1. 会議録本文
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000・会議録情報
委員會成立
本委員は昭和十六年十二月十六日(火曜日)議長の指名を以て左の通選定せられたり
飯村五郎君 卯尾田毅太郎君
宇賀四郎君 小山田義孝君
太田理一君 大橋清太郎君
加藤知正君 川副隆君
木原七郎君 小谷節夫君
小林絹治君 小見山七十五郎君
佐藤洋之助君 篠原陸朗君
鹽川正藏君 高橋圓三郎君
武田徳三郎君 高畠龜太郎君
坪山徳彌君 中島彌團次君
永田良吉君 服部崎市君
長谷長次君 平川松太郎君
松尾四郎君 松浦周太郎君
松田正一君 宮本雄一郎君
森下國雄君 渡邊玉三郎君
板谷順助君 岡崎久次郎君
田中亮一君 松尾孝之君
大石大君 米窪滿亮君
同日午後六時三十六分委員長理事互選の爲委員參集す
其の氏名左の如し
卯尾田毅太郎君 宇賀四郎君
小山田義孝君 太田理一君
大橋清太郎君 川副隆君
木原七郎君 小谷節夫君
小林絹治君 小見山七十五郎君
篠原陸朗君 鹽川正藏君
高橋圓三郎君 武田徳三郎君
高畠龜太郎君 坪山徳彌君
中島彌團次君 永田良吉君
服部崎市君 長谷長次君
平川松太郎君 松尾四郎君
松浦周太郎君 松田正一君
宮本雄一郎君 森下國雄君
渡邊玉三郎君 板谷順助君
岡崎久次郎君 田中亮一君
松尾孝之君 大石大君
米窪滿亮君
〔年長者武田徳三郎君投票管理者となる〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=0
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001・武田徳三郎
○武田投票管理者 先例ニ依リマシテ、私
ガ年長ノ故ヲ以テ投票管理者トナルコトニ
相成リマシタ、是ヨリ委員長及ビ理事ノ互
選ヲ行ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=1
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002・森下國雄
○森下委員 投票ヲ用ヒズシテ平川松太郞
君ヲ委員長ニ御推薦シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=2
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003・武田徳三郎
○武田投票管理者 森下君ノ御意見ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=3
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004・武田徳三郎
○武田投票管理者 御異議ナシト認メマス、
仍テ平川君ハ委員長ニ御當選ニ相成リマシ
タ、平川君ドウゾ···
〔平川松太郞君委員長席ニ着ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=4
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005・平川松太郎
○平川委員長 諸君ノ御推薦ニ依リマシテ
委員長ノ席ヲ汚シマス、宜シク御願ヒ致シマ
ス(拍手)是ヨリ理事ノ選擧ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=5
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006・森下國雄
○森下委員 理事ハ其ノ數ヲ五名トシ、委員
