1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○國民貯蓄組合法中改正法律案
○納税施設法案
○臨時資金調整法中改正法律案
○普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼營等に關する法律案
○銀行等の事務の簡素化に關する法律案
○戰爭死亡傷害保險法案
○鹽專賣法中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=0
-
001・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 只今カラ國民
貯蓄組合法中改正法律案外六件ノ特別委員
會ヲ開會致シマス、此ノ委員會ニ付託サレ
マシタ案件ハ、只今申上ゲマシタ國民貯
蓄組合法中改正法律案、納稅施設法案、臨
時資金調整法中改正法律案、普通銀行等ノ
貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼營等ニ關ス
ル法律案、銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關スル
法律案、戰爭死亡傷害保險法案、鹽專賣法
中改正法律案ノ七件デアリマス、只今ヨリ
是等ノ法案ニ付キマシテ逐次當局ノ御說明
ヲ伺ヒタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=1
-
002・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 本委員會ニ付託
ニ相成リマシタ國民貯蓄組合法中改正法律
案外六件ニ付キマシテ、其ノ提出ノ理由ヲ
御說明致シマス、先ヅ國民貯蓄組合法中改
正法律案ニ付キマシテ御說明ヲ申上ゲマ
ス、國民貯蓄增强上ノ施設ト致シマシテ、
國民貯蓄組合ガ戰時下極メテ重要ナ使命ヲ
果シツヽアリマスルコトハ、多ク說明ヲ要
シナイ所デアリマスルガ、時局ノ進展ニ伴
ヒ貯蓄增强ノ要ハ愈〓緊切ヲ加ヘマシタル
折柄、政府ニ於キマシテハ本制度ニ依ル組
合貯蓄ノ增加ヲ更ニ一層促進致シタイト存
ジマシテ、玆ニ本法律案ヲ提出致シマシタ
次第デアリマス、其ノ改正ノ要點ヲ擧ゲマ
スレバ、第一ハ國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル
貯蓄ニ關スル課稅上ノ特典ヲ擴張致シマシ
テ、其ノ利子又ハ利益ニ對シマシテハ元
本七千圓ヲ超エザル限リ所得稅ヲ賦課セザ
ルコトト致シタ點デアリマス、國民貯蓄組
合ヲ通ズル貯蓄ハ其ノ性質上零細ナル資金
ノ集積デアリマシテ、且相當長期間ニ亙リ
固定セラレルモノデアリマスルカラ、課稅
關係ニ於キマシテモ郵便貯金、銀行貯蓄預
金等ノ如ク分類所得稅ノミナラズ、綜合所
得稅ヲモ賦課セザルヲ適當ト認メタノデア
リマス、第二八勤務先預ヶ金ノ統制ニ關
スル規定ヲ新タニ設ケマシテ、此ノ種預ケ
金ハ向後原則トシテ國民貯蓄組合ノ幹旋ニ
依リ受入ルベキモノト爲シ、其ノ受入ノ方
法、又ハ受入レタル資金ノ運用ニ關シマシ
テハ、必要ナル指示ヲ爲シ得ルコトト致シ
マシタ點デアリマス、會社、工場等ニ勤務
スル者ガ當該勤務先等ニ對シテ爲ス預ケ金
ハ近時特ニ增加ノ傾向ニアリマスルガ、之
ニ關シマシテハ從來殆ド無統制ノ儘放置セ
ラレテ居リマシタノデ、此ノ際之ヲ貯蓄組
合トノ關聯ニ於キマシテ、其ノ資金ノ活用
ニ關シ必要ナル規制ヲ爲サムトスルモノデ
アリマス、第三ハ、組合構成員タル資格ヲ
有スル者ニ對シマシテハ必要ニ應ジ加入命
令ヲモ爲シ得ルコトト致シマシテ、貯蓄
組合體制ノ完備ヲ期セムトスルモノデア
リマス、其ノ他市町村單位ノ地域組合ノ
組織ヲ認メマスルコト、組合貯蓄ノ範圍ヲ
擴張致シマシテ、一定ノ外國有價證劵ノ買
入ヲ追加スルコト、一定範圍組合關係者ヲ
モ監督指導ノ對象トスルコト等ヲ其ノ內容
トスルモノデアリマシテ、之ニ依リマシテ
國民貯蓄組合ノ組織竝ニ運營ノ適實化ヲ圖
リ、以テ戰時貯蓄ノ增强ニ資セムトスルモ
ノデアリマス、以上國民貯蓄組合法中改正
法律案ノ要旨デアリマスルガ、次ニ納稅施
設法案ニ付キマシテ御說明致シマス、國民
ノ租稅負擔ハ戰時下ニ於ケル財政需要ノ增
加ニ伴フ屢次ノ增稅ニ依リマシテ急激ニ增
大シ、國民ノ經濟生活上租稅負擔額ハ相當
大ナル部分ヲ占ムルニ至ッタノデアリマス、
從ヒマシテ國民ハ戰時下ニ於ケル經濟生活
ニ於キマシテハ、常ニ納稅ニ對スル準備ヲ
怠ラザルコトガ極メテ肝要デアリマスルコ
トハ申ス迄モナイ所デアリマスルガ、政府
ニ於キマシテモ、國民ノ納稅ノ履行ヲ容易
ナラシメ、併セテ國民貯蓄ノ增强等ニ資ス
ル爲本法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリ
マス、政府ハ從來ニ於キマシテモ國民ノ納
稅精神ノ〓揚ヲ圖ルト共ニ、納稅組合ノ普
及勸奬其ノ他各種ノ行政的施策ニ依リ、納
稅資金ノ蓄積ト滯納防止ニ力ヲ盡シテ參ッ
タノデアリマス、併シナガラ是等ノ行政的
施策ノミニテハ未ダ十分ニ其ノ實效ヲ擧ゲ
得ザルノミナラズ、他方豫メ納稅資金ノ準
備ヲ爲シ置クコトニ關シマシテ適切ナル制
度ガ完備シ居ラザル實情等ヲ省察致シマシ
テ、今囘政府ハ納稅施設法ヲ制定シ、以下
申述ベマスルガ如キ事項ヲ綜合規定スルノ
必要ヲ認メタ次第デアリマス、以下本法律
案ノ內容ニ付其ノ〓要ヲ御說明申上ゲマス、
第一ハ、納稅ニ關シ公共的事業ヲ行フ町內
會部落會及納稅組合ヲ納稅團體ナル法制
上ノ團體トシテ認メマシテ、之ニ對シマシ
テハ政府ニ於テモ助成ノ途ヲ講ジマスルト
共ニ、納稅團體ニ於テ管理スル納稅資金ノ
保有方法ニ付キマシテハ、其ノ確實ヲ期シ
マスル爲一定ノ制限ヲ設ケマスル等、指導
監督上必要ナル事項ヲ規定シ、納稅團體ノ普
及竝ニ發達ヲ圖ルコトト致シタノデアリマ
ス、第二ハ、法人ニ對シマシテ當該法人ノ
納付スベキ法人稅等ノ納稅準備ノ爲、決算
確定ノ際一定割合ノ納稅積立金ノ積立ヲ爲
サシメ、其ノ積立金ノ一部ハ之ヲ納稅準備
預金ヲ以テ保有スベキ義務ヲ負ハシメマシ
テ、納稅ヲ容易確實ナラシメ、併セテ會社
經理ノ適正ニモ資セムトスル次第デアリマ
ス、尤モ右ノ積立及預金ノ保有ニ付、一擧ニ
納稅見込額ノ全額ヲ强制致シマスルコトハ法
人ノ經理上急激ナル變動ヲ與フルコトニ相
成リマスルノデ、之ニ付キマシテハ經過的ニ
緩和ノ措置ヲ講ズルノ要アルヲ認メマシテ、
適當ナル考慮ヲ拂フコトト致シタノデアリ
マス、第三ハ、專ラ租稅公課ノ納付ニ充テ
ルコトヲ目的トスル納稅準備預金ナル新種
預金ヲ創設致シマシテ、之ニ對シマシテ
ハ比較的有利ナル利子ヲ付シ、且其ノ利子
ニ對シテハ免稅ノ特典ヲ附與シ、又本預金
ヲ受入レル金融機關ヲシテ預金者ノ爲ニ租
稅公課ノ納付ニ關スル事務ヲモ取扱ハシメ
マスル等ノ便宜ヲ與フルコトト致シタノデ
アリマス、之ニ依リマシテ納稅者ニ對シ、
納稅ニ付有利ニシテ且便宜ナル手段ヲ提供
シ、以テ納稅ノ準備ヲ爲サシメムトスル次
第デアリマス、第四ハゝ戰時財政經濟ノ運
營上所要資金ノ圓滑ナル調達ヲ圖ル爲ニハ、
租稅ノ形態ニ依ルノ外、其ノ更ニ大ナル部
分ヲ國民貯蓄ノ增强ニ俟ツノデアリマスル
ガ、今囘新タニ租稅ノ納付ト、國民貯蓄ノ
增强トヲ關聯セシメマシタル一ツノ新シイ
施設トシテ、租稅ノ貯蓄納付制度ヲ創設致
シマシテ、之ガ目的遂行ニ寄與セムコトヲ
期シタ次第デアリマス、本制度ノ內容ハ特
定ノ所得稅、臨時利得稅等ノ納稅者ガ、其
ノ稅額ノ二倍或ハ三倍ニ相當スル金額ノ貯
黃卽チ戰時納稅貯蓄ヲ爲シタル場合ニ於
キマシテ、當該租稅ノ納付ト同一ノ效果ヲ
生ゼシメルニアルノデアリマス、之ニ依リ
國民ノ納稅義務ノ履行ヲ容易ナラシメマス
ルト共ニ、他面國民貯蓄ノ積極的ナル增强
下、財政資金ノ圓滑ナル調達ヲ圖リ、併セ
テ家產ノ造成ニ資シ、或ハ年金類似ノ作用
ヲ有スル貯蓄トシテノ機能ヲ發揮セシメム
トスルモノデアリマス、次ニ臨時資金調整
法中改正法律案ニ付キマシテ御說明ヲ申上
ゲタイト存ジマス、戰時財政經濟ノ圓滑ナ
ル運行ヲ確保シ、多額ノ戰費及產業資金ヲ
調達シ、戰力ノ增强ヲ圖リマスルコト益〓、
緊要ト相成ッテ居リマスルコトハ玆ニ申上
ゲル迄モアリマセヌ、是ガ爲ニハ各般ノ措
置ヲ講ジマシテ、國民貯蓄ノ增强、浮動購
買力ノ吸收ヲ圖リマスルト共ニ、國債其ノ
