1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
不動産融資及損失補償法中改正法律案（政府提出）
産業組合中央金庫法中改正法律案（政府提出）
漁業法中改正法律案（政府提出）
産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出）
産業組合自治監査法案（政府提出）
—————————————————————
會議
昭和十三年三月三日（木曜日）午前十時四十九分開議
出席委員左の如し
委員長 青山憲三君
理事 高木粂太郎君 理事 喜多壯一郎君
理事 田代正治君 理事 西川貞一君
長野綱良君 田中邦治君
成島勇君 大野一造君
濱地文平君 森肇君
北勝太郎君
出席國務大臣左の如し
農林大臣 伯爵 有馬頼寧君
出席政府委員左の如し
農林政務次官 高橋守平君
農林參與官 助川啓四郎君
農林省水産局長 三宅發士郎君
農林省經濟更生部長 小平權一君
農林書記官 石黒武重君
本日の會議に上りたる議案左の如し
不動産融資及損失補償法中改正法律案（政府提出）
産業組合中央金庫法中改正法律案（政府提出）
漁業法中改正法律案（政府提出）
産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出）
産業組合自治監査法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=0
-
001・青山憲三
○靑山委員長 昨日ニ引續キ開會致シマ
ス-高木君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=1
-
002・高木粂太郎
○高木委員 先ヅ私ハ產業組合關係ノコト
ニ付テ一寸簡單ニ御伺致シマスガ、昨日來
各委員ノ質問ノアッタ後デアリマスルノデ、私
ハ要點ノミニ付テ簡單ニ伺ヒマスガ、中央
金庫法ノ改正ニ依リマシテ漁業組合ニ融通
シ得ル所ノ總金額ハ何程位ノ御見込デアリ
マセウカ、又ドノ位ノ要求ガアルト云フ御
見込デアリマセウカ、其點ヲ御伺致シタイ
ト存ジマス、次ニ預金部資金及ビ特殊銀行
資金ニシテ、從來漁業組合ニ貸付ケタモノ
ノ償還狀況ハ他ノ方面ニ比ベテドウナッテ
居ルカ、良イカ惡イカト云フ其成績如何ヲ
御伺致シタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=2
-
003・三宅發士郎
○三宅政府委員 初ノ問題ニ付テ私カラ御
答申上ゲマス、政府出資ガ二百五十万圓、
漁業組合系統ガ二百五十万圓、合計五百万
圓ニナルノデアリマスカラ、十倍ノ產業債
劵ノ發行力アリト見マシテ、少クトモ五千
五百万圓ガ融通出來ルモノト考ヘテ居ルノ
デアリマス、ソレデ御承知ノ通リ政府出資
ハ五箇年デアリマスシ、漁業組合方面ハ合
計十一箇年デ拂込ムト云フコトニナッテ居
リマスノデ、來年度カラ直チニソレダケノ
融通ガ付クトハ或ハ參ラヌカト思ヒマス、
水產資金ニドレダケノ必要ガアルカト云フ
コトニ付キマシテハ、是ハ豫算ヲ作リマス
時ハ、油其他ガ現在ノ如ク高クナカッタノ
デ、先ヅ差當リハ六千万圓位ノモノガアレ
バ何トカ辻褄ガ合フダラウト云フ風ニ考ヘ
テ居ッタノデアリマスガ、今カラ考ヘマスト
諸物價ガ上ッテ居リマスノデ、是デハ中々苦
シイカトモ思ヒマスガ、豫算ヲ作リマス當時
ハ、サウ云フ考ヲ持ッテ居ッタノデアリマス
第二ノ問題モ便宜上私カラ御答致シマス、
漁業者ノ漁業組合ヨリ融通ヲ受ケタ者、農
業者ノ產業組合ヨリ融通ヲ受ケタモノトノ
間ニ於テ、特別ニ償還狀況ノ差異ヲ調査シ
タモノハナイヤウデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=3
-
004・高木粂太郎
○高木委員 尙ホ伺ヒマスガ、產業組合ノ
從來ノ成績ト言ヒマセウカ、漁村ニ於ケル
產業組合ノ成績ハドウデアリマセウカ、私
ハ靜岡縣デアリマスガ、產業組合ノ狀況ハ
海ニ面シテ居ル漁村ノ方ガ成績ガ非常ニ宜
イ、一時豐漁ノ時代ニハ預金モ多クテ、而
モ短期ノ預金ガ多イノデアルカラ、信用組
合トシテモ運用上非常ニ宜イ、又大抵引出ス
時ノ豫定モ付クノデアルカラ、非常ニ漁村
ノ預金ハ喜ンデ信用組合デモ受ケテ居ルヤ
ウニ私共聞イテ居リマスガ、私モ村ノ信用
組合ノ監事ヲシテ居ッテ、時々帳簿ナド見テ
居リマスケレドモ、相當成績ハ良イヤウデ
アリマスガ、全國ニ於テドンナ成績ニナッテ
居リマスカ、其點ヲ御分リニナッタラ何ヒ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=4
-
005・三宅發士郎
○三宅政府委員 只今ノ御尋デゴザイマス
ガ、實ハ私共ノ方ノ調査ニモ相當沿海ニ於
キマスル產業組合ノ色々ノ事情ハ分ッテ居
ルノデゴザイマスガ、併ナガラ之ヲ農村產
業組合ト比較致シマシテ、ドウ云フコトニ
ナルカト云フコトニ付キマシテノ全般的ナ
ハッキリシタ比較ハ付イテ居リマセヌノデ
ゴザイマス、御承知ノヤウニ農村方面ニ於
キマシテモ、或ハ都市ニ於キマシテモ、漁
村ノ方面ノ產業組合ニ致シマシテモ、ドウ
シテモ良イモノ惡イモノ、色々ゴザイマシ
テ、實ノ所ソレニ付キマシテ數字的ニハッキ
リトドチラガドウダト云フコトハ分ッテ居
リマセヌノデゴザイマス、大體ノ私共ノ感
ジト致シマシテハ、特ニ差異ノアルヤウニ
ハ思ッテ居リマセヌノデゴザイマス、寧ロ例
ヘバ關西或ハ本州中部地方ノ一般ノ產業組
合ハ、東北方面ヨリモ成績ガ宜シイト云フ
ヤウナ風ニ、地方的ノ漠タル比較ハ付クノ
デゴザイマスガ、沿海ト農村トノ比較ニ付
テノ特別ナ差異ト云フモノハ、今ノ所認メ
テ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=5
-
006・高木粂太郎
○高木委員 此信用程度デアリマスガ、從
來ノ漁村、或ハ漁村デナクテモ、農村デ漁
業ヲ兼ネテ居ル所ノ漁業者ノ信用程度ガ少
イノハ已ムヲ得ナイガ、實際ニ於テハ農家
ハ土地其他ヲ持ッテ居ッテ擔保品ガアルノデ
信用程度モ向上スル、漁業者ニハ何モ
ナイ、小サナ船ガアルダケノコトデア
ルカラ、數字的ニ言フト農家ニ於テ
ハ千圓内外ノ所謂信用程度ヲ平均持
テ居ル、私ノ地方ノコトヲ申上ゲルノデア
リマスガ、漁業者ニハ漸ク二百圓位ノ信用程
度シカナイノデ、其差ガ甚シイノデアルケ
レドモ、其囘收狀況カラ言ヘバ、漁業者ハ
漁ノナイ時ハ生活資金ニモ困ルガ、漁ガア
レバ囘收成績ガ却テ宜イト云フコトヲ聞イ
テ居リマス、將來此漁業組合ガ金融行爲ヲ
爲スニ於テハ、從來發達シテ居ル信用組合
ヲドウスルカト云フ考ヲ持ッテ居ルノデア
リマスガ、ソレ等ニ付テモ漁業者ガ七割モ
八割モアルヤウナ土地ニ於テハ、漁業組合
ニ爲サシメルヤウニ自然ニ村ノ組合員ガサ
ウナッテ行ッタラ、サウ云フ御意見ガアルカ
ナイカト云フコトヲ一寸聞イテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=6
-
007・石黒武重
○石黑政府委員 只今ノ御尋デゴザイマス
ガ、御話ノヤウニ大部分ノ組合員ガ漁業者
デアリマシテ、而モ其組合員ノ間ニ之ヲ漁
業協同組合ノ方ニ引直シタイト云フヤウナ
希望ノアリマスル處デアリマスレバ、勿論
ソレハサウ云フ風ニ引直シテ行クノガ宜カ
ラウト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=7
-
008・高木粂太郎
○高木委員 次ニ共同販賣ノコトニ付テ一
寸水產局長ニ伺ヒマスガ、漁業協同組合ガ
經濟的行爲ヲ爲スト致シマスレバ、共同販
賣ヲスルコトガ一番宜イ、共同購買ヲシテ
干、或ハ信用貸付ヲシテモ、其囘收ハ、漁
獲物ノ十分ノ一ナリ或ハ一一十分ノ一ナリヲ
一時止メテ置カセルヤウニ致シテ、生活ヲ
妨ゲナイ程度ニ於テ零碎ナル金ヲ囘收スル
ヤウナ方法モアリマスルノデ、共同販賣ヲ
スルコトガ一番宜イノデアッテ、漁業組合ガ
經濟行爲ヲ爲ストセバ、共同販賣ヲシナケ
レバ總テノ事業ガ發達シナイヤウニ私共考
ヘテ居ルケレドモ、府縣ニハ市場ノ取締規
則ガアリマスルノデ、一經濟區域ニ一市場
ト云フヤウニ多クノ府縣ガナッテ居ルヤウ
ニ思ッテ居リマス、是ガ爲ニ各府縣ニ於テ漁
業組合ノ共同販賣ヲ容勿ニ許サナイ、ソコ
デ之ヲ實施スルニ付テハ、モウ少シ漁業組
合ノ共同販賣ガ出來得ルヤウニ本省ニ於テ
方針ヲ立テヽ戴キタイヤウニ私共思ッテ居
ルガ、之ニ對シテ水產局デハ如何ニ考ヘテ
居ラレマスカ、伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=8
-
009・三宅發士郎
○三宅政府委員 御尤ノ御尋デゴザイマシ
テ、是ハ申ス迄モナク漁業組合ノ組織ヲ漁
業協同組合ノ組織ニ直シテ行キマスル所以
ノモノモ、苟モ漁業者ノ團體デアリマスル
モノハ自分ノ手ニ依ッテ共同販賣ヲ致サシ
メルト云フコトガ其主眼點ニナッテ居ルノデ
アリマス、唯御話ノ通リ、府縣ニ依リマシ
テ、理解ノ少イ府縣ニ於キマシテハ、其點
ガ旨ク行カヌ所モアルノデリマスルガ、又
理解ノアル府縣ニ於キマシテハ、特ニ地方
ノ取締規則ニ於キマシテ、市場ノ開設者ニ
寧ロ漁業組合ヲシテ優先權ヲ與ヘシメルヤ
ウナ規則ヲ作ッテ居ル向キモアルノデアリ
マスガ、最近ハ二三問題ヲ起シテ居ル所モア
リマスルガ、能ク協調シマシテ、兎ニ角漁
業者ノ團體ガ自分ノ漁獲物ヲ自分ノ手ニ
依ッテ共同販賣ヲスルト云フコトハ、是ハ動
カスベカラザル大原則デアリマシテ、其間
ニ於テ從來ノ市場トノ協調ヲ保ツヤウナコ
トハアリ得ルカモ知レマセヌガ、是ハ一ツ
ノ協調ノ點デアリマシテ、主義ト致シマシ
テハドウシテモ仰シヤッタヤウニ進ム積リ
デ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=9
-
010・高木粂太郎
○高木委員 只今局長ノ御話ヲ承ッテ滿足
スル者デアリマスルガ、全體漁業法ヲ明治
三十四年ニ施行セラレタ當時、漁業組合ヲ組
織致シタノデアリマスルガ、私ハ明治三十
八年頃ト思ヒマスガ、其頃漁業組合長トシ
テ今日謂フ共同販賣ヲ實施シタ所、縣デ叱
ラレタコトガアル、漁業組合ハ現在ノ法律
デハ經濟行爲ガ出來ナイノデアルカラ、サ
ウ云フコトヲシチヤイカヌ、斯ウ云フノダ
ガ、漁業組合ト云フ法人ガヤルノデナクシ
テ、漁業組合ガ自分ノ獲ッタ魚ヲ漁業者ノ
總意ニ依ッテ一箇處へ集メテ、ソレヲ俺ガ世
話シテ居ルノデアルカラ、何ガ惡イカト言ッ
テ、私ガ漁業組長ヲシテ居ル時代ニ無理ニ
押通シテヤッタコトガアリマス、所ガソレガ
數年ノ後明治四十一年カデアッタト思フ、水
產局ノ事務官ガ二名色々調ベニ來テ、漁業
組合ガ之ヲヤラナケレバイカヌト云フノ
デ、能ク調ベテ行ッテ下スッテ、簡單デハ
アリマスケレドモ、其當時ノ漁業組合ノ範
例ヲ書イタ本ニソレモ書イテアル筈デアリ
マスガ、然ルニ拘ラズマダ十分ニ之ヲ行ヘ
ナイ、靜岡縣ナドト致シマシテモサウデア
ル、其後明治四十三年ニ漁業組合ガ共同ノ
目的ノ爲ニ共同施設ヲスルコトハ許スヤウ
ニ漁業法ノ改正ニナリマシタケレドモ、此
度折角此漁業法ヲ改正シテ經濟行爲ヲ爲ス
以上ハ、市場取締規則モ改正シテ、漁業者
ノ共同販賣ヲ十分爲シ得ルヤウニ是非御助
力ヲ願ヒタイト云フコトヲ、只今ノ局長ノ
御話ニ甘ンジテ尙ホ御願シテ置ク次第デア
リマス、次ニ汚水ノコトニ付テ、本會デ
モ一寸伺ヒマシタガ、全ク漁業者ハ漁場ヲ
愛護スルト云フ精神ハ持ッテ居リマス、決
シテ小サナ魚ヲ獲ルトカ、產卵期ニ獲ルト
カ云フコトハシナイヤウニ互ニ申合セテ、
漁業組合規約等ニ於テモソレヲ制定シテ、
愛護ノ精神ハナキニアラズ、十分ヤッテ居ル
ヤウニ私ハ思フ、昨日モ大分論議サレタガ、
アヽ云フコトハ全ク宜イコトデ、何月何日
マデハ稚魚幼魚ヲ獲ラナイ爲ニ、餘リ細カ
イ目ノ網ヲ、例ヘバ棒受網等ヲ使ハナイト
云フヤウナ規約ハ私ナドノ縣ニモ各組合ニ
アルノデアリマシテ、斯ノ如ク漁業者ニ於
テハ、農家ガ耕地ヲ愛スルヤウナ考ヲ以テ、
十分肥料モ施シ耕作モシテ土地ヲ愛護スル
ヤウニ、海ヲ愛護スル精神ハアリ、悠久ノ
產業トシタイト云フ考ハ漁業者ニハアリマ
スルケレドモ、現在科學ノ進步、工業ノ發
達等ニ依リマシテ、非常ニ惡水、汚水ガ流
出シテ稚魚幼魚ヲ寄セツケナイ、是ハ昨日モ
仰セラレタカラ私細カイコトハ言ヒマセヌ
ケレドモ、ソレガ爲ニ沿岸漁場ヲ荒スノデ
アリマス、此沿岸漁業ノ資源培養ト云フ根本
ハ汚水ノ問題ヲ解決スルコトガ最モ急務デ
アルト思フノデアリマスガ、之ニ對スル當
局ノ御意見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、
ドウシテ此漁業法第三十四條ノ徹底スルヤ
ウニヤッテ下サルカ、折角漁業法第三十四條
ニハ書イテアリマスケレドモ、ソレガ徹底
シテ居ラナイノヲ遺憾ニ思フノデアリマス
ガ、ドウガ一ツ之ニ付テノ御意見ヲ伺ッテ
安心サシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=10
-
011・三宅發士郎
○三宅政府委員 是ハ重大問題デゴザイマ
シテ、是モ私共十年前ニ水產局ニ居ル時分
ニ法律案マデ作ッテ居ッタ問題デヤハリ今以
テ片付イテ居ラヌノデアリマス、是ハ外國ノ
歷史ヲ見マシテモ、水產局ナラ水產局、農
林省ナラ農林省ト云フ所ノミカラ出發シテ
居ル所ハ少イヤウデアリマス、此出發ノ仕
方ガ、ヤハリ若干考慮ヲ要シタノデハナカッ
タカト今デハ考ヘルノデアリマス、ヤハリ
鑛山ノ方面、或ハ保險ノ方面、主管省カラ
言ヒマスレバ、今カラ言ヘバ厚生省モアリ
マセウシ、商工省關係、是等ト一〓ニナッ
テ、此水質ノ汚毒ヲ防止スルト云フ立法制
度ヲ立ツベキデハナカッタカト云フ風ニ私
共ハ過去ノコトヲ考ヘラレルノデアリマス、
