1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十二日(水曜日)
午前十時二十三分開議
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議事日程 第二十八號
昭和十四年三月二十二日
午前十時開議
質問
一 大日本消防協會國庫補助増額に關する質問(松田正一君提出)
二 銅の統制に關する質問(篠原義政君提出)
三 生命延長に關する質問(南鼎三君提出)
四 小運送業法及日本通運株式會社法實施に關する質問(木檜三四郎君提出)
五 鋼材配給統制に關する質問(中村高一君提出)
六 ビルマに帝國總領事館設置に關する質問(高岡大輔君提出)
七 南極領土權確保に關する質問(伊東岩男君提出)
八 吏道刷新に關する質問(山道襄一君外一名提出)
九 人權尊重法權擁護に關する質問(福田關次郎君外一名提出)
十 搗粉有害の錯覺竝之か使用禁止の失態に關する質問(土屋清三郎君提出)
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第一 支那事變特別税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 臨時利得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 臨時租税措置法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
決議案(外交刷新内政一新に關する件)
提出者
窪井義道君 伊豆富人君
鈴木正吾君 小池四郎君
赤松克麿君 青木精一君
馬場元治君 渡邊泰邦君
小山亮君 道家齊一郎君
淺沼稻次郎君 川俣清音君
(以上三月二十日提出)
一去二十日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
臨時資金調整法中改正法律案
産金法中改正法律案
日本産金振興株式會社法中改正法律案
恩給法中改正法律案
國債整理基金特別會計法中改正法律案
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案(國債に關する件)
明治四十二年法律第九號中改正法律案(政府に對する保證金其の他の擔保に供したる國債の買入銷却に關する件)
昭和十三年法律第六十四號中改正法律案(兌換銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する件)
朝鮮銀行券及臺灣銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する法律案
昭和十三年法律第二十三號中改正法律案(關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する件)
昭和十四年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件)
支那事變に關する特別賜金として交付する爲公債發行に關する法律案
大正九年法律第五十三號中改正法律案(關税法關税定率法及保税倉庫法等の朝鮮に於ける特例に關する件)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
祈願の意義に關する質問主意書
提出者 片岡恒一君
人權尊重法權擁護に關する質問主意書
提出者
福田關次郎君 野田文一郎君
搗粉有害の錯覺竝之が使用禁止の失態に關する質問主意書
提出者 土屋清三郎君
(以上三月二十日提出)
一去二十日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第三部選出決算委員 古島義英君
一去二十日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第六部選出
決算委員 菊池良一君(遠山房吉君補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=1
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002・服部崎市
○服部崎市君 質問第一乃至第十ハ後廻シ
ニセラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ質問第一乃至第十ハ後廻シト致
シマス、日程第一乃至第三ハ同一委員ニ付
託セラレタル議案デアリマスカラ、一括議
題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一、支那事變特別稅法中改
正法律案、日程第二、臨時利得稅法中改正
法律案、日程第三、臨時租稅措置法中改正法
律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員
長川崎克君
第支那事變特別稅法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二臨時利得稅法中改正法律案(政
府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三臨時租稅措置法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一支那事變特別稅法中改正法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十日
委員長川崎克
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
支那事變特別稅法中改正法律案中左ノ通
修正ス
第三十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
物品稅ハ左ニ揭グル物品ニシテ命令ヲ
以テ定ムルモノニ之ヲ課ス
第一種
甲類
-貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒ
タル製品
二眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
三貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ
用ヒタル製品
四鼈甲製品
五珊瑚製品
六毛皮又ハ毛皮製品
七羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒタル
製品
乙類
八時計
九文房具
十身邊用細貨類
十一化粧用具
十二喫煙用具
十三〓子、枚、鞭及傘
十四鞄及トランク
十五靴及履物
十六書〓骨董
十七室內裝飾用品
十八玩具
十九運動具
二十照明器具
二十一電氣器具及瓦斯器具
二十二圍碁及將棋用具
二十三家具
二十四漆器、陶磁器及硝子製器
具ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十五貴金屬ヲ鍍シ又ハ張リタ
ル製品ニシテ別號ニ揭ゲザルモ
ノ
二十六皮革製品ニシテ別號ニ揭
ゲザルモノ
二十七織物、メリヤス、レース、
フェルト及同製品竝ニ組物
二十八果物
第二種
甲類
一寫眞機、寫眞引伸機、映寫機、
同部分品及附屬品
二寫眞用ノ乾板、フィルム及感光
紙
三蓄音器及同部分品
四蓄音器用レコード
五樂器、同部分品及附屬品
六雙眼鏡及隻眼鏡
七銃及同部分品
八藥莢及彈丸
九ゴルフ用具、同部分品及附屬
品
十娛樂用ノモーターボートス
カール及ヨット
十一撞球用具
十二ネオン管及同變壓器
十三喫煙用ライター
十四乘用自動車
十五化粧品
乙類
十六ラヂオ聽取機及同部分品
十七受信用眞空管、擴聲用增幅
器及擴聲器
十八扇風機及同部分品
十九煖房用ノ電氣、瓦斯又ハ礦
油ストーブ
二十冷藏器及同部分品
二十一金庫及鋼鐵製家具
及
二十二化粧用石鹼、シャンプー、
洗粉及齒磨
紅茶
二十三茶珈琲及其ノ代用物竝
ニココア
二十四嗜好飮料但シ酒類及〓涼
飮料ヲ除ク
第三種
-燐寸
二酒類但シ濁酒ヲ除ク
三飴葡萄糖及麥芽糖
第三十九條中「五圓」ヲ「十圓」ニ、「十圓」
ヲ「十五圓」ニ、「七圓」ヲ「十四圓」ニ改メ
「葡萄酒(酒精及酒精含有飮料稅法第三條
ノ二ニ規定スルモノ以下同ジ)」ノ下ニ「及
果實酒(酒精及酒精含有飮料稅法第三條
ノ三ニ規定スルモノ以下同ジ)」ヲ加ヘ同
條第三種ニ左ノ一號ヲ加フ
三、飴葡萄糖及麥芽糖
百斤ニ付二圓
イ麥芽糖化ノ方法ニ依リ製造シタル飴
百斤ニ付一圓五十錢
ロ其ノ他ノ飴竝ニ葡萄糖及麥芽糖
百斤ニ付二圓
第四十三條中「化粧品」ヲ「化粧品、化粧用
石鹸、シャンプー、洗粉、齒磨又ハ嗜好飮
料」ニ改ム
第五十二條ノ三遊興飮食稅ノ稅率ハ遊
興飮食ノ料金ノ百分ノ十トス但シ藝妓
花代
ノ招聘料ニ付テハ料金ノ百分ノ二十ト
ス
前項ノ遊興飮食ノ料金(以下料金ト稱
ス)ハ前條ニ規定スル場所ノ經營者ガ
遊興又ハ飮食ヲ爲シタル者ヨリ其ノ遊
興又ハ飮食ニ付領收スベキ金額ヲ謂フ
料金ノ算定ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第五十二條ノ四料金ガ一人一囘五圓ニ
滿タザル場合ニハ遊興飮食稅ヲ課セズ
ノ花代其ノ他命令ヲ以テ定ムル
但シ藝妓其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ノ
モノ
招聘料ニ付テハ此ノ限ニ在ラズニ
前項ノ一人一囘ノ料金ノ計算ニ關シ必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
第七條改正第三十八條ニ揭グル第二種
又ハ第三種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者
ガ本法施行ノ際製造場又ハ保稅地域以
外ノ場所ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當ス
ル物品ヲ所持スル場合ニ於テハ其ノ場
所ヲ以テ製造場、其ノ所持者ヲ以テ製
造者ト看做シ之ニ物品稅ヲ課ス此ノ場
合ニ於テハ本法施行ノ日ニ於テ其ノ物
品ヲ製造場ヨリ移出シタルモノト看做
シ第一號ノ物品ニ付テハ改正第三十八
條各號ニ揭グル品名每ニ價格三千圓、
酒類ニ付テハ三十石、飴葡萄糖又ハ
麥芽糖ニ付テハ一萬斤ヲ超ユル部分ニ
付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ物品稅ヲ
徵收ス但シ從前ノ規定ニ依リ物品稅ヲ
課セラレタル物品ニ付テハ其ノ課セラ
レタル稅額ニ相當スル金額ヲ控除シタ
ル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
-改正第三十八條ニ揭グル第二種第
十四號、第十五號、第十七號(擴聲
用增幅器ニ限ル)第二十二號(シャン
プー及洗粉ヲ除ク)、第二十三號又ハ
第二十四號ノ物品ニシテ同條各號ニ
揭グル品名每ニ價格三千圓ヲ超ユル
モノ
二酒類ニシテ合計石數三十石ヲ超ユ
ルモノ又ハ飴、葡萄糖若ハ麥芽糖ニ
シテ合計斤數一萬斤ヲ超ユルモノ
本法施行ノ際製造場內ニ現存スル酒類
ニシテ戾入又ハ移入シタルモノニ付テ
ハ第四十六條第二項ノ改正規定ニ拘ラ
ズ物品稅ヲ徵收ス
第一項但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之
ヲ準用ス
第一項ノ製造者又ハ販賣者ハ第二種ノ
物品ニ付テハ其ノ品名每ニ數量、價格
及貯藏ノ場所、第三種ノ物品ニ付テハ
其ノ品名每ニ數量及貯藏ノ場所ヲ本法
施行後一月以內ニ政府ニ申告スベシ
報〓書
一臨時利得稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十日
委員長川崎克
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及=ハ委員會修正)
臨時利得稅法中改正法律案中左ノ通修正
ス
第十一條ノ二讓渡利得ハ前年中ニ於ケ
ル船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權
利若ハ設備ノ讓渡ニ因ル總收入金額ヨ
リ取得價額、設備費、改良費及讓渡ニ
關スル必要ノ經費ヲ控除シタル金額ニ
依ル
船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業ニ關スル權利
若ハ設備ニシテ昭和十一年十二月三十
一日以前ニ取得シタルモノニ付テハ同
日ニ於ケル價額ヲ以テ前項ノ取得價額
トシ同日後ニ爲シタル設備又ハ改良ニ
要シタル費用ノミヲ以テ前項ノ設備費
又ハ改良費トス
前二項ノ計算ニ關シテハ相續、贈與又
ハ遺贈ニ因リ取得シタルモノハ相續
人受贈者又ハ受遺者ガ引續キ之ヲ有
シタルモノト看做シ讓渡後相續ノ開始
アリタル場合ニ於テハ被相續人ノ爲シ
タル讓渡ハ之ヲ相續人ノ爲シタル讓渡
ト看做ス
前三項ニ定ムルモノノ外讓渡利得ノ計
算ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之
づけ ハ
第十三條ノ二船舶ノ讓渡ニ因ル利益ニ
シテ第九條ノ個人ノ利益ニ屬スルモノ
及昭和十四年四月一日以後ニ於テ設定
セラレタル鑛業又ハ砂鑛業ニ關スル權
利ニシテ命令ノ定ムルモノノ讓渡ニ付
テハ本法中讓渡利得ニ關スル規定ヲ適
用セズ
第十六條中「納稅義務」ノ上ニ「甲種利得又ハ
乙種利得ニ付」ヲ加へ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
讓渡利得ニ付納稅義務アル個人ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ利得金額ヲ政府ニ申告スベシ
第十七條中「個人ノ利得金額」ヲ「個人ノ甲種
利得又ハ乙種利得ノ金額」ニ、「個人ノ利得ニ
付」ヲ「個人ノ甲種利得又ハ乙種利得ニ付」ニ
改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
讓渡利得金額ハ前條第二項ノ申〓ニ依リ、
申〓ナキトキ又ハ中〓ヲ不相當ト認ムルト
キハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定
ス
第十八條中「個人ノ利得」、ヲ「個人ノ甲種利得
又ハ乙種利得」ニ改ム
第二十六條第二項中「個人ノ利得」ヲ「個人ノ
甲種利得又ハ乙種利得」ニ改メ同條ニ左ノ一
項ヲ加フ
讓渡利得ニ付テハ船舶又ハ鑛業若ハ砂鑛業
ニ關スル權利若ハ設備ノ讓渡ノ際臨時利得
稅ヲ徵收ス
第二十七條第二項中「個人ノ利得」ヲ「個人ノ
甲種利得又ハ乙種利得」ニ改ム
附則第二項ヲ左ノ如ク改ム
本法ニ依ル臨時利得稅ノ賦課ハ法人ニ付テハ
支那事變終了ノ年ノ翌年十二月三十一日迄ニ
終了スル事業年度分限リ、個人ノ甲種利得又
ハ乙種利得ニ付テハ支那事變終了ノ年ノ翌年
分限リ、讓渡利得ニ付テハ支那事變終了ノ年
ノ翌年十二月三十一日迄ノ讓渡ニ因ル利得ニ
對スル分限リトス
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
法人ノ臨時利得稅ニ付テハ昭和十四年一
月一日以後ニ終了スル事業年度分ヨリ、
〓甲種利得又ハ乙種利得ニ對スル
個人ノ〓臨時利得税ニ付テハ昭和十四年
分ヨリ本法ヲ適用ス
讓渡利得ニ對スル臨時利得稅ニ付テハ
昭和十四年一月一日以後ノ讓渡ニ因ル利得ニ
昭和十四年ニ限リ臨時利得稅法第十六條
對シ本法ヲ適用ス
ノ規定ニ拘ラズ利得金額ノ申〓期限ヲ昭
和十四年四月十五日トス
報〓書
一臨時租稅措置法中改正法律案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十日
委員長川崎克
衆議院議長小山松壽殿
〔川崎克君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=5
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006・川崎克
○川崎克君 只今上程サレマシタ支那事變
特別稅法中改正法律案外二件ニ付キマシテ、
委員會ノ審査ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シ
マス
御承知ノ如ク此ノ法案ハ國民ノ負擔ニ重
大ナ關係ヲ有スルモノデアリマシテ、今期
議會ニ於ケル重要法案ノ一ツニ屬スルモノ
デアリマス、隨ヒマシテ委員會ト致シマシ
テハ、二月二十一日此ノ法律案ガ委員會ニ
付託トナリマシテ以來、前後ヲ通ジマシテ
十六回會議ヲ開キマシテ、長時間ニ亙ツテ
審議ヲ重ネタノデアリマス、此ノ間各委員
諸君ト各國務大臣及ビ政府委員トノ間ニ、
重要ニシテ適切ナル質疑應答ガ交換セラ
レタノデアリマス、此ノ質疑ヲセラレマ
シタ〓要ヲ御報告申上ゲルノデアリマス
ガ、先ヅ第一ニ增稅案ノ根本趣旨竝ニ程
度ニ付テ各方面カラ突キ進ンダル質問ガ
アツタノデアリマス、之ニ對シマシテ政
府ノ答辯ヲ致シマシタ要領ヲ綜合致シマス
ルニ、今囘ノ增稅ハ臨時軍事費ノ財源ノ一
部ニ充テルモノデアリ、此ノ際時局ノ好影
響ヲ受ケテ利益ヲ受ケタル者ニ對シテ負擔
ヲ增加シ、以テ負擔ノ均衡ヲ圖リ、奢侈的
傾向ヲ有スル消費ニ對シテハ、物品稅、建
築稅、遊興稅其ノ他消費稅ニ依ツテ消費ヲ
抑制シ、他面ニ於テハ時局產業ニ對シテ生
產擴充ノ爲、留保所得ニ對スル減稅ヲ認メ
ル所以ヲ說明致シマシテ、戰時下ニ於ケル
國民ノ愛國心ニ愬ヘ、此ノ增稅ヲ協贊セラ
レンコトヲ求メテ居ルノデアリマス、同時
ニ此ノ增稅ノ金額二億圓ノ根據ニ付キマシ
テハ、各方面カラ質問ガ出マシテ、本年公債
ノ募債豫定額約六十億圓ニ對シテ、其ノ三
分半利ノ公債ノ利拂ニ當ル故ヲ以テ、其ノ
利拂ヲ目標トシテ居ルノデハナイカ、又二
億圓ノ數字ノ基礎ハ何ニ據ツタノデアルカ
ト云フ質問ガアリマシテ、之ニ對シテ政府
ハ、今囘ノ增稅ハ主トシテ臨時利得稅竝ニ
物品稅ヲ中心トセルモノデアツテ、其ノ性
質ハ臨時的ノモノデアツテ、決シテ恆久的
ノモノデハナイ、若シ是ガ公債ノ利拂ヲ目
標トスルナラバ、增稅ニ次グニ增稅ヲ以テ
シナケレバナラヌノデアツテ、政府ハ斯ル
考ノ下ニ二億圓ヲ計上致シタモノデハナイ、
其ノ二億圓ノ數字ノ根據ハ、臨時利得稅、
物品稅增徴ノ結果、斯樣ニナツタノデアル
ト云フコトヲ答辯セラレテ居ルノデアリマ
ス
ソレカラ增稅ト經濟諸問題ノ關係ニ付キ
マシテ、質疑應答ガ繰返サレタノデアリマ
スガ、今日ノ經濟事情ト致シマシテハ、物
資ガ不足デアリ、反對ニ購買力ガ增大シテ
居ル、然ルニ此ノ增稅ヲ行フ結果ガ物價ノ
騰貴ヲ誘致スルコトトナリ、他面ニ軍事費
支辨財源ヲ公債ニ求ムル結果、玆ニ「インフ
レーション」的傾向ガ益〓濃度化シテ來ルノデ
ハナイカ、政府ハ之ニ對シテ如何ナル考ヲ
持ツテ居ルカト云フ質問デアリマス、之h
對シテ消費稅ノ如キハ、明ニ物價騰貴トナ
ルケレドモ、是ガ爲ニ消費ヲ抑壓シ、購買
力ヲ奪フノ結果ハ、貯蓄ノ奬勵トナリ、隨
テ貯蓄ノ奬勵ガ公債ノ消化ニ充當セラレ、
循環シテ貯蓄奬勵ノ徹底ヲスルニ至レバ、
決シテ「インフレーション」ノ來ル虞ハナイ
ト答辯ヲ致シテ居リマス、又此ノ稅ハ消費稅
的性質ヲ帶ビル物品稅トノ關係ニ付テ、商
工省デ指定セル所ノ公定價格ト、此ノ稅ト
ノ關係ニ付テ問題ガ起リマシテ、丁度此ノ
委員會ノ開會中ニ、絹織物ニ對スル所ノ價
格ノ公定ガ發表セラレ、續イテ〓酒、麥酒
等ノ十六種ノ物價ノ公定價格ガ發表セラレ
マシテ、本委員會ニ相當重大ナ刺戟ヲ與ヘ
タノデアリマスガ、此ノ問題ニ對シテハ大
藏大臣ハ極メテ明確ニ、物品稅ガ消費稅ノ
意義ヲ有スル以上、公定價格ガ決定セラレ
テモ、本稅制案ニシテ貴衆兩院ヲ通過シテ、
法律トシテ施行セラレル場合ハ、其ノ消費
稅タル部分ハ消費者ニ轉嫁セラレテ、物價
ハ當然其ノ課稅率ダケ公定價格ニ追加セラ
レルコトトナル旨ヲ明ニセラレタノデアリ
マス、之ニ對シテ商工大臣モ、大藏大臣ノ
言明セラレタ趣旨ニ依ル旨ヲ明ニサレタノ
デアリマス
續イテ增稅ト財政計畫ニ付テ質問應答ガ
交換ヲセラレマシタ、之ニ對シテハ歐洲戰
爭ノ例ヲ引用シ、又日露戰爭ノ例ヲ引用セ
ラレテ、公債ト增稅ノ振合ニ付テ、種々ナ
ル方面カラ質問セラレタノデアリマスガ、
其ノ質問ノ要旨ハ、ドウモ公債ニ對スル增
稅ノ割合、卽チ租稅負擔ノ割合ガ少イデハ
ナイカト云フコトニ重點ヲ置カレテ、質問
ガ繰返サレタノデアリマス、之ニ對シテ大
藏大臣ノ答辯ハ、成程豫算面ノ數字デハ、
サウ云フヤウナ振合モ出テ來ルノデアルケ
レドモ、實際ノ收入ノ點ヲ見ルト、本年ニ
於テハ二億五千万圓ノ自然增收モアリ、實
際ノ成績ハ豫算面以上ニ租稅收入ガアルノ
デアツテ、必ズシモ御指摘ニナツテ居ルヤ
ウニ、租稅收入ガ公債收入ニ比較シテ、著
シク其ノ振合ヲ指摘セラルル程、少クナイ
ト云フコトノ答辯ヲ與ヘラレテ居リマス、
今少シ增稅シナケレバナラヌデハナイカト
云フコトニ對シテ、今日此ノ戰時利得稅增
徴案ガ通リマスレバ、相當高率ナ負擔ニナ
ルノデアツテ、モウ旣ニ是ガ通レバ最高ニ
於テハ百分ノ八十六ニ上ル、附加稅ヲ加ヘ
ルト云フコトニナルト、或ハ九十以上ニモ
ナルコトニナルデアラウト云フ答辯ヲセラ
レテ居リマス
ソレカラ增稅ト稅制ノ改革ニ付キマシテ
ハ是モ各委員ノ方カラ質問ノ出タ問題デ
アリマシテ、昨年モ此ノ議會ヲ通ジテ、稅
制ノ根本的改革ヲ爲スベシト云フ意見ガア
ツタノデアリマスカラ、當然此ノ問題ハ質
疑應答ノ重要ナ意見交換ノ題目トナツタノ
デアリマス、之ニ對シテ政府ハ、昭和十五
年度カラ中央、地方ヲ通ズル所ノ稅制ノ根
本改革ヲ行フ、斯ウ云フ意見ヲ表明セラレ
タノデアリマス、而シテ若シ來年度カラ根
本的改革ヲ行フトスレバ、其ノ租稅體系ハ
何ニ依ルノデアルカ、所得稅中心ニ依ルノ
デアルカ、所得稅中心ニ依ルノデアレバ、
補完稅トシテ財產稅ヲ設ケルノデアルカ、
或ハ其ノ他新稅ヲ設ケル考ガアルカト云フ
質問ニ對シマシテ、政府ハヤハリ所得稅ヲ
中心トシテノ稅制ノ根本改革ヲ行フ、財產
稅ノ如キハ一應考ヘタケレドモ、種々ナル
點ニ支障ガアルカラ、是ハ今日財產稅ヲ設
ケル考ヲ持ツテ居ナイ、新稅ノコトニ付テ
ハ尙ホ考慮中デアル、斯ウ云フ答辯ヲ致シ
テ居リマス、若シ稅制ノ根本改革ヲ行フト
スルナラバ、增稅ヲ行フ考ガアルカ、又增
稅ヲ行フ考ノ下ニ稅制ノ根本改革ヲ行フノ
デハナイカ、斯ウ云フ質問ニ對シマシテ、
最初カラ增稅ヲ豫期シテ中央、地方ノ財政
ノ根本的改革ヲ行フト云フヤウナ考ハ持タ
又、又最初カラ增稅ヲ行フナドト云フコト
ヲ、國民ニ大藏大臣ガ呼掛ケテ、稅制ノ改
革ヲ行ヘルモノデナイト言ツテ居リマス、
併シ增稅ハ行ハナイガ增收ヲ求メル考ガア
ル、國民ニ擔稅力ヲ持タセテ收入ヲ增加シ
テ行ク、所謂增收ヲ求メル考ヲ持ツテ居
ル、而シテ中央、地方ヲ通ジテノ稅制ノ改
革ハ、負擔均衡ニ重點ヲ置ク、斯ウ云フコ
トヲ答辯セラレテ居リマス
是ト關聯ヲ致シマシテ地方稅ト國稅、地
方ノ固有事務ト委任事務ノ關係ニ付テ、相
當各方面カラ深刻ナ御質問ガアリマシタ、
今提案セラレテ居リマス案ノ中ニモ、遊興
稅ガ地方稅デアツタモノヲ中央ニ移管セラ
レルノデアリマスガ、昨年ハ入場税ガ移管
セラレ、本年ハ又遊興稅ガ移管セラレ、斯
ノ如クシテ地方ハ每年獨立財源ヲ失ウテ行
クノデアルガ、半面ニハドウカト云ヘバ、
地方ノ固有事務ノ外ニ國ノ委任事務ガ非常
ニ增加シテ居ル、サウシテ固有財源ヲ地方
ハ失フ狀況ニアル、斯ウ云フヤウナ狀況デ
行ケバ、終ヒニハ官治行政ニ持ツテ行クヤ
ウニナルノデハナイカト云フヤウナコトヲ
憂慮セラレタ質問ガアリマシタ、之ニ對シ
テ內務大臣ハ決シテ左樣ナ考ハ持ツテ居ナ
イ、今度移管セラレル所ノ遊興稅ハ、其ノ
缺陷ヲ生ジタモノニ對シテ、是ハ地方ニ
交付金ノ形ヲ以テ補給スルノデアル、其ノ
補給スル金額モ、現在徵收ヲ致シテ居リマ
ス金額ノ上ニ、自然增收ヲ見込ンデ地方ニ
還元スルノデアル、斯ウ云フコトヲ答辯セ
ラレマシテ、此ノ委員會ノ開會中ニハ此ノ
問答ガ屢〓繰返ヘサレタノデアリマスガ、最
後ニ追加豫算ガ出ル前ニナツテ、其ノ數字
ヲ明確ニ發表セラレタノデアリマス、最初
ハ補給金額千六百万圓ト云フ所ニ標準ヲ置
イテ、千六百万圓以上ヲ地方ニ交付金トシ
テ返スノデアルト言ハレテ居ツタノデアリ
マスガ、最後ニ發表セラレタ所ニ依リマス
ト、昭和十四年度ノ分ハ千八百万圓ヲ地方
ニ返ス、平年度ニ於テハ二千万圓ヲ返ス、
斯樣ナコトニナツタノデアリマス、其ノ數