長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=6
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007・平川松太郎
○平川委員長 御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=7
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008・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ委員長ニ於テ指名
致シマス
鹽川正藏君坪山德彌君
森下國雄君渡邊玉三郞君
板谷順助君
此ノ五名ヲ指名致シマス
會議
昭和十六年十二月十六日(火曜日)午後六時
三十九分開議
出席委員左ノ如シ
委員長平川松太郞君
理事鹽川正藏君理事坪山德彌君
理事森下國雄君理事渡邊玉三郞君
理事板谷順助君
卯尾田毅太郞君字賀四郞君
小山田義孝君太田理一君
大橋〓太郞君川副隆君
木原七郞君小谷節夫君
小林絹治君小見山七十五郞君
篠原陸朗君高橋圓三郞君
武田德三郞君高畠龜太郞君
中島彌團次君永田良吉君
服部崎市君長谷長次君
松尾四郞君松浦周太郞君
松田正一君宮本雄一郞君
岡崎久次郞君田中亮一君
松尾孝之君大石大君
米窪滿亮君
同日敵產管理法案(政府提出、貴族院送付)
ノ審査ヲ本委員ニ付託セラレタリ
出席政府委員左ノ如シ
大藏次官谷口恒二君
大藏省主計局長木內四郞君
大藏省監理局長長谷川公一君
大藏書記官植木庚子郞君
大藏省爲替局長原口武夫君
大藏省書記官木下忍君
本日ノ會議ニ上リタル議案左ノ如シ
戰爭保險臨時措置法案(政府提出)
敵產管理法案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=8
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009・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ引續キ會議ヲ開キ
やく、先ヅ政府當局ノ說明ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=9
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010・谷口恒二
○谷口政府委員 只今議題トナリマシタ戰
爭保險臨時措置法案ニ付キマシテ、提案ノ
理由ヲ說明申上ゲマス、旣ニ御承知ノ通リ
戰爭事故ニ因リマス損害ノ塡補ハ、海上保
險ニ於キマシテハ以前カラ行ハレテ居ルノ
デアリマス、是ハ戰爭ニ因ル危險ノ程度ガ
サマデ甚ダシクナイ時期ニハ、保險會社ノ
自力ニ依ツテ行ハレタノデアリマスルガ、
國際情勢ノ推移ニ伴ヒ、海上ニ於ケル戰爭
危險ガ激化スルニ連レ、保險會社ノミノカヲ
以テシテハ保險料ノ〓騰ヲ避ケ得ズ、隨ヒ
マシテ保險ノ引受ヲ確保シ難イ狀態ニ立至
リマシタ爲メ、一昨年秋カラ政府ハ戰時海
上保險國營補償制度ヲ行ヒマシテ、更ニ昨
年六月カラハ國營再保險ノ制度ヲ實施致シ
テ居ル次第デアリマス
陸上ニ於キマスル財產ニ付キマシテハ、何
レノ國ニ於キマシテモ保險會社ハ戰爭危險
ヲ保險シナイコトニナツテ居ルノデアリマ
ス、併シナガラ既ニ本會議ニ於テ御說明申
上ゲマシタ通リ、戰爭ガ開始セラレ、何時
國土ノ一部ガ敵國航空機ノ來襲ヲ受ケルヤ
モ測リ難イト云フヤウナ事態ノ下ニ於キマ
シテハ、是等陸上財產ニ付キマシテモ、戰
爭保險ノ制度ナクシテハ、國民經濟ノ圓滑
ナル運行ト國民生活ノ安定トヲ期シ難イノ
