1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十五年三月五日(火曜日)午前十時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 堀切善兵衞君
理事 小山倉之助君 理事 濱野徹太郎君
理事 木村淺吉君 理事 高橋熊次郎君
理事 小笠原三九郎君 理事 立川平君
理事 河野密君
成島勇君 中島彌團次君
内藤正剛君 長野長廣君
濱邊玉三郎君 櫻井兵五郎君
伊藤五郎君 船田中君
宮本雄一郎君 上田孝吉君
山川頼三郎君 森肇君
森田福市君 西川貞一君
瀧澤七郎君 鈴木英雄君
田万清臣君 松永義雄君
石坂繁君 道家齊一郎君
北勝太郎君 武田徳三郎君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 櫻内幸雄君
出席政府委員左の如し
内閣書記官長 石渡莊太郎君
大藏政務次官 木村正義君
大藏省主税局長 大矢半次郎君
大藏省銀行局長 入間野武雄君
大藏省爲替局長 中村孝次郎君
大藏書記官 湯地謹爾郎君
大藏書記官 田中豐君
大藏書記官 山田義見君
大藏書記官 池田勇人君
預金部資金局長 廣瀬豐作君
榮繕管財局理事 松隈秀雄君
專賣局長官 花田政春君
燃料局長官 東榮二君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法改正法律案(政府提出)
法人税法案(政府提出)
特別法人税法案(政府提出)
配當利子特別税法案(政府提出)
外貨債特別税法中改正法律案(政府提出)
相續税法中改正法律案(政府提出)
建築税法案(政府提出)
鑛區税法案(政府提出)
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
營業税法案(政府提出)
地租法中改正法律案(政府提出)
酒造法案(政府提出)
清涼飮料税法中改正法律案(政府提出)
砂糖消費税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
揮發油税法中改正法律案(政府提出)
物品税法案(政府提出)
遊興飮食税法案(政府提出)
取引所税法中改正法律案(政府提出)
通行税法案(政府提出)
入場税法案(政府提出)
印紙税法中改正法律案(政府提出)
骨牌税法中改正法律案(政府提出)
狩獵法中改正法律案(政府提出)
明治四十四年法律第四十五號中改正法律案(砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件)(政府提出)
大正九年法律第五十一號中改正法律案(内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件)(政府提出)
支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案(政府提出)
營業收益税法廢止法律案(政府提出)
資本利子税法廢止法律案(政府提出)
法人資本税法廢止法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)
家屋税法案(政府提出)
所得税法人税内外地關渉法案(政府提出)
昭和十二年法律第九十四號法中改正法律案(支那事變の爲從軍したる軍人及軍屬に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する件)(政府提出)
大正十三年法律第六號中改正法律案(外國船舶の所得税等免除に關する件)(政府提出)
アルコール製造事業等に對する所得税等の免除規定の改正に關する法律案(政府提出)
租税法規の改正に伴ふ恩給金庫法等の規定の整理に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=0
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001・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ開會致シマス、尙
ホ申上ゲテ置キマスガ、段々日限モ迫リマ
スシ、發言希望者ガ澤山アリマスノデ、成
ベク質問モ答辯モ簡潔ニ御願致シマス、尙
ホ委員長カラハ統制ヲ少シ强化致シマシテ
議事ヲ促進サセル積リデスカラ、御諒承ヲ
願ツテ置キマス-小笠原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=1
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002・小笠原三九郎
○小笠原委員 本委員會開カレテヨリ二週
間餘、其ノ間幾多ノ質問應答ガ行ハレタニ
モ拘ラズ、依然トシテ明瞭ヲ缺ク點ガ少ク
アリマセヌ、此ノ稅革案ガ果シテ稅制改正
所期ノ目的タル負擔ノ衡平ヲ十分ニ圖ツテ
居ルカ、其ノ間ニ尙ホ尠ナカラザル不公平
ガ殘サレテ居リハセヌカ、又此ノ稅革案ハ
此ノ事變目的ノ達成ニドレダケノ役割ヲシ
ヨウト云フノデアルカ、或ハ現下喫緊ノ重
要政策タル生產力擴充ヤ、或ハ低物價政策
等ニ逆行背馳スルガ如キコトハナイカ、此
ノ稅革案ガ企圖シテ居ル增收目標ハ何レニ
アルカ、國民ハ何ガ故ニ斯ノ如キ急進的ナ
大增稅ヲ負擔セネバナラヌノカ、單ニ事變
下デアルカラト云フダケデハ容易ニ納得ガ
出來ナイノデアリマス、斯ク考ヘテ來マス
ルト、此ノ稅革案ニ付テハ尙ホ質サレネバ
ナラヌ多數ノ疑義ト問題ガアルノデアリマ
ス、ソコデ私ハ玆ニ率直ニ國民ノ問ハント
スル所、質サントスル所ヲ政府ニ問ヒ質シ
テ見タイト思フノデアリマス
本會議デモ申シマシタ如ク、此ノ稅革案
ハ大體ニ於テ良ク出來テ居リ、良ク整ツテ
居リ、稅制改革ノ一點ヨリ見ルナラバ、是
マデニ作リ上ゲラレタ石渡元藏相初メ、大
藏當局ノ方々ノ御苦心ニ對シ、國民トシテ
衷心ヨリ感謝ニ堪ヘザル所デアリマス、併
シナガラ本原案ガ作成セラレテカラ相當日
數モ立ツテ居リ、其ノ後ニ於ケル社會情勢
ノ變化モ相當顯著ナルモノガアリマスルシ、
又納稅者タル國民ノ立場ヨリ見マスルト、
此ノ原案ヲ其ノ儘押付ケラレタノデハ堪ツ
タモノデナイト。云ツタ感ジノ痛切ナルモノ
ガアルノデアリマス、仍テ先ヅ最初ニ政府
當局ノ御心持ト云フカ、御心構ヘト云フカ、
ソレニ付テ御伺ヒ申上ゲタイト存ジマス、
凡ソ爲政者ハ常ニ國民ノ聲ヲ聽カネバナリ
マセヌガ、特ニ稅革案ノ如キ、國民ニ利害關
係ノ緊切ナルモノニアリマシテハ、十分ニ
國民ノ聲ヲ聽カナクテハナラナイト存ジマ
ス、若シ國民ノ聲ヲ聽キツツモ、之ヲ聽キ
容レルコトガ出來ナイ事情ヤ理由ガアリト
スルナラバ、政府ハ宜シク胸襟ヲ開イテ、
何故ニ國民ノ言フ所ヲ聽クコトガ出來ヌカ
ヲ明カニシ、以テ國民ヲ諒解納得セシムル
必要ガアル、然ルニ過日來ノ政府ノ御答辯
ヲ伺ツテ居ルト、其ノ御答辯ハ可ナリ親切
丁寧ナ御答辯モアリマスケレドモ、大體ニ
於テ原案ノミヲ固執シテ、何デモ原案ヲ一
ツ通サウト云ツタヤウナコトデ、眞ニ國民
ノ聲ヲ聽ク雅量ガアルカドウカト云フ點ハ
甚ダ疑ハシイト思フノデアリマス、而シテ
其ノ答辯ノ中ニハ、此ノ場合サヘ切拔ケレ
バ宜イト云ツタヤウナ、或ハ是ハ言過ギカモ
知レマセヌガ、一時ヲ糊塗スルヤウナ答辯
モ、根本的ナ問題ニ付テハ少クアリマセヌ
ノデ、此ノ點ハ洵ニ遺憾ニ存ジマス、私
政府ハ一方ニ於テ此ノ議會ヲ通シテ正直ナ、
僞ラザル吾々國民ノ聲ニ耳ヲ傾ケ、サウシ
テ此ノ稅革案ヲ出來ルダケ完璧ナモノニサ
レルト云フ御心懸ガ必要デアルト共ニ、他
方其ノ應答ニ當ツテハ、宜シク國民ニ政府
ノ抱懷セラルル御考ヲ能ク徹底セシムルヤ
ウニ努メラレルコトガ必要デアルト考ヘル
ノデアリマスガ、其ノ點ニ對スル政府ノ御
所見ハ如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=2
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003・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 御承知ノ通リ殆ド從來例
ノナイ稅制改革デアリマスノデ、此ノ改革
ヲ致シマスニ付テハ、十分ニ國民ノ實情ニ
卽シ、又大衆ノ意向ニモ副ツテ行カナケレ
バ相成ラヌコトハ御話ノ通リデアリマス、
私共ト致シマシテハ、從來ノ〓究ノ結果、
此ノ案ガ最善ノモノナリトシテ御協賛ヲ仰
イデ居ル譯デアリマスガ、尙ホ一層各位ノ
御意見ヲ承ツテ、サウシテ所謂國民大衆ノ
諒解ノ下ニ此ノ案ノ實行ヲ見ルヤウニ致シ
タイト思ヒマシテ、出來ルダケ說明ヲ致シテ
居ルノデアリマスガ、說明ノ不十分ナ點ガ
アリマスレバ、更ニ一層出來ルダケノ說明
ヲ致シテ御諒解ヲ得タイ、斯樣ニ思ツテ居
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=3
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004・小笠原三九郎
○小笠原委員 政府ノ方ニ於テモ長ク御〓
究ニナリ、又稅制調査會等ニ三十餘囘モ御
掛ケニナツテ、色々他ノ御意見モ御聽キニ
ナツテ居ルノデアリマスルガ、稅制調査會
等ハ其ノ構成ノ上カラ見マシテ、餘程政府
ニ憚ルモノガアリ、遠慮スルモノガアリマ
シテ、卒直ニアノ方面カラ民ノ聲ヲ聽カウ
トスルコトハ難カシイノデアリマス、議會
ニ於テコソ初メテ私共ハ率直ニ、民ノ僞ラ
ザル聲ガ聞エルト思フノデアリマシテ、其
ノ點カラ稅制調査會ニ三十數囘掛ケタカラ
是デ宜シイト考ヘルコトハ出來ナイ、甚ダ
言ヒ過ギルカモ分リマセヌガ、稅制調査會
ノ人々ハ相當政府方面ニ色々ナ連絡、關係
等ヲ持ツテ居ル人ガアルノデアリマシテ、
御用的ナ意見ガ少クナイノデアリマス、寧
ロ僞ラザル民ノ聲ハ、議會ニ於テコソ聽ケル
ノデアリマスカラ、ドウカ政府ハ胸襟ヲ開
イテ議會ノ意見ヲ聽イテ戴キタイト思フノ
デアリマス、又私共モ出來ルダケ遠慮セズ
ニ卒直ニ申上ゲテ見タイト思フノデアリマ
ス、國民ハ今日租稅ヲ以テ國政運行上ノ巳
ムヲ得ザル負擔ダト考へテ居リマスガ、此
ノ負擔ト云フ點ニ付テ政府ハドウ云フ風ニ
御考ニナツテ居ラレマセウカ、國民ノ側カ
ラ申シマスト租稅ハ負擔ダ、斯ウ云フ風ニ
考ヘテ居リマスカラ、常ニ出來ルダケ其輕
カランコトヲ欲シテ居ルノデアリマス、然
ルニ政府ガサウ云フ風ニ御考ニナツテ居ラ
ヌノデハナイカト思ハレル點ガアル、政府
ノ方デ若シサウ云フ風ニ眞ニ國民ノ負擔ナ
リト云フコトヲ御考下サルナラバ、政府モ
常ニ國家ノ負擔ヲ出來ルダケ輕クシヨウ、
詰リ重クスルニ忍ビナイト云フ心持ヲ以テ、
必要小限度ノ增稅ヲ止メラルベキモノデア
ルト考ヘルノデアリマス、勿論今日政府ハ取
レルダケ取ラウ、斯ウ云ツタヤウナ專制時
代ノ暴君ノヤウナ御考ヲ持ツテオ居デニナ
心
ルトハ考ヘマセヌ、ケレドモドウモ伺ツテ
居ルト、租稅ハ國民ノ非常ナ苦シイ負擔デ
アルト御考ニナル點ガ足ラヌノデハナイカ、
當然斯ウ云フモノヲ出サシテ宜イノダト云
フ風ナ御考デ臨マレテ居ルノデハナイカ、
斯ウ云フ風ナ感ジガ致シマスノデ、此ノ點
ニ付テノ政府ノ根本ノ御考ヲ伺ヒタイト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=4
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005・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 御話ノ如ク國民ノ負擔ノ
增加ト云フコトハ、有ユル生活上ニ付キマ
シテ困難ヲ來ス譯デアリマスカラ、爲政者
ト致シマシテハ國民ノ負擔ノ輕カランコト
ヲ期スルコトハ當然ノコトデアリマスケレ
ドモ、御承知ノ如キ事態デアリマシテ、非
常ナ國費ノ膨脹ヲ致シテ居ル場合デアリマ
スノデ、之ヲ總テ公債ニ俟ツト云フ事柄ハ
却テ將來ニ累ヲ貽シマスノミナラズ、財政
計畫ト致シマシテモ當ヲ得テ居ナイコトデ
アリマスノデ、今囘ノ增稅ノ如キ全ク已ム
ヲ得ザルモノニ出タ次第デアリマス、而シ
テ此ノ增稅案ヲ作リマスニ當ツテハ、之二
依ツテ國民生活ニ非常ナル壓迫ヲ及ボサナ
イヤウニ、又經濟上ニ於テモ非常ナ惡影響
ヲ來サナイヤウニ、有ユル方面ニ注意ヲ致
シテ本案ヲ提出シタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=5
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006・小笠原三九郎
○小笠原委員 ドウモ民ノ側デ見マスルト、
今大臣ノ仰セノ如クニハ其ノ儘受取レナイ
ノデアリマス、若シ國民ノ負擔ヲ重クスル
ニ忍ビナイト云フ心持ヲ以テ政治ヲオヤリ
下サルト云フコトナラ、一方デ斯ウ云フ大
增稅ヲ行フニ當ツテハ、ドウシテモ此ノ負
擔ガ已ムヲ得ナイモノダト云フコトヲ、眞
ニ國民ニ徹底セシムル必要ガアルト思フノ
デアリマスガ、國民ハドウモモウ少シ少ク
テモ宜イデハナイカ、是非共是ダケノモノ
ガ要ルノダト云フコトガ、國民ノ頭ニハ徹
底シテ居ラヌノデアリマス、又政府ガ眞ニ
忍ビザルノ心持ヲ十分ニ御持チ下サルナラ
バ政府ノ方ニモ增稅案ヲ國民ニ强ヒ、增
稅ヲ斷行スルニ付テハ、十分ノ決心ト覺悟
トヲ御持チニナツテ居ラナケレバナラヌト
思フ、卽チ言葉ヲ換ヘテ言ヒマスルト、政
府ニ於テモ是ダケノ政費ヲ節約スル、是ダ
ケノ施政ノ刷新ヲ行フ、是ダケノ行政整理
ヲスル、官吏制度ハ根本的ニ改正スルト云
フヤウニ、自ラノ爲ス所ヲモツト十分ニナ
サレナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、
過日來ノ又今ノ政府ノ御答辯ヲ聽イテ
モ、是非是ダケノ稅金ヲ拂ハナケレバナラ
ヌト云フコトハ私共ニハマダハツキリ呑込
メマセヌ、又政府ノ方デモ過日來本會議デ、
首相ハ十分ノ決心ト覺悟トヲ持ツテ居ルト
云フ御話デゴザイマシタガ、具體的ニドウ
シヨウト云フコトハ申サレマセヌ、決心ト
覺悟ヲ持ツテ居ルト言ハレタ所デ、國民
ハ、成程政府モ是ダケノ事ヲシテ吳レルナ
ラ、ソレナラバ吾々モ忍ンデ行カナケレバ
ナラナイ、斯ウ云フ心持ガピツタリト出テ
來ナイノデアリマス、ソコデ政府ハドウ云
フ事ヲシテ國民ニ本當ニ心カラ此ノ增稅ノ
已ムベカラザル所以ヲ悟ラセ、現ニ政府モ
是ダケノ事ヲスルノデアルカラ國民モ是ダ
ケノ事ヲセヨ、斯ウ云フ風ニ心カラ進ンデ
國民ノ協力ヲ求メラレル意味ニ於テノ御施
設ガアルノカ、此ノ點ヲ御伺申上ゲタイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=6
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007・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 申スマデモナク增稅ヲ致
ス如キ場合ニ於キマシテハ、出來得ル限リ
國費ヲ削減致シマシテ、豫算ノ膨脹ヲ防グ
ト云フ事柄ハ、是ハ當然爲サナケレバナラ
ヌコトト存ズルノデアリマス、唯今日ノ內
外ノ情勢カラ見マシテ、今囘御協賛ヲ仰イ
デ居ル所ノ豫算モ全ク巳ムヲ得ザルニ出デ
タルモノデアリマシテ、出來ルダケノ削減
ヲ致シテ作ツタモノデアルノデアリマス、
併シ此ノ實施ニ當リマシテ、政府トシテハ
極力其ノ節約ヲ期シ、或ハ若シ實際ノ實情
カラ繰延ベテ差支ナイモノガアリマシタナ
ラバ、繰延モヤラナケレバナラヌト考ヘテ
居ルノデアリマス、併シナガラ現實ノ問題
ト致シマシテハ、已ムヲ得ザルモノダケヲ
提案致シテ居ルノデアリマス、豫算ニ付キ
マシテハ其ノ點ニ於キマシテ更ニ將來十分
ナル注意ヲ致シタイト考ヘ居リマス、又其
ノ他ノ行政機構ノ改革デアルトカ、又經費
ノ節約ニ對スル具體的ノ根本方針トカ云フ
コトニ付キマシテハ、是ハ御說ノ通リ十分
考慮致サナケレバナラヌ所デアリマスケレ
ドモ、斯ノ如キ改革ハ相當〓究ヲ致シタ上
ニ於テ爲サザレバ、其ノ實行ガ難カシイノ
デアリマシテ、政府ニ於キマシテモ御說ノ
通リ此ノ問題ニ付キマシテハ深キ關心ヲ以
テ、今折角計畫ヲ重ネテ居ルヤウナ次第デ
アリマス、其ノ案ガ出來マスレバ之ヲ實
行ニ移シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルヤウナ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=7
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008・小笠原三九郎
○小笠原委員 櫻內大藏大臣ノ御誠意ハ深
ク之ヲ多トシ、同時ニ大藏大臣ハ民間ノ聲
ヲ能ク御聽キニナルコトト存ジマスカラ、
又民間ノ意向ガ凡ソドノ邊ニ在ルカト云フ
コトモ、是ハ私ガ申上ゲナイデモ御分リノ
コトト思ヒマスカラ、深キ思ヒヲ致サレマ
シテ、初年度六億、平年度八億-日本ノ
稅制史上六億ト申セバ、十年前ニハソレダ
ケガ全部ノ稅ノ收入デアル、サウ云フ六億、
八億ト云ツタヤウナ增稅ヲ織込マレルト云
フ時ニハ、政府ニ於テモ異常ナル覺悟ヲ以
テオヤリ下サルト云フコトデナイト、自ラ
ソコニ民ノ怨ノ聲ガ出テ參リマス、サウ云
フコトガアツテハナリマセヌカラ、特ニ此
ノ點ヲ御願申上ゲテ置ク次第デアリマス、
次ニ御伺ヒ申上ゲマスノハ、租稅ハ何ト
申シマシテモ國民ガ拂フモノデゴザイマス
カラ、本稅制ノ施行ニ當ツテハ國民ノ心カ
ラナル協力ガナケレバヤツテ行ケナイコト
ト考ヘルノデアリマス、心カラノ協力ト申
セバ、申スマデモナク國民ハ租稅ヲ非常ニ
苦痛ニ考ヘマシタリ、斯ウ云フ稅ヲ拂ハサ
レテハ堪ツタモノデハナイト云フ怨嗟ノ聲
ヲ放チナガラ拂フト云フヤウナコトデアツ
テハ、到底國民ノ心カラナル協力ヲ得ラレ
ルモノデハナイ、過日來私ノ所ニ電報ガ何
百通參ツタデセウ、書面ニ至ツテハ堆カク
來テ、見テ居ル暇ガアリマセヌガ、當局ノ
大藏大臣ト致シマシテモ、定メシ多數ノ陳
情等ガ參ツテ居ルト思ヒマス、此ノ中ニハ
私共ガ見テモ身勝手ナ議論モ相當アリマシ
テ、耳ヲ傾ケルニ足ルモノガ全部ト言フコ
トハ出來マセヌ、ケレドモ一〓ニ排斥出來
ナイモノガ相當澤山ゴザイマス、成程如何
ニモ尤モダ、斯ウ思フ點ガ澤山アルノデア
リマシテ、大藏大臣ハ民間ノ事モ御承知デ
アリマスカラ、成程斯ウ言ツテ來ルノハ尤
モダト自ラ御思ヒニナルコトガ多々アラウ
ト思ヒマス、斯ウ云フ事柄ニ付テハヤハリ
民ノ聲ヲ聽イテ、相當考へ直シテヤルト云
フコトデアリマセヌト、是ハ稅制其ノモノ
ガ通リマシテモ國民ガ心カラ協力致シマセ
ヌカラ、恐ラク增收ノ目的ヲ達シナイデア
リマセウ、又稅制改革ノ目的ト背馳スルコ
トニナリハセヌカト考ヘルノデアリマス、
所ガ此ノ間以來此席ニ居リマシテ色々大藏
大臣竝ニ政府委員ノ御考ヲ伺ツテ居ルト、
一步モ讓ラヌ、何デモ原案ガ最善最上ノモ
ノデアルト、斯ウ云フヤウニ御考ニナツテ
居ル、勿論御出シニナツタ以上ハ原案ヲ最
善最上ト御考ニナツテ居ルデセウ、ソレデ
ハ國民ハ心持好ク稅制案ニ御協力申上ゲル
ト云フコトハ出來マセヌ、多分私ハ主稅局
長ガ此ノ稅制案ノ功勞者ト思フ、御苦心ノ點
ハ感謝致シマスガ、併シ此ノ通リオヤリニ
ナツテ民ハ皆心持宜ク協力スルト云フ考ニ
ハナツテ居ラヌダラウト思ヒマス、是ハド
ウ致シマシテモモウ少シ民ノ聲ニ聽イテ、
修正スベキ所ハ遠慮ナク修正スル、斯ウ云
フコトデ初メテ國民ノ心カラノ協力ヲ得テ、
事變下ニ於テ稅制改革ガ實行出來ルノデア
ル、斯樣ニ考ヘルノデアリマスガ、其ノ點
ニ付テ政府ノ御考ハ如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=8
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009・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 一般ノ國民ノ聲ヲ聽キマ
シテ、若シ此ノ稅制ニ於テ非常ナ不備ナ點
ガアルト云フヤウナ場合ガアリマスレバ
ソレハ無論考慮致サナケレバナラヌコトデアリ
マス、殊ニ國民ノ代表タル所ノ議會ニ於キ
マシテ十分御論議下サルノデアリマシテ、
其ノ御論議ノ御意見ニ付キマシテハ、是一
其ノ御意見ニ對シテ之ヲ深ク參考ト致サナ
ケレバナラヌコトハ固ヨリデアリマスシ、
又議院ニ提案致シマス以上ハ、此ノ案ニ付
キマシテ十分ナル御〓究ヲ煩ハスト云フコ
トニナツテ居リマスノデ、其ノ點ニ付キマ
シテハ、若シ玆ニ非常ニ缺陷アリト致シマ
スレバ、其ノ點ニ付キマシテハ政府モ當然
考ヘナケレバナラヌト考ヘマズケレドモ、
現在之ヲ提案致シマスニ當リマシテハ、政
府ト致シマシテハ本案ガ最善ノモノナリト
ノ信念ヲ以テ提案致シタモノデアリマス、
其ノ見地カラ致シマシテ、此ノ原案ニ對シ
マシテ御協賛ヲ仰ギタイト云フ精神ヲ以テ
臨ンデ居ル譯デアリマシテ、說明ヲ致スベ
キ點ハ十分ニ說明ヲ致シマシテ、御話ノ如
ク心カラナル協力ヲ御願致シタイ、斯樣ニ
考ヘテ居ルヤウナ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=9
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010・堀切善兵衞
○堀切委員長 小笠原君、只今貴族院ノ方
デ大藏大臣ニ是非來イト云フコトデヤカマ
シイサウデスガ、其ノ間石渡書記官長ガ居
ラレマスカラ、書記官長ノ方ニ御質問下サ
ツテハドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=10
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011・小笠原三九郎
○小笠原委員 宜シウゴザイマス、ソレデ
ハ石渡政府委員ニ一ツ御伺申上ゲマス、ア
ナタガ元ノ大藏大臣トサレテ今度ノ稅制改
革案ノ骨子ヲ御作リニナリ、非常ナ劃時代
的ノ斯ウ云フ稅制改革案ヲ御作リ下サツタ
コトニ對シテ、私共ハ、非常ニヨク整ツテ
居リ、ヨク出來テ居ツテ、多大ノ敬意ヲ表
スルモノデアリマス、所ガ私聞ク所ニ依ル
ト石渡サンモ、此ノ統制改革ハ是ハ隨分
重イ增稅ニナル、此ノ重イ增稅ガ此ノ儘議
會ヲ通ルヤウニモ考へテ居ラヌト云フヤウ
ナ御話ヲ或ル席上デナサレタヤニ伺ツテ居
リマス、是ハ私ハ能ク世間ヲ御承知ニナツ
テ居ル石渡サントシテハ當然ダト考ヘルノ
デアリマスガ、今日如何ナル御心境ニアラ
レルカ、其ノ一點ヲ御伺シテ、更ニ次ヘ進
ミタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=11
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012・石渡莊太郎
○石渡政府委員 私ハ全體ヲ通ジマシテ此
ノ稅制ガ負擔ガ輕イトハ考ヘテ居リマセ
又、考ヘテ居リマセヌノデ、私ハ職ヲ退キ
マシテカラ稅制委員會其ノ他ニ於キマシテ、
今アナタノ御話ニ類似ノヤウナコトヲ申シ
タコトハゴザイマスガ、議會ヲ通スノハ難
カシイト私ハ申シタコトハゴザイマセヌ、
唯少シハ重過ギハシナイカト云フコトヲ申
シタコトハゴザイマス、マア是ハ私ガ申シ
タコトバカリデハアリマセヌケレドモ、私
モサウ云フヤウナ意見ヲ申シタコトモゴザ
イマスシ、又主稅局ニ於テモ色々〓究ノ結
果、是ハ最初ニ稅制委員會ニ提案サレタ
モノヨリハ相當低クナツテ居ルヤウニ私ハ
存ジテ居リマス、尙ホモウ一ツサウ云フヤ
ウナ噂ヲ產ミマシタノハ、最初ニ主稅局試
案トシテ、私ガ大藏大臣ヲヤツテ居リマス
時ニ、色々此ノ案ノ〓究ヲ致シタコトガゴ
ザイマシタ、其ノ時ニハ私ハ、隨分高過ギ
ルヤウナ點モアリマシタノデ、此ノ點ハ旣
ニ稅制委員會ニ提出致シマス前ニ、私ハ相
當削ル所ハ削リ、又修正ヲ命ズル所ハ命ジ
タ積リデゴザイマシテ、其ノ後又委員會ニ
提出サレタモノヨリモ更ニ減ツテ居ルト私
ハ思ツテ居ルノゴザイマシテ、今日ノ此
ノ提案致シテ居リマスル稅制案ハ、サウ重
イモノトハ考ヘテ居リマセヌ、此ノ際トシ
テハ已ムヲ得ナイ程度ノモノデハナイカ、
從ツテ此ノ案ハ議會ヲ通リニクイ程重イモ
ノトハ私ハ存ジテ居ラヌ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=12
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013・小笠原三九郎
○小笠原委員 ドウモ今日石渡政府委員ノ
御立場上ハ、ソレ以上ノ御話ハ伺ヘヌト思
フノデアリマスガ、若シ石渡サンガ國民ノ
一員トシテ、或ハ私ノ立場ニ御立チニナツ
タラ、キツト私ト同樣ナ感ジヲ御持チ下サ
ルコトト思フノデアリマス、ケレドモ今ノ
御話デソレ以上石渡サンニドウ斯ウト云フ
コトハ申上ゲナイコトニ致シマス
次ニ是ハ大藏大臣ニ御尋スル質問ダト思
フノデアリマスガ、ヤハリ分リヨイ爲ニ政
府委員ノ方カラ御話ヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス、ソレハ、初年度六億四百万圓、
ソレカラ平年度八億一千四百万圓、斯ウ云
フ增收ニナツテ居ルノデアリマスガ、是ダ
ケノ增稅ヲバ是非トモ見込マナケレバナラ
ナイト云フ根據ガドウモ私共ニ少シ分リ兼
ネルノデアリマス、或ル點カラ申セバ、今
一億公債ガ殖エヨウガ大シテ公債ノ消化問
題ニモ影響ガアルヤウニモ思ハレナイ、其
ノ限界點ガドウモハツキリセヌ、何ニ依ツ
テ斯ウ云フモノヲ出サレタノカ、私共ハ遠
慮ナク申セバ、ズツト稅ヲ見込ンデ出シテ
見タ、是モ見込ヲ取ツテ見タ、是ニモ斯ウ
盛ツテ見タ、ソレニモサウヤツテ見タト云
フ風ニヤツテ見タラ、丁度六億四百万圓ト
云フモノガ出テ來タ、平年度八億一千四百
万圓ト云プモノガ出テ來タ、ダカラ之ヲ一
ツ取ラウ、斯ウ云フコトデ臨マレテ居ルヤ
ウニ考ヘルノデアリマスガ、其ノ點ニ對シ
テ大藏省内デモ色々意見ガアツタコトト思
ヒマスカラ、御遠慮ナイ所ヲ此處デ政府委
員トシテ御發表下サレバ洵ニ結構ダト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=13
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014・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ度ノ增稅ニ因ル收入
ハ、初年度六億何ガシ、平年度八億幾ラ、
斯ウ云フノデアリマスケレドモ、一方ニ於
テ地方稅ヲ相當輕減致シマシテ、國庫ヨリ
地方ニ分與稅トシテ相當多額ノ金ヲ出シマ
ス關係上、國庫ノ純增ト致シマシテハ、初
年度三億七千三百万圓、平年度五億一千万
圓程度デアルノハ御承知ノ通リデゴザイマ
ス、サウ致シマシテ、ドウシテ斯ル國庫ノ
增收ニナルヤウナ增稅案ヲ作成シタカト申
シマスト、是ハ數字上是非是ダケナケレバ
ナラヌト云フ根據ガアツテ出テ來タノデハ
ナイノデアリマスルガ、一面ニ於テ、支那
事變遂行ノ爲ニ臨時軍事費特別會計ニ於テ
相當多額ノ經費ヲ要シマス、又一般會計ニ
於キマシテモ十五年度ト致シマシテ相當經
費ガ增加シテ居リマス、是ハ將來モ相
當期間繼續シテ出テ行クノデアリマシテ、
當分ノ間歲出ノ減モ望ミ得ナイヤウナ狀態
デアリマス、每年多額ノ赤字公債ヲ出シテ
居ル際デアリマスカラ、一般產業ニ著シイ
打撃ヲ與ヘズ、國民生活ニモ脅威ヲ與ヘナ
イ程度デ或ル程度ノ增收ヲ圖ルコトハ、國
庫ノ現狀カラ已ムヲ得ナイコトデハイカ、
斯ウ考ヘタノデアリマシテ、產業界ニ與フ
ル影響、國民生活ノ狀況等ヲ勘案致シマシ
テ、此ノ程度ヲ以テ先ヅ適當デハナカラウ
カ、斯ウ考ヘタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=14
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015・小笠原三九郎
○小笠原委員 其ノ點ニ對シテハ、是ハ根
本問題デアリマスカラ、此ノ點ハ大藏大臣
ガオ出デニナリマシテカラ更ニ詳細ニ御尋
申上ゲタイト存ジマス
次ニ個々ノ問題ニ付テ申上ゲテ見タイト
思フノデアリマスガ、是モ成ベク大藏大臣
ガ御居デニナル方ガ宜イト思ヒマスルケレ
ドモ、如何デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=15
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016・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハココデ半休憩ト云
フコトニ致シマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=16
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017・森田福市
○森田委員 私ハ立川君ヲ通ジテ資料ノ請
求ヲシテアルノデスガ今尙ホ出テ來ナイノ
デス、其ノ中ニハ私ノ質問ニ必要ナ假定資
本金ノ稅ノ計算表及ビ第三種所得稅ト綜合
所得稅トノ對照表ト云フヤウナモノガ今尙
ホ出ヌノデアリマスガ、資料ハ成ルベク早
ク出シテ戴カヌト質問ニ必要ナノデアリマ
スカラ、政府ノ方デ速急ニ出スヤウニ御願
致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=17
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018・大矢半次郎
○大矢政府委員 大體用意ガ出來テ居リマ
スカラ至急提出スルヤウニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=18
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019・山川頼三郎
○山川委員 私ハ具體的ノ問題ニ付テ二三
御伺致シマス、今度ノ稅制改正ノ趣旨ハ
大體ドウ云フ所ヲ輕クシテドウ云フ所ヲ重
クスルト云フ意味デアリマスカ、詰リ都市
ト農村トノ稅制ノ不均衡ヲ是正スルト云フ
ノガ一ツノ目的デアルト云フコトハ存ジテ
居リマスガ、資產アル階級ト收入アル階級
ニ於キマシテドノ程度ノ人ヲ重クシテ、ド
ノ程度ノ人ヲ助ケルト云フ大體ノ方針ガア
ツテ、此ノ稅制ヲ御立テニナツタモノト思
ヒマスガ、其ノ邊ニ付テ御伺致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=19
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020・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ度ノ稅制改正ノ目標
