1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十四日(金曜日)
午後一時四十八分開議
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議事日程 第三十號
昭和十四年三月二十四日
午後一時開議
第一 刑事訴訟法中改正法律案(俵孫一君外十七名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 刑事訴訟法中改正法律案(堀切善兵衞君外二十四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 刑事訴訟法中改正法律案(石坂繁君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 刑事訴訟法中改正法律案(中村高一君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 水産時局對策確立に關する建議案(高木粂太郎君外三十八名提出) (委員長報告)
第六 東亞指導者養成機關としての大學設立に關する建議案(木下成太郎君外二名提出) (委員長報告)
第七 帝國大學肅正に關する建議案(山道襄一君外十七名提出) (委員長報告)
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質問
一 搗粉有害の錯覺竝之か使用禁止の失態に關する質問(土屋清三郎君提出)
二 米の混砂精白禁止に關する質問(吉植庄亮君提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一昨二十三日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
軍馬資源保護法案
種馬統制法案
競馬法の臨時特例に關する法律案
臺灣米穀移出管理特別會計法案
地方學事通則中改正法律案
青年學校令に依り就學せしめらるべき者の就業時間に關する法律案
一去二十一日第七部選出請願委員森田政義君死去せられたり
一昨二十三日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
青年禁酒法案(高橋壽太郎君外十三名提出)委員
理事 曾和義弌 (理事泉國三郎君昨二十三日委員辭任に付其の補闕)
民族優生保護法案(八木逸郎君外一名提出)委員
理事 山川頼三郎君(委員稻田直道君昨二十三日理事辭任に付其の補闕)
一昨二十三日に於ける特別委員の異動左の如し
青年禁酒法案(高橋壽太郎君外十三名提出)委員
辭任泉國三郎君 補闕曾和義弌君
辭任仲西三良君 補闕高橋壽太郎君
辭任河合義一君 補闕杉山元治郎君
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(國勢調査に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
辭任塚本重藏君 補闕菊地養之輔君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一乃至第四ハ同一委員ニ付託シ
タル議案デアリマスカラ、一括議題ト爲ス
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第一、刑事訴訟法中改正法律
案、日程第二、刑事訴訟法中改正法律案、
日程第三、刑事訴訟法中改正法律案、日程
第四、刑事訴訟法中改正法律案、右四案ヲ
一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス-委員長牧野賤男君
第刑事訴訟法中改正法律案(俵孫
一君外十七名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第二刑事訴訟法中改正法律案(堀切
善兵衞君外二十四名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第三刑事訴訟法中改正法律案(石坂
繁君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四刑事訴訟法中改正法律案(中村
高一君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一刑事訴訟法中改正法律案(俵孫一君外
十七名提出)
一刑事訴訟法中改正法律案(堀切善兵衞
君外二十四名提出)
一刑事訴訟法中改正法律案(石坂繁君外
一名提出)
一刑事訴訟法中改正法律案(中村高一君
外一名提出)
右ハ本院ニ於テ四案ヲ併合シテ一案ト爲
シ別紙ノ通(內容同一)修正スヘキモノト
議決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長牧野賤男
衆議院議長小山松壽殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百五十二條ノ二行政執行法ニ依リ
檢束中ノ者ニ對シテハ搜査ヲ爲スコト
ヲ得ス
〔牧野賤男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=2
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003・牧野賤男
○牧野賤男君 刑事訴訟法中改正法律案、
此ノ案ハ俵孫一君外十七名提出、堀切善兵衞
君外二十四名提出、石坂繁君外一名提出、
中村高一君外一名提出、此ノ四案ガアリマ
シテ、四案トモ全ク同一ノ案デアリマス、
仍テ委員會ニ於キマシテハ、此ノ四案ヲ一
案ト爲シテ取扱ヲ致シタノデアリマス、條
文ハ極メテ簡單デ、刑事訴訟法第二百五十
二條ノ二「行政執行法ニ依リ檢束中ノ者ニ
對シテハ搜査ヲ爲スコトヲ得ス」極メテ簡
單ナ條文デアリマスガ、其ノ由テ來ル所ハ
頗ル複雜ナ事實ガ存スルノデアリマス、現
今全國各地ノ警察署ニ於テ、行政執行法ニ
依リ檢束ト稱シテ被告人ヲ拉致シテ、サウ
シテ每日々々檢束ノ蒸返シヲ致シマシテ、
一方ニ於テハ犯罪ニ對スル搜査ヲ開始シテ、
甚ダシイノハ百日、百五十日ニ至ル間警察
ニ留置ヲ致シテ、自白ヲシナケレバ出シテ
吳レナイ、警察官ガ自分ノ氣ニ向イタ通リ
ノ調書ヲ作ラナケレバ、出シテ吳レナイト
云フコトガ行ハレテ居ルノデアリマス、人
權蹂躙ニモ色々種類ガアリマスガ、或ハ腕
力ヲ以テ被告人ニ迫ツタリ致スコトハ、甚
ダシイ不法ノコトデアリマスルガ、法律ニ
依ラズシテ犯人ヲ檢束致シテ、サウシテ自
白ヲ强要致シテ、其ノ自白ヲシナケレバ何
時マデ經ツテモ歸シテ吳レナイ、進行モシ
テ吳レナイ、是ガ犯人ニ取ツテハ非常ナ苦
痛デアリマシテ、ソレガ爲ニ心ニモナイ、
全ク事實存在シナイ供述ヲ致スノデアリマ
ス、斯ノ如キハ憲法ニ於テ、法律ニ依ルニ
アラザレバ逮捕監禁スルコトガ出來ナイト
云フコトノ規定ニ反スルコトハ勿論デアリ
マシテ、法律ノ正シキ解釋ニ於テハ、斯樣
ナルコトハ出來ナイ筈デアリマスガ、是ハ
新聞デモ御覽ノ通リ、時々檢事ノ指揮ヲ仰
グトカ、若クハ檢事ガ警察ニ出張スルトカ、
卽チ警察官ト檢事ト相通ジテ爲ス場合モ
澤山アルノデアリマシテ、洵ニ以テ吾々ノ
人權ト云フモノハ、少シモ尊重セラレテ居ナ
イノデアリマス、斯樣ナル弊害ガ少シ有名ナ
ル刑事事件ニ付テハ必ズ附纏フ、或ハ何十
万圓、何百万圓、何千万圓ノ利害關係ヲ有ス
ル會社ノ重役ガ、巡査部長ヤ警部補ニ引張
ラレテ行ツテ、サウシテ法律ノ規定ニ依ル
ニアラズシテ、百日、百五十日モ警察ニ留
メ置カレテ居ル、法治國ノ有樣トシテ斯樣
ナコトガ、怪シムコトナクシテ行ハレテ居
ルト云フコトハ、洵ニ慨歎ニ堪ヘナイ次第
デアリマス(拍手)卽チ是等ノ弊害ノ第一原
因ヲ除キマスガ爲ニ、行政執行法ニ依ツテ
檢束ヲスルト云フコトヲ以テ捕ヘテ行ツタ
モノヲ、別ノ刑事事件ノ搜査ヲ致スト云フ
コトヲ重ネテヤラナイヤウニシタ方ガ一番
良イ、ソコヘ著目致シマシテ、是ハ各派ガ
各〓同一ノ案ヲ提出シタノデアリマスケレド
モ、全ク其ノ提出ノ趣旨モ條文モ同一デア
リマスカラ、先程申上ゲマシタ通リ、委員
會ニ於テハ一案トシテ之ヲ取扱ツテ、サウ
シテ提出者ノ趣旨辯明ヲ求メマシタ所ガ、
今申ス通リノ理由ヲ陳述致シタノデアリマ
ス、委員會ニ於キマシテハ、全部提案ノ理
由ヲ適當ナリト認メ、直チニ之ニ贊成ノ表
決ヲ致シタノデアリマス、何卒滿場ノ諸君
ニ於カレテモ、此ノ案ノ通過スルヤウニ御
贊成アランコトヲ希望スル次第デアリマス、
此段御報〓ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 委員長報告ハ四案ヲ
併合シテ一案ト爲シ修正議決シタルモノデ
アリマス、四案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ四案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=5
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006・服部崎市
○服部崎市君 直チニ四案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ議決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
ノ通リ確定致シマシタ(拍手)日程第五乃至
第七ハ建議案デアリマスカラ、一括議題ト
爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第五、水產時局對策確立ニ關
