第79回帝国議会　衆議院　米穀需給調節特別会計法中改正法律案委員会　第3号　昭和17年1月26日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十七年一月二十六日（月曜日）午前十時十三分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　三善信房君
  　　理事　岩瀬亮君　理事　濱地文平君
  　　理事　森田重次郎君　理事　森幸太郎君
  　　理事　前川正一君　理事　松本治一郎君
  　　　　安倍寛君　　　今成留之助君
  　　　　小串清一君　　　北勝太郎君
  　　　　坂下仙一郎君　　　高田耘平君
  　　　　土田莊助君　　　坪山徳彌君
  　　　　東郷實君　　　成島勇君
  　　　　西方利馬君　　　西川貞一君
  　　　　松浦周太郎君　　　山田六郎君
  　　　　山川頼三郎君　　　吉田賢一君
  　　　　林讓治君　　　淺沼稻次郎君
  　　　　野溝勝君　　　由谷義治君
  　　　　大石大君　　　平野力三君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　農林大臣兼拓務大臣　井野碩哉君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　農林次官　三浦一雄君
  　　　　　農林省總務局長　重政誠之君
  　　　　　農林省農政局長　岸良一君
  　　　　　農林省山林局長　井出正孝君
  　　　　　農林省蠶絲局長　石井英之助君
  　　　　　農林省食品局長　辻謹吾君
  　　　　　農林省資材部長　岡本直人君
  　　　　　　　農林書記官　笹山茂太郎君
  　　　　　食糧管理局長官　湯河元威君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　　内務事務官　永野若松君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　米穀需給調節特別會計法中改正法律案（政府提出）
  　木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨時補足に關する法律案（政府提出）
  　食糧管理法案（政府提出）

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• 001・三善信房

  ○三善委員長　ソレデハ只今カラ開會致シ
  マス、開會ニ當リマシテ一言申上ゲテ置キ
  マス、一昨日來質問ノ時間ノコトデ色々御
  希望ガアリマシタノデ、今期來理事ノ諸君
  ト協議ヲ致シマシタガ、ヤハリ最初決メマ
  シタヤウニ三十分程度ニ致シマシテ、政府
  ノ答辯ノ時間等モ考慮致シマシテ、若干三十
  分以上超過シマス場合ニモ、ソレ等ヲ考慮
  シテ委員長ニ於テ適當ニ質問ノ時間ヲ決メ
  ルヤウニ、斯ウ云フ風ニ申合セヲシマシタ
  ガ、其ノ點ヲ申上ゲテ置キマス-西川貞
  一君

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• 002・西川貞一

  ○西川委員　食糧配給機構ノ整備ニ當リマ
  シテ最モ主眼ヲ置カナケレバナラヌ點ハ消
  費者ノ便益ヲ如何ニ保護スルカト云フ點ニ
  アルト思フノデアリマス、近年商業者ノ立
  場ハ物資價格ノ統制以來非常ニ不安ノ狀態
  ニアリマシテ、其ノ狀態ニ對シマシテハ洵
  ニ同情ニ堪ヘザルモノガアルノデゴザイマ
  ス、併シナガラ是等ガ一タビ整理ヲサレマ
  シテ後ニ殘ツタ業者ハ非常ニ强クナツテ居
  ル、强クナツテ居ルノミナラズ一部ニ於テ
  ハ其ノ橫暴目ニ餘ルモノガアル、是ハ一々
  例ヲ指摘スルマデモナク、衆人ノ認メル所
  デアリマス、結局是等ヲ矯正致シマスノハ、
  官憲ノ取締ヲスルト云フコトモ中々追ツ付
  カナイノデアリマシテ、窮極ハ消費者自體
  ガ自衞的ナ組織ヲ持ツト云フコト以外ニハ
  之ヲ本當ニ矯正スル途ハナイノデハナイ
  カ、思フニ我國ノ產業組合ノ如キハ、生產
  者ガ商業資本ノ搾取ヲ免レル爲ニ、自衞的
  ナ組織トシテ發達シ來ツタノデアリマスル
  ガ、今ハ寧ロ生產者ノ自衞的ナ組織ヨリ、
  モ、消費者ノ自衞的ナ組織ガ非常ニ必要ナ
  時代ニナツテ來タノデハナイカト思ハレル
  ノデアリマス、此ノ食糧管理法ニ付キマシ
  テハ、食糧營團等ニ於キマシテ、消費者ノ
  便益ヲ保證スル爲ニハドウ云フコトガ考ヘ
  ラレテ居ルカ、食糧營團ノ機構ノ中ニ於テ、
  消費者ノ便益ヲ保證スル、是ガ爲ニ斯ウ云
  フ方法ガ設ケテアルト云フヤウナ點ガアル
  カドウカ、ソレカラ購買組合等ノ消費者團
  體ハ、是ハドウ取扱フカ、又消費者自ラガ
  自衞的ナ團體ヲ結成シヨウトスル希望ガア
  ツタ場合ニハ、是ハドウナサルカ、ソレカ
  ラ農村ニ於テ農民ハ食糧ノ生產者デアルト
  共ニ、又一面消費者デモアル、購入ヲシテ
  消費ヲシナクチヤナラヌ者モ相當多イノデ
  アリマスガ、是等ニ對スル配給ハ、其ノ農民
  ノ自治的ノ團體デアル產業組合ヲシテ配給
  ヲ行ハシメルカドウカ、此ノ三點ニ付キ根
  本方針ニ付テハ大臣カラ、事務的ナ點ニ付
  テハ事務営局カラ御答辯願ヒタイト思ヒマ
  スご

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• 003・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今御尋ネノ根本的ノ觀
  念ダケ私カラ御答ヘ申上ゲタイト存ジマス、
  西川委員ノ御述ベノ通リ、消費者方面ニ對ス
  ル自治的ナ配給機構ノ整備ト云フ問題ハ、
  吾々モ從來產業組合ノ消費組合ト云フモノ
  ヲ色々〓究モシ、又之ヲ奬勵シテ居リマシ
  タ觀念カラ見マシテ、一ツノ行キ方ト考へ
  テ居ルノデアリマスガ、今日ノヤウニ、配
  給區域ト云フモノガ相當ニ問題ニナリ、又
  配給量ト云フモノヲ公正ニ分配シマス爲ニ
  ハ、勢ヒ現在ノ過程ニ於キマシテハ隣組デ
  アルトカ、或ハ其ノ他ノ機構ヲ利用シテ行
  クヨリ外、途ガナイノデアリマス、暫ク此
  ノ情勢デ推移致シマシテ、消費者自ラノ組
  織ヲ持ツ消費組合的ノモノガ果シテ適當デ
  アルカドウカト云フコトハ今後ノ色々ノ
  情勢ニ俟チタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
  現在デハ今行ツテ居リマス方法デ暫ク進ン
  デ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リマス

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• 004・湯河元威

  ○湯河政府委員　只今ノ農林大臣カラ御
  話ノゴザイマシタコトニ付キマシテ少シ
  ク細カク申上ゲテ見タイト存ジマス、配給
  業者ノ態度ガ最近目ニ餘ルヤウニナツテ來
  テ居リマスガ、消費者ノ利益ヲドウ云フ風
  ニシテ守ルコトニナツテ居ルカト云フ御話
  デゴザイマスガ、第一此ノ公社ヲ作リマシ
  夕趣旨ガ實ハ其ノ點ニアルノデアリマス、
  從來ノ營業者的ナ態度、或ハ殊ニ最近配給
  統制ヲ致シテ參リマシテカラ、ドウモ商人
  が官僚的ナ態度ヲ執ルヤウナコトガイケナ
  イト云フノデ、此ノ營團ヲ作リマシテ、サウ
  云フコトヲナカラシメテ行キタイト云フコ
  トガ根本ニナツテ居ルノデアリマス、此ノ
  法案ノ中ニモゴザイマスヤウニ、此ノ營團
  ハ唯買入賣渡ヲスルバカリデナク、其ノ附
  帶事業ト致シマシテ色々ノ施設ヲスルノデ
  アリマスガ、特ニ配給業者ノ指導訓練ト云
  フコトニ付キマシテハ、一ツ十分營團ヲシ
  テ徹底セシメタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
  リマス、尙ホ監督上ノ規定カラ申シマスル
  ト二十三條ノ規定ニモ出テ居ルノデアリ
  きっく、配給致シマシタ物ノ配給ノ仕方等ニ
  付キマシテハ、政府ノ方カラ指示ヲスル、
  サウシテ其ノ指示ニ從フベキコトヲ命ズル
  ト云フ風ナ處置モ執レルヤウニナツテ居リ
  きゝ、更ニ治。費者組織ソレ自體ニ付キマシ
  テハ、只今企畫院或ハ厚生省ノ方デモ種々
  〓究ヲシテイラツシヤルノデアリマス、吾
  吾モ能ク連絡ヲ執リマシテ、此ノ方面ヲ將
  來固メテ行キタイト云フ風ニ考ヘテ居リマ
  ス、一方購買組合ノ問題ニ付キマシテノ御
  質問ガゴザイマシタガ、之ニ付キマシテハ
  昨年ノ四月消費規正、企業合同等ヲ致シマ
  ス際ニ問題ニナリマシタ點デアリマス、吾
  吾ト致シマシテハ、消費者ノ完全ナル組織
  ガアル場合ニ於キマシテハ、何モ商人ノ機
  構ヲ以テ之ニ置代ヘルト云フコトヲ考ヘナ
  クテモ宜イノヂヤナイカト云フ風ニ思ツテ
  居リマス、都會地ノ配給所ニ付キマシテハ、
  消費組合ノ店舗ヲ以チマシテ之ヲ代用スル
  ト云フ風ナ措置モ採ツテ居リマス、ソレカ
  ラ農村ノ方ニ於キマスル生產者ノ購買組
  織是モ純農村ノ經濟事情ニ鑑ミマスルト
  相當尊重シテ行ク必要ガアルト思ツテ居リ
  マン、吾々ト致シマシテハ何モ配給業者ヲ
  以テ全部是等ノ組織ニ置代ヘルト云フ考ヘ
  ハ致シテ居リマセヌ、左樣御承知ヲ願ヒマ
  ス

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• 005・西川貞一

  ○西川委員　〓糧營團トナリマシテ配給業
  者ノ性格ガ商人カラ公共的ナモノニ變ルコ
  トニ依ツテ、消費者ノ便益ガ保證サルルト
  云フコトヲ期待サレテ居ルヤウデゴザイマ
  スルガ、一體消費者ニ對スル「サービス」ニ
  於テハ商人ハ優レテ居ツタノデアリマス、
  是ガ營團、公社ニ變リマスコトニ依ツテ一
  層官僚的ニナリハシナイカト云フコトヲ非
  常ニ心配サレルノデアリマス、隨テ消費者
  自體ノ意思ガ此ノ營團ノ經營ノ指導ノ上ニ
  直接反映シテ來ルヤウナ方法ガ營團ノ機構
  其ノモノノ中ニ備ハツテ居ナイトスルナラ
  バソレハ一ツノ缺陷デハナイカト思ハレ
  ル、詰リ官廳デ監督ヲナサルニ致シマシテ
  モ、隔靴搔痒ノ感ヲ免レナイノデアリマシ
  テ、直接消費者ノ意思ガ經營ノ指導ノ上ニ
  反映シテ來ルト云フヤウナコトガ機構的ニ
  考ヘラレナクテハナラヌト思フノデアリマ
  ス、此ノ點ニ付キマシテハ特ニ其ノ點ヲ希
  望致シテ置キマシテ、尙ホ事務的ナコトヲ
  一二御伺ヒ致シタイノデアリマス
  只今六大都市ニ行ツテ居ラレマス通帳制
  度ヲ、少クトモ全國ノ市制施行地全部ニ行
  ハレル意思ハナイカ、又東京市等ニ於キマ
  シテハ現在米穀ノ配給ハ、配達ヲシテ吳レ
  ルノデ割合親切ニ行ツテ居リマスガ、地方
  ノ都市ニ於キマシテハ配達ヲシナイ所ガア
  ル、單ニ米ノミデナク、生活必需品ニ於テ
  ハ配達ヲサセルト云フ原則ヲ一ツ御執リニ
  ナツテハドウデアルカ、一例ヲ申上ゲマス
  ト魚ノ配給デモ大體一人ノ商人ニ依ツテ
  二百戶位ノ配給ハ從來出來テ居ツタ、詰リ
  其ノ者ガ十時間働クト致シマシテモ、十時
  間デ二百戶ノ配達ハ配達スレバ出來ルノデ
  ス、所ガ之ヲ皆ガ買出シニ出マスト、此ノ
  頃ハ魚ヤ肉ハ皆長イ時間立タナクテハ其ノ
  供給ヲ受ケルコトガ出來ナイ、二百戶ノ者
  ガ二時間ヅツ立チマスト四百時間ヲ要スル
  ノデアリマス、斯樣ナ行列ガ出來マスルノ
  ハ配達ヲシナイカラ買物行列ガ出來ル、其
  ノ他ノ嗜好品等ニ於キマシテハ一々之ヲ配
  達スルト云フコトハ不可能デゴザイマセウガ、
  少クモ米穀主要食糧品、蔬菜、生鮮〓料品、
  食肉類等ノ如キ生活必需品ニ於テハ配達ヲサ
  セルト云フコトヲ-配達料ハ値段ノ中ニ含マ
  シテ宜シイノデアリマスカラ-原則トスル
  必要ガアルノデハナイカ、特ニ直接ノ問題ト
  シテハ只今ノ通帳制ヲ六大都市ノミデナ
  ク全國ノ少クトモ都市ニハ全部之ヲ行ツ
  テ、サウシテ配達ヲサセルト云フコトヲ原
  則ニサシテハドウカ、又配達ヲサセルト云
  フコトハ、米ノミデナシニ、生活必需品全
  般ニ於テサウ云フ方針ヲ執ラレテハドウ
  カ、ソレカラ現在外食ガ自由ニ出來ルヤウ
  ニナツテ居リマスルガ、業務用ノ米ヲ別ニ
  廻サレマシテ外食ダケハ自由ニ出來ル、
  ソコデ外食スル者ト外食ノ出來ナイ者トノ
  間ニハ、一人當リノ配給量ニ非常ナ不公平
  ガ生ジテ來ル、ソコデ外食ハ一切外食劵ナ
  〓シニハ出來ナイ、詰リ各家庭ニ於テ外食ヲ
  必要トスル者ハ、若干ノ外食劵ノ配給ヲ受
  ケテ、宴會ニ行カウガ、オ客ニ行カウガ、
  何處ヘ行カウガ、食事ダケハ食劵ヲ持ツテ
  行カナクチヤ食ヘナイト云フコトニシテ、
  外食ノ出來ル者モ出來ナイ者モ、餘リ不平
  均ナコトニナラナイヤウニスル必要ガアル
  ノデハナイカ、ソレカラ全體トシマシテ、
  ヤハリ米ノ配給量ハ尙ホ不十分ナ者ガ相當
  アルノデハナイカ、現在ノ供給量デ十分ナ
  者モアリマス、餘ツテ居ル者モアリマス、
  併シナガラ發育盛リノ靑少年ヲ多人數持ツ
  テ居リマス家庭デハ非常ニ不足シテ居リマ
  ス、是ハモウ悲慘ナ程困難ヲシテ居リマス、
  ソレカラ勞働者ノ食糧ハヤハリ可ナリ不足
  デアリマス、勞働者ノ食糧ガ不足スル爲ニ、
  石炭ノ增產等ガ思フヤウニ行カナイ、是一
  炭礦地方等ニ實際足ヲ踏ミ込ンデ直接オ當
  リニナツテ見レバ能ク分ル、サウシテ石炭
  ガ掘レナイカラ、例ヘバ硫安ノ生產ノ如キ
  デモ思フヤウニ行カナイト云フコトヲ一
  昨日モ大臣ハ此處デ答辯サレテ居ツタ、
  其ノ爲ニ肥料ガ少イ、其ノ爲ニ又米ガ
  餘計出來ナイト云フ爲ニ循環シマシテ、
  所謂縮小再生產ト云フヤウナコトニナツ
  テ來ルノデアリマス、玆デ何カ一ツノ手
  ヲ打ツテ努力ヲサレマシテ、少クモ勞働者
  ニ對シテハ今少シ十分ニ食糧ヲ與ヘルヤウ
  ナ方法ハ採レナイカ、又發育盛リノ靑少年
  ニ對シテハモツト餘計ニ米ヲヤルヤウナ方
  法ヲ採レナイカ、此ノ點ニ付テ御伺ヒシタ
  イ

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• 006・湯河元威

  ○湯河政府委員　先程御說明ヲ落シマシタ
  點ガゴザイマスカラ申上ゲテ置キマス、消
  費者ノ意見ヲ此ノ營團ノ運營ニ反映致シマ
  ス措置ガ採ツテアルカナイカト云フ點デゴ
  ザイマシタガ、實ハ此ノ營團ノ仕組ノ中ニ
  評議員制度ヲ採ツテ居リマスガ、此ノ評議
  員ハ必要ニ依リマシテハ消費者ノサウ云フ風
  ナ意向ヲ十分反映シ得ルヤウナ人ヲコチラ
  カラ任命致シマシテ、ソレ等ノ意思モ十分
  含マシタ上デ、運營ヲ決メテ行キタイト云
  フコトヲ考ヘテ居リマス
  ソレカラ通帳制ノ配給ヲ、全國ノ都市ニ
  施行スル考ヘハナイカト云フ御尋ネデゴザ
  イマスガ、通帳制ハ取敢ズ昨年ノ四月ニ六
  大都市ニ施行致シマシタガ、是ガ相當全國
  ニ影響ヲ與ヘテ居ルノデゴザイマシテ、
  各都市等ニ於キマシテ之ニ準ジタ處置ヲ採
  ツテ來テ居リマス、唯農林省ト致シマシテ
  之ヲ各都市ニ全部施行スルト云フニハ地方
  ノ事情モ相當ゴザイマスカラ、ソレ等ノ事
  情ヲ考慮致シマシタ上デヤツテ行カナケレ
  バナラヌト思ツテ居リマス、只今ノ所デハ
  全部ニ之ヲ一律ニ施行スルト云フ考ヘハゴ
  ザイマセヌ
  ソレカラ食糧ノ配達殊ニ主要食糧ノ配達
  ニ付キマシテ、東京デハ配達ヲヤツテ居ル
  ガ、地方デハ中々サウ行ツテ居ナイ所モア
  ル、配達ヲ原則トシテハ如何カト云フ御話
  デゴザイマスガ、指導方針ト致シマシテハ、
  ヤハリ家庭ニマデ配達スルト云フコトガ宜
  イノデアリマス、是ハ獨リ家庭ノ便宜バカ
  リデハゴザイマセズ、配給ノ的確ト申シマ
  スカ、殊ニ消費規正ノ確實ヲ期スル上ニ於
  キマシテ、キチント配達スルコトガ宜イト思
  ツテ居リマス、サウ云フ方針デ指導致シテ
  居リマス、唯他方ノ事情、殊ニ從來ノ取引
  ノ慣行等カラ致シマシテ、其ノ通リニ行キ
  得ナイ地方モアラウカト存ジテ居リマス
  ソレカラ第三ノ外食ノ問題デゴザイマス
  ガ、是ハ西川サンノ御氣付ハ、一應ノ御意
  見トシテサウカトモ思ヒマス、併シ實際現
  在都會ニ於キマスル實情カラ申シマスト、
  一律ニハ行キ兼ネルカト思ツテ居リマス、
  外食劵ノ使用ノ方式ガ合理的デナイ部分モ
  アルト云フ非難ガゴザイマスガ、是等ニ付
  キマシテハ地方當局トモ色々相談致シマシ
  テ、改善ヲシテ行キタイト云フ考ヘヲ持ツ
  テ居リマス
  ソレカラ第四ニ配給量ガ不十分ナ所ガア
  ル、殊ニ發育盛リノ子供ヲ抱ヘテ居ル家庭
  ニ於テハ困ツテ居ル、又勞働者方面ノ配給
  ガ十分デナイ爲ニ、延イテハ生產力擴充ニ
  モ影響ガアルト云フ御指摘デアリマシタ、
  此ノ點ニ付キマシテモ昨年來色々〓究ヲ致
  シマシテ、殊ニ其ノ發育盛リノ學生等ノ居
  リマス所ニ付キマシテハ、運用上色々ノ考
  慮ヲ拂ツテ居リマス、又各家庭ニ於テ、ソ
  レゾレ隣組或ハ親戚等ノ間ニ於キマシテ、
  相互融通スルコトモ宜イト云フコトヲ吾々
  ハ認メテ居ル次第デアリマズ、殊ニ勞働者
  ノ問題ニ付キマシテハ是ハ現下重要ナ點カ
  ト思ツテ居リマスノデ、色々各地方當局ト
  モ御打合ハセ致シマシテ、運用上ニ於キマ
  シテ漸次改善シテ來テ居ル次第デアリマス、
  吾々ト致シマシテハ今後モ其ノ必要ヲ認メ
  マシタ場合ニ於キマシテハ、色々〓究致シ
  マシテ手落ノナイヤウニシテ行キタイト考
  ヘテ居リマス

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• 007・西川貞一

  ○西川委員　農政局長ニオイデ戴キタイ
  ソレカラ主要食糧ノ集荷ハ、大體ニ於
  テ生產者團體ヲシテ行ハシメル方針デアリ
  マスカドウカ、此ノ點ヲ御聽キシテ置キマ
  ス、大體集荷ハ生產者團體ヲシテ行ハシム
  ルコトガ最モ合理的デアリ、又效果的デア
  ルト思フ、配給ハ出來得ル限リ消費者ノ團
  體ヲシテ行ハシメルコトガ合理的デモア
  リ、又實情ニモ卽シ得ルシ、又效果的デアル
  ト思フ、政府ニ於テハ國策會社ノ整理等モ考
  ヘラレテ居ルヤウデアリマスガ、原則トシ
  テハ大體ニ於テ集荷ハ生產者團體、配給ハ消
  費者團體、少クトモ消費者ノ便宜ガ最モ考慮
  サレ得ル形ニ於テスル、斯ウ云フ方針デ行カ
  ルベキデアルト思フノデアリマスガ、御方
  針ハ如何デアリマスカ
  ソレカラ更ニ一點消費ノ指導ニ付テ施設
  ヲ考ヘラレテ居ルカドウカ、大體米ガ餘リ
  マシタ時代ニ於テハ、米ノ利用ニ付テノ試
  驗所ミタイナモノヲ米穀管理局ハ持ツテ居
  ラレタヤウデアリマス、例ヘバ、「アルコー
  ル」ヲ造ツタリ、米ヲ他ノ用途ニ用フル試驗
  ヲシテ居ラレタ、アノ試驗施設ハ今デモア
  リマスカドウカ、若シアリトスルナラバ、
  米ヲ他ノ用途ニ使フ試驗ヲスルヨリモ、今ハ
  米ヲ如何ニ能率的ニ消費セシメルカ、又從
  來食用ニ餘リ供サレテ居ラナカツタモノ
  ヲ、ドウシテ食用ニ供スルカト云フ方面ノ
  試驗ニ轉換サルベキデハナイカト思フ、此ノ
  方面ニ於ケル〓究ノ餘地ガアラウト思フ、
  私ガ昨年愛媛縣ニ參リマシタ時ニ、甘藷ヲ
  一年中常食ニシテ居ル人達ニ會ツテ話ヲ聽
  キマシタ、大體ノ見當ハ、四万人ノ者ガ甘藷
  ヲ常食ニシテ居ル、ドノ位食フカト云フト、
  一日ニ八百匁カラ一貫匁食フ、値段ニシ
  テモ米一升分食ツテ居ル譯ナンデス、是ハ
  「カロリー」ニシテモ非常ナ「カロリー」量ヲ
  攝取シテ居ル譯ダト思フノデアリマス、結
  局ソレダケ澤山ノ芋ヲ食ツテ、ソレヲ消化
  スル「エネルギー」ノ方ニ取ラレテシマツ
  テ、活動力ノ「エネルギー」ニナツテ來ナ
  イ、消化スル爲ニ「エネルギー」ヲ消費シテ
  居ルノデハナイカト思フ、ソコデ之ヲ澱粉
  ニスレバ、澱粉ハ消化ニ一番「エネルギー」ヲ
  要シナイ、澱粉ノ次ハ飴デアリマセウ、飴カ
  ラ葡萄糖ニナルノデ、殆ンド消化ノ「エネル
  ギー」ヲ要シナイ、而モ步留リノ點カラ致シ
  マシテモ芋ヲ澱粉トシテ食用ニ供シ、特ニ外米
  ニ混合シテ食ベサセル方ガ、外米ヲ食ベサ
  セル場合ニハ、宜イノデハナイカ、ソレ
  デ澱粉ノ生產能力カラ言ヘバ、今五分ノ
  位シカ操業シテ居ナイノデアリマスガ、澱粉
  ノ製造能力ノアル限リノモノヲ澱粉ニシテ、
  配給サレル方ガ、甘藷ノ食用供出ノ上カラ申
  シマシテモ、非常ニ大キイノデハナイカ、是
  ハ一例デアリマスガ、〓糧管理局ニ持ツテ
  居リマス試驗所ハドウ云フ方針デ取扱ハレ
  テ居ルカ、又ソレ等ノ施設ハドウ行ハレテ
  居ルカ、此ノ三點ヲ御伺ヒ致シマス

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• 008・湯河元威

  ○湯河政府委員　主要食糧ノ集荷ノ問題
  ハ、是ハ生產者團體ヲシテヤラセルト云フ
  コトハ一昨年來商工省トノ間ニモ事務調
  整ヲ取リマシテ、指導シテ參リマシタ、現
  在デハ大體全國到ル所デ、米麥ニ付テノ集
  荷ハ生產者團體ニ統合サレテ居リマシテ、
  之ヲ政府ガ買フコトニナツテ居ルノデアリ
  いう、今度ノ食糧管理法ニ於キマシテモ、
  此ノ點ハ勅令以下ニ於テ定メルコトニナツ
  テ居リマス、ソレカラ配給ノ方面ハ消費者
  團體ヲシテ當ラシメルコトガ原則デハナイ
  カト云フ御話ガゴザイマシタガ、是ハ一ツ
  ノ御議論ダト思ヒマス、產業組合、消費組
  合運動等ノ理論モソコニアラウカト存ジマ
  ス、現狀ニ於テハヤハリ相當多數ノ配給專
  門家ガ、商人ト云フ形ニ於テ參加シテ居リ
  マシタ、又其ノ動キニ依リマシテ極メテ滑
  カニ過去ニ於テハ配給ガ出來テ居タノデア
  リマス遠イ將來ノコトハ別トシテ、最近
  ノ問題ト致シマシテハ、此ノ商業機構ヲ如
  何ニシテ現在ノ必要ニ卽應スルヤウニ改變
  スルカト云フ問題デゴザイマス、吾々トシ
  テハ玆ニ提案致シマシタ營團ノ組織ヲ以テ
  ヤツテ參リタイト考ヘテ居ルノデアリマス
  ソレカラ消費生活ノ指導ノ點ニ付テ色々御
  話ガゴザイマシタ、殊ニ農林省ガ持ツテ居
  ル米穀利用〓究所ハ今何ヲシテ居ルカト云
  フ御話ガゴザイマシタ、吾々モ米穀利用
  〓究所ハ近ク之ヲ食糧〓究所ト改變致シ
  マス、是ハ旣ニ豫算モ通ツテ居リマスシ、
  官制ノ改正ヲ今手續中デゴザイマス、實質
  ニ於テハ此ノ時局ガ斯ウナリマシテ以來、
  從來ノヤウナ過剩米ノ利用ノ途ヲ〓究スル
  ト云フコトデゴザイマセヌデ、色々消費者
  ノ指導、殊ニ食糧資源ノ〓究等ヲ致シテ居
  ルノデゴザイマス、只今御話ノゴザイマシ
  タ甘藷ノ食べ方等ニ付テモ、澱粉ニスルノ
  ガ宜イノデハナイカト云フ御指摘モゴザイ
  マシタガ、吾々ノ方モ〓究致シテ居リマス、
  實ハ甘藷ヲ生ノ儘食ベルノモ一方法デゴザ
  イマスガ、之ヲ食糧管理上カラ申シマスト
  澱粉又ハ粉トシテ、小麥粉ニ混ゼテ使フト
  云フコトモ考ヘテ居リマス、又將來食糧〓
  究所ノ機構ニ依リマシテ、更ニ進ンデ色々
  ト食糧給源ノ確保ニ付テ〓究ヲシテ參リタ
  イト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=8

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• 009・西川貞一

  ○西川委員　主要〓糧ノ集荷ハ大體生產者
  團體ヲシテ行ハシメルコトガ、單ニ食糧上
  ノミデナク、農林省ノ國策會社整理等ノ場
  合ニ於テ、一ツノ原則トシテ左樣ニ御考ヘ
  ニナツテ居ルカドウカ、尙ホソレハ左樣ア
  ルベキダト思ヒマスガ、大臣カラノ御答ヘ
  ヲ戴キタイト思ヒマス
  ソレカラ大臣ノ御答ヘヲ得タイト思ヒマ
  ス問題ヲ序デニ申上ゲマス、十七年度ノ米
  ノ生產目標ハドノ位ニナサル御積リデアル
  カ、諸般ノ事情ヨリシテ、前年度ヨリ食糧
  生產ヲ後退セシムルコトハ出來ナイ事情ニ
  アルダラウト思ヒマス、出來ルダケ前進セ
  シメナクテハナラヌニ違ヒナイ、然ルニ〓
  糧增產ヲ一步前進セシメル爲ニハ肥料資材
  等ノ生產資材ガ十分ニ供給サナレクテハナ
  ラヌノデアリマスガ、一昨日ノ御答ヘニ依
  リマスレバ、窒素ニ於テ八〇%、過燐酸ニ
  於テ五〇%、加里肥料ニ於テハ零ト云フ、
  吾々ト致シマシテハ、洵ニ心細イ數字デア
  ルノデアリマス、是ハ農林當局ト致シマシ
  テハ必死ノ御努力ヲナサツタ結果デハアル
  ト思ヒマスガ、致シ方ガナイ、然ルニ農民
  ニモヤハリ又サウ云フ結論ガ出テ來ルノヂ
  ヤナイカト云フコトヲ私ハ惧レル、努力ハ
  致シマス、努力ハシタガ、結果ハ斯樣ニナ
  リマシタト云フコトニナツタノデハ、日本
  ノ食糧問題ノ前途洵ニ憂慮スベキモノガア
  ルト思フ、ソコデ肥料ハサウ云フ風ニ減ル
  ノデアルガ、外ニ何カ手ガアルカドウカ、
  農林大臣ハ外ニドンナ手ヲ用意シテ居ラレ
  ルカ、豫算面ヲ見マスト、補助金等ニ於テ
  ハ相當ノ整理削減ヲ行ツテ居ラレルヤウデ
  ゴザイマス、大體此ノ補助金政策モ行詰リ
  狀態ニモアルシ、且又相當ノ弊害モアツタ
  ト私共ハ思フノデアリマシテ、從來總花主
  義デアリ、分散的デアリ、散彈ヲ擊ツヤウ
  ナ、洵ニ效果ノナイ補助金ガ多カツタノデ
  ゴザイマス、之ヲ集中的ニ、重點的ニ使用
  致シマシテ、モツト效果ガ上ガル方法ヲ考
  ヘラルベキデアルト思ツタノデゴザイマス
  ガ、豫算面等ヲ見マスノニ整理削除ノ跡ハ
  相當ニ見エマスガ、是等ヲ轉用シテ、重點
  的ニ、效果的ニ用ヒテ行クト云フヤウナ御
  配慮ヲ十分ニ認メルコトガ出來ナイノヲ遺
  憾トスルノデアリマス、併シ大臣トシテハ、
  非常ナ困難ノ狀態デハアリマスガ、其ノ困
  難ヲ克服シ、不可能ヲ可能ナラシメルベキ
  何カ一ツノ手ヲ用意サレテ居ラレルコトト
  思フノデアリマス、食糧增產ニ付テドウ云
  フ手ヲ御用意ニナツテ居ラレルカ、此ノ際
  承ハリタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=9

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• 010・井野碩哉

  ○井野國務大臣　先ヅ第一ノ農林關係ノ
  諸物資ニ付テ集荷ヲ生產者團體ニ一元化ス
  ルヤ否ヤト云フ御尋ネデアリマスガ、是ハ先
  程モ食糧管理局長官カラ御答ヘ致シマシタ
  ヤウニ、主トシテ主要食糧ニ付テハサウ云
  フ方針ヲ執ツテ居リマス、併シ總テノモノ
  ニ付テサウ云フ方針ガ執レルカドウカト云
  フコトニナリマスト、ヤハリ現在ノ社會情
  勢カラ言ツテ、其ノ業態自體ニ於テハ集荷
  ノ部面ニ於テ商人ガ非常ニ活躍シテ居ル部
  面モアルノデアリマス、隨テソレヲ悉ク排
  除シテ全部生產者團體ニスルト云フコトガ
  寧ロ適當デナイ場合モ今日ハアルノデアリ
  マス、デアリマスカラ、物々ニ依リマシテサ
  ウ云フ方針ヲ大體今日決メテ居ルノデアリ
  マシテ、主要食糧ニ付テハ今申シタ通リノ
  方針ヲ執ツテ居ル、其ノ他ノモノニ付キマ
  シテモ成ベクハサウシタイト思ツテ、無論
  色々努力シテ居ルコトハ當然デアリマスガ、
  必ズシモ全部ガサウ行キ難イ事情ニアルト
  云フコトダケヲ御諒承願ヒタイト思フノデ
  アリマス
  ソレカラ本年ノ米ノ生產目標ニ付テドレ
  ダケノ生產目標ヲ置イテ居ルカト云フ御尋
  ネデアリマスガ、大體七千百万石ノ目標ヲ
  置イテ居ルノデアリマス、是ハ今御話ノ通
  リ去年モ大體七千百万石ノ目標ヲ置イテ居
  ル、ソレニ比ベテ本年ハ、肥料モ硫安ハ昨
  年ノ八〇%デアリ、過燐酸石灰ハ五〇%デア
  ルカラ、サウ云フ狀態デ以テ此ノ目標ガ達
  成セラレルカドウカ、何カ外ニソレニ對シ
  テノ手ハナイカドウカト云フ御尋ネデアリ
  マスガ、吾々トシテモ肥料ガ少クナツテ參
  ツタ狀態ニ於テ、出來ルダケ增產ヲシテ貰
  ヒタイト云フコトヲ農村ニ向ツテ勸メテ居
  リマス其ノ氣持カラ言ヒマスト、無論農村
  ニ對シテ非常ナ無理ヲ强ヒルノデハナイカ
  ト云フ御考ヘガアルカモ知レマセヌガ、吾
  吾トシテハヤハリ技術的ニ色々ノ〓究ヲ遂
  ゲマシタ結果、大體手段ヲ講ズレバ此ノ位
  ノモノハ穫レルト云フ見透シヲ持ツテ居ル
  カラ、此ノ數字ヲ本トシテ色々ノ割當ヲ致
  シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、大體此
  ノ基準ノ數量ガ六千三百四十六万石バカリ
  ニナツテ居ルノデアリマスガ、之ニ八百万
  石程增產シヨウト云フ譯デアリマス、ソレハ
  ドウ云フコトデヤルカト云フト、ヤハリ耕種
  及ビ施肥ノ改善ニ依リマシテ約三百万石程
  殖ヤシ得ル、又病害蟲ノ驅除豫防デアルトカ、
  溫床苗代デアルトカ、多收品種ノ奬勵デア
  ルトカ、或ハ耕地事業、詰リ簡易開墾ヲヤ
  ルトカ、色々ノ手段ヲ講ジマシテ各府縣ノ
  主任官ヲ集メ、色々ノ事情ヲ調査シテ、此
  ノ肥料事情ノ下ニ於テ自給肥料ヲ以テ之ヲ
  補ヒ、又或ハ施肥ノ工夫ヲ色々スルコトニ依
  ツテ、現在ノ配給致ス肥料ヲ有效ニ使ハセル
  ト云フ色々ノ苦心ヲシ、普通ノ氣候狀態ヲ以
  テ行ケバ大體此ノ位ノモノガ出來ルト云フ
  見透シヲ以テ吾々ノ方ハヤツテ居ルノデア
  リマス、併シ勿論今日ノ米ノ增產ト云フ問
  題ハ技術ダケデハイケナイノデアリマシテ、
  結局ハヤハリ農民ノ精神力ヲ振起シテ、此
  ノ時局ニ對シテ出來ルダケ努力シテ增產ニ
  努メルト云フ其ノ精神ガ大事デアリマスカ
  ラ、農林省トシテハ或ハ內原ノ訓練所ニ於キ
  マシテ一万數千人ノ農村靑年ノ訓練モ致シ、
  又各府縣ノ農民道場等ヲ利用シ、又更ニ農會
  技術員其ノ他ノ指導網ヲ總動員シテ、此ノ
  際增產ニ邁進シテ居リマスコトハ西川君ノ
  能ク御承知ノ通リデアリマス、ソレ等ノ技
  術方面精神方面竝ニ物的方面カラ協力シテ、
  サウシテ此ノ增產目標ヲ達成致シタイト考
  ヘテ居ル次第デアリマス、

