1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件)(政府提出)
造幣局東京出張所廳舍其の他の新營費に關する法律案(政府提出)
對支文化事業特別會計法の特例に關する法律案(政府提出)
支那事變に關する臨時軍事費の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出)
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
軍の需要充足の爲の會計法の特例に關する法律案(政府提出)
特許法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
商標法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
不正競爭防止法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
辨理士法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
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會議
昭和十三年二月十四日(月曜日)午後一時四十分開議
出席委員左の如し
委員長 一松定吉君
理事 池本甚四郎君 理事 森下國雄君
理事 川崎巳之太郎君 理事 松木弘君
理事 藤本捨助君
篠原陸朗君 今成留之助君
田中源君 江羅直三郎君
稻田直道君 小谷節夫君
星一君 一ノ瀬俊民君
山崎常吉君 野溝勝君
川村保太郎君 馬場元治君
出席政府委員左の如し
外務政務次官 松本忠雄君
外務省文化事業部長 岡田兼一君
大藏政務次官 太田正孝君
大藏參與官 中村三之丞君
大藏書記官 入江昂君
大藏書記官 植木庚子郎君
陸軍政務次官 加藤久米四郎君
陸軍參與官 比佐昌平君
陸軍主計少將 石川半三郎君
海軍政務次官 一宮房治郎君
海軍主計大佐 山本丑之助君
商工政務次官 木暮武太夫君
商工省鑛山局長 小金義照君
拓務政務次官 八角三郎君
拓務省殖産局長 植場鐵三君
朝鮮總督府政務總監 大野緑一郎君
朝鮮總督府財務局長 水田直昌君
朝鮮總督府鐵道局長 吉田浩君
厚生次官 廣瀬久忠君
本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件)(政府提出)
造幣局東京出張所廳舍其の他の新營費に關する法律案(政府提出)
對支文化事業特別會計法の特例に關する法律案(政府提出)
支那事變に關する臨時軍事費の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出)
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
軍の需要充足の爲の會計法の特例に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=0
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001・一松定吉
○一松委員長 前會ニ引續キ是ヨリ會議ヲ
開キマス、陸軍政府委員ヨリ發言ヲ求メラ
レテ居リマス、之ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=1
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002・石川半三郎
○石川政府委員 山崎サンカラ工員ノ就業
時間ニ付キマシテノ御質問ガゴザイマシタ、
取調ベマシテト申上ゲテ保留願ッテ置キマシ
タガ、只今カラ御答申上ゲマス、陸軍ニ於
ケル工員ノ就業時間ハ、陸軍工務規程ニ依
リマシテ定時間ヲ十時間ト致シマシテ、必
要ニ應ジ工場法ノ定ムル範圍內デ伸縮シ得
ルコトニ致シテ居リマスガ、今囘事變ノ發
生ト共ニ應急的ニ制限ヲ廢シマシテ、各作
業廳トモ定時間作業ノ外ニ一一乃至三時間程
度ノ殘業ヲ實施致シマシテ專ラ急需ニ應ズ
ルコトニ努メテ居リマシタケレドモ、長時
間作業ノ實施ハ工員ノ保健上惡影響ガアル
ダラウト云フコトヲ考ヘマシテ、是ガ愛惜
ノ爲ニ逐次晝夜作業ニ移行シツヽアリマシ
テ、最近ハ〓ネ十一時間乃至十二時間ノ程
度デゴザイマス、次ハ工員ノ賃金ハドノ位
カト云フ御尋デゴザイマシタ、賃金ハ男工
ノ方ニ於キマシテノ十時間作業ノ場合ノ最
高ハ六圓五十錢、最低ガ一圓デアリマシテ、
平均ガ一圓五十錢ニナッテ居リマス、女工員
ノ方ハ最高ガ三圓五十五錢、最低ガ八十五
錢平均ヲ致シマシテ九十五錢ト云フコト
ニナッテ居リマス、是ハ十時間ノ場合デゴザ
イマスルカラ、ソレヨリ一時間二時間增シ
マス場合ニハソレダケノ割增ガアル譯デア
リマス、之ヲ以テ御答ト致シマス
ソレカラ次ハ松川サンノ御尋デ、昭和十
三年度陸軍豫算一般會計ノ中デ、農山漁村
方面ニドノ位ノ支拂見込額ガアルカト云フ
御尋デゴザイマシタ、是ハ糧秣、被服、需
品、馬匹買上代等ヲ見込ミマシテ〓算三千
万圓ノ豫定デゴザイマス、以上御答申上ゲ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=2
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003・山崎常吉
○山崎委員 只今御說明ヲ願ヒマシタ陸軍
工廠方面ノ勞働時間ト勞働賃銀ノ御答デゴ
ザイマシタガ、十時間乃至十三時間、此就
業時間ハ工廠ノドノ方面ノ仕事ヲシテ居ル
從業員デアリマスカ、或ハ又女工ト稱スル
方面ハ主トシテドノ方面ニ使ッテ居ラレマ
スカ、ソレカラ最高六圓デ最低一圓、平均
ニシテ一圓五十錢平均ニナッテ居ルト云フ御
說明デゴザイマシタガ、最高ノ六圓程度ノ
賃銀ヲ得テ居ルノハ、技術エデハドノ方面
デアリマスカ、最低ノ方面ハソレハ臨時雇
デアリマスカ、又或ハ常雇ノ勞働者デアリ
マスカ、其點ヲ一寸御說明願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=3
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004・石川半三郎
○石川政府委員 御答致シマス、只今申上
ゲマシタノハ陸軍ノ造兵廠方面ノモノバカ
リデアリマス、造兵廠ニハ男エモ女エモ使ッ
テ居リマス、一番多ク女工ヲ使ッテ居リマス
ノハ被服廠ノ作業デアリマス、最高六圓五
十錢ト申シマシタノハ、普段カラノ熟練工
員デゴザイマス、低イノハ事變ニ伴ヒマシ
テ多數ノ熟練エヲ傭ッテ養成ヲシツヽアリマ
ス、一面ニ於テハ〓育ヲシ、一面ニ於テハ
實習ヲヤラシテ居ルト云フヤウナモノガ、
主デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=4
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005・一松定吉
○一松委員長 次ハ森下委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=5
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006・森下國雄
○森下委員 玆ニ現レテ居リマスル三千六
百万圓ト云フ產金施設費ニ付キマシテ、朝
鮮總督府ニ御伺致シタイノデアリマスガ、
御承知ノ通リ此委員會デハ產金ニ關スル質
問ヲドナタモシテナカッタノデアリマス、此
地圖ヲ見タダケデ、何ダカ明ルイ氣持ニナル
ヤウナ希望ガアルノデアリマシテ、今玆デ三千
五、六百万圓ノ金ヲ掛ケルコトハ何デモナイ
コトダト思ッテ居リマスガ、御承知ノ通リ金
ガ洵ニ大切ナ場合デアリマシテ、當局ハドウ
云フ計畫デ三千六百万圓ヲ掛ケテ、各鑛山
ニ電力ヲ供給スル方法ヲ立テマシテ、ドノ
位ノ金ノ增產ヲ御見込ミニナッテ居リマス
カ、實ハ他ニ何カ調ベルモノガアリマスレ
バ、現在出テ居ル金ト、ソレカラ之ヲ施行
致シマシテ、ドウ云フ計畫デ一年、二年若
クハ五年ト云フ工合ニ、ドノ位當局ハ御見
込ミヲ立テテ居ラレマスカ、其數字ヲ御示
願ヘレバ大變結構ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=6
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007・大野緑一郎
○大野政府委員 極ク搔摘ンデ朝鮮ニ於ケ
ル採金ノ計畫ノ〓要ヲ申上ゲマシテ、ソレ
カラ只今ノ三千六百万圓ノ御話ヲ申上ゲタ
イト思ッテ居リマス、現在朝鮮デハ稼行鑛山
ガ三千三百四十四、是ダケノ鑛區ガアリマ
シテ、此中カラ、朝鮮總督府デハ一々山元
ニ付キマシテ調ベヲ致シマシテ、約七百五
十ニ近イ山ヲ「エー、ビー、シー」ノ「クラ
ス」ニ分ケマシテ、サウシテ一々ニ付キマシ
テ現實ノ開發ノ計畫ヲ立テテ居ルノデアリ
そく、之ニ對シテ資金ノ融通ヲ致シマスル
シ、又一方ニ於テハ直接ノ補助ト致シマシ
テハ、縱坑、横坑ノ掘鑿ノ補助、又鑿岩機
ノ設備ニ付テノ補助、ソレカラ選鑛ノ設備
ノ補助、共同ノ施設費ノ補助、又間接ニハ
金山道路ヲ開鑿スル、是ハ凡ソ道ニヤラセ
マシテ、ソレノ約八割位ノ費用ヲ國デ補助
スル、斯ウ云フ計畫ニナッテ居リマスガ、是
モ相常ノ規模デ補助致スコトニナッテ居リ
マス、ソレカラ最後ニ送電線ヲ總督府デ拵
ヘマシテ、山奥ニ參リマスルト、只今ノ電
力ノ情勢デハ、電力モ不足ヲ致シテ居リマ
スルシ、又山奥デ出ルカ出ナイカ、其邊ノ
判然シナイ所へ送電線ヲ送ルコトモ出來ナ
イ爲ニ、非常ニ送電線ノ普及ガ惡イノデア
リマス、ソレヲ出來得ル限リ見込ミノアリ
サウナ所ニ送電線ノ敷設ヲ致ス意味ニ於キ
マシテ、此三千六百万圓ノ費用ヲ計上致シ
テ居リマス、是ハ十三、十四、十五年デ殆
ド完成致シマシテ、十六年度ニ一寸費用ガ
掛ッテ居リマスルガ、七千一一百粁バカリノ送
電線ヲ引キマシテ、ソレ〓〓現地デ採金ノ
稼行ヲシテ居ル所ニ、設備ヲシテヤル、斯
ウ云フコトニナッテ居リマス、只今現在ノ產
金額ハ昭和十二年度デ、多少ノ推定ガ混
ジッテ居リマスガ、凡ソ正確ト思ハレマス
數字デ、約二十四瓩バカリニナッテ居リマ
ス、之ヲ十三、十四、十五、十六、十七、
此年度マデニ諸種ノ設備ヲ致シマシテ、十
七年度以降ハ七十五瓩程ノ金ヲ出スコトニ
ナッテ居リマス、約二億八千万圓バカリノ金
ヲ年產トシテヤル計畫ヲ以テ進行シテ居ル
譯デアリマス、尙ホ之ニ伴ヒマシテ、資金
ノ融通ニ付キマシテ、色々ナ施設ガ要リマ
スノデ、商工省トモ協議致シマシテ、之二
必要ナル會社ノ案ヲ只今商工省ニ於キマシ
テ立テマシテ、何レ御審議ヲ願フコトニナッ
テ居ルト思ヒマスガ、是ト相竝ンデ左樣ナ
計畫ニ依リマシテ、金ノ採掘ヲ致ス、斯ウ
云フコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=7
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008・森下國雄
○森下委員 只今伺ヒマスト、「エー、ビー、
シー」ト云フ風ニ山ノ性質ノ區別ヲ致シ
テヤルト云フコトデアリマスガ、其、エー、
ビー、シー」ト區別ヲシマスルコトハ、ド
ウ云フ所ニ根據ヲ置イテオヤリニナッテ居
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=8
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009・大野緑一郎
○大野政府委員 相當產額ノ多イ、非常ニ
目ボシイ山ハ約八十九、其次ニ彼此レ五万
圓以上ノ產額ノ山ガ百五十、ソレカラ約五
百程ノ山、是ハ相當見込ノアル山デアリマ
スガ、是ハ一々技師ガ實地ニ踏査致シマシ
テ決メタ比較的正確ナ計畫ノ積リデ申上ゲ
タノデアリマス、其他段々ヤッテ居リマス內
=、送電線ノ普及ナドガアリマスト、意外
ナ所カラ又相當ナモノガ出テ來ルノデハナ
イカト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=9
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010・森下國雄
○森下委員 「エービー、シー」ト、現在
當局ニ於テ決定的ニ分ッテ居ルノデアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=10
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011・大野緑一郎
○大野政府委員 分ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=11
