1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年一月二十七日（火曜日）午前十時二十六分開議
出席委員左の如し
委員長 守屋榮夫君
理事 泉國三郎君 理事 片岡恒一君
理事 國光五郎君 理事 片山哲君
飯田助夫君 大内竹之助君
沖島鎌三君 川副隆君
北村文衞君 田代正治君
津倉亀作君 服部英明君
岸田正記君 松井郡治君
松岡俊三君 三木武夫君
渡邊玉三郎君 木檜三四郎君
服部岩吉君 井上良次君
須永好君 眞鍋勝君
出席國務大臣左の如し
農林大臣兼拓務大臣 井野碩哉君
出席政府委員左の如し
企畫院部長 亀山孝一君
大藏次官 谷口恒二君
大藏書記官 日下部滋君
拓務省拓北局長 今吉敏雄君
保險院長官 樋貝詮三君
保險院總務局長 歌田千勝君
保險院社會保險局長 木村清司君
本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和十五年法律第六十九號中改正法律案
（支那事變に關する一時賜金として交付する爲公債發行に關する件）（政府提出）
朝鮮事業公債法中改正法律案（政府提出）
臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出）
高等商船學校及商船學校の移管に伴ふ一般會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案（政府提出）
作業會計法中改正法律案（政府提出）
勞働者年金保險特別會計法案（政府提出）
昭和十七年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
昭和十五年法律第七號中改正法律案（造幣局東京出張所の廳舎、工場其の他の建物及其の屬設備の新營擴張に要する經費に關する件）（政府提出）
昭和十三年法律第五十三號中改正法律案（印刷局据置運轉資本補足に關する件）（政府提出）
昭和十五年法律第七十九號改正法律案（陸軍作業會計法、陸軍航空工廠資金特別會計法及海軍工廠資金會計法の臨時特例に關する件）（政府提出）
海軍工廠資金會計法中改正法律案（政府提出）
帝國鐵道會計法中改正法律案（政府提出）
昭和十三年法律第二十三號中改正法律案（關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する件）（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=0
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001・守屋榮夫
○守屋委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、昨
日ニ引續キ本委員會ニ付託サレマシタ各法
律案ニ付キ質疑ヲ行ヒマス-井上良次君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=1
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002・井上良次
○井上(良)委員 私ノ質問スル政府委員ガ
見エテ居リマセヌカラ一寸待ツテ下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=2
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003・守屋榮夫
○守屋委員長 ソレデハ今次官ガ見エマシ
タカラ-井上君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=3
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004・井上良次
○井上(良)委員 私ハ主トシテ勞働者年金
保險特別會計法ニ關聯ヲ致シマシテ、質問
ヲスル積リデゴザイマスガ、其ノ前ニ公債
消化ノ問題ニ關シマシテ、大藏當局ノ所見
ヲ伺ツテ置キタイノデゴザイマス、今回ノ
大東亞戰爭ノ將來ノ見透シニ付キマシテ
ハ、政府當局モ是ガ長期戰ニナルト云フコ
トヲ申シテ居リ、又國民モ其ノ覺悟デ居ル
ノデアリマスガ、而モ此ノ戰爭ノ領域ハ世
界戰史ニ曾テナイ厖大ナ領域ニ於テ戰爭ガ
遂行サレテ居ル、又世界デ一番金ヲ持ツテ
居ル國、一番生產力ヲ持ツテ居ル國、古ク
カラ世界ヲ支配シテ居ツタ國、ソレヲ相手
ニシテ長期ニ戰ヒ拔カナケレバナラヌ我ガ
國ト致シマシテ當面スル重要ナ問題ハ、
私ハ二ツアルト思フ、一ツハ長期戰ニ耐ヘ
得ル國民ノ體力ヲ如何ニシテ確保スルカト
云フ問題ガ、一番重要ナ問題デアリマス、
ソレト共ニ此ノ長期戰ヲ戰ヒ拔イテ行ク爲
二、ビクトモシナイ國家財政ノ基礎ヲ確立
スルト云フコトデアリマス、此ノ國家ノ財
政ノ基礎ヲ確立スルト云フコトニ關シマシ
テハ、支那事變ガ始リマシテ以來今日マデ、
大藏當局ハ實ニ淚グマシイ努力ヲ重ネラレ
テ居ルノデスガ、私共國民ノ立場カラ大藏
當局ノ財政政策ヲ見テ居リマスト、舊態依
然トシテ資本主義的ナ臭ヒガ拔ケ切ラナイ
ヤウデアリマス、卽チ歲入ノ重點ヲ公債主
義ニ置クト云フ此ノ考ヘ方ガ拔ケ切レナイ
ト思フ、公債ト云フモノハ返濟シナケレバ
ナラヌモノデス、利子ヲ附ケナケレバナラ
又、今日ノ戰爭ハ金儲ケノ爲ニ戰爭ヲシテ
居ルノデハナイ、第一線ニ戰ヒツツアル兵
隊サンハ金儲ケノ爲ニ戰爭ヲヤツテ居ルノ
デハナイ、然ルニ此ノ戰爭ヲ賄フ所ノ國家ノ
財政ノ一番大キナ歲入ハ、金利ヲ拂フ公債
デアル戰費ヲ金利ニ依ル公債ニ依ツテ賄ハ
ナケレバナラヌト云フコトハ一體何ント云
フ財政ノ立テ方デアルカト云フコトニ付キ
私共國民ハ非常ニ疑問ニ思ツテ居ルノデア
リマス、サリナガラ一度ニ國民ノ總テニ重
イ負擔ヲ掛ケルコトハ困難デアリマセウカ
ラ、斯ノ如キ政策ヲ立テラレテ居ルノデア
リマセウガ、此ノ際政府ハ最前私ガ申シマ
シタヤウニ、又政府モ唱ヘテ居リマスヤウ
ニ、容易ナラヌ長期戰體制ヲ整ヘナケレバ
ナラヌ、國家財政ニ於テモ每年厖大ニナツ
テ行キマス所ノ一般會計及ビ臨時軍事費ノ
豫算ニ當面シテ、唯公債ヲ以テ埋合ハシテ
行クト云フヤリ方ヲヤメテ、モツト根本的
ニ國民ノ生活ト其ノ運命トニ結付イタ財政
計畫ヲ立テル必要ガアルト私ハ考ヘテ居ル
ノデアリマス
此ノ點ニ關シマシテハ、昨年モ豫算總會
ニ於キマシテ大藏大臣ニ質問ヲ致シタノデゴ
ザイマスガ、每年ドン〓〓ドン〓〓公債ガ殖
エテ行ク、サウシテ是ガ消化ノ爲ニ、非常ナ
骨ヲ折ラレル、國民モ亦之ニ協力シテ居ル、併
シナガラ公債ガ殖エレバ殖エル程、公債金利
ト云フモノハ殖エテ行クノデアリマス、サウ
シテ其ノ結果ハ浮動購買力ヲ高メ、所謂惡性
「インフレ」ノ危險ガ高マツテ行ク、之ヲ抑
ヘナケレバナラヌ、ソコデ政府ノ方デハ此
ノ公債ノ增發ニ伴ウテ、公債ノ消化、國民貯
蓄ノ奬勵、浮動購買力ノ吸收ト云フモノニ
非常ナ努力ヲ拂ハレテ居ルト云フコトハ
最前私ガ申シタ通リデアリマスガ、又畏クモ
上陛下ニハ先日大藏大臣ヲ召サレマシテ、
此ノ公債ノ消化、國民貯蓄ノ狀況ニ對シテ
大御心ヲ注ガレ給ヒマシテ、吾々下國民ト
致シマシテ、洵ニ恐懼感激ニ堪ヘナイ所デ
アリマス。吾々ハ此ノ公債消化、浮動購買
力ノ吸收ノ爲ニ官民一體トナツテ一層ノ努
力ヲ拂フコトガ大御心ニ應へ奉ルコトニナ
ルノデス、故ニ私ハ此ノ浮動購買力ノ吸收、
戰時公債ノ消化、同時ニソレニ伴ウテ國民
體位ノ確保ト云フ見地カラ、此ノ際民間生命
保險會社ヲ國營ニ致シマシテ、國民ノ所得
收入ニ應ジテ一定ノ基準ヲ設ケテ全國民ヲ
强制加入セシメルト云フコトガ此ノ際絕對
ニ必要デアラウト思フノデアリマス
私ノ調ベタ所ニ依リマスト、民間生命保
險會社ノ一箇年間ノ保險契約高ハ六十億
餘圓ニナツテ居リマス、サウシテ其ノ保險
收入料金ハ、一箇年約十億圓ニナリマス、之
ヲ若シ其ノ國民所得收入ニ一定ノ基準ヲ設
ケテ强制加入スルコトニ致シマスナラバ、
我ガ國民ノ一箇年間ノ所得ヲ假ニ三百億ト
推定ヲ致シマシテ、其ノ二割ヲ保險料トシ
テ徵收スルト、大體六十億ノ保險料金ガ、
國庫ニ入ルノデアリマス、サウシテ此ノ保
險料金ハ、被保險者ガ不幸ノ場合、死亡又ハ
老衰シナケレバ拂フ必要ハナイノデアリマ
スカラ、每年六十億ト云フ現金ガ國庫ニ入
ツテ來ルノデアリマス、其ノ資金ヲ巧ク運
用致シマスナラバ、國家財政ノ基礎ハ非常
ニ固クナル、尙ホ國營後ノ生命保險ノ契約
高ヲ綜合シマスト、大體一千二百億位ニナ
ル豫定デアリマス、私ガ此ノ保險會社ヲ國
營ニスル必要ガアルト云フコトヲ主張致シ
マス理由ハ、現在ノ民間保險會社ノヤウニ、
各社ガ濫立競爭致シマシテ、其ノ競爭ノ爲
ニ競爭費ヲ一年間ニ一億二、三千万圓位、
使ツテ居ルノデアリマス、國民ノ體位ニ重
大ナ關係ヲ持ツテ居リマス公共的ナ事業デ
アル此ノ生命保險會社ガ、時局下ニ競爭ヲ
シテ、一億數千万圓ノ金ヲ其ノ爲ニ無駄ニ
使ツテ居ルト云フコトハ實ニ怪シカラヌ
コトデアルト共ニ、又今日政府ノ資金調整
令ノ發動ニ依リマシテ、民間保險會社ノ保
有スル資金ノ運用ト云フモノガ、完全ニ其
ノ妙味ヲ失ツテシマツタノデアリマス、民
間保險會社ノ經營致シマス三ツノ大キナ條
件ハ、一ツハ資金ラ運用致シマシテ、ソレ
デ會社ノ利益ヲ上ゲルト云フコト、是ガ先
ヅ一ツデアリマス、其ノ次ハ保險會社ノ經
營ヲ合理化スルト云フコト、第三番目ハ被
保險者ノ健康ヲ確保シテ死亡率ヲ低下スル
ト云フコト、此ノ三ツデアリマス、所ガ資
金ノ運用ハ、最前申シマシタヤウニ、資金
調整令ニ依ツテドウニモナラヌ、經營ノ合
理化ト言ヒマスケレドモ、保險會社ノ事務ハ
非常ニ簡潔デゴザイマシテ、單ニ被保險者ノ
加入者募集ヲ中心ニスル事業ニ於キマシテ
ハ合理化ノ方法ガ付カナイ、合理化ト云ヘ
バ、ドウシテモ各社ヲ合同サセナケレバナ
ラヌト云フコトニナリマス、第三番目ノ被
保險者ノ健康ヲ確保シテ死亡率ヲ低下セシ
メテ行クト云フ此ノ事業ハ民間營利事業會
社ノ仕事デハナイノデアリマス、國家的ノ
仕事デアリマス
斯ウ云フ點カラ考ヘマシテ生命保險會社
ハ今日民間保險トシテ經營スル何等ノ意
義ヲモ失ツテシマツテ、其ノ本質ハ完全ニ
國家的ナ經營ヘト成長シテ居ルト云フコト
ヲ私共ハ見拔イテ居ルノデアリマス、仍テ
政府ハ此ノ戰爭ニ勝チ拔ク爲ニ每年必要ナ
ル巨額ナ公債ヲ發行致シテ居ルノデアリマ
スガ、私ハ此ノ生命保險會社ヲ政府ノ經營
ニ移シマシテ、サウシテ國民ノ日々ノ生活
活動ト言ヒマスカ、生產活動、或ハ國民ノ
生命、運命ト言ヒマスカ、此ノ有難イ日本ノ
國土ニ生ヲ享ケテ居ル吾々國民ガ、喜ビ勇ン
デ生產活動ヲ致シテ行キマス其ノ生活活動
ノ中ニ、生命ノ中ニ國家財政ノ基礎ヲ確立ス
ル、此ノコトガ私ハ一番必要デアラウト考
ヘルノデアリマス、斯クスルコトニ依リマ
シテ、一方ニ於テハ浮動購買力ヲ吸收シ、
又此ノ資金ニ依ツテ政府ノ必要ト致シマス
公債ヲ消化シ、且ツ國民ニ對シ老後ノ準備
ヲ政府ガ命ジルコトガ出來マスシ、此ノ事
業ヲ經營スルコトニ依ツテ此處ニ色々多ク
ノ良キ結果ガ現ハレテ來ルノデアリマスガ、
斯ウ云フ點カラ大藏省ハ此ノ際百尺竿頭
一步ヲ進メマシテ、多少民間保險會社ノ方
ニモ問題ハアラウト思ヒマスケレドモ、
最近ノヤウニ保險會社ガ企業合同ヲナシ
且ツ資金ノ運用ガ巧ク行カナクナツテ來
マスト云フト國家ガ少シ强イ力デ
相談ニ乘出シマスナラバ、必ズ私ハ買收ニ
應ジルダラウト考へテ居リマス、假ニ之ヲ
買收スルコトニ致ストシテ、ドノ位金ガア
ツタラ宜イカト言ヒマスト、大體二億五千
万圓アレバ總資產全部ヲ買收スルコトガ出
來ルノデアリマス、其ノ二億五千万圓ト云
