1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月五日(土曜日)
午後二時十七分開議
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議事日程 第二十二號
昭和十三年三月五日
午後一時開議
第一 職業紹介法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 本邦内に於て募集したる外國債の待遇に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 農業保險法案(政府提出) 第一讀會
第四 不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 漁業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 産業組合自治監査法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
本邦内に於て募集したる外國債の待遇に關する法律案
農業保險法案
(以上三月四日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
産師法案
提出者
土屋清三郎君 斯波貞吉君
中崎俊秀君 山田清君
青木亮貫君 一松定吉君
農家世襲財産法案
提出者
林平馬君 眞鍋勝君
矢野庄太郎君
檢査計理士法案
提出者
森田重次郎君 松田竹千代君
野田文一郎君 小山倉之助君
裁判所構成法中改正法律案
提出者
高橋義次君 岡本實太郎君
一松定吉君 紅露昭君
宮崎一君 清瀬一郎君
片山哲君
山口縣に高等工業學校設置に關する建議案
提出者
中野治介君 西村茂生君
西川貞一君 國光五郎君
庄晋太郎君
國道路線追加に關する建議案
提出者 田中好君
京都綾部間列車増加に關する建議案
提出者
田中好君 江羅直三郎君
五戸川改修助成に關する建議案
提出者 森田重次郎君
松本高山間鐵道敷設速成に關する建議案
提出者 百瀬渡君
物部川ダム築設に關する建議案
提出者 長野長廣君
伊勢の聖地に神都大學設置に關する建議案
提出者
川崎克君 長井源君
木曾福島久々野間を鐵道豫定線に編入に關する建議案
提出者 服部崎市君
内閣に人權擁護委員會設置に關する建議案
提出者
田村秀吉君 一松定吉君
濱野徹太郎君 岡本實太郎君
手代木隆吉君 野田文一郎君
牧山耕藏君 村松久義君
今成留之助君 作田高太郎君
山道襄一君 松井郡治君
自治功勞章制定に關する建議案
提出者
田子一民君 倉元要一君
我か國號の稱呼統一に關する建議案
提出者
田子一民君 倉元要一君
中央卸賣市場法改正に關する建議案
提出者
東條貞君 鶴惣市君
手代木隆吉君 片岡恒一君
今井新造君
(以上三月四日提出)
一昨四日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
外務事務官 山形清
第七十三囘帝國議會外務省所管事務政府委員被仰付
一昨四日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第一部選出
決算委員 國光五郎君(西方利馬君補闕)
一昨四日委員長及理事互選の結果左の如し
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(輸出入品等に關する臨時措置に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 津原武君
理事
寺島權藏君 高橋義次君
大内竹之助君 行吉角治君
北勝太郎君
日滿司法事務共助法案(政府提出、貴族院送付)外三件委員
委員長 松永東君
理事
内藤正剛君 原玉重君
田中亮一君 小林絹治君
一昨四日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
農地調整法案(政府提出)委員
理事 北勝太郎君(理事高岡大輔君去三日委員辭任に付其の補闕)
臨時租税増徴法中改正法律案(政府提出)外七件委員
理事 玉野知義君(理事野中徹也君昨四日委員辭任に付其の補闕)
社會事業法案(政府提出)外二件委員
理事 長野高一君(理事古田喜三太君昨四日委員辭任に付其の補闕)
一去三日に於ける特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
重要鑛物増産法案(政府提出)外一件委員
理事 長野長廣君(理事高橋壽太郎君去三日委員辭任に付其の補闕)
一昨四日議長に於て選定したる委員左の如し
陸上交通事業調整法案(政府提出)委員
本田彌市郎君 清水徳太郎君
堤康次郎君 中井川浩君
松永東君 堀内良平君
坂下仙一郎君 愛野時一郎君
長野高一君 山田清君
星島二郎君 紅露昭君
佐藤洋之助君 小平重吉君
小笠原八十美君 深澤豐太郎君
匹田鋭吉君 上田孝吉君
田中好君 増永元也君
井阪豐光君 安藤孝三君
安倍寛君 淺沼稻次郎君
永江一夫君 道家齊一郎君
杉浦武雄君
一昨四日に於ける特別委員の異動左の如し
農地調整法案(政府提出)委員
辭任 熊谷五右衞門君 補闕 伊豆富人君
辭任 前川正一君 補闕 三宅正一君
不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出)外四件委員
辭任 河合義一君 補闕 野溝勝君
臨時租税増徴法中改正法律案(政府提出)外七件委員
辭任 野中徹也君 補闕 玉野知義君
辭任 中島彌團次君 補闕 中村梅吉君
重要鑛物増産法案(政府提出)外一件委員
辭任 玉野知義君 補闕 野中徹也君
辭任 野田文一郎君 補闕 山田清君
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(輸出入品等に關する臨時措置に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 安倍寛君 補闕 坂本宗太郎君
社會事業法案(政府提出)外二件委員
辭任 古田喜三太君 補闕 森下國雄君
辭任 高畠亀太郎君 補闕 瀧澤七郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=1
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002・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第四乃至第八
ノ五案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第四、不動產融資及損失補償法中改正
法律案、日程第五、產業組合中央金庫法中
改正法律案、日程第六、漁業法中改正法律
案〓日程第七、產業組合中央金庫特別融通
及損失補償法中改正法律案、日程第八、產
業組合自治監査法案、右五案ヲ一括シテ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求
メマス-委員長靑山憲三君
第四不動產融資及損失補償法中改正
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第五產業組合中央金庫法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第六漁業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第七產業組合中央金庫特別融通及損
失補償法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第八產業組合自治監査法案(政府提
也第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一不動產融資及損失補償法中改正法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月四日
委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一產業組合中央金庫法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年三月四日
委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
附帶決議
一政府ハ今囘ノ產業組合中央金庫法及
漁業法ノ改正ニ伴ヒ漁村ノ實情ニ卽シ
漁村金融ノ圓滑ヲ圖ル爲十分ナル努力
ヲ拂フト共ニ產業組合中央金庫ニ對シ
テモ特別ノ督勵ヲ加へラレ度キコト
報〓書
一漁業法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月四日
委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
附帶決議
一政府ハ漁村經濟ニ關スル根本的調査
ヲ行フト共ニ沿岸漁業ノ調整及培養ニ
力ヲ用ヒ更ニ海洋漁業ノ發展ニ付テモ
十分ナル調査〓究ヲ行ヒ漁村振興竝ニ
水產業ノ發展ニ關シ諸般ノ積極的施設
ヲ行フコト
二燃料礦油市價ノ暴騰ハ水產業ノ前途
ニ一大脅威ヲ與へ漁村經濟ヲ破壞スル
ノ虞アリ政府ハ從來ノ礦油關稅免除廢
止ノ對策ノ外ニ更ニ積極的ノ漁業用燃
油對策ヲ樹立實行スヘキコト
報告書
一產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年三月四日
委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一產業組合自治監査法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月四日
委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
〔靑山憲三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=4
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005・青山憲三
○靑山憲三君 本委員會ニ付託ニナリマシ
タ不動產融資及損失補償法中改正法律案外
四件ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲマス
本委員會ハ去ル二月二十八日以來前後四
囘ニ亙リ熱心ニ審議ヲ重ネマシタ、先ヅ劈
頭ニ政府ヨリ提案ノ說明ガアリマシタ、最
モ簡單ニ此要旨ヲ申上ゲマスレバ、產業組
合中央金庫法及ビ漁業法ノ改正ハ、漁業協
同組合又ハ漁業組合聯合會ヲシテ產業組
合中央金庫ニ加入セシメ、之ニ伴ヒ產業組
合中央金庫ノ資本ヲ五百万圓增加スルノ
外產業組合中央金庫ノ業務ノ狀況ヲ見マ
シテ、現行法上種々不便ナ點ガアリマスルノ
デ、是等ニ付キ必要ナル改正ヲ加ヘ、又政
府ノ出資ニ對シマシテハ、從來設立當時ヨ
リ十五箇年間ヲ限リテ、剩餘金ノ配當ヲ爲
スコトヲ要セザルコトトナッテ居リマシタ
ガ、其期間ガ本年滿了致シマスルノデ、中
央金庫ノ實情、及ビ漁業協同組合、漁業組
合聯合會ガ新ニ加入スルコト等ノ事情ニ鑑
ミマシテ、今後ノ配當ニ關シ、配當率年四
分以下ノ場合ハ、政府出資ニ對シテ配當ヲ
爲スコトヲ要セザルコトトシ、四分ヲ超ユ
ル場合ニ於テハ、一定ノ限度內ニ於テ政府
出資ニ對スル配當ヲ爲スコトトシタノデゴ
ザイマス、漁業協同組合ト漁業組合聯合會
トヲシテ、組合員又ハ所屬ノ組合、若クハ
聯合會ノ貯金ノ受入ニ關スル施設ヲ行ハシ
メ、且ツ漁業組合聯合會ニ所屬ノ組合又ハ
聯合會ニ對スル資金ノ貸付ニ對スル補償竝
ニ手形割引ヲ行ハシメルコトトシ、以テ漁
村金融改善ヲ圖ルコトトシタノデゴザイマ
ス
不動產融資及損失補償法、竝ニ產業組合
中央金庫特別融通及損失補償法ノ改正法律
案ハ、現下ノ不動產金融竝ニ產業組合金融
ノ情勢ニ鑑ミテ、其融通期間及ビ期限ヲ
更ニ三箇年間延長スルコトナノデゴザイ
マス
產業組合自治監査法案ニ付キマシテハ、
產業組合ヲシテ健實ナル發達ヲ爲サシメル
爲メ、是ガ指導監督ヲ周到ニスルト共ニ、
是ト竝ンデ產業組合自身ノ自治的監査ノ厲
行ヲ期スル爲メ、產業組合監査聯合會ナル
法人ヲ組織セシメ、之ニ產業組合監査員ヲ
設置シ、此監査員ニハ組合ノ事務所等ニ臨
ンデ諸般ノ調査ヲ爲シ、監査ヲ行フ權能ヲ
賦與スルコトトシ、行政官廳ハ之ニ對シテ
十分ナル監督ヲ行ヒ、以テ產業組合ノ健實
ナル發達ヲ期セントスル趣旨ナノデゴザイ
マス
次ニ委員會ニ於ケル質疑及ビ之ニ對スル
政府ノ答辯ノ要旨ヲ申上ゲマスレバ、第一
ニ今囘ノ改正ノ如ク、漁業協同組合及ビ漁
業組合聯合會ガ產業組合中央金庫ニ加入ス
ルコトニ依ッテ、同金庫ノ資本金ヲ單ニ五
百万圓增加スルコトノミデ、果シテ漁村金
融ノ圓滑ヲ期スルコトガ出來ルカドウカト
云フ質疑ガアッタノデゴザイマス、政府ハ
之ニ對シマシテ、五百万圓ノ出資增加ニ
依ッテ五千万圓ノ債劵發行力ヲ增加スルコ
トガ出來、且ツ產業組合中央金庫ノ自己資
金モ、相當程度融通シ得ルコトニ依ッテ、
政府ノ督勵ト相俟ッテ漁業金融ノ圓滿ヲ期
スルコトモ困難デハナイト云フ、政府ノ答
辯ガアッタノデゴザイマス
第二ニハ漁村ニ於ケル產業組合ノ活動狀
況ハドウカ、是等ノ產業組合ト漁業協同組
合トノ關係ハ、將來ドウ云フコトニナルカ
ト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ產業組合
ハ從來漁村ニ於テモ相當活動シテ、其成績
ヲ擧ゲテ居ルノデアル、所デ今囘漁業協同
組合ガ貯金受入ヲ爲シ得ルコトトナッタト
同時ニ、此際ニ於テ或ハ產業組合ノ事業ヲ
漁業協同組合ニ移スコトモ出來、又從來通
リ產業組合ハ產業組合ノ活動ニ任セテモ可
ナリデアル、ソレ等ハソレ〓〓地方ノ事情
ニ卽シテ、雙方連絡協調ヲ圖ッテ、漁村ノ
振興ヲ圖ルヤウニ指導シタナラバ宜カラウ
ト云フ答辯ガアッタノデゴザイマス
第三ニハ政府ハ漁村金融ノ改善ヲ圖ルト
共ニ、漁村經濟ニ關スル根本的調査ヲ行
ビ、漁村ノ振興竝ニ水產業ノ發展ニ付キ格
段ノ努力ヲ拂フ必要ガアルガ、之ニ對スル
政府ノ考ハドウカト云フ質疑ガアリマシ
ク、之ニ對シ政府ハ、現在ニ於テモ種々努
メテ居ルガ、將來ハ此御趣旨ニ從ウテ一層
努力スルト云フコトヲ答辯シテ居ルノデア
リマス
第四ニ漁村經營上必要缺クベカラザル漁
業用ノ燃油、漁網用ノ綿絲竝ニ染料等ニ付
テハ、如何ナル對策ヲ講ジテ居ルカ、又將
來ドウスル積リカト云フ質疑ガアッタノ
デゴザイマス、之ニ對シテ政府ハ、漁業用
燃油ニ付テハ、從來其消費節約ニ付キ努力
ヲ拂ッテ居リマスガ、漁業者ニ必要ナル燃油
ニ付テハ、節約ヲ圖ル一面不足ヲ來サナイ
ヤウニシ、將來ノ對策ニ付テモ十分ニ考
慮ヲスルト云フコトデゴザイマシタ、尙ホ
綿糸及ビ染料ニ付テハ、ソレ〓〓考慮ヲ約
シタ次第デゴザイマス
最後ニ產業組合ノ自治監査法案ニ關シマシ
テハ、自治監査ノ趣旨ニ付テ能ク說明セラ
レタイト云フ質問ガアッタノデゴザイマス
ガ、之ニ對シテ政府當局カラ、官廳ノ監査
ハ主トシテ一般產業組合監督ノ見地カラ行
フノデアッテ、自治監査ハ當該組合ノ立場ニ
於テ、或ハ又組合ノ希望ニ依リ行フノデアッ
テ、兩々相俟ッテ完全ナル監督ヲ行ハント
スルモノデアル、又監査員ハ產業組合ニ理
解アル人デアルト共ニ、監査ハ相當專門的
技能ヲ必要トスルガ故ニ、サウ云フ方面ノ
適任者ヲ選ブヤウニシタイ、是等監査員ニ
對シテハ、嚴重ナル監督ヲ加ヘテ、監査上
萬遺漏ナキヲ期シタイノデアルト云フ返答
ガアッタノデゴザイマス
次デ討論ニ入リマシテ、民政黨ノ喜多壯
一郞君カラ原案贊成ノ上、三ツノ附帶決議
ヲ附スル動議ガ提出セラレタノデゴザイマ
ス、政友會ノ田代君ガ之ニ贊成シ、之ヲ起
立ニ諮ヒマシタ所ガ、滿場一致ヲ以テ之ヲ
可決セラレタノデゴザイマス、今其附帶決
議ヲ申上ゲマスレバ、產業組合中央金庫法
改正ニ對スル附帶決議トシテ
-政府ハ今囘ノ產業組合中央金庫法及
漁業法ノ改正ニ伴ヒ漁村ノ實情ニ卽シ
漁村金融ノ圓滑ヲ圖ル爲十分ナル努力
ヲ拂フト共ニ產業組合中央金庫ニ對シ
テモ特別ノ督勵ヲ加ヘラレ度キコト
漁業法改正ニ附セラレタル希望決議ハ
-政府ハ漁村經濟ニ關スル根本的調査
ヲ行フト共ニ沿岸漁業ノ調整及培養ニ
力ヲ用ヒ更ニ海洋漁業ノ發展ニ付テモ
十分ナル調査〓究ヲ行ヒ漁村振興竝ニ
水產業ノ發展ニ關シ諸般ノ積極的施設
ヲ行フコト
二燃料礦油市價ノ暴騰ハ水產業ノ前途
ニ一大脅威ヲ與ヘ漁村經濟ヲ破壞スル
ノ虞アリ政府ハ從來ノ礦油關稅免除廢
止ノ對策ノ外ニ更ニ積極的ノ漁業用燃
油對策ヲ樹立實行スヘキコト
此二ツノ附帶決議ガ附セラレタノデゴザイ
マス、以上ガ委員會ノ經過ヲ〓要デゴザイ
マシテ、詳細ナルコトハ速記錄ニ依ッテ御
覽ヲ願ヒタウゴザイマス、ドウゾ滿場ノ御
贊成ヲ御願致ス次第デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 五案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ五案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 直チニ五案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ五案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
不動產融資及損失補償法中改正法律案
第二讀會(確定議)
產業組合中央金庫法中改正法律案
第二讀會(確定議)
漁業法中改正法律案第二讀會(確定議)
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案第二讀會(確定議)
產業組合自治監査法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、五案トモ委員長
報〓通リ可決確定致シマシタ(拍手)-日
程第一、職業紹介法改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス-厚生大臣木戶幸一君
第一職業紹介法改正法律案(政府提
出)第一讀會
職業紹介法改正法律案
職業紹介法
第一條政府ハ勞務ノ適正ナル配置ヲ圖
ル爲本法ニ依リ職業紹介事業ヲ管掌
ス
第二條何人ト雖モ職業紹介事業ヲ行フ
コトヲ得ズ
第三條政府ハ職業紹介事業ニ併セテ職
業指導及必要ニ應ジ職業補導其ノ他職
業紹介ニ關スル事項ヲ行フモノトス
前項ノ規定ニ依ル職業紹介及職業指導
ハ之ヲ無料トス
第四條政府ハ前條ニ規定スル事業ヲ行
フ爲職業紹介所ヲ設置ス
職業紹介所ノ業務ヲ補助セシムル爲職
業紹介所ニ聯絡委員ヲ置ク
職業紹介所及聯絡委員ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條市町村長(勅令ヲ以テ指定スル
市ニ在リテハ區長)ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ職業紹介所ノ業務ノ一部ヲ行
フ
第六條第三條ニ規定スル事業ニ關シ職
業紹介委員會ヲ置ク
職業紹介委員會ニ關スル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第七條職業紹介所及聯絡委員ニ關スル
費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣ヲ
シテ其ノ一部ヲ負擔セシムルモノトス
地方長官必要アリト認ムルトキハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ前項ノ規定ニ依リ道
府縣ノ負擔スル費用ノ一部ヲ市町村ヲ
シテ負擔セシムルコトヲ得
第八條勞務供給事業ヲ行ハントスル者
又ハ勞務者ヲ雇傭スル爲勞務者ノ募集
ヲ行ハントスル者ニシテ命令ノ定ムル
モノハ地方長官(東京府ニ在リテハ東
京府知事及警視總監トス)ノ許可ヲ受
クベシ
前項ノ勞務供給事業及勞務者ノ募集ニ
關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六
月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
-第二條ノ規定ニ違反シ有料又ハ營
利ヲ目的トスル職業紹介事業ヲ行ヒ
タル者
二第八條ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズ
シテ有料又ハ營利ヲ目的トスル勞務
供給事業ヲ行ヒタル者
第十條第八條ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケ
ズシテ勞務者ノ募集ヲ行ヒタル者ハ百
圓以下ノ罰金又ハ拘留ニ處ス
第十一條法人又ハ人ノ代理人、使用人
其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業
務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルト
キハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出
デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコ
トヲ得ズ
第十二條本法ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナ
ルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執
行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナ
ルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但
シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條前二條ノ場合ニ於テハ懲役又
ハ拘留ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第十四條町村制ヲ施行セザル地ニ於テ
ハ本法中町村ニ關スル規定ハ町村ニ準
ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ
町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第十五條第二條ノ規定ハ主務大臣ノ指
定スル職業ノ職業紹介事業ニハ之ヲ適
用セズ
前項ノ職業紹介事業ニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條本法ハ船員職業紹介事業ニハ
之ヲ適用セズ
附則
第十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第十八條從前ノ規定ニ依リ設置シタル
職業紹介所ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ
一年ヲ限リ職業紹介委員會ニ關スル規
定ヲ除キ仍從前ノ例ニ依ル
第十九條地方長官ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ前條ノ職業紹介所ノ廢止ヲ命ズル
コトヲ得
第二十條本法施行ノ際現ニ行政官廳ノ
許可ヲ受ケ職業紹介所ヲ設置スル者ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ當分ノ內無料ノ
職業紹介事業ヲ行フコトヲ得
第二十一條本法施行ノ際現ニ行政官廳
ノ許可ヲ受ケ有料又ハ營利ヲ目的トス
ル職業紹介事業ヲ行フ者ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ引續キ其ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
前項ノ職業紹介事業ノ施設ヲ相續ニ因
リ承繼シタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ地方長官(東京府ニ在リテハ東京府
知事及警視總監トス)ノ許可ヲ受ケ其
ノ事業ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ
ハ相續開始ノ日ヨリ一月以內ニ許可ヲ
申請スベシ
前項ノ者ハ前項申請ニ對スル許可又ハ
不許可ノ處分アル迄其ノ事業ヲ行フコ
トヲ得
第二十二條本法施行ノ際現ニ第八條ノ
規定ニ依リ許可ヲ受クベキ勞務供給事
業又ハ勞務者ノ募集ヲ行フ者ハ本法施
行後二月以內ニ地方長官(東京府ニ在
