1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出)
産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出)
漁業法中改正法律案(政府提出)
産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出)
産業組合自治監査法案(政府提出)
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會議
昭和十三年三月二日(水曜日)午前十時二十八分開議
出席委員左の如し
委員長 青山憲三君
理事 高木粂太郎君 理事 喜多壯一郎君
理事 西川貞一君
長野綱良君 成島勇君
大野一造君 濱地文平君
森幸太郎君 今井健彦君
北勝太郎君 山崎釼二君
三木武夫君 河合義一君
同日委員山崎釼二君辭任に付其の補闕として河合義一君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
農林大臣 伯爵 有馬頼寧君
出席政府委員左の如し
大藏參與官 中村三之丞君
大藏省銀行局長 入間野武雄君
專賣局長官 荒井誠一郎君
農林政務次官 高橋守平君
農林參與官 助川啓四郎君
農林省水産局長 三宅發士郎君
農林省經濟更生部長 小平權一君
農林書記官 石黒武重君
樺太廳長官 今村武志君
本日の會議に上りたる議案左の如し
不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出)
産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出)
漁業法中改正法律案(政府提出)
産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出)
産業組合自治監査法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=0
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001・青山憲三
○靑山委員長 只今カラ開會致シマス-
中村參與官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=1
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002・中村三之丞
○中村政府委員 不動產融資及損失補償法
中改正法律案ニ付キマシテ御說明申上ゲマ
ス、不動產融資及損失補償法ハ昭和七年ニ
當時ニ於ケル金融梗塞ノ情勢ニ顧ミ、銀行
ノ有スル不動產固定資產ヲ資金化シテ、其
活動ヲ圓滑ナラシメントスル趣旨ヲ以テ制
定セラレ、其不動產資金ノ融通期間ハ三年
間ト定メラレタノデアリマスガ、昭和十年
ニ至リ銀行ノ不動產固定資產ノ資金化ノ狀
況ニ照ラシ、引續キ本施設ノ存續ヲ必要ト
認メ、融通期間ヲ更ニ三年間延長シ、本年
九月末ヲ以テ終了スルコトト致シタノデア
リマス、本法ニ依ル資金ノ融通高ハ昭和十
二年末マデニ累計五千百餘万圓ニ達シマシ
タガ、尙ホ本法ノ存在自體モ金融界ニ對シ
少カラザル好影響ヲ與ヘタモノト考ヘマス、
而シテ最近ニ於ケル銀行ノ不動產固定資產
ノ狀況ヲ觀マスルニ、近年ニ於ケル經濟界
ノ好況ノ影響ヲ受ケ其整理モ次第ニ進捗シ
テ參ッタノデアリマスガ、之ヲ個々ノ銀行ニ
付テ見マス時ハ、本法ハ尙ホ利用ノ餘地ヲ
存スルモノト認メラレマスノミナラズ、事
變ノ際デモアリマスノデ、本施設ハ當分之
ヲ存續セシメ置クヲ適當ト考ヘルノデアリ
マス、之ガ爲ニハ本法ノ不動產資金ノ融通
期間ヲ延長スル必要ガアルノデアリマス
ガ、其延長ノ期間ハ前囘ノ例モアリ、雨上
三年間トスルヲ適當ト認メマス
次ニ本法ニ依ル資金ノ融通期限ハ、前囘
融通期間延長ノ際ハ特ニ之ヲ延長セズ、現
在尙ホ本法施行ノ日ヨリ十五年以内トセラ
レテ居ルノデアリマスガ、今囘融通期間ヲ
更ニ延長致シマストキハ、現在ノ儘デハ不
動產資金ノ融通期限トシテ短キニ失シマス
ノデ、融通期間ト同樣三年ヲ延長シ、之ヲ
本法施行ノ日ヨリ十八年以內トスルヲ適當
ト認メタ次第デアリマス、宜シク御審議ア
ランコトヲ切望致ス次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=2
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003・青山憲三
○靑山委員長 北勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=3
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004・北勝太郎
○北委員 私ハマダ資料ヲ戴イタバカリデ
質問スル所マデ來テ居ラヌノデスガ、〓論
ダケ御伺シテ置キタイト思ヒマス、第一ニ
御尋シタイコトハ、產業組合特別融資ノ方
デアリマスガ、其總金額ハ昭和十二年度末
ガドレ位ニナッテ居リマスカ、此不動產融資
ト對照シテ御伺ヒスル必要ガアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=4
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005・入間野武雄
○入間野政府委員 產業組合中央金庫ノ特
別融資ニ付キマシテハ、只今手許ニハッキリシ
タ數字ヲ持合セテ居リマセヌガ、大體不動
產融資ト其總額ガ似タモノデアルヤウニ記
憶致シテ居リマス、隨ヒマシテ五千百万圓
カ二百万圓見當ダラウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=5
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006・北勝太郎
○北委員 ソレハ正確ナ數字ヲ得タイノデ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=6
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007・入間野武雄
○入間野政府委員 昭和十二年十一月末マ
デニ貸付總額ガ五千万圓餘ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=7
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008・北勝太郎
○北委員 私ハ此產業組合特融ノ仕事ヲ、
實際ニ自分ノ產業組合デヤッテ居リマスガ、
其結果カラ見マスルト、此特融資金ノ融通
ト云フコトハ、產業組合ガヤリマスト政府
ガ損失ヲ來スヤウナコトハ絕對ニナイモノ
ト、斯ウ云フ工合ニ見ラレテ居リマス、ソ
レハ何故カト云フト、產業組合ガ借入主體
デアルナラバ、其產業組合ガ破產セヌ限リ
ハ損失ヲ補償シテ貰フコトガナイト云フヤ
ウナ結果ニナッテ來ルカラデアリマス、今マ
デ大分長イ間ヤリマシタケレドモ、政府ニ
實際損失ヲ掛ケルト云フコトハナイノデア
リマス、此不動產融資モ同樣デアラウト
思フノデアリマスガ、併シ先程ノ御說明
ニ依リマスト多少好景氣ニナッテ來タ爲
ニ、此融資額ガ少クテ濟ムト云フコトデ
アリマス、併シ餘リニモ此數字ガ少ナ過
ギルヤウニ思ハレテ居ルノデアリマス、
此表ニ依リマスト昭和十二年末ハ三千
二百万圓ソコ〓〓ノヤウデアリマス、北海
道ニ於ケル狀況ナドヲ申シマスト、隨分農家
ガ拓殖銀行カラ金ヲ借リテ、ソレヲ支拂フコ
トガ出來ナイ、所謂銀行カラ見レバ固定資
金ニナッテ居ルモノガ隨分アル筈デアルト
思フノデアリマス、是等ニ對シテ何等之ヲ
適用シテ行ッテ居リマセヌガ爲ニ、ドン〓〓
ト此抵當權ノ執行ヲヤッテ居リマス、實ニヒ
ドイコトヲヤッテ居ルノデアリマシテ、借リ
タ農民ハ實際始終泣カサレテ居ルノデアリ
やく、恰モ產業組合ガ此特融資金ヲヤリマ
スヤウニ、銀行ガ此特融資金ヲヤッテ吳レマ
スナラバアヽ云フコトナシニ濟ムノダト思
フノデアリマスガ、此點ニ付キマシテ當局
ハ此不動產融資ニ付テノ、一ツノ何ト言ヒ
マスカ、取締或ハ指導ト云フヤウナモノガ、
銀行ニ對シテ缺ケテ居ルノデハナカラウカ、
此不動產融資ノ主ナル理由ハサウ云フモノ
ヲ救フ爲ニ出來タモノト思ヒマスガ、此點
ニ付テ當局ノ御考ヲ承ッテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=8
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009・中村三之丞
○中村政府委員 此不動產融資ハ御承知ノ
如ク昭和七年ノ農村經濟ガ深刻ナル不景氣
ニ見舞ハレマシタ時ニ、慥カ六十二囘ノ臨
時議會ニ於テ制定セラレタモノデゴザイマ
ス、其後昭和十年ニ改訂ヲセラレテ今日ニ
及ンデ居ルノデゴザイマスガ、只今北サン
ノ仰セノ如ク出テ居リマス金ハ、昭和十二
年末ニ於テ五千百餘万圓デ、現在高ハ三千
餘万圓デゴザイマス、卒然之ヲ見マスルト、
如何ニモ金額ガ少イヤウニ思ハレマスルガ、
ソレハ此法律ガ存在ヲシテ居ルコト自體ニ
於テ一種ノ安定線トシテ非常ナ效果ヲ收メ
テ居ルコトハ認メナケレバナラナイト思フ
ノデゴザイマス、本法制定以來不動產ノ値
上リモゴザイマス、又近年農村方面ニ於テ
私ハ樂觀ハ致シマセヌガ、比較的經濟モ順
調ニ進ンデ居リマス、又銀行自體ニ於キマ
シテモ、預金ガ增加ヲシ、不動產ノ値上リ
等ニ因ル其銀行ノ自然的整理ト云フコトモ
出來テ居リマスノデ、旁、金額ノ如何ハ別ト
致シマシテ、大體ニ於テ相當ナ成績ヲ示シ
テ居ルト思フノデゴザイマス、就キマシテ
ハ此金額ガ少イノハ所謂不動產ノ鑑定價格
ガ嚴重デアルノデハナイカ、或ハ又仰セノ
如ク此取扱ノ手續ニ付テ煩瑣デアル、迅速
ヲ缺クト云フ非難モアルヤウデゴザイマス
ルガ、是等ニ付キマシテハ、銀行ヲ監督致
シマシテ、斯ル弊害ノナイヤウニ從來注意
ヲ致シテ參ッタ次第デゴザイマシテ、本法制
定以來此目的ハ相當達セラレテ居ルノデゴ
ザイマスルガ、尙ホ個々ノ銀行ニ付キマシ
テ、此本法存續ノ必要モアリ、目下支那事
變中デゴザイマスルノデ、經濟界ニ於テ如
何ナル事變突發スルヤモ知レナイト云フヤ
ウナ、萬一ヲ慮カリマシテ、尙ホ今囘本法
ヲ存續シテ萬遺算ナキヲ期シタイ、斯ウ云
フ考デアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=9
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010・北勝太郎
○北委員 此不動產融資ハ實際ノ目的ガ銀
行ノ救濟ニアルノデアリマスカ、或ハ又不
動產ヲ擔保ニシテ借入レタルモノヲ救濟シ
ヨウト云フコトガ目的デアルノデアリマス
カ、其見解ガ私ハ分ッテ居ラヌ、借入レタモ
ノヲ保護救濟スルト云フ意味デアリマスル
ナラバマダ〓〓此金ニ餘裕ガアルヤウナ筈
ハナイ、コンナ小サイ金額デ終ルベキモノ
デハナイト私ハ思フノデアリマス、先程申
シマシタ北海道ノ實例カラ言ヒマシテモ、
ドウモ銀行ガ唯自己保全ノミヲ考ヘテ居リ
マシテ、ソレデ擔保物ノ價格ガ上ッテ來レ
バ、其上ッテ來タ時ニ、農家ガ到底古イ借金ガ
拂ヘヌノハ分リ切ッテ居リマスカラ、其好機ニ
乘ジマシテ、盛ニソレヲ競賣等ノ處分ヲシテ居
ルノデアリマス、若シ此銀行救濟ノミニアラズ
シテ、不動產抵當ニ依ッテ借入レタモノヲ救濟
スルト云フコトデアリマスナラバ、現在北
海道ニ起ッテ居リマスヤウナ土地ノ抵當權處
分ト云フヤウナ問題ハ、土地ノ値段ガ上レ
バ上ル程返濟ノ餘地ガ出テ來ル譯デアリマ
スカラ、ソコデアヽ云フヤウナ問題ハ起ラ
ズニ濟ムノヂヤナカラウカ、而モ低利ニシ
テ年限ノ長イモノニ借換ヘサスト云フコト
ガ出來マスルナラバ、是ハ銀行モ救ハレル
シ、同時ニ又土地ヲ抵當トシテ提供シタ者
モ救ハレ、農業ヲ安全ニ繼續シテ行クコト
ガ出來ルノダ、斯ウ思フノデアリマス、此
見解、單ニ銀行ノミヲ救フ積リデアルノデ
アリマスカ、ソレトモ亦借リテ居ル人ニ對
シテモ救濟ノ意味デアリマスカ、其處ヲハッ
キリ承ッテ置キタイト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=10
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011・中村三之丞
○中村政府委員 本法ハ其第一條ニ示サレ
テ居リマス如ク、又昭和七年ニ此制定ノ趣旨
ヲ當時ノ大藏當局ヨリ說明致シマシタ如ク、
當時未曾有ノ農村經濟其他ノ深刻ナル不景
氣ニ際シマシテ、一般ノ金融疏通ノ爲デゴ
ザイマシテ、所謂凍結セル不動產固定資產
ヲ資金化シテ、金融ノ圓滑ヲ圖ルト云フノ
ガ其趣旨デアッタノデゴザイマス、隨テ直接
的ニ銀行ニ對シテ固定不動產ヲ資金化スル
ト云フコトガ、同時ニ肩替リセラレルコト
モアルノデアリマスカラ、是亦個人ニモ其
好影響ヲ及ボスノデゴザイマス、隨ヒマシテ
本法ハ農村負債整理トハ其本質ニ於テ多少
異ナル所ガアルノハ、已ムヲ得ナイコトデ
アラウト存ジマス、尙ホ北海道ニ於ケル御
尋ノ事柄ニ付キマシテハ銀行局長ヨリ御答
申上ゲタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=11
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012・入間野武雄
○入間野政府委員 只今中村政府委員カラ
申上ゲマシタヤウニ、本法ノ目的ハ昭和七
年頃ニ於ケル金融界ノ梗塞ヲ打開シ、金融
ノ圓滑ヲ圖ルト云フコトガ、其主タル目的
デアッタノデアリマス、隨ヒマシテ北海道ニ
於テハ普通銀行若クハ貯蓄銀行ガ借主ニナ
リマシテ、北海道拓殖銀行ガ預金部ノ金ヲ
借リテ之ニ融通スルト云フ形ニナッテ居リ
マス、御示シノ場合ハ北海道拓殖銀行ニ屬
スルモノガアルヤウニ先程承リマシタガ、
北海道拓殖銀行ハ自己ノ固定不動產貸シヲ
資金化スル途ガナイノデアリマス、普通銀
行及ビ貯蓄銀行ノ不動產貸シヲ資金化シ、
金融ノ梗塞ヲ打開シ、金融ノ圓滑ヲ圖ルト
云フノガ此法律ノ趣旨デゴザイマス、左樣
御諒承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=12
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013・北勝太郎
○北委員 是デ濟ミマシタガ、尙ホ此問題
以外デスガ、本日大藏省關係ヲ濟マサレル
ト云フコトデアリマスナラバ、大藏省ニ關
係ノアル問題ヲ御伺シタイト思ヒマスガ、
マダ議題ノ御說明ガアリマセヌ、產業組合
自治監査法ニ關聯シテ大藏省ニ御伺シタイ
コトガアルノデアリマス、今ノ機會デハ工
合ガ惡イカト思ヒマスガ、如何デゴザイマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=13
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014・青山憲三
○靑山委員長 丁度君ノ要求シテ居リマシ
タ樺太廳ノ政府委員ガオ出デニナリマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=14
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015・北勝太郎
○北委員 ソレモ同樣產業組合自治監査法
ニ關係シテノ質問デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=15
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016・喜多壯一郎
○喜多委員 委員長、農林省政府委員ヲ御
呼ビニナリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=16
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017・青山憲三
○靑山委員長 サウ致シマセウ-不動產
融資ノ案ニ付テドナタモ御質問アリマセヌ
カ
〔「中々農林省ノ政府委員ノ方ハ見エサ
ウモアリマセヌカラ、休憩シテ午後ニ
廻サレンコトヲ望ミマス」ト呼フ者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=17
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018・青山憲三
○靑山委員長 ソレデハ是デ休憩致シマシ
テ、午後一時カラ再開致シマス
午前十時五十分休憩
午後一時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=18
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019・青山憲三
○靑山委員長 只今カラ開會致シマス、產
業組合中央金庫法中改正法律案、產業組合
中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律
案、產業組合自治監査法案、漁業法中改正
法律案、之ヲ議題ト致シマシテ政府ノ說明
ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=19
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020・高橋守平
○高橋政府委員 提出理由ヲ御說明申上ゲ
マス、先ヅ產業組合中央金庫法中改正法律
案ノ提案理由ヲ御說明申上ゲマス、產業組
合中央金庫ハ設立以來、產業組合金融ノ中
樞機關トシテ、其使命ノ達成ニ努メテ居ル
次第デアリマスガ、他面漁村金融ニ付キマ
シテハ遺憾ノ點多ク、昭和八年ノ漁業法ノ
改正ニ依リ、漁業組合ハ各種ノ經濟施設ヲ
行フコトヲ得ルコトトナッタノデアリマス
ガ、其中樞的金融機關ノ備ハラナイ爲メ、
其活動上不十分ナ所ガアリマスノデ、今囘
同金庫ノ資本金ヲ增加致シマシテ、漁業組
合及ビ同聯合會ノ之ニ對スル加入ノ途ヲ開
キマスルト共ニ、產業組合中央金庫ノ業務
ノ狀況カラ見マシテ、現行法上種々不便ノ
點ガアリマスノデ、是等ニ付キ必要ナル改
正ヲ加ヘ、尙ホ政府ノ出資ニ對シマシテハ、
從來剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セザルコ
トニ相成ッテ居リマスガ、其期間ハ近ク滿了
致シマスノデ、金庫ノ實情及ビ漁業組合ノ
新ニ加ハルコト等ノ事情ニ鑑ミマシテ、今
後ノ配當ニ關シ適當ナル改正ヲ行ヒ、其活
動ヲ促進サセル必要ガアリマスノデ、以上
ノ諸點ニ關シ、玆ニ產業組合中央金庫法中
改正法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス
次ニ今囘ノ改正事項ノ〓要ヲ述べマスレ
バ第一ニ漁業組合聯合會及ビ漁業協同組
合ヲ、產業組合中央金庫ニ加入セシメ得ル
コトトシタノデアリマシテ、產業組合中央
金庫ノ各種ノ業務ハ、總テ產業組合聯合會
及ビ產業組合ト同樣ニ、漁業組合聯合會及
ビ漁業協同組合ニモ及ボシ、漁業組合聯合
會ニハ產業組合聯合會ト同樣ニ、產業組合
中央金庫ノ業務ヲ代理セシメ得ルコトニ致
シタノデアリマス、從來ニ於キマシテモ產
業組合中央金庫ヨリ、產業組合ヲ通ジテ約
五百万圓程ノ資金ガ、漁村方面ニ融通セラ
レテ居タノデアリマスガ、元來漁業組合ヲ
基礎トスル系統的漁業金融機關ノ樹立ハ、
水產界多年ノ要望デアリマシテ、此改正ニ
依リマシテ漁業法中改正ト相俟チ、其要望
ニ副フコトト相成ル次第デアリマシテ、漁
村ノ實情ニ應ズルモノト信ズルノデアリマ
ス、第二ニ產業組合中央金庫ノ資本金ヲ五
百万圓增加スルコトト致シタノデアリマ
ス、是ハ只今申上ゲマシタ通リ、漁業組合
聯合會及ビ漁業協同組合ヲ、產業組合中央
金庫ニ加入セシメマシテ、同金庫ヲシテ從
來ノ產業組合金融ノミナラズ、漁業組合金
融ニモ活動セシムルコトト致シマシタノ
デ、其爲ニ要スル資本金ノ增加デアリマ
ス、而シテ其中二百五十万圓ヲ限リ政府ガ
出資スルコトト致シマシタ、第三ニ評議員
ノ定員ニ關シマシテ、現在二十名以內トア
リマスノヲ、三十名以內ニ增加致スコトト
シタノデアリマス、是ハ產業組合中央金庫
ノ業務ノ進展ニ伴ヒマシテ、更ニ各方面ノ
知識ヲ集メマスルト共ニ、漁業組合關係者
ヨリモ其代表者ヲ出シマシテ、其業務ノ圓
滑ナル遂行ヲ期センガ爲メデアリマス、第
四ニ產業組合中央金庫ノ年賦償還貸付
額ノ制限、卽チ拂込出資金及ビ產業債劵
ノ發行額ノ二分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ナイ
ト云フ現行法ノ規定ハ、產業組合中央
金庫ガ政府資金ノ融通ヲ爲ス場合ニ於キ
マツテハ、之ヲ適用シナイコトニ致シタノ
デアリマス、近時農山漁村ノ不況ニ伴ヒ、
各種ノ政府資金ノ融通ニ依リマシテ、年賦
償還貸付ガ增加ノ傾向ヲ示シマシタ結果、
其貸付餘力ガ非常ニ減少致シマシタノデ、
政府資金ノ如ク確實ナル資源ニ依ルモノデ、
且ツ政府ノ政策遂行上必要ナルモノニ付キ
マシテハ、右制限規定ヲ適用シナイコトニ
致シマシテ、政府資金ノ圓滑ナル融通ヲ爲
シ得ルコトト致シタノデマリマス、第五ニ產
業組合中央金庫ノ餘裕金運用ヲ便ナラシメ
マス爲メ、運用ノ方法ヲ擴張致シマシテ、
現在ハ國債證劵地方債證劵、又ハ主務大臣
ノ認可ヲ受ケマシタル有價證劵ノ買入シカ
出來ナイノデアリマスガ、更ニ進ンデ是ガ
應募又ハ引受ヲモ爲シ得ルコトニ致シマシ
タコト、及ビ產業組合聯合會、產業組合、
漁業組合聯合會又ハ漁業組合ノ發達ヲ圖ル
爲メ必要ナル施設ヲ行フ法人ニ對シ、主務
大臣ノ認可ヲ受ケ短期貸付ヲ爲スコトヲ得
ルコトト致シタノデアリマス、第六ニ產業
組合中央金庫ノ事業年度ハ、現在六箇月ニ
ナッテ居ルノデアリマスガ、組合金融ノ近狀
カラ見マシテモ、又一般ノ產業組合ノ事業
年度トノ關係上モ、金庫ノ事業年度モ、產業
組合ノ例ニ準ズルノガ適當デアルト認メラ
レマスノデ、從來ノ之ニ關スル規定ヲ削除
シ、產業組合法ヲ準用スルコトト致シマシ
テ、原則トシテ事業年度ハ一箇年トシ、但
シ定款ニ依リ六箇月ト爲スコトヲ得ルコト
ト致シタノデアリマス、第七ニ產業組合中
央金庫ノ事業年度ヲ只今申述ベマシタ通リ、
一箇年又ハ六箇月ト致シマスルガ、貸付金
利子ノ最高步合ハ、必ズ六箇月每ニ定メル
コトガ必要デアルト認メラレマスノデ、從
