1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十五年三月十四日（木曜日）午前十時三十分開議
出席委員左の如し
委員長代理 理事 坪山徳彌君
理事 深澤吉平君 理事 森幸太郎君
高田耘平君 土田莊助君
今成留之助君 岡野龍一君
小笠原八十美君 小串清一君
小野謙一君 平野力三君
出席政府委員左の如し
農林政務次官 岡田喜久治君
農林省畜産局長 岸良一君
馬政局長官 村上冨士太郎君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
農林技師 佐々田伴久君
農林技師 佐藤繁雄君
農林事務官 三須武男君
本日の會議に上りたる議案左の如し
裝蹄師法案（政府提出、貴族院送付）
家畜傳染病豫防法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
牧野法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
獸醫師法等の臨時特例に關する法律案（政府提出、貴族院送付）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=0
-
001・坪山徳彌
○坪山委員長代理 ソレデハ只今カラ會議
ヲ開ギマス、發言ノ順序ハ深澤君ニナツテ
居リマスガ、今見エマセヌカラ次ノ方ニ御
許致シマス-小笠原君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=1
-
002・小笠原八十美
○小笠原委員 私ハ牧野法ノ目的デアル馬
ノ生產育成竝ニ資質ノ向上ニ付テ、又其ノ
資源確保ニ付テ伺ヒタイノデアリマスガ、
實ハ農林、陸軍、大藏ノ三大臣ノ御答辯ヲ
得テ、今日全國ノ馬產界ノ不安デアル所ヲ
一掃シタイト云フノガ目的デアツタノデア
リマスガ、大臣方ガオ見エニナリマセヌカ
ラ、其ノ他ノ次官竝ニ長官ノ方々竝ニ陸軍
ノ方々、ソレ〓〓御傳ヘヲ願ツテ、更ニ後
デ大臣ノ御出席ヲ願ツテ要點ダケ伺フコト
ニ致シタイ、ソレデ私ハ今同ノ急激ナ生產
地ノ不安ニ對シマシテ、實際ノ有體ノコト
ヲ申上ゲテ御尋シタイノデアリマス、隨テ
其ノ申上ゲルコトガ多少細カイ點ニ入ルコ
トト思ヒマスガ、ドウゾ此ノ問題ハ極メテ
急迫シテ居ル場合デモアリ、且又軍ノ作戰
上ノ極メテ重要ナ活兵器ノ生產デアリマス
カラ、御許シヲ願ヒタイノデアリマス
先ヅ牧野ノ開放モ馬產家ノ多年要望シタ
ル點デアリマシテ、今日此ノ改正ニ依ツテ
更ニ國民ノ希望ヲ滿タサントシテ居ルコト
ニ對シマシテハ、感謝ニ堪ヘナイ者デアリ
マン·併シナガラ牧野ノ改正ノ點ニ於キマ
シテモ、相當ナ疑問ヲ有シテ居ルノデアリ
マスガ、此ノ牧野法ノ改正ニ付テ思ヲ致シ
マスト、同時ニ昨今ノ物價騰貴ノ情勢カラ、
馬資源ニ如何ナル影響ガアルカト云フコト
ノ調査ガ、先ヅ必要デアルト思フノデアリマ
ス、今日ノヤウナ情勢デハ資源確保ハ到底
出來ナイノデアリマシテ、馬ノ生產ニ從事
シテ居ル者ハ經濟ヲ度外視シテ、愛馬ノ傳統
的精神ト趣味ヲ持チマシテ、愛著心カラ是
マデドウニカヤツテ來タノデアリマスガ、
數年前ヨリ諸物價ノ暴騰ニ依リ、一面出征
兵竝ニ徵發馬等ニ依ツテ、愈〓農家經濟ハ困
憊窮迫ヲ告ゲテ來タノデアリマス、併シナ
ガラ此ノ時局ニ鑑ミマシテ、軍ノ活兵器ヲ
生產スル農民ハ、一切ノ收穫ヲ擧ゲテ、馬
生產ノ損失ヲ負擔致シマシテモ、現ニ資源
確保ニ努メテ居ルモノデアリマス、軍馬ニ
對シマシテ一例ヲ申上ゲルナラバ、馬ノ糶
市場ニ於キマシテモ、市場價格ハ牛馬商ニ
購買サレル方ガ五圓、十圓高クアツテモ、
安イ方ノ軍馬購買ヲ希望シテ、軍馬御用ノ
聲ヲ聞クト同時ニ、恰モ出征兵ヲ送ルガ如
キ觀ヲ呈シテ、拍手ヲ以テ之ヲ送ツテ居ル
ノデアリマス、又畜產組合ニ於テハ何時デ
モ申上ゲル通リ、軍馬ヲ多數生產シタ部落
ニハ國防優勝旗ヲ授與シ、又個人ニ對シマ
シテモ木杯等ヲ授與シテ、奬勵シ來ツタノ
デアリマス、斯ノ如キ狀況ハ今囘ノ事變ニ
對スル軍需資材供給ノ何レカラ見マシテモ、
農村ノ個有ノ美德ノ現レデアリマス、然ル
ニ昨年ヨリ本年ニ掛ケテノ諸物價ノ急激ナ
ル暴騰ハ、物ニ依ツテハ倍カラ三倍、五倍
ト云フ狀況デアリマシテ、農村ノ美德モ、
馬資源モ破壞シツツアルト云フ點ハ、政府
デハ今見逃シテハナラナイ狀況デアリマス、
昨年日支事變ノ實績ニ鑑ミマシテ、種馬統
制法竝ニ軍馬資源保護法ノ二法案ヲ制定シ
テ、馬ノ方針ニ大改革ヲ來シタノデアリマ
スガ、此ノ改革ノ要點ハ軍ノ要求スル所
ハ低身廣軀、四肢强健ニシテ、負擔力、輓
曳力ニ富ム馬ヲ要求シテ居ルノデアリマス
ガ、斯ウ云フ條件ノ馬ヲ生產スルニハ、ヤ
ハリ生產ノ技術ニ一定ノ條件ガアリマス、ソ
レデ先ヅ最初カラ斯ウ云フ馬ヲ生產スベク
配合ニ注意シナケレバナラヌノデ、假ニ申
上ゲテ見レバ、體高ノ高過ギル馬ニ對シテハ
低イ馬ノ配合、低イ馬ニハ體高ノ高イ馬、或
ハ又蹄ノ惡イ馬ニハ良蹄ノ馬ヲ、又乘馬生產
ニ對シテハ步樣ニ注意シテノ配合トカ云フコ
トデ、中々配合カラシテ相當ノ注意ヲ拂ハ
ナケレバナラヌノデアリマシテ、隨テ種牡
馬ノ選擇ト其ノ配給ニ重點ヲ置カナケレバ、
今度ノ要求スル馬ト、此ノ法ノ目的ニ達ス
ルコトハ出來ヌノデアリマス、又次ニ我國
ノヤウニ牧野ガマダ不完全ナ所デハ、軍ノ
要求スル馬ヲ生產スルニハ、是ハ馬モ人モ同
ジコトデアリマシテ、幼駒ノ場合ニ當歲カラ
三歲時期ノヤウニ最モ發育ノ旺盛ノ時ニ、
發育ニ要スル所ノ最高ノ榮養ト運動トヲ伴
フト云フコトハ、最モ重大要件デアリマス、
次ニハ牧野ノ整備擴張、採草地ノ選定ヲ誤
ラナイヤウニシナケレバナラヌ、斯ウ云フ
コトハ此ノ馬ノ生產ニ對シテ最モ注意ヲシ
ナケレバナラヌ點デアリマスガ、吾々ノ東
北地方デハ放牧期間ハ僅カ五箇月間シカナ
イノデアリマシテ、アトハ積雪ノ爲ニ七箇
月間ト云フモノハ、舍飼ヲ餘儀ナクサレル
ノデアリマス、併シナガラ舍飼ニ於テモ放牧
ニ於テモ、一定ノ濃厚飼料ハドウシテモ與
ヘナケレバナラヌコトハ勿論デアリマス、
中ニモ冬期間ノ運動ヲ怠ラズ、同時ニ飼料
ヲ十分ニ供給スルト云フコトハ、是亦絕對條
件ナノデアリマス、隨テ馬ノ生產竝ニ幼駒
ノ育成ハ、中々サウ簡單ニ行カヌノデアリ
マシテ、殊ニ今囘ノ二法案ノ制定ニ依ツテ、
軍ノ要求馬竝ニ此ノ要求馬ヲ生產スル所ノ
種牝馬デアリマスガ、是ノ育成ニハ特別ナ
技能ヲ要スルノデアリマシテ、此ノ馬ノ生
產ニ當リ、或ハ幼駒ノ育成ニ當ル牧夫ハ一
ツノ技術ヲ要スルノデアリマシテ、軍馬ヲ
兵器トスルナラバ、ソレヲ生產スル所ノ者
ハ、恰モ鐵砲大砲ヲ製作スル職工ト同樣
ニ、今日ノ場合相當ニ重要ナ技術者デアル
ノデアリマス、此ノ人等ノ給料ハ是マデ〓
ヲ與ヘテ年ニ二百圓內外デアツタノデアリ
マスガ、現在デハ〓ヲ與ヘテ四百圓デモ人
ヲ求ムルコトハ出來ナイト云フノデ、非常
ニ困惑ヲシテ居ルヤウナ狀態デアリマス、
何故サウ云フコトニナルカト云ヘバ、今日
人ニ限リガアルモノデスカラ、假ニ靑森縣
ニ例ヲ引クナラバ、東北振興電力ト云フモ
ノガ今盛ニ大工事ヲヤツテ居ル、又一方ニ
ハ軍需工業、軍事ノ飛行場其ノ他ノ事業ヲ
方々デヤツテ居ル、ソレカラ「アルミ」工業等
モ馬產地ニ方々ニ出來テ居ルノデアリマス、
是ガドウシテモ人ガ要ルモノダカラ、如何
ナル人ヲ雇入レルニモ金ヲ以テ爭ツテヤツ
テ、小學校卒業生デ一日ニ一圓五十錢、二
圓相當ナ若イ者デアルト一日二圓五十錢
ト云フヤウナコトデ雇ハレルノデアリマス
カラ、迎モ馬產家ノ方デハ是ト競爭シテ雇
入レルコトガ出來ナイト云フヤウナ狀態デ
アリマス、故ニ馬ノ生產ハ今日ノ情勢カラ
シテ採算ナドト云フコトデナク、モウ他ノ
收穫ヲ以テ補フコトガ餘リニ犧牲ガ大キイ
ノデアリマシテ、非常ニ窮迫ヲシテ、今日
