1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年十月二十七日(水曜日)午後一時十五分開議
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議事日程 第二號
昭和十八年十月二十七日
午後一時開議
第一 工業所有權法戰時特例案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 兵役法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀〕
佐々木琲店ワイヤングラン
昨二十六日本院ニ於テ可決シタル陸海軍ニ
對スル感謝決議文ハ卽日之ヲ陸軍大臣及海
軍大臣ニ送致セリ
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
豫算委員會
委員長伯爵林博太郞君
副委員長男爵矢吹省三君
工業所有權法戰時特例案特別委員會
委員長子爵高橋是賢君
副委員長男爵肝付兼英君
昭和十八年十月二十八日
防空法中改正法律案特別委員會
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵淺田良逸君
兵役法中改正法律案、特別委員會
委員長伯爵溝口直亮君
副委員長男爵井田磐楠君
裁判所構成法戰時特例中改正法律案特別
委員會
委員長伯爵酒井忠正君
副委員長男爵伊江朝助君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
工業所有權法戰時特例案可決報〓書
兵役法中改正法律案可決報告書
同日議員ヨリ左ノ質問主意書ヲ提出セリ
國語ノローマ字綴リ方統一ニ關スル質問
主意書(田中館愛橘君提出)
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第八十三囘帝
國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
內務省所管事務政府委員
內務書記官友末洋治君
陸軍省所管事務政府委員
陸軍主計大佐遠藤武勝君
海軍省所管事務政府委員
海軍法務中將尾畑義純君
商工省所管事務政府委員
商工書記官北野重雄君
本日各部ニ於テ常任委員ノ補關選擧ヲ行ヒ
シニ其ノ結果左ノ如シ
第二部
豫算委員男爵岩倉道倶君ノ補關トシテ
男爵大藏公望君當選
第五部
豫算委員吉田茂君ノ補關トシテ東〓茂
德君、同男爵山川建君ノ補關トシテ男
爵飯田精太郞君當選
決算委員、小野塚喜平治君ノ補關トシテ
遠藤柳作君當選
第六部
請願委員柴田善三郞君ノ補關トシテ當
間重民君當選
第七部
請願委員河原田稼吉君ノ補闕トシテ藤
沼庄平君當選
第九部
豫算委員橫山助成君ノ補闕トシテ下村
宏君當選
本日左ノ質問主意書ヲ政府ニ轉送セリ
國語ノ「ローマ」字綴リ方統一ニ關スル質
問主意書(田中館愛橘君提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、御報告ヲ致シマス、議長ハ、
昨日全會一致ヲ以テ可決セラレマシタ勅語
奉答書ヲ携ヘマシテ、本日午前十一時參內
致シ、鳳凰ノ間ニ於キマシテ拜謁ヲ賜リ、
御前ニ於テ奉答書ヲ朗讀ノ上捧呈致シマシ
タ、然ル處、重ネテ勅語ヲ賜リマシタ、
是ヨリ勅語ヲ捧讀致シマス
〔總員起立〕
朕貴族院ノ深厚ナル敬禮ヲ嘉ス
〔一同敬禮〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ議事日程
ニ移リマス、日程第一、工業所有權法戰時
特例案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長
報〓、委員長高橋子爵
工業所有權法戰時特例案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十六日
委員長子爵高橋是賢
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵高橋是賢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=3
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004・高橋是賢
○子爵高橋是賢君 只今上程ニナリマシタ
工業所有權法戰時特例案、特別委員會ニ於
ケル審議ノ經過竝ニ其ノ結果ヲ御報告申上ゲ
マス、本委員會ハ、昨二十六日本會議散會
後、直チニ正副委員長ノ互選ヲ行ヒ、引續
キ會議ヲ開キ、井上技術院總裁及中村特許
局長官ヨリ、〓要次ノヤウナ提案理由ノ御
說明ヲ聽取致シマシタ、卽チ、今ヤ我ガ國ハ
戰力增强ニ總力ヲ集中シ、以テ聖戰完遂ニ
邁進致サネバナラヌ秋ニ於テ、科學技術ノ急
速且飛躍的向上發展ヲ圖ルコトガ最モ緊要
デアルノデアリマス、之ガ爲ニハ、發明考案
ノ指導奬勵竝ニ之ガ活用促進ガ必要デア
ル、然ルニ從來特許法等ニ於キマシテ、其
ノ審査竝ニ審判ノ制度ニ付テ各種ノ愼重ナ
ル法的手續ガ規定サレテアル爲ニ、相當長
期間ヲ要シマスルノデ、迅速ニ之ヲ處理シ
テ戰力增强ニ卽應スルコトヲ得ザル憾ミガ
アルノデアリマスノデ、是等手續ヲ簡捷化
シマシテ、其ノ處理ヲ速カナラシメムトス
ルト同時ニ、戰力增强ニ比較的關係ノ薄イ
不急事務ハ、之ヲ停止致シマシテ、事務ノ
簡素化ヲ圖リ、以テ工業所有權制度ノ迅速
的確ナル運營ヲ期セムトスルモノデアリマ
ス、之ガ本案提出ノ理由デアリマス、本法
案ハ七箇條アリマスルガ、其ノ骨子ト致シ
マスル所ハ、次ノ三點ニ歸スルト存ズルノ
デアリマス、其ノ第一點ハ意匠登錄ノ停止、
第二點ハ審査竝ニ審判ノ手續ノ簡捷化、第
三點ハ審査及ビ審判ヲ一一審判ト致スコトデ
アリマス、次イデ中村特許局長官ヨリ逐條
的ニ詳細ナル說明ヲ聽取致シマシタル後、
審議ニ入リマシテ、委員諸君ト政府トノ間
ニ質問應答ガ重ネラレタノデアリマスルガ、
是等ハ速記錄ヲ御覽願フコトニ致シマシ
テ、玆ニ二三ノ質疑應答ヲ御紹介申上ゲタ
イト思ヒマス、一委員ヨリ、本案第二條ニ
於テ意匠登錄ノ出願ハ停止サレマシタガ、
旣ニ出願中ニ屬スルモノハ却下サレルノデ
アルカト云フ質問ニ對シテ、政府ハ、本法
施行前ノ出願ニ係ルモノハ却下セザル旨ノ
御答ガアリマシタ、又一委員ヨリ、本案ノ
施行ニ依リ審査ノ能率ハドウナルノカト云
フ質問ガアリマシタガ、之ニ對シテ政府
ハ、特許審査期間ヲ出來得ル限リ短縮スル
爲ニ重點主義ヲ採ル故、卽チ戰力增强ニ最
モ近イ發明特許ト云フモノヲ先ヅ以テ審議
ヲ進メルト云フ風ナ重點主義ヲ採ルガ爲ニ、
平均致シマシテ、今迄ノ約六割ノ能率ガ增
進サレル見込トノ御答デアリマシタ、夊
委員ヨリ、萬國工業權保護同盟條約トノ關
係ニ付御質問ガアリマシタガ、政府ハ、同
條約ハ敵國以外ノ友邦ニ對シテハ有效デア
ル、併シナガラ本法案ノ施行ハ右ノ條約ノ
違反トハナラヌト云フ御見解ヲ述ベラレタ
ノデアリマス、ココデ質問ヲ打切リマシテ、
討論ニ入リマシタ處、何等發言モナク、採
決ノ結果、全會一致ヲ以テ原案ヲ可決致シ
タ次第デゴザイマス、簡單デアリマスガ、
之ヲ以テ御報告ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=6
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007・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=7
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008・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=8
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009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=10
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011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=11
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012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=12
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013・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=13
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014・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=14
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015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、兵役
法中改正法律案、政府提出、第一讀會ノ續、
委員長報告、委員長溝口伯爵
兵役法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ仍テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十六日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=19
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020・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 只今ヨリ本委員會ノ經
過竝ニ結果ニ付テ御報告ヲ申上ゲマス、委
員會ハ昨日午後四時三十分ヨリ開キマシテ、
委員長及副委員長ノ選擧ヲ終リ、續イテ陸
軍次官ヨリ提案ノ說明ヲ伺ヒマシテ、續イ
テ質疑ニ入リ、質疑ヲ終リマシテ、討論ニ
入リマシタ處ガ、別ニ御發言モナク、全會
一致ヲ以テ可決致シマシタ、是ヨリ經過竝
ニ質問ノ要旨ヲ御報告申上ゲマス、一ツ御
斷リ致シマスノハ、質問應答中ニ機密ヲ要
スルコトガゴザイマシテ、速記ヲ停止シ若
シクハ速記錄ヨリ削リマシタコトガ、可ナ
リ澤山ゴザイマス、是等ニ付テハ、內容ヲ
議場ニ於テ申上ゲルコトガ出來マセヌノハ
誠ニ遺憾デゴザイマス、尙質問ノ全般ニ付
テハ追ッテ速記錄ヲ御覽願ヒマシテ、只今ハ
要旨ダケヲ申上ゲタイト存ジマス、先ヅ陸
軍次官カラ御說明ニナリマシタ此ノ提案ノ
理由デゴザイマス、此ノ改正ハ大體四箇條
デゴザイマス、其ノ中ノ第一ハ服役年限ノ
延長デアリマシテ、從來一般兵員ノ服役年
限ノ終期ハ滿四十歲迄デアリマシタガ、戰
局ノ進展ニ伴ヒマシテ、軍ノ要員、就中物
殊ノ技術關係ノ要員等ノ充足ニ遺憾ナカラ
シメムガ爲ニ、之ヲ約五年間延長スルト共
ニ、服役滿了ノ日ハ、滿四十五年ニ滿ツル
年ノ三月三十一日迄延期セムトスルノデア
リマス、第二ハ臺灣同胞ヲ兵役ニ服セシメ
ルコトデゴザイマス、卽チ言ヒ換ヘレバ新
タニ臺灣ニ徵兵制ヲ施行スルコトデアリマ
シテ、此ノ聖戰開始以來、戰局苛烈ナル方
面ノ戰場ニ於キマシテモ、軍屬ノ身分デハ
アリマスガ、第一線將兵ニ伍シテ直接作戰
ニ挺身寄與致シマシタル所ノ臺灣同胞ノ殉
忠ノ赤誠ニ應ズルト共ニ、國防上所要ノ要
員ヲ取得スル爲ニ臺灣ニ徴兵制ヲ布キ、以
テ臺灣統治ノ劃期的發展ニ寄與セムトスル
モノデアリマス、第三ハ、戰時又ハ事變ニ
際シ其ノ他殊ニ必要アル場合ニ於テハ、現
役兵ノ入營ヲ延期シ又ハ歸休セシメムトス
ルモノデアリマス、曩ニ軍ノ要員取得ノ必
要ニ基キマシテ、學徒ヲシテ速カニ現下決
戰ニ參與セシムル爲ニ、在學徵集延期ハ之
ヲ全面的ニ停止セラレタノデアリマスガ、
醫科又ハ理工科等ノ一部ノモノハ、全般ノ
狀況ノ許ス範圍ニ於テ、其ノ課程修得ノ必
要ノ期間修學ヲ繼續セシメル爲ニ、徵集シ
夕年度內ニ之ヲ入營セシムルコトガナク、
更ニ其ノ時期ヲ延長セシムル必要ガアリマ
ス、尙又部隊ニ於ケル〓育力ヲ最大限ニ
活用シテ、所望ノ期間ニ所望ノ兵員ニ對シ
必要ノ〓育ヲ施スト共ニ、輸送ノ狀況等ニ
卽應セシメムガ爲ニ、適時現役兵ヲ歸休セ
シメ又ハ其ノ入營ヲ延期セムトスルモノデ
アリマス、第四ハ、兵員ノ配賦、徵兵檢査
實施地等、徵集ノ要領ヲ戰時ノ要求ニ卽應
セシメムトスルモノデアリマス、從來徵集
人員ノ比較的少ナカッタ頃ニハ、徵集ノ地
域的公平ヲ重視シ、內地ニ在ル內地人ニ付
キマシテハ、本籍地ニ於テ徵兵檢査ヲ受ク
ル見込ノ人員ヲ基礎トシテ徵集兵員ヲ配賦