フ金ハ何處カラ出スカト言ヒマスト、最前
申シマシタヤウニ、現在ノヤウニ各社ガ競
爭致シマス爲ニ競爭費ガ一億五六千万圓掛
カル、更ニ各社ノ利益ガ一年間一億二、三
千万圓アルト睨ンデ居リマスノデ、各社ノ
競爭費ト利益金ヲ合セタダケデ約三億圓近
イ金ガアルノデアリマス、ダカラ政府ガ之
ヲ買收致シマシテモ其ノ買收シタ翌年度ニ
於テ直チニ買收費ハ浮イテシマフノデアリ
マス
以上述ベマシタ見地カラ此ノ際政府ハ、
一方勞働者ニ對シマシテハ後デ質問ヲ致シ
マス勞働者年金保險ニハ强制加入セシメ、
或ハ又健康保險、職員保險、ソレ〓〓强制
加入セシメテ居リマス關係上、政府ハ更ニ
大規模ナ見地ニ立ツテ民間生命保險全部ヲ
國家ノ手ニ收メテ、國家財政ノ長期的確立
ノ爲ニ圖ルコトガ此ノ時局下極メテ重要デ
ハナイカト云フコトヲ考ヘマシタノデ、此
ノ點ニ對スル大藏當局竝ニ企畫院當局ノ御
所見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=4
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005・谷口恒二
○谷口政府委員 只今井上サンノ御話ハ、
我ガ國財政經濟各方面ニ亙ツテノ洵ニ御卓
見デアルト思フノデアリマス、御話ノ通リ
ニ今囘ノ戰爭ハ長期ニ亙ルト云フコトヲ覺
悟致サナケレバナラヌノデアリマシテ、是
ガ爲ニハ國民ノ保險ト云フコトヲ考ヘル一
友、國家ノ財政ニ付テ特段ノ注意ヲ拂ハナ
ケレバナラヌト云フコトハ御說ノ通リデア
ルト思フノデアリマス、國民ノ保險ト云フ
問題ノ爲ニハ、昭和十七年度ニ於キマシテ
ハ特ニ政府ノ政策ノ一重點ト致シマシテ、
豫算其ノ他ノ上ニ於キマシテ出來ルダケノ
措置ヲ講ジテ居リマスルコトハ、各豫算書
等ニ付キマシテ井上サン旣ニ能ク御承知ノ
コトデアルト思フノデアリマス、財政ノ鞏
固テル基礎ト云フ問題ニ付キマシテモ、本年
更ニ增稅ヲ提案致シテ居リマシテ、既ニ戰前
ニ比ベマスレバ租稅收入モ約六倍ノ額ニ達
スルヤウナ狀況ニ相成ツテ居ルノデアリマス、
併シ今後相當ノ金額ヲヤハリ公債ノ財源ニ
依ツテ居リマシテ、是ガ消化ニ付キマシテ
ハ懸命ノ努力ヲ致サナケレバナラナイト
云フ現狀デアルノデアリマス、就キマシテ
此ノ間ニ處シテ保險ノ國營ト云フ問題ヲ御
提起ニ相成ツテ居ルノデアリマスガ、只今
色々詳細ナル數字ヲ擧ゲテ御話ニナリマシ
タ點ニ付キマシテハ、洵ニ御尤モナ點モ多
イト思フノデアリマス、特ニ財政的見地カ
ラ見マシテ是ガ貢獻スル所ハ非常ニ大キ
イ、尙ホ目下ノ狀況トシテハ生命保險會
社等ノ三ツノ仕事カラ考ヘテ、民營ニ任シ
テ置クヨリモ國營ニ移シタ方ガ宜シイト云
フ點モ、洵ニ御卓見デアルト思フノデアリ
マスガ、此ノ問題ニ付キマシテハ相當及ボシ
マスル影響モ多イノデアリマシテ、今日生
命保險會社等ニ於キマシテモ一ツノ金融機
關トシテ、公債ノ消化其ノ他ノ場面ニ相當
貢獻シテ居ル點モナイコトハナイノデアリ
マス、併シサウ云フ現狀ニ於テ生命保險會
社ガ國家財政上ニ貢獻シテ居ルト云フヤウ
テ場面ノミニ着目シナイデ、是ガ國營ノ下
ニ於テ色々ノ無駄ガ省カレテ、更ニモツ
ト國家ノ財政ニ頁獻スル所ガアルト云フ御
話デアリマスカラ其ノ點、竝ニ之ヲ買收シ
テ國營ニ移シタ後ニドウ云フ結果ニナルカ
ト云フ點ニ付キマシテハ、政府ト致シマシ
テハ極ク眞面目ニ〓究致シマシテ、御說ノ
點ヲ實行ニ移スコトノ可否ヲ調査致シタイ
ト考ヘルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=5
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006・井上良次
○井上(良)委員 企畫院總裁ガ見エテ居リ
マセヌガ、企畫院ノ方ガオイデニナツテ居リ
マスカラ、此ノ點ニ關スル御見解ヲ承ツテ置
キタイノト、ソレカラ保險院長官モ見エテ居
リマスカラ、簡易生命保險其ノ他ノ政府直
營ノ保險ノ經驗カラ見マシテ、民間生命保險
ヲ國營ニスルコトノ見透シヲ伺ヒタイ、實
際是ハ役人サンノヤル仕事ニシテハ最モ簡
單デ、最モ手間ノ要ラナイ、被保險者ニ保
險證書ヲ書イテ渡セバ宜イノデアリマスカ
ラ、是程簡單ナ仕事ハナイノデアリマシテ、
此ノ仕事ヲ政府經營トスルコトニ付テノ實
際ノ見透シハドウカ、政府直營ノ保險ノ經
驗カラ、民間生命保險ヲ國營ニスルコトノ
見透シニ付テ、保險院長官トシテノ御見解
ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=6
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007・亀山孝一
○亀山政府委員 只今井上サンカラノ御質
問ニ御答ヘ致シマス、企畫院ト致シマシテ
ハ只今大藏次官カラ御述ベノ通リニ、民
營生命保險國營移管ノ問題ニ付キマシテハ
折角〓究致シテ居リマス、是デ御承知ヲ願
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=7
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008・樋貝詮三
○樋貝政府委員 只今ヤツテ居リマス官營
ノ保險ト民營ノ保險ハ--民營ノ保險ト申
シマシテモ人ノ生命ニ關スル方面ト物ノ損
害ノ方面トアリマシテ、其ノ間ニ餘程相違
ガアルト思ヒマス、私等ノ方デヤツテ居リ
マス官營ノ保險ハ、人ニ關スル保險デアリ
マス、隨テ生命保險ト云フモノヲ民營ノ生
命保險ヲ大體取ツテ考ヘマスレバ、今マデ
私等ノ方デ保險ヲ經營致シマシタ經驗カラ
技術的ニ申セバ、保險ハ比較的國營ニ適ス
ルモノデアルト思ヒマス、只今井上サンカ
ラ御話ノヤウニ、保險ノ關係ニ於キマシテ
ハ、運用ト云フコトト死亡率其ノ他事故ノ起
リマス統計關係ト、アトハ其ノ事務ヲ執行
スル所ノ費用ノ問題ダト思ヒマス、之ヲ官
營ニ致シマスレバ、募集費其ノ他ノ點ニ於
テハ非常ニ經濟ニナルト思ツテ居リマス、
運營ノ點ハ從來ノ營利主義ノ時代ニ於ケル
民間ノ運營デスト、是ハ官營ヨリハ遙カニ
上〓ツテ有利ニ運營ガ出來ルダラウト思ヒ
きくら、最近ニ至リマシテハドウ云フ風ニナ
ツテ居リマスカ、具體的ノコトハ正確ニハ
存ジマセヌシ、又朧氣ニ知ツテ居ルコトハ此
處デ申上ゲル限リデハナイト思ヒマスガ、
恐ラクハ昔ヨリハ只今井上サンノ御話ノ如
クニ、マヅイ狀態ニナツテ居ルダラウト思ヒ
やっく、隨テ是ハ官營デヤリマスノニ非常ニ
接近シテ參ツテ來テ居ルノデハナイカト思
ヒマス、又死亡率ト申シマセウカ、ソレハ
各種ノ福利施設ヲヤルコトニ依ツテ事故ノ
發生ヲ非常ニ少クナラシメルコトガ出來ル
ト云フ點ハ、各民營會社デモ今日マデヤツ
テ居ルト思ヒマスガ、官營デヤリマス場合
ニハ更ニ一層徹底ヲ期スルコトガ出來ル
ノデハナカラウカト云フコトガ考ヘラレテ
居リマス、サウ云フヤウナ諸般ノ點ヲ考慮
シテ、而シテ是ハ又民間ノ經濟界ニ及ボス
影響トカ、或ハ之ヲ國營ニ致シマス場合
ニ-是ハ大藏當局ノ方デ主トシテ御考ヘ
ニナルコトデアリマセウガ、財政關係等ヲ
考慮セラレテ、玆デ最後ノ斷ヲ下スベキモ
ノデハナカラウカト云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、私ノ方ノ經驗カラ見タ國營ハ、ソンナ
所ヲ考慮シテ決定スベキモノデアラウト云
フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=8
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009・井上良次
○井上(良)委員 御親切ナ御答辯ヲ戴キマ
シタガ、私ハ之ヲ單ニ機械的、思付キデ言
ウテ居ルノデハナイノデ、政府ノ方デ折角調
査〓究ガ、速カニ完結スル日ヲ待望致シマス
尙ホ私ハ增稅或ハ公債ノ發行、之ニ對ス
ル國民ノ心構ヘノ問題ニ付テ、政府ノ考ヘ
方ヲ伺ツテ置キタイト共ニ、國民ノ心構ヘ
ヲ述ベテ置キタイト思ヒマス、ソレハ從來
エテシテ增稅ヲ致シマスト、高イ稅金ヲ取
ラレルト云フ、納稅報國ト云フ觀念カラ難
レテ、何カ餘計ナ金ヲ取ラレルト云フ考ヘ
方デ此ノ有難イ日本ノ國ニ生ヲ享ケテ、幸
福ニ暮シテ居ルト云フ感謝ノ念ヲ少シモ起
サナイデ、唯稅金ガ高クナツタラ高クナツ
タダケ、餘計ニ取ラレルト云フヤウナ考ヘ
友從來ノ資本主義的ナ「イデオロギー」カ
ヲ考ヘテ居ル國民ガ相當居ルノデアリマ
ス、併シ今回大東亞戰爭ノ勃發ニ依リマシ
テ、前線將士ノ勇戰奮鬪ニ感激シタ國民
ハ、單ニ稅金ダケデハナシニ、國防獻金其
ノ他國家奉仕ノ活動ニ依リ、國家ニ御奉公ヲ
スル時デアルト云フコトヲ國民ハ決意致シ
テ居リマスカラ、政府ノ方デモ從來ノヤウ
ナモノノ考ヘ方、從來ノヤウナ態度ヲ一擲
サレテ、國民ト共ニ國家ノ難局ヲ乘切ルノ
ダト云フ態度デ望ンデ貰ヒタイノデアリマ
ス、公債ノ消化ノ實際ノ具體化ニ對シマシ
テモ、國民ノ自發的ナ協力ヲ出來ルダケ〓
メナケレバナラヌ現在、市町村ノ隣組其ノ
他ニ於テ公債ノ消化ニ色々協力ヲシテ居
ル人々ノ行動ト云フモノハ、相手方ノ懷ロ
工合モ生活狀態モ考慮ヲ十分ニセズニ、兎
モ角頭割デドン〓〓割當テテ來マシテ、
其ノ爲ニ國民ノ感〓ヲ〓ブラシテ居ル所ガ
アルノデアリマス、其ノ公債ガ一體何ニナ
ルカ、サウシテソレガドウ廻リ廻ツテ自分
達ノ利益ニナルカト云フコトヲ能ク說イテ
聽カスコトニ全力ヲ擧ゲナケレバナラヌト
思フノデアリマス、國民自ラガ此ノ難局
ヲ背負ツテ立ツト云フ氣魄ヲ持チマスルナ
ラバ、實際收入中、生活費ダケヲ除イテ全
部ヲ公債ニ稅金支出シテモ宜イト云フコト
ニナルト私ハ思フノデアリマス、ソコマデ
財政當局トシテモ對策ヲ考ヘテ貰ハナケレ
バナラヌ、單ニ機械的ニ、天降リ的ニ、强
制的ニ押付ケラレルヤウナ態度ハ改メナケ
レバナラヌ、是ハ參考ノ爲ニ申上ゲテ置キ
タイノデアリマス
次ニ私ハ勞働者年金特別會計法ニ關係致
シマシテ二、三點質問ヲ致シタイノデア
リマス、今日日本ノ勞働階級ハ大東亞戰
爭ガ勃發致シマシテカラト云フモノハ
此ノ戰爭ニドウシテモ勝拔カナケレバ
ナラヌト云フ非常ナ決意ヲ以テ、前線將
士ニ劣ラザル殉國的精神ヲ持ツテ、國家
ノ重要ナル生產力增强ニ全精力ヲ注イデ
居ルノデアリマス、此ノ時ニ國家ノ恩給ニ
モ比スベキ勞働者年金保險法ガ今年ノ一月
ヨリ實施サレルコトニナリマシタコトハ、
全勞働者ノ爲ニ私ハ非常ニ喜ビト致スモノ
デアルト共ニ、又此處マデ本法ノ施行ニ色
色運ンデ戴キマシタ厚生省當局或ハ又大藏
當局ノ御努力ニ對シテ改メテ感謝ト敬意ヲ
表シテ置キタイト思ヒマス、併シナガラ此
ノ年金保險法ノ規定セル各條ニ亙ツテ檢討
致シテ見マスルト、保險給付ノ內容、ソレ
カラ受給期間ノ問題、是等ガ國家ノ軍人、
官公吏ニ支給シテ居リマスル現行恩給法ニ
比較シ、其ノ給付ヲ受ケルマデノ期間ガ非
常ニ長ク、又支給金額モ極メテ少額デアリ
マス、此處ニ參考資料ヲ戴イ。テ居リマスガ、
之ヲ見マスト鑛山ノ坑內夫ニ於テ十五年、
工場勞働者ニ於テハ二十年ニナラナイト此
ノ年金ハ貰ヘナイ、然ルニ政府ハ今囘本議
會ニ對シテ大東亞戰爭ノ現狀カラ、現行恩
給法ガ適當デナイト云フ理由デ、是ガ改正案
ヲ當議會ニ提出致シテ居リマス、ソレハ受
給マデノ期間ノ短縮ヲ圖ラントシテ居ルノ
デアリマスガ、日夜軍需其ノ他國家重要產
業ニ全生命ヲ打込ンデ勤勞報國ノ精神ヲ以
テ勤勞ニ從事シテ居リマス勞働者年金保險
ダケハ、其ノ受給マデノ期間ガ非常ニ長イ、
サウシテ今申シタヤウニ給付金額ニ於テモ
非常ニ少イ、是デハ政府ガ勞働者ニ呼掛ケ
