第81回帝国議会　衆議院　公立学校職員年功加棒国庫補助法中改正法律案外一件委員会　第3号　昭和18年2月3日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年二月三日（水曜日）午前十時十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　松岡俊三君
  　　理事　高城憲夫君　理事　遠山暉男君
  　　理事　仲井間宗一君　理事　松浦周太郎君
  　　　　伊吹元五郎君　　　池崎忠孝君
  　　　　大村直君　　　加藤弘造君
  　　　　加藤宗平君　　　小松茂藤治君
  　　　　紅露昭君　　　庄司一郎君
  　　　　竹内俊吉君　　　中村梅吉君
  　　　　野田正昇君　　樋口善右衞門君
  　　　　一松定吉君　　　船渡佐輔君
  　　　　星一君　　　三宅正一君
  　　　　米田吉盛君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　文部大臣　橋田邦彦君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　企畫院部長　龜山孝一君
  　　　　　　　情報局次長　奧村喜和男君
  　　　　　　　　文部次官　菊池豐三郎君
  　　　　　文部省總務局長　藤野惠君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案（政府提出）
  　義務教育費國庫負擔法中改正法律案（政府提出）

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=0

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• 001・松岡俊三

  ○松岡委員長　只今カラ開會致シマス、質
  問ノ通告順ニ依ツテ順次發言ヲ許シマス-
  伊吹君

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• 002・伊吹元五郎

  ○伊吹委員　決戰段階下ニ於ケル文〓政策
  ノ根本方針ニ付テ、〓職員ノ優遇法ハ大イ
  ニ下情ヲ御酌取リ下サツテ其ノ端〓ヲ御開
  キ下サツタ本案ニ對シテ、私ハ其ノ優遇ト
  共ニ是等〓職員ニ對スル希望ヲ要求セラル
  ル點ヲ承リタイノデアリマス、戰局重大ナ
  ル現下ニ於ケル精神的戰力ヲ發揮增强スベ
  キ重大時節ガ訪レテ居ルコトハ皇國臣民ノ
  四六時中忘レルコトノ出來ヌ、又油斷ヲ許
  サヌコトデアリマス、戰局ガ愈〓展開スルト
  共ニ、思想戰ガ近代戰ニ於テ重大ナル役割
  ヲナシ、隨テ思想戰ノ重大性ガ益〓加重スル
  ノデアル、〓育者ノ責務モ更ニ倍加スルノ
  デアリマシテ、此ノ戰爭ノ長期化ト物資ノ
  缺乏其ノ他ハ、戰爭ニ關聯シテ是ハ當然
  來ルベキモノデアル、過去ノ萬國勞働會議
  及ビ軍縮會議當初ニ於ケル敵性國家ノ惡辣
  ナル對日思想謀略ニ鑑ミマシテモ、國民思
  想ノ弱點ハ惡思想ノ溫床トナリ、思想謀略
  ニ乘ゼラレル危險ヲ釀スノデアリマスガ、
  此ノ思想戰ニ對シマシテ、文〓政策上是ガ
  對策ヲ講ゼラレテ萬遺憾ナカルベキモ、我
  ガ國今日ノ世相ヲ見マスト、率直ニ申シマ
  スレバ、尙ホ憂慮スベキモノガアルコトヲ
  思ハセルノデアリマス、又〓育ノ偉大ナル
  力ニ想ヒヲ致シタ時分ニ、私ハ次ノヤウナ
  コトヲ御伺ヒシタイノデアリマス、先ヅ赤ノ
  最近ノ動向ニ付テ、一帝國主義戰鬪絕對
  反對ヲ口ニシテ居ツタ左翼ノ徒ガ、鳴リヲ濳
  メテ之ヲ口ニセザルノミナラズ、却テ時到
  レリトナシ、戰爭繼續擴大ヲ喜ビ、彼等ノ
  理想ヲ實現セントスル傾向ハナイデセウカ、
  又之ニ對スル〓育對策如何二、赤化運動ハ
  昭和八年頃一寸崩壞シマシタガ、其ノ後年
  年增加ノ傾向ハナイデセウカ、帝大ニテハ
  モウ左翼學生ガ相當數檢擧ヲセラレタルモ
  ノアルヤニ聞キマスガ、是等ハ所謂細鱗ニ
  過ギズ、外ニ地中深ク潜伏セル中核分子ガ、
  上層ニ動キアル合法的分子ヲ巧妙ニ操リ居
  ルノデハナカラウカ、此ノ方面ニ於ケル文
  〓政策上ノ對策如何
  次ニ歐米文化ニ禍ヒサレテ來タ所ノ生活
  觀念ノ更正ト云フ〓育ノ觀點カラ、統制配給
  上-戰爭ニ勝ツ爲ニハ如何ナル苦難ヲモ克
  服スル勇猛心ガ必要デアルコトハ言ヲ俟タナ
  イノデアリマスガ、其ノ配給ノ實施狀況ガ
  矛盾シ、或ハ不圓滑ノモノガアツテ、其ノ
  實績ガ擧ラナイトスレバ、自然怨嗟ノ聲ガ
  出テ來ハセヌカ、又配給制度ハ國民精神ノ上
  カラ言ウテ、平等及ビ權利觀念ヲ助長スル
  ヤウナ傾向ハナイカ、例へバ今マデ必要デナ
  イ物品モ一律ニ配給ニナルガ故ニ、消費節約
  トナラズ、却テ奬勵トナルヤウナコトハナ
  イカ、一家ノ長ハ老人ナルガ故ニ配給ガ少
  イ子供ハ勞働ニ從事スルカラ多クヲ取ル
  ノハ當然ダト心得、又砂糖ヤ菓子ハ子供ガ
  自ラ權利呼バハリヲシテ、親ヲビツクリサ
  セルト云フヤウナコトモ聞イテ居ル、女中
  ハ衣料切符ノ權利ヲ喜ビ、菓子、食物ニ付
  テモ配給率ダケハ當然貰フ權利ガアルト云
  フヤウナコトヲ同輩間ニ私語シテ、我ガ國
  ノ長幼ノ別ヲ撤廢シテ、沒道義的平等ヲ喜
  ブ傾向ガ濃厚トナツテ居ル、斯クシテ我ガ
  國古來ノ美風デアル家庭制度ガ漸次破壞サ
  レテ行キツツアルノデハナイカ、戰爭ガ長
  期ニ亙ツテ愈〓人的、物的ニ不足缺乏ガ深
  刻化スルト共ニ、永年ノ自由主義、個人主
  義ニ耽リタル人々ハ、戰爭終了ノ速カナラ
  ンコトヲ希ヒ、或ハ反戰、厭戰ノ氣分ヲ助
  長スルモノナキヤ、特ニ財閥及ビ文化人方面
  ニ於テ然ラザルカドウカ時局切迫ト共ニ流
  言蜚語ヲ生ズルモノデアルガ、此ノ際指導
  者、〓育者ノヤリ方ニ付テ批判的言論ガ多
  過ギルコトハ、徒ラニ世人ヲシテ迷ハシテ、又
  敵ヲシテ祕密攻撃點ヲ知ラシムル不利アルガ
  故ニ、國民ハ飽クマデ政府當局ヲ信賴シテ、國
  策ニ副ウテ邁進スベキモノデアルガ、思想ノ
  動搖ハ兎角生活問題、殊ニ食糧問題ヨリ起ル
  コト多キハ顧慮シテ置クノ要ガアルノデアリマ
  ス、ソコデ國民ハ消費節約、綜合配給ノ必要
  ナルコトハ能ク認識シテ居リ、又生產當局ノ
  並々ナラヌ努力ニ對シテハ感謝シテ居ルノ
  デアリマスガ、食糧問題トナルト兎角自己
  本位トナリ、他ヲ顧ミテハ羨望嫉妬シ、殊
  ニソレガ役人アタリガ自分達ハ食物ニ不自
  由セヌナドト言フヤウナ噂ヲ聞イテハ反
  感ヲ生ズルノミナラズ、物資及ビ食物ニ關
  スル流言ハ學生アタリマデモ相當廣範圍ニ
  擴ガツテ、思想謀略ニ乘ゼラレル危險ナル
  ヲ憂フルノデアリマスガ、其ノ實況ハ如何
  デアリマセウカ、是ガ爲ニ困苦缺乏ニ耐ヘ
  ル傳統的精神鍊成ノ對策ハ、ドウ云フ風ニ
  戰時下ノ文〓政策トシテ織込ンデアリマセ
  ウカ、之ヲ御伺ヒシタイ
  次ハ米英崇拜及ビ米英經濟依存思想ト云
  フコトニ付テ、第一ニ歐洲大戰ニ於テハ「ド
  イツ」ガ英國ノ思想謀略ニ乘ゼラレタノハ、
  米英崇拜及ビ米英經濟依存ノ潜在意識ノ存
  在ニ基因シタト云フ、或ハ「ロシア」帝國ノ
  崩壞ガ、〓育者ガ其ノ口火ノ點火役デアツ
  タコト等ニ鑑ミマシテ、我ガ國ニ於テモ文
  化人ノ知識階級或ハ財閥、實業界ノ人等ニ
  於テ、米英崇拜、米英經濟依存思想ヲ抱ク
  モノガナイデセウカ、又曠古ノ大戰ニ當リ
  テ日〓、日露戰爭當時ノ程ニアノ擊テヤ懲
  セヤ「ロシア」兵ト云フヤウナ、此ノ種ノ軍
  歌ガ子供ノ口ニサヘモ上ラヌ、此ノ國民ノ
  敵愾心ハマダ赤熱ノ度ニ至ラズ、却テ俘虜
  ニ對シテ吾々婦人モ本當ニコンナコトヲヤ
  ツテ何カセヌケレバナラヌ際ニ、俘虜ハ可
  哀サウデス、アレヲ慰問シテヤラウデハア
  リマセヌカト云フ企テガ、上流婦人間ニハ
  アツタトサヘ聞クノデアリマス、ドウモ斯
  樣ナコトガ果シテアリトスレバ啞然タラザ
  ルヲ得ナイ、尤モ是等ハ僅少ナモノデアリ
  マセウガ、家庭〓育ト學校〓育ノ關係ノ觀
  點ヨリ、大イニ是ハ考慮ヲ要スベキモノト
  思ヒマスガ、此ノ種ノ對策ハドンナ風ニナ
  ツテ居リマセウカ
  次ニ勤勞奉仕等ニ付テモ動トモスレバ依
  然外來ノ米英デナクテモ、「ヒツトラー·ユー
  ゲント」ノ稱揚ガ盛ンデアリマスガ、列聖ノ
  諭サセ給フ所ノ例ヲ申上ゲマスナラバ、繼體
  天皇ノ擧國勤勞ヲ勸ムル詔、或ハ元正天皇
  ノ麥禾ヲ植ヱルノ詔、或ハ今上陛下ガ御
  自ラ萬民ノ前ニ御〓示ヲ賜フ吹上御殿内ノ
  水田、或ハ皇后陛下ノ宮中ニ於テ蠶シ給フ
  有難キ御〓ヘハ十分徹底セシメテ、我ガ國
  ノ矜持トスル勤勞精神、卽チマツラウ精神
  コソ、祖先以來生活ノ信條トシテ誇リ來ツタ
  モノデアルカラ、此ノ精神ヲ振作涵養スル
  コトコソ、物心兩方面ノ戰力增强上緊要無
  ニ一ノ要件デアルト私ハ信ズルノデアリマス、
  斯ウ云フ觀點カラ傳統的國民道德ヨリ生マ
  レ來ル思想國防ノ涵養振作ト云フコトニ付
  テ、對策ハドウ云フ風ニナツテ居ルノデア
  リマスカ
  又次ニ在外邦人ノ〓育ニ從事シテ居ル者
  ニ付テハ、將來內地ノ者同樣ニ優遇ヲセラ
  レルヤウナ計畫ガアルノデゴザイマセウカ、
  モウ一ツハ在外邦人ノ子弟デモウ中等學
  校ノ〓育ヲ受ケル者ハ、ヤハリ母國ニ於テ
  ト云フ傳統的ノ精神ニ燃エル結果內地ニヤ
  リマシテ、例ヘバ長崎方面ノ如キハ揚子江流
  域ノアノ各都市ニ居ル者デ、原籍ハ北ハ北
  海道方面カラ南ハ九州ノ果マデノ各縣ノ者
  ノ子弟ガ參ツテ、商業學校或ハ中學校ニ入ツ
  テ居リマス、ソレガ爲ニ寄宿寮等ガ設ケテ
  アリマスガ、是等ノ者ニ對シテハ自然保護
  デモナサルト云フ御意圖ガアリマスデセウ
  カドウデセウカ、以上ノ點ヲ御伺ヒシタイ
  ト思ヒマス

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• 003・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　戰時下學校〓職員ノ覺悟
  ヲ大イニ促シマシテ、戰時下ニ相應シイ〓
  育ノ實ヲ擧ゲシムルヤウニ致スベキコトハ
  當然ノコトデアリマスガ、併シ〓育ト云フ
  モノハ戰時デアルト戰時タラザルトヲ問ハ
  ズ、少クトモ我ガ國ニ於キマシテノ根本ノ
  方針ト云フモノハ旣ニ定マツテ居ルノデア
  リマス、其ノ根本ノ方針、根本義ハ申スマ
  デモナク〓育ニ關スル勅語ノ奉體ノ一點ニ
  歸スルノデアリマス、之ニ依リマシテ、國
  體ノ本義ニ透徹シ、我ガ國ノ使命ヲ能ク自覺
  セシムルヤウニ〓育ヲ施シテ行クコトガ國ノ
  〓育ノ根本義デアリマス、併シ此ノ戰時下、
  殊ニ大東亞戰爭ノ完遂、大東亞建設ノ完成
  ト云フコトニ擧國一致邁進シテ居リマス此
  ノ戰時下ノ姿ヲ能ク認識スルコトガ、軈テ
  我ガ國ノ〓育ノ方針デアルモノヲ徹底セシ
  ムル最好ノ機會デアルコトハ言フマデモナ
  イコトデアリマシテ、從來動モスレバ其ノ
  根本ノ方針ハ定マツテ居リナガラ十分ニ徹
  シナカツタ憾ノアル事柄ガ、此ノ事變下ニ
  於キマシテ十分ニ徹底セシムル機會ガ到達
  シタト云フコトニナリマシタコトハ〓育
  ノ面ニ於キマシテハ非常ニ一面喜ブベキ事
  柄デモアルト考ヘルノデアリマス、要スル
  ニ問題ハ學校ノ〓職員ガ眞ニ我ガ國ノ戰時
  下ノ狀況ヲ能ク國體ノ本義ニ則リナガラ之
  ヲ見透シテ、眞ニ國民トシテアラネバナラ
  ナイ姿ヲ自ラ體得スルコトヲ根本ニ必要ト
  存ズルノデアリマス、是ハ要スルニ絕エズ申
  述ベテ居リマスル、又言ハレテ居リマスル
  師道ノ昂揚ト云フ一語ニ盡クル問題デアリマ
  シテ、具體的ニハ種々ノモノガアリマセ
  ウガ、根本ノ方針ハココヘ決ルノデアリマ
  ス、之ニ依リマシテ〓育ノ實サヘ擧ガレバ、
  眞ニ國體ノ本義ニ徹シ、皇國ノ使命ヲ自覺ス
  ルコトサヘ出來レバ、思想戰ニ對シテノ防
  戰ガ十分ニ出來得ルト思フノデアリマス、
  其ノ點ニ付キマシテ最近赤ノ運動ノ動向ニ
  付テノ御話ガゴザイマシタガ、國民一般ノ
  問題ニ付テハ此處デ申述ベルコトハ出來マ
  セヌガ、學生ノ動向ニ付キマシテハ最近數年
  ノ經過ヲ見マスルト、一時何カ又增加シテ
  來ルヤウナ傾向ガアツタカニ見エマシタケ
  レドモ、昨年、言換ヘレバ殊ニ大東亞戰爭
  勃發以來頓ニ其ノ傾向ガ少クナリマシテ、
  本年度アタリ幾分ノ檢擧ヲ見タモノモアル
  ヤウデアリマスケレドモ、是ハ極メテ少數
  ニ相成ツテ居ルコトハ、洵ニ喜ブベキコト
  ト思ツテ居ルノデアリマス、併シナガラ一
  面ニ於キマシテ「コミンテルン」ノ指導ニ
  基イタ或ル合法的ナ動キガ、全然社會一般
  ニナイノデモアリマセヌノデ、學校〓育ナ
  ドニ於キマシテモ、此ノ點ハ殊ニ細心ノ注
  意ヲ拂ヒマシテ、思想動向其ノ他ニ付テハ
  十分注意シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
  又戰時下ニ於キマシテ色々社會情勢ガ變化
  致シマスニ付キマシテハ、從來カラノ考ヘ
  ヲマダ能ク轉ズルコトガ出來ナイ者ガ、或
  ハ不平ヲ言ヒ、或ハ事柄ノ認識ヲ誤ルコト
  ガアリマシテ、動モスレバソレニ依ツテ又
  惡思想ガ釀サレ得ル可能性ハ、十分考ヘテ
  行カナケレバナラヌ點ガアリマシテ、政府
  ト致シマシテモ宜シク其ノ點ハ考究シナガ
  ラヤツテ居ル積リデアリマスケレドモ、マ
  ダ或ハ部分々々ヲ見マスト、十分デナイ點
  ガアルカトモ思ハレルノデアリマス、此ノ
  點ハ殊ニ御話ニアリマシタヤウナ家庭〓育ト學
  校〓育ト云フコトヲ特ニ密接ナル關係ニ於
  テ取扱フベキモノデアルト云フ御話、全ク
  同感デゴザイマシテ、文部省ト致シマシテモ
  家庭〓育ノ振興ト云フコトニ付テハ今重要
  ナルモノト認メマシテ、力ヲ注イデ居ルノ
  デアリマス、殊ニ學制改革ヲ行ヒマシテ學
  校〓育ヲ愈〓充實シヨウト云フ際ニ於キマシ
  テハ、從來〓育ト云フモノハ學校ニ於テノ
  ミヤレバ宜シイト云フヤウナ觀念ガ一部ニ
  アリマシタノヲ能ク徹底セシメマシテ、〓
  育ト云フコトハ學校ニ於テ勿論其ノ根幹ヲ
  成スモノデハアリマスケレドモ、家庭ニ於
  テモ、社會ニ於テモ〓育ト云フモノガ完成
  スルノデアルト云フ所以ヲ、能ク國民一般
  ニ滲透セシメマシテ〓育ノ完キヲ期シタイ
  ト存ジテ居ルノデアリマス、又現下ノ時局
  ニ於テ國民ノ敵愾心ガ一般ニ不足シテ居ル
  ト云フヤウニ見エル點ガアルノデハナカラ
  ウカト云フ御話デゴザイマシタガ、見方ニ
  依ツテハサウ云フヤウニ考ヘラレル事態モ
  アラウカト思ハレルノデアリマス、併シ是
  ハ從來ノ我國ノ行ヒマシタ戰爭ト、今次ノ
  戰爭トニ於ケル性質ノ相違ナドカラ來ル面
  モアラウカト思フノデアリマス、併シ旣ニ
  畏クモ大詔ヲ拜シテ居リマスル今日、大詔
  ヲ奉體スルコトニ於テ如何ナル意義ヲ今次
  ノ大戰爭ガ持ツカト云フコトハ、誰シモ認識
  シテ居ル所デアリマセウシ、又其ノ事態ヲ
  ハツキリ認識スルコトニ於キマシテハ、敵
  愾心ガ唯所謂外形ニ溢レナクトモ眞實ニ働
  キノ上ニ溢レルヤウナコトニ相成ルカト考
  ヘテ居ルノデアリマス、左樣ナ事柄ニ付キ
  マシテモ、殊ニ國家ノ將來ヲ擔フ靑少年學
  徒ヲ〓育スル〓育者自身ガ、眞ノ〓育者ト
  シテノ立場ヲ獲得スルコトガ是非トモ必要
  ナノデアリマシテ、若シ〓育者ニシテ眞ニ
  〓育者ノ立場ニ立タナイデ、所謂職業トシテ
  〓育ヲヤツテ居ルト云フヤウナコトニ相成
  リマシテハ、凡ユルモノノ根本ガ確立シナ
  イコトニ相成ルト思フノデアリマス、其ノ
  點ニ付キマシテハ從來トテモ考慮ハシテ居
  リマスガ、今後トモ十分ニ考慮致シマシテ、
  學校〓育ト云フモノノ立場、或ハモツト廣
  ク申シマスナラバ、先ニ申上ゲマシタ師道
  ノ〓揚ト云フコトニ向ツテ力ヲ致シタイト
  思ツテ居ルノデアリマス、又其ノヤウナ意
  味カラ申シマシテ國民一般ニ於ケル思想ノ
  動向ガ、靑少年學徒ニ向ツテ影響スル所ガ
  非常ニ大ナルモノガアルノデアリマシテ、
  其ノ點ハ十分ニ注意シナケレバナラヌコト
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、併シ最近ニ於キ
  マシテ、殊ニ大東亞戰爭勃發以來學生ノ士氣
  ガ昂揚シ、又思想ハ堅實トナツテ參リマシ
  タ、又風〓ガ刷新サレテ參リマシタコトハ著
  シク眼ニ着クノデアリマシテ、中ニハ少數ノ
  不心得ノ者ガアルコトハ否ミ難イ事實デアリ
  マスケレドモ、併シ殆ド大部分ノモノ、全部ト
  云ツテモ宜イ程ノ大多數ノモノガ、洵ニ戰
  時下ニ相應シキ學生トシテノ自覺ヲ感受シ
  ツツアル事柄ハ、洵ニ喜バシイ事柄デアリ
  マス、是ハ一面ニ於キマシテハ學校ニ於テハ
  訓練體制ガ漸次整備サレタ所以モアリマセ
  ウシ、又一面ニ於キマシテハ勤勞奉仕ト云
  フ事柄ガ如何ニ國家的ナ意義ヲ持ツモノデ
  アルカト云フコトヲ能ク自覺シタト云フヤ
  ウナ點モアラウカト思ヒマス、又一面ニ於
  テハ、殊ニ靑年學徒ニアリマシテハ戰場ニ
  アル自分ノ同輦或ハ同年配ノ者等ノ働イテ
  居ル其ノ姿ニ思ヒヲ馳セマシテ、自分自ラヲ
  鍛鍊シテ居ル點モ非常ニ多イカト思フノデ
  アリマス、併シナガラ〓育ノ立場ト致シマ
  シテ、之ヲ以テ滿足スベキモノデハナイノ
  デアリマシテ、愈〓其ノ方向ヲ助長シテ眞ニ
  戰時下〓育ノ實ノ擧ルヤウニ、凡ユル方面
  カラノ施策ヲ致シタイト云フコトヲ念願ト
  シテ居ル次第デアリマス
  次ニ他ノ問題トシテ在外邦人ノ子弟ヲ〓
  育シテ居リマスル〓員ニ付キマシテハ、從
  來ハ內地ノ〓員ト全ク別個ニ取扱フヤウナ
  傾キモナカツタデハナイト思ヒマスノデ、
  將來ハ、例ヘバ國民學校ニ致シマスト、內
  地ノ國民學校ノ〓員ト十分ニ交流致サセマ
  シテ、外地ニ於テ働イタ者ノ方ハ、寧ロ或
  ル點ニ於テ優遇ヲスルコトノ出來ルヤウナ
  方途ヲ講ジテ、交流ノ實ヲ擧ゲタイト云フ
  ヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、又中等〓
  育ハ現地デヤルト云フコトニ相成リマスル
  カ、內地デヤル方ガ宜イコトニナルカハ、
  將來ニ付テハマダ是ハ決定シ難イ問題ガア
  リマスルガ、少クトモ當分差當リノ內ハ中
  等〓育ハ內地ニ於テ施スベキモノト云フ方
  針ヲ政府ノ方デ立テテ居リマスノデ、ソレ
  ニ向ツテ十分ナル施設モ考ヘナケレバナリ
  マセズ、又方策モ考へ、旣ニ其ノ趣意ノ出來
  上ツテ居ル所ノモノニ向ヒマシテハ十分
  ニ從來ノ經驗ナドモ參照致シマシテ、補導
  シテ行キタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=3

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• 004・藤野惠

  ○藤野政府委員　只今在外邦人ノ〓育ニ從
  事致シマスル者ヲ、內地〓員同樣ニ優遇ス
  ルノ意ガアルカト云フ御尋ネニ對シテ、大
  臣カラ全般的ニ御答ヘガゴザイマシタガ、
  一、二私カラ事務的ナ部分ニ付テ御答ヘヲ申
  上ゲマス、從來在外邦人ノ〓育ニ從事致シ
  マスル者ト、內地ニ於ケル〓職員トノ間ニ、
  伊吹委員ノ御承知ノヤウニドウモ待遇上均
  衡ヲ得ザルモノガアリマシテ、ソレデ關係
  省トモ色々協議ヲ致シマシテ、今期議會ニ
  於キマシテ其ノ一部ガ恩給法ノ改正トナツ
  テ提案ヲ致シテアリマスノデ、ソレハ內地
  ニ居リマシタ〓育者ガ外國-殊ニ滿洲デ
  ゴザイマスガ、外國ニ招聘サレ、若シクハ
  外國ニ於ケル〓育ニ從事致シマスル、場合、
  內地ニ於ケル〓職員トシテノ恩給ニ關シマ
  スル在職年數ハ之ヲ通算スルト云フヤウナ
  コトニ致シマシテ、是マデアリマシタ待遇
  上ノ遺憾ナ點ヲ是正致シタイ、斯ウ考ヘテ
  居リマス、何レ御協贊ヲ得ルヤウナコトニ
  相成ルト思イマス
  又第二ニ各種ノ〓員ノ優遇ニ關シマスル
  事項ハ、外國及ビ外地ニ於キマシテハ只今
  折角其ノ〓員ノ爲メノ福社增進ヲ目的ト致
  シマスル團體結成ヲ急イデ居リマス、是モ
  關係省ト連絡ヲ取ツテ逐次團體ノ設立ヲ見
  ルト云フ運ビニ相成ルト考ヘテ居リマス、
  此ノ點付加ヘテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=4

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• 005・伊吹元五郎

  ○伊吹委員　今御說明デ能ク分リマシタ
  ガ、例ヲ申上ゲマシタ長崎ノ如キ、揚子江
  流域ノ各都市ニ居ル在留邦人ノ子弟ノ中等
  學校ニ入ル者ハ-例へバ長崎ノ商業學校
  トカ、或ハ中等學校ニ來テ居ル者ハ、極ク
  上流ノ漢口、九江カラ、ズツトアノ沿線ヲ
  傳ツテ南京、上海ニ至ルマデノ子弟ガヤツ
  テ來テ居ルノデアリマス、是ガ原籍地ヲ見
  マスルト、先程申シマシタヤウニ北海道カ
  ラ九州ノ南ノ涯マデノ全國ニ亙ツタ人ノ子
  弟デアリマス、ソレデ、アソコデ東亞寄宿
  寮ト云フモノヲ造ツテ置キマシテ、ソコノ
  中ニ入レテ居リマスガ、中々相當ナモノヲ
  造ツテ便宜ヲ與ヘテヤツテ居ル、又丁度距
  離カラ申シマシテモ、長崎ガ一番近イモノ
  デアリマスカラ、サウ云フ風デヤツテ來テ
  居ルノデアリマスガ、斯ウ云フ寄宿寮ト云
  フヤウナモノハ、將來ノ爲ニモ補助デモヤ
  ルト云フ御考ヘハナイカト云フコトヲ伺ツ
  タノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=5

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• 006・藤野惠

  ○藤野政府委員　御話ノ實情ハ私モ稍〓承知
  ヲ致シテ居リマス、先年長崎縣ノ施設ニ付
  キマシテハ、帝國〓育會等ニ於キマシテ、
  幾分ノ御助成ヲ申上ゲタコトモアツタカト
  思ヒマス、仰セノ通リニ、確カニ地理的關
  係カラ殆ド全國ニ跨リマス在外邦人子弟ガ
  長崎等ニ蝟集スルト云フ事實モゴザイマセウ
  ト思ヒマス、是等ニ付キマシテハ、一般在
  外邦人ノ子弟〓育ニ對シマスル團體等モ、
  今有力ナモノガ結成サレツツゴザイマス、
  政府トシテハサウ云フ團體トモ一ツ連繫致
  シマシテ、今後御示シノヤウナ趣旨ニ基イ
  テ、十分考究致シテ行キタイ、斯ウ考ヘテ
  居リマス

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• 007・松岡俊三

  ○松岡委員長　伊吹君、モウ宜シウゴザイ
  マスカ

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• 008・伊吹元五郎

  ○伊吹委員　宜シウゴザイマス

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• 009・松岡俊三

  ○松岡委員長　星一君

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• 010・星一

  ○星委員　私ハ〓育ノ根本方針ニ付テ伺ヒ
  タイト思ヒマス、時間ノ節約上要點ダケ申
  上ゲルコトニ致シマス
  日本ノ法律ハ、何ト云ウテモ自由主義、個
  人主義、資本主義カラ成立ツテ居リマス、
  隨テ日本ノ〓育モ其ノ影響ガアツタト思フ
  ノデアリマスガ、國ノ成立ガ各國トモ異ナツ
  テ居リマス、我ガ日本ハ家族制度デアリ
  マシテ、家族制度中デモ又獨特ナ家族制度
  ヲ持ツテ居ル國デアリマス、大東亞戰爭開
  始後ニ於テ、殊ニ私ハ〓育ノ根本方針ニ付
  テ質問ノ必要ヲ感ジタノデアリ、大「アジア」
  ハ、「アジア」ノ全部ハ家族制度カラ成立ツテ
  居リマス、遠ク「アフリカ」ノ「エジプト」、
  「エチオピア」ノ方マデ行ツテモ家族制度ノ
  國ト言ウテモ宜カラウト思ヒマス、日本ハ
  此ノ大東亞戰爭ノ目的ヲ完遂スルト云フコ
  トハ、大「アジア」ニ家族制度ニ還レト云フ
  コトヲ呼掛ケ、サウシテ此ノ大「アジア」ノ
  中ニ家族制度ヲ基礎ニシタル政體ヲ建設セ
  シメルト云フコトニナラナケレバナラナイ
  ト思フノデアリマスカラ、日本ノ〓育ハ
  大「アジア」ヲシテ家族制度ニ還ラシメル所
  ノ働キヲスル人ヲ造ルト云フコトガ、是ガ
  大切ナコトニナツテ來テ居ルト思フノデア
  リマスガ、今日マデノ日本ノ〓育ハ、日本
  人ヲ世界人トシテ〓育シテ來タカノヤウナ
  感ガアリマス、吾々ハ日本人デ又世界人デ
  アルコトハ申スマデモアリマセヌ、私ノ聽
  キタイコトハ、何處ニ重點ヲ置クカ、世界
  人タルコトヲ主トシテ日本人ヲ從トスル
  カ、日本人ヲ主トシテ世界人タルコトヲ從ト
  スルノカ、斯ウ云フコトニ付テ文部省ノ根
  本方針ニ付テ私ハ極ク簡單デ宜シウゴザイ
  マスカラ承リタイト思ヒマス

