1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年二月二十一日(火曜日)
午後一時十二分開議
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議事日程 第十三號
昭和十四年二月二十一日
午後一時開議
第一 鑛業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 宗教團體法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 北海道土功組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 公證人法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(國勢調査に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 支那事變特別税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 臨時利得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 臨時租税措置法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 昭和十二年法律第五十七號中改正法律案(鐵の輸入税免除に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 大正十四年法律第五十一號中改正法律案(關東州の生産に係る物品の輸入税免除等に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 民族優生保護法案(八木逸郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報〓ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
保險業法改正法律案
臨時資金調整法中改正法律案
國境取締法案
(以上二月二十一日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第二號)昭和十三年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第一號)昭和十三年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
鑛業法中改正法律案
(以上二月十七日提出)
支那事變特別稅法中改正法律案
臨時利得稅法中改正法律案
臨時租稅措置法中改正法律案
(以上二月十八日提出)
一去十八日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
宗〓團體法案
c
北海道土功組合法中改正法律案
公證人法中改正法律案
明治三十五年法律第四十九號中改正法律
案(國勢調査ニ關スル件)
一昨二十日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
花柳病豫防法中改正法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
檢査計理士法案
提出者
森田重次郞君小山倉之助君
野田文一郞君內ケ崎作三郞君
裁判所構成法中改正法律案
提出者
岡本實太郞君高橋義次君
原夫次郞君八並武治君
松定吉君原惣兵衞君
山本芳治君牧野良三君
牧野賤男君名川侃市君
立川平君中村高一君
金井正夫君
辯護士法中改正法律案
提出者
池田〓秋君今成留之助君
公立商船學校國營移管ニ關スル建議案
提出者立川平君
長野市ニ高等工業學校設置ニ關スル建議
案
提出者丸山辨三郞君
支那事變召集解除兵ニ生業資金特別融通
竝生業維持費增額ニ關スル建議案
提出者
井上良次君前川正一君
十文字町鳴子町間鐵道敷設ニ關スル建議
案
提出者
土田莊助君信太儀右衞門君
中川重春君小山倉之助君
內ヶ崎作三郞君村松久義君
我カ國號ノ稱呼統一ニ關スル建議案
提出者佐藤與一君
戰病死者町村葬ニ關スル郵便物無料取扱
ニ關スル建議案
提出者古島義英君
毛皮產業振興促進ニ關スル建議案
提出者
深澤吉平君松浦周太郞君
野岩羽鐵道速成ニ關スル建議案
提出者林平馬君
忠靈塔建設費國庫補助ニ關スル建議案
提出者
田中万逸君木檜三四郞君
堀内良平君本田彌市郞君
戰役殊勳者優遇ニ關スル建議案
提出者
高橋義次君武知勇記君
眞鍋儀十君松永東君
戰役殊動者優遇ニ關スル建議案
提出者
小高長三郞君本田義成君
田中亮一君
靑年禁酒法制定反對ニ關スル建議案
提出者
前田房之助君武知勇記君
田中武雄君今成留之助君
船川港及土崎港第二期修築工事施行ニ關
スル建議案
提出者中川重春君
(以上二月十六日提出)
平小名濱間鐵道線路決定及工事促進ニ關
スル建議案
提出者星一君
(以上二月二十日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
靑年〓育振興ニ關スル質問主意書
提出者
佐藤與一君齋藤直橘君
(以上二月十六日提出)
一去十六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第四部選出豫算委員星一君
第八部選出豫算委員馬場元治君
第九部選出豫算委員名川侃市君
一去十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
靑年學校〓育費國庫補助法案(政府提出)
委員
野村嘉六君武知勇記君
長野高一君多田滿長君
手代木隆吉君佐藤與一君
長野長廣君曾和義弌君
一ノ瀨俊民君田中源君
庄司一郞君田子一民君
猪野毛利榮君河上哲太君
簡牛凢夫君坂本宗太郞君
河合義一君椎尾辨匡君
裁判所構成法改正法律案(野田文一郞君
外二十六名提出)外一件委員
野田文一郞君高橋義次君
服部英明君仲井間宗一君
南雲正朔君仲西三良君
今成留之助君熊谷直太君
高橋泰雄君松木弘君
牧野良三君山本芳治君
名川侃市君崎山嗣朝君
井阪豐光君金井正夫君
松永義雄君小山亮君
一去十六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
軍用自動車檢査法案(政府提出)委員
辭任佐藤謙之輔君補闕信太儀右衞門君
辭任愛野時一郞君補關伊藤東一郞君
辭任池本甚四郞君補關多田滿長君
辭任山田〓君補闘山田順策君
辭任中村高一君補關前川正一君
人事調停法案(政府提出)委員
辭任野田文一郞君補關則元卯太郞君
辭任菊地養之輔君補關中村高一君
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
委員
辭任高岡大輔君補關石坂繁君
一去十七日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如
第四部選出
豫算委員高橋熊次郞君(星一君補闕)
第八部選出
豫算委員大石大君(馬場元治君
補闕)
第九部選出
豫算委員原惣兵衞君(名川侃市君
補闕)
一去十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
靑年學校〓育費國庫補助法案(政府提出)
委員
委員長野村嘉六君
理事
武知勇記君長野高一君
曾和義弌君一ノ瀨俊民君
裁判所構成法改正法律案(野田文一郞君
外二十六名提出)外一件委員
委員長熊谷直太君
理事
野田文一郞君高橋義次君
高橋泰雄君山本芳治君
一去十七日特別委員理事補闕選擧ノ結果左
/四
軍用自動車檢査法案(政府提出)委員
理事田村秀吉君(理事佐藤謙之輔
君去十六日委員辭任ニ付其ノ
補闘)、
理事伊藤東一郞君(理事愛野時一郞
君去十六日委員辭任ニ付其ノ
補關)
一去十七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
軍用自動車檢査法案(政府提出)委員
辭任藤生安大郞君補關伊東岩男君
一去十八日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第三部選出決算委員長谷長次君
一昨二十日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第三部選出
決算委員山崎常吉君(長谷長次君補
關
一昨二十日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
-シ
軍用自動車檢査法案(政府提出)委員
辭任三木武夫君補關今井新造君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、朝鮮事業公債法中改
正法律案ノ委員長ヨリ、本日本會議中委員
會ヲ開キタイトノ申出ガアリマス、之ヲ許
可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=3
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004・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際小山谷藏君提出、
上海ニ於ケル治安維持ニ關スル緊急質問ヲ
許可セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス-政府ハ此ノ議事日程變更ニ同意セラ
レマシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、
上海ニ於ケル治安維持ニ關スル緊急質問、
之ヲ許可致シマス-提出者小山谷藏君
上海ニ於ケル治安維持ニ關スル緊急質
問(小山谷藏君提出)
〔小山谷藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=6
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007・小山谷藏
○小山谷蔵君 只今議題トナリマシタ上海
ニ於ケル「テロ」事件ニ關スル緊急質問ヲ進
メルニ先ダチマシテ、今囘ノ「テロ」事件ノ
犠牲トナリマシタ維新政府外交部長陳籙氏
ニ對シテ、帝國國民ノ名ニ於テ玆ニ深甚ナ
ル弔意ヲ表明致シタイト存ジマス(拍手)政
府ニ本件ニ關スル質疑ヲ進ムルニ先ダチマ
シテ、此ノ度陳外交部長ガ「テロ」團ノ犠牲
トナラレタ其ノ事件ヲ繞ル特異性ニ付テ先
ヅ〓究シテ見タイト存ジマス、其ノ第一ハ
時デアリマス、第二ハ場所デアリマス、第
三ハ舊正月ト云フ時期デアリマス、第四ハ
此ノ舊正月ト云フ時期ニ於テハ、必ズ何カ
ノ事件ガ起ルデアラウト云フ流言ガ、可ナ
リ廣ク流布サレテ居ツタト云フ事實デアリ
やく、第五ハアノ事件ハ計畫的ニ且ツ集團
的ニ實行サレタト云フ事實デアリマス、第
六ニハ十五人ト云フ集團的「テロ」團ガ一人
モ逮捕サレテ居ラヌト云フ事實デアリマス
先ヅ上海電報ノ報ズル所ニ依リマスト、
事件ハ二月十九日午後七時、共同租界ノ「エ
キステンション」デアリマスル愚園路ト云
フ場所ニアル陳氏ノ私邸ニ於テ行ハレタ、
二月十九日午後七時ト云フ時ハ、白晝トハ
申セマセヌケレドモ、マダ薄暮デアリマシ
テ、若シ租界ノ工部當局ガ相當ノ注意サヘ
シテ居ツタナラバ、斯ル「テロ」團ヲ取締ル
ノニハ決シテ不便ノナイ時刻デアツタト云
フコトヲ知ラナケレバナリマセヌ、第二ニ
アノ場所ハ吾々ノ知ル所ニ依リマスト、上
海ニ於ケル高等住宅地トモ申スベキ極メテ
閑靜ナ、他ノ所謂商業地區デアルトカ、或
ハ支那市街トハ全然其ノ趣ヲ異ニシタ、洵
ニ閑靜ナ場所デアリマシテ、場所柄ト云ヒ、
若シ警察當局ガ多少意ヲ用ヒルト云フコト
ガアリマシタナラバ、其ノ取締ニハ極メテ
便利ナ場所デアルト云フコトヲ知ラナケレ
バナリマセヌ
第三ニ舊正月ヲ期シテ、卽チ二一月十九日
ヲ期シテ、何カ「テロ」事件ガ起ルデアラウト
云フ流言ハ、獨リ上海バカリデハアリマセ
ヌ、東京ニ居ル吾々ノ耳ニスラ、此ノ流言
ガ可テリ廣ク飛バサレテ居ツタト云フニ至
ツテハ、上海工部局ノ當局ガヨモヤ之ヲ聞
カナイト言フコトハ出來ナイデアラウト信
ジマス、又斯ル流言ガ斯ノ如ク廣ク流布サ
レルニ付キマシテ、上海ニ於ケル我ガ政府
當局ヨリ工部局警察當局ニ對シテ相當ノ警
告ヲ發シタト云フコトハ、吾々モ熟知スル
所デアリマス、卽チ斯樣ナ狀況ノ下ニ於テ、
二月十九日必ズヤ斯ノ如キ大事件ガ勃發ス
ルデアラウト云フ流言ガ、可ナリ廣ク流布
サレテ居リ、我ガ政府當局ヨリハ之ニ對シ
テソレニ相當シタ警告ヲ彼等ニ發シテ居ツ
タニ拘ハリマセズ、斯ル殘虐事件ガ共同租
界ノ眞中デ、極メテ閑靜ナ愚園路ト云フ高
等住宅地域ニ於テ、午後七時恰モ來客ト對
談中ノ陳外交部長ガ、遂ニ其ノ犧牲トナラ
レタト云フ事件ハ、是ハ吾々日本國民トシ
テ斷ジテ輕々ニ看過スルコトノ出來ナイ問
題デアルト言ハナケレバナリマセヌ(拍手)
今囘不幸ニシテ陳外交部長ニ對シテ斯ノ如
キ狀況ノ下ニ、此ノ「テロ」行爲ガ行ハレタノ
デアリマスルガ、皇軍ガ上海ヲ占領致シマ
シテ以來今日ニ至ルマデ、斯ル「テロ」行爲
ガ頻々トシテ繰返サレテ來タコトハ、是亦
明ナ事實デアリマス(拍手)中ニモ支那ノ大
政治家デ、將ニ來ラントスル更生支那ノ大
總統候補者ト尊敬サレテ居ツタ唐紹儀氏ノ
如キモ、其ノ犠牲トナツタコトハ是亦顯著ナ
ル事實デアリマス、斯ノ如クシテ或ハ維新
政府ノ要人、或ハ上海市政府ノ要人、民間
ノ有力者、我ガ日本ノ同胞、幾度カ大同小
異ノ「テロ」團ノ襲擊スル所トナツテ、爲ニ
生命ヲ失ヒ、或ハ重傷ヲ負ウタ事件ハ、吾
吾ノ知レル所ダケデモ一一十數件、或ハ三十
一件ニモ及ンデ居ルノデアリマス、斯ル問題
ノ度每ニ我ガ政府トシテハ、彼等上海工部
局當局ニ對シテ相當ノ警告ヲ發シ、其ノ取
締ヲ要求サレタト云フコトニ付テハ、吾々
亦熟知スル所デアリマス、然ルニ繰返シ繰
返シ斯ノ如キ事件ガ頻發スルト云フコトニ
對シテ、政府ハ何ト御考ニナツテ居ルノデ
アリマセウ、思フニ我方ヨリノ交涉ニ對シ
テ彼等ハ何ト答ヘタカ、是ハ察スルニ難ク
ナイノデアリマス、固ヨリ工部局警察當局
ノ責任デアリマスルカラ、彼等トシテハ十
分ニ取締ヲスルト言ハレタニ違ヒナイト信
ジマスルガ、此ノ機會ニ私ハ外交當局ニ要
求致シマス、卽チ斯ル事件ガ勃發スルコト
ニ對シテ、我ガ政府ヨリ如何ナル交涉ヲサ
レタノデアリマセウ、其ノ交涉ノ要領、又
之ニ對スル彼等工部局當局ノ答辯ハ何ト答
ヘタノデアリマセウ、而シテ其ノ答辯ガ果
シテ如何ナル程度マデ實行サレテ居ツタ
カ、此ノ如何ナル程度マデ實行サレテ
居ツタカト云フコトガ、極メテ重要ナル要
點デアルト信ジマス、出來ル限リ詳細ニ其
ノ點ニ付テ政府ノ說明ヲ要求致スノデア
リマス、此度勃發致シマシタ事件、竝ニ過
去ノ大同小異ノ事件ノ經過ヲ考察致シ
マスルト、吾々日本人トシテハ工部局當局
ニ治安ヲ確保スル能力ナイモノデアルカ、
或ハ假令能力アリト致シマシテモ、之ヲ達
成シヨウトスル誠意ナキモノト見ルカ、又
蔣介石政權ノ〓シ者デアル彼等「テロ」團ト、
工部局當局トノ通謀ノ結果、茲ニ至ツテ居
ルノデハナイカトサヘ疑ハレル嫌ガアルノ
デアリマス(拍手)政府ハ此ノ點ニ關シテ工
部局當局ヲ無能ト見テ居ラレルノカ、又誠
意ナキモノト見テ居ラレルノデアラウカ、
又蔣政權ト租界當局トノ所謂通謀ニ依ツテ
玆ニ至リシモノナリト見テ居ラレルカ、其
ノ見解ヲ此ノ機會ニ明ニシテ戴キタイト思
フノデアリマス、若シ無能デアルト云フナ
ラバ事ハ比較的ニ簡單デアリマス、卽チ彼
等ニ力ガナイ、能力ガナイト云フノデアリ
マスルカラ、我方ニ有リ餘ツテ居ル所ノ
カ、能力ヲ貸シテ、所謂共同警備ニ當レバ
ソレデ宜シイト思ヒマス、比較的ニ問題ハ
簡單デアルト信ジマスルガ、若シ誠意ナク
シテ其ノ取締ガ出來ナイトカ、更ニ列國ト
通謀シテ斯ノ如キ事件ガ頻々トシテ勃發ス
ルトカ云フニ至ツテハ、事ハ極メテ重大ダ
ト言ハナケレバナリマセヌ、若シ政府ノ見
解ガ、誠意ナクシテ事玆ニ至ツテ居ルノデ
アル、或ハ列國ト通謀ノ結果斯ノ如キ事
態ガ頻發スルト御覽ニナツタ場合、之ニ對
シテ政府ハ如何ナル處置ヲ御執リニナラウ
ト御考ニナツテ居ルノデアリマセウカ、私
ハ問題ハ極メテ重大デアルト信ジマス、吾
吾國民トシテハ、若シ斯ノ如キ事態アリト
致シマシタナラバ、遺憾千萬デハアリマス
ルケレドモ、所謂租界問題ノ根本的解決ト
云フ斷乎タル決意以外、解決ノ途ハナイト
信ズルノデアリマス(拍手)此ノ點ハ極メテ
重大デアリマスルカラ、平沼總理大臣ノ御
答辯ヲ要求致シマス
更ニ吾々ノ知レル所ニ依リマスルト、從
來我ガ政府當局トシテハ、斯ル事件ノ豫防
阻止、又再發ヲ防ガン爲ニ、最善ノ努力ヲ
講ゼラレツツアルモノト承知シテ居ルノデ
アリマス、併シ幾度抗議ヲ繰返シテ見テモ
何ノ役ニモ立クヌ、否、却テ益〓惡化シツツ
アルト云フ今日ノ事態ヲ見ルニ至リマシタ
以上ハ、此ノ儘放任スルコトハ斷ジテ出來
マセヌ、ソコデ抗議ヲ繰返シテ見タ所ガ何
ノ役ニ立タヌト致シマシタナラバ、殘サレ
タ一ツノ手段ハ自衞權ノ發動デアルト信ズ
ルノデアリマス、私ガ申上グルマデモナ
〃、自衞權ノ發動ハ條約ヤ法律ニ依ツテ束
縛サルベキモノデハ斷ジテアリマセヌ、外
務大臣ハ此ノ點ヲ何ト御覽ニナツテ居ルノ
デアリマセウ、外交當局ノ長キニ亙ル熱心
ナル御努力ニモ拘ラズ、何ノ效果モナシト
スルナラバ、之ニ對シテ自衞權ノ發動ニ依
ツテ、日本ノ實力ヲ以テ之ヲ阻止スル以外
途ハナイト存ジマス、從來上海其ノ他外國
租界ニ於ケル政府當局ノ執リ來リタル態度
ハ、條約或ハ法律ト云フ牆ニ拘束サレテノ
吾々國民ノ眼カラ見ルト、甚ダ遺憾ノ點ガ
多イヤウニ思ウタノデアリマスガ、只今申
上ゲタ自衞權ノ發動ハ法律以上デアリ、條
約以上デアルト吾々ハ信ズルノデアリマス、
此ノ點ニ對スル政府ノ御見解ヲ伺ヒタイノ
デアリマス、若シ私等ノ解釋ト同一デアル
トスルナラバ、更ニ進ンデ之ヲ實行スルノ
決意アリヤ否ヤ、是非明ニシタイト存ジマ
ス(拍手)
更ニ海軍大臣ニ御尋致シタイ一點ハ、上
海警備ノ現狀デアリマス、吾々ノ知レル所
ニ依リマスト、上海共同租界ノ警備ハ、我
ガ日本ハ固ヨリデアリマスガ、英國其ノ他
所謂外國關係ノ軍隊ガ警備區域ヲ分擔シ
テ、各〓其ノ警備ノ任ニ當ツテ居ル、而シ
テ此ノ所謂警備隊ノ主任ト申シマスルカ、
最高指揮官トモ云フベキ立場ニ、我ガ海軍
陸戰隊指揮官ガ居ラレルト承知シテ居ルノ
デアリマス、換言スレバ我ガ海軍陸戰隊ノ
最高指揮官ガ、上海租界ノ所謂警備最高指
揮官デアルト云フガ如キ形ニ見エルノ
デアリマスガ、其ノ所謂警備ノ實情ガ果
シテドウナツテ居ルカ、又英國其ノ他伊太
利等ノ警備區域ニマデ、最高指揮官ノ權限
ガ及ブモノデアリヤ否ヤ、若シサウデアル
トスルナラバ、此度行ハレタガ如キ事件ニ
付テハ、先程來色々御質問致シマシタ、海
軍警備隊ノ最高指揮官ニモ其ノ責任ノ幾分
モ分擔セシメナケレバナラヌ筈ノヤウニ見
エルノデアリマスガ、是等ニ對スル政府當局
ノ御見解ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
次ニ陸軍大臣ニ御尋致シタイコトハ、
上海ノ此度ノ如キ「テロ」行爲ハ、成程兵
器ハ用ヒナイ、又正規ノ兵隊デハアリマ
セヌケレドモ、今日蔣政權ガ到ル處デ展
開シテ居リマスル所ノ「ゲリラ」戰ノ延長デ
アルト言ハナケレバナリマセヌ、否、山西、
河北方面ニ於ケル所謂匪團ノ我國ニ對スル
打擊ヨリハ、アノ「テロ」團ノ行爲ノ方ガ、
遙ニ大ナル打擊ヲ、而シテ妨害ヲ與ヘツツア
ルト信ジマス、ノミナラズ彼等ヲシテ所謂
佛蘭西租界、共同租界ヲ巢窟トシテ、斯ノ
如キ事態ヲ繰返サシテ居ル以上ハ、軍ノ行
動ニ對シテモ大ナル支障ヲ來シツツアルト
云フコトハ、吾等國民ノ熱知スル所デアリ
マン、卽チ斯ル事件ハ「ゲリラ」戰ト同一ナ
リト陸軍當局ハ御覽ニナツテ居ラレルカ否
ヤ、若シ是ガ「ゲリラ」戰デアルト御覽ニナ
ツテ居ルナラバ、匪賊討伐ト同樣ニ之ヲ討
伐スル、卽チ軍事行動ヲココニマデ進メル
ト云フコトガ、當然附イテ來ナケレバナリ
マセヌ(拍手)之ニ對スル御見解竝ニ當局ノ
御決意如何ト云フ點ニ付テ、玆ニ御言明ヲ
シテ戴キタイト存ジマス
以上數點ニ關シ政府ハ率直簡明ナル答辯
ヲ與へ、吾々國民ニ對シテ安堵ノ出來ルヤ
ウナ御言明アランコトヲ要求致シマシテ私
ノ質問ヲ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 平沼總理大臣
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=8
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009・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 小山君ヨ
リ御尋ノ點ニ對シマシテ、私ヨリ大體ノコ
トヲ御答致シマス、由來共同租界ハ支那ニ
於ケル秩序ガ不十分デアリマスル爲ニ、外
國人ノ生活安定地帶トシテ生レ出デタモノ
デゴザイマスルガ、最近ノ如ク却テ租界ヲ
シテ「テロ」行爲ノ根據地タラシムルガ如キ
觀ヲ呈スルニ至リマシタルコトハ、洵ニ遺憾
至極ノコトデアリマス(拍手)此ノ上トモ斯
ノ如キ事態ガ改ラザル以上ハ、東亞新秩序
建設ノ爲ニ、今後治安維持ノ方法ニ關シマ
シテ、根本的ニ考慮ヲシナケレバナラヌト考
ヘテ居リマス(拍手)唯小山君ノ御尋ノ租
界ノ返還ノコトハ、是ハ支那全體ニ亙リマ
スル所ノ一般ノ見地カラ考究スベキコトデ
アリマス、今囘ノコトニ付キマシテ考慮ス
ベキコトハ、治安維持ノ方法ニ關シテ根本
的ノ對策ヲ講ズル、此ノ事ニ御承知ヲ願ヒ
タイノデゴザイマス(拍手)其ノ他個々ノ問
題ニ關シマシテハ、ソレ〓〓主管大臣ヨリ
御答ヲ致シマス(拍手)
〔國務大臣有田八郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=9
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010・有田八郎
○國務大臣(有田八郞君) 元來天津、上海
等ニ於キマシテ、租界ト云フ特異ノ地域ヲ
濫用シマシテ、蔣政權分子ヤ共產黨ノ暗躍
シマスルコトハ、默過シ得ザル所デアリマ
シテ、殊ニ上海租界内ニ於キマスル治安ノ
狀況ハ、政府ニ於キマシテモ從來非常ナ關
心ヲ以テ跳メテ來タ所デアリマス、我ガ出
先官憲ニ於キマシテハ、中央ノ方針ヲ體シ
隨時適宜ノ對策ヲ講ズルコトヲ怠ラズ、殊
ニ本年一月以來租界內ノ治安ガ再ビ計畫的
ニ攪亂セラルル狀況ヲ看取致シマシ
テ、在上海日本總領事ハ、本月十日共同
租界及ビ佛國租界ノ當局ニ對シテ、嚴重取締
方ヲ要望致シタノニ對シテ、兩租界ノ當局ハ
其ノ努力ヲ約束致シタノデアリマス、然ル
ニモ拘ラズ今囘陳外交部長暗殺ノ如キ重大
事態ノ發生ヲ見ルニ至リマシタコトハ、有
ユル意味ニ於キマシテ遺憾ト存ズル次第デ
アリマス、昨年一月租界內行進中ノ我ガ軍
隊ニ對シ爆彈ガ投擲セラレマシタ事件ヲ契
機ト致シテ、在上海日本總領事ハ共同租界
當局ニ對シ、工部局警察內ニ於ケル日本人
警察官ヲ增强シ、其ノ地位竝ニ待遇ヲ改善
シ、相當ノ實權ヲ付與スルコト等ヲ要求致
シタノデアリマス、右要求ニ付キマシテハ複
雜ナル折衝ノ結果、客年四月工部局側ヨリ
或ル程度我方ノ要求ヲ容認シタル囘答ニ接
シタノデアリマス、然ルニ其ノ後工部局側
ニ於キマシテハ、警察ニ於ケル日本人高級
職員トシテ一名ノ特別警視副總監ヲ任命シ
タル以外、何等ノ措置ヲ講ズルコトナキ狀
態ニアリマシタ爲ニ、客年十一月ニ至リ在上
海日本總領事ハ改メテ工務局警察ノ改善、能
率增進ヲ眼目トシタル提案ニ付テ折衝ヲ再
開シ、目下交涉繼續中ナノデアリマスルガ、
恰モ此ノ際今囘ノ如ク親日支那要人暗殺ノ
ミナラズ、直接我ガ在留民ヲ目標トスル
兇行事件ガ惹起セラレマシタコトハ甚ダ遺
憾ニ堪ヘマセヌ、政府ハ早速我ガ現地當局
ニ對シ適切有效ナル措置ヲ講ズベキ訓令ヲ
發シタノデアリマスルガ、具體的對策ニ付
テハ未ダ報〓マデニ至ツテ居ラナイノデア
リマス、何レニ致シテモ、此ノ上トモ斯ノ
如キ事態ガ改マラザルニ於キマシテハ、只
今總理大臣カラ述ベラレマシタヤウニ、今
後ノ治安維持ノ方法ニ關シ、根本的ニ考慮
セザルヲ得ズト考ヘテ居ルノデアリマス(拍
手)又自衞權ニ付キマシテハ、自衞ノ必要ノ
存スル以上、何モノモ其ノ發動ヲ阻碍スル
コトガ出來ナイモノト信ジテ居ルノデアリ
マス(拍手)
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=10
-
011・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 上海ニ於ケル海
軍陸戰隊ノ警備ノ現狀ニ付キマシテ〓略申
述ベマス、第一ハ警備區域デアリマス、御
承知ノ通リ共同租界ハ日、米、伊太利、英
吉利、是ダケノ軍隊ガ擔當シテ居ルノデア
リマシテ、我ガ海軍ノ擔當區域ハ蘇州河ノ
「ガーデン·ブリッヂ」カラ、蘇州河ヲ經マシテ
〓ネ以東ノ地區デアリマス、警備ヲ擔任致
シマス所ノ陸戰隊指揮官ハ、日本ノ擔當ス
ル警備區域ノ警備ノ指揮官デアリマシテ、
他國ノ軍隊ノ指揮官トハ橫ノ連絡ハ致シテ
居リマスケレドモ、縱ノ連絡ハゴザイマセ
ヌ、隨ヒマシテ他國ノ軍隊ヲ日本ノ陸戰隊
指揮官ガ指揮スルト云フヤウナコトハナイ
ノデアリマス(拍手)
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=11
-
012・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 租界ニ於テ「テ
ロ」事件ガ頻發スルト云フコトニ依ツテ
直チニ之ヲ戰場ト看做スト云フコトハ、サ
ウ簡單ニハ參ラヌト思ヒマス、併シナガラ
租界ニ於ケル所ノ斯ノ如キ「テロ」事件ガ頻
發致シマシテ、我方ヨリノ抗議ニ對シテ租
界當局ハ陳辯是レ努メマスルケレドモ、治
安維持ヲ實行シナイ、是ハ治安維持ノ能力
ノ無イト云フヨリハ、誠意ガナイデハナイ
カト、斯ウ思ハレルノデアリマスガ、租界
ニ於テ日本人ノ生命ノ保障ガ出來ナイト云
フヤウナ狀態ニ於キマシテ、租界ノ警察當
局ニ信賴スルコトガ出來ナイト云フヤウナ、
此ノ狀態ガ繼續セラルルニ於キマシテハ
日本人ノ自衞上カラ申シマシテモ、有效適
切ナル手段ヲ執ラナケレバナラヌモノト考
ヘテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=12
-
013・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ日程第六乃至第八ノ三
案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其ノ審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス
(「贊成」下呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=14
-
015・小山松壽
○議長(小山松喜君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、日
程第六、支那事變特別稅法中改正法律案、日
程第七、臨時利得稅法中改正法律案、日程第
八、臨時租稅措置法中改正法律案、右三案
ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-石渡大
藏大臣
第六支那事變特別稅法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
