1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十四年一月二十四日（火曜日）午前十時十一分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第四號
昭和十四年一月二十四日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第三日）
第二 兵役法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第三 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四 宗教團體法案（政府提出） 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第六 寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/0
-
001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
昨二十三日分科會ニ於テ當選シタル正副主
査ノ氏名左ノ如シ
請願委員會
第一分科
主査子爵保科正昭君
副主査男爵足立豐君
昭和十四年一月二十五日
第二分科
主査子爵加藤泰通君
副主査男爵本多政樹君
第三分科
主査子爵秋元春朝君
副主査男爵久保田敬一君
第四分科
主査男爵松平外與麿君
副主査子爵谷儀一君
決算委員會
第一分科
主査子爵綾小路護君
副主査男爵奧田剛郞君
第二分科
主査松本學君
副主査男爵原田熊雄君
第三分科
主査子爵立花種忠君
副主査男爵前田勇君
第四分科
主査子爵秋月種英君
副主査男爵三須精一君
第五分科
主査子爵立見豐丸君
副主査男爵沖貞男君
同日委員長ヨリ請願委員子爵豐岡圭資君ヲ
第三分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報〓書
ヲ提出セリ
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十四囘帝
國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
政府委員
企畫院次長武部六藏君
本日第四部ニ於テ請願委員野村德七君ノ補
關選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果村田省藏君當選
セリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/1
-
002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、御諮リヲ致シマス、議事日
程ヲ變更シテ日程第一ヲ最後ニ廻シ、日程
第二以下順次議題ト爲スコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/2
-
003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/3
-
004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、兵役
法中改正法律案、政府提出第一讀會、板
垣陸軍大臣
〔左ノ提出文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
兵役法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十四年一月十八日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
海軍大臣米內光政
陸軍大臣板垣征四郞
兵役法中改正法律案
兵役法中左ノ通改正ス
第六條中「四年」ヲ「五年」ニ改ム
第七條中「五年」ヲ「七年」ニ改ム
第八條中「十二年四月」ヲ「十七年四月」ニ、
「十一年四月」ヲ「十六年四月」ニ改ム
第十條削除
第十二條中「六十日」ノ下ニ「(海軍現役兵
ニシテ師範學校ヲ卒業シ小學校ノ〓職ニ
就クノ資格ヲ有スル者ニ在リテハ一年六
十日)」ヲ加フ
第十五條削除
第十七條第三項中「前二項」ヲ「前項」ニ改
メ同條第二項ヲ削ル
第十八條中「、第九條第一項及第十條」ヲ
「及第九條第一項」ニ改ム
第三十三條現役ニ適スル者ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ體格等位ノ優劣ニ從ヒ徵
集豫定者及其ノ徵集順序ヲ定メ各徵募
區ノ配賦人員ニ應ジ現役兵、第一補充
兵ノ順序ニ之ヲ徵集ス
前項ノ徵集順序ヲ定ムル場合ニ於テ體
格等位同一ナル者ニ付特ニ必要アルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ抽籤ノ法ニ
依リ其ノ徵集順序ヲ定ムルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ徵集スベキ者ノ屬
スル兵種ハ各徵募區ノ配賦人員ニ應ジ
其ノ身材、藝能及職業ニ依リ之ヲ定ム
現役ニ適スル者ニシテ現役兵又ハ第一
補充兵ニ徵集セザル者ハ之ヲ第二補充
兵ニ徵集ス
現役兵徵集豫定者ニシテ其ノ屬スル兵
種定マリタル者ハ本人ノ願ニ依リ第一
項及第二項ノ規定ニ依ル徵集順序ニ拘
ラズ現役兵ニ之ヲ徵集スルコトヲ得
第三十八條削除
第四十一條徵兵檢査ヲ受クベキ者ニシ
テ勅令ノ定ムル學校ニ在學スル者ニ對
シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ年齡二十
六年迄ヲ限トシ其ノ徵集ヲ延期ス
前項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタ
ル者ニ對シテハ在學ノ事由止ム年又ハ
其ノ翌年ニ於テ徵兵檢査ヲ行フ但シ一
ノ學校卒業ノ日ヨリ六月以内ニ他ノ學
校ニ入學スル者ニ付テハ徵集延期ノ事
由尙繼續スルモノト看做ス
第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレ
タル期間滿了ノ年ニ至ルモ在學ノ事由
尙止マザル者ニ對シテハ其ノ年徵兵檢
査ヲ行フ
戰時又ハ事變ニ際シ特ニ必要アル場合
ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ徵集ヲ
延期セザルコトヲ得
第四十五條第二項中「第三項」ヲ「第二項」
ご 入
第四十九條左ニ揭グル者徵集豫定者ト
爲リタル場合ニ於ケル其ノ徵集順序ハ
第三十三條第五項ノ規定ニ依ル者ノ下
位トシ其ノ他ノ者ノ上位トス
-第四十六條第二項ノ規定ニ該當ス
ル者
二第四十七條ノ規定ニ該當スル者
三第七十四條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑
ニ處セラレタル者
四第七十六條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑
ニ處セラレタル者
第五十三條第一項中「第四十一條第三項
若ハ第四項」ヲ「第四十一條第二項若ハ第
三項」ニ、「、第六十六條第一項又ハ第六十
七條」ヲ「又ハ第六十六條第一項」ニ、同
條第二項中「第十七條第一項又ハ第二項」
ヲ「第十七條第一項」ニ改ム
第五十五條第二項中「服役第一年次ノ」ヲ
削ル
第五十六條第三項ヲ左ノ如ク定ム
前項ニ規定スル召集日數ハ特別ノ必要
アル場合ニ限リ五十日以內之ヲ延長ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第一項ニ
規定スル召集囘數ヲ一囘宛減ズルモノ
トス
第五十七條第一項中「第一補充兵」ヲ「補
充兵」ニ改ム
第六十二條第四項中「認ムル者ナルトキ
ハ」ノ下ニ「召集期日若ハ召集年次ヲ變更
シ又ハ」ヲ加フ
第六十七條削除
第七十三條中「帝國外ノ地ニ在リテ帝國
臣民ノ爲ニ設置シタル學校」ヲ「帝國外ノ
地ニ在ル學校」ニ改ム
附則
本法ハ昭和十四年三月三十一日ヨリ之ヲ
施行ス但シ第十條、第十二條、第十五條、
第十七條、第十八條、第三十八條、第四
十一條、第四十五條及第六十七條ノ改正
規定竝ニ第五十三條ノ改正
規定中第十七條、第四十一條及第六十七
條ニ關スル部分ハ昭和十四年十二月一日
ヨリ之ヲ施行ス
昭和十四年三月三十一日ニ於テ現ニ第十
九條ノ規定ニ基キ其ノ服役ノ期間ヲ延長
セラレ居ル者ノ服役ハ第八條ノ改正規定
ニ拘ラズ仍從前ノ例ニ依ル
昭和十四年十二月一日ニ於テ現ニ短期現
役兵トシテ徵集セラレ未ダ入營セザル者、
及短期現役兵トシテノ服役ヲ終リタル者
ノ服役ハ仍從前ノ例ニ依ル
昭和十四年十二月一日ニ於テ現ニ中學校
又ハ從前ノ第四十一條ノ規定ニ依リ中學
校ノ學科程度ト同等以上ト認メタル學校
ニ在學スル者ニ對スル徵集ノ延期ハ其ノ
者ガ現ニ在學スル學校ニ引續キ在學スル
間ハ第四十一條ノ改正規定ニ拘ラズ仍從
前ノ例ニ依ル
〔國務大臣板垣征四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/4
-
005・板垣征四郎
○國務大巨(板垣征四郞君) 兵役法中改正
法律案提出ノ理由ニ付テ說明致シマス、第
一ハ服役、召集、在學徵集延期等直接軍備
充實ニ關係アル改正デアリマシテ、海軍關
係ノ事項モゴザイマスガ、併セテ私ヨリ申
上ゲマス、御承知ノ如ク現下內外ノ情勢ノ
變化ハ、帝國軍備ノ迅速且飛躍的充實ヲ必
須トスルニ至リマシテ、戰時所要兵力保持ノ
爲ニハ或程度服役期間ノ延長ヲ絕對ニ必
要トスルニ至ッタノデアリマス、卽チ陸軍ニ
於テハ補充兵役ヲ五年、海軍ニ於テハ豫備
役ヲ一年、後備兵役ヲ二年延長致サネバナ
ラヌコトトナリマシタ次第デゴザイマス、
又就中幹部ノ新銳化竝ニ在〓軍人ノ能力向
上ニ付キマシテハ、今次事變ニ於テ特ニ其
ノ必要ヲ痛感セラレタ所デアリマシテ之
ガ爲在學徵集延期制度及召集制度ニ所要ノ
改正ヲ加ヘナケレバナラヌノデアリマス、
尙現役兵徵集人員モ激增ヲ見ルコトトナリ
マシタル結果、入營兵ノ體位低下ヲ極力阻
止スルノ必要ヲ生ジ、之ガ爲兵員徵集法ニ
付キマシテモ此ノ目的ニ副フ如ク所要ノ改
正ヲ致シタイト存ジマス、第二ハ短期現役
兵制度ノ廢止デアリマス、現在ノ制度ニ於
キマシテハ師範學校ヲ卒業シタ者ハ五箇
月ノ現役ノ後ハ直チニ第一國民兵役ニ服ス
ルコトトナッテ居リマスガ、近時軍ノ裝備ハ
著シク機械化セラレ、其ノ戰鬪法モ頗ル複
雜ニナリマシタノデ、僅カ五箇月ノ期間デ
ハ到底軍隊〓育ヲ十分ニ施スコトガ出來ナ
イバカリデナク、〓員タル者ニ十分ニ軍隊
〓育ヲ體得セシメ、現役服役後ニ於テ之
ヲ兒童、生徒ノ〓育ニ及シ、國民ノ必任
義務ヲ完全ニ遂行セシメ、遺憾ナク皇運
扶翼ノ任ヲ盡サシメマス爲ニモ、現在ノ
制度デハ適當デナイト存ズルノデアリマ
ス、而モ一朝有事ノ際ニ於キマシテハ
小學校〓員ガ一般國民ト同樣ニ直チニ國防
ノ第一線ニ立ツコトハ、國民〓育上極メテ
肝要デアルト思料致シマスノデ、本制度ハ