シ、其ノ本籍地カラ全國同ジ比率デ現役兵
又ハ第一補充兵ヲ徴集シ、且徵集順序モ必
ズ之ヲ定メテ居ッタノデアリマスガ、軍要
員ノ激增ニ伴ヒ、苟モ兵業ニ耐ヘル兵員
ハ、現役兵ハ勿論補充兵モ、更ニ一部ノ國
民兵迄モ、入營セシメラレテ居ルノデアリ
マス、軍トシテハ現ニ入營セル兵員ノ體力
ノ强弱ヲ稠密ニ調査シ、體力ニ適應スル兵
業ヲ課シ、而モ訓練ト保育トノ調和ヲ圖ル
コトハ勿論デアリマスガ、徵集上ノ取扱ト
シテハ、從來ノヤウナ複雜ナ方法ヲ適當ト
セザルニ至リマシタノミナラズ、此ノ方法
デハ、戰時下敏活ナル事務處理ニモ支障ヲ
生ジマスノデ、實情ニ應ズル如ク之ヲ改メ
ムトスルモノデアリマス、尙此ノ他ニ、兵役
法ノ外、臺灣ニ徵兵制ヲ施行セラレマシタ
ノニ付キマシテ、內地人及朝鮮人ガ、臺灣
人ノ家ニ入リマスコトニ付テ、今迄通リノ
制限ガ必要デ無クナリマシタコトカラシテ、
此ノ點ヲ共通法ニ所要ノ改正ヲ致サムトス
ルノデアリマス、陸軍次官ノ御說明ノ大要
ハ只今申上ゲタ通リデゴザイマス、是ヨリ
重要ナル質疑應答ニ付テ申上ゲマス、第
ハ〓育ニ關スルコトデ、入營延期ニ關シマ
シテ學科目ニ付テ尙色々〓究ノ餘地ガアルノ
デハナイカト言フ御質問ニ對シマシテ、當局
ヨリシテ、本決定ハ短時日ノ〓究デ決メタ
カラシテ、將來或ハ實情ニ依ッテ之ヲ修正
スルノ要ガアルカモ知レナイ、ソレニ付テ
ハ十分〓究ヲ進メル積リデアル、尙入營延
期ハ如何ナル學科目若シクハ種類ヲ豫定シ
テ居ラレルカト云フ質問ニ對シマシテ、當
局ハ、醫科、理工科、及農藝化學科、林學科、
其ノ他文理大、高等師範、師範學校、其ノ他
〓育者タルコトヲ義務トスル者ニ付テハ總
テ入營延期ヲスル積リデアルト云フ御答辯
デゴザイマシタ、一委員ヨリシテ、文理大
ニハ〓育者タル義務ヲ負ハシテナイガ之ニ
付テハドウスル御考デアルカト云フ御質問
ニ對シマシテ、文部當局ヨリハ、文理大ノ
卒業者ニ對シマシテハ、就職義務ヲ將來課
スル考デアルト云フ御答デゴザイマシタ、
ソレカラ次ニ一委員ヨリシテ、女子ヲシテ
男子ニ代ラスコトガ非常ニ多クナッテ來タ
ガ、單ニ男子ノ代用タルノミナラズ、女子
トシテハ女子ノ適性ニ合スル所ノ仕事ガア
リ、從ッテ之ヲ選ンデ學バス必要ガアルト
思フガ、將來女子ノ爲ニ是等ノ學科ノ專門
學校又ハ中等程度ノ學校ヲ、官立ニテ設ケ
ル考ガアルカドウカト云フ御質問ニ對シマ
シテ、此ノ點ニ付テハ、將來十分〓究シテ
必要ガアレバ實施スル積リデアル、尙附加
ヘテ申シマスノニハ、一是等ノ專門學校又ハ
中等程度ノ特殊ノ學校ニ於テモ、ソレ等ノ
單ナル職業〓育デハナク、帝國ノ女子トシ
テ所要ノ〓養ニ付テハ十分是ハ加ヘテ〓育
スル積リデアルト云フ御答デゴザイマシ
タ、次ニ一委員ヨリシテ、學徒ノ入營延期
者ニ對スル取扱ハドウ云フモノデアルカト
云フ御質問ニ對シマシテ、陸軍當局ヨリ致
シマシテ、徵兵檢査ガ濟ミマスレバ兵役ガ
決定シ、所要ノ兵籍ニ編入スルカラシテ、
從ッテ現役兵若シクハ補充兵、若シクハ國
民兵役ト云フ身分ハ取得ヲスルコトニ於テ
變リハナイガ、併シナガラ入營期間ニ於テ
ハ、其ノ取扱ヲ一般常人ト別ニ變ル所ハナ
イト云フ御答デゴザイマシタ、次ニ一委員
ヨリシテ、只今〓育者ハ非常ニ拂底シテ居
ル、殊ニ中等〓育ノ〓育者ハ少イノデアル
ガ、是等カラ見レバ、高等師範學校卒業者
デ文理大學ニ入學スル者ヲ制限スル必要ハ
ナイカト云フ質問ニ對シマシテ、文部當局
ハ、高等師範卒業者ハ成ルベク速カニ〓職
ニ就クヤウニ勸メテ居ルト云フ御答デゴザ
イマシタ、ソレカラ次ニ矢張リ〓員、殊
理工科ノ〓員ト云フモノガ餘程不足シテ居
ル、之ニ對シテ何カ方策ハアルカト云フ御
質問ニ對シマシテ、文部當局ハ、是ハ出來
ルダケ現ニ產業ニ從事シテ居ル者其ノ他
ニ呼ビ掛ケテ、兼務的ニ〓育ニモ携ッテ貰フヤ
ウニ、出來ルダケ骨ヲ折ルト言フ御答デゴ
ザイマシタ、次ニ靑年學校ノコトニ移リ
マシテ、靑年學校ノ〓育ニ於テ、只今軍
需生產ノ增强ガ頻リニ叫バレテ居ル際ニ、
尙モット有效適切ナル〓育方法ガアリハシナ
イカト云フ質問ニ對シマシテ、政府當局ハ、
是等ノ〓育ハ成ルベク職場ニ卽應シテ、〓
室ノ〓育ヲ出來ルダケ少クシテ實地ニ於テ
〓育スル積リデアル、ソレニ付テハ既ニ實
施スベキ趣旨ヲ以テヤッテ居ルト云フコト
ヲ御答デゴザイマシタ、次ニ一委員ヨリシ
テ、入營延期ノ中ニ林學科ガ入ッテ居ルガ、
林學科ト云フモノハ實際軍ニ於テソレ程御
必要ナノカト云フ御質問ニ對シマシテ、當
局ヨリシテ、木材兵器ノ扱ヒニ付テ林學科
ノ者ガ必要デアル、現ニ相當數ノ林學科出
ノ者ヲ軍工廠、若シクハ其ノ他ノ場所ニ於テ、
技術將校若シクハ技師トシテ使ッテ居ルト
云フ御答デゴザイマシタ、次ニ一委員ヨリ
シテ、臺灣ニ於ケル徴兵制施行ニ關スル件
ニ付キマシテ、此ノ實施ハ何時カラヤルノ
ダト云フ御質問ニ對シマシテ、徴兵檢査ハ
昭和二十年ノ六月、入營ハ同年ノ十二月ニ
行フノデアルト云フ御答デゴザイマシタ、
次ニ此ノ徵兵ニ關スル準備ハドウ言フ風ニ
爲スッテ居ルカト云フコトニ付キマシテ、臺
灣總督府ノ當局ハ、此ノ準備ト致シマシテ
ハ、明年度カラシテ臺灣ニ十八箇所ノ鍊成
所ヲ作ッテ、此處デ以テ皇民鍊成及徵兵ノ準
備ヲ進メル積リデアルト云フ御答デゴザイ
マシタ、次ニ少年志願兵ノコトニ付キマシ
テ、一委員ヨリ、陸海軍ニ於テ別々ニ少年
志願兵ヲ募集サレルノデ、之ガ爲ニ地方デ
ハ多少之ニ幾分カノ迷惑ヲ感ズル所ガアル
ガ、何トカナラヌモノカト云フ御質問ニ對
シマシテ、少年航空兵ハ將來益〓是ハ擴充ス
ル積リデアルガ、之ニ關シテハ、只今ハ勿
論デアルガ、將來ハ益〓陸海兩軍ノ當局ニ於
テ緊密ニ連絡協議シテ、決シテ競爭的ニ募
集スルト云フヤウナコトノナク、地方ニ御
迷惑ヲ掛ケルヤウナコトノナイヤウニ十分
努メルト言フ御答デゴザイマシタ、以上ノ
外ニ、尙臺灣及朝鮮ニ於ケル徴兵ノ實狀ニ
關スルコトトカ、或ハ召募人員ニ關スル件
トカ、其ノ他尙諸種ノ御質問ガゴザイマシタ
ガ、是等ハ總テ軍事上ノ機密トシテ速記ヲ
停止致シマシタ、內容ハ申上ゲルコトハ出
來マセス、以上ノ如ク御質問ガ終リマシテ、
續イテ討論ニ入リ、何等御發言ガゴザイマ
セヌ、續イテ採決ニ移リマシタ處ガ、委員
會ハ全員一致可決ニ決シマシタ、之ヲ以テ
私ノ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=20
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021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=21
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022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=22
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023・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=23
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024・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=24
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025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=25
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026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=26
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027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=27
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028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=28
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029・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=29
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030・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=30
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031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=32
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033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第一讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、是ニテ日程ハ終リマシタガ、衆議
院ヨリ議案ノ送付ガアル筈デアリマスカラ、
午後三時迄休憩致シマス
午後一時四十六分休憩
午後三時二十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ直ニ之ヲ衆議院ニ送付セリ
工業所有權法戰時特例案
兵役法中改正法律案
本日請願委員會ニ於テ當選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵高橋是賢君
副委員長男爵久保田敬一君
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
裁判所構成法戰時特例中改正法律案可決
報〓書
戰時民事特別法中改正法律案可決報〓書
戰時刑事特別法中改正法律案可決報〓書
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
會計法戰時特例中改正法律案
帝國鐵道會計法中改正法律案
所得稅法及地租法中改正法律案
國有財產法中改正法律案
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=35
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036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ休憩前ニ
引續キ會議ヲ開キマス、衆議院ヨリ送付セ
ラレマシタ政府提出ニ係ル會計法戰時特例
中改正法律案、帝國鐵道會計法中改正法律
案、所得稅法及地租法中改正法律案、國有
財產法中改正法律案、國債關係事務簡捷化
ニ關スル法律案、是等ノ五案ヲ此ノ際議事
日程ニ追加シ、一括シテ第一讀會ヲ開クコ
トニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、谷口大藏次官
會計法戰時特例中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
會計法戰時特例中改正法律案
會計法戰時特例中左ノ通改正ス
第四條大東亞戰爭ニ際シ補助ノ目的タ
ル事業ノ進捗遲延其ノ他避クベカラザ
ル事故ノ爲年度內ニ補助費ノ支出ヲ終
ルコト能ハザリシトキハ豫算又ハ他ノ
法律ニ定ムル場合ノ外之ヲ翌年度ニ繰
越シ使用スルコトヲ得
第五條大東亞戰爭ニ際シ政府ニ於テ賣
買、貸借、請負其ノ他ノ契約ヲ爲サントス
ル場合ニ於テ國務大臣必要アリト認ム
ルトキハ會計法第三十一條ノ規定ニ拘
ラズ指名〓争ニ付シ又ハ隨意契約ニ依
ルコトヲ得但シ不動產膏拂ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第六條大東亞戰爭ニ際シ會計ニ關スル
事務ノ簡捷ヲ圖ル爲必要アルトキハ一
ノ會計又ハ勘定ニ屬スル特定ノ經費又
ハ收入ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ他ノ會
計又ハ勘定ニ屬セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リタル場合ニ於テハ豫
算ノ定ムル所ニ依リ當該會計又ハ勘定
間ニ於テ必要ナル收支ノ調整ヲ爲スモ
ノトス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大東亞戰爭終了ノ際ニ於テ必要ナル經過