スル建議案、日程第六、東亞指導者養成機
關トシテノ大學設立ニ關スル建議案、日程
第七、帝國大學肅正ニ關スル建議案、右三
案ヲ一括シテ議題ト致シマス、建議委員長
ノ報〓ヲ求メマス-委員長靑山憲三君
第五水產時局對策確立ニ關スル建議
案(高木条太郞君外三十八名提出)
(委員長報告)
第六東亞指導者養成機關トシテノ大
學設立ニ關スル建議案(木下成太郞
君二名提出)(委員長報告)
第七帝國大學肅正ニ關スル建議案
(山道襄一君外十七名提出)
(委員長報告)
水產時局對策確立ニ關スル建議案
水產時局對策確立ニ關スル建議
政府ハ速ニ水產時局對策ヲ確立セラレム
コトヲ望ム
右建議ス
報〓書
一水產時局對策確立ニ關スル建議案(一貫)
木条太郞君外三十八名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
建議委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
東亞指導者養成機關トシテノ大學設立
ニ關スル建議案
東亞指導者養成機關トシテノ大學設
立ニ關スル建議
政府ハ興亞永遠ノ大策トシテ東亞指導者
養成ノ爲左記要項ニ依リ速ニ之カ養成機
關タル大學ヲ設立セラレムコトヲ望ム
-興亞ノ大義ニ則リ東亞新秩序ヲ擔當
スヘキ人材ヲ日支兩國學生ヨリ養成ス
二聖喩記ニ見エタル明治天皇ノ聖旨
ニ應ヘ奉ルヘキ〓育機關ハ未タ完全セ
リト謂フヲ得サルヲ以テ新シク大學ト
シテ設立ス
三之ニ依リ日本學生ニ付キテハ皇道ノ
自覺體驗ニ徹スルヲ得更ニ一段ノ躍進
アルヲ期ス
四支那學生ニ付キテハ今ヤ形骸ノミト
化シ去リシ儒〓、陵遲衰微セル王道ノ
舊習ヲ蟬脫シテ日本ノ國土ニ於テ日本
精神ノ環境的燻染ヲ受ケシメ皇道ニ醇
化セル儒〓ノ眞髓ヲ再發見セシムルコ
トヲ得シム
五斯クテ理論實踐ノ兩方面ヨリ日本精
神ニ依ル東亞指導者ヲ亞細亞樞要ノ地
ニ据ヱ以テ八紘一宇ノ理想ヲ實現セシム
右建議ス
報〓書
一東亞指導者養成機關トシテノ大學設立
ニ關スル建議案(木下成太郞君外二名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
建議委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
帝國大學肅正ニ關スル建議案
政府ハ大學令第一條ニ改正ヲ加フルト同
時ニ各大學ニ日本學ヲ體系化スヘキ講座
ヲ增設シ且ツ學生ノ忠良ナル國民性ヲ陶
冶スルニ必要ナル施設ヲ爲シ以テ帝國大
學肅正ノ實ヲ擧ケラレムコトヲ望ム
右建議ス
報〓書
一帝國大學肅正ニ關スル建議案(山道襄
一君外十七名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
建議委員長靑山憲三
衆議院議長小山松壽殿
〔靑山憲三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=10
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011・青山憲三
○靑山憲三君 只今上程セラレマシタ水產
時局對策確立ニ關スル建議案、東亞指導者
養成機關トシテノ大學設立ニ關スル建議案、
帝國大學肅正ニ關スル建議案ノ委員會ニ於
ケル審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマ
ス
第一ニ水產時局對策確立ニ關スル建議案
ハ、我國現下ノ情勢ニ鑑ミ、產業ヲ振興シ、
國力ノ充實ヲ圖リ、以テ國際收支ノ改善、
銃後國民ノ生活ノ安定、國民體位ノ向上ヲ
期スルコトハ、刻下喫緊ノ要務デアルト存
ジマス、然ルニ我ガ水產業ハ、漁業用資材
ノ規制等ニ依リマシテ減退ヲ來シツツアル
現狀ハ、國家ノ爲遺憾ニ堪ヘナイノデアリ
マス、此ノ趣旨ニ於テ、本建議案ハ當ヲ得
タルモノトシテ、特ニ御報告申上ゲル次第
デアリマス
次ニ東亞指導者養成機關トシテノ大學設
立ニ關スル建議案ハ興亞永遠ノ大策トシ
テ、東亞指導者養成ノ爲大學ヲ設立シ、新秩
序ヲ擔當スベキ人材ヲ日支兩國學生ヨリ之
ヲ求メ、理論、實踐ノ方面ヨリ日本精神ニ
依ル東亞指導者ヲ樞要ノ地位ニ据エ、以テ
八紘一宇ノ理想ヲ實現セントスル案デアリ
マシテ、洵ニ結構ナコトト存ジマシテ、特
ニ御報告申上ゲル次第デアリマス
次ニ帝國大學肅正ニ關スル建議案ハ、各
大學ニ日本學ヲ體系化スベキ講座ヲ增設シ、
學生ノ忠良ナル國民性ヲ陶冶セントスル重
要ナル案件デアリマスノデ、特別ニ御報告
申上グルコトニ致シマシタ
以上三案トモ委員會ニ於テハ全員一致ヲ
以テ可決セラレマシタ、何卒愼重御審議ノ
上御可決アランコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 先ヅ水產時局對策確
立ニ關スル建議案ノ審議ニ入リマス、討論
ニ入リマス-高木条太郞君
〔高木条太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=12
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013・高木粂太郎
○高木粂太郞君 私ハ只今上程サレマシタ
水產時局對策確立ニ關スル建議案ハ委員長
ノ報告通リ贊成致シマス
海ハ陸地ノ約二倍半ニ相當スル廣サデア
リマシテ、而シテ我ガ漁業者ガ恰モ獨占的
ニ活躍シツツアル太平洋ダケデモ、其ノ面
積實ニ一億六千五百万平方粁アリマシテ、
全世界陸地ノ一倍半モアルノデアリマス、
故ニ此ノ海ノ利用、水產ノコトヲ詳細ニ御
話スルコトハ、多クノ時間ヲ要シマスルノ
デ、至極簡單ニ其ノ贊成ノ理由ヲ述ブルコ
トニ致シマス
諸君、我國ハ古ヨリ農ヲ以テ國ノ本ト稱
ヘラレテ居リマスルガ、四面環海ノ我ガ帝
國ト致シマシテハ、水產モ亦國本ノ一トシ
テ、恰モ車ノ兩輪ノ如ク、海ノ幸陸ノ幸ヲ
讚ヘル所ニ、我ガ日本ハ豐カナ、力强イ所
ガアルノデアリマス(拍手)彼ノ大黑天ノ神
ニ配スルニ惠比須ノ神ヲ以テシマスル、我
國產業敬神ノ思想ガ、茲ニアリマスルコト
ハ疑フノ餘地ガナク、更ニ魚食ヲ以テ榮養
ヲ攝リ、心身ノ强化ニ貢獻シテ參リマシタ
コトハ、今次事變ニ於テ明ニ其ノ眞價ガ認
メラレ、水產ノ振興ハ一段ト必要ニナツテ
來タノデアリマス、今囘ノ事變ト致シマシ
テモ、我ガ政府當局ハ、領土的野心ナキコ
トヲ屢〓世界ニ聲明致シテ居リマスガ、其ノ
領土的野心ナキニセヨ、領土以上ニ之ヲ利
用シテ、人類ノ福利ヲ增進スベキハ申スマ
デモナイコトデアリマス、我國ノ漁業者ガ
三千年來鍛へ上ゲタ膽力ト漁撈ノ技術トハ、
世界何レノ國ニモ勝レテ居ルノデアリマシ
テ、旣ニ古ヨリ自己ノ力ヲ以テ海洋ヲ開拓
シ、萬里ノ波濤ヲ物トモセズ之ヲ實行シ來
ツタノデアリマス、申スマデモナク我國水
產業ハ、國民ノ歷史的、思想的、特殊產業
トシテ、世界ニ冠タル地步ヲ有シ、隨テ其
ノ生產品ハ國民ノ榮養ヲ充シタル上、更人
之ヲ海外ニ輸出シテ多額ノ外貨ヲ吸收シ、
以テ戰時財政ヲ補ツテ居ルノデアリマス、要
スルニ其ノ無限ノ寶庫デアル海洋ノ開拓ハ、
我ガ國民ニ課セラレタル大ナル天職デアリ
マく、斯ルガ故ニ政府ハ時局ニ順應スル水
產國策ヲ立テ、常ニ之ガ目的達成ニ努ムベ
キデアリマス、今ヤ我ガ日本ハ國ノ總力ヲ
擧ゲテ興亞建設ノ大陸政策ニ邁進シテ居ル
ノデアリマシテ、此ノ大陸政策ノ進展ニ伴
ヒ、水產政策モ亦新段階ニ適合スルモノガ、
確立セラレネバナラヌノデアリマス(拍手)
蓋シ現下ノ時局ニ當リマシテ、生產力ノ維
持擴充ヲ圖ルト云フコトハ、總テノ產業皆
然リデアリマスガ、特ニ水產物ハ國民ノ保
健、榮養食糧トシテ缺クコトヲ得ナイノデ、
益〓之ガ生產ヲ增進致シマシテ、以テ漁村民
ノ生活ヲ安定シ向上セシムベキデアリマス
然ルニ去ル十二日ノ道府縣經濟部長會議
ノ際、私共常ニ先輩トシテ尊敬致シテ居リ
マスル櫻內農林大臣ノ御訓示ノ要旨ヲ新聞
デ拜見致シマシタガ、ソレニ依ルト農林水
產物ノ增產ノ必要ヲ强調サレテ居リマスガ、
其ノ增產ノ目標ハ米、麥、繭木炭其ノ他
ノ農產物又ハ畜產ニ關スルモノバカリデ、
水產ニ關スルモノハ更ニ見當ラナイノヲ、
私共甚ダ失望致シマシタ次第デアリマス、
併シ其ノ後提出サレタ追加豫算ヲ見マスレ
バ、僅カバカリノ水產ニ關スル豫算ガアリ
マシタガ、是トテモ他ノ產業ニ比べマスレ
バ甚ダ僅少デ、所謂昭和十三年度ニ於ケル
所ノ當初豫算ヨリ、十四年度ハ百万圓以上
減ジテ提出サレテ居ルノデアリマスカラ、
丁度十三年度ノ當初豫算ヲ復活シタ程度ニ
止マルノデアリマス、斯ノ如ク致シマシテ
ハ水產物ノ增產ハ全ク不可能デアルト存ジ
やく、諸君、興亞建設ノ途上ニ在ル我ガ國
民ハ、將來數倍ノ活動ヲ要シマスルノデ、
國民體力ノ增進ハ今ヤ喫緊ノ要務デアリマ
ス、而シテ之ガ動物性榮養ノ資源ハ、四面
環海ノ我ガ日本トシテハ、海洋卽チ水產物
ニ求ムル外ハナイノデアリマス、事變勃發
以來、或ル方面ニ御用ヲ勤メテ居リマスル
漁船ハ相當多數ニ上リ、加フルニ漁業用資
材ハ極度ノ規制ヲ受ケ、尙ホ不合理ナル高
價ニ賣却サレテ居ルコトハ事實デアリマス、
御承知ノ如ク事變以來、經濟機構ハ逐次戰
時體制ニ移行シ、物資ノ統制ハ愈〓强强サレ、
之ガ配給ニ付キマシテモ新ナル機構ガ生レ
マシテ、其ノ機構ヲ通ジテ配給ヲ行フコト
トナツタノデアリマスルガ、商工ノ人々ノ
ミガ多ク其ノ統制ニ參與シテ定メマスル物
資ノ價格ハ、不當ニ〓騰致シマシテ、漁村
經濟ニ不測ノ重壓ヲ加へツツアルノデアリ
マス、故ニ是等統制物資ノ價格ヲ合理的ニ
是正致シマスルコトハ銃後生產ノ確保、
漁村生活ノ安定上、焦眉ノ急務デアルト信
ズルノデアリマス、而シテ沿岸漁業ハ我國
漁業ノ大宗デアリマシテ、最モ重要ナルモ