第七臨時利得稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會
第八臨時租稅措置法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
支那事變特別稅法中改正法律案
支那事變特別稅法中左ノ通改正ス
第一條中「砂糖消費稅及取引所稅」ヲ「〓
涼飮料稅、砂糖消費稅、取引所稅及印紙
稅」ニ、「公債及社債利子稅、」ヲ「公債及社
債利子稅、建築稅、」ニ、「及物品稅」ヲ「物
品稅及遊興飮食稅」ニ改ム
第二條第三項ヲ左ノ如ク改ム
前二項ノ規定ニ依ル普通所得及超過所
得ニ對スル所得稅ノ增徵稅額ハ左ノ金
額ヨリ普通所得及超過所得ニ對スル所
得稅額(所得稅法第二十一條ノ二ノ規
定ニ依リ普通所得ニ對スル所得稅ニ加
算スル稅額ヲ含マズ)ト臨時利得稅額
トノ合計金額ヲ控除シタル殘額ヲ超ユ
ルコトヲ得ズ
普通所得ノ百分ノ五十五ニ相當スル
金額ヨリ普通所得中留保シタル金額
ノ百分ノ十五ニ相當スル金額ヲ控除
シタル殘額
第八條ノ二〓涼飮料稅ハ〓涼飮料稅法
第二條ノ規定ニ拘ラズ左ノ稅率ニ依ル
第一種玉ラムネ壜詰ノモノ
一石ニ付八圓五十錢
第二種其ノ他ノ壜詰ノモノ
一石ニ付十五圓
第三種壜詰以外ノモノ
炭酸瓦斯
使用量一
瓩ニ付四圓五十錢
第九條中「一圓二十錢」ヲ「一圓七十錢」
ニ、「三圓三十錢」ヲ「四圓」ニ、「七圓十錢」
ヲ「七圓八十錢」ニ、「八圓六十錢」ヲ「九
圓三十錢」ニ、「十一圓」ヲ「十一圓七十錢」
ニ、「三圓九十錢」ヲ「四圓六十錢」ニ改
ム
第十一條ノ二印紙稅中物品切手ニ關ス
ル印紙稅ハ印紙稅法第四條第一項第二
十八號ノ規定ニ拘ラズ一通每ニ左ノ區
別ニ依リ之ヲ納ムベシ
記載金高三圓以下ノモノ
三錢
同五圓以下ノモノ
十錢
同十圓以下ノモノ
三十錢
同二十圓以下ノモノ
六十錢
同三十圓以下ノモノ
九十錢
同五十圓以下ノモノ
一圓五十錢
同百圓以下ノモノ
三圓
同百圓ヲ超ユルモノ
百圓又ハ
其ノ端數
每一三圓
記載金高ナキモノ
三錢
第十三條利益配當稅ハ前條ノ法人ヨリ
支拂ヲ受クル利益ノ配當ニ付之ヲ賦課
シ配當金中配當率年七分ノ割合ヲ以テ
算出シタル金額ヲ超ユル金額ヲ左ノ各
級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用シテ算
出シタル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
配當金中配當率年七分ノ割合ヲ以テ
算出シタル金額ヲ超ユル金額百分
ノ十
同年一割ノ割合ヲ以テ算出シタル金
額ヲ超ユル金額百分ノ十五
第十六條中「百分ノ十」ヲ「百分ノ十五」ニ
改ム
第十八條ノ二建築稅ハ左ニ揭グル家屋
ヲ建築(增築及改造ヲ含ム以下同ジ)シ
タル者ニ之ヲ課ス
-居住ノ用ニ供スル家屋
二料理店業、席貸業其ノ他之ニ類ス
ル營業ノ用ニ供スル家屋ニシテ命令
ヲ以テ定ムルモノ
三演劇、活動寫眞、演藝又ハ觀物(相
撲、野球、拳鬪其ノ他ノ競技ニシテ
公衆ノ觀覽ニ供スルコトヲ目的トス
ルモノヲ含ム)ノ開催ノ用ニ供スル
家屋
第十八條ノ三建築稅ハ家屋(附屬工作
物ヲ含ム以下同ジ)一構每ニ其ノ建築
價額ヲ標準トシテ之ヲ賦課ス
前項ノ建築價額ノ算定ニ關シテハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
一構ノ家屋ノ一部ガ前條ノ家屋ニ該當
スル場合ニ於テハ其ノ部分ヲ以テ一構
ノ家屋ト看做ス
第十八條ノ四第十八條ノ一ニ揭グル家
屋ヲ新築シタル者新築竣成後一年內ニ
其ノ家屋ト一構ト爲ルベキ建築ヲ爲シ
タル場合ニ於テハ前後ノ建築ヲ通ジテ
一建築ト看做シ本法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依リ建築稅ヲ課スベキ場
合ニ於テ既ニ建築稅ヲ課シタル部分ア
ルトキハ其ノ建築稅ニ相當スル金額ヲ
建築稅額ヨリ控除ス
第十八條ノ五建築稅ハ建築價額ヨリ五
千圓ヲ控除シクル金額ノ百分ノ十ニ相
當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十八條ノ六左ニ揭グル家屋ヲ建築シ
タル場合ニ於テハ建築稅ヲ課セズ
-建築價額一萬圓未滿ノ家屋
二公用又ハ公共ノ用ニ供スル爲北海
道府縣、市町村其ノ他命令ヲ以テ
指定スル公共團體ガ建築シタル家屋
三其ノ他命令ヲ以テ定ムル家屋
第十八條ノ七左ニ揭グル家屋ヲ建築シ
タル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依
リ建築稅ヲ免除ス
-災害ニ因リ滅失又ハ損壞シタル家
屋ニ代ヘテ建築シタル家屋
二法令ニ依リ收用又ハ使用セラレタ
ル家屋ニ代ヘテ建築シタル家屋及法
令ニ依ル敷地ノ收用又ハ使用ニ因リ
取毀シタル家屋ニ代ヘテ建築シタル
家屋
三其ノ他命令ヲ以テ定ムル家屋
第十八條ノ八建築稅ニ付納稅義務アル
者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ建築價額ヲ
政府ニ申告スベシ
第十八條ノ九建築價額ハ前條ノ申〓ニ
依リ、申〓ナキトキ又ハ申〓ヲ不相當
ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府
ニ於テ之ヲ決定ス
建築價額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之
ヲ納稅義務者ニ通知スベシ
第十八條ノ十建築稅ハ建築竣成ノ際之
ヲ徵收ス
第十八條ノ十一建築稅ハ家屋ノ所在地
ヲ以テ納稅地トス
納稅義務者納稅地ニ現住セザルトキハ
建築價額ノ申〓、納稅其ノ他建築稅ニ
關スル事項ヲ處理セシムル爲納稅管理
人ヲ定メ政府ニ申〓スベシ
第十八條ノ十二本法ノ適用ニ付テハ被
相續人ノ爲シタル家屋ノ建築ハ相續人
ノ爲シタルモノト看做シ合併ニ因リテ
消滅シタル法人ノ爲シタル家屋ノ建築
ハ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リ
テ設立シタル法人ノ爲シタルモノト看
做ス
第三十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
物品稅ハ左ニ揭グル物品ニシテ命令ヲ
以テ定ムルモノニ之ヲ課ス
第一種
甲類
-貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒ
タル製品
二眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
三貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ
用ヒタル製品
四鼈甲製品
五珊瑚製品
六毛皮又ハ毛皮製品
七羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒタル
製品
乙類
八時計
九文房具
十身邊用細貨類
十一化粧用具
十二喫煙用具
十三帽子、枚鞭及傘
十四鞄及トランク
十五靴及履物
十六書〓及骨董
十七室內裝飾用品
十八玩具
十九運動具
二十照明器具
二十一電氣器具及瓦斯器具
二十二圍碁及將棋用具
二十三家具
二十四漆器、陶磁器及硝子製器
具ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十五貴金屬ヲ鍍シ又ハ張リタ
ル製品ニシテ別號ニ揭ゲザルモ
ノ
二十六皮革製品ニシテ別號ニ揭
ゲザルモノ
二十七織物、メリヤス、レース、
フェルト及同製品竝ニ組物
二十八果物
第二種
甲類
-寫眞機、寫眞引仲機、映寫機、
同部分品及附屬品
二寫眞用ノ乾板、フィルム及感
光紙
三蓄音器及同部分品
四蓄音器用レコード
五樂器、同部分品及附屬品
六雙眼鏡及隻眼鏡
七銃及同部分品
八藥莢及彈丸
九ゴルフ用具、同部分品及附屬
品
十娛樂用ノモーターボート、ス
カール及ヨット
+一撞球用具
十二ネオン管及同變壓器
十三喫煙用ライター
十四乘用自動車
十五化粧品
乙類
十六ラヂオ聽取機及同部分品
十七受信用眞空管、擴聲用增幅
器及擴聲器
十八扇風機及同部分品
十九煖房用ノ電氣、瓦斯又ハ礦
油ストーブ
二十冷藏器及同部分品
二十一金庫及鋼鐵製家具
二十二化粧用石鹼、シャンプー、
洗粉及齒磨
二十三茶、珈琲及其ノ代用物竝
ニココア
二十四嗜好飮料但シ酒類及〓涼
飮料ヲ除ク
第三種
-燐寸
二酒類但シ濁酒ヲ除ク
三飴葡萄糖及麥芽糖
第三十九條中「五圓」ヲ「十圓」ニ、「十圓」
ヲ「十五圓」ニ、「七圓」ヲ「十四圓」ニ改メ
「葡萄酒」(酒精及酒精含有飮料稅法第三
條ノ二ニ規定スルモノ以下同ジ)」ノ下ニ
「及果實酒(酒精及酒精含有飮料稅法第三
條ノ三ニ規定スルモノ以下同ジ)」ヲ加ヘ
同條第三種ニ左ノ一號ヲ加フ
三飴葡萄糖及麥芽糖
百斤ニ付二圓
第四十二條第一項中「第一種第十四號」ヲ
「第一種第十六號」ニ改ム
第四十三條中「化粧品」ヲ「化粧品、化粧用
石鹼、シャンプー、洗粉、齒磨又ハ嗜好
飮料」ニ改ム
第四十四條左ニ揭グル場合ニ於テハ嗜
好飮料、酒類、飴、葡萄糖又ハ麥芽糖ハ
之ヲ製造場ヨリ移出シタルモノト看做
ス
嗜好飮料又ハ酒類ヲ製造場內ニ於
テ飮用シタルトキ
二飴葡萄糖又ハ麥芽糖ヲ製造場內
ニ於テ飴、葡萄糖又ハ麥芽糖以外ノ
製品ノ原料トシテ使用シタルトキ
第四十六條第一項中「課稅標準額ヨリ其
ノ物品ノ價格ヲ控除ス」ヲ「稅額ヨリ其ノ
物品ニ課セラレタル物品稅ニ相當スル金
額ヲ控除ス」ニ改メ同條第二項ニ左ノ但
書ヲ加フ
但シ第四十八條第一項ニ規定スル政府
ノ承認ヲ受ケテ移出先又ハ引取先ニ移
入セラレタル酒類ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
第四十八條第一項中「第二種ノ物品又ハ
燐寸」ヲ「第二種又ハ第三種ノ物品」己文
ム
第四十九條第一項第二號中「葡萄酒」ノ下
ニ「及果實酒」ヲ加フ
第五十一條中「第二種ノ物品若ハ燐寸」ヲ
「第二種若ハ第三種ノ物品(酒類ヲ除ク)」
ニュル
第五十二條ノ二遊興飮食稅ハ料理店、
貸席、旅館其ノ他命令ヲ以テ定ムル類
似ノ場所ニ於ケル遊興及飮食ニ之ヲ課
ス
第五十二條ノ三遊興飮食稅ノ稅率ハ遊
興飮食ノ料金ノ百分ノ十トス但シ藝妓ノ
招聘料ニ付テハ料金ノ百分ノ二十トス
前項ノ遊興飮食ノ料金(以下料金ト稱ス)
ハ前條ニ規定スル場所ノ經營者ガ遊興
又ハ飮食ヲ爲シタル者ヨリ其ノ遊興又
ハ飮食ニ付領收スベキ金額ヲ謂フ
料金ノ算定ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第五十二條ノ四料金ガ一人一回五圓ニ
滿タザル場合ニハ遊興飮食稅ヲ課セズ
但シ藝妓其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ノ
招聘料ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ一人一囘ノ料金ノ計算ニ關シ必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十二條ノ五遊興飮食稅ハ第五十二
條ノ二ニ規定スル場所ノ經營者ヨリ之
ヲ徵收ス
第五十二條ノ六第五十二條ノ二ニ規定
スル場所ノ經營者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ每月分ノ料金ヲ記載シタル申〓書
ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ但シ
經營ヲ廢止シタル場合ニ於テハ直ニ之
ヲ提出スベシ
申〓書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ
申〓ヲ不相當ト認メタルキハ政府ハ其
ノ課稅標準額ヲ決定ス
第五十二條ノ七遊興飮食稅ハ每月分ヲ
翌月末日迄ニ納付スベシ但シ經營ヲ廢
止シタル場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付ス
ベシ
第五十二條ノ八第五十二條ノ二ニ規定
スル場所ノ經營者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ每月分ノ料金中其ノ月ニ於テ領收
セザルモノニ對スル稅金ヲ其ノ料金ヲ
領收シタル月ノ翌月末日迄ニ納付スル
コトヲ得但シ其ノ經營ヲ廢止シタル場
合ニ於テ未ダ納付セザル稅金アルトキ
ハ直ニ之ヲ納付スベシ
前項ノ規定ニ依リ未ダ稅金ヲ納付セザ
ル料金ニシテ領牧スルコト能ハザルニ
至リタルモノニ付テハ命令ノ定ムル所
ニ依リ遊興飮食稅ヲ免除ス
第五十二條ノ九第五十二條ノ二ニ規定
スル場所ヲ經營セントスル者ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ豫メ政府ニ申
告スベシ之ヲ廢止セントスルトキ亦同
第五十二條ノ十第五十二條ノ二ニ規定
スル場所ノ經營者及經營者ト經營上取
引關係アル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
其ノ業務ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載ス
ベシ
前項ニ規定スル者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ其ノ業務ニ關シ必要ナル事項ヲ政
府ニ申告スベシ
第五十四條ニ第一項トシテ左ノ一項ヲ加
フ
收稅官吏ハ建築稅ニ付家屋ヲ建築シタ
ル者、建築工事請負人、建築工事管理
者若ハ建築材料供給者ニ對シ質問ヲ爲
シ又ハ家屋、建築ニ關スル帳簿書類其
ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
收稅官吏ハ遊興飮食稅ニ付第五十二條
ノ十第一項ニ規定スル者ニ對シ質問ヲ
爲シ又ハ其ノ業務ニ關スル帳簿書類ヲ
檢査スルコトヲ得
第五十五條中「又ハ公債及社債利子稅」ヲ
「、公債及社債利子稅又ハ建築稅」ニ改ム
第五十六條中「物品稅」ノ下ニ「又ハ遊興
飮食稅」ヲ加フ
第五十七條第二號中「第四十五條」ノ下ニ
「又ハ第五十二條ノ六」ヲ加へ同條第三號
中「第二種ノ物品若ハ燐寸」ヲ「第二種若
ハ第三種ノ物品(酒類ヲ除ク)」ニ改メ同
條ニ左ノ一號ヲ加フ
四政府ニ申〓セズシテ第五十二條ノ
二ニ規定スル場所ヲ經營シタル者
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
前項第三號ニ規定スル者ニ付テハ直ニ
其ノ小賣シタル第一種ノ物品又ハ製造
シタル第二種若ハ第三種ノ物品(酒類
ヲ除ク)ニ對スル物品稅ヲ徵收ス
前項ノ規定ハ製造免許ヲ受ケズシテ酒
類ヲ製造シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第五十八條第一號中「又ハ第五十二條第
一項」ヲ「、第五十二條第一項又ハ第五
十二條ノ十第一項」ニ、同條第二號中「又
ハ第五十二條第二項」ヲ「、第五十二條第
二項又ハ第五十二條ノ十第二項」ニ、同
條第三號中「又ハ第四項」ヲ「、第三項、第
五項又ハ第六項」ご依頼人
第六十條ニ左ノ一項ヲ加フ
第五十二條ノ二ニ規定スル場所ノ經營
者又ハ經營者ト經營上取引關係アル者
ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人
其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法
中遊興飮食稅ニ關スル規定ニ違反シタ
ルトキハ其ノ經營者又ハ經營者ト經營
上取引關係アル者ヲ處罰ス
第六十一條第一項中「公債及社債利子
稅、」ノ下ニ「建築稅、」ヲ加ヘ「及物品稅」
ヲ「、物品稅及遊興飮食稅」ニ改メ同條ニ
左ノ一項ヲ加フ
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ遊興飮食稅ノ課稅標準タル料金ニ
對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第六十二條ノ二政府ハ當分ノ內第五十
二條ノ二ニ規定スル場所ノ經營者ノ組
織スル團體ニ對シ遊興飮食稅ニ付徵稅
上必要ナル設備ヲ爲シ又ハ徵收事務ノ
補助ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場台ニ於テハ前項ノ團體ニ對シ
命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交付ス
ルコトヲ得
第六十三條ノ二自己又ハ其ノ家族ノ用
ニノミ供スル第二種ノ物品又ハ飴ヲ製
造スル者ニハ當該物品ニ付本法中物品
稅ニ關スル規定ヲ適用セズ
附則
第一條本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ
之ヲ施行ス
第二條第二條第三項ノ改正規定ハ法人
ノ昭和十四年四月一日以後ニ終了スル
事業年度分ノ第一種所得稅ヨリ之ヲ適
用ス
第三條建築稅ニ關スル規定ハ昭和十四
年四月一日以後ニ竣成スル家屋ノ建築
ニ付之ヲ適用ス但シ第十八條ノ四ノ規
定ハ新築ガ昭和十四年三月三十一日以
前ニ竣成シタル場合ニハ之ヲ適用セズ
第四條本法施行ノ際製造場以外ノ場所
ニ於テ同一人ガ十石ヲ超ユル數量ノ第
二種ノ〓涼飮料ヲ所持スル場合ニ於テ
ハ其ノ場所ヲ以テ製造場、其ノ所持者
ヲ以テ製造者ト看做シ〓涼飮料稅ヲ課
ス此ノ場合ニ於テハ本法施行ノ日ニ之
ヲ製造場外ニ移出シタルモノト看做シ
十石ヲ超ユル數量ニ付第八條ノ二ニ規
定スル稅率ニ依リ算出シタル稅額ト〓
涼飮料稅法第二條ニ規定スル稅率ニ依
リ算出シタル稅額トノ差額ヲ以テ其ノ
稅額トシ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ徵
收ス
前項ノ〓涼飮料ノ所持者ハ其ノ所持ス
ル〓涼飲料ノ數量及貯藏ノ場所ヲ本法
施行後一月以內ニ政府ニ申告スベシ
第五條本法施行ノ際製造場又ハ保稅地
域以外ノ場所ニ於テ同一人ガ二萬斤ヲ
超ユル數量ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ所
持スル場合ニ於テハ其ノ者ニ於テ本法
施行ノ日ニ之ヲ製造場ヨリ引取リタル
モノト看做シ砂糖消費稅ヲ課ス此ノ場
合ニ於テハ二萬斤ヲ超ユル數量ニ付第
九條ノ改正稅率ニ依リ算出シタル稅額
ト從前ノ稅率ニ依リ算出シタル稅額ト
ノ差額ヲ以テ其ノ稅額トシ命令ノ定ム
ル所ニ依リ之ヲ徵收ス
前項ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ所持者ハ
其ノ所持スル砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ種
別、數量及貯藏ノ場所ヲ本法施行後一
月以内ニ政府ニ申〓スベシ
第六條本法施行前ヨリ引續キ第三十八
條ノ改正規定ニ依リ物品稅ヲ課スルコ
トト爲リタル第一種ノ物品ノ小賣業ヲ
營ム者又ハ同第二種若ハ第三種ノ物品
(酒類ヲ除ク)ノ製造ヲ爲ス者本法施行
後一月以内ニ其ノ旨ヲ政府ニ申〓スル
トキハ本法施行ノ日ニ於テ第五十一條
ノ改正規定ニ依リ申告シタルモノト看
做ス
本法施行前ヨリ引續キ第五十二條ノ二
ニ規定スル場所ヲ經營スル者本法施行
後一月以內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申〓スル
トキハ本法施行ノ日ニ於テ第五十二條
ノ九ノ規定ニ依リ申告シタルモノト看
做ス
第七條改正第三十八條ニ揭グル第二種
又ハ第三種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者
ガ本法施行ノ際製造場又ハ保稅地域以
外ノ場所ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當ス
ル物品ヲ所持スル場合ニ於テハ其ノ場
所ヲ以テ製造場、其ノ所持者ヲ以テ製
造者ト看做シ之ニ物品稅ヲ課ス此ノ場
合ニ於テハ本法施行ノ日ニ於テ其ノ物
品ヲ製造場ヨリ移出シタルモノト看做
シ第一號ノ物品ニ付テハ改正第三十八
條各號ニ揭グル品名每ニ價格三千圓、
酒類ニ付テハ三十石、飴、葡萄糖又ハ
麥芽糖ニ付テハ一萬斤ヲ超ユル部分ニ
付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ物品稅ヲ
徵收ス但シ從前ノ規定ニ依リ物品稅ヲ
課セラレタル物品ニ付テハ其ノ課セラ
レタル稅額ニ相當スル金額ヲ控除シタ
ル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
-改正第三十八條ニ揭グル第二種第
十四號、第十五號、第十七號(擴聲
用增幅器ニ限ル)、第二十二號(シャ
ンプー及洗粉ヲ除ク)、第二十三號
又ハ第二十四號ノ物品ニシテ同條各
號ニ揭グル品名每ニ價格三千圓ヲ超
ユルモノ
二酒類ニシテ合計石數三十石ヲ超ユ
ルモノ又ハ飴、葡萄糖若ハ麥芽糖ニ
シテ合計斤數一萬斤ヲ超ユルモノ
本法施行ノ際製造場內ニ現存スル酒類
ニシテ戾入又ハ移入シタルモノニ付テ
ハ第四十六條第二項ノ改正規定ニ拘ラ
ズ物品稅ヲ徵收ス
第一項但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之
ヲ準用ス
第一項ノ製造者又ハ販賣者ハ第二種ノ
物品ニ付テハ其ノ品名每ニ數量、價格
及貯藏ノ場所、第三種ノ物品ニ付テハ
其ノ品名每ニ數量及貯藏ノ場所ヲ本法
施行後一月以內ニ政府ニ申告スベシ
第八條輸出菓子糖果原料砂糖戾稅法第
一條中「消費稅ヲ課セラレタル砂糖」ノ下
ニ「又ハ物品稅ヲ課セラレタル飴、葡萄
糖若ハ麥芽糖」ヲ、「其ノ使用シタル砂
糖」ノ下ニ「飴、葡萄糖又ハ麥芽糖」ヲ加
へ「消費稅ニ相當スル金額」ヲ「消費稅
又ハ物品稅ニ相當スル金額」二五六
昭和十四年四月三十日以前ノ輸出ニ係
ル菓子及糖果ニ付テハ仍從前ノ例ニ依
ル
第九條明治四十年法律第二十一號第一
條第一項ニ左ノ二號ヲ加フ
十八建築稅
十九遊興飮食稅
第十條大正九年法律第五十一號中燐
寸、」ノ下ニ「飴、葡萄糖、麥芽糖、」ヲ加フ
臨時利得稅法中改正法律案
臨時利得稅法中左ノ通改正ス
第三條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
三船舶(製造中ノ船舶ヲ含ム)又ハ鑛
業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備
ノ讓渡ニ因ル個人ノ利得(讓渡利得
ト稱ス以下同ジ)
第四條ノ二第三號ヲ左ノ如ク改ム
三現事業年度ノ資本金額ガ甲既往事
業年度又ハ乙既往事業年度ノ平均資
本金額ニ比較シ增減アルトキハ比較
セラレタル既往事業年度ノ平均利益
ノ平均資本金額ニ對スル割合ヲ現事
業年度ノ資本金額ニ乘ジテ算出シタ
ル金額ヲ以テ其ノ既往事業年度ノ平
均利益トス但シ法人ノ現事業年度ノ
資本金額ガ甲既往事業年度又ハ乙既
往事業年度ノ平均資本金額ニ比較シ
增加シタル場合ニ於テ現事業年-度ノ
資本金額ガ昭和十一年十二月三十一
日ニ於ケル資本金額ヲ超過スルトキ
ハ其ノ法人ニ付テハ現事業年度ノ資
本金額中甲既往事業年度ノ平均資本
金額又ハ昭和十一年十一一月三十一日
ニ於ケル資本金額ノ何レカ多額ナル
一方ノ金額ヲ超過スル部分ニ對シ年
百分ノ七ノ割合ヲ乗ジテ算出シタル
金額ト其ノ他ノ部分ニ對シ甲既往事
業年度ノ平均利益ノ平均資本金額ニ
對スル割合ヲ乘ジテ算出シタル金額
トノ合計額ヲ以テ甲既往事業年度ノ
平均利益トシ現事業年度ノ資本金額
中乙既往事業年度ノ平均資本金額又
ハ昭和十一年十二月三十一日ニ於ケ
ル資本金額ノ何レカ多額ナル一方ノ
金額ヲ超過スル部分ニ對シ年百分ノ
十ノ割合ヲ乘ジテ算出シタル金額ト
其ノ他ノ部分ニ對シ乙旣往事業年度
ノ平均利益ノ平均資本金額ニ對スル
割合ヲ乘ジテ算出シタル金額トノ合
計額ヲ以テ乙既往事業年度ノ平均利
益トス
前項ノ場合ニ於テ第一號ノ規定ヲ適
用スルニ當リテハ現事業年度ノ資本
金額ヲ以テ甲既往事業年度又ハ乙既
往事業年度ノ平均資本金額ト看做ス
第六條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條第三項
中「各事業年度ノ」ヲ削ル
法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末
ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ
基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ
計算シ昭和十一年十二月三十一日ニ於
ケル資本金額ハ同日ニ於ケル拂込株式
金額、出資金額又ハ基金及積立金額ニ
依リ之ヲ計算ス
第七條中「平均利益」ノ下ニ「竝ニ昭和十
一年十二月三十一日ニ於ケル資本金額」
ヲ加フ
第十一條ノ二讓渡利得ハ前年中ニ於ケ
ル船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權
利若ハ設備ノ讓渡ニ因ル總收入金額ヨ
リ取得價額、設備費、改良費及讓渡ニ
關スル必要ノ經費ヲ控除シタル金額ニ
依ル
船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利
若ハ設備ニシテ昭和十一年十二月三十
一日以前ニ取得シタルモノニ付テハ同
日ニ於ケル價額ヲ以テ前項ノ取得價額
トシ同日後ニ爲シタル設備又ハ改良ニ
要シタル費用ノミヲ以テ前項ノ設備費
又ハ改良費トス
前二項ノ計算ニ關シテハ相續、贈與又
ハ遣贈ニ因リ取得シタルモノハ相續人、
受贈者又ハ受遺者ガ引續キ之ヲ有シタ
ルモノト看做シ讓渡後相續ノ開始アリ
タル場合ニ於テハ被相續人ノ爲シタル
讓渡ハ之ヲ相續人ノ爲シタル讓渡ト看
做ス
前三項ニ定ムルモノノ外讓渡利得ノ計
算ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之
可以て
第十一條ノ三讓渡利得ニ付テハ其ノ利
得ノ金額ヨリ二千圓ヲ控除ス
第十三條ノ二船舶ノ讓渡ニ因ル利益ニ
シテ第九條ノ個人ノ利益ニ屬スルモノ
及昭和十四年四月一日以後ニ於テ設定
セラレタル鑛業又ハ砂鑛業ニ關スル權
利ニシテ命令ノ定ムルモノノ讓渡ニ付
テハ本法中讓渡利得ニ關スル規定ヲ適
用セズ
第十四條中「百分ノ十七·二五」ヲ「百分ノ
二十」ニ、「百分ノ三十」ヲ「百分ノ四十」
ニ、「百分ノ二十五」ヲ「百分ノ三十」ニ改
ム
第十四條ノ二第一項ヲ左ノ如ク改ム
個人ノ臨時利得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之
ヲ賦課ス
甲種利得利得金額ノ百分ノ十二
乙種利得利得金額ノ百分ノ二十五
讓渡利得利得金額ノ百分ノ二十五
第二十三條第一項中「利得ニ付」ヲ「甲種
利得又ハ乙種利得ニ付」ニ、「利得金額」ヲ
「甲種利得又ハ乙種利得ノ金額」ニ改ム
第二十四條ノ二中「個人ノ利得」ヲ「個人
ノ甲種利得又ハ乙種利得」ニ改ム
第三十一條第二項ヲ左ノ如ク改ム
朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ有シ又ハ
一年以上居所ヲ有スル個人ノ利得ニ付
テハ命令ノ定ムル所ニ依リ臨時利得稅
ヲ課セズ但シ朝鮮ニ住所ヲ有シ又ハ
年以上居所ヲ有スル個人ノ甲種利得ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
法人ノ臨時利得稅ニ付テハ昭和十四年一
月一日以後ニ終了スル事業年度分ヨリ、
個人ノ臨時利得稅ニ付テハ昭和十四年分
ヨリ本法ヲ適用ス
讓渡利得ニ對スル臨時利得稅ニ付テハ昭
