1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○所得税法外二十九法律中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=0
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001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 本委員會ヲ開
會致シマス、先ヅ大藏大臣カラ法案ニ關シ
マシテ、御說明ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=1
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002・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 本委員會ニ付託
トナリマシタ所得稅法外二十九法律中改正
法律案ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ說明
致シタイト存ジマス、本會議ニ於テモ申上
ゲマシタ如ク、政府ハ戰局ノ苛烈化ニ伴フ
臨事軍事費其ノ他、決戰下避クベカラザル
諸經費ノ增加ニ因ル財政需要ノ膨脹ニ對處
致シマシテ、極力租稅收入ノ增加ヲ圖リ
マシテ、以テ戰時財政ノ基礎ヲ鞏固ナラシ
ムルコトニ努メ、之ト共ニ他面戰時經濟ノ
圓滑ナル運營ヲ期スル爲、購買力ノ吸收、
消費ノ抑制ヲ圖リ、以テ國民生活ヲ確保シ
ナガラ物資、勞力、資金等、凡ソ國家經濟
ノ總力ヲ擧ゲテ戰勝獲得ノ目的ノ爲ニ、戰
爭生產力ニ集中スルノ必要ガ愈〓緊切ナルモ
ノガアルト認メマシテ、仍テ臨事軍事費ノ
財源ノ一部ニ充當スル爲、此ノ際增稅ヲ行
フコトトシ、之ニ關スル本法律案ヲ本議會
ニ提案致シタ次第デアリマス、而シテ昨年
ニ於キマシテハ、酒稅等ノ間接稅ヲ中心ト
致シマシテ相當多額ノ增稅ヲ行ヒマシタ關
係モアリマスシ、今囘ノ增稅ハ自然所得稅
等ノ直接稅ヲ中心トスベキハ勿論デアリマ
ス、併シ今次增稅ノ趣旨ニモ顧ミマシテ、
間接稅其ノ他ニ付テモ相當ノ增徵ヲ行フコ
トト致シタノデアリマス、之ト同時ニ生產
力ノ擴充、貯蓄ノ增强、其ノ他戰時下緊要
ナル諸經濟政策ト租稅トノ調和ニ付キマシ
テハ特ニ愼重ニ考究ヲ致シマシテ、適當
ト認メル措置ヲ講ズルコトト致シタノデア
リマス、又稅務行政ノ全般ニ亙リ極力之ガ
簡素化ヲ圖リマスルト共ニ、課稅ノ適正
充實ヲ期スル爲ニ適當ト認ムル改正ヲ行ハ
ムトスル次第デアリマス、而シテ其ノ要點
ハ、第一ニ所得稅ニ於キマシテ新タニ丙種
ノ事業所得ヲ設ケマシテ、源泉徴收制度ヲ
擴充强化シタルコトデアリマス、第二ノ
點ハ適正ナル納稅ノ確保ニ付キマシテ特ニ
留意致シタコトデアリマス、第三ニハ決戰
下ノ現狀ニ顧ミマシテ、官民相互ノ手數ヲ
極力省キ簡便ナラシムル爲ニ、稅制及ビ賦
課徵收制度ノ簡素化ヲ圖ッタコトデアリマ
ス、是ヨリ法案ノ內容ニ付キマシテ御說明
ヲ致シタイト思ヒマス、先ヅ所得稅デアリ
マスルガ、今囘ノ增稅ハ所得稅ニ主眼ヲ置イ
タ次第デアリマシテ、所得稅中、分類所得
稅ニ付キマシテハ、各種所得間ノ負擔ノ權
衡ニ留意シナガラ稅率ノ引上及ビ課稅範圍
ノ擴張等ヲ行ヒマシタ、總稅額ニ於テ大體
五割ノ增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマ
ス、此ノ改正ノ要點ハ、第一ハ稅率ノ引上
デアリマス、卽チ稅率ヲ原則トシテ百分ノ
五ダケ引上ゲ、例ヘバ不動產所得ニ付キマ
シテハ百分ノ十六デアリマスノヲ百分ノ
二十一ニ致シ、甲種ノ事業所得ニ付キマシ
テハ百分ノ十三デアリマスノヲ百分ノ十八
ニ致シ、又勤勞所得ニ付キマシテハ百分ノ
十ヲ百分ノ十五ニ引上ゲルコトト致シタ譯
デアリマス、唯國債ノ利子所得ニ付キマシ
テハ、其ノ性質等ニモ顧ミマシテ百分ノ四
ノ引上ニ致シマシタ、又乙種事業所得ニ付
キマシテハ百分ノ六ヲ引上ゲマシタ、山林
ノ所得、退職所得、〓算取引所得ニ付キマ
シテモ、ソレ〓〓適當ト認ムル增徵ヲ行フ
コトト致シタ次第デアリマス、尙元本五千
圓以下ノ銀行貯蓄預金、產業組合貯金等ニ
付テハ從來所得稅ヲ課稅シナカッタノデ
アリマスルガ、今囘ノ增稅ノ趣旨ニモ