之ヲ廢止致サムトスル次第デゴザイマス、
本制度ノ廢止ニ依リマシテ一層國民皆兵ノ
實ヲ擧ゲ得マスコトハ、今更申ス迄モナイ
コトト存ジマスガ、尙本制度ノ廢止ニ依リ
國民〓育ニ支障ヲ及サナイコトニ付キマシ
テハ、十分ナル確信ヲ有シテ居ル次第デゴ
ザイマス、第三ハ日滿兩國一體ノ關係ヲ助
長スル爲メノ改正デアリマス、卽チ滿洲國ノ
設立スル學校中、日滿兩國發展ノ爲特殊重大
ナル關係ヲ有スルモノニ對シマシテハ帝
國ト致シマシテ其ノ充實發展ノ爲積極的援
助ヲ爲スト共ニ、此ニ在學スル帝國臣民ニ
對シマシテハ、其ノ修學ニ關シ帝國ノ設立
スル學校ニ於ケルト同樣ノ便宜ヲ與フルノ
必要ガアルモノト信ズル次第デゴザイマス、
今囘本法律案ヲ提出スルニ至リマシタ理由
ハ以上ノ通デゴザイマス、何卒御審議ノ上
速カニ御協賛アラムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/5
-
006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑モナ
ケレバ日程第三、特別委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/6
-
007・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今、議題トナリマシ
タ特別委員ノ選擧ハ、本會期中ヲ通ジ、特
別ノ場合ヲ除キ其ノ特別委員ノ數ヲ九名ト
シ、其ノ指名ヲ議長ニ一任ノ動議ヲ提出致
シマス、而シテ只今上程セラレマシタ兵役法
中改正法律案ハ重要ナル法案デアリマスル
ガ故ニ、其ノ特別委員ノ數ヲ十八名トシ、
其ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議ヲ提出致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/7
-
008・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/9
-
010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
兵役法中改正法律案特別委員
公爵鷹司信輔君侯爵德川義親君
伯爵溝口直亮君子爵野村益三君
子爵谷儀一君子爵伊東二郞丸君
織田萬君中川健藏君
三井〓一郞君男爵淺田良逸君
男爵松平外與麿君男爵渡邊修二君
小野寺長治郞君松本學君
石川三郞君辻兵吉君
松岡潤吉君大西虎之介君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第四、宗〓
團體法案、日程第六、寺院等ニ無償ニテ貸
付シアル國有財產ノ處分ニ關スル法律案、
政府提出、第一讀會、是等ノ二案ヲ一括致
シマシテ議題ト致シマスコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、荒木文部大臣
宗〓團體法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十四年一月十八日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
文部大臣男爵荒木貞夫
內務大臣侯爵木戶幸一
大藏大臣石渡莊太郞
宗〓團體法案
宗〓團體法
第一條本法ニ於テ宗〓團體トハ神道〓
派、佛〓宗派及基督〓其ノ他ノ宗〓ノ
〓團(以下單ニ〓派、宗派、〓團ト稱
ス)竝ニ寺院及〓會ヲ謂フ
第二條〓派、宗派及〓團竝ニ〓會ハ之
ヲ法人ト爲スコトヲ得
寺院ハ之ヲ法人トス
第三條〓派、宗派又ハ〓團ヲ設立セン
トスルトキハ設立者ニ於テ〓規、宗制
又ハ〓團規則ヲ具シ法人タラントスル
モノニ在リテハ其ノ旨ヲ明ニシ主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
〓規、宗制及〓團規則ニハ左ノ事項ヲ
記載スベシ
一名稱
二事務所ノ所在地
三〓義ノ大要
四〓義ノ宣布及儀式ノ執行ニ關スル
事項
五管長、〓團統理者其ノ他ノ機關ノ
組織、任免及職務權限ニ關スル事項
六寺院、〓會其ノ他ノ所屬團體ニ關
スル事項
七住職、〓會主管者、其ノ代務者及〓
師ノ資格、名稱及任免其ノ他ノ進退
竝ニ僧侶ニ關スル事項
八檀徒、〓徒又ハ信徒ニ關スル事項
九財產管理其ノ他ノ財務ニ關スル事項
十公益事業ニ關スル事項
〓規、宗制若ハ〓團規則ヲ變更セント
スルトキ又ハ法人ニ非ザル〓派、宗派
若ハ〓團ガ法人タラントスルトキハ主
務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第四條〓派及宗派ニハ管長ヲ、〓團ニ
ハ〓團統理者ヲ置クベシ
管長又ハ〓團統理者ハ〓派、宗派又ハ
〓團ヲ統理シ之ヲ代表ス
管長又ハ〓團統理者缺ケタルトキ又ハ
久シキニ亙リ職務ヲ行フコト能ハザル
トキハ代務者ヲ置キ其ノ職務ヲ行ハシ
ムベシ
管長、〓團統理者又ハ其ノ代務者就任
セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受
クルコトヲ要ス
第五條〓派、宗派又ハ〓團ハ主務大臣
ノ認可ヲ受ケ合併又ハ解散ヲ爲スコト
ヲ得
〓派、宗派又ハ〓團ハ設立認可ノ取消
ニ因リテ解散ス
法人タル〓派、宗派又ハ〓團ハ破產ニ
因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ〓派、宗派又ハ〓團
ハ〓算ノ目的ノ範圍外ニ於テハ法人ニ
非ザル〓派、宗派又ハ〓團トシテ設立
ノ認可ヲ受ケ存續スルモノト看做ス
主務大臣ハ必要アルトキハ前項ノ〓派、
宗派又ハ〓團ニ對シ設立ノ認可ヲ取消
スコトヲ得
第六條寺院又ハ〓會ヲ設立セントスル
トキハ設立者ニ於テ寺院規則又ハ〓會
規則ヲ具シ第二項第五號ノ〓會ヲ除ク
ノ外豫メ管長又ハ〓團統理者ノ承認ヲ
經、法人タラントスル〓會ニ在リテハ
其ノ旨ヲ明ニシ地方長官ノ認可ヲ受ク
ルコトヲ要ス
寺院規則及〓會規則ニハ左ノ事項ヲ記
載スベシ
-名稱
二所在地
三本尊、奉齋主神、安置佛等ノ稱
號
四所屬〓派、宗派又ハ〓團ノ名稱
五〓派、宗派又ハ〓團ニ屬セザル〓
會ニ在リテハ前號ニ規定スル事項ニ
代ヘ其ノ奉ズル宗〓ノ名稱及〓義ノ
大要竝ニ〓師ノ資格、名稱及任免其
ノ他ノ進退ニ關スル事項
六〓義ノ宣布及儀式ノ執行ニ關スル
事項
七住職、〓會主管者其ノ他ノ機關ニ
關スル事項
八檀徒、〓徒又ハ信徒及其ノ總代ニ
關スル事項
九本末寺及法類ニ關スル事項
十財產管理其ノ他ノ財務ニ關スル事
項
十一公益事業ニ關スル事項
寺院規則若ハ〓會規則ヲ變更セントス
ルトキ又ハ法人ニ非ザル〓會ガ法人タ
ラントスルトキハ檀徒、〓徒及信徒ノ
總代ノ同意ヲ得前項第五號ノ〓會ヲ除
クノ外豫メ管長又ハ〓團統理者ノ承認
ヲ經、地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ
要ス
第七條寺院ニハ住職ヲ、〓會ニハ〓會
主管者ヲ置クベシ
住職又ハ〓會主管者ハ寺院又ハ〓會ヲ
主管シ之ヲ代表ス
住職又ハ〓會主管者缺ケタルトキ又
ハ久シキニ亙リ職務ヲ行フコト能ハザ
ルトキハ代務者ヲ置キ其ノ職務ヲ行ハ
シムベシ
第八條寺院及〓會ニハ檀徒、〓徒及信
徒ノ總代(以下單ニ總代ト稱ス)三人以
上ヲ置クベシ
總代ハ寺院又ハ〓會ノ經營ニ關シ住職
又ハ〓會主管者ヲ扶ク
總代ノ選任及解任ハ住職又ハ〓會主管
者ヨリ之ヲ市町村長(市制第六條及第
八十二條第三項ノ市ニ在リテハ區長、
町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ
準ズベキ者)ニ屆出ヅルコトヲ要ス
第九條寺院又ハ法人タル〓會ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ寶物其ノ他不動產以外
ノ重要ナル財產ニ付地方長官ニ於テ保
管スル寺院財產臺帳又ハ〓會財產臺帳
ニ登錄ヲ受クルコトヲ要ス
寺院財產臺帳又ハ〓會財產臺帳ヲ閱覽
シ又ハ其ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ受ケ
ントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ請求スルコトヲ得
第十條寺院又ハ法人タル〓會左ニ揭グル
行爲ヲ爲サントスルトキハ總代ノ同意
ヲ得第六條第二項第五號ノ〓會ヲ除ク
ノ外管長又ハ〓團統理者ノ意見書ヲ添
ヘ地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要
ス
不動產又ハ寺院財產臺帳若ハ〓會
財產臺帳ニ登錄セラレタル財產ヲ處
分シ又ハ擔保ニ供スルコト
二借財又ハ保證ヲ爲スコト
前項ノ場合ニ於テ總代ノ同意ヲ得ルコ
ト能ハザルトキハ住職又ハ〓會主管者
ハ其ノ事由ヲ具シ地方長官ノ承認ヲ求
ムルコトヲ得
第一項ニ規定スル事項ニ付地方長官ノ
認可ヲ受ケズシテ爲シタル行爲ハ之ヲ
無效トス
第一項ニ規定スル事項ニ付總代ノ同意
ヲ得ズシテ爲シタル行爲ハ第二項ノ規
定ニ依リ地方長官ノ承認ヲ得タル場合
ヲ除クノ外之ヲ無效トス
前二項ノ場合ニ於テ相手方ガ善意無過
失ナルトキハ其ノ行爲ヲ爲シタル住職
又ハ〓會主管者ハ相手方ノ選擇ニ從ヒ
之ニ對シテ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任
ズ
第十一條寺院又ハ〓會ハ第六條第二項
第五號ノ〓會ヲ除クノ外豫メ管長又ハ
〓團統理者ノ承認ヲ經、地方長官ノ認
可ヲ受ケテ合併又ハ解散ヲ爲スコトヲ
得
寺院又ハ〓會左ノ各號ノ一ニ該當スル
トキハ地方長官ハ其ノ設立ノ認可ヲ取
消スコトヲ得
一堂宇又ハ會堂ノ滅失後五年內ニ其
ノ施設ヲ爲サザルトキ
二住職又ハ〓會主管者及其ノ代務者
ヲ缺クコト三年以上ニ及ブトキ
寺院又ハ〓會ハ設立認可ノ取消ニ因リ
テ解散ス
寺院又ハ法人タル〓會ハ破產ニ因リテ
解散ス
第十二條寺院ノ境內地ノ管理、境內地
ノ區域ノ變更及境內建物ノ管理竝ニ〓
會ノ構內地ノ管理、構內地ノ區域ノ變
更及構內建物ノ管理ニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條法人タル宗〓團體ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第十四條本法ニ規定スルモノヲ除クノ
外宗〓團體ノ合併及解散ノ場合ニ於ケ
ル必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條民法第四十三條、第四十四條、
第五十條、第五十一條第一項、第五十
四條、第五十七條及第七十三條乃至第
八十三條竝ニ民法施行法第二十四條、
第二十六條及第二十七條ノ規定ハ法人
タル宗〓團體ニ、民法第四十一條及第
四十二條ノ規定ハ寺院及法人タル〓會、
ニ付之ヲ準用ス但シ民法第五十七條ノ
規定ノ準用ニ依ル特別代理人ノ選任ハ
〓規、宗制、〓團規則、寺院規則又ハ
〓會規則ノ定ムル所ニ依ル
第十六條宗〓團體又ハ〓師ノ行フ宗〓
