1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付)
有限會社法案(政府提出、貴族院送付)
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會議
昭和十三年三月四日(金曜日)午前十時三十分開議
出席委員左の如し
委員長 野村嘉六君
理事 西田郁平君 理事 仲井間宗一君
理事 宮崎一君
一松定吉君 内藤正剛君
田村秀吉君 原玉重君
山本粂吉君 金澤正雄君
松木弘君 中野治介君
永山忠則君 佐竹晴記君
菊地養之輔君
出席政府委員左の如し
司法政務次官 久山知之君
司法省民事局長 大森洪太君
司法省刑事局長 松阪廣政君
本日の會議に上りたる議案左の如し
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付)
有限會社法案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=0
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001・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ是カラ開會ヲ致シ
マス-大森政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=1
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002・大森洪太
○大森政府委員 御許シヲ得マシテ、商法
中改正法律案ノ改正ノ經過ト、サウシテ其
改正ノ內容ノ〓要ニ付キマシテ、御說明ヲ
申上ゲタイト存ズルノデアリマス、尤モ此
點ニ付キマシテハ昨日司法大臣ヨリ申述べ
タノデアリマスルケレドモ、稍〓詳細ニ亙ツ
テ其補足ヲ試ミタイト存ズルノデアリマス、
御承知ノ通リニ現行商法ハ、明治三十二年
ニ公布竝ニ實施セラレタモノデアリマシテ、
當時立案ヲ急イダヤウナ關係モアリマシテ、
實施ノ最初カラ不十分ナ法律ダト云フ非難
ヲ受ケテ居リマシタ、其後明治四十四年ニ多
少ノ改正ガアリマシタケレドモ、是ハ全ク
應急的ノ改正デアリマシテ、是亦十分デハ
ナカッタノデアリマス、然ルニ御承知ノ通リ
ニ、商事ノ生活ハ民事ニ較ベマシテ、洵
日進月步デアリマシテ、實際ノ方ガドン
ドン先ヘ進ンデ參ルモノデアリマスカラ、
法律ノ方デドウシテモ遲レ勝チニナッテシ
マフノデアリマス、デアリマスカラ商法ニ
關スル關係ニ於キマシテハ、ドウシテモ時々
刻々ノ必要ニ卽應シテ、此改正ヲ怠ラナイ
ヤウニシナケレバナラナイト云フコトハ、
申ス迄モナイ所デアリマス、而モ此商法ノ
改正ニ付キマシテ世界的ノ傾向ト申シマス
カ、非常ニ重大ナル問題ニナリマシタノハ
御承知ノ通リニ世界戰爭後ニ於ケル商業上
ノ企業組織ニ付テノ變化デアリマス、申上
ゲル迄モナク、世界戰爭ハ諸般ノ方面ニ多
大ノ影響ヲ及ボシマシタケレドモ、此商業
上ノ企業組織ニ付テ變化ヲ來シタト云フコ
トモ、閑却ガ出來ナイノデアリマス、デア
リマスルカラ諸國ハ世界戰爭後、商法特ニ
會社法ノ關係ニ付テハ、到底舊時ノ法規デ
ハ致方ガナイト云フノデ、殆ド例外ナク全
般的改正ニ手ヲ染メマシテ、中ニハ旣ニ其
改正ヲ完了シタモノモアリマスシ、又現ニ
改正準備中ノモノモアリマスルガ、諸外國
デ此改正ニ著手シテ居ナイ國ハ、先ヅ無イ
ト申シテ差支ナイノデアリマス、飜ッテ我國
ハ先程申述ベタ通リデアリマシテ、此世界
戰爭後ノ傾向ガ、我國ニ付テハ特ニ强ク響
イタ譯デアリマス、詰リサナキダニ商法ソ
レ自身ガ不完全デアッタカラデアリマス、而
モ此商法改正ノ問題ニ拍車ヲ掛ケマシタノ
ハ、御承知ノ昭和二年ノ大恐慌デアリマス、
アノ時ニ於テ全國多數ノ銀行ガ、一時ニ店
ヲ閉メナケレバナラナイト云フヤウナ不祥事
ヲ惹起致シマシタ、此大恐慌ノ原因ガ商法
不備ノ爲デアルトハ、勿論申上ゲラレマセ
ヌケレドモ、若シ商法ガ整頓シテ居リマシ
タナラバ、少クトモアノ不祥事ノ齎シマシ
タ慘害ハ、餘程喰止メラレハシナカッタヾ
ラウカ、斯ウ云フヤウナコトヲ何人モ强ク
感ズルヤウニナリマシテ、玆ニ商法改正ト
云フ問題ガ、促進サレテ參ッタノデアリマ
ス、斯樣ナ關係デ實業界其他ノ諸方面カ
ラ、先ヅ商法改正促進ノ聲ガ起リマシテ、
ソレニ連レテ政府モ是ハ捨テヽ置ケナイト
云フコトニナッテ參ッタ次第デアリマス、斯
樣ナ關係カラ、昨日司法大臣ヨリ申述ベマ
シタ通リニ、昭和四年ニ內閣ニ法制審議會
ヲ設ケマシテ、其第一著手ノ事業ト致シマ
シテ、商法全般的改正ノ要綱ヲ諮問スルコ
トニ相成ッタノデアリマス、此法制審議會ニ
於キマシテ愼重審議ノ上、一一百六項目ノ要綱
ヲ揭ゲテ、先ヅ第一編ノ總則ト第一一編ノ會
社ニ付テ、根本的ノ改正ヲ加フベシト云フ
意見ガ、發表サレタノデアリマス、ソレニ
基キマシテ昭和七年カラ司法省內ノ委員會
ニ於キマシテ、銳意立案ヲ致シマシタ、昭
和十年ニ成案ヲ得マシテ、之ヲ公表致シマ
シタ、サウシテ昨年ノ通常議會ニ提案ヲ致
シマシタ、貴族院ニ於キマシテハ一二修正
ノ上可決ヲサレテ、衆議院ニ囘付サレマシタ、
衆議院デモ愼重御審議ヲ願ッテ居ッタノデア
リマスルガ、御承知ノヤウナ結果デ、遂ニ成
立スルニ至ラナカッタヤウナ次第デアリマ
ス、斯樣ナ經過ヲ辿ッテ參ッタ法案デアリ
マシテ、私共トシテハ成ベク之ヲ早ク法律
ニ致シテ公布ヲシ、且ツ實施ヲシタイ、
斯樣ニ存ジテ居ル次第デアリマス、尤モ第
一編總則第二編會社ニ付テノ全般的ノ改正
デアリマスルカラ、殊ニ會社方面ニ付キマ
シテ、此改正法ニ習熟スル必要モアリマセ
ウ、又此新法律ニ應ジマシテ、ソレ〓〓諸
般ノ準備モ整ヘナケレバナラナイ關係モア
リマスルカラ、先ヅ公布後一箇年ノ實施準
備期間ヲ置キマシテ、然ル後ニ實施ヲシタ
イト、今日デハ考ヘテ居ルヤウナ次第デア
リマス、御覽ノ通リニ、商法中改正法律案
ハ五百條ニモ亙ッテ居リマスル大法典デア
リマシテ、其中ニハ現行法ヲ全ク改正致シ
マシタモノ、又現行法デ解釋上疑義ノアリ
マシタ點ヲ、コヽデ明瞭ニ致シマシタモノ、
又現行法ニ全ク無イ所ヲ新シク改正致シマ
シタモノ、ソレ等ガ種々アリマシテ、簡單ニ
玆ニ包括的ニ其概要ヲ申述ベマスルコトハ、
困難デアリマスルケレドモ、其中特ニ重要
デアリ、且ツ有要デアルト考ヘラレマスル
點ヲ列擧シテ、申述ベテ見タイト存ズルノ
デアリマス、參考書類トシテ、「商法中
改正法律案理由書」ト云フ書物ヲ御配リ致
シテ置キマシタ、是モ甚ダ簡單ナモノデア
リマシテ、洵ニ恐縮ニ存ズルノデアリマス
ルガ、其第二頁ノ終カラ要綱ガ揭ゲテアリ
マス、其要綱ニ基イテ順次申述ベテ參リタ
イト存ズルノデアリマス
先ヅ總則ニ關スルモノデアリマスルガ、
是ガ只今申述ベマシタ商法中改正法律案理
由書ノ三頁カラ始ッテ居リマス、其初メガ
二一不正ノ目的ヲ以テスル商號ノ選定ニ
關シ適當ナル禁止規定ヲ設ケタルコト」デ
アリマス、御承知ノ通リニ現行法デハ商號
ノ選定ハ自由ニナッテ居リマス、商號ヲ選定
スルモ可ナリ、セザルモ可ナリデアリマシ
テ、而モ之ヲ選定スルニ當リマシテモ、其
內容ニ付テ別ニ强制的、制限的ノ法規ヲ持ッ
テ居ナイノデアリマス、內容ニ付テモ全ク
自由デアリマス、此商號自由ノ原則ハ、此
案ニ付テモ毫モ變更ヲ加ヘテ居ナイノデア
リマスルガ、唯一ツ不正ノ目的デ商號ヲ選
定シタ場合、是ハ甚ダ望マシカラザルコト
デアリマスカラ、之ヲ禁壓スル爲ニ新シイ
規定ヲ置イタノデアリマス、是ハ本案ノ第
二十一條及ビ第二十二條デアリマス、要件、
テ申シマスルト、實際ハ甲ノ營業デアルニ