和十四年ニ限リ臨時利得稅法第十六條ノ
規定ニ拘ラズ利得金額ノ申告期限ヲ昭和
十四年四月十五日トス
臨時租稅措置法中改正法律案
臨時租稅措置法中左ノ通改正ス
第一條中「田畑地租」ノ上ニ「所得稅、」ヲ
加へ「及織物消費稅」ヲ「、織物消費稅、登
錄稅及臨時利得稅」ニ改ム
第一條ノ二法人ノ各事業年度ノ普通所
得中留保シタル金額ガ其ノ事業年度ニ
於ケル普通所得ノ十分ノ四ニ相當スル
金額ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過部
分ノ全部又ハ一部ニ相當スル金額ヲ命
令ヲ以テ定ムル方法ニ依リ運用スルト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ運用金
額ニ百分ノ一·四五ヲ乘ジテ算出シタ
ル金額ニ相當スル所得稅ヲ輕減ス
第一條ノ三所得稅法第十九條及營業收
益稅法第八條ノ規定ニ依リ指定シタル
物產ノ製造業ニ付其ノ設備ヲ增設シタ
ル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ設備增
設ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ增設
シタル設備ニ依ル物產ノ製造業務ヨリ
生ズル所得及純益ニ付所得稅及營業收
益稅ヲ免除ス
命令ヲ以テ指定スル製造方法ニ依ル物
產ノ製造ヲ開始シタル者又ハ其ノ設備ヲ
增設シタル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依
リ製造開始又ハ設備增設ノ年及其ノ翌
年ヨリ三年間其ノ製造方法ニ依ル物產
ノ製造業務又ハ其。增設シタル設備ニ
依ル物產ノ製造業務ヨリ生ズル所得及
純益ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
第一條ノ四左ニ揭グル事項ニ付テハ所
得稅法ニ依ル所得、營業收益稅法ニ依
ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計
算ニ關シ命令ヲ以テ特例ヲ設クルコト
ヲ得
命令ヲ以テ指定スル國庫補助金ノ
收入
二命令ヲ以テ指定スル事業ニ關シ〓
究ヲ爲スニ要シタル支出
三命令ヲ以テ指定スル事業ノ用ニ供
スル建物(工場用以外ノ建物ヲ除ク)、
機械其ノ他ノ設備及船舶ノ價額ノ償
却
第二十一條ステープルファイバー又ハ
綿ヲ用ヒタル絲ニシテ命令ヲ以テ定ム
ルモノハ之ヲ織物消費稅法第一條又ハ
第一條ノ二ニ規定スル綿又ハ綿絲ト看
做ス
麻ヲ用ヒタル絲ニシテ命令ヲ以テ定ム
ルモノハ之ヲ織物消費稅法第一條ニ規
定スル麻ト看做ス
第二十二條人造絹絲ヲ用ヒタル織物ニ
シテ命令ヲ以テ定ムルモノハ織物消費
稅法第一條ノ二ノ規定ニ拘ラズ之ヲ綿
織物ト看做ス
第二十二條ノ二耕作ヲ目的トスル土地
(其ノ土地ニ附隨シテ利用セラルル土
地ヲ含ム)ノ所有權ノ交換ヲ爲シタル
場合ニ於テハ交換ニ因ル所有權ノ取得
又ハ交換ノ爲ニスル所有權ノ保存ノ登
記ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ登錄
稅ヲ免除ス
前項ノ規定ハ永小作權ノ交換又ハ前項
ノ土地ノ所有權ト永小作權トノ交換ヲ
爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第一條ノ二乃至第一條ノ四ノ規定
ニ依リ輕減又ハ免除セラルル租稅ニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
第一種所得稅、法人ノ營業收益稅及法人
ノ臨時利得稅ニ付テハ昭和十四年四月一
日以後ニ終了スル事業年度分ヨリ、第三
種所得稅、個人ノ營業收益稅及個人ノ臨
時利得稅ニ付テハ昭和十四年分ヨリ本法
ヲ適用ス
左ニ揭グル織物又ハ之ヲ以テ製造シタル
物品ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
ー本法施行前消費稅ヲ課スベカリシ
モノ
二本法施行前輸出若ハ朝鮮移出ノ目
的ヲ以テ又ハ織物消費稅法第七條ノ
規定ニ依リテ消費稅ヲ納付セズシテ
製造場又ハ保稅地域ヨリ引取リタル
モノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
四本法施行前消費稅ヲ納付シテ輸出
シ又ハ朝鮮ニ移出シタルモノ
本法施行前消費稅ヲ納付シタル織物ニシ
テ第二十一條又ハ第二十二條ノ改正規定
ニ依リ消費稅ヲ課セザルコトト爲リタル
モノ又ハ之ヲ以テ製造シタル物品ヲ本法
施行後輸出シ又ハ朝鮮ニ移出スルモ織物
消費稅法第三條第二項ノ規定及大正九年
法律第五十一號ヲ適用セズ
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=15
-
016・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 只今議題トナ
リマシタ支那事變特別稅法中改正法律案外
二件ノ法律案ニ付キ、其ノ大要ヲ說明致シ
タイト存ジマス
先ヅ支那事變特別稅法中改正法律案、臨
時利得稅法中改正法律案ニ付テ說明致シマ
ス、支那事變ニ關スル臨時軍事費ニ付キマ
シテハ、前數囘ニ互リ帝國議會ノ協贊ヲ經
マシテ、七十四億圓ニ達スル經費ヲ支辨シ
テ參ツタノデアリマスガ、今囘更ニ之ヲ增
額スルノ必要ガアリマスノデ、不日臨時軍
事費追加豫算案ヲ提出致ス見込デアリマス、
此ノ追加豫算ノ財源ノ大部分ハ、從來ト同
樣公債ニ依ル積リデアリマスガ、我國ノ財
政經濟ノ現狀ニ顧ミマスレバ、其ノ財源ノ
全部ハ之ヲ公債ニ依ラズ、其ノ一部ハ之ヲ
增稅ニ依ツテ支辨スルヲ適當ト認メラルル
ノデアリマス、仍テ此ノ際事變ノ影響等ニ
因リ利益ノ增加シツツアル產業ノ負擔ヲ增
加スルト共ニ、消費ノ節約ニ資スルノ趣旨
ニ依リマシテ、臨時利得稅、物品稅等ヲ中
心トシテ增稅ヲ行フコトト致シ、茲ニ增稅
案ヲ提出致シク次第デアリマス、尙ホ增稅
案ハ臨時軍事費追加豫算案ト同時ニ提出致
スベキ筋合ノモノト存ズルノデアリマス
ガ、增稅案ノ性質上、御審議ノ時日等ノ關
係モ考慮致シマシテ、追加豫算案ニ先ダツ
テ提出致シタ次第デアリマス
是ヨリ法案ノ內容ニ付テ御說明致シマス、
臨時利得稅ハ時局ノ好影響ニ因ル所ノ利得
ヲ課稅ノ對象ト致スノデゴザイマスルガ、
御承知ノ如ク從來ノ甲種利得ノ外ニ、昨年
新ニ乙種利得ノ制度ヲ設ケタノデゴザイマ
ス、此ノ乙種利得ハ今事變ノ影響等ニ因リ
マシテ增大致シマシタ收益デアリマシテ、
所謂事變利得トモ申スベキモノデアリマス
カラ、今囘ノ增稅案ニ於キマシテモ、乙種
利得ノ增徴ニ主眼ヲ置クコトト致シタ次第
デアリマス、卽チ乙種利得ニ對スル稅率ヲ、
法人ニ付テハ三割三分引上ゲマシテ百分ノ
四十トシ、個人ニ付テハ二割五分引上ゲマ
シテ百分ノ二十五ト致シマシタ、之ニ對シ
甲種利得ニ付テハ輕微ナル增徵ニ止メマシ
テ、其ノ稅率ヲ法人百分ノ二十、個人百分
ノ十二ト致シタノデアリマス、尙ホ法人ノ
增加資本ハ新設法人ノ資本ト同ジク、新ニ
企業ニ參加シタモノデアリマスカラ、課稅
上新設法人ト同樣ニ取扱フノヲ適當ト認メ
マシテ、昭和十二年一月以降ニ於ケル增加
資本金額ニ付キマシテハ、平均利益ノ計算
方法ヲ改メマシテ負擔ノ均衡ヲ圖ルコトト
致シタ次第デアリマス、又個人ノ船舶、鑛
業權等ノ讓渡ニ因ル利益ニ付テハ、從來課
稅シテ居ラナカツタノデアリマスガ、事變
後相當多額ノ利得ヲ收メツツアル者ガ少ク
ゴザイマセヌノデ、往年ノ戰時利得稅ノ場
合ト同樣、之ニ課稅スルコトトシ、其ノ稅
率ヲ利得額ニ對シテ百分ノ二十五ト致シタ
ノデアリマス
利益配當稅ハ一昨年八月北支事件特別稅
トシテ設ケラレタノデアリマシテ、配當金
中配當率年七分ノ割合ヲ超ユル部分ニ對シ
テ、一割ノ稅率ヲ以テ課稅スル、所謂高率
配當稅デアリマスガ、現下ノ情勢ニ鑑ミマ
シテ、相當高率ノ配當金ニ付テハ、此ノ際
稅率ノ引上ヲ行フノヲ適當ト認メマシテ、
配當金中年一割ヲ超ユル部分ニ對スル稅率
ヲ百分ノ十五ニ改ムルコトト致シマシタ、
是ガ改正ト共ニ高利率ノ公債、社債利子ニ
對シマシテ特別ニ課稅致シマスル、公債、
社債利子稅ニ付テモ、現行稅率百分ノ十
ヲ百分ノ十五ニ引上ゲルコトト致シマシ
タ
次ニ〓涼飮料稅デアリマスルガ、〓涼飮
料稅ハ炭酸瓦斯ヲ含ム飮料ニ對シテ課稅ス
ルモノデアリマシテ、比較的稅額モ少ク、
最近數次ノ增稅ニ際シ增徴致サナカツタノ
デアリマスガ、今囘ハ他ノ消費稅トノ權衡
ヲ考慮致シマシテ、增徵ヲ行フコトトシタ
ノデアリマスガ、「ラムネ」等ノ下級品ニハ
輕微ノ引上ヲ行ヒ、「サイダー」「ㄱシトロン」等
ニ對シテハ消費ノ狀況ニ照シマシテ、高率ノ
引上ヲ行フコトニ致シタ次第デアリマス
砂糖消費稅ノ增徵ニ付キマシテハ、色々
ノ見解モアリ得ルコトト思ハレルノデアリ
マスガ、元來砂糖ノ過半ハ菓子等ノ原料ニ
用ヒラレル實情ニアリマシテ、其ノ消費額
モ年々增加ノ傾向ニアリマスカラ、稅額ニ
付テ約一割ノ增徵ヲ致スコトト致シタノデ
アリマス、今囘ノ增徵後ニ於キマシテモ、
砂糖ノ稅率ハ、大體ニ於テ日露戰後ノ經營
當時ニ比較致シマシテ、尙ホ低イノデアリ
マスカラ、此ノ際此ノ程度ノ負擔ノ增加ハ
已ムヲ得ナイモノト存ズル次第デアリマス
印紙稅ニ付テハ物品切手ニ對スル稅率ヲ
引上ゲルコトト致シタノデアリマスガ、是
ハ其ノ賣上狀況又ハ利用狀況等ニ顧ミマシ
テ、此ノ際相當ノ增徵ヲ行フヲ適當ト認メ
タニ依ル次第デアリマス
次ニ物品稅ニ付キマシテハ、比較的負擔
力アリト認メラレ、又ハ此ノ際不急ト認メ
ラルル消費ニ課稅スルノ趣旨ニ依リマシテ
其ノ課稅品目ノ範圍ヲ擴張スルト共ニ、稅
率ノ引上ヲ行ハントスルモノデアリマス、
新シク課稅スル品目ト致シマシテハ、織
物、電氣器具、瓦斯器具、玩具、文房具、
運動具、茶、珈琲、「ココア」、化粧石鹼、齒
磨等デアリマスガ、此ノ中茶ニ付テハ下級
品ヲ除キマス、齒磨ニ付テハ粉齒磨ヲ除ク
コトト致シマシタ、又織物、電氣器具、瓦
斯器具、玩具、文房具、運動具類ニ付テハ
ソレ〓〓適當ナル課稅最低限ヲ置キマシテ
成ベク一般大衆ノ負擔增加ヲ避クルヤウ留
意致シタノデアリマス
次ニ現在ノ課稅物品中毛皮製品、羽毛製
品、乘用自動車及ゼ化粧品ニ付キマシテハ、
從來ノ稅率百分ノ十ヲ百分ノ十五ニ引上ゲ
タイト存ジマス、〓酒、白酒、味淋、燒
酎及ビ麥酒ニ對スル稅率ハ、一石ニ付五圓
デアリマシタモノヲ十圓ニ、葡萄酒ニ對ス
ル稅率ハ、一石ニ付十圓ヲ十五圓ニ、酒精及
ビ酒精含有飮料ニ對スル稅率ハ、一石ニ付
七圓ヲ十四圓ニ引上グルコトト致シタノデ
アリマス、尙ホ酒類中果實酒ニ對シマシテ
ハ、新シク葡萄酒ト同ジ稅率ニ依ツテ課稅
スルコトト致シマシタ外、砂糖ニ對スル課
稅トノ振合ヲ考ヘマシテ、玆ニ新シク飴、葡
萄糖及ビ麥芽糖等ニ對シマシテ、百斤ニ付
二圓ノ稅率ヲ課稅スルコトト致シタノデア
リマス
次ニ新ニ建築稅ト遊興飮食稅トヲ設クル
コトト致シマシタ、建築稅ハ此ノ際不急ト
認メラルル種類ノ建築ヲ選ビマシテ、之ヲ
抑制スルノ趣旨ヲ含メマシテ課稅スルモノ
デアリマシテ、建築價額一万圓以上ノ住宅、
料理店、貸席、劇場、活動寫眞館等ヲ建築
シタル者ニ對シ、建築價額ノ百分ノ十ノ稅
率ヲ以テ課稅スルコトト致シタノデアリマ
ス、遊興飮食稅ハ從來ノ地方稅タル遊興稅
ニ比較致シマシテ、相當高率ノ稅率ヲ以テ
課稅セントスルモノデアリマシテ、一面事
變下ニ於ケル此ノ種消費ノ抑制ニ資シタキ
意向デアリマス、而シテ飮食ニ對スル課稅
ニ付テハ、一人一囘五圓未滿ノモノヲ免除
スルコトト致シタノデアリマス、尙ホ地方
稅タル遊興稅等ハ之ヲ廢止スルコトトシ、
之ニ伴ヒ生ズル地方團體ノ減收總額ニ相當
スル金額ヲ國庫ヨリ交付致ス見込デアリマ
ス
以上申述ベマシタ增稅計畫ニ依リマシテ
平年度ノ收入ハ臨時利得稅ニ於テ八千八十
万餘圓、利益配當稅ニ於テ八百五十餘万圓、
公債、社債利子稅ニ於テ七十餘万圓、〓涼飮
料稅ニ於テ二百二十餘万圓、砂糖消費稅ニ
於テ一千百五十餘万圓、印紙稅ニ於テ百餘
万圓、物品稅ニ於テ五千五百八十餘万圓、
建築稅ニ於テ二百餘万圓、遊興飮食稅ニ於
テ三千七百六十餘万圓、合計ニ於テ二億餘
万圓ノ增收トナル見込デアリマスガ、初年
度タル昭和十四年度ニ於テハ約一億八千七
百餘万圓ノ增收トナル見込デアリマス、是
等ノ增收額ハ臨時軍事費ノ財源ニ繰入ルル
豫定デアリマス
尙ホ此ノ機會ニ於テ事變以來ノ增稅實施
ノ狀況ニ付テ御報告致シタイト存ジマス
最近數次ノ增稅ニ依リマシテ、國民ノ租稅
負擔ハ相當加重セラレテ居ルノデアリマス、
又新ニ設ケラレマシタ租稅ノ中ニハ、平
時ニ於テハ實施上相當困難ヲ豫想致サシル
モノモアルノデアリマス、然ルニ是等增稅
ニ關スル諸法律施行ノ狀況ハ至極順調デア
リマシテ、其ノ納稅狀況モ極メテ良好ノ成
績ヲ示シテ居ルノデアリマス、斯ノ如キハ
國民ガ國難ニ際シ、完全ニ銃後ノ責務ヲ果
サントスル、强キ心構ノ表現ニ外ナラナイ
ト存ズルノデアリマシテ、局ニ當ル者トシ
テ洵ニ感激ノ至リニ堪ヘマセヌ(拍手)是等
ノ事情ニ稽ヘ、今後益〓圓滿適切ナル稅務
行政ノ執行ニ盡力致シ、苟モ非難ナキヲ期
シタキ心算デアリマス(拍手)
次ニ臨時租稅措置法中改正法律案ニ付テ
說明致シマス、長期建設ノ遂行ノ爲ニハ生
產力ノ擴充、產業ノ振興ニ努ムルコトガ急
務デアリマスルコトハ、申スマデモゴザイ
マセヌガ、之ニ資スルノ趣旨ニ依リマシテ、
今囘ノ增稅ト共ニ、租稅上適當ナル措置ヲ
講ズルコトト致シタ次第デゴザイマス、先
ヅ法人ニ付テハ、此ノ際成ベク其ノ利益ノ
留保ヲ多額ニ致シ、以テ時局ニ緊要ナル生
產設備ノ擴張等ニ充テシムルコトガ適當ト
認メラレマスノデ、法人ノ所得中留保シタ
ル金額ニ付テ、一定條件ノ下ニ所得稅輕減
ノ途ヲ開クコトト致シタノデアリマス
次ニ重要物產ノ製造業ヲ營ム者ニ付テハ、
開業ノ年及ビ其ノ翌年ヨリ三年間、所得稅
及ビ營業收益稅ヲ免除シテ居ルノデアリマ
スルガ、更ニ一定程度以上ノ設備ヲ增設ヲ
シタル場合ニ於テモ免除スルコトト致シ、又
此ノ際新規ナル製造方法ニ依ル物產ノ製造
ヲ開始シタル者等ニ付テモ、一定年間所得
稅及ビ營業收益稅ヲ免除シ得ル途ヲ開クコ
トト致シタノデアリマス、國庫補助金ノ中
三、時局ニ緊要ナル生產力ノ擴充等ニ資
スル目的ヲ以テ、交付スルモノガ相當アル
ノデアリマスルガ、此ノ種ノ補助金ニ付テ
ハ課稅上之ヲ益金ニ算入致サナイコトニ
致シ、又生產力ノ擴充、產業振興ヲ圖ル爲
ニハ、此ノ際十分ナル工夫〓究ヲ重ネシム
ルコトヲ適當ト認メラレマスルノデ、此ノ
種ノ〓究的ノ支出ニ付テモ、課稅上特例ヲ
設クルコトト致シタノデアリマス
次ニ時局ニ緊要ナル事業ニ付テハ、此ノ
際出來得ル限リ固定資產ノ減價償却等ヲ多
額ニ致シ、以テ企業ノ基礎ヲ鞏固ニシツツ、
生產力ノ擴充ニ邁進セシムルヲ適當ト認メ
ラレマスノデ、此ノ意味ニ於キマシテ、租
稅上減價償却ヲ容易ナラシムル所ノ措置ヲ
講ズルコトト致シタ次第デアリマス、又農
業生產力ノ維持增進ヲ圖ルコトハ、此ノ際
必要ノコトト認メラレルノデアリマスルガ、
之ニ資スルノ趣旨ニ依ツテ耕地ノ交換ヲ容
易ナラシムル爲、一定ノ條件ノ下ニ耕地ノ
交換ヲ爲シタル場合ニ於ケル其ノ所有權等
ノ登記ニ付テ、登錄稅ヲ免除スルコトト致
シタノデアリマス
其ノ他綿絲ノ配給統制ノ現狀ニ應ズル爲、
其ノ代用トシテ「ステープル·フアイバー」絲
ヲ用ヒタル織物ニ對スル、織物消費稅ノ免
除ノ範圍ヲ擴張致スコトト致シタノデアリ
マス
以上申述ベマシタ臨時的措置ニ依リマス
減收見込ノ稅額ハ、大體平年度ニ於キマシ
テ一千四百九十餘万圓、初年度タル昭和十
四年度ニ於キマシテハ、一千百三十餘万圓
ト相成ル見込デアリマス
尙ホ最後ニ、中央地方ヲ通ズル稅制ノ一
般的改正ニ付キマシテハ、事變モ長期建設
ノ段階ニ入リマシタ今日、速ニ稅制ヲ整備
スルノ必要アリト認メラレマスノデ、負擔
ノ公平、經濟諸政策トノ調和、財政ノ彈力
性、稅制ノ簡易化等ヲ目標ト致シマシテ、
今後ニ於ケル事態ノ推移ニ十分留意シツツ、
銳意調査ヲ進メテ參リタイト存ジテ居リマ
ス
以上ハ支那事變特別稅法中改正法律案外
二件ノ大要ノ說明デアリマスガ、尙ホ詳細
ノ點ニ付キマシテハ、委員會等ニ於キマシテ
說明致シタイト存ジマス、何卒御容議ノ上
速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-小山倉之助君
〔小山倉之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=17
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018・小山倉之助
○小山倉之助君 玆ニ上程ニナリマシタ支
那事變特別稅法中改正法律案、臨時利得稅
法中改正法律案、臨時租稅措置法中改正法
律案ノ三案ニ付キマシテ質疑ヲ試ミタイト
存ジマス、支那事變一年有半ニ亙リ、第
線ニ於キマスル陸海將兵諸士ノ甚大ナル勞
苦ト、其ノ赫々タル武動ニ伴ヒマスル偉大
ナル犠牲ニ對シマシテハ、國民ノ感謝感激
措ク能ハザル所デアリマス(拍手)隨テ銃後
國民ハ財的ノ奉仕デアル租稅ノ增徵ニ對シ
マシテハ、何等異議ヲ挾ム者デハアリマセ
ヌ、卽チ今囘ノ增稅案ニ對シマシテモ、世
間ハ殆ド容認ノ態度ヲ示シテ居リマスルコ
トモ、是ガ爲デアルト存ジマス、唯此ノ增
稅案ハ、一方ニ於テ戰爭ヲ繼續シツツ、
方ニ於テ長期建設ノ大業ニ從事シテ居リマ
スル我國ノ現狀ニ於テ、果シテ妥當ナルモ
ノデアリヤ否ヤト云フ點ニ關シマシテ、多
少ノ疑問ヲ懷カザルヲ得ナイノデアリマス
ルカラ、以下數項ニ分チマシテ質疑ヲ爲シ、
國民ト共ニ疑惑ヲ一掃セントスル者デアリ
マス(拍手)
第一ニ、政府ハ何故ニ院議ヲ尊重シ根本
的稅制整理案ヲ今議會ニ提出シナカツタカ、
御承知ノ通リ第七十三帝國議會ハ、臨時租
稅增徵法中改正法律案外七件竝ニ支那事變
特別稅法案外四件ヲ通過セシメマシタ際ニ、
左ノ決議ヲ附シマシタコトハ、石渡大藏大
臣ハ能ク御承知ノコトト存ジマス、卽チ「時
局重大國民ノ負擔益、多キヲ加フルノ際其
ノ均衡ヲ圖ルハ現下ノ急務ナリ政府ハ中央
地方ヲ通ズル稅制ノ根本的整理案ヲ作成シ
速ニ議會ニ提出スベシ」ヨモヤ御忘レニナ
ツタコトデハナイト存ジマス、然ルニ玆ニ
上程セラレマシタ三案ハ、臨時利得稅、利
益配當稅、公社債利子稅、砂糖消費稅、〓
涼飮料稅、印紙稅ノ稅率ヲ引上ゲマシタノ
ト物品稅ハ其ノ稅率ヲ引上ゲルト同時ニ
課稅ノ範圍ノ擴張デアリマシテ、新ニ創設
セラレマシタノハ建築稅ト遊興飮食稅デア
リマス、隨テ中央地方ニ亙ル根本的稅制改
革ニハ觸レテ居ナイノデアリマス、帝國議
會ノ稅制改革ヲ重視シ、之ヲ主張スル所以
ノモノハ、第一ニ我國ノ稅制ハ結城藏相以
來臨時的改正又ハ創設ガ行ハレ、支那事變
以來增徵ニ次グニ增徵ヲ以テシ、國民ノ負
擔漸ク重クナリマシタガ、其ノ租稅ノ體系
ハ益〓複雜多岐トナツテ、容易ニ理解スルコ
トハ困難デアリマスルノミナラズ、稅制ノ
簡易化トハ益〓遠ザカツテ參ツタノデアリマ
ス、ソレノミデハアリマセヌ、此ノ間ニハ
不統一、不公平ナルモノサヘアリマシテ、
必ズシモ負擔ノ公平ヲ期シテ居ル譯デハナ
イノデアリマス、是レ稅制改革ヲ必要トス
ル理由デアリマス、第二ニハ、支那事
變以來戰爭目的遂行ヲ目標ト致シマシ
テ、各種ノ統制ガ行ハレマシタ、卽チ
臨時資金調整法、爲替管理法、輸出入品
等ニ關スル臨時措置ニ關スル法律、特上
物動計畫實施ノ結果ハ、原料配給ノ十分
ナル工業ハ榮エ、供給ノ不十分ナル方面
ニ於キマシテハ、失業者轉業者ヲ續出シタ
ノデアリマス、其ノ他不統一ナル綺制ガ又
次カラ次ヘト行ハレマシタガ爲ニ、經濟界
ノ各層ニ未曾有ノ激變ヲ來シタノデアリマ
ス、隨テ國民ノ所得又ハ其ノ擔稅力ニ關シ
マシテモ、之ヲ人別ニ見マシテモ、之ヲ地
方別ニ見マシテモ、著シイ變化ヲ來シテ參
ツタノデアリマス、斯ノ如キ大變動ヲ起シ
タルニ拘ラズ、從來ノ稅制ヲ持續適用致シ
マスルコトハ不適當デアリマシテ、國民ノ
痛苦是ヨリ甚シキモノハナイノデアリマス、
時代ノ變化ト情勢ニ從ツテ速ニ稅制ノ改革
ヲ行ハナケレバナラヌノデアリマス、
第三ノ理由ト致シマシテハ、我國ハ長期ニ
亙ルケ秩序ノ建設ト云フ、一大事業ヲ達成
スル大使命ヲ負ウテ居ルノデアリマスカラ、
此ノ時代ノ要求ニ順應スル新財政經濟政策
ヲ行ハナケレバナラヌノデアリマス、稅制改
革モ亦此ノ根本的財政經濟政策ニ伴ウテ、
新體系ヲ確立スル必然的立場ニアルト考ヘ
ルノデアリマス、此ノ要求ニ應ズル爲ニハ、
單ナル從來ノ負擔均衡論ヤ財政形式論ノミ
ニ囚ハレテ、稅制ヲ檢討スルコトハ許サレ
ナイ場合モアリマス、今ヤ其ノ要求ハ深刻
ナル時期ニ達シテ居ルノデアリマス、是ガ
卽チ稅革ヲ行ハナケレバナラヌ第三ノ理由
デアリマス、然ルニ今囘ノ增稅案ハ單ニ稅
率ヲ引上ゲマシタノト、地方稅デアル遊興
飮食稅ヲ中央ニ移管シタノト、新ニ建築稅
ヲ創設シタノニ過ギマセヌ、何等時代ニ順
應セル改革ノ跡ヲ見ルコトガ出來ナイノデ
アリマス(拍手)政府ハ果シテ院議ヲ尊重シ
タルモノト言ヒ得ルデアラウカ、御所見ヲ
伺ヒタイノデアリマス
第二ノ質疑ハ、根本的稅制整理案ヲ十五
年度ニ提出スルノ理由ハ如何デアルカ、賀
屋藏相ハ、經濟界ノ變動ノ激シイ時期ニ於
テ、稅制ノ根本的改正ヲ行フコトハ之ヲ避
ケテ、經濟界ノ安定シタル時期ニ於テ行ハ
ナケレバナラヌト云フコトハ、此ノ議場ニ
於テモ屢〓言明セラレタル所デアリマス、石
渡藏相ハ結城藏相以來、賀屋、池田兩藏相
ノ下ニ於キマシテ帷幄ニ參畫シテ、實ニ我
國ノ稅制ヲ其ノ掌中ニ握ツテ居ツタ人デア
リマス、若シ石渡藏相ニシテ賀屋藏相ト同
意見デアリマスルナラバ、來年度ヲ以テ經
濟界安定ノ時期ニシテ、稅制改革ニ適當ナ
ル機會ト見ラレルノデアリマスルカ、ソレ
トモ院議尊重ノ御意思ハ十分ニアルガ、今
年初頭俄ニ就任セラレタルノ故ヲ以テマダ
準備ガ出來ナイカラ、今年度ニ於テ之ヲ行
フコトハ困難デアルガ、來年度ニ於テハ院
議尊重ノ實ヲ擧ゲヨウト御考ニナツテ居ル
ノデアリマスルカ、此ノ點ニ付テ御所見ヲ
伺ヒタイノデアリマス
第三ハ財政計畫竝ニ增稅ノ限度デアリマ
ス、租稅計畫ト財政計畫トハ形影相伴フモ
ノデアリマシテ、不可分ノ關係ニアリマス、
財政計畫ガ確立シテ租稅計畫ガ確立スルノ
デアリマス、元來歲入ハ租稅ト官有財產收
入專賣益金ノ收入、其ノ他國ノ收入ヲ以
テ財源ト致シマスルコトガ原則デアツテ、
公債ハ其ノ缺陷ヲ補フニ過ギナイモノデア
リマス、然ルニ滿洲事變以來歲出ガ增加ス
ルニ從ツテ、公債依存ノ傾向ガ顯著トナリ
支那事變以來公債ガ激增致シマシタル結果、
今ヤ我國ノ歲入ハ公債ガ原則デアツテ、租
稅官業其ノ他ノ收入ハ、之ヲ塡補スルガ
如キ觀ヲ呈スルニ至ツタノデアリマス、卽
チ昭和十二年度ニ於キマシテ、百分比例ヲ
以テ示シマスルナラバ、租稅收入ハ二割五
分强、公債ハ實ニ五割九分强ニナツテ居リ
マシテ、官業其ノ他ノ收入ハ一割四分强ニ
ナツテ居リマス、十三年度ニ於テハ、租稅
ハ二割二分强デアツテ、公債ハ六割七分强
ニナツテ居リマス、更ニ十四年度ニ於キマ
シテハ、二億圓ノ增稅ヲ見込ミマシテモ、
尙ホ臨時軍事費ガ六十億圓ト假定致シマス
ルナラバ、恐ラクハ六割九分ノ程度ニ達ス
ルデアリマセウ、今ヤ戰爭ノ目的ハマダ達
成スルニ至ラズ、而モ東亞新秩序建設ノ工
作ヲ遂行シナケレバナラヌ際ニ當リマシテ
ハ、將來相當巨額ノ公債ニ依ルコトハ實ニ
避クベカラザル情勢デアルト存ジマス、然
ラバ年々增加スル此ノ巨額ノ國費ヲ支辨ス
ル爲ニ、公債發行ガ必至デアルト致シマス
ルナラバ、稅制樹立ノ目標モ亦之ニ適應セシ
メナケレバナリマセヌ、然ラバ政府ハ稅制
ヲ立テルニ當ツテ、其ノ租稅ノ限度ヲドノ
點ニ置カントスルノデアルカ、是マデ行ツ
テ參リマシタ如ク、必要ニ應ジテ其ノ時其
ノ時ニ辻褄ヲ合セテ行カントスルノデアリ
マスルカ、公債ノ利子ヲ「カバー」スル程度
ニ置カントスルノデアリマスルカ、更ニ亦
臨時軍事費支辨ノ一部ヲモ負擔シ得ル程度
ニ置カントスルノデアリマスルカ、其ノ限
度如何ニ依ツテ財政計畫ノ內容ガ定マリ、
稅制ノ立方モ亦之ニ順應シテ決定セラレナ
ケレバナラヌノデアリマス、然ラバ卽チ從
來數次行ハレマシタ增稅ノ如ク、目先ノ必
要ニ應ジテ、殆ド無方針ニ等シイ創設增徵
ヲ是レ事トシ、其ノ時々ヲ糊塗スルガ如キ
態度ヲ改メテ、新時代ノ要求スル新財政計
晝ニ順應スル根本的稅制ヲ立テナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、此ノ點ニ關シ
テ政府ノ所見ハ如何デアリマスルカ
第四ニハ生產力擴充計畫遂行ニ順應シテ
稅制ヲ改革スル用意如何ト云フ點デアリマ
ス、政府ハ生產力擴充計畫遂行ノ爲ニ意ヲ
用ヒラレマシタコトハ、非常時局ニアツテ
ハ機宜ノ處置ナリト言ハナケレバナリマセ
ヌ、併シ政府ノ新增稅案ニ於テ改革セラレ
マシタ程度ヲ以テ、果シテ所期ノ目的ヲ達
成シ得ルヤ否ヤト云フ點ニ付キマシテ疑問
ガ懷カルルノデアリマス、卽チ其ノ第一ハ、
法人ノ留保所得ノ一部ニ所得稅輕減ノ途ヲ
開キマシタコトハ結構デアリマスルガ、是
ハ〓ラクハ國家總動員法第十一條ノ發動ニ
依ル配當制限ヲ行ツタガ爲ニ、留保所得ヲ
奬勵スルヤウニナツタト存ズルノデアリマ
スガ、一方ニ於テ配當ヲ制限シ、留保所得
ガ多クナレバナル程、第三種所得ハ是ガ爲
ニ減少ヲスル結果ヲ生ズルノデアリマスル
ガ、是モ國策上已ムヲ得ヌト言ハルルノデ
アリマスルカ、更ニ政府ハ一方ニ於テ法人
ノ配當ヲ制限シ、留保ヲ奬勵シナガラ、
方ニ於テハ同ジ法人、卽チ同族會社ニ對シ
シテハ留保所得ニ制限ヲ置キ、其ノ制限以
上ノ留保ニ對シマシテハ加算稅ヲ課シテ、
之ヲ抑制セントシテ居ルノデアリマス、是
ハ恐ラクハ個人ノ第三種所得稅ヲ免ルルコ
トヲ防グ目的カラ出テ居ルノデアリマセウ
ガ、同ジ同族會社ニ於テ事業會社ガアリマ
ス、其ノ事業ノ必要上留保スル場合ガアリ
マスルガ、其ノ事業會社ニ對シテ何等玆ニ
改正ガ加ヘラレテ居ナイヤウニ見エルノデ
アリマスルガ、斯ル事業會社ニ對シテモ加
算稅ヲ課サント致シマスルナラバ、前後矛
盾ノ觀ガアルノデアリマス、之ヲ改正スル
ノ意思ハアリマセヌカ、此ノ點ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス、生產力擴充又ハ產業振興ノ
爲必要ナル各種ノ〓究的支出ニ關シ、課稅
上ノ特例ヲ設ケラレマシタルコトモ結構デ
アリマス、併シ〓究的支出ニハ高價ナル設
備ヲ要スル場合ガアリ、而モ是ハ中々得ラ
レ難イノデアリマス、又代用品製造發達ヲ
助長シナケレバナリマセヌガ、原料資材等
ガ軍需資材ニ向ケラレマスル關係カラ、供
給ノ圓滿ヲ缺クコトガアリマス、隨テ此ノ
〓究費支出ニ對シテ或ル程度ノ緩和ヲスル
ト云フコトハ、單ニ掛聲ニ終ツテ、實際ノ
效果ヲ擧ゲ得ナイノデハナカラウカト云フ
コトヲ惧ルル者デアリマスガ、政府ハ此ノ
點ニ關シマシテ特ニ留意セラレンコトヲ望
ミマス、第三ニハ減價償却ノ緩和デアリマ
ス、元來時局關係事業ニアリマシテハ、其
ノ設備原價ハ平時ヨリモ甚シク高價デアリ
ひく、船舶ニ致シテモ、機械類ニ致シマシ
テモ、特ニ化學工業設備ハ其ノ命數短ク、
工作機械ノ如キハ生產ヲ急グ爲ニ酷使セラ
レマス結果、其ノ命數ハ必ズシモ長イト致
シマセヌ、又一朝平和ガ來リマシタナラバ、
其ノ設備ハ全ク用ヲ爲サナクナルモノモア
リマス、隨テ減價償却年限ヲ相當高度ニ短
縮スルコトハ必要デアリマス、若シ適當ノ
償却ヲ許シマスナラバ、時局終了ノ後ト雖
モ影響ヲ受クルコトハ深刻デナク、且ツ將
來ニ此ノ事業ヲ持續スルコトガ出來ルノデ
アリマス、東亞新秩序ヲ樹立スル一大使命
ヲ果ス爲ニハ、時局事業、特ニ重工業、化
學工業方面ノ發達助長ヲ圖ラナケレバナリ
マセヌ、是ガ爲ニハ前途ニ不安ヲ與ヘ、生
產擴充計畫ニ躊躇逡巡セシムルヤウナコト
ハ、政策ノ得タルモノデハナイノデアリマ
ス、政府ノ船舶、機械及ビ設備ニシテ、今
