1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年三月三日(金曜日)午前十一時八分開議
出席委員左の如し
委員長 川崎克君
理事 小山倉之助君 理事 宇賀四郎君
理事 最上政三君 理事 横川重次君
理事 森田福市君 理事 藤本捨助君
理事 河野密君
中島彌團次君 一松定吉君
松永東君 川崎末五郎君
田村秀吉君 小畑虎之助君
渡邊玉三郎君 田中邦治君
津倉亀作君 田代正治君
高橋熊次郎君 武田徳三郎君
服部岩吉君 森田政義君
江羅直三郎君 坂田道男君
松浦伊平君 岸田正記君
森肇君 片山哲君
松永義雄君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 石渡莊太郎君
出席政府委員左の如し
内務省地方局長 坂千秋君
大藏政務次官 松村光三君
大藏參與官 矢野庄太郎君
大藏省主税局長 大矢半次郎君
大藏書記官 松隈秀雄君
大藏書記官 田中豐君
本日の會議に上りたる議案左の如し
支那事變特別税法中改正法律案(政府提出)
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=0
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001・川崎克
○川崎委員長 是ヨリ開會致シマス、前會
ニ引續イテ小畑君ノ質疑ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=1
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002・小畑虎之助
○小畑委員 前囘ノ質問中私ノ言葉ガ足リ
ナカツタ爲ニ、大藏大臣ノ御答辯ガ私ノ聽
カント欲スル所ト違ツテ居ルノデアリマス
カラ、更ニ言葉ヲ改メテ質問ヲ致シタイト
思ヒマス、私ハ前囘法人課稅ヲ累進トスベ
キヤ否ヤト申シマシタコトハ、所謂利益率
累進ノ意味デアルノデアリマス、固ヨリ法
人課稅ヲ利益ノ金額ニ依ツテ累進率ヲ適用
致シマスルコトノ不當デアルコトハ當然デ
アリマス、資本ノ金額ニ對スル利益ノ率ニ
依ツテ累進課稅ヲ行フコトガ如何デアルカ
ト云フコトノ質問デアルノデアリマス、現
行法ニ依リマシテモ超過所得及ビ臨時利得
稅ノ如キガ、卽チ其ノ實質ハ利益率累進ト
相成ツテ居ルノデアル、又超過所得ノ中ニ
於キマシテモ三段階ノ累進制度ガ認メラレ
テアルヤウデアリマス、併シナガラ之ヲ第
三種ノ個人所得ノ二十段階ニ分レテ居リマ
スル累進ト比較致シマシテ-固ヨリ個人
所得ノ場合ハ所得金額ヲ基準トスベキデア
リ、法人所得ノ場合ニ於キマシテハ、今私
ガ申シマスル通リ、利益率ヲ基準トスル累
進斯ウ云フコトニ假定ヲ致シマスルナラ
バ、同樣ノ階段ヲ設クルコトノ不適當デア
ルコトハ申上グルマデモナイノデアリマス、
第三種所得ニ於ケル二十段階ト現行法ニ依
リマスル所ノ第一種所得ニ於ケル普通所得
ト、ソレカラ超過所得ト、及ビ臨時利得稅
ノ制度ト-此ノ超過所得ト臨時利得稅ハ
重複スルコトガ出來マスルカラ、大別シテ
二段階或ハ三段階ト相成ルコトト思フノデ
アリマス、其ノ中ニ於テ超過所得ガ更ニ三
段階ニ分レテ居ル、之ヲ以テ適當ナリト考
ヘラルルノデアリマスカ、尙ホ此ノ累進課
稅ヲ第一種法人所得ニ於テモ徹底セシムル
ノ必要ガナイカ、斯ウ云フコトニ關スル質
問デアツタノデアリマス、其ノ點ニ付テ御
答ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=2
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003・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 個人ノ累進率ガ非常ニ細
カク分レテ居ルノニ、法人ノ方ノ累進率、
此ノ點ニ付キマシテハ此ノ前私ガ申上ゲマ
シタノハ私ノ誤解デアリマシタコトハ申譯
ナク存ズルノデアリマスルガ、利益ニ對ス
ル累進率ノ段階ガ廣過ギハシナイカ、斯ウ
云フ御尋デアルト思フノデアリマス、實、
累進率ノ段階ト云フ問題ニ付キマシテハ、
是ハ中々議論ノアル所デゴザイマシテ、何
レカト言ヒマスルト、此ノ頃ノ流行ト言ヒ
マスカ、傾向ト言ヒマスカ、寧ロ個人ノ累
進ノ段階モ廣ク數ヲ少ク致ス方向ニ向イテ
居ルノデハアルマイカト思ツテ居ルノデゴ
ザイマスス、獨逸ニ於キマシテモ、所得稅
ハ-獨逸ハ中々理窟ヲ重ンジテヤツテ居
ルノデゴザイマスルガ、獨逸ノ個人ノ所得
稅率ハ戰後非常ニ細カク切リマシタガ、一、
二年シテ次ニ改正シタ時分ニハ數段階ニシ
テシマツタ、現在ノ獨逸ノ個人ノ所得稅ハ
結局最低稅率ガ一割デ、最高稅率ガ四割デ、
其ノ間ニ數段階切ツテアルニ過ギヌト思フ
ノデアリマス、是ハ考ヘ樣ニ依ツテハ細カ
イ方ガ便利ダトモ思ヒマスシ、又細カイ方
ガ理窟ニ合ツテ居ルトモ考ヘマスガ、實際
上ノ問題カラ言フト、寧ロ粗イ方ガ便利デ
アル、適當デアルト存ジマス、今私ハ漠然
ト考ヘテ居リマスノハ、將來ノ問題ト致シ
マシテハ、今御話モゴザイマシタヤウナ法
人ノ超過所得、臨時所得稅、斯ウ云フヤウ
ナモノハ是ハ何トカ一纒メニシテ、特ニ超
過所得稅ノヤウナ、又ハ臨時利得稅ノヤウ
ナ兩者相合シタヤウナモノガ玆ニ出來テ來
ルト、徵稅上カラ行キマシテモ、又納稅者
ノ方カラ行キマシテモ、便宜デハアルマイ
カト考ヘテ居ルノデアリマスガ、今年モ此
ノ點ハ色々〓究シ、工夫シテ見タノデアリ
マスガ、一應一般改正マデ之ヲ見送ルコト
ニ致シタ次第デアリマスガ、此ノ點今日ノ
稅法以外ニ考ヘテ見ル必要ガアルノデナイ
カト考ヘテ居ルノデアリマス、今御尋ノ累
進稅率ノ段階ノ點ニ付テハ、是ハ勿論決定
致シテ居ル問題デモ何デモアリマセヌガ、
私ハ寧ロ個人ノ所得稅率ノ段階ヲ今少シク
少クシテ、粗クシタ方ガ宜イノデハアルマ
イカ、斯ウ云フヤウナ考ヘ方ヲシテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=3
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004・小畑虎之助
○小畑委員 ソレデ御方針ハ能ク分リマシ
ク、ソレカラ第二種所得稅ノ源泉比例率課
稅ヲ改メテ、第三種中ニ綜合シテ綜合累進
課稅トスルト云フコトハ如何デアルカト云
フコトノ質問ニ對シマシテ、大藏大臣ハ嘗
ツテ苦イ經驗ガアルト申サレマシテ、何カ
御答辯ヲ御遠慮ニナツテ居ルヤウデアリマ
ス、ドウ云フコトデアルカ、私ニハツキリ
シナイノデアリマスガ、外ノ角度カラ私ノ
意見ヲ申上ゲマシテ御尋ヲ致シテ見タイト
思ヒマス、前囘申上ゲマシタヤウニ、所得
稅ニ付キマシテ綜合累進課稅ノ完成ハ是ハ
理想ダト思ツテ居リマス、併シ之ニハ隨分
弊害ガ件フノデアリマシテ、私ハ豫想致シ
マス弊害ニ二ツバカリ大キイモノガアルト
思ヒマス、其ノ第一ハ第二種所得ヲ綜合累
進ト致シマスル時ニハ稅ノ通脫ガ行ハレル
ト云フコトデアリマス、卽チ例ヘバ銀行預
金利子ノ如キモ、若シ大所得者ガ預金ヲ致
シテ居リマスルナラバ、綜合累進ニ依ツテ
課稅率ガ重クナル、小所得者若クハ免稅點
以下ノ所得者ガ銀行預金ヲ致シテ居リマス
ルナラバ課稅ヲ免ルル、斯ウ云フコトニナ
ルノデアリマシテ、ソレガ爲ニ其ノ資本ヲ
虛僞ニ分散セシムル虞ガアル、或ハ他人ノ
名義ヲ用ヒ、或ハ假想人ノ名義ヲ用フル預
金等ガ行ハレナイト云フコトヲ保證シ得ナ
イノデアリマシテ、ソレハ一ツノ弊害デア
ル、併シ此ノ弊害ハ私ハ制裁法規ノ設定其
ノ他ニ依ツテ防止シ得ルト考ヘテ居ルノデ
アリマス、此ノ點ニ關スル大臣ノ御意見ヲ
伺ヒタイコトガ一ツ、ソレカラモウ一ツノ
弊害ト致シマシテ、公社債ノ利子ニ對スル
課稅等ニ於キマシテ、同樣ノ理由ニ依ツテ、
卽チ大所得者ガ公債社債ヲ持ツテ居リマシ
タナラバ、綜合累進ノ課稅ニ依ツテ課稅率
ガ高クナル、小所得者ノ場合ハ課稅率ガ低
クナリマスルカラ、純利廻ガ違ツテ來テ、
其ノ結果公債社債ノ市價ノ決定ニ混亂ヲ生
ズルト云フ虞ガ十分ニアル、之ヲ防ギ、若
クハ埋合セヲスル所ノ方策ガアルカナイカ
ト云フコトデアリマス、若シ又之ヲ防グ所
ノ方策ガナイト致シマシタナラバ、是ハ絕
對ニ容認スベカラザルコトデアル、其ノ弊
害ヲ容認シナガラ尙ホ綜合累進ノ課稅ヲ行
フト云フコトガ出來ルト致シマスレバ、相
當多額ナ增收ヲ期待シ得ラレルト思フノデ
アリマスガ、此ノ點ニ關スル大臣ノ御所見
ヲ伺ツテ見タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=4
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005・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 此ノ點ハ洵ニ稅法上ノ一
ツノ大キナ問題デアルト存ズルノデゴザイ
やく、是ハ源泉課稅ヲ主トスルカ、綜合課
稅ヲ主トスルカト云フ問題ニ結局落チルト
思フノデアリマスガ、私ガ先般苦イ經驗ガ
アルト申シマシタノハ、大正九年マデハ今
日ノ第二種ニ屬シテ居ルモノハ多クハ綜合
課稅デゴザイマシタガ、ソレニ依ツテ稅收
入ハト云フト、殆ドゴザイマセヌデシタ、
ト云フノハ、課稅ノ技術非常ニ困難デアリ
マシテ、全然ナイト言フ譯デモアリマセヌ
ガ、殆ドナカツタ、私共其ノ當時稅務署長
ヲ致シテ居リマシテ、此ノ捌キハ最モ苦心
ヲ致シタ次第デアリマス、ソレデ大正九年
ノ稅法ノ改正ニ當リマシテ、一面主トシテ
記名ヲ致シテ居リマスル株式ヲ個人ニ綜合
課稅ヲ致スト共ニ、他ノ方ハ源泉課稅ニ移シ
タノデアリマス、主トシテ此ノ立案ヲサレ
タノハ、民政黨ノ勝幹事長ガ其ノ當時大藏省
ニ居ラレテ立案サレタノデアリマス、其ノ
結果、其ノ改正ヲ致シマシタ年カラ相當額
ノ收入ガ國ニ入ツテ來タ譯ニ相成ツテ居ル
ノデアリマス、理窟カラ行キマスレバ、第二
種ノ所得ハ御說ノ通リ綜合課稅スベキ性質
ノモノデアルト存ジマス、併シナガラ一面
今日ノヤウナ場合ニ於テ、國ニ於テ相當ノ
收入ヲ得ルコトヲ必要ト致シテ居リマスル
場合ニ於テ、理窟ハサウダカラト言ツテ、
若シ收入ガ少ク相成ルヤウナコトニナツタ
ノヂハ、ソレハ非常ニ困ルト思フノデアリ
マス、其ノ點ハ餘程實際ト理論トノ間ノ調
和ヲ圖ラナケレバイカヌト思ツテ居リマス、
今日多數ノ國ニ於キマシテハ、斯ウ云フヤ
ウナ、第二種デ課稅致シテ居リマスヤウナ
種類ノモノハ、大體ニ於テ源泉課稅ヲ主ト
シテ居ルノデアリマス、獨逸ニ於キマシテ
ハ、非常ニ綜合課稅ノ好キナ國デアリマシ
テ、最初ハ皆之ヲ綜合課稅ニ致シテ居リマ
シテ、源泉課稅ヲ致サナカツタノデゴザイ
マスガ、戰後英吉利流ノ所得稅ヲ取入レマ
シテ、源泉課稅ヲ主トシテ致シテ居リマ
ス、源泉課稅ヲ致シ、其ノ上ニ或ル一定額
ノ所得者以上ノ者ニ對シマシテ、之ヲ本人
カラ申〓サセテ課稅ヲ致シテ居リマス、或
ル機會ニ於キマシテ、私ハ獨逸ノ主稅局ニ
其ノ綜合シテ居ル所ノ實績、仕方ト云フモ
ノハ、一體ドウ云フコトヲシテ居ルカト聽
イテ見タノデアリマスガ、ハツキリ返事致
シマセヌデシタ、日本デハ綜合課稅致シテ
居ラヌト申シマシタ所ガ、ソレモ一ツノ孝
ヘ方デアルガト言ツテ暫ク考ヘテ居リマシ
タガ、自分ノ方ハ其ノアトノ一定所得額以
上ノ者ニ對スル綜合課稅ヲドウ云フ風ニシ
テヤツテ居ルカト云フコトヲハツキリ申シ
マセヌデシタ、相當ナ困難ガアルト云フコ
トハ言ツテ居ツタ次第デゴザイマス、是等
ノ點ハ十分考究致シテ見ル必要ガアルト存
ジテ居リマス、一兩年前ニモ此ノ點ニ對シ
マシテ、大藏省ニ於テモ色々ト案ヲ練ツテ
議會ニ御提案ヲ致ス準備ヲ或ル程度致シタ
コトモアツタト存ジマス、其ノ當時ノ計算
ニ依ツテモ斯ウ云フコトニナル譯デアリマ
ス、源泉課稅ヲ致シテ居ルモノヲ綜合課稅
ニ移スト云フコトハ一箇年間ダケ稅額ヲ失
ヒマス、綜合課稅カラ源泉課稅ニ移シマス
場合ニハ一箇年ダケ規定ノ決メ方ニ依ツテ
ハ稅額ガ儲カルト云フコトニ相成ル、源泉
課稅カラ綜合課稅ニ移ス場合ニハ、無理ヲ
スレバヤリ方ガアルカト思ヒマスガ、先ヅ
普通ノ考へ方カラ行キマスレバ一箇年ダケ
收入ヲ失フ、何千万圓カノ收入ヲ失フト云
フ結果ニ相成ル、玆ニ一ツノ實行上ノ難點ガ
アリマス、ソレカラ免稅點以下ノモノニ對
シマシテモ、今日ニ於キマシテモ一割二分
デアリマスカ、相當高率ナ課稅ヲ致シテ居
リマス、一割二分ト言ヒマスト、今日所得
稅率ガ上リマシテモ、一万圓ヲ越エル人達
ノ稅率デアルカト思フノデアリマスガ、サ
ウ云フヤウナ稅率ヲ以テ高率ナ課稅ヲ致シ
テ居ルノデゴザイマスカラ、稅額ヲ算出シ
テ見マスルト源泉課稅ノ方ガ却ツテ餘計デ
寧ロ稅率ハ減ツテ來ルト云フヤウナ關係ニ
モ相成ツテ、稅金ノ總額ガ著シク減ツテ來
ルト云フヤウナ關係ニモ相成ツテ來ル點モ
ゴザイマス、ソレ等ノ點ニ付テハ是ガ一面
ニ於テハ稅收入ノ點、一面ニ於テハ課稅ノ
理論ノ點、相照シテ十分ニ考究シテ見タイ
ト存ジテ居リマスガ、今此處デ第二種ノ所
得ヲ必ズ第三種ニ綜合スルト斯ウ申上ゲル
コトハ一寸困難デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=5
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006・小畑虎之助
○小畑委員 次ニ大藏大臣ノ今抱イテ居ラ
レマス所ノ「インフレ」抑制ノ手段ニ付テ
言伺ツテ見タイノデアリマスガ、大臣ハ先
般中島委員ノ質問ニ對スル答辯中「インフ
レ」ヲ抑制スルニハ他ニ打ツ手モアル、左
樣ニ心配シテ居ラヌ、斯樣ニ仰シヤツタノ
デアリマス、國民ハ此ノ大藏大臣ノ一言ヲ
聽イテ非常ニ氣ヲ强ク致シテ居ル次第デア
リマスガ、所謂其ノ他ニ打ツ手ガアルト云
フ、其ノ打ツ手ト云フノハドウ云フ手デア
ルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、
目下行ヒツツアル所ノ「インフレ」抑制ノ手
段トシテ、大藏大臣ハ第一ニ貯蓄ノ奬勵ヲ擧
ゲラレテ居リマス、第二ニハ公債ノ消化ヲ
擧ゲラレ、第三ニ增稅ヲ擧ゲラレテ居リマ
ス、此ノ三ツノモノハ明ニナツテ居リマス
ガ、此ノ外ニ尙ホ打ツ手モアツテ心配ハシ
テ居ラヌト云フノデアリマスガ、其ノ打ツ
手トハ如何ナルモノデアルカ、打ツ手ト云
フモノノ正體ヲ明ニシテ戴キタイト思ヒマ
ス、私ノ考ヘル所ニ依リマシテモ、確ニ打
ツ手ハアルト考ヘテ居リマスガ、先ヅ大臣
ノ御意見ヲ先ニ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=6
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007・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 要スルニ「インフレ」ヲ防
グト云フコトハ、斯ウ云フ際ニ於キマシテハ、
御承知ノ通リ公債ヲ發行シ、一面ニ於テハ
政府資金ヲ撒布スルト云フコトモヤツテ居
ルノデアリマスガ、政府資金ヲ撒布スルコ
トヲ少クスル、又ハ之ヲ或ル程度減退セシ
メルコトガ可能デアルナラバ、是ハ一擧ニ
シテ其ノ懸念ハ薄ラグト思フノデアリマス、
併シナガラ今日ノヤウナ時代ニ於キマシテ、
公債ヲ發行シテ、サウシテ此ノ財政ヲ賄ツ
テ行クコトヲ止メル譯ニハ行キマセヌ、相
當多額ノ公債ヲ發行シテ財政ヲ運行シテ行
ク、其ノ財政ヲ運行シテ行クト云フコトデ
アリマスナラバ、一面ニ於テヤハリ政府資
金ノ撒布ハ相當多額ニ行ハレル、斯ウ云フ
コトモ亦是レ當然ノコトデアルノデアリマ
シテ、其ノ政府資金ノ撒布ニ依ツテ生ズル
購買力ヲ制限スルト云フコトニ依ツテ「イ
ンフレ」ヲ防止スル、斯ウ云フコトニ相成ル
ト思フノデアリマス、ソレデ此ノ前申上ゲ
マシタヤウナ貯蓄ノ奬勵ニ依リ、公債ノ募
集ニ依ツテ、市中ニ撒布サレテ居ル資金ヲ
吸收スル所ノ方策ヲ講ズル、又增稅ヲ一面
ニ於テ行ツテ、此ノ增稅ニ依ツテモ購買力
ヲ制限スル作用ガ行ハレル、主トシテ增稅
ニ依ツテ行ハレルガ、貯蓄ノ奬勵ト云フコ
トモ結局其ノ半面ニ於テ公債ノ消化ト云フ
コトデアリマスガ、此ノ貯蓄ノ奬勵、公債
ノ消化ト云フコトニ依ツテ行ハレルモノト
言ヒマスレバ、先ヅ貯蓄ノ奬勵公債ノ消化
ト云フコトガ主トシテ此ノ購買力ノ制限ニ
