1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○臨時利得税法中改正法律案
○臨時租税措置法中改正法律案
○酒税法中改正法律案
○酒造組合法中改正法律案
○清涼飮料税法中改正法律案
○取引所税法中改正法律案
○砂糖消費税法中改正法律案
○物品税法中改正法律案
○遊興飮食税法中改正法律案
○入場税法中改正法律案
○特別行爲税法案
○輸出する物品に對する内國税免除又は交付金交付の停止等に關する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=0
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001・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) ソレデハ是ヨ
リ臨時利得稅法中改正法律案外十一件ノ特
別委員會ヲ開催致シマス、最初ニ大藏大臣
ヨリ御說明ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=1
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002・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 本委員會ニ付託
トナリマシタ稅法中改正等ノ法律案十二件ニ
付キマシテ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、
本會議ニ於テモ說明致シマシタ如ク、政府ハ
財政需要ノ增加ニ備ヘマスルト共ニ、增稅
ガ國民經濟及國民生活ニ及ス影響等ニ付キ
マシテ愼重考究ヲ遂ゲマシタ上、現下ニ於
ケル經濟諸情勢ニ照シマシテ、臨時軍事費
追加豫算ノ財源ノ一部ニ充ツル爲、此ノ際間
接稅ヲ中心トスル增稅ヲ行フノ必要アリト
認メマシテ、本案ヲ提出致シマシタ次第デア
リマス、先ヅ增稅案ノ作成ニ當リマシテハ、
消費ノ節約、購買力ノ吸收ヲ圖ルト共ニ、
又國庫收入ヲ增加シテ戰時財政ノ强化ニ資
スル、此ノ見地カラ致シマシテ、決戰下ニ
於ケル今日ト致シマシテ、國民生活ノ確保、
國民負擔力ノ關係等ヲ考慮致シマシテ、奢
修的消費ニ對シマシテハ特ニ高率ノ課稅ヲ
致シマシタ、又ソレニ付キマシテ節約可能
ナリト認メラルヽ消費ニ付キマシテ課稅ノ
率ヲ引上ゲ、又課稅ノ範圍ヲ擴張致スコト
ト致シタノデアリマス、從ヒマシテ酒稅
其ノ他ノ間接稅ニ付キマシテ改正ヲ行フト
共ニ、特別行爲稅ヲ新タニ設クルコトト致
シタノデアリマス、ソレト同時ニ現在ノ
情勢ニ顧ミマシテ、一部產業ノ編成替ト
云フコトガ行ハレマス、又資金ノ蓄積ガ
非常ニ必要デアリマスノデ、是等ノ戰時下
ノ諸政策ガ圓滑ニ行ハレマスル爲ニ必要ナ
ル租稅上ノ措置ヲ講ズルコトト致シマシタ、
仍テ臨時租稅措置法ヲ改正致シタイノデア
リマス、次ニ今囘ノ增稅案ニ付キマシテ其
ノ內容ヲ申上ゲタイト存ジマス、先ヅ酒稅
ニ付キマシテハ主トシテ庫出稅ノ引上ヲ行
フコトト致シタノデアリマシテ、總稅額ニ
於テ大體十割程度ノ增徵ヲ行フコトト致シ
タノデアリマス、酒類中消費高ノ最モ多イ〓
酒ニ付テ申上ゲマスレバ、今囘ハ一率ニ增
徵ヲ行フト云フ方法ヲ避ケマシテ、〓酒ヲ
其ノ品質等ニ應ジテ四階級、大體三階級デ
アリマスルガ、少シノ區分迄入レマスト四階
級ニ區分致シマシテ、最モ優良ナ第一級酒
ハ庫出稅ガ一石ニ付三百六十二圓ノ引上ト
相成ッテ居リマス、現在造石稅ト庫出稅ト合
セマシテ一石ニ付百五十三圓ノ課稅デアリ
マスルガ、今囘ハ造石稅ト庫出稅ヲ合セマス
ルト五百十五圓ト云フコトニ相成リマス、
第二級酒、第三級酒及ビ第四級酒ニ付キマ
シテモ庫出稅ヲ引上ゲマシテ、現在是等
ハ造石稅、庫出稅ヲ合セマシテ一石百圓デ
アリマスガ、之ヲ第二級酒、兩者併セテ三
百四十圓、第三級酒ハ二百十圓、第四級酒
ハ二百圓ト致スノデアリマス、其ノ結果〓
酒ノ小賣價格ハ第一級酒ハ一升ニ付七圓程
度トナル見込デアリマス、第二級酒ハ同ジ
ク五圓程度、第三級酒ハ三圓五十錢程度、
第四級酒ハ三圓三十錢程度ト相成ル見込デ
アリマス、又〓酒ト共ニ、一般的消費ニ
充テラレテ居リマス合成〓酒ニ付キマシテ
モ、〓酒ノ引上ニ準ジマシテ、相當程度ノ
增徵ヲ行フコトト致シマシタ、麥酒ニ付キ
マシテハ庫出稅ノ稅率現行一石ニ付キマシ
テ八十七圓八十錢デアリマスノヲ、百七十
七圓八十錢ニ引上ゲマシタ、其ノ結果普通
壜一本小賣價格五十八錢デアリマスノガ、
大體九十錢程度ニナル見込デゴザイマス、
其ノ他味淋、燒酎、雜酒等ニ付キマシテモ、
品質等ニ依リ差等ヲ設ケマシテ、一方〓酒
トノ權衡ヲ保ツヤウニ致シマシタ、主トシ
テ庫出稅ニ付キマシテ適當ト認ムル稅率ノ
引上ヲ行フコトト致シテアリマス、尙生產
、力擴充關係ノ重要ナル產業、是ハ農業モ含
ンデ居リマスルガ、ソレ等ニ從事スル勞務
者等ニ對シマシテハ、〓酒、合成〓酒、燒
酎及麥酒ノ若干數量ヲ限リマシテ、低廉ナ
ル價格ヲ以テ供給ヲ致サムト致シマス爲、
特ニ此ノ分ニ付キマシテハ稅率ヲ引上ゲナ
イコトト致シタノデアリマス、尙今囘ノ增
徵ノ施行ノ萬全ヲ期シマスル爲、酒稅法ニ
付其ノ他必要ナル改正ヲ行フコトト致シテ
居リマス、次ニ酒造組合法デアリマスガ、
酒類ノ生產配給ニ付テハ、其ノ統制ヲ强化
スルノ必要ガ、現狀ニ於テ强ク認メラレル
ノデアリマス、從ッテ酒造組合法ヲ酒類業
團體法ト改メマスルト共ニ、其ノ內容ニ付
キマシテ適當ナル改正ヲ行フコトト致シテ
居リマス、此ノ改正ノ第一點ハ〓酒、味
淋、燒酎等ノ製造者ニ付テハ、從來ヨリ酒造
組合ヲ設ケテ居ルノデアリマスガ、今囘更
ニ他ノ合成〓酒、麥酒、雜酒等ノ總テノ酒
類製造者ニ對シマシテ、ソレ〓〓酒造組合
ヲ設置致シマスルト共ニ、組合ノ統制機能
ヲ擴充スル爲ニ組合ノ設立、統制ノ實行等
ニ關スル規定ヲ整備スルコトト致シタノデ
アリマス、第二ニハ生產ト極メテ密接ナ關
係ニ立チマスル配給部門ニ付キマシテモ、
稅法ノ施行其ノ他配給ノ上カラ申シマシテ、
酒類販賣業者ノ團體ヲ系統的ニ整備確立セ
シメマスルト共ニ、是等ノ團體ヲシテ酒類ノ
配給統制ニ關スル機能ヲ擴充强化致セシメ
マスル爲、酒造組合ニ於ケルト同樣、設立統
制ノ實行等ニ關スル規定ヲ整備スルコトト
致シタノデアリマス、次ニ〓涼飮料稅ニ付キ
マシテハ、其ノ消費ノ性質及ビ酒類トノ權
衡ヲモ考慮致シマシテ、總稅額ニ於テ十割
程度ノ增徵ヲ致シタノデアリマス、增徵ノ
割合ハ、第一種玉「ラムネ」ニ輕微デアリマ
シテ、第三種「ソーダ」水等ニ重ク致シテア
リマス、卽チ第二種「サイダー」等ニ付キマ
シテハ、一石ニ付三十五圓、第三種「ソー
ダ」水ニ付キマシテハ炭酸「ガス」一「キログ
ラム」ニ付十四圓ノ增徵ヲ致シタノデアリマ
ス、ソレニ依リマシテ「サイダー」普通壜一本
ノ小賣價格ガ二十二錢デアリマスモノガ、
砂糖消費稅ノ增徵モアリマスノデ、是等モ
合セマシテ一本三十錢程度トナル見込デア
リマス、次ニ取引所稅中取引稅ニ付キマ
シテハ、株式ノ賣買取引ニ對スル現行稅率
萬分ノ五ヲ萬分ノ八ニ、萬分ノ七ヲ萬分ノ
十ニ引上ゲル外、日本證券取引所法ノ制定
ニ伴ヒ、取引所稅法ニ付必要ナル改正ヲ行
フコトト致シタノデアリマス、次ニ砂糖消
費稅ニ付キマシテハ、第一ニ一般的ノ增徵
ト致シマシテハ、他ノ消費稅ニ比較致シ
マシテ之ヲ輕微ナ程度ニ止メマシタ、從ツ
テ總稅額ニ於テ大體二割程度ノ增徵ト相成
ルノデアリマス、第二種乙、卽チ普通ノ白
砂糖ニ付キマシテハ、現行百斤ニ付十二圓
デアリマスルノヲ十四圓五十錢ニ引上ゲマ
ス、其ノ他ノ砂糖、糖水及糖蜜ニ付テモ
ソレ〓〓適當ニ稅率ノ引上ヲ行フコトト致
シテアリマス、右ノ引上ニ依リマシテ、家
庭用ノ白砂糖一斤三十錢五厘ノ價格デアリ
マスガ、是ガ三十三錢程度トナル見込デア
リマス、第二ニ料理店、旅館等ノ業務用、
菓子其ノ他ノ製造加工用ノ砂糖ニ付キマシ
テハ、其ノ消費ノ性質ニ顧ミマシテ、家庭
用等ノ砂糖トハ區別ヲ致シマシテ、或程度負
擔ヲ加重スルヲ適當ト認メマシテ、ニング、
消費稅ノ外ニ更ニ白砂糖其ノ他上級ノ砂糖
等ニ付キマシテハ百斤ニ付十圓、其ノ他ニ
付キマシテハ百斤ニ付五圓ノ稅率ヲ以テ
特別消費稅ヲ附加スルコトト致シテアルノ
デアリマス、以上一般ト特別兩方ノ課稅ノ
改正ニ依リマシテ、砂糖消費稅ハ總額ニ於
テ七割程度ノ增徵ト相成ル見込デアリマス、
次ニ物品ニ付テ申シマスレバ、物品稅ノ
中第一種及第二種ハ、御承知ノ如ク奢侈
的性質ヲ有スル物品竝ニ國民生活上比較的
不急ト認メラレマスシ、又其ノ消費ガ擔稅
力アルコトヲ示スト認メラレル物品デアリ
マスル斯カルモノニ課稅ヲスルモノデアリ
マく、仍テ今囘ノ增稅ニ於キマシテハ、奢侈
的性質ガ特ニ濃厚ト認メラレマスル甲類ノ物
品ニ付テハ、現行稅率百分ノ五十ヲ百分ノ
八十ニ引上ゲマス、其ノ他ニ付テハ乙類ノ
現行稅率百分ノ二十ヲ百分ノ三十ト致シマ
ス、丙類ニ付キマシテ、第一種ニ於テハ現
行稅率百分ノ十ヲ其ノ儘据置キマス、第二
種ニ於テハ現行稅率百分ノ十ヲ原則トシテ
百分ノ二十ニ引上グルコトト致シマシタガ、
一部ノモノハ新タニ丁類ト致シマシテ、百
分ノ十ニ据置クコトト致シタノデアリマス、
又第一種乙類ノ物品中織物、家具、書畫、
骨董等ニシマシテ、相當高價ナル物ニ付テ
ハ稅率ヲ特ニ百分ノ六十トシ、他ノ乙類ノ
物品ヨリモ重課スルコトト致シタノデアリ
マス、他面現行ノ課稅最低限ヲ或程度引下
ゲマスト共ニ、課稅物品ノ範圍ノ擴張ヲ行
ヒマシテ、「バター」「チーズ」幻燈機、罐
詰壜詰、箱詰等ノ食料品、靴塗料類、滋
養强壯劑等ニ對シ新タニ課稅スルコトト致
シタノデアリマス、物品稅中第三種ニ付キ
マシテハ、先ヅ燐寸ニ付テハ現行稅率千本
ニ付十錢ヲ十五錢ニ引上ゲマシタ、飴ニ付
キマシテハ砂糖トノ權衡ヲ考慮致シマシ
テ、百斤ニ付二圓五十錢、「サッカリン」ハ
一「キログラム」ニ付十圓ノ增徵ヲ行ヒマス、
又新タニ蜂蜜ニ對シマシテ、百斤ニ付五圓
ノ稅率ヲ以テ課稅スルコトト致シテアリマス、
以上ノ結果、物品稅ハ總稅額ニ於テ大體八
割程度ノ增加ヲ來ス見込デアリマス、次ニ遊
興飮食稅ニ付キマシテハ、今次增稅ノ趣旨ニ
顧ミ、相當大幅ノ增稅ヲ行フコトト致シテア
リマス、卽チ藝妓ノ花代ニ付テハ、現行稅率
百分ノ百ヲ百分ノ二百ニ引上ゲマシタ、其ノ
他ノ花代竝ニ花代以外ノ料金ニ付テモ相當
ノ增徵ヲ行フコトト致シテアリマス、普通ノ飮
食ノ料金ニ付テハ一圓五十錢ガ課稅最低限
ノ金額デアリマスルガ、是ハ其ノ儘引下ゲルコ
トナク据置クコトト致シタノデアリマスガ、其
ノ稅率ハ現在百分ノ二十又ハ三十デアリマ
スノヲ、百分ノ三十乃至五十ニ引上グルコ
トニ致シテ居ルノデアリマス、又之ト共ニ
宿泊ノ料金ニ對スル課稅最低限ハ現在〓事
代ヲ除キ五圓トナッテ居リマスルガ、之ヲ引
下ゲテ三圓トスル等課稅最低限ヲ引下ゲ、
其ノ他仕出料理ニ課稅スル等、課稅範圍ノ
擴張ヲ行フコトト致シマシタ、以上ノ增徵
ニ依リ遊興飮食稅ハ總稅額ニ於テ大體七割
程度ノ增加トナル見込デアリマス、入場稅
ニ付キマシテハ第一種卽チ映畫館、劇場等
ニ付テハ課稅最低限ノ引下ハ之ヲ行ヒマセ
又、又入場料ガ五十錢未滿ノモノニ付キマ
シテモ、特ニ稅率ヲ据置クコトト致シマシ
一ク、五十錢以上ノモノニ付キマシテハ、現
行稅率百分ノ三十乃至百分ノ八十ヲ百分ノ
四十乃至百分ノ百二十ト致シマシタ、其ノ
他ノモノ及ビ特別入場稅ニ付テモ適當ニ增
徵スルコトト致シテアリマス、尙ホ本稅施
行ノ實情ニ顧ミマシテ、本稅ヲ間接稅ノ形
式ニ改ムルコトト致シ、之ニ必要ナル改正
ヲ行フコトト致シテ居ルノデアリマス、次
ニ從來外國ニ輸出スル物品及內地、臺灣、
樺太ヨリ朝鮮ニ移出スル物品ニ付テハ內國
稅ヲ免除シ、又ハ交付金ヲ交付シテ參ッタノ
デアリマスガ、現下ニ於ケル交易情勢及行
政ノ簡素化等ヲ考慮シマシテー之ヲ停止又
ハ廢止スルコトト致シタノデアリマス、次
ニ新稅ト致シマシテ、特別行爲稅ヲ創設ス
ルコトト致シタノデアリマス、特別行爲稅
ハ寫眞ノ撮影、整髮、美容、織物衣類ノ染
色仕立、書畫ノ表裝、印刷製本等ニ付テハ、
其ノ消費ノ性質ニ鑑ミマシテ、他ノ消費稅
トノ權衡上、此ノ際或程度ノ負擔ヲ爲サシ
ムルヲ適當ト認メラレマスノミナラズ、之
ニ課稅スルコトニ依リマシテ消費ノ節約、
購買力ノ吸收ニモ資シ得ル等ノ見地カラ、印
刷製本ニ付キマシテハ、他ヨリ少イ百分
ノ二十ノ稅率デアリマスガ、其ノ他ノモノ
ハ百分ノ三十ノ稅率ヲ以テ課稅セムトスル
モノデアリマス、尤モ寫眞ノ撮影ニ付キマ
シテハ、一組一圓五十錢、整髪美容ハ一囘
1四、染色刺繍ニ付キマシテハ一件五圓又
ハ十圓、仕立ニ付キマシテハ三圓乃至二十
五圓程度等、ソレ〓〓課稅ノ最低限ヲ設ケ
マシテ、ソレ以下ノ特ニ奢侈的デナイ普通
ノ必要ト認メラレマスモノニ付テハ課稅ヲ
致サナイト云フ仕組ニ相成ッテ居リマス、以
上述ベマシタ如ク、今囘ハ主トシテ間接稅
ヲ中心トスル增稅デアリマシテ、直接稅ニ
付キマシテハ、昨年ニ於テ相當大幅ノ增稅
ヲ致シタコトデモアリマスノデ、戰時國民
生活諸般ノ樣相等ヲ種々考慮致シマシタ結
果、今囘ハ是ガ增稅ヲ見合セルコトト致シ
タノデアリマスガ、臨時利得稅ニ付テハ若
干ノ改正ヲ行フコトト致シマシタ、卽チ、臨
時利得稅ニ付キマシテハ、第一ニ從來法人
ニ付テハ、昭和十一年以前三年以內ニ終了
シタ事業年度ノ平均利益率ヲ基準利益率ト
シマシテ、サウシテ資本ノ百分ノ十ヲ超エ
ル基準利益率以下ノ部分ニ付テハ、稅率ヲ百
分ノ三十五ト致シテ居ルノデアリマス、併シ
ナガラ定メマシタ基準年度ハ旣ニ現在カラ
見マスト、餘程年數ヲ經過致シマシタ爲ニ、
之ヲ基準トスルト云フコトガ、必ズシモ適
當デアリマセヌノミナラズ、現在ニ於テモ
其ノ適用ニ付旣ニ種々ノ制限ヲ設ケテ居リ
マシテ、實益ガ少イモノトナッテ居リマス關
係上、課稅手續ノ簡易化ヲモ考慮シマシテ、
今囘其ノ基準年度ヲ廢スルコトト致シタノ
デアリマス、第二ニ個人ノ營業者ニシテ利
益金額ガ少額デアリマスモノニ對シマシテ