後ノ新設又ハ進水ニ係ルモノニ對シマシテ
ハ、其ノ價格ノ三分ノ一ニ相當スル金額ニ
付キ、取得後三年間ニ特別ノ均等償却ヲ爲
スコトヲ認メルトアリマスガ、果シテ之ヲ
以テ十分ナリトセラレルノデアリマスカ、
寧ロ事變前ノ價格ト今日ノ時價トノ差額
ヲ、今日利益ガ十分上ツテ居リマス場合ニ、
可及的多ク、可及的短期間ニ償却セシムベ
キデハナイカ、之ヲ三年ノ期間內ニ每年均
等ニ償却セシムルコトハ、三年以内ニ利益
ヲ生ゼザルヤウナ場合ガアリマシタナラバ、
償却ノ機會ヲ失フコトトナリマス、償却ヲ合
理化シマスコトハ、時局收拾後ニ於テモ事
業ニ彈力性ヲ持タセル所以デアリマス、世界
市場ニ進出スル機會ヲ與フル、所謂和戰兩
樣ノ策ナリト言ハナケレバナリマセヌ、故ニ
政府ハ果シテ今囘ノ改正ノ程度ヲ以テ、十
分ナリトセラルルヤ否ヤト云フ點ニ付テ、
御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
生產力擴充ノ見地ヨリ見マシテ、更ニ政
府ノ御所見ヲ質シタイ點ガアリマス、其ノ
一ツハ現行第三種所得稅ヲ緩和スル意思ガ
ナイカト云フ點デアリマス、此ノ稅ノ增徵
ハ甚シク株式投資層ヲ重壓シテ居ルガ爲ニ、
生產力擴充ノ爲ノ株式資金吸收ニ相當ノ支
障ヲ來シテ居ルコトハ、昭和十三年度ニ於
テ取引所稅ガ激減シ、昭和十四年度ノ歲入
見積ニ於キマシテモ、相當巨額ノ減收ヲ見
テ居リマスコトカラ見テモ明カデアリマス、
元來第三種所得稅ニ於キマシテハ、株式取
得ノ爲ニ負ヘル借金利拂ヲ控除シナイデ、
高率ノ個人所得累進稅ヲ課シテ居リマスガ
爲ニ、株式ノ拂込竝ニ增資ニ當リマシテハ、
舊株或ハ所有株ヲ賣却シテ拂込金ヲ調達ス
ルノ已ムナキニ至リ、之ガ爲ニ遂ニ株價ヲ
低位ニ抑ヘテ居ルノデアリマス、隨テ增資
計晝ニ齟齬ヲ來スコトナシトセヌノデアリ
やく、大イニ生產擴充ヲ爲サント致シマス
レバ、稅率竝ニ借金ノ利拂控除ト云フ點ニ
考慮ヲ煩ハサナケレバナラヌト思フノデア
リマス、第二ニハ臨時利得稅甲種ヲ廢止ス
ルノ意思ナキヤト云フ點デアリマス、御承
知ノ如ク政府ハ時局ノ好影響ノ下ニ高利潤
ヲ得テ居ル方面ニ課稅ヲシテ、負擔ノ均衡
ヲ圖ル趣旨カラ利得稅、其ノ他ノ增徵ヲ圖
ツタノデアリマスガ、臨時利得稅ニアリマ
シテハ、稅率ヲ引上ゲタバカリデ、基準年度
ニ對シテ何等變更ヲ加へナカツタコトハ、
果シテ負擔ノ均衡ヲ得タモノト言ハルルノ
デアリマスカ、寧ロ重課ノ嫌ガナイカト云
フコトヲ疑フノデアリマス、臨時利得稅甲
種ハ昭和六年十二月三十一日以前ニ、三年
内ニ終了シタル事業年度ノ全部ノ平均利益
ヲ超過スル場合ニ於テ、其ノ超過額ヲ言フ
ノデアリマスガ、昭和七年ノ滿洲事變ヲ契
機ト致シマシテ、我國ノ經濟力ハ飛躍的ニ
進展シタノデアリマシテ、其ノ以前ノ三箇
年ハ我國經濟界ノ萎靡沈滯シタル時代デア
リマス、隨テ利益モ少ナカツタノデアル、
其ノ不景氣ノ時代ノ利益ヲ標準トシテ、之
ヲ超過シタル利益ニ對シテ重課致シマスル
コトハ、果シテ妥當デアルヤ否ヤ、經濟界
ノ變動劃期的ナルニ、十年前ノ利益ヲ基礎
ニ課稅ノ標準ヲ決定致シマスコトハ、不穩
當ノ謗ヲ免レナイト存ズルノデアリマス、
且又甲種利得ニ對シテハ七分配當ヲ基準ト
シテ居ルコトモ果シテ正當ナリヤ否ヤ、議
論ノ存スル所デアリマス、七分ノ配當ハ稅
金利子其ノ他ヲ控除致シマスルト、公債
利子ノ三分五厘ヲ下廻ルノデゴザイマス、
法人ノ標準利益配當率ト致シマシテハ、酷
ニ失スルト思ハレルノデアリマスガ、政府
ハ之ヲ是正スルノ意思ナキヤ否ヤ、此ノ點
ニ付テ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
第五ニハ、物品稅ヲ賣上稅ニ變更スルノ
意思ナキヤ、稅制ノ立テ方モ平時ト戰時ト
異ルコトハ已ムヲ得ナイノデアリマス、隨
テ平時ニアリマシテハ、間接稅ヲ增徵シテ、
消費大衆ノ負擔ヲ增加シ、物價騰貴ヲ誘因
スルガ如キハ、可及的之ヲ避ケナケレバナ
リマセヌ、併シ戰時ニ於キマシテハ、國民
大衆ト雖モ其ノ擔稅力ニ應ジテ戰費ヲ負擔
スベキデアリマス、政府ハ玆ニ物品稅ヲ增
徵シ、且ツ其ノ課稅範圍ヲ擴張シタルモ
此ノ趣旨ニ出デタルモノト存ジマス、唯政
府ハ物價騰貴ノ誘引トナルコトヲ避ケル爲、
又ハ國民消費大衆ノ負擔ノ過重トナルヲ慮
ツテ、不急ナル物品ニ對シテ課稅スルノ擧ニ
出デ、擔稅力ノアル層ニ重課セント致シマシ
テ贅澤品ヲ選ビ、又免稅點ヲ品別ニ依ツテ
比較的高イ地位ニ置キマシタコトハ、周到ナ
ル用意ノアル所ハ窺ハレマスガ、小賣課稅
ニアリマシテハ、高キハ四十圓ヨリ低キハ
五十錢ノ間ニ、各種等級ヲ付ケテ免稅點ヲ
設ケテアリマス、中ニハ贅澤品ト申シマシ
テモ、必需品モアリ、等級ヲ設ケル必要ナ
キモノモアリマス、隨テ斯ル等級ヲ付シマ
スルコトハ無意味デアルト思ハルル點モア
リマス、之ヲ小賣業者カラ見マスレバ、甚ダ
煩雜デアツテ、不必要ノ手數ヲ掛ケルコト
ニナリマス、之ヲ消費者大衆カラ見マシテ
モ、必ズシモ歡迎スルモノデハナイト思ハ
レル節モアルノデアリマス、故ニ戰時負擔
ヲ覺悟シテ居ル際デアリマスカラ、寧ロ免
稅點ヲ撤廢シテ、此處ニ揭ゲタル全部ノ物
品ニ對シ課稅ヲ爲シ、歲入增加ノ財源ト爲
スベキデハナイカ、併シ政府ハ物品稅ノ範
圍ヲ漸次擴張シテ參リマシタ、更ニ擴張ス
ル必要ニ迫ラルルモノト致シマスルナラバ、
寧ロ此ノ際此ノ免稅點ヲ撤廢シテ、國民大
衆ガ悉ク戰時費ヲ負擔スルト云フ意味カラ、
其ノ免稅點ヲ撤廢シテ、之ヲ賣上稅ニ變更
スベキデハナイカト考へルノデアリマスガ、
之ニ對スル政府ノ所見ハ如何デアリマスカ
第六ニハ個人ノ讓渡利得ニ對スル課稅ノ
點デアリマス、之ニ關シマシテハ二ツノ點
ニ付テ質疑ヲ致シタイト思ヒマス、從來船
舶又ハ鑛業、砂鑛業ニ關スル權利又ハ設備
ニ因ル個人ノ利得ハ、營業ニアラザル一時
ノ所得デアルト致シマシテ、所得稅、臨時
利得稅、營業收益稅ヲ免除致シテ參リマシ
タガ、今囘之ニ對シ臨時利得稅百分ノ二十
五ヲ課スルコトトナツタノデアリマスルガ、
其ノ價格決定ノ期日ヲ昭和十一年十二月三
十一日ト定メタノハ何故デアルカ、其ノ賣
却讓渡ノ行ハレマシタ時ハ稅金ヲ見込マナ
カツタノデアリマスルガ、若シ之ヲ昭和十
四年度四月一日ヨリ此ノ稅金ガ課ケラレル
ト致シマシテ、過去ニ遡ツテ課稅セラルル
虞ハナイカ、此ノ點ハ政府ノ御說明ニ依リ
マシテモ甚ダ明確ヲ缺イテ居ル點ガアリマ
スルカラ、此ノ議場ニ於テ明ニセラレンコ
トヲ希望スルノデアリマス、更ニ鑛業權ノ
點デアリマスガ、元來鑛業權ト云フモノハ
未ダ利益ヲ生マザル權利デアリマス、試掘
シ、採掘シテ初メテ利益ヲ生ムカ生マナイ
カト云フコトガ決セラレルノデアリマス、
隨テ此ノ鑛業權ナルモノハ、現金ヲ以テ、
或ハ市場ノ價値アル株式ヲ以テ讓渡セラレ
ルコトハ稀デアリマシテ、現在ノ實情ヲ以
テ致シマスルナラバ、市場價値ナキ株式ヲ
以テ讓渡セラルルコトガ多イノデアリマス、
寧ロ是ガ普通デアルト言ツテ差支ナイ、此
ノ方法ガ鑛業開發ヲ刺戟シテ居ルノデアリ
さく、而シテ斯ル場合ニ於キマシテハ、其
ノ株式ハ市場性モナク、個人間ノ賣買モナ
ク、隨テ額面五十圓ノ株價ハ一圓デアルカ
モ知レナイ、或ハ五圓デアルカモ知レナイ
ノデアリマス、事業ガ成功スレバ初メテ市
場價値ガ生ズルノデアリマス、故ニ會社創
立當時ニ於テ直チニ額面ニ對シテ二割五分
ヲ課シマスルコトハ、鑛產物產出ヲ助長ス
ル所以デナイノミナラズ、時局ニ必要ナル
鑛物生產ヲ阻止スル結果ヲ生ズルノデアリ
やく、是ハ政府ガ曩ニ鑛產稅ヤ特別鑛產稅
ヲ免除シテ、鑛物增產ヲ刺戟シタル政策ト
全然相反スル稅制政策デアルト謂ハナケレ
バナリマセヌ、故ニ之ヲ實情ニ卽セシメル
趣旨カラ、市場價値ナキ株式ハ、何等カ評
價ノ方法ヲ立テマシテ、其ノ標準ニ從ツテ
課稅スルコトガ妥當デハナイカ、政府ニ其
ノ意思アリヤ否ヤ御伺シタイノデアリマス
最後ニ第七ニ、政府ハ增稅計畫ヲ企圖シ
テ居ルノデアリマスルガ、其ノ租稅上ノ措
置ニ付テ、他ニ財源ヲ求ムル意思ハナイカ、
斯ウ云フ點デアリマス、御承知ノ如ク、今
日ハ法人ニシテ租稅ノ輕課又ハ減免ノ恩典
ニ浴スル者ガ多イノデアリマス、而モ是等
ノ團體ハ年々歲々增加ノ傾向サヘアリマス、
其ノ中ニハヽ相當發達シテ、其ノ擔稅力ニ
於キマシテモ、民間會社ト同一ノ「レベル」ニ
置クモ何等發達ヲ阻止スル懸念ナキ域ニ達
シテ居ルモノモ少シト致シマセヌ、又近來
特ニ激增シツツアリマス所ノ國策會社ノ如
キモ、寧ロ一率一體ニ課稅主義ヲ徹底シテ、
是ガ必要ノアル場合ニハ保護助成ヲ爲スコ
トモ所謂全國課稅主義ヲ徹底スル所以デア
リマス、是等ノ法人課稅ニ對シテ再檢討ヲ
爲シ、增收ヲ圖ルベキデハナイカト思フ點
デアリマス、次ニハ官公有事業デアリマス
ガ、民業ニ對スル課稅ト相應ズルヤウニ收
入ノ方法ヲ講ズルガ爲ニ、何等カ官公有事
業ニ對シテ或ル處置ヲ執ルベキデハナイカ
ト思フノデアリマス、更ニ免稅團體竝ニ非
課稅法人ノ整理ニ付テ注意ヲ向ケナケレバ
ナリマセヌ、近來是等免稅ノ對象ハ益〓激
增ノ傾向ニアリマス、是等ノ團體又ハ非課
税法人ハ理論上課稅ノ對象トナラヌトノ理由
ヲ以テ、租稅ヲ免レテ居リマス、中ニハ往々
ニシテ本來ノ目的カラ逸脫シテ事業ヲ經營
シ、而モ尙ホ課稅ヲ免レテ居ルモノモアリ
Rく、或ハ實質ニ於テハ商行爲ヲ營ンデ立
派ニ納稅義務ヲ果シテ居ルモノト競爭ノ立
場ニサヘ立ツテ、相剋摩擦ヲ演ジテ居ルモ
ノサヘモ存スルノデアリマス、斯ノ如キハ
理論ニ隱レテ納稅ヲ免ルルモノデアリマシ
テ、是等ノ組織ガ增加スレバスル程國家ノ
稅源ハ狹メラレ、隨テ租稅ノ重課ハ民間ニ
集中セラレ、其ノ民間ノ個人竝ニ法人ノ企
業心ヲ萎靡セシムルヤウナ結果ヲ生ジナイ
トハ限ラナイノデアリマス、而シテ是等ノ法
人ハ所得稅ハ勿論、殆ド有ユル課稅カラ免
カレテ居ルノデアリマス、斯ノ如キハ隱然
タル課稅ノ治外法權的存在ナリト謂ハナケ
レバナリマセヌ(拍手)隨テ政府ハ或ル程度
ノ撤廢ヲ期セネバナラヌト存ジマス、斯ノ
如クシテ、國民皆兵主義ト相竝ンデ、我ガ國
民ノ二大義務デアリマス所ノ國民皆納稅主
義ガ樹立セラレルノデアリマス、政府ハ是
等ノ諸點ニ關シ、深甚ナル考慮ヲ拂ヒ、國
費增收ノ目的ヲ以テ再檢討再整備ヲ爲スノ
意思アリヤ否ヤ、御所見ヲ伺ヒタイノデア
リマス、以上ノ諸項ニ亙リ政府ノ明快ナル
御答辯ヲ煩シタウ存ジマス(拍手)
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=18
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019・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 御尋ニ對シテ
御答致シマス、最初ノ第一ノ御尋ハ、昨年
政府ニ對シテ稅制ノ根本的整理案ノ作成ヲ
要求シタノデアルガ、ソレヲ今年實行シナ
イノハ如何ナル理由デアルカ、斯ウ云フ御
尋デゴザイマス、是ハ御承知ノ通リ一昨年
ノ議會ニ於キマシテ、一般的ノ稅制ノ改正
ヲ此ノ次ノ議會ニ提出スル考デアルト、斯
ウ申シタノデゴザイマスガ、偶〓一昨年ノ七
月カラ支那事變ガ勃發シマシテ、昨年ノ議
會ニ提出スルヲ得ナカツタノデゴザイマス
ルガ、同樣ノ理由ニ依リマシテ實ハ今年ノ
議會ニモ提出スルヲ得ナカツタ次第デゴザ
イマスガ、今ヤ事變ハ新シキ段階ニ入リマ
シテ、長期建設ニ相成ツテ來タ譯デゴザイ
マスノデ、玆ニ稅制モ根本的ナ一般的改正
ヲ行フト云フコトノ時期デアルト存ジマシ
テ、此ノ次ノ議會ニ提出致シタイ心構ヲ以
テ目下調査ヲ進メテ居ル次第デゴザイマス、
左樣御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス
財政計畫ヲ樹立シテソレニ相當スル所ノ稅
制ノ制度ヲ樹立スル必要ガアルデハアルマイカ
ト、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、是ハ洵ニ
御話ノ通リデアルト思フノデアリマス、併シ
ナガラ此ノ事變最中ニ於テ今後ニ於ケル公債
ノ發行額ト云フモノガ、果シテ幾許ニ相成ツ
テ行クモノデアルカ、斯ウ云フヤウナ見透
シヲ致スコトハ、此ノ戰爭狀態ニアリマスル
場合ニ於テハ、是等ノ計畫ノ見透シヲ致シ
マスルコトハ極メテ困難ナ時期デアルト共
ニ、又不適當ノ時期デアルト考ヘテ居ルノ
デゴザイマス、此ノ關係ニ於テハ其ノ財政
計畫ヲ樹立スルト同時ニ、稅制計畫ノ樹立
ヲ必要トスル、財政計畫ノ見透シガ十分デ
ナイ場合ニ、稅制改正ノ計畫ヲ立テルト云
フコトハ不適當デハアルマイカト、斯ウ云
フ考ガアルカト存ズルノデアリマス、併シ
ナガラ此ノ稅制ノ關係ニ於キマシテハ、旣
ニ數年來ノ懸案デアリマシテ、今日ノ場合
之ヲ相當程度ニ於テ改正スルノ必要ガアリ
マスルノデ、此ノ分ハ是非トモ明年度ニ於
テ實現致シタキ氣持デ居ルノデゴザイマス
稅收入ト公債收入トノ御話デゴザイマシ
タガ、是ハ斯ウ云フコトモ一ツ御考へ戴キ
タイト思フノデアリマス、稅收入ハ必ズシ
モ增稅ノ收入其ノモノガ入ツテ來ル譯デゴ
ザイマセヌノデ、增稅ノ收入ト共ニ自然增
收ト云フモノガ相當多額ニ今日收入ニ相成
ツテ居ルノデゴザイマス、ソレデ昭和十四
年度ノ豫算ニ於キマシテモ、一般會計豫算
三十六億九千万圓ノ內二十八億餘万圓ト云
フモノハ、之ヲ普通歲入ヲ以テ蔽ウテ居ル
譯デゴザイマシテ、此ノ稅及ビ稅ニ相當致
シマスル普通歲入ト云フモノモ相當增加シ
ツツ收入シテ居リマスル現狀ヲ御承知アリ
タイト思フノデアリマス
ソレカラ其ノ次ニ留保所得ノ免稅ニ付
テ、同族會社ト云フモノハ留保ヲ致セバ加
算規定ニ依ツテ租稅ガ重ク相成ル、然ルニ
今度ハ留保ニ依ツテ輕クスルト云フ稅法ヲ
政府ハ提出シテ居ルガ、ソレハ矛盾スルノ
デハアルマイカト、斯ウ云フ御尋デアルト
存ジマス、是ハ同族會社デナイモノニ付テ
ハソレハ小山サンモサウ御考へ下サルデ
アラウト思フノデアリマスガ、此ノ點ハ別
ニ問題ハゴザイマセヌ、唯同族會社デアル
場合ニ於テハ、一方ニ於テ多額ノ留保ヲ致
セバ加算規定ガアル、又一方ニ於テ留保ヲ
多額ニスレバ稅ヲ輕減スル、斯ウ云フコト
デ矛盾デハアルマイカト、斯ウ云フ御尋デ
アルト思フノデゴザイマス、小山サンノ御
尋モ此ノ保全會社ニ付テハ是ハ問題ガナイ
ヤウニ存ジテ居ツタノデゴザイマスルガ
企業會社ニ付テハ多少ノ問題ガゴザイマス、
矛盾シタヤウナ考ヘ方ノ問題ガアルト存ジ
テ居リマス、此ノ問題ハ其ノ會社ノ企業ノ
性質ニ依リマシテ、又此ノ加算規定ノ適用
ヲ出來ルダケ控ヘクイト存ジテ居リマス、
負擔ノ關係上、相當租稅ヲ逋脫致シ易イ意
思ノアル分ニ付キマシテハ、是ハ又別途ニ
考ヘル必要ガアルト存ジマスルガ、普通ノ
企業ヲ致シテ居リマスル、普通ノ狀態ニ於
キマスル同族會社ニ對シマスル加算規定ニ
付テハ、其ノ適用ニ付テ業態等ヲ考ヘマシ
六、餘程其ノ點ハ考ヘタイト存ジテ居リマ
ス、是ハ行政上ノ問題デゴザイマシテ、法
律上ノ問題デゴザイマセヌノデ、實ハ今度
ノ規定ノ中ニ之ヲ入レテ置カナカツタ次第
デゴザイマス、左樣ニ致シタイト存ジテ居
リマス
ソレカラ〓究費ノ支出ニ付テ御尋ガゴザ
イマシタガ、是ハ御趣旨ノ點ハ十分留意致
シマシテ、是等ノ點ニ付テ十分御考ノ點ハ
留意シタイト存ジマス、減價償却ノ問題デ
ゴザイマスルガ、減價償却ニ付キマシテハ
多年此ノ議會ニ於キマシテモ御議論ガゴザ
イマシテ、一昨年議會終了後一應減價償却
ノ率ヲ改正致シマシテ、償却年限ヲ短縮シタ
ノデゴザイマス、昨年議會終了後再ビ御趣
旨ニ依リマシテ減價償却ノ率ヲ短縮シタ次
第デアリマスガ、今年ノ分ハ三度目デゴザ
イマシテ、サウシテ是ハ相當大幅ナ特殊ナ
減價償却ヲ致スト云フコトデゴザイマスノ
デ、法律ニ規定シタ次第デゴザイマス、三
年間ト云フ所ニ御疑點ガアツタヤウデゴ
ザイマスルガ、是ハ急速ニ此ノ際生產擴
充ヲ取運ビタイト云フ考カラシマシテ、
一定ノ年限ヲ限ツタ譯デゴザイマスノデ、
其ノ邊ノ事情ハ御諒承願ヒタイト存ジマ
ス
ソレカラ株式配當ノ第三種所得ニ付テ、
利子ヲ引カナイモノデアルカラ拂込ノアツ
タ場合ニ株式ヲ賣却スル所ノ弊害ガアツ
テ、生產力擴充上不當ナ結果デアルデハナ
イカト、斯ウ云フ御意見デゴザイマスルガ、
是ハ色々ナ考ヘ方ガアルト思フノデアリマ
スルガ、借金ノ利子ヲ株式ノ配當カラ引カ
ナイト云フ所ニモ、一ツノ原因ガアルカト
存ジテ居ルノデゴザイマス、此ノ問題モ多
年ノ問題デゴザイマスルガ、實行上ノ不便モ
ゴザイマシテ、今日マデマダ實行ノ運ビニ
至ラヌノデゴザイマス、是ハ將來ノ問題ト
致シマシテ、十分考究致シタイト存ジテ居
リマス
次ニ甲種臨時利得稅ノ問題デゴザイマス、
是モ相當古イ時ノ所得ヲ基準ニシテ、今日
利得ヲ計算シテ居リマスルコトハ御說ノ通
リデアリマス、併シナガラ昭和四、五、六
年當時ヨリ致シマシテ、今日所得ノ更ニ增
加致サナイ者モアル狀態デアリマシテ、却
テ惡クナツテ居ルヤウナ者モアル狀態デア
リマスカラ、昭和四、五、六年ヲ基準ニ致
シマシテ、玆ニ多少ノ增徵ノアルコトハ巳
ムヲ得ナイカト思フノデゴザイマス、併シ
ナガラ御趣旨ノ點等ヲ十分考慮ニ入レマシ
テ、甲種利得ノ增徵ハ極メテ其ノ率ヲ少ク
シマシテ、今囘ノ增徵ハ主トシテ乙種利得
ノ方ヲ增徵致シク次第デアリマス
次ニ物品稅ノ免稅點ノ問題デゴザイマス、
之ヲ寧ロ此ノ際賣上稅ニ改組シタラ宜イデ
ハナイカ、斯ウ云フ御話デアルト思フノデ
アリマスルガ、御說ノヤウナ御趣旨ニ付キ
マシテハ、一應十分檢討ヲ致シテ見タノデ
アリマスルガ、此ノ際ノ問題ト致シマシテ
ハ、是ハ一面ニ於テハ物價問題トモ關係致
シテ來ル問題デアリマスルノデ、比較的生活
ノ實體ニ遠イ物ヲ選ビマシテ、ソレニ或點
ノ免稅點ヲ置イテ物品稅ヲ課稅致シマシタ
方ガ、此ノ際ノ問題トシテハ適當デアル
ト考ヘタ次第デゴザイマシテ、御趣旨ノヤ
ウナ點ニ付キマシテハ、將來ノ問題トシテ
ハ考究致シタイト存ジマスガ、今日ノ場合ハ
或ハ不適當デハアルマイカト考ヘテ居ル次
第デゴザイマス
船舶、鑛業權ノ讓渡ノ問題デゴザイマス
ルガ、只今御話ノゴザイマシタ昭和十一年
十二月三十一日ノ問題ハ、是ハ昭和十一年
十二月三十一日ニ遡ル問題デハゴザイマセ
ヌ、其ノ時ヲ一定ノ基準時トシマシテ、利
得額ヲ計算致スコトニ相成ツテ居ルノデゴ
ザイマシテ、其ノ課稅ノ對象ハ前年ニ於ケ
ル賣買ノ利得ノ總額デゴザイマス、ソレデ
ゴザイマスルカラ、今年課稅ヲ受ケマス者
ハ昭和十三年一月一日ヨリ昭和十三年十
二月三十一日ニ至ル期間ニ於テ讓渡ニ依ツ
テ儲ケヲシタ、其ノ儲ケニ課稅サレル譯デ
ゴザイマス、會社ニ出資シタ場合ノ株式等ノ
評價ノ關係ハ如何致スカ、斯ウ云フ御尋デ
ゴザイマスガ、是ハ時價ニ依リマス、時價
ノ不分明チモノニ付テハ、適當ニ算出致シ
マン、是ハ今日ノ場合ニ於キマシテモ、相
續稅其ノ他ニ於テ實行ヲ致シテ居ルコトデ
ゴザイマシテ、決シテサウ實行ニ困難デハ
アルマイカト考ヘテ居リマス
其ノ次ハ免稅團體ノ問題デゴザイマス、
免稅團體ニ付テハ、御趣旨ノヤウニ今日各
種ノ免稅ノ團體ガゴザイマス、之ニハ各〓皆
相當理由ノアルモノデゴザイマスルガ、稅
制ノ一般改正ノ場合ニハ、再檢討ヲ致ス必
要ノアルコトヲ痛感シテ居ル次第デゴザイ
マシテ、是ハ御趣旨ノ如ク再檢討致ス積リ
デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 橫川重次君
〔橫川重次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=20
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021・横川重次
○橫川重次君 只今上程ニ相成ツテ居リマ
スル租稅ニ關スル三案ニ付キマシテ、數項
ノ質疑ヲ致シタイト思フノデゴザイマスル
ガ、ソレニ先ダツテ政府ノ財政上ノ根本ノ
信念ト租稅政策トノ關係ニ付キマシテ、
應承ツテ置キタイト思フノデゴザイマス
政府ハ第六十八帝國議會ニ臨時利得稅法
案ヲ提出致シマシテ、平年度四千万圓ノ
增稅ヲ實行致シ、其ノ後數次ニ亙リマシテ
增稅ヲ行ヒマシテ、今議會ニ於テ第四次ノ
增稅案ヲ提出シタノデアリマス、之ヲ通計
致シマスルト、平年度八億四千万圓ト相成
リマシテ、昭和九年度ノ豫算ニ於キマスル
稅收入七億七千四百五十万圓ニ對比致シマ
スルト、十割ヲ超エタ額ト相成ルノデゴザ
イマス、勿論其ノ間局ニ當ル者ハ迭ツテ居
リマスルシ、又客觀情勢ニ於キマシテモ非
常ナ變化ガアツタノデアリマスルガ、增稅
ニ對スル當局ノ熊度竝ニ其ノ目標モ漸次推
移シテ參ツタノデアリマス、此ノ點ハ洵ニ
其ノ日暮シノ觀ガアルノデアリマシテ、時
局ニ對應スル一貫セル方針ハ、殆ド之ヲ其
ノ間ニ窺フコトガ出來得ナカツタノデアリ
マシテ、國民ノ立場カラ之ヲ見マスルト、
甚ダ遺憾ノコトデアルノデゴザイマスルガ、
旣往ニ付キマシテハ、時局發展ノ情勢ニ鑑
ミマシテ、是亦已ムヲ得ザルコトト致サナ
ケレバナリマセヌ、併シ今ヤ時局ハ長期
建設ノ時期ニ入リマシテ、國民ノ覺悟モ大
イニ革ツテ參リマシテ、寧ロ進ンデ增稅ヲ
迎ヘルノ態度スラ看取セラレルノデアリマ
ス、是レ一ニ皇軍將士ガ如實ニ示シマシタ
所ノ、聖戰ノ成果ニ依ツテ齎ラサレマシタ
ル所ノ、擧國的ノ熱情ノ現ハレデアリマス、
此ノ際政府ノ責任ハ殊ニ重大デアルノデア
リマシテ、政府ハ宜シク東亞新秩序建設ニ
對應致シマスル所ノ財政經濟策ノ確立ヲ以
テ、國民ノ熱情ニ應ジナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、當面致シマスル財政經濟ガ、戰
時下ノソレデアリマスルコトハ言フマデモナ
イコトデアリマスルガ、現下ノ國際情勢ヲ背景
ト致シマシテハ、從來マデノ考へ方ノ如ク、
何時ヨリ戰時デアツテ、何日ヨリヲ平時デア
ルト云フコトヲ、劃然ト區別シテ考フルコト
ハ不可能ナコトデアルノデアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
故ニ戰時卽チ平時ノ覺悟ヲ以チマシテ、
長期的ノ覺悟ヲ以テ進マナケレバナラヌノ
デゴザイマス、隨テ戰時的竝ニ平時的ノ財
政經濟政策ヲ並行的ニ按排調和シテ行クノ
デアリマセヌケレバ、眞ニ長期建設ノ實ヲ
擧ゲルコトハ出來ナイモノト信ズルノ
デアリマス、此ノ意味ニ於キマシテ國庫
ノ歲出ハ將來ニ亙ツテ相當巨額ニ上ルコ
トハ、萬人ノ齊シク看取スル所デアルノ
デアリマス、之ニ對シテ政府ハ、十分
ナル覺悟ヲ以テ公債政策竝ニ租稅政策ノ
適合ヲ圖リマシテ、財政經濟ノ積極的ノ
轉換ヲ圖リマシテ、時局ニ應ジテ行カナケ
レバナラヌノデアリマスルガ、此ノ公債政
策、租稅政策ノ適合ニ對シマシテ如何ナル
具體案ヲ保持シテ居ラレルノデアリマスル
カ、小山君ニ於カレテモ既ニ此ノ點ヲ御問
ニナツタノデアリマスルガ、之ニ對シマシ
テハ消極、積極、中間ノ三樣ノ見方ガアル
ト思フノデアリマス、試ミニ昭和九年末ニ
於キマスル所ノ公債ノ總額ハ九十億圓デア
ツタノデアリマス、而モ昭和九年ニ於キマス
ル租稅收入ハ七億七千餘万圓デアリマシテ、
昨年末現在ニ於キマスル公債總額ハ百六十
六億圓、本年度發行セラレマスル額ヲ加ヘ
マシテ二百億圓以上ニ上ルノデアリマセウ
ガ、大體二百億圓トシテ之ヲ檢討シテ見マ
スルト、租稅收入ニ於キマシテハ二十二億
餘圓デアリマシテ、此ノ租稅ト公債トノ對
比ニ付テ考ヘテ見マスト、昭和九年ニ於キ
マシテハ租稅收入ハ公債總額ニ對シマシテ
八%デアツタノデアリマスガ、本年度ニ於
キマシテハ既ニ一二%ト云フ、此ノ關係ニ
關スル限リ非常ニ改善セラレタ狀態ニ相成
ツテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ狀態カラ
見マスト、更ニ增稅ヲ要セズシテ公債發行
ノ限度ガ豐富ニ保持セラレテ居ルト云フ考
ヘ方モ出來ルノデアリマスルガ、又一方ニ
長期建設ノ積極策ニ轉ジマスル爲ニハ、ド
ンドン然ルベキ方面ニ增稅ヲシテ十分ナル
覺悟ヲ以テ進マナケレバナラヌト云フ强キ
見方モアルノデアリマス、又其ノ中間的ニ
考ヘマシテ、少クトモ新規公債ニ對スル利
拂程度ノモノハ、新規ノ增稅ニ依ツテ賄ツ
テ行カナケレバナラヌト云フ見方モアルノ
デゴザイマスルガ、是等三樣ノ見方ニ付キ
マシテ、政府ハ今後何レノ方針ニ向ツテ其
ノ根本的ナ對策ヲ立テテ行カレルノデアリ
マスルカ、公債竝ニ租稅政策ノ適合ト云フ
問題ニ付キマシテ御伺シタイノデアリマス
次ニ大藏大臣ハ豫算委員會ニ於キマシテ、
公債消化ガ比較的順調ニ進ンデ居リマスノ
デ、目下惡性「インフレ」ノ虞ハナイト云フ
意味ノ御意見ヲ發表シテ居ラレマスルガ、
元來國民貯蓄ノ增加ハ、一方ニ國民ノ時局
的協力ノ精神的現ハレデアリマシテ、他方
又國民所得ノ增加ヲ表示スルモノデアリマ
ス、而シテ此ノ國民的所得其ノモノハ一方
ニ生產活動ノ旺盛ヲ前提トシ、隨テ勞働力
竝ニ物資ノ〓騰其ノモノガ國民所得ヲ增大
セシメテ居ルノデアリマスガ故ニ、大藏大
臣ガ御說明ニナツテ居リマスル惡性「イン
フレ」防止ノ爲ニ致シマスル所ノ、國民貯
蓄ノ奬勵增大ト云フモノノ中ニハ、所謂「イ
ンフレーション」ノ道程ガ旣ニ包含セラレ
テ居ルト思フノデアリマス、併シナガラ此
ノ意味ノ「インフレーション」ハ生產活動、
消費活動ノ旺盛ヨリ致シマシテ齎ラサレル
モノデアリマスカラ、通貨的原因ニ依ル所
ノ惡性ノモノトハ區別シテ考ヘルコトガ至
當デアルト考ヘルノデアリマスルガ、斯ル
意味ノ「インフレーション」ハ政府ノ物價統
制其ノ他有ユル對策ニモ拘ラズ、現在ノ如
キ大豫算ノ續キマス限リ、進行ヲ餘儀ナク
サレルモノト思フノデアリマス、換言致シ
マスレバ生產力擴充ノ充足セラレマセヌ限
リ、此ノ傾向ハ停止セヌモノト思フノデア
リマスルガ、是等ニ對シマシテハ政府モ既
ニ各樣ノ對策ヲ講ジテ居リマスルガ貢ハ
十分ナル統制ヲ以テ臨ムベキコトハ言ヲ俟
タナイノデゴザイマス、而モ尙ホ現在ニ於
キマシテハ、其ノ統制ハ上層ノ統制デアリ
マシテ、價格構成ノ根本ニ觸レテ居ラナイ
ノデアリマス、左樣デアリマスルカラ現在
ノ儘ニ於キマシテ更ニ人的統制ヲ强化致
シマスルコトハ、結局經濟活動ノ自然ニ
背馳スル如キ結果ト相成ルノデアリマシ
テ、生產力擴充ノ根本目的ニ反スルガ如
キ虞ガ多々アルノデゴザイマス、政府
ハ豫算編成及ビ其ノ實施ニ當リマシテ、此
ノ兩立シ難キ所ノ二ツノ命題ヲ如何ニ處理
シテ行ク御考デアルノデアリマスルカ、尙
ホ進ンデ總動員法ノ全的發動ヲ必要トシテ
居ラレルト云フ現在ノ御考デアリマスルカ
ドウカ、此ノ點ニ付テ御伺致シマス
次ニ大藏大臣ハ近ク中央地方ヲ通ズル所
ノ根本的稅制整理ヲセラルルト云フ御所信
ヲ發表ラレテ居リマス、而モ其ノ御方針ノ
大要モ既ニ本日御示ニナツタノデアリマス
ルガ、其ノ中ニ負擔ノ衡平ヲ期スルト云フ
一項ガアルノデアリマス、是ハ洵ニ御尤ノ
御方針ト考ヘルノデアリマスルガ、實際問
題ト致シマシテハ課稅上ノ不均衡ノ是正ト
同時ニ、相當ノ將來ニ亙ツテノ增徵ヲ圖ル
ノ必要ガアラウカト信ズルノデアリマスル
ガ、其ノ將來ノ增徵ニ對シマシテ如何ナル
稅目ニ力ヲ入レテ御選ビニナルノデアル
カ、如何ナル方向ニ此ノ增徵ノ展開ヲ致サ
レルノデアルカ、是等ノ點ニ付キマシテ先
ヅ御伺スルノデアリマス、尙ホ現在我國ノ
國富竝ニ國民ノ所得ハ、漸次不動產カラ動
產中心ニ發展シツツアルノデアリマスル
ガ、隨テ今後ノ稅制改革ニ際シマシテハ
是等ノ點ヲ十分採入レマシテ之ヲ實行スル
ノ必要ガアラウト思ヒマスルガ、是等ニ關
スル御用意ノ程ヲ此ノ際豫メ承ツテ置キタ
イノデアリマス、尙又左樣ナ見地カラ致シ
マシテ增徵ノ目的ヲ達シマスル爲ニハ、流
通稅、消費稅、財產稅等ニ付キマシテ更ニ
擴張シタル課稅ヲスルコトガ極メテ有效デ
アルト思フノデアリマスルガ、是等ニ付テ
如何ニ御考ニナツテ居リマスルカ、其ノ點
ヲ御伺致シマス
次ニ法案ニ付キマシテ二三ノ點ヲ御伺致
シマス、先ヅ最初ニ增稅ノ目標デアリマス、
是ハ旣ニ小山君モ大體御尋ニナツタノデア