他ノ證劵ノ消化促進、產業資金ノ調達及ビ
國民貯蓄ノ保護ノ爲有價證劵ノ適正簡易ナ
ル賣買機構ヲ整備シ、株式ノ市價安定ヲ圖
ル必要ガアリマスルノデ、今般臨時資金調
整法ヲ改正シ、之ニ必要ナル規定ヲ設クル
コトト致シタノデアリマス、先ヅ本法案ノ
主ナル點ヲ說明致シマス、改正ノ第一點ハ
新種貯蓄方法ヲ實施シ、新種證劵ヲ發行シ
得ルコトト致シタコトデアリマス、卽チ第
一ニハ銀行其ノ他ノ各種貯蓄取扱機關等ハ
從來ト雖モ政府及金融統制會ノ指導ノ下
二、國民貯蓄ノ增强ニ力ヲ盡シテ參ッテ居
ルノデアリマスルガ、今般國民貯蓄ノ增强ヲ
圖ル爲必要アリト認メマスル時ハ、政府ハ
銀行其ノ他ノ所謂貯蓄取扱機關等ニ對シマ
シテ、各種ノ新種貯蓄ノ取扱ヲ爲サシメ、
且之ニ付テ課稅上ノ優遇措置ヲ講ジ得ルコ
トト致シマスルト共ニ、貯蓄者ノ便宜ヲ圖
リ、種々貯蓄施設ノ整備ヲ行ハシメマスル
等、資金ノ吸收ニ關シ必要ナル命令ヲ爲シ
得ルコトト致シ、以テ現下時局ノ要請ニ基
キ今後一層ソレ〓〓ノ機能ヲ最モ有效ニ活
用シ、政府ト一體的活動ヲ爲サシムルコト
ト致シタノデアリマスルガ、之ニ伴ヒ必要
ニ應ジマシテハ損失補償又ハ補助金交付等
ノ方途ヲ講ズルコトトシ、以テ之ガ效果ノ
萬全ヲ期スルコトト致シタ次第デアリマス、
第二ニ、現在國債其ノ他ノ債劵等ニ於キ
マシテハ、其ノ劵面金額ノ種類ニハ一定ノ
制限ガアリ、金利其ノ他ノ關係デ常時賣出
ノ方法モ取リ難ク、又各種ノ預貯金、金錢
信託等所謂金錢貯蓄ニ付キマシテモ當該貯
蓄取扱機關ノ所在地ノ遠近、店鋪數ニ限リ
ガアル等ノ理由ニ依リ、何レモ貯蓄手段ト
シテハ尙不便ノ場合ガ多イノデアリマス、
併シナガラ國民貯蓄ノ增强ヲ圖ッテ參リマ
スニハ、苟クモ貯蓄手段ノ不備等ノ理由ニ
依リ貯蓄ノ機會ヲ逸セシムルコトガアッテ
ハナラナイノミナラズ、進ンデ能フ限リ簡
便ナル方法ヲ案出シ、之ガ增强ヲ期スルノ
必要ガアルト考ヘラレマスルノデ、茲ニ一
定ノ預貯金等ニノミ充ツルコトヲ目的トス
ル證劵ヲ政府自ラ發行シ、又ハ命令ノ定ム
ル者ヲシテ發行セシムルコトト致シ、以テ
右趣旨ノ遂行ヲ期スルコトト致シダノデア
リマス、第三ニ、元來貯蓄手段ニ對シテ割
增金ヲ附與致シマスルコトハ、國民大衆ノ
微妙ナル心理ヲ利用シテ零細ナル資金、或
ハ動モスレバ戰時下好マシカラザル消費ニ
向ハムトスル購買力ノ吸收ヲ圖ルコトヲ目
的トスルモノデアリマスルガ、是ガ爲ニハ
割增金ヲ附スベキ貯蓄手段、割增金附與ノ
方法及金額、或ハ其ノ賣出又ハ募集ノ方法
等ニ付絕エズ新タナル工夫ヲ加フルコトガ
必要ト認メラレルノデアリマシテ、今般現在
アリマスル所ノ貯蓄債券、報國債劵或ハ割
增金附郵便貯金切手以外ニ一定ノ者ヲシテ
新規構想ニ基ク各種ノ割增金附證劵ヲ發行
セシメ得ルコトト致シマスルト共ニ、證劵
ノ形體以外ニ各種ノ預貯金ニ對シマシテ
モ、必要ニ應ジ抽籤ヲ以テ割增金ヲ附スル
コトヲ得ルコトト致シタノデアリマス、次
ニ改正ノ第二點ハ、貯蓄債劵及報國債劵ノ
發行、償還事務ノ輻湊ヲ緩和スル爲社債原
簿制度ヲ省略スルト共ニ、兩債劵發行償還
ノ都度、日本勸業銀行本支店所在地ニ於テ
行フコトヲ要シマスル發行竝ニ償還登記ヲ
省略セムトスルモノデアリマス、兩債劵ノ
賣出成績ハ每囘極メテ順調ニ推移致シマシ
テ、昨年十二月迄ノ發行額累計ハ十七億八
百萬圓ニ上リ、且其ノ發行額ハ逐年累增ノ
傾向ヲ辿ッテ居リマス、而シテ兩債劵ハ共
ニ日本勸業銀行ヲシテ發行セシメテ居リマ
スル關係ヨリ形式上ハ一種ノ社債トナリ、
商法ノ社債ニ關スル複雜ナル諸規定ハ特則
ノナイ限リ當然適用サレルノデアリマスル
ガ、右ノ如キ實狀ニ在ル兩債劵ニ商法ノ原
則ヲ適用スルコトハ之ガ事務量モ莫大ニ上
リ、事實上事務的行詰リヲ來スノデアリマ
ス、之ガ解決ヲ圖リマスルト共ニ戰時下資
材、勞力不足ノ折柄、其ノ節減ニ資シマス
ル爲社債發行、條件變更、償還ノ都度、右
ノ諸事項ヲ發行會社タル日本勸業銀行ノ本
支店所在地ニ於テ登記スベキコトヲ規定シ
テ居リマスル商法第三百五條ノ適用ヲ除外
致シ、併セテ社債發行償還ノ都度債劵一枚
一枚ノ番號竝ニ當該年月日ヲ記入スルコト
ヲ規定シテ居リマスル商法第三百十七條ノ
適用ヲ除外致スノ要アルモノト認メラレル
ノデアリマス、而シテ商法第三百五條ノ適
用ヲ除外致シマスル結果、當然不要トナリ
マスル日本勸業銀行法第三十五條ノ二第四
項、第五項竝ニ第三十五條ノ四ノ準用ヲモ除
外セムトスルモノデアリマス、改正ノ第三點ハ
適正、簡易、安全ナル有價證劵ノ賣買機構ヲ
整備セムトスルコトデアリマス、支那事變
勃發以來現在迄ノ國債發行額ハ四百十億餘
萬圓ニ上リマスル外、貯蓄債劵及報國債劵
ノ發行額モ前申述ベマシタル如ク極メテ多
額ニ上ッテ居リマスルガ、今後戰費及生產力
擴充資金ノ調達ノ爲、國債其ノ他ノ證劵ノ
發行額ハ益〓增加スルノデアリマシテ、之ガ消化
特ニ國民大衆ノ消化ヲ圓滑化シ、且其ノ消
化力ヲ促進致シマスル爲ニハ、一般國民ガ
已ムヲ得ザル必要アルトキハ何時ナリトモ
所有ノ國債其ノ他ノ證劵ヲ適正ナル價格ヲ
以テ簡易安全ニ賣却スルコトヲ得、又何時
ナリトモ希望スル必要ノ種類、數量ノ證劵
ヲ購入シ、又ハ希望ノ證劵ニ交換シ得ル機
構ヲ設クルコトガ必要デアリマス、現在ニ於
キマシテモ郵便局賣出國債ニ付キマシテハ
必要ニ應ジ郵便局ニ於テ之ヲ買入レ、又ハ
百貨店ニ於キマシテハ常時小額國債、貯蓄
債劵及報國債劵ヲ賣却シテ居ルノデアリマ
スルガ、今般更ニ一層廣ク且簡便ニ國民ガ
國債、貯蓄債劵、報國債劵等ヲ適正ナル價
格且簡易ナル手續ニ依リマシテ安全ニ賣買
シ得ル機構ヲ設クルコトヲ適當ト認メ、是
ガ爲政府ハ金融機關、證劵引受業者其ノ他
命令ノ定ムル者ヲシテ一定ノ有價證劵ヲ一
定ノ價格方法等ニ依リ直接賣買セシメ、又
ハ政府ノ指定スル法人ノ爲ニ賣買ノ代理若
シクハ媒介ヲ爲スベキコトヲ命ジ得ルコト
トシ、又國債其ノ他ノ證劵ヲ常時賣却セシ
メマスル爲ニ是等ノ金融機關等ヲシテ一定
ノ種類、數量ノ證劵ヲ保有セシメ得ルコト
トシ、之ニ伴ヒマシテ必要ニ應ジ損失ヲ補
償シ、又ハ補助金ヲ交付シ得ルコトト致シ
タノデアリマス、最後ニ改正ノ第四點ハ、必
要ニ應ジ株式ヲ讓渡スベキコトヲ命令シ得
ルコトトスルコトデアリマス、大東亞戰爭下
株式ノ市價安定ヲ圖リ、以テ資金動員ノ適
正ヲ期シ、產業資金ノ調達、國民貯蓄ノ保
護ニ遺憾ナカラシムルコトノ緊要ナコトハ
多言ヲ要シナイ所デアリマシテ、從來政府
ニ於キマシテモ是ガ爲ニ各種ノ措置ヲ講ジ
テ參リ、殊ニ戰時金融金庫ハ政府ノ指導ノ
下ニ株式ノ市價安定ノ爲ニ必要ナル賣買操
作ヲ行ッテ來タ次第デアリマス、然ルニ同
金庫ガ株式市價ノ過當ナル〓騰時ニ際シマ
シテ、之ガ抑止ノ爲ニスル賣リ出動ハ之ニ
必要ナ株式ノ手持ガナケレバ十分ナ效果ヲ
擧グルコトヲ得ナイノデアリマシテ、株價
操作上萬全ヲ期シマスル爲ニハ、何時ニテ
モ同金庫ノ手持株式ヲ充實シ得ルノ態勢ヲ
整ヘテ置クノ必要ガアルノデアリマス、又
別途今議會ニ提案中ノ日本證劵取引所法案
ニ於テハ、場合ニ依リ新取引所ガ自ラ斯カル
操作ヲ行フコトモ必要ト認メラレマスルノ
デ、同法中ニ之ニ關スル規定ヲ設ケマシタ
ノニ照應シ、日本證劵取引所ニ付キマシテ
モ、其ノ手持株式ノ補充ニ付キマシテ同樣
ノ必要ガアルノデアリマス、斯カル事情ニ
顧ミマシテ、今般株式讓渡命令ニ關スル制度
ヲ設ケ、政府ハ株式ノ市價安定ヲ圖ル爲必
要アリト認ムル時ハ、金融機關其ノ他命令
ノ定ムル者ニ對シ、其ノ所有スル株式ノ一
部ヲ戰時金融金庫又ハ日本證劵取引所ニ對
シ、時價ヲ以テ讓渡スベキコトヲ命ズルコ
トヲ得ルコトト致シマシタ、以上臨時資金
調整法中改正法律案ノ主ナル點ヲ御說明申
上ゲタノデアリマスルガ、何レモ大東亞戰爭下
資金ノ蓄積、浮動購買力ノ抑制等ヲ圖リ、以
テ戰時財政經濟ノ圓滑ナル運行ヲ確保致シ
マスル上ニ於キマシテ、極メテ緊要ナル措
置デアルト存ジテ居ル次第デアリマス、次ニ
普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ
兼營等ニ關スル法律案ニ付キマシテ御說明
ヲ續ケテ參リマス、本法律案ノ趣旨ハ現
下ノ經濟金融政策上、資金ノ蓄積、貯蓄ノ
增强ガ最モ緊要デアリ、是ガ爲ニハ有ラユ
ル金融上ノ施設ヲ動員シ、資金ノ吸收、特ニ
大衆的預金及長期貯蓄的資金ノ吸收ニ對シ
マシテ、其ノ全能力ヲ發揮セシムルコトガ
極メテ肝要デアルト認メラレマスルノデ、