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012・森下國雄
○森下委員 分ッテ居リマス、其內容ニ付
テ、斯ウ云フ所デ御伺出來ルカドウカ分リ
マセヌガ、サウ云フモノガ御伺出來レバ、
今デナクテ、又書面デ戴ケバ結構デスカラ、
ソレヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=12
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013・大野緑一郎
○大野政府委員 分ル所ダケ明確ニ、餘リ
小サイ所ハ分リマセヌガ、御配リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=13
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014・森下國雄
○森下委員 私ハ是デ濟ミマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=14
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015・一松定吉
○一松委員長 次ハ山崎委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=15
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016・山崎常吉
○山崎委員 私ハ發言ノ御許ヲ願ヒマシタ
ケレドモ、陸軍大臣、又内務大臣、厚生大
臣、此三人ノオ方ニ御聽シタイト思ヒマス、
御呼ビ願ヘレバ大變結構ダト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=16
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017・一松定吉
○一松委員長 山崎委員ニ申上ゲマスガ、
只今陸軍大臣、內務大臣、厚生大臣トモ貴
族院ノ豫算總會ノ方ニ御出席デアリマシテ、
手ガ外セナイト云フコトデアリマス、政府
委員デハイケマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=17
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018・山崎常吉
○山崎委員 成ルベク此場合責任アル御答
ガ願ヒタイト思ヒマスノデ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=18
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019・一松定吉
○一松委員長 ソレデハ御出席マデアナタ
ノ質疑ノ御留保ヲ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=19
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020・山崎常吉
○山崎委員 左樣御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=20
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021・一松定吉
○一松委員長 野溝委員ニオ諮リ致シマス、
商工大臣ノ御出席ヲ要求シテ居リマスガ、
商工大臣モ同ジク貴族院ノ豫算總會ニ出テ
居ルノデ出席ガ出來ナイサウデアリマスガ、
小金鑛山局長ガ御出席デアリマスガ、如何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=21
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022・野溝勝
○野溝委員 結構デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=22
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023・一松定吉
○一松委員長 野溝委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=23
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024・野溝勝
○野溝委員 最初ニオ聞キシタイコトハ、
商工省所管ノ鑛業方面ニ關スル豫算ヲ見マ
スルト、經常部臨時部合セマシテ七万六千
百三十圓ト云フモノガ鑛業監督ノ機能擴充
ノ豫算トシテ計上サレテ居ルガ、此位ノ僅
カノ金額ニ依ッテ鑛業監督ノ今日ノ不十分
ナ機能ノ充實ノ完璧ヲ期スルコトガ出來ル
トハ思ヒマセヌ、併シ當局ガ此七万六千百
三十圓ノ豫算ヲ計上シテ、鑛業監督ノ機能
ノ充實ヲ期シ得ル自信ガアルトスレバ、
吾々ハ何モ豫算ヲ多ク計上スルコトヲ好マ
ナイカラ、差支ナイノデスケレドモ、ドウ
云フ御氣持デ是ダケノ豫算ヲ計上サレタカ、
其內容ニ付キマシテオ聞キシテ置キタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=24
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025・小金義照
○小金政府委員 只今御質問ノ七万六千
百三十圓ト申シマスノハ、鑛業監督ノ機能
擴充ニ要スル經費ダケデアリマシテ、是ハ
實ハ石炭ガ非常ニ不足スル心配ガアリマス
ノデ、サナキダニ石炭ニハ動モスルト爆發、
落磐其他ノ災害ガ伴ヒ易イ、殊ニ增產ヲ急
グヤウナ場合ニ於キマシテハ、其虞ガ多イ
ノデ、石炭ノ增產計畫ヲ遂行スルニ當リマ
シテハ必ズ何ガシカノ監督ト申シマスカ、
場合ニ依リマシテハ指導ヲ同時ニ行ハナケ
レバナラヌ、斯ウ云フ考ヘ方デアリマス、
ソコデ勿論是デハ十分デハアリマセヌガ、
併シ石炭增產計畫遂行ニ伴ヒマシテ、今マ
デノ五箇所ノ鑛山監督局ニ技術者或ハ監督
者ヲ置クダケデハ極メテ不十分デアリマス
ノデ、適當ナル炭田地帶ニ常設的ニ監督者
ヲ置キ監督事務所ヲ設ケル、斯ウ云フ立前
デ昭和十三年度ニ於テ是ダケノ豫算ヲ計上
シテ戴イタ譯デアリマス、是ハ石炭ノ增產
計畫遂行ノ爲ニダケ考へタ豫算デアリマシ
テ、勿論是デハ十分デハアリマセヌガ、併
ナガラ漸ヲ逐ウテ必要ガアレバ是ハ增額致
シタイト斯樣ニ考ヘテ居リマス、ソレデ全
國ニ於テ大體八箇所位、技術者ヲ常時監督
局ノ在ル以外ノ鑛山地帶ニ置キマシテ、監
督指導ノ衝ニ當ラシメル、斯ウ云フ立前ニ
ナッテ居リマス、ソレカラモウ一ツ今ノ七万
六千百三十圓ノ外ニ大約九万圓程ノ豫算ヲ
取リマシテ石炭坑ノ爆發ヲ豫防スルトカ、
色々ナ調査〓究ヲ掌ル役所ヲ此處ニ設置ス
ルコトニ致シマシタ、勿論是デ十分トハ申
上ゲ兼ネマスガ、今野溝委員カラ御質問ノ
外ニ石炭ノ增產計畫遂行ノ爲ニ九州ト北海
道ニ石炭坑爆發豫防試驗所ト云フヤウナモ
ノヲ置クコトニ致シテ居リマス、其他ノ金
屬山等ニ於キマシテハ、今マデ無カッタ所ノ
土木或ハ電氣ノ技術者ヲ各鑛山監督局ニ配
置致シマシテ、災害ノ豫防ニ努メテ居リマ
ス、ソレカラモウ一ツハ唯官廳方面ノ指導
監督ダケデハ極メテ不十分デアリマシテ、
鑛山自體ガ自ラ災害ノ豫防ニ努メテ貰ハナ
ケレバ困リマスノデ、機會アル每ニ各鑛山
ニ注意致シマシテ、ソレ〓〓豫防施設ヲ講
ジテ居リマス、商工省ニ於キマシテモ、其
技術者ノ養成トカ、或ハ現場ノ係員ノ養成
等ニ付キマシテ、相當ナル補助金ヲ出シテ、
サウシテ潤澤ニ是等ノ技術者及ビ現場係員
ヲ山ニ供給シ得ルヤウナ計畫ヲ致シテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=25
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026・野溝勝
○野溝委員チチット御聞キシマスガ、只今 ノ當局ノ御意見ハ石炭ノ增產ニ限ッテデス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=26
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027・小金義照
○小金政府委員 只今御質問ノ七万六千百
三十圓ト、ソレカラ別ニ私ガ答ヘマシタ約
九万圓ノ金ハ、石炭ノ增產ニ伴ッテ監督ヲ充
實スル費用デアリマス、其他ニマダ色々考
ヘテ居リマス、斯ウ云フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=27
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028・野溝勝
○野溝委員 鑛山ノ災害死亡者ガ累年殖エ
テ來ル傾向ヲ示シテ居リマスケレドモ、其
原因ハ主ニドウ云フ點ニアルカ、御當局ノ
調査ノ結果ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=28
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029・小金義照
○小金政府委員 御承知ノ通リ、鑛山ノ災
害ニ因ル死亡者ガ殖エテ居リマスコトハ洵
ニ遺憾デアリマスガ、此原因ハ色々アラウ
ト考ヘマシテ、勞働關係ノ方ノ官廳トモ密
接ナル協力ヲ致シテ、勞働者ノ災害ニ因ル
死亡者及ビ負傷者ガ出ナイヤウニ努メテ居
リマスガ、其原因ノ主ナルモノハ-最近ハ
割合カラ申シマスト全鑛山ノ勞働者ニ對ス
ル死亡者及ビ負傷者ト云フモノノ率ハ著シ
ク減退シテ居リマスガ、絕對數ガ何分ニモ
殖エテ居リマシテ、是ハコヽ數年來ノ鑛產
物ノ急激ナル增產ヲ國家ガ要求シテ居リマ
スノデ、之ニ應ズル爲ニ隨分マア思ヒ切ッ
タ計畫ヲ立テテ、鑛物ノ增產ヲ實行シテ居
リマスノデ、餘程氣ヲ付ケテモ負傷者及ビ
死亡者ガ殖エル、斯ウ云フ原因デアリマシ
テ、山ノ施設ガ不完全デアルガ爲ニ起ルヤ
ウナコトハ成ベク之ヲ減少セシメ、延イテ
ハ無クシタイト云フ考ヲ持ッテ居リマスガ、
石炭等ニ於キマシテハ、地盤ノ脆弱ナル關
係モアリマシテ、其災害ガ絕エナイト云フ
次第デ、金屬山其他ニ於キマシテモ、勞働
者ノ數ガ非常ニ殖エテ居リマスノデ、其結
果カラ見テ數ガ殖エテ居リマスガ、此原因
ハ石炭山ニ於キマシテハ、落磐トカ、或ハ
坑內ノ諸機械ノ故障、ソレカラ炭車ノ逸走
ト云フヤウナコトニアルト云フ風ニ出テ居
リマス、之ニハ從業員側ニ於キマシテモ、
十分注意ヲスルヤウ、最近格段ノ注意ヲ鑛
山監督局及ビ鑛山側ニ於テ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=29
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030・野溝勝
○野溝委員 鑛業監督ノ機能ヲ充實スル經
費、或ハ鑛物資源開發促進ニ關スル經費等
ガ十三年ダケデハ僅カデアルケレドモ、十
二年度ト通ジマシテ、相當計上サレテ居ル
ノデアリマス、是ハ只今當局ノ申サレタヤ
ウナ意圖ノ下ニ計上サレテ居ルト思フノデ
アリマスケレドモ、其結果ガ當局ノ意圖ノ
ヤウニナッテ居ナイコトヲ吾々ハ遺憾トス
ルノデアリマス、最近ノ經濟ノ統計ニ依リ
マスト、鑛業資本ノ收益率ト云フモノハ、
此日支事變ニナッテ以來非常ニ殖エテ來テ
居ルノデアリマス、拂込資本金百圓ニ付キ、
昭和七年度下半期ノ當時ニ於キマシテハ五
圓二十錢ガ、十一年ノ下半期ニ當リマシテ
ハ、約其三倍、十五圓四十錢ト云フヤウナ
計數ヲ示シテ居ルノデアリマス、此收益增
加ノアルト云フコトハ、是ハ半面鑛山勞働
者ノ鮮血ガ無殘ニ此中ニ流サレテ居ルノデ
アリマシテ、此鑛山勞働者ノ犠牲アッテ、
鑛業資本家ノ收益率ガ斯ク殖エタノデアル
ト云フコトヲ、吾々ハ確信シテ居ルノデア
リマス、其鑛山勞働者ニ對スル當局ノ態度
ト申シマセウカ、此鑛山事業ニ對スル當局
ノ一ツノ見透シト云フモノガ、ドウモ唯單
ニ明治三十八年當時ニ於ケル鑛山業法ノ設
定當時ノ氣持ト一ツモ違ッテ居ラヌ、其當時
ニ於キマシテハ、鑛山ノ所謂資源開發ガ重
點デアリマシテ、人命ト云フヤウナコトニ
對シマシテハ、餘リ重キヲ置カナカッタヤ
ウナ傾向ガアッタ法案デアルト、吾々ハ心得
テ居リマス、其後鑛業法ハ十囘ニ亙ッテ部分
的ニ改正サレタノデアリマスケレドモ、今
日マダ其全キヲ期シテ居ラナイ、最後ニ當
局ニ私ノ聞キ質シタイト思フコトハ最近ニ
於キマシテ、各鑛山地帶ニ色々ナ不祥事件
ガ起ッテ居ルノデアリマス、最近ノ事件ト致
シマシテハ、昨年十一月十一日午後四時頃
ニ信越國境ニ起リマシタ小串鑛山ノ事件デ
アリマスガ、此小串鑛山ノアノ慘事ニ對シ
マシテハ、當局ノ聲明ヲ見マスト、不可抗
力ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、
併シ此不可抗力ノ理由ト云フモノガ詳細ニ
發表サレテ居ラナイ、私ハ社會大衆黨ヲ代
表致シマシテ、商工大臣竝ニ本日御列席ニ
ナッテ居ラレマス小金鑛山局長ニ對シマシテ、
此原因ヲ速ニ發表シテ吳レト云フコトヲ要
請シタ筈デアリマス、其原因ノ内容ガ審ニ
發表サレテ居ラナイノデ、吾々ハ今後ノ鑛
山行政ヲ檢討シテ行ク上ニ於キマシテモ、
非常ニ支障ヲ來シテ居ルノデアリマス、此
席上ニ於キマシテ其原因ガ不可抗力デアッ
タト云フ內容ノ一端ヲ、一ツ承リタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=30
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031・小金義照
○小金政府委員 御答致シマス、只今ノ御質
問ノ前段ニ、最近鑛山ハ〓シテ收益率ガ宜
イト云フコトハ、私モ大體サウダラウト思ッ
テ居リマス、之ニ付キマシテ、利益率ノ宜
イモノニ對シマシテハ、大體ソレヲ生產擴
充施設ノ方ニ向ケテ貰フト云フ風ニ仕向ケ
テ居リマスト同時ニ、是ハ各鑛山監督局ヲ
督勳致シマシテ、出來ルダケ勞働者ノ待遇
ヲ改善シロ、斯ウ云フコトヲ申傳へテ居リ
マス、勞働者ノ待遇ヲ改善致シマスコトハ、
良イ働勞者ヲ集メル所以デモアリマスシ、
又災害ヲ防止スル所以デモアリマスノデ、
結局鑛山ノ收益率ト云フモノハ決シテ惡ク
ナラナイ、斯ウ云フ見地カラサウ云フ指圖
ヲ鑛山監督局ニ致シテ居リマス、今御話ノ
鑛業法ハ明治三十八年ノ制定デゴザイマシ
テ、其後御說ノ通リ數囘改正ヲサレテ居リ
マスガ、根本ハ變ッテ居リマセヌ、併シ之ニ
附屬スル所ノ法令、例ヘバ鑛業警察規則、
石炭坑爆發取締規則ト云フヤウナモノハ、
昭和四年ニ全部ニ亙リマシテ改正ヲ致シテ、
災害ノ防止ニ努メテ居ル譯デアリマス、是
ダケ一寸御報告ヲ申上ゲマス
第二ニ御尋ノ小串鑛山ノ災害ノ件デアリ
マスガ、是ハ御說ノ通リ昨年ノ十一月十一日
ノ午後三時三十分頃ニ上越國境ノ小串鑛山
ニ起ッタ洵ニ遺憾ナル災害デゴザイマシテ、
是ハ小串鑛山ノ坑內ニ入ッテ居リマシタ從
業員ハ、何等災害ヲ被ムラズニ、寧ロ外ニ居
ラレマシタ鑛山從業者、其家族其他ノ方々
ガ多數遭難サレテ居ルト云フ點ニ於テ、特
ニ遺憾デアリ、又傷マシイ事件デアリマス、
當局デハ速ニ出來ルダケノ措置ヲ自ラ執ル
ト共ニ、鑛山側ヲ督勵致シマシテ、十分ナ
ル善後措置ヲ具體的ニ執ラセタノデアリマ
スガ、其直後ニ於キマシテ、野溝委員其他
ノ方々カラ私ヲ訪問シテ下サイマシテ、各
般ノ御注意モアリマシタノデ、遲滯ナク趣
旨ヲ傳ヘマシテ東京鑛山監督局及ビ小串鑛
山ノ當局者ニ、萬全ヲ期シテ善後策ヲ講ズ
ルヤウニ傳ヘタノデアリマス、此災害ノ原
因ニ付キマシテハ、商工省カラ專門ノ地質
調査ノ技師、ソレカラ採鑛ノ技師其他ヲ派
遣致シマシタ、又地震〓究所カラモ專門家
ガ一人直チニ行ッテ下サイマシテ、モウ一人
ノ方ガ之ヲ又詳シク調査シテ下サイマシタ、
其他土木ノ方ノ關係ノ技術者モ山ニ行カレ
タノデアリマスガ、是等ノ現地ニ行ッテ調
査ヲサレタ方及ビ吾々ノ方ノ採鑛竝ニ地質
調査ノ關係ノ技術者、ソレカラ内務省地震
〓究所等ノ專門家ノ合同協議會ヲ開キマシ
テ、愼重調査檢討ノ結果、本災害ノ原因ハ
崩壞地帶ノ基磐ヲ構成シテ居ル所ノ安山岩
及ビ角礫凝灰岩ノ表面ガ硫黄礦床生成後粘
土化シテ、此粘土層ガ長キ年月ノ間引續イ
テ風化作用ニ因リ次第ニ發達シ、爲ニ其上
部ニ堆積セル土砂ノ滑動ヲ支持スル力ガ漸
次消耗シテ將ニ滑動セントスル狀態ニアッタ
時ニ、偶〓連續セル降雨ニ依リマシテ、此粘
土層ノ上部ニアル土砂地帶ガ多量ノ雨水ヲ
包含スルニ至リ、滑動ヲ助長シタ結果、遂
ニ粘土層ヲ境トシテ滑動ヲ起シ、之ニ基因
シテ同時ニ起ッタ上部土砂沈下ハ此滑動ニ
衝擊ヲ與ヘ、爲ニ瞬時的强力ナル流出的崩
壞ヲ惹起セルモノト認メラル、斯ウ云フ風
ニ大體專門家ノ方々ノ御意見ガ一致シタ譯
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=31
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032・野溝勝
○野溝委員 アレダケノ重大慘事ガアッタ
ノニ對シマシテ、當局ガ其根本原因ヲ詳カ
ニ發表シナカッタコトヲ私遺憾トスルノデ
アリマス、本日初メテ鑛山局長カラ承ッタ
ノデアリマス、斯ノ如キコトニ對シマシテ
ハ、一刻モ早ク新聞紙ヲ通シマシテ其原因
ガ斯ク〓〓デアッタ、特ニ今聽イテ居リマス
ルト科學者ノ相當權威者ガ集ッテノ檢討
ノ結果ラシイノデアリマス、サウ云フ
一ツノ有力ナル資料ハ一般國民大衆ガ惑
ハナイ中ニ一ツ發表シテ戴キタイ
ト思ヒマス、私ハ其原因ガ科學者技術者ニ
依ッテ相當〓究或ハ調査ノ上發表サレタモ
ノト思フノデアリマスガ、私達ノ調査シタ
結果ニ依リマスルト、是ハ彼處ニ居タ人達
ノ話デアリマシテ、ソレハ技術者デハアリ
マセヌ、科學者デアリマセヌケレドモ、併
シ私ハ相當ノ經驗者デアルト思ヒマス、此
經驗者ノ諸君ノ話ヲ聞キマスト、其原因ガ、
彼處ノ土鍋山ノ飮用水或ハ精煉所ノ用水ヲ
採入レルロ-御聞キニナッタト思ヒマス
ケレドモ、アノ採入口ノ上ノ方ガ第一坑ハ
穴ガ開イテ居ル譯デス、彼處ノ傍ニ貯水池
ガアル譯デスケレドモ、アノ貯水池ニ採入
レル水ト、飮用水竝ニ其精煉所ノ用水ヲ採
入レル場所トガ大體同ジ所ニナッテ居ル
譯デス、ソコデ此貯水池ニ採入レル時ハ石
コロミタヤウナモノデ堰止メテ居ル譯デス、
雨ガ降ッタリ或ハ芥ガ其處ヘ溜リマスト
片一方ノ採入口ノ逆ノ方面ヘ石コロ或ハ落
葉ナドガ溜ルト、勢ヒ其貯水池ノ方ヘト水
ガ多ク流レテ行ッテシマフ、サウスルト貯水
池ノ方ニハ水ガ溢レマシテ、サモナクテサヘモ
土質ガ非常ニ軟弱ナ所へ持ッテ行ッテ貯水池
ヘ行ク所ノ水ガ溢レ出テ滲透致シマスカ
ラ、ヨリ一屬地面ガ軟柔ニナッテ來ル譯デ
ス、十一月ノ十一日ニ起ッタアノ慘事ノ前ノ
十月ノ二日ニ貯水池ノ附近ニ陷沒ガアッタ
ト云フコトヲ言ハレテ居リマス、其時ニ彼
處ニ居タ從業員ノ連中ハ非常ニ不安ガッテ
居ッタノデアリマスケレドモ、唯ソレハドウ
スルト云フ一ツノ調査モシナイデ、其儘ニ
濟ンデシマッタ、ソンナヤウナコトガ非常ニ
原因ヲナシマシテ、其後御承知ノ通リ十一
月ノ七日カラ九日マデ雨ガ降リマシタ、私
達ノ行ッタ時ニハ非常ナ大雨デアリマシテ、
雨ガ雪ニナッタ時デアリマス、行ク前ニ大雨
ガアリマシテ、貯水池へ行ク迄ノ水ガ非常
ニ溢レ出マシテソレガ爲ニヨリ一層地面ガ
軟弱ニナッテ來テアノ事件ガ起ッタノデハナ
イカト云フコトヲ言ハレテ居リマス、是ハ
經驗家ガ言ハレルコトデアリマシテ、科學
者デハナイノデアリマスカラ、採ルニ足ラ
ナイ意見ダト言ヘバソレ迄ノモノデアリマ
スケレドモ、何レニセヨ、其經驗家ノ言フ
所ノ意見ト云フモノモ私ハ原因ノ一ツニナッ
テ居ルノデハナイカト云フヤウニ心得エ
テ居リマス、今日マデノ災害ノ多クノ事件
ガ皆不可抗力ト云フコトヲ發表サレテ居リ
マスケレドモ、實ニ私達ハ心外ニ堪ヘナイ、
特ニアレダケノ大慘事ノ起ッタ調査ニ對シ
マシテ、鑛山監督局長デスカガ調査ニ參リ
マシテ、マダ山ノ上デ飯ヲ〓ッテ調査ニ掛ル
カ掛ッタカト云フヤウナ一日二日ノ間ニ、新
聞紙ヲ通シマシテ調査ノ結果不可抗力デアッ
タト云フコトヲ十三日ノ日ニ發表サレテ居
リマスガ、是ハ私ハ以テノ外ダト思フ、幾
ラ權威アル技術者ト雖モアノ大慘事事件ガ
一日ヤ二日デ以テ之ヲ不可抗力デアルト云
フコトヲ輕卒ニモ發表シ得ルモノヂヤナイ
ト思フ、私共ハ技術者デアリマセヌカラ、
之ニ對シテ具體的ノ批判モ出來マセヌケレ
ドモ、
〔委員長退席、森下委員長代理著席〕
若シアノ大慘事事件ガ一日二日デ不可抗
力デアッタト發表シ得ルトスレバ、私ハ今後
ニ於ケル鑛山事業ト云フモノハ大キナ危惧
ヲ感ゼザルヲ得ナイ、特ニ此點ニ付キマシテ
モ小金サンニハ能ク要請シタ筈ダト思ヒマ
ス、斯ウ云フコトガ一般ノ勞働者界ニ非常
ニ當局ト資本家トガ握手ヲシテ居ルヂヤナ
イカ、苟初ニシテ居ラナイニ致シマシテモ
死傷者四百名バカリアルアノ大事件ヲ、一日
ヤ二日デ資本家ノ意ノ如ク發表スルト云フ
コトハ、是ハナイコトヲ疑ハレテモ仕方ガ
ナイト思フ、今後斯ノ如キ慘事件ガアリマ
シタナラバ十分斯ウシタヤウナ點ニ付テ注
意サレマシテ、少クモ政府當局ガ輕卒ニア
ノ慘事件ニ對スル調査ノ結果ヲ發表スルト
云フコトハ、餘程愼ンデ戴キタイト思フ次
第デアリマス
最後ニ時間ノ關係モアリマスカラ、一點
ダケデ私ノ質問ヲ打切リタイト思ヒマス、
今囘ノ小串鑛山ノ事件バカリデハナクシテ、
尾去澤ノ鑛山、或ハ靜岡ノ事件等々此二三
年ニ於テ鑛山ノ慘事ト云フモノガ相當ニ
アッタト思ヒマス、之ニ對シマシテ先ヅ第一
ニ當局ガ此防止策トシテ考ヘテ貰ハナケレ
バナラヌコトハ、鑛山法ノ改正ダト思ヒマ
ス、併シ鑛業法ノ改正ニ對シマシテモ先
程申シタ通リ色々ノ缺陷ガアルト思ヒマ
ス、其缺陷ノ點ニ付キマシテハ當局ハ改正
ヲシタイト云フヤウナ氣持モアッタヤウニ
私ハ見受ケタノデアリマス、鑛業法ニ對シ
マシテ改正スル御意思アリヤ否ヤト云フコ
トヲ御聽キシテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=32
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033・小金義照
○小金政府委員 小串鑛山ノ災害ノ原因
ハ、只今申上ゲタ通リニ、實ハ直グ發表致
シタノデアリマスガ、十分徹底シナイ節モ
アリマシテ、唯吾々ノ方ハ原因ノ發表モ大
事デアリマスガ、善後措置ノ方ニ非常ニ氣
ヲ取ラレテ居リマシタ、鑛山監督局ニ於テ
モ此趣旨ヲ徹底スルト云フコトガ、或ハ不
十分デアッタカト存ジマス、今後氣ヲ付ケル
コトト致シマス
尙ホ現地ニ於テ直グニ不可抗力デアッタ
ト云フヤウナコトハ實ハ發表シナカッタ-
取調ベマシタ結果判リマシタガ、併シアヽ
云フドサクサノ際ニ不用意ノ際ダカラ、第
三者ガ聞イテ不可抗力ダト云フ風ニ直チニ
取ラレルヤウナ言動ガアルト云フコトハ戒
シムベキデアリマスカラ、今後トモ十分戒
メテ行ク積リデアリマス、尙ホ鑛業法ノ改
正ニ付キマシテハ、昨年ノ秋鑛業法改正調
査委員會ガ商工省ニ設置セラレマシテ、今
著々鑛業法ノ改正ノ審議ヲ進メテ居ル次第
デアリマシテ、現在ノ鑛業法ヲ如何ナル範
圍ニ亙ッテ如何ヤウニ改正スベキカト云フ
ヤウナ點モ鑛業法改正調査委員會ニ御任セ
ニナッテ居ルヤウデアリマスカラ、其御意見
等ヲ參酌シテ成ベク完全ナルモノニ致シタ
イ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=33
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034・野溝勝
○野溝委員 洵ニ眞面目ナ御答辯ヲ戴キマ
シテ、私ハ當局ヲ信賴シテ最後ニ希望意見
ダケヲ申シテ質問ヲ打切リタイト思ヒマ
ス、鑛業法改正調査委員會ガ開カレテ居ル
ト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス、ソ
レニ付キマシテ小金サン、或ハ商工大臣等
ニモ要請ヲ致シテ置イタノデアリマスガ、
鑛山災害防止ニ對シマシテハ今マデノヤウ
ニ唯一部ノ方々バカリノ對策委員會、或
色々ノ調査委員會デハヤハリ其結果拙キモ
ノガ出來上ルト思フノデアリマス、斯ウ
シタセノハ生產力充實ノ點カラ見マシテ
モ、或ハ產業上ノ點カラ見マシテモ、ヤハ
リ實際ノ生產階級ト云フモノヲ網羅シナケ
レバ拙イト思ヒマス、資本家バカリデナク、
ヤハリ勞働者ヲモ參加サセルヤウナ組織
ト申シマセウカ、サウ云フ委員會ノ構成ニ
シテ戴キタイト思ヒマス、ソレカラ其改正
ノ場合ニ當リマシテハ、官民合同ノ委員
會所謂勞働者、資本家、或ハ官吏ト申シ
マセウカ、サウ云フ關係者ヲ持ッタ一ツノ綜
合體ノ組織ニシテ戴キタイト云フコトヲ私
達ハ要請シテ居ル筈デアリマス、斯ウ云フ
ヤウナ點ヲ今囘ノ鑛業法改正ノ調査委員會
ニ一ツ極力要望シテ戴キタイト思フ、要望
スルバカリデナク實現サシテ戴キタイ、サ
ウナリマスレバ是ハ非常ナ一大進步デアル
ト思フ、又ドウ云フ事件ガ起リマシテモ其
原因等ニ付キマシテ、共同聲明ト申シマセ
ウカ、生產關係者ノ調査機關ガ發表シタト
云フコトニナリマスレバ、相當是ハ有力デ
アリ、又納得シ得ルノデアリマス、併シ今
ノヤウナ風ノ發表デアルト云フト、唯一部
ノ階級ノ人ガ勝手ニヤッテ居ルノデハナイ
カト云フ風ニ誤解ヲ受ケルコトガナイトハ
言ヘヌ、誤解ヲ受ケルト云フコトハ生產上
ニ於テ大キナ支障ヲ來スト思フノデアリマ
ス、ドウカ此點ハ唯考慮スルトカ、或ハ十
分〓究スルトカ云フコトデナタ、眞面目ナ
小金鑛山局長サンデアリマスカラ、特ニ此
點ダケハ飽クマデモ自分ノ職責ニアル中ニ
改正スルト云フ御意思ヲ以テ此鑛業法改正