ノデアリマス、全國沿岸二千數百ノ漁村ニ
於ケル百五六十万ノ漁民ハ、之ニ依ツテ生
活シテ居ルノデアリマス、然ルニ其ノ漁獲
ガ最近非常ニ減少シ、漁村ノ經濟ハ容易デ
ナイノデアリマシテ、全ク沿岸漁業ノ衰退
ハ、全國到ル處デ聞ク漁民ノ歎聲デアリマ
ス、是ハ獨リ經濟上ノ問題ノミデナク、社
會的方面カラ見マシテモ、放任スルコトハ
出來ナイヤウニ思フノデアリマス、勿論其
ノ不漁ノ原因ハ種々アルノデアリマスガ、
其ノ主ナルモノハ、近來鑛工業ノ發達ニ伴
ビ、ソレ等ノ工場カラ有害ナル廢液ガ、川
ヤ海ニ流レテ水質ヲ汚濁スル爲ニ、其ノ水
中ニハ「プランクトン」ノ發生ガ少イノデア
リマス、元來魚ハ餌ヲ求メントシテ沿岸近
ク集ルノデアリマスルカラ、其ノ「プランク
トン」ヲ餌トスル小サイ魚ハ、自然沿岸近ク
ニ集リマセヌ、隨テ又其ノ小サイ魚ヲ餌ト
スル所ノ大ナル魚モ、中ナル魚モ、沿岸近
ク來游致サナイコトニナルノデアリマス、
故ニ政府ハ此ノ有害ナル汚水防止ノ方策ヲ
樹立シ、以テ沿岸魚族ノ蕃殖保護ヲ圖ルト
共ニ、漁付林、魚礁、其ノ他魚族誘致ノ施
設ヲ普及强化スル等、生產力擴充ニ萬全ノ
施設ヲ講ズル必要ガアルト思フノデアリマ
ス(拍手)最近漁村ハ各方面ニ亙ツテ行詰ツ
テ居ル、漁村ヲ更生セヨナドト、世間一般
ノ注意ト認識ヲ得マシタノハ、私共常ニ漁
村ニ在ツテ漁民ノ生活ノ實情ヲ知ル者ト致
シマシテハ、稍〓意ヲ强ウスルモノデアリ
マスルガ、併シ今其ノ行詰ツタ原因ハ那邊
ニ在ルカ、深刻困憊ノ程度ハドウデアルカ
ト云フコトニ至ツテハ、遺憾ナガラ完全ナ
ル資料ハ勿論、一般ニ究明サレテ居ナイノ
デアリマス、之ガ爲漁村ノ實情ニ關シマシテ、
世間ニモ餘リ知ラレテ居ナイト申上ゲテモ
過言デハナイト信ズルノデアリマス(拍手)
是等ノ原因ハ之ニ關スル基礎統計資料ノ
缺ケテ居ル點ニ大ナル缺陷ガアルノデアリ
マス、常ニ細密ナル調査ヲ行ツテ居ル商工
業ヤ農業方面ニ於キマシテハ、政府ハ勿論
府縣ニ於キマシテモ、世ノ推移ニ伴ヒマシ
テ、之ガ對策ニ萬全ヲ期セラレツツアルノ
デアリマスガ、獨リ水產ニ關シマシテハ、
一貫シタ全國的ノ統計ガ揃ツテ居ナイ所
ニ、大ナル缺陷ガアルノデアリマス(拍手)
此ノ漁村ノ更生、漁家經濟ノ建直シニ關ス
ル對策ニ付如何ニ叫ビマシテモ、殘念ナガ
ラ基礎資料ガ整備シテ居ナイ關係上、後廻
シニサレテ居ル憾ミガアルノデアリマス
(拍手)政府ハ速ニ漁村漁家及ビ漁業ノ實態
調査ヲ行ヒマシテ、常ニ下積ミニサレ、放
任サレ勝チデアリマシタ漁村ノ振興ニ、一
段ノ御努力ヲ願ヒタイト存ズル次第デアリ
マス(拍手)
諸君、海洋漁業ハ近來長足ノ躍進ヲ示シ、
北ハ「カムチャッカ」「アラスカ」沖合ニ進出
シ、南ハ南洋一帶及ビ更ニ南極洋ニマデ活
躍シテ、世界的ニ制覇ヲ遂ゲ、尙ホ今後中
支南支方面ヘモ進出スル情勢ニアルノデア
リマス、隨テ國際的ニモ種々交涉ヲ有ツコ
トトナリ、其ノ前途ハ頗ル多事多端ヲ思ハ
ザルヲ得ナイノデアリマス、故ニ私共ハ此
ノ際一層海洋漁業ノ進展ヲ圖ルノ急務ナル
ヲ叫ビ、之ガ對策ニ萬遺憾ナキヲ希望スル
モノデアリマス(拍手)
然ルニ我國水產行政ノ中心ハ、數十年來
依然トシテ農林省內ノ水產局デアリマシテ、
最近漸ク一二ノ分課ヲ增設サレマシタガ、
到底現下ノ情勢ニ適應セルモノトハ認メラ
レナイノデアリマス、故ニ此ノ時局下ニ於
ケル新段階ニ卽スル水產國策ノ樹立實行
上水產省ノ新設ヲ希望スルモノデアリマ
スルガ、若シ一省ノ新設ガ急速實現シ得ザ
ル事情ニアルトスレバ、此ノ際水產局ヲ外
局ニ昇格シ、少クトモ之ヲ二部制トシテ、
其ノ一部ニ海洋漁業及ビ國際關係ノ事項ヲ
掌ラシメ、一部ハ主トシテ沿岸漁業ノ調整
及ビ漁村ニ關スル事項ヲ掌ラシムルヤウニ
シタイノデアリマス
更ニ國立ノ水產試驗場ハ甚ダ貧弱ノ感ガ
アリマス、一隻ノ水產試驗船スラナイノデ
アリマスガ、一體水產試驗場ニ船ガナクテ、
海洋調査又ハ水產ノ試驗ガ出來マセウカ、
今後漁撈ハ勿論輸出製品ノ〓究等、水產試
驗場ノ任務ハ一層重キヲ加フルコトニ相成
ルコトト思ハレマスルノデアリマス(拍手)
私ハ海國日本ニ相應ハシイ水產試驗場ノ整
備充實ハ、此ノ際最モ必要デアルト信ズル
ノデアリマス(拍手)
尙ホ我國ニ於ケル水產〓育機關ノ貧弱ナ
ルコトハ、洵ニ遺憾トスル所デアリマシテ、
中等程度ノ縣立水產學校スラモ、全國ヲ通
ジテ僅カ十六七ニ過ギナイ現狀デアリマス
ガ、宜シク水產大學ノ一ツ位ハ設立シ、或
ハ水產講習所ヲ二百名乃至三百名位ノ生徒
ヲ收容シ得ルヤウ整備擴大シ、更ニ水產專
門學校及ビ中等程度ノモノハモツト增設シ
テ、世界制覇ニ要スル人材ノ養成ニ努ムベ
キデアルト信ズルノデアリマス、以上縷述
致シマシタ如ク、斯業ニ關スル諸般ノ制度
施設ハ、之ヲ他ノ產業ニ比較致シマスレバ、
其ノ不備缺陷ハ殆ド之ヲ指摘スルニ遑ナイ
ノデアリマス、其ノ不備ヲ補足スル上カラ
申上ゲテモ、斯業ニ關スル指導團體タル系
統水產會竝ニ漁業組合ノ活動ヲ一段ト促
進シ、之ヲ活用シテ諸般ノ指導、且ツ施設
ノ遂行ニ協力セシムルコトハ、時局下ニ於
ケル斯業ノ進展上最モ緊要デアルト信ズル
ノデアリマス
最後ニ漁業從事者ノ救濟施設ノコトニ關
シテ申上ゲマスルガ、漁業者ハ世人ノ多ク
カラ唱ヘラレテ居ルガ如ク、常ニ板一枚下
ハ地獄ノ危險ニ曝サレナガラ、國民ノ榮養
食糧獲得ノ爲、海洋ノ開拓ニ努力奮鬪致シ
テ居ルノデアリマシテ、陸上ノ產業勞働者
ニ比ベテ、頗ル危險率ノ多イコトハ申スマ
デモナイコトデアリマス、然ルニ陸上ノ勞
働者ニ對シマシテハ、種々ナル救濟制度ノ
設ケアルニモ拘ラズ、常ニ家庭ト離レ、怒
濤ノ間ニ就業シツツアル所ノ、海ノ最モ下
級勞働者デアル漁夫ニ對シマシテハ、何等
ノ救濟制度ノ設ケナキハ全ク社會的ノ缺
陷ト言ハザルヲ得ナイト思フノデアリマス
(拍手)諸君、漁業法第四十條ニ、漁業從事
者ノ遺族扶助ニ關シテハ勅令ヲ以テ規定ヲ
設クルコトヲ得ト規定サレテ居ルニ拘ラズ、
漁業法布カレテ玆ニ三十九年、今以テ漁業
者ノ救濟制度ハ設ケラレテ居ラナイノデア
リマス、惟フニ漁民ノ遭難ニ當リ、速ニ之
ヲ救濟シ、以テ其ノ遺族糊口ノ安心ヲ確立
致シマスルコトハ、海國日本ノ將來ニ好影
響ヲ齎スノハ勿論ノコト、我ガ勇敢ナル漁
業者ノ志氣ヲ益〓〓揚セシメ、水產振興上大
イニ寄與スル所アルハ申スマデモナイコト
デアリマス(拍手)過日、本院ヲ通過致シマ
シタ船員保險法案ニ致シマシテモ、一般船
員ニ對スル保險ヲ目的トシタ制度デアツテ、
漁業船員ニ關スル所ノ特異性ハ、何等織込
マレテ居ナイヤウニ見受ケラレマス、尙ホ
本法ニハ船員法第一條ニ該當スル者ノミニ
限ラレテ居リマスノデ、全國漁業者ノ大部
分ヲ占ムル中小漁業者ハ、何等ノ恩惠ニモ
浴スルコトハ出來ナイノデアリマス、我國
ニ就業シツツアル漁船ハ約三十万隻ト承知
シテ居リマスガ、其ノ中三十噸以上ノ漁船ハ
約二千隻デ、其ノ乘組漁夫ハ約五六万人位シ
カナイノデアリマシテ、全國百五十万漁業者
ノ大部分ハ何等ノ恩澤ニ浴スルコトモ出
來ズ、漁業界ノ第一線ニ活躍シテ居ル多數
ノ漁民ハ、是ガ爲却テ置去リトナルノデハ
ナイカト、洵ニ憂慮ニ堪ヘヌノデアリマス
惟フニ日本國民ノ各層各階級ヲ通ジ、漁
業者程生活狀態ノ總テニ於テ氣ノ毒ノ位置
ニ放任サレテ居ルモノハナイノデアリマシ
テ、洵ニ同情スベキデアリマス、故ニ中小
漁民ノ救濟制度ヲ緊急實施致シマスルコト
ハ、最モ必要ノコトト存ジマス、以上甚ダ
簡單デアリマスルガ、之ヲ以テ本建議案贊
成ノ理由ト致シマスガ、何卒我ガ海國日本
ノ水產振興ノ爲ニ滿場ノ御贊成ヲ得テ、可
決セラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、本案ハ委員長ノ報〓通リ決スル
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=14
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015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御議異ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可夫致シマシタ(拍手)次ハ
東亞指導者養成機〓トシテノ大學設立ニ關
スル建議案ノ審議ニ入リマス、討論ニ入リ
マス-木下成太郞君
〔木下成太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=15
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016・木下成太郎
○本下成太郞君 只今議題トナリマシタ東
亞指導者養成機關トシテノ大學設立ニ關ス
ル建議案ニ贊成ヲ致シ、又說明モ申シテ見
タイト思フノデアリマス、現代ノ我國ニ於
ケル學問ニ付テハ、年來識者ハ此ノ是正ニ
努メテ居ルノデアリマス、學問的ニソレヲ
是正シヨウト云フノデ、識者ハ多年苦心ヲ
致シテ居ツタノデアリマスガ、ドウシテモ
是正ガ出來ナイ、隨テ政治的ニ解決スルヨ
リ仕方ガナカラウト云フノデ、本院ハ政治
的ニ解決スベク、所謂機關說ノ排擊ト云フ
コトヲ致シタノデアリマス、然ルニ此ノ機
關說ハ依然トシテ大學デ行ハレ、又發賣禁
止ヲシタ其ノ書籍ガ、大學ノ講堂ニ於テ堂
堂ト講義セラレテ居ルヤウナ次第デアリマ
シテ、所謂國民總テ醉ツテシマツタ、是デ
ハ到底所謂明治天皇ノ御詔勅-諸君モ
御承知ノ通リニ憲法發布以前ニ御〓文ト云
フモノガアリマス、ソレニモハツキリ書イ
テアル、所謂皇祖皇宗ノ遺訓ヲ明徴ニスル
ト云フコトガアルノデアリマスガ、此ノ遺
訓ヲ明徵ニスルト仰セ給ウタコトガ、憲法
ガ發布セラレ、議會ハ開ケ、而シテ一面ニ