容易ナラザル狀態ニナツテ居ルノデアリマ
ス、其ノ中デモ最モ馬政局ノ方デ注意ヲシ
テ戴カナケレバナラヌコトハ、地方ノ優秀
ナ馬ヲ生產スル人、卽チ種牡馬、候補馬ト、
云フヤウナモノヤ、或ハ軍馬ノ中ノ優秀馬
ト云フモノヲ生產スル人ハ、多クハ各部落
ニ於テノ有力者デアリマス、一體馬ニ對シ
テハ複雜ナ法律トカ命令トカ云フモノガ三
百五六十モアルノデアリマスガ、之ヲ馬生
產ニ當ル農家ハ何ニモ分ラナイデ、此ノ中
堅ノ有力ナ優秀馬ヲ生產スル連中ガ指導シ
テ、今マデ馬ノ生產ヲヤツテ來タノデアリ
マい、所ガ近頃ニナリマシテカラ、此ノ指
導者ノ連中ハ一番經濟的ニ打擊ヲ受ケ、且
又算盤ノ方ハ農村ニ於テモ達者ナ連中デア
リマスカラ-餘リニ犧牲ガ多イノト、年
年政府ノ方ニ馬ノ經濟ノコトニ付テ陳情致
シマシテモ、殆ド其ノ要望スル所ハ容レラ
レナイノデ、モウ今日ノ狀態ヲ悲觀シテ、
ソロ〓〓馬ノ方カラ逃支度ヲ始メタト云フ
現狀デアルノデアリマス、此ノ優秀ナ馬ヲ
生產スル農村ノ有力者ハ、是マデハ經濟ト
云フコトヲ度外視シテ頑張ツタノデアリマ
シテ、ソレモ御承知ノ通リ先祖傳來ノ愛馬
心ト、時局ノ重大性ニ鑑ミタコトデアリマ
シテ、此ノ愛馬心ニ依ツテ馬ト同居シテ今
日マデ來タノデアリマスガ、現在デハモウ
ドウニモナラナクナツテ、殆ド世間體ニハ
見エナイヤウニシテ居リナガラ、三頭ノ馬
ハ二頭ニ減ジ、二頭ノ馬ハ一頭ニ、一部分
中デモ良馬ハ飼料ガ餘リニ多ク掛ルノデア
リマシテ、飼料ノ要ラヌ駄馬ト云フヤウナ
モノニ換ヘ、更ニ一頭シカ所有シテ居ラ
ヌ者ハ、牛ニ乘換ヘテ居ルト云フ現狀デ
アリマス、農民ハ朴訥デアリマシテ、
他ノ產業ニ關係シテ居ル者ノヤウニ、廢メ
ル時ニモ非常ニ目立ツヤウナ方法ヲ執ラナ
イ、是マデ馬ニ對シテハ皆奬勵モシ、指導
モシテヤツテ來テ、本人モソレデハト云フ
ノデ乘出シテ、ヤリタイト云フヤウナ氣
分ノアル所ニ、急ニ斯ウ云フ大キナ打擊
ガアル場合ニ、自分カラ止メルト云フコト
ハ全ク世間ニ申譯ナイヤウナ感ガスルノデ
アリマシテ、是ハコソ〓〓止メナクテハナ
ラヌト云フヤウナ狀態デアルノデアリマス、
是ガ一番今日ノ恐シイ事情デアルノデアリ
やっく、是ハ田舍ノ地方的ナコトヲアナタ方
ニ申上ゲテモ、マサカサウデハアルマイ、
地方ノ報〓ハソンナコトデハナイ、斯ウ仰
セニナルカモ知ラヌガ、實際ノアナタ方ニ
對スル證據トシテ現ハレルノハ、中央ニ於ケ
ル乘馬團體、·此ノ方々ハ大抵金ニ困ラナイ
人デ、贅澤道樂デヤツテ居ルノデアリマス
カラ、如何ニ飼料ガ高クテモ決シテ馬ヲ牛
ニ換ヘル筈ハナイ、所ガ中央ニ於テモ、地方
ニ於テモ乘馬團體ナドヲ組織シテ居ル所ハ
半減サレテ居ル、三分ノ一ニナツテ居ルト
云フ狀態ヲ見マシテモ、如何ニ此ノ飼料ト
云フモノガ影響シテ居ルカ、又牧夫ノ關係
ガ影響シテ居ルカ、牧夫ノ關係モ飼料ニ劣
ラザル所ノ大キナ影響ガアルノデアリマシ
テ、非常ニ生產地トシテハ大打撃ヲ受ケテ
居リマシテ、ドウシテモ已ムヲ得ナケレバ
馬ヲ廢サナケレバナラヌト云フヤウナ現狀
ニマデ立至ツテ居ルノデアリマス、之ニ對
シマシテ馬政局關係ノ方々能ク御承知デア
ラレル通リ馬ノ生產擴充方面、指導方面ニモ
先刻申上ゲタ通リ各部落々々ノ知識階級ノ
有力者ガ、犠牲的ニ生產ニ從事シテ居ツテ、
ソレヲ目標トシテ多クノ農家ガ生產ニ携ツ
テ來タト云フコトハ、能ク分ツテ居ラレル
ノデアリマスガ、地方ノ有力者ガ此ノ生產
カラ逃レヨウトシ、他ニ轉向シヨウト云フ
ヤウナ考ヲ持ツテ來タ時分ニ、農家ニ對シ
テハオ前等ノ方ダケハヤレ〓〓ト云フノ
デ、自分ダケガ逃レルコトガ出來ナイノデ
アリマス、ソレガ段々大キナ影響ニナルト、
急ニ大變動ガ來ルト云フコトハ、アナタ方
ハ見逃シテナラヌト私ハ思フノデアリマス
ガ、此ノ問題ニ對シマシテハ、本當ハアナ
タ方ハ御知リニナリマスマイガ、私ハ馬ニ
携ツテ居ルカラ實際ビツクリシタコトガア
ルノデアリマス、之ニ對スル對策ト云フモ
ノヲ執ツテ居ラレルカ、或ハ又今後ドウ云
フ方針デ此ノ資源確保ト云フコトニ對シテ、
急激ナ打擊ヲ與ヘズシテ救濟スル方法ヲ執
ラレルカ、是ハ非常ニ大キナ問題デアリマ
スカラ、此ノ點デ何カ御考ニナツテ居ルコ
トガアルカ、又或ハ之ニ對策ヲ執ラレルコ
トガアリマシタナラバ、此ノ際伺ツテ置キ
タイノデアリマスガ、尙又無理ニ考ノナイ
對策ヲ執ツテ居ラヌト、今此ノ場逃レノヤ
ウナ御答辯ヲ得テモ、此ノ馬產地方ハ安心
スルモノデハアリマセヌカラ、若シ執ラレ
ナイトシタナラバ、今後ハ調査班デモ出張
セシヌ、其ノ他ノ對策ヲ執ル爲ニハ如何ナ
ルコトヲ爲サレルカト云フヤウナコトヲ言
ハレタ方ガ、却テ生產者ノ方ニ安心セシム
ルニ宜イト思フノデアリマスガ、併シナガ
ラ策ガ立ツテ居ルト云フコトデアルナラバ
幸ヒデアリマスカラ、先ヅ其ノ點ヲ伺ツテ、
ソレカラ細部ニ亙ツテ御尋シタイト思フノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=2
-
003・村上冨士太郎
○村上政府委員 只今小笠原委員ノ縷々御
述ニナリマシタコトハ、私共モ非常ニ啓發
サレル所ガ多イノデアリマス、從來此ノ馬
產ノ關係ハ、地方ニ於ケル所ノ有力者、其
ノ他一般其ノ方面ノ馬產農民ガ先祖傳來ノ
愛馬心ニ依ツテ、義勇奉公ノ精神カラ算盤
ト云フコトニ重キヲ置カズシテ、全ク純國
家的立場ヨリ馬產ノ振興、良馬ノ生產ニ努
メラレタト云フコトハ、是ハ私共竝ニ陸軍
ニ於テモ非常ニ感謝シテ居ル所ト考ヘテ居
リマス、而シテ只今御述ニナリマシタ最近
ノ現狀ニ於テ、有力家等ガ次第ニ馬產カラ
手ヲ引クト云フヤウナコトニ付キマシテ
ハ只今笠原委員ノ御述ニナツタヤウニ
サウ云フ悲觀的ナ報〓ハ私共ハマダ聽イテ
居リマセヌ、併シ私共ハ中央ニ居リマシテ、
地方ノ津々浦々ニ對シマシテハ、情報網ハ
廣ク延ビテ居ル譯デハゴザイマセヌノデ、
今後ソレ等ノ點ニ付テハ十分實情ヲ調査シ
マシテ、其ノ結果、是ハ事實捨テ置キ難イ
モノト見レバ、至急對策ヲ講ジナケレバナ
ラヌト思ヒマス
尙ホ牧夫ノ問題ニ付キマシテハ、此ノ度
豫算ニ於キマシテ、牧夫設置ノ助成金竝ニ
牧夫ノ養成費ヲ計上シテ置キマシテ、ソレ
ニ依ツテ優良ナル牧夫ヲ得ルコトニ努メル、
斯ウ考ヘテ居リマス
尙ホ飼料ノ問題ニ付テモ、是ハ畜產局或
ハ陸軍等トモ色々協議シ聯合シマシテ、軍
用保護馬トカ、種馬デアルトカ、ドウシテ
モ相當ノ飼料ヲ配給シナケレバナラナイモ
ノニ付テハ、滿洲國ノ大豆粕及ビ大豆ノ配
給ニ付キマシテ手配ヲシテ居ル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=3
-
004・小笠原八十美
○小笠原委員 只今ノ御答辯デ、能クマダ
地方ノ內容ハ御分リニナラナイト云フ御話
デアリマスガ、尤モサウデアリマセウ、併
シナガラ今申サレタ通リ、實際馬ニ關係ノ
アル人デアツテモ、地方ノ種馬所或ハ牧
場ト云フヤウナ所デアツテモ、實際ノ馬ノ
移動ノアルコトヲ知ラヌデ居ルヤウナ狀況
デアリマス、尤モ今ハ種付ケノ檢査時期デ
モアリ、其ノ他ノ關係デ馬ノ調査、檢査ニ
〓ル時デアルカラ、同時ニ移動馬ト云フモ
ノノ實情ヲ御調査ニナツテ對策ヲナサルコ
トガ、最モ急務ダト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、大體馬ニ對シマシテハ農林省デモー
マア總テサウカモ知レナイケレドモ、兎ニ
角馬ハ特ニ農林省デモ、大藏省ハ勿論、軍
部ノ方ニ於キマシテモ、大臣アタリモ、長
官アタリモ素人デアツテ、多クハ中間屬僚
ノ意見ニ依ツテ、馬政國策ト云フモノノ方
針ハ立テラレテ居ルト思フノデアリマス、
隨テ玆ニ馬ニ關係スル官吏ノ方々ハ、特
官僚獨善デアツテハナラヌト私ハ考ヘテ居
ルノデアリマス、私等ノ注意ヲスルコトハ