ノ調査委員會ニ當リマシテハ强ク要望サ
V、强ク決定サレンコトヲ特ニ御願致シマ
シテ私ノ質問ヲ打切ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=34
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035・川崎巳之太郎
○川崎委員 獨立ノ質問デゴザイマセヌ
デ、只今ノ野溝サンノ質問ニ關聯シテ極ク
僅カ伺ヒタイノデゴザイマス、鑛山ノコト
ガ朝野デ一番問題ニナッタノハ、何十年前ニ
例ノ足尾銅山ノ鑛毒事件、日立ノ鑛毒事件
ト云フモノガゴザイマシタケレドモ、世間
デヤンヤ〓〓ト騷ガレテ政府モ眞面目ニ
ナッテ色々御取締ニナッタ結果、昨今ハ足尾
ノ方デモ左樣ナコトハ聞キマセヌシ、日立
ノ方デモ東洋一ト云フ非常ニ長イ煙突ヲ拵
ヘテ略〓完全ニ近イ防禦工事ヲシテ鑛毒ノ騷
ギハナクナッテ居リマス、其經驗ニ徵シマシ
テモ政府ガ本式ニヤラウト思ヘバ產業ノ
發達ニ最モ關係ノアル鑛山業ヲ健全ニ營ン
デ行クコトハ何デモナイコトト思フ、所ガ
民間カラ其聲ガ起ラズ、鞭撻ガ加ハラナイ
ト、政府ノ當局者ハ段々々々御迭リエナル
モノデスカラ、少シ鞭撻ガ緩ムト云フト、
其時代ノ人ハ忘レテシマフ、其次ニハソレ
ガ慣習ニナルト云フヤウナコトニナッテ、甚
ダ遺憾ナ事ガ起ルノデゴザイマス、ソコデ
鑛山ニ於ケル災害防止方法ト云フノハ國際
聯盟デ勞働會議ノ關係ナドモゴザイマシテ、
日本デ國法トシテ定メタノハ例ノ社會局案
デ、是ハ數年若クハモット前ノコトデアルト
思フ、然ルニソレハ小サナ勞働時間ナリ災
害ノコトハドウスルト云フコトヲ規定シテ
居リマスケレドモ、鑛山其モノガ崩レテシ
マフトカ、「ダム」ガ泥ヲ吐イテ何百人モ流サ
レテシマフト云フヤウナコトハ取締ッテ居
ラナカッタ、其方ハスッカリ御留守ニナッテ
シマッテ居タ、サウシテ曩ニハ尾去澤事件ガ
アリ、今又野溝委員ノ熱心ニ陳辯サレタ
ヤウニ小串事件ガアルト云フヤウナコトデ、
私共國民トシテ見テ居ラレナイ、鑛山監督
局ト言フノハ何ヲ監督スルノカ、其法制ヤ
何カハ存ジマセヌケレドモ、一體何ヲシテ御
座ルノカ不思議ニ堪ヘナイノデゴザイマス、
ソコデ伺ヒタイノハ、只今ハ小串鑛山ノ事
件ノ原因ニ付テ專門家ノ說ノ御發表ヲ初メ
テ承リマシタガ、是ハ大變難シイノデ私共
素人ニハ一寸分リニクイガ、素人ノ理解シ
得タ所ニ依ルト、ドウヤラ岩床ガ脆弱デアッ
テ其上ニ何カ溜ッタ物ヲ保留シ難クナッテ崩
レタト云フヤウナ地質學上ノ解釋ノヤウニ
伺ッタノデアリマスガ、若シサウデアリマス
レバ鑛山監督局ト云フヤウナ所デハ、ソレ
等ノ地質檢査トカ何トカ云フコトヲ時々ナ
サル必要ガアルノデハアルマイカ、檢査ヲ
シテモ分ラナカッタデアラウカ、丁度警視廳
ニ於テ寄席、興行、活動寫眞ト云フヤウナ
モノノ建物ヲ時々檢査ヲシテ崩レナイヤウ
ニ、或ハ火災ノ時逃出ス設備ガ出來テ居ル
カドウカト云フヤウナコトヲ二六時中取締ッ
テ居ル、例ヘバ淺草ナリ何處ナリデ大勢人
ヲ集メテ興行物ヲヤルノニ警視廳ガ取締ル
コトハ當然デアリマスガ、ソレト同ジヤウ
ニ、大キナ鑛山ガ方々ニ在ッテ國富ヲ產ミ出
シテ居ルガ、是ハ日本ノ產業ガ大イニ進ン
デ結構ナコトデアリマスガ、ソレニ伴フ大
キナ災害ヲ根絕スルヤウニ、其土質ノ檢査
カ何カヲ時々スルコトガ必要ヂヤナイカト
思ヒマスガ、從來是ハヤッテ居ッタノダラウ
カ、或ハ今後ソンナコトヲヤル積リハナイ
カ、ソレヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=35
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036・小金義照
○小金政府委員 小串ノ災害ハ只今其原因
ヲ專門家ノ言葉デ發表致シマシタガ、大體
地盤ガ非常ニ堅イノデアリマスガ、其上ニ
細カイ安山岩、角礫凝灰岩ノ粉ガ段々浸込
ンデ行ッテ、下ノ堅イ岩石ノ上ニ溜ッテ、ソ
レガ滑ベル役目ヲシタ、ソコデ上ニ水ヲ含
ンダ爲ニ上ノ一部分ガ落チテ、ソレカラ更
ニ其上ノ山ガ下ヘ落チタ、斯ウ云フノガ大
體通俗ニ吾々ガ諒解シテ居ル所デアリマス、
川崎委員ノ御解釋モ大體サウダト思ヒマス、
是ハ現場ヲ調査シタ報告ニ依リマスト、大
體十五度乃至三十度ノ傾斜ノ「スロープ」デ
アリマシテ、普通ノ狀態ニ於テハ外カラ一
ツモ分ラナイ、ソレデ其上ニ熊笹ガ被サッテ
居リマシテ、何處ニ龜裂ガ生ズルカ、或ヘ
ドノ程度ノ水分ヲ含有シテ居ルモノカト云
フコトガ分ラナカッタノデ、其意味ニ於キマ
シテ豫防ヲシヤウガナカッタ、斯ウ云フ結果
ダト云フコトデアリマス
小串ニ於キマシテハ御案內ノ通リ二千米
モ高イ山岳ノ地帶デアリマスノデ、雪崩ヲ非
常ニ恐レマシテ、如何ニシタラ住民或ハ從業者
ノ住宅ガ雪崩ノ災害カラ免レルカト云フコ
トハ、非常ニ〓究シテ居リマシタガ、左樣ナ「ス
ロープ」ノ所ニ突如トシテ土砂崩壞ガ起ラウ
ト云フコトハ豫想シテ居ラナカッタモノデス
カラ、斯ウ云フ災害ニ遭遇シタコトト思
ハレマス、此罹災者モ大體死者ガ一一百四十
四名デアリマス、外ニ怪我ヲサレタ方ガ三
十三名ゴザイマス、悼マシイ事件デ洵ニ遺
憾ニ堪ヘナイノデアリマス、ソコデ今川崎
委員ノ御說ノヤウニ、日本ハ降雨期ニ至ッテ
ハ非常ニ雨量ガ多イノデ、サウ云フヤウナ
コトハ諸方デ氣ヲ付ケタラ宜イダラウ、斯
ウ云フ御說ノヤウデアリマスガ、洵ニ御尤
デ、今後サウ云フ狭イ土地ニ密集-鑛山
ハドウセ住民ハ密集セザルヲ得ナイ傾向ガ
アリマスノデ、サウ云フ密集シテ人ヲ住ハ
シテ置クノデアリマスカラ、出來ルダケ注
意ヲ致サスヤウニシタイト考ヘテ居リマス
ガ、何分ニモ全國ニ亙ッテノ地質調査ノ外
ニ、今ノヤウナ崩壞スル虞ガアルヤウナ所
ヲ拔キ調査スルノニモ大變ナ經費ト日時ヲ
必要ト致シマスノデ、出來レバ鑛山監督局
ナリ、又私ノ方デ所管シテ居リマスル地質
調査所ノ多數ノ技師モ居リマスノデ、折ガ
アリマシタラ只今御警告ノ點ハ十分心得テ、
機會アル每ニ災害防止ノ意味ニ於テ、又水
質ノ調査トカ土質ノ調査ト云フヤウナ意味
ニ於キマシテ、實行サシテ行キタイト斯樣
ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=36
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037・川崎巳之太郎
○川崎委員 大層眞摯ナル態度ヲ以テ御答
辯ヲ得マシテ、洵ニ有難ウゴザイマスガ、
前ニ申上ゲタヤウナ趣意デゴザイマスカラ、
兎モ角鑛山ノ發掘ヲ許可スル時トカ、或ハ
許可シテカラ後何年目トカ云フ位ニハ、少
クトモ地質檢査ト云フヤウナコトヲナサル
ノガ當局者ノ義務ヂヤナカラウカト思フ、
此頃又吾々ノ手許ニ鑛產物ヲ增產スルコト
ニ關スル法律案ガ御提出ニナリマシテ、私
共拜見シテ居リマスガ、是ハ洵ニ此時節柄
結構ナ法案デゴザイマスガ、唯增產バカリ
圖ラズニ、一ツ人命ヲ尊重スルト云フコト
ヲシテ下サラナケレバ大層困ルト思ヒマス、
ソコデ尾去澤ノ如キハ、是ハ殺人罪ニ當リ
ハセンカト云フヤウナコトデ、檢事局ガ乘
出シテ起訴シタトヤラ何トヤラト云フ其當
時新聞ノ雜報ヲ見タノデゴザイマスガ、ソ
レハドウナッテシマッタノカ、一向其經過モ
私共一般人ハ承知シテ居リマセヌシ、ソコデ
資本家ヲ相手ニシテハ勞働者ノ命ハ數百塊
マッテモ數千塊マッテモ實ニモウ輕イモノダト
云フ考ヲ此際非常時ニ持タシタリ何カシタ
ラ、ソレコソ精神總動員モ何モ滅茶苦茶ニ
ナッテシマフシ、內務省ノ人民戰線征伐モ根
柢カラ崩レルト思フ、是ハ非常ナ影響ヲ及
ボシマスカラ、左樣ナ片手落ヲスルノヂヤ
ナイト云フコトヲ示ス爲ニ、此尾去澤ノコ
トハ大分程ガ經ッテ居ルガ、何ガドウナッタ
カ一般國民ニ能ク分ルヤウニシテ戴クト同
時ニ、アンナコトデモ時々檢査デモシテゴ
ザッタラ、アレ程ノ大失態ハ出來ナカッタラ
ウ、後ニナッテ專門家ヲ集メテ評議シテモ、
ソレハ死ンデシマッテカラ醫者ヲ集メテ病
氣ノ原因ヲ糺スト同ジヤウナコトデ、惡イ
コトヂヤナイガ、ソレデハ困ルト思フ、私
共國民ノ聲ト致シマシテ一ツ希望ヲ此際申
上ゲテ置キタイト思ヒマス、私ノ質問ハ是
デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=37
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038・森下國雄
○森下委員長代理 一寸速記ヲ止メテ··
〔速記中止〕
〔森下委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=38
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039・一松定吉
○一松委員長 ソレデハ速記ヲ始メテ·····
他ニ御質疑ハアリマセヌカ-御質疑ハナ
イト認メマス、ソレデハ昭和十三年度一般
會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關ス
ル法律案外六件ニ對シマスル委員諸君ノ質
疑ハ終了シタモノト認メマス、是等ノ七件
ニ對シマシテ之ヲ議題ニ供シテ諸君ノ討論
ヲ求メマス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマ
ス-池本委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=39
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040・池本甚四郎
○池本委員、 私ハ只今議題ニナリマシタ昭
和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
公債發行ニ關スル法律案外六件ニ對シマシ
テ、政府原案ニ贊成致スモノデアリマス、
併ナガラ贊成ヲ致シマス道程ニ於キマシテ、
多少ノ意見モアリマスルノデ、ソレ等ノ主
ナルモノヲ出來ル限リ簡潔ニ申述べマシテ、
贊成ノ意ヲ明ニ致シタイト思ヒマス
先ヅ明年度ノ一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案ニ付テデアリ
マスガ、此實體ハ旣ニ過日豫算案ノ議決ニ
依ッテ決定ヲセラレタモノデモアリ、且ツ又
屢〓他ノ機會ニ於テ論及セラレタモノデア
リマスルカラ、最早多クハ申上ゲマセヌ、
併ナガラ政府當局ガ何ト申サレマシテモ、
是ガ消化ト、ソレニ伴ッテ各方面ニ及ボス
影響ニ付キマシテハ、多大ナル考慮ヲ要
スルモノガアルト考へルノデアリマス、
今日マデノ委員會ニ於ケル經過ヲ見マ
スルニ、此重大法案ニ付キマシテノ質疑ハ
比較的少カッタノデアリマスガ、ソレハ申
サバ一種ノ諦メデアッテ、結局ハ何トモ致シ
方ガナイ、斯ウ云フヤウナ考カラデアラウ
ト思ハレマス、決シテ思フ所ガナカッタノデ
ハナイノデアリマス、今更申上ゲル迄モナ
ク、本年度今日マデノ公債發行ノ豫定殘額
ヲ計算致シテ見マスルト、約二十五億圓ニ
相成ッテ居リマス、ソレニ近ク提案ヲ豫想セ
ラレマスル事件費ヲ追加致シテ見マスルナ
ラバ、何人モ申ス如ク莫大ナル額ニ上ルノ
デアリマシテ、是ガ消化難ハ勢ヒ日本銀行
ヘノ脊負ヒ込ニナリ、サウスレバ通貨ハ膨
脹シ、隨テ物價ノ騰貴ヲ免レナイ、ソレガ
延イテ國民生活ニ對スル壓迫トナリ、一面
ニ於キマシテハ、輸出貿易ヲ阻碍スルト云
フコトノ原因ニ相成ル譯デアリマス、公債
消化ノ爲ニ公債ノ信用ヲ維持シナケレバナ
ラナイ、其爲ニ爲替ノ一志二片ヲ堅持シヨ
ウト致シマスレバ、玆ニ爲替管理ヲ强行ス
ル貿易統制ヲ行ハナケレバナラナイ、必要
ナル原料輸入マデモ抑壓ノ餘儀ナクセラレ
ルト云フコトニナリマスレバ、ソレガ軈テ
必要ナル輸出減退ノ原因ニモ相成リ、又國
內ニ於キマシテハ物價騰貴ヲ誘發スルト云
フコトニ相成ル譯デアリマス、物價騰貴ニ
付キマシテハ、今日マデノ大藏大臣ナドノ
御答辯ニ依リマスレバ、左樣ニ上ッテ居ラナ
イト云フヤウナコトヲ申シテ居ラレマスガ、
併ナガラ上ッテ居ルコトハ事實デアル、唯幸
ニシテ今日迄ハ〓シテ其騰貴ハ日用品ニ及
ンデ居ラナカッタノデアリマスガ、最近ニ愈〓
此方面ニマデ進ンデ參ッタト云フコトハ注意
ヲ致サナケレバナラナイコトデアルト考へ
ルノデアリマス、現ニ國民生活ノ上ニ最モ
關係ノ深イ例ノ晒木綿ノ暴騰ノ如キハ、其
顯著ナル一ツノ例デアルト考ヘルノデアリ
やく、今日ノ生產擴充ハ言フ迄モナク、軍需
工業ノ擴充ヲ意味シテ居ルノデアル、隨テ
平和產業ハ壓迫セラレテ跛行景氣ハ益〓其勢
ヲ强メテ參ル、最近ノ資本集中ノ動向ヲ見
マシテモ、本年ノ一月分ノ日銀調査ニ依リ
マスレバ、其總額中ノ七五%マデガ軍需關係
ノ工業ニ對スル計畫資本デアルト云フヤ
ウナ譯デアリマシテ、其爲ニ一方ニハ非常
ニ大ナル利益ヲ得ル者ガアリマス其反面ニ
於キマシテ、中小商工業者ノ疲弊、農村ノ
打撃ハ大ナルヲ免レ得ナイ譯デアリマス、