マス生產力ノ增强ニ全力ヲ打込メ、前線將
士ニ劣ルナト云フ此ノ言葉ハ、實際ニ此ノ
年金保險ノ內容カラ見マスト、觀念的ニソ
レヲ勞働者ニ叫ビ、呼ビ掛ケテ居ルヤウニ
シカ思へナイ、恩給ノ受給期間ハ前線銃後
ニ拘ラズ之ヲ短縮スルト言ウテ居ル、勞働者
ノ年金保險ハ二十年デモ十五年デモ構ハヌ
ト云フノデハ、勞働者ハ感情ヲ惡クスルカラ
政府ノ方デハ此ノ際御考ヘヲ願ヒマシテ、
國家ノ恩給ニ比スベキ勞働者年金デアリマ
スカラ、此ノ受給マデノ期間ヲ短縮スルコ
ト、同時ニ給付金額ヲ增額スルト云フコト
ニ付テ一ツ御考ヘヲ願ヒタイト思フノデア
リマスガ、之ニ對スル政府ノ御所見ヲ伺ツ
テ置キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=9
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010・樋貝詮三
○樋貝政府委員 井上サンニ御尋ヲ戴イテ
居ルト申シマスヨリハ、私ハ御叱リヲ受ケ
タト拜聽ヲ致シマスガ、確カニ官吏ヤ軍人
ノ恩給ニ比シマシテ、勞働者年金ノ受給ノ爲
メノ勤務年數ガ長過ギル-比較シテ見ル
ト長イコトニナツテ居リマスガ、官吏ヤ軍人
ノ方ニ於テモ少シ短クシ過ギタト云フノ
デ、年々-年々デモアリマセヌガ、機會ア
ル每ニ延バシマシタヤウナ譯デ、理想カラ致
シマスレバ、割合長クヤツテ居ツテサウシ
テ初メテ貰フ、併シナガラ愈〓貰フ時ニハ本
當ニ爲ニナルダケ貰フト云フコトガ是ガ理
想デナケレバナラヌ、但シ此處デ考ヘナケ
レバナラヌコトハ、勞働者年金法ニ於テハー
是ハ勞働者年金法バカリデナク各種ノ保險
ガ皆サウデアリマスガ、大體ニ於テハ自力
ヲ主トシテ生活安定ヲ圖ル、斯ウ云フコト
ニ主眼ガ置イテアリマス、隨テ勞働者自體
ノ負擔ト云フモノモ、年數ヲ短ク致シマス
レバ負擔ガ增サザルヲ得ナイト云フ結果ニ
ナリマスノデ、勞働者年金法ヲ昨年作リマ
スニ付テモ、物價ハ高クナツテ來テ居ル、
其ノ上ニ掛金ヲ負擔スルト云フノデハ、中
中敵ハヌト云フヤウナ聲モ隨分聞キマシタ
譯デ、是ハ此ノ時局柄勞務者ノ諸君ニモ大
イニ御國ノ爲ニ働イテ貰フガ、此ノ方
面デモ大イニヤツテ行キタイト云フヤ
ウナ掛聲デ昨年色々斯ウ云フ制度ヲ御協
議願ツタノデアリマスガ、其ノ上ニ餘リ
一時ニ多クノ負擔ヲサセルト云フコト
モ中々考ヘモノデアリマスカラ、ソコデ年
數ノ方ヲ官吏恩給ナドヨリモ稍〓延バン、隨
テ掛金ノ方ヲ少クシテヤツテ參ツタト云フ
ヤウナ實ハ狀態デアリマシテ、現在ニ於キ
マシテハ確カニ違ツテ居ル、本年又恩給法
ガ改正セラレテ遺族ヤ何カノ恩給給付ガ非
常ニ良クナツタヤウニ承ツテ居リマスガ、
サウ云フ手前、コチラノ方モ直グニ給與ヲ
殖ヤセバ結構デアリマスガ、同時ニ負擔ガ
增スト云フ關係ガアリマスカラ、サウ云フ
譯ニ行カナイ、ソレニ又本年一月ニ漸ク實
施ヲシ掛ケタト云フヤウナ狀態デアリマス
カラ、暫ク之ヲ實行シタ上デ、負擔其ノ他
ノ關係ヲ考慮致シマシテ別途運用デモ旨ク
行キマスレバ、ソレニ依ツテ福利施設ナド
ノ方ニ向ケルトカ、或ハ又各事業主ナドノ
方へ話ガ付キマスレバ、福利施設ナドヲ別
途ニ施設ヲシテ貰フヤウニ、中ヘ入ツテ努
力致シマシテ、サウ云フヤウナコトデ、是
ハ全然別ノ方面デアリマスケレドモ、今ノ
保健給付ノ比較的少イコトノ補ヒヲ付ケル
ト云フヤウナコトモ考ヘテ行キタイ、是ハ
年金法ノ上ニ現ハレテ來ル事柄ヂヤアリマ
セヌケレドモ、サウ云フヤウナ方面デ多少
ノ補ヒヲ付ケテ行クト云フヤウナコトモ考
ヘテ考ヘラレヌコトデハナカラウト云フ風
ニ思ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=10
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011・井上良次
○井上(良)委員 此ノ年金保險法ハ其ノ制
定ニ當リマシテ政府ノ說明理由ニ依リマス
ルト、同一職場デ勞働者ガ出來ル限リ安定
シテ仕事ヲスルト云フコト、一ツハ浮動購
買力ヲ吸收スルコト、第三ニ勞働者ノ老後
及ビ不具、癈疾ニ對シテノ相互扶助機關ト
シテ此ノ保險ヲ利用スルト云フコトデアリ
マス、一番重大ナ問題ハ優秀ナル勞働者ガ
工場カラ工場へ移動シテ行クコトヲ防グ、
同一職場ニ長ク勤勞シテ貰フト云フコトガ
眼目デ、ソレカラ資本家、勞働者側ノ掛金
ガ一年間約三億圓アルト睨ンデ居リマス、
是ガ多少デモ浮動購買力ノ吸收ニナルト云
フ見地ニ立ツテ居ル、サウシマスト、是ノ
年金保險ハ勞働者ノ相互扶助機關デアルト
云フ見地カラ、單ニ政府ノ方ハ此處ニモ書
イテアリマスヤウニ「事務費及保險給付ニ要
スル費用ノ中、坑內夫ニ關シテハ其ノ二割、
其ノ他ノ者ニ關シテハ其ノ一割、」事務費ノ
一割シカ負擔シナイト云フコトニナツテ居
ル、官公吏、軍人ニ支給スル國家ノ恩給ハ
全額國家負擔デアリマス、此ノ點ハ勞働者
ニ與ヘル印象ハ非常ニ惡イノデス、厚生省
當局ハ今日勞働階級ニ對シマシテハ、生產
力增强ニ對シテ非常ナ激勵ヲ與ヘテ居ル、
增產運動ヲ起シテ、增產ニ優秀ナ成績ヲ擧
ゲタ事業主及ビ勞働者ニ對シマシテハ、勞
働徽章ト云フモノヲ新タニ制定致シマシテ、
厚生大臣自ラ總理大臣官邸ニ於テ、是等優
秀ナル模範事業主及ビ勞働者ニ對シテ國家
ノ動章ニモ比スベキ徽章ヲ與ヘテ居ル、ソレ
程勞働者ガ今日大東亞戰爭ヲ遂行シテ行
ク上ニ重要ナ銃後ノ生產力ヲ握ツテ居ルト
云フ見地カラ考ヘ、政府ハ更ニ一步ヲ進メ
テ、單ニ事務費ノ一割ヤ二割位負擔シテ、
ソレデ勞働者年金ヲ作ツテヤツタンダト言
ハレタラ、實際嗤ハレマスヨ、積極的ニ政
府ガ負擔ヲスベキデス、田舎ノ農民ガ米ガ
作レヌト云フト、米ノ增產ノ名ノ下ニ何千
万圓、何億圓ト云フ金ヲ政府ハ出シテ居ル
デハナイカ、政府ハ一石餘計作ツタラ現金
五圓ヤルト云フ法律ヲ出シテ居ルデハナイ
カ、勞働者ニ本當ニ元氣ヲ出シテ働イテ貰
フ爲ニ、僅カ一割ヤ二割位ノ金ヲ支出シテ、
サア働ケト言ツテモ、勞働者ハ感激シナイ
ノデアル、ソコデ私ハドウシテモ將來ニ對
スル保險經營ノ色々ナ觀點カラ、直チニ受
給期間ノ短縮、或ハ給付金額ノ增額ガ此ノ
保險經濟ニ於テ難カシイト云フ見透シガア
リマスナラバ、政府ガ之ニ對スル相當ノ補
助金ヲ一定期間支出スル必要ガアルト思
フ、サウ云フ運動ヲ一ツ厚生當局ハ大藏當
局ニ致シタラドウカト私ハ考ヘル是ハ相
互扶助機關デアツテ、政府カラハ僅カバカ
リシカ金ガ出ナイ、唯法律ヲ拵ヘテヤツテ
其ノ手續ノ爲ニ金ヲ一寸出シテヤルダケ
デ、アトハ全部勞働者ト資本家トデヤツテ
居ルノデスカラ、サウシマスト政府ノ方カ
ラモツト金ヲ出シテ吳レタラドウカト思
フ、官吏、軍人ニ對シテハ全額國家ガ負擔
シテ居ル、勞働者ハ全額負擔シテ吳レト言
ウテハ居ナイ、セメテモウ少シ割ノ好イヤ
ウニ、政府ノ資金デ以テ是ガ賄ヘテ行ケル
ヤウニ、補助ヲモツト餘計支出スルヤウナ
運動ヲシタラドウカ、サウ云フ要求ヲ大藏
省ニ致シテ見タラドウカ、斯ウ考ヘルノデ
アリマスガ、事務當局デアリマス保險長官
トシテハ、ドウ御考ヘデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=11
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012・樋貝詮三
○樋貝政府委員 御說ノヤウニ確カニ官吏
ヤ軍人ノ方ハ國庫納金ト云フモノヲ致シマ
スケレドモ、是ハ非常ニ少イ、ソレカラ勞
働年金ノ方ニ於キマシテハ、國ノ方デ負擔
スルモノハ事務費ダケト云フヤウナコトデ、
給付金ニ付キマシテハ全ク勞働者、企業家
ノ方面ノ醵出ニ俟ツダケデアリマシテ、國
ノ方カラモ出シテ居リマスルガ、多少官吏
ヤ軍人ト勞働者トノ關係ニ於テ其ノ點ガ違
ツテ居ルノヂヤナイカト思ヒマスルノハ、官
吏ヤ軍人ノ方ハ國ノ仕事ヲヤル、卽チ直接ノ
國ノ働キ手ト云フ譯デアリマス、勞働者ノ方
面ハ間接ノ國ノ働キ手デハアリマスケレド
モ、直接關係ニ於テハ、事業ノ働キ手ト云フ
コトニナリマシテ、幾ラカ其ノ間ニ相違ハ
アルト思ヒマス、思ヒマスガ、今御話ノヤ
ウニ、是ハ此ノ際勞働ノ國ニ對スル貢獻ト
云フコトカラ考ヘテ見テ、モツト出シテモ
宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ御說モ確カニ
十分一考スベキ事柄ト思ツテ居リマス、思
ツテ居リマスガ、何分ニモ昨年制度ヲ拵ヘ
テ、今年實行ト云フ譯デ、マダ事務當局ト
致シマシテハ大藏省ニ國費ヲ增シテ貰ヒタ
イト云フ請求ヲスルコトモ如何デアラウカ、
又實際問題トシテ一寸不可能デゴザイマ
ス、サウ云フ譯デ本年モ非常ニ御滿足ノ行
クヤウニ特別負擔ノ增額ヲ要求シタ譯デモ
アリマセヌノデシテ、兎ニ角健全ニ之ヲ育
テテ行ツテ、ソレカラ先又サウ云フ機會モ
アラウカト思ヒマスケレドモ、差當リト致
シマシテハ兎ニ角生ンダノデスカラ、生ン
ダモノヲ一應育テテ行カナケレバナラヌ、
斯ウ云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、ソンナヤウ
ナコトデマダ今ノ御話ノヤウナコトハ、十
分ニ考ヘテ居リマセヌト云フコトヲ申上ゲ
テ宜カラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=12
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013・井上良次
○井上(良)委員 ドウカ其ノ點ハ愼重ニ御
考へ御願ヒヲシテ置キタイト思ヒマス
次ニ本案ノ第二條ニ規定シテアリマス福
祉施設ノ問題デアリマスガ、今政府ノ意見
ヲ聽イテ居リマスルト、ドウモ受給期間ノ
短縮、給付金額ノ增額ト云フコトハ中々困
難ノヤウニ考ヘマスノデ、此ノ福利施設ノ
擴充ト云フ問題ガ極メテ重要ニナツテ來ル
ト思ヒマス、本法第二條ニモ「福利施設費」ト
云フ項目ガ出テ居リマス、此ノ福利施設ト
云フノハ一體ドウ云フコトヲヤラウト云フ
ノカ、サウシテ其ノ福利施設ニ要スル財源
ハ一體何處カラ流用シテ來ルト云フノカ、
之ヲ伺ツテ見タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=13
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014・樋貝詮三
○樋貝政府委員 福社施設ト申シマシテモ
色々範圍ガ廣イ方面ニ亙ツテ居リマスノデ、
年金ノ方ニ於キマシテ一、二考慮ヲ致シテハ
居リマスガ、具體的ニ今考ヘテ居リマスモ
ノハ、老齡者ノ健康保護、或ハ其ノ生命、
延長ト云フヤウナコトニ關スル施設、ソレ
カラ老齡者ノ生活保護ニ關スル施設、例、
バ老人「ホーム」ヲ造ルト云フヤウナ事柄デ
アリマス、ソレカラ癈疾者ノ職業再〓育ニ關
スル施設、癈疾者ノ癈疾囘復ニ關スル施
設或ハ生活相談ニ關スル施設、老齢者、癈
疾者、遺族年金受給者ニ授產ヲスルトカ又ハ
職業指導ヲスル施設ヲスルトカ、或ハ保養
慰安其ノ他生活向上ニ關スル施設、災厄失
業其ノ他窮迫ニ於ケル貸付ノ施設ト云ツタ
ヤウナ事柄ヲ大體考へテ居リマス、是ガ一
遍ニ出來ルトハ無論申シ難イノデアリマシ
テ、是ハ財源ナドノ關係カラ來ル外ハナイ
ト思ツテ居リマス、其ノ外先程モ一寸觸レ
テ申上ゲタ譯デアリマスガ、斯ウ云フヤウ
ナ施設ガアルモノニ付キマシテハ、私等ノ
方デ何等カノ手段ヲ持チマスナラバ、企業
者ノ方ニ實際アル物的施設ナドニシテ貰フ
コトガ出來ルノデゴザイマス、是ハ年金法
ニモ現ハレテ居リマセヌシ、法律ノ何處ニ
アルト云フ譯デモアリマセヌケレドモ、國