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• 011・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　只今御話ノゴザイマシタ
  〓育ノ根本ノ方針ハ、我ガ日本ニ於キマシ
  テハ日本獨自ノモノデナケレバナラナイコ
  トハ申スマデモナイコトデゴザイマス、國
  家ガ家族制度ト云フモノヲ基調トシテ居リ
  マスル以上、〓育自體ガ家族制度ト離レル
  ヤウナコトニ相成ツテハナラナイコトハ、
  是亦當然ノコトト思フノデアリマス、併シ
  從來〓育ノ制度ヲ外國ニ例ヲ取リマシテ勘
  案シマシタ結果トシテ、又外國ノ文化ヲ急
  速ニ輸入シナケレバナラナカツタト云フ事
  情ノ下ニ、我ガ國ノ〓育ノ本來ノ姿ガ外カ
  ラ見マシタ所、幾分蔽ハレテ居ツタヤウナ
  點ガナイデハナイト思フノデアリマス、併
  シナガラ從來ノ〓育ガ悉ク誤ツテ居ツタト
  云フヤウナコトハ、申スベキモノデハ決シ
  テナイノデアリマシテ、現時我ガ國ノ國力
  ガ充足サレ、現ニ戰ニ勝チツツアリマスル
  ノハ、從來ヤツテ來タ〓育ノ結果ナノデア
  リマスカラ、唯從來ノ〓育ガ間違ツテ居ツ
  タ間違ツテ居ツタト云フコトハ決シテ申
  スベキモノデハナイデアリマス、併シナガ
  ラ從來ノ〓育ニ於テ尙ホ我ガ國ノ〓育トシ
  テ徹底シナケレバナラナカツタ點ニ足ラナ
  カツタ點ノアルコトハ否ミ難イコトデアリ
  マスカラ、是ハ又十分ニ此ノ機會ニ於テ徹
  底シテ、眞ノ我ガ國獨自ノ〓育體制ヲ樹立
  シナケレバナラヌコトハ當然ノ事柄ト思フ
  ノデアリマス、ソレニ付キマシテ我ガ日本
  ニ於ケル〓育ガ日本人ヲ育テ上ゲル〓育デ
  アルベキハ當然ノ事柄デアリマス、ソレニ
  付テ只今日本人ハ一面日本人トシテアリナ
  ガラ、一面世界人デアルト仰セラレマシタ
  コトハ全ク其ノ通リデアリマスルガ、ソレ
  ハ日本人ト云フモノニ日本人ト云フ部分ガ
  アリ、世界人ト云フ部分ガアルト云フノデ
  ハナク、一人ノ日本人ガ日本人デアリ世界
  人デアルト云フコトニ外ナラナイノデアリ
  マスカラ、〓育ヲ致シマス場合ニ、日本人
  トシテノ方ニ重點ヲ置クトカ、世界人トシ
  テノ方ニ重點ヲ置クトカ云フコトデハ、日
  本ノ〓育ニハナラナイト思フノデアリマス、
  兩者一體トシテ、日本人トシテ〓育サレタ
  者ガ軈テ偉大ナル界世人デアル、斯ウ云フ
  建前ニ於テ日本人ノ〓育ヲスルノデアリマ
  ス、併シ若シソレヲ逆ニ世界人トシテノ〓
  育サヘスレバ日本人ニナレルカト云フト、
  決シテソレハナリ得ナイ、デアルガ故ニ日
  本人トシテノ〓育ヲ施スコトニ於テ自ラ偉
  大ナル世界人タレルヤウナ〓育ヲ施スト云
  フコトヲ根本ノ方針トスベキデアルト考ヘ
  テ居ルノデアリマス

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• 012・星一

  ○星委員　能ク分リマシタ、其ノヤウナ〓
  育ヲスル上ニハ、ドウシテモ家族制度ニ基礎
  ヲ置クト云フコトガ、私ハ必要ナコトダラ
  ウト思フノデアリマス、若シ日本ノ〓育ガ
  家族制度ニ重キヲ置カナイコトニナツタナ
  ラバ、ソレハ日本ノ〓育ニハナラナイコトニ
  ナラウト思フノデアリマス、ソコデ本當ノ
  日本人ニシ、其ノ日本人ガ世界人デアル、
  殊ニ現在ニ於テハ家族制度ノ國タル大「ア
  ジア」ノ指導者ニナルト云フコトガ、一番重
  大ナコトダラウト思フノデアリマス、今日
  日本カラ澤山ノ官吏ガ南方ニ行ツテ居リマ
  スケレドモ、是等ノ人ニモツト深ク家族制
  度ヲ基礎ニシタ〓育ヲ行ツテ居ツタナラバ
  大キナ功績ヲ擧ゲテ吳レルノデハナイカ
  ト云フ感ジヲシテ居リマス、ソコデ只今文
  部大臣ノ御話ノヤウニアルナラバ、玆ニ專
  門〓育ニ就イテ伺ヒタイノデアリマス、過
  去ノ專門〓育ヲ見マスルト、ドウシテモ家
  族制度ニ基礎ヲ置カレタヤウニハ私ハ感ジ
  ラレナイノデアリマス、例ヘバ專門學校ノ
  入學試驗ニ關シテデアリマス、專門學校ノ
  入學者ニハ資格ガアリマス、其ノ資格ノモ
  ノガ入學ヲ希望シテ來タ時ニ、ソレニ競爭
  試驗ヲシテ、成績ノ良イ者ヲ學校ニ入學セ
  シムルコトニナツテ居リマシテ、其ノ時ニ
  家族ト其ノ入學者トノ關係ヲ考慮ノ中ニ少
  シモ置イテ居ラレナイヤウニ存ゼラレマス、
  日本ノ〓育ガ此ノ美シイ家族制度ヲ永久ニ
  維持スル爲ノ〓育デアルナラバ、入學者ト
  家族トノ關係ガ考慮ニ入レラレナケレバナ
  ラナイト思ヒマス、ソレヲ徒ラニ自由競爭
  ノ試驗ヲシテ、成績ノ良イ者カラ採ツテ入
  レルト云フコト〓ミヤツテ居ラルルコトハ
  考フベキコトデアルト存ジマス、入學試驗
  ヲ全然無視シロト云フノヂヤアリマセヌ、
  競爭試驗ニ重キヲ置クヤウナコトデハ、家
  族制度ノ維持ガ出來ナクナツテ、外國ノヤ
  ウナ個人主義ニナツテ行ク虞ガアルト感ジ
  ラレマスカラ、家旅制度維持ノ上カラ專門
  學校ノ入學ニハ大イニ考慮ヲ要スルト思フ
  ノデアリマス、此ノ點ニ對シテ文部大臣ノ
  御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 013・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　專門學校〓育ト家族制度
  ト云フヤウナ關係カラ致シマシテ、入學
  試驗ノ方法等ニ御觸レニナツタ御話ガアリ
  マシタガ無論專門學校ト云フモノニ色々ノ
  種類ガゴザイマシテソレ〓〓ノ專門ガ分レ
  マン、隨ヒマシテ將來ノ職業人或ハ實務ニ
  從事スル點ヲ考ヘテ或ル學校ヲ選ンデ來ル
  ト云フヤウナ事柄ハ其ノ家々ノ事情ニモ依
  リマスコトデアリマス、併シ職業ヲ選ブト
  云フコトソレ自身ハ、無論家族制度ト云フ
  コトト重大ナ關係ノアルモノデハアリマス
  ケレドモ、或ル職業ヲ營ンデ居ル家ニ生レ
  タ者デアルガ故ニ、必ズ其ノ職業ヲ繼ガセ
  ナケレバナラナイト云フ根本理由ハナイカ
  ト思フノデアリマス、無論其ノ家ノ業ヲ繼
  ガシムルト云フコトハ重大ナ問題デアリマ
  スルガ故ニ、昔カラ家代々ノ仕事ヲ子々孫
  孫ニ遺ス爲ニハ、其ノ家ニ生レタ者ガ不適
  當デアルト云フ時ニハ、餘所カラ適材ヲ養
  子ニシテマデモ家業ヲ傳ヘサセルト云フコ
  トハ事例ニ乏シクナイノデアリマシテ、是
  ハ家ノ業ヲ傳ヘルト云フ意味ニ於テ最モ愼
  重ナ考慮ヲシタモノデアルト思ヒマス、デ
  アリマスカラ、例ヘバ醫者ノ息子ガ醫者ノ
  學校ニ入リタイト云フ場合ニ、十分ニ力ガ
  アレバ結構デアリマスガ、力ガナイケレド
  モ醫者ノ家ノ息子デアルカラ是非トモ之ヲ
  醫者ニシテヤラナケレバナラヌト云フ事柄ヲ
  〓育ノ方デ考フベキカト云フ事柄ハ、ソコ
  ニ大變考ヘナケレバナラヌ餘地ガアラウト
  思ヒマス、ソコデ例ヘバ入學試驗ノ問題デ、
  細カイコトデアリマスルカラ、是ハ其ノ
  學校ノ裁量等ニ依ツテモ十分餘地ノアリ得
  ル點モアリマスケレドモ、例ヘバ入學試驗
  ト云フモノハ何時デモ或ル標準ヲ決メテ選
  拔スルノデアリマスガ、其ノ選拔スル際ニ、
  是ハドチラヲ採用シタラ宜イカト云フヤウ
  ナ殆ド徑庭ノ付ケ難イモノニ對シテノ判斷
  ヲ入學ノ時ニ、例ヘバ校長ナリ或ハ試驗
  委員ガ困ルヤウナ場合ガ多々アリマス、其
  ノヤウナ際ニ先ヅドチラヲ選ンダラ宜イカ
  ト云フ時ニ、例ヘバ醫者ノ息子ト醫者ノ息
  子デナイ者ト同ジヤウナ條件デ居ルト云フ
  時ニ、醫者ノ息子ノ方ヲ先ヅ採擇シテヤル
  ト云フコトハ當然デアルト思ヒマスケレド
  モ、醫者ノ息子デアルケレドモ、非常ニ學
  力ガ足リヌト云フ者マデモ醫者ノ息子デア
  ルガ故ニ優先的ニソレヲ採用スルト云フコ
  トハ、入學試驗ト云フモノヲヤル點カラ考
  ヘマシテ、如何カト思ハレルノデアリマス、
  要スルニ入學試驗ハ入學試驗デアル限リ、
  又一般ニ入學スルコトヲ得ル資格ノアル者
  ニ對シテ施ス試驗デアリマスガ故ニ、極メ
  テ公正ヲ期セナケレバナラナイコトハ申ス
  マデモナイノデアリマス、公正ヲ期スルコ
  トヲ紊サナイ範圍ニ於キマシテ、或ル職
  業ヲ持ツテ居ル者ノ子弟ヲ其ノ職業ニ依然
  トシテ就カセルト云フ目的ノ爲ニソレニ優
  先ヲ與ヘルコトモ出來得ルヤウナ措置ガ認
  メラレル場合ニハ、或ハ其ノ措置ヲ講ジテ
  宜カラウカト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=13

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• 014・星一

  ○星委員　今ノ專門學校ノ入學者ハ文部省
  ガ與ヘタ資格者デアリマス、其ノ資格者カ
  ラ更ニ競爭試驗ヲ以テ選擇スルト云フコト
  ニナツテ居ルノデアリマスカラ、私ハ醫者
  ノ息子ナリ藥屋ノ息子ダカラソレガ成績ガ
  惡クテモト云フ考ヘヲ言フノデハアリマセ
  又、入學試驗ト云フモノハ極ク最近デハ少
  イ問題ヲ或ル所ハ二ツ、三ツ位ニシマシ
  テ、アト人物考査ト云フヤウナ極ク簡單ナ
  モノデ、澤山ナ人ヲ極ク短イ時間ニ試驗ス
  ルノデアリマスカラ、其ノ試驗ガ公平ナ確
  カナ試驗ト云フコトモ出來ナイヤウデアリマ
  ス、入學試驗ノ時ニ惡イ者モ、入ツテカラ
  良イ成績ヲ現ハシタト云フ例モアルノデア
  リマスガ、私ハ家族制度維持ノ爲ニハ、家庭
  ノ職業ニ重キヲ置クト云フコトニシテ考ヘ
  テ行クノガ當然ダト思フノデアリマス、サ
  モナケレバ、-日本ノ〓育モサウ出來テ
  居ナケレバ、是カラ大東亞へ出テ行ツテ日
  本ガ〓ヘテ行ク所ノ〓育ノ上ニモ大キナ影
  響ヲ與ヘルト思ヒマス、家族制度ガアツテ
  日本及「アジア」ノ秩序ガ維持サレルノデアリマ
  スカラ、其ノ秩序ヲ維持スル基礎タル家族制
  度ニ重キヲ置カレルヤウニ御願ヒシタイト
  思ヒマス
  〔委員長退席、仲井間委員長代理着席〕
  次ニ伺ヒタイコトハ、文部省ハ、必勝決戰
  ノ戰時體制ニ對スル〓育上ノ方針ト言ヒマ
  スカ、現今物心一如ト云フコトヲ言ハレテ居
  リマス、此ノ物心一如ヲ現實化スルニハド
  ウ云フヤウナ〓育デ行クガ一番捷徑カ、物
  心一如ノ現實化ニ對スル文部省ノ覺悟ト言
  ヒマスカ、方針ニ付テ御伺ヒシタイト思ヒ
  マス

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• 015・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　物心一如ノ境地ヲ體得ス
  ル所ノ目標トシテノ〓育ト云フコトハ、我
  ガ國ノ〓育ト致シマシテハ、或ル一面ノ見
  方ト致シマシテ、其ノヤウナ境地ヲ獲得サ
  セルヤウニ努メナケレバナラナイノデアリマ
  ス、併シ實ハ其ノ境地ハ中々容易ニ得ラレ
  ル境地デハナイノデアリマス、併シソレニ
  到達致シマス一ツノ段階ト致シマシテハ、
  從來考ヘラレテ居リマスル所謂學問ト云フコ
  トト實際ニ身體ヲ動カシテヤル行ト云フモノ、
  學ト行トハ全ク一體トナラナケレバナラヌ
  眞ノ學ニ非ズ、眞ノ行ニ非ズト云フコトヲ
  〓育ノ面ニ於テモ相當體得サセルコトガ出
  來ルト思フノデアリマス、其ノヤウナ意味
  ニ於キマシテ、學校〓育ハ皇國ノ道ニ則リ
  皇國民ノ鍊成ト云フコトガ目的デアルト云
  フ事柄ヲ今囘ノ學制改革デモ能ク明カニ致
  シタ次第デアリマシテ、唯所謂座學ト言ハ
  レテ居リマスル〓室內ニ於テ單ニ知識ヲ授
  受スルコトガ〓育デアルト云フ事柄ハ根本
  的ニ改メナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、デアリマスガ、一面ニ於キマシテ、唯
  行々ト云ツテ、駈ケツコヲヤラセレバ宜イ、
  體操ヲヤラセレバ宜イ、或ハ兵式訓練ヲヤ
  レバソレガ學問ダト云フヤウニ考ヘラレテ
  モ、是ハ又一方ニ偏シタ考ヘ方デアリマシ
  テ、產業ヲ營ンデ、座學トシテ〓室ニ於テ
  勉强シテ居ルコトモ行デアリマス、訓練ヲ
  受ケテ居ルコトモソレガ學問デアルト云フ
  趣旨ガ十分ニ徹スルヤウニ〓育ヲ導イテ行
  キタイト思ツテ居ルノデアリマス、今囘ノ
  例ヘバ師範學校〓育等ニ於キマシテハ專ラ
  其ノ方面ニ力ヲ致シタイト考ヘテ居ルヤウ
  ナ次第デゴザイマス

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• 016・星一

  ○星委員　能ク分リマシタ、最近文部省ガ專
  門〓育局ノ中ニ監理課ト云フモノヲ置カレ
  タノデアリマス、此ノ監理課ヲ置カレタ趣意
  ハドウ云フコトデアリマスカ、御伺ヒシタ
  イト思ヒマス

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• 017・菊池豐三郎

  ○菊池(豐)政府委員　今囘ノ行政簡素化ニ
  伴ヒマシテ、本省ノ機構ヲ各方面全面的ニ改
  メマシタノデ、從來カラ考ヘテ居リマシタ
  私立學校ノ方面ノ指導、監督、助成サウ云フ
  方面ノ行政ヲ强化スル必要ガアル、サウ云
  フ考ヘカラ課ヲ特設致シマシタ次第デアリ
  マス、大體サウ云フ趣意デアリマス

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• 018・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　只今ノ大臣ノ御答辯洵ニ
  共鳴ヲ覺エタノデアリマス、學ト行ヲ一體
  トスルト云フ御話ガアリマシタガ、モウ少シ
  之ヲ廣範圍ニ御考ヘニナツテ、一大改革ヲ
  サレタラドウカト思フノデゴザイマス、何
  ト言ヒマシテモ今マデノ〓育ハ座學偏重デ
  アリマシタ、其ノ結果、其ノ學ヲ修メテ社
  會ニ出タ人ガ、實際ニ經驗ガ乏シイシ)結
  局其ノ人ガ行政ニ携ハラウト或ハ經濟人ニ
  ナラウト、結局經驗ノ付クマデノ間ハ、マア俗
  ニ言フナラバ、理論ニ、「ペーパープランL
  ニ、或ハ抽象的ニ陷リマシテ、實際ノ仕事
  ガ出來ナイノデアリマス、隨テ從來ヤリ來
  ツタ人ノ例ヲ見習ツテ、詰リ部下ノ行ツテ
  來タ實際ノ業務ヲ聽キ取ツテ、サウシテ自
  分ガ立案シナケレバナラテイト云フヤウナ
  コトデアリマス、日本ノ軍隊ノ强イコトハ
  國柄ト云ヒ、其ノ精神力ト云ヒ、强イコ
  トハ當然デアリマスガ、〓育其ノモノガ日
  本ノ軍隊ヲシテ今日世界一ノ軍隊タラシメ
  テ居ルト思ヒマス、ソレハ科學〓育ト實際
  訓練、實際演習ト云フモノガ結付イテ居ルカ
  ラデアリマス、今後ノ〓育モ軍隊ニ於ケル
  ヤウニ、假ニ師範〓育ナラバ、今日ノ師範
  改革ニ依ツテ、師範學校ニ生徒ガ學ブ、ソ
  レガ小學校へ出ル、小學校へ出テ二年ナ
  リ三年ナリ小學校〓育ヲシテ、軍隊ノ大學
  ニ入ルヤウニ、其ノ小學校〓員ノ中カラ拔
  擢シテ高等師範ニ入レル、ソレヲ出タ者ガ
  更ニ師範大學ニ入ルト云フ風ニシテ、其ノ
  師範大學ヲ出タ者ガ文部行政ニ携ハルト云
  フコトニシタナラバ、文部行政ニ携ハツテ
  居ル人全體ガ〓員ヲヤツテ來タコトニナル、
  ソコニ本當ニ活キタ行政ガ行ハレルト思フ
  ノデスガ、學ト行トノ一體ニ對シテ積極的
  ニ今後ヤツテ行カレル方法ヲ御考ヘニナツ
  タラドウカ、是ハ今日日本ノ〓育ニ一番缺
  乏シテ居ル所デハナイカ、言換ヘルナラバ、
  一小學校ノ〓員ハ文部大臣ニナルコトガ
  出來ル、一農會ノ技術員ハ農林大臣ニナル
  コトガ出來ルト云フコト、實務ト〓育トヲ
  交互ニヤツテ行ク所ニ日本ノ軍隊ノ强サガ
  アルト思ヒマスガ、今後サウ云フ理念ノ下
  ニ學ト行ヲ一體ニスルト云フコトニ付テ積
  極的ニ御〓究サレテ、一大改革ヲサレル御
  考ヘハナイカト云フコトヲ御聽キシタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=18

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• 019・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　只今有益ナル御意見ヲ拜
  聽致シマシタ、從來ノ〓育ガ實際ニ卽セザ
  ル點ガ多々アリマシタコトハ甚ダ遺憾デア
  ルト思ツテ居ルノデアリマシテ、此ノ點ハ
  今囘ノ學制改革ニ於キマシテハ出來ルダケ
  改メマシテ、所謂實學ヲ體得サセルト云フ
  コトヲ基礎トシテ居ルノデアリマス、デア
  リマスガ故ニ、科學〓育ニ致シマシテモ、
  科學ト云フモノ自體ガ自己ノ日常ヲ離レタ
  空論ニナラナイヤウニ、又實際科學的ニ〓
  ヘラレタト云フコトハ、其ノ科學的ナルモ
  ノヲ働カシ、又自分自カラガ科學的ニ動ク
  コトガ出來ルト云フ所マデ持ツテ行キタイ
  ト云フ理念ノ下ニ今色々〓育ノ內容刷新等
  ヲ致シテ居ルノデアリマス、又〓育ノ系統
  ト致シマシテハ、其ノヤウナ意味カラ申シ
  マシテ、從來餘リ考ヘラレナカツタト思ハ
  レマスヤウナ、例ヘバ師範學校ニ〓究科ト
  云フヤウナ施設ヲ設ケマシテ、國民學校ノ
  〓員等ハ數年ノ內ニ一度ハ必ズ元ノ師範學
  校ヘ入ツテ更ニ磨キヲ掛ケルト云フヤウナ
  コトモ致サセマシテ、時代ニ遲レサセナイ
  ヤウニシヨウト云フ方策ヲ執ツテ居ルノデ
  アリマス、更ニ行政體系ニ付キマシテハ尙
  ホ考究中デアリマスケレドモ、〓育者ノ養
  成ト云フ此ノ學校體系ハ、他ノ學校體系ト
  ハ一應別個ノ體系ヲ整ヘマシテ、眞ニ〓育
  者ト云フモノハ斯クノ如クアルベキモノデア
  リ斯クノ如ク養成サレナケレバナラヌモノ
  デアルト云フ事柄ノ基準ダケハ十分ニ示シタ
  イト思ツテ居ルノデアリマス、其ノヤウナ
  モノニ向ヒマシテノ、例ヘバ入學ノ資格ト
  云フヤウナモノハ當然今囘ノ師範學校制度
  ノ刷新ニ依リマシテ、師範學校ノ卒業生ハ
  入學ノ資格ガ與ヘラレル、デアリマスカラ、
  無論師範學校ノ卒業生、國民學校ノ〓員ト
  ナルベキ總テノ者ガ上ノ方ニ向フベキモノ
  デアルト云フコトヲ示ス譯デモナイノデア
  リマスケレドモ、優秀ナ者ニ付キマシテハ、
  將來偉大ナル〓育者トシテ發展シ得ルノ途
  ヲソコニ開クコトニ是非トモ致シタイト考
  ヘテ居ルノデアリマス、唯、今事例ヲ申サ
  レマシタ通リ、小學校ノ一〓員カラデモ文
  部大臣ニナレルヤウナ仕組ミニシタラドウ
  カト云フ御話デアリマシタガ、ナニモ文部
  大臣ト云フノハ必ズシモ〓育者デナケレバ
  ナラヌト云フコトモナイ點モアリマセウケ
  レドモ、併シナガラ〓育者デアルコトノ經
  驗ヲ持ツタ者ガ又有力ナモノデアルト云フ點
  モアルカト思フノデアリマス、少クトモ學
  校ヲ出タ者ハ實際ニ働ケルト云フ者ニ是非
  トモシナケレバナラズ、又若シ假リニ從來ノ
  標準ニ比ベテ見マストドウモ學力ガ少シ劣
  ルト云フヤウニ見エテモ、一兩年ノ內ニハ
  ズツト伸ビルト云フ根本ノ潛勢力ヲ持ツタ
  ヤウナ〓育者ニシナケレバナラヌト云フヤ
  ウニ考ヘテ居ルノデアリマス、併シナガラ
  一面ニ於キマシテ殊ニ何カノ方策ヲ講ジナ
  ケレバナラヌト思フコトハ、從來ハ學校ヲ
  出サヘスレバ〓育ト云フモノハシナクテモ
  宜イト云フ考ヘデ社會ガ學校ノ卒業者ヲ引
  受ケテ居ルノデアリマス、併シナガラ學校
  〓育ト云フモノハドレダケヤツテモ未完成
  ナモノデアル、社會デ引受ケル場合ニハ、
  社會ニ於テソレ〓〓又適當ナ方法ニ依ツテ
  其ノ學力、其ノ實力ヲ伸バス爲ニ〓育シナ
  ケレバナラヌト云フコトヲ考ヘテ貰ヒタイ
  ノデアリマス、例ヘバ會社ナドニ使ヒマス場
  合デモ、唯學校ヲ出タノダカラ是レ位出來
  ナケレバ駄目デハナイカト云フヤウニ言ハ
  ナイデ、出來ルヤウニ〓育ヲ或ル程度仕込
  マナケレバイケナイト思フ、例ヘバ會社ノ
  一番上ノ人ガ、新シク入ツテ來タ學校卒業
  者ヲ、唯自分ノ思フ通リニ動カナイカラ是
  ハ力ガナイノダト云フヤウナ批判ヲ下スベ
  キモノデハナイ、若シ足リナイト思へバリ
  レヲ十分〓育スルト云フコトガ、眞ニ學校
  デ勉强シタモノヲ伸バシテ行ク所以デモア
  ラウカト思フノデアリマス、是ハ少シ餘談
  ニナルヤウデアリマスケレドモ、「ドイツ」
  ナドニ於キマシテハ、有數ナ工業會社ニ入
  リマスト、其ノ會社ニ入ツタト云フコトニ
  依ツテ直グ勉强ガ出來ル立派ナ〓究室モア
  リ、才能ノアル者ハドン〓〓勉强ガ出來ル
  施設ガアル、斯ウ云フ所ニ「ドイツ」ナドノ
  工業ノ發達スル大キナ所以ガアルト思フノ
  デアリマス、日本ニ於キマシテハ、此ノ頃
  ハ幾ラカサウ云フ方面ガアリマスケレドモ、
  從來多クノ場合ニ於キマシテ會社ニ於テ〓
  育シヨウト云フヤウナ方法ガ非常ニ缺ケテ
  居ツタト思フノデアリマス、其ノヤウナ點
  ト相俟チマスレバ實際役ニ立ツ人間ヲドン
  ドシ學校デモ送出ス、又社會ニ於テモソレ
  ヲ十分ニ利用スル途ガ開ケ、ソレニ依ツテ
  社會人トシテ活躍スレバ其ノ天分ヲ發揮ス
  ルコトモ出來ルヤウニ相成ラウカトモ思フ
  ノデアリマシテ、其ノ邊ニ鑑ミマシテ十分
  方途ヲ講ジタイト考ヘテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス

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• 020・星一

  ○星委員　文部次官ノ監理課設置ノコトニ
  關聯シテ御尋ネ致シマス、文部省ノ中ニ視
  學員ト云フモノガ置カレテアリマスガ、若
  シ此ノ監理課ヲ强化スルコトガ出來タナラ
  バ視學員ト云フモノハナクテモ宜イト云フ
  コトニナルノデハナイカトモ考ヘラレマス、
  一體文部省ノ中ニ監理課ト云フヤウナ名前
  ノ付イタモノヲ造ルト云フコトハ、文部省ニ
  トリテ是ガ果シテ適當ナ名前カドウカト私
  ハ考ヘルノデアリマス、マルデ商工省ノ中
  ニアルヤウナ名前ヲ付ケタヤウナモノデア
  リマスガ、名ハ其ノ實ヲ示スト言ハレ中々
  大切デアリマス、私ハ文部省ニ大切ナ人ガ今
  マデ少カツタト思ヒマス、澤山ナ私立專門學
  校ガアリ、又官立モ多イノデアリマスケレド
  干、ソシニ對スル指導者ト云フモノガ文部
  省ニハ足ラナカツタト思ヒマス、其ノ指導者
  ガ十分デアルナラバ視學員ガナクテモ宜イ
  ノデハナイカ、其ノ指導者ヲ置イテ行クナ
  ラバ、文部省ハ更ニ立派ナ〓育ヲ施スコト
  ガ出來ルト思ツテ居リマス、ソレ故ニ監理
  課ト云フヤウナ名前デハナシニ、指導トカ
  他ノ名前ヲ付ケルノガ是ハ當然デナカツタ
  カト思フノデアリマス、其ノ名前ニ依ツテ下
  ニ働イテ居ル官吏ガ誤解ヲスルヤウナコ
  トガナイトモ限ラヌ、斯ウ思フノデアリ
  マス、デアリマスカラ私ハ文部省ニハド
  ウシテモ指導員ヲ立派ナ學者ナリ經驗者ヲ
  澤山入レテ、サウシテ指導シテ行クト云フ
  ヤウニシテ行クナラバ、視學員ハナクトモ
  行ケルノデハナイカト思フノデアリマスガ、
  私ハ文部省ハ此ノ監理課ノ名稱ヲ改メテ、
  サウシテ之ヲウント强化シテ行クト云フヤ
  ウナ御意思ガアルカドウカ、ソレヲ伺ヒタ
  イノデアリマス

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• 021・菊池豐三郎

  ○菊池(豐)政府委員　監理課ノ名稱ニ付テ
  御批判ガゴザイマシタ、是ハ或ハモツト良イ
  名前ガアルカモ知レマセヌガ、文部省デモ
  色々〓究致シマシテ、一應斯ウ云フ名稱ニ
  致シタノデアリマス、趣意ハ只今アナタノ
  御述べ頂キマシタ指導、血督、助成ト云フ、
  サウ云フ行政ノ面ヲ强化スル、從來大事ナ
  私立學校ノ〓育問題ニ付テ文部省ノ御世話
  スル部面ガ割ニ少カツタ、又サウ云フ「スタ
  ツフ」モ少ウゴザイマシテ行屆カナカツタ憾
  ミガアリマス、是ヲ是非强化致シタイト云
  フ趣意デゴザイマス、ソコデソレヲナスガ
  爲ニハ行政ノ面カラ行キマシテモ、又指導
  ノ實際ノ專門的ナ面カラ行キマシテモ之ヲ
  相當强化シナケレバイケマセヌ、ソコデ私
  立學校ノ監督、助成ト申シマシテモ其ノ內
  容實數、種類ト云フヤウニ行政ノ場面ガ
  非常ニ廣イノデアリマス、種類モ中々複雜
  デアリマス、隨テ今囘差當リ考ヘテ居リマ
  スヤウナ行政ノ「スタツフ」デハマダ足リナ
  イ、行政ノ面ダケデモ足リマセヌ、況ヤ其
  ノ指導ヲ本當ニ親切ニサウシテ行屆イタ、
  搔イトコロニ手ガ屆クヤウナ指導ガ出來ル
  ヤウニナルマデニハ餘程專門的ナ知識、經
  驗ヲ集メマシテ、サウシテ其ノ實際的ナ方
  面ニ色々檢討シテ參ラナケレバナラヌト思
  フノデアリマス、サウ云フ點カラ申シマス
  ルト、只今御意見ガアリマシタケレドモ、
  今日實行シテ居リマスル視學員等ハ必要デ
  アルト思ヒマス、私ハマダ足リナイノデハ
  ナイカ、又種類ニ於テモ色々ナ面ニ付テマ
  ダ考ヘルベキ點ガアルノデハナイカト考ヘ
  テ居リマス、唯今後ノ運用ニ付キマシテハ、
  只今御所見ガゴザイマシタガ、監理課ト云フ
  ノデ何ダカ妙ナ感ジガスルヤウナ、サウ云
  フヤウナコトニハ行政ノ實際ニ於テハ十分
  注意ヲ拂ヒマシテ、聊モ行政ノ面ニ於テサ
  ウ云フ感ジヲ持タセルヤウナコトガナイヤ
  ウニ、實行上ニ於テハ細心ノ注意ヲ拂ヒタ
  イト思ツテ居リマス