顧ミマシテ今囘ノ增稅部分、卽チ百分ノ五
ト云フ上リマスル部分ダケヲ稅ヲ課スルコ
トト致シマシタ、ソレト共ニ其ノ他ノ銀行
預金、元本五千圓以下ノモノノ利子等ニ對
シマシテモ、實際ノ狀況ニ顧ミマシテ、同
樣ノ課稅率ニ改メタノデアリマス、又配當
所得ニ付キマシテハ、從來其ノ所得額ヨリ
一割ヲ控除シタモノヲ課稅ノ對象金額ト致
シテ居ッタノデアリマスルガ、今囘之ヲ廢
止致シマシタ、併シナガラ稅率ノ引上ノ方
ヲ緩和致シマシテ、事實上ノ調整ヲ致シマ
シタ、稅率ヲ百分ノ十五ヨリ百分ノ十九、
百分ノ四ノ引上ニ止メタノデアリマス、尙
產業組合、統制組合等ノ特別ノ法人カラ受
クル剩餘金ノ分配ニ付キマシテハ、從來配
當所得ニ比シマシテ稅率ヲ百分ノ五ダケ輕
減致シテ居ッタノデアリマスガ、今囘ハ此
ノ輕減ヲ廢止シマシテ、通常ノ稅率ニ依リ
課稅スルコトニ致シタノデアリマス、第二
ハ課稅範圍ノ擴張デアリマス、今囘ノ增徵
ニ當リマシテハ、免稅點、基礎控除等ハ原
則トシテ引下グルコトヲ見合セタノデアリ
マス、從ッテ課稅範圍ノ擴張ハ、小ナル部
分ニノミ止ッタノデアリマス、退職所得ニ
關シマシテハ、共ノ控除額ヲ五千圓ヨリ三
千圓ニ引下ゲマシタ、又產業組合、統制組合
等ノ特別ノ法人ノ清算分配金等ニ付キマシ
テモ、各方面共租稅負擔ノ增大スル此ノ際
トシマシテハ課稅スルコトヲ適當ナリト
認メ、所得稅ヲ課スルコトト致シタノデア
リマス、第三ハ源泉徴收制度ノ擴充强化デ
アリマス、日傭勞務者等ノ報酬、料金等ニ
付キマシテハ、從來建前トシテハ賦課課稅
ヲ行フコトデアツタノデアリマス、併シナ
ガラ實情ハ課稅ヲサルベキ所得ノ程度ニ平
時ニ於テハ至ラナイモノガ多イノデアリマ
シテ、又課稅致ストシマシテモ、賦課課稅
ノ方法デハ、ナカ〓〓適當ナル課稅ハ困難
ナル實情デアツタノデアリマス、處ガ、時
局ニ因ル經濟ノ樣相ノ變遷ニ伴ヒマシテ、
此ノ邊ノ所得ガナカ〓〓增大ヲ致シマシテ、
所得稅ヲ賦課サルベキ程度ニ達スル者ガ相
當アルト認メラレルノデアリマス、併シナ
ガラ現在ノ賦課課稅ノ方法デハ極メテ不十
分デアリマスルノデ、特ニ此處ニ注意ヲ致
ス必要ガ認メラレ、實際上ノ課稅ガ、充實
シテ行ハレマスルト云フコトヲ主眼ト致シ、
他面納稅及ビ徵稅上ノ手續ヲ簡便ニスルト
云フコトモ考ヘマシテ、新タニ丙種ノ事業
所得トシテ分類所得稅ヲ源泉ニ於テ徵收致
シマシタ、尙是ハ只今申上ゲマシタ日傭勞
務者等ノ料金ノ外、尙講演等ノ報酬ニ付キ
マシテモ同樣ニ致スノデアリマスルガ、是
等ノ報酬ヤ賃銀等ノ支拂ヲ爲ス者ハ、支拂
ノ際ニ徵收セシムル、斯樣ニ致シタノデゴ
ザイマス、第四ハ、年ノ中途ニ於テ稅法施
行地ニ住居所ヲ有スルニ至リマシタ者ニ對
スル所得稅ノ課稅ノ適正ヲ期シマスル爲、
適當ナル規定ヲ設クルコトト致シタノデア
リマス、綜合所得稅ニ付キマシテハ、第
ニ分類所得稅ノ引上トノ關係ヲ考慮シマシ
テ、稅率ノ引上ヲ致シタノデアリマスルガ、
現在ニ於ケル負擔ノ狀況モ考慮シマシテ、
最低三千圓ヲ超ユル部分ニ對スル稅率ハ、
現行百分ノ六デアリマスルノヲ百分ノ八ニ
致シ、最高五十萬圓ヲ超ユル所得ノ部分ニ
付キマシテハ、稅率ヲ百分ノ七十二デアル
ノヲ百分ノ七十四ニ上ゲマシテ、總稅額ニ
於テ三割弱ノ程度、一割八分位ト存ジマス
ガ、ソレダケノ增徵ヲ行フコトト立案ヲ致
シマシタ右ノ引上ニ對應致シマシテ、公
社債、銀行預金等ノ利子ニ付源泉課稅ヲ選
擇シタ場合ニ於ケル綜合所得稅ノ稅率ヲ、
百分ノ二十五カラ百分ノ三十ニ引上ゲタノ
デアリマス、第二ニ、公社債、預金ノ利子等
ニ付キマシテハ、從來總所得ノ計算ニ當リ
共ノ四割ヲ控除シテ課稅致シテ居リマシタ
ガ、右ノ源泉課稅ノ場合ニ於ケル稅率ノ引
上ニ伴ヒマシテ、之ヲ三割ニ引下ゲタノデ
アリマス、第三ニ、從來總所得一萬圓以下
ノ者ノ勤勞所得ニ付キ"マシテハ、其ノ所
得ノ性質ニ顧ミマシテ、一割ヲ控除シテ課
稅ヲ致シテ居ツタノデアリマスガ、今囘之
ヲ六千圓以下ノ所得者ニ限ルコトトスル等
ノ改正ヲ致シテ居ルノデアリマス、法人稅
ニ付キマシテハ、所得稅ノ增徵トノ權衡、
增稅カ產業及ビ經濟界ニ與ヘマスル影響等
ニ付考ヘマシタ結果、所得ニ對スル稅率ヲ、
百分ノ二十五ヲ百分ノ三十ニ引上グルコト
ト致シマシタ、尙同族會社ノ加算稅金ニ付
キマシテモ、所得稅ノ增徵ニ伴ヒマシテ現
行稅率百分ノ二十四乃至百分ノ七十二ヲ百
分ノ三十乃至百分ノ七十四ニ引上ゲルコト