字ノ根據ハ何處ニ置イタカト云フ、昭和十
二年度ノ實績ヲ基本ニ致シマシテ、昭和十
二年度ノ遊興稅ノ收入ノ基本ノ上ニ、昭和
十二、三年ノ兩年度ノ自然增收ヲ見マシ
テ、大體計算ヲ立テテ、千七百有餘万圓ト
ナルノヲ千八百万圓ト云フコトニシテ、交
付金ヲ受ケルコトニナツタノデアリマス、
但シ茲ニ一ツ御報告申上ゲテ置キタイコト
ハ、昭和十四年ハ千八百万圓デアリマスケ
レドモ、此ノ十四年ノ三月分ノ所謂遊興稅
ト云フモノハ、翌月徵稅セラレルコトニナ
ツテ居リマシテ、四月ニ徴稅セラレマスカ
ラ、十一箇月分ヲ計上セラレテ居ルノデア
リマシテ、殘リノ一箇月分百六十幾万圓ト
云フモノハ、地方ニ於テハ過年度收入ト
シテ、政府ニ納メズニ右ガラ左ヘ地方ノ收
入トナルノデアリマスカラ、實質ニ於テハ
千八百万圓ノ外ニ百六十幾万圓ノ過年度收
入ガ地方財政ノ上ニ入ルノデアリマス、卽
チ千九百六十万圓ハ地方財政ノ中ニ入ルモ
ノト御承知ヲ願ヒタイノデアリマス、其ノ
他各種ノ費目ニ對シマスル質疑應答ガ行ハ
レタコトハ、速記錄デ御覽ヲ願ヒタイノデ
アリマスガ、質疑ノ終ルニ當リマシテ、委
員長トシテ委員會多數ノ意見ヲ代表致シマ
シテ、政府ノ所信ヲ質シマシタ數點ガゴザ
イマス、又討論ニ入リマシテ字賀委員カラ
提出サレマシタ修正意見ガアリマスガ、之
ヲ御報告申上ゲルコトハ、併セテ各種ノ稅
目ニ對シマスル質疑應答ノ重點ガ明ニナル
ト存ジマスルカラ、其ノ點ヲ申上ゲタイト
存ジマス
先ヅ第一ニ私カラ質問ヲ致ジマシタ中、
遊興飮食稅ハ多年ノ慣行ニ依ツテ、關西方
面ニアツテハ藝妓ノ花代ト飮食費ガ分離計
算ニナツテ居ルノデアルガ、本法ノ實施ニ
當ツテ東京ト大阪、京都、卽チ東西ノ課稅
標準ヲ異ニスル結果ヲ生ジテ、課稅ノ不均
衡ヲ招來スルコトトナル虞ガアルデハナイ
カ、政府ハ之ニ對シテハドウシテ統一ヲ圖
ル積リデアルカト云フ質問ヲ致シマシ
タニ對シテ、大矢主稅局長ヨリ、政府ハ
右ノ不均衡ノ事情ヲ是正スル方針ヲ以
テ、勅令其ノ他命令事項ニ依ツテ之ヲ補
正シテ徴收スル考デアル旨ヲ答辯致シマ
シタ、更ニ遊興稅ハ徵稅上非常ナ困難ナ
稅デアリマス、此ノ點ニ付テハ政府モ之
ヲ認メテ居ルノデアリマスガ、其ノ運用ヲ
圓滑ナラシムル爲ニハ、納稅義務者ト稅務
署トノ間ニ介在シテ、徵稅上ノ補助機關ト
モ見ルベキ業者ノ組合團體ヲシテ、課稅標
準ノ申〓、未收入料金ニ對スル徵收ノ延期、
貸倒シニ對スル免稅等ニ付テ、協調ヲ保ツ
テ施行シテ行クノニ遺憾ナキヲ期スルコト
ガ出來ルカドウカ、サウ云フ方針デアルカ
ドウカト云フコトヲ尋ネマシタニ對シテ、
政府ハ是等ニ關シ御質問ノ通リ、同樣ノ態度
方針ニ依ツテ進ム考デアルト云フ答辯ヲ致
サレマシタ
第三ニ遊興飮食稅ハ國稅トシテ徴收セラ
レルノ結果ハ、現在東京市ニ於テ行ハレテ
居リマスル歡興稅、主トシテ「カフエーㄴ
「バー」ヲ指スノデアリマスガ、歡興稅ハ本
法施行後殆ド免稅トナル結果ニナリマス、
政府ハ遊興ヲ抑壓スルノ趣旨カラシテ、此
ノ遊興稅ヲ國稅ニ取上ゲテ統一シヨウトス
ルノデアリマスガ、ソレガ爲ニ却テ他面ニ
ハ「カフエー」「「バー」ノ如キ遊興ヲ主ニスル
處ノ稅ガ逃ガレテ行ク虞ガアルノデアリマ
ス、獨リ此ノ稅ヲ逃セバ、東京ノミニ止マ
ラズシテ、五圓以上ノ遊興ハ今後國稅トシ
テ課稅セラレルガ、以下ノモノヲ地方稅ト
シテ取ラレナイト云フコトニナツタ時ハ、
「カフエー」「バー」ハ東京ニ止マラズシテ、
地方ヘモ蔓延スル虞ガ多分ニアルノデアリ
やく、サウスレバ本稅ヲ國稅ニ致シタ意義
ガ徹底ヲシナイノデアリマシテ、之ニ對シ
マスル委員會ニ於ケル質問應答ハ、今マデ
政府ハ地方稅ヲ許サナイガ如キ答辯ヲ致シ
テ居ツタノデアルガ、是ハ當然許スベキ性
質ノモノデアルト云フ政民兩黨多數ノ意見、
及ビ他ノ會派ノ方々ノ意見ヲ代表シマシテ、
政府ニ答辯ヲ求メマシタ所、政府ハ最後ニ
內務、大藏兩大臣ヨリ、遊興飮食稅ハ五圓
以上ノ課稅標準ニ依ル徵稅ヲ地方稅トシテ
許可シナイコトニナツテ居ルケレドモ、其
ノ以下ノモノハ-歡興稅ノ如キモノヲ指
スノデアリマスガ、以下ノモノハ願出ニ依
ツテ許可ヲ致ス方針デアルト云フコトヲ答
辯ヲ致シタノデアリマス
續イテ民政黨代表ノ宇賀四郞君提出ニ係
ル共同修正案ニ付テ御報告ヲ申上ゲタイノ
デアリマスガ、此ノ案中最モ國民ノ生活ニ
重大ナ關係ヲ持チマスモノハ物品稅デアリ
やっ、此ノ物品稅ハ政府ノ說明デハ、物品
稅ハ奢侈ヲ抑制スルニアルノデアルカラ、
極メテ下級品ニ對シテハ稅ヲ課サヌ方針デ
アルト云フコトヲ、屢〓言明ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、然ルニ石鹸ノ如キ、齒磨ノ如
キ、國民ノ生活必需品トシテ缺クベカラザ
ルモノニ對シテ、課稅ヲセラテ居ルノデア
リマシテ、是ハ政府ノ趣旨ニ副ハナイモノ
デアルト云フノデ、修正意見ガ出マシテ、
化粧用石鹸、齒磨、紅茶ヲ除イタ日本茶、
是ハ全ク生活ノ必需品デアルト云フノデ、
之ヲ免稅スルト云フコトヲ提議セラレタノ
デアリマス、續イテ飴ハ、下級品ノ飴ノ課
ニ對シテモ、二圓ノ課稅ヲ一圓五拾錢ニ訂
正シ、洋服ノ最低六十五圓ト云フノヲ七十
圓ニ修正ヲスルコトヲ要求セラレタノデア
リマス、遊興飮食稅ニ付キマシテ、料理店
旅館、貸座敷、待合等ノ女中、下男等ノ祝
儀ハ、課稅標準ニ算入セザルコトニ修正ヲ
要求セラレタノデアリマス、尤モ之ニハ遊
興ノ爲ニスル所ノ祝儀、「チップ」等ハ含マ
ナイノデアリマス、徵稅事務取扱者ノ團體
ヘノ交付金ハ、稅額百分ノ一トアルヲ三以
內トスルト云フコトニ修正ヲシタイ、又藝
妓ノ招聘料トアルヲ花代ト改ムルコトニ訂正
ヲシタイト云フノガ、遊興稅ニ對シマスル
修正ノ點デアリマス、第二ニ臨時利得稅ニ
對シマスル修正ガ唱ヘラレタノデアリマ
ス、ソレハ船舶及ビ鑛業權ノ讓渡ニ關シテ
ハ昭和十三年一月ニ遡及スベキ原案ニ對
シテ、之ヲ昭和十四年一月ヨリ、讓渡ノ行
ハレタル時、其ノ都度課稅スルコトニ修正
セントスル意見デアリマス、本稅ニ對シマ
スル委員會ニ於ケル意見ハ、全ク異ツタ對
立質問ガ行ハレテ參ツタノデアリマスガ、
其ノ異ツタ對立ノ質問ノ行ハレマシタ點ヲ
申上ゲタイノデアリマス、第一此ノ稅ヲ課
ケルコトニ付テ、法律上ノ見地カラ遡及ス
ルコトガイケナイ、稅ノ遡及力ハ甚ダ良ク
ナイト云フノデ、憲法論マデ出マシテ、之
ニ對スル相當深刻ナル質問ガアツタノデア
リマス、又現物出資ノ課稅價格ニ對シテハ、
其ノ評價ノ困難ナル點ヲ指摘セラレテ、課
稅ノ適正ヲ得ナイト云フコトノ反對理由ヲ
附シテ、質問ヲセラレタ方モアリマシタ、
又名義人ニ對スル所ノ加重、不公平ナル負
擔ニナルト云フコトモ、其ノ實例ヲ指摘シ
テ擧ゲラレマシタ、之ニ對シマス政府ノ答
辯ハ、此ノ問題ハ大正七年ニ於テ之ヲ行ツ
タ先例ガアリ、又昭和十年ニ臨時利得稅ヲ
起シタ時ニモ遡及ヲシタ例モアリ、今度ノ
戰爭ト云フ特殊原因ニ因ツテ利得ヲ得タ人
ニ對シテ課稅ヲスルノデアツテ、其ノ使途
ハ卽チ臨時軍事費ニ使ハレル意味デアルト
云フ意味ノ答辯ヲセラレタノデアリマス、
之ニ對スル修正論ノ意見ハ、兩方ノ中間ヲ
採リマシテ、第一ニ原案ノ昭和十三年一月
一日カラ十二月三十日マデ遡及スルト云フ
ノヲ、丁度一年送ツテ昭和十四年一月一日
ヨリ之ヲ行フト云フコトニナルノデアリマ
スガ、ソレデハ法律ヲ四月ニ作ツテ三箇月
遡及スルヤウニナリマス、併シナガラ實際
ノ上ニ於テハ、本年ノ一月ニ稅法ノ改正委
員會ニ於テ、此ノ法律ヲ出スコトヲ世間ニ
旣ニ發表セラレテ居ルノデアリマスカラ、
當業者モ大體謀稅セラルベキモノデアルト
云フコトノ認識ハアルノデアツテ、不意打
的ニ出スモノデハナイ、又修正ノ第二ハ、
此ノ修正ガ其ノ決定ノ都度徵稅スルコトニ
ナル結果ハ、實際歲入ノ上ニハ缺陷トシテ
現ハレテ來ナイノデ、今起ツタノヲ今直チ
ニ徵稅シテ行クカラ、本年度ハ歲入豫算ノ
缺陷ニハナラヌ、斯ウ云フ點ニ於テ此ノ修
正ノ如クヤルコトガ、妥當デアルト云フ意
見デアツタノデアリマス、是ト關聯ヲ致シ
マシテ、此ノ法文ノ中ニ極メテ不公平ナル
點ヲ修正シナケレバナラヌ所ガ一箇條アル
ノデアリマス、ソレハドウ云フ點カト申シ
マスト、昭和十四年ノ四月一日以降ニ於ケ
ル原始取得ニ對シマス鑛業權ノ讓渡利得ニ
對シテハ、課稅シナイコトニナツテ居ルノ
デアリマス、斯ウ云フ特例ヲ設ケタノハ、
鑛業權ノ發見者ニ對シテ之ヲ奬勵スル意味
カラ出タノデアリマスガ、其ノ奬勵法ヲ置
クナラバ、本年ノ一月カラ稅ヲ課ケル以上
ハ、當然義務ヲ負擔セシメナケレバナラヌ
シ、又當然權利モ與フベキデアルト云フ建
前カラ、是モ亦昭和十四年一月一日ニ遡及
スルノガ當然デアルト云フコトニ、修正ヲ
スベキデアルト云フ意見ヲ提出セラレタノ
デアリマス、之ヲ要シマスルニ本修正案ノ
要旨ハ何處ニアルカト申シマスト、先ヅ第
一ニハ物品稅ノ中デ、國民大衆ニ最モ必要
缺クベカラザル所ノ必需品ノ課稅ヲ免除致
シマシタコトハ、其ノ尤ナル一ツデアリマ
ス、第二ハ奢侈遊興ヲ戒ムル精神ヲ貫カン
ガ爲ニ、女中、下男等ノ祝儀ヲ課稅標準ニ
算入セザル方針ヲ採ツテ、遊興ノ爲ニスル「ガ
フエー」「バー」等ノ「チップ」類ト區別シ、戰時
下國民ノ精神的自肅ニ愬ヘントスルノ態度
ニ出デタコトデアリマス、第三ハ遊興稅徵
收上ノ通稅未納等ヲ少ナカラシムルタメ、
業者組合團體ニ對シ適當ノ給與ヲ爲シ、其
ノ圓滿ナル運行ヲ期セシムル補正ヲ爲シタ
ルコトニアリマス、第四ハ、臨時利得稅ニア
リマシテハ、戰時事變ノ爲ニ生ジタル利得
者ニ對シテ、臨時軍事費支辨ノ趣旨ヲ貫カ
シムル爲、本年一月一日ニ遡及スルノ妥當
ナルヲ信ジタモノデアリマス、右等ノ修正
ニ依ル歲入減ハ四百五十有餘万圓ニ過ギナ
イノデアリマスルガ、是等ハ自然增收ヲ以
テ優ニ補塡シ得ルノデアリマシテ、軍事費
豫算執行ノ上ニ何等支障ヲ生ゼシムル惧ハ
ナイノデアリマス
之ニ對シテ政友會ヲ代表シテ武田德三郞
君、第一議員倶樂部ヲ代表シテ森肇君、社會
大衆黨ヲ代表シテ河野密君、第二控室ヲ代表
シテ道家齊一郞君等修正案贊成ノ意見開陳
ガアリマシテ、最後ニ東方會ノ靑木作雄君ノ
ミ船舶、鑛業權ノ原案支持ノ御意見ガアツタ
ノデアリマス、採決ノ結果、支那事變特別
稅法案ニ對シマシテハ、滿場一致ヲ以テ可
決セラレ、臨時利得稅法案ニ付テハ靑木君
ガ反對ヲセラレテ、殘ル多數ノ方ガ大多數
ヲ以テ贊成可決セラレ、殘ル臨時租稅措置
法案ニ對シテハ原案通リ滿場一致可決セラ
レタノデアリマス
右ノ中修正案ニ對シ政府ノ所見ヲ求メマ
シタ所、石渡大藏大臣ヨリ、本修正案ニシ
テ貴族院ニ於テ可決セラルルナラバ、政府
ニ於テモ異議ナキ旨ノ意見ノ表明ガアツタ
ノデアリマス、此段御報告ヲ申上ゲマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=6
-
007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案ヲ一括シテ討論
ニ付シマスルガ、三案中支那事變特別稅法
中改正法律案及ビ臨時利得稅法中改正法律
案、兩案ノ委員長報告ハ修正デアリマスカ
ラ、討論ハ便宜上第二讀會ニ於テ爲スコト
ト致シマス、三案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=7
-
008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=8
-
009・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=9
-
010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=10
-
011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
支那事變特別稅法中改正法律案
第二讀會
臨時利得稅法中改正法律案第二讀會
臨時租稅措置法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=11
-
012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 討論ニ入リマス、通
〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-中島彌團
次君
〔中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=12
-
013・中島彌團次
○中島彌團次君 私ハ立憲民政黨ヲ代表致
シマシテ委員長ノ報告通リ贊成スル者デア
リマス、次ニ贊成ノ理由ヲ述ベマス、今日
ノ日本ニ於キマシテ一番大切ナコトハ貨幣
ノ價値ノ堅持デアリマシテ、是ガ卽チ國策
遂行ノ絕對要件デアルト私ハ考ヘマス、貨
幣ノ對外價値、卽チ爲替水準ガ破レマシタ
ナラバ、輸入品ノ物價ハ暴騰致シマシテ、
之ヲ原料トスル軍需工業及ビ輸出工業ニモ
非常ノ支障ヲ來シテ參リマス、隨テ豫算ノ
執行ハ出來ナクナリマス、益〓豫算ノ增加
ヲ要求サレ、是ガ爲ニハ公債ハ增發サレ、
通貨ハ膨脹シ、貨幣ノ對內價値モ亦暴落
スルニ至リマシテ、國策ノ遂行ハ出來ナク
ナルノデアリマス、公債增發ニ依ル通貨膨
脹ガ激シクナレバ、貨幣ノ對內價値ノ下落
卽チ物價ノ暴騰トナリ、輸出品ノ「コスト」
ハ非常ニ高クナリマシテ、隨テ輸出ハ阻碍
サレ、輸入ハ多クナツテ、遂ニ貨幣ノ對外
價値、卽チ爲替水準ガ維持サレナイノデア
リマス、斯ノ如ク致シマシテ惡性ノ三
フレーション」ハ滔々トシテ我ガ財政經濟
ヲ脅威スルニ至リマス、此ノ時ニ於テハ數
字上ノ豫算ハアツテモ、實際豫算ヲ遂行ス
ルコトハ出來マセヌ、況ヤ其ノ豫算ノ內容
ニ盛ラレマシタ東亞ノ新秩序ノ建設ノ如キ
ハ思モ寄ラナイコトニナツテ參リマス、斯
ノ如キコトハ斷ジテアツテハナリマセヌ、
官民一致之ヲ未然ニ防ガナケレバナリマセ
又、今ヤ豫算ハ飛躍致シマシテ、昭和十二
年五十二億、昭和十三年八十四億、昭和十
四年ニ至リマシテ遂ニ九十四億ヲ突破致シ
マシタ、然ルニ海軍ニ於キマシテハ、十九
年度マデ十七億万圓ノ第四次補充計畫ガ全
貌ヲ現ハシテ居リマスノデアリマスガ、陸
軍ニアリマシテハ、十四年度ニ於キマシテ
ハ頭ノミヲ出シテ、胴體ハ現ハレテ居ナイ、
近キ將來ニ於キマシテ相當多額ノ胴體ガ現
ハレテ來ルデアラウト推察サレルノデアリ
Wく、隨テ九十四億ハ斷ジテ減少スルコト
ハナイト考ヘラレルヤウナ趨勢デアリマス、
大體此ノ金額ハ公債ト租稅トデ賄ツテ行カ
ナケレバナリマセヌ、公債ガ飽和點ニ達シ
マスナラバ、市場カラ通貨ガ囘收シ切レナ
クナリマシテ「インフレーション」ハ進行致
シマス、之ニ「ブレーキ」ヲ掛ケルニハ、租
稅政策ガ最モ重要ナル役割ヲ果スノデアリ
やっ、增稅バ物價ヲ上ゲル作用ヲ持ツテ居
ルノデアリマスルガ、此ノ增稅ヲ上手ニヤ
レバ、購買力ヲ奪ツテ「インフレーション」
ヲ阻止スル所ノ效力ガアルノデアリマス、
公債政策ヲ偏重シテ「インフレーション」ガ
來ツテ物價ガ暴騰致シ、財政經濟ヲ破壞ス
ル害毒ハ、增稅ニ依ル物價高ガ國民生活ニ
及ボス影響ヨリ遙ニ重大ナル恐ルベキモノ
ガアルト云フコトハ、斷ジテ疑ハナイ所デ
アリマス(拍手)政府モ思ヲ玆ニ致サレマシ
テ、今囘ノ增稅案ノ提案ニナツタコトデア
ルト思ヒマスルガ、大體委員長カラ御報告
ガアリマシタガ、簡單ニ其ノ大要ニ付キマ
シテ批評、討議シテ見タイト思ヒマス
戰爭ハ民衆ノ血ノ犠牲ニ依ツテ行ハレ、
戰爭デ儲ケタ者ハ之ニウント租稅ヲ負擔セ
シムルト云フコトハ當然デアリマス、此ノ
點カラ觀ジマシテ、臨時利得稅ニ對シ政府
ガ之ヲ取上ゲテ、乙種ニ付キマシテハ法人
ハ三割三分ノ引上ゲ、百分ノ四十ノ增稅ヲ
行ツタコトハ、洵ニ石渡大藏大臣ノ卓見デ
アルト私ハ稱讃セザルヲ得ナイノデアリマ
ス、英吉利ニ於テハ百分ノ八十マデ臨時利
得稅ヲ取ツタコトガアリマス、サウシテ此
ノ臨時利得稅ノ觀念カラ申シマスナラバ、
乙種ガ今日中心トナツテ引上ゲラレテ居リ
マスルガ、甲種ハ輕微ナル引上ゲデアリマ
スケレドモ、甲種ヲ何故除ケナカツタカト
云フ點ニ付キマシテ、多少私共モ疑問ヲ持
チマシタガ、大藏大臣ノ御答辯ニ依リマシ
テ、甲種ヲ置イタコトニ付キマシテハ了解
致シタノデアリマス、卽チ今日ノ景氣ハ歐
羅巴大戰ト違ツテ、平時ヨリ直チニ戰時體
制ヲ執ツタノデハナイ、平時經濟カラ準戰
時體制ニ移リ、而シテ戰時體制ニ移ツテ參
ツタノデアリマシテ、二段ノ階段ヲ經タモ
ノデアリマスルカラ、旣ニ昭和四、五、六
年ニ比シマシテ、八九、十年頃ニハ、高
橋財政其ノ宜シキヲ得マシテ、相當ニ日本
ノ軍需工業其ノ他ハ殷賑ノ狀況ニ向ツテ居
ツタノデアリマス、更ニ其ノ上ニ十二年、
十三年、十四年トナツテ參リマシテ、戰時
體制ニ於キマシデ、ソコニ又殷賑ナル產業
ガ勃興シテ來タノデアリマスルカラ、此ノ
二ツノ階段ヲ經テ起ツテ來タ此ノ理由ノ下
ニ、甲種ノ臨時利得稅ヲ置クト云フコトハ
已ムヲ得ナイコトデアラウト考ヘマス、若
シ之ヲ取拂ツタナレバ、最近新興シテ來タ
所ノ產業ト云フモノハ、甲種ニ屬スル基礎
ノ固イ產業ニ脅威サレマシテ、到底立行カ
ナクナルデアラウト考ヘマス、併シ臨時利
得稅其ノモノノ觀念カラ考ヘマシタナラ
バ、十年前ヲ-卽チ昭和四、五六歩ノ·
如キヲ基準年度ト致シマシテ、ソレト當該
年度トノ利益ヲ對照致シマシテ、其ノ額ニ
課ケル如キハ、臨時利得稅ノ觀念カラ致
シマシテハ、聊カ以テ不合理ナ點ガアルノ
デアリマスカラ、昭和十五年ノ改正ニ於
キマシテハ、超過所得稅ノ中ニ織込ンデ、
此ノ不合理ヲ訂正スベキデアルト考ヘマス
次ニ個人ノ船舶及ビ鑛業ノ讓渡利得ニ關
スル點デアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ、
委員長ニ於キマシテモ詳細ナル報告ガアツ
タノデアリマスガ、此ノ個人ノ讓渡利得ハ
船舶、鑛業權ニ關シマス原案ハ、昭和十三
年ノ一月ニ遡及スルコトニナツテ居リマシ
ク、是等ハ戰爭ニ因ツテ巨利ヲ博シタモノ
デアリマスカラ、謂ハバ不勞利得デアリマ
シテ、社會正義ノ觀念カラ致シマシテモ、
之ニ遡及シテ課稅スルト云フコトガ、當然
是ハ臨時利得稅ノ精神ニ副フ所以デアルト
私ハ考ヘルノデアリマスガ、又飜ツテ考ヘ
テ見マシタナラバ、其ノ讓渡行爲ヲ行ツテ
利得ヲ得タ時ニハ、此ノ法律ノ制定ハナイ
ノデアリマス、之ニ對シテ遡ツテ課稅スル
ト云フコトハ、幾分カ酷ナ點ガアリマシテ、
殘酷ナヤリ方デアリマスカラ、玆ニ今年一
月一日マデニ遡及スルコトト修正サレマシ
タコトハ先ヅ已ムヲ得ナイコトデアラウ
ト考ヘマス、併シ折衷案其ノモノハ不徹底
デアリマス、ケレドモ已ムナク贊成致シマ
ス、尙ホ本案ニハ今年四月一日以後原始取
得ニ依ルモノニ對シマシテハ、之ニ依ツテ
利得アルモノニモ課稅シナイ方針デアリマ
シタガ、此ノ精神ハ本年ノ一月マデ遡及セ
シムベキデアリマス、又讓渡行爲アル都
度都度ニ課稅スルコトニナツテ居リマスガ、
是モ亦此ノ修正ノ方ガ結構デアルト考ヘマ
ス、臨時利得稅ノ精神カラ論ジマスナラバ、
船舶、鑛業權ノミニ限ルト云フコトハ、私
ハ少シ不徹底デハナイカト考ヘマス、株式
ニ依ツテ暴利ヲ貪ツタルモノ、土地ノ暴騰
ニ依ツテ暴利ヲ貪ツタルモノ、是等ニ對シ
マシテモ、課稅スベキガ私ハ當然デハナイ
カト考ヘルノデアリマス(拍手)然ルニ本案
ニ於テ之ヲ漏シテ居ル點ガ、甚ダ遺憾ニ堪
ヘナイノデアリマス
其ノ次ニ利益配當税デアリマスガ、是ハ
從來七分ヲ超ユルモノニ對シテ一割ヲ課ケ
テ居ツタノデアリマスガ、此度一割ヲ超ユ
ルモノニ對シマシテ一割五分ノ稅率ヲ取ル
コトニナリマシタカラ、洵ニ結構ナ立法デ
アリマスガ、法人ノ社外ニ流出スル所ノ金
ハ利益配當ト重役ノ賞與ト此ノ二ツデア
リマス、利益配當ノミニ課稅致シマシテ、
何故重役ノ賞與ニ對シテ課稅セヌノデアル
カ、私共ハ此ノ點ニ付テ委員會ニ於キマシ
テ大藏大臣ニ質問ヲ致シマシタケレドモ、
完全ナル答辯ヲ得ラレナカツタノハ洵ニ遺
憾デアリマス、是等ハ來ルベキ十五年ニ於
ケル所フ稅制ノ整理ノ時ニ、當然改正スベ
キ點デアルト考ヘマス
其ノ他國債利子ニ對スル課稅、〓涼飮料
稅ノ課稅、砂糖消費稅ノ課稅等ニ付テハ玆
ニ省略致シマス
其ノ次ニ物品切手ニ付キマシテハ、從來
ハ三錢ノ印紙稅ヲ課シテ居リマスルガ、此
度階級定額稅率ニ改メマシタ、是ハ合理的
デアリマス、然レドモ一方ニ於キマシテ
ハ地方稅デアル所ノ商品切手發行稅ヲ整
理シテナイト云フコトハ、卽チ商品切手ニ
對スル二重ノ課稅トナツテ居ル點ハ洵ニ遺
憾デアリマス
其ノ次ニ物品稅デアリマスルガ、此ノ物
品稅ハ御承知ノ通リニ大衆フ課稅トナリマ
スル石鹸及ビ齒磨、綠茶等ヲ削除致シ、更
ニ進ンデ洋服ニ對シマシテモ「サラリーマ
ン」階級ノ爲ヲ思ツテ、六十五圓ガ免稅點
デアリマシタモノヲ七十圓ニ修正シタコト
ハ、修正ノ方ガ宜シイノデアリマシテ、原
案ハ其ノ物品稅ノ目的ガ奢侈ヲ以テ重課ス
ルト云フ意味カラ出タノデアリマシテ、最
早齒磨ヲ入レ、石鹼ヲ入レ、更ニ進ンデ洋
服ノ七十圓以下ノ物ニマデ課スルニ至リマ
シタナラバ、奢侈ノ限界ヲ超エテ、生活ノ
必需品マデ入ラントシテ居ルコトハ、物品
稅トシテ最早此ノ稅ガ行詰リニナツタコト
ヲ證明シテ居ルモノデアリマス、本稅ハ來
ルベキ十五年ニ於キマシテハ賣上稅ノ形ヲ
以テ再ビ出直シテ來ルカ、何レカノ方面ニ
於キマシテ大囘轉ヲ爲サナケレバナラヌト
私共ハ考ヘル次第デアリマス
其ノ次ニ建築稅デアリマスルガ、一万圓
以上ノ建築價額ノ物ニ對シテ一割ノ稅ヲ課
スルコトトナツテ居リマスルガ、是ハ年收
僅ニ二百万圓、サウシテ稅金ノ性質ハ地方
稅的ノモノデアル、殊ニ六大都市稅デアリ
マシテ、田舍ノ稅デハナイ、而シテ此ノ建
築稅タルヤ、一方ニ於キマシテ地方稅タル
不動產取得稅ニ付テ何等ノ整理ヲシテ居ナ
イノデアリマスカラ、住宅ニ關シテハ二重
ニ課カルコトニナル、更ニ臨時資金調整
法ト云フモノガアツテ、一万圓以上ノ住宅
ヲ建テルトスレバ、臨時資金調整法ノ命令
ヲ改正スレバ、十分ニ是ハ止メ得ラレル稅
デアリマス、ソレニモ拘ハラズ建築稅ヲ設
ケタ所以ハ、私共ハ諒解スルニ苦シミマス、
大藏大臣ノ答辯デハ木材ノ節約デアルト言
フガ、私ノ今申上ゲマシタ理由ニ依リマシ
テ、木材ノ節約ハ十分ニ出來ルノデアルト
云フコトヲ私ハ確信致シマス、住宅難ノ爲
ニ、厚生省ニ於テハドン〓〓政府資金ヲ出
シテ住宅ヲ建テテ居ル時ニ當リマシテ、此
ノ建築稅ヲ設ケル如キハ、聊カ其意ヲ解セ
ナイ所デアリマスルケレドモ、免稅點ガ一
万圓デアリ、而シテ政府ニ於キマシテモ、
亦相當ニ此ノ運用ヲ心配スルト云フコトデ
アリマスルカラ、私共ハ贊成シク所以デア
リマス
更ニ其ノ次ニハ遊興飮食稅デアリマス
ガ、此ノ遊興飮食稅コソ重課スベキモノデ
アリマス、之ニ對シマシテハ少シク不合理
ナ點ガアリマスルケレドモ、現在ニ於ケ
ル殷賑產業ノ結果、何處ノ待合、料理屋等
ニ行キマシテモ、異常ナル繁榮ヲ見テ居ル
點カラ考ヘマシテ、之ヲ地方稅カラ持ツテ
來テ中央稅ニ移スト云フコトハ、當然ノ處
置デアルト考ヘマス、併シナガラ玆ニ遊興
稅トシテ不合理ナノハ、藝妓ノ花代ニ對シ
テハ二割ノ稅ヲ取リ、娼妓ニ對シテハ一割
デアル、娼妓ト藝妓トヲ一〓ニ揚ゲタ時ニ
ハ、一方ニハ一割ノ稅デ、一方ニハ二割ノ
稅ガ課セラレル、ヲカシナヤリ方デアル、
ソレカラ又玉ノ井ノ如キハ無稅デアルト云
フコトハ是ハ不合理デ、大口君ガ先頭ニ立
ツテ玉ノ井課稅論ヲ唱ヘタ所デアリマス
ガ、是等ノコトヲ除イテハ、本稅ハ當然此
ノ時局ニ於テハ課スベキモノデアルト思ヒ
マス
更ニ私共ハ此ノ稅全體ヲ通覽シテ見マス
ルノニ、ドウ云フ點ガ缺點デアルカト申上
ゲマシタナラバ、地方稅カラ國稅ニ移ス所
ノ方針ガ定ツテ居ナイ、委員長モ報告セラ
レマシタ如クニ、昨年ハ入場稅ヲ國稅ニ移
シ、本年又遊興稅ヲ國稅ニ移スヤウナコトヲ
致シマシテ、少シモ此ノ間ニ方針ガナク、更
ニ物品稅ニ於キマシテハ、自家用自動車税ト
物品稅ニ於キマシテ、又自動車ニ對シテ稅金
ガ課カツテ居ル、ソレカラ商品切手ニ於テモ
先刻申上ゲマシタ通リニ、商品切手稅ト商品
切手發行稅ガ二重ニ課カツテ居リマス、況
ヤ建築稅ニ於キマシテハ、免稅點以上ノ建
築ニ對シマシテハ、不動產取得稅ト建築稅
ガ二重ニ課カリ、免稅點以下ノ建築ニ對シ
マシテハ、不動產取得稅ニ對シテ何等ノ整
理ヲシテ居ナイト云フ點ニ付キマシテハ、
免稅點ヲ設ケタ趣旨ニ反スル所以デアルト
私ハ考ヘマス、更ニ土地ノ交換ニ當リマシ
テ、國稅デアリマスル登錄稅ヲ免除シテア
リマスルケレドモ、不動產取得稅ヲ免除シ
テナイノデアリマスルカラ、免稅ノ徹底ヲ