ノ〓義ノ宣布若ハ儀式ノ執行又ハ宗〓
上ノ行事ガ安寧秩序ヲ妨ゲ又ハ臣民タ
ルノ義務ニ背クトキハ主務大臣ハ之ヲ
制限シ若ハ禁止シ、二年內ノ期間ヲ限
リ〓師ノ業務ヲ停止シ又ハ宗〓團體ノ
設立ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第十七條宗〓團體又ハ其ノ機關ノ職ニ
在ル者法令又ハ〓規、宗制、〓團規則、
寺院規則若ハ〓會規則ニ違反シ其ノ他
公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ
主務大臣ハ之ヲ取消シ、停止シ若ハ禁
止シ又ハ機關ノ職ニ在ル者ノ改任ヲ命
ズルコトヲ得
〓師法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スベ
キ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ一
年內ノ期間ヲ限リ其ノ業務ヲ停止スル
コトヲ得
第十八條主務大臣ハ宗〓團體ニ對シ監
督上必要アル場合ニ於テハ報〓ヲ徵シ
又ハ實況ヲ調査スルコトヲ得
第十九條主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ本法ニ規定スル其ノ權限ノ一部ヲ
地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十條第五條第五項、第十一條第二
項第十六條又ハ第十七條ノ規定ニ依
ル處分ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ爲ス
コトヲ得
第五條第五項、第十一條第二項又ハ第
十六條ニ規定スル設立認可ノ取消處分
ヲ違法ニシテ之ニ依リ權利ヲ毀損セラ
レタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ行政裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得ル場合ニ於テハ訴願ヲ爲ス
コトヲ得ズ
第二十一條宗〓團體ニ於テ公衆禮拜ノ
用ニ供スル建物又ハ其ノ敷地ニシテ命
令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ經タルモノ
ハ不動產ノ先取特權、抵當權若ハ質權
ノ實行ノ爲ニスル場合又ハ破產ノ場合
ヲ除クノ外其ノ登記後ニ原因ヲ生ジタ
ル私法上ノ金錢債權ノ爲ニ之ヲ差押フ
ルコトヲ得ズ寺院財產臺帳又ハ〓會財
產臺帳ニ登錄セラレタル寶物ニ付亦同
第二十二條宗〓團體ニハ命令ノ定ムル
所ニ依リ所得稅ヲ課セズ
寺院ノ境內地及〓會ノ構內地ニハ命令
ノ定ムル所ニ依リ地租ヲ免除ス但シ有
料借地ナルトキハ此ノ限ニ在ラズ
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ宗〓團體ノ所得ニ對シ地方稅ヲ課
スルコトヲ得ズ
第二十三條宗〓團體ニ非ズシテ宗〓ノ
〓義ノ宣布及儀式ノ執行ヲ爲ス結社(以
下宗〓結社ト稱ス)ヲ組織シタルトキ
ハ代表者ニ於テ規則ヲ定メ十四日內ニ
地方長官ニ屆出ヅルコトヲ要ス屆出事
項ニ變更ヲ生ジタルトキ亦同ジ
宗〓結社ノ規則ニハ左ノ事項ヲ記載ス
ベシ
一名稱
二事務所ノ所在地
三〓義、儀式及行事ニ關スル事項
四奉齋主神、安置佛等ノ稱號
五組織ニ關スル事項
六財產管理其ノ他ノ財務ニ關スル事
項
七代表者及布〓者ノ資格及選定方法
第二十四條宗〓結社ノ代表者ハ其ノ結
社ニ屬スル布〓者ノ氏名及住所ヲ遲滯
ナク地方長官ニ屆出ヅルコトヲ要ス其
ノ屆出事項ニ變更ヲ生ジタルトキ亦同
第二十五條第十六條乃至第十八條及第
二十條第一項ノ規定ハ宗〓結社又ハ其
ノ代表者若ハ布〓者ニ付之ヲ準用ス
第二十六條〓師又ハ布〓者第十六條
(前條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規
定ニ依ル制限、禁止又ハ業務ノ停止ニ
違反シタルトキハ六月以下ノ懲役若ハ
禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
宗〓團體又ハ宗〓結社ニ對シ第十
六條(前條ニ於テ準用スル場合ヲ
含ム)ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止
アリタル場合ニ於テ當該宗〓團體
又ハ宗〓結社ノ代表者其ノ他ノ機
關ノ職ニ在ル者、〓師又ハ布〓者
制限又ハ禁止アリタルコトヲ知リ
テ其ノ行爲ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同
第二十七條宗〓結社ノ代表者第二十三
條ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞
ノ屆出ヲ爲シタルトキハ三百圓以下ノ
罰金ニ處ス、
第二十八條法人タル宗〓團體ノ代表者
左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ二百圓
以下ノ過料ニ處ス
-第十三條第一項又ハ第十五條ニ於
テ準用スル民法第七十七條ノ規定ニ
依ル登記ヲ爲サザルトキ
二第十五條ニ於テ準用スル民法第五
十一條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ財
產目錄ニ虚僞ノ記載ヲ爲シタルトキ
三第十五條ニ於テ準用スル民法第八
十二條ノ規定ニ依ル裁判所ノ檢査ヲ
妨ゲタルトキ
四第十五條ニ於テ準用スル民法第八
十一條ノ規定ニ依ル破產宣告ノ請求
ヲ爲サザルトキ
五第十五條ニ於テ準用スル民法第七
十九條又ハ第八十一條ノ規定ニ依ル
公〓ヲ爲サズ又ハ不正ノ公〓ヲ爲シ
タルトキ
宗〓團體又ハ宗〓結社ノ代表者第十
八條(第二十五條ニ於テ準用スル場合ヲ
含ム)ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ、虚
僞ノ報告ヲ爲シ又ハ調査ヲ妨ゲタルト
キ及宗〓結社ノ代表者第二十四條ノ規
定ニ依ル屆出ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ屆出
ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前二項ノ過料ニ付之ヲ準
用ス
附則
第二十九條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十條明治六年太政官第二百四十九
號布〓、明治十年太政官第四十三號布
告及明治十七年太政官第十九號布達ハ
之ヲ廢止ス
第三十一條本法施行ノ際現ニ存スル〓
派又ハ宗派ハ之ヲ本法ニ依リ設立ヲ認
可セラレタル法人ニ非ザル〓派又ハ宗
派ト看做シ其ノ管長ハ之ヲ本法ニ依ル
管長ト看做ス
前項ノ〓派又ハ宗派ハ本法施行後一年
內ニ〓規又ハ宗制ヲ定メ主務大臣ノ認
可ヲ受クルコトヲ要ス其ノ認可アル迄
從前ノ〓規又ハ宗制寺法ヲ以テ〓規又
ハ宗制ニ代用ス
第三十二條本法施行ノ際現ニ寺院明細
帳ニ登錄セラルル寺院ハ之ヲ本法ニ依
リ設立ヲ認可セラレタル寺院ト看做シ
本法施行ノ際現ニ存スル祠宇ハ之ヲ本
法ニ依リ設立ヲ認可セラレタル法人タ
ル〓會ト看做ス
前項ノ寺院又ハ〓會ハ本法施行後二年
內ニ寺院規則又ハ〓會規則ヲ定メ總代
ノ同意ヲ得管長ノ承認ヲ經地方長官ノ
認可ヲ受クルコトヲ要ス其ノ寺院規則
又ハ〓會規則ノ認可アル迄ノ寺院又ハ
〓會ニ關シテハ命令ヲ以テ別段ノ規定
ヲ設クルコトヲ得
地方長官前項ノ規定ニ依リ寺院規則又
ハ〓會規則ヲ認可シタルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ登記所ニ登記ノ囑託ヲ
爲スベシ
第三十三條本法施行前〓會所、堂宇、
會堂、說〓所又ハ講義所ノ類トシテ設
立ノ許可ヲ受ケタルモノニシテ本法施
行ノ際現ニ存スルモノハ之ヲ本法ニ依
リ設立ヲ認可セラレタル法人ニ非ザル
〓會ト看做ス
前條第二項ノ規定ハ前項ノ〓會ニ付之
ヲ準用ス
第三十四條第三十二條第一項又ハ前條
第一項ノ寺院又ハ〓會ヲ主管シ之ヲ代
表スル者ニシテ本法施行ノ際現ニ其ノ
職ニ在ルモノハ之ヲ本法ニ依ル住職又
ハ〓會主管者ト看做シ其ノ檀徒總代又
ハ信徒總代ニシテ本法施行ノ際現ニ其
ノ職ニ在ルモノハ之ヲ本法ニ依ル總代
ト看做ス
第三十五條本法施行ノ際現ニ佛堂明細
帳ニ登錄セラルル佛堂ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ本法施行後二年內ニ寺院ニ屬
シ又ハ寺院若ハ〓會ト爲ルコトヲ得其
ノ寺院ニ屬セズ又ハ寺院若ハ〓會ト爲
ラザルモノノ處分ニ關シテハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
前項ノ佛堂ニシテ寺院ニ屬セズ又ハ寺
院若ハ〓會ト爲ラザルモノニ付テハ本
法施行後二年ヲ限リ仍從前ノ例ニ依ル
第三十六條本法施行ノ際現ニ存スル宗
〓結社ニ付テハ代表者ニ於テ宗〓結社
ノ規則ヲ定メ本法施行後十四日內ニ地
方長官ニ屆出ヅルコトヲ要ス
前項ノ宗〓結社ノ代表者前項ノ規定ニ
依ル屆出ヲ爲サズ又ハ虚僞ノ屆出ヲ爲
シタルトキハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十七條登錄稅法第二條及第三條ノ
二中「寺院、祠宇、佛堂」ヲ「法人タル
宗〓團體」ニ改ム
同法第十九條但書中「第八號乃至第九
號ノ四」ヲ「第二號ノ二、第八號乃至第
九號ノ四」ニ改メ同條第二號ヲ左ノ如
クルム
二神社ノ敷地ニ關スル登記
二ノ二寺院ノ境內地若ハ〓會ノ構內
地又ハ寺院若ハ〓會ノ用ニ供スル建
物ニ關スル登記
二ノ三墳墓地ニ關スル登記
第三十五條第一項ノ佛堂ニシテ寺院ニ
屬セズ又ハ寺院若ハ〓會ト爲ラザルモ
ノノ不動產ニ關スル登記ニ付テハ前二
項ノ改正規定ニ拘ラズ本法施行後二年
ヲ限リ仍從前ノ例ニ依ル
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產
ノ處分ニ關スル法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十四年一月二十一日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
大藏大臣石渡莊太郞
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產
ノ處分ニ關スル法律案
第一條本法施行ノ際現ニ國有財產法ニ
依リ寺院又ハ佛堂ニ無償ニテ貸付シア
ル國有財產ハ寺院ニ在リテハ本法施行
後二年內ニ、佛堂ニ在リテハ宗〓團體
法第三十五條ノ規定ニ依リ其ノ佛堂ガ
寺院ニ屬シ又ハ寺院若ハ法人タル〓會
ト爲リタル場合ニ本法施行後三年內ニ
申請シタルトキハ寺院境內地處分審査
會ニ諮問シ主務大臣之ヲ當該寺院又ハ
〓會ニ讓與ス
前項ノ規定ニ依リ讓與スベキ國有財產
ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