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• 011・西川貞一

  ○西川委員　農林省ノ施設サレマスコトニ
  是ナラ效果ガ上ガルト云フヤウナ目新シイ
  モノノ見エナイコトヲ遺憾ニ思ヒマス、而
  モズツトオヤリニナツテ、昨年モドウモ
  思フヤウニ行カナカツタト云フ點ガアルト
  思フノデアリマスガ、要スルニ大東亞戰爭
  ノ勃發以來、農民ノ氣分モ大分變ツテ來タ
  ト思フ、モウ今日ハ國民全部ガ私ノ存在デ
  ハナイ、皆赤切符ヲ貰フカ、白切符ヲ貰
  フカ、國ノ總動員體制ノ下ニ應召シタノ
  デアル、動員サレタノデアル、サウシテ
  自分等ハ今食糧增產ノ前線ニ配置サレテ居
  ルノダ、斯ウ云フ氣分ニ農民ハナツテ居
  ル、又其ノ氣分ヲ大イニ指導サレナクテ
  ハナラヌ、サウシテソレヲ組織化シテ、
  强力ナル一ツノ實踐力ヲ與ヘ、指導ノ組
  織ガ備ハリ明確ナル方略ヲ示シテ、今マ
  デノヤウニ補助金ヲヤルカラヤレ、オ前ノ
  利益ニナルカラヤレト云フヤウナコトデハ
  イケナイ、是ダケノモノハヤラナケレバナ
  ラヌト云フ部隊長ガ方略ヲ示シテ命令スル
  コトガ必要デアル、是ハ具體的ナ數點ニ付
  テ農政局長ニ御尋ネシタイノデアリマスガ、
  マダ農政局長ハ出テ居ラレナイノデ、山林
  關係ノコトヲ御尋ネ致シタイノデアリマス、
  農作物ヲ妨ゲル蔭樹ヲ伐ツテシマツテ日當
  リヲ好クシタラ確カニ何百万石ノ增產ガ出
  來ルト云フ目標ガハツキリ付イテ居ル、之
  ヲ强制的ニヤラセル、日當リヲ良クサセル
  爲ニ蔭林ノ伐採ヲ全國一齊ニ斷行サセルト
  云フコトヲヤルカドウカ、ソレカラ自給肥
  料ノ增產ノ爲ニ採草地ノ整理、之ヲ補助金
  トカ何トカ云フ生溫イコトデナシニ、强制的
  ニ農民ヲ率ヰテヤラセルカドウカ、ソレカ
  ラ一昨日山川君カラ色々御述ベニナリマシ
  タ野兎ノ問題デアリマスソレニ付キマシテ
  縷々御答辯ガアリマシタガ、要點ヲ明瞭ニ聽
  キ得ナカツタノデモウ一遍御伺ヒ致シマス、
  現在野兎ノ驅除ハ獵期外ニ於テハ自由ニサ
  セテ居ルノデスガ、獵期ニナルト自由ニサセ
  ナイ、併シ實際野兎驅除ノ效果ハ、獵期ニ
  於テアルノデアツテ、此ノ時期ニ許可セシ
  メテ農民ニ自由ニヤラセルカドウカ、之二
  付テ當局ハ考慮スルト云フコトヲ六年モ言
  ツテ居ラレル、每年篤ト考慮スルト云フコ
  トヲ歷代ノ山林局長ガ言ツテ居ラレルニ拘
  ラズ、今以テ結論ガ出テ居ナイ、六年考ヘ
  テ結論ガ出ナイヤウデハ、是カラ何年考ヘ
  テモ出ヤシナイト思フガ、此ノ際ヤルカド
  ウカ、此ノ三點ヲハツキリ御答ヘ願ヒタイ
  ト思ヒマス

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• 012・井出正孝

  ○井出政府委員　只今ノ御質問ノ第一點
  ノ、農產物ノ增產ヲ確保スル爲ニ、是ノ非常ニ障
  碍ニナツテ居ル日蔭樹ヲ思ヒ切ツテ伐採スル
  考ヘハナイカト云フ點ニ付キマシテハ、森林
  行政方面カラ見マシテ、左樣ナ農產物ノ增
  產ノ障碍トナル部分ノ日蔭樹ヲ伐採スルト
  云フコトハ、一向差支ナイ問題デアリマス、
  今マデ伐採スベキモノヲ伐採セシメナイデ
  アルト云フ風ナコトハナイ積リデ居リマス、
  唯之ヲ積極的ニ森林所有者等ヲシテ强制的
  ニ伐採セシメル制度ヲ將來考ヘルカドウカ
  ト云フ點ニ付キマシテハ、只今ノ所デハサ
  ウ云フ制度ハナイヤウニ思ヒマスルガ、サ
  ウ云フ點モ農產物增產ノ方面ト連絡ヲ取リ
  マシテ、篤ト考究ヲシテ參リタイト思ツテ
  居リマス、國有林方面等ニ於キマシテノ斯
  ウ云フ日蔭樹ハ屢〓、問題ニナツテ居リマス
  ルガ、極力左樣ニ障碍ニナルヤウナ部分
  ハ國ニ於テ自發的ニ整理致シ、害ノナイ
  ヤウニ致サレテ居ル積リデアリマス、ソレ
  カラ第二點ノ自給肥料ヲ相當增產セシメル
  手段トシテ、全國ニ在ル放牧採草地ヲモツ
  ト動員シテ使フヤウニスル必要ガアルノデ
  ハナイカト云フ御尋ネ、殊ニ、色々入合關
  係或ハ各地方ノ町村其ノ他ノ團體等ノ共有
  ノ爲ニ、斯ウ云フ方面ニ障碍ノアルヤウナ
  原野等ヲ、モウ少シ採草ニ十分利用出來ル
  ヤウニ整理シテ參ルト云フ點ニ付キマシテ
  ハ洵ニ私共モ同感ニ存ジテ居リマス、斯樣
  ナ時期ニ於キマシテ、是等ヲ一層有效ニ使
  フヤウニ今後色々指導又ハ工夫シテ參リタ
  イト思ツテ居リマス、ソレカラ第三點ノ野
  兎ノ被害ヲ除ク爲ニ、獵期ニ於キマシテモ、
  關係農民ヲシテ之ヲ獲ルコトヲ認メルヤウ
  ニ考ヘテハドウカト云フ點ニ付キマシテ
  ハ近年特ニ野兎ノ害等モ激甚デアルヤウ
  ニ伺ツテ居リマスノデ、獵期中ト雖モ、必
  要ニ依リマシテハ狩獵法ノ規定ノ運用ニ依
  リマシテ、是等有害ノ野兎ノ驅除ヲ斯ウ云
  フ關係方面ニ致サセルコトハ、十分努メテ
  參リタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=12

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• 013・西川貞一

  ○西川委員　自給肥料ノ生產ナリ、又一面
  榮養食糧ノ補給ナリニ付テ一番重大ナノハ
  畜牛ノ增殖デアルト思ヒマス、然ルニ畜牛
  ハ近來著シク減產ニナリツツアル、是ハ何
  故減產ニナルカト云フト飼料ノ輸入ガ無ク
  ナツタ爲デアリト云フコトデアリ、昨日モ
  農林省ノ末梢神經タル郡及ビ町村ノ畜產技
  術員カラ私ハソレニ關スル陳情ヲ受ケマシ
  タガ、此ノ減產ハ決シテ私ハ飼料ノ爲メデ
  ハナイト思フ、一體現在ノ集荷ノ制度デハ
  畜牛ハ段々減ツテ肉牛ハ出テ來ナイ、ドウ云
  フ點ガ惡イカト云フト、之ニ付テハ此ノ前樋
  口君カラモ縷々御質問ガアリ、大臣モソレニ
  付テハ十分改メルト約束サレマシタガ今日
  改メラレテ居ナイ、其ノ機構ガ惡イ爲メニ畜
  牛ガ減リ肉牛ガ出テ來ナイ、是ハ農林省トシ
  テ今日棄テ置クコトノ出來ナイ問題デアル
  ト思フ、私共モ子供ノ時分農家デ育ツテ能
  ク知ツテ居リマスガ飼料ナド買ツタ覺エハア
  リマセヌ、値段ノ高イ種牛ヲ飼フ爲メニハ購
  入飼料ヲ要シマスケレドモ、普通ノ牛ヲ飼フ
  ニハ農家ガ少シ努力スレバ飼料ヲ買ハナク
  テモ牛ハ飼ヘル、是等ニ付テモ速カニ機構ヲ
  改メラレテ、强制的ニデモ飼育サセテ牛ヲ
  殖ヤサレテハドウデアルカ、必ズ一匹ハ飼フ
  ベシ、一匹飼ツテ居ル家デハ二匹飼フベシト
  云フコトニスル、サウシテ堆肥、厩肥增產ノ爲
  メ畜舍ノ改良ヲヤラセル、補助金ガ少イカ
  ラヤレナイト云フヤウナコトデナクシテ、
  農林省ハ先頭ニ立ツテ農民ヲ相率ヰテ實際
  ニヤラセテハドウカ、ソレカラ「サイロ」ノ設置
  ナドモ是ダケハ必ズヤレト云フノデヤラセ
  ル、補助金ノ豫算ナドニ拘束サレズニ實際ヤ
  ラセテハドウカ、農林省ハ部隊長ニナツテ
  農民ヲ率ヰテ必ズヤラセテ行クト云フノデ
  ナケレバ戰時食糧ヲ私ハ乘切ツテ行クコト
  ハ出來ナイト思ヒマスガ、之ニ付テハドウ
  云フ氣分デ居リマスカ、ソレカラ最後ニド
  ウモ私ハ中央〓糧營〓ナルモノノ存立ノ意
  義ガ、御說明ヲ聽イテ見テモドウモ是非必
  要ダト云フコトヲ發見シ難イ、此ノ委員會
  ニ付託サレテ居リマス米穀需給調節特別會
  計法-此ノ改正案ヲ同時ニ付託サレテ居リ
  マスガ、是デモ此ノ中央〓糧營團ノヤラウト
  スルコトハヤレルノデハナイカ、外地米ヲ
  買入レラレ、外國米ヲ買入レラレ、ソレカ
  ラ貯藏ヲスル、加工ヲスル、米穀需給調節
  特別會計法ヲ食糧管理特別會計法ニ改メラ
  レル、是デ出來ルデハナイカ、今日總テ類
  似シタ企業ヲ整理統合サレル、企業ノ整理
  統合ガ國策トナツテ、統合バカリノ時代ニ
  農林省自身ニ於テモ是ダケノ仕事ヲスル用
  意ヲチヤントシテ置キナガラ、尙ホ外ニ中
  央〓糧營團ノ如キモノヲ御作リニナル、農
  林省ハ今マデ全然米ヲ扱ツタコトガナイト
  云フノナラ別段デアリマスガ、今日ノ農林
  省ハ米ニ於テハ一番ノ專門家ガ揃ツテ居ラ
  レル、米ニ於テハ農林省ガ「オーソリテイー」
  デアル、其ノ人物ニ於キマシテモ、又色々
  ノ施設ニ於キマシテモサウデアル、農林省
  自體ガ長年ニ亙ツテ米ノ需給ヲ調整シテ來
  ラレテ、內地ニ於テ食糧需給ノ全責任ヲ負
  ツテ行カレル時ニ、玆ニ特別會計法ノ改正
  案ヲ出サレテ、必要ナ資金ヲ增額シテ居ラ
  レル、サウシテ是等ノ仕事ガ出來ルヤウニ
  法律ヲ改正ナサツテ、尙ホ一方ニ中央〓糧
  營團ヲ設ケナクテハナラヌト云フ理由ガ十
  分ニ呑込メナイノデアリマス、此ノ點ハド
  ウカ呑込メルヤウニ御說明ヲシテ戴キタイ
  ト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=13

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• 014・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今御質問ノ第一點ノ牛
  ノ問題デアリマスガ、牛ハ現在農村ニ於キ
  マシテ此ノ二、三年來減ツテ來テ居リマセ
  又、寧ロ殖エテ居リマス、是ハ飼料ガ無論
  非常ニ窮屈ナ點モアツタト思ヒアスケレド
  モ、サウ云フ點ヲ克服シ、更ニ農村自體ニ
  於キマシテモ勞力ノ關係、其ノ他色々ノ關
  係カラ、是非有畜農業ニ進ミタイト云フ氣
  持カラト思ツテ居リマスガ、牛ハ殖エテ居
  リマス、二百万頭ヲ突破シテ居ル狀態デ
  アリマスカラ、決シテ戰前ニ比ベテ牛ハ減
  ツテ居リマセヌ、然ラバ牛ガ何故肉牛トシ
  テ出テ來ナイカト云フ問題ニナリマスト、
  先般衆議院ノ委員會デ樋口委員ガ色々ノ事
  情ヲ御話ニナリマシテ、私モサウ云フ事情
  ガアレバ非常ニ困ツタコトダ、是非改善シ
  タイト思ツテ色々調ベタノデアリマス、サ
  ウ云フ事柄ガ全然ナカツタトハ思ヒマセヌ
  ガ、ソレガ現在牛ノ出テ來ナイ原因デハナ
  イコトガ其ノ後判明シマシタ、砂田委員長
  ガ本會議デモ色々御話ニナツテ居リマシタ
  ノデ、其ノ點モ能ク砂田委員長ニモ御話シ
  タラ、成程サウダラウト云ツテ能ク御理解
  モ得タヤウナ譯デ、現在ニ於テハアア云ツ
  タ事情カラ牛ガ出ナイノデハナカツタノデ
  アリマス、其ノ當時牛ガ出マセヌデシタノ
  ハ、結局農村ノ勞力ガ非常ニ不足シテ居ル
  ノデ、牛ヲ勞力ニ使ハナクテハナラナイ、
  其ノ爲ニ肉牛トシテ出シ難イト云フ事情ガ
  アリマシタノト朝鮮牛ガ其ノ當時輸送ノ
  關係或ハ病疫ノ關係カラ內地ニ入ツテ來ナ
  イ、隨テ內地牛ノ供出ガ非常ニ減ツタ、斯
  ウ云フ事情ニアツタノデアリマス、其ノ後
  ニ於キマシテハ朝鮮牛モ段々ト入ツテ參リ
  マシタシ、農村ノ勞力ノ點カラ行キマシテ、
  近頃ニ於テハ其ノ供出量モ昨年ノ十一月、
  十二月ニ比シテ段々殖エツツアリマス、併
  シ是モ色々配給竝ニ集荷ノ機構ガ新タニ出
  來タ時代ニ直面シテ居ルノデアリマスカラ、
  吾々ガ企圖シテ居リマスヤウニマダ動イテ
  居リマセヌガ、是等ハ色々制度ノ問題デア
  リマスカラ、十分ニ改善シテ、國民ノ肉ノ
  需要ニ對シテ出來ルダケ善處シテ參リタイ
  ト考ヘテ居リマス一ヨ
  第二點ノ中央食糧營〓ノ機能ノ問題デアリ
  マスガ、西川委員ハ米穀會社ヲ整理シテ中央
  食糧營團ニスルノデハナカラウカトカ、又米穀
  會社ハ元々市場整理ノ結果出來タモノダカ
  ラ、ソレヲ今度之ニ直シテ行クノデハナカラウ
  カト云フ御考ヘガ前提ニナツテ居ラレルノ
  デハナカラウカト思フノデアリマスガ、中
  央食糧營團ハ實際今度ハ非常ニ大キナ働キ
  ヲスルノデアリマス、ト云フノハ綜合食糧
  ノ配給機構ヲ政府トシテハ今後ヤツテ行カ
  ウ、從來ノ米穀會社ガ全然ヤツテ居ラナカ
  ツタ大キナ仕事ヲ-中央ニアツテ地方
  ト能ク睨ミ合セテ配給ヲヤツテ行カウ、
  其ノ爲ニハ或ハ製粉事業モ吸收シ、其ノ
  他ノ食糧配給モ是ガ扱フト云フ大キナ使命
  ヲ持チマスノガ一ツトモウ一ツハ空襲時
  ニ於ケル非常食糧貯藏ヲ此ノ中央〓糧營團
  ガ一手ニヤル、是ダケ大キナ仕事ヲ戰時下
  ニ致シマスニハ中央食糧營團トシテノ働
  キハ十分ニアリ得ルト思フノデアリマス、
  サウシテ從來ノ發達過程ニ於テ出來テ參リ
  マシタ色々ノ食糧關係ノ國策會社ヲ、此ノ
  中央食糧營團ニ整理統合シヨウ、斯ウ云フ
  ノデアリマスカラ、衆議院ガ從來カラ國
  策會社ノ整理統合ヲ要望シテ居ラレタ其ノ
  御要望ニモ副フ、私ハ斯ウ考ヘテ此ノ法案
  ヲ提出致シタヤウナ譯デアリマス、尙ホ法
  案提出以外ニ、私ハ相當ニ國策會社ノ整理
  統合ヲ是カラモヤツテ行キタイト考ヘテ居
  リマス、隨テ是モ一ツノ現レデアルト云フ
  風ニ御理解願ヒ、而モ中央機能ハ今申シタ
  通リ色々ノ大キナ仕事ヲ持ツテ居ルノデア
  リマス、米自體ニ御付テハ話ノ通リ、內地
  米ニ付テハ政府ガ特別會計デヤルノデアリ
  マスカラ、此ノ機構ヲ餘リ煩ハサナイ、斯
  ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=14

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• 015・三善信房

  ○三善委員長　北勝太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=15

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• 016・北勝太郎

  ○北(勝)委員　食糧增產ノ要ガ今日程急ナ
  ルハナイノデアリマシテ、先程モ今年ノ肥
  料不足ヤ勞力不足、色々ナ惡條件ノ下ニ、
  モツト打ツベキ手ガアルノデハナイカ、モ
  ツト妙手ガアリサウナモノダト云フ西川君
  ノ御質問ニ對スル大臣ノ御答ヘニ、私ハ是
  ハ大分御認識ノ足ラヌ點ガアルノデハナイ
  カト考ヘテ居ルノデアリマスガ、ソレハ增
  產ノ非常ニ障碍ニナルコトデ、斯ウデナク
  テハナラヌト百姓ガ非常ニ希望シテ居ルコ
  トガ一ツアリマス、ソレハ何カト云フト、
  生產物ノ集荷カラ、生產資材ノ配給、ソレカ
  ラ更ニ農家ノ生活物資ノ配給マデモ、生產
  本位ノ統制デナクテハナラヌ、斯ウ云フコ
  トデアリマス、ソレガ何等生產本位ニ立脚
  シナイ所ノ例ノ物資別ノ配給會社ト云フヤ
  ウナモノ、或ハ生產トハ全ク遊離致シテ居
  ル所ノ商業組合或ハ商業組織、斯ウ云フヤ
  ウナモノヲ用ヒテ之ヲ擔當セシメテ居ラレ
  ルガ爲ニ、農家ハ徒ラニ無用ノ重複或ハ煩
  瑣ナ手數、或ハ無駄ナ費用、之ヲ負擔サセラ
  レテ居ルバカリデナシニ、最モ大事ナ計畫
  的生產ト云フコトガ出來ナイノデアリマス、
  詰リ斯ウ云フヤウナヤリ方デハ生產增强ニ
  非常ニ大障碍ガアル、ダカラ之ヲ取除ケト
  云フコトハ久シキニ亙ル農業者ノ眞劍ナ
  叫ビデアリマス、ニモ拘ラズ一方政府ニ於
  キマシテハ配給業者ノ立場モ考ヘラレ、配
  給業者ノ救濟ト生產ノ增强ト兩方ヲ滿足ニ
  ヤラウ、所謂兩全ヲ期スル、斯ウ云フコト
  ニ御苦心ヲシテ居ラレルノデアリマシテ、
  先程西川君ノ質問ニ對シテ管理局長ノ御答
  辯ニモ、サウ云フ點ガ現ハレテ來テ居ルノ
  デアリマス、成ベク現在ノ商業機構ヲ使ツテ
  行キタイト云フヤウナコトヲ言ツテ居ラレ
  ルノデアリマス、併シ此ノ事ハ三ツ子デモ
  分ル通リ、業者ノ救濟ト云フモノハ金デ出
  來ル、金ヲ出セバ濟ムノデアリマスガ、生
  產ノ減少シタ分ハ、是ハ金デ補ヘナイモノデ.
  アル、ダカラ此ノ場合生產ノ增强ヲ常ニ第一
  義ニ置イテ行カナケレバナラヌノデアリマ
  スガ、ドウモ人情ノ常トシテ、救濟ト云フ目前
  ノ事態ニ囚ハレ勝デアツテ、寧ロ救濟本位
  ニ傾キ易イ、サウシテ生產ノ增强ト云フコ
  ト、卽チ社會全體ノ利益、モツト突キ詰メテ
  云フト戰爭必勝ノ鍵デアル所フ生產ノ增
  强、是ハ第二義ニ取扱ハレ勝ナノデアリマ
  シテ、事實常ニ前者ニ對シテハ同情ガ集リ、
  後者ニ對スル理解ハ得ニクイ、斯ウ云フ狀
  態デアルノデアリマス、ソレガ爲ニ生產ニ
  熱心ナ者達ガヤカマシク要求シテ居ルノ
  ヲ尻目ニ、政府ハ頻リニ性格上幾多ノ弊害
  ヲ包藏シテ居ル所ノ業者中心ノ所謂商業組
  合トカ、或ハ國策會社式ノ統制ニヤツテ行
  カレヨウトシテ居ツテ、殆ド生產本位ノ統
  制ト云フコトガ行ハレナイ、是ガ生產ノ減
  少ニ拍車ヲ掛ケテ居ルノデアリマシテ、洵
  ニ私ハ國家ノ爲ニ遺憾千萬ダト思フ、物ガ
  少イ時ニ物ヲ多クスルト云フコトハ、是
  ハ絕對至上命令デアル、是ハ聊カモ、又
  片時モ輕視サレルヤウナコトガアツテハ
  ナラヌノデアリマス、ソコデ從來斯ノ如
  ク逆サマニナツテ來タ、逆立チニナツテ
  來タ所ノ、配給過程ノ見地ノミニ囚ハレタ
  所ノヤリ方、生產本位ト云フコトヲオ留守
  ニシテヤツテ居ルト云フヤウナヤリ方ヲ、
  此ノ際斷然根本的ニ改革ヲシナケレバイカ
  ナイト思フノデアリマス、斯ク申シマスト
  如何ニモ業者ニ對シテ無情ナ言ヒ分ノヤウ
  ニ聞エルカモ知レナイノデアリマスガ、此
  ノコトハ其ノ結果ニ於テ、丁度甘イ人氣取
  リノ〓員ガ〓ヘタモノト、ソレカラ少々厭
  ヤガラレテモ誠心籠メテ戒メテ行ツタモノ
  程ノ、左樣ナ違ヒトナツテ國家的得失ノ上
  ニ現ハレテ來ルノデアリマス、若シ些細ナ
  此ノ種ノ同情ニ囚ハレテ、安易ナ過渡的方
  式ノ儘デ、此ノ際斷然生產本位ノ統制ヲ行
  フト云フコトガ出來ヌト云フノデアレバ、
  政府自ラガ生產減少ヲ招來スルト言ハレテ
  モ仕方ガナイ、今日農家ハ精神的ニ、洵ニ
  些細ナコトデモ、一粒デモ增產ヲシヨウト
  云フコトデ眞劍ニナツテ居ルノデアリマス、
  ニモ拘ラズ萬一ニモ政府ノ方針ガサウ云フ
  工合デアルトスルナラバ、先程モ大臣ハ增
  產ハ技術ダケデハナイノダ、農家ノ精神力
  ニ俟ツモノガ多イノダ、ト斯ウ言ツテ居ラ
  レナガラ依然サウ云ツタヤウナヤリ方ヲシ
  テ居ラレルト云フコトデアレバ、却テ政府
  ノ增產ニ對スル熱意ヲ疑ハレル、何處カソ
  コニ口程デモナイ何物カガアルノダラウ、
  餘裕ガアルノダラウト云フヤウナ氣分ヲ農
  民ガ持ツテ來ルノデアリマシテ、所謂生產
  精神ヲ弛緩サセルノデアリマス、ヨク言フ
  コトデスガ、自ラ燃エズシテ他ヲ燃ヤス方
  法ハナイ、トハ玆デアル、吾々ガロヲ酸ク
  シテ增產ノ急務ヲ農民ニ愬ヘルケレドモ、
  一向ソレガ受容レラレナイ、今日ノ場合ニ
  ナツテ居ツテモマダサウ云フ風デアリマシ
  六、此ノ大切ナ時ニ政府ノ掛聲ニ反比例シ
  テ、マダ逆ニ離農者ガ簇出シテ居ル、此ノ
  皮肉ナ現象ハ之ヲ雄辯ニ物語ツテ居ルト思
  フ、私ハ國家ノ前途ノ爲ニ洵ニ寒心ニ堪ヘ
  ナイト思ツテ居ルノデアリマス、又經濟的
  方面カラシマシテモ、此ノ勞力ノ不足ニ惱ン
  デ居ル場合ニ、ワザト合理的ナ方法ヲ斥ケ
  テ、而モ不便デ手數バカリ掛ル今ノヤウナ
  ヤリ方デハ、何トシテモ農家ハヤツテ行ケ
  又、何モ仕事ヲシナイデ居ツテ口錢ヲ取ル
  所ノ眠リ口錢ダトカ、或ハ又仕事ハ何モ
  シナイデ、指圖ダケヲシテ居ル、或ハ取次
  ダケヲシテ居ル所ノ物資統制會社、販賣會
  社、是ノ爲ニ形式ノ變ツタ搾取、寧ロ從來ヨ
  リハ質ノ惡イ捧取ヲ受ケテ居ル、ソレガ爲
  ニ大變ニ買フモノガ高クナツテ居ル、サウ
  シテ賣ルモノガ目ニ見エテ安イ)斯ウ云フ
  ヤウナ工合デ農業經濟ガ引合ハヌデ行詰リ
  ヲ來シテ居ル、何トシテモ此ノ儘デヤツテ
  行クコトハ出來ヌカラ、眞ニ巳ムヲ得ズニ
  離農シテ行クト云フ、或ハ離農シナイマデ
  モ減產ニナルト云フヤウナコトニナルノデ
  アリマシテ、此ノ減產ノ原因ヲ唯農家ノ無
  責任ニノミ歸シテ行カウト云フヤウナコト
  デハ、是ハ大キナ間違ヒデアリマス、此ノ
  際私ハドウシテモ減產ノ眞ノ原因ニ對シテ、
  一ツ當局ハ斯ウ云フ點ニアルノダト云フコ
  トヲ頭ニシツカリ置イテ貰ハナケレバナラ
  ヌト思フノデアリマス、戰時下デアルカラシ
  テ少々位ノマヅイコトハ目ヲ瞑ツテ行カウ
  ト云フ心構ヘハ、農家ハ皆持ツテ居ルノデ
  アリマスガ、今ヤサウ云フ氣持ヲ持ツタ農
  家ニシテ尙ホ此ノ始末デアリマス、況ヤ私
  ハ將來ノ新附ノ民、或ハ又日本ガ指導國家
  トシテ、大東亞共榮圈內ノ諸民族、諸國家
  ノ農民達ニ之ヲ其ノ儘施スト云フコトデア
  ルナラバ、則チ生產者ノ立場ヲ、考慮シナ
  イ、合理性ヲ失ツタ此ノ形ノ變ツタ搾取ノ方
  式デ向ツテ行クト云フコトデアルナラバ、
  必ズヤ大ナル行詰リヲ來スデアラウト云フ
  コトハ、私ハ火ヲ睹ルヨリ明カダト思フノ
  デアリマス、カルガ故ニ、私共ハ色々ノ角
  度カラ見テ、此ノ際政府ハ農村ニ對スル集
  荷配給ハ商業組合組織又ハ物資別ノ統制會
  社ノ方式ヲ執ツテ居ルコトニ對シテ、根本
  的ナ改革ヲ要スルコトガ肝要デアルト痛感
  シテ居ルノデアリマスガ、農林大臣ノ之ニ
  對スル御考ヘヲ承ツテ置キタイ
  ソレカラ次ニ食糧營國ノ設立ニ當ツテ
  モ、以上申上ゲタ趣旨ニ依ツテ其ノ組立或
  ハ運營ニ付テ、斷然生產ノ增强ト云フコト
  ニ根本ヲ置イテ、努メテ生產本位ニ立脚シ
  テ、サウシテ特ニ生產者團體トノ繫リヲ緊
  密ニスルト云フヤウナ方法ヲ以テ行カナケ
  レバナラヌト思フノデアリマスガ、之ニ對
  スル根本方針竝ニ具體的ノ方策、之ヲ承ツ
  テ置キタイノデアリマス、大變長ク申上ゲ
  マシタケレドモ、私ノ質問ハ極メテ簡單ナ
  ノデアリマシテ、之ヲ要約シマスト農村ニ
  於ケル集荷配給ノ方式ハ、生產本位ニ改革
  シナケレバナラヌト思フガ、之ニ對スル大
  臣ノ御考ヘハドウカ、其ノ次ハ〓糧營團ノ
  組立或ハ運營ニ付テハ、生產本位ノ考へ、
  又生產者團體ト緊密ナル關係ヲ持ツテ行カ
  ナケレバナラヌト思フノデアルガ、之ニ對
  スル具體的ノ方法、此ノ二點ニ付テ伺ツタ
  ノデアリマス

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• 017・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日ノ狀態ニ於テ〓糧ノ
  增產ヲ期シマス爲ニ、農村ニ於ケル集荷配
  給ノ機構ヲ生產者本位ニ總テ立テテ行クト
  云フ此ノ根本理念ニ對シマシテ、私ハ全ク
  同感デアリマス、サウ云フ風ニ總テ指導ヲ
  致シ、又サウ云フ風ニ色々ノ機構モ整備シ
  テ參ツテ居ルノデアリマス、唯今日物ノ少
  イ時ニ集荷サレマシタモノヲ公平ニ分配
  シ、又資材等ニ付キマシテモ、入手シマシ
  タ資材ヲ公平ニ分配スルト云フ爲ニハ、今
  日ノヤウナ國策會社ト申シマスカ、國家ノ
  一ツノ機關トシデ集荷配給ノ機構ヲ持チマ
  スコトハ)是ハモウ當然サウ行カナケレバ
  ナラヌノデアリマス、何モ吾々ハ物資別ノ
  國策會社ヲワザ〓〓用ガナイノニ立テテ、
  徒ラニ手數料ヲ殖ヤス、ソンナ考ヘデハ少
  シモ致シテ居ラナイノデアリマス、必要ナ
  物ヲ必要ナ所へ集メルト云フニハ、ドウシ
  テモサウ云ツタヤウナ機構デ行カナケレ
  パ、從來ノ唯生產者ガ集ツテ居ル團體ダケ
  デソレヲ完全ニ遂行シ得ラレルカト云フ
  ト得ラレナイ色々ノ事情ガアリマスカラ、
  今ノヤウナ機構ヲ設ケテ居ルノデアリマス、
  併シソレモ發達過程ニ於ケル色々ノ機構
  ハ、段々トヤハリ生產者ヲ中心ニシ、又消
  費者ノ結付キ等モ考ヘテ段々整理統合ノ方
  向ニ向ツテ居ルト云フコトハ先程モ申上ゲ
  タ通リデアリマス、唯北委員ハ農村ノ事情
  モ非常ニ能ク御分リニナツテ居ラレルノデ
  アリマスガ、本年ノ減產、或ハ此ノ一二年
  ノ減產ハ、サウ云ツタヤウナ機構ガ農村ノ
  生產者ノ生產熱ヲ冷マス爲ニ起ルノダ、詰
  リ離村ナンカモサウ云ツタヤウナコトカラ
  起ルノダト云フ御見透シデアリマスガ、私
  ハソレハ少シ違フノデハナイカ、今日農村
  ハ非常ニヤハリ增產熱ニ燃エテ居リマス、
  昨年ノ如キモ私ハアノ勞力不足ノ農村ガ兎
  モ角國家ノ要請ヲ能ク理解シテ、生產者團
  體ハ生產者團體トシテ出來ルダケノ指導ヲ
  行ヒ、ソシテ農民トモ能ク結付イテ作付ヲ
  シテ吳レタト思ツテ居リマス、デスカラ作
  付面積ハ昨年ハ吾々ガ豫期シタヨリモ非常
  ニ良ク行ツテ居ルノデアリマス、唯其ノ後
  ノ天候ガ御承知ノヤウニ惡イト云フ爲ニ思
  フヤウナ作柄ガ出來ナカツタノデ、其ノ間
  ニ於キマシテモ病害蟲ノ驅除、豫防、又其
  ノ他色々ノ消極的障碍ヲ克服シヨウトスル
  增產熱ト云フモノハ、是ハ私ハ農村ヲ步イ
  テ見マシテ全ク淚グマシイ狀態ヲ見テ來テ
  居ルノデアリマス、農民自體ガ色々ナ今日
  ノ機構カラ來ル不平ニ依ツテ仕事ヲ怠ツテ
  居ルト云フヤウナコトハ絕對ニナイト思ツ
  テ居リマス、國家ノ爲ニ非常ナ熱ヲ以テ農
  民ハ增產ニ進ンデ來テ居ルト私ハ思フ、隨
  テ政府モ出來ルダケ農民ノ爲ニ有利ナ集荷
  機構ナリ配給機構ヲ整備シテ行クト云フコ
  トハ、是ハモウ政府ノ務メデアリマスカラ、
  北委員ノ御述ベノ通リデアリマス、サウ云
  ツタ方向ニ私モ進ンデ行カナケレバナラヌ
  ト思ツテ色々努力シテ居リマス、併シソレ
  ガ今日ノ減產ノ直グ原因デアルト云フ風ニ
  ハ私ハ見テ居ナイノデ、農民自體ハソンナ
  コトニ構ハズ、何デモ宜イカラ國家ノオ役
  ニ立ツ增產ヲシヨウト云フ氣持ニ燃エテ居
  ル、デスカラ此ノ氣持ヲ冷マサセナイヤウ
  ニ國家トシテハ出來ルダケ親切ニ農民ノ爲
  ニ色々ナコトヲ考ヘテ行クト云フコトガ大
  切デアルト思ヒマシテ、色々ノ方面ニ向ツ
  テ制度ナリ或ハ價格問題ナリ其ノ他ノ點ニ
  付テ政府トシテハ出來ルダケノ努力ヲ拂ツ
  テ居ル、斯ウ云フ狀態ト私ハ信ジテ居ルノ
  デアリマス、デアリマスカラ、今度ノ中央
  食糧營團ガ出來マス場合ニ於キマシテモ、
  此ノ食糧營團ト生產者トノ結付キ等ニ付キ
  マシテモ無論十分考慮ヲ加ヘテ參リタイ、
  斯ウ考ヘテ居ルノデアリマシテ、根本理念ニ
  於キマシテハ北委員ト私ハチツトモ違ヒハ
  ナイノデアリマス、唯其ノ一部的ノ見方ニ於
  テ多少違ヒガアルト云フ點ダケヲ申上ゲテ
  置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=17