拘ラズ、態ト乙ノ營業ナルカノ如キ商號ヲ
用ヒテ商賣ヲスル、詰リ乙ノ方ガ信用ガア
ルト云フヤウナ關係カラ、乙ノ名前ニ隱レ
テ、甲ガ實際上ノ仕事ヲスル、斯ウ云フヤ
ウナ場合デアリマス、乙ノ迷惑ハ勿論ノコ
トデアリマスガ、之ニ依ッテ第三者ガ酷ク
誑サレルト云フヤウナ結果ニモナリマスカ
ラ、之ヲ禁壓スルコトハ當然デアラウト思
ハレルノデアリマス
二ハ「營業ノ讓渡ニ關シ讓渡人及讓受人
ノ責任ヲ明確ニシテ第三者ノ利益ヲ保護シ
タルコト」デアリマス、是モ御承知ノ通リ
ニ、營業讓渡ノアリマシタ場合ニハ、當事
者間デ營業讓渡ノ約束ガ出來テ、營業讓渡
ノ結果ヲ來スコトニナッテ居リマスガ、第三
者ニハソレガ能ク分ラナイノデアリマス、
左樣ナ場合ニ、營業ノ讓渡ノアッタト云フ事
實ヲ知ラナイデ讓渡人ニ金ヲ拂フ、讓渡人
ノ方デハ、自分ノ方ハ營業ヲ濟マシテ居ル
ト、斯ウ云フヤウナ關係ガアル、サウ云フ
ヤウナ關係ニ付テ、第三者ノ利益ヲ保護ス
ルト云フコトガ、全ク現行法ニハ缺ケテ居
リマシタ、御承知ノ通リニ外國ノ法典等ニ
付テハ、之ニ付テ十分ナル保護規定ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、左樣ナ點ヲ參酌致シマ
シテ、第三者ノ保護ニ付テノ規定ヲ新設致
シマシタ、ソレハ第二十六條乃至第二十九
條ニナッテ居リマス
總則ノ關係ハ實ハ餘リ重要ナモノハ多ク
ナイノデアリマス、此法案ニ付キマシテハ
主トシテ力ヲ會社ニ注イダノデアリマス、
會社ノ中デモ特ニ株式會社ニ重キヲ置イタ
ト云フヤウナ次第デアリマスガ、實際上ノ
見地カラ申シマシテ、蓋シ當然ノコトカト
存ズルノデアリマス、是カラハ會社全部ニ
關スルモノデアリマス
三一「會社ハ本店ノ所在地ニ於ケル設立
ノ登記ニ依リテ成立スルモノトシ以テ會社
ノ成立ニ關スル權義ヲ明確ニシタルコト」
デアリマス、是ハ御承知ノ通リニ我國ノ登
記制度ハ、原則トシテ登記ニ依ッテ對抗力
ヲ持ツト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリ
マス、卽チ獨逸主義ヲ採ラナイデ、佛蘭西
主義ヲ採ッタ次第デアリマス、在來此會社ノ
設立登記ニ付キマシテモヤハリ對抗力ト云
フ問題デアリマシテ、詰リ會社ガ設立手續
ヲ完了致シマスレバ、ソコデ完全ニ成立ス
ルケレドモ、設立ノ登記ヲシナケレバ、成
立ヲ以テ他人ニ對抗スルコトガ出來ナイト
云フコトニ相成ッテ居ッタノデアリマス、サ
ウ致シマスルト、會社ガ事實上成立ハシ
タ、併シマダ登記ヲシテ居ナイト云フ此中
間ノ事實關係ニ於キマシテハ、或ル人ガ其
會社ノ成立ヲ認メテ吳レマスレバ、其人ト
ノ關係ニ於テハ會社ハ成立致シテ居リマ
ス、併シ或ル他ノ人ガソレヲ認メテ吳レナ
ケレバ、其他ノ人トノ間ニハ會社ハ成立シ
テ居ナイノデアリマス、會社ノヤウナ大キ
ナ働キノ出來ル人格者デアリマシテ、ソレ
ガ右ノ方ヲ向ケバ成立シテ居ルケレドモ、
左ノ方ヲ向ケバ成立シテ居ナイト云フヤウ
ナコトハ、決シテ法律生活ノ安固ヲ期スル
所以デハナイノデアリマス、在來ソレガ爲
ニ種々ノ不便ヲ感ジテ居ッタノデアリマス
カラ、此案ニ於キマシテハ、設立ノ登記
ヲシナケレバ會社ハ成立ヲシナイ、卽チ
設立ノ登會社ノ設立手續ノ最後ノ段
階デアルト云フコトニ致シタ次第デアリマ
ス
次ニ四デアリマス「會社繼續ノ場合ヲ擴
張シ以テ會社ノ更生ニ資シタルコト」御承
知ノ通リニ現行法デモ合名會社、合資會社
ニ付キマシテハ、會社ノ繼續ト云フコトヲ
認メテ居リマス、卽チ會社ガ解散致シマシ
テモ、其營業ノ能力ヲ復活シテ、從前通リ活
動ガ出來ルト云フ途ガ拓カレテ居リマスケ
レドモ、其繼續ノ事由ガ現行法デハ餘リニ
貧弱デアリマスカラ、實際ニハ餘リ役立ッテ
居ナイノデアリマス、又此會社繼續ガ、株式
會社ニハ少シモ適用ガ無イコトニナッテ居
リマス、ソレデハ會社更生ト云フ見地カラ
見マシテ、甚ダ遺憾デアリマスカラ、先ヅ
合名會社、合資會社ニ付キマシテモ、會社
繼續ノ事由ヲ殖ヤシマシテ、又是ガ株式會
社ニモ適用ノアルコトニ致シタノデアリマ
ス、是ハ本案ノ第九十五條及其準用ニ係ル
條文デアリマス
次ニ五ガ「會社ノ合併ノ無效ノ訴ニ付規
定ヲ新設シテ法律關係ノ調整ヲ圖リタイコ
ト」御承知ノ通リニ、現行法デハ會社ノ合
併ノ無效ノ主張方法ニ付テ、何等規定ガ無
イノデアリマス、デアリマスカラ解釋上ト
致シマシテハ、何人デモ何時デモ如何ナ
ル方法ニ依ッテヾモ、會社ノ合併ノ無效ノ主
張ガ出來ルト、斯樣ニ相成ルノデアリマセ
ウ、若シサウ致シマスレバ、會社ノ合併ト
云フヤウナ非常ニ大キナ法律事實ガ、甚ダ不
確カナコトニナリマシテ、何時何人ニ依ッ
テ、如何ナル方法ニ依依テヾモ覆ヘサレル
カモ知レヌト云フ危險ヲ伴フノデアリマ
ス、是ハ甚ダ望マシカラザルコトデアリマ
スカラ、會社ノ合併ノ無效ト云フノハ、訴
ヲ以テ主張ヲシナケレバナラヌト云フコトニ
致シマシテ、其訴ノ主張者、卽チ原〓ノ資
格其他其訴ノ手續、判決ノ效力ニ付キマ
シテ、明確ナル規定ヲ新ニ設ケタノデアリ
マス、是ハ此案ノ第百四條乃至第百十一條
ニナッテ居リマス
六ハ「會社ノ設立無效ノ訴ニ付規定ヲ改
正シテ法律關係ノ調整ヲ圖リタルコト」デ
アリマス、是ハ御承知ノ通リニ、旣ニ現行
法ニモ認メラレテ居リマス、ケレドモ現行
法ノ規定ガ不備デアリマシテ、吾々實際上
之ヲ運用致シマスノニ、多大ノ支障ヲ感ジ
タコトガアルノデアリマス、而モ前項卽チ
第五項デ申シマシタ通リ、會社ノ合併ノ無
效ノ訴ニ付キマシテ、規定ヲ新設シテ是等
ヲ調整シマシタ關係上、ソレ等ノ規定ニ倣
ヒマシテ、現行法ノ設立無效ノ訴ノ規定ヲ
追完致シタ次第デアリマス
七ハ「罰則ニ付全般的改正ヲ加ヘタルコ
ト」罰則ニ付キマシテハ、他ノ政府委員カ
ラ後デ十分御說明ヲ申上ゲルコトニ致シタ
イノデアリマスガ、大體論ト致シマシテ、
明治三十二年公布ノ現行商法デハ、刑罰ニ
付テモ他ノ刑罰法規ト權衡ヲ得ザルモノガ
多々アルノデアリマス、又此本案ニ依リマ
シテ會社ノ仕事ガ種々殖エテ參リマシタ、
サウ致シマスルト現行ノ刑罰規定デハ甚シ
ク足リナイノデアリマス、是等ノ關係ヲ考
慮致シマシテ、罰則ニ付キマシテモ全般的
ノ改正ヲ加ヘマシタ
次ニハ會社ノ種類ノ各論ニ亙リマシテ、
合名會社、合資會社ニ關スルモノデアリマ
スルガ、會社ニ付テ相當十分ナル考慮ヲ加
ヘタノデアリマスルケレドモ、先程申述べ
マシタ通リ、寧ロ主力ヲ株式會社ニ傾注シ
タノデアリマシテ、合名會社、合資會社ニ付
キマシテハ、改正ノ部分ハ左程多クハナイ
ノデアリマス、又現在ノ實情カラ申シマシ
テモ、此點ニ付テハ左程改正ヲ加ヘル程ノ
必要モナカラウカト存ジタ次第デアリマス
八ト致シマシテハ「社員ノ責任ヲ明確ニ
シ、以テ第三者ノ利益ヲ保護シタルコト」
デアリマス、卽チ合名會社ノ社員及合資會
社ノ無限責任社員ニ付キマシテハ、御承知
ノ通リニ從來ハ會社ニ債務超過ノ事實ガア
ルナラバ、會社ノ債權者ガ直ニ社員ニ請求
ガ出來ルト云フコトニナッテ居リマシタ、其
原則ハ本案デモ固ヨリ動カシテ居リマセヌ、
是ハ所謂直接責任ノ重大ナル原則デアリマ
ス、併シ實際ニ於キマシテハ會社債權者ト
云フ第三者側カラ見マシテ、會社ガ果シテ
債務超過デアルカドウカト云フコトハ、能
ク分ラナイノデアリマス、會社ノ財產ト會社
ノ負債トヲ對照シテ、負債ノ方ガ上ッテ居ルカ
ドウカト云フコトハ、會社自身ハ知ッテ居リマ
セウケレドモ、外部ノ者カラハ之ヲ窺ヒ得
ナイノデアリマス、デアリマスカラ在來此
直接責任ニ付テ、斯樣ナ立派ナ規定ガアリ
マシタケレドモ、實際ノ效果ハ餘リ擧ッテ居
ナカッタノデアリマス、デアリマスカラ此實
際的ノ見地カラ致シマシテ、此規定ヲ補正