ハ、施行ノ實情ニ鑑ミマシテ負擔緩和ノ規
定ヲ設ケルコトト致シマシタ、次ニ臨時租
稅措置法ノ改正ニ付キマシテ說明ヲ致シマ
ス、其ノ改正ノ第一點ハ、時局下愈〓緊切ナ
リト認メラルヽ一部產業ノ編成替ニ關スル
モノデアリマス、時局ノ要請ニ依ル企業ノ
合同、整理ノ場合ニハ現在法人稅、所得稅、
營業稅及登錄稅ヲ或ハ免除シ、又ハ輕減ヲ
致シテ居ルノデアリマスガ、最近ニ於ケル
企業合同ノ進捗狀況ニ顧ミマシテ、其ノ輕
減、免除ノ期間ヲ更ニ一箇年延長スルコトト
致シタノデアリマス、右ノ企業合同ノ場合
ニ於テ、營業ヲ廢止シタ者ノ受ケマス補償
金ニ付キマシテ所得稅ヲ輕減又ハ免除スル
コトト致シタノデアリマス、又事業ノ統制
ノ必要上カラ不動產、鑛業權等ヲ讓渡シタ
者ニ對シマシテモ、讓渡利得ノ計算ニ付特
例ヲ設ケルコトト致シタノデアリマス、改正
ノ第二ハ、最近ノ經濟狀態ヨリ見マスル時
ハ、個人ノ營業ノ利益ガ各種ノ事情ニ依ッテ、
相當急激ニ變動スルコトヲ免レナイノデアリ
マス、此ノ場合現行法ニ於キマシテハ、前年ノ
實績ニ依リ所得稅、營業稅等ヲ課稅スルコト
ト致シテアリマスガ、急ニ所得ノ減少致シマ
シタ場合ニハ、其ノ負擔ガ相當困難ナ場合
モ考ヘラレマスルノデ、營業利益ガ著シク減
少シタ者ニ對シ所得稅、營業稅等ヲ或程度
輕減スルコトト致シタノデアリマス、第三ハ、
法人ガ額面以上ノ價額ヲ以テ株式ヲ發行シ
タ場合ニ於ケル額面超過金額デアリマスガ、
企業基礎ノ强化、資金ノ蓄積等ノ見地カラ、
或程度之ニ對スル課稅負擔ヲ輕減スルノガ
適當ト認メマシテ、課稅上ノ特例ヲ設クル
コトト致シタノデアリマス、第四ハ、事業
ノ統制ノ必要上、設備其ノ他ヲ讓渡シタル
法人ガ時局ノ要請ニ應ジ、行政官廳ノ指導、
斡旋ニ依リ解散セザル場合ニ於テハ、事
情ニ依リ或程度負擔ヲ緩和スルノ必要ガ
豫想セラレマスノデ、此ノ場合ニ於テハ法
人稅、營業稅等ヲ輕減シ得ル途ヲ拓イタノ
デアリマス、最近ノ之ガ適用ヲ見マスル實
例ハ、當院ニ於キマシテモ御審議ニナリマ
シタ地方鐵道ノ買收ヲ致シマシタヤウナ場
合ニ、早速適用ガアルコトデゴザイマス、尙、
以上ノ外木材又ハ薪炭ノ增產ノ必要上、山
林ヲ增伐シタル者、鑛業權ノ使用權者ニ付
テモ、或程度所得稅等ヲ輕減スル等、現下
緊要ナル諸政策トノ調和ヲ圖リマス爲、各
種ノ改正ヲ致シタノデアリマス、以上、
今次增稅等ニ關スル法律案ノ〓要ヲ申上ゲ
タノデアリマスガ、之ニ依ッテ國庫收入ノ增
加ニ付キマシテ申上ゲマスレバ、平年度ト
致シマシテ、酒稅ニ付テ四億千四十餘萬圓、
〓涼飮料稅千百二十餘萬圓、砂糖消費稅七
千九百餘萬圓、物品稅二億八千百四十餘萬
圓遊興飮食稅二億七千七百十餘萬圓、入
場稅千二百八十餘萬圓、特別行爲稅七千百
五十餘萬圓、骨牌稅ニ係ル印紙收入三百餘
萬圓、臨時利得稅五千二百八十餘萬圓ヲソ
レゾレ增加致スノデアリマスガ、所得稅、
法人稅、取引所稅等ニ於キマシテ合計五千
三百八十餘萬圓ノ減少トナリマスノデ、結
局平年度約十一億四千五百萬圓、初年度タ
ル十八年度ニ於キマシテハ、約十億七百萬
圓ノ增收トナル見込デアリマス、此ノ十八
年度ノ增收額ハ、臨時軍事費追加豫算ノ財
源トシテ、一般會計ヨリ同特別會計ニ繰入
ルヽモノデアリマス、最後ニ遊興飮食稅法
中改正法律案ノ附則ニ規定シテアリマス地
方分與稅法中一部改正ニ付說明致シマス、
御承知ノ如ク、地方分與稅中配付稅ハ所得
稅法人稅、入場稅及遊興飮食稅ノ一部ヲ
以テスルコトトナッテ居リ、其ノ割合ガ法定
シテアリマス、併シ今囘ノ遊興飮食稅及入
場稅ノ增徵等ニ伴ヒマシテ、地方財源ヲ增
減ナク維持シ得マス等ノ爲ニハ、是等ノ配
付稅ノ基本タル國稅ニ移動ヲ來シマス場合
三、是等ノ割合ヲ變更スルノ必要ガアル
ノデアリマス、尙此ノ變更ニ付キマシテハ
地方團體ニ於ケル新規負擔ノ財源充足ノ爲
ニ若干地方ノ收入ノ增加スルコトヲモ考ヘ
マシテ、是等ノ點カラソレ〓〓配付稅ノ割
合ニ付テ必要ナ改正ヲ加ヘムトスル次第デ
アリマス、以上ヲ以チマシテ稅法關係諸案
フ說明ヲ一應申」上ゲマシタ次第デアリマ
ス、何卒御審議ノ上速ニ御贊成アラムコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=2
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003・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) 今日ハ大藏大
臣ハ衆議院ノ委員會ノ關係上、衆議院ノ方
ヘオイデニナルコトニナリマスノデ、午前
中ハ此ノ程度デ休憩致シマシテ、午後ハ一
時半ヨリ開會致シマス、休憩致シマス
午前十時四十一分休憩
午後一時四十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=3
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004・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) 是ヨリ開會致
シマス、質疑ニ入リタイト思ヒマス、御質
問ガアリマシタラドウゾ此ノ際ニ御願ヒ致
シマス、先ヅ最初ニハ全般的ノ問題ニ付キ
マシテ御質問ヲ願ヒタイト思ヒマス、然ル
後ニ各法案別ニ御質問願フヤウニ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=4
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005・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私ハ國民所得ニ關シマシ
テ、大藏大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマ
ス、財政計畫ヲ樹テマスル上ニ於キマシテ
ハ、其ノ時ノ事情ニ依リマシテ色々ナ方法
ガアリマセウガ、普通ニ於キマシテハ國民
所得ヲ主タル對象トスルノガ、是ガ常識デ
アラウト思ヒマス、處ガ日本ノ國民所得ニ
付キマシテハ、確カ昭和五年頃ノ統計局ノ
發表以後、公式ノ發表ハナイカノヤウニ思
ヒマスガ、私ハ常ニ財政計畫ヲ定ムル上ニ
於テ、國民所得ヲ頭ニ置イテ置ク必要ノア
ルト云フコトヲ度々主張致シテ居リマシタ
ガ、幸ヒ茲兩三年國民所得ニ付キマシテノ
御言明ノアルノヲ非常ニ喜ンデ居リマスル
次第デアリマス、尤モ此ノ國民所得ノ如キ
モノニ付キマシテハ、其ノ調ベル人ノ立場
ナリ、又ハ觀點ニ依ツテ色々積算ノ上ニ於
テ差異ヲ生ズルト云フヤウナコトハアリ得
ルコトト思ヒマスガ、又統計ノ如キモノハ、
其ノ時ノ要請ニ應ジテ適當ニ作意スルコト
モ出來ヨウト思ヒマスノデ、ソレガ正確デ
アルカドウカト云フヤウナコトハ、是ハ答
ムル必要ハナイト思ヒマス、要スルニ財政
家トシテ、國民所得ト云フモノヲ頭ニ置イ
テ此ノ計畫ヲ定メタト云フコトデアレバ
ソレデ一ト通リノ筋途ハ立ツト思フノデア
リマス、此ノ點ニ於キマシテ近來ノオヤリ
方ハ私非常ニ贊成ヲ致シテ居ルノデアリマ
スガ、併シ私多少之ニ付キマシテ御伺ヒシ
タイ點ガアリマスガ、第一ニ國民所得ト申
シマシテモ、是ハ內地ダケノモノデアリマ
スルカ、又ハ狹イ意味ニ於ケル所ノ外地ヲ
モ包含シテ積算セラレタモノデアリマセウ
カ、先ヅ其ノ點ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=5
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006・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今御質問ノ衆
議院等ニ於キマシテ申述ベマシタル國民所
得ハ、今ノ御質問ノ御言葉ニ依レバ、狹イ
意味ノ外地、內地ノ外ニ臺灣、朝鮮ヲ加ヘ
ル、其ノ意味デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=6
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007・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 サウ致シマスト只今日本
ノ人デ、外國ニ居住シテ營業ナンゾヤッテ居
ル人ハ極ク範圍ガ狹イノデアリマスガ、支
那若シクハ南洋ニ居ラレル人ノ所得ト云フ
モノハ、其ノ中ニハ包含致シテ居ラナイノ
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=7
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008・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 細カイ點ニナリ
マスト調査致シテ居リマス者カラ申上ゲテ
モ宜シイト思ヒマスガ、大體ソレハ入ッテ居
ナイト思ヒマス、ソレガ內地送金ニナリマ
ス場合ニ、ソレヲドウ見ルカト云フヤウナ
コトガ、國民所得ヲ見ル技術上ノ一ツノ觀
點ニナル、外ノモノハ大體入ッテ居ナイ、斯
ウ云フコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=8
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009・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 詳細ノコトハ無論承ラウ
ト思ヒマセヌ、大雜把デモ宜シイノデゴザ
イマスガ、五百億ト云フコトハ是レ〓〓ニ
依ッテ是ダケノ高ヲ彈キ出シタト云フコト
ノ大體ダケデモ承リタイト思ヒマス、例へ
バ農業ニ於テ幾ラ、林業ニ於テ幾ラ、水產
業ニ於テ幾ラ、又ハ商業ニ於テ幾ラ、工業
ニ於テ幾ラ、モウ一ツノ鑛業、是ハ鑛山ノ
方デアリマスガ、鑛業ニ於テ幾ラト云フ大
體ノ所得ノ見積ガ御分リニナリマシタナラ
バ、ソレヲ承ルコトガ出來レバ大變仕合セ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=9
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010・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ計算方法
ハ從來ノ實績ニ依リマシテ、ソレガ增加ス
ル趨勢等ヲ見マシテ、詰リ實績ヲ基本ニシ
テ趨勢ニ依ッテ之ヲ延長シテ行クト云フ觀
方ガ一ツアリマス、併シ只今ノヤウナ經濟
ニナリマスト、經濟ガ計畫的ニナリマスカ
ラ、所謂此ノ線ヲ引ッ張ッテ其ノ趨勢ヲ見ル
ト云フコトノミデハ實際ニ當篏リマセヌ、
ソレデ現實ノ生產力ト云フコトヲ考ヘマシ
テ、ソレニ十七年度ニ於テハ軍需關係其ノ
他ガ殖エレバ、其ノ殖エタコトニ依ッテ可能
ナル生產力ノ極限デドウ云フ風ニ國民所得
ガ殖エルカト云フ風ニ、唯從來ノ趨勢カラ
デナク、十七年度トカ、十八年度トカ、其
ノ年ノ生產力其ノモノヲ測定シテ出ス、斯
ウ云フヤリ方ヲ一面始メテ居リマス、是等
ノヤリ方ハ今御話ニナリマシタヤウニ、ド
レモサウ最後迄正確ヲ期スル譯ニハナカ
ナカ參リマセヌケレドモ、サウ云フヤリ方
ヲシタモノヲ達觀致シマシテ、大體ノ趨勢
ヲ見テ居ルコトデアリマス、無論其ノ中ニ
ハ鑛業、是ハ鑛山ノ方ノ鑛業所得、又「イ
ンダストリー」ノ方ノ工業所得、農業所得
ト云フヤウニ區分ハ致シテ居リマス、此ノ
點ハ併シ申上ゲ兼ネルト思ヒマス、ト申シ
マスノハ、色々ノ物動計畫等ハ其ノ內容ガ
分リマスレバ、日本ノ物的戰力ヲ推算スル
ト同ジヤウナ趣ガアリマスノデ、從來ノ消
費經濟的ニ向フ生產力ガ軍需的ニドノ位轉
換シタ、サウ云フヤウナコトガ矢張リ分ル
資料ニナリマスカラ、今ノ事業別ハ申上ゲ
ヌコトニ致シテ居ルト思ヒマス、尙ソレ
等ノ計算ノ方法、申上ゲ得ル範圍等〓付キ
マシテハ、ソレヲ擔任シテ居リマス政府委
員カラ、後ノ機會ニ出來ルダケ申上ゲルコ
トニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=10
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011・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 大藏省ニ於キマシテ御算
定ニナリマシタ內容ヲ政府委員ヨリ承ルノ
ハ他日デ宜シウゴザイマス、處ガ私ノ記憶
ニ依リマスレバ、昭和五年ノ國民所得ハ百
十億位デアッタカノヤウニ思フノデアリマ
スガ、其ノ後米內內閣ノ時デアリマシタカ、
時ノ大藏大臣ガ約二百五十億ト云フヤウナ
コトヲ言ハレタカノヤウニ記憶致シテ居リ
マス、或ハ私記憶違ヒカモ知レマセヌガ、
ソンナニ覺エテ居リマスルガ、ソレガ昨年
ニ於キマシテハ四百五十億ニナリ、又十八
年度ニ於キマシテハ五百億トナルト云フコ
下、兎ニ角異常ナル長足ノ進步デアリマシ
テ、是ハ國運ノ發展ノ然ラシムル所トシテ
非常ニ慶賀ヲ致シマス、若シ是ガモウ十年
モ經チマスト、千億ノ所得ニ達スルト云フ
コトデ、大變國ノ爲ニ慶賀スベキコトト思
フノデアリマスガ、近來ノ實際ノ狀況ヲ見
マスルト、小賣商人ノ如キ者ハ非常ニ窮迫ニ
瀕シテ居ルノデアリマシテ、其ノ他貿易海
運、色々ナ狀況カラ見マシテモ、左程所得
ノ殖エルト云フコトハ考ヘラレマセヌガ、
唯軍需工業ダケハ非常ニ盛デアリマスルノ
デ、要スルニ此ノ所得ノ俄ニ激增シタ所以
ノモノハ、主トシテ軍需工業ニ依ルノデハ
ナカラウカト思ヒマスルガ、左樣御考ニナ
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=11