缺イテ居ル點ハ遺憾デアリマス、ソレカラ
此ノ物品稅ヲ設ケタコトハ、支那事變特別
稅ノ關係カラ考ヘテ見マシタナラバ、租稅
ノ體系ノ紛淆ノ端〓ヲ來シテ居ル所デアリ
マス、ソレハ物品稅ノ中デ〓酒ニ向ツテ課
稅致シ、又一方ニ於テハ造石稅ニ依ツテ〓
酒ニ對シテ課稅致ス、同ジ酒ニ對シマシテ
モ、雙方ニ依ツテ課稅スルハ體系ヲ紊ルモノ
デアルト考ヘマス、ソレカラ消費稅ニ依ツ
テ課スベキ飴ニ對シマシテモ、本法ニ依ツ
テ消費稅ヲ起サズニ、物品稅ニ依ツテ賦課
シテ居ルト云フコトハ、是亦體系ヲ紊ルモ
ノデアルト考ヘマス、是等ノ點モ亦十五年
ノ改正ニ於キマシテ當然政府ハ改正ヲ加フ
ベキモノデアルト考ヘル次第デアリマス
更ニ此ノ度最モ政府ガ力ヲ入レラレマシ
テ、洵ニ稱讃ニ値スベキ問題ハ、生產力擴
充ニ關スル恩典デアリマス、法人ノ留保所得
ニ對シ四割ヲ超エタルモノヲ輕減致シタ、
是等ハ洵ニ結構ナヤリ方デアリマシテ、其
ノ次ニ法人ノ最高課稅限度ヲ改メテ、留保
金額ガ多クナレバナル程「オートマチック」
ニ稅金ヲ引下ゲルヤウナ方法ヲ執ツテ居リ
マスコトハ、是亦良策タルヲ免レマセヌ、
更ニ重要物產製造業者ニ對シマシテ、
三年間所得稅及ビ營業收益稅ノ免稅ヲ
爲シテ居リマス、舊式ノ方法ニ依ツテモ設
備ヲ改善致シ、或ハ更ニ進ンデ新式ノ方法
ニ依リマシテ設備ヲ改善增加致シマスナラ
バ、之ニ免稅ヲ致シテ居リマスルコトハ、
生產力擴充ノ點カラ申シマシテ洵ニ結構ナ
方法デアリマス、國庫ノ補助金ニ對シマシ
テハ是ハ從來法人ノ利益ト見テ居リマシ
タノデアリマスガ、法人ニ於テ之ヲ損失ト
認メマシテ、以テ是亦生產力擴充ニ對シテ
非常ナル貢獻スル所ガアリマス、更ニ〓究
費ニ對シマシテモ損失ト看做シマシテ、稅
金ヲ課ケナイヤウナ方針ヲ執ラレマシタコ
トハ洵ニ結構ナコトデアリマス、次ニ減價
償却ニ付キマシテ非常ナル恩典ヲ與ヘ、工
場用建物、機械、船舶等、三年間三分ノ一
ニ付特別ノ均等償却ヲ認メ、外ハ普通ノ
償却ヲ認メテ居ルノデアリマスルガ、是等
ハ產業ノ基礎ヲ鞏固ニスル所以デアリマシ
テ、洵ニ結構ナヤリ方デアルト考ヘマス、
土地ノ交換ニ付キマシテ登錄稅ヲ免除シタコ
トモ、亦農產物ノ生產擴充ノ上ニ於キマシ
テハ非常ニ效果ノアルコトデアルト考ヘマ
ス、唯是等ノ論點カラ致シマシテ、委員長
モ先刻報告サレマシタ如クニ、此ノ法案ガ
練ラレル上ニ於テ、何故ニ二億圓ト云フ數
字ガ出テ來タカ、此ノ點ニ付キマシテ私共、
大藏大臣ニ質問致シマジタケレドモ、二億圓
ト云フ數字ガ出テ來マシタ原因ニ付テハ
到頭分ラズニ濟ンデシマツタノデアリマス、
稅法ヲイヂツテ居レバ一一億圓ガ玆ニ飛ビ出
シテ來タ、大體斯ウ云フヤウナコトデアリ
マシテ、國民ニ對シテ二億圓ト云フ大キナ
租稅ヲ負擔セシムル所ノ增稅デアルナラバ、
其ノ根據ニ付テ明確ナル所ノ標準ガナケレ
バナラヌト考ヘマス、財政計畫ト伴ツタモ
ノデモナケレバ、又公債ノ利息ニ充當スル
モノデモナイ、唯本案ノ目的ハ奢侈ノ抑壓
ト負擔ノ均衡デアル增稅デアルカラ、增收
ハ減ツテ居ルガ、增收ガ問題デハナイ、斯
ウ言ハレマシタノデアリマシテ、益〓二億圓
ノ金ガドウ云フ譯デ出テ來タカト云フコト
ニ付テ、殆ド不明ノヤウナ狀態デアリマシ
テ、大藏省ト致シマシテハ、昭和十四年ニ於
テ根本的稅制改革ヲ樹テ、以テ之ヲ直チニ
此ノ議會ニ提出スルコトガ當然デアツタト
考ヘルノデアリマスガ、此ノ機會ヲ逸シタ
コトハ洵ニ遺憾ニ堪ヘナイ次第デアリマス、
ソレハ何故カト申シマスト、本年度ニ於テ
根本的改正ヲ爲スベキデアルト云フコトハ、
前ニ豫見サルベキコトデアツタト私ハ考
くり、昨年一月近衞前總理大臣ハ蔣介石
政權ヲ對手トセズト聲明致シ、去年七十三
議會ノ閉會後陸軍大臣ガ更迭シ、現板垣陸
相トナツテ長期建設ヲ宣傳サレマシテ、蔣
介石政權ヲ徹底的ニ膺懲スルト云フコトヲ
叫バレタ、此ノ時ニ當ツテ大藏當局ハ戰時
租稅體制ヲ準備致シマシテ、長期建設ニ對
應スル所ノ租稅計畫ヲ樹テルト云フコト
ガ、私ハ當然デアツタト考へルノデアリマ
ス、(拍手)事玆ニ出ズシテ、大藏大臣ノ頭
ノ中ニ、戰爭中ニハ稅制改革ハ出來ナイト
云フ考ヲ持ツテ居ルコトハ、洵ニ遺憾ニ堪
ヘナイ次第デアリマス、戰爭ノ刺㦸ガアレ
バコソ大キナ稅制改革ガ出來ルノデア
ラウト考ヘル、戰爭ノ刺㦸ガナクナツタ時
ニ於テ、稅制改革案ヲ出シテ來タ時ノ其ノ
紛糾ハ思遣ラレルノデアリマス、此ノ二億
万圓ノ僅カナ增稅デアツテサヘモ數日ヲ費
シテ、紛糾ニ紛糾ヲ重ネタ上デナケレバ纏
ラヌト云フコトヲ考ヘマシタナラバ、大增
稅計畫、大稅制計畫ノ時ニ於キマシテハ、
ドウシテモ戰爭ノ刺㦸ト國民ノ緊張ト、此
ノ二ツガナケレバ私ハ其ノ改革ハ斷ジテ出
來ナイト考ヘル次第デアリマス(拍手)此ノ
機會ヲ逸サレマシタコトハ洵ニ遺憾ニ堪へ
ナイ次第デアリマスルガ、旣往ハ追フベカ
ラズ、將來ハ此ノ點ヲ十分ニ留意サレマシ
テ、速カナ機會ニ於キマシテ稅制ノ改革ヲ
樹テラレンコトヲ希望致シマスガ、戰時財
政ヲ賄フニ當リマシテ、大藏大臣ハ二億ハ
少イト言ハレタ、サウシテ昭和十二年モ增
稅致シ、十三年モ增稅致シ、十四年モ增稅
致シテ居ル、之ヲ公債ニ對スル割合ヲ見マ
スナラバ、成程大藏大臣ノ言ハレルヤウニ
餘リ少イトモ言ヘナイ、日本ノ租稅ト公債
ガ戰費支辨ノ割合ハ、今日ノ狀態ニ於テハ相
當ナ割合ヲ以テ出來テ居ルノデアリマス、
昭和十三年ハ租稅ハ公債ニ對シテ四割一分
二厘デアリ、十三年ハ三割八分八厘デアリ
マシテ、十四年ニハ三割九分四厘見當ニナ
ツテ居リマス、今日ノ狀態ニ於テハ租稅ト
公債トノ割合ハ、大體割合ガ取レテ居ルト
言ツテ宜シイ、之ヲ歐羅巴大戰ノ狀況ニ比
較シテ見マスナラバ、亞米利加ニ於キマシ
テハ租稅ノ公債ニ對スル割合ハ三割七分、
英吉利ニ於テハ三割五分デアリマシデ、米
國及ビ英國ハ少クトモ三割五分ト云フ點
ハ、ドンナコトガアツテモ增稅ニ依ツテ戰
費支辨ヲヤラナケレバナラヌト云フ大決
心ヲ以テヤツダ、公債政策ノミニ重點ヲ置イ
テ戰費支辨ヲヤリマシタ獨逸ハ、僅ニ一割
三分デアリ、佛蘭西ガ一割八厘デアリマシ
テ、一割八厘ノ國ト一割三分ノ國ニ於キマ
シテハ、滔々タル「インフレーション」二見
舞ハレマシテ、アノ慘憺タル狀況ヲ經驗シ
マシタコトハ、皆サンモ十分ニ御承知デアル
ト私ハ考ヘマス、此ノ意味カラ考ヘマシテ、
先進國デアル所ノ英吉利、亞米利加ガ公債
ノ三割見當ヲ租稅ニ盛ツタ如ク、此ノ戰費
ノ賄方ニ付キマシテハ、日本ニ於キマシテ
モ少クトモ三割ハ下ラヌヤウナ範圍ニ於キ
マシテ、將來ニ於テ此ノ政策ヲ堅持シテ行
カナケレバナリマセヌ、サウ致シマスナラ
バ、是ニ於テ十二年度モ增稅致シ、十三年
度モ增稅トナリ、更ニ十四年度モ增稅トナ
リ、ソレカラ先ニ私ガ申上ゲマシタ如ク
ニ、此ノ豫算ノ膨脹ハ少クトモ九十四億ヲ
下ラヌト云フコトニナリマスナラバ、將來
ニ於ケル增稅ト云フコトヲ考へ、又惡性ノ
「インフレーション」防止、購買力ノ剝奪ト
云フコトモ考ヘマシテ、此ノ點ニ付キマシ
テハ十分ナル所ノ用意ト〓究ヲ以テヤラ
ナケレバナラヌコトデアルト私ハ存ジマ
ス、今日ノ統制經濟ノ世ノ中ニ於キマシテ、
增稅、稅制ガ如何ナル使命ヲ持ツテ居ルカ
ト申シマスナラバ、玆ニ消費ガ徹底的ニ節
約セラレ郵便貯金、其ノ他貯蓄ガ徹底的ニ
行ハレマシタナラバ、惡性ノ「インフレー
ション」ハ起ラヌノデアリマセウ、又生產及
ビ分配、消費ニ至ルマデノ過程ニ於キマシ
テ、統制ガ徹底的ニ行ハレマシタナラバ、
「インフレーション」ハ起ツテ來ナイノデアリ
マセウケレドモ、今日ノ場合ニ於テハ左樣
ニハ參リマセヌ、統制經濟ハ失敗デアリマ
シテ、此ノ間ニ於キマシテ「インフレーショ
ン」ヲ阻止致シ、「ブレーキ」ヲ掛ケル點ニ
付キマシテハ、增稅ヲ措イテ外ニ途ガナイ
ト私ハ確信スル次第デアリマス、政府ニ於カ
レマシテモ亦此ノ點ニ十分ニ留意セラレマ
シテ、昭和十五年ヨリ先ノコトニ思ヲ致シ、
稅制ヲ改革セラレンコトヲ御注意致シマス、
卽チ直接稅體系ヲ整理スルコト、所得稅ニ
於テハ法人ト個人トノ課稅、個人ニアツテ
ハ第二種ト第三種トノ問題、動產ト不動產
ノ負擔ノ均衡ノ問題、消費稅ト流通稅ヲ如
何ニ調整セシムルカ、物品稅ハ先申シマシ
タ通リ一定ノ限界ヲ最早超サントシテ居ル
ノデアリマスカラ、一大轉囘ヲ期シテ賣上
代ニ持ツテ行ツテ宜イカ惡イカ、是等ノ點
モ御〓究ヲサレ、更ニ國稅ト地方稅ノ關係
デアリマスルガ、今ヤ地方ニハ獨立ノ財源
ヲ與ヘテ宜イカドウカ、戶數割、雜種稅、
是等ヲ如何ニスルカ、殊ニ地方財政補給金
制度ヲ如何ニ確立スルカ、之ニ對シマシテ
モ十分ナル確定財源ヲ與ヘルコトニ付キマ
シテ、十分ニ御〓究ヲサレ、殊ニ義務〓育
費國庫負擔、警察費ノ連帶支辨財政補給金、
技術員ノ補助等、是等ヲ一括シテ十分ニ整
理致シマシテ、中央地方ヲ通ジマシテ、完
全ナル稅制ノ改革ヲ行ハレンコトヲ希望ス
ル次第デアリマス(拍手)
最後ニ私ハ稅務官吏ノ待遇ヲ厚クスルト
共ニ、其ノ肅正ヲ斷行致シマシテ、將來ニ
於ケル所ノ態度心構ニ付テ、大藏大臣ハ深
甚ナル注意ヲ拂フベキデアルト考ヘルノデ
アリマス、稅務官吏ガ薄給デアツテ氣ノ毒
ナ狀態デアリ、八十圓ヤ百圓位ノ月給デア
ツテ、何百万圓モノ營業收益稅ノ査定ヲ爲
ス、玆ニ惡魔ガ附込ンデ來ル原因ガアルノ
デアリマス、況ヤ遊興飮食稅ガ國稅トテリ、
法律ニ依ツテ質問、帳簿檢査權ガ與ヘラレ
ル場合ニ於キマシテハ、色々ノ綱紀紊亂ノ
端〓ガ開カレントスル虞ナシトシナイノデ
アリマス、是等ノ點ニ鑑ミマシテ、今後ニ
於キマシテ增稅ニ次グニ增稅ヲ以テスルノ
場合ガアツタ時ニ於キマシテハ、苛斂誅求
ニ趨ラナイヤウニ、民衆ヲシテアノ經濟警
察ニ對スル如キ怨嗟ノ聲ヲ發セシメナイヤ
ウニ、民心ヲシテ激怒セシメナイヤウニ周
到ナル注意ヲ爲サネバナラヌ、民心ガ離レ
マシタナラバ、東亞秩序ノ建設ノ如キ大目
的ハ斷ジテ達成スルコトガ出來マセヌ、此
ノ經濟警察ト稅務官吏ノヤリ方、此ノ二ツ
ガ民必ヲ離レサスカ離レサセヌカニ、最モ
重大ナル關係ヲ有スルモノデアルト私ハ考
ヘイ是等ノ點ニ思ヲ致サレマシテ、深甚
ナル注意ヲ以テ稅法ヲ執行サレンコトノ一
大警告ヲ私ハ大藏大臣ニ發スル次第デアリ
マン、以上ヲ以テ私ガ委員長報告ニ贊成ス
ル所以ヲ述ベタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 森田福市君
〔森田福市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=14
-
015・森田福市
○森田福市君 私ハ政友會ヲ代表致シマシ
テ、委員長報告ニ意見ヲ述べテ贊成ヲナサ
ントスル者デアリマス、今日ノ政府ノ增稅
金額ハ、先程委員長ナリ、中島君カラ述ベ
ラレタ通リ二億圓デアリマス、私ハ此ノ增
稅ニ對シテ多クノ意見ヲ持ツテ居リ、此ノ
委員長報告ノ修正ニ對シテモ滿足スル者デ
ハアリマセヌ、併シナガラ時局柄委員長報
〓ノ修正程度ノ承認ハ、已ムヲ得ナイトス
ル意見ヲ申上ゲテ置キタイト思フノデアリ
マス
一體九十億圓カラノ歲出ヲヤル政府ガ、
其ノ收入ノ一端トシテ二億圓ノ增稅ヲスル
コトハ、決シテ國家ノ爲ニモ政府ノ爲ニモ
取ル所デナイト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、九十億カラノ消費ヲスル所ノ政府ノオ
臺所ヲ賄フ上ニ於テ、二億圓ノ稅金ヲ取ツ
テ、九十億圓ニ對スル物ノ上リヲ見テ行ク
ヨリ、九十億圓使フ金ヲ、二億圓以上少ク
買ヘルヤウニ、物價ノ低下政策ヲ執ルベキ
モノデアツタト私ハ考ヘルデアリマス、今
二億圓ノ增稅ヲヤツテ、國家國民ガ消費ス
ル物價ハ、恐ラク其ノ何倍モ私ハ高クナル
モノデアラウト考ヘラレルノデアリマス、
直接增稅ヲヤツタモノダケノ物價ヲ上ゲル
ト政府ハ言ウテ居リマスガ、從來ノ慣例ニ
徴シテ見マシテモ、增稅ヲシナイモノノ物
價マデ勢ヒ道連レトナツテ上ツテ行クノデ
アリマス、サウ云フコトニ思ヲ致シテ見マシ
タナラバ、政府ハ此ノ際低物價政策ヲ執ル意
味カラ申シマシテモ、物價ノ上ルヤウナ增
稅政策ハ執ラズ、執ラザルノミナラズ、自
分ノ所デ消費スル九十億圓ノ買物ヲスル上
ニ於テモ物價ヲ低メテ行ケバ、恐ラクハ二
億三億、五億ト云フ大キナ金ハ、私ハ節
約出來ルコトデアツタラウト思ハレルノデ
アリマスカラ、政府ハ來年稅制ノ大改革ヲ
ヤルト云フノデアリマスノデ、斯ウ云フ邊
ハ能ク御考ニナツテオヤリニナラヌトイカ
ヌト思フノデアリマス
ソコデ私ハ二三具體的ニ本案ニ意見ヲ述
ベテ贊成ノ意ヲ表シタイト思フノデアリマ
ス、政府ハ來ル十五年ニ於テハ中央地方ヲ
通ジタ稅制ノ大改革ヲヤルト云フノデアリ
マスガ、本當ニ其ノ大改革ヲヤラウトスル
ノデアリマスルナラバ、議會ガ閉ヂル〓々
ニ內閣總理大臣ハ大キテ稅制ノ審議會ヲ設
ケテ、サウシテ民間カラモ此ノ方面ノ能ク分
ツテ居ル人ヲ相當多數取入レテ、本當ノ審
議調査機關ヲ設ケテオヤリニナリマセヌト、
來年ノ一月再開〓々ニ御出シニナル此ノ稅
制改革案ガ、果シテ現在ノ大藏當局デ完全
ニ出來上ルモノトハ私ハ思ハヌノデアリマ
ス、殊ニ從來アル稅制調査會ト云フモノハ、
本當ニ私ハ名目ダケダト考ヘテ居リマス、
官僚ノ屬官ガ其ノ幹事案ト云フモノヲ作ツ
テ、稅制委員會ヲ招集シテ、タツタ一日デ
其ノ案ニ贊成ヲ求メテ、之ヲ直チニ議會ニ
提案ヲスル、而モ是ハ稅制調査會ノ議ヲ經
タノダト言ウテ居リマスガ、本當ハ稅制調
査會デハ、政府ガ出シタ所ノ幹事案ヲ十分
ニ讀ム期間スラ與ヘヌノデアリマスルカラ、
是デ完全ナル調査機關トハ何人モ申サレヌ
ノデアリマス、將來大キナ稅制ノ調査、或
ハ改革ナドシヨウト思ヘバ、官吏、民間ヨ
リ相當多數ナ調査委員ヲ選ンダ機關ヲ總理
大臣ハ設ケラレテ、サウシテ是等ガ集ツタ
時ニハ必ズ幹事案ヲ先ニ出サズニ、各々其
ノ委員ニ自分ノ信ズル案ヲ出サシテ、サウ
シテソレカラ材料ヲ得テ、稅制ノ改革ニ對
スル根本方針ヲ定メラレルコトガ宜シイ、
從來政府ノ內部ニアルアノ各種ノ調査機關
デハ本當ノ民間ノ意見ヲ採入レタ委員ガ
出テ居ルモノトハ私ハ考ヘラレヌノデアリ
マス、ドウカ此ノ稅制ノ大改革ニ當ツテハ、
政府ハソコニ意ヲ用ヒラレテ、眞劍ニ〓究
ヲシ、眞劍ニ國民ガ肯定スルヤウナ稅制ノ
改革案ヲ提案セラレンコトヲ私ハ切ニ希望
致シマス、殊ニ今日ノ稅制ノ複雜極マルコ
トハ、恐ラク徵稅當局ハ勿論、納稅義務者
ハドノ位稅ノ種類ガアルカト云フコトスラ、
全然知ラナイデアラウト思フノデアリマ
ス、試ミニ申上ゲテ見マスナラバ、一ノフ
工場、一ツノ會社ヲ作ツテ人ガ稅ヲ納メテ
行クノニハ、營業收益稅、第一種ノ所得稅、
超過所得稅、臨時利得稅、ソレカラ配當課稅、
或ハ第三種ノ所得稅ト云フヤウニ、恐ラク十
指ヲ折ツテモ一ツノ營業收益ニ對スル稅金ノ
勘定ガ出來ナイ程種々雜多ニナツテ居ル、是
等ヲ整理シテ、所得稅ヲ根幹トシテ行カナケ
レバナラヌコトハ申スマデモアリマセヌガ、是
等ノ稅制ヲ整理スルニ際シテハ、一ツノ收益
カラ五通リモ十通リモ種目ヲ設ケテ取ラヌ
デモ、一ツノ建テ方デ取ルヤウニシテ行ケ
バ、取ル方モ納メル方モ簡單デアルノデア
リマス、斯ウ云フ方面ニ意ヲ用ヒ、殊ニ消
費稅デモ二ツハ源泉課稅デアリマス、卽チ
酒ヲ飮ムト致シマシテモ、酒造稅ヲ納メル、
物品稅卽チ庫出稅ヲ納メ、今度ノ稅法ノ改
正ニ依ツテ又飮メバ飮食稅ヲ取ラレル、
ツノ酒ニ對シテ三ツ税金ヲ納メナケレバ
ナラヌト云フヤウナコトハ、如何ニモ複雜
多岐極ツテ居ルノデアリマスルカラ、本當
ニ來年稅制ノ整理ヲシヨウト思ヘバ、徵稅
スル方モ納稅スル方モ簡潔ニ出來ルヤウ
ニ、而モ一ツノ收益カラ取ルノデアルナラ
バ、簡單ニ取レルヤウナ稅法ノ建テ方ヲシ
ナケレバナラヌ、ナゼ今日斯ウ云フ風ニ複
雜ニナツテ來タカト云フト、政府ハ議會ノ
度每ニ稅制ノ改正案ヲ出シテ居ルノデアリ
マン、改善カ改惡カハ存ジマセヌガ、兎モ
角モ通常議會ノアル度每ニ稅制ノ改正案ヲ
出シテ、サウシテ一年每ニ繼足シヲヤツテ
行クノデアリマスカラ、是デハ徵稅當局ヤ
納稅義務者ガ分ラウ筈ガナイノデアリマス、
是ハ國民ニ對スル親切ヲ缺イテ居ルト云フ
ヨリハ、大藏當局ガ稅ニ對スル一定ノ信念
ト一定ノ基準ヲ持ツテ居ラヌ、斯ウ云フコ
トガ斯樣ニ年々稅ノ改正ヲ出シテ行クト云
フ結果ニナツテ來タノデアリマス(拍手)ド
ウカ政府ハ此ノ點ニ思ヲ致シテ、殊ニ有力
ナ閣僚デアル大藏大臣ガ、昭和十五年ニ
ハ提案ヲスルト言ハレタノデアリマスカ
ラ、間違ヒアリマスマイガ、總理大臣モ大
藏大臣ノ言明サレタコトヲ能ク御承知ノ上
デ、サウシテ大キナ調査機關ヲ設ケテ、言
行一致セラレンコトヲ切ニ希望シテ置ク次
第デアリマス
ソレカラ殊ニ其ノ稅制ノ改革ヲスル時
ニ、私ハ希望ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
スノハ、戰爭ノ爲ノ臨時利得ヲ納メルコト
ヲ國民ハ否ム者ハ一人モ居リマセヌ、併シ
ナガラ昭和四、五、六年ノ我國ノ最モ不景
氣ナ時ヲ基準ニシテ、サウシテ物價ノ高イ
今日トノ收益ノ差額ハ、ソレガ悉ク臨時利
得デアリ、戰時利得デアルトハ私ハ考ヘラ
レナイノデアリマス、昭和四、五、六年ノ
我國ノ最モ不景氣ナ時ニ基準ヲ置イテア
ル、最モ不景氣ナ時ニ基準ヲ置イテ、其ノ
時ノ利益ヨリ今日ノ利益ガ多カツタナラ
バ、甲種ノ臨時利得トシテ直チニ戰時利得
ト同樣ナ課稅ヲシ、今囘ノ增稅ニ於テモ是
等ニ對シテモ稅率ヲ上ゲラレタノデアリマ
ス、然ルニ國民ハ昭和四、五、六年ノ時ノ
暮シト今日ノ暮シトハ、生計費ニ大キナ差
ガアルノデアリマス、例ヘバ昭和四、五、
六年ノ時ニ一圓デ暮シテ居ツタモノナラ
バ、恐ラク今日ハ二圓以上ノ生活費ヲ要ス
ル、其ノ時ニ際シテモ、今ノ案デ行キマス
ルト、昭和四、五、六年ニ假リニ五千圓儲
カツテ居ツテ、今日六千圓儲カレバ、直チ
ニ臨時利得デアル、戰時利得デアルト云ウ
テ、千圓ニ別個ノ課稅ヲスルト云フコトガ、
公平デアルトハ考ヘラレナイノデアリマス、
ドウカ此ノ點ハ大藏大臣モ來年ノ改革ニ際
シテハ取止メルヤニ仄カサレタノデアリマ
スカラ、間違ヒナク此ノ甲種ノ基本年度ハ
速ニ撤廢セラレタイト云フコトヲ、私ハ强
ク主張致シテ置ク次第デアリマス
第三點ハ、今囘ノ增稅ノ中ニ、私ハマダ
マダ修正セラルベキモノガ多々アツタト思
ツテ居ルノデアリマス、獨リ石鹼、齒磨、
茶ノ三種ニ限ツタコトデハナイ、文房具、
運動具、果物等等幾多ノ修正サルベキモノ
ガアツタト考ヘルノデアリマスガ、今囘其
ノ點ハ修正ノ線カラ漏レテ居ルコトヲ私ハ
遺憾ニ思ヒマスルガ、來年ノ此ノ稅制ノ改
革ニ際シテハ、政府當局ハ本當ニ生活ノ必
需品デアツテ、國民保健衞生上必要デアル
ト思フヤウナモノハ是カラ取去リ、其ノ反
對ニ又必要デナイモノデ、今日課稅ニ漏レ
テ居ルモノハ幾多モアリマス、斯ウ云フ方
面ニ對シテハ新ニ課稅ヲ加ヘ、能ク愼重ニ
調査ヲシテ、斯ウ云フ方面ニ萬間違ヒナキ
ヲ期セラレンコトヲ私ハ希望致シマス
又遊興稅ノ施行ニ際シテモ、是亦完全ヲ
期シタモノトハ考ヘテ居リマセヌ、又修
正ノ要點モ悉クソレガ宜イトモ考ヘテ
居リマセヌ、何故ナラバ、次囘ノ時ニ政
府自ラ直シテ出シテ貰ヒタイト思フノ
ハ、遊興ト飮食トヲ混同シテ居ルカノ如
キモノハ、決シテ私ノ採ル所デハアリ
マセヌ、率直ニ申シマスナラバ、料理
屋ヤ旅館等デ藝者ヲ揚ゲテ飮食ヲスレバ稅
ガ課カリ、「カフェー」「バー」デ女給ヲ相手
ニ飮食ヲヤレバ、飮食ニ對シテハ課稅セヌ
ト云フヤウナコトハ、不公平モ亦極ツテ居
ルノデアリマスルカラ、此ノ點ヲ分離スル
ヤウニ、其ノ案ヲ來年ハ作ラレンコトヲ、
是亦强ク私ハ切望致シテ置キマス、又其他
ノ遊興稅或ハ飮食稅等ニ對シテモ幾多ノ註
文モアリ、公平ヲ缺イテ居ル點ガアルノデ
アリマスカラ、次囘ノ時マデニ整理ヲシテ
完全ナ案ニセラレタイコト、又是ガ徵稅ニ
對シテハ委員長カラモ報告ガアリマシタガ、
是等ノ納稅義務者デアリ、徴稅義務者デア
ル者ハ、其ノ殆ド八〇%マデガ婦女子デアリ
そく、是等ヲ相手ニ徵稅ヲシ、或ハ納稅ヲ
サスノデアリマスルカラ、稅務當局トノ間
ニ於テ頗ル親切丁寧ニ之ヲ指導ヲシテ、此
ノ稅ノ取立ニ萬遺憾ナカラシメラレンコト
ヲ私ハ希望シテ置ク次第デアリマス
又臨時利得稅ニ臨時租稅措置法、此ノ問
題ノ勅令ニ對シテ私ハ一言政府ニ申上ゲテ
置キタイコトガアリマスノハ、船舶及ビ鑛
業權ノ取得ニ對シテハ、昭和十四年ノ一月一
日ニ遡及ヲスルト云フコトニ修正ノ結果相
成ツテ居リマスルガ、一方臨時措置法ニ於
テ、是等ノ工場、船舶等ノ一番高イ時ニ立
テタモノノ特別銷却ハ、昭和十四年四月一
日ト云フ風ニ勅令要綱ノ案ヲ示サレテ居ル
ノデアリマスルガ、取ル方ノ稅ガ本年ノ一
月一日ニ遡レバ、特別銷却モ當然一月一日
ニ遡ルヤウニ勅令ノ案ノ變更ヲセラレンコ
トヲ、私ハ强ク希望致シテ置ク次第デアリ
マス
其ノ他幾多申上ゲタイト思フ點モアリマ
スガ、時間ヲ餘リ費シテハ御迷惑カト思ヒ
マスカラ、以上ヲ私ハ述ベテ、委員長ノ報
告ニ對シテ滿足ニアラザルコトヲ强ク申上
ゲテ、贊成ヲ致シテ置ク次第デアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 藤本捨助君
〔藤本捨助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=16
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017・藤本捨助
○藤本捨助君 昭和十四年度ニ於キマシテ
約一億八千七百万圓、平年度ニ於キマシテ
約二億圓ノ稅收ヲ以チマシテ其ノ內容ト致
シマスル、支那事變特別稅法外二件ノ改正
法律案ノ成立ガ、東亞ノ新秩序ノ建設ニ寄
與致シ、或ハ聖戰目的達成ノ爲ニ、既ニ
年有半ニ亙リ硝煙彈雨、生死ノ巷ニ轉戰致
シマシテ、今ヤ世界未曾有ノ戰勝、戰果ヲ
擧ゲマシタル所ノ、皇軍將兵ノ誠忠無比、
鬼神モ哭ク御勞苦ニ聊カナリトモ報ヒ、或
ハ護國ノ忠魂ヲ慰藉スル微衷トモナリマス
ルナラバ、洵ニ欣快之ニ過グルモノガナイノ
デアリマス、私ハ此處ニ第一議員倶樂部ヲ
代表致シマシテ、只今議題トナリマシタル
本案ニ對シ、委員長ノ御報告通り贊意ヲ表
スル者デアリマス、併シナガラ本案ノ內容
ヲ仔細ニ檢討致シマスレバ、御當局ノ御苦
心、御努力ニ對シマシテハ深甚ノ敬意ヲ表
シマスル者デアリマスケレドモ、只今同僚
議員ヨリ。適切ニ御檢討相成リマシタルガ如
ク、本案ニハ幾多ノ矛盾ヲ藏シ、隨テ本案
ノ使命ニ徵シマシテ、甚ダ微溫的デアリ、
糊塗的デアルト申サザルヲ得ナイノデアリ
マス、故ニ私ハ本案ニハ幾多ノ矛盾ヲ藏シ
マスルガ故ニ、之ヲ指摘シマシテ、御當局
ニ其ノ是正ヲ望ミ、或ハ微溫的デアリ、糊
塗的デアリマスガ故ニ、躍進日本ノ要請ニ
卽應スル所ノ根本的解決ヲ要望致ス次第デ
アリマス
先ヅ中央地方ニ通ズル稅制ノ根本的解
決ニ付キマシテハ、其ノ聲ヲ聞クヤ既ニ
久シキモノガアリマスルケレドモ、今ニ之
ヲ高閣ニ束ネテ其ノ實現ヲ見ズ、隨テ從來
ノ基本稅法ノ外ニ、或ハ臨時租稅增徵法或
ハ支那事變特別稅法等ノ彌縫的糊塗的、
積木細工的稅法ニ依據致シマシテ、此ノ乾
坤一擲ノ關頭ニ立テル千古未曾有ノ我ガ戰
時財政ニ對處致シテ居ルノデアリマス、鎖
ノ强サハ跪弱ナル一環ノ存在ニ依リマシテ
其ノ價値ヲ止揚サレマスルガ如ク、我ガ戰
時財政ノ跪弱性モ亦茲ニ胚胎セザルヲ得ナ
イノデアリマス、隨テ戰費ノ補完トシテ稅
收ノ增加ヲ求メテ之ヲ得ズ、負擔ノ均衡ヲ
圖ツテ之ヲ得ザルガ如キモ、主トシテ玆ニ
其ノ理由ノアルコトヲ發見スルノデアリマ
ス、私ハ此ノ矛盾性ニ付キマシテ、臨時利
得稅ニ付先ヅ私見ヲ申述ベタイト思フノデ
アリマス
戰費ヲ公債ヲ以テ支辨スルコトハ、何人
ニモ異論ハアリマスマイ、サリナガラ公債
ノ累增ハ人心ニ不安ヲ與ヘ、且又之ニ不消
化ノ部分ガアリマスレバ、卽チソレダケ通
貨膨脹ノ因トナリ、惡性「インフレ」ヲ招來
致シマシテ、必至的ニ通貨ノ購買力ヲ減退
セシムルノデアリマス、隨テ其ノ程度ニ於
テ公債ヲ事實上破棄スルト同樣ナル結果ヲ
招來致スノデアリマス、曾テ道義ノ沒シタ
ル「ソ」聯ガ、其ノ公債ヲ々ロ實共ニ破棄致シ、
或ハ敗戰獨逸ガ公債ヲ事實上破棄致シマシ
タ如キハ、姑ク之ヲ措クト致シマシテ、道
義日本ニ斯ノ如キコトガアツテハ斷ジテ許
セヌノデアリマス、故ニ私ハ戰費ヲ補完ス
ル新增稅ノ不可避ナルコトヲ是認致シ、其
ノ稅源トシマシテ臨時利得稅ヲ最モ其ノ妥
當ナルモノデアルト信ズルノデアリマス、
惟フニ戰時利得ハ產業人其ノ人ノ手腕力量
ノミノ結果デハアリマセヌ、時局ノ好影響
ノ結果デアリマス、皇軍百万ノ貴キ犧牲ノ
賜デアリマス、或ハ平和產業、犠牲產業ノ
反射的利益デモアリマス、然ルニ當局ハ之
ニ對シ法人ニハ百分ノ四十、個人ニハ百分