致シタノデアリマス、ソレガ本案ノ第八十
條ノ特ニ其第二項第三項デアリマス、詰リ
「會社財產ニ對スル强制執行ガ其ノ効ヲ奏セ
ザルトキ亦前項ニ同ジ」ト云フノガ第二項
デアリマシテ、第三項ニ之ニ緩和的規定ヲ
添ヘマシテ、斯樣ニ致シマシテ、此直接責
任ノ實ヲ擧ゲヨウト致シタノデアリマス、
又合資會社ノ有限社員ノ責任ニ付キマシテ
ハ、從來兎角解釋上ニ疑義ヲ持ッテ居ッタノ
デアリマス、ト申シマスルノハ、ソレニ付
テ全ク規定ガ〓ケテ居ッタ、カラデアリマス、
併シ斯樣ナ責任ノ範圍限度ト云フヤウナコ
トニ付テ、之ヲ唯學說ニ委ネテ置クト云フ
ヤウナコトハ、法案トシテハ寧ロ不親切デ
アリマシテ、又運用上不安ヲ來ス所以デモ
アリマスカラ、之ヲ明確ニ致シマシタ、ソ
レハ本案ノ第百五十七條デアリマス
次ハ株式會社ニ關スルモノデアリマスガ、
是ハ先程來申述ベテ居リマスル通リニ、此
部分ニ付テハ改正ノ要點ハ甚ダ多イノデア
リマス
九ガ「定款ハ公證ヲ必要トスルモノトシ
以テ定款ノ存否竝ニ其ノ效力ヲ明確ニシタ
ルコト」デアリマス、御承知ノ通リニ定款
ハ會社ノ根本的規則ヲ網羅シタ主要ナ書面
デアリマシテ、是ガ會社ニ取リマシテ一日
モ缺クベカラザルモノデアルト云フコトハ、
申述ベル迄モナイノデアリマスルガ、實際
ニ於テハ定款ノナイ會社ト云フノガ、往々
ニシテアルノデアリマス、定款ナクシテ
會社ガ成立スル筈ガアリマセヌケレドモ、
定款ガ隱匿サレ、又故意ニ隱匿シタ譯デハ
アリマセヌデセウガ、何時ノ間ニカ無クナッ
テシマッテ居ルト云フ關係ニナッテ、會社債
權者ハ勿論、株主ナリ其他會社ヲ構成スル社
員ニモ、甚ダシク迷惑ガ及ンダト云フ事例
ガ無クハナカッタノデアリマス、デアリマス
カラ是ハ公證ヲ必要トスル、サウシテ公證
人役場ニ其原本一ツガアルト云フコトニス
レバ、誰デモ見タケレバ其處ヘ行ッテ見ルコ
トガ出來ルノデアリマス、斯クシテ定款ノ
存在ト云フコトニ付テ、之ヲ確保スルノ途
ヲ講ジタノデアリマス、是ハ第百六十七條
デアリマス
次ハ十「現物出資ト同視スベキ所謂財產
引受及事後設立ニ付キ規定ヲ新設シタルコ
ト」御承知ノ通リニ現物出資ニ付キマシテ
ハ、今日モ相當ノ規定ヲ持ッテ居ルノデアリ
マス、ケレドモ今日ノ現物出資ニ關スル規
定モ不十分デアリマスカラ、之ヲ補充ハ致
シテ居リマスルガ、兎ニ角現行法ニハ現物
出資ニ付テノ規定ハ、顏ヲ出シテ居ルノデ
アリマス、然ルニ實際上ノ價値ニ於キマシ
テ、現物出資ト略〓同等視スベキ財產引受、
又事後設立ニ付テ全ク規定ガナイモノデア
リマスカラ、甚ダ遺憾ナコトデハアリマス
ルケレドモ、現物出資ヲ潜ル爲ニ、脫法的
ニ財產引受ヲスル、又事後設立ヲスルト云
フコトガ、往々ニシテ行ハレテ居ルノデア
リマス、斯樣ナコトハ敢テ脫法的デアルト
云フコト以外ニ、會社ノ基礎ヲ薄弱ニスル
所以デアリマスカラ、之ニ付テ明確ナル規
定ヲ置クノ必要ヲ、感ジタ次第デアリマス、
是ハ第百六十八條、第三百七十五條デアリ
マス
次ハ十一「所謂預合ニ關シ適當ナル禁止
規定ヲ設ケタコト」デアリマス、會社設立ニ
當リマシテ、預合ノ弊害ノ往々ニシテ行ハ
レテ居リマスルコトハ、御承知ノ通リデア
リマス、御承知ノ通リニ會社ヲ設立致シマ
スニハ、募集設立デハ第一囘ノ拂込ト云フ
ノガ設立手續ニナッテ居リマス、第一囘ノ拂
込ガ完了シナケレバ設立手續ヲ完了スルコ
トガ出來ナイノデアリマスケレドモ、此第
一囘ノ拂込ガ集リマセヌ場合、第一囘ノ拂
込ガナイニ拘ラズ、アッタト稱シテ設立手續
ヲ敢テ行フト云フ例ガ、少ナクナカッタヤウ
ニ存ズルノデアリマス、其方法ト致シマシテ
御承知ノ預合ト云フコトガ行ハレタノデア
リマス、例ヘバ或ル銀行ニ第一囘ノ拂込金
全部ヲ預ケタト云フコトニ致シマス、勿論
假裝行爲デアリマス、第一囘ノ拂込ガ來テ
居ナイノデアリマスカラ、ソレヲ預ケル譯
モナイノデアリマスケレドモ、預ケタト云
フコトニシテ預リ證ヲ貰ヒマシテ、サウシ
テ第一囘ノ拂込完了セリト云フ外部ニ對ス
ル證據ニスルノデアリマス、併シ銀行ノ方
デモ、預リモシナイノニ預リ證ヲ出スノハ
危險デアリマスカラ、裏面ニ一本證文ヲ取
リマシテ、此預リ證ハ實ハ預ッテ居ナイノダ
カラ請求ニ應ジナイ、又發起人其他重要ナル
人物ニ借金證書ヲ拵ヘサセマシテ、是ト相
殺ニシテ危險ヲ防止スルトカ、色々ナ方法ヲ
採ッテ居ルヤウデアリマス、ソレ等ノ不當ナ
ル行爲ヲ一團的ニ認メテ預合ト稱スルノデ
アリマス、此預合ガ甚ダ宜シカラザル方法
デアルト云フコトハ、是ハ固ヨリ申上ゲル
迄モナイコトデアリマス、之ニ付テ何等禁
止的規定ヲ設ケテ居ナカッタ現行法ハ、重大
ナル缺陷アルモノト言ッテ宜シイノデアリ
マス、ソレデアリマスカラ本案ニ付テハ、
之ニ付キマシテ適當ナル規定ヲ設ケマシテ、
卽チ株式會社申込書ニ、此拂込ハ何々銀行
若クハ何々信託會社ニ對シテヤラナケレバ
ナラヌト云フコトヲ明ニ致シマシテ、サウ
シテ此何々銀行ナリ、何々信託會社カラ預ッ
タト云フ證明書ヲ貰ハナケレバ登記ハ受付
ケマセヌ、サウシテ此何々銀行ナリ何々信
託會社ガ預リマシタト云フ保管ニ關スル證
明書ヲ出シサヘ致シマスナラバ、假令ソ
レガ事實デナカラウトモ事實デナイト云フ
主張ハ出來ナイ、詰リ預ッタト云フ證明書ニ
拘束サレルト云フコトニ致シマシタ、又預
合ニ付テハ罰則ノ規定ヲモ設ケマシタ、第
百八十九條、第百七十七條第二項、ソレカラ
罰則ノ預合ニ關スル規定書ガ是デアリマス、
十二ガ「記名株式ハ定款ニ別段ノ定ナキ限リ
株劵ノ裏書ニ依リテ讓渡スルコトヲ得ルモ
ノトシタルコト」、是モ相當重要ナル改正デ
アリマス、御承知ノ通リニ今日ノ株式ノ讓
渡ハ白紙委任狀附デ行ハレテ居ルコトガ最モ
多イノデアリマス、此白紙委任狀附ノ讓渡
ト云フコトニ付キマシテハ、恐ラクハ現行
法立案ノ當時ニ於テハ、考ヘテ居ナカッタノ
デアリマセウ、デアリマスルカラ當初ハ學
說モ裁判モ之ヲ無效ト致シテ居リマシタ、
併シ實際上ソレガ多ク行ハレルモノデアリ
マスカラ、又現行法ノ儘デハサウシナケレ
バ株式ノ讓渡ガ行ヒニクイモノデアリマス
カラ、段々ト是ガ殖エテ參リマシテ、謂ハバ
慣習法的ニ之ヲ是認セザルヲ得ナクナッ
タノデアリマス、今日デハ裁判モ固ヨリ之
ヲ有效トシテ居リマス、又學說ノ多クモ之
ニ反對ヲシテ居ナイヤウデアリマス、デ此
白紙委任狀附ノ讓渡ニ付キマシテモ、本案
ハ之ヲ決シテ無效トハ致シテ居リマセヌ、
之ヲ無效トハ致シテ居リマセヌケレドモ、
ソレト併セテ別箇ニ株劵ノ裏書ニ依ル株式
ノ讓渡ノ方法ヲ廣ク認メタノデアリマス、
何ガ故ニ之ヲ認メタカト申シマスルト、御
承知ノ通リニ白紙委任狀附ノ讓渡ニ於キマ
シテハ、讓受人ノ地位ガ甚シク不安デアリ
やっ、ト申シマスルノハ善意取得者トシテ
ノ保護ガナイモノデアリマスカラ、ソレハ泥
棒ノ品デアッタト云フコトデ取消サレタリ致
シマシテ、折角自分ガ讓渡ヲ受ケナガラ、ソ
レヲ取戾サレルト云フ危險ニ曝サレテ居ル
ノデアリマス、又實際ニ於テ左樣ナ例ガ屢〓起ッ
タノデアリマス、デアリマスルカラ、白紙
委任狀附ノ讓渡ハ、固ヨリ之ヲ禁止ハ致シ
マセヌケレドモ、一面ニ株劵ノ裏書ニ依ル
讓渡、此讓受人ハ原則トシテ善意取得者ト
シテノ保護ヲ受ケマス、斯樣ナ讓渡ノ途ヲ
開イタノデアリマス、是モ外國ノ例ニ倣ッタ
ノデアリマスルガ、其實際ヲ〓究シテ見マ
スルト、成程巧ク行ッテ居ルヤウデアリマ
スルカラ、本案ニモ之ヲ採用致シタ次第デ
アリマス、此十二ノ條文ハ第二百五條及ビ
二百六條等デアリマス
十三、「優先株ハ會社設立ノ場合ニ於テモ
之ヲ發行スルコトヲ得ルモノトシ、尙ホ後
配株ノ發行ヲモ是認シタルコト」、御承知ノ
通リニ現行法デハ優先株ハ、增資ノ場合ニ
限ッテ認メラレテ居ルダケデアリマス、ケレ.
