1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年三月十七日(日曜日)
午後一時五十三分開議
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議事日程 第二十七號
昭和十五年三月十七日
午後一時開議
第一 所得税法改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 法人税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 特別法人税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 配當利子特別税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 外貨債特別税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 相續税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 建築税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 鑛區税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 臨時利得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 營業税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 地租法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 酒税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 清涼飮料税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 織物消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 揮發油税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 物品税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 遊興飮食税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 取引所税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 通行税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 入場税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 印紙税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 骨牌税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 狩獵法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 明治四十四年法律第四十五號中改正法律案(砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 大正九年法律第五十一號中改正法律案(内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 營業收益税法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 資本利子税法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 法人資本税法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 臨時租税措置法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 地方税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 地方分與税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 府縣制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 市制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十六 町村制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十七 北海道會法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十八 北海道地方費法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十九 地方分與税分與金特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十 家屋税法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十一 所得税法人税内外地關渉法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十二 昭和十二年法律第九十四號中改正法律案(支那事變の爲從軍したる軍人及軍屬に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十三 大正十三年法律第六號中改正法律案(外國船舶の所得税等免除に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十四 アルコール製造事業等に對する所得税等の免除規定の改正に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 租税法規の改正に伴ふ恩給金庫法等の規定の整理に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
支那事變に關する一時賜金として交付する爲公債發行に關する法律案
(以上三月十六日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
衆議院議員選擧法中改正法律案
提出者
今井健彦君 金井正夫君
三輪壽壯君 永江一夫君
清瀬一郎君 大石大君
田川大吉郎君 北浦圭太郎君
(以上三月十六日提出)
一去十五日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
國民體力管理法案
一去十五日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
昭和十五年度歳入歳出總豫算案竝昭和十五年度各特別會計歳入歳出豫算案
豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
(臨第一號)臨時軍事費豫算追加案
(臨材第一號)臨時陸軍材料資金豫算追加案
(第一號)昭和十五年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)昭和十五年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
輸出資金及輸出品製造資金融通損失補償法案
東北興業株式會社法中改正法律案
東北振興電力株式會社法中改正法律案
商工組合中央金庫法中改正法律案
一去十五日米内内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
農林書記官 梶原茂嘉
馬政局事務官 三須武男
第七十五囘帝國議會農林省所管事務政府委員被仰付
一去十五日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第八部選出
決算委員 濱地文平君(曾和義弌君補闕)
第二部選出
建議委員 庄司一郎君(中野寅吉君補闕)
第三部選出
建議委員 肥田琢司君(淺井茂猪君補闕)
第四部選出
建議委員 野口喜一君(坂田道男君補闕)
第四部選出
建議委員 川崎末五郎君(津倉亀作君補闕)
第八部選出
建議委員 沖島鎌三君(鶴惣市君補闕)
一去十五日委員長及理事互選の結果左の如し
農産物檢査法案(政府提出)委員
委員長 末松偕一郎君
理事
木原七郎君 森下國雄君
吉植庄亮君 伊東岩男君
一去十五日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出豫算委員 三善信房君
第九部選出豫算委員 小池四郎君
一去十五日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
理事 松尾孝之君(委員依光好秋君去十五日理事辭任に付其の補闕)
一去十五日に於ける特別委員の異動左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任本田彌市郎君 補闕内藤正剛君
辭任箸本太吉君 補闕瀧澤七郎君
昭和十二年法律第九十號中改正法律案(米穀の應急措置に關する件)(政府提出)委員
辭任森幸太郎君 補闕中田儀直君
辭任土屋寛君 補闕伊藤五郎君
辭任坂下仙一郎君 補闕山本粂吉君
農産物檢査法案(政府提出)委員
辭任村上紋四郎君 補闕末松偕一郎君
辭任田中好君 補闕森幸太郎君
輸出資金及輸出品製造資金融通損失補償法案(政府提出)委員
辭任星一君 補闕田代正治君
辭任野方次郎君 補闕上田孝吉君
日本肥料株式會社法案(政府提出)委員
辭任吉田賢一君 補闕石坂繁君
辭任眞鍋儀十君 補闕土屋寛君
辭任國光五郎君 補闕田中好君
辭任松村光三君 補闕村上元吉君
市町村義務教育費國庫負擔法改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任一ノ瀬俊民君 補闕川崎巳之太郎君
一昨十六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
豫算委員 板谷順助君(三善信房君補闕)
第九部選出
豫算委員 吉田賢一君(小池四郎君補闕)
一昨十六日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
所得税法改正法律案(政府提出)外三十件委員
理事 佐竹晴記君(理事河野密君去十四日委員辭任に付其の補闕)
一昨十六日に於ける特別委員の異動左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任森田福市君 補闕河野一郎君
所得税法改正法律案(政府提出)外三十件委員
辭任田万清臣君 補闕阿部茂夫君
辭任山本粂吉君 補闕高橋壽太郎君
辭任愛野時一郎君 補闕服部英明君
辭任伊藤五郎君 補闕堀内良平君
辭任櫻井兵五郎君 補闕愛野時一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=1
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002・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、會計
檢査院法中改正法律案、委託又ハ郵便ニ依
ル戶籍屆出ニ關スル法律案、大正十一年法
律第五十二號中改正法律案、裁判所構成法
中改正法律案及ビ恩給法中改正法律案、右
五案ヲ一括議題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求
メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、會計檢
査院法中改正法律案、委託又ハ郵便ニ依ル
戶籍屆出ニ關スル法律案、大正十一年法律
第五十二號中改正法律案、裁判所構成法中
改正法律案、恩給法中改正法律案、右五案
ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報〓ヲ求メマス-委員長古屋慶隆君
會計檢査院法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
委託又ハ郵便ニ依ル戶籍屆出ニ關スル法
律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
大正十一年法律第五十二號中改正法律
案(統計資料實地調査ニ關スル件)(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
裁判所構成法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
恩給法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一會計檢査院法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十七日
委員長古屋慶隆
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一委託又ハ郵便ニ依ル戶籍屆出ニ關スル
法律案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十七日
委員長古屋慶隆
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一大正十一年法律第五十一一號中改正法律
案(統計資料實地調査ニ關スル件)政
府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十七日
委員長古屋慶隆
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一裁判所構成法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十七日
委員長古屋慶隆
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一恩給法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十七日
委員長古屋慶隆
衆議院議長小山松壽殿
〔古屋慶隆君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=4
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005・古屋慶隆
○古屋慶隆君 只今上程セラレマシタ會計
檢査院法中改正法律案外四件ニ關シマシ
テ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ極ク簡單ニ報
告致シマス、其ノ詳細ハ速記錄ニ依ツテ御
覽ヲ願ヒタイト思ヒマス
先ヅ第一ニ會計檢査院法中改正法律案デ
アリマスガ、最近年々歲計ガ膨脹致シマシ
テ、會計檢査院ニ於ケル檢査事務ハ著シク
增加致シマシタ、殊ニ臨時軍事費ハ巨額ニ
上リマシテ、是ガ會計檢査ハ、或ハ書面ノ
檢査ニ於キマシテモ、或ハ實地ノ檢査ニ於
キマシテモ、何レモ其ノ分量ガ非常ニ增加
致シマシテ、其ノ範圍及ビ地域モ段々廣汎
ニ亙リマシテ、檢査上多大ノ手數ヲ要スル
狀況ト相成リマシタ、斯ノ如キ事情デアリ
マスノデ、檢査能力ノ充實ヲ圖ル爲ニ、檢
査官二人、副檢査官四人ヲ增置シタイ、、斯
ウ云フ案デアリマシテ、委員會ニ於キマシ
テハ愼重審議致シマシテ、色々意見ガアリ
マシタケレドモ、先ヅ其ノ中ノ重大ナルト
言フヨリモ、寧ロ稍〓爭ニ近イヤウナ點ヲ一
ツ御紹介申シタイト思フノデアリマス、或
ル委員ハ會計檢査院法ニ關聯致シマシテ、
實ハ日支事變後數年度ニ亙ル特別會計ハ憲
法違反デハナイカ、斯ウ云フコトヲ頻リニ
力說高調セラレタノデアリマス、政府ハ是
ハ憲法違反デハナイ、又從來ノ慣例カラ言
ツテモ、日〓戰爭ノ場合モ、日露戰爭ノ場
合モ、日獨戰爭ノ場合モ左樣デアツテ、今
日デハ一ツノ習律トナツテ來テ居ル、又憲
法ノ明文デハ每年議會ノ協贊ヲ經ベシト云
フ、此ノ點カラ見テ、決シテ違憲トハ思ハ
ナイト云フ政府ノ答辯ガアツタノデアリマ
ス、又或ル委員ハ今度ノ改正案ハ已ムヲ得
ヌモノデアルケレドモ、如何ニモ姑息デア
ル、モウ少シ根本的ノ改正ヲヤツテ貰ヒタ
イト云フヤウナ希望モ述ベラレタノデアリ
マスガ、政府ノ言ハレル所ヲ是認致シマシ
テヽ滿場一致會計檢査院法中改正法律案ヲ
委員會ニ於テ可決致シマシタ
第二ノ委託又ハ郵便ニ依ル戶籍屆出ニ關
スル法律案デアリマス、今囘ノ事變ニ際シ
マシテ、戰圖其ノ他ノ公務ニ從事スル者
ガ自ラ戶籍ノ屆出ヲ爲スコトガ困難デア
リマスルガ爲、其ノ屆出ヲ委託ヲ爲ス事例
ガ少クナイサウデアリマス、ソレデ既ニ婚
姻關係ガ成立シテ居リナガラ、其ノ屆出ガ
未ダ濟ンデナイ者ガ、戰鬪其ノ他公務ニ從
事スルニ當リマシテ、戶籍ノ屆出方ヲ委託
シテ置キナガラ、其ノ屆出ノ爲サルル前ニ
委託者ガ名譽ノ戰死ヲスルニ至ツタト云フ
ヤウナ事例ガ、相當ニアルサウデアリマ
ス、斯ウ云フ場合ニ於キマシテハ、委託者
ノ死亡後ト雖モ、委託ニ基キ有效ニ屆出ヲ
爲シ得ルモノトスト云フコトガ、本人ノ意
思ニ適フノミナラズ、遺族ノ身分關係、其
ノ他諸般ノ關係ヲ整理スルニ必要ナルコト
ハ申スマデモアリマセヌ、從來ノ取扱上
モ、斯ル屆出ハ受理セラレテ居ツタサウデ
アリマスルガ、現行法上疑義ノ起ル餘地ガ
全クナイトハ申サレヌサウデアリマスカラ、
明文ヲ以テ委託者ノ死亡ノ時ニ遡ツテ效力
ヲ生ズルト云フコトニ規定ヲサレマシタ、
向ホ一般ノ屆出人ノ郵送シタル戶籍ノ屆出
ガ、屆出人ノ死亡後ニ戶籍役場ニ到達致シ
マシテ受理セラルル場合モ、從來往々ニシ
テ起ルサウデアリマス、此ノ場合モ前ノ場
合ト同樣、屆出人ノ死亡ノ時ニ遡ツテ效力
ヲ生ズルコトガ當然ダト云フコトデ、委員會
ニ於キマシテモ政府ノ說明ヲ諒ト致シマジ
テ、是亦滿場一致ヲ以テ可決致サレマシタ
第三ノ大正十一年法律第五十二號中改正
法律案、此ノ法律ハ御承知ノ通リ農業統計
及ビ勞働統計ノ實地調査ニ關スル法律デア
ルノデアリマス、今次事變ニ際會致シマシテ、
生產力擴充ノ爲ニ、技術者ノ地位ガ著シク
重要視サレテ參ツタノデアリマス、之ニ關
スル統計資料ノ整備ガ急務トナツテ參リマ
シタ、仍テ技術者ニ關スル實地調査ヲモ、
此ノ法律ニ基キテ施行シ得ルヤウニ、此ノ
法律ニ追加ヲシヨウト云フノデアリマス、
別ニ質問等モナク、是亦滿場一致ヲ以テ可
決セラレタノデアリマス
次ハ裁判所構成法中改正法律案、本案ハ
地方裁判所及ビ檢事局ニ書記長ヲ置クト云
フ案デアルノデアリマス、現在裁判所及ビ
檢事局ニ勤務ヲ致シテ居リマスル書記ノ
總數ハ六千名ヲ超過シ、其ノ下ニ執務スル
雇員其ノ他ノ職員ハ之ニ倍加シ、加フルニ
執達吏、司法書士等ノ附屬吏員ノ數モ少ク
ナイノデアリマスルガ、之ガ直接指揮監督
ノ任ニ當ツテ居ル者ハ、高等官トシテハ僅
ニ大審院及ビ檢事局、竝ニ控訴院及ビ檢事
局ニ書記長ガアルニ止マリマシテ、地方裁
判所及ビ檢事局以下ニハ、總テ判任官タル
監督書記ヲ以テ之ニ充テテ居ル狀態デアリ
マス、此ノ故ニ監督書記ヲ、高等官ニ昇格セ
シメマシテ、部下職員フ指揮監督ニ萬全ヲ
期スルト共ニ、判任官タル裁判所書記ノ高
等官ニ進出スルノ途ヲ開キテ、サウシテ一
面ニ於テ是等ノ人々ノ志氣ヲ鼓舞スルコト
ハ、司法事務ノ改善刷新ノ上ニ大イニ裨益
スル所アリト、斯ウ云フ政府ノ說明デアリ
マシテ、委員ハ之ヲ諒ト致シマシテ、是亦
滿場一致ヲ以テ可決セラレタノデアリマス
次ハ恩給法中改正法律案、此ノ恩給法ノ
改正法律案ハ、御承知ノ通リ三ツノ點ニ改
正ガ加ツテ居ルノデアリマス、第一ハ加算
年ノ規定ノ改正、第二ハ普通恩給ノ停止ノ
規定、第三ハ扶助料ヲ受クル遺族ノ範圍ノ
擴張、斯ウ云フ三ツノ點デアルノデアリマ
ス、現行恩給法ノ加算年ノ割合ハ、今日ノ
事情カラ考ヘテ見マシテ、必ズシモ適當デ
ナイノデアリマシテ、戰地外戰務加算、外
國鎭成加算及ビ外地ノ在勤加算ノ加算年ノ
割合ハ、之ヲ低減スルト共ニ、又各般ノ情
勢ニ依リマシテ、新ニ戰車加算ヤ滿洲國ノ
國境警備ニ居ル人ニ加算ノ規定ヲ設ケマシ
テ、不備ヲ補ツタノデアリマス、更ニ恩給
ノ停止規定、三十歲未滿デ普通恩給ヲ受ク
ル者ノ恩給停止率ヲ增加致シマシテ、又恩'
給以外ノ多額ノ所得アル者ノ普通恩給ノ停
止ノ範圍ヲ擴ゲルト共ニ、其ノ停止ノ割合
ヲ增加シタノデアリマス、更ニ委託又ハ郵
便ニ依ツテ戶籍ノ屆出ヲ爲シ、公務員死亡
後是ト戶籍ヲ同ジクシ夕者、所謂內緣ノ妻
ヤ子ト云フモノヲ恩給法ニ依ル遺族トシテ
取扱ヒ、之ニ扶助料カ一時扶助料ヲ給スル
ヤウニスル、斯ウ云フ點デアルノデアリマ
ス、此ノ改正案ノ委員會ハ三月八日カラ數
囘ニ亙リマシテ開會ヲ致シマシタガ、各委
員カラ非常ナ熱心ナル質疑ガアリマシテ、
政府委員カラモ亦詳細答辯ガゴザイマシタ
カラ、其ノ主ナルモノヲ一ツ申上ゲテ見タ
イト思ヒマス
第一ハ、三四十歲ノ若サデ恩給ヲ受クル
者ヤ、多額ノ所得アル者ノ恩給ハ
ヲ停止スルカ、或ハ停止率ヲモツト高クシ
テハドウカト云フ點デアリマスガ、之ニ付
キマシテ政府委員カラハ若クシテ恩給ヲ
受クル者ハ、主トシテ陸海軍ノ下士官ヤ、
巡査等ノ警察官ノ下級ナ者デアリ、又多額
ノ所得者モ、所得ガアレバアル程出費ヲ伴
フノデアルシ、今囘ハ更ニ所得稅法モ改正
セラレテ、增率セラレルヤウナ狀態デアリ
マスノデ、政府トシテハ結局改正案ノ率ガ
適當デアル、斯ウ云フ答辯ガアツタノデア
リマス
次ニ官吏ヤ軍人ノ中デ、判任官ヤ下士官
等ノ下級者ノ恩給ヲ增額スル意思ハナイカ
ト云フ質疑ニ對シマシテハ、名譽アル戰死
者ノ遺族ヤ戰傷者ノ恩給ハ、旣ニ昭和十三
年ニ大幅ナ增額ヲ致シタノデアリマシテ、之
ヲ增額スル考ハ今ノ所ハナイ、他ノ公務員
ノ恩給ハ是ノ基礎トナル俸給ノ增額ガ、目
下ノ所色々ノ理由デ抑ヘラレテ居ル關係モ
アリ、旁〓恩給ノミヲ增額スルコトハ困難ダ
ト云フ答辯ガアツタノデアリマス
ソレカラ現行恩給法ハ色々ナ點ニ於テ現
狀ニ伴ハナイ點ガアリマスカラ、是ガ根本
的改正ヲ圖ルノ希望意見等ガアリテ、是ハ
全員一致ノ希望デアリマスノデ、政府ニ於
テモ近キ將來ニ於テ根本的改正ヲ斷行セラ
レルコトヲ、特ニ委員會デハ希望致シテ置
キマシタ
其ノ他色々質問應答ガアリマシタガ、是
等ノ詳細ナ點ニ付テハ、速記錄ニ依ツテ御
覽ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、以上ノ
理由ニ依リマシテ、會計檢査院法中改正法
律案外四案ハ、委員會ニ於テハ滿場一致ヲ
以テ可決セラレマシタ、以上御報告申上ゲ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 五案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ五案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 直チニ五案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ五案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
會計檢査院法中改正法律案
第二讀會(確定議)
委託又ハ郵便ニ依ル戶籍屆出ニ關スル
法律案第二讀會(確定議)
大正十一年法律第五十二號中改正法律
案(統計資料實地調査ニ關スル件)
第二讀會(確定議)
裁判所構成法中改正法律案
第二讀會(確定議)
恩給法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、五案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=11
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012・服部崎市
○服部崎市君 此ノ際暫時休憩セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、暫時休憩致シマス
午後二時八分休憩
午後四時五十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=14
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015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス、日程第一乃至第四十五ハ同
一委員ニ付託シタル議案デアリマスカラ、
一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第一、所得稅法改正法律案、日程
第二、法人稅法案、日程第三、特別法人稅
法案、日程第四、配當利子特別稅法案、日
程第五、外貨債特別稅法中改正法律案、日
程第六、相續稅法中改正法律案、日程第
七、建築稅法案、日程第八、鑛區稅法案、
日程第九、臨時利得稅法中改正法律案、日
程第十、營業稅法案、日程第十一、地租法
中改正法律案、日程第十二、酒稅法案、日
程第十三、〓涼飮料稅法中改正法律案、日
程第十四、砂糖消費稅法中改正法律案、日
程第十五、織物消費稅法中改正法律案、日
程第十六、揮發油稅法中改正法律案、日程
第十七、物品稅法案、日程第十八、遊興飮
食稅法案、日程第十九、取引所稅法中改正法
律案、日程第二十、通行稅法案、日程第二
十一、入場稅法案、日程第二十二、印紙稅法
中改正法律案、日程第二十三、骨牌稅法中
改正法律案、日程第二十四、狩獵法中改正
法律案、日程第二十五、明治四十四年法律
第四十五號中改正法律案、日程第二十六、
大正九年法律第五十一號中改正法律案、日
程第二十七、支那事變特別稅法及臨時租稅
增徵法廢止法律案、日程第二十八、營業收
益稅法廢止法律案、日程第二十九、資本利
子稅法廢止法律案、日程第三十、法人資本
稅法廢止法律案、日程第三十一、臨時租稅措
置法中改正法律案、日程第三十二、地方稅
法案、日程第三十三、地方分與稅法案、日程
第三十四、府縣制中改正法律案、日程第三
十五、市制中改正法律案、日程第三十六、
町村制中改正法律案、日程第三十七、北海
道會法中改正法律案、日程第三十八、北海
道地方費法中改正法律案、日程第三十九、
地方分與稅分與金特別會計法案、日程第四
十、家屋稅法案、日程第四十一、所得稅法
人稅內外地關涉法案、日程第四十一、昭和
十二年法律第九十四號中改正法律案、日程
第四十三、大正十三年法律第六號中改正法
律案、日程第四十四、アルコール製造事業