現存金融機關中其ノ人員及店舗數等ニ於キ
マシテ、最モ活動力アル普通銀行等ヲシ
テ、貯蓄銀行業務及信託業務ヲ兼營セシメ、
時局ノ要請ニ應ズル上ニ於テ遺憾ナキヲ期
セムトスルモノデアリマス、本法律案ノ內
容ハ、第一ニ普通銀行ガ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ、又ハ特別銀行ガ主務大臣ノ指定ヲ受
ケ、ソレ〓〓貯蓄銀行業務又ハ信託業務ヲ
營ミ得ルコトヲ定メテ居ルノデアリマス、
此ノ場合ニ於キマシテ、貯蓄銀行法又ハ信
託業法中必要ナル規定ハ之ヲ兼營銀行ニモ
適用スルコトト致シタノデアリマシテ、其
ノ主ナルモノハ供託ニ關スル規定、有價證
劵ノ割賦販賣ニ關スル規定、運用ノ方法ノ
特定セザル金錢信託ニ付元本ノ補塡又ハ利息
ノ補足ヲ爲シ得ルロトニ關スル規定、兼營業
務ノ種類又ハ方法ニ對スル主務大臣ノ監督
權ニ關スル規定等デアリマス、第二ハ合併
ニ關スル規定デアリマシテ、其ノ內容ハ信
託會社又ハ信託業務ヲ兼營スル銀行ガ合併
スル場合、銀行ノ合併ノ場合ノ如キ簡易手
續ヲ執リ得ルコト、及ビ兼營銀行ト信託會
社トガ合併シ、又ハ兼營銀行同志ガ合併ス
ル場合、合併後存續シ又ハ新設セラルヽ兼
營銀行ハ、合併ニ因リ消滅シタル信託會社
又ハ兼營銀行ノ信託ニ關スル權利義務ヲ承
繼スルコトノ此ノ二點デアリマス、第三ハ、本
法律案ニ伴ヒ必要ト認メラレマスル他ノ法
律ノ改正等ニ關スル規定デアリマス、最後
ニ本法律案ノ運用ニ當リマシテハ、專營ノ
貯蓄銀行又ハ信託會社ト、兼營銀行トノ間
ニ於キマシテ、不當ノ競爭ヲ生ゼザルヤウ十
分ニ留意致シ、兼營ノ認可ノ際其ノ兼營業
務ノ種類及方法等ニ付キマシテ、適當ト認メ
ラレル調整ヲ加ヘタイ考デアルノデアリマ
ス次ニ別ノ法律案ニ移リマシテ、銀行等ノ
事務ノ簡素化ニ關スル法律案、此ノ法律案
ニ付キマシテ說明ヲ致シマス、此ノ銀行ノ
事務ノ簡素化ノ法律案ハ、銀行其ノ他ノ金
融機關ノ事務ノ簡素化ヲ圖ルコトニ依リマ
シテ、是等金融機關ヲシテ愈〓其ノ機能ヲ發
揮シ易カラシメ、以テ戰時下國家財政及金
融ノ圓滑ナル運營ニ資セムトスルモノデア
リマシテ、其ノ主ナル內容ハ之ヲ三ツニ分
ツコトガ出來ルノデアリマス、第一ハ金融
機關ノ事業年度ヲ、政府ノ會計年度ニ合致
セシメムトスルモノデアリマス、從來銀行
其ノ他ノ金融機關ノ事業年度ハ、相當區々
ト相成ッテ居リ、或者ハ政府ノ會計年度ト一
致シテ居ルノデアリマスガ、其ノ他ノ大多
數ノモノハ曆年主義ニ依ッテ居ルノデアリ
マシテ、政府ノ會計年度トノ間ニ完全ナル
一致ヲ缺イテ居ッタノデアリマス、然ルニ豫
算ハ勿論資金計畫、物資動員計畫、生產力
擴充計畫等、國家財政及經濟運營ノ基礎タ
ルベキ諸計畫ハ、何レモ政府ノ會計年度ヲ
基礎トシテ樹立劃定セラレルコトト相成ッ
テ居ルノデアリマシテ、其ノ爲是等計畫ノ
立案ニ當リマシテハ、常ニ金融關係ノ諸資
料ヲ、政府ノ會計年度ニ引直ス必要ヲ存
シタノデアリマス、又金融機關ガ是等
諸計畫ニ對應シテ、具體的ナ實施計畫ヲ
樹立シ、若シクバ是等ノ諸計畫ニ卽應シ
テ其ノ業務ヲ運營シテ參リマス爲ニハ
何レモ是等ノ諸計畫ヲソレ〓〓ノ事業年度
ニ引直ス必要ガアッタノデアリマス、其ノ
爲政府ト致シマシテモ亦金融機關自身ト
致シマシテモ、種々煩雜ナル手數ヲ要シタ
ノデアリマスルガ、玆ニ此ノ缺陷ヲ是正ス
ル爲ニ、金融機關ノ事業年度ニ付キマシテ
ハ總テ之ヲ政府ノ會計年度ト合致セシ
メルコトトシ、以テ金融機關等ノ事務ノ簡
素化ヲ圖リ、併セテ右ニ申述ベマシタル諸
計畫ノ立案及實施ノ圓滑ヲ期スルコトト致
シタ次第デアリマス、尙今囘ノ改正ハ、現在
其ノ事業年度ガ政府ノ會計年度ト合致シ居
ラザル金融機關ニシテ、法律ヲ以テ事業年
度ノ規定ヲ設ケ居ルモノニ付テノミ、之ヲ
行フコトトシ、其ノ他ノ金融機關ニ付キマ
シテハ、命令ヲ以テ事業年度ノ定メアルモ
ノハ命令ヲ改正シ、ソレ以外ノモノハ定款
ヲ改正セシメルコトニ依リ總テノ金融機關
ノ事業年度ヲ、政府ノ會計年度ニ合致セシ
メルコトト致シタイト存ズルノデアリマス、
第二ハ擔保附社債ノ擔保ノ變更手續ニ關シ、
擔保附社債信託法ニ對スル特例ヲ設ケムト
スルモノデアリマス、現行法ニ依レバ、擔
保附社債ノ擔保ノ變更ニ付キマシテハ、事
ノ輕重ニ拘ラズ總テ社債權者集會ノ決議ニ
依ラナケレバナラナイコトト相成ッテ居リ、
而シテ此ノ變更ノ決議ハ、記名債券ヲ有ス
ル者及ビ無記名債劵ヲ有スル者デアリマシ
テ、會日ヨリ一週間前ニ債劵ヲ會社ニ供託
シタル者ノ半數以上ニシテ、社債總額ノ半
數以上ニ當ル社債權者ガ議決權ヲ行使スル
コトヲ要スルノデアリマス、斯クノ如クデ
アリマシテ其ノ爲ニ受託會社ハ屢〓單純ナ
ル擔保ノ變更ノ爲ニ煩瑣ナル手數ヲ費シテ、
社債權者集會ヲ招集セザルヲ得ナカツタノ
デアリマス、然ルニ最近ノ實情ニ於キマシ
テハ企業ノ整備、統合ガ頻リニ行ハレ、或
ハ一ノ會社ノ設備ガ他ノ會社ニ讓渡セラレ、
或ハ數會社ノ設備ヲ合シテ。一會社ヲ設立ス
ル等ノ事例ヲ多數見テ居ルノデアリマス、
而シテ其ノ結果社債ノ擔保ニ付キマシテモ、
變更ヲ要スル場合ガ屢、生ジテ來ルノデア
リマスルガ、斯カル際ニ當リマシテ一々煩
瑣ナル手數ヲ費シテ社債權者集會ヲ招集シ
テ居リマシタノデハ、戰時下急速ヲ要スル
企業整備ノ必要ニ應ジ得ナイ虞モアルノデ
アリマス、而モ是等ノ場合ニ於キマシテ〓
ネ分離セラレタル擔保ニ付キマシテハ、適
當ナル對價ヲ取得スルノデアリマシテ、之
ヲ社債ノ擔保トシテ追加スル等ノ方法ヲ講
ジマス時ハ、社債權者ノ利益ノ保全ニハ支
障ナイ場合ガ多イノデアリマス、仍テ當分
ノ內玆ニ擔保附社債信託法ニ特例ヲ設ク、受
託會社タル金融機關ノ變更後ニ於ケル擔保
ノ價格ガ未償還社債ノ元利金ヲ擔保スルニ
で
十分ナリト認メマス場合ニ於キマシテハ、擔
保ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケルコトヲ
以テ足リ、社債權者集會ノ決議ヲ必要トセ
ザルコトニ改メ、以テ受託會社タル金融機
關ノ事務ヲ簡素化シ、時局ノ要請ニ基ク社
債擔保變更ノ手續ヲ簡易ニセムトスルモノ
デアリマス、簡素化ノ第三ハ銀行及保險會社ノ
監査役ガ監査書ヲ作成スベキ囘數ヲ、每事業
年度ニ付一囘ト爲サムトスルモノデアリマス、
銀行及保險會社ノ監査役ハ從來每事業年度
ニ付二囘、卽チ銀行ニ付キマシテハ三箇月ニ
一四、保險會社ニ付キマシテハ六箇月ニ
囘監査書ヲ作成スルコトヲ必要トシタノデ
アリマスルガ、近時金融機關ノ內容ハ十分
堅實トナッテ參ッテ居ルノデアリマシテ、
右監査書ノ作成囘數ヲ每事業年度ニ付一囘
ニ減少セシメルモ何等支障ナシト認メラレ
ルノデアリマシテ、今囘之ガ改正ヲ爲スコ
トトシ、以テ監査役ノ行フベキ事務ノ簡素
化ヲ圖ルコトニ致シタノデアリマス、以上
ハ銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關スル法律案ノ
內容デアリマス、次ニ戰爭死亡傷害保險法
案、此ノ法案ニ付キマシテ、御說明ヲ致シ
マく、大東亞戰爭ノ前途ヲ按ジマスルニ、戰
局ハ今後一段ト擴大進展致スベキモノト考
ヘナケレバナラヌノデアリマシテ、之ニ伴
ヒマシテ戰爭ニ因ツテ國民ガ死亡シ、又ハ
傷害ヲ被ル危險モ今後尠クナイト思ハレ
ルノデアリマス、而シテ戰爭ニ因リマシテ
生ズベキ國民ノ死亡傷害ニ對處スル施設ヲ
完備致シマスルコトハ、戰時下ニ於ケル國
民生活ニ何等ノ不安ナカラシメ、國民ノ士
氣昂揚及ビ民心ノ安定ニ資スルト共ニ、戰
場タルト銃後タルトヲ問ハズ、國民ヲシテ
後顧ノ憂ヒナク、各其ノ職域ニ於テ任務ヲ
完フセシメ得ル所以デアリマシテ、此ノ曠
古ノ大戰爭ヲ完遂致シマスル上ニ誠ニ喫緊
ノ要事ト申サネバナラヌノデアリマス、政
府ニ於キマシテハ玆ニ深ク想ヒヲ致シ、戰
爭ニ因ル死亡傷害ニ對シマシテハ豫テ種々
方策ヲ講ジテ參ッタノデアリマシテ、國家ノ
行フ給與ノ制度ト致シマシテハ現在軍人等
ノ戰死傷ニ對スルモノノ外、戰時災害保護
法及防空從事者扶助令ニ基クモノ等ガアル
ノデアリマス、併シナガラ是等ノ制度ハ何
レモ國家ノ一方的給與デアリマスル關係上、
其ノ給與額等ニハ自ラ限度ガアリ、各人ノ
生活ノ實情等カラ見テ必ズシモ十分トハ申
サレヌ場合ガ尠クナイト思ハレルノデアリ
マシー又保險ノ方面ニ於キマシテハ、戰爭
ニ因ル死亡ニ對シ生命保險金及簡易生命保