ドモ、是ハ敢テ增資ノ場合ニ限ラナイノデ
アリマシテ、設立ノ場合ニモ之ヲ認ムル必
要ハ大イニアラウカト存ズルノデアリマス、
尙ホ現行法ハ會社ノ異種類ノ株式ト致シマ
シテハ、優先株ダケヲ認メテ居リマスルケ
レドモ、特別法デハ後配株ヲモ是認シテ居
ルモノモアリマス、商法上ノ株式ニ於キマ
シテモ、後配株ヲ認メルト云フ實益モ大イ
ニアルノデアリマシテ、此案デハ敢テ優先
株ニ限ラズ、後配株デモ、而モ增資ノ場合
ニ限ラズ、設立ノ場合カラデモ認ムルコト
ヲ得ル、斯ウ云フ途ヲ開イタノデアリマシ
テ、卽チ投資ノ自由ヲ擴大シタ譯デアリマ
ス、會社ト致シマシテハ投資ヲ得ルニ非常ニ
都合ガ好イノデアリマス、又投資者カラ申
シマスレバ、其好ム所ヲ選ブト云フノデア
リマシテ、其自由ヲ增サレタ譯デアリマシ
テ、事實上ニ於テ甚ダ結構ナコトデハナイ
カト存ズルノデアリマス、十三ノ方ノ法律
ノ條文ハ第二百二十二條デアリマス
十四、「株主總會ノ決議取消ノ訴ニ關スル
規定ヲ適當ニ改正シ、尙ホ決議ノ內容ガ違法
ナルコトヲ理由トスル決議無效確認ノ訴ニ
付テモ規定ヲ新設シテ、法律關係ノ調整ヲ圖
リタルコト」、此株主總會ノ決議ノ取消ノ訴
ニ付キマシテハ、御承知ノ通リニ現行法デ
ハ決議無效ノ訴トシテ規定サレテ居ルノデ
アリマス、マア文字ノ問題デアリマスカラ、
ドウデモ宜イト言ヘバ宜イヤウナモノノ、
是ハ無效ト云フヨリハ寧ロ取消ノ訴ノ方ガ
宜イノデアリマスカラ、本案デハ取消ト云
フ文字ヲ使ヒマシタ、此現行法ノ決議無效
ノ訴ニ付テハ不備ノ點ガ甚ダ多イノデアリ
マス、實際上大分困ッタ所ガアルノデアリマ
ス、デアリマスルカラ、ソレ等ヲ補充致シ
マシタモノデアリマス、又決議ノ內容ガ違
法デアルコトヲ理由トスル、是ハ無效確認
ノ訴デアリマス、之ニ付テハ商法上何等特
殊ノ規定ガナカッタノデアリマス、隨テ通常
ノ民事訴訟法上ノ無效確認ノ訴ダト云フコ
トニナッテ居リマシタガ爲ニ、其判決ノ效力
ハ個々バラ〓〓ニ生ズルト云フ遺憾ナ點ヲ
惹起シテ居ッタノデアリマス、卽チ甲原告ガ
此訴ヲ提起致シマシテ、勝訴ノ判決ヲ得マ
スルナラバ、甲ニ對スル關係ニ於テハ無效
デアルケレドモ、甲以外ノ第三者ニ對スル
關係ニ於テハヤハリ其決議ハ有效デアルト
云フヤウナ、如何ニモ變ナ結果ヲ來シテ居ッ
タノデアリマス、ソレ等ヲ是正致シマシテ、
適當ニ規定ヲ補充致シタノデアリマス、尙
ホ此決議取消ダケノ問題デハナイノデアリ
マス、卽チ先程申述ベマシタ合併無效ノ訴、
又設立無效ノ訴ニ通ズル問題デアリマス、
假令法律上其無效ノ理由ガアリマシテ、法
律上ダケカラ申シマスレバ之ヲ無效トスベ
キデアリマシテモ、其無效タルベキ瑕疵ガ
旣ニ補ハレテ居ル、又會社ノ現狀ハ甚ダ堅
實健全ニ進ンデ居リマシテ、今日カラ見
レバ之ヲ無效トスベキ理由ハ毫モナイ、之
ヲ寧ロ無效トシナイコトガ會社ノ爲ニモ、
社員ノ爲ニモ、又會社債權者ノ爲ニモ、更
ニ又一般ノ爲ニモ甚ダ適當デアル、斯樣ニ
裁判所ガ認メマシタ時ニハ、其請求ヲ棄却
シテ宜シイト云フ規定ヲ新ニ設ケマシ
ク、ソレハ此案ノ第百七條デアリマス、斯
樣ナ規定ハ其運用ニ付テ注意ヲ致サナケレ
バナラナイコトハ勿論デアリマスルガ、良
キ運用ノ結果、相當立派ナ效果ヲ發揮スル
モノデハナイカト存ジテ居ル次第デアリマ
ス、尙ホ株主總會ノ決議取消ノ訴等ニ關シ
マスル規定ハ第二百四十七條、第二百五十
三條デアリマス
十五ガ「株主總會ノ特別決議ヲ必要トス
ル事由ヲ明確ニシタルコト」、御承知ノ通リ
ニ現行法デモ株主總會ノ特別決議ヲ必要ト
スル事項ハ二三擧ゲラレテ居リマス、壁、
テ申シマスレバ、社債ノ募集、定款ノ變更、
解散ノ決議、是等ニ特別決議ヲ必要トスル
コトハ旣ニ現行法モ認メテ居ルノデアリマ
スルガ、其以外ニ會社ニ取リマシテ極メテ
重大ナル事實デアルニ拘ラズ是ガ特別決議
タルコトヲ必要トスルト云フ明文ヲ缺イテ
居ルモノガアリマス、明文ノナイモノガア
ルノデアリマス、譬ヘテ申シマスレバ、營
業ノ讓渡ニ關スル問題ノ如キ、是ハ實質カ
ラ申シマスレバ、必ズ特別決議ニ掛ケナケ
レバナラナイト存ジマスルガ、現行法條デ
ハ普通決議デモ宜シイコトニナッテ居リマ
ス、左樣ナ缺點ヲ是正致シマスル爲ニ、特
別決議ヲ必要トスル事由ヲ更ニ加ヘタノデ
アリマス、ソレハ第二百四十五條デアリマ
ス
次ニ十六ガ、「財產目錄、貸借對照表等ノ
記載方法ニ付キ規定ヲ新設シタ事由」デア
リマス、此會社關係書類ノ記載方法ニ付テ、
是ガ不備不十分デアリマスルガ爲ニ、以テ
會社ノ營業狀態ノ內容隱匿ニ甚ダ惡用サレ
マシテ、ソレガ爲ニ會社債權者ナリ、般
第三者ニ迷惑ヲ及ボシタト云フ例ハ少クナ
イノデアリマス、ソレ等ヲ考慮致シマシテ
斯ル規定ヲ設ケタノデアリマス、第二百八
十五條乃至第二百八十七條、及ビ施行法案
ノ中ニモ、之ニ付テ規定ヲ設ケマシタ、ソ
レハ第四十九條デアリマス、詳細〓究ノ上、
其記載例ヲ命令デ一定シタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス
十七ガ「社債ニ關スル規定ニ重要ナル補
修ヲ加ヘ、社債權者集會ニ關スル規定ヲ新
設シテ、一面社債權者ノ權利ヲ保護スルト
共ニ他面會社ノ便益ヲ尊重シタルコト」デ
アリマス、御承知ノ商法上ノ社債ハ無擔保
社債デアリマス、擔保付社債ハ特別法デア
リマスル擔保付社債信託法ノ支配ヲ受ケル
ノデアリマス、恐ラク此現行法立案當時ニ
於キマシテハ、無擔保社債ノ如キモノハ左
程重要ナル役割ヲ務メルモノデハナイト考
ヘテ居ッタノデアリマセウ、隨テ社債ニ關ス
ル規定ハ現行法中ニハアリマスルケレドモ、
極メテ貧弱デアリマス、當初ハソレデ足リ
ルト考ヘタノデアリマセウ、然ルニ御承知
ノ通リ無擔保社債モヤハリ隨分行ハレマシ
テ、今日經濟上相當重要ナル働キヲ致シテ
居ルノデアリマス、此實情カラ見マスルト、
今日ノ商法ノ社債ニ關スル規定デハ全ク不
十分デアリマシテ、之ヲ補充スベキコトガ
多々アッタノデアリマス、ノミナラズ此無擔
保社債ニ付キマシテモ、社債權者集會ヲ必
要トスルコトハ言フ迄モナイノデアリマス
ルガ、現行法ニハソレガ缺ケテ居ルノデア
リマス、ナゼ之ヲ必要トスルカト申シマス
ルト、社債權者集會ト云フヤウナ機關ガナ
ケレバ、社債權者ハ自分ノ權利ヲ主張致シ
マスルノニ、箇々バラ〓〓ニナッテ主張スル
ノ外ハナイノデアリマス、社債權者同志ノ
連絡ガナク、甲ハ甲ノ權利ヲ、乙ハ乙ノ權
利ヲ主張スルノ外ハナイノデアリマス、然
ルニ社債權者ノ權利ト云フノハ、要スルニ
社債劵ニ現ハス金額ガ原則デアリマシテ、
實ハ少額ナ金額デアリマス、其少額ノ金額
ノ爲ニ大キナ會社ヲ相手取ッテ爭ハナケレバ
ナラナイト致シマスルト、兎角コチラノ方ガ
不便デアッテ、泣寢入リニ終ルト云フコト
ガ、得テアリ勝チデアリマス、成程個々一人
一人ノ權利カラ申シマスルト少額デアリマ
スルケレドモ、斯樣ナ少額ナ權利者ガ多
數アルノデアリマス、一團トシテ考ヘマス
ルナラバ、是ハ由々シキ大事デアリマス、
デアリマスカラ左樣ナコトノナイヤウニ、
社債權者集會ト云フモノヲ認メマシテ、社
債權者集會ノ手ニ依ッテ權利ノ行使ヲスルト
云フコトニ致シマスレバ、社債權者ト云フ
一ツノ大キナ團體債權者ノ權益ノ擁護ニ、
缺クル所ガナイノデアリマス、又是ト恰度
反對デアリマスガ、例ヘバ會社ガ合併ヲシ