當リ、增稅ガ之ニ副作用的ニ及ンデ來ルト
思フノデアリマス、其ノ他ニ打ツ手ガアル
カ、先日ノ答ニハ打ツ手ガアルト言ツタデ
ハナイカ、斯ウ仰セデアルカモ知レマセヌ
ガ、其ノ他ニモ物價ヲ抑ヘルト云フコトハ
是非トモ必要デアルト思フノデアリマシテ、
一面ニ於テ物ノ需要供給ノ「バランス」ガ失ハ
レテ來ルコトカラ生ズル所ノ物價ノ騰貴、
普通ノ狀態デアリマスレバ、此ノ需要供給
ニ依ツテ物ガ上ルト云フコトハ已ムヲ得ナ
イノデアリマスガ、併シナガラ戰時財政經
濟ニ當ツテハ物ガ少クナツテ來テ物價ヲ上
ゲラレタノデハヤハリ困ルノデアリマスカ
ラ、一面ニ於テハ物價委員會ヲ强化シマシ
テ物ノ需要供給ノ「バランス」ヲ失ツタコ
トカラ生ズル物價騰貴ヲ抑壓スル、斯ウ云
フコトガ必要デアルト思フノデアリマス、
又一面ニ於キマシテハ食糧品等ニ付テハ出來
ルダケ之ヲ不足致サセナイ方向ニ導イテ行
ク、人ニ依ツテハ〓糧サヘ豐富ニ供給サレ
テ、サウシテ此ノ方ノ物價騰貴ガ著シク起
ラナケレバ「インフレ」ハ起ラナイ、斯ウ云
フコトヲ論ジテ居ル人モゴザイマス、私、
斯ウ云フ意見ニハ必ズシモ贊成致シマセヌ
ガ、併シナガラ農產物ノ價格ヲ引上ゲナイト
云フ方向ニ向ツテ進ミマスコトモ、「インフ
レ」ノ防止ノ一助デアルト思フノデゴザイ
さく、是ハ農產物ニ付テハ一面ニ於テハ需
要供給ノ關係ヲ十分ニ考ヘマシテ、各種ノ
增產計晝ヲ立テル、斯ウ云フコトモ必要デ
アルト存ジマス、ソレカラ又一面ニ於キマ
シテハ、國際收支ノ關係デゴザイマスガ、
國際收支ノ關係ヲ無視致シマシテ、サウシ
テ茲ニ輸入品ガ非常ニ殺到シテ參リマシテ
爲替ガ下ル、斯ウ云フコトデアルナラバ
爲替ガ著シク引下ルト云フコトニ依ツテ物
ハ暴騰シテ來ルノデゴザイマス、是ハ爲替
ヲ引下ゲナイ限リニ於テハ惡性「インフレㄴ
起ラズ、斯ウ云フコトヲ言ツテ居ル人モゴ
ザイマス、獨逸ノ慘澹タル「インフレーショ
ン」ノ起リマシタ時分ニモ、爲替ガ著シク
下ツタノデアリマス、爲替ガ下ツテ13)
フレーション」ガ行ハレタノカ、國內ニ「イ
ンフレーション」ガ先ニ行ハレテ爲替ガ下
ツタノデアルカト云フコトニ付テハ、是尺
相當論議ガアルト存ジマス、相當論議ガア
ルト存ジマスルガ、併シナガラ爲替ガ下ル
ト云フコトモ、是ハ確ニ一ツノ此ノ方面ニ
向フ傾向デゴザイマスノデ、一面ニ於テハ
爲替ヲ下ゲナイ、斯ウ云フコトモ必要デア
ルト考ヘテ居リマス、サウ云フヤウナ各方
面カラ致シマシテ、打ツ手ヲ考ヘマシテ之
ヲ防止シテ行ク必要アリト考ヘテ居ル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=7
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008・小畑虎之助
○小畑委員 只今其ノ他ノ打ツ手トシテ、
大藏大臣ハ物價ノ抑制ト食糧政策ト國際收
支ノ調整ノ三ツヲ御擧ゲニナツタヤウデア
リマス、洵ニ結構ナコトデアルト思ヒマス
ガ、私ハ此ノ他ニモ尙ホ勿論打ツ手ガアル
ト考ヘテ居リマス、其ノ私ノ考ヘテ居リマ
ス最有力ナル問題トシテ、私ハ政府ノ發註
價格ノ單價ノ切下ノ問題ヲ提唱シタイト思フ
ノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ大藏大
臣ノミナラズ、陸海軍大臣ノ御答辯ヲ得タイ
ト考ヘテ居ルノデアリマスケレドモ、陸海軍
大臣ハ今御見エニナリマセヌカラ、私ハ極メ
テ簡單ニ質問ノ趣旨ヲ此ノ機會ニ申述べマ
シテ、陸海軍大臣ガ御出席ニナリマシタ適當
ノ際ニ御答辯ヲ戴キタイト思フノデアリマス
私ハ政府、主トシテ陸海軍ノ軍需品ノ
註文價格ハ必ズシモ非常ニ高イト云フコ
トヲ申上ゲルノデハアリマセヌ、併シナ
ガラ今日陸海軍ノ註文ニ依ツテ相當ノ戰時
成金ガ澤山ニ出來ツツアルコトハ、是ハ議
論ノ餘地ノ無イ事實デアルノデアリマス、
私ハ軍部ノ註文ニ依ル單價ガ如何デアルカ
ト云フコトニ付テ巷間ノ說ニ付テハ、其ノ
眞僞ハ保證致シ兼ネマスカラ別ト致シマシ
テモ、多少ノ材料ハ持ツテ居ルノデアリマ
ス、色々ナ點ヲ考慮致シマシテ茲ニ其ノ實
例ヲ申上ゲルコトヲ差控ヘマスガ、唯陸海
軍ノ註文ニ依ツテ戰時成金ガ簇出スルト云
フ此ノ一ツノ動カスベカラザル事實ヲ眺メ
テ見マシテ、尙ホ政府ノ註文單價ノ切下ノ
餘地ガアリ、且ツ必要ガアルト云フコトヲ
感ゼシメラレルノデアリマス、大藏大臣ハ
戰時利得稅ノ說明ニ當ツテ、戰時利得產業
ノ負擔ヲ增加セシメル目的デアル、斯ウ云
フコトヲ御說明ニナツタノデアリマスガ、
戰時利得產業ノ負擔增加ト云フモノノ實體
ハ一體何デアルカ、第一ニハ戰時利得產業
負擔增加ト云フモノハ、稅本來ノ增收ノ目
的ヲ持ツテ居ルト云フコトハ是ハ明カデア
ル、第二ニハ負擔ノ衡平ヲ趣旨トシタト云
フコトハ是モ明カデアル、第三ニハ政府ノ
軍需ノ註文ニ依ツテ多額ノ資金ヲ撒布致シ
マシテ、其ノ撒布致シマシタ所ノ資金ノ餘
剩ヲ消化セザル其ノ儘ノ形ニ於テ政府ニ同
收スルト云フ所ノ手段、實質ヲ持ツテ居ル
ノデアリマス、政府ガ軍需ニ對シテ多額ノ
資金ヲ撒布シテ、サウシテ其ノ資金ノ餘剩
ヲ消化セシメザル狀態ニ於テ囘收スルト云
フナラバ、其ノ餘剩ヲ生ズル部分ニ對シテ
ハ、初メカラ政府ハ其ノ資金ノ撒布ヲナサ
ザルニ如カズト云フ結論ヲ生ジテ來ル、私
ハ此ノ點カラ考ヘマシテモ、政府ガ澤山ノ
資金ヲ撒布シテ、サウシテ其ノ儘ソレヲ取
上ゲルト云フナラバ、是ハ徒ニ其ノ資金ノ
移動ス過程ヲ澤山作ツタト云フコトデダケ
デアツテ、何ノ意味モナサナイコトデアル
ト思フノデアリマス、今國民ガ稅金ヲ負擔
致シマスルコトハ、假令此ノ際現在ノ增稅
額ノ二倍三倍四倍ノ增稅ガ行ハレタト致シ
マシテモ、祖國日本ノ躍進ノ爲ニハ、此ノ
大業完成ノ爲ニハ、國民ハ辛抱スルノデア
リマス、決シテ國民ニ之ヲ嫌フモノデハアリ
マセス、喜ンデ納稅ヲ致スモノデアリマス
ケレドモ、其ノ一方ニハ自ラノ生活ヲ顧ミ
テ齒ヲ喰ヒシバツテ居ル國民ノ姿モ想像セ
ラレルノデアリマス、隨テ政府ニ於キマシ
テモ此ノ點ニ付キマシテハ愼重ノ上ニモ愼
重ヲ期シテ、〓究ノ上ニモ〓究ヲシ、工夫
ノ上ニモ工夫ヲ凝シテ、ドウカ出來ルダケ單
價ノ切下ヲ行ツテ國民ノ負擔ヲ輕クシ、而
モ將來將ニ起ルベキコトヲ想像サレマス所
ノ「インフレ」抑制ノ根本的手段トシテ戴キ
タイト思フ、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居ルノデ
アリマス、大藏大臣竝ニ陸海軍大臣ハ是以
上單價切下ノ餘地ハナイ、斯樣ニ御考ニナ
ツテ居リマスカ、如何デアリマスカト云フ
コトニ付テ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=8
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009・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 政府ガ註文致シマスル物
ニ付テ、其ノ價格ヲ引下ゲル餘地ガアリハ
シナイカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスガ、
是ハ極メテ重大ナ問題デアルト思ヒマシ
テ、此ノ事變ガ始マリマシテ以來各事務當
局ヘモ注意致シテ居ル次第デゴザイマス
ガ、色々ナ實例ヲ聞クノデゴザイマス、此
ノ點ニ付キマシテハ今後トモ出來ルダケ注
意致シタイト存ジテ居リマスガ、唯私ハ斯
ウ云フコトヲ昨年アタリ考ヘテ居ツタノデ
ゴザイマス、詰リ戰鬪行爲ヲ致シテ居ル際
ニ、非常ニ急グ物ガアル、此ノ急グ物ヲ作
ル時分ニ、普通ノ時間、普通ノ勞力、普通
ノ價格デ之ヲ集メテ居ツタノデハ、戰爭ノ
場合ニハ間ニ合ハナイコトガ實際問題トシ
テハアルト思フノデアリマス、隨テ是非ト
モ急グト云フ場合ニハ相當是ハ勞力カラ云
ヒマシテモ、物カラ云ヒマシテモ、金カラ
云ヒマシテモ、或ル程度無理ヲシテ持ツテ
行ク、此ノ無理ヲシテ戰爭ノ爲ニ準備ヲス
ル時ニハ多少物ノ値段ガ高イコトモ忍バナ
ケレバナラヌ場合モアルト思フノデアリマ
ス、ソレデナケレバ戰爭ニ勝テヌ、十分コ
チラノ有利ニ展開シナイト云フ場合ニハ、
是ハ或ル程度辛抱シテ行カナケレバナラヌ
場合ガアルノデアリマスガ、旣ニ戰爭モ新
段階ニ入ツタノデアリマシテ、今後ニ於テ
ハ長期建設ニ入ツタノデアリマスカラ、是
等ノ點ニ付キマシテハ、更ニ陸海軍當局ト
モ能ク相談ヲ致シテ御趣旨ニ副フヤウニ運
ンデ行キタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=9
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010・小畑虎之助
○小烟委員 政府ノ註文ニ付キマシテハ、
戰時ニ於テハ非常ニ急グ、又絕對必要ナ品物
バカリデアリマスカラ、利潤追求ノ現在ノ
經濟機構ノ下ニ於キマシテハ、相當ノ利潤
ヲ目安ノ中ニ入レテ、御註文ニナラナケレ
バイケナイ場合ガアルト云フコトハ、ソレ
モ宜カラウト存ズルノデアリマス、其ノ點
ヲ大藏大臣ハ尙ホ注意ヲスルト仰シヤルケ
レドモ、私ハ注意ノ程度デハイカヌト思フ、
大ニ努力ヲシ工夫ヲシテ貰ハナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、仰セノ如ク今戰鬪
ハ一段落ヲ〓ゲテ、長期建設ノ時代ニ入ツ
テ居ルノデアリマスカラ、今マデハ非常ニ
急イダ物デモ、今日以後ハ左樣ニ急ガナイ
ト云フ物モアルデアラウト思ヒマスカラ、
ドウカ其ノ點ニ對スル格段ノ御工夫ト御努
力ヲ煩ハシタイノデアリマス、ソレ以上ノ
コトハ陸海軍大臣ガオ出デニナツテカラ、
私ノ意見ヲ述べ又大臣ノ御所見モ承リタイ
ト存ジマス
次ニ他ノ打ツ手トシテ勞銀政策ノ問題ニ
付テ伺ツテ見タイノデアリマスガ、厚生大
臣モオ見エニナツテ居リマセヌノデ、他日
ノ機會ニ於テ其ノ點ニ對スル質疑ヲ行ヒタ
イト思ヒマス、本日ハ是デ私ノ質問ヲ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=10
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011・川崎克
○川崎委員長 武田德三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=11
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012・武田徳三郎
○武田委員 最早十二時ニ垂ントシテ居リ
マスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=12
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013・川崎克
○川崎委員長 一寸申上ゲマスガ、今日ハ
午前二時ニ御承知ノ通リ豫算總會ガアリマ
ス、ソレデ豫算總會ガ四時位マデ掛カルカ
ト思ヒマス、其ノ後ノ開會ヲ如何ニ致シマ
スカ、今理事ト打合セ中デ分リマセヌ、左
樣ナ譯デアリマスカラ、今日ハ午前ハ十二
時半頃マデヤリタイト思ヒマス、今小畑君
ノ御質問ニナツタノハ五十分デ、アナタハ
アト四十分アルト思ヒマスカラ、御進メ下
サイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=13
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014・武田徳三郎
○武田委員 ソレデハ二十分カ三十分程度
デ質問ヲ致シタイト思ヒマス、私ハ此ノ度
政府ヨリ御提案ニナリマシタ此ノ增稅案
ヲ、一通リ檢討ヲ致シマシテ、又大藏大臣
ノ御說明ヲ承リマシテ、大體ニ於テ時宜ニ
適シタル御提案ト考ヘテ居ルノデアリマス、
併シナガラ更ニ飜ツテ考ヘテ見マスノニ、明
年ニ、御提案ニナルト御約東ニナツテ居リマ
スル稅制ノ改正問題ト、此ノ提案トヲ關聯
シテ考ヘテ見マスルト、種々ナル點ニ於テ
大藏大臣ノ御說明ヲ承リタイ點ガアルノデ
アリマス、今日マデ豫算總會ニ於キマシテ
モ、又本委員會ニ於キマシテモ、其ノ點ニ
付テ同僚諸君カラモ相當突込ンダ御質問モ
アルノデ、私ハソレヲ傾聽致シテ居ルノデ
アリマスガ、尙ホ私モモウ少シク其ノ點ニ
於テ御伺シタイ點ガアルノデアリマス、第
一ニ伺ツテ見タイト思ヒマスコトハ、本日
受取リマシタ臨時軍事費ノ追加豫算ヲ拜見
致シマシテ、寧ロ吾々ノ豫想シ、世間デ傳
ヘラレテ居ル。モノヨリ、決シテ金額ハ
增シテ居リマセヌ、幾分ハ寧ロ減少シテ
居ルヤウニ思フノデアリマス、ソレニ
致シマシテモ更ニ御提案ニナルト傳ヘラ
レテ居ル、一般會計ノ軍事費ニ關スル
追加豫算モ、若干アルヤウニ承ツテ居リマ
スシ、ソレ此レヲ綜合シテ見、マスルト、
ヤハリ九十億以上ニ上ツテ、本年度ノ豫算
ト比較致シマスレバ、稍〓十億近クノ增額ニ
ナルト思フノデアリマス、サウシマスルト
隨テ公債ノ發行額モ、本年度ヨリハ餘計ニ
ナルコトハ、當然ノ歸結デアラウト存ジマ
ス、然ル所一面ニ於テハ、何レ是ハ豫算總
會デ詳シク承ル事柄デアリマスケレドモ、
是ダケノ豫算ヲ消化致スト云フコトニ付テ
ハ、大藏大臣ハ十分ナル御自信ノアルコト
トハ存ジマスルガ、兎モ角是ハサウ易シイ
コトデハナイト考ヘマス、隨テ此ノ豫算ヲ
實行スル結果、物價騰貴ノ形勢ハ、今モ御
話ノアリマシタ如ク、是ハ免レナイ譯デア
リマス、隨テ此ノ「インフレ」ヲ「チエック」ス
ル或ハ物價ノ騰貴ヲ「チエック」スル方法ト
シテ、大藏大臣ハ只今モ御說明ガアリマシ
タ如ク、消費力ヲ抑制スルト云フ手段ヲ、
種々ナル點カラ御採リニナルト御言明ニナ
ツテ居リマスガ、洵ニソレハ御尤ノ次第デ
アリマス、サウシテ尙ホ此ノ增稅案ノ御說
明中ニモ、今度ノ此ノ增稅案ノ趣旨ハ、戰
時ニ對シテ殷賑產業ノ方ハ利潤ヲ得ルコト
ガ多イカラ、其ノ釣合ヲ得ルガ爲ニ、其ノ
方デモ增稅ヲスルノデアルト共ニ、一四、
於テハ消費ニ對シテ課稅ヲシテ、物價ノ騰
貴、消費力ノ昂騰ヲ抑制スルモノデアル、
斯ウ云フ御說明デアリマシタ、サウ致シマ
スルト、今度ノ增稅ハ主トシテ「インフレ」
ノ抑制、購買力ノ抑壓ト云フコトニ重點ガ
置イテアルト信ジマスルノデ、私ノ本案ヲ
洵ニ機宜ニ適シタト申上ゲルノハ、主トシ
テ其ノ點ヲ指シテ申シテ居ルノデアリマス
ガ、唯約二億圓ト云フ此ノ增稅額ヲ以テ、
所期ノ目的ヲ達スルコトハ出來ルデアラウ
カドウカト云フ問題デアリマス、此ノ點ニ
付テハ旣ニ同樣ノ意味ノ質問ガアツタヤウ
ニ存ジマスルガ、ソレニ對シテ大藏大臣ハ
增稅額ハ必ズシモ多イトハ言ヘナイガ、併
シ自然增收ノ二億五千万圓モアルノダカラ
彼此レ明年度ニ於テ四億五千万圓カラノ購
買力ヲ抑ヘルコトニナルカラ、サウ輕イモ
ノデモナイト云フ風ナ御說明モアツタヤウ
ニ存ジマス、併シナガラ本年度ハ既ニ先程
モ申上ゲタルヤウニ、約十億ノ政府資金ノ
餘計ノ撒布ニ依ツテ、購買力ハ增シテ居ル
ノデアリマス、同時ニ一面ニ於テハ軍需品
ハ勿論ノコト、日本全體ニ於ケル商品ノ「ス
トック」ハ、非常ナ勢ヲ以テ減少シツツアルト
存ジマス、是ハ數字上ニモ現ハレテ居ルノ
デアリマスガ、敢テ故ラニ私ガ數字ヲ申上
ゲナクテモ、是ハ明白ナコトデアルト思ヒ
やく、サウ致シマスルト是ハ標準ノナイ話
ト言ヘバソレマデノ話デアリマスガ、私ハ
此ノ購買力ノ抑制ト云フコトニ重點ヲ置ク
增稅案ト致シマシテ、二億ト云フコトデ、
果シテ大藏大臣ノ御話ノ如クニ、相當效果
アル購買力ノ抑制ガ出來ルカドウカト云フ
コトニ向ツテ、非常ニ疑ヲ持ツテ居ル、ソ
レデ私ハモウ少シク他ノ手段ヲ御執リニナ
ル御考ガナイカ、是デ更ニ增加セントスル
勢ニアル購買力ヲ相當效果的ニ抑ヘ得ルト
云フ御確信デアルノカ、又他ニモウ少シ手
段ヲ御執リニナル御考ガアルノカト云フコ
トヲ、先ヅ伺ヒタイノデアリマス、之ヲ更
ニ具體的ニ申上ゲルナラバ、法律ノ手段ニ
依ラズ、議會ノ協贊ヲ經ル手段ニ依ラズシ
テ、購買力ヲ抑ヘル方法ハナイ譯デモナイ
ノデアリマス、卽チ煙草ノ値上ト云フヤウ
ナ手段モ、ナイ限リデハナイト思ヒマス、
此ノ煙草ニ付キマシテハ、昨年ノ煙草ノ値
上ノ際ニハ、「バツト」ハ國民大衆ノ多ク使用
スルモノデアルト云フ理由ニ依ツテ、値上
ガナカツタト存ジマス、併シナガラ一般ノ
購買力ノ抑制ト云フコトニ付テハ、或ル程
