1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○企業整備資金措置法案
○國民更生金庫法中改正法律案
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委員氏名
委員長 子爵 大河内正敏君
副委員長 男爵 東郷安君
公爵 桂廣太郎君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 山本清君
子爵 曾我祐邦君
子爵 織田信恒君
子爵 大岡忠綱君
子爵 阪谷希一君
三井清一郎君
川村竹治君
伍堂卓雄君
柴田善三郎君
左近司政三君
男爵 久保田敬一君
男爵 飯田精太郎君
吉野信次君
男爵 肝付兼英君
男爵 益田太郎君
坂野鉄次郎君
竹内可吉君
瀧正雄君
竹下豐次君
瀧川儀作君
岩田宙造君
秋田三一君
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昭和十八年六月十八日(金曜日)午前十一時十分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=0
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001・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 開會致シマ
ス、先ヅ大藏大臣ノ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=1
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002・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今囘戰局ノ狀況
ニ對應致シ、一層物的戰力ノ增强ノ爲ニ大
ナル規模ニ於キマシテ企業整備ヲ斷行致
サナケレバナラヌコトニ付キマシテハ、詳
細ハ後程商工大臣ヨリモ御說明ガアルト存
ジマスルガ、斯カル大規模ノ企業整備ニ於
キマシテハ、各種ノ個人、會社等ノ事業、
其ノ營業或ハ營業ニ屬シマスル設備等ガ移
動ヲ生ジマシテ、他ニ之ヲ賣却スル、或ハ
他ニ合同シマス、サウ云フ事態ガ起リマシ
テ、〓算致シマシテモ三十五億圓乃至四十
億圓以上ニモ越スヤウナ設備營業等ノ移動
ノ爲ノ資金ガ、所謂普通ノ生產ガアリマシ
テソレニ依ッテ物資ガ購入サレル、或ハ新
タニ工場ガ出來ルト云フ外ニ、サウ云フ大
キナ資金ニモ移動ガ起ルト云フ事態ニ相成
ルノデアリマス、物ノ賣買、權利等ノ移轉
ガアリマシタ際ニ、其ノ對價ハ現金ヲ以テ
支拂ハレルノガ普通デゴザイマスルガ、此
ノ際ハ其ノ資金ノ移動ノ性質其ノ營業ニ顧
ミマシテ、現金ヲ以テ決濟スルト云フコト
ハ非常ニ危險ガ存スルト考ヘラレルノデア
リマス、何故カト申シマスルニ、普通ニ於
キマシテハ物ノ賣買ガアリマスル際ニハ、
多クハ新タナル生產ガアリマシテ、ソレハ
生產者ガ原料物資等ニ對シテ對價ヲ拂ヒ、
技術勞力ヲ利用致シマスルコトニ付テ賃金
其ノ他ノ對價ヲ拂ヒ、其ノ原價ニ對シマシ
テ適正ナル利益、是ハ資本ニ對シマシテハ
一割以上ニナリマシテモ、一々ノ物ノ原價
計算カラ申セバ三「パーセント」四パーセ
ント」ト云フ少イ物モアリマス、サウ云フ
物ヲ入レマシテ、ソレガ多クハ今ノヤウニ
勞銀、資材等ノ對價トシテ拂ヒ、殘リマシ
タモノヲ會社等ニ於テハ之ヲ配當致スト云
ノヤウナコトデアリマス、從ヒマシテ今迄
ハ此ノ戰時ノ金融政策トシマシテ、有ラユ
ル資金ト云フモノヲ戰時必要面ニ集中ス
ル、結局是ハ物資、勞力ヲ戰時必要面ニ集
中スル方策デアリマスルガ、何レニ致シマ
シテモ源泉ニ於テ之ヲ捕捉スルト云フコ
トデナク、所謂資金ノ蓄積或ハ國民貯蓄運
動デヤッテ參ッタノデアリマス、ソレハ右申
シマスルヤウニ蓄積總額ト云フモノハ全國
的ニハ非常ニ大キクナルノデアリマスルガ、
一々ノ受拂ニ關シマシテ源泉デ捕捉スベキ
部分ハ、一々ノモノニ付テハ少額ニナルノ
デアリマス、又極メテソレハ煩瑣ナコトニ
ナリマシテ、經濟上ノ圓滿ナル流通ヲ害ス
ルノデアリマス、是等ノ面ニ付キマシテモ、
物ニ依リマシテハ源泉捕捉ヲヤルベシト云
フ議論モ議會ニ於テモ屢〓出テ居ル位デア
リマスルガ、〓ネ是ハ不適當ト認メマシテ
ヤッテ居リマセヌ、唯極ク土地ノ賣買等ノ
同ジ性質、今對價ヲ直グ要セズシテ代金ガ
入リマスルヤウナ場合ハ、交付公債等ノ方
法ヲ以テ致シテ居ルノデアリマス、先ヅサ
ウ云フモノハ比較的少額デアリマスル場合
又土地ノ代金等ノ場合ニハ、ソレデ濟シダ
ノデアリマスルガ、今度ハ非常ニ大キナモ
ノガ動キマシテ、場合ニ依リマシテハ一會
社ニ屬スル總テノ營業、資產ト云フモノガ
外ヘ參リマシテ、會社ガ存續スルノ必要ガ
ナイ、殘餘財產ヲ皆株主ニ分配スルト云フ
ヤウナコトガ普通ナラバ起ルノデアリマス、
サウ致シマスルト、其ノ金ト云フモノハ是
カラ何處ヘ持ッテ行カウカ、斯ウ云フ金ニナ
リマス、大體サウ云フ金ヲ得ル層ハ國民ノ
中ニ於テモ所謂企業心ノ旺盛ナ、ヂット有
價證劵ナドヲ持ッテ居ルノデハ少シ退屈ニ
考ヘサウデアリマスカラ、之ヲ何カノ形デ
購買力化セムトスル勢ガ、ナカ〓〓强イ面
二、而モ多額ニ今囘金ガ行クト云フコトニ
普通ナラバ相成ルノデアリマス、ソコデド
ウシテモ現金デ決濟ヲシナイト云フ方法ヲ
執ルコトガ必要デアリマス、然ラバ普通ニ
ヤリマスルヤウナ國債デアリマスルトカ、
其ノ他社債等ノ有價證劵ヲ交付シテヤルカ
ト申シマスルニ、是ガ直グ賣リ拂ハレテ現
金化スルヤウデハ今ノ目的モ達シマセヌ、
サウスレバ其ノ國債ノ流通ヲ停止スルヤウ
ナコトヲ致サナケレバナラヌノデアリマス
ガ、是モ場合ニ依ッテ登錄致シマシテ、實
際賣買シナイナドト云フヤウナコトモオ互
ニ了解シテヤッテ居ル場合モアリマス、併シ
斯クノ如キコトハ元來本則デハナイ、所謂
國債、有價證劵デアリマスガ、是ガ自由ニ
賣レルト云フコトガ特性デアリマス、實ハ
自由ニ賣レルカラ、一般ノ層ニ於テハ之ヲ
持ッテ居ルト云フヤウナ心理的ノ逆ノ結果
モ考ヘテ、自由ニ賣ル途モ開ケテ置クノデ
アリマスガ、今囘ノ場合ハ自由ニ賣リタイ
層ニソレガ餘計行クコトニナリマスカラ、ソ
コデ之ヲ法律的ニ賣買ヲ阻止スルト云フコト
ニナリマスト、是ハ國債ノ性質ニ反シマス、
デ、是モ斯ウ云フ場合適切ナ方法デナイ、ド
ウシテモ特殊ノ構想ヲ致サナケレバナリマ
セヌ、サウ致シマセヌト、數十億ノ資金ガ所
謂浮動購買力化シテ、戰時ニ於テ是ガ浮動購
買力化スレバ、申ス迄モナク色々法令其ノ
他ニ於テ新シイ事業モ思フヤウニ出來ナイ、
又物ノ配給ガ決ッテ居リマシテ買ヘナイト
云フコトニナッテ居ルノデアリマスケレド
モ、サウ云フコトガ一ツノ統制方策デ完全
ニ行クナラバ、戰時經濟ト云フモノハ心配
ノモノデナイ、ナカ〓〓一筋ヤ二筋デ負ヘ
ナイノガ經濟界ノ實情デアリマスカラ、ソ
レデ安心シテ居ル譯ニモ參リマセヌ、ドウ
シテモ特殊ノ方法ヲ講ジマシテ、結局サウ
シマセヌト、一方ニ於テ企業整備ヲ致シテ、
新シキ生產ヲサレタ物ノミナラズ、現在ア
ル物ノ設備ハ、設備ノ儘使ヘル物ハ其ノ形
ニ置イテ、使ヘナイ機械ハ之ヲ少クシテモ
製鐵ノ原料ニシナケレバナラヌト云フ、詰
リ物資資材有ラユル物、又ソレカラ出ル勞
力ヲ戰爭用ニ集中セムトスル時ニ、一方何
十億ノ金ガ動イテ行キマスレバ、金ガ動ク
所必ズ其處ニ物資ト勞力ノ動搖ガ起リ、金
ダケノ動キデ物ガ濟ムト云フコトハアリマ
セヌ、强ヒテアルトスレバ、株式市場ニ入
リマシテ株式ノ暴騰ヲ起シテ、所謂惡性「イ
ンフレーション」化スルコトニ玆ニ拍車ヲ
掛ケルノデアリマス、左樣ナコトニナルナ
ラバ、折角一方デ戰力增强ヲシテモ、叉
方デ資材勞力、是ハ電力ニシテモ、總テノ
物ガ戰爭ニ必要ナル方面ヨリ、隱微ノ間ニ
之ヲ奪ッテ他ニ持ッテ行クト云フ戰力ノ減殺
ニナリ、一方經濟秩序ト云フモノハソコニ
壞レマシテ、動モスレバ戰時ニ起ラムトス
ル經濟不秩序、俗ニ申シマスレバ惡性「イン
フレーション」化ヲ起スノデアリマス、是
ハドウシテモ防遏シナケレバナリマセヌ、
ソレガ防遏出來ナケレバ、斯カル不秩序ノ
下ニ於テハ如何ニヤリマシテモ生產ト云フ
モノハ能率ヲ擧ゲルコトハ出來ナイノデア
リマスルカラ、企業整備ノ目的ヲ達シマス
ルト共ニ此ノ資金ノ浮動化ヲセシメザルト
云フコトガ同時ニ必要デアリマシテ、共一
兩者ノ目的ヲ達シナケレバナラヌノデアリ
マス、右申シマシタヤウナ譯デ、從來ノ所
謂金融統制、詰リ國民ノ愛國心ニ依リマス
國民貯蓄ノ增强ヲ主トシ、其ノ集積シタル
資金ノ使用面ニ於キマシテハ、資金調整法
ニ依リマシテ國家ノ生產擴充計畫ニ卽應シ
タ資金ノ費途ヲ認メル方法ノ外ニ、此ノ今
囘ノ企業整備、又是ト性質ヲ同ジウシマス
經濟上ノ權利、設備ノ移動ノ決濟方法ニ新
構想ヲ採ル必要ガアルノデアリマス、是ハ
新規ノ決濟方法ニ全面的ニ變ヘルト云フノ
デハアリマセヌ、今申上ゲタヤウナ性質ノ
モノニ付テ適用スルト云フコトデアリマシ
テ、後ハ今迄通リノ現金支拂、サウシテ其
ノ戰力集中ニ必要ナ部面ハ租稅ト國民貯
蓄今迄ノ手段ニ依リマシテヤルト云フコ
トニハ一向變リハナイノデアリマス、從ち
テ他ニ預金其ノ他ノ面ニ於キマシテ、斯カ
ル封鎖ヲ行フ意思ハ毫モナイノデアリマス、
大體ノ考ヘ方ハ左樣ナ所デアリマス、ソレ
デ今囘ノ措置ニ付キマシテ、其ノ内容ヲ是
ヨリ大體ヲ申上ゲタイト思フノデアリマ
ス、本案ノ內容ハ企業整備ニ伴ヒ、主トシ
テ決濟ノ代金デアリマス、設備營業權等ノ
賣買、或ハ賣買ノ實體ニ相當致シマスモノ
ノ是ハ引受ト云フ形ノモノモアリマスガ、
其ノ資金浮動購買力化ヲ抑制シ、簡單ニ申
セバ資金封鎖ト申シマスカ、此ノ措置デア
リマス、第二ハ其ノ封鎖資金ガ絕對ニ封鎖
ノ儘デハ矢張リ現實ノ世ノ中ノ動キニ適フ
モノデアリマセヌノデ、右申シマシタヤウ
ニ生產費ヲ拂ハナイデ、何モ勞銀ノ對價ヲ
今拂フコトナクシテ金ガ入ルトハ申シマス
ガ、過去ニ於テサウ云フ設備ヲ作ル、爲ニ、
銀行カラ金ヲ借入レタト云フ風ナ負債ノア
ル場合ガアリマス、又事業ヲヤルニ付テモ、
今迄ノ從業員ナリ、居リマシタ者ニ、退職
手當ヲ出ス必要モアリマセウ、ソレカラ將
來時局產業等必要ナルモノニ投資シタイト
云フ考ガ起ル場合モアリマセウ、是等ノ場
合ニモ必要ガアツテ適切ナモノハ之ヲ認メ
ナケレバナラヌノデアリマス、是ガ直グ起
ル場合モアリマセウシ、將來起ル場合モア
リマセウ、ソコデ必要ガアッテ適當ナ費途
デアリマス場合ニハ、同時ニ之ガ資金化ス
ルト云フ方法ガ必要デアリマス、其ノ方法
ハ大體何レノ金融機關ニ參リマシテモ、是
ハ後程申上ゲマスヤウニ所謂債權、碎ケテ
申セバ債務證書デアリマスガ、是ハ何時デ
モ擔保ニシテ金ガ借リラレル、ソレモ金額
擔保デ金ガ借リラレル、場合ニ依ッテハ分
割シテ銀行ニ依ツテ直グ金ニナル、其ノ利
子モ自分ガ受ケル利子ヨリ高クナイ、同樣
ナ損得ノナイ利子デ行クト云フ風ナ當事者
ニ損得ノナイ而モ容易確實ナル方法デ資金
化スル、斯ウ云フコトガ第二段デアリマ
ス、第三段ハサウ致シマシテモ事業ヲヤリ
マシタ會社ナドガ、直グ解散ヲ致シテ殘餘財
產ヲ分配致シマスレバ、是ハ目的ヲ達シナ
イコトニナリマスカラ、サウ云フ會社ガ存
續シ得ル建前ヲ採リマシテ、サウシテ存續
シタ場合ニ配當ナドガ急ニ激減ヲシナイヤ
ウニ色々稅金ヲ負ケマストカ、或ハ經理上
普通ノ場合ヨリモ特例ヲ認メテ、ヤリ易イ
ヤウニスルトカ云フヤウナ、存續ニ伴フ
措置ヲ致スト云フコトデアリマス、其ノ
外サウ云フコトニ關聯シマシタ租稅ノ減
免ノ問題、又企業整備ニ於キマシテハ、
其ノ儘ノ形デ轉用ヲサレル場合ハ差支アリ
マセヌガ、其ノ儘デハ轉用ヲシニクイ、極
端ナ場合ハ企業ガ「スクラップ」トシテ使ハ
レルト云フ場合ニ於キマシテハ、買受人ハ「ス
クラップ」ノ代金デ買受ケル、買受人ハサウ
デアリマスガ、賣拂人ハソレハ機械トシテ
持ッテ居ルノデアリマスカラ、之ヲ「スクラッ
ごノ値デ賣拂フト云フコトハ、不當ナ損
失ヲ與ヘルコトニナリマスカラ、其ノ間ニ
於ケル損失ト云フモノハ、國家的ノ必要ニ
應ジテ起ルコトデアリマスノデ、是ハ國家
ガ其ノ損失ヲ補塡シナケレバナリマセヌ、
斯カル財政措置ガマダ外ニモ要ルノデアリ
マス、大體サウ云フヤウナ五點ニ分ケテ考
ヘルコトガ出來ルノデアリマス、第一ニ資
金ノ浮動購買力化抑制ノ措置デアリマスル
ガ、企業整備ニ伴ヒ事業ノ讓渡、設備又ハ
權利ノ讓渡又ハ收用、株式又ハ出資ノ持分
ノ讓渡等資金ノ移動ノ生ズル場合ニ於キマ
シテハ、特殊決濟方法卽チ特殊預金、特殊
金錢信託、債務者特殊借入金、戰時金融金
庫特殊借入金、政府特殊借入金ノ五ツノ制
度ヲ設ケマシテ、大體ニ於キマシテ債權者
ヲシテ其ノ欲スルモノヲ欲スル範圍內ニ於
テ選擇セシメムトスルモノデアリマス、而
シテ是等ノ方法ハ民間相互ガ當事者デアリ
マスル場合ノミナラズ、政府ガ一方ノ當事
者デアル場合ニ於キマシテモ之ヲ採用致シ
テ居ルノデアリマス、特殊預金又ハ特殊金
錢信託ノ方法ト申シマスルモノハ、政府ノ
指定シタ金融機關、實ハ是ハ廣ク指定スル
積リデアリマス、狹ク致シマシテハ甚ダ當
事者ガ不便デアリマス、其ノ機關ハ特殊預
金又ハ特殊金錢信託ヲ取扱ハナケレバナラ
ヌト云フコトニ致シテアリマス、義務ガア
リマス、ソコデ債務者ガ支拂フベキ金額ノ
全部又ハ一部ヲ債權者ノ名義デ、是ハ大體
ニ於テ債權者ノ欲スル銀行ニ特殊預金或ハ
特殊金錢信託ヲ致シマス、サウシタ場合ニ
ハソレデ所謂代金ノ支拂ガ濟ンダ、斯ウス
ルノデゴザイマス、此ノ場合ニ於キマシテ
債務者ガ、詰リ設備等ヲ讓受ケマシタ者ガ
金ガ足リナイ場合ニ、必要ガアレバ政府ハ
其ノ金ヲ其ノ設備ノ買受人、卽チ債務者ニ
融通シテヤレト云フコトヲ銀行ニ命ズルコ
トモ出來ルヤウニ致シテアリマス、相當ナ
便利ガ供與サレルコトニナリマス、債務者
特殊借入金ト申シマスモノハ、設備等ノ資產
ヲ讓受人卽チ債務者自體ガ、其ノ支拂代金
ノ支拂ヲスル代リニ、其ノ債務者ガ引受人
ニナリ、設備ヲ讓リマシタ者ガ債權者トナ
ル、其ノ債權ヲ定メマシテ是デ決濟ヲセム
トスルモノデアリマス、企業整備ノ場合ニ
設備ヲ讓受ケマスル者ハ產業設備營團ガア
リマス、又設備ノ引受ヲ爲ス者ニ國民更生
金庫ガアリマス、其ノ外若干同樣ノ意味デ、
他ノ機關ヲ使ッテヤル場合ガアリマス、又當
事者同士デ直接ニ或工場ヲ他ノ工場ニ轉用
スル、其ノ工場ヲ使ハムトスル會社ガ、今所
有シテ居ル者カラ直接ニ引受ケル、最終ノ
需要者ニ直接行ク場合モアリマセウ、ソレ
デ產業設備營團ガ引受ケマスル時ニハ、是ハ
產業設備營國特殊借入金ト云フモノニナリ
No.19.國民更生金庫ノ場合ニハ國民更生金
庫特殊借入金ニナリマス、其ノ他ノ設備ノ
讓受人ニ付キマシテハ、當該者ガ自分ノ名
義ノ特殊借入金ニナルノデアリマス、ソコ
se
デソレハ個人的或ハ小サナ會社モアリマセ
ウカラ、債權者ガ設備營團トカ更生金庫ナ
ラ宜シイガ、誰ソレト云フ特殊借入金ノ名
義デバドウモ餘リ感心シナイト云フヤウナ
場合モアリマセウカラ、サウ云フ場合ニハ
戰時金融金庫ガ碎ケテ申セバ債務者ニ代リ
マシテ、戰時金融金庫特殊借入金トスルコ
トガ出來マス、サウシテ戰時金融金庫ハ同
額ノ債權ヲ其ノ設備ノ讓受人ニ對シテ持ツ、
斯ウ云フヤウナ關係デモ處理ガ出來ル、斯
ウ云フ風ニ致シタイト思フノデアリマス、
又當事者ガ政府ノ債務者ニシテ欲シイ、政府
ノ債務ナラ利子ガ安イノデゴザイマスケレ
ドモ、一番確實ダト云フノデ、ソレヲ欲ス
ル場合ニハ民間ガ引受ケマシテモ、政府ノ
特殊借入金ニシマシテ、政府ハ其ノ民間ノ
讓受人カラ同額ノ金額ヲ納付セシメル、或
ハ場合ニ依リマシテハ、延納等ヲ認メテ行
ク、斯ウ云フ方法モ出來マス、サウ云フ方
法ガアリマスカラ、例ヘバ產業設備營團ニ
物ヲ賣リマシタ場合ハ、其ノ債權者ハ好ミ
ニ應ジマシテ、產業設備營團特殊借入金ニ
モ出來レバ、政府特殊借入金ニモ出來ル、
又所謂特殊預金ニモ出來ル、特殊金錢信託
ニモ出來ル、斯ウ云フヤウナ餘地ガアルノ
デアリマス、國民更生金庫ニ引受ケテ貰ッタ
場合ニハ國民厚生金庫特殊借入金、政府特
殊借入金、又ハ特殊預金ヤ、特殊信託ニ出來
ル、ソレカラ其ノ外ノ會社等ニ設備ヲ賣リマ
シタ場合ニハ、其ノ會社ノ特殊借入金ニモ出
來レバ、戰時金融金庫ノ特殊借入金ニモ出來
レバ、政府ノ特殊借入金ニモ出來ル、又特
殊銀行預金、特殊金錢信託デモ宜シイ、債權
者ノ設備ノ讓渡人ノ便宜ニ應ジテソレガ選擇
出來ルヤウニ致シテアルノデアリマス、尙
其ノ際ニ產業設備營團特殊借入金、國民更
生金庫特殊借入金、戰時金融金庫特殊借入
金又ハ其ノ外ノ債務者、設備ノ讓受人ノ
特殊借入金ノ場合ニ於キマシテハ、必要ニ
應ジテハ政府ガ其ノ支拂ノ元利保證ヲ致シ
マス、卽チ債權者ノ設備ノ讓渡人ノ權利ヲ
確實ナラシムル爲ニ、政府ガ保證ノ地位ニ
立ツ、斯ウ云フコトノ出來ルヤウニ致シテ
アリマス、次ニ斯カル債權ノ資金化ノコト
デアリマスルガ、前申上ゲマシタヤウナ其
ノ企業ノ從業者ニ對スル退職給與、納稅、
債務ノ辨濟、時局緊要產業へノ投資等債權
者ガ特ニ現金ヲ必要ト致シマスル場合ニ於
テハ、迅速確實ニ之ヲ資金化シ得ル方法ヲ
講ジテ居ルノデアリマズ、前申上ゲマシタ
政府ノ指定スル金融機關ニ、其ノ債權ヲ賣
ルコトモ出來マス、又擔保ニ供シテ金ヲ借
リルコトモ出來マス、期限前ノ償還ト云フ
コトモ場合ニ依ッテハ出來ル、斯ウ云フ風ナ
措置ヲ執ルコトニ致シテ居リマス、第三ハ
廢休止企業、之ヲ營ンデ居リマスル會社ガ
解散スルカシナイカト云フコトデアリマス
ルガ、解散ヲ致シマシテ、殘餘財產ノ分配
ノ機會ニ財產ノ分解散逸ガ起リマシテ、浮
動購買力ノ發生ノ機會ガ多イノデアリマス
ルカラ、之ヲ分散セシメザル爲、是等ノ債
權ヲ保有スルダケノ會社トシテ繼續セシメ
得ル途ヲ開イテアルノデアリマス、サウシ
テサウ云フ場合ニハ事業ハアリマセヌデ、
唯債權ノ利子ヲ取立テ、之ヲ株式配當ニ充
テレバ宜イト云フコトデアリマスカラ、事
務員ヲ抱ヘ、事務所ヲ持ッテ居リマスルナド
ト云フコトハ不經濟デアリマスカラ、信託
會社ニ一括シテ其ノ事務ヲ賴ンデ極メテ少
イ經費デ、換言スレバ大部分配當ニ充テ得
ルト云フヤウナ措置モ出來ルヤウニ致シ、
ソレカラ又此ノ際ニ堅實ナル經營ヲ致シテ
居リマスル會社ハ、大〓工場等ガ假ニ百萬
圓ト帳簿價格ガアリマスル場合ニハ今ノ
時價デ賣リマスト二倍ニモ三倍ニモナリマ
ス、ナッタダケデハ利益ガ普通ナラ出マス
ガ、此ノ利益ニ直グ稅ヲ課シマスルコトハ、
非常ニ會社トシテ困ル譯デアリマス、是等
ノコトハ致シマセヌ、ソレカラ又堅實ナル
會社ハサウ云フ風ニソコニハ實ニ大キナ利
益ガ實質上出マシテ、割合ニ帳簿價格ニ比
較シマシテ、大キナ債權ヲ得、相當ナ收入
ガアルノデアリマスルガ、中ニハサウ行カ
ナイ會社モアリマセウ、ソレ等ガ急激ニ配
當ガ減リマスト云フコトモ困ルコトデアリ
マスルカラ、成ルベクソレヲ緩和スル爲ニ、
全ク事業ヲ致シマセス會社デアレバ、確實
ナル債權ヲ持ッテ居ルノデアリマスルカラ、
法定積立金ヲ場合ニ依レバ命令致シテモ宜
イ、ソレカラ一時ニ事業ヲ廢メテ、從業員
ニ退職手當等ヲ澤山出シマスト、一時ニ損
ガ餘計立チマスルガ、是等ハ今囘ノ特別ノ
企業整備ト云フコトデ起ルノデアリマスル
カラ、其ノ際ハ何期ニデモ分ケテ整備ヲシ
テモ宜イノデアリマス、サウ云フ風ナ經理
上ノ特例モ認メ得ル、斯ウ云フコトニ致サ
ムト致スモノデアリマス、其ノ外會社ト會
社ガ合同致シマスルヤウナ場合ニ、現金支
拂ヲ避ケマシテ株デ渡ス、其ノ爲ニハ一方
ガ增資ヲシナケレバナリマセヌ、サウ云フ
增資命令ヲ出スコトモ出來マス、又設備等
ノ讓渡ニ際シマシテハ、ソコニ既存ノ債權
債務擔保等ノ關係ガアリマシテ、是等ヲ處
置スル必要モアルカモ知レマセヌ、サウ云
フ場合ニハ政府ヨリ指示ヲ爲シ得ルコトニ
致シテ居リマス、指示ヲ致シマシテソレニ
從ヒマシタ結果損失ガ起レバ、之ヲ補償ス
ルト云フ規定モ設ケテアルノデアリマス、
第四ニ、只今申上ゲマシタコトニモ關聯致
シア居リマスルガ、租稅ノ減免デゴザイマ
ス、是ハ今臨時租稅措置法ニ依リマシテ、
相當租稅上各種ノ減免措置ヲ講ジテ居ルノ
デアリマシテ、ソレハ今囘ノ企業整備ニモ
適用ヲ受ケルノデアリマスルガ、從來ノ規
定ダケデハ不十分デアリマスルノデ、本法
案ノ附則ニ於キマシテ改正ヲ致シマシテ、
租稅上過重ナル負擔ヲ避ケルコトニ致シテ
居リマス、極ク搔摘ンデ申上ゲマスレバ、
第一ハ政府特殊借入金ノ利子ニ付キマシテ
ハ、其ノ性賢ニ顧ミ分類所得稅ヲ輕減シ、
所得稅法及法人稅法ニ依ル所得ノ計算ニ關
シ特例ヲ設クルコトデアリマス、第二ハ廢
休止會社ニ對シマシテ、事情ニ依リ法人稅
營業稅等ヲ輕減シ得ルコトデアリマス、第
五ハ財政上ノ措置ニ關スルモノデアリマス、
企業ノ整備ハ設備營業等ノ存廢讓渡ヲ國家
的要請ニ基イテ行ハレルモノデアリマスル
カラ、之ガ實施ニ當リマシテハ、其ノ際生
ズル所ノ當事者ノ利害得失ヲ、國家ノ負擔
ニ於テ調整スルコトガ必要デアリマス、仍
テ政府ガ廢休止ヲシマシタ事業ニ關スル設備
權利其ノ他ノ資產ノ保有、又ハ買取ヲナス者
ニ對シ、因ッテ蒙リマシタ損失ヲ補償スルコ
トトシ、關係者ヲシテ安ンジテ國家ノ要請ニ
應ジテ企業整備ノ促進ヲ圖リタイト存ズルノ
デアリマス、以上ノ外本法案ニ於キマシテハ、本
法施行ニ關スル重要事項ニ付、政府ノ諮問
ニ應ジマス爲ニ諮問委員會ヲ、又企業整備
ニ關シ國民更生金庫又ハ產業設備營團ガ買
ヒ受クル設備ノ評價ニ關シ評價委員會ヲ設
クルコトヲ規定ヲ致シテ居リマス、大體以
上ガ要旨デアリマスルガ、本法案ノ實施運
營ニ當リマシテハ、全體ノ企業整備ノ中、
特ニ早急之ヲ實行スル必要ノモノモアリマ
ス、又整備ニ關係スル當事者ハ、國家的要
請ニ基キマシテ從來ノ事業ヲ廢休止スルト
カ、設備ヲ手渡ストカ云フ風ナ、極メテ同
情スベキ立場ニモ在ルノデアリ、マス、是等
ノ點ヲ考ヘマシテ、關係當事者ノ間ニ不當
ノ損失ガナイヤウニ、國家ニ於テ之ヲ負擔
シテ、損益ヲ適正ナラシムルト云フコトニ
努メルコトガ第一點デアリマス、又第二點
トシマシテハ、相當ニ複雜ナ場合モアリマ
スケレドモ、出來ルダケ手續ヲ簡單ニ致シ
マシテ、迅速簡易ニ物事ガ運ブヤウニ努メ
ルト云フコトデアリマス、又第三ニハ先程
申上ゲマシタ所謂債務證書ノ資金化ヲ確實
ニ、成ルベク容易迅速ニセシムルト云フコ
トデアリマス、其ノ外ニ成ルベク關係者ノ
利便ヲ圖ルコトニ努メル考ヘデ居ルノデア
リマス、サウ云フ風ニ考ヘルノデアリマス
ガ、併シ新シイ方法ニ依リマシテヤルコト
デアリマスカラ、當事者ニ於テモ相當不便
ガアルト云フコトモ十分豫想サレマス、又
金融機關等ニ於キマシテモ、利益ナクシテ
事務ガナカ〓〓繁忙ニナルト云フコトモ十
分ニ考ヘラレルノデアリマスガ、併シ今囘
ノ企業整備ガ勝チ拔ク爲ニ絕對ニ必要デア
リ、同時ニ是カラ生ズル浮動購買力ノ防止
ト云フコトガ、戰時經濟ノ秩序維持、卽チ
勝チ拔ク生產力ノ基盤ニナル、其ノ基盤ヲ
崩サヌト云フ必要カラ出ルノデアリマス、
戰時上ノ絕對要請カラ出ルコトデアリマス
カラ、關係者方面ニ十分ニ其ノ趣旨ガ徹底
シ、又方法モ徹底スルヤウニ努メマシテ、
又關係者方面ニ於テモ能ク其ノ了解ヲセラ
レマシテ、國民ノ協力ノ上ニ之ヲ迅速圓滿
ニ施行シテ行キタイ、斯ウ云フ考ヘ方デ居
リマスル次第デアリマス、以上ヲ以チマシ
テ一應ノ御說明ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=2
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003・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 續イテ商工
大臣カラ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=3
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004・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 國民更生金庫法中
改正法律案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマ
ス、中小商工業ノ整備ニ付キマシテハ、從
來カラ重點主義ニ依ル生產增强、物資配給
ノ圓滑適正化ヲ目途トシ、併セテ緊要產業
部門ニ於ケル勞務ノ充足ニ資スル方針ノ下
ニ、之ヲ實施シテ參ッタノデアリマスガ、
大東亞戰爭ノ現段階ニ於ケル情勢ニ鑑ミマ
シテ、國民生活ノ確保ヲ期シツヽ皇國ノ綜
合戰力、就中直接戰力ヲ急速且最高度ニ增
强スル目的ヲ以チマシテ、從來ノ企業整備
ノ趣旨ヲ擴充致シ、新タナル構想ノ下ニ企
業整備ヲ更ニ强力且徹底的ニ推進スルコト
ハ、誠ニ刻下ノ急務ト存ズルノデアリマス
ガ、此ノ企業ノ整備ニ伴ッテ發生スル轉廢
業者ニ對シマシテハ、從來政府ハ國民更
生金庫、國民職業指導所、國民勤勞練訓
所等ノ諸施設ノ活用、殘存業者ノ醵出ス
ル共助金ニ對スル國庫ノ補助等ノ措置ヲ
講ジマシテ、銳意轉廢業ノ圓滑ナル推移ニ
努力シ來ッタノデアリマス、就中此ノ國民更
生金庫ハ政府ノ轉廢業ノ施設ノ中其ノ中心
トナルモノデアリマシテ、最近ノ企業整備
ノ進捗ニ伴ヒマシテ、國民更生金庫ヲ利用
セムトスル者ハ著シク增加シツヽアルノデ
アリマスガ、今後政府ニ於テ戰力增强ヲ目
途トスル此ノ企業整備ヲ强力ニ實施致シマ
スレバ、國民更生金庫ノ利用ハ飛躍的ニ增
加スルモノト豫想セラレルノデアリマス、
卽チ國民更生金庫ニ對スル資產引受、共助
資金借入等ノ申込ハ約二十億圓ノ多額ニ上
ル見込デアリマス、勿論一面ニ於キマシテ、
企業整備上ノ資金臨時措置ニ依リ浮動化防
止ヲ講ズル見込デアリマスガ、現在ノ更生
債劵發行餘力ハ約三億三千萬圓ニ過ギマセ
スノデ、此ノ際債劵發行餘力ヲ擴充スル爲、
現在ノ資本金五千萬圓ニ對シマシテ、更に
五千萬圓ヲ增加シ、其ノ全額ヲ政府出資ト
致シ、以テ資金ノ充實ヲ圖ラムトスル次第
デアリマス、以上申述ベタ理由ニ依リマシ
テ、本案ヲ提出シタ次第デアリマスガ、何
卒御審議ノ上速カニ協贊ヲ與ヘラレムコト
ヲ切望スル次第デアリマス、尙此ノ際御審
議ノ御參考ニ資シマス爲、今囘政府ニ於
テ企圖致シテ居リマスル戰力增强企業整備
ニ關スル趣旨、對策、善後措置等ノ極ク搔
摘ンダ〓要ヲ御說明申上ゲタイト存ジマ
ス、御承知ノ如ク企業整備ノ問題ハ、從來
常ニ戰時經濟ノ要求ニ卽應シツヽ逐次實施
セラレテ參リマシテ、略〓其ノ成果ヲ擧ゲテ
來タノデアリマスガ、何分ニモ從來ノ企業
整備ノ直接ノ對象ハ、所謂平和產業ノ整理、
中小企業ノ整備ト云フコトニ重點ガアリ、
從ッテ戰力增强ノ上ニ於キマシテモ、自然間
接的、消極的ノ感ヲ免レナカッタノデアリ
マス、併シナガラ時局ノ進展ハ、一面ニ於
テ勞務ノ供出、金屬類ノ囘收、工場設備ノ
時局的用途ヘノ轉用ト云フヤヴナ要請ヲ
益〓大ナラシメツヽアリマスト共ニ、他面
所謂重點產業ニ付キマシテ、特ニ其ノ生產增
强ヲ圖ル爲、各種生產諸要素ヲ集約シテ、
以テ戰時物資ノ生產ヲ確保スルノ必要ニ迫
ラレテ參ッテ居ルノデアリマス、從ヒマシ
テ今後ニ於キマシテハ、企業整備ノ進メ方
モ、非重點的ナ企業ノ消極的整備ニ依ッテ供
出セラルベキ色々ノ生產要素ト云フモノ
ヲ、擧ゲテ軍需其ノ他ノ重點部門ニ集約ス
ルコトト並行致シマシテ、他面此ノ重點生產
部門自體ニ於キマシテモ企業系列ノ調整强
化生產機能ノ刷新向上ヲ圖ルコトニ重點
ヲ置イテ、整備ヲ圖ッテ行ク必要ガアルト
思フノデアリマス、之ヲ要約致シマスナラ
バ前者ハマダ戰力化セラレテ居ラナイ產
業ノ力ヲ直接戰力化セムトスルモノデア
リ、後者ハ右ニ依リマシテ充實セラルベキ
重要部門ヲ更ニ組織化シ、其ノ能率ヲ向上
シ、以テ我ガ國ノ戰力ヲ最高度ニ發揮セシ
メムトスル意味ヲ持ツモノデアリマシテ、
之ガ爲ニハ、唯單ニ中小企業ノミナラズ大
企業ニ付キマシテモ、此ノ際積極的ニ整備
ヲ進ムルノ必要ガアルト考ヘラレルノデア
リマス、今囘政府ノ決定致シマシタ戰力增
强企業整備要綱ノ趣旨ハ畢竟スルニ此處ニ
存スルノデアリマシテ、政府ト致シマシテ
ハ右ノ如キ趣旨ノ徹底ニ依リ、國民各自ノ
向フベキ方向ヲ明確ニ致シマシテ、國民各
自ガ各〓其ノ職域ニ於キマシテ、戰力增强ノ
爲ニ明朗ナル御奉公ノ實ヲ擧ゲ得ルコトヲ
深ク期シテ居ル次第デアリマス、今次ノ企
業整備ノ進メ方カラ致シマシテ、工業部門
ニ付キマシテハ次ノ三種ニ區分シテ之ヲ實
施シテ參ル考デアリマス、卽チ第一種工業
部門、是ハ例ヘテ申シマスナラバ纖維工業
ノ部門ノ相當多數ノモノデアルトカ、或ハ
一部ノ化學工業部門等ノ如ク、勞務ノ供
出、金屬類ノ囘收又ハ工場及設備ノ轉用ニ
寄與スルコトガ大ナル工業ノ部門デアリマ
シテ、之ニ對シマシテハ積極的ニ整備ヲ此
ノ際推進セシムルコトト致シマシテ、必要
ガアレバ勞務調整令、金屬類囘收令、企業
整備令等ノ發動ヲモ行ヒマシテ、急速ニ確
實ニ其ノ整備ヲ完了セムトスルモノデアリ
マス、此ノ部門ニ於キマシテハ操業工場、
保有工場、轉用工場、廢棄工場、此ノ四ツ
ニ區分シテ整備セムトスルモノデアリマシ
テ、操業工場ニ付キマシテハ一面物動計畫、
立地條件等ヲ考慮致シマシテ、一定ノ操業
工場ヲ選定シテ、之ガ生產ヲ確保セムトス
ルモノデアリマスルガ、能フ限リ分散配置
ヲ圖リタイト考ヘテ居リマス、保有工場ハ
空襲其ノ他ノ災害、南方大陸ヘノ移駐、物
資關係ノ變動等ヲ考慮シテ一定數ノ工場ヲ
保有セムトスルモノデアリマス、之ガ保有
ニ付キマシテハ出來ルダケ當該業者ノ自力
デ保有セシムルノガ原則デアリマスルガ、
必要ニ應ジ適當ナル國庫補助ヲ爲シ、或ハ
產業設備營團ヲシテ買取保有セシムル方針
デアリマス、次ニ軍需工業ヘノ轉用ヲ適當
トスル工場ニ付キマシテハ、之ガ緊要方面
ヘノ轉換利用ヲ適正ナラシムル爲特ニ轉用
協議會ヲ設ケマシテ、之ガ議ヲ經テ適正圓
滑ナル有效利用ヲ期シタイト考ヘテ居リマ
ス、斯クシテ操業、保有、轉用ノ何レニモ
該當シナイ工場ハ、之ヲ廢棄工場ト決定致
シマシテ、原則トシテ屑化ノ上、焦眉ノ急
務タル鐵鋼增產ニ資セムトスルモノデアリ
マス、第二種工業部門ハ、例ヘバ航空機ノ
製作ノ工業、或ハ造船工業其ノ他ノ所謂超
重點產業ト稱セラレルヤウナ工業、又機械
工業ノ如ク、今後戰力增强ノ見地カラ擴充
ヲ要スベキ產業デアリマシテ、此ノ部門ニ
於キマシテハ益〓其ノ生產能率ヲ向上シテ、
生產ノ增强ニ邁進シナケレバナラナイノデ
ゴザイマシテ、而モ現狀ハ其ノ國家ノ要請
ニ十分適スルヤウナ組織、生產機能等ヲ發
揮致サナイ部分モアリマスノデ、之ニ對シ
マシテハ企業系列ノ組織化、生產能率ノ刷
新向上等ニ依ッテ、其ノ生產性ヲ最大限
ニ〓揚セシメムトスルモノデアリマス、
卽チ親工場子工場ノ關係ヲ一層有機的ニ
又定常的ニナラシムルヤウ調整ヲ致シ、
又製品ノ專門化等ヲ圖ッテ技術ノ向上、
高能率ノ發揮ニ資スル等、全體トシテノ
有機的ナル生產性ノ〓揚ヲ圖ラムトスルモ
ノデアリマス、此ノ部門ニ付キマシテモ
金屬類囘收ノ見地カラハ、或ハ不良ノ設備
デアルトカ、遊休ノ設備デアルトカ云フヤ
ウナモノモ、勿論此ノ部門ニモアルノデア
リマシテ、サウ云フモノニ付キマシテハ之
ヲ囘收ヲ圖ル豫定デアリマス、第三種工業
部門ハ右ノ第一種、第二種以外ノ工業部門、
例ヘバ日用品工業部門等ノ如キモノデアリ
マシテ、之ガ整備ハ〓ネ從前ヤッテ參リマシ
タ企業整備ノ如ク指導奬勵ニ依ッテ此ノ整
備ヲ實施致シテ參リタイト思ヒマス、唯或
種ノモノニ付キマシテハ、金屬囘收ノ必要
カラ此ノ金屬囘收令等ノ適用ヲ見ルモノモ
アルカトモ思ヒマスガ、大體政府ノ指導勸
奬ニ依リ整備ヲ進メテ參リタイト考ヘテ居
リマス、次ニ配給部門ニ付キマシテモ、以
上ノ如キ工業部門ノ整備ニ卽應致シマシテ、
原材料及資材製品ノ合理的配給ヲ目途ト致
シマシテ、其ノ機能發揮ヲ强化スル爲ニ必
要ナ調整改善ヲ加ヘル方針デアリマス、特
ニ小賣業ノ整備ニ付キマシテハ、今後モ曩
ニ決定致シマシタ小賣業整備要綱ニ基イテ
之ヲ行ッテ行キタイト存ジテ居リマス、此ノ
整備ヲスル業種ニ付キマシテハ、昨年第一
種所謂第一次指定業種トシテ十幾ツカノ
モノヲ指定致シテ、之ガ整備ヲ致シテ參リ、
大體三月末ヲ以テ完了致シタノデアリマス
ルガ、今後ニ於キマシテハ特殊ノモノヲ除
クノ外、政府ニ於キマシテ特ニ斯ウ云フ業
種ヲ指定スルト云フヤウナ方法ニ依ラズシ
テ、地方廳ニ於テ必要ト認ムルモノ、又ハ
業者ノ團體ニ於キマシテ自發的ニ整備シタ
