1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年十月二十八日(木曜日)午後二時五十四分開議
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議事日程 第三號
昭和十八年十月二十八日
午後二時開議
第一 會計法戰時特例中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 帝國鐵道會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 所得税法及地租法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 國有財産法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 國債關係事務簡捷に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀)
昨二十七日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
防空法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
會計法戰時特例中改正法律案可決報〓書
帝國鐵道會計法中改正法律案可決報〓書
所得稅法及地租法中改正法律案可決報〓
書
國有財產法中改正法律案可決報告書
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案可決
報〓書
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ受領セリ
昭和十八年度歲入歲出總豫算追加案第
號
昭和十八年度特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第一號)
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第八十三囘帝
國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ
受領セリ
内務省所管事務政府委員
內務書記官中島賢藏君
本日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
軍需會社法案特別委員會
委員長子爵八條隆正君
副委員長男爵東〓安君
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補
闕及復職ニ關スル法律案特別委員會
委員長子爵曾我祐邦君
副委員長男爵本多政樹君
本日政府ヨリ左ノ答辯書ヲ受領セリ
貴族院議員田中館愛橘君提出國語ノロー
マ字綴リ方統一ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
左ノ主意書及答辯書ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス
國語ノローマ字綴リ方統一ニ關スル質
問主意書
一曩ニ政府ハ訓令ヲ發シ國語ノローマ字
綴リ方ノ統一ヲ期セリ爾來官民之カ實
行ニ努メ順調ニ效果ヲ收メツヽアリ、
然ルニ今南方地域ニ英語ノ行ハルヽニ
顧ミテ一旦訓令ノ式ニ從ヒタルモノヲ
再ヒ改竄スルモノアリ
此ノ如キハ政府ノ方針ニ疑惑ヲ懐カシ
ムルノ慮ナシトセス
政府ハ適當ノ訓諭ヲ與へ之等訓令式ニ
統一ノ阻害ヲ除ク意思ナキヤ
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
昭和十八年十月二十六日
提出者田中館愛橘
贊成者
公爵一條實孝公爵山縣有道
公爵岩倉具榮侯爵西〓從德
侯爵四條隆德伯爵林博太郞
伯爵溝口直亮伯爵二荒芳德
男爵若槻禮次郞子爵靑木信光
子爵會我祐邦子爵高橋是賢
子爵三島通陽小山松吉
河井彌八石黑忠篤
下條康麿大野綠一郞
安井英二岡喜七郞
坂西利八郞建部遯吾
川村竹治田邉治通
寺島健三浦新七
次田大三郞丸山鶴吉
竹下豐次千石興太郞
下出民義岩田宙造
出光佐三岩田三史
柴田兵一郞
昭和十八年十月二十八日
內閣總理大臣東條英機
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
貴族院議員田中館愛橘君提出國語ノロー
マ字綴リ方統一ニ關スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候
貴族院議員田中館愛橘君提出ノ國語ノ
ローマ字綴リ方統一ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
ローマ字ニ關シテハ御意見ノ通リ內
閣訓令式ニヨルベキモノナルヲ以テ南
方諸地域ニ於テローマ字ヲ使用スル場
合ハ右訓令式ニ從フ樣關係各廳トモ協
議ノ上十分手段ヲ講ズル方針ナリ
右及答辯候也
昭和十八年十月二十八日
文部大臣子爵岡部長景発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、會計法戰時特例
中改正法律案、日程第二、帝國鐵道會計法
中改正法律案、日程第三、所得稅法及地租
法中改正法律案、日程第四、國有財產法中
改正法律案、日程第五、國債關係事務簡捷
化ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報〓、是等ノ五案ヲ
一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長深尾男爵
左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ
會計法戰時特例中改正法律案
右可決ス·ヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長男爵深尾隆太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
帝國鐵道會計法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長男爵深尾隆太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
所得稅法及地租法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長男爵深尾隆太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國有財產法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十七日
委員長男爵深尾隆太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十七日
委員長男爵深尾隆太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵深尾隆太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=3
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004・深尾隆太郎
○男爵深尾隆太郞君 只今上程相成リマシ
タ會計法戰時特例中改正法律案外四案ニ對
スル特別委員會ニ於ケル審議ノ次第ヲ御報
告申上ゲマス、此ノ五案共比較的簡單ノモ
ノデアリマスノデ、委員會ニ於キマシテ政
府當局ノ說明ヲ承リマシタガ、過日本議場
デナサレタモノト大體同樣デアリマシテ、
今更之ヲ繰返スノモ如何ト考ヘマスルガ、
御記憶ヲ新タニスル爲、其ノ內容ヲ簡單ニ
要約致シマシテ、又或モノハ質疑應答ニテ明
カニセラレマシタ點ヲモ織リ込ミマシテ、
之ニ主ナル質疑應答ト共ニ併セテ順次御說
明申上ゲルコトト政シマス、第一、會計法
戰時特例中改正法律案ニ付テ、是ニハ改正ノ
點ガ三ツアリマス、第一點ハ補助費ノ使用
殘リノ分ヲ翌年度ニ繰越ヲ爲シ得ルコト、
第二ハ、賣買、貸借、請負等ノ契約ニ付テ、
主務大臣ノ必要ト認ムル場合ハ競爭入札ヲ用
ヒズ、指名入札又ハ隨意契約ト爲スコトヲ
得ルコト、第三ハ、一ノ會計又ハ勘定ニ屬
スル特定ノ經費又ハ收入ヲ、勅令ノ定ムル
所ニ依ッテ他ノ會計又ハ勘定ニ屬セシムル
コトヲ得ルコト、例ヘバ郵便年金、簡易保
險等ノ收入金ヲ通信事業特別會計ニ繰入レ
テ、是ヨリ直接ニ其ノ事業ノ歳出ヲ支拂フ
コトトスルヤウナ例デアリマス、此ノ三ツ
ノ點デアリマス、之ニ對シテ、會計事務ノ
簡素化ヲ圖ル必要ハ同感デアルケレドモ、
臨時軍事費ニ付テ考ヘテ見ルト、是ハ戰爭
終了迄ヲ一會計年度ト看做シテ、決算ヲ議
會ニ提出シナイコトニ取扱ハレテ居ルガ、
非常ナル長年月ニ亙ッテ其ノ儘トシテ置ク
ヨリハ、何等カノ方式ヲ以テ或期間ヲ限ッテ
議會ニ提出スルコトヲ考慮スルコトハ如何
カト云フ質疑ニ對シマシテ、此ノ點ニ關シ
マシテハ政府ニ於テ從來トモ種々〓究ヲシ
テ見マシタガ、報〓トシテ纏メルニ非常ナ
手數ヲ要スルコト、又決算ノ形式ヲ以テ明
細ニ報〓ヲ作リマストキハ、經費ノ使用推
移ガ判明シテ戰略上好マシカラザル點ガア
ルコト、此ノ二點カラ之ヲ實現スルコトハ
不適當デアルト云フ結論ニ達シテ居ルノ
デ、將來トテモ此ノ儘デ行ク考デアルト云
フ答辯デアリマシタ、又本案ノヤウニ政府
當局ノ自由裁量ノ範圍ヲ擴大シテ、會計事
務ノ簡素化ヲ圖ルコトハ、今日ノ場合結構
ト考ヘルケレドモ、又一面ヨリ見レバ、巨
大ナル經費ヲ支出シテ居ルコトデアルカ
ラ、會計精神ノ弛緩ナキコトヲ國民ニ示シ
テ、安心ヲ與ヘルト云フコトモ極メテ肝要
ト思フガ如何カ、ト云フ質疑ニ對シテ、會
計制度ヲ嚴正ニ守ルコトヲ信條トスベキコ
トハ全ク御同感デアッテ、其ノ心懸ケヲ以
テ取扱ッテ居ル、本案ノ實行ニ當ッテモ十分
注意シテ放漫ニ流レナイヤウニ監督ヲスル
考デアルト云フ答デアリマシタ、次ニ第
ニ、帝國鐵道會計法中改正法律案、是ハ運
輸通信省ノ新設ヲ致シテ、運輸通信事業ニ劃
期的ノ改善ヲ爲サムトスルニ對處スル改正
ノ一部デアリマス、ソレデ鐵道會計法中ニ、
陸運ノ用ニ供スル機械ノ製造、修理等ノ事
業及倉庫營業ニ關スル監督助成及給制ニ要
スル費用ニ本會計ノ負擔トスルコト、ヲ追
加セムトスルモノデアリマス、之ニ對シテ、
倉庫營業中ニ臨港倉庫ヲ除クト書イテアル
ガ、地理的ニ見レバ、海岸デナクシテ河川ノ
奧ニアル倉庫デモ、用途的ニ考ヘレバ海上運
送ト密接ノ關係モアルモノガアル、此ノ臨
港ト云フ字ノ定義ガ判然シナイト云フト、
實行ニ當ッテ問題ノ生ズル虞ガアルト思フ、
ト云フ質疑ニ對シテ、海岸ヲ主トスルモノデ
アルガ、海上運送ニ關係ノ深キ處ハ廣ク取
入レルコトシテ、卽チ地域及用途ヲ參酌
シテ運輸通信大臣ニ於テ指定ヲスル積リデ
アルト云フ答デアリマシタ、又鐵道特別會
計ニ於テハ、此ノ際所督事務ノ經費ヲ一般
會計ニ移シテ豫算ヲ請求スルヲ適當ト思考
セラルヽノニ、本改正ハ是ト道行シテ、特別會
計ニ更ニ監督事務ノ費用ヲ附加スルコトニ
ナッテ、不條理ヲ重ネテ居ルノデハナイカ
ト云フ質疑ニ對シ、今囘ノ追加ニハ不條理ナ
リト考ヘラレル部分ガアルコトハ之ヲ認
ムルモ、全體ヨリ見レバ極メテ小ナル部
分デアッテ、今日ノ際已ムヲ得ナイト云
フ答デアリマシタ、第三、所得稅法及地
租法中改正法律案、是ハ改正ノ點ガ三ツアリ
マス、第一、公社債ノ利子ニ對スル分類所
得稅ハ、實際其ノ支拂ヲ受ケタル時ノ稅率
ニ依リ賦課スルコト、是ハ稅率ノ改正ガ今
日頻繁デアリマスカラ、支拂ノ際ニ、是ハ新
稅率デ課スルモノカ、舊稅率デ課スルモノ
カ、支拂フベキ日ノ率ニ依ッテ支拂フトスレ
バ、ソレヲ調ベナケレバナラヌノデ、其ノ
手數ヲ省ク爲ニ現在支拂フ時ノ現行率デ分
類所得稅ヲ課スルコトニスル次第デアリマ
ス、第二ハ地租ノ內、田租ハ一月、三月ノ
二囘ノ收納ヲ改メテ、二月一囘トスルコト
デアリマス、是ハ田租ヲ納メテ居ル人數ハ
二百五十餘萬人デアリマシテ、個々ノ額ハ
極メテ少額デアルノデ、之ヲ一囘ト纏メル
コトト致シテモ納稅者ニハ差シタル苦痛ハ
ナク、手數ハ半減スル次第デアルノデアリ
マーク、第三ハ、田租免稅ノ申請ハ、變更ノナ
イ限リ每年申請ヲスル必要ヲ無クシテ、