寺院境內地處分審査會ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條前條ノ讓與ニ關スル處分ニ對シ
不服アル者ハ訴願ヲ爲スコトヲ得
前項ノ訴願ノ裁決ヲ爲ス場合ニ於テハ
寺院境內地處分審査會ニ諮問スベシ
第三條第一條ニ規定スル國有財產ニシ
テ同條ノ規定ニ依ル讓與ヲ爲サザルモ
ノハ勅令ヲ以テ特ニ國有トシテ存置ス
ルノ必要アリト定ムルモノヲ除クノ外第
一條ノ申請ヲ爲シタルモノニ付テハ讓
與ヲ爲サザルコトノ決定通知ヲ爲シタ
ル日ヨリ五年內ニ、其ノ他ノモノニ付
テハ寺院ニ在リテハ本法施行後五年內
ニ、佛堂ニ在リテハ宗〓團體法第三十
五條ノ規定ニ依リ其ノ佛堂ガ寺院ニ屬
シ又ハ寺院若ハ法人タル〓會ト爲リタ
ル場合ニ本法施行後六年內ニ申請シタ
ルトキハ時價ノ半額ヲ以テ隨意契約ニ
依リ之ヲ當該寺院又ハ〓會ニ賣拂フコ
トヲ得
前條ノ規定ニ依リ訴願ヲ爲シタル者ハ
前項ノ期間滿了後ト雖モ其ノ裁決書ヲ
受領シタル日ヨリ尙二年間前項ノ賣拂
ノ申請ヲ爲スコトヲ得
第四條前條ノ規定ニ依ル賣拂代金ニ付
テハ命令ノ定ムル所ニ依リ五年內ノ年
賦延納ヲ認ムルコトヲ得但シ國債ヲ以
テ擔保ヲ供シタルトキハ十年內ノ年賦
延納ヲ認ムルコトヲ妨ゲズ
第五條第一條ニ規定スル國有財產ニシ
テ同條ノ規定ニ依ル讓與ヲ爲サザルコ
トニ決定シタルモノニハ國有財產法第
二十四條ノ規定ヲ適用セズ但シ第三條
ノ規定ニ依リ賣拂ノ申請ヲ爲シタル國
有財產ニ付テハ賣拂契約成立ノ日又ハ
賣拂ヲ爲サザルコトノ決定通知ヲ爲シ
タル日迄命令ノ定ムル所ニ依リ無償ニ
テ之ヲ當該寺院又ハ〓會ニ貸付シタル
モノト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/12
-
013・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 宗〓團體法
案提出ノ理由竝ニ其ノ內容ノ〓略ニ付テ御
說明申上ゲタイト存ジマス、宗〓ガ國民精
神ノ振作、國民思想ノ啓導ニ重大ナル關係
ヲ有スルコトハ言ヲ俟タヌ所デアリマスル
ガ、特ニ現下非常時局ニ際シマシテハ、人
心ノ感化、社會風〓ノ上ニ甚大ナル影響ヲ
齎ス宗〓ノ健全ナル發達コソ肝要デアルト
申サネバナラヌノデアリマス、此ノ見地ニ
於テ宗〓團體ノ發達竝ニ其ノ〓化機能ノ增
進ヲ圖ラムガ爲ニ、宗〓法規ノ整備ヲ致ス
コトハ蓋シ刻下急務ノ一ト信ズルノデアリ
やくろ今宗〓團體ニ關スル現行ノ法規ヲ看
マスルニ、〓ネ明治初年ノ法制未ダ整ハザ
ル間ニ定メラレタル布告布達等、雜多ナル
モノヨリ成ッテ居ルノデゴザイマシテ、斷片
的ニシテ、其ノ適用上往々ニシテ疑義ヲ生
ジ易ク、行政上ノ不便ハ申スニ及バズ、延
イテハ宗〓團體ノ發達ト其ノ〓化活動ヲ阻
害スルモノガ尠カラザルモノガアルノデア
リマス、從ッテ玆ニ宗〓行政ノ根本ヲ完備
シ、煩雜ナル在來ノ規定ヲ整頓シ、宗〓團
體ニ對スル國家ノ保護監督其ノ適正ヲ得ル
ト共ニ、他面宗〓〓化活動ニ便益多カラシ
ムルハ、最モ必要ナルコトト思考致スノデ
アリマス、今本案內容ノ重ナルモノヲ申上ゲ
マスレバ、神佛〓宗派ニ關スル根本法規ノ不
備ヲ補ヒ、又從來法規上根據ノアリマセヌ基
督〓其ノ他ノ〓團ノ基礎ヲ明カニ規定シ、更ニ
是等ノ中法人タラムトスルモノニ對シテハ、新タ
ニ其ノ途ヲ開キ、活社會ニ於テ各種ノ法律的、
經濟的活動ヲ營ム上ニ於テノ不便ヲ除去シ、
以テ其ノ旺盛ナル〓化活動ヲ促シ、各〓宗派
〓團ニ對シテハ、ソレ〓〓ノ歷史沿革傳統ニ
依ル特殊性ヲ尊重致スコトニ付テ十分ニ留意
シ、其ノ內部ノコトニ關シテハ、ソレ〓〓ノ自
治ニ委スルコトヲ以テ原則ト致シタノデアリ
マス更ニ寺院及〓會ニ關シマシテモ、基
礎的法規ヲ制定スルト共ニ、其ノ財產管理
ノ公正ト堅實トヲ期セムガ爲ニ、是等ニ關
スル規定ヲ整ヘ、又宗〓團體ニ對シ一方免
稅ノ特典或ハ差押禁止ノ範圍擴張等ヲ考慮
シ、行政上萬一ノ不當處分アル場合ニ於テ
ハ訴願、行政訴訟ノ途ヲ開イテ其ノ救濟ヲ
講ジ、又他方法規ノ不備ヨリシテ、從來屢〓、
忌ハシキ事象ノ發生ヲ見ルニ至リマシタ
コトニ鑑ミマシテ、今後ハ事前ニ於テ必要
ナル措置ヲ爲シ得ルヤウニ致シマシテ、以
テ宗〓團體ノ健全ナル發達ニ寄與セシメム
ト致シタノデアリマス、特ニ新興宗〓團體
ニ對シマシテハ、從來專ラ警察取締ニノミ
委セテ參ッタノデアリマスガ、現下ノ思想界
ノ實情ニ鑑ミマシテ、之ガ設立ニ當ッテハ
屆出ヲ爲サシメ、之ガ監督ト周到ナル注意
ノ下ニ弊害ノ豫防ニ努メ、一方其ノ善良
ナルモノノ發達ヲ指導致シ得ルヤウニ考慮
致シタル等、全般ニ其ノ保護監督ニ遺憾ナ
キヲ期シタノデアリマス、又申ス迄モナク
憲法ニ定メテアリマス信〓ノ自由ニ付キマ
シンニ毫末モ之ヲ冒スコトナキヤウ留意
致シテ居ルノデアリマス、尙本法案ハ其ノ
立案ニ當リ、從來開示セラレテ居リマス各
般ノ意見ヲ參照シ、愼重考究ノ上其ノ要綱
ヲ宗〓制度調査會ニ諮リ、全會一致其ノ可
決ヲ見、之ニ基イテ加除訂正以テ本法案ヲ
得タノデアリマス、幸ニ本法案ガ成立致シ
マスルナラバ、宗〓行政ハ圓滑ニ運營セラ
v、又宗〓團體ノ刷新振興ニ寄與致ス所多
大ナルモノアルヲ信ズルノデアリマス、何
卒十分御審議ノ上、御協贊アラムコトヲ切
望致ス次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 松村大藏政務次
官
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/14
-
015・松村光三
○政府委員(松村光三君) 寺院等ニ無償ニ
テ貸付シアル國有財產ノ處分ニ關スル法律
案、提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、今囘
宗〓團體法案ノ提出ニ際シマシテ、政府ハ是
ト共ニ寺院佛堂ノ國有境內地讓與ノ問題ヲ
解決スルヲ適當ト認メマシテ、寺院等ニ無
償ニテ貸付シアル國有財產處分ニ關スル法
律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、御承知
ノ通リ寺院佛堂ノ國有境內地讓與ノ問題ハ
多年ノ懸案デアリマシテ、政府ニ於キマシ
テハ寺院佛堂ノ財產管理ノ方法ガ完備スル
ニ於テハ、適當ニ之ヲ解決スベキ旨ヲ屢〓發
表シ來ッタノデアリマスルガ、今囘提案ノ宗
〓團體法案ガ成立ノ曉ニ於キマシテハ寺
院佛堂ノ財產管理ノ方法モ完備スルコトニ
ナリマスルガ故ニ、宗〓團體ヲ保護シテ其
ノ〓化作用ヲ十分ニ遂ゲシムルガ爲ニ、古
來寺院佛堂ト特殊ノ沿革的關係ヲ有スル國
有境內地ヲ、適當ナル條件ノ下ニ讓與致シ
マスルコトハ、時宜ニ適シタル措置デアル
ト信ジマス、本法案ノ〓要ヲ申シマスト
本法施行ノ際ニ寺院又ハ佛堂ニ無償ニテ貸
付ケテアリマスル國有財產ハ、寺院等ガ一
定ノ期間內ニ申請致シマシタ場合ニハ、其ノ
境內地トシテ必要ナル部分ハ之ヲ讓與スル
コトニナッテ居リマス、而シテ其ノ讓與ハ愼
重且公正ニ之ヲ行フノ必要ガアリマスルカ
ラ、寺院境內地處分審査會ヲ設ケ、之ニ諮
問シマシテ讓與スルコトト致シマシタ、又
其ノ讓與ヲ爲サザル部分ニ付キシマテモ
寺院等ノ申請ニ依リ時價ノ半額ヲ以テ賣拂
ヲ爲シ、其ノ代金ニ付キマシテハ年賦延納
ヲ認メテアルノデアリマス、何卒御審議ノ
上速カニ御協贊アラムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/15
-
016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通告ガゴ
ザイマシタ、御許シヲ致シマス、阪谷男爵
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/16
-
017・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 文部大臣ニ御尋ネ致シ
マス、荒木文部大臣ハ御就任以來諸般ノ施
設ニ付テ段々御改革ニナッテ居リマスルガ、
何レモ先ヅ以テ根本ニ觸レテ、根本ノ弊害
ニ著眼シテノ御改革ノヤウニ見エマシテ
誠ニ敬服致シテ居ルノデアリマス、扨テ此
ノ宗〓團體法案ハマダ詳シクハ拜見致シマ
セヌガ、大體ニ於テ本員ハ異存ハゴザ
イマセヌ、一ツ伺ッテ置キタイト思ヒマス
ノハ近來宗〓家、私ノ申シマスノハ特
ニ佛〓ニ付テ申シマス、佛〓ノ僧侶ノ間ニ
妻帶ノコトニ付テ問題ガ起ッテ居リマス
ノハ御承知ノ如クデアラウト思ヒマ
ス、妻帶ハ矢張リ禁ズルガ宜イ、禁ゼヌガ
宜イト云フコトガ一ツノ問題ニナッテ居ル、御
承知ノ如クニ日本ノ佛〓ハ御維新前ニ於テ
ハ、其ノ一部分ヲ除クノ外ハ悉ク妻帶ヲ禁
ジタモノデアル肉食妻帶ヲ禁ズト云フコ
トハ國禁ノ一ツトナッテ居ッタノデゴザイマ
スガ御維新後ニ神佛混淆ヲ禁ジ、又佛〓
家ノ妻帶肉食ノ禁ヲ解カレタ、是レ以來宗
〓ヲ以テ妻帶肉〓ノ禁ヲ嚴守シテ居ル者モ
アリ、又サウセナイ者モアッテ、段々トソレ
ガ緩ンデ來タヤウニ本員ハ考ヘマス、近來
ニ於ケル佛〓家ノ間ノ紛議ト云フモノハ
多ク此ノ妻帶カラ原因致シテ居ル、妻帶致
セバ子供ガ出來ル、家族ガ出來ル、ドウシ
テモ自分ガ死ヌル時ニハ後ノコトヲ考ヘナ
ケレバナラヌ、卽チ財產爭モ起ッテ來ル譯デ
アル、元來出家ト云フモノハ家ノナイノガ
出家デアラウト、マア佛〓ノ方デハ本體ト
致シテ居ル、ソコデ近來名儈智識ノ間ニハ
矢張リ是ハ以前ノ妻帶ヲ禁ズルト云フ昔ノ制
度ニ戾シタ方ガ宜イ、ノミナラズ自ラソレ
ヲ属行シテ居ラルヽ人モアルノデアリマ
ス、誠ニ是ハ大切ナ問題ト思ヒマスガ、文
部大臣ハ其ノ點ニ付テハドウ考ヘテ居ラレ
マスカ國法上ニ於テハ禁ズルガ宜イト云
フ御考デアルカ、若シクハソレハ矢張リ宗
規ニ一任シテ置イタ方ガ宜イト云フ御考デ
アリマスルカ、其ノ點ニ付テ文部大臣ノ御
考ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/17
-
018・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今阪谷男
ノ御質問ハ、宗〓ノ將來ニ對スル一ツノ御
意見ト拜承致シマスルガ、只今モ提案理由
ノ中ニ申上ゲマシタヤウニ、各宗〓宗派悉
クソレ〓〓ノ歷史ヲ有チ、習慣ヲ有ッテ居リ
マスルノデ、殊ニ信〓上ノコトデアリマスル
ノデ、ソレ〓〓ノ內部ノ自治ニ委セマシテ、
改ムベキハ自ラ改ムルヤウニ、殊ニ信仰ヲ
集メテ〓化ニ任ズベキ所ノ重要ナ宗〓ノコ
トデアリマスルノデ、内部ノ自治ニ依ッテ十
分ニ善處セシメタイ、ト斯ウ考ヘテ居ル次
第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/18
-
019・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシ
ク、宗〓團體法案外一件ノ特別委員ハ、最
モ重要ナ法案デアリマスガ故ニ、其ノ特別
委員數ヲ十八名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一