デアリマスカラ、政府ニ於キマシテハ取急
ギ本法律案ヲ立案シ、玆ニ提案ノ運ビニ至
ツタ次第デアリマス
因ミニ歐洲ノ各國ニ於キマシテハ、今次
歐洲戰爭勃發ノ前後カラ種々ノ方策ヲ講ジ
戰爭ニ因ル損害ノ塡補ニ努メテ居ルノデア
リマス
次ニ本案ノ內容ニ付テ御說明申上ゲマス、
第一ニ本案ハ戰爭損害ヲ塡補スル爲メ、新タ
ニ保險會社ヲシテ戰爭保險ヲ引受ケシメン
トスルモノデアリマス、戰爭保險ノ保險事
故ハ、戰爭ノ際戰鬭行爲ニ原因スル火災又
ハ損壞ノ外、消防又ハ避難ニ必要ナ處分ニ
因リテ生ズル損壞ヲモ含ムモノデアリマス、
戰鬪行爲ニ因ル損壞又ハ火災トハ空襲其
ノ他敵ノ攻擊ニ因ルモノハ勿論、空襲ヲ防
禦セントスル高射砲彈ノ落下ニ因ルモノノ
如キモ、之ニ含ムノデアリマス
第二ニ保險ノ引受方法ニ付キマシテモ、緊急
ノ際ニ於キマシテハ、申込ト承諾トノ合致ニ依
ツテ契約ヲ成立セシメルト云フ通常ノ方法ニ
依ルコトハ不適當ト考ヘラレマス爲メ、保險
契約ヲナサントスル者ガ保險會社ニ對シ保
險料ヲ添ヘテ契約ノ申込ヲスレバ、其ノ申
込ノ時ニ於テ契約ガ成立シタモノト看做ス
コトト致シタノデアリマス、尙ホ本制度ノ
實施後三十日以內ニ於テハ、申込ガ保險事
故發生ノ後デアリマシテモ、事故發生ノ時
ニ遡リマシテ保險契約ガ、成立シタモノト
看做スコトトシ、經過的措置ヲ講ジマシテ
國民ノ保護ニ缺クルコトナキヲ期シタノデ
アリマス
第三ニ保險金ノ支拂ニ付キマシテハ、損
害ノ額ガ幾許ニ上ルカヲ豫測シ難イコト、
物資、勞力等ノ不足ヲ豫想セラルルコト等
ニ顧ミマシテ、政府ハ保險會社ニ對シ、國
民經濟上適當ナル時期マデ保險金ノ支拂ヲ
延期スベキコトヲ命ズルコトヲ得ルコトト
致シタノデアリマス、併シナガラ緊要ナル
修理復舊等特別ノ事情ノアル場合、及ビ一
定額以下ノ小規模ノ塡補ヲナス場合等ニ於
キマシテハ卽時ニ保險金ノ支拂ヲナサシ
ムルコト申スマデモアリマセヌ、又保險金
ノ支拂ヲ受ケタ者ニ對シテモ、其ノ處分ニ
付テ政府ハ必要ナル指示ヲナスコトヲ得ル
コトトシ、其ノ使途ノ指導ニ遺憾ナキヲ期
スルコトト致シタノデアリマス
戰爭保險ノ經理ニ付キマシテハ、其ノ損害
額ノ豫測ガ付キ兼ネル等ノ事情カラ、其ノ
經營ニ伴フ危險ヲ民間保險會社ニ任セルコ
トハ不適當ト考ヘラレマスノデ、戰爭保險
ノ運營ニ依ル收支ハ別勘定トシテ整理セシ
ス、之ニ因ツテ生ズル損失ハ國庫ヨリ補償
シ、又之ニ因ツテ生ズル利益ハ國庫ニ納付
セシメルコトト致シタノデアリマス
最後ニ保險會社ノ塡補スベキ損害額ハ
保險會社ノ損失ヲ國庫ガ補償スル關係上、
其ノ査定ニ十分愼重ナルコトヲ要シマスノ
デ、一定額ヲ超ユルモノニ付テハ、損害ノ
額及ビ原因ニ付キ審査會ノ議ヲ經ルコトト
致シタノデアリマス
以上申述ベマシタ如ク、本案ハ敵國航空
機ノ襲來等ノ緊急ノ事態ニ對處シ、國民經
濟ノ運行ヲ確保スルト共ニ、國民生活ノ安
定ニ資スル所大ナルモノガアルト存ズル次
第デアリマス、何卒御審議ノ上、速カニ御
協賛ヲ御願ヒ致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=10
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011・平川松太郎
○平川委員長 御諮リ致シマス、本案ハ今
晩ノ中ニ貴族院ノ方ニ廻ハシマシテ、貴族
院ノ方デ今晩ノ中ニ審議スルノダサウデア
リマスカラ、此ノ委員會ニ於キマシテハ
質問及ビ討論ヲ省略シテ直チニ採決ニ入リ
タイト思ヒマスガ、如何デスカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=11