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012・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 大體御說ノ通リ
ダト思ヒマス、詰リ全體ノ所得力ガ非常ニ
增シテ居リマスト共ニ、是ハマア要スルニ
全生產力ノ增加デアリマス、其ノ全生產力
ヲ增シマスト共ニ、ソレガ戰時ノ目的ヲ達
スル爲、卽チ戰力ノ增强ノ爲ニ役立ツヤ
ウニ生產ノ轉換ガ非常ニ行ハレテ居リマシ
テ、平時產業ノ如キハ、支那事變前ヨ
リ寧ロ縮小シテ居ルモノモ相當アル譯デア
リマス、サウ云フ方ノ本ニナル國民所得ハ
減ッテ居ル譯デアリマス、總量ガ殖エタ以
上ノ割合デ他カラ轉換シタモノガ集ッテ、
廣イ意味ノ軍需產業關係ガ殖エテ居ル、斯
ウ云フコトデアリマス、尙御參考ニ申上ゲ
マスト、昭和十年ニ內閣統計局ノ調査、
是ハ恐ラク發表シテ居ルト思ヒマスガ、
百四十五億三千二百萬圓ト云フモノヲ發表
致シテ居リマス、ソレカラ十一年ガ、大體
是ハ課稅所得ノ增加割合等デ推算シマシタ
モノガ百六十一億八千八百萬圓、十二年ガ
百九十四億一千四百萬圓、十三年ガ二百三
十二億七百萬圓、十四年ガ二百八十三億五
千八百萬圓、十五年ガ三百二十億七千二百
萬圓、十六年ガ三百六十八億八千二百萬圓、
十七年ガ四百二十四億一千四百萬圓デアリ
マシテ、是ハ漸次增加シテ居リマス狀況ノ
一ツノ數字トシテ申上ゲマシタノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=12
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013・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 只今ノ御說明ヲ承リマシ
テ、國民所得ノ增加ト云フモノハ順調ナル
步調ヲ示シテ居ルト云フコトヲ承リマシテ、
十八年度ニ於ケル五百億ト云フコトノ決シ
テ無理ナル見積デナイト云フコトヲ承リマ
シテ、大變安心ヲ致シマシタ、次ニ公債ノ
問題ニ付キマシテ少シク御伺ヒ致シタイト
思ヒマス、公債ニ付キマシテハ、國民ニ安
全感ト確實性ヲ與ヘルト云フコトガ最モ必
要デアラウト思ヒマスガ、之ニ付キマシテ
政府トシテハドウ云フコトヲ御執リニナツ
テ居ルカ、オヤリニナッテ居ルカト云フコト
ヲ承リタイト思ヒマス、實ハ私斯ウ云フコ
トヲ御尋スル所以ノモノハ、金ノ解禁ノ際
ニ、財政ニ多少通曉スル人々ノ間ニ色々ナ
問題ガ起ッタノデアリマス、其ノ後高橋財政
トナリマシテ、經常費ノ補塡ニ赤字公債ヲ
發行スルコトニナリマシタ時モ、斯クノ如
キ趨勢ヲ以テ進ンデ行ク時ニハ、先デハ公
債ノ處理ニ付テハドウナルカト云フコトヲ
皆大變心配ヲ致シテ居リマシタ、其ノ際ニ
モ話題ニ上ッタコトガアルノデアリマス、
又第一次歐洲戰爭ノ時ニ英國ニ於キマシテ、
時ノ大藏大臣ノ「ロー」ガツイ失言ヲシタ爲
ニ、公債ニ非常ナ影響ヲ與ヘタト云フコト
デ大變狼敗シタト云フヤウニ聞イテ居リマ
ス、尤モ今日國債ニ應募スル人ノ信念ハ以
前トハ相當變ッテ居ルト思ヒマス、過去ニ於
キマシテハ、日本ノ國民性ト致シマシテ家
ヲ重ンジマス、又先祖ノ祭ヲ斷タナイヤウ
ニシナケレバナラヌト云フコトニ重點ヲ置
イテ居リマシタ關係上、公債ヲ以テ最モ安
全ニシテ且確實性ノアルモノトシテ中產階
級ノ人ハ、子孫ノ爲ニト思ッテ持ッタモノト
思ヒマス、併シ今日ニ於キマシテハ、戰爭ヲ
勝拔ク爲、又國ニ奉仕スル爲ニ進ンデ持タ
ナケレバナラヌト云フコトニナリマシテ、
以前ノ公債ニ對スル考トハ相當異ッタモノ
ガアラウト思ヒマス、併シナガラ中ニ於キ
マシテハ又往々ニ致シマシテ、過去ト同ジヤウ
ナ考ヲ持ッテ居ル人ガナキニシモアラズト
思ヒマスノデ、此ノ際政府ト致シマシテハ、
公債ガ安全ニシテ且確實性ニ富ンデ居ルト
云フコトニ付テ、出來得ルダケ國民ニ安心
ヲ與ヘルヤウナ方法ヲ御執リニナルト云フ
コトガ、公債ノ消化ノ上ニ於テモ多少ノ效
果ハナイコトハナカラウト私ハ思ヒマスル
ガ、大藏大臣ノ御所見ハ如何デゴザイマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=13
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014・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 誠ニ重要ナ御質
問デゴザイマス、率直ニ所信ヲ申上ゲマス、
今モ仰セニナリマシタヤウニ、戰爭ニ勝ツ
爲ニ必ズ國民ハ所要ノ國費、戰費ヲ調達ス
ル爲ニハ公債ニ應募シナケレバナラヌ、斯
ウ云フ情勢ニアリマス、ソコデ此ノ戰爭ノ
我ガ國ニ於ケル意義ト云フモノヲ、是ハモ
ウ皆サン無論御承知ダト思ヒマスガ、矢張リ
公債ノ問題ニ付テモ考ヘナケレバナラヌ、
端的ニ申シマシテ國家ノ興亡ヲ決スル戰爭
デ勝タナケレバナラヌ、是ハ第一ノ要件デ
アリマス、サウスレバ勝ツト云フコトハ一
ツノ至上命令デアリマス、勝ツ爲ニ必要ナ
コトヲ他ノ問題ト比較考慮シテ、スルトカ
シナイトカ云フ觀念ハ此ノ際拂拭スベキモ
ノデアルト私ハ存ジテ居ルノデアリマス、
是ガ國民ノ意識ニ徹底致サナケレバ勝ツ爲
ニ必要ナル努力ガ、外ノ方カラ不便ガアリ
マシテモ、ソレダカラ是ハ止メルト云フヤ
ウナコトハ、是ハ現在ノ狀況ニ於テハ國民
トシテ決シテ執ルベカラザル態度デアリ
マス、次ニ私ハ此ノ戰爭ニ勝ツト云フ意味
ガ、ドウ云フ意味デアルカト云フ點ヲ財政
經濟方面カラ考ヘテ見ル必要ガアルト思ヒ
そう、此ノ戰爭ノ終末ヲ〓ゲマスル平和、
或ハ講和條約、是ガドウ云フ機會ニ來マス
カ、是ハ想像ヲ致セバ色々第三者的ニハ想
像サレルノデアリマスガ、戰爭ニ我ガ方ガ
非常ニ勝利ヲ得マシテ、色々其ノ時ノ國際
情勢カラ、日本ガ勝利デ平和ヲ結ビマスル
ト、其ノ時ニ日本ノ國防力、之ヲ支ヘル國
家ノ國力、經濟力ト云フモノガ弱イ狀態ニ於
テアリ得ルカ、サウ云フコトモアリ得ナイ
コトハナイカト思ヒマス、然ラバソレハ眞
ノ勝利デアルカト云フト、是ハ私ハ眞ノ
勝利デハナイ、是ハ一種ノ經過的ノ休戰ニ
過ギナイト思フ、必ズ「アメリカ」ハ再ビ好イ
時期、好イ態勢ヲ整へ來ッテ日本ニ對スル、
其ノ時ニ日本ト云フモノノ國力ト云フモノ
ガゴザイマセヌケレバ、是ハ負ケルコトニ
ナリマス、本當ニ日本ノ勝利ト云フモノハ
最少限度ニ考ヘマシテモ、南北ヲ貫イテ西
太平洋ニ於テ有ラユル敵國ノ現勢力ヲ壓迫、
驅逐、擊摧シテ、所謂現在最少限度ニ於テ我
ガ方ヲ中心トシテ動イテ居リマス東洋ノ線
ヲ守リ拔ケル國防力ヲ持ツテ居ナイ狀態ニ
於テノ平和、勝利ト云フモノガ何時迄ノ勝
利カ、必ズソレダケノ國防力ヲ備ヘタ時ニ
眞ノ勝利ガ來ル譯デアリマス、サウ云フ時
代ハドウ云フモノカト申シマスト、國防力
ノ背後ニ經濟力ガナケレバナラヌ、生產力ガ
ナケレバナラヌト云フコトハ當然ノコトデ
アリマシテ、無論日本ノ國防力ノ主タル力
ハ日本ノ國體カラ出ル忠君愛國ノ精神、ソ
レカラ出ル軍隊精神デアルト思ヒマスガ、
同時ニソレヲ十分ニ發揮スルダケノ兵器彈
藥有ラユル設備ガ十分デ、而モ是ガ一度
ビ戰爭致シマス場合ニハ、漸次其ノ消耗ヲ
補給シ、增强スルダケノコトガ出來ナケレ
バナラヌ、是ハ取リモ直サズ日本ヲ中心ト
スル東亞共榮圈ノ經濟力ト云フモノガソコ
迄伸ビナケレバイケマセヌ、ソレヲ伸バス
ベクヤッテ居ルノガ詰リ今ノ戰爭デアリ
そうく、戰爭卽建設ト云ヒ、東亞共榮圈ノ建
設ト云フ、大東亞戰爭ノ勝利、是ガ不可分
ナコトハ單純ナ形容詞デナイ、其處ガ現實
ニ必要ナ問題デアルノデアリマス、假ニ之
ヲ一ツ生產力ニ例ヲ取ッテ見マスレバ、支那
事變前ノ日本ハ製鐵ノ原料ヲ日本ノ自衞圈
內カラ仰イデ居タモノガ約百萬「トン」シカナ
イ、船舶ノ保有量モ百萬「トン」、石油ハ殆ド
外國カラ來ル、而モ消費量モ多イ、石炭モ生
產量、消費量トモ數百萬「トン」ヲ下ラヌコ
トニナッテ居ル、是ハ戰前ノ英獨米等、又「ソ
ヴィエト」ノ狀態ナドヲ考ヘテ見マシテモ、
前ニ申上ゲル必勝不敗ノ國防力ノ背景タル
モノハ、ドウシテモ將來單位ガ一ツヅツ上
ラナクテハナリマセヌ、製鐵ニシマシテモ、
石油ノ生產、消費ニシマシテモ、モウ是ハ
百萬「トン」單位ノモノガ其ノ單位ガ上ッタ千
萬「トン」トカ、何千萬「トン」トカト云フ風ニ
ナラナケレバナラヌ、處デモウ是ハ今囘ノ世界
戰爭前ノ英米ノ狀態ヲ見テモ、總テ其ノ段階
ニ達シテ居ルノデアリマス、石炭ノ如キ無論一
年間ノ共榮圈ノ生產消費ガ億ノ單位ニナラ
ナケレバナラヌコトハ明瞭デアリマス、船舶ノ
保有量ハ千萬「トン」以上ニ行カナケレバナラ
ヌコトハ明瞭デアリマス、ソコニ行キマス爲
ニハ、是ハ所謂大陸及南方ノ共榮圈內ノ資源
ガ開發セラレ、ソレヲ必要ナル軍需品或ハ
國民生活ノ必需品ニ作リ上ゲル、處ガ鑛
山、工場ノ生產設備モ出來マスシ、又是等
ヲ運搬スル、鐵道、港灣、船舶ノ施設ガ出
來ル、サウ云フヤウナ狀態ニナラナケレバ勝
テヌシ、勝ツト云フコトハ其ノ狀態ニ行ク、ソ
レニ今非常ニ力ヲ盡シテ行キツヽアルノデ
アリマスルカラ、日本ノ此ノ戰後ノ狀態ト
云フモノハ、日本ヲ中心トシマシタ東亞ノ經
濟力ト云フモノハ、是ハ想像ニ絕シタ程ノ
大キナ經濟力ニナルト思ヒマス、財政ノ基
礎ハ經濟デアリマス、來ルベキ戰費ハ經濟
力デアリマス、斯ウ云フ狀態ニナリマス時
ニ、國債ガ千億ヤ二千億ハ何デモナイ話デ
アルト思ヒマス、輿國ハ滿洲國デアリマス、
アトハ日本ノ力デ、是ダケノモノガアノ地
圖デ見ルダケノ廣サニ經濟ノ基盤ヲ擴ゲル
ノデアリマス、是ハ全ク往年ノ大東亞戰爭
前若シクハ支那事變前ノ日本ノ經濟財政ヲ
考ヘマスト、丸デ違ッタ狀況デゴザイマス、
是等ノコトハ將來ノコトヲ申スヤウデアリ
マスガ、現ニ開戰以來、支那事變以來五箇
年半ノ實績デ證明シテ居リマス、支那事變
以來三百億ニ餘ル生產擴充ト云フコトヲ內
地及支那、滿洲デ行ッテ居リマス、是ハ支那
事變以前ニ於テハ期間ニシテ一年ニ十億ヲ
ヤル年ハナカ〓〓良イ年デアリマス、是ハ五
箇年デ三百億ヤッテ居リマス、ソレカラ國
債モ三百五十億ヲ旣ニ消化シテ居リマス、
是等ニ充テル資金ガ昨年ノ十二月迄ニ、支
那事變以來六百七十數億ノ國民貯蓄ノ增加
ガ出來テ居リマス、是ハ支那事變前ノコト
ヲ考ヘマスレバ、最モ多ク出來タ昭和十一
年ガ一年間ニ二十七億位デアリマス、昭和
十年ハ二十億チヨットデアリマス、其ノ前
ノ八年、九年ハ十億デアリマス、其ノ前ノ
六、七年ノ不況時代ハ一年ニ十億出來ナ
イ、ソレガ支那事變ニナリマスルヤ、昭和
十三年ニハ八十億、段々殖エマシテ曆年ノ
昭和十七年ハ現ニ二百十三億デアリマス、
會計年度ノ十七年ハ二百三十億ニ達セシメ
ムトシテ努力シテ居リマス、今モ御話シタ
ノデアリマスガ、郵便貯金ダケデ今年ノ一
月ハ預入金、引出金ヲ差引キマシテ五億、
是ハ殆ド······ヂヤナイ前例モナイ是
ダケノ資金力ヲ現實ニ五年ノ間ニ證明
致シテ居リマス、戰費モ既ニ御協賛ヲ受ケ
マシタモノハ七百四十億デアリマス、其ノ
前、昨年迄ハ御協贊ガ四百六十億、今囘ノ
御協賛ヲ受ケタモノハマダ使ヒマセヌニシ
テモ、支那事變以來四百六十億モ五百億モ戰
費以外ノ豫算モ含メテ居リマスガ、是ダケガ
金ニ困ルコトナクシテ確カニヤレルト思ッタ
人ハ、私ハ確信ガアッタ人ハ少イヂヤナカッ
タラウカト思フ、ソレダケノコトガ現實ニ
出來テ居リマス、是ハ金ノ表面カラ申上ゲ
タ話デアリマス、經濟ノ實質カラ解剖致シ
マシテモ、經濟力ノ根源ハ何ト言ッテモ自分
ガ使ヒ得ル天然資源デアリマス、其ノ天然
資源ヲ現實ニ製品ニシテ使フ爲ニハ、輸送
力ト所謂狹義ノ生產力、工場、鑛山等ノ設
備ガ要ル譯デアリマス、又是ガ動ク爲ニハ
人力ガナクチヤナラヌ、資源ト設備ト人力
ト云フモノガ何ト云ッテモ基本ダト思ヒマ
ス、是等ノモノガドウナルカト云フコトヲ
檢討スルノハ、基礎的ニ國力ダラウト思フ
ノデアリマス、能ク戰爭スレバ國力ハ消耗
スルト言ヒマスガ、何デ消耗スルノダト云
フコトヲ考ヘテ見ナケレバナラヌ、ソレハ
普通ニハ天然資源ガ減ル場合ガ非常ニアル
ノデアリマス、是ハ簡單ニ言ッテ、天然資源
ノ所在地ヲ敵ニ取ラレル譯デアリマス、「ウ
クライナ」ヲ「ソヴィエト」ガ「ドイツ」ニ取ラ
レマシタ如ク、〓糧資源、鐵鑛石資源、石炭資
源皆是ハ取ラレテ減ル譯デアリマス、敵ニ取
ラレヽバ其ノ資源ガ減ル、是ハナカ〓〓場
合ニ依レバ大キナ問題デアリマス、設備ガ
減ル、何故カ、敵ノ砲彈ニ依リ、敵ノ爆彈
ニ依リ破壞サレマス、現實ノ工業設備ガソ
コデ破壞サレル、是ガ國力消耗ノ原因デア
リマス、又破壞サレル以外ニ、設備ノ所在
地ガ敵ニ奪取サレマスカラ、ソコデ設備能
力ガ減ル、モウ一ツ大キナモノデ減ルノハ
詰リ人力ノ點デアリマス、是ハ死傷デ減ル、
「ソヴィエト」ノ如ク何百萬ト云フ死傷ガアル、
是ハ千萬以上カモ知レヌ、其ノ外ニ數百萬
ノ俘虜ヲ出ス、一番能率ノ多イ靑壯年ノ男
子ガソレダケ減ル譯デアリマスカラ、是ハ
ドウシテモ產業力ソレカラ第一線兵力ノ非
常ナ壓迫ニナル、此ノ減リガアルト云フコ
トガ戰爭ノ消耗デアリマス、國內ノ「ストック」
ノ減少ト云フコトモアリマス、併シ是ハ特
殊ノ方策ヲ講ジナイ限リ、國內ノ不足ナン
ト云フモノハ、一箇年間ノ生產量ノ一割位
ノモノデアリマス、物ニ依ッテ違ヒマスガ······
是ハ一ツノ問題デハアリマスガ、大局ハ今
申上ゲタヤウニ生產ノ基礎ニナル資源、設
備是ハ運輸力モ入レマシテ人力ヲ失フト
云フコトニナリマス、是ガ失ハレズ增强サ
レタラ國力ガ增强サレルコトニナルノデア
リマス、日本ノ現狀ハドウカト云ヘバ、日
本デ戰時ニ安心シテ使ヒ得ル資源ハ、日本
ト滿洲國シカ支那事變前ハナカッタ、ソレ
ガ支那事變ニ依リマシテ、北支ノ資源ヲ現
ニ日本ニ出シテ居リマス、日本ノ鹽ト云フモ
ノハ國內デハ食糧ニモ足リナイ位デアリマ
シテ、工業鹽ハ遙カニ「アフリカ」ヤ地中海カ
ラ仰イデ居ル、是ハ今日ハ到底來マセヌガ、
今主トシテ北支鹽、中支鹽ニ依ッテ補ッテ
居リマス、是ハ戰前ニハ遠ク地中海等カ