回ダケノ申請デ宜イコトニ改メルノデアリ
マス、是ハ小農耕地デ免租トナッテ居ルモノ
ハ五百四十餘萬人ノ多數ニ上ッテ居リマス
カラ、每年之ガ屆出受理ヲスル手續ガ節約
セラルヽコトトナルノデアリマス、而シテ
土地買增シ等ノ場合ハ、屆出ヲ怠ッテ居ル者
ガアリマシテモ、土地ノ登記ヲ爲ス爲ニ、
市町村ニ於テ之ヲ整理シテ稅務署ニ連絡ヲ
スルト云フ仕組デアリマスノデ、其ノ方カ
ラ間違ヒノ生ズル虞ハナイト云フコトデア
リマス、之ニ對シテハ特ニ申上ゲル質疑應
答ハアリマセヌ、第四、國有財產法中改正
法律案、是ハ國有財產總計算書又ハ國有財
產現在額計算書ヲ議會ニ報〓スル際ニ、是
レ迄ハ各省別計算書ヲ添付シテ居ッタノデ
アリマスルガ、非常ナ尨大ナモノニナリマ
スノデ、戰時中及ビ戰爭終了後一箇年間、
此ノ各省別計算書ノ添付ヲ停止スルコトト
シテ、其ノ印刷ノ勞力及ビ資材ノ節約ヲ圖
ル趣意デアリマス、尤モ原本ハ調製シテア
リマスカラ、議會ニ於テ審議ノ必要ノアル
場合ハ資料提出ヲスル心組デアルト云フコ
トデアリマス、是モ特ニ申上ゲル質疑應答
ハアリマセヌ、第五、國際關係事務簡捷化
ニ關スル法律案、是モ三點アリマス、第一、
現行デハ、登錄公債ニ對シテ債權者ノ請求
アル場合ハ記名證劵ヲ發行スルコトニナッ
テ居リマスガ、之ヲ改メテ證劵發行ヲシナ
イコトトシタノデアリマス、第二ハ、國債
ノ元利金支拂ニ際シテ消滅時效ガ完成シテ
居ル場合ニ於キマシテモ、當分ノ內之ガ支
拂ヲ爲スコトト改メタノデアリマス、是一
今日多種多樣ノ國債ガ發行セラレテ居ルノ
デアリマスカラ、其ノ支拂ノ際ニ一々時效
關係ノ調査ヲスルト云フコトハ、非常ナ勞
力ニナルノデアリマスカラ、之ヲ省イテ、當
分時效ニ掛ッテ居ルモノデモ支拂フト云フ
コトニ改メルノデアリマス、第三ニハ、大東
亞戰爭ニ關スル一時賜金トシテ交付セラル
ル公債ヲ、現行ニ於キマシテハ登錄國債ト
シテ記名證劵ヲ發行スル規定デアリマスガ、
ソレヲ改メマシテ、當分ノ內登錄公債ト爲
サズシテ無記名證劵ヲ發行スルコトト改メ
ルノデアリマス、之ニ對シマシテ、賜金公
債ハ質入讓渡ヲ禁止サレテ居ル筈デアルケ
レドモ、實際ニ於テハ色々ノ手段デ他人ノ
手ニ移ッテ居ルコトガアル、無記名トナレバ
一層是ガ自由ニ行ハレハシナイカ、よう)
質疑ニ對シマシテ、無記名デハアルケレド
モ、劵面ニハ質入讓渡禁止ノ旨ガ記載シテ
アッテ、又一般ニモ此ノコトハ知レ亙ッテ居
ルカラ、今回無記名ニシタ爲ニ其ノ危險ガ
增大スル虞ハナイト思フ、尙又元金支拂ノ
際ニハ、市町村長ノ證明書其ノ他ヲ以テ、
本人又ハ相續人タルコトヲ明カニスル方法
ヲ講ジタイト考ヘテ居ルト云フ答デアリマ
シタ、是デ質疑應答ヲ終リマシテ、五案ヲ
一括シテ討論ニ入リマシタ、一委員カラ、
各案共贊成デアルガ希望ノ點ヲ述ベルト云
フコトデ、其ノ一、今般運輸通信省ガ新設
セラレタノデ、鐵道ハ、海運陸運ト並ンデ
其ノ大臣ノ監督下ニ入ルモノデアルカラ、
帝國鐵道會計ハ現業關係ノミヲ特別會計ト
シテ存置ヲシテ、監督行政ニ當ルモノノ費
用ハ一般會計ニ移スコトガ至當ナリト思考
セラレルノデアル、ソレデ此ノ機會ニ之ガ
改正セラレルコトヲ期待シテ居ッタガ、却テ
一部逆行ノ改正ヲ見タ次第デアルガ、此ノ
際ハ巳ムヲ得ナイトシテ、近キ將來ニ於テ
根本的改正ヲ考慮セラレムコトヲ希望スル、
其ノ二ハ、臨港倉庫ノ指定ニ付テハ、地域
的ニモ用途的ニモ劃然ト區別スル線ヲ引ク
コトハムツカシイコトデアルカラ、或場所
ノ倉庫ノ所屬ニ付テハ、鐵道關係當局ト海
務關係當局トノ間ニ意見ノ扞格ヲ生ズル虞
ガアル、ソレ故ニ愼重ナル檢討ト共ニ速カ
ニ之ガ指定ヲ行ッテ、倉庫業者竝ニ之ガ利用
者ニ不便ヲ與ヘナイヤウニ注意ヲ願ヒタイ
トノコトデアリマシタ、更ニ他ノ一委員ヨ
リ、今日ノ決戰態勢下ニ於テ何レモ必要ノ改
正デアルトシテ贊意ヲ表スル次第デアルガ、
一點ノ希望ヲ述ベタイ、ソレハ戰功ニ依ッテ
賜ッタ公債ハ正當ノ所有者ヲシテ永ク其ノ
恩惠ヲ享有セシムルコトハ最モ望マシキコ
トデアルノデアルカラ、今回右公債ニ對シ
テ無記名式ヲ採用スルコトト相成ッテモ、關
係當局ニ於テハ一層其ノ點ニ留意セラレム
コトヲ望ムト云フノデアリマシタ、是ニテ討
論ヲ終リ、採決ニ入リマシテ、全會一致ヲ
以テ各案共ニ可決スベキモノナリト決定致
シマシタ、此ノ段御報告ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、五案ノ採決ヲ致シマス、五案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=6
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007・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=7
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008・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=8
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009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=10
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011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 五案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、五案全部、委員長ノ報〓通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=11
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012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=12
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013・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=13
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014・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=14
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015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 五案ノ第三讀會
ヲ開キマス、五案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、是ニテ議事日程ハ全部議了致シマ
シタガ、尙會議ニ付スベキ議案ガ多數ゴザ
イマスカラ、此ノ際午後七時迄休憩ヲ致シ
マス
午後三時十七分休憩
午後七時十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔寺光書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ直ニ裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ
通知セリ
會計法戰時特例中改正法律案
帝國鐵道會計法中改正法律案
所得稅法及地租法中改正法律案
國有財產法中改正法律案
國債關係事務簡捷化ニ關スル法律案
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和十八年度歲入歳出總豫算追加案第
一號)、昭和十八年度特別會計歲入歲出豫
算追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔
トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第
一號)可決報〓書
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補
關及復職ニ關スル法律案可決報告書
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
可決報〓書
軍需會社法案可決報告書
本日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
工業所有權法戰時特例案
兵役法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ休憩前ニ
引續キ會議ヲ開キマス、衆議院議員ニシテ大東
亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失
ヒタルモノノ補闘及復職ニ關スル法律案、
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案ノ
二案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シテ、第一讀
會ノ續ヲ開キ、委日長ノ報告ヲ求メタイト
存ジマス、御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=20
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021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長曾我子爵
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召
集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノ
ノ補關及復職ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十八日
委員長子爵曾我祐邦
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十三年法律第八十四號中改正法律
案
右可決スヘキモノナリト議决セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年十月二十八日
委員長子爵曾我祐邦
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(子爵曾我祐邦君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=21
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022・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 只今上程セラレマシタ
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シ召集中
ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補關及
復職ニ關スル法律案、ソレト同時ニ付託サ
レマシタ所ノ昭和十三年法律第八十四號中
改正法律案、此ノ二案ニ對シマスル所ノ委
員會ノ經過及結果ノ御報告ヲ中述ベマス、
提案ノ理由ト致シマシテ政府ガ說明ヲ致シ
マシタコトヲ、少シク長クナリマスルケレ
ドモ、細カク申上ゲル積リデゴザイマス、
其ノ提案ノ理由ニ依リマシテ大體ノコトハ
ハッキリ判ルト存ジマスルカラ、左樣御承知
ヲ願ヒタウゴザイマス、先ヅ衆議院議員ニ
シテ大東亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其
ノ職ヲ失ヒタルモノノ補關及復職ニ關スル
法律案ノ方ヲ先ニ申述ベマス、政府ニ於キ