度ハ大衆ノ負擔ニ歸シテモ、殊ニ勞働者ガ
非常ナ勞働賃ヲ得テ、購買力ガ增シテ
居ル今日ニ於キマシテハ、是ハ程度ノ
問題デアリマスカラ、ドノ程度ト云フ
三··ハツキリ言フコトハ出來マセ
ヌケレドモ、一般大衆ノ購買力ヲ抑ヘル手
段ト云フコトモ、相當考ヘテ宜イノデハナ
イカ、殊ニ一般大衆ノ用ヒル中デ、「バツ
ト」ガ一番多イノデアリマス、私ノ承ル所ニ
依ルト、「バツト」一個ニ付テ一錢ノ値上ヲ
致セバ、直チニ千七八百万圓ノ增收ガ出來ル
ト云フコトニ承ツテ居ルノデアリマス、勿
論斯ウ云フ煙草ノ値上ヲスル意思ガアルト
云フコトヲ、政府ガ御言明ニナルコトハ困
難デアリマセウ、併シ新聞デ承ル所ニ依ル
ト、議會開會前ニ此ノ增稅案ヲ世ノ中ニ御發
表ニナル時ニ、大藏大臣ハ煙草ノ値上ハ今
度ハシナイ決心デアルト云フコトヲ御表明
ニナツテ居ル、果シテサウデアルト致シマ
スレバ、一般ノ購買力ヲ抑制スルト云フ意
味ニ於テ別ノ手段ヲ執ルト云フ考ガナイヤ
ウニモ感ジラレルノデアリマスガ、併シ此
處デ其ノ事ヲハツキリ承ルト云フコトハ或
ハ無理カモ知レマセヌ、無理カモ知レマセ
ヌガ、煙草ノ値上ヲシナイト議會開會ノ前
ニ新聞ヲ通ジテ御表明ニナツタヤウナ御決
心デアルナラバ、是ハ御表明ニナツテモ差
支ナイ筈デアラウト思ヒマス、ヤハリ先般
新聞ニ御發表ニナツタヤウニ、煙草ノ値上
ト云フヤウナ方法ヲ御執リニナラナイト云
フ御決心デアルカドウカト云フコトモ併セ
テ伺ツテ置キタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=14
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015・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 提案致シマシタ追加豫算、
是ハマダ此ノ外ニ陸海軍ノ追加豫算、ソレ
ト普通ノ追加豫算、斯ウ云フモノガ提案サ
レルト思フノデアリマスカ、今日豫想致シ
テ居リマス公債ノ發行高、是ハ昨年ノ豫算
ニ於キマシテ臨時軍事費會計、普通豫算、
ソレカラ一般追加ノ追加豫算等ヲ引ツ括メ
マシテ議會後ニ豫想サレテ居リマシタ豫算
上ノ公債發行高ハ、五十六億四千万圓ト云
フコトニナツテ居ツタト思フノデゴザイマ
ス、今年ハ色々增稅モゴザイマスシ、自然
增收モゴザイマスシ、其ノ他色々ナ方面ニ
於テ收入ヲ圖ツタ點モゴザイマス、例ヘバ
競馬ノ納付金ノ增額デアリマストカ、叉
時ノ金デハアリマスガ、四千万圓ノ兌換劵
ノ喪失利益デアリマストカ、剩餘金ノ繰入
デアリマストカ、各種ノ途ガ考ヘラレテ居
ルノデゴザイマスガ、ソレ等ノ結果此ノ臨
時軍事費豫算ト陸海軍ノ追加豫算トヲ引括
メマシテ今日ノ所公債ノ發行高ハ五十七億
三千万圓デ、大體豫定サレマシタ昨年ノ發
行高ヨリモ一億圓マデ增サナイ程度ノモノ
デハアルマイカト思ツテ居リマス、勿論此
ノ外ニ普通ノ豫算ガゴザイマスカラ、是ヨ
リ更ニ普通ノ追加豫算ノ額ダケ增加致スト
思フノデゴザイマス、結局此ノ公債ノ發行
高ト云フモノハ赤字デ、其ノ他ノモノハ豫
算ガ增加シマシテモ是ハソレダケ國民カラ
徵收スルノデアリマスカラ、表面ノ豫算ガ
增シマシテモ、國民カラソレダケノモノヲ
徵收シテ來ルナラバ、此ノ撒布サレタ金ノ
吸收ト云フコトハ必要ナイ、詰リ公債ノ發行
高ニ應ジテノ必要デアルト思フノデアリマ
ス、其ノ公債ノ發行高ガ多少ノ增加ハ致ス
ト存ジマスガ先ヅ昭和十三年度ト餘リ變リ
ガナイ數字デアラウト存ジテ居リマス、サ
ウ云フ譯デアリマシテ、豫算ガ十億表面上
增加シタカラ十億ダケノ撒布資金ヲ更ニ昨
年ヨリモ餘計ニ集メルト云フ必要ハ、豫算
面カラハ來ナイヤウニ考ヘテ居リマス、唯
近來議論致サレテ居リマス點ハ、豫算ノ公
布額ハ前年度ト大差ナイニ致シタ所デ、今
アナタノ仰セノアツタヤウニ、物ガ少クナ
ツテ居ルデハナイカ、物ガ少クナツテ그
トック」ガ少クナツテ居ルカラ、ソレ等ノ
「ストック」ノ點ニ付テ餘程考ヘナケレバイカ
ヌ、更ニヤハリ多クノ金ヲ吸收スルコトヲ考
ヘル必要ガアルデハナイカ、斯ウ云フ說ガア
ルノデアリマス、是モ一面カラ考ヘマスレ
バ、サウ云フ點モアルヤウニ思ハレル所モ
ゴザイマス、是等ノ點ニ付キマシテハ、更
ニ餘程考究ヲシテ見ル必要ガアルト存ジテ
居リマス、ソレデ只今更ニ此ノ法律以外ノ
手段ヲ講ジテ、國民カラ撒布サレル所ノ金
ヲ引上ゲル方策ヲ政府ハ講ズル意思ガアル
カ、是ハ出來ルダケノコトハヤリタイト思
ツテ居リマス、例ヘバ貯蓄ノ奬勵ヲ强化、公
債ノ一般民衆ニ對スル普及宣傳、其ノ他貯蓄
債劵ノ賣却、斯ウ云フヤウナコトニ付キマシ
テ更ニ一段ノ力ヲ盡シタイトハ存ジテ居ルノデ
ゴザイマスガ、煙草ノ値上ヲ此ノ際行フト云フ
考ハ持ツテ居リマセヌ、是ハ年昨來私申シ
タ通リデゴザイマシテ、今日ノ所煙草ノ値
上ヲ致ス考ハ持ツテ居リマセヌ、是ハ煙草
ノ値上ヲドウシテシナイカ、斯ウ云フ御尋
デゴザイマスレバ、實ハ此ノ煙草ニ付テハ
昨年モ、其ノ前年モ相當高度ノ値上ヲ致シ
テ居ルノデアリマシテ、其ノ他ノ物品ニ比.
較致シマシテ、寧ロ此ノ煙草ノ値上ト云フ
モノハ相當高ク行ツテ居ルヤウニ思フノデ
ゴザイマス、「バツト」ヲ昨年一年休ミマシタ
カラ、「バツト」ニ對スル限リハサウデモゴザ
イマセヌガ、其ノ他ノ煙草ニ付キマシテハ
相當高度ニ行ツテ居リマス、サウ云フ點ヲ
考ヘル必要ガアリマスノト、又一面ニ於キ
マシテハ外國カラ入ツテ來マス輸入原料ト
云フモノヲ殆ド節約シテシマツタノデゴザ
イマス、隨テ從來一千万圓カラノ葉煙草ヲ
亞米利加カラ買ツテ居ツタノデゴザイマス
ガ、此ノ「バージニヤ」ノ葉ヲ輸入スルコト
ヲ廢メテシマヒマシタ、亞米利加ニアリマ
シタ煙草專賣局ノ出張所モ閉鎖シテシマツ
タノデゴザイマス、隨テ是等ノ原料ヲ買ヘマ
セヌカラ、内地ニ於ケル「チェリー」「ホープ」
斯ウ云フヤウナ煙草ノ原料ハ、二年程前カ
ラ持ツテ居リマス「ストック」ヲ漸次用ヒ
テ居ル譯デゴザイマス、是ハ今日ノ國際收
支ノ關係上已ムヲ得ナイト思フノデアリマ
ス、是等ノ代用ノ原料ヲ求メルベク、昭和
十四年度ノ豫算ニ於テモ、六千町步ノ國內
ニ於ケル所ノ煙草ノ增作ヲ御認メヲ願ツタ
ヤウナ次第デゴザイマシテ、國內ノ葉ト入
レ換ヘタイト思ツテ居リマス、ソレデゴザ
イマスカラ「バツト」ニモ少シ入ツテ居ツタノ
デゴザイマスガ、「バツト」ト云ヒ「チェリーㄴ
ト云ヒ、「ホープ」ト云ヒ、名前ニ變リハゴ
ザイマセヌガ、內容ハ舶來品カラ漸次內地
品ニ變リツツアル次第デゴザイマス、多少
味モ變ツテ來ル、品質モ變ツテ來ル、斯ウ
云フコトニ相成ル譯デゴザイマスカラ、先
ヅ斯ウ云フ變動期ニ於キマシテハ、此ノ際
ハ一先ヅ値上ハ待ツテ、是等ノ一應ノ整理
ノ付キマシタ所デ更ニ考ヘルナラバ考ヘ
ル、今日ノ所ハ先ヅ此ノ程度ニシテ置キタ
イ斯ウ思ツテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=15
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016・武田徳三郎
○武田委員 更ニ御伺ヲ致シタイコトハ
一昨日以來、來ルベキ稅制改正ノ場合ニハ
强度ノ增收ヲ含ム改正ヲサレル意思ハナイ
カト云フ小畑君ノ質問ニ對シテ、大藏大臣
ハハツキリトハ仰セニナラヌヤウデアリマ
スカ、其ノ口吻カラ私ノ推察スル所ニ依ル
ト、增收ヲ含マナイ意味ノ改正ヲオヤリニ
ナルト云フ御意思デナイカト云フ風ニ推測
サレルノデアリマス、ソレデ重ネテ其ノ點
ヲ伺フノデアリマスガ、又來ルベキ增稅ノ
方針如何ト云フコトニ對シテ私ガ豫算總會
ニ於テ質問シタ時ノ御答辯ニ依リマシテモ、
又本案提案ノ際ニ本會議ニ於テ御說明ニナ
リマシタ點ニ於キマシテモ、增稅、增收ノ
意味ガ何等特ニ謳ツテナイノデアリマス、
是ハ此ノ稅制改正ニ伴ツテ重大ナ問題デナ
イカト實ハ思フノデアリマス、今ノ御話カ
ラ伺ツテ見テモ、明年度ノ公債ノ發行額ハ
本年ト餘リ相違ハナイ、本年度モ「スムース」
ニゾレガ消化シテ、大シタ「インフレ」ニナラ
ナカツタカラ、明年度モサウ懸念スルコト
ハ要ラナイ、購買力ヲ抑ヘル途ハ必ズシモ
增稅ノミデモナイ、貯蓄ノ奬勵其ノ他ノ方法
ヲ以テヤレバサウ心配シナクテモ宜シイト云
フ風ニモ實ハ考ヘラレルノデアリマシテ、此ノ
點ハ私ノ考ト大分違ツテ居ルノデアリマス、
私ハ先程モ申上ゲタ通リ順次ニ「インフレ」
ノ傾向ハ進ンデ來ルベキ情勢ニアルト思フ
ノデアリマス、此ノ事ハ豫算總會デモ申上
ゲマシタシ、又他ノ委員カラモ屢〓御話ガア
ツタヤウデアリマシタカラ、繰返スコトハ
致シマセヌガ、ドウモ其ノ點ニ對シテ吾々
ノ見ル所ト大藏大臣ノ觀點トハ大分根本的
ニ相違シテ居ハシナイカト云フ風ニ實ハ考
ヘルノデアリマス、ソレデ此ノ程度ノ增稅
デ外ノ手段ヲ併用致スナラバ心配ハ要ラナ
イト云フ御見地カラ、明年度ニ御提案ニナ
ル稅制改正ニ對シテハ增收ノ意味ヲ含メナ
イ所ノ、卽チ負擔均衡ノ意味ニ止メル所ノ
改正ヲナサルト云フ御考デアルカ、ソレヲ
改メテ伺ヒ、ソレニ伴フ質問ヲ續イテ申シ
テ見タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=16
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017・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 單ニ負擔ノ均衡ヲ圖ル、
又複雜化シタ稅制ヲ整理スルト云フコトデ
アルナラバ、是ハ或ハ此ノ際ノ問題トシナ
クテモ宜イノデハアルマイカト私ハ思ツテ
居ルノデゴザイマス、隨テ此ノ稅制ノ改正
ヲヤリ、根本的ノ整理ヲヤリ、一般的ノ改
正ヲヤルト云フコトニ付テハ、今日ノ財政
ニ應ズル所ノ稅制ノ計畫ヲ立テル、斯ウ申
上ゲテ居ル次第デアリマスガ、劃期的ナ大
增稅ヲ含ムカドウカト云フコトニ付キマシ
テハ、是ハ今日カラ申上ゲル譯ニハイカナ
イ斯ウ申上ゲタ次第デアリマシテ、事·
昭和十五年度ノ問題デアリマスノデ、昭和
十五年度ノ其ノ當時ニ於ケル所ノ經濟狀
泥又財政ノ振合ト云フモノヲ能ク考ヘマ
セヌケレバ、今日カラ必ズ劃期的ノ增稅ヲ
行ツテ見セルゾ、斯ウ云フ譯ニハ中々行カ
ヌト思フノデアリマス、又何處ノ國デモツ
レヲ議會ニ提案スル一年前カラ大藏大臣ガ
大增稅ヲ行フゾト言ツテ威カシテ居ルヤウ
ナ-威カスト申シテハ語弊ガゴザイマス
ガ、增稅ヲ行フゾト云フヤウナ聲明ヲ致シ
テ居ルモノハナイト思フノデアリマシテ、
ソレガドノ程度ノ增收ニナツテ來テドノ程
度ノ增ニナツテ來ルカト云フコトハ、是ハ
今暫ク御待チヲ願ヒマセヌトイカヌノデハ
ナイカト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=17
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018・武田徳三郎
○武田委員 洵ニ御尤ナ次第デアリマシテ、
國務大臣ト致サレマシテ劃期的ノ大增稅ヲ
ヤルゾト言ツテオ威シニナルト云フヤウナ
コトノ出來ナイコトハ御尤ノ次第デアリマ
セウ、併シナガラ此ノ割期的トカ何トカ云
フコトハ是ハ一種ノ形容詞デアリマシテ、
ドノ位ノ增稅ガ普通ノ增稅デ、ドノ位ハ劃
期的ダト云フコトハ云ヘナイト思フ、ソレ
ハ言葉ノ爭ニ過ギナイノデアリマスガ、大
藏大臣ガ稅制ヲ整理スル方針ノ一ツトシテ
增收ヲ其ノ改正ノ一ツノ目標ニスルト云フ
コトヲ御聲明ニナツタカラト云ツテ、ソレ
ガ民心ニ非常ナ不安ヲ與ヘ、國民ヲ威嚇ス
ルト云フコトニハ相成ラヌト私ハ考ヘマス、
是ハ方針ノ問題デアツテハサウ云フコトハ
豫メ方針ノ上ニ於テ明ニナサル方ガ宜イノ
デハナイカト寧ロ私ハサウ思ヒマス、現
ニサウ云フ實例ハ屢〓アツタノデアリマス、
廣田內閣ノ當時大藏大臣ハ稅制整理ノ方針
ノ一ツトシテ增收-ドウ云フ言葉デアリ
マシタカ、要スルニ增收的ノ稅制改革ヲヤ
ルト云フコトヲ初カラ標榜シテ居ラレタノ
デアリマス、併シ其ノ爲ニ却テ一般實業界
ノ人ハ其ノ增稅ガ-其ノ當時ハ所謂準戰
時體制ト言ハレタ時デアリマシテ、此ノ準
戰時體制ノ時ニ寧ロ若干ノ增稅ハ已ムヲ得
ナイト云フ心構ヘヲ以テ其ノ增稅案ニ對シ
タト私ハ信ジテ居リマス、默ツテ拔打的ニ
ヤルヨリハ方針ヲ明ニ御示シニナツテ居
ル方ガ寧ロ私ハ宜イノデハナイカト思フノ
デアリマス、今ノ御話カラ見ルト、餘リ增
稅ヲスルト云フコトヲ言ツテハ却テ不安ヲ
與ヘル虞ガアルカラ言ハヌノダト云フ風ニ
モ取レマスノデ、ドウモソコハ一ツ大藏大
臣カラハツキリシテ戴カヌト却テ不安ヲ與
ヘル原因ニナルノデハナイカト思フ、一四
ニ於テ今ノ御話カラ承ルト、單ニ負擔ノ公
平ヲ圖ルト云フ意味ダケノ稅制ノ改正ナラ
バ、敢テ此ノ際ヤラヌデモ宜イノダ、此ノ
際稅制ノ改正ヲヤルノニハソコニ稅ヲ取リ
易クスル、增稅ヲシ易クスルト云フ意味ガ
含マレテ居ルノダト云フ御答辯ガアリマシ
タ、私モ洵ニサウナケレバナラヌト思フ、
私ハ稅制改正ノ根本ノ主義ハソコニナケレ
バナラヌト思フ、其ノ點ヘ大藏大臣ト全然同
一ノ意見ヲ持ツテ居ルノデアリマス、ソレナ
ラバ來ルベキ稅制整理ノ方針ノ此ノ頃御示
シニナツタ四條件ノ外ニ增收的稅制整理ヲヤ
ルト云フコトヲ此ノ際御言明ニナツテ差支
ナイノデハナイカト私ハ思フノデアリマス、
況ヤ私ノ考ヘル所ニ依リマスト-或ハ調
査ガ違ツテ居ルカモ知レマセヌガ、若シ違
ツテ居リマシタラ主稅局長カラ御訂正願ヒ
タイノデアリマスガ、私ノ考ヘマシタ所ニ
依リマスト、日支事變ノ前年卽チ昭和十一
年度ト本年度トヲ比較致シテ見マスト成程
絕對額カラ申シマスルト相當ニ增稅ニナツ
テ居リマス、租稅額ニ於テ約三割程增加シ
テ居ルト私ノ計算ハナツテ居リマス、併シ
其ノ稅額ガ國民ニ對シテ多イカ少イカト云
フコトハ、唯稅額ノ絕對數デ之ヲ決スルコ
トハ出來スト思フノデアリマス、ドウシテ
モ其ノ稅額ガ多イカ少イカト云フコトハ國
民ノ所得ニ比例シテ見ナケレバナラヌト思
フノデアリマス、唯不幸ニシテ我國ノ國民
所得ニ付テノ官廳ノ統計ハ、御承知ノ通リ
ニ昭和五年以來ハ發表サレテ居リマセヌ、
ケレドモ各種ノ其ノ道ノ統計學者ガ色々ナ
方法ニ依ツテ世ノ中ニ發表シテ居ルモノガ
相當ニアルノデアリマス、又昭和五年ヲ基
本ト致シマシテ、經濟界ノ景氣指標ヲ採ツ
テ見マスレバ、大體ニ於テ本年度若クハ明
年度ノ國民所得ハドノ位ノ程度ニアルカト
云フコトヲ推測スルコトハ必ズシモ困難デ
ハナイノデアリマス、私ハ土方博士其ノ他
二三ノ國民所得ノ計算ノ意見ノ發表サレタ
モノヲ比較シテ見マシテ、結局土方博士ノ
計算ガ比較的信賴スルニ足ルト思ヒマスガ、
ソレニ依リマスルト、十三年度ニ於テ國民
所得ガ凡ソ二百二十億圓位ニ上ツテ居ルト
云フ計算ニナルノデアリマス、其ノ數字ノ
如何ハ姑ク保留致シマシテモ、大體二百億
圓程度デアルト云フコトニ對シテハ何レノ
學者ノ計算モ一致シテ居リマス、共ノ計算
ト致シマスト、昭和十一年度ニ於テハ百六
十億位ニナツテ居リマス、昭和十三年度ニ
於テ二百億ト致シテ居リマス、其ノ所得ニ對
シテ國民ノ負擔ノ割合ヲ考ヘテ見マスト、昭
和十一年度ニ於テハ一一·五%ニナツテ居ル、
又十三年度ニ於テハ一〇%餘リニナツテ居
ルノデアリマシテ、國民ノ負擔ハ寧ロ十一年
度卽チ戰爭前ヨリハ今日ハ輕減サレテ居ル
事實デアリマス、是ハ洵ニ日本國民ノ生產
力ノ增加ガ如何ニモ堅實デアリ、强靱デア
ルカヲ證明スルモノデアリマシテ、私ノ今
作リマシタ數字ニ多少ノ相違ガアツタト致
シマシテモ、大體ニ於テ戰爭前ノ國民ノ租
稅ノ負擔ト所得ノ割合ハ本年度卽チ十三年
度ハ負擔ガ輕クナツテ居ルト云フ事實ダケ
ハ御認メ下サツテ間違ヒナイト私ハ考ヘマ
ス、然ルニ所謂劃期的ト申シマスカ、歷史
ノ轉換ヲ齎ラスヤウナ此ノ大事件ニ吾々ハ
ブツカツテドンナ困難ヲ冒シテモ之ヲ突破
シナケレバナラヌト云フ覺悟ヲ國民ガ持ツ
テ居ル今日ニ際シマシテ、戰爭前ヨリハ輕
イ負擔ニ吾々ガ甘ンジテ居ル、ソレデ宜シ
イト云フ理窟ハ私ハ道義的ニ考ヘテ見テモ、
又租稅論上カラ考ヘテ見テモアルベキ筈ハ
ナイト思フ、旣ニ大藏大臣ハ租稅ノ手段ニ
依ツテ國民ノ購買力ヲ抑制スルコトハ極メ
テ必要デアルト云フコトヲ御認識ニナツタ
以上ハ、此ノ國民負擔ガ相當輕イ程度ニ今
日ハナツテ居ルト云フコトハ數字ノ上ニ於
テ大體明ニナルト云フ私ノ主張ヲ御認メ下
サルナラバ、來ルベキ稅制改正ニ於テハ其ノ