リテハ東京府知事及警視總監トス)ニ
許可ヲ申請スベシ
前項ノ者ハ前項ノ申請ニ對スル許可又
ハ不許可ノ處分アル迄其ノ事業又ハ募
集ヲ行フコトヲ得
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=11
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012・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今議題ト
ナリマシタ職業紹介法改正法律案ニ付キマ
シテ提案ノ理由ヲ御說明致シマス
我國現下ノ情勢ニ觀マスルニ、國家ノ遂
行スル諸政策ニ順應セシムル爲メ、勞務ノ
適正ナル配置ヲ圖ルコトガ、極メテ緊要デ
アルト考ヘルノデアリマス、今次事變下ニ
於ケル當面ノ問題ト致シマシテハ、一九六
於テ軍需勞務ノ充足ヲ敏速的確ナラシムル
ト共ニ、他方ニ於テハ事變ニ伴ッテ生ズル
職業轉換等ヲ圓滑ナラシメ、克ク長期對戰
ニ堪ヘ得ルノ措置ガ必要デアリマスノミナ
ラズ、歸還又ハ傷痍軍人等ノ職業斡旋ニ付
テモ、其萬全ヲ期スルノ用意ガナケレバナ
リマセヌ、又今後ノ問題ト致シマシテハ、
生產力ノ擴充計畫遂行ノ爲ニモ、所要ノ勞
働力ヲ適當ニ供給スルノ要ガアリ、更ニ事
變後ニ於テモ勞務ノ調整ニ付テ十分ノ配慮
ガ必要デアルト考ヘラルヽノデアリマス、
而シテ是ガ爲ニハ職業紹介機關ヲシテ、其
機能ヲ十分發揮セシメマシテ、國家ノ行ハ
ントスル諸政策ニ順應シツヽ、一方ニ於テハ
國民各人ノ資質ト事情等ヲ稽ヘ、成ベク其
適職ニ就カシムルト共ニ、之ヲ需ムル側ニ
對シテハ、成ベク適材ヲ圓滑ニ供給シ、以
テ是ガ配置ノ適正ト需給ノ圓滑トヲ圖ルヤ
ウ、之ヲ運用スルコトガ最モ肝要デアルト
信ズルノデアリマス、併ナガラ職業紹介機
關ヲシテ、斯ノ如キ機能ヲ十分ニ發揮セシ
メマス爲ニハ、其紹介網ヲ全國的ニ分布シ、
且ツ其內容ヲ充實スルト共ニ、是ガ連絡統
制ノ組織ヲ强化シ、眞ニ全國ノ機關ヲ打ッ
テ一丸トシ、統一アル活動ヲ爲シ得ルヤウ、
之ヲ整備擴充スルコトガ必要デアリマス、
然ルニ現在ノ公益職業紹介制度ハ、大正十
年ニ是ガ制定ヲ見タノデアリマシテ、其當
時ニ於キマシテハ、職業紹介事業ハ主トシ
テ失業者ニ對スル救濟ト云フ立場ニ於テ、
是等ノ職業斡旋ヲ爲スト云フ程度デアッタ
ノデアリマス、其後公益職業紹介事業モ段
段ト發展シテ參リマシテ、今日ニ於キマシ
テハ、唯單ナル救濟的機關タルニ止マラズ、
國防、產業其他各方面ノ勞務需要ニ對シテ、
其勞務者ヲ斡旋スルヤウニ相成リマシテ、
所謂勞務ノ需給調整機關タルノ地步ヲ築キ
ツヽアルノデハアリマスガ、現在ノ制度ニ
於キマシテハ、其經營ヲ市町村等ノ地方公
共團體ニ委ネテ居ル關係上、其普及ノ點ニ
於テ、其活動力ノ點ニ於テ、將又其連絡統
制ノ點ニ於テ、種々缺陷不便ガアリ、本事
業ノ機能ヲ十分ニ發揮シ得ナイ實情ニアリ
マシテ、斯ノ如キ制度ヲ以テ致シマシテハ、
到底現下ノ要求ニ卽應スルコトガ出來ナイ
ト考ヘルノデアリマス、政府ニ於キマシテ
ハ、以上申上ゲマシタヤウナ時勢ノ要求ト、
職業紹介制度ノ缺陷トニ鑑ミマシテ、現行
ノ職業紹介制度ヲ改メ、職業紹介事業ヲ政
府自ラ管掌シ、是ガ機關ヲ整備擴充シ、以
テ現下竝ニ將來ノ時局ニ對處セント致シマ
シテ、玆ニ本改正法律案ヲ提出スルニ至ッ
タ次第デアリマス
本改正法律案ニ於キマシテハ、職業紹介
事業ノ政府管掌ニ關スル事項ヲ規定致シマ
シタ外、民間ニ於ケル職業紹介事業、竝ニ
是ガ類似事業等ニ付テ若干ノ規制ヲ加ヘル
規定ヲモ設ケタノデアリマス、尙ホ本改正法
律案實施ニ要スル經費ニ關シマシテハ、昭
和十三年度追加豫算案ニ計上シ、御協贊ヲ
願フ豫定トナッテ居リマス、何卒御審議ノ
上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-村瀨武男君
〔村瀨武男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=13
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014・村瀬武男
○村瀨武男君 只今上程サレマシタ職業紹
介法改正法律案ニ付キマシテ、私ハ簡單ニ
而モ要領ダケヲ若干質問ヲシテ見タイト思
フノデアリマス、本法案ハ只今厚生大臣カ
ラモ御話ガアリマシタ如ク、勞務ノ圓滑ナ
ル調整ヲ圖ラウト云フ趣旨ニ外ナラヌノデ
アリマス、之ニ對シマシテ私共モ贊意ヲ表
シマスルガ、併ナガラ從來アリマシタ所ノ
公設紹介所、或ハ私設紹介所、是等ノモノ
ト對比致シマシテ、又今後國營トシテ之ヲ
行ヒマスル上ニ於テ、果シテ所期ノ目的ヲ
遂行シ得ルカドウカト云フコトニ付キマシ
テ伺ッテ見タイト思フノデアリマス
先ヅ第一ニ之ニ當リマスル人ハ、國營ト
ナリマスル以上ハ卽チ官吏デアリマスガ、
兎角今日マデノ事績ヲ見マスルノニ、民間
ノ事業ヲ取上ゲマシテ、國營ニ委讓致シマ
シタ曉ニ於キマシテハ、決シテ其能率ヲ增
進シテ居ラヌノデアリマス、寧ロ減退ノ事
實ヲ示シテ居ルコトハ、是亦政府ニ於カレ
マシテモ御承知ノコトデナイカト思フノデ
アリマス、殊ニ此職業紹介所ノ如キハ、一々
人ニ當リマスル關係上、從來ノ官吏ノ頭ノ
持主デアル、卽チ融通ノ利カナイ人ガ其衝
ニ當リマシテ、果シテ其效果ヲ收メルコト
ガ出來ルカドウカ、是ガ第一疑ヲ插ム理由
デアリマス
次ニ伺ヒタイト思ヒマスルコトハ、是マ
デモ公設、私設ノ職業紹介所ニ從事致シテ
居リマスル方々ガ、非常ニ熱心ニ、而モ公
平ニ扱ッテヤラウト云フ氣持ハ、十分ニハツ
キリシテ居リマスルケレドモ、動モ致シ
マスルト云フト、產業資本家ノ爲ニ便宜ヲ
圖ッテ、求職者ノ爲ニハ滿足ノ行カナイヤウ
ナ取扱ヲシタ事實モ亦少クナイノデアリマ
ス、斯ウ云フ點ニ付キマシテハ、恐ラク今
申上ゲマシタ如キ堅イ頭ノ持主ノ官吏ガ之
ニ當ルト致シマシタナラバ、今日以上ノ弊
害ハ免レルコトガ出來ナイノデハナイカ、
之ニ對シマシテ政府ノ所見ヲ承リタイト共
ニ、今囘ノ職業紹介所ニ任命致シマスル所
ノ官吏、是ハ從來ノ文官任用令ナンカニ拘
泥シナイデ、眞ニ人物本位ニ依ッテ、是ナ
ラバ此職ニ當ッテ差支ノナイ人間デアルト
云フコトヲ、選定致シマスル上ニ、特別ノ
方法ヲ御考ニナッテ居ラレルカドウカ、此點
ヲ承ッテ見タイト思フノデアリマス
次ニ本法案ノ實施ニ當リマシテ、其費用
ノ一部ヲ道府縣若クハ市町村ニ負擔セシメ
ルヤウニナッテ居ルヤウデアリマスガ、此事
業ハ只今御說ノ如ク、眞ニ國家ヲ一丸ト致
シマシク勞資ノ協調ヲ保タントスル爲ノモ
ノデアルナラバ、全部國庫ニ於テ負擔スベ
キモノデハナイカ、貧弱ナ町村ニ無理ニ之
ヲ負擔セシムル必要ハナイデハナイカ(「ヒ
ヤヒヤ」)之ニ對シマシテ一ツ御意見ヲ承ッ
テ見タイト思フノデアリマス
ソレカラ只今モ御話ガアリマシタガ、マ
ダ豫算ガ提出致シテアリマセヌカラ、之ヲ
伺フコトハドウカト思ヒマスケレドモ、中
央地方ノ連絡統制、斯ウ云フ機關ノ整備ニ
對シマシテハ、何レ豫算ヲ提出スルト云フ
ダケノ御話デハ、承服ガ致シ難イノデアリ
マスガ、之ニ對シマスル大體ノ御意見ヲ承ッ
テ見タイト思フ、聞ク所ニ依リマスト、現在
全國ニ七百三十ノ職業紹介所ガアルサウデ
アリマスガ、是ガ國營トナッタ曉ニ於キマシ
テ、是ハ事實カドウカ知リマセヌガ、私ノ仄
聞致シマシタ所ニ依リマスト、殆ド半數ニ
減スト云フヤウナ御意見デアルラシク聞及
ンデ居ルノデアリマスガ、折角今日マデ地
方ノ人々ガ、其地方々々ニ依ッテ便利ヲ得テ
居ルニモ拘リマセズ、之ヲ半減致シマスル
ト云フコトニ於テノ不便ガ、甚ダ少クナイ
ト思フノデアリマス、之ニ對シマスル御意
見ヲ承リマスト共ニ、尙又民營事業ト致シ
マシテ、從來全國ニ行ッテ居リマス所ノ
箇所ハ、二千二百ニ餘ル多數ノ職業紹介所
ヲ持ッテ居ルノデアリマス、法文ニ依リ
マスト、民營ノ如キモノハ繼續シテヤルコ
トガ出來ルヤウニナッテ居リマスケレド
モ、實際問題ト致シマシテ、自然消滅ノ途
ヲ辿ルヨリ外ニ方法ハナイノデアリマス、
之ヲ全國ニ行ヒマス曉ニハ、如何ニ存續
ヲ認メマシテモ、實際ノ價値トシテ存續ノ
値打ガナイ、自然消滅スルヨリ外ニナイノ
デアリマス、折角認メマス以上ハ、國營ト
民營ト其處ニ何カノ區別ヲ立テマシテ、存
續シ得ル方法ヲ考ヘテヤル必要ハナイノデ
アリマスカ、之ニ對スル當局ノ御意思ヲ
承ッテ見タイト思ヒマス
ソレカラ是ハ𣏌憂カモ存ジマセヌガ、職
業紹介法ノ第一條ニ「勞務ノ適正ナル配置ヲ
圖ル爲」トアリマスガ、將來ニ於キマシテ政
府ハ勞働統制ノヤウナモノヲ施行シヨウト
云フ御考ガアルカドウカ、ソレカラ只今モ
御話ガアッタノデアリマスガ、出征兵士ノ復
員或ハ傷痍軍人ノ就職、是等ニ付キマシ
テ、今日マデモ政府ハ屢〓十分ニ斡旋ノ勞ヲ
執ルト云フ御話ハ聞イテ居ルノデアリマス、
又現在モ是等ニ對シテ相當留意サレテ居ル
ヤウナ御意見ヲ承ッタノデアリマスガ、併シ
旣ニハヤ傷痍軍人ノ中デ求職ヲ賴ンデ出テ
居ル人モ相當アルヤウデアリマス、唯口デ
幹旋ヲスルトカ、或ハ適當ニ配慮スルト言
フダケデハ、私共ハ贊成出來ナイノデアリ
マス、要スルニ現在旣ニサウ云フ者ガアリ
ト致シマスレバ、是等ニ對シ政府ハ、今果シ
テ何ヲ爲サレテ居ルカヲ承ッテ置キタイノ
デアリマス
職業紹介法ニ依ッテ、入營者ノ前職者ハ退
營ト同時ニ再ビ採用サレルコトニナッテ居
ルヤウデアリマスガ、是モ此法ノ內容ヲ見
マスト、五十人以上ノ勞務者ノ居ル所ニ
限ッテ居ルヤウデアリマス、所ガ五十人以上
ト云フコトニナリマスト、殆ド都會地デナ
ケレバ見ルコトガ出來ヌノデアリマス、之
ヲ五十人以下デモ、或ハ又前職者デナイ退
營者ニ對シマシテモ、其就職ヲ斡旋スルト
云フ風ニ法律ヲ改正ナサル意思ガアルカド
ウカ、若シ改正スルコトハ出來ナイガ、斯
樣ナ方法ガアルト云フコトデアリマスレ
バ、ソレヲ承ッテ置キタイノデアリマス、私
ノ質問ハ以上デアリマスガ、之ニ對スル御
答辯ヲ煩シタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=14
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015・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 村瀨サンノ
御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、第一ノ御尋ハ、
今囘此職業紹介所ガ國營トナリマスレバ、
職員ハ官吏トナル、隨ヒマシテ融通ガ利カ
ズ、一層今日弊害ト認メラレル點ガ助長サ
レヤシナイカト云フ御尋デアリマシタガ、
政府ニ於キマシテモ、此職業紹介所ノ職員
ニ付キマシテハ十分ノ注意ヲ拂ヒマシテ、
斯ノ如キ弊害ノナイヤウニ取扱フ爲ニ、是
ガ任用ニ付キマシテモ、自由ナル任用ヲ致
シタイト考ヘテ居リマスルシ、又現在職業
紹介所職員トナッテ居リマスル者ハ、出來得
ル限リ此方面ニ任用スル方針デ考慮致シテ
居ル次第デアリマス
ソレカラ第二ノ國營トナル以上ハ、費用
ハ國家ガ全部國費ヲ以テ負擔スベキデアル
デハナイカト云フ御尋デアリマシタガ、其
點ハ國營デアリマスルカラ一應左樣ニ考ヘラ
レマスルガ、從來トモ此點ニ付キマシテ
ハ、地方公共團體ニ於テ相當ノ負擔ヲ致シ
テ居ルノデアリマスルシ、今囘之ヲ國營ト
致シマシテモ、又地方ノ需給調整ト云フヤ
ウナ、特殊ナ事業モ行フ次第デアリマスカ
ラ、ソレ等ノ事情ヲ參酌致シマシテ、費用
ノ一部ヲ負擔サセルコトニ致シタノデアリ
マス、而シテ其費用ノ負擔ニ付キマシテハ、
只今御話ノヤウニ貧弱ナル町村等ニ付キマ
シテハ、特ニ其實情ヲ考慮シテ見タイト考
ヘテ居リマス
ソレカラ豫算ニ付テノ御尋デアリマシタ
ガ、豫算ハ今日マダ提案スル運ビニ至ッテ居
リマセヌ、大體平年六百万圓ノ豫算ヲ使フ
積リデ居リマス、而シテ經常費ニ於テ二分ノ
一ヅヽ國費ト地方費デ負擔ヲ致シマシテ、
臨時費ハ大體ニ於キマシテ國費ガ四分ノ三、
地方費ガ四分ノ一位ノ割合ニ分ケル積リデ
居リマス、ソレカラ現在職業紹介所ハ七百餘
箇所アルノデアリマスガ、之ヲ國營ニ致シマス
ト、大體四百程度ニ致ス考デ居リマス、御
話ノヤウニ斯ク致シマスルト、或ル部分ニ
於テハ非常ニ不便ヲ感ジハシナイカト云フ
御尋デアリマシタガ、此點ニ付キマシテハ、
實ハ七百ノ中ニハ相當形バカリノモノデ
アッタリ、殆ド利用サレナイ部分モアルノデ
アリマシテ、是等ノ實情ハ十分當局ニ於キ
マシテモ調査致シマシテ、一方聯絡委員會
等ノ機能ヲモ活用致シマシテ、圓滑ニ運用
致シタイト考ヘテ居リマス
其次ノ御尋ハ、營利職業紹介事業ガ自然
ニ消滅シヤシナイカト云フコトデアッタト
存ジマスルガ、職業紹介事業ヲ國家ノ一手
デ取扱フト云フコトニ致シマスレバ、自然
其傾向ヲ持ッテ參リマスルガ、併シ特別ノモ
ノニ付テハ、ヤハリ民間ニ委ネナケレバナ
ラヌカト考ヘテ居リマス
最後ニ勞働統制ヲ致ス考ハナイノカト云フ
御尋デアリマシタ、此點ニ付キマシテハ、
職業紹介事業ハ勞務ノ適正ナル配置ヲ爲ス
モノデアリマシテ、個人ノ自由。意思ヲ制限
スル積リハナイノデアリマス、隨ヒマシテ
所謂眞ノ勞働統制ハ今日ノ所ヤル積リハゴ
ザイマセヌ、又歸〓致シマシタ軍人及ビ傷
痍軍人ノ就職保護ニ付キマシテハ、此職業
紹介網ガ完備致シマスレバ、無論此方面ニ
於テ十分ノ活動ヲ致シマスルハ勿論デアリ
マスガ、傷痍軍人及ビ復員致シマシタル軍
人ニ付キマシテハ、其他ノ方法ニ於キマシ
テモ、十分盡力スル積リデ居リマシテ、此方
ハ更ニ豫算其他ヲ要求致シマシテ、傷痍軍
人ノ保護ニ當ラウト考へテ居リマス、尙ホ
復員致シマシタ軍人ニ付キマシテハ、本年
度ニ於テモ若干ノ費用ヲ增シマシテ、所謂
失業ヲ致シマセヌヤウニ、主トシテ生業補
助ト云フヤウナ方面ニ向ッテハ、相當ノ盡力
ヲ地方廳ニ於テ致シテ居ル筈デアリマス、
ソレカラ入營者職業保障法ハ、御趣旨ノ點
ハ御同感デアリマスルノデ、目下此法律改
正ヲ致スヤ否ヤニ付テハ、〓究致シテ居ル
ヤウナ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 村瀨君、宜シウゴザ
イマスカ、···世耕弘一君
〔世耕弘一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=16
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017・世耕弘一
○世耕弘一君 私ハ只今上程サレマシタ職
業紹介法ニ付テ、極ク簡單ニ政府ニ質問ヲ
致シタイト思フノデアリマス、先ヅ本案ノ
第一條ニ規定致シテ居リマスル「政府ハ勞務
ノ適正ナル配置ヲ圖ル」ト云フ文句デアリマ
スガ、勞務ノ適正ナル配置ト云フコトヲ、
此文面カラ解釋致シマスルト、卽チ勞務ノ
將來ニ於ケル統制デアリマス、ソコデ大ナ
ル疑問ヲ吾々ハ持ツノデアリマスガ、先ノ
同志モ說明サレテ居リマシタガ、政府ハ將
來勞働ノ統制ヲヤル意思ガアルノデハナイ
カ、斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ッタ、言葉ハ
違フカモ知レマセヌガ、此案ノ內容カラ持ッテ
參リマスルト、少クトモ勞働管理ノ下心ア
リト云フコトハ喝破スルコトガ出來ルノデ
アリマス、此點ニ對シテ私ハ更ニ突ッ込ン
ダ御說明ヲ仰ギタイ
第一條デモウ一點伺ッテ置キタイコトハ、
勞務ノ範圍デアリマス、卑近ナ例カラ申シ
マスルナラバ僕婢ノ端ニ至ルマデ、政府ハ
此適正ナル配置ノ中ニ加ヘヤウトスルノデ
アルカドウカ、簡單ナ言葉デ申シマスルナ
ラバ、女中ノ口入マデモ政府ガヤルノカト
云フコトヲ御尋致シタイノデアリマス、嘗
テ露西亞ニ於テ勞務ノ給制ヲヤッタ時ニハ、
所謂一般民間ノ家庭ニ雇ハレテ居ル所ノ女
中、或ハ「ボーイ」ノ端ニ至ルマデ、政府ノ
管理ニ移ッタコトガアルノデアリマス、其結
果ハ之ヲ更ニ警察權ニ利用致シマシテ、「ス
パイ」網ノ根本ヲ之ニ引イタ實例ガアルノ
デアリマス、私ハサウ云フヤウナ進ンダ所
マデ御考ノ上ニヤラレタトハ承知致シテ居リ
マセヌガ、疑問ノ起ル點ガ玆ニ生ズルノデア
リマス、此點ニ付テハッキリシタ御答ガ願
ヒタイ、勞務ノ適正ナル配置ヲ圖ルト云フ
コトニナリマスルト、勢ヒ勞働管理ト云フ
所ニ及バナクチヤナラヌ、又同時ニ產業ノ
國家管理ト云フ所マデ行カナケレバ徹底シ
ナイノデアリマス、此點ニ對シテ政府ノ御
所感ヲ伺ッテ置キタイ、更ニモウ一ツ御伺シ
タイコトハ、先ノ質問者モ述ベテ居ラレ
マシタガ、所謂國營ノ職業紹介所、言葉ヲ
換ヘテ申シマスルナラバ、官吏ノ御世話ニ
ナルコトデアリマス、民間ノ通則ト致シマ
シテ、官吏ノ親切ト云フコトニ付テハ、可
ナリノ疑問ガアルノデアリマス、特ニ職業
ノ紹介ト云フコトハ、親切ガ先ヅ根本デナ
クチヤナラヌ、果シテ此點ニ對シテ如何ナ
ル任用方法ヲ以テ之ニ充テルカト云フコト
ヲ、ハッキリ御答辯ガ願ヒタイノデアリマ
ス
第二條ニハ更ニ「何人ト雖モ職業紹介事業
ヲ行フコトヲ得ズ」ト規定シテ居リマス、
此條文ヲ見マシテ、國營ト云フコトガハッキ
リ申上ゲルコトガ出來ルノデアリマスガ、
昭和七年ノ第十六囘ノ國際勞働會議ニ於テ、
所謂有料ノ職業紹介ト云フコトハ廢止シヨ
ウト云フ案ニ對シマシテ、政府ガ日本ノ全
國產業聯合會ニ諮ッタ所、其囘答ハ反對ノ決
議ガサレタノデアリマス、尙又昭和十年ニ
樞密院デ此問題ガ論議サレタ時ニ、時ノ後
藤內相ハ斯ウ云フコトヲ言ウテ居ルノデア
リマス、我國ニ於テハ既ニ有料職業紹介所
次第ニ改善セラレ、其機能ヲ發揮シ居リ、
公營無料紹介所ト竝行シテ其業務ニ當ッテ
居ル故ニ、特ニ條約ノ御諮詢ヲ奏請スルニ
及バナイト云フコトヲ、政府ヲ代表シテ意
見ヲ述ベラレタニ對シテ、ソレヲ採用サレ
テ否決ニナッタノデアリマス、僅カ兩三年ノ
中ニ國內ノ情勢、政府ノ御考ガ斯ク變化ス
ルト云フコトハ、私ハアリ得ベキコトヂヤ
ナイト思フノデアリマス、此點ニ付テノ實
情ヲ御說明願ヒタイノデアリマス
ソレカラ第三條ニ規定シテ居ルコトニ付
テ、極ク簡單ニ御尋シテ置キマスガ、職
業指導及必要ニ應ジ職業導其ノ他職業紹
介ニ關シ」ト云フコトニナッテ居リマスガ、
此內容ハドウカ、從來地方ノ縣ノ社會課ア
タリデヤッテ居ル程度ノ職業指導竝ニ補導
デアッタナラバ、寧ロ弊害ガアッテ益ナシト
私ハ思ッテ居リマス、之ニ對シテ如何ナル方
法ヲ御執リニナルノデアルカ、此點ニ付テ
一點御尋致シテ置キタイコトハ、前ノ質問
者モ言ウテ居リマシタガ、所謂戰傷者ノ就職
ヲドウ解決付ケルカト云フコトデアリマス、
私ハ歐洲大戰ノ例カラ見マシテ、歐洲大戰
ノ獨逸ノ例ヲ見マスルト、戰傷者約七十万
ノ中デ一割、卽チ七万ガ不具者デアッタノ
デアリマス、又英佛米ノ實例カラ見マシテ
モ、此名譽ノ不具者トナラレタ所ノ人達ノ
將來ノ生活ノ保障ト云フコトハ言フ迄モナ
ク、之ヲソレ〓〓適當ナル所ノ立場ニ愉快
ニ働カシメルト云フコトハ、今日ノ厚生省
ノ重大ナ御取扱ニナル點デアラウト思フノ
デアリマス、此點ニ付テハ旣ニ著手シテ居
ラナクチヤナラヌ、學者ノ說ニ依リマスル
ト、歐洲大戰當時ニ於テハ、旣ニ入院シテ
居ル當時カラ、如何ニシテ之ヲ職ニ就ケル
カ、如何ニ再〓育ヲスルカト云フコトニ苦
心サレテ居ルノデアリマス、此點ニ付テ政
府ハ如何ナル所ノ方策ト御所信ガアルカト
云フコトヲ伺ッテ置キタイノデアリマス
更ニモウ一點ハ、第四條ノ職業紹介所聯
絡委員デアリマス、此職業紹介所ノ聯絡委
員ト云フコトハ、用ヒ方ニ依ッテハ相當問題
ニナル、大體資格ハ如何ナル程度ノ資格ヲ
有スルカ、幾人位ノ人ヲ採用セントスル
カ、私ノ聞ク所ニ依リマスルト、四百人程
度ト云フコトヲ申シテ居リマスガ、果シテ
此四百人ヲ以テ今日ノ本法案ノ實施以後ノ
活動ヲ圓滿ナラシメルカト云フコトニ付テ
ハ多クノ疑惑ヲ持ツノデアリマス
ソレカラ次ニ御尋致シタイコトハ、第七
條ニ規定シテ居リマスル所ノ、職業紹介所
及ビ聯絡委員ニ關スル費用ノ一部ヲ、道府
縣竝ニ都合ニ依ッテハ市町村ニ負擔セシム
ルト云フコトデアリマス、先程大臣カラノ
御說明デハ、凡ソ六百万圓ト云フコトノ御
話ガアッタヤウデアリマス、此六百万圓ノ中
デ、二百万圓ヲ地方ニ負擔セシメルト云フ
ヤウニ私ハ承知致シテ居リマスガ、果シテ
サウカ、苟モ國營職業紹介所デアルトスルナ
ラバ、一部分ヲ地方ニ負擔セシメルト云フコ
トハ、ソレ自體ガ矛盾デナイカ、殊ニ地方財
政ノ困窮ナ今日ニ於テ、斯ノ如キコトハ果
シテ妥當ナリヤ否ヤト云フコトヲ御尋シタ
イノデアリマス、私ハ此點ニ付テ斯ウ云フ
コトガ言ヘルト思フノデアリマス、從來民
間デ職業ヲ取扱ッテ居ルモノガ、昭和十二
年度ノ統計ニ依リマスルト五十万デアリマ
ス、公立其他デ取扱ッテ居ルモノガ約八十
万デアリマスガ、民間ノ一人ノ取扱ガ頭割
リ約三圓デアル、三圓ト假定致シマスルト、
漏レ聞ク所ニ依リマスルト、百五十万ノ
人員ヲ處理シヨウト云フ御考ノヤウデアリ
マスガ、若シサウダトスレバ、民間デ之ヲ
取扱ハシメタナラバ、四百五十万圓デ片ガ
付クノデアリマス、政府ハ七百箇所ノ現在
ノ數ヲ四百箇所ニ減ラシテ、而モ六百万圓
ノ豫算ヲ持ツト云フコトハ、私ハ時局柄少
シ贅澤過ギルト思フノデアリマス、若シ之
ヲ眞ニ民情ニ卽シテヤルトスルナレバ、此
費用ノ外ニ更ニ民間ノ從來ノ職業紹介業者
ニ補助金、或ハ其他ノ費用ヲ增額セシメテ
實ヲ結バシメルコトガ、寧ロ私ハ妥當デナ
イカト言ヒタイノデアリマス
更ニ御尋致シタイコトハ、第八條ニ勞務
供給事業ヲ行ハントスル者、又ハ勞務者ヲ
雇傭ヲ爲ス爲ニ募集ヲ行ハントスル者ハ、
命令ノ定ムル所ニ依リ云々ト書イテ居リマ
ス、此命令ノ內容ヲ簡單ニ承ッテ置キタイ
ト思フノデアリマス
長クナリマスルカラ次ハ簡單ニ御尋シテ
置キマス、第十五條ニ於キマシテ「主務大
臣ノ指定スル職業ノ職業紹介事業ニハ之ヲ
適用セズ」ト云フ條項ガアリマス、此職業
ノ職業紹介事業ト云フノハ、如何ナル內容
ヲ指スノデアルカ、私ノ承知致シテ居ル範
圍ニ依リマスルト、是ハ所謂藝酌婦其他ヲ
指スノダト思フノデアリマス、若シ藝酌婦
ノミヲ此中ニ限定シタトスルナレバ、其理
由如何ト云フコトヲ御尋シテ置キタイノデ
アリマス、藝酌婦其他ノ職業紹介ニハ、可
ナリ世間デ非難ガアルノデアリマス、若シ
職業紹介所ガ國策上重大問題デアルトスル
ナレバ、斯ノ如キ事ハ政府自ラヤルノガ寧
ロ妥當ナリト私ハ信ズルノデアリマス、然
ラザレバ理論ハ一貫シナイノデアリマス、
此點ニ付テ如何ナル理由デアルカト云フ
コトヲ御尋致シタイノデアリマス、若シ
サウデナイトスルナレバ、私ハ少クトモ此
規定ノ中ニ、一般國民ノ家庭ニ使用スル女
中竝ニ其他ノ僕婢、或ハ中小商工業者ガ使
フ所ノ見習、社會的ニ特ニ弊害ノナイ點、サ
ウ云フヤウナモノヲシテ、此條項ノ中デ例外
規定トシテ取扱ハセルト云フナラバ、マダ
ソコニ意味ガ含マレルコトガ出來ルト思フ
ノデアリマス、此點ニ付テ政府ノ御所信ヲ
伺ヒタイノデアリマス、殊ニ先ノ質問者モ
言ウテ居リマシタガ、此規定ハ卽チ從來ノ
紹介業者壓迫ノ規定ナリト云フコトヲ說明
サレテ居リマシタガ、私モ同感デアリマス、
今昭和十二年度ノ統計ヲ見マスルト、一般民
間デ取扱ッタモノガ五十万人、其五十万人ノ
中ノ所謂藝酌婦ノ取扱數ハ、約一割ノ五
万人ト見テ差支ナイノデアリマス、五十万
人取扱ッテ居ッタ業者ガ五万人ニ職業ガ限定
サレタ場合ニ、生活ハ如何ニシテ立テテ行
クカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、私
ハ特ニ此案ヲ見マシテ、痛感スルコトガア
ルノデアリマス、大體近來ノ政府ノ立案ス
ル所ノ立法ハ、一般民情ヲ酌マナイ傾向ガ
アリマス、國民ノ生活狀態ニ對シテ極メテ
不親切デアルト私ハ言ヒタイ、此意味ハ取
モ直サズ、近來ノ立法ハ下僚或ハ屬僚ガ立
案シテ、大臣ガ盲判ヲ捺ス結果ヂヤナイカ
(拍手)斯ウ云フコトガ言ヒタイノデアリマ
ス、寧ロ大臣ガ國策上是ガ必要ナリトシテ
下僚ニ命ジテコソ、初メテ私ハ立法ノ精神
ガ活キテ來ルト思フノデアリマス、斯ノ如
キ實例ハ本議會ニハ特ニ甚シイコトヲ遺憾
ニ思フノデアリマス(拍手)斯ウ云フコトヲ
此間ノ此議場ニ於テモ吾々ハミス〓〓見セ
付ケラレタ、其爲ニ却テ大臣ガ說明ガ出來
ナクテ、下僚ニ說明ヲサセナクテハナラヌ
ト云フヤウナコトハ、私ノ申上ゲル實例ヲ
玆ニ保證スルモノデアルト思フノデアリマス、
斯ノ如キコトハ今後愼ンデ貰ヒタイト私ハ
思フ、是ハ國民ノ聲デアリマス
更ニモウ一點御尋致シタイコトハ、前ノ
質問者モ說明ガアッタヤウニ思ヒマスガ、本
法ノ官制ヲ如何ナル組織ニ於テ爲スカ、私
ハ寧ロ從來ノヤウナヤリ方ヲセズニ、是ハ
外局トシマシテ、主要都市ニハ事務局ヲ置
イテ、更ニ各地方ノ自治體ト連絡ヲ圖ッテ、
以テ圓滿ニ活用スル、一方從來ノ營業者ニ
ハ能ク政府ノ意ヲ體シテ、十二分ニ社會機
關トシテ活躍セシムルヤウニ、便益ヲ與ヘ
ルト云フコトヲ骨子ニシテ置イテ貰ヒタイ
ト云フコトヲ希望致シマス
更ニ本法ト勞働團體トノ關係ヲ將來ドウ
調和シテ行クカ、加盟權ヲドウスルカト云
フ問題デアリマス、更ニ景氣ノ好イ時ハ宜