ハ四ツアルノデアリマスルガ、其ノ中最モ
力ヲ入レテ居ルノハ租稅負擔ノ均衡ト云フ
點デアリマシテ、私ハ是ハ何時ノ場合ニ於
キマシテモ稅制改正ニ於ケル根本ノ生命ダ
ト存ジテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ此
ノ度ノ中央地方ヲ通ズル稅制改正ニ於キマ
シテハ此ノ點最モ力ヲ注イデ居リマス、地
方稅ニアリマシテハ從來負擔ノ不均衡ノ一
大缺陷ヲナシテ居ル戶數割ヲ全廢致シタノ
モ、此ノ趣旨カラ出テ居ルノデアリマス、
ソレカラ國稅ニ於キマシテ分類所得稅ニ依
ツテ所得ノ種類ニ應ズル負擔力ノ相違ヲ補
足シ、綜合所得ニ於テ所得ノ高ニ應ズル負
擔力ノ相違ヲ補足スル、兩々相俟ツテ各人
ノ擔稅力ニ應ジタ課稅ヲ致サウト云フコト
ガ眼目ニナツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=20
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021・山川頼三郎
○山川委員 ソレカラモウ一ツ御伺シタイ
ノハ、私ハ斯ウ云フ疑ガ出テ來ル、今度ノ
稅制改革ニ付テ多數ノ俸給取ガ大衆課稅ト
云フ意味デエライ税金ガ高クナツタヤウナ
感ジガ致シマス、假ニ千二百圓ノ俸給者デ
アツタラ、舊稅デハ無稅デアツタ、ソレガ
新稅デハ千二百圓カラ六百圓差引イタ後ノ
六百圓ニ三十六圓課稅サレル、ソレカラ妻ガ
十二圓、子供ガ十二圓引カレルコトニナツ
テ居リマスガ、妻ガナカツタラ是ハ引カヌ
コトニナル、假ニ千二百圓ノ俸給取ト致シ
マスト月ニ割ツテ百圓、百圓程度ノ人ガ大
部分ト見ナケレバナラヌノデアリマスガ、
是等ノ大衆ガ今マデ無稅デアツタモノガ稅
金ガ課カルコトニナルノデアリマス、此ノ
稅制案ハ元々月給取ノ方ガ御拵ヘニナツタ
ノデアルカラ、或ハ月給取ヲ贔負スルヤウ
ナ風ニ出來テ居ルカ知ラント思ツテ見タラ、
實ハサウデハナイ、是ハ何處ゾ其ノ中心ニ、
澤山ノ人カラ少シヅツデモ集メナケレバナ
ラヌト云フ意味デ斯ウ云フ風ニ作ラレマシ
タカ、私ノ計算ガ誤ツテ居ルカ、此ノ邊モ
御聽キ致シタイ、大體稅ノ目標ヲ、先程申
シマシタ大キナモノト小サナモノトヲ收入
ノ上ニ平均センナラント云フ御考ガアツタ
モノカ、ソレトモ都市ト田舍ト平面的ノ上
ニ於テ豫メサウ云フ考ヲ持ツテ作ラレマシ
タカ、又大衆課稅ト云フヤウナモノヲモウ
少シヤラナケレバ計數ガ出ナイト云フ風
ニヤラレマシタカ、大體サウ云フ根本方針
ガアツテオヤリニナツタノカ、自然ノ間ニ
斯ウ云フ計算ガ出タノカ、ソレヲ一ツ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=21
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022・大矢半次郎
○大矢政府委員 勤勞所得千圓或ハ千二百
圓程度ノ人ニ對シマシテハ、從來第三種所
得稅ガ課ツテ居ナカツタガ、此ノ度大體ニ
於キマシテ分類所得稅ノ課稅ヲ受ケルヤウ
ニナリマシタノハ御說ノ通リカト思ヒマス、
本委員會ニ於キマシテモ、勤勞所得階級ガ
物價騰貴ノ今日斯ノ如キ稅ノ負擔ヲスルノ
ハ如何カト云フ御論議モアリマシタシ、
方ニ於キマシテハ又官吏優遇案ダト云フコ
トヲ言ハレタ方モアツタノデアリマスルガ、
私共ト致シマスト、勤勞所得ニ對シテ別ニ
厚クモ薄クモシテ居ナイ、他ノ商業所得、
不動產所得トノ均衡ヲ十分ニ取ツテ、適當
ト思ハレル所ニ於テ稅率ヲ決メタ、斯ウ考
ヘ居ル次第デアリマス、大體年千圓或ハ千
二百圓程度ノ俸給ヲ受ケテ居ル者ハ、官吏
ト致シマスト四級ノ程度ノ人デアリマシテ、
在職十四五年カラ十六七年ノ人カト存ジマ
ス、斯ウ云フ人ハ大體妻アリ、子供モ三四
人アルト云フヤウナ狀況デゴザイマス、隨
ヒマシテ妻モ扶養家族ノ一人ニ加ヘ、一人
當リノ扶養控除ノ金額モ擴大シテ居ル今日
ト致シマシテハ大抵此ノ程度ノ人ハ免稅
ニナルカ、或ハ課稅ヲ受ケテモ割合ニ少額
デ濟ムノデハナカラウカト存ジマス、一四
ニ於テ地方稅トシテノ戶數割ハ全般的ニ廢
止セラレテ居リマスルノデ、此ノ方面ニ於
キマシテ、小額ノ所得者ノ負擔モ多少輕滅
セラレル點モアルノデハナカラウカ、彼此
考ヘテ見マスルト、一般的ニ增稅ニナル此
ノ際ト致シマシハ、勤勞所得千圓內外ノ階
級ニ於キマシテモ、此ノ度ノ提案程度ノ負
擔ヲスルノハ已ムヲ得ナイカト存ジテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=22
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023・堀切善兵衞
○堀切委員長 中島君、大藏大臣ハ貴族院
デ是非來イト云フコトデ三十分バカリ其ノ
方ニ行カレマシタカラ、其ノ間半休憩ノヤ
ウニ致シテ居リマスカラ、發言ノ順序ナク、
ドナタデモ御質問ナサツテモ宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=23
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024・山川頼三郎
○山川委員 只今御尋致シマシタ千二百圓
ハ、大抵ノ人ガ月ニ百圓、九十圓、八十圓
ノ人ガ之ニ掛カルヤウニナル、千二百圓ト
云フト十年カ、十二三年勤續ノ官吏デアル、
段々ト事務ニ慣レテ進ンデ來ラレタ人デア
ル、此ノ八十圓位貰フ人ガ、千二百圓位ノ
收入ニナルト思フノデスガ、サウ云フモノ
モ、ピツシリ動カナイヤウニ計算シテ、是
ハ納稅者ニナルト云フヤウニ主稅局長ノ方
デハ取扱ニナルノデスカ、千二百圓以下ノ
人ハ控除六百圓ヲ受ケテ、後ノ六百圓ニ三
十六圓ノ課稅ニナルト云フ意味デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=24
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025・大矢半次郎
○大矢政府委員 從來第三種所得稅ノ納稅
者ノ扶養家族ノ控除ノ數ヲ見マスルト、大
體平均三人ニナツテ居リマス、ソレニ今度
妻ガ加ハリマスカラ、此ノ度ハ平均四人、
勤勞所得ニ於キマシテハ、一人ニ付キ二百
圓ヅツ控除スルト同樣ニナルノデアリマス
カラ、四人ノ扶養家族ガアリマスルト云フ
ト八百圓引カレマス、ソレニ基礎控除六百
圓デアリマスカラ、千四百圓マデハ免稅ニ
ナル、斯ウ云フ次第デアリマス、一方ニ於
テ大都市ハ別デアリマスルケレドモ、地方
ニ於キマシテハ月ニ百圓、或ハ九十圓程度
ノ勤勞所得階級ニ於テモ從來相當重イ戶數
割ノ負擔ヲシテ居ルノデアリマスガ、是ガ
廢止セラレマス、一方ニ於テ市町村民稅ハ
課稅ヲ受ケルノデアリマスルケレドモ、是
ハ戶數割ト違ツテ、餘程輕減セラレタモノ
カト存ジマス、是等ヲ考ヘテ見マスルト、
千圓或ハ千二百圓程度ノ勤勞階級ニ對シマ
シテ、今度ノ稅制ハ特ニヒドクナリ過ギテ
居ルト云フ風ニハ考ヘラレナイカト存ジマ
ス、併シナガラ物價ガ漸騰ノ傾向ニアル今日ト
致シマシテ、此ノ程度ノ勤勞階級ガ相當生
活上ノ困難ガアルト云フノハ、是ハ現下ノ
經濟力カラ見レバ正ニ仰セノ點ハアルカト
存ジマス、是ハ一面ニ於テ稅制以外ニ於テ
モ亦相當諸般ノ事情ト合セテ考慮シナケレ
バナラヌ問題カト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=25
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026・山川頼三郎
○山川委員 私ハ實ハ是ハ反對ノ結果ヲ現
ハシタノデハナイカト思ツテ之ヲ御伺スル
ノデアリマス、實ハ官吏ハ非常ニ輕クナツ
テ居ルト云フ話ヲ一寸聞イタノデス、ソレ
デ色々調ベテ見タ所ガ、-肝腎ノ官吏ノ大多
數ノ人、勤勞所得ノ俸給取ノ分ヲ見マシタ
所ガ斯ウ云フ結果ニナツテ居ルカラ、ソレ
カラ割出シマシテ考ヘテ、他ノ所得ノ方面、
財產ノ方ノ關係ノコトヲ一ツダケ調ベテ見
タ、本當ニ斷片的ノモノデゴザイマスガ、
ソレト對照シテ見マシテ、私ハ玆ニ一ツノ
疑ガアル、詰リ同族會社、此ノ稅金ヲ見マ
スト、是ハ輕クナツテ居ル、ソレカラ四月
一日カラ施行サレル法律ト致シマシテ、前
年中ニ作リマシタ會社ト云フモノハ、是ハ
ドウニデモナルヤウナ所ガアル、決算期ヲ向
フヘ延バシマシタラ一年ダケ延ビル、決算
期ヲ向フヘ延バシサヘスレバ、十二箇月以
內デアリマスカラ、一箇月延バス、或ハ二
箇月延バスト云フコトニナルト、其ノ年ダ
ケハ稅金ガ課カラヌト云フヤウナ缺點モ生
ジテ來ルヤウニ思ヒマスシ、其ノ他ノ方面
ヲ見マシテモ、ドウモ大衆課稅ト云フ傾向
ガアル、斯ウ云フ風ニ思ツタノデアリマス
ガ、是ハモウ斯ウ云フ戰爭ノ時ダカラ皆寄
ツテ、少シヅツデモ集メナケレバナラヌト
云フ思召デ斯ウ云フコトニナツタノデアリ
マセウカ、ソコカラ考ヘテ見ルト、斯ウ云
フ大キナ拔ケガアル、ソレカラ又ソレドコ
ロデハナイ、大變大キナ拔ケガアル、ト云
フノハ酒ノ造石ヲ減少サレタ、是等ノ方針
モ更ニ分ラナイ、四割八分モ酒ヲ少クシタ、
一億五千万圓モ七千万圓モノモノヲ少クシ
タ、サウシテ酒ハドウカト云フト、販賣高
ハ同ジコトデアル、釀造高ハ減ツテ居ルガ
販賣高ハ同ジコトデアル、斯ウ云フ結果ニ
ナツテ居ル、大藏省ハ一億圓モ一億五千万
圓モノ稅金ヲ無駄ニ捨テラレテ居ル所ヲ見
ルト豐カナヤウデアル、ソレカラ同族會社
ノ割出シヲ考ヘテ見ルト斯ウ云フ拔ケガア
ル稅金ガ減ツテ居ル、大變ナ減リ方デア
ル、サウ云フコトヲ考ヘテ見マスト、假
十万圓ノ會社デ一割ノ配當ヲスル場合ニハ
稅金デ二千圓程出スコトニナル、二割配當
シテ居ル場合ハ七千幾ラ出スコトニナル、
三割配當シテ居ル場合ハ一万圓カラ出スコ
トニナル、是ハ私ノ算盤デ、思ヒ違ヒカ分
リマセヌカラ、專門家ニ御說明ヲ承ツタラ
分ルノデアリマスガ、斯ウ云フ所ノ拔ケガ
出來テ居ル一方デハ月ニ僅ニ八十圓越シ
タラ、是ハ十年以上勤メテ居リマシタ人デ
アリマスカラ、俸給ヤ色々ノ手當ノ名前ニ
依ツテ稅金ガ課カル、是ハ殆ド中心ガ大衆
課稅ト云フヤウナ目標デ修正サレタノデハ
ナイカト云フコトモアルノデアリマス、
方都市ト農村トノ負擔ヲ修正シテ下サツタ
コトハ之ヲ有難ク思ツテ居リマス、從來ノ
甚ダシキ懸隔ヲ修正スルト云フノデアリマ
スカラ宜シイガ、又一面ニ斯ウ云フコトガ
出來ルト云フコトヲ非常ニ私ハ變ニ思ヒマ
シタノデ、ハヂララチラヲ見マシタ所ガ、
斯ウ云フ結果ヲ得マシタノデ、之ニ付テ一
ツ御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=26
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027・大矢半次郎
○大矢政府委員 勤勞所得階級ハ此ノ度ノ
稅制ニ於テ非常ニ優遇セラレテ居ルト云フ
御意見ガアリマスレバ、是ハ私共ハ左樣ニ
考ヘテ居リマセヌ、山川サンノ仰シヤル通
リ勤勞所得階級モ相當程度ノ負擔ヲシテ居
ル、他ノ種類ノ所得ヲ得ル者ト比ベテ決シ
テ勤勞所得階級ダケ著シク輕クナツテ居ル
ト云フコトハナイト存ジテ居リマス、ソレ
カラ同族會社ノ稅ノ負擔ハ輕クナツテ居ル
ト云フ御話デゴザイマスルガ、是ハ恐ラク
臨時租稅措置法ニ於キマシテ、事業ヲ主ト
スル會社ニ對スル同族會社ノ加算稅ヲ輕減
シテ居ルコトヲ指サレタルモノカト存ジマ
ス、洵ニ仰セノ通リニ致シテ居リマス、從
來事業會社ト財產ノ保全會社トノ區分ナク
苟クモ加算稅ノ適用ヲ受クル場合ニハ同ジ
率ノ課稅ヲ致シテ居リマスケレドモ、近來
ハ國家總動員法ノ發動等ガアリマシテ、事
業會社等ニ於キマシテ相當程度社內留保ヲ
シナケレバナラヌト云フヤウナ狀態ニナツ
テ居リマス、生產擴充ヲ必要トスル今日ニ
於キマシテ、保全會社ト同族事業會社トハ
之ヲ區分シテ扱フ必要ガアルト存ジマシテ、
特ニ事業會社ニ對シテハ加算稅ヲ適用スル
場合ニ於テモ其ノ稅率ヲ輕減シタト云フ次
第デゴザイマス、是ハ寧ロ從來ノ事業會社
ニ對スル稍〓行過ギヲ是正シタモノデ、特
ニ同族會社タル事業會社ノ租稅ヲ他ト比べ
テ不當ニ輕減シタモノトハ考ヘテ居ナイ次
第デアリマス
ソレカラ會社ノ決算ヲ延スト稅ヲ免レル
ト云フ御話デアリマスケレドモ、是ハサウ
云フコトハゴザイマセヌ、要スルニ從來六
箇月事業年度ノ會社ガ一年ノ事業年度ノ會
社ニナリマスレバ、一年ニ二度課稅ヲ受ケ
テ居タ所ノモノガ、今度ハ一年一度ダケ課
稅ヲ受ケル、併シ課稅所得ハ、以前ニハ半
年每ニ計算サレタガ、今度ハ一年分ヲ計算
サレルト云フコトデアリマシテ、負擔ノ上
ニ於テハ差ガナイ、寧ロ事業年度ノ期間ヲ
延長シタガ爲ニ、此ノ增稅後ニ事業年度ガ
終リマスレバ、却テ稅ノ負擔ガ重クナルト
云フ結果ヲ來スノデハナカラウカ、前半ノ
事業年度ハ、現行法ノ下ニ於テ稅ヲ負擔ス
レバ宜イノヲ、一年一事業年度ニ直シタ結
果、寧ロ稅ノ負擔ガ重クナルト云フコトモ
招來スルノデハナカラウカト思ヒマス、仰
セノヤウナ課稅ノ輕減ニナルヤウナコトハ
ナイト存ズルノデアリマス
ソレカラ酒ノコトデゴザイマスルガ、是
ハ國庫ノ收入ノ點カラ申シマスレバ、確
仰セノ通リ一億數千万圓ノ減收ヲ來スノデ
アリマシテ、各所得階級ニ對シマシテ相當
程度ノ負擔ガ增加スル際ニ、酒ノ稅ニ於テ
斯ノ如ク多額ノ收入減ニナリマスト云フコ
トハ、國庫收入ノ點ノミカラ考ヘルト遺憾
ノヤウデハゴザイマスケレドモ、是ハ言フ
マデモナク、此ノ事變下ニ於テ國民ノ生活
ニ最モ大事ナル米ノ需給ヲ確保スル意味ニ
於キマシテ、〓酒ノ造石高ノ制限ヲ見ルノ
ハ已ムヲ得ナイ、國庫收入ノ減モ忍バナケ
レバナラヌ、斯ウ考ヘテ居ル次第デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=27
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028・堀切善兵衞
○堀切委員長 山川君、其ノ程度ニ願ツテ、
大藏大臣モ間モナク來ルト思ヒマスカラ、
其ノ間ニ、中島君ガ何カ質問ガアルト云フ
コトデスカラ、一ツ中島君ニ願ツテ、御迷
惑デモ又他ノ機會ニ御質問願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=28
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029・中島彌團次
○中島委員 生產擴充計畫ガ昭和十三年カ
ラ十六年ノ間ニ、四箇年ニ亙ツテ行ハレテ
居ルト云フコトハ、政府ノ說明スル所ニ依
リマシテ明カデアリマスルガ、其ノ生產擴
充計畫ニ對應シタ租稅政策ハドウ云フ政策
ヲ執ツテ居ルノデセウカ、所得稅法案ノ第
五條ニ「命令ヲ以テ指定スル重要物產ノ製
造採掘又ハ採取ヲ業トスル個人ニハ命令
ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ
三年間其ノ業務ヨリ生ズル所ノ所得稅ニ付
所得稅ヲ免除ス」トアリマスガ、此ノ第五條
關係ノ命令規定ヲ見マスルト、所得稅法施
行細則ノ第十三條ニ「左ニ揭クル物產ノ製
造業ヲ營ム者ニハ所得稅法第十九條ノ規定
ニ依リ所得稅ヲ免除ス」トアツテ、金、銀、銅、
鉛錫其ノ外ズツト數十點擧ゲテアリマス
ガ、此ノ所得稅法施行細則ノ第十三條、是ハ
生產擴充計畫ガ出來ナイ前ノモノト私共考
ヘテ居リマス、今度改正ニナル第五條關係
ノ命令要綱ニ依ルト「製造業ニ在リテハ大體
現行所得稅法施行規則第十三條ニ揭グル物
產」トシテ揭ゲテ置イテ、ソレダケヲ取ツテ
置イテ「採掘又ハ採取ノ事業ニ在リテハ大體
左ニ揭グル重要鑛物」ト云フノデ、金鑛、銀
鑛銅鑛、鉛鑛、錫鑛、亞鉛鑛、鐵鑛ト云
フヤウナモノヲズツト擧ゲテ居リマスガ、
是ハ生產擴充計畫ニ呼應シタモノト致シマ
スナラバ、所得稅ノ減免ノ點ニ付キマシテ
ハ、原始取得ノ採掘又ハ採取ノ場合ニ付テ
ダケ考ヘタモノデアリマセウカ、或ハサウ
云フヤウナ國策的ナ生產擴充計畫トハ全ク
關係ナシニ、第五條ノ改正ヲ行ツタノデア
リマセウカ、又主稅當局ト致シマシテモ、
生產擴充計畫ニ揭ゲマシタル十五品目ニ付
テハドウ云フ取扱ヲナサルノデアリマスカ、
十五品目ハ御承知ノ通リ國家全體トシテ行
ツテ居ルノデアリマスカラ、今度ノ稅制改
革ニ於テモ亦此ノ十五品目ニ付テハ相當減
免稅的ナ態度デ出ラレテ、生產擴充ヲ確立
サセテ行クト云フコトガ、國策ノ線ニ沿ウ
タ租稅立法デアルト私ハ考ヘルガ、ドウ云
フヤウニヤツテ居ルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=29
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030・大矢半次郎
○大矢政府委員 只今ノ點デゴザイマスル
ガ、御指摘ノ通リ從來重要物產製造業ニ對
スル免稅ノ規定ガ所得稅法、營業收益稅法
等ニアリマシテ、サウシテ免稅品目ハ命令
ニ委任セラレテ居ルノデアリマス、而シテ
所得稅法施行規則ニ於キマシテハ、只今御
指摘ノ通リ十三條ニ品目ヲ揭ゲテ居ルノ
デアリマスガ、是ハ近年ニ於キマシテ、
昨年モ、昨年モ相當廣範圍ニ亙ツテ改正致
シテ居リマス、生產擴充ヲ必要トスル品目
ニ付キマシテハ、企畫院或ハ商工省ト十分
連絡ヲ取リマシテ、此ノ品目ノ取捨選擇ヲ
致シテ居リマシテ、今御示シノ十五品目ニ付
テモ大體此ノ中ニ包含セラレテ居ル筈デゴ
デザイマス、此ノ度製造業以外ニ鑛物ノ採
掘、採取ニ付キマシテモ、刻下ノ我國ノ生
產擴充ノ見地カラ致シマシテ、從來ノ重要
物產製造業ト同ジヤウニ、三年間ノ免稅期
間ヲ設ケル必要ガアルト存ジマシテ、特上
此ノ點改正法律ニ於キマシテ擴張致シマシ
テ、其ノ品目ハ大體命令案トシテ御手許ニ
差上ゲテ居ル次第デゴザイマス、是ハ今後
モ必要ニ應ジテ命令ノ改正ニ依ツテ適宜ヤ
ツテ行ケルヤウニ致シテ居リマシテ、刻下
我國ノ國策トシテ非常ニ重要ナル生產擴充
ノ點ニ付キマシテハ、租稅等ニ於キマシテ
モ十分考慮ヲ拂ツテ居ル積リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=30
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031・中島彌團次
○中島委員 洵ニ結構ナコトデアリマシテ、
其ノ御答辯デ大體滿足スルノデアリマスガ、
所得稅法第十九條ノ改正ハ、今度ハドウナ
ツテ居ルノデアリマセウカ、是ハ免稅ノコ
トニ付テデスガ、從來ノ所得稅法第十九條
ノ免稅ノ方法ト違ツタ方法デ、モウ少シ生
產擴充ノ點カラ考ヘテ、免稅ノ方法ヲ講ジ
ナケレバイカヌト思フノデスガ、其ノ點ニ
付キマシテハドウナツテ居リマスカ、今度
ハ改正シナイノデアリマスカ、免稅ノコト
ニ付キマシテノ現行ノ十九條ノ內容ハ、今
度ハドウ云フヤウナ方針デ出テ居ルノデア
リマセウカ、免稅ノ方法ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=31
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032・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ度ノ所得稅法ノ第五
條、ソレカラ法人稅法ノ第十二條ニ於キマ
シテ、從來ノ所得稅法ト同ジヤウナ規定ヲ
致シテ居リマス、其ノ外ニ鑛物ノ採掘、採
取ニ付キマシテモ、今囘新シク三年間ノ免
稅ヲ致サウト存ジテ、其ノ規定モ致シテ居
ルノデアリマシテ、其ノ意味ニ於キマシテ、
從來ノ免稅範圍ヲ更ニ擴張シタ次第デアリ
マック、是ガ實際ノ運用ハ前ニモ申上ゲマシ
タ通リ、命令事項ヲ其ノ必要ノ都度改正致
シマシテ、實情ニ副フヤウニ致シタイ、此
ノ點ハ全ク從來ト同樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=32
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033・中島彌團次
○中島委員 成ベク是等ノ點ニ付キマシテ
モ、十五品目ニ付キマシテハ國策上ヤツテ
居ルノデアリマスカラ、一層稅法カラ見タ
生產擴充計畫ノ完璧ヲ期セラレンコトヲ希
望致シマス、ソレカラ臨時措置法ノ、是モ
ヤハリ生產擴充、公債消化ニ影響スル點デ
アリマス、昨日之ヲ問ハウト思ツタノダケ
レドモ、時間ガナクテ問ハレマセヌデシタ
ガ、臨時措置法ノ第一條ノ二ノ「法人ノ各事
業年度ノ所得中留保シタル金額ガ其ノ事業
年度ニ於ケル所得ノ十分ノ三ニ相當スル金
額ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過部分ノ全
部又ハ一部ニ相當スル金額ヲ命令ヲ以テ定
ムル方法ニ依リ運用スルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ其ノ運用金額ニ百分ノ三·六ヲ乘
ジテ算出シタル金額ニ相當スル法人稅ヲ輕
減ス」デアリマスガ、現行法デハ御承知ノ通
リ十分ノ四ニナツテ居ル、之ヲ法人ノ留保
シタモノ全額ヲ免除シタラドウナリマスカ、
ドノ位國庫ノ收入ノ減少ニナリマスカ、全
額免除ニシタラ幾ラ租稅歲入ニ影響シテ來
マスカ、留保所得ニ對シテハ全額免除主義
ノ方針ヲ採ツタラドウデスカ、今日ノ法人
ガ稅金ノ重イ爲ニ、經費ヲ非常ニ濫費ス
ル、旅費若クハ其ノ他ノ寄附金、或ハ色々
ナ名目ノ下ニ使ツテ之ヲ濫費スル傾尙ガ强
イ、是ハ溜メテ置イテモ課ケラレルシ、配當ス
レバ課ケラレルシ、ソレデ隱セルダケ隱ス
コトニ吸々トシテ居ル、隱シ切レヌノハ之
ヲ非常ニ消費シテ居ツテ、ソレガ惡性イ〓
ンフレ」ノ本ニナリ、ソレ等ノ通貨ガ流通
シテ、消費ヲ膨脹サセル本ニナツテ居ル、
ソレヲ止メルニハドウシテモ十分ノ四トカ
三トカ云フヤウナ姑息ナ所ヘ行カズニ、全
額免除マデ進ンダラドウカ、ソレニ付キマ
シテ國庫ノ收入ニ付キマシテハドレダケノ
收入減ニナルカ、全額免除致シマシタナラ
バドウナルカ、又サウ云フコトヲヤレヌモ
ノデアルカドウカ、斯ウ云フヤウニ命令ノ
定ムル所ニ依ツテ、公債ヲ持テトカ、或バ
生產擴充ノ事業デアルトカ、貿易ニ關スル
事業デアルトカ、或ハ軍需工業ナンカニ投
資セヨトカ云フコトハ宜イカモ知レマセヌ
ケレドモ、ソレヨリモ留保所得ニ付テ根本
的ニ玆ニ一ツ考ヘ直シテ戴ケナイデセウ
カ、サウシナケレバドウシテモ法人ノ出ル
途ハ皆止メラレテ居ル、詰リ非常ニ制限セ
ラレテ居ル、特別ニ配當スレバ稅ガ課カ
ル、個人ニモ稅ガ課カル、ソレカラ法人稅
モ課カツテ來ル、非常ニ苦シイ所ガアル、
併シ留保サセナケレバイカヌ、公債消化ノ上
カラ言ツテモ留保サセルコトハ宜イコトデ
アル、サウ云フ點カラ、大キナ見地ニ立ツ
テ、大々的ニ免稅スルコトハ出來ナイモノ
デスカ、ドレ位減收シテ來ルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=33
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034・大矢半次郎
○大矢政府委員 法人ノ留保所得ヲ總テ免
稅シタナラバドレ程ノモノニナルカト云フ
ノハ、一寸計算ガ困難デゴザイマスガ、頗
ル多額ニ上ルコトト存ジマス、生產擴充ノ
施設ニ向ケル方面ニ付キマシテハ、自ラ程
度ガアリマスガ、國債其ノ他政府ノ指定ス
ル證劵ニ投資スルモノヲ全部免稅スル、斯
ウ云フ風ニ致シタ場合ニ、各法人ガ其ノ留
保所得ノ中、ドノ程度此ノ方面ニ向ケルカ
ト云フコトヲ推定スルノハ、相當困難デア
リマスガ、中々多額ニ上ルダラウト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=34
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035・中島彌團次
○中島委員 現行法ノ十分ノ四デ認メタ所
ト、其ノ差ハドレ位ニナツテ居リマスカ、
現行法ニ依ツテドレ位ノ金額ガ歲入減ニナ
ルカ、改正シタ十分ノ三ニシテドレ位ノ歲
入滅ニナツテ來ルカ、全額免稅シタラドレ
位ニナリマスカ、是ダケノ數字デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=35
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036・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ後デ調ベテ御知ラ
セ願フコトニシマス-大藏大臣ガ見エマ
シタカラ、小笠原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=36
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037・小笠原三九郎
○小笠原委員 先程大藏大臣ノ御心構ヘヲ
伺ヒマシテ、私共大變ハツキリシテ參リマ
シタ、尙ホ大藏大臣御不在中、石渡書記官
長ニモ御答戴キマシテ、大體政府ノ御意向
ノアル所モハツキリ致シマシタ、ソコデ所
得稅其ノ他各項目ニ入ツテ、民間ノ、所謂
民ノ聲ヲ申上ゲタイト思フノデアリマスル
ガ、其ノ前ニ唯一ツダケ根本的ナ問題トシ
テ御伺申上ゲテ置キタイノハ、昨日是ハ中
島委員カラモ詳シク御尋ガアツテ、又其ノ
他ノ委員ノ方々カラモ、從來度々質問ガ出
タノデアリマスガ、先刻申シタ通リニドウ
モ國民ニピタツト來ナイ點ハ、此ノ初年度
六億四百餘万圓、平年度八億一千四百餘万
圓此ノ增稅ノ基準ガ何處ニアルカト云フ
コトガ、ドウモピツタリト來ナイノデス、
モツト租稅ヲ少クシテ、モウ一億減シテ赤
字公債ニシテモ宜イヤウデアル、モウ二億
減シテ公債ヲ殖シテモ宜イヤウニモ取レル、
併シ又モツト取レルダケ取ツテ、此ノ事變
費其ノ他ノ調辨ニモ充テナケレバナラヌト
云フコトニモ考ヘラレル、ソコデ先程私ハ
其ノ點デ政府ノ御心構ヘヲ伺ツタノデアリ
マスガ、卽チ吾々國民トシテハ租稅ハ非常
ナ苦痛デアルカラ、出來ルダケ是ハ少ク取
ツテ貰ヒタイ、最小限度ヲ取ツテ貰ヒタイ、
必要ナルモノハ勿論負擔スルニ吝デハナイ
ガ、併シソレハ最小限度ニシテ貰ヒタイ、
斯ウ云フ考ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、
其ノ點カラ見マスルトドウモ此ノ稅收入ノ
御見込額ガ國民ニピツタリト來ナイ、ドウ
シテモソレダケ出サナケレバナラヌト云フ
理由ガハツキリ分ラヌノデアリマス、或ハ
今年一年間ニ於テサウ云フ風ニ取ラヌデ、又
必要ガアレバ來年取ツテモ宜イデハナイカ、
稅ニ彈力性ヲ認メテ居ルナラバ、又來年取
レバ宜イヂヤナイカ、何モ今年サウ云フ風
ニ取ラヌデモ宜イデハナイカ、今年ハモウ
一億少クテモ宜イノデハナイカ、斯ウ云フ
ヤウナ氣分ガ國民ニドウシテモアルノデア
リマス、ソコデドウシテモ是ダケ取ラヌト
今年ノ豫算ガ組メナイノダト云フ點ヲハツ
キリ私共伺ハヌト、ドウモ此ノ稅革案ニソ
レデハト言ツテ御贊成ガ致シ兼ネルノデゴ
ザイマスカラ、其ノ點ヲ一ツ御伺申上ゲタ
イト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=37
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038・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 其ノ點ニ付キマシテモ度々
說明ヲ申上ゲテ居ルノデアリマスガ、此
ノ度ノ增稅ガ所謂赤字公債ノ元利償還ヲ目
標ニシテヤツタモノデモナイノデアリマス、
併シナガラ又是レ〓〓ノ目標ニ依ツテ、斯
ウ云フ仕事ニ使フ爲ニ是ダケノ金額ガ要ル
ト云フ、或ル一定ノ目標ノ下ニ增稅ヲ致シ
タノデモナイノデアリマス、唯御承知ノ如
ク今後當分ノ間-或ハ永遠ニナルカモ知
レマセヌガ、當分ノ間容易ニ國費ハ減少シ
ナイ、其ノ國費ガ減少シナイトスレバ、其
ノ巨額ノモノニ對シテ之ヲ公債バカリニ依
ツテ補フト云フ事柄ハ、是ハ財政計畫ノ上
ニ於テ適當デナイ、斯樣ナル見地ガ第一點
デアリマス、ソレカラ歐羅巴戰爭ニ於ケル
所ノ亞米利加ヤ英吉利等ノ實情ニ付テ考ヘ
テ見マスルトヤハリ戰費ニ對スル一割八
トカ二割一分トカ云フ風ナモノヲ、此ノ租
稅負擔ニ依ツテ、ゝ支辨スルノガ宜シイノデ
アリマスケレドモ、日本ノ今日ノ經濟界ノ
實情ガラ見マスト、左樣ナル大キナ金額ヲ
國民ノ負擔ニノミ俟ツ譯ニハ行カナイノデ
アリマシテ、現在ノ日本ノ經濟界ニ大ナル
衝擊ヲ與ヘズ、又生產力擴充其ノ他ニ對シ
マシテモ大ナル障碍トナラヌヤウニ考ヘマ
シテ、先ヅ此ノ程度ノ增稅ヲシテモ國民ニ
負擔シテ戴クコトガ出來ルデアラウ、其ノ
金額ヲ大凡ソ見込ミマシテ、サウシテソレ
ニ依ツテ日本ノ財政計畫ト睨ミ合セテ、大
體此ノ程度ノ金額デアルナラバ差支ナイデ
アラウ、斯ウ云フ見地カラ致シマシタノガ
一點デアリマス
今一ツハ、御話ノ如ク今年ヤラズトモ、
年々必要ニ應ジテ增加シテ行ツタラ宜イデ
ハナイカト云フ御話デアリマスガ、年々增
稅シテ行クト云フコトニナリマスト、仕事
ヲ致シマス人々ガ企業ヲ目論ム際ニ於テ、
此ノ仕事ニ對シテハ稅金ガ幾ラ課カルノダト
云フ事柄ガ一定致シマセヌノデ、是ハ事業
ヲ經營スル上ニ於キマシテハ甚ダ困ルコト
デアリマスカラ、旁〓致シマシテココ當分ノ
間更ニ增稅ヲシナイト云フ見地カラ、案ヲ
立テテ御協贊ヲ願フコトト相成ツタノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=38
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039・小笠原三九郎
○小笠原委員 今御話ノ點ダケデハ私共實
ハドウモ呑込メナイノデアリマス、御說明
ノ御苦心ハ甚ダ諒ト致シマスガ、例ヘバ國
費ハ減少セヌ、是ハ私共モサウ減少スルト
ハ考ヘマセヌガ、併シ國費ガ減少セヌカラ
租稅カラ-先程一寸大藏大臣御不在中ニ
主稅局長カラモ伺ツタソデアリマスガ、ズ
ツト稅ヲ出シテ見テ、大體斯ウ云フ稅ガ取
レル、此ノ程度デ均衡ヲ得テ居ルト云フ建
前デ取ツテ居ラレルヤウデ、豫算關係カラ
出テ、是ダケノ稅收入ハ是非必要ダト云フ
點カラ出テ居ル稅革案デナイト云フコト
ハハツキリ致シテ居ルノデアリマス、ソ
レデアルカラ私共ハ其ノ點カラ見マシテ、
ドウモ租稅ヲ此ノ際餘計取ツテ置クト云フ
ヤウナ風ニ見エル、サウ云フ感ジヲ國民ニ
與ヘルコトハ甚ダ宜クナイ、ソレデ私實ハ
先刻御心構ヘヲ特ニ伺ツタノデアリマス
ソレカラ今御話ノ第三點デアリマスガ、
成程年々增加シテ行ケバ企業目論見ガ立タ
ヌト云フヤウナコトヲ仰セラレル、ソレモ
御尤モデアリマスケレドモ、今度ノ增稅デ
彈力性ト云フノハ何處ニ認メラレテ居ルノ
カト云フト、法人稅其ノ他ノモフニ彈力性