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012・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ左樣ニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=12
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013・板谷順助
○板谷委員 一寸御伺ヒ致シマス、船舶保
險ニ付キマシテ、政府ノ徵傭船ハ國家ガ補
償スルト云フコトニナツテ居リマスガ、其
ノ補償ノ標準ハドウ云フ風ニナツテ居リマ
スカ、此ノ點ニ付テ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=13
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014・谷口恒二
○谷口政府委員 徴傭船舶ノ補塡ノ問題デ
アリマスガ、是ハ大藏當局ニ於テマダ具體
的ノ相談ヲ受ケテ居リマセヌノデ、具體的
標準ハマダ決ツテ居ラナイノデアリマス、
左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=14
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015・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ質問及ビ討論ヲ省
略致シマシテ、直チニ採決ニ入リマス、本
案ニ贊成ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=15
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016・平川松太郎
○平川委員長 起立總員、仍テ本案ハ原案ノ
通リ可決致シマシタ(拍手)ソレデハ暫時休
憩致シマス
午後六時五十分休憩
午後八時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=16
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017・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ休憩前ニ引續イテ
會議ヲ開ヰマス、政府委員ノ說明ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=17
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018・谷口恒二
○谷口政府委員 只今議題トナリマシタ敵
產管理法案ニ付キマシテ提案理由ヲ說明致
シマス、本年七月ノ資產凍結以降、外國爲
替管理法ニ基ク外國人關係取引取締規則、
卽チ所謂資產凍結令ニ依リマシテ、米英等
諸國及ビ是等諸國人ノ本邦內財產竝ニ本邦
內經濟活動ニ對シマシテ、相當嚴重ナル取
締ヲ實施シテ來タノデアリマスガ、本月八
日米英ニ對シ宣戰ガ布告セラレ、兩國ト敵
對關係ニ立ツコトトナリマスルヤ、取敢ズ
是等ノ諸國人ニ對シマシテハ資產凍結令ニ
於ケル緩和的取扱ヲ撤廢致シマスルト共
ニ、從來ノ爲替管理ニ關スル規則及ビ資產
凍結令ニ基イテ與ヘラレマシタ許可ハ、何
レモ將來ニ向ツテ效力ヲ失フコトト致シタ
ノデアリマス、尙ホ宣戰布告ト同時ニ、米
英系ノ外國爲替銀行竝ニ主要商社ニ對シマ
シテハ一齊ニ檢査官ヲ派遣シ、其ノ資產ノ
調査ヲナサシメルト共ニ、現地監督ニ當ラ