ラ來タノデアリマス、現在ハ北支鹽、中支
鹽ガ相當ニ多額ノモノガ來テ居リマシテ、
無論內地生產以上ノモノデアリマス、其ノ
外ニ鐵鑛石資源、殊ニ石炭等ハ全ク今日本
ノ强粘結炭、特殊燃料炭ハ製鐵用トシテ北
支ニ殆ド全部仰イデ居ルト言ッテ宜イ、鐵
鑛石ハ其ノ外中支カラ參リ、ソレカラ經
濟的ニハ前カラ來テ居リマスガ、今ハ國防
力ノ把握ニ依ッテ邪魔ヲサレテモ來得ルノ
デアリマス、海南島カラモ來ル、支那事變
カラダケノ段階ヲ考ヘマシテモ、非常ナ天
然資源ノ增加ヲ致シテ居ル、況ヤ南方カラ
石油其ノ他多クノ資源ガ入ッテ來ル、人力
ハ現ニドウカ、北支ノ一億ノ住民、又中南
支數千萬ノ住民ハ海南島ノ鐵ヲ送リ、龍烟
ノ鐵ヲ送リ、北支ノ石炭ヲ掘ッテ日本ニ送
リ、北支ノ鹽ヲ造ッテ送リ、中支ノ鹽ヲ造ツ
テ送ッテ居ルノハ、現ニ此ノ支那ノ勞力ト云
フモノガ日本ニ協力シテ居ルカラデアル、
今南方ノ勞力モ日本ニ協力シテ居ル、日本
ハ戰爭ニ依ッテ兵員ヲ失フコトハ非常ニ是ハ
想像シテモ、他ノ「ソヴィエト」トカ、「ドイ
ツ」トカ云フ國ヨリ遙カニ少イ、ソレヨリ協
力スル人力ガ增シテ居ル方ガ多イノデアリ
マス、設備ハ今申上ゲタヤウニ、敵ノ爆彈
デ毀サレタナドト云フモノハ殆ドアリマセ
又、去年四月十八日ノ空襲ガアッタト云ツ
テモアリマセヌ、滿洲ニ於テモ別段ニ石炭ニ
困ッテ居ラヌ、設備一ツモ破壞サレヌノミ
ナラズ、前ニ申上ゲタ、旣ニ三百億ノ金デ
重點主義デ擴張致シテ居リマス、其ノ中デ
未動ノモノモアリマスケレドモ、大體ソレ
デウマク行ッテ居リマス、是ガ結局先程申
上ゲタ資金狀態デモ思ヒノ外ウマク行ッテ
居ルト云フノハ、唯是ハ金融政策ガウマ
ク行ッテ居ルダケヂヤナイ、基礎カラ申上
ゲタヤウナ經濟ノ根本ガ殖エテ居ル、是ハ
全ク戰爭ノ勝利ノオ蔭デアリマス、ソレニ
國民ノ努力ガ伴ッテ、率直ニ申シテ支那事
變以來ニ想像サレザル現在ノ經濟規模ヲ
旣ニ形造ッテ居リマス、而モ其ノ地盤ガ今
度南方へ延ビテ行ッタ、是ハモウ私ハ殆ド
支那事變前等ノ考デ物ヲ見ルベキヂヤナ
イ、結局財政ノ基礎ハ經濟デアル、是ハ何
等將來其ノ意味ニ於テ悲觀スルニハ當ラ
ナイ、悲觀スルト云ヘバソッチノ方ヨリハ
戰爭ニ負ケルコトデアル、戰爭ニ負ケテ
如何ナル投資ガ安全デアリマセウカ、
國債ガ安全デアリマセウカ、ソレヂヤ國債、
社債ヲ買ッテ置イタラ、株ヲ買ッテ置イタラ
戰爭ニ負ケテ安全デアルカ、日本ガ戰爭ニ
負ケテ、地上カラ日本ヲ抹殺シヨウト言ッテ
居ルガ、是ハ全世界戰爭ノ終末、其ノ後ノ情
勢ヲ見レバ、米英ハサウ思フノガ當然デア
リマス、ソレデ日本ガ負ケタ時ニハ、是ハ
何モナラナイ、社債ガ何處デ安全デアリマ
セウ、株ガ何處デ安全デアリマセウ、サウ
云フ考ヘ方ヲスルノハ何カ、ソレハ社債ヤ
株ガ物ヲ代表シテ居ル、ソレヂヤ亡國ノ裡
二問、今ノ會社ガ今ノ狀態デ存續シ得ルト
云フコトヲ考ヘルノハ、私ハ是ハ非國民ダ
ト思フ、ソンナコトヲ考ヘルノハ、國家ノ興
亡ニ關スル場合ニ、自分ノ資產ダケ安全デ
アルヤウニ考ヘルノハ個人主義ノ考デ、日本
國民トシテノ考ヂヤナイ、是ハ現ニ日本ガ
南方ノ敵產、是ハ日本ノモノニナルト言ッテ
居リマス、日本モ同ジコトデアリマス、斯
ウ云フ敵產ガドウシテ安全ニナリ得マセウ
カ、ソコヲ考ヘマシテモ、減債基金ガドウ
デアルトカ、是ハ物ヲ代表シテ居ルトカ、
ソンナ考ト云フモノガアルト云フノハ、私
ハ根本ガ間違ッテ居ルト思フ、ソンチ考ハ
有ルベキモノヂヤナイ、率直ニ客觀的ニモ
勝テバ是程總テノモノガ有利ナコトハアリ
マセヌ、ダカラ公債ガ不安ダト假ニ思フナ
ラ、益〓公債ニ應募シテ國力ヲ强クシテ、日
本ヲ勝タセルヤウニシナケレバナラヌ、サ
ウデナケレバ利己的ノ「ユダヤ」的ノ考デ
アースター本當ニ一生懸命ニヤッテ居ルナラ、
勝ッテ是ガ安全ニナル譯デ、勝ッガ國力ハ細々
ナガラ、タヂ〓〓ニナッテ勝ツト云フ豫想
ナラ必ズ經濟力ガ附隨シテ行クノデアリマス、
戰爭ガ日本ニ取ッテドウ云フ意味ヲ持ッテ居
ルカ、勝利ト云フモノハ財政經濟的ニモド
ウ云フ意味ヲ持ッテ居ルカ、之ヲ認識スレバ
私ハ公債等ニ區々タル疑ヲ持ツトカ、起サヌ
トカ云フ問題ハ私ハ飛ンデシマフト思フノ
デアリマス、敵產ノコトヲ御考ニナルガ、
南方デモ何十億、何百億ノ敵產ガアルヂヤ
ナイカ、是デモ勝テバ皆結局日本ノモノニ
ナル譯デアリマセウ、賠償ノ引當ニ······、ソ
レハ幾ラ米英人ガ是ハ自分ノ財產ノ權利デ
アルト言ッテモ、ソレハ本國政府ニ色々交涉
スルカモ知レヌガ、當然是ハ無クナル譯デ
アリマス、サウ云フ考ヘ方ヲ以テ見マスト
平時ノ年ノ意味カラ株ガ安全トカ、公債ガ
ドウトカ、數量ガドウトカ云フノハ、サウ
云フ觀點デ見ルベキモノニアラズ、實ニ勝
利アルノミ、勝利アレバ今ノヤウナ大經濟
力ノ發展デアル、是程安全ナモノハナイ、私
ハ能ク敵產ガ公債ノ裏付ケデアルト云フノ
ハ是モ良イ考ダト思ヒマス、併シ區々タ
ル敵產ノ裏付ドコロデハアリマセヌ、アノ
南方ノ何百億ト云フ資源ヲ見レバ、公債ノ
裏付ガ敵產ト云フドコロデハアリマセヌ、
南方ヤ大陸ノ資源ニハドウシテモ日本人ノ
頭ト勞力ト資本ガ要ルノデアリマス、是ハ無論
全部日本ガ奪掠スルト云フ考ハアリマセヌ
ガ、必ズ殖エテ行ク、此ノ考ヘ方デ是非國
民ハ行クベキモノデアリ當然其ノ軌道ニ
現實ノ國家ノ經濟財政其ノモノガ乘ッテ居
ル私ハ愛國心ト云フコトト同時ニ、其ノ
愛國心カラ出ル今ノ戰爭ノ意義、戰後ノ樣
相ト云フモノヲ國民ガ自覺シマスレバ、其
處ニ何等ノ不安ガ起ラナイ、私ハ大イナル
希望ヲ起スベキモノデアリ、之ヲ確信シ、
又國民ニ其ノ考ヲ持ッテ貰フヤウニ努メタ
イト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=14
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015・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) 大藏大臣ハ他
ニチヨット御差支ガアリマスカラ······又直グ
オイデニナリマス、政府委員ガ居リマスカ
ラ,発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=15
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016・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 現在計畫ノ公債ガ全部發
行セラレテ、十八年度末ニ於ケル公債ノ總
額竝總テノ公債ノ利息ト云フモノヲ、表一
拵ヘテ頂戴致シタイト思ヒマスガ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=16
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017・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 承知致シマシ
タ、後刻表ニシテ差上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=17
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018・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私ハ他ハ大臣ニ御伺ヒ致
シタイト思ヒマスノデ、他ノ機會ニ於キマ
シテ發言ヲ御許シ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=18
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019・東郷安
○男爵東〓安君 公債政策ニ關係シテ主稅
局長ニ御尋ネ致シタイノデスガ、今囘間接
稅ノ增徵ヲ企圖セラレルノデアリマスガ、
一方既ニ每年出シテ居ラレル小額ノ債劵ノ
發行ニハ相當ノ影響ガ或階級ニアル、見樣ニ
依ッテハ重壓ニナルノデアリマスガ、其ノ
邊ニ付テハドウ御考慮ニナッテ居リマセウ
カ、ソレヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=19
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020・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 今囘ノ間接稅ノ
增徵ニ付キマシテハ、其ノ方針ト致シマシテ
先ニ大臣カラ御話ヲ申上ゲマシタヤウニ消
費ノ節約、購買力ノ吸收ヲ狙ヒ、併セテ國
庫收入ノ增加ヲ圖ラムトシツヽアルノデア
リマスルガ、其ノ場合ニ於キマシテモ奢侈
的性質ノ强イ消費、購買力ノ多イ階層ノ消
費致シマスル方面ニ對シマシテハ、相當强
ク稅率ヲ引上ゲマスルト共ニ、戰時下ノ國
民生活ト致シマシテハ、尙此ノ際節約可能
ノ餘地アリト認メラレマスル方面ニ付キマ
シテモ、課稅最低限ノ引下、課稅範圍ノ擴
張ト共ニ、或程度ノ稅率ノ引上ヲ行ッテ居ル
次第デアリマス、ソコデ只今御話ノ如ク小
額債劵ヲ發行致シマシテ、零細ナル購買力
ヲ吸收スル方面ニ付テハ、今囘ノ間接稅ノ
增徵ニ依ッテ影響ヲ受ケテ、小額債劵ノ應募
力モ減ッテ來ル、斯ウ云フヤウナ御心配ガア
ルカト思フノデアリマスルガ、今囘ノ間接
稅ノ狙ヒ所ハ只今モ申シマシタ通リ、相當
購買力ノアル方面ニハ强ク行キマスルト共
二、購買力ノ比較的少イ方面ノ課稅割合ハ
低メテゴザイマスルシ、狙ヒ所ガ此ノ際出
來ルダケ戰力增强ノ爲ニ消費ノ節約ヲシテ
貰ヒタイ、斯ウ云フコトデアリマスルカラ、
戰時生活ヲ徹底スルコトニ依リマシテ、或
程度增稅ノ負擔ヲ受ケズニ濟ムト云フヤウ
ナコトニモナル筋合カト存ジマスルノデ、
サウ致シマスルナラバ小額債劵ニ依ッテ零細
ナル購買力ヲ吸收スルト云フ方面ニハ、サ
シタル影響ハナイカノ如ク存ゼラルヽ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=20
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021・東郷安
○男爵東〓安君 從來小額債劵ハ年度中適
宜按配シテ發行サレテタノデアリマスガ、
サウ云フコトニ關スル今後ノ考慮ハ何等從
前ト變ラナイト承知シテ宜シイノデアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=21
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022・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 其ノ點ニ付キマ
シテハ從來ト大シタ變更ヲ見ナイモノト存
ジテ居ルノデアリマス、如何ナル種類ノ債
劵ヲ如何ニ組合セテ出スカト云フコトハ、
一般ニ政府資金ノ撒布狀況、購買力ノ吸收
ノ必要性等カラ勘案致シマシテ計畫致シテ
居ルヤウデアリマスルガ、今囘ノ間接稅ノ
增徵ニ依ッテ、直接其ノ計畫ニ影響ヲ受ケル
コトハナカラウト思ハレマスルノデ、大體
從來ト同ジヤウナ方法ヲ以テ組合セ發行サ
レルダラウト見透シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=22
-
023・東郷安
○男爵東〓安君 ソコデ話ハ遡リマスガ、
最近ニ於ケル豆債劵等ノ發行及其ノ賣行キ
高ノ狀況ニ付テ〓略御話ヲ伺ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=23
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024・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 此ノ點ハ所管ガ
違ヒマスルノデ、當該所管ノ政府委員カラ
申上ゲルコトガ適當デアラウト思ヒマスル
ノデ、連絡致シマシテ他ノ機會ニ申上ゲル
ヤウニサシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=24
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025・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私ハ議事ノ進行デ御
願ヒ致シマス、或機會ニ山林局長ニ出テ戴
キタイ、サウシテ大藏大臣ト御同席ノ上質
問ヲ申上ゲタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=25
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026・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) 承知致シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=26
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027・東郷安
○男爵東〓安君 曩ニ政府ハ本年ノ一月二
十六日ノ閣議決定デ、船員ニ對スル國家的
待遇ノ途ヲ講ゼラレマシテ、戰時下船員ノ
職務ニ付テハ國家的重要性ガ公的ニ闡明セ
ラレ、其ノ待遇ニ付テモ殆ド公務員ニ準ズ
ベキコトガ事實上ニ認メラルヽニ至リマシ
タコトハ、誠ニ國民ノ齊シク待望シタコト
ガ具現サレタコトデアッテ、慶賀ニ堪ヘナイ
コトデゴザイマス、唯其ノ政策ガ稍〓遲キ
ニ失シタ憾ミガアルコトヲ遺憾トスルノデ
アリマス、卽チ政府ハ是等軍屬トナル船員
ニ對シテハ、第一線ノ陸海軍將兵ニ對スル