方針ノ一箇條トシテ增收ヲ目的トスル稅制
改正ヲヤルノダト云フコトヲ今日御言明ニ
ナツテ、國民ヲシテ豫メ向フ所ヲ知ラシム
ルト云フコトガ寧ロ必要デハナイカト思ヒ
マスガ、其ノ點一ツ大藏大臣ノ御意向ヲ伺
ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=18
-
019・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 此ノ前一昨々年デアリマ
スカ、馬場大藏大臣ノ時分ニ於キマシテモ、
財政ノ基礎ヲ鞏固ニスル彈力性ノアル稅制
ニシタイ、斯ウ云フコトヲ馬場大藏大臣ガ
申サレタト思フノデアリマシテ、其ノ時
ニモ大增稅ヲ行フト云フコトヲ私ハ標榜サレ
タト云フコトハナイト思フノデアリマス、ソレ
ハ何レニ致シテモ宜シウゴザイマスガ、今日
ノ時勢デアリマスノデ、ドノ程度デアルカト
云フコトハ別トシテ、增收ヲ考ヘツツ、今日
ノ場合此ノ稅制ノ改正ヲ行フト云フコトハ當
然ダト私ハ思ツテ居ルモノデゴザイマス、
先般來彈力性ノアル稅制ニシタイト云フコ
トヲ申上ゲテ居ルノデゴザイマシテ、國民
ノ所得ノ增加等ニ連レテ、或ハ稅率ヲ引上
ゲ、或ハ稅率ヲ引上ゲナイデ、自然ニ收入
ノ入ツテ來ル、サウ云フ稅制ヲ考ヘテ居ル
ト云フコトヲ申上ゲタ次第デアリマス、サ
ウ云フ風ニウマク行クカドウカト云フコ
トニ付キマシテハ玆デ今ノ所申上ゲ兼ネル
ノデアリマスガ、サウ云フコトニシタイト
考ヘテ居ルト申上ゲタ次第デゴザイマス、玆
ニ武田サンノ御尋ハモウ一ツ增收ト云フコ
トヲ加ヘロ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、
ソコノ所ハ强イテ申上ゲナクトモ宜シイノ
デハアルマイカト思ツテ居ル次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=19
-
020・川崎克
○川崎委員長 武田君此ノ程度デオ止メ置
キ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=20
-
021・武田徳三郎
○武田委員 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=21
-
022・川崎克
○川崎委員長 ソレデハ午後四時カラ開會
スルコトニシテ、是デ休憩致シマス
午後零時三十分休憩
午後四時五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=22
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023・川崎克
○川崎委員長 開會致シマス-武田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=23
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024・武田徳三郎
○武田委員 午前中私ハ稅制改正ニ對シテ
增收ノ意味ヲ含メル改正ヲ致ス御意思ガナ
イカト云フコトヲ大藏大臣ニ御尋申シタノ
デアリマスガ、稍〓私ノ希望ニ副フヤウナ
御答辯ヲ得タノデアリマス、卽チ增稅ヲ考
慮シツツ改正案ヲ出シタイト云フ意味ノ御
答辯デアリマシテ、大體ソレデ滿足ヲ致シ
やく、就キマシテハ其ノ增收ノ目安ヲドレ
程ニ御決メニナルノデアリマスカ、是ハ今
マデ色々論議サレテ居ル所ヲ見マスト、公
債ノ發行額ヲ目的トシテ其ノ何割ト云フヤ
ウナ意味デ考ヘル考ヘ方モアルト思ヒマス
ガ、又全體ノ一ツニ對シテドノ位ナ步合ガ
相當デアラウカト云フ風ナ考ヘ方モアルト
思ヒマス、ソレカラ又私ガ先程申上ゲタヤ
ウニ國民ノ所得ヲ標準トシテ、其ノドノ位
ノ步合ト云フヤウナ所へ見當ヲ置クト云フ
考へ方モアラウト思フノデアリマス、ドレ
ダケ增收スルカト云フヤウナコトハ勿論今
日伺フベキ筋デモナシ、御成案ガアルマデ
ハサウ云フコトヲ決定スベキ筋合デナイコ
トハ十分承知シテ居リマスガ、如何ナルコ
トヲ目標トシテヤルカト云フコトハ、是ハ
旣ニ增收ヲ考慮シツツ稅制ノ改正ニ從フト
云フ御決心デアル以上ハ、ソレ等ノコトノ
御考モ付イテ居リマセウシ、又稅制ノ方針
トカ方向トカ云フコトヲ承ル上ニ於テハ
應之ヲ承ツテ見タイト思フノデアリマス
ソレカラ先程私ノ指摘シテ申上ゲマシタ
國民所得ノ數字ノコトデアリマスガ、政府
カラ戴キマシタ參考資料ニ依リマスト、昭
和五年以後ノ國民所得ハ不明デアルト云フ
コトニナツテ、是ハ參考資料ニ御示シニナ
ツテ居ラヌノデアリマス、併シ私ハ此ノ增
收ノ目標ヲ何レニ置クニ致シマシテモ、ド
ウシテモ此ノ國民ノ利害ニ重大ナ關係ノア
ル增稅ト云フコトニ對シテハ、何レニシテ
モ國民所得ト云フコトヲ考慮ニ入レズシテ
ハ增收的ノ意味ノ稅制ト云フコトハ私ハ立
テ得ナイノデハナイカト思フノデアリマス、
ソレデ何レ政府デ確定的ノ國民所得ト云フ
モノハ世ノ中ニ發表サレテ居リマセヌカ
ラ、隨テ吾々ノ御願シタ參考資料ニハ不明
ト云フコトデアリマセウケレドモ、大藏省
ト致サレマシテハ大體此ノ國民所得ハドノ
位ノ程度ニナツテ居ルカト云フコトハ約ソ
御腹案ガアラウト思フノデアリマス、此ノ
御腹案ナシニ濫ニ增收的ノ稅制ヲ御立テニ
ナルト云フヤウナコトハアルマイト私ハ考
ヘマス、今其ノ御腹案ヲ强ヒテ御發表願ヒ
タイトハ申シマセヌ、若シソレヲ御發表願
ヘルナラバ仕合セデアリマスシ、御發表願
ヘヌナラバ、私ノ先刻申上ゲタ數字ヲ全的
ニ御肯定ニナル、ナラヌハ別問題トシテ、
大體其ノ位ノモノデアルトカ、又大藏省ノ
腹案トハ非常ナ相違ガアリマスルナラバ、
アルト云フ程度デ宜シイカラ、其ノ點ヲ
ツ御質問致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=24
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025・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 稅制改正ニ當リマシテ增
收ノ目安ト云フモノヲ何處ニ置クカ、斯ウ
云フ御尋ニ付キマシテハ、今日ノ所御答致
シ兼ネルト思フノデアリマス、一面ニ於キ
マシテハ增稅ノ問題ハ財政ノ都合モ考ヘザ
ルヲ得ナイト思フノデアリマスルガ、財政
ノ都合ハ勿論之ヲ考ヘル上ノ大キナ要件デ
ゴザイマスルト同時ニ之ヲ行ヒマスル所
ノ當時ノ經濟狀況ト云フモノモ亦加ヘテ考
ヘザルヲ得ナイト思フノデアリマス、此ノ
經濟狀況ヲ考ヘルト云フコトハ、結局武田
サンノ仰シヤル國民所得ト云フコトニ關聯
致シテ來ル問題デアルト思フノデアリマシ
テ、國民所得ノ增加シツツアリマスル場合
ニ於テハ、增稅ハ致シ易イノデアリマス、
國民所得ノ增加シテ居ナイ場合ニハ非常ニ
ヤリニクイト云フコトハ、是ハ最近ノ事例
ニシマシテモ、昭和九年當時ニ於テ三千万
圓ノ臨時利得稅ガ世ノ中ニ非常ナ「シヨック」
ヲ與ヘタコトカラ考ヘマシテモ、十分肯ケ
ルコトデゴザイマシテ、是等ハ何レモ國民
所得ノ問題ト相關聯致シテ居ル問題デアル
ト存ジマス、英吉利ニ於キマシテモ今年ハ
非常ナ豫算ノ增大ヲ見テ居ルノデゴザイマ
スガ、昨年ハ非常ニ多額ノ增稅ヲ致シタ、
併シ今年ハ今日ノ所略〓、公債ニ依ツテヤルト
云フヤウナコトガ新聞ニ見エテ居リマス、
ドノ程度ヲ公債デヤリ、ドノ程度ヲ增稅デ
ヤルカト云フコトハ、是ハヤハリ其ノ當時
ノ財政經濟、各般ノ情勢カラ考ヘテ見ル必
要ガアルト思ツテ居リマスガ、大體ニ於キ
マシテ今日ニ於テ行ハルベキ所ノ稅制改正
ハ、勢ヒ增收ニ相成ル、增收ヲ相當含ンデ
ヤルト云フコトハ是ハ豫想サレル所デアル
ト存ジマス
先程武田サンノ仰シヤル國民所得ト稅ノ
割合ノ問題デゴザイマスガ、昭和五年ニ國
民所得ヲ發表致シマシタノデアリマス、ソ
レカラ昭和十年ニ簡單ナ行キ方デモウ一度
國民所得ノ調査ヲシタノデゴザイマスガ、
此ノ昭和十年ノ國民所得ノ調査ノ結果ハ、
其ノ發表ガ偶〓支那事變ニ際會致シマシタノ
デ、是ハ此ノ際日本ノ國民所得ガ如何ナル
構成カラ出來テ居ツテ、ドウ云フ風ニ分布サ
レテ居ルカト云フコトヲ一般ニ公表致スコ
トハ止メタ方ガ宜シイ、斯ウ云フコトカラ
致シマシテ、昭和十年ニ調査致シマシタモ
ノハ今日發表シテゴザイマセヌ、其ノ後ハ
國民所得ノ調査ト云フモノハ國トシテハ致
シテ居ラナイノデアリマス、尤モ國民所得
ノ調査ノ仕方ガ、統計局デヤツテ居リマス
モノハ客觀的ナ調査ノ仕方デゴザイマシテ、
主觀的ニ各人ノ所得ヲ合計シテ行クト云フ
ヤウナ行キ方ト、客觀的ニ物ノ方カラ見タ
國民所得ノ合計額トハ一致スベキ筈デアリ
マスケレドモ、是ハ容易ニ一致シナイ問題
デゴザイマス、主稅局ニ於キマシテモ每年所
得稅ノ數字カラ國民所得ヲ推計シテ居ルモ
ノガゴザイマスガ、是モサウ正確デアルト
云フ自信ハゴザイマセヌノデ、實ハ發表シ
テゴザイマセヌ、今武田サンカラ御話ニナ
リマシタ國民所得其ノ儘ヲ是認スルカドウ
カト云フコトハ、御尋ニ相成ツテ居ナイコ
トデアリマスガ、併シナガラ此ノ增稅ヲ旣
ニ戰後ニ於テ六億圓行ツテ、サウシテ二十
一億圓ニ今日ノ稅收入ガ達シテ居リマス
際國民所得ニ於キマシテモ相當增加シテ
居ルトハ存ジマスケレドモ、私共ノ方ノ計
算致シマシタ所デハ、ヤハリ國民全所得ニ
對スル稅ノ負擔ト云フモノハ、此ノ一二年
漸次增加致シテ居ルノデゴザイマシテ、此
ノ點武田サンノ御示シノ國民所得ト稅收入
トノ關係カラ考ヘマシタヨリハ增シテ居
ルヤウニト思フノデアリマス、併シ是ハ必
シモ主稅局ノ調査ガ正確デアルトハ私ハ申
シマセヌ、隨テアナタノ御計算ノ數字モ承
ツテ置キマス、其ノ通リダト云フコトハ、
此ノ計算ノ仕方ガ非常ニ困難デアリマスノ
デ、何レニシテモ言ヘマセヌガ、サウ云フ
コトデゴザイマスノデ御諒承ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=25
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026・武田徳三郎
○武田委員 大體大藏大臣ノ御答辯ハ諒承
致シマシタガ、旣ニ國民所得ヲ御調査ニナ
ツテ、ソレヲ參考トスルト云フ御意思デア
ル以上ハ、私ノ方ト大體ニ於テ一致スルモ
ノト存ジマス、而シテ尙ホ先程申上ゲマシタ
私ノ考ヘテ居リマス國民所得ノ增加ヨリ、尙ホ
大藏省ノ大體ノ御調査ガソレ以上デアルト
云フ御話ノヤウニ承リマシタガ、サウ致シマス
ナラバ國民所得ノ多クナルコトハ、多々益々
結構ナコトナンデアリマシテ、國民所得ガ多
ケレバ多イ程、增收的ノ稅制ヲ立テテ宜シ
イト云フ結論ニ當然ナル譯デアリマスカラ、
愈〓以テ國ト致シマシテハ結構ナコトダト考
ヘルノデアリマス、次ニ來ルベキ稅制ノ改
正ニ伴ツテ、一ツノ御方針ヲ伺ヒタイコト
ハ、大藏大臣ノ御話ノ中ニハ負擔ノ均衡ト
云フコトニ餘程重點ヲ置イタト云フ意味ノ御
話ニナツテ居リマス、是ハ勿論國民ガ國家
ノ爲ニ負擔ヲ致スノヲ、成ベク其ノ重サヲ
均シクシヨウト云フ趣旨ニハ、異論ノアラ
ウ筈ハナイノデアリマス、唯問題ハ其ノ點
ニ重キヲ置クカ、或ハ大臣ガ第二ノ條件ト
シテ言ハレマシタ產業政策ニ卽應スル點ニ
重キヲ置クカト云フコトガ問題デアルノデ
アリマス、一體私ノ見ル所ヲ以テ致シマス
レバ、根本的ノ稅制整理ト云フヤウナ言葉
ガ頻ニ使ハレテ居リマスガ、私ハ實ハ其ノ
點ニ付テハ諒解ニ苦ンデ居ルノデアリマス、
根本的ノ稅制整理ト云フ言葉ヲ好ンデ使ハ
レル諸君ノ御所論ヲ冷靜ニ見マスト、所謂
自由主義經濟ノ觀念カラ出テ居ルヤウニ思
フノデアリマス、併シ理窟上ノコトハ何レ
ニ致シマシテモ、私ハ稅制ガ不均一デモ宜
シイト申ス意味デハナク、稅制ノ負擔ノ均
衡ハ勿論望ム所デゴザイマスケレドモ、私
ハ稅制ノ方針ハ其ノ社會、其ノ時代ノ客觀
的情勢ノ如何ニ依ツテ變化スルモノト思フ
ノデアリマス、所謂自由主義經濟ノ人々ノ
考ヘテ居ルヤウニ、經濟上ノ問題ニハ萬古
動カスベカラザル鐵則ガアルカノ如クニ考
ヘルノハ、元來間違ツテ居ルノデハナイカ、
他ノ物理上ノ間題、化學上ノ問題ニハ萬古
不易ノ鐵則モアリマセウケレドモ、稅ノヤ
ウナ、人間ノ經濟ハ申スマデモナク私ハ
ツノ生キ物ダト思フノデアリマス、隨テ環
境ノ變化ニ依ツテ、其ノ客觀的情勢ハ絕エ
ズ變ツテ行クノデアリマスカラ、其ノ客觀
的情勢ノ變化ニ卽應シタル稅制ヲ立テルニ
アラザレバ、本當ノ社會的要求ニ應ズルコ
トハ出來ナイノデアラウト思ヒマスト今日
ノ客觀的情勢カラ最モ重要ナモノハ何デア
ルカト申シマスレバ、申スマデモナク7
ンフレ」ノ阻止ト生產力ノ擴張デアリマス、
私ハ此ノ方ニ負擔ノ均衡ヨリ寧ロ重點ヲ置
クベキモノデハナイカト思フノデアリマス、
私ノ此ノ考ニハ大藏大臣モ多分御同意ノコ
トト存ズルノデアリマス、今日御提案ニナ
ツタ案ヲ見マスト、ヤハリ私ノ希望シテ居
ルヤウニ出來テ居ルノデハナイカト思フ、
卽チ若シ負擔ノ均衡トカ、或ハ應能主義ト
云フコトデアリマスレバ、會社ノ利益ガ多
クナツテ、保留所得ガ多クナル場合ニハソ
レニ高率ノ稅ヲ課ス、是ハ當然デアル、負
擔均衡ノ趣旨カラ言ヘバ、サウナケレバナ
ラヌモノヲ、保留所得ヲ多クスレバ却テ稅
ヲ減ラサウト云フ稅制ハ、卽チ均衡主義ニ
アラズシテ、資金ノ增加竝ニ生產力擴充ノ
方ニ重キヲ置カレタ結果ト私ハ思フノデア
リマス、此ノヤリ方ニハ極メテ私ハ贊成ナ
ノデアリマス、今日ノ我國ノ情勢ト致シマ
ジテハ、負擔ノ均衡ヨリハ生產力ノ擴張竝
ニ「インフレ」ノ阻止ニ重キヲ置カナケレバ
ナラヌト云フ私ノ考ニ若シ御同意下サルト
致シマスレバ、私ハ少シク今後ノ稅制ニ付
テ了解ニ苦ム點ガアルノデアリマス、ソレ
ハ私豫算總會ノ際ニモ大臣ニ伺ツタノデア
リマスガ、卽チ第三種所得ノ中、配當課稅
ヲ綜合的ニ課稅スルコトハ、今日ノ生產力
擴充、資金ノ集積ノ上ニ面白カラザル結果
ニナリハスマイカト云フコトヲ〓念的ニ申
上ゲタノデアリマシタ、併シ大藏大臣ハ之
ニ對シマシテ、資金ヲ集メルコトハ必ズシモ
綜合課稅ノ爲ニ妨害サレルトハ思ハナイ、
會社ノ基礎ガ堅實デアレバ、資金ヲ集メル
コトニサウ困難デハナイ、斯ウ云フ御說明
デアリマシタ、成程資金ハ信用ノアル所ニ
集マルモノデアリマスカラ、幾ラ配當ヲ餘
計ニシテモ、其ノ會社ノ基礎ガ不安デアル
ナラバ、資金ノ集マラヌコトハ當然デアリ
さい、併シナガラ會社ノ信用程度ガ同一デ
アルト云フ前提ノ下ニ考ヘマスナラバ、利
益ノ多イ株ニ資金ガ集マルコトモ當然デア
リマス、又此ノ產業資金ガドノ位ノ程度ニ
利益ヲ得ルカト云フ問題ハ、ソレ自身デ考
ヘルコトハ出來ナイノデ、他ノ金融資金ト
ノ比較ノ上ニ於テ、ドチラガ優遇サレテ居
ルカト云フコトガ、是レ亦重大ナ「ポイン
さデアルト思フノデアリマス、ソレ故ニ
信用ノアル會社ナラバ、綜合デアツテモ差
支ナイト云フ結論ハ、ドウモ私ニハ首肯出
來テイノデアリマス、私ハ今日其ノ點ヲ一
ツ伺ツテ見タイノデアリマスガ、ソレニ付
テ私ハ一二ノ實例ヲ申上ゲテ見タイト思ヒ
やっ、今日株式ヲ最モ多ク持チ得ル人、又
現ニ持ツテ居ル人ハ如何ナル程度ノ人デア
ルカト申シマスレバ、大體ニ於テ全體ノ所
得金額二万圓或ハ三万圓以上カラ二十四五
万圓乃至五十万圓位ノ所得者ガ一番餘計株
ヲ持ツテ居ルノデアリマス、ソレ等ノ者ガ
其ノ受ケル配當所得ヲ綜合課稅サレル場合
ニ於テハ、非常ナ不利ノ狀態ニナルノデア
リマス、所得ノ五千圓ヤ一万圓位ノ程度デ
ハ非常ナ不利ナ狀態ニハアリマセヌケレド
モ、現狀ニ於テ最モ多ク持ツテ居ルト認メ
ラレル二三万圓乃至五十万圓位ナ人ガ株式
ヲ持ツコトニナルト、資產上非常ニ不利ナ
結果ニナルノデアリマス、私ガ東京株式取
引所デ取調ベタ表ニ、私自身ノ考案ヲ以テ
取捨シテ見タノデアリマスガ、先ヅ此ノタ
ビ國家總動員法第十一條ノ發動ノ結果、最
高ノ配當ヲ一割ニ御決メニナルト云フ話デ
アリマス、試ミニ最高ノ一割ヲ取ツテ考ヘ
テ見マシテモ、今日大體一割ノ配當ノ出來
ル堅實ナ會社デアルト致シマスルナラバ、
其ノ株式ノ時價ハ七十圓位ガ相當デアラウ
ト思フ、左樣ニ考ヘテ見マスルト私ノ計算
シタ結果ガドウナルカ、二万圓ノ所得者ガ
其ノ中一万圓ヲ株式ニ投ジタト致シマスル
ト、株式ニ對シテ稅拔キノ利廻ガ五分六厘
ニシカ當ラナイノデアリマス、三万圓ノ者
ハ五分三厘ニシカ當ラヌノデアリマス、十
万圓ノ者ハ四分八厘ニシカ當ラヌノデアリ