此間ニ政府當局ガ色々御心配ニ相成ッテ居
リマスルコトハ承知ヲ致シマスガ、併シ其間
政府ノナサレ方ヲ見マスルノニ、ドウモ餘
リセカ〓〓ト何ダカ物ニ囚ハレテ居ラレル
ガ如キ形ナキヲ得ナイノデアリマス、其
例ト致シマシテ、最近ノ煙草ノ値上デアリ
マスガ、其結果ハ僅々一千万圓ノ收入デア
ル、此增收ノ眞價ニ付キマシテ私ハ聊カ疑
ナキヲ得ナイノデアリマス、是ガ增收主義
カラセラレルノデアルナラバ、好マナイコ
トデハアリマスケレドモ、例ノ「バット」ト
云フガ如キ大衆向ノモノヲ外サレタコトハ
意味ヲ成サナイ、又一面ニ於キマシテハ、
全國民ニ此時局ヲ認識セシメル爲ノ値上デ
アルト言ハレルナラバ、此點カラモ同ジク
此一般向ノモノヲ落サレタト云フコトデハ
駄目デアルト私ハ考ヘル、決シテ私ハサウ
云フ大衆向ノ煙草ノ値上サレナカッタコト
ヲ、是ハ喜ビコソスレ非難スル譯デハアリ
マセヌ、併シ其方針ガ何處ニアッタノカト云
フコトヲ私ハ分リ兼ネルノデアリマス、歸
スル所ハ一千万圓ダ、其一千万圓デ若シ他
ノ一般物價騰貴ノ動因トナリ、其口實ヲ與
ヘルガ如キモノガアッタトスルナラバ、ソレ
ハ甚ダ愚ナルモノデアルト私ハ考ヘルノデ
アリマス、貿易統制ニ付キマシテモ、餘リ
ニ杓子定規デアルノデハナイカト考ヘラレ
マス、其爲ニ角ヲ矯メテ牛ヲ殺スニ類スル
ヤウナ憂ガナイデモナイノデアリマス、此
案ニ私共ハ贊成ヲ致シマスルケレドモ、願
クハソレト共ニ政府當局ニ於カレマシテハ、
是ガ取扱ト其影響ニ關シマシテ、一層萬全
ノ策ヲ講ゼラレマスヤウ切望致シテ置ク次
第デアリマス
次ニ滿洲事件費ニ付テデアリマス、今更
此實體ニ付キマシテ彼此レ申スノデハアリ
マセヌ、併ナガラ過日此委員會ニ於テ質問
ガアリマシタ如クニ、何時マデ此事件費ト
云フガ如キ名目ノ下ニ臨時費ニ置クベキモ
ノデアルカト云フコトニ付キマシテハ、多
少ノ是亦疑念ヲ持ツノデアリマス、是ハ決
シテ一片ノ豫算形式ノ上カラ申スノデハナ
クシテ、財政ノ實質論カラモ之ヲ考ヘ得ル
モノト思フノデアリマス、况ヤ今囘ノ支那
事變デアリマスガ、此事變ノ跡始末ガ又斯
樣ナコトニナッテ、我國ノ財政、豫算ノ內容
ヲ混雜ナラシメルヤウナコトガナイカト懸
念致シマスル點ヨリ、一層此感ヲ深ク致ス
ノデアリマス、願クハ此費目ニ付キマシテ
モ、最早明確ニ確乎タル方針ヲ立テラレン
コトヲ切望致スノデアリマス
次ニ對支文化事業費ノ增額案ニ付キマシ
テハ、贊成デアリマスト共ニ、其必要性ニ
鑑ミマシテ、將來出來得ル限リ更ニ增額セ
ラレンコトヲ希望致スノデアリマス、但シ
本事業ノ目標ニ付キマシテハ、今囘ノ此支
那事變ヲ契機トシテ、從來ヨリモモット眞
劍ニ立直シテ考慮ヲシテ貰ハナケレバナラ
ナイト考ヘルノデアリマス、サウシテ其究
極スル所ハ排日思想ノ絕滅ニアルモノト考
ヘル者デアリマス、今囘ノ此事變ニ於テ百
万ノ大兵ヲ動カシ、數十億ノ國帑ヲ費シテ
此大事變ヲ起サナケレバナラナクナリマシ
タ根本原因ヲ考ヘテ見マスレバ、折角隣邦
相接シ同文同種ヲ高調シテ居リナガラ、實
ハ多年ニ亙ッテ相互ノ精神的文化的ノ結合
指導ガ足リナカッタノデハナイカト思フノ
デアリマス、此點ヲ思ヒマスルナラバ、本
事業ノ改善擴充ハ最モ喫緊事ト思ヒマスル
ガ故ニ、願クハ當局ニ於カレマシテ、此點
ニ十分御留意ガ願ヒタイ、其改善擴充ノ具
體案ハ固ヨリ色々デゴザイマセウガ、其中
ニ於テ留學生ノ招致、相互ノ語學ノ普及ノ
點ニ付キマシテ、一言致シタイト思フノデ
アリマス、留學生ノ招致ニ付キマシテハ、
從來ノ我國ノヤリ方ハ國庫補助ハ殆ド失敗
デアッタト言フ外ハゴザイマセヌ、卽チ折角
手鹽ニ掛ケ相當ナ費用ヲ費シテ置キナガラ、
其留學生ガ向フニ歸リマスルト其殆ド全
部ト言ッテ宜イモノガ直チニ我國ニ背イテ
排日抗日ニ憂身ヲ窶スト云フヤウナコトガ
事實デアッタノデアリマス、其ノ主要原因ハ
何レニアッタカト言ヘバ、卽チ招致組織ノ缺
陷ニアッタノデアル、此點ニ付キマシテハ過
日本委員會ノ質問應答ニ於キマシテ、當局
者モ御認メニナッタ所デアリマスカラ、將來
大イニ改善シテ戴カナケレバナラナイト考
ヘルノデアリマス
次ニハ相互ノ語學ノ普及、就中我ガ國民ヘ
ノ支那語〓習ノコトデアリマス、多クハ申
シマセヌガ、此際學校〓育ニ於テ、又或ハ
一般講習會ニ於キマシテ、大イニ支那語ノ
普及常識化ヲ必要ト考へルノデアリマス、
最近非常ニ頻々トシテ傳ヘラレマスル支那
側ノ情勢ヲ見マスルニ、日本語ノ習得ニ付
キマシテハ非常ナ熱意ヲ見セテ居ルノデア
リマスカラ、大イニ之ヲ助長致シマスルト
共ニ、コチラニ於キマシテモ亦此支那側ノ
情勢ニ對應シテ立上ルヤウニ、政府ノ御助
力ヲ希望致ス次第デアリマス、以上極ク主
要ナル事柄ニ付キマシテ希望的ノ意見ヲ申
述ベマシテ、此諸案ニ贊成致ス次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=40
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041・一松定吉
○一松委員長 川崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=41
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042・川崎巳之太郎
○川崎委員 私ハ政府提出ノ本案ニ贊成ス
ル者デゴザイマス、ソレデ池本委員ノ立場
ト同ジニ、贊成スルニ付テハ、色々希望ガ
吾々委員ノ中ニアルノデゴザイマス、其希
望ハ旣ニ度々ノ委員會ニ於テ、此處デ問答
ヲシテ多ク發表シテ居ル所デゴザイマスル
ガ、唯斯ウ云フコトハ、マア其時ハ面倒ク
サイカラ苦イ顏ヲシテ聞イテ居ッテ、モウ案
サヘ通ッテシマヘバオ終ヒダト云フヤウナ
コトデ、咽喉元過ギレバ熱サ忘レルト云フ
ヤウナノガ每年ノ例デゴザイマスノデ、此
場合ニ政府各部面ノ代表ノ方々ニ、此處デ
ハドンナ希望ガアッタノダト云フヤウナコ
トヲ、今一度思出シテ戴キタイト思フノデ
アリマス
第一大藏省ニ對シテハ、今ノ公債ハ十三
年度ノ一般會計ノ不足ヲ補塡スル爲ニ公債
ヲ發行スル、是ハモウ本會議デ通過シテ居
ルノダシ、ソレヨリ仕方ガナイノデゴザイ
マスルカラ、何人モ異議ヲ申述ベル者ハナ
イノデゴザイマス、併シ其公債ノ消化力、
分布ノ模樣等ニ付キマシテハ、池本委員ノ
御話ガアリマシタヤウニ、多大ノ憂慮ヲ私
共懷イテ居ル、ト申シマスルノハ、十三年
度ノ會計補塡ノ爲ニハ、以前ノ殘リトモ合
セテ十億幾ラノ公債ト思ヒマシタケレドモ、
追テ三十億カ四十億ノ途方モナイ大キナ額
ノモノガドシヤリト此議會ヘ下リテ來テ、
吾々國民ノ代表者ガソレヲ議シ、且又協贊
スルヤウニナルコトト思ヒマス、ソコデ是
ハ單純ナ公債デゴザイマセヌノデ、其點ニ
付テハ憂ヲ池本委員ト同ジクスル者ナノデ、
大藏當局ノ御考慮ヲ吳々モ願フヤウニ致シ
タイノデゴザイマス、ソレカラ此議案ノ中
ニ陸軍ニ關スルモノナガ大層多イノデゴザイ
マス、ソレハ滿洲事件ニ關スル云々ト云フ
ノモ、是ハ六七年前ノ滿洲事件ノ後始末ノ
繼續デゴザイマス、主トシテ陸軍關係ノコ
トデゴザイマス、ソレカラ支那事變ニ關ス
ル臨時軍事費ノ財源ニ充ツル爲特別會計ヨ
リ爲ス繰入金ニ關スル云々、是ハ名前ノ如
ク支那事變ニ關スルコトデゴザイマス、ソ
レカラ軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ
關スル法律案、軍ノ需要ヲ充タスガ爲ニ會
計法ニ特例ヲ設ケタト云フコトデ、是モ亦
海軍モアリマセウガ、陸軍ニ最モ大キナ關
係ヲ持ツモノト思フノデアリマス、サウシ
テ陸軍ニ對シマシテハ其御働キニ付キ、私
其國民ト共ニ徹頭徹尾敬意ヲ表シテ居ルコ
トハ申ス迄モゴザイマセヌガ、唯此委員會
デ屢〓繰返サレマシタコトハ、出征軍人遺家
族ノ世話ノ燒キ方、戰死者ト病死者トヲエ
ライ區別スルガ、ソレハ餘リニ困ルデハナ
イカ、例ヘバ彈ガ中ッテ卽死シタノハ戰死
ダト言フケレドモ、破片ガ原因ニナッテ、入
院シテ三箇月ノ內ニ死ンダノハドウダ、戰
傷者ダト言ッテ段ガ落チルヤウニ取扱ハレ
ル傾ハナイカ、若クハ彈デナケレバ、其處
デ「クリーク」ノ水ナリ何ナリ飮マセレバ、
ドンナ人間デモ病氣ニナリマス、黴菌ノ名前
ハ私存ジマセヌガ、「チブス」ナリ何ナリ色々
ノ病氣ニナルコトデゴザイマス、ソレハ病
氣デ死ンダノダト言ッテモ彼處ニ送ッテアノ
水ヲ飮マセサヘシナケレバソンナ病死ヲシ
ナイモノデアル、ソレハ病死者ト言ッテ、戰
死者ノ方ニハ町村祭ヲ公ニ行ハセ、ソレニ
ハ行ハセナイト云フヤウナコトモ、アナタ
方ガ机ノ上デ裁斷スル時ハ樂デゴザイマセ
ウガ、私共實際町村ニ入ッテ、其葬儀ニ立會
フ時ナドハ實ニ忍ビナイノデゴザイマス、
此點ヲドウカシテ考ヘテ吳レナイカト云フ
希望的質疑モアッタヤウデアリマスカラ、是
モ能ク御考下サルヤウ願ヒマス、ソレカラ
百万行ッテ居リマスカ、幾ラ行ッテ居リマス
カ、數ハ存ジマセヌガ、非常ニ澤山ノ軍隊
ガ外地ヘ今出テ居リマス、ソコデ其中豫後備
ガアリマスカラ、長期抗戰トナリマシタ以上
ハ、新兵デモ段々〓育ヲ受ケテ來レバ、是
ハ吾々素人ノ考デ觀測スルノデゴザイマス
ガ、段々豫後備ノ兵隊ト始終交代ヲスルヤ
ウニナルノダラウト察シマス、而シテ其數
ガ非常ニ多イノデゴザイマスカラ、是ガド
カドカト還ッテ來テ町ハ町、鑛山地帶ハ鑛山
地帶、農村ハ農村、漁村ハ漁村ト云フコト
デ、又其職業問題、生活問題ト云フモノガ
必ズ起ルノデアリマス、其時ニ還ッテ來タ軍
人ニハ是レ〓〓ノ規定ノ一時金ヲ賜ハレバ
ソレデ宜イノダ、ブッ放シテアトハ外ノ領分
ダト云フ御考ヲ陸軍及ビ海軍ノ當局ハ持タ
ズニ、後々マデモ厚生省ト能ク連絡ヲ執ッ
テ、命ヲ的ニシテ皇國ノ爲ニ奮戰シテ來タ
方々ガ續々是カラ先ニ〓里ヘ還ッテ來ル時
ノ始末ヲ遺憾ナキヤウニシテ戴キタイ、ソ
レカラ海軍ノ勇壯ナル飛行機ノ活動ヲ私共
一同感服シテ居ルト同時ニ、陸軍ノ飛行機
ニ對シテモ多大ノ敬意ヲ表シテ居ルノデゴ
ザイマスケレドモ、敬意ノ表シ方ガ一般國
民ハ陸軍ノ飛行機ノ活動ニ對シテハマダ足
ラナイ、モット敬意ヲ表シタイ爲ニ、モウ少
シ敬意ヲ表ス素ヲ陸軍ノ方デ作ッテ戴キタ
イ、サウシテ陸軍ノ飛行機豫算ナドニモ、
今モ喜ンデ協贊シマスケレドモ、尙ホ喜ン
デ大張込デ協贊ノ出來ルヤウニ一ツ御骨折
ヲ願ヒタイト云フコトモ御參考ニ申上ゲテ
置キタイノデゴザイマス
ソレカラ外務省ニ於キマシテハ、是ハ文
化事業部ガ入ッテ居リマスルガ、池本委員ノ
御話ニナッタコトニ全然同意デゴザイマス、
此機會ニ劃期的ノ文化設備ヲシナケレバ、
殆ド飯事ニ終ッテシマフ、飯事ノ因ハ何處カ
ラ始ッタカト云フト、明治三十三年カ四年頃
ノ北〓事變ノ後カラ、アノ時ノ賠償金ガ因
デ段々出來タ、隨分古イ話ダ、ソレヲ繼續
シテ今日マデヤッテ來タ譯ナノデアリマス、
サウシテ留學生ノ招致工合ヤ何カニ付テモ
亦內國ニ於テソレヲ待遇シテモ、待遇ノ工
合ガ惡クシテ、還ルト直グ排日、抗日ヲサ
レルト云フノハ、池本委員ノ御話ノ通リデ、
餘所ノ何處ノ國ヨリモ甚ダ扱ヒ振リガ惡イ
ト云フノハ、今ノ當局者ノ責任ト云フノヂ
ヤナイケレドモ、如何ニドナタガ負惜ミシ
テモ辯解ノ辭ノナイ所ト思フノデゴザイマ
ス、ソコデ劃期的ノ經營ヲシテ戴キタイ、
殊ニ設備ガアンナ區々タルモノデハイケナ
イ、歐米ニ對スル日本文化ノ宣傳ト云フノ
ハ、是亦大イニ力ヲ入レテ戴カナケレバ-
五十万ヤソコラデ以テ世界的ニ日本ノ文化
ヲ宣傳スルナドト云フ話ハ、是ハ神樣ニ賴
ンデ見タ所デ出來ナイ藝當デ、佛蘭西デハ
ドウシテ居ル、獨逸デハドンナコトヲシテ
居ル、米國デハドンナコトヲシテ居ルト云
フコトハ、外務當局デ御分リデゴザイマセ
ウ、アレ等ノ國デハ政府ガヤル外ニ、又宣
〓師團ナリ、或ハ其他ノ有志ナリ澤山アル、
日本ニハソレモナクテ切羽詰ッテカラ自發
的ニ國民使節ノ方々ガ奮發シテイラッシヤル
ト云フコトデハ、事既ニ遲イト云フコト
ヲ始終感ズルノデゴザイマスカラ、事變ガ
起ッテカラ慌テクサッテ、ミットモナイ態ヲ
呈サズニ、各歐米文化宣傳ト云フコトニモ
十分力ヲ盡シテ戴キタイ、ソレト又此處ノ
委員會ニ於テ最モ切實ニ論ジラレマシタノ
ハ、支那人ニ對スル文化設備デハゴザイマ
セヌガ、ソレニ甚ダ似寄ッテ居ルコトデ、
吾々民族ノ大陸發展ノ急先鋒トシテ何年若
クハ何十年先カラ支那へ出掛ケテ、各要地
ニ居所ヲ占メ、生活ノ根本ヲ其處ニ置イタ
者ガ、ムザ〓〓此事變ノ爲ニ追歸サレテ、
非常ノ難儀ニ遭ウテ居ル、上海南京方面ニ
於テハ早イ頃ノ調査デ日本人ノ財產デ害ヲ
被ッタモノガ一億八千万、靑島方面ニ於テハ
三億ト云フ話ヲ伺ッテ居リマシタ、其外天津
ニモ北京ニモ澤山アル、ソレカラ日本人ノ
復興ヲスルニ付キマシテハ是ハ度々外務大
臣モ此席デ吾々委員側ノ質問ニ對シテ意思
ヲ發表ニナッタヤウニ思ヒマスケレドモ、最
モ親切ナ且又急速ナ對策ヲシテ戴キタイト
思フノデゴザイマス
ソレカラ拓務省管轄ニ於キマシテハ、朝
鮮ノ方ノ移民ノ話、是モ大分此處デ問答ガ
アリマシタガ、兎モ角朝鮮カラ七十万ノ移