今後ハ是等ノ各省協調致シマシテ、成ベク
早ク斯ウ云フ制度ヲ立テナケレバ、哀レナ
沿岸漁民ノ生業ヲ確立スルコトガ出來ナイ
ト云フコトニナルト思フノデアリマス、セ
メテモ、サウ云フ關係省ノ合同ノ調査會位
ノモノハ一ツ差當リハ作ラナケレバナラヌ
モノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス、此
點ハ非常ナ大キナ問題デアルト水產當局ト
シテモ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=11
-
012・高木粂太郎
○高木委員 漁業法第三十四條ノ五項ニ依
リマシテ地方長官ハ多少ノ取締ハ致シテ居
リマス、追ッテ其設備等ニ於テハ命令モ爲サ
ナイノデハナイノデアリマスケレドモ、營
利會社ト云フモノハ儲ケタイガ目的ダカラ、
晝ノ間ハ其通リ石灰ナリ何ナリ入レテ防毒
行爲ヲ爲スノデアリマスケレドモ、夜間ニ
ナルト云フト其儘毒水ヲ流シ出スト云フヤ
ウナコトガ往々アルト云フコトヲ私ハ漁業
者ニヨク聞クノデアリマシテ、斯ウ云フコ
トモ餘程考ヘテ戴カナイト云フト、唯設備
ヲシタダケデハ、豫算ヲ取ッテ、サウシテ
監督ヲ十分ニシテ戴カナケレバ、效果ハナ
イヤウニ思フ、此點ハ御注意マデニ申上ゲ
テ置キマス、尙ホ昨年漁船保險法ガ制定セ
ラレマシテ洵ニ漁船主トシテハ結構ナコト
デアリマスケレドモ、如何ニモ此漁船保險
料ガ高過ギルヤウニ思フ、私ノ縣ナドデモ、
永ク遭難救濟法ヲ水產會デヤッテ居リマス
ガ、其統計カラ調ベマシテモ今ノハ餘リ高
過ギル、モット之ヲ廉クスル御意思ハナイカ
ドウカト云フコトヲ此際伺ヒタイ、ソレカ
ラ漁船保險ニ依ッテ船主ハ多少ノ安心モ出
來マセウ、又アレヲ金融上ノ擔保ト爲スコ
トモ船主ハ爲シ得マセウケレドモ、漁業從
事者、卽チ漁業者其人ニ對シテノ遭難救濟
ナリ或ハ生命保險ナリト云フヤウナコトヲ
一ツ考ヘテ戴キタイト思フガ、是ハ昨年モ
サウ云フコトヲ申上ゲタコトガアルガ、如
何ニ考ヘテ居ラレルカ御伺致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=12
-
013・三宅發士郎
○三宅政府委員 漁業保險ノ料金デアリマ
スルガ、大體新造船ノ價格ノ七掛ヲ時價ト
見マシテ、ソレノ又七掛ヲ保險金額トシテ
居ルノデアリマス、大體新造船ノ半分位ナ
値段ヲ保險金額ト見テ、其百圓ニ對シテ、
物ニ依ッテ違ヒマスガ、二圓前後ト云フ風ニ
定メラレテアルノデアリマシテ、私モ物ニ
依リマシテハ今少シ下ッテ宜イノデハナイ
カト云フ氣ガ致シテ居ルノデアリマスガ、
何分今年ハ店開キ早々デアリマスノデ、ソ
レ等ノ點ニ付テモマダ考究ヲ要スル點ガア
ラウト思ヒマスガ、氣持ハ今御話ノ通リ考
ヘテ居ル次第デアリマス、何レソレ等ノ調
査ヲ終ヘマシタナラバ漁船ノ保險ハ政府ガ
再保險ヲシテ居ル性質上出來ルダケ低下サ
セル必要ガアラウト考へテ居ル次第デアリ
マイ、ソレカラ人ニ對スル救濟、卽チ遭難
ノ救濟ト云フヤウナコトニ付キマシテモ、
是モ此漁船保險法ガ昨年議會ニ掛リマシタ
時ニ、衆議院ニ於キマシテモ貴族院ニ於キ
マシテモ問題ニナッタ點デアリマス、此方ヲ
先ニ致シマスルカ、或ハ遭難防止ノ方ノ施
設ヲ先ニ致スベキカト云フコトハ、私ハ考
ヘル餘地ノアル問題ガアラウト思フノデア
リマス、兩方一度ニ出來レバ仕合セデアリ
マスガ、何レヲ先ニ致スベキカト云フコト
ニナリマスレバ、ドチラヲ先ニ致スカト云
フコトヲ考ヘテ見ル必要ガアラウト思ヒマ
ス、尤モドチラモ必要デアリマス、兎ニ角
此點モ何トカ致サナケレバナラヌト云フ考
ヲ持ッテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=13
-
014・高木粂太郎
○高木委員 漁業ニ從事スル者ノ扶助ニ關
スルコトニ付キマシテハ、漁業法第四十條
ニ勅令ヲ以テ定メルト云フコトニナッテ居
リマスルガ、ソレハ漁業法施行後數十年ヲ
經テ居ルケレドモ今以テ實施セラレテ居ラ
ナイ、勅令モ出テ居ラナイノデアリマスガ、
之ニハ色々ノ御考モ、又御都合モアルカモ知
レマセヌガ、是ハ少クモ各府縣ニ於テデモ、
或ハ中央ニ於テデモ、漁業者ノ遺族ノ扶助、
相互救濟法ト云フヤウナコトヲヤッテ居ル
水產會ナリ漁業組合ナリニ先ヅ急ノコトト
シテ補助デモ與ヘテ、ソレデ指導シテ行ク
ヤウナコトモ一ツノ便法デハナイカト考へ
テ居ルガ、サウ云フ御考ハナイノデアリマ
セウカ、此點ヲ一寸伺ッテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=14
-
015・三宅發士郎
○三宅政府委員 實ハ只今高木サンノ仰シ
ヤッタヤウナ豫算ヲ局ト致シマシテハ組ミマシ
タ、併シソレヨリモ色々急ヲ要スルト云フモ
ノガアル關係ト、財政ノ關係其他カヲ實ハ
提案スルコトガ出來ナカッタノデアリマス
ルガ、色々ノ細カシイ規則ヨリモ、少クトモ
手取早ク良イ施設、卽チ今高木サンノ仰シ
ヤッタヤウナコトモ實ハ考ヘテ居ル次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=15
-
016・高木粂太郎
○高木委員 私ノ縣デハ縣費ノ多少ノ補助
モ得テ、船主モ負擔シテ居リマスガ、船員
モ多少負擔シテ、サウシテ此業ヲ圓滿ニ何
等ノ危險モナク十數年ヤッテ居リマス、都合ニ
依ルト云フト、大キナ船ガ二艘モ遭難シタ場
合、一年ニ二万圓以上モ出シタコトガアリ
マスケレドモ、此事業ハ圓滿ニ實行シテ漁
業者モ此負擔金ハ喜ンデ出スヤウナコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、併シ政府ニ於テハ
サッパリ是ガ指導モ補助モシテ下サラナイノ
ヲ私ハ非常ニ遺憾ニ思フ、此點ハ是非局長
サンノ御考ヲ俟ツ點デアルガ、御〓究ヲ願
ヒタイト思ヒマスカラ希望シテ置キマス
次ニ漁網用ノ綿絲或ハ船具用ノ麻、或
染料等ノコトデアリマスガ、是モヤハリ國
ノ統制ヲ受ケマシテ、一割 、二割ヲ減ゼラ
レルヤウナコトニ聞イテ居リマス、抑〓木綿
ノ著物ナラ、例ヘバ混織ヲスルトカ、此場
合一年二年古イノデ繼合セテ我慢スルト云
フコトハ出來マスケレドモ、漁網ト云フヤ
ウナモノハ節約ハ殆ド出來ナイ、網ニ穴ガ
明ケバ魚ハ逃ゲテシマフノデアリマスカラ、
サウ云フ古イ物ヲ使フト云フ譯ニハ行カナ
イノデアルカラ、此漁網ニ限ッテハサウ云
フ統制ヨリ除外シテ戴イテ配給ヲ願ヒタイ
ト思フ、尙ホ又殊ニ染料デアリマスガ、染
料ガ不足スレバ網ガ腐敗シ易イノデアリマ
シテ、漁網ノ統制ヲスレバスル程寧ロ染料
ハ豐富ニシテ行カナケレバナラナイノデア
リマス、漁業者ノ使フ所ノ染料及ビ漁網ニ
使フ所ノ綿絲ノ配給ニ付テハ、只今申上ゲ
タヤウナ希望ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、
農林省トシテハ之ニ對シテ如何ニ御盡力下
スッタカ、其點ヲ伺ヒタイノデアリマス、又
將來如何ナル御方針デアルノデアリマセウ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=16
-
017・三宅發士郎
○三宅政府委員 洵ニ御尤ナ御意見デゴザ
イマシテ、私共ト致シマシテハ漁業用物資
ト致シマシテ、燃油卽チ石油ノコトデアリ
マスガ、ソレノコトハ一般ニ論ゼラレマス
ガ、漁網ナリ、ソレヲ染メマス所ノ染料ニ
付テハ業界ニ於キマシテモ、餘リ叫バレテ
居ラヌノハ洵ニ遺憾トシテ居ッタ次第デアリ
マス、御說ノ通リ漁網ナクシテ四億ノ漁獲
ト云フモノハ絕對ニ擧ガラナイノデアリマ
ス、而モ漁網ハ四五百万圓ハ年々輸出シテ
居ルヤウナ次第デアリマス、今囘大體ニ於
キマシテ「ステーブル·ファイバー」ヲ混用
シナケレバナラヌト云フヤウニ綿絲ハナッタ
ノデアリマスガ、漁網ノ方ハ特ニ考慮ヲ致
サレマシテ、是ハ農林省ト商工省ト能ク協
調ヲ保チマシテ、現在ニ於キマシテハ無論
純綿デナケレバイカヌノデアリマスカラ、
ソレノ月々ノ割當ハ若干ノ節約ハシナケレ
バナラヌヤウニナッテ居リマスガ、手持品モ
アルヤニ考ヘラレマスノデ、大シタ不足ハ
ナイ所マデ兩省協調ノ下ニ行ッテ居ル次第
デアリマスガ、漁業ノ趨勢カラ見マスレバ
何時モ自然增ガ之ニ伴ッテ居ルノデアリマス、
デアリマスカラ其儘ニシテ置キマスレバヤ
ハリ不足ノ時ガ起ッテ來ルノデアリマスカ
ラ、是ハ商工省ト從來通リ、寧ロソレ以上
ニ協調ヲ保ッテ不足ナカラシムルヤウ、而モ
漁網ノ方面ニ付キマシテノ別ノ聯合會ガ今
囘設立セラレマシタ、卽チ日本網綱工業組
合聯合會ガ出來マシテソレガ割當ヲ受ケル
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、價
格ノ點モソレ等ニ牽聯致シマシテ、從來純
綿ノ方ニハ最高ノ標準値段ガアッタノデアリ
マスガ、混紡トカ撚絲ノ方ニハ是ガナカッタ
ノデアリマス、今囘其ナカッタ方ノモノニ標
準價格ヲ作ラレタガ爲ニ、純綿ノ方ノ價格
モ却テ維持セラレルト云フコトニナリマス
シ、若干量ノ供給モ殖エルト云フコトニナツ
タノデアリマス、商工省ニ於キマシテモ紡
績會社ガ純綿ノ操業ヲ忌避スルコトノナイ
ヤウニ十分注意シテ居ルヤウナ譯デアリマ
シテ、先ヅ差當リハ、相當ノ努力ヲ致シテ
來タ積リデアリマスガ、先程申シマシタヤ
ウナ關係ガアリマスノデ、尙ホ〓〓兩省能
ク協調シテ、不足ヲ來サナイヤウニシナケ
レバナラヌ大切ナ問題デアルト考ヘテ居ル
次第デアリマス、次ニ染料ハ大體百五十万
圓程度ノ輸入ヲ見テ居リマス、是ハ輸入ガ
ナケレバ絕對出來ナイノデアリマス、是モ
輸入制限ノ爲ニ相當ノ制限ヲ受ケテ居ルノ
デアリマシテ、隨分方々カラ輸入ヲ容勿ニ
スルヤウニト云フ陳情モ來テ居リマシテ、
此點ハ能ク大藏省ニモ申シテ居リマス、
是ハ漁業組合ノ聯合會邊リガ其管下ニ於ケ
ル需要染料ノ量ヲ決メマシテ、ヤハリ奬勵
ヲシナケレバイケマセヌカラ、ソンナ風ニ
シテ染料ノ不足ヲ來サナイヤウニ、染料
ガナケレバ幾ラ漁網ガアリマシテモ一月位
デ腐ッテシマウノデアリマスカラ是ハ大變
ナ問題デアリマス、御意見ヲ承リマシテ
私共一層此點ニ注意ヲ深クシナケレバナラ
ヌト云フ責任ヲ感ジテ居リマス、又一面
ニ於キマシテ染料ノ節約ヲスルヤウニ、無
駄ヲ排除スルヤウニ、或ハ漁網ノ手入ヲ
今迄ヨリモ十分ニスルヤウニト云フコト
ナドモ、團體ニ對シテ、是ガ宣傳ニ努メテ
居ルヤウナ次第デアリマス、尙ホ三月ノ十
日、十一日府縣ノ主任官ヲ集メマシテ、色々
議題トスル問題ノ中ニモ、此石油、他漁
網、染料ト云フコトモ議題ニ供スルヤウニ
ナッテ居ル次第デアリマス、精々此點ヲ努メ
ル積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=17
-
018・高木粂太郎
○高木委員 最後ニ私ハ一言希望ヲ申上ゲ
タイト思ヒマスガ、ソレハ先般請願ノ紹介
ヲシタ時ニ局長サンガラ水產省設置ト云フ
ヤウナコトハ私カラ答フベキ限リデナイト
云フコトデ刎ネ付ケラレテシマヒマシタカ
ラ只今ハ敢テ御伺ハ致シマセヌ、希望ト
シテ申上ゲルニ止メマスガ、想起シマスレ
バ是ハ十年前ノコトデアリマスガ、此問題
ニ付テ水產局へ御願ニ參リマシタラ、サウ
君等ハ勝手ナコトヲ言ッテモ、此處ハ農林省
デ、水產局ト云フホンノ宿借ヲシテ居ルノ
デアルカラ水產省ヲ獨立デモシナケレバ、
サウ色々ナコトヲ言ッテ來テモ省議デ中々
採ッテ吳レナイ、僕一人デ何ト言ッテモ駄目ダ
ト云フヤウナコトヲ十年前ノ局長サンカラ
言ハレタコトガアリマスガ、斯ウ云フコトヲ
考ヘマス時ニ於テ農ト林トハ殆ド接近シテ
居ッテ、農家ハ卽チ林業ヲ兼ネテ居ル、海國
日本トシテ水產ノ仕事ヲ何處デヤッテ居ル
カ分ラヌト云フヤウナコトデハ洵ニ困ルト
思ヒマス、ソコデ是ハ農林水產省トスルカ、
或ハ農水省ト云フヤウナコトニシテ戴キタ
イト云フコトヲ希望トシテ御願シテ置キマ
ス、尙ホ御願シテ置キタイコトハ、府縣ノ
水產課長ト云フモノヲ多クハ商工課長ガ兼
ネテ居ル、御承知ノ通リ商工ト水產トハ中
央ニ於テモ時ニ摩擦スル問題ナキニシモア
ラズデアリマス、府縣ニ於テハ殊ニ然リデ
アリマス、之ヲ兼ネテ居ラレルトドウモ
旨ク行カナイ、ドウシテモ商工省ノ方ガ資
本家ノヤッテ居ル仕事ガ大キイカラ其方ニ
轉ビ易イ人ガ多イノデアル、ソレデ弱イ漁
業者ト云フモノハ何時モ頭ヲ下ゲテ居ルト
云フ形ガ地方ニハアルノデアリマス、ソコ
デ海ニ面シテ居ル所ノ府縣ニ於テハ必ズ水
產課ヲ將來ハ置クヤウニシタイト私ハ思フ
ト同時ニ、水產課ヲ置イタナラバ專任水產
課長ヲ置クヤウニシタイ、サウシテ其水產
課長ハ必ズシモ法律屋サンデナクテモ、水
產技術者デモ結構デアリマス、却テ術技者
ノ方ガ宜イカモ知レマセヌ、若シ兼任ナラ
バ已ムヲ得ナイカラ水產試驗場長ヲシテ兼
任セシムルノモ宜イト思ヒマスノデ、サウ
云フヤウニ御指導ヲ願ヒタイ、是ダケ御願
シテ私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=18
-
019・青山憲三
○靑山委員長 他ニ御質問ハアリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=19
-
020・田代正治
○田代委員 私ハ專用漁業權ト云フコトニ
付テ一寸伺ヒタイト思ヒマス、今日ドノ沿
岸漁村デモ總テ漁業組合ガアリマシテ、サ
ウシテ之ニ專用漁業權ト云フモノガ財產ト
シテアルノデアリマス、然ルニ北千島ノ方
ハマダ未開拓地デアリマスモノデスカラ移
住民ガナイノデ漁村ガナク隨テ又漁業組合
ガナク、專用漁業權ノ設定ガナイト云フ狀
態ナノデアリマス、併ナガラ御承知ノ通リ
北千島ノ沿岸ハ猫足昆布トカ或ハ布海苔ト
カ、其他地先水產物ガ非常ニ豐富ナノデア
リマス、猫足昆布ノ如キハ浪ニ曝サレテ、
浪ニ打上ゲラレタモノダケデモ、非常ニ値
