1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月十五日(月曜日)午後一時十六分開議
出席委員左の如し
委員長 矢野庄太郎君
理事 南鐵太郎君
赤間徳壽君 伊藤五郎君
長内健榮君 鈴木忠吉君
田部朋之君 中西敏憲君
松田正一君 森川仙太君
森部隆輔君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
法制局長官 森山鋭一君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省國民貯蓄局長 氏家武君
大藏省資金局長 松田令輔君
大藏省理財局長 田中豐君
大藏省銀行局長 山際正道君
大藏省監理局長 相馬敏夫君
大藏書記官 河野一之君
大藏書記官 窪谷直光君
大藏書記官 加藤八郎君
專賣局長官 木内四郎君
專賣局理事 濱田徳海君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼營等に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
銀行等の事務の簡素化に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
戰爭死亡傷害保險法案(政府提出、貴族院送付)
鹽專賣法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
昭和十二年法律第八十四號中改正法律案(大東亞戰爭に關する臨時軍事費支辨の爲公債發行に關する件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=0
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001・矢野庄太郎
○矢野委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、
本委員會ニ付託セラレテ居リマス法律案ハ、
臨時資金調整法中改正法律案、普通銀行等
ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼營等ニ關
スル法律案、銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關ス
ル法律案、戰爭死亡傷害保險法案、鹽專賣法
中改正法律案、以上五件ハ貴族院送付ノ案
デアリマスガ、其ノ外ニ昭和十二年法律第
八十四號中改正法律案(大東亞戰爭ニ關スル
臨時軍事費支辨ノ爲公債發行ニ關スル件)ノ
六件デアリマスガ、マダ政府ノ說明ガゴザ
イマセヌノデ、此ノ際政府ノ說明ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=1
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002・谷口恒二
○谷口政府委員 本委員會ニ付託ニ相成リ
マシタ臨時資金調整法中改正法律案外五件
ニ付キ、其ノ提案ノ理由ヲ說明致シマス
現下政府各般ノ施策ノ重點ハ、大東亞戰
爭ノ完遂ヲ目的トスル戰力ノ增强ト云フ一
點ニ集中致サナケレバナラヌコトハ、今更
申上ゲルマデモナイ所デアリマス、政府ニ
於キマシテハ、從來ト雖モ各般ノ有效適切
ナル施策ヲ講ジツツアルノデアリマスガ、
本委員會ニ付託セラレマシタル今囘ノ六
件ノ法律案ハ、國民貯蓄ノ增强、國民生
活ノ維持安定等、何レモ戰力ノ增强上緊急
缺クベカラザル施策ユ卽應セントスルモノ
デアリマス、各法律案ノ內容ニ付キマシテハ、
旣ニ本會議ニ於テ其ノ要點ヲ御說明致シタ
ノデアリマスルガ、尙ホ之ヲ多少敷衍シテ
申上ゲルコトト致シマス
先ヅ臨時資金調整法中改正法律案ニ付キ
說明致シマス、戰時財政經濟ノ圓滑ナル運行
ヲ確保シ、多額ノ戰費及ビ產業資金ヲ調達
シ、戰力ノ增强ヲ圖リマスコト、益〓緊要ト相
成ツテ居リマスコトハ、玆ニ申上ゲルマデ
モアリマセヌ、是ガ爲ニハ各般ノ措置ヲ講
ジマシテ、國民貯蓄ノ增强、浮動購買力ノ
吸收ヲ圖リマスト共ニ、國債其ノ他ノ證劵
ノ消化促進、產業資金ノ調達及ビ國民貯蓄
ノ保護ノ爲メ、有價證劵ノ適正簡易ナル賣
買機構ヲ整備シ、株式ノ市價安定ヲ圖ル必
要ガアルノデアリマシテ、今般臨時資金調
整法ヲ改正シ、之ニ必要ナル規定ヲ設クル
コトト致シタノデアリマス、先ヅ本法案ノ
主ナル點ヲ說明致シマス
改正ノ第一點ハ、新種貯蓄方法ヲ實施シ、新
種證劵ヲ發行シ得ルコトト致シタコトデア
リマス、卽チ第一ニ、銀行其ノ他ノ各種貯
蓄取扱機關等ハ、從來ト雖モ政府及ビ金融
統制會ノ指導ノ下ニ、國民貯蓄ノ增强ニ力
ヲ盡シテ參ツテ居ルノデアリマスガ、今般
國民貯蓄ノ增强ヲ圖ル爲メ必要アリト認ム
ル時ハ、政府ハ銀行、其ノ他ノ所謂貯蓄取
扱機關等ニ對シ、各種ノ新種貯蓄ノ取扱ヲ
ナサシメ、且ツ之ニ付キ課稅上ノ優遇措置
ヲ講ジ得ルコトト致シマスルト共ニ、貯蓄
者ノ便宜ヲ圖リ、種々貯蓄施設ノ整備ヲ行
ハシムル等、資金ノ吸收ニ關シ必要ナル命
令ヲナシ得ルコトト致シ、以テ現下時局ノ要
請ニ基キ今後一層ソレノ〓ノ機能ヲ最モ有
效ニ活用シ、政府ト一體的活動ヲナサシム
ルコトト致シタノデアリマスガ、之ニ伴ヒ
必要ニ應ジ損失補償、又ハ補助金交付等ノ
方途ヲ講ズルコトトシ、以テ是ガ效果ノ萬
全ヲ期スルコトト致シタ次第デアリマス
第二ニ、現在國債其ノ他ノ債劵等ニ於キマシテ
ハ、其ノ劵面金額ノ種類ニハ一定ノ制限ガアリ、
金利其ノ他ノ關係デ常時賣出ノ方法モ採リ難
ク、又各種ノ預貯金、金錢信託等、所謂金錢
貯蓄ニ付キマシテモ、當該貯蓄取扱機關ノ所
在地ノ遠近、店舗數ニ限リアル等ノ理由ニ
依リ、何レモ貯蓄手段トシテハ尙ホ不便ノ
場合ガ多イノデアリマス、併シナガラ國民
貯蓄ノ增强ヲ圖ツテ參リマスルニハ、苟ク
モ貯蓄手段ノ不備等ノ理由ニ依リ、貯蓄ノ
機會ヲ逸セシムルコトガアツテハナラナイ
ノミナラズ、進ンデ能フ限リ簡便ナル方法
ヲ案出シ、是ガ增强ヲ期スルノ必要ガアル
ト考ヘラレマスノデ、玆ニ一定ノ預貯金等
ニノミ充ツルコトヲ目的トスル證劵ヲ政府
自ラ發行シ、又ハ命令ノ定ムル者ヲシテ發
行セシムルコトト致シ、以テ右趣旨ノ遂行
ヲ期スルコトト致シタノデアリマス
第三ニ、元來貯蓄手段ニ對シ割增金ヲ附與
スルコトハ、國民大衆ノ微妙ナル心理ヲ利
用シテ、零細ナル資金、或ハ動モスレバ戰
時下好マシカラザル消費ニ向ハントスル購
買力ノ吸收ヲ圖ルコトヲ目的トスルモノデ
アリマスガ、是ガ爲ニハ割增金ヲ附スベキ
)
貯蓄手段、割增金附與ノ方法及ビ金額、或
ハ其ノ賣出又ハ募集ノ方法等ニ付キ、絕エ
ズ新タナル工夫ヲ加フルコトガ適當ト認メ
ラレルノデアリマシテ、今般現在ノ貯蓄債
劵、報國債劵或ハ割增金附郵便貯金、切手
以外ニ、一定ノ者ヲシテ新規構想ニ基ク各
種ノ割增金附證劵ヲ發行セシメ得ルコトト
スルト共ニ、證劵ノ形體以外ニ各種ノ預貯
金ニ對シマシテモ、必要ニ應ジ抽籤ヲ以テ
割增金ヲ附スルコトヲ得ルコトト致シタノ
デアリマス
次ニ改正ノ第二點ハ、貯蓄債劵及ビ報國
債劵ノ發行償還事務ノ輻湊ヲ緩和スル爲
メ、社債原簿制度ヲ省略スルト共ニ、兩債
劵發行償還ノ都度、日本勸業銀行本支店所
在地ニ於テ行フコトヲ要シマスル發行竝ニ
償還登記ヲ省略セントスルモノデアリマ
ス、兩債劵ノ賣出成績ハ、每囘極メテ順調
ニ推移シ、昨年十二月末マデノ發行額累計
ハ十七億八百万圓ニ上リ、且ツ其ノ發行額
ハ逐年累增ノ傾向ヲ辿ツテ居リマス、而シ
テ兩債劵ハ共ニ日本勸業銀行ヲシテ發行セ
シメテ居リマスル關係ヨリ、形式上ハ一種
ノ社債ドナリ、商商ノ社債ニ關スル複雜ナ
ル諸規定ハ特則ノナイ限リ當然適用サレル
ノデアリマスガ、右ノ如キ實狀ニアル兩債
劵ニ商法ノ原則ヲ適用スルコトハ、是ガ事
務量莫大ニ上リ、事實上事務的行詰リヲ來
スノデアリマス、是ガ解決ヲ圖ルト共ニ、
戰時下資材、勞力不足ノ折柄、其ノ節減ニ
資スル爲メ、社債發行、條件變更、償還ノ都
度右ノ諸事項ヲ發行會社タル日本勸業銀行
ノ本支店所在地ニ於テ登記スベキコトヲ規
定シテ居リマスル商法第三百五條ノ適用ヲ
除外致シ、併セテ社債發行償還ノ都度債劵
一枚々々ノ番號竝ニ當該年月日ヲ記入スル
コトヲ規定シテ居リマスル商法第三百十七
條ノ適用ヲ除外致スノ要アルモノト認メ
ラレルノデアリマス、而シテ商法第三百
五條ノ適用ヲ除外致シマス結果、當然不
要トナリマスル日本勸業銀行法第三十五
條ノ二第四項、第五項竝ニ第三十五條ノ
四ノ準用ヲモ除外セントスルノデアリマ
ス
改正ノ第三點ハ、適正簡易安全ナル有價
證劵ノ賣買機構ヲ整備セントスルコトデア
リマス、支那事變勃發以來、現在マデノ國
債發行額ハ四百、十六億餘万圓ニ上リマスル
外、貯蓄債劵及ビ報國債劵ノ發行額モ前申
述ベマシタル如ク極メテ多額ニ上ツテ居リ
マスガ、今後戰費及ビ生產力擴充資金ノ調
達ノ爲メ國債其ノ他ノ證券ノ發行額ハ益〓增
加スルノデアリマシテ、是ガ消化、特ニ國
民大衆ノ消化ヲ圓滑化シ、且ツ其ノ消化力ヲ
促進致シマスル爲ニハ、一般國民ガ已ムヲ
得ザル必要アル〓時ハ、何時ナリトモ所有ノ
國債、其ノ他ノ證劵ヲ適正ナル價格ヲ以テ
簡易安全ニ賣却スルコトヲ得、又何時ナリ
トモ希望スル必要ノ種類、數量ノ證劵ヲ購
入シ、又ハ希望ノ證劵ニ交換シ得ル機構ヲ
設クルコトガ必要デアリマス、現在ニ於テ
モ郵便局賣出國債ニ付テハ、必要ニ應ジ郵便
局ニ於テ之ヲ買入レ、又百貨店ニ於テハ常
時小額國債、貯蓄債劵及ビ報國債券ヲ賣却
シテ居ルノデアリマスガ、今般更ニ一層廣
ク且ツ簡便ニ國民ガ國債、貯蓄債劵、報國
債劵等ヲ適正ナル價格、且ツ簡易ナル手續
ニ依ツテ安全ニ賣買シ得ル機構ヲ設クルコ
トヲ適當ト認メ、是ガ爲メ政府ハ金融機關、
證劵引受業者、其ノ他命令ノ定ムル者ヲシ
テ一定ノ有價證劵ヲ一定ノ價格、方法等ニ
依リ直接賣買セシメ、又ハ政府ノ指定スル
法人ノ爲ニ賣買ノ代理、若クハ媒介ヲナス
ベキコトヲ命ジ得ルコトトシ、又國債、其
ノ他ノ證劵ヲ常時賣却セシムル爲メ、是等
ノ金融機關等ヲシテ一定ノ種類、數量ノ證
劵ヲ保有セシメ得ルコトトシ、之ニ伴ヒ必
要ニ應ジ損失ヲ補償シ、又ハ補助金ヲ交付
シ得ルコトト致シタノデアリマス
最後ニ改正ノ第四點ハ、必要ニ應ジ株式
ヲ讓渡スベキコトヲ命令シ得ルコトトスル
コトデアリマス、大東亞戰爭下株式ノ市價安
定ヲ圖リ、以テ資金動員ノ適正ヲ期シ、產業
資金ノ調達、國民貯蓄ノ保護ニ遺憾ナカラ
シムルコトノ緊要ナコトハ多言ヲ要シナイ所
デアリマシテ、從來政府ニ於キマシテモ是
ガ爲メ各種ノ措置ヲ講ジテ參リ、殊ニ戰時
金融金庫ハ政府ノ指導ノ下ニ株式ノ市價安
定ノ爲ニ必要ナル賣買操作ヲ行ツテ來夕次
第デアリマス、然ルニ同金庫ガ株式市價ノ
過當ナル〓騰時ニ際シマシテ、是ガ抑止
ノ爲ニスル賣リ出動ハ之ニ必要ナ株式ノ
手持ガナケレバ十分ナ效果ヲ擧グルコト
ヲ得ナイノデアリマシテ、株價操作萬
全ヲ期スル爲ニハ、何時ニテモ同金庫ノ手
持株式ヲ充實シ得ルノ態勢ヲ整ヘテ置クノ
必要ガアルノデアリマス、又別途今議會ニ
提案中ノ日本證券取引所法案ニ於テハ、場
合ニ依リ新取引所ガ自ラ斯カル操作ヲ行フ
コトモ必要ト認メラレマスノデ、同法中ニ
之ニ關スル規定ヲ設ケマシタノニ照應シ、
日本證劵取引所ニ付キマシテモ其ノ手持株
式ノ補充ニ付キマシテ同樣ノ必要ガアルノ
デアリマス、斯ル事情ニ顧ミマシテ、今般
株式讓渡命令ニ關スル制度ヲ設ケ、政府ハ
株式ノ市價安定ヲ圖ル爲メ必要アリト認ム
ルトキハ、金融機關、其ノ他命令ノ定ムル
者ニ對シ、其ノ所有スル株式ノ一部ヲ戰時
金融金庫、又ハ日本證劵取引所ニ對シ時價
ヲ以テ讓渡スベキコトヲ命ズルコトヲ得ル
コトト致シマシタ
以上本法案ノ主ナル點ヲ御說明申上ゲタ
ノデアリマスガ、何レモ大東亞戰爭下資金
ノ蓄積、浮動購買力ノ抑制等ヲ圖リ、以テ
戰時財政經濟ノ圓滑ナル運行ヲ確保致シマ
スル上ニ於テ、極メテ緊要ナル措置ト存ズ
ル次第デアリマス
次ニ普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業
務ノ兼營等ニ關スル法律案ニ付キ說明致シマス
本法律案ノ趣旨ハ、現下ノ經濟金融政
策上資金ノ蓄積、貯蓄ノ增强ガ最モ緊要
デアリ、是ガ爲ニハ凡ユル金融上ノ施設ヲ
動員シ、資金ノ吸收、特ニ大衆的預金及ビ
長期貯蓄的資金ノ吸收ニ對シ其ノ全能力ヲ
發揮セシムルコトガ極メテ肝要デアルト認
メラレマスノデ、現存金融機關中、其ノ人
員及ビ店舗數等ニ於テ最モ活動力アル普通
銀行等ヲシテ、貯蓄銀行業務及ビ信託業務
ヲ兼營セシメ、時局ノ要請ニ應ズル上ニ於
テ遺憾ナキヲ期セントスルモノデアリマス
本法律案ノ內容ハ、第一ニ普通銀行ガ主務
大臣ノ認可ヲ受ケ、又ハ特別銀行ガ主務大
臣ノ指定ヲ受ケ、ソレ〓〓貯蓄銀行業務又
ハ信託業務ヲ營ミ得ルコトヲ定メテ居ルノ
デアリマス、此ノ場合ニ於テ貯蓄銀行法又ハ
信託業法中必要ナル規定ハ、之ヲ兼營銀行
ニモ適用スルコトト致シタノデアリマシテ、