中々ドウモ通ラナイヤウナ感ガシテ洵ニ遺
憾ヲ感ズル、第一此ノ間モ馬產ノ關係ニ對
シテノ重要ナ位置ニ居ル方々ニ對シテ、私
ハ今日ノ馬ノ移動狀況ヲ報〓申上ゲタ、申
上ゲテモ中々ビツクリシナイ、平然トシテ
居ツテ、ドウモ外國ニ行クノヂヤナイノダ
カラ、內地ニサヘ居ルナラ馬ガ移動シテ何
處ヘ行ツテモ、生產ニ差支ナカラウト云フ
ヤウナ言ヲサヘ吐カレル方々デアル、ドウ
モ斯ウ云フ机上ノ空論ヲ振廻スト云フヤウ
ナコトニ、官僚ノ方々ガ思フノデアレバ、
馬產ト云フモノト國防ノ前途ニ、一抹ノ不
安ヲ感ゼザルヲ得ナイヤウナコトニナルノ
デアリマス、今申上ゲタ通リ馬ト云フモノ
ノ生產ハ、技術ガ件フモノデアリマシテ、
馬ダケ移動シタツテ技術ガ伴ツテ行カナイ
ト生產率ノ減少ヲ見ルコトハ是ハ勿論デ
アリマス、況ンヤ生產地カラ育成地トカ、或
ハ使役地ニ移動シタノデハ、是ハ生產不能
ニナルコトハ勿論デアリマス、同ジ生產地
ノ移動デアリマシテモ、移動シタ其ノ年ダ
ケハ受胎率ト云フモノハ三分ノ一ニ低下ス
ル、斯ウ云フコトガ是ハ條件ノヤウニナツ
テ居ルノデアリマシテ、此ノ點ハ政府ニ於
テモ各牧場トカ、其ノ他ニ於キマシテ能ク
調査ヲナサレテ、此ノ點ハ分ツテ居ラレル
ト思フノデアリマス、隨テ此ノ馬ノ問題ニ
付キマシテハ、特ニ資源確保ト云フコトニ
對シテハ種牝馬ノ移動ヲ禁止スル、移動ガ
アルト云フコトガ一番恐ルベキモノダト云
フ風ニ御考ニナラレテ、此ノ點ニ重點ヲ置
イテ、色々御調査ヲナサレナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、先ヅ此ノ移動ニ依ツ
テ生產率ハ低下スル、或ハ生產不能ニナル
ノデアルト云フコトノ御調査ガ何處マデ出
來テ居ルカ、如何ニモ移動ガアツテハナラ
ヌモノダト云フコトニ對シテ、認識シテ居
ラレルカドウカ、ソコデ私ハ非常ニ疑ヲ持
ツテ居ルコトガ一ツアル、何故ナレバ今ノ
補助ヲ出シテ居ルコトニ付キマシテモ、亦
長官ガ馬匹協會ニ於キマシテ御講演、御訓
示ヲナサレタ點ノ內容ニ付キマシテモ、生
產ニ對シテハ生產技術者ノ助成ヲシテ各地
ニ配置シテ居ル、如何ニモ其ノ通リデアル、
又慣行ノナイ牝馬ニ對シテ奬勵ヲヤツテ、
サウシテ種付ヲ奬勵シテ居ル、ソレガ爲ニ
生產ガ非常ニ增加シタト云フヤウナコトヲ、
御講演ナサレテ居ルト記憶シテ居リマスルガ、
一體馬ハ慣行ノナイ所ニ種付ヲシタノニ依
ツテ、生產成績ガ增加スルト云フコトハ、
ソレガドレ程效果ガアルカト云フコトニ私
ハ多大ノ疑ガアル、今マデ增產計畫ヲ御立
テニナルニ際シテ、種付ノ受胎能率ト云フ
モノハ、數種付ヲシタツテ能率ガ上ルモノ
デハナイト云フ風ニ私ハ感ジテ居ルノデア
リマシテ、今マデノ日本全國ノ生產馬ニ配
合シタ其ノ受胎率ヲ見マスルト五〇%ニモ
行ツテ居ラヌ、而モ其ノ中ノ良馬ヲ選定ス
ルト云フコトニナレバ甚ダ少數ナモノデア
リマス、是ガ牧場トカ其ノ他デ非常ニ種
ヲ掛ケテ、有ユル手段ヲ盡シテ生產ニ盡
力シテ居ル所ハ、八〇%ト云フ相當ノ成績
ヲ擧ゲテ居ル、隨テ斯ウ云フノハ政府
ノ牧場アタリデ成績ヲ見テ居ルノデア
リマスカラ、如何ニスレバ增產計畫ニ效
果ガアルカ、卽チ良馬ノ生產ニ宜シイカト
云フコトハハツキリ分ツテ居ル筈デアリマ
スガ、ソレダケノ豫算ヲ出シテ生產ニ指導
助成スルト云フコトハ、今日馬產政策上ノ
豫算ヲ取ルコトハ出來ナイノデ、隨テ今ア
リノ儘ノ現狀ヲ以テ、唯數ヲ殖ヤス爲ニ慣
行ノナイ馬ニ種付ヲスルナラバ、數種付ヲ
スルカラ數生產スルダラウト云フヤウナ方
針ヲ執ツタノデハナイカト云フコトニ對シ
テ、私ハ大キナ疑ヲ持ツテ居ル、是ハ長官
ハヤハリ馬ノ實際ノ技術者ノ方カラサウ申
サレタナラバ、サウ信ジテ居ラルレノデア
リマセウケレドモ、ヤハリ受胎率ト云フモ
ノハ相當ノ榮養ヲ攝ツテ、體內ニ蛋白質ヲ
十分ニ含ンデ居ルト非常ニ成功スル、濃厚
飼料ヲ與ナイ、蛋白質ノナイ體內ニハ受胎
率ハ惡イノデアル、現在下北方面ノヤウニ飼
料ヲヤラナイ所ノ馬ハ中々受胎率ガ惡イシ、
生レテモ中々好イ按排ニ出來ナイ、朝鮮カ
ラ馬ヲ持ツテ來テモ、其ノ年ダケハドンナ
ニ配合シタツテ、中々二割モ受胎シナイ、
一年間シツカリ濃厚飼料ヲヤツテ、十分ニ
榮養飼料ヲ攝ラセレバ翌年ニナツテ一〇〇
%デアル、斯ウ云フ狀況ヲ見マシテモ、ドウ
シテモ榮養ト云フモノヲシツカリヤラヌト
駄目ダ、ダカラ今ノ雪國地方デアリマシテ
千、或ハ又其ノ他ノ農家デアリマシテモ、
何レモ舍飼シテ居ル時分ニ、運動ト飼料ト
スツカリ調和ヲ付ケルヤウニ與ヘテ、春種
付ヲスルト一番受胎率ガ多イ、ダカラ現在
慣行ノアル馬ニサヘ種付ヲスレバ、或ハ軍
ノ目的トスル馬ガドン/〓生產出來ルコト
ハ、是ハモウハツキリ分ツテ居ル、其ノ方
ヲヤルト相當ニ又是ハ助成スル上ニ於テモ
金ガ掛ルデセウ、之ヲ取ラズシテ、今言ツ
タ慣行ノナイ所ニ力ヲ置イテ居ルト云フコ
トハ一體政府ノ方デ〓究シタ何レノ方面
カラ、サウ云フ方針ヲ取ラレタカト云フコ
トニ私ハ疑問ヲ持ツテ來ルノデアリマスガ、
今後ハ殊ニ馬ノ移動ガ激シクテ前途ノ生產
ニ心配デナラナイ場合ニハ、ヤハリ生產步
合受胎步合ト云フモノニ重點ヲ置カナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、ソレニハ今
ノ蛋白質ト云フモノハ非常ニ受胎率ニ大キ
ナ關係ノアルコトハ大分〓究モ進ンデ居リ、
吾々組合トシテモサウ云フコトヲヤツテ見
テ成功シテ居ルノデアリマスカラ、サウ云
フ點ニ重點ヲ置イテ、是カラ生產增進ト云
フコトニ方針ヲ取ラレル考ガアラレルカド
ウカト云フコトヲ先ヅ伺ツテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=4
-
005・村上冨士太郎
○村上政府委員 今日馬ガ徵發其ノ他ノ關
係上相當減ツテ居リマスノデ、之ヲ囘復ス
ルニハ、第一ノ觀點ニ於キマシテ受胎率ノ
增加ト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、之
ニ付キマシテハ只今モ各地ニ生產技術ノ方
ノ受胎率增進ニ關スル技術員ヲ增置シテ居
ル譯デアリマスガ、吾々ノ〓究ニ依リマス
レバ、只今ノ受胎率ハ五〇%ヲ稍〓下ル位ノ
所デアリマス、之ヲ全般的ニ見テ六十位ニ
引上ゲルコトハ左程困難デナイ、成程國立
種馬牧場等ニ於テハ七十五、或ハ八十ト云
フヤウナ成績モ擧ツテ居ルノデアリマス、
ソコマデ之ヲ持ツテ行クト云フコトハ到底
不可能デアリマスガ、六十近クニ引上ゲ
ルコトハ、サウ困難デハナイト云フコトヲ
私共ハ技術者カラ聞イテ居リマス、其ノ受
胎率ト蛋白質ノ問題、榮養ノ問題ニ付キマ
シテハ、私ニ代リマシテ他ノ說明員カラ答
辯ヲ致サセマス
次ニ今マデ種付ノ慣行ノナイ土地ニ對シ
テモ、種付ヲ奬勵ヲシテ居リマス、是ハ必
ズシモソレカラ出マス仔ガ非常ニ良イモノ
ガ生レルトハ考ヘテ居リマセヌガ、斯ウ云
フ際ニ於キマシテハ、馬ノ數ガ殖エルト云
フコトハ、一般農耕馬等ニ對シテ供給ヲ潤
澤ニナラシムルト云フ意味ガアリマスノデ、
ソコデサウ云フ方面ニ付テモ、ヤハリ此ノ
際力ヲ注グ必要ガアルト思ツテ、其ノ方ニ
對シテモ種付ノ奬勵ニ付テハ、ソレ〓〓施
設ヲシテ居ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=5
-
006・佐々田伴久
○佐々田說明員 只今小笠原サンノ御質問
ノ中ニ、慣行ノナイ牝馬マデ生產ヲ强ヒテ
增產ヲ圖ルコトハ、效果ガ擧ルノデハナイ
カト云フ御話ガアリマシタガ、慣行ノコトニ
付キマシテハ、全然慣行ノナイ地方ノ生產
ヲ奬勵スルト云フ趣旨デ、多分長官ガ仰セ
ニナツタノデハナイカ、從來慣行ノナイ牝
馬ヲ慣行ノ方ニ誘動シテ、サウシテ種付數
ノ增加ヲ圖ルト云フ意味ニ仰セニナツタノ