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• 018・北勝太郎

  ○北(勝)委員　百姓ハサウ云フヤウナコト
  ニ拘ラズニ一生懸命ヤツテ居ルノダ、是ハ實
  際其ノ通リナンデアリマスガ、併シ仕事ハ
  怠ラヌケレドモ制度ガ惡イ爲ニ效果ガ擧ラ
  ナイ、ソシテ農業ガ引合ハヌ、ソレガ爲ニ離農
  スル、斯ウ云フノデアリマシテ、其ノ見方
  ニ付テハ同ジヤウナコトデアルガ、結果ニ
  於テ大變ナ違ヒガアル、ソコデドウシテモ
  是ハ生產本位ナ行キ方ニサセナケレバ駄目
  ダト云フコトヲ申上ゲルノデ、單ニソンナ
  不平デ農民ガ生產ヲ手控ヘルト云フヤウナ
  コトハ斷ジテアリマセヌ、ソンナ日本ノ農
  民デハナイト云フコトハ私モ能ク知ツテ居
  ル、唯結果ニ於テサウ云フヤウナ違ヒガ生
  ズルノダト云フコトヲ此ノ際一ツ申上ゲテ
  置キマス
  其ノ次ハ農地問題デアリマスガ、是ハ生
  產ノ增强ノ上カラ言ヒマシテモ亦或ハ小作
  問題ノ解決ノ點カラシマシテモ出來ルダケ
  早ク、是ハ誰デモ彼デモト言ヒマセヌガ、
  能力ノアル農民ニ對シテハ、之ヲ一日モ早ク
  自作農ニスルコトガ必要ダ、是ハ時代ノ要
  求ナノデアリマシテ、其ノ方法トシテハ色
  色アルケレドモ、私ハ現行ノ自作農創設ノ
  方法ガ一番穩當デアツテ、又效果的ダト考ヘ
  テ、折角農村ニ於テ私ハ之ニ努力シテ居ル
  ノデアリマス、併シ此ノ方法ノ缺陷ト申シ
  マスノハ何處ニアルカト云フト、政府資金
  ガ非常ニ少イ、本當ニ申譯的ナ僅少ナ金額
  シカナイ、其處ニ缺陷ガアルノデアリマス、
  今ヤ日本ハ飛躍的ナ國力伸張ノ時代デアツ
  テ、舊來ノチツポケナ考ヘデ行カウトスル
  コトハ時代ニ合ハナイ、モウサウ云フコト
  ハ〓算シテシマハナケレバナラナイノデア
  リマス、土地問題ハ生產增强ノ本當ノ基礎
  ヲナスモノデアルノミナラズ、殊ニ離農者
  ガ只今簇出シテ居ルト云フヤウナ狀況ニ於
  テ、地主ノ頭モ急激ニ變ツテ來テ居ル、又
  一般ニ離農サセナイ方法ハ土地ヲ持タスニ
  限ルト考ヘテ居ル次第デ、今ハ絕好ノ機會
  デアルト考ヘテ居リマス、ソコデ政府ハ
  此ノ資金ノ不足ニ對シテ、何トカ之ヲモツ
  トモツト大規模ナモノニ變ヘラレル御考ヘ
  ハナイカ、私ハ此ノ際非常ニ大キナ計畫ヲ樹
  テナケレバイカヌト思ツテ居ル、卽チ農地
  金庫等ノ方法ニ依ツテ資金ヲウント充實ス
  ルト云フ行キ方ヲ此ノ際執ラナケレバナラ
  ヌト思フノデアリマス、是ハ洵ニ生產增强
  上ノ極メテ大切ナ問題デアルト思フノデア
  リマシテ、此ノ點ニ關シテ大臣ノ御考ヘヲ
  伺ヒタイト思フノデアリマス、

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• 019・井野碩哉

  ○井野國務大臣　自作農創定ニ付キマシテ
  ハ、私モ北委員ト全ク同ジ考ヘ方デアリマ
  ス、是非サウ云ツタ方向カラ農地問題ヲ解
  決シテ行クコトガ極メテ適切デアルト考ヘ
  テ居ルノデアリマス、唯政府資金ガ非常ニ
  少ナイカラ、自作農ガ出來ナイト云フコト
  ニナリマスト、無論サウ云フ點モ多少アラ
  ウト思ヒマスケレドモ、今日ノ狀態カラ參
  リマスルト、各縣ノ要求ヲ取リマシテ其ノ
  要求ニ應ズル政府資金ハ相當ニ或ル程度出
  テ居リマス、唯實際ノ實行ニ當ツテ農地ガ
  非常ニ高イトカ、又色々ノ事情カラ地主ガ
  土地ヲ手放サナイト云フヤウナ狀態ガ種々
  介在シテ居リマスノデ、サウ云ツタ方面カ
  ラモヤハリ抑ヘテ行カナケレバナラナイト
  云フノデ、先般農地價格統制令デアルトカ
  色々ノ手段ヲ講ジテ居ルノデアリマス、自
  作農創設ハ必ズシモ資金ダケカラ解決シテ
  行ツテハイケナイノデ、色々ナ方面カラ小
  作人ガ農地ヲ持チ易イ方向ニ導イテ參リタ
  イ、斯ウ思ツテ、或ハ荒地ノ開墾ニ付テハ
  自作農創設ヲ優先的ニ認メルトカ、色々ナ
  苦心ヲシテ、自作農創設ヲヤツテ居ル譯デ
  アリマス、デアリマスカラ資金關係ダケヲ
  非常ニ殖ヤシテ解決スルモノナラバ、ソレ
  モ一ツノ方法デアリマスケレドモ、必ズシモ
  今日ノ情勢ハ資金ダケ殖ヤシタノデハ私ハ
  解決出來ナイ、斯ウ思ツテ居リマスノデ、
  凡ユル角度カラ自作農創設ニ對シテハ政府
  トシテモ努力ヲ致シテ參リタイ、斯ウ云フ
  ヤウニ考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 020・北勝太郎

  ○北(勝)委員　實ハ今ノ農林大臣ノ御答辯
  ト云フモノハ是ハ少シ古イ答辯ダト思フ
  最近ノ情勢ト云フモノハサウデハナイ、先
  程モ申シマシタ通リ地主ノ頭モスツカリ變ツ
  テ來テ居ルシ、ソレカラ農村ニ居ル人達モ
  何トカシテ離農ヲ防止スルニハ土地ヲ持タ
  セテ自作農ニサセルヨリ外ハナイト考ヘテ
  熱心ニヤツテ居ルノデアリマスガ、事實ハ
  金ガナイ二三年モ前カラノ分ガマダ創設
  出來ナイ、是ハ事實ナンデス、昨年ノ議會
  デシタカ、石黑前大臣ハソレヲ告白サレタ、
  實際此ノ資金ハ申譯ダケノ金シカナイノダ
  ト言ハレテ居ツタノデアリマシテ、農村ノ人
  人ハ其ノ爲ニ幾ラ申込ンデモサウ云フコト
  ハ急速ニ運バナイノダカラト云フノデ、問
  題ハ促進セズニ居ルノデアリマス、政府ニ
  サウ云フヤウナ御用意ガ出來タト云フコト
  ガ分リマスルナラバ、是ハ大臣ノ御考ヘト
  ハ別ニ、立チ所ニ自作農ニ申込ンデ來ルモノ
  ト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ
  付テハモウ一ツ御再考ヲ願ヒタイモノト思
  フノデアリマス
  次ハ米ノ奬勵金ノコトデアリマスガ、此
  ノ奬勵金ニ付テハ、成ベク生產資金ニ使ハ
  セルト云フ政府ノ親心ニ對シテハ、私共能
  ク了承シテ居ルノデアリマス、併シ東北ト
  カ、北海道ノヤウナ昨年ノヤウニ凶作ニ遭ツ
  タ所ニ對シテマデモ之ヲ堅持サレルノデ非
  常ニ今困ツテ居ル、增產ニ一番大事ナ元手
  ハ身體デアル、自分ノ身體ヲ養フコトガ大
  切デアル、ソコデ農家ノ生活費ト云フモノ
  ガ生產ノ大事ナ要素トナルノデアリマス、サウ
  云フヤウナ關係デ之ヲ斯ウ云フヤウナ場合ニ
  限ツテハ一ツ生活費ニモ充テ得ルヤウニサセ
  ルコトガ必要デアルト思フノデアリマスガ、
  此ノ點ニ關スル政府ノ御考ヘヲ承リタイト
  思ヒマス

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• 021・岸田正記

  ○岸政府委員　只今大臣ニ御尋ネニナリマ
  シタ自作農ノ資金ノ問題デアリマスガ、是ハ
  政府ノ方ガ貸出サウトスル限度ハ四千万圓
  ニナツテ居リマスガ、ソレダケノモノハ資
  金ヲ使ツテ居ナイ、地方ハソレダケ申請シ
  テ來ナイ、所ニ依リマスト縣ノ方デ起債ヲ
  スル方面ノ關係カ、圓滑ニ行カナイ所ガア
  リマス、サウシテ或ハ北君ノ御考ヘニナツ
  テ居ル程進ンデ居ラナイト云フコトガアル
  ダラウト思ヒマス、尙ホ此ノ資金ヲモツト
  圓滑ニ運營スルト云フコトニ付テハ、吾々モ
  〓究シタイト考ヘテ居リマス、自作農ヲ創
  設シテ行クト云フコトガ離農對策トシテモ
  必要デアルシ、增產上モ必要デアルト云フ
  コトハ私共モ考ヘテ居リマス、又其ノ貸付
  限度ニ付テモ、ドノ位ニスレバ宜イカト云
  フヤウナコトニ付テハ、更ニ事態ニ卽シテ
  檢討シテ行カナケレバナラヌト考ヘテ居リ
  マスノデ、其ノ點ハ十分含ンデ檢討致シタ
  イト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=21

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• 022・湯河元威

  ○湯河政府委員　米穀生產奬勵金ノ使途ニ
  付キマシテハ、之ヲ成ベク生產方面ニ、農
  業再生產ニ用フベク指導致シテ居リマスガ、
  併シ凶作其ノ他災害ノ場合ニ於テハ、之ヲ
  生活ニ充テルト云フコトモ已ムヲ得ズト云
  フコトハ、地方ニ其ノ趣旨デ指導シテ居リマ
  スノデ、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=22

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• 023・北勝太郎

  ○北(勝)委員　農地對策トシテ四千万圓ノ
  金ヲ政府ハ持ツテ居ルガ、地方カラノ申請ガ
  少イト云フコトデアリマスガ、併シ此ノ問
  題ニ對シテ眞劍ニ力ヲ御入レニナツタナラ
  バ今議員提出案トシテ色々ナ土地ニ關ス
  ル法律案ガ出テ居リマスガ、是等ハ全部引
  込ムノダト私ハ思フ、ソコデ政府ハ金ダケ
  用意シテ居ルカラソレデ宜イトカ云フヤウ
  ナコトダケデ、ソコニ熱意ガ足ラヌノデハ
  ナイカ、是ハ寧ロ此ノ金ノ方ヲ餘リ殖スノ
  ハ面倒ダカラ、成ベク自作農ノ問題ニ重點
  ヲ置カヌト云ツタヤウナ考ヘガ潜ンデ居ル
  ノデハナカラウカ、ドウモ此ノ農地問題ニ
  對シテハ私ハ齒痒クテナラヌヤウナ感ジ
  ガスルノデアリマスカラ、モツト〓〓力ヲ
  入レテ貰ツテ、サウシテ更ニ此ノ金ノ消化
  ガ十分行カヌト云フノナラバ、其ノ消化ノ出
  來ナイ原因ヲ突止メテ、一ツソレニ對處ス
  ルト云フ所マデ進ムノデナケレバナラヌト
  思フノデアリマシテ、斯ウ云フヤウナ大切
  ナ時代ニ於テハ、一ツ農地問題ニモツト/
  政府デモ力ヲ入レテ貰ハナケレバナラヌト
  思フノデアリマス
  ソレカラ凶作地等ニ於テハ奬勵金ヲ生活
  費ニ充テテモ差支ヘナイト云フ今ノ御答
  ヘヲ得マシテ、私ハ大イニ滿足シマス、ソ
  レハサウナケレバナラヌノデアリマスガ、
  之ヲ聞イク農民ハ大變喜ブダラウト思ヒマ
  ス
  次ニ北海道ノ乳價ノ問題ニ付テデアリマ
  スガ、北海道ノ乳價ハ今尙ホ一升二十四五
  錢ト云フ所ニ置カレテ居リマス、飼料ハ上
  ルシ、勞力ハ不足デアルオマケニ乳價ガ日
  本ニ安イト云フヤウナ譯デ今日家畜ヲ飼養
  スルコトガ出來ズシテ、牛ヲ手離ス形勢ト
  ナツテ來テ居ルノデアリマス、例ノ興
  農公社ハ去年ノ十月ニ乳價ヲ北海道ハ
  冬乳ヲ三十二錢トスル、夏乳ハ二十八
  錢ニ引上ゲルト云フコトヲ會議ヲ開イテ
  態〓言明シ、或ハ又新聞紙上ニモ現ハレタ
  ノデアリマス、サウシナケレバアノ秋ニ掛
  ル頃ニナツテ農家ハ皆牛ヲ賣拂フト云フ虞
  ガアツタノデ、斯ウ云フコトヲ言明シタノ
  デアラウト思フノデアリマス、所が其ノ後
  一向此ノ言明ガ實際ニ行ハレナイ、今日依然
  トシテ二十四五錢ノ乳價デヤツテ居ルノデ
  アリマス、聞ク所ニ依リマスト、興農公社
  ハ製品ノ値段ヲ上ゲロ、製品ノ値段ヲ上ゲ
  タナラバ、此ノ乳價ハ三十二錢ト二十八錢ニ
  スルノダ、斯ウ言ツテ居ルト云フ話デアリ
  マスガ、是ハドツチガ本営ロデアルカ、私ハ之
  ヲ此ノ際伺ツテ置キタイノデアリマス、政
  府ガ此ノ乳價ヲ上ゲルコトヲ許サヌノガ本
  當デアルカ、或ハ製品ノ價格ヲ上ゲヌ爲ニ、
  ソレヲ口實ニ、乳價ヲ上ゲテモ宜イノダケ
  レドモ、興農會社ガ上ゲヌノデアルカ、之ヲ
  一ツハツキリ伺ツテ置キタイノデアリマス、由
  來興農公社ハ北海道ノ酪聯ト明治、森永、極
  東是等ノ煉乳會社ガ所謂ノ企業合同ノ趣旨
  ニ依ツテ昨年合併シタノデアリマス、此ノ合
  併ニ際シテ各〓會社ノ資產ヲ物價騰貴ノ今
  日ノ現在ノ價格デ評價シタ、而シテ合併前
  ノ資產ノ約四倍ニ見積ツテシマツタノデア
  リマス、卽チ非常ニ水膨レノ資本ニシタ、而モ
  此ノ水膨レ資本ニ對シテ年六分ノ配當ヲ保
  證シタノデアリマス、ダカラ合併前カラス
  ルナラバ二割四分ノ配営ヲスルト云フコト
  ニナルノデアリマシテ、此ノ犠牲ハ必ズヤ
  農家ノ方へ來ルダラウト合併ニ當ツテ私共
  ハ考ヘテ居ツタノデアリマスガ、果セル哉
  サウ云フ工合ニナツテ來ツツアルヤウデア
  リマス、公社ハ乳價ヲ日本一ニ安クシテ居
  ル、サウシテ自分ハ多大ノ利益ヲ上ゲナガ
  ラ未ダ足ラヌトシテ會社ノ利益バカリ考へ
  テ、サウシテ乳價ノ値上ヲ聲明シナガラモ
  之ヲ其ノ儘ニ放ツテ置ク、ソコデ農民達ハ
  コンナ位ナラ早ク牛ヲ賣ルノダツタト云フ
  譯デ、マルデ是ハ詐欺ニ掛ツタヤウナ感ジ
  デ居ルノデアリマス、ドウシテモ乳製品ノ
  値ガ上ガラナケレバ乳價ノ方ヲ上ゲヌト云
  フヤウナ考ヘデ、乳價問題ニ對シテハ恐ラ
  ク積極的ニ動イテ居ラヌ、政府ハ乳價ヲ上
  ゲサシタイト思フナラバ、乳製品ノ値ヲ上
  ゲロ、斯ウ云フヤウナ態度デハナイカト私
  ハ思フノデアリマス、サウ云フ工合デ牛ガ
  ドン〓〓減ツテ行ツタノデアリマシテ、先
  程農林大臣ハ內地ノ牛ハ減ラヌト言ハレタ
  ガ、ソレハサウデセウ、ケレドモ北海道ノ
  牛ノ激減振リト云フモノハ實ニ甚ダシイノ
  デアリマシテ、吾々ノ附近デハ殆ド牛ハ影
  ヲ潛メテシマツタ、私ノ居リマス所ハ元森
  永煉乳會社ノアツタ所デアリマシテ、可ナ
  リ大キナ工場ガ立ツテ居リ、百石以上ノ牛
  乳ヲ捌イテ居ツタノデアリマス、ソレガ最
  近ニナリマシテハ十石モアリハセヌ、割
  シカナイノニ一方デハ農家ハ牛ヲドン〓〓
  賣ツテシマフト云フヤウナ狀況ニナツテ居
  ルノデアリマス、此ノ北海道ノ乳牛ノ如キ
  ハ何十年間苦心ノ結果、アア云フ優良ノ
  改良牛ヲ作リ上ゲタノデアル、又同時ニ數
  モ殖エテ來タノデアリマスガ、此ノ貴重ナ
  ル乳牛ヲ一朝ニシテ失フコトハ、是ハ洵ニ
  困ツタコトデアリマシテ、牛ハ一朝一夕ニ
  之ヲ殖ヤス譯ニハ行カヌ、鷄ヤ兎トハ違フ
  ノデアリマシテ、是ガ復活ニハ又何十年ト
  掛ルノデアリマス、之ヲ今減スト云フコト
  ハ大イニ國家ノ爲メ誠ニ採ラザル處デアリ
  マシテ、殊ニ目ノ前ニ控エテ居ルコトハ所
  謂大陸經營デアリ、或ハ南方共榮圈ノ乳製品
  ノ供出責任ハ日本ニ在ルト云フコトニナツ
  テ來ルノデアリマシテ、其ノ原料ノ基礎デ
  アル所ノ乳牛ヲ失フト云フコトハ、是ハ實
  ニ大キナ國家トシテノ損失デアリマシテ、
  而モ少々ノ年限デ之ヲ取返スコトガ出來ナ
  イノデアリマスカラ、ソコデ一ツ當局ハ我
  ガ國ノ乳牛ノ優秀ナル產地デアリ、又牛乳
  ノ非常ニ大キナ產地デアル所ノ北海道ノ乳
  價ノ値上ニ付テハドウ云フ御考ヘヲ持ツ
  テ居ラレルカト云フコトヲ承ハリタイト思
  フノデアリマズ

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• 024・岸田正記

  ○岸政府委員　北海道ノ乳價ノ問題ハ色々
  他ノ地方ノ乳價トノ關係モ考ヘラレテ今マ
  デ決メラレテ居ツタノデアリマスガ、生產
  費ガ掛ルト云フコトヲヤハリ考慮シテ價格
  ヲ決メナケレバナラヌコトハ當然デス、隨テ
  最近ノ色々ノ事情カラ北海道ノ生產費ガ高
  クナツテ居ルコトハ能ク分ツテ居リマスノ
  デ、此ノ値上ノ問題ハ一應サウ云フ風ナ方
  向デ〓究ヲシテ居リマス、尙ホ先程モ御話
  ガアツタヤウニ、之ヲ上ゲレバ必ズ製品ニ
  響クカラ、製品ノ價格モ同時ニ考慮シナケ
  レバナラヌ、製品ノ價格ヲ考慮スルト云フ
  コトニナリマスト、全體ノ製品ノコトニ付
  テ其ノ振合ヲ考ヘテ來ナケレバナラヌ、斯
  ウ云フヤウナ關係ガアリマスカラ、愼重ニ
  〓究ヲシテ居ル狀態デゴザイマス
  尙ホ牛ノ增殖ト乳製品ノ問題ハ、是ハ御
  話ノ通リデアリマシテ、吾々トシテモ凡ユ
  ル努力ヲシテ乳牛ノ確保ヲ圖リ、南方ニ對ス
  ル事態ニ卽應スルヤウニ處置シナケレバイ
  カヌ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=24

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• 025・北勝太郎

  ○北(勝)委員　政府ハ北海道ノ乳價ニ付テ
  必要ヲ認メテ愼重ニ考へテ居ルト言ハレル
  ガ、考ヘテ居ル中ニ牛ハ無クナツテシマフ
  デアラウ、サウ云フヤウナ間ノ拔ケタコト
  デハイカヌノデアリマシテ、ソレダケ必要
  ヲ認メラレタナラバ直チニ之ヲ實行シテ、
  一日モ早ク牛ガ減ラヌヤウニスルコトガ必
  要ダト思フ、ソレカラ興農公社ト云フノハ
  是ハ相當ニ儲ケテ居ルフデアリマシテ、其
  ノ內容ハ岸農政局長ハ能ク御存ジダト私ハ
  思フ、而モ二割四分ノ配當ヲシヨウトシテ
  居ル、資本ノ合同ニ當ツテ、資本ノ水膨レ
  ヲシテソレニ對シテ年六分ノ配當ヲスル、
  卽チ四倍ニ資本ヲ水膨ニシタカラ二割四分
  ノ配當デアリマスガ、之レハ巧ミナ配當制
  限令ノ下ヲ潜ツテ居ルノデアリマス、斯ウ
  云フコトハ私ハ許サレナイト思フ、此ノヤウ
  ナコトハ斷ジテ許スベキモノヂヤナイト思
  フノデアリマシテ、是ハ所謂配當制限ノ趣
  旨ニ反スルモノデアル、合法的ニ配當制限
  ヲ免レルヤウナコトヲシテ居ルノニ、コン
  ナコトヲ政府ハ認メテハ大變デアル、サウ
  シテ局長ハ乳價ヲ上ゲレバ必ズ乳製品ノ價格
  ニ響キガ來ルト云フヤウナコトヲ考ヘテ居
  ルコトハ大變ナ間違ヒデアル、先ヅ此ノ配
  當ヲ制限シテサウシテ乳價ヲ上ゲテ、而モ
  ソレデ尙ホ足ラザル時ニ、初メテ乳製品ノ
  價格ヲ上ゲルト云フコトガ順序デアルト思
  フ、ソレヲ乳製品ヲ上ゲナケレバ乳價ヲ上
  ラレヌト政府モ考へ、興農公社モソンナ態度
  ヲ執ツテ居ルカラ北海道ノ牛ハ段々減ツテ
  來ル譯デアリマシテ、是ハ急速ニ解決ヲ付
  ケナクテハナラヌ問題デアルト思フノデア
  リマス、モウ一度農政局長ノ御意見ヲ承ハ
  ツテ見タイト思ヒマス

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• 026・岸田正記

  ○岸政府委員　私申上ゲタノモ決シテ愚圖
  愚圖シテ居ルト云フ意味デハアリマセヌ、
  先程申上ゲタヤウニ愼重ニ調ベテ居ルト云
  フノデアリマス、ソレカラ興農公社ノ關係
  ハ是ハ北海道廳ガ直接監督サレテ居ルノ
  デスカラ、私共其ノ內容ニ向ツテ立入ルコ
  トハ致シマセヌガ、併シ今仰シヤツタヤウ
  ナコトニ付テハ十分考慮シテ、サウ云フコ
  トハ決メナケレバイカヌダラウト思ツテ居
  リマス

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• 027・北勝太郎

  ○北(勝)委員　商工省ノ方ガオイデニナツ
  テ居リマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=27

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• 028・三善信房

  ○三善委員長　商工省ノ纖維局長ハ今外ノ
  方ニ會議ノ爲ニ出掛ケテ居リマスカラ、今
  事務官ヲ呼ンデ居リマスガ、事務官ガ或ハ
  アナタノ質疑ノ時間中ニ出席出來ヌカモ知
  レマセヌ

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• 029・北勝太郎

  ○北(勝)委員　ソレデハモウ一ツ農林省關
  係デ伺ツテ置キマス、政府ハ農村ニ對シテ
  菓子ノ配給ヲシテ居ラレルノデアリマスガ、
  是ハ惡イコトデハナイト思フノデアリマス、
  北海道デハ一人當リ三十錢ヅツノ菓子ヲ配
  給シテ居ルノデアリマスガ、併シ是ハ全ク
  不經濟ナ行キ方デアリマス、少クトモ農村
  ニ對シテハコンナ行キ方ヲスベキデハナイト
  思フノデアリマス、農家ハ色々ノ材料ヲ持
  ツテ居ルノデアリマシテ、之ニ少シ砂糖ヲ
  加ヘサヘスレバ立派ナ子供ノオ八ツニナリ、
  或ハ菓子材料ニナルノデアリマス、而モ何
  等手數ナシニ大事ナ菓子ノ材料デアル小麥
  粉或ハ其ノ他ノ製菓原料ヲ使ハズニヤツテ
  行クコトガ出來ルノデアリマスガ、サウス
  ルナラソレダケ小麥粉其ノ他ノモノガ浮イ
  テ來ル、菓子ニ與ヘルダケノ砂糖分ヲ砂糖
  ノ儘デ所謂單味配給ヲサレルコトガ極メテ
  私ハ適切ダト思フノデアリマス、是ハ單ニ
  私ノ獨斷デハナイノデアリマシテ、農村ノ
  一般ノ聲デアリマス、政府ハ之ニ對シテ速
  カニ一ツ何等カノ方法ヲ執ツテ、サウシテ
  菓子ニシナイデ、砂糖デ配給スルト云フコ
  トニサレタラドウデスカ、人手ノ非常ニ足
  ラヌ今日ワザ〓〓菓子ニスル爲メ職工ガ大
  分要ルガ、而モ與ヘラレルモノハ配給デス
  カラ必ズシモ嗜好ニ合ハナイモノガ來ルノ
  デアリマシテ、農村デハ全ク是ハ有難迷惑
  ト云ツテモ宜イ位ダト思フノデアリマス、
  サリトテ砂糖分ガナクテ宜イカト云フト、
  人間トシテノ最小限ノ砂糖分ガ要ルノデア
  リマスカラ、是ハ手數ノ掛ラナイ砂糖ノ儘
  デ配給サレルコトガ一擧兩得ダト思フノデ
  アリマスガ、之ニ對スル御考ヘヲ承リタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=29

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• 030・辻太郎

  ○辻政府委員　菓子ノ配給ニ付テノ御尋ネ
  デアリマスガ、御承知ノ通リ砂糖ノ全體ノ
  配給數量ガ非常ニ激減シテ居ル、ソレノ配
  給ニ付テ大體申シマスト、家庭用トシテ配
  ル外ニ菓子等ノ大口ノ加工原料用トシテ配
  ル、其ノ外ニモウ一ツ是ハ各府縣ニ對シテ
  各府縣ノ實情ニ依ツテ所謂府縣小口用トシ
  テ配給スルト云フコトヲヤツテ居リマス、
  御指摘ノヤウニ菓子ノ配給モ色々ヤツテ居
  ルノデアリマスガ、中々菓子ノ種類ガ多イ
  トカ、生產ノ過程ガ複雜デアルトカ云フコ
  トカラ致シマシテ非常ナ困難ヲ嘗メテ居ル
  ノデアリマス、農村ニ對スル菓子ノ配給ハ
  寧ロ原料トシテ配ツタラドウカト云フ點ニ
  付キマシテモ、是ハ只今申シマシタ所謂府
  縣小口用トシテ配給スルモノノ中ニ合セテ
  考慮シテ、縣廳ニ於キマシテ管內ノ實情ニ
  應ジテ、農村等ニ對シテハ一般ノ家庭用ノ
  配給ノ外ニ、府縣小口用トシテノ配給ヲ受
  ケテ、農村ノ實情ニ應ジテ考ヘテ行クト云フ
  ヤウナコトモ考ヘテ見タラドウカト云フヤ
  ウナ考ヘヲ實ハ持ツテ居ルノデアリマスガ、
  尙ホ十分ニ檢討シテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=30

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• 031・北勝太郎

  ○北(勝)委員　私ハ纖維製品ノ問題、所謂
  衣料切符ノ問題デ御伺ヒシタイ、是ハ農林
  省トモ關聯ヲ持ツ問題ナノデアリマシテ、
  商工省ノ方ハ來テ居ラレヌヤウデアリマス
  ガ、一ツ能ク商工省ノ方ト農林省ト打合セ
  ヲシテ適當ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス
  此ノ衣料切符ハ最近行ハレルコトニナツ
  タガ、都會ガ百點、農村ガ八十點、此ノ差
  別待遇ノ理由ガ私ニハドウシテモ分ラナイ
  ノデアリマス、働ク者ハ働カヌ者ヨリ着物
  ノ傷ミガ多イ、卽チ働クコトニ比例シテ着
  物ガ傷ム、是ハ當然デアリマス、又荒仕事
  ヲスル者ハ荒仕事ヲシナイ者ヨリモ着物ガ
  傷ム、是モ當然デアリマス、ソコデ農村ノ
  者ハ働ク量ガ非常ニ多イ、或ハ又荒仕事ヲ
  非常ニシナケレバナラヌト云フヤウナ關係
  デ、寧ロ農村ニ衣料切符ノ點數ガ多ク來ナ
  クテハナラヌ筈ダト思ヒマス、而モ非常ニ
  汗ニ塗レテ仕事ヲスルノデアリマシテ、如
  何ニ農家ト雖モ洗濯セズニ着物ヲ著ル譯ニ
  イカタ、汗ガ付ケバ汗ガ付クダケ洗濯ヲス
  ル、洗濯スレバ品物ハ持タナイト云フヤウ
  ナコトニナツテ來ルノデアリマシテ、汗仕
  事ヲスル者ニ對スル特別ノ考慮ガ茲ニ出テ
  來ナケレバナラヌト思フノデアリマス、ソ
  コデ私ガ伺ヒタイノハ、作業衣ハ衣料切符
  ノ點數外ダト云フコトヲ言ハレテ居ルノデ
  アリマスガ、果シテソレニ間違ヒハナイカ
  ドウカ、又作業衣ト云フモノノ範圍ハ何處
  マデガ作業衣デアルカ、單ニ今マデ名稱ヲ
  付ケラレテ居ル所ノ上ニ着ル物、又上ニ穿
  ク物、是ダケガ作業衣ダト云フノデハ、是
  ハ意義ヲナサヌノデアリマシテ、少クトモ
  「シヤツ」トカ「ズボン」下トカ、斯ウ云フヤ
  ウナモノハ作業衣トシテ認メナケレバナラ
  ヌノデアリマス、或ハ暑イ地方デハ上着ダ
  ケデ働ケルカモ知ラヌガ、北海道、樺太デ上
  着ダケデヤツタノデハ直グニ凍ツテ死ンデ
  シマフノデアリマス、ソコデ作業衣ノ中ニ
  ハサウ云フモノガ入ルノカドウカ、更ニ寒地
  ト暖地トノ差ニ付テモ、衣料切符ニ何カ差
  ガ出テ來ナクチヤナラヌ筈ダト思フ、暖地
  デハ「シヤツ」ハ一枚デ通セルデセウガ寒地
  デハ二枚モ着ナケレバナラヌ、二枚ノ上ニ
  更ニ「セーター」ヲ着ナケレバイカヌ、所謂
  「シヤツ」ニ類シタモノヲ三枚着ナケレバナ
  ラヌ、其ノ上ニ作業衣ヲ着テ、辛ウジテ寒
  サヲ凌グト云フ狀況デアリマス、屋內デ働
  ク人ト違ツテ、屋外デ働ク農業者ハ、實、
  着物ノ用意ガ常ニ餘計要ルノデアリマシテ、
  寒地ノ農民ニ於テハ殊ニサウデアリマス、
  ソコデ斯ウ云フ樺太トカ、北海道トカト云
  フヤウナ酷寒ノ地方ノ者ニ對シテ、何カ特
  別ナ方法ガ考ヘラレテ居ルノデアルカドウ
  カ、又農林省トシテモ、所謂農業勞働、或
  ハ農業者ノ厚生上ノ關係カラ見テ、サウ云
  フコトハ當然要求スベキデアル、商工省ガ
  決メタノダカラソレデ宜イトシテ置クベキ
  モノデハナイノデアリマシテ、是ハ當然要求
  スベキデアル、サウシテ農業者ガドン〓〓
  活動ガ出來ルヤウニシナケレバナラヌト思
  フノデアリマス、實ハ私ハ此ノ間點數表ガ出
  テ居リマシタカラ、調べテ見マスト云フト、
  ドンナコトヲシテモ、如何ニ繼ギハギシテ
  ヤリマシテモ、寒地デハアノ點數デハ凌グ方
  法ハアリマセヌ、更ニモウ一ツ考ヘテ貰ハナケ
  レバナラヌコトハ、絹地ガ四分ノ一デアル、
  百姓ハ絹地ハ一ツモ當リマセヌ、內地ノ農
  家ナラドウカ知リマセヌガ、北海道ノ農家ハ
  絹物ハ一ツモ當ルモノデハナイノデアリマ
  ス、又絹物ハ百姓ノ仕事ヲスルノニ適當デア
  ルカドウカト云フコトモ吾々ハ考ヘテ見ナ
  §
  ケレバナラヌト思フノデアリマス、サウス
  ルト、絹物以外ノモノデ點數ヲ減ズル方法
  ハナイ、オマケニ農村ノ商店等ニ現在保有
  サレテ居ル所ノ品物ハドウデアルカト云フ
  ト、經濟的ニ貧弱ナ人達ヲ相手デアリマス
  カラ、非常ニ値段ノ安イ品デアル、所謂都
  會デドウシテモ賣レナイ粗惡ナ「スフ」製品ガ
  農村ニ先ニ廻ツテ來ル、此ノ間、私ノ隣家
  ノ子供ノコトヲ聞イタノデアリマスガ、ソ
  レハ五日ニ一足ヅツ足袋ガ要ル、ソンナ馬
  鹿ナコトハアルマイト思ツテ、見テミルト
  果セル哉、サウ云フ弱イモノデアル、穿ケル
  モノデハナイ、サウ云フモノガ農村ニ多ク
  廻ツテ居ル、商店等ニ於テハ、此ノ手持品ヲ
  賣ツテシマフマデハ恐ラク次ノ仕入ハシマ
  セヌ、サウ云フ粗惡品デモ點數ハ同ジナンデ
  アリマスカラ、サウナルト、是ハ農村人ノ生
  キテ行ク道ガナイト云フコトニナルノデア
  リマスガ、此ノ過渡期ニ於ケル農村ノ實情、
  商店ノ保有シテ居ル所ノ衣料ノ實情等ニ鑑
  ミテ、之ヲ緩和スル適當ナ方策ヲ農林省トシ
  テハ立テサセナケレバナラヌダラウト思フ
  ノデアリマスガ、之ニ對スル御意見ヲ承リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=31