マシテハ、大東亞戰爭ノ新情勢ニ卽應シ、
去月二十一日割期的ナル國政運營ノ新方針
ヲ決定致シマシテ、國政運營ノ決戰化ヲ圖
ルコトト相成リマシテ、目下著々其ノ實現
ニ努力致シツヽアル次第デアリマス、從ッテ
此ノ新方針ニ於キマスル所ノ重要ナル一翼
タル所ノ國民動員ノ面ニ於キマシテモ、亦
全面的ニ之ガ徹底强化ヲ圖ルコトニナリマ
シタノデゴザイマス、サウシテ帝國議會ノ
議員ノ間ニハ、軍籍ヲ有スル者ガ多々アル
ノデゴザイマス、現ニ是等ノ方々ノ中ヨリ
數名ノ應召者モ既ニ出テ居ルノデゴザイマ
ス、今後ニ於キマシテモ亦此ノ數ハ殖エル
コトト思ハレルノデゴザイマシテ、十分其
ノコトヲ豫想サレルコトニ相成リマシタ爲
ニ、衆議院議員ニ於キマシテハ召集ニ因ッテ
當然ニ其ノ職ヲ失フコトニナッテ居リマス
ル爲ニ、衆議院議員ニ對シ召集ガアリマス
ト、現行法ノ下ニ於キマシテハ、一面之ガ
補闕ノ爲補關選擧等ヲ執行シナケレバナラ
ナイコトニナリマスノデゴザイマス、併シ
他面應召シタル議員ハ、其ノ職ヲ回復スル
途ヲ閉ザサレル譯ニナリマスルガ、假令舊
ノ任期中ニ於キマシテ召集ヲ解除セラレマ
シテモ、舊ノ議員ノ職ニ復スルコトガ出來
ナイト云コトニナリマス、斯クノ如キ事態
ハ誠ニ適當デナイト政府ハ考ヘマシタノ
デ、應召ニ因リ闕員トナリマシテモ、其ノ
補關ヲ行ハナイコトニシタイト云フノデゴ
ザイマス、又舊ノ任期中ニ於キマシテ召集
解除セラレタ曉ニ於キマシテハ、舊ノ議員
ノ職ニ復スルコトト致シマスルノデゴザイ
マスルガ、此ノ趣旨ヲ以テ致シマシテ本案
ヲ提出シタノデアルト云フ御說明デゴザイ
マシタ、以下本案ノ內容ニ付キマシテ、其
ノ主要ナル事項ヲ簡單ニ御說明申上ゲマ
ス、第一ニ、衆議院議員ニシテ大東亞戰爭
ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒマシ
タモノニ付キマシテハ、之ガ補闕ヲ行ハナ
イ趣旨ヲ以チマシテ、議院法第八十四條及
衆議院議員選擧法第七十九條ノ規定ヲ適用
セザルコトニ致シタノデゴザイマス、
其ノ理由ハ、應召ニ因リ失職シタル所ノ議
員ハ、召集解除ニ因ッテ再ビ議員ノ職ニ
復スルコトニ相成リマス關係上、之ガ爲ニ
補關ヲ行ヒマスコトハ適當ト認メ難イ點ガ
アルカラト申スコトデゴザイマス、第二ニ、
衆議院議員ニシテ大東亞戰爭ニ際シテ召集
中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノガ召集
ヲ解除サレタル時ハ、直チニ舊ノ議員
ノ職ニ復スルコトニ致シタノデゴザイマ
ス、應召者ガ歸還致シマシタ場合ニ於キマ
シテ、其ノ者ガ舊衆議院議員デアッテ、應
應ニ因リ其ノ職ヲ失ッタモノデアリ、且其
ノ舊ノ任期中ニ於キマシテ召集ヲ解除セラ
レタト云フコトデアルナラバ、之ヲ舊ノ議
員ノ職ニ復セシムルコトニ致シマスコト
ハ、極メテ至當ノ措置ト考ヘラレタノデゴ
ザイマス、現ニ地方議會ノ議員ニ付キマシ
テハ、夙ニ昭和十三年以來是ト同一ノ趣旨
ニ基キマシタ規定ガゴザイマス、是ハ御承
知ノ通リデゴザイマセウガ、今囘衆議院議
員ニ付キマシテモ、是ト同樣ノ措置ヲ執ラ
ムトスルコトデゴザイマス、次ニ昭和十三
年法律第八十四號中改正法律案ニ付テ御說
明ヲ申上ゲマス、政府ノ說明ニ依リマスト、
今次ノ改正ハ、地方議會ノ議員ニシテ大東
亞戰爭ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失
フ場合ニ於ケル失職ノ手續竝ニ其ノ職ヲ失
ヒタルモノノ補關ニ關シ、大東亞戰爭ノ新
情勢ト、過去數年ニ亙ル法律運用ノ實績ト
ニ鑑ミ、必要ナル改正ヲ加ヘムトスルモノ
デゴザイマス、以下本案ノ內容ニ付テ申上
ゲマスレバ、其ノ主要ナル事項ヲ御說明申
スコトニ止メテ置キマスルガ、第一ニ、地
方議會ノ議員ニ付キマシテハ、其ノ召集中
ナルニ因ル失職ハ、衆議院議員ニ於ケルト
異リ、一々當該地方議會ノ決定ヲ經ナケレ
バナラヌコトニナッテ居リマスルガ、召集中
ナルノ事實ハ客觀的ニ明瞭ナル事實デゴザ
イマスルカラ、其ノ決定手續ヲ廢止スルコ
トニナッタノデゴザイマス、第二ハ、地方
議會ノ議員ニ致シマシテ大東亞戰爭ニ際シ
應召中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノニ
付キマシテハ、前ニ述ベマシタル所ノ衆議
院議員ノ場合ト同樣ノ趣旨ヲ以テ致シマシ
テ、之ガ補關ヲ行ハナイコトニ致シマス、唯
斯ク致シマスト、數多キ地方議會ノ中ニハ、議
員ノ闕員ガ多クナッテ、議會ノ機能上支障ヲ生
ズルノ虞ガアリマス場合モナイトハ限リマ
セヌノデ、之ヲ保障スル趣旨ヲ以チマシ
テ、議員ノ現在數ガ議員定數ノ三分ノ二ヲ
割ルニ至ッタ場合ニ於キマシテハ、之ガ補
闕ヲ行フコトニ致サレタノデゴザイマス、
以上ガ政府ガ此ノ二案ニ關シマシテ委員
會ニ於キマシテ說明ヲセラレタ所ノモノデ
ゴザイマス、委員會ハ今朝開會致シマシテ、
委員長及副委員長ノ選擧ヲ行ヒ、引續イテ
質疑應答ニ移リマシタ、ソレカラ十一時懇
談會ヲ開キ、午後二時再開致シマシテ、午後
引續キ質問應答ヲ續ケマシタ、其ノ後ニ於
キマシテ討論ニ移リ、ソレカラ採決ヲ致シマ
シタ處ガ、滿場一致全部原案通リ可決サレ
タ次第デゴザイマス、其ノ主ナル質疑ノ二
三ヲ申上マス、或委員カラハ、衆議院議員ニ
シテ官吏トナルト失格スルガ、斯カル者モ
國家ノ要請ニ應ヘテ役人トナッタノデアル
カラ、本案ノ如キ規定ガ必要ト思フガドウ
カト云フ御尋デゴザイマシタ、政府ハ、本
法案ハ衆議院議員ノ應召ト云フ最近ノ新事
態ニ對處スル應急措置デアルカラ、不都合
ガ生ゼヌヤウニトノ考ニ出タモノデアル、
官吏任用ノ問題ニ付テハ、別途ニ考究スベ
キコトト思フ、又一委員ヨリハ、本案ノ趣
旨ト云フモノハ衷心カラ自分ハ贊成スル、
併シナガラ此ノ規定ノ如キ程度ノモノデ
ハ、本案ノ趣旨トスル所ノモノヲ滿足ニ言
ヒ現シテ、又理解サセルコトガ出來ルカド
ウカヲ疑ハシク思フ、議院法ノ七十七條
ニ、「退職者トス」トアルノハ、當然ノコト
ヲ規定シタモノデアッテ、分リ切ッタコトデア
ル、衆議院議員ノ職務ト資格トハ分ツコト
ガ出來ナイノデアリ、此ノ點ハ職務ヲ行ヒ
得ナクトモ貴族院議員タル資格ニハ變リナ
イノトハ少シク違ッタ性質ヲ持ッテ居ル、要
スルニ衆議院議員ハ其ノ職務ト資格ハ合體
シタモノデアッテ、資格ヲ失ヘバ當然職務
ハ無クナルノデアル、應召シタ衆議院議員
ニ其ノ資格ヲ帶ビタル儘ニスルヤウニ書キ
現シタイト思フ、本法案ハ一旦資格ヲ失ッタ
者ニ更ニ資格ヲ與ヘルト云フノデアルガ、
是ハドウモ書キ現シ方ガ條理ニ反スルヤウ
ニ思ハレル、本案ノ趣意ヲ通ス爲ニハ、先
ヅ資格ヲ失ハシメナイト云フコトヲ先ニ
明カニ書クベキデハナカラウカ、補關選
擧ヲ行ハヌトカ復職セシムルトカ云フ
コトヲ規定スルコトハ、抑〓枝葉ノ問題デ
アッテ、根本問題ニ觸レテハ居ラナイ、立
法ノ仕方トシテハ、ドウモ正シクナイヤウ
ニ思ハレル、斯クノ如キ〓リクドイ立法
ヲセズ、モット簡單ニ、自分ヲシテ言ハシ
ムレバ「大東亞戰爭ニ因リ召集ヲ受ケタル
衆議院議員ハ資格ヲ失ハズ、但職務ヲ行フ
コトヲ得ズ」ト云フ書キ方モアリハシナイ
カト思フ、而シテ斯クノ如ク書ケバ、諄々
シク或ハ失職ヲスルトカ或ハ職務ヲドウス
ルトカ云フヤウナ面倒ナコトヲ言ハズニ、
此ノ一條ヲ以テ簡單明瞭ニ分ルヤウナ氣ガ
スル、而シテ此ノ問頭ガ衆議院デ討議セラ
レルニ當リマシテハ、衆議院デハ憲法違反
ニナルト云フヤウナ議論ガ出タサウデアル
ガ、本案ノ如キ規定方法デハ、其ノ議論ガ出
ルノモ當然デハナカラウカト思フ、自分ノ
純理カラ考ヘテ見ルト、全ク立法技術ノ下
手ト云フコトガ言ヘハシナイカト思フ、是
ハ政府ハドウ考ヘルカト云フ御質問デゴザ
イマシタ、政府ハ、被選擧資格ガ無クナレ
バ從ッテ退職者トナル從來ノ建前ハ、色々
ト學者ニ依ッテモ論ゼラレテ居ル所デアリ
マス、而シテ長ク行ハレテ來タ所デアリマ
スガ、政府ト致シマシテモ、只今ノ衆議院
議員ノ應召ト云フ新事態ニ對シ例外的ニ立
法スルノデアルカラ、此ノ從來執ッテ來マ
シタ建前ヲ動カスコトハ如何カト思ッタノ
デゴザイマス、御示シノ點ヲモ十分考ヘタ
ノデアリマスガ、從來ノ建前ヲ變ヘズニ、而
モ目的ヲ達スルヤウニト考ヘテ、斯樣ナ立
法ニナッタノデアリマス、更ニ又一委員ヨ
リ、應召議員ノ戰死ノ場合ニハ補闘選擧ヲ
行ハレルコトニナルノデアルカト云フヤウ
ナ意味ノ御質問ガゴザイマシタ、政府ハ、戰
死ノ場合ヲ規定スルコトハ、勇躍出征スル
方ニ對シテドウモ如何カト思フ點ガ多々ア
ル、死ト云フヤウナコトヲ此ノ場合ニ餘リ
言フノハドンナモノカト思フ、又一旦規定
スルトナレバソレニ伴ウテ他ニ色々ノコト
ヲ書カナケレバナラナクナル、例ヘバ出征
中ニ起ル所ノ或法規上ノ問題ニ觸レルトカ
何トカト云フヤウナ場合ヲモ想像シナケレ
バナラヌ、サウ云フヤウナコトヲ此ノ場合
ニ書クコトハ面白クナイ、ドウモ壯途ニ就
カムトスル所ノ勇士ニ對シテ適當ナルコト
デナイト思フカラ止メタ、實際上ノ問題
トシテ、其ノ必要ハ現在ノ所デハ無イト思
フ、卽チサウ云フコトハ書キタクナイト云
フコトヲ申サレマシタ、又一委員ヨリ、現
在、說明ニ依ルト、補關選擧ハ行ハナイト
云フコトデアルガ、或一選擧區カラ總テノ
議員ガ應召ノ結果、不幸ニシテ名擧ノ戰死
ヲ遂グルヤウナ場合ガアッテ、全部亡クナッ
タト云フヤウナ場合ニハドウスルカトカ、
所謂選擧區カラ議員ノ、民意ヲ上達スルヤ
ウナ人ガ居ナクナルヤウナ場合ヲ想像シタ
ナラバ、ソレハドウスルカト云フヤウナ質
問デゴザイマシタ、是ハ只今ノ狀況ニ於キ
マシテ、現實ニ衆議院議員デ軍籍ニ在ル所
ノ者ハ少イ、又其ノ選擧區ノ關係ヲ調ベル
ト、斯ウ云フコトハ有リ得ナイコトニナッ
テ居ル、又一委員ヨリ、然ラバ現在ノ法案
ト云フモノハ、現實ニ直面シタ所ノ、現實
ノ問題ダケヲ考ヘテ作ッタノデアッテ、今後
ノ狀況如何ニ依ッテハ、又之ヲ變更シナケ
レバナラヌ必要ガ起リハシナイカト申サレ
マシタ、無論ソレハ左樣デゴザイマスト、
大體主ナル質問ハソレ位デゴザイマシテ、
ソレカラ討論ニ入リマシテ、別ニ是レト云
フ澤山ノ御意見ハゴザリマセヌデシタ
ガ、一委員ヨリ、自分ハ本案ニ贊成スル者
デアルガ、決シテ私ノ是カラ言ハムト欲ス
ル所ノモノハ、附帶條件ヲ意味スルノデハ
ナイ、實ニ此ノ趣旨ハ贊成デハアルガ、將
來希望シテ自分トシテ一言述ベサシテ貰ヒ
タイ、立案ノ趣旨ハ結構デアルガ、本旨ハ、
召集議員ニハ尙衆議院議員タルノ名譽ヲ帶
ビサセツヽ征カシテ貰フト云フヤウナ意味
デアラウト思フガ、故ニ召集セラレタ議員
ハ失格サセナカッタ方ガ宜クハナイカ、然
ラズシテ其ノ失職者ヲ復職セシムルヤウナ
書キ方ト云フモノハ、實際色々疑義ヲ惹キ
起ス所ノ、何處々々ニ牴觸スルトカ、何々
ニ違反デアルト云フヤウナ、法理上ノ疑義
ヲ生ズルコトガアリハシナイカ、更ニ其ノ
意味ニ於テ、若シ自分ガ、普通ノ議會ノヤ
ウニ時日ガアルナラバ十分之ヲ練ッテ見
テ、或ハ極端ヲ言ヘバ兩院協議會ヲ開イテ
デモ、此ノ問題ノ純立法ノ方法ヲ考ヘルヤ
ウニシテ見タイヤウニ思フ、近來屢〓見ル
所ノ政府ノ提出スル法案ニ於テハ、一九七
ウ少シ考ヘテ、法理的ニ能ク考ヘテ提案シ
テ貰ヒタイヤウナ氣ガスル、如何ニモ何ダ
カソコニ物足リナイヤウナ氣ガスル、ソレ
ヲ斯カルコトノナイヤウニシタイノデアル
ト云フ意味ヲ、此ノ討論ノ際只今申サレマ
シタヤウナ意味ニ附ケ加ヘテ、更ニ之ヲ强
調シテ置キタイト云フ御意見デアリマシ
タ、而シテ委員會ハ、他ニ御意見ガゴザイ
マセヌデシタカラ、引續キ採決ヲ致シマシ
タ處ガ、滿場一致可決サレマシタ次第デゴ
ザイマス、右御報〓ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=22
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023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=23
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024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=24