打ノアッテ沃度ノ原料ニナルモノトカ、或
ハ鹽化加里ノ原料ニスルコトガ出來ルト云
フ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ放置
致シマスト、段々是ハ又外ノ方ノ今マデノ
水產業ノ如ク、資本家ガ段々手ヲ伸バシマ
シテ之ヲ利用スル、ソレモ開發スルノデア
リマスカラ、宜イコトニ違ヒアリムセヌケ
レドモ、私等ノ考デハ一日モ早ク彼處ニ漁
村ヲ起サレマシテ、サウシテ此漁業組合ヲ
作リマシテ之ニ對シテ專用漁業權ヲ與ヘル、
サウシテ地先水產物ノ保護ヲシテ、永遠ノ
財產ニスルト云フ考ヲ、今カラ持ッタ方ガ宜
イト思フノデアリマス、農林省ニ於カセラ
レマシテハ、北千島ニ漁業組合ヲ作ル、サ
ウシテ專用漁業權ヲ設定致シマシテ、地先
ノ水產物ノ利益ヲ永遠ニ保護スル御考ガ今
オアリニナルカドウカ、此點ヲ一寸御伺致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=20
-
021・三宅發士郎
○三宅政府委員 北千島ノ開發ニ付キマシ
テハ、農林省ト致シマシテモ隨分盡力シテ
參ッタノデアリマス、唯今田代サンカラ御話
ノヤウナコトハ、私ハ初メテ實ハ承ッタノデ、
其點甚ダ迂濶千萬デアリマス、今マデノ漁
業ノ統制ト云フコトカラ、保護ト云フコト
ニ進ンデ參リマシタ農林省ト致シマシテハ、
能ク北海道廳ト協議致シマシテ、成ベク御
說ノ點ヲ障碍ナク實現シ得ラレルヤウナ方
法ニ付キマシテ、考究致シタイト考ヘテ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=21
-
022・田代正治
○田代委員 ソレカラ又是ハ直接此法律案
ニ關係シテ居リマセヌケレドモ、好イ機會
デアリマスカラ一寸御伺致シマスガ、同ジ
ク北洋漁業ノ開發ノコトデゴザイマス、先
年農林省カラ中村技師ガオ出デニナリマシ
テ、モット北洋漁業ニ付テ外ノ水產物ヲ開發
シテ、サウシテ之ヲ輸出物トシテ外國カラ
金ヲ取ルト云フヤウナ方法ヲ御考ニナッタ
コトガアルノデアリマス、慥カ二千万圓位
ノ增收ヲ圖ルコトガ出來ルダラウト云フヤ
ウナ御考ノ下ニ、御調査ニナッタダラウト
思ッテ居ルノデアリマス、御承知ノ如ク、今
ハ北洋漁業ノ方カラハ鮭鱒罐詰ト云フ貴重
ナル輸出物ガアルノデアリマスガ、歐羅巴
ハ御承知ノ通リ丁度我ガ北洋ト緯度ヲ同ジ
クスル爲ニ、其嗜好品ハ主トシテ我ガ北洋
漁業ノ水產物ト同ジ嗜好デアルノデアリマ
ス、南洋カラ獲レマス所ノ水產物デ、只今輸
出物トシテ成功シテ居ルノハ鮪ノ罐詰位デ
アリマシテ、鰹ハ失敗ニ終ッタト云フノデア
リマス、是ハ詰リ歐羅巴ノ緯度ガ北洋ノ緯
度ト同ジ爲ニ、熱イ地方ノ水產物ガ嗜好ニ
適シナイト云フコトガ原因シテ居ルダラウ
ト思フノデアリマス、ソレデ又一面、輸出
物、輸出罐詰トシテハ、水產罐詰ハドウシ
テモ原料ノ安イモノデナケレバイケナイ、
是ガ大事ナコトデアリマス、然ルニ我ガ北
洋漁業ノ水產物ハ御承知ノ通リ實ニ豐富大
量ニ生產サレルノデアリマシテ、一ツトシ
テ高イモノハナイノデアリマス、私ノ考デ
ハ此中最モ著目スベキモノハ鮮ダト思フノ
デアリマスガ、此鱈漁業ニ付テ現在ヤッテ居
リマスノハ鱈釣リ、鱈延繩ト云フヤウナモ
ノデアリマシテ、之ヲ大量ニ獲ルコトハマ
ダヤッテ居ラナイノデアリマス、私ノ考デハ
寧ロ此際積極的ニ此「カムチヤッカ」ノ沖合
漁業ニ付テ、彼處デ鱈ノ機船底曳網モ奬勵
致シ、鱈ヲ大量ニ獲リマシテ、之ヲ水煮其
他罐詰ニ造リマシテ輸出シタナラバ、非常
ニ面白カラウト思フノデアリマス、然ルニ
現在アノ「カムチヤッカ」沖合、北洋ノ沖合
デハ、蟹漁業或ハ流シ網ト云フヤウナ漁業
ガアリマスノデ、此上鱈ノ底網漁業或ハ又
今申シマシタ所ノ機船底曳ト云フヤウナモ
ノヲ許可致シマシタナラバ、或ハ摩擦相剋
スル所ガアルダラウト思フノデアリマス、
併ナガラソレダカラト云ッテ、此豐富ナル資
源ヲ放置スルト云フコトハ、如何ニモ惜シ
イ感ジガ致サレルノデアリマス、近キ將來
ニ於テ此「カムチヤッカ」ノ沖合、或ハ又北
千島ノ沖合ト云フヤウナ所ニ、鱈ノ機船底
曳網ノ漁業ヲ許可ナサレルト云フ御意思ガ
アルカドウカ、之ヲ承リタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=22
-
023・三宅發士郎
○三宅政府委員 北洋漁業ノ中デ、今ハ大
シタ勢力モナイノデアリマスガ、將來ハ鱈
ノ漁業ト云フコトガ相當有望ニナリマス
シ、又サセナケレバナラヌト云フ考ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、併シ收支ノ點ニ於テ現
ニ工船ヲ持ッテ其方面ニ出テ居ルモノガ、慥
カ一隻デハナカッタカト思フノデアリマス、ソ
レモ實際ハ眞僞ノ程ハ保證ノ限リデハアリ
マセヌガ、本年ハ收支償ハヌノデ止メルヤ
ウナ噂ガアルノデアリマス、斯ウ云フ非常
時ノ場合ハ已ムヲ得ナイノデアリマスガ、
若シ平時ニ於キマシテ工船以外ノ底曳ニ於
テ、收支ガ償フト云フコトガ分リマスレ
バ、是ハ私ハ許シテモ宜イモノデアラウト
考ヘテ居リマス、唯現在ノ所デハ先ニ工船
ガ手ヲ著ケルト云フヤウナ所カラ見テ、却
テ工船ノ方ガ收支ガ宜イト云フ所カラ、或
ハ許可ノ關係モゴザイマセウガ、先ニ手ガ
著イタノデハナイカト云フ氣ガ致シマス、
併シ私ハ專門家デハアリマセヌカラ能ク分
リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=23
-
024・青山憲三
○靑山委員長 田中サン、御質問ハゴザイ
マセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=24
-
025・田中邦治
○田中委員 アリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=25
-
026・青山憲三
○青山委員長 ソレデハ是デ休憩致シマシ
テ午後二時カラ開會致スコトニ致シマス、
暫時休憩致シマス
午前十一時四十分休憩
午後二時二十分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=26
-
027・青山憲三
○靑山委員長 午前ニ引續イテ開會致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=27
-
028・田中邦治
○田中委員 私ハ產業組合自治監査法ニ付
キマシテ、簡單ニ當局者ニ御尋致シテ置キ
タイト思フ者デアリマス、第一ニ本法案ノ
機能及ビ之ニ依リマスル效果如何ト云フコ
トニ付テ、一般ニ分リ易ク御說明ヲ願ヒタ
イノデアリマス、現在行ハレツヽアリマス
ル農林省竝ニ縣ノ監査ニ對シマシテ、屋上
屋ヲ重ヌル結果トナリハセヌカト云フヤウ
ナ危惧ノ念ヲ持ツノデアリマス、尙又本法
ニ依リマスル監査員ハ四十有餘人ト承ッテ
居リマスルガ、此多クハ役人ノ古手ト言
フト語弊ガアルカモ知レマセヌガ、大體役
人上リト云フヤウナ者ガ之ニ當テラレルノ
デハナイカト推察致シマスルガ、サウ云フ
ヤウナコトニナリマスルト矢張一口ニ言フ
役人ノ捨場ダト云フ風ナ感ジヲ以テ、自治
監査ト云フコトノ大切ナ機能ニ付テ本當ニ
效果的ニ其職責ヲ盡サレルコトガ出來ルヤ
否ヤト云フ風ナコトモ考ヘラレルモノデア
リマス、更ニ尙ホ最モ恐ルベキハ、監査員
デアリマシテモ矢張人間デアリマスルカラ、
場合ニ依ッテ感情ニ走ッテ、被監査組合ニ對
シテ浮沈ニ關スルヤウナ行動ニ出ヅルコト
ガアリハシナイカ、是等ノ取締ト云フヤウ
ナコトニ付テハ、ドウ云フ御方針ヲ持ッテ
居ラレルカ、ソレデ第一ニ玆ニ知リタイノ
ハ、此法案ニ依リマスル所ノ主任者ハ、如
何ナル方面カラ御求メニナル御方針デアル
カ、以上ニ亙リマシテ簡單ナガラ承知致シ
タイノデアリマスカラ、適當ナ御說明ニ預
カリタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=28
-
029・石黒武重
○石黑政府委員 只今ノ產業組合自治監査
制度ニ付テノ御質問デゴザイマスガ、產業
組合ノ監査ハ、御承知ノヤウニソレ/〓ノ
產業組合ノ適正ナ活動ニ付キマシテ、外部
或ハ內部カラ監査ヲ致シマシテ、結局ニ於
テハ、產業組合ノ堅實ナ發達ヲ圖ルト云フ
目的ヲ遂ゲル爲ノモノデゴザイマスガ、其
方法ト致シマシテハ、從來ノ實例ニ見マシ
テモ、地方或ハ中央ノ官廳ノ監査ノ外ニ、
御承知ノヤウニ產業組合中央會ニ監査部ト
云フモノガゴザイマシテ、其監査モ組合ニ對
シテ行ハレテ居ルノデアリマス、併ナガラ
中央會ノ現在ノ監査部ノ仕事ト云フモノハ
如何ニモ小規模デゴザイマシテ、マダ十分
其機能ヲ發揮シテ居ラナイヤウナ譯デアリ
マスガ、最近產業組合ニ對スル監査ヲ一段
嚴重ニシナケレバナラナイト云フ聲ガ產業
組合ノ內カラモ、或ハ外カラモ起リマシテ、
今年度以來政府ニ於キマシテハ、役所ノ
內部ニ於キマテモ監査ノ施設ヲ充實致シ
マスシ、同時ニ又從來ノ產業組合中央會ノ
監査部デヤッテ居リマスヤウナ、玆ニ所謂自
治監査ト云フ施設ヲ特ニ擴大シ、且ツ確立
スルコトニナッタ次第デゴザイマス、役所ノ
監査ト自治監査ト假ニ比較シテ見マスト、
役所ノ監査ハ、大體ニ於テ監督的ナ立場カ
ラ致シマシテ、組合ノ內部ヲ監査スルノデ
アリマス、勿論監査ノ結果ニ付キマシテハ、
其誤ッテ居ルコトヲ指摘シ、更ニソレニ對シ
テ如何ニシテ矯正シテ行クカト云フ方法マ
デモ示スノデハアリマスケレドモ、サウ立
入ッテ深イコトヲ各〓細カイ細目マデ示スト
カ、或ハ示シタ結果ニ付テ其實行上ノ援助
ヲスルト云フヤウナ所マデハ參リ兼ネマス
ガ、自治監査ニナリマスト、役所ノ監査ト
多少違ヒマシテ、同ジク組合ノ內部ノコト
ニ付テ、其適不適ヲ監査スルニ致シマシテ
モ、組合ノ立場カラ非違ノアル所ハ指摘ス
ル、又ソレノ矯正ノ方法ヲ示シ、場合ニ依
リマシテハ、後ノ矯正方法ニ付テ指導モ
スレバ世話モ燒クト云フコトニナルノデア
リマス、又時ト場合ニ依リマスト、組合ノ
方カラ自分ノ所ヲ一ツ檢査シテ貰ヒタイト
云フヤウナ依賴ニ應ジテ、ソレヲ見テヤル
ト云フヤウナコトモ出來ル譯デアリマシ
テ、是ハ官廳ノ監査ト又違ッタ效果ガソコニ
アラウト思フノデアリマス、自治監査制度
ガ確立サレマシタ上デ、其監査員ガ今御話
ノ役人出ノ者バカリガ之ニ當ルコトニナル
虞ハナイカト云フ御話デアリマスガ、私共
ノ考ト致シマシテハ隱居仕事ノヤウニハ無
論シタクナイト思ッテ居ルノデアリマス、此
產業組合ノ監査ノ仕事ハ或ル程度ノ經驗ガ
ナイト出來マセヌノデ、自然如何ニモ或ル
程度ハ多少地方デ指導ノ任ニ當ッタト云フ
人モナリモ致シマセウケレドモ、亦同時ニ
廣ク產業組合ノ仕事或ハ產業組合中央會方
面ノ仕事ヲヤッタ人或ハ聯合會其ノ他ノ仕
事ヲヤッタ人、總テ從來ノ經歷ヨリ產業組合
ノ監査ヲヤル能力ガ認メラレマスレバ、成
ベク廣ク有能ノ人ガ監査ニ當ルコトヲ望ン
デ居ルノデアリマス、ソレカラ監査員ガ監
査ノ際ニ、感情ニ走ッテ却テ組合ノ爲ニナラ
ヌヤウナコトヲスル虞ガナイカト云フ御話
デアリマスガ、此產業組合監査聯合會ガ出來
マス以上ハ、監査員ノ服務規律ト云フコトニ
付テ、聯合會ノ內部ニ於テ相當ナ規定ヲ設
ケサセマシテ十分サウ云フコトノナイヤウ
ニヤッテ貰ヒタイト私共ハ考ヘテ居リマス、
尙ホ政府ノ方ニ於キマシテモ監査員ノ監査
ノヤリ方ニ付キマシテハ十分監督ヲスル積
リデ居リマス、ソレカラ此監査聯合會ノ主
任者ハドウ云フ人ガナルカト云フコトデア
リマスガ、是ハ全國ノ產業組合ガ集ッテ作ル
ノデアリマシテ、主トシテ全國ノ團體其他
產業組合界ニ於ケル指導者ノ方々ガ自然聯
合會ノ首腦者ノ大部分ヲ占メルコトニナラ
ウカト思ヒマス、其外此種ノ監査ノヤウナ
嚴正ナ仕事ヲ忠實ニヤレルヤウナ人等ガ、
自然選バレルコトニナラウト考ヘテ居リマ
ス、大體先程ノ御質問ニ對シマシテ御答致
シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=29
-
030・田中邦治
○田中委員 大體ハ分リマシタガ、現在行
ハレツヽアリマスル總テノ監査機關ニ對シ
屋上屋ヲ重ネルト云フヤウナ虞ハ絕對ニナ
イト云フコトニナルノデアリマスカ、其點
モハッキリ一ツ御願シテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=30
-
031・石黒武重
○石黑政府委員 從來ノ中央及ビ地方廳ノ
監査ノ仕事ハ、御承知ノヤウニ人手モ足リ
マセヌノデ、十分ニ參ッテ居リマセヌ、本年
度カラ多少充實ヲ致シマシテ精々出來ルダ
ケノ機能ヲ發揮シマシテ、全國ノ產業組合
ニ對シテマア五年ニ一囘位ノ監査ガ出來ル
カト云フ風ニ吾々ハ見込ンデ居ルヤウナ譯
デゴザイマスガ、ソレデハドウモ足ラナイ
ヤウニ思フノデゴザイマス、全國ノ產業組合
ニ對シテノ監査ガ大體五年ニ一囘ヤレルカ
ト云フヤウナ働キデアリマスノデ、實際ニ
於キマシテ役所ノ方面カラノ監査ハ、大體
中央機關トカ或ハ聯合會其他特殊ノ組合ト
カ云フヤウナ、產業組合ノ中デモ大キナ方
面ニ對シテ實行サレルコトニナルノデアリ
マス、今度斯ウ云フ監査聯合會ノヤウナモ
ノガ出來マスルト、是ハ寧ロ單位組合ノヤ
ウナ小サナ組合ニ對シマシテ、主トシテ
監査ノコトニ對シテ其指導ヲヤルコトニナ
ルノデアリマス、兩々相併セテ或ル程度ニ
從來ノ監査ノ働キノ不備ヲ補ヒ合ッテ適當
ニ運行シテ行ケルノヂヤナイカ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=31
-
032・田中邦治
○田中委員 甚ダ諄イヤウデアリマスルガ、
現在官吏ニ服務紀律ト云フモノガアッテサ
ヘ斯ルコトニ對シテハドウモ旨ク行カヌノ
デアリマス、然ルニ本法案ハ自治團體卽チ