民ガ日本ノ方へ入ッテ來テ、日本カラハ六十
万シカ行ケナイ、サウシテ日本ノ國策トシ
テハアノ廣クテ人口稀薄ナル所ノ滿洲へ、
朝鮮人ニドン〓〓移ッテ貰ハナクチヤナラ
ナイト云フノハ、是ハ動カスベカラザル國
策ト思ヒマス、其國策ニ因ンデ滿鮮拓殖會
社ガ出來テ居ル、ソレニモ拘ラズ著手匁々
デハアリマスケレドモ、甚ダアベコベデ、
却テオツリガ出ルト云フ移民狀態デアルノ
ハ、是ハ桂公爵ノ東洋拓殖會社ヲ興シタ時
ノ昔ノ理想カラ考ヘテモ、何十年後ニナッ
テ甚ダ至ッテ居ナイコトト殘念ニ思フノデ
アリマシテ、此點モ吳々モ御願ヲシタイシ、
殊ニ防共協定ト云フコトデ、日本ガ歐羅巴
ノ列强國ト强ク結ンデ、近頃ハ又墺地利モ
ソレニ參加スルト云フコトデゴザイマスル
ガ、左樣ナ場合デゴザイマスレバ、日本ニ
直接接シ、又「コミンテルン」ノ御連中ト直
接ニ接シテ居ル所ノ朝鮮ニ於テノ其問題ハ
最モ重要ヲ占ムルノデゴザイマスルガ、餘
リソレハ深入リシテ御伺ヒセヌ方ガ宜カラ
ウト私共委員ノ方デ思ウタノデ、其問題ノ
問答ハ略シマシタケレドモ、是ハ問題ガ小
サイカラ略シタノデハナクシテ、非常ナ重
要性ヲ帶ビテ居ルモノデゴザイマスルカラ、
此點ニ於テ朝鮮總督府ノ當局者ニ於テハ、
吳々モ御注意ヲ願ヒタイ、ソレカラ、滿洲
ノ移民、ソレカラ北支ニ於ケル農村ヤ何カ
ノ仕事ヲ助成スル、此事ハ先日モ拓務
大臣ノ御說明ヲ伺ヒマシテ、大體ハ滿足
シテ居リマスルガ、唯方針ダケデハ仕樣ガ
ゴザイマセヌシ、又北支ノ廣イ所へ百万俵
カソコラノ棉ノ種子ヲ持ッテ行ッテ散ラスダ
ケノ話デハ、拓務省ノ北支經營ノ仕事トシ
テハ、餘リ素ッ氣ナイコトデゴザイマスカ
ラ、モウ少シ內容ヲ時ノ進ムニ隨ッテ十分
ニシテ戴キタイ、殊ニ此機會ニ日本ヨリ南ノ
方ニ當リマスル南方移民、是ハ漁業移民モ
色々ゴザイマセウガ、此事モモウ少シ尻押
シヲシテ比律賓ナリ、蘭領印度ナリ、モウ
少シ先ノ方ノコトナンカモ、此日本ガ大躍
進ヲスル機會ニ空シクセズシテ、大和民族
ガ發展出來ルヤウナコトニ今一層ノ御努力
ヲ願ヒタイコトヲ希望スルノデゴザイマス
ソレカラ北支及ビ中支ニ於ケル占據地ハ、
今軍部デ以テ後ヲ治メテ御坐ッテ、宣撫官ナ
ドヲ募集シタリ何カシテ、色々世話ヲ燒イ
テ居リマスルガ、是ハ差當リ軍部ガヤルノ
ガ當然デアルシ、又ソレガ一番有力ト思ヒ
マスルケレドモ、事長キニ亙レバ、元來軍
部ノ仕事トシテソコマデヤッテハ、餘リ軍
部ノ方々ニ御苦勞ガ過ギルコトデアルト存
ジマス、其意味ヲ以テ軍部本來ノ御職業ニ
邁進シテ戴ク爲ニ、追ッテ之ヲ外務省ノ文化
事業部ト言ヒマスルカ、或ハ別ニ新シイモ
ノヲ作ルカ、兎ニ角違算ナイヤウニ只今カ
ラ御手配ヲ願ヒタイト思フノデゴザイマス、
サウ云フヤウナ點ガ此委員會ニ於テ各委
員ノ中カラ質問ノ出タ中ノ主タルモノト存
ジマス、連記錄ヲ一々御覽下サルノハ面倒
デゴザイマセウカラ、左樣ナコトヲ此處デ
指摘致シマシテ、政府當局ノ御參考ニ供シ
マシテ、左樣ナ御考慮ヲ戴クモノトシテ、
此政府提出案ニ贊成シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=42
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043・一松定吉
○一松委員長 藤本委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=43
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044・藤本捨助
○藤本委員 私ハ第一議員倶樂部ヲ代表致
シマシテ、只今議題トナリマシタ昭和十三
年度一般豫算ノ歲入不足ヲ塡補致シマスル
ニ要スル公債發行ノ法律案、其他六法律案ノ
政府案ニ付キマシテ贊意ヲ表シ、且ツ其通
過アランコトヲ希望スル者デアリマス、提
案ノ實體ニ付キマシテハ、聊カ議論モゴザイ
マスケレドモ、旣ニ贊成致シマシタ以上、
之ヲ申シマセヌ、又此七法案ノ實體ヲ成シ
マス一般豫算ガ旣ニ衆議院ノ本會議ニ於キマ
シテ、滿場一致通過致シテ居リマス、今日、
尙更其議論ヲ省キタイト思フノデアリマス
ガ、唯次ノ數項ニ亙リマシテ希望ヲ開陳致
シ、以テ贊意ヲ表スル印シト致シタイト思
フノデアリマス
其第一點ハ外務省ニ關係アルコトデアリ
マスガ、私只今申上ゲルノハ、唯只今ノ
外務省御當局ニ對スルバカリデナイノデ
アリマシテ、從來ノ外務省當局ニ於カレ
マシテモ、ドウモ餘リニ國際社會ニ於ケ
ル所謂國際主義ニ忠、實ト云フカ、歐米諸
國ニ御遠慮シ過ギルト云フヤウナ聲ガ國民
ノ間ニアリマスシ、私モ左樣ニ思ヒマスノ
デ、一言其點ニ付キマシテ希望ヲ申述ベタ
イト思フノデアリマス、固ヨリ我國ガ國際
社會ノ一員ト致シマシテ、或ハ國際政治上
重要ナ使命ヲ有ッテ居リマス關係上、國際主
義ト云フコトニ忠實デアルト云フコトハ洵
ニ御尤デアリマスガ、併シ只今ノ國際社會
ハ、口ニ口頭禪トシマシテ、國際主義ヲ說
キマスケレドモ、其實相ニ於キマシテハ國
際主義ハ〓落致シテ居リマシテ、サウシテ
尖銳極マル國家主義ガ非常ニ擡頭致シマシ
テ-コンナコトヲ抽象的ニ申スマデモナ
ク、世界地圖ヲ披キマシタラ直グソレハ分
ル、例ヘバ僅カニ本國ノ人口ガ四千七百万
シカナイ英吉利ハ世界ノ人口ノ四分ノ一ノ
五億ヲ支配シテ居ル、又僅カニ本國ノ面積
ハ九万三千平方哩デアリマスガ、世界ニ於
キマシテ千三百四十九万九千平方哩ノ土地
ヲ支配シテ居ル、此事實ヲ見マスルナラバ、
如何ニ過去ニ於テ、現在ニ於テ國家主義ガ、
世界ヲ橫行シタカト云フコトヲ實證シテ居
リマス、更ニ我國ノ鼻先デ和蘭ノ如キ、或
ハ佛蘭西ノ如キガ澤山ノ土地ヲ有ッテ居ル、
幾度カノ軍縮會議ニ於キマシテモ、軍縮會
議トハ自分ノ國ガ持ッタラ不得手ノ武器ハ
相手ニ持タサヌ會議ダト云フヤウニシカ私
共ニハ思ヘヌ、或ハ一九二八年ノ不戰條約
ノ會議ニシマシテモ、國策ノ手段トシテノ
戰爭ヲ禁ジテアリマスガ、國策ノ手段トシテ
ノ戰爭ヲシテシマッタ國ガ他所ノ國ニソレヲ
サセヌト云フ會議デアッタヤウニ思フ、詰リ
自分達ハ高イ所へ登ッテシマッタカラ、後カラ登
テ來ル者ノ梯子ヲ取ッテシマフト云フ意味
ノ條約デアリ、會議デアッタト思フノデアリ
マス、亞細亞ニ於テハ門戶開放、機會均等
ヲ唱ヘマスケレドモ、世界ニ亞細亞以外ニ
サウ云フコトガ何處ニ行ハレテ居ルカ、或
ハ禁止的關稅モアレバ輸出ノ割當モアル、
或ハ歐羅巴ニ於キマシテ今ノ西班牙ノ內亂
問題ニ付テ見マシテモ、總テ尖銳極マル國家
主義ノ衝突デアリマス、或ハ今囘ノ支那事變
ヲ繞リマシテモ、歐米諸國ノ國家主義ノ使
喉ニ依ルト云フコトニ付キマシテハ異論ガ
ナイノデアリマシテ、斯樣ナコトヲ考ヘマ
スルナラバ、國際主義ニ忠實デアルト云フ
コトハ、國際平和ノ或ハ秩序ノ樹立ト云フ
意味カラ申スナラバ宜イカモ知レマセヌケ
レドモ、餘リニモ望ンデ得ラレヌコトデア
リマシテ、痴人夢ヲ說クノダト云フ氣モ致
スノデアリマス、故ニ私ハ此國際社會ノ實
相ニ能ク鑑ミマシテ、サウ云フヤウナ國際
主義ニ忠實デアルト云フコトモ必要デアル
カモ知ラヌガ、併シ詩聖ノ「テニソン」ト記
憶シマスガ人ハ先ヅ善良ナル國際人トナル
前ニ善良ナル國家人ニナレト言ッテ居ルガ、
左樣ナ意味ニ於キマシテ、所謂先ンズレバ
人ヲ制ス、斷乎トシテ行ヘバ鬼神モ避ケル
ト云フヤウナ意味ニ於キマシテ、モウ既ニ
「スエズ」運河ヲ越セバ正義ノ觀念ノナイ
國々ニ對シテ、或ハ「パナマ」運河ヲ越セバ正
義ノナイ國々ニ對シテ、御遠慮スル必要ハ
ナイト思フ、事變以來色々ナコトヲ外務當
局ハナサッテ居リマスガ、不幸ニシテ日本ノ
新聞ニ發表サレルコトト英吉利ヤ亞米利加
ノ新聞ニ發表サレルコトコト違フ、私共ハ
之ヲ讀ム場合ニ非常ニ慨嘆ニ堪ヘヌ、日本
ハ支那ニ於テ國威ヲ宣揚シテ居ルガ、歐米
諸國ニ於テハ國威ヲ失墜シテ居ル、ソレハ
歸スル所ハ餘リニ御遠慮シ過ギルカラデア
ラウト思フ、斯樣ナ譯デアリマシテ、此尊イ
血ヲ流シ、骨ヲ埋メ前古未會有ノ國家的、
國民的犠牲ノ結果トシマシテ今占據シテ居
ル支那ノ地ヲ、其問題ヲ、此樣ニ氣兼スル
外務當局ハドウスルカト云フコトヲ國民齊
シク私ハ注目致シテ居ルト、斯ウ思フ故ニ此
聖戰ノ目的ニ能ク鑑ミマシテ、或ハ日本ガ
東洋ノ安定勢力ト云フ意味ニ鑑ミマシテ、
斷乎トシテ此尊イ國家主義ノ犠牲ノ結果デ
アル所ノ北支中支ニ對スル工作ヲ、御遠慮
ナクヤッテ戴キタイト思ヒマス、今度ノ事變
ニ對スル我國ノ所謂膺懲ガ徹底ヲ缺ケバ、
又直グニ斯ウ云フ事變ガ起ルト云フコトヲ
考ヘマス、此事變ノ跡始末ガ若シ宜シキヲ
得ナカッタナラバ又直グ起ルト思フ、殊ニ又
此跡始末ガ外交的ニ失敗スルナラバ、啻ニ
外部ニ對スル問題ダケデナク、內部的ナ重
大ナル問題ガ考ヘラレテ來ル、斯ウ云フコ
トヲ考ヘマスト、ドウゾ外務常局ニ於カレ
マシテハ、十二分ノ御努力ト、十二分ノ御
貢獻ヲシテ下サッテ居ルト云フコトニ對シ
マシテハ、衷心敬意ヲ表シマスガ、此際一
段ト不退轉ノ勇氣ヲ持タレマシテ、此跡始
末ニ付テハ一段ノ御努力ヲ希望致ス次第デ
アリマス
第二ニ滿洲ノ統治狀態ヲ眺メマスト、マ
ダ日ガ淺イコトデモアリマスシ、我國トハ
直接關係ハ無イノデアリマスガ、由來支那
人ハ法三章ト申シマスカ、非常ニ簡易ナ生
活ヲ希望シテ居リマシテ、又彼等ハ傳統的
ニ法治ヨリ德治ニ依ルコトヲ希望シテ居リ
マス、或ハ他律ニ依ルヨリ自律ヲ希望シテ
居リマス、所ガ日本ガ後見的或ハ指導的役
割ヲ引受ケマシテ、滿洲國ノ創立以來ト云
フモノハ、非常ナ法規ノ粗製濫造ヲシテ居
リマス、國家創建〓々ノ際デアルカラ已ム
ヲ得ナイカモ知レマセヌガ、法規ノ粗製濫
造デアルガ故ニ、朝令暮改ヲ免レ得ヌノ
デアリマス、元來非常ナ簡易ナ生活ヲ好
ムシ、或ハ自律、自治ヲ好ムト云フノデ
アリマスガ、支那ノ人間ノ自治ト云フモ
ノハ、本能的ニ自治ニ優レテ居ルモノデハ
ナイト思フ、非常ニ國ガ廣クテ、非常ニ人
間ガ多クテ、地方ニ中央ノ威令ガ及バヌ、
故ニ自ラヤラザルヲナカッタラ自治ガ生
レタト思フ、サウ云フ人間ニ對シマシテ、
非常ニ煩雜ナ法規デ以テ治メヨウトスルト
云フコトデハイケナイ、今日多數ノ法規デ
ヤラウトスル、而モ其法規ノ適用ガ重箱ノ
隅ヲツヽクヤウナモノデアリマスカラ、滿
洲ノ人間ハ困リ拔イテ居ル、サウ云フヤウ
ナコトハ北支那或ハ中支ノ政治工作-是
モ直接關係ハナイノデアリマスケレドモ、
ドウゾ指導的後見的役割ヲ引受ケナケレバ
ナラヌ立場上、滿洲ノアノ二ノ舞ヲ北支、
中支ニ於テ演ジナイヤウニ、斯樣ナ支那ノ
傳統的民族精神、或ハ生活上ノ慣習ト云フ
モノヲ參酌シマシテ、非常ナ煩雜ナ法規ヲ
作ッタリ、或ハ其適用ガ杓子定規ニ終ラナイ
ヤウニ希望致シタイト思フ
ソレカラ是ハ又陸軍關係、外務關係ニナ
ルノデアリマスガ、國境政策ニ付テ御注意
願ヒタイト思フ、露滿國境デアリマスガ、
國境ハ單ニ地理的、領土的境界線バカリデ
ナシニ、私ノ愚見ヲ以テシマスレバ、國境ハ
國策ノ衝突線ダト思ヒマス、露西亞ノ「ビデ
ター」大帝以來ノアノ東方政策ト、日本ノ大陸
政策トガ彼處デ衝突シテ居ル、露西亞ノ共
產主義「コミンテルン」「コンミニズム」ト日
本ノ防共政策トガ彼處デ衝突シテ居ル、斯ウ
考ヘマス、或ハ大軍ヲ彼處ニ殖ヤスト云フ
コトヲ結局言ハレタヤウデアリマスガ、ソ
レモ一ツノ方法カモ知レマセヌガ、國交ガ
調整シナイ限リ駄目デアリマス、此點ハ今
ノ國際情勢カラ私ハ論及シマセヌ、唯茲ニ
御注意ヲ喚起致シタイト思ヒマスコトハ、
私ハアチラヘ二度參リマシテ、色々聞キモ
シ、自ラモ調ベタノデアリマスガ、露西亞
ハ國境ニ非常ニ巧妙ナル國境政策ヲ施シテ
居リマス、國境地帶ニ多數ノ民ヲ移シテ居
リマスガ、彼等ニハ物資ノ配給ヲ露西亞デ
一番良クシテ居ル、文化的施設ヲ一番良ク
シマシテ、例ヘバ「ラヂオ」或ハ映畫館、或ハ
「クラブ」トカト云ッタモノヲ非常ニ澤山集
メマシテ、出來ルダケノ優遇ヲ致シテ、出
來ルダケノ文化的惠澤ニ浴サシメマシテ、
所謂王道樂土ハ此處ニアルンダト云フヤウ
ナコトヲ露西亞ハヤッテ居ルノデス、ソシテ
共產主義ナリ、露西亞ノヤッテ居ルコトヲ
滿洲ノ人間ニ國境ヲ隔テヽ、或ハ河ヲ隔テ
テ見セ付ケテ居ル、斯ウ云フコトヲ非常ニ
ヤッテ居ルノデアリマスガ、何レ十分ニ御注
意下スッテ、御對策モアッタラウト思フノデ
スガ、之ニ付キマシテ御注意ヲ願ヒタイト思
ヒマス、滿洲ニ行ッテ見マスト、斯ウ云フコ
トハ滿洲ノ領域內ニ關スル限リ無カッタト
思フノデス、更ニ日本人ハ今マデ、是ハ幸
ダッタカモ知レマセヌガ、國境ニ接シテ居ラ
ナカッタ、島帝國デアリマシテ、餘所ノ强大
國ト國境ヲ接シテ居ラヌ、斯ウ云フ譯デア
ルカラ、國境ノ觀念ガナイ、國內ニ於テモ
惡イコトヲシナケレバ人ノ庭先へ入ッテモ
構ハナイト云フ觀念ガマダアルノデス、ソ
レデ國境守備ノ兵隊、或ハ國境附近ニ住ン
デ居ル人間アタリガ、惡イコトヲシナケレ
バ宜カラウト云フヤウナ意味デ露西亞ノ國
境ニフラット入ル、ソレデ捕マル、捕ッテ見
ルト、向フハ「スパイ」トカ間諜ト云フヤウ