等ニ對スル所得稅等ノ免除規定ノ改正ニ關
スル法律案、日程第四十五、租稅法規ノ改
正ニ伴フ恩給金庫法等ノ規定ノ整理ニ關ス
ル法律案、右四十五案ヲ一括シテ第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長堀切善兵衞君
第所得稅法改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第二法人稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三特別法人稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四配當利子特別稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第五外貨債特別稅法中改正法律案
(政府提出)·
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第六相續稅法中改正法律案(政府提
出第一讀會ノ續(委員長報〓)
第七建築稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第八鑛區稅法案(政府提出)
第一讀會ノ績(委員長報〓)
第九臨時利得稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十營業稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十一地租法中改正法律案(政府提
四第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十二酒稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十三〓涼飮料稅法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十四砂糖消費稅法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十五織物消費稅法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十六揮發油稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第十七物品稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十八遊興飮食稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十九取引所稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十通行稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十一入場稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十二印紙稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十三骨牌稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第二十四狩獵法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第二十五明治四十四年法律第四十五
號中改正法律案(砂糖消費稅織物消
費稅等ノ徵收ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十六大正九年法律第五十一號中
改正法律案(內地臺灣又ハ樺太ヨリ
朝鮮ニ移出スル物品ノ內國稅免除ニ
關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第二十七支那事變特別稅法及臨時租
稅增徵法廢止法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二十八營業收益稅法廢止法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第二十九資本利子稅法廢止法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第三十法人資本稅法廢止法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第三十一臨時租稅措置法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十二地方稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十三地方分與稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十四府縣制中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十五市制中改正法律案(政府提
四第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十六町村制中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第三十七北海道會法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十八北海道地方費法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三十九地方分與稅分與金特別會計
法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四十家屋稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四十一所得稅法人稅內外地關涉法
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四十二昭和十二年法律第九十四號
中改正法律案(支那事變ノ爲從軍シ
タル軍人及軍屬ニ對スル租稅ノ減免、
徵收猶豫ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四十三大正十三年法律第六號中改
正法律案(外國船舶ノ所得稅等免除
ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四十四アルコール製造事業等ニ對
スル所得稅等ノ免除規定ノ改正ニ關
スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四十五租稅法規ノ改正ニ伴フ恩給
金庫法等ノ規定ノ整理ニ關スル法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一所得稅法改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
所得稅法改正法律案中左ノ通修正ス
第十二條分類所得稅ヲ課スベキ所得ハ
左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一不動產所得ハ前年中ノ總收入金額
〓(收入ヲ得ルニ必要ナ
ヨリ必要ノ經費〓ヲ控除シタル金額
ル負債ノ利子ヲ含ム以下同ジ)
二甲種ノ配當利子所得ハ其ノ支拂ヲ
但シ法人ヨリ受クル利益
受クベキ金額
若ハ利息ノ配當又ハ剰餘金ノ分配ハ支拂
ヲ受クベキ金額ヨリ其ノ十分ノ一ヲ控除
シタル金額
三乙種ノ配當利子所得中法人ヨリ受
クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金
ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二
月末日迄ノ、其ノ他ハ前年中ノ收入
金額(無記名株式ノ配當竝ニ無記名
ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支拂ヲ
受ケタル金額)
四事業所得ハ前年中ノ總收入金額ヨ
但シ
リ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
水產業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前
三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費
ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シタ
ル金額
五甲種ノ勤勞所得ハ其ノ支拂ヲ受ク
ベキ金額
六乙種ノ勤勞所得ハ前年中ノ收入金
額
七山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額
ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
八甲種ノ退職所得ハ其ノ支拂ヲ受ク
ベキ金額ヨリ支拂者ヲ異ニスル每ニ
五千圓ヲ控除シタル金額
九乙種ノ退職所得ハ前年中ノ收入金
額ヨリ支拂者ヲ異ニスル每ニ五千圓
ヲ控除シタル金額
所得稅及臨時利得稅ハ前項第一號、第
四號及第七號ノ必要ノ經費ニ之ヲ算入
セズ
營業利得ニ對スル臨時利得稅額ハ當該
臨時利得稅ヲ課セラルベキ年分ノ甲種
ノ事業所得金額ヨリ之ヲ控除ス
所得稅ヲ課スベキ甲種ノ事業所得ト其
ノ他ノ甲種フ事業所得トヲ有スル場合
ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ控除スベキ
臨時利得稅ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ計算ス
不動產所得、配當利子所得及山林ノ所
得ニ付テハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續
人ノ所得ト看做シ事業所得ニ付テハ相
續シタル資產又ハ事業ハ相續人ガ引續
キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所
得ヲ計算ス
二百五十
第十四條不動產所得ハ百圓ニ滿タザル
トキハ分類所得稅ヲ課セズ
戶主及其ノ同居家族ノ不動產所得ハ之
ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適
用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家
族ノ不動產所得ニ付亦同ジ
第十六條甲種ノ勤勞所得ニ付テハ命令
七百二十
ノ定ムル所ニ依リ年六百圓ノ割合ニ依
リ給與ノ支給期間ニ應ジテ算出シタル
金額ヲ其ノ給與ヨリ控除ス
同一ノ支拂者ヨリ賞與又ハ賞與ノ性質
ヲ有スル給與ト其ノ他ノ給與トヲ併セ
受クル者ニ在リテハ前項ノ控除ハ先ヅ
賞與及賞與ノ性質ヲ有スル給與以外ノ
給與ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ命令
ノ定ムル所ニ依リ賞與又ハ賞與ノ性質
ヲ有スル給與ニ及ブ
二以上ノ支拂者ヨリ甲種ノ勤勞所得ヲ
受クル者ニ付テハ前二項ノ規定ニ依ル
控除ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十七條事業所得及乙種ノ勤勞所得ニ
付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得
ヨリ左ノ金額ヲ控除ス
五
一事業所得ニ付テハ四百圓
七百二十
二乙種ノ勤勞所得ニ付テハ六百圓
事業所得ト乙種ノ勤勞所得トヲ有スル
者ノ事業所得ニ付テハ前項第一號ノ規
定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ但シ乙種ノ
七百二十
勤勞所得ガ六百圓ニ滿タザルトキハ命
五
令ノ定ムル所ニ依リ四百圓ト乙種ノ勤
七·二五
勞所得ノ三分ノ二ニ相當スル金額トノ
差額ヲ專業所得ヨリ控除ス
第十八條前年中ニ甲種ノ勤勞所得ニ付
第十六條第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ受
ケタル者ノ事業所得又ハ乙種ノ勤勞所
得ニ付テハ前條ノ規定ニ依ル控除ハ之
ヲ爲サズ但シ前年中ニ甲種ノ勤勞所得
ニ付第十六條第一項ノ規定ニ依リ控除
七百二十
シタル金額ガ六百圓ニ滿タザルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ヨリ左
ノ金額ヲ控除ス
五
-事業所得ニ付テハ四百圓ト第十六
條第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金
七·二五
額ノ三分ノ二ニ相當スル金額トノ差
額
七百二十
二乙種ノ勤勞所得ニ付テハ六百圓ト
第十六條第一項ノ規定ニ依リ控除シ
タル金額トノ差額
三前二號ノ所得ヲ併セ有スルトキハ
其ノ所得ニ付テハ命令ノ定ムル金額
第十九條同居ノ戶主及其ノ家族中二人
以上ノ者ガ事業所得ヲ有スル場合ニ於
テ前二條ノ規定ニ依リ其ノ事業所得ヨ
五
リ控除スベキ金額ハ總額ニ於テ四百圓
ヲ超ユルコトヲ得ズ戶主ト別居スル二
人以上ノ同居家族ノ事業所得ニ付亦同
前項ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ前
二條ノ規定ニ依リ控除スベキ金額ハ命
令ノ定ムル所ニ依リ納稅義務者ノ一人
又ハ數人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
第二十條山林ノ所得ニ付テハ其ノ所得
五
ヨリ四百圓ヲ控除ス
前條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用
ス
第二十六條ノ二自己若ハ家族又ハ其ノ相續
人ヲ保險金受取人トスル生命保險契約ノ爲
ニ拂込ミタル保險料アルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ保險料中年額一一百圓以內ニ於テ
命令ヲ以テ定ムル金額ノ百分ノ六ニ相當ス
ル金額ヲ不動產所得、事業所得、勤勞所得又
ハ山林ノ所得ニ對スル分類所得稅額ヨリ控
除ス
第二十七條第二十四條及第二十五條
〓及前條
〓ノ規定ハ第二條ノ規定ニ依ル納稅義
務者ニハ之ヲ適用セズ
第二十九條左ノ各號ニ該當スル所得ニ
付テハ綜合所得稅ヲ課セズ
一第十一條第一項第一號乃至第五號
及第七號ノ所得
九
二第三十條第一項第八號ノ所得中營
利ヲ目的トスル繼續的行爲ヨリ生ジ
タルニ非ザル一時ノ所得
三一時恩給及退職給與竝ニ此等ノ性
質ヲ有スル給與
第三十條個人ノ總所得ハ左ノ各號ノ規
定ニ依リ之ヲ算出ス
不動產、不動產上ノ權利又ハ船舶
ノ貸付ニ因ル所得ハ前年中ノ總收入
金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金
額
二本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル公
債、社債、銀行預金及第二十一條第
二項ニ規定スル預金ノ利子竝ニ命令
ヲ以テ定ムル合同運用信託ノ利益ハ
前年中ノ收入金額(無記名ノ公債及
社債ノ利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル
金額)ヨリ其ノ十分ノ四ヲ控除シタ
ル金額
三前號以外ノ公債、社債及預金ノ利
子竝ニ合同運用信託ノ利益ハ前年中
ノ收入金額(無記名ノ公債及社債ノ
利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)
四營業ニ非ザル貸金ノ利子ハ前年中
ノ收入金額ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ要
シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
五法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配
當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年三月一日
ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額
(無記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ
受ケタル金額)ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ
要シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
六山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額
ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
七俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、
恩給及賞與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル
給與ハ前年中ノ收入金額
八水產業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經
費ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シ
タル金額
九
八前各號以外ノ所得ハ前年中ノ總收
入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル
金額
所得稅及臨時利得稅ハ前項第一號、第
及第九號
六號及第八號〓ノ必要ノ經費ニ之ヲ算
入セズ
營業利得ニ對スル臨時利得稅額ハ當該
臨時利得稅ヲ課セラルベキ年分ノ總所
得金額ヨリ之ヲ控除ス
第十二條第四項ノ規定ハ前項ノ臨時利
得稅額ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第一項第一號乃至第六號ノ所得ニ付テ
ハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續人ノ所得
〓及第九號
ト看做シ第八號〓ノ所得ニ付テハ相續
シタル資產又ハ事業ハ相續人ガ引續キ
之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得
ヲ計算ス
第十三條ノ規定ハ個人ノ總所得ノ計算
ニ付之ヲ準用ス
第三十三條綜合所得稅ハ總所得金額ヲ
左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用
シテ之ヲ賦課ス但シ第八條ニ規定スル
利益ノ配當及山林ノ所得ハ各他ノ所得
ト之ヲ區分シ第八條ニ規定スル利益ノ
配當ニ付テハ其ノ所得金額ニ對シ本項
ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ以
テ其ノ稅額トシ山林ノ所得ニ付テハ其
ノ所得ヲ五分シタル金額中千圓ヲ超エ
五千圓以下ノ金額ニ對シテハ百分ノ五
ノ稅率ヲ、五千圓ヲ超ユル金額ニ對シ
テハ本項ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル
各
金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ。其ノ稅
額トス
五千圓ヲ超ユル金額百分ノ十
八千圓ヲ超ユル金額百分ノ十五
一萬二千圓ヲ超ユル
金額百分ノ二十
二萬圓ヲ超ユル金額百分ノ二十五
三萬圓ヲ超ユル金額百分ノ三十
五萬圓ヲ超ユル金額百分ノ三十五
八萬圓ヲ超ユル金額百分ノ四十
十二萬圓ヲ超ユル金
額百分ノ四十五
二十萬圓ヲ超ユル金
額百分ノ五十
三十萬圓ヲ超ユル金
額百分ノ五十五
五十萬圓ヲ超ユル金
額百分ノ六十
八十萬圓ヲ超ユル金
額百分ノ六十五
前項ノ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族
ノ總所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ
對シ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ
各其ノ總所得金額ニ按分シテ各其ノ稅
額ヲ定ム戶主ト別居スル二人以上ノ同
居家族ノ總所得金額ニ付亦同ジ
總所得中ニ法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ
配當又ハ剰餘金ノ分配ニシテ甲種ノ配當利
子所得トシテ分類所得稅ヲ課セラレタルモ
ノアルトキハ總所得金額ニ對シ前二項ノ規
定ヲ適用シテ算出シタル金額ト當該利益若
ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ノ前年三月
一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額無
記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金
額ノ百分ノ一ニ相當スル金額トノ合計額
ヲ以テ總所得ニ對スル綜合所得稅ノ稅額ト
ス
前項ニ規定スル剩餘金ノ分配中ニ產業組
合、工業組合、商業組合等命令ヲ以テ定ムル
法人ヨリ受クルモノアルトキハ其ノ部分ノ
收入金額ニ付テハ前項ニ規定スル割合百分
ノ一ハ之ヲ百分ノ○·五トス
第三十六條不動產所得、乙種ノ配當利
子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山
林ノ所得及乙種ノ退職所得ノ金額竝ニ
個人ノ總所得ノ金額ハ所得調査委員會
ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員會閉會後前項ノ所得ノ決
定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキ
ハ其ノ決定ヲ爲スベカリシ年ノ翌年ヨ
リ三年間ハ仍所得調査委員會ノ調査ニ
依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
ルコトヲ得
所得調査委員會閉會後第一項ノ所得ヲ
有スル者納稅義務アルコトヲ申出デ又
ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコト
ヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘
ラズ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
納稅義務者第一項ノ規定ニ依ル所得ノ
決定前ニ納稅管理人ノ申〓ヲ爲サズシ
テ本法施行地ニ住所及居所ヲ有セザル
ニ至ルトキハ第一項ノ規定ニ拘ラズ政
府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金
額ヲ決定スルコトヲ得
〓又ハ第二十
前四項ノ規定ハ第二十五條0ノ規定ニ
六條ノ二
依ル控除ニ因リ徵收稅額ナシト認ムル
者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第六十一條稅務署長ハ每年第三十六條
第一項ノ所得ニ付納稅義務アリト認ム
ル者ノ所得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ
所得調査委員會ニ送付スベシ
〓又ハ第二十六
前項ノ規定ハ第二十五條〓ノ規定ニ依
條ノ二
ル控除ニ因リ徵收稅額ナシト認ムル者
ニ付テハ之ヲ適用セズ
前二項ノ規定ハ第三十六條第二項ノ場
合ニ付之ヲ準用ス
第百一條左ニ揭グル所得ニ付テハ政府
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十五年分
又ハ昭和十六年分ニ限リ所得稅ヲ輕減
若ハ免除シ又ハ所得金額ノ計算ニ關シ
特例ヲ設クルコトヲ得
昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六
年一月一日ニ至ル期間引續キ有シタ
ルニ非ザル資產、營業又ハ職業ノ所
得
二昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六
年一月一日ニ至ル期間引續キ支給ヲ
受ケタルニ非ザル俸給、給料、歲費、
費用辨償、年金及恩給竝ニ此等ノ性
質ヲ有スル給與
三水產業ノ所得
報〓書
一法人稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
法人稅法案中左ノ通修正ス
第四條本法施行地ニ本店又ハ主タル事
務所ヲ有スル法人ノ各事業年度ノ所得
ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控
除シタル金額ニ依ル但シ相互保險會社及
會員組織ノ取引所ニ在リテハ各事業年度
ノ剩餘金ニ依ル
法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル又
ハ納付スベキ法人稅及臨時利得稅ハ前
項ノ所得ノ計算上之ヲ損金ニ算入セズ
三
法人ノ各事業年度開始ノ日前一年以内
ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタル損
金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ第一項
ノ所得ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
前二項ノ規定ハ相互保險會社又ハ會員
組織ノ取引所ノ剩餘金ノ計算ニ付之ヲ
準用ス
本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ
有セザル法人ノ各事業年度ノ所得ハ本
法施行地ニ於ケル資產又ハ營業ニ付前
四項ノ規定ニ準ジ計算シタル金額ニ依ル
報〓書
一特別法人稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
特別法人稅法案中左ノ通修正ス
第四條特別ノ法人ノ剩餘金ハ各事業年
度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金
額ニ依ル
特別ノ法人ガ取扱ヒタル物ノ數量、價
額其ノ他事業ノ分量ニ對シテ配當スベ
キ金額ハ前項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損
金ニ算入ス
特別ノ法人ガ各事業年度ニ於テ納付シ
タル又ハ納付スベキ特別法人稅ハ第一