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• 022・星一

  ○星委員　私ハ視學員ノ人ハ公職ニアル人
  モ、又私ノ職ニアル人モアリマス、視學員
  ノアルノハ醫學、齒科、藥學ノ三ツノ學校
  デアリマスガ、文部省ガ理想ノ〓育方針ニ
  進ミ得ルヤウ課、監理課カ、ソレデアルナ
  ラバ其レヲ速カニ改良强化シテ貰ヒタイト
  希望スルノデアリマス、現在ノ視學員ヲ官
  吏トシテ採用シ其ノ任ニ當ラセルコトモ宜
  カラウト思ヒマス、希望ヲ申上ゲテ置キマ
  ス
  次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、是ハ私年來ノ
  考ヘデアリマス、私ハ明治三十九年ノ議會
  ニ於テモ質問シタコトデゴザイマシタケレ
  ドモ、三十九年ノ議會ニ於ケル質問ノ時ニ
  ハ、中學校卒業後一年間希望ノ職務ニ從事
  セシメル、例ヘバ丁稚奉公ノヤウナコトヲ
  サシテ、其ノ後ニ學校ニ入レシメルト云フ
  コトデアリマシタガ、私ハ今日ハソレヲ更
  ヘハ、軍務規則ノヤウナモノヲ作リ、中學
  卒業後全學生ニ一時軍隊〓育ヲ受ケシメル
  コトニシ、其ノ服役中ニ自分ノ希望ノ所ニ
  見學ニ行ク機會ヲ與ヘルヤウニスルコトガ、
  私ハ一番適當ナ〓育デナイカト考ヘテ居ル
  ノデアリマス、若シサウ云フ〓育ヲ施シマ
  シテ、其ノ一年間ニサウ云フヤウナ見學ノ
  機會ヲ與ヘマスト、ソレニ依ツテ興味ヲ持
  ツテ、實地ニ向ツテ自分ノ希望ヲ達シヨウト
  シテ學校ニ入ラヌ者モ出來テ來ルコトニナ
  ラウト思ヒマス、健康ノ上カラモ總テノ上
  カラモ私ハ宜イコトト信ジテ居リマス、ソ
  レデアリマスカラ文部省ハ中學校卒業後ハ
  全部兵役ト云フ譯ニハ今行カンカモ知レマ
  セヌガ、陸軍海軍ト一〓ニナツテ法律ヲ直
  シテ、サウシテ軍隊ノ良イ〓育ヲ受ケシメ
  ツツ、其ノ間ニ自分ノ希望ノ所ヲ見學セシ
  メルト云フコトヲ一ツノ課目トスルヤウニ
  シ、ソレヲ終ヘナイ者ハ上ノ學校ニ絕對入
  學セシメナイト云フヤウナコトニシタラバ
  宜カラウト私ハ信ジテ居リマス、此ノ點ニ
  付テ文部大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 023・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　中等學校ノ卒業生ヲ卒業
  後直チニ兵役ニ服セシムルト云フコトハ、
  是ハ出來ルカ出來ナイカ餘程考ヘテ見ナケ
  レバ分リマセヌガ、併シ軍事的〓育、〓練
  ヲ施スト云フコトニ於テ、一面ニハ軍事的
  ナ意義モ持チマセウガ、一面ニ於テ眞ニ國
  民〓育ト云フモノヲ完成サセルト云フコト
  ニ付キマシテハ異論ノナイ所デアリマス、
  ソレハ軍〓一致ト云フ點ニ於キマシテ何等
  カ是マデヨリモモツト能ク徹底シ、又能ク
  兩者ガ融和スルヤウニ工作ヲシナケレバナラ
  ヌトハ考ヘテ居リマス、今ノ所中等學校
  ヲ卒業シテ後一年間兵舍生活ヲシタ者デナ
  ケレバ上ノ學校ニ入ラセナイヤウニシヨウト
  云フ所マデハ考ヘテ居リマセヌガ、併シ軍
  事ト文〓トヲ能ク合體セシメテ國民ノ鍊成
  ヲ全クセシメヨウト云フ考ヘハ十分持ツテ
  居リマス、今後考究致シタイト思ツテ居リ
  マス

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• 024・星一

  ○星委員　次ニ伺ヒタイコトハ〓員ノ停年
  制デアリマス、今問題ニナツテ居ル國民學
  校其ノ他ニモ義務停年ガアルノデゴザイマ
  スガ、大學校ニ於ケル停年ナドモ此ノ際延
  長ヲスル御考ヘガアリマセウカ、之ヲ伺ヒ
  タイト思イマス

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• 025・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　只今ノ所學校職員ニ對シ
  テノ停年制ト云フ制度ハ實ハナイノデアリ
  やっ、或ハ中等學校、國民學校等ニ於キマ
  シテハ、地方ノ事情ニ卽シテ何等カ内規的ニ
  一定ノ標準ヲ附ケテ居ル所ハ是ハアラウカト
  思ヒマス、併シ十年前ニナリマスカ、十五
  年前ニナリマスカ知リマセヌガ、餘程以前
  ニハ國民學校ノ先生ハ少シ年輩ニナレバ辭
  メナケレバナラヌト云フヤウナ狀態モ來テ
  居ツタト思ヒマス、併シ最近ニナリマシテ
  ハ此ノヤウナ狀態ハ漸次又逆ノ方向ヲ取ツテ
  居リマシテ、今デハ相當古イ人モ依然トシ
  テ國民學校ノ先生或ハ校長トシテ働イテ貫
  ツテ居ルヤウナ狀態ニナツテ來テ居ルト思
  フノデアリマス、大學ノ停年制ニ至リマシ
  テハ、是ハ全ク大學自體ノ內規デアリマシ
  テ、ソレニ依ツテ一應後進ノ爲ニ途ヲ開ク
  ト云フコトヲ考ヘテノ問題デアツタノデア
  リマス、併シ現時ノ如ク途ヲ開カントシテ
  モ後進ガ居ナイト云フヤウナコトガ若シ假
  ニアリマス場合ニ、唯停年制ト云フコトニ
  固執シテ是非トモ辭メナケレバナラヌト云
  フ事柄ハ當然考ヘラレナイト思ヒマスカラ、
  其ノ邊ノ問題ニ付キマシテハマダ考究ノ餘
  地ガ十分ニアルト考ヘテ居リマス

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• 026・星一

  ○星委員　父兄ガ朝ニ、晝ニ、晩ニ苦勞シ
  テ居ルコトハ子孫ノ〓育デアリマス、サウ
  シテ各人ガ其ノ〓育ニ收入ノ大部分ヲ捧ゲ
  テ居ルノデアリマスカラ、國家モ同ジヤウ
  ニ〓育ニ大キナ資金ヲ支出シナケレバナリ
  マセヌガ、戰爭中ハ別トシテ、從來其ノヤ
  ウニ行ツテ居ナイノデアリマス、何ト云フ
  テモ一番大切ナコトハ〓育デアリマス、ソレ
  ニハ先生ヲ優遇スルト云フコトガ一番大切デ
  アラウト思ヒマス、〓員ニハウント大キナ月
  給ヲ與ヘテ宜イト思ツテ居リマス、之ニハ誰
  モ反對スル者ガナイノデアリマス、反對シナ
  イノニ、文部省ガ思切ツテ大キナ金ヲ與ヘル
  コトヲ是マデ議會ニモ提出シテ居ラヌヤウデ
  アリマスガ、是ノコトハ文部省ニウント奮發
  シテ貰ヒタイト思ヒマス、國民學校ノ〓員ナ
  ドモ平均月百圓位ヤツタツテソレニ反對ス
  ル者ハ私ハ一人モナイト思ヒマス、更ニ國民
  學校ノ〓員デ眞劍ニ長ク其ノ職ニ居リシ
  者ニ位階勳等ヲ與ヘル途ヲ講ゼラレルコト
  モ必要デハナイカト思フノデアリマス、殊
  ニ大東亞戰爭後ハ一層〓育、殊ニ國民〓育
  ニ重點ヲ置イテ、其ノ方ニハ思切ツテ費用
  ヲ出シテ進ムベキデハナイカト考ヘテ居リ
  マスカラ、文部大臣ニハ此ノ際思切ツテ月
  給ヲ上ゲテ、位階動等モ他ヨリハ良イモノ
  ヲ多クヤツテ貰ヒタイト思フノデアリマス、
  斯樣ナ待遇ヲシテ朝早クカラ夜モ遲クマデ
  心身ヲ捧ゲテ子弟ノ〓育ニ犧牲ニナツテ行
  クト云フヤウナ考ヘヲ〓員ノ人ニ持ツテ貰
  ヘルヤウニ進メテ貰ヒタイト思ツテ居リマ
  ス、ソレニ對スル文部大臣ノ御所見ヲ伺ヒ
  タイト思ヒマス

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• 027・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　只今ノ御話全ク御同感デ
  ゴザイマシテ、何トカシテ學校ノ〓育ニ携
  ハツテ居ル人ノ優遇ノ途ヲ開キタイト云フ
  事柄ハ多年ノ念願トシテ今努力シテ居ルノ
  デアリマス、無論〓育ト云フヤウナ立場カ
  ラ考ヘマスレバ〓員ヲドノ位優遇シヨウト
  誰モ不贊成ハナイト、是ハ〓育ノ面面ラ考
  ヘマス、併シナガラ吾々ノ理想トシテ居ル
  所ガ直グ實現スルト云フ譯ニハ參ラチイ事
  情ガ外ニ色々アルノデアリマス、併シ其ノ
  間ニ處シテ出來ルダケノコトヲ致シタイト
  考ヘテ居リマス、例ヘバ國民學校ノ〓員ノ
  平均額ト云フモノハ大體百圓少シ上ノ所ヲ
  狙ツテ居ルノデアリマス、ソレハ今御話ノ
  通リデアリマス、又精神的ノ問題ニ致シマ
  シテモ目下種々考慮シ方途ヲ〓究中デアリ
  マシテ、何カ出來ルダケノコトヲ一ツ實現
  致サセタイト考ヘテ居ルノデアリマス

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• 028・星一

  ○星委員　最後ニ伺ヒタイト思ヒマスガ、
  最近文部省ノ各方面ニ對スル施設ノ進展ニ
  對シテ敬意ヲ表シテ居リマス、殊ニ橋田文
  部大臣ガ科學スル心ヲ以テ總テヤツテ來タ
  コトニ對シテハ敬意ヲ表シテ居リマスガ、
  一ツ玆ニ希望ヲ申シテ置キタイト思ヒマス、
  今日官廳ニ對シテ、事務アツテ政治ナシト
  云フ批評ノ聲ガ高イノデアリマス、併シ外
  ノ官廳ハ直接生產ナリ色々ノ事業ニ關係ス
  ルノデアリマスカラ、其ノ事務ニ囚ハレル
  ト云フ弊ガ多イカモ知レマセヌ、併シナガ
  ラ文部省ハ外ノ省ニアルヤウナソンナ弊ニ
  陷ラズシテ私ハ行ケル處デアルト思ヒマス
  カラ、文部省ノ中ニ於テ上ノ考ヘガ下ニ徹
  底シナイトカ、上ノ考ヘト下ノ考ヘガ違ツ
  タ方向ニ進ムト云フヤウナコトガアルナラ
  バ-又サウ云フ非難モアルノデアリマス
  カラ、是ハ文部省ハ他ノ省ト違ツテ是正シ
  得ル役所ト思フノデアリマスカラ、サウ云
  フコトヲ是正シ、大臣、次官ノ言ハレタ方
  針ヲウント强化シテ行ケルヨウニ御進行ヲ
  御願ヒシテ、私ノ質疑ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=28

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• 029・仲井間宗一

  ○仲井間委員長代理　庄司君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=29

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• 030・庄司一郎

  ○庄司委員　只今本委員會ニ於テ議題トナ
  ツテ居リマス公立學校職員ノ待遇上ノ關
  係ノ中國民學校〓員ノ賞與金、所謂ボード
  ナス」ト云フヤウナ關係ガ從來市町村ノ全
  額支辨デアツタモノガ、國ノ方ト道府縣ノ
  方ニ於テソレ〓〓御負擔下サルト云フヤウ
  ナコトハ、全國ノ市町村ノ財政ノ上カラモ、
  洵ニ欣快ニ堪ヘナイコトデアリ、又賞與金
  等ヲ受ケル所ノ〓職員モ非常ニ明朗ナ心境
  ヲ持ツテ居ルコトト思ヒマス、私ハ端的ニ此
  ノ點ヲ御伺ヒ申上ゲル次第デアリマス、大
  體國民學校〓員ニハ所謂「ボーナス」ト云フモ
  ノハ何割位ヲ支給サレル所ノ只今ノ御計畫
  デアリマスカ、従來市町村ノ國民學校〓員
  諸君ノ年末ノ賞與金或ハ盆前ノ賞與金、サウ
  云フモノハ極メテ少額デアツタノデアリマ
  ス、ソレハ御承知ノ通リ市町村ノ支辨デア
  リマスルガ故ニ、市町村ノ財政關係上中々
  思フヤウナ捧物ガ出來得ナカツタノデアリ
  マス、全國平均ハ約十割位、卽チ俸給ノ約
  一箇月分程度ノ賞與金ト云フモノガ大體ニ
  於テ出テ居リマシタ、六大都市ノヤウナ方
  面ノコトハ分リマセヌケレドモ、大體町村
  關係ニ於テハ約十割、然ルニ他ノ諸官廳ニ
  於テハ或ハ二十五割或ハ三十割、或ハ色ンナ
  委員トカ幹事トカノ關係ヲ加ヘルト云フト、
  約六十割出テ居ルオ役所モアル、ソコデ參
  考ノ爲ニ御伺ヒ申上ゲテ置キタイノハ、國
  民學校〓職員ノ賞與金ト云フモノハ、大體
  ドノ程度御出シ下サル所ノ只今ノ御豫定デ
  アルカト云フコトヲ御伺ヒ申上ゲタイト思
  ヒマス、委員長ト時間ノ御約束モゴザイマ
  スノデ、一問一答ノ形式デナク、靑年學校
  關係ノ問題ニ付テ御伺ヒシタイ三、四ノ點ヲ
  大體表題ダケ申上ゲマシテ簡單ナ御答辯ヲ得
  タイト思ヒマス、全國ノ靑少年ヲ〓育スル所
  ノ靑年學校ガ昭和十四年ヨリ義務制ガ施行
  サレマシテ、本年ニ於テ滿四箇年ヲ迎ヘマシ
  タヤウナ次第デアリマス、是等靑年學校ノ生
  徒諸君ハ大體中等學校以上ニ進學シ能ハナ
  イ多クハ其ノ家庭ガ中產階級以下デアリマシ
  テ、農漁山村ニ於テ或ハ都會ニ於テ、
  經濟的ニ惠マレテ居リマセヌ所ノ家庭ノ子
  弟ガ收容サレテ居ル學校デアルコトハ御承
  知ノ通リデアリマス、卽チ勤勞靑少年、產
  業戰士、サウ云フ諸君ガ大部分收容サレテ
  居ル學校デアリマス、ソコデ此ノ靑年學校ト
  云フモノヲ最モ完成サレタ靑年學校ニシナ
  ケレバナラナイ、靑年學校ノ生徒諸君ニハ
  完成〓育ヲ與ヘナケレバナラナイ、皇國ノ
  道ニ則ツタ所ノ立派ナ天皇歸一ノ〓育ヲ施
  シテ行カナケレバナラナイ、其ノコトハ御
  當局ニ於カレマシテモ、旣ニ學則ノ上ニ於
  テ表現サレテ居ル通リデアリマス、然ラバ
  此ノ靑年學校ヲヨリ完成ナルモノニスル爲
  ニハ如何ナル方法、如何ナル運營、如何ナ
  ル機構ノ下ニ立派ナ靑年學校ト云フモノヲ
  創造シテ行カナケレバナラナイカト云フコ
  トニ付テハ文部御當局ニ於テモ日夜御苦
  心ヲナサレテ居ルコトデアルト思フノデア
  リマス、質問者ノ私自身モ、過去十年ノ間靑
  年〓育ノ爲ニ微力ナガラ熱心ニ地方ニ於テ
  モ或ハ中央ニ於テモ微力ヲ捧ゲテ參リマシ
  タ、端的ニ御伺ヒ申上ゲタイ要點ハ、此ノ靑
  年學校ヲヨリ良キ立派ナ優秀ナ理想的ナ靑
  年學校〓育機關タラシムル爲ニハ、ドウシ
  ナケレバナラナイカ、其ノ一ツノ方法ハ、
  靑年學校生徒用ノ國定〓科書ヲ國民學校ノ
  國定〓科書同樣ニ編纂ヲサレテ、極メテ格
  安ニ、之ヲ各學校ヲ通シテ生徒諸君ニ配給
  スルコトデアリマス、餘リ演說ガマシク諄イ
  コトハ申上ゲマセヌガ、御承知ノ通リ、現
  在ハモウ靑年學校ノ〓科書ハバラ〓〓ニナ
  ツテ居ル、唯文部省ノ認定ガアリマスルカ
  ラ、立派ナ〓科書ニハ違ヒアリマセヌケレ
  ドモ、之ヲ統制シテ文部省ニ於テ編纂ヲシ
  テ國定〓科書トシテ各靑年學校ニ御配給ヲ
  願ヒタイモノデアル、其ノ御用意御所見ガ
  如何デアルカト云フ御伺ヒデアリマス
  第二ハ靑年學校ノ卒業生ニ對シテ一定ノ
  資格ヲ御與ヘニナル、例ヘバ更ニ希望者ガ
  アツタ場合ハ、師範專門學校或ハ靑年學校
  〓員ヲ養成スル新シイ御計畫ノ專門學校等
  ニ進學シ能フ所ノ受驗上ノ資格或ハ陸海軍
  ノ幹部タリ得ル所ノ資格、判任文官タリ得
  ル所ノ資格、サウ云フ資格ヲ靑年學校ノ卒
  業生ニ付與シテ戴クコトニ依ツテ、靑年學
  校ノ生徒ハ前途ニ多大ナル光明ト希望ヲ持
  ツノデアリマス、サウ云フ希望ト光明ヲ持
  タシメテ、其ノ〓育〓養ニ勤シミ勵マシム
  ルト云フコトガ、〓育上ノ私ハ理想デアル
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、五箇年間ノ滿
  十九歲マデノ〓育ニ於テ、或ル專門ノ學科
  ニ付キマシテハ、所謂中等學校ノ卒業生諸
  君ヨリ非常ニ劣ツテ居ル學科モゴザイマス
  ケレドモ、大體ニ於テ國民學校卒業後ニ於
  テ五箇年間ノ〓育ヲ受ケル所ノ只今ノ靑年
  學校ノ義務制下ニ於テハ、中等學校卒業者
  ト稍〓同等ノ學力ヲ有シ得ルモノデアルト私
  ハ考ヘテ居リマス、是等ノ卒業生ニ前途ノ
  光明ヲ與ヘル所ノ資格ヲ付與サルル御考ヘ
  ガアルカナイカ、願ハクバ左樣ニシテ欲シ
  イト云フ信念ノ上カラ御伺ヒ申上ゲマス
  ソレカラ靑年學校ノ專任校長或ハ專任〓
  員ヲモツト殖ヤシテ戴キタイ、御承知ノ通
  リ現在靑年學校ノ專任校長ハ全國約二万ノ
  靑年學校長ニ於テ僅カニ一千二百人ダケデ
  アリマス、又專任〓員ハ僅カニ約三万人デ
  アリ、囑託約二十万、合計二十三万ノ靑年
  學校〓員ノ中、專任ノ〓員ハ僅カニ三万二千
  程度デゴザイマスルカラ、一校平均二名ニ
  ナツテ居リマセヌ、一·六位ノ程度デアルヤ
  ウニ私ハ覺エテ居リマスルガ、專任〓員ヲ
  モツト殖ヤシテ戴キタイ、其ノ爲ニハドウ
  シナケレバナラナイカ、靑年學校〓員養成
  所ト云フモノガ、現在ノ府縣ノ師範學校ノ片
  隅ノ方ニ所謂伴食的ニ居候的ニ存在シテ居
  ル今ノヤウナ狀態デアツテハイカナイ、速
  カニ靑年學校〓職員ヲ養成スル所ノ官立師
  範專門學校同樣ナモノヲ御設置ヲ戴イテ、〓
  職員ノ〓養ノ上ニ於テ數ニ於テ大々的ノ募
  集ヲサレテ專任ノ〓員ヲ殖ヤシテ戴キタイ、
  是等ニ對スル御當局ノ御所見ヲ承リタイノ
  デアリマス
  最後ニ昭和十四年ニ於テ荒木文部大臣ノ
  時代ニ靑年學校ガ義務制ヲ施行サレマシテ、
  其ノ場合ニ於テ制定サレマシタル靑年學校
  國庫補助法ト云フ法律、アノ法律ヲ速カニ
  改正ノ御提案ヲ戴イテ、國民學校同樣ニ靑
  年學校〓育費ノ國庫負擔法ヲ御制定ヲ御願
  ヒ申上ゲタイノデアリマス、私ハ此ノコト
  ハ過去ニ於テモ、本會議ニ於テ三囘、委員
  會等ニ於テモ數囘、熱心ニ御當局ニ御要請
  ヲ申上ゲテ居ツタノデゴザイマスルガ、現在
  全國二万ノ靑年學校-三百万人ノ生徒ヲ
  收容シテ居ル公立ノ靑年學校約二万、其ノ一箇
  年ノ〓育費ノ〓算ハ、文部御當局ガ能ク御
  承知ノヤウニ、約四千五百万圓デアリマス、
  本年度ハ恐ラク五千万圓ニ近イ所ノ〓育費
  ヲ要スルデアラウト思フノデアリマス、然
  ルニ文部御當局ニ於カレテハ、年々補助法ニ
  依ツテ補助額ハ成程增額サレテ居リマス、
  昨年ノ八百二十五万圓ニ對シテ、本年ハ御
  提出ノ豫算ニ依ルト九百四十九万圓、卽チ
  百二十三万圓前年度ニ比較シテ增額デアリ
  マイク、前々年度ノ六百五十万圓ト比較致シ
  マスルト、約三百万圓ノ增額ニ相成ツテ居
  リマス、然ルニ只今申上ゲタヤウニ、全國一
  万一千ノ市町村、二万ノ公立靑年學校ノ〓
  育費一箇年最少限度ガ四千五百万圓、卽チ
  十八年度ノ〓算ニ於テ約五千万圓デアリマ
  ス、然ルニ文部省ガ補助法ニ依ツテ町村ニ
  補助下サル所ノ額ハ、只今申上ゲタ所ノ九百
  四十九万圓デアル、約一千万圓近イ經費デ
  ゴザイマスルガ、ソレデモ靑年學校ノ〓育
  費ノ約五分ノ一ニシカ該當シナイコトハ一目
  瞭然デゴザイマス、卽チ現在ハ靑年學校
  ノ職員ノ俸給費ノ大體三分ノ一程度ノ、補
  助法ニ依ル補助ヲ市町村ニ御交付下サツテ
  居ルノデアリマス、此ノ爲ニ全國ノ市町村
  ノ靑年學校〓育費ノ捻出ノ惱ミト云フモノ
  ハ、町村財政ノ上ニ於テ洵ニ困難ヲ來シテ
  居リマス、先月ノ末ニ、全國ノ市町村長會
  ノ總會ガ行ハレマシタガ、其ノ總會ニ於テ
  モ國民學校同樣ニ、速カニ靑年學校ノ〓育
  費ハ、全額國縣ノ負擔ヲ實現シタイト云フ
  コトガ協議事項ニ於テ決議サレマシタ、何
  トカ是ハ文部御當局ニ於テ御英斷ヲ以テ御
  解決ヲ願ヒタイ問題デアリマス、御承知ノ
  通リ、町村ノ財政上ノ收入ハ、町村民稅ガ
  一戶平均四圓デゴザイマス、私ハ多年二千
  戶ノ町ノ町長ヲ勤メテ居リマスルガ、私ノ
  町ノ財政カラ言ヒマスト、町村民ノ稅ハ約
  一万圓シカ取レナイ、一万圓ノ町村民稅ヲ
  徵收シテ、靑年學校ニ其ノ半額五千圓ヲ投
  ジテ、其ノ五千圓ノ中、前年度ノ御國ノ方
  ノ補助ハ七百五十圓デアル、是デハ到底立
  派ナ靑年〓育ハ出來ナイ、專任〓員ハ私ノ
  町ノ學校ニ於テハ四名、男女靑年學校生徒
  約三百五十名デゴザイマス、五千圓ヲ要ス
  ルノニ七百五十圓ノ國庫補助金ヲ頂戴シテ、
  ドウシテ靑年〓育ヲ完成シテ行クコトガ出
  來ルデアラウカ、仕方ガゴザイマセヌカ
  ラ、最下部ノ町ノ〓育會、外ニ靑年學校後
  援會ト云フ會ヲ作リマシテ、一箇年約一千
  五百圓程ハ町〓育會ト云フ極メテ財政力ノ
  薄弱ナ會デアリマスガ、是デ補助スル、又
  靑年學校後援會ト云フ俄カ作リノ會ヲ作リ
  マシテ、靑年〓育ニ理解アル町民ヲ會員ト
  シテ、一箇年一人當リ一、二圓ノ會費ヲ頂
  戴シテ、靑年學校〓育費ヲ賄ツテ居ルヤウ
  ナ次第デゴザイマス全國三百万人ノ生徒ヲ
  有シテ居ル靑年學校ノ生徒一人當リノ國ノ
  補助ハ-本年度ノ九百四十九万圓ノ御補
  助ノ場合ニ於テハ僅カニ三圓デゴザイマ
  ス、是ト比較スルコトガ當ルカ、當ラナイ
  カハ別問題トシテ、帝國大學ノ學生一箇年
  一人當リ文部省支辨ノ〓育費ハ一千四、五
  百圓デアルコトハ御承知ノ通リデアリマス、
  高等學校、專門學校生徒一人當リ一箇年ノ
  〓育費ハ約一千圓デアルコトハ、文部當局
  能ク御承知ノ通リデアル、道府縣ノ公立中
  等學校生徒一人當リノ〓育費ハ約八十五圓
  デアルコトモ能ク御承知ノ通リデアル、全
  國ノ國民學校ニ對スル所ノ國家ノ負擔法ニ
  依ル所ノ御負擔ハ約一億二千万圓デアルコ
  トハ能ク御當局モ御承知ノ通リデアル、然
  ルニ口ニハ靑年〓育ノ重大性ヲ說キ、大東
  亞戰爭ノ此ノ時局下ニ於テ、又將來ノ大東
  亞共榮圈建設ノ上ニ於テ靑年〓育ノ重大性
  ヲ口ニハサレテ居ルケレドモ、政府ニ於カレ
  マシテ靑年〓育ノ爲ニ支辨サレテ居ル所ノ
  〓育費ハ、驚ク勿レ生徒一人當リノ計算ニ於
  テ約三圓デゴザイマス、此ノ靑年學校ノ生徒ハ
  前申上ゲタ通リ家庭ノ經濟ニ於テ惠マレテ
  居リマセヌ、中學校、高等學校、大學等々
  ニハ到底進學シ能ハヌ所ノ、多クハ貧シイ
  家庭ノ子弟デアル、卽チソレ等ニ取ツテハ
  最後ノ學校デアリマス、國民學校卒業後ニ於
  テ最後ニ學ブ所ノ學ビノ庭デアル、此ノ〓
  育ニ於テ一人一箇年補助額ガ年々增加シタ
  リト雖モ、未ダニ約三圓ノ補助金、ソレモ
  生徒ニ對スル補助デハアリマセヌ、專任〓
  員囑託〓員ニ對スル人件費ノ補助デアル、
  斯クノ如キ補助額ハ、靑年學校經營ヲ直接
  文部大臣ヨリ御委任ヲ受ケテ居ル管理者ト
  シテノ全國ノ町村長ニ取ツテハ洵ニ迷惑千
  萬デアリマス、町村長ハ能ク靑年〓育ノ重
  大性ヲ理解シテ、御協力申上ゲテ居ルノデ
  アリマスケレドモ、速カニ國民學校負擔法
  ト同樣ニ、靑年學校〓育費國庫補助法ト云
  フモノヲ一ツ御廢止下サイマシテ、少クト
  モ來年ハ、靑年學校義務制施行五周年ヲ記
  念ト致シマシテ、此ノ負擔法ノ御提出ヲ願
  ヒマス、私ハ此ノ機會ニ俄カニト云フコト
  ハ無理ナコトハ承知シテ居リマス、ドウカ
  速カニ御調査或ハ大藏省方面ニモ御對策ヲ
  講ジテ戴キマシテ、國民學校國庫負擔法ト同
  樣ナ負擔法ノ下ニ、少クトモ現在ノ靑年學
  校ノ〓職員ノ俸給費約三千万圓ハ、直接國
  ニ於テ、或ハ道府縣ト御相談ノ上、其ノ分
  擔金ヲ御決メ下サイマシテ、國庫ノ負擔法
  ニ改メテ戴キタイ、此ノ事ガ成功セズンバ、
  如何ニ口ニ靑年〓育ノ重大性ヲ說キ、立派ナ
  靑年〓育ヲ施シタイト云フ信念ヲ精神的ニ
  持ツテ居リマシテモ、市町村ノ財政ガ、到底
  此ノ靑年〓育、靑年學校方面ニノミ之ヲ支
  辨スルコトガ出來得ナイ現在ノ町村ノ實情
  デアリマス、今申上ゲタヤウニ、稅ノ收
  入ハ一戶平均四圓デアル、二千戶ノ町ニ於
  テハ約一万圓ニシカナラナイ、アトハ政府
  ノ配付稅ニ於テ賄フヨリ外方法ガナイノデ
  アリマスカラ、〓育ニ對シテ深イ御理解ト
  御信念ヲ持タシテ居ル文部大臣ニ於カレマ
  シテハ、現在ノ補助法ト云フモノハ成程町
  村ニ對シテエライ財政上ノ迷惑ヲ掛ケテ居
  ル、又靑年〓育ヲ理想的ニ完成スル所以デ
  ハナイト云フ此ノ御信念ヲ以テ、速カニ國
  庫負擔法ヲ御提出アランコトヲ要望シテ已
  マナイ次第デアリマス
  以上三、四ノ點ニ付テ簡單デ宜シウゴザ
  イマスカラ、御答辯アラレンコトヲ御願ヒ
  申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=30

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• 031・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　靑年學校〓育充實刷新ニ
  付キマシテノ色々ナ御意見、洵ニ御同感ニ
  存ズルノデアリマス、國定〓科書ノ編纂ハ
  旣ニ一部行ツテ居リマスガ、是ハ漸次擴充
  致シマシテ、御趣旨ニ副フヤウニ致シタイ
  ト思フノデアリマス、又卒業生ノ資格ニ付
  キマシテモ目下考究ヲ致シテ居リマシテ、
  靑年學校ノ內容等ニ付テノ刷新ヲ致シマシ
  テ、兎ニ角大多數ノ日本ノ靑年ヲ〓育致シ
  マスル靑年學校ノ建前ニ於テモ、靑年學校
  ノ卒業生ガ國家ニ對シテ重要ナルモノデア
  ルコトノ意味ガ具體的ニ現ハレルヤウニ一
  ツ考慮シタイト思ツテ居ルノデアリマス、又
  專任校長、專任〓育ノ增加ヲ念願トシテ居
  ルコトモ、是亦御說ノ通リデアリマスガ、
  同時ニ〓育養成所ノ改善ヲ行フコトモ必要
  デアリマシテ、是ハ旣ニ今明年度中ニハ案
  ヲ得テ、十九年度ヨリハ靑年學校〓員養成
  所ノ刷新向上ヲ是非トモ實現シタイト固ク
  決心シテ居リマス、ヤ靑年學校ノ國庫補助法
  ノ問題ニ付キマシテハ是亦出來ルダケ早
  ク義務〓育費ノ國庫負擔法ト同樣ナ趣旨ノ
  モノニ致シタイト云フ考ヘヲ持ツテ居ルノ
  デアリマスルガ、マダ義務〓育完成ト云フ
  點ニ達シナイ所ニ色々事務上ノ難點ガアル
  ヤウデゴザイマスルガ、併シ明年度ニ於キ
  マシテ靑年學校〓員ノ養成ノ問題モ解決ヲ
  シ、又靑年學校自體ノ內容ノ刷新向上ト云
  フヤウナコトヲ圖リマス際ニハ、是ハ是非
  トモ考ヘナケレバナラヌ問題デアルノデア
  リマシテ、其ノ點ニ付キマシテハ十分私ノ
  力ヲ致シタイト考ヘテ居ルト云フコトヲ申
  上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=31

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• 032・菊池豐三郎

  ○菊池(豐)政府委員　第一ノ點ニ付キマシ
  テ御質疑ノ國民學校職員賞與ノコトニ付テ
  御答ヲ申上ゲマス、是ハ昭和十七年度ノ推定
  デゴザイマスガ、大凡十一割ノ見當ニナツ
  テ居リマス、是ハ十八年度ニ於キマシテハ
  凡ソ二十割ノ程度ニ致シタイト云フ考ヘヲ
  持ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=32

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• 033・仲井間宗一

  ○仲井間委員長代理　ソレデハ午前中ハ此ノ
  程度デ濟マセマシテ、午後一時カラ開會ス
  ルコトニシ、ソレマデ休憩致シマス
  午後零時二分休憩
  午後一時十五分開議