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• 032・三浦一雄

  ○三浦(一)政府委員　私ノ關係シテ居ル點ニ
  付キマシテ御說明申上ゲマス、衣料切符制
  ガ行ハレルコトニナツタノデアリマスガ、御
  說ノ通リ、農村ノ事情ヲ篤ト考慮シテ戴ク
  ヤウニ數次ノ折衝ヲシテ居リマス、但シ點
  數デ以テ百點ト八十點ト云フノデハ非常ニ
  不合理デハナイカト云フ御指摘ガアリマシ
  タガ、是ハ農村ノ消費量ノ實際ヲ見マセヌ
  トヤハリ單ナル點數ノ不平等ト云フダケ
  デハ行カナイト吾々モ思ツテ居リマス、ソ
  レカラ、農村ノ方面ヲ特ニ考慮シテ吳レト
  云フ點ハ、御說ノ通リ作業衣、特免品ハ除外
  サレテ居リマス、隨テ問題ハ、作業衣、特免
  品等ヲ增加シマシテ、之ヲ豊富ニ供給スル
  ト云フコトデアリマシテ、是ハ吾々ノ念願
  デアリマス、但シ御承知ノ通リ、纖維資源
  ハ共榮圈內デモ相當ニ窮屈デアリマスシ、
  數年來、特ニ農村方面ニ對シマシテ特免品
  ノ供給等ノ不十分デアル點ハ、吾々トシテ
  モ非常ニ遺憾デアリマスカラ、作業衣等ニ
  使ハレル特免品ノ增加ニ付キマシテハ商
  工省トモ協力致シマシテ、今後出來ルダケ增
  加ト云フコトニ進ンデ行キタイト思ツテ居
  リマス、寒暖地間ノ差異、屋內、屋外作業
  ノ差異、其ノ他絹地ニ亙ツテノ、衣料切符
  ノ運用ニ付テノ御指摘デアリマシタガ、是
  ハ不確實ナコトヲ申上ゲテハ甚ダ恐縮デア
  リマスカラ、商工省當局ト篤ト連絡致シマシ
  テ、次ノ機會ニ御說明申上ゲタイト思ヒマ
  スカラ、左樣御諒承願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=32

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• 033・北勝太郎

  ○北(勝)委員　農業保險ノコトデ一ツ伺ツ
  テ見タイノデアリマス、農業災害ト云フ
  モノハ、日本ノ南カラ北ニ亙ル長イ地域
  ニ於テハ、所ニ依ツテ非常ニ多ク災害ヲ
  受ケル所ト、少ク災害ヲ受ケル所トガ出テ
  來ルノデアリマス、ソレガ爲ニ、屢〓災害
  ヲ受ケ易イ場所ニ居ル者ハ、非常ニ農家經
  營ガ不安定ニナルノデアリマス、ソコデ、サ
  ウ云フコトヲ防グ爲ニ農業保險ヲ用ヒナケ
  レバナラヌト思フニモ拘ラズ、此ノ保險組
  合ノ地域ガ非常ニ狹イ、ソレガ爲ニ、災害ノ
  頻發スル地方デハ保險料ガ高過ギテ、ドウス
  ルコトモ出來ナイ、又水害、冷害、旱害等、非
  常ニ廣イ範圍ニ亙ツテ災害ヲ受ケタ場合ニ
  ハ、極メテ微溫的ナ保險料シカ貰ヘナイト
  云フコトニナルノデアリマシテ、是デハ漸
  ク農業保險ノ制度ヲ布イタケレドモ、役ニ
  立タヌ、保險事務ニ非常ナ手數ダケヲ掛ケ
  テ實際的效果ガナイト云フコトニナルノ
  デアリマス、是ハ私ハドウシテモ全國的ナ
  モノニシナクチヤナラヌト思フノデアリマ
  ス、ソレニハ、例ヘバ米デアルナラバ、米ノ價
  格ヲ決定スル時ニ、斯ウ云フヤウナ災害率
  ニ對スル一ツノ保險率ヲ定メテ、サウシテ
  其ノ保險料ヲ生產費ノ中ニ盛リ込ンデシマ
  ウ、所謂生產費ノ中ニ保險料ガ包マレルト
  云フコトハ是ハ當然ナコトデアリマス、
  サウ云フ工合ニシテ、ソレヲ差引イテ、
  農業者ニ米代ヲ支拂フト云フヤウナ方法ニ
  依ツテ、保險料ヲ生ミ出スコトヲ考ヘル、
  其ノ保險料ヲ基礎トシテ再保險料ヲ定メ政
  府ガ非常ニ大キイ額ノ保險料支拂資金ヲ作
  ツテ行クナラバ、大地域ニ亙ル災害ノ場合
  ニ於テモ、十分ノ保險金ノ支拂ヲシテヤル
  コトガ出來ル、或ハ又屢〓≧、災害ヲ受ケル方面
  ニ對シテモ、是モ適當ナ救濟ヲシテヤルコ
  トガ出來ル、イヤ冷害ハ入レマセヌノ、或ハ
  稻熱病ハ入レマセヌノト、ソンナ詰ラヌコ
  トハ言ハナクテモ凡テヲ包含シテ立派ニ農業
  保險ノ目的ヲ達シ得ルト思フノデアリマス、
  唯之ヲ一遍農家ニ與ヘタ金カラ取ラウトス
  ルカラ面倒ニナルノデアリマシテ、之レヲ
  直チニ與ヘズニ農業團體等ニ蓄積サセル、
  其內カラ全國的ノ保險料ハ幾ラト云フ具合
  ニシテ蓄積サセル、其ノ蓄積サセタ分ヲ全國
  的ニ纏メタモノデ保險事業ヲヤルト云フ風
  ニスルナラバ、本當ノ農業保險ノ目的ヲ達
  シ得ル、日本ノヤウナ細長イ地形ノ所ニ於
  テハ、斯ウ云フ保險制度デナケレバ役ニ立
  タヌト思フノデアリマス、近ク農業保險ノ
  制度ニ付テモ色々改正スベク考慮中ト云フ
  コトヲ聽クノデアリマスガ、此ノ點ニ關シ
  テ私ハ是非斯ウ云フコトヲ御採用ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス、サウナレバ農家ハ
  保險料ヲ別ニ直接納メルノデハナイ、生產
  費ノ中ニ保險料ヲ政府ガ組入レテアルソレ
  ガ米價トナツテ居ルノデアリマスカラ、隨
  テ其ノ保險料分ヲ天引シタ殘額ヲ貰フコト
  ガ當然ダト云フコトニナツテ、全國的ニ此
  ノ保險ガ巧ク行クト思フノデアリマス、此
  ノ點ニ關シテ何カサウ云フヤウナ御考ヘガ
  アリマシタラ此ノ際御發表ヲ願ヒタイト思
  ヒマス

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• 034・三浦一雄

  ○三浦(一)政府委員　今北サンカラ農業保
  險ニ付テノ非常ニ示唆ニ富ンダ御意見ガア
  ツタノデアリマスガ、其ノ內保險ノ施行地
  域ヲ廣汎ニシテ參ルト云フコトハ、是ハ保
  險ノ理論カラ言ヒマシテモ、又事業ヲ營ム
  實際ノ上カラ言ヒマシテモ御說ノ通リデ
  アリマシテ、逐次其ノ方向ニ參リタイト思
  ヒマス、唯之ヲ一擧ニ法律デ强制スルト云
  フ譯ニモ行キマセヌノデ、逐次組合ノ設置
  地ヲ擴大シテ參リマシテ、段々擴ガツテ參
  ツテ居ルノデアリマスガ、其ノ線ニ沿ウテ
  施行地域ヲ擴大シテ參リタイト思ヒマス、
  同時ニ施行地域ガ擴大シテ參リマシタナラ
  バ、其ノ地域內ニ於ケル災害ノ程度、卽チ
  危險率ノ測定ヲ精密ニシテ行クヤウニ進ン
  デ參リタイト思フノデアリマシテ、此ク點
  モ御說ノ通リ段々改善シテ參リタイト思ヒ
  マス、ソレカラ保險料ヲ一旦收メタ農民ノ
  收入カラ出スト云フコトデハ中々容易デナ
  イカラ、寧ロ米價ニ保險料ヲ組入レテ、サ
  ウシテ其ノ際ニ控除シテ之ヲ保險料ニ充テ
  ル方法ハドウカト云フ點デアリマス、是一
  私達御意見ヲ聽キマシテ、非常ニ農村ノ事
  情ニ適シタコトデハナイカト實ハ思フノデ
  アリマス、殊ニ今日ハ米ハ全部買上ゲルノデ
  アリマスカラ、此ノ制度ハ容易ニ實行シ得
  ルノデハナイカト思ヒマス、併シ諸般ノ點
  モ考慮シナケレバナリマセヌガ、農業保險
  發展ノ爲ニ寄與スルト云フコトデアリマス
  レバ、是非トモ是ハ具體的ニ考究シテ見タ
  イト思ヒマス、尙ホ冷害ノ點ニモ一寸觸レ
  ラレタノデアリマスガ、現在ノ農業保險ニ
  付キマシテ一番問題ニナリマス東北、北海
  道ノ冷害ニ付テ何等施設ガナイト云フコト
  デアリマスガ、來年度カラハ特ニ冷害共濟
  事業ヲヤツテ、其ノ共濟金ノ不足ノ場合ニ
  ハ政府ノ助成竝ニ其ノ借入金ニ對スル利子
  補給等ニ付キマシテ、豫算外國庫ノ負擔ノ
  契約ニ依リマシテ政府カラ相當助成シ得ル
  途ヲ開キマシタカラ、今度ハ冷害ニ付キマ
  シテモ兎ニ角共濟制度ヲ進メ得ルコトニ一
  步進メタノデアリマス、此ノ點モ斯ウ云フ
  時局多端ノ際ニ色々議論モアリマシタケレ
  ドモ、當該地方ノ農業經營ヲ改善シテ參リ、
  農村ノ民心ヲ昂揚サセルト云フコトニモ役
  立チタイト思ヒマシテ施設致シタ次第デア
  リマス、今後此ノ方面ニ付キマシテモ擴充
  ヲシテ參リタイ、此ノ點モ併セテ御諒承ヲ
  願ヒマス

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• 035・三善信房

  ○三善委員長　午後ハ一時カラ會議ヲ開ク
  コトニ致シマシテ、午前ハ是デ休憩致シマ
  ス
  午後零時五分休憩
  午後一時十五分開議

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• 036・濱地文平

  ○濱地委員長代理　午前中ニ引續キマシテ
  委員會ヲ開キマス-森幸太郞君

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• 037・森幸太郎

  ○森(幸)委員　最初ニ當リマシテ法文ニ付テ
  二、三ハツキリ致シテ置キタイノデアリマス、
  法文ノ第八條ニ受檢ノ義務ガハツキリシテ
  居ルノデアリマスガ、此ノ第八條ノ法文カ
  ラ見マスルト「第三條第一項ノ者ハ同項ノ規
  定ニ依リ其ノ者ガ政府ニ賣渡スベキ米麥ニ
  付勅令ノ定ムル所ニ依リ檢査ヲ受クベシ」斯
  ウ云フ風ニ規定サレテアリマシテ、第三條
  ハ「生產者又ハ土地ニ付權利ヲ有シ小作料ト
  シテ之ヲ受クル者」卽チ地主デアリマスガ、
  小作者又ハ小作料ヲ取ル所ノ地主ハ命令ヲ
  以テ定ムルモノヲ政府ニ賣渡スベシ、此ノ
  第三條ノ規定ニ依ツテ第八條ノ檢査ヲ受ク
  ベク更ニ規定サレテ居ルノデアリマスガ、
  從來此ノ土地ニ付キ權利ヲ有シテ小作料ヲ
  取ツテ居リマスル者ニハ生產者ガ定メラレ
  タル檢査ヲ受ケテ小作米トシテ納入スルコ
  トニナツテ居ルノデアリマス、此ノ法案ニ
  依リマシテモ、左樣ニナルトハ存ジマスル
  ガ、少シク檢査ヲ受ケル義務者ガハツキリ
  シナイヤウニ考ヘマスノデ、此ノ點ヲ承リ
  タイト思フノデアリマス
  ソレカラ第十七條ノ出資者ノ資格制限デ
  アリマス、「定款ヲ以テ出資者ノ資格ヲ制限
  スルコトヲ得」ト云フコトニナツテ居リマス
  ガ、是ハドウ云フ風ナ方針ニ依ツテ資格ヲ
  制限セラレルカ、其ノ範圍ヲ承リタイノデ
  アリマス、ソレト同時ニ中央營團及ビ地方
  營團ノ組織ノ內容竝ニ是等ノ地方營團ノ資
  本金ハドレ位ノ程度ニ考ヘテ居ラレルカ、
  此ノ點ヲ先ヅ第一ニ承リタイノデアリマス

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• 038・湯河元威

  ○湯河政府委員　第一ニ御尋ネガゴザイマ
  シタ檢査ノ義務者ノ問題デゴザイマスガ、
  是ハ命令ヲ以チマシテ色々細カク規定シテ
  參リタイト思フノデアリマス、原則的ニ申
  シマスルナラバ米ヲ政府ニ賣ル義務ヲ負ツ
  テ居リマスル第三條ニ規定シテ居リマスル
  者ガ此ノ檢査ヲ受ケル義務ガアリマス、唯
  問題ニナリマスノハ地主小作ノ關係ニ於
  テ、地主ガ義務ガアルカ小作人ガ義務ガア
  ルカト云フコトデゴザイマスガ、是ハ實ハ
  從來ノ例モゴザイマシテ、檢査ヲ受ケル負
  擔ガ何レニ歸屬スルカ、是ハ地主小作人間
  ノ小作契約ノ條件ニモ關係スルコトト思フ
  ノデアリマスガ、從來カラ申シマスト米ヲ
  改良シテ俵裝等ヲ良クシテ出スト云フコト
  ハ米ガ高ク賣レルノデアルカラ、其ノ檢査
  料ノ負擔ハ地主ガ之ヲナスベキデアルト云
  フ建前ヲ取ツテ居リマス、若シ地主ガ之ヲ
  ナサヌ時ニ於テハ必ズシモ小作人ガ檢査ヲ
  强制サレナイト云フ建前ヲ取ツテ居リマス、
  法律ニ於キマシテハ是ハ兩者共ニ檢査ノ義
  務ガアルコトニナツテ居リマスガ、從來ノ
  慣行等モ十分ニ斟酌致シマシテ、所謂奬勵
  金穀ニ依リマシテ必ズシモ小作人ニ無理ナ
  檢査ヲ受ケルノ義務ヲ殘シテ行クコトヲシ
  ナイヤウニナツテ居リマス、併シ尙ホ政府
  ニ賣ラナイコトニナツテ居リマス所謂地
  主ノ自家用米ヲ納メル小作人ガゴザイマス
  ガ、是等ニ付キマシテハ此ノ第八條ノ第一
  項ニ依リマセズ、第二項ノ規定ニ依リマシ
  テ政府ガ必要ヲ認メマシタ場合ニ其ノ檢査
  ヲ受クベシト云フコトヲ規定スル考ヘヲ持
  ツテ居ルノデゴザイマス、是等ノ點ニ付キ
  マシテハ、勅令ヲ定メマス場合ニ十分實情
  ニ卽應スルヤウナ考慮ヲ拂ヒタイト思ヒマ
  ス、其ノ次ハ出資者ノ制限ノ規定ガ中央營
  團ノ十七條ノ規定ニアルガ、此ノ運用ハド
  ウ云フ風ニスルカト云フコトデアリマス、
  是ハ今差當リ具體的ニ直グ斯ウスルト云フ
  ヤウナコトニ付テマダ考ヘテ居リマモヌ、
  必要ガ生ジテ、其ノ營團ノ出資者トシテ相
  應シカラザル者ガ出テ參リマシタ時ニ、之
  ヲ定款ヲ以テ制限シ得ル、サウ云フ規定ヲ
  作ツテ置カウト云フ趣旨デアリマス、初メ
  カラ非常ニ狹ク之ヲ限定スルト云フ考ヘハ
  ゴザイマセヌ、具體的ニヤツテ參リマス中
  ニハ、色々斯ウ云フ必要ガ生ズルダラウト
  思ヒマスノデ、此ノ規定ヲ設ケテアル次第
  デアリマス
  其ノ次」中央地方營團ノ組織內容ニ付テ
  ト云フ御話デゴザイマスガ、是ハ一昨日來色
  色御說明モアリマシタヤウニ、中央營團ニ
  於テハ日本米穀株式會社或ハ全國製粉配給
  株式會社、其ノ他全國的ニ配給ニ深イ關係
  ヲ持ツテ居リマスソレ〓〓ノ機關ヲ此處ニ
  吸收致シマシテ、一方政府ノ半額ノ出資ヲ
  以チマシテ之ヲ構成致シタイト云フ考ヘヲ
  持ツテ居リマスシ、地方營團ニ於テハ
  大體其ノ地方ノ實情ニ鑑ミマシテ主トシテ
  配給業者ヲ以テ之ヲ成立セシメル、尙ホ地方
  營團ニ於テハ、中央營團カラ出資ヲスルト云
  フ關係ヲ以チマシテ地方營團ヲ組織シタイ、
  斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、
  地方營團ノ出資ハ大體ドノ位ノ見當ニナル
  カト云フ御尋ネデゴザイマスガ、是ハ地方
  營團ノ二十五條ノ規定ノ第二項ニゴザイマ
  ス、是ハ一々ノ地方營團ニ付キマシテ政府ガ
  具體的ニ宜シキ額ダケニ決メテ參リタイト考
  ヘテ居リ、全體的ニ考ヘマシテハ、地方營團ノ
  出資ガ八、九千万圓カラ一億万圓位ニナルノ
  ヂヤナイカト云フコトハ考ヘマスガ、具體的ニ
  一々ノ營團ニ付キマシテノ資本金ハ、其ノ時々
  ニ決メテ參リタイト考ヘテ居リマス

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• 039・森幸太郎

  ○森(幸)委員　第八條ノ檢査デアリマスガ、
  小作者ニ檢査ヲ强制的ニ受ケシメルト云フ
  コトハ、或ル場合ニ於テイケナイカラト云
  フヤウナ御說明ガ今アリマシタガ、實際ノ
  場合トシマシテ檢査ヲセナケレバ搬出ヲ許
  サナイ、所謂無檢査米ノ搬出ヲ許サナイ、
  檢査場ヨリ地主ノ倉庫マデモ持出スコトガ
  出來ナイ、斯ウ云フ譯ニナツテ居ルノデア
  リマス、現在地方ニ依ツテ違ヒマスケレド
  モ、檢査ニ要スル經費ハ總テ、地主ガ負擔
  シテ居リマス、又等級ノ差ニ依ツテ奬勵金
  ヲ出サナケレバナラヌ場合ニ於テモ、地主
  ガ之ヲ負擔シテ小作人ニ渡シテ居ル譯デア
  リマスガ、是ハ現在ヤツテ居ル方法ニ十分
  檢討ヲ加ヘラレマシテ、成ベク實施上業者
  ニ迷惑ノ掛ラナイヤウニ御考ヘノ上實施セ
  ラレンコトヲ希望スル次第デアリマス
  次ニ御尋ネシタイノハ、今度愈〓。米麥ノ
  檢査ガ全然國營ニ移サレルコトニナツタ譯
  デアリマシテ、吾々ガ此ノ從來地方ニ依ツテ
  行ハレテ居ル檢査ヲ國營ニシテ戴キタイト
  云フコトヲ希望シテ居リマシタコトガ、此
  ノ法案ノ成立ト共ニ愈,國營ニナツタコト
  ハ洵ニ結構ナコトト考ヘルノデアリマス、
  ソレニ付テ此ノ檢査料ハドウ云フヤウニ徵
  收サレルノデアルカ、是ハ命令ニ依ツテ定
  メラレルコトニナツテ居リマスガ、現在、ノ
  檢査料ハ各府縣區々ニナツテ居リ、縣外移出
  ノ場合ト縣內消費ノモノニ付テ差ヲ設ケテ
  居ル所モ府縣ニ依ツテハアル譯デアリマス
  ガ、此ノ檢査ハ國家ガ其ノ米ヲ買取ル爲ニ
  必要ナル一ツノ手段トシテ行フ行爲デアリ
  マスカラ、僅カナ檢査料ナドハ徵收シナイト
  云フコトニスルノガ當然デアルト思フノデ
  アリマス、且又此ノ檢査ノ等級ハ今囘四等
  級ニ改正サレテ居リマスガ、十六年度ヨリハ、
  從來ノ如ク枡ニ依ツテ檢査ヲ受ケズシテ、
  目方ニ依ツテ受ケルコトガ許サレマスノデ、
  生產者トシテハ非常ニ好都合ニナツテ居ル
  譯デアリマス、從來米ノ等級ヲ査定スル場
  合ニ於テハ、含水分ニ重キヲ置イテ、此ノ
  米ハ如何ニ貯藏ニ堪ヘルカト云フコトガ主
  トシテ査定ノ標準ニナツテ居ツタ譯デアリ
  きくる。旣ニ米ノ品種ハ大體ニ於テ地方的ニ
  締制サレ、改良サレテ居ルノデアリマシテ、
  米質ト云フモノハ寧ロ其ノ乾燥程度ニ依ツ
  テ等差ガ決マルト言ツテモ宜イノデアリマ
  スガ、此ノ乾燥程度ニ依ツテ目方ト枡數ガ
  非常ニ變ツテ來ルノデアリマス、例ヘバ十
  六貫俵ニ入レル場合、十分ニ乾燥シタモノ
  ハ三斗八升デ十六貫ニナルガ、軟質米ハ四
  斗一升入レナケレバ十六貫ニナラナイト云
  フヤウテ譯デ、乾燥程度ニ依ツテ其ノ等差
  ガ付イテ來ル譯デアリマスカラ、重量檢査
  ヲ實施サレル場合ニハ、複雜ナル四等級ニ分
  ケテ檢査ヲスル必要ハナイト考ヘルノデア
  リマス、ソコデ檢査料ハ國家ガ負擔シ、檢
  査等級ニ付テハ、寧ロ、或ル一定ノ含水分
  ヲ持ツテ居ルモノ以上ヲ不合格トシ、其ノ以
  內ヲ合格トスルト云フ風ニ分ケテモ差支ヘ
  ナイト考ヘルノデアリマスガ、政府ノ御所見
  ヲ承リタイト思ヒマス

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• 040・湯河元威

  ○湯河政府委員　此ノ度ノ檢査ニ付テハ、
  檢査機關ノ費用ヲ國費ヲ以テ支辨スルコト
  ニ致シタノデアリマスガ、此ノ檢査ハ法案
  提出ノ際ニ農林大臣カラモ御說明ガゴザイ
  マシタヤウニ、多分ニ國ノ買入檢査ト云
  ヤウナ意味ヲ持ツテ居ルノデアリマス、サ
  リナガラ此ノ檢査手數料ヲ農民ニ負擔サセ
  ルコトハ無用デハナイカ、寧ロ全部國ガ持
  ツベキデハナイカト云フヤウナ御議論デアリ
  マスガ、實ハ只今ノ米價ハ端的ニ申上ゲマ
  スト、生產者ノ生產費ノ中ニ此ノ檢査手數
  料ノ實費ヲ計算致シテ居ルノデアリマス
  ソレガ各地方ソレ〓〓區々ニナツテ居ルノ
  デゴザイマシテ、或ハ非常ニ澤山ノ手數料
  ヲ負擔シテ居ル所モゴザイマセウシ、又手
  數料ガ比較的少クテ濟ンデ居ル地方モゴザ
  イマセウ、併シナガラ今度國デ此ノ費用ヲ
  持ツテ檢査ヲ實施シテ參ルコトニナリマス
  ニ付テハ、玆ニ財政上ノ負擔モ相當掛カリ
  マスシ、特別會計ガ之ヲ運用シテ參ル上ニ
  於キマシテハ、ドウシテモ檢査手數料ヲ取
  ル必要ガアルヤウニ心得テ居ルノデアリマ
  ス、サウシテ檢査手數料ヲドノ位取ルカト
  言ヒマスト、大體ノ見當デゴザイマスガ、
  米ニ付キマシテハ一俵五錢五厘、小麥、裸
  麥ニ付キマシテハ三錢五厘、大麥ニ付キマ
  シテハ三錢、斯ウ云フ方針ヲ立テテ居ルノ
  デゴザイマス、是ハ從來各地方ノ區々ニナ
  ツテ居リマシタ手數料全體ヲ見渡シテ見ル
  ト、先ヅ妥當ナ所デハナイカト思ツテ居リ
  マく、尙ホ米ノ標準生產費ノ入ツテ居リマ
  ス檢査手數料ノ實費ハ一石約十七錢デゴザ
  イマス、是ハ米ニ致シマシテモ六錢以上ニ
  ナルノデアリマス、ソレニ比ベマスト此ノ
  位ノ負擔ハ是ハ生產費計算ヲ致シマシテ、
  ソレヲ土臺ニシテ政府ノ買上價格ヲ決定シ
  テモ現在ニ於テハ差支ヘナイ、斯ウ云フ風
  ニ存ジテ居リマス、ソレデ尙ホ端的ニ申セ
  バ、若シ此ノ手數料ヲ拂ハヌト云フコトニ
  ナレバ、米ノ生產費計算ヲ變ヘテ行ク、卽
  チ米價ヲソレダケ下ゲルト云フコトニモナ
  ルノデアリマス、此ノ點ハ寧ロ經濟的ニ及
  ボス影響ハ米價ヲ現在ノ儘ニ致シマシテ手
  數料ヲ從來ヨリモ高カラザル限度ニ於テ全
  國一率ニ取ル方ガ適當ダト認メマシテ、斯
  ウ云フ方策ヲ採ツテ居ルヤウナ次第デアリ
  マス、ソレカラ檢査ガ今度統一的ニ行ハレ
  ルニ付テ、殊ニ最近重量檢査ニナツテ四等
  級ノ等級區別ハ不要デハナイカト云フ御議
  論ガゴザイマス、實ハ昨年ノ秋等級銘柄ノ
  整理ヲ致シマス際ニ、サウ云フ點モ十分考
  慮致シタ譯デアリマスガ、一時ニサウ整理モ
  出來マセヌノデ、從來ノモノヲ三等、等外ト
  云フ風ニ改メタノデアリマス、ソレト同時
  ニ銘柄ヲ非常ニ改メマシテ、地方ノ小銘柄
  ヲナクシタノデアリマス、是等ノ點カラ致
  シマシテ、餘リ急激ナル變化ヲ生ズルコト
  ハ却テ宜シナクイト思ツテ居リマスカラ、
  今後檢査ヲ國ニ於テ統轄シテ參リマスト、
  檢査上色々指導スル點ガ多イノデゴザイマ
  シテ、サウ云フ不必要且ツ煩瑣ナル要素ヲ漸
  次ナクシテ參リタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=40

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• 041・森幸太郎

  ○森(幸)委員　次ニ大臣ニ伺フノデアリマ
  スガ、昨日來、東亞共榮圈ガ確立致シマシテモ
  外米依存脫却ト云フコトヲ我ガ國米作ノ理
  想トシテ進マナケレバナラナイト云フ御議
  論モ各議員ヨリアリマシタ、又政府ニ於カ
  レマシテモ國內ニ於テ自給自足ノ計畫ヲ將
  來持ツテ行クト云フコトヲ理想トシテ御考
  ヘニナツテ居ラレルヤウニ考ヘルノデアリ
  マス、所ガ固ヨリ我ガ瑞穗ノ國ト致シマシテ
  外米依存脫却ハ理想トシテ考ヘナケレバナ
  ラヌコトデアリマスガ、果シテ長キ將來ニ
  向ツテ是ガ持續シ得ラレル問題デアラウカ
  ト云フコトヲ考ヘマスルト、ソコニ一抹ノ
  不安ガアルノデアリマス、現在耕地面積ノ增
  減ヲ見マシテモ、新シク開墾セラレルモノ
  モアリ、又地目ノ變換サレルモノモアリマス
  ルガ、鐵道、道路、工場等ノ關係上潰地ニナル
  土地モ相當アルノデアリマス、過去ノ實績
  ヲ見マシテモ、昭和十一年カラ昭和十五年ハ
  間ヲ眺メテ其ノ耕地ノ狀況ヲ見マスルト、二
  万八千七百四十三町歩ト云フモノガ減ジテ
  居リマス、ヤハリ文化ノ進ムニ從ツテ耕地
  ガ殖エルヨリモ寧ロ減ルト云フコトヲ覺悟
  シナケレバナラヌト思フノデアリマス、サ
  ウシテ殖エル土地ハ新シキ處女地デアリ、將
  來地力ヲ增シテ行クベキ土地デアルガ、破
  壞サレテ行ク土地ハ最モ都會ニ近イ交通ノ
  便利ナ良イ耕地ガ犠牲ニナツテ行クコトヲ
  考ヘマスルト、此ノ耕地面積ノ移動カラ見
  マシテモ、食糧增產ト云フコトハ餘程考ヘ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、過去
  十箇年間我ガ國ノ米ノ狀況ヲ考ヘテ見マス
  ルノニ、外國ヨリ絕對輸入ヲセナカツタトシ
  マシテ、其ノ年次ノ生產高、外地ヨリノ移
  入高、外地ニ移出シマシタモノ、之ヲ差引
  致シマシタモノト、其ノ年度ノ消費高トヲ
  考ヘテ見マスルト、昭和六年、昭和九年、
  昭和十三年此ノ三箇年ニ於テ漸ク消費高〓
  對シテ過剩米ヲ見ルノデアリマス、其ノ他
  ノ年柄ハ何レモ不足ヲ致シテ居ルノデアリ
  マス、サウシテ人口ハ申上ゲルマデモナク、
  昭和五年ニ六千四百万人ノ人口ガ昭和十四
  年ニハ七千二百六十万ニ殖エテ參ツテ居リ
  マス、此ノ人口ノ增加、耕地ノ減少、斯ウ
  云フ點カラ此ノ地力ヲ如何ニ働カセマシテ
  モ其ノ收穫ト云フモノハ減退致シテ行クノ
  デアリマス、幸ヒニ今日マデ米ノ生產高ハ
  何トカ彼トカヤリ繰リシテ維持サレタコト
  ハ外米ノ輸入モアリマシタガ、兎ニ角是ハ
  肥料ニ依存シテ居ツタトモ考ヘラレルノデ
  アリマス、是ハ一ツノ見方デアリマス、肥
  料力ニ依ツテ米ノ增產ヲ維持スルト云フ卽
  チ本當ノ農道カラ見マスレバ是ハ外道ナヤ
  リ方デアルカモ知レマセヌケレドモ、兎ロン
  角此ノ肥料力ニ信賴致シマシテ生產力ヲ維
  持シテ來タト考ヘラレルノデアリマス、然
  ルニ此ノ肥料ノ情勢ハ、先日大臣ノ御示シ
  ニナツタ如クニ、窒素ニ於テ八〇%、燐酸ニ於
  テ五〇%、過燐肥料ニ於テハ見込ミガ立タナ
  イ、斯ウ云フ情勢デアリマス、是ハ戰時下ノ今
  日トシテ電力其ノ他原料資材ノ不足ノ關係
  上是モ已ムヲ得ナイト思ヒマスルガ、斯ウ云
  フ條件ノ下ニ於テドウシテ外米依存ヲ脫却
  シテ我ガ限ラレタル耕地ニ於テ、此ノ米ヲ
  將來維持シテ行クカト云フコトヲ考ヘル時
  ニ非常ニ不安ニ存ズルノデアリマス、殊ニ
  我ガ日本ハ瑞穗ノ國ト稱セラレ、瑞穗米トシ
  テ國內ノ米ニ依ツテ國內人ハ長イ間養ハレ
  テ來タノデアリマシテ、一時已ムヲ得ナイト
  ハ云ヒマスケレドモ、外米ノアノ味ノナイ米
  ニ依ツテ生活スルト云フコトハ、將來ハ成
  ベク避ケテ、國民ニハ良イ米ヲ食べサセタ
  イト云フ氣持ヲ持チマス、殊ニ考ヘナケレ
  バナラヌコトハ、將來東亞ノ共榮圈ニ生產
  シマスル、米ノ品質ノ改善ト云フコトデアリ
  マス、例ヘバ臺灣ノ蓬萊米ト云フモノガ〓
  究ノ結果生產サレマシタガ、ソレハ我ガ內
  地米ト少シモ變ラナイ、又半島ニ於キマシ
  テモ品種ノ改良ニ依ツテ內地米ニ優ル所ノ
  立派ナ品種ガ出來テ居ルノデアリマス、
  南方外國ニ如何ニ米ガ生產サレマシテモ、
  今日輸入サレテ居ルヤウナアノ品質ノ米デ
  アリマシタナラバ、長ク將來我ガ日本ノ內
  地ニ之ヲ利用スルト云フコトハ餘程考ヘナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス、而シテ
  私ハ外地ニ於テ色々〓究ヲ重ネマシテ、アノ
  立派ナル蓬萊米ノ如キ品種ノ改良ヲ將來企
  テテ行カナケレバナラナイ、斯ウ云フコト
  ヲ考ヘルノデアリマス、「タイ」ノ米ノ狀況
  ヲ見マシテモ、全ク原始的ナ生產狀態デアリ
  マシテ、栽培ト云フヨリモ寧ロ一定ノ場所
  ニアノ草ヲ植エテ、サウシテソレノ種ヲ集
  メテ內地へ持ツテ來ル、斯ウ言ツテモ宜イ
  ヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、サウ云フ
  風ナコトヲ考ヘル時ニ、苦シイ無理ヲシテ
  外米依存脫却ト云フコトヲ理想トシテ考ヘ
  テ行ツテ宜イモノデアラウカト云フコトヲ
  私ハ考ヘルノデアリマス、大臣モ內地ニ於
  テ自給自足ノ途ヲ立テナケレバイカヌト云
  フコトヲ御說明ニナツテ居リマスケレド
  モ、此ノ事タルヤ、宜イコトデハアルガ、
  實際問題ト致シマシテハ非常ニ困難ガアル
  ノデハナイカト思フノデアリマス、今日マ
  デ肥料ニ依ツテ米ノ生產力ヲ維持シテ來タ
  コトハ、過去ニ於ケル奬勵ノ方針ニ非常ナ
  誤リガアツタト私ハ思フノデアリマス、二
  十年過去ノ米ノ生產力ト今日ノ生產力トヲ
  見マスト、餘程進ンデハ居リマスケレドモ、
  收穫ノ增加シタダケソレダケ地力ガ肥エタ
  カト申シマスト、地力ハ肥エテ居ラナイ、
  地力ハ寧ロ瘦セテ居ルノデアリマス、ドウ
  シテモ是ハ地力ヲ殖ヤシマシテ、サウシテ
  生產ヲ落付ケル、斯ウ云フコトニシナケレ
  バナラヌト思フノデアリマス、是ハ金肥萬
  能ニ馴致サレマシタ農耕法ヲ、自給肥料ノ
  方面ニ改メテ來ナケレバナラヌ、自給肥料
  或ハ客土法或ハ燒土法ニ依リ、或ハ深耕法
  ニ依ルトカ云フ風ニシテ地力ヲ殖ヤシテ行
  カナケレバ途ガナイト考ヘルノデアリマス、
  而モ農林省ハ昨年以來無畜農家ノ解消スル
  ヤウニ御心配ニナツテ居リマスガ、家畜ニ
  於キマシテモ自給飼料ニ依ル牛デアルトカ
  或ハ羊デアルトカ云フヤウナモノガ最モ適
  當ト思フノデアリマスガ、此ノ家畜ノ奬勵
  ニ付テ今日一番難儀ヲ致シテ居リマスコト
  ハ指導者ノ缺乏デアリマス、是ハ農林省ニ
  於キマシテモ色々御心配ニナツテ居ルコト
  ト思フノデアリマス、今囘ノ獸醫ノ年齡低
  下ト云フヤウナコトモ、斯ウ云フ方面カラ
  考ヘラレタコトト思ヒマスガ、指導者ガナ
  イノデアリマス、此ノ事變ガ始マリマシテ
  カラ畜產技術員ハ殆ド應召サレマシテ、指
  導スベキ技術者ガ全ク居ラナイ、斯ウ云フ
  コトガ有畜農業ヲ普及スル上ニ於テ非常ナ
  妨害ヲ成シテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ
  點ニ付テ政府ハドウ云フ風ニ處置サレント
  スルノデアルカ、外地米依存ヲ脫却セントス
  ル何等カノ方策ガナイカト云フコトヲ先程
  西川委員カラモ御質疑ニナツテ居リマスガ、
  私ハ凡ユル方策ヲ以チマシテモ長イ間ノ
  將來ニ於テ此ノ外地米依存脫却ト云フコト
  ハドウシテモ困難デアルカラ、寧口今ヨリ
  手ヲ着ケテ外地米ノ品質改良ト云フコトニ
  依ツテ內地米ヲ補給スルヤウナ方法ヲ考
  ヘル必要ガアラウト思フノデアリマス、又
  一面ニ於テ地力ノ增進ノ上ニ於テ、此ノ有
  畜農業ト云フコトヲ徹底的ニ農家ニ普及サ
  シテ行クコトガ必要ダラウト思ヒマスガ、
  此ノ點ニ付テ大臣ノ御所見ヲ承リタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=41