シメタノデアリマス、是等各種ノ應急措置
ハ總テ現行ノ法規ニ基キ出來得ル限リ取
締ヲ强化セントスルノ意圖ニ出タモノデア
リマスルガ、何レモ消極的取締ノ範圍ヲ出
ナイノデアリマシテ、開戰後ノ今日ノ事態
ニ對處スル措置ト致シマシテハ、尙ホ不十
分ナル點ガ少クナイト存ズルノデアリマス、
卽チ敵國側ノ財產ニ關シ、必要ニ應ジ政府
ニ於テ管理人ヲ選任シテ之ヲ管理セシムル
ノ外、賣却命令等ノ方法ニ依リマシテ、積
極的ニ之ヲ統制活用スル必要ガ生ズルノデ
アリマス、之ヲ實施致シマスガ爲ニハ、從
來ノ外國爲替管理法ノミヲ以テシテハ、十
分其ノ徹底ヲ期スルコトガ出來マセヌノ
デ、新タニ敵產管理ニ關スル單行法律ヲ制
定スルコトヲ必要ト認メマシテ、本案ヲ提
出致シマシタ次第デアリマス
次ニ本案ノ內容ニ付キ其ノ要點ヲ御說明
致シマス、第一ニ、政府ハ必要ニ應ジ敵國
又ハ敵國人關係ノ財產ニ關シ、管理人ヲ選
任シテ之ヲ管理セシムルコトト致シタノデ
アリマス、卽チ政府ハ、當該財產ノ所有者
又ハ保管者ガ居リマセヌ場合、又ハ居リマ
シテモ、之ニ所有又ハ保管セシメ置クコト
ヲバ不適當ト認メタ場合ナドニ於キマシテ
ハ、別ニ適當ナル管理人ヲ選任シテ之ヲ管
理セシメルノデアリマス、例ヘバ工場、事
業場等デアツテ、本邦生產力ノ增强ニ資シ
得ルモノハ、之ヲ適當ニ管理活用シ、戰時
下國家目的ニ適合スルヤウ運營致シタイト
存ズルノデアリマス、管理人ヲ選任シテ管
理セシムルコトト致シマシタ場合ニハ、其ノ
管理人ノミガ當該財產ニ付キ處分其ノ他ノ行
爲ヲナスコトガ出來ルノデアリマシテ、本人
ハ其ノ範圍ニ於テ行爲能力ヲ奪ハルルノデア
リマス、隨ヒマシテ管理財產ニ付キマシテハ、
其ノ旨ヲ第三者ニ知ラシメル必要ガアリマ
スノデ、之ヲ登記又ハ登錄ヲナサシメルコ
トト致シマシタ、尙ホ敵產ノ管理人ニ對ス
ル報酬其ノ他ノ費用ハ、管理財產ノ中ヨリ
支辨セシムルコトト致シタノデアリマス
第二ニ、政府ハ敵國又ハ敵國人關係ノ財
產ニ關シ、政府ノ指定スルモノニ對スル賣
却其ノ他必要ナル事項ヲ命ジ得ルコトト致
シタノデアリマス、例ヘバ敵國人ガ本邦内
ニ有シテ居リマスル重要物資ハ、之ヲ必要
ナル方面ニ賣却セシメ、又敵國人ガ本邦人
ニ對シテ負ツテ居リマスル借入金債務ノ辨
濟ヲ命ズル等ノ場合ニ、此ノ權能ヲ活用致
シタイト存ズルノデアリマス
第三ニ、敵國又ハ敵國人ニ對シ債務ヲ負
擔スル者ガ、政府ノ命令ニ從ツテ支拂等ヲ
ナシマシタ時ハ、其ノ債務ニ付キ免責セラ
レルコトト致シタノデアリマス、外債ノ利
子、株式ノ配當金、特許料等ニ關シ、米英
人ニ對シ支拂債務ヲ負擔スル者ハ、政府ノ
命ズル所ニ從ヒマシテ、例ヘバ橫濱正金銀
行ニ設ケラレマシタ特別ノ勘定ニ拂込ミマ
スレバ、其ノ債務ニ付キ免責セラレルコト
ト相成ルノデアリマス、斯クノ如キ免責ノ
措置ヲ講ジマスル趣旨ハ、開戰ニ依リマシ
テ對敵債務ノ履行ガ困難トナルニ伴ヒ、種
種法律上ノ紛爭ヲ生ズル虞ガアリマスノデ、
之ヲ防止致シマスルト共ニ、敵國人ノ本邦
人ニ對シテ有スル債權ニ付キ、政府ガ適切
ナル統制ヲ加ヘルコトヲ容易ナラシメヨウ
トスルニアルノデアリマス
第四ニ、敵國又ハ敵國人ガ外國ニ於テ敵性
ヲ免ルルガ爲ニ、本邦關係財產ヲ處分致シマ
スルガ如キ場合、其ノ行爲ニ付キマシテ、其
ノ效力ヲ認メナイコトト致シタノデアリマ
ス、米英人ノ所有スル本邦ノ外債ハ約十四
億圓ニ上リ、又米英人ノ本邦內ニ有シテ居
リマスル動產、不動產、事業、營業等モ少
クナイノデアリマス、開戰ノ結果、是等ノ
財產ガ敵產トシテ不利ナル取扱ヲ受クルコ
トヲ免ルルガ爲ニ、之ヲ中立國人ニ賣却ス
ル等ノ方法ヲ講ズル虞ガ多分ニアリマスノ
デ、之ヲ防止致シマスル爲メ、斯カル行爲
ノ效果ヲ否認スル規定ヲ設ケタノデアリマ