デハナイカト存ズルノデアリマス、現在私共此
ノ方面ノ指導方針ト致シマシテハ、從來生產
ノ慣行アル地方ニ於テ、而モ四歲以上ノ繁殖適
齡馬ニシテ、從來生產ノ慣行ノナイ牝馬ガ
相當居ル、之ヲ生產スルヤウニ誘導致シマ
シテ、種付數ノ絕對數ヲ增シテ增產ヲ圖ラ
ウ一方只今申サレマシタヤウニ、生產率
ノ增進ヲ圖ル爲ニ、之ニ關スル技術員ヲ增
置サレテ、生產率ノ增加ヲ圖ツテ居ラレル
ノデアリマスガ、尙ホ吾々ノ希望トシテ
ハ榮養ノ良イ-今小笠原サンノ申サレ
タ蛋白質ノ多イト申シマスカ、榮養ノ良イ
モノニ付キマシテハ、之ヲ隔年交配デナク
連年種付ノ方ニモ誘導シテ、併セデ增產ヲ
圖ル、各種ノ方面カラ增產ヲ考ヘテ居ルノ
デアリマシテ、全然慣行ノナイ育成地域ハ
飼育地ニ於ケル牝馬ニモ、種付ヲシテ增產ヲ
圖ルト云フコトハ考ヘテハ居ナイノデアリ
マス、其ノ點誤解ノナイヤウニ一言申添へ
テ置キマス、尙ホ牝馬ノ移動デゴザイマス
ガ、生產地ニ於ケル繁殖慣行ノアル牝馬ガ、
生產ヲ爲サザル地方ニ移動スルト云フコト
ハ、是ハヤハリ國內ノ生產ヲ低減スルコト
ニナリマスノデ、若シ是ガ頻々トシテ行ハ
レルヤウナコトニナリマシテハ、折角增產
計畫ヲ立テテ居ル今日、由々シキ問題デアル
ト存ジマスノデ、是ハ能ク調査致シマシテ、
ドウ云フ地方ニサウ云フ傾向ガアルカヲ調
ベテ見タイト存ジマス、私ノ申上ゲルコト
ハ是ダケデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=6
-
007・佐藤繁雄
○佐藤說明員 ソレデハ榮養ノ方ニ關シテ
私カラ御答辯申上ゲマス、只今ノ受胎、又
流產セズニ健全ナ子供ヲ生ム上ニ於テ、蛋
白質ノ豐富ナ給與ト云フコトハ是ハ根本
的ニ必要ナコトデ、第一義デアルト云フコ
トハ色々ノ調査デ小笠原サンノ仰シヤル
通リ分ツテ居リマス、隨ヒマシテ生產率增
進施設ニ於テ、技術員等ニ於テモ其ノ點ヲ
先ヅ第一ノ條件ニシテ、馬ノ生產率ノ增加
ト云フコトヲ指導シテ居ル譯デアリマス、
又サウ云フコトニ依ツテ、昭和十二年ノ成
績ハ從來ヨリモ約一割ノ生產率ノ增加ヲ見
テ居リマス、是ダケ御答シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=7
-
008・小笠原八十美
○小笠原委員 只今ノ佐々田說明員ノ御答
辯ニ依リマスト、ヤハリ從來ノ種付シテ居
ル地方ニノミ種付ヲヤツテ居ルト云フ御話
デアリマシタガ、私ガ先刻伺ツタノハ言葉
ノ足リヌ點モアツタカモ知レヌガ、種付慣
行ノナイ所ニ奬勵スルノガ惡イト云フ意味
デハナイノデアリマス、ソレモ必要デアル
ケレドモ、增產計畫ヲ立テル上ニ於テ、ソ
レ以上必要ナコトハ、今ノ從來種付慣行ノ
アル生產地ニ對シテ、一段ト助成指導ノ力ヲ
致スベキ所ガアルデハナイカ、ソレハ今申
上ゲタ通リ榮養ノ關係、蛋白質ノ關係ヲ伴
ハセテ、サウシテ生產受胎ノ能率ヲ擧ゲル
ト云フコトハ、只今佐藤サンノ御話ニ依リ
マシテモ、政府ノ方デモ旣ニサウ云フ蛋白
質ト云フモノハ重要條件デアルト云フコト
ヲ申サレ、調査濟ニナツテ居ルヤウナ關係
デアリマスルガ、唯ソコニ力ヲ注グト云フ
コトニ對シテハ、今農林省ノ豫算ヲ以テシ
テハソレハ出來ヌノデ、豫算ヲ取ルト云フ
コトニ付テ力ヲ致サナカツタト云フコトニ
缺陷ガアルノデアリマスカラ、ソレサヘ努
力スレバ此ノ生產增進ト云フモノハ出來ル
ノデアルカラ、多少馬ノ移動ガアリマシテ
モ、受胎率ニハサウシタ心配ハ起キナイヤ
ウニ出來ルト思ハレマス、又良馬生產ニモ
非常ニ效果的デアツタト考ヘテ居リマス、
サウ云フ點ガ政府ノ方デ分ツテ居ナガラ、
何故ニ其ノ點ニ力ヲ致サナカツタカト云フ
コトヲ、私ハ御尋シタノデアリマス、其ノ
點ヲ御答辯ヲ願ヒマス
モウ一ツノ點ハ馬ノ移動ト云フコトハ、
生產地カラ育成地、使役地ニ移動スルナラ
バ是ハ勿論生產不能ニ陷ルノデアリマス
ガ、サウデハナクテ、私ガ今說明員ニ伺ハ
ウトスルノハ同ジ生產地カラ生產地ニ移
動シタノデアツテモ、其ノ移動シタ年ダケ
ハ生產馬ノ受胎率ト云フモノハ二三十%ニ
シカ至ラナイ、同ジ生產地ノ移動デアツテ
モ、其ノ年ハ非常ニ不成績デアルカラ、兎
ニ角此ノ移動ト云フコトハ一番恐ルベキモ
ノデハナイカ、其ノ點ノ御調査ガアルカド
ウカ、斯ウ云フコトヲ御尋シタノデアリマ
スガ、此ノ二點ニ付テ更ニ御答辯ヲ願ヒタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=8
-
009・佐藤繁雄
○佐藤說明員 移動ガ受胎率ニドウ云フ影
響ヲ及ボスカト云フコトハ、マダ私共ト致
シマシテハ統計的ニ調査ヲシテ居リマセ
ヌ、其ノ點ハハツキリ致シマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=9
-
010・村上冨士太郎
○村上政府委員 馬ノ生產增進ニ付キマシ
テハ、是ハ今マデ生產ノ慣行ノアル所ニ、
最モ重點ヲ置クベキコトハ、只今小笠原委
員ノ御意見ノ通リデアリマス、之ニ付キマ
シテハ今マデモ色々ソレニ對スル助成ヲシ
テ居リマスガ、尙ホ只今ノ是デ不十分デア
ルト云フ御意見ニ付テハ、私共モ是デ決シ
テ十分デアルトハ申シマセヌ、今後更ニ此
ノ方面ニ對スル所ノ助成施設、指導施設ト
云フコトニ付キマシテハ、一層ノ力ヲ盡シ
タイト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=10
-
011・小笠原八十美
○小笠原委員 私ガ今ノ生產地カラ生產地
ニ移動スルト云フコトニ付キマシテ伺ツタ
ノハ、是ハ衞生方面カラノ問題デナク、實
際ニ於テ取扱ツテ居ル牧場關係其ノ他生產
ニ從事シテ居ル-國ノ方デ數字的ニ何等
御〓究ガアラレナクテモ、實際問題トシテ
ハ移動シタ其ノ年ダケハ、受胎率ノ成績ガ
非常ニ惡イト云フコトハ是ハ獨リ種牝馬
ニ限ラズ、種牡馬デアツテモ、外國アタリ
カラ輸入シタ馬ハ一二年ハ迚モ不成績デア
ツテ、三四年目カラ成績ヲ擧ゲルト云フ此
ノ實績ニ對シテハ、馬產部長サンモ能ク御
分リデナイヤウニ思ハレルノデアリマスガ、
種牝馬ノ方モ同ジ組合ニ於キマシテ、厩ガ變
ツタダケデモ種付時期ニ非常ニ受胎率ガ惡
イト云フヤウナ關係ヲ持ツテ居ルノデアリ
マス、併シ斯ウ云フコトハ實際問題トシテ
色々農家ノ方デハ今日ノミデナク相當ニ
前カラ實驗サレテ居ツタノデアリマスガ、
學理的ニハドウ云フヤウニ現ハレテ居ルカ
モ知ラヌケレドモ、斯ウ云フコトニ對シマ
シテハ馬產部長サンアタリハ、是ハ移動シ
テモ差支ナイヤウニ考へ、マダ其ノ學理的
ノ〓究ガナイカラ大丈夫ダト、斯ウ御考ニ
ナツテ居ルノカ、假ニ一番敏感デアルサ〓
ラブレット」ト云フモノカラ比較シテ見タ
ラ一番能ク分ルデセウ、厩ガ變ツタ、食ハ
ス物ガ變ツタダケデモ受胎シナイト云フコ
トガ往々アル、鈍重ナル輓馬ナドニ至リマ
シ·ハ·其ノ程度ガ幾ラカ違フデアリマセ
ウ、併シナガラ兎ニ角移動スルト云フコト
ハ受胎時期ナドニ非常ニ受胎率ニ影響ガ
アルト云フコトダケハ、ハツキリシテ居ル
今日ノ狀態デアルノデアリマス、ソレガ學
問的ノ方面カラ言ツタラ、ドウ云フコトニ
ナルカ知レナイガ、實際問題トシテサウ云
フ點ノ心配ガアリマセヌカ、其ノ點ヲ先ヅ
御答願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=11
-
012・佐々田伴久
○佐々田說明員 只今仰セノヤウニ外國ア
タリカラ種馬ヲ買ツテ參リマス、暫クスル
ト印度洋其ノ他ノ非常ニ氣候風土ノ變ツタ
所ヲ經テ、更ニ又氣候風土ガ變ツタ所ニ移
リマス關係上、馬ノ受胎ノ率、榮養ノ囘復
ニモ相當ノ時日ヲ要スルノデアリマス隨
テ本當ノ購買當時ノ狀態ニナリマスニハ
少クモ二年ハ掛ルノデアリマス、從來私共