イガ、失業群ガ襲來シテ來タ場合ニ、此組
織ヲ以テ十分喰ヒ止メラレルカドウカ、此
點ニ付テ政府ハ如何ナル對策抱負ヲ持ッテ
居ルカ(「失業保險ヲ拵ヘマス」ト呼フ者ア
リ)失業保險ハ旣ニ世界ニ於テ失敗シテ居
リマス
更ニ私ハ最後ノ結論ト致シマシテ申上ゲ
タイコトハ、此際二百數十年ノ歷史ヲ持ッテ
居ル所ノ、從來ノ紹介業者ヲ壓迫スルコト
ナク、之ヲ助長セシムルコトニシ、從來ノ
機關ヲ十分發達セシムルヤウ、寧ロ政府ハ
指導監督ノ立前ニ立ツヤウニシナケレバ、
失業對策ハ完全ヲ期シ得ルモノデナイト云
フコトヲ私ハ斷言シテ置キマス(「ヒヤ
ヒヤ」)又萬一從來ノ機關ヲ無視スルヤウ
ナ、廢止スルヤウナ結果ニ至レバ、結局一
方デ失業者ヲ拵ヘテ、一方デ就職サセルト
云フヤウナ、矛盾ナ結果ガ現レルト云フコ
トハ、此第十八條ノ規定ヲ考ヘテモ十分察
知スルコトガ出來ルノデアリマス、以上ノ
諸點ニ付キマシテ、政府ノ御所信ヲ伺ヒタ
イト思フノデアリマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=17
-
018・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 世耕サンニ
御答申上ゲマス、非常ニ澤山ノ項目ガアリ
マスカラ、或ハ漏レガアルカモ知レマセヌ
ガ、第一ノ御尋ノ點ハ、先程村瀨サンニモ
御答申上ゲタコトデアリマスガ、此職業紹
介事業ヲ國營ト致シマシタコトハ、御話ノ
通リ勞務ノ配置ヲ適正ナラシムルト云フコ
トガ目的デアリマシテ、之ニ依リマシテ勞
務ノ需給ヲ圓滑ナラシムルヤウニ致スコト
ガ其目的デアリマス、而シテ何處マデモ個
人ノ自由意思ハ尊重致シマシテ、其上ニ立ツ
テ之ヲ斡旋指導致シマスル考デアリマスルカ
ラ、今後所謂勞働絲制ヲヤル、或ハ勞働管
理ヲヤリ、延イテハ產業管理ヲヤルノデア
ルカト云フヤウナ御尋デアリマシタガ、左
樣ナ考ハ今日政府トシテハ持ッテ居ラナイ
ノデアリマス
ソレカラ第二ハ、此職業業介事業ニ於テ
ハ所謂女中デアルトカ、僕婢等ニマデ世話ヲ
燒クノカト云フコトデアリマシタガ、其點
ハ現在ノ職業紹介所ニ於テモ是ハ扱ッテ居
ルノデアリマシテ、其範圍ニ於テ今後トモ
扱フ考デ居リマス
ソレカラ第三ハ、職業紹介ノ官吏任用ノ
方法ニ付テノ御尋デアリマシタガ、是ハ先
程村瀨サンニモ御答致シマシタヤウニ、
御話ノ通リ此仕事ハ直接所謂民間ノ諸君ト
接觸ヲ保ッテ參リマスルコトデアリマスシ、
最モ親切ニ扱ハナケレバナラヌ點ニ付テハ、
全ク御同感デアルノデアリマシテ、其意味
ニ於キマシテ、現在ノ從事員ハ勿論成ベク
之ヲ採用スル考デ居リマスルシ、又其任用
ニ付キマシテモ、極メテ自由ナ考ヲ以テ之
ニ處シテ行キタイト考へテ居ルノデアリマ
ス
ソレカラ職業ノ指導、補導ト云フコトニ
付テノ御尋デアリマシタガ、此點ニ付キマ
シテハ、現在ハ大都市ノ職業紹介所ニ於テ
ハ、「タイプライター」デアルトカ、又算盤
デアルトカ、其他補導シテ居ルヤウデアリ
マスガ、今日アノ程度デハ不十分デアリマ
スノデ、今後此機能ガ擴充致シマスレバ、相
當ノ仕事ヲ輔導致シテ行ク考デ居リマス
ソレカラ傷痍軍人ノ對策ニ付キマシテノ
御尋デアリマシテ、最早段々病院カラ出ル
ヤウナ人モアルノデ、ソレ等ニ對スル對策
ハ至急考ヘテヤラナケレバナラヌト云フ御
尋デアリマシタガ、全ク御同感デアリマ
スシ、又厚生省ト致シマシテモ、既ニ十二
年度ノ追加豫算トシテ、入院中ニ職業指導
ヲ爲ス爲ノ若干ノ經費ヲ要求中デゴザイマ
シテ、可決サレマスレバ、ソレ等ニ付テハ
早速著手スル考デ居リマス
ソレカラ聯絡委員ニ付キマシテハ、只今
計畫致シテ居リマスノハ、市町村ニ於キマ
シテ靑年團ノ團長デアルトカ、或ハ小學校
ノ〓員、或ハ方面委員ト云ッタヤウナ人々
ヲ、一町村ニ約五人位ノ割デ配置致シマシ
テ、是等ガ町村長ト共ニ相協力シテ連絡ヲ
取ッテ行ク考ニ致シテ居リマス
ソレカラ費用ノ負擔ニ付キマシテハ、大
體御話ノヤウナ區分ニナルト存ジマスルガ、
之ニ付キマシテハ、先程村瀨サンニ御答致
シマシタヤウナ理由ニ依リマシテ、若干地
方〓體デモ負擔ヲ致スノガ至當ト考ヘテ、
斯樣ニ致シタ次第デアリマス
ソレカラ從來ノ職業紹介者ヲ壓迫スル結
果ニナッテ、今日マデ五十万ノ者ヲ扱ッテ居ッ
タモノガ、五万ニナルト云フヤウナ御話デ
アリマシタガ、政府ガ考ヘテ居リマスルノ
ハ、從來ノモノハ許可ニ依リマシテ之ヲ認
メテ行クノデアリマシテ、而シテ其認メテ
居ル間ニ於キマシテハ、特ニ其扱フモノハ
制限致シマセヌノデアリマスルカラ、所謂
藝者酌婦ト云フモノニノミ限定サレルノデ
ナク、僕婢、女中其他ノ關係モ扱フコトニ
ナル譯デアリマス、隨ヒマシテ、極端ニ事業
ガ衰微致シマシテ、失業ヲ起スト云フヤウ
ナコトハ、成ベク無イヤウニ扱ッテ行キタ
イト考ヘテ居リマス
ソレカラ不景氣時代ガ到來シタ場合ノ對
策ガアルカト云フ御尋デアリマスルガ、不
景氣時代ニ於テモ、此職業紹介機關ノ活動
ニ俟ツモノガ少クナイノデアリマスルガ、
是ダケデハ直チニ不景氣時代ニ對處スルコ
トノ困難ナ事態ハ勿論出テ來ルカト考ヘラ
レマス、其場合ニハ失業者救濟事業ヲ起ス
トカ、色々ノ點ニ於テ、其時ニ處シテ適當
ナル方策ヲ講ジテ行キタイト考ヘテ居リマ
ス
大體以上ノヤウナ點デアッタト存ジマス
ルガ、尙ホ漏レマシタ點ニ付キマシテ、細
カイ點ハ委員會等ニ於キマシテ十分御說明
致シタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=18
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019・世耕弘一
○世耕弘一君 大體大臣ノ御說明デ了承致
シマシタ、何レ適當ナ機會ニ又發言ヲスル
コトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 田中邦治君
〔田中邦治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=20
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021・田中邦治
○田中邦治君 職業紹介法改正法律案ノ上
程ニ當リマシテ、旣ニ前質問者ニ依リマシ
テ、大體私ノ問ハントスル所ハ盡キテ居ル
ノデアリマスルガ、併ナガラ事重大法案デ
アリマスルノデ、一面角度ヲ變ヘマシテ、
尙又厚生大臣ノ御答辯ニ滿足シナイモノモ
アルノデ、多少重複ノ嫌ハアリマスルガ、
極メテ簡單ナガラ二三質問シタイト思フ者
デアリマス
第一ニ伺ヒタイノハ、村瀨議員ノ質問ノ
御答辯中、木戶厚生大臣ハ、在來ノ口入業
卽チ民營職業紹介所ハ、本案ニ依ッテ相當減
滅シツヽ行クノハ已ムヲ得ヌモノデアルト
思フガ、併ナガラ特別ノモノニ限ッテ民間ニ
委ヌル積リデアルト云フ風ナ御答辯デアリ
マシタガ、其特別ノモノトハ如何ナルモノ
デアリマスルカ、承リタイノデアリマス
第二ニ伺ヒタイノハ費用ノ點デアリマス、
是モ村瀨議員ノ質問ニ對シテ御答辯ガアリ
マシタガ、私ハ滿足シナイカラ承リタイノ
デアリマスルガ、此費用負擔ニ關シマシテ
ハ、現在市町村營デ行ハレテアリマスル公
營職業紹介所ハ、言フ迄モナク建築費ノ二
分ノ一ハ國庫負擔デアリマシタガ、經營費ハ
僅カ六分ノ一ニ過ギナイノデアッタノデアリ
マス、斯ル少額ノ經費デアッテ、而モ地方費
多端ノ折柄デアッテ、此社會制度ノ上ニ最モ
必要ナ職業紹介ト云フ事業ガ、十分ニ其
機能ヲ發揮出來ナイ憾ガアッタノデアリマス、
併ナガラ此職業紹介ト云フ制度カラ行キマ
シテ、社會的「サービス」ヲ致シマスル關係
上、自己ノ市町村區域以外ノ取扱件數ハ二
三倍ヅヽニモ何時モ激增サレツヽアルト云
フ實情デアッテ、甚グ不合理千萬デアッタノ
デアリマス、玆ニ確メテ置キタイノハ、此
費用負擔ノコトデアリマスルガ、本法ニ依
リマシテ名ハ國營ト云フコトニナリマスル
ガ、其內容ノ經費負擔ニ於キマシテハ、相
當額地方費ニ轉嫁セシメラレルモノデハナ
イカト案ズル者デアリマス、政府ハ此法案
ニ依リマシテ府縣町村へ如何ナル程度ノ費
用負擔ヲセシメマスルカ、其内容ヲ承リタ
イノデアリマス
又是モ旣ニ御答辯ニナッテ、稍〓我ガ意ヲ得
テ居リマスルガ、第三ニ確メテ置キタイノ
ハ、在來ノ公營職業紹介所ノ吏員ノ身分ニ
付テデアリマス、國營紹介所トナリマスレ
バ、勿論國ノ官吏ガ其任ニ當ルノデアリマ
スルガ、現在多クノ是等就職シテ居リマス
ル吏員ハ其地方々々ニ依ッテ極メテ適任者
ヲ之ニ充テヽアルノデアリマス、併ナガラ
學力其他官吏トシテノ資格ヲ有スル者ガ甚
ダ少イノデアリマス、是ガ國營トナッテ官吏
ト云フ身分ヲ具ヘル時ニ於テ、相當ナル人
員ノ陶汰ヲセラレハセヌカト云ウテ、必ズ
ヤ戰々兢々タル者ガ、其從業吏員ニアルモ
ノト確信スル者デアリマスルカラ、是ニ於
テ私ハ斯ル際ハ在來ノ吏員其儘是非採用セ
ラレンコトヲ望ム者デアリマスルガ、之二
對スル大臣ノ御意見ハ如何デアリマスカ、
承ッテ置キタイノデアリマス
次ニ町村長ニ職業紹介ノ一部ヲ行ハシム
ルト云フコトガアリマスガ、其町村長ニ行
ハシムル一部トハ、如何ナル程度デアリマ
スカ、是モ承ッテ置キマス
序デアリマスルガ、聯絡委員ノコトニ付テ只
今モ御答辯ガアリマシテ、聯絡委員ハ方面委
員若クハ靑年團員ト云フヤウナ者ヲ採用シテ、
連絡統制ヲ圖ルト言ハレテ居リマスルガ、方
面委員ニシロ、其他ノ者ヲ使用スルト云フコ
トニナリマスト、極メテ少額ナル手當ニ依ッ
テ、是等ノ人ノ活動ヲ望ム者デアリマス、
現在私モ多クノ方面委員ノ活動振リヲ見テ
居リマスガ、方面委員ノ名ガ欲シサニ甘ン
ジテ其職責ニ就キマスガ、實際ニ其役目ヲ
果ス者ハ十分ノ一ノ程度モナイト私ハ認メ
テ居リマス、サウ云フ人ノ手ニ於テ此紹介
機關ノ連絡ヲ旨ク圖ラレマスカドウカト云
フコトヲ案ズル者デアリマス、其聯絡委員
ニ對スル手當ト云フモノハ、全體ドノ位豫
算ニ計上セラレル御積リデアリマスカ、是
モ承ッテ置キタイノデアリマス、以上ニ亙ツ
テ大臣ノ御答辯ヲ煩ハシタイノデアリマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=21
-
022・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 田中サンニ
御答申上ゲマス、大體先程來ノ御質問ニ於
テ御答申上ゲマシク所デ、御諒解ヲ願ヒタ
イト存ズルノデアリマスガ、民營ノ營利又
ハ有料ノ職業紹介事業ハ、今後特別ノモノ
ヲ殘シテ置クト申上ゲマシタノハ、大體藝
妓酌婦等ヲ扱ッテ居ルモノヲ殘シテ居ルノデ
アリマス、而シテ其他ニ於キマシテモ、從
來カラ營業致シテ居リマスモノニ付テハ、
經過的ニ之ヲ認メテ行キマシテ、之ヲ直チニ
禁止シテ行クト云フ趣旨デハナイノデアリ
マス、ソレカラ費用ノ負擔ニ付キマシテハ、
先程申上ゲマシタヤウニ、地方費ノ負擔ハ
大體二百万圓程度デアリマス、而シテ是ハ
全體ノ費用カラ見マスト、大體經常費、臨
時費ヲ合セマシテ、其割合ハ三分ノ一程度
デアリマス、詳細ハ委員會ニ於テ十分御說
明致シタイト存ジマス、ソレカラ現在ノ職
業紹介所ニ使ハレテ居リマス職員ニ付キマ
シテモ、先程申上ゲマシタヤウニ、御話ノ
通リニ此仕事ハ必シモ學問デアルトカ云フ
點ガ重點デハナイノデアリマシテ、地方ニ
接觸致シマシテ、熱心ニ親切ニ扱フベキ人
間ヲ採用スル考デアリマスカラ、御話ノヤ
ウナ意味ニ於キマシテ、現在ノ職員ヲ採用
致シマスニ付テハ、十分其特別ノ事情ヲ考
慮スル考デ居リマス、ソレカラ町村長ニ行
ハセマス一部ト云フモノハ、大體ニ於テ地
方ニ於キマシテ求職ノ斡旋ヲ致シマスコト
ガ主デアリマシテ、求職ノ希望ヲ受次ギマ
シタリ、或ハ求人ヲ周知シタリ、身元調査
ヲスルト云フヤウナコトヲ賴ムコトヲ致ス
ノデアリマス、ソレカラ聯絡委員ノ手當ト
云フヤウナコトニ付キマシテハ、尙ホ其他
ニモ細カイコトガゴザイマスルカラ、何レ
委員會デ十分御說明致シタイト考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=22
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023・田中邦治
○田中邦治君 簡單デスカラ此席カラ御許
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=23
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024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=24
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025・田中邦治
○田中邦治君 極メテ簡單ナ御答辯デ滿足
シマセヌ者デアリマスガ、委員會デト云フ
コトデアリマスカラ、萬一私委員ニナリマ
セヌケレバ、他ノ委員ノ方ニ依ッテ自分ノ質
サント思フコトヲ質シタイト思ヒマスカ
ラ、之ヲ以チマシテ質問ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=25
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026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 瀧澤七郞君
〔瀧澤七郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=26
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027・瀧澤七郎
○瀧澤七郞君 我國ノ職業紹介事業ガ單ニ
慈善事業ノ如キ失業救濟ヨリ進ミマシテ、
此第一條ニアルガ如ク、勞務ノ適正ナル配
置ヲ圖ル爲ニ、政府ガ此事業ヲ行フコトニ
ナッタト云フコトハ、我國職業紹介事業ニ
一大劃期ヲ來スモノト私ハ信ズルノデアリ
マス、是ハ職業紹介事業ノ發達過程ニ於キ
マスル當然ノコトデアリマセウガ、私思フ
ニ昨春來ノ生產擴充問題、及ビ日支事變ニ
因ッテ一層之ヲ强化シナケレバナラナクナッ
テ、今日提案サレタノデアルト思フノデア
リマス、サウシテ本事業ノ目的デアリマス
勞務ノ適正ナル配置トハ、如何ナルコトデ
アルカト云フコトニ付テハ、只今厚生大臣
ヨリ御話ニナッテ、私モ其說明ニ同感デア
リマスガ、從來ノヤウナ單ニ個人的ノ適材
適所ニ就職斡旋ヲスルト云フコトノミデナ
ク、國家ノ行ハントスル國防、產業、社會
上ノ政策ニ順應シテ、各人ノ資質ニ應ジテ
適當ニ職ヲ與ヘルト云フコトハ、洵ニ結構
ナコトデアルト存ジテ居リマス、是ハ從來
ノ慈善事業ノ如キ失業救濟ノ職業紹介事業
ニ比スレバ、本當ニ一步ヲ進メタモノデア
リ、又今日ノ我ガ國情ニ於テハ、ドウシテ
モ是デナケレバナラヌト考ヘテ同感ヲ致シ
テ居ル者デアリマス、サウデアリマスルケ
レドモ、如何ニ目的ガ宜クテモ、亦二百万
圓ノ費用ヲ六百万圓ニ致シマシテモ、是ガ
運用ヲ誤リマスルナラバ、制度ノ强化完備
ニ反比例致シマシテ、却テ惡弊ヲ生ズル虞
ガアリマスルガ、之ニ付テ厚生大臣ハ如何
ナル覺悟ヲ持ッテ居ラッシヤルカト云フコト
ヲ、先以テ御問スルノデアリマス
更ニ私ハ此六百万圓ノ費用モ、厚生省ニ
於テハ初メ七百万圓トシテ、紹介所ヲ減ラ
サナイト云フ考ヲ持ッテ居ラッシヤッタヤウニ
聞イテ居リマスガ、豫算ノ關係上御減シニ
ナッタノデアルカ、本當ニ七百万圓ノモノガ
六百万圓デ間ニ合フト云フ御考ヲ以テ爲サ
レタノデアルカ、其點ヲ伺フノデアリマス、
而シテ此事ヲ新聞紙上其他デ見マスルト、
紹介所ノ事業ノ費用ハアルガ、中央ニ於ケ
ル一大機關ガナイ、地方ニ於ケル機關モナ
イ、其費用モナイト云フコトデアリマスガ、
之ヲ以テ十分ニ此事業ヲ遂行スルコトガ出
來ルノデアリマスルカ、之ヲ御伺致シマス、
此費用ヲ全部國家ノ負擔トスルト云フコト
ニ付テハ、私モ其意見ノ持主デアリマスル
ガ、更ニ此際御伺致シテ置キマスルノハ、
東京市ノ如キハ日露戰爭後、卽チ明治四十
四年ノ不況ニ際シテ職業紹介所ヲ設立致シ
マシタガ、之ニ從事シテ居ル者モ今日ニ至ッ
テハ隨分古イノデアリマス、尙ホ又東京市
ノ如キハ紹介所設立ニ當ッテ、二分ノ一ノ補
助金ヲ受ケテ居リマシテ、其時ノ借金ハ今
政府ニ返シツヽアルノデアリマスルガ、此
紹介所ヲ國營ニセラレタ場合ニ、此借金ハ
其儘政府デ御引取下サルモノデアルカ如何
カト云フコトヲ御伺スルノデアリマス
只今前質問者ハ皆口ヲ揃ヘテ、特別任用
ノ途ヲ開イテ、職業紹介ノ運營ヲ圓滑ニセ
ヨト云フコトデ、私モ此點同感デアリマス
ルガ、更ニ此際雲ノ上人ニ近イ厚生大臣ニ、
何故ニ官吏、役人ガ斯ウ云フ仕事ノ世話ヲ
スルコトニ不適當デアルカト云フコトヲ、
一言申上ゲテ御參考ニ供シタイト思フノデ
アリマス、我國ノ役人、官僚ト申シマセウ
カ、是等ハ今日〓ネ親ノ財產ニ依ッテ大學
ニ入ッテ勉强ヲシテ、官吏ノ試驗ヲ受ケテ、ソ
レカラ月給ヲ貰ッテ、段々經上ッテ行ッテ、尙ホ
妻ヲ貰フニモ親ノ厄介ニナラナケレバナラ
ナイト云フ者ガ此役人デアリマス、是等ノ
役人ハ丁度八階ノ窓カラ屋根ノ上ヲ見テ、
社會ヲ見テ居ルノダ、屋根裏ノ事情ヲ知ラ
ズ、所謂基礎工事ナドハ何モ知ラナイ人達
ガ、此仕事ヲヤッテ居ルノデアルカラ、圓滑
ナル紹介事業ナドニハ、最モ適シナイモノデ
アルト云フコトヲ私ハ申上ゲルノデアリマス、
而シテ更ニ今日此機會ニ於テ一言申上ゲマ
スレバ、只今ノヤウナ人達ハ、本當ニ溫室
デ作ッタ葡萄ノヤウナモノデ、見タ所ハ宜イ
ガ、嚙ミ締メテ味ガナイ、或ハ人工孵化ノ
金魚ノヤウナモノデ、食用ニハナラナイ、
是ガ役人ナノダ、是ガ官僚ナノダ(拍手)今
日之ヲ眞似シヨウト我國ノ官僚ハ考ヘテ居
ルノダガ、例ヘバ黑「シャツ」黨ノ「ムッソリー
ニ」ニ致シマシテモ、身ヲ貧家ヨリ起シテ天
下ノ宰相トナッタ、指導者「ヒットラー」ニ於
キマシテモ、アノ十六歲ニ孤兒トナッテ以
來、孤軍奮鬪今日ノ地位ヲ得タ、之ヲ我ガ
日本ニ比ベテ見タナラバ、先ヅ太閤秀吉ガ
少年ノ頃、一箇年百何十箇所ノ家ニ奉公ヲ
シタト云フコトガ、太閤秀吉ニナッテカラ天
下ノ政治ヲ執ル時ニ、其行フ所ガ、今日「ヒッ
トラー」ガ行ヒ、「ムッソリーニ」ノ行フヤウ
ニ、吾々民衆ノ琴線ニ觸レテ來ルカラ、此
人ガ大偉人トナルノデアリマス、之ヲ夢ミ
テ日本ガ此眞似ヲシタナント云フコトガ、
金魚ヤ溫室ノ果物ニ出來ルモノデハナイト
云フコトヲ、先以テ御參考ニ申上ゲテ置キ
マス、是ガ卽チ私共ハ特別任用ニ當ッテ、本
當ニ心カラ考ヘテ戴キタイト云フコトデア
リマス
ソレカラ勞働紹介ヲスル上ニ於キマシテ、
賃銀ノコトニ及ビマスルカラ、其結果工場
其他使用人ニ對シテ勞働條件ヲ職業紹介所
ノ力ヲ以テ變更セシメルヤウナ考ヲ以テ、
此職業紹介所法ヲ御作リニナッタカ否ヤト
云フコトヲ伺ッテ置キタイノデアリマス
次ニ政府ニ於キマシテハ職業ノ輔導機關
ヲ設ケラレルト云フコトデアリマスルガ、
之ニ對シテハドウ云フ方法ヲ以テ爲サイマ
スカ、本當ニ職業輔導機關ヲ以テ熟練エヲ
養成スルガ如キコトヲ考ヘテ居ラッシヤル
ナラバ、五箇月ヤ六箇月デ熟練工ヲ得ルガ
如キハ絕對出來難イコトデアルガ、職業輔
導ノ方針、精神ヲ伺ヒタイノデアリマス、
ソレニ關シテ私ガ御參考マデニ申上ゲテ置
キマスルコトハ、我國デ古來親方徒弟ノ制
度ガ長ク存立シテ居リマシタガ、一朝工場
法ノ施行ニ依リマシテ、此制度ヲ破壞セラ
レマシタケレドモ、之ニ代ルベキ何等ノ方
法ヲ以テセラレナカッタ結果、今日產業擴充
ノ上ニ付テ中堅トナル本當ノ熟練エヲ得ル
コトガ困難デアルト云フコトヲ御認メニナ
リマスルカ、御認メニナリマシタナラバ、
此制度ニ對シテドウ云フ考ヲ持ッテ居ラッシ
ヤルカト云フコトヲ御伺致スノデアリマス、
今日英吉利ニ於キマシテモ、勞働者ノ徒弟
制度ニハ思ヲ深ク致シテ、是ハ傳統的ニ、
例ヘバ約束ヲシテ仕事ヲ見習ニ入ッテ中途
ニ出タ者ハ、如何ニ其人ハ技倆ガアリマシ
テモ、何處ノ工場へ行ッテモ職工トシテ働キ
マセヌデ、單ニ賃銀ノ安イ働キ手トシテ使ッ
テ居リマス、最近亞米利加ニ於キマシテモ、
鑄物協會ニ於キマシテハ、四年間ノ制度ヲ
以テ徒弟修養ノ機關ヲ作ッテ居ル、是等ニ對
シテ職業補導ノ上カラ見テ、厚生大臣ハド
ンナ風ノ考ヲ持ッテ居ラッシヤルカト云フコ
トヲ伺ヒマス
更ニ先程傷病兵ノ歸還後ノ〓育機關ニ付
テノ考ヘ方ヲ、世耕君ヨリ御聽ニナリ、大
臣ヨリ御答辯ガアリマシテ、追加豫算デ幾
分ノ費用ヲ取ルト云フ御話デアリマスガ、
世耕サンノ御話ニモアリマシタケレドモ、
戰後獨逸ニ於キマシテハ、命令ヲ以テ百人
ノ工場ニ對シテハ癈兵四人ヲ、卽チ二十五
人ニ對シテ一人ノ癈兵ヲ使フコトヲ强制命
令ヲシテ使ハセタカラ、其工場ノ門衞ノ如
キハ、多クハ片腕ガナイ者ガ之ニ加ハッテ
居ッタノデアリマス、又只今ドウ云フ考ヲ
以テ追加豫算ヲ御取リニナッテ、指導奬勵
セラレルカ知レマセヌケレドモ、戰後
獨逸ニ於ケル兩眼ヲ失シタ者百四十四人、
「シーメンス」-我國ニ於テハ特ニ有名ニ
ナッタ、アノ「シーメンス」ノ工場ニ於テハ、
工場自身ガ之ヲ〓育ヲ致シマシテ、全國ノ
工場ニ配付致シマシタ、「シーメンス」工場
ダケデモ盲人ヲ四十人カラ使用致シマシテ、
而モ一人ノ盲人ガ三臺ノ「ボール」盤ヲ使ッテ
居ル、之ニ對シテ電車ヲ無賃ニスルトカ、
或ハソレニ對シテ尙ホ盲人ノ〓育バカリデ
ハアリマセヌ、「セパード」種ノ犬ヲ飼ヒマ
シテ道案內ヲスルト云フ位ニ徹底シテ居ル、
而モ其費用ハ國庫負擔ニアラズシテ、會社
ニ負擔セシメテ、其〓育ヲ行ハシメタト云
フコトガアル、之ニ對シテ只今豫算ヲ御取
リニナルト云フガ、是等ノ〓育ニ關シテハ
眞ニドウ云フ考ヲ持ッテ居ルカト云フコト
ヲ御伺致スノデアリマス、桂庵、口入業ニ
對シテハ、前質問者ノ御意見ニ同感デアリ
マス
最後ニ先程ノ御質疑者ガ、現在紹介所ニ從
事シテ居ル者ヲ國ノ紹介所ニ使フト云フコ
ト、ソレニ對シテ大臣ヨリ御趣旨ヲ諒トス
ルト云フ御話ガアッテ、必ズ私ハ使ッテ戴ク
モノナリト信ジテハ居リマスガ、尙ホ啻ニ
使ッテ貰フダケデハ困ル場合ガアリマス、只
今申上ゲマシタ通リ、東京市ノ如キハ四十
四年カラ此事業ヲ致シテ居リマス、長イ間
其職員デ居リマス、將ニ恩給年限ニ達セン
トスル前ニ、若シ此職ヲ失フコトガアリマ
シタナラバ、單ニ使ッテ貰フト云フバカリデ
ハアリマセヌデ、此恩給年限ニ達シヨウト
云フ人達ニ對シテモ、相當ノ考ヲ以テ使ッ
テ戴カナケレバナリマセヌガ、是等ニ對ス
ル御考ヲ承リタイト思ヒマス、以上ノ點ニ
付キマシテ懇切丁寧ノ御答辯ヲ承リタイノ
デアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=27
-
028・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 瀧澤君ニ御
答ヲ致シマス、第一ニ御尋ノ點ハ、此國營ノ
案ガ運用ヲ誤レバ非常ナ惡弊ヲ貽スガ、厚生
大臣トシテ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云
フ御尋デアリマシタガ、此點ハ御尤デアリ
マシテ、此運用ヲ誤リマスナラバ、非常ナ
弊害ヲ來スノデアリマス、而シテ此職員ノ
活動其他ニ付キマシテ、只今色々官吏ニ付
テノ御話モアリマシタガ、ソレ等ノ點ハ十
分考慮ヲシテ遺憾ナク運用シタイト考ヘテ
居リマス、ソレカラ第二ノ御尋ハ、現在七
百餘箇所アリマスル職業紹介所ヲ四百トシ
タル理由ハ、豫算ガ少イ爲デアルカト云フ御
尋デアリマシタガ、此點ニ付キマシテハ豫
算ノ爲デハナイノデアリマシテ、從來トモ
七百ノ中ニハ、可ナリ地方的ニ既ニ活動ヲ
致シテ居ラナイ部分モアリマス、ソレ等ノ
點、其他交通機關等ノ關係モアリマスノデ、
本案ヲ作成致シマスルニ付テハ相當地方ノ
實情等ヲ調査致シマシテ、四百ニ決定致シ
タ次第ナノデアリマス、ソレカラ中央ノ機
關ガナイノデ不十分デハナイカト云フ御尋
デアッタト存ジマスルガ、此點ハ今後此機能
ヲ强化致シマシテ參リマスル場合ニ、當然
連絡機關ト致シマシテハ、現在ノ狀況デハ
私ハ不十分デアルカトモ考ヘテ居リマスガ、
是ハ將來ノ問題トシテ十分考究致シタイト
考ヘテ居リマス、ソレカラ市町村ノ職業紹
介所ノ建築起債ノ未償還ニ對シテ、國ニ於
テ引受ケルカドウカト云フ御尋デアリマス
ガ、此點ハ旣ニ二分ノ一ノ補助ヲ致シテ居
リマス關係モアリマシテ、今日トシテハ成
ベク無償提供ヲ希望シテ居ル次第デアリマ
ス、ソレカラ此職業紹介所ガ國營トナリマ
スニ付キマシテハ、職業ヲ斡旋致シマスル
場合ニ、勞働條件等ヲ變革サセルト云フヤ
ウナコトハナイカト云フ御尋デアリマスガ、
左樣ナ意味ニ於テハ之ヲ運用致サナイデ、オ
互ニ求職者モ求人者モ自由ナル立場ニ於テ、互
ノ利益ヲ求メルト云フコトニ重點ヲ置イテ居
リマスノデ、職業紹介所ガ自ラ勞働條件ニ付テ
註文ヲ付ケル、或ハ之ヲ變革スルト云フヤウナ
點ハ考ヘテ居リマセヌ、ソレカラ補導機關ノ點