ス、尙ホ此ノ規定ノ效力ハ之ヲ開戰當日ニ
遡及セシムルコトト致シマシタ
第五ニ、敵產管理ノ實施ハ其ノ關係スル
所ガ廣ク、又其ノ實施ニ當リマシテ、相手
國ノ出方、取扱振リ等ニ付テモ、愼重ナル
注意ヲ拂フ必要ガアリマスノデ、關係各省
ノ關係官ヲ以テ組織スル委員會ヲ設置シ、重
要事項ハ右ノ委員會ニ諮ツテ之ヲ決定シ運營
ノ圓滑ヲ期シテ行キタイト存ジテ居リマス
敵產管理ノ目的ハ、最初ニ申述ベマシ
タ通リデアリマスガ、其ノ運用ハ飽クマデ
相互的ナ考慮ヲ以テ臨ミ、敵國私人ノ財產
ニ付キマシテハ、私權尊重ノ建前ヨリ、相
手國ガ本邦側財產ニ對シ暴戾ナル態度ニ出
デナイ限リ、沒收等ノ如キ事柄ハ之ヲ致サ
ナイ考ヘデアリマス
以上ノ理由ニ依リマシテ、玆ニ本法律案
ヲ提出シタ次第デアリマス、尙ホ此ノ場合
原口爲替局長カラ、更ニ條文ニ付キマシテ
御說明申上ゲルコトニ致シタイト存ジマス、
何卒速カニ御贊成アランコトヲ希望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=18
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019・原口武夫
○原口政府委員 只今ノ說明ヲ補足致シマ
シテ、條文ニ付キマシテ少シク御說明ヲ申
上ゲマス
第一條ノ第二項ニ「敵產トハ敵國、敵國人
其ノ他命令ヲ以テ定ムル者」、斯ウ云フ文句
ガ第三條ノ初メニモ出テ參リマス、ソレカ
ラ一枚御捲リ願ヒマシテ、第四條ノ初メニ
モ同ジヤウナ文句ガ出テ參リマス、ソレカ
ラ第五條ニモ「敵國、敵國人其ノ他命令ヲ
以テ定ムル者」、斯ウ出テ參リマスルガ、是
ハ本法案中重大ナ意義ヲ持ツテ居リマスノ
デ、此ノ內容ハ施行勅令デ決メタイト思ツ
テ居リマスルガ、敵國ト申シマスルノハ、
帝國ト交戰狀態ニアル國デアリマシテ、大
藏大臣ノ指定スルモノ、斯ウ云フヤウナ意
味ヲ勅令デ定メタイト思ツテ居リマス、ソ
レカラ敵國人、是ハ如何ナル範圍ヲ敵國人
トスルカト申シマスルト、第一ニ敵國ノ國
籍ヲ持ツテ居ル人、尤モ其ノ中デ同時ニ日本
ノ國籍ヲ持ツテ居ル者ガゴザイマス、「アメ
リカ」ノ如キハ二重國籍ニナツテ居リマス、
左樣ナ場合ニ於キマシテハ、日本ノ國籍ヲ
持ツテ居ル者ハ敵國人ト云フ中カラハ除
クコトニ致シタイト存ジマス、ソレカラ敵
國人ノ第二ハ、敵國ノ行政區劃、公共團體
及ビ是等ニ準ズルモノ、ソレカラ敵國人ノ
第三ハ、敵國ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有ス
ル法人、第四番目ト致シマシテ、敵國ノ法
令ニ依ツテ設立セラレマシタ法人デアリマ
シテ、只今申シマシタ各項ニ該當致サヌモ
)、是ハ一寸御聞キニナリマスト變ナヤウ
ニ響キマスガ、例ヘテ申シマスト、支那邊
リニハ「アメリカ」ノ法人ガゴザイマス、左
樣ナモノヲ考ヘテ居リマス
ソレカラ「敵國、敵國人其ノ他命令ヲ以
テ定ムル者」、是ハドウ云フモノヲ命令デ定
メルカト申シマスト、第一ニ敵國內ニ居住
スル人、是ハ敵國又ハ敵國人ニ準ズルモノ
トシテ、命令ヲ以テ決メタイト思ツテ居リ
マンク、ソレカラ第二ニ命令ヲ以テ決メマス
モノハ法人デアリマシテ、敵國ニアル支店、
法人ノ支店其ノ他ノ營業所、ソレカラ第三
番目ニ例ヘテ申シマスト、法律上ハ本邦法
人デアリマシテモ、實際其ノ經營ヲ敵國人
ガ支配シテ居ル、株式ノ大多數ヲ敵國人ガ
持ツテ居ル、斯ウ云フモノ、日本「フオー
ド、「ゼネラル」、ー、「モータース」、」、或ハ日本ノ
法人デハアリマスガ、大部分「アメリカ」人
ガ株ヲ持ツテ居リマス、左樣ナモノヲ敵國
又ハ敵國人ニ準ズルモノトシテ、命令ヲ以
テ定メタイト思ツテ居リマス、其ノ他必要