項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算入セ
ズ
三
特別ノ法人ノ各事業年度開始前一年以
內ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタ
ル損金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ
第一項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算
入ス
前三項ニ規定スルモノノ外第一項ノ剩
餘金ノ計算ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第六條產業組合、商業組合、工業組合、
貿易組合、漁業協同組合及蠶絲共同施
特別ノ法人ノ
設組合ニハ。前條ノ規定ニ依ル控除前
ノ剩餘金額ガ其ノ拂込濟出資金額ニ對
シ年百分ノ三ノ割合ヲ以テ算出シタル
金額ヲ超エザルトキハ特別法人稅ヲ課
セズ
前項ノ拂込濟出資金額ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ之ヲ計算ス
六
第九條特別法人稅ノ稅率ハ百分ノ九トス
附則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法ハ昭和十五年四月一日以後終了スル
事業年度分ヨリ之ヲ適用ス
本法ニ依ル特別法人稅ノ賦課ハ支那事變終了
ノ年ノ翌年十二月三十一日迄ニ終了スル事業
年度分限リトス
明治四十年法律第二十一號第一條第一項。
ニ左ノ一號ヲ加フ
二十特別法人稅
報告書
一配當利子特別稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一外貨債特別稅法中改正法律案(政府提
〓
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一相續稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
相續稅法中改正法律案中左ノ通修正ス
第十條第一項中「五年以內」ヲ「七年以內」
二、同條第二項中「七年以內」ヲ「十年以
內」ニ改ム
報〓書
一建築稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一鑛區稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一臨時利得稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
臨時利得稅法中改正法律案中左ノ通修正
ス
第五條法人ノ現事業年度ノ利益ハ現事
業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタ
ル金額ニ依ル但シ相互保險會社及會員
組織ノ取引所ニ在リテハ現事業年度ノ
剩餘金ニ依ル
法人ガ現事業年度ニ於テ納付シタル又
ハ納付スベキ法人稅及臨時利得稅竝ニ
當該事業年度ニ於テ納付シタル分類所
得稅ニシテ法人稅法第十六條ノ規定ニ
依リ其ノ額ヲ法人稅額ヨリ控除スベキ
モノハ前項ノ利益ノ計算上之ヲ損金ニ
算入セズ
三
法人ノ現事業年度開始ノ日前一年以內
ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタル
損金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ現
事業年度ノ利益ノ計算上之ヲ損金ニ算
入ス
前二項ノ規定ハ相互保險會社又ハ會員
組織ノ取引所ノ剩餘金ノ計算ニ付之ヲ
準用ス
本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ
有セザル法人ノ利益ハ本法施行地ニ於
ケル資產又ハ營業ニ付前四項ノ規定ニ
準ジ之ヲ計算ス
第十條個人ノ利益ハ前年中ノ總收入金
〓(收入ヲ得ルニ必要ナ
額ヨリ必要ノ經費〓ヲ控除シタル金額
ル負擔ノ利子ヲ含ム以下同ジ)
二代九
所得稅及臨時利得稅ハ前項ノ必要ノ經
費ニ之ヲ算入セズ
相續シタル營業ニ付テハ相續人ガ引續
キ之ヲ爲シタルモノト看做シテ其ノ利
益ヲ計算ス
營業ヲ讓渡シ又ハ廢止シタル後相續ノ
開始アリタル場合ニ於テハ被相續人ノ
營業利得ハ相續人ノ營業利得ト看做ス
報〓書
一營業稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
營業稅法案中左ノ通修正ス
第四條法人ノ各事業年度ノ純益ハ各事
業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタ
ル金額ニ依ル法人ガ各事業年度ニ於テ
納付シタル又ハ納付スベキ法人稅及臨
時利得稅竝ニ當該事業年度ニ於テ納付
シタル分類所得稅ニシテ法人稅法第十
六條ノ規定ニ依リ其ノ額ヲ法人稅額ヨリ
控除スベキモノハ前項ノ純益ノ計算上
之ヲ損金ニ算入セズ
三
法人ノ各事業年度開始ノ日前一年以內
ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタル
損金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ第
一項ノ純益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第十條個人ノ純益ハ前年中ノ總收入金
〓(收入ヲ得ルニ必要ナ
額ヨリ必要ノ經費〓ヲ控除シタル金額
ル負債ノ利子ヲ含ム以下同ジ)
一匹氏
所得稅及臨時利得稅ハ前項ノ必要ノ經、
費ニ之ヲ算入セズ
營業利得ニ對スル臨時利得稅額ハ當該
臨時利得稅ヲ課セラルベキ年分ノ純益
金額ヨリ之ヲ控除ス
前條第二項ノ規定ハ營業稅ヲ課スベキ
純益ト其ノ他ノ純益トヲ有スル個人ノ
純益金額ヨリ前項ノ規定ニ依リ控除ス
ベキ臨時利得稅額ノ計算ニ付之ヲ準用
ス
相續シタル營業ニ付テハ相續人ガ引續
キ之ヲ爲シタルモノト看做シテ其ノ純
益ヲ計算ス
第十一條左ニ揭グル營業ノ純益ニハ營
業稅ヲ課セズ
一政府ノ發行スル印紙切手類ノ賣捌
二度量衡ノ製作、修覆又ハ販賣
三新聞紙法ニ依ル新聞紙(一月三囘
以下發行スルモノヲ除ク)ノ出版
四本法施行地外ニ在ル營業場ニ於テ
爲ス營業
五個人ノ自己ノ收穫シタル農產物、
林產物、畜產物若ハ水產物ノ販賣又
ハ之ヲ原料トスル製造但シ特ニ營業
場ヲ設ケテ爲ス販賣又ハ製造ヲ除ク
報告書
一地租法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字ハ委員會修正)
地租法中改正法律案中左ノ通修正ス
第二條第三號中「招魂社地」ヲ「護國神社
地」ニ改ム
第十條中「百分ノ三·八」ヲ「百分ノ一一」ニ
改ム
第十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
地租ハ每年左ノ納期ニ於テ之ヲ徵收ス
田租
第一期翌年一月
一日ヨリ三十一
日限年額ノ二分ノ
第二期翌年三月
一日ヨリ三十一
日限年額ノ二分ノ一
二其ノ他
第一期其ノ年八
月一日ヨリ三十
一日限年額ノ二分ノ一
第二期翌年一月
一日ヨリ三十一
日限年額ノ二分ノ
第十四條中「自作農免租地」ヲ「小農耕免租地」
三郎五
第十九條ニ左ノ一項ヲ加フ
宅地又ハ鑛泉地ト爲リタル開拓地ニ付
テハ其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ開拓減
租年期ヲ短縮スルコトヲ得
第二十條ニ左ノ一項ヲ加フ
宅地又ハ鑛泉地ト爲リタル埋立地ニ付
テハ其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ埋立免
租年期ヲ短縮スルコトヲ得
「第四章自作農地免租」ヲ、「第四章小農耕
地免租」ニ改ム
第七十條第一項ヲ左ノ如ク改ム
田畑地租ノ納期開始ノ時ニ於テ納稅義務者
ノ住所地市町村及隣接市町村內ニ於ケル田
畑賃貸價格ノ合計金額ガ其ノ同居家族ノ分
ト合算シ二百圓未滿ナルトキハ納稅義務者
ノ申請ニ依リ其ノ田畑ノ當該納期分地租ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ免除ス但シ耕作
セザル田畑ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第七十三條地租ハ各納稅義務者ニ付同
一市町村内ニ於ケル田ノ賃貸價格ノ合
計金額ト田以外ノ土地ノ賃貸價格ノ合
計金額トニ依リ各別ニ算出シ之ヲ徵收
ス但シ合計金額ガ五圓ニ滿タザルモノ
ニ付テハ地租ヲ徵收セズ
第八十二條第二項ヲ削ル
附則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス但シ昭和十四年分以前ノ地租ニ關シテ
ハ仍從前ノ例ニ依ル
土地賃貸價格改訂法第四條ノ規定中從前
ノ賃貸價格ニ依ル地租額ノ四倍トアルハ
昭和十五年分地租ニ付テハ從前ノ賃貸價
格ノ百分ノ一ニ相當スル金額ノ四倍トス
報〓書
一酒稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
酒稅法案中左ノ通修正ス
アルコ
第五條本法ニ於テ合成〓酒トハ左ニ揭
p 、燒酎又ハ〓酒ト他ノ物品トヲ混和シ
グル酒類ニシテ其ノ香味、色澤其ノ他
テ製造シタル
ノ性狀ガ〓酒ニ類似スルモノヲ謂フ
-〓酒ト燒酎又ハアルコールトヲ混
和シテ製造シタルモノ
仁〓酒、燒酎又ハアルコールト他ノ
物品トヲ混和シテ製造シタルモノ
第八十八條ヲ削ル
報〓書
一〓涼飮料稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一砂糖消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一織物消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一揮發油稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一物品稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
物品稅法案中左ノ通修正ス
第一條左ニ揭グル物品ニシテ命令ヲ以
テ定ムルモノニハ本法ニ依リ物品稅ヲ
課ス
第一種
甲類
-貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒ
タル製品
二眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
三貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ
用ヒタル製品
四鼈甲製品
琥珀製品、象牙製品及
五珊瑚製品
七寶製品
|六琥珀製品
七象牙製品
八七寶製品
九六毛皮又ハ毛皮製品
七
1十羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒタル
製品
乙類
八
十一時計
九
十二文房具
十
十三身邊用細貨類
±一
は四化粧用具
十一
十五喫煙用具
十三
十六帽子、枚鞭及傘
十四
十七鞄及トランク
十五
十八靴及履物
十六
十九書〓及骨董
十七
二十室內裝飾用品
二十一盆栽、盆石及鉢植類
二十二愛玩用動物及同用品
十八
二十三玩具
十九
二十四運動具
二十
一十五照明器具
二十一
二十六電氣器具及瓦斯器具
二十二
一一十七圍碁及將棋用具
二十三
二十八家具
二十四
二十九漆器、陶磁器及硝子製器
具ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十五
三十貴金屬ヲ鍍シ又ハ張リタル
製品ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十六
三十一皮革製品ニシテ別號ニ揭
ゲザルモノ
二十七
三十二織物、メリヤス、レース、
フェルト及同製品竝ニ組物
二十八
三十三果物
二十九
三十四菓子
三十盆栽、盆石及鉢植類
三十一愛玩用動物及同用品
第二種
甲類
-寫眞機、寫眞引伸機、映寫機、
同部分品及附屬品
二寫眞用ノ乾板、フィルム及感
光紙
三蓄音器及同部分品
四蓄音器用レコード
五樂器、同部分品及附屬品
六雙眼鏡及隻眼鏡
七銃及同部分品
八藥莢及彈丸
九ゴルフ用具、同部分品及附屬品
十娛樂用ノモーターボート、ス
カール及ヨット
十一撞球用具
十二ネオン管及同變壓器
十三喫煙用ライター
十四乘用自動車
十五化粧品
乙類
十六ラヂオ聽取機及同部分品
十七受信用眞空管、擴聲用增幅
器及擴聲器
十八扇風機及同部分品
十九煖房用ノ電氣、瓦斯又ハ礦
油ストーブ
二十冷藏器及同部分品
二十一金庫及鋼鐵製家具
及
二十二化粧石鹸トシャンプー、洗
粉及齒磨
紅茶
二十三茶珈琲及其ノ代用物竝
ニココア
二十四嗜好飮料但シ酒類及〓涼
飮料ヲ除ク
第三種
-燐寸
二飴葡萄糖及麥芽糖
同一物品ニシテ第一種及第二種ニ該當
スルモノハ之ヲ第二種トシ、甲類及乙
類ニ該當スルモノハ之ヲ甲類トス
第十六號及第三
第五條物品稅ハ第一種第十九號ニ揭グ
十號
ル物品ニ付テハ其ノ物品ガ入札其ノ他
競爭ノ方法ニ依リ賣買セラルル場合ニ
シテ命令ヲ以テ定ムル場合ニ限リ之ヲ
課ス
前項ノ場合ニ於テハ其ノ札元又ハ之ニ
準ズベキ者ガ小賣業者トシテ當該物品
ヲ販賣スルモノト看做ス
第六條製造場以外ノ場所ニ於テ販賣ノ
爲化粧品、化粧石鹸、シシンプー、洗粉、
齒磨又ハ嗜好飮料ヲ容器ニ充塡シ又ハ
改裝スルトキハ之ヲ化粧品、化粧石檢、
シャンプー、洗粉、齒磨又ハ嗜好飮料ノ
製造ト看做ス
琥珀製
第三十條本法施行前ヨリ引續キ左ニ揭
品、象牙製品、七寶製品、菓子、盆栽盆石及鉢
グル第一ノ物品ノ小賣業ヲ營ム者又ハ
植類竝ニ愛玩用動物及同用品
第二ノ物品ノ製造ヲ爲ス者本法施行後
一月以內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申〓スルト
キハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申
告シタルモノト看做ス
第琥珀製品、象牙製品、七寶製品、
盆栽盆石及鉢植類、愛玩用動物及同
用品竝ニ菓子
第二化粧石鹸、歯磨及茶(紅茶ヲ除
々
第三十一條第一條ニ揭グル第二種又ハ
第三種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ガ本
法施行ノ際製造場又ハ保稅地域以外ノ
場所ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當スル物
品ヲ所持スル場合ニ於テハ其ノ場所ヲ
以テ製造場、其ノ所持者ヲ以テ製造者
ト看做シ之ニ物品稅ヲ課ス此ノ場合ニ
於テハ本法施行ノ日ニ於テ其ノ物品ヲ
製造場ヨリ移出シタルモノト看做シ第
一號ノ物品ニ付テハ第一條各號ニ揭グ
ル品名每ニ價格三千圓、飴葡萄糖又
ハ麥芽糖ニ付テハ一萬斤ヲ超ユル部分
第二條ニ規定スル稅率ニ依リ算出シ
ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ物品稅
タル稅額ト支那事變特別稅法第三十九條ニ
ヲ徵收ス但シ支那事變特別稅法ニ依リ
規定スル稅率ニ依リ算出シタル稅額トノ差
物品稅ヲ課セラレタル物品ニ付テハ其
額ヲ以テ其ノ稅額トシ命令ノ定ムル所ニ依
ノ課セラレタル稅額ニ相當スル金額ヲ
リ其ノ物品稅ヲ徵收ス
控除シタル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
ー第一條ニ揭グル第二種第一號乃至
第十五號、第二十二號(化粧石驗及齒
磨ニ限ル)又ハ第二十三號(紅茶以
外ノ茶ニ限ル)ノ物品ニシテ同條各
號ニ揭グル品名每ニ價格三千圓ヲ超
ユルモノ
二館葡萄糖又ハ麥芽糖ニシテ合計
斤數一萬斤ヲ超ユルモノ
前項ノ製造者又ハ販賣者ハ第二種ノ物
品ニ付テハ其ノ品名每ニ數量、價格及
貯藏ノ場所、飴葡萄糖又ハ麥芽糖ニ
付テハ其ノ品名每ニ數量及貯藏ノ場所
ヲ本法施行後一月以內ニ政府ニ申〓ス
ベシ
報〓書
一遊興飮食稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一取引所稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一通行稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一入場稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
入場稅法案中左ノ通修正ス
第三條入場稅ノ稅率左ノ如シ
第一種ノ場所
入場料ガ一人一囘一圓未滿ナルトキ
入場料ノ百分ノ十
入場料ガ一人一囘一圓以上三圓未滿
ナルトキ入場料ノ百分ノ二十
入場料ガ一人一囘三圓以上ナルトキ
入場料ノ百分ノ三十
囘數、定期又ハ貸切ニテ入場ノ契約
ヲ爲シタルトキ
入場料ノ百分ノ二十
第二種ノ場所入場料ノ百分ノ二十
撞球場入場料ノ百分ノ十
其ノ他入場料ノ百分ノ二十
本法ニ於テ入場料トハ名義ノ何タルヲ
問ハズ第一種ノ場所ニ入場シ又ハ第二
種ノ場所ノ設備ヲ利用スル爲ニ支拂フ
ベキ金額ヲ謂フ
前項ノ入場料ノ算定ニ關シテハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
報〓書
一印紙稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一骨牌稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一狩獵法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一明治四十四年法律第四十五號中改正法
律案(砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收
ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一大正九年法律第五十一號中改正法律案
(內地臺灣又ハ樺太ヨリ朝鮮ニ移出ス
ル物品ノ內國稅免除ニ關スル件)(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一支那事變特別稅法及臨時租稅增徵法廢
止法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一營業收益稅法廢止法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一資本利子稅法廢止法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一法人資本稅法廢止法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一臨時租稅措置法中改正法律案(政府提
山
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一地方稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
地方稅法案中左ノ通修正ス
第六十六條市町村民稅ノ納稅義務者一
左ノ金額
人ニ對スル賦課額ハ千圓ヲ超ユルコト
ヲ得ズ
人口七十萬以上ノ市二千圓
其ノ他ノ市千五百圓
町村千圓
市町村民稅ノ賦課總額ハ左ノ金額ニ第
六十四條ニ定ムル納稅義務者數ヲ乘ジ
タル額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十萬以上ノ市八圓
其ノ他ノ市六圓
町村四圓
前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ第六十四
條第一項第三號ノ法人ハ其ノ事務所又
ハ營業所每ニ獨立ノ納稅義務者ト看做ス
報〓書
一地方分與稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
地方分與稅法案中左ノ通修正ス
第二條地租、家屋稅及營業稅ノ徵收額
ノ全部ヲ以テ還付稅トス
十
所得稅及法人稅ノ徵收額ノ百分ノ什
七·三八
六·五五竝ニ入場稅及遊興飮食稅ノ徵
收額ノ百分ノ五十ヲ以テ配付稅トス
第三章配付稅
第一節通則
第六條每年度分トシテ分與スベキ配付
稅ノ額ハ前前年度ニ於テ徴收シタル所
十七·三八
得稅及法人稅ノ百分ノ十六·五五竝ニ入
場稅及遊興飮食稅ノ百分ノ五十トス
前項ノ規定ニ依リ分與スベキ配付稅ノ
額ガ前年度ニ於ケル分與額ノ百分ノ百
十ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ之ヲ
當該年度ニ於テ分與スベキ額ヨリ減額
ス
第一項ノ規定ニ依リ分與スベキ配付稅
ノ額ガ前年度ニ於ケル分與額ノ百分ノ
九十ニ不足スルトキハ其ノ不足額ハ之
ヲ當該年度ニ於テ分與スベキ額ニ增額
ス
第四十七條昭和十五年度ニ於ケル配付
稅ノ額ハ第二條第二項ノ規定ニ拘ラズ
二億七千七百三十五萬五千六百二十圓
トス
十七·三八
第二條第二項中百分ノ十六五五トア
十四·
ルハ昭和十六年度ニ於テハ百分ノ十三·
一七十
Ellishn.昭和十七年度ニ於テハ百分ノ十
七·二五
六·四二トス
第四十八條昭和十五年度及昭和十六年
度分トシテ分與スベキ配付稅ノ額ハ第
六條第一項ノ規定ニ拘ラズ夫々二億七
一 處
千七百三十五萬五千六百二十圓及二億
八千百十一萬四千五百二十七圓
七千六百六十七萬五千七百三十四圓ト
ス
十七·三八
第六條第一項中百分ノ十六·五五トアル
ハ昭和十七年度分ニ付テハ百分ノ」
二·三五
·〇六、昭和十八年度分ニ付テハ百分
十七·四二
ノ十六·五九トス
第六條第二項及第三項、第七條第一號
乃至第三號竝ニ第八條第一號乃至第三
號ノ規定ハ昭和十五年度乃至昭和十七
年度分ニ付テハ之ヲ適用セズ
報〓書
一府縣制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一市制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一町村制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衛
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一北海道會法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一北海道地方費法中改正法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一地方分與稅分與金特別會計法案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一家屋稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一所得稅法人稅內外地關涉法案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和十二年法律第九十四號中改正法律
案(支那事變ノ爲從軍シタル軍人及軍
屬ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ
關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一大正十三年法律第六號中改正法律案
(外國船舶ノ所得稅等免除ニ關スル件)
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一アルコール製造事業等ニ對スル所得稅
等ノ免除規定ノ改正ニ關スル法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一租稅法規ノ改正ニ伴フ恩給金庫法等ノ
規定ノ整理ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月十六日
委員長堀切善兵衞
衆議院議長小山松壽殿
〔堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=16
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017・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君 只今上程サレマシタ所得
稅法改正法律案外三十件ノ委員會ニ於ケル
審議ノ經過竝ニ結果ニ付御報〓申上ゲマス、
本委員會ニ付託サレマシタ法律案ハ、中央地
方ヲ通ズル稅制ノ一般的改正ニ關係アル諸
法律案、卽チ主トシテ國稅ノ改正ニ關スル所
得稅法改正法律案外三十六件ニ、主トシテ地
方稅ノ改正ニ關スル地方稅法外七件、合計
四十五件ト云フ多數ニ上リ、其ノ內容モ極
メテ廣汎多岐ニ亙ツテ居リマス、而シテ是
等ノ改正案ハ、形式的ナル租稅體制ノ改革
ト云フ點ヨリ見ルモ、將タ實質的ナル國民負
擔ノ增加ノ點ヨリ見ルモ、眞ニ劃期的ナ
ル改正案デアリマシテ、其ノ輪廓ハ過般本
議場ニ於テ大藏大臣及ビ內務大臣ニ依リテ
說明セラレタル所デアリマスルガ故ニ、改
メテ玆ニ申述ベル必要ハアリマセヌ、要ス
ルニ多年此ノ議會ニ於テ要望セラレタル中
央及ビ地方ヲ通ズル稅制ノ根本的改革ヲ斷
行シテ、以テ負擔ノ衡平ヲ期スベシト云フ、
其ノ趣意ニ基キタルモノデアツテ、吾々ハ
深ク當局ノ勞苦ヲ多トスルノデアリマス、
唯財政當局ガ此ノ改正ニ著手シテ以來、內
外ノ情勢ハ非常ニ變化ヲ來シテ居リマス、
我ガ財政經濟ノ實體モ大ニ異ツテ參リマシ
タガ爲、此ノ現在ノ事情ニ卽シテ稅制ノ改
正モ實行セネバナラヌヤウニナツタコトハ
勿論デアリマス
サレバ今囘ノ政府提案モ、負擔ノ均
衡ト云フ點ハ、勿論目標ノ第一デアリマ
シタガ、尙ホ此ノ外ニ經濟諸政策トノ調
和ヲ圖ルコト、增收竝ニ彈力性ヲ有セ
シムルニ努メタルコト、稅制ノ簡易化ト云
フヤウナ點ニ付キテモ、深キ考慮ヲ加ヘタ
リトハ政府ノ說明致シタ所デアリマス、果
シテ是等ノ目的ガ遺憾ナク達成セラレテ居
ルカドウカ、改正案ノ內容ガ廣ク且ツ根本
的デアレバアルダケ、詳細ニ且ツ眞劍ニ檢
討スルノ必要ヲ認メタノデアリマス、ソレ
デ委員會ハ二月十二日第一囘ノ會議ヲ開キ、
爾來引續キ會議ヲ開キ、三月十二日ヲ以テ
質疑應答ヲ打切リマシタ、此ノ間議事ノ進
捗ヲ期スルガ爲、地方稅法外七件ニ關スル
小委員會ヲ設ケ、小山倉之助君ヲ其ノ委員
長ト致シマシテ、本委員會ト竝行シテ審議
ヲ進メタノデアリマス、而シテ委員諸君ハ
連日最モ熱心ニ檢討ヲ續ケラレマシタコト
ハ私ノ深ク敬意ヲ表スル所デアリマス、
其ノ質疑應答ヲ詳細ニ申述ベルコトハ、到
底時間ガ許サヌノデアリマス、殊ニ委員長
トシテ私ハ、委員諸君ニ對シ絕エズ出來ル
ダケ質疑應答ヲ簡略ニ致サレタキ旨ヲ要望
致シテ參リマシタ關係上、自ラモ極ク簡略
ニ致サネバナラヌト考ヘマス、(拍手)仍テ