ト致シタノデアリマス、又資本ニ對スル稅
率ハ、昭和十五年以來增徵ヲ行ハナカッタ點
等ヲモ考慮シ、之ヲ千分ノ一·五ヨリ千分ノ
三ニ引上ゲタノデアリマス、特別法人稅ニ
付キマシテハ、三點ニ付テ改正ヲ行フノデ
アリマス、第一ニ特別法人稅ノ稅率ハ、現
在百分ノ十二·五トナッテ居ルノデアリマス
ガ、一般ノ法人ニ對シ法人稅、臨時利得稅、
營業稅等各種ノ租稅ガ增徵セラルヽ此ノ際
トシマシテハ、之ヲ百分ノ二十ニ引上グル
コトヲ適當ト考ヘルノデアリマス、第二ニ
特別ノ法人ガ解散又ハ合併ヲ爲シタル場合
ノ〓算剩餘金ニ付キマシテハ、從來非課稅
デアッタノデアリマスガ、各事業年度ノ剩餘
金ニ對スル稅率ヲ引上ゲタル點等ニ顧ミマ
シテ、之ヲ課稅外ニ置キマスコトハ適當ニ
非ズト考ヘラレマスノデ、今囘〓算剩餘金
ニ對シテモ、新タニ課稅スルコトト致シタ
ノデアリマス、唯農業團體法、商工組合法
等ノ施行ニ依リ、從來ノ〓體ガ改組統合セ
ラルヽ場合ニ付テハ、本改正法施行後一年
ヲ限リ課稅セザルコトト致シテ居ルノデア
リマス、第三ニ、特別ノ法人ガ所有スル國
債ノ利子ニ付テハ、剩餘金ノ計算ニ當リ、
其ノ七割ニ相當スル金額ヲ控除スルコトト
ナッテ居ルノデアリマスガ、元來是等ノ法人
ニ對シテハ分類所得稅ヲ課稅シテ居リマセ
ヌ點、及ビ是等ノ法人ノ租稅負擔ノ實情等
ニ顧ミマシテ、之ヲ廢止スルヲ適當ト認メ
タノデアリマス、尤モ之ニ依ル負擔ノ急激
ナル變化ヲ避クル爲、本改正法施行後一年
間ハ尙三割ヲ控除スルコトト致シテ居ルノ
デアリマス、臨時利得稅ニ付キマシテハ、
最近屢次ノ增稅等ニ依リマシテ、其ノ負擔
ハ相當重クナッテ居ルノデアリマスガ、決
戰下ノ現在トシテハ、或程度增徵スルコト
ハ亦巳ムヲ得ナイト考ヘラレマスノデ、法
人臨時利得稅ニ付テハ、現行稅率百分ノ五
十五乃至百分ノ七十五デアリマスルガ、各階
級共ニ百分ノ五ダケ引上ゲ、百分ノ六十乃
至百分ノ八十トシ、小法人ニ對シテモ、
ソレ〓〓百分ノ五ヲ引上ゲマシタ、又個人ノ
讓渡利得ニ對スル稅率百分ノ二十五乃至百分
ノ五十五デアルノヲ百分ノ三十乃至百分ノ
六十ト致シタノデアリマス、又配當利子特
別稅ニ付キマシテモ、最近增徵ヲ行ハナカッ
タ點ヲモ考慮致シマシテ、現行稅率百分ノ十
五ヲ百分ノ二十五ニ引上ゲタノデアリマス、
其ノ地方〓體ノ財源タル營業稅、地租及家
屋稅ニ付テモ、地方財政ノ現狀及ビ他ノ各
稅トノ權衡等ノ見地カラ現行稅率百分ノ一·
五、百分ノ二、百分ノ一·七五ヲ、ソレ〓
百分ノ一·五ヲ百分ノ二ニ、百分ノ二ヲ百分
ノ三ニ、百分ノ一·七五ヲ百分ノ二·五ニ引上
グルコトト致シタノデアリマス、次ニ相續
稅デアリマスガ、右ニ申述ベマシタヤウニ、
所得ニ對シテモ相當增稅ヲ致シマシタ關係
上財產ニ付キマシテモ或程度ノ負擔ヲ
增加スルコト亦已ムヲ得ナイト認メ、總稅
額ニ於テ二割程度ノ增徵ヲ行フコトト致シ
マシタ、例ヘバ現行家督相續第一種一萬圓
以下ノ金額千分ノ十二、百萬圓ヲ超ユル金
額千分ノ三百、五百萬圓ヲ超ユル金額ハ千
分ノ四百デアリマスルガ、之ヲ千分ノ十二
ヲ千分ノ十三ニ、又千分ノ三百ヲ千分ノ三
百六十五ニ、千分ノ四百デアルノヲ千分ノ
四百四十ニ引上グルコトト致シタノデアリ
マス、卽チ少額ノ相續財產ニ對シテハ、其
ノ急激ナル負擔ノ增加ヲ避クル爲、又非常
ニ多額ノ相續財產ニ付テハ現在旣ニ相當高
率トナッテ居ル點ヲモ考ヘマシテ、增徵割合
ヲ比較的輕度ニ止ムルコトト致シテ居ルノ
デアリマス、尙是ト同時ニ從來稅額百圓以
上デアリマストキハ年賦延納ヲ認メルコトト
シテ居ルノデアリマスガ、最近ノ經濟事情
ノ變化、又事務ノ手續ノ簡素化等ノ點ニ顧
ミマシテ、之ヲ三百圓以上ノ場合ニ限ルコ
トト致シタイノデアリマス、通行稅ニ付キマシ
テハ、從來粁程ニ依ル階級定額稅率ニ依ッテ
課稅シテ居ルノデアリマスガ、之ヲ原則ト
シテ、一粁當リ一等二錢五厘、二等一錢二
厘五毛、三等二厘五毛ノ比例稅率ニ改メマ
シテ、以テ負擔ノ公正ト事務ノ簡捷化ヲ圖リ
マシテ、總稅額ニ於テ七割程度ノ增徵ヲ行
フコトト致シタノデアリマス、唯其ノ例外
ト致シマシテ、郊外電車等ノ如ク區間制ニ依
リ運賃ヲ定メマシタ線路等ニ付テハ、粁程ニ
依ル稅率ヲ採用スルコトハ、其ノ實情ニ適シ
マセヌモノガアリマスカラ、例ヘバ乘車船
區間三十粁以下ノトキハ、一等五十錢、二
等二十五錢、三等五錢等ノ如ク、從來ノ階級
定額稅ヲ存置スルコトト致シタノデアリマ