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025・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=25
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026・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=26
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027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=27
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028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=28
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029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報〓通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=29
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030・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=30
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031・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=31
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032・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=32
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033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=35
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036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 昭和十八年度歲
入歲出總豫算追加案、第一號、昭和十八年
度特別會計歲入歲出豫算追加案、特第一號、
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ
要スルノ件、追第一號、是等ノ三案ヲ此ノ
際議事日程ニ追加シ、一括シテ之ガ會議ヲ
開キ、委員長ノ報〓ヲ求メタイト存ジマス、
御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=37
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038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、豫算委員長林伯爵
一昭和十八年度歲入歲出總豫算追加案
(第一號)
一昭和十八年度特別會計歲入歳出豫算追
加案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第一號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報告候也
昭和十八年十月二十八日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=38
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039・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今議題トナリマシタ
昭和十八年度歲入歲出總豫算追加、第一號、
同各特別會計歲入歲出豫算追加、特第一號、
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル
件、追第一號、以上三件ノ豫算委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、今朝午前十
時ヨリ豫算委員會ヲ開會致シマシテ、先ヅ
大藏大臣ノ豫算ニ關スル說明ガアリマシタ
ガ、其ノ大要ニ付テ說明ラ致シマス、總豫
算追第一號、歲出一億二千九百萬餘圓デア
リマス、是ハ昭和十八年度ノ豫算ノ實行上
ノ歲出ノ節約ニ因ッテ生ジマシタ歲入超過
額デ支辨スルト云フコトデゴザイマス、第
八十二議會迄ニ成立致シマシタ昭和十八年
度豫算額ハ、歲入歲出共ニ各〓百三十八億九
千五百餘萬圓デアリマス、此ノ度ノ追加ヲ
加ヘマスト、歲出豫算額ガ百四十億二千四
百萬圓トナリマス、追加豫算額ダケガ歲出
ノ趨過ニナル次第デアリマス、此ノ追加豫
算ノ內譯ハ、經常部ニ於テ六百餘萬圓、臨時
部ニ於テ一億二千二百餘萬圓デアリマス、
省ニ付キマシテノ經費ヲ大體申上ゲテ見レ
バ、農商省設置ニ關スル經費六千七百餘萬
圓軍需省設置ニ關スル經費五千四百餘萬
圓、運輸通信省設置ニ關スル經費四百餘萬
圓デアリマシテ、國內態勢ヲ徹底的ニ强化
シ、各種ノ施策ヲ大東亞戰爭完勝ノ一點ニ集
中スルコトトシテ、行政機構ニ於テモ農林、
商工、遞信、鐵道ノ各省ヲ廢止シテ農商、
軍需、運輸通信ノ各省ヲ設ケルコトトナッタ
ノデアリマス、旣ニ成立濟ノ本年度豫算
中ノ款項デ、移管先キノ省デ使用シテモ差支
ナイモノハ其ノ儘引繼ギ使用ヲ致シマス、
又一款項ノ經費ガ二省以上ニ跨ッテ分割セ
ラレタルモノ、或ハ其ノ經費ノ性質上其ノ
儘使用シ得ザルモノハ、旣ニ成立濟ノ款項
ノ定額ノ一部ヲ不用ト致シマシテ、新タニ
追加豫算ヲ計上シタトノコトデアリマス、
其ノ不用ノ分ハ一億二千六百萬圓トナルノ
デアリマス、之ヲ今回ノ歲出追加額カラ控
除シマスト云フト、純粹ノ新規ノ經費トシ
テノ追加計上シタ分ハ、僅カニ二百萬圓ト
ナルノデアリマス、其ノ內譯ハ、今囘ノ臨
時議會開會ノ經費、防空總本部ノ設置、地
方行政協議會ノ機能擴充ノ經費、地方財務
行政充實、航空機ノ製造用機器ノ生產增强
等デアリマス、次ニ此ノ追加額ノ大要ニ付
テ申上ゲマスト、第一、內務省所管、防空總
本部ノ設置、防空ニ關スル〓究及講習機構
ノ充實、地方行政協議會ノ機能擴充ニ要ス
ル經費、國土計畫、木船建造ニ關スル經費、遞
信省所管ヨリノ移管ニ伴フ經費等デアリマ
ス、第二、大藏省所管、今囘ノ臨時議會ニ
要スル經費、地方財務機構ノ充實ニ要スル
經費、企畫院所掌ニ係ル國政ノ綜合運營ニ
關スル事務ノ內閣ヘノ移管ニ伴ヒマシテ要
スル經費等デアリマス、第三、厚生省所管、
行政機トノノ備備ニ伴フ機械技術員養成ニ關
スル事務ノ商工省カラノ移管ニ要スル經費
デアリマス、行政職權特例ニ基イテ行ヒマ
シタ遞信省所掌船員職業紹介所ノ事務ガ國
民職業指導所ヘノ移管ニ伴フ經費等デアリ
マス、第四、大東亞省所管、今次ノ行政機
構整備ニ伴フ交易關係事務ノ商工省所管カ
ラ、移管ニ伴ヒ要スル經費デアリマス、第
五、農商省、日滿ヲ通ズル食糧ノ自給態勢
ヲ確立シ、國民生活物資ノ綜合確保ヲ圖リ、
戰時國民生活ノ安定ヲ期スル爲ニ、農林省
ヲ廢シ農商省ヲ設定シタ爲ニ要スル經費デ
アリマス、第六、軍需省所管、軍需生產ノ急速
增强、特ニ航空戰力ノ躍進的擴充ヲ圖リ、軍
需生產ノ計畫的統一的遂行ヲ確保スル爲ニ、
商工省、企畫院ヲ廢止シ新タニ軍需省ヲ設
ケタル爲ニ要スル經費、及航空機等製造用機
器ノ生產增强ニ對スル經費デアリマス、笑
七、運輸通信省所管、海陸ノ綜合的輸送力
ヲ急速徹底的ニ强化シ通信能力ノ增强ヲ期
スル爲、遞信、鐵道兩省ヲ廢シマシテ、新
タニ運輸通信省ヲ設ケマシタニ因ツテ之ニ
要スル經費デアリマス、以上デ以テ第一號
ヲ終リマス、昭和十八年度各特別會計歲入
歲出豫算追加、特第一號、是ハ內務省所管、
臺灣總督府特別會計ニ關スルモノデアリマ
ス、臺灣產業營團、臺灣食糧營〓ノ經費等
デアリマス、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ニ關スル件、內務省所管、朝鮮總督府
特別會計ニ於ケル軍需關係資材確保、損失
補償、臺灣總督府特別會計ニ於ケル、臺灣產
業營團債劵元利保證、臺、灣產業營團損失補
償等デアリマス、是カラ質問ニ移リマシタ
次第デアリマスガ、コヽデ申上ゲテ置キマ
スガ、質問中ニ於キマシテ約一時間ニ亙リ
マシテ祕密會ヲ開會致シマシテ、而シテ外
務大臣ヨリノ說明竝ニ色々ノ報〓ガアリマ
シタガ、是ハ祕密會ノコトデアリマスカラ
申上ゲラレマセヌ、只今カラ質問應答ニ付
テ〓略ヲ申上ゲマス、災害對策ニ付テノ質
問、卽チ今囘ノ震災、火災、水害ノ件ニ付
テデアリマス、隣保班ノコトニ付キマシテ
ノ質問ガアリマシタ、又此ノ風水害等ニ付
キマシテハ、特ニ治山治水ノコトガウマク
行カナイ爲ニ起ツタノデアル、ソレニ付テ
砂防、其ノ他治山治水等ニ付テノ質問、又
震災等ニ因リ家屋ガ倒レマスレバ、ドウシ
テモ木材ノ集中ガ必要ニナリマス、其ノ木
材ノ供出ト竝ニ木材ノ供出シタモノガドウ
云フ風ナ實績ニナッテ居ルカニ付テノ說明
ヲ求メタ、國庫補助、低利資金ノ融通、資
材供給ノ方針、特ニ野菜、釘、疊等ニ付テ、
震災等ニ、於キマシテハ釘ト疊ハ最モ必要デ
アルノニ、最モ不足ヲ告ゲテ居ル、其ノ他
野菜モサウデアツタガ、是等ノ資材供給ノ
方針ハ將來ドウ云フ風ニスルノデアルカ、
勞務者配分ノ方針デアリマス、風水害竝ニ
震災等ノ大ナルモノガアツタ際ニ、一番必要
ナモノハ勞務者デアル、然ルニ其ノ勞務者
ガ引ッ張リ凧ニナッテ、ナカ〓〓配分ガウマ
ク行カナイノデアルガ、之ニ付テ如何ナル
計畫ヲ樹ッテヤッテ行クノデアルカ、ソレカ
ラ其ノ復興ニ付キマシテ、兎角是ガ消極的
ニ復舊ニ終ルノデアルガ、復舊ヨリモ積極
的ノ復興ガ必要ナノデアル、其ノ復興ニ付
テノ農民指導ノ方針如何、災害ニ付テ麥ノ
供出ノ方法ヲ如何ニスルカ、將來ノ衞生施
設ハドウデアルカ、デ今囘山崩レノ爲ニ非
常ナ大水ガ出マシテ、氾濫ヲシタ爲ニ、泥
水ヤ砂ヲ家屋ノ中ニ澤山持ッテ來テシマッタ
ヤウナコトモアリマス、サウ云フ點ニ付キ
マシテ衞生ガ最モ今日必要デアルガ、ソレ
等ノ施設ハドウデアルカ、又罹災民ガ急ニ
職ヲ離レマシテ商業モ出來ナイト云フヤウ
ナコトガ今囘起ッテ居ルガ、之ニ對スル對策
ハドウデアルカ、又生命保險、火災保險等
ノ點ニ付キマシテ、會社側ガ頗ル冷酷ナヤ
リ方ヲシタ爲ニ、市民ノ怨ミヲ買ッタヤウ
ナ點ガアルヤウデアルガ、ソレ等ニ付テハ
如何ナル方法ヲ講ズルノデアルカ、伯之
ナ點ニ付テ具體的ノ御質問ガアッタノデア
リマス、其ノ中ニハ、今囘ハ地方行政ノ「ブ
ロック」ガヨク行キツヽアル爲ニ、非常ニ圓
滑ニ物資ノ流通、救助等ガ行ハレタ點ハ甚
ダ喜バシイコトデアルシ、又海軍、陸軍ノ
軍ノ方々ガ急速ニ市內ニ入ッテ來テ援助ヲ
與ヘラレタコトニ付テハ、非常ニ市民モ感
謝ヲシテ居ル、非常ニ今囘ハ其ノ措置宜シ
キヲ得タ點モアルガ、又之ニ依ッテ非常ニ我
我ガ〓ヘラレル點ガアルガ、ソレ等ニ付テ
ノ對策如何ト云フ問デアリマス、色々災害
モアリマシタガ、特ニ鳥取ノ震災ニ對シマ
シテハ、銀行預金、信用組合ノ非常拂戾ヲ
致シマシテ、サウシテ生活ノ安定ト秩序維
持ニ努メタノデアル、是等ハモット急速ニ
ヤッタラ效果ガアッタト思フ、鹽ニ付キマシ
テハ、各縣ニ非常準備ト云フモノガ備ヘテ
アッテ、災害ニ應ジテ急速ニヤラレルヤウ
ニナッテ居ル、例外トシマシテハ單行勅令モ
出來ルノデアル、田畑ニハ一段步一千圓以
上モ掛ケナケレバ復舊ノ出來ナイヤウナモ
ノモアル、ナカ〓〓是ハ一私人デハ困難デ
アル、斯ウ云フ際ニハ、國トシテハ特ニ高
率ノ國家補助ヲスルノデアル、又災害ノ甚
ダシキ所ニ對シテハ地租ノ減免モヤル、又
府縣ヘノ低利資金ノ融通モ講ズルコトガ出
來ルノデアル、何レニセヨ十分ニ善處スル
ト云フコトデゴザイマシタ、保險ノコトニ