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• 042・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今森委員ノ御述ベニナ
  リマシタ後段ノ御所見ニ對シマシテハ私モ
  全ク同感デ、有畜農業ノ普及ト云フコトハ
  我ガ國ノ地力ヲ維持シ、而モ增產ヲ致シテ
  參ル上ニ於テ極メテ大事ナ問題デアルト考
  ヘルノデアリマス
  前段ノ御意見ニ對シマシテハ聊カ違ツタ
  所感ヲ持ツテ居リマズ、ト申シマズノハ、我
  ガ國ガ今日ノ〓戰ノ戰果赫々タル實情カラ
  見マシテ、東亞共榮圈ノ確立ト云フコトハ
  是ハハツキリ見透シガ立チマシタガ、先般來
  申上ゲテ居ルヤウニ、斯ウ云フ見透シガ立
  ツタ今日ニ於テ、ハツキリ我ガ國ノ農村對
  策ト云フモノヲ定メテ置クコトガ必要デア
  ル、ソレニハ農村ハ單ナル食糧ノ生產場ダ
  ケデナク、日本精神ニ燃ユル人的資源ノ培
  養地デアルト云フコトカラシテモ、日本農村
  ノ確立ヲ圖ツテ行カナケレバナラヌコトハ
  此ノ際ハツキリシテ置カナケレバナラヌ、
  ソレニハヤハリ食糧ノ上カラ見マシテモ、
  內外地、更ニ滿洲等ヲ通ジマシテ、此ノ食
  糧ノ自給自足ト云フコトヲ然ラバ其ノ食糧
  ノ自給自足ニ對シテ從來ノ耕地ノ壞滅ノ狀
  態又ハ肥料等ノ關係カラ見テ、ソレ程ノ
  確信ガ持チ得ルカドウカト云フ點ガ御所見
  ノ前提ニナツテ居ルヤウニ考ヘルノデアリ
  マン、ソレハ昨年ノ議會ニ於キマシテ、農
  林省ト致シマシテハ農地開發法ヲ提案致シ
  マシテ、第一期十二箇年ニ亙ル食糧ノ自給
  强化ノ施設ヲ樹立致シタノデアリマス、ソ
  レニ依リマスト約五十万町步ノ田畑ヲ開墾
  致シマシテ、サウシテ更ニソレニ百七十万
  町步デアリマシタカ、耕種ノ改善ニ依リマ
  シテ反當リ收量ヲ殖ヤスト云フ行キ方ト竝
  行シマシテ、十二年後ニハ米ガ一千百万石、
  麥ガ一千二百万石デアリマシタカヲ增產致
  シマシテ、人口增加ニ卽應致シマシテ自給
  自足ガ出來ル、斯ウ云フ體制ヲ執リ、其ノ
  後農地開發營團ヲ作リマシテ着々今日デハ
  其ノ途ニ進ンデ居ルノデアリマス、之ニ必
  要ナル豫算モ大藏省ハ今日財政上色々苦シ
  イ中ヲ特ニ本年モ認メテ吳レマシテ、現在
  デハ其ノ方向ニ進ンデ居ルノデアリマス、
  隨テ壞滅耕地モアリマスガ、ソレヲ克服シ
  テ更ニ耕地ハ增シテ行ク狀態ニナツテ居リ
  やく、而モ五十万町步ノ開墾地ト云フモノ
  ハ唯數字ノ上ノ開墾地ニアラズシテ、具
  體的ニ何處ノ場所ニドウ云フ開墾地ガアル
  ト云フコトヲ一々詳細ニ調査シタ上デ立案
  シテ居リマスカラ、ソレガ豫定通リ進ンデ
  參リマスレバ自給自足ト云フコトハ決シテ
  困難デナイト云フ見透シヲ持ツテ居ルノデ
  アリマス、併シ外米依存脫却ト云フコトモ、
  私ハ全然外米ヲ考慮シナイト云フノデハナ
  イノデアリマス、自給强化、自給自足ト云
  フコトハ、內外地ヲ通ジテノ內地人口ヲ、
  先ヅ原則トシテ內地米ニ依ツテ養フ、併シ
  農作物ニハ豐凶ガアルノデアリマスカラ、
  其ノ年ニ依ツテ或ハ〓糧ノ足リナイ場合モ
  アルト云フコトヲ考慮ニ入レマシテ、外米
  ハ各地ニ於テ共同貯藏ヲスルコトガ一番今
  日デハ適切デアル、ダカラ共榮圈內ニ於テ
  米ガ內外地以外ノ地ニ於テ出來マシタモノ
  ハ内外地以外ニ於テ分散的ニ共同貯藏ヲ
  致シテ置クト云フ方針ノ下ニ進ンデ參リタ
  イト思フノデアリマス、今御說ノ中デ內地
  ノ自給ノ强化ガ必ズシモ容易デナイ、隨テ
  佛印「タイ」等ニ於テ蓬萊米其ノ他ノ內地米
  ニ類スル米ノ栽培ヲ寧ロ奬勵シテ、サウシ
  テ內地ノ不足ノ分ヲ補フト云フ方策ヲ考ヘ
  タラドウカト云フ御意見ハ、是ハ屢〓色々
  ナ方カラモ私ニサウ云フ御意見ヲ御申出ニ
  ナルノデアリマス、併シ現在私ハ斯ウ云フ
  風ニ其ノ點ニ付テハ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、內地米ニ類スル米ト云フモノハ、內地
  ニ於テノ需要ニハ適シマスガ、內地以外ノ
  地ニ於テノ需要ニハ寧ロ適サナイ、外米式
  ニ所謂水分ノ少イアノ米ガ、內地以外ノ諸
  地域ニ於テハ寧ロ適スルノデアリマス、隨
  テ「タイ」佛印ノ米ニ付キマシテモ、之ヲ東
  亞共榮圈內ノ豫備貯藏ノ問題ニ當テ、又更
  ニ內地以外ノ共榮圈ノ人々ニ之ヲ以テ補給
  スルト云フ建前カラ見マスルト云フト、内地
  米ニ類スル米ニシテシマツテハ融通ガ付カナ
  クナル、內地ガ何時デモ足リナイト云フナラ
  バ、是ハサウ云ツタ方向ニ進ムコトガ必要デ
  アリマスガ、豫備的ニ、而モ內地以外ノ東亞
  共榮圈內ノ人々ニ之ヲ向ケ、更ニ必要ノア
  ル場合ニハ、東亞共榮圈外ニ之ヲ輸出スルト
  云フコトモ考ヘナケレバナラナイノデアリ
  マスカラ、サウナルト佛印「タイ」其ノ他ノ方
  而ノ米ト云フモノハ、ヤハリ現在ノ品質ノ
  米ガ適當デアル、勿論品種ノ改良ハ是ハ出
  來ルダケシナケレバナラヌト思ヒマスガ、
  蓬萊米、其ノ他內地米ニ類スル米ニ變ヘテ
  行クコトハ需要供給ノ關係カラ行キマシ
  テモ、寧ロ危險デアル、斯ウ云フ風ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、隨テ現在ノ農林省ノ
  方針ト致シマシテハ、飽クマデモ內外地人
  ガ〓スル內地米ハ、内外地ヲ以テ自給自足
  シ、「タイ」佛印等ノ所謂外米ハ、是ハ內地ノ
  補足用、又ハ貯藏用ニ之ヲ當テ、而モ其ノ
  品種ハ內地以外ノ何處へデモ融通ノ付ク米
  ノ品種ニシテ置キマシテ、サウシテ或ハ共
  同貯藏ニ依リ、或ハ輸出ニ依リ、或ハ共榮
  圈內ノ交流ニ依リマシテ、此ノ食糧ヲ向ケ
  テ行クト云フ方針ガ、今日ニ於テハ適切デ
  アルト私共ハ信ジテ居ルノアリマス、デア
  リマスカラ先般來申上ゲテ居リマスヤウニ、
  主要食糧ニ付キマシテハ、ドウシテモ自給
  自足ノ態勢デ進ミ行カナケレバナラヌシ、
  又進ミ行ク自信ヲ持ツテ居ルト云フコトヲ
  此ノ機會ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=42

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• 043・森幸太郎

  ○森(幸)委員　是ハ考ヘ方ノ違ヒデアリマ
  シテ、大臣ノ立場トシマシテハ色々今日開發
  營團等ノ施設ヲサレテ居リマス御立場トシ
  マシテハ、又サウ云フ風ナ理想ヲ御持チニ
  ナツテ居ラレルコトモ已ムヲ得ナイト思ヒ
  マスガ、是ハ恐ラク時ガ解決シテ吳レル問題
  ト私ハ思ヒマス、今日十年、十五年、二十年
  ノ後ヲ考ヘテ見マシテ、恐ラク此ノ自給自
  足ガ內外地ニ於テハ付カヌコトニナリハシ
  ナイカト思フノデアリマス、是ハ意見ノ相
  違デアリマスガ、ソレヲ私ハ心配致シマス
  ガ故ニ、地力ノ增進ト云フコトヲ考ヘテ行カ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、今日
  日本ノ農耕地ガ極度ニ疲弊致シテ居リマス
  コトハモウ申上ゲルマデモナイト思ヒマス
  ガ、其ノ耕地ニ今囘肥料ノ潤澤ニ廻ラナイ
  ト云フ四圍ノ環境ニアリマス以上ハ、容易
  ナラヌ問題ガ玆ニ起リハシナイカト思フノ
  デアリマス、今マデ各委員ノ御質問ニモア
  リマシタ通リ、肥料ハ少イ、|サウシテ增產
  ヲ確保シナケレバナラナイ、如何ナル施設
  ガアルカト云フ、此處ヲ質問ノ要點トサレ
  テ居ルノデアリマスガ、中々是ハ不可能ナ
  問題ト思フノデアリマス、ドウシテモ一日
  早ク手ヲ着ケレバソレダケ效果的ニ行クノ
  デアリマスカラ、速カニ此ノ地力增進ノ方
  面ニ一段ノ力ヲ致シテ戴キタイ、ソレニ今
  申上ゲマシタヤウナ有畜農業ヲ奬勵シヨウ
  ト致シマシテモ、牛ガ少イ、或ハ指導者ガ
  ナイト云フ惱ミニ襲ハレテ居ルト云フ譯デ
  アリマスノデ、此ヲ此ノ際一日モ早ク解消
  シテ戴キタイト思フノデアリマス、又外地
  米ノ品種改良ニ付テハ御意見ヲ承リマシテ、
  成程內地ニ要ラナイトシマスト、彼等ハ改
  良致シマシタ米ノ處理ニ持テ餘スト云フコ
  トニナル譯デアリマスガ、是ハ決シテ左樣
  ナモノデハナイ
  〔濱地委員長代理退席、委員長着席〕
  自給自足ト云フコトハ內外地ニ於テハ遠キ
  將來ニ於テ困難デアル、其ノ品種ノ改良ト
  云フコトハ五年ヤ十年デハ行カナイノデア
  リマスカラ、今內地外地ニ使用シ得ル食糧
  ノ自給自足的ノ米ノ品種ノ改良ト云フコト
  ニ今カラ手ヲ着ケル必要ガアリハシナイ
  カ、斯樣ニ考ヘル譯デアリマス、是ハ大臣
  ト考ヘ方ガ違ツテ居リマスカラ、强イテ申
  上ゲル譯デハアリマセヌ
  次ニ一局部ニ關スルコトデアリマスケレ
  ドモ、增產上ニ付テ動トモスレバ我ガ日本
  ノ東北部ニ於テ襲ハレル冷害デアリマス、
  冷害ノ恐ロシイコトハ、旣ニ昨年ノ如キ、
  吾々ハ豫想外ノ冷害ニ見舞ハレテ增產ニ非
  常ナ障碍ヲ來シタ次第デアリマスガ、此ノ
  冷害タルヤ、科學ノ力ニ依ツテ或ル程度マ
  デ之ヲ豫知シ、又或ル程度豫知シマスコト
  ニ依ツテ對策ヲ講ズルコトガ出來ルノデア
  リマス、是ハ曩ニ東北振興ノ爲ニ海洋ノ狀
  況調査ノ施設ガアリマシテ、慥カ船ガ出來
  テ居ツタト思ヒマスガ、ソレガ文部省ノ所
  屬ニナツテ居リマシテ、昨年ノ如キモ、其ノ
  內容ヲ聞イテ見マスト、其ノ經費ガ少イ爲
  ニ、思フヤウニ利用ガ出來ナカツタ、何分
  「サガレン」州カラ海南島マデヲ一ツノ船デ走
  ツテ步イテ居ル譯デアルカラ、十分ナ調査材
  料ヲ得ナカツタト云フ話ヲ聲イタノデアリ
  マスガ、私ハ折角サウ云フ施設ガアルノナラ
  バ、之ヲ農林省ノ所管トサレマシテ、サウシ
  テ農林省獨自ノ立場カラ食糧維持ノ爲ニ、
  海洋ノ動キ、海溫ノ變化ト云フコトニ付テ十
  分ナ調査、〓究ヲセラレマシテ、サウシテ今
  日ノ科學ノ力ニ依ツテ救ヒ得ラレル程度ニ
  於テ、此ノ冷害ト云フヤウナモノヲ救ツテ
  戴クコトガ最モ必要ト考ヘルノデアリマス
  ガ、斯ウ云フヤウナコトハ同ジ政府ノ中ニ
  於テ、所管ガ違ツテ思フヤウニナラヌト云
  フヤウナ場合モアラウカト思ヒマスガ、斯
  ウ云フ〓糧增產ヲ第一義ト考ヘナケレバナ
  ラヌ今日ニ於キマシテハ、サウ云フ施設コ
  ソ更ニ擴大サレマシテ、サウシテ折角科學ノ
  力ヲ增產方面ニ注イデ戴キタイト思フノデ
  アリマスガ、此ノ點ニ付テノ御所見モ承リタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=43

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• 044・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農作物ニ關シマシテ氣象
  ノ關係ノ極メテ密接デアリマスコトハ御說
  ノ通リデアリマ」ス、唯今日全國、更ニモツト
  廣イ區域ニ亙ル氣象ノ問題ト云フコトハ
  國防上非常ニ大キナ問題デアリマシテ、現
  在戰爭致シテ居リマスノデ、唯一部門カラ
  ノミ之ヲ利用スル譯ニハ行カナイ時代ニ今
  日ハ直面シデ居ルノデアリマス、此ノ氣象
  ヲ作戰ノ上カラ行キマシテモ、其ノ他色々
  ノ關係カラ見テ、ドウシテモ統制的ニヤツ
  テ行カナケレバナラナイト云フコトデ、現
  在デハ企畫院ヲ中心トシマシテ、之ニ對ス
  ル統制ヲ現在ヤツテ居ルノデアリマス、隨
  テ農林部門ニ於キマシテモ色々ノ調査ハ無
  論ヤツテ居リマスガ、コチラダケデ色々ノ
  コトヲヤルト云フ譯ニハ行カナイ關係ガア
  リマスノデ、色々ナ點ニ拘束ヲ受ケテ、經
  費等モ十分ニ得ラレナイ實情ニアルノデア
  リマスガ、併シ農林省ニ關シマスル範圍ニ
  於キマシテハ、出來ルダケヤハリ冷害等ノ
  豫知ト云フヤウナ問題ニ付キマシテモ、昨
  年來或ハ專門家ヲ集メ、或ハ種々ノ調査資料
  ヲ集メマシテ、農林省自體デモ色々〓究致
  シテ、其ノ大體ノ結論ヲ持ツテ對處シテ居ル
  ノデアリマス、隨テ今御話ノヤウニ、文部
  如
  省ニ是ガアルカラト云ツテ出來ヌト云フヤ
  ウナコトニハナツテ居リマセヌ、事實農林
  省トシテ必要ガアレバ、企畫院ヲ通ジテ色
  色ノ資料ガ戴ケルヤウニナツテ居リマス、
  其ノ點ハ御心配ナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=44

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• 045・森幸太郎

  ○森(幸)委員　最後ニ一ツ承リタイコトハ、
  今日ノ農業狀態ト致シマシテ、肥料ノ不足
  致シテ居ル關係上固ヨリデハアリマスルガ、
  集約的農業デアリマス、此ノ集約的農業ノ
  上ニ於キマシテハドウシテモ勞力ト云フモ
  ノガ最モ必要ナル役割ヲ致シテ居ルノデア
  リマス、然ルニ勞力ノ需給關係ガ、農村ニ
  於テ非常ニ賃銀ヲ安ク決メラレテアリマシ
  テ、先般公報ニ依ツテ發表サレマシタ農業、
  或ハ養蠶、其ノ他ノ賃銀ヲ見マシテモ非常
  ニ安イ是ハ工業ノ發達ニ依リマシテ非常
  ニ勞力ガ不足シテ居リマス場合、又官業、或
  ハ縣ノ事業等ニ勞力ヲ必要トシマス場合ニ
  於テハ、尙更勞働力ノ缺乏ヲ愬ヘル譯デア
  リマス、此ノ點ニ付テハ十分食糧增產ノ重
  要性カラ考ヘテ見マシテ、勞働賃金ト云フ
  ヤウナコトニ付テモ更ニ再檢討ヲ加ヘテ戴
  カナケレバナラヌト思ヒマス、此ノ點ニ付
  テノ御意見ヲ承リタイ、又次ニ生產ヲ增
  加スルニ付キマシテハ、固ヨリ今日ノ農村
  ト致シマシテハ、價格ガ高イカラ增產ヲス
  ル、安イカラ生產セナイト云フヤウナ、サ
  ウ云フ外道ニ陷ツタ考ヘヲ以テ農業生產ニ
  ハ從事致シテ居リマセヌ、金ヲ儲ケタカツ
  タラ百姓ナンカセヌ方ガ宜イノデス、金ヲ
  儲ケルト云フヤウナコトハ百姓トシテハ中
  中困難デ、更ニ金ヲ儲ケルナラ、モツト樂
  ヲシテ遊ンデ居テ錢ヲ儲ケルヤウナ方法ガ
  考ヘラレナイコトモナイト思フノデアリマ
  ス、決シテ農地生產者ハ、生產物ガ高イカ
  ラ餘計取ルノ、安イカラ取ラナイノト云フ
  コトハ致シマセヌ、ケレドモ吾々指導致シマ
  ス上カラ考ヘテ見マシテモ、或ハ又國家
  ノ立場カラ考ヘテ見マシテモ、其ノ純ナ
  ル生產者ノ勞力ニ酬イテヤルト云フコトガ
  最モ必要ナヤリ方ト考ヘルノデアリマス、
  米ノ點ニ付キマシテハ先般石當リ五圓ノ增
  產奬勵費ガ出マシテ、農生產者ト致シマシ
  テハ非常ニ氣持ノ良イコトデ、國家ガ吾々
  ノ事業ヲソコマデ重要視シテ吳レル、モツ
  ト國家ニ對シテ御奉公セナケレバナラヌト
  云フ氣持デ一生懸命ニ生產致シテ居リマス
  ルガ、此ノ價格ノ御發表ガ一寸時機ヲ失シ
  タト思フノデアリマス、固ヨリ先程申シマ
  シタヤウニ、高イカラ作ル、安イカラ作ラ
  ヌト云フヤウナ氣持デハシテ居リマセヌガ、
  アレガ苗代ヲ作ル頃、少クトモ二三月頃ニ
  御發表ニナツタノデアリマスレバ、非常ニ
  勢ヒ付イテ、喜ンデ一層生產ニ從事シタノ
  デハアルマイカトモ思ハレルノデアリマス、
  先般大麥ノ生產費ニ付テ多少今日ノ物價其
  ノ他ニ比較シテ無理ガアルヤウニモ考ヘ
  ル、將來ニ於テ考慮スルト云フヤウナ意味
  ノ御答辯ヲ大臣カラ承ハリマシタガ、若シ
  將來大麥價格ノ御訂正デモシテ下サルヤウ
  ナコトガアリマスナラバ、其ノ時機ト云フ
  コトガ、效果的ニセシムル上ニ於テ最モ重
  要ナルコトデアルト考ヘルノデアリマス、
  又今日ノ大麥ノ生產費ハ、旣ニ農林省ニモ
  統計ガ集マツテ居リマシテ、ドレダケ生產
  費ガ掛ツテ居ルカ能ク御調査ガ纒マツテ居
  ルト思ヒマス、今日ノ公定價格ハ決シテ生
  產者ニ酬イルノ價格デナイト私ハ斷言シ得
  ルト思フノデアリマス、ドウカ是ハモツト
  適當ナル時機ニ於テ、適當ナ修正ヲシテ戴
  キタイ、斯ウ云フコトヲ御願ヒスル次第デ
  アリマス、是デ私ノ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=45

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• 046・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農村ノ勞力ノ問題ニ付キ
  マシテハ、御說ノ通リ吾々モ非常ニ心配致
  シテ居リマシテ、出來ルダケ基本ノ農業生
  產ノ爲ノ勞力ト云フモノハ確保シタイト云
  フ見地カラ、先般農業生產統制令ト云フ總
  動員法ニ基ク勅令ヲ出シマシテ、其ノ點ニ
  付テノ施設ノ遺憾ナキヲ期シテ居ルヤウナ
  次第デアリマス、尙ホ農業勞働賃金等ニ付
  キマシテモ、厚生省トモ色々話シマシテ、
  十分其ノ點ノ適正ヲ期シテ居リマス、尙農
  產物ノ價格ナリ、或ハ奬勵金ナリヲ決メマ
  ス時機ニ付キマシテハ、私モ全ク御說ノ通
  リ出來ルダケ早イ機會ニハツキリシテ、サ
  ウシテ農民ニ是デ一ツヤツテ貰ヒタイト云
  フコトヲ言ヒタイト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、昨年ハ御承知ノ通リ內閣ガ色々更迭シマ
  シテ、其ノ時機ガ多少遲レマシタガ、私就
  任〓々米ニ付イテハ必ズ自分ノ責任ヲ以テ
  上ゲルカラ善處シテ貰ヒタイト云フコトヲ
  申シテ、農民トシマシテモ、獎勵金ノ有無
  ニ拘ラズ、又勞力ノ不足ニ拘ラズ、昨年モ
  植付面積ガ非常ニ殖エタト云フコトヲ申シ
  テ居ルノデアリマスガ、麥ニ付キマシテモ
  先般ノ議會デモ高田委員、其ノ他有力ナル
  議員カラ色々此ノ問題ニ付テハ私ニ御勸〓
  モアリ、又〓究ヲシロト云フ御要求モアツ
  タノデアリマス、私トシテモ其ノ後色々考
  慮致シマシテ結局大麥、裸麥ニ付テハ銘柄
  格差ノ變更、其ノ他ノ手段ニ依リマシテ多
  少何トカ考慮シナケレバナラヌト考ヘテ居
  リマスノデ、出來ルダケ近イ機會ニ是ハ實
  行致シタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=46

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• 047・三善信房

  ○三善委員長　前川正一君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=47

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• 048・前川正一

  ○前川委員　此ノ間中カラ南方ノ農業問題
  ニ付キマシテ聽クコトガ出來タノデアリマ
  スガ、モウ少シオ聽キシタイト思ヒマス、
  農林大臣ハ豫算總會デモ櫻井委員ニ對シマ
  シテ、南方ノ既耕地ノ作物ヲ轉換利用スル
  コトガ一ツト、未開墾地ノ開墾、斯ウ云フ
  コトヲ示サレタンデアリマス、又總理大臣
  ハ結局占領地域統治ノ要ハ民心ノ把握ダト
  言ハレテ居リマス、今考ヘマスノニ、南ノ
  方ノ住民ノ恐ラク八〇%以上ト云フモノハ
  農民ダト思フノデアリマス、之ヲ經濟的ナ
  立場ダケカラ見ルノデハナクテ、今ノ戰爭
  ガ政治戰、或ハ思想戰、武力戰、斯ウ云ツ
  クヤウナ幾ツモガ融合一體化シタ所ノ新秩
  序戰爭ナノデスカラ、單ニ作戦行動ガ終了
  シタラ、經濟戰ガ進出スルノダト云フヤウ
  ナ武力戰ト經濟戰ト政治戰ト思想戰トヲ分
  裂シタ考へ方ヲシナイデ、ソレ等ノ融合シ
  タ一體的ナ見方カラ南方ノ問題ヲ見ルコト、
  特ニ政治的ナ、思想的ナ意味カラ見ルコトガ
  必要ト思ヒマス、私ハ此ノ際南方ノ問題ニ
  付テハツキリシタ指導方針ヲ軍ノ作戰行動
  ニ順應シテ速カニ示サルベキデハナイカ、
  斯ウ云フヤウニ考ヘラレルノデアリマス、
  殊ニ南方ノ住民、卽チ農民ヲ吾々ハ一番先ニ
  握ル必要ガアルノデアリマスガ、此處ニハ
  吾々日本人ノ先輩ガ出テ、農業技術ヲ以テ
  指導シテ居ル地方ガ澤山アルノデアリマス
  カラ、斯ウ云フ點ヲ一ツ率直ニ御示シ戴ク
  コトガ出來レバ結構ダト思ヒマス

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• 049・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今ノ前川委員ノ御說、私
  モ全ク同感デアリマス、今後ノ南方ニ對ス
  ル政府ノ施策ト致シマシテ單ニ作戰上ノミ
  ナラズ、思想戰、或ハ經濟戰トシテノ對策ヲ此
  ノ際準備シテ置クト云フコトハ、是ハモウ全ク
  同感デアリマス、隨テ農林拓務兩省ニ於キマ
  シテモ、其ノ氣持デ委員會、其ノ他ノ制度
  ヲ設ケマシテ、民間ノ其ノ方面ニ對スル權
  威者モ之ニ加ヘテ南方方面ノ知識ヲ吸收シ
  マシテ、サウシテ南方住民ノ民心把握、之ヲ
  農業技術方面、或ハ經濟方面、其ノ他色々
  ノ方面カラ把握スル各般ノ施策ヲ此ノ際立
  テル必要ガアルト考ヘテ、目下色々調査ヲ
  シテ居リマス、全ク御說ニ同感デアリマス
  カラ、其ノ點御答ヘ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=49

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• 050・前川正一

  ○前川委員　私ハ斯ウ云フヤウニ考ヘマス、
  此ノ間企畫院總裁ハ、南方ノ既得權益者ニ
  對シテハ之ヲ尊重スル、ソレカラ第三國ノ
  商社デモ、協力スルナラバ之ヲ大イニ働カ
  シテ行カウ、華僑ニ付テモ其ノ通リダ、斯
  ウ云フヤウニ非常ニ大キナ立場カラ南ノ問
  題ヲ見テ居ラレルノデアリマス、所ガ一面
  ニ斯ウ云フ考ヘ方ガアルノデハナイカト思
  ヒマス、餘リ南方進出ニ就テノ統制ヲ嚴重
  ニスルト開發ガ遲クナリハセヌカト云フヤ
  ウナ考ヘ方モアルノデハナイカト思ヒマス、
  斯ウ云フ見方ガアルノデハナイカト思フノ
  デアリマス、此ノ點ガ今申上ゲマシタヤウ
  ナ問題ニ對シテ、現在調査〓究中ト云フヨ
  リカ、卽時行動ニ移スコトニナラナケレバ
  イカヌト思フノデス、例ヘバ是ハ事實カド
  ウカ知リマセヌガ、「ドイツ」ノ占領地域デ
  ハ前線ノ一里後方位ノ所ニマデ經濟建設
  隊ト云フカ、挺身隊ト云フカ、「トツド」博士
  ヲ先頭ニ立テテ、大イニ建設ニ努メテ居
  ル、之ヲ政治的ニヤツテ居ル、斯ウ云フヤ
  ウニ武力戰ト政治戰ト思想戰ト云ヒマスカ、
  是等ガ完全ニ一體融合シタ働キヲシナケレ
  バ此ノ頃ノ戰爭ニ於ケル民心把握ト云フ
  民衆獲得戰ハ困難デハナイカ、武力戰ハ武
  力戰ダ、思想戰、經濟戰トハ別ダ、斯ウ云
  フヤウナ考ヘ方デハナクテ、ソレ等ガ同時
  並行ニ行ハレ融合一體サレテ行ハレルト云
  フヤウニサレル必要ガアルノデハナイカ、
  ソレガ最モ必要ナノデハナイカ、サウナケ
  レバナラヌノデハナイカ、斯ウ云フ風ニ考
  ヘテ居ルノデス、カト云ツテソレヲ今マデ
  アツタ儘ノモノヲ直グ「ルーズ」ニヤリマス
  トトンデモナイ桃太郞ノ鬼ケ島征伐ノヤ
  ウナコトニナリハシナイカト云フコトヲ惧
  レテ居ルノデアリマス、是ハ可ナリ嚴重ナ
  統制ヲシナガラ且ツ敏速ニヤル、斯ウ云フ
  コトヲ御考ヘニナラナケレバナラヌノヂヤ
  ナイカト思ヒマスガ、モウ一度御答ヲ一ツ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=50

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• 051・井野碩哉

  ○井野國務大臣　政府ガ豫算總會其ノ他ノ
  機會ニ於テ屢〓申上ゲテ居リマス南方ニ對
  シテノ渡航ノ抑制ト云フ問題モ、徒ラニ唯
  抑制スルト云フ趣旨デナイコトハ今御說ノ
  通リデアリマス、唯一般ノ國民ハ南ガ日本
  ノ勢力下ニナツテ來タ、直グドン〓〓行ツ
  テ色々ナ仕事ヲ興セバ、非常ナソコニ有利
  ナ事業ガアルト云フ氣持ガ充チテ居リマス
  カラ、ソレハ船ノ關係或ハ作戰ノ關係デ、
  マダサウ云ツタ時期ニハ到達シテ居ナイノ
  ダ、寧ロサウ云フ問題ハ政府ノ統制ノ下ニ、
  今御話ノヤウニ經濟戰、思想戰、共ニ併セ
  テ統制シタ指導目標ヲ政府ガ立テテ後ニ、
  其ノ線ニ沿ツテ渡航シテ貰ヒタイ、斯ウ云
  フ氣持カラ、先般モ閣議デ其ノ問題ノ方針
  ヲ決定致シタヤウナ次第デアリマス、デア
  リマスカラ、今御說ノヤウナ進ミ方ニ付テ
  ハ、政府モ色々〓究モ致シ、又サウ云フ方向
  ニ進ムベク努力シテ居リマス、併シ何分ニ
  モマダ問題ハ戰ニ勝ツタト云フコトガ先ヅ
  第一段デアリマスカラ、ソレニ重點ヲ置キ
  マシテ總テノ問題ヲ集中シテ居リマスカラ、
  思想戰或ハ經濟戰ノ末端ニ至ル色々ノ緻密
  ナル計畫ハ、現在マダ十分立ツタト云フ所
  マデハ行ツテ居リマセヌ、併シサウ云フ方
  向ニ段々向ヒツツアルト云フコトダケハ一
  ツ御諒承願ヒタイト思ヒマス

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• 052・前川正一

  ○前川委員　先日來南方ニ對シテハ移民ヲ
  餘リ重要視シテ居ラヌ、移民ト云フヨリハ
  寧ロ指導者ヲ派遣シタイ、其ノ指導者ノ鍊
  成ハ、出來ルコトナラバ滿洲等ノ北方デヤ
  リタイ、私ハ是ハ非常ニ贊成デアリマス、
  斯クナケレバナラヌト思フノデアリマス
  是ハ人間ノ鍊成トシテハ宜イノデス、併シ
  南へ出テ行クノハ人間トシテ優秀ナ人ガ行
  カネバナラヌガ、同時ニ又技術ノアル人デ
  ナケレバナラヌト思フノデス、此ノ點ニナ
  リマスト、滿洲ニ於ケル農業技術ト云フモ
  ノハ、直チニ南方ニハ適用サレナイト思フ
  ノデアリマス、ソコデ南方へ出テ行キマス
  ル指導者ト云フモノノ人間鍊成ハ北方デモ
  宜イノデスガ、南方ヘ行ク場合ニハ、實際
  的ナ技術者トシテ又南方向キノ〓育ト指導
  ヲシナケレバナラヌノデハナイカ、或ハ又
  南方ヘ行ツテ居ル人達、若シクハ又南方へ
  行ツテ指導ノ出來ル能力ヲ持ツタ者ヲ人間
  トシテ鍊成ヲスル、斯ウ云フ方法モアルト
  思フノデアリマス、例ヘバ「ゴム」ノ接木アタ
  リハ、日本ノ植木屋サンガ實際行ツテ好イ
  成績ヲ擧ゲテ居ル、私ハ數字ハ忘レマシタ
  ガ、日本ノ植木屋ガ接木スルト、向フ自身
  デヤルヨリ實際三倍以上ノ收獲能率ガ擧ツ
  テ居ル、サウ云フヤウナモノハ日本ノ技術
  ヲ「イギリス」ナリ「オランダ」ガ利用シテ居
  ル、又「サイゴン」ノ郊外ニ於テ、臺灣ノ蓬
  萊米ヲ持ツテ行ツテ、佛印當局指導下デ仕
  事ヲシタノハ、臺灣ノ技術者デアル、斯ウ
  云フ技術者ガバラ〓〓ニ居ルノデアリマス
  ガ、サウ云フ技術者ヲ先ヅ統一的ニ指導シ政
  治性ヲ與ヘル機關南方向キノ鍊成指導ノ
  機關ガ此ノ際要ルノデハナイカ、是ハ拓務
  省關係カドウカ知リマセヌガ、拓南塾ナンカ
  モアルト思ヒマスガ、斯ウ云フモノヲモウ少
  シ大キクシテ、十分ニ養成シテ置ク必要ガ
  アルノデハナイカト考ヘルノデアリマス

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• 053・井野碩哉

  ○井野國務大臣　南方農業其ノ他ノ技術指
  導ト云フコトハ、極メテ大切ナ問題デアリ
  マス、昨日私ハ南方委員會デ、色々移民問題
  ニ付テ所懷ヲ申上ゲマシタガ、是ハ唯移民
  ヲ送ルト云フ問題ト、技術者ヲ送ルト云フ
  問題ハ別デアリマス、技術者ハ出來ルダケ
  內地竝ニ南方方面ニ於テ養成シマシテ、サ
  ウシテ適正ナル南方農業ノ技術指導ヲ行フ
  ト云フ方向ニ進マナケレバナラヌト信ジテ
  居ルノデアリマス、其ノ爲メノ機關トシテ
  ハ是ハ唯南方ノ農業技術ダケデナク、工
  業モアリ或ハ商業モアリ、色々南方ニ於テ
  指導者ノ立場デ參リマス者ノ養成機關ト云
  フコトガ一番大事ダト思ツテ居リマス、現
  在ニ於テハ拓南塾ガ之ニ當ツテ居リ、本年
  ノ豫算デソレヲ非常ニ擴大スルコトニ致シ
  マシテ、塾生モ從來ヨリハ百名モ多ク致シ
  タノデアリマス、併シ是デモ私ハマダ小サ
  イト思ツテ居リマス、モツト大キナ機關ガ
  要求セラレルノデナイカト考ヘテ居リマシ
  テ、政府部內ニ於テモ、モツトサウ云ツタ
  方面ニ付テ十分ナ機關ヲ設ケタイト、目下
  折角〓究ヲ致シテ居リマス