ス、尙之ト共ニ三等乘客ニ付テハ、現在四十
粁以下ノ乘車船ハ非課稅トナッテ居ルノデ
アリマスガ、各方面共增稅ノ行ハレマス此
ノ際ト致シマシテハ、之ヲ二十粁ニ引下ゲ
マシテ、是等ノ乘車船ニ付テモ或程度負擔
ヲ課スルヲ適當ト認メタノデアリマス、尙
勞務者等ノ定期劵等ニ付キマシテハ非課稅
デアリマスコトハ現在通リデアリマス、登
錄稅ニ付キマシテハ、定率稅ニ付テハ、不動
產ノ賣買等ニ因ル所有權ノ取得ニ對スル稅
率ヲ、現行千分ノ三十デアルノヲ千分ノ四十
ニ、會社設立ノ場合等ノ登記ニ對スル稅率、
現行千分ノ五デアリマスノヲ千分ノ六ニ引
上ゲマス等稅率ヲ引上ゲ、又定額稅ニ付キ
マシテハ最近久シク增徵致シマセヌ點ヲモ
顧ミマシテ、十割程度ノ引上ヲ行ヒマシタ、
是等ニ依リ總稅額ニ於テ二割程度ノ增徵ト
相成ル次第デアリマス、尤モ船舶、海員、
特許權、鑛業權、社債等ニ關スル登記又ハ
登錄、臨時租稅措置法其ノ他ノ特別法ノ規定
ニ依ル特別稅率ニ付キマシテハ、其ノ性質
ニ顧ミ增徵ヲ見合ハスコトト致シテ居ルノ
デアリマス、次ニ消費稅デアリマスガ、今
囘ノ增稅ノ趣旨ハ、決戰下ノ現狀ニ顧ミ、奢侈
的性質ヲ有スル消費ニ對シマシテハ特ニ重
課致シマシテ、然ラザル方面ノ消費ニ對シ
マシテハ、或ハ增徵セザルカ、又致シマシ
テモ、增徵割合ヲ少カラシムルコトニ努メ
テ居ル次第デアリマス、先ヅ酒稅ノ改正ニ
付テ說明申上ゲマスルト、從來酒稅ハ原則
トシテ酒類造石稅ト酒類庫出稅トノ二本建
ニ大體ナッテ居ッタノデアリマスガ、課稅方
法ノ簡素化ヲ圖ル爲、造石稅ヲ廢止シテ庫
出稅一本ト致シマシタ、又稅率ヲ引上ゲ、
總稅額ニ於テ七割程度ノ增徵ト致シタノデ
アリマス、卽チ〓酒ニ付テ申シマスレバ、
品質ガ優良ナル第一級酒ニ付テハ、二七〇
付四百八十圓引上ゲマシテ、現在ハ造石稅
ト庫出稅ヲ合シテ、一石五百十五圓デアリ
マスノヲ九百九十五圓ノ稅ニ相成リマス、
第二級酒及ビ第三級酒ニ於キマシテモ同ジ
ク現在三百四十圓、或ハ二百十圓デアリマ
スノヲ、ソレ〓〓六百二十圓、或ハ三百四
十圓ニ引上グルコトニ致シタノデアリマス、
其ノ結果〓酒ノ小賣價格ハ第一級酒ハ一升
ニ付十二圓程度、第二級酒ハ八圓程度、第
三級酒ハ五圓程度ト相成ル見込デアリマ
ス、尙第四級酒ハ配給事務ノ簡素化、其ノ
他ノ見地カラ之ヲ廢止スルコトト致シマシ
タ、又合成〓酒ニ付テモ右ニ準ジ相當程度
ノ增徵ヲ行フコトト致シマシタ、麥酒ニ付
キマシテハ、一石ニ付現在百七十七圓八十
錢ノ稅デアリマスガ、之ヲ二百八十圓ニ引
上ゲマシタ、其ノ結果普通罎一本ノ小賣價
格ガ九十錢ノ程度デアリマスガ、是ガ一圓
三十錢程度ト相成ル見込デアリマス、其ノ
他味淋、燒酎、雜酒等ニ付キマシテモ、品
質等ヲモ考ヘマシテ、稅負擔ニ差等ヲ設ケ
ナガラ、適當ナ稅率ヲ編出シタ次第デゴザ
イマス、尙生產力擴充關係產業其ノ他ノ重
要產業ニ從事スル勞務者等ニ對シ配給致シ
テ居リマス價格特配酒ニ付テハ、現在程度
ノ課稅ノ輕減ハ矢張リ存置スル方針デゴザ
イマス、是ハ餘談デハゴザイマスルガ、煙
草ノ値上ニ付キマシテモ、煙草ノ價格特配
ノモノニ付キマシテハ矢張リ過去ニア
リマシタ程度ノ差ハ存置ヲシテ置ク酒ト
同ジ方針ヲ採ッテ居ル次第デアリマス、〓涼
飮料稅ニ付キマシテハ、其ノ消費ノ性質及
ビ酒類ナドトノ權衡ヲモ考ヘマシテ、相當
大幅ノ增徵ヲ行ヒマシタ、卽チ第一種、玉
「ラムネ」ハ一石ニ付二十圓デアルノヲ七十
圓ニシマシタ、第二種、「サイダー」ハ一石
ニ付六十五圓デアリマスノヲ百六十圓ニ上
ゲマス、第三種、「ソーダ」水ハ炭酸「ガスㄴ
一瓩ニ付二十五圓ヲ五十圓ニ引上ゲタノデ
アリマス、其ノ結果、今囘ノ增稅ニ依リマ
シテ、玉「ラムネ」ハ、小賣價格ガ今十錢デ
アリマスルガ、十五錢程度ニナリ、「サイ
ダー」ハ現在三十錢位デアリマスルガ、是ガ
五十錢程度ト相成ルト思ヒマス、砂糖消費
稅ニ付キマシテハ、砂糖ノ家庭消費ニ付キ
マシテハ他ノモノヨリモ增徵ノ程度ヲ輕ク
スルノガ至當ト認メマシテ、是ハ二割程度
ノ增稅ニ止メタノデアリマス、第二種乙、
卽チ普通ノ白砂糖ニ付テハ、現在百斤ニ付
テ十四圓五十錢デアリマスガ、之ヲ上ゲマ
シテ、百斤ニ付十七圓五十錢ト致シマシタ
其ノ他ノ砂糖糖蜜等ニ付キマシテモ、之三
準ジマシテ適當ニ增徵ヲ行フコトト致シテ
居リマス、是デ今囘ノ引上ニ依リマシテ、
家庭用ノ白砂糖一斤三十五錢五厘ノ現在販