其ノ主ナルモノハ供託ニ關スル規定、有價
證劵ノ割賦販賣ニ關スル規定、運用方法ノ
特定セザル金錢信託ニ付キ、元本ノ補塡、
又ハ利息ノ補足ヲ爲シ得ルコトニ關スル規
定、兼營業務ノ種類、又ハ方法ニ對スル主
務大臣ノ監督權ニ關スル規定等デアリマス
第二ハ合併ニ關スル規定デアリマシテ、
其ノ內容ハ信託會社又ハ信託業務ヲ兼營ス
ル銀行ガ合併スル場合、銀行ノ合併ノ場合
ノ如キ簡易手續ヲ執リ得ルコト及ビ兼營銀
行ト信託會社トガ合併シ、又ハ兼營銀行同
志ガ合併スル場合、合併後存續シ、又ハ新
設セラルル兼營銀行ハ、合併ニ依リ消滅シ
タル信託會社又ハ兼營銀行ノ信託ニ關スル
權利義務ヲ承繼スルコトノ二點デアリマス
第三ハ本法律案ニ伴ヒ必要ト認メラルル
他ノ法律ノ改正等ニ關スル規定デアリマス
最後ニ本法律案ノ運用ニ當リマシテハ、
專營ノ貯蓄銀行又ハ信託會社ト、兼營銀行
トノ間ニ於テ、不當ノ競爭ヲ生ゼザルヤウ
十分ニ留意致シ、兼營ノ認可ノ際、其ノ兼
營業務ト種類及ビ方法等ニ付キマシテ適當
ト認メラルル調整ヲ加へタイト考ヘデアリ
マス
次ニ銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關スル法律
案ニ付キ說明致シマス、本法律案ハ銀行、
其ノ他ノ金融機關ノ事務ノ簡素化ヲ圖ルコ
トニ依リ、是等金融機關ヲシテ愈〓、其ノ機能
ヲ發揮シ易カラシメ、以テ戰時下國家財政
及ビ金融ノ圓滑ナル運營ニ資セントスルモ
ノデアリマシテ、其ノ主ナル內容ハ三ツニ
分レテ居ルノデアリマス
第一ハ金融機關ノ事業年度ヲ政府ノ會計
年度ニ合致セシメントスルモノデアリマス、從來
銀行、其ノ他ノ金融機關ノ事業年度ハ相當區
區ト相成ツキ居リ、或ル者ハ政府ノ會計年度ト
一致シテ居ルノデアリマスガ、其ノ他ノ大
多數ノ者ハ曆年主義ニ依ツテ居ルノデアリ
マシテ、政府ノ會計年度トノ間ニ完全ナ
ル一致ヲ缺イテ居ツタノデアリマス、然ル
ニ豫算ハ勿論資金計畫、物資動員計
畫生產力擴充計畫等、國家財政及ビ經濟
運營ノ基礎タルベキ諸計畫ハ、何レモ政
府ノ會計年度ヲ基礎トシテ樹立劃定セ
ラレルコトト相成ツテ居ルノデアリマシ
テ、其ノ爲メ是等計畫ノ立案ニ當リマシテ
ハ、常ニ金融關係ノ諸資料ヲ政府ノ會計年
度ニ引直ス必要ヲ存シタノデアリマス、又
金融機關ガ是等諸計畫ニ對應シテ具體的ナ
實施計畫ヲ樹立シ、若シクハ是等ノ諸計畫
ニ卽應シテ、其ノ業務ヲ運營シテ參リマス
爲ニハ、何レモ是等ノ諸計畫ヲソレ〓〓ノ
事業年度ニ引直ス必要ガアツタノデアリマ
ス、其ノ爲メ政府ト致シマシテモ、又金融
機關自身ト致シマシテモ、種々煩雜ナル手
數ヲ要シタノデアリマスガ、茲ニ此ノ缺陷
ヲ是正スル爲ニ、金融機關ノ事業年度ニ付
テハ總テ之ヲ政府ノ會計年度ト合致セシメ
ルコトトシ、以テ金融機關等ノ事務ノ簡素
化ヲ圖リ、併セテ右ニ申述ベマシタル諸計
畫ノ立案及ビ實施ノ圓滑ヲ期スルコトト致
シタ次第デアリマス
尙ホ今囘ノ改正ハ現在其ノ事業年度ガ政
府ノ會計年度ト合致シ居ラザル金融機關
ニシテ法律ヲ以テ事業年度ノ規定ヲ設ケフ
居ルモノニ付テノミ之ヲ行フコトトシ、其
ノ他ノ金融機關ニ付キマシテハ、命令ヲ以
テ事業年度ノ定メアルモノハ命令ヲ改正
シ、ソレ以外ノモノハ定款ヲ改正セシメル
コトニ依リ、總テノ金融機關ノ事業年度ヲ
政府ノ會計年度ニ合致セシメルコトト致シ
タイト存ズルノデアリマス
第二ハ擔保附社債ノ擔保ノ變更手續ニ關
シ擔保附社債信託法ニ對スル特例ヲ定メン
トスルモノデアリマス、現行法ニ依レバ擔
保附社債ノ擔保ノ變更ニ付キマシテハ、事
ノ輕重ニ拘ラズ、總テ社債權者集會ノ決議ニ
依ラナケレバナラナイコトト相成ツテ居リ、
而シテ此ノ變更ノ決議ハ記名債劵ヲ有スル
者及ビ無記名債劵ヲ有スル者デアツテ、會
日ヨリ一週間前ニ債劵ヲ會社ニ供託シタル
モノノ半數以上ニシテ、社債總額ノ半數以
上ニ當ル社債權者ガ、議決權ヲ行使スルコ
トヲ要スルノデアリマシテ、其ノ爲メ受託
會社ハ屢〓單純ナル擔保ノ變更ノ爲ニ煩瑣ナ
ル手數ヲ費シテ、社債權者集會ヲ招集セザ
ルヲ得ナカツタノデアリマス、然ルニ最近
ノ實情ニ於キマシテハ、企業ノ整備統合ガ
頻リニ行ハレ、或ハ一ノ會社ノ設備ガ他ノ
會社ニ讓渡セラレ、或ハ數會社ノ設備ヲ合
シテ一會社ヲ設立スル等ノ事例ヲ多數見テ
居ルノデアリマス、而シテ其ノ結果社債ノ
擔保ニ付キマシテモ變更ヲ要スル場合ガ屢〓、
生ジテ來ルノデアリマスガ、斯ル際ニ當リ
マシテ、一々煩瑣ナル手數ヲ費シテ社債權
者集會ヲ招集シテ居リマシタノデハ、戰時
下急速ヲ要スル企業整備ノ必要ニ應ジ得ナ
イ虞モアルノデアリマス、而モ是等ノ場合
ニ於キマシテ、〓ネ分離セラレタ擔保ニ付
キマシテハ、適當ナル對價ヲ取得スルノデ
アリマシテ、之ヲ社債ノ擔保トシテ追加ス
ル等ノ方法ヲ講ジマストキハ、社債權者ノ
利益ノ保全ニハ支障ナイ場合ガ多イノデア
リマス、仍テ當分ノ內茲ニ擔保附社債信託
法ニ特例ヲ設ケ、受託會社タル金融機關ガ
變更後ニ於ケル擔保ノ價格ガ未償還社債ノ
元利金ヲ擔保スルニ十分ナリト認メマス場
合ニ於キマシテハ、擔保ノ變更ハ主務大臣
ノ認可ヲ受ケルコトヲ以テ足リ、社債權者
集會ノ決議ヲ必要トセザルコトニ改メ、以
テ受託會社タル金融機關ノ事務ヲ簡素化シ、
時局ノ要請ニ基ク社債擔保變更ノ手續ヲ簡
易ニセントスルモノデアリマス
第三ハ銀行及ビ保險會社ノ監査役ガ監査
書ヲ作成スベキ囘數ヲ每事業年度ニ付一囘
ト爲サントスルモノデアリマス、銀行及ビ
保險會社ノ監査役ハ、從來每事業年度ニ付
二囘、卽チ銀行ニ付キマシテハ三箇月ニ一
囘、保險會社ニ付キマシテハ六箇月ニ一囘
監査書ヲ作成スルコトヲ必要トシタノデア
リマスガ、近時金融機關ノ內容ハ十分堅實
トナツテ參ツテ居ルノデアリマシテ、右監
査書ノ作成囘數ヲ每事業年度ニ付一囘ニ減
少セシメルモ、何等支障ナシト認メラレマ
スノデ、今囘是ガ改正ヲ爲スコトトシ、以
テ監査役ノ行フベキ事務ノ簡素化ヲ圖ルコ
トニ致シタノデアリマス
次ニ戰爭死亡傷害保險法案ニ付キ說明致
シマス、大東亞戰爭ノ前途ヲ按ジマスルニ、
戰局ハ今後一段ト擴大進展スベキモノト考
ヘナケレバナラヌノデアリマシテ、之ニ伴
ヒ戰爭ニ因ツテ國民ガ死亡シ、又ハ傷害ヲ
被ル危險モ今後尠クナイト思ハレルノデア
リマス、而シテ戰爭ニ因ツテ生ズベキ、國
民ノ死亡傷害ニ對處スル施設ヲ完備致シマ
スルコトハ、戰時下ニ於ケル國民生活ニ何
等ノ不安ナカラシメ、國民ノ士氣昂揚及ビ
民心ノ安定ニ資スルト共ニ、戰場タルト銃
後タルトヲ問ハズ、國民ヲシテ後顧ノ憂ナ
〃、各其ノ職域ニ於テ任務ヲ完ウセシメ得
ル所以デアリマシテ、此ノ曠古ノ大戰爭ヲ
完遂致シマスル上ニ洵ニ喫緊ノ要事ト申サ
ネバナラヌノデアリマス、政府ニ於キマシ
テハ是ニ深ク思ヒヲ致シ、戰爭ニ因ル死亡
傷害ニ對シマシテハ、豫テ種々方策ヲ講ジ
テ參ツタノデアリマシテ、國家ノ行フ給與
ノ制度ト致シマシテハ、現在軍人等ノ戰死
傷ニ對スルモノノ外、戰時災害保護法及ビ
防空從事者扶助令ニ基クモノ等ガアルノデ
アリマス、併シナガラ是等ノ制度ハ何ルモ
國家ノ一方的給與デアリマス關係上、其ノ給
與額等ニハ自ラ限度ガアリ、各人ノ生活ノ實
情等カラ見テ、必ズシモ十分トハ申サレヌ
場合ガ少クナイト思ハレルノデアリマス、
又保險ノ方面ニ於キマシテハ、戰爭ニ因ル
死亡ニ對シ生命保險金及ビ簡易生命保険金
ノ支拂ガ現在行ハレテ居ルノデアリマスガ、
其ノ制度ノ建前ガ戰爭危險ノミヲ保險スル
仕組ニハナツテ居ラズ、隨テ之ヲ戰爭保險
制度トシテ見マスル時ハ、種々ノ點ニ於テ
缺クル所ガアルノデアリマス
次ニ傷害ニ對シマシテハ、戰爭危險ヲ擔保
スル旅行傷害保險ガ一部ノ損害保險會社ニ
依リ行ハレテ居ルノデアリマスガ、普通ノ
營業トシテ行フモノデアリマスカラ、保險
料ガ高率デアリマス等、戰爭危險ノ擔保ニ
對スル國民ノ需要ヲ充タスコトガ出來ナイ
ノデアリマス
斯ク見テ參リマスルト、戰爭ニ因ル死亡
傷害ニ對スル施設ハ現在行ハレテ居リマス
ルモノノミヲ以テシマシテハ、必ズシモ全
シトスルコトヲ得ナイノデアリマシテ、殊ニ
今後ニ於ケル戰局ノ一段ノ擴大進展ニ思ヒ
ヲ致シマスル時ハ、此ノ際速カニ新タナル
施設ヲ講ズルコトガ、極メテ緊要ト申サネ
バナラヌノデアリマス、仍テ茲ニ戰爭ニ因
ル死亡傷害ニ對シ特別ノ保險制度ヲ設ケル
コトト致シタ次第デアリマス、是ヨリ本法
案ノ要點ニ付キ說明ヲ申上ゲマス
第ニ、本保險ハ戰爭ノ際ニ於ケル戰
鬪行爲、又ハ之ニ關聯アル事件ニ因ル死
亡傷害ノミヲ保險事故トスルモノデアリ
マス
第二ニ、本保險ノ保險者ハ政府ノ指定ス
ル保險會社ト致シマスルト共ニ、本保險契
約ノ手續ハ之ヲ普通ノ場合ニ比シテ簡易ニ
シ、以テ本保險ニ加入スル者ノ便宜ヲ圖ル
コトト致シタノデアリマス
第三ニ、本保險ノ被保險者、保險金受取
今保險金額、保險料、保險期間等ニ付キ
マシテハ、命令ヲ以テ之ヲ定メルコトトシ、
本保險ノ公的性質ニ鑑ミ、其ノ仕組ハ保險
會社ガ普通ノ營業トシテ行フ保險トハ著シ
ク趣ヲ異ニ致シタノデアリマス
第四ニ、本保險ハ純然タル公的性質ヲ有
スルモノデアリマシテ、保險會社ガ普通ノ
營業トシテ行フ保險トハ全ク性質ヲ異ニス
ルモノデアリマスカラ、保險會社ガ本保險
ニ因リ損失ヲ受ケタル時ハ、政府ニ於テ之
ヲ補償致シマスルト共ニ、利益ヲ得タル時
ハ之ヲ政府ニ納付セシムルコトト致シタ次
第デアリマス
次ニ鹽專賣法中改正法律案ニ付キ說明致
シマス、鹽ガ食料用及ビ工業用トシテ極メ
テ重要ナ物資デアリマスコトハ申スマデ
モナイ所デアリマスガ、特ニ食料鹽ハ他ニ
代用品ノナイ國民生活ノ最低限度維持ノ爲
メ絕對缺クコトノ出來ナイ必需物資デアリ
マスノデ是ガ供給ハ是非共確保致サナケレ
バナラナイノデアリマス、隨ヒマシテ、
政府ハ夙ニ內地製鹽事業ノ維持發達ニ力
ヲ用ヒマスルト共ニ、朝鮮、臺灣、關東
州滿洲及ビ支那等近海各地ニ於ケル鹽
生產力ノ擴充ヲ圖ツテ參リマシタ結果、
是等各地ニ於ケル鹽ノ供給力ハ著シク增
强サレルニ至ツタノデアリマスガ、時局
ノ進展ニ伴ヒ海上輸送力ノ關係等ニ依リ
マシテ、內地ニ於ケル鹽ノ需給ハ相當窮屈
ナルヲ免レナイ狀況ニアルノデアリマス、
是等ノ情勢ニ對應致シマシテ、昨年一月以
降鹽ノ販賣、關關度ヲ實施スル等、
其ノ需給ノ調整ニ努メテ參ツタノデアリマ
スガ、今囘更ニ鹽需給ノ安定ニ資スル爲メ
左ノ諸點ニ付キマシテ、鹽專賣法中ニ改正
ヲ加フルコトニ致シタ次第デアリマス、改
正ノ骨子ハ大體四點デアリマスガ、以下簡
單ニ御說明致シマスレバ、改正ノ第一點ハ、
鹹水ノ用途制限ヲ緩和スルコトデアリマス
御承知ノ通リ我ガ國內地ニ於ケル製鹽方
法ハ海水ニ操作ヲ加ヘ、鹹水ト致シマシテ
之ヲ煎熬シテ鹽トスルノヲ通常ト致スノデ
アリマスガ、現在ハ此ノ鹹水ハ鹽製造以外
ニハ使用シ得ナイコトニナツテ居ルノデア
リマス、然ルニ鹽ノ用途中ニハ、醬油釀造、
又ハ曹達製造等ノ如ク、鹽ヲ再ビ溶解シ
テ使用スルモノモアリマスノデ、此ノ際取
締上等ノ支障ナキ限リ鹹水ヲ直接使用シ得
ルノ途ヲ開キマシテ、鹽需給調整ニ資スル
コトト致シマシタ
第二ノ點ハ、鹽又ハ鹹水ノ製造廢止ニ付
キ政府ノ許可ヲ要スルモノトスルコトデア
リマス、鹽又ハ鹹水ノ製造ハ現在一箇月以
前ニ申〓スレバ、自由ニ之ヲ廢止シ得ルコ
トニナツテ居リマスガ、斯クテハ鹽又ハ鹹水
ノ生產確保上不適當デアリマスカラ、之ヲ
改メマシテ、鹽又ハ鹹水ノ製造廢止ニ付キ
政府ノ許可ヲ要スルモノト致シマシタ
第三點ハ鹽又ハ鹹水ノ製造者ニ對スル罹
災補償ノ制度ヲ設クルコトデアリマス、鹽
田ハ其ノ性質上海濱ニ位シマス關係上、高
潮海嘯等ノ危險モ少クアリマセヌノデ、鹽
又ハ鹹水ノ製造者ガ是等〓火害ニ依リマシテ、
其ノ製品ノ滅失、或ハ損傷、又ハ其ノ他ノ
事由ニ因リ損害ヲ被リマシタ場合ニハ製
造者ニ對シテ損害ノ一部ニ相當スル補償金
ヲ與フルコトトシ、以テ製鹽事業ノ安定ヲ
圖ルコトト致シマシタ
第四點ハ、鹽製造者等ノ共同活動ヲ促進
セシメ、鹽生產ノ增强ヲ圖ル爲ニ鹽業團體
ノ機構ヲ確立スルコトデアリマス、現在ニ
於テモ鹽業團體ノ組織ガアルノデアリマス
ガ、是等團體法中ニハ產業組合タルモノ、
工業組合タルモノ、工業小組合タルモノ、
又ハ單ナル申合組合タルモノ等ガアリマス
ガ、是等ニ對シマシテ、製鹽用資金、資材
及ビ勞力ノ供給ヲ一層圓滑ナラシムルト共
ニ、其ノ共同活動ヲ益〓强化促進セシメ、
以テ鹽生產ノ增强ヲ圖ル爲メ此ノ際是等團
體ニ對シテ鹽業ノ實體ニ適合シタ統一的法
人格ヲ與ヘマシテ、製鹽事業ノ改善發達ニ
資スルコトトシマシタ次第デアリマス
次ニ昭和十二年法律第八十四號中改正法
律案ニ付キ說明致シマス、臨時軍事費ニ付
キマシテハ、第七十二囘乃至第七十九囘帝
國議會ノ協贊ヲ經マシテ、其ノ財源ノ一部
ニ充ツル爲メ政府ハ三百九十四億千九百五
十万圓ヲ限リ公債ヲ發行シ、又ハ借入金ヲ
ナシ得ル權能ヲ得テ居ルノデアリマスガ、-今
囘ノ臨時軍事費二百七十億圓ノ追加計上ニ
伴ヒマシテ、其ノ所要財源中、一般會計及
ビ特別會計ヨリノ繰入金等ヲ以テ充當シ、
尙ホ不足スル金額ニ付キマシテハ、公債又ハ
借入金ノ財源ニ依ルコトヲ要シマスルノデ、