イト云フ希望ニ基イテ、地方廳等ニ於テ適
當ト認メタモノニ付キマシテハ、中央ノ
承認ヲ受ケテ逐次整備ヲ實施スルト云フ進
ミ方ニ行キタイト考へテ居リマス、以上企
業整備ノ進捗ニ伴ヒマシテ、之ニ依リ生ズ
ベキ轉廢業者ニ對シマシテハ、先刻御說明
申上ゲマシタ國民更生金庫ノ增資ヲ行ヒマ
シテ、其ノ資金的基礎ヲ十分ナラシメル外、
更ニ金庫ノ業務ノ充實ヲ圖リマシテ、資產
ノ引受、資金ノ貸付等ニ、圓滑適正ヲ期セ
シメテ參リタイト考へテ居リマス、尙又相
當多數ニ上ルベキ遊休設備ニ付キマシテハ、
產業設備營團ニ依ル之ガ買取ヲ爲シ、重點
部門へ轉用致シ、又ハ屑金屬化スルコトヲ
圖リマス外、一部必要ナ部分ニ付キマシテ
ハ營團ニ於テ之ヲ買取リ保有ヲナサシメル
考デアリマス、又轉廢業者ノ職業轉換、從
業員ノ勞務再配置等ニ付キマシテハ、特に
第一種工業部門ニ於キマシテハ、勞務調整
令ニ依リマシテ集團的ニ計畫的ニ配置轉換
ヲ爲スノ措置ヲ執リマスル外、當面ノ生活
援護ノ途ヲ講ジ、鍊成ノ爲ニハ國民勤勞訓
練所ヲ活用致シマシテ、必要ニ應ジテ其ノ
設備等モ之ヲ擴充致シマスシ、又勤勞報國
隊ノ結成指導ヲ爲ス等、專ラ圓滑ナル勞務
轉換ノ實現ヲ期シテ參リタイト考ヘテ居リ
さっ、次ニ殘存同業者カラ此ノ轉廢業者ニ
交付スル所謂實績補償ノ共助金ニ付キマシ
テハ是ハ所謂同業共助ノ精神カラ從來行
ハレテ參ッテ來タノデアリマシテ、今後ニ於
キマシテモ此ノ精神ニ基キマシテ、此ノ補
償共助ヲ爲シ得ル力ヲ持ッテ居ル者ニ於キ
マシテハ、出來ルダケ轉廢業者ニ對シテ此
ノ共助金ヲ出シテ行クヤウニ指導シテ參リ
タイト思ヒマスガ、併シナガラ此ノ殘存業
者ニ其ノ負擔ヲスル能力ガ無イ、又負擔ガ
著シク過重ニナリマシテ、將來其ノ業ノ適
正ナ運營ガ出來ナイト云フヤウナモノニ對
シマシテハ、寧ロ之ガ負擔ヲ避ケシムルノ
ヲ適當ト考ヘマスノデ、殘存業者ノ負擔能
力ト云フモノヲ勘案致シマシテ、之ヲ限度
トシテ或種ノ共助金ヲ支出セシムルノヲ原
則ト考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ代リニ
轉廢業者ノ生活援護ノ爲ニ支出致シマス所
ノ共助金、是ハ從來半額ハ國庫ガ補助スル
建前デ、一人當リ六百圓、其ノ半分ノ三百
圓ハ國庫ガ補助シ後ノ半分ヲ同業者ニ於
テ負擔シテ參ッタノデアリマスガ、此ノ
從來ノ建前ヲ更ニ一步ヲ進メマシテ、今
後ハ必要ニ應ジマシテハ六百圓ノ全額迄
國庫ガ補助ヲ爲スノ途ヲ開クコトト致シ
タノデアリマス、是ハ此ノ種ノ共助金ノ
性質ニ鑑ミマシテ、殘存業者ニ於テ共助能
力ノ有ルト無イ、或ハ乏シイト然ラザルト
ヲ問ハズ、苟モ此ノ轉廢業者ニ對スル生活
保障ノ意味デ交付スル共助金デアリマスカ
ラシテ、斯ク國庫ガ必要アレバ金額ノ負擔
ヲ辭セナイ建前ニ致シタノデアリマス、尙
政府ガ此ノ企業整備ヲ進ムルニ當リマシテ、
資金ノ關係ニ付テ種々考慮スベキ事柄ニ關
シマシテハ、先程大藏大臣ヨリ詳細ノ說明
ガアッタ通リデアリマス、以上申述ベマシタ
如ク、今次ノ此ノ戰力增强企業整備ノ實施
ニ當リマシテハ、政府ト致シマシテモ此ノ
時局ニ對應致シマシテ、此ノ整備ノ必要デ
アル、又是ガ迅速ニ圓滑ニ實行サレルト云
フコトニ付テ、十分ナ決意ト責任トヲ明カ
ニ致シマシテ、此ノ趣旨ノ徹底ヲ期シ、以テ
一億國民ノ戰爭完遂ニ對スル熱意ガ結集セ
ラレマシテ、今次ノ企業整備ノ目的ヲ迅速
ニ且圓滑ニ達成シテ、以テ戰力ノ急速ナ
ル增强ニ資シ得マスルヤウ努力ヲ致シテ居
ルノデアリマスカラ、ドウカ此ノ趣旨ニ於
キマシテ、皆樣ノ深甚ナル御支援ヲ切望シ
テ已マナイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=4
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005・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 時間ノ都合
デ十二時半迄、此ノ委員會ヲ開キタイト思
ヒマス、從ッテ此ノ際御質問ノゴザイマス御
方ハ御質疑ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=5
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006・三井清一郎
○三井〓一郞君 チヨット議事進行ニ付キ
マシテ、此ノ企業整備ノ問題ハ非常ニ範圍
ガ廣ウゴザイマス、政府當局モ矢張リ厚生
大臣、企畫院總裁若シクハ農林大臣或ハ內
務大臣ト云フヤウニ、關係スル所ガ質疑應
答ノ結果アラウト思ヒマス、デ、少クモ企畫院
總裁及厚生大臣ノ御出席ヲ願フト云フコト
ガ便宜デハナイカ、議事ノ進行ヲ早カラシ
メル所以デハナイカト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=6
-
007・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 必要ニ應ジ
マシテ何時デモオイデヲ願ヒマス、今私申
シマシタノハ、此ノ儘十二時半迄、兩大臣
ニ對スル御質疑ガゴザイマスナラバ此ノ儘
續行シテ、少シデモ餘計ノ時間ヲ審議ニ使
ヒタイト云フ意味デゴザイマス、尙議事ノ
進行ニ付テ申上ゲマスガ、出來マスレバ午
後ハ一時半カラ開會致シタイノデゴザイマ
スガ、今御意見モゴザイマシタヤウニ、
時半カラハ豫算總會ニ於テ祕密會ガ開カレ
マスノデ、或ハ關係大臣ノ御出席ガ午後ハ
ムヅカシイカトモ思ヒマスカラ、如何致シ
マセウカ、御出席ノ出來得マシタ大臣ニ對
スル御質問ダケ始メマスカ、或ハ適當ナ時
機迄待チマスカ、是モ御諮リ致シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=7
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008・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 非常ニ時間ガ切詰メラレテ
居ルノデアリマスカラ、三十分間デモ出席
ヲ得テ居ル大臣ニ對シテ質問ヲ致シタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=8
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009・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) デハ御質問
ガゴザイマシタラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=9
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010・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 豫算總會デ總理大臣初メ他
ノ大臣ニ御質問シタノデアリマスガ、商工
大臣ニハ此ノ委員會デ御質問出來ルト思ッテ
保留シテ置キマシノデ、同ジヤウナ質問ガ
アルカモ知レマセヌ、此ノ工業以外ノ他ノ
產業、例ヘバ農業方面其ノ他ノ方面ハ、今
囘ハ含マレナイノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=10
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011・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 今囘ノ整備ノ對象
ト考ヘテ居リマスノハ、工業部門全體ト配
給部門ノ全體ヲ含ンデ居ルノデアリマス、
純粹ノ原始產業等ハ考へテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=11
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012・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 此ノ整備ノ實行ニ當ッテ、
如何ナル種類ノ委員會ヲ御設ケニナル豫定
デアリマスカ、先程轉業ニ對スル協議會ノ
コトハ御話ニナリマシタガ、其ノ外特ニ委
員會、詰リ官民ヲ含メタ委員會ノ或ハ協議
會ヲ御作リニナル豫定デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=12
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013・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 轉業ニ付キマシテ
ハ、先程申述ベマシタ如ク轉業協議會ト
云フモノヲ作リマシテ、各省ノ關係等ヲ十
分ニ調整シテ參ル積リデアリマス、更ニ金
屬ノ囘收ニ付キマシテハ、金屬囘收ニ關ス
ル實際上ノ事務ヲ的確ニ實際ニ合フヤウニ
指導致シマス爲ニ、一二ノ委員會ヲ作ル
考デアリマス、尙此ノ法律ノ建前カラハ
先程大藏大臣カラ御說明ガアリマシタ通リ、
アノ企業整備資金措置ニ關シテノ運用ヲ圓
滑ナラシムル爲ニ委員會ガ置カレルト云フ
ノデアリマスノデ、又更生金庫、產業設備
營團ガ持ッテ居リマスル財產ノ許可等ニ付
キマシテハ、從來モ委員會ガアッタノデア
リマスルガ、更ニ法律ニ基イテ一層之ヲ强
力ナ委員會ト致ス考デアリマス、先ヅ大體
サウ云フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=13
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014・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 三十五億圓ニ相當スル財產
ト數十萬人ノ人ヲ移動スル極メテ重大ナ措
置デアリマスルノデ、其ノ影響ノ極メテ重
大ナコトハ申上ゲル迄モナイコトデアリマ
ス、從來支那事變以來、各種ノ新體制要綱
ニ依ル施設ガ行ハレマシテ、殊ニ經濟方面
ニ於テ多クノ施設ガ實行サレタノデアリマ
スルガ、中ニハ計畫通リニ行カナイモノモア
リ、又事情ノ變遷ニ伴ウテ改廢ヲシナケレバ
ナラナイモノモアリマシタコトハ、御承知ノ通
リデアリマス、今囘ノ如キ大規模ノ、而モ全財
產ヲ移動スルモノデアリ、又數十萬人ノ人ヲ
動カスノデアリマスカラ、是ガ事情ガ變ッタ
カラト言ッテ、急ニ又元ニ戾スト云フコトハ
容易ナコトデナイト思ヒマス、飽ク迄モ決
定シタ方針ニ依ッテ、力强ク官民協力シテ
推進シナケレバナラナイノデアリマスルカ
ラ、其ノ具體的方策ノ決定ニ當リマシテ
ハ、特ニ愼重ニ宜ク產業界其ノ他ノ實情ヲ
把握シテ計畫セネバナラヌト思ヒマス、サ
ウ云フ意味ニ於キマシテ、唯轉業協議會ダ
ケデハ物足ラナイヤウナ氣ガ致スノデアリ
マスガ、其ノ點ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=14
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015・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ御趣旨ハ
全ク御同感デアリマシテ、此ノ企業整備ヲ
行ッテ行クニ付キマシテハ、屢〓說明サレ
テ居ル如ク眞ニ官民一體協力シテ、有力ニ
又迅速ニ圓滑ニ施行シテ行カナケレバナラ
ナイ、此ノ意味ニ於キマシテ、業界其ノ他
民間ノ十分ナ協力ヲ得ルコトガ絕對ニ必要
デアリマス、御承知ノ如ク今日重要產業部
門ニ於キマシテハ、大體統制會ノ組織ガ完
備致シテ居リマシテ、此ノ整備ノ具體的方
法等ヲ決定致シマスニ付キマシテハ、統制
會ノ參畫ヲ認メテ參ル所存デアリマス、又
地方ニ於キマシテハ、此ノ前ノ議會ニ於キ
マシテ御協贊ヲ得マシタ商工經濟會ガ六月
一日ニ施行致シマシテ、近ク是ガ開始サレ
ル運ビニナッテ居リマスノデ、此ノ地方的
產業ノ整備ニ關スル具體的方策ニ付キマシ
テハ、此ノ商工經濟會ノ全面的ナ參畫ヲ期
待致シテ居リマス、尙此ノ出來上リマシタ
案ヲ實行スルニ當リマシテハ、先程申述ベ
マシタ如ク、出來ルダケ是ハ業界等ノ自發
的ナ協力ニ依ッテ實行ヲ致シテ行クコトガ
望マシイノデアリマス、唯已ムヲ得ザル場
合ニ於テハ、强權ノ發動モ其ノ目的ヲ達ス
ル上カラ行キマスト已ムヲ得ナイト申上ゲ
タノデアリマスガ、サウ云フ意味カラ致シ
マシテ、實行部面ニ於キマシテモ、是等ノ
統制會、其ノ他ノ外郭團體、商工經濟會等
ノ有力ナル團體ノ全面的協力ヲ得テ之ヲ實
施シテ行クト云フ考デアリマス、是等トノ
關係ハ別ニ委員會トカ云フヤウナ從來ノ形
式ニ依ラズシテ眞ニ政府ト常ニ表裏一體ヲ
爲シテ活動シテ行クト云フ風ニ、實際最近
御承知ノ通リ進ンデ參ッテ居リマス、是等
ニ付キマシテハ、十分ニ是等ノ機關ヲ利用
シテ、全面的ニ協力推進シ、官民一體之
ヲ實行シテ行キタイト、斯ウ考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=15
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016・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 此ノ數十萬人ノ平和產業、
其ノ他重點ナラザル產業ニ從事シテ居ッタ
者ヲ、重點產業ニ轉用スルノデアリマシテ、
サウシテ從來ノ生活ニ大シタ變動ヲ及ボサ
ナイヤウニ、言ヒ換ヘマスルト、給與、身
分等ニ付テ大シタ變動ヲ及ボサナイヤウニ、
新シイ工場ニ轉業サセルト云フコトデアリ
マスルカラ、ソレハ相當期間ノ後ハ兎モ角
モ、或期間ノ間ハ技能以上ノ賃金其ノ他ノ
給與ヲ支給スルコトニナルノデアリマス
ガ、勿論是ハ親心トシテハ適當ナコトト思
ヒマスルガ、新シク就職シタ工場ニ居ル在
來ノ從業員トノ關係ニ於テ、面白クナイ影
響ヲ來スノデハナイカ、ソレハ既ニ徵用工
ニ於テサウ云フ經驗ガアルノデアリマスル
ガ、今囘ハ極メテ大規模ノ移動デアリマス
ルカラ、徵用工ノ現狀ガ改善シタト云フヤ
ウナ程度デ濟マサレルモノデハナイノデア
リマス、是等ニ對シテ厚生大臣ノ御所見ハ
伺ヒマシタガ、商工大臣トシテドウ云フ風
ニ取扱ハレル御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=16
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017・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ點ハ實際
問題トシテ極メテ重要ナ、又之ガ調整ハ相
當困難ナ問題デアリマス、一面ニ於テ從來
カラ入ッテ居リマス工員等ニ支給スル給與
其ノ他ノ待遇ト、新タニ轉廢業ニ依ッテ出
テ參リマシタ人々ノ就職シテ受ケマス所ノ
給與トノ關係ヲ、唯技能若シクハ熟練ノ程
度ニ依ッテダケ調整ヲ致シマスト云フト、
ソレデ、工場內ニ於ケル關係ハ極メテ「スムー
ス」ナノデアリマスガ、同時ニ轉廢業ス
ル人ノ從來ノ生活若シクハ收入ガ激減致シ
マシテ、色々ナ生活上ノ問題ヲ生ズル虞モ
アルノデアリマス、之ニ對シマシテハ十分
國家トシテ、此ノ轉廢業ニ付テノ國家ノ要
請ニ付テノ轉身等カラ生ズル犠牲ヲ出來ル
ダケ少カラシメル意味ニ於テ、政府トシテ考
ヘナケレバナラナイノデアリマス、要スルニ
新タニ受入レル工場ト致シマシテハ、出來
得ル限リ溫イ氣持デ以テ此ノ轉廢業者ヲ迎
ヘナケレバナリマセヌケレドモ、併シ同時
ニ工場內ノ秩序ヲ維持シ、其ノ全體ノ生產性
又能率ヲ向上シテ行クト云フ爲ニハ、工場
內ニ於ケル調整ト云フコトガ何ト言ッテモ
主眼ニナルダラウト思ヒマス、サウシテ國
家トシテハ別箇ノ立場カラ、先程申上ゲマ
シタ如ク轉廢業ヲスル場合ニ於テハ、先ツ
生活ヲ保障スル爲ニ、年額六百圓ノモノヲ
與ヘル、其ノ外尙生活ニ困難ナ者ニ對シマ
シテハ、厚生省ノ關係カラ生活援護ニ關ス
ル給與ヲ行ヒマシテ、併セテ何シテ行クト
云フ方法ニ依リマシテ、實際ハ此ノ轉廢業
スル人々ガ生活ニ著シク困ルト云フヤウナ
事態ヲ生ゼシメナイト共ニ、工場內ニ於ケ
ル、矢張リ工場ノ秩序ト其ノ生產能率ヲ阻
害シナイヤウニ工場ノ調整ヲ講ジテ行クト
云フコトト、兩々竝ンデ行キタイト思フノ
デアリマス、或ハ先ニ居ル所ノ工員カラ見
レバ、工場デハ是ダケノ給料ヲ貰ッテ居ル
ガ、其ノ外ニ政府カラ更ニ「プラス」是ダケ
ノモノガアル、結局是ダケ多クナルト云フ
ヤウナ感ジハ、何處迄行ッテモ何カ解消シ切
レナイモノガアラウト思ヒマスガ、是ハドウシ
テモサウ云フ方法ニ依ッテヤルコトガ適當
デアッテ、唯工場ノ方ノ負擔ニ於テ賃金ヲ特
別ニ支拂フト云フヤウナ形デ行ク、事柄ハ
工場內ノ初メカラ居ル工員トノ釣合ナ
リ、ソレノ能率若シクハ精神的影響ト云フ
ヤウナモノカラ言フト、必ズシモソレハ
香シクナイノデアリマスガ、此ノ二本建ニ
シテ調整シテ行クト云フコトガ、宜シイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=17
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018・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 モウ一度ハッキリ伺ヒタイ
ガ、サウスルト詰リ技能ニ相當シナイ卽チ
過當ノ賃金支拂ハ、其ノ新シク雇入レタ工
場ガ負擔スルノデナシニ、國ガ負擔スルト
見テ宜インデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=18
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019・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 結局ハ先程申上ゲ
マシタ如ク、受入レル工場ニ於テモ、出
來ルダケ新タニ入ッテ來ル所ノ人ニ對シテ
出來ルダケノ援護ト、或ハ施設ハ講ジテ行
カナケレバナラナイト思ヒマスガ、賃金其
ノモノトシテ、能率、技術、技能以上ノモノ
ヲ支拂フ事柄ヲ工場ニ負擔セシメルコトハ
寧ロ適當デナイノデアッテ、ソレハ國家ノ施
設ナリ或ハ轉業ノ際ノ共助金等ノm方方ニ
依ッテ、之ヲ補ッテ行キタイト云フ考デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=19
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020・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 今度ノ此ノ第二種ニ屬スル
工業卽チ重點工業デアリマスガ、ソレノ系
列ヲ調整强化スルト云フコトハ、先程ノ御
說明ニ依リマスト、主トシテ親子工場ノ關
係ヲ調整スルト云フコトニアルヤウニ伺ッ
タノデアリマスガ、豫算委員會ニ於テ同ジ
ヤウナ關係ハ軍管理ノ工場ト他ノ例ヘバ商
工省ノ關係、鐵道省ノ關係、遞信省ノ關係
ノヤウナ工場間ニ於テモ、有無相通ジ長短
相補ッテ、物ト人ト時ノ無駄ヲ省クコトヲ
シテ行クコトガ必要デアルト云フコトヲ申
シマシタ所、兩軍部大臣トモ其ノ方針デ進
メテ居ルト云フ御答デアリマシタ、具體的
ニ申シマスト、ドウ云フ風ニ取扱ッテ居ラレ
マスカ、今囘ノ企業整備ニ依ッテ更ニ其ノ關
係ヲ强化スル爲ニ、ドンナコトヲサレヨウ
トシテ居ルノデアリマスカ、商工大臣トシ
テ御考ニナッテ居ルコトヲ承リタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=20
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021・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 今囘ノ整備ニ付キ
マシテハ、所謂第二種工業部門ノ生產性ヲ
〓揚スルト云フコトハ、非常ニ重要ナ點デ
アリマス、而モ第二種工業部門ト稱シマス
モノハ、直接戰力ニ關係ノアル部門デアリ
マスカラ、御話ノ如ク軍管理工場ニナッテ居
リマスモノ、又ハ軍ノ利用工場、軍管理工
場ト云フ程度デハアリマセヌガ、所謂軍利
用工場或ハ軍ノ監督工場ト云フ風ノ、色々
軍ノ方カラハ非常ニ關係ノ深イ部門ガ少ク
ナイノデアリマス、而モ是等ニ於ケル生產
性ガ〓揚セラレルト云フコトハ、此ノ時局、
此ノ戰局カラ申シマシテ最モ必要ナ緊急ナ
コトデアラウト思フノデアリマス、從ヒマ
シテ今囘ノ企業整備ヲ行フニ付キマシテモ、
陸海軍共ニ此ノ方針デ以テ是等ノ軍管理工
場或ハ監督工場、利用工場ヲ通ジテ、是ガ
合理化ヲ圖リ、整備ヲ進メルト云フコトニ對
シマシテハ、最モ强イ熱意ヲ披瀝セラレテ居ル
ノデアリマス、又我々當然サウナケレバナラヌ
コトト思ヒマス、唯軍管理工場ニ對シマシテハ、
御承知ノ通リ是ハ軍部大臣ノ直接ニ管理セラ
レテ居ル所デアリマシテ、商工大臣ノ職掌ノ
及バナイ範圍デアル、併シナガラ監督工場
利用工場等ニ付キマシテハ、軍ガ之ヲ利用
セラレルト同時ニ、一般工業ト致シマシテ、
商工大臣ノ方ニ於キマシテ世話ヲシナケレ
バナラヌ部門ナノデアリマス、〃從ヒマシテ
此ノ利用工場等ノ整備ニ付キマシテハ、此
ノ方針ニアリマス通リ系列ノ整備、特ニ親
子ノ關係、下請ノ關係等ヲ十分ニ整備シ、
又原材料ノ入手ノ關係等ニ付キマシテモ十
分ニ之ヲ計畫的ニ爲シテ行ク積リデアリマ
ス、併シナガラ是ハ多クハ軍ノ利用工場ト
云フモノハ、直接軍ガ利用サレテ居ル場合
モアリマスシ、軍管理工場ガ利用シテ居ル
場合モアリマシテ、結局軍部大臣ノ所管セ
ラレテ居ル所ニ結付ク譯デアリマス、從ヒ
マシテ是等ノ整備ヲ圖ツテ參リマスニ付キ
マシテハ、軍部トノ間ニ十分緊密ナ連繫ヲ
執リ、十分軍管理工場其ノ他軍ニ於ケル要
請ト云フモノガ十分ニ滿足出來ルヤウニ
之ガ整備サレテ行カナケレバナリマセヌ
シ、又實際ノ問題トシテ軍ノ協力ナクシテ
是等ノ企業ノ整備ハ私ハ出來ナイト思ヒマ
ス、從ヒマシテ此ノ基本要綱ガ徹底セラレ
ルニ付キマシテモ、是等ノ點ニ關シマシテ
ハ其ノ時局ノ現段階ニ卽應致シマシテ、陸
海軍、商工省、企畫院等ノ關係ノ間ニハ隔
意ノナイ協議ガ進メラレテ來テ居リマスシ、
將來ノコトニ付キマシテモ十分ナ連繫ヲ取
ツテ之ガ實現ヲ圖ッテ行ク考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=21
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022・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 商工大臣ハ能ク御存ジノコ
トト思ヒマスガ、工業界ニ於キマシテハ、
近頃軍ノ管理致シテ居ラレル工場トカ、又
其ノ下請ニナリタガルノデス、サウシテソ
レ等ノ者ハサウ云フ直接ノ關係ノナイ方面
ニ向ッテハ、自分ノ所ハ其ノ資材ニ付テハ
チットモ心配シナイ、軍ガ總テヤッテ吳レルカ
ラト云フヤウニ、非常ニ心配ナシニ仕事ヲ
シテ居ルト云フ風ナコトヲ言ヒ觸ラスノモ
アリマスノデ、我モ我モ軍ノ關係ノ工場ニ
ナリタガル、之ヲ半面カラ申シマスト軍ガ
管理シテ居ラレル工場ハ、其ノ他ノ工場ヨ
リモ樂ナ氣持デ仕事シテ居ル、斯ウ云フ風
ニ感ゼラレルノデアリマス、サウ云フヤウ
ナ關係ヲ其ノ儘ニ殘スト云フコトハ、生產
性〓揚ノ上カラモ極メテ有害デアルト思ヒ
ドン、今度ノヤウナ企業整備ヲサレマシテ
モ、從來ノヤウナ心持ガ軍管理ノ工場トノ
間ニ殘ッテ居リマスト、益〓面白カラザル結
果ガ出ルノデハナイカト思フノデアリマス、
此ノ際只今仰セラレタヤウニ積極的ニ此ノ
關係ヲ是正スルコトニ御配慮ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス、ソレカラ大藏大臣ニ伺
ヒタイノデスガ、封鎖資金ヲ必要ナ場合ニ
ハ現金ニ資金化スル用意ハアルト云フコト
ヲ御漏シニナッテ居リマスガ、ソレニモ自ラ
限度ガアルト思ヒマス、大體ドウ云フ風ナ
御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 是ハ現金化致シ
マス場合ハ、其ノ使ヒ途ニ依リマシテ決定
ヲ致シタイト思ヒマス、先ヅ其ノ會社ガ他
ニ流動資金等ガ上ッテ居リマセヌ場合ニ差
シ向キ從業者ニ退職資金ヲヤラナケレバナ
ラヌ、其ノ額ハ適當ナル額ハ全部認メル積
リデ居リマス、ソレカラ又現ニ資金ナクシ
テ過去ノ納稅ガ來テ居ル、之モ認メル、ソ
レカラ多クハ債務ノ償還ガ多イノデアリマ
スガ、設備ヲ作ル爲ニ色々銀行カラ金ヲ借
リテ居リマス、中ニハ社債ヲ返スト云プモ
ノハ借金ヲスルヨリモ返シタ方ガ、多クノ
場合ハ拂ヒマスル利子ノ上カラ言ッテモ有利
ナ場合ガアル、斯ウ云フ場合ハ殆ド無條件
デ認メナケレバナラヌ、ソレカラ少シ先ノ
コトニナリマスト、國家ノ生產擴充計畫ニ
從ヒ、ソレガ資金面ノ形カラ云ヘバ、資金
調製法ニ依ッテ新投資ヲ認メル事業面、是
等ノ事業面ト云フモノハ、積極的ニソレ等
ノ資金ヲ供給シナケレバ、戰力增强ニ關ス
ル生產力ガ足リナイ譯デアリマス、之等ヲ
ヤリタイト云フ場合ニハ勿論認メル積リデ
アル、唯其ノ場合ニハ一ツノ事業ニ對シマ
シテ甲モヤリタイ乙モヤリタイト云フコト
ガアラウト思ヒマスガ、是ハ二重ニヤッテ
ハ困ルノデ、ドチラカニヤラセマスカ、兩方
ニ或割合デヤラセルト云フコトハ考ヘナケ
レバナリマセヌ、サウ云フヤウナ場合ニハ
認メナケレバナリマセヌカラ、結局是ハ金
額ノ多寡ヨリモ性質論ニナル、ソレデ一方
ソレデハ金融上ドウナルカト云フコトニナ
リマスルト、債務ノ償還ノ場合ニハ、殆ド
金融機關デアリマスカラ、金融機關ニ
關スル場合ハ現金ガ還ルカト云フ
ト、實ハ現金ガ還ラナイノデ、ドウヤリマシ
テモ結局債務證書ヲ分ケテ金融機關ガ買フト
云フコトニナリマスカラ、資金ノ統制上假ニ
之ガ三十億トシテ、二十億ガソレニ還ッタ所
デ資金ノ統制上ハ毫モソレデ浮動化シテ
困ルト云フ關係ハ起リマセヌ、ソレカラ又
生產擴充資金ニ投下シマスルヤウナ場合ニ
於キマシテハ、是ハ其ノ方カラ言ヘバ、他
ノ方面カラノ生產擴充資金ノ投下ガソレダ
ケ要ラナイ譯デアリマスカラ、是モ全體ノ
資金計畫ノ上カラモ狂ヒガ生ジナイ譯デア
リマス、サウ云フヤウナ當事者ノ必要性、
殊ニ將來時局ノ要請スル產業ヲ會社ガ自分
デ營ミ、或ハ其ノ株ヲ有ッテ居ルコトハ希
望ヲ與ヘル所以デモアリマス、又今申シマ
シタヤウナ全體ノ資金調整ヲ狂ハサナイ
デ出來ルノデ、積極的ニ之ヲ認メテ行キタ
イ、斯樣ニ考ヘマスルト、必ズシモ金額デ
制限スル······全體ノ金額ニ依リマシテ、三
分ノ一以上ハ資金ノ封鎖ヲ解イテハイカヌ
トカ、二以上解イテイカヌト云フコトハナ
イ、詰リ金ヲ必要トスル性質ニ應ジテ判斷
シテ參レバ宜シイ部面ガ大部分デアラウト
存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=23
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024・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 サウシマスト此ノ現金化ス
ベキ金額ガ必要ナ時ト認メラルヽ事情ニ依ッ
テ、厖大ナル額ニナリマスト又ナンデスカ、
追加豫算トカ何トカデ取扱ハナケレバナラ
ヌノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=24
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025・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) ソレハ國ノ支出
面デ出マスルモノハ大體無イ、今申シマシ
タヤウニ金融機關ニ對シマシタヤウナ場合
二、或金融機關カラ債務證書デ擔保デ借
リテ返スト云フコトモアリマセウガ、債務
證書ヲ······債權ヲ原則トシテ讓レバ宜イ、
是ハ何等ソコデ國モ資金上ノ豫算ヲ必要ト
シマセヌシ、又他カラ資金ヲ作ルコトナク
實行出來マス、ソレカラ或時局產業等ニ投
下シマスル場合ニハ、ソレダケヲ、例ヘバ
五百萬圓政府ニ對シテ債權ヲ有ツ、三百萬
圓ヲ投資シマス、銀行カラ三百萬圓、ソレ
ヲ額面デ賣ッテ宜シイ、之ヲ其ノ儘入レマス
ガラ、國ト致シマシテハ何等ソコデ豫算化
スル必要ガナイ、國ガ豫算化スル必要ガ起
リマスノハ普通ナラバ損失補塡ノ場合デ
ゴザイマス、設備營團ガ假ニ十億設備ヲ引
受ケル、ソレガ工場ナドヲ引受ケマシテ、
引受ケタ値段デ轉用シ得ルモノモアリマセ
ウ、併シ場合ニ依リマスルト用途ガ違フ
カラ、千萬圓デ引受ケタガ、ホカヘ使フ方
ニ賣ル時ニハ八百萬圓ダケト云フノデ二百
萬圓ノ損ヲスル、又機械ノ如キハ其ノ儘使
ヘル紡績機械ナドハ、「スクラップ」モンテール
賣レバ設備營團ガ買ッタ値段ノ十分ノ一ニ
モ賣レナイ、損ガ起ル、此ノ損ガ起ッタ時ニ
補塡ヲシテヤルナラバ、普通ナラバ政府ノ
豫算ガ必要デアル、ソレモ赤字公債デモ募
集シテ現金ヲヤリ、設備營團ガ其ノ儘持ッテ
居ルノハ無駄デスカラ、今囘ノ法律ノ二條
デスカ三條ノ、是モ政府ノ特殊借入金デヤ
ル、是モ豫算ハ要リマセヌ、ソレデアリマ
スカラ、例ヘバ先程商工大臣ノ說明ニ、將
來空襲ガアル場合モアル、今ノ設備ガ壞レ
レバ·····操業セシムベキモノト認定シタモ
ノガ壞レレバ豫備的ニ持ッテ居ラネバナラ
又、又將來今ヨリハ原料ノ供給ガ多クナル
場合ニハサウ云フ物資ノ供給力ヲ殖シタ
リ、サウ云フノハ或程度ノ豫備的保有ヲシ
テ、斯ウ云フ保有ノ爲ニ幾ラカ經費ガ要リ
マス、ソレヲ補助シテヤラナケレバナラヌ
ト云フ場合ガアル、デアリマスカラ大體損
失補塡スル以外ハ、豫算化スルモノハ少
イ性質ノモノデアル、損失補塡ハ、大體今
具體化シテ居ルモノデハ、約二十三億圓、
其ノ中デ十億餘リハ、此ノ春ノ議會デ御協
贊ヲ經マシタ豫算外契約ノ範圍內デ處辨出
來マス、新タニ約十二億バカリ、ソレガ豫
算化シマスガ、今申シマスヤウニ豫算化シ
ナイデ處置スルモノガ大部分デ、豫算化ハ
結局少イコトニ相成リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=25
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026・伍堂卓雄
○伍堂卓雄君 私ノ質問ハ一應·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=26
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027・大河内正敏
○委員長(子爵大河内正敏君) ソレデハ是
デ体憩致シマス
午後零時三十六分休憩
午後一時四十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=27
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028・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) ソレデハ午
前ニ引續イテ開會ヲ致シマス、大藏大臣御
出席デゴザイマスカラ、大藏省關係ノ御質
疑ガゴザイマシタラ、此ノ際御願ヒ致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=28
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029・三井清一郎
○三井〓一郞君 重大法案デアリマスガ、
先ヅ審議ノ期間モナイノデアリマスカラ、
極ク大體ヲ御尋ネシテ置キマス、私ハ此ノ
今日出テ居ル企業整備ハ、一昨年來、遊休
未働設備ニ付テノ〓究ガ方々ニ行ハレタノ
デ、モウ早ク出ルカ〓〓ト待チ遠シク考へ
テ居ッタ一人デアリマスノデ、此ノ案ニ付テ