於テ我國固有ノ學問ト云フモノガ閑却ヲセ
ラレテ、遂ニ小學、中學、高等學校、大學
ヲ通ジテ、歐米ノ學問ニ心醉スルト云フコ
トニナリ、所謂機關說ニ依ツテ學問ヲシタ
所ノ者ガ高等文官試驗ヲ受ケテ、サウシテ
各省ニ於ケル其ノ要部ニ蟠踞致シテ居ル、
言葉ヲ換ヘテ言フト、精神文化ニ依ツテ我
國ハ生命ガアル、然ルニ唯物史觀、此ノ方
面ニ依ツテノミノ學問ガ效ヲ奏シテ、一身
ヲ立テル基ニナツタヤウナ次第デ、之ニ依
ツテ現代ノ諸弊ヲ生ジテ來テ居ルノデアリ
マス、故ニ吾々ハ往年議會ヲ通ジ、議會ハ
全會一致ヲ以テ機關說排擊ト云フコトヲ政
治的ニ扱ツテ、ソレヲ排擊シテシマツタ、
然ルニ今尙ホ御承知ノ如ク大學ガ完全ニ改
革ガ出來、刷新ガ出來、又官吏其ノ他ノ人
人ガ自ラ覺ツテ居ルカト言ヘバ、覺ツテ居
ナイ、所謂民間ニ於テ官僚獨善ノ聲ハ囂々
トシテ起キテ居ル、而モ數日以前ニ此ノ議
會ヲ通ジテ吏道ノ刷新ト云フコトヲ言ウテ
居ル、如何ニモ歎ハシイコトデアツテ、日
本自ラ日本精神若クハ日本ノ學問ヲ忘レテ
シマツタト云フコトハ、是ハ國家ニ對シテ果
シテ忠ナル所以デアルカドウカト言ヘバ
此ノ上モナイ不忠デアルト云フコトニナル
ノデアリマス、故ニ私ハ只今此ノ建議案ノ
贊成ノ理由ヲ述べマスルニ付キマシテモ、
時間ガ餘リアリマセヌカラ、成ベク壓縮致
シテ申述ベヨウト思フノデアリマスガ、若
シ意ノ缺ケテ居ル所ガアリマシタナラバ、
ソレハ時間ガ足リヌ故ニ意ガ缺ケタノダト
御承知ヲ願ヒタイ
之ヲ要シマスルニ明治、大正、昭和ヲ通
ジテ、百弊ヲ生ジ、權利義務論卽チ覇道論
ガ橫溢致シ、官民相剋シ、政黨又相搏擊シ
テ、遂ニ國民ノ信賴ヲ失墜シテ現在ノ政情
ヲ來シ、民間ハ官僚獨善ヲ高唱致シ、官僚
ハ政黨不信ヲ叫ブニ至ツテ居ルノデアリマ
ス、卽今之ヲ矯正シテ土下ノ相剋摩擦ヲ芟
除センガ爲ニ、現內閣ハ是ニ於テ總親和、
總努力ト云フコトヲ標榜致シマシテ、天下
ニ臨ンデ居ルノデアリマス、眞ニ是ハ當然
ト考ヘナケレバナリマセヌ、總親和、總努
力、卽チ是ハ皇道政治ノ要諦デアリマシテ、
現宰相ノ平沼君ハ所謂渾身ノ努力ヲ日夜傾
注致シテ、サウシテ此ノ事ヲ實行セントシ
テ居ラレルコトハ感謝ニ堪ヘマセヌ
勿論現宰相ハ法學博士デアツテ、其ノ學問
ヘ東京帝國大學ニ於テ昔學バレタノデアリ
マスガ、此ノ事ハ社會ノ人モ皆知ツテ居ル、
而シテ今ヤ其ノ自分ノ學ビ得タ所ノ學問ノ
蘊蓄ヲ究メテ、歐米模倣ノ學問ノ弊ヲ悟リ、
法律ノ道德化ニ努メルト同時ニ、我ガ帝國
ハ皇道ニ於テノミ生存シ、覇道ノ有害ナル
ヲ數十年〓究シ、所謂其ノ理想ト學問ヲ實
際政治ノ上ニ顯現セントシテ、今春老軀ヲ
提ゲテ組閣ノ大命ヲ拜サレタノハ、則チ文
德ニ依リ義勇公ニ奉ズルニ外ナラナイノデ
アリマス
今ヤ世界平和ヲ招來セントスル最善ノ理
想實現ノ爲、先ヅ大陸政策ヲ遂行シテ、日
支事變ヲ通ジテ東洋主義ノ平和ヲ樹立セン
爲其ノ難局ニ處スル時ニ當リマシテ、果
シテ大陸ヲ指導シ得ル濟々タル多士アリヤ
否ヤヲ思フノミナラズ、顧ミテ其ノ人材ノ
乏シキヲ痛嘆セザルヲ得ナイノデアリマス、
內ニ於テハ機關說ガ腦底ヨリ浸潤シ、功利
主義、個人主義、自由主義者等ガ橫溢シテ
要處ニ蟠踞シ、是等噴々者流ハ理論的ニハ
堪能デアリマスケレドモ、現代學問ノ弊害
ニ馴レタル、則チ部分人トシテ、大局ヲ洞
破スル眼光ナク、內政ノ振ハナイノモ專ラ
玆ニ其ノ源ガアル、國民不滿ノ因モ亦茲ニ
存スルノデアリマス、故ニ吾々ハ積年文〓
ノ根本改善ヲ絕叫スルコト、旣ニ半生ニ亙
ツテ居ルノデアリマス、此ノ時ニ當リ大陸
經綸ニ對スル天業完成ハ到底尋常ニ非ザル
ト共ニ、先ヅ大經綸ヲ遂行スル人材養成ヲ、
如何ニシテ整備スルカガ先決問題デアルト
言ハザルヲ得ナイノデアリマス、之ヲ既往
ニ遡ツテ檢討スレバ、從來外務省ガ施設シタ
對支文化事業ハ如何デアルカ、其ノ結論ハ
今日ノ事變ヲ醞釀シタルニ過ギズ、其ノ事
業ニ對シテハ寧ロ支那人ノ反感ヲ買ヒ、國
家ヲ蠧毒シタルニ過ギヌノデアリマス
是ニ於テ國民ハ靜ニ思考ノ必要ヲ生ズル
ノデアル、往年明治天皇ガ元田永孚ニ親
喩シ給ヒテ曰ク「大學ニ於テ理科、化學科、
植物科、醫科、法科等ハ益〓其ノ進步ヲ見
ルベシト雖モ主本トスル修身ノ學科ニ於テ
ハ嘗テ見ル所ナシ」ト仰セラレテ居ル、其
ノ後〓育勅語ヲ渙發セラレ、〓學ノ大方針
炳然タリト雖モ、時代ノ風潮ハ爾來益〓逆
行シテ停止スル所ヲ知ラズ、政治、治
要ノ道ヲ講習シ得ベキ人材ハ、歲月ト
共ニ寥々トシテ聞ユルコトナキニ至ツタノ
デアリマス、私共窃ニ人心惟レ危ク、
道心惟レ微ナランコトヲ憂ヘマシテ、屢
〓學刷新ノ爲ニ驚馬ニ鞭ツテ馳驅スルコト
玆ニ數十年デアリマス、近來物質文化ノ
進步駸々トシテ刮目スベキモノアリト雖モ、
時流ハ逆轉シテ帝國大學ノ學風ガ墮落腐敗
シ、國體ヲ暗閻ニ陷レ、機關說ヲ學ビタル
者ガ天下ニ橫行シテ聖旨ノ何モノタルカヲ
理解セヌト云フコトハ、是ハ誠ニ慨歎措ク
能ハザル所デアリマス、顧レバ明治天皇
ノ聖旨ニ背離シ、冠履倒行、其ノ赴ク所ヲ
知ラザル有樣デアリマシテ、人材ノ養成ニ
至リマシテハ、依然トシテ顧ル所ナク、日
本帝國ノ本義ヲ理解セズ、西洋學ニ心醉セ
ル片々タル吏僚天下ニ橫行シ、私利私慾ニ
眩惑シ、遂ニ大局ニ暗ク、枝葉ニ明敏ニシ
テ、現代ヲ創設シタル其ノ罪尠カラザルモ
ノガアリマス、然ルニ滿洲事變ヲ轉機トシ
テ、今般ノ支那事變ニ及ビ、世界列强ノ情
勢又甚ダ危急ノ迫レルモノアルヲ覺ユル此
ノ秋ニ當リマシテ、東亞新秩序建設ヲ擔當
スベキ英俊ノ要望セラレルコト甚ダ切ナル
モノガアリマス、而モ日本ノ官僚學徒、
自ラ使命ヲ白覺スルコト淺ク、中國靑年ノ
指導啓發ニ處シテ、確乎不抜ノ信念アル者
ヲ求ムルコト愈、難カシイノデアリマス、從
來支那靑年ノ英、米、獨、佛ニ留學スル者ハ、
〓シテ各自ノ留學シタル國ヲ思慕シ、之ヲ
誇耀スル風ガアルノデアリマス、而シテ該
國ニ親睦歸依スルノ深キコトハ生涯ヲ通ジ
テ變ラヌノデアリマス、之ニ反シテ本邦ニ
留學セル支那靑年ハ、一部少數者ヲ除キ、
〓シテ抗日侮日ノ精神ヲ涵養シテ歸國スル
ヲ常トスルモノデアリマス、其ノ原因一ニ
シテ足ラズト雖モ、亦本邦〓育制度ノ缺陷
ニ歸セラルル點ガナイトハ言ハレナイノデ
アリマス、國民政府ノ排日〓育ノ徹底セル
靑少年ヲ再〓育シ、徹底的ニ日、滿支提
携ノ實ヲ擧ゲントスルニハ、單ニ〓科書ノ
改訂、〓員講習會等ノ如キ、區々タル改善
事項ヲ以テ其ノ目的ヲ貫徹セントスルコト
ハ前途遼遠ト言ハザルヲ得ナイノデアリ
ママ、古來ノ名〓地ニ墜チ、再ビ挽囘スル
コトガ出來ナイ、現今師父タリ、〓員タル
者モ、亦輕佻浮薄ナル歐米「デモクラシー」
ノ盲目的崇拜者デアリマシテ、未グ以テ將
來ノ支那ノ中堅層ヲ養成スルノ重任ヲ負フ
ニ足ル者ト考ヘルコトガ出來ナイノデアリ
やっ、一時ノ趨勢ニ迎合スルカ、或ハ醉生
夢死、所謂其ノ日暮シヲ爲ス蠧魚ノ類ニシ
テ、斯ル似而非學者ニ靑年子弟ヲ託シ、興
亞ノ大義ヲ確保セント冀フハ、百年河〓ヲ
俟ツニ等シイノデアリマス、要ハ日本精神
ヲ自覺體驗セル日本第一流ノ人物ヲシテ、
自ラ一世ノ師表トナルト共ニ、彼等盟邦ノ
次代ノ人材ヲ養成セシムルニアルノデアリ
ママ、而シテ同時ニ我ガ靑年子弟ヲ是ト親
炙シ、提携シ、以テ渾然一體億兆ノ東洋民
族ヲシテ皇道學ノ化育ニ浴セシムルニ在ル
ノデアリマス、ソレガ爲ニハ單ニ歐米學
術ノ輸入品、再製品ヲ與ヘテ以テ歐米崇
拜、日本侮蔑ノ念ヲ增加セシムルノ愚ヲ再
ビスベキデハナイノデアリマス、然ラバ其
ノ對策如何、卽チ支那ノ學生ヲ本邦ニ留
學セシムルニ止ラズ、特別機關ヲ設ケテ
之ヲ誘導啓發シ、深ク日本ノ美風ニ燻染セ
シメ、知ラズ識ラズノ內ニ日本精神ヲ體得
スルニ至レバ、其ノ支那本土ニ及ボス感化
昔日ノ留學生ノ比ニアラザルコトハ明瞭ナ
ル事實デアリマス、此ノ千載一遇ノ機會ニ
際シテ、感奮興起セル日本ノ靑年子弟ヲシ
テ深ク自省セシメ、皇祖皇宗ノ遺訓ヲ顯彰
シテ、八紘一宇ノ宏謨ニ翼贊スルニ足ル人
材ヲ以テ自ラ任ゼントスルハ必スベキデア
リマス
現行ノ學校制度ニ於ケル各種各等ノ學校
文質彬々トシテ、各自成績ノ見ルベキモノ
ナキニアラズト雖モ明治天皇ノ叡慮ニ對シ
奉リ、現在ノ時局ノ要求ニ應ズル設備ニ至
ツテハ、誠ニ何等ノ該當スルモノナキヲ遺
憾トスルノデアリマス、御卽位以來夙ニ〓
育ニ御軫念アラセラレタ明治天皇ハ、明治
十二年元田永孚ヲシテ聖旨ノ大意ヲ起草セ
シメラレタル〓學大旨ハ、卽チ〓育勅語ノ
先馳ヲ爲スモノトモ謂フベキモノデアリマ
スガ故ニ、之ヲ拜讀致シマスレバ「〓學ノ要、
仁義忠孝ヲ明カニシ智識才藝ヲ究メ以テ人
道ヲ盡スハ我祖訓國典ノ大旨上下一般ノ〓
トスル所ナリ然ルニ輓近專ラ智識才藝ノミ
ヲ尙ビ文明開化ノ末ニ馳セ品行ヲ破リ風俗
ヲ傷フ者少ナカラズ然ル所以ノモノハ維新
ノ始、首トシテ陋習ヲ破リ智識ヲ世界ニ廣
ムル卓見ヲ以テ一時西洋ノ長所ニ取リ日新
ノ效ヲ奏スト雖モ其ノ流弊仁義忠孝ヲ後ニ
シ徒ニ洋風是レ競フニ於テハ將來ノ恐ルル
所終ニ君臣父子ノ大義ヲ知ラザルニ至ラン
モ測ルベカラズ是我ガ邦〓學ノ本意ニ非ザ
ル也、故ニ自今以往祖宗ノ訓典ニ基キ專ラ
仁義忠孝ヲ明ニシ、道德ノ學ハ孔子ヲ主ト
シテ人々誠實品行ヲ尙ビ然ル上各科ノ學ハ
其ノ才器ニ隨ツテ益〓長進シ道德才藝本末全
備シテ大中至正ノ〓學、天下ニ布滿セシメ
バ、我邦獨立ノ精神ニ於イテ宇內ニ恥ル無
カルベシ」ト詔セラレテ居リマス、然ルニ
〓學ガ斯ノ如キ御聖旨ニ副フヤ否ヤト言フ
二、聖旨ニ悖ルモノガ多量デアリマス
殊ニ從來ノ外務省ガ施設セシ對支文化事
業ニ關シテハ、前述ノ如ク支那人ノ反感ヲ
買ヒタルノミナラズ、甚シキハ禪讓放伐論
ハ儒〓ノ精神、思想ノ如ク誤解スル者ガアル
ノデアリマス、禪讓放伐論ハ孔子ガ此ノ世
ニ出デザル以前ノ支那ノ思想デアリマシテ、
此ノ弊ヲ矯メザル以上ハ天下ノ平和ヲ得ザ
ルコトヲ說キ、儒〓ヲ絕叫シタノデアリマ