リマスルガ、本案ハ地方還元額ヲ差引キマ
シテ約一億八千五百万圓ノ增收見積デアリ
マシテ、臨時軍事費ノ一部ニ充當スルト云
フ御趣旨デアリマスガ、此ノ稅額ニ付テ考
ヘテ見マスルニ、財政經濟上ノ意義カラ考へ
マシテ、洵ニ其ノ目途スル所ガ那邊ニアル
ノカ諒解ニ苦シムモノデアリマス、臨時軍
事費ノ全貌ハマダ之ヲ見ルコトヲ得マセヌ
ガ、恐ラク昨年度ノ五十億ヲ相當額超エル
モノト推測サレルノデアリマス、而シテ普
通豫算ニ於キマシテモ八億餘ノ公債ヲ發行
スルノデアリマシテ、斯樣ナ際ニ於テ此ノ
程度ノ、公債利子ニモ當ラナイ程度ノ增稅
ヲ致シマスト云フコトハ、其ノ必要郡邊ニ
アリヤト云フコトニ對シテ多大ノ疑問ヲ懷
ク者デアリマス、殊ニ藏相ノ言明ニ依ツテ
期待サレマスル所ノ來年度ニ於キマスル稅
制ノ根本改革ト云フモノヲ控ヘテ居リマス
ル其ノ際ニ於テ、財政上ノ將來ヲ慮リ、又
自然增收等ノ度合ヲモ睨ミ合セマシテ、所
要ノ限度ヲ決メテ爲スベキ增稅デアルナラ
バ大規模ニ之ヲ行ウテ行ツタラ宜イデハ
ナイカ、必要デアルナラバ國民ハ此ノ際ニ
於テ何モノヲモ辭サナイ所ノ覺悟ヲ持ツテ
居ルノデアリマスカラ、斯樣ナ勇斷的ノ處
置ニ出ラレルコトガ寧ロ望マシイコトデア
ルト思フノデアリマスガ、斯樣ニ稅種目ニ
致シマシテモ十項目ニモ是ガ亙ツテ居リマ
ス、又其ノ中ニハ國稅トシテハ望マシカラ
ザル稅種モ入ツテ居ルヤウニ思フノデア
リマスルガ、何ガ故ニ左樣ナル增稅ヲ此ノ
際ニ行ツタカト云フコトニ付キマシテ、再
應ノ御說明ヲ御願シタイト思ヒマス、又政
府ハ先程消費抑制ニ資スル趣旨ニ依ルト云
フ御說明ガアツタノデアリマスガ、消費抑
制ノ趣旨ガ主眼デアリマスルト、現在ノ財
政政策上ニ於キマシテハ、此ノ增徵其ノモ
ノガ必要デナシト御考デアルノデアリマス
カ、又所謂此ノ租稅上ノ處置ニ依リマシテ、
消費ノ抑制ト云フコトガ達シ得ラレルモノ
ト御考ニナツテ居ルノデアリマセウカ、又
將來ノ租稅政策ニ於キマシテハ、斯樣ナ
增收ト云フモノヲ一般的ニ考ヘルコトナシ
二、社會倫理的ノ課稅ニ重點ヲ置カレルノ
御考デアリマセウカ、是等ノ點ニ付キマシ
テ再應ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス、私
ノ考フル所ヲ以テ致シマスト、餘リニ社會
倫理的ノ「イデオロギー」ニ偏セル小乘的ノ
態度ヲ以チマシテ租稅政策ヲ運用致シマス
ルコトハ、却テ國民全體ノ期待ト誇ニ反ス
ルノ結果ニナルノデハナイカト思フノデア
リマス
次ニ臨時利得稅ニ關シマシテ一問ヲ致シ
やく、臨時利得稅ノ增徵八千一百万圓バカ
リデアリマスルガ、今次增稅ノ稅額ヨリ見
マシテモ主タルモノデアリマス、事變下ニ
於キマスル所ノ利得ニ對シマスル課稅其ノ
モノハ、是ハ不合理デハナイノデアリマス
ガ、現在甲種利得ニ對シマシテ乙種利得ト
同樣ノ、乃至ハ程度ハ違ヒマスガ、增徵ヲ
此ノ際行ハレマシタト云フコトニ付テノ政
府ノ御考デアリマス、是ハ旣ニ小山君カラ
縷々申述ベラレマシテ、私ノ問ハントスル
所モ略〓同樣デゴザイマスカラ、趣旨ダケ申
述ベテ置イタ次第デアリマス
次ニ第一種、第二種、第三種、第三種所
得稅間ニ於キマスル不均衡ノ是正ノ問題デ
アリマス、政府ハ生產擴充ニ關スル觀念ヲ
稅制政策ニ織込ンデ居リマスルガ、生產擴
充ヲ最モ阻碍シテ居ルモノハ第一種、第二
種第三種所得ノ間ニ於キマスル課稅上ノ
不均衡ガ最モ大ナルモノデアルト思フノデ
アリマス、卽チ一方ニハ總動員法第十一條
ノ發動ニ依リマシテ、機械的ニ配當ノ制限
ヲ爲シツツ、他方ニハ株式課稅ガ累進ノ結
果ヨリ致シマシテ非常ニ重ク相成ルノデア
リマシテ、公債社債トノ比率均衡ガ失ハレ
テ居ルノデアリマシテ、資金ノ活動ガ如何
ニモ其ノ間ニ圓滑ヲ缺イテ、生產擴充ヲ阻
碍スルヤウナ結果ニ相成ツテ居ルノデアリ
マスガ、是等ニ對シマシテ政府ハ進ンデ若
シ第三種所得ノ輕減ヲ圖リ得ナイナラバ
寧ロ進ンデ第二種所得ニ對シマシテ適當ナ
ル處置ヲ講ジテ、是等三種間ノ均衡ヲ御取
リニナル所ノ御考ハナイカドウカ、之ニ付
テ御伺ヲ致シマス、又生產擴充ニ對シマシ
テノ問題デアリマスルガ、第一種所得稅ヲ
重課致シマスル結果、現下最モ必要ナル所
ノ金、銅ノ生產ニ對シマシテ、或ル限度以
上ニ增產致シマスルコトガ、稅負擔ノ關係
ノ上ニ却テ非常ナ不利益トナル結果ニ相成
リマスルノデ、良鑛ノ採掘ヲ寧ロ囘避致シ
マシテ、貧鑛ヲ好ンデ掘ルト云フヤウナ、
極メテ不自然ナ反國策的ノ狀態ガ生起セラ
レテ居ルノデアリマスルガ、是ガ若シ事實
デアルト致シマスルト、洵ニ寒心ニ堪ヘナイ
コトデアリマスルト同時ニ、所謂働ク者ガ
損デアル、働キ者損ト云フ經濟ノ自然ニ背
馳スル所ノ結果ニ相成ルノデアリマシテ、
是等ノ點ニ關シマシテハ政府ハ十分關心ヲ
以テ、ソレ〓〓ノ途ニ於テ、其ノ矛盾ヲ緩
和セネバナラヌト思フノデアリマスガ、之
ニ對シテノ政府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フ
ノデアリマス、又今囘ノ增徵案ニ依リマス
ルト、四分五厘以上ノ社債竝ニ四分以上ノ公
債ニノミ增率ヲシテ居ルノデアリマシテ、
私ガ只今申上ゲマシタルガ如キ、第二種所
得稅全般ニ亙ツテ居ラナイノデアリマスガ、
斯樣ナ作用ハ結局寧ロ二三流社債ノミガ不
遇ト相成リマシテ、隨テ生產擴充ノ阻碍ト
ナルコト多大デアルトモ思フノデアリマス
ルガ、是等ニ付キマシテ政府ノ御所見ヲ伺
ヒタイト思ヒマス
更ニ臨時租稅減免ノ措置法ノ改正ニ依リ
マシテ、一方ニ法人ノ社內保留ヲ增加シ、
一方ニハ生產擴充ト國債消化ノ特典ヲ
與ヘントシテ居ラレルノデアリマスルガ、
其ノ御方針ハ洵ニ結構デアリマスルガ、
其ノ輕減ノ實際額ハ極メテ輕微デアリ
マシテ、其ノ實際ノ效果ニ付キマシテハ、
洵ニ多大ノ疑問ガアルトモ考ヘラレルノデ
アリマス、殊ニ重要產業製造業ニ關シマス
ル所ノ留保所得ニ付キマシテ、所謂四割ヲ
超エマシタ所得ニ對シマシテ、其ノ二割ノ
免除ヲ定メルト云フコトガ規定シテアル
ノデアリマスルガ、此ノ二割ト定メマシ
タ數字的ノ根據ニ付キマシテ御伺シタイノ
デアリマス、此ノ程度ニ依ツテ效果アリト
云フ見定メノ上ニ此ノ數字ヲ割出シタモノ
デアリマスルカ、ソレ等ニ付キマシテノ政
府ノ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、殊
現在平均留保率ハ三割七八分ノ限度デアル
ノデアリマスカラシテ、此ノ保留率ノ範圍
ニマデ、或ハ其ノ特典ヲ及ボスト云フ積極
的ナ御考ガアツテ、初メテ其ノ效果ガ發生
スルノデハナイカト思フノデアリマス、是
等ニ付キマシテノ政府ノ御所見ヲ伺ヒマス
最後ニ遊興飮食稅ニ關スル質問デアリマ
ス、遊興飮食稅ガ今囘國稅ニ移管セラレタ
ノデアリリマルガ、此ノ遊興飮食稅ハ所謂
徵稅上ニ種々ノ困難ガアルノデアリマシテ、
國稅ニ移管致シマシテ十分ノ成績ヲ擧ゲル
コトガ或ハ不可能デアルノデハアルマイカ
ト云フ疑點ガアルノデアリマスガ、之ニ對ス
ル政府ノ御考ハ如何デアリマスルカ、又遊
興稅ハ今日ニ於キマシテハ地方ニ於テモ相
當其ノ徴收ノ方法ニモ習熟致シマシテ、而
モ財源ノ點ヨリ見マシテモ、相當彈力性ノ
アル稅デアリマス、今日ノ如キ事變下ニ於
キマシテ、銃後施設等ノ幾多ノ施設ノ增加
ヲ見ツツアリマスル現在、本稅ノ移管ハ地
方ノ自治團體ノ財政ヲ困難ナラシムルモノ
デアリマシテ、相當ノ補給金ノ交付ガアリ
ト致シマスルモ、尙ホ其ノ擔稅力アル稅源
ヲ中央ニ取上ゲルノデアリマスカラ、是等
ガ地方ニ及ボス影響ハ、相當將來ニ亙ツテ
甚大デアルト思フノデアリマスガ、此ノ地
方ノ稅源ニ付キマシテ將來如何ナル御考ヲ
以テ、是等ノ缺陷ニ對シテ補塡ヲシテ行カ
レル御考デアリマスカ、是ハ大藏大臣竝ニ
內務大臣カラ御答ヲ戴キタイト思ヒマス
ソレカラ今囘ノ國稅移管ニ際シマシテ、
千六百万圓ノ旣ニ地方稅トシテ徵收シテ居
リマシタ額ヲ、地方ニ還元スルト云フコト
ニ規定シテゴザイマスガ、其ノ還元ノ方法
ニ付キマシテ、還元ノ度合ニ付キマシテ、
地方々々ニ依ツテ如何ナル配分ヲ爲スノデ
アルカ、取上ゲタ地方ニ其ノ儘返ス御考デ
アリマスカ、乃至ハ更ニ別箇ナ方法ニ依リ
マシテ、全體的ニ必要ナ方面ニ多ク之ヲ配
分スルト云フ方法ニ出デラレルノデアリマ
スカ、是等配分ノ方法ニ付キマシテ内務、
大藏兩大臣ニ伺ヒタイノデゴザイマス
大體小山君ノ質問ト同樣ナ點ガアリマスノ
デ、ソレ等ノ點ハ省略致シマスガ、物品稅ニ付
キマシテ一言御伺シタイノハ、物品稅中ノ
茶デアルトカ、齒磨デアルトカ、石鹼デア
ルトカ、斯樣ナ品物ハ國民ノ保健衞生ニ對一
シテ重大ナ關係ノアルモノデアリマス、唯
其ノ等級ニ付テ相當考ヘテ居ラレルト云フ
御意見モアリマスケレドモ、斯樣ナ範圍ニ
マデ其ノ稅種目ヲ擴張セラレルト云フコト
ニ付キマシテハ、相當窮餘ノ策デアルガ如
キ外觀モアルノデアリマシテ、別ニ國民衞
生保健上ニ直接關係アルヤウナモノニ對シ
マシテハ、是ハ今後ノ選擇ニ再檢討ヲ致ス
必要ガアルト思フノデアリマスガ、此ノ點
ニ關シ政府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
又最後ニ鑛業權ノ問題ニ付テ一點ダケ御
意見ヲ伺ヒマスガ、大體鑛業權乃至ハ船舶
ノ讓渡利得ニ對スル課稅ハ、相當多額ニ計
上セラレテ居リマスガ是ハ非常ニ鑛業ノ
進步ヲ直接ニ妨ゲル虞ガ十分ニアルノデア
リマシテ、是等ニ付キマシテハ旣ニ前例ア
リトハ致シマスルガ、殊ニ從來マデノ讓渡
契約乃至ハ讓渡ノ實際ニ於テハ、課稅ト云
フコトヲ前提ニシテ居ラナカツタノデアリ
マシテ、其ノ意味カラ申シマスト、旣往ニ
遡ツテ之ヲ課稅致シマスコトハ、洵ニ不自
然デアリマスシ、其ノ點ニ付テノ本稅實施
上ニ於ケル適當ナ處置ガ望マシイノデアリ
マスガ、之ニ付テ當局ノ御考如何デアリマ
スカ、此ノ點ヲ御伺致シマス
以上數項ニ互リマシテ御質疑ヲ致シタノ
デアリマスガ、尙ホ具體的ノ細カナ點ニ付
キマシテハ、多々當局ニ御意向ヲ質シタイ
コトモアルノデゴザイマスガ、此ノ程度ニ
止メマシテ政府ノ御答辯ヲ期待スル次第デ
ゴザイマス(拍手)
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=21
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022・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 橫川サンノ御
尋ニ對シマシテ御答致シマス、將來ノ財政
確立ニ對スル公債、租稅兩政策ヲ如何ナ程
度ニ之ヲ按排シテ行クカ、斯ウ云フ御尋デ
ゴザイマス、是ハ一體財政ノ計畫トシマシ
テハ、其ノ收入ノ主タル部分ハ、是ハ稅デ
賄ハルベキモノト承知致シテ居ルノデゴザ
イマシテ、公債ノ發行額ハ出來得ルダケ之
ヲ少クシテ、其ノ主タル部分ハ租稅ニ依ツ
テ賄フノガ當然デアルト存ジテ居リマス、
其ノ將來ニ對スル日本ノ財政ガ、七十億デ
アルカ、五十億デアルカ、三十億デアルカ、
又ハ是ガ更ニ餘計ニ相成ルノカト云フコト
ハ、是ハ先程カラ申シテ居リマスル通リ、
今日ハマダ事變ノ繼續中デゴザイマシテ、
一方ニハ必要ナル戰鬪ヲ致シテ居ル際デモ
アルノデゴザイマス、是ハ相手ノアルコト
デモゴザイマスルシ、今日之ヲドノ程度ニ
致スカト云フコトハ申上ゲ兼ネルト存ズル
ノデゴザイマス
其ノ次ニ物價騰貴ト此ノ「インフレー
ション」ノ問題ガ如何相成ツテ行クカト云フ
御尋デゴザイマシテ、貯蓄ト云フ中ニモ旣
ニ「インフレ」過程ニ入ツテ居ルモノガアル
ノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋デゴザイ
マスガ、要スルニ斯ウ云フ考方デアルト思
フノデアリマスガ、貯蓄ヲシナケレバ「イン
フレーション」ガ起ル、是ハ其ノ通リデ
アルト存ジマス、隨テ是非國民ニ貯蓄ヲシ
テ戴キタイ、貯蓄ヲ怠ルト「インフレー
ション」ニ相成ツテ來ル、サウ云フ意味ニ於
テ、此ノ貯蓄ヲシテ居ル金ノ中ニ「インフ
レーション」ノ金ガ入ツテ居ルト云フヤウ
ナ御考方デアルナラバ、其ノ通リデアルト
存ジマスガ、貯蓄ヲシテ居ツテモ「インフ
レーション」ガ起ルノデハアルマイカ、斯
ウ云フ御考デアルト、貯蓄ガ相當程度行ハ
レテ居ルナラバ「インフレーション」ガ來ル
心配ハゴザイマセヌ、斯ウ申上ゲタイト存
ズル次第デゴザイマス、如何ニ致シマシテ
モ貯蓄ノ行ハレルト行ハレザルトハ「イン
フレーション」ニ極メテ密接ナ關係ガアル
ノデゴザイマシテ、國民全般ニ於テ貯蓄ヲ
更ニ强度ニシテ戴キタイト存ジテ居ル次第
デゴザイマス
ソレカラ所得稅、賣上稅、財產稅其ノ
他ハ、一體ドウ云フ所ニ今度ノ根本的稅制
改正ノ目標ヲ置イテ居ルノカ、斯ウ云フ御
尋デゴザイマスガ、此ノ稅率改正ノ根本目
標ハヤハリ所得稅デアルト存ジマス、今日
其ノ收入カラ行キマシテモ、各種所得ニ對
シテ課稅致シテ居ル稅額ハ、旣ニ十億圓程
度ニ達シテ居ルト存ズル次第デゴザイマシ
テ、今後ニ於ケル稅制改正ノ中心ノ問題ハ、
此ノ所得稅ノ改正デアルト考ヘテ居リマス
ソレカラ今囘ノ增稅ノ目標如何、斯ウ云
フヤウナ少イ增稅額ハ、寧ロ全部公債デ賄
ツタラ如何デアルカト云フ御尋デアルカト
存ズルノデアリマスガ、此ノ際全部公債デ
賄フコトハ如何ナモノカト考ヘタ次第デゴ
ザイマシテ、是ハ物價ノ問題カラ云ヒマシ
テモ、一面ニ於キマシテハ增稅ガ或ル程度必
要デアルト存ズルノデゴザイマス、市中ノ
金ヲ一面ニ於テハ公債ニ於テ引上ゲ、一部
ニ於テハ增稅ニ於テ引上ゲルコトガ必要デ
アルト存ズル次第デアリマシテ、サウ云フ
意味カラモ此ノ際全部ヲ公債ニ依ラナイデ、
其ノ一部ハ增稅ニ依ル必要ガアルト信ジテ
居ルノデゴザイマス
第一種、第二種、第三種各種所得稅間ノ
不均衡ヲドウ考ヘルカト云フ御尋デゴザイ
マス、金、銅等ガ所得稅ノ不均衡ノ結果掘出
サレナイノデハナイカ、斯ウ云フ御話モア
ツタノデアリマスガ、是ハ先般來私モ御答
致シテ居ルノデゴザイマスガ、今日金ヤ銅
ノ掘出サレナイト云フコトハ、私ハ稅ノ問
題トハ極メテ緣ノ遠イ間題デアルト考ヘル
ノデアリマシテ、今日金ヤ銅ヲ掘ツテ居リ
マスル相當ナ資產家ガ、僅カバカリノ稅金
ノ爲ニ、今日國策上必要トスル金ヤ銅ヲ掘
ラヌトハ考ヘテ居ラヌノデアリマシテ、是
ハ他ニ其ノ原因ガアルト思ツテ居ルノデゴ
ザイマス
配當ノ問題デゴザイマスルガ、此ノ配當
ノ問題ト、公債、社債ノ利子ノ問題トノ關
聯ノ問題デゴザイマシテ、此ノ點此ノ數年
極メテ解決上困難ト目サレテ居ル問題デゴ
ザイマスガ、併シナガラ昨年ノ實績、昨
年ノ實績カラ考ヘマシテ、今日此ノ公社債
ニ對スル課稅ト、配當ニ對スル課稅トノ割
合ニ於キマシテ、其ノ爲ニ特別ニ株式ノ投
資ガ劣ツテ居ルトモ考ヘテ居ラヌノデアリ
やく、昨年ニ致セ、一昨年ニ致セ、株式ノ
投資ハ相當旺盛ヲ極メテ居リマシテ、社債
等ノ拂込ハ是ヨリ遙ニ少イノデゴザイマス、
課稅上ノ問題ノ均等ト云フコトハ、勢モ一
面ニ於キマシテ一割モ一割五分モ配當ヲシ
テ居ル會社ガアルニ於キマシテハ、是ハソ
レ等ノ點ニ付テモ餘程負擔ノ均衡ト共ニ考
ヘル必要ガアルノデアリマシテ、表面上ノ
負擔ハ均衡ニ相成ツタガ、預金ハ一向集マ
ラナイ、公債、社債ハ一向賣レヌト云フ狀
況ニ相成ツタノデハ、是ハ表面ノ均衡ハ得
マシタガ、其ノ實國家ノ運行ハ頗ル差支へ
テ來ルノデゴザイマスカラ、是等ノ點モ亦
十分考慮ニ入レテ考ヘル必要ガアルト存ジ
テ居ル次第デゴザイマス
臨時減免ノ數字的ノ根據ニ付キマシテ御
尋ガゴザイマシタ、是ハ四割ト致シマシタ
コトニ付キマシテハ、相當數字的ノ根據ガ
アルト存ジマスガ、是ハ追テ御說明致スコ
トニ致シマス
ソレカラ遊興稅ノ問題デゴザイマスガ
遊興稅ヲ國稅ニ移管スルノハ、稅ノ性質上、
徵稅技術上、不適當デハアルマイカト云フ
御尋デゴザイマス、此ノ稅ハ永年地方稅ト
シテ存在致シテ居ツタノデゴザイマスガ、
此ノ際此ノ稅ノ性質ト致シマシテ、相當增
徵ヲ加ヘ、又全國的ニ統一致シマシテ課稅
シタイト存ジマシテ、之ヲ國稅ニ移管シタ
次第デゴザイマス、此ノ遊興稅ノ移管ニ付
キマシテハ、是ハ國稅トシテサウ云フ稅ガ
一體施行出來ルカドウカ、斯ウ云フ所ニ御
疑問ガアルト思フノデアリマスガ、是ハ實
行上ノ問題ト致シマシテハ相當困難ナ點モ
ゴザイマス、併シナガラ決シテ國稅トシテ
不適當トシナイト考ヘテ居ル次第デゴザイ
マス、課稅ノ彈力性其ノ他ニ付テ御尋モゴ
ザイマシタガ、是ハ補給金其ノ他ノ問題ニ
於テ十分考ヘテ見タイト思ヒマス、併シ過
去ノ實績ニ於キマシテハ、此ノ稅金ハ彈力
性アルベキ稅金デアリマスガ、實際數字ノ
上デハ大シタ彈力性ハ現ハレテ居リマセヌ、
其ノ點ハ更ニ十分〓究スルコトニ致シタイ
ト存ジマス
ソレカラ物品稅ノ品目選擇ニ付テ御意見
ガゴザイマシタ、此ノ點ニ付テモ御意見ハ
相當ニアルデアラウト存ジテ居ルノデゴザ
イマス、唯政府トシマシテハ、出來ル限リ
生活ノ第一義的ノ物品ヲ避ケタ積リデゴザ
イマス、其ノ品目等ニ付テハ改メテ委員會
等ニ於テ御答シタイト存ジマス
次ニ鑛業權ノ讓渡ニ關スル問題デゴザイ
マスガ、鑛業權ノ讓渡ニ付テ既往ニ遡ルコ
トハ如何カト云フ御尋デゴザイマス、此ノ
旣往ニ遡ルト云フコトハ、詰リ今年課稅致
シマスルモノヲ、昨年ノ一月カラ昨年ノ十
二月マデノ實績ニ依リ本年課稅スルト云フ
コトデゴザイマシテ、斯ウ云フ風ナ課稅ノ
仕方ヲ致シマシタコトハ、是ハ過去數年ニ
於テ其ノ例ガゴザイマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=22
-
023・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今御尋ノ
第一點ハ、遊興稅ガ國稅移管ニナルニ付キ
マシテ、地方稅源ノ涸渴ヲ來ス虞ハナイカ、
ソレ等ニ對スル對策ハドウデアルカト云フ
御尋デアリマス、其ノ點ニ付キマシテハ大
藏大臣ヨリモ只今御答ガアリマシタガ、大
體ニ於キマシテ交付金ヲ中央カラ出シマシ
テ、其ノ補塡ニ充テル考デ居リマス、結局
ノ所ハヤハリ中央地方ノ稅制ノ根本的ノ整
理ヲ見マシテ、地方中央ノ稅ノ適正ヲ期ス
ル外ハナイト考ヘテ居リマス、ソレカラ第
二ノ點デゴザイマスルガ、是ハ大體ニ於キ
マシテ、此ノ補給金ノ總額ヲ箇々ノ地方〓
體ニ對シテ配分致シマス方法ニ付キマシテ
ハ此ノ遊興稅ガ國稅移管ニナリマシタコ
トニ依リマシテ、地方團體ノ財政經理上大
キナ支障ヲ來サナイヤウニ致シマスコトヲ
目途ト致シマシテ、只今地方財政ノ現狀ニ
鑑ミマシテ、適當ナル案ヲ得ベク各方面ト
モ〓究ヲ致シテ居ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=23
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024・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 松永東君
〔松永東君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=24
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025・松永東
○松永東君 私ハ只今上程セラレマシタ支
那事變特別稅法中改正法律案外二件ニ關シ
マシテ、各項ニ亙ツテ政府ニ質問ヲ試ミタ
イノデアリマス、併シナガラ旣ニ前質疑者
カラ各般ニ亙ツテ質疑ガアリマシタノデ、
成ベク重複ヲ避ケマシテ、簡單ニ質疑ヲ試
ミタイト存ジマス、私ハ今囘政府ノ企圖セ
ヲレテ居リマスル增稅竝ニ新稅ノ創設ニ付
キマシテハ大體機宜ヲ得タ處置ト存ジマ
シテ贊意ヲ表スル者デアリマス、何トナレ
バ現在非當時局ハ益〓深刻化ヲ加ヘテ參リマ
シタノミナラズ、遠ク海ヲ渡ツテ一身一家
ヲ犧牲ニシテ、勇戰奮闘シテ居ラルル將士
ノコトヲ考ヘマスル時ニ、國民全體ガ此ノ
位ノ負擔ノ增加ハ當然忍バナケレバナラヌ
コトデアルト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、
併シナガラ此ノ法律案ヲ仔細ニ檢討致シテ
見マスト、幾多ノ了解ノ出來ナイ點ガアル
ノデゴザイマシテ、私ハ以下各項ニ亙リ疑
點ヲ御質問申上ゲテ見タイノデゴザイマス
第一點ト致シマシテハ、政府ハ今囘ノ增
稅竝ニ新稅ノ創設ニ依リマシテ、約二億圓
ノ增收ヲ見込ンデ居ルト云フコトデアリマ
スガ、增稅案ノ内容ヲ檢討致シマスニ當ツ
テハ、負擔ノ適否トカ、或ハ新稅其ノモノ
ノ可否、乃至ハ其ノ國民經濟ニ及ボス所ノ
影響等ニ付キマシテ、詳細ニ檢討ヲ要スルコ
トハ勿論デアリマスガ、全體トシテ增新稅
ニ依ル增收額ハ幾ラヲ必要トスルカ、是ガ
增稅案ノ審議ニハ根本的ニ重要ナコトデア
ルト私ハ信ジマス、必要モナイノニ無暗ニ
稅ヲ取ル譯ニハ參リマセヌ、非常時局ダカ
ラト云ツテ、國民ハ我慢スルダラウト云フ
ノデ增新稅ヲ起ス譯ニハ參リマセヌ、ヤハ
リ是ダケノ必要ガ出來タ、隨テ是ハ增新稅
ニ依ラナケレバナラヌ、豫メ斯ウ云フ目標
ヲ置イテ掛ラナケレバナラヌ次第デアラウ
ト信ジマス、政府ハ今囘ノ增稅、新稅ニ依
ル增收見込額ヲ二億圓ト見積ツテ居ルヤウ
デアリマスガ、此ノ二億圓ハ財政計畫上
一體何ヲ目標トシテ算出セラレタモノデア
リマスルカ、今六十億圓ノ公債增發ニ依ル
利拂所要額ハ約二億一千万圓デアリマス、
ソコデ政府ハ此ノ公債ノ利拂增加ニ本增稅
案ニ依ル收入ヲ充當シヨウト云フコトヲ、
目標トシテ居ラレルヤウニモ考ヘラレマス
ノデアリマスガ、果シテサウ云フ御考ヲ御
持チニナツテ居ルノデアラウカ、ドウデア
ラウカ、之ヲ先ヅ御伺シタイノデアリマス、
若シ右申上ゲマスルヤウニ、公債ノ利拂增
加ヲ增稅ニ依ツテ賄フト云フ方針デアルト
シマシタナラバ、支那事變ノ現狀、新東亞
建設ノ前途等ヲ顧ミマスルト、重大ナル事
業ガ山積致シテ居ルノデアリマス、是等ノ
目的遂行ニハ年々相當巨額ノ國費ヲ投ジナ
ケレバナラヌコトハ當然デアリマス、サリ
トテ此ノ國費ニ充當スル財源ハ當分ノ所公
債ノ增發ニ依ルヨリ外方法ハナイノデアリ
マス、隨テ公債ノ增發ハ年々已ムヲ得ナイコ
トデアルト豫想セラレルノデアリマス、來年
度以降モ引續キ是等ノ公債ノ利拂增加ニ充
ツル爲、新增稅ヲ御起シニナル積リデアルカ
ドウカ、是モ承ツテ置キタイノデゴザイマス
更ニ第三點ト致シマシテ、大藏大臣ハ
先程昭和十五年度ヲ期シマシテ、國稅ノ
全面的調整及ビ改正ヲシヨウト言ツテ居
ラレルノデアリマスガ、此ノ問題ハ今後ノ
公債ノ增發ニ對スル增新稅ヲ爲スト致シマ
スト、是トノ關係ハドウ云フ風ニナルモノ
デゴザイマセウカ、卽チ國稅ノ全面的調整、
改正ヲ爲シテモ、公債ノ利拂增加ニ伴フ所
ノ增新稅ヲシナケレバナラヌ、之ガ爲ニ其
ノ根本ヲ破壞サレテシマフヤウナ結果ニ陷
ルノデハナイカト云フヤウナ疑モ存スルノ
デゴザイマス、此ノ點ニ關スル大藏大臣ノ
見透シヲ承リタイノデアリマス
第四ト致シマシテハ、政府ハ昭和十三年
度ノ增稅案ヲ提出ナサレルニ當ツテ、其ノ
增收見積額ヲ發表シテ議會ノ協賛ヲ求メラ
レタノデアリマスガ、其ノ見積額タルヤ全
ク低キニ失シマシテ、實收ノ二分ノ一ヲ豫
定額トシテ發表セラレタモノデアリマス、
吾々ノ見積ル所デハ、其ノ當時臨時利得稅
其ノ他ノ增收ガ、政府發表以外ニ約二億圓內
外ノモノガアルト思ツテ居ツタノデゴザイ
マスルガ、果シテ昨年十二月ニ其ノ當時ノ
池田大藏大臣ガ、昭和十四年度豫算ノ編
成ヲ終ラレマシタ際ノ聲明ニ於テ、所得稅
及ビ臨時利得稅ノ自然增收ガ二億圓ニ及ン
タ、我ガ國民經濟ノ强靱性ヲ物語ルコトハ眞
ニ愉快デアルト言ツテ居ラレタノデアリマス、
是ハ決シテ自然增收デハナイノデアリマス、
十三年度ノ增稅案ノ適用ノ結果、是ハ全部
トハ言ヘマセヌケレドモ、必然的ニ當初カ
ラ豫想セラレマシタ數字デアリマス、政府
ガ增稅案ヲ提出ナサレル際ハ、增稅案ノ見
積ヲ少クシテ、國民負擔ノ過重ヲ「カムフ
ラージュ」スル傾向ガアルノデアリマス、ソレ
故ニ斯ノ如ク見積ヲ過小ニセラレル結果、
國民ノ負擔ノ實際ガ幾ラデアルカト云フコ
トガ、增稅案上程ノ當初吾々ニハハツキリ
分ラヌノデアリマス、斯ウ云フ不都合ヲ來
スト云フコトハ、斯ウシタ案ノ審議ニ全ク
遺憾千萬ノ次第デゴザイマス、私ハ增稅案
ノ審議ニ當ツテ、質問ノ冒頭ニ述ベマシタ
通リ、此ノ增稅ニ當ツテ實際幾ラ增收ガア
ルモノデアルカ、或ハ增稅案ノ目途トシテ
居ルダケノ稅ノ增收額ヲ必要トスルモノデ
アルカドウカ、斯ウ云フ點ガ最モ必要ナ點
デアラウト存ジマス、故ラニ增收ノ見積ヲ
過小ニシテ「カムフラージュ」ヲ爲スト云フコ
トハ極言致シマスト、議會ノ審議權ヲ無
視セルモノデアリ、更ニ國民ヲ欺瞞スル罪
惡デアルト申シテモ差支ナイト私ハ信ズル
ノデアリマス、政府ハ本增稅案ノ實際ノ增
收見積ガ幾ラデアルカト云フコトヲ、率直
ニ明白ニ御發表ヲ願ヒタイノデアリマス
第五點ト致シマシテ、支那事變特別稅ハ
臨時的ナ租稅デアリマスカラ、國稅ノ全面
的改正ヲナサル場合ハ當然修正ヲ要スルモ
ノデアラウト存ジマスガ、今囘ノ增新稅ニ
付テモ、卽チ先程大藏大臣ガ明言セラレタ
通リ、來年度ノ國稅ノ全面的改正ヲセラレ
ルト致シマスレバ、其ノ時ニ當リ更ニ〓究
檢討セラレルモノデアルカ、換言スレバ臨
時的ノ增新稅デアリマスルカドウカ、此ノ
點ヲ伺ツテ置キタイノデゴザイマス
第六點ト致シマシテ、本增稅案ノ內容ヲ
見マスルニ、砂糖消費稅ノ增收トカ、物品
稅中、石鹼トカ、齒磨トカ、燐寸トカニ對
スル增稅、新稅等ノ如キ、國民生活必需品
ニ對スル增稅ガ行ハレテ居ルノデアリマス
ガ、是等ノ增稅ニ依リマシテ、國民生活必
需品ノ物價ノ騰貴ヲ促ス虞ノアルコトハ
否定ガ出來ナイコトデアラウト存ズルノデ
アリマス、然ルニ政府ハ一面ニ於テ極力物
價騰貴ノ抑制ニ努力シテ居ラレルヤウデア
リマス、是ハ當然ナコトデアリマス、今ヤ
我國ハ新東亞ノ建設ニ擧國一體トテツテ奮
起致シテ居ルノデアリマス、此ノ長期建設、
海外輸出ノ振興發展策等、斯ウシタ大目的逹
成ノ爲ニハ、寧ロ積極的ニ物價ノ引下ヲ圖
ル必要アルコトハ言ヲ俟タナイ所デアラウ
ト存ジマス、政府ハ此ノ點ニ對シマシテド
ウ云フ對策ヲ持ツテ居ラレルノデアルカ、
之ヲ承リタイノデゴザイマス
第七點ト致シマシテ、現行ノ支那事變特
別稅法ニ依リマスト、法人ノ所得稅ト臨時
利得稅トノ合計額ニ最高ノ制限ヲ設ケテ、
其ノ限度ハ法人ノ普通所得ノ百分ノ五十ト
致シマシテ、ソレ以上ハ增徵ガ出來ナイヤ
ウニナツテ居リマス、是ハ法人ノ稅金ガ國
稅地方稅ヲ合セテ所得額ノ約七割以上ニ
ハナラナイヤウニシテ、儲ケタダケヲ稅デ
取上ゲルコトノナイヤウニシタ規定デアリ
きく、然ルニ今囘ノ改正案ヲ見マスノニ、
此ノ最高限度ヲ百分ノ五十五ニ引上グルト
共ニ、法人ガ所得ヲ留保スル場合ニ、其ノ
留保所得ノ百分ノ十五ヲ右ノ最高限度五十
五カラ差引シタモノヲ、最高限度トスルト
云フコトニ改正ヲ加ヘラレタノデアリマ
ス、此ノ改正案ニ依リマスト、社内留保ノ
極ク少イモノハ、從前ヨリ多クノ稅ヲ增徵
セラレ、社内留保ガ所得ノ四割以上ノモノ
ニハ減稅セラレル結果ニナツテ居ルノデア
ツテ、一見如何ニモ巧妙ナル案ト云ツテモ
宜イノデアルガ、之ヲ課稅ノ實情ニ就テ見
マスノニ、現在現行法ノ百分ノ五十ノ限度
ノ適用ヲ受ケテ居ルモノハ殆ド絕無ト言
ツテモ差支ナイノデゴザイマス、果シテ然ラ
バ本改正ノ結果、實際百分ノ五十五ノ增徵
ヲ受ケルモノハ殆ドナク、他面ニ於テ改正
ニ依リ減稅ノ恩典ニ浴スル者ノミガ生ズル
コトトナツテ、結果ニ於テ臨時利得稅ヲ減
稅案ト云フコトニナルヤウニ思ハレルノデ
アリマスガ、政府ハ此ノ實情ヲ如何ニヤツ
テ效果ヲ擧ゲヨウトナサルノデアルカ、此
ノ點ヲ承リタイノデアリマス
第八點ハ、現行ノ支那事變特別稅法ノ第
二條ニ依リマスト、法人ノ所得ニ付テ、百
分ノ五十ノ最高限度ノ適用ヲ受クル者ガ、
實際ニ於テ今申上ゲタ通リ殆ドナイト云フ