ノ二十五ノ課稅デアリマスルガ故ニ、其ノ
殘餘ハ殷賑商工業者ノ購買力ヲ急增セシメ
テ或ハ浪費トナリ、或ハ不急不用ノ消費
ニ轉ジマシテ、茲ニ物價ノ騰勢ヲ煽ツテ居
ルノデアリマス、私ハ此ノ戰時體制下ニ於
テ產業ノ振興、生產力ノ擴充ニ對シ、產業
人ノ偉大ナル功績ハ之ヲ認メ、又如何ニ戰
時體制下ニ在リマシテモ、凡ソ企業ニ於テ
ハ相當ノ利潤ハ之ヲ保證セネバナリマセヌ、
併シ千古未曾有ノ此ノ國難ヲ打開スル爲ニ、
痛マシクモ多數ノ犠牲ニ於テ生ジタル利得
中、其ノ多クヲ彼等ニノミ獨占セシムベキ
ヤ否ヤ、世界大戰ノ際資本主義ノ國英吉利
ニ於テスラ、其ノ軍需品法ニ於テ戰前三
箇年ノ利益ヲ超過スル利益ノ八割マデ徵收
シ得ル規定ヲ存シタコトヲ想起シマスル時
ニ、甚ダ疑ナキヲ得ナイノデアリマス、惟
フニ戰爭ハ一部國民ノ破產デアリ、或ハ一
部國民ノ金儲ケデアツテハナリマセヌ、或
ハ弱小ノ多數國民ガ戰爭ノ負擔ニ呻吟シテ
居ルニ拘ラズ、有力ナル少數國民ガ戰爭ニ
依リテ利得シ、或ハ鼓腹シ、況ヤ傍若無人
ニ之ヲ濫費シ浪費致シテ居ルヤウデアリマ
シテハ、戰時體制下ニ於テ最モ喫緊ノ急務
デアル國民ノ總親和、總努力モ、恰モ木ニ
緣リテ魚ヲ求ムルガ如ク、又難キ哉ト言ハ
ザルヲ得ナイノデアリマス、故ニ私ハ社會
正義ト負擔ノ均衡ノ觀念ヨリシテ、戰時利
得コソハ最モ之ニ重課スベキデアルト確信
致スノデアリマス、然ルニ政府ハ二重三重
ニ積ミ上ゲマシタル現行稅制ノ瑕疵ニ藉口
シ、或ハ「マキシマム」ノ例外ヲ擧ゲ、自慰
セラレマシテ之ヲ爲サズ、却テ稅收ノ增加
ヲ些々タル物品稅、消費稅等ノ增徵ニ之ヲ
求メントシテ居ルノデアリマス、斯ノ如キハ
正ニ所謂雜魚ヲ捕ヘテ呑舟ノ魚ヲ逃スノ類
ヒト言ハザルヲ得ナイノデアリマス、果シ
テ然リトスレバ社會正義ハ何處ニアリヤ、
祖國ノ爲ニハ生命ヲモ辭セザル我ガ國民ニ
シテ、今次ノ新增稅ニ對シテ今ヤ深刻ナル
財政鬪爭ヲ見テ居ルガ如キハ、一體其ノ責
ハ何處ニアリヤト言ハザルヲ得ナイノデア
リマス、故ニ政府ハ世界大戰中獨逸ノ最惡
ノ現象ガ戰時成金ノ簇出デアリシコトニ再
思三考シテ、速ニ稅制ヲ改革致シ、以テ時
局ノ要請スル社會正義ノ實現ニ邁進スベキ
デアルト確信スルノデアリマス(拍手)思フニ
健全ナル財政ハ、中央地方ニ散在スル複雜多
岐ナル租稅ヲ整理シ、統制シ、或ハ煩雜極マ
ル稅法ヲ統制シテ、初メテ之ヲ得ルノミナラ
ズ、國民ノ總親和、總努力モ之ニ依リテ其ノ
全キヲ得ルカラデアリマス、故ニ稅制ノ根本的
改革ハ、戰時體制下ナレバコソ却テ其ノ遲
疑逡巡ヲ許サナイノデアリマス、戰時體制
下ナレバコソ却テ其ノ怯懦怠慢ハ嚴ニ之ヲ
戒メネバナラナイノデアリマス、思フニ遲
疑逡巡ト怠慢怯懦トノ累積ハ、將來ニ大ナ
ル禍根ヲ貽シ、遂ニ國事ヲ誤マリ、國家ノ
運命ヲ危殆ニサヘ導クカラデアリマス、
玆ニ私ハ世界大戰中獨逸ノ藏相「ヘルフェ
リッヒ」ガ、戰時狀態ニ於テ大規模ノ統一的
獨逸稅制ノ根本的改革ヲ爲スハ無理デアル
ト稱シテ遲疑シ、遂ニ國事ヲ誤リ、後世識
者ノ指彈ヲ受ケタルコトヲ玆ニ想起致シ、
戰時體制下ノ故ヲ以テ、此ノ矛盾極マル稅
制ヲ遲疑逡巡シテ改正セザル政府ニ對シテ
御警告ヲ申上ゲタイノデアリマス
次ニ本案ノ矛盾性ニ付キマシテハ尙ホ色
色他ニアリマスケレドモ、先輩議員各位ヨ
リ適切ニ御檢討ガアリマシタカラ之ヲ省略
致シマシテ、其ノ次ニ增稅ト物價政策トノ
問題デアリマス、戰時體制下ニ於テハ、
物價ハ生產力ガ巨額ニシテ急增スル所
ノ需要ニ卽應セザルガ故ニ、或ハ通貨ノ
膨脹ニ依ル惡性「インフレ」ニ依リ、或
ハ新增稅ノ轉嫁ニ依リ、殊ニ時局產業者
ガ其ノ利得ニ對スル課稅ヲ囘避致サンガ
爲ニ之ヲ其ノ經營ニ逃避セシメ、隨テ會
社自體ガ、或ハ其ノ關係者ガ購買力ヲ急
增シテ、或ハ不急不要ノ消費トナリ、或ハ
無謀ノ浪費トナルコトニ依ツテ騰貴セザル
ヲ得ナイノデアリマス、其ノ何レノ場合タ
ルヲ問ハズ國民ニ重壓ヲ與ヘ、戰費ノ必要
額ヲ增大セシメテ、必至的ニ軍事豫算ノ膨
脹ヲ來スノデアリマス、加之物價ノ騰貴ハ
通貨ノ價値下落ト形影相伴ヒマスルガ故ニ、
公債ヘノ投資ヲ嫌厭セシメ、或ハ通貨ノ購
買力下落ハ、公債ノ所有者ヲシテ其ノ手持
公債ヲ賣急ガシムルガ故ニ、公債市價ヲ動
搖セシメマシテ、玆ニ戰費調達ノ最モ根幹
デアリマスル公債政策ニ一大支障ヲ與ヘル
ヤモ知レナイノデアリマス、故ニ戰費ノ補
完トシテ新增稅ハ不可避デアリマシテモ、
其ノ副作用デアリマスル物價騰貴ヲ抑制ス
ル適切有效ナル政策ヲ執ラネバナリマセヌ、
故ニ私ハ玆ニ總動員法十一條ヲ發動シ、或
ハ稅務行政機關ヲ强化致シマシテ、時局產
業會社ガ其ノ利得ノ課稅ヲ囘避セントシテ、
之ヲ經費ニ逃避セシムルコトヲ抑ヘ、或、
總動員法第六條ヲ發動シマシテ賃金締制ヲ
行ヒ、或ハ第十九條ヲ發動シマシテ、拔本
塞源的ナル物價統制ニ邁進シナケレバナリ
マセヌ、私ハ斯ノ如クシマシテ國民ノ總テ
ガ犧牲ニ任ジ、滅私奉公シマシテ臥薪嘗膽
致シマスナラバ長期戰ノ克服、所謂長期
建設ノ如キハ洵ニ易々タルモノデアルト信
ズルノデアリマス、而シテ玆ニ私ガ一言致
シタイコトハ、凡ソ國家ニ盡スノ途ハ其ノ
職場ハ違フカモ知レマセヌケレドモ、滅私
奉公ノ至誠ヲ捧ゲマスナラバ變リガナイト
思フノデアリマス、故ニ爵位或ハ勳等、位
階ノ如キ、普キ聖恩ノ優渥ハ之ヲ獨リ軍人
又ハ官吏等ニノミ限ラズ、若シモ國民ノ模
範トスルニ足ル納稅者デアルナラバ、或人
產業人デアルナラバ、或ハ中小ノ商工業者
ニ、或ハ農村ニ、漁村ニ、或ハ鑛山ニ於テ
「ハンマー」ヲ揮フ者ニ、或ハ軍需工場ニ於
テ熔鑛爐ニ火ヲ點ズル者ニ、國民ノ模範ト
シ一世ノ龜鑑トスル者ガアルトスレナラバ、
普ク此ノ聖恩拜授ヲ奏請シ奉ツテ然ルベキ
デアルト信ズルノデアリマス、私ハ斯クス
ルコトニ依リマシテ人材ノ官界ニ偏在スル
ヲ防ギ、或ハ靑雲ノ志アル者ガ離村スルコ
トヲ防ギ、或ハ官吏獨善ノ聲モ潛ミ、或
國民ノ總親和、總努力モ之ニ依リテ一層出
來ルト思惟スルカラデアリマス
次ニ增稅ト中等階級トノ問題デアリマス、
今ヤ中等階級ガ疲弊困憊ノ一途ヲ辿リ、轉
落ノ岐路ニアルコトハ申上ゲルマデモアリ
マセヌ、而シテ其ノ由テ來ル所ハ土地建物
等ノ不動產所得竝ニ勤勞所得、或ハ中小ノ
營業所得ノ如キハ、之ヲ隱蔽スルコトガ困
難デアリマスカラ、殆ド全部課稅サレテ居
リ、或ハ國內市場ガ餘リニモ大企業家ニ依
ツテ制覇サレ盡サレテ居リ、或ハ物價ノ騰
貴ガ其ノ收入增加ニ先行致シテ居リ、或ハ又
新增稅ノ重壓等ニアルノデアリマス、併シナガ
ラ此ノ中等階級、中產階級ハ我國ノ家族制度
ノ中堅デアリ、殊ニ長期戰ニナリマシテ、富
ノ跛行的偏在ニ依リテ生ズル階級的對立ヲ
架橋シ、以テ國民思想ノ惡化動搖ヲ防ギ、而シ
テ思想戰ノ强化ヲ企圖スル爲ニ最モ重大ナ
ル使命ヲ有スルモノデアリマスルカラ、政
府ハ喫緊ノ急務トシテ之ヲ擁護シナケレバ
ナリマセヌ、其ノ方法ニ色々アリマセウケ
レドモ、私ハ第一ニ其ノ所得稅ノ課稅ニ於
テ苦吉利ノ如キ控除主義ヲ提唱致ス者デア
リマス、例ヘバ我國ニ於テ免稅點ヲ千圓ト
シマスルナラバ、千圓以下ハ課稅サレナイ
ケレドモ、所得ガ千百圓ニナリマスト、僅カ
百圓ノ相違デアツテモ、千百圓ニハ悉ク是
ガ課稅サレルノデアリマス、故ニ若シ英吉
利ノ控除主義ヲ採用シマスルト、千圓ヲ控
除シ殘リノ百圓ニノミ課稅シマスルガ故ニ、
課稅ノ均衝上カラモ、中等階級ヲ擁護スル
趣旨カラ申シテモ、洵ニ妥當デアルト思フ
カラデアリマス、故ニ少クトモ中等階級ニ
對スル所得稅ノ課稅ハ英吉利ノ如ク控除主
義ニ依ルベシト云フコトヲ申上ゲタイノデ
アリマス、次ニ中等階級、中產階級ニ對シ
テハ相續稅ヲ輕減シ、第三、現行ノ控除制
度ヲ再檢討スルト云フコトモ必要デアリマ
ス、更ニ大資本ヲ努メテ海外ニ雄飛セシメ
テ、國內市場ヲ中小業者ニ殘シ或ハ獨逸ノ
世襲農地法ノ如キモ亦以テ是ガ對策トシテ
他山ノ石トスルニ足ルト思フノデアリマス
次ニ增稅ト經濟動員トノ關係ヲ一言致シ
マス、申スマデモナク財制ノ根幹デアリマス
スル租稅ハ、國家權力ニ依リマシテ、國民
ノ生產關係ヨリ生ジタル財ヲ强制的ニ獲得
スル收入デアリマス、故ニ租稅ハ國民ノ生
產關係ヲ無視シテハ存立致シマセヌ、又租
稅ハ一方ニ於キマシテ、國家ガ來ノ經濟的
手段タル勞働力及ビ財貨ヲ獲得スル經費ト
致シマシテ、國民ノ生產關係ニ還元セシム
ルモノデアリマス、故ニ租稅ハ國民ニ新シ
キ生產關係ヲ生起セシメ、又國民ノ富、所
得ノ再分配ニ寄與スルモノデアリマス、斯
ノ如クシテ租稅ハ國民ノ經濟機構、國民ノ
生產關係ト密接不可離ノ關係ヲ有シマスル
ガ故ニ、租稅ノ徵收ヲ增加シ、財政ノ健全
ヲ圖ル爲ニハ、啻ニ徵稅技術ノ末ニ齷齪ス
ルニ止ラズ、百尺竿頭一步ヲ進メマシテ、
其ノ依存スル國民ノ經濟機構ノ刷新强化ニ
之ヲ俟タネバナリマセヌ、隨テ政府ハ國民
ガ之ヲ好ムト好マザルトヲ問ハズ、或ハソ
レガ個人ノ利益ニナルト否トニ介意セズ、
速ニ躍進日本ノ國家的必要ノ前ニ適正ナル
經濟動員ヲ行ヒ、產業ノ平時的經濟機構ヲ
戰時的經濟機構ニ再編成致シ、以テ資本主
義經濟機構ノ傳統的矛盾ヲ是正セネバナリ
マイエス
更ニ增稅ト農山漁村トノ關係デアリマス、
農山漁村ガ從來都市ニ比シテ苛酷ノ負擔ニ
惱ンデ居リマスコトハ申上ゲルマデモアリ
マセヌ、更ニ又富ハ旣ニ都會ニ偏在シテ居ル
ニ加へ、今次事變ノ國家經費ノ分配モ、亦
生產機關ガ從來都會ニ集中シテ居ル結果ト
シマシテ、都會ニ厚ク地方ニ薄イノデアリマ
ス、加之今次ノ事變ニ於キマシテ、農山漁村
ハ精銳無比ナル多數ノ勇土ヲ戰線ニ送リ、軍
用馬匹ノ徵收ニ欣然應ジ、更ニ生產力ノ擴充
ニ對シマシテ多數ノ勞働力ヲ出シ、今ヤ農村ハ
ソレガ爲ニ勞働力ガ數ニ於テ減ジ、更ニ靑壯
年男子ニ代ルニ老幼婦女子ヲ以テ致シテ居
リマスルガ故ニ、質ニ於テ低下致シ、加フル
ニ多年ノ桎梏デアリマシタル四十一億ノ負
債ニ呻吟致シテ居リマスルガ、尙ホ第一線
ノ將兵ニ對シテハ糧秣ヲ送リ、或ハ銃後國
民ノ糧食ヲ保障致シ、以テ所謂豫算ニ現ハ
レザル戰費ヲ都會ヨリモヨリ多分ニ負擔シ
テ、滅私奉公、而シテ聖戰目的ノ貫徹ニ協
力致シテ居ルノデアリマス、然ルニ今ニ戰
時經濟政策、戰時社會政策ニ依ツテ救濟セ
ラレザルハ勿論、今次事變ノ新增稅ニ依リ
マシテ、益〓其ノ重壓ニ惱マザルヲ得ナイノ
デアリマス、故ニ政府ハ速ニ農山漁村更生
政策ヲ樹立斷行致シ、更ニ中央地方ヲ通ズ
ル統制ノ改革ヲ致シマシテ負擔ノ均衡ヲ圖
リ、更ニ國家經費ノ分配ニ均霑セシメネバ
ナリマセヌ
之ヲ要スルニ、今ヤ時局ハ長期建設ノ新
段階ニ入リマシタケレドモ、今ニ殘敵ハ外
援ニ依存シテ抗戰ヲ止メマセヌ、第三國モ
亦其ノ野望ニ狂奔シマシテ、戰塵ノ渦卷ク
東亞ノ天地ニ益〓虎視耽々タルモノガアリマ
ス、故ニ之ヲ潰滅シ、之ヲ一蹴シテ聖戰目
的ヲ達成スル爲ニハ、一ニ國防ノ充實强化ト、
更ニ物心兩方面ニ亙ル民力ノ培養ニ之ヲ俟
タネバナリマセヌ、之ヲ以テ政府ハ時局對
處ノ根本的解決ヲ明日ニ殘シ、明日ノ犠牲
ニ於テ今日ヲ彌縫糊塗スルコトナク、今ヤ
天下ニ澎湃タル國家革新ノ聲ニ聽キ、內外
時局ノ要請ニ卽應スル各般ノ改革ヲ斷行シ、
內ハ國力ノ總動員、總發揮ニ努メ、外ハ外
壓ニ右顧左眄セズ、殊ニ〓ヤ晩鐘ヲ〓グル
英國風情ニ媚態ヲ呈サズ、斷乎トシテ東亞
ノ天地ノ新秩序ヲ建設シ、以テ上聖明ニ應
ヘ奉リ、下萬民ノ此ノ滅私奉公ニ榮アラン
コトヲ期サネバナラナイノデアリマス、私
ハ以上ヲ申述べマシテ只今議題トナリマシ
タル各案ニ對シテ贊意ヲ表スル次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 松永義雄君
〔松永義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=18
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019・松永義雄
○松永義雄君 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シ
マシテ委員長ノ報告ニ贊意ヲ表スル者デア
リマス
唯此ノ際政府ニ對シテ希望ヲ申上ゲテ置
キタイノデアリマスガ、第一ハ統制改革ノ
點デアリマス、政府ハ本增稅案ノ提唱ニ當
リマシテ、戰時利得ノ增稅竝ニ消費ノ節約
ノ聲明ヲ致サレタノデアリマス、固ヨリ此
ノ點ニ對シテハ異論ハナイノデアリマスガ、
併シナガラ昭和十二年以來ニ於キマスル所
ノ增稅ノ傾向ヲ見マスル時ニ、漸次其ノ稅
ノ建前ガ直接稅ヨリ大衆課稅ニ移リツツア
ルト云フコトニ對シテ、遺憾ノ意ヲ表スル
者デアリマス、今度ノ增稅案ニ於キマシテ
砂糖消費稅ノ增稅ガアリマシタ、成程奢侈
品ニ對スル所ノ增稅デハアリマスケレドモ、
物品稅ノ增徵ガゴザイマシタ、固ヨリ今度
ノ增稅案ト云フモノガ、其ノ物品稅ニ於キ
マシテハ奢侈ノ抑壓ヲ目的ト致シテ居ルト
云フコトハ、固ヨリ言フマデモナイノデア
リマスケレドモ、唯一ツノ物品ノ値上ト云
フモノハ、自然他ノ物品ノ値上ヲ誘導スル
モノデアル、卑近ナ例ヲ申上ゲマスト、靴
ガ贅澤デアルカラ値上ヲスルト云フコトニ
ナレバ、下駄マデ追隨シテ來ルト云フ
コトハ、是ハ世上ノ實際ニ徵シテ明ナ事
實デアル、成程其ノモノガ奢侈品デア
ルカラ、ソレニ對シテ稅金ヲ課ケルト云
フコトハ適當デアル、併シナガラ其ノ影響
ト云フモノハ他ノ物品ニ及ブ以上ハ、若
シ今度ノ物品稅ノ物品ノ範圍ヲ擴メテ、生
活必需品ニ亙ツテ行キマシタナラバ、世ニ
謂フ所ノ賣上稅ノ一種トナリ、サウシテ雪
崩稅ト稱シテ、物價ノ騰貴ヲ招ク虞ガアル
ト云フコトハ言フマデモナイ事實デアリマ
ス、故ニ來年度ノ稅制ノ改革ニ當リマシテ
ハ、政府ニ於カレマシテ十分此ノ點ニ付テ
注意ヲシテ戴キタイト思フノデアリマス、
物品稅ガ物價ノ騰貴ヲ招キ、國民生活ノ脅
威ヲ爲ス虞ノアルト云フコトハ常識デアリ
マス、而シテ稅制改革ヲオヤリニナルニ當
リマシテ、數年來此ノ議場ニ於テ主張サレ
テ來マシタ、所謂中央、地方ヲ通ズル稅制
ノ改革、負擔均衡ヲ趣旨トスル點ニ付テハ、
是レ固ヨリ異論ハアリマセヌ、稅制ノ改革
ハ社會正義ヲ基礎トスルト云フコトハ言フ
マデモナイ、サリナガラ恐ラクハ來年-度ニ
於キマシテハ生產力擴充ヲ目標ト致シマシ
テ、公債政策ニ依ラレルコトハ勿論否定ス
ベクモナク、公債政策ニ伴ツテ租稅政策ノ
强調ヲ圖ツテ行カナケレバナラヌコトモ、
是モ當然デアル、隨テ增稅ヲ致サナケレバ
ナラヌ結果ニ陷ルコトハ、幾多ノ諸氏ニ於
テ主張セラレタ事實デアリマシテ、來年度
ノ稅制ノ改革ト云フモノハ、出來ルダケ其
ノ稅ガ民衆ニ轉嫁サレナイヤウナ稅制ヲ選
ブ、且又其ノ稅金ハ出來ルダケ俗ニ謂フ應
能原則ニ從ツテ戴クト云フコトハ、是亦常
識デナケレバナラナイ、故ニ私共ハ來年度
ノ稅制改革ニ當リマシテハ、所得ヲ對象ト
シ、所得稅第一主義ヲ以テヤツテ戴キタイ
ト云フコトヲ希望致シタイノデアリマス
第二ハ留保所得ノ問題デアリマス、今度ノ
增稅案ヲ見マスト、法人ノ留保所得ニ對シ
テ一定ノ條件ヲ以テ減稅ヲ致サレテ居ル、
若シモ企業家或ハ資本家ナリガ法人ノ留保
所得ヲ公債消化ニ向ケル、或ハ生產力擴充
ニ連用シタナラバ、減稅ヲシテヤラウ、更
ニ又減價償却ノ年限ヲ短縮シテ、減稅ノ結
果生ズル所ノ恩惠ヲ與へラレテ居ル、所ガ
此ノ留保所得タルヤ、此ノ戰時經濟ニ伴ツ
テ儲ケタ金デアル、而モ尙ホ其ノ戰時經濟
ニ依ツテ儲ケタ金ニ對シテ、税金ヲ負ケテ
ヤルカラ留保シロト御指定ヲナサルト云フ
コトハ、最近新聞紙上ニ發表サレテ居ル所
ノ、强制貯蓄ノ精神ト矛盾スルノデハナイ
カト云フコトヲ私ハ申上ゲタイ、僅カノ稅
金ニ依ツテ留保所得ヲヤル、ソレハ企業家、
資本家ノ自由デアル、而モ留保セラレタル
所ノ所得ノ運用ニ付テモ、亦其ノ資本家、
企業家ノ自由デアル、私ハ此ノ點ニ對シテ、
斯ウシテ恩惠ヲ與ヘラレテ居ル所ノ此ノ留
保所得ニ對シテハ、進ンデ政府ノ方カラ、
オ前ハ留保所得ヲシタナラバ、稅金ヲ負ケ
ラレルノデアルカラ、此ノ金ノ運用ハ宜シ
ク斯ウ云フ風ナ方面ニ使ツタナラバ宜シ
イ、總動員法ノ第八條ノ發動ヲ見ルニアラ
ズンバ、其ノ精神ヲ行政上ノ取扱ノ上ニ現
ハシテ戴キタイト云フコトヲ御願シタイ
第三ニハ經濟機構ノ編成ノ强化ノ點デア
リマス、先程來增稅ト云フモノハ、一部位
於テ「インフレ」ノ抑制ニ役立ツ、他方ニ又
物價ノ値上モ誘發スル理由トナル、稅金ト
云フモノハ物ノ値段ヲ上ゲテ來ル理由ニナ
ルト云フコトハ、先程來縷々述べラレタノ
デアリマスガ、外國ノ立法例ノ中ニ、稅金
ト云フモノハ上ゲタナラバ、其ノ上ゲタ稅
金ハ必ズ生產者或ハ販賣者ノ負擔ニシテ、
消費者ノ負擔ニサセナイヤウニト云フ規定
ガアツタト云フコトヲ私ハ瞥見シテ居ル、
借地借家法ノ規定ヲ見マス時ニ、公租公課
ガ上レバ家賃或ハ地代ノ値上ガ出來ルト云
フ規定ガアル、而モ公租公課ガ上ツタト云フ
コトヲ理由ニシテ、稅金ハ僅カ賃貸價格地租一
坪ニ付テ一錢カ二錢シカ上ツテ居ナイノニ、
裁判所ニ於テ地代ノ値上ガ現ハレタ時ニハ、
十錢トカ二十錢トカ云ツタ十倍、二十倍ノ
値上請求ニ上ツテ居ルノデアツテ、動モスレ
バ稅金ガ上ツタカラト云ツテ物品ヲ値上ス
ル模樣ヲ見マスト、是ハ好イ機會ダト云ツ
テ、僅カ五錢ノ稅金ノ値上デアツテモ、物
價ノ上ニハ十錢、二十錢ト云フ値上ニナツ
テ現ハレテ居ル、私ハ今度ノ稅金ノ値上ニ
依ツテ、或ハ將來稅金ノ値上ニ依リマシテ、
サウシテ物價トノ關聯ヲ持ツテ來マス時ニ
ハ、其ノ稅金ノ負擔ト云フモノハ、ドウカ
生產者側ニ向ケテ戴キタイト云フコトヲ希
望致シタイ、已ムヲ得ズンバ其ノ上ツタ稅
金ノ額ダケ、其ノ額ニ限ツテ値段ヲ上ゲル
コトヲ許スト云フヤウナ程度ニ止メテ戴キ
タイト云フコトヲ希望致シタイ、物價騰貴
ト稅金トノ問題ニ付キマシテハ、先程來屢〓、
述ベラレマシタ、物價ノ問題ガ非常ニ最
24
近ヤカマシクナツテ來マシタコトハ、旣
皆樣御承知ノ通リデアリマス、物價ハ最近、
マサカサウデハアリマスマイケレドモ、公
定價格ヲ作ツテサヘ置ケバ、ソレデ抑ヘラ
レルモノノ如キ感ジヲ私共ニ與ヘテ居ル、
併シナガラ物價ト云フモノハ、配給組織ノ
完備ヲ伴ツテ行カナケレバ、物價ノ抑制ガ
出來ナイト云フコトハ、是ハハツキリシタ
常識デアル、所ガ現在物ノ配給組織ヲ見マ
ス時ニ、輸出入品臨時措置法ニ依ル法律ノ
適用ガアルニ過ギナイ、或ハ又工業組合法
ノ法律ガアルニ過ギナイ、家賃ガ上ツテ
モ、ソレニ抑ヘルダケノ力ガナイ、物價ノ
方ニ於キマシテハ、臨時措置法ニ依リマシ
テ抑ヘルコトガ出來マシテモ、家賃ノ方ニ
對シテハ抑ヘルコトガ出來ナイ爲ニ、總動
員法第十九條ノ適用ヲ見ルト云フヤウナ報
道ガゴザイマシタガ、是ト同時ニ物ノ配給
ニ付キマシテハ、工業組合法或ハ臨時措置
法ニ限ラズシテ、總動員法第十七條、第十
八條ノ規定ノ精神ヲ實行シテ戴クコトガ適
切デハナイカト思フノデアル、物價ノ抑制
ヲ致シマシテ、物ノ配給ノ組織ヲ完備シテ
行カナケレバナラヌト云フコトヲ私ハ希望
致シタイノデアルソレカラ尙ホ私ハ一言ヲ
致シタイノデアリマスガ、只今委員長ノ報
告ニアリマシタ修正案中、利得稅增徵法ノ
中ニアリマスル、所謂鑛業權及ビ船舶ノ讓
渡利益ニ對スル課稅ヲ、昭和十三年一月一
日ニ遡及スル原案ヲ昭和十四年一月一日ニ
遡及スルコトニ改メラレタノデアリマスル
ガ、此ノ點ニ關シテ私共ハ聊カ心平カナラ
ザルモノガアルノデアル、由來鑛業權及ビ
船舶ノ權利ノ讓渡ニ依ル所ノ利得ト云フモ
ノハ戰時利得デアリマシテ、宜シク是ハウ
ント稅金ヲ課スベキガ相當デアルト私共ハ
考ヘル、而モソレガ一年後ニ遡及スルコト
ニ改メラレタト云フコトニ付テハ、甚ダシ
ク理論上ノ矛盾ヲ免レナイノデアリマシテ、
私共トシマシテハ此ノ利得ニ對シテハウ
ント稅金ヲ課ケテ戴キタイト思フノデアリ
マスガ、併シナガラ由來此ノ移轉稅ニ對ス
ル所ノ課稅ト云フモノニ對シテ遡及ヲ認メ
ルト云フコトガ、租稅政策上普通認メラレ
テ居ル所ノ原則デハナイ、尙且ツ諸派ノ態
度カラ見マシテ、殊更ニ異ヲ立テルマデモ
ナイト思ヒマシテ、私共ハ玆ニ贊成ノ意ヲ
表シテ居ルノデアリマスケレドモ、宜シク
來年度ノ稅制改革ニ當リマシテハ、此ノ戰
時利得ニ對シテハ、十分ノ重稅ヲ課シテ戴
クヤウ改正シテ戴クト云フ見地ヲ以テ、私
共ハ心ナラズモ此ノ案ニ贊成ヲ致シテ置ク
次第デアリマス
尙ホ最後ニ附加ヘテ置キタイコトハ、增
稅案ニ對シテ將來政府ニ御希望ヲ申上ゲテ
置キタイノデアリマスルガ、其ノ希望ヲ茲
ニ讀上ゲテ見マス
一、政府ハ公約ニ從ヒ議會閉會後直ニ稅
制調査會ヲ活用シテ稅制ノ一般的改革
案ヲ作製シ、來ルベキ通常議會ニ必ズ
提出スベシ
二、政府ハ增稅ニ依ル物價騰貴ヲ來シ大
衆生活ヲ脅威セザルヤウ最善ノ對策ヲ
講ズベシ
三、政府ハ稅制改革ニ依リ負擔ノ均衡ヲ
圖リ國民生活ノ跛行是正ニ努力スベシ
以上三點ノ御希望ヲ申上ゲマシテ、委員長
報告ニ對シテ贊意ヲ表スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 道家齊一郞君
〔道家齊一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=20
-
021・道家齊一郎
○道家齊一郞君 私ハ第二控室ヲ代表シテ、
只今議題ニ供セラレテ居リマスル三法律改
正案ニ對スル委員長報告ニ贊意ヲ表スル者
デアリマス、以下少シク修正ニ對スル贊成
ノ理由ヲ述べマシテ、次ニ增稅ト不可分ノ
關係ニアル所ノ公債政策ニ付テ卑見ヲ申述
ベタイト思ヒマス
政府ハ臨時軍事費ノ財源ノ一部トシマシ
テ、戰爭ニ因ル殷賑產業ニ對スル負擔能力
ヲ確保スル爲ニ、利益配當稅、公債及ビ社
債利子稅、砂糖消費稅、〓涼飮料稅、印紙
稅ヲ增徵致シマスル他面、物品稅ニ付テハ
範圍ノ擴充及ビ增徵ヲ行フト同時ニ、建築
稅及ビ遊興飮食稅ヲ新設シテ居リマス、又
一面ニ於テ生產力ノ擴充ヲ圖ル爲ニ、部
ノ租稅ノ減免ヲ行ハントスルモノデアリマ
ス、戰爭景氣ノ爲ニ生ズル所ノ利得ヲ把握
シテ、サウシテ奢侈ノ增嵩ヲ抑制シ、勤儉
ノ美風ヲ〓ヘテ通貨ノ膨脹ヲ制限スル、而
シテ他面ニ於テ物價ノ騰貴ヲ緩和シテ、戰
爭ニ對スル認識ヲ深メルト云フコトハ目下
ノ急務デアリマシテ、國民ノ何人モガ之ニ
ニ對應スルノ決意ヲ持ツテ居ルコトハ言フ
マデモナイノデアリマス、今囘ノ增稅ニ依
リマシテ、政府ハ平年度ニ於テ總額約二億
圓ノ增稅ヲ計畫シテ居リマス、此ノ額ハ色
色ナ觀點カラ見テ洵ニ妥當ナルモノト私ハ
信ズルノデアリマス、若シ將來戰爭ガ意想
外ニ長引ク、或ハ意想外ナル擴大ヲ生ズル、
或ハ「ソ」聯ト戰端ヲ開クニ至リマシタ場合
ニ於テハ、彼ノ普佛戰爭ニ於テ佛蘭西國民ガ
經驗致シマシタヤウニ、棺桶ノ釘カラ板マ
デ課稅セラレ、又其ノ死後ニ於キマシテハ
重大ナル相續稅ヲ課ケラレテモ、我ガ國民
ハ敢テ辭スル者デハアリマセヌ、併シナガ
ラ現在ノ我國ノ財政的現狀ヲ見マスルト、
尙ホマダ餘裕ヲ有シテ居リマス、且ツ戰爭
ノ狀況ヲ見マシテモ、是亦今日ノ程度デハ
左樣ナ決意ヲ要スル事態ニナツテ居ラナイ
コトハ言フマデモナイコトデアリマス、否、
ソレノミナラズ、所得大衆ニ全般的ニ課稅
セントスル所ノ、所謂國民稅ナルモノノ如
キモノモ賦課スル必要ハナイト私ハ認メル、
又更ニ賣上稅デアルトカ、或ハ財產稅デアル
トカト云フヤウナモノノ如キモ、亦最後ニ殘
サルベキモノデアツテ、現在ニ於テハ左樣ナ
必要ガナイト私ハ信ズル者デアリマス、先
ヅ斯樣ナ稅ヲ課スル以前ニ更ニ繁榮ニ依ツ
テ、特ニ國民ノ血稅ニ依ツテ榮エタ所ノ、
其ノ產業ノ大收得、大利益ニ對シテ課稅ス
ベキデハナイカト思ヒマス、更ニ奢侈的消費
ニ對シテヨリ過重ニ課稅スル所ノ餘裕ヲ殘
スモノダト思フノデアリマス、尙ホ又不勞
所得、或ハ遺產相續或ハ續柄ニ依ル所ノ相
續等ニ於テモ、十分ノ餘裕ヲ今持ツテ居
ルモノト思フノデアリマス、交通稅ニ於
テモ亦同樣ニ信ズルノデアリマス、其ノ
他第三次的生活物品ニ對シテモ、亦餘裕ヲ
有スルモノデアルト信ズルノデアリマ
ス、斯ノ如キモノニ先ヅ戰時課稅ヲシテ行
クコトハ、國民一般ノ感情ニ合ヒ、社會ノ
反感ヲ和ゲ、衡平ノ觀念ニ合致スルモノト
信ズルノデアリマス、現下ノ社會情勢ヲ
見マスト、一言ニシテ言フナラバ、ソレ
ハ「インフレ」景氣ノ浸潤デアリマス、地
下層マデ相當ニ浸潤ヲシテ居リマス、併シ
ナガラ他面之ヲ見マスト、統制ニ依ル所ノ
收益ノ減少、或ハ轉業ニ依ル所ノ生活苦、
或ハ失業等々、相當ナル不況ニ國民ハアル
ノデアリマス、殊ニ「サラリーマン」階級ニ
於キマシテハ、其ノ苦痛ハ相當ナモノデア
リマス、官公吏ヲ初メトシマシテ、〓員其
ノ他有リト有ユル職業ヲ通ジテ、決シテ全
部ガ「インフレ」景氣ニ浸潤シテ居ルノデハ
ナイ、平均セラレタル所ノ狀態ニ於テ、ソ
レガ反映シテ居ルコトハ言フマデモナイコ