ス、故ニ無形人即チ神ニ依ル國家生活ト有形
人ニ依ル國家生活ノ相違モ、此ノ點カラ發生
シテ居ルデセウガ、時弊ノ滔々トシテ恐ルベ
キハ、要路ノ者ニシテ西洋學ニ心醉シテ日本學
ヲ學バズ、又聖旨ノ如何ナルモノカヲ理解セ
ズ、儒〓ヲ〓究セズ、誤ツテ儒〓ニハ禪讓放
伐ノ思想ノアル如ク誤傳セルノハ、最モ遺憾
ニ堪ヘマセヌ、則チ我ガ國體ニ醇化セル儒
〓トハ如何ナルモノデアルカト云フコトニ
ナルノデアリマスガ、我國ニ醇化セル儒〓
ハ論語、中庸ヲ通ジテ所謂明治天皇ノ勅
語ノ解釋ヲシテ居ルノデアリマス、此ノ故
ニ其ノ偏見ヲ是正シ、之ヲ修養シ、仁義忠
孝ガ何モノカヲ意得シ、大陸ニ進出シ、其
ノ連絡ニ依ツテ世界平和ノ基礎的第一手段
トシテ皇道學ヲ〓究シ、其ノ蘊奧ヲ盡サレ
タル者ニシテ、初メテ大陸指導ノ任ニ膺ル
コトガ出來ルノデアリマス、此ノ趣意ニ依
ル學問ガ淺薄デアリマシテハ、支那六億ノ
民衆ヲ道德化シテ、彼等ヲシテ日本帝國ヲ
信賴セシムルコトハ頗ル難事タルノミナラ
ズ、歐米ニ於ケル覇道ノ學風ヲ基礎トシ
テ、其ノ指導者ニナリ得ルコトハ、益〓隣邦
ヲ紛淆セシメ、今囘ノ大事業ヲ徒勞水泡ニ
歸セシムル憂慮ヲ抱クモノデアリマス
故ニ極ク簡單ナ比喩ヲ述ベマスルト、露
國ノ共產大學ヲ卒業シタ孫科ナル者ガ、今
隣邦支那ニ於テ何ヲシテ居ルデセウカ、彼
ハ共產大學ヲ卒業スルト共ニ、共產主義ヲ
以テ無上ノ學問ナリト信ジ、支那ニ歸ツテ
共產黨ノ指導ノ第一人者ヲ以テ自ラ任ジテ
居リ、又支那ニ於ケル「インテリ」層ノ全部ハ
ソレヲ信ジテ居ル、此ノ蠧毒ガ卽チ今囘ノ支
那事變ヲ惹起セル原因トナツテ居ルコトハ、
最モ見易イ事デアリマスガ故ニ、本建議案
ニ敍說シテアリマスガ如ク、支那學生ヲシ
テ我國ニ留學セシメ、我ガ國民固有思想ノ
日本精神ニ日夕浸潤セシメテ之ヲ〓養致シ
マスレバ、我ガ大和民族ハ理論ニ依ツテ生
キズシテ、道ニ依ツテ生キテ居ルト云フコ
トモ、彼等ノ心底ヨリ信ズルノミナラズ、
日本帝國ノ全貌モ隣邦支那人ヲシテ明瞭ナ
ラシメ、玆ニ大イナル無限ノ融和ガ成立ス
ルモノト思ハレルノデアリマス、故ニ幾百
千ノ子弟ヲ〓養シテ、ソレヲ歸國セシメ、
之ヲ要部ニ活動セシメテ、我ガ國民ノ眞精
神ヲ宣傳シ、又我國ノ官吏モ〓育勅語ノ御
趣意、卽チ儒〓ヲ通ジテ解說セラレタル聖
旨ノ要諦ヲ體得シテ、支那留學生及ビ民衆
ヲ指導スルコトニ依ツテ、初メテ今囘ノ大
戰爭ノ效果ハ意義アラシムルニ至ルモノト
確信スル者デアリマス
以上述べマシタ如ク、新シキ支那ハ決シ
テ物質主義ヲ以テハ建設セラレルモノデハ
ナク、精神主義ニ依ル學問ヲ樹立、其ノ實
踐化ヲ圖ラザレバ、其ノ目的ハ到底達シ得
ラレザルコトヲ確信スルモノデアリマス、
仍テ余等玆ニ斯ノ如キ大主張ノ下ニ次ノ要
領ニ依リ、將來永遠ノ策トシテ大陸指導ノ
人材養成ノ大學機關ノ設立スルノ必要アリ
ト信ズルノデアリマス
以上申上ゲマシタ所ヲ搔摘ンデ申シマス
ルト斯ウ云フコトニナルノデアリマス
興亞ノ大義ニ則リ東亞新秩序ノ建設
ヲ擔當スベキ人材ヲ日滿支三國學生ヨ
リ養成ス
二聖喩記ニ見エタル明治天皇ノ聖旨
ニ叶フガ如キ〓育機關ハ未ダ完全セリ
ト謂フヲ得ザルヲ以テ新シク御聖旨ニ
副ウタ所ノ大學ヲ設立ス
三隨ツテ日本學生ハ皇道ノ自覺體驗ニ
徹セシムルコト更ニ一段ノ躍進ヲ期ス
四支那學生ハ儒〓ノ形骸ト化シ去リ王
道ノ陵遲衰微セル彼ノ地ノ舊習ヲ蟬脫
シテ日本國土ニ於テ日本精神ノ環境的
燻染ヲ受ケシメ皇道ニ醇化セル儒〓ノ
眞面目ヲ再發見セシムルコトヲ得セシ
ム
五斯クテ理論實踐ノ兩方面ヨリ日本精
神ニ依ル東亞指導者ヲ亞細亞樞要ノ地ニ
据エ以テ八紘一宇ノ理想フ實現セシム
以上贊成ノ理由ヲ申述ベマシテ、諸
君ノ御贊成ヲ得ントシテ駄辯ヲ費シタ
ノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、本案ハ委員長ノ報〓ノ通リ決ス
ルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=17
-
018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決致シマシタ(拍手)次ニ
帝國大學肅正ニ關スル建議案ノ審議ニ入リ
マス、討論ニ入リマス-岡野龍一君
〔岡野龍一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=18
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019・岡野龍一
○岡野龍一君 私ハ只今議題ニナリマシタ
帝國大學肅正ニ關スル建議案ニ對シテ贊成
ノ意ヲ表スル者デアリマス、靜ニ考ヘマス
ニ、今日革新ヲ叫ブ人々ハ、政治機構、行
政制度ノ刷新、或ハ生產力擴充ノ如キ、形
而下的諸事項ニノミ囚ハレル嫌ヒガアルノ
デアリマス、併シナガラ現在吾々ノ直面ス
ル最モ根本的問題ハ實ニ思想ノ問題デアリ
マイ、之ヲ一言スレバ、經濟ヲ第一トシ、
政治ヲ第二トシ、思想ヲ第三トスル、從來
ノ自由主義的ナ誤レル考ヘ方ヲ徹底的ニ改
メテ、第一ニ思想、第二ニ政治、第三ニ經
濟ト云フ、我國本來ノ日本的ナル考ヘ方ト
スルコトガ、總テノ革新ノ前提デアリ、又
出發點デアルト固ク信ジマスルガ故ニ、私
ハ本案ニ特別ノ熱意ヲ有スル者デアリマス
言フマデモナク帝國大學ハ國家最高ノ學
府デアリマシテ、其ノ使命ハ天業ヲ翼贊シ
皇國ノ進運ニ寄與スベキ國家有用ノ指導的
人材ヲ養成スルニアルコトハ、今更贅言ヲ
要シマセヌ、然ルニ今日マデノ過マテル〓
育方針ノ爲ニ、其ノ趣旨ガ今尙ホ徹底ヲ缺
キ、幾多不祥ナル事件ヲ見ツツアルコトハ、
洵ニ痛歎ニ堪ヘザル所デアリマス(拍手)近
時政府ハ大學〓育ノ改革ヲ企圖シ、總長ノ
選任、〓授ノ淘汰等ニ著手サレテ居リマス
ルガ、學問及ビ思想ノ本質ヲ明ニセズシテ、
徒ニ政治的、法律的手段ニ依ル措置ヲ執ラ
レツツアルヤウデアリマスルガ、左樣ナコ
トデハ到底其ノ目的ヲ達成シ得ザルコトハ
明デアリマス、之ガ爲ニハ文〓刷新ノ目的
ノ爲ニ設立セラレナガラ、今日マデ殆ド無
爲ニ過シテ來タ文部省ノ〓學局ヲ、思ヒ切
ツテ肅正振興シナケレバナラヌノデアリマ
ス、〓學局ガ大學ノ肅正問題ヲ對岸ノ火災
視シテ、涼シイ顏ヲシテ居ルコトハ、最早
到底許サレナイノデアリマス、從來ノ如ク
大學〓授ノ思想、著書、行動ガ先ヅ內務省
ノ問題トナリ、司法當局ノ活動トナリ、世
上ノ物議ヲ惹起スルニ至ツテ、初メテ文部
當局ガ四圍ノ狀況ニ引摺ラレナガラ、其ノ
對策ヲ講ズルガ如キ緩漫ナル態度デアツテ
ハナラヌ、文部省モモツト眞劍ニ誠實ニ肅
學ノ實ヲ擧ゲル責任ガアルト考ヘルノデア
リマス、仍テ文部當局ハ本案ノ趣旨ヲ體シ、
以テ大學肅正ノ實ヲ擧ゲラレンコトヲ要望
シテ止ミマセヌ、卽チ其ノ一ツハ大學令第
一條ノ改正デアリマス、私ハ先年宇野哲人
博士ノ言ヲ聽イテ驚イタノデアリマス、明
治維新以後太政官布告ニ依ツテ〓育令ガ發
布サレマシテカラ六十年ニ垂ントシテ居リ
マスルガ、當時〓育ノ大方針ニ付テ太政官
カラ仰出サレマシタガ、其ノ中ノ重要ナ點
ハ二ツデゴザイマス、其ノ一ツハ國民皆學
バザルベカラズト云フ御趣意デアリマス、
從來ハ少數ノ特別ノ人ガ學問ヲシタガ、今
後ハ國民皆學バザルベカラズ、國ニ一人モ
學バザル者ナキヤウト云フ御趣旨デアリマ
ス、此ノ點ハ洵ニ結構ナコトデアリマシテ、
其ノ結果トシテ今日殆ド家ニ不學ノ徒ナシ
ト云フ位ニナツタノデアリマス、第二ハ學
問ノ目的ニ付テデアリマスガ、此ノ事ニ付
テハ私共ハ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマ
ス、ソレハ斯樣ニ申サレテ居ル、從來學問
ト言ヘバ徒ニ天下國家ノ爲ナドト申シ
テ居ツタガ、ソレハ間違ヒデアル、學問
ト云フモノハオ前達自分ノ立身出世ノ
捷徑デアルト仰出サレテ居ルノデアリ
マス、成程學問ヲ致シマスト結局立身出
世モ致スコトニナリマセウ、併シナガラ
學問ヲスルノハ立身出世ヲ目的トスルト云
フヤウニ、功利主義的ニノミ說カレマシタ
結果、ソレガ後世ニ大變ナ禍ヲ及ボシタノ
デハナイカト考ヘルノデアリマス(拍手)私
共ハ西洋ニ於テハイザ知ラズ、我國ニ於ケ
ル學問ハ、第一義的ニハ皇運扶翼ノ目的ヲ
以テ行ハルベキモノデアリ、天下國家ガ主
デアツテ、個人ノ立身出世ハ從デアルト思
フ、然ルニ太政官布告ニハ、學問ト云フモ
ノハ從來天下國家ノ爲ニナドト言ツタガ、
ソレハ間違ヒデアル、學問ト云フモノハ唯
立身出世ノ爲ダト申シテ居ル、是ハ西洋第
十九世紀ノ自由主義或ハ個人主義ヘノ追隨
デアリマス、爾來、〓育ノ大精神ト云フモ
ノガ功利主義ニ堕シタ結果、明治ノ文化ハ
外面的ニハ駸々乎トシテ大イニ進步ヲ見マ
シタケレドモ、遺憾ナガラ精神的方面、殊
ニ眞ノ日本的人物養成ノ點ニ於テ大イニ缺
クル所ガアツタノデアリマス(拍手)、ソレ
ガ今日ノ〓育ノ根本的缺陷デアルト思ヒマ
ス、就テハ私共ノ大學令第一條ノ改正ト申
シマスノハ斯ウデアリマス、大學令第一條
ハ「大學ハ國家ニ須要ナル學術ノ理論及應
用ヲ〓授シ竝其ノ蘊奥ヲ攻究スルヲ以テ目
的トシ兼テ人格ノ陶冶及國家思想ノ涵養ニ
留意スヘキモノトス」斯ウ云フノデアリマ
ス
〔議長退席、副議長著席〕
諸君御聽ノ通リ「大學ハ國家ニ須要ナル學
術ノ理論及ビ應用ヲ〓授」ト言ツテ居ル、
「竝其ノ蘊奧ヲ攻究」ト言ツテ居ル、是ガ主
デアツテ、「兼テ人格ノ陶冶及國家思想ノ
涵養ニ留意」スルト言ツテ居リマス、意ヲ
留ムル、諸君、何タル不都合ナコトデアリ
マセウカ(拍手)私ハ此ノ大學令ヲ速ニ改正
致サネバナラヌト思ヒマス、而シテ此ノ
主デアルベキモノガ從トナリ、從デアルベ
キモノガ主トナラネバナラヌ、少クトモ同
格ニ扱フ必要ガアルト考ヘテ居ル者デアリ