ガ向フヘ行ツテ買ツタモノガ、コチラヘ持
ツテ來マシテ元ノ狀態ニナルニハ、サウ云
フ狀態デアリマス、隨テ今統計的ニハ申上
ゲ得ナイノデアリマスケレドモ、ヨク言ハ
レルコトハ輸入後暫クノ間ハ受胎步合等モ、
ヤハリ思ハシクナイト云フコトハ一般ノ定
說デアルヤウデアリマス、是ハ外國ノ例デ
アリマスガ、國內ノ移動ニ付テ眺メマスル
ニ、東北或ハ北海道カラ九州ヘ持ツテ行ク
ト云フコトニナリマスレバ、國內ニ於テモ
氣候風土ガ多少變リマス、隨テ長距離ノ輸
送ハ、色々ナ周圍ノ環境ノ關係デ、馬ソレ
自體ニ及ブ影響ノ差ハ多少アルカモ知レマ
セヌガ、併シ主トシテ移動サレルノハ二歲
三歲、繁殖適齡前ノ馬ノ移動ガ多イノデア
リマス、政府ノ方デヤツテ居リマスル種牝
馬設置奬勵ノ實績ヲ見マスルニ、主トシテ
二歲、之ニ次イデ三歲ノ牝馬ガ移動シテ居
リマス、是等ハ二歲、三歲デアリマスカラ
又他ノ生產地ニ參リマシテ相當ノ期間ガア
ル榮養モ囘復シ、又氣候風土ニモ馴レル
ト云フ關係カラ、二歲、三歲デ買ツテ來タ
馬ハ受胎ガ惡イ、縣內產ノモノハ受胎ガ良
イト云フヤウナコトハ、餘リ聞イテ居リマ
セヌ、尤モ四歲以上ノ現ニ繁殖ニ使ツテ居
ルモノノ移動デアリマスガ、是ハ餘リ多數
ノモノハ從來移動シテ居ナイノデアリマス、
若シ移動シテ居ルモノト致シマシテモ、多
クハ生產地デ種ヲ付ケテ受胎シテ居ルト云
フヤウナモノデアリマシテ、向フヘ行ツタ
爲ニ受胎ガ惡イト云フコトニナリマスト
四歲以上ノ種付ヲシテ居ナイモノガ向フヘ
行ツテ急ニ種付ヲスル、其ノ年ノ受胎率ハ
ドウデアルカト云フコトニ付テ觀察シナケ
レバナラヌト思ヒマスガ、ソレハ今佐藤衞
生課長カラ言ハレタヤウニ、別ニ統計的ニ
今申上ゲル材料ノ持合セガナイノデアリマ
ス、御諒承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=12
-
013・小笠原八十美
○小笠原委員 如何ニモ斯ウ云フ場所デハ
統計的ニスツカリ現ハレナイコトニ對シマ
シテハ、責任ヲ持ツテ御答辯出來ナイカモ
知レマセヌガ、併シナガラ實際問題トシテ
ハ此ノ馬ノ移動ト云フコトガ、受胎ニ對シ
テモ生產ニ對シテモ、非常ニ大キナ影響ヲ
持ツテ居ルノデアリマス、殊ニ今年ノ如キ
急ニ飼料ガ暴騰致シマシテ、隨テ農家ノ常
ニ持合セル所ノ大豆ナドハ賣拂ツテシマツ
テ何カ米糠ニ變ヘヨウトカ、御承知ノ通リ
燕麥ト云フヤウナモノハ迚モ馬ニ食ハセラ
レルヤウナ狀況デハナイ、隨テ農林省ノ種
馬場トカ牧場ニ於テモ、燕麥ヲ使用スルコ
トハ控目ニシテ居ルト云フヤウナ今日ノ狀
態デアリマス、勿論民間ニ於テハ粟ヤ稗、
或ハ碎米ナド、サウ云フ種々雜多ナモノニ
依ツテ、ドウニカ償ハセテ居ルノデアリマ
スガ、斯ウ云ヲ狀況ニアル時ニハ其ノ一家
一家ニ依ツテ飼料ガ大キナ變動ヲ來シテ居
ルノデアリマシテ、斯ウ云フ場合ニハ移動
ト云フモノハ特ニ注意ヲシナケレバナラヌ
ノデ、私ノ御尋スル趣旨ハ、此ノ飼料ノ暴
騰人件費ノ暴騰ニ依ツテ、今實際ニ種付
シナケレバナラヌ所ノ四歲以上ノ馬ノ移動
ガ非常ニ多イノデアリマスカラ、私ハソシ
ヲ心配ノ餘リ御尋シタノデス、ソレガ縣內
トカ或ハ組合內ナラバ移動シテモ構ハナイ
ガ、ソレハ統計ニ現ハレテ居ナイト云フヤ
ウナコトニ御考ニナツテ居ラレルト、十ハ
リ是ハ生產ノ率ノ方ニ大キナ影響ヲシテ來
ルト思ヒマスガ、此ノ點ニ付キマシテ若シ
御調査ガナカツタナラバ、一應實際ニ當ツ
テ御調ニナル必要ガアル、生產ガ總テノ問
題ノ基礎ニナツテ居ルノデアリマスカラ、
十分御調ヲ願ヒタイト思ヒマス、大體馬ノ
生產者ハ純朴ナ農民デアツテ、隨テ他ノ業
者ノヤウニ何カ事ガアレバ、聲ヲ大ニシテ
陳情ヲ致スヤウナコトハシナイ、ドウモ此
ノ純朴ナ農家ト云フモノハ理窟ガ下手デ、
何カ言フト直グ役人ニ理窟デ抑付ケラレテ
モウ二度トロヲ開ケナイデ歸ルト云フ者ガ
多イノデアリマスガ、併シナガラ今囘ノ馬
產ノ經濟ト云フコトハ、篤ト馬政局ノ方デ
ハ御考ニナラヌト、理窟一點張デ、下ノ實
際ノ一線ノ農家ニ當ツテ居ル役人ノ連中ガ、
今マデノヤウテ指導ヲシテ行ク、或ハ煽テ
テヤツテシマツテ、其ノ場逃レヲヤツテ居
ルヤウナ指導ヲヤツタノデハ、ヤハリ農家ノ
方モ仕方ナク理窟ヲ考ヘテ來ル、農家ノ考
ヘル理窟ハ何デアルカト言ヘバ、是デハ經
濟ガ伴ハナイカラ馬ヲ止メヨウト云フコト
ニ歸著シテ來ル、ソレガ農家ノ一番良イ理
窟ダ、ソコニ至ラシメタラ話ニナラヌノデ
アリマスカラ、是ハ餘程第一線ニ居ル所ノ、
アナタ方ノ本當ノ方針ヲ指導スル連中ニ對
シテハ、今ハ農家ニ指導シテモ駄目ダカラ、
是ハ指導ト云フヨリモ、此ノ豫算ノ範圍內デ
農家ノ狀況ヲ逆ニ報告サシテ、有ノ儘ニコ
チラニ報〓サセル方ガ宜イ、是ハ陸軍ニ關
スル問題デアリマスガ、私ハ斯ウ云フ報〓ヲ
聞キマシタ、ソレハ陸軍ノ購買官ガ或ル場
所ヘ行ツタガ購買ガ出來ナカツタ、ソレヲ
上官ニ報告シタ內容、其ノ一端ニ斯ウ云フ
購買市ノ狀況ダト云フコトヲ報告サレタ、其
ノ報告ニドウ云フコトガ書イテアツタカト
云フト、此ノ地方ハ馬ガ高イ爲ニ、皆安イ
牛ニ乘換ヘテ居ルノデ、壯馬ヲ購買スルコ
トハ不可能デアルト云フ報〓ヲ書イテ居ル、
ソレヲ上官ガ見タナラバ、如何ニモ馬ガ高
クテイカヌト思フデセウガ、ソレハ逆ニチ
ツテ居ル、本當ハ陸軍デ買フノガ安イカラ
ダ、陸軍デ買フ價格ガ高カツタナラバ、高
イ馬ヲ買ツテ來テ育成スルニ違ヒナカツタ、
ソレハ逆ノコトヲ報告シテ居ルカラ、トン
ダ間違ガ出テ來ルノデス、是デハ資源ト云
フモノガ涸渴シテシマラ、皆役人ガサウ云
フ報〓バカリサレル、一體今囘ノ馬政ノ二
法案ノ方針ヲ定メル上ニ於テ、實ハ法律ハ
出來タケレドモ、軍ノ要求スル馬ヲ生產ス
ルニ配合スル馬ガナイト云フコトダケハ、
御認ニナラネバナラヌト思フノデアリマスガ、
今日ノ狀況デハ十分デハナイノミナラズ馬
ガ不足デ質ガ惡イ、是デハ迚モ軍ノ要求ス
ル馬ノ生產ニハ當ルコトガ出來ヌ、斯ウ云
フコトダケハハツキリ今御認ニナツテ宜イ
ト思フノデアリマスガ、其ノ點ハ如何デス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=13
-
014・村上冨士太郎
○村上政府委員 馬政計畫ノ改編ニ伴ヒマ
シテ、種牡馬ノ購買ヲ昨年カラ實施シテ居
リマズ、其ノ質ハ私共ノ見ル所ノ理想ノ域
ニハ達シテ居リマセヌ、隨テ是ハ昭和十年
マデニ、數ハ此處デハ一寸御預リシテ置キ
マスガ、吾々ノ目的ノ數ヲ集メル、而モソ
レヲ立派ナ理想的ナ馬デ集メルト云フコト
三、相當ノ困難ガ伴フコトハ事實デアリ
やっり、併シナガラ是ハ有ユル困難ヲ排シテ、
是非サウ云フモノヲ集メタイト思ツテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=14
-
015・小笠原八十美
○小笠原委員 今ノ御答辯ニ依リマシテモ、
種牡馬ト云フモノガ國民ノ要求數ヲ充スコ
トガ出來ナイノミナラズ質ダツテサウ良イ
モノバカリ揃ヘルト云フ譯ニ行カヌト云フ
狀況デアルコトハ、御答辯ノ通リダト私ハ
考ヘテ居リマス、然ラバ之ヲ如何ニシテ數
ヲ充タスカ、質ヲ向上セシメルカ、其ノ種
牡馬ヲ作ル爲ニハドウ云フ方針ヲ執ラレ
ルノデアルカ、其ノ點私等ガ分ツタヤウデ
分ラヌ、ソレヲ一ツハツキリト說明員カラ
デモ宜シウゴザイマスガ、能ク聞カセテ戴
キタイ、ドウ云フ風ニシテ馬ヲ生產スレバ、
政府ノ方ノ牧場カラ、ドウ云フ良馬ガ出來、
又民間ノ方カラドウ云フ風ナ指導ヲスレバ、
立派ナ馬ガ出來ルノダト云フコトノ方針ガ
分ラナケレバ、種ガナクテ迚モ馬ノ生產モ
出來マセヌ、其ノ方針ヲ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=15
-
016・村上冨士太郎