右ノ法定限度額ノ增加ヲ必要ト致シマス
ル處、今後ニ於ケル事務ノ簡捷ヲ圖ル等ノ
趣旨ニ依リマシテ、右限度額ヲ臨時軍事費
特別會計ニ於ケル歲出豫算額ヨリ當該特別
會計ニ於ケル他會計ヨリノ受入金、其ノ他
ノ普通歲入ヲ控除シタル額ニ相當スル金額
ニ改ムルヲ適當ト認メタノデアリマス、尙
ホ朝鮮總督府、臺灣總督府、樺太廳及ビ關
東局ノ各特別會計ニ於ケル今囘ノ增稅等ニ
依ル收入額ノ一部竝ニ朝鮮總督府及ビ臺灣
總督府ノ各特別會計ニ於ケル今囘ノ煙草ノ
値上ニ因ル增收額ノ一部ヲモ臨時軍事費ノ
財源ニ充ツルコトト致シマシタル等ニ伴ヒ
マシテ、是亦今後ニ於ケル事務ノ簡捷ヲ圖
ル趣旨ノ下ニ、昭和十三年法律第二十三號
中所要ノ改正ヲ本法律案ノ附則ヲ以テ行フ
コトト致シテ居リマス
以上御說明申上ゲマシタル六件ノ法律案
ニ付キマシテハ、何卒御審議ノ上速カニ御
贊成アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=2
-
003・矢野庄太郎
○矢野委員長 是ヨリ質疑ニ入リマスガ、
各案ヲ一括シテ質疑ヲ致シマスヨリモ、案
ノ進捗ヲ圖ル爲ニ一ツノ〓ノ法律案ニ付テ
質疑ヲ行フコトニ致シタイト存ジマス
先ヅ昭和十二年法律第八十四號中改正法
律案(大東亞戰爭ニ關スル臨時軍事費支辨ノ
爲公債發行ニ關スル件)ニ付テ質疑ヲ許シタ
イト思ヒマス、通〓順ニ依ツテ松田君ニ發
言ヲ許シマスガ、大藏大臣ガ御見エニナツ
テ居リマセヌノデ、如何致シマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=3
-
004・松田正一
○松田(正)委員 大體質問ハ局長ノ答辯デ
宜イコトガ大部分デゴザイマスガ、只今付
議サレテ居リマス昭和十三年法律第八十四
號中改正法律案ニ付テハ是非大臣ノ御意見
ヲ承ツテ置キタイト存ジマスノデ、大臣ガ
御見エニナルマデ暫ク待ツテモ宜シウゴザ
イマスガ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=4
-
005・矢野庄太郎
○矢野委員長 只今大藏大臣ハ貴族院ニ出
席セラレテ居ルサウデアリマシテ、今御都
合ヲ尋ネル爲ニ政府ノ方カラ人ガ參ツテ居
リマスノデ、暫ク御待チニナリマスレバ大
藏大臣ガ出席サレルト思ヒマス、ソレデ如
何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=5
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006・松田正一
○松田(正)委員 サウ云フコトニ願ヒマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=6
-
007・矢野庄太郎
○矢野委員長 ソレデハ此ノ際暫時休憩ヲ
致シマス
午後一時五十三分休憩
午後二時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=7
-
008・矢野庄太郎
○矢野委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マリー、昭和十二年法律第八十四號中改正法
律案、大東亞戰爭ニ關スル臨時軍事費支辨
ノ爲公債發行ニ關スル件ニ付テ質疑ヲ致シ
マス······松田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=8
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009・松田正一
○松田(正)委員 大臣ニ御多忙中ヲ割イテ
御出席ヲ願ヒマシテ感謝致シテ居リマスガ、
實ハ大臣ニ御伺ヒヲシテ置カナケレバ何ト
ナク根本ノ趣旨ガ分ラヌト云フノデ、特上
オイデヲ願ツタノデアリマス、其ノ要點ダ
ケ大臣ニ御質問申上ゲマシテ、アトハモウ
局長デモドナタデモ結構デアリマス、今付
議サレテ居リマス昭和十二年法律第八十四
號中改正法律案デゴザイマスガ、此ノ件ニ
付テ少シク御尋ネヲシテ置キタイト思ヒマ
ス、一體公債ノ消化ト云フモノト、ソレカ
ラ國民ノ實力トノ睨合セト云フコトニ付テ
ハ、年々何處ニ要點ヲ置カレテ居ルノカト
云フコトヲ一點御尋ネ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=9
-
010・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 戰時下ニ於テ必要ナルコ
トハ、武力ヲ戰爭ニ勝ツ爲ニ必要ナル程度
ニ備ヘルト云フコトデアリマス、其ノ武力
ノ物質的方面ニ付キマシテハ、ドウシテモ
必要ナル限度ニ之ヲ備へナケレバナリマセ
ヌ、其ノ武力ノ物的方面ヲ構成致シマスル
モノハ兵器彈藥ト申シマスルカ、軍ノ裝備
ト申シマスカ、是等ノモノデアリマス、ソ
レヲ備ヘマス爲ニハ、所要量ヲ所要ノ時期
マデニ所要ノ種類ニ付テ造リ、又其ノ爲ニ
必要ナル運輸力、生產力ヲ整ヘナケレバ、ナラ
ヌ、斯樣ニ相成ツテ參リマス、ト同時ニ一方
所謂國民生活ノ確保ヲ要シマス國民ガ前
線補充ノ人的資源ノ源デアリ、又銃後ニ於
テ戰力增强ノ爲ニ必要ナル生產、其ノ他ノ
銃後ノ務メヲ致スノデアリマス、其ノ生活
ノ確保ヲ要シマスノデ、此ノ全體ノ經濟力
ト云フモノヲ整ヘテ行カナケレバナラヌ、斯
樣ニ相成ル譯デアリマス、ソレヲ區分ヲシ
テ申上ゲマスレバ、國民ガ所謂日常ノ消費
生活ニ費シマスモノ、今ノ物的戰力ヲ整へ
マス爲ノ直接又ハ間接ニ必要ナル國費、又
其ノ爲ニ國費ノ形ニアラズシテ、民間ノ生
產資金ノ形ニ於テ行ハレマスモノ、大體此
ノ三ツニ分チ得ルト思フノデアリマス、財
政資金、生產擴充資金、國民消費資金デア
リマス、其ノ財政資金ノ中、租稅及ビ是ト
同樣ノ性質ニ依ツテ負擔シテ居ルモノト、
=
國債ニ依ツテ支辨セラルルモノト、大キク
二ツニ分レルト思フノデアリマス、隨ヒマ
シテ一方國民ノ最小限度ノ生活確保ガ必要
デアル、ソレヲ最小限度ニ切詰メマシテ、
アト出來ルダケ多クヲ國費及ビ生產擴充費
用ノ財源ニ充當スル、斯ウ云フコトニ相成
リマス、國費ノ中デハ租稅トシテ徵收シ得
ル其ノ時ノ最大限ヲ考ヘマシテ、殘リヲ公
債ト致ス、斯ウ云フヤウナコトニ相成ル次
第デアリマス、ソレガ根本ノ考へ方ノ區分
ト致シテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=10
-
011・松田正一
○松田(正)委員 サウ致シマスト本年度ノ
睨合ハセハ、ドウ云フ所ニ目安ヲ置イテ居
ラレマスルノカ、今申サレマシタ各部門ニ
向ツテ、目標ヲドノ位ニ置カレテ居ルノカ、
ソレデ此ノ豫算執行ノ爲ニ支障ハナイト云
フコトニナツテ居リマスノカ、其ノ點ノ御
說明ヲ一ツ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=11
-
012・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 本年度ニ於キマシテハ先
ヅ直接戰費ノ負擔ガ、日本ノ國民經濟、國
民所得ノ內ト外トニ分レルノデアリマス、
本年度ニ於キマシテ戰費ト一般會計トノ定
額ガ、約三百六十億圓ニ相成ルノデアリマ
ス、其ノ中三十數億圓ハ普通ニ申ス國民經
濟ノ負擔ノ範圍外デ之ヲナシ得ルト考ヘマ
シテ、是ハ臨時軍事費ノ財源トシテ計上致
シテ居リマスル三十三億圓ノ借入金等デア
リマス、殘リノ三百二十億圓餘リニナリマ
スルカ、其ノ中、性質上ハ國民生活或ハ他
ノ國費ノ主要部面ニ現ハレルヤウナ租稅ノ
性質ヲ有セザル歲入モアリマスノデ、大體
國民負擔トシテ支辨スベキモノガ三百十億
圓見當デアリマス、其ノ中百億圓ハ租稅或ハ
專賣收入等デ出來マスル爲ニ、殘餘ノ二百
十億圓前後ノモノヲ公債ニ依ツテ支辨スル、
斯ウ云フ考ヘ方デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=12
-
013・松田正一
○松田(正)委員 サウ致シマスト何レモ國
民所得ト云フモノニ大體目安ヲ置イテ、ソ
レデ各部門ニ其ノ國民所得カラ生活費ヲ引
イタモノヲ、割當テルト云フコトノヤウデア
リマスガ、事變ガ起リマシテカラ今マデ臨
時軍事費特別會計ノ方デ發行サレマシタ公
債ノ年度別ノ表ガナイノデアリマスガ、今
マデ每年臨時軍事費特別會計ノ資金補塡ニ
關スル公債ト云フモノハ一般公債ト內譯
スルト十二年カラ十七年ニ至ルマデノ間
ニ、ドウ云フ風ニナツテ年々消化ヲサレテ
居リマスカ、ソレガ御分リデアリマスレバ
承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=13
-
014・山際正道
○山際政府委員 只今ノ御尋ネノ公債ニ關
スル件ハ、一寸今手許ニ資料ガアリマセヌ
カラ、取寄セマシテカラ御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=14
-
015・松田正一
○松田(正)委員 サウシマスト今マデハ
豫算ノ上デ、臨時軍事費ト云フモノガ現ハ
レー、ソレノ方ニ色々繰入レル金額ガアツ
テ、ソレヲ差引キシタ殘リガ公債ヲ發行シ
テ居タノデアリマス、ソレデ本年度其ノ臨
時軍事費ノ中デ、三十三億圓ハ借入金デ行
〃、百七十幾億カハ公債發行デ行クト云フ
ノデアリマスガ、豫算ノ上デサウ云フ風ニ
辻褄ヲ合ハシテ居リマス、併シ實際ソンナ
百七十億圓ト云フモノヲ消化スルコトガ、
國民ノ實力ト睨合ハシテ果シテ出來ルカド
ウカト云フコトヲ、オ互ヒニ政府ニ對シテ
疑ヲ質シ、或ハ其ノ方法等ヲ〓究シテ行ク
ノガ今日マデアツタ俗ニ申シマスレバ赤字
公債委員會ト云フコトデ、審議サレテ來タ
ノデアリマス、此ノ法律ニ依ツテ見マスト、
金額ヲ現ハサズニ、不足ノ金額ハ公債若シ
クハ借入レスルコトガ出來ルト云フコトニ
ナツテ行キマスト、豫算ノ辻褄ヲ合ハス上
ニ於テハ、豫算ノ方デ現ハレテ居リマスケ
レドモ、ソレヲ實際ニ消化シテ行クト云フ
コトニ對シテハ、豫算以外ノ決議權ハナカ
ツタノデアリマス、是ハヤハリ斯ウ云フヤ
ウナ臨時軍事費ニ限ツテ、公債ヲ發行シ借
入金ヲナスノハ、白紙デ政府ニ委任ヲスル
ト云フヤウナ事項ニナリハセヌノカ、斯ウ
云フ風ニハ思レルノデアリマスガ、政府ハ
其ノ肚デハアリマスマイケレドモ、吾々考
ヘルト全ク議會ノ審議權ト云フモノカラ、
是ダケハ白紙委任狀ヲ取ツテ置カウト云フ
ヤウナ案ノヤウニ思ハレルノデスガ、ソコ
ノ所ヲ大臣ノ方デ、御說明願ヒタイト思イ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=15
-
016・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 從來臨時軍事費ニ付キマ
シテハ豫算ノ追加ノ都度、臨時軍事費財源中
所謂普通歲入ヲ除キマシタモノヲ公債トシ
テ、金額ヲ擧ゲテ御協賛ヲ經テ居リマス、
是ハ年々繰返シテ居ツタノデアリマスガ、
議會ノ御審議ノ際ニハ常ニ國力ヲ考ヘ、戰
爭ノ必要ヲ考ヘ、多少困難デモ戰爭ニ勝タ
ザルベカラズト云フ立場カラ、常ニ其ノ御
協賛ヲ經テ居ル譯デアリマス、今年ニ於キ
マシテモ恐ラク臨時軍事費ハ、後カラ必要
ナル色々ノ公債ノ實情ヲ調べ、發行ガ無理
ナラバ、之ヲ減スト云フヤウナ御考ヘデモ
ナイヤウニ私共想像致シテ居リマス、サウ
云フ次第デアリマシテ、隨テ今囘ノヤウニ
歲出カラ財源ヲ引イタ殘リ、唯從來ト同ジ
ヤウナコトヲ金額デ表ハスカ文字デ表ハス
カノ差デアリマシテ、歲出ニ付キマシテハ
議會デモ御審議ニナルコトデモアリマスノ
デ、斯樣ニ致シタ譯デアリマス、尙ホ類似
ノ場合モ吾々モ色々考へテ見マシタ、例ヘ
バ私設鐵道ノ買收ニ當リマシテモ、其ノ他
色々ナ從來ノ公債等ニ於キマシテ、是ハ政
府委員ヨリ申上ゲマスルガ、其ノ公債額ガ
算定サルベキ基礎ヲ御協算ヲ受ケマシテ、
サウシテアトハ其ノ金額ガ算定サレル基礎
ニ從ツテ公債ノ發行額ガ決マルト云フモソ
モ今マデニモ例ガアルノデアリマス、隨テ
今申上ゲマシタヤウニ、全然御審議ニナラ
ヌト云フコトデナク、豫算其ノ他ニ付テモ
御審議ニナル譯デアリマスルカラ、將來ノ
コトヲ全然政府ニ一任スルト云フヤウナ次
第デハ全クナイノデアリマス、ソレニ依リ
マシテ今囘ノヤウナ提案ヲ致シタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=16
-
017・松田正一
○松田(正)委員 鐵道其ノ他ノコトニ付テ
ハ又アトデ御伺ヒヲ致シタイト思ヒマスル
ガ、成程臨時軍事費ノ公債ガ額ガ分ツテ、
在來通リニ此ノ委員會ニ懸ツテ、別ニ之ヲ
捉ヘテ議論スルト云フ考ヘハ持ツテ居ラナ
イ、併シナガラヤハリ國民ノ實力ガソレヲ
消化出來ル狀態ニアルカドウカト云フコト
ヲ互ヒニ檢討ヲ加ヘテ行クコトガ、我ガ國
財政ノ上カラ考ヘマシテ當然ノコトダト考
ヘマス、ソコデ之ニ額ヲ表ハシ得ナイノナ