賣價格デアルト思ヒマスガ、是ガ三十八錢
五厘程度トナル見込デアリマス、又料理店、
旅館等ノ業務用、菓子其ノ他ノ製造加工用
ノ砂糖等ニ對シマシテ、特別消費稅ニ付テ
ハ、其ノ消費ノ性質ニ顧ミマシテ大幅ノ增
稅ヲ致シテ十割程度ノ引上ヲ、家庭用ノ更
ニ其ノ上ニ行ッテ居ルノデアリマス、現行
稅率ガ百斤ニ付五圓デアルノヲ十圓ニ、五
圓又ハ十圓デアリマスノヲ十圓、又ハ二十
圓ニ引上ゲタノデアリマス、次ニ織物消
費稅ニ付キマシテハ、現在ハ綿、「ステー
プル·ファイバー」等ヲ以テ組成スル
織物ニ付キマシテハ、課稅セザルコトト
ナッテ居ルノデアリマスガ、今囘ノ增稅ノ
趣旨ニ顧ミマシテ、原則トシテ所謂非課稅
ヲ廢止スルノデアリマス、皆課稅スルコト
ニ致シマシタガ、綿織物ニ付キマシテハ其
ノ用途ノ實情ニモ鑑ミマシテ、從來通リ非
課稅ヲ存置スルコトト致シタノデアリマス、
物品稅ニ付キマシテハ、第一點ハ稅率ノ引
上デアリマス、卽チ物品稅中、第一種及ビ
第二種ノ物品ハ、御承知ノ如ク奢侈的性
質ヲ有スル物品、竝ニ國民生活上比較的不
急ト認メラレ、又ハ其ノ消費ガ擔稅力ヲ示
スト認メラレル物品ニ付廣ク課稅スルモノ
デアリマス、今囘ノ增稅ニ於キマシテハ
物品ノ性質等ニ應ジマシテ、種別及ビ類別
ニ付適當ト認ムル組替へヲ行ヒマスト共ニ、
第一種ノ物品ニ付テハ現在甲類百分ノ八十、
乙類百分ノ三十、丙類百分ノ十デアリマス
ルノヲ、甲類百分ノ百二十、乙類百分ノ六
十、丙類百分ノ四十、丁類百分ノ二十ニ改
メマシテ、又第二種ノ物品ニ付キマシテハ、
現在甲類百分ノ八十、乙類百分ノ三十、丙
類百分ノ二十、丁類百分ノ十デアリマスノ
ヲ、甲類ハ百分ノ百二十、乙類百分ノ六十、
丙類百分ノ四十、丁類百分ノ二十ニ改メマ
ス、尙第一種乙類及ビ丙類竝ニ第二種乙類ノ
物品中、奢侈的性質强キモノニ付キマシテ
ハ稅率ヲ特ニ百分ノ八十ト致シマスルト
共ニ、第一種丙類ノ物品中、比較的擔稅力
少キモノト認メラルヽモノニ付キマシテハ、
特ニ稅率ヲ百分ノ二十ニ輕減スル措置ヲ講
ジテ居ルノデアリマス、第三種ノ物品ニ付
キマシテハ、燐寸ノ現行稅率、千本ニ付十
五錢デアリマスルノヲ二十五錢ニ引上ゲマ
シタ外、飴、「サツカリン」蜂蜜等ニ付キマ
シテ、ソレ〓〓適當ト認ムル引上ヲ行フコ
トト致シテアリマス、第二ニ國民生活上
比較的不急ト認メラルヽ物品ニ付キマシテ
ハ、課稅最低限ノ引下又ハ徹廢ヲ行フコト
ト致シテアリマスルガ、又此ノ際トシテ課稅
スルヲ適當ナリト認メラレマスル若干ノ物
品、卽チ「カレンダー」、繪葉書、數物類、
電話機等ニ對シ、新タニ課稅スルコトト致
シタノデアリマス、第一一ニ第一種ノ物品中、
生產者ガ製造場ヨリ移出スル際課稅スルコ
トガ適當ト認メラレマスル物品、例ヘバ時
計文房具、運動具、陶磁器等ニ付キマシ
テハ、徵稅事務ノ簡素化、課稅ノ適正化ヲ
圖ル等ノ爲之ヲ第二種ノ物品トシテ課稅ス
ルコトト致シタノデアリマス、次ニ遊興飮
食稅デアリマスガ、藝妓ノ花代ニ付テハ、
現在百分ノ二百ノ率デアリマスルガ、之ヲ
百分ノ三百ニ引上ゲ、其ノ他ノ花代竝ニ花
代以外ノ料金ニ付キマシテモ、ソレ〓〓適
當ナル增徵ヲ行フコトト致シテ居リマス、
普通ノ飮食ノ料金及ビ宿泊ノ料金ニ對ス
ル課稅最低限ハ、之ヲ据エ置クコトト致シ
マシタガ、其ノ稅率ハ現行稅率百分ノ二十
乃至百分ノ百デアリマスルノヲ、最低百分
ノ二十ハ据置キ、最高ハ百分ノ百二十ニ引
上ゲルコトニ致シマシタ、尙大衆的料理店
等一定ノ料理店ニ於ケル飮食料金ニシテ五
圓未滿ノモノニ付テハ、課稅ノ脫漏防止及
ビ手續ノ簡素化ノ見地ヨリ、特ニ最低一人
一囘二圓未滿ナルトキ四十五錢、最高五十
圓未滿ナルトキ二圓ノ定額稅ヲ以テ課稅ス
ルコトトシ、此ノ場合ニ於テハ、料金領收
書ニ代ヘ、政府ガ作成シ交付スル納稅切
符ヲ使用セシムルコトト致シタノデアリマ
ス、入場稅ニ付キマシテハ、第一種、卽チ
映畫館劇場等ニ付テハ、現行稅率百分
ノ二十乃至百分ノ百二十ヲ、百分ノ三十
乃至百分ノ二百ニ引上ゲ、第二種、卽チ撞
球場「ゴルフ」場等ニ付テモ、現行稅率百分
ノ三十乃至百分ノ九十ヲ、百分ノ四十乃至
百分ノ百五十ニ引上グルコトト致シマシタ
外、第二種ノ課稅範圍ニ付若干ノ擴張ヲ行
フコトト致シタノデアリマス、特別行爲稅
ニ付キマシテハ、寫眞ノ撮影、調髪整容、
染色等ニ對スル現行稅率百分ノ三十ヲ百分
ノ四十又ハ百分ノ五十ニ、印刷及ビ製本ニ