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• 034・松岡俊三

  ○松岡委員長　休憩前ニ引續イテ會議ヲ續
  行致シマス-中村君

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• 035・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　私ハ國民指導ト〓育トノ
  關係ニ付テ、文部大臣ト情報局次長ノ所感
  ヲ伺ヒタイト思ヒマスガ、先ヅ極ク簡單ニ
  私ノ感想ヲ述べマシテ御伺ヒ致シタイト思
  ヒマス、實ハ先達テ戰力增强議員奉公隊デ
  各工場ナドヲ廻ツタノデゴザイマスガ、其
  ノ時ニ某工場ニ參リマシタ所ガ、其ノ工場
  ノ工場長ガ本當ニ實感ヲ話サレル所ニ依リ
  マスト、新タニ入ツタ靑年職工ナドハ、是
  ハ徵用エデアルト否トニ拘ラズ何トカ鍊成
  ヲシテ、サウシテ國家意識ヲ十分ニ持タシ
  テ生產ニ專念從事サセルノニ比較的樂デア
  ル、所ガ其ノ工場ノ中堅トモ言フベキ班長
  トカ職長トカ、ズツト古クカラ居ルヤウナ
  人達ノ頭ヲ根本的ニ變へサセルト云フコト
  ハ實ニ困難デアル、ソコデ工場經營全體ヲ
  通ジテ見ルト、若イ入リタテノ下ノ方面ハ
  徹底的ニ國家意識ヲ十分ニ持タシテヤラサ
  レルガ、其ノ上ノ指導的立場ニ立ツ班長、職
  長トノ調整ヲ圖ツテ、工場全體ノ運營ヲシ
  ナケレバイカヌ、玆ニ私共ノ惱ミガアリマ
  スト云フコトヲ熟〓申サレマシタ、私ハ見方
  ニ依ツテハ是ハ一ツノ社會ノ縮圖デアルカ
  ノ如キ感ジヲ實ハ抱イタノデアリマス、隨
  テ目下情報局ニ於カレマシテ國民指導ノ任
  ニ當ラレテ居ル上ニ、如何ニ御苦心ガアル
  カト云フコトハ御察シ出來ルノデアリマス、
  所謂既成ノ人物、吾々ノ年輩、或ハソレ以
  上ノ人達、斯ウ云フ全體ノ國民ニ向ツテ完
  全ナ國民指導ヲシテ行クト云フコトニ付テ
  ハ、非常ナ御苦心ガアル、是等ノ指導方針ニ
  付テモ伺ヒタイノデアリマスガ、同時ニ私共
  ノ自分ノ體驗カラ言ヒマスト、子供ノ時代、又
  學窓ニ學ンデ居ル時代ニ印象ヅケラレタ事
  柄ト云フモノハ、是ハ一生拔ケナイ、ソコ
  デ私ハ國民指導ノ上カラ見マシテ、國民學
  校ニ、中等學校ニ、專門學校ニ、是等ノ學
  窓ニ學ンデ居ル靑年、少年ノ國民ニ向ツテ
  ノ國民指導ノ徹底ヲ期スル必要ガアルト思
  フノデアリマス、情報局デハ隨分部面廣ク
  大童ニナツテ御骨折ヲサレテ居ツテ、殊
  奧村次長ノ大童ナ御奮鬭ニ對シテハ吾々感
  謝シテ居ルノデアリマスガ、動モスレバ私
  ノ感ジカラ言ヒマスト、國民指導ノ上ニ出
  版物ナドニ付テモ、是ハイケナイ、アレハイケ
  ナイト言フ、建設的ナ方面ニ相當力ガー
  大部分ノ力ト云ツテ宜シイガ-入リ過ギ
  テ、積極的ニ此處ヘ力瘤ヲ入レタラ宜イト
  思フ方面ニ、缺ケテ居ルヤウナ感ジガ致ス
  ノデアリマス、其ノ一事例ト致シマシテハ、
  今申シマシタ學窓ニ學ンデ居ル少年、靑年
  ニ對スル國民指導ノ徹底デアリマス、是等
  ノ點カラ考ヘマスト、私ハ〓科書編纂ノ上
  ニ於テモ文部當局ニ於カレテ、〓科書ニ盛
  込ンデ差支ナイ程度ニ於テハ、十分生キタ
  事實ヲ織込ンデ行クト云フコトガ必要デア
  ラウ、現ニオヤリニナツテ居リマセウガ、モ
  ツト此ノ點ニ付テハ十分力瘤ヲ入レテオヤ
  リニナル必要ガアルト云フ考ヘヲ持ツテ居
  リマス、ト同時ニ〓科書ニハ露骨ト云フカ、
  生キタ事實ノ織込ミ方ト云フモノハ非常
  ニ難カシイト思ヒマス、ソコデ〓鞭ヲ執ル
  國民學校ノ〓員、或ハ中等學校ノ〓員、或
  ハ專門學校ノ〓員、是等ノ〓職ニ在ル人達
  ニ對シテ私ハ情報局トシテ國民思想ヲ徹底
  セシムベキ生キタ事實、生キタ事例ヲ收錄
  シ、或ハ又斯クノ如キ決戰連續ノ大戰爭ヲ
  續ケテ居ル今日ニ於キマシテハ、米英ニ對
  スル敵愾心ト言ヒマスカ、本當ニ心ノ底カ
  ラ全身ノ血ガ湧キ立ツテ、ドウシテモ叩キ
  潰サナケレバイカヌ、ドウシテモ聖戰ノ目
  的ヲ完遂セネバ已マヌト云フヤウナ敵愾心
  ヲ湧キ立タセルヤウニ、然ルベク生キタ事
  實ヲ幾多收錄ヲシテ、或ハ第一線ノ將兵ノ
  戰鬪ノ淚グマシイ、現ニ「ソロモン」ニ於テ
  「ガダルカナル」ニ於テ御奮鬪サレテ居ルヤ
  ウナ點、戰鬪ノ關係デモ宜シウゴザイマス
  ガ、其ノ他凡ユル生キタ事實ヲ十分力ヲ注
  イデ收錄ヲサレテ、其ノ程度ノモノハ經費
  モ掛リマセウガ、情報局カラ〓職ニ在ル人
  ノ手許ニ送屆ケテヤル、其ノ人達ハ常時ソ
  レニ眼ヲ通シテ居ツテ、斷片的デ宜シイカ
  ラ何カノ言葉ノ序ニハ、子供ノ前、生徒ノ
  前、此ノ學窓ニ在ル人達ノ頭ノ中ニソレヲ
  注込ンデ行ク、之ヲ徹底サシタナラバ、私
  ハ他ノ事ヲヤルヨリモ餘程國民思想ノ上ニ
  裨益スル所大ナルモノガアルト信ズルノデ
  アリマスガ、是等ノ點ニ付テ文部大臣及ビ
  情報局次長カラ御所見ヲ承リタイト思フノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=35

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• 036・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　國民指導ガ〓育ニ及ボス
  影響ノ重大ナルコトハ申スマデモナイ所デ
  アリマス、尙又社會機構、殊ニ今例ヲ以テ
  御示シニナリマシタ工場內ノ機構等、或
  狀況等ガ靑少年ニ及ボス〓育的效果ト云フ
  モノハ實ニ重大ナルモノガアルト思フノデ
  アリマスガ、單ニ〓育ノ面カラ考ヘマスト、折
  角學校デ巧ク育ツタ者ガサウ云フ所ニ入ツ
  テ來ルト早速ニ惡化サレルト云フヤウナ憂
  ガアリハシナイカト云フコトスラ心配シ
  テ居ルノデアリマス、ソレニ付キマシテ
  從來ノ從業員、殊ニ今勞働階級ノ如キ人
  ニ對シテ眞ノ國民的立場ヲ會得サセルト
  云フコトガ必要デアリマスト同時ニ、又
  只今御話ニアリマシタ通リ非常ニ困難デア
  ルコトモ推察スルニ難クナイノデアリマス、
  ソレト同樣ナ意味ニ於キマシテ學校〓育ニ
  於テ最モ重要ナルコトハ〓員自身ノ眞ニ時
  局下ニ於ケル〓育ト云フモノニ付テノ認識
  ガ全キヤ否ヤト云フコトニ問題ガ展開シテ
  來ルノデアリマス、幸ヒニ國民學校ノ〓員
  諸君ニ於キマシテハ、此ノ點ハ最モ吾々ノ
  關心ヲ持ツ所デモアリマスガ、最モ都合好
  ク來テ居ル部面ダト思ヒマス、併シナガラ
  是ガ無論十分デアルト云フコトニハ行カナ
  イ、何處マデモ其ノ上〓〓ト良キ方ヘ進ン
  デ行クコトヲ無論吾々ハ希望スルノデアリ
  マス、先程モ申シタノデアリマスガ、此ノ
  時局下コソハ眞ニ國體ノ本義ニ徹シ、肇國
  ノ大精神ヲ體得シテ、東亞ノ指導者タルベ
  キ者ヲ育成スル氣持ヲ少クトモ體現ヲスル
  コトガ出來ル重大ナル時機デアリマスカラ、
  此ノ時機ニ學校〓員自身ガ眞ニ將來ノ國家
  ヲ擔フベキ靑少年ヲ如何ニ訓練スベキカト
  云フコトヲ、自己ノ心身ニ十分ニ體得シテ
  欲シイノデアリマス、十分ト云フ譯ニハ參
  ラヌカモ知レマセヌガ、旣ニ此ノ事變以來
  殊ニ大東亞戰爭勃發以來其ノ點ハ餘程吾々
  ノ望ンデ居ル方ニ近付イテ來テ居ルト思ヒ
  マスケレドモ、マダ〓〓眞ニ時局ノ認識ト
  云フ事柄ハ唯職員ナドガ自ラ爲サント欲セ
  ズ爲セナイノデハナクシテ、只今仰セニナ
  リマシタヤウナ十分ナル材料ヲ持タナイ、
  又或ル意味ニ於テハ與ヘラレナイ材料モア
  ルト云フヤウナ點カラ、時局ノ認識ニ缺ク
  ル所アル事柄ハ否ミ難イ點デハナカラウカ
  ト思フノデアリマス、其ノ意味ニ於キマシ
  テ出來ルダケ材料ヲ彼等ニ與ヘマシテ、而
  モ自分ノ直接ナル體驗ト兼加ヘテ〓育者自
  ラガ眞ニ時局ノ要請ニ卽應スル、自己ノ體
  得、又實踐力ヲ把握スルヤウニ致サセタイ
  ト云フコトハ御說ノ通リデアリマシテ、將
  來ニ向ヒマシテ十分ニ力ヲ致シタイト思ツ
  テ居ルノデアリマス、殊ニ最近編纂致シマ
  スル〓科書等ニ就キマシテハ、出來ルダケ
  其ノ點ヲ考慮致シテ居ルノデアリマシテ、
  無論〓科書ノ編纂モ完璧ヲ期スル譯ニ參リ
  マセヌケレドモ、例ヘバ靑年學校等ノ修身、
  公民ト云フヤウナ書物ナドニ於キマシテモ
  從來トハ面目ヲ一新シタ、現時局下ノ認識
  ヲ與ヘル上ニ相當ナ力ヲ致シテ居ルヤウナ
  次第デアリマス、無論〓科書ノ編纂等ニ於
  キマシテハ〓科書ノ性質ト致シマシテ、例
  ヘバ新シキ生キタ事實ヲ盛ルニシマシテモ、
  絕エズ時世カラ遲レルト云レ憾ミガアルノデ
  アリマスカラ、一面ニ於キマシテ其ノ點モ
  只今御話ノヤウナコトヲ行ヒマシテ、〓科
  書ト相俟ツテ時局認識ガ出來ルダケ確實ニ
  又出來ルダケ深刻ニ出來ルヤウナ方途ヲ講
  ジタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=36

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• 037・奧村喜和男

  ○奧村政府委員　文部大臣カラ御答辯ニナ
  リマシタコトデ一應盡キテ居リマスガ、御
  指名デアリマスカラ情報局ノ所管ト致シマ
  シテ申上ゲマス、中村サンノ御意見ノヤウ
  ニ戰爭下ニ於キマシテ一億國民ガ國ノ爲ニ
  殉ズルノ決意ヲ以テ其ノ職域ニ奉公スルコ
  トガ極メテ重大デアルコトハ言ブマデモナ
  イノデゴザイマス、ソレニ付キマシテ國策
  遂行ノ基礎タルベキ情報、宣傳、啓發ノ任
  ニ當ツテ居リマス情報局ト致シマシテハ
  御指摘ノヤウナ責任ヲ持ツテ居リマスコト
  ハ重々常ニ痛感致シテ微力ヲ盡シテ居ル
  ノデアリマス、日本ノ政治、經濟、文化、
  娛樂、總テガ戰爭完遂ト云フコトヲ中心ト
  シテヤラナケレバナラヌ、又ヤラレテ居ル
  コトガ當然デゴザイマスガ、左樣ナ意味ニ
  於キマシテ、御指摘ノヤウニ、情報局ノ擔當ス
  ル所謂輿論指導カラ始マツテ新聞、「ラジオ」、
  映畫、紙芝居、文學、評論、其ノ他凡ユル文化
  的、思想的、精神的方面ヲ管掌スル事業ニ於
  キマシテ最モ活潑ニヤラナケレバナラヌコト
  ハ御指摘ノ通リデアリマスシ、特ニ又其ノ中
  デモ役所ガ從來ノヤウナ御指摘ノ所謂檢閱
  方面ニ力ヲ入レ過ギテ居ヤシナイカ、モツト
  積極的方面ニ力ヲ入レルベキデハナイカト
  云フコトニ付キマシテモ全ク同感デゴザイマ
  ス、又此ノ機會ニ諒解ヲ得タイト思ヒマス
  コトハ、從來政府ハ內務省ニ於テ警察權ニ依
  ツテ公安ニ害アルモノ、風俗ニ害アルモノ
  ハ取締ルト云フコトデゴザイマシタガ、積
  極的ニ政府ノ意圖、國策ノ遂行ニ協力スル
  ヤウナ指導ハ支那事變前マデハ御案內ノヤ
  ウニ殆ドナカツタノデアリマス、ソレガサウ
  云フコトデハイケナイ、消極的ニ害ガナイ
  ト云フヤウナコトデハイケナイ、積極的デ
  ナケレバナラヌト云フヤウナ、御意見ノヤ
  ウナ方途ニ基キマシテ情報局モ出來タ譯デ
  アリマス、實ハ聊カ微力ヲ盡シテ居ルノデ
  アリマス、ソコデ此ノ積極面ノ協力ト云フ
  モノモ中々一般ニハ分リニクク、御認メガ
  得ラレニクイノデアリマス、又役所ト致シ
  マシテ、情報局デ斯ウ云フ思想指導ヲヤツ
  テ居ルノダト云フコトヲ言ヒマスコト自身
  ハ、又其ノ目的トスル所トモ反スル譯デゴ
  ザイマスノデ、主トシテサウ云フコトガ分
  ラズニヤツテ居ル所ニ非常ナ苦心ガアル譯
  デアリマス、ソコデ御指摘ニナリマシタ產
  業戰士ニ致シマシテモ、非常ナ勤勞ヲシテ、慰
  安ト云フモノモ亦勤勞ノ糧トシテ必要デゴ
  ザイマス、働イテ歸ツテ來タ職工ニ又說〓
  ヲ始メテモ、職工必ズシモ歡迎致シマセ
  又、併シ其ノ敢鬪精神ナリ職域奉公ノ精神
  ヲ盛リ上ラセル爲ニハ、御說ノヤウニムヅ
  カシイ論說ヤ講演以外ニ、所謂慰安ト云フ
  面カラモ之ヲ考ヘナケレバナラヌト云フ點
  ニ着眼致シマシテ、色々努メテ居ルノデゴ
  ザイマス、其ノ一ツハ、特ニサウ云フコト
  ニ御關心ノアル中村サンデゴザイマスカラ
  能ク御承知デアリマセウガ、所謂產業戰士
  ナリ農村ノ人々、或ハ又〓職ニアル方々ニ
  本當ノ意味ノ慰安ヲ與ヘル、或ハ娛樂ヲ與
  ヘルト云フコトモ亦必要ダト云フ點カラ、
  情報局デ斡旋致シマシテ、最近移動演劇團
  ヲ作ツテ居ルノデアリマス、是ハ從來演劇
  ガ都會ニ集中シテ居ル、或ハ富裕階級ノ專
  有物デアツタト云フ點ヲ開放シテ、農村ニ
  於テモ、又貧シイ人々ニ於テモ、此ノ演劇
  ト云フモノヲ所有セシメルト云フ點カラ色
  色ト役所デ協力ヲ求メ、又劇團カラモ非常
  ナ協力ヲ得テヤツテ居ルノデアリマス、卽
  チ幸四郞トカ水谷トカ、斯ウ云フ人々ガ自
  分ノ仕事トシテヤツテ居ル以外ニ、役所ト
  シテト言ヒマスカ、一週間ナリ二週間ヲ國
  家ニ提供スルノデアリマス、サウシテ情報
  局ノ計畫ニ基キマシテ各方面、各職場或ハ
  各地方ニ演劇ニ行ツテ吳レルノデアリマス、
  非常ニ獻身的ニヤツテ貰ツテ居リマス、又
  其ノ時ニドウ云フモノヲヤルカト云フ出シ
  物ガ非常ニ問題デゴザイマスガ、其ノ點モ
  單ナル享樂ニ墮スルト云フコトハ全然避ケ
  テ、本當ノ御奉公、緣ノ下ノ力持ト云フコ
  トガ如何ニ國家ニ寄與シテ居ルカト云フコ
  トヲ分ラセル意味ニ於テ非常ニ努力致シマ
  シテ、昨年ノ-十七年一箇年間ニ於テ約
  二千囘、方々デサウ云フ演劇ヲ致シマシ
  タ、サウシテ三百万ノ人間ガソレヲ觀タノ
  デアリマス、此ノ職工ナリ田舍ノ人々ハ非
  常ナ感激ヲ持ツテ居ルノデゴザイマス、
  ツノ例ヲ申上ゲマスト、日立ノ鐵工所ニ羽
  左衞門其ノ他ガ演劇ニ參リマシタ時ハ、皆
  國民服デ規律ヲ以テ「トラック」ニ乘ツテ行
  キマスガサウ云フ所デ職工ノ幹部ト、職工
  ト皆デ舞臺ヲ作ツテヤルト云フヤウナ非常
  ニ美ハシイ光景ガアルノデアリマス、ソレ
  デ出シ物ガ今申上ゲマシタヤウナモノデア
  リマスカラ、非常ニ感激シテ居ル、而モ國
  ガソコマデ面倒ヲ見テ吳レルト云フコトニ
  非常ニ感謝シテ居ルト云フコトモアリマシ
  テ、御指摘ノヤウナコトガ一部實現致シテ
  居ルノデアリマス、尙ホ此ノ點ハ非常ニ效
  果ガ擧リマシタノデ、最近約二週間前ニ之
  ヲ社團法人ニ致シマシテ、サウシテ數十万
  圓ノ經費デ國家的計畫ノ下ニ凡ユル準備ヲ
  進メテ居ル譯デアリマス、之ニ付キマシテ
  ハ御意見ノヤウナ點ヲ十分取入レマシテ、
  犧牲的精神ナリ緣ノ下ノ力持ト云フモノガ
  自然ニ認メラレルヤウナ意味ニ於テ努力シ
  タイト思ヒマス
  尙ホ積極的指導ニ付テデゴザイマスガ、
  例ヘバ日本人ノ二億ノ人間ガ-一億ノ人
  ロデ二億ノ人間ガ每年映畫ヲ見ルノデアリ
  やく、其ノ二億人ノ見ル所ノ映畫ノ內容ト
  云フモノガ、是亦御指摘ノヤウニ非常ニ重
  大ナ關係ヲ及ボシマスノデ、從來ノヤウニ唯
  風俗上面白クナイトカト云フコトタケデハ
  不十分デゴザイマスノデ、餘リ露骨デナイ
  ヤウニ、自然ニ愛國心ガ起ルヤウニ、又犧
  牲心ガ起ルヤウナ方向ニ相當指導ヲ致シテ
  居ルノデアリマス、ソレガ爲ニハ其ノ筋書
  ヲ書替ヘルト云フコトモ好マシクゴザイマ
  セヌノデ、能ク定例的ニ情報局ト會見シテ
  今デハ敵愾心ヲ起サセルニハ斯ウ云フ材料
  ガアルト云フコトモ〓ヘテヤリ、又色々希
  望ヲ述べ、向フノ意見ヲ聽イテ話合ツテヤ
  ツテ居リマス、ソレガ最近色々現ハレテ居
  ルノデアリマス、最近日本人ガ非常ナ興味ヲ
  持ツテ觀タ「ハワイマレー沖海戰」ニ致シマ
  シテモ、其ノ他最近色々出ル映畫ハ、必ズシモ
  所謂國策ト銘ヲ打タナイマデモ、色々影
  響ヲ與ヘテ居ルノデアリマシテ、是ハヤハ
  リ陸海軍モ同樣デゴザイマスガ、政府ノ相
  當ナ指導ノ結果デアルコトモ御諒解ヲ願ヒ
  タイト思フノデアリマス、尙又サウシタ映
  畫トカ演劇ヲ奬勵致シマスル爲ニ、情報局
  總裁賞ト云フモノヲ設定致シマシテ、サウ
  云フ立派ナ、只藝術的デナクテ、國家的國
  策的ニ立派ナ映畫ニ付テハ推奬スルト云フ
  方法ヲ執ツテ、相當積極的ニ致シテ居ルコ
  トモ、御諒解願ヒタイト思ヒマス、尙ホ文
  學其ノ他モヤハリ非常ナ影響ガゴザイマス
  ノデ、是モ從來ノ個人的ナ自由主義的ナ文
  學デナクテ、本當ニ國家的文學タルベク文
  學報國會ト云フモノヲ、是亦色々斡旋致シ
  マシテ、文部省內務省ナドトモ連絡ヲ致シ
  テ、國策ニ役立テルヤウニ致シテ居リマス
  尙ホ最後ノ御意見ノ〓職ニ在ル人々ニ對
  スル生キタ事例ノ集錄ヲ配ツタラドウカ、
  敵愾心ヲ旺盛ナラシムル爲ニモ、出征兵士
  ノ非常ニ立派ナ犠牲的行爲ニ付テ御紹介シ
  タラドウカ、全ク御同感デゴザイマシテ、
  今後モ一層其ノ點ニ重點ヲ置イテ參リタイ
  ト存ジマス、確ニ斯ウシタ具體的ナ事例ヲ
  紹介スルコトガ何ヨリデゴザイマシテ、其
  ノ點ニ於キマシテ一層活潑ニ御希望ニ副フ
  ヤウニ努メタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=37

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• 038・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　情報局ニ對シテハ是デ宜
  シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=38

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• 039・松岡俊三

  ○松岡委員長　ソレデハ此ノ機會ニ委員長
  トシテ情報局長ニ尋ネタイコトガアリマス、
  私ノ實驗ニ依リマスレバ、從軍シテ出征シ
  テ居ル兵隊ノ心理ト云フモノハ、實戰ニ從
  ハナイ人ハ分ラナイ點ガ非常ニ多イノデア
  リマス、滯在ガ長キニ亙ツテ居ル間ニ、ド
  ウ云フ書物ヲ見タイカト云フコトハ、迚モ
  想像ノ出來ナイモノガアリマス、此ノ點
  ニ付テ銃後ノ人々ニ讀マセル本ト、出征シ
  テ居ル人々ニ讀マセル本、之ヲ取締ル上ニ
  於テ二重ニ考ヘナケレバ、本當ノ心理ヲ捉
  マヘルコトハ出來ナイ、私ハ一年十箇月出
  征、第一線ニ居ツタノデアリマスルカラ、
  之ヲ本當ニ痛感スルノデアリマス、銃後ニ
  於ケルヤウナ取締ノ方法ヲ以テ檢閱シタル
  本ハ、決シテ明日ノ命ヲ知ラナイ人々ノ前
  ニハ空念佛デアル、何等ノ娯樂ニモナラナ
  イト思ヒマス、是等ノ點ニ付テ銃後ニ歸還
  シタル者ノ思想方面ニ及ボス影響ナドモ篤
  ト考慮シテ掛カラネバナラヌコトデアリマ
  スケレドモ、情報局トシテ內務省、文部省、
  是等ノ方面ト親シク熟議ヲ凝ラシテ、本當
  ニ出征シテ居ル人々ノ心理ヲ捉マヘテ、見
  セシムル所ノ本ヲドノ程度ニマデ計畫シ與
  ヘテ居ルカト云フ點ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=39

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• 040・奧村喜和男

  ○奧村政府委員　委員長ノ今ノ御意見ハ
  委員長ガ日露戰爭ニ御出征サレタト云フ貴
  重ナ御體驗ニ基ク御意見非常ニ敬意ヲ以テ
  拜承致シマシタ、今御述ベニナリマシタ御
  意見ニ付テデゴザイマスルガ、出征兵士ニ對
  スル直接ノ指導ハ陸海軍ガ責任ヲ以テヤル
  ノデゴザイマシテ、御案内ノヤウニ吾々ガ
  ソレヲ兎ヤ角言フコトハ出來ナイノデゴザ
  イマス、併シナガラ又御述ベニナリマシタ
  ヤウニ、日本デ印刷サレタモノガ、或ハ慰問
  袋ニ依リ、或ハ軍ノ手ヲ經テ到達スル譯デ
  アリマシテ、其ノ意味ニ於テ色々關係ガ出
  テ參リマス、ソコデ最近現地ノ色々ナ情報
  竝ニ陸海軍ノ話ヲ聞イテ見マスト、御述べ
  ニナリマシタヤウニ、出征兵士トシテハ非
  常ニ活字ニ飢エテ居ル、本ガ讀ミタイ、併
  シ必ズシモ本ガ十分來ナイト云フ點ノ訴ヘ
  ガ現地軍カラモ參リマスノデ、聊カ陸海軍
  トモ打合セテ之ヲ斡旋シテ居ルノデゴザイ
  マス、併シナガラ唯出征兵士用ノモノヲ特
  ニ情報局デハ作ツテ居リマセヌガ、陸海軍
  デハ例ノ「ツハモノ」トカ其ノ他陸海軍ノ出
  征兵士用ノモノヲ陸海軍ノ責任デ作ツテ居
  ルモノガゴザイマス、ソレ等ニ對シテハ或
  程度ノ連絡ヲ致シ、又陸海軍獨自デ御心配
  ニナツテ居ルコトヲ承ツテ居ルノデアリマ
  ス、尙ホソレニ付ケ加ヘテ申シマスト、最
  近ヤハリ御述ベニナリマシタヤウナ御意見
  ニ依リマシテ、〓土ノ新聞ガ讀ミタイト云
  フヤウナ要求ガ多イト云フコトデゴザイマ
  スノデ、例ヘバ金澤トカ北海道ノ或ル新聞
  ノ申出デガゴザイマシテ、其ノ部隊ノ出テ
  居ル所ニ、特ニ色々情報局デモ心配ヲシテ
  差上ゲマシテ、〓土ノ新聞紙ヲ、而モ出征
  兵士用ノ新聞ヲ作ツテ運ンデ、非常ニ歡迎
  ヲ受ケタト云フコトモゴザイマス、サウ云
  フ例ガアル程度デ、直接的ニハ、陸海軍ノ
  コトデゴザイマスノデ、其ノ點位ノ範圍デ
  ゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=40

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• 041・松岡俊三

  ○松岡委員長　モウ一點御尋ネ致シマス、
  私ノ耳ニシテ居ル所ニ依リマスレバ、餘リ
  ニ固イモノガ戰地ニ行クノデ、殆ンド行ツ
  タモノガ讀マレナイト云フヤウナ點ヲ多ク
  耳ニシテ居リマス、アチラニ行ツテハ、戰
  ノナイ間、休戰中ノアノ一時ヲドンナニ忘
  レテ愉快ニシタイカト云フ其ノモノニピツ
  タリト行クヤウナ、極メテ柔カナ本當ニ神
  經ニ來ルヤウナモノデナケレバ難カシイデ
  ス、然ルニ、大政翼贊會其ノ他デ一生懸命
  デ本ヲ集メテ盛ンニ送ツテヤツテ居ルヤウ
  デアリマスケレドモ、是等ハ勞多クシテ、
  而モ交通運輸關係其ノ他ヲ相當ニ煩ハシテ
  居ルケレドモ、其ノ效果タルヤ實ニ微々タ
  ルモノデアリハセヌカト私ハ體驗カラ見テ
  思ヒマス、斯樣ナ無駄ナコトヲナサナイデ
  最モ有效ニ活用スル、印刷物ニ付テハ、思
  想ノ方面ニ特ニ關心ヲ持ツ情報局トシテハ、
  之ヲ戰地及ビ銃後國民ヲ睨合ハセタ氣持
  ノ好イ柔カナモノヲ作ツテヤラウト云フヤ
  ウナ親切心ガ當然アラネバナラヌト思フ、
  單ナル陸海軍ニノミ之ヲ任シテ居ルト云フ
  ヤウナコトデハ、私ハ戰地カラ歸ツテ來タ
  銃後ノ人トナルベキ其ノ人ノ思想ヲ考ヘテ、
  ソコニ矛盾スルヤウナコトガアリハセヌカ
  ト思ハレルモノデスカラ、ソコヲ注意シテ、
  親切ニ考ヘテ、戰地ニアル人々ヲ心カラ喜
  バシムルヤウニ、明日ノ命ヲ知ラナイデ、
  其ノ時ニ感激スルヤウナモノヲ作ツテヤル
  ト云フコトハ努メテ親切ニ考ヘテヤルベキ
  ダト思ヒマス、只今ノ御答辯ニ滿足シナイ
  譯デハアリマセヌケレドモ、ソレデハ私ハ
  少シク親切ガ足ラヌト思ヒマス、陸海軍ニ
  ノミ依ラズシテ、ソコマデ情報局ガ眞劍ニ
  考ヘテヤツテ戴クヤウニ、私ハ體驗カラ照
  シ合ハセテ之ヲ御願ヒ申シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=41

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• 042・奧村喜和男

  ○奧村政府委員　今ノ御體驗ニ基ク御希望
  ニ付キマシテハ襟ヲ正シテ拜聽シマスシ、
  又御希望ニ副フヤウニ努力致シマス、唯是
  ハ何モ陸海軍ニ任セ切ルト云フコトデナク
  テ、出征兵士ニ付テノ思想指導ハ、御述べ
  ニナリマシタヤウニ柔カイモノガ必要ナコ
  トモ想像モ付キマスガ、軍紀軍律ノ範圍內
  ニ於テデアリマスノデ、何モ怠ケテ情報局
  ガヤラヌ譯デナクテ、專實上サウ云フコト
  ハ中々困難デアリ、又御趣旨ハ必ズシモサ
  ウ云フ所ニハゴザイマセヌノデ、戰地向ニ
  付テハ、御希望ノヤウナ思ヒヤリノアラレ
  ル御意見ニ付キマシテハ、大イニ御希望ニ
  副フヤウニ努メタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=42