ラバ、是ハ無理カラヌ所モアルカモ知レマ
セヌガ、表ハシ得ラレルモノヲナゼ表サズ
ニ、法律デ包括的ニ發行ノ出來ルヤウニシ
テ居ルカ、ソコガ分ラヌノデス、今臨時軍
事費ノ方デ收入デ百七十億圓ハ公債、何々
カラノ繰入ドレダケ、是ダケ〓〓トシテ一
番終ヒニ三十三億借入、斯ウシテ辻褄ヲ合
ハシテ行ク、其ノ百七十幾億圓ト云フモノ
ノ公債ヲ發行スルマデハ在來通リ議會ノ協
贊ヲ經ルト云フコトガ、ドウ云フ所デ障碍
ガアツテ、斯ウ云フ法律ヲ出サンナラヌコ
トニナツタカト云フコトガ私ハ分ラヌノデ
ス、今日マデ通リニヤツテ居ツテ宜イノヂ
ヤナイカ、況ヤ憲法ノ上カラ言フト、サウ
云フコトニナルノガ當然ノ解釋デハナイカ
ト思ヒマスルガ、サウ云フ風ニ分ツテ居ル
數字デモ、是ハ表サヌト云フ意味ガ私ハ分
ラナイ、ソレニ付テモウ一ツ進ンデ御說明
ヲ願ヒタイト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=17
-
018・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 別ニ他意ハアリマセヌ、
臨時軍事費ハ常ニ議會ニ於テ戰爭ニ必要ナ
リトシテ急速ニ御審議ヲ賜ツテ居ル、是ハ
別ニ財源ハ拵ヘテヤラナイ、豫算ダケ通ス
ト云フ御意思デモアルマイト思フ、旣ニ議
會ノ御意思ガサウデアリマスカラ、每年同
ジヤウナ形ヲ繰返シマスルヨリモ、今ノ形
デアリマスレバ、每年公債法トシテ形式的
ニ御審議ヲ受ケマセヌデモ、事ガ運ブ、斯
ウ考ヘタニ過ギナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=18
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019・松田正一
○松田(正)委員 サウスルト今マデヤツテ
居ツタコトハ無駄ナコトヲヤツテ居ツタコ
トニナルノデスカ、今マデヤツテ居ツタコ
トガ憲法上是ハ正當ナコトトシテヤツテ居
ツタガ、今日是ガ出來ル以上、旣ニコンナ
モノハ出來テ居ナケレバナラヌ筈デアル、
ソレヲ今日マデ此ノ法律ヲ作ラズニ、年々
アノ赤字公債ヲ法律ノ上デ額ヲ決メテ、議
會ノ承認ヲ經テ居ラレタ、ソコガ分ラヌ、
ソレデ或ハ戰ガ複雜ニナツタカラ、此ノ額
ガ殖エテ來ルト云フ御考ヘハアルカモ知レ
マセヌガ、ソレデモ公債ノ發行ヲ豫算ノ範
圍內ニ於テヤツタナラバ額ハ分ル、額ガ分
レバン其ノ額ヲ示シテ議會ノ協賛ヲ求メテ
置クコトガ憲法上カラ言フト、ソレガ本筋
デハナイカト思ヒマス、其ノ公債ノ消化ニ
付テ兎ヤ角申スノデハナイ、之ヲ議會ノ協
贊ヲ經マスルノニ、コンナ廻リ諄クシナケ
レバナラヌト云フヤウナ煩雜ナ手續ガアレ
バ別デスガ、チヤント決ツテ居ルノデアリ
マセウ、憲法第六十二條ニ「新ニ租稅ヲ課シ
及稅率ヲ變更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘ
シ、但シ報償ニ屬スル行政上ノ手數料及其
ノ他ノ收納金ハ前項ノ限ニ在ラス、國債ヲ
起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ
負擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協
贊ヲ經ヘシ」トナツテ居ル、其ノ註釋ニ「之ヲ
政府ノ專行ニ任セサルハ立憲政ノ一大美果
トシテ直接ニ臣民ノ幸福ヲ保護スル者ナリ
蓋旣ニ定マレル現稅ノ外ニ新ニ徵額ヲ起シ
及稅率ヲ變更スルニ當テ適當ノ程度ヲ決定
スルハ專ラ議會ノ公論ニ倚賴セサルコトヲ
得ス若此ノ有效ナル憲法上ノ防範ナカリセ
ハ臣民ノ富資ハ其ノ安固ヲ保證スルコト能
ハサラムトス」ト書イデアル、ソレカラ報
償ニ屬スル行政上ノ手數料其ノ他ノモノハ
違フト云ツテ、是ハ特ニ例ヲ擧ゲテアル、
「卽鐵道切符料倉庫料學校授業料等ノ類」ノ
如キモノハ宜イ、ソレ以外ハイカヌ、行政上
ノ手數料ト云ツテモ司法上ノモノハ此ノ限
リデナイ、ソレハ印紙稅トカ訴訟ノ價格ニ
應ジテ印紙ヲ徵收スルト云フヤウナ例ノコ
トデアリマセウ、是ハ宜イガ、「國債ヲ起スニ
ハ必議會ノ協贊ヲ取ラサルヘカラス豫算ノ效
力ハ一ノ會計年度ニ限ル故ニ豫算ノ外ニ涉
リ將來ニ國庫ノ負擔タルヘキ補助保證及其
ノ他ノ契約ヲ爲スハ皆國債ニ同シク議會ノ
協賛ヲ要スルナリ」ト書イテアル、ソレデ今
マデ之ニ基イテヤツテ居ラレタノデス、果
シテ之ニ基イテオヤリデアツタトスルナラ
バ、今此ノ法律ヲ作ツテ今マデヤツテ居ツ
タコトヲ變ヘルト云フノデアツタナラバ、
此ノ憲法ノ解釋ヲ、今マデノ解釋ト今後ノ
解釋ヲ異ニサレルト申サレルノデアルカ、
一ツデアルトスルナラバ、今マデハ無駄ナ
コトヲヤツタノダト申サレルノデアルカ、
ソコノ所ヲハツキリ致シテ戴カナケレバ、
旣ニ軍事費ト云フモノハ提出サレルト早速
審議ヲ終リマシテ、無論勝タナケレバナラ
ヌ態勢ヲ議會ハ整ヘテハ居リマスケレドモ、
是ハ豫算ガ決マツタト云フダケデアル、偖
テドウシテ其ノ金ヲ出シテ行クカト云フコ
トハ是カラノ問題デアル、ソレデ之ヲ憲法
ニ於テ、政府ノ方デ專ラ行フト云フコトニ
ササズニ議會ノ協賛ヲ經ベシト云フコトハ、
國民ノ富資ヲ保證スル道デアル、斯ウ云フ
ヤウニ書イテ居リマスガ、之ヲ今日マデド
ウ云フ風ニ解釋サレテ居ツタカ、此ノ法律
ヲ御作リニナル時ニ解釋ヲ二樣ニサレテ居
ツタノカ、其ノ點伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=19
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020・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 憲法上ノ解釋ハ重大ナ問
題デアリマスカラハツキリ申上ゲマスガ、
少シモ變リマセヌ、憲法ニアリマスヤウニ
豫算外ノ負擔デアリマスルカラ是ハ議會ノ
協賛ヲ經ルノデアリマス、詰リ年々經テ居
ツタモノヲ一括シテ御協賛ヲ經ル、是ダケ
ノコトデ少シモ違ヒハナイノデアリマス、
今マデハ年々經テ居リマシタケレドモ、考
ヘテ見レバ必ズシモ其ノ必要ガナイ、豫メ
御協賛ヲ經テ於キマスレバ、憲法上ノ要件
ヲ滿タスノデモアリマスシ、實際上ノ金額
ハ年々軍事費ノ豫算ノ協賛ガアル時ニ議會
トシテハ御審議ニナルノデアリマス、憲法
上ノ議論カラ致シマシテモ、實質カラ致シ
マシテモ、此ノ急ヲ要スル戰時財源トシテ
斯ウ云フ處置ニ願ツテ差支ヘナイト存ジマ
シタ次第デアリマス、此ノ形式ハ隨分アリ
マスノデ、今年モ道路公債ヲ發行致シマシ
テ、其ノ豫算ノ審議ハ旣ニ濟ンデ居リマス
ガ、是モ年々金額ノ御協議ハ經マセヌ、大
正九年ノ法律第五十九號ニ依リマシテ「國道
改良費支辨又ハ國道、府縣道若ハ市ノ重要
街路ノ改良費補助ニ關スル經費支辨ノ爲政
府ヘ當該經費豫算ノ範圍內ニ於テ公債ヲ發
行シ又ハ之ガ繰替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコ
トヲ得」ト云フ規定ガアリマス、九年ニ御協
贊ヲ經マシテ法律ニナリマシテ、每年歲出
豫算ノ範圍內デ公債ヲ發行致シテ參ツテ居
ルノデアリマス、是ハ通信事業特別會計法
ノ擴張改良費財源、鐵道建設改良費財源ニ
於キマシテモ同樣デアルノデアリマス、古
クハ明治三十八年日露戰爭ノ臨時軍事費支
辨ノ爲ノ借入金、國庫債劵ノ發行ニ付キマ
シテモ年度ヲ限ラズ總括的ノモノモアルヤ
ウナ例モアリマス、又先程申上ゲマシタル
鐵道ノ買收ニ致シマシテモ、鐵道ノ買收公
債ノ發行基準ハ豫メ法律デ決ツテ居リマシ
テ、後ハ年々ドノ鐵道ヲ買收スルカト云フ
コトニ御協賛ヲ經テ居ル次第デリマシテ、
年々ノ金額ヲ明示シマセヌコトハ、憲法ニ
要求スル國庫ノ負擔トナリマスモノノ御協
贊ニ付キマシテノ根本精神ニ毫モ牴觸スル
モノデモアリマセヌシ、解釋ヲ毫モ變ヘタ
次第デハナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=20
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021・松田正一
○松田(正)委員 今申サレマシタ日露戰爭
當時デアリマスガ、總高ハ決ツテ居ツタノ
デハナイカト思ヒ、マス、ソレハ年度割ハ示
シテ居ラナカツタヤウデアリマスガ、總高
ハ示シテ居ツタ、ソレカラ各特別會計ノ方
デモ年々ノ使用高ハ決ツテ居ラナイシ、ソ
レハ特別會計デアリマスカラサウ云フヤウ
ニナツテ居ルモノモアルト薄々記憶シテ居
リマス、又南方開發金庫劵ノ發行ニ付キマ
シテモ、之ニ對シテハ金額ノ示サレヌ場合
ガアルト云フ、ソレデ斯ウ云フヤウナ
委員會ニ出サレテ居ル、併シ金額ノ明示
サレテ居ルモノモアル、斯ウ云フ風ニ
ナツテ來マスト一般會計デモサウ云フ
風ニナリハシマセヌカ、一般會計デモ公債
以外ノ歲入ハ目安ガ分ツテ居ル、稅ニ於キ
マシテモ豫定ノ收入ガ決マツテ居ル、其
ノ不足ハ公債デヤルノデアル、斯ウ云フ
ノデアレバ一般會計モ何モ此ノ法律デ以テ
金高ヲ決メヌデモ宜イヤウニ思ヒマス、ソ
レヲ決メテ之ヲ決メヌト云フコトニナル
ト、ドウモ憲法ノ解釋「ヲ二樣ニナサツテ
居ルヤウナコトニ私ハ考ヘルノデス、ソコ
ノ所ガ一般會計デ-臨時軍事費ノコトハ
チヤント分ツテ居ル、三十一億七千万圓ト
云フモノガ足リナイ、之ヲ公債ニ依ルノダ
ト云フノデ公債ノ金額ヲ示サレテ居ル、今
ノ大臣ノ御說カラ申シマスト、ドレモ是モ
公債ト云フモノハ額ヲ示サナクテモ宜イン
ヂヤナイカト云フ風ニ思ハレルノデスガ、
ソレナラバソレデハツキリト御答辯願ヘレ
バ結構デアリマス、ソレナキ以上ハ何故斯
ウ云フヤウニ二樣ニナツテ居ルカト云フコ
トヲ御說明願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=21
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022・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 金額ヲ示シマセヌデモ憲
法上ノ要件ハ十分ニ充足シテ居ルト思ヒマ
ス、一般會計デモ御示シノヤウナ方法ニ公
債法ヲ編ミマシテモ是ハ憲法違反デモ何デ
モアリマセヌ、唯憲法ノ許シマシタ範圍內
ニ於ケル政治行政ノ運用ニ付テ考フベキ點
ガアルト思フ、是ハ程度ノ差ト申シテモ宜
シイカモ知レマセヌ、臨時軍事費ニ付キマ
シテハ是ハ國家興亡ノ問題デアリマス、御
話ノヤウニ議會デモ急速ニ審議シテ之ヲ通
過シテ戰爭ニ支障ナカラシムルト云フ御考
ヘデアリマス、然ラバ其ノ財源ノ主要ナル
公債ニ付キマシテモ同樣ナコトガ望マシイ
ノデアリマス、是ガ一般會計ニナリマスト、
只今デハ一般會計ノ經費ト雖モ此ノ戰爭ヲ
ヤツテ行キマス上ニ於テ皆不可缺ノ經費デ
ハアリマス、併シ臨時軍事費ニ於テハ出來
ルダケ增稅ヲシ、又現地等ニ於テ可能ナル
範圍ニ於テ調辨致シタ差額ガ、是ハ公債デ
ヤル外仕方ガナイト云フコトハ恐ラク誰ガ
考ヘマシテモ他ニ方法ハナイノデアリマス
ルガ、一般會計ニナリマスルト云フト、アノ
歲入補塡公債ノ形ト云フモノハ是ハ議論ガ
アルノデアリマシテ、其ノ儘デ行クノガ宜
イカ、或ル時期ニ於テハ考ヘ方ヲ變ヘテ行
ク方ガ宜イカ、ソレニ付テモ御說ガアル位ノ
モノデアリマス、ソコデ私共ハ政治行政上
ハ一般會計ニ於テモ御話ノ如ク包括的ニヤ
ルコトハ憲法違反デモ何デモアリマセヌ
ガ、政治上ハ其處マデ行カヌガ宜シイ、歲
入補塡公債、赤字公債ト云フ行キ方ガオ決
マリノ已ムヲ得ナイコトデ、何處マデモ行
クンダト云フ程、アレヲソレ程立派ノヤリ
方ダト考ヘテ行クコトハ是ハ出來ヌト思ヒ
マス、ソコラガ私共ノ意見ノ相違デアリマ
シテ、是ハ憲法上ノ考ヘ方ガ一一樣デアルト
云ノデハナイ、是ハ全ク一ツデアリマス、
從來ト雖モ前申上ゲマシタ通信事業帝國鐵
道デモ何等最高限ノ金額ヲ現ハシテ居リマ
セヌ、唯自ラ豫算ニ依ツテソレガ制限サレ
ル、一方赤字公債ハ每年金額ヲ出シテ居
ル、是ハ何モ憲法上二樣ニ行キマシテドチ
ラモ違反デハナイノデアリマス、唯ソコガ
實質ノ性質論カラ多少ノ區別ハアルガ寧ロ
妥當ナリト斯ウ云フ考ヘ方デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=22
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023・松田正一
○松田(正)委員 大東亞戰爭ニ付テ戰費ガ
要ル、是ハ私ガ申上ゲルマデモナイ、憲法
上國債ヲ起スノニハ必ズ議會ノ協賛ヲ經ル
コトニナツテ居ル、サウスルト前カラ國債
ヲ出スノハ一定ノ豫算ガアツテ、一定ノ豫
算ニ歲入ノ充タナイ場合、斯ウ云フコトニ
ナツテ初メテ國債ト云フコトニナツテ行ク
ノデアリマス、サウシマスト憲法ノ規定ニ
アル國債ヲ起シト云フコトハ、モウ既ニ此
ノ法文ヲ御作リニナル時ニハ、苟クモ金額