對スル稅率百分ノ二十ヲ百分ノ三十ニ引上
グルト共ニ、現在ノ課稅最低限ヲ實情ニ適
スルヤウ適當ニ引上ゲ又ハ引下グルコト
ト致シマシタ、又蓄音器、樂器等ノ修繕、
金融機關ノ保護預リ等ニ付テハ、現行課稅
行爲トノ權衡上新タニ課稅スルヲ適當ト認
メ、之ニ課稅スルコトト致シタノデアリマ
ス、其ノ他ノ租稅ニ付キマシテハ、廣〓稅
行付、第一種ノ廣〓ニ對スル現行稅率百分
ノ十ヲ百分ノ三十トシ、第二種ノ廣〓中「ポ
スター」ニ付テハ現行稅率一枚十錢ヲ十五錢
トシ、其ノ他ノ廣告ニ付テモソレ〓〓適當
ト認ムル增徵ヲ行ヒ、又骨牌稅ニ付テモ麻
雀ニ對スル現行稅率一組ニ付十圓ヲ二十圓
ニ其ノ他ノ骨牌ニ付テハ、一組一圓五十
錢ヲ三圓ニ引上グル等十割程度ノ增徵ヲ行
フコトト致シマシタ外、印紙稅ニ付テモ若
干免稅ヲ整理シ、產業組合商工組合等ガ、
其ノ出資者以外ノ者ニ對シ發スル受取書
等ニ課稅スルコトト致シタノデアリマス、
今囘ノ增稅ニ際シマシテハ、適正ナル納稅
ノ確保ト云フコトニ特ニ留意致シタ次第デ
アリマス、就中遊興飮食稅、物品稅其ノ他
ノ間接稅ニ付キマシテハ、最近ニ於ケル屢
次ノ增稅ニ依リ、其ノ稅率ハ相當高率トナ
リ、又納稅義務者ノ數モ極メテ多數ニ上ッテ
居ルノデアリマスガ、其ノ實情ニ於テ種々
遺憾ノ點ガアリマスノデ、課稅ノ適正充實
ト云フコトガ肝要デアルト存ジマス、同時
ニ官民相互ノ手續ヲ簡素ナラシムル爲、必
要ナル改正ヲ行フコトト致シテ居ルノデア
リマス、卽チ第一ハ遊興飮食稅、物品稅、
特別行爲稅等ノ納稅義務者ニ對シ、受取書
又ハ料金領收書ノ發行、政府ガ作成シ交付
スル納稅證紙ノ貼用、其ノ他取締上必要ナ
ル事項ヲ命ジ得ルコトト致シタノデアリマ
ス、第二ハ現在遊興飮食稅、物品稅、特別
行爲稅等ノ徵收ニ付テハ、納稅者ノ組織ス
ル團體ニ對シテ、徵收事務ノ補助ヲ命ジ得
ルコトトナッテ居ルノデアリマスガ、今囘是
等ノ團體ニ對スル監督規定ヲ整備スルト共
ニ、國體員ノ納稅ニ關スル〓知ヲ其ノ代表
者ニ對シ一括シテ爲シ得ルコトト致シタノ
デアリマス、第三ニ遊興飮食稅、物品稅其
ノ他ノ間接稅ニ付惡質ナル犯則者ニ對シテ
ハ體刑ヲモ科シ得ルコトトスル等、罰則
ヲ强化シ、其ノ取締ニ遺憾ナキヲ期スルコ
トト致シタノデアリマス、而シテ是等ニ關
シ必要ナル改正ハ各稅法中ニソレ〓〓規定
スル外、間接國稅犯則者處分法ニ付テモ必
要ナル改正ヲ行フコトト致シテ居ルノデア
リマス、次ニ臨時租稅措置法ノ改正ニ付テ
說明致シタイト存ジマス、今囘ノ增稅案ノ
作成ニ當リマシテハ、前述ノ如ク增稅スベ
キ租稅ノ種類及ビ增稅額ノ決定ニ當リマシ
テ、決戰下ニ於ケル經濟諸政策トノ調和ニ
付テハ、特ニ愼重ナル考慮ヲ拂ッタ次第デア
リマスガ、尙生產ノ增强、產業ノ再編成、
貯蓄ノ增强等各種ノ重要ナル政策ノ圓滑ナ
ル遂行ニ資スル等ノ爲、臨時租稅措置法ヲ
改正シテ、租稅上必要ナル各種ノ措置ヲ講ズ
ルコトト致シタノデアリマス、第一ハ時局下
極メテ緊要ナリト認メラルヽ生產ノ增强ニ
關スルモノデアリマス、卽チ法人ガ其ノ所
得ノ一割以上ヲ留保シマシテ、設備ノ擴張
又ハ國債等ノ買入ニ充テタル場合ニ於テハ、
其ノ運用金額ノ百分ノ七·五ニ相當スル法人
稅ヲ輕減スルコトト致シテ居ルノデアリマ
スガ、今囘各事業年度ノ所得中運用シタル
金額ノ三割ヲ法人稅ノ所得ヨリ控除スルコ
トニ改メタノデアリマス、次ニ法人等ガ特
別價格報奬金ヲ取得シ、之ヲ內部ニ留保シ
タル場合ニ於テハ、課稅上ノ特例ヲ設ケ、
其ノ五割程度ニ付テハ法人稅所得稅等ヲ
課稅セザルコトト致ス見込デアリマス、又
時局產業會社等ノ新規拂込ノ株式ノ配當金
ニシテ、配當率一定以下ノモノニ對スル分
類所得稅ノ輕減程度ヲ擴張致シタノデアリ
マス、第二ハ產業ノ再編成等ニ關スルモノ
デアリマス、時局ノ要請ニ依ル企業整備等
ノ場合ニ付キマシテハ、現在所得稅、法人
稅臨時利得稅等ノ輕減免除又ハ課稅標準
ノ計算ニ關スル特例ヲ認メテ居ルノデアリ
マスガ、最近ニ於ケル企業整備ノ狀況等ニ
顧ミマシテ、右ノ期間ヲ更ニ一年延長スル
コトト致シマシタ、其ノ外其ノ適用範圍ヲ
若干擴張致シタノデアリマス、第三ハ、貯
蓄ノ增强ニ關スルモノデアリマシテ、之二
關シマシテハ、所得稅法ノ改正ニ付テモ考慮
シタノデアリマスガ、現在長期預金等ニ付
キマシテハ、其ノ奬勵ノ爲据置期間ニ應ジ、
百分ノ一乃至百分ノ五ダケ分類所得稅ヲ輕