監査聯合會ヲ作ルノデアリマスルガ、之二
依ッテ豫期ノ成績ヲ擧ゲラレルト云フヤウ
ナコトヲ御確信ガアルノデアリマスカ、此
法ノ內容ニハ何モ示シテナイノデアリマス
ルカラ、大體ハ勅令カ何カデ御定メニナッ
テモ間ニ合フノデハナイカト私ハ思フノデ
アリマスガ、此法案ノ特ニ要點トセラレル
點ハドンナ所デアリマスカ、御聽カセヲ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=32
-
033・石黒武重
○石黑政府委員 從來ノ實例カラ見マスト、
先程モ申シマシタヤウニ、中央會ニ監査部
ヲ設ケラレテ居リマス、此監査部デヤッテ居リ
マスル監査ノ實例ニ付テ見マスト、相當ニソ
レゾレ其方面ノ專門的ナ技術ヲ持ッテ居ル者
ヲシテ立派ニ其效果ヲ擧ゲテ居ルヤウニ思
フノデアリマス、唯如何ニモ小規模デアリマ
シテ、僅カバカリノ監査ヲ年々ヤッテ居ルト
云フ狀態デアルノデアリマス、今度此監査聯
合會ガ出來マスルト、監査員ノ資格トカ云フ
ヤウナコトニ付テモ相當ナ經歷ナリ體驗ヲ
持ッテ居ル者ヲ選ビマスシ、又其服務ニ付キ
マシテモ、先程申シマシタヤウナ相當ナ規
定ヲ設ケ、選任解任ニ付テモ行政廳ノ監督
ヲ受ケルト云フヤウナ風ニ致シマシテ、
成程是ハ公務員デハゴザイマセヌ、私ノ團
體ノ中ノ職員デハアリマスルガ、ソレト致
シマシテモ特別ニサウ云フ色々ナ監督ノ規
定ヲ設ケマシテ監督ヲ致シマスカラ、從來
ノ例ニ徵シマシテモ、相當ニ眞面目ニ仕事
ヲヤッテ其ノ效果ヲ擧ゲ得ルモノト私共ハ
期待シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=33
-
034・田中邦治
○田中委員 私ハモウ宜シイノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=34
-
035・青山憲三
○靑木委員長 西川君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=35
-
036・西川貞一
○西川委員 私ハ先ヅ政府委員ニ御尋ヲシ
テ行キタイト思ヒマス、大臣ニ御尋シマ
ス事項ガ數多アリマスノデ、冒頭ニ當リマ
ス所ヲ後ニ保留致シマシテ、途中ノ問題カ
ラ政府委員ノ御答辯ヲ願フヤウナ順序ニナッ
テ來ルデアラウト思フノデアリマス、第
ニ漁業組合ガ預金、貯金ヲ取扱ヒ、更ニ
漁業組合ヲ通ジテ金融ヲ行フコトニナリマ
スト、能ク〓究ヲシテ其指導ヲ誤ナライヤ
ウニシテ行キマスト共ニ、金融事業ニ伴フ
所ノ所謂漁村更生計畫ニ付テ十分ノ用意ヲ
以テ臨マナカッタナラバ、私ハ非常ナル禍
ヲ貽ス虞ガアルト思フノデアリマス、隨テ
ドウ云フ點ニ付テ今後注意ヲシテ行カナク
テハナラヌカト云フコトヲ明ニ致シマス爲
ニ、少シク當局トノ間ニ漁業組合ヲ中心ト
スル漁村社會ノ構成ニ付テ問答ヲ重ネテ見
ナクテハナラヌノデアリマシテ、言葉ヲ色々
重ネマスコトハ洵ニ恐縮デアリマスケレ
ドモ、サウ云フヤウナ意味合ニ於テ御質問
ヲ申上ゲルト云フコトヲ御諒解置キヲ願ヒ
タイノデアリマス、凡ソ資金ト云フモノハ
新シイ機關ヲ設ケテ金融ヲ始メマシテモ、
今マデ資金ノ少シモ行ッテ居ナカッタ所ニ新
ニ資金ガ流レテ行クモノデハナイノデアリ
マス、詰リ從來資金ヲ必要トシテ居ッタ所ニ
ハ、何等カノ方法ニ依ッテ資金ハ旣ニ行ッテ
居ル、新ニ中央金庫カラ資金ヲ出シマシテ
融通ヲ致シマシテモ、ソレハ今マデ資金ノ
全然行ッテナカッタ新タナル分野ニ入ッテ行
クノデハナクテ、今マデ資金ノ融通ヲサレ
テ居ッタ分野ニ、從來ノ劣惡デアッタ金融條
件ヨリモット好イ條件ニ依ッテ金融ヲサレ
テ行ク、斯ウ云フ風ニ變ッテ行クヨリ外ハナ
イモノデアリマシテ、當然私ハサウナルベ
キモノデアルト思フノデアリマス、サウス
ルト當局ハ今囘ノ施設ニ依ル金融ニ對シテ、
ドウ云フ部分ガ此金融ニ變ッテ來ルモノデ
アルト御考ニナッテ居リマスカ、從來ドウ云
フ方面カラ金融ヲ付ケラレ、ドウ云フ方面
ニ金融ヲシテ居ッタモノガ、今度ノ此新シイ
機關ニ依ッテ融通ヲシテ行クノデアルカ、其
分野ガドウ變ルノデアルカト云フコトニ付
テドウ御考ニナッテ居ルカ、此點ヲ先ヅ第一
ニ御聞キシタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=36
-
037・三宅發士郎
○三宅政府委員 成程只今西川サンノ仰シ
ヤイマシタ通リ、新タナル分野デナイ、從
來ノ分野ノ方ニ條件ガ好クナッテ變ルモノ
モ無論相當ニアルヤウニ考ヘラレマス、併
ナガラ國ガ出資致シマシテ、サウシテ中金
ヲ通ジテノ-而モ其下級團體ハ漁業ニ理
解ノアル漁業組合聯合會ト云フモノヲ通シ
テ行クヤウニナリマスト、從來ハ非常ニ危
險ノ如ク思ハレテ居ッタ水產金融モ、理解致
シマシテ長イ目デ見レバ、ソレ程危險ノモ
ノデナイト云フ意味ニ於テ、新ニ融通ノ付
キ易イ部分モ出來テ來ルヤウニ私ハ考ヘル
ノデアリマス、或人ノ話デハ東北ノ如ク不
漁ノ多イ所デアリマシテモ、亦多少危險性
ガアルヤウニ思ハレテ居リマスル漁業ニ致
シマシテモ、之ヲ七年トカ、或ハ人ニ依ッテ
違ヒマスガ、八年トカ云フ平均ヲ取リマシ
テハ立派ニ收支相償ッテ居ルノデアリマス
ガ、一旦中間ニ於テノ赤字ノ場合ヲ見マス
トドウモ危險ダト云フ風ニ誤認サレル向
キガアリマス、大體普通ノ業デアリマスナ
ラバ、四年トカ五年トカ押へレバ十分ニ收
支ガ償フヤウニ考ヘラレルカラ、斯ウ云フ
理解ヲ持ッテ居リマスナラバ、相當新タナ分
野ニモ流出ルデアラウト云フ風ニ考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=37
-
038・西川貞一
○西川委員 此委員會ニ於キマシテモ、從
來金ヲ借リルコトノ出來ナカッタ、金ヲ借リ
ル力ノナイ本當ニ困ッテ居ル漁民ニ對シテ、金
ヲ貸スヤウナ方法ヲ講ジナケレバナラヌト
云フヤウナ質問ガアリマシテ、當局ハ全ク
同感デアル、左様ニ努メマスト云フヤウナ
御返事ガアッタノデアリマスガ、併シ是ハ委
員ノ滿足ヲ得ル爲ノミノオ坐ナリノ御答辯
ナラバ、私ハソレデモ宜イト思ヒマスガ、實
際ニ漁村ノ金融問題ノ健全ナル發達ヲ圖ッ
テ行カウトスルノニハ、餘程警戒ヲ要スル
ト思フ、サウ云フ意味合ノ、今マデ誰モ金
ヲ貸シテ吳レ手ガナイ、併シ借リタイト云
フ風ナモノハ、實際ノ水產業ナリ漁業ナリ
ノ生產ニ用フル所ノ資金デハナクシテ、寧
ロ消費資金デアルト考ヘル、サウ云フ場合
ガ非常ニ多イト思フ、而モ現在ノ漁村ノ狀
況ニ於キマシテハ、非常ナ貧窮的ナ狀態ニ
ナッテ居ルカラ、消費資金ノ缺乏ニ非常ニ困ッ
テ居ルノデアリマス、是ハ漁村ニ於キマシ
テ、質屋ガ如何ニ繁昌シテ居ルカ、而モ其
質種ガ如何ニ見窄ラシイ物ヲ持ッテ來テ居
ルカ、又高利貸ノ所謂日步ノ如何ニ高イ金
ヲ彼等ガ借リテ居ルカ、又消費財ノ米代ト
カヲ店カラ借リマス者ガ、其支拂ノ成績ガ
惡イ爲ニドンナニ惡イ條件ノ下ニソレ等ヲ
借リテ居ラナケレバナラヌカト云フヤウナ
事實ニ鑑ミマスル時ニ、若シ漁業組合ガ金
融ヲ始メテ金ヲ貸シテ呉レルコトニナッタ
ナラバ、直チニ飛付イテ來ル者ハ、私ハソ
レ等ノ者ガ一番先ニ飛付イテ來ルト思フノ
デアリマス、併ナガラ是等ニ對スル金融ハ
自ラ別箇ノ見地カラ考ヘテ行カナケレバナ
ラヌ、是ハ今囘提案ヲサレマシタ所謂庶民
金庫カラ相當ノ貸倒レガアルト云フコトヲ
覺悟シテ貸ス方ノロデアリマシテ、是ハ今
囘此法律ニ依ル所ノ所謂金融ノ對象デアル
ベキデナイト思フ、ソレデ水產當局ハ漁村
ニ對スル社會政策ノ對象トシテノ漁民ト、
水產行政ト云フ一ツノ產業政策ノ對象トシ
テノ漁村トハ、範疇ヲ別ニ御考ニナッテ、其
對策ヲ立テテ行カナケレバナラヌト私ハ考
ヘト隨テ今囘ノ金融ハ、社會政策ノ對象
トシテノ漁村ヲ見テ行カレルノデハナクシ
テ、此庶民金庫ハ漁村ニハ及バナイノデア
リマセウガ、サウ云フ者ニ及ボスヤウニシ
ナケレバナラヌト云フ問題ガアル、併シ今
囘ノハ產業政策水產政策トシテノ生產的方
面ニ著目シテ、健全ナル金融ガ囘收ガ出來
ルト云フコトヲ目標トシテノ施設デアラウ
ト思フノデアリマスガ、其點ニ對スル所見
ヲモウ一度伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=38
-
039・三宅發士郎
○三宅政府委員 此度ノ資金ハ只今仰セノ
消費資金ヲ目的トシテ居ルモノデハアリマ
セヌ、生產資金ヲ目的トスルヤウニ立案シ
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=39
-
040・西川貞一
○西川委員 ソコデ生產資金ヲ目標トシテ
居ラレルノデアリマスガ、併ナガラ實際ニ
農村ニ於キマシテモ、漁村ニ於キマシテモ、
山村ニ於キマシテモ、其生產的ノ活動ト消
費的ナ生活ト云フモノガ分解サレテハ居ラ
ヌノデアリマス、ソレハ一ツニクッ付イテ居
ル、生產資金トシテ借リタ積リデハアルケ
レドモ、ソレガ旨ク行カナイ時ニハ直グソ
レヲ消費ノ方ニ喰込ンデシマフ、是ハ特ニ
水產業ニ於テ其危險ガ著シク大キイノデア
リマス、ソコデ此憂ヲ無クシマスル爲ニハ、
此金融政策ニ伴ヒマシテ、所謂經濟更生計
畫ヲ樹立實行シ、特ニ此漁村民ノ記帳生活
ニ付テ、自分ノ經濟ノ內容ヲ帳簿ニ記シテ
サウシテ生活ヲ合理化シテ行クト云フコト
ノ指導ヲ怠リマシタナラバ、當局ハ只今ノ
目標ニ依ッテ金融ヲ御付ケニナリマシテモ、
結果ニ於テハ、ソレハ消費資金ニ喰込ンデ
シマウ、其結果漁業組合ガ貯蓄預金等ヲ取
扱ウテ行キマスト、其方面ニ迄何時ノ間ニ
カ喰込ンデシマッテ、初期ノ產業組合、信用
組合ガ、屢〓此失敗ヲ繰返シマシテ、一時信
用組合ガ全國的ノ恐慌時代ガアリマシタ如
キ狀態ガ近キ將來ニ於テ私ハ漁村ニ起ッテ
來ハシナイカト云フコトヲ隨分憂ヘテ居ル
ノデアリマス、漁村ニ對シマシテハ、從來
モ經濟更生部ノ方ニ於キマシテ、更生計畫
ノ樹立實行ニ對シテ御指導ニナッテ居リマス
ケレドモ、今迄ハ實際常軌ニ乘ッテ居リマセ
又、唯農村ノ更生計畫ニ追隨シタト云フニ
過ギズシテ、本當ニ經濟ノ內容ヲ合理化シ
更生シテ行クト云フヤウナ組織ニ迄マダ入
テ居ラヌノデアリマスガ、是ハ此事業ト共
ニ、當然之ヲシテ行カレナカッタナラバ、將來
大キナ禍ヲ起スト思フノデアリマス、此點
ニ付テハ特ニ御注意ヲ御願シタイト思ヒ
マス、ソレカラ生產資金ヲ融通スルト云
フコトニナリマスト、漁業組合ヲ通ジ
テ、詰リ漁業組合ト云フモノヲ以テ、其政
策ノ對象トシテ行クコトガ、果シテ適當
ナリヤ如何ト云フコトニ付テ、私ハ色々
考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、
詰リ實際ニ現在資金ヲ要シマスル漁業ト云
フモノハ如何ナル漁業デアルカ、是ハ唯小
漁業ガ資金ヲ要スルト言ヒマシテモ、此小
漁業ニ資金ヲ供給シマスト、是ハ消費資金
ノ方ニ喰込マレル虞ガアル、詰リ沿岸デ、
自分ノ勞働ヲ以テ、自分ノ手ヲ以テ釣ッテ來
ルトカ、自分ノ手デ網ヲ入レテ來ルトカ
云フ者ニ對スル資金ノ供給ハ、消費資金ニ
ナッテ喰込マレル虞ガアル、實際ノ漁業資金
トシテ要シマスルモノハ、是ハ寧ロ中ノ漁
業デアルト思フ、ソレ等ノ漁業ハ漁業組合
ヲ通ジテソレ等ノ者ニ金融ヲ付ケル方法ガ
果シテ出來ルカドウカト云フコトニ付テ、
私ハ當局カラ御〓ヲ願ヒタイ、大體此漁業
組合ト云フモノノ實體ガ現在ドウ云フ風ニ
ナッテ居ルカ、私一例ヲ申上ゲマスナラバ、
私ノ住ンデ居リマスル山口縣豐浦郡ノ特牛
ノ漁業組合、是ハ有名ナ鰯ノ流刺網ノ漁業
權ヲ持ッテ其網代漁デヤッテ居ル組合デアリ
マス、所ガ此鰯漁業ニハ何處カラ入ッテ來
ルカト言ヘバ、恐ラク石川縣ノ靑山サンノ
統率下ニアリマス所ノ漁業者ガ入ッテ來ル
デアラウト思フノデアリマス、ソレガ入ッテ
來テ漁業ヲスル、サウスルト其特牛ノ漁
業組合員ト云フモノハ如何ナル者デアルカ
ト申シマスト、其石川縣カラ入ッテ來ル漁業
者ノ漁獲シマシタモノヲ販賣スル市場ヲ經
營シテ居ル、又ソレ等ノ者ガ網ヲ買ッタリ
其他ノ仕込ミヲスル店デアルトカ、ソレカ
ラ一番多イノハ女郞屋デアル、ソレ等ノ者
ガ遊ンデ吳レル遊廓ノ主人公、酒屋ノ主人
公、斯ウ云フ者ガ漁業組合員デアル、實體ハ
サウナッテ居ル、ソレデ實際ニ其仕事スル者
ハ石川縣ノ漁夫デアリマス、又機船底曳網
ニ於キマシテモ多クハサウデアリマス、
根縣ノ機船底曳網ノ漁業者ガ山口縣ノ漁場
ニ出テ漁獲シテ其漁獲物ハ下關ニ持ッテ行ッ
テ販賣スル、其資本ハ下關ノ問屋カラ融通
ヲ受ケテ居ル、斯ウ云フ形ニナッテ居ル、又
鯖巾著網ノ免許ヲ一ツ受ケテモ、其漁業權
ヲ持ッテ居ルモノハ、此土地ノ漁業組合ガ
持ッテ、網代ヲ取ルノデアリマスガ、其免
許ヲ受ケマシタ者ハ、名義ダケノ免許ヲ
取ッテ、實ハ一年ニ千圓カ二千圓ノ權利金ヲ
取ッテ鹿兒島縣ノ漁業者ニ行ハセテ居ル、實
際ニ資金ヲ必要トシテ漁獲ヲ行フノハ鹿兒
島縣ノ漁業者デアル、斯ウ云フ狀態デ、內
容ハ複雜多岐ヲ極メテ居ルノデアリマスカ
ラ、漁業組合ガ此金融ノ事業ヲ行ヒマシ
テ、果シテ實際ニ資金ヲ必要トスル者ニ行
クカドウカト云フコトニ付テ、私ハ多大ノ
疑問ヲ持ツノデアリマス、ソレデ私ガ考ヘ
マスノニ、本當ニ漁業ノ生產的ノ資金ヲ融
通スルト云フ考デアルナラバ、漁業組合ト
云フ一ツノ土地ヲ區域トスル一圓的ノ團體
ノ外ニ、所謂業種別ノ團體ト云フモノヲ政
策ノ對照トシテ行ク必要ハナイカ、例ヘバ
機船底曳網漁業ヲシテ居ル機船底曳網組合
デアルトカ、或ハ鯖巾著網組合、鰯刺網組
合ト云フヤウニ、各〓業種別ニ依ッテ出來テ
居リ、實際ニ漁業ヲスルソレ等ノ團體ヲ政
策ノ對象トシテ見テ行クコトガ、本當ノ漁
業ヲスル者ノ眞髓ニ觸レテ來ルコトニナラ
ウト思フノデアリマスガ、從來水產當局ノ
方針ト致シマシテハ、是等業種別ノ特殊ノ
水產組合ノ設立ハ認メラレテ居リマスルケ
レドモ、實際ニハ漁業法ニ基ク是等ノ團體