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• 054・前川正一

  ○前川委員　ソレカラ作物ノ轉換ト云フコ
  トハ、此ノ前モ御話ガアツタノデアリマス
  ガ、主要食糧ヲ內地デヤル、是ハサウナケレ
  バナラヌカト思フノデアリマス、併シ其ノ
  他ノ嗜好作物ハ轉換シテモ宜イト思フノデ
  アリマス、例ヘバ朝鮮、滿洲方面ニ煙草移民
  ヲ出シテ居ルノデアリマスガ、是ナンカモ
  出來ルコトナラバ南へ轉換シテモ宜イノデ
  ハナイカ、ソレカラ臺灣デ二万甲以上ノ麻ヲ
  ヤツテ居ルト思ヒマスガ、是モ「ダバオ」附
  近デ間ニ合フノデハナイカト思フノデアリ
  マス、斯ウ云ツタ轉換ハ、是ハ企畫院デ立
  案サレルノデアルカ、或ハ農林省デヤラレ
  ルノデアルカ知リマセヌガ、一ツ早ク御立
  テヲ願ヒマシテ、無理ニ滿洲ノ方ニ煙草ヲ
  作ル爲ニヤル必要ハナイト思フノデアリマ
  ス、能率ノ擧ガル方ヘヤレバ宜イト思フノ
  デアリマス、適地適作主義デ出來ルト思ヒ
  マス、之ニ對シテモ一ツノ方針ヲ御立テニ
  ナツテ居ルカドウカオ尋ネ致シマス

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• 055・井野碩哉

  ○井野國務大臣　作物ノ轉換ニ對シマスル
  〓究、卽チ南方方面ニ於牛マスル植裁上ノ
  種々ノ〓究ハ、最モ必要デアリマスノデ、
  現在拓務省、農林省内部ニ各〓委員會ヲ設ケ
  マシテ、民間ノ知識者ヲ網羅シテ〓究致シ
  テ居リマス、其ノ〓究ヲ俟テマシテ、更ニ
  ソレヲ取纒メ、或ハ企畫院ニ中心ノ南方關
  係ノ機關ガ出來ル時期モアラウト思ヒマス、
  サウ云フ場合ニ綜合的ニ國家的見地カラ進
  ンデ參リタイト考ヘテ居リマス

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• 056・前川正一

  ○前川委員　大體以上ノ四點デ南ニ對スル
  御意見ハ分ツタノデアリマスガ、私ハヤハ
  リ政府ノ中ニ於カレテ、武力戰ハ武力戰ダ、
  思想戰ハ思想戰ダ、經濟戰ハ經濟戰ダト云
  フヤウナ、距離ノアルヤウナ考へガ殘ツテ
  居ルヤウニ、今ノ御答辯ニ依ツテモ思フノ
  デアリマス、私ハ是ハ一ツダト思フ、完全
  ニ融合一體化シタモノデヤラナケレバナラ
  ヌノデハナイカト考ヘル、同時ニ竝行デナ
  ケレバイカヌト云フ氣ガスルノデアリマス
  ガ、是ハ私ノ考ヘナノデ、或ハ違ツテ居ル
  カモ知レマセヌガ、私ハサウ確信致シマス、
  ソレハソレト致シマシテ、次ニ-此ノ點
  ハ大分明カニナツタヤウニ思ヒマスガ、尙
  ホ明カニナラヌ點ガアルノデ、各委員ガ皆
  同ジ質問ヲサレテ居リマス、卽チ主要〓糧
  ダケハ飽クマデ內外地デ自給シテ行ク、斯ク
  ナケレバナラヌト思ヒマス、又民族ノ源泉
  ト云ヒマセウカ、大和民族ノ血液ノ純潔ヲ
  保持スルノ爲ニ、飽クマデモ內地ニ於テ一
  定率ノ農業人口ヲ保持スル、是ハ私ハ特ニ
  南方ノ問題ガ吾々ノ前ニ大キク出テ來レバ
  來ル程、此ノ問題ハ重要ダト思ヒマス、ド
  ウシテモ斯ウナケレバイカヌト思ヒマス
  ガ、ソレヲサウシテ行クノニ、何ダカ知ラ
  物足ラヌ氣ガスルノデアリマス、ソレガ爲
  ニ多クノ委員ガ不安ヲ感ジテ、色々質問ガ
  出テ來ルト思フノデアリマス、此ノ際農林
  省ノヤツテ居ルコトガ總テソレナンダ、斯
  ウ言ハレレバソレデ宜イノデアリマスガ、
  色々有畜農業ノ問題ガ出テ來タリ、開發營
  團ノ問題ガ出テ來タリ致シマスガ、特ニ重
  點ヲ置イテ、斯ウ云フ點ト斯ウ云フ點トヲ
  押ヘテヤルノダ、サウスレバヤレルノヂヤ
  ナイカ、斯ウ云フヤウナ方針ニ對シテ希望
  ノ持テルヤウニ、重點主義トデモ云ヒマス
  カ-農林大臣ハ自信ガアルト言ハレルノデ
  アリマスガ、其ノ自信ヲドウ云フ風ニシテ貫
  カレルカ、此ノ要點ダケデモ宜シイカラ、
  一ツ此ノ點ト此ノ點トニ重點ヲ置イテヤレ
  バ必ズ農業人口ノ保持ガ出來ル同時ニ食糧
  ノ心配ハナイノダ、斯ウ云フ點ニ就テ國民
  ガ安心シテ居ラレルヤウニ御示シ願ヘレバ
  結構デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=56

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• 057・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今御示シノ問題ニ付キ
  マシテハ、農林大臣トシマシテ、議會ヲ通
  ジテ斯ウ云フ方針デ政府トシテハ行クノ
  ダト云フコトヲハツキリ申上ゲタコトガ、
  私ハ日本ノ農民ニ對シテ一番政府ノ方針ヲ
  披瀝シ得タコトト存ジテ居ルノデアリマス、
  併シドウ云フ點ニ付テ政府ガソレヲ實行シ
  得ラレルカト云フコトニ付テノ手段デアリ
  マスルガ、是モ機會アル每ニ色々ノ點ヲ申
  上ゲテ居ルノデアリマスガ、大體昨年來政
  府ノヤリマシタ政策ヲ御檢討願ヒマスレバ、
  其ノ點ハハツキリスルノデハナイカト思ツ
  テ居リマス、ト申シマスノハ只今森委員ニ
  對シテ御答ヘ申上ゲマシタヤウニ、政府トシ
  テハ昨年〓糧需給計畫ヲ立テマシタ、內地デ
  以テ自給自足ノ經濟ヲ確立シテ行クノデア
  ル、是ハ大東亞戰爭勃發前デアリマスルガ、
  勿論東亞共榮圈建設ノ爲ニ政府トシテハ
  諸種ノ施策ヲ致シテ居ル時ニ、ソレヲハツ
  キリ明示シタノデアリマス、ソレガ一ツデ
  アリマス、又農村ガ農產物ヲ增產シテ行ク
  爲ニハ價格問題モ十分ニ者慮シナケレバナ
  ラヌト云フ所カラ、米ニ對シテノ生產奬勵
  金ヲ數億政府トシテハ豫算カラ支出スルト
  云フコトヲ致シマシタノモ、其ノ一ツデア
  リマス、又精神的ニ農村ヲシテ其ノ氣持ニ
  向ハシメナケレバナラヌト云フ見地カラ昨
  年來技術本部ヲ農林省ニ設ケマシテ、或ハ
  技術ノ指導ナリ、又農會技術員ノ指導、督
  勵等ヲ行ツテ、農村ニ對シ精神的ニ實行シ、
  又內原等ニ於テ農村靑年ノ中堅人ヲ養成シ
  訓練シテ、サウシテ今申シタ通リノ內地需
  給强化デ進ンデ行カウト云フ觀念ヲ農林省
  ノミナラズ、政府ノ要路ノ人々ガ皆參リマ
  シテ、其ノ氣持ヲ農村靑年ニ傳ヘテ、サウ
  シテハツキリ其ノ氣持ヲ把握シテ進ンデ參
  ル體制ヲ執ツタノモ一ツデアリマス、又今囘
  食糧管理法案ヲ提出致シタノモ其ノハツキ
  リシダ一ツノ方向デアリマシテ、要スルニ
  農民ハ今日東亞共榮圈ノ擴大ニ伴ツテ內地
  增產ガ一體非常ニ政策トシテ變ツテ來ルノ
  デハナカラウカト云フ危惧ノ念ガナイデモ
  ナイト考ヘテ居ルノデアリマスガ政府ト
  シテハ農民ノ作ツタ米麥ハ全部買フ、而モ
  其ノ價格ハ公正ナル價格デ以テ買フ、ダカ
  ラ安心シテ增產シテ吳レト云フ體制、卽チ
  專賣ニ殆ド近イ體制ヲ食糧管理法デ取リマ
  シテ、往年ノヤウニ米ガ餘ツテ來レバ自由
  價格制度ニ房ツテ、農村トシテハ安イ價格
  デ苦シムト云フコトノナイ體制ヲ示シタノ
  モ其ノ一ツデアリマス、是等ノ色々ノ施策
  ヲ綜合シテ御覽ニナリマスレバ農林省ノミ
  ナラズ政府自體モ食糧ノ自給自足ト云フコ
  トヲ根幹トシテ今日東亞共榮圈ノ建設ニ當
  ツテ進ンデ居ルト云フコトガ御分リ願ヘル
  ト思フノデアリマス

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• 058・前川正一

  ○前川委員　御話ノヤウナ點勿論吾々モ存
  ジテ居リマスガ、私ノ申上ゲマスノハモウ
  少シ基本的ナ點ガ欲シイノデアリマス、例
  ヘバ滿洲デハ四月一日カラ世襲農場法ガ出
  ルト云フヤウナコトヲ新聞デ見マシタガ是
  ハ滿洲ニ於テハ農民ニ對シテ非常ニ希望ヲ
  持タセテ居ルト思ヒマス、內地デ直チニサ
  ウ云フモノガ出ルカ出ナイカ議論ハ致シマ
  セヌガ、或ハソレニ近イヤウナモノデモ農
  民ニ御示シ願ヘルナラバ、決シテ農民ハ農
  村カラ離レナイト思ヒマス、農村カラ離レ
  ルモノニ對シテハ色々農林省ニ於テモ考慮
  サレテ居ルヤウデアリマスガ、動モスレバ
  今日農村ハ勞力不足ニ陷ツテ居リマス、ソ
  レハ國ノ御召シニ依ツテ出テ行クノハ宜イノ
  デアリマスガ、サウデナク自ラ出テ行カウ
  ト云フ者モアルノデアリマス、私ハ農村ノ人
  口ヲ飽クマデモ保持スル爲ニハ先ヅ農民ガ
  土地トシツカリ結付カナケレバナラヌ、土地ハ
  他人ノモノデ農業ヲスルダケガ俺ノ仕事ダ
  ト云フヤウナ土地ト農民ト遊離シタ狀態デハ
  決シテ農民ニ依ツテ日本民族ノ血液ヲ純潔
  ナラシメテ行クコトハ出來ナイト思ヒマス、
  私ハ此ノ土地ト人間ト一體化シタ農業ニナ
  ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、政
  府ハ之ニ對シテハ自作農創設維持ト云フコ
  トヲサレテ居リマスガ、私ハソレデ宜イト
  思ヒマス、ソレヲモウ少シ擴大强化サレテ
  ドウカ、地方カラ申請ガ十分來ナイカラ要
  求ハナイダラウト云フヤウナ御考ヘモアル
  カモ知レマセヌガ、サウデハナイ、農民ハ
  土地ヲ欲シテ居ルケレドモ土地ガ高過ギル、
  ソレハ小作料ガ高イカラデアル、小作料ガ
  高ク、又小作條件其ノ他ニ色々不合理ノ點
  ガアル、ソレデ土地ガ高クテ簡單ニ農民ノ
  手ニ入ラナイ、勿論色々ノ法律ヤ規則モ制
  定サレマシテ、政府ノ農民保護ノ御苦勞モ分
  ツテハ居リマスガ、モウ一段奮發サレマシ
  テ、配給ノ方ヲ斯クマデハツキリサレルナ
  ラバ、其ノ前提ノ計畫生產ノ基本ヲナス土
  地ト農民トノ關係モモツトハツキリシナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、中間ニ於ケ
  ル配給制度ガ出來テモ、其ノ基本デアル計
  畫生產ノ土臺ノ土地ト農民ガ遊離スルヤウ
  ナコトガアツテハナラナイ、是ハ自作農創
  設維持ノ計畫デモ宜イカラ之ヲモウ少シ擴
  大强化シテ、例ヘバ土地ガ高過ギルナラバ
  其ノ土地ノ値段ヲ抑制スル方法モアリマセ
  ウ、ソレカラ又元利ノ償還期間ヲモツト長
  クスルト云フ方法モアリマセウ、又金ヲ借
  リニ來ナイト云フケレドモ、ソレハ千圓ノ
  土地ヲ買フノニ五百圓ヤ六百圓貸シテ貰
  ツテモ實際ノ役ニ立タナイト云フ事實モア
  ル、固ヨリ農民ハ土地ヲ欲シテ居ルケレド
  モ、斯クノ如キ點ニ於テ中々自作農ニナリ
  得ナイノデアリマス、假ニ一度自作農ニナ
  ツタトシテモ災害等ノ場合ニ於テ支拂ガ出
  來ナイ爲ニ再ビ其ノ土地ヲ手離シテ行カナ
  ケレバナラナイト云フ狀態デアリマス、サ
  ウ云フコトデハ私ハ完全ナル自作農ノ創設
  ニナラナイト思ヒマス、一度土地ガ農民ノ
  所有ニナツタナラバ、末代マデ世襲シテ其
  ノ家ニ遺ツテ行クト云フ位ノ强力ナ一ツノ
  制度化シタヤウナ自作農主義、世襲的自作農
  ト言ヒマスカ、家產制自作農ト言ヒマスカ、
  サウ云フヤウナモノハ、今日ノ場合出來ル
  ノデハナイカ、四圍ノ情勢カラ見テ、大臣
  ノ英斷デ以テ出來ルヤウナ氣ガスルノデス
  ガ、斯ウ云フコトヲ一ツデモ宜シイカラ御
  示シ願フコトガ出來ルナラバ、恐ラク日本
  農民ハ實ニ喜ンデ、土地ト共ニ働クニ違ヒ
  ナイ、今モ働イテ居リマスガ、ヨリ以上馬
  力ヲ掛ケテ來ルト思フノデアリマス、サウ
  云フ足場ガ出來テコソ、初メテ民族ノ源泉
  トナリ、本當ノ强兵ノ涵養地ガ出來テ來ル
  ト思フノデアリマス、土地ト農民トガ離レ
  ナイヤウニ、自作農主義ニ對シテ、モウ少
  シ擴大强化サレルヤウナ御方針ガアルカド
  ウカ、今直グアルトハ言ヘヌト思フノデス
  ガ、私共農民ノ本當ノ氣持ヲ率直ニ申上ゲ
  テ居ル言葉ニ對シマシテ、大臣ノ御意見ヲ
  承ルコトガ出來マスレバ、仕合セデアリマ
  ス

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• 059・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今ノ御意見ニ對シテハ
  全ク同ジ氣持ヲ持ツテ居リマス、ヤハリ今
  日農村同盟ノ根本ハ、農地問題デアルト云フ
  コトニ付テノ認識ハ十分ニ持ツテ居ル積リ
  デアリマス、其ノ手段ニ付キマシテハ、色々
  問題ガアルノデアリマシテ、滿洲ノ如ク從
  來カラノ地主制度其ノ他色々ノモノノナイ
  所ヘ、新ニ農地問題ヲ確立シマスノト、內
  地ノ如ク非常ニ古イ沿革ヲ持ツテ居ル所ニ、
  或ル種ノ理念ヲ持ツタ進ミ方ヲスルト云フ
  コトトハ、自ラ程度ガ違フノデアリマシテ、
  ソコニ吾々モ色々ノ困難モ感ジ又惱ミモ存
  シテ居ルノデアリマス、併シ自作農ヲ創設
  シテ出來ルダケ耕作スル者自ラ土地ヲ持ツ
  ヤウナ方向ニ奬勵シテ行クト云フコトニ付
  キマシテハ、政府トシテモ出來ルダケソレ
  ハヤリタイト考ヘテ居リマス、唯今日農地
  ガ非常ニ高クナリ、又其ノ他ノ事情カラ其ノ
  障碍ヲ除クト云フコトガ、自分ダケノ英斷
  デ出來ルモノナラバ、幾ラデモヤリタイノ
  デスカ、自分ダケノ英斷デハ中々出來ナイ、
  色キナ事情ガアルモノデスカラ、サウ云フ
  點ハ能ク考慮シマシテ、サウ言ツタ方向ニ
  進ミタイト思ツテ居リマス

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• 060・前川正一

  ○前川委員　ソレニ關聯シテデアリマスガ、
  政府ガヤラレル所ノ農地開發ノ土地デアリ
  マスガ、之ヲ自作農ニセラレル場合ニ、山
  ヲ買ツタ價格ガ幾ラ、其ノ開墾ノ費用ガ幾
  ラ、斯ウ云フ計算カラ自作農ノ土地ノ價格
  ヲ決メラレルカモ知レマセヌガ、是ハ一ツ
  安ク、卽チ自作農トシテ飽クマデ維持シテ
  行ケルヤウナ見本ヲ御示シニナルト云フ意
  味ニ於テノ價格ノ割出シ方ト云フコトニ付
  テ何カ案ガゴザイマセヌカ

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• 061・岸田正記

  ○岸政府委員　便宜私カラ御答ヘ申上ゲマ
  ス、勿論只今ノ御話ノヤウナ點モ考慮シテ
  アリマスカラ、營團ニ對シテ助成ヲシテ居
  リマス、助成ノ額ダケハ工費ハ安クナリマ
  ス、併シ根本ハ荒地ヲ買ヒ、工費ヲ掛ケテ
  總體ノ費用ガドノ位ニナルカト云フコトヲ
  計算シテ居リマス、ソレニ政府ノ土地デア
  リマスカラ、其ノ助成ダケノモノヲ差引イ
  テ計算スルト云フコトニナツテ居リマス、
  デスカラ一般ノ人ガヤルヨリ若干安クナル、
  斯ウ云フコトニナリマス、尤モ是ハ色々ノ
  方法ヲ講ジマシテ、經費ノ掛ラナイヤウニ
  考慮シテ居リマス

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• 062・前川正一

  ○前川委員　ソレハ寧ロ經費ガ幾ラ掛カツ
  タカラト云フヤウナ營利的ナ考ヘデナクテ、
  後ノ自作農ニナツタ者ガ生活ガ維持シテ行
  ケルト云フ、サウ云フ立場カラ御計算ノ仕
  方ハ出來ナイモノデセウカ

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• 063・岸田正記

  ○岸政府委員　固ヨリ後ノ經營ガ全然賣拂
  ツタ値段デ出來ナイト云フヤウナ程度ノモ
  ノハ、是ハ一寸手モ付ケマセヌシ、考ヘラ
  レナイ譯デアリマス、若シサウ云ブモノニ
  手ヲ付ケテマデヤラナケレバナラヌト云フ
  風ナラバ助成ノ金ヲ殖ヤシテ引合フヤウ
  ニシナケレバナラヌ、要スルニ引合フト云
  フコトヲ原則トシテ考ヘテ居リマス

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• 064・前川正一

  ○前川委員　其ノ點ハ特ニ大臣ハ自作農ノ
  擴大强化ニ對シテ御熱心デアリマスカラ、
  是ハ一ツ具體的ナ見本デスカラ、先ヅ政府
  ノ土地ヲ自作化シテ行ク場合ニ於テ、最モ
  良キ範ヲ示シテ戴キタイト云フコトヲ希望
  致シテ置キマス
  尙ホ先程カラ議論ノ出テ居リマス自給肥
  料ノ問題デアリマス、肥料ガ十分デナイ、
  是ハ農民ノ大キナ聲デアリマス、自給肥料
  ノ爲ニハ色々ナ案ガアリマスガ、私ハ簡單ニ
  言ヘバ此ノ際「サイロ」ヲ思ヒ切ツテ各農家
  ガ一ツヅツ持テルヤウ二、三年位ノ計畫デ
  ヤルヤウニスル、「セメン」ガナイト言ハレル
  カモ知シマセヌガ、一ツ大キナ計畫ヲサレ
  レバ、ソレハ自給肥料ヲヤレト言ツテモ直
  グ出來ルノデアリマス、「サイロ」ヲ持タサ
  ズ、牛ガ子供ヲ產ンデモ何等之ニ補助モシナ
  イ、私ハ補助ト云フコトハ嫌ヒデスガ、牛
  ヲ此ノ際思ヒ切ツテ殖ヤシ、サウシテ有畜
  農業デ自給肥料デ行カウト云フナラバ、牛
  ヲ多ク產マス、牛ヲ產マシタ場合ハ幾ラカ
  ノ補助ヲヤル、サウシテドン〓〓殖ヤスト
  云フコトガ一ツト「サイロ」ハ幾ラデモヤレ、
  「セメント」ハ幾ラデモ補給シテヤル、此ノ
  二ツノ點ヲヤラレレバ內原出身ノ靑年ガ先
  頭ニナツテ自給肥料增產ニ馬力ガ掛ツテ來
  ルト思フノデアリマス、何モ「ポンプ」ノ呼
  ビ水ヲ出サズニヤレト言ツテモ無理ダト思
  ヒマス、「サイロ」一、三年デハ一寸難ヅカシイ
  カモ知レマセヌガ、恐ラク今三分ノ一位ノ農
  家ハ持ツテ居ルト思ヒマス、アト三分ノ二
  位ノ農家ガナイ譯デアリマスガ、「セメン
  ト」ナドモ大シタ量デナイノデアリマスシ、
  十五圓ヅツノ補助ヲヤツテモ金額ハ僅カデ
  アリマスカラ、全國ニ普及サセルト云フコ
  トト牛ノ子供ノ助成金ニシテモ大シタ金ハ
  掛ラナイノデス、是位ノコトヲヤラナイデ、
  肥料ガナイカラ辛抱シロト言ハレルノハ、
  當局ハ餘リニ親切デナイト思ヒマスガ、如
  何デセウカ

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• 065・岸田正記

  ○岸政府委員　只今御話ノ「サイロ」ノ增設
  ハ私ハ非常ニ贊成デアリマス、實際之ヲヤ
  ツタコトニ依ツテ、ドレ位肥料ガ緩和サレ
  テ增產上役立ツタカ、先刻大臣ノ御話ノア
  リマシタ如ク、牛ハ兎ニ角此ノ事變下ニ於
  テ、モト靑島カラ入ツテ居ツタ牛、屠殺シタ
  牛、之ヲ「カバー」シテ、而モ增殖シテ今二百
  十万頭ニモナツテ居ル、是等ガ非常ニ役立ツ
  テ居ルト云フコトハ事實デアリマス、私モ
  擴メテ行キタイト思フノデアリマスガ、現
  在ノ資材ノ關係カラ行クト、中々一寸奬勵
  金ヲ交付シテヤラセルト云フコトモ困難デ
  アリマス、デアリマスカラ、若シソレガ見
  込ミガ付キマスレパ、私共ハ手ヲ伸バシテ行
  キタイト考ヘテ居リマス、唯現在自給肥料ト
  シテハ、明年ノ豫算ニ計上シマシタノハ畜
  舍床ノ改造ヲ少シ促進シヨウ、サウシテ肥
  料ノ成分ヲナクサナイヤウニシヨウト云フ
  ノデ百万圓增額シテ、之ニ對處シヨウトシ
  テ居リマス、尙ホ自給肥料ニ付キマシテハ
  凡ユル部面ニ手ヲ盡シテ、之ヲ確保スルヤ
  ウニ進メタイト考ヘテ居リマス

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• 066・前川正一

  ○前川委員　牛ノ子供ニ助成金ハヤリマセ
  ヌカ

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• 067・岸田正記

  ○岸政府委員　牛ノ子供ニ助成金ハ考ヘテ
  居リマセヌ、唯基本ノ種牡牛ヲ買ヒマシテ
  種牡牛ヲ只デ貸付ケル、買ワ方ニ於テハ金
  デ行キ、貰フ方ニ於テハ物デ行ク、斯ウ云
  フコトニナツテ居リマス

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• 068・前川正一

  ○前川委員　是ハ非常ニ農民的ナ要求デア
  リマス實際是ハ農民ノ要求シテ居ルコト
  デアツテ一番可能性ガ强イト思ヒマス、ソ
  レカラモウ一ツ······最近ノ勞力不足カラ來
  ル共同作業ノ問題デアリマス、各地ノコト
  ハ知リマセヌガ、或ル地方デハ共同作業ヲ
  ヤル場合ニ、個人ヲ單位ニヤツテ居リマス、
  私ハ日本ノ農村ニ於テ共同作業ヲヤル場合
  ニ、個人單位ニシテハイカヌト思ヒマス、
  家族單位ニシナケレバイカヌ、農業ト云フ
  モノハ家族勞働カラ出來テ居ルノデアリマ
  ス、今マデオ爺サン、オ婆サン、子供モ仕
  事ヲシテ居ツタ、年寄ト子供デ一人前ノ仕
  事ヲシテ居ツタ、所ガ此ノ頃共同作業ヲヤ
  ルヤウニナツテカラ年寄子供ハ除外サレテ
  居ル、仕事ニ參加シナイ、ヤツテモ單ナル
  家庭的ノ仕事ノミデアル、農業勞働ニハ餘
  リ參加シナイ、猫ノ手モ要ル場合ニ遊ブコ
  トニナル、斯ウ云フヤウナ共同作業ノ指導
  方針ハ私ハ惡イト思フノデアリマス、個人
  ヲ基礎ニシナイ家族勞働、一家族ヲ單位ト
  シタ所ノ共同作業、斯ウ云フコトニセヌト、
  農村コソハ民族ノ源泉ダト言ヒナガラ、ト
  ンデモナイ「ロシヤ」ノ「コルホーズ」ミタイ
  ナヤリ方ニナリハシナイカト思フノデアリ
  マス、小サイ問題ノヤウデアリマスガ、農
  家ハ其ノ爲ニ仕事ガ遲レテ、農民ニ於テハ
  不平ガアルノデアリマスカラ、是ハ一ツ指
  導方針ヲハツキリ御立テニナランコトヲ御
  願ヒ致シマス、何カソレニ對シテオ氣付ノ
  點ガアレバ伺ツテ置キタイト思ヒマス

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• 069・岸田正記

  ○岸政府委員　共同作業ノ御示シガアリマ
  シタガ、勿論私共現在ノ農業ヲ經營シテ居
  ル所ノ事情ヲ無視シテ、理窟ダケデ行クト
  云、フコトヲ考ヘテ居ル譯デハゴザイマセヌ、
  作業ノ性質ニ依ツテサウ云フ風ナ「チーム
  ワーク」デ出來ルカドウカト云フコトハ考
  ヘナケレバナラヌト思ヒマス、此ノ點ハ十
  分勘考シテヤツテ居ル譯デアリマス、是力
  ラ生產統制令等ニ於テ共同作業ヲ相當行ツ
  テ行クト云フコトニナリマスレバ、十分其
  ノ點ヲ考慮シテ、其ノ向キ〓〓デ働ケルヤ
  ウニヤツテ行クト云フコトヲ考ヘ行カナケ
  レバナラヌト思ヒマス

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• 070・前川正一

  ○前川委員　私ノ言フノハ、農繁期ニ於テ、
  農家全體ガ仕事ヲシテ居ルノデス、其ノ
  場合ニ年寄ト子供トガ仕事カラ除外サレル
  ヤウナ最近ノ共同作業ノ方針ハ良クナイ、斯
  ウ云フ點デアリマス
  尙ホ次ニ御尋ネシタイコトハ、最近色々ノ
  食糧關係ノ商業組合、工業組合ガ出來テ來
  タノデアリマスガ、其ノ場合極メテ小サナ
  問題トモ思ヒマスルガ、例ヘバ卸商業組合
  ガ出來テ小賣商業組合員全體ニ-甘藷ノ
  問題デアリマスガ、事實上指定商トシテ指
  定ヲシナイ、過去ニ於テヤハリ商賣ヲシテ
  居ツタ、甘藷モ賣ツテ居ツタ、ソレニ對シ
  テ卸商組合ノ單ナル感情ト云ヒマスカ、政
  府ハ成ベク商賣人ヲ減ス方針ダカラ、オ前
  等皆ニヤラヌデモ宜イヂヤナイカ、斯ウ云
  ツタ少數ノ卸商業組合ノ幹部ノ意見ニ依ツ
  テ、其ノ地域內ニ於ケル小賣商業組合員ノ
  甘藷ヲ賣ツテ居ツタ者ニ對シテ指定商ニシ
  ナイモノガ何割カアル、斯ウ云フ實例ガア
  ルノデアリマス、是ハ單ナル一ツノ實例デ
  アリマスガ、斯ウ云フコトハ他ノ地方ニモ
  アルト思ヒマス、一ツ政府ノ方デ斯ウ云フ
  場合ノ指導ト監督ヲ嚴重ニサレテ、功利的
  ニナラウトスル所ノ斯ウ云ツタ商工業組合
  ノ幹部ノ〓育ト云ヒマスカ、監督ト云ヒマ
  スカ、指導ト云ヒマスカ、之ヲ十分ニサレ
  ル必要ガアルノデハナカラウカト思ヒマス、
  之ニ對シテ御意見ガアレバ承リタイト思ヒ
  マス

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• 071・井野碩哉

  ○井野國務大臣　現在各種ノ物資ニ付テノ
  配給機構ノ整備ニ當リマシテハ、過渡的ノ
  時代ニ於テ色々ノ問題ガアラウト思ヒマス、
  併シ御示シノヤウナ業者ニ對スル指導機構
  ト云フモノハ、出來ルダケ政府トシテモ考
  慮シテ參リタイト考ヘテ居リマス

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• 072・前川正一

  ○前川委員　尙ホ甘藷ノ價格ノ問題ナノデ
  スガ、實際ハ百姓ガ一貫目二十二錢バカリ
  デ甘諸ヲ賣ツテ、サウシテ其ノ百姓ノ住ン
  デ居ル村ニ入ツテ來タ場合ニハ三十五錢ニ
  ナツテ來ル、私ハ是ハ少シ利幅ガ廣過ギル
  ノデハナイカト思フ、是ハ岩瀨君ノ居ル所
  デ言フノハ變デスガ、別ニ岩瀨君ノ責任デ
  ハナイノデアリマスカラ申シマスガ、地方
  ニ於テ小賣ノ人達ガ二十九錢何厘カデ元受
  ヲシタモノヲ、一等級ノ甘藷ダト言ヒナガ
  ラ皆三十五錢デ賣ツテ居ル、一等モ二等モ
  アリハシナイ、是ハモウ少シ嚴重ニヤツテ
  戴キタイト云フコトト、利幅ニ對シマシテ
  モウ少シ御考慮ヲ願フ必要ガアルノデハナ
  イカト思ヒマス、是ハ全國各地ノ甘藷ヲ作
  ツテ居ル農民ノ不平ダト思フノデアリマ
  ス、此ノ調子デ行ケバ折角芋ガ三割餘リノ
  增產ニナリマシタガ、來年ハ減ルコトニナ
  ルノデハナイカト思ヒマス、甘藷ヲ增產シナ
  ケレバナラヌト云フ時ニ、ソレガ減ルヤウ
  ナコトガアツタラ困ルト思ヒマスカラ、少
  シ此ノ點ハ御考ヘヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=72

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• 073・井野碩哉

  ○井野國務大臣　芋ノ問題ニ付キマシテ
  ハ先般ノ臨時議會デ色々御質問モアリ、政
  府モ其ノ後色々考慮致シマシテ、本年ハ丁
  度仕事ヲ始メタ其ノ過程ニアリマスカラ、
  餘リ過程ノ上ニ於テ大ナル變化ヲ起シマス
  下、其ノ均衡モ破レ、種々支障ヲ生ジマス
  ノデ、本年ノ配給狀況ニ應ジテ直シ得ル限
  度ニ於テ、最近色々ナ點ヲ直シマシタ、其
  ノ詳細ハ農政局長カラ申上ゲマス、價格等
  モ或ル程度ノ修正ヲ致シタノデアリマス、
  尙ホソレニ付テ不十分ナ點ガアリマスレ
  バ、明年以後ノ色々ノ問題トシテハ、十分
  私トシテモ考慮シタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=73

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• 074・岸田正記

  ○岸政府委員　丁度好イ機會デスカラ私カ
  ラモ補足サシテ戴キタイト思ヒマス、芋ノ
  價格デ此ノ前ノ議會ノ時ニ、平野サンカラ
  御質問ニナツタコトガ五箇條バカリアリマ
  スガ、ソレニ伴ツテ話ヲシタ方ガ宜カラウト
  思ヒマシテ御話申上ゲマス、其ノ時ニ甘藷
  ノ公定價格ヲ全國的ニ改正スルコトガ出來
  ルカドウカト云フコトニ付キマシテハ、只
  今大臣ノ御話ニナリマシタヤウナ次第デア
  リマスガ、中途デヤツタガ宜イカドウカト
  云フコトハ問題デアラウト思ヒマシテ、是
  ハ止メテ居リマス
  ソレカラ先程ノ一等品、二等品、三等品
  ノ價格ガ生產者ノ方ニアルニ拘ラズ、販賣
  ノ方ノ生芋ハ一等品バカリニナツテシマ
  フ、斯ウ云フコトガアルガ、サウ云フ譯デ
  進ンデ居ツタ譯デハナイノデアリマシテ、
  結果ニ於テ左樣ナコトガ出テ來タ、物ガ足
  リナイ時ニハサウ云フコトニナルノデアリ
  マスカラ、ソレニ對シテハ生產者ノ販賣價
  格ガ等級別ニナツテ居ルト同ジヤウニ、販
  賣ノ方ノ價格モ等級別ニスルト云フコトニ
  規則ヲ直シマシタ、ソレカラ幾分デモ生產
  者ノ方ニ潤ヘルモノナラバヤルト云フ考慮
  ノ下ニ、値段ヲ變ヘルコトハ出來ナイケレ
  ドモ、何カノ方法デ考慮スルト大臣モ仰シ
  ヤツタノニ卽應シマシテ、統制會社ノ方ニ
  於テ集荷ノ場所ヲ生產地ニクツ付ケテ、澤
  山增產シマシテ、ソコデ引取ル、サウシテ
  運賃ハ會社ノ負擔ニスルト云フ方針ヲ執リ
  マシテ、問題ノアツタ所ヲ非常ニ緩和シテ
  シマヒマシタ、ソレカラ尙ホ未檢査品ノ步
  引ノ割合或ハ裸賣ノ步引ノ割合ト云ツタヤ
  ウナモノニ付テモ、其ノ步引ヲ減ラシマシ
  テ、サウシテ幾分デモ生產者ニ有利ニスル
  ヤウニ致シマシタ、ソレカラ又今御尋ネニ
  ナリマシタ生產者ノ値段ニ比シテ-是ハ同
  ジ町村ハ心配ハナイガ、隣ノ町村デサウ云フ
  コトガアツタラウト思ヒマス、サウ云フコ
  トニ對シテハ此ノ價格ヲ決メル際ニ、サウ
  云フ場合ニ於テハ地方長官ニ於テ適當ノ處
  置ヲ執ルヤウニ、方法ヲ示シテ居ルノデア
  リマス、ソレヲ實行シテ居リマセヌ爲ニ、
  サウ云フ不都合ナコトガアルナラバ、サウ
  云フ地域ハ價格ヲ下ゲテ、生產者トノ均衡
  ヲ圖レト云フコトノ通牒ハ既ニ出シテ居ル
  ノデアリマス、是等ニ付キマシテハ無論實
  行ノ狀態ヲ考ヘ合ハセマシテ、順次直シテ
  行キタイト思フノデアリマス、是等ハ大體
  平野サンカラノ御尋ネノアツタコトニ付
  テ、又其ノ外ノ各委員カラ御話ノアツタ點
  ヲ照合シテ、出來ルダケノ處置ヲシテ本年
  ハヤツテ行カウ、斯ウ云フ考ヘデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=74

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• 075・前川正一

  ○前川委員　麥工聯ハ中央ノ營團ニ入ルコ
  トニナツテ居リマスカ、地方ノ方ハドウナ
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=75