ノ豫定デモ示スガ宜シイ、金額ノナイ國債
ト云フモノハ發行出來得ナイモノデアル、
ト云フノハ今申シマスル豫算ノ中ノ歲入不
足デアリマスカラ、豫算デヤレナイ、豫算ノ
歲入デ償ヘナイ場合トカ、或ハ特ニ國家ガ
一ツノ資產ヲ持ツノダ、金ハ今出スケレド
モ、資產ヲ持ツノダト云フヤウナ場合トカ、
何カソコニ一ツノ標準ガナケレバ國債ヲ發
行スル期ハ熟シマセヌ、兎ニ角モ是ハモノ
ノ大小ノ差コソアレ、一ツノ會計ニ於テ山
ヲ買フト申シマシテモ、其ノ一ツノ會計デ
山ヲ買フダケノ金ガナイノダ、サウスルト借
金デ行カナケレバナラヌノダ、一體幾ラ借
金デ行ケバ宜イノカ、此ノ山ノ價格ハ是ダ
ケデ、資產ハ是ダケダ、サウスルト是ダケ借
金デ行カウヂヤナイカ、是ガ所謂本筋ノ行
キ方デヤナイカ、憲法ニ國債ヲ起シト云フ
コトハ額ノ決マラヌ國債ヲ謳ウテ居ル精神
ガ織込マレテ居ルカドウカヽ此ノ點ニナリ
マスルト、私ハ憲法ノ所謂國債ヲ起シト云フ
コトハ、額ガ分ツテ居ル場合ノコトヲ指ス
ノデアツテ、唯額ノ分ラナイ場合ドレダケ
國債ヲ發行シテモ構ハヌト云フヤウナ、ソ
ンナ場合ニハ、恐ラク玆ニ明文ニ謳ハレテ
居ル如ク、國債ヲ起ス場合ニハ議會ノ協賛
ヲ經ベシト云フコト、及ビ政府ノ詮衡ニ委ス
コトガイカヌト書イテアル、ソレハ憲政上
ノ美果デアルト云フコトニ書イテアリマス、
時代ハ移リ變ツテ居リマスカラ、此ノ文字
通リトハ申シマセヌケレドモ、是カラ察シ
マスルト、憲政上玆ニ國債ヲ起シト云フコ
トハ金額ノ決マツタ、所謂不足ニナツタ豫
算ノ歲入デ償ヘヌモノヲ指スノデアツテ、
額ノ分ラヌモノヲ唯政府ガ發行スルコトハ
出來ルト云フコトニナルト、議會ノ協贊ヲ
經ヨト云フ必要ガ餘リナイノヂヤナイカ、
今凡ユル事務ガ簡素化ヲ唱ヘラレテ居ル時
デアリマスルカラ、簡素化デヤルコトハ洵
ニ結構デアリマス、複雜ナル手續ハ成ベク執
ラナイガ宜イ時代トナツテ居リマスルガ、併
シ斯ウ云フ風ナ明文ガアツテ、今マデハ年
年ヤツテ居ツタ、今年モ尙ホ一般會計デ赤
字ヲ斯ウ出シテ居ル、此ノ分ニ限ツテ白紙
ノ委任狀ソヤウニシテ法律ニ變ヘルコトハ、
憲法ノ解釋ガドツチデヤツテモ宜イソダト
言ハレマスレバドツチカ一方ニ決メタラ
ドウデスカ、複雜ニ是ヲ斯ウヤル、是ハ斯
ウヤルト云フヤリ方デ、二ツニセヌデモ宜
イ譯ヂヤナイデスカ、國債ノ發行ト云ウテ
居リナガラ、國債ノ金額ヲ明示サレテ居ラ
ナイ、憲法ノ法文カラ言ヘバサウデアル、
成程文字解釋ヲ致シマスレバ、ソレニハ金
額ト云フコトヲ現ハシテ居ラナイ、現ハジ
テ居リマセヌケレドモ、今申シマスル如ク、
國債ナルモノヲ發行シナケレバナラヌコト
ニ迫ラレタ時ニハ、金額ハモウ旣ニ分ツテ
居ナケレバ發行出來ルモノデハアリマセヌ、
ソレデ一般會計モヤツテモ宜イト云フ議論
ガアルト申サレマスガ、ソレナラバ一般會
計モオヤリニナルカ、斯ウ云フ風ニ一ツノ
コトヲ事務ノ簡素化カラ言ウタナラバコチ
ラデヤツテ居ルガ、コチラハヤツテ居ラヌ
ト云フコトヲナゼオヤリニナルカ、是ハ私
ハ一方ニスベキダト思フガ、是ハ出來ルト
云フナラバ、ハツキリト明年カラスルナラ
スルト云フコトヲ御答ヘ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=23
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024・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 或ハ私ク誤解カモ知レマ
セヌガ、只今ノハ本案ニ依リマシテ或ハ無
制限ニ公債ヲ發行スルノデアルト云フ風ナ
御解釋フヤウニモ伺セマシタガ、是ハ御讀ミ
ニナルト決シテサウデハナイ、歲出ノ豫算
額カラ普通歲入ヲ引イタモノトチヤント限
度ガ示シテアリマス、ソレハ限度ガナイノ
下、何圓ト云フコトガ分ル限度ガ書イテア
ルカノ差異ダケデアリマス、是ハ過去ノ法
律ヲ御覽ニナリマシテモ、又現在生キテ居
ル法律、今ノ道路ニ於キマシテモ、鐵道ニ
於キマシテモ通信事業、擴張改良費、或ハ
道路ノ豫算額デアルトカ、自ラソコニ限度
ガ決マルモノガアリマシテ、而モ金額ハ事前
ニ何圓ト云フモノヲ出シテ居ル、是ト同ジ
デアリマス、ソレハ純形式論ハ無制限ニ發行
スルコトヲ議會ガ協贊サレレバ、憲法ハ無
制限ニ發行スルコトヲ許カレマセウガ、是
ハ事柄ノ妥當性、是非ノ問題デアリマス、
ゾコニ行ケバ御話ノヤウニ、公債ヲ發行ス
ルノニ何億圓出スノカ、何百億圓出スノカ
全ク分ラナイト云フコトハ、是ハ餘リ妥當
デハナト思ヒマスハ併シ今ハ分ラナイガ、
先ヘ行ツテ臨時軍事費ノ如ク自ラ分ル方法
ガアル、而モ議會ノ御協賛ヲ經テ決マルノ
デアリマス、サウ云フコトニナレバ是ハ限
度ガアルノデアリマス、妥當性カラ申シマ
シテモ、先例モアリマスシ、私ハ然ルベキ
モノデアルト思ヒマス唯私共ハ色々注意
シテ參リタイト思ヒマスカラ、憲法ガ許シ
マシタ範圍內ニ於キマシテモ、今ノ赤字公
債ノナヤウモノハ、是ハ、便利カラ申上ゲ
しど、每年歲入ノ不足ハ赤字公債デヤツテ
宜シイ、御協賛下サレバ甚ダ便利デアリマ
スガ、ソコマデ進シデ議會ノ功贊賛ヲ求メマ
ス程ニハ、私共ノ考ヘハマダ熟シマセヌ、
前ニ申上ゲマシタヤウニ、赤字公債ト云フ
ヽモノハ是ハ普通ノ行キ方デハナイ、戰時ダ
カラ宜イノカモ知レマセヌガ、戰費ノ公債
程マダ考ヘガ熟サヌ所がアリマスノデ、只
今御指摘ノ明年カラ必ズ金額ヲ示セトカド
ウトカ云フコトニ對シテ、サウ致シマスト
云フコトヲ申上ゲ得ルマデニハマダ至ツテ
居リマセヌ、度々繰返シテ申上ゲマスヤウ
ミニ限度ノナイ御協賛ト云フモノモ法律論
ハデハアリマシテモ違法デハナイト思ヒマス
ガ、精神論カラ云ヘバ私バ限度ガアル、或
ハ限度ガ明瞭ニ分ラナイデモ、事態カラシ
テ此ノ位デアルカラ議會ハ協賛ヲシヨウ、
斯ウ云フ考ヘデ出來ルト思ヒマスガ、今囘
ハ明カニ限界ハ示シテアル通リデアリマス、
其ノ點カラ申シマシテモ、必ズ今年豫算ノ
御協賛ヲ經マシテ、公債百七十一億、借入
金三十三億圓アル以上ハ發行ハ出來マセヌ
譯デアリマス、將來モ亦追加豫算ガ成立致
シマシタ後デナイト、其ノ金額以上ニハ出
セナイコトニナル譯デアリマス、是ハ憲法
上ノ精神カラ申シマシテモ差支ヘナイコト
ト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=24
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025・松田正一
○松田(正)委員 大臣ノ仰シヤルヤウナコ
トハ先程申上ゲタ譯デアリマス、豫算ノ上デ
ハ公債ガ幾ラ、準備金ガ幾ラ、借入金ガ幾
ラト分ツテ居ル、ソレデ戰時下デアルカラ
シテ公債ノ限度ガココデ分ラヌ、ドレダケ使
ハレルカ分ラヌノダカラト云フナラ此ノ法
律ノ意味ヲナス、分ツタモノヲ此ノ法律デ
變ヘテ行カウド云フノダカラソレガ分ラヌ
ト先程申上ゲタ、ソレデ一般會計ノ方ハソ
コマデ事態ハ逼迫シテ居ラヌト申シマスケ
レドモ、九十九億圓ト云フ此ノ一般會計ハ
戰時下ノ事態ニ卽應スルガ爲ノ大部分ノ豫
算デアツテ、戰フ爲ノ種々ナル部門ノ經費
ガ大體九十九億圓ニナツテ居ルコトハ大臣
モ能ク御承知デアリマセヴ、サウシマスル
ト分ツテ居ルモノヲ特ニ此ノ法律デ額ヲ
示サズニヤツテ行ケルト云フノナラ此ノ法
律ハ御出シニナル必要ガナイヤウニ思ヒマ
スガ、會計法六條ニ規定ヲシテ居リマスル、
政府ガ日本銀行カラ借入レル場合、是ハ一年
ノ間ニ借リテ一年フ間ニ、會計年度ニ返ス、
其ノ場合デモ金額ハ示シテ居ルデハナイデ
スカ、ソレ等ノ如キハ政府モ一ツノ收入ヲ
見越シテ、例ヘバ來月ニナレバ、稅金モ入
ツテ來ルカラ返シ得ラレルヤウニ思フ、本
月一寸足ラヌカラト言ウテ一時借リヲスル
金高デモ限度ハチヤント決メテ居ラレル、
或ハ南方開發ノ補償ン如キハ、金額ヲ現ハ
スコトガ或ハ出來ナイ事情ガアル爲ニ、政
府ハ南方開發金庫ガ同金庫劵ノ發行ニ依リ
負擔スベキ債務ニ關シ之ヲ補償スルコトヲ
得ト云フノデ、此處ニ金高ヲ示シテ居リマ
セヌ、或ハ此ノ金高ガ示シ得ラレナイ部分
モソレハアルカモ知レマセヌガ、是モ今申
シマスル會計法ノ六條ノアンナコトデモア
ア云フ風ニ-此處ニ出テ居リマス、ソレ
カラ會計法ノ十一條ノ金額ノ如キ、翌年ニ
亙ル豫算外ノ契約ヲナス〓トコ得ト云フノ
モハ議會ノ協賛ヲ經ルノミハ金額ヲ示スト
カ書イテアル「前項ノ規定ニ依リ翌年度ニ亙
ル契約ヲ爲スコトヲ得ヘキ金額ハ每年度帝
國議會ノ協賛ヲ經テ之ヲ定ム」ト書イテアル、
コンナノハホンノ一時一寸借リルダケノモ
ノデスガ、ソレデモ豫定額ハチヤント示シ
テアル臨時軍事費ハ左程大キイコトモア
リマセヌケレドモ、二百七十億圓、之ニ對
スル公債ガドレダケ要ルノカ、豫算ノ上デ
ハ決マツテ居ル、ドウ考ヘテ見マシテモ、ハ
ツキリ分ツテ居ルコトヲ此ノ文面デ繰入金
ヲ差引イタ殘リヲ公債ヲ發行スルコトガ出
來ルト云フヤウナ分ラヌゴトガ-今ノ南
方開發ノヤウナコトナラ別デアリマスケレ
ドモ、是ハ南方開發ノ補償ト意味ガ大分違
ツテ居ル、ソレデ此ノ豫算ヲ實行スルニハ、
ヤハリ金額ヲ示シテ總公債發行高ガ幾ラニ
ナリ、國民ノ實力ガ幾ラアル、ソコデ之ヲ
吸收シ、消化スルコトニ議會ト協調シテ審
議シテ行クト云フコトガ本筋デハナイカ、
憲法ノ解釋ヲ別ニシテ考ヘテモ、サウナラ
ナケレバナラナイノデアリマス、大臣モ大
分御忙シイヤウデアリマスガ、此ノ會計法
六條、十一條ノヤウナモノデモ斯ウナツテ、
金額ヲ示セト云フコトニナツテ居ルカラ示
シテ居ルノデアリマス、是ハ國債ヲ發行ス
ルコトニナツテモ金高ヲ示シテ居ラヌ、金高
ヲ示シテ居ラヌカラ幾ラデモ發行出來ルノ
ダ、兎ニ角公債ヲ發行スルト云フコトダケ
ヲ議會ノ協賛ヲ經テ置ケバ宜イノダ、ドン
ナ場合ニアツタニシテモ、國民ノ責任ノ上
カラ云ツテ、金高ヲ示サズ-今示シテ居
ルト申サレマスケレドモ、是ガモウ少シ進
ンデ行クト示サヌデモ出來ルコトニナツテ
行キマス、本年ハ分ツテ居リマスシ、是ハ
年々豫算ガ出レバ分ラナケレバナラヌモノ
デアリマスガ、此ノ法案ハソレヲ見透シテ居
ルカト云フト、或ハナクテモ出來ルヤウニ
ナツテ居ル、繰入金ト云フモノハ中々計算
ガヤヤコシクテ、中々確定セヌノデアリマ
スガ、ソレヲ差引イタ殘リハ幾ラデモ出來
ルト云フコトニ解釋サレル、ソレハ豫算ノ
上デ協賛ヲシテ居ルノデハナイカト言ハレ
マス、豫算ノ上デ協賛ハシテ居ルケレド
モ、實際ノ金高ヲ是ニ謳ツテ之ヲ法律ノ上
デ承認ヲ取ツテ置イテ別ニ差支ヘナイコト
デアル、今小サイ問題デ、會計法ノコトヲ申
シマシタガ、コンナモノデモコンナニナツ
テ居ル、況ヤ斯クノ如キハ、ヤハリドウ
シテ公債ヲ消化シテ行クカト云フコトヲ審
議スル上カラ申シマスト、是ハ今マデ通リ
ニヤル方ガ宜イノデハナイカ、ソレハ一般
會計ハ逼迫シテ居ルカモ知レナイガ、ヤハ
リ戰時費ト云フヤウナモノハ、國民ノ實力
ヲ睨ミ合ハセナケレバナラヌ、ソレカラ見
ルト、是ハ白紙委任狀ノヤウナモノデアル
ト見ラレルダケニ、此ノ質問ヲ致シテ居ル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=25
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026・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 一寸申上ゲマスガ、私ノ
申上ゲタコトヲ一寸御聽キニナリ方ガ違ツ
テ居ハシナイカト思ヒマス、一般會計ハ窮
迫シテ居ラヌト申シタノデハアリマセヌ、
赤字公債ト云フヤリ方ト云フモノハ、確定
シタヤリ方デアルトマデ云フ良イ方法デナ
イノデアルカラ、將來モ常ニ歲入ノ不足ハ
赤字公債ヲ出シテ宜シイト云フ其ノ一括シ
タ御協贊マデモ今得ル程ノ考ヘハナイト
云フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマス、國
家ノ歲入ノ入ル度ハ別ニ窮迫デハアリマセ
ヌガ、特別會計モ一般會計モ同ジデアリマ
スガ、又金額ガ分ツテ居ルノデハナイカト
云フ仰セデアリマス、本年度ハ分ツテ居リ
マスガ、將來ハ其ノ年ノ豫算デ決マル譯デ
アリマスカラ、今ハ分ツテ居リマセヌ、只
今御協賛ヲ經レバ今後ハ公債法ヲ出シマセ
ヌデ、臨時軍事費ノ公債財源ガ出來ル譯ニ
ナルノデアリマス、只今マデハ分ツテ居リ
マセヌ、而モ將來ハ、前カラ申上ゲマスルヤ
ウニ、豫算ノ御協賛ニ依ツテ金額モ明カニ
分ル位デアリマス、總テ平時ノ道路トカ鐵
道トカ通信トカノモノガアリマスルト同ジ
程度ノコトデ、況ヤ今日戰爭ノ非常ノ際デ
モアリマスルカラ提案ヲ致シタ次第デアリ
やく、何卒左樣ニ御諒承ヲ願ヒタイト存ズ
ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=26
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027・松田正一
○松田(正)委員 今大臣ノ御說明ヲ承ハリ