ノ方デ斯ウシテ吳レ、其ノ代リ俺ノ方デ斯
ウシヨウヂヤナイカト云フヤウナ話合デ行
キ得ル施設モ相當ニアラウト思ツテ居リマ
ス、サウ云フヤウナ力ヲ持チタイト云フコ
トモ餘程アリマス、是ハ實際ノ給付ガ法定
化サレタ四角四面ノ給付ノ外ニ、斯ウ云フ
ヤウナ所デ餘裕ガ付ク譯デゴザイマスガ、
其ノ外尙ホ當面ノ例ヘバ資金運用ト云フヤ
ウナコトカラ多少餘裕ガ出來マスナラバ、
ソレカラ此ノ方面ニ〓ハス餘地ヲ作リタイ
ト實ハ考ヘテ居ツタヤウナ譯デアリマス、ソ
レガ十分ニ出來得ルカドウカト云フコトニ
付テハ工夫モシ懸念モ致シテ居ル譯デア
リマスガ、ソレ等ヲ寄セ集メテ是ガヤツテ
行ケルト云フ風ニ考ヘテ、昨年モ申上ゲ、只
今モ申上ゲタヤウテ事柄ヲ考慮致シテ居ツ
タヤウナ譯デアリマス、財源ニ付キマシテ
ハ、今是ガ爲ノト云フ法律的ナ根據ヲ以テ、
給付金ノ中幾ラト書イテ、之ニスルノダト
云フヤウナコトハ致シテ居リマセヌ、大體
ハ各被保險者ノ方ニヤル金ナリ或ハ其ノ他
ノ給付ナリト云フモノヲ其ノ掛金ノ中ニ入
レテ置イテ、今言ツタヤウナ施設ノ方ニ使
フ金ヲ掛金ナラ掛金ノ中カラドレダケ出ス
ト云フ風ニ特別ニハ致シテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=14
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015・井上良次
○井上(良)委員 福利施設ノ擴充ノ問題ニ
關聯致シマシテ、便郵年金或ハ又簡易保險、
國民健康保險、勞働者健康保險、船員保險ト
色々ゴザイマスガ、是等各保險トモソレ〓〓
福利施設、厚生施設ヲ持ツテ居リマス、
之ヲ一ツ統合シテ、地域的或ハ職業別的、
產業別的ト云フカ、ソレ〓〓ニ適地適業ノ
福利施設ヲ擴充シテ行クコトガ必要デハナ
イカト云フコトヲ參考ノ爲ニ申上ゲテ置キ
マス、同時ニ私ハ此ノ際アトノ問題ヲ政府
ニ御考ヘ願ヒタイノハ、此ノ特別會計法デ
集マツテ來マシタ保險料金ガ一ツノ「プー
ル」資金トナツタ場合、其ノ「プール」資金
ハ全部大藏省ノ預金部運用資金ノ方ニ流用
サレテ行ク、斯ウ云フ本案ノ內容デアリマ
ス、是ハ後デ申上ゲマスガ、此ノ福利施設
ノ一端トシマシテ-此ノ金ハ十五年、二
十年後デナケレバ勞働者ニ實際ハ支給サレ
ナイ、勿論三年以上ニナリマシタ場合、ソ
レゾレノ條件ニ依リマシテ不具、廢疾、脫
退其ノ他ニ支出スルコトニナツテ居リマス
ケレドモ、ソレハ僅カナノデアツテ、全體
ハヤハリ十五年、二十年、三十年後デナケ
レバ實際ノ金ハ勞働者側ニ支出スルコトハ
出來ナイ、サウスルト十五年、二十年間ハ勞
働者ノ汗水滴ラシテ積ンダ金ガ全然別ノ方
面ニ使バレルコトニナルノデアリマス、ソ
コデ私ハ現ニ產業戦線デ汗水滴ラシテ生產
力擴充ニ心血ヲ注イデ居ル其ノ勞働者ノ氣
持ヲ更ニ一層昂揚シ、更ニ一層激勵スル爲
ニ、此ノ年金保險ノ掛金ヲ以テ優秀ナル勞
働者子弟ノ奬學資金制度ヲ設立シタラドウ
カト思フ、勞働者側ノ掛金ハ一年間ニ假ニ
一億三千万圓カラ一億五千万圓ハ入ルノデ
ハナイカト見テ居リマス、其ノ一億五千万
圓ノ中デ僅カ三千万圓ヲ以テ勞働者ノ優秀
子弟ノ奬學資金制度ト云フモノヲ別個ニ設
ケテ貰ヘヌカト言フノデス、三千万圓ト致
シマスト三分五厘ノ國債ノ利子ト同ジ利子
デ計算シマスト、國庫デ大體百五十万圓ヲ
每年負擔シテ貰ツタラ宜シイノデス、每年
三千万圓繰込ミマシテ、奬學資金ヲ持ツト
シマスト、假ニ上級學校ニ入學スルニ付テ、
一箇年平均致シマシテ三百圓ノ奬學資金ヲ
要ストスル、サウスルト三千万圓デ十万人
ノ奬學學生ガ出來ルノデアリマス、一年間
十万人、勞働者ノ優秀ナル子弟ガ國民學校
カラ上級學校ニ入ルコトノ出來ルノデア
ル、十万人ガ此ノ三千万圓ノ獎學資金ニ依
ツテ、每年政府ガ百五十万圓ノ補助ヲスル
コトニ依ツテ、上ハ大學マデ卒業スルコト
ガ出來ル制度ガ出來上ルノデアリマス、頭
ガ良ク肉體健全ナルニ唯家ガ貧乏ナルガ故
ニ上級學校ニ行クコトノ出來ナイ向學ノ勤
勞者子弟ガ如何ニ巷ニ歎キ苦シンデ居ルカ
ヲ吾々ハ能ク知ツテ居ルノデアリマス、是
等向學ノ者ニ政府ノ御蔭デ、而モ親父ガ働
イテ掛ケテ吳レタ保險金ノ御蔭デ吾々ハ大
學ヘ入學ガ出來ルノダ、サウシテ卒業後ハ
國家ニ御奉公ガ出來ルノダト云フコトヲ全
國ノ三百五十万人ノ勞働者家庭ニ呼ビ掛ケ
テ御覽ナサイ、ソレハ政府ガ百萬陀羅勤勞
報國ノ精神ヲ强調スルヨリモモツト有效
適切ナ效果ガ擧ガリ得ルモノデアリマス、
若シ本年カラ此ノ金庫ガ設立サレマシテ、
此ノ金庫ノ運用ニ依ツテ上級學校ニ入學シ
タ者ガ今後大學ヲ出ルマデニ大體十箇年ノ
年月ヲ要スルノデアリマス、十箇年後ニハ
旣ニ百万人ノ奬學資金ニ依ル勉學者ヲ持
チ得ルノデアリマス、今日本ハ大東亞戰
爭ニ依ツテ、東亞共榮圈ノ指導者ヲ養成シ
ナケレバナラヌコトニナツテ居ル、頭ニ於
テ、腕ニ於テ、肉體ニ於テ何レカラ見テモ立派
ナ指導者ヲ早急ニ育成シナケレバナラヌコ
トニナツテ居ル、此ノ時ニ只今ノ制度デハ金
ガナケレバ大學ヲ卒業スルコトガ出來ナイ
ノデス、其ノ時ニ此ノ勤勞者、被保險者ニ對
シテ特別ナル設施ヲ設ケテ、新タナル奬學
制度ヲ作リマスナラバ、十年後ニハ百万人
ノ奬學學生ガ育英サレルノデアリマス、
如何ニ國家的ニ、產業的ニ、又勞働者ニ與
ヘル精神的ナ影響ノ上ニ、重大ナ意義ヲ持
ツカト云フコトヲ、政府ハ篤ト御考ヘヲ願
ヒタイ、百万人ヲ育英スルノニ年々僅カ百
五十万圓ノ金サヘ出セバ出來ルノデス、斯
ウ云フ席デ申上ゲルノハドウカト思ヒマス
ケレドモ、米國東洋艦隊ノ根據地デアル「ハ
ワイ」ヲ擊滅致シマシタ總指揮官ハ、聯合艦
隊司令長官山本五十六大將デアル、山本五
十六大將ハ金滿家ノ息子デハアリマセヌ、
大地主ノ息子デハナイノデアリマス、生レ
ナガラニシテ家貧ニシテ、上級學校へ進ム
コトガ出來ズ、長岡藩ノ奬學資金ニ依ツテ、
彼ハ勉强シタト云フコトデアリマス、今日
世界ヲ驚倒シテ、日本一億ノ國民ガ感激ノ
淚ヲ流ス戰果ヲ擧ゲシメテ司令長官、名提督
タル山本五十六大將ハ、藩ノ奬學資金ニ依
ツテ少年期ニ勉學シタ我ガ海軍ノ名將デア
リマス、斯ウ云フ點ヲ私共ガ考ヘマス場合
ニ、如何ニ多クノ勤勞大衆ノ子弟ガ上ノ學
校ニ進ンデ學ヲ求メ、技術ヲ究メ、優秀ナ
ル人材ニナラウトシテ努力シテ居ルカト云
フコトヲ政府ハ能ク逹觀サレテ、此ノ際斯
クノ如キ金庫制度ヲ設ケルコトガ、時局柄
極メテ重大デアルト云フコトヲ私ハ考ヘル、
而モ是ハ此ノ年金保險特別會計ノ一部ニ依
ツテ出來ルノデアリマスカラ、是ハ何トシテ
モ保險院トシテ頑張ツテ貰ツテ、斯ウ云フ制
度ヲ新タニ設ケテ貰ヒタイト思ヒマスガ、
之ニ對スル政府ノ御所見ヲ伺ツテ置キタイ
ト思ヒマス、之ニ對シマシテハ保險院長官、
同時ニ預金部ノ政府當局竝ニ企畫院ノ關係
ノ方ノ御所見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=15
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016・樋貝詮三
○樋貝政府委員 只今ノ奬學資金ヲ勞働者
ノ子弟ニ貸付ケルト云フヤウナ御工夫ハ、
洵ニ良イ思ヒ付キダト敬服致シテ居ル次第
デアリマス、奬學資金ト云フ譯デハアリマ
セヌガ、私ノ方デヤツテ居リマス簡易保險ナ
ドノ貸付ケニ於キマシテハ、被保險者ト申
シマスカ、正當ニ言ヘバ保險契約者デアリ
マスガ、其ノ貸付要求ガアレバ、優先的ニ
貸付ケヲスルト云フ風ニ、只今私ノ方デハ
運用致シテ居リマス、ソレト同工異曲ナヤ
リ方ヲヤレバ、斯ウ云フ貸付モ出來ルコト
ト思ツテ居リマスガ、結果ハ恐ラク只今御
話ノ通リ、非常ニ好イ結果ガ生レテ來ル、
少シ位ノ金ヲ唯給付シテ增シテヤルト云フ
ヨリカ、遙カニ效果的デアラウト考ヘテ居
リマス、唯是ハ運用ニ關スルコトニナリマ
シテ、今度ノ特別會計ニ於キマシテハ、預
金部ニ預ケ入レテ、預金部ガ運用スルト云
フコトノ案ニナツテ居リマス爲ニ、私ノ方
デ直接ニドウスルト云フコトガ此ノ儘デハ出
來マセヌカラ、ドウ云フヤリ方ヲヤルカト
云フコトニ付キマシテハ、大藏當局ノ方ト
モ御相談中デアリマス、ソレノ如何ニ依リ
マシテハ、私ノ方デハドウスルコトモ出來
ナイト云フヤウナコトデ、此ノ點ハ私カラ
ハドウヤルカト云フヤウナコトニ付テ、
寸御答ヘガ致シ兼ネルノデアリマス、是ハ
尙ホ預金部長官ガ御見エノヤウデアリマス
カラ、預金部長官ノ方カラモ御考ヘヲ御話
下サルコトト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=16
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017・相田岩夫
○相田政府委員 只今樋貝保險院長官ヨリ
答辯ガアリマシタヤウニ、勞働者年金保險
特別會計ノ資金ハ、國債ニ運用サレルモノノ
他ハ、大藏省預金部ニ預入ニナルノデアリ
そう、ソコデ只今井上サンノ御話ニアリマ
シタ奬學資金トカ、其ノ他勞働者ノ福社施
設ノ爲メ金ヲ使フト云フ點ニ關シテ申上ゲ
マスト、結局ソレハ元金ヲ食フト云フ譯ニ
ハ、行キマセヌノデ、運用利殖金ノ中カラ
サウ云フ施設ヲスルト云フコトト、エ·フ
ツハ或ハ其ノ元金ノ中カラ福社施設ノ爲
ノ、例ヘバ地方資金ヲ融通スルト云フヤウ
ナ場合モアルカト考ヘラレルノデアリマス、
後者ノ場合ニ於キマシテハ、勿論厚生省ノ
御意見ヲ出來ルダケ尊重シテ、實行シ得ル
ヤウナ仕組ヲ考究致シタイト思ツテ居リマ
ス、前者ノ場合、卽チ運用利殖サレタモノ
ノ中カラ、色々ナ福社施設ノ財源ヲ生ミ出
スト云フコトニ付キマシテハ是ハ結局其
ノ特別會計ノ預入金ヲドレダケニ〓シテ、
ドレダケノ利息ヲドウ特別會計ニ拂フトカ
ト云フヤウナ問題ニ歸着スルノデハナイカ
ト一應考ヘラレルノデアリマスガ、尙ホ是
等ノ點ニ付キマシテハ、私共事務當局ノ間
ニ於キマシテモ、能ク〓究ヲ致シタイト思
ツテ居ル點デアリマスノデ、只今御述べノ
ヤウナ大キナ趣旨ノ點モ、今後十分頭ニ入
レマシテ、保險院當局ト能ク協議ヲ致シタ
イト存ジマス、一應是ダケ御答ヘ申上ゲマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=17
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018・井上良次
○井上(良)委員 預金部長官ニ一寸モウ一
ツ伺ツテ置キタイ點ガアリマスルガ、ソレハ此
ノ法律ニ依リマスト、最初私ガ申シマシタヤ
ウニ、勞働者ガ營々トシテ働イテ掛ケマス
保險金ガ、年金保險特別會計法ニ依ツテ全
體ノ資金ガ運用サレズニ、其ノ一部ハ公債
ニナリ、公債以外ノ資金ハ預金部ノ運用資
金ニ〓サレル、斯ウ云フヤウニ考ヘルノデ
アリマス、所ガ此ノ保險ト云フモノハ他ノ
政府保險、或ハ年金、其ノ他ノ社會保險ト
ハ多少性質ガ違フノデアリマス、多少ドコ
ロデハナク、考ヘ方ガ本質的ニ違フ、勞働
者ノ相互的ナ自主的機關デアリマスノニ、
此ノ資金ヲ政府ノ都合ニ依ツテ他ノ資金ト
混同シテ管理スルト云フコトナラ、特別會
計ヲ作ル必要ハナイ、特別會計フ運用資金
ト云フモノハ何モナイ、特別會計トシテ持
ツテ居ル金ヲ其ノ會計ニ於テ十分巧ク運用
スルヤウニ考慮スルコトガ必要デアルニ拘
ラズ、政府モ是レ〓〓ノ公債ヲ持テト云ウ
テ、公債ハ買ハサレルワ、殘ツタ金ハ預金
郵運用委員會ニ於テ運用サレルワト云フコ
トナラ、特別會計ヲ設置スル必要ハ何モナ
イ、特別會計ヲ設置スルナラバ、特別會計
ガ一切ソレヲ運用スルヤヴニシタラ宜イダ
ラウ、ソレヲドウ云フ必要デ預金部ニ流入
サセネバナラヌカ、ソコデ私ハ是ハヤハリ