ハ何等異見ハナイノデアリマス、唯非常ニ
大キナ金額ノ運用、ソレカラ多數ノ勞務者
ノ動キ、ソレガヤリ方ガ善シ惡シニ依リマ
シテ、財界ニ非常ナ變動ヲ與ヘ、又一方社
會ノ思想問題トモ轉ジテ行キハセヌカト云
フ憂ヲ以ッテ居リマス、然ルニ今囘御提案
ニナリマシタ此ノ資金措置法案ハ誠ニ能ク
御〓究下サレテ、所謂浮動資金ノ封鎖ヲ根
本ニ御考ニナリ、俄ニ現金ガ市場ニ撒布セ
ラレナイ方法ヲ採ラレテ居リマスノデ、誠
ニ結構ナ案ト考ヘルノデアリマス、唯一言
承レバ、此ノ浮動資金封鎖ハ轉廢業者ニモ
全部特殊ナ借入金ニスル、或ハ預金ニスル
ト云フヤウナコトガ悉ク出來ナクテ、
部ハ矢張リ現金デ御渡シシナケレバ生活其
ノ他ノ上ニ於テ困難ヲ感ズル者ガ無キニシ
モアラズ、是等ニ對シテハ大藏大臣ハ相當
ノ御考慮ヲバアッテ、先ヅ此ノ資金ノ何割
カ何分カガ現金トシテ動クモノデアルト云
フ御考ガ附イテ居ルダラウト思ヒマスガ、
若シソレガ附イテオイデニナリマスナラバ
承ッテ置キタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=29
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030・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今囘ノ設備物資
等ノ移動ニ付キマシテハ、只今提案ヲ致シ
テ居リマスル決濟方法ニ依ルノデハアリマ
スルガ、其ノ中ニ小サナ營業等ヲ國民更生
金庫ニ引受ケマスルヤウナ場合ニハ、其ノ
金額ガ零細ナモノモアルノデゴザイマス、
サウ云フ少額ノモノニ付キマシテハ程度ヲ
定メマシテ、之ヲ現金ヲ以テ交付スルト云
フコトハ已ムヲ得ナイコトト存ズルノデア
リマス、ソレ等ノ金額ハ、事實ガドウ云フ
風ナ工合ノモノガドノ位整理サレマスル
カ、實際ニ當ッテ實行シテ見ナケレバ正確
ナコトハ分リニクイノデアリマス、設備ノ
移動ガ〓算三十五億ヨリ、民間ノ自發的ノ
會社ノ分ヲ入レマスルト四十億ニ餘ル場合
モアラウカト思ヒマスルガ、其ノ中デ六七
億前後ノモノハ現金デ交付スルコトニナル
ノデハナイカ、斯樣ニ存ジテ居リマス、其
ノ外ニ民間殘存業者ガ共助金トシテ出シマ
スモノモ少額ノ一定額以下ノ金額デアリ
マスルト現金デ交付致シマス、是ガ又數千
萬圓或ハ一億以上モアルカモ知レナイ、其
ノ外ニ生活援護ノ爲ニ殘存業者或ハ國庫ガ
負擔致シマス、是ハ生活援護ノ出資デアリ
マスカラ現金デ交付スルノハ當然デアリ
マス、其ノ金額モゴザイマスルシ、又事業
ヲ廢止休止致シマスル會社ナドガ其ノ從業
員、役員等ニ對シマシテ退職ノ手當ヲ出ス
モノモアリマス、左樣ナモノハ今金額ヲ正
確ニハ計算ガ出來マセヌガ、色々ノモノヲ
合セマシテ十億或ハ其ノ上トカト云フモノ
ハ、矢張リ此ノ際之ニ伴ヒマシテ現金トシ
テ出ルモノガ生活援護資金以外ニアルト考
ヘテ宜シイカト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=30
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031・三井清一郎
○三井〓一郞君 只今ノ御答デハッキリ致
シマシタ、兎ニ角現金ガ此ノ法案ヲ實行シ
テ進ムニ從ッテ矢張リ市場ニ撒布セラレ
ル、之ニ對スル金融上ノ政策ハ又別ニ大藏
省デ御考ニナルコトト信ジマスカラ、此ノ
金融ニ關スル質問ハ止メマシテ、私ハ企業
整備ト云フコトハ殆ド各省ニ關係ヲ持ツ、
無論商工省ガ主デアリマスガ、農林省デモ
矢張リ工業ニ、食品工業其ノ他ガアリマシ
テ、不用不急ノ贅澤ナ食品ノ工業ノ如キハ
轉廢シテモ宜イノダラウト思ヒマス、サウ
云フモノモアリマセウシ、各省ニ之ガ關係
シテ居リマスガ、之ヲ圓滿ニ遂行スルノニ
ハ、ドウシテモ有機的ニ組織ガ出來テ居ナ
ケレバムヅカシイノデハナイカト思フノデ
アリマス、從來總テノ產業方面ノ關係ヲ聽
イテ見マスト、各省ニ關係ガアルノデ、
ツノ問題ヲ解決スルノニ非常ニ多數ノ日子
ヲ要スルト云フコトヲ聞イテ居リマス、果
シテサウデアルカドウカハ私ハ確然トハ申
上ゲニクイノデアリマスガ、サウ云フコト
ヲ多ク言ハレル、此ノ戰力增强ノ非常時局
ニ於テ總理大臣ハ行政ノ簡素化、總テモウ
手續ナドハ簡單ニシテ、直グニ寳行スル、
實行ガ主デアルト云フコトヲ御主張ニナッテ
居リマス、ソレデサウ云フコトハアルマイ
ト思ヒマスガ、ドウモ聞イテ居リマス、シ
テ見マスト、今度ノ企業整備ハ七十萬ノ人
員ニ關係シ、其ノ家族ヲ入レマスト、五ヲ
掛ケテ三百五十萬人ノ生活問題ニ影響ヲ持
ツ大ナル事業デアルノデアリマス、簡單ニ
ハ我々ハドウシテモ考へラレナイノデアリ
マット、是ハドウシテモ有機的組織デ、モウ
其處ニ行ッタナラバ直グニ右ニ左ニ話ガ進
ンデ行クヤウニナサラナケレバナラヌノデ
ハナイカ、サウ致シマスト、根本的ニ我々
ハ考ヘレバ、所謂戰時大產業省デモ御作リ
ニナツテ、總テ其處デ一括シテヤルト云フ
コトモアリマセウガ、ソレハナカ〓〓容易
ナコトデハアリマスマイカラ、少クモ關係
各省ノ有能ナル御方ノ委員組織デモ作ラレ
テ、其ノ委員會ニ行ケバ何處ノ役所ニ行カ
ナイデモ當業者ハ話ガ付クト云フ位迄ニハ
御進メニナランケレバナラヌノデハナイ
カ、然ルニ評價委員トカ云フヤウナ、法案
ニアリマス委員會ハ出來サウデアリマスケ
レドモ、サウ云フ各省關係ヲ一箇所デ解決
スルト云フ統一シタ機關ガ出來サウニモナ
イノデアリマスガ、サウ云フ御考モアッテ、
御作リニナル積リデアリマスカ、ソコヲチ
ヨット承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=31
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032・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 今囘ノ企業整備ガ
產業ノ非常ナ廣イ範圍ニ亙ツテ居ルノデア
リマス、御話ノ如ク、現在ノ行政組織カラ
見マスルト云フト各省ノ仕事ニ跨ッテ居
ルノデアリマス、從ッテ之ガ實行ニ當リマ
シテ常ニ十分ナ有機的ナ關係ヲ持ッテ、綜合
的ナ見地カラ全體的ニ推進シテ行カナケレ
バナラナイコトハ言フヲ俟タナイノデアリ
マス、過般政府ガ此ノ問題ヲ政府全體ノ問題
トシテ取リ上ゲマシテ基本ノ方策ヲ決定シ、
其ノ方針ニ基イテ各省ガソレ〓〓所管ノ產業
ヲ整備スルト云フ建前ヲ執ッテ參ッテ居リマスノ
モ、是等ノ企業整備ガ眞ニ其ノ目的ヲ達ス
ルガ爲ニハ、各省ガ同樣ナ步調デ之ニ協力
シ、各省ノ所管ノ問題ニ付キマシテ責任
ヲ持ッテ其ノ方針ノ線ニ副ウテ之ヲ處理シ
テ行クト云フ必要ヲ痛感致シテ居ルノデア
リマス、併シナガラ方針ガサウ云フヤウニ
一應根本的ニ、綜合的ニ、有機的ニ決ッテ居
リマシテモ、更ニ之ヲ實行スル上ニ於キマ
シテ常ニ緊密ナル連絡ヲ取リ、又全體ノ綜
合性ト有機性ヲ失ハナイヤウニ、又其ノ間
ニ足並、步調等ガ亂レナイヤウニ之ヲ十分
ニ推進シテ行クト云フ爲ニハ、中央ニソレ
ヲ推進スル機構若シクハ連絡ヲ取ル組織ヲ
考ヘル必要ガアルノヂヤナイカト云フ御質
問ノ御趣旨モ御尤モダト思ヒマスガ、現在
ノ機構ニ於キマシテモ企畫院ト云フ所ハサ
ウ云フ職能、機能ヲ果ス組織ト使命ヲ持ッテ
居リマスノデ、今後ニ於キマシテモ常ニ企
畫院ガ中心トナリマシテ、各關係省ガ此處
ニ關係事項ヲ持寄リマシテ、常ニ緊密ナル
連絡ヲ取ッテ進ンデ行ク者デアリマス、特
ニ之ガ爲ニ特別ノ役所ヲ設ケルトカ、機構
ヲ設ケルトカ、ト云フ意思ヲ政府トシテハ
現在ノ所持ッテ居リマセヌガ、併シナガラ
從來ノ企畫院ノ此ノ點ニ關スル機能ヲ今後
ハ十分ニ强化擴充致シマシテ、其ノ機能ヲ
十分ニ働カシテ、各省ノ連絡ト其ノ間ニ於
ケル所ノ十分ナル協調協力ト云フモノヲ具
現シテ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=32
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033・三井清一郎
○三井〓一郞君 特殊ナ機構ヲ持ッテ居ル
ト云フコトハ只今御述ニナリマシタ通リ
デ、之ニ付テ直チニ御答ヲ得タイトハ思ヒ
マセヌガ、唯參考的ニ申上ゲマシテ御〓究
ヲ願ヒタイト思ヒマスコトハ、此ノ企業整
備ノ實行性ノムヅカシイ所ハモウ商工大臣
能ク御承知デ度々御話ヲ承ッテ大體ハ了承
致シテ居ルノデアリマス、居リマスガ、豫
テカラ中小工業ヲ整備ナサレタ御經驗モア
リ、今度ハ寧ロ此ノ法令デ相當ナ金額ヲ支
出シテ思フ存分ニヤルト云フノデアリマス
カラ、當時ノ中小工業ノ整備トハヤリ易イ
ト云フ點モアリマセウガ、大キケレバ大キイ
ダケデ又非常ニ關係スル所ガ廣ク深ク、爲
ニ種々ノ問題ガ起ルコトト考ヘマス、此ノ
問題デ我々ハ最モ憂慮スルノハ此ノ決戰段
階ニ入ッテ國民ガ或疑問ヲ持ツ、或ハ國民
ノ思想上面白クナイト云フヤウナコトガ起ッ
テハ是ハ大變ダト思ヒマス、其ノ點ヲ憂
慮致シマシタ、午前カラ大藏大臣其ノ他商
工大臣ノ御話ヲ承ッテ大體ハ安心ハ致シマ
シタガ、ドウゾ此ノ實行ニ依ッテ國民ヲ安
心セシメル、又轉廢業者モ不幸ヲ見ナイ、
而モ轉廢業者ハソレガ爲ニ轉廢ヲシタ爲ニ
從來ヨリモ利益ガアッテ喜ブト云フコトモ
是亦公平ヲ缺ク意味ダト思ヒマス、モウ
我々ガ遊休未働ノ調査〓究ヲシタ時デモ最
早赤字デ大キナ會社デモ機械ヲ動カサズ遊
バシテ居ルルト云フ所ガモウ一昨年來ア
ル、此ノ長イ赤字ヲ出シテ行ッタ、苦痛ヲ
忍ンデ來テ居ル、是等ハ今相當ナ價格デ賣レ
レバ結構ト喜ブデアリマセウガ、是等ノ餘
リ喜ビ過ギルヤウナコトガアリマシテハ
一方ニソレニ反感ヲ持ツヤウニナッテ、
思想上影響ヲ來スコトハ小サクナイト思
ヒマス、是等ニ付テハ十分御確信ガアリ又
サウ云フヤウナ氣分ヲ起サセヌダケノ機構
上ノ御計畫モアルコトト信ジマスケレド
モ、此ノ點ハ一應私念ノ爲ニ伺ッテ置キタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=33
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034・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ如ク此ノ
企業整備ノ問題ハ、實際ノ實行ニ際シマシ
テハ私共ガ過去ヤッテ參リマシタ經驗ニ鑑
ミマシテモ種々難シイ問題ガアルト思ヒマ
ス、從ヒマシテ之ヲ圓滑ニ實行スル爲ニハ
ドウシテモ此ノ企業整備ノ趣旨ト云フモノ
ヲ十分ニ國民ニ理解徹底セシメ、業界ハ勿
論ノコト國民全體ガ之ノ完遂ニ心カラ協力
シテ貰フト云フ風ニ指導施設シテ行カナケ
レバナラヌト存ジテ居リマス、特ニ御指摘
ニナリマシタ如ク、此ノ問題ノ扱ヒ又ハソ
レノ實行ノ如何ニ依リマシテハ、色々產業
界ニ於テ生產ノ上ニ望マシクナイ結果ガ來
ルノミナラズ、社會的ニモ思想的ニモ色々
ノ重大ナ問題ヲ惹キ起ス虞ガアル問題デア
リマスノデ、此ノ問題ノ取扱ニ付キマシテ
非常ニ我々モ愼重ヲ期シ、十分ニ考ヘテ處
置シナケレバナラヌ、斯ウ考ヘテ居リマ
ス、從來モ私共此ノ問題ヲ段々實行シテ參
リマスニ付キマシテ、事ヲ餘リ事務的
ニ、唯單ニ事務的見地ダケカラ取扱ッ
テハ相成ラヌ、一ツノ政治的ノ大キナ見
地カラ此ノ問題ヲ取扱ハナケレバナラ
ナイト云フコトヲ常ニ痛感致シテ居リマ
シテ、地方官ノ會議等ニ於キマシテモ、
此ノ問題ハ地方廳ニ於テ長官自ラ中心ト
ナッテ之ヲ處理シテ貰ヒタイ、課長トカ、或
ハ下ノ下僚ニ任カシテ置イテ事務的ニ之ヲ
處理スルヤウナコトガアッテハ相成ラヌト
云フコトヲ喧シク言ッテ居リマスシ、又商工
省自體ニ於キマシテモ我々ガ自ラ此ノ問題
ノ處理ニ當ルト云フ決意ト覺悟トヲ持チマ
シテ今日迄處理シテ參ッテ居ルヤウナ譯デ
アリマス、一面轉廢業ヲスル人ノ立場ト云
フモノ、其ノ身上ト云フモノニ對シテ十分
ナ同情ヲ持チ、又之ニ對スル處置ト云フモ
ノヲ誤ラナイ、之ニ不平ヲ抱カシメタリ、
或ハ種々ノ不安ヲ抱カシメタリ、或ハ甚シ
キニ至ッテハ生活上ノ非常ナ不安ヲ與ヘル
ヤウナコトガ萬一アッテハ相成ラヌト云フ
考カラ、政府ニ於キマシテモ一應各種ノ施
設ヲ講ジマスト共ニ、新シイ馴レナイ職域
ニ挺身奉公スルト云フ場合ニ於ケル、出來
ルダケノ便益ヲ供スルコトニ努メテ參ッテ
居ル次第デアリマス、同時ニ又御指摘ニナ
リマシタヤウニ、此ノ企業整備ニ際シテ未
働遊休設備、其ノ他轉活用サレル轉用工場、
或ハ廢止工場等ノ關係ニ於キマシテ、世間
ガ考ヘテ非常ナ不當、若シクハ不當ニ近イ
ヤウナ非常ナ利益ヲ擧ゲタト云フヤウナ若
シモ實例ヲ生ズルヤウナコトガ萬一ニモアッ
テハ、是亦色々ナ意味ニ於キマシテ相濟マ
ナイ譯デアリマスノデ、是等ノ評價ニ付キ
マシテハ、之ノ公正適正ヲ期スル爲ニ、從
來モ權威アル委員會ヲ設ケテ、之ニ依ッテ
評價基準等ヲ決定シテ參ッテ居ルノデアリ
マスガ、今後ニ於キマシテハ、更ニ之ヲ强
化致シマシテ、官民ノ有識者、經驗者、學
識經驗者等ヲ集メマシテ、是等ノ評價ノ適
正公正ヲ期シテ、之ニ關聯シテサウ云フ
疑惑ヤ若シクハ惡イ影響ヲ及スコトノナイ
ヤウニ此ノ問題ヲ處理シテ行キタイ、斯
樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=34
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035・三井清一郎
○三井〓一郞君 商工大臣カラ御懇切ナル
御說明ヲ下スッテ有難ウゴザイマシタ、此ノ
企業整備ヲヤリマシタ-ト云フモノガ、
整理ヲ無論一時ニヤルノデナイ、逐次ニ
ヤッテ行カレマスガ、ソレヲ重點產業ノ方ヘ
向ケテ、直チニ以前貰ッテ居ッタ給料ヲ貰フ
ト云フコトハ、少シ自然ヲ缺ク感ジガ致シ
そう、又就業ニ至ル間、會社ハ、例ヘバ轉
廢シマシテ工人ガ職ニ就ク迄ノ間遊ブ時期
モアラウト思ヒマス、是等ノ生活保障ハ政
府ハヤラレルコトダラウト思ヒマスガ、御
話ガアッタカモ知レマセヌガ、チヨット聞キ
落シテ居リマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=35
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036・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 轉廢業ニ際シマシ
テ、是ガ新シイ企業整備ニ依ッテ或產業、工
業ノ部門ナリ、或ハ小賣業ノ部門ガ整理セ
ラレマシテ、一定ノ人ガ轉廢業シナケレバ
ナラヌ、從來ノ職業カラ離レル、同時ニ是
等ノ人ハ國家ガ要望シテ居ル緊要方面ニ轉
進シテ、此處デ新シイ御奉公ヲ願ハナケレ
バナラナイノデアリマス、併シナガラ此ノ
兩方ノ結付ケヲ如何ニスルカト云フコト
ハ、ナカ〓〓實ハムヅカシイ問題デアリマ
シテ、從來ノ實績ヲ率直ニ申上ゲマスト云
フト、是ガマダ十分完全ニ行ッテ居ラナイ憾
ミガアルト思フノデアリマス、今囘ノ此ノ
企業整備ニ當リマシテハ、從來ノ經驗ニ鑑
ミマシテ、此ノ點ニ付テ特ニ意ヲ用ヒテ居
ル譯デゴザイマス、卽チ此ノ轉業スル途上
ニ於テ、一面生活上ノ不安ヲ感ズルヤウナ
コトガアッテハナラヌ、同時ニ其ノ間相當長
イ期間ブラ〓〓シテ、十分ナ緊要ナ方面ニ
勤勞シテ御奉公シナイ期間ガ相當長クアッ
テモナリマセヌシ、又緊要ナ方面ニ入ッテ
行ッテ、十分ナ基礎的ナ訓練等ガ缺ケテ居ル
爲ニ、當分十分ナ働キガ出來ナイト云フヤウ
ナコトガアッテモ相成ラヌノデアリマシテ、
出來ルダケサウ云フコトヲ無クスルヤウニ
考ヘテ行カナケレバナラヌ、ソレデ先ヅ
此ノ轉廢業途上ニ於ケル生活保障ノ問題ニ
付キマシテハ、政府ハ所謂生活援護救護
ニ付テノ共助金、之ヲ同業共助ノ意味ニ於
テ同業者ガ出來ルダケ半分ハ出ス、後ノ半
分ヲ國庫デ出シテ年額六百圓ト云フ、是
ハ併シナガラ同業者ガ出セナイトシマシテ
モ、政府ハ六百圓ノ額ヲ與ヘマシテ、生活
ノ困難ナ人ニハ其ノ途上ニ於テ生活ニ困ル
コトノナイヤウニ致シタイ、又新タニ職
ニ就キマシテモ、當分收入ガ激減スル爲ニ
生活ガ非常ニ困難デアルトカ、或ハ六百
圓ノ共助金ヲ貰ヒマシテモ尙色々ナ關係デ
困ルト云フ者ニ對シマシテハ、厚生省所管
ノ生活援護ニ關スル一定ノ金額ガ交付セラ
レルノデアリマス、是等ニ依リマシテ生活
上ノ不安ト云フヤウナ事柄ハ此ノ轉廢業者
モ其ノ家族モ其ノ途上ニ於テ起スコトノナ
イヤウナ處置ヲ執ッテ行ク積リデアリマス、
ソレカラ尙先程申上ゲマシタ此ノ新シイ職
域ニ行ッテ十分御奉公ガ出來ルダケノ訓練
又ハ其ノ組織ヲ致シマス爲ニ、色々勤勞奉
仕隊デアルトカ、或ハ其ノ他各種ノ訓練所
等ヲ動員シマシテ、出來ルダケ此ノ轉廢業
者ニ對シテ基礎的ナ訓練ヲ與ヘ、組織ヲ與
ヘ、サウシテ新シイ職域ニ於テ十分ナ御
奉公ノ出來ルヤウナ素地ヲ鍊成シテ作リ上
ゲデ行ク、斯ウ云フヤウナ處置ヲ講ジマシ
テ、從來ノ稍〓十分デナカッタ點ヲ十分ニ補ッ
テ行キタイ、斯ウ思ッテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=36
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037・三井清一郎
○三井〓一郞君 能ク分リマシタ、此ノ企
業整備ヲ實行スルニ當ッテ、從來經濟界ニ於
テ色々是正ヲ要スルト云フ意見モアリ、又
關係省デモサウ御考ニナッテ居ル點モアラ
ウト思ヒマスガ、是等ハ此ノ企業整備前ニ
於テ是正ナサルモノデアリマスカ、同時ニ
オヤリニナリマスカ、例ヘバ統制會トカ、
統制會社トカ云フモノニハドウモ我々ガ考
ヘル所デハ、政府ハ五大產業トカ、或ハ七
大產業トカ、能ク覺エテ居リマセヌガ、權
限委讓迄ナサッテヤッテ居リマスケレドモ、
其ノ他多數ノ統制會社ガドウモ滿足ナ統制
ヲヤッテ居ナイト云フコトヲ聞キマスガ、果
シテ然ルヤ否ヤ能ク分リマセヌガ、若シサ
ウ云フ非難ガアル如クデアッタナラバ、是ハ
斯ウ云フ時機ニ御改善ニナルモノダラウト
思ヒマスガ、此ノ點ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=37
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038・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 統制會ニ付キマシ
テハ是ハ重要產業部門ニ於ケル非常ニ重
要ナ統制組織トシマシテ、政府ニ於キマシ
テモ其ノ育成、其ノ健全ナ發達ノ爲ニ常ニ
意ヲ用ヒ力ヲ盡シテ參ッテ來テ居ルノデア
リマス、必ズシモ總テノ統制會ガ今日完全ニ
其ノ使命ヲ果シテ居ルトモ申上ゲ兼ネマス
ガ、漸次此ノ統制會其ノモノノ組織內容運
營ト云フモノガ改善サレテ參ッテ居リマシテ、
近時ニ於キアシテハ重要ナ部門ニ於ケル統
制會ハ、相當ナ生產增强等ノ面ニ於テ功績
ヲ示シテ居ルヤウニ思フノデアリマス、併
シナガラ尙之ノ至ラナイ所ノ改善スベキ所
ニ付キマシテハ、絕エズ之ガ改善ヲ加ヘテ
行クコト當然デアリマス、特ニ此ノ企業整
備ニ關聯致シマシテ統制會社、此ノ統制會
社ト申シマスノハ、御承知ノ通リ多クハ原
料資材製品等ノ中間的ナ配給機構トシテ出
來上ッタモノデアリマシテ、支那事變發生以
來各種ノ統制ガ强化セラレルニ付キマシテ
順次各部門ニ出來タノデアリマスガ、大體
此ノ卸賣、問屋ト云フヤウナアタリヲ統合
致シマシテ、サウシテ此ノ重要資材等ノ配
給ニ當ラシメテ居ルノデアリマス、近時其
ノ數ハ相當多數ニ及ンデ居リマス、是等ノ
モノガ作ラレル時ニハ、ソレ〓〓ノ理由ガ
アッテ作ラレタノデアリマス、又相當ナソ
レガ出來マシテカラ使命モ果シテ居リマス
ケレドモ、併シ現段階ニ直面致シマシテ、私共
ハ此ノ統制會社ノ非常ニ澤山ナモノヲ十
分ニ再檢討致シマシテ、之ガ改善ヲ此ノ企
業整備ノ一環トシテ考ヘル必要ガアルト、
斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス、ソレハ一面
ニ於テ工業組織ガ非常ニ整備セラレテ來ル
ノデアリマスカラシテ、之ニ附屬シテ居ル
所ノ配給機構ノ重要部門デアル統制會社組
織ト云フモノガ檢討サレルコトハ當然デア
リマス、尙此ノ機構ガ非常ニ複雜多岐ニナッ
テ居リマス爲ニ取扱ノ手續ガ複雜ニナルト
カ、其ノ爲ニ却テ物資ノ流通ガ圓滑ヲ缺イ
テ居ルトカ、或ハ其ノ使命デアル重要物資
ヲ重要ナ所ニ持ッテ行ッテ適時ニ圓滑ニ流シ
テ行カナケレバナラナイノガ、ソレガサウ云
フ風ナ使命ニ行ッテ居ラナイトカ、或ハ中間
ノ機構ガ複雜ニナッタ爲ニ、中間手數料ガ非
常ニ多額ニ上ッテ、却テ消費者ヤ生產者ノ負
擔ガ增シテ來ルト云フヤウナ事例モ少クナ
イヤウニ思ヒマスノデ、目下政府ニ於キ
マシテハ是等ノ統制會社ニ對シマシテ根本
的ナ再檢討ヲ致シマシテ、出來ルダケ簡素
ナ而モ國ヲ擧ゲテ戰力化シヨウト云フ場合
ニ、此ノ統制會社ガ十分ニ其ノ使命ヲ果シ、
而モ中間ニ於ケル負擔ヲ出來ルダケ少クナ
ラシメルト云フヤウナ見地カラ之ヲ改善ス
ルト云フ考デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=38
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039・三井清一郎
○三井〓一郞君 モウ一ツ伺ヒタイ、午前
ノ豫算總會デ伍堂君ノ質疑ガアリマシテ、
厚生大臣ガ御答ニナッタノデアリマスガ、
人員ヲ多クスレバ能率ガ增進スルノデハナ
イト云フヤウナ意味ノ應答デアリマシタ、
私ガ非常ニソレハ多年ノ經驗カラ感ジテ居
ル問題デアリマス、例ヘバ產業戰士ヲ配付
スル、或ハ奉仕隊ヲ加ヘテ能率ヲ出ストカ
云フヤウナ色々ノ事モアリマセウシ、今度
ノ如キハ、無論重點產業ニハ人ヲ持ッテ行
ク、是ハ工場ノ組織、又此ノ統轄シテ行ク
人ノ所謂工業的ノ手腕、色々ガウマク行ッ
テ能率ガ增進スルノデアリマシテ、人間ノ
數ガ殖エタカラ能率ガ增進スルトハ思ハナ
イノデアリマス、從ッテ此ノ人員ノ增加ト
カ配當トカ云フコトハ、餘リ大勢ニナッテ
却テ一人當リノ能率ガ低下スルト云フ事實
ガアルコトヲ今日ノ質問應答デ聽キマシタ
ノデスガ、是ハ當然ナコトデアラウト思ヒ
やっ、ソコデ此ノ工場組織ガ適切デアッテ、
各工程ガ少シモ材料ガ不足ナク、圓滿ニ工
程ヲ廻ッテ、最後ニ行ッテ製品ニ成立ツ所へ
行ッテ檢査ヲ受ケル迄、工場ト云フモノハ
グル〓〓ト廻ッテ行カナクチヤナラヌ、然ル
ニ一方ニハ何時カ商工大臣カラ御話ガアッタ
ヤウニ、下請ノ方ガ非常ナ欲望デ仕事ヲ集
メテ居ッテ、甲ノ物ハ宜イトシテモ、乙ノ
物ガ下請ノ仕事ガ進マヌ爲ニ纒シタ品物ガ
出來上ラヌ、從ッテ工場ノ能率ヲ調ベルト低
下スル、斯ウ云フヤウナコトノ御話ガアリ
マシタガ、私ハソレモ當然ト思ヒマス、ソ
コデ是ハ管理工場ハ陸海軍バカリデハナ
イ、各方面デ監督管理ガアリマセウガ、此
ノ管理者ト云フ者ハ、極端カモ知レマセス
ガ、私ハ元來工業ヲ經營スル能力ノアル者
ガ管理シナケレバ、本當ノ增產ガ出來ナイ、
斯ウ考ヘテ居リマス、併シソレハ又單ニ算
盤ヲ彈イテ、傳票ヲ繰ッテ附合シテ「コスト」
バカリイヂクッテ居ル監理官デアッタナラ
バソレハ大事ナ所ガ脫ケテシマフノデア
リマス、工業經營ノ全體的ノ頭ヲ以テ工場
ヲ經營監督管理シテ行カナケレバ生產增强
ハ出來ナイノデス、殆ド重役、社長以下ガ
陣頭指揮ヲヤルト云ッテモ、此ノ「コスト」計
算、或ハ色々ノ帳面ヲ作ッタリ雜務ヲ致スコ
トハ是ハ責任アルコトデアリマスガ、斯
ウ云フモノニ沒頭スレバ、所謂工業ノ原則
ノ直接工費ハ幾ラ出シテモ宜イケレドモ、
間接雜費ハ幾ラ出シテハイカヌゾ、所謂事
務費ヲ幾ラ出シテハイカヌゾ、全力ヲ工場
ニ注ゲ、此ノ精神ニ反スルモノト考ヘマス、
是等ノ點ニ付テハ所謂訓練所ナリ其ノ他ニ
於テ、相當ナ指導ガ必要デアラウト思フ、
上ノ班長トカ何トカ云フコトヲヤル人ニ
ハ又管理官ヲ出ス所デハ、餘程其ノ點ニ
一ツ力ヲ入レテ戴キタイト思ヒマス、本當
ノ能率ハサウ云フ傳票屋ノソンナ所ニナ
イ、私ハ極端デアリマスガ、若シ工場ノ品
物ガ動イタリ紛失シタリ、ソレハ工場監理
官ガ鍵掛ケテ閉鎖シタ時ニハ人ヲ入レナイ
ヤウニシテ、翌日來テ、ソンナ細カイ傳票デ、
甲カラ乙ヘ行ク其ノ傳票デ動カスヤウナコ
トヲ止メタラドウカト迄考ヘル、ソコ迄行
カナケレバ私ハ本當ノ戰時ノ產業政策ヲ實
行シテ居ルトハ見エナイ、斯ウ考ヘルノデ
アリマスガ、其ノ點ニ付テハ如何御考デア
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=39
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040・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御意見ノ點ハ誠ニ
御尤モデゴザイマス、特ニ生產增强ヲ必要
トスル今度ノ整備デ擧ゲテ居リマス第二種
工業部門ト云フ、直接戰力ニ關係ノアル部
門、是ノ生產機能ヲ刷新シ、其ノ生產性ヲ
向上スル爲ニ整備シテ行クノダト云フコト
ヲ示シテ居リマスノモ、正ニ今御意見ガア
リマシタヤウナ事柄ヲ狙ッテ居ルノデアリ
マス、今日是等ノ工場ニ於テ本當ニ生產力
ヲ上ゲルト云フ爲ニハ、資材勞務等ヲ充實
スル必要モ勿論アリマセウガ、更ニ實際ノ
其ノ工場ニ於ケル生產工程ヲ管理シ、又勞
務者ノ管理勞務管理ト云フヤウナ事柄ガ徹
底シテ、合理的ニウマク行クカドウカト云フ
コトニ、非常ナ關係ガアルノデアリマス、
一ツノ例ヲ申上ゲマスルト云フト鑛山ニ於
キマシテ最近非常ナ問題ニナッテ居リマス
事柄ハ勞務者ノ不足デアリマスガ、其ノ不
足ノ原因ノ一ツノ大キナモノハ、勞務者ノ
移動ガ非常ニ多イコトデアリマス、或炭鑛
ニ於キマシテハ一年ノ間ニ百五十「パーセン
ト」ノ移動、卽チ居ル人ガ全部變ッテ、ソレ
ヨリモマダ入レタ者ガ半分變ルト云フヤウ
ナ事態モアルカト思ヒマスガ、九州ノ或工
場ニ於キマシテハ、殆ド其ノ移動ガナイ、
處ガ隣ノ炭鑛ニ於テハ非常ニ移動ガアル、
同ジヤウナ炭鑛デアリナガラ一方ハ移動ガ
ナイシ、一方ハ非常ニ移動ガアル、サウス
ルト移動ノアル工場ハ移動シテモ新シク勞、
務者ノ供給ヲ要求シテ居リマス、又ソレガ叶
ヘラレヌト云フト、所定ノ石炭ガ出ナイノ
デアリマス、一方ノ動カナイ所ノナニハ、勞
務ノ新シイ需要者ガナクテ、而モ非常ナ良
イ石炭ガ出ル、之ヲ調ベテ見ルト、事ハ非
常ニ簡單ナンデ、其ノ實際ノ勞務管理ノヤ
リ方ガ、其ノ「エー」ノ鑛山ト「ビー」ノ鑛山
トハ全然違フ、移動ノナイ所ハ勞務管理ガ
非常ニ良ク行ッテ居ル、一方ハサウデナイ、
是等ノ實例カラ見マシテモ、將來ノ生產機
能ヲ刷新シテ、生產性ヲ向上スルト云フノ
ニ付キマシテハ、其ノ工場ノ生產ノ組織カ
ラ、此ノ勞務ノ管理、結局是等ノコトヲ煎
ジ詰メマスト云フト、人ノ問題ニナル譯デ
アリマシテ、其ノ勞務管理ノ責任ヲ持ッテ當
ル人ガ宜イカドウカ、或ハ生產管理ノ責任
ヲ以テ當ル人ガ宜イカドウカト云フ問題ニ
突キ留メラレル譯デアリマス、御話ノ如ク
是等ノ重要工場ノ生產性ヲ上ゲルニ付キマ
シテハ工場ヲ實際管理シテ居リマス、又
實際ノ生產ニ當リ、勞務ヲ管理スル人ニ付
キマシテ、特ニ其ノ適材ヲ得、又其ノ管理:
方法ヲ合理的ナラシメルヤウニ、十分ニ指
導シテ參ラナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=40
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041・三井清一郎
○三井〓一郞君 最後ニ一ツ小サナ問題デ
アリマスガ、午前御話ノ中デアツタカト思
ヒマスガ、殘業者ノ共助問題デアリマス、
是ハ從來ノ例デハ共助出金ハ殆ドシナイヤ
ウナコトガアッタコトヲ聞キマスガ、今度ノ
企業整備デ以テ殘業者ノ共助金ハ無論出サ
スコトニ御考ヘニナッテ居リマスノデアリマ
スカ、實行ガ出來得ルヤ否ヤ、御考ヲ伺ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=41
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042・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 共助金、後ニ殘リ
マス者ガ轉廢シテ參ル人々ニ對シテ同業共
助ノ精神カラ共助金ヲ出シテ居ルノデアリ
マスガ、其ノ共助金ニハ一一ツノ種類ガアリマ
シテ、一ツハ先程申上ゲマシタ生活援護ノ共
助金、生活共助金ト云フヤウナ言葉デ呼バ
レテ居リマスガ、是ハ總額六百圓ト云フコ
トニ決ッテ居ルノデアリマス、其ノ六百圓ヲ
業者ガ半額三百圓負擔シ、後ノ三百圓ヲ政
府ガ負擔スルト云フ、兩方併セテ持チ寄リ
デ六百圓ニシテ、與ヘルト云フ建前ヲ執ッテ
來テ居ルノデアリマス、處ガ、或業種、或
地方ノ業態ニ於キマシテハ、其ノ三百圓ノ
生活共助金ガ殘ル人カラ出ニクイ、又ソレ
ヲ出サセルノガ實際無理デアルト認メラレ
ルヤウナ狀態モ段々アルノデアリマスガ、
サウスルト云フト建前ガ從來半々デ、政府
ト何トガ持チ寄ルト云フコトニナッテ居ルノ
デアリマシテ、全然業者カラ出ナイト云フ
コトニナルト、其ノ生活援護ノ共助金ト云
フモノガ全體ニ渡ラヌト云フコトニナル虞
ガアルヤウナ事例ガ段々出テ來テ居ルノデ
アリマス、ソコデ今度ノ豫算ニ於キマシテ、
苟モ其ノ轉廢スル人ニ、其ノ途上ニ於テ生
活上ノ不安ヲ與ヘテハナラヌト云フコトハ、
一ツノ國策ノ何デ行クベキモノデアルカラ、
ソレハ同業者ノ共助精神ノ發露ニダケ俟ッ
テ居ル譯ニハ行カヌ、ソレハ必要ガアレバ
國庫ガ全部ヲ負擔シテモ、苟モ轉廢業ヲス
ル人ニハ生活上ノ不安ダケハ與ヘナイト云
フ建前ヲ執リマシテ、必要ガアレバ六百圓
迄政府ガ出シテ、如何ナル場合ニ於テモ六
百圓ハ、轉廢業者ノ生活ニ苦シイヤウナ人
ニハ行クヤウニ致シテ居ル譯デアリマス、
其ノ外ニ實績共助、實績補償ノ共助金ト云
フモノガアルノデアリマス、卽チ廢メテ行
ク人ガ從來商賣上或實績ヲ持ッテ居ッタ、其
ノ實績ヲ後ノ殘ッタ連中デ補償スルト云フノ
デアリマス、例ヘバ石炭ノ商賣ヲ致シテ居
ル者トスレバ、或店ハ年ニ一萬「トン」取扱ッ
テ居ル、或所ハ五千「トン」取扱ッテ居
ル、或ハ千「トン」取扱ッテ居ルト云フヤウ
ナ者ニ對シマシテ、實績トシテ一、「トン」當
リ一圓ナラ一圓、或ハ五十錢ト云フヤウナ
基準デ以テ此ノ實績補償ノ金額ヲ定メマシ
テ、一萬「トン」取扱ッテ居ッタ者ハ一圓ト
スレバ一萬圓、五千「トン」取扱ッテ居ッタ者
ハ五千圓、ソレヲ殘ッタ人ガ負擔シテ出ス
ト云フヤウナ立前ニヤッテ居ッタノデアリマ
ス、是ハ勿論業種ニ依リマシテ、業態ニ依
リマシテ、或ハ地方ニ依リマシテ一樣デハ
ナカッタノデアリマス、或者ハ過去ノ營業利
益ノ大體三年分位ヲ見テ居ルトカ、或ハ一
年分位ヲ見ルトカ、業態業種ニ依ッテ、地
方ニ依ッテ必ズシモ一樣デハナイノデアリ
マンク。此ノ實績補償金ノ、此ノ實績補償ノ
共助金ノ性質ハ一種ノ營業權ノ補償ミタヤ
ウナ意味ヲ有ッテ居リマスノデ、更生金庫ガ其
ノ轉廢業シタ人ノ財產等ヲ時價デ評價シ、
更ニ營業權的ナ觀念ヲ認メマシテ、過去ノ一
年、三年間ノ平均シタ利益ヲ一割デ還元シ
タモノヲ見テ買取ルコトニナッテ居リマスガ、
此ノ中ニハ當然營業權的ナ意味ノ補償ガ入ッ
テ居ルノデアリマス、從ヒマシテ實績補償
ヲ此ノ同業者ガ共助金ヲ出シタ額ト云フモ
ノハ、將來更生金庫ガ營業權的ナ意味ニ於
テ財產ヲ引取ル場合ニ於テ、之ヲ斟酌スル
ト云フコトニ建前ガナッテ來テ居ル譯デアリ
マス、マアサウ云フ建前デ進ンデ來テ居ル
ノデアリマスガ、是ハ言フ迄モナク同業者
ノ同業共助ノ精神ノ現レデアリ、又私ハ其ノ
意味ニ於テ成ルベク此ノ殘ル人ガ、殘存業
者ガ其ノ力ガアル限リニ於テハ一ツ自分達
モ負擔シテ、轉廢業者ニ實績ヲ補償シテ行
クト云フコトハ、私ハ非常ニ良イ仕組デア
ルト思フノデアリマス、併シナガラ實績補
償ヲスル力ガナク、又其ノ實績補償ヲスル
爲ニ、特ニ取扱物資ニ對シテ、何カ統制量
ミタヤウナモノヲ割當テマシテ、物價ヲ高
クシテデナケレバ返セナイ、ソレヲ積立ッテ
デナケレバ補償ガ出來ナイト云フヤウナ、
殘存スル人ノ力以上ノコトヲ要求スルト云
フコトハ是ハ隨分無理デアルト思ヒマス、
ソレデ從來更生金庫ガ、是等ノ實績補償ノ