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• 076・湯河元威

  ○湯河政府委員　中央ノ營團ニ日本精麥工
  業組合聯合會ヲ入レル考ヘヲ持ツテ居リマ
  ス、地方ノ營團ニ地方ノ精麥業者ヲ入レル
  カドウカト云フコトハ、地方々々ノ事情ニ
  依ツテ十分能ク考ヘテヤリタイト思ツテ居
  リマスガ、大體中央營團デ精麥シタモノヲ、
  地方ニ配給スルコトニナルト思ヒマス、唯
  地方生產ノ原麥ヲ使ヒマス地方ノ消費ノ問
  題デアリマスガ、此ノ問題ニ付キマシテハ
  地方々々ノ精麥設備ヲ動カスコトニナルノ
  デ、地方營團ニ收容スルコトニスルカドウ
  カト云フコトハ、是ハ別ニ考ヘテ宜イト思
  ヒマス、地方ノ麥ヲ地方デ精麥シテ消費ス
  ルニハ、地方ノ精麥設備ヲ利用スルト云フ
  コトガ宜イト思ヒマスガ、果シテ其ノ場合
  ニ地方ノ精麥業者或ハ組合ヲ、地方營團ニ
  收容スルカドウカト云フコトハ、モウ少シ
  〓究シテ見タイト思ヒマス

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• 077・前川正一

  ○前川委員　モウ一ツ營團ガ取扱フ品物ノ
  種類デスガ、此ノ間御示シニナツタノデハ
  米、麥、甘藷、馬鈴薯、雜穀等ト云フノデ
  アリマスガ、國民ノ主要食糧ノ中ニ於テ蔬
  菜トカ鮮魚介ト云フモノハ、非常ニ重要ナ
  モノデアルト思ヒマス、是ハ非常ニ複雜ナ
  關係ガアリマスガ、營團ハ將來サウ云フモ
  ノヲ取扱フコトガアルノデセウカ、ナイノ
  デセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=77

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• 078・湯河元威

  ○湯河政府委員　其ノ點ハ只今ノ所ハ豫
  想シテ居リマセヌ、實ハ今前川サンノ御話
  ノヤウニ、此ノ取引ノ經濟機構ハ餘程違ツ
  テ居リマス、斯ウ云フ風ナ中央地方ノ營團
  組織ヲ以テスルコトガ、適當デアルカドウ
  カト云フコトハ、十分能ク考ヘナケレバナ
  ラヌト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=78

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• 079・前川正一

  ○前川委員　是ハ管理局長官ニ御尋ネスル
  ノデアリマスガ、最近農民ノ聲トシテ斯ウ
  云フコトヲ言ツテ居ルノデアリマス、管理
  米トシテ供出スル時ニ地主兼自作農ノ場合
  ハ地主兼自作農ガ今マデ自分ノ家デ食ツ
  テ居ツタモノハ、自作シテ出來タモノヲ食
  ツテ居ツタ、今日デ言ヘバ保有米ト稱スル
  モノデアリマス、所ガ最近ハ石五圓ノ金ガ
  貰ヘルカラ、自作ノ土地カラ出來タ米ヲ管
  理米トシテ出シテ、今マデ小作米トシテ貰
  ツテ居タモノハ產業組合ノ倉庫ニ入レテ置イ
  テ他ニ販賣シテ居ツタモノヲ、自分ノ家ニ
  持ツテ來サセテ保有米ニスル、管理米ニス
  ルノハ自作地デ出來タ米ヲ管理米トスル、
  是ハ今度ノ此ノ問題ト關聯ハナイノデアリ
  マスガ-將來關聯シテ來ルト思ヒマスケ
  レドモ、是ハ一體ドウ云フ風ニ取扱ツタラ
  宜イノデセウカ、是ハドウモ變ダト云フ聲
  ガ農民ノ間ニ非常ニ强イノデアリマス、是
  ハ小サナ地主カラ言ヘバ已ムヲ得ナイトシ
  テ、同情ノ出來ルコトデアリマス、併シ折
  角石五圓貰ヘルカラ、貰ヘルモノナラ貰ヒ
  タイト云フ氣持モアリマセウガ、政府ハサ
  ウ云フ場合ニオ金ヲ出ス時ノ氣持ハサウ
  云フ場合モアリ得ルコトト御想像ニナツテ
  オヤリニナツタコトデアルカドウカト云フ
  點ニ付テオ尋ネ致シマス

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• 080・湯河元威

  ○湯河政府委員　只今前川サンカラ御指摘
  ノ點ハ非常ニ重大ナル問題デ、吾々モ重要
  ニ感ジテ居リマス、實ハ昨年ノ秋一石五圓
  ノ生產奬勵金ヲ支出スル場合ニ、色々地方
  ノ實情等モ地方ノ關係者ト會同シテ〓究致
  シマシタ結果、只今ノ所デハ生產奬勵金ノ
  石五圓ハ地主兼自作農ノ場合ニ於テモ、政
  府ハ一應計算上ハ出スコトニ致シテ居リマ
  ス、併シ地主ガ自分ノ作リマシタ米ヲ從來
  食ツテ居ツタニモ拘ラズ、生產奬勵金ガ出
  ルコトニナツタガ故ニ、小作米ヲ食ベテ自
  分ノ作ツタ米ヲ賣出スト云フ傾向ガアル、
  其ノ爲ニ農村デハ非常ニ妙ダト云フ印象ヲ
  起シマスヤウナ場合ノアルコトハ、洵ニ吾
  吾ノ期待ニ反スルノデアリマス、大體此ノ
  生產奬勵金ナルモノハ米價ノ引上ト相對シ
  テ居ル譯デアリマシテ、從來自分ノ作ツタ
  モノヲ食ツテ居ル地主ガアリマスレバ、ソ
  レガ率然トシテソレヲ賣出シテ小作米ヲ食
  ベテ奬働金ヲ取ルト云フヤウナコトハ、道
  理上洵ニ面白カラヌコトデアルト思フノデ
  アリマス、唯之ヲ一時ニキチツト區別スル
  ト云フコトニ付キマシテ、實ハ地方ノ當局
  者等トモ色々相談ヲ致シタノデアリマスガ、
  ドウモハツキリセヌ所ガアルト云フコトヲ
  申シマスノデ、只今カラ地方ニ其ノ趣旨ヲ
  十分徹底シマスルヤウニ通牒ヲ致シマシテ、
  地主側ノ自肅ヲ待ツテ居ル次第デアリマス、
  吾々ノ考ヘト致シマシテハ地主ト雖モ種々
  自作米ヲ賣ツテ居タ地主ガアルトスレバ、
  此ノ人ニ奬勵金ガ年五圓參リマスコトハ、
  正當デアルト考ヘテ居リマス、區別ノ付ケ
  ニクイ點ガゴザイマスノデ、若干徹底ヲ缺
  イテ居ル點ガアルト思セマス、今後指導上
  十分氣ヲ付ケマス

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• 081・三善信房

  ○三善委員長　平野力三君

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• 082・平野力三

  ○平野(力)委員　第一ニ御伺ヒ致スコトハ
  第二條ノ勅令ヲ以テ定ムル食糧ト云フ問題
  ガ只今ノ御答辯デハマダ明確ニナツテ居ラ
  ヌノデスガ、米麥、甘藷、馬鈴薯、其ノ他ノ
  雜穀ト云フ點マデハ明確ニナリマシタガ、
  又蔬菜ノヤウナモノハ今考ヘテ居ラヌ、斯ウ
  云フコトモ明カニナリマシタガ、米麥、甘
  諸、馬鈴薯、雜穀以外ニハ其ノ他ドウ云フヤ
  ウナ範圍ニマデ是ガ及ブカト云フヤウナコ
  トモ凡ソ輪廓ヲ承ツテ見タイノデアリマス

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• 083・湯河元威

  ○湯河政府委員　第二條ノ解釋ノ問題デゴ
  ザイマスガ、是ハ只今ノ運用ノ方針ト致シ
  マシテハ、先程申シマシタヤウナ米麥、甘
  諸馬鈴薯、雜穀及ビ其ノ加工品ト云フ程
  度ニ止マツテ居ルノデアリマス、是ハ政府
  ノ特別會計ヲ以テ措置致シマスル食糧管理
  ノ輪廓ニ關係スルコトデゴザイマスノデ、將
  來此ノ以上ニ亙リマシテ管理致シマスコト
  ガ可能デアリ、必要デアル時ニ至リマスレ
  バ、勅令ヲ以テ更ニソレ以外ノモノニモ及
  ボスコトガ出來ルヤウニ仕組ンデゴザイマ
  スルガ、只今ト致シマシテ吾々食糧管理局
  デ御預リヲシテ居リマスル範圍ニ於キマシ
  テ色々考ヘテ居リマスルト、先ヅ今御示シ
  シタ範圍デヤツテ行クノガ、ソシテソレヲ
  完全ニスルノガ當面ノ急務ダト考ヘテ居リ
  マス

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• 084・平野力三

  ○平野(力)委員　サウスルト將來ハ其ノ範
  圍ガ相當ニ擴ガツテ行クモノデアルト考ヘ
  テ差支ヘナイノデスカ

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• 085・湯河元威

  ○湯河政府委員　先程申上ゲマシタヤウニ
  是ハ行政ノ實際ノ必要ガ之ヲ認メマスルシ、
  又是ガ經濟的ニ取引其ノ他流通ノ關係-
  生產、消費、配給ノ關係ガ此ノ管理法ニ依ツテ
  ヤツテ行クコトガ可能デアリ、適當デアルト
  云フコトガ前提ニナルト考ヘマス

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• 086・平野力三

  ○平野(力)委員　第三條ノ命令ヲ以テ定ム
  ルモノヲ全部政府ニ賣渡スベシト云フ此ノ
  解釋ハ、農家ノ飯米以外ノモノヲ全部賣渡
  セ、斯ウ云フコトニ解釋シテ宜シイノデスカ

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• 087・湯河元威

  ○湯河政府委員　大體左樣デゴザイマス米
  ニ付キマシテハ只今自家用保有米制度ヲ米
  穀管理ノ制度デ認メテ居リマスガ、之ヲ除キマ
  シテ其ノ他ノモノヲ政府ニ賣渡スベシ、斯
  ウ云フコトニナルノデゴザイマス、モウ少
  シ細カクナツテ宜シケレパ申上ゲマスガ、只
  今デハ酒米ノ特約栽培ノモノハ政府ニ賣渡
  スベシト云フコトニハナツテ居リマセヌ
  サウ云フヤウナ特殊ノ事情ノアルモノガ除
  カレルノデアリマス、麥ニ付キマシテハ自
  家用麥ト云フ制度ガゴザイマセヌノデ、是
  ハ米程ニ嚴重ニ參リ兼ネルノデアリマス、
  只今ノ麥類ノ配給統制規則上ニ於キマシテ
  ハ生產者、地主ガ麥類ヲ賣ルモノハ政府
  ニ全部賣ルト云フコトニ致シテ居リマス、
  是等ノ點ハ十分實情ヲ勘案致シマシテ、出
  來ルダケ横流レトカ、或ハ溢レルモノノナ
  イヤウニ致シテ行キタイト考ヘテ居リマス

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• 088・平野力三

  ○平野(力)委員　同ジク第三條ノ第二項デ
  アリマスルガ、「政府ノ買入ノ價格ハ勅令ノ
  定ムル所ニ依リ生產費及物價其ノ他ノ經濟
  事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム」ト云フ生產費ト云
  フ內譯ガ大體吾々モ常識的ニハ分ツテ居ル
  ノデアリマスガ、此ノ際御差支ヘガナケレ
  バ〓糧管理局ニ於テ考ヘテ居ラルル此ノ生
  產費ト云フモノノ主ナル內譯、及ビ其ノ勞
  賃デアリマスルナラバ勞賃ヲドノ程度ニ見
  テ居ルカ、或ハ肥料代デアリマスルナラバ
  一反ニ付テ大體ドノ程度ノ肥料代ヲ見テ居
  ルカ、此ノ數字ニ付テ御明示ヲ願ヘレバ幸
  ヒト思ヒマス

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• 089・湯河元威

  ○湯河政府委員　其ノ點ハ實ハ勅令ヲ規定
  致シマス際ニ十分愼重ニ考ヘタイト存ジテ
  居リマスルガ、大體此ノ生產費ハ只今デハ
  米穀統制法ノ施行令ニ於キマシテ生產費內
  容ヲ法規ヲ以テ定メテ居ルノデゴザイマス、
  是ハ相當深イ〓究ヲ致シマシタ結果決メマ
  シタ項目デゴザイマシテ、御參考マデニ申
  上ゲテ見レパ、或ハ種籾代、肥料代、或
  勞賃、畜力費、諸材料費、農會費、農具費、
  租稅其ノ他ノ公課、部落協議費又ハ之ニ準
  ズルモノ、是ハ特ニ水利費又ハ病蟲害驅除
  豫防費タルモノ、ソレカラ土地、資本利子
  小作料、米穀檢査手數料、是等ノモノガ從
  來生產費ノ項目トシテ擧ゲラレテ居ツタノ
  デゴザイマスルガ、是ハ御承知ノ通リニ米
  穀統制法ニ於キマスル所謂最低價格ヲ決メ
  マスル場合ノ生產費デゴザイマシテ今度食
  糧管理法ニ依リマシテ政府ノ買入價格ヲ決
  メマスル生產費ヲ取リマスル場合ニ於キマ
  シテハ、此ノ儘デハ如何カト吾々ハ考ヘテ居
  リマス、此ノ外ニ投下資本ノ利子デアリマ
  ストカ、或ハ相當ノ經營上ノ利潤ト云フヤ
  ウナモノヲ加味致シマシテ、生產費ヲ決メ
  ルコトガ適當ダト考ヘテ居ルノデアリマス、
  是等ノ各費目ニ付キマシテドレダケノ數字
  ガ現ハレルカト云フコトハ每年吾々ノ手許
  デ從來生產費調査ヲ致シテ居リマス、今後
  モ其ノ生產費調査ヲ更ニ一層改善シマシテ、
  此ノ法規ノ適用ニ役立ツヤウニ致シテ參リ
  タイト考ヘテ居リマス、生產費項目ノ一々
  ヲ申上ゲマスコトハ祕密事項ニナツテ居リ
  マスノデ差控ヘサシテ戴キタイト思ヒマス
  ガ、例ヘバ一例ヲ申シマシテ勞賃ノ如キモ
  ノヲ如何ニ見ルカト云フコトニ付キマシテ
  ノ考慮ヲ參考マデニ申上ゲマスト、吾々ト
  致シマシテハ、各地方ノ農村ニ所謂協定勞
  賃ナルモノガゴザイマス、之ヲ以テ主張シ
  テ參ルコトニナツテ居リマスガ、併シ吾々ガ
  今後色々此ノ買入價格ヲ勘案致シマス場合
  ニ於キマシテハ、勞賃ト致シマシテハ少ク
  トモ農村ノ勞力ガ他ノ有利ナ方面ニ逃ゲテ
  行カナイヤウニ、相當事情ヲ勘案シテ勞賃
  ノ計上ヲ決メルト云フ風ナコトヲ考ヘテ居
  リマス、具體的ノ數字ダケハ一ツ御許シヲ
  願ヒタイト思ヒマス

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• 090・平野力三

  ○平野(力)委員　ソレカラ米價ノ計算方法
  ニ付テ地主、自作農ト小作農ノ供出ズル米ト
  云フモノハ實際ノ內容ニ於テハ相當ニ差ノ
  アルベキ筈デアリマス、肥料モ勞働賃金モ
  加ヘナイ小作料トシテ取ツタモノヲ賣ルト
  云フ其ノ米價、ソレカラ自作農ノ如ク全收
  穫ガ自分ノモノデアルト云フモノト、小作
  料トシテ約半分ヲ提出シテ、殘ツタモノガ
  收入デアルト云フ此ノ米價ノ計算ト云フモ
  ノハ嚴密ニ申シマスルト、三種ニナラザル
  ヲ得ヌノデアリマス、ソコデ小作料ノ問題
  ハ論外ト致シマシテ、自作農ノ米價ノ計算
  ト小作農ノ米價ノ計算トニハ相當ノ差ガ生
  ジテ來ナケレバ相成ラヌ筈デアリマスガ、
  此ノ點ニ付テハ食糧管理局長官トシテハ何
  カ御考ヘニナツテ居ルコトガアリマスカ、
  或ハ斯ウ云フ點ニ付テハ別ニ特ニ考ヘテ居
  ラレナイノカ、一寸聽イテ置キタイ

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• 091・湯河元威

  ○湯河政府委員　自作農ト小作農トハソレ
  ゾレ其ノ經濟的ノ立場ニ於テ違ヒモゴザイ
  マスルガ、生產者トシテ見マスル時ニ、小
  作農ニ付キマシテハ、小作料ヲ生產費ノ中
  ニ見込ムノデゴザイマス、自作農ニ付キマ
  シテハ土地資本利子ヲ見込ンデ居ルノデア
  リマスガ、土地資本利子ノ計算ハ大體吾々
  ノ所デハ類地ノ小作料ニ依ツテ之ヲ計算ス
  ルト云フ方法ヲ執ツテ居リマス、サウ致シ
  マシテ、實ハ只今マデ兩者ノ違ヒヲ詳細ニ
  檢討致シマシテ、サウ著シイ違ヒハ出テ居
  リマセヌノデ、兩者ヲ平均致シマシタモノ
  ヲ以チマシテ一ツノ價格ノ基準ニ致シテ居
  リマス、將來モ十分今ノ御話ノヤウナコト
  モゴザイマスルカラ、吾々トシテモ〓究ヲ怠
  ラナイ積リモゴザイマスガ、差當リノ所其
  ノ方針デヤツテ參リタイト考ヘテ居リマス

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• 092・平野力三

  ○平野(力)委員　其ノ點ハ特ニ御留意ヲ願
  ツテ置キタイト思ヒマス
  次ニ御伺ヒ致シマスノハ、此ノ買入價格
  ヲ決定スル委員會ノ內容デアリマスガ、前
  ニハ米穀統制法ニ依リマシテ大體ノ內容ガ
  明示サレタト思ヒマスガ、此ノ法律ニハ只
  今申上ゲタヤウナ「生產費及物價其ノ他ノ經
  濟事情ヲ參酌」スルトアルダケデ、ドウ云フ
  機關ニ依ツテ之ヲ決定サレ、ドウ云フ機關ニ
  諮問ヲセラレルカト云フコトハ書イテナイ
  ノデアリマス、之ニ付テハ何カ特別ノ諮問
  機關ノヤウナモノヲ當局ハ考ヘテ居ラレル
  カドウカ承ツテ置キタイ

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• 093・湯河元威

  ○湯河政府委員　實ハ最低價格、最高價格
  ニ付キマシテモ、法律ノ上ニハ書イテゴザ
  イマセヌ、當時ニ於キマシテハ勅令ヲ以チ
  マシテ、米穀統制委員會ト云フモノヲ設ケ
  テ居リマス、其ノ委員會デ審議スルコトニ
  ナツテ居リマス、其ノ趣旨ハ米穀統制法ノ
  第二條ノ「政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト
  云フコトガ、或ハ其ノ內容ヲ暗示シテ居ツ
  タカト思ヒマスガ、ソレナラバ今度モ同ジ
  ヤウニ「勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト出テ居リ
  マス、實ハ吾々ノ方ハ此ノ法律ノ施行ニ關
  シマスル重要ナル事項ヲ審議致シマスル爲
  ニ、特ニ〓糧管理委員會ヲ設置致シタイト
  存ジマシテ、法律ノ中ニ其ノ事ヲ規定シテ
  ハ如何カトモ思ヒマシタガ、最近ノ立法ノ
  例ニ倣ヒマシテ、特ニ規定ノ上ニハ載セマ
  セヌデシタ、併シ官制ヲ以チマシテ、食糧
  管理委員會ト云フモノヲ設ケマシテ、ソレ
  ニ於キマシテ此ノ法律ノ施行ニ關スル主要
  事項ヲ調査審議シテ貰フコトニナリマスカ
  ラ、買入價格ノ問題モ其ノ委員會ノ重要ナ
  ル問題ニ相成ルダラウト私共考ヘテ居リマ
  ス

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• 094・平野力三

  ○平野(力)委員　サウスルト〓糧管理委員
  會ト云フモノガ大體ニ於テ其ノ價格等ノ諮
  問ヲ受ケルコトニナルト解釋シテ宜シイノ
  デスカ

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• 095・湯河元威

  ○湯河政府委員　サウ致ス積リデゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=95

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• 096・平野力三

  ○平野(力)委員　次ハ第五條ノ問題ガ相當
  不明瞭ノヤウニ思フノデゴザイマスガ、茲
  ニ「米麥以外ノ主要食糧ノ買入又ハ賣渡ノ價
  格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム」トナツテ居リ
  マス、此ノ解釋カラ言ヘバ甘藷、馬鈴薯等
  ハ米麥以外ノ主要食糧ニナツテ居ル、第五
  條ニ依レバ時價デ買フ、斯ウ云フコトニナ
  ルト、今ヤツテ居ラレルコトトハ大分違フ
  ト思フノデスガ、是ハドウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=96

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• 097・湯河元威

  ○湯河政府委員　第五條ノ規定ハ所謂保管
  的ナ意味ヲ持チマス食糧ヲ政府ガ必要ナリ
  ト認ムル時ニ賣買スルノデゴザイマス、此
  ノ價格ノ決メ方ハ時價ニ準據シテ之ヲ定メ
  ル、現在米穀ノ應急措置法ニモヤハリ同樣
  ノ規定ガアルノデゴザイマス、運用ノ上ニ
  於キマシテハ現狀ト變ラナイ積リデゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=97

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• 098・平野力三

  ○平野(力)委員　併シ玆デ米麥以外ノ主要
  食糧ト云フノハ、甘藷、馬鈴薯ニ當ツテ居
  ル譯デスネ、ソレヲ時價デ買フト云フコト
  ハ甘藷、馬鈴薯ハ現在時價デ買ツテ居ラ
  ヌノデスガ、是ハドウナルノカ、ソコヲ聽
  キタイノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=98

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• 099・湯河元威

  ○湯河政府委員　現在甘藷、馬鈴薯ハ米穀ノ
  應急措置ニ關スル法律ノ規定ニ依ツテ買ツ
  テ居ルノデアリマス、時價ニ準據シテ買入
  價格ヲ定メマシテ之ヲ買ツテ居ルノデアリ
  マス、政府ノ買入價格ハ時價ニ準據致シテ
  居ルト云フコトデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=99

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• 100・平野力三

  ○平野(力)委員　大體此ノ法律ガ出ルト應
  急措置法デハナク、是デ御ヤリニナルト解
  釋シテ居ルノデス、サウスルト甘藷、馬鈴
  著ト云フモノハ第五條ニ適用サレテ時價デ
  今後買ツテ貰フコトガ出來ル、斯ウ云フコ
  トニナルノデハナイカト思ヒマスガ、ソレ
  デ宜シイノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=100

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• 101・湯河元威

  ○湯河政府委員　ドコマデモ時價ニ準據シ
  テ政府ノ定メタル價格ニ依ツテ買フ、是ハ
  從來應急措置法デ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
  ト云フコトニナツテ居リマスノデ、現在政
  府ノヤツテ居ル處置ガ何カ不都合ガゴザイ
  マスレバソレヲ改メルコトニシテ、只今ノ
  處置デ宜シケレバソレデヤルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=101

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• 102・平野力三

  ○平野(力)委員　ソコデ御伺ヒ致シマスガ、
  日本甘藷、馬鈴薯統制株式會社ハ今後此ノ
  營團ニ吸收サレルコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=102

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• 103・湯河元威

  ○湯河政府委員　日本甘諸馬鈴薯會社ハ此
  ノ營團ニ吸收致シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=103

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• 104・平野力三

  ○平野(力)委員　サウ致シマスルト甘藷、
  馬鈴薯ノ統制ハ現在出來テ居ル會社ガ大體
  ニ於テヤル、第五條ニ依リマスルト甘藷馬
  鈴薯ハ只今ノ御說明ニ依リマシテモ大體ニ
  於テ主要食糧以外ノモノトシテ時價ニ準據
  シテ買ツテ貰ヘル、ココニ私ハ依然トシテ
  相當喰違ヒガアルト思フノデアリマス、ソ
  コデ先程前川君カラモ此ノ問題ニ付テ質問
  ガアリ、農政局長カラモ御答辯モアリマシ
  タガ、私ハ此ノ甘藷ニ關スル問題ニ付テハ
  先程ノ御答辯ダケデ實ハ滿足シ難イモノガ
  アルノデゴザイマス、是ハ大臣ガ屢〓、前議
  會ニ於テモ抽象的ニハ相當誠意ノアル御答
  ヘヲサレテ居ルノデ、其ノ誠意ノ現レト云
  フモノガドノ邊ニアルカト云フコトヲ吾々
  トシテハ深ク注意ヲ拂ツテ見テ居ツタノデ
  アリマスガ、先程ノ農政局長ノ御答辯ニ依
  ルト極メテ微溫的ナモノデ、唯驛マデ持ツテ
  行ケバ宜カツタノヲ、農民ノ持ツテ行ク所
  ノ數ガ殖エテ、幾ラカソレニ運賃勞力ト云
  フモノガ削減セラレルト云フヤウナモノヲ
  具體的ニ見ル程度デアツテ、其ノ改正ヲサ
  レタ心持ニ付テハ固ヨリ吾々ト致シマシテ
  モ非常ニ困難ノ中ヲサレタト云フコトニ付
  テハ諒承スルノデアリマスケレドモ、併シ
  今尙ホ此ノ點ニ付テ不十分デアルト考ヘル
  ノデ、ココニ具體的ナ一ツノ事例ヲ擧ゲテ
  此ノ問題ニ付テハ此ノ點ガ、此ノ程度ニ一
  ツ改メルコトガ出來ルカドウカト云フコト
  ヲ、此ノ際ニ於テハツキリト伺ヒタイノデ
  アリマス、實ハ前議會ニ於テモ相當ニ承ラ
  ウト思ツタノデアリマスガ、是ハ會ノ性質
  上通常議會ニ讓ルベキモノデアルト考ヘタ
  ノデ、此ノ際ハ洵ニシツコク申上ゲルヤウ
  デアリマスケレドモ、相當詳シク御伺ヒ致〓
  シマスノデ、一ツ御諒承願ヒタイト思フノ
  デアリマス、是ハ靜岡縣沼津ヲ中心トスル
  地方ニ於キマスル甘藷ノ取扱方ノ實況ト云
  フモノヲ地方ノ農民各位カラ聞イタノデア
  リマスガ、農民タル生產者ノ統制會社ニ納
  メル値段ガ十貫目二圓七十錢、會社ガ市場
  ヘ出シマスルノガ二圓七十錢、市場ガ配給
  所ヘ持ツテ參リマスノガ三圓十八錢、配給
  所ガ小賣業者ニ持ツテ參リマスノガ三圓三
  十五錢、小賣業者ガ消費者ニ持ツテ參リマ
  スノガ三圓八十錢、驚クナカレ生產者ノ農
  民ノ手カラ離レテ消費者ニ參リマス間ニ於
  テ二圓七十錢カラ三圓八十錢ト云フ、殆ド
  一圓モノ大キナ開キガアルト云フコトハ、
  恐ラク誰ガ考ヘマシテモ、理由ノ何タルヲ
  問ハズ不思議デアリマス、又不屆デアリマ
  ス、而モ農民ハ二圓七十錢ト申シマシテモ
  俵裝運賃ヲ加算致シマスナラバ、ソコニ一一
  圓七十錢ヨリハ農民ノ手ニ入ルモノハ少ク
  ナル、消費者モ三圓八十錢トアリマスガ、
  隣組ニ配給サレル時ニハ目減リヲシテ居ル、
  目減リシタモノヲ誰ガ負擔スルカト言フト
  結局消費者ガ負擔スル、サウスルト生產者
  ノ手カラ實際ノ家庭ニ入リマス間ニ於テ一
  圓以上ノ値幅ガ出來テ是ガ所謂日本ノ戰時
  下ニ於ケル甘藷ノ統制デアル、而モ其ノ爲ニ
  非常ナル苦心ヲサレタノデアリマセウガ、
  甘諸、馬鈴薯會社ト云フモノガ出來タ、此ノ
  間ニ於テ政府當局ハ種々ナル苦心ヲ拂ハレ
  タデアラウケレドモ、斯ウ云フヤウナ誰ガ
  考ヘテモ非常ニ間違ツタ結果ヲ招來シテ居
  ルト云フコトニ付テ農林大臣ハ何ト考ヘテ
  居ラルルカ、又此ノ會社ヲ作ラレルニ當リ
  マシテ是等ノ問題ニ付テモ十分ナル檢討ヲ
  サレテ、或ハ農業團體ナリ、農民ナリ、或ハ
  馬鈴薯、甘藷ヲ作ツテ居ル所ノ眞ノ農民等
  ノ意見ヲ十分尊重サレテ、尙且ツ是ガ已ム
  ヲ得ザルノ統制デアツタカドウカ、斯ウ云
  フコトヲ先ヅ承ルト共ニ、ソコデ只今農政
  局長ノ御答辯ノヤウナ程度ヲ越エテ、吏 五
  モウ一步私ガ前議會ニモ質疑致シマシタ五
  ツノ項目デアリマス所ノ、公定値段ヲ根本的
  ニ改正ヲスルコトガ出來ルカドウカ、又出來
  ナイトスルナラバ甘藷生產業者ニ對シテ特
  ニ奬勵金ヲ交付スルト云フコトガ出來ルカ
  ドウカ、斯ウ云フヤウナ諸點ニ付テ此ノ際
  極メテ明確ニ農民諸君ガ安ンジテ甘藷ノ生
  產ニ從事シ、又不平ナカラシメルヤウナ御
  答辯ヲ一ツ得テ置キタイト思フノデアリマ
  ス

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• 105・井野碩哉

  ○井野國務大臣　甘藷馬鈴薯ノ統制ニ付キ
  マシテハ、前議會ニ於キマシテモ色々問題ガ
  アリマシテ、私モ當初カラ此ノ問題ニ付キ
  マシテハ相當ニ檢討ヲ遂ゲタ上、此ノ制度
  ヲ實行致シタノデアリマス、卽チ今日國家
  ガ要請シマスル物資ト致シマシテ、自由ニ
  販賣ヲサセテ居ツタノデハ國家ガ欲シマス
  ル自的ニ流レナイデ、違フ方面ニドン〓〓流
  レテ、結局國家目的ノ達成ニ困難デアルト
  云フ物資ニ付キマシテハ是ハ或ル程度ノ
  統制ヲ致サナケレバナラヌト考ヘタノデア
  リマス、甘藷、馬鈴薯モ其ノ一ツデアリマ
  シテ、國家ハ甘藷、馬鈴薯ニ付キマシテ增
  產ヲ致シマスト同時ニ、其ノ需要ニ對シマ
  シテハ或ハ「アルコール」原料トシ、或ハ澱
  粉用トシ、其ノ他食糧トシ、各〓其ノ目的ニ
  從ツテ之ヲ流シタイト考ヘテ居リマスガ、現
  在ノヤウナ自由ナ機構ニ於キマシテハ折角
  「アルコール」原料ニ取リタイト思ツテモ其
  ノ方ニ流レズシテ、價格ノ有利ナ方ニ流レ
  テ其ノ目的ヲ達成シ難イ、又或ル方面ノ食
  糧ニ取リタイト考へマシテモ、價格關係カ
  ラ之ヲ自由ニシテ置キマスルト、國家ガ欲
  スル食糧自給ニ卽應シ難イト云フ事態ガア
  リマシタノデ、是ハドウシテモ統制會社ヲ
  作ツテ一手ニ之ヲ買取ツテ、サウシテ必要
  ナ方面ニ流サナケレバナラヌト云フ風ニ考
  ヘタノデアリマス、ソコデ價格決定ノ時ニ
  當リマシテモ、今御話ノヤウニ一ツノ例ヲ
  取ツテ見マスルト、ソコニ生產者ガ賣リマ
  ス値段ト、消費者ガ買ヒマス値段ノ間ニ非常
  ナ開キガアルヤウニ御考ヘニナリマスガ、ソ
  レニハ運賃、其ノ他從來ノ斯ウ云ツタ生鮮
  食糧品デアリマスカラ腐敗率等モ考ヘナケ
  レバナラヌ、サウ云フモノモ色々加味シテ
  見マスルト其ノ間ノ値開キト云フモノハサ
  ウ不合理デハナイト私共ハ見タノデアリマ
  ス、デアリマスカラ原則トシテハ農民ガ
  此ノ機構ガ出來ル前ニ賣ツテ居ツタ價格ヨ
  リ、今度賣ル値ノ方ガ安クナツテハ是ハイ
  カヌ、ソレデアリマスカラ農民ガ手放ス場
  合ニ於テハ、其ノ生產費ヲ「カバー」シ、十
  分ニ作リ得ルダケノ努力ニ對シテ報イラレ
  ル價格、是モ過去ノ價格ト何等開キノナイ
  價格ニスルト云フコトガ一ツノ原則デアル、
  今一ツノ原則ハ消費者ガ買ヒマス小賣價格
  モ、從來ノ小賣價格ヨリハ餘リ高クナラヌ
  ヤウニ、多少ノコトハ是ハ何レニシテモ仕
  方ガナイト致シマシテモ、原則トシテ此ノ
  兩者ニ於テ此ノ問題ヲ解決スルヤウニシテ
  進ンデ行ツタノデアリマス、實際ニ於キマ
  シテ其ノ價格ノ形勢ヲ見マシテモ、例ヘバ
  一ツノ村ト隣ノ村トノ關係ニ於テ見ルト、
  或ハ多少不合理ノアツタト云フ點モアルト
  思ヒマス、是ハ尙ホ地方長官ガ其ノ事情ニ
  卽應シテ直サナケレバナラヌノデアリマス
  ガ、マダ其處マデ行ツテ居ナイノデ、多少不
  合理ナ點モアルカモ知レマセヌガ、斯ウ云
  フ大キナ統制ヲヤツタノデアリマスカラ、
  其ノ過程ニ於テハ多少サウ云ツタヤウナ缺
  點モアツタト思ヒマスガ、根本理念ニ於テ
  ハヤハリ農民ガ作リマシタ芋ハ從來トサウ
  變リナイ値デ賣レルノデアリマス、ソレハ
  消費者モ從來ノ値段ト同ジ値段デ買ヘルノ
  デアリマス、唯此ノ間ニ於テ運賃ノ「プー
  ル」ヲ致シマシタリ、或ハ又腐敗率其ノ他
  ノ「プール」ヲ致シマシタカラ、場所的ニ見
  ルト少シソコニ不合理ナ點モ起ツタカト思
  ヒマス、ソレデアリマスカラサウ云フ點ハ
  地方長官ノ權限デ段々ト直シテ行クヤウニ、
  今折角指導致シテ居ルノデアリマス、何分
  ニモ本年ハ甘藷ニ致シマシテハ十數億万貫
  馬鈴薯ニ致シマシテモ五六億万貫ノ、竝
  今マデ全ク自由デアツタモノヲ是レ程ノ統
  制ヲスルノデアリマスカラ、其ノ間ニ無理
  ノ起ツタコトハ是ハ私モ全然ナイトハ申シ
  マセヌ、デアリマスカラ惡イ所ハ惡イ所デ
  出來ルダケ直スヤウニ事務當局ニ命ジテ、
  斯ウ云フコトヲ決シテコダハツテハイカヌ
  惡イ所ハ端的ニ直サナケレバナラヌト言ツ
  テ居ルノデアリマス、併シ事業ノ途中カラ
  餘リソレヲ直シテ前ノモノト非常ナ不均衡
  ヲ生ズルト云フコトガアツテハ、又是モ公
  平ヲ缺ク所以デアリマスカラ今年ハ或ル程
  度ハ暫ク皆ニ辛抱シテ貰ツテ、兎ニ角是ダ
  ケノ芋ヲ必要ナ所ニ集メルト云フコトニ主
  眼點ヲ置イテヤツテ見テ、實際ニ應ジテ訂
  正シナケレバナラヌ點ハ明年ヨリ、明年ト
  云フノハ本年秋以後ノコトデアリマスガ、
  此ノ芋ニ付テハ更ニモツト端的ニ考ヘテ見
  テ直スベキハ直ス、斯ウ云フ方針デ進ミタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、デアリマス
  カラ今御示シノ沼津ノ問題、具體的ノ問題
  ハ私ハ一々存ジマセヌガ一圓位ノ値開キガ
  アルト云フ御話ハ、其ノ間ニ運賃ノ「プール」
  モアレバ、卸小賣ノ從來取ツテ居ツタ手數
  料ノ「プール」モアルシ、色々ノモノガアル
  ノデアツテ、芋會社自體ノ口錢ト云フモノハ
  千分ノ六デアリマシタカ、極メテ僅カノ口
  錢ヲ取ツテヤツテ居ルノデアリマスカラ、
  甘藷馬鈴薯統制會社ガ出來タ爲ニ配給手數
  料ガ高クナルト云フヤウナコトハナイト御
  諒承ヲ願ヒタイト思フノデアリマス