來每事業年度ノ初メニ於テ定ムル規定デア
リマスモノヲ、事業年度ニ從ヒ六箇月每ニ
主務大臣ノ認可ヲ受ケテ定メシメ、其期間
內ニ之ヲ變更セントスル時モ亦同樣ニ、主務
大臣ノ認可ヲ受ケシメルコトニ致シタノデ
アリマス、第八ニ產業組合中央金庫ハ創立
初期ヨリ十五箇年間政府ノ出資ニ對シ、剩
餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要シナカッタノデ
アリマスガ、其期間ガ近ク滿了致スノデア
リマス、現在ノ產業組合中央金庫ノ業績內
容及ビ漁業組合ノ新ニ加入スルコト等ニ伴
フ今後ノ業務等ヨリ見マシテ、政府以外ノ
者ノ出資ニ對スル配當ト同率ノ配當ヲ、政
府ノ出資ニ對シテモ爲サシムルコトハ、妥
當デアリマセヌシ、產業組合中央金庫ノ基
礎ヲ鞏固ナラシムル所以デモアリマセヌノ
デ、其間ニ區別ヲ設ケマシテ、政府以外ノ
者ノ出資ニ對スル配當ガ一定率以下ナル場
合ニハ、政府ノ出資ニ對スル配當ヲ制限ス
ルコトト致シマシテ、今後一層農山漁村ノ
金融ニ活動セシメルコトト致シタノデアリ
マス、增加致シマスル政府ノ出資二百五十万
圓ニ付テモ、勿論同樣ニ取扱フノデアリマス
次ニ漁業法ノ改正ニ付キ御說明申上ゲタ
イト存ジマス、漁業組合ハ現在其數約四
千ニ及ビ、昭和八年ノ漁業法改正ニ依リ其
組織ヲ整備シ、漁村ニ於ケル協同ノ經濟機
關トシテ、漁村經濟更生上重要ナル役割ヲ
演ジ來ッタノデアリマスガ、金融機關トシテ
ハ其機能上缺クル所ガアリマシテ、漁村金
融ノ改善上遺憾トスル所ガ少クナイノデ
アリマス、仍テ先ニ御說明申上ゲマシ
タ通リ、漁業組合聯合會及ビ漁業協同組合
ヲ、產業組合中央金庫ニ加入セシムルト
共ニ、漁業組合聯合會及ビ漁業協同組合
ニ對シ、貯金ノ受入ニ關スル施設ヲ認
ムルコトトシ、漁村ニ於ケル相互金融ノ途
ヲ開キ、漁業組合ニ依ル共同事業等ノ促進
ヲ圖ラントシタノデアリマス、尙ホ漁業組
合聯合會ノ活動ヲ圖ル爲メ二三ノ事項ニ付
キ改正セントスルモノデアリマス、改正事
項ノ主ナル點ヲ申上ゲマスト、第一ニ漁業
協同組合ニ對シ組合員ノ貯金ノ受入ニ關ス
ル施設ヲ認ムルト共ニ、併セテ加入豫約貯
金、家族貯金ノ受入ヲ爲スコトヲ認メ、又
漁業組合ノ系統機關デアル漁業組合聯合會
ニ對シ、所屬組合又ハ所屬聯合會ノ貯金ノ
受入ヲ爲スコトヲ認メルコトト致シタノデ
アリマス
第二ニ日本勸業銀行、日本興業銀行、北
海道拓殖銀行、農工銀行又ハ產業組合中央
金庫ガ漁業組合及ビ漁業組合聯合會ニ對シ
資金ノ供給ヲ爲スニ際シ、自己ノ信用ノミ
ニテハ資金ノ借入不可能ノ場合ニ漁業組合
聯合會ヲシテ保證ヲ爲スコトヲ得シメ、其
資金供給ノ圓滑ヲ圖ラシムルコトト致シタ
ノデアリマス
第三ニ漁業組合又ハ漁業組合聯合會ガ水
產物ヲ遠隔地ニ共同出荷スルコトガ漸次增
加シテ參リマスル爲、道府縣ヲ區域トスル
漁業組合聯合會ガ所屬ノ組合又ハ聯合會ニ
對シ手形ノ割引ヲ爲スコトヲ認メ、代金決
濟ノ敏速、圓滑ヲ圖ルコトト致シタノデア
リマス
次ニ產業組合中央金庫特別融通及ビ損失
補償法中改正法律案提案ノ理由ヲ御說明申
上ゲマス、本法ハ御承知ノ如ク昭和七年當時
ニ於ケル經濟界ノ異常ナル不況ノ爲メ、農
村金融機關トシテ重要ナル地位ヲ占メテ居
リマスル信用組合及ビ信用組合聯合會ノ貸
付金ガ甚ダシク固定致シマシタノデ、產業
組合中央金庫ヲシテ政府ノ損失補償ノ下
ニ、所屬信用組合聯合會又ハ所屬信用組合
ニ對シマシテ特別融通ヲ爲サシメ、其固定セ
ル債權ヲ資金化シテ金融ノ疏通ヲ圖ルコト
ヲ目的トシテ制定サレタモノデアリマス、
而シテ本法ハ昭和七年十月一日ニ施行セラ
レマシテカラ昭和十二年十二月末ニ至リマ
ス迄ノ間ニ中央金庫カラ旣ニ信用組合及ビ
信用組合聯合會ニ對シマシテ貸付致シマシ
タ金額ハ五千七十万圓餘ニ達シ相當ノ成績
ヲ擧ゲテ居ルノデアリマスガ、本法ニ依ル
特別融通期間ハ昭和十年ノ法律改正ニ依リ
三年ヨリ六年ニ延長サレマシテ、本年九月
末ヲ以テ終了スルコトニナッテ居ルノデア
リマス、然ルニ全國ノ信用組合ノ實情ヲ見
マスルト、尙ホ相當ノ固定債權ヲ有シ、是ガ
資金化ヲ要スルモノガ少クナイノデアリマ
シテ、此際融通期間ヲ延長シ、本制度ニ依リ
マシテ事變下ニ於ケル組合金融ノ疏通ニ努
メルコトガ極メテ必要デアルト思フノデア
リマス、此故ニ組合金融ノ現況、其整理更
生ニ要スベキ時日等ヲ考慮致シマシテ、特
別融通資金ノ融通期間及ビ融通期限ヲ尙ホ
三箇年延長スルコトト致シタノデアリマス
最後ニ產業組合自治監査法案提出理由ヲ
御說明致シマス、本法案ハ第七十囘帝國議會
ニ提出致シマシテ、貴族院ニ於キマシテハ
可決セラレ、衆議院ニ於キマシテハ委員會ニ
附託セラレタ儘、衆議院ノ解散ノ爲メ、不成
立ニ終ッタノデアリマスガ、產業組合ノ現狀
ニ鑑ミマシテ、玆ニ本議會ニ重ネテ之ヲ提
案致シマシタ次第デアリマス、產業組合ハ
其數約一万五千ニ達シ、其事業モ亦逐年進
展致シテ參リ、中小產業殊ニ農山漁村ノ經濟
更生ノ中樞機關トシテ缺クベカラザル組織
ト相成ッテ居ルノデアリマス、隨テ產業組合
ヲシテ堅實ナル發達ヲ爲サシムル爲メ、是ガ
指導監督ヲ周到ニスルノ要益〓緊切ナルモノ
ガアルノデアリマス、是ガ爲ニハ行政官廳
ノ檢査機能ノ充實ヲ要スルコト勿論デア
リマスガ、之ト竝ンデ產業組合自身ノ自治
監査ノ厲行ヲ期スルヲ肝要ト認メマシテ、
是ガ制度ヲ確立致シマスル爲メ、玆ニ本案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス
本法案ノ主要ナル點ヲ申述べマスレバ、產
業組合ヲシテ產業組合監査聯合會ナル法人ヲ
組織セシメ、之ニ產業組合監査員ヲ設置セシ
ムルコトトシ、右ノ監査員ニハ組合ノ事務所
等ニ臨ミ諸般ノ調査ヲ爲シテ監査ヲ行フ權能
ヲ賦與スルコトト致シマシタコト、主務大臣
必要アリト認メマシタ時ハ、產業組合ニ對シ
產業組合監査聯合會ニ加入スベキコトヲ命
ジ得ルコトニ致シマシタコト、監査員ハ其
職責ニ照シ、監査ニ關スル技能ヲ有スル者
ノ中ヨリ選任スルコトトシ、其選任、解任
等ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受ケシメマス
ト共ニ服務ニ對シマシテモ十分ノ監督ヲ行フ
コトト致シマシタコト、及ビ本制度ハ自治
監査デハアリマスガ、其運用ノ適正圓滑ヲ
期スル爲メ、行政官廳ノ監督ノ下ニ行ハシ
ムルヲ必要ト認メ之ニ關スル規定ヲ設ケタ
コト等デアリマス
以上ガ四法案ヲ提出致シマシタ理由ノ大
要デアリマス、何卒御審議ノ上御可決アラ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=20
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021・青山憲三
○靑山委員長 北君、質疑ノ通〓ハ數名ア
ルノデゴザイマスルガ、政府委員ノ都合ニ
依ッテ、北君ニ特ニ發言ヲ許ス次第デゴザイ
マスカラ、ドウカ簡單ニ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=21
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022・北勝太郎
○北委員 產業組合自治監督法案ハ其字句
ノ示ス通リ、組合自身ノ自治的精神ニ依ッテ、
所謂組合ノ自肅自戒ノ精神ニ依ッテ行ハルヽ
ノデナケレバナラヌコトハ申スマデモナ
イノデアリマス、斯カル意味ノ自治監査ハ
寧ロ產業組合側ノ望ム所デアリマスルガ、
唯本法案ノ制定ニ當リマシテ、特ニ注意ヲ
要シマスルコトハ、動モスレバ此事ガ妙ナ
響キ方ヲスルコトデアリマス、恰モ當今ハ
世間ニ於キマシテ所謂反產的言動ガ頻リニ
行ハレル時デアリマス、其爲ニ本法ノ制定
ヲ何カ政府ガ產業組合壓迫ノ意圖デモアル
カノ如キ曲解ヲ生ミマシテ、產業組合壓迫
時代ガ來タトデモ云ッタヤウナ一種ノ錯覺
ニ陷リマシテ、サウシタ意味ノコトガ萬一
ニモ働キ、且ツ是ガ世間ニ植付ケラレルコ
トガアッテハナラヌト思フノデアリマス、近
頃反產ノ聲ガ擡頭シマシタ爲ニ政府ノ役人
マデガ世間ニ遠慮勝チニナリ、何時トハナ
シニ之ニ感染シテ、遂ニ其調子ニ乘ッテ、產
業組合ノ正當ノ事業ニ迄モ干渉シ、或ハ之
ニ彈壓ヲ加ヘルト云フヤウナ實例ガ少クナ
イノデアリマス、最近私ノ手許ニ屆キマシ
タモノデ其著シイモノハ、北海道ニ於ケル
產業組合ノ鹽小賣取消ノ問題、ソレハ北海
道十勝支廳管內ノ芽室村ノ產業組合、御影
村ノ產業組合、後志支廳管內ニ於ケル喜茂
別村ノ產業組合ニ對シテ、當局ハ從來カラ
鹽ノ小賣ヲ許シテ居ッタノデアリマスガ、其
認可ノ取消ヲサレタノデアリマス、函館地
方專賣局ノ認可方針ヲ仄聞シマスト、同局
デハ地方ノ鹽小賣商人ノ請託ヲ容レマシテ、
爾後產業組合ニ對シテハ機會アル每ニ認可
ヲ取消シ、再ビ認可シナイ方針ダト聞クノ
デアリマス、殊ニ此喜茂別ノ產業組合ノ如
キハ旣ニ購買シテアッタ鹽ノ手持品ヲ、是
ガ期限ガ切レタカラト云フノデ其配給マデ
モ禁止シタ、斯ウ云フヤウナ當局ノ處置ハ
洵ニ不當ニ產業組合ノ事業ヲ壓迫セントス
ルモノデアルコトハ明カデアリマス、洵ニ
寒心ニ堪ヘヌモノガアルト思フノデアリマ
ス、此問題ニ對シマシテ大藏當局ハソンナ
ヤウナ方針ヲ執ッテ居ラレルカドウカ、ソレ
ヲ一ツ伺ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=22
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023・荒井誠一郎
○荒井政府委員 只今御尋ノアリマシタ鹽
小賣人ヲ產業組合ニ指定スル方針ニ付テ御
答ヘ致シマス、御承知ノ通リ今マデ鹽ノ小
賣人ハ產業組合ニモ指定シテ參ッタノデアリ
マシテ、殊ニ多量ノ鹽ヲ扱ヒマスル場合、
例ヘバ味噌、醤油等ニ使フ、或ハ漁業ノ方
ニ使フト云フヤウナ場合ニハ、產業組合ガ
之ヲ扱ヒマスコトガ便宜ナ場合ガ多イノデ
アリマス、サウ云フ場合ニハ指定シテ參ッタ
ノデアリマス、只今御述ベニナリマシタ北
海道ニ於ケル具體的ノ事例タル小賣人ノ指
定取消ニ付キマシテハ、私ハマダ能ク存ジ
テ居リマセヌ、能ク狀況ヲ調査致シマシテ、
別ニ產業組合ヲ壓迫スルト云フヤウナコト
ハナイト思ヒマスガ、斯ノ如キコトガアリ
マスレバ能ク注意ヲ致シタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=23
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024・北勝太郎
○北委員 ソレデハ其御調査ヲ願ッタ後デ
詳細ニ承ルコトニ致シマス、其次ハ樺太廳
ノ產業組合壓迫ノ問題デアリマス、私ハ此
問題ガ昨年新聞ノ噂ニ上リマシタ際ニ、萬
一ニモソンナ事ガアッテハイカヌト思ヒマ
シテ、北海道カラ態〓樺太マデ視察ニ出掛ケ
テ行ッタノデアリマス、樺太ハ御承知ノヤウ
ニ寒イ所デアリマシテ、普通作物ヲ耕作致ス
ダケデハ農業經營ガ成立タヌノデアリマス、
ソコデ所謂主畜農業、牛ヲ主トシタ酪農業
ガ中心ニナルベキデアリマス、所ガ其酪農製
品ノ販路ノ見透シガ付キ、前途有望視セラ
レル矢先ニ於キマシテ、樺太廳モ近頃ノ官
廳ノ間ノ流行リニ見エマス所ノ高級ノ古手
役人ノ會社入リガ行ハレマシテ、同時ニ全
島ノ製酪事業竝ニ製品ノ販賣事業ヲ擧ゲテ
明治製糖會社ニ、事モアラウニ二十五箇年
ト云フ長イ間ニ亙ッテ、一切ノ權利ヲ讓渡ス
ル方針ヲ立テタノデアリマス、爾來島内ノ
產業組合ヲシテ植民地ノ役人ノ威光ヲ以ッテ
無理ヤリニ之ヲ明治製糖會社ノ特約組合化
セシメツヽアルノデアリマス、所ガ樺太農
民ノ中ニモ目明キガ居リマシテ、之ニ反對
ヲ致シマシテ、酪農經營ノ最後ノ仕上ゲノ
一番大事ナ仕事ヲ營利資本家ニ握ラセルト
云フコトハ、所謂農業經營ノ生命線ヲ失フ
モノダ、首ツ玉ヲ資本家ニ抑ヘラレタノデ
ハイカヌト云フノデ、所謂自主的農場建設
ノ主張者等ハ之ニ應ジナイ、然ルニ樺太廳
ハ是等反對者タル組合側ニ對シテハ有ユル
壓迫、有ユル彈壓的態度ヲ以テ之ニ臨ミマ
シテ、島農民ヲシテ官廳ニ對シテ御無理御
尤ノ態度ニ出ヅルノ巳ムナキニ至ラシメテ
居ルノデアリマス、第一樺太廳ノ官吏ハ廳
內ノ高級古手ノ役人ガ會社ニ入リマシタ爲
ニ、何處マデガ會社ノ仕事デアルカ、樺太
廳ノ領分デアルカ、見境へモ付イテ居ラヌト
云フノカ、其官吏ガ會社ノ重役ニナッテカラ
尙ホ二箇年間モ樺太廳ノ元ノ官舍ノ中ニ置
イテ、其處カラ會社ニ通勤サシテ居ル、此一
事ヲ以テシテモ其消息ヲ知ルコトガ出來ル
ノデアリマス、斯樣ナ工合デ此問題ニ付キ
マシテ、樺太廳デハ法治國ニアルマジキ恣
ナコトヲシテ而モ平然トシテ居ルノデアリ
やっ、總テ補助助成ハ此會社側ノ特約組合
又ハ申合セ團體以外ノモノニハ致サナイト
云フ風ニ、反會社側ノ組合ニ對シテハ一文
モヤラナイ、甚シキ差別待遇ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、昭和三年ニ樺太廳ニ酪農奬
勵補助規定ト云フモノガ出來テ居ルノデア
リマスガ、是ハ會社側ニ入ッテ居ラヌモノニ
對シテハ、全ク空文化シテ居ル、現ニ昨年
度ニ於キマシテ、此會社ノ加入ニ反對スル
組合ニ對シテハ補助助成ノ申請ガアッタノ
ニ對シテ、全部之ヲ却下シテ居ルト云フコ
トヲ聞クノデアリマス、第一ハ「バター」ノ
製造補助デ、是ハ脂肪一%當リニ八厘ヅヽ補
助シテ居ルノデアリマスガ、隨分大キナ額
デアリマス、此補助ヲ一厘モ與ヘナイ、次
ハ製酪器具機械購入補助、之ニ對シテモ却下
シテ居ル、乳製品營業許可、是モ許シテ居ラ
ナイ、集乳所建設竝ニ冷藏庫建設等モ補助
スルカラト云フ條件デ、ソレハ口約束デアッ
タガ、建設サシテ置キナガラ、ソレガ愈〓出
來上ッテモソレヲヤラヌ、又農業倉庫建築補
助等、飛ンデモナイ所ノモノマデ反對スル組
合ニハヤラヌ、其他貸付種牡牛ヲ取上ゲル、
或ハ移入牝牛ニ補助スルノガアルガ、ソレ
モ反對ノ組合ニ對シテハ其補助ハ一切ヤラ
ヌ、ソンナ工合ニシテ會社側ノ組合ニハ事每
ニ補助ヲ與ヘテ居ルケレドモ、會社ニ反對ス
ルモノニ對シテハ悉ク補助ヲセヌ、而シテ
其他色々ノ點デ甚シキ彈壓ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、デ此補助規定ト云フモノハ、
實ニ會社側デナイモノヲ彈壓スル所ノ一ツ
ノイヂメル材料ニ用ヒラレテ居ルノデアリ
マス、一方會社側組合ニ對シマシテハ集乳
所ノ建築或ハ器具機械ノ購入ニ對シマシテ
ハ、其權益ヲ明治製糖ニ讓渡ス條件附デ補
助金ノ交付指令ヲ發シテ居ルノデアリマス
ガ、此補助規定ニ依リマシテ、補助金ノ交
付ヲ得テ拵ヘタモノハ五箇年間ハ他ニ讓渡
スルコトガ出來ナイト云フコトニナッテ居
ルノデアリマスガ、之ヲ一年以內ニ會社ニ
賣却サシテ居ル、斯ノ如キハ全ク此補助ノ
精神ニ適ハナイノミナラズ、農家ニ補助ス
ベキ金ヲ農家デナイ巨大ナル營利資本家ニ
補助スルト同樣ナ結果ニ陷ッテ、明ニ此事業
奬勵ノ精神ニ背クモノデアルト思フノデア
リマス、其他產乳補助ノ如キモ、是ハ會社側
ノ組合員ダケ一「パーセント」ニ八厘ノ補助
ヲ交付シテ、非會社側ノ組合員ニハ一厘モ
交付シナイ、是亦形ヲ變ヘタ所ノ營利資本
家ノミニ補助スルモノト同一形態デアルト
考ヘルノデアリマス、斯ノ如キハ樺太廳ガ
酪農奬勵補助規定ノ精神ヲ無視シ、之ニ背
反スル所ノ非違ノ處置デアルト思ハレルノ
デアリマス、當局ノ所見如何デアリマスカ、
之ヲ伺ッテ置キタイ、其次ハ此補助ニ付テ、
當局ハ單ニ表面ヲ繕ウテ無理押シヲスル、
サウ云フヤウナコトヲスルノデナク、何人
ガ見テモ公平ナ處置ヲ執ッテ、補助ノ金額ノ
足ラヌヤウナ時ニハ、寧ロ資本家ニ與ヘル
分ハ後〓シニシテモ、アノ極北ノ地デ惠マ
レザル自然ノ惡條件ノ下ニ於テ奮闘シテ居
ル所ノ貧弱ナル農民ノ方ヲ先ニヤルベキデ
ハナイカ、現ニ樺太廳ノ執ッテ居ル方針ト
云フヤウナモノハ、アノ方針ハ全クアベコ
ベノ方針デアル、サウ思フノデアリマスガ、
當局ハ會社ニ入ラナイ方ノモノニ對シマシ
テハ、或ハ意見ノ相違ニナルカモ知レマセ
ヌガ、其意見ノ相違ハ相違トシテ行クベキ
モノデハナイ、是ハ江戶ノ仇ヲ長崎デ討ツ
ヤウナモノデアル、會社側ニ入ッテ居ル者
ダケニヤルト云フヤウナコトヲスルコトハ、
甚ダ公平デナイ處置ダト思ヒマス、此點ニ
關シマスル當局ノ所見如何、之ヲ承ッテ置キ
タイト思ヒマス
其次ハ樺太農村ノ更生モ內地同樣ニヤハ
リ產業組合ヲ基準トシタ、所謂產業組合ヲ
中樞機關トシテ使フ所ノ更生計畫デナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、資本主
義ノ社會ニ於テ最モ不利ナ立場ニ立ッテ居
ル農民ガ、唯一ノ生キル途トシテ選ンデ
居ル所ノ此協同組合組織、卽チ產業組合
組織ニ依ッテ、自主的農村ヲ立テヨウトス
ルノニ對シテ、之ヲ助成スルノハ當然ノ
コトデアルノデアリマス、樺太廳ノ考ヘテ
居ルヤウナ、近視眼的ニ一時ノ利便ノ爲ニ
農民ヲ營利資本家ノ搾取ノ對象物ニシテシ
マヽ、サウ云フヤウナ政策ハ考ヘ直シテ戴
カナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、
此點ニ付キマシテ、樺太廳ノ指導方針ナル
モノヲ一ツ改メテ戴クコトガ出來ナイカ、
其考ヲ承ッテ置キタイト思ヒマスガ、殊ニ現
ニ執リツヽアル產業組合ニ對スル色々ナ壓
迫ノ態度、此彈壓ノ態度ハ速ニ之ヲ改メラ
レルヤウニ考ヘラレタイ、之ヲ承ッテ置キ
タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=24
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025・今村武志
○今村政府委員 御答致シマス、只今御話
ノ點ハ酪農組合ノ問題デアルト思ヒマス、
樺太ニハ約七十程ノ產業組合ガアリマス、
其中酪農事業ヲヤッテ居リマス組合ハ多分
七ツカト存ジテ居リマス、御話ノ通リ樺太
ノ農業トシテハ、飽マデモ有畜農業デナケ
レバナラヌノデアリマス、隨テ畜產ノ奬勵
ニ對シテハ、全力ヲ擧ゲテ居ルヤウナ次第
デアリマス、只今ノ酪農事業デアリマス
ガ、是ハ北海道ト違ヒマシテ、非常ニ樺太
ハ新シイノデアリマス、大體明治四十二年
頃カト思ヒマスガ、其當時個人ニ依ッテ始
メラレマシテ、漸ク昭和元年頃ニ組合ノ組
織ヲ致シタノデアリマス、只今ハ二十二三
万封度ノ製造ダト思ヒマスガ、何分樺太ノ
地形ハ御承知ノ通リ非常ニ狹小デアリマシ
テ、北海道ト違ッテ、纏ッテ居ル場所ガ非常
ニ少イノデアリマス、隨テ酪農工場ノ如キ
モ、十七八箇所ニ及ンデ居ルト思ヒマス、
其結果製品ガ非常ニ不統一デアッテ、且又
島內ノ需要ガ非常ニ少イ爲ニ、多クハ之ヲ
內地ノ方ニ出サナケレバナラナイノデアリ
マス、然ルニ北海道ノ方ハ只今モ申ス通リ
隨分古クモアリ、又製品モ多クアリ、且ツ
販賣系統モソレ〓〓出來テ居ルノデアリマ
スカラ、其間ニ處シテ、樺太ノ「バター」ヲ
販賣スルト云フコトハ中々容易デハナイノ
デアリマス、ソレガ爲ニ酪農組合ノ成績ガ
一向擧ラヌ、年々多額ノ補助ハ致シテ居リ
マスケレドモ、結局缺損倒レダ、之ヲ何ト
カ變ヘネバナラヌト云フヤウニ色々考究致
シテ居ッタノデアリマスガ、昭和十年頃ニナ
リマシテ、其「ストック」ガ非常ニ多クナッタ
ノデアリマス、已ムヲ得ズ、之ヲ何等カノ
方法デ處分シナケレバナラヌト思フ矢先ニ
於キマシテ、明治製糖ノ方ニ是ガ販賣方ヲ
實ハ申込ンダノデアリマス、所ガ先刻モ申
上ゲル通リ、製品ガ非常ニ不統一デアリ、
且又其規模ガ非常ニ小サイ爲ニ、生產費モ
非常ニ多額ニ掛リ、之ヲ改良スル爲ニハド
ウシテモ相當ノ設備ヲシナケレバ改良ガ出
來ナイ、所ガ樺太ノ方ノ組合トシテハソレ
ダケノ力ガアリマセヌノデ、結局明治製糖
會社ノ方デモ之ヲ自分ノ方デ買收シタイ、
サウシテ出來ルダケノ改良ヲ致シタイ、斯
クシテ若シ其「バター」ガ多數ニ生產サレル
ト云フコトニナリマスレバ、隨テ牛乳モ段々
殖エルト云フ結果ニナリマスノデ、條件
サヘ宜ケレバ考ヘテ見テモ宜カラウト云フ
風ニ致シタノガ昭和十年デアリマス、爾來
色々〓究ヲ致シタノデアリマスガ、結局各
酪農組合ノ希望スル所ハ何處ニアルカ、ソ
レヲ聞クコトガ先ヅ大事ダラウト云フ考デ、
酪農組合長ノ聯合會ヲ開イタノデアリマス、
サウスルト、酪農組合ノ方デハ、自分等トシ
テハ勿論牛モ殖ヤシタイ、牛乳モ多ク搾リ
タイ、併ナガラドウモ資金ガナイ、デアル
カラ若シ明治製糖會社ノ方デ相當ノ値段デ
買ッテ吳レ、且又其乳價ヲ所謂資本家ノ橫暴
ニ依ッテ蹂躪セラレルガ如キコトハ困ル、デ
アルカラ少クトモ北海道ヨリ高ク買ッテ欲シ
イ、當時北海道ヨリハ安カッタノデアリマス、
ソレデ北海道ヨリ高ク買ッテ欲シイ、若シ又
値段ノ協定ガ付カナカッタナラバ、樺太長官
ニ裁定シテ貰フ、サウシテ資本家ノ橫暴ヲ
抑ヘテ貰フ、サウ云フ風ニシテ戴カナケレ
バ、私共トシテモ更生ノ途ガ付カヌ、斯ウ
云フ風ニ意見ガ大體一致シタノデアリマス、
所ガ豐原ノ酪農組合ト、ソレカラ小能登呂
ト云フ所ニ製酪工場ガアリマス、其小能登
呂ノ產業組合ノ一部トハ之ニ一致シナイ、
此豐原ノ方デハ何シロ自分等トシテハ多年
苦心シテコヽ迄來テ居ルシ、又販賣スルニ
付テモ東京ノ一二ノ商店ト特約ガアルノデ
アルカラ、自分ノ方ハ入リタクナイ、又小
能登呂ノ產業組合ノ一部ハ、產業組合ト畜
產組合トノ間ニ多少ノ行違ヒガアリマシテ、
ソレヨリ分離シテ造ッテ居ルヤウナ關係モア
リマシタノデ、小能登呂ノ酪農者ハ是モ自
分等ハ入ラヌ、斯ウ云フ風ナコトガアッタノ
デアリマス、ソレデ其二ツノ部分ヲ除イテ、
他ハ滿場一致ソレナラバ自分等トシテハ賣
リタイ、斯ウ云フ御話デアリマシタカラ、
ソコデ更ニ明治製糖會社ト折衝致シタノデ
アリマス、其結果製糖會社トハ、先刻御話
ニナリマシタ通リ二十五箇年間ノ契約デ其
買收價格モ、現在ノ設備デハナク、將來牛
ガ殖エタ時ノ製造量マデモ見込ンデ、サウ
シテ組合ハ聯合會ノ方デ五十三万圓ト云フ
申入デアッタト思ヒマスガ、五十三万圓デハ
如何ニモ多過ギルカラ、五十万圓程度デ買ヒ
タイ、ソレカラ今ノ乳價ノ如キモ樺太長官
ノ裁定ニ任シ、北海道ヨリハ決シテ安ク買
ハヌト云フヤウナコトヲ契約致シマシテ、サ
ウシテ此問題ハ昭和十二年ノ二月ニ契約ガ出
來タト思ヒマス、其結果乳價モ契約前ハ九錢
幾ラデアッタト思ヒマスガ、今日ハ十一錢幾
ラニ値段ガ上ッテ居リマスシ、斯樣ナ次第デ
樺太ノヤウナ資力ノ乏シイ所デハ、先ヅ主ト
シテ農民ノ方ニハ畜牛ノ增殖及ビ牛乳ノ多產
ト云フコトニ全力ヲ注ギマシテ、サウシテ製造
ノ方ハ明治製糖會社-今日ハ明治製糖會
社デハアリマセヌ、ソレノ傍系ニナッテ居リマス
樺太製糖會社ニ之ヲヤラセルコトニ致シタ
ノデアリマス、樺太製糖會社ノ方ハ、是ハ
北海道ト違ヒマシテ、實ハ之ヲ作リマシタ