規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
帝國鐵道會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國鐵道會計法中改正法律案
帝國鐵道會計法中左ノ通改正ス
第七條第二項ヲ左ノ如ク改ム
鐵道、軌道其ノ他陸運、陸運ノ用ニ供ス
ル機械器具ノ製造(自動車ノ製造ヲ除
ク)、修理其ノ他ノ事業及倉庫營業〓
港倉庫ニ係ルモノヲ除ク)ニ關スル監
督助成及統制ニ要スル諸費用ハ本會
計ノ角擔トシ收益勘定ノ歲出トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
所得稅法及地租法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
所得稅法及地租法中改正法律案
第一條所得稅法中左ノ通改正ス
第十二條第一項第二號中「其ノ支拂ヲ
受クベキ金額」ノ下ニ「(公債及社債ノ
利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)」ヲ
加フ
第二十二條ノ二甲種ノ配當利子所得中
公債及社債ノ利子ニ對スル分類所得稅
ハ其ノ支拂ヲ受ケタル時ニ於ケル稅率
ニ依リ之ヲ賦課ス
第二條地租法中左ノ通改正ス
第十一條第一項第一號ヲ左ノ如ク改ム
一田租翌年二月一日ヨリ末日限
年額全部
第七十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項ノ規定ニ依リ申請ヲ爲シタル
田畑ニ付テハ翌年以降第一項ノ規定
ニ依ル申請ヲ爲スコトヲ要セズ
附則
本法ハ昭和十八年十二月一日ヨリ之ヲ施
行ス
國有財產法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國有財產法中改正法律案
國有財產法中左ノ通改正ス
第二十九條ノ二第二十六條第二項ノ規
定ハ大東亞戰爭中及其ノ終了後一年間
ニ同條第一項ノ規定ニ依リ帝國議會ニ
報告スル國有財產增減總計算書又ハ國
有財產現在額總計算書ニ付テハ之ヲ適
用セス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案
第一條明治三十九年法律第三十四號中
左ノ通改正ス
第二條第二項但書ヲ削ル
第二條國債ノ元利金ニ付テハ其ノ消滅
時效完成シタル場合ニ於テモ當分ノ內
之ガ支拂ヲ爲スコトヲ得
第三條昭和十五年法律第六十九號中左
ノ通改正ス
附則ニ左ノ一項ヲ加フ
第一條ノ規定ニ依リ發行スル公債ハ第
二條ノ規定ニ拘ラズ當分ノ內之ヲ登錄
國債ト爲サザルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ無記名證劵ヲ發行スルモノトス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員谷口恒二君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=37
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038・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 只今議題トナリ
マシタ會計法戰時特例中改正法律案外四件
ニ付キマシテ、其ノ提案理由ヲ說明致シマ
ス、政府ニ於キマシテハ、去ル九月二十一
日閣議ニ於テ決定致シマシタ現情勢下ニ於
ケル國政運營要綱ノ趣旨ニ基キマシテ、國
內態勢ノ强化確立ヲ圖ル爲、行政機構ノ改
革、行政事務ノ簡素化、其ノ他戰時下緊要
ナル各般ノ施策ニ付キマシテ、著々其ノ具
體化ヲ取急イデ居ルノデアリマス、會計法
戰時特例中改正法律案外四件ノ法律案モ、
亦悉ク右ノ趣旨ニ出ヅルモノデアリマシテ、
會計ニ關スル事務ノ外、大藏省關係事務ノ
一部ニ付キマシテ、其ノ徹底的簡捷化ヲ圖
リ、以テ決戰行政遂行ノ要請ニ應ヘムトス
ルモノデアリマス、先ヅ會計法戰時特例中
改正法律案ニ付キマシテ御說明致シマス、
政府ハ昭和十二年以來法律及勅令ノ改正ニ
依リ會計法及會計規則等ノ特例ヲ設ケ、資
金前渡、前金拂、〓算拂又ハ隨責契約ヲ爲
シ得ル範圍ヲ擴メマルス等、戰時ノ實狀ニ
卽シマシタル各般ノ措置ヲ講ジテ參ッタノ
デアリマスルガ、現下ノ時局ニ顧ミ必要ナ
ル措置ト致シマシテ、更ニ會計事務ノ簡捷
化ヲ圖ルコトト致シタノデアリマス、而シ
テ此ノ際特ニ其ノ必要アリト認メラレマス
ル補助費定額ノ繰越、指名競爭契約若シク
ハ隨意契約ヲ爲シ得ル場合ノ範圍ノ擴張、
又ハ會計事務ノ簡捷ヲ圖ル爲ノ會計間ノ關
涉ニ關スル事項ニ付キマシテハ、法律ノ改
正ヲ必要ト致シマスルノデ、本法律案ヲ提
出致シマシタ次第デアリマス、次ニ帝國鐵
道會計法中改正法律案ニ付キマシテ說明致
シマス、從來商工大臣ノ管理ニ屬シテ居リ
マシタル陸運ノ用ニ供スル車輛、其ノ他ノ
機械器具ノ製造、修理其ノ他ノ事業ニ關ス
ル監督等ノ事務、及ビ倉庫營業ニ關スル監
督等ノ事務ハ、自動車ノ製造ニ關スルモノ
ヲ除クノ外、今囘新タニ設置セラレマスル
運輸通信省ニ於テ之ヲ行フコトト相成リマ
シタル處、是等ノ事務ノ執行ニ必要ナル諸
費用ハ、從來鐵道、軌道其ノ他陸運ニ關ス
ル監督等ノ諸費用ヲ、帝國鐵道特別會計ニ
所屬セシメテ居リマスルノト同樣ノ取扱ト
致シマスルノヲ適當ト存ゼラルヽノデアリ
マン、而シテ之ガ爲ニハ、現行ノ帝國鐵道
會計法中改正ヲ行フ必要ガアリマスノデ、
本法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
次ニ所得稅法及地租法中改正法律案ニ付キ
マシテ御說明致シマス、國內決戰態勢ノ强
化ノ爲、各般ノ行政ニ亙リマシテ、其ノ簡
捷化ヲ圖ルコトハ愈〓緊切ノ度ヲ增シテ參リ
マシタノニ伴ヒマシテ、稅務行政ニ付キマ
シテモ出來得ル限リ之ヲ簡素化シ、人的及
物的資源ノ節減ヲ圖ルコトト致シタノデア
リマス、先ヅ所得税ニ付テデアリマスルガ、從
來甲種ノ配當利子所得ニ付キマシテハ、總テ
支拂期日又ハ支拂ノ確定致シマシタ日ニ於
ケル稅率ニ依リ、分類所得稅ヲ徴收シ來ッタ
ノデアリマス、是ハ稅率ノ改正アル每ニ、
新稅率ニ依ルモノト舊稅率ニ依ルモノトヲ
區別シテ徴稅スルコトトナリマスル關係上、
特ニ公社債ニ付キマシテハ利子ノ受領ヲ遲
延致スモノモアリマスルノデ、此ノ場合ニ
於キマシテハ、徵稅事務ハ極メテ煩雜トナ
ルヲ免レナイノデアリマス、今回之ヲ改正
シ、甲種ノ配當利子所得中公社債ノ利子ニ
對スル分類所得稅ハ、實際ニ支拂ヲ受ケタ
ル時ニ於ケル稅率ニ依リ課稅スルコトト致
シタノデアリマス、次ニ地租法ニ付キマシ
テハ、二ツノ點ニ付キマシテ簡易化スルコ
トト致シタノデアリマス、第一ハ、田租ノ
納期ハ現在一月及三月ノ二囘トナッテ居ル
ノデアリマスルガ、之ヲ二月一囘トシ、以テ
納稅上及徵稅上ノ手數ヲ省略スルコトト致
シマシタ、第二、小農耕地免租ニ關スル申請
ハ、現在ハ每年之ヲ提出スルヲ要スルコトト
ナッテ居ルノデアリマスガ、同一田畑ニ付キ
マシテハ一囘提出スレバ重ネテ之ヲ要セザ
ルコトニ改正セムトスルノデアリマス、次
ニ國有財產法中改正法律案ニ付キマシテ說
明ヲ致シマス、本法案モ亦國內決戰態勢ノ强
化ノ爲國有財產ニ關スル事務ノ簡捷化ヲ圖
ルト共ニ、資材ノ節約ヲ圖ラムトスルモノ
デアリマス、現行ノ國有財產法ニ依リマス
レバ、各會計年度間ニ於ケル國有財產增減
總計算書又ハ每年三月三十一日現在ノ國有
財產現在額總計算書ヲ帝國議會ニ報〓致シ
マスル際ニハ、ソレ〓〓各省ノ國有財產增減
報〓書又ハ國有財產現在額報告書ヲ添付ス
ルコトニ相成ッテ居ルノデアリマスルガ、之
ガ調製ノ爲ニハ多大ノ人手ト資材トヲ要ス
ルノデアリマス、仍テ玆ニ國有財產法ヲ改正
シ、大東亞戰爭中及其ノ終了後一年間ヲ限
リマシテ、是等各省ノ報〓書ハ之ヲ添付スル
コトヲ要セザルコトト致シタ次第デアリマ
ス、次ニ國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案
ニ付キマシテ說明致シマス、本法案ハ、國債
關係事務ニ於キマシテモ極力其ノ手續ヲ簡
捷化シ、併セテ國債消化ニ資セムトスルモ
ノデアリマス、從來登錄國債ニ對シマシテ
ハ、債權者ノ請求ガアリマスル場合ニハ、
記名證劵ヲ發行スルコトトナッテ居ルノデア
リマスルガ、之ヲ發行スルノ必要性ハ乏シ
イノデアリマスルカラ、此ノ際記名證劵
ノ發行ニ伴フ諸種ノ事務ヲ簡捷化スル
爲之ガ發行ヲ廢止スルヲ適當ト認メ
タノデアリマス、又國債ノ元利金ニ付
キマシテハ、從來時效完成シタル場合
ニ於テハ之ガ支拂ヲ爲サザル取扱ヲシ
テ參ッテ居リマスルガ、消滅時效完成ノ
有無ヲ一々調査スルノ煩ヲ除キ、以テ國
債元利拂事務ノ簡捷化ヲ圖ル等ノ爲、今
般當分ノ內、有ラユル國債ノ元利金ニ付テ
ハ、消滅時效完成シタル場合ニ於キマシテ
モ、之ヲ支拂ヒ得ルコトト致サムトスルノ
デアリマス、最後ニ大東亞戰爭ニ關スル一
時賜金公債ハ、從來之ヲ登錄國債トシタル
上記名證劵ヲ發行交付シテ居ルノデアリ
マスルガ、記名證劵ノ印刷發行及ビ交付ニ
ハ、相當ノ人員手數ヲ要シマスルノデ、之ガ
發行交付ニ關スル事務ヲ簡捷化シ、旁〓大
東亞戰爭ニ關スル一時賜金公債ノ交付ヲ簡
易迅速ニ行ヒ得マスルヤウ、之ヲ無記名證
劵ヲ以テ發行交付シ得ルコトト致サムトス
ルノデアリマス、以上五件ノ法律案ニ關シ
マシテハ、何卒御審議ノ上速カニ御協賛ヲ
與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=38
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039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ五案ノ審査ヲ付託スベキ特別委員ノ
選擧ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=39
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040・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
會計法戰時特例中改正法律案外四件ノ特別
委員ノ數ヲ十五名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ
議長ニ一任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=40
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041・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=41
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042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=42
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043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致セマス
〔小野寺書記官朗讀〕
會計法戰時特例中改正法律案外四件特別
委員
侯爵井上三郞君侯爵四條隆德君
伯爵堀田正恒君子爵裏松友光君
子爵松平親義君入江貫一君
三井〓一郞君河田烈君
男爵島津忠彥君男爵深尾隆太郞君
黑田英雄君西野元君
竹下豐次君佐々木長治君
柴田兵一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=43
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044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 此ノ際、裁判所
構成法戰時特例中改正法律案、戰時民事特
別法中改正法律案、戰時刑事特別法中改正
法律案ヲ議事日程ニ追加シ、三案ヲ一括シテ
第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報〓ヲ求メ
タイト存ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ラ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=44
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045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長酒井伯爵