實情デアリマス、是ハ課稅ノ實際ニ當ツテ、
稅務當局ガ極端ナル增稅ノ非難ヲ避ケル爲
ニ、相當手加減ヲセラレテ居ル結果デアル
ト聞イテ居リマス、若シ今囘ノ改正ノ結果、
社内留保ヲ爲ス所ノ法人ニ對シ減稅ヲ行ヒ、
更ニ他方社內留保ノ少イ法人ニ對シテ課稅
ノ最高限度ヲ上ゲル方針ヲ採ル場合ニ於テ、
此ノ手加減ヲ廢シテ本改正ノ趣旨ヲ實際ニ
實行スル御意向デアルヤ否ヤ、之ヲ伺ツテ
置キタイノデアリマス、卽チ從前通リ手加
減ヲスルコトヲ止メテ、本當ニ規則通リニ
嚴格ニ取立テルト云フ御意向デアルカドウ
カト云フ點デゴザイマス
第九點ト致シマシテ、本案ノ印紙稅法ノ
改正ニ依ツテ、物品切手ニ關スル印紙稅ノ
增徵ヲ爲スコトニナツテ居リマスガ、從來
物品切手ニ對スル印紙稅ハ、物品切手ノ購
入者ガ負擔シテ居リマセヌ、「デパート」其
ノ他ガ負擔シテ居ル實情デアリマス、今囘
ノ增徵ニ當リマシテ、政府ハ其ノ實際ノ負
擔ヲ販賣者、購入者ノ何レニナサル積リデ
アルカ、若シ「デパート」其ノ他ノ商人ノ負
擔トスル、斯ウ云フコトデアリマスレバ
本稅增徵ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナクナ
ルト思ハレルノデゴザイマス、ナゼデアル
カト言ヘバ、卽チ本改正ノ目的ハ、一面商
品切手購買ヲ減少シ、消費ノ節約ヲ爲サシ
メテ、更ニ他面ニ於テハ商品劵購買者ハ比
較的擔稅力ヲ有スル人々デアルカラ、之ム
課稅シヨウトスル意圖ニ出デタノデアリマ
ス、然ルニ若シ「デパート」ニ負擔セシメル
ト云フコトニナルト、此ノ二ツノ理由ニハ
全然相反スル結果ヲ生ズルコトニナルノデ
アリマス、政府ハ此ノ點ニ對シ如何ナル御
考デアリマスカ、此ノ點ヲ承リタイノデア
リマス
第十點ト致シマシテ、政府ハ今回增稅案
ニ遊興飮食稅ヲ創設シ、更ニ遊興稅ノ國庫
移管ヲ爲シマシテ、地方自治體カラ取上ゲ
ヨウトスル所ノ案ヲ制定セラレルノデアリ
マスガ、是ハ從來遊興稅ヲ地方稅トシテ徵
收致シテ居リマシタ地方自治體ニ取リマシ
テハ洵ニ重大ナル問題デアリマス、元來
此ノ遊興稅ハ地方稅ト致シマシテハ、極メ
テ彈力性ニ富ム有力ナル財源デアリマス、
之ヲ地方稅トシテ許サレテカラ約二十箇年、
其ノ間色々ノ苦心ノ結果今日ニ至ツテ居ル
ノデアリマス、此ノ稅ヲ一番初メ地方稅ト
シテ御許ヲ願フ時ニハ、其ノ當時大藏省ニ
於テモ、是ガ稅制トシテノ體系ヲ成シ得ル
ヤ否ヤト云フコトニ付テ、非常ニ憂慮セラ
レタ位デアリマシテ、地方自治體ニ於テハ
初期ニ於テハ業者トノ反抗摩擦、斯ウシタ
色々ノ障碍ニ苦ミマシテ、其ノ次ニ脫稅隱
匿ノ發見ニ苦ミ、漸ク今日ニ至ツテハ業者
モ能ク此ノ稅ヲ理解スルニ至リマシテ、地
方稅トシテ有力ナル體系ヲ具フルニ至ツタ
ノデアリマスガ、此ノ今日マデノ粒々辛苦
ノ結晶ヲ、今日政府ニ於テ奪ヒ取ツテシマ
ハウトナサルコトハ、恰モ苦心慘憺育テ上
ゲタ所ノ生ミノ親ノ手カラ、一人前ニナツ
ク靑年ヲ奪取サレルノト同ジ結果デハナカ
ラウカト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)殊
ニ稅制ノ上カラ見マシテモ、不合理ナコト
デアラウト信ジマス、中央地方ヲ通ズル稅
制體系ノ改正ノ要ハ、何人モ之ヲ認メル所
デアリマス、此ノ問題ハ馬場財政以來ノ懸案デ
アリマシテ、政府ニ於テモ明年度ハ中央地方ニ
亙リ稅制改革斷行ノ意圖アルト云フコトヲ、
只今モ大藏大臣ガ御述ニナツタノデアリマス
ガ、サウ云フ場合ニ局部的ニ此ノ稅制改革
ト云フモノヲ、直グココデヤラナケレバナ
ラヌ必要ガ、果シテアルデアラウカト云フ
コトニ付テモ多少ノ疑念ガアル、ナゼデア
ルカト言ヘバ局部的ノ稅制改革ニハ多ク
ノ無理ヲ伴フコトヲ常トスルノデアリマス
カラ、明年度全般的改正ヲスルト云フ御意
向デアリマスナラバ、其ノ時ニ改正ナサル
方ガ適當デアラウト存ズルノデアリマス、
併シナガラ私ハ政府ノ今囘ノ處置ニ對シテ
反對ヲ致スモノデハアリマセヌ、政府ガ今
囘突如トシテ此ノ稅ノミヲ切離シテ國庫ニ
移管シヨウトシテ居ラレル意圖ハ、洵ニ諒
承スルコトガ出來ルノデアリマス、卽チ政
府ノ目的トセラレル所ハ、遊興稅移ノ管ニ
依リ、主トシテ消費ノ節約、奢侈ノ抑制ヲ
圖ツテ、國民ノ生活ヲ戰時體制ニ適應スル
ヤウニ誘導シヨウトセラレルモノデアルト
承ツテ居リマス、洵ニ此ノ觀點ヨリ致シマ
シテ適當ノ處置デアルト私ハ信ズルノデア
リマス、現在都市農村ヲ問ハズ、物價暴騰
ニ惱ンデ、生活難ニ戰イテ居ル細民居ノ呻
キ聲ノ半面ニハ、戰時好景氣ニ有頂天ニナ
ツテ居ル富裕層ガゴザイマス、殊ニ都會ニ
於テハ待合トカ料理屋等連日滿員ノ噂ヲ聞
クノデアリマス、斯ノ如キ贅澤ヲ爲ス人々
カラ取レルダケウント稅金ヲ徵收スルト云
フコトハ當然デアリマス、又政府ノ爲サナ
ケレバナラヌ所ノ必要性ガ存在シテ居ルモ
ノト私ハ信ズルノデアリマス、併シナガラ
是ガ爲ニ國庫ノ增徵ヲ圖ルコトニ重點ヲ置
イテ、地方財政ノ壓迫、收支均衡ノ混亂ヲ
招カシムルト云フコトハ絕對ニ避ケナケ
レバナラヌト私ハ信ジマス(拍手)卽チ目的
ハ國庫ノ增收ト云フコトハ附隨的ノ問題
デアリマシテ、國民ノ奢侈抑制ヲ圖ラント
スルノガ重點デアリマス、私ハサウ考ヘル
ノデアリマスガ、當局ニ於カレテハ果シテ
ドウ云フ風ニ御考ニナツテ居リマスカ、此
ノ點ヲ明確ニ承ツテ置キタイノデアリマス
第十一點ト致シマシテ、此ノ遊興飮食稅
ノ創設竝ニ國稅ヘノ移管ニ依ル國庫收入ク
御見込ハ幾ラデアリマセウカ、先ニモ申シ
マシタ通リ政府ノ收入ハ、エテ過小ニ見積
ヲナサル所ノ例ガ澤山アルノデアリマス
デアリマスカラシテ此ノ席ニ於テ、御見込
通リ率直ニ御知セヲ願ヒタイノデアリマス
第十二點ト致シマシテ、政府ハ地方稅タ
ル所ノ遊興稅ヲ國稅ニ移管スルニ付テ、別
ニ地方ニ對シテ約千六百万圓ヲ還元スルト
云フコトヲ、稅制調査會ニ於テ大藏大臣ガ
言明セラレテ居リマスガ、此ノ千六百万圓
ハ今囘政府ガ突如トシテ、地方ノ有力財源デ
アル所ノ遊興稅ヲ國稅ニ移管スルニ當ツテ、
地方收入ノ減少ヲ補塡スルガ爲ニ、計上セラ
レタモノデアルト考ヘマスルガ、正ニ左樣
デゴザイマスカ、改メテ御伺シテ置キタイ
第十三點ハ、此ノ交村金ハ內務省ノ意向
トシテ、從來ノ地方財政補給金ニ追加豫算
トシテ計上セラレルト云フヤウナ、御意向
ガアルヤウナコトモ承ツテ居リマスガ、前
ニモ申述べタ通リ、此ノ遊興稅ハ現在地方
ノ都市ガ徵收シテ居ルモノデアリマシテ
若シ此ノ交付金ヲ地方財政補給金ニ計上セ
ラレルヤウナ場合ニ於キマシテハ、地方財
政補給金ノ性質上、大都市ハ勿論ノコト
川越トカ或ハ豐橋トカ云フヤウナ小都市ニ
對シテスラ交付セラレナイヤウニナルト思
ハレルノデアリマスガ、政府ハ如何ニ此ノ
交付金ヲ御取扱ニナラウトスルノデアル
カ、此ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス、內務
省ノ意向ノヤウニ、地方財政補給金ニ計上
シテ、各都市ニ交付セラレヌヤウニナリマ
シタトスルナラバ、各都市ノ財政ハドウシ
テ辻褄ヲ合ハシテ行クベキデアリマセウ
カ、近年統計的ニ見テモ御分リニナルヤウ
ニ、大都市ニハ細民層ガ逐年激增シテ、底止
スル所ヲ知ラナイ狀態デアリマス、擔稅力
無キ所ノ地方農村カラノ移住民ガ激增スル
結果デアリマス、而モ大都市ノ行ハネバナ
ラヌ所ノ行政施設ハ無限デゴザイマス、是
等ノ行政費ヲ賄フニ足ル十分ナル課稅權ハ、
都市ニハ與ヘラレテハ居ナイノデアリマス、
所謂獨立稅、卽チ市ノ特別稅デス、是ハ國
稅府縣稅ニ對スル附加稅ノ一割程度デゴ
ザイマス、卽チ都市財政ハ制限的デアリマ
ス所ノ附加稅ニ依ツテ、固有ノ財源ハ與ヘ
ラレテ居リマセヌ狀況デアリマス、卽チ今
日大都市共通ノ惱ミハ、財源涸渴デアリマス、
世ノ中ノ人ガ多ク申シマス、大都市ニハ國
民ノ富ガ集中スル、斯ウ云フコトヲ申ス人
ガアリマスガ、是ハ或ル程度マデハ事實デ
ゴザイマス、併シナガラ個人經濟ト公共團
體經濟トハ別個デゴザイマス、市民ノ一部
ハ富裕ナリト申シマシテモ、之ニ課稅スル
手段モナケレバ、權限モ與ヘラレテ居リマ
セヌ所ノ公共團體ノ財政ハ、必ズシモ金持
ガ幾ラ都會ニ住ンデモ、富裕トハ斷ジテ申
スコトハ出來マセヌ、大藏當局ニ於カセラ
レテハ、現ニ手近ナ東京府ノ財政ト、自治
體東京市ノ財政トガ、ドンナ風ナ現況ニア
ルカト云フコトハ御承知ノ筈デアリマス、
各都市トモ市民ニ是レ以上ノ市稅ヲ賦課ス
ル方法ハナイノデアリマス、中小商工業者
、今日ノ此ノ社會情勢ニ於テ、平和產業
ガ不振ニ陷ツテ居ル此ノ眞最中ノ生活難ト
云フモノハ、實ニ想像以上デゴザイマス
(拍手)政府ハ此ノ交付金ニ付テ、ドウ云フ
措置ヲナサラウトセラルルノデアリマスカ、
此ノ點ヲ改メテ御伺シタイノデアリマス
第十四點ト致シマシテ、前述千六百万圓
ノ交付金ハ、旣ニ各地方團體トモ豫算ノ編
成ヲ終了致シテ居リマス、其ノ編成ヲ終了
致シテ居リマス今日、突如トシテ政府ガ遊
興稅ヲ國稅ニ移管スルト云フ結果ハ、全ク
地方稅ヲ混亂ニ陷ルルコトニナルノデアリ
マシテ、此ノ千六百万圓ノ金ハ、此ノ混亂
ニ陷ルルコトヲ防止スルガ爲ニ、交付セラ
レル所ノ金デアリマス、卽チ臨機應急ノ措
置ト考ヘラレルノデアリマス、然ルニ右交付
金ヲ地方補給金ニ計上セラレル場合ニハ
地方財政補給金ノ配付規則ニ依リマシテ、
各地方團體ノ財政ノ內容ヲ一々檢討シテ、
是ガ交付ノ要否ヲ決定セラレルノデアリマ
スガ、元來地方團體ノ財政ハ、地方自治ノ
本義ニ基キマシテ、專ラ地方團體ガ自主的
ニ決定セナケレバナラヌモノデアリマス、
政府ガ補給金ヲ交付スルニ當ツテ、各地方
團體ノ財政ノ運營ニ一々干渉スルト云フコ
トハ、補給金ト云フ恩惠的ナ補助ヲ與ヘル
時ニ、其ノ交換條件トシテハ認メラレルコ
トデアリマス、斯ウシタ交換條件トシテ認
メラレル特殊ナ場合ニ於テノミ、サウシタ干
涉ガ許サレルノデアリマス、今囘ノ此ノ稅
金ノ如キ、地方團體ガ本來課稅權ヲ持ツテ居
ツテ、サウシテ課稅ヲ許サレテ居ツタ、其ノ
收入ヲ取上ゲテ、其ノ財源ヲ補塡スル爲ニ
交付金ヲ交付スル場合、斯ウ云フ場合ニ一々
地方財政ノ內容ヲ指圖スルガ如キハ、地方
財政自主ノ原則ニ反スル事柄デアリマシテ、
斷ジテ認容スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス(拍手)更ニ内務省ハ斯ノ如キ交付金問題
ニ依ツテ與ヘラレタル所ノ監督權ノ濫用ニ
ナルヤウナ結果ニナリマスマイカ、自治ノ
壓迫ニナルヤウニナリハシマスマイカ、私
ハ卽チ知ル、此ノ問題ガ地方補給金ニ計上
セラルルコトニナリマスレバ、各都市ノ當
事者ハ其ノ補給ヲ受ケル爲ニ、內務省ノ官
僚ノ人々ニ叩頭百拜、本當ニ頭ヲ下ゲテ、
尙且ツ其ノオ手盛、匙加減ニ依ツテ、補給
セラルルノ外ナイヤウニナルデアラウト
考ヘマス、正ニ官僚ノ權力擴張ノ用具ニ
供セラルル虞ガ、多分ニ包含スルト申ス
外ハナイノデアリマス(拍手)元來政府ノ
此ノ遊興稅ニ對スル措置ハ、各都市ニ對シ
極メテ不親切デス、政府ハ此ノ稅ガ各都市
ノ主要ナル財源デアルト云フコトハ、疾ニ
御承知ノ筈デアリマス、而モ各都市ハ昨年
又ハ本年ノ一月初メニ、各〓豫算編成ヲ終
了致シテ居リマシテ、今現ニ各都市ソレノ
市會ニ於テ審議中デアルト云フコトモ御承
知ノ筈デアリマス、此ノ各都市ノ歲入ノ重
大ナル部分ヲ剝奪セラルル結果、財政上ノ
打擊ハ極メテ深刻ナルモノガアルノデアリ
マス、大都市モ國家機構ノ一部デアリマス
以上、國策ニ順應シテ市政ヲ施スコトハ當
然デアリマス、併シナガラ都市ハ他面別個
獨立ノ團體トシテノ機能ヲモ有シテ居リマ
ス、其ノ機能發揮ニ重大ナ障碍ヲ政府ハ與
ヘントシテ居ルノデアリマス、政府ハ事前
ニ是等都市ノ當局ト協議シテ、豫メ斯ウ云
フ事態ニ對處スル準備ヲ爲サシムル必要ガ
アツタト思フノデアリマス、政府デハ斯ウ
云フ風ニ考ヘテ居ルゾ、隨テ遊興稅ハ今度
ハ國庫ニ取上ゲテシマフゾ、オ前ノ方デ
モ豫メ其ノ準備ヲシナケレバナラヌゾト云
フヤウナコトヲ、チヤント打合セノ上、ソレ
ゾレノ市會ニ原案ヲ提案スルヤウニ、打合
セノ上ニヤラナケレバナラヌ筋合デアツタ
ラウト思フ、然ルニ拘ラズ拔打的ニ斷行シ
テ、是ダケノ財源ヲ剝奪シテシマツテ、相
剋摩擦ヲ更ニ刺戟ヲシヨウト云フコトデ、
果シテ平沼總理大臣ノ言ハレル總親和ト云
フコトガ言ヘルデアラウカ(拍手)私ハ總
親和ドコロヂヤナイ、寧ロ總摩擦ダト考ヘ
テ居ル、斯ウ云フコトヲシテ總親和ヲ圖ラ
ウトナサツテモ、正ニ木ニ緣ツテ魚ヲ求ム
ルト同ジ結果ニ陷ルデアラウト信ジマス
政府ハ此ノ交付金ヲドウ云フ風ナ按排ニ分
配シヨウトナサルカ、此ノ點ヲ承リタイノ
デアリマス
更ニ第十五點ト致シマシテ支那事變特別
稅法第六十一條中ニ一項ヲ設ケテ「北海道、
府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ遊興飮食
稅ノ課稅標準タル料金ニ對シテ地方稅ヲ課
スルコトヲ得ズ」斯ウ云フ條項ガアルノデ
アリマスガ、從來ノ地方稅タル遊興稅ガ、
本稅創設ノ爲メ認メラレナイト云フコトハ
已ムヲ得ナイコトデアルト致シマシテモ、
東京市ノヤウニ遊興稅ノ外ニ別ニ歡興稅ナ
ル特別稅ガアリマシテ、專ラ「カフエー」ト
カ「バー」等ノ特殊飮食店ニ於テ飮食ヲ爲シ
タル者カラ、其ノ料金ニ對シテ一割ノ地方
稅ヲ徴收致シテ居ルノデアリマスガ、此ノ
條項ノ適用ノ結果、右ノ「カフエー」「バー」
ニ於ケル歡興稅モ徵收スルコトガ出來ナク
ナルモノデアラウカ、是ガマダハツキリ致
シテ居リマセヌ、御承知ノ通リ右ノ「カフ
エー」「バー」ニ於ケル歡興稅ハ、大體ニ於
テ一人當リ一圓以上五圓未滿ノ飮食費ニ對
スル課稅デアリマシテ、從來何等ノ不平モ
ナク徵收サレ來リマシテ、且ツ此ノ財源ヲ
以テ有效適切ナル社會政策ノ費用ニ東京市
ハ使用シテ參ツタノデアリマスガ、先程御
說明ニナリマシタヤウニ、今後ハ此ノ稅ハ
國稅ニ於テモ五圓以下ハ徵收サレマセヌカ
ラ、地方稅ニ於テモ徵收セラレナイト云フ
コトニナルト、政府ハ如何ナル理由ニ依ツ
テ此ノ歡興稅ノ廢止ヲ强制セラレルノデア
ルカ、此ノ「カフエー」ㄱバー」ニ於ケル歡興
稅ハ多年政府ガ認メテ來ツタモノデアリマ
ス、殊ニ最近ニ於テハ奢侈抑制、國民精神
ノ緊張ノ國策ノ線ニ沿フモノトシテ、寧ロ
世人ノ期待ト賞讃ヲ博シマシテ、時代ノ脚
光ヲ浴ビテ登場シテ來マシタ所ノ良稅デア
リマス、政府ハ果シテ惡稅トシテ之ヲ廢止
ショウトナサルノデアルカ、之ヲ承リタイ
次ニ政府ハ十三年度ニ於テ所得稅ノ免稅
點ヲ千圓ニ引下ゲタ際ニ、當時地方ガ徵收
シテ居リマシタ特別所得稅中千圓未滿ノモ
ノニ對スル課稅ハ之ヲ認ムルト云フ方針ヲ
執ツタフデアリマスガ、唯地方ガ自發的ニ
少額所得者ニ對スル此ノ稅金ヲ廢止スルコ
トニ努メタノデアリマス、今囘ノヤウニ國
稅ノ徵收ニ何等ノ重複モ來サナイシ、又國
稅ノ徵收ニ何等ノ障碍モ齎サナイ「カフ
エー」トカ「バー」ニ於ケル歡興稅ヲ强制的ニ
廢止セシムルト云フ理由ガ果シテアリマセ
ウカ、之ヲ承リタイノデアリマス
最後ニ一點御伺シタイ點ガアリマス、地
方制度調査會ヲ初メ、政府ニ於ケル各種ノ
地方關係ノ調査會ニハ、ソレ〓〓地方ヲ代
表スル意味ニ於テ地方團體ノ理事者、名譽
職等ガ委員ニ加ヘラレテ居リマシテ、各く
地方ノ實情ニ卽シタル意見ヲ述ベル機會ガ
與ヘラレテ居リマス、更ニ又地方ノ利害ト
中央ノ利害トヲ互ニ調和サセル役目ヲ致シ
テ居ルノデアリマスガ、獨リ稅制ニ關スル
調査會ニハ、ドウ云フ理由デアリマスカ、
斯ル意味ノ委員ガ加ヘラレテ居ナイノデア
リマス、申スマデモナク稅制ノ改革ト云フ
コトハ、地方公共團體ニ對シ頗ル重大ナル
關係ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、政府ノ
每年度提出セラレル增稅案或ハ新稅案ニハ、
直チニ地方歲入ニ影響スルモノガ多々ア
ルコトハ御承知ノ通リデアリマス、或ハ地
方ノ關係ニ付テハ內務省ヨリ委員ガ出テ居
ルト言ハレルカモ知レマセヌケレドモ、內
務省ノ官吏ガ机上ヨリ地方ヲ眺メ、地方ニ
關シテ考ヘラレルコトハ、往々地方ノ實情
ニ副ハナイモノガアルコトハ、幾多ノ實例
ノ存スル所デアリマシテ、故ニヤハリ稅制
ニ關スル調査會ニモ、他ノ調査會ニ於ケル
ト同樣ニ、地方ノ實情ヲ知リ、地方ノ利害
ヲ代表スル意味ノ委員ヲ加ヘラレルコトガ
必要デアルト私ハ考へルノデアリマスガ、
此ノ點ニ關スル政府ノ將來ノ御方針ヲ承ツ
テ置キタイノデアリマス
以上十數項ニ亙ル質問ヲ致シタノデアリ
マスガ、之ニ對スル政府ノ御答辯ヲ伺ヒタ
イノデアリマス(拍手)
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=25
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026・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 御答致シマ
ス、第一點、增稅ヲ必要トスル金額如何、
斯ウ云フ御尋デゴザイマス、是ハ今日ノ場
合ニ於キマシテ寧ロ一般的ニ增稅ヲ行フコ
トハ適當デナイト考へマシタノデ、實際ノ
問題ト致シマシテハ臨時利得稅、物品稅ヲ
中心トシテ、ソレヲ主トシタル增稅ヲ致シ
タイ、斯ウ考ヘマシテ、其ノ結果二億圓ノ
金ヲ得タノデゴザイマシテ、最初カラ幾ラ
ノ金ヲ增稅スルト云ツテ目當ニ致シタ譯デ
ハゴザイマセヌ
隨テ第二點ノ、公債利子ノ爲ノ增稅デア
ルカ、斯ウ云フ御尋ニ付キマシテハ、最初
ノ目的ハサウ云フモノデハゴザイマセヌ
又公債ノ利子ノ爲ノ增稅デアルナラバ、是
ハ恒久財源デアルコトガ必要デアルト存ジ
マスガ、今囘ノ增稅ハ臨時的ノ增稅デアリ
マシテ、恒久的ノ收入デハゴザイマセヌデ、
臨時的ノ增稅デアリマス、隨テ公債利拂ノ
爲ノ增稅ト云フ譯ニハ行カナイト存ジマ
ス、若シ公債利拂ノ爲ノ增稅デアルナラバ、
增稅ニ次グニ增稅ヲ以テシテ、結局稅制改
革ノ破壞トナルノデハアルマイカ、斯ウ云
フ御尋デゴザイマスガ、假令ソレガ公債利
拂ノ爲ノ增稅デアリマシテモ、今年四十億
ノ公債ヲ發行シ、サウシテ其ノ利拂ノ爲ノ
利子ニ相當スル位ノ增稅ヲ致シタ、其ノ翌
年度ニ於テ四十億ノ公債ヲ發行スルト云フ
コトデアリマスナラバ、其ノ前ノ增稅額ガ
ソコニ收入トナツテ現ハレテ來ルノデアリ
マスカラ、サウ云フ必要ハゴザイマセヌ、
結局當分公債デ財政ヲ持ツテ行クト云フコ
トト、連年必ズ其ノ利拂ノ爲ノ增稅ヲシナ
ケレバイケナイカ、斯ウ云フコトハ其ノ間
ニ關聯ガゴザイマセヌ、前年マデ公債ノ發
行額ニ、增加致シタ發行額ノ利子ダケ、斯
ウ云フコトデ宜イト思フノデゴザイマス、
隨テ稅制改革ノ破壞ト相成ルト云フヤウナ
コトハ、若シサウ云フ見地カラシテノ增稅
デアツテモ、サウ云フコトハアルマイト存
ズルノデアリマス
第四點、增稅案提出ノ際ノ見込ガ過小デ
アツテ、審議權ヲ無視シ、國民ヲ欺瞞スル
ト云フヤウナ强イ御叱リガアツタノデゴザ
イマスガ、是ハ決シテサウ云フコトハゴザ
イマセヌ、昨年提出致シマシタ新稅案、增
稅案ニ付テモ、實ハ大抵ノ稅金ヲ新稅等ニ
付キマシテ調ベテ見マシタ所ガ、大體ニ於
テ見込通リ收入シナイヤウデゴザイマス、
通行稅ダケガ多少ノ增收ニ相成ルカト思ツ
テ居ルノデゴザイマスガ、其ノ他ノ新稅等ニ
於キマシテハ、却テ收入ハ減ツテ居リマス、ド
ウモ新稅提案ノ際ニ於キマシテ折々斯ウ云
フ御注意ヲ受ケマスノデ、實ハ相當見込ヲ引
上ゲテ居リマス、隨テ實際問題トシマシテハ
玆ニ御注意ノ場合トハ反對ニ見込額ガ過大デ
アツテ、却テ實額ガ減ツテ居ル、斯ウ云フコト
ニ相成ツテ居ルト思フノデゴザイマシテ、
決シテ國民ヲ欺瞞スルト云フヤウナ考ハ毛
頭ゴザイマセヌカラ、左樣御諒承ヲ願ヒタ
イト思ヒマス
第五點、此ノ增稅案ガ恒久的デアルカ臨
時的デアルカ、是ハ臨時的デゴザイマス
第六點、生活必需品ニ對スル增稅ト物價
騰貴ニ對スル對策如何ト云フ問題デゴザイ
マスガ、生活必需的ノ品物ニ付キマシテハ
出來ルダケ之ヲ避ケタ積リデアリマシテ、
比較的餘裕ノアル品目ニ付テ選ンダト思フ
ノデゴザイマス、此ノ物價騰貴、是ハ課稅
ヲ受ケマス品目ニ付テ、稅額ダケ上リマス
コトハ、一面ニ於キマシテ增稅ヲ致スノデ
ゴザイマスカラ、已ムヲ得ナイト思フノデ
ゴザイマス、增稅モヤハリ一方增加シテ來
ル所ノ購買力ヲ奪フ一ツノ行キ方デゴザイ
マスノデ、是ハ已ムヲ得ナイ次第デアルト
考ヘテ居ルノデゴザイマス
ソレカラ其ノ次ノ御尋ハ餘程細カイ御尋
デゴザイマシテ、是ハ私伺ツテ居リマシテ、
實ハ判然ト致サナイ所モゴザイマスノデ、
適當ナ機會ニ於テ御答シタイト存ジマス
第八點ノ增稅ニ對シテ手加減ヲ加ヘテ居
ルノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋デゴザ
イマスルガ、此ノ關係ニ於キマシテ、手加
減ヲ加ヘテ居ルモノハ別段ゴザイマセヌ
法規通リノコトヲヤツテ居ル次第デゴザイ
マス
ソレカラ其ノ次ノ第九點トシテ、印紙稅法ノ
改正ハ一體ドウ云フコトニ相成ツテ來ルカ、
物品切手ヲ若シ發行者ノ方デ持ツテシマヘ
バ一向客ニ對スル壓迫ニナラヌデハナイ
カ、斯ウ云フ御尋デゴザイマス、是ハ一般
ノ印紙稅ノ通リデゴザイマシテ、結局發行
者ガ其ノ印紙ヲ貼用スルノデゴザイマスガ、
其ノ負擔ハソレヲ買フ人ガ結局ニ於テ負擔
スルモノト心得デ居ルノデゴザイマス、又
今日ノ我國ノ印紙稅ノ立場カラ行キマシテ
モ、之ヲ間接稅トシテ、間接犯則者處分法
ヲ適用致シテ居リマスノデ、結局ニ於テオ
客ガ納稅者デアル、斯ウ云フ風ニ見テ居ル
次第デゴザイマス
ソレカラ其ノ次ノ問題ハ遊興稅ノ問題デ
ゴザイマスガ、是ハ今囘遊興飮食稅ヲ新設
シマシテ、サウシテ、此ノ遊興稅ニ相當ス
ル金額ヲ國庫カラ支辨シタイト存ジテ居ル
ノデゴザイマス、其ノ分配如何ニ付テ色々
御尋ガゴザイマシタガ、之ニ付テハ內務大
臣カラ御答スルト存ジマス
ソレカラ歡興稅ノ問題デアリマスガ、歡
興稅ハ是ハ結局ニ於キマシテ、遊興飮食稅
ノ課稅ヲ受ケル者ニ付テハ課稅シ得ナイ、
斯ウ云フコトデゴザイマスノデ、法律ノ條
文カラ行キマスレバ、五圓以上ノ飮食ニ付
テハ課稅出來ナイ、五圓以下ノ飮食ニ付テ
ハ別ニ此ノ法律ノ適用ヲ受ケナイ、斯ウ云
フコトニ相成ルト思フノデゴザイマスガ、
實際問題トシテハ五圓以上ノ飮食ニ付テハ
國デ課稅シ、五圓ニ滿タザルモノハ地方デ
課稅スルト云フコトハ、實行問題トシテハ
不可能デアラウト存ジマス、隨テ歡興稅
ハ之ヲ行フコトヲ止メル斯ウ云フ結果ニ
相成ルト思ツテ居リマス
ソレカラ稅制調査會ニ市町村ノ關係者ヲ
加へタラ如何デアルカ、斯ウ云フ御尋デゴ
ザイマスガ、是ハ今日ニ於キマシテ市長會
ノ會長、町村長會ノ會長ガ稅制委員トシテ
入ツテ居ラレマス、併シナガラ尙ホ地方團
體等ニ付テ相當密接ナ關係ガアルノデアル
カラ、其ノ構成分子ニ付テ更ニ考ヘロト云
フ松永サンノ御意見ニ對シマシテハ、ッ
十分ニ考ヘテ見タイト存ジマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=26
-
027・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 松永サンニ
御答申上ゲマス、松永サンノ御尋ハ、本補
給金ノ配分ノ標準ニ付キマシテノ御尋デア
リマシタガ此ノ補給金ハ申スマデモナク
遊興稅ヲ國稅ニ移管致シマスルコトニ依リ
マシテ生ジマスル、地方財源ノ喪失額ヲ補
塡スルノガ目的デアリマス、隨ヒマシテ從
來ノ地方財政補給金ノ標準ニ依ツテ、直チ
ニ之ヲ律スルコトハ妥當デアルトハ考ヘテ
居リマセヌ、殊ニ先程モ御話ノヤウニ、本
年ハ各都市ノ豫算モ旣ニ相當ニ編成セラレ
ツツアル際デアリマスカラ、ソレ等ノ點モ
考慮致シマシテ、先程橫川サンニモ御答致
シマシタヤウニ、地方團體ノ財政經理上大
ナル支障ヲ來サナイヤウニ處理スル方針デ
進メタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=27
-
028・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小池四郞君
〔小池四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=28
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029・小池四郎
○小池四郞君 違ツタ角度カラ數點質問ヲ
致シマス、本來本增稅案ガ目標ト致シマス
ル所ハ、臨時軍事豫算ノ財源ノ一部トシテ
ト云フコトモアルデアリマセウケレドモ
本來ノ目標ト云フモノハ、施政方針ノ演說
ノ際ニ大藏大臣ハ、過大ナ所得ヲ得マシタ
所ノ產業ヲシテ負擔ノ增加ヲセシメルト共
ニ、消費ノ抑制ニ資スル爲ニ增稅案ヲ其ノ
內ニ出スト云フコトヲ言明シテ居リマシタ
通リ、此ノ過大ナ所得ヲシテ居ルト政府ノ
認メマスル所ノモノニ負擔ノ增加ヲサシテ、
而モソレガ消費ノ抑制ニ役立ツト云フ點ニ
大キナ重點ガアルト私共ハ見ルノデアリマ
ス、恐ラク是ハ大藏大臣モ必ズ承認セラレ
ル所デアラウト私ハ思フ、サレバコソ先程
モ御答辯ノ中ニアリマシタヤウニ、乙種ノ
利得ニ對シテハ、甲種利得ニ比ベテ、餘程
過大テ增稅ヲ今囘行ツテ居リマスルト云フ
コトハ、今日ノ經濟界ニ於キマシテ、過大
ナ所得者ガアルコトヲ氣付イテオ居デニナ
ル、又言葉ヲ換ヘテ言ヒマスレバ、或ハ不
當所得者ガ居ルノデハナイカト云フコトモ
考ヘテ居ラレルノデハナイカト思フ、之ヲ
其ノ儘ニ置イテオキマスルコトハ國民精
神ノ上カラ云ヒマシテモ、其ノ他ノ或ハ生
產力擴充ノ遂行上カラ云ヒマシテモ、妥當
デハナイト云フコ·ハ大藏大臣ハ認メテ居
ラレルト思フノデアリマス、此ノ點ヲ考ヘ
テ參リマスルト、大體政府ガ經濟經營ヲ民
間ニサセテ置キマシテ、餘リ眼ニ餘ルヤウ
ナ過大ナ所得ヲ取ラセテ置クト云フ問題ニ付
テ、政府ハ深ク檢討シテ貰ハナケレバナラ
ナイト思フ、經濟活動ハ自由自在ニ得テ勝
手ニサセテ置イテ、其ノ結果トシテ非常ニ
過大ナル、比較上過大ナル所得ヲ取ラスコ
トヲ自由ニ任セテ置イテ、取ツタ所得ガ過
大デアルカラ、見テハ居ラレナイカラシテ、
之ヲ增稅手段ニ於テ政府ニ囘收スルト云フ
ナラバ、卽チ今日一部ニアリマスル所ノ、
相當過大ナル所得ヲ得テ居リマス產業ト云
フモノガ、決シテ今日ノ經濟界カラ云ヒ、
今日ノ時局カラ云ツテ妥當ナル所得デハナ
イ、妥當以上ノ所得デアルト云フコトヲ、
政府モ亦認メテ居ルコトニナルノデアリマ
ス、サウスレバ一應取ラセテ置イテ、其ノ
後デ下カラ稅トシテ引拔クト云フヤウナ面
倒ナコトヲシナイデ、產業ノ經營ヲ致シマ
スル其ノ際ニ、其ノ個々ノ產業ニ付テ自由
勝手ニ所得ヲ取ラセルコトニ制限ヲ加ヘテ、
政府ガ適正ナリト考ヘル所ノ、其ノ所得ノ
程度ニ制限ヲシテ置キサヘスレバ、多ク儲
ケサシテ後カラ增稅ノ形デ、下カラ引拔ク
ト云フ面倒ナコトヲシナイデ私ハ濟ムト思
フ、若シモ政府ニサウ云フ最初カラ適當ナ
處置ガアリマスルナラバ、本日提案ヲ致シ
マスル所ノ增稅案ノ內容モ、モツト簡單ニナ
ツテシマフノダト私ハ思フ、石渡大藏大臣ノ
此ノ時局產業ニ對スル考ヘ方ハ、サウ云フ
考ヘ方デアルコトヲ私共時々聞カサレテ居
ル、例ヘバ今日生產力ノ擴充ヲヤリマスニ
付テモ、民間產業者ニ、極端ナ言葉ヲ以テ
言ヒマスレバ、利益ヲ以テ之ヲ刺戟シテヤ
ラナケレバ、民間產業人ハ生產ニ努力ヲシ
ナイト云フコトヲ、無批判的ニ承認シテ居
ラレル、ソレデスカラ國家總動員法第十一
條ノ發動ノ際ニ對シマシテモ、喰ハスニ利
益ヲ以テシナケレバ生產ト云フモノハ擴
充ヲシナイト云フ考デアリマシタカラ、
最モ消極的ナ態度ヲ大藏大臣ハ當時ノ次
官トシテ執ラレタト思フ、併シナガラ斯ク
シテ消極的ナ態度デアリマシタ其ノ結果ト
シテハ、殷賑產業ハ得テ勝手ニ所得ヲ餘計
取ルノデアリマスルカラ、國民所得ノバ
ランス」ガ破レルコトハ決マリ切ツテ居リ
Wく、跛行狀態ガ結果シタコトハ、現實ノ