ヨウトカ、資本ノ減少ヲシヨウトカ云フ時ニ
ハ、債權者ノ同意ヲ得ル、債權者ノ承認ヲ
得ナケレバナラナイト云フコトニ相成ル譯
デアリマス、之ニ異議ヲ唱ヘタ債權者ニ對
シテハ辨濟ヲスルトカ、或ハ擔保ヲ供シナ
ケレバ、ソレ等ノ手續ヲ進メル譯ニハ行カ
ナイト云フコトニナルノデアリマス、然ル
ニ社債權者モ亦債權者デアリマスカラ、斯
樣ナタッタ一人ノ、而モ少額ナ債權者ノ異議
ノ爲ニ、斯樣ナ手續ニ支障ヲ來シタト云フ
例モアルノデアリマス、斯樣ナ場合ニハ社
債權者集會カラ異議ヲ申立テテ、個々ノ社
債權者カラ異議ノ申立ハ出來ナイ、斯ウ云
フヤウニシタ方ガ會社ノ爲ニモ、又一團的
ノ社債權者總體ノ爲ニモ宜イノデアリマ
ス、左樣ナ諸般ノ點ヲ考慮致シマシテ、此
案デハ社債權者集會ヲ商法上ノ社債ニモ認
メタ次第デアリマス、ソレハ第三百十七條
カラ第三百四十一條ニ亙ッテ居リマス
次ハ十八デ「資本增加ニ關スル規定ヲ改
正シテ實際上ノ利便ヲ圖ルト共ニ法律關係
ノ調整ヲ期シタルコト」、御承知ノ通リニ增
資ニ關スル現行法ノ規定モ、隨分不十分デア
ル、又同時ニ役ニ立タナイ、又邪魔ニナル
ヤウナ規定モアルノデアリマス、是等ノ規
定ヲ調整致シマシテ、實際ニ卽應シマスル
ヤウニ、又關係者ノ權益ノ無視サレナイヤ
ウニ、適當ナル規定ヲ置イタノデアリマス、
譬ヘテ申シマスルト、現行法ニ依リマスル
ト、御承知ノ通リニ株金金額拂込ノ後デナ
ケレバ、資本ノ增加ハ出來ナイト云フコト
ニナッテ居リマス、現行法ノ第二百十條デア
リマス、此規定ガアリマスルガ爲ニ、極ク
僅カナ部分ノ拂込ガ未濟ニナッテ居ル、例へ
バ其株主トノ間ニ紛爭ヲ生ジテ居ル、或ハ
株主ガ行衞不明デアルト云フヤウナ關係ガ
アッタ場合ニ、左樣ナ僅少部分ノ缺陷ノ爲ニ
增資ガ出來ナイト云フヤウナ不便ガ、往々
ニシテ愬ヘラレタノデアリマス、然ラバ此
規定ハ左程重要ナルモノデアルカト申シマ
スノニ、實ハサウデナイノデアリマシテ、
容易ニ脫法的ニ潜ラレテシマフノデアリマ
ス、卽チ斯樣ナ場合ニ姉妹會社ヲ作リマシ
テ、後ニソレヲ合併ニ依ッテ吸收致シマス、
サウ致シマスト增資ガ出來ナイト云フモノ
ノ、結局增資ヲシタト同ジコトデアリマス、
少シ違ヒマスノハ登錄稅ノ稅額ガ違フダケ
ダサウデアリマス、デアリマスカラ此規定
ノ如キハ邪魔ニナリコソスレ、役ニ立タナ
イ規定デアリマスカラ、之ヲ削除致シマシ
タ、併シ是ト同時ニ無用ナル、又危險ト思
ハレル增資ニ付キマシテハ、十分警戒致サ
ナケレバナリマセヌカラ、之ニ關スル適當
ナル規定ハ設ケタノデアリマス、第三百五
十三條等デアリマス
次ニ第十九デアリマシテ「各種株式ノ相互
ノ轉換(例、優先株ト普通株トノ相互ノ轉換)
ヲ是認シテ投資ノ自由ヲ擴大シタコト」、先
程モ申述ベマシタ通リ、本案ニハ普通株以
外ニ優先株、後配株、各種類ノ株ヲ廣ク認
メルコトト致シタノデアリマス、所ガ各種
類ノ株式ノ中デ如何ナル種類ノ株式ガ最モ
有利デアルカト云フコトハ、必ズシモ一〓
ニ申サレナイノデアリマス、譬ヘテ申シマ
スレバ普通株ニハ六分ノ配當ヲシテ、其殘
リガアッタ場合ニ、其殘リヲ後配株ニ全部
配當スル、斯ウ云フヤウナ規定ガアリマシ
タ場合、最初ハ成程普通株ノ方ハ利益デア
リマセウケレドモ、此會社ノ營業成績ガ好
クテ、段々ト利益配當ノ額ガ多クナル、例へ
バ一割五分モ利益ガ出テ來ル、斯ウ云フ場合
普通株ニハ六分ダケノ配當ヲスレバ宜イノデ
アリマシテ、殘リハ皆後配株ニ行クノデア
リマスカラ、後配株ノ方ガ非常ニ配當額ガ
宜イノデアリマス、左樣ナ場合ニ後配株ニ
乘移ラレルト云フコトニシテ置キマスレバ、
誰デモ安心シテ先ヅ株ヲ持ツコトガ出來ル
ノデアリマス、現在ノ利益及ビ將來ノ利益
ヲ考ヘテ、現在ハ之ヲ持チ、將來ハ之ニ乘
換へラレルト云フ餘裕ヲ存シテ置キマスナ
ラバ、投資ノ自由ガ尙バレテ、又投資ヲ迎
ヘルニモ極メテ便利デアラウト思フノデア
リマス、ソレデ各種ノ株式相互ノ轉換ヲ是
認致シタノデアリマス、ソレハ第三百五十
九條カラ第三百六十三條デアリマス
二十ハ更ニ前項ノ趣旨ヲ擴張シテ「社債
ヲ株式ニ轉換スルノ途ヲ開キタルコト」、是
ハ御承知ノ英米等デ行ハレテ居リマス「コ
ンヴアーチブル·ボンド」ノ制度ヲ採用シタ
ノデアリマス、御承知ノ通リニ社債ヲ持チ
マスルト、劵面額ガ還ッテ來ルノデアリマス
カラ、還ッテ參リマスル金額ガ豫定サレテ居
リマシテ、確實ナルコトハ確ニ確實デアリ
マス、ソレデ確實ヲ期シテ社債ヲ持チマシ
テ、斯クシテ社債ヲ集メテ會社ガ營業ヲ擴
大シテヤリマシタ所ガ、大變其成績ガ良イ、
ソコデ株式ニ利益配當ガ非常ニ付ク、サウ
シテ見ルト最初社債ヲ持タウト思フ人ガ、
是ハ社債ヲ持ッタ方ガ宜イカ、株式ヲ持ッタ方
ガ宜イカ、大變迷フ譯デアリマス、デスカ
ラ、最初ハ取敢ヘズ先ヅ確實ナ社債ヲ持ッ
テ置イテ、然ル後ニ營業成績ノ工合ヲ見テ、
株式ニ利益ノ配當ガ澤山付クナラバ株式ニ
乘移ル、社債權者デアッタ者ガ今度ハ株主
ニナル、斯ウ云フ途ヲ開キマスナラバ、安
ンジテ社債ガ持テル、又社債ヲ持ツコトニ
付テ心ノ餘裕ガ十分出來ル譯デアリマス、
資金ヲ得ル會社カラ見テモ便利デアリ、又
資金ヲ出ス方カラ見テモ都合ガ好イノデア
リマス、斯樣ナ途ヲ我國ニ於テモ開クベキ
モノダト考ヘタノデアリマス、ソレガ第三
百六十四條乃至第三百六十九條デアリマス
二十一ガ「資本ノ增加又ハ減少ノ無效ノ
訴ニ關スル規定ヲ改正シテ、法律關係ノ調
整ヲ圖リタルコト」、是ハ先程會社ノ設立ノ
無效ノ訴等ニ付テ申述ベタト全ク同樣ノ趣
旨デアリマス、ソレハ本案ノ第三百七十一
條乃至第三百七十四條、第三百八十條デア
リマス
二十二ガ「會社ノ整理ニ關シ新ニ一節ヲ
設ケ、會社ガ支拂不能若ハ債務超過ノ虞ア
ル時又ハ支拂不能若ハ債務超過ノ疑アル時
ハ、裁判所ハ申立又ハ請求ニ依リ會社ニ對
シ整理開始ノ命令ヲ爲シ、爾後裁判所監督
ノ下ニ適宜諸種ノ措置ニ依リ以テ公正的確
ニ整理ニ當ルベキモノトシタルコト」、是ハ
極メテ重要ナル改正デアリマス、御承知ノ
通リ會社ノ營業ガ不振ニナリマシテ、大分
危ブナクナッテ來タヤウナ場合、在來ノ實例
ヲ見ルト、得テ整理委員ト云フモノガ出テ
參リマシテ、其整理ニ當ル譯デアリマス、
所ガ此整理委員ノ整理ト云フコトハ、現行
法ニハ何等規定ガナイモノデアリマスルカ
ラ、全ク事實上ノ問題デアリマシテ、之二
何等法律上ノ力ガ加ハッテ居ナカッタノデア
リマス、其結果極メテ多クノ例ヲ見マスル
ト、旨ク行ッテ居ナイノデアリマス、旨ク
行ッテ居ナイドコロカ、整理ニ依ッテ甚ダ惡
イ結果ヲ招致シタト云フ例ガ少クナイノ
デアリマス、左樣ナ會社ガ不振ノ場合デア
リマスルカラ、ドウシテモ差當リ先ヅ會社
ノ財產ノ散逸ヲ防ガナケレバナラナイノデ
アリマス、所ガ事實上ノ問題デアリマシ
テ、法律上ノ力ガ加ハッテ居ナイノデアリ
マスルカラ、會社財產ノ散逸ヲ防グコトガ
出來ナイノデアリマス、又整理委員モ實際
上、事實上携ッテ居ルダケノコトデアリマ
ス、之ニ付テ法律上ノ監督モナケレバ、又
保護モナイノデアリマスカラ、實際上ノ仕
事ハサウ大シテ出來ル譯ガ、先ヅナイノ
デアリマス、デアリマスルカラ、多クノ
場合ヲ見マスルト、折角整理委員ガ入ッテ
整理ニ從事ハ致シタモノノ、會社ノ財產ガ
減リ、整理ノ費用ガ却テ嵩ンデ來ル、サウ
シテ結局法律上ノ問題ニナリマシテ、破產