ノモ昭和十年デアリマス、其株ノ三分ノ二
ハ明治製糖會社ガ有ッテ居リマス、又此「ビー
ト」ヲヤリマス時ニ、明治製糖會社ノ方デハ
北海道ト同ジヤウニ分工場ニシテ貰ヒタイ
ト云フ御話デアリマシタケレドモ、分工場
ニ致シマストドウシテモ監督ガ行屆カヌ、
ソコデ獨立ノ會社トシテ樺太ニ設立サセマ
シテ、而モ其株ハ出來ルダケ樺太島民ニ持
タセヨウ、殊ニ農民ニ持タセヨウト云フコ
トニ致シマシテ、募集致シマシタガ、中々
資力ガ乏シイ爲ニ思フヤウニハ參リマセヌ
ノデ、ソレデモ六七千株ト云フモノハ樺太
ノ農民及ビ其他ノ者ノ手ニ入ッタノデアリ
マス、今後ニ於キマシテモ三分ノ一程度マ
デハ樺太ノ興農會ナリ或ハ「ビート」耕作者ニ
何時デモ拂込ノ價格ヲ以テ渡シテ宜シイ、
斯ウ云フコトニ致シタノデアリマス、サウ
シテ此會社ヲ內輪カラ牽制シ、樺太長官ガ
之ヲ監督シ、サウシテ農民ヲ壓迫シナイヤ
ウニシ、一面農民ニハ出來ルダケ早ク乳牛
ノ增殖ヲ圖ラセ、農民ガ乳牛ヲ增殖シサヘ
スレバ、ソレヲ製糖會社ノ方デ製品ニシテ
販賣スル、斯ウ云フ云フコトニ致シマシ
タ、ソコデ其後ノ經過ヲ見マスルト、非常
ニ農民ハ喜ンデ居リマス、今御話ノ工場ハ
甚ダ氣ノ毒デアリマシタケレドモ、其後燒
失致シマシテ、實ハソレノ候補地ニ付テハ
小能登呂ノ者ガ樺太廳ヘ參リマシテ、實ハ
今マデ甚ダ間違ッタ行動ヲ執ッテ居リマシタ
ケレドモ此際改メテ、何トカ致シマスト言ッ
テ今一生懸命ニ考究シテ居リマス、先刻補
助ニ付テ色々御話ガアリマシタケレドモ、
會社ニ酪農事業ヲ讓渡シマシタ結果、從來
酪農ノ製造ニ對シテ補助ヲ致シテ居リマシ
タモノヲ其補助ヲ止メテ、之ヲ農家ノ畜產
ノ增殖或ハ飼糧ノ改良ト云フヤウナ方面ニ
持ッテ行キタイ、ソレカラ農業倉庫ノ話ガア
リマシタガ、是ハ一囘補助ヲシタ村ニハ他
ノ方ノ新シイモノガ濟マナイ內ハ補助セヌ
コトニナッテ居リマス、ソレガ爲ニ農業倉庫
ニ付テ補助セヌノデアリマス、ソレカラ製
酪品ノ製造許可ト云フコトガアリマシタ
ガ、是ハ自由ニ出來ルノデアリマシテ、何
モ許可ヲ要サヌノデアマリス、機械、器具
ヘノ補助ト云フコトガアリマシタガ、是モ
今言フ通リ乳酪事業ヲ會社ノ方デヤルコト
ニナリマシタカラ、一般ニ補助セヌ、斯ウ云
フコトニ致シマシタ、其代リ乳牛ノ少イ所
ニハ今後ドン〓〓補助シテ行カウ、要スル
ニ只今マデ樺太廳ト致シマシテハ、農村ノ實
情カラ見マシテ、成ベク畜產ノ增殖ヲ圖リ、
サウシテサウ云フ危險ノアル所ニハ-甚
ダ言過ギルカモ知レマセヌガ、面倒ナ乳酪
ノ販賣デアルトカ、或ハ乳酪ノ製造デアル
ムラヤウナコトハ其方ノ專門家ニ委セ
ル、斯ウ云フコトニシテ居リマス、尙ホ先
刻樺太廳ノ役人ガ云々ト云フ御話ガアリマ
シタガ、是ハ何カノ御間違デハナイカト思
ヒマス、其製糖會社ガ出來タ時ニ「ビート」ノ
指導ト云フヤウナ見地カラ農務課長ガ入ッ
タノデアリマス、併シ是ハ會社ガ出來タノ
ハ昭和十年デアリマス、一一年間モ官舍ニ居ッ
タト云フコトハ全然アリマセヌ、無論會社
ノ方ニ社宅ガ出來ルト同時ニ其處ヘ移ッテ
居リマスシ、社宅ノ出來ナイ前ニモ借家ヲ
致シテ居リマシタ、或ハ一一三箇月位ハ居ッタ
カモ知レマセヌガ、二年間モ其官舍ニ住ン
デ居ッタト云フヤウナ事實ハアリマセヌ、又
是ハ假令元ハ官吏デアリマシテモ、會社ニ
入ッタ以上ハ、決シテ役所ノ仕事ニハ容喙ハ
サセマセヌ、其間ノ混同ト云フコトハ絕對
ニナイコトヲ確信致シマス、是ダケ御答致
シンズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=25
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026・北勝太郎
○北委員 是ハ私自ラ去年行キマシテ調査
ヲシテ來タノデアリマス、長官ハ御存ジナ
イノダ、私ハ是ダケ詳細ニ書イタモノヲ持ッ
テ居リマス、殊ニ長官ハ此營利會社ニ一切
ノ製酪竝ニ販賣ノ權利ヲ賣ッテシマッタ、ソ
レガ樺太ノ農民ニ有利ナリト云フ工合ニ解
釋シテ居ラレルヤウデアリマスガ、併シ是
ハマア解釋ノ仕方ニ依リマセウガ、營利會
社ガソンナ有利ナ權利ヲ買ッタ時ニハ、
必ズ後カラ搾取シナイデハ承知スルモ
ノデハアリマセヌ、ソンナ世間ニ通ジ
ナイ通念ノ下ニサウ云フヤウナコトヲ
御ヤリニナルト云フコトハ、是ハ大變ナ間
違ヒデアリマス、營利會社ト云フモノハソ
ンナモノデハナイ、儲ケルノガ本位デアリ
マスカラ、決シテ樺太ノ農民ニ特別ノ恩惠
ヲ與ヘテ、サウシテ自分ノ會社ハ損ヲシテ
迄ヤルト云フコトハ絕對ニアリマセヌ、又
牛乳代金ノ開キノ如キモ、私ハスッカリ調べ
テアリマスガ、ソンナコトハ兎ニ角トシ
テ、サウ云フヤウニ樺太內ニ於テ產業組合
デ立ッテ行カウト云フモノガアル場合ニ、之
ニ對シテ差別待遇ヲスルト云フヤウナコト
ハ、私ハ宜シクナイト思フ、ソンナヤウナ
差別待遇ヲシテ色々ナ事ヲ言ッテ表面ヲ繕ツ
テ居ラレル、現ニ或ル村ニ對シテハ、二度
モ三度モヤッテ居ル、其先ノ村ニ行ケバヤッ
テ居ラヌ、ソレカラ乳製品ノ如キモ許可ハ
要ラヌト言ハレルガ、許可ガ要ラヌナラバ
尙更怪シカラヌ、巡査ヲヤッテ許可ガ要ルト
言ッテ止メテ居ル、樺太長官ハ警察權ヲ持ッ
テ居リマスガ、左樣ナ色々ナ事ヲヤッテ居
ル、又私ハ行ッテ調ベテ驚イタ、或ハ水ニ付
テモサウデアッテ、開拓地デアリマスカラ、
普通道路ノ下ヲ土管ヲ通シ、水ヲ通シテヤッ
テ居リマスガ、他ノ所ハ皆許シテ居ルガ、
其處ダケハピッタリ止メテ居ル、實ニ意地ノ
惡イ事ヲシテ水ヲヤラヌヤウニシテ居ル、
ソレカラ今小能登呂ノ者ガアヤマッテ來テ居
ルト云フガ、ソレハサウ云フヤウナ樺太廳
ノ彈壓ニ依ッテ、ドウシテモ敵ハナイカラ、
不滿ハ十分持ッテ居ルケレドモ、アヤマッタ
ヤウナ恰好ヲシテ行ッテ居ル、ソレハ間違ヒ
ナイコトダト思ッテ居リマス、アレダケ盛ニ
自主的ニヤラナケレバナラヌト言ッテ居ッタ
連中ガ、ソンナニ急角度ニ變ッテ行クモノ
デハナイ、殊ニ驚クベキハ、私ガ去年調査
ニ行ッタ時ニハ、私ノ行ック跡ニ全部刑事ヲ
遣ッテ居ル、ソンナ事ヲヤッテ彈壓シテ居ル
如何ニ開拓地ト雖モ、ソンナ極端ナコトヲ
ヤッタ例ヲ見タコトハ誰モナカラウト思フ、
アナタハソレヲ御存ジナイ、下僚ノ官僚ガ
アナタノ爲ニ都合ノ好イヤウナコトバカリ
報〓シテ居ル、實際ヲ御覽ナサイ、私ハ實
際見テ來タ、見テ來テ驚イタ、長官ガ今言
ハレルコトハ唯表面ヲ繕ッテ居ルコトデ、ソ
レハ事實ト斷ジテ違ッテ居ル、マアソンナコ
トハ兎ニ角トシテ、今後ニ於キマシテハ、
樺太廳ハ此產業組合ガ自主的ニヤラウト云
フモノニ對シテ、彈壓ヲ加ヘタリ、差別的
待遇ヲナサルカナサラヌカト云フコトガ、
先ヅ第一ニ伺ッテ置カナケレバナラヌ點デ
アリマス
更ニモウ一ツ伺ッテ置カナケレバナラヌ
點ハ、樺太廳ハ、產業組合ヲ農村更生ノ中
樞機關トシテ御ヤリニナル積リデアルカド
ウカ、營利資本家ニ賴ッテヤラセル積リデア
ルカドウカ、產業組合ヲ中樞ニシテヤルナ
ラバ、ソコニサウ云フ政策ガ生レテ來ナケ
レバナラヌ、又營利資本家ニ賴ラセルモノ
デアルト云フ一ツノ指導方針デアルナラ
バ、今言ハレルヤウナコトニナッテ行クダ
ラウト思フ、若シ假ニ營利資本家ヲ賴ラズ
シテ自主的ニヤラセル、自主的ニヤルコト
ガ困難ナリトスレバ、其困難ナルモノニ對
シテ之ヲ助長シテヤルト云フコトコツ、樺
太廳ノ當然執ルベキ處置ダト思フ、ソコデ
其點ニ付キマシテ、樺太廳ハ將來產業組合ヲ
中心トシテヤルノカヤラヌノカト云フコト
ヲモウ一ツ伺ッテ置キタイ、ソレカラ產業組
合デヤラウト云フモノニ對シテサウ云フヤ
ウナ差別待遇ヲスルカセヌカ、彈壓シテ居ッ
タコトヲヒドイト思ハレテ、之ヲ改メラレ
ルカドウカ、又モウ一ツノ問題ハ、五年間
賣ルコトガ出來ヌヤウニナッテ居ル、ソレヲ
一年デ賣ラシテ居ル、コンナ不都合ナコト
ハナイ、而モ會社側ニ附イテ居ル者ニ對シ
テハ、脂肪一「パーセント」八厘ノ補助ヲ與
ヘテ居ル、然ルニサウデナイ方ニハ與ヘテ
居ラヌ、サウスルト會社ニ補助ヲ與ヘテ居
ルト同ジデアリマス、而シテ產業組合デヤ
ルト云フモノハ難カシイ所ニ押込メツヽア
ル所ノ此態度ヲ改メラレルカドウカ、之ヲ
伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=26
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027・今村武志
○今村政府委員 今大變差別シテドウ斯ウ
ト云フヤウナ御話デアリマシタガ、實ハ昨
年御調査ニオ出デニナッタコトヲ承ッテ居リ
マス、若シ樺太廳ニ御立寄願ヒマシタナラ
バ、十分ニ御話ガ出來タカモ知レマセヌ、
私ノ聞イテ居リマス所、又見テ居リマス所
デハ決シテサウ云フヤウナ差別觀念カラ、
資本家ニ利益ヲ與ヘンガ爲ニ產業組合ヲ壓
迫シテヤルト云フ考ハ毛頭持ッテ居リマセ
又、先刻モ申シマス通リ、樺太ノ有畜農業
トシテハ實際牛ガ足ラヌノデアリマス、又
馬モ足ラヌノデアリマス、隨テ之ヲ增殖ス
ルト云フコトガ非常ニ必要デアリマス、所
ガ農民ノ資力ガ薄弱ナ爲ニ、北海道ノ乳牛
ニ比較致シマスルト非常ニ數量モ少ナイノ
デアリマス、左樣ナ狀態デアリマスカラ先
ヅ牛ヲ殖ヤス、牛ヲ改良スルコトガ先決問
題デアリマス、結局今囘酪農事業ヲ會社ニ
委讓致シマシテ、畜產ノ方ニ專念サセルコ
トモ、農民ノ利益ト云フコトヲ考ヘテヤッテ
居ル仕事デアリマシテ、決シテ營利會社ニ
搾取サセルト云フヤウナ考ハ毛頭アリマセ
又、先刻モ申上ゲマシタ通リ、其利益ヲ北
海道ヨリモ決シテ低下サセヌシ、又値段ノ
協定ガ纏ラヌ場合ニ於キマシテハ、樺太長
官ガ之ヲ決定スルト云フコトニ致シテ居ル
ノデアリマス、又會社ガ其契約ヲ履行セヌ
ヤウナ場合ニ於キマシテハ、其建物其他ノ
モノヲ半額又ハ無償デ會社ノ方ニ返還スル
ト云フコトマデモ附加へテ居ルノデアリマ
シテ、決シテ會社ダケヲ守護スルト云フ考
ハ毛頭ナイノデアリマス、營利會社デアリ
マスカラ勿論損ハ致シマスマイガ、一四、
於テ此會社ハ所謂樺太製糖會社デアリマシ
テ、北海道ノ製糖會社ノ分工場デハナイノ
デアリマス、又此製糖會社ハ製糖事業ヲヤ
ルノデアリマスカラ、其方面ニ於テモ多少
ノ利益ハアリマセウシ、旁、以テ樺太ニ於ケ
ル砂糖ノ增產及ビ乳製品ノ增產ト云フコ
トヲ名義トシテ此會社ガ生レテ居ルノデア
リマスカラ、私ノ方デモ十分ニ監督シテ、
御心配ノナイヤウニ致シタイト存ジマス、
又他ノ產業組合、殊ニ農產物ヲ扱ッテ居リマ
スル利用販賣ノ組合ガアリマスガ、之三
對シマシテハ出來ルダケノ助成ヲ致シマシ
テ、農村ノ振興ヲ圖リツヽアル次第デアリ
マス、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=27
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028・北勝太郎
○北委員 私ハ實ハ樺太廳ニ御寄リヲシマ
シテ、詳シク調ベタ事情ヲ申上ゲタ、丁度長
官ハ御留守デ、殖產部長ガオ居デニナリマ
シタノデ、部長ニ私詳シク申上ゲマシタ、
サウ云フ非違ナ點ハ改メルト云フコトデア
リマシタ、更ニモウ一ツ小能登呂組合ノ屬
シテ居リマス眞岡支廳ニ態、、行ッテ、支廳長ニ
會ッテ此事ヲ言ッタラ斯ウ云フ點ハ改メル、
私ノ言ッタコトニ對シテハ是認ヲシテ居ッタ、
サウ云フ點ハ改メルト言ッタケレドモ、改メ
ルドコロデハナイ、私ノ歸ッタ後デ刑事ヲ派
シテ、農民ヲイヂメテシマッタ、斯ウ云フヤウ
ナ結果ガ現ハレテ來テ居ルノデアリマス、
產業組合ノ問題ニ對シマシテハ是以上私ハ
申上ゲマセヌガ、ドウゾ一ツ私ノ趣意ノア
ル所ヲ御諒察ヲ願ッテ置キタイノデアリマ
ス、私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=28
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029・青山憲三
○靑山委員長 喜多君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=29
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030・喜多壯一郎
○喜多委員 私ハ漁業法ト產業組合中央金
庫法中改正法律案ニ關聯シテ質問致シマス、
特ニ沿岸漁業ニ對スル施設ニ對シテ政府當
局ノ意向ヲ明ニシテ欲シイト思フノデアリマ
ス、第一ニ御尋シタイノハ、漁村ノ窮乏-
私ガ此處デ漁村ト云フ言葉ヲ使フコトハ、
申上ゲル迄モナク所謂沿岸漁業ヲ行ッテ居
ル漁村ヲ意味スルノデアリマスガ、特上
其漁村ニ於ケル中小產業階級ヲ要素トシテ
居ル沿岸漁業ノ窮迫振リト云フコトハ、流
石政府デモ最近認識シテ來テ居ルコトハ分
リマス、今度ノ漁業組合法ノ改正ト同時ニ、
漁業組合中央金庫制ヲ作ルトハ言フモノノ、
產業組合中金ノ中ニ加へテ行クト云フコト
デハ、實ヲ云フト今日ノ日本ノ沿岸漁業ノ
窮迫振リニ對スル根本的ノ對策ニハナッテ
居ナイ、中途半端、一時遁レデアル、此點
ハ此前ノ議會ノ建議委員會デ、水產局長ノ
私ハ御意見ヲ承ッタノデスガ、結局出テ來タ
モノハ中途半端ナモノダト云フ風ニシカ考
ヘラレナイ、漁村ノ今日窮乏シテ居ルト云
フコトハ御承知ト思ヒマスガ、第一ハ沿岸
漁業ノ著シイ不漁ト云フコトデス、第二ハ
漁獲物ノ値段ノ著シイ低下、日々ニ低下シ
テ居ルト云フコト、第三ハ漁村金融ノ不完
全、不滿足ト云フ此三ツヲ大體漁民ハ原因
トシテ擧ゲテ居ル、是ハ認メザルヲ得ナイ、
第一ノ沿岸漁業ノ著シイ、不漁、卽チ魚ガ
獲レナイト云フコトハ、恰モ之ヲ自然ノ罪
ノヤウニ兎角シテ居ルガ、私共ハサウデハ
ナイト思フ、自然的原因ト人爲的原因トガ
「タイアップ」シテ今日ノ魚ノ獲レナイ、魚
ガ居ナイト云フ所マデ追込ンデ來テシマッ
テ居ルノダカラ、例ヘバ定著性ノ魚族ナラ
其處ニ居ナイ、荒廢シテ漁場ニナラナイ、況
ヤ囘游性ノ鰯トカ鰤トスレバ、ソレガ沿岸
ヲ囘游セズ、寄附イテ來ナイ、此點ニ關シ
テ漁村對策ガ漁業組合法中改正法律案トシ
テ現ハレル、ソレカラ產業組合中央金庫制
ニ吾々ガ多年要望シテ居ッタモノガ附加へ
ラレルト云フノデスケレドモ、此沿岸漁業
窮乏打開策ノ根本ニ付テ、一體農林當局ハ
對策ヲドンナ形式デ今行ッテ居リマスカ、同
時ニソレガドノ位ノ金デヤラレテ居ルカ、
此點ハ質問ガ中途デスカラ、私ハ特ニ水產
局長ノ御考ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=30
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031・三宅發士郎
○三宅政府委員 御答致シマス、只今仰セ
ノ兩改正法律案ニ付キマシテ、金融以外ノ、
沿岸漁業ノ振興ト云フ點ハ、實ハ直接ニハ
現ハレテ居ラナイノデアリマス、是ハ主ト
シテ金融方面ヲ考ヘテ居ルノデアリマス、
尙ホ仰セニナリマシタ沿岸漁業、殊ニ一部
小漁業者ノ沿岸漁業ノ不漁ニ對シテ、ドウ
云フ方策ヲ現ニ執ッテ居ルカト云フ御話デ
アリマスガ、現在行ッテ居ルモノト致シマス
レバ、本年度カラ行ッテ居リマスル機船底曳
網漁業ノ整理ト云フコトニ依ル沿岸漁業ノ
保護、ソレカラ、海面デ申シマスレバ、魚
族ノ增殖ト云フ點ヲ、最近ニ積極的ニ始メ
テ居ルト云フ程度デアリマス、但シ今後ニ
於テハドウ云フ風ニシナケレバナラヌカト
云フコトニ付テハ、實ハ考ヲ持ッテ居ラヌ
ノデハゴザイマセヌガ、一方ニ於キマシテ
自然的ノ原因ニ依ル不漁モゴザイマスシ、
又工場ノ汚水其他ニ依リマシテ漁場ガ荒廢
シテ行クモノガ多イノデゴザイマス、私共
ト致シマシテハ沿岸ノ漁場ニ付テハ、先日
西川サンカラ仰セニナリマシタ通リ、今日
ニ於キマシテハ地先キノ水面ヲ以テ其生計
ノ大部分ニ充テルト云フコトハ時代ノ變遷
デ參ラヌト思フノデアリマスケレドモ、此
制度ノ改正ニ依リマシテ、言換ヘマスレバ
共通水面ガ非常ニ入リ合ッテ利用サレテ居
リマス所ヲ調整スルコトニ依リマシテ、現
在ヨリモ單位面積ニ於キマシテ相當增收ニ
ナルヤウナコトモアラウト考ヘマシテ、之
ヲ豫算ニ計上シタヤウナ關係モアルノデア
リマス、併シ色々ノ事情デ實現出來ナイコ
トニナッテ居リマス、私共ハ之ヲ沿岸漁業調
整ト云フヤウナ言葉ヲ私共限リデ使ッテ居
ルノデアリマスガ、或ハ今一步先ノ方へ出
マスレバ魚族モ囘游シテ居ルノデアラウケ
レドモ、是等ノ點モ十分ニ調査ノ出來ナイ
現狀デアリマス、是モ此間御話ニナリマシ
タ通リ、地方々々ノ試驗場ノ施設ヲ擴充致
シマシテ、是等ノ漁利ヲ逸シナイヤウニシ
ヨウト云フコトモ、是カラ進ンデ行ク大キ
ナモノデアラウカト存ジマス、其他色々ト
ゴザイマセウケレドモ、一應ソレダケ御答
シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=31
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032・喜多壯一郎
○喜多委員 承ルト云フト、戰爭デ出來ヌ
ト云フ結論ニナッテ甚ダ遺憾デアリマスガ、
大體是ハ戰爭ガナクトモ、今日ニナラナク
トモ、私ノ方カラ言フト、モット早ク農林
當局ハヤラナケレバナラヌト思ヒマス、丁
度大臣ガ御見エニナリマシタガ、私ハ實ヲ
言フト、餘程物ノ判ッタ大臣ダト思ッテ吾々
ハ期待シテ居ッタノデアリマス、所ガ「事變
ト農村」ト云フ立派ナ本ヲ讀マシテ戴ク
ト、之ヲ見タダケデモ、漁村ニ付テハ、
百九十頁ニ近イ中ニ、我輩ハ大イニ局ニ當ッ
テ時節柄日本ノ漁村ニ期待ヲ掛ケルト言ハ
レテ、七頁シカ使ッテ居ラレナイ、其中ヲ讀
ムト有馬サンニモ似合ハナイ、ドウモ漁民
ハ板子一枚下ハ地獄ト云フ氣持ガ拔ケテ居
ナイヤウダカラ貯蓄心ガナイ、ト云フヤウ
ナコトハ、是ハ此頃ノ漁師ヲ知ラヌノデス、
折角ノ本ヲ私ハ讀ンデ、前ノ方ハ非常ニ良
イナト思ッテ居ッタガ、最後ノ此處へ來ルト、
言換ヘルト、農林大臣ノ沿岸漁業ニ對スル認
識不足ト云フヨリモ、徹底的ニ是ハ落第デ
アル、寧ロ付ケナケレバ宜カッタト實ハ思フ
位デアル、是ガ私ハ今日ノ農林當局ノ水產
行政ニ對スル考ガ、日本全體ニ反映シテ居ル
大キナ證據ダト思フ、是ハ委員長モ、此處
ニ居ル高木長老アタリデモ、西川君デモ贊
成シテ居ル、是ガイカヌト思フノデス、私
ハ今後ニ於ケル對策ハ、一步ヲ進メレバ沿岸
漁業調整ト云フヤウナコトガ、必要ナコトダ
ト思フ、是ガ此金融機關ノ調整ガ出テ來ル
前ニ出テ來ナケレバ、ドンナニ金融機關ヲ
持ッテ來テモ、溝ノ中へ金ヲ突込ムヤウナモ
ノデ、結局ハ浮ンデ來マセヌ、此場合私ハ
此點ニ付テ一ツ大臣ノ懷イテ居ラッシヤル
漁業對策ヲ伺ヒタイノデアリマス、金融機
關ヲ設ケルコトモ必要ダガ、ソレヨリ一步
先ニ沿岸漁業ノ更生策ト、特ニ漁業調整ノ
合理化ト云フヤウナコトニ付テ、積極的ニ
ヤルコトガ必要ダト思フ、是ハ時節柄サウ
大シテ金ハ取レヌゾト仰シヤルコトナクシ
テ、ヤレルコトデハナイカト思フ、大體日
本ノ政府當局ノ漁業ニ對スル態度ヲ見ル
下、遠洋漁業トカ、海外漁業、卽チ高度ノ
資本主義化サレタモノニ對シテハ-或ハ
嫉妬ノセイカモ知レマセヌガ-ドウモ其
方ニ少シ戀シ、其方ニ可ナリ「エロチック」ナ
「エロサービス」ニナルヤウナコトマデ、大
キナ資本ヲ持ッテ居ル者ニ對シテハヤッテ居
ル、所ガ今救ッテ戴キタイ所ノ-救フト云
フ言葉ヲ敢テ使フノデスガ-貧困ノ中ニ
落込ンデ來テ居ル奴ハ、實ヲ云フト、今後
ノ對策、今後ノ對策ト延バサレテ來タ沿岸
漁業ナノデアリマス、只今モ申上ゲタヤウ
ニ、此沿岸漁業民ト云フモノヲ、ドウシテ
行クカ、是ハ一面カラ言フト、日本ガヤレ
世界有數ノ水產國デアルトカ、ヤレ四面海
ニ繞マレタ海ノ幸ノ國デアルトカ云フヤウ
ナコトハ、ドウモ昔ノコトニ歸シテシマッタ
ト思フ、事ニ依ルト神代ノ時代ノコトヲ言ッ
テ居ルヤウナモノデ、今日ノ資本主義經濟
ノ段階ニ入ッテ來タ其重壓ト、昭和五年以來
ノ深刻ナ漁村恐慌ト云フモノハ取去レナ
イ、特ニ沖合二里乃至五里、或ハ十里シカ
出テ行カレナイヤウナ海上ヲ、漁場トシテ
居ル沿岸漁民ヲ、アナタ方ハ能ク御考ヘニ
ナラナイト、飛ンデモナイ傾向ニ陷ッテ居ル
ノハ、沿岸漁業者ガ漁村ニ於ケル階級分化
ノ過程ヲ辿ッテ居ルト云フコトデス、是ハ農
林省カヲ御出シニナッタ我國ノ漁業ニ於ケ
ル漁獲高ノ推移、所謂ドンナモノガ年々獲
レテ來ルカト云フ「テンデンシー」ヲ示シテ
居ル統計ヤ、沿岸漁業ニ於ケル階級構成ノ
變化ト云フヤウナコトカラ考ヘテ見ルト、
是ハ純然タル「プロレタリアート」ノ階級ニ
入ッテシマッテ居ル、是ハ此儘デ行クト、
面カラ言フト日本ノ沿岸漁場ノ荒廢ト云フ
コトト同時ニ、階級的ニ、モウ救ヘナイ所
マデ行クト云フヤウナ感ジヲ持ツ、漁船保
險法ノ制定トカ、農業動產信用法トカ、或
ハ今度ノ中金制度ノ確立ト云フヤウナコト
モ、餘リニ此階級ニ取ッテハ緣遠イモノデア
ル、時節柄日本ノ食糧政策ナドモ問題ニナッ
テ居ル時ニ、若シ出來マスルナラ私ハ此機
會ニ、百九十頁ニ對シテ七頁シカナイ日本
ノ漁村對策ニ對シテ、敷衍シテ大臣カラ御
說明ヲ聽キ、ソレガ或ル意味デ農林當局ノ
意見ニナリ得ルコトヲ希望スルノデスガ、
此點ニ付テ一ツ大臣ノ御考ヲ聽カセテ戴キ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=32
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033・有馬頼寧
○有馬國務大臣 喜多君カラ叱ラレタノデ
アリマスガ、私農林省ニ入リマス前ニ、漠
然ト感ジテ居リマシタコトハ、農村ト漁村
ト山村ト云フ三ツノ問題ヲ考ヘテ見タ時ニ、
從來農村ノ問題ニ付テハ相當色々ナ方面ニ
亙ッテ、〓究モサレ、又色々ナ施設モ講ゼラ
レテ居ッタノデアリマスガ、漁村ト山村ト云
フモノニ付テハ、今日マデ割合ニ閑却サレ
テ來タノデハナイカ、水產ト云フ事柄ハ只
今御述ベニナリマシタヤウニ、日本ノ富ノ
增進ト言ヒマスカ、國際收支ノ關係ヲ出來
ルダケ良好ニスルト云フ意味カラ、水產業
ト云フモノハ考ヘラレタ、其結果ガ所謂遠
洋漁業ナリ、資本主義的ナ漁業ト云フモノ
ニ、力ヲ注ガレタト云フ結果ニナッタノダ
ラウト思フノデアリマス、其國富ノ增進ト
云フカ、貿易關係ノ發達ト云フヤウナ見地
カラ、漁業ニ力ヲ入レラレタト云フ其結果
ガ、今日逆ニ沿岸漁業、所謂漁村ト云フモ
ノニ對シテ、非常ナ不利ナ狀態ヲ生ジタノ
デハナカラウカト思フノデアリマス、ソレ
デ先般モ一寸申上ゲタコトガアリマスガ、
在來ノ資本主義的ナ漁業ト云フヤウナ方面
ニ對シテハ、今後國ガサウ積極的ニ援助シ
ナケレバナラヌト云フヤウナ狀況ニハナイ
ト思フノデアリマス、其方面ハ寧ロ自然ノ
發達ニ任セルト云フコトデ宜イノヂヤナイ
カト思フノデアリマス、寧ロ之ヲ統制ヲシ、
監督ヲスルト云フ方面ニ力ヲ入レル程度デ