事實トシテ明ニ證明出來ル、此ノ事實ヲ大
藏大臣ハ增稅ノ手段ニ依ツテ是正サレヨウ
トスルノデアリマスガ、サウ云フ方法モア
ルデアリマセウケレドモ、增稅ヲシテ過大
所得者ニ負擔ヲ增加セシメナケレバナラヌ
ト云フナラバ、初メカラ產業經營ノ際ノ所
得ヲ適正ナル所ニ置イテ、制限ヲシテ置ク
コトノ方ガ宜シイノデハナイカト私ハ思フ
ノデアリマス、サウスレバ此ノ增稅案ノ如
キモ、項目的ニモ少クナツテ參リマスシ、
ゾレガ本當ノヤリ方デハナイカト私ハ思ヒ
マスルガ、之ニ對シテ大藏大臣ノ所見ヲ伺
ツテ置キタイト思ヒマス
第二點ハ、先程カラ問題ニナリマシタ點
デアリマスルガ、減稅手段ニ依リマシテ留
保所得ヲ社內ニ增サシメル、サウシテ生產
力ノ擴充ノ目的ニ副ハセヨウト云フ所ノ氣
持ガ、本增稅案ノ中ニ盛ラレテ居リマス、
此ノ點ニ付テハ私ハ一ツノ疑問ヲ持ツノデ
アリマスガ、有リ餘ルヤウナ所得ヲ取ツテ
居ル-勿論留保所得ヲ致シマスルノハ
產業ノ經營ガ好調デアリマシテ、相當利益
ヲ餘計ニ得ル產業ニ限ルト私ハ思フガ其
ノヤウナ有リ餘ルヤウナ所得ヲ得ル所ノ者
ガ、國家ガ生產力ノ擴充ニ必要ナリトシテ
社內留保ヲ望ンデ居リマスル際ニ、減稅ト
云フ所ノ、是ハ一ツノ賞金デアリマス、褒
美デアリマス、賞金ヲ懸ケナケレバ、サウ
シタ經濟人ガ留保所得ヲ增加セシメナイト
考ヘテ然ルベキデアラウカ、此ノ一點デア
リマス、私ハ金錢的ナ利益ノ上カラ言ヒマ
スル刺㦸ヲ以テ、國民ノ活動ヲ盛ナラシメ
ルト云フコト全體ニ付テ、一般的ニ私ハ之
ヲ否定スルモノヂヤナイ、時ニ此ノ手段ニ
依ツテ國民活動ヲ促進セシメルコトノ必要
ナルコトヲ信ジマス、併シナガラ此ノ一ツ
ノ特例、一例ニ付テ私ハ左樣ニハ考ヘラレ
ナイ、有リ餘ルヤウナ所得ヲ取ツテ居ル所
ノ者、其ノ所得ノ處分ニ困ルヤウニ餘計ニ
儲ケテ居ル所ノ者ガ、政府ガ稅ヲ減ズルカ
ラト言ハナケレバ、國家ノ望ム方向ニ進マ
ナイト云フヤウナ情ナイ國民デアリ、經濟
人ダトハ私ハ考ヘナイ、現ニ一般ノ國民ハ
消費節約ヲ政府ノ命ズルガ儘ニ喜ンデ實行
シテ居リマス、是ガヤハリ個人經濟ニ於ケ
ル社內ノ所得留保デアリマス、一家內ノ所
得留保デス、小サナ個人ハ消費節約ヲ國策
ノ線ニ沿ツテ何等ノ賞金モナク、何等ノ代
償モナク、個々ニ細カク今日實行ヲシテ居
ル(「ヒヤ〓〓」)大キナ所得ヲ取ル所ノ大企
業家ハ、其ノ儘放置シテ置ケバ、留保所得
ヲ增加サセナイト云フヤウニハ私共考ヘラ
レナイ此ノ點ニ付テノ疑問ニ對シテ大藏
大臣カラ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマスガ
之ニ付テ私ハ政府ノ態度ニ一ツノ遺憾ナ點
ヲ見ルノデアリマス、日本ノ國民デアリマ
スル以上ハ、ドンナ經濟人デアラウト、ド
ンナ實業家デアリマセウト、胸ノ中ニハ深
ク國策ニ協力シヨウト云フ、忠誠ナル氣持
ノアルコトハ疑フコトガ出來ナイ、此ノ胸
中ニ潜在スル日本人的ナ性格ヲ、政府ノ燒
クガ如キ熱情ト、鐵ノ如キ意思ヲ以テ掘出
シテ貰フダケノ努力ヲスルナラバ、留保所
得ヲ餘計ニスレバ稅ヲ免ジテヤルト云フヤ
ウナ物慾的ナコトヲシナクテモ、日本ノ國
民ハ擧ツテ大藏大臣ノ欲スル所ニ私ハ赴ク
ダラウト思フノデス、私ノ此ノ希望ニ反シ
マスル所ノ一ツノ手段ガ、減稅ニ依ル留保
所得ト云フ新シイ方法ニ依ツテ、此ノ增稅
案ニ盛ラレテ居リマスルガ、私ハ此ノ點極
メテ了解ニ苦ムノデアリマスガ、サウ云フ
ヤウナ考ヘ方ニ對シマシテ、大藏大臣ハ如
何ナル所見ヲ御持チニナリマスカ、伺ツテ
見タイ
第三點ハヤハリ只今申上ゲマシタ留保所
得ノ問題デアリマスガ、是ハ別ノ觀點カラ
見ルト、減稅手段ニ依リマシテ、政府ガ留
保所得ノ增加ヲ奬勵助長致シマスルト、物
價ヲ引上ゲル結果ニナリハシナイカト云フ
此ノ一點デアリマス、是ハドウ云フ意味デ
申上ゲルカト云フト、留保所得ヲ增加セシ
メナケレバナラナイヤウナ企業、產業ハ
言フマデモナク相當厖大ナ利益金ヲ擧ゲテ
居ル會社デアリマス、モウ一度言換ヘマス
ナラバ、サウシタ會社ハ相當高率ナ利益率
ヲ擧ゲテ居ル會社デアリマス、卽チ例ヘテ
言ヒマスルト、二割五分デアルトカ、或
三割デアルトカ云フヤウナ高率ナ利益率ヲ
擧ゲテ居ル會社ニハ、此ノ留保所得ノ增加
ヲ要求シ得ルノデアリマス、サウスル際ニ
ドウナリマスカト云フト、三割ト云フヤウ
ナ大キナ高率ノ利益率ヲ擧ゲテ居ル會社ニ、
其ノ利益金ノ處分ニ付キマシテハ、言フマ
デモナク國家總動員法第十一條ノ發動ニ依
リマシテ、配當額ガ制限サレルノデ、是ハ
固定シマス、斯ウ云フヤウナ普通竝ミ以上
ノ高イ利益率ヲ擧ゲテ居リマスル產業ニ對
シマシテハ、政府ガ是カラ懸命ニ努メナケ
レバナラヌトシテ居リマス、物價抑制政策
カラ申シマスルト、斯ウ云フ高率ナ利益率
ノ會社ニ對シマシテハ、先ヅ物價形成ノ立
場カラ言ツテ、利益率ヲ縮減サセルヤウニ
政府ガ仕向ケナケレバナラナイノデアリマ
ス、物價ノ形成ハ生產原價ト利潤ノ此ノ兩
者ニ在ルノデアリマスカラ、生產原價ヲ切
縮メルコトハ勿論デアリマスガ、又同時ニ
單ナル生產「コスト」ノ問題ノミデナクシテ、
其ノ產業ノ利潤ニ付テ政府ハ嚴重ナ檢討ヲ
シテ見ナケレバ、物價ノ引下ト云フコトハ
出來ナイト私ハ思フ、サウスレバ一方カラ
サウ云フ高率ノ利益率ノ會社ニ對シテハ、
政府ハ利益率ヲ減ラセト云フ要求ヲシテ
行カナケレバ駄目デアリマス、所ガ又一方
カラハ總動員法第十一條ノ發動ニ依リマシ
テ配當ハ制限サレ、固定サレテ動キガ付カ
ナクナツテ居ル、之ヲ引上ゲルコトガ出來
ナクナツテ居ル、其ノ結果ハドウナルカト
云フト、社内留保ニスベキ金額ト云フモノ
ガ、利益金總體カラ見マスルト、其ノ率ガ
非常ニ小サクナツテ來ル、是ハ當然デアリ
せい、率ガ小サクナツテ來ルト云フコトハ
本增稅案ニ依リマスト、減稅ドコロカ却テ
逆ニ增稅スルゾト脅カサレテ居ル、サウス
レバ其ノ「ヂレンマ」カラ產業人ガ逃レ出シ
マス爲ニハ、國家及ビ政府ガ要求スル所ノ利
益金ヲ切縮メテサウシテ物價ノ値段ヲ下
ゲルト云フ此ノ註文ニ應ジ兼ネラレナクナ
ルノデアリマス、ソコニ大キナ矛盾ガアツ
テ、社内留保或ハ留保所得ヲ、政府ガドン
ドン斯ウ云フ手段ニ依ツテ奬勵シテ參リマ
スト、政府ガ望ンデ居リマス物價引下政策
ヲ、逆ニ縛リ付ケル矛盾ニ逢著スルト私ハ
思フ、此ノ點ニ對スル大藏大臣ノ所見ヲ伺
ヒタイト思フ
第四點ハ、消費ノ抑制ニハ國民全般ニ亙
ツテ之ヲ公平ニ抑制スルヤウニ仕向ケナケ
レバナラヌコトハ、言フマデモナイノデア
リマス、先程カラ御話ガアリマシタガ、其
ノ點ニ付テハ齒磨デアルトカ、石鹼、傘ノ
如キモノニ物品稅ヲ擴張スルコトノ是非ト
云フコトハ、相當論議ノ的ニナルト思ヒマ
ス、假ニ斯ノ如キ物マデモ物品稅ヲ課シテ
然ルベシト致シマシテモ、勿論ソレニ一割
ノ稅ガ付クダラウト思ヒマスガ、一方ニ於
テ今度ノ增稅案ノ一ツノ新稅トナツテ居リ
マス建築稅、或ハ遊興飮食稅、是等ト今ノ
齒磨、石鹼、傘ノ如キ些細ノ物品ノ消費稅
ト比べ合セテ考ヘマスト、私共ハ聊カ合點
ガ行カナイ點ガアル、勿論建築稅モ、遊興
飮食稅モ、物品稅モ、各〓率ハ一割デアラ
ウト思ヒマスガ、今日一割デアルカラト云
ツテ、決シテ是ガ公平ナル消費ノ抑制デハ
ナイト思ヒマス、消費ヲ抑制サレマスル際
ニ、二通リノ現象ガ起ツテ來ルト云フコ
トヲ私共ハ忘レテハナラナイト思フ、ソ
レハ何カト云フト、消費ヲ國民ガオ互ニ擧
ツテ自發的ニ抑制シテ參リマス時ニ、-
方ニハ生活必需品、生活ノ爲ニ無クテハナ
ラナイ物マデモ切詰メマシテ-言葉ヲ換
ヘテ言ヒマスレバ、最小限度ノ生活水準ヲ
切破ツテ下ニ潜リ込ンデ、國家ガ要望致シ
マス消費ノ節約ヲヤラウト云フ此ノ階層ト、
一方ハ政府ノ註文、政府ノ忠告ガナカツタ
ナラバ生活ヲ出來ルダケ美化シ、享樂シ、
高度化シテ行カウト云フモノガ、消費節約
ノ政府ノ註文ニ依リマシテ、生活ノ美化享
樂化ヲシヨウトスル慾望ノ一部ヲ制限スル
ト云フコトニ止マル所ノ、サウ云フ消費ノ
抑制ガアルノデアリマス、此ノ二通リノ抑
制ト云フモノハ同ジ國民ノ中ニ別々ニ存在
スル、此ノ二通リノ違ツタ消費抑制ニ對シ
マシテハ增稅ノ際ニ、或ハ其ノ他ノ際ニ
政府ハ特別ノ眼ヲ以テ之ヲ見ナケレバナラ
ナイト思フ、卽チ先程申上ゲマシタ齒磨、
或ハ石鹼ノ如キモノニ對シマス態度ト、僅
ニ慾望ノ一部ヲ差控ヘレバ濟ムト云フダケ
ノ建築稅デアルトカ、或ハ遊興飮食稅ノ如
キモノニ對シマスル態度トハ、大藏大臣トシ
テハ、自ラ別ノモノガナケレバイケナイト
私ハ思フ、齒磨ヤ其ノ他ノ些細ノ生活必需
品ヲ抑制セシムルト云フ決心デオヤリニナ
ルナラバ、僅カナ遊興飮食マデ禁止スルヤ
ウナ狹苦シイヤリ方ハ勿論イケマセヌガ、
一夕數百金ヲ投ズルヤウナ遊興飮食ト云フ
モノハ、殆ド禁止的ノ態度ヲ以テ大藏大臣
ハ當ツテ然ルベキデアラウト思フ、サウ云
フ意味カラ言ヒマスレバ、建築ノコトニ付
テモ言ヘルノデアリマシテ、二十万圓ノ建
築三十万圓ノ建築ト云フモノモ、マダ此
ノ時局柄チラホラ見エルノデアリマス、之
ニ對シテ新增稅案ニ依ツテ僅ニ建築稅ヲ取
ルト云フニ過ギナイ、是等ニ對シマシテハ
殆ド禁壓的、禁止的ノ累進課稅ヲ以テ大藏
大臣ハ當ツテ然ルベキダト思ヒマスガ、此
ノ點ニ付テノ政府ノ御所見モ承ツテ置キタ
イト思ヒマス
第五點ハ此ノ時局ニ際シマシテ國策
ノ爲ニ犠牲ヲ受ケマシタ產業者ニ對シテ
今囘ノ新增稅ガ公布實施サレマス際ニ、
勿論徴稅上犠牲產業者デアルカラト云ツ
テ特別ナオ目零シデアルトカ、手心ヲ
加ヘルコトハ是ハ出來ナイコトデアリマ
スケレドモ、少クトモ斯ウシタ犠牲產業者
ニ對シマシテハ、徴稅事務ニ當リマスル所
ノ徴稅事務官ガ、本心カラ極メテ親切ニ徴
稅ニ當ツテ貰ヘルカドウカト云フコトヲ申
上ゲテ置キタイ、時局ノ始マツテカラ今日
マデ、實際徵稅ニ當ル所ノ徵稅事務官ハ
決シテ犠牲產業者ニ對シテ特ニ親切デアツ
タ例ハ私共ハ無イヤウニ思フ、例ヘバ自動
車屋ガ三臺カ四臺ノ自動車ヲ持ツテ居ツテ
營業ヲシテ居リマス、從來ハ「ガソリン」ガ
豐富ニ使ヘタカラ、相當ナ收益ハ擧ツタガ、
「ガソリン」ガ制限サレマシタ今日、從來ノ
ヤウナ成績ヲ擧ゲルコトガ出來ナイノハ明
カデス、所得ニ於テ格段ノ差ガ起ツテ參リ
マスルニ拘ラズ、徵稅事務官ガ其ノ自動車
屋ニ對シマスル態度ト云フモノニハ何等變
リナク、事變前ノ所得ノ推定ヲ殆ド動カサ
ズニ押付ケテ行クト云フ例ヲ私共ハ聞イテ
居ル、斯ウ云フ點ニ付キマシテ新增稅ノ實
施ニ際シ、大藏大臣ハ特ニ御注意ヲ願ツテ、
徴稅事務官ニ向ヒマシテ斯ノ如キコトノナ
キヤウニ、法律、法規ノ許ス範圍ニ於テ
極メテ親切ニ取扱ヲスルヤウナ訓令ヲ發セ
ラルルコトガ必要ダト思フ
第六點ハ最後ノ質問デアリマスガ、今囘
砂糖ノ消費稅ヲ增スコトニナツタノデアリ
マスガ此ノ消費稅ハ砂糖製造業者ノ負擔
スベキモノデアリマスルカ或ハ消費者ノ
負擔スベキモノデアルカト云フ點ヲ伺ヒタ
1、以前麥酒ニ增稅ヲ致シマシタ際ニ、時
ノ商工大臣ハ、其ノ增稅ノ大部分ハ麥酒會
社ノ經營ヲ整理合理化セシメテ負擔セシメ
ルカラ、消費者ノ負擔ニナル部分ハ極メテ
僅カデ濟マセルト云フ言明ヲサレテ、略〓其
ノ言明通リ實行サレタコトガアリマスガ
今囘ノ砂糖消費稅ニ付テハ大藏大臣ハ如何
樣ニ御考ニナル積リデアルカ、更ニ又此ノ
際砂糖ニ消費稅ヲ課ケマスル際ニ、砂糖ノ
生產原價竝ニ利潤ニ付テ政府ガ之ヲ十分ニ
檢討ヲサレテ、出來得ル限リ切縮メテ、砂糖ノ
製品ノ値段ト云フモノヲ引下ゲルダケノ御
決意ガアルカドウカ、是モ併セテ承ツテ置
キマス、況シテヤ五六日前ニ議會ニ出マシ
タ所ノ臺灣米ノ移出管理ノ問題ニ付キマシ
テ、當然此ノ移出管理ガ實施サレルヤウニ
ナリマスレバ、砂糖會社ハ圖ラズシテ利益
ヲ得ルヤウニナルノデアリマス、斯ウ云フ
砂糖製造會社ノ側カラ見テ好材料モアルノ
デアリマス、此ノ際ニ消費稅ヲ進ンデ大藏
大臣ガ增稅セラレタ際ニ、砂糖ノ生產原價
ト云フモノヲモウ一度深ク檢討シ直シテ、
消費稅ハ課ケルガ、一方ニ於テ出來ルダケ
安イ砂糖ヲ國民ニ供給スルト云フダケノ御
熱意ガアルカドウカ、或ハ其ノ消費稅ハ消
費ノ抑制ヲ手段ニシクノデアルカラ、安クシ
テシマシテハ抑制ノ目的ヲ果サナイカラト
云フナラバ、更ニ一方砂糖ノ生產原價ヲ切詰
メマシテ、ソレカラ浮ビマスル分ト同ジモノ
ヲ、今日ノ消費稅以上ニ課ケルコトモ出來ル
ノデアリマシテ、何レニシテモサウ云フ點ニ
付テ單ニ消費稅ヲ課ケルト云フコトダケデ
ナク、其ノ品物ノ値段ヲ如何ニスルカト云フ
點ニマデ御考ニナル御意思ガアルカドウカ
ト云フコトヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス
以上數點ニ亙リマシテ大藏大臣ノ御答辯
ヲ得タイ(拍手)
(國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=29
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030・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 御答致シマス、
小池サンノ御尋ノ第一點ハ過大ノ所得者ガ
アル、斯ウヤツテ臨時利得稅デ稅金ヲ取ル
ヨリモ、寧ロ過大ノ所得者ヲ生ジナイコト
ニ工夫シタラドウダ、斯ウ云フ御尋ダト思
フノデアリマス、小池サンノ仰セノ通リサ
ウ云フ所得者ノ生ジナイコトヲ期セラレナ
イ今日ノ社會經濟界ノ實情デアリマシテ
所得者ガ相當所得ノ增加シツツアルモノガ
アルノデアリマシテ、之ニ對シテ此處デ增
徵ヲ致ス、斯ウ云フ譯ノモノデアリマシテ、
今日ノ時勢ニ於キマシテ、御意見ノヤウナ
コトニハ中々行キ兼ネルノデハアルマイカ
ト思ツテ居ル次第デアリマスガ、結局所得
ノ過大ト云フ者ニ於キマシテハ、出來ルダ
ケサウ云フ者ノ生ジナイヤウニ檢討シテ行
ク必要ハ、是ハ十分アルト存ジテ居リマス
其ノ次ノ問題ハ是モ同ジヤウナ御考カラ
ノ御尋デアリマスガ、減稅ヲシテ、サウシ
テ留保サセル、必要ナモノデアルナラバ留
保サセレバ宜イデハナイカ、其ノ上ニ減稅
ヲ伴フト云フコトハ-利益ヲ與ヘテ、其
處ニ留保ト云フコトヲセシメルト云フコト
ハ如何ナモノデアラウカ、斯ウ云フ御考デ
ゴザイマス、此ノ點ハ私モ實ハ少カラズ考
ヘタ問題デゴザイマス、詰リ減稅ト云フコ
トデ留保ヲサセルト云フコトガ今日國民
ノ戰時意識ニ對シテ如何ナモノデアルカト
云フ點デアリマスガ、併シナガラ此ノ留保
減稅ノ程度等ヲ御覽下サレバ丁度角ヲ取
ル非常ニ尖ツテ居ル角ヲ削ル、斯ウ云フ
程度ノモノデアリマシテ、是ガ爲ニ特ニ利
益ヲ供與シテ、サウシテ留保セシメル、斯
ウ云フ程度ノモノデハナイト存ズルノデゴ
ザイマシテ、唯會社ガサウ云フ留保ヲスル
ニ當ツテヤリ宜クナル便宜ガ與ヘラレル、
斯ウ云フ程度ノモノデアリマシテ、强ヒテ
其ノ人ノ利益心ヲ刺戟シテ、サウ云フコト
ニ持ツテ來ル、斯ウ云フ效果ハ此ノ留保減
稅ノ結果、サウ云フコトハアルマイカト存
ジテ居ル次第デゴザイマス
ソレカラ第三點ノ御尋ハ、結局物ヲ安ク
シテ行クト云フコトニ付テハ却テ損デアツ
テ、重稅ヲ負擔シテ留保シテ行クト云フコ
トハ、物價ヲ騰貴サセルノデハアルマイカ、
斯ウ云フヤウナ御尋ダト思フノデゴザイマ
スルガ、利益金ヲ切詰メテ行クト云フモノ
ハ此ノ稅金ノ關係カラ行キマスレバ、勿
論是ハ留保シテ居ルモノヨリ、更ニ稅金ハ
安クナルト思フノデアリマシテ、此ノ點ハ
私ハ折角ノ御尋デゴザイマスルガ、寧ロ稅
金ノ問題デハナイノデハナイカト考ヘテ居
ル次第デゴザイマス
其ノ次ニ消費節約ニ付テノ考カラ行クノ
デアルナラバ、モツト贅澤ノ度ノ强イモノ
ニ付テハ、更ニ極端ナル課稅ヲシタラバ如
何デアルカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマス、
此ノ御意見モ一應ノ御意見ダト思フノデゴ
ザイマス、サウ云フ點ニ付キマシテモ一應
考ヘタノデゴザイマスルガ、併シナガラ何
分ニモ新稅ノコトデアリ、一應此ノ程度ニ
於テ實行シテ見ル必要ガアルト思ヒマシタ
ノデ、此ノ程度ニ止メテ置イタ次第デゴザ
イマス、或ルモノニ付テハ更ニ負擔力ノア
リマスコト、是ハ仰セノ通リデアルト存ズ
ル次第デアリマス
其ノ次ハ犧牲產業者ノ問題デゴザイマス
ガ、犧牲產業者ニ付テハ更ニ手心ヲ用ヒテ
ナイノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋デゴ
ザイマスルガ、是ハ旣ニ今日マデニ於キマ
シテモ、犠牲產業者ニ付テハ、稅務官廳ニ
於テ出來ルダケ寛カナ手心ヲ以テ之ニ接シ
テ居ルノデゴザイマス、實際上ノ扱ヒモ餘
程寛クナツテ居ルト思フノデゴザイマス
ルガ、併シナガラ御注意モゴザイマスノ
デ更ニ此ノ點ニ付テハ注意スルコトニ致
シマス
最後ノ御尋ハ砂糖消費税ノ負擔者ノ問題
デゴザイマスルガ、是ハ消費稅ノコトデゴ
ザイマスルノデ、稅ノ立場カラ行キマスレ
バ消費者ノ負擔デゴザイマスガ、併シ生產
者ニ於テ生產費ヲ少クシテ、サウシテ負擔
スルト云フコトヲ別ニ避クル譯デハゴザイ
マセヌ、サウ云フヤウナ點ニ付キ、又生產
費等ノ問題ニ付テハ、是ハ餘程考慮スルコ
トニ致シタイト存ジマス
ソレカラ先程松永サンノ御尋ニ私一寸思
違ヒシテ御答シテ置キマシタガ、結局今年
ノ公債ノ利子ニ對スル增稅、其ノ次ノ年ニ
發行シタ公債ノ利子ニ對スル增稅、是ハ別
ニ計算サルベキモノデアルト存ジマス、唯
利拂程度ノ增稅ニ依ツテ稅全體ノ組織ガ破
壞サレル斯ウ云フコトハナイト存ジテ居
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=30
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031・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 片山哲君
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=31
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032・片山哲
○片山哲君 私ハ此ノ增稅案ニ付キマシテ、
五點ニ分ツテ大藏大臣ニ質問致シタイト
思フノデアリマス、大分多數ノ諸君カラ各
方面ニ亙ツテ質問ガアリマシタカラ、多少
重複スルト思ヒマスガ、其ノ質問ノ理由及
ビ立場ガ違ツテ居ルノデアリマス、仍テ其
ノ理由ヲ申述べマスルナラバ、違ツタ點ヨ
リ質問シテ居ルコトガ能ク分ルト思ヒマス
ルカラ、其ノ點御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス
第一ハ今囘ノ增稅ノ趣旨ト、增稅額ヲ二
億圓ト定メタ意味ヲ質問致シタイノデアリ
マく、之ヲ分ツテ申シテ見マスルナラバ
公債利子支拂ノ爲ノ增收ヲ當ニシテ居ルノ
デアルカ、或ハ又單ニ消費抑制ト云フ精神
的效果ダケヲ狙ツテ提案シテ居ルノデアル
カ、其ノ意味ヲ明ニシテ貰ヒタイ斯ウ云
フ質問デアリマス、首相モ藏相モ、一部ノ一
消費ニ對シテ抑制、制壓ヲ加ヘナケレバナ
ラナイ、是ハ現事變下ニ於テ洵ニ已ムヲ得
ナイ事柄デアルト云フコトヲ、有ユル機會
ニ於テ述ベラレテ居ルノデアリマス、是ハ
成ベク物ヲ多ク買ハナイヤウニシナケレバ
ナラヌト云フ趣旨ニ取レルノデアリマス
卽チ消費抑制ノ觀念ガ精神的ノ意味デ現ハ
レテ居ルノデアリマシテ、其ノ精神的意味
ガ消費增稅、或ハ物品稅トナツテ現ハレタ
ト見ラレルノデアリマス、サウ致シマスル
ト、現內閣ノ方針ト致シマシテハ、消費節
約ヲセヨト云フ趣旨カラ、物品稅、消費稅
ヲ課ケタモノデアルト考ヘラレマスルカラ、
卽チ精神的趣旨ニ依ツテ斯ル增稅ヲ爲シタ
モノデアル、斯ウ云フ風ニ取レルノデアリ
マス、稅ヲ通ジテ消費節約ノ政策ヲ實施セ
ントシテ居ルモノデアルト感ゼラレルノデ
アリマス、稅金ガ課カレバ、增稅ニ依ツテ物
ガ高クナルト云フコトハ當然デアリマス
此ノ物價高ト云フコトニ付キマシテハ、前
内閣時代カラ商工省ハ物價委員會ヲ開キマ
シテ、物價高デハ困ルカラ、此ノ物價高ヲ
抑ヘナクテハナラナイト云フ政策ヲ執ツ
テ、現內閣モ亦之ヲ踏襲致シテ居ルノデア
リマス、サウスルト、精神的意味カラ來
ル今囘ノ增稅ハ、現內閣ノ物價政策トハ矛
盾スル結果ニナツテ來ルノデアリマス、此
ノ矛盾ヲ一體ドウ大藏大臣ハ扱ハレルノデ
アルカ、此ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス、
斯ル矛盾ガアルカラ、或ハ精神的意味デハ
ナシニ、ソレハ增收ヲ目當ニシテ居ルモノ
デアルト言ハレルカモ知レナイノデアリマ
ス、然ラバ此ノ增稅ハ、公債ノ利息支拂ノ爲
ノ增收ヲ目安ニシテ居ルモノデアルト考ヘ
ラレルノデアリマス、サウ致シマスルト、
卽チ增收ヲ目當ニシテノ增稅デアリマスル
ナラバ、是ハ消費稅ヲ主トシテ考ヘマスレ
バ必ズ國民ノ生活ニ對シテ負擔ヲ加重ス
ル結果トナルシ、又物價騰貴ヲ來スシ、更
ニ又生活費ノ昂騰ト云フコトニナツテ參ル
ノデアリマス、ソレ故ニ之ヲ其ノ儘ニシテ
抛ツテ置ク譯ニハ行カナイ卽チ增稅ノヤ
リ放シニシテ置ク譯ニハ行カナイカラ、何
トカ之ニ對スル對策ヲ執ラナクテハナラ
ナイト云フコトニナツテ來ルノデアリマス、
消費稅ヲ加重シ、物品稅ヲ增徵致シマスル
ト、必ズソレハ消費者大衆ニ轉嫁サレルモ
ノデアリマス、サウ致シマスルト、其ノ轉
嫁防止策ヲ執ラナクテハナラヌト云フ結果
ニナツテ來ルノデアリマス、果シテ現內閣
ハ之ニ對シテドウ云フ對策ヲ執ツテ居ル
カ、本案ニ付テ其ノ方策ヲ執ツテ居ルナラ
バ、ドウ云フ方策ヲ執ツテ居ルカト云フコ
トヲ伺ヒタイノデアリマス(拍手)元來此ノ
二億圓ト云フ全體ノ增稅ノ數額ハ何處カラ
一體來テ居ルノデアリマセウカ、增收ヲ目
當トシテ居リマスルナラバ、增收ノ根柢ヲ
明ニシテ貰ハナクテハナラナイノデアリマ
ス、增收ト云フ單ナル事柄デアラウカ、利
息支拂ノ目安ト云フコトダケデアラウカ、
或ハ又問題トナツテ居リマスル公債ノミニ
依存スル譯ニハ行カナイカラ、其ノ惡性「イ
ンフレ」ヲ防止スル爲ニ、健全化ヲ圖ル意味
ヲ以テ增徵スルノデアルト云フ意味デアラ
ウトモ考ヘラレル、サウ致シマスルト二億
圓ト云フ數額ハ餘リニ少イ、又今日ハ非常
ナ跛行景氣デアル、此ノ跛行景氣ヲ抑制ス
ル爲ニ增稅ヲシテ行カナケレバナラナイ、
斯ウ云フ風ニ考ヘルト、是亦餘リニ數額モ
小サク、問題ガ局限サレテ參ルノデアリマ
ス、財界ニ急激ナル變動ヲ與ヘナイヤウニ
シテ行カナケレバナラナイ、其ノ意味デ二
億圓程度ニ止メテ行クト云フヤウナコトヲ
考ヘテ見マシテモ、是亦大シタ理由ニハナ
ラナイノデアリマス、色々考ヘテ見マスル
ト、增稅案ノ根據ガ判然シナイノデアリマ
ス、藏相ハ或ル機會ニ、今囘ノ增稅ハ租稅收
入ヲ必ズシモ第一義トシテ居ルモノデハナイ、
奢侈的消費ヲ抑ヘヨウトスルコトガ目標デア
ルト云フコトヲ言ハレテ居ルノデアリマスル
ガ、此ノ機會ニ此ノ問題ヲ先ヅ第一ニ明確ニ
スルト云フコトハ、本增稅案審議ニ當ツテ最
モ必要ナルコトデアラウト信ジマスカラ、其
ノ點ヲ第一ニ伺ヒタイノデアリマス、(拍手)
第二ニ、前刻カラ諸君ニ依ツテ質問ガ
アツタ點デアリマスルガ來年度ヨリ實
現セント致シテ居リマスル所ノ稅制ノ根
本改革ノ狙ヒドコロヲ私モ伺ヒタイノデ
アリマス、負擔ノ均衡ヲ圖ルト云フコト
ハ稅制ノ根本觀念デアツテ、最モ大切デ
アルト云フコトハ多クノ人々ノ述ベテ居ル
所テアリ、又私モ疾クニ諒承致シテ居リマ
ス、併シ現內閣ハ生產力擴充ト云フコトヲ
標榜致サレテ居リマス、前內閣ヨリ或ハ其
ノ前ノ內閣ヨリ、現下ノ時局ニ於テ重要ナ
ル政策デアリマス所ノ生產力ノ擴充ハドウ
シテモヤラナクテハナラヌ、是亦言フヲ俟
タナイ點デアリマス、或ハ貿易ノ振興ヲ圖
リ、國防ノ充實ヲ完ウ致シマシテ、サウシ
テ財政ノ確立ヲ圖ツテ行カナケレバナラナ
イト云フコトハ言フマデモナイノデアリ
ママ、果シテ然ラバ現在ノ如キ稅制デ、負
擔均衡ヲ圖リツツ同時ニ生產力ノ擴充ヲ爲
シ得ルモノデアルカト云フコトヲ、最モ
重要ニ考ヘテ行カナクテハナラヌト思フ
ノデアリマス(拍手)現在ノ營利主義經濟
ノ建前ヲ其ノ儘ニシテ置イテ生產力ノ
擴充ヲ圖ラウト思ヘバ、必ズ負擔均衡ノ原
則ヲ破ツテ、之ヲ犧牲ニシテ行カナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス(拍手)大衆增稅
ヲ敢行シテ行カナケレバナラナイト云フ結
果ニナルデアリマセウ、色々サウ云フ風ナ
故障ガ起ツテ來ルノデアリマス、前年馬場
增稅案ガ發表サレマシタ時ニ、負擔均衡ト
云フコトヲ眞先ニ振翳シテ居リマシタ、負
擔均衡ニ依ツテ稅制ノ根本改革ヲ中央地方
ヲ通ジテ斷行スルノデアルト云フコトヲ標
榜サレテ居リマシタ、併シアノ當時其ノ標
榜ヲ聞キマシテ、或ハ改革ニ關スル根本案
ヲ聞キマシテ、財界ハ非常ナ「シヨック」ヲ
受ケマシテ色々ノ問題ヲ起シタ、是デハ生
產力ノ擴充ヲ爲スコトガ出來ナイト云フ議
論ガ、其ノ當時上ツタコトガアルノデアリ
マく、卽チ生產力ノ擴充ト負擔均衡ノ兩全
ヲ圖ラウト思ヒマスルナラバ、增稅案又ハ
稅制改革案ハ、結局營利主義經濟機構ヲ是
正スルト云フ點ヲ衝カナケレバ、斷ジテ兩
全ヲ圖ルコトハ出來ナイト私ハ信ズルノデ
アリマス(拍手)或ル一部デハ、生產力擴充
ノ爲ニハ負擔均衡ノ原則ハ其ノ觀念ヲ一應
預ケテ、之ヲ抛棄シナケレバナラヌト云フ
ヤウナ議論ヲスル人ガアルカモ知レマセ
ヌ、併シナガラ稅制ノ建前ハ、ドコマデモ
負擔均衡ト云フコトヲ眞向ニ振翳スベキ原
則トシナケレバナラナイノデアリマス(拍
手)而シテ國民ハ、現下聖戰ノ目的遂行ノ
爲ニハ幾ラデモ犠牲ヲ忍ブノデアリマス、
犧牲ヲ忍ンデ聖戰ノ目的ノ遂行サレルコト
ヲ衷心ヨリ希フモノデアリマスケレドモ、
其ノ犠牲ハドコマデモ公平ニ、飽クマデ公正
デナクテハナラナイト云フコトヲ、私ハ言
ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)是ハ誰
シモ異論ノナイ所デアラウト思フノデアリ
マス、私ハ之ニ關シマシテ大藏大臣ニ向ツ
テ、負擔均衡ヲ稅ノ根本トスル爲ニハ、是非
トモ營利經濟ノ改廢ヲ基本トスルノ要ガア
ルト云フコトヲ考ヘルノデアル、現內閣ハ
稅制改革ト相竝ンデ、其竝行セル政策ト致
シマシテ、營利主義經濟改革ノ決意アリヤ
否ヤト云フ點ヲ伺ヒタイノデアリマス(拍手)
更ニ其ノ次ニ藏相ニ伺ツテ其ノ所見ヲ質
シテ見タイト思ヒマスル點ハ、租稅ノ財政
上ニ於ケル任務デアリマス、是ハ稅制ノ根
本革改ニ當ツテ是非トモ明カニシテ置カナ
クテハナラナイ點ト思フノデアリマス、現
在ノ如キ豫算デハ、卽チ百億圓ヲ超ユル大
キナ豫算ヲ賄ツテ行カナクテハナラヌト云
フ今日ノ時代ニ於キマシテハ、公債ガ其ノ
中心ヲ成シテ居ルト云フコトハ言フマデモ
ナイノデアリマス、其ノ公債ト租稅トヲ睨
ミ合ハシテ、能ク此ノ間ノ調節ヲ圖ツテ行
カナケレバ、財政ノ健全ハ期シテ俟ツベキ
モノデハナイノデアリマス、卽チ今日ノ財
政ハ公債依存ノ狀態ニナツテ居ルノデアリ
マスルカラ、其ノ租稅ノ組立方ハ今マデノ
時代ト變ツク氣持ヲ以テ之ヲ考ヘテ、其ノ
編成替ヲシテ行カナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、卽チ今後ノ財政上ニ於ケル租
稅ノ地位ハ、公債トノ關係ニ於テ新シキ役
割ヲ持ツテ參ツタト云フコトヲ、租稅自體
ニ於テ考ヘテ行カナクテハナラナイノデア
リマス(拍手)私ハ此ノ意味カラ惡性「イン
フレ」ノ防止、財政ノ健全化ハ勿論ノコト、
增收ヲ圖ル意味ニ於キマシテモ、或ハ先程
申シマシタ負擔均衡ヲ圖ル點カラ申シマシ
テモ、社會情勢上產業政策ノ完全ナル遂行
ノ上カラ申シマシテモ、玆ニ新シキ體制ヲ
租稅ノ上ニ立テテ行カナクテハナラナイ、
ソレニハ中心ヲ成スモノハ何デアルカ、租
稅ノ中心ヲ成スモノハ何デアルカ、先程此
ノ點ニ對シマシテハ大藏大臣ヨリ、所得稅ヲ