ヲ認メラレテ居ルノデハアリマセヌ、認メ
ラレテ居ルノハ實ニ比例稅率ニ依ル所ノ分
類所得稅ダケデアリマス、其ノ他ノ點ハ全
部建直サナケレバナリマセヌカラ、相當複
雜ナモノデ、彈力性ト申ス譯ニ參リマセヌ、
恐ラクソレハ主稅局長モサウ云フ考デアリ
マセウ、アナタ方ガ言ハレル彈力性ト云フ
意味ハ、比例稅率デ行カレル所ノ分類所得
稅ニ付テ仰シヤルコトデアラウト思ヒマス、
他ノ累進率デ行クモノニ付テ彈力性アリト
云フコトヲ仰セニナルモノデハナイト思ヒ
マスガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=39
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040・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ度ノ稅制改正ニ於
テ。彈力性ト云フフハ一ツノ目標ニナツテ
居ルノデアリマスガ、此ノ彈力性ニハ大體
二通リアリマシテ、經濟界ノ狀況ガ好クナ
ルニ連レテ自然增收モ自ラ入ツテ來ルト云
フ稅ノ伸張性ガアルノガ一ツデアリマス、
ソレカラ稅率ノ伸縮ニ依ツテ增收或ハ減收
ト云フコトヲ來シ得ルト云フコトモ一ツノ
彈力性ダト思フノデアリマシテ、此ノ點ニ
付キマシテハ今御示シノ通リ、今囘ノ分類
所得稅ニ於テ其ノ分子ガ可ナリ多ク入ツテ
居リマスガ、併シナガラ獨リ分類所得稅ノ
ミデハナイノデアリマス、昨日モ申シマシ
タ通リ現行ノ稅法ニ於テハ、新設法人ニ於
テ稅率ノ高イ場合ニハ所得稅附加稅、營業
收益稅附加稅、臨時利得稅等ヲ通算致シマ
シテ、九三%以上ノ稅率ニナツテ居リマシテ、
モウサウ云フ方面ニ於テハ現行體制ノ儘ニ
於テ稅率ノ引上ハ全ク不可能ニナツテ居ル
ノデアサマスガ、併シナガラソレナラバ法
人ニ對スル租稅負擔全部ヲ通ジテ增收ノ
餘地ガナイカト申シマスレバ、マダ〓〓ア
ルノデアリマシテ、此ノ點ニ於テモ今度ノ
改正ハ十分考慮ヲ運ラシマシテ、法人稅ノ
方面ニ於テモ將來相當ノ伸縮性ヲ持タシタ
積リデアリマス、ソレカラ地方ニ於ケル戶
數割ヲ廢止致シマシタノモ、御承知ノ通リ
戶數割ハ全國非常ニ不均等ニチツテ居リマ
シテ、特ニ窮乏セル農村等ニ於テハ其ノ負
擔ノ過重ニ苦シムト云フ譯デアリマシテ、
此ノ方面ニ於キマシテモ稅制ノ彈力性ト云
フコトハ著シク阻碍サレテ居タノデアリマ
スガ、之ヲ全廢致スコトニ依ツテ此ノ障碍
モ撤去シタ譯デアリマス、尙ホ第二種所得
稅ハ從來源泉比例稅率デアリマシタガ、其
ノ稅率モ資本利子稅ト通算致シマシテ、社
債銀行預金等ニ付テハ百分ノ十二ト云フ
稅率ニナツテ居リマス、是ハ多額所得者モ
小額所得者モ皆此ノ稅率ニナツテ居リマシ
テ、相當全部ヲ通算シテ見ルト高率ノモノ
ニナツテ居リマシテ、之ヲ個人ノ所得稅、
法人ノ所得稅ト同樣ニ增稅ヲ致スト云フコ
トハモウ現在ノ經濟機構、金融界ノ情勢カ
ラ言ツテ不可能ニナツテ居タノデアリマス
ガ、是モ今囘ノ稅制改革ニ於キマシテ撤去
セラレマシテ、此ノ點ニ付キマシテモ、從
來多年ノ障碍トセラレタモノガ排除セラレ
タト云フ譯デアリマシテ、各方面ニ於テ稅
制ニ十分伸縮性ヲ持タセタト云フ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=40
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041・小笠原三九郎
○小笠原委員 增收ト云フ點カラ見レバ、
ソレハ色々ナ點デ伸縮力ハアリマセウ、併
シ其ノ伸縮力ヲヤルニハ比例稅率ノ分ハ
ハツキリトソレヲ變へレバ宜イガ、累進稅
率ニ依ル分ハ根本的ニ色々ナ要素ヲ加ヘテ
來ルノデアルカラ、アナタガ言ハレルヤウ
ニサウ簡單ニ行クモノデハナイ、現
今マデノ說明ニ於テモ、彈力性ニ付テハ比
例稅率ニ付テノミ言ハレテ居ル、比例稅率
外ノモノニモ彈力性ガアルト云フナラバ、稅
制改正ハ何時デモ彈力性ガアル譯デ、其ノ
必要ハナイト云フコトニナルガ、左樣ナコ
トハ其ノ程度ニシテ、私共サウ云フ風ニ考
ヘマスカラ、此ノ事業目論見ヲスルモノニ
付テハ、サウ大ナル營業ガ假ニ年々增加シ
テモ、凡ソ其ノ限度ハハツキリシテ居ル、
例ヘバ事變以來昭和十二年、十三年、十四
年トズツト增稅サレテ居ルケレドモ、ソレ
ガ爲ニ別ニ事業ニ阻碍ヲ受ケナカツタコト
ハ、大藏大臣ガ御承知ノ通リデアル、ソレ
デアルカラ事業目論見云々ト云フコトニ付
テハ私共ハ少シク了解ニ苦シムノデアリマ
ス、更ニ又第二點トシテ、產業界ニ大キナ
衝撃ヲ與ヘズ、生產擴充、物價政策等トモ
背馳セヌト云フコトカラ持ツテ行ツタノダ
ト云フ御話ヲ聽キマシタガ、是ハ見解ノ相
違ト言ハレルナラバソレマデデアルガ、生
產擴充等ニハ相當大キナ衝擊ヲ與ヘルノデ
アリマス、現ニ物價政策ハ、過日來ノ色々
ナ話ニ依ツテモ、消費稅ガ全額殖エテ行ク、
消費稅ガ全額殖エテ行クト云フコトハ、「イ
ンフレ」阻止ニモ役立ツノデアツテ、其ノ點
大藏大臣ノ見解ガ正シイト思フ、ソレヲ生
產者ノ方ニ食込ムノハ間違ツテ居ルト當初
カラ考ヘタノデアルガ、何レニシテモ物價
ハ上ツテ行ク、ソレハ生產擴充ニ致シマシ
テモ-是ハ平俗ナ例ヲ申上ゲテ甚ダ失禮
デアルガ、今日花柳界方面ハ非常ニ繁昌シ
テ居ル、之ニ付テハ會社ノ重役ナドニ聽イ
テモサウ言ツテ居ル、一生懸命儲ケテ見タ
所ガ、稅金ニ取ラレテシマフカラ、寧ロ經
費デ使フ方ガ宜イト言ツテ居ル、此ノコトニ
付テハ此ノ頃ノ會社ノ內部ノ環境ヲ見レバ
一番能ク分ルノデスガ、內部配當、社内配
當ノ著シイ增加ハ何人モ蔽フコトノ出來ナ
イ事實デアラウト思フ、此ノ社內配當ノ增
加ハ稅金ノ壓迫カラ來ルノデアル、非常ナ
重稅ヲ課セラレルヨリハ······ト云フコトハ、
國民ノ心懸ケトシテシテ惡イコトデアリマ
セウガ、其ノ人情ハ幾ラカ斟酌シテヤラナ
ケレバナラヌ、稅金ニ出シタクナイト言ツ
テハ語弊ガアルガ、稅金ニ取ラレル位ナラ
バト云フ心ヲ起スノモ無理ハナイト思フ、
ソレデアルカラ非常ニ社內配當ヲ殖ヤシテ
居ルノデアリマシテ、サウ云フ點等カラ見
テモ、私共ハドウモ是ガ生產擴充ニ大キナ
影響ヲ與へ云々ト云フノハ、今後實際カラ
御考ニナレバ非常ナ影響ヲ與ヘルト云フ結
果ガ來ルト思フ者デアリマスガ、其ノ點ニ
付キマシテハ大藏大臣ノ御答辯ヲ一應諒ト
スルコトニ致シマシテ、次ニ私ハ各個ノ問
題ニ付テ、私ガ先刻申上ゲタ所謂民ノ聲ヲ
少シク申上ゲテ、政府ノ御意見ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス
先ヅ所得稅ニ付テ御伺ヲ致シマス、此ノ
原案ハ昨年ノ七月、詰リ歐洲戰前ニ作ラレ
タモノデアツテ、ソレカラ以後ノ物價ノ騰
貴、生活費ノ昂騰等著シキモノノアルコトハ
大藏大臣能ク御承知ノ通リデアリマス、所
ガ事業所得者、勤勞所得者ノ基礎控除額ヲ
見マスルト、是ハ四百圓ト六百圓トナツテ
居ル、今日四百圓、六百圓ト云フ金ガドレ
ダケノ働キヲスルモノカ、昨日中島委員ガ
厚生大臣ニ頻ニ其ノ點ヲ確メテ居ラレマシ
タガ、是ハ厚生大臣ヲ俟タズトモ、最モ常
識ニ富ンデ居ラレル大藏大臣能ク御分リノ
コトト思フノデアリマス、又物價ニ致シマ
シテモ、昨年ノ七月、歐洲戰前カラ見マス
ルナラバ、是ハ日常生活其ノモノカラ見タ
ナラバ三四割ハ確實ニ騰貴シテ居ルデアリ
マセウ、デアリマスカラ此ノ數字ハドウシ
テモ今ノ實情ニ卽シテ改訂スル必要ガアル
ト思フノデアリマス、之ニ關シテ大藏大臣
ハ如何樣ニ御考ニナツテ居ルデアリマセウ
カ、私ハ六百圓、八百圓ニ改訂スルカ、然ラ
ザレバ一樣ニ六百圓ニ改訂スル必要ガアル
トヘ考ルノデアリマス、大藏大臣ノ御考ハ
如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=41
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042・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 從來ハ御承知ノ通リ千圓
デアリマシテ、千一圓ニナレバ直グ千圓全
部ニ課稅スルノデアリマスガ、此ノ度ノ改
正ニ於テハ、四百圓ナリ六百圓ナリハ基礎
控除率デアリマシテ、其ノ上ノ金額ニ對シ
テ課ケル譯ニナツテ居リマスノデ、前ノ稅
トハ少シク性質ヲ異ニ致シテ居リマス、ソ
レカラ六百圓内外ノモノニ課ケルコトハ甚
ダ不都合デハナイカ、況ンヤ四百圓ト云フ
風ナ控除率デハ、事業所得者ニ於テモソレ
ハ少シ酷デハナイカト云フ風ナ御話デア
リマスガ、此ノ度ハ度々申上ゲマス通リ、
卽チ扶養家族ノ控除デアルトカ、同時
ニ只今ノ基礎控除トカ云フモノヲ行ヒ、
殊ニ妻ニ對シテマデ控除スルコトニ致シ
マシタ結果、大體千圓以下ニ於キマシテ
ハ、獨身者ハ別デアリマスケレドモ、家族
ヲ持ツテ居ル者ハ大抵稅ヲ課サナイ方ニ屬
スルノデアリマシテ、サウ云フ觀點カラ見
マシテ、先ヅ辛抱ヲシテ戴イテ差支ナイノ
デハナカラウカト思フノデアリマシテ、現
在ノ物價騰貴其ノ他ニ付テ、ドウシテモ其
ノ金額ガ當ヲ得テ居ナイト云フヤウナ御議
論モアルト思ヒマスケレドモ、從來ノ實情
ニ徵シテ、大體此ノ程度ナラバ負擔ヲシテ
戴イテ宜イノデハナカラウカト云フ見解カ
ラ提案致シタヤウナ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=42
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043・小笠原三九郎
○小笠原委員 原案ヲ御作リニナツタ石渡
元大藏大臣ハ、ナゼ此ノ四百圓、六百圓ト
云フ控除ヲ認メラレタカ、是ハ私ガ此處デ
說明スルマデモゴザイマセヌ、此ノ基礎控
除額ガ認メラレタ原因ニ遡ツテ御考ニナル
ナラバ、物價騰貴ガ斯ウ云フ風ニ起ツテ來
タ今日、之ヲ改訂セラレルノハ當然ノコト
ト考ヘマスカラ、此ノ點ハ政府ノ方デ篤ト
御考ヲ願フコトト致シマシテ、事務當局ノ
方カラ次ノ二ツノ表ヲ御差出ヲ願ヒタイト
存ジマス、基礎控除額四百圓、六百圓ヲ六
百圓、八百圓ニ改訂シタル場合ノ國庫ノ收
入減見込高、一率ニ六百圓ニ改訂シタル場
合ノ收入減見込高、其ノ御調ヲ一ツ御差出
ヲ願ヒタイト存ジマス
次ニ御伺申上ゲマスノハ、事業所得甲
種ヲ百分ノ七·五ニ、乙種ヲ百分ノ六ト勤
勞所得ト同ジヤウニ改訂セラレテハドウ
カ、斯ウ云フコトニ付テノ政府ノ御意向ヲ
質シタイト云フコトデアリマス、申スマ
デモナク事業所得ト勤勞所得トノ差別ヲ
設ケルコトハ、此ノ程度ニ於テハ極ク乏
シイノデアリマス、營業者或ハ農家デモ
サウデアリマスガ、一家總動員デ働イテ
居ル實情等ハ過日來御述べニナツタ通リデ
アリ、又御醫者ヤ辯護士ハ夜中デモ-此
ノ頃大藏省ノ方々ハ晝夜兼行デ御働キニナ
ツテ居リマスケレドモ、併シ大體官公吏ノ
諸君ヨリモ非常ニ激シイ事實上ノ勞働ヲシ
テ居ラレルノデアリマス、一方官公吏ノ方ハ
ト申セバ、現ニ受取ツテ居ル收入以外ニ恩
給ト云フ現ハレザル收入ガ一日々々增加シ
テ行ツテ居ルノデアリマス、所ガ事業所得
者ニハ形ニ現ハレナイ所得ハ何處ニモアリ
マセヌ、斯ウ云フ風ナ點カラ見マスト、事
業所得ト勤勞所得トヲ區別スル理由ハ甚ダ
乏シイノデアリマシテ、所謂自由職業ニナ
ツテ居ル辯護士、醫者等ニ於テハ特ニ一層
然リト申サナケレバナリマセヌ、醫者ヤ辯
護士等ガ死ンデシマツタリ、或ハ老朽ニナ
ツタ、頭ガ痴呆ニナツタトスレバ、收入ハ
何モナクナツテシマフ、所ガ官公吏ノ方ニ
ハ恩給ト云フモノガアツテ、死ネバ遺族扶
助料ト云フモノガ附イテ居ル、サウ云フ風
ナエ合デ、現在ノ收入以上ニ尙ホ收入ガア
ル官公吏ト、現在ノ收入以外ニ何モノモナ
イ事業所得者トニ付テ、斯ウ云フ差別待遇
ヲスルト云フコトハ私ハ穩當デハナイト考
ヘルノデアリマス、尤モ大キイ事業ハ是ハ
別デアリマス、ソコデ私ハ少クトモ現在ノ
事業所得甲種ト云フモノヲ乙種ノ程度ニ引
下ゲル、乙種ノモノハ之ヲ勤勞所得ト同一
ニ扱フ、斯ウ云フコトガ必要デアルト思フ
ノデアリマスガ、此ノ點ニ關スル御意見ヲ
承リダイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=43
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044・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 少シク數字的ニ亙リマス
ノデ、是ハ私カラ申上ゲルヨリハ政府委員
カラ申上ゲタ方ガ宜イトト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=44
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045・大矢半次郎
○大矢政府委員 勤勞所得ハ純粹ニ勤勞カ
ラ生ズルモノデアルカラシテ負擔力ガ少イ、
事業所得ハ勤勞ト資本トノ共同ノ働キデア
ルカラ多少勤勞所得ヨリモ負擔力ガアルト
見ルノガ通念カト存ジマス、從來ニ於キマ
シテモ勤勞所得ノ少額ノモノハ二割控除シ
テ所得ヲ見テ行ク、サウ云フ關係カラ致シ
マシテ、此ノ度モ百分ノ七·五ノ二割引ハ丁
度百分ノ六ニナルト云フノデ、其ノ性質カ
ラ言ツテモ、又從來ノ負擔均衡ノ點カラ言
ツテモ、此ノ程度ノ開キガアツテ然ルベキ
デハナカラウカト存ズルノデアリマス、事
業所得ノ甲種ハ事業所得ノ乙種ト多少資產
ノ分子ガ入ツテ居ル點ニ於テ違フ所ガアル
ノデハナカラウカ、從來ノ收益稅制度ニ於
キマシテモ、營業收益稅ハ課稅シテ居リマ
シタガ、自由職業等ニ對シマシテハ收益稅
ハ課稅シテナカツタノデアリマス、是モヤ
ハリ是等ノ業態ノ性質カラ出テ來ル所ノ負
擔力ノ相違ヲ見テ居タノデアリマシテ、此
ノ度モ大體從來ト同ジ程度ノ開キヲ置イタ
方ガ寧ロ負擔力ノ程度ニ副フ所以デハナカ
ラウカト考ヘテ居リマス、併シナガラ極ク
僅少ノ所得ニアリマシテハ、營業所得、自
由職業所得等ニ於キマシテモ殆ド勤勞ヨリ
成ルト見ラルベキモノガ多イノデアリマス
カラ、隨ヒマシテ此ノ度モ是等事業所得、
自由職業所得等ガ千圓以下ノ場合ニハ、勤勞
所得ト同ジヤウナ百分ノ六ト云フ稅率ニ致
シテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=45
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046・小笠原三九郎
○小笠原委員 今ノ資本モ入レルト云フ事
業所得ハ、私モ申上ゲタ通リ唯區別スル、
餘リ差ヲ置ク程デハナイカラ、詰リ二割位
多ケレバ宜イダラウカラ、乙種ト同ジヤウ
ニ百分ノ六ニサレタラドウカ、斯ウ云フノ
デアリマス、ソレカラ更ニ醫師トカ辯護
士トカ云フ向ニ付テハ、千圓以下ノ場合
ハ、今ノヤウナ勤勞所得ト同ジコトニナツ
テ居リマスガ、併シ私共ハ官公吏ノ中五千
圓未滿ノ者モ是ハ同ジヤウナ工合ノモノヲ
取ラレテ居ルノデアルカラ、之ヲナゼ千圓
ト限ルカト云フコトガ分ラナイノデアリマ
シテ、此ノ點ハ何等區別スル必要ガナイ、
若シ强ヒテ區別ヲスルトスルナラバ、少ク
トモ是ハ三千圓程度マデハ引上ゲル必要ガ
アルト思フノデアリマス、之ニ關スル御意
見ヲ伺フト共ニ、今私ガ申シタ事業所得
ノ甲種ヲ乙種ニスル、乙種ノ三千圓以下ヲ
百分ノ六ト、勤勞所得ト同一ニシタラバド
ウ云フ數字ガ出テ來ルカ、一ツ其ノ表ヲ御
示ガ願ヒタイト存ジマス、今ノ點ニ付テ主
稅局長ノ御意見ヲ承リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=46
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047・大矢半次郎
○大矢政府委員 醫師、辯護士等ト官公吏
其ノ他一般ノ「サラリーマン」トノ負擔ノ均
衡ノ問題デアリマスルガ、雇傭關係ニ於テ
所得ヲ得ル者ト、獨立シテ所得ヲ得ル者ト
ノ間ニ於テハ、多少負擔力ニ相違アルモノ
ト見ルノハ妥當デハナカラウカ、各國ノ
事例ヲ見テモ大體サウ云フ風ニナツテ居ル
ノデアリマシテ、是ハヤハリ雇傭關係ニア
ル者ハ幾分ソコニ負擔力ノ點ニ於テ低イモ
ノガアル、斯ウ考ヘテ居リマス
ソレカラ三千圓ト云フ御話テゴザイマス
ガ、三千圓トナルト相當多額ノモノニナリ
マンク、營業所得等ニ於キマシテモ相當資產
ヲ投ジテ居ルモノガ多イノデアリマス、從
來ノ營業收益稅ニ於キマシテモ千圓ト千圓
ヲ超エル場合トデ稅率ヲ區分シテ居リマシ
テ、大體日本ノ現狀ニ於キマシテハ所得千
圓ヲ限界ニシテ區分スルノガ適當デアラウ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=47
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048・小笠原三九郎
○小笠原委員 私ノ言葉ガ足リマセヌデシ
タガ、三千圓ト云フノハ乙種ノ意味デス、
尙ホ今ノ御話デアリマスガ、一番御忘レニナ
ツテ居ル點ハ斯ウ云フ點ヂヤナイカト思
フ、官公吏ハ取ツテ居ル月給以外ニ尙ホ別
ナ收入ガ段々餘所デ積マレテ行ツテ居ル、
此ノ事ハ御忘レニナツテハイカヌト思フ、
辯護士、醫師其ノ他ノ方ニハ何モ積マレテ
居ルモノハアリマセセ、詰リ官公吏ノ方ニ
ハ恩給、扶助料、斯ウ云ツタモノガ他ニア
ルト云フコトヲ一ツ御忘レナイヤウニ、今
後ノ稅制ヲヤツテ戴ク必要ガアルト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=48
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049・大矢半次郎
○大矢政府委員 官公吏ト仰シヤイマスケ
レドモ、寧ロ勤勞所得ノ納稅者ハ官公吏ヨ
リモ一般ノ會社員ト云フ方面ガ遙ニ數ガ多
イノデアリマスカラ、其ノ點一言申上ゲテ
置キマス、尙ホ官公吏等ニ於キマシテハ俸
給以外ニ別ニ積マレテ居ルモノガアルト云
フノハ、恩給等ノコトカト存ジマスガ、是
ハ恩給ヲ受取ル場合ニハヤハリ課稅所得ノ
方ニ計算サレテ課稅ヲ受ケル、斯ウ云フコ
トニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=49
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050・小笠原三九郎
○小笠原委員 ソレハ全額控除サレルモノ
ニ付テハ左樣ナ事實ハゴザイマス、尙ホ私
ガ官公吏ト申シタノハアナタ方ニ御分リガ
好イカラ申シタノデ、例ヘバ是ガ銀行員、
會社員デアリマスナラバ退職慰勞金ト云フ
モノガ、ヤハリズツト會社銀行等デ積マレ
テ居ルコトハ、是ハ御分リノコトト思ヒマス、何
處ニモ退職慰勞金ト云フモノハ積マレテ居
リマス、其ノ時ノ收入以外ノ收入ガ別個ニ
アルノデス、ソレハ御說明セヌデモ御分リ
ノコトト思ツタカラ、唯官公吏ト言ツテ皆
ザンニ御分リノ好イヤウニト思ツテ申上ゲ
タノデス
次ニ御伺致シタイノハ、分類所得ノ最高
限五千圓トアリマスガ、之ヲ七千圓ニ引上
ゲル御意思ハナイカ、此ノ場合ノ減收見込
ニ付テ一ツ表ヲ出シテ戴キタイト思ヒマス、
實ハ今日ノ五千圓ト云フモノハ非常ニ低イ
ノデアツテ、是ハ私共ハ少クトモ元ノ案ハ
大體七千圓程度ニナツテ居ルヤウニ聞イテ
居ルノデアリマスガ、其ノ七千圓程度ニ戾
ストコガ今日ノ實情ニ副ヒ得ルノデハナイ
カ、五千圓カラノモノガ綜合所得ヲ受ケル、
五千圓以下ノモノハ綜合所得ヲ受ケナイト
云フコトニナリマスト、非常ニ其ノ間ノ差
別ガ激シクナル、片方ハ唯此ノ場合デ申セ
バ百分ノ六デアル、片方ハ其ノ外ニ百分ノ
十ヲ加ヘタモノヲ課稅サレルト云フコトニ
ナツテ、五千圓ト五千圓デナイモノトノ差
ガ餘リニモヒド過ギル、斯ウ云フ點ヲ考ヘ
テ私ハ是ハ七千圓程度ニ引上ゲルベキデハ
ナイカト思ヒマスガ、其ノ點ハ如何デアリ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=50
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051・大矢半次郎
○大矢政府委員 其ノ點ニ付キマシテハ、
是ハ私共相當考究ヲ致シタノデアリマスガ、
是ハ本委員會ノ初メニ於キマシテ私相當詳
シク申上ゲテ置イタノデアリマス、要スル
ニ綜合所得稅ヲ課稅スル限界點ヲ何處ニ置
クカト云フコトハ、我國ノ所得階級ノ分布
ノ狀況、分類所得稅ノ稅率、現行ノ租稅ノ
負擔ノ程度、ソレト移リ變リノ點、斯ウ云
フモノヲ能ク檢討シテ見テ適當ノ所ニ落著
ケナケレバナラヌト思フノデアリマシテ、
ソレデ他ノ委員ノ方カラハ比較的少額所得
者ノ所ニ於テ負擔ガ增加スル、所得五千圓
程度ノ所ニ於テバ餘リ增加シテ居ナイノガ
負擔ノ不均衡デハナイカト云フコトモ度々
問題ニセラレタノデアリマシテ、ソレニ對
シマシテハ現行法トノ負擔ノ關係カラ見レ
バ仰セノヤウナ點ガ確ニアルノデゴザイマ
ス、併シナガラ現行法ガ所得千圓ノモノハ
百分ノ一、所得千五百圓ヲ超エル場合ニハ
百分ノ四、所得三千圓ノモノハ百分ノ七ト
云フ風ニシテ非常ニ稅率ガ飛躍シテ居ル、
斯ウ云フ少額所得階級ノ間ニ、一寸所得ガ
多クナルニ從ツテ三倍ノ負擔力ガアル、七
倍ノ負擔力ガアルト云フ風ニ見ルノモドウ
カト思ツテ、今度ノ分類所得稅ニ於テ比例
稅率ヲ取ツテ居ルノハ、一面ニ於テ基礎控
除ヲ致シマスル關係上、所得ノ少イモノハ
低イ稅率デ課稅ヲ受ケタト同樣ニナツテ、
大體四五千圓程度マデノモノハ累進稅率デ
課稅ヲ受ケタノト同樣ノ結果ヲ來シテ居テ、
其ノ負擔ノ變化ノ程度ハナダラカニ、從來
ヨリモ自然ニナツテ居ル、其ノ結果下ノ方
ガ稍〓高目ニナツテ、五千圓程度ガサウ上ラ
又、斯ウ云フ結果ニナルト云フコトヲ申上
ゲテ置キマシタガ、今ノ分類所得稅ノ稅率
ノ盛リ方ニ致シマシテ、綜合所得稅ノ課稅
ノ限界點ヲ六千圓、七千圓ニ致シマスト、
六千圓、七千圓ノ所得階級ハ現在ノ第三種
所得稅ノ負擔ヨリ相當輕減セラレル、斯ウ
云フ結果ニナルノデアリマシテ、一般ノ所
得階級ニ於テ或ル程度負擔ガ增加スル場合
ニ、六千圓、七千圓程度ノモノガ負擔輕減
ニナルノハ如何カト存ジマシテ、五千圓ヲ
適當ト認メタ次第デアリマス、內部ニ於キ、
マシテ七千圓程度ニシタラドウカト云フ詮
議モ一時アツタカノヤウナ御話ガゴザイマ
シタガ、ソレハゴザイマセヌ、實ハ四千圓、
五千圓程度ガ上リ方ガ少イカラ、或ハ綜合
所得稅ノ課稅ヲ三千圓程度カラシタラドウ
カト云フコトモ考ヘテ見マシタケレドモ、
サウ致シマスルト所得納稅者ノ數モ相當殖
エテ參リマシテ、綜合課稅スル上ニ於テ、
手數モ非常ニ掛カルト云フ點モアリマスノ
デ、サウ云フ點カラ見マスルト、此ノ限界
點ハ或ル程度高ク致シタイ、併シ餘リ高ク
致シマスルト、分類所得稅ノ稅率ヲ引上ゲ
ルニアラザレバ六千圓、七千圓程度ノモノ
ガ負擔ガ輕クナル、分類所得稅ノ稅率ヲ引
上ゲルト云フコトニナルト下ノモノガ重ク
ナル、斯ウ云ラコトニナリマスト、大體五
千圓程度ヲ適當ト見タ譯デアリマス、五千
圓ヲ限界トシテ綜合所得稅ヲ課ケマスレバ、
五千圓以上ノモノガ直グニ百分ノ十ノ稅率
デ負擔ヲスルカラ負擔ガ加重スルト云フ御
話デアリマシタガ、是ハ超過額ダケニ對ス
ル所ノ稅率デゴザイマスカラ、五千圓ノモ
ノハ綜合所得稅ノ課稅ヲ受ケマセヌ、五千
百圓ノモノハ受ケルケレドモ、五千圓ヲ超
過スル所ノ百圓ニ對シテ百分ノ十ノ稅率デ
十圓ダケ餘分ニ負擔スル、斯ウ云フ譯デア
リマシテ、非常ニ負擔ガ激增スルト云フ風
ニモ實ハ考ヘテ居ナイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=51
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052・田中豐
○田中政府委員 只今ノ點デゴザイマスガ
一寸稅率ダケ申上ゲマス、現在五千圓ヲ超
エル金額ハ國稅ダケデ百分ノ十一ニナツテ
居リマス、附加稅ヲ入レマスト十三·七ニナ
ツテ居リマス、ソレデ之ヲ若シ綜合課稅ヲ
スル點ヲ上ゲルト致シマシテ、七千圓若ク
ハ八千圓ニナリマスト、現在ノ稅率ハ只今
申上ゲマシタ率ヨリモ遙ニ高イノデアリマ
スカラ、初メノ「スタート」ノ稅率ガズット
高クナケレバ減稅サレルコトニナリマス、
一方分類所得稅ノ稅率ヲ最高ニ置キマシテ
モ十デゴザイマスカラ、之ヲ餘程上ゲナケ
レバ、綜合課稅點ヲ上ゲルト云フコトハ困
難ナル事情デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=52
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053・堀切善兵衞
○堀切委員長 國稅課長、モウ少シ餘計ニ
答辯サレタ方ガ宜イデセウ、主稅局長バカリ
答辯ヲスルト疲レテシマハレルデセウカラ
(笑聲)ソレデハ此ノ程度デ休憩致シ、午後
ハ一時十五分カラ始メマス
午後零時六分休憩
午後一時二十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=53
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054・堀切善兵衞
○堀切委員長 ゾレデハ開會致シマス-
小笠原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=54
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055・小笠原三九郎
○小笠原委員 次ニ御伺致シマスノハ、綜
合所得稅ノ稅率ノ點デアリマスルガ、五千
圓トシテ最低百分ノ十、八十万圓トシテ
最高百分ノ六十五ハ餘リニ急進的デアツ
テ、ドウモ租稅負擔ガ非常ニ過重サレルト
思フノデアリマス、是バ私共ハヤバリ最低
百分ノ五トカ、或ハ最高ノ所デ八十万圓ナ
ラ百分ノ五十位ニ止メタラドウカト考ヘル
ノデアリマス、ソコデ事務當局ニ一ツ御願
シタイノデスガ、最低百分ノ五トシテ、最
高稅率ヲ百分ノ五十或ハ百分ノ六十位ニ止
メタラ、國庫ノ減收ガドウ云フ風ニナルカト
云フ表ヲ作ツテ戴キタイト思ヒマス、或ハ
モウ一ツ御面倒デモ、百分ノ六十五ト云フ
今ノ最高稅率ヲ殘シタケレバ、百五十万圓
以上トスル、斯ウ云フ風ニシタ場合ニ、累
進率ヲ大體其ノ振合ニ依ツテヤラレテドウ
云フ風ニナツテ行クカト云フヤウナコトモ
御示シガ願ヘレバ結構ダト存ジマス、此ノ
綜合所得稅ノ稅率ガ餘リニ急進的デアルト
云フコトハ、相當各方面ニ大キナ衝擊ヲ與
ヘテ居リマスガ、此ノ點ニ付テ大藏當局ハ
如何ニ御考ニナツテ居ルカ、御意見ヲ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=55
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056・大矢半次郎
○大矢政府委員 御手許ニ資料ノ第二十二
號ト云フモノヲ差上ゲテ居リマスガ、之ニ
所得稅ノ新舊負擔稅額比較表ト云フノガゴ
ザイマス、是ハ分類所得稅ノ乙種ノ事業所
得、卽チ原始產業所得、自由職業所得ニ關
スル新舊稅負擔ノ比較表デアリマス、ナゼ
自由職業所得ヲ採ツタカト云フト、他ノ方
ヲ採サマスト、不動產所得、營業所得等ニ
付キマシデハ、從來收益稅ガアリマシテ、
此ノ關係デ負擔ヲ比較スルコトニ不便ガア
ルノデアリマスカラシテ、從來收益稅デ補
完セラレテ居ナカツタ自由職業所得ヲ例ニ
採ツタノデアリマスガ、是デ各階級ノ現行
ノ所得稅ト附加稅ノ合計額ト、改正後ノ分
類所得稅、綜合所得稅ノ合計額ヲ對比致シ
マスト、ソレ程上ツテ居ナイノデアリマス、
所デ今御示ノ通リ、綜合所得稅ガ初メテ課
ル五千圓以上ノ所、百分ノ十ヲ百分ノ五ト云
フ風ニ致シマシテ、ソレカラ漸次百分々五
ダケ稅率ヲ低下シテ參リマスト、現行ノ所
得稅附加稅ノ合計額ヨリモ、改正後ノ分類
所得稅、綜合所得稅ノ合計額ノ方ガ、各階
級共何レモ多少ヅツ減稅ニナル、斯ウ云フ
結果ヲ來シマスノデ、其ノ百分ノ五ト云フ
ノヲ引下ゲル譯ニハ行クマイト云フ風ニ考
ヘテ居リマス、ソレカラ最高ヲドノ點ニ止
メルカト云フコトニ付キマシテハ、實ハ現
行ノ第三種所得稅法ニ於キマシテハ、四百
万圓ヲ最高ニシテ居リマスルガ、是ハ稅率
最高百分ノ三十六デ止ツテ居タ當時デアリ
マシテ、支那事變ガ發生致シマシテ以來大
分增徵シテ參リマシテ、臨時租稅增徵法ノ
稅率ノ睨ミヲ百万圓ヲ最高トシテ居ルノデ
アリマシテ、、此ノ稅率ガ段々上ツテ來ルニ
從ツテ-從來ノ如クドウモ最高ヲ四百万
圓程度ニ致シテ居リマスト、上ノ方ハ隨分
高イ稅率ヲ盛ラナケレバナラヌ、然ルニ多
額所得者ト雖モサウ稅率ヲ高クスル譯ニハ
行カナイト存ジマシテ、稅率ガ漸次向上ス
ルニ從ヒマシテ、最高ノ稅率ヲ盛ラルル限
度ガ漸次低下シテ來ナケレバナラヌト存ジ
マス、現在ハ臨時租稅增徵法ニ於キマシテ
ハ、百万圓ヲ限度ト致シテ居リマスガ、此
ノ度多少增徵ニナル結果ト致シマシテ、八
十万圓ヲ最高ニ押ヘタ方ガ宜イデハナイ
カ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、何レ今
御要求ニナリマシタ資料ハ至急提出致ス積
リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=56
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057・小笠原三九郎
○小笠原委員 ソレデハ其ノ資料ヲ拜見シ
マシテカラ更ニ質問シタイト思ヒマスカラ
御手數デスガ至急一ツ御差出ヲ願ヒタイト
思ヒマスハ
次ニ度々問題トナツテ居リマス綜合所
得稅ノ方デ、負債利子ノ全額控除ヲ認メ
テハドウカト云フ點デアリマス、配當利
子ノ所得ニ二割控除ヲ認メラレテ居ルト云
フノハ、從來四割アツタ、二割殘ツテ居ル、
斯ウ云フ所カラヤハリ今度ハ其ノ負債利子
ヲ控除スルコトニ認メラレタノダラウト思
フノデアリマスガ、負擔能力ノ點カラ言ヒ
マスト、ドウシテモ負債利子ト云フモノハ
全額控除スルト云フコトデナケレバ、所得
稅ノ建前カラ見テ完全デナイ、斯樣ニ考ヘ
ルノデアリマスガ、此ノ點ニ付テ政府ハド
ウ云フ風ニ御考ニナツテ居ルカ、一方
配當利子ダケ二割控除スルト云ツタヤウナ
事柄ヲ止メタ其ノ埋合セニ負債利子ヲ控除
サレルノダラウト思フガ、其ノ御心持デア
ルナラバ、ヤハリ全部ノ所得ニ付テ、負債
利子ノ全額ヲ控除サルベキモノデアルト思
フノデアリマスガ、御考ハ如何デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=57
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058・大矢半次郎
○大矢政府委員 從來メ所得稅法ニ於キマ
シテハ、個人所得ニ付キマシテハ、負債利
子ハ其ノ所得ヲ得ルニ必要ナルモノニ限ツ
テ引イテ居ルノデアリマス、併シ配當所得