詳細ハ速記錄ニ付御高覽ヲ願フ次第デアリ
マス
先ヅ問題ニナリマシタ最モ重要ナル點
ヲ拾ツテ見マスト、第一、大藏大臣ハ此ノ
增稅案ヲ出スニ當リ、今日以後ノ我國ノ財
政狀態ヲ、ドウ見透シテ居ルカト云フ質問
デアリマス、卽チ政府ハ本案ヲ考慮スル前
提トシテ、現在ノ戰時財政經濟ノ狀態ハ、
當分大ナル變化ガナク繼續スルト見テ居ラ
ルルカ、日支事變ノ範圍ニ於テ、長期建設
ノ道程ニ於テ、餘リニ大ナル變化ナシト見
テ居ルカドウカト云フ點デアリマス、之二
對シ大藏大臣ハ、今後尙ホ長期ニ亙リ今日程
度ノ國費ヲ要スルコトト思フ、其ノ財政的
見地ヨリ、卽チ其ノ見透シガ付キマシタノ
デ、一日モ速ニ稅利ノ改革ヲ致シ、且ツソ
レト同時ニ增收ヲ圖ルト云フコトガ、必要デア
ルト認メラレマシタノデ、本案ヲ提出致シ
タ譯デアリマス、而シテ只今ノ所デハ、
支那事變ニ對應スルト云フ見地ヨリ立案致
シテ居リマスガ、一面ニ於テ所謂稅制ニ彈
力性ヲ附シテ置イテ、一朝測ラザル事變ガ
起リマシタ時ニハ、更ニ增收ヲ圖ル必要ガ
起ツテ來ルト考ヘマスガ、現在ノ所デハ、
此ノ支那事變、卽チ東亞ノ新秩序建設ト云
フ所ニ目標ヲ置イテ、本案ヲ定メタ譯デア
リマス、斯樣ニ答ヘテ居リマス、此ノ點ニ
關シテハ、可ナリ多數ノ委員諸君ヨリ、同
ジ趣旨ノ質問ガ發セラレマシタガ、藏相ノ
答ハ、要スルニ國際情勢ニ大ナル變化ノ起
ラザル限リ、今年協賛ヲ願フ百億前後ノ歲
出ハ、當分ノ內繼續スルモノト思フ、而モ
一方ニ相當ノ自然增收モ、年々期待シ得ルト
信ズルガ故、國際情勢等ニ著シキ變化ナキ
限リ、再ビ增稅ヲ爲スコトナクシテ賄ツテ
行ケル見込デアル、又其ノ具體的ナ財政計
晝ニ付テハ、尙ホ今後十分考究スル旨ヲ答
ヘテ居リマス、尙ホ此ノ點ニ付テハ藏相ノ
答辯ヲ以テ足レリトセバ、陸海軍兩大臣ニ
對シマシテモ、時局及ビ軍事費ニ對スル見
透シニ付、答辯ヲ求メマシタル所、大體ニ
於テ大藏大臣ト同ジ見解ノヤウニ申述ベラ
レタノデアリマス
第二ニハ、政府ガ平年度ニ於テ五億一千万
圓ノ增收ヲ期スルコトト致シマシタ數字上
ノ根據ハ、何處ニアルカト云フ質問デアリ
マス、之ニ對シテハ明確ナル答辯ノ得ラレ
ナカツタコトヲ遺憾ト致シマス、卽チ大藏
大臣ハ-以下速記其ノ儘デアリマス、「平
年度五億ト云フ目標ヲ置キマシタノハ、現
在ノ財政狀態カラ見マシテ、大體財政狀態
竝ニ經濟界ノ實情カラ見マシテ、此ノ程度
ノ增稅ナレバ、所謂經濟界ニ大ナル變動ヲ
與ヘズ、又國家ノ財政上ニ對シマシテ、先
ヅ此ノ分ナラバ適當デアラウト云フ見地カ
ラ、五億圓程度ニ納マルヤウナ本稅制ヲ定
メタヤウナ譯デアリマシテ、大體ニ於キマ
シテ現在ノ經濟狀態ニ大ナル打擊ヲ與ヘナ
イト云フコトヲ目標トシテ定メタヤウナ譯
デアリマス」ト述ベテ居ラルルノデアリマ
ス、又藏相ハ「出來得ルダケ國費ハ稅ニ依賴
スルコトト致シ、其ノ足ラザル部分ヲ公債
ニ仰グハ、健全ナルヤリ方ト思ハレマスガ、
其ノ稅ト雖モ、一面經濟界ノ發展ヲ阻碍スル
程度マデ取立テテハ宜シカラズト思ヒマス、
而シテ今日我ガ經濟界ノ情勢ヨリスレバ、
五億圓程度ノ增稅ハサシタル苦痛デナク、
之ニ耐ヘ得ルモノト信ジマス」斯樣ニ答ヘ
テ居リマス、唯是ダケデハ餘リニ抽象的デ
アツテ、確タル數字上ノ根據ガナイヤウニ
感ゼラレタノデアリマス、詰リ何故モツト
取ツテハイケナイカ、何故其ノ中ヨリ一
割ナリ一割五分ヲ減ジテハ惡イカ、五億ナ
ケレバ財政計畫ガ立テラレヌカト云フヤ
ウナ點ハ、一向明ニナツテ居ナイノデアリ
マス
第三ニハ、今囘ノ增稅ハ國民ノ負擔力ニ應
ジタル、卽チ國民所得ノ增加ニ對應シタル
增稅デアルカト云フ點デアリマス、今囘ノ
增稅ヲ含メテ昭和十五年度ノ稅及ビ印紙收
入ノ豫算ハ實ニ三十三億圓ニ達スルガ、昭
和十一年度ノ十一億圓ニ比スレバ、實ニ三
倍ニ達シテ居ル、僅々五年間ニ三倍ノ激增
デアルガ、是ハ國民ノ實力ニ應ジタ增徵
デアルカ如何、抑〓政府ハ今日ノ我ガ國民所
得ヲ何程ニ見テ居ルカト云フ質疑ガ起ツ
タノデアリマス、之ニ對シテ政府ハ、今
囘ノ增稅ハ各方面ニ對シ容易ナラヌ負擔デ
アルトハ思フガ、此ノ非常時ニ際シテハ國
民ニ忍ンデ貰ヒ得ルコトト思フ、而シテ
國民所得ニ關シテハ、大藏當局ハ「每年第三
種所得稅ノ增加ノ割合ヲ以テ推算致シテ居
ルノデアリマス」之ニ依ルト、昭和十一年
ニハ第三種所得二十七億デアツタモノガ、
十四年ニハ略〓五十億ニナツテ居リマス、隨
テ國民所得モ是ト同ジ割合ニ殖エテ居ルト
スレバ、自ラ其ノ程度ガ推算出來ル、卽チ
大略デハアルガ、現在國民所得ハ二百五十
五億位ト見テ差支ナイ、其ノ現在ノ國民所
得ニ對スル割合ハ一五%、改正後ニハ一七%
ニナルト云フ說明ガアリマシタ、然ルニ斯
ノ如ク第三種所得稅ヨリ逆算シタノデハ、
政府ガ苛歛誅求ヲスレバスル程、富國ハ增加
スルコトニナル道理デアツテ、ソレデ國富
ノ增加ヲ圖ルノハ如何ノモノカ、故ニ內閣
統計局ニハ別ニ國富ノ統計ガアル筈ダカ
ラ、之ヲ聞クコトニ致シマシタ、然ルニ統
計局デハ昭和十年ノ統計マデハアルガ、其
ノ後ノ分ハ出來テナイト云フコトデアツ
ク、而シテ昭和五年ノ國富ハ百六億、十年
ハ百十五億圓ト云フ數字デアリマス、ソレ
ガ十四年マデニ二百五十五億ニ達スルニ
ハ、餘程急激ナ增加ガ其ノ間ニナケレバナ
ラヌ譯デアリマスルガ、由來內閣統計局ノ
調査ハ内輪ニ見過ギル傾キガアルサウデア
リマス、又此一兩年間ノ我ガ產業ノ發達及
ビ物價騰貴モ非常ナモノデアリマスルカラ、
此ノ間ニ百十億圓ヲ增加シテ二百五十五億
ニナツテ居ルト云フ推算モ、强チ無理デモ
ナイヤウデ、要スルニ其ノ當不當ハ人々ノ
判斷ニ任ス外ハナイト云フ次第デアリマス、
唯問題トナルモノハ、負擔ガ過重カ否カト
云フ點デアツテ、此ノ改正案ガ良ク出來テ
居ルカ否カニ依ツテ、國民ハ如何樣ニモ感
ズルデアラウト思フノデアリマス、換言ス
レバ、餘リ擔稅力ノナイト思ハルル方面ニ
無理ヲ强ユルト、不平ハ自ラ起リ勝チニナ
ルノデアリマス、時局柄何人モ犠牲ヲ避ケ
ントスルモノデハナイ、併シナガラ一定ノ
限度ヲ越エテ之ヲ强ユルト云フコトハ、決
シテ國民的協力ヲ期待シ得ル所以デナイト
思フト云フノガ議論ノ焦點デアリマス
第四ニハ、物價問題ニ付キテモ多數諸君
ヨリ熱心ナル質疑ガアリマシタ、卽チ今囘
ノ直接稅及ビ間接稅ノ增徵ハ、共ニ物價ヲ
騰貴セシムルニ相違ナイガ、政府ノ所謂低
物價政策ト矛盾スルニ非ズヤ、殊ニ消費稅
ハ其ノ名ノ如ク消費者ニ轉嫁セラルルモノ
デアルガ、ソレダケ現在ノ公定物價ヲ引上
グルコトヲ許スヤ、現政府ハ適正物價ヲ目
標トシテ居ルト言フガ、ソレハ一體ドウ云
フ物價ヲ指スノデアルカ、九·一八ノ物價
ヲ適正ニスルト云フコトハ、結局一ツ
之ヲ引上ゲテ、遂ニハ所謂闇相場ト同ジモ
ノニスルノデハナイカト云フヤウナ質疑ガ
アリマシタ、之ニ對シ政府ハ、消費稅ハ原
則トシテ消費者ニ轉嫁スルモノデハアル
ガ、必ズシモ其全部ガ消費者ノ負擔ニナル
トハ限ツテ居ナイ、生產者ニ於テモ其ノ全
部或ハ一部ヲ負擔シ得ルコトモアルノデア
ルカラ、政府ハ物ニ依リテハ稅額ダケ公定
物價ヲ引上グルコトヲ許サザル場合モアル
旨ヲ答ヘテ居リマス、又適正物價ノ意義ハ、
從來ノ如ク自由經濟ノ法則ノ儘ニ放任スレ
バ、闇相場ガ本當ノ物價トナルカモ知レナ
イ、ソレデハイケナイカラ、之ニ政治的必
要ト、社會的正義觀等トヲ加味シテ、以テ
出來ルダケ低廉ニ物價ヲ維持シタイト思フ
旨ノ答辯ガアリマシタ
第五、政府ハ國民生活ノ最小限度ヲ確保
スル旨ヲ聲明シテ居ルガ、其ノ國民生活ノ最
小限度ヲドノ邊ニ見テ居ルカト云フ問題デ
アリマス、今囘ノ稅制改正案ニハ基礎控除
ト云フモノヲ設ケテ居ルガ、之ヲ最小限度
ト見テ宜イカ、而シテ所得稅ノ本質ヨリス
レバ、此ノ國民ノ生活最小限度ヲ課稅外ニ
置クノガ從來ノヤリ方デアツタガ、今囘ハ
勤勞所得ノ場合ノ六百圓ト云フノガ、ソレ
ヲ意味スルノカ、將又事業所得ノ四百圓ガ
ソレカ、マサカ不動產所得ノ場合ノ百圓ガ、
ソレト云フ譯デハアルマイト云フヤウナ質
疑ガ發セラレマシタガ、餘リ確タル答ヲ與
へ得ナカツタノデアリマス、唯政府ハ免稅
點或ハ基礎控除ト云フノハ、下級所得者ニ
對スルソレ〓〓ノ負擔ノ緩和ナリト言フニ
止ツタノデアリマス
次ニハ今囘ノ增稅案ハ、高額所得者ニ對
スル增稅ノ割合ガ比較的僅デアツテ、小額
所得者ニ對スル增稅ノ割合ガ非常ニ多イ、
二千圓程度ノ不動產所得者ノ如キ、實ニ現
在ノ四倍以上ニモナル場合モアル、上ニ至
レバ至ル程增加率ガ少イト云フノハ甚ダ不
當デアル、何故斯ル改正ヲ敢テシタカト云
フ問デアリマス、之ニ對シテ政府ハ、今日
マデ我ガ所得稅法ハ下ニ輕ク、上ニ至ルニ
從ツテ加重セラレテ居タ、而モ高額所得者
ノ比較的少イ我國デハ、此ノ上ノ增收ヲ得ル
爲ニハ、ドウシテモ國民稅ノ觀念ニ基キ、
多數ノ中小ノ所得者ニモ新ニ課稅スルカ、
又ハ之ヲ增徵スルノ已ムヲ得ザル次第デア
ル、但シ是等小額所得者ニ對シテハ、種々
負擔緩和ノ方法ヲ講ジテ居ル旨ノ答辯ガア
リマシタ、又負擔ノ衡平ヲ圖ルハ、今囘ノ
改正案ノ目標中尤モ肝要トスル所ナルニ拘
ラズ、各分類所得者間ノ不均衡甚シク、之
ヲ是正スルニ非ザレバ、改正ノ意義ヲ沒却
スルデハナイカト云フヤウナ議論モ鬪ハセ
ラレマシタ
次ニ綜合所得稅ニ付キマシテ、最モ問題
トナツタ事項ハ、配當所得ニ對スル負債利
子控除ノ問題デアリマス、株式取得ニ要
シタル負債利子ナリヤ否ヤヲ判定スルコト
ハ、極メテ困難ナコトデアリ、稅法デハ控
除スルコトニナツテ居テモ、實際上稅務署
ノ役人ハ、種々口實ヲ構ヘテ控除シナイノ
デハナイカト云ツタ趣旨ノ質問ガ、繰返シ
行ハレタノニ對シ、政府當局ハ、現行法ノ
ヤウニ負債利子ヲ控除セズシテ、漫然一律
ニ二割控除ヲ爲スト云フコトハ、眞ニ負擔
力ニ應ジタ課稅ト云フコトガ出來ヌ、而シ
テ負債利子ノ控除ハ困難ナリト言フモ、政
府トシテハ今後ハ稅務署員ヲ良ク指導シテ、
實情ニ卽シテ間違ヒナク控除セシムル考デ
アルト云フ答辯デアリマシタ、尙ホ之ニ關
聯シテ負債利子ハ原因ノ如何ヲ問ハズ、總
テ之ヲ控除シテ課稅スルコトハ理論上當然
デアルガ、一體ドウシテ出來ナイノデアル
カ、サウデナケレバ眞ノ負擔力ニ應ジタ課
稅トハナラナイノデハナイト云フ質問ガア
リマシタガ、之ニ對シ政府ハ、ソレハ十分
首肯スベキ議論ト思ハレルシ、又將來
サウ云フ方向ニ向ツテ進ムベキモノト
思フガ、唯其ノ前提トシテ、一面ニ於
テ資產ノ賣却益等ノ一時所得、自家用
住宅ノ見積所得等ニモ課稅スル機構ヲ
採用スル必要ガアルノデアル、而シテ之ニ
關シテハ種々ノ難問ガアツテ、今囘ハ之ヲ
立法化シ得ルマデニ至ラナカツタ、隨テ全
般的ニ負債ノ利子ヲ控除スルト云フ制度ハ
採用シ得ナカツタ次第デアル、併シナガラ
株式取得ノ爲ノ負債利子ノ控除ハ、其ノ方
向ニ一步ヲ進メタモノト認ムルノデアツテ、
是ニテ所得ヲ得ルニ要シタ負債ノ利子ハ、
大體全部控除スルト云フ建前ニナツタ次第
デアルト云フ政府ノ說明デアリマシタ
次ニ個人所得稅ニ於テモ法人所得稅ニ於
ケルト同ジク、寄附金ヲ控除シテ課稅スベ
キデハナイカト云フ質問ガアリマシタノニ
對シ、政府ハ寄附金ハ所得ノ處分ト見ルベ
キモノデアルカラ、個人所得稅ニ於テ之ヲ
控除スベキ理由ハ薄弱デアル、法人ト個人
トハ所得ノ計算方法ヲ異ニシ、個人ニ於テ
ハ資產ノ增減等ヲモ見テ居ナイカラ、寄附
金ヲ控除スルコトハ弊害ガアル、寄附金ハ
先ヅ所得稅ヲ納メタ後支出スベキモノト思
フト云フ答辯デアリマシタ
次ニ法人課稅デ最モ問題トナツタ點ハ、
所得ノ計算上稅金ノ控除ヲ廢メタ點デアリ
やく、委員諸君カラハ法人所得ノ計算上稅
金ヲ損金トシテ控除スルコトハ多年ノ慣行
デアツテ、其ノ性質上亦之ヲ適當ト認メラ
レルノデアルガ、此ノ際特ニ此ノ計算方法
ヲ變ヘテ增稅ヲ圖ラントスルノハ、一番搾り
ウ云フ趣旨ニ出ヅルモノデアルカ、增稅セ
ネバナラナイノナラバ、稅率ヲ引上ゲタナ
ラバ宜イデハナイカト云ツタヤウナ點ニ付、
是亦最モ熱心ニ質問ガ繰返サレタノデアリ
マス、之ニ對シ政府ハ、現行法ノヤウナ所
得ノ計算方法ハ、所得稅ヤ臨時利得稅ノ課
稅ノ性質上適當デナイ、殊ニ稅負擔ガ今日
ノヤウニ重クナツタ場合ニ於テ、斯ウ云フ
計算方法ヲ採ツテ居タノデハ、前期マデノ
稅金ヲ損金トシテ控除スル爲ニ利益ニ著シ
キ波動ヲ生ジ、法人負擔ノ適正明確ヲ缺ク
コトニナリ、而モ現行法ノ儘デ税率ノ引上
ヲ行フコトトスレバ、稅率ヲ實質以上ニ高
カラシメ、表面上如何ニモ高イ稅率トナラ
ザルヲ得ズ、企業心ニ及ボス影響等モ面白
クナイト思ハレルノデアツテ、法人所得ノ
計算方法ハ此ノ際是非トモ之ヲ改メル必要
ガアルト信ズルト云フ答辯デアリマシタ、
又此點ニ關聯シテ、多年ノ慣行ヲ打破シテ
斯ル改正ヲ行フ場合ニハ、少クトモ初年度
ハ重複課稅ノ嫌ガアルカラ、經過規定ヲ設
クルノ必要ナキヤト云フ質疑モアリマシタ
次ニ特別法人ニ課稅スルハ本質上宜シク
ナイデハナイカ、又源泉ト綜合ノ選擇ヲ許
シテ、二万圓以上ノ所得アル預金者ニ對シ、
千万圓以上ノ增稅ヲ緩和シタノハ不當ニア
ラズヤ、又小額保險ノ掛金ニ對シ控除セザ
ルコトト爲シタノハ不當ニアラズヤ、昨年
議會ニ於テ否決セラレタル物品稅ヲ、今回
又復課稅スルコトトシタノハ、議會ヲ蔑視
シタルモノニアラズヤ、濫リニ相續稅ヲ增
徵スルハ、家族制度ヲ以テ本質トスル我ガ
國體ノ基礎ヲ動搖セシムル危險ナキヤ、物
納ヲ許ス意思ナキヤ等々ノ質疑ガ發セラレ
マンド
又地方稅ニ關スル問題トシテハ是亦多種
多樣ニ亙リマシタガ、分與稅ガ地方稅ノ重
要部分ヲ占ムルガ爲、地方自治ノ精神ニ背
反スル結果ヲ齎サズヤ、今囘ノ改正案ハ餘
リニ中央集權的ニアラズヤ、此ノ案ノ如ク
ナレバ地方財政ノ彈力性ハ滅殺サルルニア
ラズヤ、戶數割ハ必ズシモ惡稅ト言フベカラ
ズ、之ヲ存置スルフ方法ナキヤ、之ヲ廢シ
タルガ爲町村民ノ負擔ニ激變ヲ起サシメザ
ルヤ、市町村民稅ハ必ズシモ千圓ヲ限度ト
スル必要ナキニアラズヤ、天災等ノ場合ニ
地方町村ハ非常ノ窮苦ヲ感ズベシ、其ノ救
濟ノ途如何等ノ質疑ガアリマシタ、又所謂
三部制廢止ニ當リ、摩擦ヲ防グ爲ノ善後處
置ノ問題ニ關シテハ、種々ノ質問ガアリマ
シタガ、之ニ對シテハ內務大臣及ビ當局ヨ
リ、神戶市及ビ名古屋市ハ其ノ市債ヲ縣ガ
引受ケルトカ、或ハ市ノ其ノ負債ヲ縣ガ補
給スルトカ、或ハ市ノ事業ニ對シテ縣ガ補
助ヲ與ヘルトカ、市ノ事業ノ一部ヲ縣ガ引
取ツテ施行スルトカ、或ハ新ニ縣ノ負擔デ
市ノ事業ヲ起ストカ、或ハ地域ノ擴張ニ協
力スル是等ノ事項ヲ行フニ當リ、圓滿ニ
之ヲ處理スル爲、·知事ヲ中心トシテ委員會
ヲ設ケル等ノ方法ニ依ツテ最善ヲ盡シタイ
ト云フ答辯ガアツタノデアリマス
以上申述ベタヤウナ多數ノ質疑ニ對シ、
政府側ヨリハ總理ヲ初メ、大藏、內務兩相
ハ言フニ及バズ、陸海軍、商工、農林、厚
生文部ノ各大臣及ビ各省政府委員ヨリ、
ソレノ答辯ガアリマシタ、其ノ要旨ハ〓
ネ政府提案ヲ支持スルモノデアリ、或ハ强
ヒテ之ヲ辯護セザルマデモ、今日ノ場合誠
ニ已ムヲ得ズトシテ、偏ヘニ國民各方面ノ
御諒解ヲ望ム次第ナリトノ趣旨ヲ述べラレ
タノデアリマス、而シテ是等ノ答辯中ニハ十
分質疑者ヲ首肯セシメタルモノモアリ、或
ハ毫モ首肯セシメザリシモノモアツタノデ
アリマス、殊ニ今囘ノ增稅案ハ國民ヨリ全
然遊離シテ居ツタ前內閣ノ作製ニ係リ、現
內閣ハ組閣勾々急遽之ヲ引繼イデ居ルダケ
デアリマスカラ、大藏、內務兩大臣サヘ十
分ニ之ヲ檢討スルノ暇ノ無カツタコトハ申
スマデモアリマセヌ、卽チ總理初メ內閣諸
公ハ、此劃期的大增稅ノ內容ニ付テハ、〓ネ
無理解デアツタコトハ爭ハレマセヌ、而モ
此ノ改正ノ結果、現在百八十万人ニ過ギザ
ル所得納稅者ガ、一躍三百八十万人ヲ超ユ
ルコトトナリ、就中新規ニ增加スル納稅者
ノ大多數ハ、所謂小額所得者デアツテ、粒
粒辛苦ノ結晶ヲ非常時局ニ於テ國家ノ爲之
ヲ割カントスルノデアリマスカラ、此ノ際
ノ政府ノ態度トシテハ、須ラク用意周到、
深ク國民ノ苦痛ヲ察知シテ、愼重事ヲ斷ジ
タト云フ其ノ態度ガ欲シカツタノデアリマ
ス、然ルニ政府ハ今言フガ如ク漫然之ヲ採
上ゲタ形デアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小田君ニ注意致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=18
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019・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君(續) 故ニ國民ノ代表者ト
シテハ、殊更愼重ニ檢討シ、審議シテ、其
ノ缺陷ヲ是正シ、以テ巷間ニ苟モ怨嗟ノ聲
無カラシメ、何人モ喜ンデ時局ニ協力シ得
ルヤウ致サネバナラナカツタ次第デアリマ
ス
斯クテ委員會ハ昨十六日午後十時再ビ會
議ヲ開キ、討論ニ入リマシタ、先ヅ民政黨
ノ木村淺七君ヨリ、立憲民政黨及ビ立憲政
友會ノ共同修正案及ビ附帶決議ノ提出ト其
ノ說明トガアリ、次ニ立憲政友會ヨリ森肇
君、田中好君ノ贊成意見ノ陳述アリ、續イ
テ社會大衆黨、時局同志會、第一議員倶樂
部三派ヲ代表シテ佐竹晴記君ヨリ共同修正
及ビ一部否決ノ提案ガアリ、尙ホ社會大衆
黨獨自ノ修正案ヲモ說明サレ、次イデ道家
齊一郞君ハ時局同志會ヲ代表シテ意見ヲ述
ベラレ、北勝太郞君ハ第一議員倶樂部ヲ代
表シテ獨自ノ修正意見ヲ述ベラレマシタ、
而シテソレ等ノ修正案ハ御手元ニ配付サレ
テアリマスカラ、ドウゾソレニ依ツテ御覽
ヲ願ヒマス、尙ホ木村君提出ノ附帶決議ハ
審査請求其ノ他不服ノ申立アリタル時ハ口
頭審問制度ヲ採用シ且ツ速ニ裁決スベシ
ト云フノデアリマス、而シテ採決ノ結果ハ
立憲民政黨及ビ立憲政友會ノ共同修正案ハ
大多數ヲ以テ可決セラレマシタ、右委員會
ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマス(拍手)
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小田君ノ發言ヲ禁止
致シマス-四十五案中所得稅法改正法律
案、營業稅法案、物品稅法案、遊興飮食稅
法案、入場稅法案、地方稅法案ニ對シテハ
松永義雄君外二名ヨリ成規ニ依リ各、修正
案ガ提出セラレ、又法人稅法案、通行稅法
案地方稅法案ニ對シテハ、佐竹晴記君ヨ
リ成規ニ依リ各〓修正案ガ提出セラレ、又所
得稅法改正法律案ニ對シテハ藤本捨助君外
一名及ビ川崎克君外三名ヨリ成規ニ依リ修
正案ガ提出セラレマシタ、仍テ四十五案ニ
對スル討論ハ、便宜上第二讀會ニ於テ之ヲ
爲スコトト致シマス、四十五案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=20
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021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ四十五案ノ第二讀會ヲ開クニ決シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=21
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022・服部崎市
○服部崎市君 直チニ四十五案ノ第二讀會
ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=22
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023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=23
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024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ四十五案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス、所得稅法改正
法律案外七案ニ對スル修正案ノ趣旨辯明ハ、
提出者ヨリソレ〓〓省略ノ申出ガアリマシ
タ、是ヨリ討論ニ入リマス、通〓順ニ依ツ
テ發言ヲ許シマス-松永義雄君
所得稅法改正法律案第二讀會
法人稅法案第二讀會
特別法人稅法案第二讀會
配當利子特別稅法案第二讀會
外貨債特別稅法中改正法律案第二讀會
相續稅法中改正法律案第二讀會
建築稅法案第二讀會
鑛區稅法案第二讀會
臨時利得稅法中改正法律案第二讀會
營業稅法案第二讀會
地租法中改正法律案第二讀會
酒稅法案第二讀會
〓涼飮料稅法中改正法律案第二讀會
砂糖消費稅法中改正法律案第二讀會
織物消費稅法中改正法律案第二讀會
揮發油稅法中改正法律案第二讀會
物品稅法案第二讀會
遊興飮食稅法案第二讀會
取引所稅法中改正法律案第二讀會
通行稅法案第二讀會
入場稅法案第二讀會
印紙稅法中改正法律案第二讀會
骨牌稅法中改正法律案第二讀會
狩獵法中改正法律案第二讀會
明治四十四年法律第四十五號中改正法
律案(砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收
ニ關スル件)第二讀會
大正九年法律第五十一號中改正法律案
(內地臺灣又ハ樺太ヨリ朝鮮ニ移出ス
ル物品ノ內國稅免除ニ關スル件)
第二讀會
支那事變特別稅法及臨時租稅增徵法廢
止法律案第二讀會
營業收益稅法廢止法律案第二讀會
資本利子稅法廢止法律案第二讀會
法人資本稅法廢止法律案第二讀會
臨時租稅措置法中改正法律案第二讀會
地方稅法案第二讀會
地方分與稅法案第二讀會
府縣制中改正法律案第二讀會
市制中改正法律案第二讀會
町村制中改正法律案第二讀會
北海道會法中改正法律案第二讀會
北海道地方費法中改正法律案第二讀會
地方分與稅分與金特別會計法案
第二讀會
家屋稅法案第二讀會
所得稅法人稅內外地關涉法案第二讀會
昭和十二年法律第九十四號中改正法律
案(支那事變ノ爲從軍シタル軍人及軍
屬ニ對スル租稅ノ減免、徴收猶豫等ニ
關スル件)第二讀會
大正十三年法律第六號中改正法律案
(外國船舶ノ所得稅等免除ニ關スル件)
第二讀會
アルコール製造事業等ニ對スル所得稅
等ノ免除規定ノ改正ニ關スル法律案
第二讀會
租稅法規ノ改正ニ伴フ恩給金庫法等ノ
規定ノ整理ニ關スル法律案第二讀會
所得稅法改正法律案(政府提出)ニ對ス
ル修正案(川崎克君外二一名提出)
所得稅法改正法律案中左ノ通修正ス
第十二條第一項第八號及第九號中「五千
圓」ヲ「一萬圓」ニ改ム
所得稅法改正法律案(政府提出)ニ對ス
ル修正案(松永義雄君外二名提出)
所得稅法改正法律案中左ノ通修正ス
第十四條第一項中「百圓」ヲ「二百圓」ニ改
ム
第十六條第一項中「六百圓」ヲ「八百圓」ニ
改ム
第十七條第一項第一號中「四百圓」ヲ「六
百圓」ニ、同第二號中「六百圓」ヲ「八百圓」
ニ、同條第二項但書中「六百圓」ヲ「八百
圓」ニ、「四百圓」ヲ「六百圓」ニ改ム
第十八條第一項但書中「六百圓」ヲ「八百
圓」ニ、同第一號中「四百圓」ヲ「六百圓」
ニ、同第二號中「六百圓」ヲ「八百圓」ニ改
ム
第二十一條第三項中「千圓以下」ヲ「千五
百圓以下」ニ改ム
第二十六條ノ二自己若ハ同居家族又ハ
其ノ相續人ヲ保險金受取人トスル生命
保險契約ノ爲ニ前年中ニ拂込ミタル保
險料(徵兵保險料ヲ含ム)二百圓ヲ限リ
其ノ拂込ミタル保險料ニ該當スル所得
ニ對スル稅率ヲ乘ジテ算出シタル金額
ヲ契約者ノ所得ニ對スル分類所得稅額
ヨリ控除ス
前項ノ控除ノ方法ハ扶養家族ノ控除方
法ニ依ル
第三十一條ノ二第三十條ノ規定ニ依リ
算出シタル總所得金額ヨリ必要經費ト
シテ控除セラレザル負債ノ利子ヲ控除
ス
第百六條ヲ削リ第百七條ヲ第百六條トシ
以下順次繰上ク
所得稅法改正法律案(政府提出)ニ對ス
ル修正案(藤本捨助君外一名提出)
所得稅法改正法律案中左ノ通修正ス
第十一條第一項第五號中「元本三千圓ヲ
超エザル」ヲ削ル
法人稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(佐竹晴記君提出)
法人稅法案中左ノ通修正ス
第十六條第一項第一號中「百分ノ十八」ヲ
「百分ノ二十」ニ改ム
營業稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(松永義雄君外二名提出)
營業稅法案中左ノ通修正ス
第十一條第三號ヲ左ノ如ク改ム
三新聞紙法ニ依ル新聞紙ノ出版
物品稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(松永義雄君外二名提出)
物品稅法案中左ノ通修正ス
第一條第一項第二種乙類中第二十二號及
第二十三號ヲ左ノ如ク改ム
二十二シャンプー及洗粉
二十三珈琲及其ノ代用物竝ニココア
第六條中「化粧石鹼、」及「、齒磨」ヲ削ル
遊興飮食稅法案(政府提出)ニ對スル修
正案(松永義雄君外二名提出)
遊興飮食稅法案中左ノ通修正ス
第三條第一項中「一人一囘三圓」ノ下ニ
「(但シ命令ヲ以テ定ムル料理店ニ付テハ
二圓)」ヲ加ヘ同第三號ヲ削ル
通行稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(佐竹晴記君提出)
通行稅法案中左ノ通修正ス
第二條一項乘車船區間八千粁以下ナルト
キ中「三等二錢」ヲ「三等(但シ乘車船區
間五十キロ未滿ヲ除ク)二錢」ニ改ム
入場稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(松永義雄君外二名提出)
入場稅法案中左ノ通修正ス
第三條第一項「第二種ノ場所」ノ下「入場
料百分ノ二十」ヲ削リ「撞球場入場料
ノ百分ノ十」及「其ノ他入場料ノ百分
ノ二十」ヲ加フ
第四條中「十九錢」ヲ「二十三錢」ニ改ム
地方稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(松永義雄君外二名提出)
地方稅法案中左ノ通修正ス
第六十三條第一項中「自轉車稅」及「荷車
稅」ヲ削ル
第六十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
市町村民稅ノ納稅義務者一人ニ對スル
賦課額ハ左ノ金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十萬以上ノ市二千圓
其ノ他ノ市千五百圓
町村千圓
地方稅法案(政府提出)ニ對スル修正案
(佐竹晴記君提出)
地方稅法案中左ノ通修正ス
第四十八條第一項中「自動車稅」ノ下ニ
「(但シ人口七十萬以上ノ市ニ定置所ヲ有
スル自動車ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ)」ヲ
加フ
第六十三條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ
第四項中「前項」ヲ「前二項」ニ改ム
人口七十萬以上ノ市ニ在リテハ第一項
ニ揭グル獨立稅ノ外自動車稅ヲ課スル
コトヲ得
〔松永義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=24
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025・松永義雄