マシテ、大體政府ノ肚モ分リマシタガ、併
シマダ將來ノ法律上ノ解釋ニ付テ大分〓究
ヲ要スル事項ガアルト思ヒマス、實ハ私ハ
昨日日曜デアリマシテ、此ノ委員會ニ掛ツ
テ居ル案ノ內容ハドウデアルカト色々調ベ
タ所ガ、斯ウ云フヤウニ疑問ガ大イニ起キ
タノデアリマス、マダ今朝カラモ調ベテ居
ツタノデスガ、時間ガナカツタモノデスカ
ラ、取調ガバラ〓〓デ······斯ウ云フヤウニ
紙切ニ書イタモノダケガバラ〓〓ニナツテ
居テ、纏マツテ居ナイノデス、ソレデ後日
ニ質問ヲ留保スルコトヲ御許シ願ヘマセヌ
デセウカ、ソレトモ今日ハ大臣ニ對スル質
問ハ全部ヤツテシマヘト云フ御意見ナラバ、
私ノ調ベテ來タコトヲ結ビ合セテ質問ヲ申
上ゲナケレバナラヌノデスガ、委員長ノ御
意見ハドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=27
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028・矢野庄太郎
○矢野委員長 松田君ニ申上ゲマスガ、是
ハ憲法第六十二條及ビ憲法第六十四條ニ關
聯スル重大ナル法律案デアルト解釋致シテ
居リマス、デアリマスルノデ後世ニ遺ス爲
ニ政府ノ處置及ビ議會ノ態度ヲ此ノ際ハツ
キリシテ置ク必要ガアルト思ヒマス、隨テ
此ノ根本問題ニ付テハ十分ニ審議ヲシタイ
ト存ズルノデアリマスガ、松田君ノ御質問
ハ今日續行スルノニ不都合ダカラ明日ニ延
バスト云フノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=28
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029・松田正一
○松田(正)委員 斯ウ云フヤウニ〓究シタ
紙ガチラバラニナツテ居リマシテ、マダ纏
マツテ居リマセヌ、コンナ風ニナツテ居リ
マス、之ヲ一ツ組立テテ來ナケレバ一貫シ
タ質問ヲ致スコトガ出來マセヌノデ、若シ
大臣ニ對スル質問ヲ留保サシテ貰ヘマスレ
バ結構デアリマスシ、今日ヤツテシマヘ、
留保ハ困ルト云フ委員長ノ御話デアリマス
レバ、コンナモノデモ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=29
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030・矢野庄太郎
○矢野委員長 ソレデハ松田君ノ大藏大臣
ニ對スル質問ハ留保ヲ許シマス、ソレカラ
南君ニ申上ゲマスガ、此ノ根本問題ニ付テ、
アナタニ御質問ガアルナラバ此ノ際許シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=30
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031・南鐵太郎
○南委員 私ハ憲法違反ノ問題ニ付キマシ
テ、幸ヒニ森山法制局長官モ御出デ願ツタ
ノデアリマスカラ、大藏大臣ト共ニ、篤ト
吾々ノ了解ガ出來ル御說明ヲ願ヒタイト思
ヒマス、只今マデノ御問答ヲ拜聽致シマス
ト、マルデ問題外レノヤウナ御答辯シカ承
ハルコトガ出來ナイノデアリマス、一體憲
法デ六十二條ト六十四條ト別ニアルト云フ
コトヲ御忘レニナツテ居ル、六十二條ハ國
債ヲ起ス場合ニ於テ帝國議會ノ協賛ヲ經べ
シト云フコトガハツキリ獨立ニアル、又六
十四條ハ「國家ノ歲出歲入ハ每年豫算ヲ以
テ帝國議會ノ協賛ヲ經ベシ」豫算ノ協賛ト
云フモノハ別ノ條文ニハツキリアル、事柄
自體ガ全然違フカラデアリマス、豫算ト云
フモノハ、歲出歲入ノ見積リナンデス、
斯ウ云フ風ニヤラウト思フガドウデスカト
云フノト同ジデス、サアソレモ宜カラウト
云フノガ卽チ豫算ノ協贊デス、偖テ之ヲ實
行スルニ付テ金ガ足ラヌ、豫算ニモ見積リ
シテアルガ、其ノ金ヲ愈〓出シタイガドウ
ダ、イヤサツキアア言ウタケレドモ、ドウ
モ借金ヲシ過ギルゾト言ヘバ或ハ其ノ時ニ
削ラレルコトガナイトモ限ラヌ、是ハ理窟
デアリマスガ······兎ニ角金ヲ借リルカ借
リヌカト云フ問題ト、金ノ出シ入レノ見積
リヲスルト云フコトハ全然別箇ノコトデス、
之ヲ混同シテ居ルカラシテ大藏大臣ノ先程
ノ曖昧ナ御答辯ガ出テ來ルノデス、私ハ此
ノ際ニ憲法第九條ヲ考ヘテ見タイ、第九條
ハ法律ニ關スルコトデアリマス、所謂法律
ヲ執行スル爲ニ命令ヲ發スルコトガ出來ル、
「命令ヲ發シ又ハ發セシム」ト云フ條文ガア
ル、卽チ執行命令デアル、此ノ執行命令ニ
付テハ既ニ總動員法デモ問題ニナツタヤウ
デアリマスガ、併シ如何ニ大キナ內容ヲ持
ツテ居リマシテモ、法律ノ點ニ付キマシ
テハ、法律ガ其ノ內容トシテ之ヲ執行スル
所ノ命令ヲ發スルコトヲ認メタ以上ハ憲法
上ハ違法デハアリマセヌ、政治上、事實上
ノ關係ニ於テ穩當ヲ缺クカドウカト云フコ
トハ是ハ別問題デアルガ、法律上ノ問題ト
シテハ形式上ハ總動員法ト云フモノハ決シ
テ違憲デハアリマセヌ、併シナガラ今日議
題ニナツテ居ル所ノ本件ニ付キマシテハ、是
ハ明カニ憲法違反デス、ト云フノハ豫算ハ
執行命令ト云フヤウナサウ云フ性質ヲ持ツ
テ居ルモノデハナイ、豫算ハ法律ガアルカ
ラ、法律ニ基イテノ執行命令デ豫算ヲ出ス
ノダ、サウ云フヤウナ關係ハ一ツモナイノ
デス、隨テ假ニ斯ウ云フ法律ガ出來テ、此
ノ法律ガ假ニ通ツタト致シマシテモ、サウ
シテ憲法第六十二條ノ協贊ヲ免ルルト云フ
コトニ假ニナツタト致シマシテモ、是ハ憲
法上無效ダト思フ、若シ斯ウ云フコトヲ許
スモノトスレバ、斯ウ云フ法律ニ依ツテ豫
算サヘ作レバ其ノ豫算ノ內容ニ見積ツテア
ル公債ハ勝手ニ出セルト云フヤウナコトガ
許サレルモノトスレバ先程問題ニナツタ
一般會計ニ於ケル赤字公債モ同ジコトデス、
苟モ豫算デ足ラヌ所ガアツタラ公債デ賄フ
コトガ出來ルト、斯ウ云フ法律ガ出來レバ
一本デヤレル、赤字公債ガ宜イカ惡イカハ
別問題、併シドウアラウト法理ハ一貫スル
ノデアリマス、所ガ若シサウ云フ赤字公債
モ宜シイト云フコトニナレバ、イツソノコ
ト簡單ニ豫算モ宜イデハナイカ、豫算モ政
府ニ任シテシマツテ政府ガ勝手ニ每年適當
ナ見積リヲシテヤツタラ宜シイ、サウ云フ
コトヲ內容トスル法律ヲ作ツタラドウデ
ス、サウ云フ法律ガ出來タラ豫算ハ政府ノ
勝手デ議會ノ協賛ヲ要シナイ、サウ云フコ
トニナツテ來レバ結局議會ハ要ラヌト云フ
コトニナル、是ハ最モ重大ナ內容ヲ包藏シ
テ居ル法律案デアルト私ハ考ヘル、ソレヲ
先程大藏大臣ハ、每年豫算ガ直グ通過シ、
臨時軍事費モ直グ通過シ、公債ノ發行ニ關
スル法律モ直グ通過スルノダカラ宜イデハ
ナイカ、其ノ手續ヲ略シタ方ガ宜イデハナ
イカト云フ御考ヘノヤウニ見エマシタガ、
早ク通ル、簡單ニ通ルト云フコトガ宜イノ
ナラバ、臨時軍事費ノ豫算ガサウデス、何
モ十分ナ審議ヲ盡ス暇ハナシ、モウ.政府ヲ
信賴シ、軍部ヲ信賴シテ一刻ヲ爭ウテ豫算
ヲ通シテ居ル、ソンナ早ク通ルヤウナ豫算
ナラバ、豫算ハ議會ノ協賛ヲ經ナイデモ宜
イ、戰サニ要スル經費ハ一本ニシテ政府ガ
勝手ニ作ツタラ宜シイ、斯ウ云フ法律ニシ
タラドウカ、斯ウ云フ理窟モ成立ツノデア
リマス、ソレナラ一步進ンデ、先程申シマ
シタヤウニ、一般豫算デモ豫算ナド作ラヌ
デモ宜シイ、モウ政府ニ任シテ置ケバ宜シ
イノダト云フ結論ニナル、是ハ由々シキ大
事デアル、議會ヲ否認スルト云フ結論ニナ
ルノデアリマスカラ、單ニ憲法六十二條ヲ
屁理窟デ以テ解釋シテハイケナイ、卽チ「議
會ノ協賛ヲ經ヘシ」ト云フコトハ內容ガナケ
レバナラヌ、抽象的ナコトデ公債ヲ發行出
來ルト云フ、具體的ニ內容ノナイモノヲ協
贊ヲ經ルト云フコトハ協賛ニナラヌ、少クト
モ確定シ得ベキ基礎、例ヘバ鐵道ノ買收ニ
付テ公債ヲ發行スルト云フナラバ、計算ノ
基礎ガアル、計算ノ基礎ガアレバ其ノ數額ハ確
定シ得ベキモノデアル、具體的ノ內容ガアツ
テコソ協賛スル價値ガアル、卽チ憲法第六
十二條ハ協賛ノ義務ヲ陛下ノ議會ニ課シテ
居ル、陛下ノ議會トシテ吾々ガ職責ヲ全ウ
スル爲ニハ、陛下ノ執行機關デアル政府ノヤ
リクフ陛下ノ議會トシテ監視シナケレバナラ
ヌ、今日ノ問題ハ實際問題トシテ、善惡ノ問題
デモナク、官吏ノ眼ヲ光ラスト云フ、サウ云フヤ
カマシイ問題デモアリマセヌケレドモ、理論ノ
上ニ於テ、憲法上ニ於テ是ハ重大ナ問題デアル
ト確信スルノデアリマス、斯ウ云フコトヲ
唯事務的ニ都合ガ好イカラト云ツテ簡單ニ
濟マスト云フノデアレバ、議會ハ要リマセ
又、ソレハ實際恐ルベキ結果ニナリマス、
ダカラサウ云フ弊ニ墮セヌ爲ニ、會計法ス
ラモ先程御引用ニナツタ六條ニ、ヤハリ借
入金ヲスルノデモ其ノ年度ノ最高限度ヲ決
メロト言ツテ居ル、卽チ會計法ノ第六條第
三項ニハ、「大藏省證劵及借入金ノ最高額ハ
每年度帝國議會ノ協賛ヲ經テ之ヲ定ム」、卽
チ帝國議會ヲ尊重シテ此ノ法律ガ出來テ居
ル、況ヤ此ノ法律ハ憲法ノ下ニアルノダカ
ラ是ハ改正ハ出來ヌデアリマセウガ、此
ノ法律ヲモ改正シヨウト云フ御趣旨デアリ
マセウ、本日御提案ニナツタ法律案ハ帝
國議會ヲ無視シ、結局專制政治ニ還ラウト
云フ一段階デアルト考ヘラレテモ仕方ノナ
イ御改正デアルト思フ、一君萬民ノ政治ハ
卽チ民ノ心ヲ以テ上御一人ガ御裁納ニナツ
テ、ソコデ初メテ歸一ノ關係ガ明カニナル
ノデアリマス、餘所ノ國ノヤウニ個人主義
ガイカヌカラ全體主義ト云フ風ニ勝手ニ極
端カラ極端ニ馳セテ、卽チ差別觀念デアル
個人主義ノ變形デアル全體主義ヲ眞似テ國
家ノ權力ヲ增大スレバソレデ足レリト云フ
ヤウナ思想ガマダ橫行シテ居ルヤウデアリ
マスガ、サウ云フ國體ニ反スルモノヲ今日
議會人ハ陛下ノ爲ニ陛下ノ議會トシテ
打チ破ラナケレバナラヌト思ヒマス、固ヨ
リ大藏當局ハサウ云フ深イ御考ヘヲ以テ御
提案ニナツタモノデナイコトハ私ハ確信致
シマス、決シテサウ云フ意味ニ於テ非難ス
ルノヂヤアリマセヌガ、結果ニ於テサウ云
フ結論ヲ生ミ出スヤウナ御提案ハ希クハ引
ツ込メテ戴キタイ、サウシテ從來通リヤハ
リ金額ヲ決メテ具體的ニ議會ノ協賛ヲ經ラ
レルト云フ形式ヲ-紙一枚書クコトハ御
面倒デアリマセウガ、豫算ノ審議ト共ニ、
此ノ公債發行ノ件ニ付テ協贊ヲ求メラレル
ト云フコトモ、或ル意味ニ於テ御面倒カモ
知レマセヌガ、是ハ陛下ノ御聖慮ニ依ツ
テ御作リニナツタ憲法ニ基クモノデアリマ
スカラ、憲法ヲ尊重スル意味ニ於テ是非此
ノ改正案ヲ御引ツ込メニナツテ戴キタイト
云フコトヲ切望スルト共ニ、此ノ憲法上ノ
見解ニ對シテ大藏大臣及ビ森山長官ノ御所
見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=31
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032・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ハ御質問カ御意見カ
存ジマセヌガ、憲法違反、議會否認ナドノ
考ヘハ私ハ毫モアリマセヌ、憲法上ノ見解
ハ明瞭ニ申上ゲテ置キマス、憲法六十二條
ニ依リ御協賛ヲ願ツテ居ルノデアリマス、
六十四條ハ豫算ノ協賛デアリマス、私ハ六
十四條デ以テ公債ノ發行權ヲ得ルナント云
フコトハ一言モ申シタコトハアリマセヌ、
六十四條デ豫算額ガ決レバ自ラ發行限度モ
決マルデセウト云フコトヲ申上ゲタノデ、
六十四條ト六十二條ヲ混同スルコトハ毫モ
アリマセヌ、政府ノ會計ヲ扱ツテ居ル私ハ
斷ジテサウ云フコトハアリマセヌ、現ニ何
度モ申上ゲマシタヤウニ既ニ過去ノ議會ニ
於テ度々御協賛ニナツテ居リマス、御同樣
ノ趣旨ヲ鐵道ニ於キマシテモ亦通信事業ニ
於キマシテモ、道路ニ於キマシテモ決シテ
議會ヲ無視スルト云フコトハナイノデアリ
マス、平時デモ協贊ニナツテ居ルト同ジコ
トヲ御協賛ヲ願ツテ居ル次第デアリマス、
議會ヲ無視スルトカ、專制政治ヲ行フトカ
左樣ナ考ヘハ、恐ラク大藏當局ハナイダラ
ウト仰セニナリマシタガ、其ノ通リデアリ
マス、私ハ-政府ハ此ノ提案ヲ別ニ引ツ
込メルヤウナコトハ毫モ考ヘテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=32
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033・森山鋭一
○森山政府委員 今囘提案ノ昭和十二年法
律第八十四號中改正法律案ハ憲法ニ違反ス
ル提案デナイト云フコトヲ此處デ言明ヲ致
シマス、色々ノ點デ御所見ハ伺ツタノデア
リマスガ、一々此處デ私ノ意見ヲ申上ゲル
ノハ其ノ時ヲ得ナイト思ヒマスシ、又必要
ガアレバ申上ゲテ宜イト思ヒマスガ、憲法
う違反ハ全然ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=33
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034・南鐵太郎
○南委員 憲法ニ反スルト云フ見解ヲ私ハ
取ルノデアリマスガ、反シナイト云フ御見