トデアリマセウ、中等以下ノ是等ノ收入ア
ル所ノ階級ノ者達ニ對シテ、齒磨デアルト
カ、或ハ洋服デアルトカ云フヤウナ、生活
ノ必需的物品ニ對シテ課稅スルコトハ考ヘ
モノデアルト思フノデアリマス、私ハ多ク
ノ例ヲ擧ゲテ其ノ不當ナル所以ヲ述ベタイ
ト思フノデアリマスガ、與ヘラレタル時間
ガアリマセヌカラ、簡單ニ洋服ニ付テノミ
一例ヲ擧ゲマセウ、最近ノ調査ニ依リマス
ト、是ハ政府ノ調査デアリマスカラ、最モ
信ズベキ調査デアルト思フノデアリマスガ、
是レ以外ニハ絕對ニナイト私ハ信ズル、其
ノ家計調査ニ依ツテ見マスト、月八十圓ノ
月給ヲ取ツテ居ル者ノ生活狀態、其ノ者ガ
洋服ヲ購入スルニ如何ナル狀態ニアルカ調
査シマスト、一昨年卽チ十二年ノ九月カラ
十二月マデノ間ニ、購入價格ノ平均ハ六十
四圓八十錢ニナツテ居ルノデアリマス、八十
圓ノ「サラリーマン」ノ購入價格ガ-是ガ
今騰貴シテ居リマスカラ、一割五分騰貴シ
タモノト假定シマスト、玆ニ其ノ總額ハ七
十四圓五十錢ニナル、然ルニ之ニ對シテ六
十五圓以上課稅スルト、殆ド總テノ「サラ
リーマン」ノ洋服ニハ課稅サレルコトニナ
ル、一方給料生活者ノ精神ト云フモノハ、
漸次物價ノ騰貴ニ從ツテ窮迫シツツアリ
マス、指數ヲ以テ之ヲ見マスト、十二年ニ
比較スルト一割三分五厘ノ騰貴ヲ示シテ居
ルノデアリマス、卽チ八十圓ノ月給ヲ取ツ
テ居タ者ハ六十九圓二十錢ニ現在相當スル
ノデアル、卽チ十圓八十錢ノ割引ヲサレテ
居ルノデアリマス、サウシテ「サラリーマ
ン」全體ノ收入ノ狀況ヲ、全部ノ統計的觀
察ニ依ツテ見マスト、是亦決シテ增加シテ
居ラナイ、平均昨年三月ヲ百ト致シマスト、
最近ハ八十四ニナツテ寧ロ低下シテ居ル、
殷賑產業ヲ入レテ「サラリーマン」ヲ計算シ
テモ、「サラリーマン」ノ收入ト云フモノハ
一般的ニ斯クモ低下シテ居ルノデアリマス、
其ノ低下シツツアルコトガ、此ノ洋服ヲ購
入スル其ノ狀況ニ能ク反映シテ居リマス、
其ノ狀況ヲ申上ゲマスト、十二年ノ一年間、
卽チ一昨年一年間ニ於テ現金デ買ツテ居ル
者ハ二一%シカアリマセヌ、月賦デ買ツテ
居ル者ガ七九%デアル、所ガ昨年ノ一年間
ニナリマスト、此ノ割合ガ變ツテ來マシテ
一三%シカ現金デ買ハナクテ、アトノ八七
%ハ月賦ニナツテ居リ、段々「パーセンテー
ジガ仲ビテ居ル、此ノ狀態ヲ見テモ如
何ニ「サラリーマン」ガ窮迫シテ居ルカガ分
ルノデアリマス、斯樣ナル狀況ヲ見ル時ニ、
吾々ハ全面的ニ齒磨デアルトカ、茶デアル
トカ、洋服デアルトカ云ツテ、「サラリーマ
ン」ニ重壓ノ加ハル所ノ增稅ニ對シテ反對
セザルヲ得ナイノデアリマス、隨テ修正意
見ニ贊意ヲ表スルノデアリマス
次ニ私ハ簡單ニ政府ノ增稅ト不可分ナ公
債政策ニ付テ卑見ヲ申述ベタイノデアリマ
ス、公債政策ニ付テハ言フマデモナク二ツ
ノ方針ガアル、一ツハ可能ナル範圍ニ於テ
成ベク多ク增稅ヲ行ツテ、出來ルダケ赤字
公債ヲ減少スルト云フ、所謂健全財政
ノ建前ガアリ、第二ハ每年增發セラルル
所ノ公債ノ利拂ノ程度ヲ限度ト致シマ
シテ、稅ノ自然增收ト增稅トニ依ツテ歲
入ノ體形ヲ整備セントスルモノデアリ
マシ、事變以來政府ノ增稅ノ跡ヲ見マス
ト、最初ノ一億圓ヲ初メトシテ、昨年ノ
三億一千五百万圓ト云ヒ、今年ノ二億圓ト
云ヒ、何等關聯性ヲ持タナイノデアリマス、
サウシテ其處ニ何等ノ計畫性ガナイノデア
リマス、是ハ恐ラク政府モ言明セラレルヤ
ウニ、健全財政主義ヲ執ラレタ建前ト解釋
スルノデアリマス、戰爭ノ見透シガ殆ド付
カナイ內ハ、此ノ健全財政策モ宜シイノデ
アリマスケレドモ、今囘ノ事變ノ如ク其ノ
將來ノ見透シヲ付ケネバナラヌ、サウシテ
其ノ將來ハ相當ナ永續性ヲ持ツト云フコト
ノ見透シガ付イタ今日ニ於キマシテハ、寧
ロ私ハ技術的ニ容易デアル所ノ公債政策ニ
依ツテ、此ノ戰費ヲ賄フベキ計畫ヲ樹立シ
テ戴キタイト思フノデアリマス、每年增發
セラルル所ノ公債ニ對シテ大體豫測ヲ樹テ
テ、サウシテ利拂ノ程度ヲ限度トシテ、稅
ノ自然增收ト戰時利得ニ更ニ重課スルニ依
ツテ、又其ノ他ノ補足ニ依リマシテ、增稅
ニ依ツテ當分ノ內之ヲ賄ツテ行ツテ貰ヒタ
イ、卽チ公債政策ニ健全財政主義カラ轉換
ヲシテ貰ヒタイト云フコトヲ要求スルノデ
アリマス、從來マデ相當ニ增稅ハ行ハレテ
居ルノデアリマシテ、今ヤ是レ以上增稅ス
ルコトハ考ヘモノデハナイカト思フ、見に
於テ僅カ一億カ二億ノ增稅ヲ行ツテ、赤字
公債ヲ一億カ二億減ラシタ所デ、大勢カラ
言ツテ大シタ問題デナイト私ハ思フ、ソレ
ヨリモ消費大衆ニ增稅ガ加ハツテ重壓サレ
テ來ルコトヲ恐レル者デアリマス、寧ロ國
民ニ對シテ增稅ノ苦痛ト愛國心トガ調和ヲ
保ツテ、サウシテ國民精神ガ作興スルヤウ
二、政府ハ方針ヲ樹テテ貰ヒタイト思フノ
デアリマス、若シ人心ノ機微ヲ察シテ、成
ベク最小限度ノ增稅ニ止メルナラバ、ソレ
ハ國民ガ其ノ稅ヲ稼ギ出スト云フコトノ努
力ニ依ツテ、經濟活動ノ旺盛ヲ生ズルコト
ヲ私ハ信ズルノデアリマス、但シ公債ガ將
來ニ負擔ヲ殘スモノデアルト云フヤウナ考
ヘ方モ是レ當然デアリマスガ、併シナガラ
我國ノ現狀ニ於キマシテ、今ヤ滿洲ニ於テ
飛躍シツツアリ、又支那ニ於テノ大開發ヲ
計畫シ、物資動員計畫ノ著々トシテ進ミツ
ツアル今日ニ於テ、我國ノ國、富ハ非常ナ增
加ヲ示シツツノルノデアツテ、敢テ百億ヤ
ソコラノ公債ニ對シテ躊躇スル必要ハナイ
ノデアル、吾々ハ決シテ大言壯語ヲスルノ
デハナイケレドモ、我國ノ國富ノ狀況、將
來ノ增加等ヲ豫測スル時ニハ、優ニ二百億
若クハ三百億ノ公債ヲ持ツテ差支ナイト信
ズルノデアリマス、斯樣ナ觀點ニ於キマシ
テ、吾々ハ政府ニ對シテ將來ノ公債政策ノ
轉換ヲ要望スル者デアリマス、以上意見ヲ
述べマシテ委員長ノ報告ニ贊成スル者デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=21
-
022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ採決ニ入リマス、先ヅ支
那事變特別稅法中改正法律案ニ付キ採決致
シマス、本案ノ委員長報告ニ係ル修正ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=22
-
023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=23
-
024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長ノ報告ニ
係ル修正ハ全會一致可決致ジマシタ-其
ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ修正ヲ除キタル其ノ他ノ部分ハ原
案ノ通リ決シマシタ(拍手)次ニ臨時利得稅
法中改正法律案ニ付キ採決致シマス、本案
ノ委員長ノ報告ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ
起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=25
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026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=26
-
027・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長ノ報〓ニ
係ル修正ハ可決致シマシタ(拍手)其ノ他ノ
部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ修正ヲ除キタル其ノ他ノ部分ハ原
案ノ通リ決シマシタ(拍手)最後ニ臨時租稅
措置法中改正法律案ニ付キ採決致シマス、
本案ノ委員長報〓ハ可決デアリマス、本案
ハ原案ノ通リ決スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=28
-
029・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ原案ノ通リ可決致シマシタ
(拍手)是ニテ三案ノ第二讀會ハ終了致シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=29
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030・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=30
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031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=31
-
032・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第三讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
支那事變特別稅法中改正法律案
第三讀會
臨時利得稅法中改正法律案第三讀會
臨時租稅措置法中改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=32
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033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、三案トモ第二讀會議決ノ通リ確定致
シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=33
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034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 此ノ際暫時休憩致シ
マス
午後一時休憩
午後二時四十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=34
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035・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=35
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036・服部崎市
○服部崎市君 先ニ後廻シト爲シタル質問
中、山道襄一君外一名提出、吏道刷新ニ關ス
ル質問ヲ此ノ際許可セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=36
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037・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=37
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038・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、質問八、
吏道刷新ニ關スル質問ヲ許可致シマス-
提出者山道襄一君
八吏道刷新ニ關スル質問(山道襄一
君外一名提出)
吏道刷新ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月十八日
提出者山道囊
外一名
吏道刷新ニ關スル質問主意書
我カ國近時ノ實情ニ觀ルニ官僚獨善官紀
弛廢ノ事實頗ル多シ內外時局重大ノ秋ニ
際シ國家ノ爲深憂ニ堪ヘス仍テ政府ハ行
政機構及官吏制度ノ改革ト相俟テ官僚ヲ
シテ萬民輔翼ノ大精神ヲ體得セシムルノ
策ヲ講シ速ニ吏道ノ根本的刷新ヲ圖ルコ
ト緊要ナリト認ム之ニ對スル政府ノ所見
如何
右及質問候也
〔山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=38
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039・山道襄一
○山道襄一君 吏道刷新ニ關シマスル質問
ハ、政友會竝ニ民政黨ノ幹部諸君ノ御贊成
ヲ得マシテ、政友會ノ福井甚三·君ト私ト
ノ提案デアリマス、福井君ノ事情ニ依リマ
シテ私ガ此ノ質問ヲ致スコトニ相成リマシ
タ申上ゲルマデモナク日本ノ現狀ハ外
ハ忠勇義烈ナル我ガ皇軍ノ將兵諸君ガ善戰
善鬪ヲセラレマシテ、曠古ノ戰果ヲ收メテ
居ルノデアリマス、內ニ於キマシテハ忍苦
報效能ク萬民輔翼ノ實ヲ致シマシテ、農工
商業ノ諸君ガ銃後ノ憂ヲナカラシメテ居ル
ノデアリマス、將兵ノ諸君モ、農工商業ニ
從事セラレル諸君モ、共ニ應分應能能ク其
ノ輔翼ノ責ヲ盡シテ居リマス、而モ身命ヲ
賭シ財政、經濟、產業ノ大犧牲ヲ負擔致シ
マシテ、更ニ〓〓將來ニ對シマシテ長期戰
ヘノ決心ヲ致シテ居ルノデアリマス、是ガ
今日ノ我國ノ內外ノ實情デアリマス、此ノ際
ニ當リマシテ、國政ニ參與致シマスル行政官
吏諸君ガ、若シ獨リ私心ヲ逞ウ致シ、私慾ヲ
恣ニ致シテ、獨善專權ヲ以チマシテ民ヲ虐
ゲルガ如キコトガアツテハ勿論ナラヌノデ
アリマス、此ノ擧國一體總親和ノ必要ナ時
ニ於キマシテ、國民ニ由ラシムベシ知ラシ
ムベカラズト云フガ如キ態度ヲ執ルヤウナ
コトガアツテハ、斷ジテナラヌノデアリマ
ス(拍手)今日ノ場合ニ於キマシテハ、政府
ハ國民ニ對シマシテ政治、經濟、產業ノ實
情ニ明示致シマシテ、物心共ニ眞ノ協力ヲ
求メナケレバナラヌト私ハ信ズルノデアリ
さく、衆議院ハ民意ヲ暢達シ國政ノ實情ヲ
明ニシマスルコトガ任務デアリマス、故ニ
議會ニ於テハ完全ニ之ヲ盡スコトヲ致サナ
ケレバナリマセヌ、是ガ卽チ上下ニ對シマ
スル衆議院トシテノ重大ナル任務デアリマ
ス、是ガ卽チ民政黨竝ニ政友會ノ幹部諸公
ガ此ノ質問ニ贊成ヲセラレタ理由ダト考へ
マス、單ニ民政黨、政友會兩黨ノ幹部ダケ
デハアリマセヌ、恐ラクハ兩黨ヲ初メ各黨
派ノ議員諸君モ同樣ノ感ヲ持ツテ居ラルル
方ガ、殆ド全部デアルト私ハ信ズルノデア
リマス(拍手)是ガ卽チ今日ノ質問トナリマ
シテ、是ヨリ此ノ質問ヲ續ケントスル次第
デアリマスガ、私ハ此ノ事ニ付キマシテハ、
此處ニ多クノ言葉ヲ費スコトヲ避ケマス、併
シソレダケ政府ニ於カレテハ特ニ此ノ點ニ
留意セラレマシテ、私ノ質問ニ對シテ明快ナ
ル御答辯ヲ下サランコトヲ御願致シマス
先ヅ便宜上私ノ質問致シマスコトヲ箇條
別ニ申上ゲテ置キマス、第一ニ問ハント致
シマスコトハ、官僚獨善ト議會ノ能率發揮
ニ關スルコトニ付テデアリマス、第二ニハ
内閣其ノ他ノ行政機構ノ改革ニ付テデアリ
さ 、第三ニハ官吏身分保障令ノ撤廢ニ付
テデアリマス、第四ニハ官吏ノ民間會社ヘ
行ク、所謂天降リ人事ニ付テデアリマス、
第五ハ官吏任用令ノ擴大ニ付テデアリマス、
第六ハ下級俸給者、特ニ下級官吏ノ待遇改
善ニ付テデアリマス、第七ハ東亞ノ新秩序
建設ト官吏ノ誤レル優越感ニ出ヅル獨善ニ
付テデアリマス、第八ハ官吏服務紀律ノ厲
行ニ付テデアリマス、最後ニ吏道刷新根本
ニ付テ私ノ希望ヲ述べ、隨テ總理大臣ノ御
所見ヲ承リタイノデアリマス、是ガ卽チ私
ノ是ヨリ御尋セントスル要綱デアリマス
先ヅ第一ニ官僚ノ獨善ト議會ノ能率發揮
ニ付テ總理大臣ニ御尋ヲ致シマス、近來世
間ニハ議會ニ對シテ色々ナ要望ヲセラレ、
中ニハ色々ナ非難ヲ加ヘラレマス、其ノ要
望、非難、或ハ誤解モアリマス、曲解モアリ
やっ、或ル場合ニハ故ラニ議會ヲ傷ツケン
ガ爲ニ發セラレル言說モアリマスガ、中ト
ハ又傾聽スベキモノモ相當ニアルノデアリ
やく、ソレ故ニ昨今ノ議會ガ自肅自戒ヲ致
シマシテ、其ノ能率ヲ增進シ、新建設ニ寄
與センコトニ努力致シテ居リマスルコトハ
現ニ今期議會ト言ハズ、前期議會ト云ハズ、
事實ガ自肅自戒、新建設寄與ノ爲ニ努力致
シテ居ルコトヲ證明シテ居ルト私ハ信ジ
テ居リマス、然ルニ此ノ議會ノ自肅自戒、
此ノ議會ノ努力ニ對シマシテ、議員ト等シ
ク國政ニ參與ヲ致シテ居リマスル所ノ行政
官吏ガ、此ノ能率發揮ニ對シテ、動機ノ如
何ニ拘ラズ、結果トシテハソレヲ妨害スル
ノ事實ヲ玆ニ幾多認メルコトヲ、私ハ殘念
ニ考ヘルノデアリマス、玆ニ其ノ一二ノ例
ヲ申述ベマスレバ、帝國議會ノ會期ハ憲法
ニ依ツテ三箇月ニ定メラレテ居リマスガ、
帝國議會ガ創設セラレマシタ當時ト今日ト
ハ、財政、經濟、產業、社會、國防、外交
色々ナ點カラ考ヘテ見マシテモ、眞ニ隔世
ノ感アルコトハ申上ゲルマデモナイコトデ
アリマス、此ノ際ニ於テ吾々ハ此ノ三箇月
ノ期間ヲ如何樣ニ善用スベキカニ付テ種々
ナ考慮ヲ拂ツテ、議會ノ振肅、議會ノ刷新、
議會ノ自肅等ニ付テ吾々自ラモ考へ、又他
ノ局外者ノ意見ヲモ求メテ、其ノ方法ヲ幾
度カ〓究致シマシタ、其ノ中ニ於テ何人モ
氣付キマスルコトハ、十二月ノ年末ヨリ一
月ノ年始ニ掛ケテノ三週間餘ニ亙ル休暇ヲ
善用スルコトガ、最モ大キナ一ツデアラネ
バナラヌ、此ノ意味ニ於テ議會ノ振肅委員
會等ハ、屢〓一月二十一日或ハ二日マデ休會
致スコトヲ改メテ、一月早々ヨリ再開致ス
コトニ種々申合セタノデアリマス、然ルニ
其ノ事ガ何故ニ實現セナイカト云フナラ
バ、是ハ最近政府ガ設ケテ居ラレマスル議
會制度ノ審議會ニ於テモ檢討セラレタコト
デアリマスガ、何ガ原因デアルカト云フナ
ラバ、政府ノ官僚、吏僚諸君ノ申分ハ、
會計法ノ第七條ニ於テ集會ノ始ニ豫算案ヲ
提出スベシトアル此ノ集會ノ始ナル言葉
ハ議會ガ年末ニ於テ召集ヲセラレ、更に
休暇ニ入リ、再開ヲシタ劈頭デアルト云フ
コトヲ固執セラルルノデアリマス、此ノ議
會ノ集會ノ始マリハ、年ノ始ニ於ケル議會
再會ノ劈頭デアルコトヲ主張セラレルノデ
アリマス、併シ若シ劈頭デアルト云フナラ
バ、十二月ノ二十五日ニシテモ、二十六日
ニシテモ、二十七日ニシテモ、其ノ召集セ
ラレテ議會ノ成立シタ時ノソレガ劈頭デア
ラネバナラヌニモ拘ラズ、事實ノ審理ヲス
ルノガ再會ノ時デアルカラト云フ理由ノ下
二、一月ノ二十一日カ二十一一日ノ再會ノ日
ガ集會ノ始デアルト執拗ニ主張セラレルノ
デアリマス、同時ニ會計法第八條ニハ、豫
算ヲ議會ニ提出スルニ當ツテハ款項ヲ備ヘ、
而モ豫算ノ明細書ヲ之ニ添附スベキコトガ
附加ヘラレテアルガ爲ニ、如何樣ニシテモ
此ノ豫算ノ印刷能力ガ間ニ合ハナイ、ドウ
シテモ一月二十日以前ニ之ヲ整ヘルコトガ
出來ナイト云フコトヲ之ニ結付ケテ、議會
ノ始ト云フコトト豫算ノ明細書ヲ添附シナ
ケレバナラヌト云フコトヲ結付ケテ、印刷
能力ノ足リナイガ爲ニ、二十日以前ノ再開
ニ對シテハ反對ヲスル理由ハアリマセヌガ、
其ノ不可能ナルコトヲ力說セラレテ、之ヲ
頑强ニ主張セラレルノデアリマス、其ノ故
ニ遂ニ一月二十日以前ニハ再開スルコト
出來ズシテ、議會ガ會期ノ短キコトニ非常
ニ惱ンデ居リマスニモ拘ラズ、徒ニ年始二
十日間ヲ議會ハ空費シナケレバナラヌ狀態
ニナツテ居ルト云フコトナノデアリマス
若シ此ノ會計法ノ第七條ノ解釋ヲ日本人ノ
習ハシト致シマシテ、始ト云フコトハ、ソ
レハ月ノ始ト申スナラバ、月ノ一日カラ月
ノ十日頃マデデアル、月ノ中頃ト申スナラ
バ、月ノ十日カラ二十日マデデアル、月ノ
終リ頃ト申スナラバ、卽チ月ノ二十日ヨリ
三十日マデデアルト云フ、此ノ俗ノ解釋ヲ採
リマスナラバ、必ズシモ再開劈頭ニ出サナケ
レバナラヌト云フコトハ必要ヲ感ジナイニ拘
ラズ、斯ノ如キ杓子定規ナル解釋ヲセラレ
マスガ爲ニ、此ノ議會ノ能率ガ擧ゲラルベク
シテ擧ゲラレナイコトニナルコトハ、全ク
コノ條文ニ拘泥シ、餘リニ其ノ解釋ヲ固執
セラレルコトニアリ、印刷能力ノ爲ニ此ノ
重大ナル議會ノ審議權能ヲ蹂躪スルト云フ
コトニ相成ツテ居ルノデアリマス、而モ斯
ノ如キコトヲ申シナガラ、法律案ノ如キモノ
ニ至リマシテハ每議會度々議會ハ督促ヲ
致シ、警告ヲ發スルニ拘ラズ、豫算以外ノ
法律案ハ會期ノ半バ過ギニ至ツテ提出スル
ト云フガ如キコトニ相成ツテ、此ノ帝國議
會ノ議案審議ニ向ツテ非常ナル支障ヲ與ヘ
テ居ルコトハ是ハ申上ゲルマデモナイ事
實デアリマス、更ニ每會議ニ於キマシテ、
此ノ議會ガ或ハ附帶決議、或ハ希望條件、
此ノ如キモノヲ數多ク致シテ居ルニ拘ラズ、
政府ノ吏僚諸君ハ全然之ヲ無視スルノ狀
態ニ至ツテハ、極端ニ之ヲ申シマスナラ
バ-此ノ方面カラ申シマスナラバ、全ク議
會無視ノ狀態ヲ續ケラレテ居ル、是等ノコ
トヲ考ヘル時ニ、行政各部ニ於ケル所ノ吏
僚諸君ガ、議會ニ對シテ否認ノ考ヲ持チ、議
會ノコトヲ無視スルノ考ヲ持ツテ居ルト言
フモ敢テ過言デナイト思フノデアリマス、
其ノ動機ノ如何ヲ私ハ玆ニ論ズルノデハア
リマセヌ、只今申シマス如ク、事實ニ現ハ
レテ居ル結果ヨリ致シマスレバ、實際ニ此
ノ議會ノ立法翼贊ヲ無視シ、審議翼贊ヲ妨
害シ、總理大臣御自身デハ萬民輔翼、應分
ノ翼贊ヲ言ハレテ居リマスケレドモ、遂
其ノ萬民輔翼ハ吏僚諸君ニ依ツテ全然無意
味ニセラレテアツテ、此ノ重大ナル所ノ帝
國議會ガ能率ヲ發揮シマスルコトニ、非常
ナル支障ヲ來シテ居ルト云フ此ノ事實ニ對
シテ、是ハ一ニ官僚獨善ノ結果デアリマス
ガ、一法規ノ改正ヲ致シマスルナラバ、其
ノ一解釋ヲ緩和致シマスルナラバ、此ノ議
會ヲシテ尙ホヨリ良キ能率ヲ發揮セシムル
方法ガアルニ拘ラズ、之ヲセザルコトハ、
全ク結果ヨリシテ、官僚獨善ノ結果デアル
コトヲ玆ニ斷言ヲ致スノデアリマス(拍手)
此ノ點ニ對シテ總理大臣ハ、議會ノ能率增進
ヲ妨ゲルガ如キ所ノ法律ヲ改メ、官吏ノ專
權ヲ矯メ、立法ノ源ヲ廣ムル爲ニ、過去ノ
國會開設ノ有難キ御趣旨ニ背クガ如キコト
ヲ、斷ジテ改メル所ノ決心ト用意ヲ有セラ
レマスカドウカ、是ガ私ノ第一ニ御伺ヲ致
シタイ點デアリマス
第二ニ、我國ノ內閣ノ官制其ノ他ノ行政
機構等ノ多クハ五十年前ニ制定セラレタモノ
デアリマス、俗ニ西洋人ノ申ス言葉ヲ藉リテ
申スナラバ、半世紀前ニ制定セラレタモノデ
アリマス、五十年前ト今日ハ、客觀情勢ハ
著シクドコロデハアリマセヌ、殆ド隔世的
ノ轉換ヲ致シテ居ルノデアリマス、此ノ際
此ノ官制或ハ機構ニ改正ヲ加フルコトハ、
客觀情勢ヨリ見テ最モ必要ナルコトダト考
ヘマス、殊ニ今日ノ實情ヲ見マスレバ、各
省對立ノ狀態デアリマス、總理大臣ノ御言
葉ニハ、日本ノ肇國ノ精神ニ基イテ常ニ一
體ノ語ヲ用ヒラレマスガ、而モ此ノ總理大
臣ノ言ハレル肇國ノ精神デアル一體觀ノ原
理ヲ破ツテ、常ニ各省對立ノ狀態ニナツテ
居ルコトハ事實デアリマス、更ニ省內ニ入
レバ各局對立ノ狀態デアリマス、各個人對
立ノ狀態デアリマス、遂ニハ最近ハ、新
聞紙上其ノ他ニ傳ヘラレテ居ル所ニ、一
些事ノ如クニシテ、政治的ニハ洵ニ不
吉ナル言葉ガ傳ヘラレテ居ル、近來ノ
内閣ハ四相會議デアルトカ、五相會議
トカ云フモノヲ開カレルト云フコトガ
世間ニ公然ト噂サレル、全閣僚ヲ以テ開カ
レル閣議ガアリ、更ニ四相會議ガアリ、五
相會議ガアル、斯ノ如キコトノ爲ニ、巷間
ニ於キマシテハ、等シク御親任ヲ辱ウ致シ
テ居リマス各閣僚ニ對シテ、一等閣僚デア
ル二等閣僚デアル、三等閣僚デアルト云
フガ如キ言葉ヲサヘ發スルニ至ツテ居ルノ
デアリマス、洵ニ一小滑稽事ニ屬スルヤウ
ナコトデアリマスケレドモ、斯ノ如キ言葉
ガ巷間ニ行ハレルト云フコトハ、內閣ノ威
信ノ上カラ申シマシテモ、政治ノ力ノ其ノ
奧底ニ思ヒ及ビマスル時ニ、巷間ニ於ケル
一小些事ノ如クニシテ、事實ニ於テハ之ニ
依ツテ民心ガ動搖致シ、色々ナルコトヲ考
ヘル時ニハ民心ニ非常ナル影響ノアルコ
トヲ私ハ心配致スノデアリマス、殊ニ私ハ
個人ノ對立ト申シマシタガ、役所ノ中ニ於
テハ技術ト事務トノ對立ガアリ、今日ハ動
モ致シマスレバ、豫算ノ分捕、豫算ノ濫費、
而シテ今日ハ此ノ豫算ノ分捕、各省割據ノ
結果ハ、國務ト事務トガ分離サレテ、此ノ
大キナ國務ハ事務化サレツツアルノデアリ
マス、斯ノ如キ狀態ニアリマスコトハ、他
ニ根本的ニ改正スベキコトガ色々アリマス
ケレドモ、併シナガラ機構ノ改正ニ依ツテ
之ヲ矯メ得ルコトモ相當ニアルト信ズル、
殊ニ私ノ殘念ニ思ヒマスコトハ、總理大臣
ハ、二月二十二日デアリマシタカ、官吏自
肅ノ訓示ヲ發セラレタ、其ノ自肅ノ訓示ヲ
發セラレテ後僅ニ二週間カ三週間經過スル
カシナイカノ時ニ當ツテ、大藏大臣ハ更ニ
各省ニ向ツテ、年度末ニ於ケル所ノ不要ノ
調度、年度末ニ於ケル所ノ無用ノ出張ヲ嚴
禁スルコトヲ示達シナケレバナラヌ狀態デ