マス、二十五万圓ノ者ガ一万圓ノ株式ヲ持
ツタト致シマスト四分ニシカ當ラヌノデア
リマス、五十万圓ノ所得者ガ株式ヲ一万圓
持ツト致シマスト-一万圓デモ二万圓デ
モ同ジデアリマスガ、三分五厘ニシカ當ラ
ヌノデアリマス、斯樣ナ低利廻ヲ以テ、此
ノ生產擴張ノ最モ急ヲ要スル今日ニ於テ、
資金ヲ「スムーズ」ニ集メルコトハ極メテ困
難デハナイカト思フノデアリマス、生產力
擴張ニ重點ヲ置イテ此ノ改正案ガ出夕場合
ニ、只今申上ゲルヤウナ保留所得ニ向ツテ
「スライヂング·スケール」ヲ以テ稅ヲ減ズ
ルコトハ、ヤリ方ハ結構ナコトト思ヒマス
ガ、其ノ趣旨ヲ何故ニ此ノ配當課稅ニ御適
用ニナラナイノデアルカ、私ハ之ヲ疑フノ
デアリマス、要スルニ私ノ伺ハントスル所
ハ、負擔均衡ノ原則ヲ無視セヨトモ言ハズ、
ソレヲ輕ク見テ宜イトモ申サヌケレドモ、
今日ノ我國ノ客觀的情勢カラ見マシテ、此
ノ原則ト、生產力擴張ニ資スルヤウナ稅制
ヲ立テナケレバナラヌト云フ原則ト、ドチ
ラニ重キヲオ置キニナルカ、多分大藏大臣
ハドチラニモ重キヲ置クト仰シヤルカモ知
レマセヌガ、若シ其ノ兩原則ガ衝突シタヤ
ウナ場合ニハ、何レニ團扇ヲ御擧ゲニナル
カ、斯ウ云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、
今私ガ實例ヲ擧ゲテ申シマシタヤウナ配當
課稅ニ取ツテ、之ヲ綜合ニセズ何等カノ方
法ヲ御執リニナラナカツタト云フコトハド
ウ云フ譯デアルカ、又此ノ度ノ增稅案ニ對
シテ、ソレガ此ノ際ハ入ラナカツタト假ニ
致シマシテモ、將來ニ來ルベキ稅制改正ノ
場合ニ於テ私ノ今申上ゲタ事柄ニ付テ相當
御考慮ニナル御考デアルカドウカ、此ノ事
モ伺ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=26
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027・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 稅制ノ改正ヲ行フ場合ニ
負擔ノ均衡ニ重キヲ置クカ、產業政策ニ重
キヲ置クカ、斯ウ云フ御尋デアリマス、此
ノ前モ豫算總會ニ於テサウ云フ御尋ヲ受ケ
タノデゴザイマスガ、色々武田サンノ御議
論モゴザイマスガ、私ハ稅制ノ改正ヲ行ヒ
マス場合ニ於テハヤハリ負擔ノ均衡ト云フ
コトガ主タル流レデアルト思フノデゴザイ
そう、產業政策ト負擔ノ均衡ト衝突シタ場
合ニハドウスルカ、斯ウ云フ御尋デアリマ
スガ、負擔ノ均衡ヲ本ニシマシテ、今日ノ
產業政策ニ矛盾シナイヤウニ負擔ノ均衡ヲ
或ル程度修正シテ行ク必要ガアル、斯ウ考
ヘテ居ルノデゴザイマシテ、稅制ト致シマ
シテハ負擔ノ均衡ニ重キヲ置クベキモノデ
アルト云フ私ノ考ハ變ラヌノデゴザイマス
根本的整理ト云フ言葉ガ惡イト仰シヤイマ
スガ、私モ實ハ其ノ點ハ御同感デゴザイマ
ス、根本的ト云フ言葉ハ私モ出來ルダケ用
ヒナイヤウニシテ居ルノデアリマス、根本
的ト云フコトハ是ハ實ハ一寸分ラナイ言葉
デアリマシテ、ドコカラドコマデガ根本的
デ、ドコカラドコマデガ根本的デナイカト
云フコトハ中々分ラナイト思フノデゴザイ
きく、私モ出來ルダケ根本的ノ整理ト云フ
言葉ヲ用ヒナイヤウニシテ居ルノデゴザイ
マスガ、御尋ノ方ガ根本的整理、根本的整
理ト仰シヤルモノデスカラ、私モツイ根本
的整理ト申上ゲテ居ルヤウナ次第デゴザイ
マシテ、寧ロ一般的整理、一般的ニ國及ビ
地方ヲ通ジテ整理スル、改正ヲスルト申上
ゲタ方ガ宜イカト思フノデゴザイマス
ソレカラ第三種ノ所得稅ノ問題デゴザイ
マスガ、第三種ノ所得稅ニ株式ノ配當ヲ綜
合致シテ居ルガ、株式ノ綜合課稅ニ付テド
ウ考ヘルカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマス、
是ハ今日午前中ニモ御答致シタト思フノデ
ゴザイマスガ、大正九年ニ配當ヲ個人ニ綜
合致シマシテ今日ニ至ツテ居ルノデアリマ
スガ、株式ノ配當綜合課稅ヲ止メテ源泉課
稅ニ移スト云フコト私ハ非常ニ不合理ダト
思フノデゴザイマス、是ハ例ヘバ今日日本
ノ一二ト呼バレテ居リマスヤウテ所得者、
三百万圓モ四百万圓モアル所得者ガ、株式
ヲ綜合致サナケレバ三万圓トカ五万圓トカ
ノ所得ニ相成ツテシマフ譯デアリマシテ、
是等ノ人々ガ此ノ株式ノ配當ノ合課稅ヲ受
ケナイト云フコトハ私ハ不合理ダト思フノ
デアリマス、大所得者ノ六割ナリ七割ナリ
或ハ八九割マデ占メル所ノ株式配當ヲ綜合
課稅カラ落シテシマツタノデハ、是ハ所得
稅ノ最モ特徴ト致シテ居ル所ノ綜合課稅ノ
實ガ實際的ニ失ハレルト思フノデゴザイマ
シテ、株式配當ノ綜合課稅ト云フコトヲ全
然止メルト云フ考ハ毛頭持ツテ居リマセヌ
唯、今御尋ノ點デゴザイマスガ、株式ト社債
公債トノ割合ガドウデアルカ、一割ノ配當
ヲ受ケテ居ル人ガ多額ノ所得者ニナツテ行
クト、高率ノ課稅ヲ受ケ、配當ノ利益率ガ
減ツテ來テ、持チタガラナイト云フ結果ヲ
生ズル、斯ウ云フコトデゴザイマスガ、ソ
レハ私ハ仰セノヤウナコトノアルコトハ別
段否認ハ致シマセヌガ、ソレデハ今日十万
圓以上ノ所得者ニ幾ラ位ノ株式ガ集ツテ居
ルカト云ヘバ、全株式配當ノ一割八分ガ十
万圓以上ノ所得者ノ持ツテ居ルモノデアリ
マシテ、之ヲ株式全體カラ行キマスレバ八
割以上ノモノハ其ノ他ノ者ガ持ツテ居ル譯
デアリマス、ソレデアリマスカラ其ノ人達
ニハ聊カ不利ニ相成ツテ居リマシテモ、日
本ノ國全體トシテノ會社ガ進ンデ行ク所ノ
道ニハサウ大シテ妨ゲニ相成ツテ居ルモノ
トハ考ヘナイノデゴザイマス、仰シヤルヤ
ウニ大所得者ガ株式ヲ持ツ所ノ傾向ガ幾分
鈍ツタ所デ、又鈍ルベキ傾向ニアルト思フ
ノデアリマスガ、併シ實際問題トシテハ私
ハサウ鈍ツテハ居ラヌト思フノデアリマス、
縱シヤ多少鈍リマシテモ、產業全體ノコト
ヲ考ヘマスレバ、サウ大シテ心配致スコト
ハアルマイト考ヘテ居ル次第デゴザイマス
純理論カラ行キマスレバ仰セノ通リデア
リマスガ、併シナガラ株式ハ必ズシモ
五分五厘ノ利廻、六分ノ利廻デ市場カラソ
レヲ取得スルモノバカリデモゴザイマ
セヌ、寧口大キナ所得者ノ持ツテ居リマス
モノハ市場カラ買ハズニ、其ノ拂込ニ依ツ
テ配當ヲ受ケルヤウナモノモアルノデアリ
マシテ、全體カラ引括メテ考ヘマスレバ、
世ノ中デ計算シテ居ル程不利ナモノトハ
考ヘテ居リマセス、併シナガラ此ノ點ニ付
テ考究スル必要ハアルト存ジテ居ルノデア
リマス、第三種所得ノ株式ノ配當、卽チ八
割課稅ト云フコトガ適當デアルカ、又ハ借
金ノ利子ヲ引イテ全額ヲ課稅スルコトガ適
當デアルカ、又今日非課稅ニ相成ツテ居ル
所ノ配當ノ受領者、卽チ免稅點以下ノ人々
モ社債、公債ト同樣ニ或ル程度ノ負擔ヲシ
テ差支ナイノデアラウカドウカ、斯ウ云フ
コトニ付テハ相當考究致シテ見ル必要ガア
ルト存ジテ居リマス、必ズシモ今日ノ所得
稅ノヤリ方ガ宜イトハ考ヘテ居リマセヌ、
其ノ點ニ付キマシテハ十分考究スル積リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=27
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028・武田徳三郎
○武田委員 其ノ點ハ其ノ程度デ諒承致シ
テ置キマス、私ハ議論ト致シマシテハマダ
承服致シ兼ネル點ガアリマスケレドモ、是
ハ意見ノ相違デアリマスカラシテ次ノコト
ヲ伺ヒタイト思ヒマス、次ニ私ハ消費稅ノ
點ニ向ツテ如何ナル御腹案ヲ持ツテ居ルカ
ト云フコトヲ承リタイノデアリマス、石渡
大臣モ此ノ度ノ增稅ニ付テモ、又將來ノ增
收ヲ伴フ稅制改革等ニ付テモ、消費ヲ抑制
スルト云フコトニ相當重點ヲ置クト云フコ
トハ屢〓、仰セニナリ、又極メテ適切セルコ
トト思フノデアリマスガ、其ノ方法ト致シ
マシテハ直接稅ト云ヒマシテモ國民ノ消費
力ヲ抑制スルノ效力ハナイトハ私ハ申サヌ
ノデアリマス、況ンヤ先般來ノ中島君ノ質
問ニ對シテノ御答デアリマシタカ、所得稅
ノ國民化ト云フヤウナコトヲ實行シヨウト
云フヤウナ御計畫モアルヤウニ承リマシタ
カラ、必ズシモ消費ノ抑制ハ間接稅デナク
テハナラヌトハ私モ考ヘテ居リマセヌガ
今日ノ實情ト致シマシテ消費ノ抑制ヲ高所
得者ニノミ抑制ヲシタカラト云ツテ餘リ消
費ノ抑制ト云フコトニ向ツテハ效果的デナ
イト思フノデアリマス、大衆ノ消費力ヲ抑
制スルニアラズンバ物價ノ昂騰ヲ抑ヘル力
ハ極メテ薄インヂヤナイカト思フノデアリ
さく、サウ云フ點カラ申シマシテモ、私ハ
消費稅若クハ間接稅ニ力ヲ入レルト云フコ
トガ必要デナイカト、斯樣ニ考ヘマス、又
モウ一ツハ此ノ消費稅ニ重キヲ置クト云フ
コトハ、一面カラ見テハ經濟的ニ資金ヲ有
效ニ使フト云フ働キヲ爲スモノデナイカト
云フ私ハ考ヲ持ツテ居ルノデアリマス、卽
チ何十万、何百万ト云フ大衆ノ懷ニ一圓ヅ
ツヲ入レテ置イテモ、何等ノ働キヲ爲サヌ
併シナガラ是ハ僅カ零細ノ一圓ノ資金デモ
一万人ノ懷カラ政府ノ手ニ取上ゲテ一万圓
トシテ働カス場合ニ於テハ、其ノ金ノ働キ
ト云フモノハ國家全體ノ上カラ見テ非常ニ
大キナ働キヲスルモノデナイカト、斯樣ニ
考ヘマス、資金ノ働キノ力ヲ增スト云フ上
ニ於テモ相當間接稅ニ力ヲ入レルコトハ至
當デナイカト、斯ウ云フ風ニ私ハ考ヘルノ
デアリマス、而シテ又我國ノ現情ハ、從來
我國ノ稅制ノ缺陷トシテ世ノ中ニ强ク論ゼ
ラレテアル議論トシマシテハ、間接稅ニノ
ミ負擔ガ多クテ直接稅ト間接稅ノ割合ガ甚
ダ適當デナイ、或ハ四分六分デアルトカ、
或ハ七分三分デアルトカ云フコトデ、我國
ノ稅制ノ根本的ノ缺陷ハ間接稅消費稅ニ重
キヲ置イテ居ルト云フコトデ、是ハ社會政
策的ニ見テ甚ダ不合理ノ點デアルト云フコ
トハ從來屢〓論ゼラレテ殆ド常識ノヤウニナ
ツテ居ツタノデアリマス、然ルニ最近ノ情
勢ハ事實上大ナル變化ヲ示シテ居リマス、
順次ニ此ノ傾向ハ變ツテ來タノデアリマシ
タガ、日支事變以來稅制ノ改正ガ再三行ハ
レマシタ結果、昨年度ニ於キマシテハ寧ロ
間接稅ノ方ハ少ナクテツテ居ル傾向ヲ私ハ
見ルノデアリマス、私ノ計算ハ或ハ違ツテ
居ルカモ知レマセヌガ、私ノ計算致シマシ
タ所ニ依ルト大正十一年-度ニ於キマシテハ
直接稅ト認メラルベキモノハ約五億、之二
對シテ間接稅ト認メラレルモノハ七億二千
五百万圓以上ニナツテ、其ノ割合ガ直接稅
ノ百ニ對シテ間接稅ガ百四十五デアツタノ
デアリマス、ソレガ本年十三年度ニ於キマシテ
ハ、此ノ比率ガ非常ナ變化ヲ示シテ居リマス、
私ノ見ル所デハ、直接稅ト認メラレルモノ
ガ十一億八千五百万圓ニナツテ居ルノデア
リマス、間接稅ト認メラレルモノハ九億四千
四百万圓位ニナツテ居ルノデアリマス、是ハ
極ク大數ヲ申シタノデアリマス、此ノ比率
ヲ「パーセンテージ」デ申シマスト、直接稅
百ニ對シテ間接稅八十ト云フコトニナツテ、
著シク間接稅ガ輕イ傾向ヲ認メルノデアリ
マス、私ハ先程申上ゲマシタ間接稅ノ社會
經濟的ノ作用カラ考ヘマシテモ、又現實ニ
我國ノ直接稅ト間接稅トノ負擔關係カラ申
シマシテモ、此ノ稅制ノ改正ニ當リマシテ
ハ、此ノ點ニ向ツテ深ク御考慮ヲ加ヘラレ
テ然ルベキモノデハナイカ、私ハ間接稅ヲ
直接稅ヨリ非常ニ多クセヨト云フヤウナコ
トヲ申スノデハアリマセヌガ、幾ラ間接稅
ニ重キヲ置ク程度、又少クトモ間接稅ト直
接稅ト相半バスル位ノ程度ニハ改正ヲ加ヘ
ナケレバナラヌモノダト云フ風ニ私ハ考ヘ
ルノデアリマスルガ、此ノ點ニ向ツテ大藏
大臣ノ御意見ハ如何デアリマセウカ伺ヒタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=28
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029・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 消費稅ノ問題デゴザイマ
スルガ、消費稅ハ御承知ノ通リ、是ハ今御
話ノアツタヤウニ、「パーセンテージ」ノ上
カラ行キマスルト漸次少クナツテ來テ居リ
やっ、是ハ少クナツテ來テ居ルト申シマス
ルガ、實ハ皆樣方ニ此ノ兩三年御決議ヲ願
ツタ增稅案ト云フモノハ主トシテ直接稅ノ
增徵ニ重キヲ置イタモノデゴザイマスルカ
ラ、今日間接稅ノ率ガ著シク少クナツテ來テ
居ル、卽チ議會ニ於テ御協贊ヲ願ヒマシタ
增稅案ガ主トシテ直接稅ノ增徵ニ重キヲ置
イテ居ツタモノデゴザイマスカラ、斯ウ云
フコトニ相成ツテ居ルト存ズルノデゴザイ
マシテ、是ハ自然的ノ現象ト云フヨリモ寧
ロ此ノ兩三年來斯ウ云フコトニシテ來タト
斯ウ申シタ方ガ宜イノデハアルマイカト思
ツテ居ルノデゴザイマス、此ノ傾向ハ私ハ
惡イ傾向トハ存ジマセヌ、結局直接稅ガ主
ニナツテ國ノ金ガ賄ルヘカ、間接稅ガ主デ
國ノ金ガ賄ヘルカ、斯ウ云フコトハ先程御
說ノアリマシタ國民所得ノ階層ト云ヒマス
カ、段階ト云ヒマスカ、ソレニ依ルト思フノ
デゴザイマシテ、小所得者ガ-國民所得
ハ同ジク五十億ナリ百億ナリアルニシマシ
テモ、其ノ國民ノ所得ノ階層ガ非常ニ低
イ、斯ウ云フ國ニ於キマシテハ是ハ勢ヒ消
費稅ヲ以テ賄ハザルヲ得ナイト思フノデゴ
ザイマス、若シ其ノ國民所得ノ段階ガ比較
的高度デアリマスレバ、是ハ直接稅ヲ以テ
賄フ部分ガ餘計ニ相成ツテ來ル、斯ウ云フ
コトニナツテ來ルノデハアルマイカト思ツ
テ居ルノデゴザイマシテ、今日又各國ノ稅
收入ノ割合カラ考ヘマシテモ、比較的此ノ
國民所得ノ階層ノ高イ國ニ於キマシテハ直
接稅ノ收入ガ餘計ニ相成ツテ來テ居ルト思
フノデゴザイマス、我國ノ將來ノ稅ノ階級
トシマシテハ、今日地方稅ノ大部分ハ直接
稅デゴザイマス、其ノ他專賣益金等ノ間接
稅ニ當ルモノモゴザイマスルガ、是モ引ツ
括メマシテ、國民ノ全所得カラ考ヘテ、國
民ノ負擔ガ直接稅ニ多額デアルト云フコト
ハ、私ハ其ノ傾向ハ持續シタイト思ツテ居
ルノデゴザイマス、消費稅ニ付キマシテ
モ、是ハ間接的ニ個人ノ所得ヲ推定致シマ
ス一ツノ材料デゴザイマシテ、今日所得稅
ノ調査モ中々完全ニ行カナイモノデゴザイ
マスノデ、其ノ漏レタル所得ヲ斯ウ云フ方
面カラ補足スルト云フコトモ、是モ亦絕對
ニ必要ナモノダト思ツテ居ルノデゴザイマ
ス、ソレデ生活必需品ニ課稅致スコトハ是
ハ人頭稅ノヤウナコトニ相成ツテ來ルノデ
ゴザイマスカラ、是ハ出來ルダケ避ケナケ
レバイカヌト思フノデゴザイマスガ、其ノ
他ノ比較的生活ノ第二義的ナコトニ考ヘラ
レル物品ニ對スル消費稅ハ、是ハドウシテ
モ賦課シテ行カザルヲ得ナイ、又斯ウ云フ
時節ニ於キマシテ比較的所得ノ低イ人々ニ
金ノ餘計落チル時分ニ於キマシテハ、サウ
云フ方面ニ於ケル消費稅ノ增徴賦課ト云フ
コトガ國民經濟上カラモ必要デアラウト云
フ御意見ニ付テハ、全然御同感デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=29
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030・武田徳三郎
○武田委員 大藏大臣ノ只今ノ御說明ハ、
一般論トシテハ私モ左樣ニ考ヘテ居ルノデア
リマシテ、御尤ノコトダト存ジマス、卽チ
大體ニ於テ國家ノ費用ノ支辨ニ充テル租稅
トシテハ、國民ノ所得ニ直接ニ課ケル所ノ
直接稅ニ先ヅ重キヲ置イテ、サウ云フ其ノ
不足ノ點ヲ間接稅ヲ以テ補フト云フ方針デ
アルト云フコトデアリマスガ、是ハ一般論
トシテハ其ノ通リデアリマス、併シ私ガ最
初ニ、根本的ノ稅制整理ト云フコトニハ所
謂次善法ガアルモノダト云フ風ナ自由主義
經濟ノ考ヘ方ノイケナイト云フコトヲ申上
ゲテ大臣ノ御意見ヲ伺ツタソハ、其ノ事ヲ
申上ゲタイガ爲ニ申シテ置イタノデアリマ
ス、サウ云フ一般論カラ言ヘバサウデアリ
マセウガ、稅制ノ如キハ先程モ申上ゲマシ
タ如ク其ノ時ノ社會的情勢ニ卽應スルヤウ
ナ稅制デナケレバナラヌモノデ、根本的ノ
稅制整理ト云フヤウナ一定不動ノ方針ガ必
ズシモアルモノデハナイト思フノデアリマ
ス、英吉利ノ如キ高所得者ノ多イ國ニ於キ
マシテハ、今大臣ガ言ハレル通リ一般論ガ
行ハレテ居ルノデアリマス、是ハ英吉利ノ
社會情勢トシテハサウ云フコトガ行ハレ易
イカラ行ハレテ居ルノデアリマスガ、我國
ノ今日ノ情勢ト致シマシテハ、資金ハ集積
ヲ最モ必要トシ、生產力ノ擴張ヲ最モ必要
トスル、ソレニハ物價ヲ抑ヘナケレバナラ
又、物價ヲ抑ヘル方法トシテハ購買力ヲ稅