ニ應ジテ、假令中立國ノ人デアリマシテモ、
敵性ノモノハ其ノ場合々々ニ依リマシテ、
大藏大臣ノ指定ニ依ツテ追加スル、斯ウ云
フ規定ヲ置キタイト思ツテ居リマス
ソレカラ第二條ニ「政府ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ敵產ニ關シ政府ノ指定スル者ニ對ス
ル賣却其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ
得」トアリマスガ、此ノ「命令ノ定ムル所」、
是ハ特ニ重要ナコトハ考ヘテ居リマセヌガ、
例ヘテ申シマスト、賣却命令ヲ出シマシタ
場合ニ、當事者デ價格ノ折合ガ付カナイト
云フヤウナ場合ニ於キマシテハ大藏大臣
ガ賣却價格ヲ定メルト云フヤウナコトヲ命
令事項トシテ考ヘテ居リマス
ソレカラ第三條デアリマスガ、是ハ外債
ノ利拂、配當金、特許料、サウ云フヤウナ
モノヲ米英人ニ對シテ支拂ノ債務ヲ持ツテ
居ル日本人ガゴザイマス、ソレ等ニ付キマ
シテハ、今日アチラニ金ヲ送ルト云フ方法
ガ非常ニ困難デゴザイマス、假ニソレガ出
來タトシテモ、アチラニ支拂フベキ筋合デ
ハゴザイマセヌノデ、左樣ナ場合ニ於キマ
シテハ、政府ノ定メマス特別ナ方法ニ依リ
マシテ、例ヘバ正金銀行アタリニ特殊ノ封
鎖勘定ノヤウナモノヲ置キマシテ、ソコニ
拂込マセマシテ、債務者ノ債務ヲ免除スル、
斯ウ云フコトニ致シタイト存ジマス、尤モ
此ノ特許料、工業所有權ニ付キマシテハ
御承知ノ通リ工業所有權戰時法ト云フ現行
法ガゴザイマス、戰時ニ於キマシテハ、必
要ニ應ジテ敵國人ノ登錄ハ取消ス、特許ハ
取消ス、斯ウ云フ現行法ガゴザイマスノデ、
工業所有權其ノモノニ付キマシテハ、アノ
法律ガ特別法的ノ立場ニ立チマシテ、本法
ニ優先シテ適用セラレルト云フコトニ相成
リマス
ソレカラ第四條デアリマスガ、是ハ簡單
ニ申シマスト、第一條ノ如キ場合ニ敵國財
產ニ付キ管理人ヲ置キマス、左樣ナ場合ニ
ハ其ノ管理人ノ働ク限度ニ於キマシテ、本
人ノ權利ト云フモノハ制限ヲ受ケマス、管
理人ヲ置イタ場合ニハ、假令所有者ト雖モ
其ノ財產ニ付テ處分其ノ他ノ行爲ヲナスコ
トガ出來ナイ、斯ウ云フコトニナリマス、斯
樣ニ致シマセヌト、管理人ヲ置キマシタ本
旨ヲ達スル譯ニハ參リマセヌ、第四條ノ第
二項ニ管理及ビ管理人ニ關シテ必要ナ事項
ハ命令デ決メルト云フコトガ書イテゴザイ
マスルガ、是ハ管理人ノ權限ノヤウナモノヲ
此處ニ入レタイト思ツテ居リマス、ソレカラ
管理ト云フ言葉ハ、是ハ非常ニ曖昧ナ言葉
デアリマスガ、私共此處デ考ヘテ居リマスル
ノハ無償デ其ノ財產ヲ勝手ニ人ニ渡スト
云フヤウナコトマデハ考ヘテ居リマセヌ、
保存行爲-保存ノ爲ニ必要ナ賣却ト云フ
ヤウナ程度ハ、管理人トシテ出來マスルガ、
ソレ以上ノ廣イ權限ハ此處ニ豫想シテ居リ
マヨル
ソレカラ第五條、是ハ一寸分リニクイ文
句ガ書イテゴザイマスガ、日本ト米英ト交
戰狀態ニナリマスト、例ヘテ申シマスト
日本ノ外債ヲ米英人ガ澤山持ツテ居リマス、
彼等ハソレニ付テ日本カラ將來利拂ヲ受ケ
ルコトガ出來ナクナリハシナイカ、斯ウ云
フコトヲ心配致シマスルシ、現ニ日本ノ公
債ト云フモノハ開戰間際ニ餘程相場ガ下ツ
テ居ルノデアリマス、左樣ナ場合ニ英米人
ガ之ヲ外國ニ於キマシテ中立國人等ニ讓リ
渡ス、斯ウ云フコトハ極メテアリ得ルコト
デゴザイマスガ、左樣ナコトヲ默認政シマ
スルト、敵產管理上多大ノ支障ガゴザイマ
ス、一寸御覽ヲ願ヒマスガ、本文ニ於キマ
シテ「政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ」トアリマス、ソレカラ最後ノ附
則ノ所ニ「昭和十六年十二月八日以後本法施