アツタノデアリマス、總理大臣ノ官吏自肅
ノ訓令ガ徹底致シテ居リマスナラバ、大藏
大臣ガ此ノ年度末ニ際シテ、斯樣ナ示達ヲ
スルノ必要ハ毫モナイコトデアルト思ハナ
ケレバナリマセヌ(拍手)ガ事玆ニ至ルガ如
キコトニ考ヘマシテモ、極メテ大キナル遺
憾ヲ感ジマスノミナラズ、私ノ極メテ殘念
ニ思ヒマスコトハ、今日各人對立抗爭ノ狀
態トナリ、下ガ上ヲ剋スルノ狀態トナリマ
シタ結果、人事ヲ掌ツテ居リマス所ノ其ノ
直屬ノ官廳以外ノ官廳ニ對シマシテハ其
ノ上級官廳ニ對シマシテ動モスレバ下級ノ
官吏ハ之ヲ輕視スルノ風ガアル、一例ヲ取
ツテ申上ゲマセウ、地方ノ道府縣廳ニ於ケ
ル所ノ各部長ノ如キ、悉ク之ガ人事ハ內務
省ガ扱ツテ居ルガ爲ニ、例ヘバ學事ヲ扱ヒ
マス學務部長ノ如キ、其ノ學務部長ノ管下
ニ居リマス吏僚ノ如キ、其ノ傍系デアル-
事實ニ於テ自己ノ直屬長官デアリ、直屬上
級官廳デアルベキ文部省ニ對シテ、或ハ交
通ヲ掌ツテ居居其官吏ハ、自分ノ仕事ノ
上ノ直屬ノ上級官廳デアルベキ所ノ鐵道省
ニ對シテ、極メテ之ヲ輕視スルノ風ガアル
ノデアリマス(拍手)唯自己ノ人事ヲ扱フ內
務省ノミニ向ツテ眞面目ニ其ノ命令ニ服シ、
其ノ人事ヲ扱ハザル所ノ各省ニ對シテハ、
上級ノ官廳ニ對シテモ之ヲ輕視シ、甚ダシ
キニ至ツテハ-豫算分科ニ於テハ問題ニ
ナツテ長ラク議セラレテ居ツタヤウデアリ
マスガ、私ハ一々之ヲ取上ゲテ此處ニハ申
シマセヌガ、或ル地方官吏ノ如キハ、中央
ノ各省ノ官吏ノ電話ニ接シタ場合、自己ノ
意ニ滿タザル場合ニハ其ノ命ニ服サザルノ
ミナラズ、積極的ニ之ニ抗辯ヲ致シテ、
而モ之ニ向ツテ罵聲ヲ發スル、殆ド匹
夫野人ト雖モ用フベカラザル如キ言辭ヲ
弄シテ居ル、斯ノ如ク今日ノ狀態ハ實ニ
非常ナル上下系統ヲ紊ツテ居ル事實ガア
ル、其ノ事實ヲ私ハ一々此處ニ申上ゲルコ
トハ欲シマセヌガ、左樣ナ事柄ガ幾多今日
現ハレテ居リマス、甚ダシキニ至リマシテ
ハ、自己ノ榮達ヲ圖リマスガ爲ニハ、日本
國民ノ大切ナル孝道ヲ紊リ、而モ日本ノ國
ニ於キマシテ大切ナル所ノ師弟ノ道ヲ紊
ル、私ハ是モ此ノ場合ニ實例ヲ擧ゲテハ申
上ゲヌ、某ナル者ガ大學ヲ卒業シテ今ヤ高
等官ノ地位ニ就イテ居ル、曾テ中等學校ノ
時代ニ〓ヲ受ケタル其ノ恩師ガ一中等學校
ノ校長トシテ居ルト云フ場合、自己ガ自ラ
曾テ〓ヘラレタル所ノ自己ノ恩人ガ其ノ官
等ノ低ク、其ノ地位ノ低キ故ヲ以テ-私
ハ人心ヲ紊スノ虞ガアリマスカラ露骨ニ申
上ゲマセヌガ、洵ニ言語道斷ナル所ノ無禮
ナ態度ヲ執ツテ居ツタル事實ガアルノデア
リマス、是等ノ如キ者ハ人間ノ風上ニ置ク
ベキモノデハナイ、是ハ其ノ根本ニ間違ガ
アルノデアル、多クノ官吏ガ之ヲ致シテ居
ルト私ハ申スノデハナイ、稀ニアル事實デ
アリマス、又左樣ナ事實ガ到ル處ニアツテ
ハ洵ニ殘念デアリマスガ、私ハ多クアルト
ハ申サナイ、併シナガラ苟モ官吏ノ中ニ斯
ノ如キ者ガ現ハレテ居ルト云フ其ノ事柄ヲ
思フ時ニ、如何ニ日本ノ吏道ガ頽廢シテ居
ルカヲ私ハ證明スルモノデアルト思フノデ
アル(拍手)制度ノ運用モ必要デアリマス
ガ、今日ハ最早運用ダケデハ到底是等ヲ匡
救スルコトハ出來ナイノデアリマス、此ノ
場合ニ私ハ總理大臣ノ御決心ヲ御尋致シタ
イ、事實上ニ於テ必要ノアルベキモノデア
ルナラバ、單ニ運用ニ俟ツト云フコトニア
ラズシテ、之ヲ速ニ法文化シ、之ヲ速ニ法
制化シテ-今日ノ此ノ吏道ノ頽廢ノ何分
カデモ之ニ依ツテ救ヒ得ルナラバ、何等ノ
躊躇スルコトナク、運用ニ俟ツコトハ勿論
デアリマスガ、其ノ運用ダケニ止メズシテ、
之ヲ法文化シ制度化シ、所謂官制機構等ニ
付テノ根本的ノ改革ヲ行ヒナサル御決心ガ
オアリデアルカ否カヲ御尋致シタイノデア
ル(拍手)
殊ニ官吏ノ身分保障令ノ問題ニ付キマシ
テハ、幾度カ議會ノ各委員會ニ於テ問題ト
ナレルノミナラズ、朝野ノ間ニ於テ喧マシ
ク論ゼラレテ居ル問題デアリマス、勿論此
ノ官吏ノ身分保障令ノ制定セラレマシタ其
ノ當時ニ於テハ、相當ニ之ヲ制定スベキ必
要ノアツタコトヲ私ハ認メマス、決シテ不
必要ニ是ガ偶然ニ出來タル法律デハアリマ
セヌ、ソレハ私モ認メマスケレドモ、前ニ
申シタ如ク、客觀情勢ハ今日ニ於テハ著シ
ク變化致シテ居ルノデアリマス、殊ニ議會
自身モ政黨自身モ自肅ヲ致シテ居ル今日デ
アリマス、此ノ身分保障令ノ如キモノハ、
此ノ制定ノ必要デアリシ事由ハ今日全ク解
消セラレテ居ルト言ツテ私ハ毫モ差支ナイ
ト思フノデアリマス(拍手)寧ロ不必要ニナツ
テ居ルト云フダケデハアリマセヌ、必要ヲ
感ゼナイト云フダケデハアリマセヌ、今日
ハ此ノ身分保障令ノ存在ヲ致シマスコト
ガ、非常ナル一ツノ害惡トナリ、害毒トナ
ツテ居ルト云フ事實ヲサヘ今日ハ認メルノ
デアル(拍手)不必要ニナツテ居ルモノハ勿
論之ヲ廢スベシ、況ヤソレガ今日ノ場合ニ
於テ寧ロ有害トナリ、害毒ノ源トナツテ居
ル事實アル以上ハ、速ニ之ヲ撤廢スベキガ
當然デアルト私ハ思ヒマス、之ニ付テモ多ク
ノ理由ヲ申上ゲルコトハ時間モアリマセ
ズ、私玆ニ差控ヘマスガ、私ハ二三其ノ例
ヲ申上ゲテ見タイ、何故ニ有害ニナツテ居
ルカ、私ハ前ニ一二申上ゲタ所ノ官僚獨善、
此ノ官僚獨善ニ此ノ身分保障令ト云フモノ
ハ、是ハ一ツノ牙城ヲ「ペトン」デ以テ固メ
ルト同樣ナモノデアリマス、最モ優レタ「トー
チカ」ヲ造ツタヤウナモノデアル、所謂難攻
不落ノ要塞ヲ茲ニ築キ上ゲテ居ルガ如クニ
ナツテ居ル、其ノ爲ニ是マデモ論ゼラレマ
シタガ、何レ此ノ議會ニ提出セラレテ居リ
マスル人權蹂躙ニ關シマスル質問ノ際ニ於テ
モ述ベラレルコトト私ハ思ツテ居リマスカ
ラ申上ゲマセヌガ、實ニ驚クベキ官權濫用、
人權蹂躪ノ事實ハ、此ノ身分保障令ノ裏ニ
隱レテ不心得ナ吏僚ガ之ヲ爲シテ居ルノダト
私ハ言フヲ憚リマセヌ(拍手)而モ前ニ申シ
マシタヤウナ下剋上ノ思想ガ、ヤハリ依然
トシテ身分保障令アルガ故ニ之ヲ致シテ居
ルノデアリマス、私ハ直接總理大臣ヨリ承
ツタコトデハナイノデアリマスカラ、其ノ
眞否ハ知リマセヌガ、私ガ傳ヘ聞ク所ニ依
レバ、總理大臣デアリマスカ、他ノ閣僚諸
公デアリマスカ、其ノ身分保障令ノ必要ナ
ル理由ノ中ニ、今日ノ官吏ハ信念ノ强キ者
ガ多數ニ居ル、斯ノ如キ者ガ今日ノ社會ニ必
要ナノデアル、斯ル人間ニ對シテ身分ノ保
障ヲシテヤルコトハ必要ナノデアルト言ハ
レタル總理大臣デアリマスカ、閣僚デア
リマスカガアツタト私ハ聞イテ居ル、是ガ
若シ事實デアルト致シマスルナラバ、驚入
ツタルコトダト私ハ思ハザルヲ得ナイ、信
念ト申スモノハ或ルモノノオ陰ニ依ツテ我
儘勝手ヲ致スコトガ信念デハアリマセヌ(拍
手)左樣ナ者ハ自ラ自己ヲ「カモフラージュ
スル爲ニ信念ト申スカモ知ラヌガ、是八
卑怯未練ナ、一番人間トシテ恥ヅベキ態度
デアルト私ハ思ハザルヲ得ナイ、信念ノ强
キ者デアルナラバ、身分保障令ノ如キモノ
ハナクナツテモ、自己ノ信念ニ向ツテ
國ヲ愛スル、國ニ奉公スル所ノ信念ヲ一身
分保障令ニ依ツテ仲ベルニアラズシテ、自
己ノ身分ハドウナラウトモ、自己ノ信念ニ
向ツテ、國家ノ爲ニハ自己ノ一身ヲ投出シ
テ邁進スル、是ガ私ハ信念デアラネバナラ
ヌト思フ(拍手)今日私ノ今申上ゲマシタ如
キコトヲ致スコトハ、身分保障令ニ依ツテ之
ヲ保障スルコトニ依ツテ致スノデアツテ、
其ノ信念アル官吏ヲ保護スルト云フガ如キ
コトハ甚ダ殘念ナコトダト思フノデアリマ
ス、私ハ斯ノ如キ場合ニ勅任官デアリマス
トカ、或ハ恩給年限デアリマストカ、或
又最高官等ニ達シテ居ルト云フガ如キ、其
ノ官吏ニマデ之ヲ適用シナケレバナラヌト
云フ理由ハナイノデハナイカ、斯ノ如キコ
トヲ致シマスカラ、ソレガ爲ニ殊更ニ人事ガ
梗塞スルノデアル、之ヲ私ハ總理大臣ニ御
一考ヲ求メナケレバナラヌ、委員會ノ席上
ニ於テ私ハ總理御自身デ、官吏身分保障令
ニ付テハ考慮シテ居ル、廢止サレルノデア
ルカト一議員ハ質問サレマシタガ、廢止スル
考慮カト言ツタラサウデハナイ、ソレデハソ
レヲ存置スル考慮デアルカ、サウ取ラレテモ
困ルト云フ御答辯デアリマシタ、其ノ御考
慮ニ付テハ何レノ點デアルカハ、私ガ御伺シ
タノデハアリマセヌガ、私ハ今申上ゲルガ
如クニ、御考ヘ下サル時ニ、眞ニ此ノ保障
令ノ一日モ早ク撤廢ナサルト云フコトガ、
私ハ今日ノ此ノ總親和ヲ要求スル時代ニ於
テ-何時ノ時代ニモ要求致シマスガ、殊
ニ今日ハ上下一體總親和ノ必要ナル此ノ重
大時局ニ、人心ヲ明朗ナラシムルト云フコ
トハ、此ノ保障令ノ撤廢ニ負フ所最モ大キ
イコトヲ考ヘテ、總理大臣ガ玆ニ留意セラ
レンコトヲ私ハ御尋致シ、同時ニ希望致ス
ノデアリマス、大體官吏ノ身分保障令ハ官
吏法ノ原則デハアリマセヌ、必要ニ應ジテ
便宜之ヲ制定セラレタ法令デアリマス、決
シテ原則的ナ法令デナイ以上ハ、必要ニ依
レバイツ何時デモ之ヲ制定スル、不必要ニ
ナリ有害ニナツタ場合ニハ、直チニ之ヲ廢
止スルト云フコトガ、最モ賢明ナル政治家
ノ執ルベキ措置デアルト私ハ信ズルノデア
ル(拍手)此ノ點ハ私ハ特ニ總理大臣ニ御伺
致シマス
更ニ私ノ次ニ御尋シタイコトハ、今日濫
立ノ傾キガアルト言ツテモ宜イ國策會社及
ビ民間ニ於キマス所ノ殷賑會社、是等ニ對
シマシテ、此ノ民間會社或ハ半官半民ノ會
社ニ對シマシテ、餘リニ官吏ノ天降リ人事ガ
行ハレマスコトニ付テ、國民ハ顰蹙ヲ致シテ
居ルノデアリマス、私ハ今日此ノ民間會社ニ入
社致シマシタ者ノ中ニハ、適材適能ノアルコ
トヲ承知シテ居リマス、私ハ官吏デアルガ故
ニ悉ク民間會社ニ入ルコトハ出來ナイト云
フヤウナ、極端ナル絕對的ノ議論ヲ致スノ
デハアリマセヌ、其ノ中ニ適材適能ノ人ノ
アルコトヲ私ハ實地ニ於テ認メテ居リマス
ガ、私ハ此ノ場合ニ私ノ最モ茲ニ總理大臣
ニ御尋シテ置キクイコト、又私ノ最モ不都
合デアルト思ヒマスノハ、卽チ官廳ノ人事
ノ行詰リノ結果天降リ人事ヲ行フ、所謂官
吏身分保障法ヲ存置シテ置キマスガ爲ニ
無理ヲシテ此ノ法令ヲ存置スルガ爲ニ、官
廳ノ人事ガ行詰ツタ、其ノ行詰ツタ無理ヲ
ドウニカシナケレバナラヌ爲ニ、又モウ一
ツノ理由ヲ重ネテ居ルヤウナ、無理カラ生
ンダ無理ガ之ヲ爲シテ居ル(拍手)此ノ人事
ガイケナイノデアル、モウ一ツハ、豫メ在
任中ニオ手盗細エヲシテ置イテ、其ノ動機
A
ハ一ツノ貨汚ノ動機ニ基イテ、サウシテ天
降リ人事ヲ致シテ官吏ガ會社ニ入ル、是ガ
最モ戒メナケレバナラヌコトデアルノデア
リマス、其ノ結果ハ所謂產業界ニ經濟界ニ
色々ナル不振ノ原因ヲ與ヘマス、殊ニ斯ノ
如キ事ヲ致シマスコトハ、官吏服務紀律、
官吏ノ鐵則ト申スベキ所ノ此ノ服務紀律ヲ、
合法的ニ紊亂シ背反スルモノデアリマス、
政府自ラ、役人自ラガ儼然タル此ノ尊嚴ナ
ル國法ヲ冐瀆シ、合法的ニ之ヲ紊亂スル、
合法的ニ之ニ背反スルト云フガ如キ事實ヲ
惹起スルノデアリマス、況ヤ綱紀紊亂ヲ助
長スルコトニ相成ルコトハ、是ハ私ガ申上
ゲルマデモナイ、是等ノ理由ニ依リマシテ、
一日モ早ク此ノ官吏保障法ヲ撤廢セラレ、
此ノ非常時局ニ於テ擧國一體、國民總親和
ヲ要スル時代ニ於テ、此ノ際人心ヲ一新シ、
明朗化スル上ニハ、是ガ非デモ斯樣ナ事柄
ヲ斷然防止スルト云フコトニ付テ、政府ハ
如何ナル御考ヲ御持チニナツテ居ルカ、遂
ニ議會ハ已ムナク色々ナ條文ニ附帶決議ヲ
シ、或ハ新ナ法律ノ條文ノ改正ヲシナケレ
バナラヌト云フガ如キ狀態ニ立至ツテ居ル
ノデアリマスカラ、此ノ場合總理大臣ノ之
ニ對スル御決意ヲ明ニセラルルコトガ、國
民ニ對スル最モ良キ對策ノ一ツデアルト私
ハ考ヘル(拍手)
更ニ私ノ御伺致シタイコトハ、官界ニ於
キマスル所ノ此ノ原因ハ、所謂秀才型ガ
不足シテ居ル爲デハナイ、今日ノ官界ニ於
ケル所ノ幾多ノ弊害、幾多ノ缺陷ハ、所
謂大學ノ秀才型ノ缺乏ノ爲ニ起ツテ居ル
ノデハナイ、寧ロ時務ヲ解スル所ノ人物ノ
缺乏ニ依ツテ、今日ノ官界ニ異變ガ起ツテ
居ルト私ハ信ズル、產業、經濟ヲ掌リマス
ル省ニ於テハ勿論ノコト、內務省、外務省
ノ如キ役所ニ於キマシテモ、此ノ所謂時務
ヲ解スル所ノ人物ノ拂底ト云フコトガ、今
日ノ官界ニ於ケル色々ナ異變ヲ生ジテ居ル
ト云フコトヲ思ハザルヲ得ナイノデアリマ
ス、故ニ此ノ際內外ノ色々ナ政治ヲ改メ、
內外ニ革新的ナ、大イナル仕事ヲ致サント
シマス場合ニ於キマシテハ、此ノ官吏任用
令ヲ改正致シテ、サウシテ人物登用ノ門戶
ヲ開放スルト云フコトガ、今日殘サレタル
一ツノ重大ナル命題デアル、而シテ是ト相伴
ヒマシテ官吏ノ登龍門ヲ開ク爲ニハ、今日
ノ試驗制度ヲモウ少シ實際ニ卽シタヤウニ
改正ヲナサル御考ハナイカ、何ト申シマシ
テモ東亞ノ新建設ニ對シマシテ、人的資源
ノ必要ナルコトハ玆ニ申上ゲルマデモナイ、
人的資源ト申スノハ、必ズシモ勞働者ノミ
ヲ指スノデハアリマセヌ、技術者ノミヲ指
スノデハアリマセヌ、私ノ今申シマスガ如
キ其ノ人物ヲ用ヒルニアラザレバ、斷ジテ
新東亞ノ建設ハ可能ナラズ、成功シ得ザル
コトヲ信ジテ、私ハ此ノ點ニ付テモ特ニ總
理大臣ノ御言明ヲ得タイト考ヘルノデアリ
マス(拍手)
更ニ私ハ是等ノ問題ト相關聯ヲ致シマシ
テ、總理大臣ニ御伺ヲシテ、是非トモ總理
大臣ノ御決心ヲ促サナケレバナラヌコトハ、
ソレハ近來ノ一般社會ノ生活ノ向上ト、之
ニ加ヘマシテ物價ノ騰貴、先程道家君カラ
モ此ノ席上デ御話ニナリマシタ、一部ノ階
級ニ對シマシテハ、此ノ物價騰貴ガ禍シテ、
非常ナル苦境ニ陷レテ居ル所ノ數字ヲ示シ
テノ道家君ノ御話デアリマシタガ、今日ハ
下級ノ俸給者ノ生活ハ、或ル意味カラ申シ
マスレバ、人道問題ヲ以テ考ヘナケレバナ
ラヌ程ノ急迫ノ狀態ニ差迫ツテ居リマス、
一例ヲ申上ゲレバ、今日先ヅ地方ノ町
ナドニ於キマシテ相當ナル役人-私ハ此
處デ此ノ事ノ役所ヲ引用スルコトヲ避ケタ
方ガ、役所ノ名譽ノ爲ト思ヒマスカラ茲ニ
避ケマスガ、或ル一部ヲ代表スベキ役所ニ
居ル所ノ其ノ長ノ一箇月ノ俸給、少クト
モ判任官五六等位ナ官吏ノ一箇月ノ給料
下、殷賑產業ニ從事致シテ居リマスル熟練
職工ノ一日ノ日給トガ、相匹敵スルヤウナ
狀態ニナツテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ
狀態ニ於テ、熟練職工ノ一日ノ給料ト、或
ル役所ヲ代表スルガ如キ地位ニ在ル、其ノ
役人ノ一箇月ノ給料トガ同額デアルト云フ
ガ如キコトニ付テ、私ハ必ズシモ物ノミニ
重キヲ置クノデハアリマセヌガ、今日ノ社
會生活ノ上カラ見マシタナラバ、左樣ナコ
トヲ致シテ其ノ儘デドウシテ此ノ官紀ガ完
全ニ保タレ、威信ガ完全ニ保タレルカト云
フコトニ疑ヲ持タザルヲ得ナイ、此ノ點ニ
付テ私ハ此ノ內閣トシテハ特別ナル考ヲ御
持チ下サランコトヲ願フ、殊ニ日本國民ハ
興隆國民デアリマス、日本ハ今躍進ノ途上
ニアリマス、當然今後ニ於テ國務ガ增加致
シマス、國務ガ增加致シマスレバ官吏モ增
加致スニ違ヒナイ、卽チ一昨年、昨年、今年ノ
豫算ヲ議シタ明年ノコトヲ考ヘテ見マスレ
バ約五万人ノ官吏ノ增員トナル豫定ニ相
成ツテ居ル、私カラ申スナラバ、今日ノ場
合身命ヲ賭シテ戰場ニ働イテ居ル人モア
ル、今日ノ場合人ヲ增スヨリモ、現在居リ
マス人ノ其ノ待遇ヲ改善スルコトヲ先ヅ先
ニ致シテ、而シテ働ケ、働クナラバ與ヘラ
レルト云フコトノ、其ノ明朗性ヲ持タスト
云フコトガ、私ハ最モ必要ナルコトダト考
ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ於テ總親
和新建設ヲ提唱セラレテ居リマス總理大
臣ガ、第一ニ解答ヲ與ヘラルベキ命題デア
ラネバナラヌト私ハ考ヘテ、特ニ總理大臣
ニ此ノ事ノ質問ヲ致スノデアリマス
更ニ私ハ今囘ノ大ナル聖戰ノ其ノ目標
ハ言フマデモナク東亞ノ新建設ニアルノ
デアリマスガ、此ノ建設ノ核心トナルベキ
モノハ人的要素デアリマス、而シテ日滿支
ノ提携ガ其ノ全貌デアリマス、此ノ場合ニ
私ハ少シク過去ヲ顧ミテ、總理ニ促シタイ
コトガアル、朝鮮ノ萬歲騒動ノ起リマシタ
其ノ原因ニハ色々ナ理由ガアリマス、寺內總
督ハ就任以來銳意此ノ施政ノ改善ニ向ツテ
努メマシタ、然ルニ總督在任八年ノ後ニ所
謂獨立萬歲騒動ガ起ツタノデアリマス、其
ノ起ツタコトニ付テハ幾多ノ理由ガアリマ
スガ、其ノ中デ一番大キナ原因ノ一ツヲ擧
ゲテ申シマスナラバ、官吏ノ誤レル優越感
ニ基ク獨善ガ、之ヲ起サシメタ大キナ原因
ヲ成シテ居ルコトハ、何人モ否ムコトノ出來
ヌコトダト思フ(拍手)私ハ此ノ過去ニ於ケ
ル朝鮮ノ萬歲騒動ノコトヲ想ヒマシテ、更
ニ滿洲ノ實情ヲ想フ時ニ、滿洲ノ巷間ニ於
テ法律匪、所謂法匪ノ名ガアル、或ハ官吏
ノ匪、官匪ノ名ガアル、此ノ法匪官匪ノ譬
語ノ如キモノハ、滿洲ノ民情ニ照シテ考へ
マスル時ニ、決シテ是ハ吉兆ト云フコトハ
出來ナイノデアリマス、朝鮮ノ獨立ノ萬歲
騷ギガ起ツタコトト其ノ當時ノコトヲ考
ヘ、更ニ滿洲ニ於キマシテノ其ノ法匪、官
匪ノ譬語ノアリマスコトヲ想フ時ニ、政治
的ニ甚ダシク吉兆ナラザルコトヲ思ハザル
ヲ得マセヌ、之ヲ更ニ押延ベテ押擴ゲテ申
シマスレバ、日滿支提携ニ思ヒ及ブ時ニ、
此ノ事實ヲ以テ見ル時ニ、私ハ一抹ノ憂心
ヲ禁ズルコトガ出來ナイノデアリマス、是
等ノ事實ニ付テ、斯ウ云フコトニ付テ、東亞
ノ新建設ノ大業ヲ爲サントスル此ノ聖戰ノ
目標ガ、東亞ノ新秩序建設ニアル、之ヲ遂
行セントスル此ノ現内閣ノ首班ニ居ラレル
平沼内閣總理大臣ハ、如何樣ニ御考ニナル
カ、是ハ今日ノ實情デハアリマセヌ、今後ニ對
スル重大ナル問題デアリマスガ故ニ、特ニ總
理大臣ノ御言明ヲ私ハ得タイノデアリマス
更ニ私ハ今日日本ノ官界ノ實情ヲ思ヒ
マス時ニ、洵ニ憂フベキモノガ少カラ
ズ、本當ニ痛憤ニ堪ヘザルモノガ少クナ
イト思ヒマス、總理大臣ハ今日官吏ノ服
務規律ガドノ程度ニ堅持セラレテアルカ
ト思召ニナリマスカ、私ヲシテ率直ニ言
ハシムレバ、此ノ官吏道ノ鐵則デアル官
吏ノ服務規律、竝ニ先般發セラレタル總
理大臣ノ官吏自肅ノ訓示ハ、悉ク私ハ玆
ニ裏切ラレテ居ルノデハナイカ、若シ此ノ
事實ヲ一々玆ニ申上ゲルコトニナリマスレ
バ、餘程多クノ時間ヲ要シマスカラ、私
ハ事實ハ一々指摘致シマセヌ、要領ダケ
ヲ玆ニ申上ゲル、曩ニ總理ガ戒メテ居ラレ
マシタガ、ソレニ反シテ今日ノ官吏ハ自ラ
高ク評價シテ居リマス、誤レル優越感ニ依
ル所ノ獨善ノアルコトハ、先ニ申シタ如ク
デアリマス、而シテ職務ニ勉勵デアルノカ、
今カラ二十年モ以前デアリマセウカ)私ガ
役所ニ行ツテ見タコトノアル頃ニハ、下級
ノ官吏ト云フモノハ書面ニ印ヲ捺シマス
コトニ付テ、其ノ印ノ捺シ方ニマデ長官ヨ
リヤカマシク言ハレタモノデアル、其ノ位
ヤカマシク言ハレテ使ハレタモノデアリマ
ス、然ルニ今日ハ殆ド役所ニ於テ-私ハ
役所ノ中ノコトヲ申上ゲルコトハ餘リ好ミ
マセヌガ、役所ニ於ケル所ノモノハ、縱ノ
系統ハ形式ガ假ニアルトシタ所ガ、橫ノ連
絡ト云フモノガ全然ナイガ爲ニ、橫ニ於テ
ノ統一ガ全然取レテ居ラヌノデアリマス、
皆ガ思フ勝手ニ書面ヲ作ツテ、唯分リサヘ
スレバ宜イデハナイカト云フガ如キ狀態ニ
今日ハナツテ居ル、況ヤ判ノ取扱ノ如キ
斯樣ナコトヲドウノ斯ウノト申スノハ小サ
イヤウデアリマスガ、其ノ位ニ勤勉ナラザ
ル狀態ニナツテ居リマス、隨テ懇切ヲ缺イ
テ居ルコトハ勿論デアリマス、私ハ斯ウ云
フ意味ニ於キマシテ、是等ノコトニ關シ官
吏ノ服務紀律ナルモノニハ儼然ト書カレテ
居ル、職務ニ勉勵デアリ、懇切デアレト云
フコトガ書カレテ居ルニ拘ラズ、全然之ヲ
裏切ツタル行爲ガ行ハレテ居リマス、今日
ハ曩ニ申シタ如ク、下剋上ノ行爲ヲ爲ス者
モ少クナイ、而モ一面ニ於テ考ヘル時ニ、
曩ニ申シタ如ク相剋摩擦、或ハ學校ハ閥ヲ
作リ、或ハ個人ハ派ヲ作リ、色々ナコトヲ
致ス、殊ニ贈與饗應ノ如キモノハ公々然ト
行ハレテ居リマス、若シ總理大臣ガ此ノ東
京市內ニ於テ夜每遊興ニ耽ル其ノ人間ノ數
ノ報告ヲ警視廳ニ命ジ、憲兵隊ニ命ジテ求
メラレマシタナラバ、恐ラクハ總理大臣ハ仰
天セラレルコトデアラウト思ハザルヲ得ナ
イ(拍手)私ハアレ是ノ事實ハ申上ゲマセヌ、
兎ニ角左樣ニナツテ居ツテ、一面ニハ非常
ナ弛緩ヲ生ジ、或ハ進退ヲ處シテ居ルカト
思ヘバ、一面ニ於テハ革新ノ名ノ下ニ、時
局ニ便乘シテ、色々ナモノヲ煽動シテ國法
ヲ紊リ、不祥事ヲ誘發スルガ如キコトヲ爲
シテ居ルガ如キ者ノアルコトヲ私ハ思ハザ
ルヲ得ナイ、而モ左樣ナコトヲ致ス者デア
ツテモ、年來リ、機來リマスルナラバ、勳
位官等ハ遂ニ高位ニ推奏セラレルガ如キ狀
態デアツテ、實地ヲ見テ居リマス國民ノ精
神ニ及ボス影響ハ、極メテ甚大ナルモノガ
アルト私ハ考ヘル(拍手)甚ダシキニ至リマ
シテハ威權ヲ濫用致シマシテ、良民ニ罰ヲ
構ヘマシテ之ヲ拷糺シテ居ル、天下ノ名士
ノ名譽ヲ故ラニ毀損致シ、自己滿足ヲ致シ、
自己ノ功名ヲ誇ルガ如キ、自己ノ權勢ヲ誇
ルガ如キ不心得ナ吏僚ガ、今日跋扈シテ居
ルノデアリマス(拍手)今日ノ日本國民ハ
官吏ニ對スル恐怖時代デアリマス、私ハ判
然ト申上ゲル、私ガ最近手ニシタコトハ
此ノ吏僚ニ關スル質問ヲ議會デ致スコトノ
小サナ記事ガ新聞ヲ通ジテ現ハレルト、其
〓ノ翌日カラ態〓私ヲ訪問シテ來ル、私ノ許
ニ書面ヲ送ツテ來ル、此ノ吏道頽廢ノ色々
ノ事實ヲ私ニ示シテ吳レタコトハ、實ニ驚
クベキモノガアルト同時ニ、私ハ其ノ內容
ヲ點檢シテ、實ニ痛憤ニ堪ヘザルモノガア
ツタノデアリマス(拍手)今日ノ國民ハ實ニ官
吏ニ對スル恐怖時代ニアルコトヲ、私ハ如
實ニ示シテ居ルモノデアルト思ヒマス、恐
怖時代ハ尙ホ抑ヘテ行クコトガ出來ルデア
リマセウガ、此ノ官吏ニ對スル恐怖時代ガ
更ニ一轉シテ、官吏ニ對スル反抗時代ニナ
ツタ時ニハ、由々シキ大事ヲ惹起スデアラ
ウコトヲ思ハザルヲ得ナイ、今日未ダ反抗
ノ時代ニ至ラザル此ノ洵ニ悲シムベキ恐怖
時代デアリマスケレドモ、此ノ恐怖時代、
之ヲ匡救シ、之ヲ救出シ、之ヲ善導致スコ
トガ、是ガ今日ノ總理大臣ノ最モ重大ナル
責任ノ一ツデアルト私ハ考ヘテ居ルノデア
リマス(「ヒヤ〓〓」拍手)
更ニ私ノモウ一ツ御伺致シタイコトハ、
今日ニ於キマシテ、今私ガ申シマシタ如ク、
此ノ官界ヲ〓觀致シマスレバ、一方ニ於キ
マシテハ、官吏ノ其ノ氣風ガ沈滯ヲ致シ、
或ハ緊張ヲ缺イテ居ル、所謂事勿レ主義ニ
堕シテ居ル一派ガアリマス、更ニ又其ノ
派ハ、先ニ私申シタ如ク、日本ノ國ノ革新
ハ大化ノ革新ニ致サレマシテモ、建武ノ
中興ニ致シマシテモ、明治ノ維新ニ致シマ
シテモ、所謂日本ノ革新ト稱スルモノハ
悉ク肇國ノ元ニ還ルノガ日本ノ革新デアル
ノデアリマス、此ノ日本ノ嘗テ千年、二千
年間ニ於テ行ハレマシタ其ノ革新ハ、悉ク
肇國ノ元ニ還ルニアツタ、然ルニ今日ハド
ウ云フコトニナツテ居ルカト申シマスレバ、
之ヲ誤ツテ所謂革新的陰謀ヲ試ミルコトヲ
以テ、一ツノ革新デアルト考ヘテ、時局ニ
便乘スルガ如キ者ガアルノデアリマス(拍
手)之ヲ改ムルコトガ必要デアル、此ノ所
謂事勿レ主義ニ墮シテ居ル者モ、革新的陰
謀ニ狂躁シテ居リマス者モ、共ニ是ハ-
日本ノ國ハ悉ク公私一體デアル、其ノ公私
一體ノ建前ニ於ケル私人ノ完成、私ノ完成、
公私一體ノ建前ニ於ケル私ノ完成ト云フコ
トヲ忘レテシマツテ、之ヲ歐米ニ於ケル個
人主義、其ノ個人完成ト同樣デアルト考ヘ
テ居ルコトニ、此ノ兩者ハヤハリ揆ヲ一ニ
シテ、今日ノ弊害ヲ作シテ居ルト私ハ思ヒ
マス(拍手)端的ニ申シマスレバ、今日官界
ニ於ケル所ノ其ノ弊害ノ禍根ハ、其ノ個人
主義ニアルノデアリマス、何ヲ致シマスニ
モ、悉ク自己ノ功名ノ爲ニ、悉ク自己ノ出
世ノ爲ニ、悉ク自己ノ利益ノ爲ニ、悉ク自
己ノ權勢ノ爲ニ、是ガ卽チ今日ノ吏道頽廢
ノ根本デアリ、今日ノ日本ニ於ケル大ナル
憂ノ本ヲ成シテ居ルノダト私ハ考ヘル(「ヒ
ヤヒヤ」拍手)此ノ吏道刷新ノ根本ハ、總理
ノ言ハルル如ク、官吏ガ應分應能ニ依リ大
政ヲ翼贊シ奉リ、自己ノ分ニ依ツテ、隨テ
官吏ハ行政翼贊ニ依ツテ大御心ニ歸一シ奉
ルト云フコトガ、是ガ日本ノ官吏道デアリ、
日本ノ道義デアル、漢學者流ノ謂フ道義ト
日本ノ道義トノ相違ハ此處ニアルノデアル、
日本ノ道義ハ、其ノ萬民輔翼ノ道ニ依ツテ
大御心ニ歸一シ奉ルト云フ、是ガ卽チ日本ノ
道義デアル、此ノ道義ノ外交、道義ノ行政、
道義ノ經濟、道義ノ國防、之ヲ行フコトニ
於テ、今日ノ日本軍ガ連戰連勝致シテ居ル
コトハ、一ニ私ハ之ニ歸シテ居ルト考ヘル、
我ガ出征將兵諸君ガ考へテ居ル此ノ道義心
ヲ、官吏ガ自ラ考ヘテ居ルトキニ、官吏ハ
其ノ職ヲ執ルニ當ツテ、如何ニシテ大御心
ニ對ヘ奉ルカ、如何ニシテ大御心ニ歸一シ
奉ルカト云コトヲ一念ニ思ヒマストキニ、
初メテ吏道ハ刷新セラレ、初メテ日本ハ仕
合セニナルノダト私ハ考ヘル、樂翁公ガ嘗テ
民其ノ座右銘トシテ置カレマシタル「爾ノ俸
爾ノ祿嘗民ノ脂ナリ下民ハ虐ゲ易ク上天欺
キ難シ」云フトコトヲ、官吏ガ固ク銘記シ
テ居リマ、スナラバ、若シ之ニ背反スルガ如
キ者、紀律ニ背反スルガ如キ者ガアレバ
容赦ナク之ヲ處斷シ、サウシテ信賞必罰ヲ