特別會計トシテ別箇ニ管理シ、預金部運用
資金ニ〓ハシテハイカヌト思ヒマス、特別
資金會計トシテ被保險者ノ利益ヲ圖ルト共
ニ勞働者年金保險ノ名ノ下ニ政府ノ必要ト
スル公債ヲ消化スル、其ノコトハドウナル
カト云フト、結局勞働者ノ名ノ下ニ於テ公
債ガ買ハレテ、其ノ公債ガ飛行機ニナリ、
戰車ニナリ、彈丸ニナルト云フコトヲ勞働
者ニ意識サセナケレバナラヌ、是ハ非常ニ
大切ナコトデス、是ガ間違ツテハ大變ナコ
トニナリマス、斯クノ如クスルコトニ依ツ
テ勞働者ハ自分デ自ラ飛行機ナリ、彈藥ナ
ル、戰車ナリヲ造リ、ソシテ其ノ働イテ得
タ金ニ依ツテ年金ガ掛ケラレ、ソレガ又集
マツテ全國ノ勞働者ノ名ニ於テ公債ガ買ハ
V、サウシテソレガ又戰車トナリ、彈藥ト
ナリ、飛行機トナツテ行ク、斯ウ云フコト
ニナルノデアリマス、ダカラ勞働者ハ右手
ニ於テ現實ニ戰車、彈藥ヲ造ツテ居リ、同
時ニ又左手ニ於テ其ノ資金ヲ賄ツテ居ルト
云フコトニナル、此ノ考ヘ方ハ勞働者ニ非
常ニ大キナ影響ヲ與ヘル、オ前達ガ一生懸
命ニ働イテ吳レタ年金保險デ買ツタ公債
ガ、是ダケノ飛行機ニ變ツタ、是ダケノ彈
ニ變ツタゾ、是ダケノ戰車ニ變ツタゾト云
フコトニ依ツテ、勞働者ハ一層年金保險金
納入ノ成績ヲ擧ゲマセウシ、擧ゲレバ擧ゲ
ル程飛行機ヤ彈藥等ノ戰時公債ノ消化ノ能
力ガ出テ來マセウ、此ノ關係ハ廻ハリ廻ハ
ツテ居リマス、其ノヤウニ廻ハリ〓ハルモ
ノデアルニ拘ラズ、其ノ金ヲコチラニ持ツ
テ來テ、俺ノ方デ勝手ニ運用スルノダト云
フ、成程預金部運用資金ハ今日ノ時局上重
要ナル方面ニソレ〓〓使ハレテ居リマス、
決シテ私ハ無駄ナ方面ニ使ハレテ居ルトハ
考ヘテ居リマセヌ、國家ノ必要ナ方面ニソ
レゾレ按配シテ使ハレテ居ルト思ヒマス
併シ年金保險資金ハ他ノ資金ト一緒ニシテ
使フト云フヨリモ、勞働者ト云フ名前ノ下
ニ使ツテヤレバ、一層時局下生產力增强ノ
上ニ勞働者ニ與ヘル精神的ナ影響ハ非常ニ
大キイト思ヒマス、斯ウ云フ點カラ是ハ何
トカ預金部運用資金ノ方ニ〓サズニ、此ノ
儘獨立シタ方ガ、私ハ年金保險ノ性質カラ
考へ、且ツ勞働者ノ實際現場ニ於ケル活動
ノ士氣昂揚ノ見地カラ考へ、非常ニ效果的
デナイカト考ヘテ居リマス、得テシテ企畫
院其ノ他ニ於テハ大キナ聲デ勞働者ノ生
產力增强ニ對シテ、一生懸命呼ビ掛ケテ居
リマスケレドモ、問題ハ觀念論ノ氾濫デハ
ナイト思ヒマス、勤勞報國精神ヲ朝カラ晩
マデ何百遍繰返シタ所デ、現實ニ働イテ居
ル勞働者ノ意志ガ振作サレズ、勞働能率ガ
高マラズ、實際的ノ方向ニ指導セズニ、彼
等ノ生產ヘノ感情ヲ激發セズニ、單ニ勤勞
報國精神ヲ百萬遍說イテモ、ソレハ觀念論
トシテ一ツノ言葉ニ過ギナクナツテシマフ、
勞働者ハ何モ言フコトヲ聽キマセヌ、本當
ニ勞働者ニ今日ノ時局ヲ認識セシメテ、其
ノ勞働意志ヲ振作セシメ、勞働者ヲシテ一
層殉國的ノ氣持デ生產力ヲ高メシムル爲ニ
ハ斯ノ如キ微妙ナ人情ノ籠ツタ考ヘ方ガ
絕對ニ必要デアリマス、此ノ點ハ政府ハ如
何ナルオ題目ヲ唱ヘテモ、何ノ感情モ沸上
ツテ來マセヌ、逆ニ今私ガ說明ヲ致シマシ
タヤウナ觀點カラ之ヲ扱ヒマシタナラバ、
二倍、三倍ノ效果ガ現ハレテ來ルノデアリ
マス、斯ウ云フ點ニ對シマシテ、特ニ大藏
當局ノ御考ヘヲ一ツ承リタイ、同時ニ企畫
院トシテモ此ノ點ニ對シテハ御指示ヲ願ヒ、
又保險院當局者ハ責任ヲ以テ、是ガ勞働者
ノ新シイ生產力擴充ノ大キナ刺戟ニナルト
云フ見地カラ御考ヘヲ願ツテ、是ハ特別會
計ノ方デ運用スル、預金部ノ方ニ持ツテ行
カナイヤウニ出來ナイモノカ、此ノ點ニ對
スル責任ノアル御答辯ヲ承ツテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=18
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019・相田岩夫
○相田政府委員 只今井上サンノ御意見、
洵ニ傾聽致スベキ點モ多々アルヤウニ存ゼ
ラレルノデアリマスガ、是ハ非常ニ大キナ
政策ノ問題デアリマシテ、私共カラ御答ヘ
スルノハ或ハドウカトモ思ヒマスガ、只今ノ
御話ノヤウニ同ジコトヲヤルニシテモ、勞
働者ノ名ニ依ツテヤルト云フコトニ依ツテ
大イニ效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルノデハナ
イカ、橫ノ方カラソレヲ攫ツテ行クヤウナ
ヤリ方ハ、ドンナモノカト云フヤウナ御趣
旨ノヤウニ拜聽致シタノデアリマスガ、私
共カラ率直ニ言ハシテ戴キマスレバ、此ノ會
計ノ仕事トシテ致シマス福社施設其ノ他ノ事
業費ト云フモノハ、此ノ會計ノ保險料、
般會計ヨリノ受入金、積立金ヨリ生ズル收
入金及ビ附屬雜收入ヲ以テ賄ハレルヤウニ
第二條ニ書イテアリマスノデ、結局此ノ積
立金等ノ運用ニ依ツテ生ズル牧入金ガ、ド
ノ程度ニナルカト云フコトガ一番大事ナ點
デアルト思フノデアリマス、ソコデ之ヲ運
用スルニ付キマシテ此ノ會計ダケ獨立シテ
其ノ資產ヲ運用スル、最モ餘計ニ收益ヲ擧
ゲルヤウニ運用シマスレバ、自然福祉施設
其ノ他ニ使ヒ得ル金ガソレダケ多クナル譯
デアリマスガ、併シ今日ノ事態ニ於キマシ
テハ此ノ資金ノ運用ト云フモノハ、國家全
體ノ資金ニ付キマシテ出來ルダケ之ヲ國家
目的ニ照シテ能率的ニ運用スルト云フコト
ガ大事ナ時デゴザイマスノデ、其ノ意味ニ
於キマシテハ或ル事業ノ目的ノ爲ニ出來ル
ダケ餘計ニ收益ヲ擧ゲルト云フコトト、今
申シタヤウナ金融全般ノ統制ト申シマスカ、
或ハ資金ノ效率的ナ配分運用ト申シマスカ、
サウ云フモノトノ調和ヲソコニ取ツテ行カ
ナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、隨
ヒマシテサウ云フ意味ニ於テ本會計ノ資金
モ第四條ニ於テ國債ヲ以テ保有シ、又ハ大
藏省預金部ニ預入レルト云フコトニシテ預
金部ガ之ヲ一般的ニ他ノ資金ト共ニ統一的
ニ最モ效率的ニ之ヲ運用スルト云フ建前ヲ
執ラレタモノト解釋致サレルノデアリマス、
ソコデ私共ハ例ヘバ其ノ金ガ公債ニナリ、
ソレガ飛行機ニナリ、「タンク」ニナルト云フ
例ヲ只今御擧ゲニナリマシタガ、其ノ場合
ニ於テ、此ノ特別會計ガ自分デ運用スレバ
勞働者ガ自分ノ金デ飛行機ガ出來タ、「タン
ク」ガ出來タト云フ氣持ニナルノニ、預金
部ニ集メラレテ、其ノ上デ公債ニナリ、ソ
レガ飛行機ニナリ「タンク」ニナルト云フ場
合ニハ、其ノ感ジガピント來ナイト云フ
コトダラウト拜聽シタノデアリマスガ、願ハ
クハサウ云フ場合ニ於テモ一方ニ於テ資金
ノ統一的運用ノ重要性ト云フコトヲ理解サ
レマシテ、預金部ノ資金モ何モ資本家ノ資
金デモナシ、郵便貯金者バカリノ資金デモ
ナイノデアリマシテ、ヤハリ勞働者ヲ含メ
タ全國民ノ資金デアツテ、其ノ資金ニ依ツ
テ生產力擴充モ行ハレ、公債モ消化セラレ
ルト云フ氣持ニナツテ戴ケナイモノデアラ
ウカト實ハ考ヘルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=19
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020・井上良次
○井上(良)委員 企畫院ノ御意見ハドウデ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=20
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021・亀山孝一
○亀山政府委員 私中座シテ居リマシテ、
御論旨ヲ全般ニ伺ヒマセヌノデ、何レ又速
記錄デモ拜見致シマシテカラ御答ヘ致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=21
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022・井上良次
○井上(良)委員 此ノ問題ハ預金部長官サ
ンダケデハ一寸難カシイノデハナイカト思
ヒマス、何レ適當ナ機會ニ大藏大臣ノ御出
席ヲ願ツテ-是ハ本會計ノ今後ノ運用ノ
上ニ重大ナ問題ニナツテ行クノデス、同時
ニ今マデアリマシタ厚生省所管ノ各特別會
計ノ現金支拂ノ上ニ餘裕ヲ生ジタ場合ニ、
其ノ餘裕ガ預金部ノ方へ預入レラレ繰入レ
ラレテ居リマスカ、此ノ點一寸伺ツテ置キ
タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=22
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023・谷口恒二
○谷口政府委員 私今參ツタノデアリマス
ガ、井上サンノ御話ハ勞働者年金特別會計
ノ積立金ノ運用ノコトノ御質問デアツタト
思フノデスガ、吾々ノ方ノ政府委員カラ何
ト御答ヘ申上ゲタカ存ジマセヌガ、吾々ト
シテハ年來總テノ資金ガ預金部ニ集ツテ來
テ、一元的ニ運用サレルコトヲ非常ニ希望
シテ居ルノデアリマス、併シ又ソレ〓〓ノ
年金ナリ保險ノ特別會計ニハソレ〓〓ノ行
政ノ立場等ガアルノデアリマスカラ、サウ
吾々ダケノ立場カラ物事ヲ一纒メニ纒メル
ト云フコトモ、之ヲ押通ス譯ニモ行カヌノ
デアリマス、是ハ實際ニ實行スルニ當リマ
シテ、ソレ〓〓能ク相談致シマシテ、吾々
ノ希望スルコトモ當該特別會計ノ立場トシ
テ幾分ソレニ協調シテ貰フ、同時ニ吾々モ
當該ノ行政ニ大シタ不都合ノナイヤウニ能
ク相談シテ行クト云フコトニ實行シテ行キ
タイト思フノデアリマス、大藏大臣ガ伺フ
ト宜シイノデアリマスケレドモ、參リマシ
テモ大體サウ云フコトヲ申上ゲルダラウト
思ヒマスカラ、此ノ程度デ御諒承願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=23
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024・井上良次
○井上(良)委員 大藏大臣ノ候補者トシテ
次官ヨリ御答辯ヲサレタノデアリマスガ、
今谷口次官ノ其ノ氣持ハ能ク分リマシタ、
今日此ノ保險ノ設定セラレマシタ氣持、同
時ニ又今日ノ時局ニ勞働者ヲ協力セシメル
氣持、更ニ又一層生產力ヲ高メル其ノ氣持、
サウ云フ考ヘ方カラ-其ノ法制的ナ行政
的ナ趣旨ヂヤナイノデス、人情ノ微妙サデ
ス、此ノ人情ノ細ヤカサヲ以テヤツテヤラ
ナケレバ駄目ダ、ソコニ勞働者相互扶助ト、
出來タ金デ、其ノ金ガ積立テラレテサウシ
テ國家ノ飛行機ニナリ、戰車ニナリ彈藥ニ
ナル、ダカラ保險ヲウント掛ケロ、一生懸
命働カウヂヤナイカト云フ其ノ感情ガ、其
ノ儘ピント其ノ會計ノ運用ニ依ツテ勞働者
ニ響クヤウニシテ貰ヒタイ、ソレニハ他ノ
預金ヲ運用シテ居ル預金部運用委員會ニ持
ツテ行カレタノデハハツキリシナイ、ソレ
ハ此ノ儘デ特別會計トシテ運用シテ戴キタ
イ、斯ウ言フノデス、ザツクバランニ言フ
ト、ソコハアナタモ能ク分ツテ居ルノデア
ルカラ、是ハ第四條ハサウ云フコトニ訂正
ヲ願ハナケレバナラヌト思フノデス、サウ
云フ大藏省ノ氣持モ能ク分リマス、全體ヲ
纒メテ一ツニ持ツテ行カウ、サウシタラ一
番簡單デスカラ······併シサウハ行カヌノデ
ス、ヤヤコシイ問題ガ餘計橫ツテ居リマス
カワ、サウ云フ點モ御諒承願ヒタイト思ヒ
マス
イマ一點伺ヒマシテ打切リマスガ、將來
此ノ保險資金ヲ運用スルニ當ツテ、利益ガ
出來ルダラウト思フ、此ノ利益金ト云フモ
ノハ、本保險ノ給付ガ將來若シ不足スル場
合ハ、此ノ利益金カラ補充スルヤウニスベ
キデアルト思フ、此ノ將來ニ對スル保險運
用ノ利益金ノ處分等ニ付テノ見透シヲ伺ヒ
タイ
ソレカラ今一ツ、此ノ資金ノ運用如何ハ
直接勞働者ニ及ボス影響ガ極メテ大キイノ