デアリマスガ、此點モ先程モ御話致シマシ
タヤウニ、大都市ノ職業紹介所ニ於テハ、
若干極メテ輕微ナモノヲヤッテ居リマス、是
ハ將來漸次擴張致シマシテ、十分ノ補導機
能ヲ發揮シタイト思ヒマスルガ、只今直チ
ニ熟練工ノ養成ト云フ所マデ行キ得ナイデ
アラウト考ヘテ居リマス、ソレカラ徒弟ノ
制度ニ對シマシテノ御考ハ、御尤デアリマ
シテ、我國モ亦此徒弟ノ保護ノ點ハ、可ナ
リ閑却サレテ居ルヤウニ考ヘマス、而シテ
此點ハ重要ナ事柄デアリマスカラ、今後ト
モ十分〓究致シテ、善處シタイト考ヘテ居
リマス、ソレカラ現在ノ職員ハ勿論是ハ大
體先程カラ御答申シマシタヤウニ、特別ノ
事情ノナイ限リニハ引受ケルノデアリマス
ガ、尙ホ御話ノ通リ旣ニ相當ノ年月ヲ經テ
居リマシテ、恩給等ノ問題モ或ル一部分ニ
アルコトハ、承知致シテ居ルノデアリマス、
是等ノ點ニ付キマシテハ、折角ソレ等ノ者
ニ不利益ヲ與ヘナイヤウニ、十分ニ考究致
シタイト考ヘテ居リマス、ソレカラ最後ニ
歸還軍人及ビ傷痍軍人ニ對スル方策デアリ
マスガ、此點ハ今日ノ所デハ、マダ强制雇
傭ト云フ問題ニ付テ適確ナル方策ヲ持ッテ居
リマセヌガ、愼重ニ考究致シタイト考ヘテ
居リマス、尙ホ先程申シマシタ豫算ノ內容
ハ、此病院ニ入ッテ居リマス者ノ職業ノ指導
ヲ致ス者ヲ派遣シ、或ハ精神的ニ是等ヲ補
導致シマスヤウナ人ヲ充員致シマシテ、是
等ノ相談ニ應ジ、又慰安ニ當ラセルト云フ
コトヲ只今考ヘテ居リマス、尙ホ十三年度
ノ豫算ニ於キマシテハ、更ニ傷痍軍人其他
ニ付キマシテ、モウ少シ病院ノ設置デア
ルトカ、或ハ療養所デアルトカト云フヤウ
ナ點ニ付キマシテモ計畫致シテ、目下是ガ
豫算ニ付テハ、提案ノ準備ヲ致シテ居ル狀
況デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=28
-
029・瀧澤七郎
○瀧澤七郞君 簡單デアリマスルカラ此席
カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=29
-
030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=30
-
031・瀧澤七郎
○瀧澤七郞君 只今厚生大臣ノ御答辯ハ、
殆ド全部調査〓究ト云フコトデ、マア大臣
ニハ今日マデ深イ御〓究ガナイヤウニ思ヒ
マスカラ、此點ハ委員會ニ讓リマスガ、
點此場合ニ申上ゲテ置キマスルコトハ、二
分ノ一ノ補助金ヲ受ケタカラ、後ハ無償提
供ト云フコトヲ考ヘテ居ルト云フコトデア
ルガ、私共ハ絕對ニ、是等ヲ國ガ取上ゲル
ノデアリマスルカラ、借金ト共ニ只今ノ市
營紹介所ノ資產負債ヲ、全部厚生省職業紹
介所ニ移シテ貰ヒタイト云フコトヲ强ク申
上ゲテ、此質問ヲ打切リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=31
-
032・小山松壽
○議長(小山松壽君) 川村保太郞君
〔川村保太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=32
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033・川村保太郎
○川村保太郞君 職業紹介所ノ國營ノ問題
ニ付キマシテハ、私共ノ多年ノ主張デアリ
マス、隨テ私ハ此問題ニ付テ敢テ異議ヲ唱
ヘル譯デハナイノデゴザイマスガ、私共數
年來職業紹介所ノ國營ヲ主張シテ參リマシ
タノハ、主トシテ失業對策ノ爲ニ紹介所ヲ
國營ニスベシト云フコトヲ、主張シテ參ッタ
ノデアリマス、今度ハ紹介所ガ國營ニナル
ノデ、是ハ結構ナヤウデアリマスケレドモ、
今日ハ勞働市場ノ情勢ガ全然一變シテ居ル、
失業者ノ爲ノ對策ト云フヨリモ、先程大臣
カラモ御說明ガアリマシタヤウニ、寧ロ時
局關係ノ生產力擴充ノ爲ニ、所謂勞働力ヲ
充足シヨウト云フ目的ノ爲ニ、今度ハ國
營ニナルノデアリマス、私ハソレデアルガ
爲ニ異議ヲ唱ヘル譯デハゴザイマセヌガ、
一種ノ皮肉ヲ感ズル、但シ今日ハ軍需產業
ノ生產力充實ト云フコトハ、國策上是ハ絕
對ニ必要デゴザイマスカラ、是ハ是非ヤッテ
戴カナケレバナラヌノデアリマスガ、私
ソレニ關聯致シマシテ、左ノ五點ニ付テ御
伺ヒシタイト考ヘマス
前以テ御斷リ致シテ置キマスガ、前ノ
質問者ト、多クノ點ニ於テ私ハ見解ヲ異
ニスルノデ、反對ノ意見ヲ有スルコトハ
私ハ甚ダ遺憾デゴザイマスガ、先ヅ第一ニ
私ハ職業紹介所ノ運營ニ付テ大臣ニ御伺
ヒシタイ、先程ノ答辯ノ中ニハ、私ハ甚
ダ不滿トスル所モアルノデアリマスガ、
申ス迄モナク今度ノ國營ハ、勞働力ノ充
足ノ爲ニ各市町村ニ聯絡委員ヲ置イテ、所
謂人ヲ集メヨウト云フ譯デアリマス、言
葉ヲ換ヘテ申シマスナラバ、求職者ノ開拓
網ヲ完備シヨウト云フノガ、一ツノ眼目デ
アリマス、勞働力充足ノ爲ニ、勿論必要デ
アリマスガ、私ハソレニ付テハ是非一ツ
御考ヲ願ハナケレバナラヌ點ガアル、ソレ
ハドウ云フ點カト申シマスルト、紹介所デ
紹介スル場合ニハ、第一ニ此勞働條件ノ適
正ヲ期シテ貰ハナケレバナラヌト私ハ考ヘ
ル、申ス迄モゴザイマセヌガ、紹介所ハ一
ツノ勞働市場デアリマス、若シ勞働者ノ數ガ
足ラナイカラト云フノデ、自然ニ勞働條件ガ
向上シテ、サウシテ自然ニ農村ノ人ヲ誘致
スルト云フナラバ、是ハ自由デアリマス、
所謂此自由取引ノ形ニナッテ、一ツノ自然ノ
形ト云フモノガ、ソコニ生ジテ來ルノデア
リマスガ、ソレヲ量ラナイデ、聯絡委員ヲ
置イテ、ドン〓〓人ヲ集メルト云フ風ナコ
トニナリマスト、玆ニ私ハ政府ガ仲ニ入ッ
テ、適正ナル條件ヲ設定シテ戴クノデナケ
レバ、公平デナイト考ヘル、申ス迄モゴザ
イマセヌガ、勞働力ハ、只今委員會デ問題
ニナッテ居リマスル電力ト同ジデアリマシ
テ、「ストック」ノ出來ナイモノデアリマス、
殊ニ勞働者ハ常ニ貧乏デアリマス、否デモ
應デモドンナ惡イ條件ニデモ應ジナケレバ
ナラヌ、勞働力ハ「ストック」ガ出來ナイカ
ラ、隨テ投賣ヲシナケレバナラヌ、況ヤ自
分ハ貧乏ダカラ、ドンナ惡イ條件デモ甘ン
ジナケレバナラヌト云フヤウナ弱イ立場ニ
置カレテ居ル、傭主ノ方ハ常ニ經濟的ニ有
利ナ地位ヲ占メテ居ル、ダカラ今日ノ條件
其モノハ、決シテ公正ナモノデハナイ、況
ヤ今度ノハ聯絡委員ヲ置イテ、澤山ナ勞働
者ヲ農村カラ集メテ來ルト云フコトニナリ
マスレバ、勢ヒ勞働條件ヲ低下サセルカ、
若クハ低下サセナクテモ、勞働條件ノ向上
ヲ阻碍スルコトハ明デアリマス、私ハ紹介
所ヲ國營ニスルト云フナラバ、此間ニ立ッテ
適正ナル條件ヲ設定スルヤウニ努力スルト
云フノデナケレバ、紹介所國營ノ意義ヲ成
サヌト私ハ考ヘル(拍手)此點デハ勞働者ト
傭主トノ間ノ自由取引ニ委セテ置クコト
ハ、適當デナイト私ハ考ヘル、先程カラモ
申シマシタヤウニ、經濟上ノ弱者ト經濟上
ノ强者、ソレヲ自由取引ニ委セテ置クト云
フナラバ、是ハ恰度駈出シノ笊碁ト有段者
ト對等デ碁ヲ打タセルノト同ジデアリマシ
テ、勝負ニハナラナイ、サウ云フ自由取引
ハ百害アッテ一利ナシト私ハ考ヘル、此點ニ
付テ先程大臣カラ御答辯ハアリマシタケレ
ドモ、尙ホ一ツ御一考ヲ煩シタイト私ハ考
ヘル
モウ一ツ是非トモ御考慮ヲ願ハナケレバ
ナラヌト思ヒマスコトハ、紹介シテカラ後
ニ尙且ツソレ等ノ人達ニ付テノ保護ノ問題
ニ付テ、御考ヲ願ハナクテハナラヌト私ハ
考ヘル、申上ゲル迄モゴザイマセヌガ、勞働
力ハ他ノ商品ト異リ、勞働者ノ肉體ト引離
シテ考ヘルコトノ出來ナイ問題デアル、只
今問題ニナッテ居リマスル電力ハ、發電所ガ
山ノ中ニアリマシテモ、電力ダケ都會デ賣
ルコトガ出來ル、ケレドモ勞働力ハサウデ
ハナイ、勞働者ノ體ヲ現場ニ持ッテ行カナケ
レバナラヌ、ソコデ今度ハ聯絡委員ヲ作ッ
テ、ドン〓〓人ヲ集メテ來テ紹介シヨウト
云フノデアリマスガ、若シ此間ニ十分ナル
御考慮ヲ煩スノデナケレバ、今度ハ恰度國
營紹介所ガ會社ノ募集員ノ代リヲ無料デヤ
ルノト同ジコトニナル(拍手)サウ云フ風ナ
コトデ恐ラク聯絡委員ハドンナ所デ仕事ヲ
スルノカ、ドンナ所デドンナ條件デ働クノ
カ分ラナイ人ガ、農村ニ於テ人ヲ集メ、サ
ウシテ盲目ノ儘都會ニ連レテ來テ、斯ウ云
フ條件デ此處デ働ケト云フ風ニ、無理ニ强
制サレルト云フヤウナコトニナリマスナラ
バ、先程申上ゲマシタヤウニ此紹介機關ガ、
恰度會社ノ惡辣ナ募集員ノ代理ヲヤルノト
異ラヌト云フ風ナコトニナルノデアル、私
ハ此點ニ付テ一ツ特ニ御考慮ヲ願ヒタイ
ト考ヘル、紹介シテカラ後ニモ、十分ニ
ソレ等ノ勞働者ノ保護ノ問題ニ付テハ、
考ヘナクテハナラヌト思フ、私ノ知ッテ居
リマス工場ニ斯ウ云フノガアル、名前ヲ申
上ゲテモ宜イノデアリマスガ、ソレハ遠慮
シテ置キマスケレドモ、勞働者仲間デハ鬼
工場ト言ハレテ居ル、年中職工ヲ募集シテ
居ル、年中職業紹介所ヘ申込ンデ、人ヲ紹
介シテ貰ッテ居ルノデアリマスガ、使ヒ方
ガ酷ナ爲ニ、問題ニナラナイヤウナ惡イ條
件ヲ課スル爲ニ、ドン〓〓罷メテ行ク、
幾ラ罷メテ行ッタッテ是ハ差支ガナイノデア
リマシテ、紹介所ハ無料ダカラ紹介所ニ賴
ンデ、ドン〓〓人ヲ送ッテ貰ヒ、年中表ニ職
工慕集ノ看板ヲ掛ケテ居ル、ソウシテ入ッテ
來ル者ハ只今申シマシタヤウナ惡イ條件
デ、イヂメ出スト云フ風ナコトヲヤッテ居
ル、若シ斯ウ云フヤウナモノガ、今後モ尙
且ツ跋扈スルト云フコトニナリマスナラバ、
是亦紹介所ハ百害アッテ一利ナシト云フコ
トニナル、勞働者仲間デハ之ヲ鬼工場ト稱
シテ居リマシテ、アレハ鬼工場ダカラ、ア
云フ所ニ行カヌヤウニシロト言ッテ、オ互
ニ口カラ口ヘ傳ヘテ居ルノデアリマスガ、
紹介所ハヤハリドン〓〓其處ニ人ヲ送ッテ
居ル、斯ウ云フ風ナ鬼工場ノ手先ニナラナ
イヤウニ、一ツ御注意ヲ願ハナクテハナラ
ヌト私ハ考ヘル、勞働條件ガ適正ヲ期シテ
居ルカドウカ、或ハ紹介後ニモ十分ナ保護
ヲ受ケテ居ルカドウカト云フ風ナコトハ、
紹介所カラ紹介サレタ人ノ勤續年數ヲ見レ
バ、一番能ク分ル、紹介所カラ紹介サレタ
人ノ勤續年數ハ平均短イ、私ノ極ク狹イ範
圍ノ調査ニ依リマシテモ、平均五箇月シカ
勤メテハ居ラヌ、若シ是ガ個人紹介カ何カデ
アレバ、紹介シテ貰ッタ人ノ顏モアルモノダ
カラ、餘リ無理ナ使ヒ方ヲスルコトモ出來
ナイト云フ風ナコトニナリマシテ、大體滿
足スベキ條件ノ下ニ、働クコトガ出來ルノ
デアリマスガ、紹介所ニハソレガ無イ爲ニ、
傭主ガ無理ナ使ヒ方ヲスルト云フコトニナ
リマシテ、永續シナイデ、ドン〓〓罷メテ
行ク、罷メテ行ッタッテ差支ハナイ、紹介所
ハ無料ダカラ幾ラデモ其處カラ紹介シテ貰ヘ
ルト云フコトニナリマシタナラバ、紹介所ノ存
在ガ却テ是ハ有害ナリト申サナケレバナラヌ
ト私ハ考ヘル(拍手)此點ニ於キマシテ果シテ紹
介後ニモ相當ナル保護ヲシテヤル所ノ御考ガ
アルカドウカヲ御伺シタイト私ハ考ヘル
其次ニハ臨時雇ノ問題デアリマス、御
承知ノ通リ最近ハ、臨時雇ト云フ風ナ
者ガ非常ニ殖エマシテ、是ハ傭主ノ立場
カラ申シマスナラバ、臨時雇ト云フ制度
モ、强チ之ヲ絕滅スル譯ニハ行クマイト思
フ、ホンノ十日カ、二十日カ或ハ一月位、
臨時ニ人ガ欲シイト云フ風ナ場合モアラウ
ト思ヒマスカラ、私ハ之ヲ全然禁止セヨト
ハ申シマセヌガ、併シ今日ハ此制度ガ段々
惡用サレマシテ、到ル處臨時職エデ氾濫シ
テ居ルト云フ狀態デアリマス、御承知ノ通
リ臨時デナク常傭ト云フコトニナリマスト、
罷メサス時ニハ退職手當モヤラナケレバナ
ラヌ、或ハ健康保險ニモ入ラサナケレバナ
ラヌ、色々勞働者保護ノ問題ガ生ジテ參リ
マスカラ、名前ハ臨時雇デ、事實上ニ於テ
ハ二年、三年、或ハ五年、八年ト云フ長イ
期間使ッテ居ルト云フ風ナ例ガ、是ハ隨分ア
ルノデアリマス、斯ウ云フコトニナッテ參リ
マスト、百ノ勞働立法ガ出來テモ、是ハ畫
餅ニ歸シテ何ニモナラヌノミナラズ、今日
勞働力ガ拂底シテ居ルト云フ所ノ大キナ原
因ノ一ツハ、此臨時雇制度デアル、私共ノ
知ッテ居ル範圍ニ於キマシテモ、多クノ熟
練職エデ失業シテ居ル者ガアル、數年前ニ
失業シタノデアルカラ、今日デハ何等カノ
生活手段ヲ得テ居ルノデアリマスガ、是等
ノ者ニ、モウ一度工場ニ歸レト言ッテモ、
馬鹿々々シイ、臨時雇ノ惡イ條件デハ、今更
歸ル譯ニハ行カヌト云フノデ歸ラナイ、私
ハ此點ヲ改善スルニアラズンバ、國策ノ線
ニ沿ウタ本當ノ生產力ノ充實ハ出來ナイト
考ヘル、其點カラ職業紹介所ヲ國營ニ爲サ
ルノハ結構デアリマスガ、ソレト關聯シテ、
臨時雇ノ制度ニ何等カノ制限ヲ加ヘル御考
ハナイカドウカ、少クトモ一定ノ期間ヲ決
メテ、ソレ以上引續イテ使ッテ居ル場合
ハ形式ハ臨時デアッテモ、ヤハリ相當ナ保護
立法ヲ、適用スルト云フヤウナ制度ヲ設ケ
ルノデナケレバ此問題ハ解決シナイト私ハ
考ヘル、其點ニ於キマスル臨時雇ノ問題ニ
付テ、厚生大臣ハ如何ナル御考ヲ持ッテ居
ラレルカヲ御伺シタイト私ハ考ヘル
モウ一ツハ日傭人夫、是モ臨時雇ト同ジ
デアリマシテ、御承知ノ通リ供給人夫ト申
シマシテ、人夫名義デ以テドン〓〓ト人ヲ
入レテ居ル、是ハ所謂人夫供給業者ト云フ
者ガ人ヲ入レルノデアリマスガ、甚シイ場
合ニハ人夫供給業者デナクテモ、ヤハリ今
日マデ公營紹介所ガ人夫供給業者ノ代理ヲ
致シマシテ、日傭人夫ノ形式デ以テ、繼續
シテ同一ノ工場ニ、每日人ヲ送ッテ居ルト云
フ例ガ澤山アル、私ハ是非是ハ一ツ御止メ
ヲ願ヒタイト考ヘル、一體吾々ノ常識ニ依
レバ、千人ノ人間ノ働イテ居ル機械工場ニ
於テ、五百人以上ガ人夫ダト云フヤウナ篦
棒ナ話ハアリ得ナイ、而モ今日ハサウ云フ
風ナ所ガ澤山アル、旋盤ヲ使ッタリ、鐘ヲ使ッ
タリスル立派ナ熟練職工ヲ、日傭人夫ノ形式
デ、或ハ勞務供給業者カラ、或ハ公營職業
紹介所カラ人ヲ送ッテ貰ッテ、使ッテ居ルト云
フ例ガ澤山アルノデアリマス、斯ウ云フコト
ガ若シ增長サレテ行クナラバ、紹介所ノ運
營ヲ誤ッテ、是カラ先モ斯ウ云フコトヲヤッ
テ行クト云フナラバ、是亦私ハ紹介所ノ國
營ガ、却テ百害アッテ一利ナシト云フコト
ニナルノデアリマスガ、是等ノ點ニ付テ一
體厚生大臣ハ、如何ナル御考ヲ持ッテ御居
デニナルカ、私ハ御伺シタイト考ヘル
其次ニ御尋致シタイト思ヒマスコトハ、
失業保險ノ問題デアリマス、前ニモ申シマ
シタヤウニ、此法案ノ眼目ハ、求職者開拓
ノ網ヲ强化シヨウ、サウシテドン〓〓ト人
ヲ集メヨウト云フノガ、此法案ノ一ツノ目
的デアリマス、私ハソレハ宜シイガ、今日
國策ノ線ニ沿ウテ勞働力ヲ充實スル爲ニ、
農村カラ人ヲドン/〓集メテ、或ハ職業〓
育ヲヤリ、色々ナ方法デ以テ生產力ヲ充實
シヨウト云フノハ結構デアリマスガ、體
此次ニ戰爭ガ濟ンデ不景氣ガ來テ、戰時產
業ハ閉鎖シナケレバナラヌ、事業ハ停止シ
ナケレバナラヌ、戰線カラハドン〓〓歸ッテ
來ルト云フ譯デ、再ど失業問題ガ激化致シ
テ參リマシタ際ニ、一體其際ノ對策ヲ如何
ニ御考ニナッテ居ルノカト云フコトヲ御尋
シタイト思フ、集メルダケハ集メルガ、今
度ハ散ズル所ノ手段ヲ持ッテ居ラヌ、集メル
ダケハ集メルガ、失業シタ時ニハ捨テヽ置
クト云フノデハ、私ハ國民ニ對シテ極メテ
無責任ナヤリ方ダト言ハザルヲ得ナイト思
フ(拍手)散ズル時ノ對策ヲ持ッテ居ルノカド
ウカ、私ハ此點ハ是非共一ツ此職業紹介ノ
國營ニ關聯シテ、失業保險ヲ作ッテ貫ハナケ
レバナラヌト考ヘル、先程世耕君ノ御質問
ノ中ニ、失業保險ハ外國ニ於テ失敗シテ居
ルト云フヤウナ御話ガゴザイマシタガ、例
ヘバ英國デ失敗シタト云フノハ、ソレニハ
理出ガアル、御承知ノ通リ英國デ失業保險
ガ最初出來タノハ千九百十六年、併シ其時
ハ極ク少數ノ軍需工業ノ熟練職工ダケヲ保
險ニ入レテ居ッタ、而シテ本當ニ之ヲ擴大シ
テ、一般勞働者ニ失業保險ヲ適用スルコト
ニナッタノハ千九百二十年デアリマス、卽チ
失業者ガ氾濫スルヤウニナッテカラ、遽ニ失
業保險ヲ適用シタノデアリマスカラ、是ハ
旨ク行カナイノガ當然デアリマス(拍手)千
九百十六年ニ、多クノ勞働者ガ皆就職シテ
居ル際ニ、之ヲ失業保險ニ入レテ置ケバ、
莫大ナル積立金ガ出來ルベキデアッタノデ
アリマス、ソレヲヤラナイデ、失業者ガ氾
濫シテ來テカラ失業保險ヲ作ッタノデアリ
マスカラ、是ハ死ニ掛ッテ居ル人ヲ生命保
險ニ入レタト同ジデアル(拍手)此例ヲ持ッテ
來テ、外國デハ失敗シタカラ、日本デハヤ
ルベカラズト言フナラバ、是ハ誤レルモ甚
シキモノデアルト思フ、寧ロ失業保險ヲヤ
ルナラバ、今日ガ絕好ノ「チヤンス」デアル
(拍手)失業者ノ非常ニ少イ今日、失業保險
ヘ入レテ、サウシテ此好況時代ニ相當ナ積
立金ヲ積ンデ置クナラバ、私ハ次ニ不況ガ
來タ所デ決シテ困ラヌト思フ、之ヲ考ヘナ
イデ、英國ナドデ戰爭ガ濟ンデ失業者ガ氾
濫シテ來テカラ失業保險ヲ作ッテ、澤山ナ國
費ヲ使ッタ案ガ失敗ダカラト云フコトハ、是
ハ私ハ誤レルノ甚シキモノダト考ヘル、其
點カラ申上ゲマシテ、私ハ失業保險ハ是非
共作ッテ貰ハナケレバナラヌト思フ、若シ作
ルナラバ、今日ガ絕好ノ「チヤンス」ダト云
フ風ニ考ヘマスガ、此點ニ付テ厚生大臣ハ
如何ナル御考ヲ持ッテオ居デニナルカト云
フコトヲ御伺シタイト私ハ考ヘル
其次ニ私ノ御伺致シタイト思ヒマスコト
ハ、復員ノ問題デアリマス、御承知ノ通リ
今日動員サレテ居ル人ハ百万ト言ハレテ居
リマスガ、是等ノ人ガ戰爭ガ濟ンデ歸ッテ
來ルト云フ風ナコトニナリマスト、是ハ非
常ニ大問題デアリマス、嘗テ「ロイド·ジョー
ヂハ用意ナクシテ平和ニ入ルト云フコ
トハ、用意ナクシテ戰爭ニ入ルヨリモ尙ホ
危險ダト言ッテ居ル、ソレ等ノ用意ナクシ
テ百万ノ人ガ歸ッテ來ル、戰時產業ハ停止シ
ナケレバナラヌ、國內ノ國民生活ノ上ニ一
大變化ヲ來スト云フ風ナコトニナリマスナ
ラバ、是ハ用意ナクシテ戰爭ニ入ルヨリモ、
尙ホ危險ダト言ハレテ居ルノデアリマス、私
ハ此點ニ付キマシテモ、是等ノ人達ガ歸ッテ
來テ-今日命ヲ捧ゲテ戰爭ニ行ッテ居ル
人達ガ歸ッテ來テ、其仕事ニ困ルト云フヤウ
ナコトニナリマスナラバ、吾々ハ同胞ニ對
シテモ申譯ガナイ話デアリマス、是等ニ付
テ一體如何ナル對策ヲ持ッテオ居デ二·九
カ、今日勿論職業保障法ト云フモノガゴザ
イマス、職業保障法ハゴザイマスケレド
モ、是ハ一ツノ道德法デアリマシテ、傭主
ガソレヲ守ラナイカラト云ッテ、之ニ對シテ
ハ制裁ガナイ、元働イテ居ッタ所デ假ニ使ハ
ナクテモ、之ニ對シテ制裁ガナイト云フ風
ナコトニナッテ居リマスカラ、果シテ是ガ旨
ク行クカドウカ分リマセヌ、職業保障法ノ
適用ハ、御承知ノ通リ五十人以上ノ工場ト
云フコトニナッテ居リマシテ、大部分ノ人ハ
適用ヲ受ケルコトガ出來ナイコトニナルノ
デアリマスガ、第一ソレ等ノ點ニ付テ此際
如何ナル對策ヲ持ッテオ居デニナルカ(拍手)
私ハ之ヲ强制的ニ使ハシメルコトニスルコ
トガ、最モ必要デアルト思フ、サウシテ又
前ノ質問者カラモ御話ガアリマシタヤウ
ニ、假ニソレ等ノ人ガ片輪ニナッテ居ッテ
モ、何等カノ方法ヲ以テ之ヲ使ハシメルト
云フコトモ、勿論必要ダト思ヒマスガ、反
對ニソレ等ノ人ヲ雇傭スル爲ニ、今迄働イ
テ居ッタ人ヲ今度ハ解雇スルト云フ問題モ
亦起ッテ來ル譯デアリマス、私ハ此解雇ノ問
題ニ付テモ、適當ナル統制ヲ加ヘル必要ガ
アルノデハナイカト云フ風ニ考ヘマスノ
デ、是等ノ點ニ付テ對策ガアルナラバ、是
非トモ一ツ御伺致シタイト考ヘル
モウ一ツ御伺致シタイト思ヒマスコト
ハ、營利職業紹介業者ノ間題デアリマス、是
モ私ハ遺憾ナガラ多クノ前ノ質問者ト意見
ヲ異ニスルノデアリマス、私ハ此營利職業
紹介事業ハ禁止シテ貰ヒタイト思フ、今壓
迫スル虞ハナイカト云フ風ナ御話ガアリマ
シタガ、私ハ營利職業紹介業者ハ遠慮ナク
禁ズルガ宜シイト思フ、ソレヲ單ニ壓迫ス
ルバカリデナク、出來ルナラバ之ヲ禁止シ
テ宜シイト私ハ考ヘル(拍手)營利ノ目的ヲ
以テ仕事ノ紹介ヲシテ居ル者ガ、今日如何ナ
ルコトヲヤッテ居ルカ、多クノ弊害ヲ貽シテ
居ルコトハ、前ノ質問者モ御認メニナッタ
通リデアリマス、私ハ此問題ニ付キマシテハ、
多クノ例ヲ擧ゲルコトガ出來ルノデアリマス
ガ、ソレハ申上ゲル必要ハナイト思ヒマス
シ、成ベク簡單ニ致シタイト思ヒマスカラ略
シテ置キマスガ、唯先程厚生大臣カラ、特
殊ノ職業ノ紹介ニ付テハ之ヲ民間ニ委シテ
置クコトガ、或ル場合ニハ適當ト考ヘルト
云フ御話ガアリマシタガ、是ハ多分藝娼妓、
酌婦ノ紹介ト云フモノハ、是ハ國營紹介所
デヤル譯ニハ行カヌ、ダカラ是ハ民間ニ委
シテ置カウト云フ御趣旨ダラウト考ヘルガ、
ナニモ國營デヤル必要ハナイデハナイカ、國
營デヤラナイデ宜イバカリデナク、民間ノ方ニ
禁止シテモ宜シイト考ヘル、無理ニサウ云
フコトヲ紹介シナケレバナラヌコトハナイ
ノデハナイカ、ノミナラズ國營ノ紹介所デ
ヤルト云フコトニナリマシタナラバ、マサ
カ國營ノ紹介所ニ藝娼妓ノ紹介ヲ賴ンデ來
ル者ハアルマイ、私ハサウ云フ風ナ點カラ、
アヽ云フ風ナ職業ヲ漸次根絕セシメル爲ニ
干、是非トモ營利職業紹介所ハ廢メタ方ガ
宜シイト考ヘル(拍手)御承知ノ通リ、會社
ノ募集人ト稱スル者ガ農村ヘ參リマシテ、
何モ分ラヌ者ヲ騙シテ隨分連レテ來ルト云
フ例モ澤山アル、或ハ其他人夫ノ供給業者
ナドニ致シマシテモ、殆ド本人ニ對シテ旨
イ事ヅクメノコトヲ言ッテ連レテ來テ、金儲
ケノ目的ニ使フ例モ隨分アルノデアリマス、
私ハ是非トモ斯ウ云フモノハ寧ロ禁止シテ
戴キタイト考ヘル(拍手)
最後ニモウ一點御伺致シタイト思ヒマス
コトハ、紹介所ガ國營ニナルト、是ガ官僚
化スル虞ハナイカト云フ風ナコトハ、是ハ
私共モ同感デアリマス、一體職業紹介事業
ガ慈善事業デアッタ間ハ、是ハ一ツノ社會事
業デアルト云フヤウナ考デ、非常ニ此問題
ニ對シテ獻身的ナ努力ヲスルト云フ傾向ガ
アッタ、私ハ是カラ先モサウデナケレバナラ
ヌト考ヘルノデアリマスガ、職業紹介事業ガ
慈善事業ノ範圍ヲ脫シテ、今日ハ產業ニ
ツノ協力ヲスルト云フヤウナ重要ナ機關ニ
ナッテ參リマシタ際、今日マデ是ガ公營デ行
ハレテ居リマシタ間ニモ、トモスレバ是ガ
官僚化スル傾向ガアッタ、私ハサウ云フ點カ
ラ致シマシテ、是ガ國營ニナリ、國家ノオ
役人ダト云フヤウナ考デ、斯ウ云フ事ニ携
ハラレルコトニナッタナラバ、是ハ傭主ニ致
シマシテモ、傭人ニ致シマシテモ、其爲ニ
迷惑ヲ感ズルコト多大ナモノガアルト私ハ
考ヘル、單ニ職業紹介ニハ限リマセヌガ、
斯ウ云フ風ナ社會事業ニ對シテハ、之ヲ
ツノ天職ト考ヘテ、獻身的ニ此事業ニ從事
スルヤウナ人ガ必要ナノデアリマス(拍手)
敢テ是ハ學問ハ要ラヌノデアリマス、大學
ヲ出テ居ルコトヲ必要トシマセヌ、問題ハ
之ヲ天職ト考ヘテヤルト云フヤウナ人ガ必
要ナノデアリマス、此點ニ付テモ是非トモ
一ツ御考ヲ願ハナクテハナラヌト私ハ考ヘ
ル、私ハソレ等ノ點デ、所謂官僚化ヲ防止
スル爲ニ、委員會制度ヲ設ケルト云フ風ナ
御話モアルト思ヒマスガ、委員會ト云フ風
ナモノガ出來タ所デ、私ハ多クノ期待ヲ持
ツコトハ出來ナイ、外國ノ職業紹介委員會
ハ實際ニ働イテ居リマスケレドモ、日本ノ
職業紹介委員會ト云フ風ナモノガ假ニ出來
マシタ所デ、是ハ有名無實デアリマス、今
日マデニモ職業紹介委員ト云フ風ナモノガ
任命サレテ、勞働者側ハ或ハ資本家側カラ
委員ガ任命サレテ居リマスケレドモ、是ハ
ホンノ一年ニ一遍カソコラ形式的ナ委員會
ヲ開クダケデアリマス、私ハコンナ事デハ
何ニモナラヌト思フ、總テノ職業紹介所ニ
委員ガ常任トシテ、本當ニ其事業ニ從事ス
ルヤウニスルノデナケレバ、職業紹介委員
會ノ意義ヲ成サナイト私ハ考ヘル(拍手)一
體外國ノ委員會ハソレナノデアル、是ナド
モ失業保險ガ出來レバ、ドウデモサウ云フ
風ニ、常任ノ委員ト云フ風ナモノガ専屬デ
居ッテ、色々世話ヲシナケレバナラヌト云フ
コトニナルノデアリマス、例ヘバ英國ニ於
キマシテモ、佛蘭西ニ於キマシテモ、勞働
條件ヲ設定スル上ニ於テ、或ハ紹介後ノソ
レ等ノ人ノ保護ノ問題ニ付テ、或ハ此人ニ
失業保險ノ手當金ヲヤルノガ適當デアルカ
ドウカト云フ風ナ判斷ヲスル上ニ於テ、此ノ
職業紹介委員ト云フ風ナモノガ、重大ナ働キ
ヲ爲シテ居ルノデアリマスガ、日本デハサウ
云フ風ナ御考ハ毛頭ナイ、日本ノ委員會ト云
フノハ、アレハ國際條約ノ關係上外國ノ眞
似ヲシタモノニ過ギナイ、有名無實デアリ
マス、斯ウ云フ風ナコトデハ何等ノ意義ヲ
成サヌト思ヒマスノデ、私ハ官僚化ヲ防止
スル爲ニハ、是非トモ委員制度ヲ充實シナ
クテハナラヌ、常任ノ委員ヲ置イテ、サウシ
テ此事業ニ本當ニ常設的ニ協力セシメルヤ
ウニスルノデナケレバ、意義ヲ成サヌト考ヘ
ルノデアリマスガ、是等ノ點ニ付テ厚生大臣
ハ如何ナル御考デアルカト云フコトヲ御伺シ
タイト考ヘルノデアリマス、私ノ質問ハ以上
六點、是等ニ付テ出來得ルダケ親切ナル御答
辯ヲ願ヘルナラバ、結構ダト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=33
-
034・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 川村サンニ
御答ヲ致シマス、第一ノ御尋ハ、職業紹介
所ニ今後聯絡委員ヲ置イテ、市町村カラ勞
働者ヲ募集シテ來ル、隨テ是ガ搔集メヲスル
ト云フヤウナ形ニナル結果、所謂會社ノ募
集員云々ノヤウナ狀況デ、勞働條件ノ適正