○村上政府委員 私カラ申上ゲマシテ、尙
ホ佐々田馬產部長カラ補足シテ貰フコトニ
致シマス、此ノ度ノ所謂小格輓馬、ドウ云
フモノガ小格輓馬デアルカト云フコトハ、
成程從來ノ馬產家ニモ徹底シテ居ラヌト思
ヒマス、隨テ之ニハ第一ニ其ノ理想體型ト
云フモノヲ、日本全國ノ馬產家ニ徹底セシ
メルコトガ第一デアリマス、ソシデ此ノ二
月モ主タル馬產地デアリマス北海道、東北
及ビ九州ニ民間ノ當業者、縣ノ技術員、私共
ノ方ノ技術者等ガ集マリマシテ、是等ニ付
キマシテ協議會ヲ開イタ次第デアリマス、
斯樣ナ協議會、懇談會等ハ今後モ屢〓開キマ
シテ、互ニドウ云フ馬ガ今後軍ノ要求ズル
馬デアルカト云フコトノ正確ナル認識ヲ作
ルト云フコトガ第一デアリマス、次ニハ是
ハ急速ニハ中々思フ通リナ馬ガ出テ來マセ
ヌガ、次第ニ良型ノ種牡馬ヲ求メマシテ、
ソレニ依ツテ遂次ニ理想體型ノ種牡馬ヲ作
ツテ行カウト、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=16
-
017・佐々田伴久
○佐々田說明員 只今長官カラ申サレマシ
タヤウニ、今囘ノ新シイ方針ニ副フ所ノ各
役種ノ馬ヲ作ル爲ニ、ソレ〓〓種牡馬、種
牝馬ノ適當ナルモノヲ得、又ドウ云フモノ
ヲ得ルト云フコトニナツテ居ルカト云フ方
針ノ徹底ヲ圖ルト云フコトハ固ヨリデアリ
マスガ、其ノ外ニ種牡馬ヲ作ル具體的ノ方
策ト致シマシテハ、折角馬政局ノ方デ豫算
ヲ取ツテ〓究中デアリマス、馬ノ登錄制度
ニ關スル施設デアリマスガ、是ハ前ノ計畫、
卽チ馬政第二次計畫樹立ノ際ニ、將來日本
ノ馬ハ一定ノ規格ノモノヲ作出ス、卽チ軍
ノ要望サレル一定ノ規格ノモノヲ作出ス爲
ニハ、其ノ根源デアル種牡馬、種牝馬ノ立
派ナモノヲ作ラナケレバナラヌ、ソレガ爲
ニハ種馬資源ヲ確保スル爲ニ、種馬ノ登錄
制度ヲヤル必要ガアルト云フノデ、昭和十
一年度以來本年デ丁第五箇年ニナリマスガ、
大體準備調査ノ基礎調査ヲ致シテ居リマス、
是ハ地方ノ產馬地ニ於ケル產種ニ使ハレル
牝馬ノ體形、血統カラ總テ具サニ調査シテ
アリマスガ、是モ略〓完了致シマシタノデ、
將來ハ種牡馬ヲ作ル種馬ニ關シマシテハ、
登錄制度ヲ實施シナケレバナラヌコトカト
存ジマス、尙ホソレガ爲ニハ結局何處ニモ
サウ云フモノニ依ツテ種馬ヲ作ルト云フコ
トハ至難デアリマス、種牡馬ヲ作ル適地ガ
自ラアル譯デアリマス、デスカラ、其ノ地
方ニ向ヒマシテハ、先ヅ種牡馬ヲ作ル種牡
馬ヲ配置スル、又種牡馬ヲ作ル種牝馬ノ基
本トナル種牝馬モ出シマシテ、サウ云フ種
牝馬ニ種牡馬ヲ作ル種牡馬ヲ配合致シマシ
テ、サウシテ國家ノ要望スル種牡馬ヲ作ツ
テ行ク、昨年御審議ヲ經マシタ種馬統制法
ハ專ラ軍所要ノ馬ヲ作ル其ノ種馬資源ヲ
確保スル爲ニ種牡馬トカ候補種牡馬トカ、
優良種牝馬、候補優良種牝馬ノ制度ナノデ
アリマス、其ノ中ニ種牡馬ヲ作ルモノハ勿
論アリマスガ、更ニ其ノ一部ヲ選リ出シマ
シテ種牡馬ヲ作ル種種馬、種牝馬ヲ作ル種
牡馬ヲ各地ニ確保致シマシテ、實際トシテ
ハドウ云フ方法ニナルカ知リマセヌガ、サ
ウ云フ特定ノモノヲ指定致シマシテ、種牡
馬資源ヲ確保スルト云フ方針ヲ以テ、今登
錄制度ノ準備ヲ進メテ居リマス、其ノ外ノ
コトニ付キマシテハ、大體長官ノ申サレル
通リノ方針ヲ以テ進ンデ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=17
-
018・小笠原八十美
○小笠原委員 只今種牡馬ノコトニ付テノ
說明員ノ御答ガアリマシタガ、ヤハリ政府
ノ方ニ於テモ、此ノ種牡馬ニ對シテ相當ノ
重點ヲ置イテ、今後方針ヲ改メラレルヤウ
ナコトニ伺ツタノデアリマスガ、大體此ノ
戰時中ニアア云フ馬政計畫ノ二大方針ヲ確
立シテ置イテ、種ガナクテサウ云フ馬ヲ出
セト國民ニ强ヒルコトハ、、初カラ無理ダ
シ、又無理デモ宜シイガ、斯ウ云フ種牡馬
ノ選定又ハ增產ニ對シテ、質ト數ヲ揃ヘル
ト云フコトニ付テ急イデオヤリニナツテコ
ソ本當デ、國民ノ方ニハ斯ウ云フ方針ヲ出
シテ置イテ、種ガナイゾト云フコトニシテ
ヤルト云フノハ、是ハ無理ノ上ニ大キナ無
理ガアルノデアリマス、併シ只今佐々田サ
ンノ御說明ヲ伺フト、種馬ヲ作ル種牡馬、
種牝馬ヲ特定地ニ配置スルト云フコトハ如
何ニモ結構ナコトデアリマセウ、併シナガ
ラココニマダ御忘レニナツテ居ルコトガア
ルヤウニ思ハレマス、大體斯ウ云フコトカ
ラ伺ツタラ一番分リ易イノデアリマセウガ、
今年奥羽牧場ニ於テ種馬生產ノ目的ヲ以テ、
今度方ノ針ニ基イテ「アングロ·ノルマン」系
ノ種牝馬ヲ購入サレタヤウニ承ツテ居リマ
ス、其ノ馬ノ價格ヲ承ルト、三千圓或ハ四
千圓ノ種牝馬ヲ購入サレタヤウデアリマス、
之ニ付テハ資料ヲ要求シテゴザイマスケレ
ドモ、簡單ナ問題デアリマスカラ、此處デ
何頭御買ヒニナツテ、價格ハ一頭々々ガド
レダケダト云フコトダケ一ツ御答辯願ツテ、
ソレカラ更ニ此ノ種牡馬ノ價値ニ付テ御尋
シヨウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=18
-
019・佐々田伴久
○佐々田說明員 只今仰セノヤウニ昨年ノ
秋奧羽種馬牧場ニ於テ種牝馬ヲ買ヒマシ
タ、其ノ買ヒマシタ目的ハ、奧羽種馬牧場
ト言ハズ、國ノ牧場ニ於キマシテハ、種牡
馬ヲ作ル種牡馬ト云フコトヲ根本ノ目的ト
シテ居リマスノデ、今囘ノ方針ノ改變ニ伴
ヒマシテ、從來ノ繫養シテ居ル牝馬デハ小
格輓馬、卽チ戰列駄馬向キノ小格輓馬ノ種馬
ヲ作ツテ行クニハ、種牝馬ノ資源ガ十分デ
ナイト思ヒマシテ、北海道ノ根室ト十勝ニ
於キマシテ、昨年種馬統制法ニ依ツテ、優
良種牝馬ニ指定致シマシタモノノ中、特一
小格輓馬ノ甲ニ屬スル特有ノモノノ中、最
モ優秀ナモノヲ交涉致シマシテ、七頭程漸
ク手ニ入レタノデアリマス、其ノ數デハマ
ダ十分デハアリマセヌガ、而モ種牡馬ヲ作
ル種牡馬ノ又種牝馬デアリマスカラ、中々
ナイノデアリマスガ、漸ク七頭程手ニ入レ
タノデアリマス、是ハ所有者ノ方モ賣ラナ
イト云フノヲ、無理ニ懇願シテ分ケテ貰ツ
タノデアリマス、ソレハ最高四千圓、最低
三千圓、平均三千四百二十八圓ト云フコト
ニナツテ居リマス、ソレダケ申上ゲテ置キ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=19
-
020・小笠原八十美
○小笠原委員 ソコデ私ハ其ノ種牡馬ノ價
値ト云フコトニ對シテ伺ヒタイノデアリマ
スガ、牝馬ハ三千五百圓ノ平均トシマシテ
モ、ソレニ何歲カハ知ラヌガ、假ニ五歲、
其ノ歲カラ配合スルト見マシテモ、年五分
ノ金利ヲ加ヘマシテ、ソレカラソレヲ育成
スル上ニ於テ今ダト一日一一圓五十錢ヲ奧羽
牧場ニモ要スルト思ヒマス、ソレニ牧夫ノ
給料ガ假ニ一圓五十錢トシテ、馬ガ三頭ト
云フ割合ニシテモ五十錢デ合計三圓、スル
ト月ニ百圓掛ル、厩肥ノ耕作ハ畑地ノ半分
ノ損失ニ該當スルト見マシテモ、畑地ノ使
用料ガ半分ニ當リマス、ソレヲ假ニ四歲カ
ラ十七歲マデニ、アア云フ八割ノ受胎成績
ノアル所デ何頭生產シテ、其ノ中カラ種牡
馬トナツテ現ハレルモノハドレ程アルカ、
其ノ中ニハ牝馬モアルデセウシ、或ハ怪我
スルモノモアルデセウシ、或ハ流產スルモ
ノモアルデセウ、今マデノ牧場アタリデハ、
一頭當リカラ平均シテ、種牡馬トシテ國デ
使用シタモノハドレ程ニナツテ居ルデアリ
マセウカ、ソレハ餘リ細イ數字デ御分リニ
ナラナカツタラ、是ハ後デ御調ヲ戴イテモ
宜イノデアリマス、斯ウ云フ所カラ計算シ
テ參リマスト、愈〓、御承知ノ通リ-是ハ佐
藤サンノ方ノ關係ニ屬スルカモ知レナイケ
レドモ、受胎スルト云フコトニナルト、種
牡馬ヲ生產スル馬ニハ、受胎六箇月後ニハ
一割增ノ飼料ヲ遣ラナケレバナラヌ、生產
シテ乳ニアル六箇月ノ開ハ、六割ノ濃厚飼