ト云フヤウナコトニナリマシタ場合、會社
ノ財產ハ頗ル減ッテ居ル、債權者ハ何等取ル
所ガナイト云フヤウナコトニ流レテシマ
フ、サウ云フヤウナコトニ相成ルノデアリ
さく、デアリマスルカラ、破產ニナッテシマ
ヘバ是ハ致方ガアリマセヌガ、破產ニナル
前ニ此整理ヲ法律上ノ保護ノ下ニ十分ニヤ
リマシテ、ソレデ會社ノ更生ガ出來ルナラ
バ更生サセル、又和議ガ出來ルナラバ和議
ヲスル、而モソレ等ガ出來ナクテ、已ムヲ
得ズ破產ニ流レテ行クナラバ、是ハ破產ニ
流レテ行カシメル、斯ウ云フ工合ニ、破產
前ニ出來得ル限リノ整理ヲ法律上デスル、
而モ公正ナル裁判所監督ノ下ニスルト云フ
コトガ、最モ望マシイ所デアリマシテ、左
樣ナ關係ヲ愼重ニ考慮シテ、會社整理ノ
節ヲ設ケタ次第デアリマス、ソレガ此案デ
ハ第三百八十一條以下ニナッテ居リマス
二十三ハ「合併ニ關スル規定ニ付キ必要
ナル補修ヲ加ヘタルコト」卽チ合併契約書
其他合併ニ關スル重要ナル手續ニ付テ、現
行法ノ規定ガナイモノデアリマスルカラ、
之ヲ補充シタノデアリマス、第四百八條乃
至第四百十六條デアリマス
二十四ガ「特別〓算ニ關シ重要ナル規定
ヲ新設シ、裁判所監督ノ下ニ於テ嚴密ナル
〓算手續ヲ行フ場合ニ付キ必要ナル規定ヲ
揭ゲタルコト」デアリマス、會社ガ解散ス
ルト、會社ノ手ニ依ッテ〓算サレマス、是ガ
普通ノ狀態デアリマシテ、此普通ノ〓算ヲ
決シテ禁ズルモノデハアリマセヌケレドモ、
是亦少カラザル場合ニ付テ考ヘマスルト、
會社ガ解散ヲスルノハ決シテ功成リ名遂ゲ
タト云フ場合ダケデハナイノデアリマス、
營業不振ノ結果、行詰ッテ解散スルト云フ
場合モ少クナイノデアリマス、左樣ナ場合
ニ全ク其會社自身ノ手ニ委ネテ〓算ヲサセ
ルコトニスルナラバ、果シテ多數權利者ノ
權益ガ十分ニ保護サレルデアリマセウカ、
是ハ固ヨリ憂慮ニ堪ヘザル所デアリマス、
デアリマスルカラ、普通ノ〓算ハ〓算トシ
テ勿論置イテアリマスルガ、其以外ニ〓算
ノ遂行覺束ナシト思ハレルモノニ付テ、裁
判所ノ監督ノ下ニ一層嚴重ナル〓算手續ヲ
以テ臨ム必要ガ、大イニアラウト存ズルノ
デアリマス、是亦破產ニナッテシマヘバ、是
ハソレダケノモノデゴザイマスルケレド
モ、破產ノ一步若クハ數步前デ喰止メルコ
トガ出來ルナラバ、是ハ結構ナコトデアリ
マスルカラ、左樣ナ考カラ致シマシテ、特
別〓算ノ規定ヲ玆ニ置イタ次第デアリマ
ス、其趣旨ハ會社ノ整理ニ付テ申述ベタ所
ト同樣デアリマスルケレドモ、會社ノ整理
ハ解散前ノ問題デアリ、特別〓算ハ解散後
ノ問題デアリマスルコトハ、中上ゲル迄モ
ナイノデアリマス、ソレハ第四百三十一條
乃至第四百五十六條デアリマス
以上此理由書ニ揭ゲマシタ所ニ依リマシ
テ、甚ダ蕪雜デ恐縮デアリマスガ、一應申
述ベタノデアリマス、次ニ此理由書ニ漏レ
テ居リマスコトヲ、尙ホ一點補足致シタイ
ト存ズルノデアリマス、ソレハ本會議デモ
問題ニナリマシタカラ申上ゲタイノデアリ
マスルガ、株式會社ノ取締役、監査役ノ資
格ノ問題デアリマス、御承知ノ通リニ現行
法デハ株主タルコトヲ必要トシテ居リマス、
是ハ申上ゲル迄モナク佛蘭西其他二三ノ國
ノ主義ニ則ッタモノデアリマス、所ガ株主ニ限
定スルト云フコトニ付テ諸種ノ弊害ガ生ズル
ノデアリマス、廣ク適材ヲ他カラ求メテ來ルト
云フコトガ出來ナイノデアリマス、今日實際ド
ウシテ居ルカト申シマスト、御承知ノ通リニ
株主外カラ取締役ヲ迎へマスル時ニハ、株
式ヲ之ニ預ケマシテ株主タルコトヲ假裝シ
テ、此假想株主ニ取締役ニナッテ貰ッテ居ル
ノデアリマス、サウスルト此假裝株主ト會
社トノ間ニ所謂假裝株ノ保管、返還等ノ問
題ニ付テウルサイ問題ヲ、往々ニシテ惹起
スルノデアリマス、例ヘバ小サイ問題カラ
申シマスルト此假裝株主ガ稅金ヲ拂フ、其
利益配當ヲ受ケタヤウナ、受ケナイヤウナ
格好ニナッテ居ルノデアリマスカラ、其稅金
額デ問題ヲ生ズル、ソレカラ又此假裝株主
ガ死ンダト云フヤウナ場合ニ紛紜ガ生ズ
ル、假裝株主ノ相續人ガ遂ニ株主トシテ居
直ッタト云フヤウナ例モ聞キマス、斯樣ナ紛
紜ヲ生ジマスル所以ハ、蓋シ現行法デ株主
ニ限ルト云フヤウナ小規模ノ制限ヲ設ケテ
居ルカラデアリマス、又御承知ノ通リニ斯
樣ナ脫法行爲ガ、公々然トシテ行ハレテ居
ルノデアリマス、此假想株主ノ脫法行爲ハ
決シテ無效トハ申シマセヌ、無效デハアリ
マセヌケレドモ、斯樣ニ公々然ト脫法行爲
ノ行ハレテ居ルト云フコトハ、決シテ遵法
精神ノ爲ニモ宜イコトデハナイノデアリマ
ス、デアリマスルカラ左樣ナ種々ノ關係カ
ラ致シマシテ、此案デハ獨逸其他大多數ノ
國ノ例ニ從ヒマシテ、株主タルコトヲ要セ
ザルモノト致シマシタ、ソレハ本案ノ第二
百五十四條第一項デアリマス、斯ク致シマ
シタケレドモ、是ハ本案自身ガ株主以外ノ
者カラ株主ヲ採用シロト云フコトヲ、固ヨリ
强制シテ居ル趣旨デハナイノデアリマシテ、
會社ガ株主中ヨリ取締役ヲ選任シナケレバ
ナラナイト云フコトニ決メマスルナラバ、
定款デ以テソレヲ定メテ宜イノデアリマス、
斯ル定款ノ定メハ固ヨリ有效デアリマス、
デアリマスルカラ會社ガ其欲スル所ニ從ヒ
マシテ、取締役ノ資格要件ヲ株主ニ限ル、
若クハ限ラナイト云フコトハ、是ハドチラ
デモ出來ル次第デアリマス、唯會社ガ取締
役ヲ株主外カラ取ラウトシマシタ場合ニ、
ソレガ取レル、要スルニ株主總會ノ決議ノ
範圍ヲ廣クシタニ過ギナイノデアリマス、
左樣御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス
時間ガ切迫シテ居リマスルガ、簡單ニ他
ノ二法律案ニ付テ申述ベテ見タイト存ズル
ノデアリマス、商法中改正法律施行法案ハ、
八十九箇條カラ成ッテ居リマス、是亦相當厖
大ナ法律デアリマスルガ、是ハ御承知ノ通
リニ新法ト舊法ノ適用關係ヲ明ニシテ、ソ
レニ數箇ノ施行上必要ナル規定ヲ加ヘタモ
ノニ過ギナイノデアリマス、詰リ此第二條
ノ「新法ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外新
法施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用ス
但シ舊法ニ依リテ生ジタル效力ヲ妨ゲズ」、
是ガ根本ノ方針ニナッテ居ルノデアリマシ
テ、或ル場合ニ此第二條デハ明確デハアリマ
セヌガ爲ニ、念ノ爲ニ其適例ヲ所々ニ現ハ
シタト云フ關係ニ過ギナイノデアリマス、
後ニ內容ニ入リマシテ御說明ヲ申上ゲルコ
トガアラウト思ヒマスケレドモ、包括的ニ
施行法案ニ付テハ申述ベル必要モナイカト
存ズルノデアリマス
次ハ有限會社法案デアリマスガ、是ハ此法
案ニ依リマシテ、有限會社ト云フ商業上ノ特
殊ノ企業組織ヲ、新ニ認メヨウトスルノデ
アリマス、御承知ノ通リ商法ニハ合名會社、
合資會社、株式會社、株式合資會社ノ四種
類ヲ旣ニ認メテ居ルノデアリマシテ、是等
四種類ノ會社ニハソレ〓〓獨特ノ特色モア
リマスガ、御承知ノ通リニ今日最モ重大ナ
ル活躍ヲ致シテ居リマスノハ株式會社デア
リマシテ、非常ニ巨額ノ資本ヲ擁シテ、商
業界ニ活動シテ居ルノデアリマス、近來ノ
企業組織ノ傾向ト致シマシテ、有限責任ト
云フコトガ最モ歡迎セラレル譯デアリマス、
無限責任デアリマスト、會社ノ營業成績ノ
如何ニ依リマシテ、一朝ニシテ財產ヲ蕩盡