共助金等ニハ、貸出ヲシテ居ルノデアリマ
スガ、此ノ貸出ヲスル場合ニ於キマシテ、
政府ハ利子ハ補給補償シテ居リマスガ、元
金ハ是ハ取立テナケレバナラナイ、卽チ殘存
業者ガ一時更生金庫カラ借入スルケレドモ、
是ハ或年賦デ以テ返サナケレバナラヌト云
フ金ナンデス、處ガ其ノ實力ノナイ所ノ借
金ヲ負フト云フト、殘存シタ人ガ將來非常
ニ困ッテ來ルト云フヤウナ狀況モアリマス
ノデ、是ハ飽ク迄同業者ノ實力ノ範圍內ニ
於テ、負擔能力ノアル限リニ於テハ一ツ出
シテ貰ヒタイガ、ソレヲ越エテ出スト云フ
ヤウナコトヲ指導スルコトハ、又ソレヲ强
制スルヤウナコトハ適當デナイト斯ウ考ヘ
テ、今度ノナニニ於キマシテハ實績補償ノ意
味ノ共助金ニ付テハ、殘存業者ノ實力ガ許
ス限リニ於テ之ヲヤルト、ソレヲ越エテハ
ヤラヌト云フ建前ニ致シタ譯デアリマス、
多少從來モサウ云フ實際ハ建前デアッタノ
デアリマスガ、取扱カラ云フト、多少「ルー
ズニナッテ居ル嫌ガアルト思ヒマス、其
處ヲハッキリスル譯デアリマシテ、其ノ結
果トシテ從來轉廢シタ人ガ貰ッタモノトド
ウ云フ風ナ關係ニナルカ、元ハ良カッタガ
今度ハ惡イトカ、元ハ惡カッタガ今度ハ良
イト云フ結果ニナルト云フヤウナコトハ餘
リ望マシクナイノデ、成ルベク權衡ヲ失セ
ナイヤウニシテ行カナケレバナラヌト思ヒ
マスガ、先程申上ゲマシタ通リ、更生金庫
ガ後デ財產ヲ引取リマス時ニ、營業權的ナ
利益ヲ補償スルコトヲ加味シテ其ノ財產ヲ
引取ッテ居ルノデアリマス、結局手取ニ付
キマシテハサウ多クノ差違ヲ生ジナイヤウ
ニ持ッテ行クコトガ出來ルダラウト斯ウ思ッ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=42
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043・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 此ノ際御了
解ヲ得テ置キタイコトガアリマスガ、此ノ
委員會ニ於キマシテ御發言ニナリマシタ數
字ニ付キマシテ、若シ是ガ必要ガアリマシ
タ場合ニハ速記錄カラ削除致シマスト云フ
コトヲ委員長ニ御委セヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、御異存ゴザイマセヌデスカ、ソレデハサ
ウ云フコトニ取計ラヒマス、續イテ御質問
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=43
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044・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ本案ノ浮動購買力ノ發
生ヲ防止スルコトニ關シマスル方策ノ中心
ト致シマシテ、一一、三ノ點ニ付テ大藏大臣
ニ御尋ヲシタイノデアリマス、此ノ浮動購
買力ノ發生ヲ防止スル趣旨ノ規定ト致シマ
シテハ、此ノ工業設備ヲ買收致シマシテ支
拂ヲスル、最後ノ決濟トシテ現金ヲ拂ハナ
イデ、色々ナ方法ガ設ケテアルノデアリマ
スガ、此ノ場合ニ會社殊ニ株式會社ノ設備
ヲ買ヒマシタ場合ニ、其ノ會社ガ設備ノ全
部ヲ賣渡シテ、普通ナラバ解散ヲ致シマス
ト云フヤウナ狀況ニナッタ時ニハ、解散ヲ禁
止シテ、唯債權ヲ保有スル目的ノミデ存續
セシメルト云フ趣旨ニナッテ居ルノデアリ
マスガ、此ノ場合ニ付キマシテ今朝大臣ノ
御說明ノ中ニモ、是ハ必ズシモ解散ヲ誘致
シナイデモ、支拂ノ代金ヲ國債ナリ或ハ社
債デ交付スルナラバ解散セシメテモ宜イン
ヂヤナイカト云フ見方モアルケレドモ、國
債社債等ニスルト、是ハ現金ニ變リ易イカ
ラ矢張リ浮動購買力ヲ發生スル虞ガアル、
從ッテ解散ヲ認メナインダ、斯ウ云フ御說明
デアッタノデアリマスガ、ソコデ其ノ解散ヲ
禁止シマシタ場合ト、普通ノ成行ニ任カシ
テ解散ヲ認メタ場合ニドウ云フ相違ガアル
カト云フコトヲ考ヘテ見マスト云フト、解
散ヲシナイデ置キマスレバ株主ハ從前通リ
ニ各自銘々株式ヲ持ッテ居ル、若シ國債、社
債ヲ交付シテ解散ヲシマシタ時ニハ、其ノ
會社ノ殘餘財產ノ分配トシテ、其ノ株主ハ
自分ノ株式ノ代リニ國債ヲ所有スル、是ハ
現行ノ商法ノ儘デ置キマスレバ、其ノ國債
ヲ換價シテ金デ分配スルコトニナリマスケ
レドモ、其ノ點ハ特別ノ規定ヲ設ケテ、國
債其ノモノデ分配ヲ命ズルコトガ出來ルノ
デアリマスカラ、假ニサウ云フ方法ヲ執ッタ
トシテ考ヘテ見マスルト、其ノ差違ハ何處
ニアルカト云フト、株式ガ變ッテ國債ニナッ
タト云フダケノ違ヒニナルノデアリ
マスガ、然ラバ株式デ持ッテ居レバ浮動購
買力ハ增サナイガ、國債ニナレバ浮動購買
力ガ增スカト云フコトヲ考ヘテ見マスト、
ドウモ其ノ點ハ私共素人デ能ク分リマセ
ヌケレドモ、ドウモ大シタ差ガナイノデナ
イカト思ハレルノデアリマス、却テ國債ニ
ナリマスルト、國債ノ方ガ、澤山纒メテ金融
機關カラ金融ヲ得ヨウトシマシテモ其ノ方
ガ却テ困難デ、株式ノ方ガ場合ニ依レバ金融
ハ得易イト云フコトモアリ得ルノデハナイ
カ、又現ニ株式デアリマシテモ多數ノ人ハ
株式ヲ金庫ニ藏ッテ置クノデハナクシテ、實
際ハソレヲ金ニ換ヘテ融通ヲシテ居ルノデア
リマスカラ、ソレガ國債ニ變ッタ所ガ同ジ
コトデハナイカト思ヒマス、若シ株式デ金庫
ニ藏ッテ置クヤウナ人デアリマスナラバ、
國債ニ變ッテ見タ所デ矢張リ金庫ニ藏ツテ置
ク人デ國債ニナッタカラ直グソレヲ金ニ換
ヘルト云フコトハナイノデハナイカ、況ヤ
事業ヲヤッテ居ル間デゴザイマスレバ、株
式ト國債トハ其ノ價格ノ安全率ニ於テ相當
ノ差違ガアリマスケレドモ、只今ノヤウニ
事業ヲ止メテシマヒマシテ、國債コソ貰ヒ
マセヌガ、政府ニ對スル貸金トシテ一定ノ確
定シタ利息ノ支拂ヲ受ケテ居ルト云フコト
ニナリマスレバ、其ノ債權ヲ代表シタコト
ニ株式ガナルノデアリマスカラ、株式其ノ
モノガ實質ニ於テハ國債ト少シモ相違ガナ
イコトニナルダラウト思ヒマス、サウシマ
スルナラバ、殊更ニ仕事ヲシナイ、普通ナ
ラバ解散ヲシテシマフ會社ヲ解散セシメズ
ニ置イテ、色々ナ面倒ナ手數ヲシナクテモ、
其ノ買收代金ヲ國債ナリ社債ナリデ拂ッテ
解散ヲセシメテモ大差ナイデハナイカト云
フ考ガアルノデアリマスガ、先ヅ其ノ點ニ
付テノ御考ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今仰セニナリ
マシタヤウナ考ヘ方モ出來ルノデアリマス、
是ハ色々ノ面カラ觀察シナケレバナラヌ實
際問題デアル、大體今迄株式ヲ持ッテ居リ
マスヤウナ人ニ、株式ニ換ヘテ公債ニナリマ
スト、國債ハスグ賣リタガル、是ハ實際其
ノ通リデアリマス、ソレナラバ今岩田委員
ノ仰セニナルヤウニ、株式ノ形デ置クケレ
ドモ、サウ云フ會社ノ株式ハ確定利附ノ公
債ト同ジデハナイカ、是ハ私ハ確カニ理窟
ダラウト思ヒマス、併シソレナラバスグ賣
飛バスカ、其處ニハ矢張リ實際ニハ相當ノ
差違ガ起ルト思フ、又殘存會社ハ時局緊要
產業ニ投資スル、斯ウ云フコト、又事業其
ノモフヲ營ム機會、是ハ矢張リ殘シテアル
譯デアリマス、其處ニモ違ガアル、ソコデ
ソレハ事業ヲ營ム會社ヨリハ株トシテノ
面白味、特色ト云フモノハナクナリマスケ
レドモ、今遽カニ確定利附證劵ニ換ヘタヨ
リハ變動ノ起リ方ハ非常ニ少イト思フ、ソ
レカラ一方戰時ノ大キナ金融政策ト致シマ
シテ、御承知ノヤウニ非常ニ巨額ノ公債ガ
出マス、而モ此ノ公債ノ法律上ノ流動ノ自
由ハ其ノ儘認メテ置キマシテ、然ラバ流動
スルコトガ希望カト云フト希望ヂヤアリマ
セヌ、希望デナイガ故ニト申シテモ、逆ニ
流動性ヲ法律上失ハセマシテハ宜シクナ
イ、是ハ必要ナ時ニハ自由ニ流動性ヲ持チ
ナガラ、ソレ故ニ人ガ安心ヲシテ流動セシ
メナイト云フ、斯ウ云フ要求カラ來テ居リ
マシテ、決シテ一時ニ巨額ニ賣出サレルコ
トヲ歡迎シテ居ルノデハナイノデアリマ
ス、法律上轉々流通スルコトガ性格デアル
トスルナラバ、多ク轉々流通シテ宜イノデ
ハナイカト云フノハ法律論デアリマス、法
律上流通ヲ認メ、實際上ハ大ナル所有者ノ
移動ナシニ、寧ロサウ云フコトニナルコト
ヲ狙ッテ政策ヲ行ッテ居リマシテ、大體今
日迄ハソレデ行ッテ居ルノデアリマス、其
處ニ大體ニ於キマシテハ心理的ニ申シマ
シテモ確定利附證劵デハ面白クナイ方面ヲ
持ッテ居リマス所ニ、確定利附證劵ト云
フ顏ヲ張ッタ其ノモノヲ今何十億渡スト云
フコトハ、是ハ餘程ノ冒險ダラウト思ヒマ
ス、現在ノ戰時ニ於テ少シデモ此ノ資金ノ
流動ト云フコトニ關シマシテ、其ノ自然性
ヲ持タセナガラ而モ赴ク所ハ戰時ノ資金統
制ノ要求ニ副フヤウニ持ッテ行クト云フ、
此ノ見樣ニ依ッテハ危ナイ、而モ重大ナ匙
加減デアリマス所ニ、何ト云ッテモ確定利
附證劵ノ形ニ於テ何十億出スト云フ勇氣
ハ私ハ持チ合セナイノデアリマス、ソレ
ガ爲ニ、今岩田サンノ仰セラレルヤウナ面
モ考ヘラレマスケレドモ、是ハ矢張リ此ノ
形デヤルノガ現在トシテハ適切デアル、ソ
コデ此ノ確定利附證券ニ類似シタガ如キ株
劵ガ、是ガ動キマシテモ、其ノ動キガアル
コトト、之ヲ確定利附ノ國債其ノモノデ渡
シテ其ノ證劵ガ動キマスコトトハ、戰時ノ
資金統制上非常ナ差ガアル、ソコヲ狙ッテ斯
ウ云フ制度ニ致シマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=45
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046・岩田宙造
○岩田宙造君 只今ノ御說明ハ私ハ實ハ十
分納得シ兼ネルノデアリマス、ドウモ現在
仕事ヲ盛ニヤッテ居ル會社ノ株式デゴザイマ
スルナラ、確定利附ノ國債トハ餘程ソレニ對
スル持ッテ居ル人ノ感ジガ違フト思ヒマス
ガ、只今申シマシタヤウニ、モウ仕事ヲ止メ
タ會社ノ株式ニナリマスト、唯政府カラ一定
ノ時期ニ貰ッタ利息ヲ配當スルダケノコトニ
ナルノデアリマスカラ、ドウモ其ノ間ニ只今御
說明ニナリマシタヤウナ差違ガアルトハチ
ヨット考ヘラレナイノデアリマス、其ノ點ハ
姑ク措キマシテ、其ノ次ノ點ヲ御尋ネ致シ
タイノデアリマスガ、此ノ會社特ニ株式會
社デアリマスガ、株式會社ノ其ノ所有營業
設備ノ全部ヲ賣渡シマシタヤウナ場合ニ、
全部デナクテモ其ノ大部分ヲ賣渡シマシ
テ營業繼續ノ希望ガナイト云フ場合ニハ
普通ナラバ解散ヲスルノデアリマスガ、其
ノ解散ハ此ノ規定ノ何條カデ認メナイコト
ニナッテ居ルヤウデアリマス、併シ此ノ規定
ヲ見マスト、ソレヲ禁止シテアルノハ、唯
定款ニ定メタ解散ノ事由ガアッテモ、ソレニ
依ッテハ解散ヲ認メナイ、又株主總會ノ決
議デ解散ヲシテモ、ソレハ認可ヲ經ナケレ
バ效力ガナイ、又定款ニ存立期間ガ定メテ
アッテモ其ノ滿了ニ依ッテハ當然解散ヲシナ
イト云フヤウナ規定ダケガ見當ルノデアリ
マスガ、今一ツ定款ノ規定デモナク、株主總
會ノ決議デモナク、法律上當然解散ヲ來ス
場合、卽チ營業設備ノ全部ニ近イモノヲ賣
渡シマシタ場合ニハ、商法ノ規定ニ依ッテ
當然會社ハ解散ヲ來スノデアリマスガ、其
ノ場合ハ此ノ規定ニハチヨット漏レテ居ル
ノデハナイカト云フヤウナ氣ガスルノデア
リマス、其ノ點ハドウ云フ御考デアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=46
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047・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 前囘ノ御質問ニ
モウ一度御答ヘ申上ゲマス、本法律ハ浮動
購買力防止ニ關聯シマシテ、經濟秩序ノ維持
ト云フコトヲ主眼ニ致シテ居リマス、浮動
購買力ノ見地カラ國債證劵ト、此ノ場合ノ
殘存會社ノ株劵ヲ賣ルカ賣ラヌカト云フコ
トニ付キマシテハ、何ト申シマシテモ、ソ
レガ株劵ノ形デアルノデ、明白ニ國債證劵
ニ切替ヘラレルノトハ、私バ相違ガアルト
思ヒマス、ソレカラ殘存會社ガ事業ヲ爲シ
得ル希望ガアルト云フコトニモ相違ガアル
ト思ヒマス、其ノ上ニ今申シマシタヤウナ
多額ノ國債證劵ノ發行サレマス場合ニ、今
後益〓多額ニ發行シナケレバナラヌ場合ニ、
其ノ國債證劵ガ賣ラレルト云フコトト、殘
存會社ノ株劵ガ賣ラレルト云フコトハ、戰
時ノ經濟秩序ノ維持ニハ非常ナ、重大ナ相違
ガアルト思フノデアリマス、此ノ點ヲ御承
知ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、次ノ御
尋ノ點ニ付キマシテハ一ツ政府委員ヨリ御
答ヲ申上ゲタイト思七マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=47
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048・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 第十七條ニ會社
ノ營業ノ全部ノ讓渡ハ政府ノ認可ヲ受クル
ニアラザレバ其ノ效力ヲ生ゼズト、斯ウ書
イテゴザイマシテ、今御質問ノ場合ハ、營
業ノ全部ノ讓渡自體ヲ認可ニ掛ケテ居リマ
ス、認可ヲ受ケナケレバ營業ノ全部ノ讓渡
ハ起ラナイ、從ッテ自然ニ解散スルコトハ
ナイ、斯ウ解釋シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=48
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049・岩田宙造
○岩田宙造君 無論政府ガ買收サレルヤウ
ナ場合ヲ考ヘマスルト、其ノ全部ノ讓渡ニ
付テノ認可ノ問題ハ問題ニナラヌノデアリ
そく、假ニ形式的ニ云ヘバ、認可ハアリマ
セヌデモ、其ノ實質ニ於テハ認可アルト同
ジコトデアリマスルシ、ノミナラズ假ニ
認可ト云フ形式ヲ得ルニシテモ、是ハ讓渡
ニ付テノ認可デアリマスカラ、其ノ讓渡ニ
付テノ認可ヲ得テ、政府ナリ產業設備營團
ニ賣リ渡シテシマヘバ、ソレデ當然解散ヲ
來スノデアリマスカラ、ソレデアリマスカ
ラ私ノ最初ノ質問ハ矢張リ依然トシテ殘ル
ト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=49
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050・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 其ノ場合、次ノ
第十八條ノ條文ヲ適用致シマシテ、定款ノ
變更ヲ命ズルナリ、或ハ目的ノ變更ヲ命ズ
ルナリ致シマシテ、先ヅ會社ヲ存續スベキ
狀態ニ置イテ置イテ、卽チ營業ノ全部ノ讓
渡ト云フコトガ起ラナイ狀態ニシテ置イテ
認可ヲスルト云フ考デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=50
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051・岩田宙造
○岩田宙造君 ソレハマア非常ナ手數ナ話デ
アリマシテ、サウ云フコトヲ爲サラヌデモ、其
ノ場合ニモ解散ヲシナイト云フコトニスレ
バ宜イノデアッテ、ワザ〓〓ソレガ爲ニ定
款ヲ變更スルト云ウテ見タ處ガ、其ノ會社ノ
營業ハ此ノ整備ノ爲ニ廢メテ、サウシテ全
部ヲ讓渡サスト云フ場合ニ、其ノ會社ニ又
存續スルヤウナ定款ノ規定ナリ、或ハ又設
備ヲ何處カラカ買取ッテ殘シテ置イテ、サウ
シテ從來ノ設備ノミヲ買收スルト云フマア
ソンナコトハ、、詰リ此ノ法律ガ出來テ、缺點
ガアル場合ニソレヲ補フ途トシテハ、ソレ
モ一ツノ方法カモ知レマセヌガ、今法律ヲ
作ラウト云フ時ニ、サウ云フコトニ依ルン
ダト云フコトハ理由ガナイヤウニ思フノデ
アリマスガ、如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=51
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052・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 法律ヲ作リマス
時ニ色々審議ヲ致シタノデアリマスガ、只
今モ御說明申上ゲマシタヤウナコトデ處理
ヲ致スコトニ決メタ譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=52
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053・岩田宙造
○岩田寅造君 マア只今ノ點ハ、後ハ議論
ニナリマスカラ其ノ程度ニシテ置キマシテ、
今一ツハ此ノ資金ガ封鎖サレマシタ場合
ニ、其ノ封鎖ノ儘デハ今後ノ三十五億ト云
フヤウナ大キナ資產ノ其ノ大部分ハ恐ラク
株式會社其ノ他ノ會社ニ屬スルモノト考ヘ
マスカラ、ソレガ封鎖ノ儘デアッテハ一般
ノ金融ニ重大ナ影響ヲ及スト云フコトハ先
刻大臣モ御說明ノアッタ通リデアリマシテ、
其ノ封鎖ノ一部又ハ全部ヲ解除スル方法ト
シテハ、ソレノ拂戾或ハ擔保ニ提供スルコト
ニ付テ政府ノ許可ヲ得テ出來ル途ガ開イテ
アルト云フコトデアッタノデアリマス、ソレ
ハサウ云フ風ニ出來テ居ルヤウデアリマス、
併シナガラソレハ設備ノ一部ヲ賣渡シマシ
テモ、尙他ノ事業ヲヤッテ居ル場合ニ付テハ
行ハレルコトダト思フノデアリマス、併シ
ナガラ一部ノ設備ヲ賣渡シテモ、尙他ノ事
業ヲヤッテ居ルヤウナ會社デゴザイマスナ
ラバ、實ハ其ノ賣渡シタ一部ノ代金ガ封鎖サ
レルト云フコトハ、其ノ會社ニ取ッテハ實ハ
重大事件デアルノデナイカト思フノデアリ
やっく、モウソレデ營業ヲ止メテシマフノデ
アリマステラバ、ソレハ封鎖サレテモ差支
ナイノデアリマスガ、仕事ヲヤッテ居ル場合
ニハ其ノ一部ヲ賣渡シテモ、ソレヲ以テ又
代ル仕事モシナケレバナラヌト云フ場合ガ
アルノデナイカト考ヘマスルガ、マア其ノ
點ハ暫ク措キマシテ、實際問題トシテハ
其ノ資產ガ封鎖サレルト云フ場合ノ多クハ
全部若シクハ全部ニ近イモノヲ賣渡シテ、
其ノ會社ハモウ仕事ヲ止メテシマッテ居ル
場合ガ多イノデアラウト思フノデアリマス、
サウ云フ場合デゴザイマスルト云フト先
刻御說明ノヤウニ、他ニ借金ガアルトカ、退
職資金ヲ交付スルトカ云フヤウナ必要デ、其
ノ一部ノ解放ヲスルト云フコトハ考ヘラレ
ルノデアリマスガ、併シ其ノ解放モ實際解
放ノ意味ノアリマスル解放ハサウ云フ借金
ヲ返ストカ、或ハ退職資金ヲ拂フトカ云フ
コトデハナクシテ、其ノ封鎖サレタ資金ガ
積極的ニ又有效ニ利用サレル意味デ解放サ
レルト云フコトニ主タル意義ガアルノデア
ラウト思フノデアリマス、供シナガラ全部
營業ヲ止メテ、サウシテ資金ガ封鎖サレテ居
ル、サウ云フヤウナ會社ニ付キマシテハソ
レヲ願出デテ、其ノ封鎖ヲ解イテ貰フ理
由ガ寧ロナイノデハナイカト思フノデアリ
マス、尤モ是ハサウ云フ一ツノマア睡眠會
社トモ申シマスカ、唯債劵ダケヲ持ツテ居
ル會社ヲドウ云フ風ナ會社トシテ殘スカト
云フコトニ依ッテモ違フノデアリマシテ、私
ガ今想像致シマスルノハ、サウ云フ會社ハ
唯持株會社ミタヤウナ、其ノ貸金ノ利息ノミ
ヲ株主ニ配當シテ、サウシテモウ機關モ總テ收
縮シテ、モウ事業會社ノ實ハナイ、唯其ノ債權
ダケヲ持ッテ居ッテ、其ノ利息ヲ受取ッテ配當スル
ダケノ會社トシテ殘ルモノデアルト云フ頭デ御
尋ヲシテ居ルノデアリマスガ、又サウ云フ
風ニ案モ出來テ居ルヤウニ考ヘルノデゴザ
イマス、サウ云フ會社デゴザイマシタナラ
バ、ソレヲ解放シテ貰ッテ拂渡シテ貰フト云
フ政府ニ申請スル理由ハナイヤウニ私ハ考
ヘルノデアリマス、デアリマスルカラ、結
局其ノ會社ノ資金ト云フモノハ封鎖サレタ
儘デ、解散ノ時期迄持越ス外ハナイト云フ
成行キニナルノデハナイカト思フノデアリ
マスガ、其ノ點ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=53
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054・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 此ノ問題ハ國家
全體ノ資金ノ問題ト、各會社ナリ、其ノ人
達ノ資金ノ動キト云フ問題、觀點ガ二樣カ
ラ考ヘナケレバナラヌ問題ナノデアリマス、
經濟的ニ申シマスト、設備ノ受取代金ヲ全
部封鎖スルト云フコトガ、國家的ニ宜イノ
デアリマス、何トナレバ見合ノ物資ノ新シ
イ生產ガ無イカラ、ソコヘ金ダケ動キマス、
金ガ動ク時ニハ、必ズ物資ノ購買力ガ生ズ
ル、ソレデアリマスルカラ、新規ノ會社ヲ
設立シテ、時局ニ必要ナル會社ヲ設立シテ
行クト云フ資金ニハナラナイ性質ノモノデ
アリマス、經濟上······、ソレカラソレガ活動
シタラ國家ニ害ガアル、國家ハ何故ニ資金
調整法ヲ創立スルカ、是ハ要スルニ國家ガ
利用シ得ベキ全物資、全勞力ヲ計畫的ニ使
ヒマシテ、戰爭ニ勝ツ爲ニ、必要ナラザル
方面ニハ一切ノ事業ヲ興サヌ、資金ヲ使ハ
サヌ、斯ウ云フ觀點、必要ナ面ニハ必要ナ
ダケ使ハセルト云フ觀點、ソレデ戰力ニ集
中スルノデアリマス、必ズ積極面ト消極面
ト相應ズル點、新タナル生產行爲、物資勞
力ヲ生ミ出サナイ會計ノ下ニ資金ガ製造サ
レマスノハ、單ナル印刷機械ガ製造スル資
金デアリマス、國家全體ノ金ノ動キノ見合
ト致シマシテ、サウ云フ方策デドウシテモ
行カザルヲ得ヌ、從ッテ今囘ノ假ニ設備ノ移
動ガ全部現金デ出マシテ、是ガ所謂貯蓄ノ
增强方策ニ依ッテ吸收スルト致シマスト、
是ハ今ノ二百七十億ノ問題以外ニナッテ居
リマス、生產ノ無イモノガ動イテ居ルノデ
アリマス、ソレガ生產ガアル場合ノ資金ノ
動キノ見返リニハナラナイ性質デアリマス、
從ッテ或一ツノ會社ガ半分ノ事業ヲ賣渡シテ
來タ、半分ガ殘ッタト云フ場合ニハ、封鎖シ
テ一向差支ナイ、何等カノ形デ其ノ事業ガ
增資ヲシナケレバナラヌト云フノナラバ、
是ハ國家的ニ必要ヲ認メル、其ノ意味デ增
資ヲ許セバ宜イノデアリマス、運轉資金ガ
必要ナラバ、ソレヲ認メレバヨイノデアリ
マス、唯次ニ起ル問題ハ斯カル國家的ノ資
金ノ總量、物資ノ總量ト云フモノヲ按配シ
マス上ニ、各事業每ニ企業者每ニ按配スル
觀點ニ立タナケレバナリマセヌ、其ノ意味
カラ申シマスルト一方ニ資金ノ蓄積ヲサ
レマス場合ニハ、今ノ封鎖資金ヲ同額ダケ
解放シマシテ、國家ノ全體ノ資金計畫ハ少
シモ差支ナイノデアリマス、斯ウ云フ觀點
カラ行キマスルト云フト、大體整備サレル
企業者ハ氣ノ毒ナ立場ト見ナケレバナラヌ
ノデアリマスカラ、サウ云フ場合ノ資金ヲ
解放シテ行ッテ、サウシテ別ニハ生產ヲ背景
トスル貯蓄ガ相當デ、斯ウ云フ操作ヲヤッテ
行ケバ宜イ、別言スレバ、サウ云フ方面ノ
投資ヲソレダケ狹メレバ宜イ、サウ云フ觀
點ニナリマスルカラ、斯カル封鎖サレタ資
金ヲ持チマスル會社ガ戰爭ニ有效ナル事業
ニ投資ヲナサムトスルコトハ、其ノ限度ニ
於テ認メテ宜シイト思フノデアリマス、是
ハ要スルニ戰爭ニ有效ナル企業ニ對スル投
資ト云フコトヲ何人ニ認ムルカノ問題デア
リマス、資金ノ總量カラ云ヘバ封鎖スベキ
金額デアリマス、其ノ金額ヲ大體其ノ時ニ
依ッテ封鎖シタノデアリマスルガ、併シソレ
ガ國家的重要產業ヲ營ム場合ニハ、先ヅサ
ウ云フ人ノ方ニ投資ノ希望ヲ與ヘルト云フ
コトガ必要デアラウト思フノデ、開放ヲ認
メルノデアリマス、ソレデ一應債權ノ保有
會社ノヤウニナリマシテ、重役ノ株モ少ク
ナリ、又ソレモ殆ド形式的ノ報酬シカナイ
ヤウニナリマス、事務ハ債權ノ利子ヲ取
立テテ之ヲ株主ニ配當スルト云フヤウナ、
簡單ナ決リ切ッタコトニナリマスルノデ、信
託會社ニ賴ンデ行キマスレバ、一應今仰セ
ノヤウナコトニナルト思ヒマスガ、是等ノ
重役ヤ株主ガ從來ノ經驗ヲ持ッテ居リマス
ルシ、目下ノ戰時中ニ於ケル產業、生產擴
充計畫、サウ認メル計畫、資金調整法デ認
メラレル事業ヲ自分ガ營ミタイト考ヘマス
時ニ、ソレガ適當デアリマスレバ、其ノ定
款ヲ改正シテ新タニ仕事ヲ始メルコトヲ認
メルノヲ拒ム理由ハナイト思フノデアリマ
ス、又自ラ事業ヲ營ミマセヌデモ、斯カル
株式ニ投資シタイト云フ場合ニハ、之ヲ認
メテモ宜イ場合ガ多カラウト思フノデアリ
マスルカラ、サウ云フ希望ヲ持タス途ヲ明
ケテ置ク、又明ケテ置ケバ、之ヲ實行致シ
テ差支ヘナイ場合モ想像サレマスノデ、其
ノ途ヲ明ケテヤリマス、斯ウ云フ次第デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=54
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055・岩田宙造
○岩田宙造君 モウ一ツ、只今ノヤウナ保
有會社ニナリマシタ場合ニ、其ノ會社ノ存
續期間ニ付テハ何カ御定メニナル御豫定デ
アリマセウカ、ソレガ一ツト、今一ツ、此
ノ買收設備ガ擔保ニ入ッテ居ッタヤウナ場
合ニハ何等其ノ擔保權者ノ權利ヲ保護スル
ヤウナ規定ガドッカニ設ケラレルノデゴザ
イマセウカ、其ノ二點ダケヲ最後ニ御尋ネ
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=55
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056・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 初メノ御尋ノ問
題ニ對シマシテハ、本法ニ依リマスルト、
特殊決濟ノ方法ニ致シマシテモ、其ノ期限
ノ何時迄ニ致シマシタラ宜イカト云フ必
要性ニ至リマシテハ、今後戰爭ノ繼續ノ狀
況及ビ戰後ノ狀況ニモ依リマスルシ、今カ
ラ豫定ハ致シ兼ネル所デアルノデアリマス、
併シナガラ一應ノ區切リヲ附ケナケレバナ
ラナイノデ、或ハ十年デアリマスルトカ、
五年デアリマスルトカ、サウ云フ期限ヲ決
メタイト思フノデアリマス、從ヒマシテ所
謂仰セニナリマスル殘存會社ノ存立ニシマ
シテモ、一應何年ガ適當力、期限ヲ切リマ
シテ、其ノ切リガ參リマシタ所デ後ノ處置
ヲ考ヘル、モウ一遍ソコデ考ヘ直サナケレ
バナラヌ事態ガ殘ルト思フノデアリマス、
新タナル立法モ亦必要ト致スカモ知レマセ
ヌ、ソレカラ後ノ處理物件ガ擔保ニ入ッテ居
リマスヤウナ場合、其ノ外債權債務ナドノ
關係ガアリマシテ之ヲ處理スルニ非ズンバ、
設備ノ讓渡等ガ圓滑ニ行ハレナイト云フ場
合モ想像サレマスノデ、何條デアリマシタ
カ、之ニ關シマシテ必要ナ指示ヲ與へ、指
示通リ實行致シマシタ場合、若シモ當事者
ノ損失ガ生ジマス場合ニ、國家ガ補償スル
ト云フ規定ヲ設ケテアルノデアリマス、尙
是ハ政府委員ヨリ補足致シテ說明ヲ致サセ
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=56
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057・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 讓渡致シマシダ
モノガ擔保權ノ目的デアリマス場合ニハ、
其ノ替リ金ヲ封鎖致シマシタ場合ニハ封鎖
シタ債權ノ上ニ擔保權ガ移ル、通常ノ民法
ノ原則ニ依ッテ考ヘル、斯ウ云フ風ニ考ヘマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=57
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058・岩田宙造
○岩田宙造君 擔保ノ目的ニナッテ居リマス
ル物權ガ賣買ヲサレマシテモ、擔保權ハ當
然消滅致シマセヌカラ、直グ其ノモノノ上
ニアッタ擔保權ガ替リ金ノ債權ノ上ニ移ッテ
來ルト云フコトハ、何等カノ規定ガナケレ
バサウハナラヌノヂヤナイカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=58
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059・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) チヨット言葉ハ
足リナイヤウデアリマシタガ、其ノ場合ノ
擔保ノ問題ハ、一般民法ノ原則ニ依ッテ解決
スルト云フコトニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=59
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060・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ一般民法ノ規定ニ依ル
ト云フコトニナリマスルト、此ノ企業整備
ノ目的ヲ達スル上ニ非常ナ障碍ガアルト考
ヘマシテ、ソレデ民法ノ規定ニ何等カ特別
ノ規定ガ設ケラレルノデハナイカト思ッテ
伺ッタノデアリマスガ、ソレハサウ云フ虞ガ
ナイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=60
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061・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 其ノ點ガゴザイ
マスルノデ、只今大臣ヨリ答辯致シマシタ
通リ、第二十四條ノ規定ニ依リマシテ、條
件、擔保等ノ調整ニ關シ必要ナル指示ヲナ
スコトヲ得ト云フ規定ヲ設ケテ、之ニ依ッテ
適當ニ解決ヲシテ行ギダイ、當事者ノ合意
ニ依ッデ解決ヲシテ行キタイ、斯ウ思ッテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=61
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062・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ此ノ二十四條デハ、ソ
レハ解決出來ナイト思フノデアリマスガ、
私ノ質問トシテハ是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=62
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063・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) ヂヨット私ハ法
律的ノ〓究ガ、或ハ不十分デアルカモ知レ
マセヌガ、第二十四條ニ依リマシテ、先ヅ
擔保權ヲ持ッテ居ル債權者カラ擔保ヲ拔グ
話ヲ致シマシタ、是ハ直グ替リ金ガ來マシ
タラ、之ヲ直グ資金化スルト云フコトデ返
セマス、斯ウ云フコトデ話ノ了解ガ付クト
思ヒマス、殊ニ二項ニ於キマシテ、損失ヲ
被ッタ場合ニハ政府ガ保障スルヤウニ致シテ
居リマスルカラ、擔保權者ハ安心シテ拔キ
得ルヤウナ、サウ云フ情勢ト云ヒマスカ、
實際上ノ運用デヤッテ行キタイト云フヤウ
ナ考ヘ方ヲ致シテ居ルノデアリマス、法律
上ノ强制的ニ萬全ヲ期スルカト申シマスル
トソレハ當事者ガ聽キマセヌ場合ハ擔保
權ハ其ノ儘殘ッテ參リマスルガ、實際ハ其ノ
場合ハ今申上ゲマシタヤウニ、元ノ債務者
ハ直グ金ヲ得ル場合デアリマシテ、其ノ金
ハ直グ銀行デ資金化シテ返セル、實際ニ返
セル見込ガアリマス、先へ擔保ヲ拔クト云
フコトダケガ、稍〓危險ヲ冒スヤウデアリマ
スガ、併シソレニハ政府ガ後楯ニナッテ居
リマスカラ、事實上支障ガナイト云フ、關
係立法ノ相談ノ時ニモ、見込ンデ居リマシ
タ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=63
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064・竹下豐次
○竹下豐次君 商工大臣ニ御伺ヒ致シマス
ガ、今囘ノ企業整備ニ依リマシテ重工業、
特ニ五大產業ニ重點ヲ置イテ、其ノ能率ヲ
出來ルダケ發揮スルト云フ御計畫デアリマ
スルガ、私共何ヨリモ先ニ伺ヒタイコトハ、
今度ノ企業整備ニ依リマシテ、此ノ五大產
業ノ能率ヲドノ程度ニ御擧ゲニナル見込ガ