任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/19
-
020・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 只今戶澤子爵ノ
御動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/21
-
022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔近藤書記官朗讀〕
宗〓團體法案外一件特別委員
公爵一條實孝君侯爵細川護立君
侯爵久我通顯君伯爵柳原義光君
子爵大河內輝耕君子爵岡部長景君
子爵舟橋〓賢君男爵千秋季隆君
小原直君岡喜七郞君
塚本〓治君下村宏君
男爵松岡均平君男爵北島貴孝君
田所美治君大塚惟精君
久保市三郞君仲田傳之〓君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 園田男爵ニ申上
ゲマスガ、國務大臣ノ都合ニ依リマシテ、
男爵ノ御質疑ニ對スル答辯ハ後ノ場合ニ於
テ致シマスルカラ····此ノ場合ハ大臣ノ
御都合ニ依リマシテ、其ノ際ニ御許ヲ致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/23
-
024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一ニ戾リ
マス、國務大臣ノ演說ニ關スル質疑ヲ御許
シ致シマス、水野甚次郞君
〔水野甚次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/24
-
025・水野甚次郎
○水野甚次郞君 今日ノ重大時局下ニ、日
本國民ハ各層擧ッテ協力一致ノ實ヲ示シテ
居リマス、全的ニ當局ノ御方針ニ信賴ト期
待トヲカケテ居ルカト觀ジラレマス、今日
國ヲ擧ゲテ軍官民三位一體協力ノ下ニ防空
訓練ガ行ハレツヽアリマスケレド、其ノ
殆ドガ列强ノ飜譯追從ニ過ギマセヌ、然ル
ニ列强ノ建築ト我ガ國ノソレトハ、全然其
ノ趣ヲ異ニシテ居リマシテ、爆彈ノ被害
ヨリモ寧ロ恐ルベキハ、三千度ノ高熱ヲ有
スル十「キロ」ノ燒夷彈デアリマス、一飛行
機ニ十「キロ」ノ燒夷彈百個ヲ搭載シ得マス
カラ、今日ノ我ガ建築樣式ヲ以テスレバ、之
ガ防禦ハ到底人力ノ及ブ所ニ非ザルヲ悲シ
ムモノデアリマス、故ニ勢ヒ不燃燒家屋ニ改
造スル外他ニ方策ハゴザイマセヌ、若シ夫
レ國內ノ家屋全部ヲ改造スルトセバ、其ノ
費用ハ莫大ナ額ニ達スルノデ、財政上多
大ノ不利ト困難トヲ招來致シマスノミナラ
ズ、時日ノ問題ニ於テ殆ド不可能デゴザ
イマセウ、斯ク觀察致シマスト、此ノ際此
ノ秋我ガ日本ハ何ヲサテ措イテモ、金ヲ
惜マズ、思ヒ切ッタ航空防禦網ガ肝要デハア
リマセヌカ、來ルナラ來レ、攻防總テ用意
萬全、神國日本ノ領土上空ニハ敵ノ飛行
機一機タリトモ飛翔突入ヲ許シテハナリマ
セヌ、軍部竝ニ關係省ニ於カレマシテモ、
國防上ハ勿論、航空對策上、運輸上、交通
上其ノ他文化開發ノ必要上ヨリ、航空日本
ノ建設ト防空安全日本ノ樹立トヲ最大急
務第一目標ト致サレマシテ、全能力ヲ此
ノ方面ニ集注、以テ其ノ實施實現ニ全幅ノ
努力ヲ拂ハレムコトヲ要望シテ已ミマセヌ、
「防衞ハ旣ニ退却ヲ意味ス、眞ノ防衞六
進ンデ敵ヲ攻擊スルニアリ」トノ眞諦ヲ我
我ハ一層銘記シ、空軍ノ大充實ヲ圖ラネバ
ナリマセヌ、今更事新シク繰返ス迄モナク、
是カラノ軍事國防策ハ、何ト致シマシテモ、
航空國策ノ緩慢ニシ、遠慮勝チ、控ヘ目ニ
シタノデハヽ其ノ價値ニ於テ缺クル處尠少
デハナイト憂慮スルモノデアリマス、「空ヲ
制スルモノ世界ヲ制ス」トハ、今日世界各國
ノ「モツトー」デアリ、目標デアリ、狙ヒデ
アルノデアリマス、今ヤ世界ヲ擧ゲテ航空
第一主義ノ時代ト進化シ來タノデアリマス
カラ、我ガ日本モ其ノ攻擊ト防空ノ二方面
ヘノ備ヘノ爲ニ、戰鬪機ノ四五千臺乃至五
六千臺ハ是非用意サレタイモノデアリマス、
而シテ又新大陸ト內地トノ防空、防禦ノ爲
三·H、遺憾ナイ航空國策ガ望マシイ次第デ
アリマス、單リ軍部ノ戰鬪機充實ノミデハ
アリマセヌ、民間航空機ノ充實策ハ如何ニ
計畫致サレテ居リマセウカ遞信省內ニ航
空局ガ獨立設置セラレマシタコトハ、之ガ
發達ニ數步ヲ踏ミ出シタト云フニ過ギマセ
ヌノデ、其ノ積極化コソ望マシク、積極化
シナイ限リ日本ノ航空網完成ハ、日暮レテ
途尙遠シノ憾ミガアリハ致シマセヌカ、曩ニ
「ベルリン」、東京間ヲ翔破致シマシタ「ドイ
ツ」ノ民間機「コンドル」ノ偉容ニ比較シテ、果シ
テ日本ノ民間機ハドウデアッタカト、驚キノ聲
ヲ發シナカッタデアリマセウカ、假令歸路ニ
於テ蹉跌失敗ニ終ッタトハ申セ、全體的ニ見
テ尙且暗示深イモノノアッタコトヲ、今ニシテ
我々國民ハ感ゼザルヲ得ナイノデアリマス、
最近或信ズベキ筋ヨリノ報道ニ依レバ、米
國デハ每年二萬人ノ飛行士養成計畫アリ
更ニ航空機ノ製造能力ニ於テ一日一千臺ヲ
超ユルト稱シテ居リマス、固ヨリ是ハ民間
各會社ノ製造能力ヲ總計致シマシタ統計デ、
此ノ內多數ガ外國へ商品トシテ輸出サレテ
居ルモノデハアリマセウガ、ソレダケニイ
ザトナッテノ量的航空能力ノ程ガ思ヒ遣ラ
レマス、我ガ國ニ於テモ軍民一致飛行士ノ
大量養成ト共ニ、セメテ一日製造能力二三
百臺ニ漕ギ付ケルノ努力精進ガ肝要カト存
ジマス、是レ偏ニ政府ノ民間ヘノ奬勵徹底
ト、政府又自ラ之ガ製作ニ絕大能力ヲ發揮
セラルルコトガ急要デアラウト思ヒマス
更ニ政府ハ何故ニ中央航空〓究所ヲ二三學
會ノ獨占ニ一任シテ顧ミラレナイノデゴザ
イマスカ、世ノ無名ナル發明家、熱心家ヲ
糾合總動員シ、以テ眞ニ其ノ足ラザルヲ補
フノ努力ト〓究ヲ遂ゲシムル御意思ハゴザ
イマセヌカ、本員ハ無爆音ハ勿論無滑走ノ
飛行機ハ、其ノ地形上ヨリスルモ、我ガ日
本國民ノ手ト頭腦ニ依リ是非發明セラレネ
バナラヌコトヲ確信シ且熱望シテ已マヌ者
デアリマス、而シテ是等ノ良キ發達ト擴張
トノ爲ニ、政府デハ民間航空機中心ノ獨立
シタル航空省ヲ設置スルノ必要ヲ感ゼラレ
マセヌカ、以上ニ對スル總理大臣ノ御所見
ヲ伺ヒマス、次ニ陸軍省ニ於カレマシテハ、
航空方面ノ整備充實ニ進一步ヲ加フベク
航空總監ノ獨立設置ヲ期セラレマシタコト
ハ、輿論ノ一部ヲ反映實現セラレタルノ觀
アリ、吾人ノ誠ニ喜ビトシ意ヲ强ウスルニ
足ルモノト大ナル敬意ヲ表スル者デアリマ
スガ、之ヲ端〓ト致サレマシテ、更ニ全國
各要處々々ニ航空兵團又ハ航空師團等ヲ設
置セラレ、以テ我ガ防空ノ完璧ヲ圖ラルヽ
御意思ハゴザイマセヌカ、遠慮ナク申上
グレバ、今日各都市ニ行ハレテ居ル防
空設備ノ如キハ、眞ノ防衞ニ非ズシテ、
消極的退嬰ヲ意味スルモノニ外ナラヌ憾
ガアルノデアリマスガ、當局ハ此ノ際積
極的ニ移動式防空兵機隊ノ組織編成、卽チ
高級自動車ニ新設備ヲ施シ、以テ輾轉自
由ニ、道アル限リ西ニ東ニ、將南ニ北ニ、
照空燈、聽音機、無線電信、高射砲、高射
機關銃、是等ノ武器兵器ヲ乘設移動スルモ
ノヲ一隊トスル新防空兵機隊ヲ組織活躍セ
シメ、帝都ヲ初メ各大都市防空ノ任務ニ服
セシムル新制度確立ノ御意思ハゴザイマセ
ヌカ、斯クテ敵ノ一機タリトモ我ガ皇土ノ
上空ヲ絕對飛翔突入セシメザル準備ガ必要
デハゴザイマセヌカ、一見奇矯突飛ノ說ニ
聽キ取ラレルカ知レマセヌガ、今日ノ學理
的應用進步ノ立場カラ申シマスト、問題ハ
單ニ金ト電力トデアリマシテ、電力ノ應用
ヲ巧ミニスルナラバ、之ガ實現ハ極メテ容
易ナリト深ク信ズル者デアリマス、陸軍大
臣竝內務大臣ノ御答辯ヲ願ヒマス、次ニ非
常時下ニ於ケル〓究問題ノ一トシテ一言御
質問申上ゲマス、由來日本ハ四面海、卽チ
海國日本トシテ終始シテ參リマシタ、海上
勢力ト申シマスト、一ハ海軍ノ軍艦デアリ、
今一ツハ海運方面ノ商船デアリマス、空
飛行機、海ニ此ノ軍艦商船ト云フ、海上勢
力ノ鞏固サガ整ッテ居リマセヌト、是カラ
ノ海國日本ノ眞使命ノ遂行ト發展トニ幾多
ノ支障障碍ガ發生スル虞ガアリマス、而モ海
軍ト海運トハ恰モ車ノ兩輪ノ如ク、何レヲ
缺キマストモ、海上權力ノ保持獲得ハ至ッ
テ困難ナルコトハ今更申上グル迄モゴザイ
マセヌ、大陸ヘノ人的飛躍ト經濟的進出ヲ
大々的ニ行ハナクテハナラナイ現時ニ、特
ニ必要ナノハ海運界ノ寵兒、商船隊ノ活躍
雄飛デアリマス、現ニ我ガ國ノ海運界ハ一
億數千萬圓ニ亙ル貿易外ノ收入ヲ擧ゲテ居
ルノデアリマス、事變ニ依ル新天地へノ進
出ハ、今後數億圓或ハ數十億圓ノ純收入ヲ
目指シテ躍進シナクテハナリマセヌ、現在
ノ商船隊五百萬「トシ」其ノ乘組員十萬ノ
職責タルヤ一段ト重キヲ加ヘテ居リマス
此ノ平時ニ於ケル海ノ王者、商船隊ノ勇士
タル乘組船員達ハ船長初メ特殊ニシテ優
秀ナル手腕技倆ヲ有シナガラ、意外ニモ差
別的ナ取扱ヲ受クルノ環境ニ放置サレツヽ
アル事實ヲ見逃シ得ナイ、本員ハ玆ニ改メ
テ海運界發展ノ爲メ、是等船員待遇改善ノ
一方策トシテ、左ノ三點ニ付質問致シマス、
商船科大學ノ急設、ニ、軍隊式船員服
ノ改良統一、三、船員稱呼名ノ改正、此ノ
三者ニ至急手ヲ染メラルヽ御意思ハゴザイ
マセヌカ、尤モ軍隊式船員服ノ改善統一ト
船員稱呼名ノ改正ト云フ此ノ二ツハ揭ゲ
マシタ題目ソレ自身ガ旣ニ要望內容ノ全體
ヲ說明シテ餘リアルモノトシテ、省略シテ
何事モ申上ゲマセヌガ、商船科大學ノ設置
ニ付キマシテハ是非一言附加サセテ戴キ
タイト思ヒマス、當局ニ御尋ネ致シマス、
時勢ハ如何ニ進步シ、文化ハ如何樣ニ進展
致シマシテモ、船員ニハ大學〓育ヲ授ケル
ノ必要ハナイノデゴザイマセウカ、船員ノ
或者ニモ他科大學卒業生ニ匹敵スル最高等
〓育ヲ授ケテ、進步シ行ク時勢ニ適應スル
優秀、有益、眞ニ國家ニ役立ツ高級船員ヲ
造ル必要大イニアリハ致シマセヌカ、文化
ハ向上進展シ、文明ハ歐米何レノ國ニ比較
對照スルモ、決シテ負ケヲ取ラナイ我ガ國
現時現在ニ、商船科大學ノ存在シナイコト
ハ、文化的、學術的ニ跛行デアリ、不公平
デハアリマセヌカ、若シ當局ニ於カセラレ
マシテモ、之ガ必要ヲ認メラルヽナラバ、
帝國大學ニ其ノ一科ヲ設ケラルヽモ可、又
現高等商船學校ヲ昇格セシメラルヽモ宜シ
ク、何レニシテモ、至急其ノ實現ニ邁進セ
ラレムコトヲ切望シテ已ミマセヌ、終リニ
臨ミ本員ハ文部、遞信兩省閣下ニ御尋シタ
イ、極メテ緊要ナル問題ガゴザイマス、外
デハアリマセヌ、目下海上生活者、殊ニ其
ノ高等船員等ハ一大興奮ト一大驚異ト、而
シテ一大「センセーション」ヲ起シツヽアル
地方商船學校昇格問題デアリマス、一箇年
三十五萬「トン」ノ自然增加率ヲ示シツヽア
ル我ガ商船隊ハ、數年ナラズシテ、其ノ總
「トン」數一千萬「トン」ニ達スベキハ、火ヲ睹
ルヨリモ明カデアリマス、又斯クアラネバ
ナリマセヌ、然ルニ政府ハ現在八箇ノ地方
商船學校ヲ僅カニ四校昇格セシメ、殘餘ノ
四校ハ之ヲ海員養成所ノ名目ノ下ニ、廢
校セラレムトスル御意嚮ノ如ク傳ヘラレテ
居リマスガ、本員ハ之ヲ信ジタクナイノデ
アリマス、然レドモ是等諸校ヲ卒業セル
現高等船員一萬數千名ハ今ヤ死線ヲ超
エテ大動搖ヲナシツヽアル事實ガアルノデ
アリマス、新タニ官立商船學校ヲ四校設置