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• 043・仲井間宗一

  ○仲井間委員　情報局總裁ガ見エテ居リマ
  スカラ、此ノ機會ニ一二點御願ヒヲ兼ネマ
  シテ御伺ヒヲ申上ゲタイト思ヒマスガ、私
  ハ豫ネテ現地ノ寫眞書報ト云フモノヲ見
  タコトガアリマス、百枚バカリ綴ラレテ居
  リマシタモノデソコニハ戰爭ノ畫報モアル
  シ、色々アリマシタガ、其ノ中デ一番感激
  ニ堪ヘナカツタノハ、草ムス屍水漬ク屍大
  君ノ邊ニコソ死ナメ顧ミハセジ、命ヲ捨テ
  テ君國ノ爲ニ陛下ノ爲ニ働イテ居ル、其ノ
  際ニハ何事モ忘レテ唯勝拔クト云フ感ジ以
  外ニハ何物ノ心境モナイ、所ガ何カノ暇ヲ
  得テ靜カニ考ヘル餘裕ノアル際ニ先ヅ思ヒ
  浮ブノハ、銃後ニ於ケル國民ガ、今日吾々
  ガ命ヲ捨テテ戰ツテ居ル此ノ大戰爭ニ際シ
  テ國民ハドウ云フ心構ヘヲ持ツテ居ルカト
  云フコトノミヲ考ヘル、是ガ一番私ハ感激
  シタ、アノ百枚ノ戰況ノ畫報ノ中デ一番考
  ヘタノハ、之ニ私ハシミ〓〓ト胸ヲ打タレ
  タ、第一線ノ將兵ガ考へテ居ルコトガ、吾々
  ノ命ヲ捨テテヤツテ居ル此ノ大事業ヲ國民
  ハドウ考ヘテ居ルダラウカ、國民ハ如何ニ
  此ノ大戰爭ヲ勝拔ク決意ヲ持ツテ居ルデア
  ラウカト云フコトノミヲ考ヘルノダト云フ
  畫報デアリマス、何トカシテ-私ノヤウ
  ナ氣持ヲ全國民ガ持ツテ居ルト云フコトハ
  想像ニ難クナイノデアリマス、サウ云ツタ
  意味ヲ含メタ映畫、演劇デモ普及サレタラ
  結構デハナイカ、斯ウ思ヒ付イタ譯デアリ
  マス、モウ一點ハ、此ノ大戰爭ヲ勝拔ク皇軍
  ノ犠牲心、國家ノ爲ニ盡サレテ居ル點ニ付
  テハ何ト申シテモ感謝感激ニ堪ヘマセヌガ、
  一度歸還シテ參リマスト、第一線ニ立ツテ
  居ル常時ニ銃後カラ感謝シテ居ル皇軍ガ、
  一タビ銃後ニ歸ツテ來テ、本當ニ第一線ニ
  立ツテ皇國ノ爲ニ盡シテ居ツタ人物デアル
  カドウカト云フコトガ疑ハシイ行動ガ時々
  アルト云フコトヲ聞カサレテ居ル、銃後
  ニ歸ツテ來テモ、第一線ニ立ツテ國家ノ
  犧牲ヲ一身ニ擔ツテ挺身シテ行クト云フ
  行動ヲ何トカシテ持續セシメテ行クコトガ、
  一般ノ皇軍ニ對スル信賴、皇軍ノ勇戰奮闘
  ノミデナクシテ、皇軍ノ人物、人格ニ對シ
  テ國民ガ信賴スルノダト云フ點ヲ何トカ指
  導シテ行ケル工夫ハナイモノカ、之ニ對シ
  テ御所見ナリ、何カ今日指導サレテ居ル御
  方針ガアリマスレバ承リ、又今後トモ善處
  シテ戴クヤウニ御願ヒシタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=43

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• 044・奧村喜和男

  ○奧村政府委員　出征兵士ノ身ヲ御思ヒ下
  サツテノ御意見全然同感デゴザイマス、確
  カニ出征シテ居ル澤山ノ吾々ノ同胞ハ、戰
  ノ間ニ氣ニ掛ルコトハ妻子ノコトデアリ故
  〓ノコトデアルコトハ言フマデモナイノデ
  アリマス、隨テ吾々ガ、アナタ方ガ御感ジニ
  ナツタヤウニ、戰地ノ寫眞ニ付テ非常ナ感銘
  ヲ受ケル寫眞ガアルト同樣ニ、戰地ニ於テモ
  亦銃後ノサウシタ一層戰フ精神ヲ起スヤウ
  ナモノヲ送ルベキデアリマシテ、微力ナガ
  ラサウ云フコトノ御希望ニ副ヒタイト存ジ
  マス、現在ヤツテ居ルコトハドウ云フコト
  カト云フコトニ付キマシテ申上ゲマスト、
  例ヘバ「ラジオ」ノ如キモ、戰ガ濟ミマスト兵
  ハ、部隊ハ大抵短波ノ「ラジオ」ヲ持ツテ居リマ
  スノデ、內地ノ「ニユース」ガ聽キタイ、
  內地ノ演劇ガ聽キタイ、又內地デ今日今ド
  ウ云フ「ラジオ」ヲ聽イテ居ルカト云フコト
  ガ知リタイノダサウデアリマス、是ハ無理
  モナイコトデ、吾々チヨツト旅行シテ見テ
  モサウ感ジマス、サウ云フ意味ニ於キマシ
  テ、日本ノ「ラジオ」ハヤハリ戰地ノ人モ聽
  イテ居ルト云フ點カラ、番組ノ編成ニ心掛
  ケテ居リマス、最近ハ又戰地向ノ「ラジオ」
  モ考ヘテ居ルノデアリマス、例ヘバ國技館ノ
  相撲放送ノ如キ、戰地デ考ヘレバ今頃內地
  デハ相撲ヲヤツテ居ルノカト憤慨シサウナ
  モノデアリマスガ、日本ノ勇士ハ必ズシモ
  サウデハナイノデアリマシテ、自分等ハ斯ウ
  シテ働イテ居ル、斯ウシテ國ヲ思ツテ居
  ル、其ノ一面ニ於テ、昔ナガラノ國技ヲ東
  京ニ於テヤツテ居ルト云フコトハ、彼等ハ
  安心スルノデアリマス、サウ云フ意味ニ於
  キマシテ、或ル時間ハサウ云フモノモ送ル
  ト云フコトヲ致シテ居リマスルシ、又出征
  兵士ノ希望ヲ募リマシテ、色々ト其ノ希望
  ニ應ジタモノヲ送ルト云フコトデ、相當陸
  海軍トモ打合ハセテ、御心配ノ點ヲ或ル程度
  解決致シテ居リマス、尙又最近ハ專門ノ新
  聞ガナクナリマシタコトニ伴ヒマシテ、現
  地デ新聞ヲ發行シテ居リマス、日本ノ出來
  事ハ其ノ日ニ分ルヤウニ、日本語ノ新聞ヲ、
  內地ノ各新聞社ヲ進出セシメテ、「ジヤカル
  タ」、昭南島、「マニラ」、、「ラングーン」其ノ
  他デ發行シテ居リマスノデ、割合ニサウシタ
  コトガ近頃ハ分リ易クナツテ居リマス、又
  御案内ノ映畫ニ付キマシテモ、成ルベクサウ
  シタモノガ結構デゴザイマスノデ、情報局デ
  幹旋シテ澤山ノ寫眞ヲ送ツテ居リマス、唯
  玆ニ日本デ見ラレル映畫ガ必ズシモ其ノ儘
  送レナイ、卽チ單ニ兵士ダケノコトヲ考ヘ
  ラレナイノデアリマシテ、例ヘバ支那事變
  後出征兵士ノ慰問ノ爲メ、其ノ希望ニ應ジ
  マシテ日本ノ映畫ヲ送リマシタ、日本ノ兵
  士ハ舊劇ノチヤンバラ劇ガ好キデゴザイマ
  ス、ソレヲ相當送リマシタ所ガ、兵士ハ喜
  ビマシタガ、ソレヲ見テ居ル支那人ハ-
  ドウシテモ一緒ニ見ル譯デアリマス、ソレ
  ガ時ノ觀念、歷史ヲ知ラヌモノデアリマス
  カラ、日本內地デハ今デモコンナ斬合ヲシ
  テ居ルノカ、ソレヂヤ日本ハ强イ筈ダト思
  ツテシマフ、是ハ大失敗ヲ致シタノデアリ
  マス、サウ云フ譯デ非常ニ「デリケート」
  ナ關係ガゴザイマス、最近內地人ヲシテ非
  常ニ感奮セシメタ「ハワイ」爆擊ノ實寫、是
  ハ素晴シイ世界的ノ映畫デアリマス、所ガ之
  ヲ滿洲ニ持ツテ參リマスト何等ノ感銘モ與
  ヘナカツタ、軍艦、般海ト云フモノヲ知
  ラナイ四千万ノ中ノ九割ノ民衆相手ニハ何
  ニモナラナイ、サウ云フヤウナ色々ナデ
  リケート」ナ關係ガゴザイマスガ、最近ニ
  於キマシテハサウ云フ點ニ付テ相手ノ心
  理、傳統ヲ調ベマシテ、注意ヲ致シマシテ、
  兵士ニモ、又現地人ニモ惡イ影響ヲ與ヘナイ
  ヤウニ配慮ヲ致シテ居リマス、卽チ「ハワ
  イ、マレー沖海戰」ニ出テ來マス所ノ少
  年航空兵ノ出身ノ家ガ、マルデ少年航空兵
  ガ出サウモナイヤウナ大キナ豪華ナ家デア
  ル、是ハ誰デモチヨツト氣ガ付ク、ソレデ
  ヨク質問ヲ受ケマスガ、アレハ現地、支那、
  滿洲、世界各地ニ持ツテ行ク、「ドイツ」ヘモ
  持ツテ行クノデスガ、ソレデコンナ小サイ家
  カト云フヤウナ印象ヲ與ヘナイト云フ含ミ
  デアリマシテ、最近ハ色々ト宣傳ハ致シマ
  セヌガ、サウ云フアナタノ御心配ノ點ニ付
  キマシテモ、色々ト細カイ氣ヲ配ツテ努力致
  シテ居リマス、今後モ一層努力スル積リデ
  アリマス、尙ホ歸還兵ノ問題ニ付キマシテ
  ハ、是ハ陸海軍ノ直接ノコトデゴザイマシ
  テ、私カラ兎ヤ角申上ゲルコトデハゴザイマ
  セヌガ、御心配ノ點ハ洵ニ御尤モデゴザイ
  マシテ、歸還兵コソ日本ノ國民トシテ、戰
  場ニ於テ模範デアツタヤウニ歸還後モ模範デ
  ナケレバナラナイノデ、陸海軍デハ十分御
  配慮ノコトト存ジテ居リマスガ、情報局ト
  致シマシテモ、サウシタ一般國民ノ-歸
  還スレバ一般國民デアリマスガ、サウシタ
  人ノ指導ニ付キマシテハ、特ニ配慮致シマ
  シテ、御意見、御希望ノ點ヲ重々加ヘテ、
  施策致シテ行キタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=44

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• 045・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　前提トシテ一寸簡單ニ文
  部省ニ伺ヒマスガ、ツイ數日前ニ官立ノ各
  大學ノ〓究所ノ擴充ガ發表ニナリマシタガ、
  アレハ今度ノ大學院ノ擴充ト云フモノト關
  係ガアリマスカ

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• 046・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　アレハ關係アリマセヌ

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• 047・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　大學院ノ擴充ニ付テ文部
  當局ト企畫院當局ニ伺ヒタイト思ヒマスガ、
  今度ノ學制改革ニ依リマシテ、中學校モ、
  高等學校モ年限ガ短縮サレマシテ、色々之
  ニ付テハ議論モアリマセウガ、兎ニ角既ニ
  政府トシテ御發表ニナリ、實施スルコトニナ
  ツタノデアリマスルガ、之ニ伴フ大學院ノ組
  織ト云フコトニ付テハ、相當當局デ御考へ
  ニナリ、目下色々其ノ實現ノ具體化ニ付テ
  ハ御〓究ニナツテ居ルコトト思ヒマス、先
  日モ庄司君カラ此ノ點ニ付テハ御尋ネガア
  ツタヤウデアリマスガ、私ハ大學院ノ擴充
  ニ付テ平素考ヘテ居リマスコトハ、一應今
  出來マシタ學制ニ依ル大學ヲ卒業シタ者之
  ヲ大學院ニ收容シテ、眞ニ國家必要ノ要員
  ヲ養成スルト云フ使命カラ考ヘマスト、大學
  院ノ組織內容ト云フモノハ餘程私ハ思ヒ切
  ツタ權威アルモノニスル必要ガアルト思フ
  ノデアリマス、設備ノ上カラモ、ソレカラ
  ソレヲ指導スル人ノ上カラモ、總テノ點カ
  ラ見テ、權威アルモノニスル必要ガアル、同
  時ニ其ノ大學院ニ收容スベキ人ノ問題デア
  リマス、是ハ大學ヲ出タカラ入リタイ人ヲ入
  レル是デハ何ニモナラヌト思ヒマス、寄口
  大學ヲ出テカラ、官廳ナリ民間ナリソレ
  ゾレノ職場ニ就イテ、一通リ實務ニ就イタ
  人ノ中カラ極メテ嚴選ヲシテ、サウシテ將
  來國家トシテ必要缺クベカラザル要員ヲ養
  成スルト云フ建前デ、一タビ實務ニ就イタ
  人ノ中カラ凡ユル角度カラ-ドウ云フ方
  法デヤルカト云フコトハ非常ニ難カシイト
  思ヒマスガ、併シ相當嚴選ノ制度ヲ設ケテ、
  其ノ嚴選サレタ人ヲ收容シテ、國家ノ要員
  ヲ養成スルト云フ建前デ行カナケレバナラ
  ヌト私ハ固ク信ズルノデアリマスガ、此ノ
  點ニ對スル御所見ヲ承リタイト思ヒマス、同
  時ニ大學院ノ〓究ニ關スル經費デアリマス、
  私ハ是ハ國家ガ全部負擔シテ、本當ニ國家
  ノ爲ニ必要缺クベカラザル、其ノ人ノ榮達
  トカ何トカ云フコトデハナイ、モウ國家存
  立上缺クベカラザル人物ヲ養成スルト云フ、
  恰モ陸海軍大學ノヤウナ建前デ行クノデア
  リマスカラ、私ハ國家ガ全部ノ經費ヲ負擔
  シテ、サウシテ思ヒ切ツタ大規模ナ組織デヤ
  ツテ行ク、權威アルモノニシテ行クト云フ
  必要ガアルト思フノデアリマス、此ノ點ニ
  付テ文部當局トシテハ相當ノ意氣込ミヲ持
  ツテ居ラレルト思ヒマス、學制改革ニ伴フ
  大學院ノ組織ニ付テハ、昨年ノ豫算總會ニ
  於テモ、私文部當局ニ希望ヲ述べ、且ツ御
  尋ネヲ致シタノデアリマスガ、今日學制改
  革ヲ致シ、大學院ヲ擴充スルト云フ肚ガ決
  マツテ居ル以上ハ、相當私ハ思ヒ切ツタ方
  向ニ文部當局トシテハ進ンデ行カレルモノ
  ト內心思ツテ居リマスガ、之ニ付テハ企畫
  院ノ當局ニ於テモ其ノ點ニ付テ十分ノ御理
  解ガナケレバナラヌ、斯樣ニ思ヒマスノデ、
  此ノ機會ニ企畫院當局ノ御所見ヲ伺ヒタ
  イ、大學院ノ擴充ニ付テ、固ヨリ具體的ノ
  事柄ハ、文部當局ニ於テモ、企畫院ニ於テ
  モ御〓究中ノコトト思ヒマスカラ、其ノ考
  ヘニ付テ、御所見ヲ承リタイト思ヒマス

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• 048・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　昨日モ庄司委員カラ大學
  院ト云フ問題デ御質問ガゴザイマシタ、其
  ノ際ニモ御答ヘ申シタ通リ、今囘政府デ考
  ヘテ居リマスル〓究者、又ハ〓究者ノ後繼
  煮或ハ〓授ノ後繼者ト云フモノノ養成ト
  云フ機構ハ、必ズシモ大學院トハ申スカ申
  サナイカ分ラナイノデアリマス、兎ニ角ア
  ノ發表ノ仕方ガ拙カツタト存ジマスガ、現
  在ノ大學院ヲソレニ向ツテ利用スル場合モ
  アルカモ知レマセヌ、又別ナ機構トシテ構
  成スル場合モアルカモ知レマセヌ、唯單ニ
  大學院ノ擴充ト云フ趣旨デ今囘計畫ヲシタ
  ノデハゴザイマセヌ、場合ニ依リマスト
  從來ノ大學院ヲ其ノ儘從來ノ大學院トシテ
  又適當ナ利用ノ途ガ十分アリマスノデ、ソ
  レハ適當ニ利用スルコトト致シマシテ、別個
  ニ國家ノ手ニ依ル〓究者ノ養成所トシテ、
  何等カノ施設、機構ヲ設ケルコトニ相成ル
  カモ知レマセヌ、其ノ邊ノ所ハ目下考究シ
  テ居ル次第デアリマス、今囘ノ計畫ハ只今
  御話ガアリマシタガ、全ク國家ニ於テ必要ナ
  ル〓究者ヲ國家ノ手ニ於テ養成シヨウト云
  フ計畫ナノデアリマシテ、ソレニ付キマシ
  テハ無論ソレニ收容スベキ人々ノ嚴選ヲ必
  要トスルコトハ、是ハ申スマデモナイコト
  デアリマス、併シ其ノ人ヲ選ビマスニ付テ
  千、單ニ帝國大學ノ卒業生デアルトカ、何
  處ノ大學ノ卒業生デナケレバナラヌト云フ
  制限ハ無論アリマセヌ、何處デモ適當ナ人
  ガアレバ宜シイト云フコトニ今一應考ヘテ
  居リマスノト、又一應實務ニ從事シタ後ニ
  〓鑚ニ從事スルコトヲ適當トスル學問ナド
  ニ付キマシテハ從事シタ者ヲモ採用致シマ
  ス、又學問ノ種類ニ依リマシテハ、現在ノ
  大學ヲ經タ其ノ儘連續スルコトヲ最モ適當
  トスルモノモアリマスノデ、ソレニ付テハ
  其ノ儘致スト云フヤウナ趣旨ニ於キマシテ、
  十分ニ適當ナ機構ヲ設ケテ人選ヲ致シタイ
  ト思フノデアリマス、隨ヒマシテ又其ノ〓
  究ノ費用、又或ル極メテ限定サレタ範圍デ
  ハアリマスルガ、生活ノ費用等モ國家カラ
  支給スルト云フコトニ是非トモ致シタイト
  考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレニ付キマ
  シテハ、サウ云フ〓究機構、〓究者養成ノ
  機構ニ向ヒマシテハ新シク指導者ノ陣容ヲ
  建直サナケレバナラヌノデアリマスルガ、
  目下ノ所デハ先ヅ最高ノ指導者ハ今ノ大學
  ノ〓授ト或ハ其ノ他ノ〓究指導者デアリマ
  セウガ、其ノ手傳ヒヲスル助〓授級ノ人ト
  云フヤウナモノヲ相當擴充シナケレバナラ
  ヌノデ、其ノ點ニ付テハ十分ニ今留意ヲシ
  テ居ル次第デアリマス、又ソレト同時ニ施
  設ノ擴充ト云フ事柄モ當然來ルベキコトデ
  アリマスガ、先ヅ差當リハ只今大學ノ方面
  ニアリマスル〓究施設ヲ重點的ニ集中スル
  ト云フコトニ於テ一應ハ間ニ合フ點ガ多々
  アリマスルノデ、直グサマ大擴張ト云フヤ
  ウナ運ビニハ參リマセヌケレドモ、漸次此
  ノ養成機構ノ整備シマス間ニ於テハ、十分
  只今御話ノアリマシタヤウニ權威アル〓究
  者養成所トシテ又〓究機關トシテノ實ヲ擧
  ゲルヤウニ內部ノ設備其ノ他ニ付テモ擴張
  ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス

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• 049・亀山孝一

  ○龜山政府委員　只今中村サンカラ大學院
  制度ニ關シテ企畫院ガ如何ナル協力ヲスル
  カト云フヤウナ御趣旨ノ御質問デアツタト
  思ヒマス、其ノ意味デ御答ヘ致シマス、只
  今文部大臣モ御話ニナリマシタ通リ我ガ國
  ノ學術文化ノ高度ノ進展ヲ圖リマスル爲
  ニ、大學院制度ト云フモノノ擴充整備ヲ圖
  ルト云フコトハ洵ニ現下ノ時局ニ鑑ミ最モ
  緊要ナコトデアルト存ジマス、デアリマス
  以上ハ、企畫院ニ於キマシテモ、此ノ大學
  院制度ノ爲ニハ十分ニ〓究ヲ致シ、又之ニ
  對シマシテモ文部省ト一〓ニナリマシテ十
  分是ガ推進ニ付テ努力ヲ致シタイ、斯樣ニ
  考ヘテ居リマス

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• 050・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　色々文部大臣カラモ企畫
  院當局カラモ伺フコトガ出來マシテ仕合セ
  デアリマスガ、尙ホ此ノ大學院ト云フ名前
  ヲ使フカ、使ハヌカハ別問題ト致シマシテ、
  最高〓究機關ノ方法トシマシテハ、綜合〓
  究ノヤウナ行キ方ト、分科〓究ノ行キ方ト
  アルヤウニ思ヒマスガ、例ヘバ東京ノ帝國
  大學內ニ設置セラレル最高〓究機關ガ凡ユ
  ルモノノ〓究ヲソコデヤルト云フコトハ事
  實不可能デアリ、且ツ又サウ云フコトニナ
  リマスト非常ニ私ハ此ノ目的ヲ眞ニ達シ得
  ル深イ掘下ゲタ十分ノ〓究ヲ遂ゲルコトガ
  困難ナヤウニ思ヒマス、隨テ各大學ノ中ニ
  此ノ最高〓究機關ヲ設ケルトスルナラバ、
  ソレ〓〓ノ部門ヲ別ケテ部門別ニ徹底セル
  行キ方ヲスルト云フコトガ必要ダト思ヒマ
  スルコトト、ソレカラ先年豫算總會デ砂田
  重政サンガ頻リト其ノ議論ニナリマシタガ、
  大學院ノ助手ノ待遇ナドハ非常ニ低イラシ
  イ、八十圓カ九十圓ノ待遇デ甘ンジテ助手
  ヲヤツテ〓究ニ從事シテ居ル、斯ウ云フノ
  デスガ、今度ノ最高〓究機關ノ組織ニ付テ
  ハ私ハ指導スル指導ノ擔當者及ビソレニ協
  力ヲスル助手ナドノ人件費ナドニ付テモ、
  是ハ思ヒ切ツタ行キ方ヲシテ本當ニ身ヲ捧
  ゲテ指導〓究ニ當リ得ル建前ヲ採リマセヌ
  下、他ニ著述ヲシナケレバ其ノ〓授ハ〓ツ
  テ行ケナイ、出版ヲシナケレバナラヌト云
  フヤウナコトデナシニ、本當ニモウサウシ
  タヤウナコトハ完成サレタ〓究ヲ發表スル
  目的デアルモノニ付テハ格別デアリマスガ、
  モウ專心ソレニ沒頭シテヤツテ行ケルヤウ
  ナ、待遇ノ上ニ於テモ、ヤハリ設備ト同樣
  ニ思ヒ切ツタ豫算ヲ取リ得ルト云フコトデ
  ナケレバ、眞ニ此ノ使命ヲ達シテ國家ノ必
  要ヲ滿タシテ行クト云フコトハ困難デアル
  ト思ヒマスカラ、希望的ニ之ヲ申述ベテ、
  尙ホ御所見ガアレバ承リタイト思ヒマス

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• 051・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　大學院ノ構成ヲ部門制ニ
  致スベシト云フ御意見、是ハ十分ニ考慮シ
  ナケレバナラヌ問題ト存ジマス、何レ機構
  ノ考究ニ當ツテハ十分注意ヲ致シマス、又
  〓究者自身、少クトモ〓究指導者ニ對シテ
  ノ優遇ト云フ問題ハ、是ハ十分考究シナケ
  レバナラズ、又多年熱望シテ居リナガラマ
  ダ今日マデ色々ナ事情カラ致シマシテ十分
  ニ實現シテ居ナイ點デゴザイマシテ、將來
  十分ニ出來ルダケノ力ヲ盡シタイト考ヘテ
  居リマス、唯此ノ際、私個人ノ體驗ヲ申上ゲ
  マストヲカシイ御答辯ニナルカモ知レマセ
  ヌガ、大學ノ〓授ハ洵ニ薄給デゴザイマス、
  是ハ國家トシテ適當ニ面倒ヲ見テヤラナケ
  レバナラヌト思ヒマスケレドモ、一面ニ於
  テ大學ノ〓授ガ國家カラ任サレタ〓究施設
  ヲ自由ニ使ツテ居ルト云フ點ハ如何ニ惠マ
  レテ居ルモノデアルカト云フコトハ大學〓
  授自身能ク考ヘテ貰ハナケレバナラヌ點デ
  アリマシテ、私共其ノ點ニ付テハ〓究ヲヤ
  リマス際ニ始終感謝ヲシテ居ツタノデアリ
  マス、サレバト申シテ何モ大學ノ〓授ヲ優
  遇シナクテ宜イト申スノデハアリマセヌケ
  レドモ、假ニ大學〓授ガ二百圓シカ俸給ヲ
  貰ツテ居ナイトシテ二百圓デ〓究シテ居ル
  ノデハナイ、月給ハ二百圓デモ一年ニ數千
  圓數万圓ノ金ヲ使ツテ、自分ノ好ム道ニ
  携ハツテ居ルノデアリマス、一面ニ於テハ
  無論國家トシテ唯〓貧ニ甘ンジロト云ツテ
  放ツテ置クコトハ出來マセヌ、十分ニ優遇
  ノ途ヲ講ジナケレバナリマセヌケレドモ、
  大學〓授ガ專心〓究ニ從事シヨウト云フナ
  ラバ其ノ點ニ付テハ又大イニ感謝スル氣持
  デヤツテ貰ヒタイト考ヘルノデアリマス、
  其ノ點大學〓授ガ一般ノ俸給ヨリ少イト云
  フコトト絡ミ合ヒマシテ動モスルト認識ヲ
  脫却スル點ガアルノヂヤナイカト云フコト
  ヲ私カニ懸念シテ居ルノデアリマシテ、此
  ノ際サウ云フ考ヘヲ持ツテ、私自ラハ〓究
  ニ從事シテ居ツタト云フコトダケヲ申上ゲ
  テ置キタイト存ジマス

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• 052・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　先程庄司君カラ靑年學校
  ノ問題ニ付テ色々御質問ガアリマシタ、私
  モ少シ御尋ネ致シタイト思ツテ居ツタノデ
  アリマスガ、大分盡サレマシタノデ一點ダ
  ケ文部當局ニ伺ヒタイト思ヒマス、ソレハ
  私立靑年學校ノ指導ニ付テデアリマスガ、
  私立靑年學校ニ付テハ隨分優秀ナ成績ヲ擧
  ゲテ居ル所ト、全ク問題ニナラヌヤウナ所
  ト甚ダシク差ガアリ過ギルヤウニ思フノデ
  アリマス、ソコデ何トカ、生產ニ從事シテ
  居ル產業戰士タル靑少年ヲ鍊成スル此ノ私
  立靑年學校ガ、唯認可ヲ受ケテ作ツテサヘ
  置ケバ言ヒ譯ハ通ルト云フヤウナ放任ノ狀
  態ニ置クト云フノハ非常ニ間違ツタコトデ
  アル、國家的ニ此ノ點ハ十分力ヲ添ヘナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、是ハモウ
  工場側ト云フカ、サウシタ人達ノ認識如何
  ニ依ツテ非常ナ差ガアルノデアリマス、徵
  用工等ニ付キマシテモ先般モ議員奉公隊デ
  各工場ヲ見マスト、其ノ工場ノ勞務係ナリ
  擔當者ナリノ指導如何ニ依ツテハ立派ニ成
  績ヲ擧ゲテ居ル所モアルシ、ソレカラ其ノ
  擔當者ガ自分ノ工場ハ管理工場デアツテ徵
  用エヲ權力ニ依ツテ使ヘルノダト云フヤウ
  ナ認識ノ不十分ナ所ニ於テハ非常ニ成績ガ
  惡イ、評判モ惡イ、不平モ多イ、斯ウ云フ
  現狀ヲ具サニ私共見タノデアリマスガ、靑
  年學校ニ於テモ同ジ感ジヲ持タザルヲ得ナ
  イノデアリマス、之ニ付テハ現學制度カ何
  カ、指導監督ニ關スルシツカリシタ機關ヲ
  設ケテ、大事ナ年齡ト大事ナ立場ニ居ル是
  等ノ產業戰士ノ鍊成ヲスル靑年學校ニ付
  テ、何等カ私ハ考ヘルベキデアルト斯樣ニ
  存ズルノデアリマスガ、文部大臣ニ於テ何
  カ御計畫ニナツテ居リマスカドウカ、若シ
  御計畫ガナイトスルナラバ此ノ點ニ付テ、
  一ツシツカリ文部大臣ニハ力ヲ注イデ戴キ
  タイト思フノデアリマスガ、此ノ點ニ付テ
  一應承リタイト思ヒマス

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• 053・藤野惠

  ○藤野政府委員　只今私立ノ靑年學校ノ實
  情トシテ非常ニ良イモノガアルガ、一 一二、
  於テ甚ダ申譯的ナ學校モナイコトハナイ、
  是ガ指導監督ニ付テ一層强力ナラシメ、眞
  ニ產業靑年ノ指導上遺憾ナキヲ期スル上ノ
  意圖ガナイカドウカト云フ御質問デアリマ
  シタ、洵ニ私共御趣意ヲ承リマシテ、今日
  ノ戰時下ニ於キマスル殊ニ產業戰士ノ靑年
  指導鍊成ノ上ニ大事ナ點デアルト考ヘルノ
  デアリマス、御述ベノゴザイマシタヤウニ
  此ノ點ハ全ク工場經營ノ責任者、或ハ管理
  者ト云フヤウナ向キ〓〓ガ靑年〓育ニ認識
  ヲ十分ニ持ツテ戴クト云フコトガ最モ大事
  ナ點デアルト考ヘマシテ、機會アル每ニ是
  等ノ方面ニ付キマシテハ其ノ理解ヲ求ムベ
  キ方策ハ隨分內面的ト申シマセウカ、或
  〓究會、或ハ協議會等モ屢〓地方ニ於テ開イ
  テ居リ、時ニハ「ブロック」式ナ合議モ開ク
  ト云フヤウナコトモ致シテ居ルノデアリマ
  ス、同時ニ御承知ノヤウニ此ノ靑年學校ノ
  指導監督ニ當リマスル機關トシテ、地方ニ
  靑年〓育官ノ外ソレ〓〓ノ機關ヲ設ケマシ
  テ、ソレニ當ツテ居リマスルガ、最近府縣
  ニ於テ是等ノ靑年〓育官等ヲ以テ致シマシ
  テハ不十分デアルト考ヘマシテ、新タニ靑
  年學校ノ視學委員ト云フ制度ヲ設ケマシテ、
  縣下ノサウシタ方面ノ有識ノ方々ニ御參加
  ヲ願ヒ靑年〓育官ノミナラズ、是等ノ視學
  委員ノ方々カラモ靑年學校ヲ御視察ヲ願ツ
  テ、現地ニ付テ其ノ指導〓育ノ狀況ヲ視テ戴
  キマシテ、其ノ結果ヲ又縣廳ノ方ニ申出テ
  戴キマシテ之ヲ更ニ靑年〓育官ガ具體的ニ
  指導上ノ一ツノ據リ所トシテヤツテ行ク、
  斯ウ云フ方法モ實ハ致シテ居リマス、是一
  當面ノコトデゴザイマシテ、御指摘ノ問題
  ハ非常ニ重要ナ靑年〓育ノ根本ニ觸レタ問
  題ダト思フノデアリマス、此ノ點午前ニモ
  大臣カラ一應御說明ガゴザイマシタヤウ
  ニ文部當局ト致シマシテハ靑年學校〓員
  養成所等ノ將來ノ擴充計畫ト相伴ヒマシテ、
  靑年學校〓育全般ニ付テ十分檢討モ致シ、
  御所論ノヤウナ點ニ付テハ遺漏ナイヤウニ
  致シタイト考ヘテ居リマス

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• 054・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　此ノ問題ハ此ノ程度ニ致
  シマシテ、次ニ私伺ツテ置キタイト思ヒマス
  ルコトハ新制度ノ師範學校ガ創設サレマシ
  テ、舊制度ノ師範學校卒業者ニ對シテハ各
  師範學校ニ〓究科ト云フモノヲ併置シテ再
  〓育ヲ施ス、此ノコトハ豫テカラ文部當局
  ノ明カニセラレテ居ル所デアリマスガ、私
  共ノ伺ヒマス所ニ依ルト、此ノ〓究科ノ組
  織ヲ以テ一體何時マデノ間ニ再〓育ガ完了
  スルノデアラウカト云フ點ガ一般〓育者ノ
  間ニモ非常ニ不安ニ思ハレテ居ル所デアリ
  マス、ダラ〓〓長ク非常ナ長期ニ亙ルノデ
  ハナイダラウカト云フ點ガ懸念サレテ居ル
  ノデアリマシテ、現在文部當局ハ此ノ舊制
  度ニ依ル師範學校卒業者ノ再〓育ヲ各師範
  學校ニ併設シタ〓究科ニ依ツテドノ位ノ期
  間ニ完了スルト云フ御見込ニナツテ居リマ
  スカ、其ノ點ヲ事務當局カラデ結構デアリ
  マスカラ御伺ヒシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=54