險金ノ支拂ガ現在行ハレテ居ルノデアリマ
スルガ、其ノ制度ノ建前ガ戰爭危險ノミヲ
保險スル仕組ニハナッテ居ラズ、從ッテ之ヲ
戰爭保險制度トシテ見マスル時ハ種々ノ點ニ
於テ缺クル所ガアルノデアリマス、次ニ傷害
ニ對シマシテハ戰爭危險ヲ擔保スル旅行傷
害保險ガ、一部ノ損害保險會社ニ依リ行ハレ
テ居ルノデアリマスルガ、普通ノ營業トシテ行
フモノデアリマスルカラ保險料ガ高率デアリ
マスルト、戰爭危險ノ擔保ニ對スル國民ノ
需要ヲ充スコトガ出來ナイノデアリマス、斯
ク見テ參リマスルト戰爭ニ因ル死亡傷害ニ對
スル施設ハ現在行ハレテ居リマスモノノミ
ヲ以テシマシテハ、必ズシモ全シトスルコ
トヲ得ナイノデアリマシテ、殊ニ今後ニ於
ケル戰局ノ一段ノ擴大進展ニ想ヒヲ致シマ
スル時ハ、此ノ際速カニ新タナル施策ヲ講ズ
ルコトガ極メテ緊要ト申サネバナラヌノデ
アリマス、仍テ玆ニ戰爭ニ因ル死亡傷害ニ對
シ特別ノ保險制度ヲ設ケルコトト致シタ
次第デアリマス、本法案ノ要點ニ付キ是ヨ
リ御說明ヲ申上ゲマス、第一、本保險ハ戰
爭ノ際ニ於ケル戰鬪行爲、又ハ之ニ關聯ア
ル事件ニ因ル死亡傷害ノミヲ保險事故トス
ルモノデアリマス、第二ニ本保險ノ保險者
ハ政府ノ指定スル保險會社ト致シマスルト
共ニ、本保險契約ノ手續ハ之ヲ普通ノ場合
ニ比シテ簡易ニシ、以テ本保險ニ加入スル
者ノ便宜ヲ圖ルコトト致シタノデアリマス、
第三ニ、本保險ノ被保險者、保險金受取人、
保險金額、保險料、保險期間等ニ付キマシ
テハ、命令ヲ以テ之ヲ定メルコトトシ、本
保險ノ公的性質ニ鑑ミ、其ノ仕組ハ保險會
社ガ普通ノ營業トシテ行フ保險トハ著シク
趣ヲ異ニ致シタノデアリマス、第四ニ、本
保險ハ純然タル公的性質ヲ有スルモノデア
リマシテ、保險會社ガ普通ノ營業トシテ行
フ保險トハ全ク性質ヲ異ニスルモノデアリ
マスカラ、保險會社ガ本保險ニ依リ損失ヲ
受ケマシタル時ハ、政府ニ於テ之ヲ補償致
シマスルト共ニ、利益ヲ得マシタル時ハ之
ヲ政府ニ納付セシメルコトト致シタ次第デ
アリマス、最後ニ鹽專賣法中改正法律案、
此ノ法律案ニ付キマシテ御說明致シマス、
鹽ガ〓料用及工業用トシテ極メテ重要ナ物
資デアリマスルコトハ申ス迄モナイ所デア
リマスルガ、特ニ〓料鹽ハ他ニ代用品ノナ
イ國民生活ノ最低限度維持ノ爲、絕對缺ク
コトノ出來ナイ必需物資デアリマスルノデ、
之ガ供給ハ是非共確保致サナケレバナラナ
イノデアリマス、從ヒマシテ政府ハ夙ニ內地
製鹽事業ノ維持發達ニ力ヲ用ヒマスルト共
ニ、朝鮮、臺灣、關東州、滿洲及支那等、
近海各地ニ於ケル鹽生產力ノ擴充ヲ圖ッテ參
リマシタル結果、是等各地ニ於ケル鹽ノ供
給力ハ著シク增强サレルニ至ッタノデアリ
マスルガ、時局ノ進展ニ伴ヒ、海上輸送力ノ
關係等ニ依リマシテ、內地ニ於ケル鹽ノ需
給ハ相當窮屈ナルヲ免レナイ狀況ニ在ルノ
デアリマス、是等ノ情勢ニ對應致シマシテ、
昨年一月以降、鹽ノ販賣ニ關シ、割當制度
ヲ實施スル等、其ノ需給ノ調整ニ努メテ參ッ
タノデアリマスルガ、今囘更ニ鹽需給ノ安
定ニ資スル爲、左ノ諸點ニ付キマシテ鹽專
賣法中ニ改正ヲ加フルコトニ致シタ次第デ
アリマス、改正ノ骨子ハ大體四點デアリマ
スルガ、以下簡單ニ御說明致シマスレバ、改
正ノ第一點ハ鹹水ノ用途制限ヲ緩和スルコ
トデアリマス、御承知ノ通リ我ガ國內地
ニ於ケル製鹽方法ハ海水ニ操作ヲ加ヘ、鹹
水ト致シマシテ之ヲ煎熬シテ鹽トスルノヲ
通常ト致スノデアリマスルガ、現在ハ此ノ
鹹水ハ鹽製造以外ニハ使用シ得ナイコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、然ルニ鹽ノ用途
ノ中ニハ醬油釀造又ハ曹達製造等ノ如ク、
鹽ヲ再ビ溶解シテ使用スルモノモアリマス
ルノデ、此ノ際取締上等ノ支障ナキ限リ鹹
水ヲ直接使用シ得ルノ途ヲ開キマシテ、鹽
需給調整ニ資スルコトト致シタノデアリマ
ス、改正ノ第二ノ點ハ、鹽又ハ鹹水ノ製造
廢止ニ付政府ノ許可ヲ要スルモノトスルコ
トデアリマス、鹽又ハ鹹水ノ製造ハ現在一
箇月以前ニ申告致シマスレバ、自由ニ之ヲ
廢止シ得ルコトニナッテ居リマスルガ、斯
クテハ鹽又ハ鹹水ノ生產確保上不適當デア
リマスルカラ之ヲ改メマシテ、鹽又ハ鹹水
ノ製造廢止ニ付、政府ノ許可ヲ要スルモノ
ト致シタノデアリマス、第三點ハ鹽又ハ鹹
水ノ製造者ニ對シ罹災補償ノ制度ヲ設ケル
コトデアリマス、鹽田ハ其ノ性質上海濱ニ
位シマスル關係上高潮、海嘯等ノ危險モ尠
クアリマセヌノデ、鹽又ハ鹹水ノ製造者ガ
是等災害ニ因リマシテ、其ノ製品ノ滅失或
ハ損傷又ハ其ノ他ノ事由ニ因リ損害ヲ蒙リ
マシタ場合ニハ製造者ニ對シマシテ損害
ノ一部ニ相當スル補償金ヲ與フルコトト
シ、以テ製造事業ノ安定ヲ圖ルコトト致シ
マシタ、改正ノ第四點ハ鹽製造者等ノ共同
活動ヲ促進セシメ、鹽生產ノ增强ヲ圖リマ
スル爲ニ鹽業團體ノ機構ヲ確立スルコトデ
アリマス、現在ニ於キマシテモ鹽業團體ノ
組織ガアルノデハアリマスルガ、是等團體
中ニハ產業組合タルモノ、工業組合タルモ
)、工業小組合タルモノ、又ハ單ナル中合
組合タルモノ等ガアリマスルガ、是等ニ對
シマシテ製鹽用ノ資金、資材及勞力ノ供給
ヲ一層圓滑ナラシメマスルト共ニ、其ノ共
同活動ヲ益〓强化促進セシメ、以テ鹽生產ノ增
强ヲ圖ル爲、此ノ際是等團體ニ對シマシテ、
鹽業ノ實體ニ適合シタ統一的法人格ヲ與ヘ
マシテ、製鹽事業ノ改善發達ニ資スルコト
ト致シマシタ次第デアリマス、以上御說明
申上ゲマシタル七件ノ法律案ニ付キマシテ
ハ、何卒御審議ノ上、速ニ御贊成アラムコ
トヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=2
-
003・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 只今御說明ヲ
伺ヒマシタ七ツノ法案ノ審議ノ必要上、何
等カ資料ノ御要求ガゴザイマスレバ、此ノ
際御申出ヲ願ヒマスレバ政府ニ傳達致シタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=3
-
004・三井清一郎
○三井〓一郞君 此ノ七法律案ノ中預金、貯
金ニ關係スルモノハ四件デアリマスガ、此
ノ四件ハ一括シテ質疑應答サシテ戴イテ、
アトノ個々ノ問題ハ個々ノ案ニ付テ審議サ
シテ戴ク方ガ便利カト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=4
-
005・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 三井サンノ御
發議、私モ異存ゴザイマセヌガ、ソレヨリ
先ニ何カ調査上ノ御必要ナ資料ガゴザイマ
スレバ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=5
-
006・三井清一郎
○三井〓一郞君 今度此ノ預金、貯金其ノ
他ニ關係ノ中ニ、納稅團體ヲ公的ニ認メテ
納稅ヲ完全ナラシメ、又ハ納稅ノ準備金ヲ
預金セシメルト云フ省令其ノ他ノ要綱ガア
リマス、元來滯納其ノ他ガドノ程度ニアッタ
カ、御調ニナリマシタモノガアリマシタラ
御參考ニ戴イテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=6
-
007・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレヂヤ若シ
段々審議シテ參リマス中ニ、又御必要ガ生
ジマスレバ御申出ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=7
-
008・下村宏
○下村宏君 是ハ他ノ方デスガ、臨時資金
調整法中ノ命令デ、貯蓄債劵、報國債劵以
外ノモノノ割增ヲスル規定ナドアリマスガ、
サウ云フ方ノ命令ニ讓ッテアルコトデ、腹案
ノ出來タモノガアレバ頂戴致シタイト思ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=8
-
009・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 只今下村サン
ノ御申出ガアリマシタガ、御出來ニナリマ
シタラドウゾ······ソレデハ先程三井委員カ
ラ御申出モゴザイマシタシ、本委員會ニ付託