中心トシテ收入問題ヲ考ヘテ行クト云フヤ
ウナ御答辯ガアツタヤウニ伺フノデアリマ
スルガ、ソレノミナラズ、ソレト相竝ンデ、
大體ニ於キマシテ戰時ニ於ケル利得稅、
或ハ直接稅、新シキ財產稅ノ設定、斯ルモ
ノヲ中樞ト致シマシテ租稅ノ新シキ體制ヲ
立テテ行クト云フコトガ、今日必要ナコト
デアルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)今
度ノ改正案ニ於キマシテ是等ノ問題ヲ如
何ニ取扱ツテ、新時代ニ處スル所ノ根本方
針ヲ如何ニ考慮セラレテ居ルカ、此ノ點ヲ
伺ヒタイノデアリマス
第三點ニ於キマシテ、大藏大臣ハ更ニ來
ルベキ租稅改正ニ於キマシテハ產業政策
ニ對應シテ稅制ヲ考ヘテ行キタイト云フコ
トヲ言ツテ居ラレマスルガ、其ノ點ニ關シ
マシテ伺ヒタイノデアリマス、此ノ產業政
策ニ對應致シマシテ租稅ノ組立ヲ考慮シテ
行クト云フ、其ノ點ニ付テハ私ハ贊成致ス
者デアリマスルガ、其ノ產業政策對應ト云
フ內容ヲ、今少シク明確ニ聽カナクテハナ
ラヌト思フノデアリマス、旣ニ諸君ノ御承
知ノ通リ現在ニ於ケル產業ハ急激ナル變化
ヲ遂ゲマシテ、所謂產業ノ轉換期ニアルノ
デアリマス、卽チ重工業、化學工業ヲ中心
ト致シマス所ノ新產業體制ガ現ハレテ居ル
ノデアリマス、國策ノ線ニ沿ヒマシテ新シ
キ機構ガ組立テラレツツアルノデアリマス、
隨テ從來ノ輕工業中心ノ產業政策デハ立行
カナイノデアリマス、ソコデ此ノ重工業、
化學工業ヲ中心ト致シマスル所ノ新產業政
策ハ如何ナル建前デ進ンデ居ルカ、之ニ關
シマシテハ國家ノ統制ガ行ハレテ居ル、國
家ノ統制ハ單ニ機構ノ上ニ現ハレテ居ルノ
ミナラズ、或ハ金融ノ上ニ於テ、或ハ其ノ
活動ノ上ニ於テ、有ユル方面ニ國家ノ統制
ガ及ビツツアルノデアリマス、資金調整法
ガ現ハレマシタ、總動員ノ第十一條ガ現ハ
レマシタ、サウ云フ風ナ狀態デ、今マデ豫
想モ付カナカツタ新シキ觀念ガ其ノ中ニ現
ハレテ居ルノデアリマス、金融市場モ一變
致シマシク、色々工面ヲシテ金融ヲ考ヘ、サ
ウシテ之ニ依ツテ產業ノ經營ヲヤツテ居ツ
タ時代トハ違ツテ、今日ニ於キマシテハ統
制ト云フコトト、又國策ノ線ニ沿フ重工業、
化學工業ガ現ハレテ居ルノデアリマスルカ
ラシテ、產業政策モ在來ノ如キ產業政策ト
ハ違ツタ形デ進ンデ行カナクテハナラナイ
ノデアリマス、同時ニ其ノ產業ヲ對象ト致
シマスル所ノ租稅モ一變セナケレバナラヌ
ト私ハ思フノデアリマス、從來ノ如キ租稅
政策デハヤツテ行カレルモノデハナイト思
フノデアリマス、所ガ現行租稅ハ舊來ノ統
制ナキ時代、自由主義經濟時代ヲ對象トシ
テ組立テラレタモノデアリマスルカラ、其
ノ間ニ非常ナ「ギヤップ」ヲ生ズルノデアリマ
ス(拍手)色々ノ矛盾ガ生ズル、其ノ矛盾ガ
何處ニ現ハレテ參リマシタカ、是ガ私ノ今
大藏大臣ニ向ツテ質問セントスル點デアリ
マス、從來ノ租稅ハ舊態依然タルニ拘ラズ、
對象ガ急激ナル變化ヲシタ爲ニ、其ノ矛盾
ハ何處ニ現ハレタカト申シマスルナラバ
極メテ容易ナル方法ヲ以テ多クノ金ヲ集メ
テ歲入ノ增大ヲ圖リタイト云フ、所謂小物
搔集メ主義ニ墮シテ居ルト云フコトヲ指摘
シタイノデアリマス(拍手)ソレガ物品稅ト
ナリ、消費稅トナツテ來テ居ルノデアツテ、
大衆課稅ノ根源ハ實ニ玆ニアリト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、換言致シマスルナラバ
ロデハ「インフレ」防止或ハ財政ノ健全化ト
云フコトヲ唱ヘテ居リマスルケレドモ、實
ハ消費稅ニ墮シツツアル今日ノ現狀ヲ考ヘ
テ見マスル時ニ、租稅政策ハ餘リニ時代遲
レデアツタ、社會ガ變リ、時代ガ變リ、產
業ガ變ツテ居ルノニモ拘ラズ、租稅ノミ遲
レテ居ツタ、一部ヅツ每年々々改正シツツ
進ンデ來タ今日ノ狀態ガ、斯ル禍根ヲ成シ
タモノデアルト云フコトヲ考ヘザルヲ得ナ
イノデアリマス、尙ホ此ノ際一言致シタイ
ノハ、此ノ新產業體制下ニ於キマシテハ
勤勞者ノ勤勞、或ハ勞働者ノ働キト云フモ
ノカ、產業ノ重要ナル要素トナルモノデア
ル、要素トナツテ尊重サレナケレバナラナ
イモノデアル、其ノ尊イ技能ト經驗ト云フ
モノハ、金錢ヲ以テ換ヘルコトノ出來ナイ
重要ナル產業ノ構成要素デアルト云フコト
ヲ考ヘタイノデアリマス、重要ナル產業ノ
構成要素ト申シマスルコトガ、ヤハリ新產
業體制ニ於キマスル構成ヲ考ヘル上ニ於
テ、最モ重大ナルコトニナツテ參ルノデア
リマス、ソコデ此ノ勞働要素、或ハ勞働
力構成要素ト云フモノノ協力ナクシテハ
新シキ產業政策ノ遂行ヲ爲スコトガ出來ナ
イシ、且又產業ノ發展ハ期セラレナイノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ、吾々ノ考
ヘテ居リマスル所ノ產業政策或ハ勞働政
策ハ、產業ノ隆盛發展ノ爲ニ協力シテ
行カナケレバナラナイ、己ノ立場ノミヲ
考へ、或ハ利己的ノ方面ニ堕スルコトナク
シテ、眞ニ國家發展ノ爲ニ、國力充實ノ爲
二、經濟力擴充ノ爲ニ協力シテ行カナケレ
バナラナイト云フ建前ヲ取ツテ居ルノデア
リマス、卽チ我國ノ產業ガ重工業中心トナ
ルト共ニ、外ニ於キマシテ重工業中心ノ新
產業政策ガ現ハレルト同時ニ、ソレニ呼應
致シマシテ內部ニ於テ勞資ノ關係モ立直サ
レ、且ツ各人ノ其ノ働キヲ尊重スベキ新產
業勞働體制ト云フモノガ出來上ツテ來テ居
ルト云フコトヲ考ヘルノデアリマス(拍手)
ソレデアリマスカラ続制ニ於キマシテモ、產
業對應策トシテ勞働者ノ勞力、經驗、技能、
卽チ人的資源ノ培養ト云フ意味カラ、之
ヲ十分ニ守ツテ、之ヲ尊重シテ行クト云フ
コトガ、新產業體制ノ上ニ於テモ必要デア
ルト私ハ感ズルノデアリマス(拍手)大衆ノ
負擔ガ加重セラレ、消費稅ガ增徵セラレル
ト云フコトガ現ハレテ來マスト、當然此ノ
新產業體制ノ稅制ノ上ニ色々ノ矛盾ヲ生ズ
ルノデアリマスカラ、ヤハリ是ニ於キマシ
テハ先程申シマシタ戰時利得稅、直接稅、
財產稅ヲ中心ト致シマス所ノ新シキ稅制ガ、
新產業體制ニ對應シテ行カナケレバナラヌ
ト云フコトヲ信ズルノデアリマスガ、藏相
ガ先ニ申サレマシタ產業政策ニ對應シテ稅
制ヲ考ヘルト云フノハ、斯ウ云フ風ナ見解
デアルカ、將又變ツタ考ヲ持ツテ居ラレル
ノデアルカ、其ノ點ヲ伺ヒタイト思フノデ
アリマス(拍手)
第四點ハ極ク簡單デアリマス、臨時利得
稅ノ問題デアリマスガ、此ノ臨時利得稅ハ
何ヲ標準トシテ算定スルノデアルカ、或ハ
又增收ノ見込ハ八千万圓ト云フコトデアリ
マスガ、今日ノ所謂軍需「インフレ」ノ景氣
ヲ見マス時ニ、今少シク擔稅能力ガアルノ
デハナイカト云フコトヲ感ズルノデアリマ
ス、素晴シイ今日ノ跛行景氣ヲ見マス時ニ、
斯ル感ジヲ致ス者ハ豈啻ニ私一大ノミデハ
ナカラウト思フノデアリマス、其ノ他ノ氣
ノ毒ナル平和產業狀態ヲ見マス時ニ於テハ
軍需「インフレ」ノ跛行景氣ノ波ニ乘ツテ居
リマス今日ノ狀態ニ對シマシテ、稅制ハ大
イニ考ヘテ行カナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、今一ツノ點ハ、此ノ臨時ト云フ
名前ヲ戰時ト云フ名前ニ變ヘル必要ガアラ
ウト思フノデアリマス、長期對戰デアリマ
スカラ、ソレニ對應スル財政、稅制一切ノ
狀態ヲ變ヘテ行カナケレバナラナイ、其ノ
意味ニ於テ臨時利得稅ヲ戰時利得稅ト改變
スル意思アリヤ否ヤ、此ノ點ニ對シマシテ
大藏大臣ノ御答辯ヲ得タイト思フノデアリ
マス(拍手)
最後ニ第五點ト致シマシテ、社內留保所
得ニ對スル減免稅ノ方針ニ付テ伺ヒタイノ
デアリマス、先程此ノ點ニ關シマシテ小池
君ヨリ色々質問ガアリマシタガ、私ノ質問
ハ遠ツタ質問ニナルノデアリマス、留保セ
ラレテ居リマスモノニ減免ヲスル結果、儲
ケルト云フコトヲ主眼ニ置イテ儲ケル政策
ニ集中スル、サウ致シマスト生產ハ增加致
シマセウ、生產增加ニ力瘤ヲ入レマス結果、
ドウ云フヤウナ事柄ガ起ツテ來ルカト申シ
マスト、殘念ナガラ產業自體ノ生產性ト云
フモノガ無視サレ、之ヲ向上シ之ヲ高メル
ト云フ觀念ハ沒却セラレルコトニナツテ來
ルト思フノデアリマス、事業家ハ將來避ク
ベカラザル所ノ增稅ヲ豫想致シマシテ、極メ
テ短イ間ニ多ク儲ケテ置キタイト云フ結
果、生產設備ノ消磨ヲスルト云フ結果ニナ
ツテ來ルト同時ニ、又從業勞働者ヲ長時間
酷使致シマシテ、勞働力ノ消磨ヲ來スト云
フ結果ニナツテ來ルノデハナイカト思フノ
デアリマス、此ノ機械ノ磨滅、此ノ酷使ニ依
ル勞働力ノ消磨ト云フモノハ、先程申シマ
シタ留保所得ノ減免ト云フコトト關係ヲ持
チマシテ、之ヲ誘キ出スト云フ結果ニナルノ
デハナカラカト云フ點ヲ考ヘルノデアリマ
ス、生產力ノ重要要素デアリマスル人的
資源ヲ大切ニシナケレバナラナイト云フコ
トハ先程申シマシタガ、之ヲ私ハ斯ウ云フ
風ニ考ヘタイ、片方ニ於テハ儲ケル留保所
得ニ對シマシテ減免ヲスル、片方ニ對シテ
ハ其ノ結果非常ナル磨滅ヲ來シ非常ナル酷
使ガ來ル、ソコデ其ノ酷使ヲ救濟シ人的資
源ヲ培養スル爲ニ、ソレニ向ツテ戰時社會
政策ノ實行ヲスルト云フコトニナツテ參リ
マスナラバ、兩全ヲ期スルコトガ出來ルノ
デアリマスケレドモ、此ノ保留所得ニ對シ
テ減免ダケシテ置イテ、磨滅シ酷使セラレ
ル人的資源ヲ無視シ、之ヲ放置シテ居ルト
云フ結果、非常ナル跛行狀態ガ來ルト云フ
コトヲ私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)ソコ
ニ戰時社會政策ガアル、戰時社會政策ト申
シマスノハ、人ニ物ヲ惠ンデヤルト云フ意
味デハナシニ、減免スル、減稅スル、增稅
デハナシニ、其ノ反對ニ減免スルト同ジ結
果ヲ來スノガ、今日申シテ居リマスル所ノ
戰時社會政策デアツテ、增稅或ハ留保所得
ノ滅免ニ對應スル、戰時ニ於ケル最モ必要ナ
ル政策デアルト云フコトヲ私ハ感ズルノデ
アリマス(拍手)藏相ハ斯ル意思ヲ持ツテ居ラ
レルカドウカ、其ノ點ヲ伺ヒタイノデアリ
さく、首相ハ現内閣ノ方針ト致シマシテ
總親和、或ハ總協力ト云フコトヲ頻リニ述
ベラレテ居リマス、總協力ガ出來ルヤウナ
總親和ノ出來ルヤウナ素地ヲ作ルト云フコ
トガ、現內閣ノ最大ノ任務デアルト云フコ
トヲ私ハ考ヘマス、ソレヲ稅制ヲ根本的ニ
改革シタイト云フ時ニ現ハサナイデ、體體
此ノ長期戰ヲ乘切ルコトガ出來ルカト云フ
コトヲ私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)勞働
者ト云ハズ、農民ト云ハズ、一切ノ國民ガ
働イテ生活ヲ爲シ得ルト云フ建前ヲ作ルコ
トガ眞ニ總協力デアツテ、初メテ玆ニ產業
ハ發展シ、國力ハ充實スルモノデアルト云
フコトヲ私ハ考ヘルノデアリマス、是等ノ
點ニ付キマシテ大藏大臣ノ所見ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス、私ノ質問ハ之ヲ以テ終リマス
(拍手)
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=32
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033・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 第一ノ御尋ハ
增稅ノ意味デゴザイマスルガ、是ハ最初カ
ラ二億圓ト云ツテ稅額ヲ決メタ譯デハゴザ
イマセヌ、今囘ノ增稅ハ臨時利得稅ト物品
稅トヲ中心ニシテ增稅ヲ行ヒタイ、ソレハ
御尋ノ中ニモゴザイマシタヤウニ、此ノ時
局ニ當ツテ所得ノ增加シツツアル產業、ソ
レカラ消費ノ抑制ニ資スルト云フ意味カラ
致シマシテ、或ル程度ノ增徵ヲ行ツタラド
ウカト云フコトデ、此ノ方面ニ於ケル稅率
ヲ見込ミマシテ、二億圓ト云フ結果ヲ得タ
次第デゴザイマス、左樣御諒承ヲ願ヒタイ
ト存ジマス
ソレカラ第二點ハ、將來ノ稅制ノ改正
ニ當リマシテ、負擔ノ均衡ニ重キヲ置
クノデアルカ、又ハ產業ノ助成、生產力
ノ擴充等ヲ考ヘナイデハ負擔ノ均衡ガ行ヘナ
イノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋デア
ルト存ジマス、稅制改正ノ根本ノ議論ハ、是
ハ負擔ノ衡平ト云フコトガヤハリ此ノ稅制
ノ改正ニ當リマシテハ根本ノ問題デアルト
存ジマス、其ノ負擔ノ均衡ト云フ上ニ、今
日各方面ニ於テ行ツテ居リマスル產業政策
ト矛盾シナイヤウニ、其ノ產業政策ヲ妨害
シナイヤウニ心掛ケテ行キタイ、斯ウ考ヘ
テ居ル次第デゴザイマシテ、稅制改正ノ根
本的ノ問題ハ是ハ片山君ノ御說ノ通リ、負
擔ノ均衡ガ根本ノ問題デアルト存ジマス
第三點ノ將來ノ產業ノ狀況等ヲ考ヘテ、
所得稅、財產稅、戰時利得稅ヲ中心ニシテ
考ヘテ、消費稅ニ付テハ是ハ考ヘナイ方ガ
宜イデアラウト、斯ウ云フヤウナ御考デア
ルヤウニ伺ツタノデゴザイマス、是ハ併シ
ナガラ消費稅ト申シマスモノモ、私ハ一面
ニ於テヤハリ是ハ考フベキ性質ノモノデア
ルト思フノデゴザイマシテ、今囘ノ調査ニ
於キマシテハ、直接稅ト同樣間接稅ニ於テ
モ相當調査ヲ進メテ行キタイト考ヘテ居ル
次第デゴザイマス
第四點ハ跛行景氣ノ際ニ於テ臨時利得稅
ヲ今少シク增徵スル必要ガアルマイカ、斯
ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、是モ御尤ナ
御尋デゴザイマス、稅率カラ考ヘマシテ百分
ノ四十ト云フ稅率ハサウ高イヤウナ感ジノ
致ス稅率デゴザイマセヌ、此ノ稅率ニ付キ
マシテハ、更ニ今少シク引上ゲル必要ガア
ルノデハナカラウカト云フコトデ、是ハ色々
〓究致シマシタ其ノ結果、今日旣ニ超過
所得稅アリ、又普通ノ一般所得稅ノ增徵等
ノ結果、臨時所得稅ノ百分ノ四十ト云フコ
トハ、多額ニ稅金ヲ拂ヒマス者-寧ロ多
額ト云フヨリモ、率ヲ餘計ニト言ツタ方ガ
宜イカモ知レマセヌガ、高率ノ稅金ヲ拂フ
者ニ取ツテハ、百分ノ四十ト申シマスト相
當極端ニ行クノデアリマシテ、是レ以上臨
時利得稅ヲ增徵致シマスコトハ實際實行
上ノ問題トシテ相當困難ヲ感ジタモノデゴ
ザイマスノデ、此ノ程度ニ引止メタ次第デ
ゴザイマス、一寸御覽下サルト、サウキツ
ク行ツテ居ナイヤウニ見エルノデゴザイマ
スカ、是ハ實際問題トシテハ相當ナ稅率ニ
相成ツテ居ルト存ジマス、名前ヲ臨時利得
稅カラ戰時利得稅ニ改メタラドウダ、斯ウ
云フ御話デゴザイマスルガ、是ハ戰時ト申
シマスル言葉ハ今日普通ニ用ヒテ居リマセ
ヌノデ、依然臨時利得稅ト言ツテ居リマス
ルガ、臨時利得稅ト云フ名前モ、是モ決シ
テサウ好イ名前トハ思ツテ居リマセヌノデ
ゴザイマスカラ、此ノ次ノ改正ノ場合ニ於
キマシテハ、宜シク一ツ考ヘルコトニ致シ
タイト存ジマス
第五ノ點ニ付キマシテハ、御議論中々難
カシウゴザイマシテ、實ハ一生懸命ニ聽イ
テ居ツタノデスガ、一寸此ノ場ニ於テ御答
出來兼ネルト思フノデゴザイマシテ、改メ
テ速記錄ヲ拜見シマシテ適當ノ機會ニ於テ
御答シタイト存ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=33
-
034・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靑木作雄君
〔靑木作雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=34
-
035・青木作雄
○靑木作雄君 簡單ニ質問致シタイト思ヒ
そく、唯大藏大臣ノ御答辯ニ、ハツキリシ
ナカツタヤウニ思ヒマス點ハ、重複致シマ
シテモ、之ヲ明ニシタイト思フノデアリマ
ス、今囘ノ增稅ノ目的ガ果シテ十分ニ達シ
得ラレルカト云フ點ニ付キマシテ、生產力
擴充ニ對應スル點ニ付テ御伺シタイト思ヒ
マスルノハ、政府ノ意圖スル所ハ產業振興
ニ資スル爲、留保所得ノ一部ニ對シ課稅ヲ
輕減シ、重要物產製造業ニ對スル免稅範圍
ヲ擴張シ、補助金ノ收入、〓究ノ爲ノ支出
及ビ生產設備等ノ減價償却ニ關シ課稅上ノ
特例ヲ設ケルニアルノデアリマスルガ、今
日ノ產業形態ハ極メテ多種多樣デアツテ
等シク國家ニ必要ナルモノト雖モ、其ノ
角度ニ夥シキ高低ノアルコトハ爭ハレマセ
又、例ヘバ重工業方面ニ於テモ粗笨ナル過
程ヲ辿ルノミニテ、相當ノ利潤ヲ獲得スル
部面モアレバ、精密ナル過程ヲ經テ、漸ク
製品ト看做ス部面モアルノデアリマス隨
テ精密ナル部面ノ國家ニ最モ緊要ナモノハ
其ノ利益ノ大半ヲ將來ノ〓究ト計畫ニ投ジ
ナケレバ、現ニ世界ノ進步カラ置去ラレル
モノモアルノデアリマス、是ハ一例ニ過ギ
ナイノデアリマシテ、同ジ重要產業ノ部面
ニ於テスラ、斯ノ如キ距リガアルノデアリ
さい、況ヤ全產業ノ部面ニ亙ツテハ、其ノ
間夥シキ懸隔ノアルコトヲ知ラナケレバナ
リマセヌ、斯ノ如キ廣汎ニ亙ル全企業ノ收
支ヲ監査スルコトハ、今日ノ徵稅機關デハ
全然不可能デアリマシテ、若シ之ヲ完全ニ
行ハントスレバ、現存ノ官吏ノ大半ハ其ノ
用ヲ爲サヌノデアリマス、之ヲ强ヒテ爲サ
ントスレバ却テ徒ニ混亂ヲ生ジ、折角企テラ
レントスル生產力ノ擴充ニ對應スルコトガ
出來ナイノデハナイカト思フノデアリマスル
ガ、藏相ノ御所見ハ如何デアリマセウカ
次ニ今囘ノ增稅ニ依ツテ目的トスル所ハ
稅ノ收入ヲ得テ、公債ノ利子ヲ賄フコトヲ
目安ニショウト云フノデモナイヤウニ仰シ
ヤル、今囘ノ增稅ハ跛行景氣ノ齎シタ享樂
氣分ノ抑制、之ヲ目標トシテ居ラレルノデ
アリマスガ、若シサウデアルトシマスルトい
政府ハ此ノ稅ニ依ツテ消費節約ニ因ル所ノ
國民ノ緊張、或ハ殷賑產業ヘノ特別課稅ニ
因ル負擔ノ均衡)或ハ物動計畫ノ遂行ト、
惡性「インフレーション」ノ防止ノ爲ノ消費
節約、サウ云フヤウナ色々ナモノヲ此ノ稅
ニ依ツテ其ノ目的ヲ達シ得ラレルト考ヘテ
居ラレルノデアルカ、若シ又其ノ目的ヲ達
スル程度ニ立案セラレタモノデアルトシマ
スルナラバ、今後ハ此ノ同種目ノ稅ニ於テ
ハ、增稅ヲスルノ餘力ヲ見テ居ラレナイト
云フノデアルカ、大藏大臣ハ公債ノ利子ヲ
此ノ增稅ニ依ツテ賄フノデハナイト云フヤ
ウナ御答辯ヲ、松永議員ノ質問ニ對シテ申
サレマシタガ、少クトモ藏相ガ他ノ委員會
ニ於テ述ベラレタ御言葉カラ考ヘテ見マス
た ち藏相ハ飽マデ公債ノ利子ニ相當スル
金額ヲ、增稅ニ依ツテ賄ツテ行クト云フヤ
ウナ御考ノヤウニ見エルノデアリマス、卽
チ只今ノ赤字公債ハ恰モ無利子ノ金ヲ借リ
テ居ルヤウナモノデアツテ、非常ニ喜バシ
イコトデアル、將來モ成ベク此ノ方針ヲ續
ク限リハ續ケテ行キタイ、斯樣ニ仰シヤツ
テ居ルノデアリマス、ソコデ御伺スルノハ、
此ノ增稅ニ依ツテ一般會計ニ於ケル財政
ヘノ壓迫ヲ避ケラレタノデアリマスガ、
事變以來ノ物品稅其ノ他ノ增稅ガ物價對策
ト矛盾シ、政府ノ努力ヲ裏切ル結果ヲ呈シ
テ居ルノハ今更爭フ餘地ハナイノデアリ
マン、果シテ然ラバ政府ハ年々巨大ナル支
出ニ當リ、物價騰貴ニ依ツテ、知ラズ識ラ
ズノ間ニ支拂フ金額ト比較シテ、果シテ國庫
ノ負擔ヲ輕カラシメテ居ルト思ハレルカド
ウカ、私ヲ以テ評セシムレバ一文吝ミノ百
知ラズノ結果ニ陷ツテ居ルノデハナイカト
思フノデアリマス(拍手)之ニ對スル政府ノ
御所見ヲ伺フト共ニ、斯ル大衆轉嫁ノ容易
ナルモノヲ擇ブノ外、所得稅等ニハ最早餘
力ガナイトノ見解ニ立ツテ居ルノデアルカ
三、若シ現在ノ稅制ノ下ニ於テ餘力少シ
トセバ、如何ニシテ所謂アナタノ無利息公
債ノ方針ヲ續行セラレントスルノデアルカ、
申スマデモナク事變ノ將來ハ遼遠デアリ
マス、卽チ年々五六十億圓ノ臨時軍事費ハ、
引續キ支出セラレルコトヲ覺悟セネバナラ
ナイ、否生產擴充ト共ニ國庫ノ支出モ增嵩
スルニハ違ヒナイガ、玆ニ留意スベキコト
ハ、公債ノ利子ノ增加率ハ、國民所得ノ增
加ニ因ル自然增收ノ增加率ヨリモ遙ニ大キ
イト云フコトデアル卽チ年々五十億圓ヅ
ツ支出スルモノトシマシテ、略〓同額ノ、年
年國庫ノ支拂ニ依リマスル國民所得ハ大差
ナイノニ反シ、五十億圓ノ利息一億七千五百
万圓ハ、每年新ニ增加スルト云フコトニナ
ルノデアリマス、自然增收ハ政府モ意想外
トスル所デアリマセウガ、ソレハ急激ニ昭
和十一年、十二年、十三年ト、政府資金ガ
撒布セラレタカラデアツテ、此ノ調子ハ
ココ數年ヲ以テ著シク遞減スルコトハ疑ナ
イノデアリマス、若シサウナラナイトスル
ナラバ每年公債發行額ガ少クトモ四五十億
圓宛漸增シナケレバナラヌ、是ハ政策ノ上
カラモ、物動計畫ノ上カラモ豫定サレナイ
ノミナラズ、果シテ可能ナリヤ否ヤモ疑問
トセネバナラヌノデアリマス、現ニ軍ハ
「ソ」支兩面作戰ニ基キ計畫ヲ樹テテ居ラレ
ルト云フガ、此ノ先提出サレントシテ居リ
マスル臨時軍事費ノ額ハ昨年ノ倍額ニナル
ト云フヤウナコトハマダ豫想サレテ居リマ
セヌガ、要スルニ現狀デ推移シマスルニ於
テハ國民所得ノ增加率ハ遞減シ、公債ノ
利息ハ遞增スルコトハ豫斷ヲ憚ラナイ、是
ニ於テ若シ財政當局ガ公債ノ利子ダケハ增
稅ニ依ラナケレバナラナイト云フ方針ヲ執ラ
レレバ、來年モ亦此ノ程度ノ增稅ヲ免レナイ、
再來年モ然リデアル、私ヲ以テ見レバ今囘ノ
改正ニ依ツテ生產力擴充ノ爲一部輕減シタ
モノサヘアル狀態デアリマスルカラ、現稅制ノ下
ニ於テハ餘力十分ナラズト思考サルルノデ
アリマスルガ、藏相果シテドウ思ツテ居ラ
レマスカ、若シ然ラバ今後此ノ年々新ニ要
スル財源ヲ何處ニ求メラレル所ノ御方針デ
アルカ、政府ハ昭和十五年度ヨリ稅制改革
ヲ行フト云フコトデアリマスガ、此ノ行詰
リ打開ノ爲ニ增收ヲ爲シ得ルガ如キ稅制確
立ノ爲ニ改革ヲセラレルノデアリマスカ、
藏相ノ只今ノ御答辯ニ依リマスト、負擔ノ
均衡ガ第一ノ目的デアルト仰シヤイマシタ
ガ、固ヨリ負擔ガ均衡ニナリマスレバ、增
收ノ伸縮性モ亦增加スルトモ考ヘラレマス
ルガ、必ズシモ其ノ技術如何ニ依リマシテ
ハサウ云フ結論ニナラナイノデアリマス、
若シ負擔均衡ヲ主トセラレ、更ニ增稅ノ餘
地ガ段々ナクナルトセラレルト、少クトモ
政府ハ今マデ執ツテ來ラレタ所ノ、ハツキ
リハ言ハレナイガ、無利息ノ公債ヲ借リテ
居ルト同ジヤウナ公債政策ヲ執ツテ居ラレ
タ方針ハ、近イ將來ニ於テ抛棄セラルルノ
御方針デアリマスカ、以上ヲ御伺シマシテ
降壇致シマス(拍手)
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=35
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036・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 御答致シマ
ス、第一點ハ生產力擴充ニ關スル留保所得
ノ減免稅ニ付テ、今日ノ稅務官吏ガ不適任
デアツテ、斯ウ云フヤウナ複雜ナ規定ヲ適
用スル譯ニハ行クマイ、若シ强ヒテ適用シ
ヨウトスルナラバ、却テ生產力不擴充ニ陷
ラシムル心配ガアル、斯ウ云フ御尋デアリ
マスルガ、是ハ稅務官吏ニ任セル部分モゴ
ザイマスガ主ナル問題ハ法規ニ依ツテ決
メテシマフノデゴザイマシテ、一々稅務官
吏ガ判斷スル譯デハゴザイマセヌ、ソレデ
是ハ決シテ御心配ノヤウナコトニ相成ルコ
トニハ行キマセヌ、適當ニ持ツテ行ケルモ
ノト存ジテ居リマス
ソレカラ其ノ次ガ物資ノ節約其ノ他ニ付
テハ是デ宜イノデアルカ、是デ十分デアル
ノカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、是ハ是
デ十分デアルトハ存ジマセヌ、ソレデゴザ
イマスルカラ、總テサウ云フヤウナ商品ノ
節約ニ資シタキ希望デアル、一助ニ相成ル、
斯ウ云フコトヲ言ツテ居ルノデゴザイマシ
テ、是デ總テノ政策ガ十分デアル、斯ウ考
ヘテ居ル譯デハゴザイマセヌ
ソレカラ第三ノ點ハ利子ニ相當スル增稅
額ノ問題デゴザイマスルガ、是ハ先般靑木
サンカラ赤字委員會ニ於テ御尋ニナツタ問
題デアルノデゴザイマシテ、其ノ當時私ハ
申上ゲタノデアリマスルガ、決シテ利子ニ
相當シテ居ル額ダケ課稅シテ居ルトハ言ハ
ナイガト私ハ申シタノデアリマス、ソレダ
ケノ收入ガアレバ結局利子ヲ拂ハナイデ金
ヲ借リテ居ルノト同ジヤウナ結果ニ相成ル、
斯ウ申上ゲテ居ルノデゴザイマシテ、其ノ
意見ハ今デモ變リハゴザイマセヌ
ソレカラ第四點ノ、今日ノ所得稅ノ增徵
ニハ餘地ガアルカドウカ、斯ウ云フ御話デ
ゴザイマスルガ、私ハ今日ノ所得稅ニ增徵
ノ餘地ガナイトハ考ヘテ居リマセヌ、今囘
提案致シマスニハ所得稅ノ增徵ハ不適當ダ
ト存ジタモノデゴザイマスカラ、見合セタ
次第デゴザイマシテ、別ニ之ニ增徵ノ餘地
ガ最早ナイト考ヘテ居ル譯デハゴザイマセ
ヌ
ソレカラ最後ノ御尋デゴザイマスガ、國
民ノ負擔ノ均衡ト云フコトヲ深ク考ヘテ居
ルト、結局彈力性ト云フモノガ少クナツテ
來ルノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋デア
ルト存ズルノデアリマスガ、此ノ彈力性ノ
問題ニ付テハ十分考慮スルコトニ致シテ居
ル次第デゴザイマス、靑木サンノ御話ノ中
ニ公債ガ相當增加シテ來テ國民所得ハ却テ
減ツテ來ルヤウナ時期ガ來ルノデハアルマ
イカ、サウ云フ場合ノコトヲ餘程考ヘテ置
ク必要ガアル、斯ウ云フ御說デゴザイマス、
御注意トシテハ是ハ謹ンデ拜承致シテ置キ
マスガ、併シナガラ今後ニ於キマシテハ日
滿支ヲ通ズル經濟ノ發達、生產力ノ擴充ニ
依ツテ國民所得ハ增加スル、其ノ增加スル
所ノ所得ガ、是ダケノ公債ヲ脊負ツテ行ク
ダケノ將來大キナ力ニ相成ル、斯ウ考ヘテ
居ル譯デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=36
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037・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ調査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=37
-
038・服部崎市
○服部崎市君 日程第六乃至第八ノ三案ヲ
一括シテ、議長指名三十六名ノ委員ニ付託
サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=38
-
039・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=39
-
040・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マン、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=40
-
041・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ハ延期シ、明二
十二日定刻ヨリ特ニ本會議ヲ開クコトトシ、
本日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=41
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042・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=42
-
043・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
さく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時九分散會
衆議院議事速記錄第十一一號中正
誤
頁段行誤正
二〇六三二五控窒控室
衆議院議事速記錄第十三號中正
誤
頁段行誤正
二三一四一七攻路攻略発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01419390221&spkNum=43
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