付キマシテハ、生命保險ハ之ヲ拂ッタノデア
ル、火災保險モ、見舞金ナドハ是迄ニハナ
カッタノデアルガ、今囘ハ此ノ點ニ付テモ行ッ
テ居ルノデアツテ、サウ冷酷デアルト云
フヤウナコトハ聞イテ居ラナイ、震災保險
ト云フコトハ、是ハ震災ハ保險ノ對象デハ
ナイノデアル、且此ノ震災ニ對スル保險ト
云フノハ非常ニ危險モ多イコトデアル、又
保險會社ノ金ト云フモノハ、多年ノ間年々
拂ッテ居ッテモ、其ノ金ハ積立テラレテ居ル
モノデハナイノデアッテ、右左ニ保險者被
保險者トノ間ニ融通ヲシテ行カナケレバナ
ラヌノデアリマスカラ、震災ノヤウナ大キ
ナ問題ガ起ッテ來ルト、會社トシテハナカ
ナカ拂ヘルモノデハナイノデアル、サウ云
フ工合デアッテナカ〓〓困難ナ點ガアル、
此ノ故ニ若シ震災保險ト云フ問題ニナレ
バ、是ハ國ガヤラナケレバナラナイ、國ガ
ヤルニシマシテモ保險料ノ算定ノ基礎ヲ何
處ニ求メルカト云フコトニナルト、ナカ〓〓
是ハ經濟上ムツカシイ、又風水害保險ニ付テ
モ、是ハ國ガヤルノガ結極デアルト思フガ、
矢張リ計算技術ノ材料ニ乏シイ、此ノ兩者
ニ付テハ、〓究ハシテ居ルガ直チニ實行ス
ルト云フコトハ困難デアルト云フコトデア
リマス、復舊ノミデナク復興ト云フコトニ
專念スルト云フコトハ、是ハ誠ニ結構デア
ルガ、是等ニ付テハ今日ノ戰時ノ場合又實
情ニ卽シテ行カチケレバナラナイト思フ、
島根縣ノ災害ヲ例ニシテ見ルト云フト、雨
量ノ割合ニ水害ガ非常ニ多カッタ、是ハ前
前カラ長雨ガ續イテ居ッタ所ニ又大キナ雨
ガ降ッタ爲ニ、地盤ノ弛ンデ居ッタ所ニ來タ
モノデアリマスカラシテ、此ノ結果ニナッタ
ノデアリマス、勿論伐材ヲシタト云フコト
ハ確カニ一原因デアルカモ知レナイ、又サ
ウデアリマセウ、併シナガラ今日ハ一面ニ
於テ大戰爭完遂ノ爲ニ伐材ト云フコトモヤ
ラナケレバナラナイ、從ッテ此ノ木ヲ伐ッタ
跡地ノ植林、山林治水ニ寧ロ力ヲ努メルト
云フコトニナラナケレバナラナイ、昭和十
二年ノ第二期山林治水計畫ト云フモノガアッ
テ、今日實行中デアル、災害防止林モヤル
積リデアル、伐材ト搬出ト云フコトニ付テ
モ、ドウモ今日勞務者ガ非常ニ得ルコト困
難デ窮屈デアリマスケレドモ、是モ鐵道省
ト協力シテ出來ルダケ努メテ行ッテ、サウ
シテ災害地へノ木材ノ集中モヤル積リデア
ル、治水ニハ砂防ト云フコトガ最モ必要デ
アリマス、砂防十八億圓ト云フコトガ議會
デ當テ決メラレテアルノデアルガ、是ハド
ウカ速カニ完成シテ貰ヒタイノデアルガド
ウデアルカト云フコトデアッタガ、此ノ點ニ
付テハ政府ハ、十分ニ是ハ再檢討ヲシテ後
デ御答ヘスルト云フコトデアリマス、耕作
指導ニ付キマシテハ、地所ニ依リマシテハ
ナカ〓〓算盤的ニ復舊ガ引合ハナイ所ガア
リマス、先程申シマシタ如ク一千圓以上モ
掛カル所ガアルノデアリマス、併シナガラ
此ノ點ニ付テハ如何ニ困難デアッテモ、原形
ニ復スルト云フコトモ大イニ政府ハ考ヘテヤ
ラナケレバナラナイ、何トナレバ農業ト土地
ノ愛著ト言フコトハ親密ナ關係ヲ持ッテ行カ
セナケレバナラナイノデアル、特ニ我ガ國ノ
是ハ醇風美俗デアリマスカラ、成ルベク舊ノ土
地ニ居リタイト云フ者ハ、其ノ元ノ家ニ復舊サ
シテヤルト云フコトノ原則デ行カナケレバナラ
ナイト思フ、金ハ掛ルニシマシテモ十分能ク
其ノ心理狀態ヲ尊重シテ其ノ復舊ニ努メタ
イト思フ、麥ノ供出ノコトハモウ完了シタ
ノデアル、之ニ付キマシテモ、農家ノ心理
狀態、又實情ヲ睨ミ合セテヤッタノデアル、
今日ハ以前ノ如ク特別ノ要求ヲ聞カナイノ
デアル、頗ル順調圓滑ニ行ッタモノト考ヘ
ル、且又豫定以上ノ量ガアッタノデアル、
災害地方ノ米ノ減收量ノ鑑定ニ付テモ、追
追計算ガ完了シテ行キツヽアリマス、其ノ
著シク減收シタ地方ニ於キマシテハ、適當
ニ考慮シテ善後策ヲ講ズル積リデアル、勞務
者配給ノ件デアリマスガ、先程モ申シマシ
タ如ク、勞務ガドウモ斯ウ云フ場合ニハ足
リナイノデアルカラ引ッ張リ凧ニナル、之
ヲドウシタラ宜イカト云フコトニ付テハ、
政府ハ勞務報國會ト云フモノヲ利用シタイ
ト思フ、是ハ空襲ニ付テ考へ出シタノデア
ルガ、此ノ際ハ非常ニ利用サレルモノデア
ル、應急家屋ノ形式ヲ定メマシテ、木材ノ
保有モアルコトデアルカラ、其ノ動員モ出
來テ、著々ト進行シタイト思フ、又商業報
國隊ト云フモノニモ大イニ努力シテ貰ヒタ
イノデアル、家屋ハ元來十五坪ト云フコト
ニ制限ガアリマスガ、罹災地ニ於テハ、是
ハ今日ハ緩和ヲシナケレバナラナイノデ、
二十四坪迄ハ地方長官デヤレルコトニシ
タ、針金トカ、釘トカ、「トタン」板ト云フモ
ノハ、防空對策トシテ地方ニ保管シテアリ
マスカラ、ソレヲ適宜ニ集中シテ送ル積リ
デアル、要スルニ一億ノ結集ノ必要ハ今日
ヨリ甚ダシキモノハナイト考ヘラレル、是
等ノ災害ニ對シテハ實ニ同情ニ堪ヘナイ、
併シナガラ他面之ニ依ッテ我々ハ良イ〓訓
モ體驗シタノデアル、是デ防空對策ノ上ニ
資スル點モ亦多イト思フ、其ノ點ニ付テハ
十分ニ活用ガ出來ルト思フト云フ同情的ノ
挨拶ガアリマシタ、ソレカラ授職ノコトデ
ス、職業ヲ授ケルコトデアリマス、國民職
業指導所ト云フモノガアッテ、國民共同勤
勞施設ヲ又利用シテヤルト云フコトモア
ル、ソレモ今日ハ益〓掘下ゲテ深ク考ヘテ行
カナケレバナラナイ、罹災救助基金支出ト
云フコトモ出來ルノデアル、又空襲ナドノ
コトヲ考ヘマシテ、將來ハ益〓掘下ゲテ、深
イ考慮ヲ之ニ對シテハ拂ッテ善處ヲスル考
デアル、交通ニ付テノ質問モ出マシタ、潛
水艇ニ對スル船舶輸送計畫、又崑崙丸ノ如
キ事ガ再ビアッタノデハ困ルガ、何力之ニ
ハ不備ガアルノデハナイカ、之ニ對シマシ
テハ輸送ニ付キマシテハ萬難ヲ排シテ
ヤッテ居ル、海軍トモ連絡ヲ密ニシテ護衞
ナドモ附ケマシテヤッテ居ルノデアルガ、
今後ハ一層輸送力ヲ强化シマシテ、先程ノ
ヤウナ不幸ナル出來事ヲ最小限度ニシテ進
ンデ行キタイ、支那鐵道ヲ利用シテハドウ
デアルカ、日滿支連絡輸送ト云フコトハ、
是ハ一貫的デナクテハナラナイ、彼我有無
相通ジ、計畫ト實施ヲ睨ミ合セマシテ、多
大ナル效果ヲ擧ゲルヤウニ、運輸通信省ト
ナリマスレバ、更ニ又一層之ヲ强化スル便
宜モアラウト思フガ、其ノ點モ十分努力ス
ル、造船、木造船ニ付テハドウ云フ考ヲ持ッ
テ居ルカ、之ニ付テモ十分努力シタイト思
フ、殊ニ木造船ハ船體ハ大イニ進捗シテ居
ル、機關トカ艤裝トカ云フ點ニ於テ聊カ不
備ノアルヲ免レナイカトモ思フノデアル
ガ、是ハ又大イニ計畫ヲ積極的ニ進メマシ
テ、最善ノ努力ヲスルコトニ致シマス、
昨日ノ汽車ノ三重衝突ハアレハドウ云フコ
トデアルカ、又詳細ナル報告ヲ聽キタイ、
常盤線土浦驛ノ椿事ハ誠ニ遺憾千萬デア
ル、今日ハ檢察官ノ手デ取調中デアルカラ、
鐵道省トシテハマダ御報告ヲスルコトハ出
來ナイ、是ハ二百九十四貨物列車ガ、貨物ノ
入換ヲシテ居リマス時ニ、午後六時五十三
分通過ノ石炭ノ貨物列車ガ、其ノ後カラ參リ
マシテ接觸ヲシマシタ、サウシテ十八輛脫
線轉覆ヲシタ、其ノ爲ニ其ノ隣リノ線路ガ
傷ミマシテ、其ノ傷ンダ線路ノ所ニ更ニ列
車ガ來マシテ、客車四、五輛脫線ヲシマシ
ク、其ノ若干ガ橋ノ上ニアッタ爲ニ川ニ落
チマシテ死傷ガ出來タノデアリマス、若シ
モ橋ノ上デナカッタナラバ是程ノ出來事ハ
ナカッタラウト思フ、死者九十名、重傷者
七十九名ヲ出シタ、誠ニ遺憾ノ至リデア
ル、尙又今日ハ斯ウ云フ常盤線ノ如キ所ハ、
石炭其ノ他貨物ノ輸送ガ頻繁デアリマシテ、
後カラ〓〓列車、貨車ガ來ル、其ノ爲ニ汽
車ノ間隔ト云フモノガ極メテ短イト云フ點
ガ一ツノ原因デアツタラウト思フ、今後ハ
益〓保安裝置ヲ整備シ、自動信號ヲ改善シマ
シテ、再ビ斯クノ如キ事故ノ起ラヌヤウ、
不幸ノ起ラヌヤウ、犧牲者ノ生ジナイヤウ
ニ努メマス、慰安、弔慰其ノ他ノ方法ニ付
テモ出來ルダケ十分ナコトヲ講ジタイト思
フ、ソレカラ農產物ノコトニ付テ質問ガア
リマシタ、米ハ今囘六千三百三十萬石穫レ
ル、相當ナ成績デアッテ結構デアルガ、甘
諸ハ十四億貫以上穫レル、モット餘計ダト
思フ、昨年ニ比シテ四億貫モ多ク出來テ居
ル、明年ハ又更ニ是ハヤリ樣ニ依ッテハ殖
エトク馬鈴薯ハ五億一千三百萬貫穫レルノ
デアルガ、是モマダ方法ニ依ッテハ來年度
ハモット增產ガ出來ルト思フ、ソレニハ土
地ノ改良ト云フコトガ伴フコトニナリマス、
土地改良ハ食糧增產ニハ必要缺クベカラ
ザルコトハ明瞭ナコトデアル、土地ヲ改
良スレバ面積ガ殖エルノデアリマス、處
ガ他方ニ於キマシテ、今日食糧ト同時ニ必
要ナ物ハ薪炭デアリマス、薪ト炭デアリマ
ス、是ハ前年度ヨリモ著シク其ノ生產ガ落
チテ來マシタ、ソコデ其ノ原因ハ何カト言
フト、今囘三箇月間ニ、此ノ一ト冬ニ、土
地改良ヲヤラウト云フ計畫ガアル爲ニ、勞
働力ガ其ノ方面ニ吸收サレタ結果デアル、
之ヲドウ云フ風ニ調節スル意思デアルカ、
第一次增產計畫ト云フモノハ、モウ外米依
存ト云フコトヲ脫却スルコトカラヤッタノ
デアル、第二次ノ增產計畫ハ、十年ノモノ
ヲ一ト冬デ以テヤラウトスル頗ル忙シイモ
ノデアルガ、是モ今日自給自足ノ必要ニ迫
ラレテ居ルカラシテヤラナケレバナラナ
イ、薪炭ト食糧增產ト云フモノノ喰ヒ合ヒ
ニ、コヽニ無理ガ起ツテ來タノデアルガ、
之ヲ何トカシテ調節シナケレバナラヌコト
ハ御同感デアル、幸ニ土地改良ハ各縣ニ於
テ非常ニ熱心ニヤッテ居ル、此ノ三箇月間
ニ之ヲ仕上ゲルト云フコトデアリマスガ、
若干ハ次年度迄殘ルモノガアリハシナイカ
トハ思フケレドモ、非常テ意氣込ヲ以テ地
方デヤッテ居ルノデアリマスカラシテ、出
來ルダケ良イ結果ヲ期待シテ居ルノデア
ル、之ニ對シテ又、〓糧增產ト云フコトモ
絕對的ニ是ハ必要デアリマス、此ノ方面ニ
付テモ勞力ヲ中心トシテノ具體案ヲ樹テナ
ケレバナラナイ、ソレヲ又今日樹テツヽア
ル、一體日本デハ米作偏重主義ガアル爲
ニ、ドウモ米ノ執著心ニ偏シテシマッテ、サ
ウシテ米ノ外ノ麥ト諸ト云フ非常ニ必要ナ
モノガアルノニ、此ノ方ヲ閑却シテ困ル、
米作偏重主義ヲ止メテ、適地適作主義ニ變
ヘタラドウデアルカ、今囘ノ經驗ニ依ルト
云フト、餘リ土地ガ乾燥スルノデ甘藷ヲ作ッ
タ所ガ、當局カラ諸ヲ作ルコトハ相成ラ
又、今日ハ穀類ノ增殖ガ第一デアルカラ、
之ヲ引ッコ拔イテ陸稻ヲ作レト云フヤウナ
コトヲ命令シタ所ガアル、是等ハ實ニ非常
識デアッテ、適地適作デ、藷ニ適シタ處ハ藷
ヲ作リ、米ニ適シタ處ハ米ヲ作ルト云フノ
デナケレバ、增產ト云フモノノ調整ハ出來
テイモノデアル、陸稻等ハモウ廢止シタガ
宜カラウ、汽車ノ辨當ハ甘藷ニシタラ宜カラ
ウト思フガ、ソレニ付テノ意見ハドウデア
ルカ、ソレ等ニ付テモ政府ハ、御尤モノ點ガ
十分アルカラシテ、十分ニ是ハ考慮スルト
云フコトデアリマス、消費問題ノ質問、卽チ
供出ノコトデアリマス、前ニハ少々滿足ノ
出來ナイ點モアッタト思フケレドモ今囘ハ甘
諸ニ付キマシテハ四割ヲ超エナイコトニシ
タノデアル、相當餘裕ヲ取ッタノデアリマス、
此ノ故ニ五億數千萬貫ト云フモノヲ地方ニ
割當テタノデ餘裕ガアル、又供出ト、皇國農
村ニ付テノ御質問ガアリマシタ、供出ハ今囘
ハ段々無理ガ無クナッタト思フガ、政府ノ方針
ニ無理ハナクテモ、段々末端ニ於テ、第一線ニ
立ツ所ノ官吏ト農民トノ間ノ不調和ガ起ッテ
ハ何ニモナラナイ、又小作人ト地主トノ間ノ
離間ト云フコトガアッテハナラナイト思フ、
ソレデアルカラ、單ニ机ノ上ノ命令ダケデハ、
兎角末端ノ官吏ト農民トノ龜裂ヲ生ジ易イ
ノデアルカラ、其ノ點ニ付テハドウ云フ風ニ
サレルノデアルカ、供出ト云フコトニ付テ
ハ出來ルダケ農民ノ苦痛ヲ避ケテ行カナケ
レバナラナイノダ、又之ヲ避ケツヽ、又出
來ルダケ供出ノ方モ多クシテ行カナケレバナ
ラナイ、供出ノ量ト云フモノハ是ハドウモ
年々增加スルコトデアラウト思フ、今回ハ
各地方廳ニ說明書ヲ送リ、又是ハ府縣村
落ニ至ル迄其ノ說明書ヲ徹底スルヤウニ配
布シタノデアル、又地方長官會議トカ、其
ノ他面ノアタリ面會シタヤウナ場合ニハ、
十分今囘ノ供出ノ意義ガ徹底スルヤウニ努
メル積リデアル、食鹽ニ付テノ問題ガアリ
マシタ、食鹽ガ專賣デアルガ爲ニ制限ガ必
要ニナッテ來ルノデアル、制限ヲスルカラ食
鹽ノ多產ガ出來ナイ、食鹽ノミナラズ之ヲ
通シテ重要ナル工業ガ振ハナクナルガ、是
ハ自由ニシテ、民間ノ事業ニシテハドウデ
アルカ、政府ハ、專賣デアルガ故ニ今日ノ
ヤウナ生產ガ維持サレタノデアル、又維持
サレツヽアル、食鹽ト云フモノハ其ノ初メ
ニ於キマシテハ政府ノ有力ナ財源ノ一ツデ
アリマシタガ、今日ハサウ云フ財政主義ハ