アリマスカ、其ノ點ヲ若シ御差支ガナカッタ
ナラバ五ツニ分ケデ御說明ヲ御願ヒ致シタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=64
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065・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ點デアリ
マスガ、是ハ具體的ニ各產業ニ村テ申述ベ
ル事柄ハムヅカシイゴトト思ヒマスルガ、
本年ノ物動計畫及勞務動員計畫、又電力計
畫及生產擴充計畫等ノ諸計畫ニ付キマシテ
ハソレ〓〓此ノ緊要方面ノ第二種工業部
門ニ於ケル所ノ生產力、及其ノ生產力ヲ維
持スル爲ニ必要ナ勞務、資材等ヲ確保致シ
マス爲ニ、企業整備ニ依ッテ一定ノ勞務者
ノ數、又轉用スベキ一定ノ設備ノ量及屑鐵、
屑銅等ノ供出ニ依ル生產計畫、又此ノ企業
整備ニ依ル動力ノ關係ニ於テ、本年ノ生產
擴充計畫及物動計畫ト云フモノハ立テラレ
テ居ルノデアリマス、從ヒマシテ本年ノ此
ノ物動計畫及生產擴充評畫ニ於キマシテ、
鐵鋼、「アルミニウム」、石炭、航空機及船
舶ニ付テノ目標ト云フモノハ、第一種工業
カラ、其ノ他ノ部面カラ出テ參リマスル勞
務者、屑鐵、及ビ設備ノ轉用及ビ動力ノ
轉用ト云フコトヲ前提トシテ考ヘテ居ル譯デ
アリマス、從ヒマシテ是ガ出來ナケレバソ
レガ達セラレナイト云フコトニ相成ルノデ
アリマス、各產業別ニ具體的ニドレダケノ
何ト云フコトハ一應計畫ハアリマスケレド
モ、此ノ數字ニ付テハ此處デ申述ベル自由
ヲ持チマセヌ、是デ御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=65
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066・竹下豐次
○竹下豐次君 私厚生省ノ御方ニ御伺ヒシ
タイト思ヒマスガ、大臣デナクテモ宜シウ
ゴザイマスガ、アトデ又時間ガアリマシタ
ラ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=66
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067・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 厚生次官御
出席デスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=67
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068・竹下豐次
○竹下豐次君 商工大臣、大藏大臣ニ御質
問ノ方ガゴザイマシタラ、時間ノ都合モゴ
ザイマセウカラ、私ハアトデモ結構デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=68
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069・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 今直グデモ
宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=69
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070・竹内可吉
○竹內可吉君 委員長、宜シウゴザイマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=70
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071・竹下豐次
○竹下豐次君 ドッチデモ宜シウゴザイマ
ス、大臣ニ御尋デシタラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=71
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072・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) ソレヂヤ竹
內君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=72
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073・竹内可吉
○竹內可吉君 二、三ノ點ヲ御伺ヒ致シマス
ガ、先ヅ輸送計畫ヲ一ツ先ニ伺ヒタイト思
ヒマス、今囘ノ企業整備ハ少シ言葉ハ極端
デアリマスガ、一方デ破壞ヲ致シマスケレ
ドモ、ソレハ前ヨリモ一層有效ニ生產力ヲ
發揮サセヨウト云フノデアリマシテ、一方
ニ破壞スルガ、併シ一方ニ建設ヲスルノデ
アリマス、從ッテ其ノ間ニ手順ニ少シデモ
狂ヒガアリマシテハ、現在兎ニ角或程度ノ
戰時生產ヲヤッテ居ルモノデモ、今囘ハ之
ヲ廢メサセルモノガアルノデアリマスカ
ラ、其ノ手順ト云フモノガ餘程重要ナ關係
ガアルト思フノデアリマス、ソレデ先年來
行ハレテ居リマスル金屬囘收ノ例ガ我々ニ
色々ナコトヲ〓ヘテ居リマスガ、御承知ノ
通リ囘收物件ガ持運バレテ行ク迄ニ相當ナ
時日ヲ要シテ居ルト云フ例モアル、是ハ色
色原因ガアルノデアリマスガ、其ノ原因ノ
中ニハ、將來ハサウ云フコトハナカラウト
豫想サレルモノデアリマス、併シナガラ一
番大キナ原因ハ輸送上ノ支障ヂヤナイカト
斯ウ察セラレルノデアリマス、今度ノ整備
ハ非常ニ廣汎ナ、而モ短時日ノ間ニ之ヲオ
ヤリニナル、殊ニ其ノ囘收物件ガ從來ノヤ
ウナモノト違ヒマシテ、工場ノ設備ト云フ
ヤウナモノデアリマシテ、運搬上ハ更ニ一層
困難ガ加ハッテ來ルノデハナイカト思ハレ
ルノデアリマス、輸送力ノ今日ノ現狀カラ
見マシテ、之ニ付テハ餘程具體的ナ何カ御
計畫ガアルノデアリマセウカ、承ルコトガ
出來タラ大變仕合セト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=73
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074・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 今囘ノ企業整備ニ
依ッテ、企業整備ノ大キナ狙ヒノ一ット致シ
マシテ、大量ノ金屬囘收ヲ其ノ目標ト致シ
テ居リマス、而シテ此ノ金屬囘收ハ過去ノ
實例ニ鑑ミテ見マシテモ、此ノ計畫通リ之
ヲ囘收スルト云フコトニ付キマシテハ、色
色ナ困難ガアルノデアリマス、今御指摘ニナ
リマシタ輸送ノ間題ノ如キモ其ノ重要ナル
困難ノ一ツデアリマス、十六年、十七年ニ行
ハレマシタ金屬囘收、是ハ主トシテ各家庭
及指定施設等ニ付テ行ハレタノデアリマス、一
部ハ工場ノ產業設備ニ付テモ行ハレタノデ
アリマスガ、一番輸送關係ニ於テ問題ヲ來
シテ居リマシタノハ、一般家庭等カラノ囘收
ニ付テ色々非難モアリマスシ、又御迷惑ヲ
掛ケタコトガ多カッタヤウニ思フノデアリマ
ス、勿論工場ノ囘收ニ付キマシテモ同樣ナ
例ガ皆無デハアリマセヌケレドモ、此ノ問
題ノ困難ハ、斯ウ云フ事態ヲ生ジマシタ理由
ニハ二ツアルト思フノデアリマス、一二、
實際上近時海上及陸上ノ輸送力ト云フモノ
ガ非常ニ窮屈ニナッテ居ル、輸送力其ノモ
ノガ非常ニ窮屈ニナッテ居ルノデアルカラ、
ナカ〓〓金屬囘收ノ方ニ幾ラ皆ガ努力シマ
シテモ輸送ヲ爲シ得ナイト云フ絕對ノ輸送
力ノ窮屈化ト云フコトガ一ツノ原因デアル
コトハ是ハ勿論當然デアリマス、併シナガ
ラモウ一ツ大キナ理由ハ、最初ニ十分ナ輸
送計畫ガ立テラレ、手順ガ著ケラレテ居ラ
ナイ、サウ云フ總テノ組織ト計畫ガ立ッテ
手順ガ著イテ居ラナカッタト云フ點ニ非常
ニ大キナ原因ガ實ハアッタノデアリマス、
是ハ從來ノ囘收ニ付キマシテ、各種ノ機關ノ
間ノ綜合的ナ有機的ナ連絡ト云フモノガ十
分デナカッタシ、又何時何處デ、ドコソコニ
集メラレタ所ノモノヲ、ドレダケノ量デ
アッテ、之ニ對スル輸送力ト云フモノヲド
ウ云フ風ニ手配シテ行クト云フヤウナ事柄
ニ付キマシテ整然タル計畫ヲ缺イテ居ッタ、
本年ニ於キマシテハ此ノ囘收ハ必ズ本年中
ニ之ヲ行ハナイト、先程申述ベマシタ通リ、
物動計畫、生產擴充計畫等ニモ非常ナ支障
ヲ來スト云フコトデアリマスカラ、計畫通
リ此ノ計畫數量ト云フモノヲ實行シナケレ
バナラヌ、ソレニ付キマシテハ、中央ニ於
キマシテ御承知ノ通リ商工省ニ金屬囘收本
部ト云フモノヲ設ケマシテ、此ノ囘收量又
具體的ノ大體ノ產業別ノ目標、ソレノ囘收、
撤去、輸送ノ手順ト云フモノヲ何シマシテ、
陸上ノ輸送、其ノ內「トラック」ニ對シテド
レダケノモノガ要ル、鐵道ノ輸送力ニドレ
ダケ何スル、海上ノ輸送力ヲドウスル、又
之ヲ更ニ熔鑛爐其ノ他ニ運ビ、何處ノ熔鑛
爐ニ之ヲ持ッテ行クトカ、或ハ其ノ內機械ノ
儘デ利用スルモノヲドウ云フ風ニ利用スル
カト云フ計畫ヲ、具體的ニ順序ヲ立テテ、
之ニ應ズル所ノ輸送力及動力ト云フモノヲ
手配シテヤッテ行ク考ノ下ニ、關係方面ト協
力シテ其ノ輸送計晝ト云フモノヲ立テテ居
ルノデアリマス、唯ナカ〓〓之ニ必要ナ
ㄱトラック」トカ、或ハ海上輸送力等ニ付キ
マシテハ、ソレヲ具體的ニ確保スル上ニ於
キマシテ相當ナル努力ヲ要スル部分ガアリ
マス、本年ニ於キマシテハサウ云フ計畫ト
手順ヲ著ケテ、之ニ必要ナ輸送力ト云フモ
ノヲチヤント計畫ヲ立テマシテ、之ガ確保
ニ付テ遺憾ナイ狀態ヲ期シテ行ヒタイ、斯
ウ云フ建前ニナッテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=74
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075・竹内可吉
○竹內可吉君 次ニ設備ノ評價ノコトニ付
テ御伺ヒ致シマス、今朝大藏大臣カラ設備
評價ノ爲ニハ評價委員會ヲ設ケルト云フ御
說明ガアッタノデゴザイマスケレドモ、恐ラ
クソレハ、此ノ法案ノ第二十七條ノコトデ
アラウト思フノデアリマス、併シナガラ是
ハ〓ヘテ戴キタイノデアリマスケレドモ、
設備ノ評價ヲ必要トスルヤウナ場合ハ此ノ
二十七條ニ書イテアル場合ノ外ニモット澤
山アルノヂヤナイカ、斯フ思フノデアリマ
ス、二十七條デハ轉業又ハ廢業ヲ爲ス商工
業者等ガ云々ト書イテアリマシテ、轉業又
ハ廢業ヲシナイ設備、若シクハ事業ノ一部
ヲ讓渡スルト云フ場合モアリマセウ、又其
ノ次ニ此處ニアリマス產業設備營團ノ場合
デモ矢張リ同樣ナノデアリマスガ、此ノ以
外ニ於テモ何カ斯ウ云フ仕組ガ考ヘラレテ
居ルノデアリマスカ、先ヅソレヲ御伺ヒ致
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=75
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076・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 資產ノ評價ヲ公正、
適正ナラシメル爲ニ御指摘ニナリマシタヤ
ウニ、二十七條ニ評價委員會ヲ設ケルコト
ニ相成ッテ居リマス、評價委員會ノ何ニ付キ
マシテハ從來產業設備營團ノ買取リマスル
場合ニ於キマシテモ、或ハ更生金庫ガ轉廢
業者カラ設備ヲ買取リマス場合ニ於キマシ
テモ、其ノ評價ニ付キマシテハソレ〓〓官
制ノ定メニ依リマシテ評價委員會ガ作ラレ
テ居ルノデアリマス、之ヲ大體此ノ二十七
條ニ於キマシテ基礎ニ置イタ譯デアリマス、
此ノ外ニ之ニ直接入ラナイデ、而シテ相當
大キナ部分デアルト思フノハ、業者間ニ於
テ設備等ヲ移動スル場合デアリマス、或八
轉用等ノ形ニ於キマシテ實際ニ更生金庫ナ
リ、或ハ產業設備營團ガ中ニ介在セズニ行
ク場合ノ評價ノ基準ト云フモノハ之ニ入ッ
テ居ラナイト思フノデアリマス、是ハ從來
ニ於キマシテモ大體此ノ兩委員會デ定メタ
基準ニ準據シテ民間ニ於テモ是ガ行ハレテ
居ルノガ實情デアリマス、今後ニ於キマシ
テモ是ハ此ノ法律ニ依ッテ民間ガサウ云フ
風ナ自由ノ契約ニ於テヤル所ノモノノ評價
ノ基準ヲ此處デ定メテ之ヲ强制スルト云フ
コトハ適當デナイ、寧ロ評價基準ト云フモ
ノハ企業整備ニ關聯シマシテ、產業設備營
團及更生金庫ガ買受ケルモノニ付テ、是ハ
基準ハ決メルノデアルガ、同時ニ左樣ナル
場合ニハ之ニ準據シテヤルト云フ實際上ノ
指導ニ依ッテ從來モヤッテ來テ居リマスシ、
今後ニ於キマシテモ之ヲ基準トシテヤッテ
行クト云フ取扱ニナスコトガ適當デアル、
斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=76
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077・竹内可吉
○竹內可吉君 今ノ問題ノ少シ續キニナリ
マスケレドモ、現在施行サレテ居リマス企
業整備令ニ依リマスト、會社ノ合併又ハ設
備ノ讓渡ヲ政府ガ命ジマシタ場合ニ、兩者
間ニ意見ガ一致シナイコトガ澤山アルト
豫想シナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、又現實ニ是ハナカ〓〓一致シ難イノデ
アリマス、サウ云フ場合ニハ整備令ニ依リ
マスト云フト、主務大臣ガ之ヲ決定スルト
云フコトニナッテ居ルノデアリマス、而
シテ之ニ對シテハ別ニ其ノ決定ニ對シテ仲、
裁ヲ受ケル規定モアリマセヌシ、又決定前
ニ商工大臣ガ何カ第三者的ノ者ノ意見ヲ聽
クト云フヤウナコトニモナッテ居ラナイノ
デアリマス、私ハ是ハ妥當デナイト實ハ思ッ
テ居ルノデアリマス、斯ウ云フ場合ニハ政
府ノ命令ヲ受ケマシタ者ガ心カラ安心シテ、
其ノ決定ナリ、或ハ裁決ナリニ安心シテ任
カセルト云フヤウナ氣持ニナリ得ルヤウナ
仕組ガ矢張リ必要ナノヂヤナイカ、斯ウ思
フノデアリマス、具體的ニ申シマスト、矢
張リ斯ウ云フ場合ニ官民ノ委員會ト云フヤ
ウナモノデ之ヲ裁イテヤルトカ、何カサウ
云フヤウナ少クトモ客觀的ニ見テ妥當性ノ
アル仕組ヲ考ヘルト云フコトガ必要デアル
ト思フノデアリマス、併シ之ニ對シマシテ
ハ斯ウ云フ戰時ニ際シテサウ云フ面倒ナコ
トヲヤル暇ハナイノダト云フヤウナ考ガ或
ハ起ルカモ知レヌノデアリマス、併シソレ
ハ一ツノ唯サウ云フ想像デアリマシテ、今
日迄ノ實際ヲ考ヘマスト、寧ロ是ハ私ハ逆ダ
ト思フノデアリマス、此ノ企業整備令ハ今日
迄マダ一遍モ發動ハサレテ居リマセヌ、併
シ企業整備令ト云フ强權ノ發動ヲ背景ニシ
テ政府ガ指導ナリ、或ハ斡旋ナリヲサレテ
合併、讓渡ヲ促進サレテ居ルト云フコトハ、
是ハ非常ニ例ガ多イノデアリマス、サウ云
フ場合ニ澤山アル例デハナイデアリマセウ
ガ、當事者兩方カラ一札取リマシテ、意見
ガ我々ノ間ニ合ハナイ時ニハ、之ヲ主務當
局ニ一任スル、斯ウ云フ一札ヲ取ッテ居ル
例ガアルヤウデアリマス、事ヲ急速ニ運ブ
爲ニ如何ニモ必要ニ見エルノデアリマス
ケレドモ、實際ニナリマスト云フト、官廳
ノ責任ガ非常ニ重クナリマスル爲ニ、成ル
ベク兩者間ノ協議ノ成立スルノヲ待ツ、斯
ウ云フコトガ、實際デアリマス、其ノ結果、
戰力增强上甲乙ヲ一〓スルト云フコト
ノ必要ガ痛感サレテ居ルニモ拘ラズ、
其ノ條件ガ一致シナイ爲ニ延ビテ居ル、
斯ウ云フ事實ハ私ノ知ツテ居ルノデモ一、
二アルノデアリマス、寧ロ斯ウ云フ場合
ニハ第三者的ナモノヲ玆ニ置カレマシタナ
ラバ、餘程却テ其ノ方ガ運ビガ早イノデハ
ナイカト云フ風ニ考ヘルノデアリマスガ、
如何ナモノデアリマスカ、私ハ先程大藏大
臣ノ御說明ガアリマシタノデ、非常ニ此ノ
點ハ安心ダト思ヒマシタケレドモ、能ク條
文ヲ見タ處ガ非常ニ狹イノデ、之ヲ御伺ヒ
スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=77
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078・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 總動員法ニ基ク企
業整備令ノ關係ニ於キマシテハ今竹內委員
ノ御話ニナリマシタヤウナ規定ニ相成ッテ
居リマス、併シ實際ノ取扱ト致シマシテハ、
從來ノ一、二ノ例ヲ見マシテモ、最近ハ此ノ
當事者ニ於テ合意ガ成立タナイト云フ風ナ
場合ニ於キマシテハ、產業設備營團ニ評價
サセマシテ、其ノ評價ニ依ッテヤル、其ノ產
業設備營團ガ評價スル基準ハ委員會デ決メ
ラレテ居ル基準ニ基イテ、產業設備營團ガ
「エキスパート」ヲ持ッテ居リマスノデ、ソレ
ノ公正ナ評價ニ依ッテソレヲ兩當事者ノ最
後ノ決定ニスルト云フヤウナ事柄デ實際行
ハレテ居ル例ガ最近數件アリマシテ、業界
ニ於キマシテハ、產業設備營團ノ利用ト謂
ヒマスカ、介在ニ依リマシテ此ノ評價ノ問
題ヲ公正ニヤッテ行ク、先ヅソレヲ信賴スベ
キモノトシテ、權威アルモノトシテ何シテ
行クト云フ方ガ非常ニ一般ニ强クナッテ居
リマジテ、最近ハ大體サウ云フコトデ、私
共ガ扱ヒマスル困難ナ問題ヲ解決致シテ居
ルヤウナ狀況デアリマス、ソレデ將來ノ企
業整備ノ問題ニ付キマシテモ、結局企業整
備令等ヲ發動スルト云フ事柄ハ是ハ最後ノ
問題デアリマシテ、出來ル限リ此ノ當事者
ノ協力、協議ニ依ッテ是等ノ問題ヲ進メテ
參リタイト思ヒマス、併シナガラドウシテ
モ出來ナイ、而モ急速ニヤラナケレバナラ
ナイト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、企
業整備令ノ發動ニ依ッテ主務大臣ガ最後ノ
値段ヲ裁定ヲシナケレバナラナイト云フヤ
ウナ事態モ起ルダラウト思ヒマスガ、ソレ
ニ付キマシテハ此ノ企業整備ニ關シマシテ
相當從來ノ經驗モ持ッテ居ルシ、又財界ニ
於キマシテモ相當ナ信賴ガ置カレテ居ル所
ノ產業設備營團ノ資產評價ノ標準及ビ之ニ
關聯シテ產業設備營團ノ評價ト云フ風ナモ
ノガ權威付ケラレテ考へラレルト思ヒマス
カラ、是等ヲ活用致シマシテ、敏速ニ處理
シテ行ク、而モ公正ニ處理シテ行クト云フ
コトガ出來ルダラウト斯ウ思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=78
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079・竹内可吉
○竹內可吉君 只今ノ說明デ實際上ノ心配
ハナクナリマシタ、是非サウ云フ風ナ仕組
ヲ利用サレマシテ、出來ルダケ急速ニ問題
ノ解決スルヤウニ御運ビヲ願ヒタイト思ヒ
マス、尙此ノ上ノ御願ト致シマシテハ、サ
ウ云フ仕組ヲ何トカシテ制度化シテ戴キタ
イト云フコトヲ附加ヘテ置キタイト思ヒマ
ス、次ニ資金措置法ニ關係スルコトデアリ
マスガ、「勅令ニ規定スベキ事項要旨」ヲ戴
キマシタガ、此ノ中ニ特ニ伺ヒタイト思ヒマ
スノハ、法案第四條關係ノ問題デアリマシ
テ、此ノ要旨ニ依リマスト、「勅令ノ定ムル
所ニ依リ」、此ノ勅令ノ內容トシマシテ、
「一定金額以下ノモノ」ハ之ヲ除外スルト云
フノガ勅令ノ豫定事項ニナッテ居ルヤウデ
アリマスガ、其ノ次ニモ亦「會社合併交付
金ノ一定金額以上ノモノトスルコト」、此ノ
一定金額ト云フコトニ付テ今日何カ御說明
ガ伺ヘルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=79
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080・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今フ御質問ニ
付キマシテハ資金ノ浮動購買化ト云フコト
ガ主眼デアリマス、產業設備營團ガ纒ツタ
設備ヲ買取リマスルトキ、此ノ外ノ殘存企
業者ガ買取リマスルト云フヤウナ場合ニハ、
大體今臨時資金調整法ノ限度ニ致シテ居リ
マス、一件三萬圓、是カラ以下ノ金額ハ自
由ニシテ、併シ是モ三萬圓以下ト云フモノ
ハ餘リ少イト思ヒマスガ、小サイモノハ國
民更生金庫ニ參リマスガ、是ハ大體一千圓
ト考ヘテ居リマス、引受ノ場合、共助金ノ
場合モ左樣デアリマス、ソレカラ尙此ノ點
ニ付キマシテ、御質問ニハアリマセヌデア
リマシタガ一應申上ゲテ置キタイト思ヒマ
スノハ、本法ノ適用ノ範圍ノコトデアリマ
ス、ソレハ企業整備ニ關スルモノデアリマ
スルガ、企業整備ト申シマシテモ、從前カ
ラ引續イテ行ハレテ居ルモノガ澤山アリマ
ス、現ニ行ヒツヽアルモノガアリマス、是
等ハ企業整備ト致シマシテ、經濟上如何ナ
ル國家ガ之ニ對シテ施策ラスベキカト云フ
觀點ニ立チマスルト、資金ノ封鎖ヲ必要ト
スル面ニ於キマシテモ、又ソレ以上色々特
典ヲ與ヘナケレバナラヌト云フ必要面ニ於
キマシテモ同樣ノ性質ヲ有シテ居リマス、
殊ニ今囘ノ企業整備トハ申シマスルガ、中
小工業等ニ於キマシテハ、同ジ業態ガ或縣
デハ前カラ行ハレ、或縣デハ今囘ト云フコ
トニナリマスノデ、是ハ從前ノモノモ廣ク
入ルコトニナリマス、ソレカラ如何ナル場
合ニト云フノニ、穫極的ニ政府ノ命令ニ基
イタ場合ハ勿論デアリマスガ、併シ是ハ必
要ガアリマスレバ、政府ノ强制法ノ發動ニ
依ラズシテ、民間カラ進ンデ行ハレルコト
ガ寧ロ希望スベキ狀態デ、又現實ニハ左樣
ナ件數ノ方ガ多カラウト思ヒマス、隨ヒマ
シテ政府ノ命令ガアリマセヌデモ、政府ノ
指導斡旋ガアリ、或ハ指導斡旋ト云フ形ガ
アリマセヌデモ、企業ノ設備ノ增强、或、
設備等ノ整理、又ハ企業ノ合同、是等ニ關
シマシテ經濟統制ヲ目的トスル法令ニ依ッ
テ許可認可ガアリマス、是ハ各種ノ事業法
デアリマストカ、資金調整法デアリマスガ、
サウ云フ場合ニ適用致ス、斯ウ云フ風ニ範
圍ヲ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=80
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081・竹内可吉
○竹內可吉君 次ニ措置法ニ付キマシテハ、
實ハ今ノ其ノ範圍ヲ御伺ヒシタイト思ヒマ
シタケレドモ、只今少シ聯關シテ御答ガア
リマシテ十分分リマシタカラ、ソレデモウ
質問ヲ致シマセヌ、商工大臣ニモウ一ツ御
尋·······御尋ヨリハ希望的ナコトニナリマ
スガ、共助金ニ付テ、今朝程來非常ナ適切
ナ御意見ヲ伺ッタノデアリマスガ、モウ
少シ幾分マダ殘ッテ居ル點ガアルヤウニ思
ヒマス、ソレハ能力ノアル者ニハ業績補償、
實績補償ノ共助金ヲ矢張リ出サセル、私モ
是ハ其ノ方ガ矢張リ宜イト思ヒマス、本當
ニ共助ト云フ精神ノ現レデアリマスルカラ、
其ノ額ガ無理デナイ限度デ能力ニ應ジルモ
ノナラバ、是ハ出サセル方ガ宜イト斯ウ思
フノデアリマス、唯能力ノ判定デアリマス
ガ、信用アリ、又資產ガアリマシテモ、之ヲ
一時融通ヲ受ケテ支拂ヲスルト云フコトガ
必要ニナッテ來ルト思フノデアリマス、御
承知ノ通リ、今業績補償ニ對スル共助金ハ、
國民更生金庫ニ於テハ政府補償ガアリマセ
ヌ、其ノ結果デアリマセウカ、貸付ノ條件
ハ非常ニ嚴重デアリマス、是ハ尤モナコト
ダト思フノデアリマス、之ニ對シテハ農
村ノ產業組合等ノ例ニ依ッテ居ルノデアリ
マセウカ、役員ノ個人保證ヲ取ッテ居ル、
是ハ私ハ窮餘ノ策デアラウト思フノデアリ
やっ、商工業者ニハ餘リ是ハ適當デナイト
思フノデアリマスガ、今後モ國民更生金庫
ニ融通ヲ希望シテ來ル者ハ矢張リ相當多イ
ト見ナケレバナラヌノデアリマスガ、之ニ付
テハ貸出條件ハ緩和サセル、或ハ安心シテ
金庫ガ貸シ得ルヤウナコトニ、是非シテ貰
ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、唯唯
ソレヲ今囘ノ措置法ノ何カ之ヲ使ッタナラ
バ、現在ノ金庫ニ對シテ政府補償ヲヤラナ
クトモ、別ノ形デ何カノ損失補償ノドレカ
ニ當ルヤウナ氣ガスルノデアリマスケレド
モ、ハッキリト是ガ呑込メナイノデアリマス、
何カソコヲ商工省デ御考ニナッテ、斯ウ云フ
風ニナッタカラ國民更生金庫ノ貸出ガ餘程
緩和サレルト云フヤウナコトガアルノヂヤ
ナイカ、斯ウ思フノデアリマス、政府委員
ノ方カラデモ宜シウゴザイマスガ、御說明
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=81
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082・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 業績補償ノ共助金
ノ問題ハ、實ハ今日更生金庫ト、ソレカラ
更生金庫ノ貸出ノ業務ニ付キマシテ實際上
問題ヲ生ジテ居ル點ハ、此ノ實績補償ノ共
助金ノ貸付ヲ更生金庫ノ方ニ於テ嚴格ニ査
定ヲスルト云フ點ガ非常ナ大キナ問題ニナッテ
居リマス、殆ド設備、建物其ノ他營業ノ引
取リ、之ヲ引當テニスル所ノ所謂更生資金ノ
貸出ニ付キマシテハ、是ハモウチヤント
基準ガ決ッテ居リマシテ、基準ガ決ル迄
ハ相當問題デアリマシタガ、基準ガ決ッ
テシマッテ、具體的ナ評價ハ地方長官ガ
決定スルコトニナッテ居リマス、決定シタ
モノハ無條件ニ更生金庫ガ貸シテ居ルノ
デアリマス、此ノ點ハ殆ド問題ガナノイデ
アリマス、處ガ實績共助ノ補償金ニ付キマ
シテハ、今御話ノ通リ、更生金庫ノ責任ニ
於テ貸スト云フコトニナッテ居リマスノデ、
果シテ償還計畫ガ立ッカドウカ、償還能力ガ
アルカドウカト云フヤウナコトガ非常ニ問
題ニナルノデアリマス、而モ甚ダ一面ニ於
キマシテ面白クナイ傾向ダト思フノデアリ
マスガ、業者ノ中ニハ實際同業共助ノ精神カ
ラ、自分達ノ力ニ應ジテ之ヲ共助スルト云
フ美シイ場面モアリマスガ、同時ニ最初カ
ラ更生金庫カラ借リタ金ハ、是ハ結局返サ
ナイノダト云フヤウナ、一ツノ本當ニ金ヲ
借リル、自分達ガ後デ返スノダト云フ意識
ナクシテ、兎ニ角更生金庫カラ無理ヲシテ
モ澤山ノ金ヲ借リテ置ク、人ノ金デ良イ顏
ヲシヨウト云フ風ナ氣持モ實際アルコトハ
否ムコトノ出來ナイ事實ナンデアリマス、
從ッテ其處ニ更生金庫ト實際ノ共助スル殘
存業者トノ間ニ、色々共助金ノ額ニ付テノ
イザコザガ起ッテ居ルノガ現狀デアリマス、
ソレデ實ハ是ハ問題ハ、最初ニ轉廢業整備
計畫ヲ立テマス時ニ更生金庫ノ者モ一緒ニ
入レテ、サウシテ整備計畫ト云フモノニチ
ヤント共助金ヲドレダケ出ス能力ノ狀態ニ
アルト云フコトニ行政官廳ト更生金庫トガ
一緒ニ入リマシテ、應分ノ能力ニアル限リ
ニ於テハ金ヲ出ス、併シ矢張リ出シタ金ハ
同業共助ノ精神カラ出スンダカラ、是ハ國
家其ノ他ニ迷惑ヲ掛ケナイ、自分達デ必ズ
出シ合ッテ後ハ返濟スルンダト云フ意識ノ
下ニ其ノ能力ニ應ジタモノヲ出サセル事柄
ガ私ハ適當デアルト思フノデアリマス、而
シテ今實際上ノ問題トシテ色々ノイザコザ
ガアル或ハ稍〓遲滯シテ居ルヤウナ關係ハ
整備計畫ヲ立テル最初カラ更生金庫ト云フ
モノヲ參畫セシメマシテ、共助金ノ額ヲ決
定スル時カラ之ニ參畫サセテ置クコトニ依ッ
テ總テノ問題ハ餘程緩和シ、實際ニ適スル
ヤウニ處理スルコトガ出來ル、最初相當額
ノモノヲ決メテ計畫ヲ立テテ轉廢業シテシ
マッタ後カラ、共助金ヲ貸ス貸サヌトカト云
フ問題ニナッタカラ、非常ナ問題ニナッテ居
ル最初カラ是ダケシカ共助金ハ出ナイト
スレバ廢メテ行ク人モ殘ッタ人モ成程ソレ
ダケノ力シカナイト云フコトデ減額シテモ、
其ノ當時デアルト云フト問題ガ解決シタノ
ガ、一應額ガ決ッテカラ數箇月後ニ減額サレ
ルト云フヤウナコトガ非常ナ業界ニ於テ問
題ニナッテ居ル、從ッテ事務的ノ扱ニ於テ私
ハ此ノ問題ヲ處理シ、寧ロ積極的ニ更生金庫
ノ金ニ對シテ政府ガ補償スルト云フヤウナ
考ヘ方モ實ハアリマシテ、私共〓究致シテ
居ルノデアリマスガ、此ノ際サウ云フ制度
ヲ特ニ置クコトハ今ノ時代カラ申シテ私ハ
適當デナイト云フヤウナ考デ實ハ居ルノデ
アリマス、今尙之ニ關聯シテ御質問ノアリ
シマタ色々ノ借入金、特殊借入金等ニ對シ
テハ政府ノ元利支拂ノ保證ガアリマスノデ、
ソレトノ關係ニ於キマシテハ事務當局ノ方
カラ一應說明致サセマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=82
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083・竹内可吉
○竹內可吉君 今一應、御尋ネシマシタ最
後ノ點ハ、ソレデ方法ガアルンダト云フコ
トデアリマスナラバ、其ノ言葉ダケデ宜シ
ウゴザイマス、其ノ詳シイ說明ハ時間ガ惜
シウゴザイマスカラ別ノ時ニ伺ヒマスカラ、
方法ガ別ニアルンダト云フコトデアルナラ
バソレダケデ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=83
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084・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 此ノ本法ニ依リ
マシテ御尋ノヤウナ場合ニ於キマシテ困難
ヲ緩和スルヤウナ規定ハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=84
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085・竹内可吉
○竹內可吉君 最後ニモウ一ツダケ御伺ヒ
致シマス、從來オヤリニナリマシタ轉廢業
者ノ行衞デアリマス、平タク申シマスト、
行衞ガドウ云フ風ニナッテ居リマスカ、或ハ
厚生大臣或ハ厚生省ノドナタデモ御答ヲ願
ヘマスレバ宜シイノデアリマス、政府デ斡
旋セラレタ轉廢業者ガドウ云フ風ニナッテ
行ッテ居ルカト申シマスノハ、大部分歸農シ
テ居ル、斯ウ云フ風ニ伺フノデアリマス、
ソコノ事情ヲ極ク〓略ダケデ宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=85
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086・武井群嗣
○政府委員(武井群嗣君) 從來中小商工、
小賣商ノ整備等ニ依リマシテ轉廢業致シマ
シタ者ノ行衞デアリマスガ、政府ニ於キマ
シテハ之ヲ國民勤勞訓練所ニ入所セシメマ
シテ訓練ヲ致シマシテ、サウシテソレノ
適當ナ職ニ就カセル譯デアリマス、只今御
尋ノ大體ノ見透シト致シマシテハ、其ノ轉
廢業ノ中ノ七、八割迄ハ重要產業ノ方ニ參ッテ
居リマス、サウシテ殘ッタ中ノ半分位ガ其
ノ他ノ工業部門ニ行ッテ居リマシテ、アト
ノ殘リガ歸農スル、大體左樣ナ風ニ見テ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=86
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087・竹内可吉
○竹內可吉君 數字ノ問題デアリマスカ
ラ、基礎ノ取リ方デ色々アルト思ヒマスガ、
更生金庫デ斡旋サレタモノニ付キマシテ
ハ、先ヅ大體五割ガ歸農、殘リノ中、二割內
外ガ重點產業方面デ、三割ハチヨット分ラナ
イ、斯ウ云フヤウナコトヲ聞イタヤウニ思
フノデアリマスガ、是ハ併シ他デ聞イタコ
トデアリマスルカラ、ソレト違フカラドウ斯4
ウト云フ譯デハアリマセヌガ、只今ノ御說
明ノ通リデアリマスト云フト、是ハ誠ニ成
績ガ宜シイト思フノデアリマス、今囘ノ再
編成ニ付キマシテハ、本當ニ重點方面ニ是
ガ行クヤウニ一層ノ御配慮ヲ御願ヒシタイ
ト云フコトダケヲ申上ゲテ私質問ヲ止メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=87
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088・竹下豐次
○竹下豐次君 厚生大臣ニ御伺ヒ致シマス、
勞務者ノ住宅ノ問題ニ付テ御尋ネ致シマス、
今度ノ企業整備ニ依リマシテ可ナリ多數ノ
勞務者及其ノ家族ガ住居ヲ變ヘナケレバナ
ラナイト云フコトニナル譯デゴザイマス
ガ、ドウモ現在ノ狀況ヲ見マシテ、申上ゲ
ル迄モナク、住宅ニ非常ニ困ッテ居ル、處ガ
先年來御計畫ニナリ、又實行シテ居ラレマ
スル住宅營國ノ建設ノ事業、是ガ私ナドノ