○松永義雄君 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シ
マシテ、委員長報告ノ一部ニ反對シ、且ツ
旣ニ御手許ニ配付シテアリマス社會大衆黨、
時局同志會、及ビ第一議員倶樂部ヨリ共同
提出致シマシタ修正案及ビ我黨獨自ノ見解
ニ基イテ提出致シマシタ修正案ニ贊成スル
者デアリマス、玆ニ其ノ理由ヲ申上ゲタイ
ト存ジマス
惟フニ戰時經濟ノ特徵ハ、勞働力ヲ有ス
ル者ハ勞力、物ヲ持テル者ハ物ヲ國家ニ提
供スルコトガ、常態デアルコトハ申スマデ
モナイノデアリマス、而シテ稅制改革案ノ
根本方針ニ於キマシテモ、同樣此ノ精神ヲ
織込ンデ行カナケレバナラナイト信ズルノ
デアリマス
第一ニ政府ハ本案ノ說明ヲ爲スニ當リマ
シテ、先ヅ四大原則ヲ明ニシ、特ニ負擔均
衡ヲ力說シテ、地域的且ツ所得階級間ノ負
擔均衡ヲ强調サレタノデアリマス、併シナ
ガラ具サニ本案ヲ通觀致シマスト、遺憾ナ
ガラ其ノ精神ガ一貫サレテ居ルヤ否ヤヲ疑
ハザルヲ得ナイノデアリマス、先ヅ公債ノ
利息及ビ定期預金利息等ノ所謂不勞所得ニ
對シテハ、源泉課稅ト綜合課稅ノ選擇權ヲ
許容シテ居ル、而シテ其ノ結果約一千數百
万圓ノ收入輕減ヲ敢テシテ居ルノデアリマ
シテ、負擔均衡ノ原則ヲ無視シテ居ルバカ
リデナク、稅制體系ノ根本ニ於テ誤リヲ犯
シテ居ルト申サナケレバナラヌノデアル
(拍手)而モ此ノ誤リニ隨伴致シマシテ見逃
シ難イ事實ハ、旣ニ皆樣御案内ノ如クニ、
株式會社ニ在リテハ株主及ビ配當金額ト云
フモノハ、其ノ都度稅務署ニ報告サレテ居
ルニ拘ラズ、銀行ニ在リテハ取引上ノ祕密
ト稱シテ、定期預金ノ持主竝ニ金額ト云フ
モノハ、進ンデ稅務署ニ報告シテ居ラヌ、
隨テ相續ヲ致シマス際ニ於キマシテハ、斯
ウシタ定期預金ノ持主ニ對シテ相續稅脫稅
ノ機會ヲ與ヘテ居ルコトハ現實ノ常態ニナ
ツテ居ルノデアリマス(拍手)而シテ此ノ選
擇課稅ヲ認メマシタコトハ、預金者ヲ保護
シテ居ルバカリデナク、且又銀行ノ經營ニ
對シテ便宜ヲ與ヘテ居ルノデアリマシテ、
此ノ選擇課稅ガ明ニ金融資本家擁護デアル
ト云ツタ非難ヲ受ケテ居ルコトハ、正當デ
アルト言ハナケレバナラスノデアリマス
(拍手)又逆ニ勤勞所得ノ基礎控除額ヲ見マ-
スレバ、六百圓ニ限定シテ居ル、今マデハ
千圓ノ免稅點ヲ付シテ居リ、四百圓方引下
ゲルト云フ結果ニナルノデアリマシテ、獨
身者ニ致シマシテモ、今日ノ此ノ物價騰貴
ト高イ下宿料ヲ以テシテハ、到底一箇月
五十圓ノ月給デハヤリ切レヌト云フコト
ハ、私ノ說明ヲ俟タズシテ明ナル事實デア
ル、吾々ハ本案ヲ通觀致シマシテ、負擔均
衡ノ原則ヲ徹シテ居ラナイバカリデナク、
稅制體系ノ根本ニ於テ、誤リヲ犯シテ居ル
事實ヲ指摘セザルヲ得ナイノデアル
第二ニ政府ハ經濟政策ノ調節ヲ圖ツテ居
ルト言ハレルノデアリマスガ、本稅制改革
案ハ、其ノ點ニ於テ甚シク心細イ感ジヲ與
ヘテ居ルノデアル、吾々ハ今日ノ通貨膨脹
ハ必ズシモ過大ナリトハ信ジテ居リマセ
又、又財政經濟ノ前途ニ對シテ毫末ノ不安
ヲ抱イテ居ルモノデハアリマセヌ、政府ノ
正シキ方針ト、國民ノ深キ覺悟ヲ以テ行キ
マスレバ、易々トシテ此ノ難局ヲ突破シ得
ルト云フ確信ヲ私ハ持ツテ居ル、顧ミルニ
昨年ノ暮ノコトデアリマスガ、年末決濟資金
ノ放出ノ爲ニ著シク通貨ガ膨脹ヲ來シテ、
限外發行ヲ現ハシタノヲ見マシテ、之ヲ警
戒信號トシテ國民ニ〓ヘナケレバナラヌト
言ウタ人モアツタ、併シ私ハ今日ノ程度ヲ
以テスル所ノ通貨膨脹ハ、通貨收縮ニ對ス
ル增稅ノ運用宜シキヲ得ルナラバ、必ズヤ
之ヲ緩和シ得ルト私ハ信ズルノデアル、卽
チ國民ノ間ヨリ餘剩購買力ヲ引上ゲルコト
デアル、此ノ改正案ニ於キマシテモ、奢侈
品稅及ビ遊興飮食稅ノ增徵ヲ圖ツテ、サウ
シテ購買力ヲ吸牧サレテ居ルノデアリマス、
固ヨリソレハ妥當デアツテ、非議スベキ
コトデハナイノデアリマスガ、更ニ百尺竿
頭一步ヲ進メマシテ、所得ノ根本ニ進ミマ
シテ、サウシテ徵稅ヲ圖ツテ行ツタナラバ、
モツトヨリ以上ノ效果ヲ擧ゲ得ルコトハ事
實デアルノデアリマス(拍手)吾々ガ銀行利
息ノ選擇課稅ヲ削除シ、法人稅ノ稅率ヲ百
分ノ二十ニ修正シタノモ其ノ理由カラナノ
デアリマス(拍手)又最近議題ニ上ツテ居リ
マス所ノ增產奬勵金ニ驚クベキ多額ノ金ガ
支出サレテ居ルコトヲ聞イテ居リマスガ、
石炭其ノ他ノ增產ヲ圖ルニ當リマシテ、其
ノ財源ヲ公債ニ求メテ居ルコトガ必ズシモ
「インフレ」ヲ起ストハ私ハ信ジナイノデア
リマスケレドモ、假ニ此ノ奬勵金ヲヤルト
致シマシテモ、其ノ財源ヲ一流會社ノ獨占
的價格ヲ以テ利益ヲ擧ゲテ居ル所ノ人達ニ
對シテ、增稅ヲ以テ相殺シタナラバ、有無
相通ズルノデハナイカト私ハ考ヘルノデア
ル(拍手)
第三ニ政府ハ低物價政策ヲ堅持シ、國民
生活ノ安定ヲ圖ラントシテ居ル點ハ結構デ
アリマス、然ルニ增稅ハ一方ニ「デフレ」ノ作
用ヲ有スルト共ニ、他面物價騰貴ノ素因ト
ナルコトハ言フマデモナイノデアル、隨テ
稅ハ出來ルダケ轉嫁シ難イ所ノ直接稅ノ增
徵ヲ圖ルコトガ最モ適當デアツテ、所得稅
ヲ中心トシテ增稅スベキデアルト私ハ考ヘ
ル、然ルニ此ノ度砂糖消費稅ノ增徵ニ當リ
マシテ、之ヲ生產者ニ負擔セシメズ、生產
者以外ノ者ニ轉嫁スルカモ知レヌカノ如
キ、大藏大臣ノ御答辯ノアリマシタルコト
ハ、私トシテハ甚ダ遺憾ナリト言ハザルヲ
得ナイノデアル)砂糖會社ハ一々玆ニ名前
ヲ申上ゲルマデモナク、數會社ガ如何ニ多
額ノ獨占的利益ヲ獲得シテ居ルカト云フコ
トハ、私ノ說明ヲ俟タズシテ明カデアル、
砂糖ハ生活ノ必需品デアル國民生活ニ及
ボスバカリデナク、他面物價騰貴ノ誘導ト
ナツテ、低物價政策ニ矛盾スル結果ニ陷ル
虞ガアルノデアリマス、其ノ他事業所得控
除ヲ四百圓、勤勞所得控除ヲ六百圓トシタ
ル如キハ、相當國民生活ト對照シテ考ヘナ
ケレバナラヌト云フコトハ、是ハ各派一致
シタル所ノ意見デアリマシテ、其ノ引上ノ
修正案ガ出テ居ルコトハ、旣ニ配付セラレ
タル書面デ御承知ノ通リデアル
第四ニ、稅金ハ公平ニシテ地域的ノ均衡
ヲ目標トシナケレバナラヌ、此ノ事ハ旣ニ
四大原則ノ一ツニ現ハレテ居ルノデゴザイ
マスガ、今度輕減ニナツテ居リマス所ノ地
租ハ、都會ニ於キマシテハ地方ト同率デア
リマシテ、都會ノ空地ニ對シテモ同ジク二
割ノ減稅ニナツテ居ルノデアル、所ガ現在
東京ナリ、或ハ大阪ナリ、六大都市ニ於ケ
ル所ノ土地ノ暴騰ト云フモノハ、驚クベキ
モノガアリマシテ、恐ラクハ三倍四倍ノ高
サニ及ンデ居ルト私ハ承知致シテ居ル、隨
テ此ノ場合土地增價稅ヲ設ケロ、土地ノ値上
リニ對シテ稅金ヲ課ケロト云フコトガ、異
口同音ニ叫バレテ居ルノデアリマスガ、私
ハ土地增價稅ヲ設ケテ戴クコトハ、固ヨリ
希望スル所デアルケレドモ、差當ツテ斯ウ
シタ地租ノ輕減ニ依リマシテ浮ビ上ツタ地
主ニ對スル負擔ノ輕減ヲ、地代家賃ノ値下
ノ方へ向ケテ戴イテ、低物價政策ノ一助ト
シテ戴キタイト云フコトヲ私ハ希望スル者
デアル、又市町村民稅ノ、大都會ニ對シテ
ハ最高二千圓、或ハ中小都會ヲ千五百圓、
町村ニ對シテハ千圓、是ハ各派全部ノ一致
ニ依ル修正案ニナツテ居リマスガ、是亦地
域的ニ負擔均衡ヲ圖ラントスル所以デアル
ト云フコトハ、私ガ申上ゲルマデモナイ、
第五ニ、生產力擴充ト增稅ノ點ニ付テ、
應ノ批評ヲ申上ゲテ見タイト思フ、動モス
レバ稅金ヲ增シマスト、生產力擴充ニ支障
アリト非難スル者ガアルノデアル、隨テ工
場會社ノ社内保留金ノ積立金ヲ刺戟シテ、生
產力擴充ニ差向ケル爲ニハ、減稅ノ餌ヲ以テ
シナケレバナラヌト云フノガ、玆ニ現ハレマ
シタ稅制改革案ノ規定ニナツテ居ル、更ニ又
工場ノ償却年限ヲ短縮シテ、早ク其ノ元本ヲ
囘收セシメントシテ、飽クマデモ利潤本位ニ
生產ヲ增進セシメン、トシテ居ルノデゴザイ
マス、所ガ一タビ農村ニ入リマスナラバ、農會
ニ依ツテ割當テテ居リマスル所ノ農產物ノ
增產ニ對シテハ、農民ハ生產費ヲ切ツテマデ
モ供出致シテ、犠牲的精神ヲ以テ農業報國ニ
奉仕シテ居ルノデアル(拍手)然ルニ多額ノ利
益ヲ收メテ、尙ホ減收ノ誘惑ガナケレバ、生
產力擴充ノ方へ投資セザルト云フヤウナコ
トニ至ツテハ、洵ニ產業報國ノ精神ガ、果
シテ何處ニアリヤト云ソコトヲ疑ハザルヲ
得ナイノデアル(拍手)吾々ハ資本家諸君ガ
進ンデ此際此ノ減稅ヲ辭退シテ、生產力擴
充ニ向ツテ一路邁進セラレンコトヲ希望シ
テ已マナイノデアル
第六ニ、今囘政府ハ愛知縣及ビ兵庫縣ノ
三部制經濟ヲ廢止シヨウトシテ居ルノデア
リマスガ、從來廢止セラレマシタ、廣島京
都其ノ他ノ例ヲ見マスルニ、二、三箇年乃至
四箇年ノ猶豫期間ヲ與へテ居ルノデアル、
三部制ハ實施以來六十年ヲ經過シ、各地方
地方ニ各〓特殊ノ事情ガ內在シテ居リマシテ、
何等ノ猶豫期間ヲ與ヘナイデ、是ガ廢止ヲ
斷行セントスルガ如キハ、洵ニ容易ナラヌ
コトデアルト私ハ考ヘル、例ヘバ兵庫縣ノ
如キハ、郡部債ガ約七千万圓アル、然ルニ
市部債ハ一千万圓ニ過ギナイ、之ニ對スル
適當ノ整理ヲ爲サシムル餘裕ヲ與ヘナイデ、
今直チニ之ヲ廢止スレバ、郡市部ノ利害ガ
衝突シテ、恐ルベキ紛糾ヲ惹起スルデハナ
イカト、憂慮シテ居ル次第ナノデアリマス、
隨テ是ガ廢止ニ付テハ、地方自治ノ本旨ニ
依リマシテ、當該地方ヲシテ自治的ニ圓滿
ナル解決策ヲ講ゼシムル爲ニ、相當ノ猶豫
期間ヲ與フベシト云フコトハ、當然ナコト
ト思フノデアリマス、然ルニ今囘ニ限リ一
片ノ法令ニ依リマシテ、其ノ廢止ヲ卽時斷
行セラルルト云フコトハ、洵ニ官僚獨善ノ
譏ヲ免レナイモノト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、今後若シ此ノ問題ニ付キマシテ、地元
ニ不幸ナル紛爭ガ惹起シタル場合ニ於キマ
シテハ、其ノ責任ハ總テ内務當局ノ負フベ
キモノデアルト云フコトヲ、一言致シテ置
ク次第デゴザイマス
以上六點ノ希望竝ニ意見ヲ申上ゲ、冒頭
ニ申上ゲマシタ趣旨ニ依ツテ、社會大衆黨
ノ態度ヲ決シタ次第デゴザイマシテ、甚ダ
措辭不調デゴザイマシタガ、御〓聽ヲ煩ハ
シマシタコトヲ有難ク存ズル次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=25
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026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 中島彌團次君
〔中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=26
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027・中島彌團次
○中島彌團次君 私ハ立憲民政黨ヲ代表致
シマシテ委員長ノ報告ニ贊成シ、且ツ政友、
民政三派共同提出ノ修正案ニ贊意ヲ表スル
者デアリマス
第一ニ、本稅制整理案ト社會政策及ビ物
價對策ノ調和ニ付キマシテ考察シテ見タイ
ノデアリマス、我ガ國民ハ何人モ其ノ分ニ
應ジマシテ戰費ヲ負擔センケレバナリマセ
又、此ノ意義カラ致シマシテ租稅負擔ノ普
遍化ヲ必要ト致シマス、併シ此ノ普遍化ノ
ミニ囚ハレマシテ、均衡ヲ失シテハナラナ
イノデアリマス、又長期應戰及ビ長期建設
ノ爲ニハ經費ハ多々益〓辨ジマス、之ニ應ジ
マスル爲ニハ租稅制度ニ彈力性ガナクテハ
ナリマセヌ、此ノ意義ヨリ致シマシテ、本
改正案ハ直接國稅ノ體系ヲ改組シ、所得稅
ヲ分類所得稅及ビ一般所得稅ト致シ、收益
稅制度ヲ廢止シ、分類所得稅デハ、不動產所
得ハ免稅點百圓、之ヲ吾々ハ二百五十圓ニ
修正致シマシタ、甲種ノ勤勞所得六百圓、
吾々ハ之ヲ七百二十圓ニ修正致シマシタ、
事業所得四百圓、吾々ハ之ヲ五百圓ニ、修正
致シマシタ、各〓斯ノ如ク基礎控除ヲ設ケマ
シテ、非常ナル小所得者ニマデ負擔ノ範圍
ヲ擴張致シマシタコトハ、是レ戰時ト致シ
マシテハ洵ニ已ムヲ得ナイ次第デアリマス、
而モ分類所得稅ハ比例稅デアリマシテ、貧
富ヲ問ハズ、一律一體ニ源泉課稅ニ依ツテ
負擔サレルノデアリマス、隨テ是ガ不均衡
ヲ補ヒ、且ツ增收ヲ圖ル爲ニハ、一般所得
稅ニ於キマシテハ五千圓以上ノ所得者ニ
對シマシテ、累進稅率ニ依ル綜合課稅主義
ヲ執ラレテ居リマスルガ、此ノ制度ハ大體
ニ於キマシテ、英吉利ノ「ノルマルタッ
キス」及ビ「サータッキス」ノ制度ノ例ニ
傚ツタモノデアリマシテ、增稅ヲ必要トス
ル時ニハ、先ヅ分類所得稅率ヲ引上ゲテ
所要ノ收入ヲ得、綜合所得稅ノ改正ノ如
ク、殆ド所得稅全般ニ亙ル編ミ直シヲ行フ
煩累ヲ避ケルコトヲ得ルフデアリマシテ、
是卽チ極メテ彈力性ガアル所以デアリマス、
然ルニ我國ノ如キ富ノ程度ノ低イ國ニ於キ
マシテ、前ニ述ベマシタ如ク、小所得者ニ
マデ課稅スルコトハ、果シテ適當ナル政策
デアリマスルヤ否ヤ、本案ハ今日ノ如ク物
價ガ騰貴シナイ前ニ立案サレマシタモノデ
アリマシテ、之ヲ其ノ儘此ノ議會ニ提案サ
レテ居リマス、本案提案後ニ於テ物價騰貴ハ
甚シキモノガアリマス、本改正案ノ實藏ニ
當リマシテ、一方ニ於キマシテハ低物價
政策ノ徹底ヲ必要ト致シマス、サウデナ
ケレバ新ニ分類所得稅ヲ課セラルル三百
万-政府ハ三百万ト言ウテ居リマスルガ、
生產ノ擴充ニ伴ヒマシテ、恐ラク五百万ヲ
突破スルデアリマセウ、是等ノ人々ハ此ノ
重壓ニ苦シミマス、藤原商工大臣ハ、低物
價政策ヲ執ルト共ニ、肥料、米、石炭、木
炭「マッチ」等ハ其ノ價格ヲ引上ゲズ、是
ガ增產ニ付テハ奬勵金ノ制度、補償金ノ制
度等ニ依リ、其ノ他ノ商品ハ適正價格ヲ決
定シ、今日ノ如キ物價騰貴ニ苦シム所ノ國
民生活ノ壓迫ヲ除ク決心ガアル旨明言サレ
マシタガ、現下ノ情勢ハ商相ノ言明ニ反シ、
物價ノ騰貴ハ沼々タル勢ヲ以テ行ハレテ居
リマス、前記各所得ノ免稅點ノ引上ハ、基
礎控除ハ修正サレマシテ、原案ヨリ稍〓改〓
善サレマシタケレドモ、政府ハ本案實施ニ
當リマシテ、眞劍ニ低物價政策ヲ徹底シ、
本案ノ重壓ノ緩和ニ最大ノ努力ヲ拂ハンケ
レバナリマセヌ(拍手)加之我國ノ小所得者
ハ、英國ノソレニ比シマシテ、國家的ノ恩
惠ヲ受ケルコトガ極メテ少イノデアリマス、
卽チ英吉利ニ於テハ、失業保險、養老保險、
其ノ他社會保險制度ト云フモノニ依ツテ、
個人ノ生活ガ保障サレテ居リマス、故ニ
方デハ政府カラ取ラレテモ、他方デハ與ヘ
ラレテ居ル、「ギブ·アンド·テーク」ノ思想ニ
依ツテ、個人ノ生活ハ保障サレテ居リマス、
我國デハ個人ノ生活ヲ保障スルモノハ、自
己以外ニナイノデアリマス、米內總理大臣
ハ、國民生活ヲ確保スルト明言ヲサレマシ
タケレドモ、具體案ヲ示サレナイ限リハ
吾々斷ジテ之ヲ信ズルコトハ出來マセヌ、
此點ニ關シマシテ、私ハ稅制委員會ニ於テ、
𠮷田厚生大臣ニ質問致シマシタ、今日ノ物
價高ノ下ニ於テ、ドレダケノ收入ガアツタ
ナラバ國民生活ガ確保サレルヤ、換言スレ
バ、國民生活ヨリ見タル租稅負擔ノ限界如
何之ヲ問ヒマシタガ、𠮷田厚生大臣ハ、
的確ナル資料ガナイ、厚生省ニハ其ノ調ベ
ガナイ、斯ウ仰セラレタ、洵ニ以テ遺憾ナ
コトデアリマシテ、如何程ノ生活費デ今日暮
セルカ、數字ヲ擧ゲテ之ヲ示シテ吳レト私
ガ言ヒマシタラバ、ソレハ分ラヌ、ソレナ
ラバ此ノ免稅點ノ引下、此ノ基礎控除ノ極
端ナル低下ニ對シテナゼ贊成シタカ、斯ウ
私ガ質問致シマシタ所ガ、完全ナル答ハ得
ラレナカツタ、更ニソレナラバ、本稅制案
ノ實施ニ對應シマシテ、昭和十五年度豫算
ノ中ニ、何等カ是等ヲ救濟スル所ノ社會政
策的施設ガ見積ラレテ居ルカト質問致シマ
シタ所ガ、何ニモナイ、斯ウ答ヘラレタ、
併シ厚生大臣ハ、將來ニ於テ養老保險制度、
其ノ他失業保險制度ニ付キマシテハ、十分
ニ〓究シ、成ルベク早ク立法化スルコトニ
付テ努力致シタイト云フコトヲ、私ニ明言
サレマシタカラ、私ハ此ノ明言ヲ信ジ本案
ニ贊成セザルノ已ムヲ得ナイコトニナツタ
ノデアリマス
第二ニ、本稅制案ト地方財政トノ調和問
題ヲ考察シテ見タイノデアリマス、地方ニ
分與稅制度ヲ創設サレマシテ、中央地方ヲ
通ズル所ノ負擔ノ均衡ヲ圖ツタ、是等ノ問
題ハ馬場案ニ源ヲ發シ、相當ニ改善サレマ
シテ、中央地方ヲ通ズル一大改革デアリマ
ス、地方稅モ亦國稅ト等シク、一應是ハ彈
力性アル改革案デアルト云フコトハ認メラ
レマス、又貧弱ナル町村ハ、此ノ分與稅制
度ニ依リマシテ相當ニ調整サレマス、然ル
ニ國ノ財政ノ膨脹ニ伴ツテ、地方ノ財政モ
亦等シク膨脹シテ居リマス、一方デハ分與
稅ハ、地方ニ分與スル率ガ決定サレテ居リ
マス、地方財政ノ無限ノ膨脹ハ、分與稅
ノ如キ「充ガヒ扶持」デハ、直チニ行詰リ
ヲ生ジマス、ソコデ附加稅ヲ許サレタ、還
付稅ニ於テ附加稅ノ制限外課稅ヲ行フヤウ
ニナヅテ來ルコトハ勿論デアリマス、斯ノ
如ク考ヘマスルト、地方稅モ亦國稅ト同樣
ニ、根本ノ財政ガ放漫ニ流レテ居ツテハ、
此ノ方面ノ彈力性モ亦一時的ノモノデアル
ト言ハナケレバナリマセヌ、眞ノ根本的稅
制ノ整理案ハ、府縣ノ合併、市町村ノ合併
等ヲ行ヒ、地方支出ノ增加ヲ來ス根本的原
因ヲ削除シタル上ニ建設サレタ稅制案デナ
クテハ、眞ノ根本的ノ稅制案トハ言ヘマセ
ヌ(拍手)
次ニ國費ト地方費ノ負擔區分ノ是正スベ
キ事項ガ、內務省ヲ中心トシテ百一一十餘件
フ多キニ上ツテ居リマス、其ノ中デ解決サ
レタフガ、今囘ノ義務〓育費國庫負擔ノ件、
警察費連帶支辨ノタツタ二ツデアル、之二
依リマシテ約五億ニ相當スル金額ガ解決サ
レテ居リマスガ、殘リノ百何十件ハ其ノ儘
ニ打棄テラレテ居リマス、此ノ總計金額ハ
三億圓デアリマシテ、主ナルモノヲ上ゲマ
スナラバ、府縣ノ〓育費、土木費、職員費
等ガアリマス、是等ノ費用ハマダ未解決ニ
シテアル、之ヲ根本ニ於テ改正シナケレバ、
眞ノ地方財政ノ調整ヲ期スルモノデナイト
云フコトヲ、私ハ斷言シテ憚リマセヌ拍
手)何故ニ百二十件ニ餘ルモノガ棄テラレ
テ居ルカ、其ノ根本ノ原因ハ各省割據主義
ノ犧牲デアリマス、政府ハ速ニ此ノ點ニ留
意致シマシテ、官僚ノ割據主義ヲ打破致シ、
多年ニ亙ツテ懸案トナツテ居ル此ノ問題ノ
解決ニ力ヲ致サレンコトヲ希望致シマス
第三ニ、本案ト生產力擴充トノ調和ニ付
テ考察シテ見タイノデアリマス、今度ノ稅
制デハ生產力擴充政策トノ調和ニ付キマシ
テハ、相當ニ力ヲ入レラレテ居リマス、第
一ニ株式配當課稅ニ對シマシテ、其ノ株ヲ
取得スルニ要シタル負債ノ利子ヲ必要經費
トシテ控除スルコト、其ノ外法人ノ前事業
年度ニ生ジタル缺損全額ハ、現事業年度ノ
所得計算上之ヲ損金ニ算入スルコト、是ガ
原案デアリマスガ、吾々ハ之ヲ修正致シマ
シテ、前三年ノ缺損ノ損金ト見ルコトニ修
正致シマシタコトハ、一大進步デアルト私
ハ考ヘマス、更ニ大問題トナリマシタ本案
デハ法人ノ所得ノ計算上、法人稅ハ之ヲ損
金ニ算入セザルコトニ改革致シタノデアリ
=
マスルガ、此ノ改革ハ租稅理論トシテハ正
當デアリマス、併シ多年ノ習慣ヲ急激ニ變
更致シマシテ、且ツ法人ニ急激ナル重課ト
ナリマスガ爲ニ、委員會ニ於テモ相當議論
ヲ鬪ハサレマシタ、併シ之ヲ稅引計算ニ致
シマスレバ、二億二千一百万圓ノ減收ヲ來
シマスル故ニ、吾々ハ已ムヲ得ズ原案ニ贊
成致シタ次第デアリマス
其ノ次ニハ本改正案ト公債政策トノ調和
ニ付テ申上ゲテ見タイ、卽チ公債、社債ノ
利子、預金ノ利子ハ四割控除シテ、綜合課
稅スルコトニナツテ居リマス、非常ナ特典
ヲ與ヘテ居リマス、更ニ綜合課稅カ源泉カ
ニ付キマシテハ納稅義務者ニ選擇主義ヲ
與ヘテ居リマス、此ノ點松永君ハ反對ヲサ
レタノデアリマスルケレドモ、是等ハ理論
上カラハ私モ松永君ト同感デアリマス、不
合理極マルモノデアツテ、綜合課稅主義ノ
不徹底ノ甚シイモノデアリマスルガ、併シ
ナガラ財政政策ノ運用上、公債政策ニ重點
ヲ置イテ居リマスル關係上、又是ハ承認セ
ザルノ已ムヲ得ナイ次第デアリマス(「ノー
ノー」)斷ジテ金融資本家ノ偏重若クハ擁護
デナイト云フコトヲ、私ハ此處ニ申上ゲテ
置キマス(「ノー〓〓」)
次ニ相續稅ニ付キマシテハ、我國ノ美風
デアル家族制度ノ保存上、外國ト違ツタ考
デ以テ之ヲ課稅セナケレバナリマセヌ、相
續稅ノ三割增徵ハ非常ナル負擔ノ重課デア
リマス、殊ニ山林其ノ他不動產ノ如キ、容
易ニ金ヲ換ヘルコトガ出來ナイモノニ對シ
マシテハ、物納ヲ考慮スル必要ガアリマス、
政府ハ之ニ對シマシテ、新ニ委員會ヲ設ケ
テ〓究スルト云フコトヲ明言サレマシタ、
速ニ是ガ實施ヲ期シ、次期議會マデニ立法
化サレンコトヲ希望致シマス
〔議長退席、副議長著席〕
次ニ本案ト惡性「インフレ」防止手段トノ調
和ニ付テ考察シテ見タイノデアリマス、增
稅ハ成ベク避ケタイ、國民負擔ハ出來ルダ
ケ加重シタクハナイ、併シ公債ガ不消化ヲ
來シ、貨幣ノ價値ガ暴落シ、所謂惡性ノ「イ
ンフレーション」トナツテ、國民生活ヲ破
局ニ陷レルヨリハ、增稅ニ依ツテ購買力ヲ
吸收シ、公債ノ不消化ヲ避ケルコトガ、國
民ニ忠實ナル所以デアルト私ハ信ジマス、
此ノ意味ニ於テ巳ムヲ得ザル手段トシテ、
吾々ハ增稅ヲ執ルノデアル、櫻內藏相ハ、
一月現在ニ於テ國債ノ總額ハ二百三十億圓
デアツテ、今後五十億乃至六十億ノ公債ハ、
每年之ヲ發行スルコトモ已ムヲ得ナイト共
ニ、數年ナラズシテ公債ハ四百億又ハ五百
億ニ上ル、併シ最近ノ租稅ノ自然增收ノ狀
況ハ、年ニ五十億ノ公債ヲ發行致シマシテ
モ、其ノ利拂及ビ一部ノ償還ニ十分デアル、
況ヤ今度ノ增稅案ヲ以テスレバ、ソレヨリ
生ズル自然增收ヲ以テ公債ノ利拂位ハ何デ
モナイ、特殊ノ國際情勢及ビ經濟界ニ變化
ナキ限リ、ココ數年間ハ增稅ノ必要ハナイ、
斯ウ斷言サレテ非常ナ樂觀論ヲ吐カレテ居
リマスガ、本改正案ノ如キ、是程大騷ギヲ
シテ、根本的ナ中央地方ヲ通ズル大改革ノ
增稅案ニ依ツテ、僅ニ得ラレル所ノモノハ、
平年度七億、初年度五億ト云フ所ノ餘リ大
キカラザル數字デアリマス、本議會ノ質問
應答ヲ吾々ガ囘顧シテ見マスルニ、時局ノ
見透シニ付テハ吾々ニ的確ナル〓念、指
導的精神ヲ與ヘラレナカツタ、生產擴充ニ
付キマシテモ、行詰ツタ以外ニ吾々ハ十分
ナル說明ヲ與ヘラレナカツタ、經濟界モ亦
安定ヲ得テ居ルトハ言ヘナイ、斯ウ云フヤ
ウナ感ジガ、吾々ト大臣ノ間ニ於ケル質問
應答ノ中ニ現ハレタ、況ヤ財政ノ見透シノ
如キハ、何モ吾々ニハ與ヘテ吳レナカツタ、
殊ニ財政膨脹ノ基礎トナリマスル軍事費ハ、
本年ハ昨年ニ比シマシテ一億六千万圓減ジ
テ居リマス、此ノ方面ダケ減ズル所ノ徵候
ダケハ、吾々ニ感得サレタ、一億六千万圓減
ツテ居ル、ソレカラ海軍ノ方デハ、昨年ノ
議會ニ於キマシテ其ノ全貌ヲ現ハシタ、併
シ陸軍ニ於キマシテハ、本年卽チ十五年度
ノ新國防計畫ニ於キマシテ、二十六億三千
九百万圓ト云フ所ノ、新國防計畫ニ於ケル
數字ヲ現ハシマシタガ、陸軍大臣ノ御答辯
ニ依リマスルト、二年若クハ三年位ノ國際
情勢ヲ基礎トシタモノデアツテ、全貌デハ
ナイ、斯ウ仰セラレタ、昨年ハ頭ヲ出シテ
居ルノデアルト言ツテ、四億九千九百万圓
ヲ出サレマシタ、今年ノ二十六億ハ是ハ全
貌デハナイ、マダ全貌ハ分ラヌ、其ノ次ニ
大キナモノガ何カ出テ來ルヤウナ感ジガ吾
吾ニハ與ヘラレタ、加之物價ノ騰勢ハ底止
スル所ヲ知ラナイヤウナ狀況デアリマス、
藏相ノ言フガ如クニ、今後百億豫算ガ續ク
バカリデナク、是ハ直チニ是等ノ情勢カラ
見マシタナラバ百五十億豫算トナリ、一一
百億豫算トナルコトハ、私ハ遠クナイ將來
デアルト考ヘル、此ノ情勢デハ、公債ガ年
額五十億乃至六十億增發セラルルコトハマ
ダオロカ、百億時代ガ出現スルノデハナイ
カト云フコトヲ私共ハ見透サレル、隨テ藏
相ノ如ク、本增稅案ニ依ツテ得ル自然增收
ノミデ、公債ノ利子ガ拂ヘルナドトハ-25.
ハ樂觀的ニハ斷ジテ考へラレナイノデアリ
マス、政府ハ先ヅ一、外交關係ヲ整調シ、
國際情勢ヲ安定セシス、國防費ノ全貌ヲ明
ニスベキデアリマス、陸軍大臣ハ國際情勢
ガ分ラナイカラ、二三年ノ間ノ國際情勢
ヲ基礎トシタモノシカ出サレナイト仰シ
ヤル、是デハ財政ノ將來ハ見透サレナイ、
サウシテ一一、事變處理ノ具體的ナ規格ガ明
示サレテ、之ニ依ル必要ナル經費ノ大體ノ
見當ガ付ケラレナケレバナラヌ、是等ニ依
リマシテ、眞ニ國力ニ應ジタル、生產擴充
計畫ガ立テラレルノデアリマス、又是等ニ
依ツテ初メテ物價政策ノ確立ヲ期セラレル
ノデアリマス、斯ノ如ク致シマシテ、財政
ノ見透シガ立チ得ルノデアリマス、然ラザ
ル間ハ、是ガ決マラス間ハ、每年公債ノ連
發ト、增稅ノ連發ヲ繰返スヨリ外ハアリマ
スマイ、本改正案ノ彈力性ノ如キモ、此ノ
不安定ナル內外情勢ノ下ニ於キマシテハ、
直チニ行詰ツテシマフベキ運命ニアルト私ハ
信ジマス、昭和十二年此ノ方、本年マデ四箇
年間、每年增稅ヲ繰返シテ居リマス、最近
ニ直チニ增稅ノ機會ガ到來スルコトハ火ヲ
睹ルヨリモ明カデアリマス、遂ニ吾々ハ大
規模ノ賣上稅及ビ財產稅ノ創設ヲサレテ、
國民ハ此ノ增稅ヲ覺悟センケレバナラヌ、
好ムト好マザルトニ拘ラズ、斯ノ如クスル
ニアラザレバ、此ノ時局ハ到底打開出來ナ
イト私ハ信ズル次第デアリマス
次ニ私ハ本案實施ニ對シマシテ政府ニ申
上ゲテ見タイ、兎ニ角七億、八億ト云フ
所ノ大增稅ヲ行ハレルノデアリマス、國
民ハ物價騰貴ノ上ニ、更ニ此ノ大增稅ノ
爲ニ苦痛ヲ受ケ其ノ生活ニ重壓ヲ蒙ムルノ
デアリマス、國民ハ戰時ナルガ故ニ忍耐致
シマス、政府ニ於キマシテハ、國民ノ寬容
ニ馴レテハナラナイノデアリマス、豫算ノ
實施ニ當ツテ自肅シ、一錢一厘タリト雖モ
無駄ニ使用スベカラズ、此ノ大增稅ハ國民
膏血ノ結晶ナルベキヲ知ルベシ、而シテ全
力ヲ擧ゲテ、事變ノ處理ニ邁進スルト共ニ、
物價政策ヲ確定シ、國民生活ノ確保ニ盡瘁
シ、上聖明ニ對ヘ、下國民ノ期待ニ副フベ
キデアルト信ジマス
尙ホ最後ニ一言申上ゲマスルコトハ、是
等ノ諸法案ハ極メテ重大デアリマス、私共
ノ修正ニ對シマシテ、是ガ決議サレマシタ
ナラバ、政府ノ所信ヲ表明セラルルヤウ、
此ノ場合政府ニ要求致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=27
-
028・田子一民
○副議長(田子一民君) 靑木作雄君
〔靑木作雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=28
-
029・青木作雄
○靑本作雄君 私ハ時局同志會ヲ代表シテ、
社會大衆黨、第一議員倶樂部竝ニ時局同志
會ノ共同提案ニ成リマスル修正案ニ贊成シ、
其ノ他ハ原案ニ贊成スルコトヲ表明スル者
デアリマス、以下其ノ理由ヲ述ベマス、先
ヅ法人缺損金中、繰越損金課稅年度ニ於テ
生ジタル缺損金ニ付テ、三箇年遡及スルト
云フコトハ、吾々モ考ヘタノデアルガ、是
ハ株式會社ノ基礎ヲ强化スルコトヲ目的ト
スルモノデアツテ、個人ノ缺損ニ付テハ、
之ヲ認メナイノデアル、個人ノ缺損ハ、ソ
レダケ個人ノ財產ヲ減少シテ居ルカ、或ハ
借金トナツテ現在ノ生活ニ重荷トナツテ居
ルノデアルガ、斯ル借金ニシテ今囘ノ政民
共同修正案デ控除セラルルモノガ幾許アル
デアリマセウカ、更ニ其ノ元本償還ニ付テ
ハ、何等ノ控除ヲ伴ハナイノデアル、法人
ニアツテハ三箇年間認メラルルコトニナレ
バ、三箇年間ニ埋合ハセル所ノ損失金額ハ
課稅ヲ免レルノデアル、元來株式會社ノ資
金充實ト云フコトハ、株式ニ對スル認識ノ
不足ナル時代ニ於テ特ニ强調サレタルモノ
デアリマスガ、今日トシテハ同一ノ重要サヲ
認メルノ必要ハナイ、政府原案ノ如ク前年
度分ヲ認メレバ宜シイノデハナイカ、殊ニ
國家ノ消費ガ戰時經濟收入中多額ヲ占ムル
今日ニ於キマシテハ、其ノ利得ヲ國家ニ還
元スルト云フ意味カラ言フモ、個人トノ比
較ニ徵スルモ、サウマデ金融資本ヲ擁護ス