明ニスル總理大臣ノ御決心ガアルナラバ、
今日ハ文書ノ訓示、「ラデオ」ノ放送ノ如
キデ之ヲ改メルコトハアリマセヌ、總理大
臣自ラ躬ヲ以テ、總理大臣ハ各閣僚ヲ董督
シ、各大臣ハ次官、次官ハ局長、局長ハ課
長、課長ハ係長主任、ソレ等ノ人達ハ全課
員、之ヲ躬ヲ以テ本當ニ日本ノ道義、
日本人ノ道義ヲ實行スルコトヲ致シマス
ナラバ、是ハ必ズシモ難カシイ事ニアラズ
シテ、而シテ是ガ完成セラルルコトヲ信ズ
ルガ故ニ、此ノ點ニ於テ「ラヂオ」ノ放送モ
可ナリデアリマス、文書ノ訓示モ可ナリデ
アリマス、併シナガラ總理大臣ハ躬ヲ以テ
私ノ今申シタ、此ノ所謂吏道刷新ニ御當リ
下サル御決心ヲ御持チノコトト考ヘマス
ガ、之ヲ明白ニナサレテ、苟モ訓示ニ反シ、
苟モ官吏ノ服務紀律ニ背反ス。ルガ如キ者
ハ、斷乎タル御處置ヲ執ルコトヲ茲ニ言明
ヲセラルルノ御決心ガアリヤ否ヤヲ、私ハ
重ネテ御伺ヲ致スノデアリマス(拍手)
最後ニ私ハ總理大臣初メ內閣ノ閣僚ニ申
上ゲル、嘗テ政黨ニ對シテ一部ノ人達ガ加
ヘタルガ如キ、左樣ナル陰謀、左樣ナル策
動ノ意味ニ於テ、私共ハ政友會、民政黨ノ
諸君ノ贊同ヲ得テ此ノ質問ヲ致シタノデハ
アリマセヌ、私共ハ官吏ノ非違ヲ剔抉シ、
吏僚ノ曲非ヲ糾彈シテ、一時ノ快ヲ貪ラン
トスルノデハアリマセヌ、今日ノ日本國ノ
實情ニ照シテ見テ、此ノ聖戰ノ目的ヲ如何
ニシテ貫徹スベキヤ、卽チ吾々ハ此ノ東亞
新建設ノ大使命ヲ持チ、更ニ進ンデハ吾々
ハ此ノ世界ノ重壓ニ向ツテ抗セナケレバナ
ラヌ、此ノ事ニ付テ如何ニスベキヤト云フ
コトノ根本ノ一ツノ重大ナル問題ハ、吏道
ノ刷新デアルコトヲ思フガ故ニ徒ニ私ハ非
違ヲ剔抉シ、徒ニ非曲ヲ糾彈スルニアラズ
シテ、眞ニ憂國ノ至誠ヲ以テ民政黨政友會
ノ諸君ト共ニ之ヲ御尋致スノデアリマス
(拍手)幸ニ總理大臣ハ此ノ意味ヲ諒承セラ
レマシテ、若シ私ノ言葉ガ足ラズト雖モ、
之ヲ總理大臣ガ今日御酌取リニナラナカツ
タナラバ、恐ラクハ次ノ議會ヲ俟タズシテ、
色々重大ナル事柄ノ發生スルコトヲ私ハ憂
慮シマスルガ爲ニ(「ヒヤ〓〓」拍手)願ク
バ總理大臣ハ此ノ國民代表ノ府タル衆議院
ヲ通ジテ、一山道襄一ノ質問ニアラズ、
政友會、一民政黨ノ代表者ノ質問ニアラズ、
眞ニ日本ノ帝國ヲ憂フル意味ニ於テ、總理
大臣ハ此ノ國民ノ代表ノ府ヲ通ジテ之ヲ天
下ニ示シ、之ヲ國民ニ示シ、而シテ民心ヲ
安定セシメ、而シテ此ノ東亞再建ノ大業ノ
完成ニ貢獻セラレンコトヲ切望致シマシテ、
私ノ質問ヲ終ル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=39
-
040・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 只今山道
君ヨリ民政黨竝ニ政友會ヲ代表セラレマシ
テ、私ニ對シテ吏道刷新ニ關スル御尋ガゴ
ザリマシタ、山道君ノ之ヲ私ニ問ハルル意思
ハ、眞ニ憂國ノ至誠ニ出デ、現狀デハ國家ノ
前途ニ對シテ憂フベキモノガアル、此ノ意
思ニ出デタノデアルト云フコトヲ御述ニナ
リマシタ、私ハ固ヨリ斯ノ如ク山道君ノ之
ヲ述ベラルル所以ノモノヲ、能ク諒承致シ
マシテ拜聽致シタノデアリマス(拍手)私ハ
現今內閣ノ首班ニ坐シテ、官吏全體ヲ董督
スルノ責任ヲ持ツテ居リマス、官吏全體ニ
付キマシテ、其ノ何レノ部分ニ於キマシテ
モ、苟モ非違ガゴザイマシタナラバ、私ノ
董督ノ責任ヲ盡サザルニ因ルモノデゴザイ
マスルカラシテ、私ハ如何ナル場合ニ於テ
モ、其ノ責任ヲ負ハナケレバナラヌ地位ニ
現今居ルノデアリマス、只今山道君ノ御述
ニナリマシタ各項目ニ付テノコトヲ承リマ
シテ、私自身洵ニ憂慮ニ堪ヘナイノデアリ
マく、斯ノ如キコトガ官吏ノ中ニゴザイマ
シテハ、將來國政ヲ執ル上ニ於キマシテ、
洵ニ心配ニ堪ヘナイト云フコトヲ感ジマス、
現今我ガ忠勇ナル將兵パ、戰地ニ於キマシ
テ身命ヲ抛ツテ君國ノ爲ニ盡シテ居リマス、
又銃後ノ國民ハ內ニ在ツテ之ニ應ジテ、各〓〓
其ノ國民タルノ責任ヲ盡シテ居ルノデアリ
マス、私ハ官吏獨リ此ノ責任ヲ解セナイト云
フコトハ、決シテ考ヘテ居ラナイノデアリ
マス、現今ノ宜吏ガ其ノ職務ニ勉勵ヲ致シマ
シテ、其ノ心底ニ於テ君國ノ爲ニ力ヲ致シ
テ居ルト云フコトハ、私ハ官吏全體ノ爲ニ
玆ニ言明ヲ致シマス、併シナガラ現今官吏
ガ各官廳ニ於キマシテ執務ヲ爲ス際ニ於キ
マシテ、山道君ノ述べラレル如キ點ノ全ク
ナイト云フコトヲ私ハ申上ゲルノデハアリ
マセヌ、先ヅ大體ニ付テ觀察ヲ致シマスト、
先刻山道君ノ根本ノ原因トシテ述ベラレマ
シタルコトハ、洵ニ私ハ傾聽スベキコトデ
アルト考ヘルノデアリマス、我國ガ明治維
新以後必要ニ應ジマシテ外國ノ文物ヲ採入
レマシテ、之ニ依ツテ〓育ヲシ來ツタノデ
ゴザイマス、固ヨリ我ガ固有ノ精神ヲ授ケ
ルコトモ深ク考ヘラレタデアリマセウガ、
唯物質文明ヲ早ク採入レル必要ヨリ致シマ
シテ、精神方面ノコトガ疎カニナツタト云
フコトハ否ムコトハ出來ナイノデアリマス、
山道君ノ仰シヤル所謂個人主義思想ト云フ
モノガ、我ガ上下、殊ニ〓育ヲ受ケル若キ
人々ノ頭ヲ支配シタト云フコトモ否ムコト
ガ出來ナイト思フ、私ハ山道君ト共ニ我ガ
臣民ノ進ムベキ道ノ根本デアルト考ヘマス
ル、眞ニ君國ニ奉仕スルノ精神、大御心ニ
歸一スルノ精神、是ガ官吏タルト官吏ニア
ラザルトヲ問ハズ、總テノ者ノ職務業務ノ
根本ニナラナケレバナラヌト云フコトハ、
洵ニ其ノ通リデアル、此ノ精神ヲ以テ總テ
ノ人ヲ導キマシタナラバ、必ズヤ總テ所謂
滅私奉公ノ精神ニ依リマシテ、各〓其ノ職務
業務ニ從事致シマシテ、之ニ依ツテ君國ニ
奉仕スルト云フ結果ニ相成ルト考ヘルノデ
アリマス、官吏ノ中、山道君ノ述ベラレル
ガ如キ非遠ノ點ガデゴザイマスナラバ、蓋
シ其ノ原因ハ此處ニアルデアラウト考ヘル
ノデアリマス、私ハ吏道刷新ノ方法ト致シ
マシテ、徒ニ文書ヲ發シ、或ハ言論ニ依リ
マシテ、之ヲ導クト云フコトヲ考ヘテ居ル
ノデハアリマセヌ、山道君ノ述べラレル通
リ、身ヲ以テ範ヲ示スト云フコトガ大事デ
アリマス、私ハ閣僚ト共ニ此ノ事ヲ深ク考
ヘマシテ、自ラ範ヲ示シマシテ、吏僚ノ正
シキ道ヲ履ムコトニ指導致スコトガ大切デ
アルト云フコトハ、深ク感ジテ居ルノデゴ
ザイマシテ、是ハ自分ハ此ノ官吏董督ノ重
責ヲ負ヒマスル以上ハ、必ズ之ヲ實行シナ
ケレバナラヌト云フコトヲ痛感シテ居ルノ
デゴザイマス
山道君ノ述ベラレマシタ個々ノ事柄ニ付
キマシテモ、先ヅ大體ノ御答ヲシテ置キタ
イト考ヘマス、先ヅ官吏ト議會トノ關係デ
アリマス、現今議會ノ職能ヲ發揮スルニ付
キマシテ、官吏ガ之ヲ妨害シテ居ルデハナ
イカ、大體斯ウ云フ御趣意ニ歸著スルノデ
アリマス、其ノ事實トシテ擧ゲラレル所ハ、
議會ノ
(田淵豐吉君「官吏ハ協力シテ居ナイヂ
ヤナイカ」ト呼ヒ其ノ他發言スル者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=40
-
041・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靜肅ニ-田淵君
靜肅ニ
〔田淵豐吉君「神奈川縣警察部ハ······
ト呼ヒ其ノ他發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=41
-
042・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 田淵君ノ發言ヲ禁
止致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=42
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043・平沼騏一郎
○國務大巨(男爵平沼騏一郞君) (續)會期
ノ初ニ於テ豫算ヲ提出セズシテ、休會明ケ
ニ之ヲ提出スル、斯ノ如キコトハ議會ノ審
議スベキ期間ヲ短縮スルノ結果トナルノデ
アル、是ハ例トシテ御擧ゲニナツタコトデ
ゴザイマス、吏僚ノ法令ノ解釋、法文ニ拘
泥シタ解釋ガ實情ニ適セズ、是ガ爲ニ議會
ノ審議權ヲ蹂躪スルノ結果トナルト云フコ
トヲ例トシテ御述ニナツテ居ルノデアリマ
ス、是等ノ點ニ付キマシテハ、在來長年此
ノ例ヲ逐ウテ來ツテ居リマス、私ト致シマ
シテハ成ベク豫算ノ提出ヲ早ク致シマシテ、
議會ノ審議期間ヲ事實上短縮スルガ如キコ
トハ出來ルダケ避ケルコトノ至當ナルコ
トヲ信ジテ居ルノデゴザイマス、或ハ又議
會ニ於テ附シタル希望條件若クハ附帶決議
ヲ、全ク是マデ無視シテ居ルデハナイカ、
在來ノ事例ニ於キマシテ、私ハ悉ク諳ンジ
テハ居リマセヌガ、或ハ山道君ノ御述ノ如
キコトデアルカモ存ジマセヌガ、今後ニ
於キマシテハ、苟モ議會ニ於キマシテ附
帶決議ヲセラレタルコト、又ハ決議トシ
テ希望セラレマシタ事柄ニ對シマシテ
ハ愼重ニ考慮ヲ致ス考ハ持ツテ居リマス
ソレカラ次ニ內閣ノ機構改正ノ意思ガア
ルカドウカ、其ノ理由トシテ御述ニナリマ
スコトハ、現行ノ內閣制ハ五十年以前ニ制
定セラレタルモノデアツテ、今日變ツタ時
勢ニハ適セズ、時勢ノ變遷ニ依ツテ機構ハ
改正スルノガ當然デアラウト云フ御說デ、
斯ノ如クスル意思ハナイカ、現今或ハ四相
會議或ハ五相會議ヲ設ケラレテ、是デ諸般
ノコトヲ議シテ居ル、卽チ之ヲ法制化ヲシ
テ、現今ノ內閣制ニ變更ヲ加ヘルノガ至當
デアラウト云フ意味ノ御尋デアリマシタ、
私ハ現今ノ內閣ノ制度ヲ變更スルノ意思ハ
持ツテ居リマセヌ、或ハ四相會議ヲ致スコ
トモゴザイマス、又五相集ツテ會議ヲ致ス
コトモゴザイマス、是ハ總テ其ノ事務ノ性
質ニ依リマシテ、全部ノ閣僚悉ク議シマス
ル前ニ、其ノ主務ノ各大臣ガ寄ツテ議シマ
シテ、之ヲ決スルニ當ツテハ總テ内閣ノ議
ニ付スルノデゴザイマス、何處マデモ內閣
ガ中心デゴザイマス、決シテ五相ガ中心ニ
ナルトカ、四省ガ中心ニナルト云フコトハ
ナイノデゴザイマス、他日或ル意味ノ改正
ヲ必要トスル時期モアルカモ存ジマセヌガ、
現今ハ此ノ儘ノ機構ニ依ツテ時勢ニ對感ス
ルコトガ出來ルモノト考へテ居ルノデアリ
マス
ソレカラ官吏ノ身分保障令撤廢、是ハ屢〓、
本議場ニ於キマシテモ、豫算總會ニ於キ
マシテモ、議員各位ヨリ質問セラレタル事
項デアリマス、御說ノ通リ官吏ト云フモノ
ヲ如何ナルコトガアツテモ之ヲ免黜スルコ
トガ出來ヌト云フコトデアリマシタナラ
バ、是ハ各官廳ノ事務ノ運用ト云フモノガ、
非常ニ阻碍サレルコトハ固ヨリデアリマス、
身分保障令ノ爲ニ現下ハサウ云フ結果ニナ
ツテ居ル、或ハ下剋上、下ノ者ガ上ニ反抗
スル、或ハ同僚ノ間ニ融和ヲ缺ク、是ハ如
何ナル事デアツテモ官吏ノ免黜ガ出來ヌカ
ラデアル、此ノ保障令ヲ盾ニ取ツテ、官吏ガ
一口ニ申セバ我儘ヲスル、斯ウ云フ御說デ
アリマス、私ハ身分保障令ト云フモノヲ、
全部現今ノ儘ニ必ズシテ置カナケレバナラ
ヌトハ考ヘテ居リマセヌ、併シ大體ニ於テ
官吏ノ身分ヲ保障スルト云フコトハ、熱
必要デアルト考ヘテ居ルノデゴザイマス、
併シ是ト同時ニ官吏ニ非違ノアリマシタ場
合ニ、之ヲ全ク處分スルコトガ出來ヌト云
フコトデハ、是ハ相成ラヌノデアリマス、
又假令官吏ガ非違ヲ犯シマセヌデモ、官廳
ノ都合デ其ノ人ヲ置イテハ工合ノ惡イコト
ガ、是ハ幾ラモアルノデアリマス、官廳內
ノ關係カラ申シマシテ、其ノ地方ニ對スル
關係カラ申シマシテ、民間ニ對スル關係カ
ラ申シマシテ、其ノ事務ノ性質カラ申シマ
2
シテモ、其ノ人デハドウシテモイケナイト
云フ場合ハ、是ハ官廳ノ都合ニ依ツテ免ズ
ルコトガ出來ルノデアリマス、現今ノ冷限
委員會-內閣ニ設ケテ居リマス所ノ委員
會詰リ、之ニ諮ツテ、唯長官ガ自分ノ考
ダケデハ是ハ出來ナイト云フ、ココニ一ツ
ノ保障ヲ設ケテ居ルノデアリマシテ、在來
ノ事例ニ於キマシテモ、其ノ事由ガ明カデ
アリマスレバ、如何ナル場合デモ是ハ休職
ニスルコトガ出來ルノデアリマス、是ガ非
常ナ障リニナルト云フコトハ私ハナイト思
フ、唯私ガ申上ゲテ置クノハ、全部例外ナ
シニ此ノ保障令ニ據ラシムルカト言ヘバ、
之ニ對スル例外ヲ設ケルコトハ、私ハ決シ
テ否ムモノデハアリマセヌ
次ニ官吏任用令ノ改正、現今ノ官吏任用
令デアツテハ人物ノ登用ガ出來ヌデハナイ
カ、私ハ此ノ點ハ御同樣ニ感ジテ居ルノデ
アリマス、現今ノ官吏任用令ノ制度デアリ
マシテハ、ドウシテモ事ガ形式ニ相成リマ
シテ、實際ニ於キマシテ必要ナル有用ノ人
村殊ニ山道君ノ言ハレル時務ニ精通シテ
居ル人ヲ得ルニ、甚ダ不便ナコトガ多イノ
デアリマス、私ハ此ノ點ニ付キマシテ、現
今ノ官吏任用令ヲ改正スル必要ガアルト云
フコトハ考ヘテ居ルノデアリマス
ソレカラ下級官吏ヲ今日ノ如キ待遇ニシ
テ置クノハ宜シクナイ、宜シク之ヲ優遇セ
ンケレバナラヌト云フ御質問デアリマシ
タ、洵ニ現今ノ下級官吏ノ狀態、是ハ私モ
存ジテ居リマス、是ハ豫算委員會ニ於テモ
御質問ガゴザイマシタガ、官吏ヲ董督致シ
マスル自分ト致シマシテハ、深ク此ノ點ヲ
考ヘテ居リマス、之ニ對シテ方法ヲ講ゼン
ケレバナラヌト云フコトモ痛感致シテ居ル
ノデアリマス、是ハ現今ノ財政ノ都合ヲ
考ヘマシテ、然ル後ニ實行致サンケレバ
ナラヌコトデゴザイマス、是ハ他ノ閣僚ト
モ能ク意見ヲ交換致シマシタ上、此ノ事ハ
考慮致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス
ソレカラ今東亞ノ新秩序建設ニ付テ、
體現今ノ官吏ノ自ラ優越性ヲ感ズルト云フ
コトハ牴觸スルノデアル、所謂優越感ト云
フモノハ、東亞ノ新秩序ノ建設ニ付テハ
是ハアツテハナラヌト私モ考ヘテ居リマス、
是マデ歐羅巴諸國ガ異色人種ノ住シテ居リ
マスル國ニ臨ミマスル場合ニハ、何時モ優
越感ヲ以テ臨ンデ居リマス、是ハ自ラ優越
ナリト考ヘテ居ルノデアリマセウ、我國ハ
外國ニ臨ミマスルニハ、斯ノ如キ觀念ヲ以
テ臨ムト云フコトハ、我國ノ固有ノ精神ニ
背クト考ヘテ居リマス、殊ニ今囘ノ日滿支
三國ノ提携ヲ圖リマスルニ付キマシテハ、
我國ハ固ヨリ主要ノ地位ニ立チマシテ、之
ヲ指導シテ行クト云フ必要ハアルノデアリ
やく、言葉ハ色々ゴザリマセウガ、兎ニ角
我國ハ其ノ間ニ立チマシテ、能ク之ヲ導イ
テ行クト云フコトハ必要デアリマセウガ、
併シ之ヲ導クニ付キマシテ、是マデ白人種
ガ異人種ノ國ニ向ヒマシタルガ如ク、所謂
優越感ヲ以テ之ニ臨ムト云フコトハ、決シ
テアツテハナラヌト思フノデアリマス、此
ノ點ニ付キマシテハ深ク留意致サナケレバ
ナラヌ、卽チ所調德ヲ以テ化スル、人心ヲ
把握スル、是ハ必ズ德ヲ以テ之ニ臨ムト云
フコトデナケレバナラヌ、所謂優越感ヲ以
テ臨ムト云フコトハ、或ル意味ニ於テハ力
ヲ以テ之ヲ制壓スルト云フ意味ニナルノデ
アリマス、無論力モ必要デアリマセウガ、
大體ハ德ヲ以テ之ニ臨ムト云フコトヲ根據
トシナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス
ソレカラ次ニハ官吏ノ服務紀律ノ紊亂ト
云フコトニ付テ、種々例ヲ擧ゲテノ御尋ガ
ゴザイマシタ、私ハ之ヲ皆無トハ決シテ申
シマセヌ、此ノ點ニ付キマシテハ極力之ヲ
矯正スルノ方途ヲ講ジナケレバナラヌト云
フコトハ考ヘテ居ルノデアリマス、固ヨリ
官吏ノ大多數ハ決シテ服務紀律ヲ犯シテ綱
紀紊亂ニ至ツテ居ラヌト云フコトハ私ハ信
ジマスルガ、併シ是ガ全クナイト云フコト
ハ私ハ斷言ハ致シマセヌ、如何ニ小部分デ
アリマシテモ、斯ノ如キ者ガゴザイマシタ
ナラバ、是ガ矯正ノコトハ十分ニ努メル積
リデゴザイマス
ソレカラ最後ニ吏道刷新ノ根本方針ニ付
キマシテ御述ニナリマシタルコトハ、私ガ
最初ニ御答申シマシタ通リ、全ク此ノ根本
精神ニ付キマシテハ、山道君ト意見ヲ同ジ
ウスルノデゴザイマス、先ヅ大體山道君ノ
御質問ノ點ニ付キマシテ、以上ヲ以テ私ノ
御答ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=43
-
044・山道襄一
○山道襄一君 再質問ノ御許ヲ願ヘマス
カ-許サレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=44
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045・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 山道君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=45
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046・山道襄一
○山道襄一君 此ノ席ヲ拜借致シマシテ··
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=46
-
047・山道襄一
○山道襄一君 只今總理大臣ノ御答辯ヲ得
マシテ、私ト同樣ナ御考、御感ジヲ御持チ
下サツタ點ヲ承リマシテ、此ノ點ハ滿足ヲ
致シマスガ、私ノ質問ニ對シテ同意セラレ
ナイト云フ二三ノ點ニ付キマシテハ私ト
總理大臣トハ認識ヲ異ニシ、意見ヲ異ニシ
テ居ルモノト思ヒマスカラ、是レ以上私申
シマシテモ、是ハ結局意見ノ相違、認識ノ
相違ニ至リマシテ、容易ニ解決ヲ致サヌト
考ヘマス、此ノ際私ハ特ニ再質問ノ形ニ於
キマシテ、總理大臣ニ申上ゲテ置キタイコ
トガアル、根本ニ付テノ認識ハ私ト御同樣
デアルノデアリマス、私ノ申上ゲマシタコ
トハ、私一己ノ意見ヲ申上ゲタト云フヨリ
モ、實際ノ事實ヲ私ハ申上ゲ、而モ其ノ餘
リニ有害デアルト認ムベキ事實ハ此ノ場合
遠慮ヲ致シマシテ、之ヲボカシタ形ニ於テ
私ハ申上ゲマシタケレドモ、是等ノ事柄ニ
付テハ總理大臣ハ十分ニ認識ヲ深メテ下サ
イマシテ、サウシテ殊ニ今ノ御說明ノ中ニ
於ケル機構ノ改革等ニ付テハ、私ハ內閣ニ
五相會議ノアルコトヲ惡イト申スノデモ
ナケレバ、善イト申スノデモアリマセ
又、事實ニ於テ必要ト認メラレルコト
ハ、速ニ之ヲ法文化セラレルコト、制
度化セラレルコトガ、世ノ中ノ流言蜚語
ノ原因トナラズシテ、效果的デハアリマセ
ヌカト云フコトヲ申上ゲマシタ、殊ニ私ハ
一例ヲ取ツテ申上ゲタノデアリマス、內閣
ノ官制ノミデハアリマセヌ、現在ノ實際ノ
機構ノ各般ニ亙リマシテ改正スベキモノア
リ、之ヲ革新スベキ必要ノアルコトハ
總理大臣御認ニナツテ居ル事實ガ幾多アラ
ウト私ハ思ヒマス、之ヲ一々玆ニ具體的ニ
申上ゲルコトハ、時間モ許サズ、不必要ト
考ヘマスガ、特ニ總理大臣ハ機構全般ニ亙
リマシテ、寸毫モ變ヘル必要モナク、總テ
ハ現在ノ行政機構ノ儘ニ於テ、運用ノミニ
依ツテ目的ヲ達成シ得ルト御考ニナルノデ
アリマスカ、中ニハ改正スベキ必要ノアル
モノモアルト御考ニナルカ、是ダケハ簡單
ニ御答ヲ願ツテ置キタイノデアリマス
更ニ官吏身分保障令ニ付キマシテハ、此
ノ中ニ於テ改正ヲスル考ヲ持ツコトハ、今
日御言明ニナツタト思ヒマスガ、根本的ニ
之ヲ全然廢スルコトハ必要ナイト云フ御話
デアリマシタ、此ノ點ニ於テ總理大臣ノ御
認識ニ私過ナキヤヲ疑フノデアリマス、旣
ニ改正ノ要アリト認メテ居ラルルト云フコ
トノ、其ノ深キ具體的ナコトハ存ジマセヌ
ガ、ソレヲ旣ニ御認ニナツテ居ルト云フコ
トガ、今日保障令ハナクテモ、總理大臣ノ
言ハルル如ク、官吏ノ地位ハ十分ニ認メラ
ルルノダ、私ハ七八年前デアリマスガ、議
員會議ニ參リマシタ時ニ、時ノ內閣總理大
臣ヨリ官吏身分保障令ニ付テノ取調ヲ委囑
、セラレタコトガアリマシタ、歐米ノ諸國ニ
於キマシテ、具體的ノ最モ好キ參考ト爲ス
ベキ官吏身分保障令ト云フ法令ハアリマセ
ナカツタ、唯官吏ノ身分ガ事實ニ於テ保障
セラレテ居ルコトハ、英吉利ノ如キハ其ノ
事務ノ「エキスパート」ガ居ルト云フコトニ
於テ、假令政黨内閣ガ迭リマシテモ、此ノ
事務ノ權威者デアルベキ者ヲ、ヤタラニ馘
ルコトハ輿論ノ反抗ヲ受ケルガ爲ニ、攻擊
ヲ受ケルガ爲ニ、其ノ事務次官ノ如キモノ
ハ十五年、二十年ト其ノ位ニ居ツテ、其ノ
省ノ權威者トシテ、事實上ノ身分ノ保障ヲ
セラレテ居ル、日本ニ於テハ色々ナ事情ノ
爲ニ左樣ナコトガ出來ナイ爲ニ、斯ノ如キ
勅令ニ依ツテ保障シナケレバナラヌト云フ
コトニナリ、其ノ結果ハ改正ヲ要スルモノ
ト認メテ居ラレルナラバ、モウ一步進メテ、
眞ニ實力ニ依ツテ身分保障ヲスル程度ニマ
デ、總理大臣ノ御決心アルコトガ、日本ノ
國ヲ革新スルコトニ於テ、色々ノ制度ヲ革
新シ、色々ノ事柄ヲ革新スルコトニ於テ、
最モ必要ナコトト私ハ信ジマス(拍手)此ノ點
ニ於テ意見ノ相違デアルカモ知レマセヌガ、
特ニ總理大臣ガモウ一度再認識ヲ下サラン
コトヲ御願致シマシテ、私ハ此ノ再質問ヲ
打切ルコトニ致シマス(拍手)
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=47
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048・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 只今山道
君ヨリ御尋ニナリマシタ點ニ付キマシテ
簡單ニ御答ヲ致シマス、行政機構ノ改革ニ
付キマシテハ私モ其ノ必要ヲ感ジテ居リマ
ス、今具體的ニドウ云フコトト云フコトハ
申上ゲマセヌガ、或ル方面ニ於キマシテ機
構ノ改革ヲ要スルコトハ私モ認メテ居リマ
ス、ソレカラ身分保障令ノコトニ付キマシ
テ御述ニナリマシタ點ハ、山道君御述ノ通
リ全ク意見ノ相違デアリマス、併シ尙ホ御
述ニナリマシタコニ付キマシテハ、私ハ決
シテ之ヲ全ク考慮ノ外ニ置イテ居ル譯デハ
ゴザイマセヌ、
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=48
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049・服部崎市
○服部崎市君 提出致シマス、
金支出ノ件、
備金支出ノ件、
費支出ノ件、
ノ件、《昭和十三年度特別
支出ノ件、
ニ於テ豫算超過支出ノ件、
題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求メ、
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=49
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050・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=50
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051・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) やく、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、
十二年度第一豫備金支出ノ件外五件、
ヲ求ムル件ヲ一括シテ議題ト致シマス、
員長ノ報告ヲ求メマス-委員長福井甚三君
昭和十二年度第一豫備
金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
豫備費支出ノ件
昭和十三年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十三年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十三年度特別會計
豫備金外ニ於テ豫算超
過支出ノ件
左樣御承知ヲ願ヒマス拍
議事日程變更ノ緊急動議ヲ
卽チ昭和十二年度第一豫備
昭和十二年度特別會計第一豫
昭和十二年度特別會計豫備
昭和十三年度第二豫備金支出
會計第二豫備金
昭和十三年度特別會計豫備金外
右六件ヲ一括議
其ノ審議
服部君ノ動議ニ御
御異議ナシト認メ
昭和
承諾
委
承諾小行·
ヲ求長報
ムル
件告
報告書
一昭和十二年度第一豫備金支出ノ件(承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和十二年度特別會計第一豫備金支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一昭和十二年度特別會計豫備費支出ノ件