デアリマスカラ、勞働者側ノ意見ヲ尊重スル
爲ニ、之ニ此ノ運用ニ對スル發言權ヲ與ヘ
ルヤウニシタラドウカ、ソコデ政府ハ此ノ
運用ニ對シテ何カ特別ノ委員會ノ如キモノ
ヲ設ケテ、勞働者側ノ代表ノ發言ヲ求メル
ヤウニシタラドウカト思ヒマスガ、此ノ點
ニ對スル御意見ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=24
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025・樋貝詮三
○種貝政府委員 是ハ一部ハ大藏當局ノ方
カラ御答ヘヲ願ツタ方ガ宜イカト思ヒマス
ガ、一部ハ保險關係デモアリマスルノデ、
私カラ御答ヘ申上ゲマス、保險給付ニ付キ
マシテハ、可ナリ綿密ナル統計ノ下ニドレ
ダケノ掛金ヲ貰ヒ、又ドレダケノ給付ヲシ
テ行ケバ、ソレデ給付ニ付テハ心配ガナイ
ト云フ細カイ計算ヲ致シマシテ算出ヲ致シ
テ居リマスカラ、給付自體ニ付テハ先ヅ心
配ガナイ、斯ウ考ヘテ宜シイト思ヒマス、
不足ヲ生ズルヤウナコトハナイト思ヒマス、
ソレカラ運用ニ依リマシテ生ジタ利益ト云
フモノハ、是ハ玆ニ會計法ニモアリマスヤ
ウニ、福利施設ナドニ主ニ--固ヨリ事務
取扱費ダトカ、或ハ營繕費ナドデ已ムヲ得
ナイ支出ハ出シマスガ、其ノ他ハ其ノ方ヘ全
部持ツテ行クベキモノト考ヘテ居リマス、
現實ニドレダケ持ツテ行ケルカト云フコト
ハ、是ハ其ノ時々ニ考究シナケレバナラヌ
コトト思ヒマスケレドモ、行クベキ方向ト
云フモノハサウ行カナケレバナラヌ、之ニ
依ツテ別ノ方面へ勝手ニ使ツテ行クト云フ
コトデハナイト思ヒマス、是ハ二條ノ制限
デ當然ナ話ダト考ヘテ居リマス
尙ホ特別委員會ニ付キマシテハ、假ニ此
ノ會計ガ今日簡易保險ニアルガ如クニ、勞
働年金ノ事務ヲ行ツテ居リマス所デ運用ス
ルトスルナラバ、今御話ノヤウナ方面ノ人
ヲ委員ノ如クニ入レマシテ、其ノ方面ノ諸
種ノ事情ヲ拜聽モシ、又サウ云フ方面ノ要
望其ノ他ノコトヲモ十分ニ考慮ニ入レル譯
デアリマスガ、其ノ點ハドウナリマスカ、
預金部ニ預ケ入レマスルニ付テハ、是ハ是
カラノ話合ヒモアリマスガ、ドウ云フ風ニ運
用サレテ行キマスカ、私ノ方デ一寸申上ゲ
兼ネマスカラ、大藏當局ノ方カラ御聽取リ
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=25
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026・谷口恒二
○谷口政府委員 只今ノ保險院長官ノ御話
デアリマスガ、今後ノ運用ノ狀況ニ付キマ
シテハ保險院當局ト能ク十分打合セヲ致シ
マシテ、只今井上サンノ仰セニナリマシタ
ヤウナ御趣旨モ幾分通リマスルヤウニ能ク
考ヘタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=26
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027・井上良次
○井上(良)委員 私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=27
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028・守屋榮夫
○守屋委員長 只今谷口政府委員カラ、本
委員會ニ付託サレテ居リマス昭和十七年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律案中修正ニ關スル說明ヲ致シタ
イト云フ申出ガアリマス、之ヲ許シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=28
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029・谷口恒二
○谷口政府委員 本委員會ニ付託ト相成ツ
テ居リマスル昭和十七年度一般會計歲出ノ
財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律案ニ
對シ修正ヲ加ヘルコトニ相成リマシタノデ、
其ノ次第ヲ簡單ニ說明致シマス、目下當委
員會ニ付託サレテ居リマスル昭和十七年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律案ハ既ニ御說明致シマシタル通
リ、昭和十七年度歲入歲出總豫算追加第一
號ニ計上セル經費ノ財源ノ一部トシテ十三
億七千八百六十万圓ノ公債發行ノ權能ヲ得
ントスルモノデアリマスルガ、今囘別途提出
致シマシタル昭和十七年度歲入歲出總豫算
追加第二號ニ計上致シマシタル經費ノ財源
ノ一部トシテ、更ニ一億二千九百三十万餘
圓ノ公債ノ發行ヲ要シマスルノデ、之ニ伴
ヒ曩ニ提出致シマシタル昭和十七年度一般
會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關ス
ル法律案第一條ノ、公債ノ發行限度ヲ十五
億七百九十万圓ニ增加致ス必要ガアルノデ
アリマス、仍テ議院法第三十條ニ依リ本修
正ヲ提出致シタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=29
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030・守屋榮夫
○守屋委員長 暫時休憩致シマシテ午後一
時半カラ開會致シマス
午後零時二十分休憩
午後一時五十分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=30
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031・守屋榮夫
○守屋委員長 午前ニ引續キ是ヨリ會議ヲ
開キマス-松岡俊三君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=31
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032・松岡俊三
○松岡委員 私ハ本會議ニ於テモ、又豫算
委員會其ノ他ノ委員會ニ於テモ、今私ノ質
問セントスル問題ニハ一ツモ觸レテ居ラナ
イノヲ發見シテ頗ル遺憾ニ存ジテ、特ニ御
忙シイ所ヲ大臣ノ御出席ヲ煩ハスニ至ツタ
次第デアリマス、希クハ拓務大臣ハ國務大
臣トシテ、私ノ質問ニ對シテ御答ヘヲ得タ
イト思フノデアリマス、先ヅ質問ノ前提ト
シテ十七年度ニハ一般開拓民ノ送出ノ豫定
數ハ何程デアルカ、又靑年義勇隊ヲ送出ス
十七年度ノ計畫豫定數ハ何程デアルカ、承
リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=32
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033・井野碩哉
○井野國務大臣 十七年度ノ滿洲開拓移民
計畫ハ豫算ニモ計上シテゴザイマルスガ、
大體開拓民ガ一万五千、義勇靑少年ガ一万
二百、斯ウ云フ數字ニナツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=33
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034・松岡俊三
○松岡委員 十六年度ノ滿洲開拓移民ハ一
万六千戶、靑年義勇隊ノ方ハ一万二千六百
人ト存ジテ居リマスガ、是デ宜シウゴザイ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=34
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035・今吉敏雄
○今吉政府委員 開拓民ハ轉業其ノ他ヲ加
ヘマシテ大體ノ數ハ二万一千戶位ト思ヒマ
ス、靑少年義勇軍ノ方ハ今御話ノ通リ一万
二千六百人デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=35
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036・松岡俊三
○松岡委員 此ノ十七年度ノ開拓民送出ノ
豫定ガ約一万五千、又義勇軍ノ送出ノ計畫
ハ一万二百人デアル、此ノ問題ニ付テ實行
可能ナリト拓務大臣ハ御考ヘニナツテ居リ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=36
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037・井野碩哉
○井野國務大臣 豫算ニ計上致シマシタ以
上ハ、實行勿論可能ナリト信ジテ豫算ニ計
上致シタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=37
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038・松岡俊三
○松岡委員 私ハ遺憾ナガラ今日ノヤウナ
情勢ヲ以テ參リマシタナラバ、此ノ計畫ガ
頗ル難儀ニ陷リハセヌカト懸念スル次第デ
アリマス、ナゼナラバ猫モ杓子モ殆ド皆南
方ヲ主張シテ居リマス、待望ノ東亞共榮圈
ノ進展ト共ニ、南方ガ今日ノヤウナ情勢ニ
ナツタノデアリマス、其ノ資源ハ豐富デア
リ、其ノ氣候ハ滿洲方面ニ比較スベクモア
リマセヌ、サウシテ戰果斯クノ如クデアル、
全世界ノ耳目ヲ聳動シタト同時ニ、國民ノ
南方ニ對スル憧憬ト云フハ、是ハ實ニ名狀
スベカラザル狀況ニナツテ居ルノデアリマ
ス、人情トシテ旨イ物ヲ眺メテ之ヲ食ヒタク
ナイト云フヤウナ人ハナカラウト思フ、鼓太
鼓デ國內ニ喧傳サレル南方ノ資源ノ豐富ナル
所ヲ見セ付ケラレテ、之ニ想ヒヲ到サザル者
ハナカラウト思フ、此ノ時ニ當ツテ只今ノ
豫算ニ計上シタル以上ハ、之ヲ必ズ實行ス
ルノダト云フ其ノ大臣ノ御決意ハ、洵ニ私
共ハ感激ニ堪ヘヌ次第デアリマスルケレド
モ、事情ガ斯クノ如クデアル、水ノ低キ
ニ流レルノハ當然デアル、斯樣ニ南方ト北
方ノ滿洲方面ノ開拓民ノ送出ト云フモノヲ
比較〓究スル時ニ於テハ實ニ容易ナラザル
モノガアル、私ノ所見ヲ申上ゲマスレバ
鎖國時代ヲ脫却シテ開國日尙ホ淺イ我ガ日
本國トシテハ、東西南北ニ悉ク進出センケ
レバナラヌト思フノデアリマス、此ノ進
出セシムル上ニ於テ、適地主義ニ依リ能ク
氣候慣習ヲ參酌シテ、無駄ノナイヤウナ工
合ニ國家ノ發展ヲ導イテ行カナケレバナラ
ヌト思フ、斯樣ニ考ヘマス時ニ於テ、北方
方面、滿洲方面ヲ滿洲事變直後ニ於テノ計
畫當時ト今日ヲ比較シタナラバ、モウ此ノ
間ハ少クトモ五十年ノ時ガ經過シタ如クニ
感ゼザルヲ得ナイ、或ハ五十年ヨリモ百年
近イ變化ガアリハセヌカトサヘモ見ナケレ
バナラナイト思フノデアリマシテ、殆ド豫
想シ得ナカツタ所ニ到達シテ居ルト存ジマ
ス、所ガ今春閣議デ決定セラレタトシテ傳
ヘラレル所ノ滿洲開拓第二期五箇年計畫ノ
要綱ヲ見マスト、此ノ殆ド五十年乃至百年
位變化シタノヂヤナイカト思ハルル時ニ於
テ、尙ホ滿洲事變直後ニ於テ執ツタ舊態依
然トシタ所ノ開拓方針ヲ其ノ儘踏襲シテ行
カウト云フヤウナコトデアリマシテ、是デ
ハ只今モ申上ゲタヤウナ工合ニ水ハ低キニ
付イテ流レルノハ當然デアル、斯ウ云フ人
情ノ上カラ考ヘテ、只今豫算面ニ現ハレ
タル所ノモノハ、實行スルノダト云フ御決
意ハ結構デアリマスケレドモ、果シテ是ガ
末梢ニ行ツテ各府縣ガ開拓民ヲ募集スル上