解ヲ御說明願ヒタイ、私ハ第六十二條ニ基
ク協賛ハ具體的ニ其ノ內容ノアルモノノ協
贊ヲ求ムベキモノデアルト云フコトヲ確信
スルノデアリマス、唯將來何カ出テ來タラ、
出テ來タモノニ必要ナ額ハ幾ラデモ宜シ
イ、サウ云フ包括的ナ白紙委任的協賛ハ斷
ジテ協贊デハナイト思ツテ居リマス、具體
的ニ內容ヲ持ツタモノニ付テノ協賛ヲ求ム
ベキ義務ガアルト思フ、ソレニ對シテ法理
上ノ見解ニ付テ法制局長官ノ御意見ヲ伺ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=34
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035・森山鋭一
○森山政府委員 今度ノ法律案ハ金額ガ何
百万、何十億ト云フ數字ヲ現ハシテ居リマセ
ヌガ、此ノ規定カラドレダケフ公債ヲ發行
スルカト云フコトハ明瞭ニ現ハレテ居ルダ
ラウト思ヒマス、其ノ現ハシ方ハ別ニ議會
ノ協賛ヲ經タ豫算ヲ借リテ現ハシテ居リマ
スケレドモ、金額ハ之ニ依ツテ明瞭ニ現ハ
レテ居ルト思ヒマス、マルキリ分ラヌ金額
ニ付テ公債發行ヲナシ得ルト云フコトヲ決
メルモノデハナイ、金額ガ分ラヌト云フヤ
ウナ例ガアルカト言ハレレバソレハナイコ
トハアリマセヌ、澤山アリマス、一例ヲ申
シマスレバ、交付公債ト云フノハ金額ハ決
ラナイ、私モハツキリ覺エテ居リマセヌ
ガ、震災ノ時ニ何カ補償スル場合ニ公債デ
渡セ、其ノ必要ナ限度ニ於テハ公債ヲ發行
シテ宜シイト云フコトモアツタト思ヒマ
ス、ソレカラ大東亞戰爭ニ關スル特別資金
ハ公債デ交付スルト云フコトニナルノデア
リマスガ、是ハヤハリ金額ハ分ラナイノデ、
之ニ必要ナ額ヲ限度トシテ公債ヲ發行スル
コトヲ得ト云フコトニナツテ、是ハ金額ガ
出テ居ナイ、必要ダケ發行出來ルト云フコ
トニナツテ居リマス、是ハ自然ニドノ程度
ト云フコトハ色々ナ方面カラ分ツテ來ルノ
デ、斯ウ云フコトデ憲法六十二條ノ協賛ヲ
經タモノ、斯ウ云フ風ニナルダラウト思ヒ
そう、今度ノ法律案ヘ帝國議會ガ協賛ニナ
ル豫算カラ當然分ツテ來ルノデ、是ハ寧ロ
金額ヲ書イタコトト同ジコトヂヤナイカト
思ヒマス、唯金額ヲ書イタ方ガ宜イデハナ
イカトカ何トカ云フ論ハ、是ハ一ツノ妥當
論ト申シマスカ、一ツノ立法ノ仕方ノ問題
デアリマスカラ、是ハ色々御意見ガアラウ
ト思ヒマスケレドモ、此ノ點ニ於テマルツ
キリ白紙委任狀ト云フ風ナモノデハナイト
私ハ存ジマス、而モ先程法律トカ何トカ色
色御意見ガアリマシタガ、此ノ憲法六十二
條ノ協賛ト云フモノハ、必ズシモ法律ニ依
ル必要ハナイノデ、形ハドンナ形ヲ取ツテ
モ宜シイノデ、會計法ノ六條ナドモ結局法
律デ決メナクテモ宜イノデハナイカ、起債
ト云フモノハ必ズシモ法律デ決メル必要ハ
ナイガ、色々ナ點デ今マデハ法律デ決メテ
居リマスケレドモ、他ノ形式ヲ取ツテモ決
シテ憲法違反デハナイト思ヒマス、突如御
質問ニナツタノデ私ハ今準備ヲシテ來テ居
リマセヌノデ、或ハ準備シテ來テカラ御答
辯シテモ宜シウゴザイマス、今大藏省ノ材
料ヲ借リテ私ノ頭ニアルモノヲ申上ゲテ居
ルノデアリマスガ、マダ他ニモ色々アルト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=35
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036・南鐵太郎
○南委員 私ハ善イ惡イト云フコトヲ問題
ニシテ居ルノデハナイ、憲法上違反デハナ
イカト云フコトヲ明カニシテ戴キタイノデ
ス、其ノ點ニ付テノ疑問ヲ持ツテ居ル、今
御示シノヤウニ本年度ノ豫算ニ付テハモウ
旣ニ分ツテ居ル、ハツキリ分ツテ居リマス、
併シ本年度デハナイ、過日衆議院ヲ通リマ
シタ追加豫算ニ付キマシテハ分ツテ居ルノ
デスケレドモ、是カラ後何ボ出テ來ルカ分
ラヌ、其ノ將來ノ追加豫算ト云フモノニ付
テハ一ツモ分ツテ居ラヌ、ソレヲ今カラ何
ボデモ御出シナサイ、サウ云フ協賛ヲスル
ト云フコトハ、協賛デハナイト思フ、協賛
ト云フモノハ、具體的ニ現ハレテ來テ、其
ノ事ニ協賛スルノガ本當ノ協賛デアル
六十四條ニ依ツテ豫算ノ見積リト云フモノ
ガ出來タ、ダカラ金ハ借リテモ宜シイト云
フコトトハ別ノコトデアル、金ハ何ボ借リテ
モ宜シイ、豫算ニ見積ツデ來レバ何時デモ
借リテモ宜シイ、サウ云フコトハ憲法六十
二條ニハ豫想シテ居ラヌ、其ノ意味デ私ハ
違憲ダト言フノデス、ソレヲ許スナラバ
一步進ンデ終ヒニハ總テノモノヲ任シテモ
宜シイト云フコトニナル虞ガアルカラ、
私ハ心配スルノデス、現當局ガサウ云フ考
ヘヲ決シテ持ツテ居ラヌト云フノハ無論ノ
話デアルガ、唯結果ニ於テ非常ニ恐ルベキ
コトヲ包藏シテ居ルカラ、特ニ此ノ點ヲ明
カニシタイト云フダケノ話ナノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 先程讀ミマシタガモウ一
度讀ミマス、之ヲ御聞キ願ヒタイト思ヒマ
ス、道路公債法、大正九年八月十一日法律
第五十九號ノ第一條「國道改良費支辨又ハ
國道、府縣道若ハ市ノ重要街路ノ改良費補
助ニ關スル經費支辨ノ爲政府ハ當該經費豫
算ノ範圍內ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ之カ繰
替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコトヲ得」卽チ當
該豫算ノ範圍內ニ於テトアルノデアリマス、
是ハ恐ラク大正九年以來今年マデ二十數年
ニナリマセウガ、皆每年是ハ實行シテ議會
ノ御協賛ヲ經テ居リ、法律モ御協賛ヲ經テ
居リマスシ、又ソレデ以テ議會ノ御叱リモ
ナク豫算ヲ協賛セラレテ、每年公債ヲ發行
シテ進ンデ居リマス、決シテ政府ハ憲法違
反ヲヤラウトカ、何トカ云フヤウナ考ヘハ
毫モナイノデアリマスカラ、ソレハ能ク御
諒解ヲ願ヒタイト思ヒマス、同ジヤウナノ
ガ通信事業特別會計法、是ハ昭和八年四月
一日法律第四十一號、是ノ第二條ニ「通信事
業設備ノ擴張及改良ニ必要ナル金額ハ業務
勘定過剩金竝ニ電信電話建設寄附及設備負
擔金ヲ以テ之ニ充ツ但シ業務勘定過剩金竝
ニ電信電話建設寄附及設備負擔金不足ノ場
合ニ於テハ電信電話設備ノ擴張及改良ニ必
要ナル金額ニ付公債ヲ發行シ又バ借入ヲ爲
スコトヲ得」是モ金額ハアリマセヌ、必要
ナル金額ニ付テ今ノヤウナ業務勘定過剩金、
設備負擔金等ヲ除ケマシタ殘リガヤツテ宜
シイト書イテアリマス、是モソレニ依ツテ
年々行ツテ居ル譯デアリマシテ、今囘ノ軍
事費豫算ノ中デモ、繰入金ト普通財源ヲ除イ
タ殘額ニ付テナシ得ル、斯ウ云フ風ニ丁度
前ノ通信事業ヤ道路デ申上ゲタト同ジヤウ
ナ仕組デアルノデアリマシテ、私共モ無論
其ノ點ヲ考ヘマシテヤリマシタ譯デ、ソレ
ハ決シテ左樣ナコトヲ考ヘテ居ルモノデモ
ナク、又是ガ初メテ斯ウ云フ變ツタモノガ
出タカラ、大變ナコトデアルト云フモノデ
ハナイ、マダ外ニモアル譯デアリマスカラ、
後デ資料ヲ御目ニ掛ケテモ宜イト思ヒマス、
ドウゾ其ノ意味デ御〓究願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=37
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038・南鐵太郎
○南委員 私ハ一般的ノ法理論デ以テ御尋
ネシタ譯ナノデ、今日マデ憲法違反ノ法律
ガ何ボ出テ居ルカト云フヤウナコトハ知ラ
ナイノデス、デアリマスカラドウ云フ風ナ
法律ガ出テ居ルカト云フコトハ、資料ヲ戴
イテカラ一ツ〓究シテ見タイト思ヒマス、
兎ニ角得心ノ行クヤウニシタイト云フダケ
ノ意味ナノデ、賢明ナル大藏當局ヲ疑ツテ
居ルト云フヤウナコトハ絕對ニアリマセヌ
唯結果ニ於テ禍根ヲ貽スヤウナコトニナツ
テハ困ルト云フ心配カラ來テ居ルノデス、
ソレデ一ツ此ノ點ニ付キマシテハ質問ヲ留
保シテ置キタイト思ヒマス
序ニ之ニ關聯シテ借入金ヲナスコトニ付
テ一寸伺ツテ置キタイ、借入金ハ先程モ會
計法ノ六條ニハ、借入金ハ最高額ヲ決メテ
協賛ヲ經ルト云フコトハアリマスガ、憲法
上ノ協賛ヲ要スルト云ブ根據ハ、政府ハ何
處ニ求メテ居リマスカ、之ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=38
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039・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハヤハリ先程松田君ヨ
リモ御話ガアリマシタ六十二條デゴザイマ
ス、今度ノ今御審議ヲ願ツテ居リマス問題
ニナツテ居ル法律ノ根據デ、借入金ヲスル
積リデアリマス、アレガ公債及ビ借入金ヲ
スル根據ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=39
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040・南鐵太郎
○南委員 所ガ憲法六十二條ハ單ニ國債ト
シテアリマス、「國債ヲ起シ及豫算ニ定メタ
ルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約
ヲ爲スハ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ」トアル、
借入金ト云フモノハ憲法ノ上ニ現ハレテ居
ラヌノデスガ、是ハドウ云フ風ナ御見解ヲ
ナサルカ、私ハ國債ト云フ中ニハ公債モ借
入金モ包含シタモノデアルト云フ、實ハ假
ニ見解ヲ持ツテ居ルノデスガ、ソレハ大藏
省トシテハドウ云フ風ナ御考ヘヲ持ツテ居ラ
レルカ、ソレヲ確メテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=40
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041・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 借入金ハ御話ノヤウニ實
質上國債同樣ノモノデアリマス、唯形式ハ
違ヒマス、ソレニシマシテモ歲出ハ御協賛ヲ
經テ金ヲ出スコトニナルガ、其ノ財源トシ
テ金ヲ借入レタナラバ將來之ヲ返サナケレ
バナラヌ、又利子モ拂ハナケレバナラヌ、
國庫ノ負擔ト云フモノハドウシテモ殘ル、
ソレデ形式上國債ノ中ニ入ラヌデモ、憲法
六十二條ノ精神カラ行ケバ、議會ノ協贊ヲ
經ナケレバ借入金ヲスルコトハ出來ナイト
私ハ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=41
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042・南鐵太郎
○南委員 ソレデハ廣ク解釋シテ公債及ビ
借入金モ國債ト云フ廣イ觀念ノ中ニ入ルノ
ダ、斯ウ云フ風ニ憲法ノ御解釋ヲ願ツテ居
ルト云フ風ニ取ツテ宜シウゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=42
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043・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 其ノ形ハドウナツテ居リ
マスカ、私一寸忘レテ居リマスカラ是ノ
調ベテ御返事申上ゲマス、ドツチニシテモ
六十二條ヲ本ニシテ協賛ヲ經ナケレバイカ
又、斯ウ云フ考ヘデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=43
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044・南鐵太郎
○南委員 私ハ其ノ點ニ付キマシテハ尙ホ
〓究致シマシテ、改メテ御尋ネスルカモ知
レマセヌカラ、一ツ留保サシテ戴キタイト
思ヒマス、一應是デ此ノ問題ニ對スル質問
ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=44
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045・矢野庄太郎
○矢野委員長 南君ニ申上ゲマス、先刻私
ガ申述ベマシタ通リノ問題デアリマスノデ、
アナタノ大藏大臣ニ對スル質問ノ留保ヲ許
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=45
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046・松田正一
○松田(正)委員 一寸關聯シテ申上ゲマス
ガ、今法制局長官ヨリ交付公債ノ御話ガア
リマシタケレドモ、アレハ他ノ法律ニ依ツ
テ基準ガ決マツテ居リマス、他ノ法律ニ依