セラレマシタ七ツノ法案ノ審議上ノ便宜ニ
資スル爲ニ、皆樣ノ御異議ガナケレバ三井
委員ノ御申出ノヤウナ取扱ヲ致シタイト思
ヒマスガ、宜シウゴザイマセウカ······三井
委員ニ更メテ伺ヒマスガ、モウ一度件名ヲ
仰ッシヤッテ戴キタウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=9
-
010・三井清一郎
○三井〓一郞君 國民貯蓄組合法中改正法
律案、納稅施設法案、臨時資金調整法中改
正法律案、普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ
信託業務ノ兼營等ニ關スル法律案、此ノ四件
ハ根本ノ目的ハ預金、貯金ニアル、故ニ是
ハ一括シテ一ツ議題トシテ戴キタイト思ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=10
-
011・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ只今
三井委員ノ仰セノヤウナコトデ御異議ガゴ
ザイマセヌケレバ、委員長ニ於テモ其ノ方
ガ便宜ト心得エマスカラ左樣致シタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=11
-
012・一條實孝
○公爵一條實孝君 是ハ改正法律案デスカ
ラ現行ノ法律案ヲ政府カラ御出シ下サイマ
スカ、例ヘバ國民貯蓄組合法ト云フヤウナ
モノヲ刷ッタモノデモ下サイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=12
-
013・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 御審議ニ御便宜
ノヤウナモノヲ差上ゲタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=13
-
014・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ審議
上便宜ノモノデ、御出來ニナリマスモノハ
取揃ヘテ御提出ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=14
-
015・澁澤金藏
○澁澤金藏君 私モチヨット資料ヲ御願ヒ
シタイノデアリマスガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=15
-
016・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 御申出ヲ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=16
-
017・澁澤金藏
○澁澤金藏君 國民貯蓄組合ガ出來マシテ
カラ逐年ドレ位今迄ニ貯蓄ガ出來テ居リマ
スカ、其ノ表ヲ一ツ戴キタイト思ヒマス、
ソレカラ尙普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ
信託業務ノ兼營等ニ關スル法律案ニ關スル
コトデアリマシテ、是ハ全國的ニ集計シタ
モノデ結構デゴザイマスガ、普通銀行ノ預
金ト、ソレカラ貯蓄銀行ノ各種ノ貯金、預
金ソレト信託預金ノ額ガ分リマシタラ適
當ナ年度デ宜シウゴザイマスカラ、今カラ
五年位前カラノ表ガ戴ケマシタラ御願ヒシ
タイト思ヒマス、ドウゾ委員長ニ御取計ラ
ヒヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=17
-
018・上原七之助
○子爵上原七之助君 鹽ノコトガ近來頻リ
ニ申サレマスガ、鹽ノ需給數量ニ關シマシ
テ、若シモ資料ガ頂戴出來マシタラ戴キタ
イト存ジマス、共榮圈內バカリデナク、世
界各國モ併セテ頂戴出來レバ結構デゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=18
-
019・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 只今ノ御話ノ點
ハ總動員ノ機密物資ニナッテ居リマス關係
ガゴザイマス、ソレニ觸レマセヌ限リデ御
希望ノヤウナモノヲ整ヘタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=19
-
020・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ大體
資料ノ御要求ハ此ノ程度デ、御異議ガゴザイ
マセヌケレバ只今議題ニ供シマシタ四件、ソ
レニ付キマシテ大體ノ御質疑ガゴザイマス
レバ、此ノ際伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=20
-
021・三井清一郎
○三井〓一郞君 戰力增强ノ必要上、刻下
國民ハ無駄ヲ省イテ預金貯金ヲ爲シ、以テ
戰費ノ充實ニ資スルト云フコトハ當然過ギ
ル程當然デ、今日ノ時局ヲ眞ニ認識シテ
居ッタナラバ、大藏大臣ガ斯ウ云フ案ヲ御出
シニナラヌデモ預金貯金ハシテ、豫想サ
レタ額以上ニアルモノト我々ハ考ヘルノデ
アリマスガ、總理大臣ハ何時デアリマシタ
カ、此ノ戰力增强ノ爲ニ强權ヲ發動シナ
イ、國民ノ眞ノ理解ヲ以テ進ムト云フ御意
嚮ヲ御漏シニナッテ、國民ノ財產ノ權利義務
ニ立入ッテ迄法制デ預金ヲセシメヌ、貯金
ヲセシメヌト、無論是ハ强制デハアリマセ
ヌガ、法律デ斯ウ云フ規定ヲ作ラナケレバ
ナラヌト云フコトハ、私ハ我ガ日本帝國國
民トシテ誠ニ遺憾ニ堪ヘナイト考ヘル者デ
アリマス、併シ今日迄ノ事實ガドウシテ
モ斯ウ云フ法律ノ改正ヲ以テシナケレバ
希望ノ點ニ預金其ノ他ガ達シナイトスレ
バ、誠ニ已ムヲ得ナイ次第デアリマシテ、
何等我々ガ此ノ點ニ付テ彼此申ス次第デハ
アリマセヌガ、間々此ノ預金貯金ノ奬勵手
段ガ度ヲ過ギテ、我々モ隣組ノ組長ヲ自ラ
經驗シタイ意味デ半年バカリヤッテ見タノ
デアリマスガ、ドウモ割當ガ度ヲ過ギテ、
常會ヲ開イテモ家計簿ハ皆赤クナッテ居ル、
是デドノ裕リヲ以テ預金ガ出來マスカト
云フヤウナコトガアルノデアリマス、此ノ
預金貯金ノ奬勵ニ付テモ政府ハ相當狙ヒ
所ヲ定メラレテ、國民一般ニ奬勵セラレル
トカ、生活ヲ脅カス程度ニ至ラシメズ、又
例ヘバ農村デ御承知ノ產業組合中央金庫ハ
六十萬圓ノ資金ヲ以テ十一萬圓ノ貸出シ、
十一萬圓ノ公債、アト四十萬圓近ク尙持ッ
テ、其ノ組織ガ中央ト或ハ府縣ト二重組
織ニナッテ、經費モ高マッテ居ル、斯ウ云フ
點モ改正ヲシタナラバ今日農村ノ增產奬勵
カラ出ル所ノ預金ト云フモノハ相當吸收出
來ルノデハナイカト思フ、或ハ株式ガ無暗
ニ騰貴スル、事實騰貴スベキ原因ガアッテ騰
貴スルナラ勿論宜イノデア』リマスガ、資
金ヲ株ニ投ズルト云フ所カラ株式ガ騰貴ス
ルトシタナラバ、是等ノ方ニモ裕リガアル
ノデハナイカ、又軍需工場ナドノ社内保留
ガ多キニ過ギルノデハナイカ、色々ノ疑問
ガ國民間ニアルノデアリマスカラ、是等ニ
付テモ一ツ斯ウ云フ國民ノ疑ヲ晴ラス上ニ
付テ、相當御調査ニナッテ居ルコトト信ジ
マスカラ、或程度ノ公表ヲナサレテハ如何
カト思ヒマスガ、無論是ハ公表スベキデハ
ナイト言ハレヽバ、答辯ノ限リニ非ズト云
フコトニナリマスケレドモ、其ノ點ハ一ツ
一般的デ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=21
-
022・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 今日ノ場合ニ資
金ノ蓄積、國民貯蓄ノ增强ト云フヤウナコ
トヲ、戰時ノ財政經濟ノ中核ト致シテ參ッテ
居リマスルコトニ付キマシテハ、十分御理
解ヲ戴イテ居ルト存ズルノデアリマスガ、
國民貯蓄ノ增强ニ付キマシテハ、只今御話
ノ如ク總理大臣モ申サレタ通リニ、根本ニ
於テ强制ヲ致スト云フコトハ、是ハ只今迄
其ノコトハ致シテ來テ居ラナイノデアリマ
シテ、法律ヲ以テ强制シテ貯蓄ヲ行ハシメ
ルト云フヤウナコトハ、今後モ之ヲ行フト
云フコトハ考ヘテ居ラナイノデアリマス、
唯貯蓄ニ關シマスル色々ノ法律案ガ出ルノ
デアリマスガ、之ニ付キマシテハ個人ノ貯