聞マキシタ所ニ依リマスルト非常ニ成績ガ
宜クナイ、敢テ營團ノ方ガ怠ケテオイデダ
トカ、力ガ足リナイト云フヤウナ問題デナ
イノデ、其ノ外大キナ隘路ガアルト云フヤ
ウナコトモ承ッテ居ルノデアリマス、何ガ
隘路デアルカト云フ要點ハ、申ス迄モナク
木材ノ配給ガ極端ニ不足デアルト云フコト
ヂヤナイカト思ッテ居リマス、ツイ此ノ間、
私ハ貴族院ノ調査會カラ派遣サレマシテ、
木材事情ノ調査ニ參ッタノデゴザイマスル
ガ、木材モ、色々聽キマスト云フト、ソレ
ハ矢ッ張リ詮ジ詰メルト輸送ノ關係デアル、
隘路デアル、幾ラ山林所有者ガ供出シテモ、
又製材業者ナリ縣木社等ガ活躍シテモ、輸
送ガ出來ナイノデ非常ニ困難ガアル、消費
地デハドウモ、軍需材ハ別トシテ、其ノ他
ノ關係ハ大變ナ行詰リデ困ッテ居ルト云フ
コトヲ聽イテ來タノデアリマス、其ノ一ツ
ノ大キナ例ガ住宅ノ問題ニ影響シテ居ルノ
カト思ヒマス、現在ノ輸送ノ程度デハ迚モ
此ノ問題ヲ完全ニ解決スルト云フコトハ出
來ナイコトデアラウト思フノデアリマス、
處ガドウシテモ此ノ問題ダケハ解決シナイ
ト云フト、此ノ後五大產業ノ能率ヲ增進セ
シメル上ニ於テ、遂ニハ其ノ目的ヲ達スル
コトガ出來ナイ、行詰ッテシマフト云フコ
トニナリハシナイカト思ッテ居リマス、就
キマシテハ厚生省ノ方デハ、農林省ナリ或
ハ鐵道省ノ方トドウ云フ風ノ御話合ニナッ
テ居ルノデアリマスカ、私ノ考ヘテ居リマ
スル所デハ、幸ヒ戰時行政特例法ニ依ル總
理大臣ノ指示權ト云フモノモアルノデアリ
マスカラ、何カアノ發動デモシッカリ此ノ
際オヤリニナリマシテ、徹底的ニ御計畫ニ
ナラナイト、少シバカリノ輸送ヲ增シテヤ
ラウ位ノコトデハ此ノ問題ノ解決ニハナラ
ナイト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリ
マス、其ノ點ニ關シテ厚生大臣ハドンナ御
考デアリマスカ、ドンナ御計畫デアリマス
カ、御說明ヲ御願ヒシタイト思セマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=88
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089・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彥君) 御答申上ゲマス、
住宅營團ガ設立サレマシタ當時ノ營團設立
ノ目的ハ、今日ノヤウチ緊迫シタ勤勞者ノ
住宅問題ト云フヤウナ風ナ點ガ、强ク擧ゲ
ラレテ居リマセヌデシタ關係上、出發致シ
マシテカラ、只今御指摘ニナリマシタヤウ
ニ、資材ガ十分デナイ、又住宅營團ガ採算
ノ關係カラシテ、家ヲ相當ニ安ク作ラナケ
レバナラナイト云フヤウナコトカラ、十分
ナ建築業者ヲ探スコトガ出來ナイ、卽チ建
築勞務者ガ十分ニ取レナイ、資材、勞務兩
方面カラ致シマシテ、住宅營團ノ計畫通リ
ノ住宅ガ建設サレナカッタト云フコトハ、
遺憾ナガラソレガ専實トシテ現レテ參リマ
シタノデアリマス、之ニ大東亞戰爭勃發致
シ、色々ノ面ニ於テ制約ヲ受ケルコトトナ
リマシテ、只今御指摘ノヤウナ風ナ、非常
ニ計畫通リノ建設ガ進マナイト云フコトニ
焦慮ヲ致シマシテ居リマスル旁、ミ愈〓重點
產業方面ニハ、此ノ住宅問題ノ解決ヲ要求
スル緊要度ガ切々トシテ迫ッテ居ルト云フ
ヤウナコトニナリマシタノデ、從來ノ住宅
營團ノ考ヲ變ヘマシテ、一般ノ住宅難ノ解
決ト云フノデナクシテ、所要勤勞者ノ住宅
ヲ建設スルト云フコトニ方針ヲ改メマシテ、
從ヒマシテ住宅ノ設計、或ハ中ノ雜作總テ、
或ハ其ノ土地ト云フヤウナモノニ對シマシ
テ、新タナ構想ノ下ニ再出發ヲ昨年致シ出
シタ所デアリマス、處ガ今囘ノ企業整備
ニ伴ヒマシテ、御質疑ノ第一ニゴザイマ
シタ多數ノ配置轉換ヲ受クベキ從業員ノ
住宅問題ヲ解決シナカッタナラバ、是ハ
所期ノ目的ヲ達成スル、生產增强ガ出來
ナイト云フコトハ御說御尤モ、其ノ通リデ
ゴザイマスノデ、此ノ過去ノ實績ニ鑑ミ、
現在ノ此ノ國家ノ絕對要請ニ鑑ミマシテ、
今囘此ノ十八年ノ物動計畫ニ於キマシテハ、
重點產業方面へノ勞務者ノ住宅資材、卽チ
普通鋼材及木材ヲ相當數物動ノ上ニ別個ニ
計上致シマシテ、其ノ輸送其ノ他ニ於キマ
シテモ、是ハ優先的ニ配給ヲスルト云フコ
トヲ決定致シタ次第デアリマス、併シナガ
ラ今囘ノ企業整備ニ伴ヒマスル配置轉換ヲ
受ケマスル勞務者ノ住宅ヲ、新タニ之ニ依ッ
テ建設スルト云フヤウナコトデハ到底要求
ニ間ニ合ヒマセヌノデ、今囘ノ企業整備ニ
伴ヒマスル勞務者ノ配置轉換ニ當リマシテ
ハ、之ヲ計畫的綜合的ニ勘案致シマスル爲
ニ、先ヅ以テ配置轉換計畫ヲ策定致スコト
ニ致シテ居リマス、此ノ配置轉換計畫ヲ作
定致シマスル其ノ要綱ノ最モ重キモノト致シマ
シテ、勞務者ガ轉換サレル所ノ適否ヲ判定
ヲ致サナケレバナラナイ、其ノ目的ガ生產
增强ノ一ツニアルノデゴザイマスノデ、其
ノ目的ニ合致スルカドウカト云フコトノ、
轉換勞務者ノ配置轉換ノ適否ヲ考ヘナケレ
バナリマセズ、其ノ配置轉換適否ヲ判定致
シマスル事項ノ最モ大キナモノト致シマシ
テ、此ノ居住ト云フ問題ヲ採上ゲテ居リマ
シテ、配置轉換計晝ヲ策定致シマスル時ニ、
其ノ從業員ガ休廢止シ、供出サレル所ノ從
業員ト云フモノガ、新タナル受入工場事業
場ニ其ノ者ガ轉居シナケレバナラナイカド
ウカ、若シ轉居スルナラバ其ノ行先ノ受入
工場事業場ノ所ニハ、ソレ等ヲ十分ニ受入
レルダケノ居住施設ガアルカナイカト云フ
點ヲ能ク調査ヲ致シマシテ、サウシテ其ノ
住居問題ヲ解決スルニ資シタイ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、此ノ住宅
ハ受入工場附近ノ供出致シマスル事業場ノ
持ッテ居リマシタ寄宿舍、或ハ舍宅或ハ住宅
ト云フヤウナモノ、是ガ今囘整備セラレマ
スル第一種工業部門ニ於キマシテハ重工業
部門ト違ヒマシテ、所謂是等ノ厚生施設ガ
比較的進步致シテ居リマスルノデ、是等ノ
休廢止工場ノ其ノ寄宿舍其ノ他ノ旣設建物
ヲ出來ルダケ利用ヲシテ、サウシテ此ノ移
動ヲ出來ルダケ地域的小範圍ニ限局スル、
出來ルナラバ從來ノ住宅カラ新シキ受入工
場ニ通ヘルヤウナ地域的ノ移動ヲ限局シテ
考慮スル、併シドウシテモ轉居ヲシナケレ
バナラナイ同一企業內ノ受入工場デゴザイ
マスレバ、金鑛山ノ時ノ例ニモゴザイマス
ルヤウニ、矢張リ相當ノ距離ヘ轉居ヲシナ
ケレバナラナイト云フヤウナモノガゴザイ
マスルノニ付キマシテハ、其ノ受入工場ニ
先程申上ゲマシタヤウナ居住ノ施設アリヤ、
利用スベキ旣設建物アリヤト云フヤウナ點
ヲ十分ニ考ヘマシテ、サウシテ此ノ住宅間
題ヲ解決シ、轉換ト同時ニソレヲ見マシテ
配置轉換計畫ヲ策定シ、計畫ガ樹立致サレ
マシタ場合ニ於テハ、住宅難ノ爲ニ直チニ
生產ニ從フコトガ出來ナイ、企業整備ノ主
要目標タル所ノ生產增强ニ寄與スルコトガ
出來ナイト云フヤウナコトノ萬々ナキヤウ
ニ計畫ヲシ措置ヲシテ、サウシテ實施致シ
タイ、斯ウ云フ風ニ今囘考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=89
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090・竹下豐次
○竹下豐次君 次ニ此ノ勞働時間ノ緩和、
ソレカラ保護勞務者ノ深夜業、坑內作業等
ノ緩和ノ問題ヲ御伺ヒ致シタイノデアリマ
ス、實ハ此ノ問題ニ付キマシテハ、前ノ議
會ノ戰時行政職權特例法案關係ノ委員會デ
一應抽象的ナ御意見ヲ承リマシタノデアリ
マスガ、其ノ後工場ノ實際ノ狀況ヲ私時々
氣ヲ付ケテ聞イテ居リマス所ニ依リマスト、
勞働時間ナドハ可ナリ長クナッテ、私ノ聞キ
マシタ一例ヲ申シマスルト、相當ニ代表的
ナ大キナ鐵工場ニ於キマシテ、一月ニ働イ
タ時間ガ六十五日働イテ居ル、是ハ極端ナ
例デアリマス、併シ五十日カラ五十五日働
イテ居ルノハザラニアルト云フコトデアリ
やっく、先ヅサウ云フ種類ノ工場ニ於ケル勞
働時間ヲ當リ前ニ考ヘテ見マスルト、勉强
シタ者デ居殘リシナカッタナラバ二十五日、
又ソレガ少シ餘計勉强シテモ居殘リシテ三
十日カ三十五日働ケバ餘計働イタ方ダ、其
ノ位ノ所迄ハ能率ヲ上ゲタイト思ッテ居リ
マス、併シソレ以上ノ勞働ニナリマスト、
三日四日一週間位ハ續キマセウケレドモ、
長イ間ノコトヲ考ヘレバ、段々能率ガ下ッテ
來ルト云フコトハ疑ナイコトダラウト思
フ、五十日働イタトシテモ、是ハ尤モ居殘
リノ步合ハ少シ高クナリマスカラ、五十日
働イタカラ二十五日ノ倍ノ額ト云フコトニ
ハナリマセヌケレドモ、大體サウ云フ見當
ニナルダラウト思ヒマス、サウ云フ風ノ工
場ガ今日可ナリ方々ニアルノデアリマス、
サウ云フ際ニ今度愈〓正面カラ緩和サレル
ト云フコトニナル譯デアリマスガ、是モ併
シ斯ウ云フ際デアリマスカラ、極ク特殊ノ
モノニ付キマシテハ一週間トカ一月後ノコ
トハ言ッテ居ラレナイ、兎ニ角出來ルダケ三
日デモ四日デモ、ブッ續ケニデモ働カセナケ
レバ間ニ合ハナイト云フヤウナ勞務者モア
ルダラウト思ッテ居リマス、ダカラサウ窮屈
ニ勞働時間ノ取締ヲ嚴重ニシナケレバナラ
ヌト云フヤウナ譯ニハ行クマイト思ッテ居
リマスガ、此ノ問題ハ餘程當局ノ方デ締メ
テ御掛リニナリマセヌト云フト、益〓「ルーズ」
ニナッテ行クノヂヤナイカ、申ス迄モナク現
在ノ處勞務者ガ足リナイトカ、或ハ能率ガ
下ッテ居ルトカ云フヤウナコトデアリマスル
ノデ、弱味ノアルノハ事業主ノ方デアリマシ
テ、勞働者ノ方デハナイノデアリマス、結
局勞働者ハ自分ノ保健トカ云フコトヲ考ヘ
ルダケノ素養モ餘リナイモノガ多イノデ、賃
金欲シサニ幾ラデモ延バシタイ、賃金ノ分ダ
ケ働ケバ宜イケレドモ、工場ニ行ッテ居眠リヲ
シテ居ル、懶ケテ居ルト云フモノガ相當ニ
殖ヱル、事業主ノ方デハソレヲ抑ヘルダケ
ノ力ガナイ、ソレヲ言ッタラ逃ゲテシマフ
ト云フヤウナ危險ガアルノデ、斯ウ云フ際
ノ事業主ノ力ハ非常ニ微弱デ氣ノ毒ダト
思ッテ居リマス、言ハレル儘ニダラ〓〓ト長
クナッテ、六十五日分モ給料ヲ拂ハナケレバ
ナラヌ、其ノ結果ハ事業主ガ困ルダケナラ
バ宜シイケレドモ、是ハ國家ガ困ルト云フ
問題ニナルト思ッテ居リマス、ドウシテモ此ノ
問題ハ私ハ厚生省ノ方ニ於キマシテサウ云
フ風ノ事業主ノ立場モ能ク御推察ニナリマ
シテ、嚴重ナ制限ヲ······今ヨリモ制限ナサ
ルト云フヤウナ譯デハゴザイマセヌガ、緩
和ノ實行ニ當リマシテ特別ノ御注意ヲ御願
ヒ申上ゲタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル次
第デアリマス、特ニ私ハ此ノ點ハ今度ノ產
業增產ノ問題ニ付キマシテ大事ナコトダト
思ヒマシテ、重ネテ申上ゲル次第デゴザイ
マスガ、何カ又新タナ構想デモ厚生省ノ方
デゴザイマスデセウカ、ゴザイマシタラ此
ノ際御伺ヒ致シタイト思ヒマズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=90
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091・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彥君) 御答ヲ申上ゲマ
ス、只今今囘就業時間制限撤廢ヲ致シマス
ノニ關聯致シマシテ、時間ト能率、色々ノ
點ニ關係シテ御尋ガゴザイマシタガ、甚ダ遺
憾デゴザイマスルガ、今日此ノ勞務者ノ收
入增ト云フコトノ爲ニ特ニ時間ヲ御言葉ノ
ヤウニダラ〓〓延バシテ實際夜業ヲヤッテ
居ルト言フケレドモ、行ッテ見ルト寢テ居ル
ト云フヤウナ工場ガマダアルト云フコトハ
否ムコトノ出來ナイコトダト存ジテ居リマ
ス、是ハ誠ニ遺憾ナコトデゴザイマスルガ、
私共ト致シマシテハ第一ノ今囘ノ此ノ就
業時間ノ撤廢ト云フコトハダラ〓〓時間ヲ
增セバ宜イト云フノデナイノデアッテ、御話
ノ通リ、或一定ノ時間以上働キマスレバ著
シク能率ガ下ッテ參リマスルノデ、此ノ適當
ナル業種業態ニ應ジマシテ時間ト云フモノ
ノ大體ノ峠ハ決マルノデアリマス、ソレ以
上時間ヲ延スト云フコトハ詰ラナイト云フ
コトノ指導ヲ今囘强ク普及ヲ徹底シタイ、
斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、從ヒマシテ
今日極ク管理ノ手ノ屆イテ居リマセヌ工場
等ニ於キマシテハ今申上ゲマシタヤウナ、誠
ニ遺憾ナ現象ガ認メラルヽノデアリマスル
ガ、管理ノ十分屆イテ居リマスル工場ニ於
キマシテハ今日今指導致サムトスルヤウナ
方向ニ段々進ミマシテ、寧ロ時間ハ今迄十
二時間ヤッテ居ルノヲ十時間ニシタ方ガ宜
イ、甚ダシキニ至ッテハ九時間ト云フノガ一
番能率ガ良イカラ、シタイト云フ軍需工場
モポツ〓〓出テ參リマシタ、併シマダノ
此ノ就業時間ト云フコトガハッキリ徹底致
シテ居ナイコトハ誠ニ遺憾デゴザイマス、
第一勞務者ガ非常ニ多過ギルト云フコト
ハ是ハモウ生產能率ヲ確實ニ科學的ニ考
ヘテ居ラルヽ所ノ業者ハ齊シク認メテ居ラル
ル所デアリマシテ、重要事業ノ方面ニ於キ
マシテモ、今日實際ノ一人々々ノ勞務者ノ
正味ノ働イテ居ル時間ト云フモノハ、一日
ノ就業時間、勤務時間トサレテ居ルモノノ
五分ノ一、八分ノ一ダ、極ク緩ク大イニ讓
步シテ見テモ、二分ノ一ノ人間ニシナケレ
バ勤勞時間ト云フモノガ適正ニ行カナイ、
三分ノ二位延ビルノダケレドモト云フヤウ
ナ、斯ウ云フヤウナ意見ハ、是ハ强ク今述
ベラレテ居ルヤウナ次第デゴザイマスルノ
デ、斯ウ云フ卽チ科學的ナ勞務ノ組織的動
員組織ヲ確立致シマシテ、之ニ依リマシテ、
一面ニハ就業時間制限撤廢ニ伴フダラ〓
ニ行クコトヲ戒メ、一方ニハ非常ナ高能率
ノ生產ヲ擧ゲルヤウニ進メル、殊ニ企業整
備ニ伴ヒマシテ、人ノ適材ヲ適所ニ置クト
云フ合理的ナ勞務ノ配置ト、又過去ニ於ケ
ル事業主ガ唯要求シタ其ノ儘ヲ配置シタト
云フヤウナ面モ强カッタ所ハ、此ノ勞務配
置ニ對シテ再檢討ヲ加へルト云フ立場デ進
ミマシテ、只今御尋ノヤウナ點ヲ是正シテ
行ク、改善ヲシテ行キタイ、斯ウ云フヤウ
ニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=91
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092・竹下豐次
○竹下豐次君 モウ一ツ御尋ネ致シマス、
今囘ノ企業整備ノ狙ヒ所ハ、モウ一ツトシ
テハ、浮カシタ勞務者ヲ重工業ノ方ニ持ッテ
行クト云フノガ狙ヒ、其ノ筈デス、唯私ノ
考ヘマスルニ、工場勞働、特ニ重要產業ニ
付キマシテハ、此ノ際勞務者ヲ增サナケレ
バナラナイト云フ必要ニ迫ラレテ居ル場合
デアリマスルケレドモ、之ト同時ニ農業
勞働者モ非常ニ不足ヲ告ゲテ居ル譯デアリ
マス、デ此ノ際農業勞働者ノ配置ノ問題ニ
付テ御考慮ヲ願フト云フコトハ、少シ便乘
主義ナヤウナ嫌ヒガナイトモ限ラナイト思
ヒマスケレドモ、併シ食糧ノ問題ハ、是ハ
五大產業ニ劣ラナイ位ノ重大ナ問題デアル
シ、現在農村ニ勞力ノ不足シテ居ルト云フ
コトハ能ク御分リノ筈ダト思ヒマス、何レ
ガ重イカ、何レガ輕イカト云フコトハウッカ
リ旗ガ擧ゲラレナイコトデアラウト思ヒマ
ス、唯此處デ大臣モ御話ノ通リ、適者ヲ適
當ノ所ニ持ッテ行ク、必ズシモ今ハ勞働者ガ
ドノ工場ニモ人ガ足リナイト云フ譯ヂヤナ
イノデ、能率ガ擧ラナイト云フコトヲ考ヘ
合セマスルト云フト、サウシテ又此ノ企業
整備ト云フ一ツノ問題ダケニ捉ハレズ、モウ
一段高イ見地カラ見マスルト、斯ウ云フ機
會ニ農業勞働ノ方面ノ關係モ一〓ニ厚生省
デハ御考へ下サルト云フコトモ好イ機會ヂ
ヤナイカ、先ニ御話ヲ承ッテ居リマスルト
云フト、大臣ノ方ノ御說明ト竹內君トノ御
考トガ違ッテ居ルヤウデアリマスガ、若シ
適者デアルト云フヤウナ故ヲ以テ、サウシ
テソレガ必ズシモ工場ニ行カナケレバナラ
ナイヤウナ事情デナイ、看逃ガスコトガ出
來ルト云フ事情デアルナラバ、成ルベク積
極的ニ歸農スルヤウニ厚生省ノ方デハ勸奬
シテ貰フト云フコトモ、若シ出來マスナラ
バ非常ニ良イト思ヒマス、是ハ併シ五大產
業ニ於ケル勞務者ノ數ガドノ位要ルノカト
云フコトハ、其ノ數ハ私ニハ分リマセヌノ
デ、是非サウシテ戴キタイト云フ譯ヂヤゴ
ザイマセヌガ、若シソコニ多少ノ裕リデモ
アリマスナラバ御考ヲ願ヒタイ、斯樣ニ考
ヘテ居ル次第デゴザイマス、何カサウ云フ
コトニ付キマシテ御考ノ筋デモゴザイマシ
タラ、御伺ヒシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=92
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093・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彥君) 農業勞務ヲ確
保シナケレバナリマセヌ重要性ハ重點產業
ト同樣デゴザイマスルノデ、本年ノ國民動
員計畫モ昨年同樣ニ農林業ヲ計畫產業ノ
一ツトシテ此ノ方面ノ勞務確保、從ッテ例へ
バ國民學校卒業生ノ中ノ一定數ハ必ズ農村
ニ確保スルト云フヤウナ計畫ヲ立テテ居ル
次第デアリマスルガ、今囘ノ企業整備ニ伴
ヒマシテ、何處迄モ此ノ轉換ハ過去ニ於テ
得タル經驗、又技能等ヲ十分ニ活カシテ、
新タナル職場ニ於テ直チニ勤勞ノ總力ヲ發
揮シテ貰フ、斯ウ云フ風ニ行キタイト考ヘ
テ居リマスノデ、國民ノ決戰意識ニ基ク國
策へノ協力ト云フコトヲ期待スル意味デ
モ、何處迄モ指導勸奬シテ行クト云フコト
ニ行キタイト存ジマス、併シナガラ其ノ休
廢止工場カラ轉業致シマス迄ノ間ニハ、色
色ノ事情ニ依リ已ムヲ得ズ離職スル者モゴ
ザイマセウ、之ニ對シテ生活援護ノ途ヲ講
ジラレテ居リマスルガ、其ノ間又轉職後ニ
於キマシテモ、生活困難ノ者ニ對シテハ生
活援護ガ行ハレマスルガ、此ノ者ニ對シア
シテモ、此ノ期間ニ於キマシテモ、同樣一
人殘ラズ其ノ生活ニ生產性ヲ强ク持タセル、
從來ノ社會政策的ナ此ノ生活援護生活扶助
ト云フヤウヲ氣持ハ全然ナク、國家ノ要請
ニ基イテノ轉業デアルト云フコトカラ一人
モ体ムコトナク、其ノ離職ノ間ニモ新シイ
職場ヘノ準備ノ鍊成ヲ加ヘテ行キタイ、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、併
シナガラドウシテモ年齡ノ關係モゴザイマ
ス、又身體ノ健康ノ關係モゴザイマセウ
シ、或ハ色々ノ事情カラ轉職ヲ致スコトノ
ドウシテモ出來ナイ者モ、是ニ對シマシテ
モ亦同樣ニ從來ノ社會政策的ノ觀點カラ離
レテ居ルモノデゴザイマスルカラ、事業主
ニ負擔ヲセシメナイデ、國庫ノ負擔ニ依ッテ
矢張リ生活援護ト續イテ授產ト云フヤウナ
モノヲ致シマスガ、ソレデモ尙、ドウシテモ
是ハ色々ノ關係カラ、新シイ職場ニ受入レ
シムルト云フコトガ生產增强ノ目的ニハ直チ
ニ合致シナイト云フヤウナ人ガ生ズルト考
ヘマス、此ノ人達ハ大體ニ於テ農村出身ノ者
デアリマスルノデ、歸農ヲ勸メタイ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居リマス、卽チ此ノ歸農ヲサレル
ト云フコトガ過去ノ轉廢業ノ方々ノ非常ニ
大キナ成績ヲ擧ゲテ居ル面ガ澤山アリマス
ルノデ、今囘生產方面カラ出マシタ斯ウ云
フ人ハ產業報國會、配給方面カラ出マシタ
斯ウ云フ人ニ對シテハ商業報國會デ鍊成ヲ加
ヘマシテ、今ミタヤウナ方ハ歸農ヲ勸メテ歸
村セシメテ、一層〓糧增產ノ方面ニ働イテ
貰フ、斯ウ云フコトニ進ム積リデ計畫ヲ致
シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=93
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094・竹下豐次
○竹下豐次君 私ハ是デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=94
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095・久保田敬一
○男爵久保田敬一君 私ハ陸上輸送機關ノ
企業整備ノコトニ付テ鐵道大臣ニ伺ヒタイ
ト思フノデゴザイマスガ、時間モ非常ニ少
イコトデゴザイアスシ、私ノ質問ノ要旨ハ
簡單ニ申上ゲル積リデアリマス、尙ホ御說
明ニ對シテ重ネテ伺ヲヤウナコトハナイヤ
ウニシタイト思フノデアリマスカラシテ、
御說明ハ成ルベク詳細ニ承リタイト思ヒマ
る、鐵道省ガ企業整備ニ付テ非常ノ熱心ヲ
以テ御協力ニナッテ居ルト云フコトハ承知
シテ居ルノデアリマシテ、或ハ現在營業シ
テ居ル所ノ線モ撤廢サレル、又或區間ニ於
テハ複線ノアル所ヲ、片方ノ線ヲ離シテ單
線ニシテヤルト云ヲヤウナコト迄モナサル
御計畫ニナッテ居ルヤウニ承ッテ居ルノデア
リマスガ、是ハ國有鐵道自體ノコトデアリ
マシテ、私共ガ感ジマシタ所デハ、此ノ國
有鐵道以外ノ民間ノ鐵道軌道ニ對シテ、何
ト謂ヒマスカ、企業整備ニ運輸機關ダケガ
立遲レテ居ルト云フヤウナ感ジガ非常ニス
ルノデアリマス、是ハ勿論國有鐵道ガ非常
ナ厖大ナ施設企業デアリマシテ、外ノモノ
ハソレニ比スレバ比較的輕微ニモ見ラレル
ノデアリマスルケレドモ、矢張リ可ナリノ
施設モ持ッテ居ルモノデアルシ、又是等ノ鐵
道全體トシテ考ヘテ企業整備ヲ致シマスル
ナラバ、相當ノ效果モ擧ルモノダラウト思
ヒマスルニモ拘ラズ我々ノ感ジタ所デハ、
鐵道省ハ、役人ノ仕事ト云フモノハ大體人
ヲ責ムルニ嚴デ、己レニハ非常ニ寛ダト云
フヤウナコトガアリマスガ、鐵道省ノヤリ
方ハ反對デアッテ、自分ノ方?企業整備、色々
ナコトニ對シテハ非常ニ嚴重ニ十分ニヤツ
テ居ラレルヤウニ思フノデアリマスガ、此
ノ鐵道省ノ監督シテ居ラレル所ノ地方鐵道、
軌道ニ對シテハ或ハ比較的緩ヤカト云フカ、
多少抛リ放シノヤウナ感ガナイデモナイト
思フノデアリマス、例へバ鐵道省ニ於テハ、
重要ナル線路ノ複線ヲ撤廢シテ單線ニシテ
運轉スルト云フヤウナコトモ計畫シテ居ラ
レマスガ、ソレニ匹敵スルヤウナ地方鐵道
ニ隨分複線ヲ撤廢シモ宜イヤウナ所モアル、
此ノ近郊ニ於キマシテモ一時間ニ一遍位シ
カ列車ヲ運轉シテ居ナイ所ニ複線ノアル所
モ隨分アリマス、尤モ此ノ遊山鐵道ト申シ
マスカ、「ケーブル·カー」ト云フヤウナモ
ノハ是ハ撤廢サシテ囘收スルト云フヤウナ
御計畫ハアルヤウデアリマスガ、其ノ以外
ニモ單ニ或地點カラシテオ寺カナンカヘ行
クニ過ギナイ所ノ鐵道モアルニ拘ラズ、是
等ニ對シテハ手ヲ著ケテ居ラレナイト云フ
ヤウナ所モアルヤウニ見エル、段々ニハサ
ウ云フ風ニナサレルノカモ知レマセヌガ、
只今ノ所デハ非常ニソレニ對シテ緩ヤカニ
シテ居ラレルヤウニ思フノデアリマス、又
旅客ノ制限等ニ致シマシテモ、鐵道省デ非
常ニ嚴重ニシテ居ル、反對ニ地方鐵道ニ關
スル所ノ取締ガ嚴重ニ行ッテ居ナイ、ソレ
ガ爲ニ鐵道省デ旅客制限ヲシテ折角制限シ
テ居ル所ヘ持タテ行ッテ、外カラ地方鐵道
軌道ニ依ッテドシ〓〓人ガ入ッテ來ル、結
局目的ヲ達シナイト云フヤウナ所モ可ナリ
多イト思フノデアリマス、ソレカラ又此ノ
線路ノ連絡ノ施設等ニ於キマシテハ、ヂヨツ
トシタ連絡施設ニ依ッテ國有鐵道ト地方鐵
道ニ連絡ヲ取ルコトニ依ッテ非常ナ利益ヲ
得ル所ガアリマス、早イ話ガ東京ノ市電ト
此ノ近郊ノ同ジ軌幅ヲ持ッテ居ル所ノ鐵道
トノ連絡施設ヲスレバ、其ノ地方ノ鐵道カ
ラ或程度ノ制限ヲ附ケレバ、東京市內ヘ列
車ニシロ貨車ニシロ入ッテ來ラレルト云フ
ヤウナ所モアルノデアリマス、是ハ前カラ
ノ問題デアリマシテ、所謂陸上交通整備ト
云フ問題ガアリマシテ、只今デモ鐵道省ニ
其ノ委員會ガアルト思フノデアリマス、是
ガナカ〓〓具體化シナイ、斯ウ云フ際デア
リマスルカラシテ、元々問題デアッタヤウ
ナ問題ハ此ノ際ニ直チニデモ此ノ問題ガ具
體化シナケレバナラヌダラウト思ヒマス、
我々ハ此ノ戰爭ガ始マレバ、輸送機關ト云
フモノガ必然的ニ國家管理ニ移ッテモ宜イ
モノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ居ルノ
デアリマスガ、之ニ反シテ鐵道省自體ノ國有
鐵道ハ非常ニ立派ニ行ッテモ、ソレニ關聯
スル所ノ、附帶スル所ノ地方鐵道、軌道ニ
對シテ餘リ御關心ガナイヤウニ思ハレルノ
デアリマスガ、斯ウ云フ點ニ對シテ一ツ鐵道
省ノ只今迄ノ御協力ノ仕方デアリマストカ、
又今後ニ對スル所ノ御方針ヲ承リタイト思
フノデアリマス、尙施設ノミニ限ラズ人的
ノ資源等ニ於キマシテ、隨分地方鐵道軌道
等ト申シマスカ、國有鐵道以外ノ交通機關ニ
於テ無駄ノコトヲシテ居ルコトモ隨分アル、
我々ノ承知シテ居ル所ニ依レバ、此ノ厖大ナ
機關ヲ持ッテ居ル所ノ交通機關ニ於テ、其ノ
機關ニ不相應ナト申シマスカ、不相應す非
常ナ小サイ仕事ラシテ居ル所ガアル、ソレ
ハ非常ナ大キナ目的ヲ以テ作ラレテアルノ
デアリマスルカラシテ、自然厖大ナル組織
ニナッタノデアリマスケレドモ、ソレガ只今
ニ於テソレダケノ仕事ヲシテ居ラズ、又近
キ將來ニ於テ其ノ仕事ヲスル所ノ見込ガ到
底ヲイヤウナ所モアル、人ノ噂ニ依ルト其
ノ鐵道ハ一「キロ」ニ付テ勅任級ノ人ガ一人
ノ割合ニ居ルト云フヤウナ所モアル、斯ウ
云フ所ハ整理ラサレタナラバ、サウ云フ勞
務的ノ仕事デナシニ、モット高級ナル所ノ人
モ隨分出スコトガ出來ルノデアリマスカラ、
人的資源ノ爲ニモサウ云フモノヲ整理サレ
ルノガ非常ニ宜イト思ヒマスガ、或モノ
ハソレ等ニ付テ何等ノ處置ナシニ鐵道省
ガ放置シテ置カレルト云フコトハ、我々
ガドウモ餘リ感心シナイヤウニ感ジテ居
ルノデアリマス、此ノ企業整備ノコトニ
付キマシテハソレダケ伺ヒタイノデア
リマスガ、只今申上ゲマシタ所ノモノハ總
テ消極的ニ輸送力ヲ增スト申シマスルカ、
消極的ノ施設デアリマス、尙積極的ニ輸送、
力ヲ增スコトニ付キマシテハ、車輛ノ增强
ト云フコトガ必然的ニ起ッテ來ル問題デア
ルト思フノデアリマス、此ノ事ニ付キマ
シテハモウ議論ガ盡サレテアッテ、誰モ車輛
ノ增强下云ラコトガ必要デナイト言フヤウナ人
ハナイノデアリマス、只今車輛ノ增強ノ有
樣ガドウデアルカト云フコトヲ承ルコトモ
出來ナイデアリマセウシ、又私ガ申上ゲル
コトモ出來ナイノデアリマスケレドモ、隨
分車輛ノ增强ニ付テハ鐵道當局モ苦心シテ
居ラレルニ拘ラズ、餘リニ香シクナイ結果
ニナッテ居ルト云フコトヲ承ッテ居ルノデア
リマス、其ノ原因ト申シマスノハ、車輛ノ
增强チドニ付キマシテハ、第一資材ノ配給
ガ十分デナイ、是ハ外ノ產業ニ於テ壬同ジ
コトデアリマスガ、假令資材ガ十分ニ參リ
マシテモ、ソレヲコナス所ノ勞力ヲ貰フヨ
トガ出來ナイ、又或工場ニ依リマシテハ
電力節約等ニ抑ヘラレマシテ、一月ニ四日
トカ五日トカ休業シナケレバナラヌト云フ
ヤウナコトニナッテ居ルサウデアリマス、
是ハ結局車輛ノ工業ト云フモノガ、五太重
要產業ナミニ取扱ハレテ居ナイ爲ニサウ云
フコトガ起ル、五大重要產業ニ取扱ハレテ
居ナイト云フコトハ、車輛ノ增强下云フモ
ノハ、サウ言ッテハヲカシイデスケレドモ、
餘リ重要デナイ、第一ノ重要ノモノデチイ
ト云フコトニ思ハレテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、是ハ非常ナ重大ナコトデアリマ
シテ、只今迄チ各委員カラ御話ガアリマシ
タヤウニ、產業ノ增强ニ付キマシテモ、輸
送ト云フモノハ第一ノ間題デアリマス、
輸送ナシニ增產ヲシヨウト云フノハ家ヲ
作ッテ二階ニ梯子ヲ作ラナイヤウナ感ジガ
スルノデアリマス、是等ニ付テハ今迄善隨
分色々ナ議論ヲサレマシテ、何故輸送ト云
フモノガ重要視サレナイカト云フコトハ、
鐵道當局ノ方モ始終心配シテ居ラレマス、
結局陸上輸送ニ對スル所ノ認識ガ世間デハ
薄イカラサウ云フ風ニナルノヂヤナイカ
ト云フコトヲ始終言ッテ居ラレルノデアリ
マス、是ハ世間一般ノ人ニ對スルコトデア
リマシテ、其ノ筋ノ有識者デアル所ノ企畫
院デアルトカ、又例ヘバ鐵道大臣ガ閣議デ
以テ其ノ話ヲサレタト云フコトニナレバ、
是ハモウ世間一般ノ人々ト全然違フノデア
リマスカラシテ、サウ云フ認識ガナイト云
フコトハ言ヘナイト思フ、斯ウ云フ重大ナ
ル所ノ事柄ヲ取上ゲテ、サウシテ〓車〓ノ增
强ト云フコトヲ今日圖ラナケレバ、是ハ全
ク手段ヲ與ヘナイデ以テ仕事ヲシヨウト云
フコトニナルト私ハ思フノデアリマス、是
等ニ對シテ今迄モ隨分御話モゴザイマ
シタガ、此ノ企業整備ニ關スル所ノ問題ノ
アリマスノハ非常ニ好機會ト思ヒマスノ
デ其ノ點ヲ鐵道大臣ニ伺ヒタイト思ヒマ
ス、甚ダ簡單デアリマスガ、承リ得ル限リ
テ於テ詳細ニ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=95
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096・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 久保田委員ノ御
尋ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマス、今回ノ
一般ノ工、業ノ企業整備ト同時ニ陸運事業ノ
整備調整ヲ致シマスコトニ相成リマシタ
ガ、其ノ主ナル目的ハ、鐵道事業ニ於キマ
シテハ、全國的ニ見マシテ、今日所謂陸運
非常體制ノ確立ノ方針ニ基キマシテ、本年
度ニ於テ是非共致サナケレバナリマセヌ最
小限度ノ輸送力增加、只今御話ニナリマシ
タ車輛トカ其ノ他ノ器材竝ニ軌條、サウ云
フモノガドウ致シマシテモ、單ニ物動ノ配
給カラノミニ之ヲ期待スルコトガ許サレマ
セヌノデ、出來ルダケ鐵道ノ部內ニ於キマ
シテ、官私ヲ問ハズ、鐵道部内カラ此フ必
要ナル資材ヲ應急的ニ臨機ノ處置ト致シマ
シテ、要度ノ低イ方カラヨリ要度ノ高イ方
ヘ之ヲ移シ植ヱルト云フコトガ、十八年度
ノ此ノ輻輳シテ參リマスル戰時下ノ輸送ヲ
完成スル爲ニ是非共致サナケレバナラヌ立
場ニアリマスノデ、サウ云フ觀點カラ致シ
マシテ、今囘此ノ臨時議會ニ御協賛ヲ仰イ
デ居リマス鐵道ノ事業ノ整備、又其ノ他ノ
陸運事業ノ整備ノ豫算ガ計上サレテ居ルヤ
ウナ次第デアリマス、從ヒマシテ只今久保
田委員ノ御說ニアリマシタル通リ、我ガ國
ノ今日ノ交通機關、殊ニ之ヲ鐵道ノ觀點カ
ラ見マスル時ニ、唯今囘ノ所謂應急ノ企業
整備ト云フ點カラ致シマスル所ノ整備デ
目的ガ無論達セラレナイノデアリマス、
若シ許サレルナラバ、新シイ此ノ大東亞建
設ノ基本ノ方針ニ基キマシテ、内外ノ情勢
ヲ交通ノ將來ヲ達觀致シマシテ、國有鐵道
デアルト又民間ノ鐵道デアルトヲ問ハズ、
之ヲ再檢討致シマシテ、其ノ將來ニ同ッテ
施設ヲスベキハ施設ヲシ、又廢止スベキ
ハ廢止スルノガ本當デアラウト考ヘテ居ル
ノデアリマス、之ニ付キマシテハ、鐵道省
トシテハ、只今部內ダケデアリマスルガ、
將來ノ我ガ國ノ鐵道ヲ中心トシテノ、交通
施設ハ如何ニアルベキカト云フコトヲ大
陸其ノ他ヲ一貫致シマシテ考ヘテ居ルノ
デアリマス、其ノ一應ノ〓究ガ出來マシタ
ラバ、之ヲ更ニ國內ノ官民ノ有力ナ、又權
威家ノ御智慧ヲ拜借致シマシテ、我ガ國ノ
將來ノ斯クアルベシト云フ交通ノ施設ノ外貌
ヲ決定致スコトガ此ノ際必要デアルト考ヘ
ルノデアリマス、デアリマスルカラ、サウ
云フ見地カラ見マスト、今日ノ國有鐵道ト、
今日アリマスル所ノ地方鐵道軌道ト云フモ
ノノ國家的重要性、或ハ今日ノ時局ニ對シ
テノ件ト致シマシテ觀ル所ノ重要性ト云フ
モノハ又別ニアルト考へルノデアリマス、今
日應急ノ施設トシテ資材ヲ主眼ト致シマシ
テ詰リ囘收、轉用、而モ之ヲ非常ニ急イデ
本年度內ニ於テ必要ナル施設ニ之ヲ活用セ
ムトスル其ノコトカラ考ヘマスト、此ノ根
本的ト申シマスカ、官私兩方ヲ比較シテ檢討
シタ所ノ施設ノ改廢ト云フコトニ付テハ、
其ノ時間ガナイノデアリマス、從ッテ今御話
ノ中ニアリマシタ所ノ御意見、卽チ今囘ノ企
業整備ハ鐵道交通ニ關スル限リ國有鐵道ノ
モノニ重クシテ、民間ノ鐵道ニ輕イデハナ
イカト云フ御批評ト謂フカ御考ハ、全ク其
ノ通リニ御感ジニナルト思ヒマスガ、只今
申述ベタ通リ今囘ノハ應急ノ施設ト致シマ
シテ、國有鐵道或ハ地方鐵道等ニ於キマシ
テ、是非共急ギ施設スベキ所ノ資材ノ中囘
收、轉用ヲ要スルモノニ付テノミ最小限度ノ
計畫ヲ立テタ次第デアリマス、尙左樣ナ見
地カラ此ノ企業交通整備ト云フモノヲ考ヘ
テ居リマスルノデ、例ヘバ中ニハ根本ノ觀
察カラ申シマスレバ、此ノ際止メテシマッテ
モ宜イヂヤナイカト思ハレルヤウナモノモ