ル必要ハ認メナイノデアリマス(拍手)
次ニ遊興飮食稅收入交付金デアルガ、斯
ル修正案ガ出タノハ、政府ノ官僚獨善ヲ示
ス好適例デアル、前議會ニ於テ吾々ハ政府
ノ原案百分ノ一ヲ百分ノ三以下ニ修正シタ
ノデアル、然ルニ實費以上ニ交付スルコト
ヲ惧レルノカ、先ヅ實費ヲ知ルノ要アリト
云フ駈引カラカ、兎ニ角不當ニ小額ヲ交付
シ、院議ヲ無視シタノデアル、其ノ結果今
囘ノ修正案トナツテ、政府モ亦同意セラル
ルノ已ムナキニ至ツタガ、此ノ修正ニ依リ
テ大都市ノ徵稅擔當者ハ百分ノ一ノ最小
限度デモ相當額ノ殘額ヲ殘シ、不當利得ヲ得
ルノ不合理トナルノデアル、此ノ修正ニ對
スル運動ハ、交付率ノ寡少ニ苦シム地方ノ
取扱業者ノ必死ノ運動功ヲ奏シタノデアル
ガ、是等ノ救濟ニ便乘シテ、大都市ノ取扱
業者ガ國稅ニ付不勞分配ヲ受ケルガ如キ結
果ニナツタコトハ、要スルニ修正ノ惡シキ
ニアラズシテ、政府ノ無理ノ結果ト斷ゼザ
ルヲ得ナイノデアリマス、此ノ度ノ修正ノ
運行ニ當ツテ、十分心得ヘラルベキコトデ
アルト思フノデアリマス
特別法人稅ニ付テハ、吾等同志中ニモ原案
ヲ可トスル者アツタノデアルガ、ソレハ課稅
ノ目的タル剩餘金ガ、必ズシモ組合員ノ純粹
ノ利用量ニ比例シテ配分セラルルモノニアラ
ズ、小ナリトモ出資關係、利用關係トノ間ニ儲
ケル者、儲ケラレル者トノ關係ガ生ズル點ニ
付テ、目ヲ著ケタモノデアル、而モ特別法人
ノ特殊性ニ立脚シテ三分以上、一般法人ノ
半額タル九%ノ課稅ハ至當デアルトスル所
ノ理由ニ基イタモノデアル、併シナガラ左
樣ナ關係ハ、產業組合本來ノ趣旨ヲ逸脫シ
タモノデアルト思フノデアリマス、產業組
合ハ單ニ此ノ組合員ト出資者トノ關係ト云
フガ如キ問題ニ限リマセズ、本來ノ使命ヲ
逸脫セルモノニハアラザルカヲ疑ハシメル
モノガ、決シテ少クハナイノデアリマス、
公平ナル第三者トシテ苦々シク思ハシムル
モノガアルノデアリマス、此ノ反感ハ特別
法人自體ノ發展ノ爲ニ、決シテ輕視スベカ
ラザルモノガアルノデアリマス、產業組合
ハ言フマデモナク資本主義ノ弊害カラ農村
ヲ救ヒ、相互扶助、協同體ノ結成ヲ目指シ
テ發達シタモノデアル、社會經濟機構改革
ノ先驅ヲ爲シ、而モ事變下ニ於テ大イニ其
ノ活動ニ期待スルモノガアルノデアリマス、
苟モ革新ヲ企圖スル者ノ認識ノ外ニ置ク能
ハザルモノデアル、其ノ精神ト此ノ使命ハ
實ニ完成セシムベキモノデアツテ、僅ニ百
五十万圓ノ稅收ヲ圖ラントスル爲ニ、精神
的ニ及ボス影響ラ無視スベキモノデハナ
イ、飽クマデ產業組合トシテ本來ノ使命ヲ
全カラシムベク、政府モ監督指導ヲ怠ラザ
ルト共ニ、組合自體モ自奮自戒スベキモノ
デアル、產業組合ノ役員中既ニ官僚化シタ
者ガアツテ、商人ノヤウナ痒イ所ニ手ノ屆
クヤウナ親切ノナイ者ガ多イト云フノデ、
商人ノ必要ヲ說ク者ガ多イノデアル、又地
方ノ組合役員ハ無給或ハ二三十圓ノ安月給
デ、共濟組合マデ作ラウトシテ居ル際ニ於
テ、中央聯盟デハ万圓以上ノ高給ヲ食ンデ、
其ノ組織ノ上ニ立ツテ、動トモスレバ、本
來ノ使命ヲ逸脫スルモノデハナイカト思フ
ヤウナコトニ狂奔シテ居ル者ガアルノデア
ル(拍手)色々ノコトハ別ト致シマシテ、一ツ
コンナ高給ノ者カラヤメテ見タラドウデス、
私共ハ本來ノ使命カラ逸脫シテ行ク所ノ利
潤ニ稅ヲ課スルト云フ方針ヲ廢シマシテ、
之ヲ逸脫セシメザルヤウ、飽クマデ政府モ
組合モ進ムベキモノナリトノ信念ニ立脚シ
マシテ、特別法人稅ニ對シテ否決的態度ヲ
決シタノデアリマス(拍手)
地方稅ヲ三收益稅ヲ主トセラレタルニ反
對スル譯デハアリマセヌガ、今囘ノ稅制ノ改
正ニ依リマシテ、是等ノ所得階級ヲ他ノ所
得ニ比較スルト、著シク重課ヲ受ケルコト
ニナツテ居ルノデアル、政府ハ地方稅ニ於
テ三億三千万圓ノ減稅ヲシタト言ハレルノ
デアリマスガ、是ハ決シテ此ノ種所得者ノ
負擔ヲ減ジタルモノト早合點シタナラバ、
トンデモナイ間違ヒデアル、多キハ四倍ニ
モ及ブモノガアルノデアリマス、然ルニ地
方ノ財政上ノ要求ヲ、今囘ノ稅制ガ自動調
整ヲ爲シ得ルヤ否ヤハ、政府自身モ大ナル
確信ハナイモノノヤウデアル、吾々モ的確
ナル數字ヲ見テ、結論ニ到達スルコトヲ得
ナカツタコトヲ遺憾トスル者デアリマス、
ソレダケ多大ノ不安ガアリ、殊ニ三收益稅
ノ賦課率制限デアル所ノ府縣百分ノ百、町
村百分ノ二百ハ、想定所得稅收入ノ平均デ
アルト云フコトデアル、隨テ實施ト同時ニ
約半數ハ制限ヲ突破シナケレバ、政府ノ謂
フ所ノ平年度十億三千二百万圓ハ確保出來
ナイト云フコトニナルノデアル、旣ニ吾々
ノ恐ルル重課ハ十五年度ヨリ來ルモノガア
ルノデアリマス、況ヤ將來ニ於テヲヤデア
ル、政府ハ其ノ實行ニ當テハ格別ノ注意ヲ
拂ツテ、其ノ弊ノ大ナラザルニ先ダチ、本
案ノ缺陷ヲ改正シ、萬全ヲ期セラレンコト
ヲ望ンデ已マナイ、尙ホ地方自治體ノ腐敗
ハ、單ナル自肅ヤ刑事政策デハ目的ハ達セ
ラレナイ、自治體ノ事變下ノ活動ノ重要性
ハ益〓倍加スルバカリデアル、政府ガ地方稅
ヲ附加稅ト分與稅ヲ主タルモノトセラレタ
ルコトハ伸縮自在、此ノ點ニ思切ツタ改革
ヲ行フ上ニ、先ヅ稅制上ノ基礎ヲ確立シタ
モノト言ハナケレバナラナイ、此ノ上ハ斷
ノ一字ガアルバカリデアル、所信ニ向ツテ
邁進セラレンコトヲ期待スルノデアリマス
政府ガ今囘ノ增稅ヲセラレタル一面ノ目
的ハ購買力ノ吸收ニアリマス、然ルニ消費
稅ノ增徵ハ、更ニ物價ノ騰貴トナリ、生活
ノ脅威ヲ增シ、自然賃金物價ノ循環高ヲ導
キ、所謂「インフレーション」ヲ激化スル所ノ
矛盾ヲ來スコトハ、中島議員ノ指摘セラレ
タ所デアル、此ノ矛盾ヲ承知ノ上デ、幾分
デモ膨脹シテ止マザル購買力ノ吸收ニ效果
アル此ノ增稅ヲ企テラレタル政府ノ意ノア
ル所ハ諒トスルモノデアルガ、政府ガ眞ニ
그インフレーション」ノ激化ヲ防止セラレン
トスルナラバ、通貨ノ膨脹ヲ抑制スルト共
ニ、信用「インフレーション」ノ抑制ニ十分
ノ注意ヲ拂フノ要ガアル、銀行預金ノ增大
ト共ニ貸出ハ之ヲ十二年末、十三年末、
十四年末ニ見マスルニ、七十七億、八十七
億百十一億ニナツテ居ル、之ヲ「パーセン
テージ」カラ見マスレバ、百、百十三、百四
十四ノ比トナツテ居ル、兌換劵ノ二十三億、
二十七億、三十七億ト跳躍シテ居ルコトト
對照シテ、通貨ノ膨脹ハ更ニ信用「インフ
レーション」ヲ起シテ居ルト云フコトハ紛レ
モナイ事實デアル、而モ銀行ノ公債所有高
ハ二十五億、三十六億、四十六億トナツテ、
每年十億ヅツノ增加トナツテ居ルノデアル、
卽チ貸出ハ購買力ヲ與ヘ、購買力ハ闇相場、
思惑熱ニ拍車ヲ掛ケ、物價高ハ利潤ト融通
力ノ增大トナリ、相俟ツテ更ニ貸出ノ增加
トナツテ居ルコトヲ思ハネバナラヌ、卽チ
預金ト貸出トノ兩建ノ關係ニアルコトガ、
銀行ノ公債保有高ノ增加高ガ十億圓ニ固定
サレテ居ルノデハナイカト思ハレルノデア
ル、彼ノヘチ株ト稱スルモノガ融通力ノナ
イコトハ明瞭デアリマスガ、融通力ノアル
モノヲ借入レテ、是等ノヘチ株ヤ、鑛山ヤ
船舶ノ思惑ヲ爲スコトガ、眞ノ生產擴充ニ
役立テバ宜イノデアルガ、無統制亂雜ナル
事業熱ガ、如何ニ物價政策ニ禍シテ居ルカ
ニ、深キ考察ヲ與ヘナケレバナラナイノデ
アリマス、吾々ガ特ニ負債利子ノ控除ヲ求
メテ居ルガ、是ハ自然借金ニ依ル事業ヲ促
進スルノ働キヲナス爲ニ、土地、船舶、株
式等ノ思惑ヲ刺戟シ、一見「インフレ」對策
ト矛盾セルガ如キ修正ヲ爲シタルヤウニ思
ハレルノデアリマスルガ、負擔ノ衡平ヲ圖
ルコトト、信用「インフレ」、通貨「インフ
レ」ノ防止策トハ、自ラ異ルモノガアルカラ、
政府トシテハ「インフレーション」、生產擴充
低物價政策ノ關係ニ格段ノ注意ヲ拂ヒ、時
局ニ善處セラレンコトヲ切望シテ巳マナイ、
國民多年ノ宿望タリシ稅制改革ハ是デ出來
タノデアル、若シ是ガ事變前デアルナラバ
問題ハ少イノデアルガ、此ノ改革ニ伴フ增
稅デアル、稅制ノ上デハ政府ノ四大目標ガ
一應整ツタノデアルガ、玆ニ殘サレタル問
題ハ、物價異變ニ依ル所ノ必要經費、生活
費ノ凹凸デアル、物價停止ニ依リ收入ハ限
定セラレテ居ルガ、事實ハ闇相場デ見當ガ
付カヌト云フノガ實情デアル、阿部内閣ハ
此ノ爲ニ倒レ、現內閣ハ此ノ爲ニ生レタト
言ウテモ憚ラヌ狀態デアルカラ、商工大臣
初メ必死ノ御努力アルコトヲ期待スルモノ
デアルガ、果シテ其ノ成果ガ期シ得ラレマ
スルヤ疑ナキヲ得ナイノデアル、然ルニ稅
ハ其ノ如何ニ拘ラズ現實ニ卽シテ取ラレナ
ケレバ、折角ノ苦心ノ改革モ水泡ニ歸スル、
サリトテ箇々ノ經費ニ付テ調査ハ出來ナイ、
標準經費ノ算出ナルモノニ付キマシテハ、
如何ニシテ此ノ凹凸ヲ稅ノ上ニ淚アル數字
トシテ決定スルカニ、格別ノ努力ヲ拂ハナ
ケレバナラヌ、要スルニ箇々ノ經費ニ付テ
モ成ベク理解アル態度ニ出ラルコトコソ、
國民ヲシテ納稅報國ノ至誠ヲ盡サシムル所
以ナリト信ズルノデアル、少クトモ從來ノ
調定方針ハ思切ツテ改メテ貰ハナケレバナ
ラヌ、ソレニハ稅務署員ノ人格ノ陶冶、常
識ノ涵養、再〓育ニ努メラレルノミナラ
ズ、今日ノ如キ過勞ト薄遇ヲ改メラレナケレ
バナラナイ、實ニ酷イ、是デ親切ニ綿密ニヤ
レト言ウタ所デ無理デアル、私ノ知人モ健康ガ
續カヌト云フノデ遂ニ辭メタ、是ハ稅制ニ對
スル紋切型ノ言葉トシテ葬ラズニ、此ノ劃期的
稅制ノ及ボス所ヲ深ク洞察セラレテ、善處
セラレンコトヲ御願スル(拍手)而モソレデ
モ尙ホ見違ハ起ル、不服ハ起ル、故ニ簡易
稅務裁判所ノ設置ヲ吾々ハ要望スルノデア
ル、何ト申シマシテモ、物價政策ト徵稅事
務ノ適正、是ガ本案ノ死活ヲ決スル問題デ
アルコトヲ思ウテ戴キタイノデアル
次ニ將來ノ見透シニ付テ一言スレバ、委
員長ノ報告ニモアルガ如ク、增稅ノ目標ハ
明瞭デナイ、石渡藏相ノ答辯要領ヲ現藏相
ハ踏襲セラレテ居ル、卽チ臨時軍事費ヲ公
債ニ仰ギ、他ヲ增稅ニ依ルノデモナケレバ、
公債ノ利子支拂ヲ目標トスルモノデモナ
イ要スルニ生產擴充、國民負擔、其ノ他
各種ノ事情ヲ考慮スレバ、此ノ位ノ增稅ガ
出來タノデアルト云フノデアル、而シテ事
變ノ繼續ト共ニ遞增スル公債ニ對シテ惡性
「インフレーション」ノ懸念ハナイカト問ヘ
バ、藏相ハ公債ニ對スル利子其ノ他ノ當テ
ガアレバ、必ズシモ不安ハナイノデアルト
言ハレル、要スルニ蒟蒻問答ノヤウナモノデ
アルガ、出來得ル限リ公債ノ利子位ハ、增稅
ヲシテ賄ヒタイト思ツテ居ラレルヤウニ諒
解セラレルノデアル、惟フニ藏相ガ斯ノ如
ク石渡前藏相ト同樣ニ、極メテ愼重ニ本問
題ニ對處セラレルコトハ、今囘ノ改正案ニ
依リテ國民ノ擔稅力モ飽和點ニ到達シタ、
是以上ノ增稅ハ國民心理ヲ刺戟スル、一方
汪精衞ノ中央政權ノ成立ヲ控ヘテ、事變處
理モ確ニ一段階ヲ劃スルニ至ツタガ、聖戰
ノ目的完遂ノ前途ハ、尙ホ遼遠タルコトヲ
覺悟セナケレバナラナイ、是ニ於テ公債ノ
發行ノ前途亦樂觀ヲ許サナイノデアル、是
等ヲ思合セテ、セメテ時局ヲ刺㦸セザルガ
如ク注意セラルルノデアル、其ノ御苦心ノ
程ハ察スルニ餘リアル、併シ國民ハ旣ニ覺
悟シテ居ルノデアル、有史以來未ダ企テラ
レタルコトナキ大事業ニ乘掛ツタ以上、如
何ナルコトヲシテモ目的完遂ニ努力セネバ
ナラヌノデアル、殊ニ最近ノ「ソ」芬兩國ノ
平和成立ト共ニ、「ソビエト」ノ極東攻勢ヲ
想像セラルル場合ニ於テ、正ニ今日コソ朝
野ヲ擧ゲテ奮ヒ起チテ、其ノ決意ノ程ヲ示
サナケレバナラヌ秋デアル、「憂キコトノナ
ホコノ上ニツモレカシ限リアル身ノ力タメ
サン」此ノ意氣ヲ以テ進ム秋ナリト信ズル、
隨テ藏相ノ御苦心ノ程ハ察スルガ、何時マ
デ經ツテモ斯ノ如キ薄氷ヲ履ム思デ、財政
ノ前途ニ付同ジヤウナ答辯ヲヤラレズニ、
今囘ノ增稅額ガ二三年ノ後ニ行詰ツテモ、
更ニ增稅可能ノ用意ガ必要デアル、如何ニ
牢固タル決意ト不動ノ方針ヲ聲明セラレテ
モ、其ノ用意ヲ缺ク時ニ於キマシテハ、ソ
レハ空威張ニ過ギナイノデアル、財界ノ
部ニハ我ガ財政ノ前途ニ付悲觀的見解ヲ有
スル者モアルガ、私ハ必ズシモ悲觀ハシナ
イ、何トナレバ悲觀論ノ根柢ヲ調ベテ見ル
ト、現狀維持ノ觀點ニ立ツガ故ニ、悲觀ス
ルヨリ外ナイト云フコトデアルカラデア
ル、例ヘバ此ノ稅制案デアルガ、稅率ノ上
カラ言ヘバ、向ホ增稅ノ餘地ハアルニシテ
モ、臨時利得稅ニ對シテモ、富豪ヘノ累進
率ニシテモ、昨年ヨリ政府ハ寧ロ低下ノ方
針ヲ執ツテ居ラレル、更ニ時局ニ巨利ヲ博
シテ居ルニモ拘ラズ、生產擴充ノ爲ニハ特
例ヲ設ケテ、臨時租稅措置法ヲ以テ稅率引
下或ハ免稅シテ居ル、此ノ方面ヲ見タ時ハ
最早增稅ノ餘地ナク、此ノ上ノ增稅ハ中以
下大衆課稅ニ行クヨリ外ナイノデアル、ソ
レ故ニ悲觀論ガ生レルノハ當然デアル併
シ事變遂行ノ財政的見地ニ立チマスレバ、
物ノ問題ハ姑ク措イテノ話デアルガ、國民
所得ヲ二百五十億ト考ヘレバマダ餘裕ハ
十分デアル、唯現行ノ稅制ノ形式デハ、如
何ニ工夫シテモ、其ノ最大限ニ到達スル
コトハ困難デアル、旣ニ飽和點ニ近イノ
デアル、故ニ公債ニ依ルノデアルガ、公
債ト租稅ニ行カナイモノヲモ吸收シ得ベキ
方途ヲ考ヘル必要ガアル、今囘ノ稅制改
正案ニ、差當リ稅制トシテハ現在考へ
得ベキ最善ニ近イモノニナツタ、近イ將
來稅制ノ改正ニ依ツテ之ヲ吸收シ得ベキ
見込ハナイ、唯增率ヲ目論ムノミデアル、
此ノ次ハ何カ、公債ノ强制保有カ、公債ノ
强制保有論ハ存外逆效果ヲ起シテ、其ノ結
果ヲ期待シ難イカモ分ラヌ、然ラバ此ノ次
ノ增率ハ可能デアルガ、其ノ時ガ來タ時ニ、
其ノ增率モ行詰ツタ時ニ、今マデノ歷代ノ
政府ガヤツテ居ツタヤウニ、根本的方策ハ
急場ノ間ニ合ハナイ、サリトテ應急手段ハ
ナイト云フヤウナコトニナラヌヤウナ、
戰時體制ノ强化ガ絕對必要デアル(「簡單簡
單」ト呼フ者アリ)卽チ公債ヲ稅收入ニ依ル
國民所得ノ國家奉仕ニアラザル吸收ヲ爲シ
得ル經濟組織ノ再編成ヨリ外ニ方法ハナイ、
之ヲ現内閣ニ求ムルコトハ無理カモ知レヌ
ガ、無理デモ時局ノ歸趨ハ之ヲ要求シテ居
ルノデアル、閣僚諸公ノ一大決意ト工夫ヲ
切望シテ已マナイノデアル
最後ニ重ネテ時局同志會ノ要望スル點ヲ
擧ゲテ私ノ討論ヲ終リタイ
政府ハ本稅制改革案ガ國民生活ニ重
大ナル關係ヲ有スルコトヲ考ヘ、物價
ニシテ修正スベキモノハ速ニ之ヲ修正
シ、他面物資ノ配給ニ關シ一大改革ヲ
斷行シ、國民生活ノ安定ヲ期スベシ
ニ、政府ハ本稅制改革案ガ大增稅ヲ內容
トスル劃期的改正案ナルニ鑑ミ是ガ實
施ト並行シテ根本的行政諸機構ノ改革
ヲ斷行シ事務ノ刷新ヲ圖リ吏道ヲ振肅
シ以テ戰時體制ノ强化ヲ期スベシ
政府ハ本稅制改正案ヲ實施スルニ當リ
稅務官吏ノ待遇ヲ改善スル他面必要ナ
ル〓育ヲ施シ圓滿ナル人格ト常識ヲ養
成シ以テ必要費等ノ決定其ノ他徵稅上
遺憾ナキヲ期スベシ
三、政府ハ本稅制改正案ヲ實施スルニ當
リ稅務官吏ノ處置言動ニ關シ特ニ監督
ヲ嚴ニシ徒ニ苛歛誅求ヲ事トセズ補導
ニ意ヲ注ギ以テ徵稅上遺憾ナキヲ期ス
ベシ
四、政府ハ不法不當ノ課稅救濟ノ方法ト
シテ本稅制改正ヲ契機トシテ速ニ簡易
稅務裁判所ノ設置ヲ斷行スベシ
五、政府ハ產業組合ノ本質使命ニ鑑ミ其
ノ經營ニ是ガ改革ノ實ヲ擧ゲシムベシ
又產業組合自體モ深ク思ヲ其ノ本質ニ
致シ時局ニ對スル使命達成ニ遺憾ナキ
ヲ期スベシ
六、政府ハ相續稅ニ付速ニ物納制度ヲ採
入ルル方途ヲ講ズベシ
七、政府ハ義務〓育費國庫支辨ニ依ル〓
育國策等ノ徹底ヲ圖リ今次稅制ノ改正
ニ依リ大都市〓育ノ低下ト不安ヲ來サ
ザルヤウ善處スベシ
八兵庫縣、愛知縣ノ三部制廢止ニ伴フ
債務關係ニ付適當ナル方法ヲ講ズベシ
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=29
-
030・田子一民
○副議長(田子一民君) 高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=30
-
031・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 私ハ立憲政友會ヲ代表シ
テ委員長ノ報告ニ贊成シ、且ツ民政、政友
三派ノ共同提案ニ係ル修正案ニ贊成スル者
デアリマス
私共ノ考ヲ以テ致シマシテハ國民ニ向ツ
テ重キ負擔ヲ求メントスルニ當ツテハ、局
ニ當ルノ人々トシテ先ヅ考フベキハ、豫算
ノ整理緊縮デアリマス、國ノ豫算、地方ノ
豫算ヲ必要ノ最小限度ニ切リ詰メテ、尙ホ
且ツ足ラザルヲ國民ニ向ツテ要求スルノ態
度ニ出ヅルノデナケレバ、國民ヲシテ喜ン
デ負擔ニ甘ンゼシムルコトハ出來ヌト思フ
ノデアリマス、本稅制委員會ハ前後三十餘
日ニ亙ツテ有ユル觀點ヨリ檢討ヲ加ヘタノ
デアリマスガ、遂ニ此ノ豫算增稅兩面ニ亙
リ政府ノ信念何レニアルヤヲ確メ得ザリシ
コトハ遺憾ニ堪ヘマセヌ、成程事變下ノ我
國ハ軍事產業其ノ他ノ必要ニ依リ財政ノ膨
脹公債ノ增發、隨テ紙幣ノ增發ヲ免レ得ザ
ル情勢ニアリマス、一方ニハ資材ノ供給
意ノ如クナラズ、其ノ結果旺盛ナル購買
力ヲ前ニシテ、需給ノ關係動モスレバ圓
滑ヲ缺キ、延イテ物價ノ騰貴ヲ招來スル
ノ現況トナツテ居リマス、是ニ於テ國民ノ
消費ヲ必要ノ最小限度ニ壓縮致シ、基)
國民ノ購買力ヲ出來得ルダケ吸收スルノ
必要ナルコトハ論ヲ俟クヌノデアリマス、
ソレカト云ツテ、此ノ動イテ已マザル今日
ノ國民經濟情勢ノ上ニ根本的改革ヲ租稅制
度ノ上ニ行フノ得失當否ニ付キマシテハ種
種ノ議論アルヲ免レマセヌガ、此ノ際或ル
程度ノ增稅ヲ斷行スルト共ニ、複雜ニシテ
體系ノ混亂セル現行制度ヲ改正致シ、國民
ノ負擔ノ均衡ヲ圖ルコトハ、今日ノ急務デ
アルコトモ申スマデモアリマセヌ、私共ハ
先ヅ此ノ見地ニ立ツテ、四十五件ノ多キヲ
數フル稅制改革案ヲ取扱ツタノデアリマス、
唯茲ニ考フベキハ我國ノ特殊性デアリマス、
如何ナル場合ニ於キマシテモ、我國獨特ノ
歷史、我國獨特ノ國民性ヲ傷クルガ如キコ
トガアツテハナラヌト云フコトデアリマス、
租稅制度ノ改正ヲ行フニ當ツテモ、特ニ此
ノ點ニ留意スルコトガ肝要デアルト存ジマ
ス
私共ハ斯ク信ズルガ故ニ、平年度五億一
千餘万圓ノ增收ヲ得ントスル稅制改革案ヲ
檢討スルニ付キマシテハ、第一ニ新稅制實
行ノ結果トシテ國民生活ヲ脅威スルガ如キ
コトガアツテハナラヌ、第二ニ獨特ノ家族
制度ノ根柢ヲ傷クルガ如キモノガアツテハ
ナラヌ、第三ニ苟モ生產擴充ヲ阻碍スルガ
如キコトガアツテハナラヌ、第四ニ政府ハ
低物價方針ヲ破局ニ導クヤウナコトガアツ
テハナラヌト、此ノ四點ニ特ニ意ヲ用ヒタ
ノデアリマス、卽チ分類所得稅ニ於ケル不
動產所得ノ免稅點ヲ引上ゲ、勤勞所得、事
業所得、山林所得ノ基礎控除額ノ引上ヲ行
ビ、且ツ生命保險料ノ控除ヲ行ヒ、又五千
圓以下ノ小額所得者ガ受クル株式配當ニ付
テ相當額ノ控除ヲ行ヒ、以テ各種小額所得
者間ノ均衡ヲ得セシムルト共ニ、其ノ最小
限度ノ生活保障ノ趣旨貫徹ニ資シタイト思
ヒ、且ツ退職所得ノ基礎挖除ヲ引上ゲテ、
恩給所得者トノ均衡ヲ得セシメ、又收入ノ
極メテ不安ニシテ不同ナル水產所得ノ課稅
緩和ヲ圖リ、而シテ自作農地ノミナラズ、
一般農村耕地ニ對スル地租ノ免稅點ヲ擴充
シテ、小農ノ負擔緩和ヲ期スル等ノ目的ヲ
以チマシテ、ソレ〓〓原案ニ修正ヲ加へ
又家族制度維持ノ基本觀念ヨリ相續稅ノ基
礎控除額ノ引上、竝ニ其ノ稅率ノ緩和及ビ
物納制度ノ創始ヲ圖リ、又生產者團體ノ負
擔ノ輕減ヲ期スベク原案ノ修正ヲ企テタノ
デアリマス、併シ院內各派トノ折衝、政府
トノ協調等ノ爲其ノ總テヲ遂行シ得ナカツ
タコトハ洵ニ遺憾デアリマシタガ、玆ニ提
出シタル修正案ヲ以テシテモ、〓ネ其
ノ趣旨トスル所ヲ貫クコトガ出來タト思フ
ノデアリマス、而シテ此ノ七千餘万圓ヲ上
下スル修正ヲ行ヒタルニ付キマシテハ、其
ノ補塡財源ヲ何處ニ求ムベキカト云フ心配
ヲサルル向モアルヤウデアリマスガ、增稅
ノ當初ニ於キマシテハ、總テヲ內輪ニ計算
スルノガ政府ノ常習デアリ、現ニ昭和十二
年以來ノ數字ニ亙ル增稅ニ於テモ、常ニ三
割五割ノ增收ヲ得テ居ル次第デアリマス
カラ、今囘ノハ中央、地方ヲ通ズレバ、八
億ヲ數フル大增稅デアリ、僅カニ收入ノ見
積ヲ變更スレバ七千万圓ハ愚カ、一億圓デ
モ立チ所ニ現ハレテ來ルト確信致シマスカ
ラ、斷ジテ此ノ點ヲ憂フル必要ハナイト存
ズルノデアリマス、併ナガラ何ト言ツテモ我
國未曾有ノ稅制大改革デアリ、前代未聞ノ
大增稅デアリマスカラ、本案ハ兩院通過シテ
成立スルノ曉、政府當路ノ法ノ運用一步ヲ
誤レバ、其ノ結果ハ國民生活ノ脅威トナリ、
家族制度ノ破却トナリ、低物價主義ノ崩壞
トナリ、惡性「インフレーション」ヲ誘發スル
ニ至ルノ虞ガ少クナイノデアリマシテ、私
共ハ深ク此ノ點ヲ憂慮スル次第デアリマス
次ニ地方稅制デアリマスルガ、多年ノ問
題デアリマシタル地租、家屋稅、營業稅ノ
三稅ノ實質的委讓、分與稅制度ノ創設、戶
數割ノ廢止ヲ根幹トスル根本的ノ改正ガ行
ハレ、之ニ關聯シテ義務〓育費ノ市町村負
擔ヨリ、府縣負擔ニ移スコト等ノ地方財政
上ノ變革ガ行ハルルノデアリマスガ、是ハ私
共ノ雙手ヲ擧ゲテ歡迎スル所デアリマス、
唯此ノ法案ガ企ツルヤウナ組立ヲ以テシテ
ハ、果シテ能ク地方民負擔ノ均衡ヲ保チ、
且ツ再ビ其ノ負擔ノ過重ヲ招來セザルノ保
障ガ得ラルルヤ否ヤ、又負擔分任ノ趣旨ニ
出デタル市町村民稅ガ軈テ再ビ形ヲ變ヘタ
ル戶數割トナツテ、地方民ヲ苦シマシムル
ガ如キコトナキヲ保障シ得ルデアリマセウ
カ、又土地、家屋、營業ニノミ重キ負擔ヲ
賦課スルガ如キ危險ハナイデアリマセウカ、
私共ハ此ノ稅制施行ニ付テ特ニ心ヲ用ヒ、
萬一ヲ警戒スルニアラズンバ、數年ナラズ
シテ中央ニハ增稅又增稅、地方ニハ負擔ノ
不均衡、負擔ノ過重ヲ愬フルノ聲ヲ開クニ
至ランコトラ恐ルルノデアリマス、政治ノ
要道ハ民ノ信ヲ得ルニアリ、民ヲシテ喜ン
デ國家ノ命ニ遵從セシムルコトデアリマス、
近來事アレバ直チニ强權ノ發動ヲ云々ス
ル者ガアリマスガ、强權ノミヲ以テシテ果
シテ能ク民ノ信賴ヲ買フコトガ出來ルカ否
カ、內外古今ノ史乘ハ、幾多貴重ナル〓訓
ヲ吾々ニ殘シテ居ルノデアリマス、時トシテ
强權ノ發動亦巳ムヲ得ズトスルモ、政治家ハ
民ヲシテ悅服セシムルノ要諦ヲ了得シナケ
レバナリマセヌ、殊ニ今囘ノ如キ大增稅ヲ
行ヒ、重キ負擔ヲ國民ニ求ムルニ當ツテハ、
政府先ヅ自ラ襟ヲ正シ、此ノ稅制改革ノ已
ムヲ得ザル所以ヲ總テノ國民ニ徹底セシメ、
苦樂共ニ、=之ヲ國民大衆ト共ニスルノ誠意
ヲ披瀝シナクテハナリマセヌ、政府ノ諸公
以テ如何ト爲ス、深ク自ラ戒ムル所ガナク
テハナルマイト存ズルノデアリマス
產業組合其ノ他ノ生產者ノ團體等ニ新ニ
課稅スルガ如キハ、私共ノ好マザル所デア
ルガ、今日ノ時局ガ極メテ重大ナルニ鑑ミ
テ原案ニ修正ヲ加フル程度ニ於テ滿足シタ
ノデアリマス、政府ハ斯ル團體ヲ勸奬シ、
扶掖シテ今日ニ至レル產業報國、隣保共助
ノ大精神ニ鑑ミ、此ノ事變終了ノ上ハ直チ
ニ非課稅ノ根本方針ニ復歸スルノ誓ヲ違ヘ
ザルヤウ留意セネバナラヌト存ジマス、又
此ノ稅革案ハ制度ノ簡易化ニ努力セラレタ
ニ拘ラズ、尙ホ複雜多岐ニシテ、其ノ上ニ
法律以外ノ命令事項ニ亙ル部分ガ頗ル多イ
ノデ、依然トシテ國民ノ理解ヲ困難ナラシ
メテ居ル點ニ鑑ミ、且ツ增稅ニ伴ヒ常ニ苛
歛誅求ノ聲ガ絕エナイノデアルガ、收稅ノ
局ニ當ル官吏ハ、是等ノ點ニ留意シ最モ公
正ニシテ敏活ニ事務ヲ運ビ、苟モ國民ノ怨
府トナラザルヤウ深甚ナル注意ヲ喚起スル
ト共ニ、納稅義務者ニ對シ懇切丁寧ニ之ヲ
指導シ、從來ノ如ク各個ニ納稅擔當ノ專門
家ヲ常置スルガ如キ煩累ト弊害トヲ、將來
除去スルヤウ、格別ノ努力ヲ拂ハレンコト
ヲ要請シテ已マナイノデアリマス
之ヲ要スルニ、今日ノ緊切セル時局下ニ於
テ聖戰ノ目的ヲ貫徹シ、東亞新秩序、長期
建設ノ大業ヲ完遂致シマスルニハ、如何ニ
シテモ國民經濟ノ順調ナル經過ト其ノ發達
トヲ確保致サネバナリマセヌ、此ノ緊急ノ
情勢ニ鑑ミ、特ニ本案ト國民經濟トノ調整
上ニ、更ニ一段ノ考慮ヲ拂ヒ、臨時措置法
ノ運用ヲ周密ニシテ、生產擴充、海外企業
等ノ發展ニ資スベキコトヲ强調シテ結論ト
致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=31
-
032・田子一民
○副議長(田子一民君) 藤本捨助君
〔藤本捨助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=32
-
033・藤本捨助
○藤本捨助君 私ハ第一議員倶樂部ヲ代表
致シマシテ、委員長ノ御報告ノ一部ニ反對
ヲ致シ、且ツ第一議員倶樂部、社會大衆黨、
時局同志會ノ共同提案ニ係リマスル修正案
竝ニ否決案ニ對シ、更ニ第一議員倶樂部獨
自ノ見解ニ基キマスル修正案ニ對シマシテ
贊意ヲ表スル者デアリマス先ヅ私ハ今
次稅革案ニ對シマシテ非常ナル努力ヲ致サ
レマシタル御當局ニ對シ、深甚ノ敬意ヲ表
スル者デアリマス、サリナガラ本案ヲ仔細
ニ檢討致シマスルナラバ、旣ニ標榜サレマ
シタル諸原則ニ照シ、又時局ノ重要性ニ鑑
ミマシテ、尙ホ遺憾ノ點ナシトシナイノデ
アリマス、故ニ以下其ノ二三ヲ指摘致シ、
而シテ其ノ是正ニ對シマスル希望ノ一端ヲ
開陳致シタイト思フノデアリマス
政府ハ今次ノ稅革ニ依リマシテ現行ノ所
得單稅制度ヲ改組致シ、所得複稅制度ヲ採
用致サレタノデアリマスガ、併シ其ノ稅收
ノ增加ハ、此ノ改組ニ依ルト言ハンヨリハ、
寧ロ稅率ノ引上竝ニ免稅點ノ引下ニ依ルト
申スベキデアリマス、又所得複稅制度ハ、
其ノ分類所得稅ニ於テ、所得ノ種類ニ依リ
多少稅率ヲ區別致シ、且ツ廣範圍ニ課稅ス
ルノ長所ヲ持チマスルケレドモ、人的考慮
ヲ適當ニ致シ兼ネルノデアリマス、加之比
例稅率ニ依ツテ居リマスガ故ニ、大所得者
ニ輕ク、小所得者ニ重課ヲ免レナイノデア
リマス、凡ソ負擔ノ均衡ハ、納稅義務者ノ
課稅標準ニ對スル限界效用ガ一致致ス場合
ニアルト思フノデアリマスガ、此ノ見地カ
ラ致シマスルナラバ、唯分類所得稅ダケヲ
取ツテ見マシテモ、大所得ト小所得ノ間ニ
負擔均衡ノ原則ハ具現シテ居ラナイノデア
リマス、且又今次ノ稅革ハ、國稅ガ地方稅
ノ約半額ヲ分與稅ノ形態ニ於テ背負込ン
デ居リマスガ故ニ、其ノ財源ヲ涉獵致ス爲、
大幅ノ免稅點ノ引下ヲ一擧ニ爲シ得ナイ現
行ノ制度ヲ、基礎控除ノ名ヲ以テ新稅ノ故
ニ容易ニ改組致シ、而シテ其ノ分類所得稅
ニ於テ、所謂小物搔集メ主義ニ墮シテ居ル
ノデアリマス、而シテ此ノ事ハ戰時社會政
策ニ矛盾致シテ、小額ノ所得者、或ハ收益
者ノ生活ヲ壓迫スルハ勿論、更ニ是ハ同時
ニ課稅ニ依リマスル愛國心ノ發揮ハ直接稅
ニ依ラザルベカラズト云フガ如キ、古キ傳
統ニ囚ハレタルニアラズヤノ感ガ致スノデ
アリマス、併シ愛國心ノ發揮ハ獨リ直接稅
ニ於テノミ計ルベキデナク、又小物ハ所謂
大物ニ比シテ、殊ニ物品稅ガ增徵ニ次グニ
增徵ヲ〓グル今日、消費稅卽チ間接稅ニ於
テ、相對的ニ多額ノ納稅義務者デアルト云
フコトヲ看過シテハナラナイノデアリマス、
又綜合所得稅ニ付テ見マシテモ、株式所得
ノ二割控除ヲ廢止致シ、公社債銀行預金利
子所得ノ四割控除ヲ存置スルガ如キハ)何
ト致シマシテモ理論上ノ矛盾デアルノデア
リマス、又負債利子ヲ控除致シマスルナラ
バ、何故百尺竿頭一步ヲ進メテ、一切ノ負
債利子ヲ控除致シ、サウシテ所謂消極財產
ヲ有シ、其ノ利子負擔ニ惱ミナガラ尙且ツ
納稅セザルヲ得ナイ多數ノ國民ノ苦痛ヲ緩
和致サザルカ、斯樣ニ觀ジマスルナラバ
今次稅革ニ依ル所得複稅制度ノ御採用ハ、
結局一ツノ所得ニ對シ、一度ノモノヲ二度
ニシテ課稅スル制度ニ過ギズシテ、而モ色
色矛盾ヲ藏シテ居リマスガ故ニ、稅制進化
ノ觀點カラ見マスナラバ必ズシモ理論上ノ
進步トハ言ヒ得ナイノデアリマス、故ニ私
見ヲ以テシマスルナラバ、所得單稅ニ課稅
技術上ノ非常ナル困難ハアリマスケレドモ
之ヲ克服致シマシテ、彈力性竝ニ社會政策