料ヲ遣ラナケレバナラヌ、若シソレニ缺陷
ガアルト親カ仔ノ何レカニ缺陷ヲ生ズルト
云フコトハ、是ハ非常ニ調査シテ居ラレル
カラ佐藤サンノ方デ御分リダラウト思フ、
ゾレ程今日ノ高イ濃厚飼料ヲ與ヘ、ソレカ
ラ離乳シタ後ニ對シテハ、親馬ノ半分ノ飼
料ヲ與ヘテ、民間デアレバ二歲ノ秋ニ市場
ニ出スマデニ、最モ發育旺盛ナ場合ニ、飼
料ヲ十分ニシテ運動ヲ付ケテヤツテ、サウ
シテ今ノ軍ノ要求スル體格骨量ニマデ、十
分ナ發育ヲスルヤウニ致スノデアリマス、
ソレデ立派ナ種馬トナルノデアリリマス、
ソレヲアナタ方ハ種馬ノ又種馬ヲ作ルノダ
ト云ツテモ四千圓、四千圓ノ馬ヲ三歲マデ
育テテ、ソレニ五分ノ金利ヲ加ヘ飼料ヲ與
ヘタノヲ計算スレバ、八千圓位ニナリマス、
能ク計算シテ見テ下サイ、ソレヲ民間カラ
ハ千三百圓ヤ千四百圓デ購買シテヤツタラ
宜イト云フコトナラバ、良イ馬ハ民間カラ
ハ出ヨウ筈ハアリマセヌ、ソレガ種牡馬ヲ
高ク致シマスト、低物價政策ニ反スルトカ、
軍馬ニ少々毛ノ生ヘタ位デ、サウ高ク買フコ
トハナイデハナイカト云フヤウナコトヲ言
フ人モアル、サウ云フ譯デ値段ヲ無理ニ抑
ハイ、種牡馬購買ト云フコトハ採算ガ取レ
ナイト云フカ、相當ナ損失ヲ與ヘテ購買シ
ナケレバナラヌト云フコトハ、今日ノ馬產
方針ガ國デ拵ヘルナラバイザ知ラズ、費用
ヲ構ハズヤルカラ宜イガ、民間デ作ルト云
フノデハ誰モ種馬ヲ作ル者ガアリマセヌ、
其ノ豫算ノコトニ重點ヲ置クコトヲ忘レタ
ラ、有ユル手段ヲ盡シテモ無效デアリマス、
其ノ豫算ヲ取ルダケノ勇氣ガアルカ、軍ノ
要望スル所ノ理想ノ種馬ヲ揃ヘルニハ、何
處ニ重點ヲ置クカト云ヘバ、購買ノ價格ニ
依ツテ決定スルモノデアル、是位ハツキリ
シタコトハナイノデアリマス、ソレヲ如何
ニ御考ニナツテ居ルカ、ソレヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=20
-
021・村上冨士太郎
○村上政府委員 只今民間カラ買ツテ居リ
マスモノハ、一年ニ相當ノ數ヲ買ツテ居リ
マス、是ハ平均ハ大體二歲デ千三百二十八圓、
三歲ニ於テ千四百圓バカリデアリマスガ、
併シナガラ是ハ平均デアリマシテ、質ノ良
イモノハ今デモ二千三百圓位デ買ツテ居リ
そう、隨テ今後ト雖モ質ノ良イモノハ無論
二千圓、二千五百圓出シテモ買フノデアリ
ひと、而シテ種馬ノ購買價格ノ引上ニ付キ
マシテハ、御承知ノ通リ今後種馬ヲ買フモE
ノハ、大體農林省ト云フコトニナリマスノ
デ、是ガ一種ノ獨占價格ヲ作ルヤウナモノ
デアリマスカラ、隨テ生產費ニ合ハナイデ
價格ヲ決メタラ、成程小笠原サンノ仰シヤ
ルヤウニ、種馬ヲ作ル者ハ無クナツテシマ
ヒマス、ソレデ私共ノ方ト致シマシテモ、
出來ルダケ豫算ノ範圍ニ於テ、種馬ノ購買
ニ付テハ出來得ルダケノコトヲヤリタ
イト思ヒマズヽ尙ホ將來是ガ價格ノ引上
ヲスルガ爲ニ、豫算ヲ要求スルカト云フ
問題ニ付キマシテハ是ハ低物價政策
ヲ執ルト云フ關係モアリ、又單價ノ引上
ト云フノハ、從來モ大藏省ノ容認ヲ得ル
コトガ中々困難デアルト云フ實情ニハナ
ツテ居リマスガ、私共ト致シマシテハ是
ハ豫算ヲ取ルコトニ努力シタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=21
-
022・小笠原八十美
○小笠原委員 此ノ種牡馬ノ育成ニ付テモ
段階ハ幾ツモアツテ、單種牡馬トハ申サレ
マセヌ、或ハ乘馬アリ、小格挽馬アリ、挽
馬アリト云フヤウナ狀況デアルノデアリマ
シテ、ソレヲ唯一律ニ御考ヘニナルト大キ
ナ間違デアリマス、同ジ育成デアリマシテ
モ、挽馬ノヤウナモノヲ二歲ガ五六百圓ニ
購買シテ參リマシテ、ソレヲ小作馬ニ與ヘ
テ使役シナガラ飼養ヲヤツテ、サウシテ種
牡馬候補馬トシテ購買ニ應ズル所ガアルノ
デアリマス、是ハ相當經濟的デアリマスル
ガ、併シナガラ、如何ニモサウ云フコトヲ
致シマシタナラバ、軍ノ方デ奬勵スル艱難
粗食ニ堪ヘルモノガ出來ルノダカラ宜イデ
ハナイカト云フ風ニ考ヘレバ、一應御尤モ
ノヤウニ思ハレルノデアリマスケレドモ、
是ハ馬產部長サンモ佐藤課長サンノ方モ御
承知ノ通リ、中々幼駒當歲カラ三歲ノ間ト
云フモノハ、飼育ニ相當ナ注意ヲ要シ、少
シ無理スルト故障ガ出來ル、又是ガ爲ニ發
達ヲ阻碍スルト云フヤウナコトガアルノデ
アリマシテ、ヤハリ幼駒ノ中ハ十分飼料ヲ
與ヘテ、運動適度ト云フコトガ一番面倒デ、
サウシナケレバ立派ナ體格ニ發達スルコト
ガ出來ナイ、隨テ五歲ニナツテ十分ニ體軀
ガ出來タ頃、人間ナラバ徵兵適齡ニナツテ
カラ艱難粗食ニ堪ヘルコトヲ鍛ヘル、斯ウ
二ツニヤラナケレバナラヌ、サウ幼駒ノウ
チカラ艱難粗食ト云フコトニナルト、多ク
ハ育成ニ過チヲ來スノデアリマス、隨テサ
ウ云フ方面ノ馬ハ餘リ良イ馬ハ出マセヌ、
ヤハリ種牡馬ト云フモノハ、種牡馬ヲ作ル
ベク努力スルト云フコトデナケレバハ本當ノ
理想ノ馬ハ出來ナイ、況ンヤ乘馬ニ至ツテハ、
幼駒ノ時ニ多少デモ無理ナ使役ガアルト、
故障ガ出テ種牡馬ニナリマセヌ、又乘馬ノ內
デモ輕種ニ至ツテハ-輕種ハ乘馬ト別ニナ
ツテ居ルケレドモ、輕種ニ至ツテハ非常ニ面
倒ダ、輕種ノ人件費ト云フノハ挽馬ノ倍ヲ
要スルノデアリマス、今日ノヤウニ非常ニ人件
費ノ〓騰致シタ場合ニハ、特ニ影響ガ大キイ、
然ルニ競馬デ購買ハサセヌ、競馬デハ澤山
金ガアルカラ購買シタクツテ仕樣ガナイ、
買ヒタガツテ居ルノヲ農林省ガ抑ヘテ、競
馬バヤリヤツタラ外ノ馬ガ仕樣ガナイト買
入ヲ抑ヘ付ケテ、種馬選定ノ方針ヲ無理ニ
低價デ購買サシテ居ルト云フコトニ聞イテ
居リマスガ、只今長官カラ種牡馬購買ニ對
シテハ、農林省ノ方デ豫算ヲ要求シテ大イ
ニ善處スルト云フ御話モアリマシタケレド
モ、御答辯ダケデアツテ、實際問題トシテ
出シ宜イ競馬ノ方ヲ抑ヘ付ケテ置イテ、取
ルニ中々困難ナ方ニ對シテハ努力スルト仰
シヤルケレドモ、手取早ク出シ宜イ方カラ
出サセルト云フコトニシタラ宜ササウナモ
ノデアル、殊ニ斯ウ云フ經費關係ガ困難ヲ
來シテ居ル、ナクテモ宜イト云フナラバ別
デアリマスガ、育テナケレバナラヌト云フ
ノニ、今ドン〓〓輕種ハ移動ガアル場合ニ、
多少トモ斯ウ云フ方面ニ努力ヲシタリ、或
ハ方針ヲ決メタト云フコトニナツタナラ
バ、此ノ移動ノ方モ緩和サレルダラウト思
フ、何カノ方針ヲ立テナクテハ抑ヘ切レナ
クナツタノデアリマス、輕種ノ飼養育成ト
云フコトハヽ普通ノ挽馬方面ヨリ相當ナ大
キナ費用ヲ要スルト云フコトニ對シマシテ
ハ、能ク政府ノ方デ〓究サレテ御分リノコ
トト思フノデアリマス、今後購買方針ヲド
ウ云フ風ニ改メラレル方針デアルカ、又豫
備馬ノ制度ヲ設ケル御考デアルカ、其ノ點
ニ付テモ、馬政局ニ於テ相當議論ガアツタ
ト云フコトヲ伺ツテ居リマスガ、今度ハド
ウナサルノデアリマスカ、其ノ點ヲ明確ニ
御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=22
-
023・村上冨士太郎
○村上政府委員 競馬ノ抽籤馬ノ購買ニ付
テハ、昨年度ニ於キマシテハ一昨年度ヨリ
4
相當之ヲ情勢ニ應ジテ引上ゲマシク、ザウ
シテ此ノ「アラブ」系統ノ馬ニ付キマシテモ、
豫備馬制度ヲ設ケルカドウカト云フコト
ハ、今馬政局內ニ設置サレテ居ル所ノ競馬
〓究會ニ於テ〓究中デアリマス、此ノ點ニ
付テハ、贊否兩論ガアリマシテ、マダ決定
ニ至ツテ居リマセヌ、本年度ノ抽籤馬ヲ日
本競馬會デ買ヒマス爲ノ購買價格ヲ、ドウ
致シマスカト云フコトニ付テハ、目下ノ所
全然未定デゴザイマス、唯玆ニ申上ゲテ置
キタイコトハ、抽籤馬ノ購買價格ダケヲ非
常ニ引上ゲマスコトハ、結局輕種ノ生產ヲ
非常ニ刺戟スルヤウナコトニナリマシテ、
場合ニ依リマスト、折角今マデ決メマシタ
馬產方針ニ、支障ヲ來スト云フヤウ。ナコト