執ッテ居ナイ、若シ今日專賣デナカッタナラ
バ民間ガヤル、民間ガヤレバ、工業ニ必要
デアルト云フノデ其ノ點、工場化スルヤウ
ナコトガ起リ易イノデアッテ、又同時ニ鹽ノ
ヤウナ廉イモノハ民間デハ引合ハナイ、從ッ
テ不振狀態ニ陷ル、是ハ政府ノ專賣デアッ
テ、而モ多年利用シツヽアル所ノ配給網ト
云フモノガ完備シテ居ル爲ニ、其ノ配給ノ
制度モ實ニ宜ク行ッテ居ルト思フノデアル
カラ、是ハ專賣ノ方ガ良イト思フト云フ答
辯デアリマス、以上ヲ以チマシテ大體質問
ヲ終リマシテ、討論ニ入リマシタ、採決ヲ
致シマシタル處、豫算三案共全會一致デ可
決ト相成リマシタ、右甚ダ簡單デアリマス
ガ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=39
-
040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、是ヨリ採決ヲ致シマス、御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ガナケレ
バ、三案全部ヲ問題ニ供シマス、三案共、
委員長ノ報告通リデ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=42
-
043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 軍需會社法案
ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シ、第一讀會ノ續ヲ
開キ、委員長ノ報告ヲ求メタイト存ジマス、
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=43
-
044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、八條子爵
軍需會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年十月二十八日
委員長子爵八條隆正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵八條隆正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=44
-
045・八條隆正
○子爵八條隆正君 軍需會社法案ノ特別委
員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、
本委員會ハ今朝午前十時ヨリ會議ヲ開キマ
シテ、ツイ先刻迄繼續致シテ居リマシテ、
先程審議ヲ終リマシタヤウナ次第デアリマ
ス、先ヅ最初ニ本法案ノ提出理由ニ付キマ
シテ政府ノ方ヨリ說明セラレマシタ所ヲ御
紹介申上ゲマス、政府ノ提案理由ノ說明ニ
依リマスルト、現下ノ內外ノ情勢ニ鑑ミマ
シテ軍需生產ノ急速增强、特ニ航空戰力ノ
飛躍的擴充ヲ圖ルコトガ、刻下最大ノ要請
デアルコトハ改メテ申ス迄モナイコトデア
ル、而シテ之ガ實現ノ方途ハ極メテ多岐ニ
亙リ、政府ニ於テモ是等諸方策ノ樹立、實
施ニ付テ銳意努力シツヽアルノデアル、併
シナガラ生產增强ノ直接ノ衝ニ當ルベキ企
業體制ハ尙在來ノ儘デアッテ、企業經營上ノ
國家的性格ハ必ズシモ明カデハナイ、其ノ
生產遂行上ノ國家責務ノ確保ニ付テモ、何
等特別ノ考慮ガ拂ハレテ居ナイノミナラズ、
企業ノ運營ハ、或ハ經理上ノ顧慮ニ左右セ
ラレテ、或ハ煩瑣ナル外部的給制、ニ煩ハサ
ルヽ等ノ爲ニ、其ノ本來ノ生產性ヲ十分ニ
伸暢シ得ナイ狀態ニアルト思フノデアル、
從ッテ政府諸般ノ施策竝ニ國家意圖ハ、十分
企業ノ末端ニ迄滲透セズ、又國家ガ負託ス
ル重大ナル責務ヲ深ク認識シ、之ヲ端的ニ
生產活動ニ具現セムトスル努力ニ於テモ缺
クル處ナシトセナイノデアル、仍テ此ノ際
企業精神ヲ更ニ〓揚シ、企業ノ國家性ヲ經
營上明確ニシ、生產責任體制ヲ確立スルト
共ニ、其ノ責務ノ完遂ヲ阻害スベキ諸般ノ
拘束ヲ極力排除シ、以テ盛リ上ル國家意識
ニ基ク潑刺タル生產活動ノ伸暢ヲ期スルコ
トガ、最モ肝要デアルト信ズルノデアル、
斯クノ如キ企業體制ガ確立セラルヽニ於テ
ハ、政府ノ施策ハ企業ノ旺盛ナル活動力ト
相俟ッテ、必ズヤ力强キ生產增强ヲ推進シ、苛
烈深刻ナル戰爭ノ要請ニ應へ得ルモノト信ズ
ルノデアル、本法案ハ上述シタ如キ見地ニ立脚
シ制定セムトスルノデアッテ、飽ク迄モ企業ノ有
機的組織ハ之ヲ尊重シ、其ノ運營上國家的性
格ヲ明カニシ、澎湃タル產業報國ノ精神ヲシテ
眞ニ其ノ效果アラシムルガ如キ强力ナル企業
運營ヲ期セムトスルノデアル、斯ウ云フノ
ガ提案ノ理由デアリマス、而シテ本案ノ骨
子トスル所ハ、昨日モ商工大臣ヨリ〓略御
說明ガアリマシタガ、玆ニ本法案ノ內容ニ
付キマシテ少シク具體的ニ御紹介申上ゲヨ
ウト思ヒマス、先ヅ第一ニハ本法ノ軍需會
社或ハ軍需事業ト云フモノニ付テノ定義
ヲ與ヘテ居ルノデアリマスガ、本法ニ於テ
軍需會社ト謂フノハ、軍需事業ヲ營ム會社
デアッテ、而シテ政府ガ指定スルモノデア
ル、而シテ其ノ軍需事業ト云フノハ如何ナ
ルモノデアルカト申シマスルト、兵器、航
空機、艦船等ノ重要軍需品、其ノ他軍需物
資ノ生產、加工及修理ヲ爲ス事業デアルト
云フコトニナッテ居リマシテ、其ノ具體的ノ
範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムルノデアリマス、
本法ハ斯クノ如ク軍需會社ニ適用スルモノ
デ、アリマスルガ、尙本法中必要ナル規定ハ、
軍需事業ヲ營ムモノデアッテ會社以外ノモ
ノ及軍需ノ充足上必要ナル軍需事業以外ノ
事業ヲ營ム會社其ノ他ノモノニ對シテモ、
之ヲ準用スルト云フコトニ相成ッテ居リマ
ス、而シテ次ニ本法運營ノ精神ニ付テデア
リマスガ、軍需會社ハ、戰力增强ノ國家要請
ニ應へ、政府ノ計畫ニ從ヒ、責任ヲ以テ軍
需ノ充足ニ關スル事業ノ遂行ニ當ルモノト
スルコトヲ明記シテ居リマス、是ガ軍需會
社運營ノ精神ヲ明カニシタモノデアリマ
ス、卽チ其ノ性格ヲ明確ニナラシメタモノ
デアルノデアリマス、次ニ生產責任體制ノ
確立ニ關スル規定デアリマス、卽チ其ノ一
ハ生產責任者デアリマスガ、軍需會社ニハ
生產責任者ヲ置キ、生產責任者ハ政府ニ對
シテ會社ノ戰力增强ノ責務遂行ニ關シ會社
ヲ代表シテ其ノ責ニ任ゼシムルモノデアリ
マス、而シテ此ノ生產責任者ト云フノハ、
原則トシテ會社ニ於テ選任ヲ致シマス、若
シ會社ニ於テ選任セザルトキハ政府ガ之ヲ
任命スルト云フコトニナッテ居リマス、又其
ノ解任ハ政府ノ認可ヲ要シマス、更ニ政府ガ
生產責任者ヲ不適任ト認メタトキニハ、之ヲ
解任スルコトヲ得ルト云フコトニナッテ居
リマス、次ニ生產擔當者ニ關スル規定デアヾ
リマスガ、生產責任者ハ本店又ハ軍需事業ヲ
營ム工場若シクハ事業場ノ第一線ニ於ケル
業務ニ附シテ、生產擔當者ヲ任命スルコト
ヲ得ルト致シテ居リマス、又政府ハ、生產擔
當者ヲ置クベキコト、又ハ解任スベキコトヲ、
生產責任者ニ對シテ命ズルコトヲ得ルモノ
トシテ居リマス、生產擔當者ハ、政府ニ對
シテ、生產責任者ノ指揮ニ從ッテ擔當業務ヲ
遂行スルノ責ニ任ズルモノデアリマス、而
シテ是等生產責任者又ハ生產擔當者ノ創
意工夫、努力ニ依ッテ、十分其ノ責任ヲ以
テ國家ノ負託ニ應ヘルコトニナッテ居ルノ
デアリマス、又「生產責任者及生奇擔當者竝
ニ軍需會社ノ營ム軍需事業ニ從事スル者ハ
國家總動員法ニ依リ徵用セラレタルモノト
看做ス」ト云フ規定ガアリマス、次ニ生產命
令ニ關スル規定デアリマスガ、「政府ハ軍需會
社ニ對シ期限、規格、數量其ノ他必要ナル事
項ヲ指定シ軍需物資ノ生產、加工又ハ修理ヲ
命ズルコトヲ得、」次ニ會社ノ運營ニ付キマ
シテノ諸般ノ命令規定ガ出テ居リマス、卽
チ「政府ハ軍需會社ニ對シ受注若ハ發注、
設備ノ新設、擴張若ハ改良、原料若ハ材料
ノ取得、使用、保管若ハ移動、技術ノ改良
若ハ公開、試驗〓究其ノ他事業ノ運營ニ關
シ必要ナル命令ヲ發シ若ハ處分ヲ爲シ又ハ
政府ノ指定シタル事業以外ノ事業ヲ營ムコ
トヲ制限若ハ禁止スルコトヲ得」ト云フ規
定モアリマス、而シテ又政府ハ「勤勞管理
竝ニ資金調整及經理ニ關シ必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得」、更ニ又政府ハ「定款ノ變更、
事業ノ委託、受託、讓渡、讓受、廢止若ハ休
兵、合併若ハ解散又ハ事業ニ屬スル設備若
ハ權利ノ讓渡其ノ他ノ處分ニ關シ必要ナル
命令ヲ爲スコトヲ得」ト云フ規定ガアリマ
ス、「軍需會社又ハ軍需事業ノ遂行ニ關係ア
ル者ニ對シ其ノ間ニ於ケル軍需事業ノ遂行
上必要ナル協力關係ノ設定ニ關シ必要ナル
命令ヲ爲スコト」ヲ得ルノデアリマス、
以上ノ如クニ、軍需會社ノ生產性ヲ確保ス
ル爲ニ、有ラユル命令ヲ發シ得ル權限ヲ、
政府ハ留保致シテ居ルノデアリマス、是等
軍需會社ガ命令生產ヲ達成スル爲ノ側面的
援助トシテ、此ノ爲ニ軍需會社ニ對シテ特別
ナル措置ヲ執ルコトヲ得ルコトニナッテ居リマ
ス、卽チ「軍需會社ノ業務執行、株主總會、社
員總會及社債權者集會ノ招集及決議其ノ他
軍需會社ノ運營ニ關シテハ他ノ法律ノ規定ニ
拘ラズ勅令ヲ以ッテ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得」、
又「軍需會社ニ關シテハ必要アルトキハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ統制、取締等ニ關スル法
律ノ規定ニ付テ其ノ適用ヲ排除シ又ハ特例
ヲ設クルコトヲ得」、斯樣ニ此ノ軍需會社ニ
對シマシテハ、一般ノ法令ノ規定ニ拘ラズ、
種々ノ拘束ヲ除外致シテ居ル規定ヲ存スル
ノデアリマス、次ニ前述ノ如キ各種ノ命令、
處分ヲ爲シタル場合ニ於テ、必要アルトキ
ハ政府ハ軍需會社ニ對シテ補助金ノ交付、
損失ノ補償、是等ニ止マラズ尙進ンデ利益
ノ保證ヲ爲スコトヲ得、斯クノ如ク軍需會
社ニ對シテハ手厚キ保護ガ加ヘラレテ居ル
ノデアリマス、次ニ監督規定ト致シマシテ
ハ、監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ
爲ズコトヲ得、事業運營ニ關シ考査ヲ爲ス
コトヲ得、又業務及財產ノ狀況ニ付報〓ヲ
徵シ、官吏ヲシテ臨檢、檢査ヲ爲サシメル
コトヲ得、又政府ハ軍需會社ニ對スル命令
又ハ處分ノ效果ノ確保上支障アリト認ムル
トキハ軍需會社ノ取締役若ハ監査役ヲ解任
シ又ハ業務ヲ執行スル社員ノ業務執行權
ヲ喪失セシムルコトヲ得ル、斯樣ニ一面ニ
於テハ又嚴重ナル監督ヲ加ヘテ居ルノデア
リマス、而シテ斯クノ如ク一面ニ於テハ各
種ノ命令ヲ發シテ軍需會社ヲ拘束シ、又現
行ノ諸般ノ法令規定ニ依ル所ノ拘束ヲ排除
シ、或ハ又特別ナル保護ヲ與ヘテ居ル、斯
樣ナ特殊ノ會社デアリマスカラシテ、其ノ
制裁ニ付キマシテモ亦嚴重ナル規定ガアル
ノデアリマシテ、生產責任者又ハ生產擔當
者ガ職務ヲ懈リ其ノ責任ヲ果サヾルトキニ
ハ、懲戒處分トシテ之ヲ解任又ハ譴責ニ處
スル、又解任セラレタ者ガ取締役其ノ他ノ
役員デアルトキニハ之ヲ解任シ、其ノ他ノ
者ナルトキハ解雇ヲスル、而シテ此ノ解任
又ハ譴責ニ止マラズ、制裁ト致シマシテ、
解任セラレタル場合ニ於ケル退職金ノ全部
又ハ一部ノ支給ヲ禁ズル、又譴責處分ヲ受
ケタル者ニ對シテハ、場合ニ依ッテハ給與
ヲ減ズルト云フヤウナ制裁モアリマス、其
ノ他ノ職員、從業員ガ生產責任者擔當者ノ
指揮ニ對シテ從ハザルトキニハ譴責、訓〓
ト云フ國家ノ爲ス懲戒規定ガアリマス、又
罰則モ相當嚴重ナモノデアリマシテ、本法
ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ逹反シタル者
ニ對シテハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
ノ罰金ニ處ス、或ハ場合ニ依ッテハ、情狀
ニ依ッテハ徵役及罰金併科ノ規定モアリマ
ス、斯クノ如キモノガ大體本法案ノ內容デ
アルノデアリマス、次イデ委員會ニ於キマ
シテハ質疑ニ入リマシタガ、其ノ主ナルモ
ノヲ大體御紹介申上ゲマス、先ヅ最初ニ軍
需會社ハ、其ノ狙ヒハ生產ニ國家性ヲ貫徹
シ、生產責任性ヲ立ッルニアルノデ、會社
ニ生產責任性ヲ負ハシムルノニハ、生產ノ
諸條件卽チ資材或ハ輸送關係、勞力等ノ確
保ニ付テ、政府ニ於テ責任ヲ取ル要ガア