ニ付キマシテハ、此ノ所得ヲ得ルニ必要ナ
ル負債利子モ控除セズニ、收入金ヲ其ノ儘
見テ、サウシテ二割控除シテ居タノデアリ
マスガ、此ノ度稅制改正ヲ機ト致シマシテ、
配當所得ニ付キマシテモ他ノ營業所得或ハ
不動產所得ト同ジヤウニ、其ノ所得ヲ得ル
ニ必要ナ借金ノ利息ハ經費トシテ見ヨウ、
斯ウ存ジテ居ル次第デアリマス、一步進ン
デ、個人ニアツテハ一切ノ負債ノ利子ヲモ
所得ヨリ控除スルノガ適當デバナイカ、負
債利子ハ其ノ發生原因如何ヲ問ハズ擔稅力
ヲ減殺スルモノデアルカラ、之ヲ控除スベ
キデハナイカト云フノモ一應御尤モノ御考
デアリマスケレドモ、併シナガラ現行法ニ
於キマシテモ、又改正法ニ於キマシテモ
實ハ個人ノ所得一切ヲ捉ヘテ課稅シテ居ル
譯デハアリマセヌ、例ヘバ昨日モ問題ニナ
リマシタ株式ノ賣却益トカ、不動產ノ處分
益ト云フヤウナ一時ノ所得ニハ課稅シテ居
ナイノデアリマス、ソレカラ獨逸、英吉利
等ニ於テハ負債利子ハ大體全額控除スルヤ
ウナ風デゴザイマスケレドモ、是等ノ國ニ
於キマシテモヤハリ自家用住宅ノ利用價格
ヲ一面所得ニ見テ計算シテ居ルノデアリマ
スガ、我國デハ斯樣ナコトヲ致シテ居リマ
セヌ、又今直チニ之ヲ實行スルト云フノ
モ、各種ノ方面カラ檢討シテ見テ適當デハ
ナイト存ジテ居ルノデアリマスルガ、若シ
モ負債利子ラ所得ヨリ控除スルト致シマス
ルト、自己住宅建設ノ爲ノ負債ト云フモノ
ハ相當アルノデアリマスガ、是等ハ所得金
額カラハ引カレル、而モ自家用住宅ノ利用
價格ハ所得ノ方ニ計算サレナイト云フヤウ
ナ點モアルノデアリマス、其ノヤウニ致シ
マシテ、各種所得ノ中ニマダ全部綜合サレ
テ居ナイ分子ガ相當アルノデアリマスカラ、
今直チニ負債利子ヲ、發生原因如何ヲ問ハ
ズ全額ヲ控除スルト云フコトニハ行キ兼ネ
ルカト存ジマス、併シ負債利子ヲ支拂ヘバ
ソレダケ擔稅力ガ減殺サレルノハ事實デア
リマスカラ、此ノ度配當所得ニ付キマシテ
ハ不動產所得、營業所得ト同ジヤウニ之ヲ
控除シヨウ、將來前ニ申上ゲマシタ一時所
得等ニ付テモ相當廣イ課稅ガ行ハレルヤウ
ニナツタ場合ニ於キマシテ、負債利子全額
ノ控除ト云フコトモ考慮シタイト存ジテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=58
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059・小笠原三九郎
○小笠原委員 此ノ負債利子ヲ全額控除ス
ルコトニセヌト、實ハ扱ヲ受ケル者ニハ隨
分不公平ナ場合ガ出テ來ルノデアリマシテ、
此ノ點ハ實例ヲ二三御考ニナレバ能ク分ル
コトト思フノデアリマス、例ヘバ自分ガド
ウモ親ヲ限定相續スルノモ忍ビナイカラ、
其ノ儘大キナ借金ヲ引繼イダトカ云フヤウ
ナ者トカ、或ハ勤勞所得者ニシマシテモ、
病氣シタリ災害ヲ受ケテ借金シタリ、サウ云
ツタ者ナドハ是ハ負擔力ガナイノデアリ
マシテ、今申サレタヤウナ、自分ノ家ヲ買
フ爲ニ負債ヲシタト云ツタヤウナノハ非常
ニ好イ例デアリマスケレドモ、サウ云フ點
ノミヲ見ル譯ニ行カヌカラ、此ノ點ハ更ニ
御考ヲ願ヒタイト存ジマス、尙ホ所謂株式
取得ニ要シタ負債利子ヲ控除サレルト云フ
コトデアリマスガ、是ハ銀行ノ證明書デモ
アレバ宜イト云フノデスカ、或ハ本人ガサ
ウ云フコトヲ申出レバソレデ宜イト云フコ
トニナリマスカ、何カシツカリシタ標準ガ
アリマセヌト、或人ハ法律的ニハ出來ルガ
實際控除ヲ受ケルコトガ困難ダト云フ風ニ
言ツテ居ルノデアリマス、ソコデ例ヘバ銀
行保險會社、信託會社等ノ金融業者ガ證
明ヲシテ、是ハ斯ウ云フ株式取得ニ要シタ
負債ダト云フコトニナレバ宜シイノデアリ
マスガ、色々擔保物カラ之ヲ調ベヨウトシ
テモソレハ困難デアリ、又一々說明シテ
モ、稅務署ガサウデアルト云フ風ニ納得シ
テ呉レヌト云フコトニナルト、事實株式取
得ニ要シタニ拘ラズ、其ノ控除ヲ受ケヌ場
合ガ澤山アリマスカラ、ソレデ稅務署ノ判
斷デナクトモ、斯ウ云フ標準ガアツテ、是
デハツキリ株式取得ニ要シタ負債利子ダト
云フコトガ分ルト云フヤウナ工合ニ、株式
買入ニ要シタ負債ダト云フコトガ分ルヤ
ウナコトヲ、外形的ナ標準デ御示ヲ願フ
ト云フ譯ニ行キマセヌカ、例ヘバ金融業
者ノ證明ガアルナラバ宜シイ、本人ガ申立
テタラ、本人ノ申立ニ付テ稅務署ガ特ニ論
駁スベキモノガナイ場合ニハソレヲ認メル
ト云フヤウナ工合ニ、何カ規定ガナイト、
是ハ事實ノ取扱ガ非常ニ困難ト思フノデア
リマスガ、ソレニ付テ大藏當局ハ如何ニ御
考ニナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=59
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060・大矢半次郎
○大矢政府委員 是ハ前ニモ申上ゲタ通リ
現行法ノ下ニ於キマシテモ、營業所得、不
動產所得、或ハ自由職業所得等ニ於キマシ
テモ、其ノ所得ヲ得ルニ必要ナ借入金ノ利
息ハ經費ニ見テ居ルノデアリマシテ、稅務
署モ多年實行シテ居ルコトデゴザイマス、
株式ニ於キマシテモ、是ト何等異ナル所ガ
ナイト存ズルノデアリマス、金融業者ノ證
明ト云フコトデゴザイマスケレドモ、金融
業者ハ何某ニ對シテ如何程イツ何日ニ貸シ
タト云フコトノ證明ハ出來ルカ知レマセヌ
ケレドモ、其ノ用途マデモ證明スルト云フ
コトハ實行ガ中々難カシイ、眞相ヲ得難イ
ノデハナカラウカト存ジマス、要スルニ借
入ノ時期、借入金額、株式取得ノ時期、金
額等ヲ見比ベテ見ルト判定ガ付クダラウト
思ヒマシテ、金融業者等ヨリ借入ノ時期、
金額、ソレカラ本人カラ株式取得ノ時期、
斯ウ云フモノニ付テノ參考資料ヲ提出致シ
マスト、適當ナ認定ガ付クノデハナカラウ
カト存ジマス、一ツノ外形標準ニ依ツテ判
定スルト云フコトハ、若シサウ云フモノガ
アレバ結構デゴザイマスケレドモ、是ハ中
中サウ云フ譯ニハ行カナイト存ジマス、例
ヘバ株式ヲ擔保ニシテ借金シテ居ルカラト
云ツテ、必ズシモ其ノ借金ガ其ノ株式ヲ取
得スル爲ニ要シタモノト見ル譯ニハ行カ
ナイノデアリマス、或ハ其ノ他ノ不動產ヲ
擔保ニシ、或ハ信用デ借リテ株ヲ取得スル
ト云フヤウナ場合モアルノデアリマシテ、
擔保物ノ如何ニ依ツテ判定スルト云フ風ニ
ハ參ラヌコトカト存ジマス、營業所得、不
動產所得等ニ付キマシテ現ニ實行シテ居ル
ヤウニ、個々ノ場合ニ本人ノ申〓ト、其ノ
他ノ適當ナル資料トニ依ツテ判定スベキモ
ノデ、又是ガ株式ニ付テノミ到底實行ガ出
來ナイト云フ風ニハ考ヘテ居ナイ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=60
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061・小笠原三九郎
○小笠原委員 今御話ガアリマシタガ、例
ヘバ金融業者ト云フモノハ資金ノ用途ヲ聽
カナケレバ金ヲ貸スモノデハアリマセヌ、
唯漫然ト金ヲ貸セト言ツタノデハ、何處ノ
銀行ニ行ツテモ借リラレナイ、況ヤ今日ハ
臨時資金調整法ガアツテ、大口ノ分ナラバ
屆出主義ヲ採ラレテ居ルノデアリマスシ、
小額ノ分ニ付テモ中々銀行ハ其ノ用途ヲ明
ニシナケレバ金ヲ貸スモノデハアリマセヌ、
ダカラ金融業者ノ證明等ガアレバ、其ノ證
明デヤツテヤルト云フコトハ、ドチラカト
言フト問題ヲ紛糾サセズニ-納稅者ガ事
實ソレニ要シテ居ルニ拘ハラズ、稅務署ガ
ソレヲ認メヌト云ツタ爭ヲ避ケルニ大變宜
イノデハナイカ、サウ云フ風ニ考ヘマスノ
デ、ソレ等ノ點モ考ヘテ戴キタイト思ヒマ
ス
其ノ次ニ御伺致シタイノハ、退職ノ場合
ノ所得ノ課稅デアリマスガ、是ハ大變多イ
ヤウニ思ハレルシ、且ツ勤勞所得ト非常ニ
權衡ヲ失スルヤウニ思フノデアリマス、申
スマデモナク、退職所得ト言ヘバ、主トシ
テ會社トカ銀行ニ永年勤續シタ者ガ、退職
慰勞金ヲ貰ツテソレデ生計ヲ立テテ行クノ
デアリマスガ假ニ其ノ退職慰勞金ヲ貰ツタ
者ガ、只今三分五厘ノ公債ヲ貰フトスルト
稅金ヲ拂フト恐ラク三分ソコ〓〓ノ利〓ダ
ラウト思ヒマス、サウスレバ二万圓貰ツテ見
タ所デ六百圓デアル、六百圓トスレバ、勤
勞所得者ノ貰フ恩給デアレバ、基礎控除ノ
中ニ入ツテシマフノデス、片方ハ二万圓貰
ツタ場合、事實收入ハ六百圓シカナイノニ
源泉デ大キナ課稅ヲ受ケテ居ルト云フコト
ニナル、片方ハ何モ課稅ヲ受ケズニ恩給ヲ
貰ツテ居ルコトニ比べルト、大變不公平デ
ハナイカト思フ、ソレデ是ハヤハリ其ノ時
ノ利廻ニモ依ルガ、大體恩給其ノ他ノ關係
トノ均衡ヲ得ル程度ニ、此ノ課稅標準ヲ高メ
ルベキモノデハナイカ、言換ヘレバ五千圓
ト云フコトデハナク、多少事情モ違フカラ
敢テ同ジヤウトハ申サヌガ、最低一万圓以
上ニ課稅スルト云フコトガ必要デハナイカ
ト考ヘルノデアリマスガ、之ニ付テ當局ノ
御考ハ如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=61
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062・大矢半次郎
○大矢政府委員 先ヅ金融業者ノ證明ノ點
デアリマスガ、金融業者ガ金ヲ貸ス場合ニ
ハ、大抵用途ヲ尋ネテサウシテ確實ナ方面
ニ對スル貸出デアレバ喜ンデ應ズルト云フ
ノハ事實デアラウト思ヒマス、隨ヒマシテ
金融業者ガ、誰某ガ斯ウ云フ株ヲ取得スル
爲ニ要シタ資金デアルト云フコトヲ證明ス
レバ、是ハ株式取得ニ要シタ借入金デアル
カ否ヤヲ見ルニ非常ニ有力ナ資料ニナルト
思フノデアリマス、一方ニ於テ、ソレト同
時ニ、ソレニ相當スル株式ノ買入ガ其ノ人
ニアレバ、モウ疑フ餘地ノナイモノトナル
ノデアリマシテ、サウ云フ意味ニ於テ非常
ニ有力ナ資料ト存ジマス
ソレカラ退職所得ノ件デゴザイマスガ、
此ノ點ハ隨分考慮致シマシテ、五千圓ヲ差
引イタ其ノ殘額ニ對シテ稅率ヲ盛ルノデア
リマシテ、其ノ稅率モ五千圓ヲ超エテ二万
圓マデハ百分ノ六ト致シマシテ、勤勞所得
ノ稅率ト同ジヤウニナツテ居リマス、サウ
シテ之ニ對シマシテハ、別ニ綜合所得稅ノ
課稅モ致サナイ、斯ウ云フコトニ致シテ居
リマスルノデ、大體此ノ程度デ適當デハナ
カラウカト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=62
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063・小笠原三九郎
○小笠原委員 今五千圓控除ノ點ガ出マシ
タガ、私ハ一万圓位ニナスツタラドウカト
云フコトノ意味デアリマシテ、銀行會社等
ニ居ツテ辭メタ場合ニハ、恩給取ナドトハ
事情ガ違フモノダト云フコトハ能ク御分リ
ニナツテ居ルト思ヒマス、此ノ控除五千圓
ヲモウ少シ高メル必要ガアラウト思ヒマス、
此ノ點ニ付テ篤ト御考願ツテ置キタイト思
ヒマス
次ハ例ノ生命保險料ノ控除ノ點デアリマ
ス、之ヲドウ云フ譯デ今囘御見合セニナツ
タノカ、二百圓程度ノ控除デアルナラバ
是ハ私ハ認メル方ガ社會政策的デハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、是ハ先刻申上ゲタ
勤勞所得者ノ大部分ガ含マレテ居ルノデア
リマスガ、兎ニ角遺族扶助料ト云ツタヤウ
ナモノノアル官公吏ノ方ハソレデ宜シイカ
モ知レマセヌガ、遺族扶助料モ何モ附イテ
居ラヌ者ハ、纔ニ生命保險料デ子孫ノ計ヲ
立テヨウト思ツテ、乏シイ中カラ之ヲ掛ケ
テ居ル、サウ云フ者ニ對シテ控除ヲ認メナ
イト云フコトハ、ドウモ社會政策的ニ見テ
穩當ヲ缺イテ居リハセヌカ、是ハ金額ガサ
ウ多クモアルマイシ、從前通リ二百圓程度
ノ控除ヲ認メル方ガ宜イノデハナイカト考
ヘルノデアリマス、此ノ點之ヲ控除スルト
セヌトデ幾ラ稅收入ガ違フノカト云フ表ノ
御示シヲ願ヒタイト思ヒマス、尙ホ之ニ付
テノ當局ノ御考ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=63
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064・大矢半次郎
○大矢政府委員 退職給與ニ付テ一万圓控
除ニシタラドウカト云フ御尋デアリマスガ、
一万圓ト致シマシテモ、三分ニ〓ハストソ
レ程ノ裕リガナイト云フノハ仰セノ通リデ
アリマス、恩給所得者トノ均衡上ドウカ、
斯ウ云フコトデアリマスガ、唯多少違ヒマ
ス所ハ、恩給所得者ハ死ンデシマヘバモウ
何モ貰ハヌガ、片方ハ元本ハ其ノ儘殘ルト
云フ點デ、多少違フ點ガアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=64
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065・小笠原三九郎
○小笠原委員 多少ノ違ヒヲ認メテ一万圓
ト申上ゲテ居ル譯デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=65
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066・大矢半次郎
○大矢政府委員 ソレカラ生命保險料ノ控
除ヲ此ノ度廢止致シマシタノハ、旣ニ二三
囘御答シテ居ルノデアリマスルガ、是ハ我國
ニ未ダ生命保險ノ事業ガ今日ノヤウニ盛ニ
ナラナイ時ニ、多少其ノ發達ヲ助長スルト云
フ政策的ノ意味モ含マレテ居タノダト存ズ
ルノデアリマス、今日ハ生命保險事業モ相當普
及發達シテ居ルノデアリマス、併シ私共ガ從來
長ク保險料ノ控除ヲ致シテ居リマシテ、且ツ
今日貯蓄奬勵等ガ大イニ國策トシテ國民ノ
協力ヲ俟ツ時デアリマスカラ、此ノ際ニ保
險料控除ヲ廢止スルト云フコトニ付キマシ
テハ躊躇セザルヲ得ナカツタノデアリマス、
併シナガラ此ノ度分類所得稅ニ於キマシテ、
源泉課稅ヲ受ケル勤勞所得者ノ數ト云フモ
ノハ頗ル多クナルノデアリマシテ、百七八
十万、二百万近クニナルカト存ジマス、數
ガ非常ニ多クナリマシテ、是等ニ俸給ヲ支
給スル際ニ、扶養家族ノ點マデ考慮シテ源
泉デ課稅ヲスルト云フノハ、之ニ携ハル者
ノ手數ガ相當多イモノガアルト存ズルノデ
アリマス、其ノ上ニ更ニ各人ニ依ツテ違ヒ、
年ニ依ツテ違ヒ、稍〓極端カモ知レマセヌ
ガ、月ニ依ツテ違フ保險料ノ拂込ト云フヤ
ウナモノヲ正確ニ計算シテ控除スルト云フ
ノハ、中々扱フ者ニ對シテ重イ負擔ニナル
ト思フノデアリマス、又一面ニ於キマシテ
ハ保險料ノ控除ヲドウシテモシナケレバ
ナラヌモノカドウカト云フコトヲ考ヘテ見
マスト、控除スル方ガ勿論宜イノデアリマ
スケレドモ、併シナガラ保險料ヲ控除スル
位ナラバ郵便貯金ニ預ケ入レタモノモ控除
スル、或ハ貯蓄銀行ニ預金シタモノモ控除
スルト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌト思
フノデアリマシテ、サウ云フ風ニ考ヘテ見
マスルト、保險料ノ控除ノミヲ絕對ニシナ
ケレバナラヌモノト云フ風ニハ考ヘ得ラレ
ナイト思フノデアリマス、尙ホ實際ノ拂込
狀況ヲ見マスルト、勤勞所得者其ノ他中小
所得者ニアリマシテ、年二百圓ノ保險料ノ
拂込ヲスルト云フノハ比較的少イノデアリ
マシテ、相當多額ノ所得者ニ於テ初メテ年
二百圓以上ノ拂込ヲ爲シ得ルノデアリマス、
保險料ノ控除ヲ申請シタ者ノ實績ヲ見マシ
テモ、中小ノ方ハソレ程控除ヲ多ク受ケテ
居リマセヌ、或ハ百圓トカ七八十圓程度ノ
モノデアリマスルガ、斯ウ云フコトヲ考ヘ
テ見マスルト寧ロ非常ニ手數ノ掛ル保險
料ノ控除ヲ致シマスヨリモ、扶養家族ノ控
除ノ範圍ヲ擴張致シマシテ、此ノ點ニ於テ
社會政策的ノ分子ヲ十分加味スルト云フコ
トニ致シマスレバ、寧ロ實際ノ事情ニ相應ス
ルヤウナコトニナルノデハナカラウカ、ト
云フヤウナ考ヲ以チマシテ保險料ノ控除ヲ
廢止シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=66
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067・小笠原三九郎
○小笠原委員 今仰セニナツタコトハ私少
シ了解シ兼ネル、例ヘバ保險會社ノ助成
云々ト云フコトヲ言ハレタガ、今日此ノ時
局下ニ保險會社ガドウ云フコトヲシテ居ル
カ、例ヘバ日露戰爭デモ日〓戰爭デモ、總
テサウデアルガ、ドノ戰爭デモ保險會社ハ
皆戰時ノ特別ナ料金ヲ取ツテヤツテ居ル、
所ガ今囘ハ戰地ニ行ク者ニ對シテモ何等料
金ヲ取ラナイ、普通ノ掛金デヤツテ居ル、
各保險會社ヲ通ジテノ其ノ金額ハ御調ニナ
レバ分ルデアリマセウガ、私ノ承知シテ居
ル所デハ約七千万圓ヲ越シテ居ル、ダカラ
保險會社ノ立場ヲ御考ニナルナラバ、斯ウ
云フ風ナ國家的ナ奉公ヲシテ居ル保險會社
ノ立場ヲ認メテヤツテ然ルベキダト思フノ
デアリマス、更ニ又手數ダトカ面倒ダトカ
云々ノ御話デアリマスガ、國民ハ左樣ナ手
數左樣ナ面倒ヲ政府ガ厭ハヌト云フダケ
ノ態度デ稅金ヲ取ツテ貰ヒタイノデ、手數
ダカラ面倒ダカラ餘計取ル、斯ウ云フ態度
デハ困ル、手數デモ面倒デモ、出來ルダケ
國民ニ稅ヲ課ケヌヤウニシテ戴キタイ、私
ガ今朝第一ニ御尋シタノハソレナノデス、
詰リ稅金ト云フモノハ國民ノ負擔ダ、ダカ
ラ出來ルナラバ少クシテヤラウト云フ御心
持デヤツテ戴カヌト困ルノデアリマシテ、
私共ソレガ爲ニ人ガ要ルナラバ其ノ豫算ヲ
協賛スルニ吝カデアリマセヌ、ドウカサウ
云フ御考デナク是ハ一ツヤツテ戴キタイ、
又今二百圓ハ高額所得者云々ト言ハレマシ
タガ、私ハ二百圓マデノ控除ハ認メラレタ
ラドウカト思フ、二百圓以上掛ケル者ハ或
ハ高額所得者カモ分ラヌガ、ソレ等ハサウ
云フ生命保險デモ賴ツテ行カナケレバナラ
ヌヤウナ氣ノ毒ナ人間デス、ソレニ對スル
同情ガナケレバイカヌ、遺族扶助料ガアル
カラ事ガ足リルト云ツタヤウナ官僚主義ノ
考へ方デハイカヌノデス、此處ヲ能ク御考
ヲ願ヒタイト思ヒマス
其ノ次ニ私ノ御伺シタイノハ、寄附金ヲ
或ル程度マデ、例ヘバ所得ノ一割トカ二割
トカサウ云フ程度マデハ所得カラ控除スル
意向ハナイカドウカ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=67
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068・堀切善兵衞
○堀切委員長 小笠原君、其ノ點ニ付テハ
今マデ屢〓質質應答ガアリマシタカラ、大藏
當局ノ考モ一應分ツテ居リマス、ソレハ其
ノ次ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=68
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069・小笠原三九郎
○小笠原委員 ソレデハソレハ止メマシテ、
所謂稅法ノ第二十二條ニ依ルト、本法施行
地ニ住所ヲ有シ或ハ一年以上居所ヲ有セザ
ル個人ガ賞與ヲ受ケタ場合ヲ見ルト、分類
所得稅トシテ百分ノ十五ヲ取ラレルト云フ
コトニナツテ居リマス、卽チ大キイ會社、
銀行アタリノ人間ガ滿洲、支那其ノ他海外
ニ勤務シテ居ルト云フト、百分ノ十五ダケ
ノ分類所得稅ヲ源泉デ取ラレルト云フコト
ニ相成ツテ居ルノデアリマス、公社債ノ利
子、預金利子等ハ當分ノ間ハ百分ノ十五ヲ
源泉ニ支拂ヘバ累進的ナ綜合所得稅ヲ免レ
ルコトニナツテ居ルガ、ソレナラ一步進ン
デ勤勞所得者ニ限ツテ源泉デ百分ノ十五拂
ヘイ、ツレデ綜合所得ノ自由選擇ヲ許ス、
斯ウ云フコトヲ御認ヌニナル考ハナイカド
ウカ、例ヘバ五万圓ノ勤勞所得ダトスルト
御出シ下スツタ表デ見レバ源泉デ百分ノ十
五拂フトスレバ七千五百圓デアルガ、綜合
所得デヤルト一万四千七百二十圓ヲ拂フコ
トニナルノデアリマスガ、此ノ點ニ付テド
ウ云フヤウニ御考ニナルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=69
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070・大矢半次郎
○大矢政府委員 先ヅ第一ニ保險會社ハ事
變下ニ於テ相當ノ働キヲシテ居ル、斯ウ云
フモノニ對シテ從來ヤツタ保險料ノ控除ヲ
認メナイノハドウカト云フ御意見デゴザイ
マス、此ノ點ハ十分考慮致シマシテ、臨時
措置法ニ依リマシテ、保險會社ガ所有シテ
居ル株式ノ配當ニ對スル分類所得稅ハ或ル
程度輕減スル措置ヲ執ツテ居ルノデアリマ
シテ、此ノ事變下ニ保險會社ガ時局ニ相應
シイ活動ヲシテ居ルト云フコトハ十分認メ
テ、ソレニ對應スル租稅上ノ臨時措置ヲ執
ツテ居ルノデアリマス、ソレカラ保險料ノ
點デハ非常ニ手數ダト云フヤウナ、ドウモ役
所ノ手數位ハ構ハズニ納稅者ノ爲ニヤツタ
ラドウカト云フ御話デゴザイマスガ、私ガ
主トシテ先程申上ゲマシタノハ二百万ニ垂
ントスル俸給所得者ハ源泉ニ於テ課稅ヲ受
ケル、官廳モ勿論アリマスケレドモ、大多
數ハ各會社等ニ於テ俸給ヲ支拂フ際ニ納メ
ルコトニナルノデアリマシテ、此ノ方面ノ
實際ノ手數ト云フモノハ新シク殖エル仕事
デ相當手數ダラウト思フノデアリマシテ、
之ニ更ニ保險料ノ控除ヲ致サセルト云フコ
トニナリマスト、實際上餘程ノ重荷ノヤウ
ニ存ズルノデアリマス、此ノ度ノ分類所得
稅ノ源泉課稅ト云フノハ我國デ新シイ試ミ
デアリマシテ、出來ルナラバ手續ヲ簡單ニ
シテ手數ノ掛ラナイヤウニシテ成ベク「ス
タート」ニ誤ナイコトヲ期シタイ、斯ウ云
フ考デゴザイマス、官廳ノ手數ヲ省略ス
ル意味デハゴザイマセヌカラ御諒解願ヒタ
イト存ジマス、ソレカラ所得稅法第二十二
條ノ「法人ヨリ受クル利益又ハ剩餘金ノ處
分タル賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ
對スル分類所得稅」ヲ百分ノ十五ニシテ居
ルノハドウ云フ譯カ、斯ウ云フコトデゴザ
イマス、是ハ從來モ第二種ノ乙ノ所得ト致
シマシテ他ノ稅ヨリモ高イ課稅ヲ致シテ居
ルノデアリマシテ、是等ノ所得ハ分類所得
稅ノ課稅ハ受ケマスケレドモ、受ケル者ハ
本法施行地外ニアリマス關係上綜合所得ノ
課稅ハ受ケマセヌ、其ノ分ヲ見積ツテ幾ラ
カ高クシテ居ル、斯ウ云フ譯デゴザイマシ
テ、昨日モ寧ロ此ノ稅率ハ高キニ過ギルデ
ハナイカト云フ御意見モゴザイマシタガ、
先ヅ大體サウ云フ觀點カラ致シマシテ此ノ
程度高クシテ置クノハ必要デハナカラウカ
ト存ジテ居リマス、銀行預金利子等ニ於キ
マシテハ綜合所得稅ニ代ルニ源泉課稅ヲ
選擇シタ場合ニ百分ノ十五ノ稅率デ以テ課
稅スルト云フコトニナツテ居ルカラシテ、
勤勞所得ニ付テモ其ノヤウニシタラドウカ
ト云フ御話デゴザイマスケレドモ、御承
知ノ通リ銀行預金等ニ對シマシテ源泉選擇
ヲ認メルコトニ致シマシタノハ、事變下ノ
金融界ノ事情ヲ考慮致シマシテ、暫定ノ措
置トシテ此ノヤウニ致シタノデアリマス、
從來是等ハ第二種所得トシテ源泉比例稅デ
課稅シテ居タモノデアリマスルガ、今囘綜
合課稅ヲ致シマスルト高額所得者ノ負擔ガ
激增スル、其ノ結果ト致シマシテ低利ノ銀
行預金等ニ預ケテ居タ者ハ手取ガ少クナル
カラ、銀行預金ヲ引出シテ他ニ投資スルト
云フコトニナリハシナイカ、其ノ過渡期ニ
於キマシテ金融界ニ相當ノ變化ガ來ルト云
フコトハ、此ノ事變下ノ金融界ニ於テ出來
ルダケ避ケタイト云フ趣旨ヲ以チマシテ、
暫定ノ措置トシテ斯ウ云フ風ニ致シタノデ
アリマス、勤勞所得ニ付キマシテハ從來ト
モ第三種所得稅デ他ノ所得ト同ジヤウニ累
進稅率デ課稅シテ來タノデアリマスガ、此
ノ際之ヲ改メテ源泉デ特ニ高イ稅率デ課稅
ストパソレヲ選擇スル途ヲ開クト云フ考ハ
全然ゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=70
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071・小笠原三九郎
○小笠原委員 今ノ金融資本ニ對スル預金
利子等ノ關係デアリマスガ、一體今囘ノ所
得稅法ガ私共ガ非常ニ良ク出來テ居ルト思
フノハ、兎モ角モ一方デ分類所得稅ヲ比例
稅率トシテ彈力性ヲ持タシタ、他方デ綜合
所得稅ハ累進率ニシテ負擔ノ衡平ヲ圖ツタ、
斯ウ云フ點ガ私共ガ此ノ所得稅法ガ良ク出
來テ居ルト思フノデアリマス、然ルニ金融
資本ニ限ツテ此ノ負擔ノ衡平ト云フ一點ヲ
取去ツテシマシタ、詰リ負擔ヲ不衡平ニシ
テシマシテ居ル、斯ウ云フコトハ洵ニ私ハ
宜クナイト思フ、斯ウ云フ考ヘ方ト云フモ
ノハ仕事ハスルナ、成ベク金デモ預ケテ惰
ケテ居レ、斯ウ云ツタコトト殆ド變ラヌヤ
ウナ結果ニナルノデアリマシテ、生產力擴
充ヲ要スル今日甚ダ面白クナイヤリ方ダト
思フノデアリマス、一體此ノ金融資本ヲ見
九ト稅率モ低クナツテ居ルシ、又控除モ
設ケラレテ居ル、斯ウ云フ特別ノ取扱ヲ旣
ニ受ケテ居ルノニ、玆ニ又斯ウ云フ自由選
擇ヲ許シテ居ルト云フコトハ世間デヨク
言ツテ居ルヤウニ、ドウモ弱イ者カラハ取
レルダケ取ルガ、强イ者ニ掛ツタラ其ノ言
ヒ分ハ聽キ入レルト云フコトヲ言ツテ居
ル、斯ウ云フコトハ事變下斯ウ云フ大キイ
稅ヲ課セラレル時ニ於テ、國民ヲ納得セシ
メル所以ヂヤナイ、左樣ナコトデ此ノ重大
ナル時局ガ乘切レルモノデハナイト私ハ考
ハトハ如何ニモ一時的ニハサウ云フコトガ
アルカモ分リマセヌガ、併シ今日マデ說明
ヲ伺ツテ居ル中デ、成程今日是ダケノ區別
ヲシテモ綜合所得ニシナケレイカヌソダト
云フヤウナ結論ヲ私共ガ得ルダケノ說明ヲ
マダ戴イテ居ラヌ、此ノ點ニ付テ尙ホモウ
少シ私共ノ納得ノ出來ルヤウナ御說明ヲ願
ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=71
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072・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 金融資本ヲ擁護スルヤウ
チ結果ニナツテ居ルデハナイカト云フ御話
デアリマスガ、決シテ左樣ナ意味デハナイ
ノデアリマス、今囘ノ增稅ハ全般ニ見マシ
テ大體二、三割程度デアリマスガ、只今御話
ノ第二種ノ所得ニ對シマシテハ、或ルモノ
ハ三倍ニナリ、或ルモノハ二倍强ニナツテ居
ルノデアリマシテ、非常ナ增稅ニナツテ居
ルノデアリマス、之ヲ綜合スルニ當リ四割
控除シ、又ハ一面ニ於テ百分ノ十五ト云フ
稅率デ綜合課稅ニ代ハル源泉課稅ノ選擇
權ヲ與ヘマシタコトハ、是ハ餘リ急激ナル
變化ヲ與ヘマスト、ソレガ經濟上ニ非常ナ
ル影響ヲ及ボシマスノデ、其ノ點ニ付テ考
慮致シタ譯デアリマス、卽チ公債消化ノ上
ニ於キマシモ、又其ノ他ニモ種々ナル關係
ガアリマスノデ、其ノ點ヲ考慮ニ入レマシ
テ當分ノ內過渡的處置ト致シマシテ選擇ノ
方法ヲ許シタ、斯ウ云フ譯ニナツテ居ルノ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=72
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073・小笠原三九郎
○小笠原委員 今ノ種々ナルト云フ御說明
ノ中ニハ、或ハ銀行ナドガ言ツテ居ルヤ
ウナ、ドウモ預金ノ高ガハツキリシテハイカ
ヌ、祕密ヲ要求スルト云フヤウナ點カラモ
來テ居ルノデハナイカト思ヒマスガ、今日
國民ハ總テノ財產ガ皆課稅上明ニサレテ居
ルノデアツテ、銀行預金ダケガ祕密ヲ要求
サルベキ理由ハナイト思フノデアリマス、
此ノ點ニ付テハモツト政府ノ斷乎タル決意
ヲ希望致シマシテ次ニ所得稅ニ付テモウ一
點ダケ御伺致シマス、個人ノ場合ニ付キマ
シテモ所得ノ一定割合ヲ豫メ政府ハ指定シ
テ居ル、例ヘバ生產力擴充ニ擧ゲラレテ居
ル十五品目ニ關係シテ居ルモノダトカ、或
ハ特ニソレニ擧ゲラレテ居ラズトモ時局產
業トシテ必要ナモノト認メラレテ居ル、サ
ウ云フ方面ノ資本ノ蓄積ニ向ケラレルト云
フヤウナ場合ニハ、是ハ綜合所得稅ヲ或ル
程度免除シテ源泉課稅ノミトシタラドウカ
ト考ヘマスガ、此ノ點ニ付テ如何ニ御考ニ
ナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=73
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074・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 特別ノ產業ニ付キマシテ
ハ、卽チ今日ノ時局下ニ於テ最モ必要トシ
マス所ノ事業其ノ他ニ付キマシテハ、或
免稅ノ規定ガアリマスシ、或ハ他ニ補助ヲ
必要トスルヤウナ狀況モアリマスノデ、其
ノ點ニ於テ相當ノ保護ガ加ヘテアルノデア
リマシテ、ソレヲ更ニ御話ノヤウナ風ニ綜
合課稅ノ方ヘ持ツテ行クコトヲ免除スルト
云フ程ノ必要ハナイヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=74
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075・小笠原三九郎
○小笠原委員 或ハ私ノ聞誤リデアルカモ
分リマセヌガ、個人ノ場合ハ法人ノ場合ト
大變違フヤウニ考ヘルノデアリマスガ、大
臣ノ御話ハ法人ニ付テノ御話デハアリマセ
ヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=75
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076・大矢半次郎
○大矢政府委員 個人ノ場合ニ、現ニ法人
ニ付テ認メテ居リマスヤウニ、其ノ所得ノ
中カラ生產擴充ニ必要ナル設備ニ投資シタ
場合、或ハ又國債等ニ投資シタ場合ニハ
或ル程度所得稅ノ稅率ヲ輕減シタラドウカ
ト云フ御尋カト存ジマス、是ハ理論的ニハ
サウ云フコトハ一應考ヘラレルノデアリマ
シテ、私共モ色々考究シテ見タノデアリマ
スケレドモ、實際問題ト致シマスルト法人
ハ全資產ガ明カデアリ、全所得ガ明カデア
リマスルガ、個人ニ付キマシテハ、全資產、
全收入ト云フモノハ明瞭ニナツテ居ラナイ
ノデアリマス、隨ヒマシテ果シテ其ノ年ノ
課稅所得カラドレダケ生產設備ノ方へ持ツ
テ行ツタカ、或ハ國債ノ方ヘ持ツテ行ツタ
ノカ、ソレトモ從來銀行等ニ預ケテ居タ預
金ヲ引出シテ持ツテ行ツタノカ、財產處分
費カラ持ツテ行ツタノカ、色々ノ場合ガア
〓
リマスノデ、中々檢討スルノニハ容易デハ
ナイト思フノデアリマス、是ハ理論上ハ考
ヘラレマスケレドモ、實行問題トシテ中々
困難デアリ、一方ニ於キマシテ個人ガ何カ
ノ都合デ一旦國債等ニ投資シタモノヲ、更
ニ處分シナケレバナラナイト云フ場合ニハ
稅ノ追徵ト云フコトモ考ヘナケレバナリマ
セヌシ、是等ヲ綜合シテ考ヘテ見ルト、今
日實行シ得ルト云フ確信ハ持チ得ナイ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=76
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077・小笠原三九郎