裁判所構成法戰時特例中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十七日
委員長伯爵酒井忠正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
戰時民事特別法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長伯爵酒井忠正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
戰時刑事特別法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長伯爵酒井忠正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵酒井忠正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=45
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046・酒井忠正
○伯爵酒井忠正君 只今議題ニナリマシタ
裁判所構成法戰時特例中改正法律案外二件
ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ニ付キマシテ
御報告ヲ申上ゲタイト存ジマス、委員會ハ
昨日第一囘ヲ開キマシテ、政府ヨリ說明ヲ
聽取致シマシタ、引續イテ祕密會ニ入リマ
シテ、質疑應答ヲ重ネタノデアリマス、今
朝第二囘ヲ開キマシテ質疑應答ヲ重ネテ、
午後ニ至リマシテ討論採決ニ入リマシテ、
三案トモ可決スベキモノト決定致シタノデ
アリマス、三案ハ、今日大東亞戰爭ガ苛烈
ナル決戰段階ニ入リマシタ時ニ當リマシテ、
政府ニ於キマシテモ國內態勢强化方策ヲ執ッ
テ、國民總力ノ結集ト云フコトニ力ヲ注イ
デ居リマスル時デアリマシテ、司法部面ニ
於キマシテモ、一層敏活ナル處理ヲナシテ、
其ノ效果ヲ發揮セシムルコトヲ目的トシテ、
此ノ三法律ニ必要ナル改正ヲ行ハレムトス
ルノデアリマス、裁判所構成法戰時時例ノ
改正ノ要點ハ、第一點ニ於キマシテハ、民
事及刑事ノ訴訟ニ付テ區裁判所ノ事物管轄
ヲ擴張スル點デアリマス、卽チ民事ニ於キ
マシテハ、從來區裁判所ハ千圓ヲ超過セザ
ル金額又ハ價額千圓ヲ超過セザル物ニ關ス
ル請求ニ付テ裁判權ヲ有シテ居ッタノヲ、今
囘之ヲ二千圓ヲ超過セザル金額又ハ物ニ關
スル請求權ヲ、總テ區裁判所ノ管轄ニ屬セ
シメタノデアリマス、又刑事ニ於キマシテ
ハ、短期一年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ
當リマスル罪ヲモ、區裁判所ノ管轄ド致ス
コトニ範圍ヲ擴張致シタノデアリマス、第二
點ハ、民事及刑事ヲ通ジマシテ全面的ニ二
審制ヲ採用致シタコトデアリマス、第一審
判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズシテ、
直接上告ヲ爲スコトヲ得ルコトニ改メマシ
テ、區裁判所ノ爲シタ判決ニ對スル上〓ハ、
總テ之ヲ控訴院ノ管轄ニ屬セシメルノデア
リマス、第三點ハ、刑事ニ付テモ民事ト同
樣ニ再抗〓ハ許サナイモノト改メル點デア
リマス、次ニ戰時民事特別法中改正法律案
ノ改正ノ要點ハ、第一點トシテ事實ノ誤認
ニ關シテモ上〓ヲ爲スコトヲ得ルモノト致
シテ、且上告審ニ於ケル事實審理ヲ認メム
トスル點デアリマス、第二點ハ、是モ裁判
所構成法戰時特例ノ改正ニ伴ッテ、金額又ハ
價額二千圓以下ノ訴訟ガ區裁判所ニ移ルコ
トニ相成ルノデ、訴訟物ノ價額ノ算定ノ出
來ナイ場合ニハ、之ヲ地方裁判所ノ管轄ト
スル爲ニ、其ノ價額ヲ二千圓ヲ超過スルモ
ノト看做ス所ノ特則ヲ定メタモノデアリマ
ス、次ニ戰時刑事特別法中改正法律案ニ付
キマシテハ、戰時下率先垂範スベキ所ノ官
公吏等ノ綱紀ノ振肅ヲ圖ル爲ニ、瀆職罪ニ
關シマスル刑罰ヲ加重啓備致シマシテ、又
一方刑事手續ヲ簡素强力ニ致シ、的確敏速
ナル裁判、檢察ノ運用ヲ致サムトスルモノ
デアリマス、改正ノ要點ト致シマシテハ、
第一ニ、公務員ノ瀆職罪ニ對シテ全般的ニ
重刑ヲ以テ之ニ臨ンデ、尙官公署ノ職員ガ
其ノ地位ヲ利用シテ、他ノ官公署職員ノ職
務ニ屬スル事項ニ關シテ斡旋ヲ爲スコト、
又ハ爲シタコトニ付テ、不當ノ利益ヲ受ケ
或ハ要求シ、又ハ約束致シタ場合ニ於キマ
シテモ、之ヲ收賄罪トシテ處罰スルコト
ト致シ、一方贈賄罪ニ付キマシテモ、其ノ
刑ヲ加重致シマスルト共ニ、贈賄ヲ爲サシ
ムル目的ヲ以テ金品ヲ交付致シタリ、又ハ
情ヲ知ツテ其ノ交付ヲ受ケタ者モ、處罰シ
得ルコトト致シタノデアリマス、第二點ハ、
略式手續ノ範圍ノ擴張デアリマシテ、事案
ノ內容ガ單純デ且犯罪ノ成立ガ明白ナル場
合ニ於キマシテハ、略式命令ヲ以テ一年以
下ノ懲役若シクハ禁錮又ハ拘留ノ刑ヲ科シ、
更ニ竊盜、戰時住居侵入、常習賭博ト云フ
ヤウナ特殊ノ罪ニ付キマシテモ、同樣ノ條
件ニアル時ハ三年以下ノ懲役ヲ科シ得ルコ
トト致シタノデアリマス、其ノ他刑事手續ノ
簡易化ヲ圖ル爲ニ、公判調書ニ訊問供述ヲ
記載スル場合ニハ其ノ要領ノミヲ明確ニス
ルコトニ止メルトカ、鑑定人ノ訊問ニ代ヘ
テ書面提出ヲナサシメルト云フヤウナ改正
ガナサレテアルノデアリマス、更ニ裁判所
構成法戰時特例ノ改正ニ伴ッテ必要ナル調整
ガ數點改正致サレテ居ルノデアリマス、質疑
應答ノ大要ヲ申述ベタイト存ジマスルガ、構
成法ニ付キマシテ、構成法ノ改正ニ依ッテ
訴訟物ノ價額ヲ二千圓ニシタガ、今日物價
ノ騰貴致シテ居ル時ニ於テ此ノ程度ヲ以テ適
當トスルカドウカ、其ノ標準ハ何ニ依ッタカ、
ト云フノニ對シマシテハ、此ノ度ノ改正ニ依ッテ
控訴審ヲ省略シテ區裁判所ノ權限ヲ擴大シタ
ノデアルガ、之ヲ又餘リニ擴大スルト云フコトハ
止メテ、此ノ二千圓ノ程度ニ致シタノデアル、
又戰時下司法官モ手不足トナルコトデアルガ、
此ノ改正ガ圓滿ニ行ハレル爲ニハ、人員ノ
配置ガ必要デアルシ、殊ニ監督判事ニ付テ
ハ相當熟練者ノ配置ガ必要ト思ハレル、又
今日內政ノ根本改革ガ行ハレル時ニ當ッテ、
司法官ノ定年制ト云フコトハ是ハ施行後長
イ年月ヲ持ッテ居ルノデアルガ、是ハ輕率ニ
動カスベカラザルモノト思フガ、之ニ對ス
ル政府ノ所見ハドウデアルカト云フノニ對
シマシテ、人員ノ補充ニ付テハ今日差支ハ
ナイガ、此ノ法案ノ實施ニ當ッテハ十分配
置ニ付テ遺憾ナカラシメル考デアル、又區
裁判所ノ權限ガ擴張致サレルノデアルカラ
シテ、從ッテ監督判事ノ人選ニ付テハ特ニ
練達ノ士ヲ配置スル考デアル、又定年制ニ
付キマシテハ、是ハ多年ノ〓究ノ結果創設
セラレタモノデアッテ、職掌ノ性質其ノ他
ノ點カラ見マシテ根本的ニ重要ナ問題デア
ルカラシテ、今日現行制度ノ儘存置シテ行
キタイ考デアルト云フ答辯デアリマシタ、
又民刑ヲ通ジテ三審制度ヲ二審ニセムトス
ルト云フコトハ、我ガ國司法制度ノ劃期的
ノ變更デアル、斯クノ如キ重大ナル法律案
ヲ、此ノ短期デアル所ノ臨時議會ニ提出セ
シ其ノ理由ハドウ云フ理由デアルカ、之三
對シマシテ、戰爭ハ益〓熾烈ヲ極メ、空襲等
ノ危險モ考ヘナケレバナラナイノデアルカ
ラ、萬一ノ場合、交通其ノ他ノコトモ考へ、
司法裁判ニ關シテ地方的ニ分布處理ノ出來
ルヤウニ致シテ、又事件處理ヲ出來得ル限
リ短クスル爲ニ其ノ用意ガ必要デアルノデ
アル、又會期ヲ短期ニ奏請致シタコトハ、
今日緊迫セル情勢ニ鑑ミ短クスベキモノ
ト考ヘタ次第デアルト云フ答辯ガアッタノ
デアリマス、更ニ裁判ノ三審制ト云フコト
ハ、是ハ司法ノ大原則トシテ、民人ノ權利
義務ノ上ニ重大ナル影響ヲ及スコトデアル
カラシテ、此ノ大原則ヲ變更スルト云フコ
トハ誠ニ重大ナ問題デアルカラシテ、大東
亞戰爭終了後ニ於テハ三審制度ニ復スル考
デアルカドウカト云フ問ニ對シマシテ、政
府ニ於テモ、三審制度ハ司法制度ノ原則デ
アルコトハ勿論デアル、今囘ノ處置ハ戰爭
目的遂行ノ爲ノ處置デアルカラシテ、戰爭
終了ノ場合ニ於テハ、原則トシテ元ニ復ス
ル考デアルト云フ答辯デアリマシタ、次ヘ
戰時民事特別法中ノ法案ニ對スル質問ニ付
キマシテハ、事實ノ誤認ニ關シテモ上告ヲ
爲スコトヲ得ルコトトシテ、原裁判ガ大キ
ナ誤リヲ爲シタコトヲ見出シタ時ハ、原審
ヲ是正スルト云フコトハ是ハ尤モナコトデ
アルガ、事實ノ誤認ト云フコトヲ上告理由
トスルノハドウカト思フ、之ニ對シマシテ、
上告審ガ原則トシテ法律審デアルベキハ、
サウデアルガ、實績ヲ見ルト良好ナ成績ヲ
擧ゲテ居リ、又裁判ハ事實ノ認定ガ根柢デ
アルカラシテ强テ惡イトハ思ハナイ、二審
制ニスル以上、刑事ト步調ヲ合セテ民事デ
モ事實審ヲ行フコトヲ適當ト考ヘル、又現在
二審制ノ事件ニ、上告審ニ於ケル事實ノ審
理ヲ認メテ居ナイノニ拘ラズ、今囘全面的
ニ事實ノ誤認ヲ上告ノ理由ト致シ、且上告
審ニ於ケル事實審理ヲ認メル理由ハドウカ
ト云フ質問ニ對シマシテ、現在之ヲ認メテ
居ナイノハ、事件ノ種類ヨリ見テ事案簡單
ナルガ爲ニ斯カル制度ヲ認メル必要ガナ
イカラデアル、今囘全部ノ民事訴訟ニ付テ
二審制ヲ採用シタノデアルカラシテ、之二
對應シテ全部ノ訴訟ニ付テ事實ノ誤認ヲ上
告ノ理由トシテ上〓審ノ事實審理ヲ爲ス途
ヲ拓イタノデアルト云フ答辯ガアリマシタ、
次ニ戰時刑事特別法ニ關シマシテハ、贈收
賄ノ罪ニ對シマシテ刑ヲ加重シタ、其ノ點
ハ誠ニ結構ナコトデアルガ、刑罰ノ量定ニ
付テハ其ノ標準ヲ何ニ依ッタノデアルカト云
フノニ對シマシテ、立案ニ際シテ、贈賄收
賄共ニ重クスベキデアルガ、特ニ收賄ヲ重
クスベキモノト考ヘタ、如何ニ贈賄者惡質
デアッテモ、之ヲ收賄シテ地位ヲ汚スト云
フコトハ最モ憎ムベキモノトシテ之ヲ重ク
致シタノデアル、又公務員ノ瀆職罪ニ付テ、
如何ニ刑ヲ重ク致シテモ、檢擧ト云フコト
ガ之ニ伴ハナケレバ何ニモナラナイノデア
ル、檢事ノ搜査檢擧ガ困難デアルナラバ、
何等カノ規定ノ改正ガ必要デハナイノカト
云フ質問ニ對シマシテ、檢事ノ捜査力ヲ强
クスルト云フコトニ付テハ、現在國防保
安法、治安維持法等ニ依ッテ相當ニ伸ビテ
ハ居ルノデアルガ、搜査力ニハ相當力ヲ附
與スル必要ガアルト考ヘル、司法省ニ於テ
モ現在〓究ヲ重ネテ居ルト云フ答辯デアリ
マシタ、次ニ略式命令ニ付キマシテ質問ガ
アッタノニ對シマシテ、政府側ヨリ、運用上
ハ略式命令ノ請求ニ際シテ檢事ニ於テ求刑
ヲ記載スルコトトナルノデアリマシテ、略式
命令ト同時ニ爲スベキ刑ノ執行猶豫ハ、檢
事ノ請求又ハ裁判所ノ權限ニ依ッテ言ヒ渡サ
レルモノデアルト云フ旨ノ答辯ガアッタノデ
アリマス、以上ガ質疑應答ノ〓要デアリマスル
ガ、質疑ヲ終リマシテ、討論ニ入リマシタ際
ニ、一委員ヨリ、本案實施ニ當ッテハ、一番
ト云フモノガ眞ニ大切デアルト云フコトニ
深ク留意ヲ致シテ萬遠算ナキコトヲ期セラ
レタイ、又治安保持ニ付テハ、現下決戰態
勢下ニ於テ、國內治安ニ付テ特ニ深甚ノ注
意ヲ望ムト云フヤウナ御貴見ガアッタノデ
アリマス、討論ヲ終リマシテ、採決ヲ致シ
マシタ結果、三案トモ原案通リ可決スヘキ
モノト決定致シタ次第デアリマス、以上御
報告ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=46
-
047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、三案ノ採決ヲ致シマス、三案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=47
-
048・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=48
-
049・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=49
-
050・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=50
-
051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=51
-
052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=52
-
053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀會
ヲ開キマス、『異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=53
-
054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=54
-
055・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望〓シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=55
-
056・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=56