ル、今囘ノ軍需省設置ニ付テ具體的ノ方策
ハ如何デアルカト云フ問ニ對シマシテ、生
產條件ノ上ニ於ケル隘路ハ、軍需省設置ニ
依リ大イニ打開スルコトヲ得ルデアラウ、
卽チ從來企畫ハ企畫院ニ於テヤリ、其ノ實
施ハ各省ニ於テ實行致シテ來タノデアル
ガ、軍需省設置ニ依ッテ、企畫、實施ヲ共
ニ軍需省ニ於テ行フコトトナリマス、又軍
需省ニ於テ發注ノ一元、配給ノ簡素化ニ
依ッテ、計書通リニ適時適所ニ適量ノ配分
ガ行ハレ、同時ニ現場ニ於ケル實情把握ニ
努メ、常ニ事實ニ卽シ檢討シ、隘路ヲ處理
シテ行ク、此ノ爲ニ工務官、勞務官、陸海
軍ノ監理官等ガ從來アッタノデアルガ、之
ヲ唯一ノ監理官ニ統一シテ、一監理官ガ生
產擔當者ト體トナッテ、卽時卽刻隘路打
開ニ付テ協力ヲシテ參ル、發注一元、勤勞
管理、資金調整、動力モ軍需省ニ於テ所管
ヲスル、唯輸送ニ付テハ運輸通信省ニ於テ
ノ所管トナッテ居ルノデ、ソレト協力シテ
參ル、故ニ計畫、實施、是ガ相一致スルノ
デ、著シク刷新セラレルデアラウト云フ答
辯デアリマス、又生產增强策ニ付テ、生產
責任ヲ社長ニ一任シテモ效果ハ一向少イ、
期待ニ反スルデアラウ、社長ハナカ〓〓大
キ過ギテ陣頭指揮ガ容易ニ出來ナイ、故 p
會社ニ生產推進ノ機構ヲ作ルガ宜クナイカ、
又軍需生產ノ爲ニハ科學技術ノ動員ガ必要
デアル、又第一線ニ於ケル軍隊モ必要デアル
ガ、銃後ノ生產陣ニモ之ヲ充實スルノ必要
ガアル、是等ニ付テノ政府ノ所見ヲ問ハレタ
ノデアリマスガ、會社內部ノ機構ハ改善ノ
必要ガアルガ、是ハ生產責任者ニ責任ヲ負
ハセテ之ニヤラセル積リデアル、又科學技
術ノ動員ハ必要デアル、一般ノ科學ト生產
トノ結ビ付ケ、大量生產ニ移ス必要ガアル
ノデアル、而モ急速ヲ要スルコトデアッテ、
科學技術ノ總動員ヲ要スルノデアル、又是
ト關聯致シマシテ、第一線トノ關係ニ關シ
テハ軍トモ話シ合ッテ、軍部ノ狀況ノ許ス限
リ、銃後ニ於テ生產ニ從事シ得ルヤウニ致
シテ居ルト云フコトデアリマシタ、又軍需
會社ト軍需會社ニ非ザルモノトノ區別ヲ明
確ニ、第三者ヨリ見テ區別シ得ルヤウニ公
示等ノ方法ヲ採ル必要ガアルト思フ、然ラ
ザレバ會社、株主ハ別トシテモ、取引ノ相
手方タル第三者ニ對シテ不測ノ損害ヲ與フ
ル虞ガアル、故ニ指定會社ニハ商業登記等
ヲ爲サシムルガ宜クハナイカト云フ質問ニ
對シマシテ、軍需會社トシテノ指定ニ付テ
ハ、第三者ニ對シテ明確ナラシムルノ必要
ガアル、併シナガラ又考ヘナケレバナラヌコ
トハ、防諜上ノ關係デアル、軍需會社ヲ明
カニセナイノヲ宜シトスルコトモ亦考ヘラ
レルガ故ニ、公示サセルニ付テハ尙〓究ノ
餘地ガアル、現在軍管理工場ニ對シマシテ
ハ、會社ニ管理令書ヲ發シテ取引方面ニ於
テモ支障ガナイノデアル、併シナガラ軍管
理工場ト云フモノト軍需會社トハ違フモノ
デアルカラシテ、取引上、第三者保護ノ爲
ニ公示ノ必要ガアルヤニモ亦考ヘラレルカ
ラ、是ハ尙考究ヲ致ス考デアルト云フコト
デアリマシタ、又政府ノ價格賃金政策ニ付
テノ質問ガアリマシテ、政府ノ政策ヲ尋ネ
ラレタニ對シマシテ、價格ニ付テハ、般
價格ハ農商省ニ移管セラルヽコトトナル、
軍需省ニ於テハ其ノ所管物資ノ價格ヲ取扱
フノデアル、卽チ軍需品ヲ目的トスルノデ
アル故ニ價格ニ付テモ國民生活ニ關スル
物トハ一般ニ及ス效果ガ異ルノデアル、軍
需品ニ付テハ、其ノ生產確保ノ爲ニ之ヲ阻
害スル價格ニテハ宜シクナイ、價格ノ關係
ニテ軍需品ノ生產ガ阻害スルヤウナコト
ガアッテハ宜シクナイ、軍需品ハ多ク原價計
算ニ依ル陸海軍ノ調辨價格ニ依ッテ行ハレ
テ、陸海軍ノ經驗ニ依ッテ、軍需省ニ於テ、
軍需省ニ於テハ簡單ニ是ハ決定シ得ルノデ
アル、唯此ノ際考フベキハ、價格決定ノ遲
延ノ爲ノ不安ヲ除ク爲ニ、假價格ヲ定メテ
後ニ生產スル、卽チ眞ノ價格ハ期末ニ〓算
スルコトガ、軍需品ニハ適當デアラウト思
ハレル、又價格適正ナラザル爲ニ軍需品ノ
生產ヲ阻害スルヤウナモノガアッテハナラ
ナイノデアルガ、徒ニ又利益ガ大キイコ
ト又價格決定ニ付テ放漫ナルコトハ考ヘ
ナケレバナラス、賃金モ軍需生產上重要ナ
ル要素デアルガ故ニ、各事業ニ適應シタル
賃金ヲ定メナケレバナラヌ、能率增進上、
賃金增加モ亦考ヘナケレバナラヌ、但シ此
ノ賃金ハ名義上ノ賃金ダケノコトデハナク
テ、他ノ條件ニ付テモ亦考慮シナケレバナ
ラヌ、而シテ價格賃金ニ付テハ特ニ軍需事
業ニ付テ特例ヲ設クルコトトスベキデア
ル、他ノ事業ニ及ス影響ヲ考ヘナケレバナ
ラナイガ如キデアルガ、軍需會社ニ付テハ
特別ノ考慮ヲ拂ハレテ、他ノ事業ト異ッテ
居ル、是ハドウモ已ムヲ得ヌコトデアル、
他ノ部面ニ於ケル惡影響ハ豫想ガシ得ルノ
デアルケレドモ、是ハ忍バナケレバナラヌ
ト云フ答辯ガアリマシタ、次ニ生產責任者
ニ關スル質問デアリマスガ、是ハ多クノ委
員諸君カラ非常ニ注意セラレマシテ、其ノ
運營ニ付キマシテ深キ考慮ヲ拂ハレタノデ
アリマシテ、其ノ質問モ多數ノ委員諸君ノ
御口カラ出テ居リマス、ソレヲ大體御報〓
申上ゲマスト、生產責任者ヲ社長ト限定セ
ザル理由ハ如何、法案ニ依リマスルト、「軍
需會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ生產責任者
ヲ選任スベシ」「軍需會社生產責任者ヲ選任
セザルトキハ政府ハ命令ノ定マル所ニ依リ生
產責任者ヲ任命スルコトヲ得」ト、斯樣ニナッ
テ居ルノデアリマシテ、社長ト云フコトニ
限定ハ致シテ居ラナイノデ、會社ノ社長以
外ノ人デアッテモ宜ケレバ、又第三者ヲ以テ
生產責任者トシテ選任シテモ宜イト云フ規
定ニナッテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付テ
ノ質問デアルノデアリマスガ、只今申上ゲ
ル通リニ社長ニ限ラザル理由ハ如何デアル
カ、政府ニ對シ代表スルモノデアルガ故ニ
是ハ社長トスベキデハナイカト云フノデア
リマス、ソレニ對シマシテハ、生產責任者
ハ會社ニ於テ選任スルノデアル、別ニ社長、
役員ト限定ハシテ居ナイ、適任者ガ生產責
任者トナルコトヲ希望スルノデアル、併
シナガラ實際ハ、原則トシテ社長ガ生產責
任者トナルコトト思ハレル、又生產責任者
ハ二社以上ヲ兼ネルコトヲ得ルト云フコト
モ、規定シテナイケレドモ、是ハ一會社ニ
沒頭スルコトヲ希望スルノデアル、併シ會
社ノ事情ニ依ルコトデアルカラシテ、是ハ
必ズシモ限定ハシナイト云フコトデアリマ
シタニ又一委員ハ、生產責任者ハ會社ニ於
テ取締役中ヨリ選任スルコトトシテ、適任
者ガナイトキニハ、第三者ニ付テ適任者ヲ
求メ、政府ノ認可ヲ受クルモノトシテハド
ウカ、然ラザレバ會社ガ或ハ責任囘避ノ爲
ニ第三者ヲ選任シヨウトスルコトモアルデ
アラウシ、又政府トノ連絡ノ宜イ人ヲ責任
者トシテ人選ヲスルコトモアラウ、或ハ又監督
官廳ノ意ヲ迎ヘテ選任スルト云フ弊モナシ
トハシナイ、現在ニ於テハマダ責任者選任
ニ關スル命令案ガ出來テ居ナイノデアリマ
スルカラシテ、命令ニ規定ヲスル時ニ、之ヲ明
文上ニ規定ヲシタラ宜クハナイカト云フ御
意見デアルノデアリマス、又是等責任者ニ付
キマシテ、政府ノ說明スル所ハ、前ニモ申上
ゲマシタガ、尙責任者ガ取締役以外ヨリ來
タトキニハ、會社ト有機的關係ヲ保持セシ
ムル爲ニ、責任者トシテ選任セラレタ、ナラ
バ役員トシテ業務執行ヲ出來ルヤウニスル、
卽チ株式會社デアッタトキニハ取締役トナ
ル、斯ウ云フノデアリマス、卽チ第三者ガ
責任生產者トナツタトキニハ會社ノ役員トナ
ル譯デアルノデアリマス、又定款ニ定員ノ
定メガアルガアルトキデモ、取締役何名ト
規定ニアルトキデモ、定員ノ規定ニ拘ラズ
出來ルヤウニシヨウト思ツテ居ル、而シテ
又其ノ生產責任者トナリ、會社ノ役員トナッ
タ者、ソレハ政府ニ對シテ責任ヲ持ツガ、
又一面ニ於テ役員トシテハ他ノ役員ト同樣
ニ職務權限ヲ有スルモノデアルノデアリマ
ス、斯クノ如ク生產責任者トシテノ責任ノ
外ニ、他ノ役員ト同ジ權限ヲ有スルモノデ
アリマスガ、他ノ役員ノ代表權ハ制限スル
モノトハ考ヘザルモ、場合ニ依ッテハ制限ノ
必要モアルコトモアラウ、斯ウ云フ答辯モ
アリマシタ、又一委員ハ、責任者ヲ社長以
外ヨリ採ルトキハ、社長ト責任者トガ二人ト
ナツテ責任ノ混淆ヲ來ス虞ガアル、事業經
營責任ト生產責任トハ同一人デナケレバナ
ラヌ、二頭政治トナッテテハ生產弱體化ス
ル虞ガアル、故ニ原則トシテ社長ヲ責任者
トシ、又ハ社長ノ推薦者ヲ以テ爲シタル場
合ニハ政府ノ認可ヲ要スルコトトシテ、ス
ルガ宜イ、若シ社長ガ責任者トシテ不適當
デアルナラバ、其ノ社長ヲ更迭スベキデア
ル、斯クノ如ク飽ク迄モ社長ヲ以テ生產責
任者トシ之ヲ同一人ト爲スベキデアルト云
フ御意見デアルノデアリマス、是等ニ付キマ
シテハ政府ハ、是等ハ運用ニ依ッテ然ルベ
クヤラウト云フ考デアル、併シ尙命令ヲ制
定スル迄ニハ餘裕ガアルカラシテ十分ニ考
慮シヨウト云フ答辯デアリマシタ、次ニ生產
責任者デアルトカ或ハ又生產擔當者ノ任期
ハドウデアルカト云フ御質問デアッタノデ
アリマスガ、其ノ趣旨ニ依リマスト、生
產責任者ト云フモノハ原則トシテ社長トシ
テ、役員以外ノ第三者ノ任命セラルヽ場合
ニモ役員ト看做スト云フコトデアッタガ、責
任者ハ役員トシテ、任期ニ依ッテ任期滿了ノ
アルモノデアルカ、換言スレバ社長ナリ取
締役トシテノ任期ガ滿了シタトキニハ、生
產責任者トシテモ退任スベキデアルト云フ
御質問デアルノデアリマス、之ニ對スル政
府ノ答辯ハ、商法ナリ定款ニ役員ノ任期ノ
定メガアッテモ、是ハ生產責任者ニハ任期ハ
ナイノデアル、社長ト責任者トノ同一ナル
コトハ望マシキガ故ニ、社長ノ任期ガ滿了
シタトキト雖モ、責任者ハ任期ナキモノデ
アルガ故ニ、社長ノ重任スルコトヲ希望ス
ルノデアル、故ニ生產責任者デアル間ハ、
商法、定款ノ規定ヲ排除スルノ規定ヲ勅令
ヲ以テ定メテ、社長ハ任期滿了ト雖モ生產
責任者デアル間ハ退任ハセナイト云フコト
ニ致スト云フ考デアルト云フコトデアリマ
シタ、更ニ社長ナリ生產責任者タルベキ者
ノ陣頭指揮ニ付テノ御質問デアリマス、生
產ノ最後ノ責任者ハ勞務者デアル、其ノ志
氣〓揚ニ努メナケレバナラヌノデアル、是
ハ首腦者ノ陣頭指揮ニ俟ツ所ガ多イノデア
ル、然ルニ現狀ニ於キマシテハ、首腦者ノ陣
頭指揮ガ甚ダ十分デナイト云フ憾ガアル、
何ガ故ニ其ノ陣頭指揮ニ缺クル所ガアルカ
ト申シマスト、其ノ首腦ガ、或ハ官廳ニ對
スル事務デアルトカ、或ハ出張官吏ナドノ
應接ナドニ遑ガナイト云フヤウナコトノ爲
ニ、陣頭指揮ガ十分ニ出來ナイノデアル、
斯ウ云フ御質問デアリマス、ソレニ對シマ
シテハ、今後ハ政府ノ書面監督ヲ止メ、現
場卽決主義ヲ執ルコトニシテ居ル、又手續
ナリ行政上ノ煩瑣ナル點ヲ一掃スル、從來
資材、資金、勞務等ノ所管官廳ガ分カレテ
居ッタト云フコトガ、今度ハ軍需省ニ統一サ
レル、從ッテ會社首腦者ガアチラコチラニ
奔走スル必要ガナクナル、其ノ他有ラユル
方面ニ於テ官廳關係ノ事務ラ簡素ニシテ煩
瑣ヲ少クスル、是等ハ政府ト會社トノ方
ノ關係デアリマスガ、又會社自體ニ於キマ
シテモ、會社ノ本社ト工場ト云フモノガ相
當遠隔ノ地ニ在ル場合ガアツテ、工場長或
ハ首腦部ガ出張スル要件ガアレバ、遠イ所
ニ出張セナケレバナラヌ、是等ノ爲ニ陣頭
指揮ニ缺クルヤウナコトモ無キニシモ非ズデ
アルカラシテ、是等ハ今後ノ現場卽決主義
ニ依ッテ相當是正サレルデアラウ、サウシテ
十分ニ生產責任者ナリ生產擔當者ノ創意工
夫デヤラセテ、大イニ志氣〓揚ニ努ムル考
デアルト云フコトデアリマシタ、軍需會社
ノ監理官ニ關スル質問ヲ是ヨリ御紹介申上
ゲマスルガ、先ヅ監理官ノ權限範圍ハ如何
デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、具體的
ニ監理官ノ現場ニ於テ處理スル事項ヲ擧グ
ルト云フコトハ困難デアルガ、各種ノ許可
認可ト云フモノノ、廢止スルモノハ廢止ヲス
ル、併シナガラ廢止セナイモノモ成ルベク
多ク現場ノ監理官ノ承認ニ止ムル程度ニ致
シタイト云フコトデアリマシタ、次ニ監理
官ノ人選ニ付キマシテ、從來軍方面ノ監理
官ト云フモノハ其ノ希望者ガ少ク、從ッテ其
ノ能力ハ低下致シテ居ッタノデアル、願ハクハ
今後其ノ人選ニ付テハ優秀ナル人ヲ選ビ、又
其ノ事務ニ熟練セシムル爲ニ努メテ轉任ヲ頻
繁ナラシメナイヤウニスベキデナイカ、之
ニ對シマシテ、監理官ノ人選、人事ト云フ
モノハ軍需省竝ニ軍需會社ノ運營上重大ナ
ル關係ガアル、監理官ノ所要人員ハ相當ノ