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• 055・藤野惠

  ○藤野政府委員　旣ニ師範學校終了、若シ
  クハ其ノ他ノ學歷ヲ經マシテ現ニ國民學校
  〓員トナツテ居ル人々ニ付キマシテハ再〓育
  ヲ行フノデアリマスルガ、是等ハ實ハ新制
  師範學校卒業者トノ俸給ノ釣合等モ考慮致
  シマシテ、大體最近年度ニ於ケル卒業者カ
  ラ再〓育ヲヤツテ行ク、詰リ具體的ニ碎イ
  テ申シマスト、十七年度卒業者ト云フモノ
  ハ直グニヤラナケレバナラヌ、斯ウ云フヤ
  ウニ考ヘテ居リマス、只今ノ計畫ト致シマ
  シテハ五箇年計畫ヲ立テテ居リマス、五
  箇年計畫デ每年約一万二千程度ヲ再〓育致
  シマシテ、總數約六万程度ノ人々ニ再〓育
  ヲ施シテ行ク、是デ以テ一ハ學力ノ强化ヲ
  圖リ、指導力ヲ高メテ參リ、一方ニハ俸給
  支給上ノ權衡ヲ保ウヤウニ致シタイ、斯ウ
  云フ計畫ヲシテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=55

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• 056・中村梅吉

  ○中村(梅)委員　ソコデ私ノ御尋ネシタイ
  ト思フコトハ、先程モ庄司君カラデシタカ
  御質問ガアツタコトニ關聯ヲ致スノデアリ
  マスガ、師範大學ノ新タナ制度ヲ創設サレ
  マスルニ付テ、此ノ師範大學ノ計畫內容ト
  言ヒマスカ、是ガ或ル程度具體化シテ御發
  表出來ルノデアリマシタナラバ承リタイ、
  ソレカラ師範大學ニ收容スベキ人ノ問題、
  是ハ私ハヤハリ〓育者トシテ幼少ノ際ヨリ
  志望ヲ持ツテ發足ヲ致シタ、「スタート」ヲ
  切ツタ人、卽チ今度ノ新制度ニ依ル或ハ舊
  制度ニ依ル師範學校ノ卒業者デアツテ、國
  民學校ニ現ニ〓鞭ヲ執ツテ居ル、斯ウ云フ
  ヤウナ人ノ中カラ優秀ナ者ヲ師範大學ニ收
  容シテ、更ニ中等、高等ノ〓育者ヲ養成ス
  ルト云フ建前ヲ取ルコトガ最モ適切デアル
  ト思フノデアリマス、併シ是ノミニ依ルト
  云フコトハ固ヨリ不可能ノコトデアラウト
  思ヒマスシ、一般カラノ門戶ヲ閉ザス必要
  モナイコトデアリマスカラ、一般カラ募集
  スルコトモ併用セラルベキデハアリマセウ
  ケレドモ、併シ主トシテ〓育者タラントス
  ル希望ニ燃エテ「スタート」ヲ切ツタ師範學
  校卒業者ノ中カラ出來ルダケ多ク、寧ロ大
  部分ハ其ノ方面カラ收容スベク師範大學制
  度ヲ採用スルノガ私ハ〓育ヲ一貫セシムル、
  初等〓育カラ中等〓育、高等〓育ト一貫セ
  シムル上ニ於テ指導者ノ精神的一貫ヲ期ス
  ルト云フ目的ヲ果ス上ニ於テ必要デアルト
  思フノデアリマスガ、此ノ點ニ付テハドウ
  云フヤウニ目下御考ヘニナツテ居ラレルデ
  アリマセウカ

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• 057・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　最高ナル〓育者養成ノ機
  關ノ機構ニ付キマシテハマダ此處デ十分
  御話ヲスルマデニ至ツテ居ナイコトヲ遺憾
  ト致シマスガ、兎ニ角是ハ昨年デアリマシ
  タカ豫算總會カデ御質問ノ時ニモ御答ヘ致
  シマシタ通リ、〓育者ノ養成ト云フ體制ハ
  普通ノ學校體制トハ別ニ組織致シタイト云
  フコトダケハ考ヘテ居ルノデアリマス、隨
  ヒマシテ殊ニ此ノ專門學校程度ニナリマシ
  タ新制師範學校ノ卒業者ト云フモノハ最高
  〓育機關ニ入學セシムベキ者ノ重要ナルモ
  ノト考ヘテ居ルノデアリマス、又ソレダケ
  ノ資格ハ十分出來ルヤウニ〓育モ致シタイ
  ト云フヤウニ考ヘテ居リマス、唯其ノ際ニ
  モ御話ガアリマシタ通リニ、全然他ノ方カ
  ラノ者ヲ入レナイデ濟ムカ済マナイカト云
  フコトニナリ、又場合ニ依リマスト他ノ方
  面カラ入レルコトヲ必要トスル學科ナドモ
  アラウカト思ヒマス、其ノ邊ノ所ハ十分ニ考
  慮致シタイト考ヘテ居ルノデアリマスガ、
  兎ニ角國民學校〓員ト云フモノガ從來ノ如
  ク唯國民學校〓員トシテノミ一生涯居ナケ
  レバナラナイト云フヤウニ考ヘラレルヤウ
  ナコトハ、此ノ際〓員養成ノ組織ト云フコ
  トヲ考ヘル際ニ併セテ打破シタイト考ヘテ
  居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=57

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• 058・松岡俊三

  ○松岡委員長　樋口君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=58

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• 059・樋口善右衞門

  ○樋口委員　私ハ靑年學校ノ〓育振興ニ關
  シ、尙ホ其ノ他二、三ノ點ニ付テ御質問致
  シタイト思ヒマス、先程庄司君カラ色々御述
  ベニナリマシタ通リ、現在ノ靑年ハ第二ノ
  國民ト云フヨリハ寧ロ第一ノ國民トシテ此
  ノ戰力增强ノ上ニモ又生產倍加ノ上ニモ最
  モ此ノ靑年ニ期待セラレル所ガ多イノデアリ
  マシテ、是ハ恐ラクハ此ノ戰時下ニ於ケル趨
  勢カラ見マスレバ、世界中サウデアルト思フ
  ノデアリマス、「ドイツ」ハ靑年ノ〓育ニ對シテ
  戰前ニ於テ既ニ一億五千万圓ノ豫算ヲ計上
  シテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス、
  ソレガアツテコソアノ戰敗「ドイツ」ガ今ヤ
  世界ノ勝利者タラントスル優越ナル戰鬪力ヲ
  以テ國力ヲ維持シテ居ルノデゴザイマス、
  此ノ戰鬪力ハ何レモ戰前ニ於ケル靑年ノ〓
  育、指導ノ結果ニ外ナラヌコトハ論ヲ俟タ
  ヌト思フノデアリマス、是アツテ此ノ靑年
  ニ望ム所實ニ大ナル所以デアリマス、先般
  全國靑年學校長會議ニ於ケル東條首相ノ激
  勵ノ御演說ヲ新聞デ拜見スルニ、靑年學校
  ノ職員諸君ハ之ヲ吉田松陰先生ノ例ニ御取
  リニナリ、サウシテ又生徒ニ對シマシテハ第二
  ノ豫備軍、豫備兵團デアルト云フ風ニ激勵
  ヲ致サレテ居リ、又其ノ必要性ヲ說カレテ、
  學校長等ハ固ヨリ全國幾百万ノ靑年ハ、最
  モ信賴ヲスル總理大臣カラ自分等ノ使命ニ
  對シテ斯クモ重大ニ看做サレテ居ルト云フ
  コトヲ非常ナル感激ヲ以テ迎ヘテ、其ノ使
  命完遂ヲセントスル彼等ノ氣持ハ、全クア
  ノ新聞ヲ見タ時ニ如何ニモ我ガ國ノ將來ニ
  新シキ旺盛ナル力ガ展開セラレルカノヤウ
  ナ風ニ察セラレタノデアリマス、此ノ職員
  ヲ初メ幾百万全國ノ靑年ノ感激ヲ一時ノ感
  激ニ止メズシテ、此ノ感激ヲ活カシテ、ソ
  シテ茲ニ戰時下ニ於ケル豫備兵團ノ靑年ヲ
  シテ、宜ク其ノ使命ヲ完遂スベク之ヲ指導、
  〓育スルコトガ、激勵ヲ致シマシタ所ノ政
  府ノ責任デハナイカト私ハ思フノデアリマ
  ス、又ソレアル意味ニ於テ私ハ御激勵ニナ
  ツタト思フノデアリマス、然ルニ本年ノ豫
  算ヲ眺メマシテモ、先程庄司君ハ靑年〓育
  費ガ少イ、數百万圓ノ計上ノ外ナイヂヤナ
  イカト言ハレタガ、併シソレハ前年カラノ
  コトデゴザイマシテ、本年ノ豫算面カラ
  私共ガ見マスルト、僅ニ五万五六千圓ノ新
  シキ豫算ガ計上ヲ見タノデゴザイマス、
  方デ第二ノ豫備軍デアルト何百万ノ靑年ヲ
  激勵セラレ、サウシテ此ノ感激ヲ旨ク收拾
  シテ、靑年ノ指導、〓育ヲシテ其ノ使命完
  遂ノ爲ニ資セントスル〓育ガ政府ノ此ノ貧
  弱ナル豫算ヲ以テ果シテ出來ル御信念ガア
  ルカドウカ、口ニハ靑年ヨ立テ、奮起セヨ、
  蹶起セヨ、斯樣ニ激勵ヲセラレテ居リ、況
  ンヤ政府首腦ノ總理大臣カラ言ハレタル本
  年ノ豫算ハ、之ニ對シテ相當割期的ナモノ
  ガ現ハレルコトヲ期待シテ臨ンダノデアリ
  マスルガ、如何ニモ此ノ豫算ヲ見テ、聊カ
  ドコロデハアリマセヌ、大イニ失望ヲ致シタ感
  ガアリマスルガ、之ニ付キマスル文部大臣ノ御
  意見果シテ是デヤリ得ルヤ否ヤ、御信念アル
  御答辯ヲ願ヒタイト存ズルノデゴザイマス
  尙ホ只今庄司君ノ質問セラレタルコトニ
  關聯致シマシタコトヲ先ニ御尋ネ致シマス
  ガ、靑年學校〓員俸給ノ國庫負擔ノ件デゴ
  ザイマス、是ハ旣ニ義務制ニナツタ當時ヨ
  リ每議會本會及ビ各委員會ニ於テ政府トノ
  間ニ色々心配ヲシテ來タノデ、曩ニ御答ヘ
  ニナリマシタヤウニ、靑年學校ガ義務制ニ
  ナツテ居ラヌカラ云々ト云フ御言葉ガゴザ
  イマシタガ、私共ハサウ云フコトニ信ジテ
  居ツタノデゴザイマス、又御尤モダト思ツテ
  居ツタノデアリマスルガ、國民學校ノ方ノ
  高等科ハ義務制デアリマセヌケレドモ、之
  ニハ昨年カラ國庫負擔デ縣費支辨ニナツテ
  居ルノデアリマス、是ハドウ云フ譯デ國民學
  校ノ〓育費ト靑年學校ノ〓育費トガ斯ウ云
  フ扱ヒヲ受ケテ居リマスカ、之ニ付テ今少シ
  ク詳細ナル御答ヘガ願ヒタイノデアリマス
  ソレカラ次ニ靑年學校〓員養成所ノ昇格
  ノ問題デアリマスガ、先程庄司君ノ質問
  ニ對シテノ御答ヘハ、今調査ヲシテ明年
  度上程スルト云フヤウナ御答ヘデアリマ
  シタ、昨年國民學校ノ〓育上師範學校ノ
  專門學校昇格ノ當時ニ此ノ質問ガ各方面
  デ當局トノ間ニ交ハサレタ記憶ハアリマ
  スガ、同時ニヤルヨリモ寧ロ先ニヤラネバ
  ナラヌ事情ノアルモノニ對シテ、師範學校
  ハ各府縣ニ一校ヅツアルケレドモ、此ノ養
  成所ハ府縣每ニ置クト云フコトハ數ノ上カ
  ラ考慮ヲ要スルカラ、是ハドウシテモ今一
  年調査ヲスルト言ハレマシタガ、是モ尤モ
  ナリトシテ居ル、其ノ調査ハ私ハ十七年度
  ニ出來テ居ラネバナラヌト思フノデアリマ
  スガ、ソレガ今申上ゲタ調査ト言ハレル
  コトニ付テ、果シテ只今ノ御答辯通リ十九
  年ニ實現出來ルヤ否ヤ、昨年ノ御答辯カラ
  見ルト聊カ之ニ不安ヲ持ツモノデアリマス
  ガ、此ノ點ヲ明確ニ御答ヘヲ願ヒタイト存ズ
  ルノデゴザイマス
  ソレカラ靑年學校ノ專任校長、專任職員ト
  云フコトデ庄司君ノ質問ニ御答ヘニナリマ
  シタガ、是ハ何時モ質問ニ上ルノデアリマ
  スガ、私ハ此ノ靑年學校ト云フモノニ付テ、
  文部省ガ果シテ〓育上最モ重要ナリト考
  ヘテ居ルカドウカト云フコトヲ私ハ疑ハザ
  ルヲ得ナイ、先程庄司君カラモ、靑年學校
  〓員ノ養成所ガ一師範學校ノ片隅ニ置カレ
  テ居ルト云フヤウナ、居候扱ヒヲ受ケテ居
  ルト言ハレマシタガ、〓員養成所ニ於テサ
  ウデアリマスガ、靑年學校ノ現狀ト云フモ
  ノハ、名ハ靑年學校デアリマスケレドモ、
  全國ニ約一万六千アルト思ヒマスガ、其ノ
  中大部分ハ何レモ以前ノ小學校デアル國民
  學校ニ併置ヲセラレテ居リマシテ、其ノ校
  長、其處ノ訓導ガ許サレタル資格ノ上デ校
  長タリ訓導タリ得テ〓ヘテ居ルト云フヤウ
  ナ次第デ、一面ニハ靑年ヨ〓〓ト言フ傍ラ、其
  ノナサレル所ヲ見マスルト、全ク繼子扱ヒ
  ナリ、ドウデモ宜シト云ツタヤウニ見エル
  場合ガ多イノデアリマス、何トナレバ此ノ
  〓ヘル所ノ先生ハ固ヨリ師範學校ヲ出テ來
  タル先生デ、今日專門學校ニ昇格セネバナ
  ラヌトマデ此ノ師範學校ノ程度ヲ見テ居ラ
  L、畫一、形式的ナル〓育ヲ本旨トシテ〓
  ヘラレタル師範學校カラ出タノデアリマス、
  之ニ靑年〓育-元氣潑刺タル國家ノ中心ヲ
  擔フ靑年ヲ〓ヘルダケノ勇氣ト覇氣ト信念
  ガアルカ、私ハ疑ハザルヲ得ヌノデアリマ
  ス、隨テ其ノ〓授ノ仕方タルヤ、殆ド尋常
  小學校ノ子供ヲ〓ヘルヤウナ、柔弱ニシテ
  且ツ形式的、其ノ場逃レノ〓育ヲ致シテ居
  ルガ爲ニ、其ノ靑年〓育ノ成績タルヤ極メ
  テ擧ラヌ、只今中村君カラモ善イ所モアル
  ガ、惡イ所モアルト云フ御心配ガアリマシタ
  ガ、果シテ文部省ハ之ヲ監督シテ居ルヤ否ヤ、
  私ハ此ノ點ニ付テ甚ダ疑ヒヲ存スルノデアリマ
  ス、デアリマスカラ、此ノ專任校長、專任
  職員ノ問題モアルガ、更ニ之ニ續イテ國民
  學校ノ普通科ノ兒童ト共ニ〓育ヲスルト云
  フヤウナヤリ方ハ、靑年〓育ノ本旨デハナ
  イ、然ルニ其ノ兒童ノ机ト腰掛ヲ借リテ、
  其ノ兒童ノ〓室デ之ヲ〓ヘテ居ルト云フ現
  狀ガ多イノデアリマス、是等ハ何レモ、靑
  年ニ靑年ラシキ〓育ヲスル爲ニハ、其ノ學校
  タルヤ又ソレニ相應シクナケレバナラヌ、
  之ニ依リマシテ一町村一校ノ獨立校ヲ置イ
  テ、サウシテ〓土ニ留マル彼等靑年ヲシテ
  一學窓ノ下ニ學バセテ置クト云フコトガ、
  又將來其ノ町村ノ自治ヲ運行スル上ニ於テ
  非常ナル效果ノアルコトハ經驗ニ徵シテ明
  カデゴザイマス、仍テ此ノ校長及ビ專任〓
  師獨立校舍ト云フヤウナモノニ付テ、今
  文部省ガ見テ居ラレル所ノ御意見ヲ私ハ承
  リタイト思フ、ドウシテ行クノカ、又如何
  ナル方法ヲ以テ之ニ臨ンデ居ラレルノカト
  云フコトヲ承ツテ置キタイト存ズルノデア
  リマス、以上ハ庄司君ノ御質問ニ關聯シタ
  質問デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=59

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• 060・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　靑年學校ガ、其ノ成立ノ
  歷史的事情カラ致シマシテ、今日尙ホ不十
  分ナル點ガ多方面ニアルコトニ付テハ洵ニ
  遺憾ニ存ジテ居ルノデアリマス、斯樣ナル
  點カラ致シマシテ、掛聲バカリデ豫算其ノ
  他ニ於テモ甚ダ少イ、文部省ニ於テハ果シ
  テ靑年〓育ト云フコトヲドウ考ヘテ居ルノ
  デアラウカト云フ御疑ヒノ出テ居リマスコ
  トニ對シテハ、洵ニ申譯ナイト存ジマスガ、
  靑年〓育ヲ重視スル點ニ付キマシテハ、他
  ノ學校、殊ニ國民學校ニ次イデ-ト申シ
  テハ又御叱リヲ受ケルカモ知レマセヌガ、
  國民學校同樣ニ此ノ靑年學校ガ如何ニ重大
  ナルモノデアルカト云フコトニ付テハ深ク
  考へ、出來ルダケ早ク靑年學校ヲアルベキ
  姿ニ立直シタイト考ヘテ居ルノデアリマス
  ガ、色々ナ事情カラシテ今日マデ其ノ點ニ手
  ガ〓リ兼ネマス-ト言ツテモ、是モ亦申譯
  ガアリマセヌガ、〓リ兼ネテ居ル點ハ甚ダ
  遺憾ニ存ジテ居ルノデアリマシテ、國民學
  校ノ問題カラ師範學校ノ問題ガ一應片付キ
  マシタ此ノ際、十八年度ニ於キマシテハ專
  ラ靑年學校ニ主力ヲ注イデ、改善ノ方途ヲ
  講ジタイト固ク決心ヲシテ居ルノデアリマ
  ス、隨ヒマシテ〓員養成所ノ改善等ニ付テ
  モ、實ハ師範學校改善ト同時ニ實行シタイ
  ト云フ企圖ヲ以テ色々調査モ致シマシタシ、
  又畫策モ致シタノデアリマスガ、種々ノ事
  情カラソレヲ本年同時ニ實行スル運ビニ相
  成リマセヌデシタノデ、是モ甚ダ遺憾ニ存
  ジテ居ルノデアリマスガ、是ハ靑年學校〓
  育ノ刷新振興ヲ畫策致シマスル際ニ、是非
  トモ實行致サナケレバナラヌ問題トシテ、十
  八年度中ニハ單ニ調査ヲ終ルト云フノミナ
  ラズ、必ズ計畫ヲ齎シテ、其ノ次ノ年度カ
  ラハ是非實現ヲスルヤウニ致シタイト云フ
  コトヲ固ク決心シテ居ルノデアリマス、其
  ノヤウナ點カラナリ色々ナ點カラ致シマシ
  テ、靑年學校ト云フモノニ對シテノ監督ガ、
  或ハ十分ニ行屆イテ居ナイ點モアリマセウ
  シ、又此ノ靑年學校ノ獨立性ニ對シテノ實
  現ガ甚ダ不十分デアルヤウナ點ノ多々アリ
  マスコトハ、深ク關心ヲ拂ツテ居ル點デ
  アリマシテ、出來ルダケ速カニ靑年學校〓
  育ノ體制ヲ整ヘマシテ、此ノ重要ナル靑年
  〓育ヲ一日モ速カニ其ノアルベキ姿ニ持チ
  返シタイト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、
  事務上ノ事柄ニ付キマシテハ政府委員ヨリ
  御答ヘ致サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=60

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• 061・藤野惠

  ○藤野政府委員　只今ノ樋口サンノ御尋ネ
  ノ靑年學校〓員ノ俸給費ニ對スル國庫負擔
  ハ殆ド每議會要望ルス所デアルガ、未ダニ實
  現セズ、其ノ點國民學校〓員ノ俸給ニ於テ、現
  ニ高等科ハ未ダ義務制實施ニ至ラズトモ、高
  等科〓員俸給ハ府縣費ニ移管サレテ居ル、
  彼レ此レノ間ニ取扱上差異ヲ生ズベキ如何
  ナル理由ガアルカト云フ御尋ネデゴザイマ
  スガ、此ノ點ハ實ハ私共モ根本トシテハ樋
  口委員ト全ク同樣ノ感ヲ持ツテ居ルノデア
  リマシテ、一日モ速カニ此ノ靑年學校〓員
  ノ俸給ノ縣費移管竝ニ國庫負擔ノ實現ヲ要
  望スル氣持ニ於テ變リガナイ次第デアリマ
  スルガ、御承知ノ如ク國民學校〓員俸給費
  ニ付テハ高等科〓員ハ府縣費支辨ニハ相成
  ツテ居リマスルガ、併シナガラ高等科ノ〓育
  ニ專ラ携リマスル〓員俸給ニ付キマシテハ
  國庫補助ノ對象ト致シテ居リマセヌ、除イ
  テ居ルノデアリマス、併シ御尋ネノ點ハ國
  庫負擔ノ對象トナルカナラヌカデハナクシ
  テ寧ロ府縣費移管ノ關係ニゴザイマスルガ、
  此ノ點ハ實際上事務的ニ此ノ高等科〓員ノ
  俸給費ヲ初等科〓員ノ俸給費ト分別致シマ
  シテ初等科〓員ハ府縣費ヲ以テ支辨シ、高
  等科〓員ハ町村費ヲ以テ支辨スルト云フガ
  如キ體制ヲ執リマスルコトハ事務上到底出
  來難イノデアリマス、此ノ關係ハ恰モ靑年
  學校ノ〓員ノ中義務制ニナツタ部分ダケノ
  〓員俸給ヲ府縣費ニ移シテ義務制ニアラザ
  ル部分ヲ町村ニ殘スト云フコトガ出來難イ
  ノト實ハ同樣ノ關係ニアルノデアリマス、
  全ク是ハ事務上ノ關係カラ致シマシテ、取
  扱上ノ困難ノ爲ニ、國民學校〓員ニ付テハ
  一應國民學校高等科ノ〓員モ同樣ニ府縣費
  移管ト相成ツテ居ル次第デアリマス、併シ
  ナガラ此ノ點ニ付キマシテハ午前中文部大
  臣カラモ一應御答ガゴザイマシタヤウニ出
  來得ル限リ速カニ靑年學校〓員ノ府縣費移
  管國庫負擔ト云フコトノ實現ヲ期シタイ
  ト云フ考ヘヲ以テ文部省ト致シマシテモ何
  處マデモ努力ヲ致スト云フ考ヘデ居リマス、
  此ノ點御諒承置キヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=61

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• 062・樋口善右衞門

  ○樋口委員　只今御答辯ヲ戴キマシタガ、
  職員ノ俸給ノ國庫負擔ノ件デアリマスガ、
  御同情ヲ願ヒタイト思ヒマスコトハマダ
  學校長ガ國民學校長ヲ兼ネテ居ル所ハ國民
  學校ノ方デ支給セラレルカラシテ苦痛ハナ
  イノデスガ、此ノ一万何千ト云フ中デ獨立
  專任校長ヲ持チ、專任職員ヲ持ツテ居ル所
  ハ町村負擔トナツテ居ルノデアリマス、專
  任ノ校長、或ハ專任ノ職員、是コソ靑年〓
  育上ニ於テ最モ大切ナル所ノ人ダト思フノ
  デアリマス、國民學校ヲ兼任シテ靑年學校
  ヲヤツテ居ル所ハ、靑年〓育ニ對スル熱意ノ
  程度ガ全ク違フノデハナイカト思フノデア
  リマス、殊ニ連日通年ノ通學ヲヤツテ居ル
  所ノモノハ國民學校ノ高等科ニ匹敵スルノ
  デアリマスガ、隣村ハ高等科ダカラ縣費デ
  來ル、靑年學校メ普通科ヲ以テ連日通年ヲ
  ヤツテ居ル町村ニ付テハ其ノ町村ノ負擔ニ
  ナツテ來ル、今日本省デモ分ツテ居ルト思
  ヒマスガ、靑年學校ニ於テ連日通年ノ普通
  科ヲヤツテ居ル所程靑年〓育ニ熱意ヲ持ツ
  テ居ルノデアリマス、靑年ニ直チニ社會人
  トシテ活動ノ出來ル〓育ヲ致シタイガ爲ニ、
  ソレ〓〓工面ヲシテ獨立校舍モ造リ適當ナ
  ル校長、職員モ選ンデ益〓〓靑年〓育ニ力ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、然ルニソレニ對シテ
  ハ町村負擔トナリ、片方ニハ縣費負擔トナ
  ツテ居ル、私ノ縣デモ四十幾ツカノ獨立校
  舍ヲ持チ普通科ヲヤツテ居ル所ガアリマス
  ガ、經濟上悲シイカナ〓育ニ理解ノナイ議
  員ガ多ク縣費ガ貰ヘルナラバソチラノ方ガ
  良イデハナイカ、〓育ハ金デハ買ヘナイト
  云フ理解ガアルナラバ宜シイガ、理事者ハ
  縣費支給ノ方へ轉向シテ曾ツテハ各學校ニ
  併置セラレテ居ツタモノヲ一ツニ纏メル爲
  ニ一町村一校ノ原則ニ基イテ其ノ當時ノ當
  局ハ〓育上理解ノナイ所ノ人ヲ說キツケテ
  幾ツカノ學校ヲ一ツニ寄セタ、所ガソレニ
  ハ縣費ノ補助ガ來ナイ、サウシテ再ビ各
  國民學校ニ併置ヲセヨト云フコトガ國民
  學校令ノ原則ニナツテ居ル、其ノ前ニハ
  靑年ノ〓育ヲヤカマシク言ハレ、ソレニ
  從ツテヤツタ所デハ今日町村支給ニナツテ
  居ルノデ、ソレ見ヨト言ハレル、何デモ國
  ノ言ハレルコト、縣ノ言ハレルコトニ從ツ
  テ行クカラサウ云フコトニナル、是デハ國
  及ビ縣ノ權威ニモ係ハルト思ヒマスシ、再
  ビ元ニ戾サネバナラヌ理事者ノ悲シキ心情
  ニ御同情願ヒタイ、庄司君ハ來年カラト云
  フヤウナコトヲ言ハレルケレドモ、實際ハ
  連日通年ノ普通科ヲ持ツテ居ル所ハ錢ガ貰
  ヘヌデ、隣ノ一般ノ國民學校ノ方ハ錢ヲ貰
  フト云フ形ニナツテ居ル、仍テ縣廳ニ於テ
  モ出來ルダケ是ノ補助ヲ殖ヤシテ釣合ノ取
  レルヤウニハサレルヤウデアルガ、町村ノ
  理事者トスレバ縣廳ヘオ百度參リヲシテ、
  サウシテ補助ノ增額ヲ御願ヒスル狀態デア
  ル國家ノ要請スル剛健ナ靑年〓育ニ全力
  ヲ擧ゲテ居ル町村ガ補助金ノ額增ニオ百度
  ヲ踏ムト云フコトハ如何ニモ不見識ノコト
  デアリ、靑年〓育上精神的ニモ重大ナル影
  響ガアルト思ヒマス、今日靑年學校ノ必要
  ナコトハ申スマデモナイ、先程大臣モ是カ
  ラハ一ツト云フ御話デアリマシタガ、私共
  ハ此ノ大戰爭下ニ於テ靑年ノ使命ヲ考ヘル
  時、寧ロ國民學校ノ方ナドハ一年ヤ二年遲
  レテモ、直グニ役立タセナケレバナラヌモ
  ノノ方カラ先ニヤルコトガ順序デハナイカ
  ト思ヒマス、今第一線ニ血ト肉トヲ拂ツテ
  居リマスル靑年ハ、義務〓育ニナリマシタ
  當時ノ靑年デゴザイマス、何レモ是ガ適齡
  デアリ、皆一線ニ立ツテヤツテ居ルガ、ドウ
  カシテ彼等ニ十分ナトハ言ハヌデモ、出來
  ルダケ完全ナ知識ヲ與ヘ、完全ナ技能ヲ與
  ヘ、サウシテ心身共ニ健全ナル訓練ヲ與ヘテ
  ヤツテ、遺憾ナク私ハ御國ノ爲ニ彼等ガ全
  力ヲ捧ゲルコトノ出來ルヤウニシタイト思
  ツテ居ル、ソレアルガ故ニ今日私共ハ靑年
  ノ〓育ト云フコトハ、國民學校ノ後カラ來
  ル者ヨリモ、先ヅ以テ之ヲヤラネバイカヌ、
  中學校ダ師範學校ダト云フモノニ莫大ナ金
  ヲ掛ケナガラ、靑年學校ニ對シテ何ト云フ
  貧弱ナ情ナイコトヲスルノカ、實際文部省
  ハ繼子扱ヒニシテ居ルト一般ハ言ツテ居ル
  ノデゴザイマス、洵ニ是等上級學校ヘモ行カ
  ズ、小學校ヲ出ルヤ直チニ彼等ハ「ハンマーㄴ
  ヲ揮ヒ、職場ニ全力ヲ上ゲテ、サウシテ全
  ク今日ノ戰力增强ノ中心ニナツテ役立ツテ
  居ルノデアリマス、私ハ斯樣ナ意味ニ於キ
  マシテ、庄司君ハ來年カラデ宜イヤウナコ
  トヲ言ハレマスケレドモ、庄司君ノ方ノ實
  情ハソレデ宜イカモ知ラヌガ、全ク靑年〓
  育ニ熱意ヲ持ツテ居ル所カラ見マスルト
  私ハ本年ト言ハズ、同時ニ之ヲヤツテ戴キ
  タイ、是ガ私ハ本當ダト思フノデゴザイマ
  スルカラ、出來ルナラバドウカ本年度ニ於
  キマシテ、如何ナル方法デモ宜シイガ、國
  家ガ之ヲ認メテ國民學校同樣ノ扱ヒヲ受ケ
  タト云フコトダケデモ、其ノ精神狀態ニ及、
  ボス效果ハ非常ニ大ナルモノガアルコトト
  思フノデゴザイマス、只今ノ大臣ノ御說デ
  ハ御心配ニナツテ居ルヤウデゴザイマスケ
  レドモ、其ノ額タルヤ國家ノ上カラ見レバ尊
  イ錢デアリマスルケレドモ、洵ニ微々タルモ
  ノデアルト私ハ思フノデゴザイマス、併シ
  其ノ微々タルモノノ及ボス效果ヲ考ヘマス
  ル時ニハ、私ハ又實ニ大ナルモノガアルト
  存ズルガ故ニ、ドウカ町村ノ爲デハナク、
  國家靑年〓育ニ付テ御心配ヲ願ヒタイト存
  ズルノデゴザイマス
  ソレカラ只今大臣ガ愈〓國民學校、師範學
  校等ノ整備ノ見透シガ付イタカラト云フノ
  デ、靑年〓育ニ付テ熱意ノアル御答辯ヲ得マ
  シタガ、ソレニ付キマシテハ此ノ大東亞戰、
  所謂事變前ニ靑年學校令ト云フモノガ出
  來テ居リマシテ、此ノ大東亞戰爭下ニ於キ
  マシテハ、曩ノ靑年學校令竝ニ靑年學校ノ制
  度ト云フモノハ戰時下ニ於テ不適當デアリ、
  又大東亞共榮圈ノ導指者タル所ノ意味カラ
  見マシテモ、今少シク學校令竝ニ制度ノ改
  正ヲシテ貰フ必要ガアルト思ヒマスルガ、
  是等ニ付キマシテ今日マデ何カ御〓究ニナツ
  テ居ル點ガアリ、御意思ノアル所ガアレバ、承
  ハリタイト存ズルノデゴザイマス
  尙ホ次ニモウ一點伺ヒマスガ、靑年學校ノ
  校舍ヲ建築致シマス時ニ起債ヲ願ヒマスト、
  是ハ許サレヌノデゴザイマス、國民學校
  ノ方ハ許サレマスガ、靑年學校ノ建築ノ方
  ハ起債ヲシテマデ造ラヌデモ宜イト云フコ
  トニナツテ居リマスガ、是ハ本省カラ指示
  セラレタモノカ、地方廳ニ依ツテノ手加減
  デアルカ、之ヲ一ツ承リタイ
  ソレカラモウ一ツハ此ノ青年〓育ノ重大
  性ニ鑑ミマシテ、靑年〓育官ト云フノガ特別
  任用デ定メラレテ、先程大臣カラモ御話ガ
  アリマシタガ、此ノ靑年學校ノ靑年〓育官、
  此ノ人ガ唯大學ヲ出タ位デ-關係ノナキ
  課長ガナツタリ、又地方事務所長ガ其ノ役
  ヲ指導ナドシテ居ル縣ガアルト云フコトヲ
  聞キマスガ、是等ハドウカ大學卒業生ノ踏
  臺ニナラヌヤウニシテ戴キタイ、全ク靑年
  〓育位ムヅカシイモノハナイノデアリマス、
  ソレデ一向關係ノナイ所ノ課長ナドガ來テ
  指揮ノ立場ニ立ツテ貰フ位ナラバ、寧ロナ
  イ方ガ宜イ場合モ多イノデアリマス、是等
  ニ付キマシテ無論本省ト雖モソレ〓〓御檢
  討ノ上デアラウト思ヒマスガ、サウ云フコ
  トガ若シアリト致シマスレバ、私ハ此ノ際
  靑年〓育官ト云フモノノ任命ニ當ツテハ
  一層御檢討ヲ願ハネバナラヌト存ズルノデ
  ゴザイマス、ドウカ一ツ宜シク御願ヒ致シ
  タイモノデアリマス