マス、而モ茲ニ「大學ハ國家」トアリマスノ
ヲ「大學ハ國體」ニ改メタイノデアリマス、
卽チ「國家思想ノ涵養」トアリマス所ヲ〓
體思想ノ涵養」ニ私ハ改メタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、學問ノ獨立、學問ニ國境ナシ
等ノ言ヲ爲ス者アリ、吾人ト雖モ學問ノ獨
立及ビ學問ノ超國家的部分ヲ認メマスガ、
ソレハ斷ジテ反國家的、反國體的デアツテ
ハナリマセヌ、之ヲ端的ニ言ヘバ、我國ノ〓
育ハ皇道翼贊ヲ念願トスベキモノデアリ、
國家ノ最高目的ニ奉仕シナケレバナラヌモ
ノデアリマス
次ニ此ノ建議案ニ擧ゲラレマシタ第二點
ハ「各大學ニ日本學ヲ體系化スヘキ講座ヲ增
設シ其ノ確立ヲ圖ルコト」ト云フノデアリマ
スガ、之ニ付テ聊カ愚見ヲ申上ゲテ見タイ
ノデアリマス、最近行ハレタ平賀總長ノ肅
學ガ、斯ノ如キ紛糾狀態ヲ惹起シタノハ、
其ノ方針ガ實質的ニ見テ妥當デナカツタカ
ラデアリマス、經濟學部ノ紛爭ヲ單ナル派
閥的鬪爭ト看做シタル所ニ禍根ガアルト思
フ、問題ハ派閥ノ爭鬪ト云フガ如キ人的感
情ノ縺レナドヲ超越シタ、モツト〓〓深刻
ナ思想、世界觀、又ハ學問ノ本質ニ觸レタ
問題デアリマス、隨テ事件ヲ形式的ニノミ
取扱ツテ、人民戰線的「イデオロギー」ヲ固
執スル河合〓授ト、兎モ角モ日本國民科學
トシテ經濟學體系ニ努力シ來ツタ土方〓授
トハ、質的ニ相違シテ居ルコトハ明白デア
ル、隨テ問題ノ核心ハ派閥的闘爭ニアラズ
シテ、實ニ深刻ナル思想戰デアルコトヲ銘記
スベキデアル、然ルニ此ノ本質的相違ヲ無
視シテ、喧嘩兩成敗ニ出タルコトハ洵ニ遺
憾デアツテ、斯ノ如ク實質カラ離レテ形式
的解決ニ甘ンゼラレタ文部當局ノ態度ハ、
文〓刷新上吾人ノ斷ジテ採ラザル所デアリ
マス(拍手)私ハ第三者トシテ冷靜ニ是マデ文
部當局ノ執ラレタル大學肅正ノ處置ヲ檢討
シマスルト、其ノ根本ニ觸レズ、徒ニ表面的、
形式的デアリ、動モスレバ政治的、法律的ニ
ノミ處斷セラレタ嫌ヒガアリマス、荒木文部大
臣ニ對スル意見モアリマスガ、是ハ省略致シマ
ス、尙ホ從來ノ肅學ハ謂ハバ破壞的デアツテ、
決シテ建設的デハアリマセヌ、大學肅正ノ
實ヲ擧ゲントスレバ、單ニ反國體的ナル〓
授ヲ逐ヒ、其ノ著書ヲ發禁處分ニ付スルノ
ミニ止マラズ、破壞ヨリ建設的、創造的方
向ヘ進ムベキデアリマス、大學再建ノ問題
ハ運命不可避的ニ學問、思想、世界觀、
宇宙觀等ノ實質的、根本的問題ニ觸レテ來
マシタ、卽チ從來ノ如ク我ガ國體ニ對シ無
關心デアリ、或ハ之ヲ否認スルガ如キ、自
由主義的世界觀ニ立脚セル一般抽象形式的
ノ學術ヲ肅正シテ、新ニ-此處ガ大切デ
アリマス、新ニ大和民族ノ歷史傳統ノ地盤
ノ上ニ根據シ、君民一體ノ國體ヲ樞軸トス
ル日本國民科學ヲ積極的ニ理論體系化シ、
之ヲ大學ノ主要講座トスベキモノデアルト
信ズル者デアリマス、此ノ客觀的ナ學的基
準ガアツテコソ、大學諸〓授ノ學說ノ批判
モ初メテ的確ニ行ハレ得ルノデアリマス、
私ハ大學問題ガヤカマシイ時ニ、何トカシ
テ之ヲ計ル尺度ハナイカ、其ノ尺度ヲ何處
ニ求ムベキカト云フコトニ苦心ヲ致シタノ
デアリマス、ソコデ此ノ言ヲ爲スノデアリ
マスケレドモ、客觀的ナ學的基準ガアツテ
···大學諸〓授ノ學說批判モ初メテ的確
ニ行ハレルノデアリマス、又世人モ思想問
題ガ如何ナルモノデアルカト云フコトヲ
ハツキリト理解シ得ルデアリマセウ、今日
ノ大學問題ガ斯ノ如ク縺レテ明朗性ヲ失ツ
タノハ、全ク日本學ノ本質ト內容トガ體系
的ニ闡明セラレナカツタカラデアリマス、
近ク京都帝大ニ於テ日本經濟學講座ノ創設
ヲ見ルトノコトデアリマスガ、此ノ事洵ニ
國家ノ爲ニ慶祝ニ堪へナイノデアリマス、
同時ニ此ノ他、速ニ日本政治學、日本憲法
學、日本〓育學等々ノ日本諸學ヲ振興シ、
理論的ニ體系化シテコソ眞ノ日本帝國大學
ガ實現スルモノデアツテ、是ニ於テ初メテ
飜譯最高學府ノ汚名ヲ拂拭スルコトガ出來
ルト思フノデアリマス、是ニ至ツテ考ヘネ
バナラヌコトハ、文部省ノ國民精神文化〓
究所デアリマス、此ノ〓究所ヲ質的ニモ機
構的ニモモツト擴大强化致シテ、之ヲシテ
日本學理論體系化ノ直接ノ衝ニ當ラシメネ
バナリマセヌ、併シ現在ノ陣容ノ儘デハ斯ノ
如キ重大ナル使命ヲ遂行シ得ザルコトハ言
フマデモナイコトデアリマス、故ニ速ニ是
ガ內容ヲ整備シテ、今後ハ各大學ノ法文學
部ナドノ〓授タラントスル者ハ、一應國民
精神文化〓究所ヘ入所シタル後ニ〓鞭ヲ執
ラシムル必要ガアルト思ヒマス、各帝大ノ
法經文學部ノ學的權威ガ斯クマデ失墜シタ
ル今日ニ於テハ、同〓究所ノ振興ハ最モ重
大ナル國策ノ一ツデアルト考ヘルノデアリ
マス
第三ハ「帝國大學ノ各學部ニ於テハ齊シ
ク學生ヲシテ日本精神ヲ涵養セシメ且ツ忠
良ナル國民タル品性ヲ陶冶セシムルニ必要
ナル施設ヲ爲スコト」ト云フノデアリマス、
今日ノ帝國大學ノ學生ノ大部分、私ハ全部
トハ申シマセヌガ、大部分ハ遺憾ナガラ個
人主義的傾向ガ頗ル濃厚デアリマス、八紘
一宇ノ國家的大使命ヲ體現シテ、東亞新秩
序建設ニ身ヲ捧ゲントスルガ如キ、民族的
情熱ト感激ヲ持タナイノデアリマス、斯ノ
如キハ帝大卒業生ガ各方面ニ於テ指導的地
位ニ就クノ實情ニ鑑ミ、洵ニ寒心ニ堪ヘヌ
ノデアリマス、今日言擧ゲセヌ民衆ガ忠誠
ノ念ニ燃エ、君國ノ爲ニ一身ヲ賭シテ居ル
ノニ反シテ、所謂「インテリゲンチュア」ノ無
信念、無感激ト云フ奇怪ナル現象ハ、主ト
シテ玆ニ基因スルノデアリマス、是ニ於テ
カ大學生ノ心身ヲ鍛鍊スル禊道場其ノ他必
要ナル施設ヲ設クルコトハ、緊急缺クベカ
ラザルコトデアルト存ズルノデアリマス
私ハ以上贊成ノ意見ヲ申述ベタノデアリ
マスガ、戰時ノ思想問題固ヨリ大切デアリ
マス、併シナガラ戰時ハ民心ガ緊張致シテ
居リマスカラ、先ヅ宜イトシテ、寧ロ私ハ
戰後ノ思想問題ヲ重視スルノデアリマス、
卽チ戰時ノ思想問題固ヨリ大切デアルケレ
ドモ、戰後ノ國民思想ノ問題、國民思想ノ
統一ト云フコトヲ考ヘマスルガ爲ニ、-日
モ速ニ我ガ帝國大學ノ肅正ニ向ツテ全幅ノ
努力ヲ致シタイト思ヒマス、何卒滿場ノ諸
君、本案ニ對シマシテ熱意ヲ以テ御贊成ア
ランコトヲ希望致シテ降壇スル者デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=19
-
020・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ討論ハ終局
致シマシタ、本案ハ委員長ノ報告通リ決ス
ルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=20
-
021・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ本案ハ可決致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=21
-
022・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、郵便
年金法中改正法律案ヲ議題ト爲シ、委員長
ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=22
-
023・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=23
-
024・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
ずく、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-郵
便年金法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員
長庄晋太郞君
郵便年金法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一郵便年金法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長庄晋太郞
衆議院議長小山松壽殿
〔庄晋太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=24
-
025・庄晋太郎
○庄晋太郞君 只今議題トナリマシタ郵便
年金法中改正法律案ノ特別委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
本委員會ハ本月ノ二十二日、二十三日、二
十四日ノ三囘ニ亙リマシテ會議ヲ開キ、最初ニ
政府當局ヨリ本案ニ付テ詳細ナル御說明ガゴ
ザイマシタ、本改正法律案ノ要旨ハ、現下緊
要ナル國民生活ノ安定竝ニ國民貯蓄奬勵ノ
見地ヨリ、郵便年金制度ヲ擴張シテ、年金受
取人ノ生存中年金ヲ支拂フニ止マラズ、一定
條件ノ下ニ本人ノ遺族ニモ年金ノ支拂ヲ繼
續スルガ如キ年金種類ヲ創設スルト共ニ、
戰爭事變ニ因リ死亡セル年金受取人ノ遺族
ニ特別ノ支拂ヲ爲ス等、制度ノ效用ヲ大ナ
ラシムルノ外、一般民衆ノ利用ヲ容易ナラ
シムル爲、掛金拂込上便宜ナル方途ヲ開ク
ト同時ニ、併セテ現行法中不備ノ條項ヲ補
整シテ制度ヲ改善スル目的ノ下ニ、郵便年
金法ヲ改正セントスルモノデアリマス
次ニ審議ノ〓要ヲ申上ゲマスト、本制度
ハ國民ノ生活安定上洵ニ結構ナル制度デア
ルガ、廣ク庶民階級ニ普及セシムル爲ニ
ハ、郵便機關ノ利用其ノ他現在ノ間接的助
成ノ外ニ、國庫ヨリ相當ノ補助金ヲ出シ、
掛金ノ低廉ヲ圖ルコトガ肝要デアルト思フ
ガ、政府ノ所見如何トノ質問ニ對シ、本制
度ハ社會政策的意義ヲ持ツ施設デアルガ、
强制加入ノ社會保險ト異リ、何人ニテモ任
意ニ利用シ得ルコトニ特徴ガ存スルノデア
ルカラ、國庫ヨリ掛金ノ補助ヲ爲スコト