○小笠原委員 ドウモ主稅局長ノ方ハ、先
程ノ株式取得ニ要シタ負債利子ノ如キモノ
ニナルト云フト、稅務署デ十分鑑定ガ出來
ル、サウ云フコトハ能ク分ルト云フコトヲ言
ハレテ、今度又斯ウ云フコトニナツテ來ル
ト、稅務署ノ方デハ分ラヌト云フヤウニ言フ、
一體稅務署ノ働キニ付テドチラニ御考ヘニ
ナツテ居ルノカ、是コソ能ク分ラヌコトニ
ナルノデアリマスガ、併シ時局產業ト云フ
ヤウナモノハ、產業ノ方面ガ限ラレテ居ル、
是コソ取締ルノニハ相當困難ヲ感ゼズニヤ
ラレルノデハナイカ、或ハ海外事業ノ如キ
モ法人ハ特別ナ取扱ヲ受ケテ居リマスガ、
ヤハリ同ジヤウナコトガ言ヘルノデハナイ
カト思フノデアリマス、此ノ點ハ更ニ一ツ
御考ヲ願ヒタイト存ジマス、所得稅ハ大體
其ノ程度ニ致シマシテ、後ニ澤山アリマス
カラ極ク簡單ニ御尋ヲ申上ゲテ參リマス
法人稅ノコトヲ一二點御伺ヒシタイト思
ヒマスガ、度々此席デモ質問ヲサレテ居ル
ヤウニ、法人ノ所得計算ニ付テハ、其ノ稅
金ガ損金ト認メラレテ居ラヌガ爲ニ、隨分
其ノ結果數割モ增稅トナルモノガアルト云
フ風ニ聞イテ居ルシ、又此ノ結果トシテハ
少クトモ過渡期ノ年ニ於テハ、前期ノ租稅
ト當年度ノ租稅ト二重ニ拂ハナケレバナラ
ヌヤウナコトモ起ツテ來ル、且ツ利益ト云
フト、何カソコニ現金デモ殘ツテ居ルヤウ
ニ大藏當局ハ御考ニナツテ居ルヤウニ思フ
ノデアリマスガ、實際各會社ノ利益ハ、大
藏大臣ハ能ク御承知ノ如ク、或ハソレガ生
產設備ナリ、或ハ機械ナリ、土地建物等ト
ナツテ居ルノデアリマシテ、其ノ利益ト云
フモノハ要スルニ貸借對照表ノ「バランス
ニ過ギマセヌカラ、ソレダケノ現金ヲ持ツ
テ居ル譯デハナイノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、是ハヤハリ損ニ見テヤルト云
フコトデナイトスルナラバ、是ハ非常ニ法
人ニ取ツテハ重イ負擔ダト私ハ考ヘルノデ
アリマス、サウシテ之ヲ引イテヤツテ、次
ノ期ニ出サレル、或ハ次ノ期ノ收入或ハ借
金等デ拂フノガ實情デアリマスカラ、此ノ
間マデノ御說明デハ今度ノ改正ガ少シク理
論ニ走リ過ギテ、多年ノ慣行ヲ無視シテ居
ルノデハナイカト云フヤウナ感ジヲ持ツノ
デアリマシテ、此ノ多年ノ慣行ト云フモノ
ハ稅ノ如キモノデハ相當尊重サレルト云
フコトガ、一番稅ヲ拂フ者ニ拂ヒ易クナル
ト云フ點ヲ篤ト御考ガ願ヒタイト思フノデ
アリマス、旣ニ御說明ハゴザイマシタケレ
ドモ、尙ホ一應御伺申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=77
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078・大矢半次郎
○大矢政府委員 是ハ多年慣行的ニ損ニ見
テ居ルノハ仰セノ通リデアリマスガ、ソレ
ガ實際ノ負擔關係カラ見テ不均衡ヲ來ス原
因ニナルノデアリマス、今度改正ヲシヨウ
トスル次第デアリマス、之ニ依ツテ特ニ稅
收入ヲ餘計上ゲヨウト云フ考ハ毛頭アリマ
セヌ、稅ヲ多ク負擔スルカドウカト云フコ
トハ、稅率ニ於テ考ヘテ行クベキモノト存
ジテ居ル次第デアリマス、所得稅、臨時利
得稅等ヲ經費ニ見ルガ爲ニ、事業ヨリ生ズ
ル利益ト稅負擔トガ不均衡ニナルト云フコ
トニ付キマシテハ、本委員會ノ劈頭ニ於キマ
シテ私ハ口頭デ述ベテ置イタノデアリマス
ケレドモ、重ネテノ御尋デゴザイマスカラ、
ソレハ一ツ資料トシテ提出致シタイト存ジ
Pv2、ソレカラ過渡期ニ於テ一一度稅ヲ拂フ
ト云フ御話デゴザイマスガ、一事業年度ニ
於テ稅ハ一度ヅツシカ納メナイノデアリマ
スカラ、一事業年度ニ二度分納メルト云フ
コトハ起ラナイカト存ジマス、ソレカラ
所得ハ、貸借對照表上所得ガアツテモソレ
ハ現金化シテ居ナイモノデアルカラ、斯ウ
フフモノハ損ニ見ルベキダト云フ御話デゴ
ザイマスガ、是ハ損ニ見ルカラソコニ現金
ガ出テ來ルト云フ譯デモナイノデアリマシ
テ、損ニ見ルカ益金ニ見ルカ、所得ガ現金
化シテ居ルカト云フコトハ別個ノ問題ト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=78
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079・小笠原三九郎
○小笠原委員 今ノヤウニ色々ノモノニナ
ツテ居ルト云フコトト、租稅ノ關係トハ別
個ノモノデゴザイマスガ、納稅者ノ納稅上
ノ點ヲ私ハ特ニアナタ方ハ徴稅者ノ立場カ
ラモノヲ論ゼラレルカラ、納稅者タル國民
ノ立場カラ今ノヤウナコトヲ申上ゲテ御參
考ニシテ貰ハナケレバナラヌト云フコトデ
申上ゲタノデアリマスガ、是ハ相當旣ニ御議
論モアツタコトダカラ私ハ其ノ程度ニソレ
ハ止メテ、其ノ次ニ法人ガ國債等ヲ所有シ
タ場合ニハ、法人稅法第十三條デ百分ノ七十
控除スルコトニナツテ居ル、又海外事業、
時局產業等ノ臨時租稅措置法デ特別ノ取扱
ヲ受ケテ居ルノデアリマスルガ、併シ其ノ
法人ガ事業管理及ビ經營上ノ必要カラ他ノ
法人ニ投資ヲシテ株式ノ配當等ヲ受ケル場
合ニ於テ、其ノ配當ニ對シテ課稅セラレテ
居ル上ニ、又此ノ法人ノ方デ取ラレルノデ
アリマスカラ、二重課稅トナルコトニナツ
テ、甚ダ不合理デハナイカト考ヘルノデア
リマス、且ツソレガ延イテ事業ノ壓迫トナ
ツテ來ルノデハナイカト思フノデアリマス
ガ、此ノ點ニ關スル政府ノ御所見ハ如何デ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=79
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080・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ點ニ付キマシテモ先
般小山委員ノ御質問ニ對シマシテ相當詳細
ニ御答シテ居タ次第デアリマスルガ、更ニ御
尋デゴザイマスカラ簡單ニ御答致シテ置キ
マス、大正九年所得稅法ガ大分大規模ニ改
正ヲ見タノデアリマス、其ノ以前ニ於キマ
シテハ我國ニアリマシテモ、他ノ法人ヨリ
受クル配當ハ、其ノ法人ノ所得計算上益ニ
ハ見テ居ナカツタノデアリマス、ソレカラ
個人ニ於テモ配當ハ綜合課稅シテ居ナカツ
タノデアリマスガ、大正九年ノ稅法改正ノ
場合ニ、法人ニ於テモ益ニ見、個人ニ於テ
モ綜合課稅ヲスル、斯ウ云フ風ニナツテ來
タノデアリマシテ、我國法人事業ノ發達ニ
連レマシテ、法人ノ獨立ノ課稅主體ト云フ
風ニ見テ-法人ヲ獨立ノ人格者ト見テ課
稅スルヤウニ漸次進ンデ來テ、ソレガ我國
法人ノ企業ノ發達ヲ別ニ阻碍モシテ來ナイ
ト云フ狀況デアリマスノデ、今日一般的ニ
增稅ニナル際ニ於キマシテ、以前ノヤウナ
コトニ復歸スル必要アリトハ考ヘテ居ナイ
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=80
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081・小笠原三九郎
○小笠原委員 其ノ點モ議論ニ亙リマセウ
カラ、此ノ程度ニシマシテ、次ニ固定資產
減價償却ノ件デアリマスガ、之ヲ法人ノ希
望通リニ-其ノ希望モ勝手ナ希望デハ困
リマスガ、穩當ナル希望通リニ減價償却ヲ
ヤラシテヤルト云フコトハ極ク必要ナコ
トデハナイカト考ヘルノデアリマス、內規
ニナツテ居ル堪久年數トカ、時局產業ノ特
別年數、斯ウ云フモノハ此ノ間頂戴シタ資
料ニアリマスガ、之ヲ見テモ私共ハマダ十
分ト云フコトハ出來ナイヤウデアリマス、
デアリマスカラ一方ニ根本的ナ減價償却ノ
年限ヲ決メテ、大體ソレハ現行ノ二分ノ
程度ニ短縮スルノガ宜イノデハナイカト思
フノデアリマスルガ、之ヲ內規ノミニセズ
二、寧ロ法制化デモセラレテ、皆ノ議論ヲ
許シタナラバ、減價償却問題ニ付テ能ク納
得モ出來、又穩當ナル所ヘ落著クダラウト
思フノデアリマスガ、大臣ハ之ヲ法制化ス
ル御心持ハナイカドウカ、是ハ稅ノ上カラ
云フト相當大キナ問題デアリマスカラ、其
ノ點御伺シタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=81
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082・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 減價償却ノ問題ニ付テハ、
是ハ昔カラ非常ニ議論ノアル問題デアリマ
シテ、稅務署ト事業者トノ間ニ於テモ可ナ
リ議論ヲ致シテ居ル問題デアリマスガ、是
ハ何分ニモ各〓變ツタ多數ノ事業ニ關係ガゴ
ザイマスシ、又其ノ時ノ狀況ニ付テ考ヘナ
ケレバナラヌ點モアリマスノデ、之ヲ法文
化スルコトハ少シク困難ナ事情ガアルノデ
ハナカラウカト思フノデアリマス、最近ニ
於ケル時局產業等ニ對シマシテハ、極メテ
短イ期間ニ於テ償却スルヤウニシ、又化學
工業ノ如キ、日ニ〓〓發達致シマシテ、折
角設備シタモノガ直チニ後ニ至ツテハ役ニ
立タヌヤウナコトニナルヤウナ仕事ニ付キ
マシテハ、殊更ニ償却年限ヲ短クシナケレ
バナラヌ關係モアリマスシ、之ニ反シテ鐵
道デアルトカ、或ハ電力事業デアルトカ、
斯ウ云フモノハ凡ソ償却年限ト云フモノガ
考ヘラレルノデアリマシテ、斯ウ云フ一部
的ノモノニ付キマシテハ償却年限ヲ法文化
スルコトモ出來ヌコトハアリマセヌケレド
モ、全般ニ亙リマシテハ法文化スルコトハ
非常ニ困難ダラウ、斯樣ニ考ヘルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=82
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083・小笠原三九郎
○小笠原委員 私ガ法文化スルガ良イト申
ス趣意ハ、詰リ今日ノ如ク變化ノ激シイ際
ニ、法文化サレテ居レバ議會每ニ之ヲ加減ガ
出來ルケレドモ、內規ダト云フト、大藏省デ
直シテヤラウト云フ心持ガ出テ來ナケレバ
是ハ何トモ致シ方ガナイ、其ノ點カラ法文
化サレタラ良イノデハナイカト思ツテ、今
ノヤウナ御尋ヲ申上ゲタ次第デアリマス、
尙ホ現在償却ノ取扱ヲ見ルト、例ヘバ利益
ノナカツタ時ニ其ノ年ノ償却ヲシナカツタ
ガ、次ノ年ニ利益ガアツタカラ二期分ヲ一
遍ニ償却シヨウトスルト、ソレハ許サレナ
イコトニナツテ居ルノデアリマス、儲ケタモ
ノハ償却ヲ許シテ置イテ、儲ケナイモノガ
次ニ儲ツタカラ二期分償却シヨウトスルト
ソレハ許サナイ、斯ウ云フコトニナツテ居リ
マス、斯樣ニ御取扱ニナツテ居ルモノダカラ
不都合ナコトガ色々アルノデハナイカト考
ヘルノデアリマス、私共ハ左樣ナ場合ニハ、
ハツキリト二期分ニ相當スル分ヲ、第二期
目ニ儲ケタナラ償却ヲ許シテ然ルベキモノ
デアリ、ソレガ償却ノ本旨デアルト考ヘル
ノデアリマスガ、ソレニ對シテ大藏當局ハ
如何ニ御考ニナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=83
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084・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 ソレハ小笠原サンノ御話
ノ通リデアリマシテ、前期ニ償却シテ居ラ
ナケレバ、其ノ次ニ於テ其ノ償却ヲ多ク致
スベキ筋合ダト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=84
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085・大矢半次郎
○大矢政府委員 今ノ點ハ稅務ノ扱ヒニ於
キマシテモ、小笠原サンノ御希望ノ通リニ
致シテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=85
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086・小笠原三九郎
○小笠原委員 事實ハサウナツテ居ラヌノ
デス、ソレデドウカサウ云フ風ニシテ貰ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=86
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087・大矢半次郎
○大矢政府委員 是ハ全ク其ノ通リ致シテ
居リマス、若シモ具體的ノ事實ニ付テサウ
云フ風ニナツテ居ナイト致シマスレバ、何
カソコニ行キ違ヒガアルカ、或ハ稅務署ガ
間違ツテ居ルコトカト存ジマス、全體ノ方
針ト致シマシテハ、是ハ認メル、斯ウ云フ
風ニ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=87
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088・小笠原三九郎
○小笠原委員 私ハ船舶會社等ノ實例ヲ知
ツテ居ルノデアリマスルガ、今サウ云フ風
ニナツテ居ナイ、併シ要スルニ行ヘバ宜イ
ノデアリマスカラ、其レ以上今此處デハ申
上ゲマセヌ
ソレカラ是ハ事務當局ノ方カラ一ツ斯ウ
云フ表ダケ出シテ戴キタイト思フノデアリ
マスガ、今ノ配當利子特別稅法ニ依リマス
下、一割以上ノ利益ヲ擧ゲタモノニ對シテ
機械的ニ百分ノ十五ヲ利益ノ配當トシテ課
稅セラレテ居ルノデアリマスルガ、此ノ
割以上ノ配當額、國債利率四分以上ノ分、
四分五厘以上ノ公債又ハ社債額ガドレダケ
アルカ、斯ウ云フコトヲ、是ハ表デ一ツ御
示シガ願ヒタイト思ヒマス、尙ホ外貨債特
別稅法ノ分デ、是ハ旣ニ御出シ下サツテ、
私ガ見テ居ナイノカモ知レマセヌガ、是モ
後デ、利率四分以上ノ外國ノ國債、利率四
分五厘以上ノ外國ノ國債以外ノ外貨債、ソ
レカラ起債者ガ外貨債利子ニ對スル租稅ヲ
負擔スベキ旨ノ約款ノアル外貨債、是ノ高
ヲ一ツ御示シガ願ヒタイト存ジマス
次ニ相續稅ノコトヲ御伺致シマス、此ノ
相續稅ハ非常ニ急進的デアツテ、斯ウ云フ風
ナコトハ日本ノ家族制度ノ上カラ言ツテド
ウカト云フ點ヲ、私共既ニ本會議ニ於テモ
申述ベマシタカラ、玆ニ其ノ點ヲ繰返シテ
ハ申シマセヌガ、唯家督相續ト云ツタヤウ
ナ場合ニハ、モウ少シ是ハ輕減サレル必要
ガアラウト思フノデアリマス、相續ト云フ
ト、マルデ財產ヲ只デ貰ツタカノ如キ考ヘ
方デ、相續稅ヲ取ルノハ當リ前デアルト云
ツタヤウナ考ヘ方ガアルヤウデアリマスケ
レドモ、日本ノヤウナ家族制度ノ國デアレ
バ、旣ニ華族ノ世襲財產制度ガアツタリ、
獨逸ニモ家產制度ガアルト云ツタ工合デ、
モウ少シ家族制度ヲ尊重スルト云フコトガ、
日本ノ國家ヲ維持スル所以ダト思フノデア
リマシテ、今ノヤウニ三遍モ相續スレバ全
然無クナルト云ツタヤウナ制度ハ、是ハ餘
リ歐羅巴カブレデ宜クナイト思フノデアリ
マスルガ、之ニ付テノ御考ヲ伺ヒタイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=88
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089・櫻内幸雄
○櫻内國務大臣 日本ハ家族制度ノ國デア
リマスガ故ニ、家族制度ヲ維持スルト云フ
上ニ於テ、相續ニ付テ相當考慮ヲ拂フベキ
コトハ固ヨリデアリマス、併シ先般來度々
答ヘテ居リマス通リ、先ヅ五千圓乃至一万
圓ノ資產ヲ相續サレタ人ガ、其ノ一%ノ稅
金ヲ相續稅トシテ納メルト云フコトハ、サ
ウ大シテ無理デハナカラウ、一割ト云フ程
度ニナリマスノニハ約四十万圓ト云フ程度
ニナラナケレバ一割ニナラナイノデアリマ
シテ、四十万圓ト云フ資產ヲ持ツテ居ル人
ガ四万圓程度ノ稅金ヲ納メテモ、是モ大シ
タ困難デハナカラウカト思ヒマス、唯不動
產ヲ多ク持ツテ居ラレル方ガ相續ノ時ニ御
困リニナルコトハ、是ハ尤モデアルノデア
リマシテ、卽チ其ノ資產ガ半額以上不動產
デアル場合ニハ、十箇年ノ延納ト云フコト
ガ許サレテ居ルノデアリマス、其ノ他三度
モ近イ間ニ相續ノ問題ガ起レバ、資產ガ無
クナルト云フ御話デアリマスガ、ソレハ或
ル年限ノ間ニ於テ相續ガ起ツタ場合ニ於テ
ハ、免稅或ハ全免ト云フ規定ガ設ケテアル
ノデアリマシテ、多少ハ增課ニナツテ居リ
マスケレドモ、此ノ程度ハ仕方ナカラウト
思ヒマス、此ノ相續稅ハ曾テ大幅ノ增徵ヲ
シタコトガアリマスガ、ソレ以來他ノ稅ガ
上リマシテモ、此ノ相續稅ハズツト上ゲズ
ニ居リマシタノト、今囘ノ增稅ニ際シマシ
テ、此ノ二三割ノ程度ノ增稅ヲスルコトハ
巳ムヲ得ナイコトデアラウ、斯樣ニ考ヘタ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=89
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090・小笠原三九郎
○小笠原委員 相續稅ノ非常ナ增徵ト云フ
コトハ、私ハ飽クマデ日本ノ家族制度ヲ破
壞スルモノデアルトシテ、政府ノ御考ヲ改
メテ戴カナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、ノミナラズ今御話ノ點カラ致シマシテ
モ、現金カ何カヲ相續スルヤウニ御考ニナ
ツテ居ルノデハナイカト思フノデアリマス
ガ、相續財產ノ大部分ハ不動產デアリマシ
テ、是ハ今マデノ相續稅ノ實際ガ示ス所デ
モ能ク分ルノデアリマス、ソレデ今十年ト
云フヤウナ御話デアリマスケレドモ、是一、
物納ト云フ制度ヲドウシテモ御認メニナラ
ナイト、例ヘバ土地ニシテモ或ハ有價證劵
ニシテモ、事實實行困難ナ場合ガ澤山起ツ
テ參リマス、例ヘバ地方ノ土地ノ如キモノ
ニ付テ見マスト、稅務署ガ其ノ時價ニ基イ
テ相當ナ評價ヲ致シマス、所ガ其ノ土地ヲ
今賣ラウトスルト、其ノ土地ハ、其ノ地方
デハ之ヲ今御話ニナツタ十箇年ト致シマシ
テモ、全然消化力ノナイ所ガアリマス、例
ヘバ私ガ承知シテ居ル人口七八千ノ地方ニ、
約二三万坪ノ土地ヲ持ツテ居ル人ガアリマ
スガ、其ノ人ガ其ノ土地デ不動產ヲ賣ルト
ナレバ、是ハ一年ニ精々四五百坪シカ消化
力ガアリマセヌ、十箇年經ツテ見タ所デ稅
務署ノ評價ニ基ク所ノモノハ賣レナイノデ
アリマス、何處ヲ探シテモ消化力ハナイノ
デアリマス、曾テ銀行ナドハ、財界ノ反動
ガ來タ時ニ、ソレ〓〓不動產會社ヲ作リ、或
ハ有價證劵會社ヲ作ツテ、其ノ物納ヲ認メ
タ、銀行ガ謂ハバ物納ヲヤツタト云フ實例
ガ、今ノ相續稅法ニ付テ私ハ實際ニ當嵌マ
ルモノデアラウト考へルノデアリマス、卽
チ若シ不動產ニ付テ言ヘバ、其ノ評價ヲシ
テ取ツテ吳レト云フナラバ、ソレヲ取ツテ
ヤレルト云フ建前ニスル、ソレガ市街宅地
ノヤウナモノデアルナラバ、漸次換價處分
シテ行ク、現ニ國有財產ト云ツテ澤山持ツ
テ居ルノダカラ、面倒ナコトデモ何デモナ
イ又地方デ耕作地ノ如キモノデアルナラ
バ、是ハ自作農ノ奬勵ト相結ビ付ケテヤツ
テ行ケバ、却ツテ國策的ニ是ガヤツテ行ケ
ルト云フコトニナル、又有價證劵ニ致シマ
シテモ、現ニ大藏省ハ各種ノ有價證劵ヲ御持
チニナツテ居ル、ソレデアルカラ何モ有價
證劵ヲ持ツテハイケナイト云フ理窟ハナイ、
所ガ地方デ五十万圓、百万圓ト云フ會社ノ
株式ヲ相續スル時ニ、ソレガ八分トカ一割
ノ利廻ノモノトスル、稅務署ハ五十圓拂込
ノ株ヲ五十圓或ハ八十圓ト評價スルノデア
リマス、サウ致シマシテモ其ノ株ガ賣却處
分ガ出來ルカト云フト、事實ハ賣却處分ハ
出來マセヌ、賣却處分ガ出來ナケレバ、結
局稅務署ヘ納付シテシマフト云フコトニナ
ル、相續財產ハ何物モナイト云フコトニナ
ツテシマフノデアリマス、机ノ上デ御考ニ
ナツテ居ルト、如何ニモ財產家ガアツタ、
其ノ財產ヲ右カラ左ニ處分ガ出來テ相續
ヲシテ居ル、彼ハ何某ノ子供ニ生レタソ
レデ斯ウ云フ財產ヲ受取ル、ウント取ツタ
ラ宜イデハナイカト御考ニナル、ソコガ考
ノ誤リノ點デアリマス、私共ハドウシテモ
相續稅ヲ御變ヘニナルナラバ、少クトモ物
納制度ニスル、是ハ私ハ諄ク申シマスガ、
何モ面倒ナコトデハアリマセヌ、現ニ國有
財產ヲ不動產デ御持チニナツテ居ルノデア
リマス、又大藏省デハ有價證劵ヲ御持チニ
ナツテ居ル、若シ必要ガアルナラバ、特殊
會社ヲ御作リニナツタラ宜シイ、大藏省ガ
株式ヲ持ツテ不動產會社ヲ御作リニナレバ
宜シイ、又有價證劵會社ヲ御作ニナレバ宜
シイ、サウヤツテ納稅者ノ便利ヲ圖ツテ
ヤルト云フコトニ致シマセヌト、私ハ相續
稅ト云フモノハ、家族制度ノ非常ナ破壞ニ
ナリ、皆ノ怨ミノ的ニナルベキ稅金デアル、
斯樣ニ考ヘルノデアリマス、之ニ關シテモ
ウ一度大藏大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=90
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091・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 物納ト云フ問題ニ付キマ
シテハ、是ハ深ク考慮スベキ問題デアルト私
モ考ヘテ居リマス、併シナガラ事實ノ上ニ
於テ之ヲ取扱ヒマス際ニ於キマシテハ今
小笠原サンノ御話ノヤウナ風ニ、簡單ニハ
參ラナイト思フフデアリマス、成程政府ハ
土地ヲ持ツテ居リ、株劵モ持ツテ居ル、色
色ナ證劵ヲ持ツテ居リマスガ、全國ノ資產
ヲ相續スル場合ニ於テ考ヘテ見マスト、非
常ナ多數ノ數ニ跨ツテ居リマス、サウシテ
同ジ土地ニ致シマシテモ、例ヘバ市街地ノ
土地ニ一ツ例ヲ取ツテ見マスト、表通リノ
三間カ五間ノ地所ハ、二百圓ナラ二百圓ニ
賣レル、裏ノ地所ハ三十圓位ニシカ賣レ
又、斯ウ云フ場合ニ於テ、ドウ云フ風ニ其
ノ地所ヲ別ケテ、ドウ云フ風ニスルト云フ
コトモ困難デアリマスシ、又一團ニナツタ
家屋敷ガアツタト致シマスレバ、家ガ全部
建ツテ居リマスト、之ヲ別ケテヤルト云フ
コトモ大變困難ナコトデアリマシテ、實際
ニ於テ此ノ取扱ハサウ簡單ニハ行カヌト思
フノデアリマス、隨ヒマシテ今直チニ之ヲ
物納ニスル云フコトニ付キマシテハ、相當
ナ準備ト〓究ヲ積マナケレバ私ハ實行出來
ナイト思フノデアリマシテ、今囘ハ此ノ物
納ト云フコトニ付キマシテ、提案ヲ致サナ
カツタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=91
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092・堀切善兵衞
○堀切委員長 一寸私御尋致シテ置キマス
ガ、一定年限內ニ相續ガ二度アタタ場合ニ
ハ二度目ノハ取ラヌ、所ガ三度アツタ場合
ニハ近頃ハドウ致シテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=92
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093・大矢半次郎
○大矢政府委員 五年內ニ相續ヲ開始シタ
場合ニハ前ノ相續財產ニ相當スル部分ニ
付テハ免稅致シテ居リマス、七年內ニ相續
ガ開始致サレマスレバ、二分ノ一ダケ免稅
シテ居ル、斯ウ云フ譯デアリマシテ、今委
員長ノ御尋ノ三度相續ヲ開始シタナラバド
ウカト云フノデアリマスガ、是モ第一囘目
ノ時カラ五年以內ナレバ全免致シマス、七
年以內ナレバ半減致シマス、第二囘目カラ
ヤハリ五年以內ナレバ、第二囘目ノ課稅ヲ
受ケタモノニ付テ全免スル、七年以内デア
リマスレバ第二囘目ノ課稅ヲ受ケタ財產ノ
半分ダケ免稅スル、斯ウ云フ風ニナツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=93
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094・堀切善兵衞
○堀切委員長 五年內ニ三度アリマシタナ
ラバ全免デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=94
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095・大矢半次郎
○大矢政府委員 全免デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=95
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096・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレハ私共大藏省ニ居タ時
ヨリモ大分進步シテ居リマス、吾々ガ居タ
時ハ三囘ヤレバ三囘御取リニナツタ、ソレ
ガ再ビデアルカラ二度ハ宜イ、三度目ハ再
ビデナイカラ三番目ハ宜イト云ツテ取ツテ
居ラレタ、長イ間サウ云フ風ニナツテ居ツ
タガ、近頃ハ御改メニナツタノデアリマス
ネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=96
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097・小笠原三九郎
○小笠原委員 今ノ大藏大臣ノ御說明
ハ私共、少シ承服致シ兼ネマスガ、唯私ガ
申上ゲタ趣意ヲ能ク御酌取リ下サレバ、成
程小笠原ガ言フコトハ實行出來ルコトダ、
曾テ銀行ガ不動產會社ヲ作ツタ、有價證劵
會社ヲ作ツタノハ當リ前ダナト、今ノ大藏
大臣ナラ確ニ御考ニナルト思フ、銀行ガ處
分ガ出來ナイデ困ツタ、銀行ガ有價證劵ヲ
持ツナラ困ツテ行クト御考ニナルコトハ、
反對ノ結果ヲ來シテ居ルト云フコトハ、能
ク大藏大臣ハ御承知デアリマス、今日臺灣
銀行ノ整理ガドウ云フモノニナツテ居ルカ
ト云フコトハ御分リナ筈デアリマス、御困
リデナク、國家ノ爲ニ其ノ方ガ好イ結果ヲ
多ク來シマス、是レ以上ハ申シマセヌガ、
是ハ是非必要ナコトデス、今年ノ立法ニ間
ニ合ハナケレバ、次ヲ時ニハ斯ウ云フモノ
ヲ是非御出シ下サルコトヲ希望致シマス
次ニ臨時利得稅ノコトヲ御尋スルノデア
リマスガ、臨時利得稅ト超過得所稅ヲ何故
一〓ニシタカト云フコトニ付テハ、是ハ度
度質問モアリ、又御答辯ガアツタノデアリ
マスケレドモ、ドウモ私共此ノ點ガ分ラ
又、之ヲ一〓ニサレテ置イテ臨時利得稅ハ
御承知ノヤウニ支那事變終了後一箇年スル
ト廢止スルト云フコトガ附則ニ出テ居ルガ、
其ノ場合ハ超過所得稅ハドウ云フコトニナ
リマスカ、斯ウ云フ全然性質ガ違ツタモノ
ヲ一〓ニサレテ置イテ、ソレハ其ノ時ガ來
タラ變ヘヨウ、斯ウ云フ稅ノヤリ方ハ一向
簡易化サレテ居ラヌト思フ、寧ロ觀念カラ
言フト一〓ニナルベカラザルモノヲ一〓ニ
シタノダカラ、法律ダケハ少クナツタガ、
考ヘ方ハ複雜化シテ來ル、斯ウ云フ風ニ私
共思フガ、此ノ點ニ付テ如何御考デアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=97
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098・大矢半次郎
○大矢政府委員 臨時利得稅ハ昭和十年ニ
創設シタノデアリマスガ、其ノ後支那事變
ガ發生致シマシテ、更ニ經濟界ノ狀況等ガ
變ツテ來タノデゴザイマジテ、之ニ相當ノ
改正ヲ加ヘタノデアリマス、隨ヒマシテ現
在臨時利得稅ノ基準年度ハ甲種、乙種ト二
ツニナツテ居リマシテ、甲種ノ基準年度ハ
昭和四年、五年、六年、乙種ハ昭和九年、
十年、十一年トナツテ居リマシテ、相當複
雜ナ組織ニナツテ居リマス、一方ニ於キマ
シテ超過所得ニ對スル所得稅ト云フノハ第
一種所得稅ノ方ニアリマシテ、是モ亦資本
ニ對シテ年一割以上ニ廻ツタ場合ニハ幾ラ、
年二割以上ニ廻ツタ場合ニハ幾ラ、年三割
以上ニ廻ツタ場合ニハ幾ラ、斯ウ云フ風ニ
ナツテ居ルノデアリマシテ、假ニ今新設法
人ガアツタト致シマスト其ノ法人ガ年ニ四
割ノ利益ヲ擧ゲタト致シマスト、超過所得
ニ對スル稅トソレカラ甲種利得ニ對スル稅
ト、乙種利得ニ對スル稅ト、三段構ヘノ稅
ヲ負擔スル、斯ウ云フ風ニナツテ非常ニ複
雜化シテ居ルノデアリマス、而モ、此ノ超
過所得ト臨時利得トハ性質ハ相當異ナル所
ガアリマスケレドモ、又相通スル所モアル
ノデアリマス、昭和十二年臨時租稅增徵法
ノ場合ニ法人ニ對スル所得稅ヲ相當增徵シ
タノデアリマスガ、普通所得ニ對スル稅ダ
ケ增徵致シマシテ、超過所得ニ對スル稅ヲ
增徵シテ居リマセヌ、是ハ臨時利得稅ヲ切
離シテ考ヘテ見マスト甚ダ不合理ナコトデ
アツテ、寧ロ資本ニ對スル利廻ガ相當高イ
法人ニハ尙ホ重課シテ宜イ筈デハゴザイマ
スケレドモ、一面サウ云フ法人ハ當時ノ經
濟界ノ實際カラ致シマシテ、臨時利得稅モ
納付スル、斯ウ云フ風ニナツテ居リマシテ、
臨時利得稅ハ時局下ニ於テ利益ノ增大シタ
方面ニ對シテ課稅スルト云フ建前カラシテ、
是ハ相當重課シナケレバナラヌト云フノデ
之ヲ增徵シタノデアリマスガ、是ト同時ニ
超過所得ニ對スル稅率ヲ引上ゲマスト、相
當高イ利益率ノ法人ニアリマシテモ其ノ負
擔ガ重過ギルヤウニナル嫌ヒガアリマス
ソレニ更ニ昭和十三年ニ於キマシテ乙種利
得マデモ加ヘテ課稅スルト云ラコトニナリ
マシタ結果ト致シマシテ、新設法人ニ於キ
マシテハ第一種所得稅附加稅、營業收益稅
附加稅、臨時利得稅ト此ノ三ツヲ計算シテ
見マスト、稅率ノ最高ノ所ハ百分ノ九三·
八五カト思ツテ居リマス、是程マデニナツ
テ居リマシテ、モウ現在ノ超過所得、臨時
利得稅ノ體系ヲ此ノ儘ニシテ置キマシテハ、
斯ウ云フ新設法人ニ對シテ負擔ガ餘リニ過
重ニナルト云フ所ガアルノデアリマス、併
シナガラ一面ニ於キマシテ昭和九年、十年、
十一年ハ、事變前トハ申シナガラ軍需工業
ガ相當盛ンニナツテ來テ居ル、滿洲事變以
後ノ軍需工業ガ非常ニ發達シタノデアリマ
シテ、アノ當時三割四割ノ收益率ヲ擧ゲテ
居ツタ法人ガザラニアルフデアリマシテ、
斯ウ云フ方面ニ於キマシテ又乙種利得ニ對
スル課稅ヲ幾ラ引上ゲテモ負擔ガ增シテ來
ナイ、斯ウ云フノデアリマシテ、是等ニ對
シマシテハ超過所得ニ對スル稅率ハ思切ツ
テ引上ゲナケレバ、負擔ノ不均衡ガ起ルト
云フノデアリマス、サウ致シマスト新設法
人ニ對シテハ超過所得ニ對スル稅率ヲ引上
ゲル餘地ガ全然ナイ、昭和九年、十年、十
一年、此ノ三年ニ於テ相當高率ノ利益率ノ
法人ニ對シテハ、超過所得ニ對スル稅デモ
ウント引上ゲナケレバ負擔ノ均衡ヲ得ナイ
斯ウ云フ風ナ狀況ニアリマスト、ドウシテ
モ現行ノ體制ヲ其ノ儘維持シテ居ツタノデ
ハ負擔ノ均衡ヲ得ルヤウヲ稅制改正ハ思
モ寄ラナカツダノデゴザイマス、大體甲種
利得ノ基準年度タル昭和四年、五年、六年
ハ我國ノ財界ノ最モ不況ノ時デアリマシテ、
此ノ當時ニ於キマシテ年七分以上ノ利益率
ノアル法人ト云フモノハ極メテ少イ、殊
大法人ハ殆ドアリマセヌ、中小ノ法人ト云
ヒマスト語弊ガアリマスガ、小法人デ利
益率ノ相當アツタ法人ニ於テ初メテ七分以
上ノ利益率ヲ得タト云フノガ多イノテゴザ
イマシテ、結局現在ニ於テ超過所得ニ對ス