スルト云フ危險ガアリマスノデ、勢ヒ何人
モソレニ手控ヘシテ、有限責任ノ方ニ向フト
云フコトハ、是ハ蔽フベカラザル傾向デア
リマス、左樣ナ次第デ株式會社ト云フモノガ
歡迎セラレルノデアリマセウ、所ガ此株式
會社ハ有限責任ノ點ハ宜イノデアリマスケレ
ドモ、普通株主ガ非常ニ多イノデアリマシ
テ、而モ株式ノ讓渡ト云フコトガ、自由ニ認
メラレテ居リマスカラ、株主ハ常ニ異動ヲスル
譯デアリマス、ソレデスカラ株主ト株主トノ間
ノ橫ノ連絡ト云モフノガ、甚ダ少イノデアリ
マシテ、考方ニ依リマシテハ其關係ハ頗ル水臭
イコトニナッテ居ルノデアリマス、ソコデ株
式會社ノ如ク有限責任デハアルケレドモ、
社員同志ノ間ニモット密接ナ關係ヲ持タ
セテ、卽チ互ニ信賴スル少數者ノミニ依ッテ
組織スル企業組織ト云フモノガ、是ガ大變
便利デアル、手頃デアル、斯ウ云フノデ段々
ト實際社會ニ歡迎サレテ來タノデアリマス、
卽チ株式會社カラ斯樣ナ特殊ノ會社ガ派生
シテ參ッタノデアリマス、御承知ノ通リニ英
國ニ先ヅ實際是ガ行ハレマシテ、ソレヲ判
例ガ是認シ、更ニソレヲ法律ガ是認シタ
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、其實
際ノ成績ガ極メテ好カッタモノデアリマス
カラ、是ガ獨逸、佛蘭西、墺地利、瑞西等
ニモ是認サレマシテ、段々ト諸國ニ先ヅ流行
シテ居ル次第デアリマス、マダ之ヲ法律ト
シテ認メテ居ナイ國デモ亦、多ク之ヲ認メ
ントシツヽアル狀況ノヤウデアリマス、我
國デモ斯樣ナ會社ヲ認メテ貰ヒタイト云フ
要望ハ、早クカラ實業界ヨリアッタノデアリ
マシテ、實ハモット早ク之ニ付テ規定ヲスベ
キデアッタノデアリマセウガ、御承知ノ通リ
會社法ノ全般的改正ト云フコトヲ控エテ居ッ
タモノデアリマスカラ、會社法ノ全般的改
正ト共ニソレヲ認メヨウト云フコトデ、實
ハ今日マデ遲レテ居ッタノデアリマス、遲レ
タ事情ニ付キマシテハ私共慚愧ニ存ジテ居
ル次第デアリマス、左樣ナ關係カラ致シマシ
テ、有限會社ト云フモノハ、詰リ總テノ社員
ガ原則トシテ有限責任デアリマシテ、此點ニ於
テハ株式會社ノ一種ト申シテモ宜シイデア
リマセウ、ケレドモ少數ノ、互ニ信賴スル社
員カラ成立シテ居ルノデアリマシテ、其持
分ノ讓渡ニ付テモ嚴重ナル制限ガアリマス、
此點ニ付テハ合名會社的色彩ヲ帶ビテ居ル
ト申シテ宜カラウカト存ズルノデアリマス、
今日多ク行ハレテ居リマスル同族會社ノ如
キハ、株式會社トナッテ居リマスルケレド
モ、是ハ有限會社ノ規定ガナカッタカラ、已
ムヲ得ズ株式會社トナッテ居ルノデハナイ
カト思ハレルノデアリマシテ、若シ此法案
ガ法律トナリ、ソレガ實施サレマスルナラ
バ、十分ニ是ハ利用サレルコトデハナイカ
ト存ズルノデアリマス、簡單ニ此案ニ基キ
マシテ、有限會社ノ骨子ヲ申述ベマスルト、
是亦甚ダ不鮮明デ、申譯ナイノデアリマス
ガ、有限會社法案說明ト云フ書類ヲ御配リ
致シテ置キマシタガ、劈頭ノ部分ニ基イテ
申述ベテ參リマス
一、「其目的ハ商法上ノ會社ト其揆ヲ一ニ
ス」、全ク商法上ノ會社ト同樣ノモノデアリ
マスルガ、之ヲ別箇ノ法典ニ致シマシタノ
ハ、之ヲ商法中ニ編入シテ、商法ニ五種類
ノ會社ガアルト致シマスルト、規定ガ相當
錯綜スルノデアリマス、吾々ガ之ヲ〓究致
シマスルニモ、亦運用致シマスルノニモ、
寧ロ別法典トシタ方ガ便宜デアルト考ヘマ
シタシ、又此有限會社ニ付キマシテハ、全
ク新シキ制度デアリマスルカラ、此實際ノ
運用如何ニ依リマシテハ、將來改正スル必
要ヲ生ズルカモ知レマセヌ、是ハ會社法全
般ノ改正ト云フコトヨリモ、先ニ、又屢〓來
ルカモ知レナイノデアリマス、何シロ新シ
イ問題デアリマスルカラ、實際ノ運用如何
ニ依ッテノ改正ト云フコトヲ、頭ニ入レテ置
カナケレバナラナイノデアリマス、サウシ
マスト、改正ノ便宜ノ爲ニハ別法典ニシテ
置イタ方ガ宜イノデアリマス、左樣ナ便宜
カラ別法典ニシタダケデ、實質上カラ申シ
マスレバ、商法上ノ會社ト何等選ブ所ガナ
イノデアリマス
二ハ、「社員ノ責任ハ其出資ノ金額ヲ限度
トスルコトヲ以テ原則トス」、第十七條ニソ
レヲ明ニ致シマシタ、此例外ハ第十四條、
第十五條等デアリマス、卽チ設立又ハ資本
增加ニ際シマシテ、拂込ノ未濟ナモノガア
リ、若クハ現物出資ノ評價ニ著シク過當デ
アッタモノガアルト云フ場合ノ、塡補責任デ
アリマス
三ハ、「社員ノ數ノ最大限度ヲ五十人トス
ルコトヲ以テ限度トス」、是ハ先程申シマシ
タ合名會社的色彩ヲ帶ビル所以デアリマス、
第八條ニ之ヲ揭ゲテ置キマシタ
四ハ、「資本ノ總額ノ最小限度ヲ一万圓ト
ス」、此有限會社ノ資本ノ最高限度ニハ、限
定ガナイノデアリマス、成程有限會社ノ組
織ナリ、管理方法ナリ、ソレハ簡易デアリ、
又單純デアリマスルケレドモ、資本ノ額ハ
制限ガナイノデアリマシテ、大資本ヲ擁シ
テ、大活動ヲスルコト、固ヨリ妨ゲガナイ
ノデアリマス、唯最小限度ヲ斯ク限定シテ
置カナイト、一個人ガ有限會社ヲ假裝スル
ト云フ弊害ヲ伴ヒ易イノデアリマス、左樣
ナ實際上ノ見地カラ、最小限度ヲ規定シタ
次第デアリマス、是ハ第九條デアリマス
五ハ、「出資一口ノ金額ハ百圓ヲ下ルコト
ヲ得ザルモノトス、」御承知ノヤウニ株式會
社ノ株式ハ、原則トシテ五十圓デアリマス
ルケレドモ、有限會社デハ、先ヅ今日ノ所、
百圓單位ガ適當デアラウト存ジタノデアリ
マス、是ハ第十條デアリマス
六、「持分ノ讓渡ニハ社員總會ノ特別決議
ヲ要スルモ、社員相互間ノ讓渡ニ付テハ定
款ヲ以テ別段ノ定メヲ爲スコトヲ得」、詰リ
社員ニ、相信賴スル少數者ヲ以テスルト云
フコトガ、此特色デアリマスルカラ、持分
ノ讓渡ガ自由ニ行ハレテ、社員ニ常ニ異動
ヲ生ズルト云フノデハ、此特徵ニ反スルノ
デアリマス、デアリマスカラ、嚴重ニ之ヲ
制限致シマシタ、尤モ社員間ノ讓渡デアリ
マスルナラバ、社員ニ變動ヲ來サナイカラ、
ソレハ緩和的規定ヲ以テ臨ンデ居ルノデア
リマス、ソレハ第十九條デアリマス
七ハ、「設立ノ際出費全額ノ拂込及現物
出資ノ目的タル財產ノ全部ノ給付ヲ必要ト
ス」、卽チ株式會社ノ如ク分割拂込ヲ許サナ
イノデアリマシテ、全額卽時ノ拂込ヲ必要ト
シタノデアリマス、有限會社ハ其組織、管
理方法ガ簡單デアリマスルカラ、一面設立
手續ニ付テモ之ヲ單純ニ致シマシテ、株式
會社ノ如ク法律ノ干涉スル部分ヲ極メテ少
クシタノデアリマス、ケレドモ、他面會社
ノ基礎ヲ確實ニシマスル爲、全額拂込ト云
フコトヲ以テ望ンダ次第デアリマス、是ガ
第十二條デアリマス
八ハ、「現物出資及財產引受ニ付キ其會社
成立當時ノ實額ガ定款所定ノ價格ニ著シク
不足スルトキハ、設立當時ノ社員ハ連帶シ
テ是ガ塡補ノ責ニ任ズ」、詰リ基礎鞏固、會
社ノ確實ヲ圖ッタ所以デアリマス、第十四條
ニ明ニナッテ居リマス
九、「拂込又ハ現物出資ノ給付ノ未濟ニ
付テハ、會社成立當時ノ取締役、監査役及
社員ハ連帶シテ是ガ塡補ノ責ニ任ズ」、是亦
前項ト同趣旨デアリマス、是ハ第十五條デ
アリマス、此八ト九トノ責任ニ付キマシテ
ハ、第十六條デ五年間ハ其免除ガ出來ナイ
ト云フコトヲ明ニ致シマシタ、デスカラ五
年經ッテシマヘバ、免除スルコトモ出來ル
譯デアリマス、是ハ株式會社ノ例ノ設立ニ
際シ拂込未濟ノ部分ニ付テノ發起人ノ塡補
責任、是ハ何年經テバ免除ガ出來ルト云フ