セラルヽコトハ雙手ヲ擧ゲテ贊成致シマス
ケレドモ、現地方商船學校ヲ廢シ、其ノ半
數ヲ移管セシメラルヽコトニハ遺憾ナガラ
反對セザルヲ得ナイノデアリマス、而モ各
地方廳ニ於テ數十年來指導〓養シ來リタル
殘餘ノ四校ハ、之ヲ廢校セムトスルニ至リ
テハ言語道斷沙汰ノ限リデアリマス、加フ
ルニ昇格ハ名目ノミニシテ、卒業生ノ將來
ニ於ケル資格ハ、現在ノソレヨリモ寧ロ低
下スルモノナリトテ、昇格内定ノ諸校卒業
生モ之ニ反對セル現狀ハ何物ヲ物語ッテ居
ルノデアリマセウカ、角ヲ矯メムトシテ牛
ヲ殺シタ愚人ノ轍ヲ履ムガ如キ行爲ニ了ラ
ザレバ幸デアリマス、此際政府ハ寧ロ百
尺竿頭一步ヲ進メテ官立四校ハ之ヲ新タニ
他ニ建設セラレ、地方廳ニ於ケル旣設八校
ハ之ヲ助長奬勵セラレ、將來ノ高等船員ノ
養成ニ策セラルヽ御意思ハゴザイマセヌ
カ、板子一枚下ハ地獄ノ生活ヲナシ、國家
ノ爲ニ第一線ニ活躍シテ居ル我ガ愛スベキ
商船員ヲシテ、繼子イヂメヲセラルヽト云
フ僻ミ心ト危惧ノ念ヲ起サシメザルヤウ、
一段ノ御留意ヲ御願シテ巳マヌ者デアリマ
ス、以上ヲ以テ本員ノ質問ヲ打切リ、御〓
聽ヲ感謝シナガラ當局ノ熱意アル御答辯ヲ
御待チ致シマス
〔國務大臣板垣征四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/25
-
026・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 今後ニ於ケル
國政ノ發展竝國防上、航空ノ使命ガ益〓重大
ヲ加ヘマスルコトハ御說ノ通リデゴザイマシ
テ、航空ノ飛躍的進步ヲ期スル爲ニハ國
政ノ廣汎ナル部門ニ亙リマシテ、之ヲ航空
發達ニ適合スル如ク運營スルコト及ビ此
全國民ノ擧國一致ノ努力ヲ傾注スルコトヲ
必要ト信ジマス、之ガ爲ニハ曩ニ航空局ガ
創設セラレタノデアリマスガ、陸軍ト致シ
マシテハ之ヲ以テ未ダ十分ナリトハ考ヘテ
居リマセヌ、更ニ强力ナル機構ノ必要ヲ
痛感致シマシテ、關係當局ト共ニ之ガ〓究
ヲ進メテ居ル次第デアリマス、尙航空兵器
等ニ付キマシテモ、日進月步ノ趨勢ニ遲レ
ザラムコトヲ期シマシテ、折角〓究ヲ遂ゲ
ツヽアリマスノデ、御期待ニ副ヒ得ルコト
ト信ジテ居リマス
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/26
-
027・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 民間航空事業ノ
件ニ付キマシテ、只今水野サンニハ總理大
臣ノ答辯ヲ御要求ニナリマシタガ、總理大
臣ハ只今衆議院ノ豫算總會ニ出席中デゴザ
イマスカラ、主管大臣ト致シマシテ、私ヨ
リ一應御答ヲ申上ゲマス、御諒承ヲ願ヒマ
ス、民間航空事業ノ整備擴充ヲ圖リマシテ、
帝國經濟力ノ充實發展ヲ策スルト共ニ、國
防力ノ增大强化ニ資スルコトハ新東亞建
設工作上必要缺クベカラザルノ要件デアリ
マシテ、政府ニ於キマシテハ財政ノ許ス限
リ之ニ必要ナル經費ヲ豫算ニ計上致シマシ
テ、本事業ノ發達ヲ促進スル考デアリマス、
卽チ其ノ一ツニハ、航空路施設ノ完備擴充
ニ關スルコトニ努メテ居リマス、國內幹線
航空路モ近ク完成スル豫定デアリマスル
ガ、航空路施設ノ整備擴充ハ一日モ忽セニ
スルコトヲ許シマセヌカラ、昭和十四年度
以降ニ於キマシテハ、其ノ整備擴充ヲ致シ
マスル爲ニ、豫算ノ上ニ於キマシテモ、經
費ヲ計上致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
其ノ二ハ、内外定期航空路ノ伸張ノ件ニモ努
メテ居リマス、此點ニ付キマシテモ、昭和十
四年度ノ豫算ニ相當ノ經費ヲ計上致シテ居
ルヤウナ次第デアリマス其三ハ、航空機
製造事業ノ確立ニ關シテモ專ラ努力致シテ
居リマスルガ、只今御說ニモアリマシタ通
リ、我ガ航空工業ノ發達ヲ期スル爲ニ、前
議會ノ御協賛ヲ得テ設立致シマシタ中央
航空〓究機關設立準備ヲ致ス部ヲ設ケマシ
テ、中央航空機關設立委員會ヲ設置シテ、
其ノ準備、計畫ヲ進メツツアルヤウナ次
第デアリマス、昭和十四年度以降五箇年間
ニ亙ル繼續費ト致シマシテ、昭和十四年
度ノ豫算ニ於キマシテモ、相當額ヲ計上致
シテ居ルヤウナ次第デアリマス、尙航空
省設置ニ關スル當局ノ意見ヲ聽キタイト云
フ御尋ノヤウデアリマシタガ、我ガ國現下
內外ノ時局ニ徵シマスルモ、帝國將來ノ發
展ヲ期スル上ニ於キマシテモ、航空事業ノ
軍事的、經濟的使命ハ愈〓重且大ナルモノ
ガアリマス、ガ併シナガラ我ガ民間航空事
業ハ未ダ微々トシテ振ハナイヤウナ次第デ
アリマシテ、政府ハ從來ニ於キマシテモ銳
意之ガ振興、發展ニ努力シテ參ッタノデア
リマスルガ、未ダ遺憾ナガラ民間航空ノ現
狀ニ於キマシテハ專任大臣ヲ置ク域ニ達
シテ居リマセヌガ、更ニ斯業ヲシテ格段ノ
飛躍的發展ヲ遂ゲシメタル曉ニ於キマシテ
ハ、卽チ民間航空ノ基礎、內容共ニ充實致
シマスレバ、自ラ之ヲ專管スル行政機構等
ニ付キマシテモ、考慮セラルベキモノト考
ヘテ居ル次第デアリマス、次ニ海運ノ擴充
ニ關スル件ニ付テ御答ヲ申上ゲマス、海運
事業ガ經濟上、將又國防上、極メテ重要ナル
使命ヲ有シテ居リマスルコトハ、改メテ申
上グル迄モナイコトデアリマス、殊ニ帝國
ノ對支活動ガ所謂長期建設ノ段階ニ入リマ
シタル今日、海運ノ使命ガ愈〓重大ヲ加ヘ
テ參リマシタル事實ニ鑑ミマシテ、政府ニ
於キマシテモ海運業ノ全面的發展ヲ圖ルベ
"對外航權ノ伸張、海事金融施設ノ改
善、對支對滿航路ノ整備擴充、優良船員ノ
養成、海運竝造船事業ノ確立振興等ニ關シ
マシテ、銳意對策ヲ考究中デアリマス、今
議會ニ於キマシテモ、是等政策ノ具現ニ必
要ナル豫算ヲ計上シ又之ニ關スル法律案ヲ
提出スベク準備ヲ進メテ居ル次第デゴサイ
マス、商船員服ノ制定ニ關シテノ御尋ガア
リマシタガ、船內勤務ノ關係カラシテ各制
服ヲ定メテアル情況デアリマスルガ、之ガ
改善等ニ付キマシテハ、將來一層〓究ヲ致
シタイト考ヘテ居リマス、又船員ノ稱呼ニ付
キマシテモ、是亦〓究シテ善處致シタキモ
ノト考ヘテ居リマス、尙船員ノ〓育ノ問題
ニ付キマシテ、商船科大學ヲ設置シテハ如
何カト云フ御質問ガアリマシタガ、誠ニ高
級船員ノ必要デアルコトハ申ス迄モナイコ
トデゴザイマス、只今ノ處政府ト致シマシ
テハ、官立ノ高等商船學校、又官立ノ商船
學校竝、海員養成所ト云フ三ツノ〓育機關
ヲ以テスル方針デ居リマスルガ、尙其ノ上
ニ大學程度ノモノヲ置クコトニ付キマシテ
ハ、十分ニ考究致シテ善處致シタイト考ヘ
テ居ル次第デアリマス、序ニ公立商船學校
ノ存廢ニ付テノ御尋モゴザイマシタガ、此
ノ點ニ付キマシテハ目下調査〓究中デゴザ
イマシテ、何レ其ノ中ニ確定ヲ致スコトト
存ジテ居リマス、以上ヲ以チマシテ御答ト
致シマス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/27
-
028・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 御質疑ニ御
答ヲ致シマス、第一點ノ大學ヲ設ケテハ如
何デアルカト云フ點ニ付キマシテハ、高等
ノ船舶職員タルベキ者ノ養成機關トシテ
ハ專門學校令ニ依ルモノハ東京、神戶
ノ高等商船學校デアリマシテ、其ノ就學年
限ガ五年六箇月デアリマシテ、一般ノ他ノ
專門學校ニ較ベマスト、極メテ長期ニ亙ッテ
居ルノデアリマシテ、十分ナル學習ヲ爲サ
シメテ居ル積リデアリマス、此ノ種學校ノ
卒業者ノ職業ノ重要性ニ鑑ミマシテ、其ノ
資質向上ニ努メマスルコトハ固ヨリ重要
ナコトデアリマスルガ、商船科大學ヲ設置
スルコトハ學科ノ性質等ニ鑑ミマシテ、
相當考慮ヲ拂ハネバナラヌモノト存ジマス
ルノデ、直チニ此ノコトニ關シテノ御答ヲ
致シ兼ネルノデアリマス、尙船舶ノ建造等ノ
技術〓育ニ付キマシテハ、御承知ノヤウニ東
京帝國大學ノ工學部ニ船舶工學科、九州、大
阪ノ兩帝大ニハ造船學科ガ設ケラレテ居リマ
シテ、此ノ方面ニ於テ十分此ノ方面ノ〓究ヲ
致シテ、〓養モサセテ居ル次第デアリマ
ス、ソレカラ第二點ノ高等商船學校ノ問題
デアリマスルガ、只今既ニ遞信大臣カラ〓
要御答ヲ申上ゲタヤウデアリマスルガ、-
應重ネテ申述ベテ置キタイト存ジマスルノ
ハ、只今御指摘ガアリマシタヤウニ、我ガ
國ノ海運ノ進展ヲ將來ニ期スルコトハ當然
ナコトデアリマシテ、私ト致シマシテモ、
我ガ國ノ將來ガ海洋方面ニ對スル大ナル活
躍ヲ期待シテ初メテ今囘ノ長期建設ノ一端
ヲモ擔任スルコトガ出來ルト信ジテ居ルノ
デアリマシテ、斯樣ナコトガ旣ニ過去ヨリ
考ヘラレテ居リマスルノデ、之ニ適應シマシ
テ海員ノ資質向上ニ對スル意見ハ多年各方面
ヨリ叫バレテ居ッタノデアリマス、而シテ只今
ノ公立商船學校デハ不十分デアルカラ、之
ヲ國立ト致シマシテ、更ニ其ノ內容ヲ强化ス
ル必要ガアリトセラレテ居ッタノデアリマス、
然ルニ財政其ノ他ノ關係ニ於テ今日迄實現ガ
出來ナカッタノデアリマスルガ、今囘之ヲ
實現ヲ致スコトニ努力致シマシテ、玆ニ多
年ノ懸案ヲ解決シテ、國立商船學校ノ設立
ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、而シテ只今御
指摘ノ學校數ヲ減ラスコトニ對シテ御異議
ガアルヤウデアリマスルガ、內容ノ强化改
善、又〓員ノ配合擴充ノコトヲ考ヘマスル
ト之ヲ一箇所ニ集メマシテ、此處ニ十分
ナル設備ヲスルコトガ最モ適當ト認メラレ
マシテ關係當事者ノ間ニ十分ノ交涉ヲ重
ネテ、玆ニ取敢ズ四校ヲ以テ將來ノ第一機
關トセラレテ居リマスル所ノ船員ノ養成ヲ
スルコトニ致シタノデアリマス、而シテ海
員養成ニ付キマシテハ只今遞信大臣カラ御
述ニナリマシタヤウニ、資質向上ノ多年ノ
懸案ヲ解決スルノデアリマスルカラ、6原則
ト致シマシテハ官立高等商船學校、公立商
船學校及海員養成所ニ於テ爲スコトニ致シ
テ居ルノデアリマスルガ尙現在ノ商船學
校ノ······公立商船學校ノ問題ニ付キマシテ
ハ今日將來ノコトヲ考ヘマシテ考究考慮
中デアリマシテ、然ルベキ方法ヲ以テ解決
ヲ致シタイト存ジテ居ル次第デアリマス、
以上ヲ以テ御答ニ致シマス
〔水野甚次郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/28
-
029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 水野君ハマダ
內務大臣ノ御答辯ガアルヤウデアリマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/29
-
030・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今水野サ
ンカラノ御尋ハ、民間防空〓究ヲ促進致シ
マス爲ニ、防空〓究所ノ設置ニ付テノ件ト、
又都市防空ニ付キマシテノ御質問デアッタ
ト存ジマス、第一ノ御尋ノ民間防空〓究ヲ
促進スルト云フコトハ防空ト云フコトガ
其ノ關係スル所ガ非常ニ廣ク且複雜デアリ
マスノデ、其ノ〓究ハ各方面ニ於キマシテ
行ヒマスコトガ極メテ重要ナノデアリマス、