ル稅ヲ負擔シテ居ルモノト、臨時利得稅ヲ
負擔シテ居ルモノトハ、中以上ノ法人ニ於
テハ共通シテ居ツテ、而モ其ノ間ニ新設法
人ト昭和九年、十年、十一年ニ利益率ス多
イ法人トノ間ニ不均衡ガ起ル、斯ウ云フ狀
況デゴザイマスノデ、此ノ際ハ兩者ヲ打ツ
テ一丸トシテ負擔力ニ應ズルヤウナ稅率
ヲ盛ルノガ適當デハナカラウカト存ジタ次
第デアリマス、併シナガラ臨時利得稅ノ基
準年度ト致シマス昭和九年、十年、十一年
ト云フノハ支那事變前ノモノデアリマシテ、
支那事變前ト事變後ニ於キマシテハヤハリ
經濟界ニ相當ノ變動ガアリ、利益ノ擧ゲ方
ニ於テモ相當ノ違ヒガアリマスノデ、是ハ
或ル程度存置シテ置カナケレバナリマセヌ
ケレドモ、一方ニ於テ又之ニ餘リ重キヲ置
クト、實際ニ各法人ノ負擔狀況ニモ適應シ
ナイト云フ點ガアリマスノデ、兩者ヲ調整
スルヤウナ仕組ニ致シタノデアリマス、將
來臨時利得稅ガ廢止セラルル場合ニ於キマ
シテハ、超過所得ニ對スル稅ト云フモノハ
恆久稅トシテ存置セラルルコトニナルノデ
ハナカラウト私カニ考へテ居ル次第デゴザ
イマス
小笠原委員ソレハ其ノ程度ニシテ置キ
マスガ、ドウモ之ヲ見マスト非常ニヤハリ
高率ニ過ギルト思フ、是ガ結局生產擴充ノ
趣旨ニ非常ニ反スルヤウニ考ヘルノデアリ
マス、資本金十万圓以下ノ小法人ニ限ツテ百
分ノ十程度輕減サレテ居ルガ、ヤハリ斯ウ
云フ風ニ資本金十万圓以下ト同ジヤウニ、
一律ニ全部御取扱ニナルベキモノデハナイ
カト考ヘマスガ、斯樣ニシタナラバ政府ノ
收大ハドレダケ減ルカ、是モ一寸御手數デ
スガ一應御示ヲ願ヒタイト思ピマス
其ノ次ニ是ハ極ク簡單ヲコトデスガ、地
租法中改正法律案ノ所デ開拓減租年限ノ短
縮埋立免租年限ノ短縮等ガアリマスガ、
ソレハドレ位短縮サレル見込デアリマスカ、
是ハ事務的ニ御伺スレバ宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=98
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099・大矢政府委員
○大矢政府委員 大體次ノ程度ニ致シタイ
ト存ジテ居リマス、埋立地ハ普通ノ年期ハ
六十年デゴザイマスガ、宅地ニ於テ市街地
又ハ其ノ附近ハ二十年程度、其ノ他ハ三十
年程度、鑛泉地ハ二十年程度、開拓地ハ普
通年期ハ二十年デゴザイマスガ、宅地ハ十
年程度、鑛泉地ハ七年程度ニ致シタイト存
ジテ居リマス、農村宅地トナツタ場合ニ於
キマシテハ年期ヲ短縮シナイデ、普通ノ年
期トスル見込デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=99
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100・小笠原委員
○小笠原委員 次ニ酒造稅ニ付テ御伺致シ
やっと、是ハ此ノ前ニモ一寸御話ガアリマシ
タガ、ヤハリ世間デハドウシテモ了解セヌ
ヤウデアリマス、詰リ〓酒ナドノ造石稅ト
合成〓酒ノ造石稅トハ一石三圓ノ開キガア
ル、此ノ三圓ノ開キハドウ云フ所カラ來テ
居ルノデアルカ、現在ノヤウニドウカスル
ト酒ガ粗惡ニナツテ、國民保健ノ上カラモ
ドウカト思ハレルヤウナ場合ニ於テ、合成
〓酒ノ奬勵ハ餘リドウカト云フ風ニ考ヘテ
居ラレルノデアルカ、ソレトモ又米ナドノ
關係カラ見テ合成〓酒ヲ奬勵シタ方ガ宜イ
ヤウニモ考ヘラレル、ドチラカラモ議論ガ
立ツヤウニ考ヘルガ、大藏省ハドウ考ヘテ
稅ノ區別ヲ付ケテ居ラレルノデアリマスカ、
ソレヲ承ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=100
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101・大矢政府委員
○大矢政府委員 現行ノ酒造稅法ト、酒精
及酒精含有飮料稅法ニ於キマシテモ、兩者
或ル程度稅率ニ差ガアルノデアリマス、更
ニ支那事變特別稅法ノ物品稅ニ於キマシテ
モ兩者ニ差等ヲ設ケテ居ルノデアリマス
〓酒ハ酒精分二十三度ヲ限界トシテ稅率ヲ
盛ツテ居ルノデアリマスケレドモ、實際出
來上ルノハ平均十七八度內外デアリマシ
テ、酒精分二十度以上ト云フノハ少ク、極
メテ稀ニアルダケデアリマスガ、合成清酒
ハ人工的ニ出來ルモノデアリマスカラ、二
十三度マデキチント酒精分ノアルモノガ出
來、隨ヒマシテ割水ガ〓酒ヨリモ相當能ク
利クト云フ狀態ニアリマス、此ノ度各酒類間
ノ負擔均衡ヲ圖ルガ爲ニ、酒精分二十度ヲ
限界トシテ稅率ヲ盛ルヤウニ致シマシタガ、
斯ノ如ク致シマシテモ、前ニ申上ゲマシタ
通リ〓酒ハ十七八度程度デアリマスガ、合
成〓酒ハ二十度マデハキチント出來ルノデ
ゴザイマシテ、隨テ割水モ〓酒ヨリ多少餘
計利クト云フ譯デアリマシテ、實際消費者
ノ負擔スル量ニ對スル稅率カラ申シマスレ
バ、是デモ合成清酒ノ方ガ幾分低目ニナル
コトカト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=101
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102・小笠原三九郎
○小笠原委員 大藏大臣ニ御伺シタイノデ
アリマス、ソレハ酒ヲ專賣ニナサル御意思
ハナイカドウカト云フ點デアリマス、最近
酒カ水カ分ヲヌヤウナ酒ガ出ルニ付テ、國
民保健ノ上カラモ一層サウ云フコトガ言ハ
レルノデアリマス、日本酒ハ此ノ間ノ表デ
御示シニナツタガ、約六千軒以上ノ澤山ナ
酒造業者ガ居ツテ、オ互ニ競爭シ合フト云
フヤウナ所カラ、甚ダ面白クナイコトガ各
方面ニ現ハレテ來テ居ル、ソレデ酒ヲ政府
ノ專賣ニデモサレルト云フコトデアルナラ
バ、非常ニ大キナ財源ニモナルシ、日本酒
ハ殊ニ日本特有ノモノデアルカラ、例ヘバ
砂糖ナドヲ專賣スルノト違ツテ國際經濟ノ
影響ヲ受ケル點ガ非常ニ少イ、サウ云フ點
カラ見テ、又最近釀造法モ進步シテ殆ド四
季釀造ガ出來ルコトニナツテ居リ、今ノヤ
ウニ六千軒ニ餘ル酒造業者ガソレ〓〓酒ヲ
造リ、水ヲ混ゼテ居ルト云フ狀況ハ甚ダ面
白クナイカラ、斯ウ云フ機會ニ政府ノ增收
ノ建前カラモ酒ヲ專賣ニスル御意向ハナイ
カドウカ、之ヲ專賣ニスルニ付テハ私共ハ
相當案ヲ持ツテ居ルノデアリマスガ、政府
ハドウ云フ御考カ、此ノ點ヲ伺ツテ見タイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=102
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103・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 酒ヲ專賣ニスルト云フ問
題ハ可ナリ以前カラ問題ガアリマシテ、
大藏省ニ於テモ種々〓究ヲ積ンデ居リマス
ガ、何分ニモ七千餘軒ト云フ多數ノ製造家
ガ居リマシテ、殊ニ酒ハ各〓違ツタ性質ヲ持
チ、又違ツク商標ヲ以テ販賣サレテ居ルノ
デアリマシテ、之ヲ今直チニ專賣ニ致スト
云フコトニ付キマシテハ、ソレ等ノ點ニ付
キマシテ相當難カシイ點ガアリマスノデ、
只今ノ所デハマダ專賣ヲスルト云フ風ナ考
ヲ持ツテ居ラヌ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=103
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104・小笠原三九郎
○小笠原委員 ソレハ現在ノ所ハサウ云フ
風ニ多數ノ商標モアリ、多數ノ酒ノ質モ出來
フ
テ居ルノデアリマスガ、釀造法モ今日ハ科
學的ニ同一ナ方法デヤリ、而モ四季釀造ガ
出來ル低溫釀造法ノ進步ニ依リマシテサウ
云フヤウニナツテ來テ居ル、多數ノモノハ
寧ロ在來ノ慣習ニ囚ハレテ商標ヲ飮ンデ居
ルト云フヤウナ實情ニアルノデアリマスカ
ラ、今日ハ左樣ナコトニ囚ハレズニ、政府
ガ酒ノ專賣ヲ御實行ニナツテ宜イ時期ニ到
達シテ居ルデナイカト存ジマス、此ノ點ハ
モウ少シ御〓究下サイマシテ、餘リ細カイ
稅金ヲ取立テルコトヨリハ、斯ウ云フモノ
ヂ政府ノ財源ヲ御增シ下サル方ガ宜イデハ
ナイカト考ヘマスノデ、今囘ノ稅ニハ直接
關係アリマセヌケレドモ、特ニ此ノ點ヲ一
言致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=104
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105・中島彌團次
○中島委員 關聯シテ伺ヒマス、酒稅法案
ノ第五十條デアリマスガ、「製造石數査定後
ニ於テ酒類ニ種類ノ異ル酒類又ハ水以外ノ
物品ヲ混和シタルトキハ新ニ酒類ヲ製造シ
タルモノト看做ス伹シ左ニ揭グル場合ハ此
ノ限ニ在ラズ」トアツテ、混ゼルコトヲ許シ
テ居ルノデアリマスガ、今小笠原君ノ申サ
レマシタ酒ノ專賣ニ關聯致シマスケレド
モ、稅金モ納メ兼ネルヤウナ小サイ酒屋ガ
大分アリマスノデ、之ヲ整理致シマシテ、
段々大キナ酒屋ダケヲ殘シテ行クヤウニス
ルコトニ付テドウ云フ御考ヲ持ツテ居リマ
スカ、水ヲ混ゼタリ、非衞生的ナ惡イ酒ヲ
飮マス所ハ小サイ所ガ多イ、サウ云フ小サ
イ酒屋ヲ整理シテ、而シテ機械酒ヲ造ラシ
テ行クト云フヤウニ、專賣ニナル前ニ小サ
イ酒屋ノ整理統一ト云フコトニ付テドウ云
フ御考ヲ持ツテ居リマスカ、ソンナヤウナ
方法ヲ立テテ、衞生的、合理的ナ機械酒ヲ
增加シテ行ツテ專賣ヲヤル前提トシ、中々
納稅モ出來ニクイト云フヤウナ、政府ノ厄介
ニナル小サイ酒屋ヲ整理シテ、大キナ酒屋
ヲ殘シテ置ク、灘ノ生一本ダト云フヤウナ
少數ノ極ク特殊ノモノヲ殘シテ行ツテ、ア
トノモノハ合成酒的ノモノデ間ニ合ハシテ
行ク、サウ云フヤウナモノヲ擴メテ行クト
云フコトハ國民衞生保健ノ上カラ言ヒマシ
テモ宜イ、殊ニ第五十條ノ取締ハ中々容易
デハナイト思フノデス、水ヲ混ゼタリスル
コトニ付キマシテハ、今マデハ取締ガ出來
テ居ツタガ、是ハ取締ガ到底出來ナイコト
ニナルト思フノデス、是カラ考ヘマシテ
モ、惡イ酒ヲ國民ニ飮マスト云フヤウナコ
トヲ防止スル點ニ於キマシテモ、前ニ吾々
ガ大藏省ニ居ツタ當時ニ立テタ案ガ宜イト
考ヘテ居ルノデアリマスガ、ソレガ主稅局
トヤハリ專賣局ノ局ノ所謂イガミ合ニ依
ツテ-イガミ合ト言ツテハ失禮デスケレ
ドモ、ヤハリ商工省ト農林省ガ何時デモ
喧嘩シテ居ルヤウナ工合ニ、デモナイケレ
ドモ、局ハ局ノ權限ノ擴張ト言ハウカ、ソ
レカラ來タノデハナイトハ思ヒマスケレド
モ、ソレヲ引離シテシマツテ、今度燒酎ノ
方ハヤハリ主稅局デ持ツコトニナル、「アル
コール」ハ專賣局デ持ツテ行クト云フヤウ
ナコトニナツテ居ルノデスガ、小笠原君ガ
斯ウ云フ質問ヲサレタカラ私モ氣ガ付イタ
ノデアリマスガ、其ノ案ノヤウニシテ、小
サイ酒屋ヲ段々ト減シテ行クト云フ方針ヲ
執ルコトガ、稅源ヲ確保スル上ニ於キマシ
テモ宜クハナイカ、又大藏省ノ面倒モ少ク
ナリハセヌカト云フヤウニ感ゼラレルノデ
スガ、此ノ點ニ付テドウ云フヤウニ御考ニ
ナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=105
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106・大矢半次郎
○大矢政府委員 御承知ノ通リ昭和十二酒
造年度ヨリ、酒造業者ノ間ニ於テ自治的生
產統制ガ行ハレテ來マシテコヽ三年ニナリ
マスガ、此ノ統制ガ漸次强化サレテ來ルニ
從ツテ、地方ノ中小ノ製造家ノ地位モ稍〓安
定ヲ得テ來テ、中島サンガ大藏省ニ居ラレ
テ色々御心配ニナツタ當時トハ聊カ狀況ガ
違ツテ來テ居ルノデアリマスガ、併シナガ
ラ昨年ノ早害ニ依リマシテ米ガ不足シテ、
是ガ爲ニ〓酒ノ原料米モ一大制限ヲ受ケナ
ケレバナラヌト云フコトニナリマシテ、是
ガ影響ハ又頗ル深刻ニ現ハレテ來テ居ルノ
ハ御承知ノ通リデゴザイマス、之ニ對スル
應急ノ措置ニ付キマシテハ色々具體策モ今
考ヘテハ居リマスルガ、マダ申述ベル機會
ニハ達シテ居ナイノデアリマスガ、ソコデ
〓酒ヲ成ベク廢メテ合成〓酒ノ方ニ轉ジ
テ、サウシテ政府ノ專賣ニシテ行ツタラド
ウカト云フ御尋デゴザイマス、一應ノ御見
解カト存ジマスルガ、今日ノ米ノ不足ト云
フノハ將來モ永續スルカドウカト云フノガ
一ツノ疑問デゴザイマス、御承知ノ通リ數
年前マデハ寧ロ米ガ過剩デ、如何ニシテ之
ヲ消化シテ行クカト云フノガ大キナ問題デ
アツタノデデアリマス、當時酒ノ方ニ向ケ
ルノガ一番用途トシテ廣イモノデアル、日
本酒ノミニ限ラズ、海外ニモ米ヲ原料トシ
タ酒類ヲ輸出スルコトヲ考ヘタラドウカト
云フノデ、釀造試驗所ヲ中心ニシテ色々〓究
シタコトモアルノデアリマシテ、遠イ先ノ
コトニナルトドウナルカ分リマセヌケレド
モ、兎ニ角サウ云フコトモ一ツアルノデア
リマス、若シモ米穀ノ需給狀況ガ緩和サレ
マシタナラバ、私ハ必ズシモ現在日本各地
ニ散ラバツテ居ル中小ノ酒屋ヲ無クシテシ
マフト云フ必要モナイデハナカラウカ、各
地ニソレ〓〓適應シタ產業ヲ分散サシテ置
クト云フノモ一ツノ行キ方デアリマシテ、
之ヲ中央或ハ大規模ノ數會社ニ於テヤルト
云フノモ、果シテ宜イカドウカト云フノハ
一ツ檢討シナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、ソレカラ差當リノ問題ト致シマシテ、
米ガ非常ニ不足シテ居ルカラシテ、寧ロ斯
ウ云フ際ニ思切ツテ合成〓酒ノ方ニ轉換シ
テ國營ニシタラドウカト云フノモ考ヘラレル
ノデアリマスケレドモ、是ハ實際問題ト致
シマスト、ヤハリ合成〓酒ヲ造ルト致シマ
シテモ、原料ノ芋ガ不足シテ居ルノデ、サウ
多クヲ期待スル譯ニハ行カナイノデアリマ
ス、又假ニ芋ヲ相當供給シ得テモ原料用燒
酎酒精ヲ造ルガ爲ニハ相當大規模ノ工場ヲ
造ラナケレバナラヌ、是ハヤハリ鐵材其ノ
他物資ノ不足ノ今日、急速ニハ出來ナイ、
斯ウ云フ制約モアリマスノデ、今一二年斯
ウ云フ方面ニ大々的ニ國營ニ乘出シテ行ク
ト云フノモ時機當ヲ得ナイデハナカラウ
カ、將來モウ少シ經濟界ノ情勢ノ推移ヲ見
テ態度ヲ決メテ行キタイト存ジテ居リマス
中島サンノ大藏省ニ居ラレタ時ニハ、或ハ
主稅局ト專賣局ノイガミ合ト云フコトモア
ツタカモ知レマセヌガ、現在ニ於キマシテ
ハ專賣局ハ揮發油ニ混用スル無水酒精及ビ
工業用原料ノ酒精ト云フ方面ニ專心シ、主
稅局ハ釀造方面ニ專心シ、兩者各〓分野ヲ定
メテ仲好クヤツテ行カウ、斯ウ云フコトニ
ナツテ居リマスカラ御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=106
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107・堀切善兵衞
○堀切委員長 小笠原君ニ営テマシタ時間
ハモウ殆ドナクナリマスカラ、ドウゾ急イデ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=107
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108・小笠原三九郎
○小笠原委員 アト十分間デ終リマス、序
ニ今ノ酒ノコトニ付テ一寸申シテ置キマス、
今ノ御話モアリマシタガ、現ニ日本ガ外國
カラ巨額ノ白米ヲ買入レテ居ルト云フ實情
カラ見レバ、假ニ糖蜜ナラ糖蜜ヲ御入レニ
ナレバ、私共ノ計算デハ約四分ノ一位ノ價
額ヲ拂フコトニ依ツテ十分ニソレダケノ酒
ガ出來ルコトニナリマス、デアリマスカラ
ソレ等ノ點モ併セテ御〓究ニナツテ置クコ
トガ必要ト思フノデアリマス、サウシテ米
ハ優ニソレダケノ節約ガ出來マス
次ニ揮發油稅法中改正法律案ニ付テ申シ
マシ、此ノ理由書ヲ讀ミマスト「國庫ノ增
收ヲ圖リ併セテ燃料國策ノ遂行ニ資スル爲
云々」ト云フコトガ書イテアリマス、燃料
國策ノ遂行トアリマスノハ、多分國內デノ
人造揮發油奬勵ノ意味デアラウカト考ヘル
ノデアリマス、詰リ今日造ツテ居ル揮發油
ノ「コスト」カラ割出シテ、ドウシテモココ
デモウ少シ稅金ヲ取ツテ置カナケレバイ
カヌ、詰リ人造揮發油ノ「コスト」ガ高イカラ、
是ハ國庫增收ヲ圖リトアリマスガ、國庫增
收ノ爲バカリデナクシテ、其ノ點カラ特ニ
是ハ引上ゲラレテ居ル立法デハナイカト考
ヘマスガ、ソレハ如何デアリマスカ、其ノ
點ヲ大藏當局カラ御答ヲ戴キタイ、更ニ御
急ギノヤウデアリマスカラ、燃料局長官カ
ラ、今日本ニ於ケル人造揮發油製造ノ狀況
ハ如何相成ツテ居ルカ、又生產費等ハ如何
相成ツテ居ルカ、此ノ二點ヲ大藏當局ノ說
明ノ後デ御說明ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=108
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109・田中豐
○田中政府委員 只今ノ御質問デゴザイマ
スガ、揮發油稅ヲ今囘上ゲマシタノハ、御
趣旨ノヤウニ、單ニ國庫增收ノミナラズ、
燃料國策ニ資スルト云フ見地モ含メマシタ
上デゴザイマス、燃料國策ノ見地カラ申シ
マスト、我國ノ揮發油ガ非常ニ安イ、其ノ
爲ニ例ヘバ代用燃料ノ製造ニ付キマシテモ
採算ガ合ハナイト云フヤウナ狀況ガアリマ
スノデ、サウ云フ點ニ鑑ミマシテ揮發油稅
モ創設サレタノデゴザイマス、今囘引上ゲ
マシタノモサウ云フ理由ヲ加味致シマシテ
引上ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=109
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110・東榮二
○東政府委員 人造石油ノ生產ノ狀況ハ、
資材ノ不足、ソレカラ技術上ノ困難等ガ
ゴザイマシテ、必ズシモ豫定通リニハ進行
シテ居リマセヌ、併シナガラ最近ハ相當設
備モ出來上ツテ參リマシテ、又技術上ノ困
難モ關係業者ノ非常ナ努力ニ依リマシテ漸
次克服シテ參リマシテ、最近ニ於キマシテ
ハ、相當量ノ產出ヲ見ルヤウニナツテ居リ
マス、其ノ生產費ニ付キマシテハ、今日尙ホ
相當ノ設備ヲ以テ、相當ノ量-所謂經濟
界ニ對スル程度ノ產出ガマダゴザイマセヌ
ノデ、今日ノ狀況デ生產費ヲ計算スルコト
ハ、頗ル困難デアリマス、又當ヲ得ナイカ
ト存ジマス、今日デハ尙ホ相當ノ高イモノ
ダト御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=110
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111・小笠原三九郎
○小笠原委員 私共慥カ帝國燃料ノ時ノ特
別委員トシテ御尋ヲシタ時分ニハ、市場へ
出シテ七十錢位デ賣レルト云フヤウナコトニ
當時承知シテ居ツタノデアリマス、恐ラク
今日デハ一圓ヲ超スコト相當遙カナルモノ
ガアラウカト私共察シテ居リマス、併シ御
說明ハ戴キマセヌカラ、モウ東長官ハ宜シ
ウゴザイマス、有難ウゴザイマシタ
次ニ物品稅ノコトヲ簡單ニ一ツ御尋致シ
マス、ドウモ物品稅ノ中ノ文房具、文房具
ト言ツテモ萬年筆ノ如キモノハ別デアリマ
スガ、或ハ學生ノ帽子ダトカ、老人ノ杖ダ
トカ、傘、履物ト云フヤウナモノ、或ハ一
杯飮ム御茶、例ヘバ紅茶ノ如キ特別ノ
「サービス」ノアル御茶ハ別ダガ、サウ云フヤ
ウナモノデナク、普通何處へ行ツテモ飮ム
綠茶ノヤウナモノマデ稅ヲ取ルト云フコト
ハ、是ハドウモ物品稅ノ範圍ガ擴大シ過ギ
テ、餘リ日常必需品ニマデ及ビ過ギテ居ル
ト思フノデスガ、子供ノ學生用ノ帽子、老
人ノ突ク杖、雨降ノ傘、履物、或ハ綠茶ノ
如キモノマデ取ラナケレバナラナイノデア
ルカ、又サウ云フモノヲ取ラヌコトニシタ
ナラバ、ドレ位ノ減收ニナルカト云フコト
ヲ一ツ御示シ願ヒタイト存ジマス、尙ホソ
レニ對スル御意見ヲ伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=111
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112・田中豐
○田中政府委員 只今御示シノ物品稅ノ品
目ハ、綠茶ヲ除キマシタ以外、從來カラ課
稅致シテ居ルモノデアリマシテ、新タニ今
囘課稅スルトカ、或ハ稅率ヲ上ゲルト云フ
コトデハゴザイマセヌ、之ニ課稅シマス當
初ニハ、ソレ〓〓學生ノ〓子デアルトカ、
或ハ又老人ノ杖トカ、サウ言ツタヤウナモ
ノハ、課稅ニナラナイヤウニ、ソレ〓〓適
當ナ課稅最低限ヲ置キマシテ御協賛ヲ願ツ
タ譯デアリマス今囘ノ綠茶ニ付キマシテハ、
新シク課稅致スノデアリマスガ、之ニ付キ
マシテモ一貫目十圓以上ノ茶ニ課稅スルト
云フヤウナ最低限ヲ置キマシテ、極ク高級
ノ茶ノミニ課稅スルコトニナツテ居リマス、
是等ヲ止メタ場合ノ金額ト申シマスノハ、
品目ヲ能ク承リマシテカラ計算シテ御示シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=112
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113・小笠原三九郎
○小笠原委員 サウ云フ最低限ガ設ケラレ
テ、日常ドウシテモナケレバナラナイモノ
ダト云フ程度ガ壓迫サレルノデ困ルノデア
リマス、私共ハ物品稅ノ趣旨ニハ何等反對
シテ居ルノデハアリマセヌ、唯此處デ大藏
大臣ニ一ツ御伺申上ゲテ置キタイノハ、斯
ウ云フヤウニ段々物品稅ノ範圍ヲ擴張サレ
テ來ルノデスガ、是ハ考ヘ方トシテハ、寧ロ
進ンデ將來取引稅ニデモサレヨウトスル御
考ガアルノデハナイカ、尤モ大藏大臣ハ、
其ノ前ノ立法ノ時ニハ、大藏大臣トシテ御
居デニナツタ譯デハナイカラ、大藏當局ノ
說明ノ中ニサウ云フ意向ノアルコトハ御承
知デハナカラウカト思フノデスガ、是ハ取
引稅ニ進メヨウト云フ所カラ、段々斯ウ云
フ風ニ持ツテ行ツテ居ルノデハナイカト云
フ風ニモ見エマスノデ、此處デ御大藏大臣
ノ御意見ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=113
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114・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 左樣ナ考ハ持ツテ居リマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=114
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115・小笠原三九郎
○小笠原委員 ソレデハモウ一點ダケニシ
マス、營業稅ノ中ニ「新聞紙法ニ依ル新聞紙
ノ出版」ト云フモノガ免稅ニ中ニアリマスガ、
其ノ中ニ、「一月三囘以下發行スルモノヲ除
ク」トシテ、三囘以內發行スル、詰リ雜誌類等
ハ營業稅ヲ課スルト云フコトニ相成ツテ居
ルヤウデアリマス、私ハ是ハ文化的使命ヲ
果ス點ニ於テハ、其ノ間何等ノ區別ガアル
モノデモナイシ、既ニ新聞紙法ニ依ツテ發
行スルモノヲ除クト云フコトデアルナラバ、
全部新聞紙法ニ依ル新聞紙ノ出版ハ之ヲ除
カレルト云フコトガ穩當デハナイカト考ヘ
ルノデアリマス、其ノ點ニ付テ第十一條ニ
「左ニ揭ゲル營業ノ純益ニハ營業稅ヲ課セズ」
トシテ營業稅ヲ課セサセナイモノトシテ、
三ニ「新聞紙法ニ依ル新聞紙ノ出版」ト云フ
コトガアリマシテ、其ノ中ニ括弧シテ「(一月
三囘以下發行スルモノヲ除ク)」トアルノデ
アリマスルガ、新聞紙法ニ依ルモノデアリ
ナガラ、營業稅ヲ課セラレルコトニ相成ツ
テ居ル、ソレデ此ノ新聞紙ノ出版ニ對シテ
營業稅ヲ課セナイト云フノハ、是ハ私ガ申ス
マデモナク文化的使命ヲ果シテ居ル點デ斯
ウ云ブ區別ガザレテ居ルノデアラウト思フ
ノデアリマス、所ガ斯ウ云フ風ニ三囘ト云
フ所デ區別ノ點ヲ置カレタノハ何處カラ來
テ居ルカ、此ノ點ヲ伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=115
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116・田中豐
○田中政府委員 現在ノ營業收益稅ニ於キ
マシテ新聞紙法ニ依ル出版ヲ全部免稅致シ
テ居リマスノハ、御話ノ通リ文化的使命其
ノ他ヲ考慮サレタ結果ダト思ヒマス、併シ
一面ニ於キマシテハ社會〓育的或ハ國民〓
育的ニ非常ニ有効ナル書籍ノ出版其ノ他ニ
對シマシテモ、總テ營業收益稅ヲ課稅致ス
コトニナツテ居リマスカ、之等トノ權衡上、
日刊ノ新聞ハ特殊ナ意味ヲ持ツモノトシテ
除外スルニ致シマシテモ、各種ノ娛樂雜誌、
其ノ他ノ雜誌ニ付キマシテモ、新聞紙ト同
樣ニ扱フノ必要ガナイト云フ觀點カラ、今
囘或種ノモノニ付テ課稅スルコトニ致シテ
居リマス、唯月三囘ト云フコトニ切リマス
コトニ依ツテ、例ヘバ週刊ノ雜誌ハ課稅ヲ
免除サレル、旬刊ノモノハ課稅サレルト云
フコトニナリ、其ノ間不公平トノ問題デア
リマスガ、其ノ點ハ現在ノ新聞紙法ニ於キ
マシテモ、例ヘバ保證金ヲ命ズル場合ニ、
月三囘ヲ超エルモノト以下ノモノトヲ區別
シマシテ、保證金ガ半額ニナツテ居リマス、
ソコラノ點ヲ標準ニ致シマシテ、大體週刊
程度マデ新聞紙ニ準ジテ免稅スルヲ適當ト
認メタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=116
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117・小笠原三九郎
○小笠原委員 今娛樂雜誌云々ト言ハレマ
シタガ、週刊ノ分ヲ課シナイナラバ、大部
分ハ娯樂的ノモノデアツテ、之ヲ日刊新聞
ト同樣ニ扱フト云フ趣意ナラバ、ドウモ私
ハ承服出來ナイ、寧ロ月刊ノ雜誌トカ、月
三囘トカノ雜誌等ニ非常ニ尊敬スベキ意見
ガ載ツテ居ル、寧ロソレノ方ガ文化的使命
ヲ果ス上カラ言フナラバ、大キイト思ヒマ
ス、又サウ云フヤウナ三囘トカ何トカト云
フコトニ拘泥セズニ、新聞紙法改正ノサ
レルマデハ、新聞紙法ノ出版ト一樣ニ御
取扱ニナル方ガ公平デハナイカト考ヘ
ルノデアリマス、大分委員長カラモ御
催促モアリマシテ、時間モ掛カリマシタカ
ラ、後ハモウ一遍私ノ番ノ來マシタ時ニ
更ニ足ラザル點ハ御尋スルコトニシマシテ
一應是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=117
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118・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ山本君デスガ、差
支ガアルサウデスカラ伊藤君ニ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=118
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119・森田福市
○森田委員 一寸關聯シテ-何レ私ノ番
ノ來タ時ニ、此ノ問題ハ聽カズニ濟ミマス
カラ聽キマスガ、物品稅ノ中ニ、昨年御承知
ノ通リ政府ノ原案デハ出テ、此ノ稅制委員會
デ削除シタモノガアル、卽チ石鹼デアルトカ、
茶デアルトカ、「シャンプー」デアルトカ洗粉
デアルトカ、齒磨デアルトカ云フモノヲ削除
シタノデス、是ハ、政府モ同意シタ、ソレヲ本
年又此ノ原案ヲ作ル時ニ、何レ是ハ昨年ノ
夏ヤツタコトダラウト思フガ、議會デ修正
ヲ三月ニヤツテ、七八月ニ此ノ原案ヲ作ル
時ニモウ斯ウシナケレバナラヌト云フコト
ハ、恐ラク議會ノ空氣ト云フカ、議會ノ決
議ノ權威ヲ尊重セズ、如何ニモダラシガナ
サ過ギルト思ヒマス、大藏大臣ハ勿論今囘
全面的ニ承認シテ御出シニナツタノダカラ、
斯ウ云フモノヲ削レナカツタカモ知レマセ
ヌガ、ナゼ斯ウ云フ風ニナツタノデアラウ
カ、私ハ此ノ點ハ甚ダ不都合ダト考ヘテ居
ル、大藏大臣ハ其ノ點ハドウ御考ニ·シル
カ、大藏大臣ノ御答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=119
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120・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 甚ダナンデアリマスガ、
私前議會ノ決議ヲ能ク存ジテ居リマセヌ、
之ヲ決定致シタ時ニハ丁度之ニ參畫致シテ
居リマセヌノデ、一應其ノ事情ヲ聽キマシ
テカラ、私ノ意見ヲ申上ゲタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=120
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121・森田福市
○森田委員 ソレデハ私ノ番ガ來ルマデニ
御〓究置キヲ願ヒタイト思ヒマス、物品稅
ヲ見ルト、昨年ノ議會ニ於テ各派一致デ、
政府モ同意ヲ與ヘテ、石鹸デアルトカ、或
ハ齒磨、或ハ日本茶ト云フヤウナ小サナモ
ノハ、ドウ考ヘテ見テモ生活必需品デアリ、
縱カラ論ジテモ橫カラ論ジテモ是ハ課稅品
目カラ除外スベキモノダト決ツタモノヲ、
半年經ツカ經タズニ又之ヲ直グニ揭上シテ
協賛ヲ求メヨウト言ハレルメハ、ドウモ甚
ダ議會ヲ侮辱シ、無視シタヤリ方デアルト
思フノデアリマス、ドウ云フ譯デ斯ウ云フ
コトヲシナケレバナラナツタト云フコトヲ、
私ノ番ガ來ルマデニ能ク御〓究ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=121
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122・堀切善兵衞
○堀切委員長 今朝程皆サンガマダオ出ニ
ナラヌ內デシタガ、小笠原サンノ御始メニ
ナル時ニ申シテ置キマシタガ、段々會期モ
切迫シテ來マシタノデ、委員長ニ於テ統制
ヲ强化シテ進捗ヲ圖ルコトニ致シマシタカ
ラ、御諒承願ヒマス、伊藤君
〔委員長退席、濱野委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=122
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123・伊藤五郎
○伊藤委員 私ハ先ヅ大藏大臣ニ御尋致シ
タイト思ヒマス、物價ト財政支出ト何レガ
指導的地位ニアルカト云フコトヲ調ベテ見
マスト、明治二十三年カラ昭和十年マデノ
物價ト一般會計歲出トノ動キヲ見ルト、財
政支出ト物價トハ離ルベカラザル所ノ强イ
關係ガアルコトハ御承知ノ通リデアリマス、
而シテ昭和六年以後ニ付テハ、常識上モ財政
支出ガ物價ヲ「リード」シ、特ニ支那事變勃發
後、卽チ昭和十二年以後ハ、財政支出ノ膨脹
ニ連レテ、物價ガ暴騰シタルコトハ歴然タ
ル名所ノ事實デアリマス、カルガ故ニ商工
大臣ガ如何ニ低物價政策ヲ堅持シヨウト致