ヤウナ規定ガナイノデアリマスルカラ、ソ
レト權衡ヲ失スルヤノ考モアリマセウケレ
ドモ、是ハソレトハ少シク趣ヲ異ニスルノ
デアリマシテ、株式會社ノアノ規定ハ、御
承知ノ通リニ發起人ダケノ責任デアリマシ
テ、是ハ全社員ノ責任デアリマス、又株式
會社ノアノ規定ハ、第一囘ノ拂込ダケニ對
スル規定デアリマス、併シ是ハ全額拂込デ
アリマシテ、拂込額全額ニ對スル規定デア
リマス、尙ホ後ニ當該部分ニ付テ御說明ヲ
申上ゲマセウケレドモ、其點ハ相當違ッテ居
ルト云フコトヲ、御諒承ヲ願ヒタイノデア
リマス
十ハ、「監査役ヲ置クト否トハ定款ノ定ム
ルトコロニ依ル」、是ハ社員ガ互ニ能ク知ッ
テ居ルモノデアリマスカラ、社員同志デ話
ヲ付ケルコトガ出來ルナラバ、ソレハ結構
デアルト云フ趣旨デアリマス、是ハ第三十
三條デアリマス
十一ガ、「資本增加ノ場合ニ付テモ、前揭
八及ビ九ト同樣ノ塡補責任ヲ定ム」、是ハ第
五十四條乃至第五十六條デアリマス
十二ガ、「社員總會ニ於ケル議決權ハ、原
則トシテ出資一口ニ付キ一個トス」、是ハ議
決權算定ノ基礎ヲ斯ク定メテ置キマスコト
ガ、事實上便宜デアリマシテ、是ハ第三十
九條デアリマス
十三ガ、「決議ニハ通常決議ト特別決議ト
ノ二種アリ」、此關係ハ株式會社ト同樣デア
リマス、普通決議ニ付キマシテハ、本案ノ
第四十一條デ、商法ノ第二百三十九條第一
項ヲ準用致シテ居リマス、特別決議ハ本案
ノ第四十八條ニ規定ヲ致シテ居リマス
十四ガ、「書面ニ依ル決議ノ途ヲ開キタル
外社員總會ニ付テハ株式會社ノ株主總會ニ
比シ其手續ニ相當ノ餘裕アリ」、是亦有限會
社ノ特色ヲ現ハスモノデアリマシテ、社員
ノ數ガ比較的少イ、而モ相信賴スル者デア
リマスカラ、株式會社ノ株主總會ノヤウニ、
二週間前ニ書面ヲ必ズ發シナケレバナラヌ
ト云フヤウニ煩サイ手續ヲ必シモ要シナイ
ノデアリマス、デアリマスカラ書面決議ト
云フ便法モ認メテ居リマスルシ、其他ノ手
續ニ付キマシテモ株式會社ニ比ベマシテ、
餘程ノ裕リヲ設ケタ次第デアリマス、書面
決議ニ付キマシテハ本案ノ第四十二條デア
リマシテ、其他裕リヲ設ケマシタノガ第三
十六、第三十八條デアリマス
十五、「少數社員ノ訴提起ノ請求權、總會招
集ノ請求權及檢査役選任ノ請求權ヲ認ム」、
少數社員ノ權利ヲ認メマシタコトハ、株式
會社ニ於ケル少數株主ノ權利ヲ認メタノト
同趣旨デアリマス、尤モ此點ニ付テ株式會
社トハ多少相違シタ所ヲモ、是認シタノデ
アリマス、ソレハ內容ニ入ッテノ御說明ノ際
ニ讓リタイト存ジマス、條文ハ本案第三十
候第四十五條等デアリマス
十六ハ、「有限會社相互ノ間及有限會社ト
株式會社トノ間ニ於テ合併ヲ爲スコトヲ得」
此合併ハ有限會社ト有限會社ガ合併スル、
之ヲ先ヅ認メマシタ、其結果出來ルモノハ
有限會社ニ限ルノデアリマス、次ニ有限會
社ト株式會社ノ合併ヲ認メマシタ、其結果
出來マスルモノハ有限會社ナル場合ト、株
式會社ナル場合ガアルノデアリマス、其以
外ノ合併ハ認メナカッタノデアリマス、デア
リマスカラ、例ヘバ有限會社ト有限會社ト
ガ合併シテ合名會社ヲ拵ヘル、是ハイケナ
イノデアリマス、有限會社ト合資會社ガ合
併スル、是モイケナイノデアリマス、斯樣
ニ限定致シマシタ趣旨ハ、ソレデ十分ヂヤ
ナイカ、ソレ以外ノコトハ殆ド安際上豫想
出來ナイト云フ積リデアルノデアリマス、
ソレハ第五十九條以下デアリマス
十七ガ、「有限會社ハ其組織ヲ變更シテ株
式會社ト爲スコトヲ得」、有限會社デヤッテ
居ルケレドモ、株式會社トシテ更ニ活躍ヲ
シタイト云フコトモアリマセウカラ、組織
變更ノ途ヲ開キマシタ、併シ株式會社ニナ
リマスルノニハ、餘程嚴重ナル手續ヲ必要
ト致シテ居リマス、ト申シマスルノハ有限
會社ハ其設立ガ單純デアリマス、法律ガ之
ニ干涉スル部分ガ極メテ少イノデアリマス
カラ、脫法的ニ實ハ株式會社ヲ拵ヘタイノ
ダガ、先ヅ有限會社ヲ簡單ニ拵ヘテ、ソレカ
ラ組織變更デ變形シヨウト云フヤウナコト
ガ、行ハレルコトヲ豫防スル爲ニ、組織變更
ノ結果株式會社ニナルニハ、嚴重ナル手續
ヲ必要トスルコトニ致シマシタ、前項ノ合併
ノ結果、株式會社ニナルモノモ同樣デアリマ
ス、ヤハリ嚴重ナル條件ヲ必要ト致シマス
十八ハ「株式會社ハ其組織ヲ變更シテ有
限會社ト爲スコトヲ得」、有限會社ガ株式會
社ニナルト同樣、株式會社ガ有限會社ニナ
ル途モ開カナケレバナラヌト思フノデアリ
やっ、是ハ第六十四條デアリマス
十九ハ「貸借對照表ノ公〓ハ之ヲ强制セ
ズ」、有限會社ノ組織ナリ、管理方法ナリノ
單純ナル點ニ鑑ミマシテ、此公〓ノ强制ヲ
除イタノデアリマス、是ハ商法ノ之ニ關係
シテ居リマスル第二百三十二條ノ第二項、之
ヲ準用シナカッタノデアリマス
二十ハ「社債ノ募集ハ之ヲ認メズ」、是亦
株式會社ノヤウニ大仕掛ノヤウナモノデハ
ナイカラデアリマス
以上甚ダ粗雜デアリマシテ、汗顏ニ堪ヘナ
イノデアリマスガ、時間ノ關係モアリマス
ルカラ、一應大體ノ御說明ハ是デ終ルコト
ニ致ツマシテ、一般的ナ御質問ナリ、若ク
ハ內容ニ進ミマシテ、ソレ〓〓補足ヲ致シ
タイト存ズルノデアリマス、洵ニ恐縮ニ存
ジマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=2
-
003・野村嘉六
○野村委員長 一寸御諮リ致シマスガ、モ
ウ十二時ニナリマシタ、ソレデ委員會ガ立テ
込ンデ居ルノデ、明日ハ委員課ノ方デ會場
ノ都合ガ困難ダサウデアリマス、ソレデ今日
午後ナラバ何時マデオヤリニナッテモ宜シイ
サウデス、明日ハ委員會ノ會場ガ差支ヘル、
斯ウ云フノデス、サウ致シマスト今日午後
カラ引續イテヤルコトニ致シマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=3
-
004・内藤正剛
○内藤委員 御說御尤デスガ、午後ハ本會
議モアリ、只今政府委員カラ詳細ナ御話ヲ
聞キマシタノデ、ソレヲ基礎トシテ調査シ
タイト思ヒマスカラ、明日以後ニ於テ勉强
シテヤレバ、今日晝カラスルヨリ有效デア
ラウト思ヒマス、實ハ私共大體ノ質問ヲ致
シタイ點ガアルノデアリマスガ、只今詳細
ナ御說明ヲ承リマシタガ、現ニ今日ノ日程
ニ上ッテ居リマス陸上交通事業調整法案ノ如
キモノモ商法ノ規定ガヤハリ引用サレテ居
ルノデアリマスカラ、色々サウ云フ關聯事
項ヲ持ッテ居リマスカラ、各委員諸君ニ於カ
レマシテモ、時ニ御〓究ニナルベキ個所ガ
アルト思ヒマス、デスカラ今日晝カラ爲サ
ルコトハ御見合セ願ッテ、明日以後デシタラ
夜分ニ亙ッテデモ、勉强スルヤウニ致シタラ
ドウデセウカ
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=4
-
005・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ次會ハ月曜日ノ午
後一時カラ開會スルコトニ致シマス-尙
ホ御質疑ナサル方々ハ、委員長マデ御申出
ヲ願ヒマス、本日ハ是デ散會致シマス
正午散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00319380304&spkNum=5
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