ニ於テ、勸誘スル上ニ於テ、靑少年義勇軍
ヲ送出ス上ニ於テ、實際ニ出來得ルモノカ
ドウカ私ハ頗ル懸念ニ堪ヘナイ、此ノ點ニ
付テモウ一囘御所見ヲ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=38
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039・井野碩哉
○井野國務大臣 大東亞戰爭勃發ニ依リマ
シテ、南方ニ於ケル赫々タル〓戰ノ戰果ノ
結果、南方資源ノ開發ト云フ問題ト絡ンデ
南方移民ト云フ問題ガ世間デモ色々ヤカマ
シク言ハレテ居リマス、又國民全般トシマ
シテモ、滿洲ニ行クヨリハ南ニ行ツタ方ガ
仕事ハ容易デアルシ、又生活モ安易デアル
ト云フヤウナ氣持カラ、滿洲開拓移民ニ付
テノ實現性ニ付テ色々ナ御心配ガアルヤウ
デアリマス、政府トシテモ斯ウ云ツタ事態
ニ卽應シマシテ、色々ノ方策ヲ考ヘテ行カ
ナケレバナラヌノデアリマスガ、現在ノ移
民政策ト云フモノハ、私ハ從來ノ自由移民
フ政策デアツテハナラヌト思フ、高度國防
國家ノ建設ノ意味ニ於テ計畫的ナ一ツノ理
·念ヲ持ツタ移民デナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、其ノ意味ニ於テ先般企畫院總
裁カラ豫算總會ニ於テ南方ニ對スル諸方策
ヲ明示セラレマシタ中ニ、渡航ノ制限ニ付
テモ日滿支ノ建設ヲ先ヅ前提トシテ、其ノ
狀態ニ應ジテ南ノ方ニ渡航ヲセシメルト云
フコトヲ言ツテ居ルノデアリマス、アノ發
表ハ閣議デモ御相談ヲ經タ發表デアリマス
ルカラ、內閣全體ノ意向デアリマス、結局
日滿支ト云フモノヲ先ヅ中心ニ考ヘテ、移
民計畫モ高度國防國家建設ヲ理念トセルモ
ノヲ作ツテ、サウシテ其ノ以外ニ又南ノ方
ニ移民計畫ニ依ツテ出來上ツタ人々ヲ送リ
出ス、詰リ南方ノ方ハ第二段ニ考ヘテ居ル、
斯ウ云フ建前ヲ政府トシテハ執ツテ居ルノ
デアリマス、隨テ只今御述ベニナリマシタ
第二次ノ滿洲開拓移民ノ計畫モ、計畫ノ內
容自體ハ滿洲開拓移民ヲ作リマシタ時ト、
餘リ變ツテ居ナイト思ヒマスガ、氣持ハ今
日ニ於テモ滿洲開拓移民ヲ創設シマシタ當
時ト何等政府トシテハ違ヒガナイノデアリ
マス、結局滿洲ニ立派ナ日本精神ニ燃ユル
農村ヲ作リ上ゲル、是ガ今日日本ノ農業移
民政策ノ一ツノ一貫シタ理念デアル、斯ウ
云フ建前カラ出來上ツテ居ルノデアリマス
カラ、今御心配ノヤウニ各地方デノ募集ニ當
リマシテモ、今御述ベノヤウナ氣持カラ滿
洲ニ行キタガラナイ者ガアルトシマシタナラ
バ、私ハ是ハ國家ノ要請トシテサウ云フ氣持ハ
イケナイノダ、出來ルダケ一ツヤハリ日本ノ
高度國防國家ヲ作ル爲ニ滿洲開拓移民ニ出
テ戴キタイト云フコトヲ說キサヘスレバ、日
本ノ農村ノ靑年ハ能ク分ルト思フノデアリ
マス、隨テ豫算ニ計上シタモノニ對シテ自
信ガアルト申上ゲタノモ、吾々ノ信念ヲ農
村方面ノ靑年ニ披瀝シテ能ク理解セシメレ
バ必ズシモ南ニノミ行キタイト云フ靑年
バカリデハナイト思フ、滿洲ニ行ツテ大イ
ニ働キタイト云フ靑年ナリ開拓民モ相當ニ
アルト思ヒマス、其ノ點ニ於テ只今私ノ豫
算上ノ信念ヲ中上ゲタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=39
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040・松岡俊三
○松岡委員 大臣ノ御信念ニ敬意ヲ表スル
ノデスガ、サウ云フ鹽梅ニ高度國防國家ノ
上カラ、滿洲開拓農民ノ確固タル地盤ヲ作
ラセルマデハ國家ガ之ヲヤラウト云フ點ニ
付テハ吾々モ左樣ニ希ツテ居ルノデアリ
マス、一般民ニモ之ヲ出來ルダケ知ラシメ
テ共鳴ヲ得セシメタイト念願ハシテ居ル者
デアリマスケレドモ、事實ハドウダト、斯
ウ云フノデス、私ハ事實ヲ言フノデス、私
ノ氣持モ大臣ノ氣持モ少シモ變リナイ、過
去ニ於テ頗ル難儀ヲシテ居ル、ソコヘ持ツ
テ行ツテ旨イオ菓子ガ前ニ見エテ居ル、サ
ウシテソレガ今ハ渡航ヲ制限シテヤラナイ
ト云フケレドモ、何時マデモヤラナイト云
フノヂヤナイ、「ボルネオ」方面ニ於テモ「セ
レベス」方面ニ於テモ、人口ガ稀薄デ其ノ
開拓ヲ待ツテ居ルノダ、「ジャワ」「マレー〓
方面ノ人口ノ密度ハ中々容易ニ國民ノ進出
ヲ許サナイ點ガアルカモ知レナイケレド
モ、人口頗ル稀薄ニシテ之ヲ待ツテ居ル所
ガ澤山アル、一例ヲ中シマシテモ、樺太ニ
付テハ、尙ホ國費ガアノ通リニ行カネバナ
ラヌ、所ガ南洋ノ統治方面ニ於テハ早クモ
國費ヲ要シナイデ自給自足シテ、尙示餘力
ヲ國家ニ貢獻シテ居ル、斯樣ナ工合ニナツ
テ居ルソコヘ持ツテ行ツテサウ云フ理念
ノ上ニ信念ヲ以テ國民ヲ指導シタイト云ス
-
吾々ノ氣持ハ少シモ變ラナイケレドモ、事
實以テ如何センヤト云フノデアル、殊ニ農
村ガ比較的ニ生活ガ樂ニナツテ居ル、三年
ヲ卒ヘタル青年義勇隊ガ歸ツテ來タ時ニ彼
等ノ親ハドウスルカ、其ノ期限滿了ヲ早ク
モ首ヲ伸バシテ待ツテ居ルト云フヤウナ國
民ガ必ズシモナイトハ言ヘナイト私ハ思フ
ノデアリマス、而モ前ノ方ニ旨イオ菓子ガ
見エテ居ルノデアル、親ノ方面カラ純ナル
靑年ノ氣分ヲ動カシ得ナイトハ斷ジ得ヲ
イ、斯ウ云フ問題ヲ考ヘテ來レバ來ル程、
拓務當局ノ是カラノ苦心ハ洵ニ諒察ニ値ス
ルモノガアルノデスケレドモ、ソレダカラ
私ハ之ヲ聽クノダ(不用意ナル明治維新當
時ニ於テ外國ノ政治ニ模做シタガ爲ニ、日
本ノ國土ノ氣侯關係其ノ他ヲ少シモ考察ニ
入レナイデ政治ヲヤツタモノデスカラ、ト
ンデモナイコトニナツテ、十年バカリ私ガ
雪害問題ヲ唱ヘテ、遂ニアノヤウニ修正セ
ラレタノデアリマス、此ノヤウナ大キナ政
治ノ間違ヒガドノ位國民ニ禍スルカト云フ
明カナル事實ヲ、過去ニ於テ私ハ體驗シテ
居ル、提唱シ、之ヲ實行シテ居ルカラ知ツ
テ居ル、又拓務大臣モ此ノ事ニ付テハ能ク
分ツテイラツシヤルノダ、農林當局トシテ
オイデニナツタ時ニ、此ノ誤ツタル狀態ヲ
是正スルニ御力ヲ下サツタ、ソレガ今度。又
此處ニ來ヤセンカト思フノデアル、如何ニ
御心持ガソコニアツテモ、サウシタイト云
フ希望ガアツテモ、唯ソレダケデハイケチ
イト思ヲ、何カソレヲ償フ所ノ「ハンデキャツ
プ」ヲ持タシメルヤウナ工合ニシテ、一面
ニ於テハ力ニ於テ、一面ニ於テハ精神ニ於
テ、兩々相俟ツテ、高度國防國家ノ爲ニハ、
斯クナラザルベカラズト云フヤウナ所ニ行
カシメナケレバナラヌト思フ、其ノン
デキャップ」ヲ以テ彼等ヲシテ滿足セシメ
ルヤウナ狀態ニ、開拓民ニ對スル或ハ義勇
軍ニ對スル設備上ニ付テノ一ツノ福音ト云
フカ、新シイ計畫ト云フカ、或ハソレ以外
ノ經費、卽チ滿洲國及ビ政府ト相共ニ與フ
ル所ノ補助ノ上ニドレ位ノ差額ヲ以テヤラ
ウトスルカ、斯ウ云フ點ニ付テ新シイ計畫、
時代ニ卽應シタ何モノカガアツタナラバ御
披露願ヒタイト思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=40
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041・井野碩哉
○井野國務大臣 松岡委員ノ御心配ノ點ハ
全ク私共モ同ジ氣持ヲ持ツテ居リマス、此
ノ仕事ハ非常ニ難カシイ、此ノ時勢ニ直面
シテ愈〓サウ云ツタ點ニ付テ吾々其ノ職ニ當
ル者ノ努力ト云フモノハ、一層重且ツ大ヲ加
ベテ來タコトト思フノデアリマス、併シ是
ハ難カシイカラト云ツテ手ヲ擧ゲテシマツ
テハナラヌ問題デ、ドウシテモヤハリ何等
カノ手段ヲ以テ此ノ國策ノ遂行ニ邁進シナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス、今御話
ノ色々チ難カシイ仕事ニ對シテハ、一四、
於テハ福音ヲ與ヘ、喜ンデソチラニ導イテ
行クト云フ行キ方モ一ツノ行キ方デアリマ
スガ、又行ク者ノ氣持ヲシテ國家ノ要請
スル所ニ向ハシメルト云フ精神的ナ指導
モ一ツノ行キ方デアリマス、拓務省トシ
マシテハ、豫算ノ上ニ於テ出來ルダケサ
ウ云フ點モ考慮致シマシタ、併シ此ノ際
直グ多額ノ經費ヲ增シテ、補助金デ以テ
サウ云フ人々ノ氣持ヲ直スト云フ行キ方
ガ宜イカドウカ、其ノ點ニ付テハ私ハ俄
カニ此ノ補助金ダケデ行クト云フコトニハ
贊成シ難イノデアリマス、今囘計上致シマ
シタ豫算ノ中ニ、或ハ幹部指導者ノ訓練ノ
經費デアリマストカ、或ハ滿洲開拓士トシ
テ行カレテ居ル人々ノ細君ノ爲ノ女子ノ訓
練ノ問題デアルトカ、色々サウ云ツタ方面
ニ付テハ本年ハ相當力ヲ入レマシタ、併シ
開拓士ノ渡航費ノ補助デアルトカ云フ點ニ
付テハ、サウ豫算ハ多ク殖エテ居ナイト考
ヘテ居リマス、併シ精神的ノ方面カラ之ヲ
訓練シテ參リマス行キ方ニ對スル經費ニ付
キマシテハ、內原ノ訓練所ヲ利用シテノ色
色ノ設備デアルトカ、又其ノ他ニ付テモ經
費トシテハ相當ニ計上致シタノデアリマス
ケレドモ、松岡委員カラ見レバ、其ノ位ノ
モノデハ迚モ此ノ難事ニ向ツテ各府縣デ拓
士ヲ募集スルノニ困難ダト云フ御見透シガ
アルカモ知レマセヌガ、是ハ吾々ノ努力ニ
依ツテ出來ルダケサウ云ツタヤウナ人々ノ
募集ヲ行ヒタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=41
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042・松岡俊三
○松岡委員 開拓要綱ノ第九ニハ「開拓民ニ
對スル日滿兩國政府補助ニ付テハ現下ノ經
濟的諸條件ニ卽應セシムルト共ニ、開拓地
ノ立地條件ト建設經營ノ難易等ヲ勘案シ補
助ノ適正ヲ期スルモノトス」斯ウ云フヤウニ
アリマス、私ノ得タル材料ニ於テハ是ガア
リマス、「補助ノ適正ヲ期スルモノトス」トア
ルノデスガ、現ニ是ハ適正ニナツテ居ルカ
ドウカ、今度ノ補助ニハドノ位出サウトス
ルノカ、只今大臣ハ、金ノ方面カラ力ヲ與
ヘルコトガ宜イカドウカト云フコトハ問題
デアルカノヤウニモ私ハ拜聽致シタノデア
リマス、精神方面其ノ他ニ付テハ同感デア
リマスガ、ソレダケデハイカヌ、物ヲ與ヘ
ナケレバナラヌ、オ腹ガ空イテ居ル者ニ向
ツテ、オ腹ヲ空カシテ置イテ働ケト言ツタ
ツテ、是ハ出來ルモノデハナイ、世ノ中ガ
アノ通リ皆金ガ取レル、而モ南ノ方ニ於テ
ハ資源ガ豐富デ、身體ヲ樂ニシテ行ケルト
云フヤウナ工合ニナツテ居ル、サウ云フモ
ノガブラ下ツテ居ルノヲ、之ヲ見ルナ、其
處ニヤラナイト言ツテ法律デヤツタ所デ、
是ハ潜ル途ガ幾ラモアルノデス、人情トシ
テ其處ニ行クノハ當然デアリマス、大東亞
共榮圈、大東亞戰爭ノ上カラ南方ガ喧傳サ
ルル、此ノ狀況ニ於テハ今マデノ滿洲ニ
對スル國民ノ考ヘトハ相當ナ違ヒガ出ハセ
ヌカト私ハ思フ、殊ニ「ソヴィエト」ノ問題ガ
ドウナリマスカ、此處ニ於テ言フベキ必要
モアリマセヌシ、又言フベキ所デモナカラ
ウト思ヒマスガ、ドウ考ヘテモ此ノ第二次
計畫ヲ遂行スル上ニ於テハ、是ダケデハ如
何ニアナタ方ガ左樣ニ申サレテモ私ハ洵ニ
難カシイト思フ、本當ニ難カシイ、大臣ハ
樂觀シテ居ルトハ思ヒマセヌケレドモ、末
梢ノ方ノ各縣ニ行ツテ御覽ナサイ、容易ナ
モノデナイ、吾々ノ縣ニ於テ、東北人ハ南
ニ志スナ、吾々ハ北ヲ護ルノガ任務デアル、
天ノ與ヘタルモノデアル、浮氣ヲ起スナト
云フコトヲ私ハ〓ヘテ居リマス、私ノ所ノモ
ノハ相當ナ成績ヲ擧ゲテ、義勇軍ノ送出ノ
上ニ於テ或ハ開拓民ノ送出ノ上ニ於テヤツ
テ居リマスガ、吾々滿洲ニ行ツタ者ハ實ニ
馬鹿ヲ見タト云フヤウナ氣持ヲ起サセナイ
ヤウニスル爲ニハ、餘程前ト考ヘヲ異ニシ
タモノガ現ハレテ來ナケレバイカヌト私ハ
思フ、ソレガマダ現ハレテ居ラナイヤウニ
思フ、私ノ得タ材料ニ依レバ、衞生費ニ於