宜カラウカト思フノデス、今後ノ水產方面ト
申シマスト、只今水產局長カラ申上ゲマシ
タヤウニ、所謂沿岸漁業ノ保護ト申シマス
カ、又漁村ノ繁榮ト云フ方面ニ、ドウシテ
モ力ガ入レラレナケレバナラヌト云フコト
ハ、私農林省ニ入リマシタ當初ニ、山村問
題ト同時ニ考ヘタノデアリマス、唯併シ自分
トシテモ漁村ノコト、漁業ノコトハ餘リ詳
シク知ラナイモノデアリマスカラ、サウ云
フ本ヲ書キマス場合ニ-書キマシタ譯デ
ハアリマセヌガ-サウ云フ場合ニ、非常
ニ頁ガ少クテ甚ダ恐縮デアリマス、實際政
策ノ貧困ヲ物語ッテ居ルノカモ知レマセヌ
ガ、唯併シ漁村、山村ト云フコトニ付テ、
農林省ハ今後一層ノ力ヲ入レナケレバナラヌ
ト云フコトダケハ、眞面目ニサウ思ッテ居
ルノデアリマシテ、今後ハ出來ルダケ其方
面ニ力ヲ入レテ、沿岸漁業ノ發達、漁村ノ繁
榮ト云フコトニ對シテハ、出來ル限リノ力ヲ
入レタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、
實際ノ施設其他ニ付キマシテハ、只今水產
局長カラ申上ゲマシタ以外ニハ、私トシテ
モ一寸今思ヒ浮ンデ居ルコトハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=33
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034・喜多壯一郎
○喜多委員 ドウモ、正直ニ言ハレルト、
ウント喰ッテ掛ラウカト思ッテ用意シテ居ッ
タノデアリマスケレドモ-實ハ確ニ是ハ
貧困ナノデ、ソレハ本案其モノガ現シテ居
ル、大體是ハ農林省ガ貧困ナノデアリマス、
是ハ後程ノ機會ニ、沿岸漁業調整ノ方法ニ付
テ御尋ヲ致シマスガ、モウ階級分裂ノ過程
ニ入ッテ「プロレタリア」ト云フモノニナッテ
行クノヲ默ッテ見テ居ルト云フノデハ、第一
ノ點ニ手ガ及ンデ居ナイ、第三ノ點ノ漁村
金融ニ對スル手ダケガ、辛ウジテ斯ウ云フ非
常時ニ伸ビテ來テ、第一第二ノ沿岸漁業ノ
不漁ニ對スル對策、第三ノ漁獲物ノ價格ノ
低落ニ對スル防止策ガナイ、例ヘバ石油ナ
ドニ付テハ三宅サンハ西川サンニ對シテ、
切腹シナケレバナラヌコトニナッテ居ル、石
油ナドハ一昨年ノ八月頃八割高位ダッタガ、モ
ウ此頃デハ能登ノ不便ナ所マデ行クト、十二
割高ニナッテ居ルカラ、ドンナニ魚ガ獲レテモ
勘定合ッテ錢足ラズデ、實質的ニ追込マレテ來
テドウニモナラナイ、私ハ此處デ水產局長ト
特ニ產業組合ノ係ノ方ニ御尋シタイノデス
ガ、大體日本ニハ諾威邊リニアル水產銀行
ナドガ建ッテモ然ルベキダト云フ今日、產業組
合中央金庫ニ僅カ五百万圓位入ルト、鬼ノ首
デモ取ッタヤウニ帝水ダノ、大日本水產關係
ノ長老達ハ喜ンデ居ルノデスカラ、是ガ旣
ニ私達カラ言ハセルト救ヘナイ、此位ノ端
金ヲ一體日本ノ本當ニ救ハナケレバナラナ
イ所ニ持ッテ行カレハシナイ、私ハ特ニ漁
業協同組合中漁業組合聯合會ガ組合員ノ貯
金ノ受入、加入豫約貯金又ハ家族貯金ノ受
入ニ關スル施行ヲシテモ、或ハ道府縣ヲ區
域トスル漁業組合聯合會ガ所屬ノ組合又ハ
聯合會ニ對シテ手形ノ割引ヲ爲スナント云
フ位ノコトデ、本當ニ一體漁業ニ對スル金
融ノ途ガ開カレルカ、ソレハモウ申スマデ
モナク御分リダト思フノデスケレドモ、私
ハ漁村ト農村、或ハ漁業ト農業、是ハ本質
的ニ違ッテ居ルモノダト思フ、之ヲ同ジヤウ
ニ御考ニナル所ニ、今度ノ中途半端ナ私生
兒ト嫡子ノ間ノ子ミタイナ出來損ヒノモノ
ガ出テ來テ、實ヲ言フト沿岸漁業ノ貧困ニ
對シテ「アヂャスト」サレタ政策ニナッテ來ナ
イ、此點ハ一體產業組合中央金庫ニ加入ス
ルコトニ依ッテ、漁村金融ノ目的ガ果シテ達
シ得ルカ、是ハ農林省ノ方モ恐ラク漁業ノ
特別性カラ考ヘテ、隨分不便ナ點ガアルト
云フコトハ、心中窃ニ感ジテ居ラレルダラウ
ト思フ、ダカラ寄ッテ成ベク鞭撻ヲシテ、中
金ヲシテ漁業協同組合ニ貸出サセルヤウニ
監督シマスト云フ點ハ、期待シナイデモ分ッ
テ居ルノデスガ、ドウ云フ監督ヲシテ行ク
カ、中金ハ中々出サヌデスヨ、ガッチリシタ
連中ガ抑ヘテ居ッテ、今更少々ノ金ガ付イ
テ行ッテモ-日本デ一番金ヲ貸スノニ不
安全ナモノハ何カト言ッタラ、板一枚ノ下ハ
地獄ト云フモノデ、其爲ニ今マデ金ガ出ベ
キモノガ出ナイ、私ハ此案ガ縱ンバ無修正
デ通過サレテ實現シタトシテモ、恐ラク
其實行ノ場合ニ於テ、隨分强力ナ監督指導ヲ
爲サラナケレバ、物ハ出來タガ入ッタ錢ハ產
業組合「プロッパー」ノ方ニ持ッテ行カレタト
云フコトニナッタラ、是亦アナタノ切腹問題ガ
一ツ起キルデスヨ、此點ニ付テ「プラクチカ
ル」ナ鞭撻ハドウスルノダ、私達ガ憂ヘテ居
ルノハ杞憂ニナルカモ知レマセヌガ、產業
組合中央金庫ガ貸サナイ、何トカムヅカシ
イコトヲ言ッテ貸サヌト言ッタラ、錢ハ向フ
ガ持ッテ居ルノダカラ、昔カラ借リニ行ク奴
ノ方ガ弱イト決ッテ居ルノデ、此點ニ付テ成
ベク旨クヤッテ行ク積リデス位ヂヤナク、モ
ウ少シ打明ケテ、斯ウ云フ積リデ行ク、是
ハ尤モ堤康次郞君ミタイナ借金ノ旨イ人ガ
質問スルト宜イノデスガ、私ハシタコトガナ
イノデ旨ク行キマセヌガ、ソコノ所ヲ一ツ
御話願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=34
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035・三宅發士郎
○三宅政府委員 漁業組合ノミガ集ッテ行
ク漁業組合、中央金庫トカ、或ハ只今仰セ
ノ水產銀行ナド、私ハ十年バカリ前ニ水產局
ニ居ッタ時カラ言ハレタ問題デゴザイマス、
十數年振リデ歸ッテ參リマシテモ、其片鱗モ
實現サレナイヤウナ狀態デアリマス、サウ
シテ考ヘテ見マスト、十何年ソレヲ私共申
シマシテモ實現出來ナカッタモノヲ、今後ソ
レヲ申シマシテモ何時實現出來ルカ分ラナ
イヤウナ情勢ニアリマスノデ、寧ロソレヨ
リモ、農業ト漁業トハ性質ハ違ヒマスガ、
上ニ於テ一緒ニナリマスレバ有無通ズル所
モアルノデアリマスカラ、農業部落、漁村
部落ト云フヤウナモノ、是等ヲ一體ニシタ
農漁村一體ト云フヤウナ考ヲ持ッテ行ッタ方
ガ、言ヒ換ヘマスレバ漁村ガ良イ組織ニナ
リマスレバ、回收モ農業方面ヨリモ早イノ
デアリマス、尤モ是ハ旨ク行カナクテハ左
樣ニ參リマセヌガ、サウ云フ點モアリマス
ノデ、上ニ於テハ有無相通ズルヤウナ組織
ヲ採ルコトガ、切メテモ此際憐レナ中小漁業
者ニ對シハ、必要デアルト云フヤウナ意味ニ
於キマシテ、御不滿ノヤウデハアリマシタ
ケレドモ、斯ウ云フ風ナコトニナリ終ッタ
次第デアリマス、隨ヒマシテ之ヲ具體的ニ
中央金庫ニ貸出ガ旨ク行クヤウニ、監督ス
ルト云フダケノ言葉デハ、承知シナイト云
フ風ニ仰セラレマスト、サウ具體的ナコトヲ
一々擧ゲテ、斯ウ云フ場合ニハ斯ウスルノ
ダト云フコトハ、迚モ申上ゲ兼ネマスケレ
ドモ、一體有無通ズルト云フ意味デヤッタ
ノデアリマスカラ、出來ルダケ此點ヲ漁業
者ノ方ニ理解アル金融ヲ付ケルヤウニ-
是ハ農林省トシテハ一々申上ゲル譯ニモ參
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=35
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036・喜多壯一郎
○喜多委員 ヤハリサウダラウト思ッテ居ッ
タノデス、ソコハ何故サウ云フ答辯ニナル
カト云フアナタ方ノ氣持ヲ、一ツ私ハ檢討
シテ見タイノデス、是ハ上ノ方デ有無相通
ズル、中央金庫ダケデ有無相通ズルガ、下
ニ行クト、借リニ行クヤツハ組合ガ違フノ
デスヨ、法文ノ上カラ見ルト、片方ハ農業、
片方ハ漁業トダケ解釋シマスケレドモ、私
ハ上ノ方デ農漁山村デ危險ハ分散サレテ、
漁師ガ困ッタ年デモ百姓ガ好ケレバ、謂ハバ
親分ノ懷ロダケ好クテ子分ノ方デハ危險ガ
分散サレテ居ルノダカラト云フヤウナ、便
宜的ナヤウニ、觀念的ニ御考ニナルガ、私
ハ實ヲ言フト、此案ガ實現サレル時ノ最大
的ノ缺陷ハ、今仰シヤッタ上ノ方デ有無通ズ
ルト云フコトヨリモ、上ナンカドウデモ宜
イノデス、若シアナタ方ノ議論ヲ進メテ行
ケバ、日本ノ金融機關ノ最高峰、「ピラミット」
ハ日本銀行ダカラ、總テ日本銀行ニ持ッテ來
イト云フコトニ、論理的飛躍ヲシテシマフノ
ト同ジダト思フ、是ハ寧ロ下ノ方ヲ考ヘテ
戴キタイ、一口ニ言ヘバ、私ハ漁業ノ特殊
性ト云フカ、極ク農業ト違フ、ナント言フ
カ「エクストラ·オーヂナリチー」ト云フヤ
ウニ言フト、ピント來ルノデスガ、特別性
ト云フト一寸オカシイガ、一風變ッタ漁業ノ本
質之ヲ無視シテ居ラレルカラ、上ノ方ダ
ケデ有無通ズレバ宜イヂヤナイカト云フ御
答辯ニナルノデハナイカト、遺憾ニ思フノ
デス、ソレハ漁業ト云フモノハ、私ハ今日ハ
單ニ水ノ中ノ魚ヲ獲ッテ來ルト云フコトデハ
ナイト思フ、ソレハ神代時代ノ沿岸漁業民
デアッテ、神代時代カラ原始的ナ、海ヤ湖
ヤ、河ヲ相手ニシテ居リマスケレドモ、漁
業活動ソレ自體ハ、既ニ社會的ナ要因ニ依ッ
テ「コントロール」サレル、金ノ無イ奴ハ負
ケテ行キ、金ノアル奴ハ勝ッテ行ク、金ノア
ル奴ニダケ政府ハ「エロ、サービス」ヲスル
ト云フヤウナ實例ガアル、無イ奴ハ何時マ
デ經ッテモ棄テラレテシマフ、其無イ奴ニ上ノ
方デ旨クヤッテヤルノダト云フコトガ、實ヲ
言フト下ノ者ニ取ッテ非常ニ不安デアリ、
又ソコニ一種ノ偏見モ生ズルノダト私ハ思
フ、ソコデ私共ノ考カラ行クト、例ヘバ今御
話ノヤウニ、沿岸漁業調整ト云フコトニ付
テ、廻游性ノ魚族ガ寄付カヌト云フコトヲ
自然ダト思ッテシマッテハイケナイノダ、鰯
デモ鰤デモ寄リ付クヤウニ出來ルノダ、ケ
レドモソレガ出來ヌ、沿岸漁業カラ遠洋漁
業ニ移ルト言ッタッテ、漁具ノ問題ヲドウス
ルカ、船ノ問題ヲドウスルカ、食物ノ問題
ヲドウスルカト言ヘバ、ソコニ所謂資金ト
云フモノガ入ッテ來ルト云フコトニナルト、
漁業ニ對スル社會的要因ト云フモノハ、ウ
ント違ッテ來ル、大體今ノ漁師ト云フモノ
ハ自分ノ口ニ入レル爲ニ魚ヲ獲ッテ來ルノ
デナク、ソレヲ賣ッテ自分達ガ生キテ行ク生
活ノ資料ニスルノダカラ、此點デハアナタ
方ノ仰シヤル上ノ方デ有無相通ズルダラウ
ト云フ言葉ノ如ク、農業モ漁業モ同ジナノ
デスガ、獲ッテ來タ魚ヲ貨幣ニ換ヘルト云
フヨリモ、直グニ食ッテ行クダケノ物ヲ買ツ
テ來ル、此方程式ガ成立ツ、商品卽貨幣卽
他ノ商品、是ダケハ、アナタ方ノ仰シヤル
言葉ノ方デ有無相通ズルコトニ持ッテ行ク同
一性ガアルノデスケレドモ、私ガ特ニアナ
タ方ニ考ヘテ戴キタイコトハ、漁業ニ依ル
商品ト云フモノハ、消費經濟ノ進步發達シ
タ今日、非常ニ都市集中化サレテ來テ
居ル、是ハ一面カラ行クト宜イコトデ
セウ、ウント魚ガ東京ヤ大阪ヘ出テ來ル、
例ヘバ此頃北海道ヘ行ッタッテ石狩川ノ新卷
ノ上等ノ物ハ、北海道ノ人間ノロニ入ラナ
イ、皆東京ヤ大阪ノ金持ノ贅澤ナ奴ノ口ニ
入ル、例ヘバ委員長ノ選擧區デ獲レル能登
ノ海鼠腸ハ、昔ハ貧乏人デモ食へタガ、此
頃ハ一垂モ食ヘハシナイ皆大阪、東
京ノ料理屋ヤ待合ト云フヤウナ、吾々ノ
口ニモ入ラヌヤウナ所ニ行ッテシマフ、キッ
ト興津鯛ナドモサウデセウ、是モ地元ニハ
アリマセヌ、是ガ一ツ、ソレカラモウ一ツ
ハ、沿岸漁業民ハ「マーケット」ノ情勢ニ付
テ全ク盲目デアル、魚ノ値段ノ決定力ナン
ト云フモノハ寸分ダニ持ッテ居ナイ、ソコニ
行クト農民ハ違ヒマス、政府ガ手ヲ出シテ
米穀統制法ダ、產繭處理ダ、何ダ彼ダト
言ッテ非常ニ騒イダダケニ、物ヲ餘計取ッテ
來テ、ズバットヤッテ居ル、ソコヘ行クト此
點漁民ハ全ク商人ノ隸屬デス、或ル意味ニ
於テハ奴隷視サレテ居ル、ソレカラモウ一
ツ、漁獲物ニハ農業ノ產物ナドト違ッテ「フ
レッシュネス」、新鮮ト云フモノガ大切デス、
魚篇ノ字ヲ書ク位ダカラ餘程新シクナケレ
バ〓ヘハセヌ、ソレデ此點デ農產物以上ニ
價格ノ變動ノ激シイモノダト考ヘテ居ル、
ソレカラモウ一ツハ、何ト言ッタッテ板子一
枚下ハ地獄、サウシテ自然ニ支配サレ易ク
テ、漁獲ト云フモノハ、アレダケノ田圃何枚
作ッタカラ米ガ幾段穫レルト云フヤウニ、算
盤ガ彈ケハセヌ、出テ行ッテ風ヲ喰ヘバ、沈
沒スルカ、精々良クテ空手デ歸ッテ來ル、言換
ヘレバ自然ニ支配サレル危險性ガ非常ニ多
イ、此四ツノ點-今日此點デ農林大臣ニ
一ツ〓ヘテ置イテ上ゲヨウト思ッテ居ルノ
デスガ、是ガ加ハッテ來タモノデスカラ、漁
村ニハ蓄財心ナドト云フモノガ無イノデ
ス、モウ蓄財心ヨリモ蓄財スベキ何物モ無
クナッテ居ル、何物モ無イト云フコトハ一面
カラ行クト非常ニ强イコトデ、何カト言ッタ
ラ直グニ騒動ヲ起スノデス、米騒動ナント
云フモノハ漁師ノ女房ノ專賣特許ノヤウニ
言ハレテ居ルノデス、ナゼカト言ヘバ私
ハ斯ウ思フ、今ノ農業ノ方ノ、商品卽貨幣
卽他ノ商品ト云フ此生產原則ハ、實ヲ言フ
ト沿岸漁業へ來ルト飛ンデモナイ化物ガ居
ル、ソレハ中間搾取階級デス、魚問屋、親
方、金貸、仕込親方、網主、船主、漁場主
ナドト云フ者ガ出テ來ルト、結局獲レテ、
受けた食ッテ居ル漁民ハ仕込親方ナドノ關
係カラ行ケバ、私共ノ方ノ沿岸ナドデ見テ
ミマスルト、仕込ム時ニモウ既ニ貸ス金ニ
商業利潤ト金利ヲ付ケマシテ、ソレニプ
ラス」漁獲物ノ儲ケト、其漁獲物ニハ商業利
潤ト又金利ガ付イテ行クノデスカラ、非常
ニ高イモノニナル、ダカラ沖合ニ出テ行ク
爲ニ物ヲ買フベキ金モ無イ、米モ味噌モ仕
込親方ノ所カラ貰ッテ來ル、酷イ所ニナル
ト、言葉ハ變デスガ掛賣ニ對スル掛買ト言
ヒマスカ、要スルニ品物ヲ取ッテ來タナラ
バ、ソレト、トン〓〓ニ彈イテ吳レト云フ風
ニシテ借リテ行クノデスガ、是ハモウ殆ド
今日ノ沿岸漁業民ノ持ツ一番ノ弊害デス
ガ、二割三割方高イノデス、油カラ、網カ
ラ、米カラ、味噌カラ、仕込間屋カラ仕込ム
モノハ、一般商人カラ買フヨリモ私共ノ調
ベタ所デハ安イモノデー一割、富山縣、石川
縣ノ不便ナ所ニ來ルト四割高、先達テ政府
ニ要求シタ資料ノ中ニモ出テ居ラヌヤウデ
スシ、是モ私ノ當テズッポウカモ知レヌガ、
マア據ル所ハアッタノデス、此仕込資金ト云
フモノハ、沿岸漁業民ダケデ今日日本デ二
億圓位ニナッテ居ルト思フ、之ヲ全國ノ漁家
ニ割當テテ見ルト一戶當リ四百圓位ニナッ
テ居ル、是ハ帝水アタリデ計算シテ出シテ
居ルガ、農林省ノ調査デハ最低八分カラ最
高三割二分ト言ッテ居リマスケレドモ、此
平均ヲ取ッテ見テモ一割三分、所ガ此外ニ
一ツ大臣アタリニ、モット貧乏ナ沿岸漁村
ヲ步イテ見テ戴キタイコトハ、今ノ仕込
ノ金ノ借方デス、是ハモウ東京ヤソコラ
デ暴利ダトカ、高利ダトカ言ッテモ、迚モ
比較ニナラヌ、第一口錢ヲ取ル、手數料
ト云フ名目デ五分カラ一割天引ナノデス、
是ハアリ得ルコトナノデスガ、而モ漁村ノ
仕込親方ヤ網主ヤ何カノ漁民トノ借金關係
ト云フモノハ、償還期間ガ箆棒ニ早イ、平
均三箇月デ長クテ四箇月、半年ト云フモノ
ハナイ、其度ニ借換手數料ヲ取ル、千圓ノ
借金證文ヲ御覽ニナルト千圓受取ッタヤウ
ニナッテ居リマスガ、手取五百圓位ガ關ノ
山、是等ハ何デ斯クナッテ來ルカト云フ
ト、是ハ結局私ガ今申上ゲタ此漁業ノ特殊
性ト、農業ノ特殊性トノ間ニ全ク共通性ヲ
持ッテ居ナイト云フコトナノデアル、其上
ニ斯ウ云ッタ高イ金利ノ所ヘ追込マレテ來
ルト同時ニ、先程仰シヤッタ通リニ、實ヲ
言フト漁場ガ擴大シタ、其方法ガ違ッテ來
タ、棹一本擔イデ釣ニ行ッタモノガ網ニナッ
ク、其網ヲ持ッテ居ル者ガ今度ハ仕立方ガ
違フシ曳方ガ違フ、例ヘバ鰯ナドヲ地曳網デ
曳イタリ、鯛ヲ「タカツナダイ」ナドト云フ
モノデ曳イテ居ッタモノガ、此頃ハソンナコ
トデハ目高モ入ラナイ、ソレハアナタ方ガ御
出掛ニナッテ見ルト驚クガ、此頃ハ中々ハイ
カラデス、モウ「ランプ」ナドヲ使ッテ居ル者
ハアリマセヌ、遠ク八戶邊リノ漁港ニ行ッテ
見テモ、皆「カーバイト」ノ「ランプ」ナドヲ持
ツヤウニナッテ來タノデ、結局金ガ無イト駄
目ナノダト云フコトニナル、其金ハ先程申
上ゲタヤウナ漁業ノ特殊性カラ、高イ金利
デ而モ短イ間デ借リテ居ル、私ハ今日此制
度ガ出來テ、上ノ方デ旨クヤルゾト言ッテ
モ、此沿岸漁村ニ於ケル驚クベキ高利資本
ガ、跳梁跋扈シテ居ルト云フコトニ對シテ、
アナタ方ノ方デ何トカシテヤラヌト云フト、
此制度ハ活キナイデ半身不隨ニナリハセヌ
カト思フ、先程戴イタ資料ノ中ニ漁村ニ於
ケル負債狀況調借入先別ト云フノガアリマ
スガ、是ハ實ハ私ガ狙ッタ所ト違フ、私ハ仕
方ガアリマセヌカラ昭和元年ノ調デ少シ古
イノデスガ、玆ニ水產資金貸付狀況ト云フ
ノガアル、ソレニ依ルト固定資金ト流動資
金ト、且ツ其「パーセンテージ」ガ出テ居ル
ノデス、貸付機關ハ此調ニ依ルト、北海道拓
殖ト日本勸業ト農工ト普通銀行ト貯蓄銀行
ト漁業組合ト產業組合、其他ト云フ八項目
ニナッテ居ル、其金額ハ略シマス、御手許ニ
オアリダト思ヒマスガ、此表カラ計算シテ
見ルト、是等ノ貸付總額ハ全體ニ對シテ特
殊銀行ト云フモノハ、日本ノ漁業ニ關シテ金
ヲ貸スベキ職能ヲ持チナガラ、僅カ一五%シ
カ貸シテ居ナイ、普通銀行ガ四六·五%貸シテ
居ル、貯蓄銀行ガ〇·二%貸シテ居ル、是ガ全
體ノ六一·七%ニナル、此調デ見ルト、相當銀
行ハ貸シテ居ルト云フコトニナル、ソレニ
對シテ漁業組合、產業組合ノ融通高ハドノ
位カト云フト、是ハ無論政府委員ニ申上ゲ
テ置キマスガ、昭和元年ノ調デスカラ、モット
今年ハ「プロモート」シテ居ルト思ッテ居ル
ノデアリマスガ、漁業組合、產業組合ノ融通
高ハ僅ニ此表ニ依ルト八·五%ニシカナラナ
イノデアル、殘リノ二九·八%ガ、此項目デ行
クト其他ノ中ニ入ッテ居ル、是デ見ルト並ミ
大抵ノ金融機關ガ出テ來テモ、日本ノ沿岸
漁業ニ對シテ金融力ノ逼迫、窮乏ニ對シテ
ハ、救フ手ガナイト云フ結論ガ出テ來ル、
ソレデ水產資金ハ銀行ニ依ルモノト其他ニ
依ルモノトデ、私ノ計算ニ依ルト、卽チ水
產資金貸付狀況ノ統計ニ依ルト、結局水產
資金ハ銀行ニ依ルモノト其他ト云フ得體ノ
知レナイモノデ九一·五%ヲ占メテ居ルノデ
スカラ、其大部分ヲ占メテ居ルト云フコト
ニナル、スルト漁業組合、產業組合ト云フモ
ノハ今マデ何ヲシテ居ッタノカ、先程提案理
由ノ中ニ相當貸シテ居ルゾト啖呵ヲ政務次
官ハ切ラレタヤウデスガ、事實調ベテ見ル
ト、サウ云フ所ニハ行ッテ居ラヌ、殆ド貸シ
テ居ラヌト言ッテ宜イ、漁業組合、產業組合
ノ活動ハ甚シク貧弱デアリ微弱デアルト云
フコトニナル、ソコデ銀行デアリナガラ漁
業金融ヲ爲スベキ特殊銀行ガ貧弱、微弱デ
アリ、く普通銀行ガ稍〓中心的勢力ヲ占メ、而
モソレニ對シテ其他ト云フ高利的ナ金利ヲ
持ツモノガ王座ヲ占メテ居ルト云フコト
ハ、玆ニ私ハ漁村金融ノ建直スベキ一ツノ
原因ガ、立派ニ存在シテ居ルト思フ、農林
當局モ此點ハ私ノ意見ヲ認メテ下サルコト
ト思フノデスガ、私ハ此其他ト云フモノヲ
排除スルダケノ金融力ヲ、產業組合中央金
庫ヲ通ジテ漁村ニ貸出ス決心ヲ爲サイト云
フコトヲ中上ゲタイ、ソレハ其他ト云フノ
ハ第一ガ問屋デス、漁獲物ノ買受人、ソレ
カラ漁業用生產手段タル諸商品ヲ販賣スル
人間、其次ガ高利貸、其次ガ質屋、其次ガ
無盡、賴母子講及ビ借ル者ト貸ス者トノ個
人關係ニ依ッテ、伯父サンニ、借ルノモア
リマセウ、婆サンニ借ルノモアルダラウ
ト云フコトニナル、是等ヲドウ是カラ
整理スルカ、例ヘバ農村デ一口ニ、金ヲ借
ル時ニ何デ借リタカト云フト、仕込ミ融通
ダト云フ言葉ガアリマス、御分リダラウト
思フガ、卽チ靑田賣買ニ依ル融通、漁獲物
抵當ニ依ル融通、是ハ上等ノ方デ、ソレカ
ラ普通ノ貸借ニ依ル融通トカ及ビ無盡、賴
母子講ニ依ル融通、此位ニ漁村ニ來ルト分
レテ居ル、仍テ是等ノ事情カラ見テ、今度
ノ產業組合中央金庫ニクッ付ケルコトハ宜
イ、時勢ダカラマゴ〓〓シテ居ルヨリモ、
早ク作ッテ戴イタ方ガ宜イガ、ソレニ對シテ
政府當局ガ根本的ニ實ハ何時カ時期ガ來タ
ナラ、是ハ一本立ヲモット完全ニスルカ、或
ハ二本立ニスルカ、漁業組合中央金庫ヲ獨
立サセル意思ガアルノカナイノカ、ソレト
モ未來-無論時世時節デ變リマセウガ、
產金ニ軒ヲ借ルカ母屋ヲ乘取ルヤウニナル
カ、母屋ヲ乘取レバ結構ト思ヒマスケレド
モ、中々ヤラヌカ、之ニ對シテ一體ドウ云フ
御考デアルガ、コンナ高イ金融ヲ持ッテ居ル
下ノ方ヲ無視シテ、上ノ方ダケデ有無相通
ズルゾト言ッタ所デ、中々問題ダラウト思ヒ
やべ 、一ツ御考ヲ聽カセテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=36
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037・有馬頼寧
○有馬國務大臣 私カラ私ノ考付イテ居ル
所ヲ一應申上ゲテ、足リナイ所ハ政府委員
カラ御答申上ゲマス、只今喜多君カラ縷々
御述ニナリマシタ漁村ニ於ケル非常ニ高利
ナ資金ニ關シマスルコトハ、今囘漁村ノ金
融ヲ圓滑ナラシムル爲ニ、中央金庫ニ加入
シテ此途ヲ拓クト云フコトニ致シマシタノ
モ、只今御述ニナリマシタ所謂漁村ニ於ケ
ル非常ナ高利ノ金ノ爲ニ、一般ノ漁業者ガ
困ッテ居ルト云フコトヲ救ヒマス所ニ、眞ノ
目的ガアルノデアリマシテ、私共ハ是非共
漁業協同組合、漁業組合聯合會、斯ウ云フ
モノヲ通シテ、一般ノサウ云フ高利ノ資金
ノ爲ニ非常ニ困難致シテ居ル者ニ、資金ノ
融通ヲ圓滑ニシテ之ヲ救濟シ、漁業ノ發展
ヲ圖リタイト云フノガ、主タル目的ナノデア
リマス、有無相通ズルト水產局長ガ申サレ
マシタコトヲ私ガ忖度シテハ甚ダ變デスガ、
私ハ實ハ斯ウ云フ意味ニ聞イテ居ッタノデ
アリマスガ、例ヘバ產業組合中央金庫ノ金
ガ數少イ種類ノ方面ニ資金ガ融通サレテ居
リマスルト、資金ノ需要ガ一年ノ或ル時期
ニ非常ニ偏ルト云フ傾向ヲ持ツノデアリマ
ス、成ベク色々ナ種類ノ方面ニ金ガ融通サ
レルト云フコトニナリマスレバ、十年ヲ通
ジテノ資金ノ融通ガ偏ラナクテ、非常ニ宜
クナルト思フノデアリマス、隨ヒマシテ私
共ト致シマシテハ、產業組合中央金庫ニ漁業
方面ガ入ッテ來ルト云フコトニナルト、中央
金庫ノ資金ノ運轉上非常ニ便利ニナルノデ
ハナイカ、農業ノヤウニ資金ガ偏ラナイノ
デアリマスカラ、漁業ノ方ハ或ル時期ハ金
ガ非常ニ要ッテ、或ル時期ハ要ラナイト云フ
コトガ農業程ヒドクナイノデ、漁業方面
ノ金融ガ加ハルトスレバ、所謂中央金庫ノ
金ノ運轉ガ非常ニ圓滑ニ行ク、隨テ漁業方面
ニモ相當ニ多ク金ガ融通サレルト云フ結果ガ
生レル、斯ウ云フ意味デ有無相通ズルト言
ハレタノデハナイカト思ヒマス、私ハサウ
云フ意味ニ於テ漁業方面ガ單獨ナ金融機關
ヲ持ツヨリハ、一ツノモノニ集ッタ金融機關ヲ
持ツ方ガ、資金ノ運用ノ上カラ言ッテ宜イノ
デハナイカト云フ風ニ、私ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=37
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038・喜多壯一郎
○喜多委員 旨ク行ケバ洵ニ御話ノ通リ結