行前敵國、敵國人其ノ他命令ヲ以テ定ムル
者ノ外國ニ於テ爲シタル行爲ニシテ第五條
ニ揭グルモノノ取得又ハ處分ヲ目的トスル
モノハ行爲ノ時ニ遡リテ之ヲ無效トス」是ハ
宣戰布告ノ十二月八日以後本法施行ニ相成
リマスマデノ間ニ、左樣ナ行爲ガ起ツタ場
合ニハソレハ無效デアルト云フ風ニ遡及
シテ效力ヲ持タセタイト思ツテ居ルノデア
リマス
其ノ次ニ第六條デアリマスルガ、是ハ手
續ノ規定デアリマシテ、管理財產ヲ置キマ
シタ、公債ノ場合モゴザイマス、或ハ不動
產ノ場合、法人ノ登記、斯ウ云フヤウナ場
合ニハ取引ノ相手方ニナル善意ノ第三者ヲ
保護スル爲ニ、管理ニ關スル登記又ハ登錄
ヲサセルト云フコトヲ規定ヲ致シマシタ
次ノ第七條ハ管理ニ要スル費用、色々ナ
經費、無論管理人ノ報酬モ此ノ中ニ考ヘテ
アリマスルガ、斯樣ナモノハ敵產ヲ以テ之
ヲ支辨スル、斯ウ云フヤウニ致シテ居リマ
ス、以下三箇條程罰則ノ規定ガゴザイマス
ガ、是ハ全體的ニ申シマスルト普通ノ刑ノ量定
ヨリモ重クナツテ居リマス、本法ノ性質上
司法當局ト協議ヲ致シマシテ、普通ノ場合
ヨリモ稍〓重キヲ適當トスルト云フノデ、左
樣ナ建前ニ於テ刑ノ裁量ガ出來テ居リマス
次ニ十一條ニ委員會ノコトガ書イテゴザ
イマスルガ、敵產管理ハ外交方面、軍事上
其ノ他廣汎ナル影響ヲ持ツテ參リマスルノ
デ、關係方面ト能ク相談ヲ致シマシテ、之ヲ
運用シテ行キタイ、斯ウ云フ意味デ委員會
ヲ置キタイト思ツテ居リマス、此ノ法律ハ
極メテ急ヲ要シマスルノデ、御協賛ヲ得マ
シタナラバ、出來ルダケ早イ時期ニ於テ公
布ヲ致シマシテ、其ノ日カラ之ヲ施行スル、
斯ウ云フ風ニ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=19
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020・平川松太郎
○平川委員長 是ヨリ質問ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=20
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021・小谷節夫
○小谷委員 質問、討論ヲ省略シテ可決セ
ラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=21
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022・平川松太郎
○平川委員長 ソレデハ左樣ニ處理致シマ
ス、質問竝ニ討論ヲ省略致シマシテ、直チ
ニ採決ニ入リマス、本案ニ贊成ノ方ハ起立
ヲ望ミマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=22
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023・平川松太郎
○平川委員長 全會一致
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=23
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024・平川松太郎
○平川委員長 ドウモ有難ウゴザイマシ
タ、是ニテ散會致シマス
午後八時四十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007812054X00119411216&spkNum=24
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