モアリマスノデ、色々ノコトヲ考慮シテ、
愼重ニ是ハ決定シナケレバナラナイト思ツ
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=23
-
024・小笠原八十美
○小笠原委員 種馬ノ購買價格ヲ增加スル
ト云フコトハ、種馬ノミヲ奬勵スルヤウナ
傾向ニナツテイカヌト云フコトニ、御答辯
ガアツタノデアリマスガ、私ハ相當ナ增額
ヲナサレテモ、サウ云フコトハ一定ノ限度
ヲ示シテ指定シテ居ル今日ノ場合、輕種ノ
方ハ相當ニ厩カラ、人間カラ、技術ヲ伴ハ
ナケレバ、輕種ヲヤレルモノデハナイカラ、
恐ラク其ノ方面ニハ走ツテ行カヌト、私ハ
考ヘルノデアリマス、而モ半面ニ之ヲ放置
シテ、輕種ノ方ノ資源ヲ破壞シテシマフ現
象ノアルコトヲ、如何ニシテ救濟スルカト
云フコトヲ、私ハ考ヘテ居ルノデアリマス
ガ、其ノ方面ノコトハ先刻來マダ御調査ヲ
ナサツテ居ラヌト云フコトデアリマス、殊
ニ又先刻ノ種牡馬デモ、今年ハ二千五百圓
デ買フト云フ御話ガアリマシタガ、ソンナ
コトデハ出テ來ハシマセヌ、牧場ノ方デコ
ツコツニヤツタモノハ、ソレヲ種牡馬トシ
テ國ノ種馬所ニ配給スル時分ニハ、費用ヲ
計算シテ見ルト、七八千圓ニナル、ソレニ
民間ノモノハ、オ前ノモノハ千五百圓デ宜
イ、二千圓デ宜イト云フノデハ、良イ馬ヲ
眞劍ニ作ル者ハアリマセヌ、昨年ハ別トシ
テ、今年ハドウスルカ、今年ハ二千五百圓
ト云フコトデアル、私ハ飼料ノ問題ヲ十年
度ト比較シテ申上ゲテ見マストコンナコト
ニナツテ居リマス、米ハ四斗俵一俵昭和十
年ニハ十一圓七十八錢、今年ハ十七圓、是ハ
安イ方ノ田舍ノ相場デアリマス、大豆ハ十
年ニハ四斗俵一俵五圓、是ガ今年ハ十七圓
五十錢、三倍半デアリマス、米糠ハ十年ニ
一圓十錢、今年ハ五圓デアリマス、統制價
格ハ三圓二十錢トカニ決メタサウデア
リマスケレドモ、今ハ生產者ノ方ハ賣拂ツ
テシマツテ一俵モ持ツテ居ナイ、却テ
商人カラ買ハナクテハナラナイ立場デ
アル、所ガ統制價格デハ商人側ハ持ツテ居
ツテモ中々出サナイ、粟ハ十年ハ六圓四十
錢今ハ十七圓、稗、是ハ殼ニ入ツタ儘ノ
モノデアリマスガ、十年ニ四斗俵一俵二圓、
ソレガ今日ハ八圓ニナツテ居ル、小豆ハ馬
ハ〓ハヌケレドモ、農家ノ方面ニ關係ガア
リマスカラ申上ゲマスガ、是ハ十年六圓デ
アツタモノガ、今年ハ二。十二圓五十錢、燕
麥ハ十年ニ二圓三十錢デ、是モ今ハ九圓八
十錢、ソレカラ農家ノ方デヤツテ居リマス
菜種デアリマスガ、是ハ昭和十年ハ九圓ノ
モノガ、今ハ二十七圓、斯ウ云フ狀態デア
リマス、昨年カラ見マシテ殆ド全部ガ倍、
或ハ三倍ニナツテ居ルモノモアルノデアリ
マス、斯ウ云フ飼料ノ價格ノ大キナ變動ヲ
來シタ場合ニ、國ノ最モ大切ナ種牡馬ヲ配
置スル上ニ於テ、種牡馬ノ購買ニ對シテ未
ダニアナタ方ハ考ヘル所ナク、二圓カ三圓
ヲ豫算ノ中デヤリ繰シヨウト考ヘテ居ツタ
ナラバ、先刻申上ゲタ部落ノ中堅ニナツテ
居ル優秀ナ馬ノ生產者、村ヲ指導スル連中
ガコソ〓〓馬ト云フモノカラ逃ゲテシマハ
ウ馬ノ生產カラ逃レヨウトシテ、三頭ノ
モノハ二頭ニ、二頭ノモノハ一頭ニスルト
云フヤウナコトニナツテ行クノハ當然デア
ル、此ノ場合、部落ノ有力者ヲピタント抑
ヘルト云フコトガ必要デアル、オ前等ガヤ
ツテ居ル馬ニ對シテハ輕種ノ方ハ斯ウ云
フ制度デ今度ハ高クシタ、軍用馬ハ是程高
クシタ、種牡馬ニ對シテハ斯ウ云フ制度ヲ
設ケタト云フコトヲ示ス必要ガアル、ソレ
モ無理ニ此ノ低物價時代ニ高クシテ吳レ
トアナタ方ニ言フノデハナイ、適正價格
デ宜シイカラ、其ノ適正ト云フコトヲアナ
タ方ハ考ヘナケレバナラヌ、是ハ私大藏省
ノ方ニ聽カウト思ツテ居リマシタガ、今日
馬ノ購買ノ爲ノ低利資金ヲ吾々ニ貸サレ
ク、ソレハ三分八厘デ貸サレテ、吾々ニソ
レヲ幾ラカ鞘ヲ取ツテ農家ニ貸セト云フコ
トナノデ、吾々ハソレヲ農家ニ年五分デ貸
シタ、農家ハソレデ二歲馬ヲ買ツテ、三歲、
四歲ト二年間育テテ、ソレカラ四歲デ種付
ヲシテ孕ンデ、五歲デ產ンデ、六歲ノ時ニ
ソレガ二歲馬ニナルガ、其ノ前後四年間年
五分ノ金利ヲ拂フ、サウシテヤツト軍用馬
ニナツタモノヲ、一頭四百圓デ手ヲ椀ガレ
ルヤウニ市場デ取ラレル、是デハ多少經濟
ノ分ツタ者ハドウシテ馬ヲヤレマスカ、政
府モチト金ヲ借ル身ニナツテ考ヘテ見レバ
直グ分ル、斯ウ云フ實情ヲ考ヘタ時ニ、ソ
レガドウシテ適正價格デアルカ、是デハア
ナタ方ガ能ク御調査ヲナサツテ居ルノカド
ウカ疑ハザルヲ得マセヌ、此ノ軍用馬ノ適
正價格ト云フモノト、ソレカラ種牡馬ノ購
買ノ適正價格ト云フモノハ、是ダケハ御役
所デオヤリニナツテ居ルノダカラ、今日ハ
時間モナイヤウデアリマスカラ明日デモ宜
イデスガ、ドレダケガ其ノ適正價格デアル
カト云フコトノ御調査ヲナサツテ、馬政局
トソレカラ軍用馬ノ方ノ方カラ、先ヅ以テ
之ヲ御答辯願ヒタイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=24
-
025・村上冨士太郎
○村上政府委員 明日適正價格ヲ出セト云
フコトハ、是ハ一寸困難デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=25
-
026・小笠原八十美
○小笠原委員 ソレデハ明後日デモ宜シイ
デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=26
-
027・村上冨士太郎
○村上政府委員 明後日ニシテモ、此ノ價
格ヲ今直グ出スト云フコトハ、中々難カシ
イ事ダラウト思ヒマス、若シ幾ラガ適正價
格ダト云フコトヲ簡單ニ出シテ、後デ高イ
トカ安イトカ云フコトデ問題ニナツテモ困
リマスカラ、サウ云フコトハ餘程〓究シテ
掛リマセヌト、簡單ニ適正價格ハ幾ラダト
云フコトヲ、一夜作リデ出スコトハ危險ダ
ト思ヒマスカラ、ドウカ其ノ點ダケハ御諒
承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=27
-
028・小笠原八十美
○小笠原委員 ソレデハ斯ウ云フコトヲ伺
ヒマセウ、馬政局ハ大藏省ノ預金部ノ方カ
ラ低利資金ヲ借リテ、ソレヲ吾々ニ貸シテ
二歲ヲ買ハシテ居ルノデアリマスカラ、今
年全國デ買ツタ二歲馬ノ頭數ト其ノ平均價
格ヲ見マシテ、今マデノ生產馬ハ二歲デ購
入シタモノハ、大體十七歲マデガ、其ノ生
產馬ノ一生ト見テ、其ノ一代ニドレダケノ
生產ヲシ、ドレダケノ收入ヲ得テ居ルカ、
而シテ金利ハ幾ラ掛ツテ居ルカ、大體金利
ニ掛ツタモノト生產ニ依ル收入トヲ比較シ
テ、飼料ノ方ノ問題ハ私ノ方デ出シテ參リ
マスカラ、其ノ金利ト云フモノト從來國ノ
方デモ、民間ノ方デモ生產シタ頭數ガ分ツ
テ居リマスカラ、ソレデ比例シテ見ルト、
ドレダケ一頭カラ生產馬ガ出テ、其ノ中軍
用馬ニドレダケ、種馬ニドレ程行ツテ居ル
カト云フコトガ分ルカラ、其ノ價格ヲ出シ
テ、年五分ノ金利トシテ金利ダケハ幾ラニ
ナルカ、其ノ金利ダケナラハツキリ分ル譯
デセウカラ、サウ云フコトモ一ツ計算ヲ御
願シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=28
-
029・坪山徳彌
○坪山委員長代理 今日ハ是デ終ヒタイト
思ヒマスガ、明日ハ速記ノ都合デ出來マセ
ヌシ、明後日ハ或ハ休ミニナルノデハナカ
ラウカト思フノデス、サウ云フ譯デ月曜ノ
午後一時開クコトニシテ本日ハ是デ散會致
カシュ
正午散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511723X01619400314&spkNum=29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。