ナ意味デ扱ッテ非常ナ國際問題ガ起ル、斯ウ
云フ譯デ、此「デリケート」ナ日「ソ」關係、「デ
リケート」ナ日支關係ノ際デアリマスカラ、
特ニ國境ニ居ル人間ニ、兵ト云ハズ、住民
ト云ハズ、餘程御注意ヲ拂ッテ戴キマシテ、
無用或ハ不必要ノ摩擦ヲ起サヌヤウニ御努
力願ヒタイト思フノデス
更ニ外務省ニ關係ヲ持ツノデアリマスガ、
今囘國民使節ヲ歐米ニ派遣サレタコトハ意
義モアリ、必要モアリ、價値モアッタト思ヒ
マス、併シサウ云フコトヲ考ヘルニ村キマ
シテ、私ハ此際亞米利加ノ同胞、東ニ三四
千、西ニ十數万居ルデアリマセウガ、アノ
人間ニ付キマシテ、モウ少シ考ヘテ戴キタ
イト云フ切ナル希望ヲ持ッテ居リマス、私
ガ留學シテ居リマシタ際ニ、十月程亞米利
加ニ居リマシテ、是等ノ主ダッタ人間ト話
シタノデアリマスガ、彼等所謂第一世ノ日
本ニ對スル觀念ト云フモノハ非常ナモノデ
アリマシテ、私共ハ寧ロ敬意ヲ表スル、是
ハ國境ヲ越エテ見ナケレバ本當ノ國家ノ有
難味ハ分ラヌト云フ結果カラ來ルノカモ知
レマセヌガ、旣ニ御存ジノ通リ東京ノ震
災或ハ滿洲事變、上海事變、今度ノ日支
事變デモ、彼等ハ應分ト云フヨリモ、非常
ナ努力ヲ致シテ日本ニ金ヲ送ッテ居ル、或
ハ昭和九年頃デアッタカト思ヒマスガ、
度々ノ關西地方ノ風害、水害等ニ對シ
テモ澤山金ヲ送ッテ居ル、彼等ハ母國ノコト
ヲ夢ニモ見ル、ヒドイ人ニナルト、日曜每
ニ態〓自動車ヲ飛バシテ太平洋岸ニ出テ來
テ、此水ハ橫濱ニ續イテ居ルト云フコトヲ
考ヘテ、ソレデ樂シムンダト云フヤウナコト
ヲサヘ聞イタノデアリマシテ、洵ニ眼頭ガ
熱クナルヤウナコトガ度々アッタノデアリ
やく、所ガ彼等ハ一體國家カラ何ノ保護ヲ
受ケテ居ルカト云ヘバ、旅劵一本ダ、所ガ
其旅劵モ中々渡シテ吳レヌ、且又長イ間ア
チラニ進出シテ、非常ナ粒々辛苦ノ結果事
業ヲヤッテ居リマスガ、其事業ガ直グニ排日
ノ犠牲ニナル、例ヘバ「アリゾナ」事件ノ如
キ、非常ナ問題ガ起リマシテモ、外務當
局、出先官憲ハ知ッテ知ラザル如ク、洵ニ御
氣ノ毒ナンデス、何カト云ヘバ、是ハ亞米
利加ダカラ我慢シロ、遠慮シロト云フヤウ
ナコトデアリマシテ、アチラニ居ル同胞ハ
非常ニコボシテ居ル、而シテ彼等ハ、吾々
ハ移民ヂヤナイ、棄民デアル、斯ウ言ッテ居
ル、官憲ニ賴ミマシテモ、ドウモ酒トダ
ンス」ト「ゴルフ」ニ非常ニ御忙シイサウダ
ト云フヤウナコトデ、非常ニ彼等ハ失望致
シテ居ル、之ニ反シマシテ、滿洲移民、是
ハ日露戰爭ノ結果ニ依ルノデアリマスガ、
日本ニハ金ハ送ラヌケレドモ、日本カラ金
ヲ取ッテ彼等ハヤッテ居ル、何カ問題ガアレ
バ、軍隊ヲ送ル、軍艦ヲ送ッテ保護スル、併
シ亞米利加ニ關シテハ何ノコトモシテ吳レ
ヌト云フヤウナコトガアルノデアリマス、
故ニ私ハ優渥ナル皇恩ヲ亞米利加ニ居ル第
一世ニモ及ボシテ戴キタイ、斯ウ云フ希望ヲ
特ッテ居ル者デアリマス、又是ガ相當ニ發展
シマスルナラバ、日本ノ貿易ニモ寄與シ、販
路ノ擴張ニモナリマス、又此間ノ三人ヤ五
人ノ國民使節ヨリモモット意義ノアル活動
ヲ一旦緩急ノ場合ニスルカモ知レマセヌ
更ニモウ一ツハ第一世デアリマスガ、第
二世ハ殆ド頭ノ天邊カラ足ノ先マデ、所謂
「アメリカナイズ」シテ居ルカモ知レマセ
又、ケレドモ心ノ奧底ハヤハリ日本人ノ血
ヲ受ケテ居ル、更ニ最近日本ノ國際的進出
ニ依リマシテ、親父ノ母國デアル日本ニ對
シテ關心ヲ持ッテ居リマス、ソコデ日本語ノ
〓究ヲ始メル、或ハ日本ニ留學スルト云フ
コトガ盛ニナッテ居リマス、此際ニ當リマシ
テ、斯ウ云フ二世ニ適當ナ處置ヲ執ッテ、日
本ヲ傳ヘ、日本精神ヲアチラニ傳ヘサス、
ソレ等ノ者ハ又何レアチラニ歸ッテ發展致
シマスカラ、之ヲ好クシテ置ケバ、我國ノ
貿易ニモ或ハ販路ノ擴張ニモ非常ニ役立
ツ、又國交ノ調整ニモ役ニ立ツト云フヤウ
ナコトデアリマヌカラ、留學生ニ對シテハ
出來ルダケノ便宜ヲ與へルヤウニスル、ゾ
レカラ一番困ッテ居ルノハ、日本ノ相當ナ學
校ハ試驗ガ難カシクテ入レヌ、殊ニ官立學
校ニ入リタイ希望者ガアルケレドモ、形式
ハ入レルコトニナッテ居ルガ、實際ハ試驗ガ
難カシイカラ入レヌ、故ニ留學生ヲ多數呼
ンデ、サウシテ良イ〓育ヲ村ケテ歸ラスト
云フ意味ニ於テ、官學ノ試驗ヲ簡單ニシ
テ、之ヲ開放スルト云フヤウナ方法ヲ執ッテ
戴クナラバ、彼等ハ歸リマシテ、必ズヤ日
本ノ爲ニ、父祖ノ母國トシテ、而シテ亞米
利加ノ國民トシテノ義務ニ反シナイ限リニ
於テ、盡シテ吳レルト思フノデアリマス、
斯樣ナ意味ニ於キマシテ、亞米利加ニ居ル
第一世及ビ其子供達ニ對シテ外務當局ハ從
來ヨリモ一段ト深甚ナル御注意ト御努力ヲ
願ヒタイト思フノデス
次ニ大藏省關係ニ付キマシテ申上ゲタイ
ト思ヒマスガ、大臣ハ色々ナ場合ニ於キマ
シテ計畫經濟ト云フヤウナ御言葉ヲ使ハレ
マシタガ、經濟ノ所謂自律性ハ、普通ノ景
氣變動ニ適用スベキデアリマシテ、事變下
ノ今日適用スベキデナイト思フノデアリマ
スガ故ニ、卽チ今日ノ一切ノ經濟問題或ハ
財政問題ハ、國策カラ、或ハ政治的結果カ
ラ來テ居リマスルカラ、今日ノ色々窮迫シ
テ居ル問題ヲ政治的ニ、國策的ニ考ヘルト
云フコトガ當然デアル、隨テ其結果統制經
濟或ハ計畫經濟ガ生レル、是ハ尤モデアリ
マス、併シ計畫經濟デアルトスルナラバ、
ソレ自體ガ縱ニ國家百年ノ大計ニ沿ウテ居
ラナケレバイカヌト思フノデス、ソレヲ
指導精神トシテ色々ナ經濟立法ガ生レマス
ガ、此經濟立法ガ橫ニ色々ナ具體的事例ニ
公平ニ適應シナケレバイカヌト私ハ思フノ
デス、更ニ政府ハ今マデノ事例ニ依リマス
ト、二年カ三年シタラ迭リマス、政府ノ政
策ヲ遂行スル役人モ罷メタリ、或ハ轉職シ
タリシテ迭ル、併シ國家ハ更迭シナイノデ
ス、又國民ハ生活上ノ幸福ヲ追求シテ、
是モ易ラヌノデス、故ニ二年カ三年ノ職
務ヲ擔當スル政府ノ御都合ヤ、或ハ不聰明
ヤ、或ハ短見ヤ、ソンナモノニ依リマシ
テ、此易ラヌ所ノ國家、易ラヌ所ノ國民ガ
禍サレタラ困ルノデス、禍サルベキデナイ、
故ニ計畫經濟ヲ立テルト云フコトハ非常ニ
難シイ、非常ナル〓究ト非常ナル努力ヲシ
ナケレバ却テ誤マルト思フノデス、第一卑
近ナ話デアリマスガ、計畫經濟デハ例ヘバ
合理化、技術化ト云フコトハ自ラ出テ來ル、
玆ニ失業者ハ必ズ出テ來ル、失業者ハ遞增
シマス、軍需工業ニ重點ヲ置ケバ平時工業
ハ卽チ操短モ行ハレルシ縮小モサレル、茲
ニ又失業者ハ出テ來マス、此失業者ハ國策
ノ犠牲デス、故ニ是ハ國策ヲ以テ救濟シナ
ケレバイカヌト思フ、或ハ會社ガ操短スル、
或ハ縮小スルサウ云フモノニ對シテハ國策
トシテ救濟セナケレバイケマセヌカラ、玆
ニ或ハ租稅ヲ減免スルカドウカ斯ウ云フコ
トモ起ッテ來ルノデアリマス、色々斯ウ云フ
コトノ結果考ヘナケレバナラヌコトハ澤山
アリマセウケレドモ、例ヘバ玆ニ會社ガア
ル或ハ失業シタ者ガ金ヲ借リテ居ル、社債
ガアル、サウ云フ社債ヲ一體ドウスルカ、
社債ノ借換デモサスカ、或ハ借換ヲ債權者
ガ許サヌトスルナラバ支拂猶豫デモスルカ
ト云フヤウナ色々ナ問題ガ出テ來ルト思ヒ
マスガ、更ニ又公債ノコトニ付キマシテ、
先程申サレマシタガ、大藏大臣ハ二百億デ
モ三百億デモゴザレト云フ洵ニ自信ノアル
御言葉ヲ頂戴シマシテ國民ハ安心シタカ知
レヌガ、併シ先程池本委員ガ申サレマシタ
ヤウニ、本年度ノ公債ダケハ三十三億餘リ
デス、旣ニ半分ノ十六億程ハ濟ンデ居ルデ
アリマセウガ、マダアト十六億一千餘リア
ル、更ニ十二年度ノ追加公債ガ出ルカモ知
レヌ、或ハ戰時ノ四十何億ガ出ルカモ知ラ
又、斯ウ云フコトヲ考ヘマスト、此消化ト
云フコトハ非常ニ困難デアラウト思ヒマス
ガ、若シ國民ガ公債ノ消化力ニ堪ヘヌヤウ
ナ場合ニハ、固ヨリ通貨ハ膨脹致シ物價ハ
騰貴スル、生產「コスト」ノ騰貴カラ輸出ノ減
ズルコトハ固ヨリデアリマス、更ニ又物價
騰貴カラシマシテ小預金者トカ、或ハ勞働
者トカ、或ハ俸給生活者、或ハ小企業者ハ
困ルニ決ッテ居ル、更ニ私ハ物價ノ騰貴カラ
此焦眉ノ急デアル狭義國防ノ計畫ト云フコ
トニ非常ニ支障ヲ來スト思フ、更ニ公債ノ
濫發カラ惡性「インフレ」ガ起ルカモ知レマ
セヌガ、斯ウ云フコトニ付テ考ヘテ見マス
ト、ドウシテモ私ハ少クトモ一般會計位ハ
御方針ノ如ク公債漸減ノ方針ヲモット徹底
サレマシテ、卽チ此際財政計畫、租稅ノ根
本的ノ立直シヲサレマシテ、公債ニ依ラナ
クテモヤッテ行ケルト云フヤウナ所謂健全
財政ニ進ンデ戴キタイ、斯ウ云フコトヲ私
希望トシテ持ッテ居リマスガ、詳細具體的ナ
コトハ又ノ機會ニ御尋スル「チヤンス」ガアル
カトモ思ッテ居リマス、更ニ農村デアリマスガ、
農村ガ生產擴張ニ對シテ重要ナ勞力ヲ提供
スル、.或ハ兵ヲ出ス、或ハ國家ガ農村ノ基
礎ニ立ツ、ソンナコトハ申ス迄モアリマセ
ヌガ、其農村ガドウナッテ居ルカト云フコト
ニ付テ私ハ非常ニ憂慮致シテ居リマスガ、
此農村ヲ大イニ救濟致シテ貰フ爲ニハ色々
方策ガアルノデアリマスガ、今農村ガ困ッテ
居ルト云フノハ借金ニ困ッテ居ル、ダカラ此
借金ニ付テ政府ニ於カレマシテハ借換ヲ便
宜ニサスト云フコト、或ハ借換ヲ若シ債權
者ガ許サヌ場合ニハ支拂猶豫デモスルト云
フヤウナコトニ付テ御考慮ヲ願ヒタイ、斯
ウ云フコトヲ非常ニ考ヘザルヲ得ナイノデ
アリマスガ、更ニ時間ノ關係モアリマシテ
詳シク申スノヲ止メマスガ、今ノ農村ノ
困ッテ居ル事情ハ是ダケデアリマセヌ、或ハ
一家ノ支柱ガ應召シタトカ、或ハ又富ト事
業ガ都會ニ集中シタ結果トカ、更ニ又都會
デ失業シタ者、都會ニ吸收サレヌ連中ガ農
村ニ歸ッテ來テ居ル、斯ウ云フ意味ニ於キマ
シテ、非常ニ今農村ガ困ッテ居リマスノデ、
特ニ農村ノ救濟、ソレニ付キマシテハ交付
金ノ增加ト云フヤウナコトモ關係シテ來マ
スガ、何卒此農村ノ困ッテ居ル事情ヲ正視サ
レマシテ、御救濟ヲ願ヒタイト思フ、ソレ
カラ復員問題、是ハ厚生省ニ關係ガアリマ
スガ、私ノ御願致シタイト思ヒマスノハ、
復員後色々ノ補助ヲヤルト云フコトハ是ハ
國家ガヤルベキデアッテ、市町村或ハ個人ノ
義俠心ニ任シテ置クベキヂヤナイト云フコ
トハ申ス迄モナク、國家モヤッテ下サッテ居
リマスガ、併シ此事ハ補助ニシロ救濟ニシ
口、是ハ決シテ慈善事業ヂヤナイノデスカ
ラ、此衝ニ當ル役人共ガ、此護國ノ勇士ニ
對シマシテ恩惠デモ施シテ居ルノダト云フ
ヤウナ意味デナサラヌヤウニ願ヒタイト思
フ、之ヲ一ツ申上ゲテ見タイト思フノデス、
ソレカラマダ一ツ二ツアリマスガ、長期膺
懲ナドト申シマスガ、是ガ私ハ怪シカラヌ
ト思ヒマス、支那風情ヲ捕マヘテ長期トハ
何事カト思フ、是ハ成ベク短期デナケレバ
ナラヌ、又短期ノ方ガ日本ノ國民性ニ適シ
テ居ルト思フノデス、私ハ長期ヲ何故恐レ
ルカト云フト、長期ニナレバ後ガ弱ッテ來ル
ノデス、後ガ弱ッテ來タナラバ、玆ニ列國ノ
干涉ガアルノデス、日〓戰爭ノ後デ三國干
涉ハ何故起ッタカ、非常ニ後ガ弱ッタカ
ラデアル、日露戰爭ノ後デ「ハリマン」ガ
滿鐵ヲ買ヒニ來タ、アレモ後ガ弱ッタカラ
デアル、長期ニナレバ後ガ弱ル、支那ダケナ
ラ幾ラ長期デモ宜シイガ、支那ノ後ニハ質
ノ惡イ列强ガ牙ヲ砥イデ居ル、長期ニナレ
バナル程不利デアルカラ、短期デ膺懲シ得
ル方策ガアルト私ハ確信シテ居リマスガ故
ニ、大イニ御考慮下サイマシテ、短期ニ聖戰
ノ目的ヲ達スルヤウニシテ戴キタイ、ソレガ
國民ノ聲デアル、斯ウ思フノデアリマス
次ニ對支文化事業或ハ防共政策ニ付テ
一言致シタイト思ヒマスガ、是ハ色々ナ
方策モアリマセウガ、併シ私ハ支那ノ言
葉トシマシテ、恆產ナケレバ恆心ナシト
云フコトガアルノデアリマシテ、先ヅ今
ノ家ヲ失ヒ、職ヲ失ッタ支那人ヲ生活的
ニ救濟スル必要ガアル、ソレカラデナクテ
ハ、文化ハ入ルマイト思フ、學校ヲ立テル、
或ハ病院ヲ造ルコトモ結構デアリマセウガ、
先ヅ生活ノ資料ヲ與ヘル、而シテ後ニ文化
的方面ト併行スルノモ宜イデアリマセウ
ガ、サウ云フコトガ必要デアラウト思フ、
ソレカラ防共ニ付キマシテモ、是ハ支那ノ
人間ハ九割マデ無學文盲デアルカラ、共產主
義ナドハ分ラヌト思フ、何故共產主義ニ走
ルカ、ソコニ付テ大イニ考ヘテ貰ヒタイ、
食ヘヌカラデアル、食へヌ理由ハ澤山アリ
マスガ、支那ノ耕作地ハ僅ニ支那ノ土地ノ
一〇%乃至一七%シカアリマセヌガ、其僅カ
ノ土地ニ、而モ非常ニ土地兼併ガ行ハレテ居
リマス、卽チ國民ノ二%位シカナイ大地主ガ、
其耕作反別ノ四五%モ持ッテ居ル、七五%モ占
メテ居ル農民ガ、僅ニ其土地ノ約六〇%シカ
持ッテ居ラヌト云フヤウナ譯デ、非常ニ土地ガ
狹イ、隨テ小作料ガ高イノデス、故ニ共產主
義者アタリガ土地ヲ分ケテヤルトカ、或ハ
年貢米ヲ全廢シテヤルトカ、或ハ借金棒引
ダトカ言ッタラ、飛付クノハ分ッテ居ル、サ
ウ云フ譯デ支那ハ共產主義ガ行ハレテ居ル
カラ、斯ウ云ッタ實體關係、ソレヲ救濟シナ
ケレバ、百ノ防共協定ヲ作ッテモ駄目デス、
故ニサウ云ッタ方面ニ大イニ御努力ヲ願ヒ
タイト思フ
ソレカラ最後ニ國民精神總動員、是ハ非
常ニ御注意ヲ下サッテ居ルヤウデアリマス
ガ、併シマダ徹底シテ居ラヌ、其徹底シテ
居ラヌ證據ハ、此間ノ電力國家管理法案ニ
於テ分ル、或ハ議場ニ於テ、或ハ議會外ニ