ト同ジ心持ヲ以テ之ニ對スルト共ニ、戰爭
ノ長期化ニ伴ッテ、船員ヲシテ愈〓後後ノ憂
ナカラシムル、サウシテ其ノ職域ニ挺身
奉公シ得ラルヽヤウ措置セラレタノデア
リマス、ソコデ政府ノ溫キ御趣旨ガ果シテ
船員ノ保護、優遇ニ對シテ徹底セラレルナ
ラバ、當時發表セラレマシタ船員ノ功績
ニ對シテ、之ガ論功行賞ノ措置ヲ執ラウ
トカ、戰爭中殉職シタ者ニ付テ公葬ヲ行フ
トカ、船員竝ニ其ノ遺家族ニ對シテ適當ナ
ル援護扶助ヲ行フ、又町內會トカ、隣保班
等ヲシテ船員ノ遺家族ニ對スル援護扶助ヲ
實施セシムルト云フヤウナコトニ加ヘテ、
稅法ノ上カラ申シマシテモ、相當此ノ國家
ノ有難キ意志ヲ徹底セシムル必要ガアルノ
デハナカラウカト思ハレルノデアリマス、
既ニ第七十二議會ニ於テ通過シマシタ大東
亞戰爭ノ爲從軍シタル軍人及軍屬ニ對スル
租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關スル法律、卽
チ昭和十二年法律第九十四號ニ於テ所得
稅營業稅等ハ命令ノ定ムル所ニ依ッテ減
免セラレルト云フ特典ヲ與ヘラレテ居ルノ
デアリマスルガ、今囘斯ウ云フ風ニ船員ニ對
シテモ陸海軍ノ軍屬トスルト云フコトニ定
メラレマシタ以上ハ、此ノ法律ノ趣旨ガ當
然享受セラレル、及ブモノト了解シテ宜シ
ウゴザイマスカ、其ノ點ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=27
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028・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 船員デアリマシ
テモ軍屬トナッタト云フ場合ニ於キマシテ
ハ、只今御話ノ通リ大東亞戰爭ノ爲從軍シ
タル軍人及軍屬ニ對スル租稅ノ減免、徵收
猶豫等ニ關スル法律ノ適用ヲ受ケマシテ、
租稅ノ輕減、免除ノ措置ヲ受ケ得ルモノト
存ジテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=28
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029・東郷安
○男爵東〓安君 誠ニ有難キ御趣旨ト了承
致シマス、尙相續稅ニ付テモ既ニ軍人、軍
屬ニ與ヘラレタ特典ヲ享受シ得ルモノト了
解シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=29
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030・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 御說ノ通リデア
リマシテ、其ノ場合ニ於キマシテハ、戰死ノ
場合ト戰爭ニ因ル傷痍疾病デ一年以内ニ死
亡シタル場合ニ限ルト云フ條件ハ付イテ居
リマスガ、ソレニ當嵌レバ相續稅ノ免除ノ
特典ガ與ヘラレルト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=30
-
031・東郷安
○男爵東郷安君 此ノ稅法ニ於ケル特典ヲ、
新タニ陸海軍ノ軍屬トナル船舶ノ乘組員ニ
與ヘラレルト云フコトハ非常ナ特典デアリ
マシテ、旣ニ一月二十六日ノ閣議デ決定セ
ラレタ優遇ニ關スル發表バカリデナク、玆
迄政府ノ恩典ガ徹スルト云フコトハ、現在
遠ク海洋ニ働イテ居ル船員ニ對シテハ非常
ナ激勵トナリ士氣ノ昂揚トナルコトト思ヒ
そく、此ノ點ハ政府トシテモ進ンデ全船員、
全國民ニ廣ク徹底スルヤウニ、或機會ニ於
テ御取計ヲ願ヘレバ時局柄非常ナ良キ刺戟
トナルト私ハ信ズルノデアリマス、其ノ點
ヲ申添ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=31
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032・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今東〓男爵ノ
御述ニナリマシタ點、誠ニ御尤モデアリマ
スノデ、私共モ適當ナ機會ニ徹底方ニ付テ
取計ラヒタイト思ヒマス、尙先程東〓男爵
カラ御尋ノアリマシタ小額債劵、卽チ特別
報國債劵ニ付キマシテハ今迄ノ處、九囘賣
出サレテ居ルヤウデアリマス、第一囘ハ昭
和十六年ノ七月十五日ニ賣出サレマシタ一
千萬圓、第二囘ハ昭和十六年八月二十一日
ニ賣出シマシタ五百萬圓、第三囘ハ昭和十
六年十一月十五日ニ賣出シマシタ五百萬
圓、第四囘ハ昭和十七年一月六日ニ賣出シマ
シタ七百萬圓、第五囘ハ昭和十七年四月二
十日ニ賣出シマシタ一千萬圓、第六囘ガ昭
和十七年七月十六日ニ賣出シマシタ七百萬
圓、第七囘ガ昭和十七年八月十五日ニ賣出
シマシタ三百萬圓、第八囘ガ昭和十七年十
月一日ニ賣出シマシタ八百萬圓、第九囘ハ
昭和十七年十二月二十六日ニ賣出シマシタ
八百萬圓、合計致シマシテ六千三百萬圓ニ
及ンデ居リマスルガ、是ハ今日迄ノ處大體
賣切レテ、殘ッテ居ルモノハナイ模樣デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=32
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033・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 主稅局長ニ伺ヒマス
ガ、此ノ立法ヲオヤリニチルニハ、外國ノ
例モ御調ニナッタラウト存ジマスガ、日本
ノ稅ハ外國ニ比シテ高イト云フ人モアルシ、
安イト云フ人モアル、餘リ詳シイコトハナ
シデスガ、極ク簡單ニ要點ダケ、外國ト比
較シテ御述ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=33
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034・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 今回臨時軍事費
ノ財源ニ充テマスル爲ニ增稅案ヲ計畫致シ
マシタノデアリマスルガ、其ノ場合ニ於キマ
シテ、直接稅ヲ增徵スベキヤ、或ハ間接稅
ヲ增徵スベキヤ、又ハ直接稅ト間接稅トヲ
併セテ增徵スベキデアルカドウカト云フコト
ニ付キマシテ〓究致シタノデアリマスルガ、
直接稅ニ付キマシテハ、我ガ國稅率ハ之ヲ
外國ト比較致シテ見マスルニ、必ズシモ非
常ニ高過ギルト、斯ウ云フコトハ言ヘナイ
ト思フノデアリマス、一例ヲ所得稅ノ最高
稅率ニ取ッテ見マシテモ、我ガ國ニ於キマ
スル所得稅ノ最高稅率ハ、不動產所得稅デ
五十萬圓ヲ超エマスル場合ニハ······實際問
題ト致シマシテハ不動產所得デサウ云フ大
キイノハナイノデアリマスガ、假ニアリト
致シマスルト、分類所得稅ガ百分ノ十六、
綜合所得稅ノ最高稅率ガ五十萬圓ヲ超エル
部分ニ付テハ百分ノ七十一一デアリマスルカ
ラ、合計百分ノ八十八デアリマス、英國ニ
於キマシテハ、所得稅ノ最高稅率ハ、普通
所得稅ガ百分ノ五十、附加所得稅ノ最高稅
率ハ百分ノ四七·五トナッテ居リマスルカラ、
兩者ヲ合セマスルト云フト二萬「パウンドL'
ヲ超エルヤウナ所得金額ニ對シマシテハ、百
分ノ九七·五トナッテ居リマス、「アメリカ」ニ
於キマシテ、普通所得稅ト附加所得稅ト、最
近ニ設ケラレマシタ勝利稅ヲ加ヘマスルト
云フト、所得稅ノ最高稅率ハ百分ノ九一ニ
ナルヤウデアリマス、「ドイツ」ニ於キマシ
テハ最近迄ノ資料ニ依リマスルト云フト、
所得稅ノ最高率ハ百分ノ六五デ一應止ッテ
居ルヤウニ思ハレルノデアリマス、從ヒマ
シテ、所得稅ノ最高稅率ダケヲ見マスルト
云フト、「イギリス」ガ最モ重ク「アメリカ」
ガ之ニ次ギ、日本ハ其ノ次ニアッテ、「ドイ
ツレハ日本ヨリモ少シ下ニアルヤウデゴザ
イマス、今囘直接稅ヲ增徴スルカドウカト
云フコトニ付キマシテハ〓究致シタノデア
リマスルガ、差當リ直接稅ヲ增徵シナイト
云フコトニ付キマシテハ、大藏大臣カラ
モ既ニ他ノ機會ニ於キマシテ御說明ガ
アッタ通リデアリマス、間接稅ニ付キマシ
テハ、外國トノ比較ヲ致シタノデアリマス
ルガ、國々ニ於キマシテ立法ノ沿革、ソレカ
ラ奢侈的ノ消費ト見ルカ見ナイカト云フヤウ
ナ觀點カラ致シマシテ、相當、稅率ガ區々
デアリマス、今囘間接稅ノ增徵ヲシマシタ
跡ニ付テ見マスルト云フト、我ガ國ノ稅率
モ既ニ相當高クナッタヤウニ思ハレルノデ
アリマス、併シポツノ〓外國ノ方ガ高イヤ
ウナモノハアルノデアリマシテ、例ヘバ燐
寸ノ稅金ノ如キモノハ、大體ニ於テ外國ノ
方ガ日本ヨリモ高イヤウデアリマス、麥酒
ノ稅金ハ國ニ依ッテ違ッテ居リマシテ、麥酒
ノヤウナモノヲ非常ニ大衆飮料ト見テ、
比較的安イ稅率ニ置イテ居ル國モアリマス
ルノデ、サウ云フ國ト較ベマスルト云フト、
日本ノ麥酒ノ方ガ遙ニ高イト云フコトニ相
成ッテ居リマス、ソレカラ物品稅ニ付キマ
シテハ、賣上稅ヲ施行シテ居リマスル國ハ、
稅率ハ百分ノ二デアリマスルケレドモ、賣
上稅ハ數段階ニ掛ルト云フコトニナリマス
ルカラ、果シテ物ニ依ッテ負擔ヲ幾ラト見
タラ宜イカト云フコトニ疑問ガアリマスル
ノデ、チヨット比較ガシニクイヤウニ思ハ
レルノデアリマス、一囘限リノ課稅ト致シ
マシテ英國ノ仕入稅ト云フノガゴザイマス
ガ、是ハ稅率ハ六割六分六厘ト云フヤウナ
稅率ニナッテ居リマスルノデ、我ガ國ノ稅率
ト比較致シマスルト云フト、增稅後ハ最高
稅率ガ物品稅ハ百分ノ八十、最低稅率ハ百
分ノ十ニ相成ッテ居リマスルカラ、我ガ國ノ稅
率ニ高イモノアリ、低イモノアリト云ッタヤ
ウナ狀況ニ相成ツテ居リマス、ソレカラ「ア
ルコール」度ノ高イ沸騰酒ト云ッタヤウナモ
ノノ稅率デアリマスルガ、是ハ英國等デハ
相當高イ稅率ニナッテ居リマス、我ガ國ノ稅
率ハ今迄雜酒ノ稅率ガ比較的低カッタヤウ
デアリマスルガ、今度ノ改正ニ依リマシテ
雜酒ノ稅率ハ相當キツク引上ゲラレタ、或程
度外國ノ高イ稅率ニ接近シテ參ッタト思フ
ノデアリマス、ソコデ尙比較致シマシテ、
我ガ國ヨリモ少シ高イ國モアレバ、モウ我
ガ國ノ方ガ高クナッテ居ルト云フヤウナ結
果ニモナッテ來夕方面ガアルト思フノデア
リマス、娛樂稅、遊興飮食稅等ニ付テ見マ
スルト云フト、我ガ國ノ稅率ハ非常ニ高イ
ヤウデアリマス、是ハ遊興飮食稅ニ付テハ
御承知ノ通リ、今囘ノ提案ハ藝妓ノ花代ニ
對シテ百分ノ二百、入場稅ニ付テモ最高稅
率百分ノ百二十ニナッテ居リマスガ、ドウモ
サウ云フ高イ稅率ハ外ノ國ニハ見當ラナイ
ヤウニ思ハレマス、一應外國ノ立法例モ參
考シテ立案ニ當ッタノデアリマスガ、冒頭
ニモ申上ゲマシタ通リニ、國々ニ依ッテ非
常ニ區々デアリマスル爲ニ、改正後ニ於キ
マシテ我ガ國ノ方ガ高クナッタモノモアリ、
我ガ國ノ方ガマダソレヨリモ下ニ〓ッテ居ッ
テ、マダ外國迄ヤルトスルナラバ餘裕モア
ルト云フモノモアルヤウナ實情デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=34
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035・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 誠ニ有難ウゴザイマ
シタ、此ノ點マダモウ少シ伺ヒタイト思ヒ
マスガ、大臣ガオイデニナリマシテ、外ノ
御方ノ御都合モゴザイマスカラ、一應私ハ
止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=35
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036・中野敏雄
○中野敏雄君 只今ノニ關聯致シマシテ、
チヨット外國トノ比較ノナンデアリマスガ、只
今承リマスト云フト、個々ノ稅ニ付キマシ
テハ色々凹凸ガアルヤウデアリマスガ、ソ
レヲ國民所得ト云フ觀點カラ、稅負擔ガド
ウ云フコトニナッテ居リマセウカ、ソレハ御
調ニナッテ居リマセウカ、チヨット発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=36
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037・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 國民所得ノ調査
自體ガ、非常ニ困難ナ問題デアルノデアリ
マスルガ、從ヒマシテ國民所得ト租稅負擔
トノ比率ト云フモノニ付キマシテハ、正確
ヲ期スルコトハナカ〓〓困難ナノデアリ
マスガ、一應持ッテ居リマスル資料ニ依
リマシテ御答へ申上ゲマスルト云フト、
先ヅ我ガ國ニ於キマシテハ增稅後ニ於テ、
國民所得ニ對シマシテ、租稅ノ負擔ガ何程
ニナッタカト云フコトヲ申上ゲマスルト
云フト、國民所得ハ先達テ大藏大臣カラ發
表セラレマシタ通リ、十八年度ニ於キマ
シテハ五百億ト一應見テ居ルノデゴザイ
マスガ、ソレニ對シマシテ租稅ノ總額
ハ、租稅及印紙收入以上ハ一般會計ノモノ
デアリマス、ソレカラ地方分與稅分與金
特別會計ニ入リマス租稅ガゴザイマス、
地租、營業稅、家屋稅デゴザイマス、ソレ
ヲ加ヘ、更ニ專賣益金ハ消費稅ノ變形トモ
見ルベキモノデアリマスルノデ、專賣益金迄
加ヘマスルト云フト、昭和十八年度ニ於テ
ハ約八十九億五千六百萬圓程ト相成ルノデ
アリマス、之ヲ國民所得五百億ニ對比シテ
見マスルト云フト、十七·九「パーセント」
ニナリマスルカラ、先ヅ十八「パーセント」
ト言ヘルト思フノデアリマス、尙地方稅モ
國民ノ負擔デアリマスルノデ、先程申上ゲ
マシタ八十九億五千六百萬圓程ニ地方稅ヲ
加ヘマスルト、地方稅ニ付キマシテハ最近
ノ十八年度ノ數字ガ得難イノデアリマシテ、