ノ力ニ依ツテ抑ヘルト云フ方法ヲ執ラナケ
レバナラヌ、ソレニ向ツテ相當重キ比重ヲ
置カナケレバナラヌト云フヤウナ社會情勢
カラ考ヘテ見マスト、今ノ一般論ヲ以テ律
スルコトハ出來ナイノデハナイカ、斯樣ニ
私ハ考ヘテ今ノ質問ヲ致シタノデアリマス
ガ、今大臣ノ御話デハドウモソレガハツキ
リ致サナイデ、出來ルダケ國民所得ニ直接
課稅スル直接稅ニ先ヅ重キヲ置イテ、而シ
テ其ノ振合ハ其ノ時ノ情勢ヲ見テ間接稅モ
決シテ輕ンズルコトハナイト云フヤウナ御
答辯ト私ハ承リマシタガ、サウ云フ一般論
デナク、現實ノ我國ノ經濟情勢カラ御考ニ
ナツテ、明年改正ナサラントスル稅制改正
ニ當ツテ、從來ノ一般的ノ考ヘ方ト違ツタ
間接稅ニ重キヲ置クト云フ御考ガアリマセ
ヌカドウカ、斯ウ云フ質問ナノデアリマ
ス、ソレニ向ツテ何レデアルカト云フコト
ヲ、簡單ナ御答辯デ宜シウゴザイマスカ
ラ、伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=30
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031・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 武田サンノ御述ニナリマ
スコトハ私ハ御尤ダト思ヒマス、間接稅、
消費稅ニ對シマシテ、是ハ一般的ノ購買力
ヲ制限スルト云フ意味ニ於テ考ヘテ此ノ方
面ニ相當ノ增徴ヲ圖ル必要ガアルノデハナ
イカ、斯ウ云フ御意見ニ付キマシテハ、洵ニ
御尤ダト思ヒマスガ、併シナガラ稅制ノ
般的ノ改正ヲ行ヒマスル場合ニ、ソレデハ
間接稅ニ重キヲ置イテ其ノ方ノ增徵ヲ主ト
考ヘルカト申シマスレバ、私ハドウモサウ
云フ譯ニハイカヌト思フノデアリマシテ、
間接稅、消費稅ノ增徵ニ付テハ十分考ヘハ
致シマス、又其ノ必要モアルカト思フノ
デアリマスガ、併シナガラソレデハ中々何
ト申シマスカ、一般的情勢トシテ治マラナ
イ所ガアルト思フノデゴザイマシテ、是ハ
ヤハリ增收ヲ圖リ、他面ニ於キマシテハ間
接稅ヲ考ヘルト同時ニ、又直接稅ニ付テモ
相當考ヘナケレバイカヌ、寧ロ私ハ增徵ト
致シマシテハ直接稅ヲ相當重ク考ヘル必要
ガアルノデハアルマイカト、斯ウ存ジテ居
ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=31
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032・武田徳三郎
○武田委員 同ジ事ヲ繰返シテモイケマセ
ヌカラ、ソレハ其ノ程度ニ致シテ置キマシ
テ、今ノ點ヲ事實上カラ一寸伺ツテ見タイ、
今日ノ現狀ト致シマシテ、此ノ豫算ニ付テ
今度御計畫ニナリマシタ二億ノ增稅ヲスル
モノト假定致シマシテ、サウシテ此ノ消費
稅ト直接稅トノ割合ヲ明年度ノ豫算ノ上カ
ラ見マスト、消費稅ト認メラレテ居リマス
ルモノハ十二億八千万圓見當ニナツテ居ル
ト思フノデアリマス、サウシマスト明年度
ノ稅收入ハ全體デ二十五億何千万圓カニナ
リマスカラ、丁度間接稅ト直接稅ハ半々ニ
ナルヤウナ情勢ニ明年度ノ豫算ハナルカト
思ヒマス、此ノ明年度ノ豫算ノ割合ハ不適
當ト御考ニナリマスカ、或ハ左樣不適當デ
ナイ割合デアルト御考ニナリマスカ、具體
的ニ伺ツタラ一番ハツキリシヤウカト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=32
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033・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 直接稅、間接稅ノ區分ニ
付テ昭和十四年度ノ直接稅、間接稅、ソレ
カラ其ノ他小サナモノガゴザイマスルガ、
ソレヲ考ヘテ見マスルト、大體斯ウ云フ風
ニ相成ルカト思フノデゴザイマス、直接稅
ガ五五·九%、間接稅ガ三八·七%、其ノ他ガ
五·四%、斯ウ云フコトニ相成ツテ居ルト思
フノデゴザイマシテ、此ノㄱパーセンテー
ジ」ニ對シマシテ、妥當デアルカドウカ答
>·ヽ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、實
ハ私ハ是ハ一ツノ參考デモアリ、目安デア
ルトモ存ジテ居ルノデアリマスルガ、併シ
ナガラ此ノ間接稅、直接稅ト云フモノノ區
分ニ付キマシテ、サウ是ノミニ依ツテ判斷
スルト云フ譯ニハ行カナイト云フコトヲ思
ツテ居ルノデゴザイマシテ、此ノ事ハ一昨
年ノ議會ニ於キマシテモ私ハ屢〓申述ベテ居
ルト存ズルノデゴザイマス、例ヘバ直接稅
ト言ヒマシテモ、此ノ直接稅ノ中ニハ相當
一般大衆ノ負擔ニ相成ルヤウナ稅モ含ンデ
居ルノデゴザイマス、ソレカラ又間接稅ト
言ヒマシテモ、比較的奢侈的ノ物品、殊
一番「ティピカル」ナ例ハ、狐ノ襟卷デアル
トカ、獵虎ノ襟卷デアルトカ、斯ウ云フヤ
ウナモノニ課稅シテ、ソレガ間接稅デアツ
テ、ソレガ一般大衆ノ負擔デアルト云フ理
窟ニハナツテ居ラナイノデゴザイマシテ、
間接稅デアツテモ生活ノ必需品デナイ所ノ
モノニ課稅スルト云フモノハ、是ハ間接稅
デアツテモ、ソレガ一般大衆ノ負擔ニ相成
ツテ來ルト云フモノデハナイノデアリマス
ルカラ、私ハ此ノ「パーセンテージ」ニハ左
程重キヲ置イテハ居リマセヌ、唯斯ウ云フ
ヤウナ、「パーセンテージ」ニ依ツテ直接稅
ガ相當多額ノ牧入ヲ示シテ居ルト云フコト
ニ付テ稍〓滿足ノ意味ヲ持ツテ居ルニ過ギナ
イノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=33
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034・武田徳三郎
○武田委員 次ニ伺ヒタイコトハ、先日ド
ナタカノ質問ニ對シテ、來ルベキ稅制整理
ニ際シテハ、ヤハリ所得稅ヲ中心トシテ考
ヘタイト思フ御話ガアリマシタ、是ハ御尤
ノコトダト思ヒマス、近來ノ各國ノ稅制ノ
趨勢ヲ見マシテモドウシテモ所得稅ヲ中心
トシテ考ヘルト云フコトデナケレバナラヌ
コトハ當然デアリマス、就キマシテハ我國ノ
所得稅ヲ-是コソ根本的ト云フ言葉ヲ使
ツテ宜イト私ハ思フノデスガ、之ヲ根本的
ニ改正スルノ御考ガアリマスカドウカト云
フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、我國ノ所
得稅ハ洵ニ亂雜極マツテ居リマス、第一種、
第二種、第三種ト分ケテ、其ノ釣合等モ色
色ニ變ツテ居リマス、實例ヲ私ハ多少調ベ
タモノガアリマスルケレドモ、今日ハ時
間ガアリマセヌカラ其ノ點ハ申上ゲナイコ
トニ致シマシテ、兎ニ角釣合ノ取レナイト
云フコトハ大藏大臣モ御承知ダラウト思ヒ
マス、ノミナラズ我國ノヤウナ高額所得者
ノ極メテ少イ現狀ニ於キマシテ、累進ノ率
ヲ餘リニ多クスルト云フコトハ必ズシモ稅
ノ增收ト云フ上ニ於テ役立ツコトハ少イノ
デハナイカ、斯樣ニモ思ヒマス、サウシテ
補完稅トシテ、或ハ營業收益稅トカ、色々
サウ云フ風ナ補完稅ヲ持ツテ居リマスルガ、
ドウモ此ノ補完稅ト所得稅トノ間ノ釣合ト
云フモノガ極メテ不合理ノ點ガ多クアルト
思フノデアリマス、今日我國ニドウモ脫稅
ヲスル者ガ多イト云フヤウナ非難ヲ隨分聽
クノデアリマス、是ハ國民ノ納稅義務ニ對
スル德義心ノ少イト云フコトモ一ツノ原因
デアルカモ知レマセヌガ、餘リニ高額所得
者ノ少イ今日ノ現狀ニ於テ高額所得者ニ課
稅ノ率ガ高イト云フコトモ脫稅者ノ多イト
云フ一ツノ原因ヲナスモノデハナイカト實
ハ私ハ思フノデアリマス、ソレデドウ云フ
風ニ之ヲ改正スルカト云フコトノ論議ハ簡單
ニハ申上ゲ兼ネマスルケレドモ、大體ニ於
テ今日ノ英吉利ノ所得稅ノ方向ニ向ツテ根
本的ニ我國ノ所得稅ヲ改正シ、國民ノ所得
ヲ遺漏ナク調査スルノ方法ヲ考ヘルコトガ
必要デアリ、稅ノ增收ヲ圖ル上ニ於テモ、
サウシテ一面負擔均衡論ノ趣旨カラ申シマ
シテモ、所得稅ノ根本的ノ改正ハ極メテ必
要ナコトデナイカト私ハ思フノデアリマス
ガ、大臣ハ如何ヤウニ御考ニナツテ居リマ
スルカ、改正ノ急務ヲ御認メニナルナラバ
ソレヲ如何ヤウナ方向ニ向ツテ所得稅ヲ改
正ナサルカト云フ其ノ方向位ナ點ヲ御示シ
ヲ願ヘレバ幸ダト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=34
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035・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 武田サンノ御尋ハ、所得
稅ヲ英吉利流ノ所得稅ニ改メル考ハナイカ、
斯ウ云フコトガ主ニナツテ居ルヤウデアリ
やっ、累進課稅ハ英吉利ニ於キマシテモ相
當高率デゴザイマスガ、一面ニ於キマシテ
各種ノ所得ニ付テ源泉課稅ヲ行ツテ居リマ
スルコトガ又一ツノ特徴デアリマスコト、
是レ武田サンノ御指摘ニ相成ル所デアルト
思フノデゴザイマス、ソレデ租稅ヲ餘計取
ル、卽チ今御尋ノ脫稅ヲ少クシテ國民ガ
般ニ負擔スル、斯ウ云フ考カラ致シマスレ
が、此ノ英吉利流ノ源泉課稅ト云フコトニ
モ確ニ面白キ特徵ガゴザイマス、是ハ戰後
ニ於テ獨逸ニ於キマシテモ英吉利流ノ源泉
課稅ノ思想ヲ多分ニ組入レタノデゴザイマ
スルガ、是ハ所得稅ヲ多額ニ徵收スル場合
ニ於テハ確ニ一ツノ興味アル問題デアルト
存ジテ居ルノデアリマス、是等ニ付キマシ
テハ固ヨリ〓究ハ致シタイト存ジマス、但
シ英吉利流ノ所得稅ト云フモノガ必ズシモ
何レノ國ニ於テモ行ハレルト云フ譯ノモノ
デハゴザイマセス、是ハ亞米利加ニ於テ最
初所得稅ヲ施行致シマシタ時分ニ、英吉利
流ノ所得稅ヲ施行致シマシテ失敗致シタ例
モアルノデゴザイマスカラ、其ノ邊ノ所ハ
一ツ十分ニ〓究シテ見タイト存ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=35
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036・武田徳三郎
○武田委員 次ニ御伺申シタイコトハ、財
產稅ノコトニ付テデアリマス、財產稅ヲ新
ニ設ケルカドウカト云フ問題ハ、是ハ大正
九年以來論議サレテ居ル問題デアリマシテ、
今更私ガ新シク此ノ問題ヲ持出シテ大臣ニ
意見ヲ伺フ必要ノナイ問題トモ言フコトガ
出來ルノデアリマス、唯私ハ此ノ場合財產
稅ノコトニ付テ伺ヒタイノハ、從來ノ財產稅
ノ考ヘ方ト違ツタ觀點カラ、私ハ今日ノ場
合トシテ、所謂今日ノ經濟上ノ情勢ニ適應
セシムルト云フ意味ニ於テ、財產稅ガ必要
デナイカト云フ意見デ伺フノデアリマス、
卽チ大藏大臣ハ此ノ戰時利得稅ニ相當力ヲ
御入レニナツテ居ルノデアリマス、是ハ至極
適當ナコトダト私ハ思フノデアリマス、詰
リ時局ノ爲ニ特別ノ利益ヲ得タ者ニ相當重
課スルト云フ此ノ方針ハ、私ハ結構ダト思
フ、其ノ方針カラ見テ、玆ニ此ノ財產稅ヲ
新設スルコトガ必要デナイカト私ハ考ヘル
ノデアリマス、戰時若クハ事變ト云フヤウ
ナ事柄ニ依ツテ特ニ利益ヲシタモノト申シ
テモ、ソレハ自然增加デハナイノデアリ
マス、卽チ其ノ人ノ努力ニ依ツテ得タノ
デアリマスルガ、ソレニサヘ重課シテ居ル
ト云フコトデアリマスルナラバ、自然ニ財
產ノ價値ヲ增シタ所謂自然增加ト云フヤウ
ナコトニ付テハ、當然相當ナ重課ヲシテモ
差支ナイ、重課ト云フ言葉ハ遠慮シマスガ
相當ナ課稅ヲシテ然ルベキデハナイカト思
フノデアリマス、土地增價稅ト云フヤウナ
コトハ從來是ハ中央稅ニハ不適當デアル、
或ハ中央稅ガ適當デアルト云フヤウナ論議
ガ學者ノ間ニアリマシタガ、遂ニ此ノ土地
增價稅ト云フモノハ我國ニハ未ダ實行サレ
テ居リマセヌ、私ハ土地ノミガ自然增加ヲ
スルノデハナイ、個人ノ持ツテ居ル財產ソ
レ自身ガ社會ノ情勢ノ變化如何ニ依ツテ、
其ノ價値ガ自然ニ增シテ居ルノガ多イノデ
アリマス、其ノ自然增加ニ付テ、所謂不勞
所得ト申スカ、不勞財產ト申スカ、サウ云
フモノニ向ツテ今日ノヤウナ國家ノ重大ナ
ル時局ニ於テハドウシテモ是ハ戰時利得
稅以上ニ重課スベキ理由ガ玆ニアルノデハ
ナイカト斯樣ニ思フノデアリマス、ソレデ
然ラバサウ云フ意味ヲ肯定サレルトシテモ、
何ガ故ニ財產稅ヲ設ケナケレバナラヌカ云
フ疑問ガアルカモ知レマセヌガ、私ハ此ノ財
產ノ評價、是ハ申スマデモナク獨逸デモソレ
ヲ實行シテ居リマスシ、馬場稅制改正ノ時モサ
ウ云フモノハ出テ居ル、財產評價法ト云フモ
ノハ是ハ財產稅ニハ當然伴フ法律デアルコ
トハ申スマデモナイ、ソレデ此ノ嚴密ナル
財產評價法ト云フヤウナモノヲ設ケマシテ、
之ニ依ツテ嚴密ナル財產ノ評價ヲ致スト云
フコトハ、今年評價シタモノハ來年ニナツ
テ、若シクハ一二年ハ据置クカ知レマセヌ
ガ、社會ノ情勢ノ變化ニ從ツテ財產ノ評價
ヲ變ヘマスレバ、其ノ間ニ自然增加ト云フ
モノハ遺漏ナク課稅セラレルコトニ相成ル
ノデアリマスルカラ、サウ云フヤウナ意味
ニ於テモ私ハ此ノ際財產稅ト云フモノヲ考
ヘルノ必要ハアリハシナイカ、ソレハドウ
云フ組織ニシテ、ドウ云フ率ニスルカト云
フヤウナ具體的ノ問題ハ〓究ノ餘地アリト
致シマシテモ、兎モ角モ此ノ自然增加ニ相
當ナ課稅ヲスルト云フ趣旨カラ、來ルベキ
稅制改正ノ場合ニ、財產稅ノ新設ト云フコ
トニ向ツテ御考慮ニ相成ツテ居ルカドウカ、
又相成ル積リデアルカドウカト云フコトニ
付テ御意見ヲ伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=36
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037・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 財產稅ノ御尋デゴザイマ
スガ、實ハ財產稅ト云フモノハ最モ古イ稅
デ、負擔ノ均衡ヲ得ナイト云フコトデ捨テ
ラレマシテカラ、旣ニ百餘年經過致シテ居
ルト思フノデアリマス、財產稅ガ最モ古イ
稅デ先ヅ財產ニ課稅スル、次デ收益稅時代、
ソレカラ所得稅ト斯ウ發達シテ來テ居ルノ
デゴザイマシテ、今日亞米利加デヤツテ居
リマスヤウナ財產稅ト云フモノハ、是ハ十
七八世紀ノ遺物デアルノデゴザイマシテ、
斯ウ云フヤウナ財產稅ヲ施行致シタイト考
ヘテハ居リマセヌ、要スルニ今日財產稅ガ
再ビ取上ゲラレマシタノハ、獨逸ニ於テ此
ノ綜合的ノ財產稅ヲ施行致スト云フコトカ
ラ取上ゲラレテ論ゼラレテ居ル問題デゴザ
イマスガ、先ヅ今日ノ社會ノ大勢カラ申セ
バ、所得稅ニ問題ハ集中致シテ居ルノデゴ
ザイマシテ、何ダカ財產稅ト言フト、如何
ニモ財產家ガ餘計ニ負擔スルヤウナ稅デア
ルノデ、世ノ中デ比較的好評デゴザイマス
ガ、併シナガラ實際ハ財產家デナイ者ガ負
擔スルモノガ相當多イノデゴザイマス、ソ
レデアルノデ是ハ施行シテモ名ト實トハ伴
ヒマセヌノデ、餘リ評判ノ好イ稅デハゴザ
イマセヌ、併シナガラ此ノ新シク獨逸ニ於
テ取上ゲラレマシタ綜合的ノ財產稅ト云フ
モノハ、是ハ評價ガ適切ニ行ハレ、サウシ
テ其ノ綜合ガ適切ニ行ハレルナラバ、是尺
相當面白イ稅金デアリマス、ソレデ唯問題
ハ今日此ノ財產カラ生ズル所ノ所得ニ重課
スル、斯ウ云フ意味ナノデアリマシテ、財
產ヲ別ニ稅源ト致シテ居ル譯デハゴザイマ
セズ、所得ヲ稅源ト致シテ居ルト思フノデ
アリマス、其ノ所得ヲ稅源ト致スト云フ意
味ニ於テ財產ニ課稅スルト云フコトデアル
ナラバ、是ハ今日ノ營業收益稅、地租、資
本利子稅ト云フ問題ト重複シテ來ル關係ニ
アルノデゴザイマスカラ、其ノ點ヲ考ヘネ
バイカヌノデアリマシテ、今日是等ノ稅ヲ
施行シテ置キナガラ、更ニ其ノ上ニ所得ノ
稅源トスル所ノ財產稅ヲ施行スルト云フコ
トニハ多少ノ難色ガゴザイマス、サレバト
云ツテソレ等ノ稅ヲ皆ヤメテシマツテ、其
ノ代リ財源トシテノ財產稅ト云フモノガ相
當ノ收入ヲ得テ、又圓滑ニ施行サレルカド
ウカト云フコトニハ多少ノ疑問ガアルト存
ジマス、多少ノ疑問デハゴザイマセヌ、相
當深キ疑問ガアルト思フノデゴザイマス、
今評價法ト云フモノニ依ツテヤレバ宜イデ
ハナイカ、斯ウ云フ御話デゴザイマスガ、
獨逸ニ於キマシテモ評價法ガ出來テ居リマ
スガ、財產ノ評價ト云フコトハ是ハ中々ム
ツカシイ問題デゴザイマス、又此ノ問題ニ
付キマシテハ中々ムツカシイ點モゴザ
イマスガ、併シ是ハ今後ニ於テヤハリ