政府ニ於キマシテハ是等ノ〓究ヲ管掌致シ
マスト共ニ、政府自ラニ於キマシテモ〓究
ヲ爲ス爲ニ、來年度ニ於キマシテ十五萬圓
ノ經費ヲ計上致シマシテ、內務省ニ於テ其
ノ〓究機關ヲ設置スルコトト致シタヤウナ
次第デアリマス、又都市防空ハ我ガ國ノ都
市ノ建築其ノ他ノ情況ニ鑑ミマシテ、之に
應ジクル處置ヲ爲スコトガ必要ニ相成ッタ
ノデアリマス、從ヒマシテ中央防空委員會
等ノ意見ヲ徵シマシテ、漸次之ガ實行ヲ促
進シテ行ク積リデアリマス、來年度ニ於キ
マシテモ綠地ノ設置ガアルトカ、或ハ重要
ナ都市ニ於キマスル木造建築ノ改修等ニ對
シマシテハ、旣ニ經費ヲ計上シテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/30
-
031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 水野甚次郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/31
-
032・水野甚次郎
○水野甚次郞君 簡單デゴザイマスカラ此
ノ席デ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/32
-
033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス、成ルベク御高聲ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/33
-
034・水野甚次郎
○水野甚次郞君 遞信大臣ニ御伺致シマス
ガ、私ガ防空充實ノ質問ヲ致シマス度每ニ、
民間航空ハ遲々トシテ振ハナイト云フ御答
ヲ得テ居ルノデアリマス、民間航空ガ遲々
トシテ振ハナイノハ何故デゴザイマセウ
カ、私ハ民間航空ガ遲々トシテ振ハナイ所以
ノモノハ、政府當局ニ本當ニヤラウト云フ御熱
心ガ聊カ缺ケテ居ラルヽノデハナイカト疑
ハザルヲ得ナイノデアリマス、遲々トシテ
振ハナイ、振ハセラレルナラバ振フノヂヤ
ナイカト思フ、是等ニ付テ御答辯ハ要リ
マセヌケレドモ、將來民間航空ノ發展ニ付
テ十分ナル御〓究ト御熱心ヲ以テ促進ヲシ
テ戴キタイコトヲ此ノ際附加ヘテ置キマス、
内務大臣ニ御伺ヒ致シマスガ、今內務省ノ
防空局ヨリ各地方廳、市町村ニ對シテ防空
ノ設備ハ井戶ヲ掘レ、穴ヲ掘レト云フ御命
令デアリマスケレドモ、穴ヲ掘ッテ幾人ノ人
ガ避ケ得ラレルデアリマセウ、又井戶ヲ掘ッ
テドウシテ此ノ三千度ノ强熱ヲ有スル燒夷
彈ヲ防ギ得ルデアリマセウカ、無イヨリハ
宜イデゴザイマセウガ、積極的ニ之ヲ防空ノ
設備、防空ノ方法ヲ、唯民間デヤッテ居ルト
云フヤウナコトデナク、積極的ニ防衞策ヲ
講ゼラレル必要ガアリハ致シマセヌカ、卽
チ防空ノ充實ヲスルノガ第一デアリマスノ
ト、其ノ建築樣式ニ對シマシテハ、燒夷彈
ヲ防衞スル爲ニドウシテモ轉々道路上ヲ移
行スル照明燈ヲ置キマシテ、一箇所ニ照明
燈ヲ置キマスルコトハ其ノ場所ノ存在ヲ飛
行機カラ見ラレル虞ガアリマス、照明燈ヲ
移行致シマシテ敵ヲ欺ク必要ガアルノデハ
ナイカ、又ソレニ別ノ自動車ニ高射砲、高
射機關銃、聽音機等ヲ各自動車ニ載セテ
サウシテ敵ノ飛行機、照明燈ニ欺カレテ來
タ飛行機ハ直チニ之ヲ擊墜スルト云フヤウ
ナ方法ヲ積極的ニ〓究シテ戴クコトハ出來
マセヌデゴザイマセウカ、唯消極的ニ穴ヲ
掘レ、井戶ヲ掘レ、砂ヲ用意シテ置ケ、
軒ノ家ニ四斗樽ヲ用意シロ、私ハ四斗樽位
デ何十「キロ」、、三千度ノ高熱ノアル燒夷彈ヲ
防グコトハ絕對ニ不可能デアルト信ズルノ
デアリマス、是等ニ付テノ內務大臣ノ御考
ヲ承ッテ置キタイト存ジマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/34
-
035・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今縷々ト
防空ニ關シマスル御意見ヲ承リマシタノデ
アリマスガ、內務省ニ於キマシテハ大體ニ於
キマシテ國民防空ヲ主宰シテ居ルノデア
リマス、從ヒマシテ只今御話ノヤウナ兵器
ヲ利用スルトカサウ云フヤウナ問題ニナ
リマスルト、是ハ軍防空ト國民防空ト、丁
度相牽聯スル問題ニナルノデアリマシテ、
其點ニ付キマシテハ決シテ内務省トシテ
モ等閑ニ付シテ居ルノデハアリマセヌノ
デ、ソレ等ノ點ニ付キマシテハ軍當局トモ十
分連絡ヲ取リマシテ、又中央防空委員會等
ノ意見ヲ徵シテ、萬遺漏ナキヲ期スルヤウ
ニ折角〓究シテ居ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/35
-
036・水野甚次郎
○水野甚次郞君 御親切ナ御答辯ヲ得マシ
テ滿足致シマスガ、更ニ一言御伺ヒ致シタ
イノハ、文部省關係ニナルノデゴザイマス
カ分リマセヌガ、先程御尋シマシタ中央防
空〓究所ノ問題デアリマス、是ハ是非國內
ノ無名ノ發明家、若シクハ熱心家ヲ求メラ
レテ十分ナル〓究ヲセシメラレル必要ガゴ
ザイマセヌデセウカ、アノ世界一ノ海軍ノ
潜水艦ハ誰ニ依ッテアレガ發明サレテ居ル
カト云フコトニ想ヒ到ッタ場合、唯二三ノ學
者ニ一任シテ置イテ然ルベキモノデハナイ
ノデハナイカト私ニハ思ハレルノデアリマ
ス、更ニ此ノ機會ニ私ハ中島飛行機株式會
社ヲ初メトシテ、幾多ノ有力ナル飛行機會
社ガアリマスガ、是等ニ對シテ陸海軍ガ唯
飛行機ヲ斯ウ云ッタモノヲ造レト云ッテ、ソ
レヲ造ラシテ居ラレルカノヤウニ承ッテ居
リマス、陸海軍ノ註文ヲ唯受ケルダケデナ
ク各飛行機會社ニ命ゼラレテ飛行機〓究
室飛行〓究所トカヲ各會社ニ命ゼラレテ
〓究セシメラルヽ御意思ガゴザイマセヌデ
セウカ、日本ノ纖維工業ガ英國ヲシテ怖レ
シメテ居リマスル原因ノモノハ、各纖維工
業ノ會社ガソレ〓〓〓究室ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、此ノ事實ヲ御考ニナッタナラ
バアノ有力ナル飛行機會社ニ命ゼラレ
テ、獨自ノ〓究ヲセシメラレル必要ガゴザ
イマセヌデセウカ、此ノ點ヲ御伺致シマス
〔國務大臣荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/36
-
037・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 御質問ガ各
方面ニ亙ッテ居リマスルノデ、私カラ全部ヲ
御答スル譯ニハ參ラヌト存ジマスガ、航空
ノ〓究ノ重要性ニ付テハ今日到ル所其ノ必
要ヲ認メテ居リマシテ、文部當局ト致シマ
シテモ、最近是ニ關シテノ只今御說ノアリ
マシタヤウナ方向ニ向ッテ何等カノ處置ヲ
講ズル必要ヲ認メテ、ソレ〓〓考究中デア
リマス又今日ノ機關ニ於キマシテモ各方
面トモニ表ニハ現レマセヌガ、非常ナ努力
ヲ拂ヒマシテ異常ノ躍進ヲシツヽアルモノ
ト認メラルヽノデアリマス、更ニ科學調査
振興會ヲ設ケマシテ、是等ノ點ニ亙ッテモ
其ノ基礎學、又是等ノ具體的、各種ノ方法
ニ付テモ目下考究中デアリマシテ、各委員
ハ非常ナル熱誠ヲ以テ此ノコトヲ考究サレ
テ居リマスノデ、御心配ノ點ハ誠ニ感謝ニ
堪ヘナイノデアリマスガ、以上ノヤウナコ
トノ實現ヲ期シテ御期待ニ副ヒタイト存ズ
ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/37
-
038・水野甚次郎
○水野甚次郞君 文部大臣ノ御親切ナル御
答辯ヲ得マシテ滿足致シマス、ドウゾ宜シ
ク防空日本ノ建設ニ向ッテ邁進セラレムコ
トヲ切望致シマシテ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 淺田男爵ニ伺ヒ
マスガ、大臣ノ出席ハ只今內務大臣ダケ御出
席ニナッテ居ルヤウデアリマス、文部大臣ト
御兩君デアリマスガ、御質問ノ御趣旨ニ依
リマシテ內務大臣ダケノ御質問ヲ願ヒタイ
ト存ジマス、淺田男爵発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/39
-
040・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 左樣ニ致シマス
〔男爵淺田良逸君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/40
-
041・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 今日ハ戰サ中デゴザイ
マイ、此ノ戰サハ長ク續クデゴザイマセウ
カ又更ニ大キクナルコトヲ覺悟シナケレ
バナリマセヌ、玆ニ於テ全國民ハ國防ト云
フコトニ付キマシテハ深甚ノ關心ヲ有ッテ
居ル次第デゴザイマス、此ノ意味ニ於キマ
シテ、私ハ國防ニ關スル重要問題ト信ジマ
スル件ニ付キマシテハ總理大臣初メ軍部大
臣ニ御尋ネ申上ゲタイト存ジマシタル處、
今日ハ御出席ガゴザイマセヌノデ次會ニ
讓ルノ已ムヲ得ザルコトデゴザイマス、續
イテ國防ノ一部分デゴザイマスル所ノ防空ニ
付キマシテハ、其ノ根本ヨリ申上ゲタ後ニ
スルガ順序デゴザイマスルケレドモ、何サ
マ軍國多事ノ今日デゴザイマスルノデ、時
間ノ節約上防空ニ關スルコトノミヲ御質問
申上ゲタイト存ジマス、各國ガ競フテ航空
ニ專念ヲ致シテ居リマス故ニ、若シモ多數
ノ航空機ヲ有スル所ノ國ト交戰ヲ致シマシタ
ナラバ、如何ニ軍ガ骨ヲ折リマシテモ、此
ノ廣イ空中全體ノ護リヲ全ウシ、敵ノ飛行
機ノ一臺モ我ガ上空ニ飛ンデ來ナイナドト
云フコトハ思ヒモ寄ラヌコトデアルト思フ
テ居ルノデゴザイマス、今日一觸卽發ト申
セラレテ居リマス此ノ危險ナル時機ニ於キ
マシテ、風雲若シ一ト度動イタナラバ日本
海ノ彼方ヨリ又太平洋ノ沖ヨリ、我ガ國
防ノ最弱點トモ考ヘマスル所ノ此ノ空襲ト
云フコトガアルニ付キマシテ、私共ハ大ニ
憂慮スルト共ニ主管大臣デゴザイマスル所
ノ內務大臣トシテハ、軍防空ニ關聯シ、國
民防空ヲ如何ニシテ全ウスルカト云フコト
ニ付テノ御苦心ハ察セラレル次第デゴザイ
マス、左樣チ不祥事ノ起リマシタ場合ニ、
固ヨリ國民ハ皆先キニ立ジテ防空ノコトニ
當ルニ違ヒナイノデ、何人モ斯樣ナコトハ
法文ニアルカラ無イカラト云フヤウナコト
ヲ以テ言ヒ遁レヲスルコトハアルマイトハ
存ジマスケレドモ、過去ノ歷史ヲ顧ミマス
レバ、儼然タル兵役法ガアリマシテモ、兵
役ヲ忌避スル者ガ實體的ニモ亦精神的ニモ
アッタコトニ思ヒ及シマスルト云フト、實際
今度ノ防空ノ任ニ當リマスル場合ニハ、非
常ナ困苦モアリ、危險モ伴フノデアリマス
此ノ場合ニ於キマシテ單ニ國民ノ自覺的奉
仕ニ俟ツト云フコトガ如何ナモノデアラウ
カ、矢張リ是ハ法律ヲ以テハッキリト防空、
國防ハ國民全體ノ義務デアル、斯ウ云フコ
トヲハッキリト示シテ、若シ之ニ背ク場合ニ
於ケル所ノ制裁ヲモ明カニシ、サウシテ
マサカノ時ノ用意ヲ完備スルト共ニ、又平
常ニ於キマスル訓練ヲモ徹底セシメル必要
ガアルト存ズル次第デアリマス、此ノ點ニ
付キマシテ內相ガ如何ニ御考ニナリ、又
如何ニ御〓究ヲ御進メニナッテ居ルカヲ伺ヒ