シマシテモ、此ノ財政膨脹ガ物價ヲ指導シ
テ居ル以上、到底豫期ノ目的ヲ達スルコト
ハ出來ナイノデハナイカト私ハ思フノデア
リマス、是ニ於テ私ハ國防費ヲ除ク一般財
政支出ヲ爲スニ當リ、出來得ル限リ厖大購買
力ノ適正化ヲ圖リ、サウシテ物價ノ安定ヲ
指導シナケレバナラナイト云フ考ヲ持ツテ
居ルノデアリマス、仍テ此ノ際大藏大臣ハ、
膨脹財政支出ハ物價暴騰ヲ指導スルヲ以
テ、是ガ對策ト致シマシテ、政府自身ノ厖
大購買力ノ適正化ヲ圖ル必要ガアルト思フ
ノデアリマス、各省ハ所謂「セクショナリ
ズム」ナ觀念ヲ拂拭スル能ハズシテ、豫算
ノ編成ニ當リ不要不急ノ費用ヲ、時局ニ藉
ロシテ其ノ分捕戰ニ狂奔致シテ、サウシテ
各省ハ其ノ獲得シタル所ノ厖大ナル豫算ノ
消化ニ苦シンデ居ルノデアリマス、昨年私
ハ-是ハ省ノ名前ハ申上ゲマセヌガ、時
局ニ藉ロシテ厖大ナル豫算ヲ取ツテ、其ノ
豫算ノ使ヒ途ニ困ツテ、全國ニ此ノ豫算ノ
使ヒ方ヲ勸誘シタト云フ事實ヲ知ツテ居ル
ノデアリマス、是ハ一例デアリマスルガ、
其ノ他ノ各省ニ於テハ、恐ラク之ニ類似シ
テ居ル所ノ、此ノ厖大豫算ノ消化難ニ苦シ
ンデ居ル例ガ澤山アルト私ハ思フノデアリ
マス、吾々ハ此ノ厖大ナル豫算ヲ支出スル
承認ヲ與ヘマシタ、併シナガラ此ノ厖
大ナル豫算ヲ無意義ニ使ツテ宜イト云フ承認
ハ與ヘテ居ナイノデアリマス、出來ルダケ
節約シテ、出來ルダケ時局ニ相應シタル所
ノ豫算ノ支出方ニ付テハ承諾ヲ與ヘテ居
リマスルガ、徒ナル冗費ノ支出ニ付テハ
絕對ニ承認ハ致シテ居ナイノデアリマス、
吾々衆議院ト致シマシテハ、此ノ豫算ノ審
議ニ當リ、豫算ヲ通過セシメタル以上、其
ノ豫算ガ一年間ドウ云フ風ニ實行セラレル
カト云フコトヲ監督指導シテ、サウシテ吾
吾ハ此ノ豫算ノ持ツ內容ヲ完全ニ貫徹出來
ルヤウニ仕向ケナケレバナラナイ所ノ重大
ナル使命ヲ持ツテ居ルノデアリマス、御承
知ノ如ク我ガ議會ニハ決算審議權ト云フモ
ノガアリマスガ、決算審議權ハ既ニ使ツタ
所ノ豫算ガ正當デアルカドウカヲ調ベルダ
ケデアツテ、此ノ豫算ニ對シテ果シテ正當
ナル使ヒ方ヲスルカドウカト云フコトヲ監
督スル權限ハナイノデアリマス、是ハ衆議
院トシテハ甚ダ無責任デアラウト思フノデ
アリマス、豫算ヲ通シタ以上ハ、其ノ通シ
タ豫算ガ一年間ドウ云フ風ニ使ハレテ居ル
カ、ドウ云フ風ニ使ヒツツアルカト云フコ
トヲ、常ニ監督指導スル所ノ重大ナル責任
ガ吾々議員ニアルモノデアルト私ハ痛感ヲ
致シテ居リマス、此ノ一年間ヲ通ジテ常ニ
各省ヲ監督指導スルコトガ吾々議員ノ重大
ナル責任デアルト思フガ、憲法上吾々ニサ
ウ云フ權限ハナイノデアリマス、是ニ於テ
私ハ大藏大臣ニ御諮リ致シタイノハ、各省
ノ豫算ノ施行ニ際シマシテ、其ノ豫算ガ果
シテ本當ニ其ノ目的ニ向ツテ立派ニ使ハレ
テ居ルカドウカト云フコトヲ監督指導ヲスル
所ノ、豫算施行ニ對スル常置委員會ヲ作ル
必要ガアルノデハナイカト私ハ思ツテ居ル
ノデアリマス、卽チ衆議院全般ガ茲ニ打ツ
テ一丸トナツテ、或ハ其ノ中ノ委員ガ、各
省ノ豫算ガドウ云フ風ニ使ハレテ居ルカト
云フコトヲ一年中、少クトモ一箇月ニ一度
位ハ各省ノ會計帳簿ヲ審査シテ、サウシテ
此ノ豫算ガ果シテ正シク使ハレテ居ルカド
ウカト云フコトヲ調ベテ、吾々ハ其ノ責任
ヲ果サナケレバナラヌト思ツテ居ルノデア
リマス、其ノ意味ニ於テ、大藏大臣ハ一ツ
本當ニ勇斷ヲ以テ、此ノ各省豫算ノ消化難
ニ苦シンデ居ル今日、衆議院議員及ビ貴族
院議員ヲ主體トスル所ノ、豫算施行ニ對ス
ル一ツノ監査委員會ヲ設ケテ、此ノ厖大ナ
ル豫算ヲ節約スル御意思ガアルカドウカ、
之ヲ一ツ御伺致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=123
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124・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 物價騰貴ト財政ノ膨脹ト
ガ相竝行スルト云フ話ニ付キマシテハ、私
ハ大體ニ於テ御同意ヲ表スル者デアリマス、
固ヨリ物價ノ騰貴ハ單ニ財政ノ膨脹ノミナ
ラズ、他ニモ幾多ノ理由ガアツテ物價ノ騰
貴ヲ招キマスガ、併シナガラ物價騰貴ノ一
原因ト致シマシテ、消費ノ方面ガ殖エタ場
合ニ於テハ、是ハ當然物價ガ騰貴スルノデ
アツテ、卽チ豫算ガ膨脹致スト云フ事柄ハ、
消費ノ方面ガ膨脹スルト云フコトヲ意味ス
ルノデアリマスガ故ニ、豫算等ニ竝行シテ
或ル程度物價ガ上ルト云フコトハ當然ノ成
行ト思ヒマス、而シテ現在非常ニ物價騰貴
ノ趨勢ニアル、而シテ一面國家ノ財政ト致
シマシテ、百數億ト云フ、未ダ曾テナイ大
キナ豫算ヲ使フコトト相成ツテ居リマス、
假ニ軍事費ヲ除キマシテモ、未ダ曾テナイ
巨額ニ達シテ居ルノデアリマス、ソレハ御
說ノ通リデアリマス、隨テ此ノ豫算ヲ實施
スルニ當リマシテ、細心ノ注意ヲ拂ツテ、
苟モ一錢一厘ト雖モ無駄ニ使ハナイヤウニ
致ス、國民ノ膏血ニ依ツテ注ガレタル所ノ
此ノ費用ヲ有效的、殊ニ豫算ニ對シテ見込
マレタル所ノ事業ヲ完遂スル上ニ、遺憾ナ
ク是ガ使用サレルコトニ付キマシテハ、私
共全力ヲ注イデ此ノ問題ニ對シテ注意ヲ拂
ツテ行キタイト思ツテ居リマス
而シテ只今ノ御意見ノ、衆議院ハ豫算ニ
對シテ協賛ヲ與ヘル、併シナガラ其ノ協賛
ハ豫算面ニ現ハレタ事業ヲ完全ニ有效ニ遂
行スル意味ニ於テ協贊ヲ與ヘテ居ルノデア
ル、故ニ此ノ議會閉會後ト雖モ、常ニ之ヲ
監視シ、指導シ、督勵シテ行ク立場ニアル
ト考ヘルノデ、ソレニ對シテ特別ノ委員會
ヲ組織シテ、常時監督指導スルノ方法ヲ講
ジテハドウデアルカ、ソレニ對シテ如何ナ
ル考ヲ持ツテ居ルカト云フ御話デアリマス
ガ、御承知ノ如ク此ノ事業遂行ニ對シマシ
テノ會計上ノ問題ニ付キマシテハ、會計檢
査院ニ於テ常ニ之ヲ監督致シテ居ルノデア
リマシテ、又具サニ調査ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、而シテ其ノ結果ニ付テハ今御話
ノ如ク、衆議院ノ決算委員會ニ於テ十分ニ
檢討ヲサレテ、サウシテソレガ本會議ニ於
テ承認サレル、若シ決算ニ於テ不都合ナ事
ガアリマスレバ、自ラ其ノ責任者ノ責任
ヲ問フ云フト風ニナツテ居ルノデアリマス、
唯其ノ制度ガ、決算ハ前年一箇年カ繰上ゲマ
シタケレドモ、ソレデモ尙ホ今年度ハ十三年
度ノ決算ガ出テ居ルノデアツテ、十四年度
ノモノガ直グ決算トシテ現ハレルモノデハ
アリマセヌカラ、監督上十分デナイ云フ御
考ヲ御持チニナルト云フコトハ尤モデアリ
マスケレドモ、大體ニ於テ今ノヤウナヤリ
方デサウ不都合ハナイト思ヒマス、唯本年
ノモノヲ本年實行スル時ニ當ツテ、監督シ
テ行ク組織ガナイト云フ御話デアリマスガ、
ソレハ全體ノ議員諸君ガ十分ニ御注意下サ
ルコトデアリマシテ、成ル程各省ノ會計ニ
立入ツテ御調ヲナサルト云フコトハ出來マ
セヌケレドモ、其ノヤリ方ニ對シマシテハ
大體ニ於テ監視ガ出來ル譯デアリマシテ
若シ苟モ不都合ナ點ガアリマシタナラバ、
次ノ議會ニ於テ十分指彈ガ出來ルコトト思
ヒマスノデ、今玆ニソレニ對シテ直チニ委
員會ヲ開イテ、サウシテ常時之ヲ監督スル
ト云フコトノ必要ガアルトハ認メテ居リマ
セヌシ、又左樣ナル事柄ヲ計畫モ致シテ居
ラヌ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=124
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125・伊藤五郎
○伊藤委員 私ハ會計檢査院竝ニ決算委員
會ノ審査ニ付テハ、十分承知シテ居ルノデ
アリマスルガ、斯ル會計檢査院ノ審査ヤ或
ハ決算委員會ノ審査等ニ於テハ、本當ニ豫
算ガ立派ニ使ハレテ居ルカドウカト云フコ
トハ分ラナイ、若シ衆議院ガ一體トナツテ
其ノ委員會ヲ作ツテ各省ノ豫算ノ施行ニ當
ツテ本當ニ監督シタナラバ、政治的ニ見テ
日本ノ國家ノ爲ニドウシテモ必要デアル、
或ハ此ノ豫算ハ通過シタケレドモ日本ノ國
家ニハ餘リ必要デナイト云フ場合モ生ジテ
來ル、サウ云フ場合ニハ之ヲ節約サセルト
云フ大キナ立場カラ、此ノ大委員會制度ヲ
作ルコトヲ希望シテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、大藏大臣ハ今咄嗟ノ間ニ於テ御考ヘ
ニナツタコトデアリマスケレドモ、一ツ此
ノ點ニ付キマシテ將來十分御〓究ヲシテ戴
キタイト思フノデアリマス
第二ニ御伺致シタイコトハ、專賣局ニ關
スルコトデアリマス、厖大ナル財政ガ物價
ニ重大ナル影響ヲ及ボスト云フコトハ、大藏
大臣モ大體御認メニナツタヤウデアリマス、
而シテ私ノ〓究致シタ所ニ依リマスレバ、
歲入ト歲出ノ何レガ物價ノ變動ニ强イ關係
ヲ持ツテ居ルカト云フコトヲ調ベテ見マス
ト、特ニ歲入ノ厖大ナル時ニ物價ガ高クナ
ツテ居ルノデアリマス、サウシテ歲入ノ內
公債收入、地租等ヲ除イタ有ユル收入、卽
チ所得稅其ノ他ノ租稅竝ニ官業收入等ガ、絕
大ナル關係ヲ持ツテ居ルノデアリマス、卽
チ是等ノ收入ガ大キケレバ大キイ程、物價
ガ高クナツテ居ルヤウニ私ハ考ヘルノデア
リマス、此ノ意味ニ於テ私ハ官業收入ノ中
ニ於テ、特ニ煙草ノ値上ニ付テ、一ツ御尋
ヲ致シテ見タイト思フノデアリマス、私ハ
煙草ノ値上ト云フモノハ先程申上ゲマシタ
通リ、一ツノ物價高ヲ誘致スルモノデアル
ト云フコトハ、是ハ斷言ヲシテモ憚ラナイ
ノデアリマス、煙草ノ値上ニ依ツテ他ノ物
價高ヲ誘致スルナラバ、私ハ煙草ノ値下ヲ
シテ、低物價政策ヲ政府自ラ一ツ之ヲ强行
スルコトガ、絕對ニ必要デアルト云フ考ヲ
持ツテ居ルノデアリマス、今更申スマデモ
ナク煙草專賣ハ、專賣事業ノ九割ヲ占メテ、
昭和十年度ニ於ケル總賣上二億九千五百万
圓ニシテ、其ノ利益ハ驚クナカレ一一億圓ヲ
突破スル重要財源トナツテ居ルノデアリマ
ス、試ミニ昭和九年度ニ於ケル煙草總賣上
高二億九千百五十五万九千圓ニ對シ、原價
計算ハ一億七百九十四万五千圓デアリマシ
テ、差引利益金ガ一億八千三百六十一万四
千圓デアリマシテ、消費稅トシテ大衆ニ轉
稼サレタモノハ、實ニ一億八千三百六十一
万四千圓ニナツテ居ルノデアリマス、之ヲ
稅率ニ致シテ見マズト、六割强ノ課稅ヲ吾
吾大衆ガ負擔シテ居ルコトニナルノデアリ
マス、而シテ政府ハ昭和十一年十一月十二
日、二割方ノ値上ヲ爲シ、更ニ政府ハ低物
價政策ヲ死守セザレバ財政ノ破綻ヲスラ來
ス時期デアツタニ拘ラズ、昭和十四年末ニ
至リ平均一割四分ノ大幅値上ヲ斷行致シタ
ノデアリマス、斯ル再度ノ値上ニ依ツテ煙
草ノ消費稅割合ハ、正ニ七割乃至八割ト云
フ恐ラク世界無比ノ高率ニ上ツテ居ルト私
ハ思フノデアリマス、零細ナル消費者大衆
ニ對シテ、斯ノ如キ犧牲ヲ轉嫁セシムル事
ハ、果シテ正義公平ノ觀念ヨリ見テ之ヲ許
シテモ宜イノデアリマセウカ、煙草ハ生活必
需品デアリマス、大藏省ノ方ハドウ云フ風ニ
考ヘテ居ルカ知レマセヌ、併シナガラ社會通
念上煙草ハ絕對ニ生活必需品デアリマス、贅
澤品デハ斷ジテナイノデアリマス、一本ノ煙
草ハ戰線ノ勇士ヲドンナニ慰安スルコトデア
リマセウ、又疲勞困憊致シタル所ノ產業戰士
ハ此ノ一本ノ煙草ニ依ツテ起死囘生スルノデ
アリマス、斯ル重要ナル所ノ生活必要品ニ
對シマシテ、大藏省ハ貢取リノ精神ヲ發揮
致シマシテ、七割乃至八割ノ稅金ヲ課スル
トハ、政府ハ正ニ文字通リノ苛斂誅求ヲヤ
ツテ居ルモノト申シテモ斷ジテ憚カラヌノ
デアリマス、加之政府ハ低物價政策ヲ堅持
セザレバ惡性「インフレ」ヲ招來シ、遂ニハ
財政ノ破綻ヲ來スベキコトヲ十分ニ知ツテ
居リナガラ、政府自ラ經營スル煙草專賣事
業ニ於テ、原價計算ニ對シテ七八割ノ課稅ヲ
爲シテ、煙草ヲ暴騰セシメ、延イテ他ノ有
ユル物價ノ異常ナル騰貴ヲ刺戟シタルコト
ハ、大藏省ノ近來ニナイ大イナル「ミス」デア
ルト私ハ思フノデアリマス、靑木前大藏大
臣ハ阿部內閣ノ退陣ニ當リマシテ、煙草ノ
値上ニ對シテアレダケノ惡評ヲ浴ビナガ
ラ、尙目ツ反省スル所ナク、寧ロ煙草ノ値上
ハ今以テ失敗デハナイト思フト云フ辭ヲ殘
シテ野ニ下ツタノデアリマス、昔カラ斯ウ云
フ言葉ガアリマス、鳥ノ死ナントスルヤ其ノ
聲ヤ悲シ、人ノ死ナントスルヤ其ノ聲ヤ悲シ、
人ノ死ナントスルヤ其ノ聲ヤ善シト云フ
言葉ガアリマスケレドモ、靑木大藏大臣ハ
退陣ニ當ツテ國民大衆ニ對シテ挑戰的言辭
ヲ弄シテ、遂ニ悄然トシテ退イテシマツタ
ノデアリマス、洵ニ遺憾至極ニ堪ヘナイト
存ジマス、此ノ際大藏大臣ハ此ノ席上ニ於
テ、煙草ノ最近ニ於ケル所ノ原價計算ヲ國
民大衆ノ前ニ明示致シマシテ、サウシテ思切
ツテ値下ヲ斷行シ、政府自ラノ經營スル所
ノ專賣事業ニ於テモ斷ジテ不當ナル利益ヲ
壟斷スルコトナク、社會通念上正當ナル利
益ニ止メ適正價格ト低物價政策ノ模範ヲ官
業自體ニ於テ全國民ニ示シ、サウシテ國民
生活ノ安定ヲ圖ル御意思ハアリマセヌカ、
ドウカ、之ニ付テ本當ノ御苦心ナサツタ所
ノ大藏大臣ノ肚ノ底カラ湧キ上ツタ所ノ
御答辯ヲ得タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=125
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126・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 煙草ガ專賣ニナツテ居リ
マシテ、是ガ相當巨額ノ利益ヲ擧ゲテ居ル
コトハ事實デアリマス、而シテ昨年値上致
シマシタコトニ付キマシテ、今日勞働者其
ノ他ガ煙草ニ依ツテ慰安ヲ求メテ居ルノハ
殆ド生活必需品トナツテ居ル、此ノ生活必
需品ニ對シテ非常ナ値上ヲスルコトハ不都
合デアル、斯ウ云フ御意見ト拜聽スルノデ
アリマスガ、固ヨリ煙草等ニ付キマシテモ、
出來得ル限リ安イ値段ヲ以テ供給スルト云
フ事柄ハ是ハ考ヘナケレバナラナイト思ヒ
マス、併シ煙草ノ或ル種類ニ付キマシテハ、
是ハ贅澤ト看做スコトガ出來ルモノモアル
ト思ヒマスノデ、私自身ト致シマシテハ贅
澤ナ煙草ノ値ガ多少上ツテモ、一般大衆ノ
煙草ニ對シテハ出來ルダケ安ク致スコトガ
本來爲サナケレバナラヌコトデアルト存ジ
テ居リマス、ソレハ昨年一割四分バカリ上ゲ
マシタノハ-昭和十一年度ハ是ハ別問題
デアリマズガ、昨年上ゲマシタノハ一割四
分幾ラカト思ヒマスガ、是ハ今囘ノ總テノ
他ノ稅金ノ引上ガ凡ソ二割乃至三割ニナツ
テ居リマス、其ノ建前カラ致シマシテ、ソ
レト調節ヲ取ル意味ニ於テ昨年値上シタモ
ノト心得ルノデアリマス、ソレデ酒トカ煙
草トカ云フモノハ一面カラ申シマスト生活
ノ必需品デアルニハ相違アリマセヌガ、又
一面カラ申シマスト、酒モ煙草モ身體ニ害
ガアルト云フヤウナ議論モアリマシテ、煙
草ヲ召上ツタリ酒ヲ召上ツタリスル方ハサ
ウハ思ヒマセヌガ、人ニ依リマシテハ中々
禁煙運動、禁酒運動ガアルノデアリマシテ、
之ヲ絕對的ノ必需品ト見ル人ト、又サウデ
ナイト見ル人モアリマシテ、必ズシモ意見
ガ一致致シテ居ルト云フ譯デハアリマセ
又、其ノ點ニ付テハ、今煙草ノ値下ヲスル
ト云フ考ヲ持ツカト云フ御話デアラウト思
ヒマスガ、私ハ煙草デアルトカ酒デアルト
カ云フモノニ付キマシテハ相當〓究考慮シ
テ、大衆ノ喫ム方面ニ付キマシテハ是ハ或ル
程度〓究ヲ致シテ見ル必要ガアルト考ヘマ
スケレドモ、只今私之ニ對シマシテドウ致
スト云フコトヲ申上ゲルヤウナ所マデ〓究
ヲ積ンデ居リマセヌ、今此ノ機會ニ於テ私
ノ意見ハ申上ゲ兼ネルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=126
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127・伊藤五郎
○伊藤委員 專賣局長官ガ來マシテカラ詳
シイコトハ御尋シマスガ、兎ニ角私ハ煙
草專賣事業ニ於テモ適正價格ト云フモノ
ガアルト思フ、ソレヲ聽イテ居ル、官營
事業ト云フモノハ幾ラ暴利ヲ貪ツテモ宜
イト云フナラバ-サウ云フ原則ガアル
ナラバ別問題デスガ、是ハヤハリ國家ノ
事業ト雖モ一定ノ利益ヲ得ルコトハ差支ナ
イケレドモ、其ノ限度ヲ超エテハイケナイ
ト云フコトヲ私ハ信ジテ已マナイノデス、
ソレヲ原價計算ニ對シテ七割モ八割モ課稅シ
テ國民ヲ苦シメテ宜シイノカ、ソレヲ大藏大
臣ニ御伺スル、サウ云フ點ニ付テ私ハ此ノ
席上ニ於テ十分ナ御答辯ヲ願ヒタイト思フ
モウ一ツ伺ヒタイコトハ、煙草ト云フモ
ノハ生活必需品デアリマシテ、絕對ニ値上
ヲサレテハ困ル、ダカラ今後ハ絕對ニ値上
ヲシナイト云フ言明ヲ願ヒタイ、ソレデナ
ケレバ私共ハ安心シテ煙草ハ喫マレマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=127
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128・櫻内幸雄
○櫻内國務大臣 煙草ノ專賣ノ利益ヲ單純
ニ利潤ト見做スコトハ果シテ適當デアルカ
ドウカ、今卽答致シ兼ネルノデアリマスガ、
是ハ今ノ所デハ一ツハ財政收入ヲ得ルノ目
的トモナツテ居ルノデアリマス、將來絕對
値上ヲセヌト云フコトヲ斷言シテハドウカ
ト云フ御話デアリマスガ、此ノ點ニ付キマ
シテハ私マダ〓究ヲ積ンデ居リマセヌケレ
ドモ、先日來申上ゲマス通リ、ココ數年間增
稅ハ致サナイ考ヲ持ツテ居リマスノデ、隨
ヒマシテ煙草ノミニ對シテ增稅的意味ヲ含
ムヤウナ事柄ニ付テハ考慮致シテ居ラヌト
申上ゲル外ハナイノデアリマス、生活必需
品ニ對シテ大イニ考ヘロト云フ御話ニ對シ
テハ、是ハ多少議論ガアリマスケレドモ、
十分〓究シテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=128
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129・森田福市
○森田委員 一寸伊藤君ノ質問ノ機會ニ聽
イテ置キタイノデスガ、今專賣局ノ當局者
ハ居ラレヌガ、御傳ヘヲ願ヒタイ、大藏大
臣ノ所管デアルカラ申上ゲルノデアリマス
ガ、御承知ノ通リ煙草ノ値上前ハ何處ノ小
賣屋ニ行ツテモ品切デアツタ、所ガ値上ヲ
シタ今日ハアレ程ノコトハナイ、ドウヤラ
斯ウヤラアリマス、サウスルト此ノ間ハ專
賣局ガ値上スルノヲ目標ニシテ品物ノ配給
ヲ控ヘタノカ、或ハ小賣店ガ配給ヲ受ケタ
モノヲ半分位賣ツテ、アトハ奧ノ方ニ隱シ
テ置イタノカ、其ノドチラカデス、其ノド
チラカデアルト云フコトダケハ肯定ナサラ
ナケレバイカヌ、其ノドチラデアツテモ私ハ
宜クナイト思フ、將來値上ヲシヨウト思ツ
テ配給ヲ手控ヘタナラバ國家事業トシテ
不都合ナルコトハ議論ノ餘地ガアリマセヌ、
サウデナクシテ小賣店ガ配給シテ貰ツタモ
ノヲ店先へ或ル程度出シテ、或ル程度藏ヒ
込ンデ居ツタナラバ、是ハ監督不行屆モ極
マレリト言ハナクテハナラヌノデアリマス、
其ノ證據ニハ、先日モ申シタ通リ定價改訂
ノ「スタンプ」ヲ捺シテナイモノガ今日市場
ニアルコトヲ以テ立證ガ出來ルノデアリマ
ス、若シ斯ウ云フ風ニ小賣店ガ品物ヲ藏ヒ
込ンデ居ツタトスルナラバ、今後專賣局ガ
煙草ノ値段ヲ改訂シタ時ニハ、其ノ改訂ノ
「スタンプ」ヲ捺サヌ煙草ハ以前ノ定價デ賣
ラスヤウニシテ置ケバ、少クモ品物ヲ隱シ
テ置クト云フコトハ防止ガ出來ルノデハナ
イカト思ハレル、デアルカラ今伊藤君ノ質
問ニ對シテ、今後煙草ノ値上ヲセヌト云フ
コトヲ大藏大臣ハ聲明セラレタ、大體其ノ
方針デアルト·····(「暫クハヤラヌノダ」ト
呼フ者アリ)暫クト云フノハ大臣ガ場在職
中ノコトダラウシ、大臣ハ何時迭ルカ分ラ
文、併シ此ノ點ハ私ハソコマデ議論ハ致シ
マセヌ、煙草ノ影ヲ隱シタコトニ付テハ色
色込入ツテハ居ルガ、此ノ二ツノ問題ガア
ルカラ、ソレヲ此ノ際解決シテ置ク必要ガ
アルノデ、專賣局長モ見エテ居ラヌヤウデ
アルカラ大藏大臣カラデ宜シイ、之ヲドウ
スルカ、今後アア云フコトヲ繰返ス積リデ
アルカドウカ、繰返ス積リデアルカドウカ、
繰返サヌ積リナラバ此ノ際解決シテ置カナケ
レバナラヌト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=129
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130・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 只今ノ御話ノヤウナコト
ガアリマスト甚ダ適當デナイト思ヒマス、
併シナガラドウ云フ手續デソレガヤラレテ
居ツタノカ、又ドウ云フ風ナヤリ方ラ致シテ
居ツタカト云フコトニ付テハ、私今日マダ
承知致シテ居リマセヌノデ、今專賣局長官
ガ來マスカラ詳細御話ヲ申上ゲテ、若シ不
適當ナコトガアルト致シマスレバ、ソレニ
對シテ十分ナル取締ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=130
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131・伊藤五郎
○伊藤委員 次ニ私ガ御伺ヲ致シタイノハ、
此ノ所得稅改正法案ニ於テ、委員諸氏カラ
最モ問題視サレテ居ル勤勞所得者及ビ事業
所得者ニ對スル免稅點ニ關スルコトデアリ
やっ、租稅配分上ニ關スル原則ト致シマシ
テ、生活必要費ニ對シテ免稅スベキコトハ
嚴トシテ守ラナケレバナリマセヌ、萬一此
ノ鐵則ヲ無視シテ課稅スルガ如キコトアラ
ンカ、國民大衆ハ生活ニ困難ヲ來シ、其ノ
思想上ニ及ボス影響ハ洵ニ甚大ナルモノア
リト確信シテ疑ハヌモノデアリマス、私ハ
國家非常ノ場合ニ於テソレ〓〓分ニ應ジ納
稅ヲスルコトハ當然デアルト思フノデアリマ
スガ、假令戰時非常ノ際ト雖モ、負擔能力ナ
キ者ニ對シテ課稅スルガ如キハ斷ジテ許シ
テハナラナイト思フノデアリマス、私ハ今
日ノ如キ生活必要品ノ暴騰シタル時代ニ於
テハ、百圓以下ノ俸給生活者ハ決シテ稅金ヲ
納メル能力ハナイト云フコトヲ考ヘテ居ル
ノデアリマス、試ミニマダ物價ガ今日ノ如
ク騰貴シナカツタ昭和九年ニ於ケル內閣統
計局ノ調査ニ依レバ、俸給五十圓未滿ノ例ヲ
取ツテ見ルト、生活必要品ハ四十四圓六十七
錢社會生活費ガ五圓八十六錢、文化費ガ四
圓十錢、合計ガ五十四圓六十三錢トナツテ居
ルノデアリマス、之ヲ收支ニ付テ見マスレ
バ、五十圓未滿ノ者ハ四圓六十三錢ノ不足
トナリ、六十圓未滿ノ者ハ六十六錢ノ剩餘
トナリ、七十圓未滿ノ者ハ一圓二十二錢、
八十圓未滿ノ者ハ三圓五十六錢、九十圓未
滿ノ者ハ五圓六十六錢、百圓未滿ノ者ハ六
圓四十七錢トソレ〓〓剩餘ヲ來スノデアリ
やく、併シナガラ御承知ノ通リ最近ハ物價
暴騰致シマシテ、所謂天井知ラズデアリマ
ス、最近ノ物價指數ハ昭和十二年ニ對シ、
食料品ハ七割弱、衣類身廻品ハ七割弱、燃
料三割、建築材料同ジク七割ノ上リ方ニナ
ツテ居ルノデアリマス、此ノ中デドンナモ
ノガ一番高クナツタカト言ヘバ、大藏大臣
モ既ニ御承知デアリマセウガ、鮪デアリマ
ス、是ハ昨年ノ今頃ニ比ベテ二倍半以上、三
倍近クノ上リ方デアリマス、鰹節ハ七割近
クノ上リ方デアリマス、衣料綿製品ハ二倍、
富士絹ハ五倍カラノ上リ方デアリマス、之
ヲ先程申上ゲタ昭和九年ノ內閣統計局調査
ノ當時ニ比スレバ、實ニ二倍ノ値上リヲ致
シテ居ルノデアリマス、之ヲ非常ニ內輪ニ
見積ツテモ昭和九年ニ比ベテ生活必要品ガ
六割ノ値上リヲシタモノト計算シテ算盤ヲ
置イテ見マスナラバ、俸給五十圓未滿ノ者
ハ、支出七十一圓五十七錢デ、不足分ハ二
十一圓五十七錢デアリマス、六十圓未滿ノ
者ハ支出八十四圓二十五錢デ、不足分二十
四圓二十五錢、七十圓未滿ノ者ハ支出九十
五圓五錢デ、不足分二十五圓五錢、八十圓
未滿ノ者ハ支出百六圓二十四錢デ、不足分
二十六圓二十四錢、九十圓未滿ノモノハ支
出百十七圓四十六錢デ、不足分二十七圓四
十六錢トナツテ居ルノデアリマス、然ラバ
是等ノ人々ハ如何ニシテ生活シテ行クカト
言ヘバ或ハ無盡ニ加入シ、高利ノ借金ヲナ
シ、或ハ親カラノ仕送ヲ受ケ或ハ衣類ヲ質
ニ入レタリシテ、隨分苦勞シテ生活ヲ營ン
デ居ルノデアリマシテ、病氣ニナツテモ醫
者ニ掛カルコトガ出來ナイ現狀デアル、小
學校〓員ノ如キハ他人ノ子供ハ〓育シテ
モ、自分ノ子供ハ因果ヲ含メテ丁稚奉公ニ
出サナケレバナラヌ現狀ニナツテ居ルノデ
アリマスガ、此ノ悲慘ナル現實ヲ無視シテ、
月給五十圓以下ノ下級生活者ニ對シテ百分
ノ六ト云フ高率ノ稅金ヲ課スルコトハ、私
ハ餘リニ冷酷無情デハナイカト思ハザルヲ
得ヌノデアリマス、私ハ政府ハ百圓以下ノ
小額收入者ニ對シテハ思切ツテ免稅ヲシテ
生活ノ安定ヲ與ヘ、健康ヲ增進セシメ、思
想ヲ堅固ナラシメ、小國民タル子女ノ〓育
ニ不安ナカラシメ、職務ニ邁進セシメテ國
家ニ貢獻スルヤウニシナケレバナラヌト思
フノデアリマス、政府ハ此ノ際事業、勤勞
兩所得ニ付キ千圓以下ノ者ニアリマシテ
ハ、私ガ先程縷々申上ゲタ如ク、ドウシテモ
生活出來ナイノデアリマス、此ノ生活出來
ナイ者ニ對シテハ免稅ヲスル意思ハナイカ
ドウカ、ソレカラ第二ニ聽キタイコトハ、
或ハ政府ハ現在ノ儘ニ於テ生活ガ出來ルト
云フヤウナコトヲ仰シヤルカモ知レヌガ、
私ハ出來ナイト思ヒマス、若シ萬一ニモ物
價暴騰ノ爲ニ實際何人ガ見テモ生活ガ出來
ナイ、。百圓以下ノ者ハ稅金ヲ納メルコトモ
出來ナイト云フヤウナ狀態ニナリマシタナ
ラバ大藏大臣ハ之ニ對シテ如何ナル方針
ヲ以テ進マントスルカ、此ノ所得稅法第
七十五條ノ、著シク資力ヲ喪失シ納稅困難ト
認ムルトキハ政府ハ免稅スルコトガ出來ル
ト云フ規定ヲ適用シテ、是等ノモノヲ救ハ
ントスル御意思デアルカ、或ハ之ヲ適用シ
ナイデ他ニ命令カ何カ出シテ、サウシテ免
稅セントスルカ、或ハ減俸ヲ復活シテ是等
ノ生活ヲ安定セントセラレルカ、此處マデ
考ヘナケレバ、此ノ重大ナル所ノ所得稅法
案ヲ漫然トシテ出スト云フコトハ吾々ノ
到底許スベカラザルコトデアラウト思ヒマ
ス、吾々ハ眞劍ニ此ノ問題ヲ考ヘテ居ルノ
デス、此ノ法案ヲ吾々ガ漫然ト通シタナラ
バ、吾々衆議院議員ハ國民大衆ノ怨嗟ノ的ト
ナルト思フノデアリマス、之ニ對シマシテ私
ハオ座ナリノ御答辯デハナク、眞劍ナル御
答辯ヲ得タイト思フノデアリマス、昨日厚
生大臣ガ此ノ委員會ニ於テ、最低生活費ガ
幾ラデアルカト云フ我黨ノ中島委員ノ質問
ニ對シマシテ答辯ガ出來ナカツタデハアリ
マセヌカ、其ノ最低生活費ノ調査モシナイ
デ、サウシテ五十圓以上百圓以下ノ者ニマ
デモ稅金ヲ課スルト云フ漫然タル机上ノ
「プラン」ヲ拵ヘテ、國民大衆ヨリ稅金ヲ取
ルト云フコトハ本當ニ淺マシイコトデアル
ト思フノデアリマス、ドウカ大藏大臣ハ此
ノ日本ノ今日ノ狀態ヲ達觀セラレマシテ、
一ツ本當ニ此ノ國民大衆ヲ救ツテヤラウト
云フ御氣持カラ御答辯サレンコトヲ希望シ
テ已マナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=131
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132・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 伊藤君ノ言ハルル如ク、
國民生活ノ最小限度ト云フモノハドウシテ
モ國モ確保シナケレバナラヌシ、自己モ確
保スルト云フコトハ當然ノコトデアリマス、
而シテ此ノ度ノ稅金ガ左樣ナル所マデ行ツ
テ居ルカ行ツテナイカト云フコトハ、是尺
各〓意意ノアルコトト考ヘマスガ、今囘ノ稅
率ハ五十圓月給ヲ取ツテ居ル人ニ直チニ其
ノ百分ノ六ト云フモノヲ課稅致スト云フ意
味デハナイノデアリマシテ、六百圓ノ人ハ
要スルニ一厘モ稅ハ課ラナイノデアリマス、
唯其ノ六百圓ヲ越シタ金額ニ對シテ課稅ヲ
致スコトトナツテ居ルノデアリマシテ、ソ
レモ妻ガアリ若クハ子供ガアリ或ハ老人ガ
アリト致シマスルト、ソレニ控除率ガアル
ノデアリマシテ、今日本全國ヲ平均シテ考
ヘテ見マスト、大抵家族ガ三人位アリマス
ノデ、ソレヲ本法案ト照シ合シテ見マスト、約
千圓乃至千二百圓位ノ人々ハ皆稅金ガ課ラ
ナクナルノデアリマス、唯家族ガ一人モナイ、
單獨デ動イテ居ル人ガ假ニ七十圓月給ヲ取
ツテ居ルト致シマスト、二十圓ノ部分ニ對
シテ稅金ガ課ルノデアリマシテ、唯單獨ノ
人ガ今日月ニ五十圓デ〓ツテ行ケヌカト申
シマスト、私ハ五十圓ナラバ一人ナラ食ツ
テ行ケルト思ヒマス、併ナガラ今伊藤君
ノ言ハルル通リ、物價ガ次第々々ニ騰貴シ
テ、サウシテ生活ガ非常ニ困難ニナル斯
ウ云フ事實ガ玆ニ現ハレテ參リマスレバ、
是ハ當然考慮致サナケレバナラヌト思ヒマ
ス、卽チ國民生活ノ最小限度ト云フモノハ
確保シテ、是ハ稅ヨリモ何ヨリモ更ニ一步
進ンデ國家トシテ生活ノ安定ヲ圖ルト云フ
コトヲ致サナケレバナラヌノデアリマシテ、
此ノ點ニ付キマシテハ自ラ考ガアルノデア
リマス、唯今囘ノ稅法ハ只今モ申上ゲマス
通リ、此ノ家候控除ト云フコトニ付キマシ
テ重キヲ置キマシテ考へタノデアリマシテ、
從來ハ御承知ノ如ク千圓ガ基準トナツテ居
リマス、千圓カラ一圓デモ上ヘ出レバ千圓
全額ニ對スル課稅デアリマスガ、今囘ノ課
稅方法ハ六百圓ト云フ基準ガアリマスケレ
ドモ、ソレハ六百圓ヲ控除シテシマツテ其
ノ上ノ部分ニ對シテノミ課稅ヲスルト云フ
コトニナツテ居ルノデアリマシテ、從來ノ
稅トハ少シ建前ガ違ツテ居ルノデアツテ、
之ニ依ツテ直チニ國民大衆ガ飢餓ニ瀕スル
ト云フガ如キコトハナイト思ヒマス
ソレカラ生活ノ基準ノ問題ニ對シテ、厚
生大臣ガドウ云フ御答辯ヲ申上ゲタカ知リ
マセヌケレドモ、是ハ要スルニ中央デアル
トカ地方デアルトカ、或ハ都會地ニ於キマ
シテモ、東京デアルトカ、或ハ靜岡デアル
トカ、或ハ千葉デアルトカ、其ノ場所々々
ニ依ツテモ生活ノ基準ハ多少相違シテ居ル
ノデアリマシテ、平均收入トカ何トカ云フ
モノハ出テ居リマセウガ、ソコニ於テ多分
厚生大臣ガハツキリシタコトヲ申上ゲナカ
ツタト思ヒマスケレドモ、大體ニ於テノ調
ト云フモノ付テ居ルコトト存ジマスルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=132
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133・伊藤五郎
○伊藤委員 大藏大臣ニアト二ツダケ御尋
申上ゲタイト思ヒマス、私ハ大藏大臣ノ御
考慮ヲ煩ハシタイ問題ガアルノデアリマス、
ソレハ支那事變勃發以來、個人若クハ大會
社ガ出征軍人ニ對シマシテ二年モ三年モズ
ツト給料ヲ支拂ツテ、サウシテ是等ノ出征
軍人竝ニ其ノ遺家族等ノ生活ノ安定ヲ圖ツ
テ居ル所ノ尊イ奉仕ノコトニ付テデアリマ
ス、支那事變勃發以來玆ニ二年ト八ケ月ヲ
閱シテ居リマスガ、其ノ間皇軍將兵諸士ハ
能ク第一線ニ於テ力戰奮鬪、赫々タル武勳
ヲ立テテ居ルノデアリマスルガ、此ノ際是
等ノ諸士ヲ今日ニ至ルマデ何等ノ不安ナク
活躍セシメタル銃後國民ノ絕大ナル所ノ後
援ヲ衷心カラ吾々ハ感謝シナケレバナラナ
イト思フノデアリマス、特ニ私ガ先程申上
ゲマシタ如ク、個人ノ工場ヤ商店又ハ會社