ト云フモノハ、極メテ少イヤウニ私ハ承知
シテ居ル、多クハ申譯的ノ組合デアリマス
ケレドモ、實際ニハソレガ一番力ヲ持ッテ
居ル、其一番力ヲ持ッテ居ル組合ニ對シテ
ハ、從來當局ハ何等指導奬勵ノ對象トシテ
居ラレナイノデアリマスガ、私ハ實際ニ水
產政策ヲ確立スル爲ニハ、是等ノ業種別ノ
組合ヲ水產行政ノ對象トシテ採上ゲテ行ツ
テ、是等ニ對シテ指導奬勵策ヲ行ウテ行ク
ト云フコトガ、實際ノ資金ヲ必要トスル水
產ニ金融ヲ付ケ、ソレ等ノ發達ヲ圖ル所以
デアラウト思ヒマス、是等ニ對スル當局ノ
御所見ヲ伺ッテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=40
-
041・三宅發士郎
○三宅政府委員 御尤ノ御意見ト拜承致シ
タノデアリマスガ、例ヘバ甲ノモノガ乙地
ニ於テ漁業ヲ營ム場合ニ於テハ、今ノ法規ニ
於キマシテハ、乙デ營ンデ居ッテモ、甲ノ所
在地ノ甲ノ漁業組合ノ組合員ニナレルノデ
アリマシテ、其甲ノ方ノ漁業組合員ハ、乙ノ方
カラハ融通ヲ受ケラレマセヌケレドモ、甲
ノ方カラ受ケラレルト云フ解釋ヲシテ差支
ナイト思フノデアリマス、モウ一ツ今ノ石
川ト山口ト云フコトガ例ニナリマスト一寸
困リマスケレドモ、同ジ縣內ノ端ト端ノモ
ノハ、是ハ一ツノ縣內ノ聯合會デ融通ガ付
キマス、併シ御話ノ通リ縣ガ違ッテ居リマ
スト、共聯合會ナリ、組合自體ハ漁業ノ馴
染ノ薄イ所デアッテ融通ハ付キマセヌガ、立
前ガサウナッテ居リマス
ソレカラ業種別ニ對シテノ漁業奬勵ノ方
針デアリマスガ、現在若干ハ致シテ居リマ
ス、是ハ主トシテ輸出品ノ漁業ニ對シテ事
重大ナリト見テ、左樣ナ指導方針ヲ執ッテ居
リマスガ、御話ノ通リ水產組合ハマダ百ニ
滿タナイヤウニ考ヘテ居リマス、是ハドウ
カト思フノデアリマスガ、今マデノヤリ方
ハ何ト申シマシテモ御話ノ通リ、大中小ノ
漁業者ガ一緒ニナリ、業態カラ言ヒマシテモ
製造家ト漁業者ト云フモノガ一體トナッタ
漁業組合ト云フモノガ指導方針ノ對象ニナッ
テ居ッタノデアリマス、私ハ斯ウ云フヤウナ考
ヘ方モ一村一體トシテノ一ツノ考ヘ方デア
ラウト思フノデアリマスケレドモ、サウ云フ
ヤウナ現狀ニ於キマシテモ、內部ニ於テ業種
別ト云フヤウナ觀念ハ少クトモ是カラ入レ
テ行カナケレバナラヌヤウニ考ヘテ居リマ
ス、例ヘバ製造家ト漁業者ハ現在ノ法律ノ
下ニ於テ協同組合ガ出來ルノデアリマスガ、
製造家ノ方ガ非常ナ勢力ヲ持ッテ抗議ヲ申
込ンデ來レバ、漁業者ノ方ハサッパリ成立タ
ヌノデアリマスカラ、サウ云フ場合ニハ漁
業ニ付テハ組合員タル製造家ハ先ヅ默ッテ
居ル、斯ウ云フヤウナ意味ニ於テ業種別ノ
ヤウナ思想ハ少クトモ入レテ行カナケレバ
ナラヌト云フヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=41
-
042・西川貞一
○西川委員 尙ホ小サイ點ヲ餘リ穿鑿シマ
スト、非常ニ委員各位ニ御迷惑ヲ掛ケマスカ
ラ、大體其點ハソレデ打切ッテ置キマス
次ニ是ハ大臣ノ認識ヲ改メテ貰ハナケレ
バナラヌト思ヒマスガ、マダ大臣ハオ出デ
ニナリマセヌノデ、大臣御出席後ニ御質問
致シタイト思ヒマスケレドモ、其時間ヲ空
費スル譯ニ行キマセヌカラ質問ヲ續ケマ
ス、大臣ノ御認識ニハ水產〓局局ノ御認識ガ反
映スルノデアラウト思フカラ、其本ノ方ヲ
改メテ行カナケレバナラヌト云フ意味ニ於
テ此質問ヲシタイト思フノデアリマス、ソ
レハ水產政策ト漁村政策トノ關係デアリマ
ス、水產政策ト云フ言葉ノ含ム意味ト漁村
政策ノ關係、資本漁業ト沿岸漁業ノ關係ニナッ
テ來ルノデアリマス、私本會議ニ於テモ御
尋シマシタヤウニ、當局ハズット以前ニ水產
政策ト云フコトニ重キヲ置カレテ、大臣モ
先日委員會デ御述べニナッタ通リニ、人ヨリ
モ物ニ重キヲ置イテ、我國ノ水產生產物ノ
增加ヲ圖ルトカ、或ハ國際貸借ノ改善ヲ圖
ルト云フ意味ニ於キマシテ、唯總生產額ノ
增加ニ重キヲ置イテ來ラレタ結果、生產高
ハ增加シタケレドモ、漁村ハ疲弊シテ來テ
居リマス、其後最近ハ物ヨリモ人ニ著目シ
テ、漁村ニ生活シテ居ル漁業者ノ生活ノ向
上安定ト云フコトヲ目標トスル一ツノ對策
ニ轉ジテ來ラレタト云フコトハ、大臣モ先
日御辯明ニナッタ通リデアリ、當局モ左樣ニ
見テ居ラレルト思ヒマス、併シ漁村ニ住ン
デ居リマスル者ノ生活ノ安定向上ヲ圖ッテ行
クコトガ、水產政策ノ全部デアッテ宜シイカ
ドウカト云フコトニ付テハ、私相當ノ疑問
ガアルト思フ、水產業ト云フモノハ日本國
民ノ極メテ重要ナル食料品デアリマスル所
ノ水產物ヲ生產スル產業デアリマスルカラ、
單ニソレニ從業シテ居ル者ノ生活ガ安定シ
向上スレバ宜イト云フダケデナシニ、全國
民ノ生活問題ノ上カラ豐富ニシテ低廉新
鮮ナル水產物ヲ供給サレルト云フコト
モ亦當局ノ政策ノ眼目デナクチヤナラ
ヌノデアリマス、此點ヲ若シ當局ガ御忘レ
ニナッタトシタナラバ、ソレハ非常ナ誤デア
リマシテ、當局ハ一面國民ノ食料供給ノ資
源トシテノ水產業ノ發達ヲ圖リ、其豐富ニ
シテ低廉、新鮮ナル水產物ヲ供給シナガラ、
尙ホ傍ニ於テ漁村ノ者ノ生活ノ安定ト向上ヲ
圖ッテ行ク、此兩方ヲ十分ニ睨ミ合セテ行
カレナカッタナラバ、水產政策ハ全キヲ得ナ
イノデアリマス、然ルニ先日モ大臣ノ此委
員會ニ於ケル御答辯等ヲ聽イテ見マシテモ、
大臣ハ肝腎ノ國家的見地ノ下ニ、國民ノ食
料問題ト云フ見地ノ下カラ見テ行カナケレ
バナラナイ水產政策ト云フコトヲ看過シテ居
ラレルノデハナイカ、ソレハ又水產當局ノ思
想ノ反映デハナイカト思フノデアリマスガ、
此點ニ付テノ御考ハドウデアルカ承ッテ置
キタイト思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=42
-
043・三宅發士郎
○三宅政府委員 私ハ御說ノ通リニ、豐富
ニシテ低廉ナル魚族ヲ多數ノ國民ニ供給ス
ルト云フコトガ水產政策ノ大事ナ部分デア
ルト考ヘテ居リマス、唯ドノ方面ニ於テド
ウ云フヤウニ漁獲シテ行クカ、多獲スベキ
場合ニ於テドノ方面ニ於テ多獲シ、ドノ場
面ニ於テ減ズベキカハ別問題デアラウト考
ヘラレマス、十二年度カラ底曳網ノ整理ヲ
シマシタケレドモ、其船ハ軈テ轉業シテ外
ノ所ニ行ッテ外ノ魚ヲ獲ル、或ハ東經百三十
度以西ニ於テハ、底曳網ノモノト沿岸ノモ
ノハ違ヒマスケレドモ、以東ニ於テハ同ジ
モノガ甚ダ多イノデアリマス、斯ウ云フヤ
ウナコトモ考ヘラレルダラウト私ハ想像ス
ルノデアリマス、一方ニ於テハ沿岸ニ增殖
スル、他方ニ於テハ大ナルモノヲ減ラス、
併シ轉業シテ殖ヤシテ行クノミナラズ今囘
御協賛ヲ得ントシテ居リマスモノノ中ニハ、
進ンデ中部太平洋ニ於キマシテ鮪ノ調査ヲ
致シテ-是ハ現在輸出向トシテハ數量ハ
極メテ足ラナイノデアリマス、其方ヘ持ッテ
行ク、近イ所ノ、沿岸漁業ト云ッテモ宜イ程
度ノ鰹漁業者ヲウント遠洋ヘ持ッテ行ッテ轉
換サセル、斯ウ云フヤウナコトモ實ハ若干
デアリマスケレドモ、豫算ニ計上シテ居リ
マスルシ、ソレカラ又非常ニ澤山獲レテ、
食料ニナラナイデ粕ニナルト云フヤウナモ
ノモ冷藏庫ニ之ヲ藏ッテ置イテ、サウシテ之
ヲ漁村ナリ農村ノ方ニ送出スト云フヤウナ
施設モ新ニ、若干デアリマスガ、ヤハリ來
年度ノ豫算トシテ計上シテ居ルヤウナ次第
デアリマシテ、決シテ全體ノ量トシテモ現
狀維持デ宜イト云フヤウナ考ハ毛頭特步子
居ラナイノデアリマス、左樣御承知ヲ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=43
-
044・西川貞一
○西川委員 其認識ニ於テ兩方面ヲ睨合セ
テ政策ヲ行ッテ貰ヒマスナラバ、此問題モ敢テ
私ハ追窮シナイノデアリマス、其次ニ先ニ
申シマシタ資本漁業ト沿岸漁業ノ關係デア
リマスガ、當局ハ之ヲ二ツノ存在トシテ御
考ヘニナルヤウナ傾向ガアルヤウニ思フノ
デアリマス、併シ是ハ水產業ト云フ一ツノ
生產方面カラ云ヒマスレバ二ツノ存在カモ
分リマセヌガ、漁村政策トシテ、詰リ漁村
民ノ生活ノ安定ト向上ヲ圖ッテ行クト云フ
點カラ言ヒマスト、是ハ一ツノ存在デアル
ト云フコトヲ御認メニナラナクテハ、妥當
ナル政策ハ立タヌト私ハ思フノデアリマス、
私ガ縷々申上ゲルマデモナク、賢明ナル局
長ハ御承知ノ通リニ、現在ノ沿岸漁業ニ於
テドンナニ御當局ガ御指導ナサイマシテモ、
少々築磯ヲナサイマシテモ、魚床ヲ御作リ
ニナッテモ、又海草類ノ色々ノ培養等ヲナサ
イマシテモ、ソンナコトデ一家ノ經濟ヲ立
テヽ行クダケノ收入ハ決シテ沿岸漁家ハ得
ラレルモノデハナイノデアリマス、隨テ靑
壯年ハドウジテモ資本漁業ノ勞働者トナッテ
出テ行カナクチヤナラヌ、ノミナラズ、漁
家ノ經濟ノ內容ヲ分析シテ見マスナラバ、
靑壯年ハ遠洋漁業、資本漁業ノ勞働者トナッ
テ出テ行ク、其收入ノ外ニ又娘等ハ或ハ
「カフエー」ノ女給トナリ、宿屋ノ女中ト
ナッテ稼ギニ出テ、ソレ等ノ仕送リモ亦漁家
ノ收入ノ相當ナ部分トナッテ居ルノデアリ
マス、漁村政策ト致シマシテモ「カフエー」
ノ女給ノ收入ガドンナ風デアルカ、宿屋ノ
女中ノ收入ガドンナ風デアルカト云フコト
マデ見テ行カナクチヤ實際ノ漁村政策ノ眞
髓ヲ把握スルコトハ出來ナイノデアリマス
ルガ、要スルニソレ等ノ收入ガ集ッテ來テ、
其全體ノ收入ガ一番多クナッテ、ソレ等ノ生
活ガ惠マレルヤウニ仕向ケテ行クト云フノ
ガ漁村政策ノ目標デナケレバナラヌト考ヘ
ルノデアリマス、而モ此水產經濟ノ經營
ニ於キマシテハ、他ノ經濟トハ極メテ趣
ヲ異ニシマシテ、資本家ト勞働者トノ間
ハ收益分配制度デアル、其收益分配ヲ行
フノニ船ノ償却費トカ、資本家ノ負擔シ
マスモノハ漁獲物ガ多クテモ少クテモ頭
カラ漁獲物ノ中カラ引去ッテシマッテ、
サウシテ殘ッタモノヲ勞働者ニ分配スルト
云フコトガ多イノデアリマスカラ、此資
本漁業ニ於ケル生產費ガ高クナルトカ、其
成績ガ擧ガラナイトカ云フヤウナコトハ、
ソレガ全部勞働者ノ負擔ニナッテ、沿岸漁村
民ノ生活ニ重大ナ影響ヲ持ッテ來ルノデア
リマス、斯ウ云フ點ニ付テ十分ナ認識ガア
ルカドウカ、認識ヲシテ置イテ戴ケレバソ
レデ宜イノデアリマス、隨テ若シ此沿岸漁
村民ノ生活ヲ護ル爲ニ資本漁業ヲ壓迫スル
トカ、遠洋漁業ハ最早是以上奬勵スベキモ
ノデハナイト云フヤウナコトヲ考ヘルヤウ
デアリマシタナラバ、是ハ大ナル誤リデア
ルト云フコトヲ私ハ此處デ高調シテ置キタ
イ、其事ヲ御認メニナリマスレバ御答辯ハ
要リマセヌ、若シ其反對ノ御見解デアリマ
スルナラバ御答辯ヲ戴キマスケレドモ、御
同感デアリマスレバ敢テ御答辯ハ戴カナイ
ノデアリマス、同感デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=44
-
045・三宅發士郎
○三宅政府委員 同感デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=45
-
046・西川貞一
○西川委員 ソレデハ次ノ問題ニ私ハ移ッ
テ行キタイ、其次ノ問題ハ機船底曳網ノ整
理問題デアリマスガ、私ハ此機船底曳網ノ
整理問題ハ、法令ノ上デハ整理ハ出來テモ、
實際ノ上ニ於キマシテハ整理ハ出來ナイダ
ラウト思フノデアリマス、先日濱地君ノ質
問ニ對シマシテ、局長ハ、現在免許ヲ受ケ
テ居ナイ禁止漁業ヲ敢テ犯シテヤッテ居ル
者ハ地方ニ相當アル、而モ何故直チニ之ヲ
處分シナイカト言ハレルト、直チニ之ヲ處
分スルコトハ農林省トシテハ中々困難デア
ルカラ、其實際ニ禁止漁業ヲヤリツヽアル
者ト縣トノ間ニ何等カノ解決ヲ付ケテ來ナ
クテハ、農林省トシテハドウニモ出來ナイ、
ト云フヤウナ御答辯ガアッタノデアリマス
ルガ、此事實カラ推測シマシテモ、現在機
船底曳網類似ノ禁止漁業ヲ敢テ犯シテ居ル
漁船ハ相當アルダラウト私共ハ想像シテ居
ル、其數ハ二千隻ニ近イ數ニ上ルト云フヤ
ウニ私共ハ聞イテ居ルノデアリマスガ、是
等ニ付キマシテ當局ノ調査ナサッタ所ハド
ウデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=46
-
047・三宅發士郎
○三宅政府委員 無許可デ機船底曳網類似
ノ漁業ヲ營ンデ居ル者ハ、詳シイ數字ハ
寸持合セマセヌガ、一万數千隻ニ及ンデ居
ルヤウニ考ヘテ居リマス、只今御話ノアリ
マシタ濱地サンノ御話ノハ、許可ヲ受ケナ
クテヤッテ居リマスル機船底曳網類似ノ漁
業デアリマシテモ、凡ソ二種類ゴザイマシ
テ、發動機ハ付ケテ居ッテモ、横ニ曳クノデ
アッテ縱曳ガ出來ナイ、漁場ヘノ往復ノミニ
シカ使ッテ居ラナイト云フモノモ相當アル
ノデアリマス、ソレト本當ニ縱曳スル所ノ
强イ違反ト云フモノト、同ジ違反ノ中デモ
二ツニ分レル、其漁場ヘノ往復ノミニ使フ
モノモヤハリ違反漁業ト云フコトニナッテ
居リマス、デ斯ウ云フヤウナモノハ今當局
者ニ於テ色々考ヘマシテ、斯ウ云フ案ハドウ
デアラウカ、斯ウ云フ案ハドウデアラウカ
ト云フヤウナ、色々ノ案ヲ考ヘテ居ル最中デ
アリマス、デアリマスルカラ、サウ云フコ
トニ依ッテ善處シテ行カナケレバナルマイ
ト思ヒマスガ、今此處ニ於テハ是ハ甚ダ申
上ゲ惡イノデアリマスカラ、ドウカ其點ハ
御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=47
-
048・西川貞一
○西川委員 其點ハ能ク諒承致シマス、唯
問題ハ斯ウナノデス、免許ヲ受ケナイ禁止
漁業ヲヤッテ居ル者モ整理ノ付カヌヤウナ
狀態ニ今日アル、現ニ禁止漁業ヲヤッテ居
ル者デスラ整理ガ付カヌ、サウスルト現
在免許ヲシテ居ル所ノ機船底曳網ノ免許ヲ
取消シタカラト云ウテ、免許ヲ取消シタダケ
デアッテ、彼等ガ欲セザルノニ之ヲ整理シ
ヨウト强壓的ニ掛ッタノデハ、彼等ハ唯
免許ヲ取消サレヽバ、免許ヲ取消サレ
タ者ハ禁止漁業ヲヤリ出ス、詰リ當リ
前ニ働イテ居ル者ガ泥棒ヲヤリ出ス、支那
ノ兵隊ガ變ジテ馬賊ニナッタ、斯ウ云フコト