構ダト思ヒマス、此點ハ意見ニ亙リマスカ
ラ御說ダケ承ッテ、セメテソレガ速記錄ニ殘
サレテ、旨ク行ケバ宜イガ、ソレガ旨ク行
カナイデ、斯ウ言ッテ居ルガドウダト云フ攻
メ道具ニナラナケレバ仕合ダト思ヒマス、
重ネテ政府委員ニ御尋致シマスガ、漁村ニ於
ケル產業組合ハ過去ニ於テ發達シタモノト御
考ニナルカ、其理由ハ御分リニナッテ居ルト
思ヒマスカラ申シマセヌガ、此點ガ一ツ、ソ
レカラモウ一ツハ昭和八年ノ漁業法ノ改正
ニ依ッテ漁業協同組合ノ成立ヲ奬勵シタ、果
シテ其豫期通リノ目的ヲ達シテ居ルカト云
フコト、是ガ第二、ソレニ關聯シテ申上ゲマス
ガ、漁業法ノ附則第二條ニ「本法施行ノ日ヨ
リ五年ヲ限リ」トアッテ、從來ノ漁業組合ノ存
續ガ許サレテ居ッタノデアリマスガ、現在
何程從來ヨリノ漁業組合ガ存續シテ居ルカ、
モウ一ツハ若シ存續シテ居ルトスレバ、ソ
レハ必然的ニ出資困難ト云フ事情ニアルト
私ハ考ヘルガ、其出資困難ノ原因ニ付テ、
農休當局ハ其內容ヲ眞劍ニ御考ニナラレタ
カドウカ、若シ御考ニナッテ居ルト云フ材料
ガアレバ一ツ示シテ戴ケレバ結構ダト思ヒ
マス、第三點ハ漁業組合ノ振興策ニ付テデ
アリマス、何ト言ッテモ漁村ノ振興ヲ圖ルノ
ニハ漁業組合ヲ擴充シテ、其生產關係、配
分關係ヲ調整スルコトガ必要デス、今相當
發達シテ來タガ一層之ヲ所謂擴充シテ行カ
ナケレバナラヌト言フガ、此點デ政府ハ一
體漁業組合ヲ奬勵シテ行カウト云フ意思デ
アリマスカ、モウ一ツ言葉ヲ附加ヘテ置キ
マス、漁業協同組合ヲ大イニ奬勵シテ行カ
ウト云フ根本策カ、ソレトモ產業組合ヲ奬
勵發達セシメテ行カウト云フノカ、此點ニ
付テドッチヘ行クノカ、隨テ其結果斯ウ云フ
コトモ私ハアナタ方ニ御尋シテ置キタイ、
若シ漁業協同組合ヲ奬勵シテ行クノガ、今日
政府ノ懷イテ居ル方針デアルトスルナラバ、
ドンナ具體的方針デ一體仕事ヲ進メテ行キ
マスカ、第二ハ一體如何ナル地域ニ漁業協
同組合ヲ設置シヨウト云フノカ、昭和八年
ノ漁業法改正ニ依ッテ、漁業協同組合ガ出來
テ來テソレガドノ位今日マデ實績ヲ示シテ
居ルカ、サウシテ漁業協同組合ニ法規上ノ
立前カラ一體ドンナ實質ヲ與ヘヨウトスル
ノカ、モウ一ツアナタ方ニ言フガ、漁村々々
ト言ヒ、漁村ニ於ケル產業組合ノ發達實
績ト言フガ、其漁村トハ一體ドウ云フモノ
ヲ御考ニナッテ居ルカ、私カラ言ハセルト、
純漁村ガアリ、半農半漁ノ町村ガアリ、或
ハ農村デアッテ一部漁民部落ヲ持ッテ居ルト
云フ風ナモノモアルガ、斯樣ニ漁村ノ形態
ト云フモノハ純農村ノ形態ヨリモ複雜多岐
ダガ、其處ニ持ッテ行ッテ一體漁業協同組合
ヲ如何ナル形デ奬勵サレルカ、是等ニ付テ
アナタ方ノ御考ヲ承リタイ、若シ純漁村、
半農半漁村、農村或ハ商業町村ト云フ風ナ
分類ニ付テ御調ベガナケレバ、是ハ明日デ
モ-イツカノ機會ニ文書デ示サレテモ結
構ダト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=38
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039・三宅發士郎
○三宅政府委員 昭和八年漁業法ノ改正以
來今日マデ、漁業協同組合ノ出來マシタ數ハ
約一千五百九デアリマス、殘リノマダ改組
シテ居リマセヌ千七百近イモノ、ソレガ昭和
十四年ノ七月末マデニ或ハ漁業協同組合
ナリ、或ハ責任組織ヲ取ル出資ノ組合ニ變
ラナケレバナラヌコトニナッテ居ルノデア
リマス、數字ノ上ノ實績ハ左樣ナ風ニナッテ
居リマス、漁業協同組合ハ御承知ノ通リ出
資組合デアリマスルカラ、是ハ大半共同販
賣ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレカラ殘ッ
タモノ、責任組合ニナラナイモノ、或ハ漁
業協同組合ニナラナイモノハ、ナラナイ原
因ガ奈邊ニアルカト云フ御尋デゴザイマス
ガ、是ハ非常ニ小サクテ一ツダケデハ其部
落ノ-部落ト申シマシテモホンノ小サイ
モノデアッテ、固リマシタ所ガ大シタ働キヲ
シナイシ、又シ得ラレナイト云フモノモゴ
ザイマセウシ、或ハ組合員其他ノ關係ニ於
キマシテ出資ノ困難ナモノ、或ハ若干出資
ガアリマスルガ故ニ積立金ノ如キモノモア
リマスルカラ、別ニ此際出資制度ニ直サナ
クテモ、同ジ働キヲ爲スノヂヤナイカト云
フヤウナコトヲ考ヘテ居ル向キト、大體此三
ツカ四ツノ種類デアラウト考ヘテ居リマス、
ソレカラ漁業組合ノ振興策トシテ、今後漁
業協同組合ヲ如何ニ導イテ行クカト云フ風
ナ御話デアリマスルガ、私共水產ニ關係シ
テ居ル者ト致シマシテモ、苟モ漁業者ガ町
村ニ居リマスレバ、總テ漁業協同組合ヲ以
テ固メルト云フ風ナ考ハ持ッテ居リマセヌ、
是ハ又色々ナ場合ガ想像サレルダラウト思
ヒマス、例ヘバ相當强力ナ漁業者ノ部落ナ
リ、或ハ數部落漁業者ノ居ル所ガアリマス
レバ、是ハ獨立シテ經濟行爲ヲ十二分ニヤッ
テ行ケルモノデアリマスルカラ、其村ニ對
シマシテハ、漁業協同組合ガ漁業關係ニ付
テハ中心トナッテ行クモノデアラウト思ヒ
マス、又左樣ニ指導致シタイト考ヘテ居リ
やく、併ナガラ極メテ小サイ部落デアッテ、
而モ數ガ非常ニ少イト云フヤウナモノハ、
別ニ漁業協同組合ヲ作ラス必要ハナイノデ
アリマシテ、現在產業組合ヲ利用シ居ルモ
ノハ利用サセマスルシ、又シテ居ラナイモ
ノハ寧ロ大部分ヲ占メテ居リマスル產業
組合ヲ利用セシムルト云フ風ニ導キタ
イト思フノデアリマス、或ハ又本當ニ個
人トシテ半農ヲ致シ、半漁ヲ致ス者モ
アラウカト思ヒマスルガ、是等モ場合ニ依
リマシテハ、二重加入ノ弊ハアリマスル
ケレドモ、村ノ平和ヲ圖リマスル意味ニ
於テ、二重ニ又產業組合ヘモ加入スルト云
フヤウナコトモアラウカト思ヒマス、要ハ
農漁一體ト云フ思想ト、而シテ又一面ニ於
テ漁ト農トガ特異性ヲ持ッテ居ルト云フ此
兩方面ヲ巧ク調和シタ指導方針ニ進ミタイ
ト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=39
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040・喜多壯一郎
○喜多委員 政府委員ニ御尋シマスガ、今
私ノ申シタ第四點デスガ、純漁村、半農、
半漁村、農村又ハ商業村ト云フ風ナモノニ
依ッテ、產業組合ナリ漁業組合ヲ設置サレタ
資料ト云フモノハマダアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=40
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041・石黒武重
○石黑政府委員 先程ノ御質問ノ中ノ產業
組合ニ關係スル點ニ付テ私カラ一應御說明
申上ゲマシテ、ソレカラ只今ノ點ニ付テ御
說明申上ゲマス、漁村ニ於ケル產業組合ガ
從來如何ニ漁村ノ爲ニ利用サレテ居ルカト
云フ點ニ付キマシテハ喜多サンノ昨日御
希望ニ依リマシテ差上ゲマシタ資料ノ中ニ
モアリマスルヤウニ、從來產業組合ガ漁村
ノ爲ニ相當ニ利用サレテ居ルノデアリマ
ス、差上ゲマシタ資料ノ中ニモアリマスヤ
ウニ、沿海町村ニ於キマシテ今日未ダ產業
組合ノ設立サレテ居ラナイ町村ノ數ハ僅ニ
百三十七デアリマシテ、大體ニ於キマシテ
ハ產業組合ガ普及シテ居ルノデアリマス、
尙ホ實質的ニ是ガドノ位ニ利用サレテ居ル
カト云フコトニ付キマシテ、先程昭和元年
ノ產業組合ニ依ル漁業資金ノ貸付ノ數字ノ
御示シガアリマシタガ、アレモ私共承知シ
テ居リマスガ、其後、是ハ全部ガ全部ノ產
業組合ヲ調ベタ資料デハアリマセヌケレド
モ、昭和十一年末ニ於キマシテノ產業組合
ノ漁業者ニ對スル貸付ノ金額ハ、私共ノ方
ニアル調査ニ依リマシテ分ッテ居リマス、其
金額ハ一千三百三十一万四千圓デアリマス、
先程ノ御話ノ四百何十万圓ト云フモノニ比較
致シマスレバ、此十年ノ間ニ大體三倍ニナッテ
居ルノデアリマス、一方大體同ジ年間ニ於
キマシテ、普通銀行ノ漁業者ニ對スル貸付
ハドウ云フ風ニ變遷シテ居リマスカト云フ
ト、先程御話ノ三千六百餘万圓ガ寧ロ減ジ
マシテ、三千三百万圓ニナッテ居ル、ソレカ
ラ又特殊銀行ノ貸付、是ハ殖エテ一千百餘
万圓ガ二千七百万圓ニナッテ居リマスガ、產
業組合ガ漁村方面へ貸付ノ增加シマシタ割
合ニハ及ンデ居ラナイノデアリマス、サウ
云フヤウナ譯デアリマシテ、漁村方面ニ相
當產業組合ガ從來活動シテ居ルノダト云フ
コトガ私共考ヘラレルノデアリマス、殊
尙ホ斯ウ云フコトモ併セテ申上ゲテ置キタ
イト思フノデアリマス、先程申シマシタ千
三百三十餘万圓ノ產業組合ノ漁業者ニ對ス
ル貸付デアリマスガ、是ト見合ッテ、ソレデ
ハ漁業者ガ同時ニ產業組合ニドレ位貯金シ
テ居ルカト云フコトヲ見マスト、千百餘万
圓ニナッテ居ル、之ニ依ッテ見マスト、漁業
者モ相當貯金ヲヤッテ居リマスガ、併シマダ
貯金金額ヨリモ餘計ニ產業組合ガ漁業者ニ
貸付ケテ居ルト云フ事實ハ、產業組合ガ相
當漁業者ノ爲ニモ肌ヲ脫イデ居ルト云フコ
トガ明ニナルノデアリマス、サウ云フヤウ
ナ譯デアリマシテ、只今ノ御質問ノ點ニ付
キマシテハ、產業組合モ相當ニ從來漁村ノ
爲ニ活動シテ居ッタト云フコトヲ申上ゲテ
置キタイト思ヒマス
ソレカラ今度ノ漁業組合ノ制度ノ改正
ニ依ッテ漁業協同組合ガ貯金ノ受入ヲス
ルコトニナッテ參ッタ時ニ、產業組合ト漁
業組合ノ關係ガドウ云フコトニナルカト
云フコトニ付キマシテハ、私共此案ヲ農
林省部內デ相談シテ居ッタ間ニ無論篤ト
考ヘタ點デアリマスガ、マダ十分熟シナ
イ點モアリマスガ、私ハ自分ノ多少知ッテ
居リマス例ニ付テ申上ゲマスト、例ヘバ愛
知縣ノ名古屋市内ノ下之一色、アレハ有名
ナ漁村部落デアリマスガ、彼處ニ信用單營
ノ產業組合ガアルノデアリマス、其下之一
色モ最近都市的ニ發達シテ來マシタ爲ニ相
當ノ商業者モアルノデアリマスガ、此信用組
合ハ主トシテ漁業者ニ利用サレテ居リマス、
斯ウ云フ組合ハ今度漁業組合ガ貯金受入ガ
出來ルコトニナリマスト、寧ロ解消ヲシテ漁
業協同組合ノ事業ノ一部ニナルノデハナイカ
ト云フコトヲ私共想像シテ居ルノデアリマ
ス、ソレカラ德島縣下ノ出羽島ノ漁業組合
ハアノ邊デノ良イ組合ノヤウニ聞及ンデ居
リマスガ、此處ニ信用組合ガアリマス、是
ハドウ云フコトヲシテ居ルカト言ヒマスト、
彼處ハ島デアル關係デモアリマスガ、純漁
村デアリマシテ、農村ハ殆ドナイノデアリ
やく、信用組合ノ貸付モ主トシテ漁業用資
金ノ貸付ヲヤッテ居ル、其他日用品ノ購買
ヲヤッテ居ルト云フヤウナ組合デアリマス
ガ、斯ウ云フ組合ハ日用品ノ購買關係ニ於
テ產業組合ノ系統機關ヲ利用スルコトガ依
然トシテ便利デアルト云フヤウナ關係カラ
引續キ產業組合トシテ殘ルカモ知レマセヌ
ガ、サウ云フ關係ヲ除ケマスト、是ハ漁業
協同組合ニ貯金ノ受入ガ出來マス以上ハ合
體シテシマフモノデハナイダラウカト私共
考ヘテ居リマス、併ナガラ例ヘバ香川縣ノ
庵治村ノ產業組合ト漁業組合ノ關係ノ如キ
ニナリマスト、區域内ノ住民ノ漁業者ト農
業者トノ關係ガ、農業者ノ方ガ數ガ多イノデ
アリマス、產業組合ノ事業ヲ見マスト、信
用事業ノ外ニ、販賣、購買事業等ヲヤッテ居
リマシテ、販賣事業ノ中ニハ米麥ノ販賣モ
ヤッテ居リマスシ、購買ノ事業ノ中ニハ、肥
料ノ如キモノハ最モ大キナ取扱品目ニナッ
テ居リマス、サウシテ從來漁業組合トノ關
係ヲ見マスト、貯金ノ受入ノ如キモ、漁業
者ガ皆產業組合ニ預ケテ居リマシテ、資金
ノ融通關係ナンカモ、此產業組合ガ他カラ
資金ヲ借入レマシテ漁業者ニ對シテ融通シ
テ居ル、斯ウ云フモノハ恐ラク漁業組合ガ
貯金受入ガ出來ルヤウニナリマシテモ從來
通リ漁業組合ト產業組合ノ間ハ圓滿ニ連絡
ガ取レテ、產業組合ハ依然トシテ庵治村全
體ノ協同組合トシテ活動シテ行クノデハナ
イカ、サウシテ漁業協同組合ノ方ハ漁村部
落ノ中ノ仕事ヲ產業組合ト連繫ヲ執リナガ
ラヤッテ行クノデハナイカ、斯ウ云フヤウナ
風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、大體斯ウ云
フ例ハ存ジテ居リマスガ、全體ノ沿海町村
ノドレ位ガ今申シマシタモノノドウ云フ種
類ニ當ルカト云フ數字ハ今ノ所持ッテ居リ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=41
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042・喜多壯一郎
○喜多委員 能ク分リマシタ、其點ハ私ハ
自分ノ蒙ヲ啓カレタノデスガ、私共懸念ス
ルノハ、實ヲ言フト、ソレヲ承ッテ更ニ强
マッテ來ルコトハ、結論的ニ此次ノ質問ノ要
點ダケヲ申上ゲマスト、弱小生產者ノ集リ
デアル沿岸漁業者ト云フモノハ、ドウ團結
シタ所デ、共同シタ所デ、資本ニ對シテ攻
勢的ナ態度ヲ執ルト云ッタ所デ、金ハナイノ
デスカラネ、經濟能力ハナイ、「ゼロ」ハ幾ラ
集ッテモ「ゼロ」デアル、ソコデ其經濟團體ニド
ンナ實力ヲ與ヘルカト云フコトニナルト、
私ハ實ハ漁業協同組合ノ行キ方デ宜イト思
フノデスケレドモ、漁村ノ農村部落ニ於ケ
ル經濟ヲソレデハ逆ニドウ處理スルカ、例
ヘバ漁獲物以外ノ生產物、〓括シテ言ヘバ
農產物或ハ山林カラ出テ來ル物モ、一體漁
業協同組合デ取扱ハセル積リカドウカ、此
點ソレカラ漁業法ノ改正ニ依ッテ第四十三
條ノ二ノ事業規定デ如何ナル生產物ヲモ取
扱フト云フ風ナコトニナルト、一體サウ云
フコトガ可能カドウカ、此際農林省カラ戴
イタ農村ト漁村トノ比較材料ト云フモノヲ
見ルト、是ハ略シマスガ、相當複雜シテ居ル
日本デスカラ、今ノ政府委員カラ御話ニナッ
タヤウナ、斯ル鵺的ナ立場ニナルモノガア
ル、ソコデモウ漁業協同組合ニ改組豫定ノ
モノガ約七百アルト戴イタ資料ノ中ニアル
ガ、是等ニ向ッテハ漁業協同組合ニ改組スル
ト云フコトヲ奬勵スルト同時ニ、漁業協同組
合ニ產業組合ノ代行力ヲ與ヘナイカト云フ
コトデアル、サウ云フコトハ出來マセヌカト
云フコトデアル、今ノ御話ノ通リ隨分產業組
合ハ過去十年間ニ於テ私ノ擧ゲタ資料以上
ニ立派ナ成績ヲ漁村ニ示サレテ居ルコトヲ今
明示サレテ實ハ有難ク思フノデスシ、私共ノ
調ベタ所ニ依リマスト、三陸地方ノ漁業資
金ノ狀態ナドヲ調べテ見マスト、殆ド漁村
デアル、貧漁村程實ハ產業組合ニ御迷惑ヲ
掛ケテ居ル、三千圓、六千圓、中ニハ一万
七千二十七圓五十二錢ナント云フ金ヲ岩手
邊リデ借リテ居ッテ、產業組合ガ今度ハ弱リ
切ッテ居ルノデス、サウ云フ實例ガアル、岩
手縣、宮城縣、福島縣ナドニ付テ見ルト
隨分澤山アル、斯ウ云フヤウナコトヲ考ヘ
テ見テ、モウ一ツピント頭ニ來ルコトハ、
例ノ石油ノ問題デス、是ハ度々引合ヒニ出
シテ三宅君ニ御氣ノ毒ダガ、西川君ガ腹ヲ
切ラナケレバナラヌゾト言ハレタヤウナ間
題ガアル、私共ガ聞イテ見ルト、漁業組合
聯合會デ買ッテ居ルモノハ產業組合縣聯合
會ヲ通ジテ買ッテ居ルモノヨリモ高イ、高イ
筈デス、「ライジングサン」トカ、日本石油
トカ、三井、三菱邊リトカカラ直接買ハナイ
デ、漁業組合聯合會ハ第二段、第三段ノ「ブ
ローカー」カラ買ッテ來ルノデスカラ、同ジ
モノデアレバ產業組合、言換レバ全購聯、
全販聯ノ方ノ組織ヲ持ッテ居ルモノハ安イ
モノヲ高イ時ニ使ッテ居ラレテ、同時ニ漁民
ハ高イモノヲ買ッテ居ルト云フ缺陷ハ、ハッ
キリト此戰爭以來現ハレテ來テ居ル、是ハ
「タンク」ナンゾ少々造ッテモ補ヘヌコトデ
ス、何故ナラバ言換ヘレバ、漁業協同組合
ガ產業組合ノヤウニ、四ツノ所謂信用、利
用、販賣、購買ト云フ風ナ全神經的ナモノ
ヲ持ッテ居ナイカラ斯ウ云フコトニナル、ダ
カライッソ今後漁業協同組合ノ奬勵ト產業
組合ノ奬勵ト云フ風ニ區別セズシテ、漁業
協同組合其モノニ產業組合ヲ思切ッテ代行
サセルト云フ風ナ決意ヲ持タレマセヌカ、
是ハ大臣ニ大乘的ナ見地カラ、-此頃ノ
大臣ノ使フ好キナ言葉デアルガ、一ツ御考
願ッテ、出來ルモノカ、出來ナイモノカ、是
ガ一ツ、ソレカラ最後ニ日本ノ水產業、漁
業ノ狀態カラ言ッテ、何時カハ諸威ノ國立水
產銀行、卽チ「デン·ノルスク·スターツ·フィッ
シヤーバンク」ト云フヤウナ水產銀行ト
シテノ特殊銀行ヲ、日本デモ作ル必要ア
リト御考ニナリマセヌカ、戰爭中ハ無論出
來ヌデセウガ、サウデナク平和ノ狀態ニ歸ッ
タヤウナ時ニ、一體農林省ハ今カラ用意ヲ
スルヤウナ御意思ガアルカドウカ、此點ニ
付テ御尋ヲシタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=42
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043・有馬頼寧
○有馬國務大臣 漁業協同組合ノコトハ、
喜多サンモ能ク御承知ダト思ヒマスガ、漁
業協同組合ガ出來マシタ最初ニ、大體產業
組合ト、其內容ニ於テハ、殆ド同ジデアル
ト申上ゲテ宜イト思フノデアリマス、ソレ
ガ所謂漁村ト云フモノハ、或ル特殊ナモノ
デアルトシテ、漁村ニ於ケル產業組合的ナ
仕事ヲスル爲ニハ、漁村協同組合ガ適當デ
アルト云フ意味ニ於テ、漁業協同組合ガ出
來タモノデアルト思ヒマスノデ、漁業協同
組合ヲ十分ニ發達サセ、之ヲ完備致シマス
レバ、產業組合ノ代行ヲ是非サセナケレバ、
不都合デアルト云フヤウナコトニハナラナ
イノデハ、ナイカト云フ風ニ考ヘルノデア
リマス、產業組合ガ、初メカラ申上ゲマシ
タヤウニ、其方ガ適當デアルト認メラレタ
所デハ產業組合ガ發達シテ居ルデアラウ
シ、協同組合ニ依ル方ガ適當デアルト思ハ
レル所ニハ協同組合ガ發達シテ居ルノデア
リマスカラ、ソレハ各〓其適當ナモノガ適
當ナ所ニ發達スルト云フコトデ宜シイノデ
アッテ、强ヒテ代行ヲシナケレバ不都合ガ生
ズルト云フ風ニハ、私ハ考ヘテ居ナイノデ
アリマス、第二段ノ點ニ付キマシテハ十分
ニ今後〓究ヲ致シタイト思ヒマスガ、只今
ノ所ハ纏ッタドウ致シマスト云フコトヲ御
答申上ゲルマデニハ至ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=43
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044・喜多壯一郎
○喜多委員 最後ニ御尋ヲシマスガ、-體體-
五百万圓程度ノ資本金增加デ宜シイカドウ
カ、是ハマア多々益〓辨ズデ、多ケレバ多
イ程宜イノデスガ、是デハ今ノ農村ノ窮乏
シ窮迫シタ金融ニ對シテハ、燒石ニ水ノヤ
ウナ狀態デハナカラウカト思フノデアリマ
スケレドモ、政府ノ御考ヲ一ツ聞カシテ戴
キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=44
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045・有馬頼寧
○有馬國務大臣 漁業金融ヲ產業組合中央
金庫ヲ通シテ行ヒマスニ付キマシテ、五百
万圓ノ增資ト云フコトデアリマスガ、是ハ
私カラ今更申上ゲルマデモナイト思ヒマス
ケレドモ、中央金庫ト致シマシテ、時ニハ
非常ニ資金ニ詰マリマシタ場合モアルコト
デアリマスシ、時ニハ又隨分金ガ剩ルコト
モアルノデアリマス、最近ハ餘裕金ガ大分
少クナッテ困ッテ居リマスガ、一時ハ隨分餘
裕金ガ多過ギテ困ッタ場合モアルノデアリ
やく、サウ云フ點ヲ色々考ヘテ見マスレバ、
中央金庫自體ト致シマシテモ、相當ノ金ガ
漁業方面ニ必要デアレバ、之ニ融通スル餘
力ハ十分アルト私ハ思フノデアリマス、五
百万圓ノ出資ヲ致シマスト云フコトハ、勿論
多キニ越シタコトハナイト思ヒマスガ、併
シ此際ソレ程多額ノモノデナクテモ、是ダ
ケノコトヲ致シマスレバ漁村ニ於ケル金融
ノ爲ニ、中央金庫トシテ相當ノ力ヲ伸バス
コトハ出來ルト云フ風ニ私ハ信ジテ居ルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=45
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046・喜多壯一郎
○喜多委員 是デ私ノ質疑ハ打切ッテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=46
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047・高木粂太郎
○高木委員 一寸關聯シテ簡單ニ御伺シマ
スガ、只今喜多君ノ御質問ニ對シマシテ、
大臣カラ沿岸漁業ノ調整ト云フコトニ付テ、
將來大イニ考慮シテ下サルト云フコトヲ承ッ
テ、私ハ非常ニ滿足スル者デアリマス、併
シ魚モ生物デアル以上ハ多ク捕レバ減ルト
云フコトハ已ムヲ得ナイノデアリマスガ、
本會議ノ時ニモ一寸申上ゲマシタケレドモ、
近來工業ノ發達、其他種々ノ關係カラ沿
岸漁業ガ衰頽スル、私ハ其資源ノ培養ニ努
メテ魚ヲ殖ヤスト云フコトニ、將來シテ戴
ケルト思ッテ滿足スルノデアリマスガ、豫算
ヲ見マシテモ、沿岸漁業振興費トシテ僅ナ
ガラ認メテアリマスケレドモ、アレバカリ
ノ金デハ迚モ廢頽シテ居ル所ノ沿岸漁業ノ
振興ハ望ミ得ナイノデアリマス、既ニ病膏
盲ニ入ッタヤウナ形ノモノニ對シマシテハ、
將來モット〓〓豫算ヲ增額シテ、此目的貫
徹ニ努メテ戴キタイト思フノデアリマス、
尙ホ元來沿岸漁業ノ衰頽ノ傾向ヲ來シマシ
タノハ-既ニ二十年前カラ沿岸漁業ハ
ポツ〓〓惡クナッテ來タノデアリマシテ、玆
ニ於テカ、私共唱ヘタノハ、沿岸漁業ハ成ダ
ケ守ッテ、大事ニシテ遠洋ニ進出スルガ宜イ、
簡單ニ言ヘバ、近キヲ守ッテ遠キノ魚ヲ捕ル
ト云フコトニ付テ、御願ヲ致シタノデアリ
きく、政府ニ於テモ遠洋漁業ノ奬勵ヲ相當
ナサレテ、今日ノ發達ヲ來タシタノデアリ
マスケレドモ、併ナガラ遠洋漁業ノ發達モ、
旣ニ私ハモウ目的ノ所謂角度マデ達シテ居
ルノヂヤナイカト思フ、或ハ行止ル時代ガ
近イノデハナイカト思フ、斯ウ云フコトヲ
考ヘマシタナラバ、ヤハリ遠洋漁業者ナド
ニ付テモ、相當ノ統制ヲ保ッテ、例ヘバ鰹、
鮪ナドニ付テモサウ無限ニ獲ルト云フコト
バカリ考ヘズニ、統制ヲ保ッテ欲シイト思フ
ノデスガ、サウ云フ意思ガアルカナイカ、
ソレヲ局長サンデモ宜シイガ伺ヒタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=47
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048・三宅發士郎
○三宅政府委員 遠洋漁業ノ或種ノモノノ
統制ノ御話デアリマシタガ、是ハ或種ノモ
ノニ付キマシテハ或ル特種ノ境界ガアリマ
シテ、其境界ヲ自發的ニ統制スベキヤ否ヤ
ト云フコトニ付テ、連續三囘ニ亙リマシテ
議ヲ練ッテ居ル次第デアリマス、私トシテハ
或種ノモノニ付キマシテハ、或ル程度ノ統
制ヲ加ヘル必要ガアルト思ッテ居ルト云フ
コトダケヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=48