減致シテ居ルノデアリマス、然ル處今囘契
約期間三年以上ノモノニ付テハ、預入ノ初
メヨリ一律ニ百分ノ五ノ輕減ヲナスコトニ
改メタノデアリマス、又國民貯蓄組合法ヲ
改正シマシテ、國民貯蓄組合ノ幹旋シタル
貯蓄ニ對スル非課稅ノ限度ヲ、現在ノ七千
圓ヨリ一萬圓ニ引上グル等、其ノ範圍ヲ擴
張スルコトト致シテ居リマス、尙元本五千
圓以下ノ銀行貯蓄預金、產業組合貯金ノ利
子等ニ付キマシテハ、前述ノ如ク分類所得
稅ノ稅率ヲ特ニ百分ノ五ト致シタノデアリ
マスガ、之ヲ取扱フ金融機關ノ手續ヲ簡便ナ
ラシムルコトガ必要デアリマスノデ、如何
ニ簡便ニスルカト云フヤリ方ノ必要ニ應ジ
テ、稅引利子ノ計算上簡易ナル方法ヲ採用
シ得ルコトト致シマシテ、此ノ爲ニハ百分
ノ一ノ範圍內ニ於テ、稅率ヲ輕減シ得ルコ
トト致シタノデアリマス、第四ハ金融機關
ニ對スル課稅制度ノ改正ニ關スルモノデゴ
ザイマス、從來銀行等ニ對シマシテハ、其
ノ所有スル供託又ハ登錄公社債ノ利子ニ付
テハ、分類所得稅ヲ百分ノ二乃至百分ノ六
輕減シマシタ、一方所有國債等ニ付テハ利
子ノ七割ヲ控除シテ法人稅ヲ課稅致シテ居ッ
タノデアリマスガ、今囘ノ增稅ニ當リマシ
テハ、供託又ハ登錄公社債ノ利子ニ付テハ、
分類所得稅ハ課稅シナイコトト致シマスル
ト共ニ、國債利子等ノ七割控除制度ヲ廢止
スルコトト致シタノデアリマス、第五ハ立
木ヲ以テ相續稅ノ物納ニ充ツル場合ニ於キ
マシテハ、從來ノ行キ方デハ一時ニ山林ノ
所得ガ澤山出マス爲ニ、多額ノ所得稅ヲ課
セラルヽノデアリマス、又不動產ヲ以テ物
稅ニ充ツル場合ニ於キマシテモ、一時ニ讓
渡利得ヲ生ズル爲ニ多額ノ臨時利得稅ヲ課
セラルヽコトトナルノデアリマスガ、是ハ
年賦延納ノ場合ニ比シマシテ、權衡ヲ得ザ
ル點ガアリマスノデ、是等ノ場合ニ於ケル
所得稅又ハ臨時利得稅ヲ輕減シマスル爲ニ、
其ノ所得金額又ハ利得金額ノ三割ヲ控除シ
テ課稅スルヤウニ致シタノデアリマス、其
ノ他木材又ハ薪炭ノ增產ノ必要上、山林ノ增
伐ヲ爲シタル者ニ對スル所得稅輕減ノ程度
ヲ擴張シ、法人ノ合併ノ場合ニ於ケル〓算所
得等ノ計算ニ關スル規定ヲ整備スル等必要
ナル改正ヲ行フコトト致シタノデアリマス、
次ニ國內決戰態勢ノ强化ニ伴ヒマシテ、
各般ノ行政ニ亙ッテ其ノ簡捷化ヲ圖ルコトハ
極メテ重要デアリマシテ、稅務行政ニ付キ
マシテモ相當複雜トナッテ居リマスカラ、出
來得ル限リ簡素化ノ方法ヲ考ヘマシテ、人
的及ビ物的資源ノ節減ヲ圖ルコトトシ、旣
ニ實行致シテ居ルモノモアルノデアリマス
ガ、今囘ノ增稅等ニ伴ヒマシテ、更ニ納稅
及ビ徵稅ニ伴フ官民相互ノ手數ヲ省略シマ
シテ、以テ戰力增强ニ寄與致サムト致シマ
シタ外、徵收制度全般ニ亙リマシテ、簡素
化及ビ合理化ヲ圖ルコトト致シタノデアリ
マス、是等ニ付キマシテハ、各稅法ヲ御說
明申上ゲル際既ニ申述べタ點モアリマスガ、
ソレ以外ノ點ニ付テ其ノ主ナルモノヲ申上
ゲマスト、分類所得稅ノ扶養家族ノ控除及
ビ基礎控除ノ計算方法等ヲ簡易化シタルコ
ト、山林ノ所得ニ對スル綜合所得稅ノ課稅
ヲ廢止シマシテ、之ヲ分類所得稅ニ統合シ
タルコト、法人稅及ビ臨時利得稅ノ課稅ニ
當リマシテ、資本金ノ計算方法ヲ簡易化シ
タルコト砂糖消費稅及ビ印紙稅ノ課稅方
法ヲ簡易化シタルコト、內外地間ニ於ケル
所得稅等ノ課稅方法等ヲ簡素化シタルコト、
田租以外ノ地租及ビ家屋稅ノ納期ヲ年一回
トシ、其ノ外各種租稅ノ納期ヲ適正ナラシ
メタルコト、又國庫出納金端數計算法ヲ改
正シマシテ、納稅金額ノ錢位ニ付適當ナル
簡素化ノ方法ヲ講ジタルコト等デアリマス、
右申上ゲマシタ外樺太ニ於テモ適當ナル增
稅ヲ行フコトト致シマス關係上、之ニ必要
ナル爲明治四十年法律第二十一號ニ付テ改
正ヲ行フコトト致シ、又納稅施設法ニ付キ
マシテモ、必要ナル改正ヲ行フコトト致シ
テ居リマス、以上ヲ以チマシテ增稅法律案
ノ內容ニ付說明ヲ申上ゲタ次第デアリマス
ガ、是等ノ增稅ニ依リマシテ、ドレダケノ
增收ガアルカト申シマスニ、平年度額ト致
シマシテ分類所得稅九億五千百餘萬圓、綜
合所得稅一億五千三百餘萬圓、合計所得稅
ガ十一億四百餘萬圓デアリマス、法人稅ハ
二億四百餘萬圓、特別法人稅千三百餘萬圓、
營業稅四千六百萬餘圓、臨時利得稅一億八
千二百餘萬圓、配當利子特別稅三百餘萬圓、
地租千二百餘萬圓、家屋稅千四百餘萬圓、
相續稅二千五百餘萬圓、通行稅五千九百餘
萬圓、登錄稅二千四百餘萬圓、酒稅四億六