已ムヲ得ズ十六年度ノ調定濟額ヲ其ノ儘使
ヒマシテ、八億一千八百萬圓程ヲ加ヘルコ
トニ致シマスルト云フト、國稅及地方稅ノ
計ハ、九十七億七千五百萬圓程ニナリマス、
之ヲ五百億ニ對比シテ見マスルト云フト、
十九·五「パーセント」見當ニナリマスルカ
ラ、先ヅ大略二十「パーセント」見當ニ相成
ルト思フノデアリマス、外國ニ付キマシテ
ハ、昭和十八年度ニ該當スル數字ハ得難イ
ノデアリマスルノデ、昭和十六年度ニ該當
致シマスル千九百四十一年度ニ付テ申上ゲ
マスルト云フト、英國ハ國稅ノミノ場合ニ
於キマシテ、三十一·四九「パーセント」程
ニナッテ居リマス、米國ハ十四·九「パーセン
ト」デアリマスルカラ、先ヅ十五「パーセン
ト」ト云フ所デアリマス、「ドイツ」ハ二十七·
닭八三ト云フ率ニ出テ居リマスルカラ、先
ヅ二十八「パーセント」程度デゴザイマス、
其ノ場合ニ於キマシテ、同ジ年度ノ日本ノ
國民所得ニ對シマスル租稅ノ割合ハ、國稅ノ
ミデ申上ゲマスルト云フト、約十二·四「パー
セント」位ニナッテ居リマスルノデ、其ノ
當時ニ於キマシテハ、日本ノ國民所得ニ對
シマスル租稅負擔ハ比較的低ク出テ居ル、
他ノ國ニ較ベテ低ク出テ居ルヤウデアリマ
ス、其ノ後日本モ增稅致シマシタガ、交
戰各國トモ何レモ相當增稅ヲ致シテ居リマ
スルノデ、大觀致シマシテ、今日國民所得
ニ對シマスル租稅負擔ノ割合ハ、依然日本
ノ方ガ數字的ニハ低ク出ルノデハナイカト
思フノデアリマスガ、是ハ單ニ國民所得ノ
對租稅ノ比率ノミヲ以テ總テヲ論ジ去ル譯
ニ行カナイ問題デアリマスルノデ、國民所
得ノ分布狀況、資本ノ發達狀況ト云ッタヤウ
ナ各種ノ觀點カラ議論ヲシナケレバ、單ニ
數字ガ低イカラ非常ニ負擔力ニ餘裕ガアル
下、斯ウ云フコトハ一〓ニハ言ヘナイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=37
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038・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私引續イテ大臣ニ御伺ヒ
シタイノデスガ、其ノ前ニ只今ノ問題ニ關
聯致シマシテ、主稅局長ニ御伺ヒシタイノ
デスガ、只今國民所得ト其ノ國民ノ負擔ノ
割合ニ付キマシテノ御話ガアリマシタ、此
ノ點ニ付キマシテ御趣意ノアル所ハ略〓承知
致シマシタガ、日本ニ於キマスル所得階級
ト、外國ニ於キマスル所得階級トハ、大分
趣キヲ異ニシテ居ルヤウニ私ハ考ヘル、日
本ニハ高額所得者ト云フモノハ比較的少イ
丁度「ピラミッド」型ニナッテ居リマシテ、上
ハ極ク僅カデアッテ、下程所得ノ總額ハ多イ、
外國ハ之ニ反シマシテ、是ハ何ト申上ゲテ
宜イカ、桶型トモ申シテ宜イカ、圓錐形ノ
桶型ト云フヤウナ風デ、上ハサウ迄小サク
ハナクテ、高額所得者及中以上ノ所得者ガ
相當ノ位置ヲ占メテ居ルヤウニ思フノデア
リマス、ソレデ日本ノ稅ノ負擔者ト云フモ
ノハ只今所得ニ於キマシテ、三千圓以上ノ
者ガ負擔ヲシテ居リマスルガ、ソレ等ノ人ト
外國ノ、所得ヲ負擔ヲシテ居ル階級ノモノト
ノ比較ヲシテ見レバ、必ズシモ日本ノ方ガ
低イト云フ見方ニハ私ハナラヌト、斯ウ思
ヒマスルガ、ドンナ風ニ御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=38
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039・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今橋本委員ノ
御述ニナリマシタ國民所得ノ分布狀況デアリ
マスルガ、大體ニ於キマシテハ御觀察ノ通
リデアラウト思ヒマス、我ガ國ニ於キマシ
テハ、比較的高額所得者ノ數ガ少ク、少額
所得者ノ數ガ多イ、外國ニ於テハ大體高額
所得者ノ數ノ方ガ多クテ、小額所得者ガ少
クテ、桶ノヤウニ窄ンデ居ルト云フヤウナ
コトハナイヤウデアリマス、唯上ガ細クテ、
下ニ行ッテ太クナル其ノ割合ガ、ㄱピラミツ
ドㄴ型デアル場合モアレバ、或ハ上ノ方ハ
五重塔ノ先ノ尖ッタ所ノヤウニ、非常ニ細ッテ
シマッテ居ルト、斯ウ云フヤウナ恰好トノ差
ハアルヤウデアリマス、ソレカラ三千圓位
ノ階級ニ對シマスル所得ノ負擔狀況ヲ調ベ
テ見マスト云フト、〓シテノ話デアリマスガ、
比較的我ガ國ノ課稅ノ率ハ輕イヤウニ思ハ
レルノデアリマス、英國等ニ於キマシテハ、我
ガ國ノ分類所得稅ニ當リマス普通所得稅
ノ稅率ガ相當重イノデアリマスルカラシテ、
比較的所得ノ少イ者ガ相當ノ負擔ヲシテ
居ルヤウデアリマス、今三千圓ノ營業所得
ノ場合ニ於キマシテ、獨身者ノ場合ニ於キ
マスル所得百圓當リノ負擔、卽チ平均稅率
デ申上ゲマスルト云フト、日本ハ十一「パー
セント」、、「ドイツ」ハ十一「パーセント」半、
英國ハ十二「パーセント」、、「フランス」ハ二十
四パーセント」程度ニナッテ居リマス、一萬
圓ニナリマスト、日本ハ二十一「パーセン
ト」程度デアリマスルガ、英國ハ三十一「パ
ーセント」ニナリ、「ドイツ」ハ二十九「パー
セント」ニナリ「フランス」ハ三十二「パーセ
ント」ニナルト云フ風ニ出テ居リマスノデ、
三千圓程度デハ大シタ差ハナイヤウデアリ
マスガ、ソレヨリ少シ上ニ行キマスト、相
當外國ノ租稅負擔ハ重イヤウデアリマス、
從ヒマシテ今後ニ於キマスル所得稅ノ稅率
ノ組ミ方ニ付キマシテハ、高額所得者ニ或
程度ノ負擔ヲサセルコト勿論必要デアリマ
スルガ、中位ノ程度ノ所ニ於テ相當ノ負擔
ヲスルト云フヤウナ、稅率ヲ盛ルト云フヤ
ウナコトガ一ツノ考へ方デハナイカト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=39
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040・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 先程大藏大臣ノ御所見ヲ
承ッテ、私モ非常ニ賴モシイ力强イ御答辯
ト拜聽致シマシタ、中ニハ希望的樂觀モ加ッ
テ居ルヤウデアリマスガ、併シ其ノ希望ハ單
ニ空想ナクシテ、今日日本國民トシテハ必
ズ是ハ實現シナケレバナラヌ希望デアリマ
シテ、大藏大臣ノ御答辯ハ、國民齊シク之
ニ共鳴スルモノト私ハ思フノデアリマス、
今後公債ノ發行、戰費ノ調達ニ付テ何等危
懼ヲ抱クノ必要ノナイト云フコトヲ承リマ
シテ、私ハ大變安心ヲ致シマシタノデアリ
やく、次ニ今囘ハ間接稅ヲ御引上ニナリマ
シタガ、此ノ課稅ニ付キマシテモ、自ラ其
ノ限界ガアルノデハナカラウカト思ヒマス
一方考ヘマスルト戰局ノ進展ニ伴ヒマシテ、
戰費ハ益〓增加スルト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラヌ、之ニ對シテ單ニ公債ノミニ依ルト
云フ譯ニハ無論參リマセヌデ、公債ト共ニ
租稅モ國民ニ負擔サセナケレバナラヌト、
斯ウ考ヘルノデアリマスガ、財政家ト云フ
者ハ矢張リ先ノ先迄モ當然頭ニ御持チニ
ナッテ居ル必要ガアルト思フ、以前ハ十年〓
計表ト云フヤウナモノヲ御示ニナッテ居ッタ、
是ガ當テニナッタカナラヌハ暫ク措キマシテ、
矢張リサウ云フ御考ヲ時ノ財政家ガ御持チ
ニナッテ居ッタト云フコトハ窺ハレルノデア
リマスガ、當然大藏大臣ト致シマシテハ、
今後ノ財政ニ付キマシテモ、相當ノ御考ヲ
御持チニナッテ居ルト思ハレルノデアリマ
ス、此ノ課稅ニ付キマシテ自ラ限界ガアリ
ト致シマスレバ、今度ノ間接稅及ビ現行ノ
直接稅トノ關係ニ於キマシテ、相當マダ課
稅スルノ餘地ガアルト御認メニナッテ居ラ
レマセウカ、其ノ點ヲ御尋ネ致シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=40
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041・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 課稅ノ限界ニ關
シマシテハ國民所得ノ增加、其ノ基礎ハ經
濟ノ發達デアリマスガ、此ノ國民所得ノ增
加經濟ノ發達ト相伴ヒマシテ、伸縮性、
彈力性ガアルト存ジマス、從ヒマシテ其ノ
限界ハ抽象的ニハアリ得ルト考ヘマスルガ、
實際ハ段々ニ國民所得ガ殖エマス、是ハ先
程ノ御話ニ。モアリマシタヤウニ、人口ノ增
加割合ヨリハ國民所得ノ方ガ殖エルノデア
リマスカラ、結局一人當リト言ヒマスカ、
一戶當リノ所得額ガ殖エル傾向ニアルノデ
アリマス、サウ致シマスト、單純ニ所得ガ
殖エタノハ、現行稅率ニ依ッテ自然ニ殖エル
以外ニ、稅率ヲ增シテ行ク擔稅力ノソコニ
餘力ハ出ルト思ヒマス、段々ニ其ノ程度ヲ見
計ラヒマシテ進ンデ行キタイ、斯ウ考ヘテ居
ルノデアリマス、ソレハマア大體直接稅ガ主
デアリマス、間接稅ニ付キマシテハ、今囘ハ相
當ニ大幅ノ引上デアリマシテ、煙草ノ增收
計畫モ實質ハ間接稅ト略。同ジ性質ノモノデ
アリマスガ、ソレ迄入レマスルト、一年間、平
均平年度十六億圓ニ近イモノニナリマス、
間接稅ダケデ十六億圓ハ相當ナ大キナモノ
デアリマシテ、今見マスト、是ハ將來上ゲル
餘力ハ少イヤウニ見エルノデアリマス、併シ
ナガラ此ノ國民生活ニ付キマシテモ、最低
限度ト云フコトヲ申シマスガ、矢張リ是ニ
モ彈力性ガアル譯デアリマシテ、相當此ノ
感ジノ部分ガ入リマス譯デアリマス、同ジ
戰爭ニ致シマシテモ、支那事變ノ初メノ段
階ニ於キマス場合ト、大東亞戰爭ニナリマ
シタ今日ノ場合、自ラソコニ相當ノ違ヒガ
出テ來ル譯デス、尙今後進ムニ從ヒマシテ、
只今デハ餘リ餘地ガナイト見ラレマスル間
接稅ニ付キマシテモ、私ハ矢張リ或程度ノ
增徵ヲシ得ル狀態ガ出テ來ルデアラウ、而
モ是ガ相當高イ程度現ニ引上ゲテ居ル譯デ
アリマスカラ、其ノ時ノ戰局、戰費、國民
ノ氣持、有ラユル觀點カラ致シマシテ、其
處ニ自然ニ其ノ時ニ於ケル限界ト云フモノ
ガ私ハ出ルヤウニ感ジテ居リマス、一面稅
ニ依ッテ國民ガ自覺シタ、所謂時局認識ヲ致
シマス、是ガ刺戟トナリ、國民ノ時局認識
ガ進ンデ、ソコニ擔稅ヲシ得ル實際ノ力ガ
出テ參リマス、間接稅モ私ハ是デ行詰リデ
アルトハ存ジマセヌ次第デアリマス、直接
稅ノ如キハマダ相當餘地ガアルト申シマス
ルカ、或ハ餘地ガアルト云フト樂ニ擔稅ガ
出來ルヤウデアリマスガ、サウデナク、相
當引上ゲネバナラヌト云フ時期ガ參ルヤウ
ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=41
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042・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 國民所得ノ增加ニ伴ウテ
擔稅力モ增加スルト云フコトハ、如何ニモ
其ノ通リデゴザリマシテ、私モサウ考ヘテ
居リマス次第デアリマス、消費稅ニ付キマ
シテハ、今囘ノ引上ハ御話ノ通リニ非常ニ
突飛ナモノモアリマス、是デ一時非常ニ「シ
ヨック」ヲ與ヘマシテ、或ハ稅收入ノ基本ニ於
テ多少ノ狂ヒヲ來シハセヌカト私ハ思フノ
デアリマス、併シ是ハ慣ルレバ、或ハ稅ハ
古イ程宜イト云フコトヲ申シマスノデ、何
等心配ハナカラウト思ヒマスケレドモ、差
當リ十八年度ニ於キマシテハ、餘リ突飛ノ
引上ノ爲ニ、詰リ其ノ基本ノ數量ニ於テ自
然減少ヲ來シテ、豫算ノ收入ノ上ニ於テ相
當ノ齟齬ヲ生ジハシナイカト思フノデアリ
マス、多少是ハ減少スルモノト云フ豫想ノ
下ニ豫算ヲ御組ミニナッタノデアリマスカ、
若シサウダトスレバ、其ノ割合ハドノ位デ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=42
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043・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 稅率ガ非常ニ高
クナリマス爲ニ、所謂課稅物件ノ減少、消
費ノ減少ノアリマスコトハ當然考ヘラレマ
ス譯デアリマス、相當ニ大幅ノモノガアル
ト思ヒマスルガ、尙是ハソレ以外ニ本年度
ニ於キマシテハ、國家ノ總生產力ヲ戰力ノ
方面ニ集中スルト云フ觀點カラ、計畫的ニ
消費物資ノ生產ヲ制限スル面ガ現レテ來
ル、旣ニ增稅計畫ヲ入レマセヌ部分ニ於キ
マシテモ、詰リ豫算デ申上ゲレバ本豫算ノ
場合ニ於キマシテ、ソレ等ノ意味モ含メテ
相當ノ課稅物件ノ減少、斯ウ云フモノガ見
込ンデアリマス、サウデアリマセヌト、マ
ダ相當自然增收ガ餘計見積ラレルノデアリ
マス、酒ナドモ石數其ノモノモ相當見テア
ル譯デアリマス、ソレデ尙增稅致シマス場
合ニ、斯ウ云フ風ニ基本ガモウ減ッテ居リ
マスカラ、增稅ヲ致シテモソレ以上ニ消費
ハ減ラナイ、斯ウ見ルノモ相當ゴザイマス、
ソレデナク非常ナ增率ノ爲ニ、相當ニ減ルダ
ラウト見マシタモノモアリマシテ、ソレニ
付キマシテハ、相當ノ消費ノ減退ト云フモ
ノヲ相當ニ見込ンデ居リマス、ソレカラ尙
是ハ御尋ノ範圍外ニナルカモ知レマセヌ
ガ、結局稅收入ヲ得マスト同時ニ、資金、
資材、勞力、總テノモノガ戰力增强ノ方ニ
集中轉換ヲスルト云フコトハ、有ラユル施
策ガ其ノ面ニ向ヒマスヤウニ、今囘ノ間接稅
ノ增徵モ其ノ點ガ考慮致シテアリマシテ、少
シク强ク申上ゲマスレバ、意想外ニ消費ガ
減ズレバ幸デアル、稅收入ノ缺陷ガ客觀的ニ
申シマスト、私ハ是ハアレダケハ取レヌト思
ヒマス、或稅ニ於テハ殖エマシテモ、或稅ニ
於テハ減リマシテ······唯寧ロ希望ヲ申セバ、
取レナイ位ニ消費ガ減ル方ガ望マシイ、全
經濟ノ爲ニハ望マシイ位ニ考ヘテ居リマス
ガ、其ノ結果ハ稅收入ニ若干ノ缺陷ガ生ジ
マシテモ、ソコニハ稅收入ノ缺陷ヲ生ジタ以
上ノ消費ノ節約ガ出來、半面資金ノ蓄積ガ
出來マス、是ハ如何樣ニモ財政的ニ利用シ得