ヲ期スルコトガ出來ナイコトニナルノデハ
ナイカト云フヤウナ御尋デアリマシタガ、
勿論政府ガ考ヘテ居リマスル點モ、聯絡委
員ハ求職者ト求人者ノ間ノ連絡ヲ圖ルノヲ
目的ト致シテ居ルノデアリマシテ、必シモ
地方カラ搔集メテ勞働市場ニ提供スルト云
フヤウナコトヲ、職能ト致スモノデハナイ
ノデアリマス、而シテ今囘ノ法案ニ依リマ
シテ、中央及ビ各府縣ニハ職業紹介委員會
ヲ置キマシテ、民間ノ實情ヲ反映スルヤウ
ニ之ヲ運營致シテ、斯ノ如キ弊害ノナイコ
トヲ期シテ居ル次第デアリマス、而シテ就
職後ニ於テ適當ナ保護ヲ與ヘルト云フ問題
ニ付キマシテモ、全ク御同感デアリマシテ、
此職業紹介所ガ出來マシテ、漸次機能ヲ發
揮致シマスルニ於テハ、勞働者ガ就職致シ
マシタ後ニモ、此保護施設ヲ致シマスコト
ニ付テハ、其施設ヲ助長發達サセテ行キタ
イト考ヘテ居リマス、ソレカラ臨時雇、日
傭人夫等ノ制度ニ付キマシテ、實情ニ付テ
色々ト御話ガアリマシテ、惡用セラレテ居
ルカノ如キ御話ガアリマシタガ、斯ノ如キ
コトハ紹介所ガ國營トナリ、其機能ヲ發揮
致シマスレバ、十分注意致シマシテ、是正
シテ行キタイト考ヘテ居リマス、ソレカラ
不況ノ對策ト致シマシテ、如何ナル策ヲ持ッ
テ居ルカト云フ御尋デアリマシタガ、此點
ハ先程モ御答致シタト存ジマスガ、勿論不
況ニナリマシテ失業者ガ出テ參リマスル時
三、之ノ責任ヲ囘避スルヤウナ考ハ、政
府トシテハ毛頭ナイノデアリマシテ、失業
救濟事業其他ノ實施ニ依リマシテ之ヲ救濟
シ、適當ノ職業ニ就ケテ行キタイト考ヘテ
居リマスガ、失業保險制度ニ付キマシテハ、
我國ノ國情ニ鑑ミマシテ、尙ホ愼重ニ考慮
ヲ要スル點ガ少クナイト考ヘテ居リマスノ
デ、今後當局ト致シマシテモ、十分考究致
シタイト考ヘテ居リマス、ソレカラ復員對
策ト致シマシテハ、先程モ御答致シマシタ
ガ、現在ノ所强制雇傭ニ付テハ、尙ホ愼重
考慮ヲ要スル點ガアリマスガ、差當リ入營
者職業保障法ニ依リマシテ、之ヲ活用致シ
マシテ、從來ノ雇傭主等ニ勸誘ヲシ、又公
共〓體其他ノ方面ニ付テハ、傷痍軍人等ノ
採用等ニ付キマシテ、十分連絡ヲ取ッテ之ニ
當リタイト考ヘテ居リマス、尙ホ保障法ニ
付キマシテモ、今日現行ノ程度デハ不十分
ナ點モアリマスノデ、其點ハ目下關係方面
ト〓究ヲ致シテ居ル次第デアリマス、ソレ
カラ營利職業紹介所ヲ禁止シタ方ガ宜イデ
ハナイカト云フ御話ガアリマシタガ、此點
ハ先程モ御答致シマシタヤウニ、今日政府
ト致シマシテハ、特別ノモノヲ扱ハセル點
モアリマスシ、又從來長ク其仕事ニ當ッテ
居リマシク關係等ガアリマスノデ、先程御
話致シマシタヤウニ、許可ニ依ッテ永續サセ
テ行ク考デ居リマス、ソレカラ職業紹介所ガ
官僚化スルト云フ意味ニ於キマシテ、獻身
的ニ天職トシテ之ニ當ルベキ人ヲ使ハナケ
レバナラヌデハナイカト云フ御尋デアリマ
シタガ、其點ハ先程來屢〓申上ゲマスヤウニ、
此紹介所ノ仕事ノ性質カラ申シマシテ、全ク
御同感デアリマス、是等ノ採用ニ付テハ、
可ナリ自由ナ裁量ヲ用ヒテ人ヲ採用シテ行
キタイト考ヘテ居リマス、尙ホ委員會ノ運
用ガ兎角形式的ニ流レルト云フ御話デアリ
マシタガ、此點ハ十分注意致シマシテ、委
員會其モノニ依ッテ十分地方ノ實情等ヲ反
映シテ、誤リナキヲ期シテ行キタイト考ヘ
テ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=34
-
035・川村保太郎
○川村保太郞君 尙ホ色々御伺致シタイ點
モアリマスガ、別ノ機會ニ讓リマシテ、私
ハ之ヲ以テ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=35
-
036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ質疑ハ終局致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=36
-
037・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、社會事業
法案外二件委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=37
-
038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=38
-
039・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=39
-
040・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第三ヲ繰上ゲ上
程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=40
-
041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=41
-
042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 、御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第三、農業保險法案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-農林大臣有馬賴寧君
第三農業保險法案(政府提出)第一讀會
農業保險法案
農業保險法
第一章農業保險
第一條市農會又ハ町村農會ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケ風
水害其ノ他ノ災害ニ因リ會員ノ被ル農
作物ノ收穫上ノ損失及小作料ノ取得上
ノ損失ニ付共濟金ノ交付ヲ爲ス事業
(共濟事業)ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ共濟事業ヲ行フ市農
會又ハ町村農會ハ之ニ因リ會員ニ對シ
テ負フ共濟責任ニ付相互保險ヲ爲ス目
的ヲ以テ農業保險組合ヲ設立スルコト
ヲ得
共濟責任ノ保險ニ付セラルベキ共濟ノ
目的タル農作物及小作料、共濟事故竝
ニ共濟責任期間ニ關スル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二條養蠶業ニ關スル共濟施設ヲ行フ
養蠶實行組合ニシテ主務大臣ノ認可ヲ
受ケタルモノハ前條第二項ノ規定ニ依
ル農業保險組合ノ設立者又ハ組合員タ
ルコトヲ得
第三條農業保險組合ハ法人トス
第四條農業保險組合ノ區域ハ郡又ハ郡
市ノ區域ニ依ル但シ特別ノ事由アルト
キハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
前項ノ規定ニ於テ郡トアルハ北海道
ニ在リテハ北海道廳支廳長管轄區域ト
ス
第五條農業保險組合ハ其ノ名稱中ニ農
業保險組合ナル文字ヲ用フベシ
農業保險組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱
中ニ農業保險組合ナル文字ヲ用フルコ
トヲ得ズ
第六條本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其
ノ事實ノ生ジタル後三週間以内ニ之ヲ
各事務所ノ所在地ニ於テ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ行政官廳ノ認可
ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ
在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコ
トヲ得ズ
第七條農業保險組合ニハ所得稅及營業
收益稅ヲ課セズ
第八條農業保險組合ガ本法ニ基キテ爲
ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第九條本法ニ依ル農業保險ニ關スル書
類ニハ印紙稅ヲ課セズ
第十條農業保險組合ヲ設立セントスル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ區域
ヲ定メ其ノ區域內ニ於テ組合員タルベ
キ資格ヲ有スル者ノ同意ヲ得テ創立總
會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項ヲ定
メ理事及監事ヲ選任シ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
前項ノ創立總會ノ決議ニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條農業保險組合ノ定款ニハ左ノ
事項ヲ記載スベシ
ー目的
二名稱
三區域
四事務所ノ所在地
五保險スベキ共濟責任
六保險料率
七準備金ノ積立及管理ノ方法
八共濟基金ニ關スル規定
九剩餘金處分及不足金塡補ノ方法
十組合員タル資格ニ關スル規定
十一組合員ノ加入及脫退ニ關スル規
定
十二事業執行ニ關スル規定
十三役員ニ關スル規定
十四組合ガ公〓ヲ爲ス方法
十五存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
タルトキハ其ノ時期又ハ事由
第十二條主務大臣特ニ必要アリト認ム
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ農業保
險組合ノ組合員タルベキ資格ヲ有スル
者ニ組合ヲ設立スベキコトヲ命ジ又ハ
組合ノ區域內ニ於テ組合員タル資格ヲ
有スル者ヲシテ其ノ組合ノ組合員タラ
シムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル
者命令ノ定ムル所ニ依リ設立ノ認可ヲ
申請セザルトキハ主務大臣ハ定款ノ作
成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ爲
スコトヲ得
第十三條農業保險組合ハ設立ノ認可ア
リタル時又ハ前條第二項ノ規定ニ依リ
定款ノ作成アリタル時成立ス
前條ノ規定ニ依ル組合ノ設立アリタル
トキハ其ノ組合ノ區域内ニ於テ組合員
タルベキ資格ヲ有スル者ハ其ノ組合ノ
組合員トス
第十四條農業保險組合ノ設立アリタル
トキハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一第十一條第一號乃至第三號、第十
四號及第十五號ニ揭ゲタル事項
二事務所
三成立ノ年月日
四理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ
第十五條農業保險組合ノ組合員ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ組合ノ行フ保險ニ付
セラルベキ第一條第三項ノ共濟ノ目的
及共濟事故ノ總テニ付共濟ヲ行フコト
ヲル、
第十六條農業保險組合ノ組合員タル市
農會又ハ町村農會及養蠶實行組合ハ其
ノ地區ガ重複スル場合ニ於テハ命令ノ
定ムル所ニ依リ同一地區內ノ同一ノ共
濟ノ目的ニ付重複シテ組合ノ保險ニ付
スルコトヲ得ズ
第十七條農業保險組合ノ組合員ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ第一條第三項ノ共濟
ノ目的及共濟事故ニ付組織員ニ對シテ
負フ共濟責任ノ總テヲ保險ニ付スベシ
組合ハ組合員ニ對シ正當ノ事由ナクシ
テ保險ノ引受ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十八條農業保險組合ノ組合員ハ定額
ノ保險料ヲ醵出スルコトヲ要ス
保險料及保險金額ニ關スル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條農業保險組合ハ第一條第三項
ノ共濟ノ目的タル農作物及同項ノ共濟
ノ目的タル小作料ノ生ズル小作地ノ農
作物ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ
割合以上ノ被害アリタル場合ニ限リ其
ノ被害程度ニ應ジテ定メタル保險金ヲ
組合員ニ對シ支拂フモノトス
第二十條農業保險組合ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ保險金ノ支拂ニ不足ヲ生ズル
トキハ保險金額ヲ削減スルコトヲ得
第二十一條農業保險組合ノ組合員ハ組
合ニ醵出スベキ保險料ニ付相殺ヲ以テ
組合ニ對抗スルコトヲ得ズ
第二十二條農業保險組合ノ組合員保險
料ノ拂込ヲ遲滯シタルトキハ組合ハ其
ノ遲滯期間中ニ生ジタル事故ニ對シテ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ保險金ノ全部
又ハ一部ニ付支拂ノ責ヲ免ルルコトヲ
得
第二十三條農業保險組合ノ組合員ハ命
令ノ定ムル所ニ依リ第一條第三項ノ共
濟ノ目的タル農作物及同項ノ共濟ノ目
的タル小作料ノ生ズル小作地ノ農作物
ニ付耕作細目書ヲ組合ニ提出スベシ
組合員惡意又ハ重大ナル過失ニ因リ前
項ノ耕作細目書ノ提出ヲ怠リ又ハ之ニ
不實ノ記載ヲ爲シタルトキハ組合ハ命
令ノ定ムル所ニ依リ保險金ノ全部又ハ
一部ニ付支拂ノ責ヲ免ルルコトヲ得
第二十四條農業保險組合ノ組合員ハ第
一條第三項ノ共濟ノ目的タル農作物及
同項ノ共濟ノ目的タル小作料ノ生ズル
小作地ノ農作物ニ付通常爲スベキ肥培
管理其ノ他損害防止ニ付指導ヲ爲スベ
シ
組合員惡意又ハ重大ナル過失ニ因リ前
項ノ規定ニ違反シタルトキハ組合ノ命
令ノ定ムル所ニ依リ保險金ノ全部又ハ
一部ニ付支拂ノ責ヲ免ルルコトヲ得
第二十五條農業保險組合ハ定款ノ定ム
ル所ニ依リ損害ノ防止ニ關シ必要ナル
施設ヲ爲スコトヲ得
第二十六條農業保險組合ハ組合員ヲシ
テ損害ノ防止ノ爲特ニ必要ナル處置ヲ
爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ
組合員ノ負擔シタル費用ハ組合ノ負擔
トス
組合員前項ノ規定ニ依ル組合ノ指示ニ
從ハザルトキハ組合ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ保險金ノ全部又ハ一部ニ付支拂
ノ責ヲ免ルルコトヲ得
第二十七條農業保險組合ハ損害ノ防止
又ハ損害ノ評價ノ爲必要アルトキハ何
時ニテモ組合員ノ組織員ノ耕作スル土
地ニ立入リ又ハ其ノ耕作及收穫ノ狀況
ヲ調査スルコトヲ得
第二十八條農業保險組合ノ組合員ハ命
令ヲ以テ定ムル事故發生シタルトキハ
遲滯ナク其ノ旨ヲ組合ニ通知スベシ
組合員ハ第一條第三項ノ共濟ノ目的タ
ル農作物及同項ノ共濟ノ目的タル小作
料ノ生ズル小作地ノ農作物ニ付共濟金
ノ支拂ヲ爲スベキ損害アリト認メタル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ遲滯ナク
其ノ旨ヲ組合ニ通知スベシ
組合員前二項ノ規定ニ違反シタルトキ
ハ組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ保險金
ノ全部又ハ一部ニ付支拂ノ責ヲ免ルル
コトヲ得
第二十九條農業保險組合ノ組合員ノ支
拂フ共濟金ノ額ハ組合ヨリ支拂ハレタ
ル保險金ノ額ヲ下ラザルコトヲ要ス
第三十條農業保險組合ノ組合員ハ第二
十二條、第二十三條第二項、第二十四
條第二項、第二十六條第二項又ハ第二
十八條第三項ノ規定ニ依リ保險金ノ全
部又ハ一部ノ支拂ヲ受ケザルトキト雖
モ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ組織員ノ
責ニ歸スベキ事由ナキ限リ共濟金ヲ支
拂フコトヲ要ス
第三十一條耕地ノ所有者ガ農業保險組
合ノ組合員ヨリ第一條第三項ノ共濟ノ
目的及共濟事故ニ付共濟金ノ支拂ヲ受
クルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ共濟
金ノ額ニ相當スル部分ノ小作料ハ之ヲ
請求スルコトヲ得ズ
他人ノ土地ニ付耕作ヲ營ム者ガ組合員
ヨリ第一條第三項ノ共濟ノ目的及共濟
事故ニ付共濟金ノ支拂ヲ受クルモ之ニ
因リ其ノ土地ニ付權利ヲ有スル者トノ
間ノ權利義務ニ影響ヲ及ボスコトナシ
第三十二條行政官廳必要アリト認ムル
トキハ農業保險組合ヲシテ組合員ノ第
一條第三項ノ共濟ノ目的及共濟事故ニ
關スル共濟金支拂ノ義務ニ代ヘ組合員
ノ組織員ニ對シ保險金ヲ支拂ハシムル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ組合ハ組合
員ニ對スル保險金支拂ノ義務ヲ免ル
第三十三條農業保險組合ノ組合員ガ第
一條第三項ノ共濟ノ目的及共濟事故ニ
付支拂フ共濟金ニ關シテハ民事訴訟ヲ
提起スルコトヲ得
第三十四條農業保險組合ヨリ保險金ノ
支拂ヲ受クル權利及組合ノ組合員ヨリ
共濟金ノ支拂ヲ受クル權利ハ之ヲ讓渡
シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三十五條商法第三百九十七條、第三
百九十九條、第四百條、第四百三條第
一項及第四百十七條ノ規定ハ農業保險
ニ之ヲ準用ス
第九條及商法第四百十七條ノ規定ハ農
業保險組合ノ組合員ガ第一條第三項ノ
共濟ノ目的及共濟事故ニ關シ共濟事業
又ハ共濟施設ヲ行フ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六條農業保險組合ハ保險事業ヲ
行フノ外命令ノ定ムル所ニ依リ總會ノ
議決ヲ經テ行政官廳ノ認可ヲ受ケ共濟
基金ヲ積立テ組合員ニ對シ共濟金ノ交
付ヲ爲ス事業ヲ行フコトヲ得
第九條及第三十四條竝ニ商法第四百十
七條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テハ組合員ノ組合ヨ
リ交付セラルル共濟金ヲ組織員ニ交付
スル爲之ニ關スル規程ヲ設ケ行政官廳
ノ認可ヲ受クベシ
第九條、第二十九條及第三十三條竝ニ
商法第四百十七條ノ規定ハ前項ノ規程
ニ基キ組合員ガ共濟金ノ交付ヲ爲ス場
合ニ之ヲ準用ス
第三十七條農業保險組合ニハ理事及監
事ヲ置ク
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員クル法
人ノ役員ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ設立
當時ノ理事及監事ハ第三十八條ノ場合
ヲ除クノ外創立總會ニ於テ組合員タル
ベキ資格ヲ有スル法人ノ役員ノ中ヨリ
之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ組合ハ行政官廳
ノ認可ヲ受ケ前項ニ該當セザル者ヨリ
理事又ハ監事ヲ選任スルコトヲ得
第三十八條主務大臣第十二條第二項ノ
規定ニ依リ定款ヲ作成シタルトキハ農
業保險組合ノ理事及監事ヲ命ズ
第三十九條理事ハ定款及總會ノ決議錄
ヲ各事務所ニ備置キ且命令ノ定ムル所
ニ依リ組合員名簿ヲ主タル事務所ニ備
置クベシ
第四十條理事ハ通常總會ノ會日ヨリ
週間前ニ財產目錄、貸借對照表、事業
報告書、損益計算書及剩餘金處分案又
ハ不足金塡補案ヲ監事ニ提出シ且之ヲ
主タル事務所ニ備フベシ
第四十一條農業保險組合ノ組合員及組
合ノ債權者ハ前二條ノ書類ノ閱覽ヲ求
ムルコトヲ得
第四十二條農業保險組合ト理事トノ利
益相反スル事項ニ付テハ血事組合ヲ代
表ス
理事缺ケタルトキハ監事其ノ職務ヲ行
フ但シ其ノ期間ハ三月ヲ超ユルコトヲ
得ズ
理事ノ職務ヲ行フ者ナキトキハ行政官
廳ハ假ニ理事ヲ選任スルコトヲ得
第四十三條農業保險組合ノ組合員ハ總
會ニ於テ各一箇ノ議決權ヲ有ス但シ定
款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決權總
數ノ十分ノ一ヲ超エザル範圍內ニ於テ
二箇以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ
得
第四十四條農業保險組合ノ組合員ハ書
面又ハ代理人ヲ以テ議決權ヲ行フコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做
ス
前項ノ代理人ハ組合員タルコトヲ要ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ
提出スベシ
第四十五條總會ノ招集ノ手續又ハ決議
ノ方法ガ法令又ハ定款ノ規定ニ違反ス
ルトキハ農業保險組合ノ組合員ハ決議ノ
日ヨリ一月以内ニ其ノ決議ノ無效ノ宣
告ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
商法第百六十三條第二項第三項及第百
六十三條ノ四ノ規定ハ前項ノ場合ニ之
ヲ準用ス
第四十六條農業保險組合ノ事業年度ハ
一年トス
第四十七條農業保險組合ハ每事業年度
ノ終ニ於テ存スル農業保險ニ付命令ノ
定ムル所ニ依リ責任準備金ヲ積立ツベ
シ
第四十八條農業保險組合ハ不足金ノ塡
補ニ備フル爲每事業年度ノ剩餘金中ヨ
リ命令ノ定ムル所ニ依リ準備金ヲ積立
ツベシ
第四十九條農業保險組合ノ組合員命令
ノ定ムル所ニ依リ一定年間自己ノ責ニ
歸スベキ事由ナクシテ組合ヨリ保險金
ノ支拂ヲ受ケザルトキ又ハ支拂ヲ受ケ
タル保險金ガ一定額ニ滿タザルトキハ
組合ハ組合員ニ對シ保險料ノ一部ニ相
當スル金額ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得
商法第四百十七條ノ規定ハ前項ノ場合
ニ之ヲ準用ス
第五十條第三十六條第一項ノ共濟基金
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農業保險組合
ノ每事業年度ノ剩餘金ノ一部及組合員
ヨリ徵收シタル共濟掛金ヲ以テ之ニ充
ツ
前項ノ共濟基金ハ共濟金又ハ前條ノ拂
戾金ノ支拂其ノ他命令ヲ以テ定ムル場
合ヲ除クノ外之ヲ他ノ費用ニ充ツルコ
トヲ得ズ
第五十一條農業保險組合ハ組合員タル
資格ヲ有スル者ニ對シ正當ノ事由ナク
シテ組合員ト爲ルコトヲ拒ムコトヲ得
ズ
第五十二條農業保險組合ノ組合員タル
法人ニ付合併又ハ分割アリタルトキハ
合併後存續スル者ニシテ組合員タラザ
ルモノ又ハ合併若ハ分割ニ因リテ設立
シタル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ組合
ニ加入シタルモノト看做ス
第五十三條地區ノ重複スル市農會又ハ
町村農會及養蠶實行組合ハ協議ノ上主
務大臣ノ認可ヲ受ケ命令ノ定ムル所ニ
依リ其ノ一方ガ農業保險及第三十六條
第一項ノ規定ニ依ル事業ニ關シテ有ス
ル權利義務ヲ承繼スルコトヲ得
第五十四條農業保險組合ノ組合員ハ左
ノ事由ニ因リテ組合ヨリ脫退ス
-第一條第三項ノ共濟ノ目的及共濟
事故ニ關スル共濟事業又ハ共濟施設
ノ廢止
二解散又ハ合併若ハ分割ニ因ル消滅
第五十五條農業保險組合ノ組合員ハ組
合ヲ脫退シタルトキト雖モ脫退ノ日ノ
屬スル事業年度ノ保險金額ノ削減ニ關
シテハ其ノ義務ヲ免ルルコトヲ得ズ
第五十六條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ農業保險組合ノ組合員ノ支拂フベキ
保險料ノ一部ヲ負擔ス
第五十七條行政官廳ハ農業保險組合ニ
對シ組合ノ事業又ハ財產ニ關スル報〓
ヲ爲サシメ、組合ノ事業又ハ財產ノ狀
況ヲ檢査シ其ノ他監督上必要ナル命令
ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十八條農業保險組合ノ事業若ハ財
產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲若ハ
決議ガ法令若ハ定款ニ違反シ其ノ他公
益ヲ害スルノ虞アルトキハ行政官廳ハ
決議ヲ取消シ、理事若ハm事ヲ解任シ、
組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ノ解散ヲ
命ズルコトヲ得
第五十九條農業保險組合ハ左ノ事由ニ
因リテ解散ス
一定款ニ定メタル事由ノ發生
二總會ノ決議
三組合ノ合併
四組合ノ破產
五行政官廳ノ解散ノ命令
解散及合併ノ決議ニ關シ必要ナル事項
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十條農業保險組合ガ合併ノ決議ヲ
爲シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週
間以内ニ財產目錄及貸借對照表ヲ作ル
ベシ
組合ハ前項ノ期間內ニ其ノ債權者ニ對
シ異議アラバ一定期間內ニ之ヲ述ブベ
キ旨ヲ定款ノ定ムル方法ニ從ヒ公〓シ且
知レタル債權者ニ各別ニ之ヲ催告スベシ
但シ其ノ期間ハ二月ヲ下ルコトヲ得ズ
債權者前項ノ期間內ニ合併ニ對シテ異
議ヲ述ベザリシトキハ之ヲ承認シタル
モノト看做ス
債權者ガ異議ヲ述ベタルトキハ組合ハ
合併前之ニ對シ辨濟ヲ爲シ又ハ相當ノ
擔保ヲ供スベシ