性ヲ有スル財產稅ヲ創設致シ、之ヲ以テ配
シ、之ヲ以テ補完スベキデアツタラウカト
思フノデアリマス
第二ニ臨時利得稅ニ付テデアリマス、長
期戰時體制下ニ於テ最モ憂慮スベキ國家
ノ疾患ハ、窮乏ノドン底ニ呻吟スル多數國
民ノ日每ニ增加スルコトト思慮ナキ戰時
成金ノ簇出スル事デアリマス、長期消耗戰
下ニ於テ國民生活ノ窮乏ハ或ハ不可避ノ姿
ト致シマシテモ、此ノ戰時成金ノ簇出ニ對
シマシテハ、何トシテモ無關心タルヲ得ナイ
ノデアリマス、惟フニ富ノ偏在ト浪費、而
シテ思想ノ惡化等、長期戰下ニ於テ最モ好
マシカラザル事態ノ根源ハ、皆玆ニ胚胎致
シテ居ルカラデアリマス、申スマデモナク
戰時經濟ノ重要ナル使命ハ、軍需品ヲ中心ト
スル生產力ノ擴充デアリマス、而シテ其ノ
需要ノ巨額ニシテ急速ナルコトハ、遂ニ軍
需品ノ價格形成ヲシテ、最高原價ノ價格法
則ニ依ラシメザルヲ得ナイノデアリマス、卽
チ軍需品ノ價格ハ、之ヲ充足スルニ必要ナ
ル經營中、最惡ノ條件ニアル經營、卽チ最
高ノ經費ヲ要スル經營ノ原價ニ依リテ形成
サレルノデアリマス、故ニ所謂限界經營以
上ノ經營ニアリマシテハ當然ニ利潤ヲ發
生セシムルハ勿論、平素ニ於テモ尙且ツ有
利ナ條件ニアル經營ニ取リマシテハ、更ニ莫
大ナル利潤ノ發生ヲ可能ナラシメルノデア
リマス、是レ軍需產業ガ平和產業ニ比シ莫
大ナル利潤ヲ獲得スル所以デアリマス、戰
時利潤ノ發生ニシテ斯ノ如クデアルトシマ
スルナラバ戰時利潤ハ斷ジテ企業者其ノ
人ノ苦心經營ノミノ結果デアリマセヌ、時
局ノ影響デアリマス、第一線將兵ノ貴イ血
稅ノ賜モノデアリマス、或ハ平和產業、犧牲
產業ノ反射的利益デモアリマス、故ニ戰時
利潤ノ發生竝ニ其ノ處分ニ對シマシテハ、假
令戰時產業ニ編成替ニ要シタル費用、新設
增設シマシタル設備ニ對スル減價償却、或ハ
戰後動員解除ニ依ル所ノ危險負擔等、色々
考慮スベキ所ハアリマスケレドモ、戰時下
ニ於テ非常ナル苦難ト機牲ニ呻吟シテ居リ
マスル平和產業トノ均衡ニ於テ、或ハ第一
線將兵ノ鬼神モ哭ク勞苦ヲ思フ時ニ、何ト
シテモ嚴正ナ統制ヲ加へネバナラナイト信
ズルノデアリマス、是レ卽チ戰時利潤ノ發
生ニ對シマシテハ利潤統制ヲ以テシ、戰時利
潤ノ處分ニ對シマシテハ配當統制竝ニ戰時利
得課稅ヲ以テスルノ根據デアリマス、而シテ
前者ニ付キマシテハ、軍需工業ニ關スル國家
管理、軍需品ニ對スル統制價格制、軍需品買
入方法トシデノ原價契約制、或ハ國家ガ軍
需工業ノ利潤ニ参加スル形態等アルノデア
リマスガ、我ガ政府ノ現在採ル所ハ未ダ徹
底ヲ缺キ、或ハ其ノ完璧ヲ期シ得ズシマシ
テ、莫大ナル戰時利潤ヲ發生セシメ、是ガ
富ノ偏在トナリ、是ガ無謀ノ消費トナリ
而シテ今ヤ國民怨嗟ノ的トナツテ居ルト云
フコトハ、何人モ否定シ得ナイノデアリマス、
故ニ私ハ、政府ハ斷乎トシテ此ノ戰時利潤
ノ發生スル源泉ニ遡リ、而シテ之ヲ抑ヘル
所ノ利潤統制ノ强化ニ邁進サレンコトヲ望
ムノデアリマス、更ニ後者ニ付キマシテ、配當
統制或ハ戰時利得課稅ガアリマスガ、配當
統制ハ姑ク之ヲ措キ、戰時利潤課稅ニ付キ
マシテモ甚ダ不徴底ト言ハザルヲ得ナイ、
惟フニ英國ハ世界大戰中、戰前二箇年ノ平
均利潤ヲ超過致シマスル利得ニ對シ、最初
ハ五〇%、次ニ六〇%、千九百十七年以來
ハ八〇%ヲ課シ、千九百十七年、千九百十
八年ニ於テハ、大英帝國ノ全收入ノ三割一
分一厘ノ戰時利得課稅ヲ擧ゲ、又佛蘭西ニ
於テモ八〇%課シタニモ拘ラズ、我國ニ於
テハ個人ノ超過利得ニ對シテ課率三〇%、
法人ニ於テハ資本金額年一割ヲ超過致シ、
平均利潤率以下ニ對シマシテハ課率二五%、
平均利潤ヲ超過致シ資本金額年三割以下ニ
對シテハ課率四五%、更ニ資本金額ノ年三割
ヲ超過スル部分ニ對シマシテ百分ノ六十五
デアルカラデアリマス、此ノ由ツテ來ル所
ハ、我國ノ法人ノ臨時利得稅ハ、現行所得
稅ニ於ケル法人ノ超過所得ニ對スル課稅ト、
現行ノ臨時利得稅ニ於ケル法人ノ乙種所得
トヲ統合致シテ居ル所ニアルノデアリマス、
何故ニ政府ハ之ヲ二本建ニ致シマシテ、戰
時利得ノ全部ニ對シテ更ニ重課致シマシテ、
戰時下ニ於ケル有ユル社會惡ノ根源ヲ是正
致サナカツタノデアルカ、然ルニ政府ハ之
ヲ爲サズ、却テ勤勞所得、事業所得ノ基礎
控除額六百圓或ハ四百圓ヲ超エマスルモノ
ヲ捉ヘテ居ルノデアリマスガ、斯ノ如キハ
所謂雜魚ヲ捕ヘテ呑舟ノ魚ヲ逃スノ類ニシ
テ、正ニ負負擔均衡ノ原則ハ何處ニアリヤト
言ハザルヲ得ナイト共ニ、又私ハ戰爭ハ少
數國民ノ金儲ケデアリ、或ハ多數國民ノ破
產デアツテハナラナイト信ズル、或ハ弱少
ノ多數國民ガ戰爭ノ負擔、戰爭ノ犧牲ニ呻
吟シテ居リマスルニモ拘ラズ、國民ノ一部
ガ戰爭ニ依ツテ利得ヲ致シ、之ヲ無思慮ニ
或ハ浪費致シ、或ハ濫費致シテ居ルヤウデ
アリマシテハ斷ジテ長期戰下ニ附キモノ
ノ思想惡化ヲ克服致シ、以テ戰時體制ヲ强
化スルガ如キハ、恰モ木ニ緣リテ魚ヲ求ム
ルガ如クデアルト信ジアスルガ故ニ、私ハ
再ビ大聲疾呼致シマシテ、不當ナル戰時利
潤ノ處分ニ對シマシテハ、課稅ニ依ル所ノ
國家干與ヲ一段ト强化サレンコトヲ望ムノ
デアリマス
次ニ稅ト物價政策ニ一言致シマス、課稅
ハ申スマデモナク、其ノ轉嫁ニ依リマシテ
物價騰貴ヲ必至的ナラシメマス、而シテ物
價騰貴ハ戰費ノ必要額ヲ增大致シマシテ、
所詮軍事豫算ノ膨脹ヲ來シ、或ハ消費者ノ
犧牲ニ於テ生產者ニ莫大ナル利潤ヲ與ヘ、
而シテ是ガ富ノ偏在ト浪費、而シテ是ガ思
想惡化等ノ社會惡ノ素因ヲ作リ、或ハ又貨
幣ノ價値下落ト形影相伴ヒマスルガ故ニ、
公債ノ實質的破棄ヲ結果致シマシテ、公債
ヘノ投資ヲ嫌厭セシメ、或ハ手持公債ヲ賣
リ急ガシメマシテ、遂ニ公債市價ヲ變動セ
シメ、戰費調達ノ根幹タル公債政策ニ一大
支障ヲ與フルニ至ルヤモ知レナイ惡循環ヲ
致シマスルガ故ニ、戰時課稅ノ財政政策的、
經濟政策的任務ト致シマシテ、斷乎低物價
政策ヲ堅持致シ、又其ノ社會政策的任務ト
致シマシテ、國民ノ全層ニ生活必需品ニ對
スル一定ノ最低需要ノ充足ヲ確保セシメ、
而シテ資力ナキ者ニ對シマシテモ、食糧品
供給ノ部面ニ於テ恐ルベキ物資缺乏ノ結果
ノ生ゼザルヤウ注意致サナケレバナラナイ
ノデアリマス、政府ノ低物價政策ヲ眺メマ
スト、貯金ヤ公債消化ニ依ル惡性「インフレ
ノ防止、生產力ノ擴充、配當統制、物價委
員會ノ設置、公定價格制ノ採用、更ニ暴利
取締令、又ハ經濟警察等ヲ以テ致シテ居リ
マスルガ、未ダ完璧ヲ期シ得ナイノデアリ
マス、惟フニ一定物資ニ對スル生產、配給、消
費ノ綜合的ノ一元的統制ヲ今尙ホ行ツテ居
ナイカラデアリマス、中ニ就キマシテ最モ
遺憾ナルコトハ、不足資材ニ對スル消費ノ
割當ヲ斷行致シテ居ラナイコトデアリマ
ス、思フニ生產力ノ擴充ガ物資又ハ勞力ノ
不足、資金統制、或ハ爲替管理等ニ依リマ
シテ遲々トシテ牛步ノ如キ今日ニ於キマシ
テハ、低物價政策ノ實現ハ、一ニ國民ノ消費
ノ規正ヲ强化致ス外ナク、依然トシテ國民
ノ消費ヲ資本主義的或ハ自由主義的無統制
ニ放任シテ置キマシテハ、斷ジテ物ノ需給
關係ノ調整ハアリ得ナイノデアリマス指
手或ハ又如何ニ經濟警察ノ威力ヲ以テシ
マシテモ、資力アル者ノ買溜ハ減少シ得ズ、
隨テ其ノ程度ニ於テ資力ナキ者ノ生活必需
品充足ニ對シマシテ支障ヲ與ヘ、遂ニ戰時
體制下ニ於テ最モ好マシカラザル社會不安
ヲ釀成セシメザルヲ得ナイフデアリマス、
故ニ私ハ政府ハ右顧左眄スルコトナク、斷
乎不足資材ニ對スル强力ナル消費規正ヲ行
ヒ、以テ課稅ニ依ル物價騰貴ト、更ニ小所
得小收入ノ故ニ惱ム國民大衆ニ對シマシ
テモ、生活必需品ニ對スル一定ノ最低需要
ノ充足ヲ確保致サシメナケレバナラナイト
思フノデアリマス
次ニ稅ト生產力擴充ニ付キ簡單ニ一言致
シマス、長期戰下ニ於キマシテ獨リ軍需
品ニ限ラズ、近代戰ノ特色ガ國家總力戰ト
ナリマシテ、非戰鬪員タル國民ヘノ物資供
給ガ軍需ノ重要ナル構成要素トナリマシタ
ル今日、戰時經濟ニ課サレマシタル最高ノ
使命ハ、生產力擴充ニアルコトハ申スマデ
モアリマセヌ、而シテ現實ノ如キ資本主義的
經濟機構ノ下ニ於キマシテハ之ヲ法規ノ
統制力ニノミ期待スルコトハ出來マセヌ、
所詮利潤追求ノ個人的創意、個人的活動ニ
之ヲ俟ツ外ナイノデアリマス、故ニ戰時經
濟ニ於テ殊ニ物資不足ノ今日、生產力擴充
ヲ急務トスル際ニ於キマシテハ、全體ノ經
濟ノ發達、全體ノ生產力擴充ノ爲ニ、無制
限ナル營利活動ハ之ヲ許サレザルガ如ク又
營利活動ノ全面的否認モ亦生產力擴充ヲ急
務トスル戰時經濟ノ自殺的矛盾ト申サネバ
ナリマセヌ、玆ニ戰時利潤ニ對スル課稅ノ
限度ガ重要ナ「テーマ」トナリ、而モ今次稅
革ニ盛レル課率ガ、戰時經濟ノ有スル使命
ニ卽シテ果シテ妥當ナリヤ否ヤノ問題モ生
ズルノデアリマス、併シ私ハ之ニ對シマシ
テハ事變以來多數ノ戰時成金ノ簇出致シタ
コト、更ニ遊興飮食稅ガ豫想外ニ莫大ナ額
ニ達シタコトヲ擧ゲレバ十分デアルト信ジ
マスガ故ニ、今ハ之ニ言及致シマセヌ、唯茲
ニ一言致シタイコトハ、凡ソ生產力擴充ニ
支障ヲ及ボスモノハ獨リ課稅ノミニ限ラヌ
ト云フコトデアリマス、卽チ生產力ノ擴充
ニ支障ヲ及ボスモノニハ尙ホ他ニ重大ナル
要素ノアルト云フコトデス、其ノ一ツハ配
當統制デアリマス、配當統制ハ最後ニ戰時
利潤ノ處分ニ對シテ一定ノ制限或ハ干涉ヲ
與ヘルモノデアリマスガ故ニ、一旦與ヘラ
レタモノヲ取戾サレルヤウナ感ヲ與ヘ隨
テ企業活動力ヲ萎縮セシメテ、結局生產力
ノ擴充ニ支障ヲ及ボスノデアリマス、故一
私ハ生產力擴充ノ見地カラ致シマスルナラ
バ利潤ノ配當統制ヨリモ、其ノ利潤ノ發
生スル源泉ニ遡ツテ之ヲ抑ヘル利潤統制ニ
如カズト思フノデアリマス、第二ニ戰時經
濟ノ特色ト致シマシテ、戰時產業動員ニ要
シタル費用ノ囘收、或ハ新設擴充スルニ要
シタル經費ノ減價償却等ニ對スル不安、更
ニ戰後動員解除ノ次ニ來ルベキ危險負擔等
ニ對スル懷疑デアリ、而シテ此ノ不安、此
ノ懷疑ガ生產力擴充ニ重大ナル支障ヲ及ボ
スノデアリマス、故ニ生產力擴充ノ爲ニハ、
此ノ不安、此ノ懷疑ヲ一掃致スコトガ肝要
デアリマス、此ノ點ニ付キマシテ、政府ハ
新シキ構想工夫ヲ致シテ居ルヤウデアリマ
スルガ、例ヘバ英國ニ於テ世界大戰中採リ
マシタ方法ノ如ク、例ヘバ戰後減價償却ノ
不足シタル部分ヲ國家ガ補償スル方法、或
ハ戰後尙且ツ一定ノ製品ノ註文ヲ與ヘテ、
戰後動員解除後ニ來ルベキ危險ノ負擔ヲ國
家ガ保障スルト云フヤウナコトモ一ツノ方
法トシテ考ヘラレルノデアリマス、敢テ政
府ノ御賢慮ヲ煩ハシタイノデアリマス
最後ニ稅ト實行豫算編成ノ問題デアリマ
ス、櫻內大藏大臣ハ幾度カ、今ノトコロ實
行豫算ヲ編成スル意思ナシト仰セラレタノ
デアリマスルガ、併シ政府ハ國家機構中最
大ノ消費者デアリ、而モ其ノ購買力ハ粒々
辛苦國民ノ膏血ノ結晶デアリマスルガ故ニ、
之ヲ現實ニ消費スルニ當リマシテハ、物
一錢ト雖モ空シクスベカラザルハ勿論、
又莫大ナル政府ノ購買力ヲ撒布スルコトニ
依リマシテ生ズル通貨ノ膨脹、物價ノ騰貴
及ビ之ニ因リテ生ズル諸々ノ弊害ヲ未然ニ阻
止致スベキデアリマス、是ガ爲ニ政府ハ利
潤發生ノ源泉ニ遡リテ適切妥當ナル製品原
價ヲ審査シ、之ニ妥當ナル利潤ノミヲ認メ
テ適正價格ヲ形成致シ、以テ不當ナル戰時
利潤ヲ發生セシムル餘地ヲナカラシメネバ
ナラナイノデアリマス、此ノ爲ニハ何ト致
シマシテモ實行豫算編成ニ如クモノハナイ
デアリマス、斯ノ如ク致シマシテ、若シ百
三億豫算ノ約六割ガ物件費ト致シ、其ノ一
割ヲ節約緊縮シ得ルト致シマシテモ、六億
ト云フ節約ガ可能ニナリマスルガ故ニ、玆
ニ平年度國家ノ純增收五億一千万圓ノ增稅
カ、或ハ六億ノ節約カノ問題ガ起ツテ來ル
ノデアリマス、故ニ戰時財政ノ任務ト致シ
マシテ、今次稅革ニ依ル增稅ヲ不可避ト致
シマシテモ尙且ツ實行豫算編成ノ急務ヲ
痛感致スノデアリマス
以上ノ如ク見マスルナラバ、今次ノ稅革
ハ御當局ノ非常ナル御苦心ノ成果デアリマ
スケレドモ、尙ホ且ツ幾多ノ矛盾缺陷ヲ有
シテ居ルノデアリマス、併シ時局下ニ於テ
已ムヲ得ザル稅革ト致シマシテ、私ハ冒頭
ニ於テ述ベマシタ如ク之ニ贊意ヲ表シ、而
シテ幾分ナリトモ其ノ矛盾或ハ缺陷ヲ是正
スル一助ト致シマシテ修正案ヲ提出致シ、
更ニ又之ニ贊意ヲ表スル次第デアリマス(拍
手ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=33
-
034・田子一民
○副議長(田子一民君) 立川平君
〔立川平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=34
-
035・立川平
○立川平君 私ハ立憲政友會ヲ代表致シマ
シテ委員長報告ニ贊成ヲ致シ、且ツ民政、
政友三派共同ノ修正案ニ贊意ヲ表スルモノ
デアリマス、玆ニ簡單ニ其ノ趣意ヲ明ニ致
シタイト思ヒマス
稅制ノ改革ハ我國朝野數年來ノ懸案デア
リマシテ、殊ニ從來動モスレバ不均衡ナル
租稅ノ重壓ニ苦ンデ居ツタ地方農山村ノ切
實ナル要望デアツタノデアリマス、今囘此
ノ懸案ガ解決セラレント致シテ居リマスノ
ハ洵ニ欣快ノ至リデアリマシテ、政府ノ
勞ハ之ヲ多トスルニ吝カデナイノデアリマ
ス、此ノ意味ニ於キマシテハ吾々ハ此ノ稅
制改革案ニ對シテ、大イニ贊成ノ意ヲ表ス
ルノデアリマスガ、其ノ內容ヲ一見致シマ
スル時ニ、吾々ハ玆ニ平年度五億一一千万圓
ニ上ル大增稅ヲ見ルノデアリマス、時局ノ
重大ヨリ致シマシテ、洵ニ已ムヲ得ザル結
果デアルトハ云ヘ、國民ニ取ツテ非常ナル
重課ト相成ル次第デアルノデアリマス政
府ハ此ノ稅制改革案ニ對シマシテ、或ハ負
擔ノ均衡、或ハ經濟諸政策トノ調和、或ヘ
收入ノ增加ト彈力性、或ハ稅制ノ簡易化、
是等ノ目標ヲ提ゲテ、大イニ自讚ヲ致シテ
居ルノデアリマスルガ、私ハ玆ニ多少ノ疑
問ヲ持タザルヲ得ナイノデアリマス、如何
ナル場合デアリマシテモ、增稅ハ國民生活
ニ苦痛ヲ與ヘ、經濟界ヲ壓迫シテ、之ニ惡
影響ヲ與フルモノデアルト云フコトハ、否
ムコトガ出來ナイノデアリマス、今囘ノ如
キ厖大ナル增稅ノ場合ニ於テ、殊ニ左樣デ
アリマス、政府ノ謂フ經濟諸政策トノ調和
ト云フノモ、畢竟致シマスルニ、消極的ニ
成ルベク經濟界ニ與フル影響ヲ少クスルト
云フ、一ツノ「ブレーキ」條件ト見ルベキモ
ノデアルト思フノデアリマス
〔副議長退席、議長著席〕
政府ハ此ノ增稅ニ依ツテ通貨ヲ縮小シ、惡
性「インフレーション」ヲ防止スルノダト言
ツテ居リマス、如何ニモ增稅ハ其ノ意味ニ
於テ惡性「インフレ」防止ニ相當ノ效果ヲ持
ツデアリマセウ、併シナガラソレヲ目標ト
シテ增稅ヲスルト云フコトハ私ハ當ラナイ
ト思フ、今日ノ場合惡性「インフレーショ
ン」ノ防止固ヨリ大イニ必要デアリマス)
併シナガラソレニハ自ラ他ニ其ノ途ガアル
筈デアリマス、否寧ロ苛酷ナル增稅ニ依ツ
テ、若シ國民ニ濫費浪費ト云フコトヲ刺戟
サセルヤウナコトガアリマシタナラバ、卽
チ端的ニ申スナラバ、節約ヲシテモ貯蓄
ヲシテモ高イ稅金ニ取ラレテシマフト云フ
ヤウナ考ヲ以テ、サウシテアベコベニ浪費
ヲシテ、惡性「インフレーション」ヲ助長ス
ル虞ハナイカ、斯樣ナ虞ハナイトモ言ヘマ
セヌ、法人ニ付キマシテモ、卽チ產業界ニ
於キマシテモ、實業界ニ於キマシテモ、同
樣ナ虞ハアル卽チ會社ニ於テ利潤ヲ貯ヘ
テモ、高イ稅金ニ取ラレテシマフト云フヤ
ウナ意味カラ、所謂社內配當ノ增加ト云フ
ヤウナ傾向ガナイデモナイノデアリマス、
デアリマスカラ吾々ト致シマシテハ此ノ
稅制案ニ對スル根本的ナ熊度ハ、是マデ歪
メラレテアツタ稅制ノ體系ヲ建直シヲスル
サウ云フ所ニ此ノ主眼ヲ置イテ、時局ノ重
大ノ際相當高度ノ增稅ハ已ムヲ得ナイ、併
シナガラ飽クマデモ今囘ノ稅制改革案ハ將
來ニ備フルモノデナケレバナラナイ、今日
ニ於テハ極度マデ增稅ヲスルト云フ場合デ
ハ斷ジテナイト思フノデアリマス、隨テ國
民生活ノ安定ハ飽クマデモ之ヲ擁護シ、生產
擴充ニ對シマシテハ出來ルダケ其ノ影響ヲ少
クシヨウト考ヘタ次第デアルノデアリマス
此ノ度ノ增稅案ニ依ツテ、政府ハ平年
度國稅地方稅ヲ通算致シマスルト純增
稅額ハ五億二千万圓ト言ツテ居ルノデアリ
マスガ、併シ此フ數字ハ全體何處ニ其ノ根
據ヲ置イタモノデアルカ、國民ノ總所得
ト云フヤウナ所カラ割出サレタモノデアル
カ、或ハ又公債ノ利子支辨ト云フヤウナ、
豫算上ノ關係カラ必至的ニ出テ參ツタ數字
デアルカ、斯ウ云フ點ニ對シマシテハ政府ノ
言フ所ハ甚ダ明確デナイノデアリマス、政
府ハ此ノ程度ノ增稅ハ產業界、經濟界ニハ
影響ヲ及ボサナイト言フダケデ、卽チ此ノ程
度ノ增稅ナラバ差支ナカラウト云フヤウナ
消極的ナ理由ヲ以テ、此ノ數字ヲ立テタヤ
ウニシカ伺ハレナイノデアリマス、サウシ
テ見マスルト、吾々カラ見マスルト、アレ
ニモ稅金ヲ課ケロ、是モ增稅出來ルダラウ
ト云フヤウナ風ニ、漫然ト而モ極メテ苛酷
ニ寄セ集メタ數字ガ斯ウナツタト見テモ、
已ムヲ得ナイノデハナイカト考ヘマス、斯樣
ニ致シマシテ吾々ガ虛心坦懷ニ此ノ案ノ內
容ヲ見マスル時ニ於テ、私ハ其ノ稅ガ餘リニ
過重ナル負擔トナツテ、而モ所謂大衆課稅
トナツテ、國民ノ中層以下ノ大衆ニ振掛ツ
テ居ルト云フコトヲ知リ、〓力カ憂慮ニ堪ヘ
ヌモノガアルノデアリマス、吾々ハ結城、
賀屋、石渡ノ三君、此ノ三代ノ大藏大臣ニ
依ツテ、此ノ數年間ニ實ニ七億八千百万圓
ノ增稅ヲ負擔致シマシタ、其ノ上ニ此ノ增
稅トナツタノデアリマス、而モ時代ハドウ
デアルカト言ヘバ年々膨脹スル大豫算ト、
日滿支ノ通貨政策ト相俟ツテ、國內ニ紙幣
ノ洪水ハ滔々ト流レテ居リマス、物資ハ生
產ノ偏リト、圓「ブロック」ヘノ輸出ノ激增
ニ依ツテ、國內ニ於テハ著シク不足ヲ來シテ
居ル、殊ニ生活必需品ノ最近ノ暴騰ハ如何デ
アリマセウカ、公定價格ト云フモノガアルコ
トハアリマスガ、其ノ價格ヲ維持シテ居ル
モノハ量目ヲ減ジ、品質ヲ落シテ、質ト量
トニ依ツテ暴騰ヲ致シテ居ルノデアリマス、
サウシテ所謂闇相場ハ到ル處ニ橫行濶步シ
テ居ル、斯ウ云フ狀態ニ於テ年收四五百圓、
卽チ政府ノ增稅ノ目標トナツタ、此ノ四五
百圓ノ收入ノ人達ニ取ツテ、其ノ上ニ稅金
ヲ取ラレルト云フコトハ、是ハ此ノ儘斷ジ
テ見逃スコトハ出來ナイト思フノデアリマ
ス(拍手)我等ハ此ノ點ヲ考慮致シテ此ノ稅
制案ニ向ツタノデアリマス、吾々ガ所得稅
法ニ於テ不動產所得ノ免除點ヲ、政府原案
百圓カラ二百五十圓ニ引上ゲ、或ハ各種所
得ノ基礎控除ヲソレ〓〓百圓ヅツ引上ゲタ
コト又小額保險料、ヲ所得ノ中カラ控除ス
ルコトニ致シタコト、是等ハ尙ホ足ラナイ
モノハアリマセウケレドモ、國民ノ生活不
安ヲ最小限度ニ食止メヨウトシタ努力デア
ルノデアリマス(拍手)地租免稅點ニ付テ、獨
リ自作農ノミナラズ、一般耕地ニ於テ其ノ
賃貸價格二百圓未滿ノモノヲ免稅シタト云
フノモ、等シク農村民ノ生活上ノ重壓ト云
フモノヲ顧慮シタ結果デアルノデアリマス
次ニ私ハ產業方面カラ致シマシテ今囘ノ
稅制案ヲ檢討シテ見タイト思ヒマス、今日
我國ニ於キマシテハ何ヲ措イテモ最モ重大
ナル問題ハ、生產力ノ擴充デアルト云フコ
トハ申スマデモアリマセヌ、而シテ率直ニ
申上ゲルナラバ生產殊ニ重要物資ノ生產
ニ於テハ洵ニ憂慮スベキモノガアリマス
政府ニ物動計畫ノ實績ヲ聽イテ見マスト、
悉ク滿足ニ進行シテ居ルヤウニ、增產サレ
テ居ルヤウニ申サレマスガ、具體的ニソレ
ナラバ鐵ハドウダ、石炭パドウダ、電氣ハ
ドウダト云フヤウナ問題ニナリマスト、諸
君御承知ノ如キ有樣デアリマシテ、政府ノ
オ座ナリノ說明ニ私共ハ其ノ儘安心シテ居
ルコトハ出來ナイ狀態デアルノデアリマス、
併シナガラ私ハ玆ニ產業政策ヲ論ジテ居ル
時間ガアリマセヌノデ、統制ノ關係カラ致
シマシテ簡單ニ論ジテ見タイト思ヒマス
元來現在ノ經濟組織ヲ破壞シナイ限リニ
於テハ、相當ノ利潤ト云フモノヲ無視シテ
生產擴充ヲ圖ルト云フコトガ斷ジテ出來ナ
イノデアリマス、是ハ善惡是非ノ問題デハ
ナイ、現實デアル此ノ頃政府ノ若イ官僚
諸君ノ指導精神ニ依レバ、利潤ヲ甚シク輕
視シテ居ル傾キガアリマス、若イ官僚諸
君ノミデハナイ、·大藏大臣ガ委員會ニ於
テ申サレマシタ、其ノ御言葉ヲ聽イテ居リ
マスト、利潤ト云フモノヲ一割程度ニ抑ヘ
テ、ソレ以上ノ利潤ハ幾ラ稅ニ取ラレテモ
忍バナケレバナラナイト云フヤウナコトヲ
仰シヤツタノデアリマスガ、其ノ考ヘ方デ
現狀ニ於テ果シテ生產ハ擴充出來ルデアリ
マセウカ、今囘ノ稅法改正ニ依ツテ法人稅
率ハ少シク低減致シタノデアリマスガ、其
ノ代リ課稅方法ノ變更ニ依ツテ急激ナ增加
ニナツテ居リマス更ニ又全然性質ノ違フ
超過所得稅ト臨時利得稅ヲ一〓ニシテ、サ
ウシテ非常ナル高率ノ課稅ヲ致シテ居ルノ
デアリマスガ、果シテ產業界ノ振興ヲ期待
シ得ルカ疑ナキヲ得ナイノデアリマス此
ノ點ニ付キマシテ政府ノ豫定ニ依レバ增稅
約一億八千万圓ト言ハレテ居ルノデアリマ
スルガ、恐ラク是ハ更ニ厖大ナル數字トナ
ツテ現ハレテ來ルノデハナイカ、此ノ重壓
ニ耐ヘテ產業擴充ガ果シテ豫定通リ出來ル
カドウカト云フコトハ是ハ確ニ疑フ餘地
ガアルト思ラノデアリマス、金ノ卵ヲ生ム
鷄モ腹ヲ割ラレテシマツテハ最早卵ハ出
テ來ナイノデアリマス、產業界ヲ殷賑ナラ
シメテコソ生產ノ增加モ期待出來ルシ、稅
收入ノ增加モ圖ルコトガ出來ルノデアルト
考ヘル、私共ハ此ノ實情ニ照シテ四五ノ修
正ヲ致シタノデアリマス、卽チ所得稅法中ノ
法人ノ〓算合併ノ際ニ於ケル所謂「看做ス所
得」ニ付テ、從來山林所得ノ場合ニ用ヒラレ
テ居ツタ五分五乘ノ課稅方法ニ依ツテ之ヲ
緩和致シマシタ、或ハ水產所得ノ算定ヲ過去
三年ノ平均ニ之ヲ求メルコトニ致シタ、或ハ
株式配當ノ場合源泉課稅ニ於テ一割控除ヲ
認メ、又不動產其ノ他ノ所得算定ノ場合ニ
於テ其ノ收入ヲ得ルニ必要ナル負債ノ利子
ヲ控除スルコトニ致シタナドハ、皆其ノ考カ
ラ出タ修正デアルノデアリマス(拍手)尙ホ
此ノ負債利子ノ控除ニ付キマシテハ吾々
ハ負債ノ利子ハ總テ所得中カラ之ヲ控除ス
ベシト云フ意見ヲ持ツテ居ルノデアリマス、
苟モ負債ガアリ其ノ利子ヲ支拂フ以上ハ、
ソレガ如何ナル原因デアリマセウトモ、所
得ヲ減ラスト云フコトニ於テハ是ハ同ジデ
アル之ヲ所得カラ減ラスト云フコトハ
洵ニ合理的デ當然ナコトト思フノデアリマ
ス、又公共目的ニ對スル個人法人ノ寄附金
ト云フモノモ、是亦其ノ意味ニ於テ所得ノ
中カラ減サナケレバナラナイ、控除シナケ
レバナラナイト云フ意見ヲ持ツテ居ルノデ
アリマス、吾々ハ强ク是等ノ點ヲ主張シ、
其ノ實現ヲ圖ツタノデアリマスルガ、同志
ノ諸君トノ協調ニ依ツテ、是非共此ノ稅制
改革案ヲ成就セシメナケレバナラナイト云
フ此ノ必要カラ致シマシテ巳ムヲ得ズ今
囘ハ是等ノ點ヲ割愛ヲ致シタ、併シナガラ
此ノ點ニ付テハ切ニ政府ノ考慮ヲ煩ハシテ
置クノデアリマス、法人稅法ニ於テ政府ノ
原案ガ繰越缺損ヲ前一年ノ分ニ限ツテ損金
トシテ之ニ算入スルコトヲ認メタト云フコ
トヲ、前三年間ニ改メマシタノモ、是等モ
產業振興ノ爲ニ私共ハ圖ツタト信ジテ居リ
マス
尙ホ特別法人稅、特ニ產業組合ノ課稅問
題ニ付キマシテハ一言シタイト思フノデア
リマスガ、申スマデモナク我國ニ於ケル產
業組合ハ組合相互主義ニ依ルノデアリマシ
テ、一般人ヲ相手トスル營利團體デハアリ
マセヌ、隨テソコニハ營利ノ追求ノ精神ハ
毫末モナイノデアリマス、觀念上利潤ト云
フモノガアルコトヲ許サナイ、隨テ之ニ課
稅ヲスルト云フコトハ、是ハ理論的デハナ
イト思フノデアリマス、併シナガラ今日國
家ノ必要ハ產業組合ニ對シテモ尙ホ財政上
ノ援助ヲ求メテ居ルノデアリマス、產業組
合モ亦之ニ應ズルノ雅量ヲ持ツテ然ルベキ
デアルト思フノデアリマス(拍手)此ノ見地
カラ致シマシテ、吾々ハ此ノ新稅ヲ認メマ
シテ、而モ產業組合ノ發展ヲ阻碍セザラン
ガ爲ニ、稅率ヲ輕減シテ之ヲ認メタノデア
リマス、而シテ本稅ハ飽クマデモ原則的ノ
モノデナイト信ジマスルガ故ニ、支那事變
終了ノ直後ニ於テハ之ヲ廢止スルト云フコ
トヲ、法文ニ明示致シタノデアリマス指
手ノ
相續稅ニ付キマシテハ從來幾多ノ非難ガ
アリマシタ、今囘稅率ガ改正サレテ非常ニ
高度ニナツタノデアリマスルカラ、是マデ
ノヤウナ徴稅ノ仕方ヲヤリマスルト、其ノ
弊ハ測リ知ルベカラザルモノガアルト思ヒ
やく、我國家族制度ノ美風ヲ是ガ爲ニ破壞
スルト云フ虞アリト考ヘルノデアリマス
之ヲ緩和スル爲ニハドウシテモ物納ノ制度
ヲ認メルノ外ハナイ、物納ノ制度ヲ認メマ
スルナラバ、稅務署ノ評價ハ勢ヒ公正ナラ
ザルヲ得ナイノデアリマス、此ノ制度ヲ認
メマスルナラバ、私ハ他ノ諸點ニ於テ之ヲ
改正シナクテモ、從來ノ非難ハ是ハ一掃ス
ルコトガ出來ルト信ジマス(拍手)政府ハ今
更調査會ナドヲ置ク必要ハアリマセヌ、ド
ウカ一日モ早ク之ヲ實現スルヤウニ具體化
シテ行ツテ貰ヒタイト云フコトヲ、此ノ際
强ク要望致シテ置キマス(拍手)
地方稅制ノ改正ハ地方自治體ノ財源ヲ確
實化シタト云フコトニ於テ、又其ノ體系ヲ
簡易化シタト云フ點ニ於テ、確ニ面目ヲ一
新致シマシタ一大進歩デアリマス、當局ノ
苦心ヲ吾々ハ感謝致スノデアリマス、併シ
ナガラ尙ホ滿足シ得ザルモノガ二三ゴザイ
ママー政府ハ地租、家屋稅、營業稅ノ三收
益稅ヲ國稅トシテ徵收シテ、更ニ之ヲ地方
ニ還元スル制ヲ採ツテ居ルノデアリマス
ガ、我黨ガ多年唱道シテ參リマシタ如ク、
何故ニ百尺竿頭一步ヲ進メテ之ヲ直接地方
ニ委讓スルノ制ヲ採ラナカツタカ(拍手)之
ニ對スル政府ノ辯解ハ吾々ハ毫モ首肯スル
コトガ出來得ナカツタノヲ遺憾ト致シマス、
地方分與稅ナルモノノ創設ニ依ツテ、或ル
意味ニ於テハ地方團體ノ財源ハ確立シタト
言ヘルノデアリマス、併シナガラ是ハ一步
ヲ誤リマスルト、地方自治ノ崩壞ノ虞ガアル
ノデアリマス、サモナクテモ最近官僚ノ勢
力ハ增大致シマシテノ地方ノ町村ハ事每ニ
縣廳ノ鼻息ヲ窺ツテ、一切合財其ノ顯使ニ
甘ンジナケレバナラナイト云フヤウナ傾向
ガアリマス、今囘ノ改正法ニ依ツテ其ノ弊
ガ愈〓甚シクナラナケレバ宜イガト思ツテ居
ルノデアリマス、斯ノ如ク致シマシテ地方
自治制ノ前途聊カ憂慮ニ堪ヘヌモノガアリ
やく、地方町村ヲシテ縣廳ニ隸屬セシメ、
其ノ出店ノヤウナモノニスルナラバ何ヲカ
言ハンヤデアリマスルガ、町村自治ヲ以テ
國政ノ礎石ト爲シ、地方團體ヲ以テ產業振
興ノ源泉タラシメントスルナラバ、政府ハ
此ノ點ニ付テ十分ノ注意ヲ拂ハナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス(拍手)
而モ此ノ際更ニ一言ヲ附加致シタイノ
ハ我國ニ於テハ從來國ノ事務ヲ無制限ニ
町村ニ委任シテ、町村ハ其ノ煩ニ堪ヘナイ、
費用ノ支出ニ苦シンデ居ルト云フ弊ガアツ
タノデアリマスルガ、最近ニ於テ益〓甚シ
クナツテ參リマシタ、獨逸ノ如ク、法律ヲ以
テ財源ヲ與ヘナケレバ委任事務ヲ押付ケル
コトガ出來ナイヤウニスルカ、或ハ其ノ他
ノ方法ニ依ツテ何トカ致シテ是ガ匡正ヲ圖
ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、戶
數割ノ廢止ハ地方民ノ最モ喜ブ所デアリマ
ス、戶數割ハ確ニ惡用セラレテ惡稅トナツ
テ居リマシタガ、併シナガラ之ニ依ツテ地
方ハ不時ノ必要ヲ極メテ便利ニ解決シテ參
ツタノデアリマス、而シテ地方ニハ不時ニ
相當ノ費用ヲ捻出シテ處理シナケレバナラ
ナイ場合ガ屢〓起ルノデアリマス、將來此ノ
必要ヲ如何ニシテ滿スノデアルカ、新制度
ニ依レバ三收益稅ノ附加稅ニ依ツテ滿ス外
ハナイノデアリマス、而モ此ノ三收益稅ノ
中デ、營業稅ヤ家屋稅ハ地方ニ於テハ多額
ノ收入ヲ期待スルコトガ出來マセヌ、勢ヒ
地租ニ於テノミ之ヲ求メザルヲ得ナイノサ