ナイ譯デハアリマセヌ、例ヘバ「ケーブル·カ
ー」ノ如キ、ケレドモ今囘ハ旣ニ御承知ト存
ジマスガ、其ノ會社ハ存續致サセマシテ、
勿論營業權モ免許モ其ノ儘ニ致シマシテ、
サウシテ其ノ必要ナル資材ダケヲ囘收轉用
スル、サウシテ之ニ對シテ必要ナル補助ヲ
致スト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス、從ヒマシテ原則ト致シマシテハ、廢止
ヲスルノデハナク休止ヲスルノデアリマス、
更ニ出來マスレバ將來近キ機會ニ於テ軌道
ナリ軌條ナリ何ナリガ再ビ得ラレマス機會
ニ於テハ、之ヲ囘復致スト云フコトノ原則
ニ相成ッテ居ルノデアリマス、但シ左樣ナコ
トデアリマスカラ、今後ニ於キマシテ自然
廢止スル方ガ宜イ、適當ト考ヘルモノニ付
キマシテハ、改メテ其ノ方法ヲ講ズルト云
フコトモ起ッテ參ルカト思ヒマス、何故ニ左
樣ナ消極的ナ態度ヲ取ッタカト申シマスト、
私カラ申上ゲル迄モナク御承知ノ通リ我ガ
國ノ交通ノ發達ハ、大體ニ於テ所謂重要物
資ト謂フカ、嵩高ナ重量品而モ遠距離輸送
ト云フモノハ天然ノ地形上之ヲ海運ニ依ッテ
發達致シテ居リマシテ、陸上ノ鐵道其ノ他
ハ比較的其ノ殘リノ雜貨的ノモノヲ中心ト
シタ國內ノ小距離ノ輸送ヲ主トシテ居リ.マ
ス、其ノ他ハ旅客輸送ヲ主眼ト致シテ居リ
マス、國有鐵道サヘモ過去ニ於キマシテハ、
旅客輸送ヲ本位トシテ發達致シテ居ルノデ
アリマス、況ヤ地方鐵道ノ如キハ所謂電車
ト云フヤウナ形ニ於テ、地方ノ旅客ヲ主ト
シテ對象ト致シテ發達致シテ居ルノデアリ
マス、左樣ナ歷史ヲ持ッテ居ルノニ、俄カニ
海運ニ依ッテ運バレテ居リマシタル沿岸重要
貨物ガ陸ニ移ッテ來ルト云フコトニナリマ
スト、其ノ施設ハ根本的ニ違ッテ居ルノデア
リマス、今回十八年度ニ於テ施設ヲ致スノモ、
其ノ最少限度ノ施設ヲ致スノデアリマス、デ
アリマスカラ、總テガ應急ノ考ニナッテ居ル
ト云フコトヲ、私カラ申上ゲナクテモ御承
知ノ通リデアリマス、斯樣ニ考ヘマスルノ
ト、一方ニ於キマシテハ、ソレ等ノ地方鐵
道貨物輸送ニ付キマシテハ甚ダ貧弱デア
ルノデアリマスガ、其ノ地方ノ旅客交通ト
云フコトニ相成リマスルト相當ノ働ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、從ヒマシテ何カ旅客
自動車ノヤウナ代用スベキ機關ガソコニゴ
ザイマスナラバ、又道路ガ相當其ノ沿線ニ
發達致シテ居リマスレバ、或ハ相當外シ得
ル地方鐵道モアルト考ヘルノデアリマスガ、
遺憾ナガラ今日旅客自動車ト云フモノガ甚
ダ不十分デアリマスルノト、サウ云フヤウナ
只今申述ベマシタヤウナ關係カラ、今囘ハ
地方ノ方々ノ日常ノ生活ト云フヤウナ狀態、
實際ノ狀況ヲモ愼重ニ考慮致シマシテ、實
ハ最少限度ニ地方鐵道ニ付キマシテハ、或
ハ軌道ニ付キマシテハ、或ハ「ケーブル」等ニ
付キマシテ、左樣ナ考ヲ以テ整備ヲ致スコ
トニナッテ居リマス、殘リノ資材ハ國有鐵道
ガ自ラノ施設ノ中カラ力强ク出スト云フコ
トニ致シタノデアリマス、大部分ハソレ
ガ故ニ國有鐵道ノ新線ノ中ノ未開業機關
ノ而モ「レール」ヲ敷イタ一部デ、チヨット
今日近キ將來ニ於テ其處ヲ開業シ完成ス
ルト云フコトノ見込ノナイ部分ノ軌條ハ惜イコ
トデアリマスガ、ソレヲ一部取リマシテ、ソ
レヲ他ノ必要ナ方面ニ之ヲ向ケル、或ハ今
日複線デアリマスル所ノモノデ將來ハ必要
ナ機關デアルカモ知ラヌガ、今日複線デナ
クテモ間ニ合フト云フ機關ハ之ヲ單線化致
シマシテ、之ヲヨリ一層必要ナル時局ノ方
面ニ持ッテ參ルト云フヤウナ風ニ致シテ居
リマス、其ノ他停車場ノ上屋ノ如キ、或ハ
各停車場ノ側線ノ如キ、此處數年間之ヲ轉
用シ得ルモノハ悉ク之ヲ轉用スルト云フ方
針ヲ執ッタノデアリマス、敢テ斯ウ云フ官
設鐵道ガ民間ニ範ヲ示スト云フ趣旨カラ出
タノデハゴザイマセヌデ、先程申述ベマシ
タヤウナ今日地方ノ交通ト云フモノガ、甚
ダ貧弱デアルト云フ狀況カラ、而モ農業ノ
生產ナリ或ハ其ノ他ノ方面カラ見マシテ、出
來ルダケサウ云フモノハ殘シタイト云フ考
ヘカラ、國有鐵道ノ方ノ囘收轉用ガ多イ譯
デゴザイマス、尙モウ一ツ御尋ノ、ドウモ
會社ニ依ッテハ非常ニ人ガ多イデハナイカ、
恐ラク役員ト云フヤウナモノヲ仰シヤルノ
デハナイカト思ヒマス、御話ノ通リノ如ク
ト思ヒマス、是ハ今日合併合同ト云フヤ
ウナコトガ出來テ進ミツヽアリマスノデ、
是モ出來ルダケ法規ニ依ラズニ任意ノ合同
慫慂ニ依ッテ行政的ニヤッテ居リマスノデ、
一時ハ相當役員ノ定員ガ增加セラレルト云
フコトハ已ムヲ得ナイ事實ト考ヘマスガ、
出來ルダケ早ク斯クノ如キハ之ヲ最小限度
ニ止メナケレバナラヌト考ヘマス、尤モ其
ノ中ニハ兼務ヲ持ッテ居ル人ガ多イノデアリ
マシテ、純然タル其ノ專門ノ方ハ割合ニ少
イノデハナイカト考ヘマス、併シナガラ御
話ノ點ハ鐵道省ト致シマシテモ一層ノ力ヲ
致シタイト考ヘテ居リマス、又第三ノ御尋
デアリマス輸送增强ノ爲ニハ車輛ガ要ル
ノデハナイカ、其ノ車軸ガ他ノ重要產業ニ
比シテ其ノ配慮ガ足ラヌデハナイカト云フ
御話ハ御尤モニ感ズルノデアリマス、今日
何ト申シマシテモ貨車竝ニ貨車ヲ牽ク所ノ
機關車ガナクテハナラヌノデアリマスガ、
昨年度ニ於キマシテモ必シモ豫定通リ進行
致シテ居リマセヌノデ、從ッテソレ〓〓應
急ノ策ヲ執ツテ是迄ニモ二囘ニ亙ッテ旅客
列車ノ壓縮ヲ致シテ居ルノデアリマス、又
最近近年ニ於キマシテハ物動ニ於キマシテ
モ客車ハ作ラナイト云フコトニ致シテ居リ
やっく、總テ貨車ヲ作ルト云フコトニ致シテ
居リマスガ、一方ニ於テハ工員ノ輸送ト云
フモノガ恐ラク場所ニ依リマシテハ三十倍
位モ殖エタ所ガゴザイマス、或ハ平均シテ
四五倍重要產業ノ工員ノ輸送ト云フモ
ノガ日夜殖エテ參ツテ居ルノデアリマス、
其ノ車ハドウシテモ作ラナケレバナリマセ
ヌノデ、已ムヲ得ズ二等車、一等車、寢臺
車、展望車ト云フヤウナモノヲ之ヲ三等車
ニ變ヘテ、今日日ニ增シテ參リマス所ノ工
員輸送ト云フモノニ對シテ充テテ居ルコト
モ御承知ノ通リデアリマス、特ニナケレバ
ナリマセヌノハ貨車デゴザイマス、或ハ機
關車デゴザイマス、是ガ所謂五大重點產業
ト云フモノト取扱方ガ違フヂヤナイカト云
フ點ニ付キマシテハ、私共モ其ノ從業者カ
ラ愬ヘラレテ居ルノミナラズ、又私共モ其
ノコトヲ主張スベキ所ニ於キマシテハ隨分
ト主張致シテ居ルノデアリマス、唯玆ニ御了
解ヲ願ヒタイコトハ政府ニ於テ所謂五大品
目ト申シマスガ、直接戰力ニ關係アル品目
ニ對シマシテ職權特例、卽チ總理大臣ガ之
ヲ指示スル、之ニ對シ必要ナル指示ヲ爲ス
三、或ハ職權特例ヲ發動シ得ルト云フノ
ハ決シテソレダケガ重點產業ト云フ意味
デハナクテ、總テノモノガ必要デアルガ、
是等ノ問題ニ對シテハ、或所管ノモノヲ命
令ニ依ッテ其ノ勅令ナリ、何ナリニ依リマ
シテ他ノ官廳ノ人ヲシテサセルト云フコト
ガ問題デアルニ拘ラズ、識者ニ於テハナイ
ノデアリマスガ、是ガ地方ニ參リマスト五
大重點產業ノミガ今日時局ニ必要ガアル、
ソレニ書イテナイモノハ何カ必要ガナイヂ
ヤナイカ、是ハ餘リ勉强セヌデモ宜イト云
フヤウナ誤解ガ下部ノ方ニ參リマストナイ
デハアリマセヌノデ、其ノコトハ私ハ非常ニ
耳ニシテ居ルノデアリマシテ、其ノコトハ
敢テ車輛バカリデナク、若シ斯クノ如クン
バ重點產業ト云フモノノ結局生產ノ豫定ニ
狂ヒヲ生ズルト云フコトニ相成ルト思フノ
デアリマシテ、決シテ私共ノ承知シテ居ル
範圍ニ於テ政府ニ於テハ左樣ナコトハナイ
ノデアリマシテ、計畫經濟ニ於テハ決シテ
重點產業ト云フモノハナイ筈デアッテ、其
ノ年ニ定メラレタル所ノ物動計畫、生產計
畫ニ必要ナルモノハ是非共其ノ品目ノ如何
ヲ問ハズソレダケハ作ラナケレバナラヌノ
デアリマスカラ、私共ハ左樣ナ見地カラ勞
カ、電力、資材等ニ於キマシテモ今後最善
ヲ盡シマシテ御期待ニ副ヒタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、特ニ第一線ニ於キマシテ
往々從業者ガ愬ヘテ參リマスガ、是ハ何等
カノ誤解ガアルモノト存ジマスノデ、是等
ノ點ニ付キマシテモ今後政府ノ面ニ於キマ
シテモ是非サウ云フコトノナイヤウニシマ
シテ、此ノ豫定計畫ガ出來、而モソレニ依ツ
テ戰力增强ガ完遂サレマスルヤウニ政府ノ
面カラモ努力致シタイト存ジテ居リマス、
一應御答申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=96
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097・久保田敬一
○男爵久保田敬一君 只今ノ御說明デ能ク
了解致シマシタ、有難ウゴザイマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=97
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098・飯田精太郎
○男爵飯田精太郞君 私モ鐵道大臣ニ一ツ
御伺ヒシタイト思フ、只今ノ御話デ、其ノ
中ニ含ンデ居ルカトモ思フノデアリマスガ、
違ッタ方面ガアレバ伺ヒタイト思ヒマス、ソ
レハ今囘ノ企業整備ニ伴ヒマシテ、色々ノ
方面ニ影響ヲ及スト思フノデアリマスガ、
鐵道、特ニ地方鐵道、軌道ニ對スル影響ハ
非常ニ大キナモノガアルト思ヒマス、從ッテ
大キナ工場ガ廢止サレルトカ、又ハ轉用サ
レテ外ニ動クト云フヤウナコトガ起リマス
ト、其ノ工場ニ依ッテ成立ッテ居ッタ地方鐵
道軌道等ガ、場合ニ依リマスト經營ガ非
常ニ困難ニナル、其ノ一方貨車トカ客車ト
カ云フモノガ非常ニ餘ル、又他方工場ガ移ッ
テ行ッタ先ハ非常ニ輸送ガ殖エタ爲ニ、ソレ
ニ對スル擴張其ノ他資材ヲ非常ニ要スルヤ
ウナコトガ起ッテ來ルダラウト思ヒマス、是
等ニ對シテ鐵道省トシマシテドウ云フ風ニ
處置ナサルコトニナッテ居リマスカ、其ノ點
ヲ一ツ御伺ヒ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=98
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099・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 今囘ノ所謂一般
ノ工業ノ企業整備ニ伴ヒ·マシテ、數字ハ私
共詳シク知リマセヌガ、少クトモ囘收ニナ
ル所ノ鐵材、或ハ其ノ他ノ器材等、色々ノ
物資ガ今迄アリマシタ所カラ他ノ所へ移ッ
テ參ルト云フコトハ、是ハ明カデアリマス
ガ、其ノ數モ相當ナモノデアラウト思ヒマ
スガ、只今御尋ノ今後ノ輸送ノ狀況ガ過
去ニ於ケルモノト違ッテ來ルモノモアルダ
ラウ、是ハ私ハサウダラウト思ヒマス、併
シナガラ私共ノ伺ッテ居ル所ニ依リマスル
ト今囘ノ囘收、轉用、企業整備ニ依リマ
シテ、人ナリ物ナリハ何處へ移動スルカト
云ヘバ、屑鐵ノヤウナ決ッタモノハソレ/。
其ノ消費地へ參リマセウガ、其ノ他ノ器材
等ハ出來ルダケ之ヲ距離カラ申シテ近イ所
ニ、手近ナ所ニ移ス、所謂交錯輸送ノ起ル
ヤウナコトノナイヤウニ、無駄ノナイヤウ
ニ、又工員ニ致シマシテモ無駄ニ舍宅ガ要
ルト云フヤウナコトノナイヤウニ、出來ル
ダケ手配スルト云フヤウニ伺ッテ居リマス、
是等ハソレ〓〓ノ企業每ニ、各省ニ於キマ
シテソレ〓〓計畫ガ立ッテ、其ノ計畫ニ基イ
テ人ト物トガ動イテ參ルモノト考ヘルノデ
アリマス、從ッテ是等ノ人ト物トノ動クコト
ニ必ズ伴ヒマスル所ノ人竝ニ物ノ輸送ト云
フコトニ付キマシテモ、是等ノ各省ニ於ケ
ル、又各企業ノ御方針ニ基キマシテ、之ト
調子ヲ合セタ所ノ輸送ヲ致サナケレバナラ
ヌト考ヘマス、何故ナラバ、今日サモナク
トモ貨物輸送ニ於キマシテモ、或ハ人ノ輸
送ニ於キマシテモ非常ナ輻輳デアリマス所ヘ、
此ノ企業整備ニ依リマシテ更ニ是ガ相當ノ
動キヲ致スト云フコトニナリマスルト、是
ハソレダケ他ノ重要ナル物資、或ハ必要ナ
ル人ノ動キト云フモノヲ壓迫スルコトニナ
リマスルノデ、是ハ彼此レ相組合セマシテ、
其ノ時ト場所ト、サウシテ其ノ方法ハ恰モ
織物ノ縱ト横ノ絲ガ織リ成シテ綾ヲ成スガ
如ク、調子宜ク行カナケレバナラヌト考ヘ
ルノデアリマス、之ニハ商工省ナリ農林省ナ
リ、或ハ其ノ他ノ各企業統制會等、ソレ〓〓
ノ方面ニ於キマシテ計畫ノ立チマスルト同
時ニ、輸送ノ方面モ之ト織リ合セマシテ、
無駄ナ輸送ノナイヤウニ致シタイト考ヘテ
居リマス、從ヒマシテ御尋デアリマシタ
今後ノ變ッテ行ク輸送ニ付キマシテモ、若シ
ソコニ從來ノ引込線ナリ專用線ナリ、積込、
取卸シト云フヤウナ設備ガ要ラナクナリマ
スルナラバ、是ハ勿論他ノ方面へ移シ植ヱ
マシテ、萬遺憾ナキヲ期シタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=99
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100・飯田精太郎
○男爵飯田精太郞君 只今ノ御說明デ大體
ハ分リマシタガ、最初御伺ヒシマシタ大キナ
工場ガ動イタ爲ニ經營ガ若シ成立タヌヤウ
ナ鐵道ガ出マシタ場合ニハ、何カ此ノ企業
整備ニ依ッテ補助ヲナサルトカ、補給ヲナサ
ルト云フヤウナ御考ハナイノデアリマスカ、
ソレヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=100
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101・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 今最初ノ御尋ヲ
私チヨット誤解シテ居リマシタ、最初ノ御尋
ハ、サウ云フモノモアラウト思ヒマス、或
線區ニ對シテ在來アッタ所ノ工場ガ移轉致
シマシタ爲ニ、或ハ更ニ多クノ工場ガ出來
テ參ツタト云フコトニ依リマシテ、其ノ線路
ノ輸送ノ繁閑ノ度ガ違ッテ參ルト考ヘマス、
今御話ノ、要ラナクナッタナラバドウスルカ
ト云フコトニ付キマシテハ、場所ニ依ッタラ
線路其ノモノモ或ハ廢止ト云フカ、休止ス
ルト云フヤウナコトモ起ルノデハナイカト
思ヒマス、私共ハ先程申上ゲマシタヤウニ
專用線トカ引込線等ニ於テハ今考ベテ居リ
マスガ、マダサウ云フコトガアルカドウカ
ト云フコトハ存ジテ居リマセヌ、サウ云フ
モノガアリマシタラバ、今囘ノ鐵道ノ企業
整備ニモ織込ンデ考ヘタイト考ヘマス、又
車輛等ハ他ニ無論之ヲ活用スルト云フコト
ニ致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=101
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102・飯田精太郎
○男爵飯田精太郞君 少シ諄イヤウデアリ
マスガ、收入ガ非常ニ滅リマシテ、サウシ
テ經營ガ成立タナイト云フヤウナモノニ對
スル補助トカ何トカ云フ御考ハアリマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=102
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103・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 今度ノ企業整備
ト同ジ方針ニ依リマシテ、鐵道ニ於テモ休
止シマスモノニ對シテハ補助ヲ致スノデア
リマス、處ガ鐵道ノ觀點カラデハナクテ、
一般他ノ企業整備ノ結果起ッタ所ノ營業ノ
損失ハドウスルカト云フコトハ、是ハ特ニ
私ハ今考ヘテ居リマセヌガ、若シ企業整備
ノ觀點カラ之ヲ補助スベキモノナラ企業整
備ノ結果トシテ補助ガ出來ルノデハナイカ
ト思ヒマスシ、或ハ之ヲ一般ノ所謂地方鐵道
法ニ依ッテヤリマス場合ニハ、鐵道ノ營業補
助ト云フモノガ出來ルト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=103
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104・飯田精太郎
○男爵飯田精太郞君 商工大臣ニ一ツ二ツ
御伺ヒシタイト思ヒマス、今朝程御說明ノ
アリマシタ保有工場ノ維持ニ付テ御尋ネシ
タイト思ヒマスガ、御話ニ依リマスト、保
有工場ハ大體三通リバカリニ分ケテ御話ニ
ナリマシタ、第一ハ空襲ニ依ル場合、叉南
方ニ移駐スル爲、モウ一ツハ今後ノ變動ニ
依ッテ物ヲ動カス必要ガ起ル場合ヲ豫想シテ
保有スルト云フ風ナ御話ガアリマシタ、此
ノ三通リノ保有ノ仕方ハ何カソコニ違ヒガ
アルノデアリマスカ、事業者ニ保有サセル
ト云フ御話デアリマスガ、何時デモ直ダ動
カセルヤウナ狀態ニ之ヲ保持スルト云フコ
トハナカ〓〓困難ナコトダト思フノデアリ
マス、殊ニ從業員ヲドウ云フ風ニシテ抱ヘ
テ行クト云フコトニナリマスカ、又ソレ等
ノ費用ハ政府ガ御持チニナルノダラウト思
ヒマスガ、ドウ云フコトニナッテ行クモノ
デアリマスカ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=104
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105・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 保有工場ニ付キマ
シテハ、今御話ガアリマシタ通リ、大體大
キナ目標トシマシテハ、三ツノ場合ヲ目標
トシテ適當ナ保有ヲ致シタイ積リデアリマ
ス、保有ニ付テハ先刻モ申上ゲマシタ通リ、
出來ルダケ業者自體デ之ヲ保有スルトカ、
或ハ業者自體デ出來ナイ場合ニ於テハ、此
ノ業者ノ團體デ保有スルトカ云フ風ナ形デ
行キタイト思ヒマスガ、併シソレモ力ノ上
デ出來ナイト云フヤウナ場合ニハ、產業設
備營團ニ買取保有ヲサセルトカ云フ方法モ
考ヘテ居リマス、又ハ政府ガ此ノ保有費用
ヲ補助スルコトニ依ッテ業者ニ保有セシメ
ルト云フキウナ、是ハ事業ニ依ッテ色々負
擔ノ關係ニ付キマシテハ、原則ハ自力負擔
デヤツテ貰ヒタイト考ヘテ居リマスケレド
モ、色々ナ事業ノ性質デサウ云フ色々ナ方
法ヲ用ヒテ參リタイ、併シ御質問ニアリマ
シタ、何時デモ之ガ必要ニ應ジテ直グ動キ
得ルト云フ狀況デ保有スルト云フ事柄ニツ
キマシテハ、成ルタケ此ノ保有ニ付キマシ
テハ其ノ必要ガ起ッテ來レバ出來ルダケ早
イ期間ニ操業工場ニナリ得ル形デ保有ヲサ
セタイト思ヒマスガ、是亦事業ノ性質ト色々
ナ機械設備等ノ何カラ申シマシテ、一〓ニハ
參リ難イト思ヒマス、併シ科學裝置等ニ於
テ始終手入レヲシテ居ラナイト云フト非常
ニ傷ムトカ云フ風ナモノニ付テハ、相當之ヲ
保持スルノニ必要ナコトヲシナケレバナラ
ヌト思ヒマスガ、從業員全體ヲ全部之ヲ其ノ
儘ニ仕事ナシニ保有スルト云フ事柄ハ、是ハ考
ヘテ居ラナイノデアリマス、寧ロソコノ從
業者ハ他ノ緊要ナ操業工場、事業場ニ於テ
働イテ貰フト云フコトニ致シマシテ、保有
ニ必要ナ最小限度ノ人ハ是ハ置イテ置カ
ナケレバナラヌ、從ヒマシテ一朝事アッタ
場合ニ之ヲ操業工場トシテ動カスト云フノ
ニハ多少、必要ガアッタ場合ニ翌日カラ直
ダ動キ得ルト云フ譯ニモ行カナイト思ヒマ
スガ、成ルベク必要ガアル場合ニハ操業シ
易イ狀況デ保有サシテ行キタイ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=105
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106・飯田精太郎
○男爵飯田精太郞君 モウ一ツ御伺ヒシタ
イ、ソレハ第二種ノ工場、重要產業ノ工場
ヲ系統的ニ整備スル、親子會社ノ關係ヲ明
カニスルトカ云フ御話デアリマシテ、誠
結構ナコトト思フノデアリマス、唯實際ノ
現狀ハ非常ニ複雜シテ居リマスルノデ、殊
ニ商工省ガ今迄統制ナサッテオイデニナツ
タヤリ方ハ、ドチラカト言ヒマスト、橫ノ
統制ガ多カッタ、自然現在出來テ居リマス
統制會ガ橫ノ統制ノ會ガ多イノデアリマス、
ソレノ行過ギノ爲ニ、寧ロ現在縱ノ統制ガ
ウマク行カナイ、能率ガ擧ラナイト云フヤ
ウナ所ガ相當アルト思ヒマス、今回其ノ點
ヲ是正ナサルト云フコトハ非常ニ結構ナコ
トデ、下請工場、部分品工場方面ニ非常ナ
無駄ガ多イ、整理スベキ餘地ガ非常ニ澤山
アルト思フノデアリマス、唯先程ノ御話ニ
依リマスト、整理ヲ統制會ニ御任カセニナ
ルヤウニ伺ッタノデアリマスガ、場合ニ依
リマスト、統制會ガ非常ニ縱ノ系統ヲ妨害
ヲシテ居ルト謂ヒマスカ、邪魔ニナッテ居ル
モノガ多イノデアリマス、今囘ノ整理ヲヤ
リマスト、統制會ガ大分、ドチラカト云フ
ト、今迄ノ統制ガ破ラレルヤウナ所ガ出來
テ來ハシナイカト云フ風ニ考ヘルノデアリ
やく、其ノ點ニ付テ何カ特ニ御考ヘニナッ
テ居リマスデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=106
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107・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ御趣旨、
多少御了解シ兼ネル所ガアルヤウニ思フノ
デアリマスガ、從來ノ統制ニ於キマシテ、
或ハ縱ノ統制、横ノ統制、色々ナ形デ統制
ヲ致シテ居リマスガ、十分縦ノ統制ガ徹底
ヲシテ居ラナカッタ部門モ少クナカラウト
思ヒマスガ、統制會ノ組織自體ガ必ズシモ
橫ノ統制デアッテ、縱ノ統制ト云フモノハ統
制會ノ機能ト低觸スルヤノヤウナ御意見デ
ゴザイマシタガ、私共必ズシモサウ考ヘテ
居ラナイノデアリマシテ、現ニ機械ノ統制
會等ノ部門ニ於キマシテハ、此ノ下請工場
ノ整備、又之ト親工場トノ有機的關聯、生
產分野ノ確定、下請工場ノ專門化等ニ付キ
マシテ實際ノ方面カラ相當〓究モ、指導モ
サレテ居リマスシ、極メテ適切ニ之ノ改善
策ニ付テノ案モ出テ居ルヤウナ狀況デアリ
マス、出來ルダケサウ云フ意味ニ於テ統制
會ヲ私共活用致シテ參リタイト、斯ウ考へ
テ居ルノデアリマス、尤モ若シ或特殊ノ統
制會ニ於キマシテ、サウ云フ縱ノ關係ノ統
制ガ十分ニ行ッテ居ラナイト云フ風ナモノ
ニ付キマシテハ、寧ロ統制會自身ヲ、統制
會ノ機能ト云フモノハ決シテ橫ダケニ限ラ
レテ居ルモノデハナイト私共考ヘテ居リマ
スノデ、統制會自身ヲ十分ニサウ云フ風ナ
機能ヲ持ツヤウニ指導シテ參ルノガ適當デナ
イカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=107
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108・秋田三一
○秋田三一君 今朝來ノ質疑應答デ大體私
ノ質疑モ解ケタ譯デアリマスガ、尙多少時
間ヲ許サレテ居ルヤウデゴザイマスシ、大
體ノ質問モ終ッタヤウデアリマスカラ、運用
等ニ關シマシテ二、三ノ點ヲ簡單ニ御伺ヒシ
タイト思フノデアリマス、第一種工業部門
ノ中デ操業、轉用、保有、休止等ニ限ラレ
テ居リマスルガ、實際ニ此ノ四ツニ御分ケ
ニナリマスル基準ト申シマスカ、是ハドウ
云フモノニ依ッタモノデアリマスカ、無論能
率、又國防、輸送ト云フヤウナ點、又勞務
ト云フヤウナモノ等ヲ勘案サレテ居ル結果
デアラウト思ヒマスガ、尙當事者ノ希望ト
カ、或ハ地方ノ要望ト云フヤウナモノモ御
斟酌ニナルモノデアリマセウカ、將來ノ爲
ニ參考ニ御聽キシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=108
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109・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 各企業ヲ操業、保
有、轉用、廢止ノ四ツノ何ニ具體的ニ分ケ
マス標準ニ付キマシテハ、今御意見モアリ
マシタヤウニ各工場ノ能率モ一ツノ標準ニ
ナリマスガ、併シナガラ唯單ニ從來ノ產業、
企業整備ニ於キマシテハ、此ノ能率ト云フ
コトガ殆ド唯一ノ標準ニナッテ居ッテ、高能
率ノ所ニ集中スル、良イ設備ヲ持ッテ居ル
能率ノ良イ所ニ集中スルト云フダケノ標準
デ從來整備サレテ來タ傾向ガアルノデアリ
マスガ、今囘ノ整備ニ當リマシテハ、更に
大キナ立地條件ノ點ニ於キマシテ、更ニ大
キナ考ヘ方ヲシナケレバナラヌト思ヒマス、
ソレハ一ツハ國防的ノ見地カラノ立地ノ關
係デアリ、モウ一ツハ輸送ノ關係カラノ立
地デアリマス、所謂此ノ能率ガ良イト云フ
問題、能率ガ良イト云フコトモ詳シク分析
シテ考ヘマスト云フト、色々ナ何ガアルト
思ヒマスガ、唯單ニ生產「コスト」ガ安イ、ヽ算
盤ノ關係デ最モ有利ナモノデアル、或ハ設
備ガ最モ新シクテ能率ガ良イト云フダケデ
ナクシテ、今日ハ例ヘバ原料ノ石炭ヲ輸送
スル關係ニ於テ非常ナ制約ヲ受ケテ居ルト
云フヤウナコトヲ考ヘテ見マスルト、寧ロ
石炭ノ產地ニアル所ノ工場ヲ「フル」ニ動カシ
テ、石炭ヲ比較的長イ距離輪送シナケレバ
ナラヌヤウナ工場ハ休廢止スルコトガ適當
デアルト云フヤウナ問題モ起ツテ來ヨウト
思フノデアリマス、是等ノ點ヲ十分加味シ
テ之ヲ決定シナケレバナラヌ、又轉用ノ必
要モ今度ノ整備ニ於テハ非常ニ重要ナ要素
ヲ爲シテ居ルノデアリマスガ、緊要產業方
面ニ轉用スルガ爲ニハ相當ナ設備ヲ持ッテ
居リ、相當ノ規模ヲ持ッテ居ルト云フヤウナ
コトヲ轉用ノ上カラ要求セラレル場合ガ少
クナカラウト思ヒマス、又立地ノ點等ニ付
キマシテモ色々ノ必要ガ起ッテ來ルノデア
リマシテ、而モ轉用ヲシヨウト云フコトニ
ナリマスト、轉用ノ目的ヲ十分叶ヘルヤウ
ナモノハ轉用シテ行カナケレバナラヌト云
フ必要モ起ッテ參リマスノデ、從來ノ如ク唯
能率本位若シクハ企業ノ規模ノ大小デ以テ唯
決メルト云フ風ニ簡單ニハ行カヌト斯ウ思フ
ノデアリマス、各方面ノ、之ニ付テハ軍方面
ノ轉用サレル方面ノ要望モアリマセウシ、
又政府部內ニ於キマシテモ勞務ノ關係或ハ
金屬ノ囘收ノ關係ト云フヤウナコトト睨ミ
合ハシテ具體的ニ決メテ參ラナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、相當ニ複雜ナ要素ヲ持ッ
テ居ルト思フノデアリマス、唯併シ今御尋ガ
アリマシタガ、當該業者ガ希望シテ自分ハ操
業シテ居リタイ、或ハ自分ハ保有シテ居リタイ、
斯ウ云フ希望デアルトカ、地方ニ於テ此ノ產業
ガ此ノ工業ガ休廢止ニナルト非常ニ困ルカラ、
何デモ是ハ動カシテ置イテ吳レト云フ風ナ〓
望モアラウカト思ヒマスガ、是ハ今囘ノ企
業整備ガ專ラ我國ノ產業經濟力ヲ動員シテ
戰力增强ニ集中スルト云フ目標ヲ持ッテ居
ルノデアリマシテ、是等ノ業者ノ希望ガ先程
申上ゲマシタ我々ノ考ヘテ居ル基準ニ合ッテ
居ル場合ニハ、是ハ勿論聽イテ參ラナケレ
バナラヌト思ヒマスガ、國家ノ高イ要請ガ
業者ノ希望ト一致シナイト云フ場合ニ於テ
ハ必ズシモ業者ノ希望等ニ重キヲ置イテ
之ヲ決メルト云フヤウナコトハ適當デナカ
ラウ、斯ウ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=109
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110・秋田三一
○秋田三一君 纖維工場ガ此ノ第一種工業
部門ノ代表的ノモノニナッテ居ルカト思フ
ノデアリマスガ、同ジ纖維關係デモ直接戰
力增强ニ關係ノ少イ、老人トカ婦女子ナド
デ家內工業的ニヤッテ居ル特殊ノ織物業ナ
ドハ、私共ノ考デハ或ハサウ云フ方面ニハ
寧ロ仕事ヲサセテ、幾分カ纖維ノ生產力
減退ヲ其ノ方面ニ於テ補ッテ行クノモ一ツ
ノ方法ニナリハシナイカト思フノデアリマ
スガ、斯ウ云フ部面ニ對スル御考ハドウ云
フモノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=110
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111・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 纖維ノ問題ニ付キ
マシテハ、今日纖維工業ノ實情ヲ簡單ニ申
上ゲマスト云フト、從來漫然纖維產業ハ平
和產業ダト、從シテ整備ノ常ニ對象トナッテ
來ルヤウナ考ヘ方ガ行ハレテ居リマスガ、
今日ノ纖維產業ニ於キマシテノ操業狀態ヲ
見マスルト云フト、是等ノ工場ニ於テ實際
動イテ居ル、動カスニ必要ナ纖維資源ガ非
常ナ制約ヲセラレテ居ルノデアリマス、棉
花ニ致シマシテモ、羊毛ニ致シマシテモ、
或ハ化學纖維ニシテモ、生絲等ノ動物纖維
ニシテモ、全體ノ量ガ非常ニ制約ヲセラレ
デ居ル狀況デアリマス、從ッテ此ノ原料ヲ
用ヒテ纖維製品ガ作ラレテ居リマスガ、其
ノ纖維製品ハ軍需及戰爭遂行上必要ナ用途
ト及ビ戰時下ニ於ケル國民生活ノ絕對ノ必
要ト申シマスカ、所調生產擴充用ノ勞務者
ノ作業衣デアルトカ、或ハ乳幼兒ノモノデ
アルトカ、或ハ學童服デアルトカ、其ノ他
兎ニ角生產擴充若シクハ國民生活ノ上カラ
申シマシテ絕對ニ必要ト思ハレル部分ニ實
ハ限ラレテ居ルノデアリマス、其ノ量ガ非
常ニ制約ヲセラレテ居ルト云フノハ戰時下
已ムヲ得ナイ狀況デアル、從ヒマシテ所謂
一般ノ國民ノ衣料生活ニ付キマシテハ、非
常ニ節約ヲシ、特別ニ戰時下ニ相應シイヤ
ウナ衣料生活ヲ國民ハ緊張シテ營マナケレ
バナラヌト斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、
而シテ今囘ノ企業整備ニ當リマシテモ、今
申シマシタ原料ノ許ス限リニ於ケル纖維製
品ノ製造、又所謂其ノモノハ軍需、戰爭遂
行、國民生活ノ絕對必要品ト云フモノヲ確
保スルニ必要ナ生產ト云フモノハ、今後ト
雖モ勿論是ハ續ケテ行カナケレバナラナイ
ノデアリマス、而シテ今囘ノ整備ニ當リマ
シテ、相當量ヲ休廢止致シマスケレドモ、
此ノ休廢止スルコトニ依ッテ纖維製品ガ減
ルト云フコトハ絕對ニナイノデアリマス、
又アッテハ私ナラヌト思フノデアリマス、
唯現在デ申シマスト云フト、設備ニ對シマ
シテ原料ノ狀況カラ申シマスト、全體ガ二
割操業シテ居ルトカ、三割操業シテ居ルト
カト云フヤウナ狀況デアリマスガ、今後ノ
整備ニ於キマシテハ、整備サレマスト、操
業工場ガ大體七十「パーセント」位ノ集中シ
夕操業ヲサシタイト思フノデアリマス、サ
ウシテ一定量ヲ保有シテ置イテ、アトノナ
ニヲ整備致スノデアリマシテ、之ガ爲ニ纖
維製品ノ製造ガ減ル譯デモアリマセヌシ、
然ラバ整備セズニ今迄置イタカラ、非常ニ
著物、衣料ガユッタリシテ居ルノデアルト
云フヤウナコトニハ相成ラナイノデアリマ
シテ、併シナガラ此ノ整備ノ方法ニ付キマ
シテハ、今秋田委員ノ御質問ガアリマシタ
通リ、機ノ業態等ニ付キマシテハ、必ズシ
モ企業ノ單位ノ大小ニ依ッテ之ヲ整備スル
ト云フヤウナコトハ、私共考ヘテ居ラナイノ
デアリマス、寧ロ家庭工業ヤ小工業ノヤウ
ナ、是ガ休廢止サレマシテモ他ニ轉用ノ見
込モ付カナイシ、又勞務者モ特ニ必要方面
ニ供出スルコトモ出來ナイシ、又屑鐵等ノ
囘收ニモ寄與シナイト云フヤウナモノハ寧
ロ存置シテ、サウ云フモノハ動カシテ行ク
ト云フヤウナ、サウシテ設備ノ大キナ、從
來カラ言フト、能率ノ高イヤウナ大キナ規
模ノ工場ノ方ヲ他ニ轉用スルト云フヤウナ
方法ニ寧ロ行カナケレバナラナイカト、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=111
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112・秋田三一
○秋田三一君 前囘ノ中小工業ノ整備ニ當
リマシテハ、轉廢業者ノ生活保障ノ爲ニ、
地方ニ於キマシテハ色々勞務ノ需要者、
其ノ他ノ有力者カラ寄附ヲ募ッテ、其ノ資
金ノ一部ニ充テテ居ルノデアリマスガ、今囘ハ
先程カラノ御話ニ依リマスト、共助資金、
其ノ方面ノ考ヘ方モ大分變ッテ居ルヤウデ
アリマスガ、地方ノ寄附ヲ募ル從來ノ方法
ハ今囘ハ御採リニナラヌ御考デアリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=112
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113・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 從來、御話ノ如タ