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• 063・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　明年度ヲ期シテ靑年學校
  〓育ノ改善刷新ヲ試ミヨウトシテ居ルコト
  ハ申上ゲタ通リデアリマスガ、ソレニ付キ
  マシテハ無論靑年學校令ト云フモノノ根本
  的ナ見直シハ是非トモ必要デアルト存ジテ
  居リマス、ドノヤウニト云フコトハ今申上
  ゲ兼ネマスガ、學校令ヲ能ク改正致シマシ
  テ、眞ニ靑年學校〓育ノ目的ノ達成ニ遺憾
  ナキヲ期シタイト思ツテ居リマス、其ノ他
  ノ點ニ付テハ政府委員ヨリ申上ゲマス

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• 064・藤野惠

  ○藤野政府委員　先程靑年學校校舍建築ニ
  關シテ、起債ノ許サレナイコトハ甚ダ遺憾
  デアル、右ハ本省ノ方針ニ基クカ、或ハ地
  方廳ノ手心デヤツテ居ルノデアルカト云フ
  御尋ネデアリマシタガ、仰セノ通リ靑年學
  校ノ校舍建築ニ認スル地方起債ハ只今許サ
  レテ居リマセヌノハ事實デアリマス、此ノ
  點ハ営局トシテモ樋口委員ト同樣ニ考ヘマ
  シテ、靑年〓育ノ必要ノ上カラ、又靑年ノ
  保健上ノ關係其ノ他凡ユル點カラ考ヘテ見
  マシテ、校舍建築等ニセメテ起債許可ノ途
  ヲ開キタイト云フ考ヘヲ持ツテ居ルノデア
  リマスガ、御承知ノ通リ之ニハ本省ダケノ
  關係デゴザイマセズ、寧ロ內務省等ノ關係
  ガゴザイマシテ、是マデトテモ實ハ本省ト
  致シマシテハ、出來得ル限リ此ノコトノ實
  現ヲ期シタク存ジマシテ、內務省ト數次協
  議ヲ致シテ居リマス、然ルニ一方ニハ現在
  資金ノ統制關係等モゴザイマシテ、又一面
  資材等ノ關係モ考慮セネバナラズ、ソレ〓
  ノ事情モゴザイマシテ、未ダニ實現ヲ見
  テ居リマセヌコトヲ甚ダ遺憾ニ存ジテ居リ
  マスガ、尙ホ今後トモ此ノ點ニ付キマシテ
  ハ出來得ル限リ御趣旨ニ副フヤウニ、當
  局ト致シマシテ努力ヲ致ス考ヘデゴザイマ
  ス
  ソレカラ最後ニ御述ベノゴザイマシタ靑
  年〓育官ニ、經歷其ノ他カラ見テ適當ナラ
  ザル--適當ナラザルトハ言葉ガ餘リ强過
  ギマスガ、稍〓、關係ノ稀薄ナル者ガ任用セラ
  レテ居ルヤウデアルト云フ點ニ付テノ注意
  ヲ戴キマシタ、洵ニ有難ウゴザイマシタ、
  此ノ點ハ實ハ先頃御承知ノヤウニ、行政簡
  素化ノ結果、中央地方ニ於テ相當官職ノ整
  理統合竝ニ之ニ伴フ人事ガ行ハレマシタ結
  果、左樣ナ關係カラ生ジテ居ル事情モ若干
  アルカノヤウニ吾々ノ方ハ承知ヲ致シテ居
  リマス、併シ是ハ極メテ經過的ナ事情デモ
  ゴザイマスノデ、御注意ヲ戴キマシタ點ハ
  十分心得マシテ、今後御示シノヤウナ遺憾
  ナ點ノナイヤウニ、關係省トモ協議致シ、
  靑年〓育官ノ適材ヲ得ルコトニ十分努力ヲ
  致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=64

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• 065・樋口善右衞門

  ○樋口委員　只今ノ御言葉ハ甚ダ恐縮デア
  リマスガ、實ハ今申シマスヤウニ〓員ノ俸
  給ハ町村デ拂ハネバナラヌ、ソレデ町村經
  濟ヲ工面シテ學校ヲ造ラウト云フ場合ニモ、
  靑年學校ノ方ハ建築ヲ先ヅ見合セロナント
  云フ實際問題ニ直面致シマスト、果シテ靑
  年〓育ト云フコトヲ、縣廳デモ何處デモ認
  識シテ居ラレルカドウカ、掛聲ダケデ其ノ
  運ビニ至ラヌモノヂヤナイカ、是ハ靑年〓
  育上ニ於テ非常ナ危惧ノ念ヲ私ハ持ツト同
  時ニ、其ノ向上發達ヲ萎縮セシメル虞ガア
  ルト思ヒマスノデ、事ハ僅カノコトノヤウ
  デアリマスケレドモ、ソレ等ノ及ボス影響
  ヲ御考慮願ヒマシテ、今後何卒適正ナ方法
  ヲ採ツテ戴キタイト思ヒマス
  ソレカラ靑年〓育官デアリマスガ、實際靑
  年ノ〓育ニ當ル者ハ、身先ンジテ範ヲ示スト云
  フ行キ方テナケレバ靑年ハ蹤イテ來ナイノデ
  アリマス、禊ヲヤルナラバ其ノ〓育官ガ
  眞先ニ寒水ニ飛込ム所ニ於テ、靑年ハ勇
  氣百倍シテ之ニ蹤イテ行クノデアリマス、
  講演ヲシテ貰ツタリ靑年ラシカラザルヤ
  ウナ行動ヲ取ツテ貰フト、靑年ト云フモノ
  ハ眠ツテシマツテ、寧ロソレハ柔弱ナヤウ
  ナ感ジニ引キ戾サレテ來ル虞ガアリマス、
  此ノ〓育官タル人ハ勿論種々ノ方面ニ御
  心配ヲ願フケレドモ、何ニシテモ今戰
  ツテ居ル現在ゴザイマスカラ、理想ハ抛ツ
  テデモ、兎ニモ角ニモ靑年ヲ元氣ニ導イテ
  行クト云フコトノ信念カラ言フト、一番偉
  イトシテ敬意ヲ表スル人デアリマスカラ、
  是ガ陣頭ニ立ツテ實行スルト云フコトガ、
  何ヲ言ヒ、何ヲ〓ヘルヨリモ一番靑年ニ效
  キ目ガ良イノデ、地方事務所長ニモ適當ナ
  人ガアリマセウガ、ドウカ元氣ト覇氣ノア
  ル人間ヲ第一條件ニシナケレバナラヌト存
  ズルノデゴザイマス、御參考マデニ申上ゲ
  テ置キマス
  尙ホ一寸伺ヒタイノデスガ、國民學校令
  ノ方デゴザイマス、國民學校ノ義務制ハ
  八年制ニナツタノデアリマス、是ハ民國ノ
  基礎的〓育ヲセヨト云フノデ、二箇年ノ延
  長ヲセラレタコトニ見マスト、此ノ民國ノ
  基礎的〓育タル八年ヲ終ツテカラ中等學校
  ヘ行クノガ順序ダト思ヒマスガ、ヤハリ初
  等科ノ六年ヲ終ヘレバ中學校ヘ行クト云フ
  事柄デアル、ソレデ此ノ二箇年ト云フモノ
  ヲ、俗ニ袋〓育ト謂フヤウナコトデゴザイ
  マス、私共ノ最初二年延ビタト云フ感ジハ、
  八年ズツト小學校デヤツテ、ソレカラ中學
  校ヘ入ツテ、中學ノ方ノ年ガ縮マルヤウニ
  思ツテ居ツタノデアリマス、ソレデ此ノ先
  生ハ八年ヲ〓ヘル先生ダカラ、專門學校程
  度ニ昇格シナケレバイカヌ、斯ウ云フコト
  ヲ感ジタノデアリマスガ、從來通リ六年カ
  ラ入レルト云フコトデハ、國民ノ基礎的〓
  育ト云フコトニ付テ、ソコニ矛盾ガアリハ
  セヌカト思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ
  當局ノ御意見ヲ承リタイト存ジマス
  ソレカラ近頃話ニ聞キマスト勤勞奉仕ト
  云フコトガ學校デヤカマシクヤラシテ居ル、
  心身鍛鍊トシ、又時局下勞力不足對策トシ
  テ、全國的ニ各學校デヤツテ居ル、ソコデ
  勤勞奉仕ニ先ヅ時間ヲ取ラレル、一日トカ
  二日トカ、各會社工場、其ノ他農村デ心身
  鍛鍊ト云ヒマスカ、修養上ニ於ケル道場訓
  練ナドガヤカマシク言ハレルコトハ結構デ
  アリマスガ、一面カラ之ヲ見マスト、先程
  松浦君カラ言ハレタノト私ノハチヨツト逆
  ニナルカモ知レヌガ、餘リ勤勞奉仕トカサ
  ウ云フコトヲ、最高學府ト言ハレルヤウナ
  人ガヤツテ居ツテ、智能〓育ノ方ヲ怠ツテ
  居リハシナイカ、聞ク所ニ依リマスト卒業
  者ハ給料ハ決マツテ居ル、行先モ決マツテ
  居ル、事變前ノヤウニ就職難ト云フコトモ
  ナイ、、又優秀デモ我ガ希望ノ所ヘ行クコト
  モナラナイ、勤勞奉仕ト心身ノ鍛鍊ニ合格
  シテ、右向ケ右、左向ケ左ノ〓練ガ巧ク出
  來レバ卒業證書ハ樂ニ貰ヘルト言ハレテ居
  ルノデアリマス、是等ニ對スル可否ハ私共
  分リマセヌガ、文部當局ノ見ラレル御意見
  ヲ伺ヒタイト思フノデゴザイマス
  ソレカラ東亞共榮圈ノ指導ト云フ大キイ
  コトデゴザイマスガ、私共ノ考ヘルノニ、
  東亞共榮圈內ノ被指導國ニ對シテ指導スル
  者ハ學術技藝勿論必要デアリマスガ、何
  ヲ措イテモ先ヅ國民精神ガ指導ノ本トナラ
  ネバナラヌト思フノデゴザイマス、其ノ國
  民精神タル、所謂我ガ日本精神ハ何レニシ
  テモ國ノ本タル農ニアル、ソコデ假令向フ
  ニ必要ガアラウガナカラウガ、農業ヲ先ニ
  移シテ行ク、其ノ者ニ對シテハ、例ヘバ滿
  洲支那デアリマスナラバ、之ニ大陸的〓
  育ヲ與ヘル、ソシテ其ノ土地ノ者ハ右ヘ習
  ヘ、此ノ模範村ヲ見ヨト云フコトニスル、
  又南方ニ對シテモ農ヲ先ニ進メテ、同ジヤ
  ウニ仕向ケテ行ク、サウ云フコトニ於テ初
  メテ精神ガ移ツテ行クノデハナイカト思ツ
  テ居リマス、ソレニ付テ先立ツモノハ何デ
  アルカト言ヘバ、農業ト雖モ大陸ニ出デ、
  又外國ニ行クニ付テハ相當高等ナ技術ヲ必
  要トスル、ソレニハ農科大學ノ增設ガ必要
  デハナイカ、是ハ戰前ニハ一時餘リ思ハシ
  カラザル話ガアリマシタガ、斯ウナツテ見
  ルト、ヤハリ農科大學ヲ增設シテ、ソコニ
  於テ大陸南洋ニ農村移住ヲスル者ニ技術
  的訓練ト國民的精神ヲ十分植付ケルコトガ、
  東亞共榮圈指導ノ上ニ於テ一番必要デハナ
  イカ、滿洲デモ何處デモ、向フノ人ニ學術
  技藝ヲ〓ヘテ、向フノ人ハ日本語ガ幾ラデ
  モ出來ルガ、コチラノ者ハ滿語モ露語モ出
  來ヌト云フコトデハドウカ、是ハ見方ニ依
  ツテハ、日本語ヲ廣メルト云フコトハ、英
  國全盛ノ因ガ英語ヲ廣メタト云フコトニア
  ツタト云フ事實ニ當ルコトカモ知レマセヌ
  ガ、私ハ世界ヲ指導スルト云フ上カラ言ツ
  テ問題ガアルト思ヒマス、向フノ事情ガコ
  チラニ分ラヌデ、指導ナド云フコトハ出來
  又、ヤハリ學術技術ヲ向フノ者ニ〓ヘルヨ
  リモ、コチラノ者ヲ大陸的ナリ南洋的ニ〓
  育シテ、ソコニ植付ケ、十年、五十年、百
  年經ツコトニ依ツテ初メテ日本精神ガ向フ
  ニ移ツテ行クノデハナイカ、サウ云フヤウ
  ニ考ヘル時ニドウシテモ農ヲ以テ先ニヤラ
  ナケレバナラヌ、南洋開拓ヲ政府ハ試ミテ
  居ラレマスガ、ソレニハ農業ノ最高學府ヲ
  出タ者ガ必要デアル、固ヨリ私共ノ考ヘハ
  間違ツテ居ルデアリマセウガ、其ノ點ニ付
  テ御造詣アル大臣ノ御〓示ヲ願ヒタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=65

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• 066・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　國民學校ニ於テ國民ノ基
  礎的訓練、鍊成ヲ致シマスノニ八年ヲ要ス
  ルト云フコトニ相成リマシタノハ、從來ノ
  六年間デ國民學校ヲ卒業シテ社會ニ出ルト
  云フコトデハドウシテモ國家ノ中堅ヲ形作
  ル國民トシテハ其ノ〓育的基礎ガ不十分デ
  アルト認メタカラデアリマス、併シナガラ
  其ノ中ノ上級學校へ進ンデ尙ホ學問ヲスル
  者ニ於テハ、上級學校へ進マセルノニ少年
  ノ心理或ハ身體ノ發育狀況等カラ見テヤハ
  リ六年カラ上級ノ學校へ進マセル方ガ適當
  デアルト云フ〓育的ナ立場カラ六年カラ連
  續スルコトニシテ居ルノデアリマス、此ノ
  國民的ナ基礎〓育ハ八年デアルカラ、其ノ
  上ニ更ニ上級學校ヲ造リ上ゲタラト云フ御
  趣旨ハ、是ハ一面ノ考へ方トハ存ジマスケレ
  ドモ、單ニ國民學校ヲ以テ終ルノデナクシ
  テ、更ニ進ンデ長時ニ亙ツテ〓育ヲサレヨ
  ウトスル者ニ取ツテハ、ヤハリ六年カラ連
  續シタ方ガ適當デアルト云フ考ヘノ下ニ、
  依然六年ヲ以テ中等學校ヘノ連續ト致シテ
  居ルノデアリマス、又勤勞奉仕、道場訓練
  ニ付キマシテハ、一部ニハ動モスレバ其ノ
  本旨ヲ誤解シテ居ル向キモアリマスガ、勤勞
  奉仕ヲヤラセル學校側ニ於テモ、又勤勞奉
  仕等ヲ實行スル學生生徒等ニ於テモ、其ノ
  趣旨ガマダ十分徹シナイ點ガアルコトハ甚
  ダ遺憾デゴザイマス、併シ最近ニ至リマシ
  テハ此ノ勤勞奉仕ヲ學生ニヤラセマス場合
  ニ、單ニ勞働力ヲ社會ニ提供スルト云フ意
  味デナク、勤勞ヲ通ジテ心身ヲ鍊磨スルト
  云フコトノ趣旨ハ段々徹底シテ來タト思フ
  ノデアリマス、然ル所只今御話ノ如ク、一部
  ノ學生等ニ唯ソレサヘヤツテ居レバ學業ノ
  方ハ疎カニシテモ別ニ差支ナイト云フヤウ
  ナコトヲ口ニスル考ガアルコトヲ私モ聞イ
  テ居リマスガ、ソレハ甚ダ間違ツタ考ヘデゴ
  ザイマシテ、其ノヤウナコトノナイヤウニ是
  カラ十分ニ學校ヲ指導シ、又學生生徒等ノ誤
  解ヲ解キタイト思ツテ居ルノデアリマス
  次ニ東亞共榮圈ノ指導者トシテノ日本國
  民ノ立場、先ヅ精神的ナ體得ヲ基ニスルト
  云フコトハ全ク御同感デゴザイマス、然ル
  所南方諸地域ニ差當リ何ヲ持ツテ行ツテ指
  導的立場ヲ確保スベキカニ付キマシテハ、
  是ハ種々事情モ輻湊シテ居リ、事態又現ニ
  -戰爭ヲ遂行シテ居ルト云フ現實ノ段階ニ於
  キマシテハ、直チニ農ダケヲ以テ之ヲ實行
  スルト云フ段取ニ相成ルカナラヌカト云フ
  事柄ハ容易ニ此處デ斷定シテ申上ゲ兼ネル
  點デゴザイマス、併シナガラドノ方面ニ於
  キマシテモ、又各方面ノ者ガ出掛ケナケレ
  バナラヌコトデモアリマスシ、又各方面ノ者
  ガ何レモ唯單ニ所謂日本人デアルカラト云
  フノデ出掛ケルノデハナク、眞ニ日本精神
  ノ體得者デアリ又一面ニ於テハ學術技藝ニ
  堪能ナ者デアルコトヲ必要トスルコトハ御
  說ノ通リデゴザイマシテ、其ノヤウナ方向
  ニ於テ農業〓育ノ最高學府ガ現ニアルダケ
  デハ甚ダ不足デアルト云フ事態ノ見透シガ
  若シ付キマシタナラバ、是ハ例ヘバ農學部
  ヲ增設スルト云フヤウナ事柄ニ付テハ十
  分考慮スベキデアラウト考ヘテ居ルノデア
  リマス、併シナガラ今尙ホ諸種ノ戰爭狀態
  等ニ於キマシテ、主トシテ技術方面トシテ
  考ヘラレテ居リマスモノハ、工業方面ノ技
  術デゴザイマスノデ、其ノ方ノ擴張ハ凡ユ
  ル方面ニ向ツテ今旣ニ實現サレ、又將來モ
  致サント致シテ居ルノデアリマス、併シ左
  樣ナ際ニ能ク其ノコトヲ考ヘテ參リマセヌ
  下、手落チニナルモノガアリ勝チナモノデ
  ゴザイマスノデ、其ノヤウナ事柄ヲ考ヘマ
  ス際ニ、只今ノ御說ノアル所ハ能ク參考ニ
  致シタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=66

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• 067・樋口善右衞門

  ○樋口委員　私ハ之ヲ以テ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=67

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• 068・加藤弘造

  ○加藤(弘)委員　、關聯シテ居リマスノデ、御
  許シヲ願ツテ質問致シタイト思ヒマス、先
  程樋口サンカラ、師範學校ヲ先ニシテ靑年
  學校〓員養成所ノ方ヲ後ニシタノハイケナ
  イト云フ御話ガアリマシタガ、私モ全クサ
  ウ思ツテ居ルノデアリマス、靑年學校卒業
  生ハ直グニ今日ノ生死ノ問題ニブツカルノ
  デアツテ、學制改革ノ方面ノ學校卒業生
  ハ、直チニ生死ニブツカルト云フコトハ考
  ヘラレナイノデアリマス、ナゼカト云ヒマ
  スト、靑年學校卒業生ノ靑年ハ直チニ戰場
  ニ行ク場合ガ多イノデ、其ノ靑年ガ訓練
  ガ行屆イテ居ルカ居ラナイカト云フコ
  トハ、是ハ命掛ケノ問題デアリマス、今
  度ノ事變デハ私モ應召兵ノ一人デアリマ
  シテ、補充隊デ〓育方面ノコトヲヤツ
  テ居リマシタガ、其ノ時ニ訓練ノナイ靑
  年ヲ率ヰテ行ク其ノ指揮官ノ後ロ姿ヲ見ル
  ト泣カザルヲ得ナイノデアリマス、死ナ
  ヌデモ宜イ所ヘ行ツテ死ンデ居ルノデアリ
  マス、ソレデスカラ、靑年學校ノ充實ト云
  フコトハ今日ノ問題デアツテ私ハ來年ノ問
  題デハナイト思ヒマス、隨テ師範學校ハ後
  ニナツテモ、靑年學校〓員養成所ハドウシ
  テモ先ニヤナケレバナラナイ問題ト始終思
  ツテ居リマス、ソレガ一日遲レレバ、- 日
  ダケ日本ノ兵力ヲ削減スルノヂヤナイカ、
  私ハサウ思ヒマス、戰力ノ增强ガ叫バレテ
  居リマスガ、戰力增强ニ付テハ物的ナ方面
  モアリマスシ、人的ナ問題モアリマス、特
  ニ東條首相ハ人ト云フコトヲ强ク言ハレテ
  居リマスノデ、此ノ人ノ〓育問題ガ私ハ戰
  力增强ニハ一番必要ナモノダト思ヒマス、
  隨テ靑年學校ヲ充實スルシナイト云フ問題
  ハ、戰力增强ノ今日ノ問題ニ非常ニ關聯シ
  テ居ルノデアリマシテ、此ノ靑年學校ノ〓
  育ニ關聯スル靑年學校〓員養成所ト云フヤ
  ウナモノハ、是ハ當然師範學校ヨリモ先ニ
  考ヘナケレバナラヌ間題ダト思フノデアリ
  マス、所ガ靑年ノ〓育ト云フコトニ對シテ
  ハ、マダ外ニ色々ノ方法ガアルノヂヤナイ
  カト云フコトモアリマスガ、庄司委員ノ御
  話ニ依ルト、靑年學校方面デモ一人當リ三
  圓ダト云フコトヲ言ツテ居リマス、樋口サ
  ンハ「ドイツ」ノ「ヒツトラー·ユーゲント」
  三、總計一億五千万圓位出シテ居ルト云
  フ話デアリマスガ、日本ノ現狀ニ比ベマス
  ト、日本ノ靑少年團方面ノ關係カラ行キマス
  ト、「ドイツ」ノ一億五千万圓ニ對シテタツタ
  八十万圓、而モ十七年度ニ於テハ五分引ニナ
  ツタヤウデアリマス、「ドイツ」ノ一人頭十五
  圓ニ比較スルト、日本ノ靑少年ハ補助金一人
  頭六錢五厘ニナリマス、ソレガ經費ノ問題
  カラ行キマスト、大日本靑少年團デ大半人
  件費其ノ他ニ使ヒマシテ、アトノ殘部ガ約
  二十万圓デアツテ、ソレヲ割振リマスト一
  人頭一錢六厘ニナル、靑年學校方面ガタツ
  タ三圓デアリ、靑少年團ノ方ハ大日本靑少
  年團ヲ入レテ僅カニ六錢五厘、是デ何ノ訓
  練ヲヤリ得ルカ、何ノ〓育ヲヤリ得ルカ、
  戰力增强ヲ叫バレテ居ル折柄、是ハ全ク何
  トモ言ヒ樣ガナイノデアリマス、兵ヲシテ
  喜ンデ死地ニ入レルナラバ宜イノデアリマ
  スケレドモ、訓練モ何モナイ兵ヲ指揮スル
  指揮官ノ身ニモナツテ戴キタイト私ハ思フ
  ノデアリマス、一人頭ノ靑少年團ノ六錢五
  厘ト云フコトハ、是ハ一年六錢五厘デアリ
  やく、靑少年團ノ方デ何カ射擊演習ヲスレ
  バ、一發ノ實彈モ今日ハ六錢五厘デハ私ハ
  出來ナイト思ヒマス、事變前ニ於テ一發四
  錢五、六厘デアリマシタカラ、恐ラク今日
  ハサウ云フコトデハ出來ナイト思ヒマス、
  一發ノ實彈射撃モ出來ナイ所ノ兵ヲ連レテ
  營門ヲ出テ行ク指揮官ノ姿、私ハ一年六箇
  月其ノ姿ヲ見セ付ケラレマシタ、ドウシテ
  モ是ハ樋口サンノ仰シヤルヤウニ、私ハ靑
  年學校〓員養成所ト云フモノハ、師範學校
  
  ヨリモドウシテモ先ニ考ヘナケレバナラヌ
  問題デハナカツタカト思フノデアリマス、
  隨テ靑年學校ノ充實ト云フコトハ、ソレハ
  當然ヤリ得ル問題ダト思フノデアリマス、
  私ハ經費ノ點バカリ言フ譯デハアリマセヌ
  ガ、ヤハリ經費ト云フコトニ關係スルモノ
  デハナイカト思ヒマス、竹槍ダケデ戰爭ハ
  出來得ナイト思ヒマス、內原ノ靑少年義勇
  軍ノ訓練所ニ於テハ、十七年度ニ於テ千七
  十圓ヲ一人ノ子供ニ使フノデアリマス、千
  七十圓ヲ一人ノ子供ニ使フヤウナ內原ノア
  ノ靑少年義勇軍ノ訓練所ノアルト云フ日本
  デ、靑少年〓育ノ爲ニ學校ノ方ハ三圓デア
  リ、團ノ方ハ六錢五厘ダト云フヤウナコトハ、
  如何ニモ私ニハ考ヘラレナイノデアリマス、
  ドウカ文部當局ニ於テ眞劍ニ此ノ問題ハ採
  上ゲラレテ、來年ト言ハズ本年ニ何トカナ
  ラヌモノデセウカ、サウ云フコトヲ眞劍ニ
  私ハ考ヘテ居ルノデアリマスガ、大臣ノ御
  所信ヲ承リタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=68

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• 069・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　先程費用ノ問題等ニ付テ
  ノ御意見ガアリマシタガ、是ハ又色々計算
  ノ仕方ナドモアリマセウシ、其ノ邊ニ付テ
  彼此レ御議論ヲシヨウトハ思ヒマセヌ、併
  シ靑年學校ニ付テ〓育ノ振興ガ手遲レニナ
  ツテ居ルコトガ遺憾ニ思ハレマスコトハ
  先程カラ度々申上ゲテ居ル通リデアリマス、
  唯師範學校ヲ先ニスベキカ、靑年學校〓員
  養成所ヲ先ニスベキカト云フコトニ付テ
  モ、色々意見ハアラウカト思ヒマスガ、兎
  ニ角同時ニ行ヒタイト思ツテ居リナガラ、
  同時ニ行ヘナカツタコトノ遺憾デアツタコ
  トモ、先程申上ゲテ置イタ所デアリマス、
  又靑年學校ノ〓育ガ一日モ忽セニスベカラ
  ザルモノデアルト云フノハ、皆サンノ御話
  ノ通リデアリマシテ、ソレヲ疎カニシテ居
  ルモノデハナイノデゴザイマス、出來ルダ
  ケ速カニ充實ヲシタイト云フコトヲ考ヘマ
  シテ、明年度ヲ期シテ是非トモ實行シタイ
  ト思ツテ居ルノデアリマス、併シ能ク考ヘ
  テ見レバ、明年度中ニデモ直グニ着手スベ
  キ點、一年間ヲ放置スル必要モナイ問題ガ
  多々アラウカト思ヒマス、其ノヤウナ點ニ
  向ヒマシテハ極力力ヲ致シマシテ、靑年學校
  〓育ガ一日モ速カニ振興サレルヤウニ、眞
  ニ骨ヲ折リタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=69