蓄ニ關スル熱意ヲ育テ上ゲテ參リマシテ、
出來上リマシタ貯蓄ヲ安全ニ之ヲ確保シテ
行クト云フヤウナ方面ニモ、色々立法ノ必
要ガ出テ參ッテ來テ居ルノデアリマス、國
民貯蓄組合ノ如キモノモ、之ニ依リマシ
テ貯蓄ノ增進ヲ圖ルト共ニ、此ノ出來上リ
マシタ貯蓄ヲ確實ニ管理スル、ソレカラ又
貯蓄心ヲ誘導シテ行ク方面ニ於キマシテモ、
今囘御審議ヲ願ッテ居リマスル臨時資金調
整法中ノ改正法律案ト云フ方面ニモ、サウ
言ッタヤウナ貯蓄心ヲ進メテ行クト云フガ
爲ノ立法ノ手段モ含マレテ居ルノデアリマ
シテ、今後色々貯蓄心ヲ又新シク刺戟發動
サセルト云フヤウナ方面カラ、立法ノ必要
モ生ジテ來ルカト思ハレルノデアリマスガ、
要シマスルニ直接强制ト云フコトノ方途ニ
ハ向ヒマセヌデ、根本ノ建前ハ任意ノ貯蓄
ト云フコトニ致シマシテ之ヲ誘導シ、又出
來上リマシタ貯蓄ヲ確保スルト云フヤウナ
方面ニ色々ノ措置ヲ講ズルコトガ必要デア
ルト思フノデアリマス、又仰セニナリマシ
タ隣保消化等ノ方法ニ付キマシテハ、色々
部分的ニハ實際上ノムヅカシイ問題ガアル
カト思フノデアリマスガ、一面是等ノ各個
人ニ出來ルダケ生活費ヲ切リ下ゲマシテ、
貯蓄ノ增强ヲ御願ヒ致シマスト同時ニ、御
指摘ニナリマシタヤウナ方面ノ、農村金融
機構ノ改善ト云フヤウナ方面ニモ著目シナ
ケレバナラヌト云フコトハ誠ニ御同感デア
リマス、此ノ方面ニモ今囘ノ議會ニ於キマ
シテ、團體組織ノ法律案ガ出テ居ルノデア
リマスガ、是等ノ團體ノ形成發達ノ指導等
ニ際シマシテハ貯蓄ノ增進ニ妨ゲノナイヤ
ウニ、寧ロ之ヲ十分促進シテ行クヤウニ取
計ラッテ參リタイト云フコトヲ切ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、株式ノ方面ニ資金ガ集
リマシテ、ソレガ其ノ方面ニ投機的ノ波紋
ヲ描キマスト云フコトハ國民貯蓄ノ增强
上ニ甚ダ好マシクナイコトデアリマシテ、
此ノ點ニ付キマシテハ我々ト致シマシテハ、
出來ルダケ配慮ヲ致シテ居ルノデアリマス、
過當ナル投機ノ行ハレテ居リマス場面ニ對
シマシテハ、之ヲ抑制スルト云フガ爲ニ直
接間接ノ指導ノ方法ヲ執ッテ來テ居ルノデ
アリマス、今後共此ノ方面ニ付キマシテハ、
過當投機ノ抑制ト云フコトニ付キマシテハ
十分注意ヲ致シマシテ、其ノ方面カラ國民
ノ貯蓄增强心ヲ阻害スルガ如キコトノナイ
ヤウニ十分配慮シテ參リタイト思フノデア
リマス、ソレカラ軍需產業方面ニ於キマス
ル此ノ貯蓄ノ增强推進ニ付キマシテハ、是
ハ特別ニ意ヲ用ヒテ居ルノデアリマシテ、
國民貯蓄ノ增强ノ指導等ニ付キマシテハ特
ニ此ノ方面ニ組合ノ結成ナリ、又貯蓄ノ制
度等ヲ强化サセルヤウニ指導致シテ居リマ
シテ、軍需工業方面ノ會社ノ役員達ニモ十
分ノ理解ヲ得、特ニ力ヲ用ヒテ居ルヤウナ
關係ニ相成ッテ居ルノデアリマス、要シマス
ルニ最初御話ノゴザイマシタヤウニ、强制
ト云フコトハ根本ノ建前ニ致シテ居ラナイノ
デアリマシテ、大體國民ノ任意ナル貯蓄心ニ
俟ット云フ建前ニ於キマシテ貯蓄ノ增强ヲ
圖ッテ居ルノデアリマスルガ、農村、株式、
軍需工業、ソレ等ノ方面ニモ特ニ注意ヲ致
シマシテ、全體的ニ出來ルナラバ無理、摩擦
ノ起リマセヌヤウニ十分注意ヲ致シマスコト
ニ付キマシテハ、今後モ怠ラナイ考ヘデゴ
ザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=22
-
023・下村宏
○下村宏君 普通銀行ノ貯蓄銀行業務信託
業務ノ兼營ニ關スル此ノ法律案ニ付テデア
リマスガ、大體在來ヨリモ普通銀行ガ段々
合同シテ鞏固ニハナッテ來テ居ルカラ、在
來ノヤウナ懸念ハ薄ライデ來テ居リ、ソ
コヘ斯ウ云フ時局デ段々合併シテ、ソレ
ニ依ッテ物資ナリ人ナリノ節約ト言ヒマス
か、サウ云フコトガ矢張リ斯ウ云フ法案
ガ出タ重點デハナイカト思ヒマスガ、重
ネテ此ノ法案ノ出タ趣旨ヲ御說明願ヒタ
イ、ソレカラ元ハ細カイ銀行ガ地方等ニ澤
山アッテ······田舎ナドニ親銀行トソレニ伴
フ貯蓄銀行ガアッテ、其ノ親銀行ガ隨分放
漫ナ放資等ヲシテ、累ヲ貯蓄銀行ニ及ス
ヤウナ時代ガアッタ、貯蓄銀行ハ貯蓄銀行
デ、其ノ預金ノ放資其ノ他ニ特殊ナ制限ヲ
受ケテ居リナガラモ、曾テハ隨分貯蓄銀行
ノ破綻ト云フヤウナコトガアッタ、近頃ノヤ
ウニ銀行ガ皆合同サレテ來ルト、モウサウ
云フ懸念ハ無論ナイト思フノデスガ、是一
極ク念ヲ入レルト此ノ時局モ濟ミ、又或反
動時代デモ來ルト云フヤウナコトデ、其ノ
普通銀行ノ業務ノ上ニ何カ懸念デモ起ル
ト、ソコニ兼營サレテ居ル貯蓄銀行ノ仕事
ニモ亦懸念ガ起ッテ來テ、貯蓄ヲシテ居ル多
數ノ者達ニ可ナリノ不安ノ念ヲ抱カセタ
リ、不祥ナ事ガ絕對ニ起ラヌトモ言ヘナイ
ノデス、少シ馬鹿念ニナルカモ知レヌガ、
無論普通銀行ノ業務或ハ信託業務、ソレ〓
ニ付テ確乎タル分界ヲ立テ、ソレ〓〓ノ取
扱ノ方法ガ皆立ツコトトハ思フノデスガ、
兎ニ角一ツノ銀行ノ中デ兼ネテヤルト云フ
コトニナルト、同ジヤウナ懸念ガ自然冠サッ
テ來ルヤウニモ思ハレル、是等ニ對シテノ
當局ノ用意ト言ヒマスカ、所信ノ程モ伺ヒ
タイノデアリマス、ソレカラ此ノ法案ヲ出
シタ趣旨ハ自然サウ云フヤウニシテ、貯蓄
銀行ト云フモノハ段々獨立シタモノハ認メ
ヌト云フ方針ニナッテ居ルヤウデ、恐ラクハ
多クノ貯蓄銀行ハ同ジ系統ノ親銀行ノ普通
銀行ヲ持ッテ居リマスカラ、段々其ノ方デ兼
營サレル、ソレヲ當局ハ支持サレテ居ルノ
ヂヤナイカト思フノデス、サウスルト是カ
ラ後ニ貯蓄銀行ノミヲ營ムト云フ新シイ申
請ガ出ルト、ソレハマア、成ルベク認メナ
イト云フ方針デアルカ、自ラサウナルノデ
ハナイカト思ハレルノデス、サウシテ獨立
シタ貯蓄銀行ガ段々少クナッテ來ル、極メテ
限ラレタ三四ノ貯蓄銀行ダケノ爲ニ貯蓄銀
行法ガ殘ルト云フヤウナ時モ來ルノヂヤナ
イカト云フヤウナコトモ考ヘラレルノデス
ガ、矢張リ將來普通銀行ガ貯蓄銀行ヲ兼營
スルコトハ兼營スルデ認メルガ、獨立シタ
貯蓄銀行ハ大體既設ダケニ限ル方針デアリ
マスカ、矢張リ在來通リ貯蓄銀行法ニ依ッテ
認メテ行クト云フコトニナルノデセウカ、
ソレ等ノ點ニ付テ當局ノ御所見ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス、又ソレニ關聯シテ何カ御心附
ニナルコトガアレバ併セテ御示シヲ願ヒタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=23
-
024・山際正道
○政府委員(山際正道君) 取敢ズ私カラ大
體ノコトヲ御答ヘ申上ゲマシテ、尙足ラザ
ル所ハ後刻補フヤウニ致シタイト思ヒマス、
最初ニ御尋ノ普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又
ハ信託業務ノ兼營等ニ關スル法律案ヲ今囘
提案スルニ至リマシタ趣旨ハ、果シテドノ
邊ニアルノデアルカト云フコトデゴザイマ
スガ、是ハ其ノ趣旨ニ於キマシテハ只今御
話ノ通リデゴザイマス、卽チ此ノ時局下ニ
於キマシテ資金ノ吸收ノ爲ニ有ラユル手段
ヲ盡スト云フコトガ、最モ必要ナ事柄ト思
ヘルノデゴザイマス、其ノ爲ニハ國民ヲシ
テ成ルベク同ジ場所デ、其ノ好ム所ノ形態
ノ貯蓄ヲ何デモ用ガ辨ジ得ルヤウニスルト
云フコトガ、其ノ貯蓄增强ノ上ニ效果ガ尠
クアルマイト考ヘルノデアリマス、其ノ意
味カラ申シマスルト、現在各種ノ金融機關
ノ中ニ於キマシテ、普通銀行或ハ特別銀行
ガ其ノ店舗ノ數ニ於テモ、亦其ノ從事致シ
テ居リマスル職員ノ數ノ上カラ申シマシテ
モ最モ餘裕ニ富ミ、又能力ニ長ジテ居ルノ
デゴザイマスノデ、此ノ機關ヲ動員致シマ
シテ、尙此ノ貯蓄預金或ハ長期ノ貯蓄的ナ
ル資金ノ吸收ニ働カセマシタナラバ、其ノ
效果ハ見ルベキモノガアルデアラウト云フ
ノガ、是等ノ銀行ヲシテ貯蓄業務信託信託
業務ヲ扱ハシメヨウト云フ積極的ナ理由デ
ゴザイマス、尙他面ニ於キマシテ只今御話
ノ如ク、段々資金ノ吸收ヲスル爲ニハ、店
舗ヲ增設シ、從事員ヲ增サネバナラヌノデ
アリマスルガ、半面ニ於テ時局ノ要請上物
資人員等ガ思フニ委セヌ事情モアリマ
スノデ、相成ルベクソレ等ノ物的施設、
人的要員ヲ節約スル意味ニ於キマシテ、
成ルベク一ツノモノニ澤山ノ種類ノ仕事
ヲ取扱ハセルト云フ趣旨ニ於テ此ノ働キ
ヲ持タセルト云フコトガ、將來ニ備ヘル
途デアラウト考ヘマシタコトガ、又理
由ニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、今日御
示シノ如ク、普通銀行ノ內容ハ往時ニ
較ベマスレバ誠ニ隔世ソ感ガアル程度ニ改
善ヲ見テ居リマス、固ヨリ時局ノ影響モゴ
ザイマセウガ、今日其ノ內容ニ關シマシテ
懸念ヲ要スルモノハ一ツモナイノデゴザイ
マンク、是ハ私ガ監督ノ立場ニ居リマシテ、
明カニ申上ゲテ宜シイト思フノデゴザイマ
ス、而シテ是等ノ機關ニ對シマシテ政府
ハ極力國民ガ其ノ勤勞ノ結果デアル貯蓄
ヲ預入レルコトヲ奬メテ居ルノデアリマス
ルカラシテ、政府ト致シマシテモ是等機關
ヲ健全ニ維持シテ行クト云フコトニ付テ
ハ、最モ深イ關心ヲ持チ、又最モ重大ナル
責任ガアルノデゴザイマス、此ノ意味ニ於
キマシテ彌ガ上ニモ是等銀行ノ內容ニ關シ
マシテハ常時監督ヲ怠ラヌヤウニ努メテ
居ルノデゴザイマス、ノミナラズ御承知ノ
通リ、一昨年大東亞戰爭ガ勃發致シマシタ
ル當時直チニ大藏省ト致シマシテハ、非常
金融對策ナルモノヲ實施致シタノデゴザイ
Wv.其ノ內容ノ一ツニ、從來ノ事例ニ於
キマシテハ動モスルト非常ノ際ニハ預金ノ
支拂ヲ停止スル、所謂「モラドリアム」ノ措
置ヲ執ッタ事例モアルノデアリマスガ、今
後ハ絕對ニ左樣ナ事態ハ生ゼシメナイ、如
何ナル事態ガ起ッテモ必ズ預ケタダケノ金
ヲ金融機關ガ拂戾ス爲ニハ、政府トシテハ
何處迄モ金融機關ヲ援助スル、必要ナル資
金ハ日本銀行其ノ他ノ發劵銀行ヲシテ無
制限ニ貸出サセル、デアルカラシテ安ンジ
テ如何ナル事態ノ下ニ於テモ、預金ヲ續ケ
テ貰ヒタイト云フ措置ヲ講ジタノデゴザイ
マス、內容ハ先程申上ゲマシタ通リ、非
常ニ堅實ニナッテ居リマス上ニ、益〓信用ヲ
付ケマスル上ニ於テ非常對策ヲ講ジテア
ルノデアリマスカラ、將來ノ預金者保護
ノ點ニ於キマシテハ、今日缺クル所ハ先ヅ
ナイモノト考ヘテ居ルノデゴザイマス、又
時局ノ要請スル方面ニ向ヒマシテ、今日資
金調整法其ノ他ニ依ッテ金融機關ノ保有
スル資金ヲ運用致シテ居ルノデアリマシ
テ、其ノ中ニハ勿論大部分ノモノガ軍需
產業方面へ出テ居ルノデゴザイマス、ソレ
等ノ事業會社等ガ、或ハ將來ノ事態ノ變遷
ニ於テハ其ノ經營上ニ變更ヲ生ジテ、其
ノ結果ガ延イテ銀行ノ內容ニ及ブヤウナ
懸念ハナイカト云フヤウナ點ニ關シマシテ
ハ今日是等ノ事業ヲ進メマスルニ付キマ
シテモ、單ニ金融機關ノソレ等ニ貸出シテ
居リマスル債權バカリデナク、事業會社自
體ノ經營ノ面ニ付キマシテモ、ソシ〓〓國
家ハ必要ナル保護ヲ加ヘ、將來ノ懸念ノナ
イ狀態ニ置イテ、事業ノ發達ヲ企圖致シテ
居リマスルヤウナ次第デゴザイマスルノ
デ、將來是等事業會社等ノ業績ノ激變ニ因ッ
テ此ノ金融機關ガ影響ヲ被ルト云フ虞
ハ今日ノ所デハ十分ニ防ギ得ル用意ガ出
來テ居ルト存ズルノデゴザイマス彼此致シ
マシテ今囘ノ法律案ニ依リマシテ貯蓄銀
行業務、信託業務等ヲ普通銀行等ニ兼營致
サセマシテモ、此ノ內容ノ方面又將來ニ生
ズルカモ知レヌ事態ノ關係ニ於ケル懸念ト
云フモノハ、先ヅ我々ト致シマシテハナイ
ト云フ確信ヲ持チマシテ、此ノ法案ヲ提出
致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、尙兼
營ヲ許ス結果ハ、漸次專門ノ貯蓄銀行トナ
リ信託會社ナリト云フモノガ、將來ナクナッ
テ行クノデハナカラウカ、或ハ新タニ專門
ノソレ等ノ機關ヲ認メル積リガアルカドウ
カト云フ御尋デゴザイマスルガ、此ノ法律
ヲ施行致シマスル趣旨ガ、先般申上ゲマシ
タ通リ、成ベク國民經濟的ニ考ヘマシ
テ、能率ノ良イ形態ニ於テ出來ルダケノ貯
蓄ヲ吸收シヨウト云フ建前デゴザイマスル
カラ、地方ノ貯蓄銀行トカ、信託會社トカ
ノ實情ニ應ジテ、從來持ツテ居ル親子關係ナ
ドデ普通銀行ナドト合併ヲ致シマシタ方ガ
全體トシテ、其ノ人員ナリ設備ナリノ能率
ノ上ニ於テ宜シイト云フモノニ關シマシテ
ハ、將來恐ラク合併ガ實現ヲシ、又是ハ奬
メテ宜シイト思フノゴザイマス、併シナガ
ラ大都會等ニ於キマシテ十分獨力ヲ以テ
貯蓄銀行業務其ノ他ガ實行出來、又ソレガ
他ニ合併スルヨリモ能率ガ宜シイト云フ
モノニ付キマシテハ、何處迄モソレハ專
門ノ機關トシテ働イテ貰ヒタイノデゴ
ザイマス、ソレ等ニ付キマシテハ寧
ロ合併シタイト云フ申出ガアリマシテ
モ、尙政府トシテハ獨立シテヤッテ貰ツタ方
ガ能率ガ宜カラウト認メマスル場合ニハ
其ノ儘獨立ノ形態ヲ續ケテ貰ヒタイト考ヘ
テ居ルノデゴザイマス、尙將來專營ノ機關
ヲ新タニ認メルカト云フ點ニ關シマシテハ、
從來ト雖モ金融機關ノ數ニ關シマシテハ、
尙整理合同ノ餘地ハアッテモ增設スル餘地
ハ乏シイト云フ所カラ、新規ノ免許ハ相當
以前カラ之ヲ致シテ參ラヌ狀況ニアッタノ
ゴザイマス、御承知ノ通リ產業經濟一般ノ
方面ニ於キマシテ、漸次企業ノ規模、經濟
ノ態樣ガ變ツテ參リマシテ、ソレニ應ジマ
シテ金融機關ノ方モ、其ノ機構ノ要素ヲ調
整シテ參ラネバナラヌノデアリマスルガ、
從來ノ傾向ハ主トシテ金融機關ノ數ヲ縮小
スル方面ニ向ツテ參ツタノデゴザイマス、實
際ノ狀況カラ申シマスルト、尙此ノ勢ハ續
イテ居ルヤウニ思フノデゴザイマシテ、今
日ノ所カラ申シマスルナラバ、金融機關ノ
數ト致シマシテハ、尙減少ノ餘地ハアリマ
スルガ、增加ノ必要ハ比較的乏シイト思フ
ノデゴザイマス、從ヒマシテ將來狀況ガ變
化致シマスレバ格別デゴザイマスガ、現在
ノ所デハ新規ノ免許ヲ與ヘルト云フコトハ
相當困難ガアルノデハナイカ、斯樣ニ考ヘ
テ居ルノデゴザイマス、尙御尋ニ對シテ洩
レタ點モアルカト思ヒマス、恐レ入リマス
ガ更ニ御尋ヲ願ヒマシテ御答申上ゲタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=24
-
025・三井清一郎
○三井〓一郞君 只今ノ御質問ニ關聯シタ
コトデアリマス、政府ノ御懇切ナル御答辯
ニ依リマシテ非常ニ明瞭ニナリマシタ、斯
ウ云フヤウニ預金者ノ便宜又銀行ノ能率增
進ノ上、將來ノ銀行政策ノ上カラ斯ウ云フ
案ヲ御出シニナッタコトデアルト信ジマシ
テ、私ハ能ク諒解致シテ居ルノデアリマスルガ、
昨年デアリマシタカ、銀行ノ改正法律案ノ時
ニ大藏當局ニ御尋ヲシテ、恩給金庫ヲシテ
受給者ノ寄託ヲ許シテ居ルノデアルカラ、
受給者ノ預金ヲ許スト云フコトハ出來ナ
イカト云フ質疑ヲ致シタノデアリマスル
ガ、之ニ對シテハ尤モナ御意見ダカラ十分
〓究シテ、時ヲ得タナラバ提案ヲスルト云
フ御答辯ヲ得テ居ル、御承知ノ恩給金庫ハ
七十萬ノ受給者ヲ抱ヘテ、所謂受給者ノ金
庫デアル、受給者ハ我々ノ金庫デアル、我々
ガ受給證書ヲ寄託ヲシ、或ハ困ル時ニハ恩
給ノ規定ノ額以内ヲ借用スル我々ノ銀行デ
アル、斯ウ云フ信念ガ非常ニ昂ッテ來テ、旣
御承知ノ通リ今日恩給金庫ハ囘收額ヲ引イ
テモ彼此一億ニ達セムトシテ居ルダラウト
思フノデアリマスガ、サウ云フヤウニナ
リ、既ニ寄託モ千萬圓ニ近クナラウト云フ情
勢ニアルノデアリマス、處ガ此ノ受給者ガ
金庫ヘ來テ寄託ヲスル以外ニ、自分ノ所ニ
是ダケノ裕リガアルカラ預金ヲシタイガ、
ソレハ恩給金庫ハサウ云フ金ハ取扱フ所ヂ
ヤナイト云フノデ失望シテ歸ル者ガ隨分ア
ル、是ハ現在ノ理事者ノ方デモ御承知ノコ
トト思ヒマス、斯樣ニ各普通銀行ヲシテ貯
蓄銀行ノ業務ヲ兼營セシメルト云フヤウナ
御考ニナルナラバ、是等ハ御考慮下サッテ
宜イノヂヤナイカ、受給者ガ自給自足デ集ッ
テ恩給金庫ヲ維持シテ、寄託ヲスルト其ノ
寄託ハ御承知ノ銀行ト同樣ナ利子デ預ッテ
居ル、ソレデ我々ハ銀行ノ取引ヂヤナイノ
ダカラ恩給金庫ダケハ自分ノ取引銀行ト
思ッテ居ルト云フ可愛イ心持ヲ活カシテヤッ
テハ如何デアルカ、斯ウ思フノデスガ、其
ノ後ノ御〓究ノ狀況ハ如何デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=25
-
026・山際正道
○政府委員(山際正道君) 恩給金庫ニ預金
ヲ、受恩給者ヲ對象トシテ開始シテハドウ
デアルカト云フ御說ハ、只今御示シノ如ク
豫テ承ッテ居ッタ所デゴザイマス、其ノ後
段々私共ノ方ニ於キマシテモ色々考案ハ致
シテ居ルノデゴイザマスルガ、未ダ實現ハ
見テ居ラヌノデゴザイマス、考ヘテ居リマ
スル所ヲ申上ゲマスルト、大體ガ恩給金庫
ハ恩給債劵ヲ發行致シマシテ、外部カラ資
金ヲ集メマシテ、ソレヲ受恩給者ノ中必
要ト認メラルヽ方々ヘ融通ヲスルト云フ、