テハ前ニハ一圓五十錢位デアツタガ、今度
一圓六十七錢ニナツテ居ルヤウデアリマズ、
一年ニ一人前十七錢ダケ多クナツテ居ル、
又被服費ガ昨年ハ七十圓與ヘテ居タモノガ、
今度ハ八十五圓與ヘテアル、今日ノヤウナ
狀態ニ於テ十五圓ダケ多クナツテ、サウシ
テ南方ニアレ程マデニ旨イモノヲ見セテ置
イテ、北ノ方ニ是デ行ケト言ヒマシテモ、
是ガ出來ルト思ヒマスカ、私ハ出來ナイト
思フ、コンナコトデ行ケルモノデナイ、ソ
レデスカラ、今年ハ仕方ガナイケレドモ、
明年ニ於テハドウ云フ御考ヘヲ御持チニナ
ルカト云フ點ヲ承ルコトガ出來マスレバ結
構ダト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=42
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043・今吉敏雄
○今吉政府委員 便宜私カラ御答ヘ申上ゲ
マンク。第二期五箇年計畫ガ閣議デ決定致シ
マシタノガ昨年ノ十二月三十一日デゴザイ
マシゝ、要綱トシテ十三項目擧ゲテアリマス
ガ、是等ニ付テ逐次實現ヲシタイト云フ氣
持デ居リマシタケレドモ、何分時日ガ切迫
シテ居リマシタ關係デ、其ノ項目ノ中デ日
本側ノミニ於テ考へ得ルモノハ豫算ニ計上
シテ多少トモ考ヘテアルノデアリマス、先
刻大臣カラ御話ノゴザイマシタ通リ、女子
拓殖訓練所ノ専任職員設置費補助、指導員
養成ノ爲ノ補助二十万圓、地方機構ノ充實
ノ爲ニ地方廳ニ拓務課ヲ設ケル、ソレカラ
拓務主事ヲ十六名新タニ各地方ニ置クヤウ
ニ致シマシタ、其ノ他宣傳奬勵諸事業費ノ
關係ニ於キマシテモ、全部集メマシテ大體
約三十万圓見當ノモノヲ增額シタノデアリ
マス、斯樣ニアノ項目ノ中デ日本側ノミニ
於テ考ヘ得ルモノハ先ヅ考ヘタノデゴザイ
マスガ、併シナガラ先刻御示シノ、例ヘバ
經濟的諸條件ニ卽應スルヤウ補助ノ適正ヲ
期スルヤウニ努力スルト云フ項目ガゴザイ
マシタケレドモ、何分ニモ補助ハ日滿兩國
ノ關係デアリマスノデ、明年度ノ豫算ニ直
チニ之ヲ計上スル譯ニモ參リマセヌ、隨テ
今後第二期五箇年計畫遂行ノ上ニ於キマシ
テ、日滿兩國ニ於テ能ク相談シテヤルベキ
事項ニ付キマシテハ、現ニ滿洲國側ニ於テ
委員會ヲ設ケマシテ、日本側ノ方モ之ニ加
ハリマシテ、ココ一年間詳細ニ檢討シタ上
ニ於キマシテ、改メテ再來年度ノ豫算ニ於
テ計上スベキモノハ計上スルト云フ行キ方
ヲ以テ、此ノ五箇年計畫ノ遂行ヲ圖リタイ
ト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=43
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044・松岡俊三
○松岡委員 私ガ先程一年ニ十七錢ト言ツ
タノハ、一月十七錢デシタカラ、是ハ訂正
致シテ置キマス、詰リ一人ニ付テ一年ニ衞
生費ヲ僅カ二圓ダケ增加スル、サウスルト
義勇軍ガ一万ソコ〓〓デスカラ、丁度二
十万圓ヲ增加ニナツタ、實ニコンナ慘憺タ
ルモノデ、高度國防國家ノ爲ニ滿洲ガ必要
ナリトスル時ニ、是デ行ケルモノデナイ、
私ハ是レ以上申上ゲマセヌガ、現地ヲ見レ
バ見ル程其ノ感ヲ深クスルノデアル、氣候
風土、風俗、悉ク同ジデアルカラ、東北ニ
生レタモノハ北ヲ天職トシテ此處ニ就クノ
ガ當然デアルカラ、浮氣心ヲ起サナイデ北
ニ行ケト云フコトヲ私ナドハ言ツテ居ルダ
ケニ、其ノ責任ガ强イト思フ、私ガ言フノ
ハ單ナル考ヘカラ出テ居ルノデハアリマセ
又、モウ一ツハ、北ノ方ハ春夏秋冬ガアル、
人間ガ特ニ締リガ宜イ、南ノ方ニ參リマス
ト一年中樂ニ暮セルヤウナ工合ニナツテ居
ル、春夏秋冬ノ切目ガナイト云フコトヲ言
フ、或ハ二世三世ニナルト國民トシテノ資
格ノ上ニ於テハ、ドウデアルカト云フ說ヲ
ナス人ガアリマスルケレドモ、私ハ其ノ意味
カラ申スノデハアリマセヌ、サウ云フ點デ
南方ニ是カラ送出スル上ニ付テモ發展スル
上ニ付テモ國家ノ指導ガ左樣ナ二世、三世
ニ於テ國民トシテノ資質ヲ缺如シテ居ルヤ
ウナコトニハナラナイヤウニ努ムルコトハ
勿論デアリマスルカラ、是ハ申シマセヌケ
レドモ、本當ニ北ハ高度國防國家ノ必要ガ
アル、國策ノ上カラ云ツテモドウシテモ之
ヲ爲サネバナラヌト云フ左程熱意ヲ持ツモ
ノデアルトシタナラバ是ガ豫算ニ現ハレテ
來ナケレバ嘘デアル、掛聲バカリデハイケ
ナイノデアル、私ガ此ノ掛聲ダケデハイケ
ナイト云フコトヲ特ニ玆ニ申上ゲルノハ
只今政府委員ノ御答辯ノヤウニ、是ハ滿洲
國ト相計ツテ而シテ爲サネバナラヌト云フ
ノデスカラ一方的ニ意思表示ハ難シイカモ
知レヌケレドモ、國家トシテ重要ナル此ノ
問題ニ付テハ、モウ少シ滿洲ニ向ツテ進マ
ウトシテ居ル所ノ氣分ヲ無クナサナイヤウ
ニ、之ヲ活カシテ行クヤウニ、私ノ質問ガ
好イ機會デスカラ、之ヲ機會トシテ國家ノ
向フベキ所ヲハツキリト示シテ、南ノ方ニ
ソンナニ關心ヲ持ツベキモノデハナイ、ソ
レヨリモ、モツト大切ナノハ北デアルト云
フコトヲ國務大臣トシテ、國民ニ十分ニ知
ラシテ戴キタイト思フノデアリマス、サウ
スレバ、漸ク各府縣、各町村ノ人々ガソレ
ナラバヤラウヂヤナイカト云フコトニナ
ル、今朝私ノ所ニ參リマシタ町村長ナド
ハ、先生全ク其ノ通リダ、今マデ滿洲ノ視
察ニ行ツタガ、今度ハ南ダ、モウ滿洲ハ止
メヨウヂヤナイカ、斯ウ云フ者ガ不用意ニ
出テ困ツテ居ルト云フヤウナ話デアル、ソ
コデ拓務當局トシテ此ノ問題ヲ國策トシテ
遂行スル上ニ付テハ、人的資源ノ不足ナ今
日ニ於テ、各方面ノ困難ナ中ニ於テ之ヲ遂
行シナケレバナラヌノデアリマスルカラ、
今少シ豫算上ニ於テモ政府ノ方針ガ、其處
ニ決マリマスレバ國策ニ順應シテヤツテ行
ケルヂヤナイカ、私ノ此ノ衷心國家ノ前途
ヲ憂ヘテノ發言ニ對シテ好イ機會ナリトシ
テ、國民ノ向フ所ヲ大臣カラ特ニ明示シテ
戴キタイト思フノデアリマス、卽チ開拓要
綱ノ第九項ニモ「現下ノ經濟的諸條件ニ卽應
セシムルト共ニ、開拓地ノ立地條件ト建設經
營ノ難易等ヲ勘案シ補助ノ適正ヲ期スルモ
ノトス」ト云フコトガアルノデスカラ、近ク
是等ニ付テハ適正ノコトヲスルノダ、滿洲
事變直後ニ於テ定メタモノハモウ五十年モ
時代ガ隔ツテ非常ナ急「テンポ」ニ變ツタノ
ダカラ、之ニ卽應スルガ如ク斯ク〓〓ニスル
方針ダト云フコトヲ、國民ニ明示シテ戴ク
實ニ好イ機會ヂヤナイカト思ヒマスカラ、
繰返シテ御願ヒ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=44
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045・井野碩哉
○井野國務大臣 松岡委員ノ滿洲開拓移民
ニ對スル熱心ナル御所見ニ對シマシテハ、
私モ滿腹ノ贊意ヲ表スルノデアリマス、國
民ニ向ツテ御趣旨ノヤウナ點ニ付テハ私ト
シテモ極力明示シ、指導シテ參ラナケレバ
ナラヌト思ヒマス、ソレダケノ御議論ニハ
私自身ハ全ク同感デアリマス、唯豫算關係
等ニ付キマシテハ折角是ハ大藏省ノ委員會
デアリマスカラ、大藏省ノ人ニモ能クアナ
タノ氣持ヲ御傳へ願ツテ、吾々ガ豫算ヲ要
求スル場合ニ於テハ大藏省當局ガアナタノ
所信ヲ能ク認識スルヤウニ、サウ云フ點ハ
松岡サンモ能ク御承知デアリマスカラ拔カ
リノナイヤウニ一ツ御願ヒ致シタイト思ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=45
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046・松岡俊三
○松岡委員 先程申上ゲマスルヤウニ、猫
モ杓子モ南々ト言ツテ實際ニ此ノ重要性ヲ
忘レントスル其ノ時ニ於テ、拓務大臣ハ全
ク同感ダケレドモ、大藏省ノ方ニ於テモ認
識セシメルヤウニ云々ト云フコトヲ承リマ
シテ、私モ是カラ大イニ努力ハシマスケレド
モ、是ハ國務大臣ガナサレルコトデアル、
總理大臣ト此ノ點ニ付テハ十分ニ御協力ヲ
御願ヒ致シマシテ、眞劍ニヤラナケレバヤ
レルモノデハナイト思フ、ケレドモアナタ
方ハヤレルト言ヒマスカラ私ハヤレルトセ
ザルヲ得ナイ、併シナガラ是デハヤレナイ
ト私ハ思ツテ居ル、サウデナクテサヘモ種
種ナル故障ガ起ツテ居ル、私ハ是デ質問ヲ
終リマスガ、此ノ問題ハ後日ニ禍ヒヲ殘ス
問題デ、水ノ低キニ流レル當然ナ所ヲ逆ニ
持ツテ行クノデスカラ「モーター」ガナケレ
バナラヌ、此ノ「モーター」ヲ要スル「ハン
デキヤップ」ヲ唯精神的バカリデヤラウト
サレルケレドモソレデハイケナイ、ドウシ
テモ豫算デス、此ノ豫算ヲシツカリト持ツ
テ行ツテ、補助ヲ增額スルナリ、種々ナル
設備ニ依ツテ滿足ヲ得セシムルヤウニ導イ
テ行カナケレバナラヌト思フノデアリマス、
私ノ所見ト全然御同感ノヤウデアリマスカ
ラ、拓務大臣ヨリ國務大臣トシテノ御答辯
ヲ得マシタコトヲ私ハ喜ンデ、安心シテ暫
ク當局ノ爲ス所ヲ見タイト思フ次第デアリ
やっ、私ノ質問ハ是デ終リマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=46
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047・井野碩哉
○井野國務大臣 只今私申上ゲタノハ、無
論國務大臣トシテハ閣內ニアリマシテ私ノ
所信ヲ大藏大臣ナリ、總理大臣ナリニ披瀝
シテ實行的ニ自分トシテ努力スルコトハ當
然デアリマス、唯吾々ノ意見ト、又民間ノ
方々ノ意見ト自ラ聽ク人ニ依ツテ色々效果
ガ違ヒマスカラ、折角立派ナ御意見ヲ御持
チニナツテ居ラレマスカラ、ヤハリ吾々ニ
聽カシテ戴ク御意見ハ、他ノ大臣ニモ御聽
カセ願ヒマスレバ、大變參考ニナルト思ヒ
マシテ申上ゲタノデゴザイマシテ、決シテ
豫算ヲ取ルコトニ付テ御援助ヲ御願ヒシタ
イト云フノデ申上ゲタノデハアリマセヌ、
ドウカ誤解ノナイヤウニ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=47
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048・守屋榮夫
○守屋委員長 他ニ質疑ヲナサル方ハアリ
マセヌカ、拓務大臣ヘノ質疑ハ是デ宜イデ
スカ、田代君、保險院ノ政府委員ニ對スル
質疑ハドウシマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=48
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049・田代正治
○田代委員 ホンノ一寸デスカラ政府委員
ヲ呼ンデ下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=49
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050・守屋榮夫
○守屋委員長 ソレデハ政府委員ヲ呼ビニ
ヤリマス、暫ク御待チ下サイ-田代君ノ申
出ニ依ツテ保險院ノ政府委員ヲ探ガシタノ
デアリマスガ、居ラヌヤウデアリマス、本日
ハ外ニ臨時軍事費豫算ニ關スル本會議モゴ
ザイマスカラ、本委員會ニ於ケル會議ハ此
ノ程度ニ止メマシテ、明日ハ午後一時カラ
開會スルコトニ致シマス、是ニテ散會致シ
マス
午後二時四十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911705X00419420127&spkNum=50
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