以外ニ得ル所ハナイダラウト私ハ思フ、而
モ此虞レハ非常ニ多分ニアルノデアリマス、
局長ハ御承知ノコトト思ヒマスガ、又一ツ
ノ例ヲ申上ゲマスガ、私ノ屢〓引用致シマス
大島郡安下庄ノ漁業部落ニ於テ何故アンナ
ニ貧乏ヲスルカ、何故彼等ガアノ慘澹タル
生活ヲシナケレバナラナイカト申シマスト、
二艘持網ノ機船底曳網ノ禁止漁業ヲ彼等ガ
ヤッテ居ル、禁止漁業デアルカラ時々捕ッテ
罰金ヲ取ラレル、其上ニ網ヲ取上ゲラレル、
其網ガ八十圓位スル網デアルガ、ソレヲ何
箇月目カニハ網ヲ取上ゲラレル、罰金ヲ取
ラレル、又ソレニ追徴金ヲ取ラレル爲ニ、
稼グノハ稼グノデアルケレドモ罰金ヲ稼
グ爲ニ生活ヲシテ居ル、ソレデハ何故斯ウ
云フヤウナ禁止漁業ヲシテ居ルカト云ヘバ、
自分達ハ此漁業ヲスルヨリ外ニ生活ノ途ガ
ナイ、自分達ハ之ヲシテ稼グヨリ外ニハ生
キテ居ラレナイ、ダカラ死刑ニシテ下サレ
バ私共ハ之ヲ止メルケレドモ、死刑ニサレ
ナイ限リ、生キテ居ル限リ私共ハ生キル爲
ニハ之ヲスルヨリ外ニ途ハナイ、彼等ハ叫
ンデ居ル、是ガ私ハ漁村民ノ實情デアルト
思フ、實際ニソレヲヤル外ニ生キル途ノナ
イ漁民ニ對シテハ、如何ナル法令ヲ以テ之
ニ重壓ヲ加ヘマシテモ、結局ハソレ等ヲ捕
ヘテハ罰金ヲ取リ、追徴金ヲ取リ、網ヲ沒
收シテ、彼等ヲ苦シメルト云フ以外ニ效果
ハナク、何等水產政策ニ寄與スル所ハナイ
ト云フ結果ニナルノデアリマス、私ハ今囘
ノ機船底曳網ノ整理問題ガ悉ク斯樣ナ結果
ニ陷ッテ行クトハ申シマセヌガ、併シ當局ガ
ソレ等ノ漁民ノ轉業スル途ヲ開イテ、積極
的方面ヲ打開シテ行ク、積極的ニ解決ノ途
ヲ圖ッテ行クト云フコトヲサレズニ、消極的
ニ此解決ノ途ヲ圖ラウトサレルナラバ、是
ハ實ニ恐ルベキ結果ニ陷ッテ行ク外ハナイ
ト思フノデアリマスガ、此點當局トシマシ
テ十分御考慮ノ上ニ、其對策ガ立ッテ居リマ
スカドウカ、甚ダ吾々ハ不安ニ思ヒマスノ
デ、此點ハ御答辯ヲ得タイト思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=48
-
049・三宅發士郎
○三宅政府委員 機船底曳網ノ整理ニ付キ
マシテハ、本年度ノ豫定ハ慥カ二十艘前後
ノ積リデ居リマシタ、希望者ハ四十何艘デ
アリマシタガ、奬勵金ノ關係デ二十七艘轉
業資金ヲ與ヘマシタ、此調子デ來年、再來
年モ旨ク行クカモ存ジマセヌ、初年度デア
リマスカラ、餘計出タノダラウト云フ氣持
ヲ以テ、御話ノ通リ積極的ニ外ノ漁業ニ轉
向スルヤウニ一層努力シタイト思ヒマスガ、
初年度ノ成績トシテハ左樣ニナッテ居リマ
ス、ソレカラ無許可ノモノニ付キマシテモ、
私ハ相當早イ中ニ主義方針ヲ決メタイト思ッ
テ居リマス、是ダケ申上ゲテ差支ナイト思
ヒマスガ、内容ダケハ御容赦ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=49
-
050・西川貞一
○西川委員 轉業ノ資金ヲ御與ヘニナリマ
スコトハ、其資金ニ依ッテ實際ニ何等カ生
活ノ出來ル、新シイ漁場ヲ開拓シテヤラヌ
限リハ、又借リタ資金ヲ喰込ンデ禁止漁業ヲ
スルト云フ結果ニナルト思フノデアリマス、
ソコデ積極的ニ打開スルト申シマスノハ、
單ニ其轉業資金ヲヤッテ形ヲ變ヘサシタト
云フノミデナク、彼等ニ新タナル天地ヲ打
開スベク一大熱情ヲ以テ水產當局ガ積極的
ニ乘出サレルコトヲ意味スルノデアリマシ
テ、左樣ナ意味ニ於テ對策ヲ立テラレンコ
トヲ希望スル者デアリマス
次ニ私ガ御伺スルノハ、此機船底曳網漁
業ガ旨ク轉向シマシタト致シマシテモ、是ハ
日本ノ食料問題ニ及ボス影響ハ極メテ重大
デアル、ト申スノハ、水產加工物ノ原料ハ大
抵此機船底曳網漁業等ノ漁獲物デアリマス、
蒲鉾、竹輪、味淋干等ノ原料ニ付テモ、是
等ノ物ガ多イ、ソレハ沿岸ノ魚族ヲ保護
スルカラ、サウ云フ材料ガ出來ルノデハ
ナイカト思ハレルカモ知レマセヌガ、ソ
レハ生產費ガ非常ニ違フ、機船底曳網デ
一捲キニ捲取ッテ來ル生產費ト、沿岸漁業
ノ生產費トハ非常ニ違ヒマスカラ、此機
船底曳網ノ整理ガ强化サレマシタ結果ニ
於テハ、水產加工等ノ事業ハ一大打撃ヲ
來シ、其方面ニ於ケル水產業ノ打撃ハ私
ハ少クナイト思フ、又太平洋ノ鰹漁業ニ
轉換シマシテモ、鰹デ蒲鉾ハ造レナイノデ
アリマシテ、今マデノ水產加工ト云フモノ
ガ、全面的ニ當局ガ想像シテモ居ラレヌヤ
ウナ思ハザル所ニ非常ナ打擊ガ起ッテ來ル
コトモ爭フベカラザル事實デアルト考ヘマ
ス、隨テ其船其モノガ轉換スルト云フコト
ダケヲ考ヘラレズニ、更ニ其周圍ニ於テ影
響ヲ受ケル所廣汎ナル水產界全般ニ付テ對
策ヲ講ゼラレテ行カナクテハナラヌト思ヒ
マス
次ニ私御伺致シタイノハ、本會議ニ於テ、
私ガ現在ノ水產業ガ何故行詰ルカ、漁村ガ
何故疲弊スルカ、漁民ガ何故貧乏スルカト
云フノハ、單ナル個別的ナ、現象的ナ問題
ダケデナクシテ、其根本ニ於テ現在ノ價格
經濟組織ノ下ニ於テ、工業生產物ガ獨占價
格ニナッテ居リ、農業生產物ハ統制價格ニ
依ッテ維持サレテ居ル、其間獨リ水產物ノ
價格ハ自由放任ノ波ニ揉マレテ、此社會經
濟法則ノ必然的ノ歸結トシテ今日ノ水產界
ガ行詰ルノデアル、漁民ガ貧乏スルノデア
ルト申上ゲタノデアリマス、而シテソレニ
對スル對策ヲ聽キマシタ所、高橋農林政務
次官ハ、「農林水產物價ガトモスルト他ノ物
價ト鋏狀價格差ヲ保ツ、殊ニ水產物ノ價格
ガ一番等閑ニサレテ居ルノデハナイカト云
フ御話デアリマスルガ、此點ニ付キマシテ
モ色々ト考慮ヲ致シマシテ、共同販賣其他
ノ方法ニ依リマシテ、行政ノ運用ニ依リマ
シテ、是非トモ御指摘ノヤウナコトノ少シ
デモ少クナルヤウニ致シタイト考ヘル次第
デアリマス」斯ウ云フ御答辯デアッタノデア
リマスガ、是ハ私ハマダ認識ガ違ッテハ居ルノ
ヂヤナイカト思フ、サウ云フ微細ナ技術
的ナ小サナ問題デナイ、是ハ社會經濟ノ法
則ノ根本ノ問題デアリマスカラ、是ガ克服
ニ對シマシテハ、水產當局ト致シマシテハ、
之ヲ克服シ得ル體系的ノ政策ヲ調査〓究
シ、之ヲ樹立シテ行カナカッタナラバ、到底
ドンナニ逆立ヲサレマシテモ、水產業ノ振
興漁村ノ更生ト云フコトハ出來ルモノヂ
ヤナイ、社會科學ノ必然的ノ法則デアル、
ソコデ是等ニ對シマシテハ、私ハ漁業水產
ノ經濟ニ對スル熱心ナル〓究ヲ行ッテ、其諸
法則ヲ明ニシテ、ソレニ對スル對策ヲ樹立
サレナクテハナラヌト云フコトハ本會議ニ
於テモ申述ベタノデアリマス、水產經濟ニ
付テハ水產講習所デ水產經濟ノ講義ヲ始メ
タト云フ御話ガアッタノデアリマスガ、ドン
ナ講義ガ始マッタカ知ラヌガ、サウ云フ問
題デナクテ、モット突込ンダ根本問題ニ付テ
農林當局トシテハ御考下サッテ、其對策ヲ講
ジテ行カレル必要ガアルト思フノデアリマ
ス、其點ニ付テ水產局長ノ御決心ノ程ヲ伺ッ
テ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=50
-
051・三宅發士郎
○三宅政府委員 所ニ依ッテモ違ヒマセウ
ガ、漁業者一人ノ月ノ收入ト云フモノハ、
大體二十圓乃至二十五圓位ノモノデアルト
云フコトヲ漁村ニ行ッテ見マシテ、御話ノ通
リ、漁業ノミヲ以テ漁村政策ヲ立ツベキモ
ノデナイト云フ感ジヲ深ク致シマシテ、實
ハ非常ニ惱ンデ居ル次第デアリマス、ソレ
デ甚ダ遲蒔ナガラ漁業組合ノ全國ノ聯合會
ニ匹敵スルヤウナ組織ヲ作ラセマシテ、サ
ウシテ單純ニ、地方々々ノ共同販賣デハ物
足ラヌノデアリマスカラ、例ヘバ六大都市
ノヤウナ大キイ所ニハセメテ販賣斡旋所ノ
如キモノヲ作ッテヤッテ行カネバナラヌト云
フノデ、ヤット半年掛リデ、東京ノ魚市場ニ
三人バカリガ寝泊リヲシテ、斡旋ヲスルヤウ
ニヤット二月カラナッタヤウナ次第デアリマス、
甚ダ申譯ナイノデアリマスガ、何トカ是ハ
シナケレバナラヌト云フ心持ノ現レデアリ
マス、タッタ半年バカリノ現レデアリマス
ノデ碌ナコトハゴザイマセヌガ、サウ云フ
氣持ヲ持ッテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ
魚價ノ調査ト云フコトモ、若干ハ農林省ト
シテハゴザイマスケレドモ、固ヨリ僅カノ
村ヲ調ベタダケデゴザイマスガ、是等モ相
當致サネバナラヌト云フ氣持ヲ、僅カデハア
リマスルガ現シテ居ル次第デアリマス、御
說ノ通リ此點ニハ十分ナル努力ヲ拂フ決心
デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=51
-
052・西川貞一
○西川委員 サウ云フ風ニ氣持ガ向イテ戴
キ、且又懸命ニ努力ヲ拂フ御決心ヲ披瀝シ
テ戴キマシタナラバ、私ハソレデ滿足スル
者デアリマス、サウ云フ當局ノ御決心ニ對
シテ、私共出來ルダケ協力シテ、此問題ノ
根本的解決ヲ圖ルベク努力スル積リデアリ
マス、更ニ私ガ御伺致シタイノハ、本會議
ノ御答辯ニ於キマシテモ、漁村ノ經濟調査
ヲ帝國水產會ヲ通ジテ御始メニナッタト云
フコトヲ御答下サッタノデアリマスガ、若シ
漁村ノ經濟ノ御調査ガ、從來農林省ガヤッテ
居ラレル漁村ノ經濟調査ト同ジヤウナ氣持
デ、サウ云フ方法ノ下ニ行ハレマスルト、
是ハ私ハ大ナル失敗ニ終ルト思フノデアリ
マス、ト申シマスノハ、農村ニ於テハ何百
年來、何千年來同ジヤウナ型ノ經營ヲシテ
居ル、勿論ソコニ變化ハアリマスケレドモ、
大體ニ於テ基本的ノ型ハ同ジデアル、併シ
漁村ニ於キマシテハ、一ツノ經濟ノ型ト云
フモノハ長ク續カナイ、漁法ガ頻繁ト變ッテ
來ル、ドノ漁場ニ行ッテ見マシテモ、同ジ漁
法ヲ何百年モシテ居ルト云フコトハアルモ
ノヂヤナイ、大抵三十年カ五十年デ變ッテ來
ル、短イノハ十年デ變ッテ來ル、或ル一ツ
ノ漁法ヲ用ヒテ數年間ハ其漁法デ行ケルガ、
漁族ガ之ヲ囘避スルト申シマスカ、或ハサ
ウ云フ漁法ニ掛ッテ來ル魚族ガ缺乏シテ來
ルト申シマスカ、漁法ニ大キナ變化ガアル、
漁法ノ變化ガ經濟ノ根本的變化ヲ齎シテ來
ルカラ、單ナル平面的調査デハ眞髓ヲ摑ム
コトハ出來ヌノデアリマシテ、漁村ノ經濟
ノ調査ニ對シマシテハ、漁村獨得ノ漁村經
濟ノ本質ニ卽シタル所ノ經濟調査ヲオヤリ
ニナラナクテハ、是ハ無駄ニ終ルノデアリ
マス、サウ云フ點デ私ハ帝水ニ委囑サレマ
シタ經濟調査ガ、如何ナル方法論ノ下ニ規
定サレテ居ルカハ存ジマセヌガ、農家ノ經
濟調査ヲオヤリニナッタヤウナコトデオヤリ
ニナッタラ、全然是ハ失敗デアラウト思フ、
ソレニ對シテハ考ヘテヤッテ居ラレマスル
カドウカ、一寸御伺シテ置キタイノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=52
-
053・三宅發士郎
○三宅政府委員 ソレヲ加味シテヤル積リ
デ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=53
-
054・西川貞一
○西川委員 漁業用ノ礦油ノ問額ガ、最近
ノ暴騰ニ依ッテ、水產界ノ前途ニ一大危機ヲ
來シテ居ルト云フコトハ、私ガ改メテ申上
ゲル迄モナイ、是ハ此前ノ豫算分科會ニ於
キマシテ小見山議員カラノ質問ガアッテ、當
局ガ答辯サレテ居ルノデアリマスガ、時局
以來農村ニ對シマシテハ肥料對策ト云フモ
ノニ付テ殆ド農林省ハ全力ヲ注ガレタル感
ガアル、十分トハ申サレマセヌケレドモ相
當ニ肥料對策ニ對スル施設ヲシテ居ラレル
ノデアリマス、併シ本會議デモ申上ゲマシ
タヤウニ、農村ニ於ケル所ノ肥料ヨリ以上
ニ、漁村ニ於テノ燃料ノ問題ハ重大デアリ
マス、燃料油ノ對策トシマシテハ三百万圓
ノ對策豫算ハ出テ居リマスケレドモ、是ハ
今マデノ免稅ト云フ特典ヲ取上ゲタ代償デ
アル、不十分ナル代償デアル、積極的ニ時
局ノ下ニ於ケル燃料ノ對策トシテハ何モ無
イノデアリマス、是ハ今マデ與ヘテ居ッタ
特典ヲ取去ッタ所ノ代償ノ三百万圓デアリ
マシテ、農林省ガ肥料政策ニ對シテ只今執ッ
テ居ルヤウナ時局ニ對應スル積極的對策
ト云フモノハ、漁村ニ於テハ未ダ何等無イ
ノデアリマス、是ハ水產當局ト致シマシテ
何處マデモ三百万圓ノ外ニモウ一ツ燃料對
策ト云フモノヲ積極的ニ講ジテヤル所ノ責
任ガアルト思フ、ソレニ要スル所ノ豫算ノ
獲得ヲサレル所ノ義務ガアル、水產當局ガ
ソレヲシッカリシテオヤリニナリサヘスレ
バ、吾々死力ヲ盡シテ水產當局ヲ支持後援
シマシテ、此問題ノ解決ヲ圖ルベク、私共
モ有ユル方面ニ努力スルノデアリマス、然
ルニドウモ水產當局ハ甚ダ腰ガ弱イノヂヤ
ナイカ、此前ノ三百万圓デスラ、此三百万
圓ヲ計上シテ之ヲ貰フト、他ノ方ニ斧鉞ヲ
加ヘラレヤシナイカト云フ危懼ノ下ニ、何
ダカ水產當局ハ此三百万圓ノ出シ方ガ、非
常ニ腰ノ弱イ出シ方デアッタト云フコトヲ、
私ハ大藏省方面カラモ-コンナ事ヲ言ツ
テ宜イカ惡イカ知リマセヌガ、聞イタノ
デアリマス、ソンナ弱腰デハ到底此水產問題
ノ解決ガ出來ルモノヂヤナイノデアリマス、
アノ三百万圓ハ今マデ與ヘテ居ッタ所ノ恩
典ヲ取上ゲタ其代償デアル、此時局ノ、殊ニ
燃料油ノ暴騰ニ依ッテ危機ニ瀕シテ居ル水產
界ノ對策トシテハ、未ダ何モ無イノデアル、
是ガ無クテ進メラレル問題デナイト云フコ
トニ一ツ御著目ニナリ、十分ニシッカリト腰
ヲ据エラレテ、次ノ年度ノ豫算ニハ是ガ對
策ヲ現サレル必要ガアルト私ハ思フ、之二
對スル當局ノ御決心ヲ一ツ承ッテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=54
-
055・三宅發士郎
○三宅政府委員 御說ノ通リデゴザイマス、
唯甚ダ消極的デ恐レ入ルノデアリマスガ、
二三日前ニ發表サレマシタ石油ノ節約ノ切
符制ノ問題デアリマス、是ニモ消極的デア
リマスルガ相當努メマシテ、他ノ方ハ何割
ノ節約ト云フコトニナッテ居リマスルガ、漁
業用ノ石油ニ限リマシテ無駄排除ト云フ程
度ニ、而モ其無駄排除ト云フモノハ水產ノ
方面ガ先立チマシテ、不必要ニ速力ヲ出ス
必要ガナイ、斯ウ云フ場合ニハ、適當ノ速
力ヲ出セバ宜シイノダ、ソレニ依ッテ若干ノ