タイノデゴザイマス、防空ノ爲ニハ都會ノ中
心バカリデナク、其ノ周圍モ全國一體トナッ
テ事ニ當ラナケレバナリマセヌ、是ハ何人
モ知ッテ居ル所デアリマス、就キマシテハ今
日各所ニ流行致シテ居リマスル所ノ防火群
ト稱ヘルガ如キモノヲ、全國的ニ之ヲ組織
化シテハ如何デゴザイマセウカ、〓ネ十軒
以內ノモノヲ區切リト致シマシテ、イザ空
襲ト云フ場合ニハ軍隊ガ居リマセヌデモ、
又外ニ出テ居ル所ノ人達ノ力ヲ藉リマセヌ
デモ、家ニ殘ッテ居ル所ノ家族ダケデ以テ
是等ノ人達ニ依リマシテ消火デモ或ハ防毒
デモ、一切ノコトガ出來ルヤウニスル組織
ガ必要デアラウト考ヘマス、サウシテ此ノ
小サイ細胞組織ガ町內ニナリ、又部落ニナ
リ、部落カラハ町村ニ及シ、町內カラハ區
市ニ及スト云フ、斯ウ云フコトニナリマシ
テ、一元的ノ强力ナル團體ヲ作ルト云フコ
トガ一番有效デアラウト思フガ如何デゴザ
イマセウカ、尙私ハ只今申上ゲテ居ル所ノ
組織ヲ單ニ防空ト云フコトニ限ラズニ、之
ヲ廣ク押シ擴メテ、國防ノ目的ヲ達スル所
ノ一ツノ國民的組織ニシテハ如何ナルモノ
デアルカ、敢テ私ハ玆ニ「ドイツ」ノ「ヒト
ラー」ノヤリマシタコトヲ禮讚スル者デハ
ゴザイマセヌケレドモ、斯クノ如ク致シマ
シテ之ヲ市或ハ府縣ニ一致ヲセシメテ政
府ノ指導ニ從ッテ隨時必要ト思フ國防要綱
ヲ此ノ機關ヲ通シテ國民ニ徹底セシムルト
共ニ、又實行セシメタナラバ、極メテ是ハ
全國的ニ行キ渡ルデアラウト思フノデゴザ
イマス、此ノ制度コソハ誠ニ近代的ナ、合
理的ナ、而モ相剋摩擦ノナイ所ノ、我ガ國
體ニモ相應ジ、我ガ國古來ノ獨得ノ兵制ニ
モ一致スルモノデゴザイマスルガ故ニ、斯
クノ如キ所ノ制度ヲ御〓究ノ結果御採擇ニ
ナッテハ如何デアルカト云フコトヲ申上ゲ
ルノデゴザイマス、次ハ私ハ甚ダ微力ナ
ガラ國民防空ノコトニ付キマシテ志ヲ抱
キ、現ニ中央防空委員ノ末席ヲ汚シテ居
ル者デゴザイマスルガ故ニ、政府ト專
念協力ヲ致シマシテ、何トカシテ此ノ防
空事業ノ完成ヲ致シタイト思ウテ居ルノ
デゴザイマスケレドモ、今日此ノ戰時體
制デハアリナガラ、誠ニ私共ノ思フヤウニ
ナラナイノデアリマス、率直ニ申上ゲマスル
ナラバ、私ト致シマシテ主管タル內務當局
ニ頗ル不滿ノ念ヲスラ抱イテ居ル者デゴザ
イマス、斯樣ニ申上ゲマスレバ、先程モ水
野君ノ御質問モアリマシタガ、火ヲ消ス
云々ノコトナドニ付キマシテモ、今年度ノ
豫算ニ於キマシテハ稍、從來ト變ッタ進展
ヲ見テ居ルノデハゴザイマスケレドモ、私
ガ之ヲ將來戰ト云フコトニ考ヘテ見マスル
時ニ、詰リ現政府ガ二大使命ト致シテ居リ
マスル其ノ二大使命ニ、直グニ引續イテ參
リマスルモノハ將來戰ノ準備デアルノデゴ
ザイマス、其ノ將來戰ト云フコトヲ考ヘ
マスル時ニ於テ、斯樣ナ程度ノ防空豫算ヲ
取リマシテ、斯樣ナ小規模ノコトヲヤッテ
置イテ、果シテドウナルカト云フコトヲ眞
ニ憂ヘテ居ルノデゴザイマス、ソコデ私ハ
茲ニ御尋ヲ申上ゲタイコトハ、斯ウ云フ豫
算ヲ計上シテ居ル、斯ウ云フ仕事ヲスルト
云フ、サウ云フ些々タルコトデハアリマセ
ヌノデ、內務大臣トシテ眞ニ責任ヲ感ジ、如
何ニシテ我ガ國土防空、國民防空ヲ全ウス
ルヤノ抱負經綸ニ付テ御披瀝ヲ願ヒタイノ
デゴザイマス、又今年ノ此ノ豫算ト云フモ
ノハ一體內務大臣ノ描イテ居リマスル此
ノ防空ノ何分ノ一位ノモノデアルカ、其ノ
根本ガ御極リニナッテ居ルカ、私ハ其ノ本
ヲ御尋シテ、サウシテ今年度ニ於キマシテ
幾干迄總體計畫ノ部分ガ達成セラレルノデア
ルカヲ御尋ネ申上ゲタイノデゴザイマス、
次ハ前議會ニ於キマシテ色々防空協會助成
機關ノ問題ガ出テ、私共ハ一刻モ早ク之ガ
創立ヲ期待シテ居ッタニ拘ラズ、又私共ハ
委員ト致シマシテ政府ニ要望致シタニ拘ラ
ズ、十一月ト云ヒ、十二月ト云ヒ、時過ギ
テ一月トナリ、未ダ其ノ創立ヲ見ナイト云
フコトハ、一體ドウ云フ原因デアルカ、其
ノ成行ノ大體ヲ伺ヒタイノデアリマス、斯
クノ如ク牛步漫々、如何ニモドウモ不徹底
デゴザイマスノハ一體ドウ云フコトガ原因
デアルカ私ハ分リマセヌケレドモ、昔カラ
內務省ニハ警保局ト云フモノガアリ、警察
ヲ管掌致シテ居ル、其ノ警察ヲ使ヒマシ
テ今度防空バ指揮監督スルト云フコトニ
ナッテ、計畫局ト云フ新シイ局ガ之ヲ御管
掌ナサルト云フコトニナル、サウスルト果
シテ其ノ警保局ト云フモノト計畫局トノ間
ニ於ケル仕事ガウマク行クデアラウカ、人
間ニハ感情ガアル、或ハ仕事ノ分界ニ於キ
マシテモ色々其處デ論議セラレルコトガア
ルノデアラウト思ヒマス、果シテ左樣ナコ
トガアルカナイカ、是ハ事實上ニ於テ頗ル
ムツカシイ問題デアラウト思フ、又警防ノ
コトハ甚ダ大切デアル、斯ウ申シナガラ、
内務省ニ於キマシテハ是ガ良イト信ジマシ
テモ、斷乎トシテ六大都市ニ向ッテ斯クセ
ヨト云フコトガ出來ナイ情勢ニ在ル、斯樣
ナコトデハ私ハ誠ニ權威ニ關スルト云フコ
トノミナラズ、實際問題トシテ左樣ナコト
デハ、此ノ防空ニ對スル所ノ熱意ニ於テ、
斷乎トシテ必要適切ナルコトヲ要望スルト
云フコトデナケレバナラヌト思ヒマスルガ、
動モスレバ其ノ間ニ於テ妥協苟合、全クドチ
ラトモ付カヌコトニ於テ終始スルコトニ相
成ル憂ガアルノデゴザイマス、又今日ノ此
ノ制度ヲ見マシテ、防空ノコトハドウモ各
省ニ跨ッテ居ル、各省ガソレ〓〓ノ申分ガ
アル、斯樣ナコトノ爲ニ進展ヲ見ナイノデ
アラウカトモ懸念ヲ致シマスノデ、其ノ間
ノ事情ト將來ノ決意竝ニ斯クノ如キコト無
カラシムル爲ノ方策ニ付キマシテ、內相ノ
御考ヲ伺ヒタイノデゴザイマス、終リ
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/41
-
042・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 淺田男爵ノ
御質問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、現下ノ
重大時局ニ對シマスル淺田男爵ノ御高見
ハ、私モ全然御同感デアリマス、防空ニ付
キマシテハ特ニ力ヲ用ヒテ萬遺漏ナキヲ期
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、只今御
尋ノ第一點ハ防空ヲ國民ノ義務トシテ規
定スル考ハナイカト云フ御尋ノヤウデアリ
マシタガ、防空法ハ一昨年ノ十月ニ實施セ
ラレマシテ、只今マグ短イ經驗デアリマ
スガ、併シナガラ此ノ實施致シマシタ實
績ニ徵シマスト、將來改正ヲ要スルト認
メラレル點モ少クナイノデアリマス、現
在施行シテ居リマスル所ノ防空法ニ於キ
マシテハ國民ノ義務ト云フコトハ書イ
テ居リマセヌノデアリマス、併シナガラ
今日防空ガ國民ノ國家ニ對スル義務デアル
ト云フコトハ、實際ノ指導其ノ他ニ當リマ
シテハ徹底的ニ此ノ趣旨ヲ徹底サセテ居ル
次第デアリマス、將來法律ノ改正等ニ付キ
マシテハ、十分ニ此ノ點モ考慮致シタイト
考ヘテ居リマス、第二ノ御尋ノ家庭防火群
ヲ、之ヲ全國的ニ普及シテ、十分ニ活用ス
ル考ハナイカト云フ御尋デアリマスルガ
是ハ誠ニ御同感デアリマシテ、今後トモ此
ノ一ツフ單位ヲ普及致シマシテ、十分ニ將
來家庭ヲ中心ト致シマシタル防火ヲ實施ス
ルコトニ致シタイト考へテ居リマス、尙此
ノ點ニ付キマシテ此ノ防火群ヲ利用致シ、
利用ト申シマスカ、此ノ防火群ノ使命ヲ更
ニ擴充致シマシテ、國防ニ關スル國民的ノ
組織トシテヤル考ハナイカト云フ御尋デア
リマスガ、此ノ點ニ付キマシテハ國防ト云
フモノガドノ範圍迄及ブモノデアルカ、其
ノ他ノ點モアリマス、又家庭防火群ト云フ
モノノ發達ノ徑路等モ考ヘナケレバナラヌ
ト存ジマス、從ヒマシテ十分愼重ニ考究ス
ル考デ居リマス、其ノ次ニ御尋ノ點ハ警保
局、計畫局ノ關係、其ノ他各省トノ關係ニ
於テ、色々各省間ノ支障ガアル爲ニ、此ノ
問題ガ進捗シテ居ラナイノデハナイカト云
フ意味ノヤウニ伺ヒマシタノデアリマスガ、
時ニ或ハ此ノ種ノコトハ官廳ニハ有勝チデ
ゴザイマス、併シナガラ防空ト云フヤウナ
大キナ問題ニ付キマシテハ必ズシモ割據
致シタリ或ハ所謂今日能ク言ハレマスル
「セクシヨナリズム」ト云フヤウナコトデ
御互ニ意見ヲ異ニシテ突合ッテ居ルト云フ
コトハ是ハ絕對ニ避ケナケレバナリマセ
ヌシ、今日サウ云フコトハ私共ハ此ノ問題
ニ付キマシテハナイト考ヘテ居リマス、尙
警防團ノコトニ付キマシテモ昨年以來〓究
サレテ居リマシタガ、本年ニ及ビマシテ勅
令ヲ出シタコトニナリマス、是等ハ十分ニ
活用シテ行クコトニ努力致シタイト考ヘテ
居リマス、ソレカラ防空協會ノ設立ノ進行
情況ニ付テ御尋デゴザイマス、是ハ淺田男
爵モ色々御關係ヲ爲サッテ居リマスノデ
內情ハ十分御承知ダラウト存ジマス、事實
其ノ進行ハ少シク遲レテ居リマス、併シナ
ガラ稍〓其ノ目途モ付キマシタノデ、來年
度ニ於キマシテハ補助金ノ十萬圓ヲ計上
シテ居リマスルノデ、成ルベク速カニ結
成致シマシテ、十分此ノ機能ヲ活用シテ
行キタイト考ヘテ居リマス、尙最後ニ
將來戰ノ準備ニ對シテ、防空ノ責任者
トシテノ抱負經綸ニ付テノ御尋デアリ
そく、是ハ改メテ申上ゲル迄モナク、
私ハ將來ノ見透シト致シマシテ、此ノ重
大ナル時局ニ於テ此ノ重大ナル責任ヲ
負ッテ居ルノデアリマスルカラ、出來ルダケ
ノ努力ト熱意ヲ以テ十分ノ準備ヲシテ、如
何ナル事態ガ起リマシテモ、之ニ對處スル
ダケノコトヲ期シタイト、折角努力スル積
リデ〓究シテ居ル次第デゴザイマス、尙防
空ノ全體ノ規模ニ對シテドノ位デアルカト
云フヤウナ御尋デゴザイマシタガ、是等ハ中
央委員會ノ決議等ニ於キマシテ稍〓其ノ全
貌ハ御分リノコトト存ジマス、併シナガラ
只今本年ノ豫算ニ其ノ何分ノ一ガ出テ居ル
ト云フヤウナ點ニ付キマシテハ此ノ際御答
ハ差控ヘタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/42
-
043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽者) 今日ハ此ノ程度
ニ於テ延會ヲ致シタイト存ジマス、御異議
ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/43
-
044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/44
-
045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 明後二十六日午
前十時ヨリ開會致シマス、議事日程ハ彙報
ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散
會致シマス
午前十一時四十五分散會
貴族院議事速記錄第二號正誤
頁段行誤正
一一六三一八時久持久
八一一七粉粹粉碎発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007403242X00419390124/45
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。