所謂資金ヲ融通スル貸付機關トシテ存立致
シテ參ッタノデゴザイマス、ソレガ漸次受
恩給者ノ便宜ヲ圖リマスル爲ニ、只今御話
ノ如ク寄託金ノ範圍ハ扱ッテモ宜イト云フ
所迄參ッテハ居ルノデゴザイマス、之ヲ更
ニ一步進メテ寄託金ニ限ラズ、一般ノ預金
迄モ取ッタラドウカト云フ點ガ今問題ニナッ
テ居ル譯デゴザイマス、成ル程資金ヲ集メ
マスル點カラ申シマスルト、如何ナル機會
ヲ利用シテモ窓口ノ多イ方ガ宜イノヂヤナ
イカト云フコト)モ尤モト思フノデアリマ
スガ、他面御承知ノ資金ヲ集メル機關同士
ノ間ニ於ケル一種ノ對立ト申シマスルカ、
競爭ト申シマスルカ、其ノ方面カラ生ズル
弊害ト云フコトモ考ヘル必要ガアリマス爲
ニ、新シイ種類ノ機關ニ預金ノ取引ヲ認メ
マスルト云フコトニ付キマシテハ、從來相
當愼重ナ態度ヲ執ッテ參ッテ來テ居ルノデ
ゴザイマス、元來ガ申上ゲマシタヤウニ、
受恩給者ニ資金ヲ貸付ケル機構トシテ發達
ヲ致シテ參ッテ居ル金庫デゴザイマスルノ
デ、現在ノ機構ヲ以テ致シマシテハ、恩給
ヲ受ケル者ヲ對象トシテノ一般ノ預金機關
トシテハ、マダ機構ノ上ニ於テモ十分デナ
イ憾モアルノデゴザイマスガ、是ハ將來ノ
此ノ金庫ノ發達ノ狀況、ソレカラ恩給金庫
ト取引ヲ致シテ居リマスル人々ノ實情等
ニ應ジマシテ、漸次更ニ其ノ問題ヲ考ヘテ
行キタイ積リデゴザイマシテ、未ダ實現ハ致
シテ居リマセヌガ、尙調査〓究中ニ屬スル
事項ト御諒解ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=26
-
027・三井清一郎
○三井〓一郞君 御說ハ嘗テ恩給金庫ガ出
來タ一兩年ノ際ニハ、今銀行局長ノ御話ニナッ
タヤウナコトデゴザイマシタガ、其ノ後
此ノ戰時狀況ニナリ、預金者ノ便宜ヲ圖ル、
又今ヤ進ンデ普通銀行ガ貯蓄銀行ヲ兼營ス
ルト云フ迄進ンデ行ク以上ハ、恩給者或ハ
年金者等、斯ウ云フ者ノ六、七十萬ノ者ノ
一部ガ、自己ノ銀行ダト確信シテ居ル金庫こ
ニ若干ノ寄託金、是ハ恩給生活者ダカラ多
額ノモノヂヤナイ、便宜上取扱ッテ貰ヒタ
イト云フノデアルカラ、是ハ一ツ〓究シテ
戴キタイト思フ、殊ニ此ノ恩給金庫ノ資金
ハ今債劵ヲ御承知ノ四分一一厘デ發行シテ
居リマス、政府保證ヲ爲シテ四分二厘ノ債
劵ヲ發行シ、其ノ他大藏省ノ預金部カラハ
時ニ依ッテ借入レラレルコトモアリマセウ
ガ、サウ多額ノ資金ヲ得ルコトハマアムツ
カシイ、從ッテ他ノ團體カラ資金ヲ求メマ
ストドウシテモ四分四、五厘ニナル、サ
ウシテ六分ニ貸付ケテ、其ノ六分ガ軍部其
ノ他ノ方面カラ高イ、早クモット低利ニセ
ヨ、又保證料ト云フモノヲ取ッテ居ル、是
モ高過ギル、色々ノ意見ガ出ルノデアリマ
ス、此ノ際受給者ノ寄託シタ者ガ、序デニ
五百圓預ケテ行キタイ、三百圓預ケテ行キ
タイト云フコトヲ御認ニナッタカラト言ウテ、
他ノ大キナ銀行ニ對抗シテ無理ガアルトハ
我々ハ考ヘナイノデアリマシテ、サウ云
フ風ニ受給者ガ自ラ預金ヲシテ、サウシテ
安イ金利ノ資金ヲ恩給金庫ガ運用シタナラ
バ金利モ下ゲルコトガ出來ル、又保證料モ
幾ラカ低下スルコトモ出來ルト考ヘルノデ
アリマスカラ、其ノ點ヲ一ツ十分御〓究下
サッテ、既ニ一昨年デハ殆ドモウ次ノ年ニデ
モ案ヲ出スト言ハヌバカリノ御答ヲ得タノ
デアリマス、前ノ銀行局長モオイデニナリ
マスガ、大分サウ云フ風ニ話ガ進ンデ居ッタ
ノデアリマスガ、其ノ點ハ一ツ決シテ大藏
省ノ不信ヲ、私ハ無理ヲ言ウテ非難スルノ
ヂヤアリマセヌガ、十分御〓究ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=27
-
028・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 段々ト御尤モナ
御話デアリマシテ、恩給金庫ノ資金ノ關係等
カラ考ヘテ見マシテ、只今御話ノヤウナ預金
ガ其ノ方面ニドレダケノ貢獻ヲスルカ、又貸
出ノ利率ニ相當ノ引下ゲヲ生ゼシメルコト
ガドレダケノ働ヲスルカ、是ハ色々數字ノ
關係等モ〓究シテ見ナケレバ確カデハナイ
ト思フノデアリマスガ、兎モ角モ恩給受給
者ガ自分達ノ金庫ト思ッテ居ル所へ預金ガ
出來ル便利ガアレバ宜シイト云フヤウナ、
極クサウ云フヤウナ話ハ、サウ云フコトモ
實際アルト思ッテ居リマス、御尤モダト思
フノデアリマス、併シ先程銀行局長モ申上
ゲマシタヤウニ、之ニ預金ヲ許スト云フコ
トニナリマスレバ、又ソレニ釣合ヲ取リ
マシテ許サナケレバナラナイヤウナ方面モ
出來テ參ルヤウナ關係モアリマスルシ、他
ノ機關トノ競爭關係ト云フヤウナモノモア
ルノデアリマシテ、前囘御話ノ際ニ、或ハ
直グニモト云フヤウナ御答ヲ致シタカトモ
思フノデアリマスガ、其ノ後色々〓究致シ
テ見マシタ結果、マダ見極メガ付カナイノ
デアリマス、御承知ノ通リ恩給金庫ニ付キ
マシテハ、只今ノ考へ方トシテハ監理局ニ
其ノ仕事ヲサシテ居ルノデアリマシテ、一般
ノ預金モ取ルト云フ機關トハ稍〓別ナ見方
ヲ只今ノ所デハシテ居ルヤウナ狀況デアリ
マヽ、併シ御話ノ點ニ付キマシテハ實際
的ノ方面、又〓究致シテ見マシタナラバ
或ハ金庫ノ資金關係ノ方面ニモ色々考究シ
ナケレバナラヌ點モアルカト存ズルノデア
リマシテ、前囘御答ヘ致シテ置キマシテ、
解決遷延致シテ居リマスノハ甚ダ恐縮デア
リマスケレドモ、今後尙十分〓究ヲ續ケタ
イト、左樣ニ考ヘテ居リマス、御了承ヲ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=28
-
029・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ一般的ナ
御質問ガゴザイマスレバ······尙御質疑モ殘ッ
テ居ルト存ジマスケレドモ、何分相當御〓
究モ要ルコトト考ヘマスルノデ、法案モ澤
山ゴザイマスカラ、今日ハ此ノ程度デ止メ
マシテ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=29
-
030・綾小路護
○子爵綾小路護君 先刻ノ資料ノ追加ヲ致
シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=30
-
031・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=31
-
032・綾小路護
○子爵綾小路護君 先程銀行預金ノ總額ノ
要求ガゴザイマシタガ、ソレニ關聯ヲ持ッ
テ居リマスルカラシテ、郵便貯金ノ最近五
箇年程ノ數量ヲ所管ガ違ヒマスルガ、御提
出ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=32
-
033・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 承知致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=33
-
034・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ只今
申上ゲマシタ通リ今日ハ此ノ程度ニ止メマ
シテ、本委員會ヲ月曜ノ朝十時ヨリ開會致
シタイト思ヒマス、本日ハ是ニテ散會致シ
マス
午前十一時五十五分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵橋本實斐君
副委員長男爵明石元長君
委員
公爵一條實孝君
侯爵淺野長武君
子爵綾小路護君
子爵上原七之助君
三井〓一郞君
男爵小畑大太郞君
下村宏君
河田烈君
富田健治君
澁澤金藏君
野村德七君
米原章三君
政府委員
大藏次官谷口恒二君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏省國民貯蓄局長氏家武君
大藏省資金局長松田令輔君
大藏省理財局長田中豐君
大藏省銀行局長山際正道君
大藏省監理局長相馬敏夫君
專賣局長官木內四郞君
專賣局理事濱田德海君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00119430130&spkNum=34
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。