ル途ハアリマス、毫モ困ルドコロデハナク、
其ノ結果ハ寧ロ、却テ經濟的ニモ良好ナリ
ト考ヘテ居ル次第デアリマス、稅收入ハ減ッタ
ラ減ッタデヤル途ハ幾ラモアル、寧ロ其ノ方
ガ宜シイ位ニ考ヘテ居リマス、唯私ノ觀測
ヲ申上ゲマスレバ、今年度ノ稅收入ニ見積リ
マシタ位ノモノハ實際ニ入ッテ來ル、寧ロ
決算ニ於テハ幾ラカ餘計位ノ狀態デ入ッテ
來ルノデハナイカト思ハレル位デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=43
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044・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私只今ノ御尋ヲ致シマシ
タノデアリマスガ、御答辯ニ依リマシテ私
モ能ク悟ル所ガアリマシタ、實ハ一時、私
ハ斯ウ云フ突飛ナ引上ニ付テハ、必ズ稅收
入ガ減ルモノト見テ居リマシタガ、近來或
方面ノ景氣ヲ伺ヒマスト、ナカ〓〓素晴シ
イ景氣デアルサウデアリマス、又保險事業
デアリマスガ、是ハ只今大藏省ノ管轄ニナッ
テ御承知デアリマセウガ、近來生命保險ノ
加入者ガ著シク增シテ、是等ハ矢張リ餘裕
ノアル證據デアリマシテ、是ハ貯金ノ意味ヲ
ヲ持ッテ居ルモノトハ思ヒマスルケレドモ、
矢張リ手許ニ相當ノ餘裕ノアル結果、此處
ニ來タト見ナケレバナリマセヌノデ、サ
スレバ御話ノ通リニ收入減ト云フモノヲ見
ルヤウナ虞ハナイ、斯ウ私ハ考ヘルノデア
リマス、其ノ點ハ御同感デゴザイマス、ソ
レカラ今後ハ增稅ニ付キマシテハ、矢張リ
間接稅ト直接稅ト交互ニ上ゲルカ、同時ニ
上ゲルカト云フヤウナコトハ、其ノ時ノ經
濟界ノ狀況ナリ、戰力ノ進展等ニ伴ッテ適當
ニ按排セラレルモノト思ハレマスルガ、私
個人ト致シマシテノ考デハ、直接稅ト云フ
モノハ〓シテ、是ハ事業ノ資本トナッテ生產
增强ニ非常ニ貢獻スルモノガ多イ、一方間
接稅ト云フモノハ、是ハ浪費セラレルモノ、
所謂購買力ヲ吸收スルト云フ效果ガ非常ニ
大キイカト思フノデアリマス、之ニ付キマ
シテハ色々租稅原論トカ、學說等ニ付キマ
シテ、色々ナナニガアリマスルガ、戰時中
ニ於テ戰費ヲ調達スル上ニ於キマシテハソ
ンナ學說トカ、理論トカ云フヤウナモノハ
モウ重キヲ置ク必要ハナイト思ヒマス、現ニ
「ドイツ」ノ「フンク」ノ如キ者ハ、此ノ際租稅
ノ收入、戰費ノ調達ニ付テハ理窟ナドハモ
ウ要ラナイ、要スルニ國民ニ直接ノ犧牲
ヲ與ヘズシテ、且徵稅費ヲ要スルコトガ割
合ニ少ク、手數ヲ掛ケルコトガ少クシテ、
稅ノ收入ヲ圖ルノガ第一ダト云フコトヲ申
シテ居ルヤウニ聞イテ居リマス、是ガ所謂
間接稅ニ重キヲ置ク所以デアラウト思ヒマ
スガ、今後財政ヲ按配セラルヽ際ニ於キマ
シテハ、其ノ點ハ一ツ御考慮ヲ願ヒタイト
私ハ思ヒマスガ、大藏大臣ノ御考ハ如何デ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御尤モナ御意見
デゴザイマシテ、戰爭ノ場合ニハ戰鬪行爲
其ノモノデモ理窟バカリニ拘ッテ行ク譯ニ
イカナイ、ヤレバドウシテモ、何トシテ勝タ
ナケレバナラヌト云フ場合ガ多イト存ジマ
シテ、是ハ銃後ニ於キマシテモ、矢張リ是
ハ戰爭中デアリマスノデ、餘リ理窟バカリ
拘ッテ行クト云フコトハ、是ハ宜シクナイ、
斯ウ云フ考ヘ方ニ付テハ全ク御同感デアリ
マス、近來衆議院ニ於キマシテモ平素ノ租
稅原則ナドニ囚ハレナイデ、ドシ〓〓ヤッタ
方ガ宜イヂヤナイカト云フ趣旨ノ御意見モ
拜聽致シマシタ、寧ロ議會ノ方カラ何ト申
シマスカ、寧ロ當事者ノヤリ方ヲ樂ニスル
ト云フヤウナ御意見ガ出ルノデ、私共ハ非
常ニソレハ有難ク存ジテ居リマス、唯私共
ノ政府ノ考へ方トシテハ、同時ニ自ラ相當愼
シム所ガナイトイケナイト思フノデアリマ
ス、矢張リ間接稅ニ致シマシテモ、之ヲ生
活必需品其ノ他ニ同率デ掛ケルヤウナコト
ニナリマスト、實際ニ稅金ヲ拂ヒマス時ニ
ハ、直接稅トシテノ苦痛ハ國民トシテハ感
ジガアリマセヌノデアリマセウガ、矢張リ
其處ニハ比較的所得ノ少イ者ニ餘計掛ル、
多イ者ニ寬ニナルト云フ結果ガ玆ニ結果ト
シテ出テ參リマス、ソレデ從來ノ應能負擔
ニ致シマシテモ、考へ方ガアノ人ヨリハ自
分ガ餘計租稅ヲ負擔スルノハ不公平ダ、互
ニ他ヨリ自分ノ負擔ガ資力ニ比シテ多過ギ
ハシナイカト云フヤウナ、詰リ個人的ナ觀
點カラ立ッタ負擔ノ均衡論ト云フコトハ、是
ハ宜シクナイト考へマスルガ、寧ロ各人ハ
爭ッテ、財的ニ國家ニ奉公スル爲ニ餘計稅ヲ
納メルノダ、此ノ氣持ハ有難イ、サウナク
チヤナラヌト思ヒマスケレドモ、矢張リ國
民ガ堪へ得ルトカ、能力ニ應ズルトカ云フ
所ヲ見マシテ課稅スルコトガ、結局國民ガ
長キニ亙ッテヨリ多ク國家ニ御奉公ヲ爲シ
得ル力ヲ養ヒ、存續シ得ル所以デアルト思
フノデアリマス、其ノ點ニ於テハ當局者ト
シテハ非常ニ愼重ニ考ヘテ行カナケレバナ
ラヌ、衆議院ニ於テハ、實ニ應能課稅ノ原
則ハ、議員ノ色々發言サレタ方ニハ、私共
ノ方ガ寧ロ重視スルヤウナ、問答ヲ致シテ
居リマス間ニ氣分ガ出テ來ル位デアリマス、
矢張リ私ハ其處ハ十分ニ進ンデ考ヘテ行カ
ナケレバナラヌ、今囘ノ間接稅ニ致シマシ
テモ、消費ノ性質ニ應ジテ非常ニ差等ヲ設
ケテ、是ハ間接稅トシテハ隨分從來ヨリハ
違ッタ行キ方デアリマス、簡單ニ行ヘバ稅
率ヲ少クシテ課稅ヲシマスルコトガ極メテ
徵稅上樂ナノデアリマス、ソレハ矢張リ國民
ガ能力ニ應ジテ負擔スル所以デモナク、國
民ノ消費ガ戰時トシテ適正ナ方ニ已ムヲ得
ズ向フ以外ニ、間違ッタト申シマスカ、行カ
ヌデモ宜イ方ニ行カナイヤウニスルト云
フ、ソレ等ノ心構ヘガ必要デアリマスルノ
デ、私ハ衆議院デモ今囘ノ間接稅ハ直接的
間接稅ナリ、負擔能力ニ應ズルト云フカ、
少クトモ消費力ニ非常ニ應ジテ行ク、徵稅
カラ言ヘバ是ハ誠ニ面倒ナコトデアリマス、
稍〓難キヲ選ンダヤウナ觀點ガアリマスガ、
是モ必要ナリト考ヘテ居ルノデアリマス、
今御示ノヤウナ御考ヲ戴クト云フコトハ、
我々トシテ非常ニ有難イ、少々當事者ニ無
理ガアッテモ簡單ニヤッテ喜ンデ稅ヲ出サ
ウト云フ此ノ氣持ト云フモノハ非常ニ有難
イノデアリマス、ソレダケニ我々ノ方ニハ、
マア普通ノ言葉デ言ヘバ、自肅ト申シマス
カ、一面應能負擔ト云フコトモ忽セニシナ
イデ出來ルダケサウ考へテ行キタイ、斯ウ
云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=45
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046・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 只今御意見ヲ承リマシテ
誠ニ結構ニ存ジマス、次ニ私ハ玆ニ表ヲ戴
キマシタガ、此ノ相續稅ノ物納問題ニ付キ
マシテ御尋ネシタイト思ヒマス、近來國民
ノ全體ニ亙ッテデモアリマスルガ、就中高
額所得者ノ租稅ノ負擔ト云フモノハ、御
承知ノ通リ隨分重イノデアリマス、之ニ又
莫大ナ相續稅ヲ負擔致シマスト、ナカ〓〓
此ノ相續稅ノ納入ニハ非常ニ苦心ヲスルノ
デアリマス、私ハ相續稅ノ物納ト云フコト
ハモウ多年、十數年前カラ主張シテ來タノ
デアリマスガ、是ハ私ノ眞意ハ必ズシモ物デ
納メルト云フノデハナクシテ、此ノ制度ヲ
設クルコトニ依ッテ、比較的穩健ナル評價ガ
爲シ得ラルヽ、斯ウ云フコトヲ期待シタノ
デアリマス、昔稅關ニ於キマシテ從價稅ノ
時デアリマシタガ、餘リ鑑定價格ガ高イト
云フト、其ノ物ヲ稅關ニ買ッテ貰ッテ居ッタ
時代モアルノデアリマス、物納ヲ許スト云
フコトハ餘リ稅務署ガ無理ナル評價ヲスレ
バ、其ノ物ヲ以テ稅ニ代ヘルト云フコトノ
制度ガアレバ、決シテ苛酷ナ、不當ナル査
定ハ受ケズニ濟ムト、斯ウ云フコトガ私ノ
狙ヒ所デアッタ、處ガ此ノ物納ニハ不幸ニ致
シマシテ、不動產ヲ過半持ッテ居ル者ニ限ッ
テ許サレルト云フコトデアリマシテ、其ノ
適用範圍ト云フモノハ誠ニ狹イノデアリマ
ス、此ノ表ヲ見マスト該當スル事項ハナイ
ト云フコトデアル、一人モ物納シタ者ハナ
イヤウデアル、是ハ折角拵ヘマシタケレド
モ、其ノ適用範圍ガ餘リ狹イガ爲ニ斯ウ云
フコトニナッタノデハナカラウカト思ヒマス、
デ不動產ガ財產ノ過半ヲ占メルト云フヨリ
モ、私ハ都會ノ地ニ於ケル所ノ商品トカ、
若シクハ不動產トカノ評價ノ適正ナルコト
ヲ期シタイト云フコトガ希望デアリマス、
不動產ガ過半ヲ占メルト云フノハ、矢張リ
郡村ニ於ケル所ノ大地主デナケレバ殆ド見
ラレナイナニデアリマスガ、此ノ農村ノ田
畑ノ評價ト云フコトハ、餘リ不公平ハナイ
ヤウニ聞イテ居リマスケレドモ、單リ都會
地ニ於ケル市街宅地ノ評價ハ非常ニ區々ニ
亙リマシテ、甚ダシキハ百圓ノ價値シカナ
イモノヲ稅務署ハ二百圓ニモ評價ヲシテ、
決シテ讓ラナイト云フヤウナ話モ往々聞ク
ノデアリマスガ、此ノ際斯ウ云フコトヲ述
ベルノハ時機デハナイノデアリマスガ、若
シモ適當ナル時機ガ參リマシタナラバ是
ハ何トカ緩和ヲスルトカ、若シクハ實際此
ノ法律ノ餘惠ヲ受ケルヤウナコトニ御進ミ
ニナルト云フ御意思ハナイノデアリマセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=46
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047・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今御述ニナリ
マシタ點ハ資料トシテ差出シマシタ中ニ、
相續稅物納調トシテハ該當事項ガナイト云
フ點ニ關聯シテデアリマスルガ、是ハ察シ
マスルノニ、マダ制度ガ施行サレテ年數ヲ
經テ居リマセヌ爲ト、ソレカラモウ一ツ比
較的有力ナ理由ト致シマシテハ、最近ニ於
キマスル不動產ノ價格ハ、ドチラカト云ヘ
バ上向キノ狀態ニアルヤウデアリマス、ソ
コデ相續稅ノ課稅標準トシテ決定サレマシ
タ金額ヨリモ、時價ガ大體上向キデゴザイ
マスレバ强ヒテ其ノ物ヲ提供致サナイデ
モ稅金ヲ調達スル途ガ付ケ易イト云フ點ガ、
此ノ制度ノ比較的利用サレナイ理由デハナ
イカト思ッテ居ルノデアリマス、ソコデ將來
何等カノ理由ニ依リマシテ、不動產價格ガ
下向キニナッテ來ルト云フヤウナコトニ相成
リマスレバ此ノ制度ハ或程度迄利用サレ
ルコトト存ズル次第デアリマス、尙法律ノ
改正ノ問題ト致シマシテ、現在物納ノ場合
ニ置イテ居リマスル相續財產ノ價格中、不
動產ノ價格ガ二分ノ一ヲ超エテ居ナケレバ
ナラヌト云フ、其ノ制限ヲ撤廢シテハ如何
カ、斯ウ云フ御意見デアリマスルガ、之ヲ
置キマシタ趣旨ハ、稅金ハ現在デハ現金納
付ト云フ建前ニ全部統一サレテ居ルノデア
リマスルガ、唯不動產ヲ相當澤山持ッテ居リ
マスルモノニ付キマシテ、相續ガ開始致シ
マスルト、其ノ不動產ヲ處分シナケレバ相
續稅ガ納メラレナイ、不動產ヲ處分シナケ
レバナラナイ場合ニ於テ、處分ガ出來ニク
イ場合ガアル、或ハ賣ラナケレバナラナイ
ト云フ事情ガ分ルト云フト、値段ヲ叩カレ
ル、斯ウ云フヤウナ事情ガアリマシテ、サ
ウ云フ場合ヲ救濟スル趣旨ヲ以チマシテ、
特ニ現金納付ニ對スル例外ノ制度トシテ物
納ト云フコトヲ認メタヤウナ次第デアリ
マスルノデ、相續財產中、不動產以外ノモ
ノガ相當アリマスルヤウナ場合ニ於キマシ
テハ、相續稅ノ負擔モ現在程度デアリマス
ルナラバ、マダ著シク重イト云フ所迄至ッ
テ居リマセヌカラ、其ノ換價シ易イ財產ヲ
稅金ニ充當スルコトニ依ッテ、左程ノ苦痛
ハナカラウ、斯ウ云フヤウナコトデ、此
ノ二分ノ一ト云フヤウナ制限ヲ置イタ
次第デアリマス、尙此ノ制度ガ、或程度斯
ウ云フ制度モアルカラ、稅務署ニ於テ亂暴
ナ不動產ノ評價ヲシテ置クト云フト、其ノ
價格デ以テ稅金ニ充當シテ吳レト云フ申出
ガアル、從ッテ是ハ稅務署ノ不動產ノ評價ヲ
適正ナラシメル、安全瓣ノヤウナ作用ヲス
ル、斯ウ云フヤウナ見方モアリマスガ、マ
ア稅務署ノ不動產ノ評價ニ當リマシテハ、
斯ウ云フ規定ノ有ル無シニ拘ラズ、出來ル
ダケ適正ヲ期セシメマシテ、納稅者トノ間
ニ特ニ紛糾ヲ釀スココトノナイヤウニ平
生モ注意致シテ居リマスルガ、今後ニ於キ
マシテモ、御趣旨ノ點ヲ體シマシテ、十分
注意シテ施行シテ參リタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=47
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048・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 只今ノ御答辯ノ末尾ニ於
キマシテ、御同情アル御話ヲ承リマシタコ
トハ滿足デアリマス、併シ御意見中、近來
不動產ノ價格ガ段々向上シツヽアルト云フ
コトハ事實トハ相違致シテ居リマス、昨
年頃ハ其ノ頂上デアリマシテ、昨年以來段々、
是ハ市街宅地デアリマスガ、市街宅地ハ
低下ノ傾向ヲ辿ッテ居リマス、ソレハ詰
リ商人ガ店舗ヲ張ッテ居リマシテモ、其ノ
店舗ニ依ッテ相當ナ利益ハ勿論、經費迄モ
償フコトハ出來ナイト云フヤウナコトデ、
段々閉店スルト云フヤウナ氣分ガ多イノデ
アリマス、從ヒマシテ都會ノ盛リ場ニ於キ
マシテハ勿論、其ノ場末ニ於キマシテモ、
漸次今日デハ不動產ハ低下スルノ傾向ヲ辿
リツヽアルノデアリマス、殊ニ不動產ヲ賣
リマシタ場合ニハ、其ノ賣上價格ノ八割ヲ
以テ公債ヲ買ヘト云フヤウナ制度ガアリマ
スガ、是ナンカハ、不動產ヲ賣ル人ハヨク
ヨクノ人デアリマシテ、實ニドウモ八割モ
公債ヲ買ハセラレマシテハ、折角賣リマシ
テ金ヲ以テ家政ノ整理モ出來ナイト云フヤ
ウナコトモ往々アリマス、斯ウ云フ點モア
リマスノデ、折角相續財產ノ評價ニ付キマ
シテノ御同情アルト同ジヤウニ、稅ノ課稅
及ビ其ノ收入ハ一元化ニシテ、對立ヲ許サ
ヌト云フ大藏大臣ノ御話ハ誠ニ結構デアリ
マスルカラ、其ノ趣意ニ反セザルヤウニ一ツ
今後御取扱ヲ願ヘバ大變仕合セト思ヒマス、