節約ガ出來ル、或ハ帆ナンカモ若干使フヤ
ウニスレバ、「スロー」デ以テ油ノ節約ガ出
來ルコトモアルノダト云フ風ニ、一面ニ於
テ眞面目ニ其節約ヲ致シマシタ關係上、今
囘ノ切符制ニ於キマシテモモウソレデ十分
デアッテ、ソレ以上ノ制限ハ受ケナイヤウニ
聊サカ努力シテ參ッタ積リデ居リマス、併シ
是ハ消極的ナ事デゴザイマシテ、御說ノ通
リ油價ガコンナニ高クナラウトハ思ヒモ依
ラナカッタコトデアリマシテ、唯アレハ免稅
ガ無クナッタダケ上ル位ノ程度ニシカ考ヘ
テ居ラナカタノガ、今日非常ニ、場所ニ依
リマスレバ當時ノ倍、平均スレバ一割七分
程度ニ上ッテ參ッタノデアリマス、是ハ何等
カノ適當ナ對策ヲ講ジテ然ルベキモノト考
ヘテ居リマス、折角適當ナル案ヲ來年度ハ
考ヘナケレバナラヌト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=55
-
056・西川貞一
○西川委員 要スルニ水產ノ問題ニ關シマ
シテハ、從來兎モスレバ政治ノ上カラ閑却
サレル傾向ガアッタノデアリマスガ、今ヤ此
非常ナル窮境ニ際會シマシテ水產業者ハ、
漁村民自身モ大イニ自覺ヲ致シマシテ、其
自覺ノ現レハ又色々ノ方面ニ反映シツヽア
ルノデアリマシテ、今後ニ於キマシテハ從
來トハ色々政治上ノ狀況モ違ッテ來ルト思フ
ノデアリマスガ、水產當局トシマシテモ十
分ニ其點ヲ御自覺アッテ、御努力アランコト
ヲ希望スルノデアリマス、以上ヲ以チマシ
テ私ノ水產事務當局ニ對スル質問ヲ終ルノ
デアリマス、此際是非大臣ノ御出席ヲ御願
シタイノデアリマスガ、委員長、如何デア
リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=56
-
057・青山憲三
○靑山委員長 今聞キニ行ッテ居リマス-
長野君ハ如何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=57
-
058・長野綱良
○長野委員 私ノ問ハントスル所ハ西川君
カラ御問ニナリマシタカラ、重複スルノデ
止メテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=58
-
059・北勝太郎
○北委員 私モ大臣ニ質問シタイノデスガ、
一寸豫定ガ付カヌデスカラ、此處デ申上ゲ
テ、速記錄ヲ見テ答辯ヲシテ貰フコトニシ
マシテ御許シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=59
-
060・青山憲三
○靑山委員長 北君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=60
-
061・北勝太郎
○北委員 「ステープル·フアイバー」ノ網
ニ混用ノ問題ニ付キマシテハ、高木サンカ
ラ先程御質問ガアッタサウデアリマスガ、私
ハ農漁業者ノ衣服ノ問題、之ニ付キマシテ
御尋シタイト思フノデアリマス、御承知ノ
ヤウニ農漁業ノ作業ハ屋外作業デアリマス、
雨ノ降ル日モヤラナケレバナラヌノデアリ
マス、殊ニ勤勉ナ人程、朝ハ露ノアル內ニ出
テ働カナケレバナラヌ、或ハ夜遲ク夜露ニ
濡レテ働カナケレバナラヌ有樣デアリマス、
漁業家ノ如キハ、年中船ト共ニ水ノ中デ働イ
テ居ラレルシ、又水田耕作ナドモ漁業家ト
同ジヤウニ、水ノ中デ何時デモ働クノデア
リマスガ、「ステープル·フアイバー」ヲ混用
シタモノノ非常ニ弱イト云フコトハ、玆ニ
詳細調査サレタモノガアルノデスガ、之
ヲ一々讀ムコトノ煩ヲ避ケマシテ、之ヲ差
上ゲマスカラ、適當ニ速記錄ニ載セテ戴キ
タイト思ヒマス、要スルニ「ステープル·フ
アイバー」ヲ混用シタモノハ濕氣ニ非常ニ
弱イ、水ノ中ニ入リマスト半分ノ力シカナ
イ、又水ニ弱イノデスカラ、洗濯ニ非常ニ弱
イ、殊ニ「アルカリ」ニ弱イ、熱ニ弱イ、摩
擦ニ弱イト云フヤウナ色々ノ缺陷ガ現レテ
來テ居ルノデアリマス、然ルニ農家ニハコ
ンナ物ヲ、ヤハリ昔通リノ丸洗ヒラスル習
慣ガアリマス、農家ノ使フ洗濯石鹼ト云フモ
ノハ實ニ惡イモノヲ使ッテ居リマスノデ「ア
ルカリ」ニ弱イト云フ特性ノ爲ニ、非常ニ
着物ガ弱クナルト云フコトニナッテ來ルノ
デアリマス、ソコデドウシテモ農家、或ハ
漁業家ノ作業衣ニ對シマシテハ、一ツ特例
ヲ設ケテ貰ハナケレバナラナイト思フノデ
アリマスガ、商工大臣ハ此點ニ付テ是認サ
レタ、公式ノ場所デハナイト思ヒマスガ
是認サレテ、何トカシタイト云フコトヲ漏
サレタト云フコトデアリマスノデ、此際此
問題ハ一ツハッキリサシテ戴キマシテ、サウ
シテ農漁業家ノ着物ガ始終傷ンデ困ルト云
フヤウナコトガナイヤウニ、經濟的ニ行ケ
ルヤウニ、是ハ國家的ニ見テモ必要ナコト
ダト思フノデアリマスノデ、一ツ此問題ノ
解決ヲシテ戴キタイト思フノデアリマス、
不幸ニシテ商工省ノ關係ノ方ガ居ラレマセ
ヌカラ、以上申上ゲマシタコトヲ速記錄ニ
依ッテ、委員長カラ適當ニ御傳ヲ願ヒマス、
サウシテ適當ノ時ニ御答辯ヲ得ルヤウニ御
願致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=61
-
062・青山憲三
○靑山委員長 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=62
-
063・高木粂太郎
○高木委員 西川君カラ大臣ノ御出席ヲ求
メテ居リマスガ、マダ御見エニナリマセヌ
ノデ、其間ニ一寸二三分間申上ゲタイト思
ヒマスガ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=63
-
064・青山憲三
○靑山委員長 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=64
-
065・高木粂太郎
○高木委員 國民保健衞生ノ爲ニ魚食ノ必
要ナコトハ、私本會デモ强調致シマシタシ、
又只今西川君カラモ大分御話ガアッタノデ
アリマスガ奈何セン鐵道運賃ガ非常ニ高イ
ノデアリマス、大體私ノ調ベタ所ニ依リマ
スルト、米穀、野菜、乾瓢ト云フヤウナモ
ノニ比ベマスト云フト、四割乃至八割水產
物ノ方ガ高イノデアリマス、現在ニ於テハ
已ムヲ得ズ如何ニ大漁ノ所ガアッテモ、運賃
ガ高イ爲ニ、安イ魚ヲ山村農村マデ送ルコ
トガ出來ナイデ、空シク肥料ニシテ居ルト
云フヤウナ所モアル、殊ニ此漁業ノ特異性
トシテ、潮流ノ關係デ獲レル所ニハ澤山獲
レルガ獲レナイ所ハサッパリ獲レナイト云
フヤウナコトモアルノデアリマスガ、是ガ
鐵道運賃ガ高イ爲ニ全國民ニ之ヲ適當ニ配
給スルコトガ出來ナイノデアリマス、斯ウ
云フ請願モアリマシタガ、ドウカモウ少シ
魚類、水產物等ノ運賃ヲ低下シテ、サウシ
テ山村ニモ、農村ニモ等シク榮養食糧ノ配
分ガ出來ルヤウニシテ戴キタイト思ヒマス、
現在ニ於テハ良イ魚ハ多ク都市ニ配給セラ
レルノミデ、最モ需要ノアル山村農村ニ却
テ安イ魚ノ配給ガ十分デナイコトヲ私ハ常
ニ遺憾トシテ居ルノデアリマスカラ、此點
ニ付テ今鐵道省關係ノ人ハオ居デニナッテ
居リマセヌケレドモ、水產局ニ於テドウカ
十分御盡力ヲ賜リタイト云フコトヲ希望シ
テ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=65
-
066・西川貞一
○西川委員 大臣御多忙中ノ所態、御出席
ヲ煩ハシマシテ恐縮デアリマスガ、大體此案
ニ對スル質問モ是ヲ以テ終結スルヤウデア
リマスカラ、最後ニ私ハ產業組合ノ問題ニ
關シマシテ、大臣ノ御考ナリ、又政府當
局トシテノ御考へ方ニ付テ此際伺ッテ置キ
タイノデアリマス、產業組合ハ我國ノ農
村其他ノ方面ニ於キマシテハ、極メテ重
大ナル國策的ノ使命ヲ持チマシテ、從來
其事業ヲ行ヒ來ッタモノデアルト吾々ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、隨テ此組合ノ事業
ニ當リマス者ハ一ツノ熱情ヲ持ッテ、極メテ
菲薄ナル給與ニ甘ンジ、自分等ハ之ニ依ッテ
日本ノ農村ヲ護ルノデアル、斯ウ云フ一ツ
ノ信念ト熱情ヲ持ッテ努力シテ來テ居ルノ
デアリマス、私共ハ地方ニ居リマシテ、地
方ノ產業組合ニ從事シテ居リマス靑年達
ガ、如何ニ純眞ナル熱情ト、燃エルガ如キ
氣魄ノ下ニ此仕事ニ當ッテ來テ居ルカト云
フコトヲ見マシテ、非常ニ感激ニ打タレタ
ノデアリマスガ、ソレ等ノ人々ニ對シテ、
最近ニ於ケル一ツノ傾向ハ一種ノ打撃ヲ與
ヘテ居ルノデアリマス、卽チ最近反產運動
ガ非常ニ勃興シマシタ爲ニ、政府當局ガト
モスレバ此反產運動ニ遠慮サレル爲カ、產
業組合ニ對シテ何ダカ冷ヤカナ心持ヲ以テ
臨マレツヽアルヤウナ傾向ガ見エルノデア
リマス、是ハ地方ニ依ッテ產業組合ノ仕事
ナドニ從事シテ居リマス者ニハ、强ク是ガ
響イテ來テ居ルノデアリマス、隨テ是ハ產
業組合ノ陣營ニ於ケル所ノ者達ノ士氣ノ上
ニモ非常ニ大キナ影響ヲ與ヘツヽアルコト
ヲ私共憂フルノデアリマスガ、此際政府ハ
果シテサウ云フ御考デアルノデアリマス
カ、農林大臣ガ產業組合ニ對シテハ非常ナ
理解ヲ持ッテ居ラレルト云フコトハ、是ハ何
人モ能ク承知シテ居ルノデアリマスガ、政
府全體ト致シマシテノ空氣ニ付テ、ドウ云
フ狀況ニアルノデアルカ、私ハ此點ニ付テ
大臣ノ御所見ヲ伺ッテ置キタイノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=66
-
067・有馬頼寧
○有馬國務大臣 西川君ノ御問ニ御答ヲ致
シマス、產業組合ニ從事致シテ居リマスル
者ガ、最近ニ反產運動ガ起リマシテ以來ノ
政府ノ指導其他ニ於テ、多少以前ト異ナル
モノガアルヤウニ見エルノデ、其結果產業
組合ニ從事シテ居ル所ノ殊ニ若イ者ノ意氣
ヲ多少鈍ラシテ居ルヤウナ感ジガスルガト
云フコトデアリマスガ、是ハ御承知ノ通リ
ニ、農林省トシマシテ、農村ハ勿論、其以
外ノ所ニ於キマシテモ、產業組合ガ有效ナ
働キヲ致スモノデアリ、隨テソレヲ十分ニ
發達セシメテ活躍セシメナケレバナラナイ
ト云フ考ハ、以前ト少シモ違ッテハ居ナイ
ノデアリマス、唯產業組合側ニモ、非常ナ
多數ノモノガ出來、又事業ノ進展ニ伴ヒマ
シテ、動モスレバ、特ニ軌道ヲ踏外スヤウ
ナモノモ從來多少アッタト思フノデアリマ
ス、ソレ等ガ反產運動ヲ惹起シマシタ一ツ
ノ原因デモアラウト思フノデアリマシテ、
ソレ等ニ對シテ敢テ反產運動ガアルカラ、
ソレニ遠慮ヲシタトカ、ソレニ氣兼ネヲシ
タトカ云フ意味デハナイノデアリマスガ、
多數ノ產業組合ノ中ニ、多少取締ヲ嚴ニ
シ、之ヲ監督シテ行カナケレバナラナイヤ
ウナモノモ多々アルト思ハレマスノデ、ソ
レ等ニ對シテ幾分カ是正ヲスルト云フヤウ
ナ態度ニ出タコトガ少クナイト思フノデア
リマス、詰リ監督ヲ嚴重ニシ、產業組合ノ
行クベキ道ヲ誤ラナイヤウニシタイト云フ
ヤウナ考カラ、政府トシテサウ云フヤウナ
態度ニ出タト云フコトガ、反產運動ノ爲ニ
非常ニ遠慮シテ、產業組合ニ對スル取締ガ
非常ニ嚴重ニナッタトカ、或ハ冷ヤカデアル
ト云フヤウナ感ジヲ與ヘテ居ルノデハナイ
カト云フ風ニ私共思フノデアリマス、只今
御述ニナリマシタヤウニ、產業組合ト云フ
モノハ、特ニ農村ニ取ッテハ大事ナノデアリマ
スカラ、先般モ申上ゲマシタヤウニ、不正不
法ノ行爲ノナイヤウニ、產業組合ノ正シイ發達
ヲ致シマスル爲ニハ、出來ルダケノ力ヲ之ニ
添ヘテ行カナケレバナラヌト思ヒマスガ、敢
テ反產運動ニ對シテ怖ヲ爲ストカドウトカ
云フ意味デハアリマセヌガ、履ミ行クベキ
道ヲ誤ラシメナイト云フコトノ爲ニ、多少
ソコニ監督ヲ嚴重ニシ、今度ノ監査聯合會
ノヤウナモノモ作リマシテ監督ヲ嚴ニシテ
行クト云フコトニハナルト思ヒマスガ、ソ
レハ決シテ發展ヲ鈍ラセルトカ、遠慮スル
トカ、サウ云フヤウナ意味デハナイノデア
リマシテ、今後ト雖モサウ云フ考へ方デ農
林省トシテハ當ッテ行キタイト考ヘテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=67
-
068・西川貞一
○西川委員 反產運動ノ口實トナリマスノ
ハ、產業組合ガ中小商工業者ヲ壓迫スル、
又私ハ或ル政府筋ノ大官カラ其意見ヲ聽キ
マシタ時ニモ、產業組合モ宜イケレドモ、
中小商工業ノ問題ヲ考へル時ニハ、產業組合
ニ對シテモ相當考ヘナクテハナラヌト云フ
ヤウナ意見モ嘗テ伺ッタコトガアリマスガ、
併シ產業組合ト云フ言葉ヲ言表シマスト、
中小商工業ト對立スルヤウナ感ジガスルノ
デアリマスケレドモ、本質的ニ協同組合ト
云フ風ニ見テ行キマスト、今日中小商工業
ト雖モ、其更生ヲ圖リ其安定ヲ圖ルノニハ、
協同組合ノ力ニ依ルヨリ外ハナイト云フコ
トハ、政府當局ガ、或ハ商業組合、工業組
合等ヲ操作致シ、又商工組合中央金庫等ヲ
操作致シマシテ、協同組合ニ依ッテ是等ヲ更
生セシメヨウトシテ居リマスル政府ノ政策
ノ事實ニ照シテモ、明カナ所デアリマス、
サウ云フ意味ニ於キマシテハ、單ナル農村
ノミデナク、中小商工業ノ陣營ニ於キマシ
テモ、協同組合ハ其經濟ヲ更生セシメ、其
地位ヲ安定セシメ、生活ヲ守ッテ行ク所ノ一
ツノ防壘ニ外ナラヌ、而モ是ガ兎角對立ヲ
スルガ如クニ考ヘラレルノハ、同ジ協同組
合ノ陣營ノ下ニ集リ來ル農村デアリ、中小
商工業者デアルニモ拘ラズ、强イテ機關ヲ
別ニシテ對立セシメルト云フコトガ私ハ惡
イノダト思フ、現在商工組合中央金庫ハ出
來マシタケレドモ、實際ニ於テ商業組合、
工業組合ヲ通ジテ中小商工業者ニ對スル金
融ハ圓滑ニハ行ッテ居ラヌノデアリマス、現
在ノ商工組合中央金庫ノ實力ヲ以テシテハ、
多年培養シ蓄積シ來ッタ產業組合中央金庫
ノ力ニ及ブベクモナイ、別ノ機關ヲ設ケタ
カラ、徒ニ資金ノ需要ハ多イケレドモ、ソ
レニ供給スルコトガ出來ナイ、組合ヲ作ッテ
モ資金ノ供給ハ出來テ居ラナイ、私ハ斯ウ
云フ對立觀念ヲ根本的ニ解消シテ、寧ロ中