ハ困難デアルガ、工場勞働者等ニ付テハ團
體加入ノ方法ニ依リ、掛金ノ低下ヲ圖ルコ
トニ考究中デアルトノ答辯ガアリマシタ、
其ノ他掛金計算上ニ於ケル豫定利率、戰
死者ニ對スル特別返還金、貸付金ノ利子、
積立金ノ運用其ノ他ノ點ニ關シ、熱心ナル
質疑應答ガ行ハレマシタガ、其ノ詳細ハ速
記錄ニ讓ルコトニ致シタイト存ジマス
質疑ガ終了シテ討論ニ入リ、贊成意見ノ
陳述ガアリマシタガ、其ノ際本制度ハ收入
ノ增加セル殷賑產業方面ニハ、特ニ利用ヲ
勸奬スルト共ニ、立派ナ趣旨ノ事業ナルニ
拘ラズ、社會的ニ周知セラレテ居ラヌ現狀
ニ鑑ミ、政府ハ極力是ガ周知ノ徹底ニ努メ、
又將來下層者ニハ掛金ノ補助ヲ爲ス途ヲ講
ズルヤウニセラレタイ、又戰死者遺族ニ對
スル特別給付ハ出來ル限リ解釋ヲ寛大ニ、
多數者ニ恩典ヲ及ボスヤウニセラレタイト
云フ希望意見ガゴザイマシタ
討論ヲ終ツテ採決ニ入リ、全會一致政府
原案通リニ可決致シマシタ、此段御報告ヲ
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=25
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026・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=26
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027・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=27
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028・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=28
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029・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=29
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030・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
郵便年金法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=30
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031・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=31
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032・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際北海道土功組合
法中改正法律案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=32
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033・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=33
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034・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっく、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-北
海道土功組合法中改正法律案ノ第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委
員長坂東幸太郞君
北海道土功組合法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一北海道土功組合法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長坂東幸太郞
衆議院議長小山松壽殿
〔坂東幸太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=34
-
035・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 只今議題トナリマシタ北
海道土功組合法中改正法律案ノ委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
現在ノ法規ニ依リマスルト、組合ノ廢置
分合ハ總會ノ決議デナケレバソレヲ行フコ
トガ出來マセヌモノヲ、ソレデハ非常ニ不
便ナルガ故ニ、協議ヲ以テモ之ヲ爲スコト
ガ出來ルト云フノガ改正ノ要旨デアリマス、
現在北海道ノ土功組合ハ二百四十一ゴザ
イマスルガ、其ノ水田ノ面積ハ約十九万町
步デアリマス、所ガ水系竝ニ地區錯綜ノ關
係上、之ヲ給制スル必要ノアル組合ハ約三
十六デ、此ノ三十六ノ組合ヲ十程ニ統制ス
ルト云フノガ、差當リ此ノ法律改正ノ目的
デゴザイマス、此ノ三十六ノ組合ノ地區ノ
水田ハ約三万町步、此ノ三一万町步ノ水田ハ、
土功組合費ハ現在一反歩ニ付約一圓デア
リマスルガ、此ノ法律ヲ實行致シマスル
ナラバ、ソレガ約七十七錢程ニナリマ
シテ、全部デ約七万圓バカリハ事務
費ノ輕減ヲスルコトガ出來ルノデア
リマス、又之ヲ輕減スルノミナラズ、
延イテハ或ハ灌漑溝ノ統制、或ハ其ノ他ノ
利益ガアリマスルノデ、此ノ法律ガ實行サ
レマスルナラバ、非常ニ利益ガアルト云フ
點カラ、此ノ法律案ガ出タノデゴザイマス、
之ニ對シマシテ、委員會ハ昨日マデ六囘開
會致シマシテ、昨日ヲ以テ委員會ノ質疑ハ
終了致シマシタ、此ノ條文ニ對スル所ノ質
問ハ大シタモノデハゴザイマセヌ、唯是ダ
ケノ質問ガアツタノデス、卽チ甲ト乙ノ組
合ガアル、所ガ甲ノ費用ハ一反步ニ二圓デ
アル、乙ハ五十錢デアル、之ヲ一〓ニシテ
假ニ一圓トナル場合ニハ二圓ノ方ハ一圓
減ズルガ、五十錢ノ方ハ五十錢高クナル、
サウ云フコトガアル場合ニハ、斷ジテ乙ノ
方ノ組合ハ參加スルモノデハナイ、ソレハ
ドウスルカト云フ質問ニ對シテ、政府答ヘ
テ曰ク、其ノ時分ニハ是ガ廢置分合スル時
分ニ、不均一賦課ト云フ條件附ヲ以テ之ヲ
決行スルカラ、サウ云フコトハ少シモナイ
ト云フコトノ答辯デゴザイマシタ、偖テ此
ノ關聯事項トシテ大キナ所ノ質問ハ、ソレ
ハ北海道ハ全ク特殊ノ事情ニアル、例ヘバ
土功組合ヲ作ル場合ニモ、ソレハ政府ガ奬
勵シテヤツタノデアル、最初ハ農民モ希望
シタガ、併シソレヨリモ尙ホ一層政府ハ〓
糧政策ノ立場カラ、之ヲ國策的ニ奬勵シタ
結果出來タモノデアル、故ニ土功組合ヲ設
置スル場合ニモ、計畫モ工事モ亦道廳、卽
チ政府ノ役人ガヤツタモノデアル、其ノ結
果最初ノ計畫ヨリモ非常ニ費用ガ增加致シ
マシテ、最モ激シイ例ハ、六十万圓ノ最初
ノ設計ガ百八十万圓ニナツテ居ル例ガア
ル、之ヲ政府ノ役人ガ計畫及ビ工事ヲ施行
シタ結果、多額ノ負債ガ生ジタトスルナラ
バ、少クトモ其ノ責任ノ半分位ハ政府自身
ガ負ハナケレバナラヌモノデアル、隨テ現
在負債ノアル所ノ組合百九十七、其ノ負債
ハ三千二百万圓、之ニ付テモ政府ハ之ヲ救
濟或ハ助成スル必要ガアルデハナイカト云
フヤウナ質問ガアツタノデゴザイマス、之
ニ對シテ政府ハ答ヘテ曰ク、成程其ノ點モ
アルケレドモ、併シナガラ昭和十一年カラ
朝鮮ニ施行シタ水利組合法、竝ニ昭和十二
年カラ內地ニ施行シク所ノ耕地整理組合法
等ニ依ル救濟ハ、組合員ト竝ニ融資銀行ト
政府ト、此ノ三者ノ協力ニ依ル救濟主義ヲ
執ツテ居ルノデアル、隨テ北海道ノ特殊性
ヲ認メルトハ言ヒナガラ、此ノ主義ト照シ
合セテヤラナケレバナラヌモノデアル、隨
テ北海道ノ要求通リニハ行カヌケレドモ、
併シナガラ十分ニ委員側ノ要求、希望ヲ酌
ンデ、サウシテ假令助成金ヲ出サナクテモ、
其ノ他ノ方法ニ依ツテ、成ベク土功組合ノ
負債ガ輕減スル途ヲ講ズルト云フ意味ノ答
辯ガアツタノデゴザイマス、而シテ本日愈〓ゝ
採決ニ移ツタノデアリマス、其ノ前ニ申上
ゲマスルガ、政府側ノ答辯ニ當ツタ方ハ、
內務政務次官ノ漢那憲和君、內務參與官ノ
中井一夫君、內務省地方局長坂千秋君、北
海道廳長官ノ半井〓君、北海道廳土木部長
ノ中村忠充君デアツタノデアリマス、而シ
テ本日愈〓討論トナリマスルヤ、民政黨ヲ代
表致シマシテ深澤吉平君ハ、本案ニ贊成ノ
意見ヲ述ベマシテ、更ニ希望條項トシテ左
ノ各項ヲ朗讀致シマシタ
希望條項
政府ハ北海道土功組合法制定ノ趣旨
達成ヲ期スル爲幹支線溝ヲ國費支辨ト
スルノ方途ヲ講ズベシ
昭和十五年度以降ニ於テハ土功組合
ノ經營ヲ堅實ナラシムルニ必要ナル土
地改良助成費ヲ增額スベシ
前項方法ヲ以テ十分ナル目的ヲ達シ
能ハザル場合ハ特別助成ノ途ヲ講ズベ
シ
水田不能ニシテ原地ニ還元スルノ巳
ムヲ得ザルモノニ對シテモ前項同樣ノ
特別助成ヲナスベシ
此ノ希望條項ヲ附ゲマシテ原案贊成ノ演說
ヲサレマシタ、之ニ對シテ政友會ヲ代表シ
テ東條貞君カラ贊成意見ノ陳述ガアリ、又
第一議員倶樂部ヲ代表シテ北勝太郞君カラ
贊成ノ意見、又社大黨ノ川俣〓音君是亦贊
成ノ意見ヲ述べマシタ、斯クテ採決ノ結果
滿場一致ヲ以テ此ノ希望條項ヲ加ヘタ原案
ヲ可決スルコトニ決シマシタ、以上御報告