ツテ斯ウ云フモノハ斯ウスルト云フコトガ
決マツテ居リマス、總體ノ高ハ九億何千万
圓ト云フノデソレハ決マツテ居リマス、ソ
レカラ道路公債等モ、是レ〓〓ノモノニ對
シテハ國庫ガナンボ補助スル、或ハ全額國
庫ガ、補助スルト云フコトハ他ニ法律ガアリ
マス、今大臣ハ是モヤツテ居ルト仰セラレ
マシタケレドモ、ソレハ額ヲ決メルコトニ
付テ一ツノ法律ガアリマス、他ノ法律ニハ
ソレガ少シモ關係ナクシテ幾ラデモヤレル
ト云フモノヂヤナイ、要ルカラドレダケ取
レルト云フモノヂヤナイ、例ヘバ通信事務
ノ如キモノデモ、電話ノ時ニハ是ダケ個人
カラ金ヲ取ルト云フヤウナ規定モアリマス
カラ、是トソレトハ一ツニハナラナイ、ソ
レデ此處デ御尋ネスルノハ、私ハ南方開發會
社ノヤウナコトハイカヌカモ知レナイガ、
認メルト云フコトヲ申上ゲテ居ル、此處デ
之ヲ御尋ネスルコトハ、是ハ他ノ法律ニ關
係ガナイノデ、唯實際要ルダケノ金ヲ豫算
デ認メル、豫算デ認メテ收入不足ヲ公債デ
出スノハ、今マデ此ノ委員會デヤハリ審議
ヲ致シテ來タノデアリマス、ソレハ何故カ
ト言ヒマスト、ソレニ依ツテ公債ノ高ガ分
ツテ、之ヲ消化スルノニ國民貯蓄ハ是ダケ
デ行カナケレバナラヌトスレバ、此ノ貯蓄
方法ヲ一ツ斯ウ變ヘタラドウデアラウ、モ
ウ一ツ之ヲ斯ウ强化シタラドウカト云フコ
トヲ色々ト政府ニ折衝ヲ致シテ、之ヲ〓究
シテ決メテ行クノダカラ、何モ此ノ委員會
デ額ヲ現ハセヌコトハナイ、ソレハ簡單ニ
現ハセルノダカラソレヲ現ハシテ、共ニ〓
究シテ滑カニ審議シテ行ツタラドウカ、憲
法六十二條ノ解釋ニ付テ、今借入金モ同ジ
コトダト言フ、ソレハ同ジコトデス、國債
モ借入金デス、誰ガ借リルノカト云フコト、
政府ガ御借リニナルノデハナイ、國民ノ責
任ニ於テ借リルノデス、ダカラ歸着スル所
ハ、憲法ハ協賛ヲ求メヨト云フコトニナツ
テ居リマス、交付公債トカ或ハ特別公債ト
是トハ一ツニハナラヌノデス、アレハ見積
レル場合ガアルケレドモ、他ノ法律ニ於テ
是ハ是ダケ補助ヲシテ行キ、是ハ全額補助
デ行クト云フノニ付テハ、法律モアレバ又委
員會モアツテヤレル、交付公債ノ如キモ基
準ヲ決メル機關ト云フモノガ法律デ決マツ
テ居ル、ソレト是トハ一緒ニナラヌ、稅金
デモサウデス、今度增稅シタモノハ是ダケ
取レルト云フコトハ豫算デアル、ケレドモ
ソレモ取レルカ取レヌカ分ラヌ、所謂見積
リデアル、是ハ法律ニ依レト云フコトガ書
イテアル、法律ニ依レト云フコトヲ憲法ニ
明示シテナカツタナラバ、兎ニ角戰費モ高
マツテ來タ、不足分ハ增稅デヤレ、尙ホ不
足分バ公債デヤレ、尙ホ不足分ハ借入レデ
ヤレト云フコトノ法律ヲ御出シニナルカモ
知レマセヌ、ソコハ一寸ヤヤコシイ所デア
リマス、增稅ヲスルトカ率ヲ變ヘル場合ニ
ハ法律ニ依レト云フコトヲ規定シテアル、
ダカラ其ノ法律ヲ御出シニナツテ居ル、多
ク法律デ基準ヲ決メテ行クノデス、其ノ基
準カラ出テ來ル豫想ト云フモノガ豫算ニ現
ハレテ來ルノデスカラ、ソレレ此此公公
起ス時ニハ協賛ヲ經ヨト云フノト一〓ニハ
ナラナイ、交付公債ノ如キモサウデアリマ
ス、道路公債ノ如キモサウデアリヤス、遞
信省ノ電話ナドモサウデアリマス、電話ヲ
一本架ケテヤルト云ツテ五百幾圓ヲ吾々カ
ラ取ル、其ノ規定ガアル、ソレニ付テハ實
際ノ費用ハドレダケ要ル、實際ノ費用ハ是
レ是レ要ルノダカラ是ダケノ費用ヲ取ルノ
ダト云フヤウナ色々ナ規定ガ一方ニアツテハ
漏レテ來タモノヲ公債デ出スト云フノト、
此處デ言ツテ居ル公債トハ意味ガ違フ出シ
得ル金額ハ豫算デナケレバ使ヘヌノデス、
其ノ豫算ノ上ニ現ハスト云フ實際ニ不足ト
云フモノガ出テ來ルノデスカラ、出テ來ル
モノハ、手數ノ上デ申シマスト、手數ガ餘
計掛ルトカ何トカ云フコトハナイ筈デス、
ソレナラバ、軍事費ハ別トシテ一般會計ノ
歲入不足三十一億七千万圓ヲ此ノ委員會デ
否決シタ場合ニドウナルカ、是ハ通過致シ
マシタカラ宜シウゴザイマスガ、之ヲ否決
シタ場合ニドウナルカ、又之ニ對シテ本會
ガ否決シタ場合ニハドウシテ實行サレルカ
ト云フト、ヤハリ憲法上ノ問題ガ起キテ來
ル、デスカラ此ノ委員會ハ政府ト膝ヲ交ヘ
テ、經費モ高マツテ來夕、是ダケ公債ヲ出
サナケレバナラヌ、貯蓄ヲドウシテ行クカ、
增稅モヤルシスルカラ國民ノ負擔モ重イ、
是ハ普通デハイカヌカラ何々ヲ强化シテ行
カウヂヤナイカト、此處デ滑カニ政府ト共ニ
檢討ヲ加ヘテ、サウシテ之ヲ認メテ行クト
云フ在來ノヤリ方ガ宜イノヂヤナイカト云
フコトヲ私ハ申上ゲテ居ルノデ、ソコノ所
ハ頭カラ斯ウダト云フ譯デハナイノデスガ、
私ノ意見ニ對シテ大藏大臣及ビ法制局長官
ノ方デ、是ハ無理ダト申サレマスカ、私、
是ガ一番今ノ時局ニ相應シイヤリ方デハナ
イカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=46
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047・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 ソレハ松田サンノ御話ハ
少シ違ツテ居ルト思ヒマス、今ノ道路デモ
ソレハ補助ハ法律ニ依リマスガ、其ノ補助
ノ法律ハ一遍御決メニナツタラ年々開クノ
デハナイカラ、ソコデソレガ良イトカ惡イ
トカ云フコトハ、改正ガ出ヌ限リハ審議
スル機會ハ一ツモナイ、而モ憲法上ノ問
題ハ同ジコトデアリマス、何分ノ一國庫ガ
補助スルト云フコトハ決マツテ居リマス、
ソレハ租稅デヤルノカ、公債デヤルノカ、
借入金デヤルノカ、是ハ全ク別問題デ、ソ
レガ決マツテ居ルカラ公債ガ良イトカ惡
イトカ云フコトハ、私ハソコカラ出テ來
ヌト思ヒマス、電話デモサウデス、電話設
備ノ負擔金ヲ取ル、是ハソレニ對シテ取
ルト云フダケノコトデス、ソレヂヤ取ツタ
餘リガ一體ドウナルカ、是ハ電話モ御承知
ノヤウニ市外電話モアリマスレバ、個々ノ
加入以外ノ口座モ色々アル、ソレダケ取ツ
タラ殘リハ公債ダト云フヤウナ筋合ハ出テ
參リマセヌ、是ハ他ニ電話ノ雜收入モアリ
マセウ、サウ云フヤウニ言ヘバ、臨時軍事
費デモサウデス、增稅ノ御審議ヲ願ヒソレ
デ稅金ガ決マル、アトノ雜收入ノ外ハ公債
ニナルト云ヘバ、ヤハリ元ニナルモノハ增稅
トシテ一應御決メヲ願ツテ居ル、ソレハサ
ウ云フ牽聯ガアリマス、併シ憲法上公債デ
ヤルカ、借入金デヤルカト云フ問題ハ、ソ
レガアルカラ殘リハ公債デヤルトカ借入金
デヤルトカ云フコトデハナイ、是ハヤハリ
御協賛ヲ其ノ途デ願ハナケレバナラヌ、其
ノ御協賛ヲ願フ方法ガ違憲デアルカドウカ
ト云フ問題デアリマスカラ、私ハソレハヤ
ハリ道路公債法デモ、憲法ニ合フカ合ハヌ
カト云フ問題ニナレバ、是モ同ジク御解釋
ノ參考ニナルト思ヒマスガ、實ヲ申シマス
ト、臨時軍事費ヲ通シテ戴イテモ、財源タ
ル公債ガ通ラナケレバソレハ實行ガ出來ナ
イ、今御話ニナツタヤウニ、一般會計ハ通ツ
タガ赤字公債ガ通ラナケレバドウナルカ、
ソレガ通ラナケレバ赤字公債ダケハ財源ガ
不足ニナツテ實行出來ナイ、折角臨時軍事
費ヲ御通シ願ヒマシテモ、ドレダケ臨時軍
事費ノ財源ノ公債ヲ出シテ宜イノカドウカ
分ラヌ、ソコデソレヂヤ待テト云フノデハ
急速御決定ヲ願ツタ-少シ端的ニ申スト
甲斐ガナイノデアリマスガ、ソレハ皆サン
ノ方デ、是ハ國家ノ戰爭ノ爲ニ必要ダカラ
ト云フ御氣持デ御通シ下サツタ譯デアリマ
ス、ソレデ私共ハ赤字公債ト云フ形ガ餘リ
良イモノデハナイガ、將來臨時軍事費ノ財
源歲出豫算ヲ協賛シタラ、租稅其ノ他ヲ
引イタ殘リハ幾ラデモ赤字デヤラセテ下サ
イト云フ程ニマダ申上ゲレナイト云フノハ、
ヤハリ議會ノ御審議等ニ對スル妥當性ヲ考
へ、尊重スルカラノコトデアリマス、ソレデ
今別ノ意味デ、松田委員ノ御話ニナリマシ
タヤウニ、ソレデハ斯ウ云フ機會ニドウシ
テ公債ヲ消化スルカ、其ノ源泉タル貯蓄ノ
問題ニ付キマシテ、色々アレヤ是ヤト御互
ヒニ考ヘヲ練ツテ巧クヤツテ行キタイト云
フコトハ、是ハ私モ全ク御同感デアツテ、結
構ダト思ヒマス、ソレデ恐ラク只今ノ私共
ノ考ヘト致シマスレバ、一般會計赤字公債
法ハ、是ハ年々御協費ヲ願ツテ行クコトニ
ナラウト思ヒマス、其ノ機會ニ於キマシテ
モ公債全般ノ消化其ノ他ニ付キマシテ、十
分ニ御意見モ伺ヒ、私共モ參考ニ致シ、ド
ンドン適切ナコトヲ實行スルト云フ機會ハ
アリマスノデ、根本ニ於テ今ノ違憲デアル
トカ何トカ云フ考ヘ方、或ハ御審議ノ機會
ヲナクシテシマフト云フ風ナコトハ毫モ考
ヘテ居ラヌ次第デアリマスカラ、其ノ邊ハ
是非御諒解ヲ願ヒタイト思ツテ居リマス、
是ハ事務當局ニ於テモヤハリ提出ノ際ニ今
ノヤウナ點ヲ〓究致シテ行キマシタ、何モ
別ニ其ノ意圖ガアル譯デハナイノデアリマ
スカラ、ソレダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=47
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048・松田正一
○松田(正)委員 今ノ大臣ノ御話ハ公債ト
云フコトト借入金ト云フコトハ同ジコトダ、
是ハ結局同ジコトナノデスガ、憲法ニハ借
入金ト書イテナイ、ケレドモ借入金ト云フ
モノハ公債ト同ジ性質ノモノダト云フノデ、
借入金モ六十二條ニ依ツテ、之ヲヤハリ公
債ト同樣ニ扱ツテ居ル、サウスルト憲法ニ
國債ヲ起スト云フコトデ金額ヲ入レテ居
ラヌカラ、金額ハヤハリドウデモ宜イノダ、
公債ヲ起スト云フコトハ國家的ニ協賛ヲ經
テ置ケバソレデ宜イデハナイカ、斯ウ云フ
風ニ議會人ハ直グニ考ヘルノデス、ソコガ
問題ニナリハセヌカ、ソレデ借入金モ公債
ト見テ六十二條デヤツテ居ル、ソレハ結構
デス、其ノ通リデス、ソコマデ解釋サレル
ナラバ、一方ニ國債ヲ起スト書イテアル、
國債ノ金額ヲ示シテ協賛ヲ經ベシト書イテ
居ラヌカラ、金額ヲ示サヌデモ構ハヌノダ、
是ハ解釋ノ問題デアリマスケレドモ、少シ
無理デハナイカト思ハレルノデスソレカラ
今申シマシタ道路公債トカ、サウ云フ風ナモ
ノハ、ソレハ成程不明確ノ部分モアル、併
シ使フベキ範圍ト云フモノガヤハリ色々ノ
法律デ決メラレテアル、其ノ法律ノ範圍內
ニ於テ使フノデアル、併シ十本ノ川ガアル
ヤラ二十本ノ川ガアルヤラソレハ分ラヌト
言ハレルカモ知レヌケレドモ、ソレハ國家
ノ法律ニ依ツテ決メラレテ、其ノ範圍內ニ
於テ負擔ヲシテ行ク、是モヤハリ公債ノ裏
面ニ法律ガ動イテ居ル譯デアルガ、實質ハ
何モ法律ハ裏面デ動イテ居ナイノデス、唯
繰入金ダケハソレハ差引スルト云フノデス
カラ、ドウモソレト是トハ一〓ニハナラナ
イノヂヤナイカト私ハ信ズルノデアリマス、
ソレデスカラ南方開發ノ如キモ諄イヤウデ
スケレドモ、ソレハ已ムヲ得ヌダラウ、ダ
カラ是ハ此ノ額ガ表ハシテ行クヂヤナイカ
ト思ヒマスカラ質問ヲ續ケテ行ツタノデア
リマス、是以上ハ別ノ機會ニ讓リマシテ、
本日ハ此ノ程度デ質問ヲ打切ツテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=48
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049・矢野庄太郎
○矢野委員長 大藏大臣及ビ森山政府委員
ニ御相談申上ゲマスガ、先刻來ノ質疑應答
デハ、本日此ノ問題ノ質疑ヲ打切ルコトガ
出來ナイノデアリマスガ、明日十時カラ開
會致シタイト存ジマス、如何デセウ、御出
席下サイマスカ、御出席ガナイト會議ガ進
マナイノデアリマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=49
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050・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今明日ニハ申上ゲラレマ
セヌガ、成ベク繰合セテ出ルヤウニ致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=50
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051・矢野庄太郎
○矢野委員長 承知致シマシタ、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後四時二十四分散會
衆議院昭和十八年度一般會計歲
出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律案外九件委員會議錄
第五囘中正誤
頁段行誤正
四三四二九保有米ヲ賣ツテ保有米ヲ持ツテ
〃ヽ〃三〇屑米ヲ賣ツテ屑米ヲ持ツテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008111734X00819430215&spkNum=51
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