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049・高木粂太郎
○高木委員 元來漁業ト云フコトハ、漁業
法第一條ニ、漁業トハ營利ノ目的ヲ以テ水
產物ヲ採取スルコトガ漁業デアルト云フ定
義ヲ下シテアルガ、一體魚ヲ獲ルコトバカ
リガ漁業デアルト云フコトハ、私ハ大ナル
間違ヒデアラウト思フ、斯ウ云フ考ヲ以テ
各漁業組合等ニ於テハ既ニ組合デ繁殖保護
ノ途ヲ講ジテ、悠久ノ產業トシテ長ク沿岸
魚族ヲ保タシメル、サウ云フヤウニ考ヲ決
メテヤッテ居ルノデアリマス、全ク漁業ト云
フコトハ魚ヲ獲ルコトバカリガ漁業デハナ
イノデアリマス、長ク獲ル、卽チ農家ニ於
テ肥料ヲ施シテ田畑ヲ瘦セサセナイヤウニ
スルノト同ジ意味ニ於テ、漁業組合等ニ於
テハ漁場ヲ愛護シテ居ルノデアリマス、然
ルニ近來種々ノ關係カラ-諄ク同ジコト
ヲ繰返スヤウニナリマスルカラ申上ゲマセヌ
ケレドモ、種々ノ關係カラ、汚水ナドノ流
出ノ爲ニ漁場ヲ幾ラ沿岸漁業者ガ愛護シテ
干、第三者ノ色々ナ關係デ漁族ハ減少スル
ノデアリマス、此點ニ付テ沿岸漁業ヲ御考
ニナルナラ、ドウゾ長ク獲レルヤウニ沿岸
ノ稚魚、幼魚ヲ保護スルコトヲ主眼トシテ
ヤッテ貰ヒタイト云フコトヲ希望致シマシ
テ私ノ質問ハ是デ終ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=49
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050・濱地文平
○濱地委員 甚ダ簡單デ幼稚ナ質問デアリ
マスガ、漁船保險組合ニ對スル政府ノ補助
奬勵ニ付テ簡單デ宜シイカラ具體的ナ御說
明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、次ニ遠
洋漁船ノ遭難ハ頻々トシテアルノデアリマ
シテ、私モ統計ヲ取ッタ譯デハアリマセヌ
ケレドモ、私ノ考ヘルノニ遠洋漁船三百艘
ニ對シテ一年ニ一件位ハ遭難ガアルヤウニ
思フノデアリマス、此時ニ何時モ私共ハ鎭
守府ヘ行キマシテ遭難漁船ノ搜査方ヲ願フ
ノデアリマス、而シテ又海軍ノ方デモ相當
ノコトヲヤッテ吳レルノデアリマスルケレド
干、一々行キマシテ一々御願ヲシテ不徹底
ニ濟マスト云コトガ多クゴザイマスルノデ、
此際遠洋漁船遭難ノ時ニ、其艘査方ヲ
ツ農林省ノ方カラ海軍ノ鎭守府カ何カト相
談シテ能クハッキリトシタ方法ヲ決メテ戴
ク譯ニ行カヌカドウカト云フコトヲ承ッテ
置キタイノデアリマス
ソレカラ漁船ノ補助金下付ニ關スル點
デアリマスガ、其時期ニ付テ政府ノ方デ
ハドウ云フ風ニ取扱ッテ下サッテ居ルノ
デアリマセウカ、大體漁船機關ノ補助金
ト云フモノハ、當業者ガ是等ノ資本ガ不
足ナ爲ニ補助ヲ申請スルノデアリマシ
テ、先程御質問ノアッタ仕込金ノ問題ナ
ンカモ是カラ主ニ來ルノデアリマスガ、此
補助金ノ下付ト云フコトニ付テ、一日モ速
ク下付セラレルヤウニシテ戴キタイト思フ
ノデアリマス、然ルニ船ガ出來上ッテシマッ
テ、機關ガ据付ケラレテシマッテ、ソシテ船
代金モ機關ノ代金モ拂ッテシマッタ後デナケ
レバ、補助金ヲ戴ケナイト云フヤウナ補助
ノヤリ方ハ、目的ト非常ニ遠ザカルノデナ
カラウカト思フノデアリマス、又全部ヲ一纏
メニシテ置イテカラ補助金ヲ下付スルト云
フヨリモ、一艘ヅヽ處理シテ戴ケル方ガ宜
イノデナカラウカト思フノデアリマスガ、
之ニ付キマシテハ、船ヤ機關ノ調査ナドモ
必要デアルノデ遲レル關係モアルデアラウ
ト思ヒマスルケレドモ、水產局ノ方デ役人
ガ足リマセヌガ爲ニ、此檢査ニ行ク時機ヲ逸
スルコトモ間々アルヤウデゴザイマスルカ
ラ、斯ウ云フ船體檢査ヤ機關檢査ニ付キマ
シテハ、イッソノコト縣ノ方ヘ委任シタ方ガ
早クナルノデナカラウカト思フノデアリマ
スガ、此邊ノ御意見ヲ承ッテ置キタイト思
フノデアリマス
ソレカラ沿岸漁業ノ衰微ノコトデア
リマス、先程カラ度々前ノ質問者カラ
モ御話ガアッタコトデアリマスガ、私ノ
村ハ沿岸漁業ガ衰微シテ來マシテ、純漁夫
ノ半分ハ土方ヲシタリ漁夫ヲシタリシテ居
ル有樣デアリマス、沿岸魚族ガ「トロール」船
其他打瀨網ガ盛ニナルニ隨ッテ、十年バカ
リ前カラ長足ノ早サデ魚族ガ減ッテシマッタ
ノデアリマス、魚族ガ減ッタ譯ハ打瀨網ニ因
ルモノデアルコトハハッキリ言ヒ得ラレル
ノデアリマス、私ノ考デハ魚族ノ減ルノハ
決シテ自然的ニ減ルモノデハナイト思ヒマ
ス、或ル年ニ依リマシテハ自然ニ減ルコト
モアリマセウガ、長キ間ニハ決シテ自然的
ニ減ルモノデハナイノデアリマス、是ハ打
瀨網ニ因ッテ減ッテ來タモノト想像スルノデ
アリマス、或ル漁村ニ行キマスト、許可ヲ
取ッテ居ナイデ打瀨網ヲヤッテ居ル、詰リ機
船底洩網ヲ生業トシテ居ル村ガアリマス、
全村擧ッテヤッテ居ル、今之ヲ取締ッテ絕對的
ニ出來ヌヤウニシタナラバ、直チニ一村ノ
生業ニ關係シマスシ、サリトテ規則ガアル
以上ハ之ヲ見逃シテ置クコトモドウカト思
ヒヨス是ハ三重縣ノ沿岸ニ行クトソレガ
アルノデアリマスガ、是ハ水產當局トシテ
先ヅ第一ニ解決シテ戴カナケレバナラヌコ
トデアルト思フノデアリマス、是ハモウ十
數年間問題ニナッテ居ルコトデアルニ拘ラ
ズ、マダ解決シテ居ナイノデアリマス、之
ニ對スル御答辯ヲ局長ノ御意見デ宜シイカ
ラ承ッテ置キタイノデアリマス、ソレカラ
沿岸漁家ノ衰微ヲ防グ方法ニ付キマシテ、
色々意見ハアリマスケレドモ、私ハ網ノ目
ヲ制限スル必要ガアルノデハナカラウカト
思フノデアリマス、「トロール」船ナドモ五箇
年間ニ半減スルト云フ政策モ結構デアリマ
ス、取締方法モ結構デアリマスケレドモ、
徒ラニ消極的政策ノミヲ爲スコトハドウカ
ト思フノデアリマス、イッソノコトヤラセル
モノハヤラシテ、網ノ目ニ制限ヲ與ヘテ、
網ノ目ヲ大キクシサヘスレバ、小サナ魚ハ
逃ゲ得ラレルノデアリマスケレドモ、今日ノ
如キ狀態デアリマスルト、生レタバカリノ
魚ノ子モ全部取去ラレテシマフノデアリマ
スルカラ、是ハ宜シク網ノ目ニ付テ一ツ御
〓究セラレタイノデアリマスガ、其意思ア
リヤナシヤト云フコトヲ承ッテ置キタイト思
ヒマス、ソレカラ次ニハ鰹節ニ付テデアリ
マスガ、鰹節ノ製品ニ付キマシテ國營檢査
ヲシテ、サウシテ此製品ニ等級ヲ付ケルト
云フヤウナ方法ヲ御考ニナッテ居ルカドウ
カト云フコトヲ聞キタイノデアリマス、鰹
節程品物ニ等差ノ多イモノハナイト思ヒマ
ス、一等カラ百等マデモ私ハアルト思ヒマ
ス、而モ其鰹節ノ善惡ヲ見分ケルト云フコ
トハ、マア專門家デナイコトニハ、需要者
ニハ絕對ニ見分ケル眼識ガナイト思フノデア
リマス、東京ノ一流ノ「デパート」ヘ行ッテ、
賣ッテ居ル鰹節ヲ見マシテモ、極メテ惡イ四
等品、五等品ト云フヤウナモノサヘモ出テ居
ル場合ガアルノニ驚カサレルノデアリマス
ガ、此鰹節ノ需要ガ段々減ッテ來ルヤウニ思ヒ
マス、減ッテ來ナイニシマシテモ、鰹節ノ製
品ニ對シテ信用ガナイ爲ニ賣レ惡イ、詰リ
安ク賣ラナケレバナラナイヤウナ狀態ニナッ
テ居ルノデアリマスガ、ソレハモウ其通リ
デアリマス、本當ヲ言ヒマシタラ、鰹節ト
云フモノハ四遍モ五遍モ黴ヲ附ケテ製品ス
ルモノデアリマスガ、今日鰹節ニ五番黴ト
云ウテ、黴ヲ五遍モ附ケテ製造シタ鰹節ハ、
先ヅ日本國中ニハナイト思フノデアリマス、
多ク黴ヲ附ケテモ三遍位附ケルナラバ餘程
ノコトデアリマス、大抵ハモウ一遍モ黴附ケ
セズニ賣ッテ居ルノガ多イノデハナカラウ
カト思フノデアリマス、斯ウ云フ粗製濫造
ヲ致シマスガ爲ニ、賣ルノニモ賣リ惡ウゴ
ザイマスシ、買フノニモ買ヒ惡ウゴザイマ
シテ、鰹節ノ商賣ハ活潑ヲ缺クノデアリマ
ス、之ニ向ッテ政府ガ製品ノ檢査ナドヲ致シ
マシテ、サウシテ製品ニ對シテ保證ヲスル
ヤウナ方法ヲ御執リニナッタナラバ、鰹節製
造業者モ商賣ガシ易クナッテ助カルデアラ
ウト思ヒマス、製造業者ガ助カレバ漁業者
ガ助カルノデアリマス、製造業者ガ助カラ
ナイガ爲ニ、漁業者モ折角釣ッテ來タ鰹ヲ
安ク投賣セネバナラナイヤウナコトガ多ウ
ゴザイマスガ、斯ウ云フ方面ニ對シテドン
ナ御意見ヲ持ッテ居ラレルカト云フコトヲ
承ッテ置キタイノデアリマス、ソレカラ各種
漁業權ニ對スル許可、漁業權ノ申請ヲ致シ
マシテモ、許可ガ大變遲レルノデアリマシ
テ、譬ヘテ言ヒマスルト、遠洋漁業權ナド
ヲ御願シマスルト、早クテ四年、中ニハ十
年モ掛カルノモアリマス、是ハナゼサウ遲
イノデアルカト聞キマスルト、人ガ少イシ
旅費ガナイシト云フヤウナコトヲ當局ハ言
ウテ居ルヤウデアリマス、ヤハリ許可スル
ノニハ實地ニ調査ヲシナケレバナラナイノ
デアリマスガ、ソレハ日本國中カラ澤山願
出ガアルノデ調査ヲシニ行ク金ガナイバカ
リデナク、人ガナクテ弱ッテ居ル、ダカラ氣
ノ毒デアルケレドモ、早クテ先ヅ四年待ッテ
貰ハネバナラヌ、斯ウ云フヤウナ挨拶ヲ聞
クコトガアリマスガ、是等ニ付キマシテド
ウ云フ御考ヲ持ッテ居ラレルカヲ聞キタイ
ノデアリマス、大體水產方面ニ關スル總テ
ノ法令、規則、施設全部ガ他ト比ベマシテ
立遲レテ居ルト云フコトハ、是ハドナタモ
認メテ居ル所デアリマスガ、何カ政府ニ於
キマシテ少シク豫算ヲ取ッテ漁村ノ實際ヲ
本當ニ眞面目ニ調査〓究シテ、アヽ云フ間
違ッタ統計ナドヲ餘計集メズニ、本當ニ間違
ノナイ〓究ヲシテ、一ツ水產國策ヲ立テヨ
ウト云フヤウナ心持ヲ持ッテ居ラレナイモ
ノデセウカ、御奬メスル意味ニ於キマシテ、
御意見ヲ聞イテ置キタイノデアリマス
ソレカラ是ハ農林省ノ方ニ申上ゲテ宜イ
ノカドウカ知レマセヌガ、參考トシテ御話
ヲ申上ゲタイノデアリマス、詰リ漁民ノ生
活ト云フコトニ對シテ先程喜多サンカラノ
質問モアリマシテ、大臣ガ華族デアラセラ
レルカラ、ドウトカ云フ御話モアリマシタ
ケレドモ、マアサウ云フ偉イ人ハ漁民ノ生活
ヲ知ラヌノガ當リ前デアリマシテ、知ッテ居
ルト云フコトハ無理ナノデアリマス、私ハ漁
民ニ同情ノアル大臣デアレバ、ソレハマア適
當デアルト私ハ思フノデアリマシテ、此意
味ニ於キマシテ現農林大臣ハ、吾々漁民カ
ラ見テ」適當デアルト斯ウ思フノデアリマ
ス、何モ知リマセヌノデ、是カラ一生懸命
ニナッテ〓究シタイト云フ、飾ラザル御葉
ニ對シテ、吾々敬意ヲ表スルノデアリマシ
テ、知ラヌ癖ニ知ッテ居ルヤウナコトヲ言
ウテ、色々ナ答辯ヲセラレルヨリモ、其方
ガ一番宜イト思フノデアリマス、然ラバ此
意味ニ於キマシテモ、私ノ言フ調査〓究ノ
機關ヲ設ケラレマシテ、サウシテ吾々漁民
ノ聲ヲ能ク聞イテ戴イテ、水產上ノ國策ヲ
御立テニナル御意思ガアリヤナシヤ、以上
簡單デアリマスガ、御答辯ヲ得レバ幸ヒダ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=50
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051・三宅發士郎
○三宅政府委員 一番最後ノ御質問ハ大キ
ナ問題デアリマスカラ、農林大臣カラ御答
ヲシテ戴キマス、前數項ノ點ニ付テ簡單ニ
御答辯申上ゲタイト思ヒマス、第一ハ漁船
保險ノ制度ニ付テ、ドウ云フ手段方法ヲ
執ッテ居ルカト云フヤウナ御話デアリマス、
是ハ御承知ノ通リ地方ニ漁船保險組合ト云
フモノヲ作ラセマシテ、ソレガ元請保險ヲ
シマシテ、國ガ再保險ヲスルト云フ形ニナッテ
居リマス、現在ニ於テハ組合ガ七ツ出來マ
シテ、發起ノ認可ヲシタモノガ四ツアルト
云フ狀態デアリマス、經費ト致シマシテハ
指導員ノ補助ナリ、先程申シマシタ組合ノ補
助ヲ合セマシテ、六万四五千圓位ノ程度デア
リマス、本年度卽チ昨年ノ六月カラ行ハレ
タモノデアリマシテ、進ミ方トシテハ過去ノ
保險ヨリモ順調ニ進ンデ居リマスコトダケ
ハ、申上ゲラレルト考ヘマス、ソレカラ第
二ハ遠洋漁船ノ遭難ニ對シテ、海軍鎭守府
其他ト連絡ヲ取ッテ、モット便宜ヲ與ヘタラ
ドウカト云フヤウナ御質問デ、洵ニ御說ノ
通リデゴザイマス、斯ウ云フコトガゴザイ
マスト、農林省ニモ船ヲ數隻持ッテ居リマス、
サウ云フモノヘ無線デ連絡ヲ取リマシテ、
出來ルダケ現在マデ致シテ居ッタノデアリ
やく、尙ホ斯ウ云フ方面ニ付キマシテモ、
モウ一層念ヲ入レタイト考ヘテ居リマス、
ソレカラ第三點ト致シマシテハ各種ノ補助
金殊ニ漁船ナリ機關ナリノ補助金ノ下付
ガ遲レルカラ、早クシテハドウカト云フ御
話デアリマスガ、是モ隨分前ヨリモ餘程昨
年來早クナッテ居ルコトト、私ハ考ヘテ居リ
ママ、唯昨年ハモノニ依リマシテ實施期ガ
非常ニ遲レマシタ關係上、御迷惑ヲ掛ケタ
點モアラウト思ヒマス、此點ハ出來ルダケ
改メタイト存ジマスルシ、檢査ノ一部ハ實
ハ縣ニ委任シテ居リマスルガ、例ヘバ「エ
ンヂン」ノ如キ專門家ハ縣ニゴザイマセヌ
ノデ、或種ノモノハ出來マスルガ、或種ノ
モノハ出來ナイ、併シ成ベク勉强サシテ委
任ノ部分ヲ多クスルヤウニ、現ニヤッテ來テ
居リマス、ソレカラ其次ハ打瀨ノ問題デア
リマス、無許可ノモノガ發動機ヲ付ケタ打
瀨網ヲヤッテ居ルノハドウ云フ譯カ、之ニ
對スル處置ハドウスルカト云フ御話デアリ
マスガ、是ハ實ハ大變難カシイ問題デアリ
マシテ、御說ノ通リ今直グ之ヲ禁止致セ
バ、直チニ路頭ニ迷フノデアリマス、ト言ッ
テ十數年前カラ禁止シテ居ル違犯漁業ヲ、
ヤッテ居ルノデアリマス、是等ニ付キマシテ
ハ惡イ事ヲヤッテ居ル方ノ者共ト、其監督ヲ
致シテ居リマスル府縣トニ於キマシテ、種々
ノ對案ヲ考ヘテ見テ、如何ニスベキカト
云フコトノ相談ヲスベキモノノ筋合ノヤウ
ニ考ヘルノデアリマシテ、農林省ト致シマ
シテ斯ウシタ方ガ宜イト云フコトハ、守
此際申上ゲ兼ネマスカラ、此席デ申上ゲヌ
ト云フコトニ御諒承願ヒタイト思ヒマス、
ソレカラ網目ノ制限、御尤ナ御議論デアリ
マシテ、現ニ昨年瀨戶內海ノ一部ノ漁業規
則ヲ改正シマシタ時ニモ、此網目ノ制限ヲ
一部加ヘマシタ、色々ノ漁法、ソレニ連レ
テ網ノ種類モ多イノデアリマスカラ、是等
ニ付キマシテ一ツ尙ホ一層〓究ヲ進メタ
イト存ジテ居リマス、第五點ト致シマシテ
ハ、鰹節ノ等級ニ關スル國營檢査ヲスル意
思ナキヤ否ヤト云フ御考デゴザイマスル
ガ、是ハ先程高木サンカラ御話ノ、寧ロ鰹
漁業ノ統制ト云フモノヲ如何ニスベキカト
云フコトノ方ガ、私ハ先決問題デアラウト
考ヘテ居リマス、其方ヲ決メテカラノ問題
ニ致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、
左樣ニ一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、ソレカラ專用漁權バカリデハゴザ
イマセヌ、外ノ漁權ノ免許ナリ許可ト
云フモノガ、非常ニ遲レルト云フコトヲ仰
シヤイマシタコトモ御尤デアリマシテ、實ハ
人費用ノ關係デ、專用漁權ノ如キ漁業組
合權利ノ主體ヲ成スモノノ方針ガ、未
調査ノ儘取敢ズ更新シナケレバナラヌト云
フコトデ、未調査ノ儘更新免許ト云フ印ヲ
捺シテ、今迄デモヤッテ居ル次第デ、甚ダ申
譯ノナイ次第デアリマス、出來ルダケ人員
ヲ繰合セマスヤウニ致シマシテ、又足ラナ
イ所ハ大事ナコトデアリマスカラ、新シク
豫算ヲ要求致シマシテ、現在ノヤウナ遲延
ヲ避ケナケレバナラヌト考ヘテ居ル次第デ
アリマス、私カラ申上ゲルコトハソレダケ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=51
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052・有馬頼寧
○有馬國務大臣 只今御尋ニナリマシタ水
產國策確立ニ關スル御質問ニ對シマシテ、
簡單ニ御答ヲ申上ゲマス、從來トテモ水產
ノ關係各方面ノ意見ヲ聞キマシテ、又色々
ナ會合ニ於キマシテ、ソレ等ノ意見ヲ十分
ニ聽取致シマシタ、農林省ニ於テモ十分ニ
〓究ヲ致シマシテ、從來水產ニ關スル色々
ナ政策ヲ實行シテ參ッタノデアリマス、併シ
只今御述ニナリマシタヤウニ、私共モ決シ
テ是ガ十分デアルトハ考へテ居リマセヌノデ、
今後特ニ機關ヲ設ケルト云フヤウナコト
ニ付キマシテハ、今ハッキリシタ事ヲ中上ゲ
ラレマセヌガ、日本ノ水產國策ヲ確立スル
爲ニ十分ニ〓究ヲシテ、ソレヲ立テナケレ
バナラヌト云フ必要ハ、十分ニ感ジテ居ル
ノデアリマス、附加ヘテ申上ゲマスガ、農
林省ノ色々ナ政策ガ農產物ニシテモ水產物
ニシテモ、又林產物ニシマシテモ、物ガ澤
山出來テ、ソレガ値段ガ相當ニ保テヽ、利益
ガアレバ宜イト云フ、詰リ物ヲ對象トシテ
致シテ參リマスコトガ、從來非常ニ主デア
リマシタ、勿論人ノ問題モ蔑ロニシテ居ッタ
譯デハアリマセヌガ、稍〓物ノ方ニ重キヲ
置イテ總テガ考ヘラレテ來タト思フノデア
リマス、最近ニ至リマシテ之ヲ作リマスル
モノモ人間ヲ十分ニ保護シテ、其人々ノ幸
福ヲ圖ラナケレバ、ヤハリ物ノ生產モ出來
ナイト云フ意味ニ於キマシテ、人ノ方面ニ
モ相當ノ力ヲ入レナケレバナラヌト云フコ
トハ、特ニ考ヘラレテ參ッタト思ヒマス、サ
ウ云フ場合ニヤハリ數ニ於テモ又地域ニ
於テモ、最モ主要デアル所ノ農村ガ、ヤハリ
一番早ク力ヲ入レラレルヤウニナッタト云
フコトハ、是ハ已ムヲ得ナイ傾向ダト思フ
ノデアリマス、農村ニ關シマスル政策ガ、
稍〓農村ノ振興ト申シマスカ、農民ノ救濟
ト申シマスカ、サウ云フヤウナ問題ニ付テ
ノ主ナ事柄ガ、順々ニ解決サレテ參リマシ
テ、今囘ノ農地調整法ナリ、又農業保險ナ
リ、肥料ノ對策ナリ、サウ云フヤウナコト
ガ達セラレマスレバ、米ニ關スルコトトカ、
或ハ蠶絲ニ關スルコトトカ、色々ナ主要ナ
ル農村關係ノモノハ、大體片付クノデハナ
イカト思フノデアリマス、隨テ今後ハ農林
省ノサウ云フヤウナ方面ノ政策ト云フモノ
ハ、主トシテ漁村及ビ山村ノ方面ニ向ケラ
レルト云フ結果ニナルト私ハ思フノデアリ
マツ、又サウシテ行カナケレバナラヌヤウ
ニ考ヘマス、隨テ日本ノ海外貿易ノ關係カ
ラ言ッテ、遠洋漁業等ヲ盛ニ致シマシテ、水
產物ノ多獲ヲ圖リマスト同時ニ、沿岸漁村
ノ繁榮ヲ圖ッテ、ソコニ居住スル所ノ漁村
ノ人々ノ幸福增進ト云フコトヲ、今後大イ
ニ力ヲ入レナケレバナラヌト考ヘテ居ルヤ
ウナ次第デアリマス、ソレニ付キマシテ御
意見ノゴザイマシタヤウナ國策ヲ-今後
ノ方針ヲ決定スル爲ニ何等カノ方法ヲ執リ
タイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=52
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053・青山憲三
○靑山委員長 森君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=53
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054・森幸太郎
○森(幸)委員 極ク簡單デアリマスガ、幸ヒ
大臣ノ御出席ガアリマスカラ、此機會ニ御
尋スルコトヲ得マスコトハ、洵ニ仕合セデ
アリマス、農山漁村ト一口ニ言ヒマスルガ、
今日迄ノ狀況ハ山村、漁村ト云フモノヲ、
國策ノ上カラ顧ミル餘地ガナカッタノデハ
ナイカト思フノデアリマス、成程今大臣ノ
御話ニナリマシタヤウニ、農村ニ對スル有
ユル施設ガ著々ト施行セラレ、山村方面ニ
對シマシテモ其施設ノ二三ガ、實現スルヤ
ウニナリマシタガ、獨リ漁村ニ對シマシテ
ハ今日マデ放任サレテアッタ、決シテ國策ノ
上カラ顧ミナイト云フノデハナカッタノデ
アリマセウガ、漁村ノコトヲ考ヘル暇ガナカッ
タノト、山村、漁村ト云フモノガヤカマシク叫
バレタ爲ニ、後廻ハシニナッタヤウニモ考ヘ
ルノデアリマス、所ガ今日マデ捨テヽ置カ
レタガ爲ニ、今ヤ病膏盲ニ入リマシテ、救
濟スルコトノ出來得ナイヤウナ狀態ニ、漁
村ガ置カレテアリハシナイカト思フノデア
リマス、今囘御提案ニナッテ居リマス法案ノ
如キハ、漁村ニ對シマシテモ、產業組合ノ
系統ニ依ッテ金融ノ途ヲ開イテヤラウ、漸ク
金融方面カラ漁村モ一人前ノ大人トシテ認
メラレタヤウナコトニナッタノデアリマス、
洵ニ漁村トシマシテハ、成年期ニ達シタ如
クニ、光榮ニ考ヘルノデアリマスガ、遺憾
ナガラ此時節ニ順應致シマスニ付テハ、色
色ナ條件ガソコニアルノデアリマス、而モ
漁村ハ旣ニ行詰ッテ居ル、果シテ今囘ノ產業
組合法ヲ改正シテ、金庫ヲ施設致シマシテ、
之ヲ利用スルコトガ出來ルデアラウカドウ
カト云フコトヲ、私ハ心配スルノデアリマ
ス、今囘御奬勵ニナッテ居ルノハ、此金庫ヲ
利用スルモノハ、漁業協同組合、漁業組合
聯合會ト云フモノヲ組織スルコトガ條件ト
サレテ居ルノデアリマスルガ、漁業組合改
組ノ結果ハ、四千ノ漁業組合ノ中漸ク千七
百デアリマス、約四割ガ改組サレテ居ルノ
デアリマスルガ、此改組サレタ漁業協同組
合ト云フモノガ、政府當局ガ御期待シテ居
ラレタ如クニ、眞ニ漁業協同組合ト云フモ
ノノ本然ノ働キヲシテ居ルカドウカト云フ
コトヲ私ハ伺フノデアリマス、漁業協同組
合ト一〓ニ申シマシテモ、隨分力ノ大キイ
組織ノ下ニ出來テ居ル組合モアリマスシ、
又漸クニシテ協同組合ノ仲間ニ、辛フジテ
入ッタト云フヤウナ組合モアルノデアリマ
ス、現ニ私ノ縣ノ如キハ、特殊ナル事情ニ
置カレテアリマスルガ、極ク僅カ一箇年ノ
漁獲高ガ一万五六千圓位ノ程度、或ハ一万
圓ニ滿タナイヤウナ漁業組合ガ、農林省ノ
方針ニ基イテ、サウシテ出資ヲ致シテ、其
協同組合ニ改組致シテ居ルノデアリマス、
コンナ微々タル協同組合ガ、果シテ本當ニ
農林省ノ期待サレテ居ラレル、漁業協同組
合ノ本領ヲ發揮スルコトガ出來ルデアラウ
カト云フコトヲ、私ハ心配スルノデアリマ
ス、又一面カラ考ヘテ見マスルナラバ、假
令小サイ漁業協同組合ニ致シマシテモ、農
林省ノ奬勵ノ方針ニ基イテ、斯ウ云フ組織
ヲ改メ得ル所ノ力ノアル漁業者ハ、謂ハヾ
相當力ノアル漁業者デアリマス、自力デ行
ク所ノ能力ヲ持ッテ居ル所ノ漁業者デアリ
やっ、トコロガ今日ノ多數ノ漁民ハ、迚モ
サウ云フ組織ヲ作ルコトハ出來得ナイ、農
林省ガ折角御奬勵ニナリマシテモ、尙ホ六
割ト云フモノハ改組シ得ナイ實情ニ置カレ
テ居ル、斯ウ云フ力ノ無イ漁業者コソ、眞
ニ私ハ救ッテ行カナケレバナラヌ漁業者デ
ハアルマイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、
卽チ大乘的ニ力ノ弱イ多數ノ漁業者、漁民
ヲ救ッテ行クト云フコトデナケレバ、私
ハ折角ノ施設モ、唯上級ノ力ノアル者ニ更
ニ助成スルト云フコトニ終リハシナイカト
思フノデアリマス、此點ニ付キマシテ特ニ
農林大臣ノ御所見ヲ承リタイト思フノデア
リマスル、尙ホ先程喜多君ノ御質問ニ依リ
マシテ、三宅政府委員カラ御答辯ニナリマ
シタガ、私ハ三宅政府委員ノ御立場ヲ考ヘ
マスルト、ハッキリト御答ヲナサルコトガ出
來得ナイ事情ニ居ラレルノダラウト、私ハ
御察シスルノデアリマス、一體今日マデ農
林省ハ水產業ニ對シテ甚ダ水臭イ施設デア