第二項又ハ前項ノ規定ニ違反シテ爲シ
タル合併ハ之ヲ無效トス
第六十一條農業保險組合ガ解散シタル
トキハ合併ノ場合ヲ除クノ外保險關係
ハ終了ス
前項ノ場合ニ於テハ組合ハ未ダ經過セ
ザル期間ニ對スル保險料ヲ拂戾スベシ
第六十二條農業保險組合ガ解散シタル
トキハ合併及破產ニ因ル場合ヲ除クノ
外〓算人ノ氏名及住所竝ニ解散ノ原因
及年月日ノ登記ヲ爲スベシ但シ行政官
廳ノ命令ニ因リ解散シタルトキハ解散
ノ原因及其ノ年月日ノ登記ヲ爲スコト
ヲ要セズ
前項ノ規定ニ依リ登記シタル事項中ニ
變更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ爲ス
ベシ
第六十三條行政官廳農業保險組合ノ解
散ヲ命ジタルトキハ解散ノ原因及其ノ
年月日ノ登記ヲ囑託スベシ
登記所ハ前項ノ囑託ニ因リテ其ノ登記
ヲ爲スベシ
第六十四條設立ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ノ申請ニ依リテ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ定款竝ニ理事及監事ノ資格
ヲ證スル書面ヲ添附スベシ
合併ニ因ル設立ノ登記ニハ前項ノ書面
ノ外合併ニ關スル總會ノ決議錄ヲ添附
ストン
第六十五條事務所ノ新設、移轉其ノ他
登記事項ノ變更ノ登記ハ理事、其ノ職
務ヲ行フ監事又ハ〓算人ノ申請ニ依リ
テ之ヲ爲スベシ但シ合併ニ因ル變更ノ
登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ依リ
テ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面
及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附
スベシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル
申請人ガ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要セズ
第六十六條合併ニ因ル解散ノ登記ハ解
散シタルトキノ理事及事ノ全員ノ申
請ニ依リテ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ總會ノ決議錄及第六十條ノ
手續ヲ爲シタルコトヲ證スル書面ヲ添
附スベシ
第六十七條民法第四十四條第一項、第
四十五條第二項第三項、第四十八條、
第五十條、第五十二條第一一項、第五十三
條乃至第五十五條、第五十九條、第六
十條、第六十一條第一項、第六十二條、
第六十四條、第六十六條、第七十條及
第七十三條乃至第八十三條、非訟事件
手續法第三十五條第二項、第三十六條、
第三十七條ノ二、第百二十二條、第百
三十六條乃至第百三十八條、第百四十
二條乃至第百五十一條ノ六、第百五十
四條乃至第百五十七條、第百七十五條、
第百七十六條、第百七十八條及第百九
十五條ノ二竝ニ產業組合法第二十三
條、第二十七條、第二十八條、第三十
條第三十三條、第三十四條ノ二第
二項、第三十六條、第三十九條、第六
十五條、第六十六條第一項、第六十七
條、第七十條、第七十四條ノ二第一項、
第九十六條、第九十七條及第百四條ノ
規定ハ農業保險組合ニ之ヲ準用ス但シ
民法第四十五條第三項、第四十八條第
一項及第七十七條ノ規定中一週間トア
ルハ三週間トシ產業組合法第二十八條
(同法第三十九條ニ於テ準用スル場合
ヲ含ム)中四分ノ三トアルハ三分ノ二
トシ同法第三十九條及第六十五條中地
方長官トアルハ行政官廳トス
第二章農業再保險
第六十八條本法ニ依ル農業保險ノ再保
險事業ハ農業保險組合聯合會及政府之
ヲ行フ
第六十九條農業保險組合ハ農業保險組
合聯合會ヲ設立スベシ
聯合會ノ區域ハ道府縣ノ區域ニ依ル
第七十條農業保險組合ガ農業保險ノ引
受ヲ爲シタルトキハ之ニ因リテ農業保
險組合聯合會ト組合トノ間ニ再保險關
係成立スルモノトス
聯合會ト組合トノ間ニ再保險關係成立
シタルトキハ之ニ因リテ政府ト聯合會ト
ノ間ニ再保險關係成立スルモノトス
第七十一條農業再保險ノ再保險金額ハ
農業保險組合聯合會ノ行フ再保險ニ在
リテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ元受保險
金額ノ一定割合ニ相當スル金額トシ政
府ノ行フ再保險ニ在リテハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ聯合會ノ總再保險金額中異
常災害ニ對應スル金額トス
再保險料ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之
マルト
第七十二條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ農業保險組合聯合會ノ農業保險組合
ニ對スル支拂再保險金ガ聯合會ノ總再
保險金額中ノ一定額ヲ超過シタル場合
ニ於テ再保險金ヲ支拂フモノトス
第七十三條農業保險組合ハ農業保險ノ
引受ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所
ニ依リ農業保險組合聯合會ニ對シテ其
ノ旨ヲ通知スベシ
聯合會ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ對シテ其
ノ旨ヲ通知スベシ
第七十四條左ノ場合ニ於テハ農業保險
組合聯合會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ再
保險金ノ全部又ハ一部ノ支拂ノ責ニ任
ゼズ
一農業保險組合ガ法令又ハ定款ニ違
反シテ保險金ヲ支拂ヒタルトキ
二組合ガ損害額ヲ不當ニ認定シテ保
險金ヲ支拂ヒタルトキ
三組合ガ不正ノ目的ヲ以テ前條ノ規
定ニ依ル通知ヲ怠リ又ハ不實ノ通知
ヲ爲シタルトキ
前項ノ規定ハ政府ノ行フ農業再保險ニ
之ヲ準用ス
第七十五條農業保險組合聯合會成立シ
タルトキハ其ノ區域內ノ農業保險組合
ハ其ノ聯合會ノ會員トス
第七十六條農業保險組合ハ解散ニ因リ
農業保險組合聯合會ヨリ脫退ス
第七十七條農業保險組合ガ再保險ニ關
スル事項ニ付農業保險組合聯合會ニ對
シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ道府縣農
業再保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要
ス
聯合會ガ再保險ニ關スル事項ニ付政府
ニ對シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ農業
再保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
前二項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關
シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
農業再保險審査會及道府縣農業再保險
審査會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第七十八條第三條、第五條、第七條乃
至第十二條、第十三條第一項、第十四
條、第三十七條乃至第四十八條、第五
十七條乃至第五十九條、第六十一條乃
至第六十三條、第六十四條第一項第二
項及第六十五條、民法第四十四條第一
項、第四十五條第二項第三項、第四十
八條、第五十條、第五十二條第二項、
第五十三條乃至第五十五條、第五十九
條、第六十條、第六十一條第一項、第
六十二條、第六十四條、第六十六條、第
七十條及第七十三條乃至第八十三條、
非訟事件手續法第三十五條第二項、第
三十六條、第三十七條ノ二、第百二十
二條、第百三十六條乃至第百三十八條、
第百四十二條乃至第百五十一條ノ六、
第百五十四條乃至第百五十七條、
第百七十五條、第百七十六條、第百七
十八條及第百九十五條ノ二竝ニ產業組
合法第二十三條、第二十七條、第二十
八條、第三十一條、第三十三條、第三
十四條ノ二第二項、第三十六條、第三
十九條、第六十五條、第七十條、第七
十四條ノ二第一項、第九十六條、第九十
七條及第百四條ノ規定ハ農業保險組合
聯合會ニ之ヲ準用ス但シ民法第四十五
條第三項、第四十八條第一項及第七十
七條ノ規定中一週間トアルハ三週間ト
シ產業組合法第二十八條(同法第三十
九條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)中四
分ノ三トアルハ三分ノ二トシ同法第三
十九條及第六十五條中地方長官トアル
ハ行政官廳トシ第五十九條及第六十五
條竝ニ產業組合法第六十五條ノ規定中
組合ノ合併ニ關スル規定ヲ除ク
商法第三百九十一條ノ規定ハ農業保險
組合聯合會ノ行フ農業再保險ニ之ヲ準
用ス
第二十八條第二項第三項及第三十四條
竝ニ商法第三百九十七條、第三百九十
九條、第四百條及第四百十七條ノ規定
ハ農業再保險ニ之ヲ準用ス
第三章罰則
第七十九條左ノ場合ニ於テハ農業保險
組合又ハ農業保險組合聯合會ノ理事、
監事又ハ〓算人ヲ五圓以上五百圓以下
ノ過料ニ處ス
一本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受クベキ場
合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
三行政官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申
立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
四本法ニ依リ行政官廳ノ徴スル報告
ヲ差出サズ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
他行政官廳ノ命令若ハ處分ニ從ハザ
ルトキ
五本法ニ依ル總會ノ招集ヲ怠リタル
トキ
六組合又ハ聯合會ノ目的ニ非ザル事
業ヲ爲シタルトキ
七本法ニ依リ事務所ニ備置クベキ書
類ヲ備ヘズ、其ノ書類ニ記載スベキ
事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲
シ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱覽
ヲ拒ミタルトキ
八本法ニ違反シテ破產ノ宣〓ヲ請求
セザルトキ
九第四十七條(第七十八條ニ於テ準
用スル場合ヲ含ム)、第五十條及第六
十條ノ規定ニ違反シタルトキ
十本法ニ依ル公〓ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
十一〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シ
テ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ處分ヲ
爲シタルトキ
十二法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金
ヲ處分シ又ハ保險金額ヲ削減シタル
トキ
第八十條第五條第二項(第七十八條ニ
於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違
反シタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過
料ニ處ス
第八十一條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=42
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043・有馬頼寧
○國務大臣(伯爵有馬賴寧君) 只今議題ト
ナッテ居リマス農業保險法案ニ付テ御說明
致シタイト思ヒマス、申ス迄モナク農業ハ
自然界ノ影響ヲ受ケルコトガ極メテ多イ產
業デアリマシテ、特ニ我國ノ農業ハ氣象上、
地理上ノ關係カラ、農作物ノ災害其他農業
上ノ災害ハ、年々全國ニ亙ッテ頻發シ、其損
害額モ頗ル多額ニ上ッテ居ル實情デアリマ
ス、之ヲ過去ノ統計カラ見マスルト、農作
物ノ災害ノミニ付テ見マシテモ、年々ノ被
害面積ハ百万町步、其損害額ハ一億圓餘ニ
達シテ居ルノデアリマス、然ルニ我國ノ農
業經營ハ其規模極メテ小サク、一戶當リ耕
作面積ハ一町步餘ニ過ギズ、隨テ農家ノ經
濟モ餘裕少ク、彈力性ヲ缺イテ居リマスノ
デ、一タビ災害ガ發生致シマシタ場合、其
損失ニ堪ヘルコトハ頗ル困難デアリマシテ、
直接農家ノ經濟、農家ノ生活ニ非常ナ脅威
ヲ與フルコトトナル譯デアリマス、卽チ農
家ノ收入源泉ガ失ハルヽ爲メ、翌年ノ農業
生產ニ支障ヲ來シ、農業生產力ニ影響スル
所大ナルモノガアリ、又農家ノ負債ヲ增加
セシムルコトトモナルノデアリマス、政府
ト致シマシテモ、從來災害ガ廣範圍ニ互リ、
又ハ被害程度ガ著シイ場合ニハ其都度各種
ノ救濟ヲ行ッテ來テハ居リマスガ、年々之ヲ
臨機應急ノ措置ノミニ委ヌルコトハ、何ト
申シマシテモ不十分ト言ハネバナラヌノデ
アリマシテ、現下ノ農村事情ニ鑑ミ、農業
災害ニ對シテハ、是ガ救濟施設ニ付制度化
致シマスコトガ、極メテ緊要ト考ヘラレル
ノデアリマシテ、此爲ニ今般農業保險制度
ヲ樹立シテ、一定災害ニ因ル損害ノ塡補輕
減ヲ圖リ、農業經營、農家經濟ヲ安定セシ
メ、以テ農業生產力ノ維持增進ト、農村ノ
經濟更生トニ資セントスルノデアリマス、
本案ノ要旨ハ、農業保險ノ元受保險事業ハ
相互組合タル農業保險組合ヲシテ之ヲ行ハ
シムルコトトシ、組合ハ市町村農會及ビ地
方ノ實情ニ依リ、養蠶實行組合ヲ其組合員
ト致シマシテ、組合員タル是等團體ノ行フ
共濟事業ニ基ク共濟責任ニ付保險ヲ行ヒ、
農家ハ共濟事業ヲ通ジテ保險ノ利益ヲ亨受
スルコトト致シタノデアリマス、更ニ農業
保險ノ再保險事業ハ、農業保險組合ノ組織
スル農業保險組合聯合會ヲシテ之ヲ行ハシ
メ、聯合會ノ行フ再保險ニ對シマシテハ、
政府ガ更ニ再保險事業ヲ行フコトト致シテ
居ルノデアリマス
以上ハ本案提出理由ノ大體デアリマスガ、
何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望ス
ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=43
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044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-山本条吉君
〔山本条吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=44
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045・山本粂吉
○山本粂吉君 私ハ只今御上程ニナリマシ
タ農業保險法案ニ對シマシテ、二三質疑ヲ
試ミヨウトスルモノデアリマス、本法案ガ
當議會ニ提案セラレマシタコトハ、全國三
千万農民ガ非常ナ期待ヲ以テ待ッテ居タコ
トヲ實行セラレタ結果ニナリマスノデ、恐ラ
ク本法案ノ實施セラレマスルコトヲ、一日
千秋ノ思ヒデ待ッテ居ルモノト信ズルノデ
アリマス、而シテ其法案提出ノ理由ヲ檢討
致シマスルト、災害ノ損害ガ極メテ甚大デ
アルガ爲ニ、農家負債ノ原因ガ生ズルカラ、
之ヲ控除スル、而シテ以テ農家經濟ノ安定
ヲ圖ルノデアルト云フコトニ歸著スルヤウ
デアリマスガ、玆ニ提案セラレマシタ法律
案ニ依リマシテ、果シテ以上提案理由ノ如
キ重大ナル目的ヲ貫徹スルコトガ出來ルカ
ドウカト云フコトニ對シテ、疑問ヲ持ツモ
ノデアリマス、但シ本法案ニ依リマシテハ、
未ダ保險料ト保險金トノ關係、被保險災
害ノ程度ト保險金トノ關係等ノ一切ハ、命
令ニ委任セラレテ居リマスノデ、其内容ヲ
承知スルコトガ出來マセヌカラ、是等ノ點
ニ付キマシテハ、何レ委員會ニ於テ詳細質
疑ヲ試ミルコトニ致シマシテ、私ハ現在ノ
我國農村ノ實情カラ考ヘテ、本法案ニ依ル、
所謂保險組合制度ニ依ル農業保險ハ、未ダ
我國ノ貧窮ニ陷ッテ居ル農村ヲ救濟スルニハ
不十分デアルト考ヘルモノデアリマス
卽チ第一ニ私ノ御尋致シタイ點ハ、政府
ハ農業保險ヲ全部國營ニスル意思ガアルカ
ナイカ、御承知ノ如ク現在ノ我國ノ農家ノ
實情ハ、私ガ此處デ申上ゲルマデモナク、
數十年ノ間農民救濟ヲ叫バレ、農村救濟ヲ
叫バレテ居リマスケレドモ、未ダ農民ノ經
濟安定ヲ來シタト云フコトヲ聞カナイ、ソ
レト反對ニ益〓生活不安ノ狀態ニ陷リツヽア
ルノデアリマス、其原因ヲ煎ジ詰メルト、
結局收支ノ均衡ヲ得ナイト云フコトニ歸著
スルノデアル、收支ノ均衡ヲ得ザル原因ヲ
更ニ探究スルト、結局不測ノ災害ニ因ル被
害ニ依ッテ負ウタル債務ノ爲メデアッテ、之
ニ依ッテ到底浮ビ上ルコトガ出來ナイ實情
ニ立至ッテシマウノガ、多クノ農民ノ悲慘ナ
ル生活ノ原因ナノデアリマス、而シテ農家
ノ最モ恐ルベキ災害ハ、他ノ事業ノ危險ニ
比ベテ、甚シク危險率ガ多イノデアリマス、
卽チドノ事業ニモ事業上ノ危險ノアルコト
ハ申スマデモアリマセヌケレドモ、社會ニ
存在スル企業危險ハ、現在ノ科學ノ力ヲ以
テシテ、或ル程度マデ之ヲ豫測スルコトガ
出來ル、豫測スルコトガ出來ルカラシテ、
之ニ對スル對策モ亦講ズルコトガ出來ル、
然ルニ農業上ノ事業危險ハ、現在ノ科學ノ
力デ到底豫測スルコトノ出來ナイ部分ガ、
其大部分ヲ占メテ居ルノデアリマス、科學
ノ力デ豫測スルコトガ假ニ出來タトシテ
モ、現在ノ農家ニ之ニ對應スルダケノ準備
ヲサセル餘裕ガ經濟的ニ存スルヤ否ヤ、私
ガ申上ゲル迄モナク、現在ノ農家ニハ其餘
裕ガ全然存シナイ、隨テ此災害ニ對スル危
險ヲ負擔スベキモノハ、當然國家全體觀ヨ
リスルモ、國家ガ之ヲ負擔スベキモノデア
ルト私ハ信ズルノデアリマス、國家ガ危險
ヲ負擔スルト云フコトハ、取モ直サズ此保
險法案ヲ國營ニスルト云フコトデアル、卽
チ現在ノ此法案ニ依ルト、組合員ノ單位ガ
市又ハ町村農會デアル、其農會ノ事業、卽
チ共濟事業ノ資ニ供スル爲ニ保險組合ガ設
立セラレル、然ルニ現在ノ市町村農會ハ、
農民ヨリ農會費ヲ納メサセルコトスラ非常
ナ困難ヲ來シテ居ル、農會費未納ノ爲ニ農
會其モノノ存立スラ出來ナイヤウナ町村ガ、
全國ニ大分存在スルコトヲ承知シテ居ル
ノデアリマス、此農會ヲ組合員トシテ、更
ニ保險料ヲ農民ヨリ徵收シ、之ヲ保險組合
ニ支拂ハセテ、保險組合ハ更ニ再保險料ヲ
支拂ハレル、斯ノ如キ制度ニ依ッテ如何ナ
ル結果ヲ招來スルカト想像致シマスルニ、
恐ラクハ現在ノ農民ガ果シテ其農業保險、
卽チ保險料ノ支拂ニ堪へラレルヤ否ヤ、是
ガ此法案ヲシテ果シテ政府所期ノ目的ヲ達
セシムルヤ否ヤノ、最重大ナル點ト思料ス
ル者デアリマス(拍手)若シ農民ガ保險料ノ
支拂スラ不可能ナリトセバ、本法案ニ依ッテ
ハ災害ニ罹ッテモ、悲シイ哉保險金ノ一部
若クハ全部ヲ拂ッテ貰フコトガ出來ナイコ
トニナッテ居ル、故ニ私ハ先ヅ第一ニ御尋致
シマスルノハ、本法案ノ如キ趣旨ニ於テ結
構デアリマスルカラ、唯其保險料ヲ免除
シ、卽チ國家ガ總テノ危險ヲ負擔シテ、國
家全體觀ヨリ國營ノ農業保險制度樹立ノ意
思アリヤ否ヤヲ伺ヒタイト思ヒマス
第二ハ、若シ政府ガ國營ノ農業保險制度
確立ノ意思ナシトスルナラバ、又不可能ナ
リトスルナラバ、セメテ保險料ノ全額ヲ國
家ガ之ヲ負擔スル意思アリヤ否ヤ、此點ヲ
第二ニ御伺シタイト思ヒマス
第三ニハ、本法案ニ依リマシテハ、未ダ
保險料ト保險金額トノ關係ガ明瞭デアリマ
セヌカラ、之ヲ窺フノ餘地ガアリマセヌガ、
保險金額ヲ增大シテ、農民ノ五箇年平均ノ
收益ヲ標準トシテ、ソレニ滿ツルマデ國家
ガ危險負擔ヲシテ補助スル意思アリヤ否
ヤ、卽チ本法案ニ依リマスルト、保險料ト
保險金トノ割合ガ不明確デアリマスルカラ
分カリマセヌケレドモ、恐ラクハ本法案ノ
趣旨ヨリ致シマシテ、到底平均收益ニ滿ツ
ルマデ國家ガ之ヲ補助スル意思ナキコトハ、
明ニ窺ヒ知ルコトガ出來ルノデアリマス、
斯ノ如キ狀態デハ災害ヲ被ッタ農民ノ、其年
ニ於ケル收益ヲ平均率マデ補助スルニアラ
ズンバ、所謂二階カラ目藥、飛行機ヨリ目
藥程度ノ救濟ニ過ギナクナッテシマッテ、到
底保險ノ目的ヲ貫徹スルコトガ出來ナイト
思フノデアリマス、故ニ私ハ少クトモ五箇
年平均收益ニ滿ツル迄ハ、國家ガ如何ナル
災害ニ當ッテモ、之ヲ補助スルダケノ準備ヲ
必要トスルモノト考ヘルノデアリマス、故
ニ本法案ニ於キマシテモ、此保險金ノ支拂
ニ付テハ再々保險卽チ國家ガ保險金ノ支拂
ヲ爲ス場合ニ於テハ、少クトモ此平均率ニ
滿ツルダケノ補助ヲ爲ス御考アリヤ否ヤヲ
御尋スル次第デアリマス
第四ニ、從來ノ新シク生ズル制度ニ付キ
マシテハ、其手續ノ煩雜ナル爲ニ、而シテ
政府ノ監督ガ其宜シキヲ得ザル爲ニ、非常
ナ弊害ヲ來シテ居ルコトハ、產業組合ノ例
ニ付テモ、其他ノ政府事業ニ付テモ多々ア
ルノデ、其實例ヲ申上ゲル必要ハナイ程存
在シテ居ルノデアリマス、ソコデ第四番目
ニ、私ニ兎ニ角手續ヲ簡易ニシテ、實質上
ノ效果ヲ得ルコトニ留意シ、嚴正公平ナル
指導監督ヲ爲スコトニ付テノ手段方法ニ付
テ、如何ナル對策ヲ持ッテ居ルカト云フコト
ヲ御尋シタイノデアリマス、卽チ本法案ノ
如ク災害ノ救濟ヲ目的トスル法案ニ付キマ
シテハ、急速ニ其災害救濟ガ出來ナケレバ、
半バ目的ヲ沒却シテシマフノデアリマス、
卽チ其災害ノ招來シタ時ニ、ソレガ異常災
害デアリ、國家ガ之ニ對シテ保險金ヲ支拂
フ場合ノ如キニ立至リマシタ時ニ、從來ノ
如ク政府ノ調査、政府ノ監督其宜シキヲ得
ザル爲ニ長時日ヲ要シテ、爲ニ農民ノ悲慘
ナル災害ノ救濟ノ目的ノ半バヲ沒却シテシ
マフト云フヤウナコトハ、想像ニ難クナイ
ノデアリマス、敢テ官僚獨善ヲ攻擊スル譯
デハアリマセヌガ、兎ニ角本法案ノ如キ急
速ヲ尊ブ救濟ニ付テハ、只今質疑致シマシ
タ手續ノ簡易化ト、嚴正公平ナル指導監督
ヲシテ、實質上ノ效果ヲ得ルニ付テノ特別
ノ御考ヲ必要トスルモノト思フノデアリマ
ス、故ニ此點ニ付テ對策アリヤ否ヤヲ御尋
スル次第デアリマス
最後ニ農業保險制度ハ本法案ニ依ッテ曲
リナリニモ出來マシタケレドモ、是ト相對
シテ漁村ニ於ケル漁業保險ヲ設置スル意思
ガ政府ニアリヤ否ヤ、現在ノ漁村ニ於テ漁
業保險ノ必要ナルコトハ、今更私ガ此處デ
喋々スル必要ハアリマセヌ、故ニ政府ハ此
農業保險制度ノ確立ヲ圖ッタト同時ニ、近キ
將來ニ於テ是非トモ漁業保險ノ制度確立ヲ
期シテ貰ヒタイ、果シテ政府ハ之ニ對スル
準備アリヤ否ヤヲ御尋致シタイノデアリマ
ス、以上五點ニ付キマシテ直截簡明ナル御
答辯アランコトヲ希望致シマス
〔議長退席、副議長著席〕
〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=45
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046・有馬頼寧
○國務大臣(伯爵有馬賴寧君) 山本君ノ御
質問ニ御答致シマス、第一ノ御尋ハ、農民
ガ果シテ保險料ノ支拂ノ負擔ニ堪へ得ルカ
ドウカ、保險ハ良イ制度デハアルケレドモ、
現在ノ日本ノ農村ノ實情カラ言ヘバ、農家
ニ此負擔ヲサセルコトハ、可ナリ困難デハ
ナイカト云フ御話デアリマス、隨テ國營ト
スル意思ハナイカト云フ第一ノ御尋デアリ
マスガ、私共モ其點ヲ深ク考へマシテ、保
險金額ヲ多額ニ致シマスレバ、隨テ救濟ノ目
的ヲ達スル上カラ言ヘバ宜イノデアリマス
ガ、併シソレダケ保險料ヲ多ク拂ハナケレ
バナラヌト云フコトニナリマスルノデ、本
法案ニ於キマシテハ、保險金額ヲ低額ニ致
シテ、保險料ヲ出來ルダケ低ク致シマシテ、農
家ノ負擔ヲ輕クスルト云フコトヲ考ヘタノ
デアリマス、國營ト致シテ國ガ全部ノ負擔
ヲ負フト云フコトニ付キマシテハ、是ハ非
常ニ重大ナコトニナリマスルシ、財政ノ關
係モアリマシテ、今直チニ之ニ付テ考ヘル
譯ニハ行カナイノデアリマス
第二點ノ保險料ノ金額ヲ國ガ負擔スル意
思ガナイカト云フ御尋デアリマスガ、是モ
只今申上ゲマシタコトト大體同ジコトデア
リマシテ、保險金ノ支拂ニ付キマシテ、組
合ニ對シテハ縣區域ノ聯合會ガ再保險ヲ
シ、更ニ國ガ其再保險ニ對シテ保險ヲスル
ト云フ制度ニ於キマシテ、國ハ相當ノ負擔
ヲ致シ、其外保險ニ關スル事務費等ヲ國ガ
負擔ヲシテ居ルト云フ程度デアリマシテ、
是以上ノコトハ今日トシテハ行ヒ得ナイノ
デアリマス
第三ノ御尋ノ點ハ、保險金額ヲモット增
大シテ、國家ガ補助シタラバ宜イダラウト
思フガドウカト云フ御尋デアリマシテ、是
モ前ノ一二ノ御尋ト關聯シテ居ルト思フノ
デアリマス、只今申上ゲマシタヤウニ、保
險金額ヲ增大致シマスコトハ、國ガ負擔ヲ
スレバ無論結構デアリマスガ、併シ農家ノ
負擔トシテハ保險料ガ多クナリマスノデ、
ソレハ實施致シ兼ネルノデアリマス、而シ
テ一方國ガソレヲ全部補助スルト云フ譯ニ