(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一昭和十三年度第二豫備金支出ノ件承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和十三年度特別會計第二豫備金支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和十三年度特別會計豫備金外ニ於テ
豫算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長福井甚三
衆議院議長小山松壽殿
〔福井甚三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=51
-
052・福井甚三
○福井甚三君 只今上程サレマシタル昭和
十二年度第一豫備金支出ノ件外五件ノ承諾
ヲ求メル件ノ委員會ノ經過竝ニ其ノ結果ヲ
御報告致シマス、本各案ノ〓要ヲ申上ゲマ
スレバ、昭和十二年度ニ於キマシテハ、
般會計、特別會計ヲ通ジマシテ、豫備金、
豫備費ヨリ四千三百十三万餘圓ヲ支出サレ
テ居ルノデゴザイマス、昭和十三年度ニ於
キマシテハ、同ジク第二豫備金ヨリ五千六
百四十三万餘圓ヲ支出サレルト同時ニ、尙
ホ豫備金ノ外ニ其ノ國庫剩餘金等ヨリ豫算
外ト致シテ支出サレテ居ル金額ハ、三百十
四万餘圓デアルノデアリマス、之ニ對シテ委
員中井間君ヨリ、政府ハ近來豫備金ナリ、餘
裕金ヲ取扱フ處置ニ付テハ輕ンジテ居ラレ
ルヤウナ憾ガアル、嚴格ニ審査スルト、何時
ノ議會ニ於テモ論議サレマス所ノ、憲法違
反デアルト云フ議論ガ立チ得ルノデアル、又
殊ニ豫備費、餘裕金ヲ支出スルニ付テハ、
餘程嚴格ニヤラナケレバナラヌ、憲法第七
十條ノ精神ヲ參酌シテ嚴密ニヤラナケレバ
ナラヌガ、ドウモ其ノ嚴密ノ程度ガ缺ケテ
居リハシナイカト云フ、適切ナル質疑應答
ガアツタノデゴザイマス、又本案ノ如キ重
要案件ガ、會期切迫ノ際ニ提出サレテ委員
ニ付託セラレテハ、十分審議スル餘裕ガナ
1、特ニ憲法上ノ見地ヨリ愼重ニ審議スル
餘裕ガナイノデアルカラ、今後ハ十分此ノ
邊ヲ諒トセラレテ、審議ノ餘裕ヲ與ヘルヤ
ウニシテ貰ヒタイト云フ注意ノ希望意見ガ
アツタノデゴザイマス、又現下時局ノ長期
建設ニ際シテハ、加藤委員ヨリ重要農林生
產確保ノ計畫樹立ノ爲ニ、豫備金ガ支出セ
ラレナケレバナラヌ筈デアルニ拘ラズ、何
等之ニ考慮シテ居ラヌコトハ、甚ダ遺憾デ
アルト云フ適切ナ質疑應答ガアツタノデゴ
ザイマス、而シテ今日午前ニ委員會ヲ開會
致シマシテ、質疑ニ續イテ討論ニ移リ、直
チニ採決致シマシタ所、原案六件トモ承諾
ヲ與フベシト滿場一致ヲ以テ議決セラレタ
次第デゴザイマス、此段御報告申上ゲマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=52
-
053・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 昭和十二年度第一
豫備金支出ノ件外五件ハ承諾ヲ與フルニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=53
-
054・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ六件トモ承諾ヲ與フルニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=54
-
055・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ質問ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=55
-
056・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02919390322&spkNum=56
-
057・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆
ニ揭載ス〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
篠原義政君提出銅ノ統制ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
南鼎三君提出生命延長ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
伊東岩男君提出南極領土權確保ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
(以上三月二十二日受領)
銅ノ統制ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月六日
提出者篠原義政
銅ノ統制ニ關スル質問主意書
(1)銅及銅線
銅及銅線ノ配給統制ニ關シテハ世上幾
多ノ非難ヲ聞カルルヲ以テ現行ノ所謂
自治統制ノ機構竝之カ配給方法ニ關シ
其ノ缺陷トシテ指摘セラルル左記各項
ニ付改善又ハ是正ノ意圖ナキヤ
-需要票制度ニ付商工當局ハ屢〓銅ノ
需要ニ對シテハ最終ノ消費目的ヲ吟
味シテ其ノ配給ノ要否ヲ決定スト稱
スルモ有名無實ニシテ而モ銅線ノ査
定ノ如キハ之ヲ電線原料銅配給統制
協會(以下單ニ電線協會ト稱ス)ト稱
スル法的資格ナキ一部電線業者ノ協
定機關ニ委シテ顧ミサル結果割當ニ
關シ妥甞公正ヲ缺クノ嫌アリ徒ニ從
來ノ取引系統ヲ重ンスル主旨ノ下ニ
問屋ノ如キ仲介機關ニ迄之ヲ配給ス
ル結果トシテ取引上ノ不正ヲ誘發セ
シムルカ如キ國策ニ反スル行爲ヲ助
長セシムルヨリハ寧ロ設備主義ニ基
キ公正ナル配給ヲ行フヲ可トセサル
ヤ
二需要票制度ニ依ル査定ノ標準及割
當ノ內容ニ付之カ明示セラレサル爲
且ツ最近ニ於ケル配給量ノ劇減ノ爲
電線協會加盟外ノ中小電線業者ハ將
來ニ於ケル銅線需給ノ見込ヲ立ツル
コト能ハスシテ操短又ハ休止ノ窮狀
ニアル一方電線協會加盟社及其ノ傘
下ニ屬スル一部業者ハ軍需註文ノ外
ニ一定量ノ割當ヲ受ケ平時ニ比シ却
テ殷賑ヲ呈セリ斯ノ如キハ國策ニ殉シ
テ共ニ統制ノ犠牲ヲ强要スル現下ノ
情勢ニ於テ相當考慮スヘキ事態ニア
ラスヤ
三需要票ニ依ル銅線ノ割當ニ關シテ
ハ裸銅線ト被覆銅線トノ區別ヲ無視
シ悉ク之ヲ電線協會加盟社ニ半ハ獨
占的ニ割當ツル結果トシテ被覆電線
ノ製造ノミヲ營ム盟外ノ業者ハ統制
ニ依テ從來ノ得意先ヲモ加盟社ニ奪
ハルル結果トモナリ二重ノ脅威ヲ蒙
レリ商工當局ハ是等ノ事情モ考慮シ
タルコトアリヤ
四銅及銅線ニ關シテハ何故ニ鐵鋼ノ
配給規則ニ於ケルカ如ク官廳又ハ公
共團體ノ購入ニ對シテ一般的ニ特例
ヲ認メサルヤ例之遞信省ニ於テ通信
事業ニ要スル電線ヲ購入スル場合前
記電線協會加盟社ニ於テ製造スル被
覆電線ニ付テハ豫メ商工省ノ査定ヲ
受ケテ之ヲ受註者ニ配給(但シ此ノ
分ト雖モ盟外者カ受註シタル場合ニ
ハ遞信省ハ其ノ銅線ノ配給ヲ爲サ
ス)スルモ加盟社ニ於テ全ク製造ヲ
爲ササル電線例ヘハ通信用「コード」
ノ如キモノニ付テハ其ノ芯線ニ用フ
ル銅線ハ全ク之ヲ査定セサルカ如キ
偏頗ナル處置ヲ爲スコトアリテ盟外
業者ハ統制實施以來二重三重ノ壓迫
ヲ蒙リ前途頗ル不安ノ實情ニ在リ
(二)故銅及故銅線
故銅ニ關スル統制實施以來之ヲ唯一ノ
原料トセル中小電線業者ノ窮狀ハ日ヲ
追ウテ甚シキモノアルニ拘ラス當局ハ
單ニ集荷少キヲ理由トシテ積極的ニ之
カ善後措置ヲ講セムトスル意圖ナク只
僅ニ物調第二部長ノ通牒ヲ以テ事態ヲ
糊塗セムトスルモノアルハ一般實需家
ノ極メテ遺憾トスル所ナリ
ー一般ニ物資ノ統制ニ關スル諸規則
ハ公布卽日ヲ以テ實施セルニ反シ故
銅ノ統制ニ關シテハ其ノ要綱ノ發表
以來數箇月ヲ經過セルモ猶ホ之ヲ實
施スルニ至ラスシテ其ノ間業者ヲシ
テ然ルヘク之カ大量的處置ヲ爲サシ
メタル結果今日ノ如ク集荷不能ノ醜
態ヲ惹起スルニ至レルハ一ニ當局ノ
責任ト謂フヘク該規則實施延期ノ眞
相ヲ問フ
二故銅ノ集荷不能ノ重大ナル理由ハ
前項ニ揭ケタル如ク大工場ニ於テソ
レソレ之ヲ處理シタルカ爲ナルニ拘ラ
ス當局ハ大工場ニ限リ該規則第五條
但書ノ特例ヲ認メテ同一事業者內ノ
融通ヲ圖リ延テ故銅類ノ出廻リヲ阻
止シタルハ甚タ不可解ノ處置ト謂
フヘシ仍テ此ノ際第五條ヲ改正シ同
一工場又ハ鑛山內ニ於テモ彼此ノ受
入レヲ禁止スル意圖ナキヤ
三現在ノ如キ集荷狀況カ今後猶ホ數
箇月ニ亙リテ繼續スルコトアラムカ
中小實需家ニ對シテ極メテ憂慮スヘ
キ事態ヲ惹起スルヤモ計ラレサルヲ
以テ此ノ際速ニ同規則第八條ノ强制
命令ヲ發動スルヲ機宜ノ處置ト認メ
サルヤ
四故銅配給ノ緩和ヲ圖ル爲其ノ應急
適切ナル手段トシテ圓「ブロツク」內
ヨリ相當數量ノ屑銅ヲ輸入スル意圖
ナキヤ
(三)全國電線工業組合聯合會
商工當局ハ電氣銅線ト故銅線トノ一元
的統制ヲ否認シ且ツ現行ノ自治的統制
機構ヲ以テ最善ノモノナリトスルカ如
キ意向ヲ發表セリ然ルニ現行ノ配給機
構ハ未タ全國電線工業組合聯合會ノ結
成セラレサリシ時ノ應急機構ニシテ今
日首記聯合會ニ於テハ電線用原材料ノ
配給品目ハ十種ヲ數フルニ至リシト雖
モ未タ之カ最眼目タル銅線ノ配給ヲ爲
ササル爲其ノ他ノ副材料ノ配給ハ全ク
跛行狀態ヲ呈シ延テハ國家重要ノ資材
ヲ死藏又ハ退藏スルノ已ムナキニ至リ
中小業者ノ窮狀ハ日ヲ追ウテ甚シキモ
ノアリ仍テ曩ニ東京及西部ニ於ケル地
方組合員ハ總會ノ決議ヲ以テ定款中ニ
銅線ノ配給ヲ追加スルコトヲ要望セル
ニモ拘ラス當局ハ容易ニ之ヲ認可セサ
ル意向ノ如ク玆ニ於テカ中小業者ハ工業
組合結成ノ本旨ニ對シテ重大ナル錯誤
ヲ生シ延テハ國家最高ノ使命遂行上遺
憾ナキヲ期セサルニ至ルヲ以テ當局ハ
宜シク玆ニ深甚ナル考慮ヲ拂ヒ以テ統
制ノ餘弊ヲ芟除セサルヘカラス
一全國電線工業組合聯合會ノ一構成
分子トシテ當初商工當局ニ於テ內示
シタル「全國電氣銅線工業組合」ヲ結
成シ之ヲシテ現ニ電線協會カ代行ス
ル銅線ニ關スル配給事務一切ヲ繼承
セシムル意圖ナキヤ
二電氣銅線及故銅線ノ區別ハ從來需
要家側ニ於テハ之ヲ意識セス只之カ
供給者側ニ於テ任意ノ鑑別ヲ爲シタ
ルニ過キサルヲ以テ電氣銅線ト信シ
ツツ故銅線ヲ使用シタル者少カラス
隨テ電線部門ニ關スル限リ此ノ際之
カ截然タル區別ニ拘泥スルコトナク
卽チ此ノ兩者ヲ一元的ニ統制シ且ツ
全國電線工業組合聯合會ニ於テ業界
ノ實情ニ應シ公正適切ナル配給ヲ行
ハシムルヲ可トセサルヤ
右及質問候也
昭和十四年三月二十二日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員篠原義政君提出銅ノ統制ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員篠原義政君提出銅ノ統制ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
(一)ニ關シテ
銅ノ需要査定ニ先立ツ各需要票ノ
整理ハ日本銅締制組合、電線原料銅
配給統制協會及伸銅用銅亞鉛配給統
制協會ヲシテ行ハシムト雖査定ノ本
體ニ至リテハ商工省關係官ニ於テ査
定ノ原案ヲ作成シ之ヲ官民委員ヲ以
テ構成スル銅配給統制協議會ノ議ニ
附シ之ガ審議ヲ經テ商工省ニ於テ決
定シ其ノ決定ニ基キ平時ノ配給機構
及取引系統ニシテ尊重スベキハ之ヲ
尊重シ夫々配給ヲ實施シ居ルモノナ
ルヲ以テ電氣銅消化設備ノ狀況モ考
慮セラレ居リ統制ニ依ル相剋摩擦モ
能フ限リ輕減シ居ルモノト思料ス
二銅ノ配給ハ各月其ノ需要額ト供給
可能額ト彼此檢討シ主トシテ軍需關
係、生產力擴充關係等現下ノ情勢ニ
鑑ミ重要ナルモノニ付緩急ノ度合ヲ
モ審査シ之ヲ實施シ居ルモノナルモ
中小電線業者ノ立場ヲモ考慮シ中小
電線業者ニシテ電氣銅ノ使用實績ヲ
有スルモノニ對シテハ現ニ直接又ハ
間接ニ月々一定量ヲ配給シ居ル次第
ナリ
三被覆電線ノ製造ノミヲ營ムモノニ
對シテハ過去ノ電氣銅使用實績ニ準
據シ配給ヲ實施シ配給ノ公正ト各者
ノ實績ノ尊重トヲ期シ居ル次第ナリ
四電氣銅ノ配給ニ付テハ所謂切符制
度ヲ實施シ居ラズ而シテ例示ノ遞信
省購入ノ通信用「コード」ノ芯線ノ如
キモ遞信省ニ割當ノ電氣銅中ヨリ之
ヲ取得シ得ルモノナルヲ以テ官廳、
公共團體ノ購入ニ付特ニ鐵鋼配給ノ
場合ノ如キ特例ヲ設クルノ要ナキモ
ノト思料ス
(ニ關シテ
故銅配給統制要綱ノ發表ト統制實
施トノ間ニ相當ノ期間ヲ存セルハ統
制實施ノ爲諸般ノ準備ヲ要セルニ依
ルモノナリ
二銅鉛錫等配給統制規則第五條
但書ノ運用ニ當リテハ大工場、小工
場等ニ付區別ヲ行ハザルハ勿論故銅
集荷ニ惡影響ヲ及ボスガ如キコトナ
キヲ期シ嚴格ニ之ヲ實施シ居ルヲ以
テ今直ニ之ヲ改正スルノ意圖ヲ有セ
ズ
三故銅配給統制實施以來日淺クシテ
其ノ集荷量充分ナラザルハ甚ダ遺憾
トスル處ニシテ今後一層集荷促進ニ
關スル措置ヲ講ジ度必要アラバ同則
第八條ノ發動ニ關シテモ考慮セント
ス
四圓「ブロック」內ヨリノ屑銅輸入ニ
關シテハ目下考究中ナリ
三)ニ關シテ
(
電氣銅ノ配給ハ過去ニ於テ電氣銅ヲ使
用シタル實績ヲ有スル者ニ對シ而モ其
ノ用途ガ時局ニ適應スルモノニ對シテ
優先配給スルヲ根本方針トスルヲ以テ
過去ニ於テ電氣銅線ヲ使用セシ實績ヲ
有スル者ト故銅線ヲ使用セシ者トヲ併
セ包含スル全國電線工業組合聯合會ニ
電氣銅線ノ配給事務ヲ擔當セシムルハ
相當考慮ヲ要スベキモノアリ而テ
一現在機構ヲ以テ公正妥當ナル配給
ヲ爲シ得ルモノト思料ス
二電氣銅線ト故銅線トハ電導率ニ於
テ明ニ差異アルベク通信事業者、電
氣事業者等ノ電線需要家ニシテ電氣
銅線ト故銅線トヲ混同スルガ如キハ
思考シ難ク從テ之ヲ以テ電氣銅線ト
故銅線トヲ一元的ニ統制スベシト爲
スハ首肯シ難キ次第ナリ
右及答辯候也
昭和十四年三月二十二日
商工大臣八田嘉明
生命延長ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月九日
提出者南鼎三
生命延長ニ關スル質問主意書
日本民族ノ平均生命ハ四十四年餘ニシテ
歐米人ノ五十五年餘ニ比シ實ニ十一年餘
ノ短命ナリ然ルニ今ヨリ約五百年前本願
寺八代ノ法主蓮如上人ハ
「干時文明九年九月十七日俄ニ思出
ノ內辰剋巳前早々書記之訖信證院
六十三歲」ト奥書シ人間壽命ノ御文章ヲ
綴リテ曰ク
「夫レ人間ノ壽命ヲ數フレバ今ノ時ノ定
命ハ五十六歲ナリ然ルニ當時ニ於テ年五
十六マデ生キノビタラン人ハマコトニモ
テイカメヂキコトナルベシ予スデニ頽齡
六十三歲ニセマレリ勘篇スレバ早七年マ
デ生キノビヌ(後略)」
ト右ノ文獻ヲ檢討スルニ五百年前ノ我カ
民族ノ壽命ハ五十五年餘ナリシコトハ事
實ニシテ上人ハ眞宗御文章トシテ御遺訓
ヲ後世ニ垂ルルニ基準數ノ統計ヨリ算出
シタルコトハ勿論ナリ
聖德太子以來、ノ祭政ハ大伽藍ノ殿堂ニ祖
先崇拜ノ年忌ヲ營ミ之カ爲小院末寺ト雖
モ過去帳ヲ必ス備ヘ(一)俗名(二)法名
(三)續柄(四)死亡年月日(五)享年(六)命
日等一々克明ニ登錄スルコトハ今モ昔モ
更ニ變ラス然ルヲ以テ全國末寺ヨリ集マ
レル過去帳ヨリ起算シ當時ノ我カ民族ノ
平均生命ヲ知リ五十六歲ト確證シタルモ
ノナリ
今ヤ世界新秩序建設ノ使命ヲ負フ我カ日
本民族ハ彼等歐米人種ニ少カラサル長命人
種トナラサルヘカラス而シテ皇祖ノ御神
勅ト歷代ノ御稜威ニ應へ奉ル第一義ノ忠
誠ハ寔ニ長命健康ヲ謀ルヘキニ在リ近世
我カ國ノ繁榮態勢ヲ顧ルニ實ニ跛行的ニ
シテ國民大衆ノ健康ト生命トハ自由主義
經濟機構ノ人身供養トナリ醫術ノ進步ニ
逆比例シ國民ノ體位ハ年ト共ニ低下スル
カ如ク其ノ壽命スラ偏重的保護政策ノ肥
料ニ供セラレタル結果終ニ今日ノ如ク世
界最劣ノ短命民族トナリタルナリ現在世
界平均年齡ノ最長ハ獨逸人種ノ五十九年
餘ニシテ我ハ十五箇年餘モ短命ナリ最短
ト稱セラルル伊太利人種ハ五十三年餘ニ
シテ我ハ尙且九箇年餘モ短命ナリ今日東
西ヲ通シ防共樞軸ヲ貫キ友邦ト手ヲ握ツ
テ相伍スルニ生命ノ延長ヲ謀議スヘキコ
トハ刻下ノ急務タリト信ス
政府ハ我カ民族ノ壽命長短問題ニ對シ如
何ナル關心ヲ有シ且ツ如何ナル方策ヲ有
セルヤ左ノ數項ニ付質問セムトス
全國ノ寺院ヲ總動員シ古來ノ過去帳
ヲ調査シ蓮如上人ノ五十六歲說ヲ檢討
スル意思アリヤ
二若シ夫レ蓮如上人ノ五十六歲說ノ確
證ヲ得ハ五百年間ニ十一箇年餘短命ト
ナレル原因ハ那邊ニ在ルカヲ知リ得ヘ
ク政府ハ之ヲ好資料トシテ特殊機關ヲ
設ケ長命對策ヲ講スルノ意思アリヤ
三短命ノ原因ハ主トシテ體位低下ニ在
リ體位低下ハ食料化身ノ法規ニ因テ來
レルモノナリ而シテ人類ハ智識ニ依テ
味覺三味ニ走リ自然恩惠ノ食餌ヲ改惡
セリ大日本國創造ノ大神ハ瑞穗國トシ
テ表作ニ米ヲ收メ裏作ニ麥ヲ採リ米麥
混食スヘキヲ啓キ〓へラレタリ然ルニ
現今僅ニ陸海軍ト刑務所トニ限リ實行
セルモノナルヲ以テ政府ハ國民一般ニ
米麥混食ヲ强制スルノ意思ナキヤ
四厚生大臣ハ這般ノ吉植庄亮代議士ノ
食料問題ニ答ヘテ「嗜好ハ强制出來ヌ」
「國民ノ自覺ニ待ツ」ト言明セルモ嗜好
放任ハ今日ノ如ク體位低下ヲ來シタル
モノナリ而シテ自覺依存ハ我カ國ヲ世
界一ノ結核病國ト爲セルモノナリ嗜好
ト自覺トハ物ニ依リ放任シテ可ナルモ
苟モ體位低下ノ原因トナリ早世短命ノ
素因トナルカ如キモノハ斷々乎トシテ
法制ヲ以テ律スヘキモノナリ然ルニ尙
且「成行ニ委カス」ト言フハ政府ニ其ノ
對策ナキモノト看做シテ宜シキヤ所見
如何
五我カ國ノ乳幼兒ノ死亡率ハ是又世界
一ナリ而モ其ノ七割ハ腸ヲ害スト云フ
斯ノ如キハ母乳ニ代フルニ牛乳乃至ハ
各種ノ製菓子ヲ以テシ是等カ我カ小兒
ノ體質、胃腸ニ不適ナルカ故ナリ政府
ハ牛乳ノ害、白砂糖ノ害、脚氣母乳ノ
害等アルヲ認ムルヤ若シ之ヲ認ムルト
セハ其レニ對スル方策ヲ講スルノ意思
アリヤ
六今日ノ如ク醫術ノ進步ニ逆比例シテ
短命トナレル所以ノモノハ肉食人種ニ
適セル洋醫學ヲ入レテ穀食人種タル我
等ニ强制シタルカ故ナリ之ニ對スル政
府ノ所見如何又其ノ對策ヲ講スル意思
アリヤ
右及質問候也
昭和十四年三月二十二日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員南鼎三君提出生命延長ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員南鼎三君提出生命延長ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
一蓮如上人ノ五十六歲說ニ付テハ目下
ノ所全國ノ寺院ヲ總動員シ檢討スルノ
意思ナシ
二長命對策ヲ講スル爲特殊機關ヲ設置
スル點ニ付テハ目下ノ所其ノ意思ナシ
然レ共各厚生行政ハ本目的ノ達成ヲ重
要ナル使命トナスモノナリ
三國民一般ニ米麥混食ヲ强制スル點ニ
付テハ目下ノ所其ノ意思ナシ
四政府ハ現ニ白米食ノ廢止ヲ奬勵シ混
砂搗精ニ付テハ法令ヲ以テ地方ノ實狀
ニ卽シタル取締ヲ勸奬シツツアル現狀
ニシテ嗜好ニ放任シ自覺ニ依存セシム
ルノミニ非ス
五適當ナル用法ニ於テハ牛乳及白砂糖
カ乳幼兒ニ對シ害アリト認メス育兒方
法トシテ善導シツツアリ
脚氣母乳ノ害ニ付テハ人工榮養ノ指導
等ニ依リ之カ是正ヲ期シツツアリ
六我民族ニ對シ洋醫學ヲ用セタルコト
カ卽チ我民族ノ平均壽命ヲ短縮シタル
ニ原因ト斷スルノ資料ト根據トヲ有セス
但シ固有ノ治療法等ニ關シテモ之ニ科
學的檢討ヲ加フルハ適當ナリト思料ス
右及答辯候也
昭和十四年三月二十二日
厚生大臣廣瀨久忠
南極領土權確保ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月十四日
提出者伊東岩男
南極領土權確保ニ關スル質問主意書
宮崎縣延岡市ニ在住スル日吉小次郞氏ヲ
會長トシテ組織セル南極領土權確保期成
同盟會ハ其ノ目的達成ノ爲元日本南極探
檢隊長白瀨中尉一行ノ探檢ノ結果發見シ
我カ大日本帝國日章族ヲ樹立シタル南極
地域ノ領土權獲得ノ儀ニ付目下奔走努力
中ナリ抑〓永山聳ユル南極ノ地ハ五百四十
萬方里ノ大陸ニシテ「アムンゼン」、「シヤッ
クルトン」、白瀨中尉、「バード」少將等
ノ探檢家ニ依リテ地球ノ謎ヲ解カレシ
カ就中我カ陸軍輜重兵中尉白瀨〓氏ハ僅
少ノ資金ト二百四噸ノ小帆船トヲ以テ人
類未踏ノ極地探檢ヲ決行シ明治四十五年
南緯八十度五分、西經百五十六度三十七
分及南緯七十六度六分、西經百五十一度
二分ノ地ヲ極メ開南灣、大隈灣ヲ發見シ
テ以來既ニ二十有餘年ヲ經タルモ白瀨中
尉カ一生ノ大事業ノ成果タル發見ノ地域
ハ探檢家ノ慣例ニ從ヒ大日本帝國ノ領土
トシテ昭和六年及昭和十三年ノ二囘ニ亙
リ寄附願ヲ提出シタルニ拘ラス今日ニ至
ルモ尙ホ未タ日本領土トシテ確認セラル
ルニ至ラサルハ吾人ノ甚タ遺憾トスル所
ナリ然ルニ諾威政府ハ曩ニ昭和六年「ア
ムンゼン」氏ノ探檢ニ依ル「アムンゼン」島
ノ領有ヲ宣言シ更ニ本年一月南極ニ領土
ヲ求メツツアル際獨リ我カ帝國カ國際公
法上當然我カ國ニ歸屬スヘキ地域ノ領有
確立ヲ放任スルコトハ國家ノ一大損失タ
ルノミナラス此ノ事業達成ニ生涯ヲ賭
シタル偉大ナル探檢家ヲ失望セシメ且ツ
斯ノ如キ壯擧ノ敢行ヲ萎縮セシムル結果
ヲ招來セムコトヲ虞ルル次第ナリ殊ニ前記
白瀨中尉發見ノ地域ニ就テハ米國ノ「バー
ぎ少將自ラ白瀨中尉ノ先占ヲ證明セ
ルモノニシテ國際法上何等ノ疑義ナキ所
ナレハ此ノ際速ニ國家ニ於テ占領地域ノ
領土權ヲ獲得シ之ヲ發表セラレムコトヲ
切望スルモノナリ就テハ左記ノ質問事項
ニ付明確ナル答辯アラムコトヲ望ム
白瀨中尉探檢ノ南極ノ地域卽チ開南
灣、大隈灣、大和雪原、四人氷河、「シ
タワシ」山ノ地域ハ去ル昭和六年及昭
和十三年一月ノ二囘ニ亙リ白瀨中尉ヨ
リ帝國政府ニ寄附願ヲ提出シタルモ政
府ハ之ヲ受理シタリヤ否ヤ若シ受理シ
タリトセハ其ノ領土權ハ帝國政府ニ屬
スルモノナリト思フカ政府ノ所見如何
果シテ帝國ノ領土ナリトセハ何故ニ之
ヲ中外ニ宣言セサルヤ其ノ理由ヲ問フ
二若シ政府カ此ノ寄附願ヲ未タ受理セ
サルモノナリトセハ何故ニ受理セサル
ヤ政府ハ此ノ地域ノ寄附願ヲ却下スル
考ヘナリヤ或ハ近ク受理スル準備中ナ
リヤ
三若シ之ヲ近ク受理セムトスルモノナ
ラハ其ノ時期ハ何時カ又ソレト同時ニ
領有宣言ヲ爲スヘキモノナリト思考ス
ルモ政府ノ所見如何
四白瀨中尉ハ年旣ニ老齡テアリ自ラカ
一生涯ヲ捧ケタル探檢ノ成果カ未タ日
本領土トシテ確認セラレサルコトヲ甚
タ遺憾トシ其ノ實現ノ速カナルヲ希望
セラレツツアルモ政府ハ之ニ對シ速ニ
領有宣言ヲ爲シ以テ此ノ國家ノ功勞者
ヲシテ其ノ意ヲ安ンセシムルハ最高ノ
禮儀ナリト信ス又萬一先占ニ付テ問題
ノ起リタル場合ニモ之カ立證ノ爲白瀨
中尉ノ存命中ニ事ヲ處理スヘキ必要ア
リト思考スルモ政府ノ所見如何
五南極カ捕鯨業ノ本據トシテ世界各國
ノ著目スル所トナリ現在日本ト諾威ト
ハ南極捕鯨業ノ競爭的立場ニアルモ諾
威ハ右ノ如ク捕鯨業ノ根據地トシテ南
極ニ領地ヲ得タル今日我カ日本カ南極
地帶ニ領地ヲ持タサルコトハ將來ノ捕
鯨其ノ他ニ極メテ不利ナリト思フカ如
何
六現在我カ日本ハ建國ノ精神タル八紘
一宇ノ大精神ヲ以テ大イニ世界ニ雄飛
スヘキ秋ナリ此ノ秋ニ當ツテ南極ニ領
地ヲ得ルコトハ國民ノ氣字ヲ宏大ニシ
國民精神ニ及ホス效果亦甚大ナルモノ
アリト信ス政府ノ所見如何
七支那事變ヲ繞ツテ世界列强カ東亞ノ
天地ニ注目セル今日南極ノ領有ヲ宣言
スルコトハ列國ノ眼ヲ南極ニ注カシム
ルヲ以テ事變處理ニ多少ノ效果アリト
思フカ如何
八白瀨中尉ハ此ノ大探檢ニ依テ何等國
家的恩典ニ浴セス單ニ陸軍中尉トシテ
探檢前ト何等變ル所ナキノミナラス現
在ハ不遇ナ立場ニ置カルルモ之ヲ諸外
國ノ例ニ見ルニ斯ル大探檢ニ成功シタ
ル人ハ或ハ爵位ヲ授ケラレ或ハ位數級
ヲ飛ンテ將官ニ列セラルル者枚擧スル
ニ遑アラス政府ハ此ノ國家的功勞者ニ
對シ何等カ適當ナル優遇表彰ノ方法ヲ
講スル考ヘナキヤ
右及質問候也
昭和十四年三月二十二日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員伊東岩男君提出南極領土權確
保ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員伊東岩男君提出南極領土權
確保ニ關スル質問ニ對スル答辯書
南極地方ハ早クヨリ各國探險家ニ依リ探
險セラレ從來英國、佛國及諸威等ノ諸國
ハ自國ノ探險家ノ爲シタル探險ヲ根據ト
シテ右地域ニ對シ夫々領土權ヲ主張シ居
リ帝國政府モ亦白瀨中尉ノ探險ニ基キ大
和雪原地方ニ對シテハ權利ヲ主張シ得ル
次第ナルモ諸般ノ事情ヲ考慮シ適當ナル
方策ニ付充分〓究ノ上善處スル意嚮ナリ
右及答辯候也
昭和十四年三月二十二日
外務大臣有田八郞
農林大臣櫻內幸雄
午後四時二十五分散會
衆議院議事速記録第二十八號中
誤植
頁段行誤正
六五二三二二-報〓報〓報〓
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