リマス、普通ノ農事ニ於キマシテモ、或ハ
治山、治水ノ林業方面ニ於キマシテモ、相
當ノ施設ヲ以テ、之ヲ今日マデ引伸バシテ
來ラレタノデアリマスガ、此水產業ニ對シ
マシテハ-私ハ全然施設ガナイトハ申シ
マセヌ、相當ノ機關、組織、機構ヲ備ヘテ
居ラレルノデアリマスルガ、私ハ餘リ繼子
扱ヒヲシテ居ラレルヤウナ感ガスルノデア
リマス、今日水產業ノ立場ハドウデアルカ、
是ハ過去ノ神代ノ時代ノ漁業ハ知リマセヌ
ガ、我ガ日本ノ現在又將來ヲ考ヘマスト、
此漁業ト云フモノ、水產ト云フコトガ、非
常ニ我ガ國力ノ進展ニ偉大ナル責任ヲ持ッテ
居ルト思フノデアリマス、トコロガ今日マ
デ此水產ト云フコトハ、自然ニ獲レテ自然
ニ委シテ置ケバ宜イト云フ風ニ放任サレテ
居ッタノデハナイカ、ソレガ稍、資本主義的
ニ營ムヤウニナッタ結果、色々ナ助成ガ行ハ
レタノデアリマスルケレドモ、殆ド不徹底
デアル、不徹底デアリマスルカラ、當業者
ハ殆ド國ノ力ニ依ラズシテ、自分ノ命ヲ
投出シテ、自分ノ力デ活躍シテ、今日ノ水產
業マデ引摺リ持ッテ來タ今日デアルマイカ
ト云フコトヲ、私ハ考ヘサセラレルノデア
リマス、トコロガ最早自分ノ力ニ依ッテ、此
業ヲ支ヘルコトガ出來得ナイヤウナ四圍ノ
環境ニ置カレテ居ルノデアリマス、先程喜多
君ノ御話ニナリマシタ通リ、沿岸漁業ト云
フモノハ殆ド絕滅デアリマス、此沿岸漁業ノ
絕滅ニ對シマシテハ、世ノ中ノ經濟關係モア
リマセウガ、私ハ考ヘマスノニ、寧ロ他カラ
來タ原因ニ依ッテ沿岸漁業ト云フモノガ荒ラ
サレタモノデアル、卽チ人口ノ增殖ト、近代
科學ノ發達ニ依ッテ、斯ク沿岸漁業ト云フモ
ノガ、不毛ノ地ニ陷ッテシマッテ居ル、是八
農林當局モ御認メニナッテ居ルト思ヒマス、
而モ此近代科學ノ害毒ニ依ッテ、沿岸ガ荒廢
ニ歸シテ居ル、一旦荒廢ニ歸シマシタナラ
バ、全然之ヲ回復スルコトガ出來得ナイノ
デアリマス、而モ此被害ニ對シテ、何等對
策ヲ國家トシテ講ゼラレテ居ラナイ、ソレ
デアリマスルカラ、段々魚族ガ沿岸ヲ遠ザ
カッテ、爲ニ遠洋ニ出漁シナケレバナリマセ
ヌガ、遠洋漁業ハ微力ナル當業者ノ敢テ企
テ及ブヤウナ仕事デハナイノデアリマス、
大資本ヲ持ッテヤラナケレバ出來得ナイ漁
業デアリマス、此沿岸漁業ガ廢滅ニ歸セン
ト致シテ居リマスル其原因ヲ考ヘマスルノ
ニ、私ハ先程申シマシタ近代科學ノ發達ニ
依ッテ、サウシテ此沿岸ガ荒廢ニ歸シテ居ル
ノデアリマス、之ヲ何トカシテ救ハナケレ
バナラナイ、ニモ拘ラズ今日我ガ國策トシ
マシテハ、此近代科學ヲ益,發達助長セシメ
テ、サウシテ此發達ニ依ッテ犧牲トナッテ居
ル原始產業デアル所ノ、此漁業ノ荒廢ヲ敢
テ顧ミナイ、內務省ニ於テモ此鑛毒、惡水、
汚水ト云フ問題ニ對シテ、何等ノ對策モ講
ジテ居ラレナイ、斯ウ云フ狀況デアリマス
ルカラ、力弱キ漁業者ハ、獨リ業ヲ失フヨ
リ仕方ガナイノデアリマス、サウシテ色々
原因モアリマセウガ、此魚族ノ價格ト云フ
モノハ、需給關係ニ支配サレルコトハ勿論
デアリマスルガ、水產ノ漁獲ト云フコトガ
季節的デアル、サウシテ是ハ殆ド天然ノ
力ニ因ッテ增殖スルモノデアリマスルカラ、
吾々ノ豫想ヲ裏切ルコトハ度々デアルノデ
アリマス、サウシテ不必要ナル時ニ、澤山
ナル漁獲ヲ得ルト云フヤウナコトモ事實ア
ルノデアリマス、斯ウ云フ風ナ洵ニ不自然
ナル收獲ヲ與ヘル所ノ魚族ニ對シマシテハ、
之ニ對シテ何等カノ施設ガナケレバナラナ
イ、卽チ需給關係ヲ調節スルヤウニ、或ハ
加工ノ方面ニ、或ハ是等ノ貯藏、或ハ冷凍、
斯ウ云フ風ナ施設ニ依ッテ、需給關係ノ調節
ヲ圖ッテ行クト云フヤウナコトモ、私ハ必要
ト思フノデアリマス、然ルニ今日マデ遺憾
ナガラ國家トシテ、是等ノ施設ニ徹底的ナ
ル〓究ガ積ンデ居ラナイ、業者自ラガ色々
苦心慘憺シテ〓究ハ致シテ居リマスルガ、
國家ノ力ニ依ッテ、斯ウ云フ風ナ事業ニ對シ
テ手ヲ盡クシテ居ラナイト云フヤウナ實情
ニ在ルコトヲ、私ハ遺憾ニ思フノデアリマス、
斯ウ云フ風ナ狀態デ、最モ利益ノアル沿岸
漁業ハ、化學工業ノ爲ニ恣ニ荒サレ、サウシ
テ漸クニシテ取上ゲタ所ノ魚族モ、市價ノ
安定ヲ缺クガ爲ニ、殆ド業トシテノ價値ヲ
失ッテ居ル、サウシテ消費經濟ハ益〓業者ニ對
シテ不利益ナ條件ニ置カレマスルカラ、貧
乏セザラントシテモ豈得ベカラザルヤウナ
狀態ニナッテ、益〓漁村ト云フモノガ疲弊困憊
ニ陷ッテ居リマス、ソレデアリマスルカラ、今
日產業組合ガアリマシテモ、漁業者ニ對シ
テノ信用ト云フモノハ「ゼロ」デアリマス、何
モアリマセヌ、サウ云フ風ナモノニ依ッテ今
囘金融ノ途ガ開カレマシタ所ガ、遠キ天上
ノ星ヲ眺メルガ如クニシテ、私ハ漁業者ト
云フモノガ、其恩惠ニ浴スルコトハ到底出
來得ナイト思フ、是ハ私ハ折角ノ立派ナル
膳立デアリ立派ナル組織デアリマスルケレ
ドモ、此實行ノ上ニ於テ吾々ガ之ヲ利用セ
シムルコトガ出來得ナイト云フコトヲ心配
スルノデアリマス、先程ノ質問ニ對シテ三
宅政府委員ハハッキリト御答辯ニナラナカッタ
ガ、ドウスレバ金ガ借リレルカト云フ問題
ニ對シテ御答辯ガ出來得ナカッタノハ御尤
デアル、ドウシテモ是ハ中央金庫ノ關係
上サウ云フ風ナ力ノナイ者ニ貸シ得ラレ
ナイ、是ハ獨リ今囘ノ施設ノミナラズ、過
去ニ於ケル中小商工業者ノ救濟資金ノ如
キ、立派ナル組織ニ依ッテ貸シ與ヘテヤル
途ハ與ヘテアリマスルケレドモ、遺憾ナガ
ラ之ヲ利用スルコトガ出來得ナイ、洵ニ小
乘的ナ、力ノアル者ヲ助ケテ力ノナイ者
ハ助ケ得ラレナイト云フヤウナ組織ニナッ
テ居ルコトヲ私ハ遺憾ニ思フノデアリマ
ス、斯ウ云フ機會ニ私ハ農林當局ガ根本
的ニ日本ノ水產業ノ現狀ヲ再認識セラレ
マシテ、本當ノ救濟ノ手ヲ差伸ベテ戴キタ
イト云フコトヲ申述ベテ農林大臣ノ御所見
ヲ承リタイト思ヒマス、殊ニ今後時局ノ發
展ガ如何ニナリマスカハ知リマセヌガ、旣
ニ此時局ノ影響ト致シマシテ棉花ノ暴騰ニ
依ッテ網其他漁具ノ非常ナル不自由ヲ感ジ
テ居リマス、サウシテ漁網等ノ仕上ゲニ使
ヒマスル所ノ澁ノ如キモ全然輸入ガ杜絕致
シテ居リマス、ソレガ爲ニ漁獲ハ出來ナイ、
燃料國策ノ關係上「ガソリン」ガ上リ重油ガ
上ッテ來テ、漁業者ハ非常ナル資力ヲ要スル
ヤウニナッテ來タ、微力ナル力デハドウシ
テモ漁業ハ營マレナイト云フヤウナ狀況ニ
置カレテ居ルノデアリマス、是ハ漁業者自
體ノ苦シミハ勿論デアリマスルガ、國家ノ
資源ノ上カラ、國民全體ノ保健上カラ考ヘ
テ見マシテモ、此漁業ト云フモノヲ困難ナ
狀態ニ置イテオイテ宜イノデアルカ、私
國策トシテ一日モ早ク眞ニ徹底シタル所ノ
水產業ニ對スル對策ヲ立テラレマシテ、サ
ウシテ一面漁業者ヲ救濟スルハ勿論ノコ
ト、我ガ國民ノ將來ニ對シテ榮養關係カラ
考ヘテ見マシテモ、此漁業ト云フコトヲ今
一層考ヘテ行カナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、ドウカ私ガ申上ゲタコトハ多岐
ニ亙リマシテ統一ヲ缺イテ居ッタカ知レマ
セヌガ、以上申シマシタ點ニ對シマシテ、
農林大臣トシテノ御所見ヲ承リタイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=54
-
055・有馬頼寧
○有馬國務大臣 縷々御述ニナリマシタ點
ニ付キマシテ、至極私モ御同感デアリマス
ガ、今囘ノ此產業組合中央金庫法ヲ改正致
シマシテ、漁業金融ノ途ヲ開キ得ルヤウニ
致シマシタト云フコトハ、先程モ申述ベマ
シタ通リニ、漁村ノ振興ノ上、又漁民ノ救
濟ノ點カラ申シマシテ、金融上ノ困難ト云
フコトヲ、先ヅ救濟シナケレバナラナイト
云フ多年ノ宿望ニ依リマシテ、今囘ノコト
ガ行ハルヽコトニナッタノデアリマス、併
シ只今モ御述ニナリマシタヤウニ、實際ニ
金融ノ途ノ得ラレル者ニ此金ガ行クト云フ
コトデハ、眞ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナ
イノデアリマスカラ、實際ニ困ッテ居ル金
融ノ途ノナイ人ニ金ガ行クト云フコトデナ
ケレバ、斯ウ云フ途ヲ開キマシテモ、意味
ハナイト思フノデアリマス、サウ云フ金融
ノ途ノ付カナイヤウナ人ニ、金融ノ途ヲ付
ケル方法ト致シマシテハ只今ノ所產業組合
若クハ漁業協同組合ト云フヤウナモノヲ利
用致シマシテ、產業組合中央金庫又ハ政府
ガ之ヲ通シテ資金ノ融通ヲ圖ルト云フコト
ガ最モ良イ形式デアルト私等ハ思フノデア
リマス、隨テ今囘斯ウ云フコトニナッタノ
デアリマスガ、併シ理論ハサウデアッテモ、
實際ノ取扱ノ上ニ於テ、ソレガ其通リニナ
ラナケレバ、意味ヲ成サナイヂヤナイカト
云フヤウナ御考ヲ當然懷カレルデアラウト
思フノデアリマス、其點ハ私共ト致シマシ
テ出來ルダケ監督モシ、奬勵モ致シマシ
テ、此改正ヲ致シマシタ趣意ガ十分ニ貫徹
サレルヤウニ努メテ參ル積リデアリマス、
產業組合中央金庫ノ資金ナリ又政府ノ資金
ナリト云フモノガ此機關ヲ通シテ漁業組合
聯合會、若クハ漁業協同組合ト云フヤウナ
モノヲ通シテ極ク低イ程度ノ漁民ノ方へ此
資金ガ流レテ行クト云フコトニナリマスレ
バ、ソレハ單ニ金融上ノ利益バカリデナシ
ニ、ソレヲ通シテ漁村ノ今後ノ指導ナリ色
色ナコトニソレガ活用サレテ行クダラウト
思フノデアリマス、私ハ唯、玆ニ金融ノ途ヲ開
イタカラト云ッテ、ソレデ決シテ滿足スル者
デハナイノデアリマシテ、之ヲ通シテ漁村
ノ有ユルコトノ振興或ハ救濟ト申シマスカ、
サウ云フ之ニ關聯致シマス有ユル事柄ヲ、
共ニ實行シテ行カナケレバナラナイト云フ
コトハ十分ニ考ヘテ居ルノデアリマス、私
中央金庫ニ居リマシタ所ノ經驗カラ申上ゲ
マスレバ、例ヘバ損失補償ノ金デ國ガ損失
ノ補償ヲシテ居ルヤウナ金デアリマスレバ、
可ナリ思切ッテ其資金ノ融通ヲシテモ宜イ
筈ナノデアリマスケレドモ、ヤハリ後カラ
囘收ノ出來ナイヤウナ金ハ成ベク出サナイ
ト云フ風ナ態度ヲドウシテモ取扱者ガ執ル
ノデアリマス、ソレデハ實際ニ困ッテ居ル者
ガ救ハレナイト云フ結果ニナルノデアリマ
スカラ、損シテモ宜イト云フコトハ申サレマ
セヌケレドモ、成ベク多少ノ無理ガアッテモ、
困ッテ居ル人ニハ十分ニ金融ヲシテヤルト
云フ風ニ致シマスルヤウニ、指導モシ、サ
ウ云フ風ニ傳ヘテ參リタイト考ヘテ居リマ
ス、只今御述ニナリマシタ諸種ノ點ニ付キマ
シテハ、至極御同感デアリマシテ、只今申
上ゲマシタヤウニ、私共ハ決シテ玆ニ金融
ノ途ヲ開イタト云ッテ、ソレデ滿足スル者デ
ハナイノデアリマス、之ニ附隨致シマシテ、
漁村ニ關スル有ユル出來ルダケノ政策ヲ實
行致シマシテ、將來漁村ノ振興、漁民ノ幸
福ト云フモノヲ企圖シタイト考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=55
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056・森幸太郎
○森(幸)委員 洵ニ農林大臣カラ漁村ニ對
シマシテ御親切ナル御所見ヲ拜聽致シマシ
テ感謝スル次第デアリマス、洵ニ御趣旨ハ有
難イノデアリマス、金ニ困ッテ居ル漁村ニド
ウカシテ金融ノ途ヲ開イテヤリタイト云フ
此御趣旨ニ對シマシテハ、私ハ滿腹ノ敬意
ヲ表スルノデアリマスガ、此賴ミノ綱ヲド
ウシテ漁民ガ握ルコトガ出來ルカ、手ガ屆
カナイノデアリマス、今少シク此救ヒノ
綱ヲ下ゲテ貰ハナケレバ手ガ屆カナイ、現
ニ漁業協同組合ヲ作レ、漁業協同組合ヲ作ッ
テサウシテ經濟行爲モ行ヒ得ル組織ニシテ
ヤル、ソレニ對シテ指導モシテヤル、色々ノ助
成ノ途モ開イテアル、殆ド農林省ノ助成ハ
漁業協同組合ヲ中心ニヤラレテ居ルノデア
リマス、此結構ナ漁業協同組合ニスラ組織
ヲ改メルコトガ出來得ナイノガ現在六割ア
ル、各府縣ニ漁業協同組合ヲ促進スベク奬
勵ノ技術員ガ皆居リマス、サウシテ漁業組
合ニ付テ改組スルヤウニ熱心ニ說キ付ケ、
サウシテ農林省ノ助成金交付ハ必ズ漁業協
同組合ヲ主トシテ渡スノデアルト云フヤウ
ニ、此表ヨリ裏ヨリ奬勵サレテモ、尙ホ且
此漁業協同組合ト云フモノニ改組セラレナ
イモノガ六割アル、ソレハ何故出來ナイカ、
漁業協同組合ヲ作ッテヤルダケノ力ガナイ
ノデアリマス、其他ノ色々事情モアリマセ
ウケレドモ大體ハ力ガナイ、十圓、二十圓ト
云フ出資ヲスル其力サヘナイ弱イ漁業者ノ
團體デアル漁業組合ガアルノデアリマス、
ソレガ改組出來得ナイトシマスト、折角此
處ニ救ヒノ手綱ガ下サレ、サウシテ一面ニハ
漁村振興ノ爲ニ有ユル施設ヲ以テ臨マレテ
居ルケレドモ、ソレガ漁業協同組合デアル
トカ、漁業組合聯合會デナケレバ其手ガ屆
カナイ、サウシマスト今大臣ノ御話ニナリ
マシタ漁村ニ對スル其思召シハ洵ニ漁村ト
シテ有難クオ受ケスルノデアリマスガ、協
同組合ノ改組スラナシ得ナイ所ノ貧弱ナル
漁村トシマシテハ、普通ノ助成金ヲオ貰ヒ
スルコトガ出來ナイノミナラズ、此金融機
關ニ依ッテ金融ノ便ヲ受ケルコトサヘモ出
來得ナイ狀態ニアルノデアリマス、私ハ斯
ウ云フ狀況ニ今日ノ漁村ガアルト云フコト
ヲ農林當局ニ深ク考ヘテ戴キマシテ、待テ
暫シハナイノデアリマス、大乘的ナ立場カ
ラ、食へナケレバ政府デ保障シテヤルト云
フ位ナ御考ヲ以テ徹底シテ本當ニ漁民ヲ救
フト云フ-高イ所ニ餌ヲ置イテ見セラレ
テハイケナイノデアル、傍ヘ持ッテ行ッテヤ
ルト云フ御親切ヲモット徹底シテ戴イテ、
漁村ノ振興ニ御考ヲ廻ラシテ戴クコトヲ特
ニ御願ヒ致ス次第デアリマス、私ハ抽象的
ナ質問デアリマシタガ、是デ私ノ質問ヲ終
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=56
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057・青山憲三
○靑山委員長 河合君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=57
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058・河合義一
○河合委員 私ハ產業組合自治監査法案ニ
關シマシテ一二御尋ヲシタイト思フノデア
リマス、近來新聞紙上ニ於キマシテモ、各
地デ產業組合ヲ經營シテ居ル人達ガ不法行
爲ヲヤリマシテ、失態ガ暴露サレタ記事ヲ
見受ケルノデアリマス、私ハ兵庫縣ノ者デ
アリマスガ、縣下ニ於キマシテモ、揖保郡
越部信用組合、或ハ淡路ノ洲本ノ信用組合
ノ如キハ、理事者ノ不法行爲ニ依リマシテ
組合員一同ガ非常ニ迷惑シテ居ルト云フ事
實ガ現存シテ居ルノデアリマスガ、近頃ニ
ナリマシテ又一ツ私ノ住ンデ居リマス町デ
其事實ガ發見サレタノデアリマス、斯ウ云
フ風ニ澤山ノ失態ガ暴露サレマスカラ、是
デハ打捨テ置クコトガ出來ヌ、自治監査法
デモ制定シテ、旣存ノ行政官廳ノヤッテ居
ル所ノ監督指導ノ足リナイ所ヲ補フト云フ
コトヲ目的トサレタコトト思ヒマスガ、甚
ダ私ハ是ハ結構ナコトト思フノデアリマ
ス、ソコデ此制度ガ布カレマシタナラバ全
部此監督指導ト云フコトハ、此自治監査法
ニ委ネマシテ、在來ノ監督指導ノ方ハオ見
合セニナルノデアリマスカ、在來ノヤリ
方ガ足リナイカラ此度自治監査法ヲ制定サ
レマシテ、足リナイ所ヲ補フオ考デアリマ
スカ、此點ヲ承リタイト思ヒマス、此答
辯ヲ戴キマシテカラ、引續キマシテ二三
ノ點ニ付キマシテ私ハ御尋シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=58
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059・有馬頼寧
○有馬國務大臣 御承知ノヤウニ產業組合
ノ監督ト云フコトニ付キマシテハ、政府竝
ニ地方廳ニ於キマシテ從來行ッテ居ルノデ
アリマスガ、併シソレガ十分デナイト云フ
コトハ私共モ認メテ居リマス、出來ルダケ
ソレヲ完備致シマシテ十分ニ監督ヲシタイ
ト云フ考ハ持ッテ居ルノデアリマスガ、併シ
色々財政上ノ都合其他ノ事情ニ依リマシテ
所謂役所ノ方ノ監督ト云フモノヲ完備スル
ト云フコトガ出來ナイノデアリマス、隨テ
ソレハソレト致シマシテ產業組合自體ガ自
分ノ力ニ於テ所謂監督ヲ行ッテ、自ラ其誤レ
ル所ヲ匡スト云フコトモ勿論結構ナコトデ
アリマスカラ、此處ニ所謂自治監査ト云フ
ヤウナ制度ヲ設ケマシテ、自ラ產業組合ノ
監査ヲ行ッテ、何處迄モ產業組合ノ精神ニ副
ウタ正シイ運動ニシテ行キタイト云フ爲ニ
出來タノデアリマシテ、政府ト致シマシテ
ノ監督ト云フコトニハ別ニ變リハナイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=59
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060・河合義一
○河合委員 御趣旨ノアル所ハ能ク諒承致
シマシタ、所ガ在來ノ監督ガ不十分デアッタ
ト云フ事實ヲ證據立テマス爲ニ、私ハ最モ
顯著ナ一ツノ事例ヲ申上ゲテ見タイト思ヒ
マスガ、實ハ是カラ私ガ申述ベヨウト致シ
テ居リマス所ノ信用組合ノ失態ニ付キマシ
テハ、再三縣ノ方ニモ申出テ參リマシタシ、
又農林省ノ方ヘモ參リマシテ此事ハオ耳ニ
入ッテ居ル筈ナノデアリマス、ドウ云フヒド
イ事實ガアッタカト云フト、ソレハ斯ウ云フ
コトガアッタノデアリマス、實ハ私ノ住ンデ
居リマス所ノ高砂町ト云フ小サナ町ニ信用
組合ガアルノデアリマスガ、其專務理事ヲ
シテ居リマス人ガ、全體ノ出資ガ僅カ三万
六千圓シカナイ其信用組合ニ於キマシテ、
專務一人ノ負債ガ二万四千六十五圓九十四
錢アルノデアリマス、是ノ內譯ヲ申シマ
スト、大正十四年八月二十六日契約シタ極
度金三千圓ノ當座取引ニ對スル分ガ、其後
元利金ノ入金ガナカッタノデ、延滯利息ハ三
箇月目每ニ元金ニ繰入レ、順次計算シテ、
ソレガ昭和十二年八月十三日現在ニ於テ元
利合計金八千七十圓四十六錢トナッテ居リ
やく、是ハ專務理事ヲシテ居リマス者ガ債
權者カラ破產ヲ申請サレマシテ、ソレニ付
キマシテ專務理事ガ姫路ノ區裁判所へ提出
致シマシタ所ノ債權ノ屆出書ニ此コトガ記
サレテ居ルノデアリマス、此八千七十圓四
十六錢ト云フ金ハ大正十四年八月二十六日
ニ三千圓ノ借入ノ契約ヲ致シマシテ、昭和
十二年八月十三日迄一厘ノ利子モ支拂ッテ
居ナイ、其結果八千七十圓四十六錢ニナツ
テ居ルノデアリマス、其次ニ昭和四年六月
二十日契約シタル極度額金五千圓ナリノ當
座取引ニ對スル昭和十二年八月十三日現在
元利合計金、ソレガ七千二百六十七圓六十
九錢ニナッテ居リマス、是モ一囘モ利子ノ仕
拂ヲ致シテ居リマセヌ、次ニモウ一ツアルノ
デアリマス、昭和七年一月七日契約シタル
極度額金五千圓也ノ當座取引ニ對スル昭和
十二年八月十三日現在元利合計金、ソレガ
八千七百二十七圓七十九錢トナッテ居リマ
シテ、之ヲ合計致シマスト二万四千六十九
圓九十四錢ノ債務ニナッテ居ルノデアリマ
ス、是ガ其信用組合ヲ經營シテ居リマス專
務理事ノヤッタコトナノデアリマス、實ハ私
モ此組合員デアルノデアリマシテ、斯ル狀
態ニマデ立至ッタコトヲ知ラズニ居ッタト云
フコトハ、組合員ト致シマシテモ、甚ダ無
責任ナヤリ方デアッタト云フコトハ、私モ心
苦シク思フノデアリマスガ、併シ其監督官廳
ニ於キマシテモ、大正十四年以來金ヲ借リ
マシテ、一囘モ利子ヲ仕拂ハズシテ二万四
千六十九圓九十四錢ト云フ額ニ達シテ居ル
ノニ、知ラヌガ佛デ、今日マデ過シテ來ラレ
タト云フコトハ、今迄ノ制度ニ於キマシテド
ウ云フ監督ノヤリ方ヲシテ居ルノデアルカ
ト云フコトヲ、私ハ不思議ニ思フノデアリマ
ス、監督官廳ガ之ニ對シマシテ、少シモ念ヲ
入レテ調査ヲセナカッタト云フ一ツノ歷タル
證據ガアルノデアリマスガ、私ノ只今讀ミ
マスモノハ信用組合ノ組合長ヲシテ居リマ
シタ者ガ裁判所へ喚出サレマシテ、是ハ
破產ノ訴訟ニ關シテ裁判所ニ喚出サレマシ
テ、證人トシテ申述ベマシタ中ニアル言葉
デアリマスガ、斯ウ云フコトガアルノデア
リマス、「組合ハ縣當局ノ監査ヲ受ケルコト
ニナッテ居ルノデ、其監査ヲ受ケルトキ、不
良ノ貸付等ヲ發見サレルト無論縣當局カラ
注意ハ受ケマスガ、由利ニ對スル貸付ノ分
ニ是マデ其注意ヲ受ケタコトハアリマセヌ」
斯ウ云フコトヲハッキリ申シテ居ルノデア
リマス、大正十四年以來一囘ノ利子ノ仕拂
モセズ致シマシテ、二万四千六十九圓九十
四錢ト云フヤウナ金額ニ達シテ居ルニ拘ラ
ズ、今マデ由利ニ對スル貸付ノ分ニ付テ是
マデ注意ヲ受ケタコトハアリマセヌト云フ
コトヲ、組合長ガハッキリト神聖ナル法廷ニ
於キマシテ證言ヲシテ居ルノデアリマス、
所デマダ私ハ驚キ入リマシタコトハ、斯ウ
云フ狀態ヲ見逃シテ居ルバカリデナク、縣
ノ當局ナリ農林省カラ出張サレマシテ檢査
ヲサレタ方ガ、ドウモソレヲ希望スルヤウ
ナ言辭ヲ弄セラレテ居ルノデアリマス、是
ハ其債務者タル由利駒吉ナル者ガ神戶ノ地
方裁判所ノ小林判事ニ提出致シマシタ上申
書ナルモノノ中ニ、斯ウ云フコトガ書イテ
アルノデアリマス、「昭和十二年十一月一日兵
庫縣農政課產業係齋藤勝太郞、井上徹兩氏
出張、當組合現況調査ノ爲、一切帳簿記錄
其他擔保ニ關スル書類提出スベキ旨〓示サ
レタルニ依リ、左記ノ通リ提出シ檢閱ヲ受
ケタリ、右調査時間午前十時ニ始マリ午後
七時ニ至ル、翌二日午前九時更ニ前記兩氏
來訪、昨日ニ引續キ綿密ニ調査ノ結果午後
七時半終了ス、然ルニ前記兩氏調査ノ結果、
組合ニ對シ何等訓諭戒〓モ受ケズ、却テ
切記錄ニ付別儀ナキ旨言明セラレタリ」、是
ガ縣ノ檢査ヲ受ケタ際ノ事情デアリマス、
其次ハ農林省カラ米澤事務官ガ御出デニナッ
タラシイノデアリマスガ、其時ノ事情ハ斯
ウナノデアリマス、「同月二十七日農林省產
業組合檢査官產業組合事務官米澤恒雄殿及
隨員竝ニ兵庫縣產業組合係近藤主事補殿同
組合ニ相見エ、組合ノ現況調査ノ旨〓示セ
ラレ、由利駒吉ト組合トノ關係事項ニ關ス
ル一切帳簿書類等ノ提出ヲ命ゼラレタルニ
依リ、關係帳簿一切ヲ提出閱覽ニ供シタリ、
右調査ハ午前十時開始午後二時終了セリ、
其結果何等前囘同樣訓諭戒告ヲ受ケズ、但シ
農林省米澤事務官ハ組合ガ由利個人ヲ補助
スル爲ニ、種々ノ動作ヲ爲スハ不可ナルモ、
由利ヲ補助スルコトガ組合ノ利益トナル限
リハ一切差支ヘナク、且ツ組合ガ由利ノ和
議事件ニ付、組合ノ利益ノ爲ニ和議ヲ成立
セシムルベク、總テノ動作ヲ爲スコトハ何
等差支無之、斯ノ如ノ諸種ノ障碍アルモ組
合ノ爲メ理事監事諸君一同ハ由利組合長ヲ
救ケ、協力一致非常時局ヲ認識シ、產業組
合使命遂行ニ充分奮勵努力セラルベキ旨申
聞ケラレタリ、前者後者ノ出張監査ヲ促シ
タルハ、縣及農林省ニ對シ、本件異議債權
者一派ガ種々ノ事項ヲ揑造牽强附會ノ陳述
書ヲ提出ノ結果ニ基ク旨米澤事務官殿ノ言
明有之候、而シテ同日陳情者ニ對シ」云々
ト云フコトガアルノデアリマスガ、中ハ略
シマシテ、「米澤事務官殿及ビ縣ハ役員
諸君ニ對シ、諸君方ノ陳情ナレバ知ラズ、
一部組合員ヨリノ陳情ナドハ一切取上ゲヌ