-
057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=57
-
058・松平頼壽
○議長(松平賴壽君) 御異議ナイト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=58
-
059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀會
ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=59
-
060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、議事ノ都合ニ依リマシテ午後五時
迄休憩ヲ致シマス
午後三時五十九分休憩
午後五時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=60
-
061・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ直ニ之ヲ衆議院ニ送付セリ
裁判所構成法戰時特例中改正法律案
戰時民事特別法中改正法律案
戰時刑事特別法中改正法律案
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
防空法中改正法律案可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=61
-
062・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ休憩前ニ
引續キ會議ヲ開キマス、此ノ際、防空法中
改正法律案ヲ議事日程ニ追加シ、第一讀會
ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メタイト存
ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=62
-
063・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長二荒伯爵
防空法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長伯爵二荒芳德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵二荒井德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=63
-
064・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 防空法中改正法律案ノ
委員會ノ經過ヲ御報告致シマス、本委員會
ハ昨日ト今日ニ亙リマシテ審議ヲ致シマシ
タ、先ヅ內務大臣カラ提案ノ理由竝ニ法案
ノ說明ヲ伺ヒマシテ、其ノ後ニ祕密會ヲ開
キマシテ、政府當局カラ空襲判斷ニ關スル
說明ヲ聽キマシタ、防空法中改正法律案ノ
要綱ト致シマシテ大體十箇條ヲ數ヘルコト
ガ出來ルノデアリマス、防空業務ノ範
圍ヲ擴張致シマスコト、二、防空上必要ア
ルトキハ一定ノ物件、施設又ハ事業ニ對シ
移轉、疎開又ハ轉換ヲ命ジ得ルコトトスル
コト、三、一定ノ區域ヲ指定シ其ノ區域內
ニ在ル家屋及施設ノ疎開ヲ命ジ得ルコトト
スルコト、四、防空上特ニ必要アルトキハ
一定ノ區域ヲ指定シ其ノ區域內ニ居住スル
者ニ對シ轉居又ハ退去ヲ命ジ得ルコトトス
ルコト、五、防空上特ニ必要アルトキハ一
定ノ區域ヲ指定シ其ノ區域ヘノ轉居ヲ禁止
若ハ制限ヲ爲シ得ルコトトスルコト、六、
疎開ノ爲建築規制、建築物ノ管理又ハ利用
ノ統制ヲ爲シ得ルコトトスルコト、七、防
空施設整備ノ爲土地、家屋又ハ物件ヲ收用
又ハ使用ン得ルコトトスルコト、八防空
上特ニ必要アルトキハ營業其ノ他ノ業務ニ
關シ禁止若ハ制限シ又ハ繼續ヲ命ジ得ルコ
トトスルコト、九、訓練事故者ニ對シテモ
扶助金ノ給付ヲ爲シ得ルコトトスルコト、
十、防空ニ要スル費用ノ負擔區分ヲ整備ス
ルコト、之ニ付キマシテ先ヅ質疑ヲ開始致
シマシタ、其ノ質疑應答ノ主ナルモノヲ申
上ゲマスレバ、物資ノ保管、貯藏ハ、昨今
十分ニ用意サレテ居ルト云フコトヲ聞クガ、
殊ニ主要食糧品ノ保管ニ付テハ違算ガナイ
ノデアラウカト云フ質問ニ對シマシテ、
政府ハ、相當ノ長期間ニ適當ナ方法ニ依
リ保管ガシテアッテ、違算ナイコトヲ期
シテ居ル、從來農林省ガ是ノ保管ニ從事
シテ居ッタガ、今度ハ防空業務トシテ取
扱ヲスルト云フコトニナッテ、分散竝ニ
集配ノ急ニ處スル爲ニ十分ニ用意ヲ致シテ
居ルト云フコトデゴザイマシタ、次ニ他ノ
委員カラ、今日ニ於テスラモ食糧ノ配給ハ
圓滑ヲ缺イテ居ルノデアルガ、一度非常事
態ノ發生シタ場合ニ想到スレバ、誠ニ憂フ
ベキモノガアルヤニ思ハレル、此ノ點如何
デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ、
配給組織ハ、食糧營團ノ中ニ食糧國防團ガ
やっとり有ラユル配給上ノ用意、設備ヲ致
シテ居ル、殊ニ警視廳當局ガ之ニ協力ヲシ
テ居ル譯デアル、從ッテ十分ニ危急ノ場合
ニ處置スルコトガ出來ルト云フ答辯デゴザ
イマシタ、其ノ次ニ或委員カラ、防衞ハ先
ヅ各個人ガ自ラヲ護ルコトガ一番宜イノデ
アル、卽チ各家庭ノ〓糧保管ニ付テハ準備
ガアルコトガ必要デアルガ、此ノ家庭ノ準
備ニ付テ政府ハ如何ナル所見ヲ持ッテ居ル
カト云フ質問ニ對シマシテ、政府當局カラ
ハ、非常ノ用意ヲナスコトニ付テハ誠ニ結
構デアルガ、是ガ極端ニ、所謂買溜メニ陷ッ
テ〓糧ヲ死藏スルガ如キ弊ニ陷ラザルコ
トヲ要スルノデアルト云フ說明デゴザイマ
シタ、其ノ次ニ他ノ委員カラ、分散疎開ノ
程度ハドウ云フ程度デアルカ、人ハ容易ニ住
居ヲ變ヘルコトニハ幾多ノ困難ヲ伴フデア
ラウ、又其ノ人心ニ及ス影響モ少クナイカ
ラシテ、愼重ナル注意ヲ要スルノデアル、
殊ニ家族制度ノ尊重ト云フコトガ、人口疎
開ニ依ッテ損ハレルコトニナッテ如何デアラ
ウカト思ハレル、之ニ對シマシテハ政府ハ、
轉居或ハ轉出ニ付キマシテハ、成ルベク一
戶ガ其ノ儘轉ジテ行クコトヲ理想トシテ居
ル、若シ全戶ガ轉ジ得ナイ場合ニハ、緣故
者ノ家ヲ辿ッテ轉居セシメ、極力家族制度
ノ良習ヲ傷ケザラムコトヲ企圖シテ居ル、
其ノ他轉職者、兒童生徒ノ轉入學等ニ付テ
モ、十分世話ヲスル考デアルト云フコトデ
ゴザイマシタ、更ニ他ノ委員カラ、本法ハ
私有財產ニ付キテモ最モ强力ナル制限トナ
ルノデアル、總動員法ガ旣ニ所有權ニ對シ
テ大ナル制限ヲ加ヘテ居ルノデアルカラ、此
ノ法案ハ、目下ノ決戰段階ニ於テハ固ヨリ
必要デアルケレドモ、私有財產ガ憲法ニ於
テ保障セラレテアルコトハ、國民生活ノ基
礎タル點ニ於テ重大ナル意義ヲ持ッテ居ル
ノデアル、斯ク私有財產ノコトヲ申スケレ
ドモ、此ノ私有財產ノ觀念ハ、歐米ノ流儀ノ
意味ヲ以テ申スノデハナクシテ、天皇ノ統
治シ給フ所ノ國土ニ在ル其ノ動產不動產
ヲ、姑ク許サレテ臣下ガ私有シテ居ル點ニ於
ケル日本ノ所有權觀念ヲ申スノデアル、サ
ウデアレバコソ、此ノ法案ノ實施ノ曉ニ於
テ、最モ愼重ナル、公正ナル運營ヲ要スル
ガ、政府當局ノ用意如何ト云フ質問デゴザ
イマシタ、之ニ對シマシテ政府ハ、誠ニ御
同感デアッテ、此ノ適用ニ付テハ萬全ヲ期
シテ居ル、尙苟モ私有財產ヲ否認スルガ如
キ思想乃至ハ所謂私有財產奉還論ノ如キモ
ノニ付テハ、十分當局トシテ取締ヲスル考
デアル、ト云フ御答辯デアリマシタ、尙本
法ノ適用ハ、戰時、事變ト明記シテアルガ
故ニ、法全體ノ性格トシテハ此ノ限度ニ限
局サレテ居ルノデアル、從ッテ空襲狀態ニ
在ッテハ、努メテ强制ノ部面ヲ少クシテ、
能ク國民ヲ理解セシメルヤウニ運營ヲスル
考デアル、又防空ハ、空襲狀態ノ場合バカ
リデナク、平時ニ於テ國土計畫、都市計畫
等ニ基準シテ行ハレルモノデアルカラ、其
ノ來ルベキュ時、事變ヲ豫想シテ、事前ニ
著手スルコトヲ要スル次第デアルカラ、此
ノ點ニ付テモ十分ノ考慮ヲ以テ實施スベキ
考デアルト云フ答辯デゴザイマシタ、更に
他ノ委員カラ、本法ハ既ニ二囘ノ改正ヲ經
テ、民防空トシテ現狀ニ適應セシメヨウト
スルモノデアルガ、果シテ此ノ程度ニ於テ
十分ナリヤ否ヤト云フ質問ニ對シマシテ、
政府ハ、相手ガ敵ノ空軍力デアルカラ、將來ノ
變化ガ如何ニアルカハ必ズシモ豫測出來ナ
イガ、大體今日ノ改正法案ヲ以テ國土防衞
ニハ完全デアルト思ハレルト云フ答辯デゴ
ザイマシタ、又他ノ委員カラ、本法ハ戰鬪法
規デアル、從ッテ法律トシテ最モ彈發力ヲ
必要トスル、施行ニ對シテモ獨斷專行ヲ要
スルノデアル、此ノ法ニ依ル組織ハ、果シ
テ完全デアリ運用ニ十分ニ滴應スルカドウ
カト云フ質問ニ對シマシテハ、當局ハ、
萬全ヲ期シテ、殊ニ民防空ト軍防空トノ
兩面ニ於テ緊密ナル連繫ヲ致シ、協力シテ
時勢ノ要求ニ應ズルバカリデナク、最近ニ
於テ此ノ連繫又運營ノ用意ガ躍進的ニ進步
シテ居ルカラ、御安心ヲ願ヒタイト云フ答
辯デゴザイマシタ、更ニ他ノ委員カラ、防
空訓練ノ神聖、又統一ト云フコトヲ保ツ必
要ガアル、時ニハ是ガ極端ニ趨ッテ人民ノ迷
惑ガ多〓アルト云フコトニ付テ、政府ノ所見
ヲ求メラレマシタニ對シマシテ、政府ハ、
訓練計畫ヲ中央デ作ッテ、地方ニハ警察署長
ヲ之ニ當ラシメテ、尙都市以外ノ所ニハ、
山林防空、農村防空等ニ付テモ準備ヲシテ
居ル譯デアル、從ッテ時ニ官廳方面ノ指令ニ
依ラナイ防空演習等ニ於テ、行過ギ或ハ正
シクナイ所モアルケレドモ、漸次サウ云フ
モノハ是正サレルモノト考ヘルト云フコト
デゴザイマシタ、更ニ他ノ委員カラ、民
軍防空ノ下ニ、防空長官ヲ內務省ニ置イテ、
總テノ防空事務ヲ總括セムトスルガ如キ、
新組織ガアルヤニ承ルガ、其ノ狀態ハ如何
デアルカト云フ問ニ對シマシテ、政府當局
ハ、只今組織ニ付テハ發表ノ時期尙早シト
スルト云フ答辯デアリマシタ、更ニ他ノ委
員カラ、空襲ノ避難ニ付テ、省線及省線ニ
連結スル所ノ他ノ鐵道線路等ノ連絡ガ甚ダ
不便デアル、斯クノ如キコトハ今後ニ於テ
十分ニ統一ヲシ、相連絡シ得ルヤウニスル
ノガ正シクハナイカト云フ質問ニ對シマシ
テ、政府當局ハ、此ノ問題ハ軈テ運輸通信
大臣ノ所管ノ事項トシテ考究セラレルデア
ラウ、又現ニ防空施設トシテ、所謂轉換卽
チ引替ヲシテ、防空業務ノ計畫ヲ遂行スル
考デアルト云フコトデアリマシタ、更ニ他ノ
委員カラ、乳幼兒姙婦產婦等ガ、疎開ノ爲ニ
地方ニ移ル時ニハ、非常ニ榮養其ノ他ニ付テ注
意ヲ要スルト思フ、若シ此ノ注意ヲ怠ルニ
於テハ、人口問題ニ關スル將來大キナ手違ヒ
ガ生ジハシナイカト云フ質問ニ對シマシテ、
政府當局ハ、理想トシテハ十分ナル設備ヲ以
テ、斯クノ如キ人々ノ移轉ニ用意ヲシテ十分
ナル保育ヲ與ヘルコトガ考慮セラルベキデ
アルガ、今日ニ於テハ未ダ十分ニサウ云フ所
ニ手ガ屆カナイカラ、矢張リ緣故者竝ニ適當
ナル保護者ヲ持ツ所ニ疎開セシメルコトニ
シナケレバナルマイト思フ、此ノ點ハ厚生
省ト打合セテ十分質問者ノ意圖ニ副フヤウ
ニシ、又食糧住宅等ニ付テモ、不良ナルモノ
ノナイヤウニ注意ヲ要スト云フ答辯デゴザ
イマシタ、其ノ他防空訓練ニ付テ色々事故
其ノ外ガアルガ、此ノ點ニ付テハドウ云フ風
ニ考ヘラレルカト云フ點ニ對シマシテハ、
政府當局ハ、何ト云ッテモ防空訓練ハ實戰
的デナケレバナラナイ、從ッテ激シイ訓練ヲ
致スカラ、時ニサウ云フ事故モ生ズルデア
ラウガ精々注意ヲ致シマスト云フ答辯デゴ
ザイマシタ、更ニ法文ニ聯關致シマシテ、補助
金ノ問題ノ質問ガゴザイマシタガ、轉換ノ
意義ハ、或資材ヲ用ヒテ其ノ損失損害ヲ生
ジタ品物ニ引換ヘルヤウナ方法ヲ意味スル
ノデアル、之ヲ例ヘバ水道、電氣、瓦斯等ノ
施設ノ壞レタ場合ニ、之ヲ連結ニ依ッテ、他
ノ同ジヤウナ水道、瓦斯ノ道ト連絡セシメ
ルコトニ依ッテ、相互相通ズルヤウニ計畫ス
ルヤウナコトヲ意味スルノデアッテ、所謂切
換ヲスル意味デアル、斯ウ云フ說明ガゴザ
イマシタ、斯ク致シマシテ質問ヲ終リマシ
テ、討論ニ入リマシタ、一委員カラ次ノ如
キ發言ガゴザイマシタ、我ガ國ノ防空法制
定後旣ニ六年ヲ經テ、二囘目ノ本改正ヲ經
タノデアルカラ、之ヲ以テ十分ニ防衞ノ目
的ヲ達シ得ルモノト思ハレル、卽チ換言ス
レバ、過去ニ於ケル脆弱視サレタ所ノ防空
事業ハ漸ク改善セラレテ、國民ノ訓練、心
懸ケ愈〓〓進步シテ、本法ノ實施ヲ時宜ニ適
スルヤウニ行ヒ、又革斷活用セシメタナラ
バ、必至ト言ハレル敵ノ空襲ニ對シテ憂フ
ルニ足ルベキモノガナイト思フ、又所管大臣
ガ之ニ對シテ十分ノ自信アル答辯ヲセラレ
タコトハ誠ニ欣快至極デアル、然ルニ世上
ニ於テハ、我ガ國ノ建築家屋ノ構造ガ動モ
スレバ密集的デアルト云フ點カラ、或ハ悲
觀ヲシ恐怖心ヲ持ツ者ガ無イコトモナイノ
デアルガ、本法ノ實施ノ曉ニ於テハ、必要
ナル疎開分散ニ依ッテ著シク其ノ被害ヲ減
少スルノミナラズ、其ノ上ニ貯藏物ノ配當
宜シキヲ得タナラバ、一時ノ急ヲ免レルノ
ミナラズ、隨時隨處ニ於テ必要ナル國力ノ
建直シ、又戰力ノ保持モスルコトガ出來ル
ト思ハレル、我々ハ空襲ニ對シテ被害ノ極