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• 106・平野力三

  ○平野(力)委員　實際問題トシテハ、苟モ
  農林省トモアラウモノガ同ジ甘諸トハ言ヒナ
  ガラ九州ノ甘藷ト岐阜、愛知、三重方面ニ於
  ケル甘藷ノ時價其ノ性質此ノ〓究ガナカツ
  タト云フコトハ了承出來ナイ、勿論〓究ハ
  アツタト思フ、ソコデ東海方面ニ於ケル甘
  諸ト云フモノハ斯ウ云フ例ヲ申スト當ラヌ
  カモ知レマセヌガ、菓子ノ代用或ハ羊羹ノ代
  用ト云フモノニナル程ノ「カロリー」モアリ
  味モ好イ、是マデ一貫目一圓ナリ一圓二十
  錢デ賣レテ、隨テ一反ニ對スル生產量モ看貫
  モ非常ニ少イ、ソコデ漸ク値段ガ引合ツテ
  農民ハ生活ヲシテ居ツタモノヲ、一貫目二
  十錢三十錢デ賣レタ地方ト殆ド同一ノ値段
  ヲ決定サレタ其ノ決定方法ト云フモノハ私
  共ハ當初ノ事情ヲ斟酌致シマシテヤハリ能
  ク了解ガ出來タ、ソレハ大臣ハ率直ニ惡イ
  所ヲ直スト仰シヤルシ、又是ガ統制ニ付テ
  ハ非常ニ御忙シイ所デ非常ナ苦心ヲサレタ
  ァ云フ點ニ付テハ諒承セヌト云フノデハナ
  イケレドモ、甘藷ノ地方ニ於ケル性質ヲ顧慮
  セズシテ、「ブロック」ヲ五ツニ分ケテ大差
  ナイヤウニ決定サレタ、其ノ結果地方ニ參リ
  マスレバ、オ前達ハ値段ガ安クナレバ一反
  デ二百貫位穫ツテ居ツテハイカヌカラ千貫
  位穫レト言フ、百姓ノ方ハソンナニ穫レヌ、
  穫レ穫レヌデ農林省ノ技師ト百姓ト喧嘩ヲ
  シテ居ル、結局作ツテ居ル者ハ百姓デアル
  カラ、私ノ所ハ一反二百貫ヨリ作ルコトガ
  出來ナイカラ來年カラ止メル、斯ウ云フコ
  トニナツテ來タノデアリマス、只今ノ御答
  辯ハ諒トシマスケレドモ、是ガ改正ニ付テ
  ハ此處デ大奮發サレタラドウカ、所謂實情
  ニ卽スルヤウニサレタラドウカ
  モウ一ツ、今沼津ノ例ヲ引キマシテ大體
  十貫目ニ一圓ノ差ガアル、是ハ運賃其ノ他
  ヲ見テ居ルト云フ御話デアルガ、一寸聞ケ
  バ運賃其ノ他ト云フコトニナルカモ知レナ
  イ、能ク〓究スレバ從來ノ農民カラ市場、
  市場カラ小賣、斯ウ云フ配給機構デアル時
  ハコンナ澤山ノ中間利潤ト云フモノハナカ
  ツタ、隨テ會社ノ配給所ト云フモノガ出來
  テ、段階ガ五段階ニモナツテ斯ウ云フヤウ
  ナ利潤ガ出來タト云フコトデアレバ、是ハ
  何ト言ツテモ何處カデグツト引締メル、方
  法ハアル、締ラヌト言ツタツテ締ル、私ノ
  此ノ地域的ナ値段ノ非常ニ不合理ナルモ
  ノヲ此ノ際改正セラルルコトト、此ノ中間
  利潤ト云フモノヲ壓縮シテ、誰ガ見テモ是
  ハ完全ダ、尤モダト云フ所マデ改正サルル
  ト云フ此ノ二ツノコトダケハ、大臣ハ此ノ
  通常議會ニ於テ一ツ安心出來ルヤウニ御言
  明ヲ願ツテ置キタイ、殊ニ私ガ先程〓糧管
  理局長官ニ聞キマシタヤウニ、第五條ニ
  依リマスナラバ、卽チ時價ニ準ジテ買フ
  ト云フ法律サヘ出來テ居ルノデアリマスカ
  ラ、甘藷ノ値段ノ改正ト云フモノハ、私ノ
  考ヘデハ出來ルノヂヤナイカト考ヘマスノ
  デ、玆ニ增產ト云フコトヲ考へ、農民生活
  ト云フコトニ付テ一ツノ御同情ガアリマス
  ナラバ、イマ少シク具體的ニ此ノ甘藷問題
  ニ對シテハ斯樣ニシヨウト云フ御考ヘヲ一
  ツ御發表願ツテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=106

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• 107・井野碩哉

  ○井野國務大臣　先程カラ御答へ申上ゲマ
  シタ通リ、甘藷、馬鈴薯ノ値段ヲ決メマスノ
  二、色々農林省モ苦心ヲ致シテ決メタノ
  デアリマス、併シ其ノ實行ニ當リマシテ、
  地方事情ニ偶、ミ卽サナイ部分ガアルト云フ
  コトハ吾々モ諒承シテ居リマス、唯本年途
  中ニ於テ之ヲ色々ニ致シマスコトハ、却テ折
  角集メントスル甘藷ノ集荷狀態ニモ大キナ
  影響ヲ與ヘマスノデ、本年ハ此ノ程度ノ改正
  デ進ンデ參リタイ、併シ明年ハ-明年ト
  申シマスノハ、先程申上ゲマシタヤウニ、本
  年ノ秋ノ芋デアリマスガ、ソレニ付キマシ
  テハ尙ホ能ク〓究致シマシテ、成ベク農
  民ノ氣持ニ合フヤウニシナケレバナラヌコ
  トハ當然デアリマス、サウ云フ方向ニ進ン
  デ參リタイト云フコトダケヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=107

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• 108・平野力三

  ○平野(力)委員　此ノ點ニ付キマシテハ尙
  ホ申上ゲタイコトモアリマスガ、一ツ是非
  只今申述ベマシタヤウナ點ニ付テ、御誠意
  アル對策ヲ切望致シマシテ、次ノ問題ニ移
  リマス
  第八條ニ依リマスルト、新タニ米穀檢査
  ト云フモノガ設ケラルルヤウデアリマシテ、
  其ノ豫算モ千二百万圓トカ承ハツテ居リマ
  スガ、此ノ際此ノ米穀檢査ニ付テ、大體凡ソ
  ドウ云フ程度ノ檢査方法ヲ御執リニナルノ
  カト云フコトニ付テ、一ツ御發表願ツテ置
  ケバ幸ヒト思ヒマス

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• 109・湯河元威

  ○湯河政府委員　第八條ノ運用ハ、是モ全
  部勅令ニ任サレテ居リマスノデ、今頻リニ
  其ノ準備ヲ致シテ居ルノデゴザイマスガ、
  今度斯ウ云フ風ニ玆ニ法律ニモ書イテ戴キ、
  又豫算モ特別會計ニ計上シテ貰ヒマシタ所
  以ノモノハ從來各地方ノ檢査ハソレ〓〓
  地方ノ經費ヲ以テ之ヲ施行シテ居リマス
  ノデ、勢ヒ地方事情ニ制セラレテ區々ニ
  ナツテ居リマス、又殊ニ檢査ノ公正ヲ第一
  ト致シマスニモ拘ハリマセズ、地方費ノ負
  擔ニ依ツテ計上サレテ居リマスル爲ニ、檢
  査員ノ地位ノ安定モ得ラレナイ點ガナクモ
  ナイト云フ風ナ事情ガアリマスノデ、ソレ
  等ノ點ヲ直スベク、今度ノ措置ヲ執ツタノ
  デアリマス、是ハ豫算ノ方ニ於キマシテ御
  審査願フコトニナツテ居リマスケレドモ、
  大體米麥ノ檢査ニ從事致シマスル檢査關係
  職員ノ費用ヲ全額國費ヲ以テ負擔スルコト
  ニ致シマシタ、又檢査ニ必要ナル手數料ノ
  收入デアリマスガ、之ヲ國庫ノ收入ニスル
  ト云フ建前ニナツテ居ルノデアリマス、隨
  ヒマシテ此ノ米麥ノ檢査ニ付キマシテハ、
  國ガ一定ノ基準ヲ設ケテ、全國ニ對シテ統
  一的ノ基準ヲ與ヘタイ、斯ウ考ヘテ居ルノ
  デアリマス、從來各府縣ガソレ〓〓自分ノ
  思フ所ニ依ツテ檢査ノ機構ヲ定メ、又其ノ規
  格等モ定メテ居リマシテ、是ハ無論農林省
  ガ之ヲ認可等ノ處置ニ依リマシテ監督ハ致
  シテ居リマスガ、今度ハ中央ヨリ其ノ機構
  規格等ヲ定メマシテ、地方ニソレヲ施行セシ
  メテ行キタイ、斯ウ云フ考ヘヲ持ツテ居リ
  マス、檢査ノ內容ニ付キマシテハ、米麥共
  ニ一本ノ單式檢査ニスルト云フ考ヘヲ持ツ
  テ居リマス、從來往々ニシテ生產檢査、或
  ハ移出檢査ト云フ複式檢査ヲヤツテ居リマ
  スルモノガゴザイマスガ、今度ハ一本ノ單
  式檢査デヤツテ參リタイト云フコトヲ考ヘ
  テ居リマス
  ソレカラ此ノ檢査ノ運營ハ、從來地方農
  產物檢査所ト云フモノガゴザイマス、今後モ
  一應地方農產物檢査所ノ機構ハ存置セシメ
  テ參リタイト云フ考ヘヲ持ツテ居リマスル
  ガ、檢査員ノ職務執行ヲ十分公正ナラシメル
  爲ニ、檢査員ノ身分ヲ保障シ、尙ホ其ノ人
  事等ニ付キマシテハ、十分吾々ノ方デ篤ト
  注意ヲシテ參リタイト云フ考ヘヲ持ツテ居
  リマス、檢査ノ規格等ヲ決メマスニ當リマ
  シテハ、吾々ノ方デ中央ニ於キマシテ、其
  ノ檢査標準ノ査定ヲ致シマシテ、之ヲ地方
  ニ施行セシメル考ヘデアリマス、從來ノヤ
  ウニ地方々々ガ檢査標準ト標準品ヲ持チ寄
  リマシテ、之ヲ協定スルト云フ風ナ處置ハ
  ソレ〓〓地方ノ獨立性ヲ認メテ居ツタノデ
  アルガ、今度ハ中央ノ方ノ指揮ニ依リマシ
  テ、吾々ノ方デ決メタ標準品ヲ地方ニ持チ
  歸ラセテ實施セシメテ參リタイト云フ風ナ
  コトヲ考ヘテ居リマス、手數料ニ付キマシ
  テハ、先程モ御話ガアリマシタヤウニ、殊
  ニ料額等モ全國一率ニ決メマシテ、之ヲ徵
  收シタイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、尙
  ホ米麥以外ノ農產物檢査殊ニ食糧品ニ關ス
  ル檢査デアリマスガ、此ノ第八條ノ第二項
  ノ規定ニ依リマシテ、政府ハ檢査ヲ受クベ
  キ義務ヲ課スルコトニナツテ居リマスル
  ガ、此ノ檢査ノ建前ハ、是ハ從來通リ地方
  費ニ依ツテ維持サレテ居リマスル地方ノ檢
  査地方廳ノ檢査ト云フコトニ残シテ置ク
  積リデアリマス、元ノ農產物檢査法ニ依リ
  マシテハ、此ノ米麥以外ノ檢査ニ付キマシ
  テハ、國ガ囑託ヲ受ケテ檢査ヲスルト云フ
  コトニナツテ居リマシタガ、今度ハサウ云
  フ必要ヲ認メマセヌノデ、地方長官ニ於キ
  マシテ地方費ノ負擔ヲ以テヤル檢査、是ト
  國費ヲ以テヤル檢査トハ、地方長官ノ下ニ
  於テ一ツノ農產物檢査所ニ於テ施行サレ
  ル、サウ云フ風ニ致シタイト考ヘテ居ル次
  第デアリマス

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• 110・平野力三

  ○平野(力)委員　法文ニ對スル質問ハ一應
  此ノ程度ニ致シマシテ、最後ニ增產問題ニ
  關スル主ナル點二、三ニ付テ農林當局ノ所
  信ヲ質シテ終リタイト思ヒマス、此處ニ私
  ハ鏡中條村農會共同作業規程ト云フモノヲ持
  ツテ參ツタノデアリマス、是ハ前議會デモ
  一寸問題ニナリマシテ、只今前川委員カラ
  モ一寸御話ガアツタ、農林當局ノ御答辯ハ
  極メテアツサリシテ居ルノデスガ、併シ農
  林省ガ少クトモ一ツノ方針トシテ全國ノ農
  會ニ向ツテ共同作業ニ對スル相當徹底シタ
  ル指令ヲ御出シニナリ、且ツ此ノ規定ニハ
  命令ニ背イタ場合ニ於キマシテハ、通俗ナ
  意味ニ於ケル罰金ヲ取ラレル、斯ウ云フ程
  度ノ强度ノ共同作業ト云フ方向へ進ンデオ
  イデニナルコトニ付テハ、農林當局ノ農業
  ニ對スシ根本理念、我ガ國ノ食糧增產政策
  ニ對スル當局ノ考ヘ方、此ノ根本理念ヲ多
  少質シテ置カナケレバ不安心デアリマスノ
  デ、此ノ際一言私ノ意見ヲ申上ゲマシテ、
  御答辯ヲ得テ置キタイト思フノデアリマス
  此ノ規定ニ依リマスルト共同耕起整地、
  共同採種、共同苗代、共同田植、共同除草、
  共同收穫、共同脫穀、共同籾、麥摺、共同播
  種共同育苗、是ダケノ共同作業ヲ規定シ
  テ居リマシテ、之ニ付テハ部落農業團體ガ
  中心デ共同作業ヲ行フ、此ノ共同作業ノ命
  令ニ違反シタ場合ニ於キマシテハ、此ノ規
  定ニ依ルト、第十二條ニ「第二條乃至第五條、
  第七條及第九條ノ規定ニ違反シタル會員ニ
  ハ二百圓以下ノ過怠金ヲ課ス」斯ウ云フコ
  トニナツテ居ル、農林當局ガ實際ニ御出シ
  ニナツタ命令ト云フモノハ、私ハマダ實ハ
  詳細ニハ拜見シテハ居リマセヌケレドモ、
  併シ斯ウ云フモノガ實際上農民ノ方ニ參リ
  リマスルト、モウ是ハ大體ニ於テ共同作業
  ヲヤラナケレバ罰金ニナル、斯ウ云フ思想
  ガ農村ヲ風靡スルコトハ間違ヒナイ、ソレ
  デ具體的ナ事例ヲ一ツ申上ゲマスルガ、私
  ノ知ツテ居リマスル、或ル部落ニ於テ共同
  作業ヲヤルト云フノデ、三十人ノ者ガ其ノ
  中ノ一軒ノ農家ヲ持ツテ居ル僅カ二反步バ
  カリノ、其ノ土地カラ一里モ向フニアル所
  ニ行ツテ共同デヤツテ來タ、斯ウ云フ事例
  ガアル、ソレハ共同デヤラナケレパ罰金ニ
  ナルト云フノデ、何デモ彼デモ共同作業ト
  云フ譯デヤツテ居ル、斯ノ如キコトハ少ク
  トモ命今ヲ御出シニナル前ニ餘程御〓究ニ
  ナツテ出シテ居ラレルトハ考ヘルケレド
  モ、一體日本ノ農業ハ共同作業ニ對スル農
  林當局ノ根本觀念ト云フモノガ間違ツテ居
  ルノデハナイカ、而モ此ノ中デ見逃スコト
  ノ出來ナイノハ、共同作業ヲヤツタ勞働賃
  銀ト云フモノヲ共同計算ニ於テ支拂フト云
  フコトニナルト、是ハ全ク大問題デアル、
  私ハ此ノ點ニ付テ、果シテ是ハ農林省ノド
  ナタガ立案サレマシテ、ドウ云フ經過ヲ踏
  マレタカト云フコトマデ、實ハ御聽キシタ
  イノデアリマスガ、斯ウ云フヤウニ一緒
  ニ行ツテ一〓ノ賃金ヲ取ツテ一〓ニヤル、
  斯ウ云フ共同農業ノ觀念ハ日本ノ實情ニハ
  卽シナイ、日本ノ農業ト云フモノハ、申ス
  マデモナク是ダケノ地面ト云フモノガアツ
  テノ自作農デアル、此ノ農家ニハ是ダケノ
  祖先傳來ノ自作地ガアルカラト云フノデ、
  祖父サンカラ子供ニ至ル、其ノ家庭ノ總勞
  力ガ「フル」ニ發揮サレテ行ヅテ、其ノ反別カ
  ラウント生產ガ上ル、日本ガ日本ノ農業ノ
  基本觀念デアツテ、吾々ガ玆ニ農林大臣ニ
  シツコク家產制ヲヤリナサイ、ナゼ土地問
  題ヲ解決セヌカト言ツテ居ルノハ此處デア
  ル、農林省ガ此ノ方ヘ農業政策ヲ持ツテ行
  カレルト云フノデアツタナラバ、私共ハ步
  ミガ少シ位遲クテモ、農業勞力ガ「フル」ニ發
  揮サレルノダカラ了承スルノデアリマス、
  所ガ現ニ今申上ゲタヤウナ共同耕作ヲ命令
  シテ、一里モ向フニアル三反步ノモノヲ共
  同デヤツテ來テ、賃金ヲ共同デ分ケルト云
  フヤウナヤリ方ハ、日本ノ農業ニ對シテ根
  本的ナル大キナ思想問題デアツテ、所謂農
  業ノ指導トシテハ誤ツテ居ル、隨テ此ノ際
  一ツ御明示ヲ願ヒタイノハ、此ノ共同作業
  ノ指令ハドウ云フヤウナ內容ヲドウ云フ形
  ニ於テ、ドウ云フ見解デ出サレタノカ、隨
  テ又今後斯ウ云フコトヲオヤリニナル上ニ
  於テハ、ドノ程度ノ注意ヲ拂ハレルカト云
  フコトヲ一ツ明確ニサレテ、サウシテ農民
  ガ其ノ方向ヲ迷ハヌヤウニ、多少答辯ハ長
  クナリマセウトモ、ハツキリ御願ヒヲ致シ
  タイト思ヒマス

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• 111・井野碩哉

  ○井野國務大臣　其ノ事例ノ內容等ニ付キ
  マシテハ又後程政府委員カラ申上ゲマス
  ガ、私ノ農村ノ共同作業ニ對スル指導理念
  ハ、今平野君ノ言ハレタ通リデアリマス
  大體ニ於テヤハリ家族ヲ中心ニシテ、サウ
  シテ其ノ農家ノ持ツテ居ル土地ヲ共ニ耕作
  シテ行クト云フコトガ根本理念デアルノデ
  アリマス、唯今日戰時下ニ於キマシテ、農村
  ノ手不足カラ色々一家ノ中ノ勞力ガ不足シ
  テ居ル、ソレヲ其ノ部落ニ於テ相互ヒニ助
  ケ合ツテ、サウシテ共同耕作ヲヤツテ行ク
  ト云フコトハ今日ノ事態ニ卽シテ必要デア
  リマスカラ、其ノ爲ニ或ル一ツノ仕事ニ對
  シテ、全家族ガ利用出來ナイデ、家族ノ一
  部ト他ノ家族ノ一部トガ其ノ共同作業ヲス
  ルコトガ適切デアルト云フモノニ付キマシ
  テハ、サウ云フ場合モアリ得ルト云フコト
  ハ考ヘラレマスケレドモ、併シ是ハ農村勞
  力ノ不足ヲ補フ一ツノ手段デアリマシテ、
  農村ノ共同作業ト云フモノノ理念デナイコ
  トハ、是ハ明カデアリマス、デアリマスカ
  ラ、今御示シノ具體的ノ農會ノ規定ハ、私
  モマダ能ク承知シテ居リマセヌカラ、十分
  〓究シテ惡イ所ハ直サナケレバナラヌト思
  ツテ居リマスガ、大體ノ根本理念ハ今私ノ
  申シタ通リデアリマシテ、之ニ副ハナケレバ
  農林省トシテモソレヲ直シテ行カナケレバ
  ナラヌト云フ風ニ考ヘテ居リマス、尙ホ詳
  細ハ局長ノ方カラ申上ゲマス

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• 112・岸田正記

  ○岸政府委員　只今大臣カラ御話ノアリマ
  シタ通リナ考ヘ方デ居ルノデアリマス、其
  ノ農會ガドウ云フ風ニ考ヘタカ知リマセヌ
  ケレドモ、從來アル所ノ各種ノ共同作業、季
  節的ニヤルモノニ對シテ-是ハ何處ニモア
  ルコトデアリマスケレドモ、動モスルト一
  〓ニ仕事ヲシナイ、ソレガ爲ニ折角ヤリ掛
  ケタ仕事ガ出來ヌト云フヤウナコトガアル
  ノデ、サウ云フコトニ對シテ何等カノ强化
  ヲシテ貰ヒタイト云フコトガ各方面ノ要求
  デアリ、ソレニ對處シテ農會等ト共ニ十分
  〓究シテ、農會ノ生產統制ノ規定ヲ適用シ
  テヤルト云フコトデ發動シタ譯デアリマス
  ガ、根本的ナ考ヘ方ニ於テハ、決シテ、只
  今御話ノアリマシタヤウナ無理ナコトマデ
  共同シテヤレト云ツタヤウナコトデ行ツテ
  居ル譯デハアリマセヌカラ、其ノ點御諒承
  願ヒマス、實際ノ指導ニ於テハ更ニ一層注
  意致シタイト思ヒマス

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• 113・平野力三

  ○平野(力)委員　ドウモ長クナツテ洵ニ申
  譯アリマセヌヌ、一ツ能ク確カメテ置カネ
  バナラヌノデス、第九條ノ「共同作業ノ精算
  勞賃ハ會長ノ指定スル勞賃ニ依ルベシ」ト
  カ、又第九條ノ規定ニ違反シタル會員ニハ
  二百圓以下ノ罰金ヲ課スト云フノデス、ア
  ナタ方ニ斯ウ云ウ云フコトヲ申スノハ釋迦
  ニ說法デアルケレドモ一言言ハシテ戴キタ
  イト思フノデス、詰リ日本ノ農家ノ共同作
  業ト云フモノハ、オ互ヒニ一度行ツタラ二
  圓五十錢トカ、幾ラ貰フトカ云フヤウナコ
  トハヤラナイ、田植ノ手傳ヒニ行ツタラ、
  ドノ位出サナケレバナラヌト云フコトハ傳
  統アル習俗デ決ツテ居ルモノデス、之ヲ會
  長ガ命令シテ二圓五十錢ナラ二圓五十錢ト
  云フコトニナリマスト、是ハ將來全部ガ部
  落ノ共同地ヘ行ツテ共同作業ヲヤツテ、貰
  フ賃金モ全部一〓、サウ云フモノニ進ムト
  云フコトハ餘リニモ明瞭デハアリマセヌ
  カ、私ガ今單ニ此處デオ座ナリノ答辯デ引
  下ラナイノハソコナンデス、言換ヘレバ斯
  ウ云フ風ニ部落デ一度手傳ヒニ行ケバ賃金
  ハ幾ラト云フヤウニ決メテ置イテ、サウシ
  テ一方ニ於テハ第一條ニアルヤウナ、殆ド
  農業全體ニ向ツテノ共同作業デアル、田植
  ナラ田植ダケ、脫穀ナラ脫穀ダケヲ共同デ
  ヤルト云フナラ當リ前ノ話デアルケレド
  干、此ノ規定カラ行ケバ凡ユルモノヲ共同
  デヤルト云フヤウニ決メテ居ル、サウシテ
  賃金ヲ決メテヤルト云フヤウニナルト、日
  本ノ將來ノ農業ガ、土地ヲ全部共同ニシ、
  勞働ヲ共同ニシテ、サウシテ賃金ヲ分ケル
  ト云フコトニナツタラ、何處ニ日本ノ農業
  ノ根本的增產ガアリマスカ、ドウシテ農村
  ノ民族强化ナント云フ思想ガ其處カラ湧キ
  マセウカ、私ハ此ノ點ダケハ農林當局ガ最
  近御採リニナツタ農林對策トシテ一ツノ大
  キナ誤リデハナカラウカ、固ヨリ是ハ大臣
  モ、其ノ信念ヲ披瀝サレマシタカラ私ハ敢
  テ是レ以上追求シマセヌケレドセ能ク御考
  慮ヲ願ヒタイ、ソレカラ尙ホ私ガ此ノ點ニ
  付テ-私ハ持論ヲ言ウテ惡イヤウデアリ
  マスケレドモ、吾々ガ屢〓大臣ニ言フヤウニ、
  斯ウ云フヤウナ方へ進マレルヨリハ日本ノ
  全農家ヲ早ク自作農ニスルト云フ方面ニド
  ウシテ農政局ハ一步出ナイノデスカ、吾々
  ハ全農家ヲ自作農ニスルト云フコトニ付テ
  聲ヲ大ニスルケレドモ、農政局ハ〓究中、
  考慮中ト言ツテ居ツテ、共同耕作ノ方へ行
  カレルカラ、私ガ靑筋ヲ立テテ追求シナケ
  レバ承服出來ナイコトニナル、此ノ點ニ付
  テハ明確ナ所信ノ御開陳ヲ願ヒタイ

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• 114・井野碩哉

  ○井野國務大臣　私ハ其ノ點ニ付テハ十分
  明確ナ所信ヲ申上ゲタノデアリマス、農林
  省トシテサウ云ツタヤウナ方向ニハ持ツテ
  行カナイ、假ニモ現在ノ勞力不足ノ爲ニ一
  ツノ手段トシテ講ジテ居リマスコトガ、思
  想的ナ動キニナルヤウナコトガアレバ、是
  ハ由々シキ問題デアリマス、ソレデアリマ
  スカラ私トシテモ其ノ點ハ十分注意ヲ致シ
  マシテ、今御話ノヤウナ方向ニ農林行政ヲ
  導イテ行クト云フコトニ付テハ善處致シタ
  イト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=114

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• 115・平野力三

  ○平野(力)委員　此ノ點ニ於テハ只今ノ大
  臣ノ御答辯ヲ諒承シマシテ、是非左樣ニナ
  ルコトヲ信ジテ、一應私ノ此ノ點ニ對スル質
  問ヲ終リマスガ、最後ニモウ一點內務省ノ
  保安課長ニ伺ツテ置キタイ、是モヤハリ增
  產政策ニ相當關係ノアルコトデアリマス、
  昨年ノ議會以來私ガ內務省ニ御問ヒヲ致シ
  マシテ、今尙ホ未解決ノ問題デアリマス
  ガ、新潟縣ニ盡忠會ト云フ會ガアリマス、是
  ハ警察ノ署長サンガ會長デ、村長サンガ副
  會長、地主カラ三名、小作人カラ三名デ以
  テ構成サレタ各村落ニ一組合ヅツアル所ノ
  會デアリマス、是ハ御承知ニナツテ居ルト
  思ヒマスガ、如何デアリマスカ、サウ云フ
  モノノアルコトヲ御承知デアリマスカ

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• 116・永野若松

  ○永野說明員　新潟縣ニ左樣ナルモノガア
  ルコトハ聞イテ居リマスガ、詳シイコトハ
  知リマセヌ

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• 117・平野力三

  ○平野(力)委員　此ノ會ノコトニ付テハ私
  屢〓御問ヒシテ居ルノデアリマスガ、日本
  ノ農村ノ土地問題、小作問題等ノ處理ニ付
  テハ、小作調停法及ビ農地調整法ナル法律
  ガ出來テ居リマシテ、農林省ニ於テハ小作
  官、裁判所ニ於テハ小作調停主任判事ナル
  人ガアツテ、紛議ノ解決ニ當ツテ居ル、然
  ルニ警察ノ署長サンガサウ云フ會ヲオ作リ
  ニナツテ、其ノ會デ一切ノ土地問題、小作
  問題ヲ御處理ナサツテ、新潟縣デハ小作官
  ト云フモノハ一寸申スト要ラナイヤウナモ
  ノニナツテ居ル、ソレカラ小作調停法ノ精
  神カラ言フト、問題ガ起レバ成ベク小作人
  ガ共同デ一ツノ申立ヲシテ、事件ヲ少クシ
  テ片付ケルト云フコトガ農林省ノ採ツテ居
  ル小作調停ニ於ケル最近ノ方針デアルガ、
  新潟縣ニ於テハ警察ノ署長サンガ申立ヲサ
  セルト云フヤウナコトヲ拒否シテ、署長サ
  ンノ裁量デ、此ノ小作料ハ幾ラニシテ置
  ケ、此ノ土地問題ハ斯樣ニシテ置ケト事フ
  ヤウナコトニ實ハナツテ居ルノデアリマ
  ス、是ハ內務省ノ根本方針トシテナサツテ
  居ルモノト私ハ解釋シテ居ラヌノデアリマ
  スケレドモ、警察ノ署長サンガサウ云フコ
  トヲヤツテ居ラレルト云フコトハ、內務省
  ニ關係ガナイトハ言ヘナイ問題デアリマ
  ス、ソコデ其ノ村ニ於ケル小作問題、土地
  問題ハ其ノ村ニ於ケル增產政策ニハ非常ニ
  重大ナル關係ガアルノデス、ソレヲサウ云
  フ方面ニ對シテ餘リ能ク御〓究ニナツテ居
  ラナイ警察官ノ方々ガ斯ウヤレアアヤレト
  御指令ニナルコトハ、其ノ地方ノ實情トシ
  テハ生產ノ上ニ非常ナ障碍ニナリツツアル
  ノデアリマス、勿論是ガ治安上ノ問題トシ
  テ色々ノ問題ヲ御取締ニナルコトデアレ
  バ、是ハ署長サンノ絕對ノ權能デアルカ
  ラ、ソレハ兎ヤ角言ハナイガ、治安上ノ問
  題デナク、單ナル經濟上ノ分配問題デ、二
  割ガ宜イカ、五割ガ宜イカト云フコトニ署
  長サンガ立入ツテ、今日農地調整法、小作
  調停法ト云フモノガアツテ、農林省ハ之ニ
  依ツテヤラウ、司法省ハ之ニ依ツテヤラウ
  ト云フ時ニ、警察ノ署長サンガサウ云フモ
  ノヲ作ツテヤツテ居ラレルコトハイケナイ
  コトデアルト私ハ解釋致シマシテ、是ガ改
  正ヲ要求シテ以來一年ニナツテ居ルノデア
  リマスガ、今尙ホ何等改正ヲサレナイ、前
  ノ警保局長サンカラハ、之ニ對シテハ一ツ
  調ベテ善處スルト云フ御答辯ガアツタガ、
  今尙ホ何トモナツテ居ラヌノデアリマス、
  實ハ斯ウ云フコトハ吾々ガ地方ニ於テ色々
  增產奬勵ナドヲヤル上ニ複雜ナル問題ヲ招
  來スルノデ、保安課長サンニ於カレマシテ
  ハ、如何樣ニ考ヘテ居ラレルカ、此ノ際御
  答辯ヲ願ヒタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=117

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• 118・永野若松

  ○永野說明員　前ニ調ベルト云フコトニナ
  ツテ居ツテ、其ノ後ドウナツテ居ルカト云
  フコトデアリマスガ、實ハ其ノコトニ付テ
  私聽イテハ居リマセヌケレドモ、警保局ト
  シテ十分調査ガ出來テ居ルコトト思ヒマ
  ス、所デ只今小作官、調停官ガ居ルノデア
  ルカラ、其ノ方デ左樣ナ紛議等ニ付テハ、皆
  片付ケレバ宜イノデアツテ、警察官ガ餘リ
  ニ出シヤバルコトハイカヌデハナイカト云フ
  御意見デアリマスガ、尙ホ十分其ノ實情ハ
  能ク調ベテ見タイト思ヒマスガ、勿論小作
  實調停官ノ方デ職掌上オヤリ下サルノガ
  當然デアリマス、併シ警察ト致シマシテ
  モ、ソレ等ノ係官トヨク連絡シテソレニ御
  協力申上ゲテ、紛爭等ガ、成ベク圓滿ニ早
  ク片付クヤウニナルコトガ、最モ望マシイ
  コトデアリマスノデ、警察トシテハ專ラ小
  作官、調停官ニ御協力申上ゲタイト云フ心
  持デヤツテ居ルモノダラウト私ハ思フノデ
  アリマス、若シソレガ非常ニ行過ギテ、サ
  ウ云フ本來ノ係官ニ持ツテ行クコトハナ
  イ、警察デ皆片付ケテヤルト云フヤウナコ
  トデ、只今御話ガアツタヤウニ調停ノ申立
  ナドヲサセズニ、專ラ警察ガヤルト云フコ
  トデアリマスレバ、是ハ適當デナイト思フ
  ノデアリマス、能ク係ノ人ト連絡ヲ取ツ
  テ、警察ハ專ラ其ノ下働キヲスルト云フ心
  持デヤルベキモノデアラウト思ヒマス、ド
  ウ云フヤウナコトニナツテ居リマスカ十分
  調ベテ見タイト思ヒマス

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• 119・平野力三

  ○平野(力)委員　殊ニ今囘言論集會結社ニ
  關スルアア云フ法律ガ出マシテ、村ニ集會
  ヲ開ク場合等ニ於キマシテモ、署長サンノ之
  ニ對スル一ツノ權能ト云フモノガ增大シテ
  居ルノデアリマス、保安課長サンノ只今ノ
  御答辯ニ依リマスト、御考ヘトシテハ大體
  了承シタノデアリマスガ、此ノ事件ニ付テ
  マダ能ク御〓究ガナイヤウニ考ヘマスガ、
  洵ニ恐縮デスガ、是ハ私共農村問題ニ關心
  ヲ持ツ者ト致シマシテ、斯ウ云フ具體的ナ
  問題ハ適當ナル明確サヲ持ツテ居リマセヌ
  ト具合ガ惡イノデアリマシテ、一應新潟縣
  ニ御照會ヲ願ヒマシテ、尙ホ適當ナル機會
  ニ於キマシテ一ツ內務省ノ御所信ヲ御發表
  願ヒタイ、斯樣ニ思ツテ居リマス、其ノ點
  ニ付テハ尙ホ質疑ヲ保留致シマシテ、尙ホ
  司法省關係ニ付テ質疑ガアリマスガ、當局
  ガ御見エニナリマセヌノデ、此ノ兩問題ニ
  付テハ、洵ニ勝手デアリマスガ、質疑ノ留
  保ヲ願ヒマシテ、一應本日ノ私ノ質疑ヲ終
  ルコトト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913114X00319420126&spkNum=119

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• 120・三善信房

  ○三善委員長　ソレデハ本日ハ是ニテ議事
  ヲ止メマシテ、明日ハ午前十時ヨリ開會致
  シマス、明日ハ部屋ノ都合ニ依リマシテ午
  前中ダケデアリマスカラ、ドウゾ正十時ニ
  御出席ヲ願ヒマス、本日ハ是ニテ散會致シ
  マス
  午後三時五十分散會

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