由ヲ話サレ、吾等ニ激勵有難キ言ヲ承リ、
吾等責任ノ重且ツ大ナルコトヲ一層ニ感
ジ、役員一致協力以テ組合使命達成ニ努力
邁進仕ル決心ニ御座候」斯ウ云フコトヲ裁
判所ニ上申シテ居ルノデアリマスガ、是ハ
爲ニスル目的デ此專務理事ナル者ガ僞リヲ
申シテ居ルノカドウカハ知リマセヌガ、兎
ニモ角ニモ裁判所ヘ提出致シマシタ上申書
ノ中ニ斯ウ云フコトガ書イテアルノデアリ
マスカラ、一應ハ米澤檢査官ニ是ガ事實デ
アッタカナカッタカト云フコトヲ御尋スル必
要ガアルノデアリマス、自治監査法ガ制定
サレルコトモ無論私ハ贊成デアリマスガ、
斯ウ云フヤウナ甚シキ事態ガアルニ拘ラ
ズ、組合員ガ其事ヲ縣ニ參リマシテ注意致
シマシテモ、本省へ出テ參リマシテ其事ヲ
申上ゲマシテモ、ソレハ反產運動ノ一ツノ
現レデアルト云フヤウニ取扱ハレマシテ、
少シモ耳ヲ御藉シニナラズ、却テ斯ウ云フ
失態ヲスル組合ノ幹部ニ激勵ノ言葉ヲ與ヘ
ラレルニ至ッテハ、私ハ呆然トシテロヲ塞
グコトガ出來ナイノデアリマス、私ハ此事
ガ事實デアルヤ否ヤト云フコトヲ御尋シタ
イ、元來私ハ私ノ立場カラシテ無論產業組
合ノ發達ヲ希望シテ居ル所ノ一人デアリマ
ス、併シ現在ニ於キマシテハ、商人ノ立場ヲ
モ考ヘテヤラナクテハイケナイ、私ハ商人
ニ對シテ常ニ申スコトデアリマスガ、產業
組合、消費組合、購買組合、怖ルヽニ足ラ
ヌデハナイカ、君達ノ努力ガ足ラナイカラ
イケナイノダト云フコトヲ私ハ始終申シテ
居ルノデアリマス、私ハ東京へ參リマシテカ
ラ餘リ日モ經チマセヌノデ、總テノ事情ハ
能ク分リマセヌケレドモ、東京ニ於テモ最
モ習熟シタル所ノ生活ヲシテ居ル地區ニ於
キマシテハ、例ヘバ新橋ノアノ烏森ト申シ
マスノカ、アノ邊トカ、或ハ日本橋ノ中心
ナドヘ行ッテ見マスト、色々ノ物ヲ纏メテ
賣ルヤウナ「マーケット」ナドハ發達シテ居
ラヌノデアリマス、ヤハリ古クカラアル
所ノ店カラ買ッテ居ル、或ハ紙ナラバ榛原
ヘ行ッテ買フトカ、海苔ハ山本ヘ行ッテ買フ
トカ云フヤウナ風デアリマシテ、商人ガ本
當ニ力ヲ入レテ使命遂行ノ爲ニ努力ヲ致シ
マスナラバ、決シテ產業組合ヤ購買組合ハ
怖ルヽニ足ラヌノデアリマス、ドレ程產業組
合ガ發達致シマシテモ、我國ニ於ケル消費
經濟ノ總テノ機能ヲ引受ケルコトハ到底出
來ナイノデアリマシテ、ヤハリソコニハ分
ガアル、商人ノ領分、或ハ產業組合ノ領分
ト云フモノハ、ハッキリ致シテ居ルノデアリ
マスカラ、私ハ如何ニ產業組合ノ肩ヲ持ツ
カラト申シテモ、總テノ商人ヲ壓ヘテシマ
フヤウナコトハ間違ッテ居ルト思フノデア
リマス、所ガ私ガ只今申上ゲマシタヤウニ
信用組合ガ購買ヲモヤッテ居ルノデアリマ
シテ、私ノ町ニ於キマシテハ、此組合ニ加
入シテ居ル所ノ家數ハ僅カ二百世帶デアリ
マス、人口ハ一万二三千アルノデアリマス
ガ、極ク一部分ノ人ガ加入シテ居ルノデア
リマス、其組合ガ時々斯ウ云フ年末謝恩大
賣出シト云フヤウナ廣告ヲシテ、商人ガ迚
モ賣ルコトノ出來ナイヤウナ値段デ賣ッタ
ノデアリマス、二百軒シカ加入者ガナイ町
ニ於テ三千枚モ斯ウ云フ廣告ヲ配ルノデア
リマス、ソレカラ辻々ニ立看板ヲ立テヽ糯
米ハ一升幾ラデ賣ルト云フヤウニ書ク、是
ハヨク商人ノヤル前賣リト云フコトデ、或
ル一ツノ品物ニ損ヲスル所ノ値段ヲ揭ゲ
テ、此品ナレバ是ダケデ賣ルト云フコトヲ
廣告シテ、客ヲ引ッ張リ込ンデ他ノ品物ヲ
賣ッテウント口錢ヲ取ル、是ガ前賣リト申
スモノデアリマスガ、此手ヲヤッタノデア
リマス、是ハ先年モ豆炭ヲヤハリ信用組合ガ迚
モ商人ハ賣ルコトノ出來ナイヤウ値段デ賣
出シタ、豆炭ハ製造元トノ特約店ガ土地ニアリ
マスノデ、特約店以外ニ賣ルコトハ出來ナ
イト云フ規定ガアルニ拘ラズ、信用組合ガ
手ヲ廻シマシテ其品ヲ買ッテ來テ安ク賣出
シマシタ、ソレヲ調査致シマシタ結果、明
石ノ何トカ云フ所カラ澤山買ッテ參ッタト云
フコトガ分ッタモノデアリマスカラ、販賣
元ノ大阪ノ商人ガ中へ入リマシテ話ヲシタ
結果、炭問屋ノ組合カラ三百圓ノ金ヲ出ス
コトニシテ、ソレノ販賣ヲ止メテ貰ッテ、
其商品ヲ全部炭屋ノ組合ガ引受ケタト云フ
話ガアルノデアリマス、卽チ信用組合ハ商
人ヲ脅シテ三百圓セシメタト云フ結果ニ
ナッテ居ルノデアリマス、ソレデサウ云フ
事情ヲ縣ヘ申立テマスト、縣ノ商工課ニ於
テハ、ソレハ怪シカラヌト言ッテ下サッタノ
デアリマス、併シ農政課ノ方ヘ參リマス
ト、ソレハ君、ソンナ廣〓ヲ出シタカラト
云ッテ、賣ラナケレバ宜イノデハナイカ、
廣〓ダケデソンナニ氣ニシナイデ、君達ハ
商賣シテ居タラ宜イデハナイカト言ハレタ
ノデアリマス、同ジ縣ノ中デモ斯ウ云フヤ
ウニ相剋摩擦ガアル、商工課ノ方デハ、ソ
レハ怪シカラヌト言ッテ吳レルケレドモ、
農政課ノ方ハ、斯ウ云フ惡イコトヲヤッテ
モ之ヲ庇ッテマデ產業組合、購買組合ヲ指
導シヨウト云フヤウナ事實ガ、現ニ兵庫縣
廳內ニアルノデアリマス、相剋摩擦ト云フ
コトガ甚ダイケナイコトデアルト云フコト
ハ、始終近衞首相モ申サレテ居リマスガ、
オ役所ノ中ニ斯ウ云フ相剋摩擦ガ行ハレテ
居ルノデス、サウシテ其組合外ニモ註文ヲ
聞キニ行ッテ物ヲ賣ッテ居ル事實ガ澤山アル
ノデアリマス、是ハ證據ガアルノデアリマ
ス、ソレヲ縣廳ヘ申シテ行キマシテモ、農
政課ニ於テハ取合ッテ吳レナイノデアリマ
ス、實ハ組合員ガ非常ニ困リマシタ結果、
私ニ賴ンデ來マシタノデ、私ハ組合員ノ代
リニナッテ農林省ノ產業組合課ヘモ參ッテ其
事ヲ御話致シタノデアリマス、名前ハ忘レ
マシタガ、一人ノ役人ノ方ハ、ソレナレ
バ、アナタ議會ガ濟ンデ歸リニ縣廳へ寄ッテ
縣ノ役人ニシッカリ其事ヲ言ッテ吳レト言ハ
レマシタ、ソレデ私ハ此前ノ特別議會ノ時
ダッタト記憶シテ居リマスガ、歸リニ寄ッ
タノデアリマス、所ガ農政課ノ課長ハ右田
トカ云フ事務官デアリマシタガ、私ニ喰ッ
テ掛ッタ、アナタハ組合員デスカト云フ譯
デス、私ハ實ハ產業組合ノコトニ付テハ能
ク分ラナイモノデスカラ仙石サンニモ相談
ヲシタノデスガ、其時ニモ、國政ヲ監督ス
ルト云フ立場カラ、サウ云フコトハ君ニ農
林省ヘモ行ッテ話シテ貰フシ、地元ノ縣廳
ヘ行ッテモシッカリ言ッテ貰ハナクテハナラ
ヌト言ハレタカラ、縣廳へ寄ッタノデアリ
マス、所ガ、君ハ組合員カ、斯ウ尋ネラレ
ク、組合員デアリマス、君ハ何カ、預金ヲ
シテ居ルカ、斯ウ云フコトヲ尋ネラレタノ
デアリマス、ソレカラ此事ヲ經濟部長ニ話
シマスト、經濟部長ハ、甚ダ遺憾ニ思フト
言ハレマシタガ、直接監督ノ任ニ當ッテ居
ル所ノ農政課ノ役人ハ、サウ云フ態度デ居
ルノデアリマス、私ハ過日東京へ參リマシ
テカラ、斯ウ云フコトニカケテハ玄人ノ方
カラ聽イタノデアリマスガ、全國ニサウ云フ失
態ハ澤山アルト云フコトヲ其時ニ私ハ聽カサ
レタ、偶〓、是ハ一地方ノ小サナ問題ニ過ギナ
イカモ知レマセヌケレドモ、其方カラ聽イ
タ所ニ依リマスト、全國ニハサウ云フコト
ハ澤山山積シテ居ルト云フコトヲ聽イタモ
ノデアリマスカラ、若シソレガ事實トスレ
バ、是ハ放ッテ置ク譯ニ行カヌ問題デアル
ト私ハ思フノデアリマス、サウ云フ事實ガ
アリマスコトハ、政府委員トシテ御出席下
サッテ居ル方ハ恐ラク初耳デアラウ、多分御
存ジナイト思ヒマスケレドモ、此席上デナ
クテモ結構デスカラ、十分調査ヲシテ戴イ
テ、本省トシテハ斯ウ云フ事柄ニ對シテハ
斯ウ云フヤウニ處置スルノデアルト云フ位
ノ、ハッキリシタ御答辯ヲ私ハ戴キタイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=60
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061・有馬頼寧
○有馬國務大臣 只今御述ニナリマシタ兵
庫縣ノコトハ、政府委員ガ大體承知シテ居
ルサウデアリマスカラ、政府委員カラ御答
ヲ申上ゲマスガ、產業組合全般ニ亙ッテノ只
今ノ御尋デハナカッタト思ヒマスガ、御述べ
ニナリマシタコトニ付キマシテ、私トシテ
一言申上ゲテ置キタイト思ヒマス、產業組合
ノミデナシニ、總テ不正ナ行爲ヲ致シマス
ルモノ、不正ナ行動ヲ致シマスルモノニ對
シマシテ、假令政府ガ奬勵ヲ致シテ居リマ
スルコトデアリマシテモ何デモ、苟モ其精
神ニ反シ、其主義ニ背イテ不法不正ナ行爲
ヲ致シマスル者ニ對シテハ、之ヲ嚴重ニ取
締リ、之ヲ排除シナケレバナラナイト考ヘ
マス、私ハ、御承知ノ方モアルカモ知レマ
セヌケレドモ、學校卒業以來、今日マデ殆
ド產業組合關係ヲ終始シテ來タ人間デアリ
マシテ、產業組合ノコトニハ關係ノ深イ者
デアリマスガ、併シ私共ハ產業組合ト云フ
モノノ精神ナリ主義ナリ、ソレヲ正シイモ
ノデアルト信ジマスレバ信ジマスル程、產
業組合ニ從事致シマスル者ガ不法ナ事ヲシ
不正ナ事ヲ致シマスコトニ對シテハ、嚴ニ之
ヲ排除シナケレバナラヌト堅ク信ジテ居リ
マス、今後農林省ト致シマシテ、產業組合
ノ監督ヲ致シテ-一方ニ助長ヲ致シテ參
リマスト同時ニ、監督ヲ嚴ニシ、又茲ニ自
治監査聯合會ガ出來マシテ、自治的ニ產業
組合ガ不正ノ事ノナイヤウニ、不法ナ事ノ
ナイヤウニ致シテ參リマスコトハ、是ハ產
業組合ノ精神カラ申シマシテモ、主義カラ
申シマシテモ、當然ノコトダト考ヘマス、
御尋デハゴザイマセヌト思ヒマスガ、私ト
シテノ產業組合ニ對スル只今御述ニナリマ
シタコトニ對シテノ考ヲ申上ゲテ置キマス、
斯ウ云フコトハ全國ニ山ノヤウニアルト云
フ御話デアリマシタ、私モサウ云フ事ガ處々
ニアルト云フコトヲ耳ニシテ居リマス、隨
テ甚ダ遺憾ダトハ思ッテ居リマス、又傳ヘ
ラルヽ程惡イ事ガ多イノカドウカト云フコ
トニ對シテモ、多少ノ疑ハゴザイマスガ、
前ニモ申シマシタヤウニ、眞ニ惡イモノガ
アリマスナラバ、是ハ嚴ニ監督ヲシ、之ヲ
又排除シナケレバナラヌト思ヒマス、併シ
サウ云フコトガアリマシテモ、產業組合自
體ガ惡イモノデアルトハ考ヘマセヌ、產業
組合ハ何處マデモ良イモノデアリ、必要ナ
モノダト云フコトハ堅ク信ジテ居リマスカ
ラ、今後十分ニ助長シ發達セシメマスト同
時ニ、此監督ヲ嚴ニシテ誤リノナイヤウニ
致シテ參リタイト考へマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=61
-
062・石黒武重
○石黑政府委員 個々具體的ノ組合ノ內部
ノ問題ニ付キマシテ、斯ウ云フ席上デ御話
ガ出來マセヌノハ遺憾デゴザイマスガ、併
シ今ノ御質問ノ中ニ、私共ノ方デ致シテ居
リマスル檢査、殊ニ昨年ノ秋全國ニ亙ッテ施
行致シマシタ一齊監査ノコトニ關聯シテノ
御話ガゴザイマシタノデ、一般的ニ檢査ナ
リ、殊ニ又先般致シマシタ一齊監査ニ關聯
致シマシテ御答致シテ、只今ノ御質問ニ對
スル私共ノ致シ方ヲ明ニシテ置キタイト思
ヒマス、古イ沿革ハ存ジマセヌケレドモ、
產業組合ニ對スル監査ノ施設ハ、是ハ產業
組合ガ出來マシタ時ニ、今日私共ガ
ヤッテ居リマス程ニ監査ヲヤッテ居ッタ
ノデハナイノデアリマシテ元ハ
實地指導トカ、或ハ督勵トカ稱シテ、組合
ヲ廻ッテ步イテ、色々大體ノ命令ヲシテ步ク
ト云フヤウナ程度ノコトヲヤッテ居ッタ時代
モアルノデス、ソレガ段々ニ私共ノ方ノ施
設ガ發達シテ參リマシテ、今日デハ相當ニ
嚴正ナ監査ヲヤッテ居ルト私共確信シテ居
リマス、唯從來人員其他不十分ナ點ガアリ
マシテ、此監査ヲヤル度數ガ全國ノ一万五
千ノ組合ニ對シテ非常ニ少カッタノデ、組合
ニ依リマシテハ、設立以來未ダ一度モ本省
カラ監査ニ人ガ來タコトガナイト云フヤウ
ナモノモアリマセウシ、或ハ一年ニ一度位
シカ來ナカッタト云フヤウナモノモアル譯
デアリマス、昨年以來私共ノ方デモ豫算ヲ
得マシテ、中央ニ檢査官ヲ倍加致シマシ
テ、地方ノ方ニモ充實スルコトニナリマシ
テ、今後ハ從來ヨリモ餘程頻繁ニ行クコト
ニナルノデアリマス、ソレト併セテ、今度
產業組合自治監査法ニ依リマシテ、全國區
域ノ監査聯合會ヲ作ッテ、自治的ニ監査ヲ
ヤッテ行クト云フコトニナッテ居ル譯デアリ
やっく、先般致シマシタ一齊監査ハ、全國ノ
一万五千ノ組合ヲ、極メテ短期間ニ、昨年
秋ノ頃ニ一齊ニ實行シタノデアリマシテ、
謂ハヾヤリ方ト致シマシテハ、組合內部ニ
於ケル監事ノ檢査ヲ指導致シマシテ、嚴重
ニヤッテ貰ッテ、ソレヲ後カラ本省ノ者ガ參
リマスカ、或ハ本省ノ手ノ足ラヌ所ハ縣廳
ノ人或ハ中央會ノ支會ノ人ヲ借リタノモア
リマスガ、斯ウ云フ連中ガ見マシテ、色々
ナ批判ヲ加ヘテ、指導モスルト云フヤリ方
デ、全國的ニ一應狀態ヲ明ニシテ居ルノデ
アリマス、只今段々ト其結果ヲ取纏メ中デ
アリマス、所デ其一齊監査ノ際ニハ、大體
ニ於キマシテ本省カラハ聯合會ノ監査ヲ致
シマシタノデアリマスガ、多少問題ガアル
トカ云フヤウナ所ニ付キマシテハ、單位ノ
組合ニ對シマシテモ、本省カラ人ガ參リマ
シテ監査ヲ致シタヤウナ譯デアリマス、併
シ何ト致シマシテモ、今申シマシタヤウナ
譯デ、僅カ一日カ二日デ一寸監査ヲシタト
云フ程度ノ事デアリマスノデ、多少トモ問
題ノアルヤウナ組合ニ付テハ、昨年秋ノ監
査ダケデハ間ニ合ハナイノデアリマシテ、
今後引續キマシテ、段々ト計畫ヲ立テヽ細
密ナル監査モヤラウト思ッテ居リマス、何
シロ數ノ多イコトデアリマスカラ、多少問
題ノアル組合モアッタガ、サウ云フ組合ニ
付キマシテハ、段々ト計畫ヲ立テマシテ、
近イ中ニ尙ホ今一度見ルヤウナコトガアル
コトニナッテ居ルノデアリマス、現在ノ所
ハマダ、全般的ナ統計其他ノモノヲ取纏メ
中デアリマスカラ、サウ云フ細密ナル監査
ノ實行ト云フ所マデハ行ッテ居ラナイコト
ヲ御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ
組合ニ何カ問題ガ起ッテ、殊ニ內容ニ多少ノ
缺陷ヲ生ジタト云フトキノ私共ノ處置デア
リマスガ、斯ウ云フ事ダケハ皆樣御諒承ヲ
願ヒタイト思フノデス、ソレハ例ヘバ多少
ノ極メテ短期間ノ時期ヲ見、是ハ問題ノ程
度ニモ依リマスガ、時期ヲ置キマシテ、多
少ノ時期ノ間ニ其組合ノ事業ヲ停止スルヤ
ウナコトノナイヤウニシテ、段々ト處置ヲ
シテ行クト云フコトガ、組合ノ今後ノ爲ニ
モナリ、又組合員全般ノ爲ニモナルト思ハ
レルヤウナ場合ニ於キマシテハ、何モ必シ
モ急イデ事ヲ荒立テマシテ、組合ノ事業ガ
停止サレルヤウナ所マデ突進メナイデ、而
モ或ル期間ヲ置イタ短時日ノ間ニ、結局ヤ
ルベキダケノ事ヲヤッテシマフト云フヤウ
ナ事モヤルコトガアルノデアリマス、一ツ
サウ云フヤウナコトノアリ得ルコトニ付テ
ハ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=62
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063・河合義一
○河合委員 只今ノ御答辯能ク諒承致シマ
シタ、併シ斯ウ云フ事實ガアルノデアリマ
ス、大正十四年ニ三千圓ヲ借リタト云フコ
トデ、實ハ其當時問題ガ起ッタ、監事ノ承
認ヲ經ズシテ專務理事ガソレヲ使ッテ居ッタ
ト云フコトガ後デ分リマシテ、實ハ縣廳ニ
於キマシテモ問題ニナリマシテ、創立早々斯
ウ云フ不都合ナコトヲヤル者ハ一ツ罷メササ
ウヂヤナイカト云フ御意見モアリマシタシ、
折角出來上ッタノダカラ、後カラデモ宜イカ
ラ判ヲ捺サシテ、サウシテヤハリ其專務理
事ニヤラス方ガ宜カラウヂヤナイカト云フ
意見モアリマシテ、後者ノ意見ガ勝ヲ占メ
マシテ、依然トシテ此人ガ專務理事ヲヤッテ
居ルノデアリマス、其三千圓ニ對シテ一囘
モ利子ヲ拂ッテ居ナイ、是ハ外ノ事柄デアリ
マシテ、申上ゲルベキモノデハナイカト思
ヒマスガ、ヤハリ兵庫縣下ニ於キマシテモ、
無盡會社ガ非常ニ惡イコトヲヤッテ居ッタ、
ヤハリ私ノ土地デ出張所ガ惡イコトヲヤリ
マシタガ、裁判沙汰ニナリマシテ、縣廳ト
致シマシテハ、行政處分ト致シマシテ、其
出張所ノ閉店ヲ命ゼラレタノデアリマス、
所ガ其本店ニ遡ッテオ炙ヲ据エナカッタ爲
ニ、同ジ事ヲ他所デヤリマシテ、迚モ仕方
ガナイ程ノ害毒ヲ同ジ縣下ニ於テ流シテ居
リマス、モウ今度ハ監督官廳ニ於テ斷然タ
ル處置ヲ執ラレルコトデアラウト思フノデ
アリマス、其當時私ガ、言ハナイコトデハ
ナイカ、偶〓此店ヲ止メテモ、同ジ縣內デ他
ノ人ガ現ニヤッテ居ル、ドウデス、私ガ言ツ
タ通リニナッタデセウト言ッタ時ニ、如何ニ
モサウデアリマスト言ッテ居ル、小サイ事柄
デモ斷然處置ヲシテ居ッタナラバ、アトデコ
ンナ大キナコトニナラヌ、サウ云フコトモ
アリマスカラ、監督ヲ爲サル上ニ於キマシ
テハ、十分其點ヲ御注意願ヒタイト思フ、
ソレカラ先程御尋致シタ米澤檢査官ガ上申
書ニ述べテ居ルヤウナコトヲ、果シテ申サ
レタノデアリマセウカ、若シソレガ僞リ
デアルトスルナラバ、是ハ裁判所ヘ出テ居
ル上申書デアリマスカラ、裁判所ハ之ヲ
眞實トシテ取上ゲテ居ルカモ知レナイ、若
シ是ガ僞リデアルトスルナラバ、何等カノ
方法デ之ヲ是正シテ貰ヒタイノデアリマス、
此點ヲ御調査ノ上明確ナ御答辯ヲ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=63
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064・石黒武重
○石黑政府委員 尙ホ先程申落シマシタガ、
私共產業組合ノ全般ヲ見マシテ、大體ニ於
キマシテ、產業組合ノ當事者ガ、組合ノ本
來ノ精神ニ則ッテ、非常ニ立派ナ仕事ヲヤッ
テ居ラレルト思ヒマスガ、但シ例ヘバ都會
地ニ於ケル購買組合ト云フヤウナモノニナ
リマスト、時ニハ折角幹部ノ方ハ熱心デアッ
テモ、必シモ組合員全般ガ組合的精神ニ足
リナイ所ガアリマシタリ、或ハ幹部ニ其人
ヲ得ナイト云フヤウナコトガアリマシテ、
時ニハ私共カラ見マシテ不十分ニ思ハレル
ヤウナ所ガアルノデアリマス、其事ニ付キ
マシテモ御諒承置キヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、尙ホ色々ノ御話ニ付キマシテハ、私共
ノ方デモ當然必要ナル調査ヲ進メタイト思ッ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=64
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065・河合義一
○河合委員 米澤檢査官ガ激勵サレマシタ
コトガ事實デアリヤ否ヤト云フコトヲ確メ
テ戴キタイト云フコトノ御答辯ガナカッタ
ヤウニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=65
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066・小平權一
○小平政府委員 組合ノ檢査ノ內容、實體
ニ付キマシテ檢査官ガ言ヒマシタコトヲ、
斯ノ如キ席デ發表スルコトハ出來ナイノデ
アリマシテ、甚ダ遺憾デアリマスケレドモ
左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=66
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067・河合義一
○河合委員 能ク御答辯ノ趣旨ヲ諒得スル
コトガ出來ナイノデアリマスガ、斯ウ云フ
コトヲ質問スルノハイケナイト仰シヤッタ
ノデアリマスカ、事實ハ能ク分ッテ居ルガ、
答辯ガ出來ナイト仰シヤッタノデアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=67
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068・小平權一
○小平政府委員 個々ノ組合ノ監査ニ對シ
テ、監査官ガ組合ニ指示致シマシタコト、
或ハ監査官ガ地方廳ニ言ヒマシタコト、左
樣ナ個々ノ組合ニ對スル監査官ノ行動ニ付
キマシテハ、外部ニ發表スルコトガ出來ナ
イコトニナッテ居リマス、故ニ斯樣ナ席デ以
テ米澤事務官ガ如何ナルコトヲ申述ベマシ
タカト云フコトヲ述べルコトハ出來ナイノ
デアリマス、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=68
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069・河合義一
○河合委員 此上申書ナルモノニ書キ竝ベ
テ居リマスコトガ僞リデアルト致シマシテ
モ、之ヲ僞リデアルト云フコトヲ明ニスル
方法ハナイノデアリマセウカ、斯ウ云フ席
上デサウ云フコトヲ質問シ又答辯スルコト
ハ出來ナイノデアルト云フコトダケデハ私
ハドウモ納得ガ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=69
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070・小平權一
○小平政府委員 左樣ナ御注意ハ洵ニ結構
ナ御注意ニ拜聽致シマスノデ、農林當局ト致
シマシテハ、勿論常ニ產業組合ノ監督ニ付
キマシテ、監督ノ事後ニ於キマシテモ、又
監査ノ結果ニ付キマシテモ更ニ再檢討ヲ致
シマシテ、左樣ナ監督ニ從事シタ事務官ノ
申シマシタコトガ誤リ傳ヘラレテ、更ニ他
ノ官廳ニ誤ッテ利用サレルヤウナコトノ虞
ガアリマスヤウナ場合ハ十分ニ是正スルコ
トガ出來マス、是ハ官廳間ノコトデアリマ
スカラ、外部ニ發表致シマセヌガ、官廳間ニ
於テ十分努力致シマス、左樣御承知ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=70
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071・河合義一
○河合委員 私モソレデ甚ダ滿足致シマス、
若シ必要トサレマスナラバ其上申書ナルモ
ノノ寫シヲ私持ッテ居リマスカラ、御手許
ニ差出シテモ宜シイト考ヘテ居リマス、此
席上ニ於テ御發表出來ナイト致シマスナラ
バ、ソレモ結構デアリマス、若シソレガ間
違ヒデアッタト致シマシタナラバ、ハッキリ
ト官廳間ニ於テソレガ間違ッテ居ルト云フ
コトヲ明ニシテ戴キタイ、其事ヲ重ネテ希
望致シテ私ノ質問ハ是デ終了致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=71
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072・青山憲三
○靑山委員長 本日ハ是デ散會致シマス、
明日ハ午前十時ヨリ開會致シマス、追テ更
ニ公報ヲ以テ御知ラセ致シマス
午後五時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00219380302&spkNum=72
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