ハ、事實上參リ兼ネルノデアリマス
第四ノ手續ノ煩雜ト云フコトニ付キマシ
テハ、御話ハ至極御尤デアリマシテ、之ヲ
實施致シマスル場合ニ、出來ルダケ簡易化
致シマシテ行ッテ參リタイト思ヒマス、個人
ヲ對象ニ致シマセヌデ、市町村農會ト云フ
モノヲ組合員ニ致シテ居ルト云フコトモ、
サウ云フ團體デアレバ總テノコトガ簡易ニ
參リマスルシ、又保險金額ヲ低クスルト云
フコトモ、簡易ニスル一ツノ方法デアルカ
ト思ヒマス、指導ニ付キマシテハ勿論地方
廳モアリマスルシ、農會ガヤルノデアリマス
ルカラ、ソレ〓〓之ヲ指導シ、監督スルコト
ハ出來ルト思ヒマス
最後ニ漁業保險ノコトニ付キマシテハ、
洵ニ御尤ナコトデアルト思フノデアリマス、
御承知ノヤウニ漁船保險ハ旣ニ行ッテ居リ
マスガ、漁業ト云フモノハ、御承知ノヤウ
ニ非常ニ危險ノ多イモノデアリマスノデ、
隨テ今直チニ之ニ保險制度ヲ布クト云フコ
トハ、相當考究ヲ致サナケレバナラナイト
考ヘテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=46
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047・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 泉國三郞君
〔泉國三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=47
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048・泉國三郎
○泉國三郞君 本法案ハ曩ニ提出セラレマ
シタル農地調〓法案ト共ニ、今期議會ニ於
ケル農林省關係ノ進步的二大立法トシテ、
敬意ヲ表スルニ吝デハナイノデアリマス、
私ハ有馬農林大臣ハ近衞內閣ノ閣僚ノ中ニ
於キマシテモ、最モ革新的「イデオロギー」
ヲ持ッテ居リマスルモノト信ジテ、農村ノ爲
ニ期待甚ダ大ナルモノガアッタノデアリマ
ス、然ルニ私ハ本議會ノ有ユル機會ヲ通ジ
テ、遂ニ農林大臣ノ農村ニ對スル基本的認
識及ビ其指導精神ノ何モノデアルカヲ把
握シ得ナカッタコトハ、私ノ最モ遺憾トスル
所デアリマス、强ヒテ農林大臣ノ指導精神
ヲ求ムルナラバ、ソレハ自作農主義デアル
ト言ヒ得ルカモ知レナイノデアリマス、農
村ノ内部ニ於キマシテハ、土地ガ根本的問
題デアルコトハ爭ハアリマセヌ、併ナガラ
資本主義經濟ノ組織ノ下ニ於キマシテハ、
農村ト致シマシテハ土地問題、卽チ農村內
部ノ問題、災害保險ト云フガ如キ災害ノ問
題ガ解決サレタト致シマシテモ、未ダ以テ
農村問題ノ解決トハナラナイノデアリマ
ス、現在ノ社會組織ノ下ニ於キマシテハ、
人的資源、原料資源、食糧資源ノ生產
地トシテ、最モ尊重サレナケレバナラ
ナイ所ノ農村ガ、却テ安價ナル勞力、原料、
食糧ノ供給地トシテ、軈テ再生產サレタル
高價ナル商品ノ需要地、消費地トシテ、資
本主義的搾取、收奪ヲ恣ニセラレ、社會的、
經濟的ニ從屬的立場ニ置カレル所ニ、資本
主義生產ノ指導者タリ得ナイ所ニ、其處ニ
農村ノ生活ノ永久不安ノ原因ガ存スルノデ
アリマス、隨テ內部的土地間題トカ、災害
ノ問題ガ解決セラレマシテモ、ソレハ一時
ノ小康ハ得ラレマスルケレドモ、ヤハリ農
村ハ永久ニ年ト共ニ窮乏ヘノ一路ヲ迪ルデ
アラウコトハ、推測スルニ難クナイノデア
リマス、現在ノ經濟機構ノ下ニ於テハ、農
業經營ハ旣ニ儲カラザル、利潤ヲ生ゼザル
所ノ企業デアリマス、小作農ノ生活ガ其甚
シイノハ言フ迄モアリマセヌ、自作農ト雖
モヤハリ苦シイノデアリマス、收支ノ計算
ガ引合ッテ居ナイノデアリマス、或ハ地主ノ
間ニモサウシタ者ガアルノデアリマス、少
クトモ此農村問題ノ解決ハ、農村ノ永久恐
慌カラ之ヲ救フコトハ、現在ノ資本主義制
度ノ機構ニ、其根本ニ觸ルヽコトナクシ
テハ、全ク不可能ナコトデアルト私ハ信ジ
やっ、併ナガラソレハ洵ニ至難ノ業デアリ
マス、其至難ノ業ハ何人ニ依ッテ爲シ遂ゲラ
レルカ、ソレコソ革新政策ノ遂行ヲ以テ立
ツ所ノ、近衞內閣ノ下ニ於ケル有馬農林大
臣自ラ爲サラナケレバナラナイ問題デアル
ト考ヘルノデアリマスルガ、農相ノ之ニ對ス
ル所見如何(拍手)其農村ニ對スル根本的認
識其指導精神ニ付テノ腹藏ナキ御所見ヲ
先以テ承リタイノデアリマス(拍手)
第二ニ伺ヒマスコトハ、本法案ノ目的、内
容等ニ關スル問題デアリマス、思フニ農業
保險法ノ目標トスル所ハ、農家收入ノ源泉
ヲ確保スルコトヲ以テ最高ノ目的トシ、他
ノ各種ノ農村政策ト相俟ッテ農業生產力ノ
維持增進ヲ圖リ、負債ノ原因ヲ防除シ、農
業經營ヲ安定セシメ、以テ國家ノ爲ニ人的
資源、食糧資源タル農村ヲシテ、不安ナカ
ラシムルモノデナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、然ルニ本法案ヲ一瞥致シマスナ
ラバ、其內容甚シク不整備且ツ貧弱ナルニ
一驚ヲ禁ジ得ナイモノガアリマス、其最モ
甚シキ例ノ一ツハ、農業保險制度ノ構成ニ
付キ、市町村農會ヲシテ共濟事業ヲ行ハシ
メル、郡ノ區域ヲ以テ、農業保險組合ヲシ
テ市町村農會ノ共濟責任ニ付テノ保險ヲ爲
サシメル、此點デアリマス、私達ガ思ヒマ
スルノニ、農業保險ノ理想ハ農民ノ收穫ニ
對スル損失ノ全部ヲ補償スル、卽チ收穫保
險ニアラザレバ、未ダ以テ全シト云フ譯ニ
ハ參ラヌノデアリマス(拍手)各國ノ歷史ニ
見マシテモ、農業保險ハ、自然的災害ヲ綜
合的ニ觀察シテ、一括シテ保險事故ト爲ス
所ノ一般收穫保險ト、各個ノ災害ヲ目標ト
シマス所ノ個別災害收穫保險、其二ツノ別
ハアリマシテモ、其被保險利益ハ收穫ニア
ル、收穫ガ災害ニ因ッテ損傷セシメラレマシ
タル場合ニ、其損傷ヲ補塡セシメラルヽコ
トガ大體ノ例デアリマス、農民ハ災害ニ拘
ラズ、斯クシテ初メテ平年作ト同樣ナル收
入ヲ得テ、次年度ノ再生產ヲ用意スルコト
ガ出來ルノデアリマス、然ルニ本日御提案
ニナリマシタ所ノ法案ハ、世界ニ類例ノ少
イ共濟制度デアリマス、共濟制度ヲ基本ト
スル所ノ法案デアリマス、此制度ノ下ニ於
キマシテハ、災害ニ因ル全損失ガ補塡セラ
ルヽニハアラズシテ、單ニ其一部ガ共濟セ
ラルヽニ過ギナイノデアリマス、何程ノモノ
ガ共濟セラレマスルカハ、此法案ノ中ニハ見エ
ヌノデアリマスルケレドモ、恐ラク收穫ノ爲ニ
投下サレタ所ノ、生產費ニ充タナイ少イモノ
デアラウコトハ、推測スルニ難クハナイノデ
アリマス、若シ災害ヲ受クル者ガ組合員中ニ
二三名ニ過ギナイ場合ニ於キマシテハ、他
ノ組合員ニ經濟力ガ未ダアルノデアリマス
カラ、有無相通ズルコトニ依ッテ農村ノ經濟
ハ成立チマセウ、併ナガラ若シ組合ノ全員
ガ災害ヲ受ケタト云フヤウナ場合ニ於キマ
シテハ、全組合員ガ何レモ生產ノ爲ニ投下シ
マシタ所ノ資本ヨリ少イ共濟金ヲ受ケテ、
ドウシテ農村ノ經濟ガ成立チ、農民ノ生活
ガ維持セラレテ、所謂農家收入ノ源泉ヲ確
保シ得ルト言ハレマスルカ(拍手)殊ニ此法案
ノ第二十條ニ依リマスレバ「保險金ノ支拂ニ
不足ヲ生ズルトキハ保險金額ヲ削減スルコ
トヲ得」拂フニ足リナカッタナラバ、拂ハナ
クテモ宜イト云フ法律ヲ拵ヘヨウトシテ居
ルノデアリマシテ、此法案ノ缺陷ガ茲ニ暴
露セラレテ居リマス、政府ハ何故ニ收穫保
險制度ノ樹立ニ努力セズシテ、本法案ノ如
キ半端ノモノヲ提案シタカ、政府ノ豫想ス
ル共濟金ハ反當リ何程ヲ豫想スルカ、吾々
ノ得心ノ行ク迄御說明ガ願ヒタイノデアリ
マーク我國ヲ凡ソ南北ニ兩分シテ、〓觀致
シマスナラバ、〓ネ南ニ位置スル地方ハ旱
魃風害ノ甚シキアリ、北ニ位置スル地方
ハ氣溫低キニ失シ、爲ニ稻作等ニ決定的打
擊ヲ與フル所謂冷害、若クハ雪害ノ被害ヲ
受ケマスルコトハ、是レ農民ノ避ケ得ザル
所ノ災害ノ一ツデアリマス、殊ニ東北地方
ニ於キマシテハ、遠キ歷史ヲ繙ク迄モナク、
明治以來旣ニ八囘ノ大凶作ニ遭遇シテ、平
均八年ニ一度ト云フ周期的災害ノ前ニハ、
農民ノ勞苦殆ド酬イラレズ、益〓其經濟ヲ窮
乏ノドン底ニ追込ミツヽアルコトハ、洵ニ
痛惜ノ極ミデアリマス(拍手)殊ニ昭和九年
ノ冷害ニ至リマシテハ、想起スルダニ今尙ホ
慘然タルモノガアルノデアリマス、雪ニ於
テモ然リデアリマス、昨年十二月ノ降雪量
ハ、コヽ四十年來ノ大雪デアルト謂ハレテ
居リマス、此災害ハ東北農民ガ怠惰逸樂ノ
爲ニ求メタノデハアリマセヌ、耕作技術ヲ誤ッ
タ爲ニ招來シタモノデモゴザイマセヌ、孜
孜營々トシテ朝ニ星ヲ戴キ、タニ月ヲ踏ン
デ刻苦勉勵、尙且ツ免レ得ザル所ノモノデ
アリマス(拍手)斯ル災害コソハ國家ガ之ヲ
第一義的ニ補償シ、革新政策ノ一環トシテ
本議會ニ提出シタ所ノ此法案ニ、第一ニ取
上ゲラレナケレバナラナイ問題デアリマス
ルノニ拘ラズ、之ヲ政府ガ本法案ニ規定ス
ルコトヲ爲サザル理由ハ如何、政府ハ果シテ
是等ニ對スル調査〓究ヲ爲シツヽアルカ、
アラバ其結果ハ如何ニナッテ居ルカ、政府ガ
本法案第一條ニ謂フ所ノ「其ノ他ノ災害」ノ
中ニハ、此冷害雪害ト云フヤウナモノヲ、
ドウ云フ風ニ處置セントシテ居ルカ、本法
ニ委任セラレテ出ヅル所ノ勅令ニハ、之ヲ
規定スル意思デアルカ、ナイカト云フヤウ
ナコトヲ、先ヅ第二ニ聽カウト欲スルノデ
アリマス
次ニ本法案ニ關聯シテ質問致シマス、ソ
レハ災害ノ豫防施設ニ關スル問題デアリマ
ス、農作物ノ自然的災害ニ對スル對策ハ、單
ニ保險法ノ制定ノ如キ消極的手段ヲ講ズル
ヲ以テ、萬全ナリト爲スコトガ出來ナイノ
デアリマス、進ンデ積極的災害豫防ノ方策
ヲ科學的ニ〓究シ、調査シ、樹立シ、實踐
强化シナケレバ、農民ハ常ニ其堵ニ安ンジ
テ、所謂鼓腹擊壤ノ樂ミヲ爲スコトガ出來
ナイノデアリマス、卽チ風雨、霜害、雪害
ニ對スル防風、防雪其他ノ災害豫防林ノ造
成旱害及ビ洪水ニ對スル水源林ノ培養、
灌漑用水路、溜池等ノ築道、防潮林、砂防
工事、大中小河川ノ改修等、各般ノ施設ヲ
完備スルト共ニ、病蟲害ニ對シテ是ガ豫防
驅除ノ〓究、實驗指導ノ宜シキヲ得ナケレ
バナラヌノデアリマス、又同時ニ自然的災
害ノ熊樣ニ應ジテ、各地勢風土ニ卽シテ各
種災害ニ堪へ得ル農作物ノ品種、竝ニ栽培
方法ノ發見、改良普及等ニ、格段ノ努力ヲ
致サナケレバナラヌト思フノデアリマス、
是等災害豫防ノ完璧ヲ期シ、是ト竝行シテ
進ムコトニ依ッテノミ、始メテ農業保險ハ所
期ノ目的ヲ達シ得ルノデアリマス(拍手)然
ルニ政府ノ爲ス所〓ネ之ニ副ハザルヲ、私
ハ遺憾トスルノデアリマス
各地農民ノ要望スル砂防及河川ノ改修ハ、
中々ニ內務省ノ容ルヽ所トハナラズ、其利
益ガ地方ニ均露セズ、農村各種〓體自ラ起ッ
テ用水路溜池等ノ工事ヲ爲サントスルモ、
其起債ハ容易ニ許可セラレズ、若クハ助成
之ニ伴ハズ、大藏省預金部ハ濫リニ資金ノ融
通ヲ阻ミ、農事試驗場ハ又徒ニ高遠ナル學
理ヲ試驗管中ニ密閉シテ、糞土ノ上ニ立タ
ズ、農民餓死スルモ我關セズ焉タル有樣デ
アリマス(拍手)斯ノ如キ狀態ヲ以テシテハ
生產力ノ擴充モ、災害ノ防止モ、到底期シ
得ナイコトハ火ヲ睹ルヨリモ明カデアリマ
ス(拍手)有馬農林大臣ハ是等ノ點ヲ如何ニ
見ラレルカ、曩ニ東北ノ凶作ヲ契機トシテ、
農林省ガ冷害試驗場ヲ囑託設置シタルガ如
キハ、前述ノ目的ニ副フモノデハアリマス
ルガ、其規模餘リニ貧弱ノ憾ヲ免レナイノ
デアリマス、更ニ之ヲ擴大シテ水稻ノミナ
ラズ、各種主要食料農產物ノ試驗ニマデ及
ブベキデアルト考ヘマスガ、果シテ農林大
臣ハ將來之ヲ實現スルノ意思ガアルカ、又
內務大臣ハ各地農民ノ要望ニ應ジテ、砂防
竝ニ河川改修事業ヲ擴大スルノ意思ハナイ
カ、公共團體等ノ適切妥當ナル起債認可ノ
申請ニ對シテ、是ガ許可ヲ緩和スルノ意思
ハナイカ、是等ノ諸點ニ付キ關係閣僚ニ質
問シテ置キマス
農民生活ヲ窮乏ノ底ニ押込ムモノ、獨リ
自然的災害ノミデハアリマセヌ、資本主義
生產機構亦然リデアリマス、併ナガラ私ハ
今其全般ニ付テ之ヲ問ヒマセヌ、政府ノ事
業〓〓就中軍需工業ニ付テ私ハ之ニ關聯シテ
質問セントスル者デアリマス、卽チ軍需工
業ガ現時局ノ下ニ於テ如何ニ民間ヲ潤シテ
居リマスルカ、一應國民ノ手許ヨリ國家ニ集
中サレ、更ニ軍需工業ニ投下セラレタ資本
ガ、民間註文ノ形ニ於テ、或ハ原料ノ購入
費トナリ、勞働賃金トナッテ、如何ナル率ニ
於テ農村ニ還元歸納スルカト云フ問題デア
リマス、私ハ玆ニ最近ノ數字ヲ持チマセヌ
ケレドモ、昭和十一年度ニ於テ陸軍ガ軍需
品ヲ民間ニ註文致シマシタル額ハ二億三百
九十餘万圓、之ヲ都市一億七千五百万圓ニ
比較シテ、農村ハ僅ニ二千八百餘万圓デア
リマシテ、都市八五%ニ對シテ農村僅ニ一五
%ニ過ギナイノデアリマス、更ニ之ヲ地方別
ニ檢討スルナラバ、差等ノ餘リニ甚シキニ
一驚ヲ禁ジ得ナイノデアリマセウ、卽チ昭
和十年度ニ於ケル軍需品ノ民間註文高ハ、
海軍ガ三億六千八百万圓、陸軍ガ一億九千
六百万圓、計五億六千四百万圓デアリマス
ルガ、此中關東二億四千九百八十五万圓デ
第一位ヲ占メテ、約二分ノ一ヲ獨占シ、大
阪ヲ中心トスル近畿之ニ次イデ一億二千五
百万圓、福岡ヲ中心トスル九州ハ五千七百
万圓デ第三位デアルニ比較シマシテ、東北
六縣八百二十三万三千圓、四國三百八十万
圓、斯ノ如ク貧弱ナノデアリマス、卽チ東
京ヲ中心トスル關東ガ、民間註文ノ約半分
ヲ壟斷シテ、面積之ニ倍スル東北地方、或
ハ四國ハ、關東ノ三·三%關東ガ百圓ノ註
文ヲ受ケル場合ニ東北、四國ガ僅ニ三圓三
十錢ト云フ雀ノ淚程ノ註文シカナイノデア
リマス、此狀態ヲ妥當デアルト考ヘマスル
カ、私ハ此狀態ヲ以テシテハ農村ハ疲弊ス
ル一方デアルト考ヘル、此軍需工業ニ投下
セラレル所ノモノガ、再ビ農民ニ公平ニ
還元スルヤウナコトデナケレバイケナ
イト考ヘル、此點ニ對シテ政府ハ如何ニ考
ヘラレルカ、之ヲ是正スルノ意思ガア
ルカ、何等カ之ニ對シテ考慮シテ居ルコ
トガアルカト云フコトヲ、御聽キシタイ
ノデアリマス
更ニ御許ヲ得マシテ、モウ一點最後ニ御
伺ヒスル、ソレハ東北ガ明治政府以來疎外
又ハ放任セラレテ、一切ノ經濟的文化的施
設ニ於テ、他ノ地方ヨリ劣惡ナル條件ニア
ルコトハ、今更私ガ申上ゲル迄モナイノデ
アリマス、冷害、凶作ヲ契機トシテ東北振
興問題ガ再認識サレ、內閣ノ下ニ東北局ガ
置カレマシタコトハ、吾々ノ洵ニ感謝ニ堪
ヘナイ所デアリマスルガ、調査會ノ最初ノ
答申ニ對シマシテ政府ノ爲ス所ヲ見マスト、
殆ド此答申ニ副ハザル狀態ニアルノデアリ
マス(「東北問題ヲ片手間ニヤラレテハ困
ル」ト呼フ者アリ)東北問題ハ國策デアリマ
ス、吾々ハ此狀態ニ見マシテ、眞ニ國策ト
シテノ東北振興ヲ、此內閣ニ依ッテヤッテ戴
カナケレバナラナイト考ヘテ居ル、ソレニ
ハ先以テ東北局ノ設置ト云フガ如キ根本間
題竝ニ是ハ豫算ヲ一途ニ統一シテ、其豫
算ヲ更ニ擴大シテ貰ハナケレバナラナイト
考ヘテ居リマス、時局ハ支那事變勃發ニ依ッ
テ、戰時體制ノ下ニ東北問題ナンカニ關係
シテ居ラレナイト云フ御意見ガアルカモ知
レマセヌガ、ソレハ認識不足モ甚シイモノ
デアリマス、戰ガ長期ニ亙レバ亙ル程、農
民ノ生活ヲ鞏固ナル基礎ノ上ニ置キ、一切
ノ原料資源ヲ開發シ、生產力ヲ擴充シ、以
テ食料其他ノ原料ヲ枯渴セシメズ、同時ニ
人的武力ノ補充ニ支障ナカラシメナケレバ
ナラヌノデアリマス、此點ニ關スル政府ノ
所見如何、東北ガ憂ヘテ居ルコトハ、東北
振興ノ問題ガ尻切レ蜻蛉ニ終リハシナイカ
ト云フコトデアリマス、政府ハ國策トシテ、
事情ノ許ス限リ速ニ此解決ニ努力スル意思
ハナイカ、吾々ガサウ云フコトヲ言フノハ、
少クトモ日本人竝ノ經濟的文化的地位ニアリ
タイト云フ、東北人ノ水平運動ヲヤッテ居ル
ニ過ギナイノデアッテ、諸君ニ優越シテ吾々
ハ惠ンデ欲シイト言フノデハナイノデアリ
やっ、日〓、日露、日獨ノ戰爭、滿洲事變
等々、戰ノタビニ日本ノ國威ハ宣揚サレ、
國力ハ擴充シ、資本主義ハ成長シマシタ、
或ハ戰時成金ノ輩出ヲ伴ヒナガラデアリマ
ス、併ナガラ東北農民ノ生活ハ、依然トシ
テ窮迫ノドン底ニアルノデアリマス、滿洲
事變ニ際會シテ、東北ノ健兒ハ血ヲ以テ參
戰シタノデアリマス(「議長、注意セラレン
コトヲ望ミマス」ト呼フ者アリ)支那事變一
タビ起ルヤ、北中、南支ノ曠野ニ、執拗
果敢ナル東北特有ノ鬪爭力ヲ揮ッテ、國防
ノ第一線ニ起ッテ居リマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=48
-
049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 泉君、成ベク本間
題ニ付テ質疑ヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=49
-
050・泉國三郎
○泉國三郞君(續) 左右幾多ノ生靈ガ奪ハ
ルヽモ、顧ミル暇ガナイノデアリマス、勿
論彼等ガ一タビ君國ノ爲ニ銃ヲ執ッテ立ッタ
時、一死奉公ノ一念アッテ、他ニ求ムル所ア
リマセヌ、併ナガラ思フ、戰火漸ク戰ッテ、
日滿支一體ノ經濟ガ確立シ、東北ガ其爲ニ
直接如何ナル利益ニ均霑スルカ、其失フ所
ニ比シテ、其得ラレル所ガ、餘リニモ少イ
デアラウコトハ言フ迄モナイノデアリマス、
國難來ラバ共ニ起チ、國ニ憂アラバ共ニ憂
ヒ、喜アラバ共ニ喜ビ、失フモノハ共ニ失
ヒ、得ラルヽモノハ共ニ分ツモノデナケレ
バイケナイ、政府ハ如何ニ之ヲ考ヘラレル
カ、此點ニ付テ責任アル御答辯ヲ望ンデ已
マナイ次第デアリマス(拍手)
〔政府委員高橋守平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=50
-
051・高橋守平
○政府委員(高橋守平君) 詳細ハ委員會デ
御答スルコトニ致シマシテ、極ク簡單ニ御
答辯申上ゲマス、第一ノ農村問題ノ解決
ハ、本保險制度ノ確立ダケデハ出來上ラナ
イト云フコトハ、御說ノ通リデアリマシ
テ、農地ノ問題、肥料ノ問題、農產物價ノ
問題ト云フ、諸般ノ方面カラ考察致シマシ
テ、此農村問題ハ解決シナケレバナラヌト
信ズル者デアリマス、第二點ノ收穫保險ニ
何故シナカッタカト云フ御尋デアリマス
ガ、本法案ヲ考ヘマスル際ニ於キマシテハ、
實情ヲ基礎ト致シマシテ、簡易ニ加入シ得
ルト云フコトヲ立法ノ立前ニ致シ、先ヅ
此害額保險ヲ致シマシテ、之ニ依ッテ相當
農民ガ保險ト云フモノヲ理解致シマシタ後
ニ於キマシテ、收穫保險ニマデ進ンデ行キ
タイ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス、冷
害ヲ何故入レナカッタカト云フ御質問ガアッ
タノデアリマス、此冷害ニ對シマシテハ、
マグ保險技術上尙ホ愼重ニ〓究ノ要ガアリ
マスノデ、取敢ズ町村農會ニ於キマシテノ
共濟事業ノ中ニ之ヲ入レマシテ、將來十分
ノ〓究ヲ遂ゲマシテ、保險事項ノ中ニ含マ
セタイト存ジテ居ルノデアリマス、災害保
險ヲ立テタダケデハイケナイ、其根本ヲ芟
除シナケレバナラナイト云フ御說ニハ全ク
同感デアリマシテ、出來得ル限リ努力ヲ續
ケタイト考ヘテ居ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=51
-
052・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 中野寅吉君-中
野君、一寸御待チ下サイ-木村政府委員
〔政府委員木村正義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=52
-
053・木村正義
○政府委員(木村正義君) 只今泉君カラノ
農業保險制度ト共ニ、災害豫防ノ色々ナ施
設ヲ講ズル必要ガアルト云フ御說ニ對シマ
シテハ、全ク同感デアリマス、內務省ノ所
管ニ於キマシテハ、治水費トシテ十三年度
ニ於キマシテハ約二千五百万圓、災害費ト
シテ約千五百万圓ヲ支出スルコトニ相成ッ
テ居ルノデアリマス、併シ是ハ泉君ノ御述
ニナリマシタヤウニ、決シテ十分ノ經費デ
ハアリマセヌ、全ク支那事變ノ關係、財政
上ノ關係、又物及ビ勞力ノ需給ノ關係等カ
ラ、斯ノ如キ經費ニ相成ッテ居ル次第デアリ
やく、今後此治水事業ノ完璧ヲ期シマスコ
トハ、產業ノ發展ノ上カラ見マシテモ、民
力ノ涵養ノ上カラ見マシテモ、殊ニ災害防
除ヲ致ス根本問題デアリマスカラ、昭和八
年ノ土木會議ノ決定モアリマスノデ、ソレ
等ノ問題ニ付テハ十分ナル〓究ヲ致シタイ
考デアリマス(拍手)
〔政府委員加藤久米四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=53
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054・加藤久米四郎
○政府委員(加藤久米四郞君) 泉君ニ御答
致シマス、陸軍ニ於キマシテハ、軍需品ヲ
調達スル場合ニ於キマシテハ、極力之ヲ全
國各地方ニ分散スルコトヲ圖ッテ居リマス、
且ツ大工業ニ偏シナイヤウニ注意ヲ致シテ
居リマス、農村中小工業ヲ利用スルコトニ
努メマシテ、成ベク一地方ニ集中シナイ
ヤウニ努メテ居リマス、然レドモ軍需品ト
致シマシテハ、必要ナルモノハ其性能ト云
ヒ、性質ト云ヒ、自然ト其註文ガ都市ニ集
中セラルヽ傾向ノアリマスコトハ、自ラ免
レ難イ所デアリマス、陸軍ト致シマシテハ、
其結果カラ生ズベキ弊害ニ關シマシテ、緩
和是正ノ方法ヲ講ズル必要ガアリマスノデ、
特ニ此點ニ注意ヲ致シテ、御期待ニ副フコ
トニ努力致ス積リデアリマス(拍手)
〔政府委員岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=54
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055・岸田正記
○政府委員(岸田正記君) 泉サンノ海軍ニ
對スル御質問ニ御答致シマス、海軍ニ於キ
マシテハ、軍需品註文ニ當リマシテノ地方
分散、殊ニ農村ノ都市トノ國防費ノ負擔
ト、其還元トノ關係ニ付キマシテハ、極メ
テ公平ヲ期スルヤウニ、出來得ル限リ注意
ヲ拂ッテ居ル次第デアリマシテ、此點ハ時
局柄重大ナル點デモアルト思ヒマスカラ、
一言海軍ノ實際狀況ヲ御報告申上ゲマス
御承知ノヤウニ、海軍ニ於キマシテハ、
各鎭守府及ビ要港部ニ於キマシテ、地方統
制工業委員會ナルモノヲ設ケテ居リマシ
テ、關係府縣ト能ク協力致シマシテ、工作
廳及ビ軍需部ガ之ニ善處シテ當ッテ居ル次
第デアリマス、斯ウシタ結果、各府縣側ニ
於キマシテハ、御承知ノ如クニ技術ノ指導
及ビ金融ノ途ヲ開クト云フヤウナコト、或
ハ製品ノ檢査トカ云フヤウナコトニ付キマ
シテ、色々機關ヲ擴充シテ居リマスルシ、
又工廠側ト致シマシテハ、關係者ニ技術ノ
指導ヲ實施致シテ居リマシテ、其技倆ニ應
ジテ註文致スヤウニ致シテ居リマスノデ、
非常ニ生產ニ當リマシテモ、適當ナ處置ヲ
執ルコトガ出來テ居リマシテ、良好ナル結
果ヲ擧ゲテ居ル次第デアリマス、斯ウシタ
結果ハ、昭和十一年ニ於キマシテハ、此統
制工業ヲ通ジタ購入、或ハ工作廳、或ハ軍
需部カラ直接購入シタモノ、此合計ハ二百
四十万圓ニ達シテ居リマス、又十二年度ニ
於キマシテハ、事變關係ノ影響モアリマス
ルノデ、非常ニ註文量ガ增大致シマシテ、
九百万圓カラニ達スル見込ニナッテ居ル次
第デアリマス、尙ホ糧食及ビ需品ニ付キマ
シテハ、出來得ル限リ地方ノ中小工業者ノ
利益ハ害シナイト云フ考ヲ頭ニ置キマシテ、
農會或ハ產業組合カラ成ベク之ヲ購入スル
コトニ致シテ居リマシテ、十二年度ノ如キ
ハ、海軍自體及ビ共濟組合等ノ購入金額合
計ハ、五百十二万圓ニ達スル狀態ニナッテ居
ル次第デアリマス、以上ノ實情ニ於キマシ
テ、大凡海軍ガ此點ニ付テ十分注意ヲ拂ッテ
居ルト云フコトヲ、御諒解ヲ願フト云フコ
トガ出來タト思ヒマスルガ、尙ホ將來モ一
層此趣旨ニ對シマシテハ、徹底ヲ期スルヤ
ウニ心掛ケタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=55
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056・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 中野寅吉君
〔中野寅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=56
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057・中野寅吉
○中野寅吉君 私ハ極ク簡單ニ質疑ヲ致シ
やく、長ク致シマセヌ、先刻長野高一氏カ
ラ二十分以内デ止メロト云フコトデアリマ
シタシ、山本条吉君ナリ、泉國三郞君カラ
長イ間御質疑ガアリマシタカラ、私ハ重複
ノ點ハ避ケマス
此農業保險法ヲ出シタト云フコトノ、農
林省トシテハ洵ニ大出來デアリマス、今迄
ハ斯ウ云フモノヲ出サナカッタ、ソレヲ今度
出シテ來タト云フダケデモ大出來デアル、
ソレデ先ヅ第一ニ伺ヒタイノハ、第一條ノ
「風水害其ノ他ノ災害ニ因リ」ト云フコトデ
アッテ、冷害ト雪害ヲ何故此處ニ明記シナ
イカ(拍手)之ヲ是非明記スル必要ガアル、