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• 070・松岡俊三

  ○松岡委員長　加藤宗平君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=70

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• 071・加藤宗平

  ○加藤(宗)委員　文相ノ樋口君ニ對スル答
  辯ニ依リマシテ、昭和十八年度カラ靑年學
  校〓育ノ振興ノ爲ニ力ヲ致ス旨ノ非常ニ自
  信ニ滿チタ答辯ヲ聽キマシテ、私共ハ非常
  ニ意ヲ强ウスルノデアリマス、他ノ學校關
  係ノ改善ト比ベマシテ遲レマシタコトニ付
  テノ文部省ノ靑年學校〓育觀ニ付テハ、私
  共亦一個ノ見解ヲ持ツテ居リマスガ、兎の上
  角遲レテモ十八年度カラ心ヲ致シテヤルト
  云フ決意ガ出來タト云フコトハ、非常ニ喜
  ブベキコトデアリマス、ソレニ付キマシテ私
  モ此ノ際靑年學校〓育ニ付テ二三御尋ネ致
  シタイト思フノデアリマス、靑年學校ノ問
  題ニ付テハ大分先輩各位ガ御質疑ニ相成リ
  マシタカラ、其ノ點ハ重複スル所モアリマ
  スノデ、サウ云フ所ハ省キマシテ、質問等
  ニ付キマシテモ同一觀點カラデナク進メテ
  行キタイト思フノデアリマス、一ツハ今後
  日本ノ國防國家體制ヲ確立シテ行クト云フ
  ヤウナ點カラ考ヘマスト、今後ノ〓育ノア
  リ方ト云フモノガ、〓育ノ爲ニ〓育ヲシテ行
  ク〓育ノ純粹性ヲ保ツテ行クト云ヲコトガ
  相當困難ニナツテ來マシテ、寧ロ從來ノ考
  ヘカラ言ヘバ、〓育トハ異質性ノモノデア
  ツタ詰リ勞働トカ勤勞トカ、サウ云フヤウ
  ナ異質性ノ方面ト〓育ト云フモノガ一體ニナ
  リマシテ進ムノデナケレバ、〓育其ノモノ
  ノ理念ガ貫徹サレナイノデハナイカ、今後
  ノ〓育ノアリ方ハサウ云フ異質性ノモノト
  一體ニナツテ進メテ行クト云フコトニシテ
  行カナケレバナラナイノデハナイカ、斯ウ
  云フ私ハ根本ノ見透シヲ持ツテ居ル、此ノ
  觀點ニ立チマシテ、私ハ勤勞ヲ通シテ〓育
  ノ成果ヲ獲得スルト云フ建前ニ立ツテ居ル
  靑年學校ノ〓育ト云フモノハ、今日ノ姿ニ
  ノミ留マツテ居ルコトハ許サレナイト考ヘ
  ルノデアリマス、所ガ今日ノ靑年學校〓育
  ハ完成〓育デアルト云フコトカラ致シテ、
  ソレ以上ノヨリ高次ナ〓育トノ關係ガ玆ニ
  斷絕セラレテ居ルノデアリマス、例ヘバ靑
  年學校ヲ卒業致シマシテモ、靑年學校ノ卒
  業者ニ與ヘラレル待遇ナリ資格ナリガヨリ
  高次ナ學校ニ入ルニハ聊カノ用モ足シテ居
  ナイ、是ハ甚ダ遺憾ナコトデアリマシテ、
  私共ハドウシテモ、此ノ點ニ付テ文部省ノ
  新タナル觀點ニ立ツタ御心配ヲ戴キタイ、
  新タナ觀點ニ立ツタト云フコトハ從來ノ
  〓育ノ因襲的ナ考ヘカラ言ヘバ、兎モスレ
  バ靑年學校ノ卒業者ニ中學校卒業ト同等ノ
  待遇ヲ與ヘテ上ノ學校ト繋グ、斯ウ云フヤ
  ウナ見方ヲシ易イノデアリマシテ、現ニサ
  ウ云フ要求モ相當ノ靑年學校〓育ニ從事シ
  テ居ル人々ノ方面カラ出テ居ルヤウデアリ、
  マス、併シナガラ私ハ新シイ立場トシテ考
  ヘラレルコトハ、ヤハリ勤勞ヲ通シタ〓育
  ト云フモノガ靑年學校ヲ卒業スレバ、其ノ
  上ニ又サウ云フ形ノ專門ノ學校〓育ガアツ
  テ宜イノデハナイカ、詰リ勤勞ヲ通シタル
  〓育ノ一ツノ組織體系ヲ國家自身ノ手ニ依
  ツテ作リ上ゲルト云フ一ツノ考ヘ方ヲ持ツ
  テ欲シイ、ソレヲ實踐シテ欲シイト思フノ
  デアリマス、固ヨリ今日勤勞靑年ノ向學心
  ニ應ヘル爲ニ、私立ノ各種ノ學校ガ何レモ
  各〓相當ノ役割ヲ果シテ居ルコトハ御承知ノ
  通リデアリマス、併シナガラ私ハ今後勤勞
  ヲシナガラ〓育ヲスルト云フコトガ〓育ノ
  面ニ進ンデ行ク、是デ行カナケレバイカンゾ
  ト云フコトヲ國家ノ指導力ナリ意思ヲ通
  シテ靑少年ニ示スト云フ所ニ一ツノ大キナ
  使命ガアルノデアリマシテ、之ヲ單ニ民間
  ノ私立ノ人々ノ恣意的ナ考ヘノ儘ニ委セル
  コトハイケナイノデハナイカ、私共ハ此ノ
  意味合ニ於キマシテ、再度言フコトデアリ
  マスガ、勤勞ヲ通シテ〓育ノ成果ヲ獲得シヨ
  ウトスル者ニ對シテ、燃エルガ如キ希望ヲ
  與ヘテヤルト云フコトヲ國家ガ自ラ指シ示
  スト云フコトヲ私ハシナケレバナラヌト思
  ヒマス、ト云フコトハ今日ノ學制改革ガ
  他ノ面カラ見レバ、學年ノ短縮デアリマス、
  是ハ詰リ國家ガソレダケニ勞働力ヲ欲シ
  イ、ソレカラ早ク業ニ就イテ貰ヒタイト云
  フヤウナ要請ガ現戰爭ノ段階ニ於テ强イ
  カラ、サウ云フ〓育以外ノ面カラ〓育ト云
  フモノガ一ツノ壓縮ヲ受ケテ居ルコトハ事實
  デアリマス、ダカラ此ノ際ニ於テ私ハ業
  ニ身ヲ置ク者、勞働ヲ致ス者ノ尙ホ學問ヲ
  スル、〓育ニ精進スルト云フ氣持ヲ忘レナイ
  ヤウニスルコトニ依ツテ、私ハ初メテ〓育ノ
  〓育ト云フ方面ハ學年ヲ短縮サレテモ、ソコ
  ニ〓育ノ一般的ナ「レベル」ガ下ラナイヤウニナ
  ルノデハナイカ、斯ウ云フ氣持ヲ靑少年ニ
  起サセナケレバ、私ハ學年ノ短縮ハ直チニ
  國家全體ノ文〓ノ水準ヲ下ラシメルモノデ
  ハナイカト思ヒマス、併シ少數者ノ大學院
  ノ設置ノミニ私ハ一國ノ文化ノ水準ノ低ク
  ナルコトヲ妨ゲル力ヲ期待スルコトハ無理
  デハナイカ、私ハ斯ウ云フ意味ニ於キマシ
  テ、向學心ニ燃エ、而モ働イテ居ル靑少年
  ニ一ツノ燈火ヲ與ヘルト云フ役割ヲ國家自
  ラガヤツテ欲シイ、ダカラ私ハ此ノ點ニ於
  テ靑年學校〓育ニ付テハモツト高次ナ靑年
  學校〓育ノ性格ヲ持ツタモノヲ作ツテ貰ヒ
  タイ、「ドイツ」「ロシア」等ニ於キマシテハ、
  旣ニ幾多ノ事例ヲ吾々ハ持ツテ居リマス、
  我ガ國ニ於キマシテモ之ニ劣ラザル施設ヲ
  シテ欲シイト思ヒマス、愈〓來年カラ心ヲ其
  ノ方面ニ致サントスル文相ニ對シマシテ、
  新タナル構想ノ下ニ此ノ體系ヲ考ヘテ欲シ
  イト思フノデアリマス
  ソレカラ只今ノ御話ノ前提ヲ、直チニ此
  ノ次ノ問題ノ理由ノ一ツニスルノデアリマ
  スガ、今後私立ノ靑年學校ト云フモノハ益〓
  盛ンニナツテ來ルモノダト考ヘマス、此ノ
  私立靑年學校〓育ノ成果ガドウデアルカト
  云フコトハ、單ニ是ハ〓養ノ面ニ於ケル成
  果ノ問題デハナクシテ、直チニソレハ一國
  ノ生產力ノ上ニ繫ガリヲ持ツモノデアリマ
  ス、斯ウ云フ意味合ニ於キマシテ、私ハ私
  立靑年學校ノ〓育ト云フモノニヨリ以上ノ
  重點ヲ置イテ戴キタイ、此ノ點ニ付テ現狀
  ノ私立靑年學校ノ姿ト云フモノハ、或ル點
  ニ於テハ非常ニ喜ブベキ姿デアリマスガ、
  或ル點ニ於テハ餘リ喜ブベキ姿ヲ呈シテ居。
  リマセヌ、是ハ一面ニ於テハ其ノ私立靑年
  學校ノ基礎ニナリマス所ノ、會社ヤ工場ノ
  經營ノ影響力ト云フモノガ强ク影響スルノ
  デハナイカ、公益ハ私益ニ優先スルト云フ
  ヤウナ氣持ガマダ會社ナリ工場ナリノ經營
  者ニ徹底シテ居ナイト云フコトガ、絕エズ
  此ノ〓育ノ上ニ薄暗イ影ヲ投ゲテ居ルノデ
  ハナイカト思ツテ居リマス、ソコデ、私共
  ハドウシテモ此ノ私立靑年學校ノ〓育ノ主
  體性ヲ奪還シ、會社ヤ工場ノ利潤追求ノ觀
  念カラ明白ニ切離シテ、靑年ノ〓育ヲ護ツ
  テ行クト云フコトヲシナケレバナラヌト思
  フノデアリマスガ、ソレニ付テハ斯ウ云フ
  コトモ其ノ一ツノ方法デナイカト思ハレル
  コトガアリマス、ソレハ其ノ會社ヤ工場ノ
  私立靑年學校ノ校長ニ、其ノ會社ヤ工場ノ
  重役ノ待遇ヲ與ヘ、サウシテ會社ヤ工場ニ
  於ケル勞務管理ト云フモノガ今日ノ段階ニ
  於テ非常ナル重要性ヲ持ツト同樣ニ、〓育
  管理ト申シマスカ、サウ云フ面ガ非常ニ戰
  時生產力ヲ增大スル上ニ於テ大キナ役割ヲ
  持ツモノデアルト云フコトヲ、會社、工場
  ノ經營、〓育ノ面ニ强烈ニ滲透セシメテ行
  ク、斯ウ云フ方法ヲ何トカシテ執ル方法ハ
  ナイダラウカ、固ヨリ法律上ノ重役ト云フ
  コトニナリマスト、商法ノ關係ヤ其ノ他色
  色ト法律的關係ガアルカモ知レマセヌガ、
  此ノ點ニ付テ私極メテ知ル所ガ少イノデア
  リマスガ、兎ニ角目的ヲサウ云フ所ニ置イ
  テ、今日以後ニ於ケル會社ヤ工場ノ生產力
  ヲ增强スル上ニ於ケル〓育ノ偉大ナル效果
  ト云フモノヲ信ジテ、ソレヲ其ノ會社、工
  場ノ經營ノ中ニ何等カ織込ンデ行クヤウニ
  シタイ、サウ云フ方面カラ今言ツタ勞務管
  理ト同樣ナ重要サヲ以テ〓育管理ト云フヤ
  ウナ役割ヲ果スベキ人ヲ其ノ方ニ置クヤウ
  ニシタラドウカ、斯ウ云フヤウナ點ニ付キ
  マシテ、文相ノ御考ヘヲ御聽キ致シタイト
  思フノデアリマス
  ソレカラ私ハ翼政會ノ文部委員ノ靑年學
  校振興ノ小委員ノ一人トシテ地方ニ調査ニ
  參ツタコトガアルノデアリマスガ、其ノ時
  靑少年ノ鍊成ニ付テ、其ノ鍊成ノ第一線ニ
  立ツテ居ル學校ノ先生方カラ斯ウ云フ惱ミ
  ナリ歎キナリヲ聞イタノデアリマス、ソレ
  ハ今日ノ靑少年ノ錬成ノ方法、鍊成ノ形ガ
  非常ニ多樣デアル、非常ニ多過ギル、靑少
  年鍊成ヲ目指ス各種ノ團體ナリ會ナリガ各〓自
  分ノ方ノ靑少年鍊成ノヤリ方ガ最上ノモ
  ノナリト信ジテ、色々靑少年ニ呼ビ掛ケヲ
  スル、非常ニ是ハ困ルト云フコトデアツタ
  ノデアリマス、私共ハソレヲ聞キマシテ、
  實ハソレマデ氣ガ付カナカツタノデアリマ
  スガ、若シモサウ云フノガ靑少年鍊成ノ現
  實デアルト致シマスナラバ、速カニ私ハ之
  ヲ國家ノ手ニ依リマシテ一元化スルノ必要
  ガアラウト思フノデアリマス、靑少年ノ
  年齡ヲ超エタ人々デアリマスナラバ、色々
  特殊ナル鍊成ノ形デ其ノ各〓ノ趣味ニ
  依ツテヤツテ行クト云フコトモ私共ハ決
  シテマヅイコトデハナイト考ヘマス、
  併シナガラ靑少年ナドノ如キ、若イ、鍊成
  ノ「ベスト·シーズン」ニ於キマシテハ、私
  ハ此ノ形式ノ紛淆複雜化ト云フモノハ、決
  シテ靑少年ニ純一ナル氣持ヲ與ヘルモノデ
  ハナイ、ダカラ私ハ速カニ此ノ靑少年ノ鍊
  成ノ方法ナリ形式ヲ强力ニ一元化シテ欲シ
  イ、サウデナケレバ、色々ナ團體カラ靑少
  年、靑年學校ナリ國民學校ノ生徒ガ色々ニ變
  ツタモノヲ〓ヘラレテ非常ニ困ツテ居ルト
  云フコトヲ聞イテ居リマス、又學校ノ先生
  達モ色々ナ名前デ催サレル鍊成ノ講習會ニ
  行クト、大分違ツタモノガアリ、非常ニ困
  ツテ居ルト云フコトデアリマスガ、ドウゾ
  一ツサウ云フ紛清ノナイヤウニ是正シテ欲
  シイト思フノデアリマス
  ツレカラ靑年學校ノ〓育、特ニ私ガココ
  デ言フノハ、地方ノ町村ノ靑年學校ニ付テ
  デアリマスガ、結論ヲ申上ゲルト、靑年學
  校ハ現在ノ凡ユル〓育ノ上ニ於テ最モ〓土
  的ナ色彩ノ强イ學校デアリマス、所ガ私ハ、
  靑年學校ノ運營ニ當ツテ居ル校長ナリ先生
  ナリガ決シテ思ヒヲ〓土ノ振興ニ致サナイ
  ト云フノデハアリマセヌシ、又〓土ノ色々
  ナ產業ト連絡ヲ持ツテ居ナイト申スノデハ
  ナイノデアリマスガ、モツト其ノ町ナリ村
  ナリノ產業ト連繫ヲ緊密ニスル必要ガアル
  ノデハナイカ、申スコトハ、私ハ今日ノ〓
  育ノ面ニ於ケル一ツノ行ナリ練成ナリト云
  フモノハ、固ヨリ行ナリ鍊成ナリ、ソレ自
  身モ心身ノ訓練ノ上ニ於テ一ツノ大キナ意
  義ヲ持ツコトヲ決シテ否定スルモノデハア
  リマセヌ、併シナガラ現在ノ激シイ戰爭ノ
  段階ニ於テ、凡ユル部面カラ戰時生產力ノ
  增强ト云フコトヲ叫バレテ居ル時ニ當ツテ
  ハ凡ユル行ナリ鍊成ナリハ、絕エズ出來
  ルダケ一國ノ生產性ヲ高メルト云フ點ニ繫
  ガリヲ持ツコトニ心ヲ配ル必要ガアルノデ
  ハナイカ、一國ノ生產性ニ何等ノ關聯モナ
  イヤウナ、單純ナ行、單純ナ鍊成ト云フモ
  ノハ一應現段階ニ於テハ後退シテ宜イノデ
  ハナイカ、斯ウ云フヤウナ意味カラ考ヘマ
  シテ、町村ノ靑年學校ノ農業ナリ商業ナリ
  ノ指導實踐ト云フ方面ニ於テ、其ノ町ナリ
  村ナリニハヨク其ノ町村ノ更生計畫ト云フ
  モノガアリマス、ソレカラ現在ニ於テハ國
  策ニ順應スル爲ニ、其ノ村ナリ町ナリノ一
  箇年ノ生產計畫ト云フモノガ立テラレテ居
  リマス、私ハ靑年學校ノ生徒モ、其ノ一村一
  町ノ一箇年ノ生產計畫ノ、小ナリト雖モ一
  部分ヲ擔當セシメルト云フ所マデ、〓土ノ
  產業トノ聯關ヲ强メテ欲シイト思フノデア
  リマス、固ヨリ〓育ノ面カラ携ハル所ノ生
  產面デアリマスカラ、必ズシモ生產ニ專心
  シテ居ル人ノ如ク效果ヲ擧ゲ得ナイト致シ
  マシテモ、私ハソレヲ單ニ學校ノ中デノ、
  學園ノ中デノモノノミニ止メズ、是ハヤハ
  リドウシテモ一國ノ生產性其ノモノニ影響
  ヲ持ツヤウナモノヲ持タセルコトニ依ツテ、
  靑少年學徒ニ現實ノ國家ノ要請ニ對スル責
  任ヲ持タセルト云フヤウナ觀念カラモ、是
  非必要デハナイカト考ヘルノデアリマス、
  斯ウ云フヤウナ私ノ立場カラ見マスト、今
  日ノ靑年學校ノ授業ノヤリ方ハ必ズシモ滿
  足シ得ナイノデアリマス、實ハモツト其ノ
  村ナリ町ナリノ農會ナリ、產業組合ナリ、
  商業報國靑年隊ナリ、サウシタモノトノ關
  聯ヲ十分密ニ致シマシテ、靑少年ノ勞働ガ
  直チニ其ノ村ヤ町ノ一箇年ノ生產性ニ强イ
  影響力ヲ持チ、延イテハ國ノ生產力增强ノ
  上ニモ影響ヲ持ツト云フ所ニマデ高メテ行
  キタイト思フノデアリマスガ、其ノ點ニ付
  テノ御所見ヲ承リタイト思ヒマス
  次ハ靑年學校ノ問題デナク、國民學校ノ
  綴方〓育指導ニ關スル事柄デアリマス、或
  ル時代ニ、最近マデアリマスガ、日本ノ小學
  校ノ綴方ノ指導方針ガ、所謂生活派ト云フヤ
  ウナ人々カラ强力ニ指導サレ、ソレガ綴方
  〓育ノ主流ヲナシタ時代ガアツタノデアリ
  マス、別ナ方面カラハ所謂調ベタ綴方ト云
  フヤウナ名前デ呼バレタノデアリマス、所
  ガ是ハ要スルニ文學上ニ於ケル「リアリズム」
  ト同樣ノ「カレント」ニ立ツモノデアリマシ
  テ、現實ノ面ヲ分析シテ實證的ニ堀下ゲテ行
  クト云フ點ハ、私ハ一ツノ重大ナル役割ヲ
  ナスモノダト考ヘル、併シナガラソレノミ
  ニ追求シテ行キマスルト、兎モスレバ是ガ階
  級的世界觀ノ上ニ立ツタ「マルキスト」ノ利
  用スル所ニナル虞ガ十分ニアルノデアリマ
  ス、此ノ生活派綴方ガ全盛ヲ極メテ居ツタ時
  ニ、私ノ〓里デ綴方ノ講習會ガ行ハレタ際
  ニ、私ハ此ノ點ニ付テ注意ヲ促シタコトガ
  アルノデアリマス、今カラ七、八年前デア
  リマス、其ノ時ニハマダサウ云フ私ノ注意
  ニ對シテ餘リ關心ヲ持ツテ居ナカツタノデ
  アリマス、所ガ其ノ後ニ於テ私ノ心配ガ現
  實ニ現ハレマシテ、各種ノ綴方〓育ヲ通シ
  テノ「マルキシズム」ノ宣傳ト云フモノガ相當
  出テ參ツタヤウデアリマス、所ガ最近ニナ
  リマシテ是ガ-實ニ明ケテ昨年ニナリマ
  スガ、又此ノ問題ガ擡頭致シテ來タノデア
  リマス、私甚ダ遺憾ニ存ジテ居リマス、文
  部省ニ於キマシテハ、此ノ問題ニ關シマシ
  テ、サウシタ先生ヲ出シタ不幸ナル學校ノ
  校長先生サン方ヲ集メマシテ、特殊ナ講習
  會ヲ御開キニナツタヤウニ聞イテ居リマス、
  遲蒔ナガラ大變良イコトデアツタト思ツテ
  居リマス、普通ノ校長先生ナンカハ、何等
  此ノ綴方〓育ニ於ケル生活派的ナ物ノ觀方
  ニ對シテハ〓養ガナカツタノデアリマスガ、
  一ツノ〓養ヲ與ヘマシテ大變宜イト思ヒマ
  ス、併シナガラ之ニ依ツテ私ガ憂フルノハ、
  更ニ又餘リニサウ云フ方面ヲ恐レ戰イテシ
  マツテ、科學的ナ物ノ觀方ニ對シテサヘ面
  ヲ背ケルト云フヤウナコトガ綴方指導ノ上
  ニ現ハレヤシナイカト云フコトナノデアリ
  マス、兎ニ角ニモ生活ト云フモノヲ見詰メ
  タリ、自分ノ境遇ナリ或ハ社會ニ於ケル立場
  ナリト云フモノニ付テ餘リ考ヘヲサセナイ
  方ガ宜イ、危イモノニハ近寄ラナイ方ガ宜イ
  ト云フ膾ヲ吹クヤウナ氣持デ、此ノ綴方ノ
  〓育ニ從ヒマスナラバ、私ハ玆ニ一ツノ誤リガ
  生ズルノデハナイカト思フノデアリマス、
  問題ハ純粹ナ意味ニ於ケル生活派的ナ物ノ
  觀方、物ヲ調ベテ行クト云フコトハ、低學
  年ノ生徒ハ是ハ天性「ロマンチシズム」ノ世
  界ニ住ンデ居ルノデアリマスカラシテ、之
  ヲ强ヒテ歪メテ、「リアリズム」ノ世界ニ持
  ツテ行クト云フコトハ、私ハ餘リ贊成致シ
  マセヌガ、相當ノ高學年ノ國民學校ノ生徒
  ニ對シマシテハ、「リアリズム」ノ眼ヲ覺マ
  サセル、十分ニ現實ノ生活ヲ觀ル眼ヲ向ケ
  ルト云フコトハ、私ハ國民トシテノ一ツノ啓
  蒙ニナルモノダト思フ、斯ウ云フ所カラ科
  學的ナ物ノ觀方モ發生スルノデアリマス、
  又物ノ觀方バカリデハナイ、觀方ヲ表現スル
  コトモソコカラ分ルノデアリマスカラシテ、
  私ハ十分此ノ點ハ哺ミ育テテ行ク必要ガア
  ルノダト思ツテ居リマス、問題ハソレヲ「マ
  ルキスト」ガ階級的世界觀ノ上ニ立ツテ之
  ヲ見タト云フコトガ誤リナノデアリマス、
  若シモ其ノ上ニ立ツテ皇國日本ノ世界觀ヲ
  以テ、皇國日本ノ「イデオロギー」ヲ以テ進ン
  デ行クナラバ、何等ソコニ弊害ガ生ズルモノ
  デハナイ、必ズヤ國民的ナ目覺メノ上ニ十
  分ナル役割ヲ果シ得ルモノデアル、實證的
  ナ、科學的ナ、經濟的ナ、現實的ナ分析ノ綜
  合ノ力ヲ養フト云フコトガ私ハソコニ庶幾
  セラレルモノダト思ヲノデアリマス、所ガ
  今言ツタヤウニ羹ニ懲リテ膾ヲ吹クト云フ
  ヤウナ態度ニナツテ居ルト云フコトハ甚ダ
  遺憾デアリマシテ、私ハ是ハ延イテハ物ノ
  觀察ノ仕方ト云フヤウナモノガ非常ニ非科
  學的ニナリ易イ點ガアルノデハナイカト思
  フノデアリマス、思ヒヲ科學ノ振興ニ特ニ
  致サレテ居ル一個ノ科學者デアル-文部大臣
  トシテヨリ一個ノ科學者トシテ私共ノ尊敬
  致シテ居リマス橋田文相ガ斯ウ云フヤウナ
  點ニ付テモ決シテ俗事ニ煩ハサレル所ナク、
  良イ所ハ採リ惡イ所ハ棄テテ進ンデ行ク
  ト云フ氣持ニ出ラレンコトヲ私共ハ期待致
  スノデアリマス、此ノ點ニ對スル御所見ヲ
  伺ヒタイノデアリマス
  最後ニ女子靑年學校ノ問題デアリマスガ、
  女子靑年學校ノ就學ノ義務制ガ今日行ハ
  レテ居ナイノデアリマスガ、ナゼ今日行ハ
  レテ居ラナイノデアルカ、私共ハ女子靑年
  學校ノ義務制ヲ速カニ斷行スベキ必要アリ
  ト考ヘテ居リマスルガ、之ニ對スル文部當局
  ノ將來ノ見透シヲ御伺ヒシタイト思ヒマス

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• 072・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　只今ノ御質問ノ中第一ノ
  點靑年學校〓育又勤勞ニ卽シタ實務ト相
  共々ニ行フベキ〓育ト云フモノノ少シ高級
  ナ組織ヲ考ヘタラドウカト云フ御話デゴザ
  イマスガ、只今デモ靑年學校ハ御承知ノ通
  リ〓究科專修科ト云フヤウナモノガゴザイ
  マシテ、ソレニ依ツテ一應ノ目的ハ果シテ
  居ルノデアリマス、併シナガラ從來〓育ト
  云フ抽象サレタ純粹的ナ物ノ觀方ダケカラ
  〓育ト云フモノノ制度ヲ考ヘテ見マシタ事
  柄ハ、單ニ時代ノ動キノミナラズ、現實ノ
  問題ト致シマシテハ餘リニ懸ケ離レルコト
  ニナルノデアリマシテ、ヤハリ純粹〓育カ
  ·
  ラハ異質的ト見ラレルガ、併シ實際ノ〓育
  ニ於テハ必要ナモノデアルト云フコトハ御
  說ノ通リト考ヘルノデアリマス、殊ニ勤勞
  ニ卽シテ〓育スルト云フ事柄ハ、實ニ〓育
  トシテ最モ重要視スベキ所デアルノデゴザ
  イマスノデ、所謂勤勞ノミナラズ廣ク實務
  ニ從事スル者ガ絕エズ〓育ヲ他カラ受ケル
  コトモアリ、又自ラガ自ラヲ〓育スルト云
  フヤウナコトコソガ眞ノ〓育デアラウト考
  ヘテ居リマスノデ、靑年學校〓育ノ問題ヲ
  考ヘマス場合ニハ、其ノ點等十分ニ考慮致
  シタイト存ジテ居リマス
  又私立ノ靑年學校ニ於キマシテドウモ學
  校長ト云フモノノ力ガ實ハ設立者ノ立場ト
  非常ニ懸隔ガアリ過ギテ、〓育ノ方針ト云
  フモノガ會社經營ノ方針ト全ク懸ケ離レル
  ト云フヤウナ事柄モ從來事例ニ乏シクナイ
  ノデゴザイマス、併シナガラ近來其ノ點ハ
  稍〓設立者等モ目覺メテ、設立者自ラガ校長
  ニナツテ、學校ノ經營ト云フコトト又其
  ノ會社或ハ事業ノ經營ト云フコトト一體ト
  シヨウト云フ傾向モ餘程出テ參ツタト存ジ
  マスガ、兎ニ角校長ト云フモノノ地位ガ唯
  會社カラ離レタ、或ハ會社ニクツ付イテ居
  リマシテモ、唯會社ノ雇傭人デアルト云フ
  ガ如キ關係ニナイヤウニ、學校ノ組織ヲ持
  チ來サナケレバナラヌト云フコトニ付テハ
  全ク御同感デゴザイマシテ、何カ適當ナ方
  策ヲ考ヘタイト思ツテ居リマス
  又靑少年鍊成ノ指導面ガ餘リニ多岐ニ亙
  ツテ居ルト云フ弊害ガアルコトモ、各種ノ
  方面カラノ話ヲ承ツテ居リマス、靑少年、
  殊ニ少年ノ如キ者ヲ指導致シマス場合ニ、
  複雜多岐ニ亙ルコトハ最モ禁ズベキ事柄デ
  アルコトハ御意見ノ通リデアリマス、適當
  ニ其ノ方法ト形式トヲ定メルコトニ向ツテ
  努力致シタイト存ジマス
  又町村ノ靑年學校〓育ガ、〓土トノ聯關
  ニ於テナサルベキデアルト云フ事柄ハ、當
  然ノ事柄デアルト思フノデアリマス、又其
  ノ〓育自體ガ、先程申シマシタヤウナ意味
  カラ、〓育ノ理想、又〓育ノ目的ト云フモノ
  ハ飽クマデ保持シナガラ、併シナガラ現實
  トノ聯關ニ於テ其ノ實ヲ全クスルモノデア
  ルト云フ點カラ考ヘマシテ、町村ニ於ケル
  靑年學校〓育ガ殊ニ勤勞ヲ通ジテノ〓育デ
  アルノ故ヲ以テ、〓土ノ生產計畫ノ、一部分
  ヲ負擔スルト云フコトニナルコトハ、洵ニ
  結構ナコトデアルト思フノデアリマス、唯
  其ノ際ニ於キマシテモ、御說ノ通リ、勤勞
  奉仕ト云フヤウナ形ヲ取ル場合モアリマセ
  ウシ、又實際學校ノ〓育計畫ノ中ノ一ツト
  シテ生產計畫ト云フモノノ中ニ關與スルト
  云フコトモアラウシ、色々アリマセウガ、
  〓土的ナモノノ現實ニ卽シテノ〓育ヲ行ハ
  セルヤウニスベキコトハ、殊ニ職場、或ハ職
  場以外ノ實務ト云フモノヲ通ジテ、靑年ヲ
  〓育スル上ニ於テ重大ナコトト考ヘルノデ
  ゴザイマシテ、是亦靑年學校ノ問題ヲ考慮
  致シマス時ニハ、十分ニ參酌致シタイト思
  ヒマス
  又國民學校ノ綴方指導、所謂生活綴方〓
  育ト云フモノガ色々ノ弊害ヲ起シタ事柄ハ
  御承知ノ通リデアリマス、併シ最近ズツト
  以前カラノモノノ殘リダラウト思ハレマス
  モノガ取上ゲラレテ問題ニナツテ來テ居リ
  マスノニ付テ、又御話ノ通リ、餘リ反動
  的ニ其ノヤウナ面ヲ十分利用スベキモノデ
  アルニモ拘ラズ、全然利用シナイデ終ルト
  云フコトノアルヤウナ事柄ハ、是亦遺憾ナ
  コトデアルト存ズルノデアリマス、殊ニ自
  己ノ生活自體ヲ學術的ニ、又科學的ニ取扱
  ヒナガラ、科學ト云フモノノ眞諦ニ觸レル
  ト云フ事柄ハ最モ重要ナコトデアルノデア
  リマシテ、其ノ邊ノコトハ十分利用シテ行
  カナケレバナラナイノデゴザイマス、唯併
  シナガラ從來動モスレバ科學ト云フモノガ、
  我ガ國民性ヲ離レタモノデアルト云フヤウ
  ナ考ヘノ下カラ、科學的ニ物ヲ見ルト云フ
  時ニハ現實ニ現ハレテ居ル事象ノ底ヲ流
  レテ居ル最モ根源的ナモノニ觸レルコトヲ
  忘レテ居ツタノデアリマス、ソレガ故ニ動
  モスレバ科學的ニ〓究スルト云フ事柄ガ、
  唯物論者ノ利用スル所ト相成ル弊害ヲ釀シ
  テ居ツタノデアリマスカラ、無論是等ノモ
  ノヲ十分利用致シマシテ、生活ニ卽シテ事
  物ヲ科學的ニ取扱フト云フ場合ニ、科學的
  ナルモノヲ運轉サシテ居ル日本人トシテノ
  立場ト云フモノハ、何處ニアルカト云フ事柄
  ハ常ニ忘レナイヤウニサセル方針デ指導シ
  テ行キタイ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス
  又女子ノ靑年學校ノ義務制ハ、是非トモ
  或ル機會ニ實行シナケレバナラナイ問題デ
  ゴザイマスガ、女子ノ勞働問題、勤勞問題
  ハ、男子靑年ノ勤勞トハ稍、複雜ナ點ガゴザ
  イマスノデ、マダ卽時義務制ノ實施ト云フ
  段取マデニハ至ツテ居リマセヌケレドモ、
  十分ニ此ノ勤勞女子靑年ト云フ者ノ特殊ナ
  性格ヲ考慮致シマシテ、出來ルダケ早イ時期
  ニ於キマシテ、女子ノ靑年學校ヲモ義務制
  ト致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 073・松岡俊三

  ○松岡委員長　委員長トシテ或ハ私ノ聽キ
  間違ヒカモ知レマセヌガ、サツキ加藤弘造
  君ノ御質問ニ對シテ、文部大臣ハ明年ヲ待
  タズトモナシ得ルモノガアルカノヤウナ一
  寸御答辯ガアツタヤウニ私聽カレタノデス
  ガ、此ノ點速記ヲ見ナケレバ分リマセヌガ、
  ドウ云フ御氣持ダカ御伺ヒ致シタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008110863X00319430203&spkNum=73

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• 074・橋田邦彦

  ○橋田國務大臣　私ガ申上ゲマシタノハ、
  靑年學校問題ニ付テハ明年度ニ於テ十分ニ
  考究シテ、少クトモ改善ト云フ事柄ヲ、十
  九年度カラハ實施致シタイ、切ニ其ノ方ニ
  向ツテ努力スルト申上ゲタノデアリマス、
  其ノ際ニ、〓究中ニ、場合ニ依レバ十九年
  度ヲ待タズトモ出來ルモノガアルカモ知レ
  マセヌ、サウ云フモノハ速カニ實行シタイ
  ト思ヒマス、斯ウ云フ話ヲ申上ゲタノデ、
  現ニ十八年度中ニ何カ實行出來ルカト云フ
  コトヲ具體的ニ摑ンデ居ル譯デハアリマセ
  ヌ

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• 075・松岡俊三

  ○松岡委員長　分リマシタ、本日ハ此ノ程
  度ニ質問ヲ打切リマシテ、明日午前十時ヨ
  リ開會シテ質問ヲ續行シタイト思ヒマス、
  本日ハ是ニテ散會致シマス
  午後四時十六分散會

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