次ニ私ハ今囘ノ消費稅ノ中デ產業戰士ニ對
シテハ、酒及ビ煙草ノ稅金ヲ輕減シタモノヲ
供給ヲスルト云フ便法ヲ御設ケニナッタト
云フコトデアリマシテ、是モ一方カラ見マ
スレバ誠ニ結構デアリマスルガ、一昨年來
此ノ時局事業ニ勤務スル所ノ勞働戰士、產
業戰士ト云フ者ハ、比較的其ノ收入ハ多イ
爲ニ浪費ノ傾向ガ强イノデアリマス、小サ
イ場末ノ遊興等ニ付キマシテハ、其ノ御得
意ハ主トシテ斯ウ云フ產業戰士ニ依ッテ占
メラレテ居ルト云フヤウナコトモ聞キマス
ノデ、是等ノ人ニ斯ウ云フ特典ヲ與ヘラレ
ルト云フコトハ、果シテ當ヲ得タモノデア
ルカドウカト云フコトヲ私ハ疑ハザルヲ
得ナイノデアリマスルガ、大藏省ニ於キマ
シテ斯ウ云フ特典ヲ御設ケニナリマシタ御
趣意ノアル所ヲ一應承ッテ置キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=48
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049・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 先程土地ノ價格
及ビ土地ノ賣却代金ノ一部公債買入ノ御話
ガアリマシタ、土地ノ價格ニ付キマシテハ
今頃流行ノ言葉デ申セバ、產業ノ再編成ト
云フヤウナコトモ行ハレマシテ、御說ノヤ
ウナコトモアラウト思ヒマス、評定ニハ今
後十分注意シテ參ル積リデアリマス、又不
動產賣却代金ノ一部ヲ公債買入ニ充テル、
是モ從來ノ負債ノ整理ヲヤリマストカ、サ
ウ云フヤウナ場合ニハ、勿論其ノ範圍ニ於
テ公債ヲ買入レルコトハ、是ハ出來ナイ譯
デアリマシテ、ソレヲ强ヒテサウセシメル
ト云フ者ハ毫モアリマセヌ、サウ云フ間違
ハナイト思ヒマスガ、何カ實行上ニ間違ガ
アリマシタラ、ソレハサウ云フコトガナイヤ
ウニ十分注意シテ參リマス、斯ウ云フコト
ヲ考ヘマシタノハ、只今色々工場ガ出來マス、
軍事上飛行場ナド隨分廣イ土地ガ買ハレル
トカ、詰リ賣ラナケレバナラヌモノデナク、
非常ナ大キナ土地ノ今申シマシタヤウナ買
入ガ隨分アルノデアリマス、サウ云フヤウ
ナ買入代金ト云フモノガ、是ガ所謂消費生
活ノ購買ノ爲ニ金ガアルカラ、其ノ金ヲ向
ケルト云フヤウナコトガ起キタラ非常ニ有
害デアリマスカラ止メマス、無論金ガ要ル
カラ整理スルト云フ場合ニハ、是ハ除外ス
ル方針デアリマスカラ、其ノ實行ニ注意シ
テ參リタイト思ヒマス、一部ノ重要產業關
係ノ方面ニ特定ノ價格デ酒ヲ配給シ、又其
ノ爲ニ增稅率ノ稅ヲ引上ゲナイ、此ノ點ニ
付キマシテハ御話ノ如ク、一部勞務階級ニ
ハ收入ノ良イ方面モ隨分アリマスルガ、是
ナドハマダ遺憾ナガラサウハ及ビマセヌ勞
務者、殊ニ自由勞働者階級モアリマスルシ、
又實際所謂腕ガ良クテ本當ニ餘計取ル人モ
アリマスルガ、併シ勞務者全部ガ非常ニ收
入ガ良イカト申シマスト、良イノモ見マス
ガ、全部ガサウ良イト云フ譯デモナイ次第
デアリマス、ソレデ賃銀ノ水準ヲ維持スル
ト云フコトガ物價政策其ノ他デ極メテ必要
ナノデアリマスルカラ、ソコデ酒、煙草モ
同樣ノ措置ヲ採リマシタノデアリマスガ、
是ナドハ普通生活ノ必需品ト申ス範圍ニハ
入ラヌデアリマセウガ、併シナガラ其ノ若
干數量ト云フモノガ實際ハナクテハナラヌ
習慣ノ人々、是ハ勞務者階級ニモ相當アル
ヤウデアリマス、色々增產上酒ヤ煙草ノ數
量ニ關シテ特別配給ノ要求モ多イ譯デアリ
マシテ、又實情ソレハ必要巳ムヲ得ヌ場合
モアルト思フノデアリマス、今囘ノ値上ト
云フモノハ、酒ニシマシテモ非常ニ大幅デ
アル、煙草モ大キイ譯デアリマス、是ハ勿
論各自ガ生活ヲ節約シテ、平タク申セバ
少ク共煙草代、酒代ヲ前ト同ジヤウニスル
三、マア飮ム量ヲ減シテ前ト同ジニスル
ト云フ趣旨ト、マア簡單ニ申セバ言へル譯
デアリマスガ、ソレガドウモ非常ニ大幅ナ
値上デアリマスカラ、ソコニ多少ノ無理ガ
アッテハイカヌ、サウスルトサウ云フ方面ハ、
現在トシテ非常ニ重要ナ方面デアリマスル
カラ、是ハマア農業方面モ入レル積リナン
デアリマスガ、ソコデ所謂生活費ノ增加ガ
賃銀水準ニ及ス影響モ考ヘマス、然ラバソ
コラノ飮ムダケ完全ニ安クスルカ、是ハ
非常ナ數量ニナリマスカラソコ迄ハ參リ
マセヌガ、其ノ點ニ貢獻ヲシマスルノト、
又サウ云フ點ニ國家トシテ力ヲ入レナケレ
バナラヌト云フ、今ノ此ノ緊要產業ノ增產
等ニ對スル一ツノ意思ノ現レ、斯ウ云フヤ
ウ、ニ强ヒテ分ケテ申セバ二點ニナルト思ヒ
マスガ、觀點カラアヽ云フ措置ヲ致シマシ
タ次第デアリマス、一ツハ餘リ酒ニシマシ
テモ、煙草ニシマシテモ、增稅ガドウモ急
激デアル、之ニ對シテサウ云フ必要ノ方面
ニ多少ノ緩和ヲ圖ラナケレバナラヌ、斯ウ
云フ趣旨デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=49
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050・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 御趣意ノアル所ハ承リマ
シタガ、只今酒、煙草ノ特別配給ハ農家モ
之ニ加ヘルト云フコト、是ハ殊ニ私結構ト
思ヒマス、近來農產物ノ價ト云フモノハ物
價政策ヨリ抑制セラレマシテ、割合ニ他ノ
物價ニ比シマシテ安イノデアリマス、從事を
農家ノ收入ト云フモノハ非常ニ窮屈ニナッテ
居ルヤウニ聞イテ居リマス、是ハ農家ニ對
シマシテハ以前ノヤウニ濁酒、ドブロクヲ
拵ヘルコトヲ御許シニナルト云フ御考ハア
リマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=50
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051・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) ソレハ端的ニ申
シマスルト、實ハナイノデアリマス、是ハ
ドウモ相當今稅率ガ高クナリマスルカラ、
單純ニ稅ノ方カラ申シマシテモ、ソレハ非
常ナ高イ特許料ヲ取ラナケレバナラヌト云
フコトニナリマス、又食糧ノ方カラ考ヘマ
シテモ個々ニ造リマスト云フコトニナレ
バドウモソレニ向ケマスル數量、又米ナ
ドノ其ノ消費ノ取締ト云フコトモ、是ハ非
常ニ困難デモアリマスシ、旁、一面相當議論
ハアルノデアリマスルガ、自家用酒ノ釀造
ト云フコトヲ認メル譯ニハドウモ參ラヌト
思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=51
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052・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 モウ一ツ御伺ヒ致シタイ
ト思ヒマスガ、是ハ大藏省ノ主管デハアリ
マセヌガ、國務大臣トシテ一ツ御盡力ヲ願
ヘバ大變結構ト思ヒマス、ソレハ鐵道ノ運
賃及通信料ノ改訂デアリマスルガ、此ノ鐵
道ノ運賃ノ如キモノハ、近來旅客ノ賃金ヲ
引上ゲラレマシタノデアリマスガ、貨物ノ
運賃ハ未ダ一遍モ引上ゲラレタコトハナイ
ト云フヤウニ承ッテ居リマス、處ガ鐵道始ッ
テ以來今日迄ノ日本ノ物價ノ趨勢ヲ見マス
ルト、少クトモ五倍乃至十倍ニ當ッテ居リ
マス、從ッテ其ノ經營費モ少ナカラズ增嵩致
シテ居ルト思フノデアリマシテ、昨年少シ
ク旅客賃金ヲ引上ゲマシタガ、モウ五割位
ノコトハ引上ゲル餘地ガアルト見ル人ガ多
イノデアリマス、若シサウナレバ今日ノ不
急不要ノ旅客モ自然自肅ヲ致シマシテ、鐵
道ノ混雜モ緩和ヲセラルヽト云フコトハ疑
ヒナイト云フコトヲ見ル人モアルノデアリ
マス、又此ノ通信料ノ如キモノモ一、二囘引
上ゲラレマシタケレドモ、是モ今日ノ物價
及ビ此ノ通信料ヲ制定セラレタ當時トノ比
較カラ見マスルト非常ニ安イノデアリマス、
今日斯ウ云フ國家ノ興廢ヲ決シテ大戰爭ヲ
ヤッテ居ル時デアリマスカラ、苟クモ增收ノ
見込ノアルモノハ、何デモ手ヲ著ケベキモ
ノデアルト私ハ思フノデアリマスガ、主管
外デアリマスケレドモ、兎ニ角其ノ收入ノ
大部分ハ大藏省ニ入ッテ來ルト云フ便法モ
アリマスノデ、此ノ鐵道ノ賃金及通信料等
ノ引上ニ對シマシテ御盡力ヲ願ヒタイト思
フノデアリマスガ、如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=52
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053・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 鐵道ノ旅客運賃
ニ付キマシテハ今御話ノアリマシタヤウ
ニ、昨年相當ノ大幅ノ値上ヲ致シ、又通行
稅モ相當重課致シマシタ、ソレ等ノ關係
上、本年度ニ於テ又增加スルト云フコトニ
付キマシテハ少シドウカト思ヒマスルノデ、
議ニ致シマセヌ次第デアリマス、通信料ニ
付キマシテモ大體同樣デアリマス、併シ將
來ハ御話ノヤウナ點ガアリマスノデ、十分
考ヘテ參リタイト思ッテ居リマス、唯此ノ鐵
道ノ貨物ニ付キマシテハ、現在ハ此ノ貨物
ノ重點輸送ト云フコトヲヤッテ居リマス、食
糧其ノ他刻下緊要ナル石炭、鐵サウ
云フモノノ運搬デ全部ヲ占メテ居リマ
ス、是等ノモノハ物價政策カラ申シマシ
テモ、賃金引上ヲ今ヤリタクナイ性質ノ
モノバカリデアリマス、石炭ノ如キモノモ
從來海運デアリマシタモノガ、非常ニ陸運
ニ轉換シテ居リマス、サウ云フマア謂ハバ
金ニナラナイ輸送バカリデアリマシテ、今
年ノ鐵道ノ收益步合モ非常ニ惡クナッテ居
リマスルガ、是ハ全般ノ戰時施策トシテ已
ムヲ得ヌコトデアリマスノデ、現在輸送シ
テ居リマス貨物ノ大量ニ付キマシテハ、右
申上ゲマシタヤウナ事情デ當分增收ノ餘地
ガナイト思ヒマス、其ノ他ノモノニ付キマ
シテハ、又機會ヲ得マシテ考慮ヲ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=53
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054・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 此ノ海上ノ運賃ト陸上ノ
運賃ト云フモノハ元來非常ナ差ガアルノデ
アリマス、詰リ陸上ガ非常ニ高クテ海上ガ
安イノデアリマス、處ガ今日ノ實況デ見マ
スルト、尤モ兩方トモ負擔料ヲ入レテノ計
算ニナルノデアリマスガ、海運ノ方ハ非常
ニ高イ、從ヒマシテ陸上ノ運賃ハ相當大幅
ニ引上ゲテモ其ノ餘裕アリト見テ宜カラウ
ト思ヒマスルノデ、斯ウ云フコトモ御調査
ノ上デ特別ノ御盡力ヲ願ヒタイト思ヒマス、
私ハ是デ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=54
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055・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今ノ運賃ノコト
デチヨット申上ゲテ置キタイト思ヒマスガ、
從來ノ海運ノ運賃ハ、陸上ノ運賃カラ比較致
シマスレバ御話ノ通リ高イノデアリマス、
唯現狀ハ斯ウ云フ風ニナリマス、例ヘバ石
炭ヲ北支カラ内地ニ輸送シマス場合ニ、之
ヲ陸運ニ變更致シマスト、現在ハ主トシテ
朝鮮鐵道、滿鐵、華北鐵道ガ關係スルノデア
リマスルガ、相當是等ノ賃金ハ抑ヘマシテ
モ高クナル、海上運賃ナラバ又餘程高クナ
リマス、高クナリマスルト、日本ニ於ケル石
炭ノ原價ト云フモノガ高クナル、ソコデ政策
上石炭ノ價格ヲ上ゲナイモノト致シマスト、
其ノ差額ヲドウシテ行クカト云フコトガ直
グ問題ニナルヤウナ狀況デアルノデアリマ
シテ、サウ云フモノガ又輸送量トシテ非常
ニ大キナモノヲ占メテ居リマス關係上、今
尙此ノ重要物資ノ販賣價格ヲ維持スルト云
フ面カラ見マスルト、最早引上ノ餘地ガナ
イト云フカ、寧ロ引下ゲタイ、鐵道經營ニ
ハ都合ガ惡イコトデゴザイマスルガ、サウ
云フヤウナ因子ガ非常ニ多イ點ガアルノデ
アリマス、今ソレデ結論ヲドウスルト申上
ゲル譯デハアリマセヌガ、マア其ノ邊ノコ
トモ今後御考ノ中ニ一ツ加ヘテ、又色々御
考ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=55
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056・酒井忠正
○委員長(伯爵酒井忠正君) 今日ハ此ノ程
度ニ致シタイト思ヒマス、明日ハ午前十時
ヨリ開會致シマス、今日ハ是デ散會致シマ
ス
午後三時五十八分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵酒井忠正君
副委員長男爵東〓安君
委員
公爵德川家正君
公爵二條弼基君
侯爵井上三郞君
子爵大河內輝耕君
子爵西尾忠方君
子爵梅園篤彥君
子爵綾小路護君
子爵牧野康熙君
小倉正恒君
松本烝治君
柴田善三郞君
男爵岩村一木君
男男益田太郞君
男爵島津忠彥君
男爵倉富鈞君
坂野鉄次郞君
安宅彌吉君
野村德七君
橋本辰二郞君
松本勝太郞君
中島德太郞君
岩田三史君
中野敏雄君
國務大臣
大藏大臣賀屋興宣君
政府委員
大藏次官谷口恒二君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏書記官池田勇人君
同平田敬一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103751X00119430217&spkNum=56
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