央金庫一本ニシテ、農村ニ對シマシテモ中
小商工業ニ對シマシテモ、家族的ナ產業ニ
對スル金融ハ、中金一本ニシテ、今囘中央
金庫カラ貸出スコトニシタ點ハ宜イト思ヒ
マス、其點ハ高木サンノ意見トハ對立スル
ヤウデアリマスケレドモ、別ニ一本ニ立テ
ルト云フコトガ私ハ惡イト思フ、是ガ寧ロ
對立觀念ヲ激成スルト思フノデアリマス、
今日本當ニ此農村ノ中デ產業組合ト中小商
工業者ガ相剋ヲシ兩方ガ立行カナイヤウナ
情勢ニアル農村ニ於キマシテハ、產業組合
ト云フモノガ商業組合モ工業組合モ、自ラ
ノ小組合トシテ、以テ丁度農事實行組合ガ
產業組合ノ小組合デアリマスヤウニ小組合
トシテ、以テ一村ノ協同組合ハ一ツニシテ、
其協同組合ノ小組合トシテ商業組合、工業
組合、漁業組合、農事實行組合ト云フヤウ
ナモノガ蹤イテ行クト云フ所ニ、本當ノ兩
方ノ協調ガ出來テ來テ、又其發展ヲ圖リ得
ルモノト私ハ多年左樣ニ信ジテ居ルノデア
リマス、之ヲ別々ニ振分ケマスカラ對立觀
念ガ起リ、兩方共ニイケナクナル、元來信
用組合ナルモノハ農村ニ於テ發達シタカ、
中小商工業者ノ間ニ於テ發達シタカト申シ
マスト、是ハ地方ニ依ッテ違ヒマセウケレ
ドモ、產業組合ノ一番發祥地デアリマス所
ノ山口縣アタリニ於テハ、中小商工業者ノ
金融機關トシテ初メ發達シタノデアリマ
ス、現在ニ於テ最モ勢力ヲ持ッテ居ルモノハ
市街地信用組合デアッテ、中小商工業者ノ中
デハ一番實力ヲ持ッテ居ル、其沿革ニ照シテ
見マシテモ、其實質ニ照シテ見マシテモ、
中小商工業者ト農村トガ對立シテ行クト云
フコトニハナラヌノデアリマスケレドモ、
是ハ行政機構ノ取扱ノ上デ寧ロ對立スベカ
ラザルモノヲ對立サシテ居ルト云フヤウナ嫌
ガ多々アルノデアリマス、勿論是ハ農林大
臣ノ御方針一ツデ動クコトデハナイノデア
リマスケレドモ、大臣ハサウ云フヤウナ御
考ノ下ニ、本當ニ農村ナリ地方ニ於ケル中
小商工業者ト產業組合トノ對立ガ解消シ、
一ツノ協同組合ノ中ニソレ〓〓ノ業態ヲ吸
收シテ行クト云フヤウナ方針ノ下ニ、此問
題ノ解決ヲ御圖リニナルト云フヤウナ御考
ハナイデアリマセウカ、私ハ多分御同感デ
アルト思フノデアリマスガ、甚ダ失禮デア
リマスケレドモ、御伺シテ置キタイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=68
-
069・有馬頼寧
○有馬國務大臣 只今西川君ノ御述ニナリ
マシタコトニ付テハ、仰セノ如ク全然御同
感デアリマス、唯問題ハ所謂行政機構ノ改
革問題ニ伴フ問題デアリマシテ、行政機構
ノ改革ト云フコトガ本當ニ出來得ルナラバ、
今ノ問題モ出來ルト思ヒマスガ、ドウモ行
政機構ノ改革ト云フヤウナコトハ、徒ニ聲
ガ大キクテ實ガ伴ハナイノハ今迄ノ例ダト
思ヒマス、果シテ今後ニ於ケル行政機構ノ
改革ト云フヤウナ場合ニ、今御述ニナリマ
シタヤウナコト迄實際ニ出來ルナラバ非常
ナ仕合セダト思ヒマスガ、私共モ全然御意
見ニハ同感デアリマスガ、私共ノ望ンデ居
ルヤウナ風ニナルト云フコトハ餘程難カシ
イノデハナイカト思ヒマス、併シ出來ルダ
ケ只今ノ對立ノヤウナ形カラ生ズル色々ナ
弊害ト云フモノヲ除カナケレバナリマセヌ
カラ、出來ルダケ最少限度ニ其弊害ノ少イ
ヤウニ努メテ行クト云フ程度ニシカ今申上
ゲラレナイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=69
-
070・西川貞一
○西川委員 是デ最後デアリマスカラモウ
一ツ御伺スルコトヲ許シテ戴キタイノデア
リマス、此產業組合ノ本質ナリ、其指導精神
ノ根本ニ於キマシテ、先般國民健康保險法
ノ審議ニ當リマシテ、厚生大臣カラ、產業
組合ハ物ヲ扱フモノデアッテ、人ヲ取扱フモ
ノデハナイ、斯ウ云フ風ナ御言明ガアリマ
シタコトハ、私將來ノ產業組合ノ指導精神
ノ上ニ及ボス影響少カラザルモノガアルト
思フノデアリマス、外ノ大臣ナラマダ忍ビ
宜イノデアリマスケレドモ、恐ラク今後厚
生省ハ農村ニ多大ノ接觸ヲ有ツト共ニ、農
村ニ於ケル協同組合トモ多大ノ接觸ヲ有ッ
テ行クデアラウト思フ、協同組合ト云フモ
ノヲ基本ニシナカッタナラバ決シテ私ハ厚
生省ノ期待スル諸事業ハ圓滑ナル進展、圓
滿ナル發展ヲ圖ルコトハ出來ナイト思ヒマ
ス、併シ其厚生當局ガ產業組合ハ物ヲ扱フ
機關デアルト云フ風ニ頭カラ前提シテ掛ラ
レルト云フコトハ、私ハ將來相當ナ問題デ
アルト思ヒマスノデ、此際自治監査法案ノ
審議ニ當リマシテ、將來產業組合ノ指導ト
云フモノヲドウ云フ方面ニ引張ッテ行カレ
ル積リデアルカ、產業組合ニ對シテドウ云
フ觀念ヲ有ッテ居ラレルカト云フコトニ付
テ當局ノ御見解ヲ御伺シ、且又前提トシマ
シテ私ノ考ヲ一寸申上ゲテ置キタイ
產業組合ハ單ニ物ヲ扱フ人ヲ扱フト云フ
コトノミナラズ、是ハ日本ノ國民道德ノ上
ニ、國民精神ノ上ニ、國體觀念ノ上ニ產業組
合ハ重大ナル關係ヲ有ッテ居ルト私八位ヲ
ノデアリマス、日本ノ國民道德、國民精神、
國體觀念ト云フモノガ最モ赤裸々ニ發揚サ
レマスノハ、敵前ニアル軍人ガ戰死ヲスル
場合デアル、其場合ニ"天皇陛下ノ萬歲ヲ奉
唱シテ死ヌルノデアリマス、併シ私ハ先般
自分ノ身寄リノ者カラ、自分ノ傍ニ寢テ
居ッタ戰傷者ガ戰死シタト云フ其戰死ノ情
景ヲ報告サレマシタ時ニ、天皇陛下萬歲ヲ
奉唱致シマスルノミデナク、更ニ私共ガ餘
程考ヘナクチヤナラヌコトヲ必ズ唱ヘル、
ソレハオ母サント言フサウデス、天皇陛下
萬歲ヲ唱ヘタ後ニオ母サント言フサウデア
リマス、是ハ戰死者ヲ取扱ヒマシタ軍醫
ガ、十人ノ戰死者ノ中ノ九人マデハ必ズオ
母サント言フト云フコトヲ申シテ居リマス、
先般大谷智子裏方ガ戰地ニ慰問ニ行カレマ
シテ、御歸リニナッタ時ノ言葉ニモ、日本ノ
軍人ガ强イノハ偉大ナル母ノ力デアルト云
フコトヲ述ベテ居ラレマシタ、天皇陛下
ノ萬歲ヲ奉唱シ、且ツオ母サント呼ブ戰死
者ノ心情ヲ私ハ靜ニ想ウタノデアリマス、
其天皇陛下萬歲ヲ奉唱シマス心理トオ母
サント呼ビマス此心ガ結付イテ此日本精神
ハ出來テ居ル、此國體ハ成立ッテ居ル、此國
民道德ハ成立ッテ居ル、ソレハ如何ナルコト
ヲ意味スルカト申シマスト、表ニ國ヲ持チ
裏ニ家ヲ持ツ、國家一體、此氣持ノ上ニ人
間ガ生キテ居ル、斯ウ云フ事實ノ上ニ私ハ
立ッテ居ルト思フ、詰リオ互ガ國ヲ發展セシ
メマスト共ニ、自分ノ家ト云フモノヲ-
形ノ上ノ家デハアリマセヌ、精神上ノ家ト
云フモノ、本質的ニ見テノ家ト云フモノヲ
シッカリ日本國民ガ把握シテ居ナカッタナラ
バ、私ハ此國民道德ノ更張ヲ圖リ、國民精
神ノ更張ヲ圖リ、國體ノ基礎ヲ益〓培ウテ行
クト云フコトハ出來ナイト思フノデアリマ
ス、家ヲ守ッテ行カナケレバナラヌ、家ヲ守
ルト云フコトハ第一ニ祖先崇拜ノ觀念ヲ更
張スルコトデアル、自ラノ祖先ヲ尊ブコト
デアリ、家產ヲ重ンズルコトデアル、家產
ヲ守ッテ行クコトデアル、家業ヲ守ッテ行ク
コトデアル、祖先ヲ崇拜シ、家產ヲ守リ家
業ヲ守ル、此三ツノモノガ一ニナッテ
日本ノ家ガ存立シ、此家ガ國家ノ基礎ヲ
成シテ居ルト私ハ考ヘル、而モ資本主義
經濟ハ、特ニ最近ニ於ケル高度ノ資本主
義經濟ハ此家ヲ沒落セシメントシテ居ル、
家業ガ破レ、家產ガ破レ、祖先崇拜ガ破壞
シ盡サレタ後ニ、果シテ日本ノ國民道德ガ
如何ナル形ニ於テ殘ルデセウ、國民精神ガ
如何ナル形ニ於テアリ得ルデアリマセウ、
私ハ此事ヲ考ヘマス時ニ、家業ヲ守リ家產
ヲ守リ祖先ヲ崇拜スル、家ヲ守ルト云フコ
トガ日本ノ國家トシテ一番力ヲ注ガナケレ
バナラヌ問題デアルト思フ、而モ農村ヲ護
リ中小商工業者ヲ護ルト云フコトハ家ヲ守
ルト云フコトデアル、此家ヲ守ルト云フモ
ノハ產業組合シカナイト思フ、國家ノ執ッテ
居リマス政策ハ色々アリマスガ、是ハ家ヲ
守ルコトヨリ外ニナイ、產業組合ノ政策ハ
家ヲ守リ國民精神ヲ守ルノデアル、單ナル
物ヲ取扱フモノデハナク、單ナル人ヲ取扱
フモノデモナイ、實ニ國體ノ基礎ニ關係致
シマス所ノ家ヲ守ッテ行ク所ノモノデアル、
產業組合ハサウ云フ崇高ナル使命ヲ持ッテ
居ルモノデアルト私ハ愚考スルノデアリマ
ス、今後ノ產業組合ノ御指導ニ於キマシテ、
厚生大臣ガ言ハレマシタヤウニ、單ニ產業
組合ハ物ヲ扱フモノトシテ取片付ケテ行カ
レルモノデアリマセカ、進ンデ人ノ問題ヲ
解決シ、否、モット進ンデ國民精神ノ問題
ニマデ觸レテ產業組合ハヤッテ行カナクチ
ヤナラヌモノト御考ニナルデアリマセウカ、
是ハ甚ダ失禮ナ問デアリマスケレドモ、此
事ヲ最後ニ伺ヒマシテ私ハ此質問ヲ終リタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=70
-
071・有馬頼寧
○有馬國務大臣 只今ノ西川君ノ御述べニ
ナリマシタコトハ私モ大體御同感デアリマ
ス、前議會デ國民健康保險法案ガ貴族院ノ
委員會ニ付サレマシタ時ニ、只今厚生大臣
ノ言ハレタト仰シヤッタト同ジヤウナ意味ノ
コトヲ一貴族院議員ニ依ッテ述ベラレタコト
ガアルノデアリマス、厚生大臣ハ以前農林
省ニ居ラレマシテ、產業組合ノ事務ニモ關
係ヲサレテ居ルノデアリマス、恐ラク厚生
大臣自身ノ御考デハナカラウト私ハ推察ス
ルノデアリマス、現在ノ立場ト申シマスカ、
或ハ自己ノ個人ノ意見ヲ述ベラレナイト云
フ關係カラ恐ラクサウ云フコトヲ言ハレタ
ノデハナカラウカト私ハ思フノデアリマス、
私ハ以前カラ產業組合ト云フ團體ニナゼ產
業ト云フ字ヲ付ケタカト云フコトヲ多少遺
憾ニ思ッテ居ッタノデアリマス、最初ニ此字
ヲ使ッテ居ナケレバモット誤解サレタリスル
コトナク、今御述べニナリマシタヤウナコ
トモ行ッテ居ッタノデハナカラウカト思ッテ
居ルノデアリマス、併シ是ハ長イ歷史ヲ有ッ
テ居リマシテ、サウ簡單ニ之ヲ改メルト云
フ譯ニモ參ラヌノデアリマス、只今御述べ
ニナリマシタヤウニ、是ハ單ニ經濟上、產
業上ノ利益サヘ圖レバ宜イト云フ、サウ云
フコトバカリ目的トシテ居ル團體デハナイ、
ソレダケガ目的デハナイト云フコトハ私共
モ御同感デアリマス、農村ニ於キマシテハ、
農村全體、又農家ト云フ家、都會ニ於キマ
シテモ同樣、サウシタ所謂〓土生活ノ基礎
ヲ確立スル、御互ノ幸福ヲ圖ッテ行クト云フ
組合ノ精神ハ其點ニアルト思ヒマシテ、決
シテ物ヲ對象トスルト云フコトダケガ目的
デナイト云フコトハ、私共ハッキリ認識シテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=71
-
072・喜多壯一郎
○喜多委員 是デ質疑ヲ打切ッテ戴キタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=72
-
073・青山憲三
○靑山委員長 御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=73
-
074・青山憲三
○靑山委員長 サウスレバ質疑ハ此程度デ
打切リマシテ、本日ハ是デ散會致シマス、
明日ハ午後二時半ヨリ開會致シマス
午後四時散會
〔北委員演說參照〕
「ス·フ」竝綿絲布ノ性能調査
含水分相異時ニ於ケルス·フ綿絲ノ
强伸力比較
綿絲ス·フ
含水率强力伸度强力伸度
0%一七二·一四·九二一九·一れた
自然狀態
一二-一六%一七四·七五·〇三一七七·八一〇·三三
五〇%一八二·八五·五五一三二·七一〇·六五
濕潤二一〇·六七·三一〇五·三一四·四五
右試驗綿絲ハ富士四〇番手單絲、ス·フ四
○番手單絲ニシテ含有セシムベキ水分率
ヲ(〇%-一二%-五〇%-濕潤)トシ其
ノ間ノ溫度七六度、而シテ試驗二十囘平
均ノ結果ノモノデアル
以上ノ如ク自然狀態ニアツテハス·フノ
强力ハ綿絲ヨリ大デアル次ニ含水率ノ變
化ニヨル强力ノ變化ヲ見ルニ綿絲ハ却ツ
テ强力ヲ增大シス·フニ於テハソノ減少
度ハ頗ル急激デ濕潤狀態ニ至ル減少率ハ
ス·フハ五〇%以上減少スル缺點ヲ有ス
ルニ反シ綿絲ハ却ツテ二一一%餘ノ增加ト
ナル譯デ此處ニ於テス·フガ洗濯ニ對シ
テ非常ニ弱イ所以デアル
二、彈性
綿ニ比シ彈性ガ少デアル
三、耐水性
ス·フハ耐水性ニ乏シイ從ツテ濕潤狀
態ニ於テ强力ヲ著シク減少スル結果ト
ナル
四、混紡絲(棉七割、ス·フ三割)ノ强力比
較
乾燥强力濕潤强力
混紡絲二OS八二·七七四·九
綿二〇S七七·一九二·五
五、三綾生地(混紡絲、純綿物)トノ强力
比較
最大最小平均
%%%
純綿布經三日1五三·〇五三〇·三
緯二六·五二三·〇二四·三
ス·フ混紡絲經三〇·〇二四·〇三〇·一
(五對五)
緯二三·〇二〇·五二一·九
洗濯ニツイテ
洗濯ニ於テス·フガ綿製品ヨリ弱イ理
由ハ
(イ)濕潤ニ弱此ノ點ニ就テハ別表
ノ如ク五〇%以上强力ガ減少スル
(ロ)アルカリニ弱ス·フ、綿ノアル
カリ溶解量(一〇%、苛性曹達ニ攝
氏二五度三〇分間)
試料アルカリ溶
解量(%)
ビスコース1一三·五
同2二一·四
同3三五·二
同4膠化分散
綿〇·八
(ハ)熱ニ弱
人纖アルカリ煮沸試驗
料アルカリ煮
試沸減退(%)
ビスコース1七·八
同2一一·四
綿〇·八
以上ノ如ク殊ニ前表ロニヨツテ明
カナ如ク硬化油ヲ多量ニ含ンデ濯
ギニ落ノ惡イアルカリノ强イ下級石
鹼ヲ使用スル農村ニ於テハ特ニ純綿
物ノ製品ガ必要トナル譯デアル
(ニ)摩擦ニ弱摩擦ニ對シテ弱イ爲
メ農村ノ如ク洗濯知識ニ乏シイノ
デ總テ丸洗トスル結果ハ非常ニ弱
クナルノデアル
猶洗濯試驗ニ於テ特ニ注意ヲ引クノハ全
ス·フ織物ガ混紡織物ヨリ强イコトデア
ル從ツテ混紡織物ハ前項ノス·フト純綿
トノ比較表ヨリ猶弱クナルト云フコトデ
アル
以上ニ依ツテ大體ス·フガ如何ニ不利デ
アルカハ分ルコトト思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313028X00319380303&spkNum=74
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。