ウシテ此ノ附加稅ハ、許可サヘ得レバ無制
限ニ賦課スルコトガ出來ルコトニナツテ居
リマス、是ハ極メテ危險千萬デアリマシテ、
地租納稅者ノミガ戶數割ニ代ル厖大ナル負
擔ヲ荷フ虞ガ生ズルノデハナイカト考ヘラ
レマス(拍手)政府ハ之ヲ如何ニ處理スル
カ、十分ニ御考ヲ願ヒタイト思ヒマス、更
ニ目的稅デアリマス都市計畫稅ニ付テ、府
縣知事ハ其ノ府縣ノ邊陬ノ僻地ニモ之ヲ尙
ホ賦課スルコトガ出來ルヤウニナツテ居リ
マスコトハ、最モ不合理千萬デアルト思ヒ
マス、政府ハ急速ニ是ガ改正ヲ圖ラナケレ
バナリマセヌ
以上ノ如ク數多ノ修正ヲ施シマシテ、吾
吾ハ此ノ劃期的ノ大增稅ヲ伴フ稅制改革諸
法案ニ對シテ贊成ヲスルノデアリマス(「資
本家擁護ノ辯終リ」ト呼フ者アリ)思ヘバ明
治ノ元年ニハ僅ニ三百十五万七千圓デアツ
タ稅收入ガ、今日ハ其ノ千百倍ニ上ツテ居
ル、斯樣ナル厖大ナ國力ノ飛躍ト云フモノ
ハ實ニ驚歎ニ値スルモノデアリマシテ洵
ニ國家ノ爲ニ私ハ慶祝スベキ數字デアルト
考ヘマス(拍手)併シ政府ガ萬一、國民ノ多
數ガ誰モ彼モ大シタ苦痛ナシニ此ノ稅金ヲ
拂ツテ居ルダラウト思ツタナラバ、ソレハ
大變ナ間違ビデアルト云フコトヲ申上ゲタ
イ(拍手)殊ニ徵稅ノ官吏ハ從來徒ニ徵稅額ノ
多イノヲ以テ誇ルト云フヤウナ弊ガアリマ
シテ、苛斂誅求ノ非難ハ隨所ニ之ヲ聽クコ
トガ出來ルノデアリマス(拍手)斯ノ如キ大
增稅ガ行ハレマシタナラバ、一層此ノ非難
ガ多クナルノデハナカラウカト云フコトヲ
惧レマス、ドウカ從來ノ此ノ弊風ヲ一掃シ
テ、善良ナル國民ヲシテ怨嗟ノ聲ヲ放ツコ
トナカラシムルヤウニ、政府ノ善處ヲ求ム
ル次第デアリマス(拍手)
最後ニ私ハ政府ニ對シテ强ク要望スル、
吾々國民ハ此ノ大增稅ヲ甘受致シタノデア
リマス、而モ將來國家ガ愈、、已ムナキ必要ニ
迫ラレルナラバ、吾々ハ最後ノ一錢ヲモ吝
ム者デハアリマセヌ、日本國民程犠牲奉公
ノ一念ニ燃ニテ居ル國民ハナイノデアリマ
ス、若シ此ノ國民ニ多少デモ緊張ノ度ガ足
リナイト云フヤウナコトガアリマシタナラ
バ少クトモ其ノ一半ハ政府ガ責任ヲ持タ
ナケレバナラヌト思フ(拍手)政府ガ本當ニ肚
ヲ割ツテ國民ニ呼ビ掛ケ、其ノ協力ヲ求メ
ルナラバ、日本ノ國民ハ何物ヲモ捨テテ政
府ノ懷ニ飛込ンデ參リマス(拍手)歐羅巴戰
爭ガ長クテモ短クテモ、吾々ノ前途ニハ更
ニ險シイ荊棘ノ途ガアル亞米利加最近ノ
對日態度、其ノ無軌道ノ軍備擴張ハ如何デ
アリマスカ、「ソビエト」聯邦ノ極東經營ハ
漸次本格的ニナツテ、「ノモンハン」事件ノ
後ニ國境ニ增派シタ軍隊ハ十箇師團ニ上ツ
タト傳ヘラレテ居リマス、斯ル秋ニ當ツテ
唯其ノ日其ノ日ヲ事勿レ主義デ國民ヲ引摺
ツテ行クト云フヤウナ政治ハ斷ジテ今日
日本ノ政治デアツテハナラナイト思フ拍
手)政府ハ宜シク議會ヲ通シ、或ハ更ニ
街頭ニ出テ、時局ノ眞相ヲ國民ニ知ラシメ、
率直ニ其ノ協力ヲ求メナケレバナリマセヌ、
國民ハ國家ノ必要ノ前ニハ喜ンデ惜ミナク
總テノ犧牲ヲ拂フニ躊躇シナイデアリマセ
ウ(拍手)政府ハ、租稅ハ悉ク國民ノ膏血デ
アルト云フコトヲ銘記シテ、豫算實行ニ當
ツテハ聊カモ放漫デアツテハナラナイ尙
ホ行政整理ヲ斷行スルト共ニ、官紀ノ振肅
ハ嚴トシテ之ヲ守ラナケレバナラナイト思
ヒマス、以上簡單ニ所見ヲ開陳シテ諸君ノ
御賛同ヲ願フ次第デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=35
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036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ第二讀會ノ採決ニ入リマ
スガ、其ノ順序ハ先ヅ委員長報〓ニ係ル修
正ノ所得稅法改正法律案、法人稅法案、
特別法人稅法案、營業稅法案、物品稅法案、
入場稅法案、地方稅法案ヲ順次採決シ、次
ニ委員長報告ニ係ル修正ノ、相續稅法中改正
法律案、臨時利得稅法中改正法律案、地租
法中改正法律案、酒稅法案、地方分與稅法
案ヲ一括シテ採決シ、次ニ委員長報告可決
ノ遊興飮食稅法案、通行稅法案ヲ順次採
決シ、最後ニ委員長報告可決ノ配當利子
特別稅法案外三十案ヲ一括シテ採決スルコ
トト致シマス
採決致シマス、先ヅ所得稅法改正法律案
ニ付キ採決致シマス、藤本君外一名提出ノ修
正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=36
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037・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ-次ニ松永君外二
名提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=37
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038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ-次ニ川崎君外三名
提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メスマ
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=38
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039・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=39
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040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ川崎君外三名提
出ノ修正案ハ可決セラレマシタ-次ニ委
員長報告ニ係ル修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=40
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041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=41
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042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長報告ニ係
ル修正部分ハ可決セラレマシタ(拍手)次ニ
其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=42
-
043・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ(拍手)
次ニ法人稅法案ニ付採決致シマス、佐竹
君提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=43
-
044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ-次ニ委員長報告
ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=44
-
045・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=45
-
046・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長報告ニ係
ル修正部分ハ可決セラレマシタ(拍手)次ニ
其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=46
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047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ(拍手)
次ニ特別法人稅法案ニ付採擇致シマス、
本案ノ委員長報告ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=47
-
048・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=48
-
049・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長報〓ニ係
ル修正ハ可決セラレマシタ(拍手)
次ニ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決スルニ
贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=49
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050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=50
-
051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ其ノ他ノ部分ハ
原案ノ通リ可決致シマシタ
次ニ營業稅法案ニ付採決致シマス、松永
君外二名提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=51
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052・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ-次ニ委員長報告
ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=52
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053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=53
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054・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ委員長報告ニ係
ル修正部分ハ可決セラレマシタ-次ニ其
ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=54
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055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ
次ニ物品稅法案ニ付採決致シマス、委員
長ノ報告ニ係ル修正ト、松永君外二名提出
ノ修正案中ニハ共通ノ部分ガアリマス、卽
チ第一條、第六條、第三十條及ビ第三十一
條ノ化粧石鹼及ビ齒磨ヲ削除スル點デアリ
マヽ、仍テ先ヅ此ノ共通部分ヲ採決シ、次
ニ共通部分ヲ除キタル、松永君外二名ノ修
正案ヲ採決シ、次ニ共通部分ヲ除キタル委
員長ノ報告ヲ採決スルコトト致シマス、委
員長報告ト松永君外二名提出ノ修正案ト共
通セル部分ハ、委員長報告ノ通リ決スルニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=55
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056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ共通ノ部分ハ可決セラレマシタ
次ニ共通ノ部分ヲ除キタル松永君外二名提
出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=56
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057・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ共通
部分ヲ除キタル松永君外二名提出ノ修正案
ハ否決セラレマシタ-次ニ共通部分ヲ除
キタル委員長ノ報告ニ係ル修正ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=57
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058・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數、仍テ共通
部分ヲ除キタル委員長ノ報告ニ係ル修正ノ
部分ハ可決セラレマシタ-次ニ其ノ他ノ
部分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=58
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059・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ
次ニ入場稅法案ニ付採決致シマス、委員
長ノ報告ニ係ル修正ト松永君外二名提出ノ
修正案中ニハ共通ノ部分ガアリマス、卽チ
第三條ノ撞球場ノ入場料ニ對スル課稅ヲ百
分ノ十トシ、其ノ他ノ入場料ニ對スル課稅
ハ百分ノ二十トスル點デアリマス仍テ先
ヅ此ノ共通部分ヲ採決シ、次ニ共通部分ヲ
除キタル松永君外二名提出修正案ニ付採決
スルコトト致シマス、委員長報告ト松永君
外二名提出ノ修正案ト共通セル部分ハ、委員
長報告ノ通リ決スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=59
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060・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ共通ノ部分ハ可決セラレマシタ
次ニ共通ノ部分ヲ除キタル松永君外二名
提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=60
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061・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ共通
部分ヲ除キタル松永君外二名提出ノ修正案
ハ否決セラレマシタ-次ニ其ノ他ノ部分
ハ原案ノ通リ決スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=61
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062・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=62
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063・小山松壽
○議長(小山松壽君) 次ニ地方稅法案ニ付
採決致シマス、本案ニ對シテハ佐竹君及ビ
松永君外二名ヨリ各〓修正案ガ提出セラレテ
居リマスカラ、先ヅ佐竹君提出ノ修正案ニ
付採決致シマス、佐竹君提出ノ修正案ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=63
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064・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ佐竹
君提出ノ修正案ハ否決セラレマシタ-次
ニ松永君外二名提出ノ修正案ニ付採決致ス
ノデアリマスガ、委員長ノ報告ト、松永君
外二名提出ノ修正案中ニハ共通部分ガアリ
マス、卽チ第六十六條ノ市町村民稅ノ最高
賦課額ヲ、人口七十万以上ノ市ニアリテハ
二千圓、其ノ他ノ市ニアリテハ千五百圓、
町村ニアリテハ千圓ト爲ス點デアリマス、
仍テ此ノ共通部分ニ付採決シ、次ニ共通部
分ヲ除キタル、松永君外二名提出ノ修正案
ヲ採決スルコトト致シマス、委員長報告ト
松永君外二名提出ノ修正案ト共通セル部分
ハ委員長報告ノ通リ決スルニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=64
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065・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ共通ノ部分ハ可決セラレマシター
次ニ共通ノ部分ヲ除キタル、松永君外二名
提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=65
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066・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ共通
部分ヲ除キタル、松永君外二名提出ノ修正
案ハ。否決セラレマシタ-次ニ其ノ他ノ部
分ハ原案ノ通リ決スルニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=66
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067・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
シマシタ
次ニ相續稅法中改正法律案、臨時利得稅
法中改正法律案、地租法中改正法律案、酒
稅法案、地方分與稅法案ノ五案ヲ一括シテ
採決致シマス、此ノ五案ノ委員長報告ハ何
レモ修正デアリマス、五案ノ委員長報告ニ
係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=67
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068・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數、仍テ五案
ノ委員長報告ニ係ル修正ハ可決致シマシ
タ-次ニ五案ノ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通
リ決スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=68
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069・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ五案ノ其ノ他ノ部分ハ可決致シマ
シタ
次ニ遊興飮食稅法案ニ付採決致シマス、
本案ノ委員長報告ハ可決デアリマス、松永
君外二名ヨリ修正案ガ提出セラレテ居リマ
ス、此ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=69
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070・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ-次ニ本案ニ贊成
ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=70
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071・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數(拍手)仍テ
本案ハ原案ノ通リ可決セラレマシタ
次ニ通行稅法案ニ付採決致シマス、本案
ノ委員長報告ハ可決デアリマス、佐竹君ヨ
リ修正案ガ提出セラレテ居リマス、此ノ修
正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=71
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072・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ--次ニ本案ニ贊成
ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=72
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073・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數、仍テ本案
ハ原案ノ通リ可決セラレマシタ
次ニ委員長報告可決ノ、配當利子特別稅
法案外三十案ハ、原案ノ通リ決スルニ御異
議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=73
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074・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナジト認メマ
ス、仍テ配當利子特別稅法案外三十案ハ原
案ノ通リ可決致シマシタ(拍手)是ニテ四十
五案ノ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=74
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075・服部崎市
○服部崎市君 直チニ四十五案ノ第三讀會
ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=75
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076・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=76
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077・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ四十五案ノ第三讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
所得稅法改正法律案第三讀會
法人稅法案第三讀會
特別法人稅法案第三讀會
配當利子特別稅法案第三讀會
外貨債特別稅法中改正法律案第三讀會
相續稅法中改正法律案第三讀會
建築稅法案第三讀會
鑛區稅法案第三讀會
臨時利得稅法中改正法律案第三讀會
營業稅法案第三讀會
地租法中改正法律案第三讀會
酒稅法案第三讀會
〓涼飮料稅法中改正法律案第三讀會
砂糖消費稅法中改正法律案第三讀會
織物消費稅法中改正法律案第三讀會
揮發油稅法中改正法律案第三讀會
物品稅法案第三讀會
遊興飮食稅法案第三讀會
取引所稅法中改正法律案第三讀會
通行稅法案第三讀會
入場稅法案第三讀會
印紙稅法中改正法律案第三讀會
骨牌稅法中改正法律案第三讀會
狩獵法中改正法律案第三讀會
明治四十四年法律第四十五號中改正法
律案(砂糖消費稅織物消費稅等ノ徵收
ニ關スル件)第三讀會
大正九年法律第五十一號中改正法律案
(內地臺灣又ハ樺太ヨリ朝鮮ニ移
出スル物品ノ內國稅免除ニ關スル件)
第三讀會
支那事變特別稅法及臨時租稅增徵法廢
止法律案第三讀會
營業收益稅法廢止法律案第三讀會
資本利子稅法廢止法律案第三讀會
法人資本稅法廢止法律案第三讀會
臨時租稅措置法中改正法律案第三讀會
地方稅法案第三讀會
地方分與稅法案第三讀會
府縣制中改正法律案第三讀會
市制中改正法律案第三讀會
町村制中改正法律案第三讀會
北海道會法中改正法律案第三讀會
北海道地方費法中改正法律案第三讀會
地方分與稅分與金特別會計法案
第三讀會
家屋稅法案第三讀會
所得稅法人稅內外地關涉法案第三讀會
昭和十二年法律第九十四號中改正法律
案(支那事變ノ爲從軍シタル軍人及軍
屬ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ
關スル件)第三讀會
大正十三年法律第六號中改正法律案
(外國船舶ノ所得稅等免除ニ關スル件)
第三讀會
アルコール製造事業等ニ對スル所得稅
等ノ免除規定ノ改正ニ關スル法律案
第三讀會
租稅法規ノ改正ニ伴フ恩給金庫法等ノ
規定ノ整理ニ關スル法律案第三讀會
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=77
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078・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌカラ、四十五案トモ第二讀會議決ノ通
リ確定致シマシタ(拍手)是ニテ稅制改革ニ
伴フ法律案四十五案ハ議了致シマシタ拍
手)此ノ際政府ヨリ發言ヲ求メラレテ居リ
マス-櫻內大藏大臣
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=78
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079・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 此ノ際一言申上
ゲタイト存ジマス、政府ハ只今御可決ニナ
リマシタ各案ニ對スル修正ニ付キマシテハ、
兩院ヲ通過致シマシタル場合ハ、之ヲ尊重
致ス考デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=79
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080・小山松壽
○議長(小山松壽君) 次會ノ議事日程ハ公
報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是ニテ散會
致シマス
午後八時十三分散會
衆議院議事速記錄第二十七號
中正誤
頁段行誤正
六三二三三勞力協力発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02819400317&spkNum=80
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