共助金ヲ業者ガ十分ニ負擔能力······出スコ
トノ出來ナイノヲ補フ爲ニ、地方々々ニ於
キマシテ時局產業等ガ寄附金ヲ出シテ此ノ
共助金ヲ補給シテ居ルヤウナ實情モ御話ノ
通リデアリマス、又ソレガ相當ノ效果ヲ收
メテ居ル地方モアルヤウニ承知致シテ居リ
P Y、今囘ノ此ノ建前ニ於キマシテハ生
活共助金ニ付キマシテハ、必要ガアレバ政
府ガ全部ヲ持ツト云フコトニ致シテ居ルノ
デアリマシテ、從來ノ寄附金ノ場合ノ多ク
ノ實例ハ、生活共助金ヲ業者ガ出スコトガ
出來ナイ、從ッテ政府ガ出スコトモ出來ナイ
カラ、ソレヲ補フト云フコトガ一番大キナ
コトニナッテ居ルヤウデアリマス、併シ或縣
ニ於キマシテハ實績補償ノ一部ヲ此ノ寄附
金デ補助シテ居ルヤウナヤリ方ノモノモア
ルノデアリマス、生活保障金ノ共助金ニ付キ
マシテハ、今囘國庫ノ負擔ニ於テ全額モヤ
ルト云フ建前ニ致シテ居リマスノデ、此ノ
關係ニ於テハ從來ノ如キ寄附金デ援助スル
必要ハナカラウト思ヒマス、唯一般ノ實績
補償等ニ付キマシテ、業者ニ十分能力ノナ
イ場合ニ、其ノ地方ニ於ケル有力ナル時局
產業等ガ協力ヲ示ス意味ニ於キマシテ、寄
附金等ニ於テ是等ヲ處置シテ行クト云フヤ
ウナコトデアルトカ、或ハ色々將來轉廢業
サレル所ノ人々ガ病氣ヲスルトカ、或ハ色々
ナ福利的ナ施設ヲ講ズルト云フヤウナコ
トニ、地方ニ於テ有力產業等ガ協力シテ寄
附金ヲ出サウト云フヤウナ問題ニ付キマシ
テハ、固ヨリ私共結構ナコトデアルト斯ウ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=113
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114・秋田三一
○秋田三一君 本法ノ第三條ニ船舶ノ買收
代金ニ付テ規定サレテ居リマスガ、船舶ノ
企業整備ハドウ云フ風ニナリマスカ、政府
委員ノ方デモ宜ウゴザイマスガ····ソレデ
ハ今ノ御尋ハ後ニ廻シマシテ、大藏當局ニ
御伺ヒ致シマスガ、十一條ノ特殊預金ノ利
息、其ノ他ノ條件ハ大藏大臣ガ定メラレル
コトニ規定サレテアリマスガ、是ハ大體其
ノ時々ノ銀行信託會社ナドノ利息ト同額ト
見テ差支ナイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=114
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115・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 特殊預金竝ニ特
殊金錢信託ノ利率ハ現在ノ定期預金ノ利率
ヨリモ若干高イ所ニ決メル豫定デゴザイマ
シテ、御手許ニ配付シテアリマス資料ニモ
三分八厘見當ト確カ書イテ置イタ筈デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=115
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116・秋田三一
○秋田三一君 先程大藏大臣ハ今囘ノ特殊
預金ヲ扱ハセル金融業者ニ對シテハ繁忙ナ
手續ヲサシテ氣ノ毒デアルト云フヤウナ御
話デアリマシクガ、此ノ手數ト申シマスカ、
預金ト貸出トノ差ト申シマスカ、ソレハド
ノ位ノ御見込デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=116
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117・山際正道
○政府委員(山際正道君) 只今御尋ノ點ハ
特殊預金ト、ソレニ見合フ資產ノ運用ガド
レ位ノ差異ガアルノデアラウカト云フ御尋
デアッタト了解致シマス、特殊預金ノ方ハ大
體只今申シマス通リ年三分八厘見當ノ利率
ヲ附ケルコトニナッテ居リマスガ、其ノ資金
ヲ以チマシテ、今度ノ資金ノ特色ハ、大部
分ノ金ハ其ノ特殊預金ニ致シマスル企業ノ
設備等ヲ買取リマシタモノニ對スル貸付金
ト兩建ニ致ス考デアリマス、兩建ニ致シマス場
合ニハ大體ソレガ產業設備營團デアリマス
トカ、國民更生金庫ナドノ政府機關又ハ之ニ
準ズルモノデアル場合ハ、先ヅ大體ノ處四
分三厘見當ノ利子ヲ付ケテ宜イノヂヤナイ
カト思フノデアリマス、サウ致シマスト三
分八厘ノ預金ヲ取リマシテ四分三厘見當ノ
運用ガ出來ルト云フコトニ相成ルト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=117
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118・秋田三一
○秋田三一君 モウ一ツ御尋ネ致シマスル
ガ、斯ウシタ企業ノ整備ハ最モ必要デアル
ト云フコトハ申ス迄モナイコトデアリマス
ガ、勞務者ノ外ニ技術者ノ動員ト申シマス
カ、其ノ方ノ整備ト云フコトモ考ヘラレル
ノデハナイカト思フノデアリマス、先程久
保田委員カラモ鐵道ニ關スル問題トシテチ
ヨット御話ガアリマシタガ、ソレハ全般的ニ
考ヘルベキ問題デハナイカト思フノデアリ
マス、現在官廳ニ勤メテ居ラレル技術者ト
致シマシテモ、官廳ニ依ッテハソレガ寧ロ
餘リ用ノナイ部門ノ方モアルヤウデアリマ
ス又大キナ會社ナドト致シマシテモ、技
術者ヲ持ッテ居ルト云フコトガ一ツノ强味
デアル爲ニ、昨今餘リ必要デナクテモソレ
ヲ抱ヘテ居ルト云フヤウナ現狀モ見受ケラ
レルノデアリマス、一面非常ニ技術者ガ足
ラナイト云フコトハ事實デアリマスガ、此
ノ邊ノ技術者ノ按排ト云フヤウナ點ニ對シ
マシテハドウ云フ風ニ御考ニナッテヰラッシ
ヤイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=118
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119・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彥君) 只今御尋ガゴザ
イマシタ技術者ノ需給關係ハ、勞務需給ノ
中ノ最モ是ガ困難ナ點デアリマス、而モ需
要ノ面ニ對シマシテ誠ニ供給源ガ少クアリ
マシテ、需要ニ對シテ供給ガ餘リニ少イ、
ヒドイ所ニナリマスト三十分ノ一ト云フ位
シカ供給源ガナイト云フヤウナ點モゴザイ
マス、此ノ爲ニ技術者ノ配置ニ關シマシテ
ハ各省ト密接ナ連絡ノ下ニ之ノ需給ノ調製
ヲ圖ッテ居ル次第デゴザイマスガ、今囘ノ
企業整備ニ於キマシハ、此ノ技術者モ職員、
技術者、從業員ト云フモノヲ一體トシテ出
來レバ配置轉換ヲ致スコトヲ考ヘテ居リマ
スガ、併シ其ノ間特殊ノ技術者ニ對シマシ
テハ、是ハ別途ニ考究ヲセラルベキ當然ノ
問題ダト存ジマス、此ノ點ニ關シマシテハ、
先程モチヨット申シマシタ勞務ノ組織、動
員ト云フコトニ絡ミ合セマシテ、今後此ノ
配置ヲ出來ルダケ合理化スルト云フコトニ
行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=119
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120・秋田三一
○秋田三一君 私ノ質問ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=120
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121・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 秋田君ニ申
上ゲマスガ、遞信大臣、海務院長官等ハ此
處ニ居ラレマセヌガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=121
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122・秋田三一
○秋田三一君 大臣デナクテモ宜イノデス
ガ、ドナタカ遞信省關係ノ·······若シ手間取
ルヤウデゴザイマシタラ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=122
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123・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) ソレヂヤ時
間モ餘リゴザイマセヌカラドウゾ一ツ願ヒ
マッ、大體是デ御質問ハ終ッタト思ヒマス
ガ、如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=123
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124・益田太郎
○男爵益田太郞君 チヨット一ツ簡單ニ商
工大臣ニオ尋ネ致スコトヲ御許シヲ願ヒタ
イト思ヒマス、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=124
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125・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) ドウゾ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=125
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126・益田太郎
○男爵益田太郞君 企業整備ノ實際問題ニ
付テチヨット伺ヒタイト思ヒマス、既ニ大臣
カラオ話ガアリマシタ如ク、今日迄モ民間
ニ於テハ段々、今囘御發表ニナリマシタ企業
整備ト同樣ノ趣旨デ、相當ニ事ガ運バレツ
ツアッタコトハ御承知ノ通リデアリマス、ソ
コデ此ノ度此ノ御發表トナッタ譯デアリマス
ルガ、從ッテ實際問題ヲ申シマスト、、旣ニ現
在軍ノ御慫慂ナドニ依リマシテ、會社ト會
社ト旣ニ賣買ノ話ガ進行シツヽアルナドト
云フ狀態ノ所モアリマスシ、ソレカラ又是
亦軍ノ御慫慂ニ依ッテ、會社ノ持ッテ居ル遊
休設備ヲ、軍需品ニ變ヘヤウト、或一ツノ
獨立シタ株式會社ナド拵ヘテ、軍需品製造
ニ著手シヨウト云フ所モゴザイマス、ソレ
等ヲ、此ノ法案ガ定マリマスト、商工省ノ
立場トシテハ現在ノソレ等ノ話ハ御認メ
ナサルノデアリマセウカ、或ハ全然御認メ
ニナラズニ御命令ガ出ルノデアリマスカ、
ソレヲ參考ニ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=126
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127・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 御質問ノ如ク企業
整備ハ今囘ガ初メテデハナイノデアリマシ
テ、此ノ線ニ沿ウテ從來ヤッテ來テ居ラレ
ルノデアリマス、特ニ今御指摘ニナリマシ
タ設備ノ轉用等ニ付キマシテモ、隨分今日
迄大キナ紡績工場ガ機械ノ部分品工場デア
ルトカ、或ハ航空機、造船等ニ關係シタ事
業ニ變ッテ來テ居リマシテ、現在モ其ノ話
ノ進行シテ居リマスモノガアラウカト思ヒ
マス、之ノ轉用ニ付マシテハ之ノ十分適正
ナ方面ニ轉用サレテ行ク、國家全體カラ見テ
最モ必要ナ所へ必要ナ施設ガ轉用サレテ行
クト云フコトヲ定メテ行ク必要ガアリマスノ
デ、過般來·商工省ニ實際ノ設備ノ轉用ノ委員
會ヲ作ッテ居リマシテ、ソコニ陸海軍初メ關係
方面ノ方モ、皆御參畫ニナリマシテ、サウ
シテソコデ此ノ工場ハ何ニ轉用サス、サウ
スレバ何處ノ所ニ持テ行クト云フ風ナコト
ヲ決メテ居リマス、處ガ之ニ反シテ業者ノ
方デ勝手ニ決メテ居ルノモアリマスケレド
モ、最近ハ業者同志ガ勝手ニ話ガ附イタカ
ラ、其處ニ持ッテ行クト云フコトニ致シマ
スト云フト、隨分國家ノ方カラ言フト、是
ハヨリコチラノ方へ向ケタイ、併シナガラ
業者同志ハモウ話ガ濟ンデ居ルト云フヤウ
ナ事例モアリマシテ、非常ナ混雜モ致シ、
又設備ガ必要ナ方面ニ活用サレナイト云フ
ヤウナ事例モアリマシタノデ、今申シマシ
タヤウナ委員會ヲ作ッテ、關係方面ガ一〓
ニナッテ十分連絡ヲ取ッテ決メテ居リマス、
總テ委員會ノ議決ヲ經テ初メテ其ノ轉用ノ
問題ヲ決メルト云フ風ニ、先般來運用シテ參ッ
テ居リマス、今度ノ議會後ニ於キマシテ
モ、矢張リ其ノ通リニ進行スルノデアリマ
シテ、別ニ此ノ點ニ於テハサウ大シテ變リ
ガアル譯デハナイノデアリマスガ、從ッテ
旣ニサウ云フ委員會等ノ議ヲ經テ、チヤン
ト兩者ノ間ニ轉用ノ方法ガ定マッテ居ル、國
家デ承認シテ居ルト云フヤウナモノニ付テ
ハ、其ノ儘進行サレルコトハ當然デアリマ
ス、而シテ先程大藏大臣ガ御說明ガアリマ
シタ通リ、此ノ企業整備資金措置法ニ基ク
所ノ特別支拂ノ方法ハ、矢張リサウ云フモノ
ヘモ適用サレルト云フコトニ、話ノ〓ハズッ
ト前カラ附ケラレテ居ルト致シマシテモ、
今後實際ノ支拂ノ必要ガ起ッテ來マスレバ、
其ノ法律ニ依ル所ノ支拂ガ適用サレテ來ル
ト云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=127
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128・益田太郎
○男爵益田太郞君 大藏大臣ニチヨット伺ヒ
マスガ、此ノ度ノ企業整備令ニ關シテ、製
造會社ノ從業員ノコトナドモ色々御話ガ出
マシテ、親心ノ十分籠リマシタ御方針デ、
誠ニ喜ンデ居リマスルガ、併シ同時ニ又一
方ニハ此ノ企業整備令ノ影響ノ及ス所ノ株
主ト云フモノノ數モ、ナカ〓〓容易ナラヌ
モノダラウト思ハレルノデス、ソコデ株價
ト云フモノノ立場カラ考ヘテ見マスルト、
ドウモ下ガラウトモ上ガル理窟ガナイヤウ
ニ考ヘラレル、故ニ此ノ點ハ旣ニ暴落ヲ生
ジナイヤウニ、財界ニ波瀾ヲ起サヌヤウニ
御心配下サッテ居ラレルト云フ匂ハ嗅ゲル
ノデアリマスルケレドモ、ドウ云フ工合ニ
シテ株ノ暴落ノ時ニハ之ヲ停止サセルカト
云フヤウナ、詳シイ御話ガマダ出ナイヤウニ
思ヒマスガ、其ノ方ノ何カ御考、御企テガ
アリマスルナラバ、伺ヘルナラバ伺ッテ置キ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=128
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129・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 此ノ企業整備ノ
株式ニ關シマスル問題ハ、株式一般ノ情勢
ニ對シマスル分ニ付キマシテハ、大體ハ寧
ロ下落ヨリモ騰貴ヲ助長スル趨勢ニアリマ
ス、昨年カラ所謂解散價値ヲ買フト云フ傾
向ガアッタノデアリマス、ソレガ今囘ノ措置
デ、大體斯ウ云フ考ヘ方ヲ致シテ居ルト云
フコトハ、貴族院ニ於キマシテモ此ノ春ノ
通常議會ニ、稅法ノ委員會デモ大體ノ構想ハ
御話ヲ致シマシタガ、中小企業整備ニ關シ
テ······又世間ニ對シマシテモ、機會ガアリ
マス度ニ大體ノ考ヘ方ヲ話シタコトモアリ
マスルノデ、自然ニ解散價値ヲ買フト云フ
コトハナクナリマシテ、其ノ點ハ騰貴ノ理
由ニ寧ロナラヌト云フコトデ、ソレカラ又
下落ニ付キマシテハ本問題ニ限リマセズ、
一般ノ株式ノ下落、理由ナキ下落ハ起サナ
イヤウニ、又戰時ニ於テ、今ノ狀態ニ於テ
一般ノ株ガ大イニ下落スルト云フ理由ハナ
イ、寧ロ其ノ時々ノ投機者ノ策動デアルト
カ、或事態ヲ神經過敏ニ考ヘマス以外ニハ
ナイ譯デアリマス、ソレデアリマスカラ
假ニ起リマシタ場合ニハ、戰時金融金
庫ヲシテ强力ナル買出動ヲサセマスカラ
其ノ心配モアリマセヌ、全般的ニハ斯
カル措置ガ發表サレマシテモ株式ハ別ニ其
ノ爲ニ動イテ居リマセヌ、ソレカラ尙御質
問ニハ、此ノ整備ニ關係ノアル會社ノ株ハド
ウナルカ、斯ウ云フコトガ含マッテ居ルカト
思ヒマス、之ニ付キマシテハ堅實ナ資產ノ
評價ヲ致シテ居ル會社ナドニナリマスト、
其ノ設備ヲ時價デ產業設備營團ガ引受ケル、
又他ノ企業者ガ引受ケル、ナカ〓〓高クナル、
普通ノ賣買デハドウモ高クナル傾向ガ强過
ギルト云フ話ノ方ガ餘計出ル、產業設備營
團ガ引受ケマシタ例デモナカ〓〓帳簿價格
ヨリハ高イノデアリマス、相當ナ會社ニ付テ
推算ヲシテ見マスルト、從來ノ利益率ヲ維
持シ得ル會社モナカ/〓多イ、尤モ資產ノ
評價ガ余リ堅實デナクシテ、帳簿價格ガ高
イヤウナ會社ニナリマストサウヂヤナイカ
モ知レナイ、場合ニ依リマスト又今囘ノ
第一種部門ニ當ルヤウナ事業ハ、將來ハ減
配見越シノモノガ多イノデアリマス、ソレ
ガ餘リ減配シナイデモ濟ムヤウナコトニナ
ルノモ相當アラウカト思ヒマス、サウ云フ
大體情勢デゴザイマス、尙ソレニシマシテ
モ、相當今ノ會社ノ從來ノ經理ノ狀態ナドデ
結果ガ違ヒマスカラ、勝手ノ惡イ會社モ中
ニハアリ得ルノデアリマス、サウ云フ場合
ニハ租稅ノ減免デアリマストカ、數個ノソ
レニ對スル對應策ヲ本法案ニソレヲ致サシ
ムル根據ヲ置イテ居ルコトデアリマス、ソ
レデアリマスルカラ、少クトモ一般的ニハ株
價ニ對シテ好影響モ惡影響モナイ斯ウ考ヘ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=129
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130・益田太郎
○男爵益田太郞君 最後ニ私一言申上ゲ
タイノハ先程或委員ノ御方カラモ御話ガ
出マシタガ、此ノ企業整備ト云フ此ノ度政
府ノ發表サレタ法案ハ、實ニ我ガ國ニ取リ
マシテ未曾有ノ是ハ事柄デアリマス、國民
ト致シテモ無論其ノ必要性モ能ク分ッテ居
リマスルシ、極力ソレニ向ッテ努メタイト云
フ熱ハ十分持ッテ居ルコトハ私確信シテ居
ルノデアリマス、問題ガ戰爭デアッテ、而モ
我々日本トシテハドウシテモ勝チ拔カナケレ
バナラヌノデアリマス、是ハ能ク分ッテ居リ
そう、從ッテ此ノ實行ハ、政府ノ方々モ仰シ
ヤル如ク迅速デナケレバナラナイノデアル、
處ガ先程モ御話ガ出マシタ如タ、民間ニアッ
テ此ノ企業整備的ノ何カ用ヲ足サウト思ヒ
マス時ノ其ノ實情ト云フモノハ、實ニ驚ク
ベキモノガアル、其ノ關係スル官省ノ多イ
コト、手間取ルコト、複雜ナコト、私白身ノ
體驗ナゾヲ申セバ、關係ノナイ官省ハ僅ニ文
部省ト司法省ダケ、サウ云フヤウナ次第デ、悉
クニ關係ガアルノデアリマシテ、ソレデ今日
ノ儘ノ組織デハ矢張リ仕事ガ早ク運ビマセ
又、故ニ希クバ此ノ企業整備令ナゾノ效果
ガ一日モ早ク擧ガリマス爲ニハ、何トカ事
ガ迅速ニ運ビ得ラレルヤウナ方法組織ヲ、御
〓究且御實行アラムコトヲ御願ヒ申上ゲタ
イト存ジマス、之ヲ以テ私ハ自分ノ質問ヲ
終リタイト思ヒマス、有難ウゴザイマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=130
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131・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 如何デゴザ
イマスカ、大體御質問モ終ッタト思ヒマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=131
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132・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 極ク簡單ニ二點
バカリ申上ゲタイト思ビマス、一點ハ先程
三井委員カラ御質問ガゴザイマシテ、先ヅ
十億或ハ其ノ餘リノ現金ガ斯ウ云フ方法ヲ
執リマシテモ之ニ關聯シテ出ルデアラウ、
而モソレハ所謂生活援護資金以外ノモノニ
付テ、其ノ位出ルカモ知レヌト云フコトヲ
申上ゲマシタ、ソレニ對スル處置デゴザイ
マスガ、是ハ大體其ノ元ヘ食ヒ込ム金デゴ
ザイマス、新タナル所得が新タナル勤勞生
產ニ依ッテ起ルニアラズシテ、過去ノ勤勞ノ
結果、其ノ他ノモノガ出ル譯デアサマスカ
ラ、之ヲ消費ノ面ニ〓サナイデ蓄積ノ部面
ニ廻スト云フコトガ特ニ必要ナ譯デアリマ
シテ、退職資金等多額ニ貰フヤウナ所ガ多
イノデアリマス、ソレカラ實績補償等ノ金
ニ致シマシテモ、是ハ從來ノ平時ニ必要ナ
場合ノ如ク、先ヅ細君ナゾヲシテ店ヲ開カ
シテ生計ノ足シニスル、ソレニハ二、三千圓
ノ金ガ要ル、ソレニ致スト云フヤウナノハ
イケナイ、歸農等ヲ致ス外ハ寧ロサウ云
フ金ヲ使ッテハ困ル、是ハ寧ロ本法ニ記載
シテ居ル決濟方法デハ、餘リ斯ウ云フ小額
ナモノニ適用致シマスコトハ、又煩瑣ニシ
テ事柄ニ適サナイコトモアリマスガ、是ハ
從來相當ノ額ノ退職資金ハ公債ヲ以テ交付
致シマスコトヲ勸奬致シマストカ、其ノ他
是ハ新タナル貯蓄デアリマセヌケレドモ、
貯蓄獎勵ト同ジ方法デ、本年度ノ二百七十
億ノ貯蓄目標以外ニ、特別ノ貯蓄方策ヲ講
ジタイト思ッテ居リマス、其ノ點ヲ一點申上
ゲテ置キマス、尙其ノ次ノ點ハ極メテ簡單
ナコトデアリマスガ、世間ニ誤解ヲ生ズル
トイケマセヌカラ一言申シテ置キマスガ、
今囘ノ如キ資金ノ所謂封鎖方法ヲ執リマス
ノハ、其ノ資金ノ動ク關係ガ前ニモ御說明
申上ゲマシタヤウニ、普通ノ場合ト違ツタ
事情デアリマス、斯カル經濟現象ニ對シマ
シテハ特殊ノ方法モ要リマスガ、是ハ其ノ
他一般ノ生產行爲ガアリマスヤウナ場合ニ
適用スルモノデアリマセヌ、本法ノ如キコ
トヲ將來有價證劵ソレ自體ノ流通ニ對シテ
執ルト云フコトハ決シテ致シマセヌ、又普
通ノ預金等ニ左樣ナ封鎖ヲスルト云フコト
ハ絕對ニ致シマセヌ、特殊預金ニ限ルノデ
アリマス、此ノ點ニ付キマシテ一言申添へ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=132
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133・秋田三一
○秋田三一君 今海務院長官が御見エニナ
ツテ居リマスガ、先程御尋ネ申上ゲマシタヤ
ウナ船舶ノ企業整備ノ方針ヲ御說明ヲ御願
ヒ政シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=133
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134・松木益吉
○政府委員(松本益吉君) 今囘ノ此ノ企業
整備ト船舶ノ企業整備トハ全然關係ガアリ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=134
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135・秋田三一
○秋田三一君 第三條ニ船舶ノ買收代金ノ
事ガ記述サレテ居リマスガ、アレハドウ云
ス場合ヲ豫想サレタノデアリマスルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=135
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136・迫水久常
○政府委員(迫水久常君) 第三條ハ政府ノ
支出ノ問題デゴザイマシテ、政府ガ何等カノ
關係デ土地建物等、或ハ船舶ヲ買ヒマシタ場
合ニ、其ノ履行ヲ特殊借入金又ハ特殊預金、
特殊金錢信託ニナシ得ルト云フ規定デゴザ
イマシテ、アノ規定ヲ以テ船舶ノ企整業備
ヲ前提トシタモノデハナイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=136
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137・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今ノ秋田サンノ
御話ハ、ドウ云フ風ニ御考ニナツテ居ルカ
知リマセヌガ、實際ハ斯ウ云フ風ニ考ヘテ
居リマス、民間ノ船ガ沈ミマシテ保險金ガ
下リマシタ際、代リ船ヲ造ル金ガ要ル迄ハ
興業銀行ニ預金ヲスル、代リ船ヲ造ツタラ
其ノ代金ニ當テル、又船ヲ買ヒマシタ場合
三·〓·其ノ他ノ代金ニ使ハセル、斯ウ云フ
コトニシテ居リマス、ソレカラ民間ノ船主
ノ合同ナドニ付キマシテハ、是ハ現金が出
ルト云フコトハイケマセヌ、大體會社ノ合
併ノ方法ニ依リ金ヲ渡サヌ、斯ウ云フ方式
デ致ス考ニ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=137
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138・秋田三一
○秋田三一君 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=138
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139・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 別ニ御發言
ガゴザイマセヌケレバ、直チニ討論ニ入リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=139
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140・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 本員ハ今囘ノ企業整備
ニ伴ヒマス兩法案ニ贊成ノ意ヲ表スルモノ
デゴザイマス、併シナガラ今囘ノ企業整備
ノ內容ヲ檢計致シマスルト、極メテ廣範圍
デアリ、大規模デゴザイマスダケニ、之ガ
實行ニ當リマシテハ、政府當局トシテハ勿
等論十分愼重ナ御態度ト竝ニ御〓究ガ必要ダ
ト思ヒマスルガ、ソレト同時ニ國民全體ノ時
局ニ對スル理解ト指導者ノ熱意トガ極メテ必
要デアルコトガ要求サレテ居ルト思フノデゴザ
イマス、而モ先般行ハレマシタ第二次ノ企業
整備ノ結果カラ考ヘマシテモ、其ノ成功ノ如
何ハ一ニ懸ッテ地方長官ノ熱意ニアルト云フ
コトガ實證サレテ居ルノデアリマシテ、例
ヘバ鹿兒島縣ノ如キハ地方長官ガ陣頭指揮
致シマシタ結果、昨年末ニ於テ既ニ百「パ
セント」ノ成功ヲ收メタト云フ實例ガアル
ノデアリマス、地方長官ノ熱意ノ無イ所ニ
至リマシテハ、今年ノ三月三十一日ニ終ル
ベキデアルニ拘ラズ、未ダニマダ最後ノ委
員會ヲスラ開キ得ナイ實情ニアルノデゴザ
イマス、此ノ事實カラ見マシテモ、今回ノ
此ノ企業整備ヲ完成致シマス爲ニハ、全國
的ノ運動ト致シマシテ、地方長官ガ積極的
ニ立上ッテ吳レルト云フコトガ何ト言ッテモ
私ハ必要ダト思フノデアリマス、處ガ地方
長官ノ所屬ハ大體內務省所管ト云フ立場ニ
アルダケニ、各省間ニ於ケル色々ナ要求ヲ十
分理解シテ、之ヲ一般國民ニ指導シ善導ス
ルト云フコトハ、非常ニ困難ガ伴フノデゴ
ザイマス、此ノ點ニ付テハ今囘ノ企業整備
ニ關係ヲ持ツ各省ノ指導者ノ方々ハ十分御
留意戴キマシテ、地方長官一人ニ於テ各省
ノ總テノ必要ナ事項ガハッキリ頭ニ入ルヤ
ウニ指導シテ戴クト云フコトガ、私ハ又絕
對ニ必要ダト考ヘテ居ルノデゴザイマス、
左樣デゴザイマセヌト、例ヘバ商工省關係
ノ問題ダト思ッテ仕事ヲ進メテ居ッテモ、或
ハソレガ大藏省ノ所管ノコトガ起リ、或ハ
鐵道省ノ所管ノコトガ起ッタ場合ニ、一々
其ノ話ヲ打切ッテ、改メテ各省ノ連絡ヲ執ラ
ナケレバ問題ガ進展シナイト云フノガ今日
迄ノ實情デゴザイマス、此ノ缺點ヲ補フ爲
二、ドウシテモ其ノ一人ガ各省ニ關スル
相當必要ナル事項ヲ十分了解シ、呑ミ込ン
デ置クト云フコトガ絕對必要條件ト思ヒマ
ス、而モソレヲ呑ミ込ンダ地方長官ガ陣頭
指揮ヲシテ國民ニ當ル、國民ハ又其ノ熱意
ヲ受ケテ時局ノ認識ニ依ッテ立上ルト云フ
ノデナケレバ、今囘ノ企業整備ノ完成ヲ期
スルコトハ極メテ困難デアルト云フコトヲ
痛感致スノデアリマス、ドウゾ此ノヤウナ
點ニ付キマシテハ十分御留意戴キマシテ、
今後共ニ國民運動ヲ十分展開シ、指導者ノ
先ヅ認識ヲ深メシムルコトニ重點ヲ置イ
テ、此ノ運營ニ遺憾ナキヲ期セラレタイノ
デアリマス、特ニ今囘ノ企業整備資金措置
法案ノ如キ新シク施行セラレマス法案ノ如
キハ、餘程懇切丁寧ニ御說明戴キマセヌト、
其ノ指導者間ニ於テ既ニ意見ガ相違ヲスル
ト云フコトニナリマスト、指導ヲ受ケル者
ハ全ク混亂ニ陷ッテシマフ場合ガ極メテ多
イノデアリマス、斯樣ナ點ニモ十分ニ御注
意ヲ戴キマシテ、萬全ヲ期セラレルコトヲ
御願ヒスル次第デゴザイマス、斯樣ナ意味
ニ於キマシテ私ハ企業整備ニ伴フ兩法案ニ
全幅ノ贊意ヲ表スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=140
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141・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 外ニ御發言
ガゴザイマセヌカ······御發言ガゴザイマセ
ヌケレバ採決ニ入リマス、企業整備資金措
置法案、國民更生金庫法中改正法律案、兩
案ヲ一括シテ議題ニ供シタイト思ヒマス、
御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=141
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142・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 御異議ナイ
ト認メマス、兩案ヲ一括シテ採決致シタイ
ト思ヒマス、兩案共原案通リデ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=142
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143・大河内正敏
○委員長(子爵大河內正敏君) 御異議ナイ
ト認メマス、全會一致デ可決致シマシタ、
是デ本委員會ヲ終リマス、御多忙ノ處有難
ウゴザイマシタ
午後五時五十八分散會
出席者左ノ如シ
委員長子爵大河內正敏君
副委員長男爵東〓安君
委員
公爵桂廣太郞君
侯爵細川護立君
侯爵中山輔親君
伯爵山本〓君
子爵曾我祐邦君
子爵織田信恒君
子爵大岡忠綱君
子爵阪谷希一君
三井〓一郞君
川村竹治君
伍堂卓雄君
柴田善三郞君
左近司政三君
男爵久保田敬一君
男爵飯田精太郞君
吉野信次君
男爵肝付兼英君
男爵益田太郞君
坂野鉄次郞君
竹內可吉君
瀧正雄君
竹下豐次君
瀧川儀作君
岩田宙造君
秋田三一君
國務大臣
厚生大臣小泉親彥君
大藏大臣賀屋興宣君
商工大臣岸信介君
鐵道大臣八田嘉明君
政府委員
企畫院調査官平井豊一君
技術院總裁子爵井上匡四郞君
技術院次長和田小六君
大藏省總務局長迫水久常君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏省理財局長田中豐君
大藏省銀行局長山際正道君
大藏書記官野田卯一君
陸軍中將吉積正雄君
海軍少將保科善四郞君
農林省總務局長重政誠之君
商工省總務局長神田暹君
商工省企業局長豊田雅孝君
商工省金屬局長津田廣君
商工省機械局長佐藤筌太郞君
商工省纖維局長西川浩君
商工書記官赤間文三君
金屬囘收本部長難波經一君
遞信次官手島榮君
海務院長官松木益吉君
鐵道監平山孝君
同佐藤榮作君
同堀木鎌三君
厚生次官武井群嗣君
厚生省勤勞局長持永義夫君
厚生書記官靑柳一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008200433X00119430618&spkNum=143
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