何故ナラバ、問題ノ起キル度每ニ雪害モ冷
害モ災害デナイ、是ハ認メラレナイト云フ
ヤウナ役人ガ出ナイトモ限ラナイカラ、明
記シテ置ク必要ガアル、明記スレバ卽チ迷
ハナイノデアル、法文ヲ曖昧ニシテ置イテ
ハイケナイ、役人ノ自由裁量ニシテ置ケ
バ、丁度オ互ガ協贊シタ選擧法ノヤウナ目
ニ遭フカラ、ハッキリ書イテ置ク必要ガア
ル(拍手)雪害、冷害ノ間題ハ最モ必要デ、
我ガ先輩松岡俊三君ハ、殆ド此問題ニ對シ
テハ命ヲ捧ゲテ當ッタノデアル、吾々モ亦
引摺ラレテ之ヲ叫ブヤウニナックノデア
ル、雪害、冷害ノ本家本山ハ全ク松岡俊三
氏デアリマス(「ヒヤ〓〓」)ソレデ是ハ松岡
氏ノ地位ニ懸ケテモ、此法文ニ冷害、雪
害ト明記シテ置ク必要ガアル、冷害、雪害
ヲ蟲害、煙害トカ、霜害、雹害トカ、コン
ナ詰ラナイ害ト一〓ニサレテハ堪ラナイ、
其冷害ノ最モ悲慘デアッタノハ、昭和九
年ト昭和十年デアル、昭和九年ハ山崎達之
輔君ガ農林大臣、昭和十年ハ島田俊雄氏ガ
農林大臣、我ガ福島縣ナドハ今ノ此御二人
ノ方ニハ、オ百度ヲ踏ンデ救濟ヲ願ッタ
ノデアル、本當ニアノ時ハ田ノ中ニ入ッテ見
ルト、立ッテ居ル稻ガカサ〓〓ト音ガスル、
洵ニ悲慘デアッタ、アレヲ思フト、ドウシテ
モ之ニ冷害ト雪害ヲ入レテ貰ハナケレバ駄
目ダ(拍手)森肇君デモ、又山崎猛君デモ、
私ガ賴ンデ數囘行ッテ貰ッタ、是ハ實際ノ話
デアル
ソレカラモウ一ツハ五十六條、國庫ハ組
合員ノ支拂フベキ保險料ノ一部ヲ負擔ス、
其負擔ノ額ハ勅令デ定メルト書イテアル、
是モ危イモノダ、大體斯ウ云フ仕事ヲ始メ
ルノハ、農業者ノ方カラ此仕事ヲ始メテ吳
レト叫ンダノデハナイ、政府カラ進ンデ農
業保險制度ヲ設ケルト云フコトヲ言出シタ
以上ハ、國家ト云フ立場カラ、此負擔額ハ
成ベク餘計ニ國家ニ持ッテ貰ハナケレバナ
ラヌ(拍手)農家ノ方デヤル仕事デナク、國
家ガヤル仕事デアルカラ、其負擔ハ國家ガ
多ク持タナクテハナラヌ、少クモ事務費ノ
全部ハ負擔シテ貰ハナケレバナラヌト思フ
ガ、サウ云フ意思ガアルカドウカ、ソレカ
ラ若シ冷害、雪害ヲ入レナカッタラ提案ノ理
由ニ合ハナイ、農業保險法案ノ提案ノ理由
ニハ「自然的災害ニ因ル農作物ノ損失ノ多大
ナルニ鑑ミ之ガ損害ノ塡補輕減ヲ圖リ以テ
農家負擔ノ原因ヲ防除シ農家經濟ヲ安定セ
シメ農業生產力ノ維持增進及農村ノ經濟更
生ヲ期スル爲農業保險制度ヲ確立實施スル
ノ要アリ」ソレデ此法案ヲ出シタト書イテア
ル、然ラバ自然的災害ニ因ル中デモ、冷害、
雪害ハ最モ多イモノデアル、先ヅ「イ」ノ一番
ニ之ヲ揭ゲナケレバナラヌ、ソレヲ提案ノ
理由ニ、コンナニ立派ニ書イテ置イテ、法
文ヲ見ルト拔カシテ居ルト云フコトハ、マ
ルデ羊頭ヲ懸ケテ狗肉ヲ賣ルモノダト言ッテ
モ宜シイ(拍手)ソレカラ共濟事業ト農業保
險組合設立ト兩建デ行クト言フガ、是ハ兩
建デ行カナイデ、一本建デ行ッタ方ガ宜カラ
ウト思フ、共濟事業デヤッテ見テ、豫期ノ成
績ヲ擧ゲラレナカッタ時ハ、今度ハ其外デヤ
ル、斯ウ云フヤウナコトハ試シテ見ナクト
モ分ル、初メカラ一本建デ行ク氣ハナイカ
ドウカ(拍手)
ソレカラ何故法文ニシッカリ書ケト云フ
コトヲ言フカト云フト、官僚ト云フモノハド
ウモ都合ノ惡イ時ハ逃ゲル、是ハイケナイ、
ソレダカラシッカリ書イテ置ク必要ガアル、
昭和八年ノ時ノ農林大臣ハ後藤文夫君、其
時ハ米ガ穫レテ、米ノ始末ニ困ッテ減反問
題ヲ起シタ、耕作反別ヲ減ジロ、中ニハ「ブ
ラジル」デ珈琲ヲ穫ッテ餘ッタモノヲ、珈琲ノ
値段ヲ維持スル爲ニ、海ノ中ニ船デ三杯カ
四杯投ゲタカラ、米モ投ゲロト云フヤウナ
役人モアック、所ガ其次ノ昭和九年ノ山崎農
林大臣ノ時、昭和十年ノ島田サンノ時ノ如
キハ、ホラ今度ハ凶作ニナッタデセウ、後藤
文夫ハ此次ハ內務大臣ニナッテシマッタ、自
分ガ農林大臣ノ時ヤリ損ッタナラバ、假令內
務大臣ニ君ナレト言ハレテモ斷ッテ、俺ハ
ドウシテモ此前ノ減反問題ノ責任ガアル
カラ、今度コソ農林大臣ニナッテ農村ヲ
救ハナケレバナラヌト云フ位ノ、意地ガ
ナクテハナラナイデハナイカ、然ルニ官
僚ト云フモノハ、農林大臣ノ責任ナド疾
ウノ昔ニ忘レテ居ル、ソレダカラ私ハ法
文ニ後デ文句ヲ言ハナイヤウニ、チヤン
ト書イテ置ケト言フノダ、此點ヲ伺ヒマ
ス(拍手)
〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=57
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058・有馬頼寧
○國務大臣(伯爵有馬賴寧君) 中野君ノ御
質問ニ御答致シマス、東北ニ於ケル冷害及
ビ東北、北陸方面ニ於ケル所ノ雪害ノ甚大
デアリ、之ヲ救濟スルコトニ力ヲ入レマセ
ヌケレバナラヌコトハ、十分ニ承知致シテ
居ルノデアリマス、併ナガラ御承知ノ
ヤウニ、冷害ハ年ヲ置キマシテ起ッテ參
リマス關係ガアリマスノト、サウ云フ事
情ノ爲ニ此保險制度ヲ立テマスル基礎トナ
ルベキ災害ノ統計ヲ作ルコトニ、非常ニ
不便デアリマシテ、マダ十分ノ災害ノ統計
ノ基礎ヲ得テ居ナイノデアリマス、政府ハ
決シテ冷害トカ、雪害トカ云フモノヲ輕ン
ジテ居ル譯デハナイノデアリマスガ、只今
直チニ之ニ付テ保險ヲ致スト云フ迄ニ、調
査ガ十分ニ屆イテ居ナイノデアリマス、御
承知ノヤウニ法文ノ第一條ニ「風水害其他
ノ災害ニ因リ」ト云フコトガ書イテゴザイ
マスノデ、今後調査ガ十分出來マスレバ、成
ベク早イ機會ニ於テ、冷害等モ保險ノ中ニ
加ヘマスルヤウニ致シタイト云フ考ヲ持ッ
テ居リマス、次ニ國ガ一部ヲ負擔スルト云フ
コトハ甚ダ不徹底デアルカラ、モット餘計ニ
持タナケレバナラヌト云フ御話デアリマス
ガ、是ハ先程モ申上ゲマシタヤウニ、國ガ
大部分ノ費用ヲ負擔致シマスト云フコト
ハ、財政上ノ關係カラモ出來マセヌ、隨テ
保險ノ事務費等ハ一部國ガ持チマスシ、尙
ホ再保險等ノ金ナドヲ支出致シマシテ、出
來得ル限リニ於テ國ガ之ヲ負擔シテ、成べ
ク保險料ノ輕減ヲ圖ルト云フコトヲ考ヘテ
居ルノデアリマス、第三ノ共濟ト保險トノ
兩建ハイケナイト云フ御話デゴザイマシタ
ガ、此共濟ト申シマスノハ、只今御述ニナ
リマシタ冷害ノヤウナ、今回ノ保險ノ中ニ
加ッテ居リマセヌモノヲ、一時共濟制度ニ依
リマシテ、冷害等ノ爲ニ救濟ノ積立金ヲ致
シテ置キマシテ、ソレハ共濟事業ニ依ッテ行
フト云フ爲ニ、共濟制度ヲ設ケテ居ルノデ
アリマシテ、單ニ冷害バカリデハゴザイマ
セヌ、陸稻其他ニ付キマシテモ、保險ニ依
ラズ共濟金ニ依ルコトノ方ガ、寧ロ宜シイ
ト思ハレルモノモアリマスノデ、ソレ等ハ
共濟制度ニ依ルコトニ致シマシタ、保險一
本デ參リマスヨリハ、寧ロ其方ガ實際ニ適
スルト云フコトモ考ヘテ、斯樣ニ致シタヤ
ウナ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=58
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059・中野寅吉
○中野寅吉君 簡單デスカラ此席カラ御許
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=59
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060・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=60
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061・中野寅吉
○中野寅吉君 政府ノ御答辯ハ甚ダ納得シ
得ナイ點ガアリマスガ、尙ホ他ノ機會ニ於テ
質問致スコトニシマシテ、是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=61
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062・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 菊地養之輔君
〔菊地養之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=62
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063・菊地養之輔
○菊地養之輔君 私ハ先ヅ農村ニ取リマシ
テ極メテ重大ナル本案ニ對シマシテ、ナゼ
會期剩ス所僅ニ二十日シカナイ今日マデ其
提出ヲ延バシテ居ッタカ、此點ニ對シテ御伺
致シタイノデアリマス、モット早ク提出セラ
レマシテ、愼重審議ノ機會ヲドウシテ十分
吾々ニ與ヘナカッタカ、此點ニ對シテ當局ノ
答辯ヲ得タイト思フノデアリマス、本案ガ
今日ノ窮乏セル農村ニ取ッテ極メテ必要デ
アリ、又特ニ長期戰ニ對シマシテ、生產力
ノ擴充、銃後農村生活ノ安定ニ對シマシテ、
極メテ重要ナル法案ナルコトハ、何人モ異
論ノナイ所デゴザイマス、政府當局モ十分
之ヲ信ジ、之ヲ常ニ力說シテ居リナガラ、
何故ニ今日マデ荏苒日ヲ送ッテ來タノデア
ルカ、提出ノ準備ニ付キマシテハ、旣ニ昭
和八年五月ニ出シマシタ農業保險經過〓要
說明書ニ詳シク書イテアルノデアリマス、之
ニ依リマスト、政府ハ調査スベキ調査ハ十分
致シタ、又〓究スベキモノハ十分〓究シ盡
シタ、旣ニ第六十二議會ニ於テ提出シヨウ
ト思ッタガ、大藏當局ノ拒ム所ニ依ッテ出セナ
カッタ、越エテ七十議會ニ於テ出サウト思ッタ
ノデアルガト云フコトヲ書イテ居ルノデアリ
マス、隨テ準備不足ノ結果遲レタト云フヤウ
ナ口實ハ、何處カラモ出テ來ナイノデアリ
マス、旣ニ今議會始マッテ以來今日マデ七十
日、荏苒今日ニ至リマシタコトハ如何ナ
ル理由デアルカ、其點ヲ御伺致シタイ、而モ
會期剩ス所僅カ二十日デアル、斯ノ如キ重
要法案ヲ斯ル短時日ヲ以テ審議スルト云フ
コトハ、中々難シイト思フノデアリマス、
若シ萬一ニシテ斯ルコトガナイト信ジマス
ルガ、審議未了ニ終ルヤウナコトガアッタ
ナラバ、ソレハ政府當局ノ責任デアルト私
ハ信ズルノデアリマス(拍手)此點ニ關スル
政府當局ノ御意見ヲ承リタイノデアリマス
第二ニ本保險制度ノ内容ニ付テ質問ヲ申
上ゲタイノデアリマス、其一ハ今日ノ農村ノ
現狀ニ於テ、相互保險制ハ果シテ妥當デア
ルカドウカト云フ點デアリマス、其第二ハ
保險金定額制ハ損害保險ノ性質ニ反シナイ
モノデアルカドウカト云フ二點デアリマス、
第一本案ハ多少國家ノ補助助成ガアリマス
ケレドモ、原則トシテ相互保險制ヲ採用シ
テ、農民共同ノ分擔ニ於テ損害ヲ塡補セン
トスル立前ヲ取ッタト云フコトハ、法文上明
カデアリマス、併ナガラ今日ノ農村ノ窮乏
ハ文字通リ餓死線ヲ彷徨シテ居ル、何等災
害ガナクテモ農民ハ沒落ノ一途ヲ辿ッテ居
ルノデアリマス、其現實ノ農村ヲ見ル時ニ
保險料ノミニ於テ、日本各地ニ頻發スル所ノ
災害ニ對シテ、損害塡補ヲ爲サントスルコ
トハ不可能デアルト云フコトヲ、豫斷スル
ニ難クハナイノデアリマス、相互保險制ノ
成立スル爲ニハ、亞米利加或ハ諸外國ニ於
テ行ハレル所ノ大農經營ノ組織デナケレバ
ナラヌ、一旦災害ガアッタ場合ニ、其災害ニ
因ッテ被ッタ損害ガ、家族ノ生活ニ影響シナ
イ所ノ大農經營デナケレバナラヌノデアリ
マス、然ルニ我國ノ農業ハ私ガ申上ゲル迄
モナク、家族農業ヲ主體トスル小農經營デ
アリマシテ、全農家ノ六八%マデガ、一町步
以下ノ五反百姓デアリマシテ、農業經營ト
家族生活トハ一ツノ紐帶ヲ成シテ居リマシ
テ、一度災害ニ見舞ハレマスト、直チニ一
家ガ食フコトスラ出來ナイヤウナ狀態ニ立
至ルノデアリマス、斯ル貧困者ニ平素多額
ノ保險料ヲ負擔セシムルコトハ不可能デア
リマシテ、玆ニ本法案ノ相互保險制ヲ採リ
マシタ所ノ重大ナル缺陷ガ存在スルト思フ
ノデアリマス、政府ハ社會保險ノ原則ヲ十
分酌ミ入レテ、國營保險制度ヲ採用シ、生
活費ノ全額ヲ負擔スル制度ヲスルニアラザ
レバ、本案ノ目的ヲ達成スルコトハ出來ナ
イト思ヒマスルガ、政府ノ所見ハ如何デア
リマセウカ
次ニ本案ニ於キマシテ保險金ノ定額料制
ヲ採用シテ居ル、是ハ損害保險ノ本旨ニ反
スルノデハナイカ、本案ニ於キマシテハ、
保險金額ハ勅令ニ委任シテ居リマスノデ、
何程ニナルカハ不明デアリマスケレドモ、
昨年ノ末農林省ノ發行致シマシタ所ノ要綱
ニ依リマスルト、水稻ニハ僅ニ二十圓、桑
ニハ二十圓、麥ニハ十圓トナッテ居ルノデア
リマス、是ダケノ塡補デハ到底農民ハ救ハ
レナイコトハ明デアリマス、尙ホ帝國農會
ノ調査ニ依リマスルト、米作反當リノ生產
費ハ、昭和十年度ニ於キマシテハ六十九圓
十八錢、十一年度ニ於キマシテハ反當リ七
十一圓十一錢トナルノデアリマシテ、二十
圓ノ塡補ヲ受ケタリトスルモ、僅ニ損害額
ノ二割五分ニ過ギナイノデアリマス、而モ
此二割五分ハ皆無作ノ場合ニ於テデアル、
三割乃至五六割ノ減收ノ場合ニハ、僅ニ二
三圓カ五六圓シカ與ヘラレナイ、ドウシテ
本案ノ目的ヲ達スルコトガ出來ルデアリマ
セウカ、又一面ニ於キマシテハ、物ノ價格
ハ固定シテ不動ノモノデハナイノデアリマ
ス、種々ノ事情ニ依ッテ或ハ昂騰シ、或ハ暴
落スルト云フコトハ明ナ事實デアル、最近
ノ情勢ヲ見マスルト、支那事變ノ影響ニ依
リマシテ、漸次物價ハ〓騰シテ居ル、而モ
物價ノ昂騰ハ勞賃ノ値上ヲ必然的ニ齎ス
ト云フコトハ言フ迄モナイノデアリ
マス、隨テ災害ヲ受ケタル農作物又ハ生產
費モ時ニ依ッテ相異ッテ來ル、損害金額モ亦
異ルノガ當然デアリマス、例ヘバ今後物價
竝ニ勞賃ガ騰貴ヲ致シマシテ、今日反當リ
七十二圓ノ生產費デアルガ、將來或ハ百五十
圓ニナルカモ知レヌ、其場合ニ又同ジ保險金
ノ定額制ニ依ッテ、七十圓ノ場合ト同ジ二十
圓シカ與ヘラレナイト云フコトハ、損害保
險ノ本旨ニ反スルモノデハナイカ、此點ニ關
スル當局ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマス
第三ハ、保險ノ目的物竝ニ保險事項ガ餘
リニ狭小ニ過ギハシナイカト云フコトデア
リマス、是ハ保險法ヲ見マスルト云フト、
其第一條ニ於キマシテ「行政官廳ノ認可ヲ受
ケ風水害其ノ他ノ災害ニ因リ」ト書イテアリ
マシテ、何等具體的ナ事項ヲ一ツモ言ッテ
居ラナイ、其他ノ災害トハ如何ナル災害ヲ
指スノデアルカト云フコトヲ、ハッキリ當局
ニ御示ヲ願ヒタイ(拍手)昨年ノ十二月ニ發
表サレマシタ要綱ヲ見マスルト、僅ニ米作
ト麥作ト桑作トノ農民ダケシカ、此保險ノ
對象トナッテ居ラナイ、野菜或ハ果樹ヲ作ル
農民ニ對シテハ、何等ノ方策モ講ジテ居ラ
ナイ、一方ニ於テ農林當局ハ、今日多角形
農業ヲ奬勵シテ居ル、野菜ヲ作レ、果樹ヲ作
レ、兎ヲ飼ヘ、或ハ豚ヲ飼ヘト、多角形農業ヲ
奬勵シテ居リナガラ、其多角形農業ノ奬勵
ニ應ジテ作ッタ農作物ニ對シマシテハ、何等
保險ノ對象ニシテ居ラナイ、是ガ矛盾ニア
ラズシテ何ゾヤト言ヒタイノデアリマス、
ソコデ私ハ斯ウ云フコトヲ質問致シタイ、
第一ニ將來麥、桑、或ハ米以外ノ農業ニ從
事シテ居ル者ニ對シテ、本案ヲ擴張スル意
思ガアルカナイカト云フ點デアリマス、若
シ擴張スル意思ガナイトスルナラバ、如何
ナル方法ヲ以テ農業保險ヨリ除外サレタル
所ノ農業ヲ保護スルヤト云フ、二點ニ付テ
御伺致シタイト思フノデアリマス(「簡單」
ト呼フ者アリ)直グ終リマス、第二ハ、保
險事項ノ點デアリマスガ、是ハ中野氏或ハ
其他ノ人カラ略〓御話ガアッタノデアリマ
スガ、例ヘバ雪害、冷害、蟲害ニ因ルモノ
ハ除外シテ居ル、雪害、冷害ニ付テハ、先
程ノ人カラ詳シク申サレマシタガ、政府ノ
之ニ對スル答辯ハ吾々ヲ納得セシメルコト
ガ出來ナイ、マダ〓究ガ足ラヌト云フコト
ヲ言ウテ居ル、然ルニ農業保險ガ日本ニ唱
道セラレタノハ、明治二十年デアッタノデア
リマス、ソレカラ在朝在野ノ人、或ハ色々
ノ人々ニ依ッテ〓究ガ盡サレテ、政府ハ既ニ
六十二議會ニ於テ法案ヲ提出シヨウトシタ
ト言ハレルノデアリマス、ソレ以來ズット
〓究ヲ續ケテ居リナガラ、今尙ホ冷害ニ對
シテ〓究ガ出來テ居ナイト云フコトハ、冷
害ノ常ニ存シテ居ル所ノ東北地方ニ對シテ、
政府當局ガ冷淡ダト云フコトヲ物語ルモノ
ダト吾々ハ思フノデアリマス(拍手)然ルニ
政府委員ノ答辯ハ、保險ニシナクテモ共濟
事業ヲ行フト云フコトヲ言ッテ居ル、所ガ共
濟事業ノ主體ハ市町村デアル、國家サヘモ行
ヘナイ所ノ厖大ナル雪害及ビ冷害ニ對シテ、
市町村ガドウシテ之ヲ行ヘルカ、單ニ法文
ノ中ニ共濟事業ヲ冷害ニ對シテ行フト云フ
コトヲ規定シタニ止ッテ、實際上ハ不可能デ
アルト云フコトハ明ナ事實デアリマス、是
ハ私共ハ政府ノ遁路デハナイカト思フ、市
町村ニ委シテ置イテ、ドウシテ共濟ガ出來
ルカ、共濟事業ニ依ッテドウシテ行ヘルカ、
ソレヲ御聽シタイノデアリマス
最後ニ政府ハ農業保險ノ實施後ニ於テ、
從來政府ガ罹災農民ニ對シテ執ッテ參リマシ
タ所ノ罹災救助、其他災害地免租、低利資
金ノ融通等ヲ、併セテ行フノ意思アリヤ否
ヤト云フ問題デアリマス、若シ農業保險制
度ノ實施ニ於テ、政府ハ之ニ滿足シテ是等
ノ方策ヲ講ジナイトスルナラバ、吾々ハ本
案ニ對スル贊否ニ關シテ、十分考ヘナクチ
ヤナラヌノデアリマス、ドウカ此點ニ對シ
テ明確ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フノデゴ
ザイマス(拍手)
〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=63
-
064・有馬頼寧
○國務大臣(伯爵有馬賴寧君) 菊地君ノ御
尋ニ御答ヲ致シマス、第一ノ提出ノ遲レマ
シタ理由ニ付キマシテハ、別ニ取立テヽ申
上グルコトモナイノデアリマシテ、色々ノ
法案ガアリマスルシ、準備其他ノ爲ニ遲レ
タノデアリマシテ、甚ダ申譯ガアリマセヌ
ガ、ドウゾ短イ時間ニ於テ十分御審議ヲ願
ヒタイト思ヒマス、相互制ハイカヌト云フ
御說デゴザイマシタガ、日本ノ農村ノ農業
ガ非常ニ小規模デアルト云フコトハ、或ハ
缺點デアルカモ知レマセヌガ、併シ日本ノ
農村ノ相互共濟ト云フヤウナ風カラ考ヘテ
見マシテモ、所謂相互制ト云フモノハ、必
シモ日本ノ農村ニ不適當デアルト考ヘテ居
ラナイノデアリマス、殊ニ何ト申シマスカ、
生活費全部ヲ保險ニ付スルト云フヤウナ、
保險金額ヲ多額ニ致シマスコトハ、保險料
ヲ高ク致シマシテ、小農ニ取リマシテハ負擔
ガ重クナリマスルカラ、其點ハ考慮致シマ
シテ、成ベク保險料ヲ低額ニ致シマス爲ニ、
定額制ヲ採ルコトニ致シタノデアリマス、
定額制ノ大體ノ標準ト云フモノハ、是ハ次
ノ生產ヲ行ヒマスル上ニ付キマシテ、其準
備ヲスル爲ニ必要ナ現金支出ト云フモノヲ
大體ノ標準ニ置キマシテ、定額制ト云フモ
ノヲ考ヘタノデゴザイマス、收穫全部ニ對
スル保險ト云フコトニナリマスレバ只今
申上ゲマシタヤウニ、非常ニ保險料ガ高クナ
ル爲ニ、定額制ガ宜シイト思ッテ居ルノデア
リマス、保險事項、保險ヲ致シマス作物其
他ニ付キマシテハ、只今ノ所デハ、米ト麥
ト桑ト云フコトニナッテ居リマス、是ハ日本
ノ全農產物ノ約七割ヲ占メテ居リマス、又
面積カラ申シマシテモ、大部分ヲ占メテ居
リマスノデ、差當リ此三ツノモノニ付キマ
シテ、風水害、早害、其他ノ主ナル害ニ付
テ保險ヲ付ケルコトニ致シマシタガ、決シテ
之ニ限定ヲ致シテ居ルト云フ意味デハナイ
ノデアリマシテ、將來必要ニ應ジテ又之ヲ
改メタイト考ヘテ居リマス、冷害、雪害ノ
點ニ付キマシテハ、只今中野君ニ御答申上
ゲマシタ通リデアリマスガ、共濟ト云フコ
トハ決シテ市町村ガ行フノデハナイノデア
リマシテ、共濟事業ハ保險組合ガ行フ、所
謂郡區域ノ保險組合ガ之ヲ行フコトニナッテ
居ルノデアリマス、此保險制度ガ設ケラレ
テモ、決シテ普通一般ニ今マデ行ハレタ所
ノ災害ニ因ル救濟的ナモノヲ廢止致ス考ハ
ゴザイマセヌ、災害ニ因ル所ノ免租デアル
トカ、或ハ低利資金ノ融通ナドハ、從來通
リ之ヲ行フノデアリマシテ、保險ノ爲ニソ
レ等ヲ廢止スルト云フヤウナ考ハ持ッテ居リ
マセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=64
-
065・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=65
-
066・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名二十七名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=66
-
067・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=67
-
068・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=68
-
069・服部崎市
○服部崎市君 此際暫時休憩セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=69
-
070・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=70
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071・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ暫時休憩致シマス
午後六時二分休憩
午後六時四十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=71
-
072・小山松壽
○議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス、日程第二、本邦內ニ於テ募集
シタル外國債ノ待遇ニ關スル法律案、第
讀會ヲ開キマス-大藏政務次官
第二本邦內ニ於テ募集シタル外國債
ノ待遇ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
ニ關スル法律案
本邦內ニ於テ募集シタル命令ノ定ムル外
國債ハ租稅ノ賦課又ハ納稅ノ擔保ニ關シ
テハ之ヲ國債ト看做ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前募集シタル外國債ニハ本法ヲ
適用セズ
〔政府委員太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=72
-
073・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 只今議題トナリ
マシタ本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待
遇ニ關スル法律案ニ付テ御說明申上ゲマ
ス、我國ノ國債ニ對シマシテハ、租稅ノ賦
課竝ニ納稅ノ擔保ニ付キ、其性質上他ノ有
價證劵ト比ベマシテ特例ガ設ケラレテ居ル
ノデアリマスケレドモ、外國ノ國債ニ付キ
マシテハ、斯樣ナ取扱ヲ致シテ居ラナイノ
デアリマス、然ルニ外國ノ國債ニ付キマシ
テモ、我ガ國內ニ於テ募集セラレクモノニ
付キマシテハ、此際一定條件ノ下ニ我國ノ
國債ト同樣ノ待遇ヲ與ヘマシテ、其發行ニ
便宜アラシメタイト存ズルノデアリマス、
差當リマシテハ滿洲國ノ國債ニ其適用アリ
ト認メラレルノデアリマス、何卒御審議ノ
上御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=73
-
074・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=74
-
075・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、臨時租稅
增徵法中改正法律案外七件委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=75
-
076・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=76
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077・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ議
事日程ハ議了致シマシク、次會ノ議事日程
ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後六時四十四分散會
衆議院議事速記錄第二十二號中正誤
頁段行誤正
五〇五二一一武智勇記君武知勇記君
同同三武智勇記君武知勇記君
同同一一一○武智勇記君○武知勇記君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02319380305&spkNum=77
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