減ニ努メルベキハ勿論デアルケレドモ、徒
ニ不安ノ念ニ驅ラレテハ斷ジテナラナイ、寧
ロ進ンデ官民一致協力シテ本法ノ實施ヲ的
確ナラシメ、防空鐵壁ノ完成ヲ心懸クベキ
モノデアル、又要スレバ戒嚴令下ニ於テ軍
民防衞ノ一體化モ想像セラレルノデアッテ、
斯クノ如ク用意セラレル時ニ、敵ノ空襲企
圖ト云フモノハ我ガ本土ヲ決シテ容易ク侵
スベキモノデハナイト思フ、此ノ點ニ於テ
非常ナ安全感ヲ持ツモノデアル、此ノ趣旨
ヲ以テ本法律案ニ贊成ノ意ヲ表スル所以デ
アルト斯ウ云フ發言ガゴザイマシタ、更ニ
他ノ委員カラ發言ガゴザイマシテ、本法ハ、
强權ノ發動ニ付テハ特ニ愼重ナル態度ヲ以
テ臨マレムコトヲ希望シテ、本案ニ贊成ス
ルモノデアルト云フ御發言ガゴザイマシ
タ、以上ヲ以チマシテ討論ヲ終リマシテ、
其ノ法案ノ可否ニ付テ決ヲ採リマシタ處
ガ、全會一致シテ可決スベキモノト議決致
シタ次第デアリマス、以上御報告ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=64
-
065・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=65
-
066・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=66
-
067・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
0
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=67
-
068・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=68
-
069・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=69
-
070・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=70
-
071・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報〓通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=71
-
072・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=72
-
073・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=73
-
074・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=74
-
075・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=75
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076・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=76
-
077・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=77
-
078・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、議事ノ都合上午後八時迄休憩ヲ致
シマス
午後五時三十六分休憩
午後八時七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=78
-
079・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀〕
本日會計法戰時特例中改正法律案特別委員
會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ
如シ
委員長男爵深尾隆太郞君
副委員長子爵裏松友光君
本日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ受領セリ
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補
闕及復職ニ關スル法律案
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
軍需會社法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=79
-
080・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、只今國務大臣ガマダ見エマセヌカ
ラ、暫ク御待チヲ願ヒマス、衆議院ヨリ送
付セラレマシタ政府提出ニ係ル軍需會社法
案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シ、第一讀會
ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=80
-
081・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、東條商工大臣
軍需會社法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
軍需會社法案
軍需會社法
第一條本法ハ兵器、航空機、艦船等重
要軍需品其ノ他軍需物資ノ生產、加工
及修理ヲ爲ス事業其ノ他車需ノ充足上
必要ナル事業ニ付其ノ經營ノ本義ヲ明
ニシ其ノ運營ヲ强力ナラシメ以テ戰力
ノ增强ヲ圖ルコトヲ目的トス
第二條本法ニ於テ軍需會社トハ兵器、
航空機、艦船等重要軍需品其ノ他軍需
物資ノ生產、加工及修理ヲ爲ス事業(以
下軍需事業ト稱ス)ヲ營ム會社ニシテ
政府ノ指定スルモノヲ謂フ
軍需事業ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條軍需會社ハ戰力增强ノ國家要請
ニ應へ全力ヲ發揮シ責任ヲ以テ軍需事
業ノ遂行ニ當ルベシ
第四條軍需會社ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ生產責任者ヲ選任スベシ
軍需會社生產責任者ヲ選任セザルトキ
ハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ生產責
任者ヲ任命スルコトヲ得
生產責任者ハ政府ニ對シ軍需會社ノ責
務遂行ニ關シ會社ヲ代表シテ其ノ責ニ
任ズルモノトス
生產責任者ノ會社ノ代表及業務執行竝
ニ之ニ伴フ事項ニ關シ必要ナル事項ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軍需會社選任又ハ任命セラレタル生產
責任者ヲ解任セントスル場合ニ於テハ
政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ解
任ハ效力ヲ生ゼズ
政府生產責任者ヲ不適任ト認ムルトキ
ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第五條生產責任者ハ本店又ハ軍需事業
ヲ營ム工場若ハ事業場ニ於ケル業務ニ
關シ生產擔當者ヲ任命スルコトヲ得
生產擔當者ハ政府ニ對シ生產責任者ノ
指揮ニ從ヒテ擔當業務ヲ遂行スルノ責
ニ任ズルモノトス
政府ハ生產責任者ニ對シ生產擔當者ヲ
置クベキコト又ハ解任スベキコトヲ命
ズルコトヲ得
生產擔當者ノ職務權限ニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條命令ノ定ムル所ニ依リ生産責任
者及生產擔當者竝ニ軍需會社ノ營ム軍
需事業ニ從事スル者ハ國家總動員法ニ
依リ徵用セラレタルモノト看做ス
前項ニ規定スル者ノ業務從事等ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條軍需會社ノ職員其ノ他ノ從業者
ハ其ノ擔當業務ニ從事スルニ付生產責
任者及生產擔當者ノ指揮ニ從フベシ
第八條政府ハ軍需會社ニ對シ期限、規
格數量其ノ他必要ナル事項ヲ指定シ
軍需物資ノ生產、加工又ハ修理ヲ命ズ
ルコトヲ得
第九條政府ハ軍需會社ニ對シ受注若ハ
發注、設備ノ新設、擴張若ハ改良、原
料若ハ材料ノ取得、使用、保管若ハ移
動技術ノ改良若ハ公開、試驗〓究其
ノ他事業ノ運營ニ關シ必要ナル命令ヲ
發シ若ハ處分ヲ爲シ又ハ政府ノ指定シ
タル事業以外ノ事業ヲ營ムコトヲ制限
若ハ禁止スルコトヲ得
第十條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍
需會社ニ對シ其ノ勤勞管理竝ニ資金調
整及經理ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコ
トヲ得
第十一條政府ハ軍需會社又ハ軍需事業
ノ遂行ニ關係アル者ニ對シ其ノ間ニ於
ケル軍需事業ノ遂行上必要ナル協力關
係ノ設定ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコ
トヲ得
第十二條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
軍需會社ニ對シ定款ノ變更、事業ノ委
託受託、讓渡、讓受、廢止若ハ休止、
合併若ハ解散又ハ事業ニ屬スル設備若
ハ權利ノ讓渡其ノ他ノ處分ニ關シ必要
ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十三條政府第八條、第九條、第十一
條及前條ノ規定ニ基ク命令又ハ處分ヲ
爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムル
トキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍需會社
(第十一條ノ軍需事業ノ遂行ニ關係ア
ル者ヲ含ム)ニ對シ補助金ノ交付、損失
ノ補償又ハ利益ノ保證ヲ爲スコトヲ得
第十四條軍需會社ノ業務執行、株主總
會社員總會及社債權者集會ノ招集及
決議其ノ他軍需會社ノ運營ニ關シテハ
他ノ法律ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別
段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第十五條軍需會社ニ關シテハ必要アル
トキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ統制、取
締等ニ關スル法律ノ規定ニ付其ノ適用
ヲ排除シ又ハ特例ヲ設クルコトヲ得
第十六條政府ハ軍需會社ニ對シ監督上
必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコ
トヲ得
第十七條政府ハ軍需會社ノ事業運營ニ
關シ考査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ考査ニ關シ必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條政府ハ軍需會社ノ業務及財產
ノ狀況ニ關シ報〓ヲ徵シ又ハ當該官吏
ヲシテ其ノ事務所、工場、事業場其ノ
他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿
書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシム
ルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢
팀
檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ
示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十九條政府ハ本法若ハ本法ニ基キテ
發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス命令若
ハ處分ノ效果ノ確保上支障アリト認ム
ルトキハ軍需會社ノ取締役若ハ監査役
ヲ解任シ又ハ業務ヲ執行スル社員ノ業
務執行權ヲ喪失セシムルコトヲ得
第二十條生產責任者又ハ生產擔當者職
務ヲ懈リ其ノ責任ヲ果サザルトキハ之
ニ對シ左ノ懲戒ヲ行フコトヲ得
一解任
二譴責
懲戒ハ政府軍需生產責任審査會ノ議決
ニ依リ之ヲ行フ
軍需會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ懲戒
解任ノ處分ヲ受ケタル生產責任者又ハ
生產擔當者取締役其ノ他ノ法人ノ業務
ヲ執行スル役員ナルトキハ之ヲ解任シ
又ハ業務執行權ヲ喪失セシメ其ノ他ノ
者ナルトキハ之ヲ解雇スベシ
軍需會社ハ政府ノ指示ニ從ヒ前項ノ規