〓究致サルベキ一ツノ問題デアルト存ジ
テ居ルノデゴザイマス、今一ツク難點ハ
調査ニ相當ナ人ト金トヲ要スルノデゴザ
イマス、今日ノ場合多數ノ人ヲ官廳ニ入レ
テ、此ノ稅ノ徵收ノ爲ニサウ云フ人ガ得
ラレルカ得ラレナイカト云フ問題モ、餘程
是ハ考慮シテ見ナケレバナラヌ問題デアル
ト存ズルノデアリマス、今武田サンノ仰セ
ノアリマシタ戰時ニ於テ財產ヲ增シテ居ル
デハナイカ、之ニ付テ一體ドウ云フ考ガア
ルカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、是
ハ寧ロ財產增價稅ト謂フベキモノデアルト
思フノデアリマス、斯ウ云フ稅ノ形式ハ獨
逸ニ於キマシテ歐洲大戰當時行ハレタコト
ガアリマスガ相當高率ナモノデアツタト思
ヒマス、其後更ニ制定サレマシタガ、ソレ
ハ施行サレナイ儘ニナツテ居ル樣ニ思ツテ
居リマス、是ハ其ノ當時實行極メテ困難デ
アツテ、國民ノ浪費ヲ助長スルト云フコト
ヲ以テ實行致サレテ居ラナイモノト思フノ
デゴザイマス、斯ウ云フ稅ヲ施行致シマス
ルコトハ、餘程考ヘル必要ガアルト思ツテ
居ルノデゴザイマス、一面ニ於キマシテ相
續稅ガ財產ニ對シテ綜合的ニ課稅スル一ツ
ノ稅デゴザイマス、ソレデ相續稅ヲ改正シ
マシテ、普遍的ニ財產ニ對シテ相當高率ナ
ル課稅ヲ行フト云フコトハ、一面ニ於テ財
產稅ヲ施行致シマシタコトト、或ル程度略〓、
同ジヤウナ結果ヲ得ルヤウナコトモアルノ
デゴザイマス、是等ノ點ニ付キマシテハ
何レ稅ノ一般的ノ改正、又ハ斯ウ云フ點ハ
根本的ノ改正デアルカモ知レマセヌガ、之
ニ付テハ十分考究シテ見タイト存ジテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=37
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038・武田徳三郎
○武田委員 財產稅ニ對シテ色々御示シガ
アリマシタ、私モ財產稅ニハ幾多ノ論議ガ
アルコトヲ承知シテ居リマスガ、併シナガ
ラ先程申上ゲタヤウニ、所謂財產增加稅ト
スルヨリハ財產稅トシテモ、其ノ間ニ昨年
評價シタヨリモ本年若シ評價ガ餘計ニナツ
タナラバ、其ノ餘計ニナツタ部分ニ對シテ
率ヲ變ヘルト云フ方法ハ、課稅ノ技術上幾
ラモアラウト存ジマス、サウ云フ必要上私
ハドウモ財產稅ハ今日ノ社會情勢トシテ考
ヘルベキ價値アル問題デハナイカ、實ハ斯
ウ考ヘタカラ伺ツタノデアリマスガ、現セ
御承知ノ通リ馬場稅制改正ノ時ハ、財產稅
ヲ旣ニ確定ニ相成ツテ、千分ノ一ト云フ低
イ率ニスルコトニ相成ツテ居リマシタガ、
私ハ今日再ビ之ヲ取上ゲル時期デアル、馬
場サンノ時代ヨリハ今日ノ時代ハ一層之ヲ
取上グベキ時期ニ達シテ居ルノデハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、ノミナラズ今日旣
ニ此ノ馬場稅制改正ノ時ニ立テラレタ財產
稅ガ、半分存置シテ半分壞サレテ居ルノデ
アリマス、卽チ法人資本稅ト云フモノハ其
ノ片割レデアリマス、卽チ財產稅デアリマ
ス、今日法人ニノミ財產稅ヲ課シテ個人ガ
財產稅ヲ免レルト云フコトハ、私ハ現在ノ
我國ノ稅制ノ上カラシテ甚ダ不合理ヂヤナ
イカトモ思フノデアリマスカラ、ソレ等ノ點
ニ對シテ、今大臣ノ仰セノ通リ、來ルベキ稅
制改正ノ時ニ、財產稅ハ是ハ最早十八世紀
時代ノ舊思想カラ出タ稅デアルト云フヤウ
ニ、一〓ニ之ヲ排斥スルコトナク、諸般ノ
情勢カラ私ハ深ク此ノ點ニ向ツテ御〓究ニ
相成ツテ然ルベキモノヂヤナイカ、斯樣ニ
考ヘマス、若シドウシテモ財產稅ガイカヌ
ト云フコトデアリマスナラバ、法人資本稅
ト云フモノモ其ノ論理カラ言フナラバ-
是ハ調査ハ簡單デアリマスケレドモ、財產
ニ直接ニ稅ヲ課スコトハイカヌト云フ結論
デアリマスナラバ、法人資本稅ト云フモノ
モ私ハ不合理ヂヤナイカト思フ、仍テ私ハ
是等ノ點ニ向ツテ十分ニ一ツ御考慮願ヒタ
イト云フコトヲ申上ゲテ、此ノ點ノ質問ヲ
止メテ置キマス
次ニ伺ヒタイノハ明年行ハレマスル稅制
ノ改正ト今度ノ此ノ增稅案トノ關係ガドウ
ナルカト云フコトデアリマス、先達テノ御
說明ニ依リマシテモ、今度提案ニナリマシ
タ稅ノ完全ナル收入ハ、明後年デナケレバ
ナイコトニナツテ居ルノデアリマス、卽チ
昭和十四年度ダケデハ此ノ增稅案ガ完成ヲ
致サヌノデアリマス、隨テ常識カラ申セバ、
明後年ニナツテ御實行ニナル稅制改正ニ取
リマシテハ、今度ノ改正ハ何等變更ハサレ
ナイモノト一應考ヘテ然ルベキヤウニ思フ
ノデアリマスガ、此ノ關係ハドウナリマス
カ、ドウ云フ御考デゴザイマスカ、其ノ點
ヲ御伺致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=38
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039・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 今年改正致シマシタ稅法
ヲ此ノ次ノ一般改正ノ時分ニ變更ハシナイ
カ、斯ウ云フ仰セデゴザイマスガ、是ハ引
括メテ一般的ノ改正ヲ行フノデアリマスカ
ラ、是等モ引括メマシテ改正スルカシナイ
カ考究スルコトニシタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=39
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040・武田徳三郎
○武田委員 サウシマスト、今度ノ稅ガ或
ハ場合ニ依ツテハ減ルコトモアリ殖エルコ
トモアル、又物品稅ノ如キハ品目ガ增スコ
トモアリ減ルコトモアル、斯樣ニ考ヘテ宜
シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=40
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041・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 大體論トシテハ左樣ニ御
考下サツテモ宜シイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=41
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042・武田徳三郎
○武田委員 私ハソレハドウモ變ナコトデ
ハナイカト思フノデス、若シ先程申上ゲタ
通リ、此ノ案ガ此ノ儘通過致シマシテモ、
大臣ノ御說明通リ明年-度ニハ完全ニ稅ガ取
レナイ、完成ヲ致サナイ、明後年ニナツテ
初メテ所謂平年度ノ收入ガアルト云フコト
デアル、子供ガ生レナイ中ニ殺シテシマフ
カ、或ハ變更シテシマフカト云フヤウナコ
トヲ今日吾々ノ前ニ御提出ニナルト云フコ
トハ餘リニ輕卒デハアリマスマイカ、大體
旣ニ稅制ノ改正ヲシヨウト云フ御考ガアル
ノデアリマス、ソハ最早昨年ノ十二月ニ、
石渡大臣デハナイケレドモ、事實石渡大臣
ガ次官トシテ此ノ財政ノ切盛リ、竝ニ最モ
稅制ノ權威者トシテ切盛リヲナサツテ居ツ
タ其ノ當時ニ於テ、豫算ノ內示會ノ時ニ
前ノ大藏大臣カラ其ノコトハ說明サレテア
ツタ、サウシマスレバ其ノ當時カラ既ニ稅
制ノ改革ヲシヨウト云フ御考ハ決ツテ居ツ
タノデアリマス、其ノ稅制ヲ改正シヨウト
云フ大體ノ方針方向ト云フモノヲ胸ニ置イ
テ、サウシテ今日ノ增稅案ヲ御提出ニナツ
テ居ルニ拘ラズ、僅カ一年ノ後ニ改正スル
場合ニ、今日提案サレテ而モソレガ完全ニ
收入スル年度ニ達シナイ中ニ、早ヤ既ニ之
ヲ變更スルカモ知レナイ、或ハ率ヲ變ヘル
カモ知レヌ、或ハ其ノ品目ヲ變ヘルカモ知
レヌト云フコトデハ、如何ニモ吾々ハ今御
提出ニナツク此ノ增稅案ニ對シテ政府ガ御
自信ガナイヤウニ思ハレテ何ダカ賴リガナ
イ感ジガ致シマスガ、今一應其ノ點ヲ確メ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=42
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043・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 稅ハ法律ヲ以テ徵收スル
ノデゴザイマシテ、議會ノ協贊ヲ經マシテ、
サウシテ其ノ法律通リニ徵稅ヲ致ス、斯ウ
云フコトニ相成ツテ居ル次第デゴザイマ
ス、隨テ其ノ翌年度ニ於テ御協賛ヲ經マシ
テ更ニ之ヲ變更致ス、斯ウ云フコトハ何時
ノ場合ニ於テモ是ハアルコトト思フノデア
リマス、隨テ一昨年增稅ノ御協贊ヲ經マシ
タ其ノ增稅ニ付キマシテモ、支那事變ガ始
マリ增稅ヲスルト云フ場合ニハ、其ノ增
稅案ヲ施行致シマシテ三四箇月ニシテ再ビ
之ニ增率ヲ加ヘル、斯ウ云フコトモ致シタ
次第デゴザイマス、今回ノ增稅ニ當リマシ
テモ、大體將來ノ稅制改正ト云フコトヲ眼
中ニ置キマシテ、サウシテ此ノ改正ヲ御願
致シテ居ル次第デゴザイマスルガ、併シナ
ガラ之ヲ大體論トシテ變更シナイカト斯ウ
仰セラレレバ、ソレハ變更シナイト云フ譯
デモゴザイマセヌ、先般來御話モゴザイマ
シタ臨時利得稅ト所得稅トノ關係、又臨時
利得稅ニ於テ甲種所得稅ト云フモノガ、モ
ウ既ニ古クナツテ來テ居ルガ、一般改正ニ
當ツテハ此ノ點ハ何トカ考ヘタラドウダ、
斯ウ云フヤウナ御說モアルノデアリマシ
テ、ソレ等ノ點ニ付テモ十分考ヘル、斯ウ
云フコトヲ申上ゲテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=43
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044・武田徳三郎
○武田委員 次ニ伺ヒタイコトハ、此ノ前
ノ增稅ノ時モ內地ニ增稅スルト同時ニ、外
地ニモ增稅シタノデアリマス、新聞ノ傳フ
ル所ニ依ルト、此ノ度外地ニモ增稅ノ計畫
ガアルヤニ聞イテ居ルノデアリマスガ、ソ
レハ果シテサウデアリマセウカ、ドウデア
リマセウカト云フコトト、若シ外地ニ增稅
ヲサルルト致シマスレバ、內地ノ今日御提
案ニナツタ案ト照應スルヤウナ增稅デアル
ノカドウカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリ
ひと、サウシテ若シ外地デモ增稅ナサルト
云フコトデアリマスレバ、其ノ外地デ增稅
ヲサレタ全部ガ一般會計ニ繰入レラレルノ
デアルカドウカ、此ノ二點ヲ伺ヒタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=44
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045・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 御尤ナ御尋デアルト存ジ
マス、外地ニ於キマシテ昨年來ノ增稅ハ、
大體內地ノ增稅ニ準ジマシテ增稅致シテ居
ル次第デゴザイマス、今囘ノ增稅ニ當リマ
シテモ、外地ニ於キマシテモ略〓同樣ナ增稅
ヲ行フコトニ致シテ居リマスガ、是ハ全然
同樣トハ申上兼ネルノデゴザイマシテ、外
地ノ事情ニ依リマシテ、稅率其ノ他ニ於キ
マシテハ多少ノ別ハゴザイマスガ、大體ニ
於キマシテ同ジヤウナ增稅ヲ致シテ居リマ
ス、其ノ收入ハ臨時軍事費特別會計ヘ繰入
レルコトニ相成ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=45
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046・武田徳三郎
○武田委員 モウ二三點簡單ニ御伺シタイ
ト思ヒマス、成ベク大藏大臣ニ對ス·ル質問
ダケハ今日終ラサセテ戴ケバ結構ダト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=46
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047・川崎克
○川崎委員長 理由ハ後デ御付ケニナツテ、
成ベク要點ダケヲ簡單ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=47
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048・武田徳三郎
○武田委員 私ハ前カラ考ヘテ居ルコトデ
アリマスガ、半官半民會社ガ課稅ヲ免レ、
又政府事業ガ課稅ヲ免レテ居ルト云フコト
ハ是ハ從來ノヤウニ半官半民會社ト云フ
モノガ極メテ少ナカツタ、或ハ政府事業ガ
極メテ少イ場合ハ多クノ注意ヲ引カナカツ
タノデアリマスガ、近來ノ傾向トシテ半官
半民會社ノヤウナモノ竝ニ政府事業ガ非常
ニ殖エツツアル狀況ニ於キマシテハ、是等
ガ何等國家ニ租稅的ニ貢獻スルコトナクシ
テ居ルト云フコトハ、私ハ國家ノ收入ノ觀
點カラシテ考へ直シテ見ナケレバナラヌ點
デハナイカト常ニ思ツテ居ルノデアリマス、
成程近來ハ通信特別會計ニ於テハ八千百万
圓一般會計ニ繰入レ、又鐵道會計ニ於キマ
シテハ明年度ニ二千万圓繰入レルト云フヤ
ウナコトハアリマスルケレドモ、ソレハ稅
ノ性質デナイノデ、何ヲ標準トシテ鐵道ハ
二千万圓繰入レルノデアルカ、サウ云フ標
準ガナイノデアツテ、一般會計ガ困ルカラ
取ルノデアル、現ニ一昨々年デシタカ鐵道
會計カラ繰入ヲスルト云フコトデ非常ナ騒
ギヲシテ、其ノ當時ノ鐵道大臣ノ內田君ガ
思ヒ切ツテ投出シタトカ何トカ、自分ノ懷
ロノ金デモ投出スヤウナ-是ハ新聞ノ言
フコトデスカラ必ズシモ取上ゲテ論ズルヤ
ウナ必要モナイノデアリマスケレドモ、私
ハ是ハ當然ナコトデハナイカト思フノデア
リマス、國家ト雖モ經濟活動ヲスル場合ニ
於テハ經濟人デアリマス、半官半民會社ハ
勿論ノコト、等シク個人的ノ經濟活動ト同
樣ニ、經濟社會ニ於テ經濟活動ヲスル以上
ハ、是ハ經濟人デアル、經濟人トシテ經濟
活動ヲシテ、ソレデ相當ノ利潤ヲ擧ゲタ場
合ニ、何等カノ標準ニ依ツテ國家ニ貢獻ス
ルト云フコトハ私ハ當然ノコトヂヤナイカ
ト思フ、昨年ノ發送電會社ノ問題ノ時モ私
ハ其ノ事ヲ質問シタコトガアル、同ジク民
間ノ會社ニ相當ノ稅ヲ取ツテ居リナガラ、
發送電會社ニハ稅ヲ取ラナイ、サウシテ是
ハ六分ノ配當ハ必ズ出來ル、斯ウ云フ利害
ノ問題モ色々計算サレルケレドモ、稅ト云
フモノヲ一寸モ計算ニ入レテ置カヌ、サウ
シテ民間ヨリ有利ノ計算ガ出ルト云フコト
ハ、私ハ外ノ意味ニ於テ發送電會社ニハ贊
成ヲシテ居リマスケレドモ、稅ヲ計算ニ入
レズシテサウシテ餘計得ニナルトカ得ニナ
ラヌトカ云フコトハ、根本ニ於テ是ハ間違ツテ
居ルノデハナイカト思フ、ノミナラズ中央
ノ收入ニ於テモ非常ナ影響ヲ及ボシマス、殊
ニ地方ノ自治團體ニ於テハ非常ニ困ツテ居ル、
民間ノ會社デアリマスナラバ、發電所ノアリマ
スル所ニ於テ相當ナル營業稅ノ附加稅ヲ取ル
コトハ出來マス、又府縣ト致シマシテハ水利
稅ヲ取ルコトハ出來ルノデアリマス、又市
町村ニ於キマシテモ電柱稅ヲ取ルコトモ出
來ルノデアリマス、是ハ地方ノ自治團體ト
シテハ有力ナル財源デ、是ガアルトナイト
云フコトハ非常ナ關係ガアルノデアリマ
ス、然ルニ所謂官營ノ發電所ニナツテ、營
業稅モ勿論市町村ニ納メナイ、電柱稅ハ勿
論ノコト、水利稅モ府縣ニ納メナイト云フ
コトデハ餘リニ是ハ私ハ不合理デハナイ
カト思フ、是ハ根本的ニ一ツ考ヘ直スベキ
事柄デナイカト私ハ思フノデアリマス、幸
ヒ明年稅制ノ改正ヲナサルト云フ場合ニ於
テ、是等ハ相當御考慮下サルベキ値打ノア
ルコトデハナイカト思フノデアリマスガ、
大藏大臣ハ如何樣ニ御考ニナルデアリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=48
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049・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 色々ナ事業又ハ半官半民
ノ會社ニ對シマシテ、所得稅、營業稅ノ免
除ト云フコトヲ致シテ居ルノデゴザイマ
ス、併シ是ハ法律デ一定ノ期限ヲ切ツテ居
リマス、三年デアルトカ、五年デアルトカ、
十年デアルトカ云フ期限ヲ切ツテ免稅ヲ