於キマシテ、反對ノ聲ガ囂々トシテ居ル、
是ハ一體何ヲ意味スルカ、是ハ精神總動員
ガ徹底シテ居ラヌ證據デアル、國家總動員法
案ガ近ク提出サレヤウトシテ居リマスガ、
ソレニ付テモ院內外ニ於テ色々ナ聲ガアル、
是モ精神總動員ガ徹底シテ居ラヌ證據デア
ル、故ニ此際政府ハ大イニ具體的方策ヲ立
テネバナラヌ、國民精神總動員、ソレハ國
民ニ國家思想ヲ養フコトナノデス、又ソレ
ト同時ニ、國際情勢ニ於テ我國ガドウ云フ
立場ニ在ルカト云フコトヲ徹底サスコト、
ソレナンデス、ソレヲ大ニ爲サッテ戴クナ
ラバ、精神ハ總動員サレルト思ヒマス、サウ
云フ點ニ付キマシテ、一段ノ御努力ヲ願ヒ
タイト思ヒマス、時間ガアリマセヌノデ、
申シ盡セヌノデアリマスガ、又ノ機會ニ御
許ヲ願ヒマシテ、今日ハ以上ノ愚見ヲ申上
ゲマシテ、只今議題ニナリマシタ七ツノ法
律案ニ贊意ヲ表シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=44
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045・一松定吉
○一松委員長 川村委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=45
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046・川村保太郎
○川村委員 本案ハ、モウ既ニ本會議ニ於キ
マシテ豫算ハ滿場一致デ通過シテ居リマス
カラ、殊更此處デ蛇足ヲ加へル必要モナイ
ノデアリマスガ、唯私共ハ一言政府當局ニ
希望シテ置キタイト考へルノデアリマス、
是ハ質問ノ際ニモ色々御尋シタノデスケレ
ドモ、結局私共ハ滿足ナル答辯ヲ得ルコト
ガ出來ナクテ、勿論是ハ贊成ハ致シマスガ、
喜ンデ贊成スル譯ヂヤナイノデス、謂ハヾ
不安ヲ持チナガラ、今日ノ時局ノ情勢上巳
ムヲ得ナイト云フ風ナ意味デ贊成スルノデ
アリマス、此點ハ公債政策ノ操作ニ於テ、
餘程御注意ヲ願ハナケレバ、飛デモナイ問
題ガ起ルノデハナイカト私共ハ考ヘル、先
程カラ他ノ委員諸君カラモ段々御意見ガゴ
ザイマシタヤウニ、本案ハ僅ニ七億圓ノ亦
字公債デアリマスケレドモ、此後ニマダ約
四十億トカ或ハ五十億トカ色々噂サレテ居
リマスガ、事變費ノヤハリ公債ガ出ルト云
フ風ニ傳ヘラレテ居ル、昨年度ノ公債ノ未
發行額モ約十一億圓ト云フ風ニ傳ヘラレテ
居ルノデアリマスガ、サウスルト本年度ニ
於テ餘程澤山ナ赤字公債ガ發行サレルト云
フ風ナコトニナルノデアリマス、大藏大臣
ハ二百億、三百億ノ公債ハ何デモナイト云
フ風ナ樂觀論ヲ唱ヘテ居ラレマスガ、國民
ノ經濟力ト云フモノハ結局生產力ノ問題デ
ハナイカト私共ハ考ヘル、御承知ノ通リ今
日生產力ハ昨年ト比較致シマシテ、餘程擴
充サレテ居ルダラウト思ヒマスガ、果シテ
ソレダケノ金ヲ使ヒ切レルカドウカ、使ヒ
切レナケレバ結局輸入ニ俟ツト云フ風ナコ
トニナルノデハナイカト私共ハ考ヘルノデ
アリマス、サウ云フ風ナ點カラ致シマシテ
干、但シ國際收支ノ問題ハ金產出ノ範圍內
ニ於テト云フ風ニ言ハレテ居ルノデアリマ
シテ、果シテ是ダケノ公債ヲ消化出來ルカド
ウカト云フコトニハ、私共ハ餘程不安ヲ持ッ
テ居ル譯デアリマス、輸出入ノ關係ニ付テ
モ餘程不安ガアルノデアリマスガ、單ニ是
ハ日本バカリヂヤナイ、御承知ノヤウニ北
支ノ方デモ中國聯邦準備銀行ト云フ風ナモ
ノガ出來テ、是モヤハリ日本ノ圓ニ「リン
ク」セシメルト云フ風ナコトニナッテ居リマ
スガ、北支ニ於テモヤハリ事變後ノ恢復ノ
爲ニハ、相當ナ輸入超過ヲ免レナイノデハ
ナイカト私共ハ考ヘル、滿洲國ニ於テモヤ
ハリ輸入超過ヲ免レナイノデハナイカト私
共ハ考ヘル、而モ是等ハヤハリ結局日本ノ
圓デ以テ決濟シナケレバナラヌト云フ風ナ
コトニナルノデアリマス、ソレ等ノ點カラ
致シマシテモ、餘程御注意ヲ願ハナケレバ、
惡性「インフレ」ニ陷リ、恐シイ物價騰貴ヲ惹
起スト云フ風ナコトガ起ラヌトハ限ラヌ
ノデアリマス、現ニ今日物價ハ相當騰貴シ
テ居リマス、此上尙ホ非常ナ物價騰貴ヲ惹
起スルコトニナレバ、國民生活ニ對シテ非常
ナ脅威ヲ與ヘルト云フヤウナコトニモナリ
マスノデ、此點ハ大藏當局ニ於テ特ニ深甚
ナル御注意ヲ願ヒタイト考ヘルノデアリマ
ス
尙ホ對支文化事業ノ問題モゴザイマスガ、
私共ハ單ニ是ダケノ文化事業デ以テ十分ナ
效果ヲ收メラレルトハ到底考ヘテ居リマセ
ヌ、私ハ此支那ノ問題ニ付キマシテハ、單
ニ是ハ外務當局バカリデナシニ、日本國民
全體ガ餘程考へ直サナケレバナラヌ問題デ
ハナイカト考ヘル、御承知ノヤウニ露西亞
ハ外蒙ヲ殆ド自分ノ勢力範圍ニテシ居ル、ケ
レドモ支那ハ露西亞ニ對シテ親露政策ヲ執ッ
テ仲好クヤッテ居ル、英吉利ハ西南方面ヲ段
段自分ノ勢力範圍ニ致シマスケレドモ、此方
モ所謂親英政策ト云フヤウナ譯デ仲好クヤッ
テ居ル所ガ日本ハ何程ノコトモシテ居ナイ
ノニ排日、抗日、侮日ト云フヤウニ、年中
排擊サレテ居ルト云フヤウナ狀態デ、日本
ハ十年一日ノ如ク日支親善、コッチハ日支親
善ト言ッテ居ルケレドモ、向フハ十年一日ノ
如ク排日ヲ唱ヘテ居ル、是ハ日本國民全體
ガ餘程考ヘ直サナケレバナラヌ問題ダト思
フ、武力デ以テ征服スルコトハ容易デアリ
やく、併シ精神ヲ征服スルコトハ容易デナ
イ、私ハ此點デハ單ニ外務當局バカリデナ
シニ、軍部ニモ考ヘテ戴カナクテハナラヌ
ト思ヒマス、日本ノ國民全體モ餘程考ヘテ、
モウ一度建直ス必要ガアルノデハナイカト
私共ハ考ヘル、本當ニ親切ナル隣人トシテ、
支那人ヲ心服セシメルヤウナ方策ヲ執ッテ
行クノデナケレバ、私ハ本當ノ東亞ノ平和
ハ實現出來ナイト考ヘルノデアリマス、サ
ウ云フ點カラ致シマスト、單ナル文化事業
ト云フヤウナモノニ對シテ到底多クノ期待
ヲ持ツコトハ出來ナイノデアリマス、唯是
ハ無イヨリ增ダト云フ意味デ、之ニ對シテ
モ贊成ノ意ヲ表スルニ過ギナイノデアリマ
ス、ドウカソレ等ノ點ニ付テモ十分ニ一ツ
御考慮ヲ願ヒマシテ、是非共一ツ公債政策
ノ方面ニ於テモ、物價騰貴ト云フヤウナコ
トヲ惹起サナイヤウニ十分御注意ヲ願ヒタ
イト云フコトヲ希望致シマシテ、贊成ノ意
見ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=46
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047・一松定吉
○一松委員長 馬場委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=47
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048・馬場元治
○馬場委員 私共ハ只今議題ニナッテ居リ
マス各案ニ對シテ贊成ノ意ヲ表シマス、政
府ハ通常豫算デ二十八億圓、更ニ近ク支那
事變費ノ特別追加豫算デ約五十億バカリノ
御要求ヲ爲サル模樣デアリマス、合セマス
ト約八十億近クニナルノデアッテ、健全財政
論者ニ見セマスルナラバ、恐ラク卒倒スル
ヤウナ巨額ノ數字デアリマス、私共ハ此健
全財政流ノ考ヲ一擲シテ貰ヒタイト考ヘル
ノデアリマス、由來此健全財政論ハ古イ自由
主義ノ根據ニ立ッテ、政府ト國民ハ別々ダ、
豫算ハ政府ノ辻褄ガ合ヒサヘスレバソレデ
宜シイ、斯ウ云ッタヤウナ考ヘ方ナノデアリ
マス、ソコデ增稅ヲヤルニシテモ公債ノ利
息ヲ增稅デ賄フ、ソンナ考ヘ方ハ此際一ツ
止メテ欲イ、オッカナビックリデヤルヤウナ
コトデハ到底此非常時ヲ切拔ケルコトハ來
出ナイト思ヒマス、八十億ノ金ヲ兎ニ角使
フノデアリマス、ソレヲ一億ヤ二億增額致
シマシテモ、賀屋大藏大臣ノ言明ノ通リニ、
我國ノ財政ハ微動ダモシナイ筈デアリマス、
今農村モ因ッテ居ル中小商工業者モ窮乏ノ
底ニアル、思切ッテ一二億ノ金ヲ增額シテ地
方財政調整交付金モオ出シニナルガ宜シイ、
軍事扶助費モ思切ッテ一ツ增額ナサル方ガ
宜シイ、國力ヲ培養スル、民力ノ涵養助長、
斯ウ云ッタコトヲ此際一ツ徹底的ニヤッテ置
カナケレバ、支那ニ對スル長期抗戰ニモド
ウカト思ヒマス、更ニ今日ノ國際情勢ガ、
何時日英、日露ノ大事ガ勃發スルカ分ラナイ、
左樣ナ場合ニ國トシテノ抵抗力、持久力ヲ
維持スルコトハ餘程困難デハナカラウカト
考ヘマス、財政上ノ健全性ヲ維持シヨウト
云フ考カラ色々御心配ノ筋モアルヤウデア
リマスガ、八十億ノ國費ヲ使ヒマスル今日、
少々ノ增額ヲシテモ日本ノ財政經濟ノ力ハ
大丈夫、寧ロ私共ハ此際思切ッタ積極的ナ發
展的ナ經濟ニ飛躍シテ戴キタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、色々申上ゲタイコトモア
リマスガ、同僚諸君カラ詳シイ御議論モアリ
マシタ後デアリマス、本會議モ既ニ豫算ガ
通過ヲ致シタ後デアリマスノデ多クノ議論
ヲ申上ゲマセヌ、現在ノ政府ノヤリ方ハド
ウモ中庸ノ道ヲ行カウト云フノカ、私共ニ
ハ不滿ノ點ガ多イノデアリマス、オッカナ
ビックリデハッキリシナイ、ソレヲモット積極
的ニ勇敢ニオヤリヲ願ヒタイト考ヘルノデ
アリマス、殊ニ一言申上ゲテ置キタイト思
ヒマスノハ、此事變ノ終結シタル後ノ問題
デス、事變終結ノ後ニ凱旋兵士ガ續々歸ッテ
參リマス、其凱旋將兵ノ復員ノ問題、就職
ノ問題、生產工業或ハ商業、農業、日本ノ
國家社會全般ニ亙ッテ大キナ問題ガ玆ニ伏
在シテ居リハシナイカト私ハ考ヘル、此間
ニ處シテ、餘程愼重ニ、餘程綿密ニ御考ヘ
ニナッテ善處シテ戴カナケレバ、私ハ或ハ不
幸ナル結果ヲ見ルヤウナコトニナリハシナ
イカト云フコトヲ頻リニ惧レルノデアリマ
ス、軍事、外交、財政、經濟、有ユル方面
ニ政府ハウント一ツ肚ヲ決メテ御盡力ヲ御
願シタイト思ヒマス、現在ノ我國ノ情勢カ
ラ考ヘマスト、政府バカリニ要求スル譯ニ
行カヌ、官僚モ政黨モ眞面目ニ反省シ、眞
面目ニ協力シテ御奉公致サナケレバナラヌ
ト考ヘルノデアリマス、以上ノコトヲ申上
ゲマシテ、未曾有ノ重大ナル時局デアリマ
スカラ、實ハ不滿ナガラ兎ニ角贊意ヲ表シ
タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=48
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049・一松定吉
○一松委員長 是ニテ昭和十三年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル
法律案外六案ニ對スル討論ハ終局致シマシ
ク、仍テ直チニ採決ニ入リマス、順序トシ
テ各案ニ付キ順次採決ヲ致スノガ本筋デア
リマスガ、各案ニ對シテ別ニ反對ノ御意見
ハナイヤウデアリマスルカラ、各案ヲ一括
シテ採決致シタイト思ヒマス、御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=49
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050・一松定吉
○一松委員長 御異議ナシト認メマス、仍
テ昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案、昭和七年法
律第一號中改正法律案、造幣局東京出張所
廳舍其ノ他ノ新營費ニ關スル法律案、對支
文化事業特別會計法ノ特例ニ關スル法律案、
支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ充ツ
ル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律
案、朝鮮事業公債法中改正法律案、軍ノ需要
充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關スル法律案ニ
付キ御贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=50
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051・一松定吉
○一松委員長 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=51
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052・一松定吉
○一松委員長 只今議題トナリマシタ諸案
ハ滿場一致可決セラレマシタ-本日ハ是
ニテ散會致シマス、次會ハ十六日午前十時
ヲ以テ會議ヲ續ケ、特許法中改正法律案外
三案ノ審議ヲ繼續致シタイト思ヒマス
午後四時二十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311707X01119380214&spkNum=52
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