定ニ該當スル者ニ對シ退職金ノ全部又
ハ一部ヲ支給スルコトヲ得ズ
軍需會社ハ政府ノ指示ニ從ヒ譴責ノ處
分ヲ受ケ其ノ情狀重キ者ニ對シ一定ノ
給與ヲ減ズベシ
懲戒ノ處分ハ之ヲ公示ス
軍需生產責任審査會ニ關スル規程ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
軍需事業ヲ營ム會社其ノ他ノ法人又ハ
軍需事業ニ關スル統制會若ハ統制會社
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ懲戒解任ノ處
分ヲ受ケタル者ニシテ其ノ理事、取締
役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員
タルモノヲ解任シ又ハ其ノ業務執行權
ヲ喪失セシムベシ但シ政府ノ許可ヲ受
ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
軍需事業ヲ營ム會社其ノ他ノ法人又ハ
軍需事業ニ關スル統制會若ハ統制會社
ハ懲戒解任ノ處分ヲ受ケタル者ヲ其ノ
處分アリタル日ヨリ二年間理事、取締
役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員
ト爲スコトヲ得ズ但シ政府ノ許可ヲ受
ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一條軍需會社ノ職員其ノ他ノ從
業者故ナク生產責任者又ハ生產擔當者
ノ指揮ニ從ハザルトキハ之ニ對シ左ノ
懲戒ヲ行フコトヲ得
一譴責
二訓〓
懲戒ハ政府生產責任者又ハ生產擔當者
ノ具狀ニ依リ之ヲ行フ
軍需會社ハ政府ノ指示ニ從ヒ譴責ノ處
分ヲ受ケ其ノ情狀重キ者ニ對シ一定ノ
給與ヲ減ジ及一定期間內昇給ヲ停止ス
ベシ
第二十二條本法中必要ナル規定ハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ軍需事業ヲ營ム者ニ
シテ會社以外ノモノ及軍需ノ充足上必
要ナル軍需事業以外ノ事業ヲ營ム會社
其ノ他ノ者ニ對シ之ヲ準用スルコトヲ
得
第二十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰
金ニ處ス但シ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ
併科スルコトヲ得
-第九條ノ規定(前條ノ規定ニ依リ
準用スル場合ヲ含ム)ニ基キテ發ス
ル命令又ハ同條ノ規定ニ依ル處分若
ハ制限若ハ禁止ニ違反シタル者
二第十條ノ規定(前條ノ規定ニ依リ
準用スル場合ヲ含ム)ニ依ル命令ニ
違反シタル者
三第十一條ノ規定(前條ノ規定ニ依
リ準用スル場合ヲ含ム)ニ依ル命令
ニ違反シタル者
四第十二條ノ規定(前條ノ規定ニ依
リ準用スル場合ヲ含ム)ニ依ル命令
ニ違反シタル者
第二十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第十六條ノ規定(第二十二條ノ規
定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)二醇
キテ發スル命令又ハ同條ノ規定ニ依
ル處分ニ違反シタル者
二第十八條第一項ノ規定(第二十二
條ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含
ム)ニ依ル報告ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ
報〓ヲ爲シタル者
第二十五條第十八條第一項ノ規定第
二十二條ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ
含ム)ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒
ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ六月以下
ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十六條法人ノ代表者又ハ法人若ハ
人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十三
條又ハ第二十四條ノ違反行爲ヲ爲シタ
ルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人
又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣東條英機君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=81
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082・東條英機
○國務大臣(東條英機君) 只今議題トナリ
マシタ軍需會社法案ノ提案理由ヲ御說明申
上ゲマス、申上ゲル迄モナク、戰爭ノ樣相ハ
時々刻々ニ苛烈ノ度ヲ加ヘツヽアルノデア
リマシテ、今ヤ各種ノ施策ハ總テ之ヲ完勝
ノ一點ニ集中致シマシテ、以テ聖戰目的ノ
完遂ヲ期セナケレバナラナイノデアリマス、
之ガ爲ニハ國力ヲ擧ゲテ軍需生產ノ增强、
特ニ航空戰力ノ躍進的擴充ヲ最短期間ニ實
現スルコトガ、刻下最大ノ要請デアルノデア
リマス、而シテ軍需生產ノ急速增强ヲ圖リ
マスル爲、政府ニ於キマシテハ豫テヨリ銳
意各般ノ施策ヲ講ジツヽアルノデアリマス
ルガ、特ニ軍需生產其ノモノヲ擔當致シマ
スル企業ノ生產活動如何ガ、之ガ成否ノ鍵
ヲ握ッテ居ルノデアリマスルカラ、此ノ際是
等企業ヲシテ眞ニ國ニ殉ズル企業精神ヲ更
ニ〓揚シ、其ノ國家性ヲ經營上明確ナラシ
メ、生產責任體制ヲ確立致シマスルト共ニ、
企業ニ對シマスル行政運營ノ方法ヲ徹底的
ニ刷新シ、企業ヲシテ責任ヲ以テ國家所要
ノ生產增强ニ一意邁進セシムルヤウ、諸般ノ
體制ヲ整備スルコトガ極メテ緊要デアルト
信ズルノデアリマス、是レ本法案ヲ提出致
シマシタル所以デアリマシテ、今其ノ骨子
ヲ要約シテ申述ベマスレバ、凡ソ次ノ三點
ニ歸著スルノデアリマス、卽チ第一ニハ企
業精神ヲ〓揚、シ企業ノ國家性ヲ運營上明確
ニ致スコトデアリマス、之ガ爲ニハ重要企
業ハ、戰力增强ノ國家要請ニ應ヘ、全力ヲ
發揮致シマシテ、責任ヲ以テ軍需事業ノ遂行
ニ當ルベキコトヲ法律上明カニ致シマスル
ト共ニ、重要企業ニ從事致シマスル所ノ役
職員其ノ他ノ從業者ハ、專心國家ニ奉仕シ、
苟モ懈怠アラバ國家ニ對シテ其ノ責ヲ負フ
ベキ旨ヲ明カニ致シマシテ、斯ク致シマシ
テ職務ノ國家性ヲ明確ニ致シタノデアリマ
ス、第二ニハ生產責任制ヲ確立スルコトデ
アリマス、企業ニ負託セラレタル國家的責
務ヲ具體的ニ完遂セシメマスル爲ニハ、責
任ヲ以テ之ガ遂行ノ任ニ當ルベキ生產責任
者ヲ定メ、責任ノ所在ヲ明確ニ致シタノデ
アリマス、而シテ生產責任者ノ任務遂行ヲ
確保致シマスル爲ニハ、之ニ對シテ企業ニ
於ケル軍需事業遂行ノ全權ヲ賦與シ、其ノ
地位ヲ確立致シマスルト共ニ、業務執行上
必要アル場合ニ於キマシテハ、商法等ノ法
令ノ特例ヲモ認メマシテ、强力ニ企業運營
ヲ爲シ得ルコトトシタノデアリマス、又工
場事業場ノ生產現場ノ末端ニ至ル迄、企業
ノ國家性ヲ滲透セシメ、迅速果敢ナル生產
增强ヲ期シマスル爲、必要ニ應ジ是等ノ生
產現場ニ生產擔當者ヲ置キ、生產責任者ノ
指導ノ下ニ明確簡素ナル命令系統ヲ確立ス
ルコトヲ意圖シテ居ルノデアリマス、第三
ニハ企業ニ對シマスル行政運營ノ方法ヲ刷
新スルコトデアリマス、生產責任制ヲ透徹
サセ、且其ノ效果ヲ强力ニ昂揚致シマス爲
二ハ企業ニ對シマスル煩瑣ナル統制法令
及ビ取締法令等ノ適用ヲ、極力排除又ハ緩
和致シマスル外、現場處理ヲ適當トスル行
政事務ニ付キマシテハ、極力現場卽決ヲ爲
シ得ルガ如ク措置致シマスルト共ニ、責任
生產ノ遂行ニ伴フ企業經理上ノ不安ヲ除去
シ、以テ生產責任者ヲシテ、一意生產ノ增
强ニ專念セシムルコトト致シタノデアリマ
ス、以上申述ベマシタル所ガ本法案ノ骨子
デアリマスルガ、其ノ意圖致シマスル所ハ、
飽ク迄モ現下時局ノ要請ニ基キ、戰力增强
ノ飛躍的ニ實現スル爲、是ガ負託者タル企
業ノ有機的組織ヲ尊重シ、其ノ國家的責務
完遂ニ必要ナル體制ヲ整備セムトスルモノ
デアリマシテ、之ニ依リ企業內部ニ盛上ル
澎湃タル產業報國ノ精神ヲシテ、眞ニ效果
アラシメムトスルニ外ナラナイノデアリマ
ス、以上本法案提案ノ理由ヲ御說明申上ゲ
タノデアリマスガ、何卒御審議ノ上、速力
ニ御協賛アラムコトヲ切望致ス次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=82
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083・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、本案ノ審査ヲ付託スベキ特別委員
ノ選擧ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=83
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084・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
軍需會社法案ハ、其ノ特別委員ノ數ヲ二十
五名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任ス
ルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=84
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085・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=85
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086・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=86
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087・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔小野寺書記官朗讀〕
軍需會社法案特別委員
公爵島津忠重君侯爵西〓從德君
侯爵東〓彪君伯爵橋本實斐君
子爵大河內正敏君子爵八條隆正君
子爵秋元春朝君子爵阪谷希一君
男爵向山均君內田重成君
小林一三君伍堂卓雄君
松本烝治君男爵東〓安君
村瀨直養君男爵安場保健君
男爵宮原旭君倉知鐵吉君
竹內可吉君瀧川儀作君
河西豊太郞君岩田宙造君
中山太一君佐藤助九郞君
中野敏雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=87
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088・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 衆議院ヨリ送付
サレマシタ政府提出ニ係ル衆議院議員ニシ
テ大東亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ
職ヲ失ヒタルモノノ補關及復職ニ關スル法
律案、昭和十三年法律第八十四號中改正法
律案、是等ノ二案ヲ此ノ際議事日程ニ追加
シ、一括シテ第一讀會ヲ開クコトニ御異議
ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=88
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089・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、只今、マダ國務大臣ガ見エラレマ
セヌカラ、少シ御待チヲ願ヒタウゴザイマ
ス、安藤內務大臣
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ
召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモ
ノノ補闕及復職ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ司決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召
集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノ
ノ補關及復職ニ關スル法律案
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノニ付