致シテ居ルノデゴザイマシテ、其ノ免稅モ
所得稅、營業收益稅ニ限ツテ居ルノデアリ
マス、是ハ實ハ稅ノ方ノ立場カラ言ヒマス
レド、所得稅、營業收益稅ノ免稅ト云フコ
トハ餘リ感心致サナイノデアリマシテ、斯
ウ云フモノハ取ツテモ構ハナイト思フ點モ
アリマスガ、ドウモ是ハ從來カラ斯ウ云フ
ヤウナ仕來リニナツテ來テ居ルモノデアリ
マスカラ、新シク出來テ來ルモノト前ノモ
ノトノ權衡ヲ考ヘルト、之ヲ取ルト云フコ
トニナルト、ドウモ權衡ガ取レナイト云フ
モノモゴザイマス、サウ云フヤウナ關係デ
相當今日各種ノモノニ所得稅、營業收益稅
ト云フモノヲ免稅シテ居ルノデアリマスガ、
是等ノ點ニ付テハ能ク一ツ再考シテ見タイ
ト存ジテ居リマス、但シ是ハ稅ノ問題デハ
サウデゴザイマスガ、一旦免稅シタモノヲ
ソレニ課稅ヲ致スト云フコトニ付テハ、餘
程ノ困難ガアルノデゴザイマスガ、再檢討
シテ見タイト思ツテ居リマス、政府事業ニ
付テノ御話モゴザイマスルガ、之ニ付キマ
シテモ能ク一ツ考究シテ見タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=49
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050・武田徳三郎
○武田委員 何卒一ツ此ノ點ニ向ツテ今度
改正ノ場合ニハ十分御檢討ヲ願ツテ置キタ
イト存ジマス、ソレカラモウ一ツ伺ツテ置
キタイコトハ物品稅ノコトデアリマスガ、
物品稅ノ中、或物ハ從價稅デアリ、或物ハ
從量稅ニナツテ居リマス、從價稅ト申スノ
ハ變デアリマスガ、賣上ノ金額ニ應ジテ稅
ヲ取ル、物品稅トシテ取ルト云フコトハ是
ハ普通ナコトデアルノデアリマスガ、同ジ
ク物品稅トシテ酒其ノ他ニ從量稅ヲ御課ケ
ニナリマスコトハ、ドウ云フ譯デアリマセ
ウカ、私ハ觀念上サウハ認メナイノデアリ
さい、今日酒ノ如キ或ハ酒ニ類シタ物品
稅ニナツテ居ルモノハ、皆サウデアリマス
ガ、著シイノハ酒デアリマス、同ジ原料ヲ
使ツタ酒デアツテ、一升五圓ノ酒モアレバ
或ハ一圓ノ酒モアル、甚シキニ至ツテハ八
十錢ノ酒モアル、同ジ原料ヲ使ツテ、殆ド
同ジニ操作ヲシテ居テ、コンナニ値段ノ相
違スル品物ハ餘リ多クハナイト思フ、然ル
ニ從量稅ニ致シマスレバ、五圓ノ酒モ物品
稅トシテ一升ニ付テ十錢、一圓ノ酒モ亦十
錢や、是ハドウモ不均衡モ甚シイモノデハナ
イカ、又消費ヲ抑制スルト云フ趣旨カラ致
シマシテモ、五圓ノ酒ヲ飮ンデ居ル消費者
モ、一圓ノ酒ヲ飮ンデ居ル消費者モ、同
ノ率ヲ以テ抑ヘルト云フコトハ、消費ヲ抑
ヘルト云フ目的カラ出マシタ所ノ物品稅ト
シテハ、根本觀念トシテ間違ツテ居ルノデ
ハナイカ、斯樣ニ私ハ思フノデアリマス、又
增收ノ點カラ申シマシテモ、從價稅ニ致シ
マスナラバ、酒ノ高イモノカラハ多クノ稅
ヲ取レルノデアリマシテ、增收ノ意味カラ
言ツテモ、從價稅ニ致ス方ガ宜イト思フノデ
アリマス、是ハ獨リ物品稅ダケノ問題デハ
ナイノデアリマス、造石稅ソレ自體ヲ私ハ
從價稅ニスルコトガ極メテ適切デハナイカ
ト思フノデアリマスガ、序デナガラ其ノ點
モ一ツ大藏大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=50
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051・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 課稅ノ技術上カラ斯ウ云
フ風ニ分レテ居ルノデゴザイマス、物品稅
トシテハ從價稅ヲ附加シテ居リマスモノモ
相當アルノデゴザイマス、是ハ稅ノ理窟カ
ラ申セバ、或ハ從價稅ノ方ガ宜イカモ知レ
マセヌ、酒ニ付キマシテモ從來カラ從價稅
ニシタラドウダト云フヤウナ意見モ屢〓アリ
マシテ、〓究致シテ居ルノデゴザイマスガ、
普通ノ品物ニ付テハ金ノ高イ物、値ノ高イ
物ハ品質ガ良イ、斯ウ云フ品質ノ物ハ値段
ガ高イ、斯ウ云フコトニ相成ツテ居ルノデ
ゴザイマスガ、酒ニ付キマシテハ値段ガ高
ク賣レルカ賣レヌカト云フコトガ、其ノ品
質ノ良否ニ依ラヌノデアリマシテ、其ノ點
ガ實ニ從價稅ヲ施行スルノニ困ル點デアリ
やく、銘柄デアルトカ、廣告デアルトカ、
產地デアルトカ、サウ云フヤウナ傳統的ナ
コトニ押サレテ居ル點ガ多イノデアリマシ
テ、酒ノ良質デアルトカ、惡質デアルトカ、
ソレ等ニ依ツテドウモ値段ガ出テ來ナイノ
デゴザイマス、ソレデアリマスノデ、今
段ノ〓究ヲ積ミマスマデハ、從量稅デ之ヲ
行ツテ居ツタ方ガ無事デアル、斯ウ云フ考
デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=51
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052・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ大藏大臣ノ御說明ハ少
シク私ハ間違ツテ居ハシナイカト思フ、賣
上稅ヲ御實行ナサラヌト云フナラバ、是ハ
別問題デアリマス、技術上ニ困難ガアルト
云フコトモ言ヘルデアリマセウ、旣ニ物品
稅ハ賣上稅ノ一部デアリマス、物品稅ノ品
目ガ總テニ亙ルヤウニナリ、サウシテ免稅
ヲ置カヌト云フコトデアレバ、卽チ賣上稅
デアリマス、卽チ此ノ働キハ賣上稅デアル
ノデアリマス、賣上稅ヲ創設サレテ、其ノ
徴稅ニ技術上ノ困難ガ伴フト云フコトハ覺
悟ノ前デ、賣上稅ヲ御實行ニナツテハサウ
シテ相當ノ效果ヲ今日收メテ居ルデハアリ
マセヌカ、酒デナクテモ他ニモ現ニ免稅點
ヲ御置キニナリ、品ニ依ツテ幾ラ/〓ノモ
ノハ免稅ニスルト云フコトニ定ツテ賣上稅
ガ實行サレルノデアリマスナラバ、酒ノ課
稅ヲ總テ賣上稅ニシテシマツタナラバ何等
サウ云フ良イ酒ト惡イ酒ノ區別ヲシナクテ
モ宜イ、銘柄ニ依ツテ成程高イモノモアリ
マセウ、灘ニ出來タ酒ダカラト云ツテ、
灘ノ生一本ダト云フノデ、實際ニ味ヒガ惡
クテモ値ノ高イモノモアリマセウ、併シソ
レハ構ハヌデハアリマセヌカ、買フ人ハソレ
ガ宜シイト思ツテ買フノデアツテ、ソレヲ
抑ヘルコトニ依ツテ消費ヲ抑制シ得ルト云
フナラバ、賣上ニ依ツテ課稅サレルコトハ
何等差支ヘナイコトデハナイカ、銘柄ガ違
ハウガ、惡イ酒ヲ高ク買ハウガソレハ買フ
人ガ滿足シテ買ツタナラバ、其ノ賣上金額
ニ依ツテ課稅スルコトハ何等差支ヘナイコ
トデハナイカ、技術的ニ於テ賣上稅ヲ認メ
ナガラ、從價稅ガ行ハレナイト云フ大藏大
臣ノ御說明ハ、私ニハドウシテモ會得ガ出
來ナイノデアリマス、其ノ點ヲ今一應御伺
シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=52
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053・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 酒ノ稅金ハ從來ノ沿革カ
ラ考ヘマシテモ、我國ニ於ケル重大財源ノ
ツデゴザイマス、ソレデ是ハ物品稅トシテ物
品稅中ニ編入ハ致シテ居リマスガ、課稅ノ
實際ハ酒造稅ト非常ニ似テ居ルノデゴザイ
マシテ、結局製造場ヲ移出スル時ニ納額ノ
計算ヲ致スノデアリマス、其ノ根本ノ課稅
ハヤハリ造石稅ヲ基礎トスルモノデアリマ
シテ、ソレヲ物品稅ニ繰入レマシタノハ、
當業者ノ希望シテ居リマス庫出稅ヲ此ノ物
品稅ニ依ツテ加味シテ居ルノデアリマス、
課稅ノ實際査定ノ狀況ハ今日一面ニ於テ酒
造稅トシテ課稅シテ居ルノデアリマスカ
ラ、其ノ方ノ實際ノ課稅ノ狀況ヲ其ノ儘執
リマシテ、ソコデ物品稅ニ依ツテ納期ノ加
減ヲシテ居ルヤウナ實質ヲ含ンデ居ルト思
フノデアリマス、隨テ此ノ分ダケ引離シマ
シテ從價稅ニ致スト云フコトハ實行上ニ
於キマシテモ相當ノ困難ガアルト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=53
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054・武田徳三郎
○武田委員 私ニハドウモ大臣ノ仰セガ分
ラナイ、技術上ノ困難ダト云ツテモ、酒ト
他ノ品物ニ賣上稅ヲ課スル上ニ於テドウシ
テ區別ガアルデセウカ、賣上稅ニシタ爲ニ
ドウ云フ困難ガアルデアリマセウカ、私
先程申上ゲタ通リ造石稅ソレ自身モ從價稅
ノ賣上稅ニシタ方ガ宜シイト思フ、又其ノ
方ガ餘計稅ガ取レル、今日ノ一般ノ酒造家
ガ負擔シテ居ルノヲ標準ト致シマシテ賣上
稅ニ致シマスナラバ、思フニ標準ノ酒ヲ中
心トシ、大體同ジ率ニシテモ五割位ハ餘計
ニナルト思フ、今日之ヲ賣上稅ニ致シマス
レバ、同ジク此ノ酒ト云フモノハ大體奢侈
品ト認メラレテ居ルノデアリマスカラ、奢
侈ヲ抑制シ、購買力ヲ奪フト云フ意味ニ於
テ私ハ適フノデハナイカ、元來此ノ物品稅
ト云フモノハ、奢侈ヲ抑制シ、購買力ヲ奪フ
ト云フ趣旨カラ出タモノデアリマスルカラ、
賣上稅ガ實行サレルモノデアリマスルナラ
バ、酒ト云フ品物ダケニ賣上稅ガ課セラレ
ヌト云フ技術ノ上困難ト云フコトハドウシ
テモ私ニハ一寸諒解ガ出來ナイ、私ハ必ズ
シモ既ニ今日御提案ニナツテシマツテ居ル
ノヲ修正シヨウトカ、修正ナサツタラドウ
カトハ申サナイ、兎ニ角來ルベキ稅制整理
ニ於テ之ヲ御考ニナル御意見ガアルカナイ
カ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、若シ賣上
稅ニスルト技術上困難ガアルト云フナラ
バ、ドウ云フ困難ガアルノデアリマセウ
カ、其ノ點ヲ御說明願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=54
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055・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 酒ハ製造場ヲ移出致シマ
ス時ニ課稅致スノデゴザイマス、酒ヲ製造場
以外ニ小賣ニ於テ課稅致スト云フコトハ、
殆ド不可能デアルト思フノデゴザイマス、
隨テ製造場ヲ移出スル時ニ課稅ヲスル、斯
ウ致サザルヲ得ナイト思フノデアリマス、
其ノ時ニ從價稅ニ依ツテ課稅致スト云フコ
トモ、ソレガ絕對ニ出來ナイト云フコトデ
ハナイト思フノデゴザイマスガ、併シ之ニ
ハ相當ナ困難ノ伴フト云フコトハ、酒ノ稅
金ハ若シモ他ニ何カ同ジヤウナ販賣會社デ
モアリマシテ、ソレニ庫ヲ出ル時ニ安ク賣
ツタト云フノデ安ク課稅ヲスルト云フ譯ニ
モ行カヌト思フノデアリマス、ソレデ之ニ付
テハ色々私ノ方デモ從來〓究致シ、又當業
者モ〓究致シタノデアリマスガ、中々名案
ガゴザイマセヌノデ、結局今日ノ從量稅ノ
方ガ寧ロ宜カラウト云フコトデ今實行致シ
テ居ルノデゴザイマス、稅ノ理窟カラ行キ
マスレバ從價稅ノ方ガ宜シウゴザイマス
ガ、ドウモ實際上從量稅ノ方ガ宜シイ、ソ
レナラバ一體他ノモノニ從價稅ヲ施行シテ
置イテ、酒ダケニ從量稅ヲ施行スルノハド
ウ云フ譯ダ、斯ウ云フ御尋デゴザイマスガ、
酒ノ稅ハ先稅モ申シマシタ通リ昔カラノ重
要財源デゴザイマシテ、之ニ對シテ新シク
課稅ヲシテ其ノ財源ニ動搖ヲ來スト云フコ
トハ今日ノ場合忍ビ難イノデゴザイマスノ
デ、勢ヒ-或ハ多少當局トシテハ臆病ナ
考カモ知レマセヌガ、從來ノ稅額ト云フモ
ノニ相當重要性ヲ認メテ居リマスノデ、當
分從來ノ行キ方デ行ツタナラバ如何デアラ
ウカ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ルノデゴザ
イマスガ、今後ニ於テ考ヘロト云フ御註文
デゴザイマシテ、其ノ點ニ付テハ更ニ考究
スルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=55
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056・武田徳三郎
○武田委員 モウ一點デ私ノ大藏大臣ニ御
尋スルノハ終ルノデスガ、一ツ御許シヲ願
ヒマス、私ハ飮食稅ノ性質ニ付テ大藏大臣
ノ御說明ヲ得タイト思ツテ居リマス、此ノ
度消費稅ノ遊興稅竝ニ飮食稅ハドウ云フ趣
旨カラ中央ニ移管サレタノデアルカト云フ
先日ドナタカノ御質問ニ對シテハ、大藏大
臣ハ衣〓住ト三ツノ中ノ是ハ食ニ當ルノ
デ、衣ニ對シテモ消費稅ヲ課ケ、住ニ對シ
テモ建築稅ノヤウナ消費稅ヲ課ケテ居ルノ
デアルカラ、ソレトノ釣合上衣〓住總テニ
對シテノ奢侈的ノ消費ヲ抑制スルト云フ觀
念カラ中央移管ヲシタノデアル、斯ウ云フ
御說明デアツタノデアリマス、サウ致シマ
スルト、私ハ此ノ觀念カラ申シマスレバ家
屋稅ヲ中央ニ同時ニ移管ヲサレナケレバ理
窟ガ合ハヌノデハナイカ、斯ウモ實ハ考へ
テ居ツタノデアリマス、サウ申シマスト是
ハ奢侈的ノモノヲ抑ヘルト云フ意味合カラ
言ヘバ、新ニ建築スルモノニ對シテ抑ヘレ
バ宜イト云フ御考デアルカモ知レマセヌ、
併シ奢侈的ノ物ニ稅ヲ課ケルト云フ趣旨カ
ラ申シマスルナラバ、是カラ新ニ建築スル
モノノミデナク、從來建築サレタモノデ其
ノ生活必要程度以上ノ奢侈的ナモノデアル
ナラバ、建築ト雖モ之ニ稅ヲ課ケテ宜イ筈
デアルト思ヒマス、況ヤ元來家屋稅ト云フ
モノハ稅ノ原理カラ申シマスルナラバ是ハ
財產ニ對スル稅ト致シマシテ、ドウシテモ
理論的ニ言ヘバ中央ニ置カナケレバナラヌ
稅デアルト思ヒマス、其ノ理論的ナコトハ
兎モ角トシテ、私ハ其ノ點ニ於テモ一ツノ
矛盾ガアルヤウニ思フノデアリマスガ、又
飮食稅ニ對シテモ此ノ奢侈的消費ヲ抑ヘル
ト云フ意味カラ言ツテ、觀念上ニ矛盾ガア
リハシナイカト思フ、成程料理屋ニ於テ飮
食スル、或ハ待合ニ於テ飮食スル、或ハ藝
妓ヲ聘スト云フヤウナコトハ、是ハ明ニ議
論ノ餘地ナク奢侈的消費デアリマス、併シ
ナガラ旅人宿ニ泊ルト云フコトハ、是ハ國
民ノ經濟活動ノ必要上旅ヲシテ宿屋ニ泊ル
ト云フコトガ、宿屋ニ泊ル人ノ七八分デア
ルト思フ、唯遊山ニ騒ギ廻ツテ宿屋ニ泊ル
ト云フ人ハ是ハ奢侈的ニ宿屋ニ泊ルノデア
リマスガ、サウ云フ人ハ極メテ少イノデハ
ナイカト私ハ思フ、然ラバ此ノ營業者ハ營
業トシテ利益ヲ得ルモノニ付テハ所得稅ヲ
課ケ、又其ノ收益ニ對シテハ收益稅ヲ取ツ
テ居ルノデアリマスカラ、奢侈的意味ノナ
イモノニ課稅ヲスルト云フコトハ、本來此
ノ大臣ノ御說明ノ趣旨カラ申スト、其ノ飮
食稅ヲ宿屋ノ飮食ニ課ケルト云フコトハド
ウモ私ハ觀念上ソコニ矛盾ガアリハシナイ
カト、斯樣ニ考ヘルノデアリマスガ、此ノ
點ニ付テ大臣ノ御意見ヲ承リタイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=56
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057・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 宿屋ニ宿泊致シマスコト
ハ、是ハ別ニ普通ノ場合ニ於テハ奢侈デハ
ナイト存ジマスガ、同ジヤウナ行爲デ又其
ノ事ガ必要ナコトデアリマシテモ、一定金
額以上ニ消費ヲスル、一定金額以上ニ物ヲ
買フ、斯ウ云フコトヲ奢侈ト申シマシタラ
多少語弊ガアリマスガ、此ノ際租稅ヲ負擔
スル所ノ能力ノアル消費行爲デハアルマイ
カト斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=57
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058・川崎克
○川崎委員長 ソレデハ本日ハ是ニテ散會
ヲ致シマスガ、明日ハ午前十一時カラ開會
ヲ致サウト考ヘマス、就テハ明日ハ大藏大
臣ハ終日出ラレルヤウナ豫定ニナツテ居リ
マスカラ、成ルタケ殘餘ノ通〓ノ方々ニ其
ノ機會ヲ與ヘタイト存ジマスノデ、理事ノ
方ニ後ニ御殘リヲ願ヒマシテ御協議ヲ申上
ゲタイト思ヒマス、ドウゾ御殘リヲ願ヒマ
ス、ソレデハ是ニテ散會致シマス
午後六時散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X00719390303&spkNum=58
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