等カラ雇人ヤ社員ガ出征シタル場合ハ、其
ノ個人ヤ會社ハ是等ノ出征軍人ニ對シマシ
テ、出征シテカラ凱旋ニ至ルマデ大體ノ給
料ヲ支拂ツテ銃後ノ護リヲ完ウ致シテ居ル
ト云フ事實デアリマス、大會社ニナレバ二百
人、三百人、數百人モ出征ヲ致シマシテ、之ニ對
シマシテ會社ハ每月々々二年モ三年モ給料ヲ
支拂ツテ、莫大ナル負擔ヲ致シテ居ルノデア
リマス、此ノ額ヲ全國的ニ調ベタナラバ何千万
ト云フ驚クバカリノ金ニナルト私ハ思フノ
デアリマス、而シテ是等個人又ハ會社等ニ
於テハ、財產ノ續ク限リ喜ンデ一一年デモ三
年デモ此ノ出征軍人ニ對シテ給料ヲ支拂ツ
テ居ルノミナラズ、其ノ家族、遺族等ニ對シ
マシテハ至レリ盡セリノ慰安ノ途ヲ講ジテ
居ルノデアリマス、假ニ大會社カラ二百人
出征シテ居ツテ、一人ニ對シテ一ケ年六百
圓トスレバ、一年ニ十二万圓、三年ニ三十
六万圓ノ負擔ヲシテ居ルト云フコトニナル
ノデアリマス、此ノ負擔ハ長期戰爭ノ續ク
限リ飽クマデ繼續セラレルノデアリマス、
國家ガ危急存亡ノ場合ニ於テハ、生命アル者
ハ生命ヲ、財產アル者ハ財產ヲ、其ノ分ニ應
ジテ國ニ捧ゲテ其ノ存立ヲ完ウシナケレバ
ナラナイノデアリマスガ、政府ハ一囘デモ
是等銃後ノ義人ニ對シマシテ特別ノ感謝ノ
意思表示ヲシタコトガアルデアリマセウカ、
是等ノ義人ハ全ク自發的ニ、何等ノ法規ニ
束縛セラルルコトナク、此ノ事變ノ重大性
ヲ認識シテ心カラ銃後ノ財的奉仕ヲ續ケテ
居ルノデアリマス、此ノ際大藏大臣ニ御經
ノコトヲ申上ゲルノハドウカト思ヒマスガ、
修證義ト云フ曹洞宗ノ經本ニ「德アルハ讚
ムベシ、面ヒテ愛語ヲ聞クハ面ヲ喜バシメ
心ヲ樂シクス、面ハズシテ愛語ヲ聞クハ肝
ニ銘ジ魂ニ銘ズ、愛語能ク〓天ノ力アルコ
トヲ學スベキナリ」ト云フ一句ガアリマス、
政府ハ此ノ際是等ノ義人ヲ調査シテ、サウ
シテ何等カノ表彰ヲ爲ス御意思ハナイカド
ウカ、若シ之ヲ表彰スルナラバ全國民之ニ
感化セラレマシテ、サウシテ愈〓銃後ノ護
リヲ固ウスルコトガ出來ルト思フノデアリ
マス、是ガ私ノ問ハントスル第一點デアリ
マス
次ハ是等ノ人々ニ對シマシテ、租稅政策
上何等カ之ニ考慮ヲスル御意思ハナイカド
ウカ、私ハ是等ノ人々ハ欣然トシテ此ノ財
的奉仕ハシテ居ルケレドモ、租稅政策上政
府ノ溫カイ氣持ヲ以テ、之等ノ重課ニ喘イ
デ居ル所ノ人々ヲ援ケテヤルト云フ御氣持
ヲ持ツト云フコトガ、爲政者ノ執ラナケレ
バナラナイ重大ナル責任ダラウト思フノデ
アリマス、之ニ對シマシテ大藏大臣ノ御答
辯ヲ得タイト思ヒマス
〔濱野委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=133
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134・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 今囘ノ事變ニ際シマシテ、
會社ト云ハズ個人ト云ハズ、其ノ事業ノ下
ニ從事シテ居ツタ人々ノ出征シタル際ニ、
俸給ノ全額ヲ支給シ若クハ半額或ハ三分ノ
一ヲ支給シテ今日マデ持續シテ居ル人ガ少
クナイト云フコトハ私能ク存ジテ居リマス、
洵ニ伊藤君ノ言ハレル通リ、國家ノ重大時
ニ際シテ國ニ奉仕スルノ至誠カラ出テ居ル
ノデアリマシテ、是ガ日本國民特有ノ發露
デアラウト思ツテ居リマス、而シテ是等國
民ガ少カラザル財帑ヲ費シテ國家ニ奉仕ヲ
致シテ居ル、之ニ對シテ政府ハ何等カ表彰
ヲスルノ考ヲ持ツテ居ルカドウカ、又租稅
政策ノ上ニ於テ之ニ對シテ何等カノ特殊ノ
措置ヲ執ル考ヲ持ツテ居ルカドウデアル
カ、斯ウ云フ御話デアリマスガ、國家ト致シ
マシテ是等ノ人々ニ對シマシテ適當ナル表
彰ヲ致スト云フ事柄ハ考ヘナケレバナラヌ
コトデアリマスガ、今日ハ日本全國民總テ
ガ此ノ奉仕ノ觀念ヲ以テ働イテ居ルノデア
リマシテ、如何ナル方面ニ向ツテ表彰ヲ致シ
テ行クカ、又ドウ云フ風ナ表彰方法ヲ執ル
カト云フコトニ付キマシテハマダ〓究中デ
アリマシテ、一定ノ方針ガ決定致シテ居リ
マセヌ、殊ニ事變ニ從事シタル人々ニ對シ
テスラ、極メテ一部ニ於テ表彰ノ論功行賞
ガ行ハレタ位デアリマシテ、中々斯ウ云フ
場合デアリマスカラシテ手ガ行キ屆キ兼ネ
テ居ル譯デアリマスガ、今ノ點等ニ付キマ
シテハ、私共モ機會アル場合ニ於テソレ〓
ノ係ニ向ツテ注意ヲ促シテ行キタイト思ヒ
マス、租稅政策ノ方ノ問題ハ、要スルニソ
レヲ經費ニ見テ居ルノデアリマシテ、ソレ
ガ損失ニ相成ツタト云フコトニナリマスレ
バ、其ノ方面ハ當然ソレダケハ控除セラル
ル譯デアリマスガ、利益ノアル會社デアツ
テ、サウシテ其ノ爲ニ利益ガ減ツテ居ルト
云フ方面ハマダ宜シイノデアリマスケレド
モ、其ノ事自身ノ爲ニ事業其ノモノノ經營
ノ出來ナクナリ掛ツテ居ルモノモ可ナリ
アルノデアリマス、其ノ點ニ付キマシテハ
政府トシテハ適當ナル措置ヲ執ラナケレバ
ナラヌト思ツテ居リマスガ、今囘ノ稅ノ建
前カラ申シマスト、サウ云フ特殊ノ場合ニ
於テ、特殊ノ措置ヲ執ルト云フ方法ハマダ
決定致シテ居ラヌノデアリマシテ、ソレハ
行政措置ニ於テ適當ニ處置ヲ執ルベキモノ
デアツテ、稅ノ方カラ申シマスト、ソレダ
ケノ利益ノ減ツタ場合ニ於テハ稅ガ當然減
ツテ來ル、斯ウ云フコトト存ズルノデアリ
マス-発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=134
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135・伊藤五郎
○伊藤委員 ドウカ大藏大臣ハ只今ノ問題
ニ付キマシテハ色々ノ方面ニ向ツテ特別ノ
御考慮アランコトヲ御願致シテ置キマス
次ニ私ハ此ノ戰時體制下ニ於キマシテハ、
戰時多額納稅者ニ對シマシテ、政府ハ特別
ノ考慮ヲ用ユル必要ガアルノデハナイカト
云フ考ヲ持ツテ居ルノデアリマス、我國ハ
支那事變勃發以來三タビノ增稅ヲ爲シ、五
億圓ノ增收ヲ圖リ、此ノ度ノ增稅案ニ於テ
更ニ五億圓ノ增收ヲ目的トシテ四タビノ增
稅ヲ斷行セント致シテ居ルノデアリマス、
昭和十年ニハ一人當リ十一圓二十三錢デア
ツタガ、昭和十三年ニハ一一十二圓六十六錢、
昭和十四年ハ三十一圓六十四錢トナリ、昭
和十五年度ハ未曾有ノ大增稅案ニ依ツテ計
算ヲ致シテ見マスルト、一人當リ驚クナカ
レ三十六七圓カラ四十圓トナリ、事變前ノ
約三倍半カ四倍ニナツテ居ルト云フヤウナ
狀態ニアルノデアリマス、特ニ大所得者ノ
負擔ノ重加ヲ思フ時、洵ニ私ハ心カラ是等
ノ方々ニ對シマシテノ御同情ニ堪ヘナイノ
デアリマス、併シナガラ國家ガ危急存亡ノ
場合、私ガ先程申上ゲタ如ク財產アル者ハ、
軍人ガ恰モ戰場ニ於テ尊キ生命ヲ喜ンデ君
國ニ奉還スルト同ジク、其ノ財產ノ一部ヲ
割イテ戰費ニ充當スルコトハ國民ノ重大ナ
ル義務デアツテ、又最高ノ榮譽ナリ思フ
ノデアリマス、併シナガラ茲ニ思ヒヲ致サ
ナケレバナラナイノハ、是等大所得者、富
豪ト稱セラレル者ハ、粒々苦心慘憺シテ財
產ヲ築キ上ゲマシタモノデ、眞ニ營々努力
ノ賜モノデアルト思フノデアリマス、此ノ
點ヨリ考ヘマスル時ニ於テ、大所得者ナル
ガ故ニ當然ニ重課スベシト云フガ如キ階級
思想、又ハ義務觀念ニ依ツテ是等ノ大所得
者ヲ遇シテハナラナイト思ヒマス、寧ロ政
府ハ國難ニ際シ、是等ノ大所得者ノ協力ヲ
得ルニアラザレバ到底事變ノ目的ヲ達成ス
ルコトハ出來ナイト云フ謙讓ナル態度ヲ以
テ臨マナケレバナラナイト私ハ確信シテ已
マナイノデアリマス、而シテ一面ニ於テ多
額納稅者ノ名譽化ヲ徹底セシメ、擧ツテ多
額納稅者タラントスルヤウニ仕向ケルノデ
ナケレバ、此ノ戰時體制ヲ切拔ケルコトハ
出來ナイト私ハ存ジマス、政府ガ斯ル態度
ヲ持スルナラバ、假令法規ニ依ラズトモ大
事業家大所得者、大富豪ハ悉ク財產ノ相
當分ヲ割イテ戰費ノ負擔ニ應ズルコトハ私
ノ確信スル所デアリマス、是ハ正ニ國民ノ
微妙ナル所ノ心理デアリマシデ、此ノ微妙
ナル心理ヲ把握致シマシテ、爲政者ハ戰費
ノ充足ヲ圖ラナケレバナラナイト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、斯ル謙讓ナル態度ヲ以テ
是等ノ大所得者、大富豪、大實業家ニ對シ
テ協力ヲ求メ得ルナラバ、是等ノ人々ハ眞
ニ自分ノ持ツテ居ル所ノ財產ヲ提供シナケ
レバ、此ノ戰爭ニ勝ツコトハ出來ナイト云
フ信念ノ下ニ、欣然トシテ其ノ財產ノ一部
ヲ國家ニ奉納スルデアラウト私ハ確信シテ
已マナイノデアリマス、斯ウ云フ氣分ヲ持
ツテ爲政者ガ全多額納稅者或ハ全大事業家
ニ對スルナラバ、私ハ戰時特別財產奉仕稅
ノ課稅モ亦易々タルモノデアラウト云フ考
ヲ持ツテ居リマス、今マデノ爲政者ト云フ
モノハ、唯稅金ヲ取ラウ〓〓ト云フ考バカ
リデ、貢取リノ氣持デ以テ唯稅金ヲ取ツテ
居ツタガ爲ニ、是等ノ納稅者ハ欣然トシテ
納稅スルコトヲシナカツタノデアル、併シナ
ガラ今ノヤウナ氣持ヲ以テ納稅者ニ對シマ
スナラバ、是等ノ人々ハ眞ニ自分ノ財產ヲ
擲ツテ一ツ此ノ國難ヲ突破シテヤラウト云
フ氣持ニナツテ、納稅スルコトヲ最高ノ偉業
デアルト云フ氣持ニナルト思フノデアリマス、
仍テ政府ハ此ノ際、全國ノ多額納稅者會議ヲ
開キ、米內總理大臣、大藏大臣自ラガ陣頭
ニ立ツテ、支那事變ノ眞相ヲ知ラシメ、眞
ニ其ノ協力ヲ仰ガントスル態度ヲ執ルコト
ガ必要デアラウト思フノデアリマス、今マ
デ斯ウ云フコトヲ致サナカツタ、ソレデ吾
吾ハ財界ニ於テ、實業界ニ於テ、大富豪ニ
於テ色々ノ話ヲ聽イテ見マスト、政府ガサ
ウ云フ態度ヲ持ツテ來ルナラバ、吾々ハ財
產ノ半分ヲ出スコトモ大シテ吝マナイト云
フコトヲ明ニシテ居ル、斯ウ云フコトヲ政
府ガナサラナイデ、徒ニ一片ノ法規ヲ以テ、
此ノ厖大ナル戰費ヲ賄ハントスルガ如キ
ハ、大政治家ノ執ルベキ態度デハナイ、私
ハ大藏大臣ハ野ニ在ツタ時ノアノ抱負經綸
ヲ此ノ時ニ於テ實行スベキモノデアラウト
思ヒマス、全國多額納稅者會議ヲ開イテ、
ドウカ一ツ此ノ時局ハ斯ウナツテ居ル、斯
ウ云フ風ニ持ツテ行ケバ、國民全部ト云フ
モノハ現内閣ヲ應援致シマシテ、本當ニ戰
費ノ二百億モ出ス、三百億モ出スト云フコ
トニナルト思フノデアリマス、此ノ態度ヲ
私ハ大藏大臣ガ率先シテ示サナケレバナラ
ナイト思フノデアリマス、今マデノヤウナ
多額納稅議員ナドヲ廢シタ方ガ宜イト云フ
觀念ヲ以テ多額納稅者ヲ見ルナラバ、此ノ
戰時豫算ト云フモノハ實行出來マセヌ、現
在ノ日本ト云フモノハ十年前ノ日本デハ
ナイノデアリマス、是等負擔能力ノアル多
額納者ニ依ツテ、相當ノ戰費ヲ負擔シテ
貰ハナカツタナラバ、戰爭ノ遂行ガ出來ナ
イノデアリマスルカラ、願クバ大藏大臣ハ
一ツ此ノ際思ヒ切ツテ、全國多額納稅者ノ
會議ヲ東京ニ於テ開カレマシテ、米內總理
大臣自ラ、大藏大臣自ラ一ツ陣頭ニ立ツテ、
是等ノ戰費ノ多額納稅者ニ對シマシテ協力
ヲ求メラレル御意思ガアルカナイカ、御伺
ヲ致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=135
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136・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 多額納稅ノ人ガ國家ニ貢
獻ヲ致シテ居ルコトハ、洵ニ御說ノ通リデ
アリマス、殊ニ近時ニ於キマシテハ、所謂
社會政策的見地カラ財產ヲ多ク持ツテ居ル
人ニ、國費ヲ多ク負擔シテ戴クト云フ建前
ニナツテ居ルノデアリマシテ、此ノ點カラ
申シマシテモ、多額納稅ノ人々ガ、國家ニ
貢獻セラレテ居ルコトハ少クナイト考ヘマ
ス、殊ニ現在金ヲ儲ケテモ、大部分稅金ニ
持ツテ行カレルカラ、ドウモ働ク氣ガナイ
ナドト云フヤウナ風ノ考ヲ持ツ人ハ、先ヅ
日本ニハナイデアリマセウケレドモ、起リ
易イ傾向ニアルト思ヒマス、隨ヒマシテ其
ノ點ハ爲政者ト致シマシテハ、十分ニ注意
シナケレバナラヌ所デアリマス、卽チ一生
懸命ニ働イテ財產ヲ作ル、其ノ作ツタ財產
デ國ノ爲ニ御奉公スル、御奉公スル觀念ハ
固ヨリデアリマスガ、傍ノ人々ハ恩賞ニ與
ルケレドモ、此ノ人々ハ却ツテ社會的ニ見
テ、アレハ金ヲ儲ケテ居ルカラト云フ風
ニ、斯ウ云フ言葉ヲ使ツテハ如何デアリマ
スガ、蔑マレルト云フ言葉デハナイガ、輕
ンゼラレルヤウナ氣ノスルヤウナ場合ガア
リマシテ、皆働クト云フ氣ヲ失ツテ來ルヤ
ウナ情勢ガアルト云フ事柄ニ付キマシテハ、
深ク心配ヲシナケレバナラナイ點デアリマ
ス、卽チ國ニ多クノ財產ヲ以テ貢獻スル人
ハ一面カラ言ヘバ、國家ニソレダケ御奉
公ヲ多クシテ居ル者ト言ツテ差支ナイト思
ヒマス、其ノ點ニ付キマシテ國ガソレ等ノ
人々ニ對シテ、或ハ位ヲ奏請スルトカ、或
ハ敍動ヲ御願スルトカ、斯ウ云フ事柄ヲ政
府ノ人ガ取扱ツテ、是等ノ人々ノ名譽ヲ表
彰スルヤウニ致シマスレバ、財產ハ假ニ殘
ラヌデモ、其ノ名譽ガ殘ツテ子々孫々ノ爲
ニ光榮ガ遺ル、斯ウ云フコトニ相成リマス
レバ、卽チ是等ノ人々ガ働クノミナラズ、是
カラ金ヲ貯メテ、事業界ニ於テ働カウト云
フ人ノ上ニ於テ大キナ勵ミヲ與ヘルデアラ
ウト思フノデアリマス、其ノ點ニ付キマシテハ、
只今伊藤君御話ノコトハ私全ク同感デア
リマスノデ、此ノ點ニ付キマシテハ深ク他ノ
閣僚トモ協議致シマシテ、適當ナル方法ヲ發
見致シタイト考ヘテ居リマス、唯今御話ノ
全國ノ多額納稅者ヲ集メテ、總理大臣カラ
所謂時局ニ對シテ協力ヲ求メルト云フコト
ニ付キマシテハ是ハ集メマス所ノ範圍ニ
關シマシテモ、色々ノコトガアリマセウシ、
又集メル方法ニ付キマシテモ色々ナコトヲ
考ヘヲケレバナリマセヌノデ、今直チニ之
ニ對シマシテ斯ウ云フ風ニ致スト云フコト
ヲ申上ゲ兼ネマスケレドモ、併シナガラ兎
ニ角一般大衆ニ向ツテ、是非トモ此ノ時局
收拾ニ對シテ御協力ヲ願フト同時ニ、特ニ
力アル人々ニ對シマシテハ特別ノ援助協力
ヲ願フト云フコトニ付キマシテハ、適當ナ
ル方法ヲ講ジタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=136
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137・伊藤五郎
○伊藤委員 ドウモ質問ノ蒸シ返シニナリ
マスガ、簡單ニ結論ダケ申シマス、此ノ際
大藏省ハ煙草ノ原料計算ヲ明ニシ、其ノ値
下ヲ斷行シ、政府自ラノ經營スル專賣事業
ニ於テモ斷ジテ不當ナル利益ヲ壟斷スルコ
トナク、社會通念上正當ナル利益ニ止メ、
適正價格ト低物價政策ノ範ヲ官業自體ニ於
テ示ス意思ハナイカドウカ、斯ウ云フ意味
デアツテ、後段ノコトニ付テハ大藏大臣カ
ラ答辯ヲ得テ居ルノデアリマスガ、大體ニ
付キマシテ專賣局長官カラモ御答辯ヲ承リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=137
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138・花田政春
○花田政府委員 初メノ方ノコトニ付キマ
シテハ、私ハ能ク承ツテ居リマセヌノデ大
臣カラ御說明ガアリマシタガ、今御話ノ專
賣局ノ方ノ煙草ニ對シテ、大體儲ケガ多ク
ハナイカト云フコトニ歸着スルト思ヒマス、
此ノ點ハ御承知ノ通リ煙草ノ益金ト云フノ
ハ大體事業ノ純益トカ利潤トカト云フ風
ナ考ヘ方ヲ持ツテ居リマセヌデ、消費稅ニ
權衡ヲ取ル、消費稅ト云フ方ノ建前ヲ强ク
考ヘテ居リマス、サウ云フ建前ヲ執ツテ居
リマスノデ、財政收入ノ方ノ點ヲ强ク考へ
テ居リマスカラ、或パ御話ノヤウニ、唯利
潤トシテ御考ニナレバ儲ケガ多イト云フコ
トニナルカモ知レマセヌガ、サウ云フ點カ
ラ豫算ヲ決メテ參リマスノデ、其ノ點御諒
承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=138
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139・伊藤五郎
○伊藤委員 儲ケノアルコトハ私モ知ツテ
居ルノデス、原價計算ニ對シテ七八割ノ稅
金ヲ課ケテ居ツタノデアリマス、ダカラ原
價計算ヲ明ニシテ貰ヒタイ、卽チ昭和十四
年度ニ於テハ煙草ヲ幾ラ賣ツテ、サウシテ
原價計算ハ幾ラデ、幾ラ儲カツテ、國民大
衆ガ幾ラ稅ヲ拂ツテ居ルカ、之ヲ聽カシテ
貰ヒタイ、サウスレバ如何ニ不當ナル利益
デアルカト云フコトガ分ルノデス、ソレデ値
下ヲシテ貰ヒタイト云フコトヲ申上ゲタノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=139
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140・花田政春
○花田政府委員 煙草ノ方ニ付テ申上ゲマ
スレバ、十五年度ハ賣上ノ金額ガ四億七千
七百万圓デアリマス、サウシテソレノ益金
ガ三億三千七百万圓ニナツテ居リマス、煙
草ニ付テハサウナツテ居リマスガ、アト鹽
或ハ「アルコール」ニ付キマシテハ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=140
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141・伊藤五郎
○伊藤委員 先ヅ煙草ダケデ宜イノデス、
稅金ト云フ文字ヲ使フトヲカシイカモ知レ
ナイガ、稅金トスレバ、ソレハ何割何分何
厘ニナツテ居マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=141
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142・花田政春
○花田政府委員 專賣局全體ト見マシテ大
體約七割ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=142
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143・伊藤五郎
○伊藤委員 煙草ダケデス、胡麻化シテハ
困リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=143
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144・花田政春
○花田政府委員 今ノハ原價ニ對シテ利益
ガ約七割ト云フコトヲ申上ゲタノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=144
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145・濱野徹太郎
○濱野委員 一寸議事進行ニ付テ申上ゲマ
スガ、只今ノ伊藤君ノ御質問ニ對シテハ、
明日ニデモスツカリ資料ニシテ出シテ戴イ
テ、御說明ニナツタラドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=145
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146・伊藤五郎
○伊藤委員 ソレ位ノコトハ今此處デ御答
辯ニナレマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=146
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147・花田政春
○花田政府委員 今ノハ說明ノ仕方ガ或ハ
惡カツタカモ知レマセヌガ、賣渡代金カ
ラ事務費トカ其ノ他囘送保管費トカ云フモ
ノヲ差引キマシテ、原價ニ對シテ益金ノ割
合ガ約七割ニナルト云フコトヲ申上ゲタノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=147
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148・伊藤五郎
○伊藤委員 國民大衆ニ對シテドレダケノ
稅金ニナリマスカ-ソレデハ言葉ヲ換ヘ
テ言ヒマセウ、「バット」ナラ「バット」ニ付
テ國民大衆ノ稅金ハ幾ラニナルカト聽クノ
デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=148
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149・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 煙草ハ普通ノ品物ト違ヒ
マシテ、稅金ト利潤ト云フモノトノ關係ハ
自ラ變ツテ居リマス、殊ニ資本金等ニ對シ
テノ關係モ考慮シテ居リマセヌ、又總テノ
色々ナ品物ノ經費ノ上ニ於テモ違ツテ居リ
マスカラ、一〓ニハ申サレマセヌガ、今御
話ノ通リノ算法カラ言ヒマスルト、所謂賣
上金額カラ利益ヲ引イタ殘額ガ元金デアル
カラ、元金ニ對シテ幾ラニナルカト云フコ
トナラバ、是ハ直グ出ル勘定デアリマシテ、
此處デ申上ゲヌデモ、一寸算盤ヲ御取リ下
サレバ分ルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=149
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150・森田福市
○森田委員 ソレカラ僕ノ質問ニ對シテ御
答ヲ願ヒマス-私ノハ斯ウ云フ質問デス、
煙草ノ價格ヲ上ゲル前ニハ品物ガ小賣店ニ
ナカツタ、煙草ノ價格ヲ上ゲテカラハ可ナ
リアリマス、ソコデ私ガ御尋スルノハ、煙
草ノ價格ヲ上ゲルコトヲ目標ニ置イテ專賣
局ガ配給ヲ怠ツタノカドウカ、若シ配給ヲ
怠ラナカツタノナラバ小賣店ガ賣惜ヲヤツ
タノカドウカ、此ノ二點ノ何レカデアルト
云フコトダケハ否定スルコトハ出來ナイ筈
デアリマス、若シ小賣店ガ賣惜ヲシテ居ツ
タト云フノデアルナラバアナタノ監督ガ惡
イノデアル、煙草ノ原價ヲ改訂シタ時ニ專
賣局ハ、朝日ナドモ十八錢デアツタモノニ
對シテ二十錢ノ「スタンプ」ヲ捺シ變ヘタ、
然ルニ捺シ變ヘナイモノガ今日デモ澤山ア
ルト云フコトハ、一部ハ小賣店ガ賣惜ヲシ
テ居ツタト云フコトガ明ニアルノデアル、
兎モ角モ、サウ云フコトヲヤツテハイカヌ
ガ、今後値上ノコトモ又アルコトデアルカ
ラ、小賣店ニ値上ヲシタ差額ヲ儲ケサセナ
イヤウニスレバ、少クトモ賣惜ハナイト考
ヘルガ、其ノ點ニ付テハ專賣局ハド考ヘテ
ウ居ルカ、一ツノ調査モシテ居ナイノデア
ルカ、若シシテ居ルノナラバ、煙草ノ拂底
ニ對シテ今後ノ對策ハドウ考ヘテ居ルカ、
斯ウ云フ質問デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=150
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151・花田政春
○花田政府委員 大體私共ノ知ツテ居リマ
ス範團ニ於キマシテハ、專賣局ハ普段ト殆
ド同ジニヤツテ居リマス、尙ホ煙草値上
ノ風評ガアリマシテ、煙草ノ消費者ノ買進
ミト云フモノガ非常ニアツタヤウニ考ヘマ
ス、隨テ小賣店ノ方ノ店ニアリマス煙草ト
云フモノガ非常ニ拂底シテ來マシタノデ、
ソレニ對シテノ寧ロ其ノ當時ハ餘計ニ配給
シテ居リマス、ソレカラ今御話ノヤウニ、
元ノ定價ノモノガ出テ居ルト云フコトハ、
是ハ細カイコトニナリマスガ····(森田委
員「細カイコトデハナイ」)手續上ノ細カイ
コトニナリマスガ、專賣局ノ販賣官署ナリ、
製造官署ナリカラ、小賣店ニ參リマス間ニ
於テ、相當アリマス、ソレカラ前ニ販賣シ
テアリマスモノデ、在庫ノモノガ相當ニア
リマス、ソレ等ハ全部新シイ定價ヲ捺スト云
フコトハ事實上非常ニ困難ナノデアリマス、
是ハ其ノ度ニ捺印スルコトニナツテ居リマ
スケレドモ、實際ハ實行出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=151
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152・森田福市
○森田委員 今ノ答辯デハ答辯ニナツテ居
リマセヌ、私ノ問ウテ居ルコトガアナタノ
頭ニ入ラヌノカモ知レヌガ、消費者ノ方デ
買溜ヲシタコトガアルカモ分リマセヌ、ソ
レハ私ハ問ウテ居ナイ、其ノ當時デモ賣惜
ヲシテ居ツタ者ガアル證據ニハ、改訂價格
ノ「スタンプ」ガ捺シテナイデハナイカ、ア
ナタノ答辯ニ依ルト、「スタンプ」ノ捺シテ
ナイモノガアルカモ知レヌト言ハレル、ソ
レハ各專賣局ガ價格ノ改訂ニナツタモノハ
直グ各市町村ノ配給所デ「スタンプ」ヲ捺シ
替ヘテ賣ツテ居ルカラ、專賣局ガ値上ヲシ
テ、其ノ値上ヲシタ原價デ賣ツタモノニハ
改訂價格ノ「スタンプ」ヲ捺シテアル、ソレ
ガ今日デモ尙ホ小賣店ニ改訂價格ノ「スタ
ンプ」ノ捺シテナイモノガアル、昨年ノ秋
値上ヲシタガ、今日デモ改訂價格ヲ捺シテ
ナイモノヲ賣ツテ居ル、ソレハ賣惜ヲヤツ
タノデアラウ、今後ハサウ云フコトヲヤラ
セズニ改訂價格ノ「スタンプ」ノ捺シテナ
イモノハ賣ラセナイヤウニスレバ、サウ云
フ賣惜ハ出來ナイデハナイカ、斯ウ云フ私
ノ質問デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=152
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153・花田政春
○花田政府委員 小賣人ノ方ニ賣惜ガアツ
タノデハナイカト云フ話デアリマスガ、多
少サウ云フコトハアツタト思ヒマス、今御
話ノヤウナ點ニ付キマシテハ尙ホ十分〓究
致シタイト思ヒマス、今申上ゲマシタヤウ
ニ、大體ハ非常ニ大キナモノニナリマスノ
デ、此ノ前ノ改訂ノモノガアルト云フヤウ
ナコトハ、私餘リ存ジテ居リマセヌケレド
モ、サウ云フ點ハ十分取締リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=153
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154・森田福市
○森田委員 アナタノ今ノ答辯デハ、私ノ
知ツテ居ル範圍トカ何トカ言ハレルガ、ア
ナタ以上ニ誰ガ知ツテ居ル者ガアリマスカ、
專賣局長官ガ知ラズシテ、誰ガ知ツテ居ル
者ガアルカ、アナタガ一番能ク知ラナケレ
バナラヌ、アナタガ專賣局長官デアルナラ
バ、アナタ以上ニ知ツテ居ル人ガアツタラ
大變ナコトデス、アナタガ知ラナケレバナ
ラヌノデス、ソレカラ今ノヤウナ賣惜ガア
ツタトカ何トカ、ソレモ分ラナカツタヤウ
ナ御答辯デハ困リマス、アツタカラコソ今
日デモ其ノ品物ガ小賣店ニ出テ來ルノデハ
ナイカト云フ實例ヲ擧ゲテ質問シテ居ルノ
デアリマス、今少シ所管事務ニ付テ勉强シ
テハドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=154
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155・木村尚達
○木村政府委員 一寸私カラ申シマスガ、
今ノ專賣局長官ハ此ノ間迭ラレマシタ、私
ガ前ノ專賣局長官カラ其ノ點ニ付テ話ヲ聽
イタノデアリマスガ、從來例ヘバ煙草ノ値
上ヲシタ時ニ、小賣店ナドニ行ツテ居ルモ
ノナドモ總テ改訂サセル方法モ一ツアル、
併シ今囘ノ場合ニハドウモサウ云フ小賣店
ニ行ツテ居ルノヲ一々定價ヲ捺サセルト云
フヤウナコトハ、非常ニ困難デアルカラ、
此ノ度ハ其ノ儘ニシテ置イタ、斯ウ云フ說
明デアリマシタ、隨テ今森田君カラ言ハレ
タヤウナ、當時賣惜等ヲシテ元ノ定價ノ付
イテ居ルモノヲ今ノ値デ賣ツテ居ル小賣店
ガ多少アルダラウト思ヒマス、サウ云フ方
法ニ付キマシテハ、只今御話ニナツタヤウ
ナ不都合ナ點モアリマスカラ、今後ノ場合
ニ於テハ十分其ノ點ヲ手續上等ニ付テ、〓
究ヲ致サナケレバナラヌト思ヒマスガ、昨
年ヤリマシタモノニ付テ、ドウモ今日ソレ
ヲ改メルト云フコトハ困難デアラウト思ヒ
マス、今後ハ十分其ノ點ニ〓究ヲ致サナケ
レバナラヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=155
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156・濱野徹太郎
○濱野委員 今長官ノ御答辯ノ中ニ、森田
君ノ御質問ニ對シテ、或ハソレハ消費者側
ノ買占デアルカ分ラヌト信ハレマシタガ、
消費者側ノ買占ト云フヤウナコトガアツタ
トシタラ、其ノ原因ハ何處ニアルカ、ヤハ
リ市中ニ於ケル自分ノ好キナ、民衆的ナ煙
草ガ缺乏シテ來タ、サウ云フヤウナコトカ
ラ自然ニ、是ハ例年通リノ値上ニデモナルノ
デナカラウカト云フ氣持ガ現ハレタト、善
意ニ解釋スルノデス、サウデナイトスレバ、
消費者側ニ買占ヲスル理由ガナイ、モウ少
シ深刻ニ言ヘバ、或ハ或ル方面デ煙草ノ煙
クラヰノ暗示ヲ與ヘタノデハナイカ、是レ
以上ノコトハ申シマセヌ、若シサウ云フコ
トニナレバ由々シキコトデス、ソレカラ先
程大藏大臣ノ御說明デハ、煙草ハ國家ノ收
入財源ノ大キナモノデアツテ、商品性卽チ
營利性ヲ帶ビテ居ナイト云フ御言葉ガゴザ
イマシタケレドモ併シ買フ方カラ言ヘバ、
何モソレガ政府ノ重要ナル財源デアラウガ
何デアラウガ、一ツノ商品性、營利性ヲ帶
ビテ居ル、アナタノ方デ商品性、營利性ヲ
持ツテ居ナイト仰シヤルナラバ、値上ヲシ
ヨウガシマイガ、出來ルダケノモノヲ、今
日十五錢ノモノヲ明日十八錢ニスルトシテ
モ、今日ノ夜ノ十二時マデハ十五錢デ潤澤
ニ與ヘナケレバナラヌ、ドウモ自分達ノ身
內ノコトヲ考ヘルト營利性ヲ帶ビサセテ置
イテ、サウデナイ時ニハ國民ニ對シテ申譯
的ニ營利性ヲ帶ビテ居ナイト言ハレル、國
家ノ財源ダト云フ御說明デハ、聊カ吾々國
民トシテ引込ンデ居レナイヤウナ氣持ガシ
やく、之ヲ要スルニ煙草ノ値上ヲナサル時
ニ、煙草ノ煙デハナイケレドモ、何處ト
ナク匂ガ洩レテ來ル、是ハ大イニ官紀ノ方
カラ考ヘラレルト同時ニ、配給ヲ差控ヘル
ト云フヤウナ商賣氣ヲ起シタモノガ、營利
的デナイノカト云フコトヲ一本突込マレマ
ス、私モ一本突込ンダ積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=156
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157・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ今日ハ委員諸君ニ
大分御都合ガアルヤウデスカラ、此ノ程度
デ散會致シタイト思ヒマス、明日ハ午前十
時ヨリ開會致シマス
午後四時五十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01619400305&spkNum=157
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