テハ議院法第八十四條及衆議院議員選擧
法第七十九條ノ規定ハ之ヲ適用セズ
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノ其ノ
殘任期間中ニ召集ヲ解除セラレタルトキ
ハ其ノ職ニ復ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第一項ノ規定ハ本法施行前召集セラレタ
ル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス但シ其ノ者ニ
關シ衆議院議員選擧法第七十九條ノ規定
ニ依ル選擧會又ハ補關選擧ニ關スル〓示
アリタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第二項ノ規定ハ本法施行前召集ヲ解除セ
ラレタル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス
昭和十三年法律第八十四號中改正法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十八年十月二十七日
衆議院議長岡田忠彥
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十三年法律第八十四號中改正法律
案
昭和十三年法律第八十四號中左ノ通改正
ス
第一條第一項中「北海道會法」ノ上ニ「東
京都制、」ヲ加へ「市町村長」ヲ「區市町村
長」ニ改ム
第一條ノ二東京都制、北海道會法、府
縣制、市制、町村制又ハ此等ニ基キテ
發スル勅令ニ依リ設置スル議會ノ議員
大東亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其
ノ職ヲ失フ場合ニ於テハ東京都制第
五十八條、北海道會法第十四條、府
縣制第三十七條、市制第三十八條若ハ
第百四十六條又ハ町村制第三十五條、
第百二十六條若ハ第百三十六條ノ規定
又ハ東京都制、市制若ハ町村制ニ基キ
テ發スル勅令中ノ此等ノ規定ニ該當ス
ル規定ニ拘ラズ當該議會ノ決定ヲ經ル
コトヲ要セズ
第一條ノ三東京都制、北海道會法、府
縣制、市制、町村制又ハ此等ニ基キテ
發スル勅令ニ依リ設置スル議會ノ議員
ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ
因リ其ノ職ヲ失ヒタル者ニ付テハ東京
都制第十六條、北海道會法第十四條、
府縣制第八條、市制第二十條若ハ第百
四十六條又ハ町村制第十七條、第百二
十六條若ハ第百三十六條ノ規定又ハ東
京都制、市制若ハ町村制ニ基キテ發ス
ル勅令中ノ此等ノ規定ニ該當スル規定
ハ之ヲ適用セズ但シ議員ノ數當該議員
ノ定數ノ三分ノ二ニ滿タザルニ至リタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二條第一項中「北海道會法一ノ上ニ「東
京都制、」ヲ、「其ノ職ヲ失ヒタル者」ノ下
ニ「其ノ殘任期間中ニ」ヲ加フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第一條ノ二ノ改正規定ハ本法施行前召集
セラレタル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス但シ
同條ニ揭グル當該規定ニ依ル決定ニ對ス
ル訴願及訴訟ニ付テハ仍當該規定ニ依ル
第一條ノ三ノ改正規定ハ本法施行前召集
セラレタル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス但シ
其ノ者ニ關シ同條ニ揭グル當該規定ニ依
ル選擧會又ハ補關選擧ニ關スル告示アリ
タル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
參照
昭和十三年法律第八十四號ハ大東亞戰
爭ニ際シ召集中ノ者ノ選擧權及被選擧
權等ニ關スル法律ナリ
〔國務大臣安藤紀三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=89
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090・安藤紀三郎
○國務大臣(安藤紀三郞君) 只今上程ニ相
成リマシタル兩法案ニ付キマシテ、其ノ提
案ノ理由竝ニ法案ノ內容ヲ御說明申上ゲマ
ス、先ヅ衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際
シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノ
ノ補關及復職ニ關スル法律案ニ付キマシテ
御說明申上ゲマス、政府ニ於キマシテハ、大
東亞戰爭必勝ノ信念ヲ堅持致シ、去月二十
一日劃期的ナル國政運營ノ新方針ヲ決定致
シマシテ、國政運營ノ決戰化ヲ圖ルコトトシ
目下著々其ノ實現ニ努力致シツヽアル次第
デアリマス、而シテ此ノ新方針ニ於ケル重要
ナル一翼タル國民動員ノ面ニ於キマシテモ、
全面的ニ動員ノ徹底强化ヲ圖ルコトニ相成ッ
タノデゴザイマス、然ルニ帝國議會ノ議員
各位ノ中ニハ、現ニ軍籍ニ身ヲ置カルヽ方々
ガアリ、旣ニ今期議會ヲ目前ニ控ヘマシテ、
奮躍應召入隊セラレタル方々モアリ、尙今
後御召ニ應ジテ戰場ニ立タレル方々モアル
デアラウト云フコトハ、十分豫想シ得ル所デ
ゴザイマス、然ルニ衆議院議員ハ、召集ニ
因ッテ當然ニ議員タル其ノ職ヲ失フコトニ
相成ッテ居リマス、之ガ爲ニ、衆議院議員ニ
對シ召集ガアリマスルト、現行法ノ下ニ於
キマシテハ、一面之ガ補關ノ爲ニ補闕選擧
等ヲ執行シナケレバナリマセヌト共ニ、他
面應召シタル議員ハ、爾後全ク議員ノ職ヲ
囘復スル途ヲ鎖サレ、假令舊ノ任期中ニ於
キマシテ召集ヲ解除セラレタル場合ニ於キ
マシテモ、舊ノ議員ノ職ニ復スルコトガ出
來ナイノデゴザイマス、斯クノ如キ事態ハ、
誠ニ適當デナイト考へマスルノデ、應召ニ
因リ闕員ヲ生ジマシテモ其ノ補闕ヲ行ハズ、
闕員ノ儘トシ、他方應召シタル議員ガ、舊
ノ任期中ニ於キマシテ召集ヲ解除セラレマ
シタル曉ニ於キマシテハ、舊ノ議員ノ職ニ
復スルコトニ致サムトスルノデゴザイマス、
右ノ如キ趣旨ヲ以チマシテ本案ヲ提出致シ
タ次第デゴザイマス、以下本案ノ內容ニ付
キマシテ其ノ主要テル事項ヲ御說明申上ゲ
マス、第一ニ、衆議院議員ニシテ大東亞戰
爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒマ
シタルモノニ付キマシテハ、之ガ補關ヲ行
ハザルノ趣旨ヲ以チマシテ、議院法第八十四
條及衆議院議員選擧法第七十九條ノ規定、
卽チ補關選擧等ニ關スル手續ニ關スル規定
ヲ適用セザルコトニ致シタノデゴザイマス、
其ノ理由ハ、議員ガ應召ニ因リ失職シ闕
員ヲ生ズルコトニ對シマシテ、必ズ之ガ補
關ヲ行フ現行ノ規定ヲ其ノ儘ニ致シテ置キ
マスコトハ、其ノ議員ガ召集解除トナリマ
シタル場合ニ於キマシテ、議員ノ職ニ復セ
シメヨウトスル本案ノ趣旨、目的上適當ト
認メ難イカラデアリマス、第二ニ衆議院議
員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因
リ其ノ職ヲ失ヒタルモノガ召集ヲ解除セラ
レタルトキハ、直チニ舊ノ議員ノ職ニ復スル
コトニ致シタノデゴザイマス、應召者ガ歸
還致シマシタル場合ニ於キマシテ、其ノ者
ガ舊衆議院議員デアリ、而モ應召ニ因ッテ
議員タル職ヲ失ッタモノデアリ、且其ノ舊
ノ任期中ニ於テ召集ヲ解除セラレタト云フ
コトデアルナラバ、之ヲ舊ノ議員ノ職ニ復
セシムルコトニ致シマスコトハ、極メテ至
當ノ措置ト考ヘマス、現ニ地方議會ノ議員
ニ付キマシテハ、夙ニ、昭和十三年以來之ト
同一趣旨ノ規定ガアリマスコトハ御承知ノ
通リデアリマシテ、今囘衆議院議員ニ付キ
マシテモ、是ト同樣ノ措置ヲ講ゼムトスル
ニ外ナリマセヌ、次ニ昭和十三年法律第
八十四號中改正法律案ニ付テ御說明申上
ゲマス、今次ノ改正ハ地方議會ノ議員ニ
シテ大東亞戰爭ニ際シ召集中ナル一四丁
其ノ職ヲ失フ場合ニ於ケル失職ノ手續
竝ニ其ノ職ヲ失ヒタル者ノ補關ニ關シ、
必要ナル改正ヲ加ヘムトスルモノデゴザ
イマス、以下本案ノ內容ニ付キマシテ、
其ノ主要ナル事項ヲ御說明申上ゲタイト
存ジマス、第一ニ地方議會ノ議員ニ付キ
マシテハ、其ノ召集中ナルニ因リ失、職ス
ル場合ニハ、衆議院議員ニ於ケルト異リマ
シテ、一々當該地方議會ノ決定ヲ經ナケ
レバナラヌコトト相成ッテ居ルノデアリ
マスガ、召集中ト云フ事實ハ客觀的ニ明
瞭ナル事柄デアリマスカラ、其ノ決定手
續ヲ廢止スルコトト致シマシタ、第二ニ
地方議會ノ議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ
應召中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノ
ニ付キマシテハ、前ニ御說明致シマシ
タル衆議院議員ノ場合ト同樣ノ趣旨ヲ以チ
マシテ、其ノ補關ヲ行ハナイコトニ致シタ
ノデアリマス、唯地方議會ニ付キマシテハ、
衆議院ト異リ、數多キ地方議會ノ中ニハ、
應召中ノ議員ノ關員ガ多數ニ上リ、爲ニ議
會ノ機能上支障ヲ生ズル虞アルモノヲ生ジ
マスル場合モ、皆無トハ限ラレマセヌノデ、
斯クノ如キ場合ヲ保障スル趣旨ヲ以チマシ
テ、議員ノ現在數ガ議員定數ノ三分ノ二ヲ
割ルニ至ッタ場合ニ於キマシテハ、之ガ補
闕ヲ行フコトニ致シタノデアリマス、其ノ
他東京都制ノ施行ニ伴フ字句ノ整理等、規
定ノ整備ヲ行ッテ居ルノデアリマス、何卒
御審議ノ上御協賛アラムコトヲ希望致ス次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=90
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091・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、兩案ノ審査ヲ付託スベキ特別委員
ノ選擧ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=91
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092・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集中
ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補關及
復職ニ關スル法律案外一件ノ特別委員ノ數
ヲ十二名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一
任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=92
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093・秋田重季
○子爵秋田重季君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=93
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094・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=94
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095・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔小野寺書記官朗讀〕
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補關
及復職ニ關スル法律案外一件特別委員
侯爵德川賴貞君伯爵德川宗敬君
子爵曾我祐邦君子爵松平忠壽君
織田萬君男爵井上〓純君
男爵本多政樹君瀧正雄君
松本學君水野甚次郞君
塩田團平君秋田三一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=95
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096・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 明日ハ午後二時
ヨリ開會致シマス、議事日程ハ、決定次第
彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後八時三十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00219431027&spkNum=96
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