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=35
-
036・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=36
-
037・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
さく、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=37
-
038・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=38
-
039・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=39
-
040・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
さく、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
北海道土功組合法中改正法律案
第一讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=40
-
041・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=41
-
042・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ政府提出、花柳病豫防
法中改正法律案ヲ議題トシ、委員長ノ報〓
ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=42
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043・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=43
-
044・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、花柳
病豫防法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員
長〓寛君
花柳病豫防法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一花柳病豫防法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長〓寛
衆議院議長小山松壽殿
〔〓寛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=44
-
045・清寛
○〓寛君 只今議題ニナリマシタル花柳病
豫防法中改正法律案ノ委員會ノ審議ノ經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
本委員會ハ三月二十二日開會致シマシテ、
二十三日、二十四日ト三日間ニ亙ツテ續行
致シタノデアリマス、劈頭ニ於キマシテ、
厚生大臣ヨリ本案ノ提案ノ理由ノ說明ガア
リマシタ、其ノ〓要ヲ申上ゲマスルト、現
行法ハ昭和二年四月公布、同三年六月ヨリ
施行シタノデアリマスガ、主ナル對象ヲ業
態上花柳病傳播ノ虞アル者、所謂業態者ニ
局限シテ居ル關係上、現下ノ社會情勢ニ照
シ本病豫防ノ目的ヲ達成スル上ニハ不十分
ノ點ガアルノデ、差當リ最モ必要ト認メラ
ルル部分、卽チ診療所ニ於ケル利用範圍ノ
擴大、換言スレバ業態者以外ノ者ニ對シテ
モ診療ノ途ヲ開キ、以テ是ガ豫防撲滅ヲ期
セントスル趣旨デアリマス、續イテ委員ヨ
リ熱心ナル質疑ガ續ケラレタノデアリマス
ガ、委員ヨリ希望セラレマシタル主ナル事
項ヲ申上ゲマスレバ、業態者ニ對スル强制
檢診實施、娼妓及ビ業態者ニ對スル檢診制
度ノ統制竝ニ强化、壯丁適齡者及ビ學生等
ニ對スル健康診斷ノ施行、花柳病ヲ傳染セ
シメタル男子ニ對スル制裁規定ノ設置、賣
藥ノ誇大廣告ノ取締、花柳病蔓延防止ノ一
手段トシテ結婚資金制度ノ樹立及ビ禁酒法
ノ强化、庶民層ニ對スル輕費診療等ノ極メ
テ廣汎ニ亙ル質疑ガアツタノデアリマス、
之ニ對シマシテ政府ニ於テハ、近キ將來ニ
於テ提出スベク現在考究中ノ全部改正案ニ
十分參酌スベキ旨ノ答辯ガアリマシタ、其ノ
他法律ニハ直接關係アリマセヌガ、國ノ興廢
ハ法律ヲ嚴守スルト嚴守セザルトニ因ル、サ
ウ云フ意味ニ依ツテ法律ハ嚴守シナケレバ
ナラナイモノデアル、然ルニ密賣者ヲ默認シテ、
否、甚ダシキハ奬勵スルヤウナ施設マデモ
設ケラレテ居ルガ、其ノ半面ニ於テ法律デ
認メラレタル其ノ業者ヲ極端ニ壓迫シテ居
ル、洵ニ不可解ダ、斯ノ如キ法案ノ目的ヲ
遂行スル重要ナル方法ハ、密賣者ヲ極端ニ
壓迫撲滅シテシマツテ、サウシテ法律ニ依
ツテ認メラレタル其ノ業者ニ十分ナル施設
ヲ爲スト云フコトガ必要デアル、斯ウ云フ
意見ガ强ク述ベラレタノデアリマス、政府
ハ之ニ對シ廢娼地方ニ對スル善後措置ノ指
導監督ニ付テハ一層力ヲ效スベク、又花柳
病豫防對策樹立ノ爲ニ、斯界ノ權威者ヲ網
羅スル中央機關、及ビ豫防思想ノ啓發ヲ目
的トスル宣傳機關ノ設置、竝ニ花柳病ノ豫防
ヲ目的トスル日滿支三國條約ノ締結等ニ對
シテハ、政府ニ於テ篤ト考慮スル旨ノ答辯
ガアリマシテ、質疑ヲ打切リマシテ討論ニ
入ツタノデゴザイマス
討論ニ入リマシテ、委員會ハ全會一致ヲ
以テ希望意見ヲ議決シタノデアリマス、其
ノ希望意見ハ、高橋委員ガ委員會ヲ代表致
シマシテ左ノ如キ希望條項ヲ附シマシタ
政府ハ現行花柳病豫防法ノ根本的
改正案ヲ來議會ニ提出スベシ
政府ハ現在地方府縣ニテ施行中ノ公
私娼ノ檢診制度ヲ改正シ入院治療費ノ
增額ヲ計リ治療機關ノ擴充ヲ期スベシ
一、政府ハ花柳病ノ治療ニ困難セル勤勞
大衆ノ爲ニ地方自治團體ニ交付補助金
ヲ增額シテ公費實費ノ診療機關ヲ增設
擴充スベシ
一、政府ハ花柳病ノ撲滅ヲ計ル爲中央機
關ヲ樹立スベシ
一、政府ハ每年定期ニ花柳病ノ豫防撲滅
ノ國民運動ヲ展開スベシ
以上ノ希望意見ヲ加ヘマシテ、民政黨ハ信
太委員ガ贊成ノ意見ヲ述べ、社會大衆黨ハ
井上委員ノ贊成ノ意見ガアリマシテ、滿場
一二本案ニ只今ノ希望意見ヲ加ヘマシテ、
可決確定致シマシタ、ドウゾ御贊成アラン
コトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=45
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046・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=46
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047・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マート、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=47
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048・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=48
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049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=49
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050・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
花柳病豫防法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=50
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051・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=51
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052・服部崎市
○服部崎市君 質問ハ之ヲ延期シ、明二十
五日ハ會期終了日デアリマスガ、特ニ午後
一時ヨリ本會議ヲ開クコトトシ、本日ハ是
ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=52
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053・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=53
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054・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、議事日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後三時三十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03119390324&spkNum=54
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