數ニ上ルモノト思ハレル、故ニ是等ハ特別
任用トシテ、軍官民有ラユル方面ヨリ適任者
ヲ物色シテ人選ヲ致ス考デアル、而シテ又
其ノ在任期間モ相當成ルベク長ク致シタ
イト思ッテ居ルト云フコトデアリマシタ、
又監理官ノ成績査察ノ方法ニ付テノ御質問
ガアリマシタガ、政府ニ於テハ、査察ニ付
テハ現ニ行政査察使ヲ任命セラレテ査察ヲ
行ッテ居ル、又從來トテモ左樣デアルガ、官
廳自體ガ自己査察ヲ行フコトガ多イ、各省
多クハ考査課ヲ設ケテ省ノ事務ノ效率ヲ調
査致シテ居ル、軍需省ニ於テモ考査課ヲ置
イテ、現場ニ於ケル監理官、生產責任者、
擔當者ノ成績ヲ考査セシムル考デアルト云
フコトデアリマシタ、次ニ政府ハ軍需會社
ニ對シテ受注若シクハ發注ニ付テ必要ナル
命令ヲ爲スコトニナッテ居ル、又原料材料ノ
使用ニ付テ命令スルコトガアルガ、是ハド
ウ云フ風ニヤルノデアルカト云フ質問ニ對シ
マシテ、受注發注ハ軍需省ニ於テ一元的ニ
統制ヲスル、軍需省ガ自ラ爲スコトモアリ、
他ノ陸海軍ノ發注ヲ認ムル場合ニモ、統制
ハ軍需省ニ於テ行フノデアル、原料材料ノ
使用ニ付テモ、能率ノ增進上、又使用上濫費
ヲ爲スコトアルトキハ制限ヲセナケレバナ
ラヌ、材料ノ使用ニ指圖スルノハ、生產技
術ニ干涉スルガ如キコトモアルケレドモ、
是ハ、生產技術ニ干涉スルコトハ好マシク
ナイコトデハアルガ、作戰上、輸送上ノ關
係ガアッテ或種ノ原料材料ノ使用ヲ制限シ、
海外品ノ代リニ國內生產品ノ使用ヲ命ゼナ
ケレバナラヌコトモアリ、生產技術ニ干涉
スルコトガフルケレドモ、是等ハ重大ナル
事情ニ依ルモノデアッテ巳ムヲ得ナイ所デ
アル、之ニ付キマシテ、政策上ヨリ來ル場
合ハ差支ナク、已ムヲ得ナイガ、法文ノ用
語ハ甚ダ不明デアル、何カ是ハ明記シナケレ
バ、此ノ點ニ付テ濫用スルヤウナ弊ガアルカ
モ知レナイト云フ御注意ガアリマシタ、次
ニ軍需會社ニ對シテハ、必要アルトキニハ統制
取締等ニ付テ法律ノ適用ヲ排除スルコトノ
現定ガアル、是ハ賃金統制令、價格統制令、
經理統制令ノ排除ニモ及ブノデアルカト云フ
質問デアリマス、之ニ對シマシテハ、其ノ
排除スルモノハ具體的ニハ勅令ヲ以テ定メ
ル、法律、勅令、省令等各種ノ法令ニ依ッテ、
制限デアルトカ、許可デアルトカ、認可ト
云フヤウナ規定ガアルノデアルガ、本法ニ
規定スルモノハ法律上ノ規定ニアルモノデ
アル、勅令以下ノ規定ノ排除ハ本法ノ直接
ノ目的トハナッテ居ナイ、法律ノ規定ノモ
ノハ法律デ以テ排除スル必要ガアルカラ、
此處ニ規定スルノデアルガ、國家總動員法
ニ基ク勅令以下ニ依ルモノモ、其ノ趣旨ニ
依ッテ特例ヲ設クルガ、此處ニ規定スル所
ノ直接ノ目的デハナイト云フコトデアリマ
ス、次ニ本法ハ命令事項ガ極メテ多イ、此
ノ命令ハ指導監督ニハ宜イガ、生產者ノ生
產技術ニ迄干涉スルト云フコトニナレバ、
企業經營ヲ阻害スルノ虞ガアル、從來ノ監
督官ガ生產昂揚ニ熱心ノ餘リ、生產方法ヲ
强フル傾キガアッタガ、斯樣ノ點ニ付テノ虞
ハナイカ、ト云フ質問ニ對シマシテ、本法
ノ運用ニ付テハ、其ノ趣旨ガ生產責任者、
生〓擔當者ノ地位ヲ尊重シ、其ノ人々ノ創
意工夫、努力ニ依ルコトト相成ッテ居ル、
故ニ監理官ヲ各工場ニ配置スルガ、職務ニ
付テハ職務規程ヲ設ケテ、生產責任者ト
體トナリ、生產隘路打開ヲ第一トシ、之二
關シ指導、考査ヲ職務トスル、故ニ技術的
或ハ經營的方面ニハ不必要ナル干渉ハ爲サ
シメヌ考ヘデアル、ト云フコトデアリマス、
次ニ本案全體及ビ第八條以下ノ規定ニ付テ
見レバ、先稈御紹介致シマシタ通リニ、監
督其ノ他ノ規定ガ澤山アルノデアッテ、政
府ハ如何ナルコトモ出來ルヤウニ、規定ガ
嚴密ニ、脫漏ガナイヤウニ出來テ居ルヤウ
ニ見エル、會社ニ重大責任ヲ負ハセ、其
ノ代リニ手腕ヲ發揮セシムルノデ、增產ガ
出來ルノデアルケレドモ、本法ノ如ク諸種
ノコトヲ一々法令ヲ以テ嚴格ニ規定シタナ
ラバ、却テ會社ハ萎縮スル、モット干涉シ
ナイガ宜イデハナイカ、ト云フ質問ニ對シ
マシテ、誠ニ御尤モデアル、責任者、擔當
者ニ全權ヲ委任シテヤラセルノガ本法ノ建
前デアルノデアル、唯兵器等軍需生產デア
ルガ故ニ、作戰上ノ見地ヨリ命令、指圖ノ
必要ガアルノデアル、卽チ第八條以下各種
ノ命令ヲ爲スノ必要ガアル、是ガ故ニ一面
ニ於テ、第十三條ニ於テ損失ノ補償トカ、
補助金ノ交付トカ、或ハ利益ノ保證ヲ爲シ
テ、無理ノナイヤウニ致シテ居ルノデア
ル、此ノ規定ヨリ見マスルト、有ラユル場
合ノ規定ガアル故ニ、甚ダ不安ヲ感ズルガ如
クデアリマスルガ、全體ノ精神ヨリ見ルト、
大イニ自由ヲヤラセル精神ヲ持ッテ居ルノ
デアルト云フコトデアリマシタ、更ニ又軍
需會社ノ〓究機關ハ技術院ノ下ニ統一スル
ヲ可トセズヤ、軍需省ノ設置ト共ニ科學技
術總動員體制ノ必要ガアル、官民〓究機關
ガバラ〓〓トナッテ居ッテハ適當デナイ、官
民〓究機關ハ之ヲ系統的ニ技術院ニ統一ス
ルガ宜クハナイカト云フ質問ニ對シマシ
テ、規在ニ於テハ軍需會社ノ〓究機關ノミ
デハナク、廣ク軍需生產增進ノ必要ガア
ル、今日各種ノ機關ニ於テ〓究セルモノガ
實行ニ移サルヽ必要ガアルノデアル、科學
技術動員會議ト云フモノモ出來、之ニ依ッテ
活用セラルヽコトモ考ヘテ居ルケレドモ、
特ニ軍需會社ノ〓究機關ノミヲ技術院ノ下
ニ置クト云フ考ハナイ、併シ其ノ方向ニ進
ミツヽアル、必要ナルコトハ勿論デアルト
云フコトデアリマシタ、大體以上ノ如キ御
質問、又色々細カイ質問ガアリマシタガ、餘
リ時間ヲ取リマスルカラ此ノ程度ニ止メマ
スルガ、委員中ノ法律ノ權威者デアル方ハ、
本法案ノ各條ニ付テ色々詳細ナル檢討ヲ盡
サレマシタ、一々ソレ〓〓〓ノ節條ニ付テ意見
ヲ述べ、質疑ヲ爲シ日批評ヲ試ミラレマシタ
ガ、此處ニ之ヲ御紹介スルコトハ餘リ細カ
クナリマスルカラ省略致シマス、併シナガラ
同委員ハ最後ニ希望的意見ヲ述べラレマシ
タ、本法ノ如キハ重大ナル法案デアルガ、
之ヲ一日ニテ審議スルノハ無理デアル、字
句ノ如キモ修正スベキ所ノ必要モアル、
體法律制定ト云フモノハ憲法上重大ナルモ
ノデアル、斯カル重要法案ヲ短時日ニ議決
出來ルト思フコトハドウカト思フ、併シ今
日ノ時局ハ非常時局デアル、知時日ノ議會
ニ提出スルノヲ不可ト言フノデハナイ、併
シナガラ斯樣ナ重大ナル法案ハ、之ヲ提出
スルナラバ、法文ナリ命令ノ內容モ十日ヤ
二週間前ニ作ッテ、豫メ〓究ナサシムルガ宜
イ、短期ノ議會デアルケレドモ、之ヲ議會
ニ提出セラレルノハ宜イガ、一夜作リト
ナラナイヤウニセラレタイモノデアルト
云フ希望的意見デアリマシタ、尙序ヲ以
テ申上ゲマスガ、本法ノ實施期ハ何時カ
ト申シマスルト、本法ハ時局ノ情勢上急施
ヲ要スルモノデアル、併シナガラ此ノ
實施期日ハ未ダ確定ヲ致シテ居ラナイ、軍
需省ノ設立ト竝行シテ、官廳方面、又陸海
軍、或ハ又會社方而トモ協力シテ準備ヲ急
イデ居ル次第デアルト云フコトデアリマシ
タ、以上ヲ以テ質疑應答ノ御紹介ハ終リマ
シテ、討論ニ入リマシテ、一委員ヨリ發言
ガアリマシタ、ソレニ依リマスルト、生產
擴充ハ思フヤウニ行カナイ、却テ低下セル
モノアリト言ハレテ居ル、然ルニ之ヲ調査
スルト、其ノ原因ハ、功ヲ急グノ結果餘リ
ニ干渉ニ過ギテ、當業者トノ間ノ意見ノ扞
格ヲ生ジタルノガ主ナル原因デアル、今少
シ當業者ノ經驗知識ヲ活用シテ、彼等ノ道
義心ニ信賴シヤラセレバ宜シイ、從來直接
開接ニ、政府當局ニ對シテ進言ヲ致シタ所
デアルガ、今回ノ立法ヲ見ルト、生產責任
者、生產擔當者ヲシテ十分ニ責任ヲ負ハシ
メテ生產ニ當ラセルモノデアルカラシテ、
是ハ自分ノ歡迎スル所デアルト云フ意見ヲ
述ベラレマシテ、贊成ヲ表セラレマシタ、
採決ニ移リマシタル處ガ、特別委員全會一
致ヲ以テ、本案ハ可決スベキモノナリト議
決致シマシタ次第デアリマス、以上ヲ以テ
御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=45
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046・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=46
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047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=47
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048・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=48
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049・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=49
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050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=50
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051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=51
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052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報〓通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=52
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053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=53
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054・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=54
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055・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=55
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056・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=56
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057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=57
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058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=58
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059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=59
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060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ議案全部
ヲ議了致シマシタ、是ニテ散會ヲ致シマス
午後九時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008303242X00319431028&spkNum=60
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