千四百餘萬圓、〓涼飮料稅千五百餘萬圓、砂
糖消費稅三千四百餘萬圓、織物消費稅五百
餘萬圓、物品稅一億九千五百餘萬圓、遊興
飮食稅一億千六百餘萬圓、入場稅二千三百
餘萬圓、特別行爲稅千四百餘萬圓、廣〓稅
八百餘萬圓、骨牌稅二百餘萬圓、印紙稅百
餘萬圓ノ增收ト相成リマスノデ、地方團體
ノ財源タル還付稅收入ノ增收ヲ含メマシテ、
結局平年度約二十五億七千六百萬圓ノ增收
デアリマス、初年度タル昭和十九年度ニ於
テ約二十二億七千二百萬圓ノ增收トナル見
込デアリマス、而シテ此ノ昭和十九年度ノ
增收額中、還付稅收入ノ增收額ヲ除キマシ
タル金額ハ、之ヲ全部臨時軍事追加豫算ノ
財源ノ一部トシテ、一般會計ヨリ同特別會
計ニ繰入ルヽコトト致シ豫算案ヲ編成致シ
テ居ルノデアリマス、最後ニ、地方分與稅
法ノ改正ニ付テ御說明致シマス、御承知ノ
如ク所得稅、法人稅、入場稅及ビ遊興飮
食稅ノ一部ハ、地方分與稅中ノ配付稅ト相
成ッテ居リ、其ノ割合ヲ法定シテアリマス關
係上、今囘ノ增稅等ニ伴ヒマシテ配付稅ノ
割合ヲ改正スルノ要ガアリマスノデ、地方
分與稅法ニ於キマシテ必要ナル改正ヲ行フ
コトト致シタノデアリマス、以上所得稅法
外二十九法律中改正法律案ニ付御說明ヲ申
上ゲタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上速
カニ御贊成アラムコトヲ御願ヒスル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=2
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003・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今ノ大藏大
臣ノ御說明ニ對シマシテ、全般的ニ御質疑
ノアル方ニ御許ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=3
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004・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私、チヨット皆樣ノ御
尋ニナル前ニ、極ク簡單ナコトヲ二、三御尋
ネ致シマス、大變增稅ニナリマシテ、誠
是ハ非常時デ已ムヲ得ナイコトト存ジマシ
テ、誰デモ喜ンデ之ヲ負擔スルダラウト思
フ、コンナニ增稅アルニ付キマシテモ、ド
ウカ國家ノ擔稅力ハ十分ニ養ハナケレバナ
ラヌ、又將來モ非常ニヤッテ行カナケレバ
ナラナイト考ヘルノデスガ、昨日モ一體此
ノ時局ノ見据ハドウダラウト云フコトヲ御
尋ネシタノデアリマスガ、總理ノ御考デハ
今年ダケデ勝敗ハ決ッチマフノダト云フコ
トニナルト、率直ニ言ヘバ今年ダケ辛抱ス
レバ來年カラ直グト樂ニナルトシカ取レナ
イ、決シテ私ハサウ云フ御考ヘデハナイト
思フ、〓愈〓是ハ激烈ヲ加ヘルカラ十分ニ覺
悟ヲシテヤラナケレバナラヌ、決シテ何モ
今年ダケデ宜イノデ、來年カラ平和ガ來ル
ノダト云フヤウナ風ニ考ヘルベキモノヂヤ
ナイト云フヤウニ取ルノガ普通ダラウト思
フノデスガ、併シアノ總理ノ言明ハ、チヨツ
ト何ト云ヒマスカ誤解ヲシ易イノデスガ、
ドウ云フ風ニ御考ヘデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 時局ノ將來ガド
ウナルカト云フコトニ付キマシテハ、第三者
トシテノサウ云フ傍觀者的ノ立場ニ於ケル
所謂觀測ト云フモノト、當事者、交戰國デ
アリマスル日本ナリ「ドイツ」又ハ敵側
米英等ノ致シマスル所謂其ノ角度ト云フモ
ノトハ、自ラ全然同一ノモノデハナイト思ヒ
マス、敵ノ米國ニ致シマシテモ、色々國內
ノ事情其ノ他ヲ考ヘマスルト、到底長期ノ
戰爭ニハ堪ヘ得ナイト云フ觀測ヲ致ス人モ
アリ、又堪へ得ナイト云フ觀測ノ結論ニハ持ッ
テ行カナイガ、堪へ得ナイヤウナ事情ガ相
當ニアル、一步用心ヲシテサウ云フ觀測ヲ
致シテ居ル人モ相當アルト思フ、是等ノ事
情カラ、大體斯ウデアラウ、アヽデアラウ
ト云フ觀測ハ、人々ニ依ッテ異ルノデアリマ
スルガ、然ラバ其ノ觀測ハ必ズ當ルト云フ
確信ヲ以テヤル人ガ何人アルカト云フト、
是ハ世界的ニモ少イコトデアラウト思ヒマ
ス、色々事情ノ變化、其ノ事情ノ變化ニハ
人智ノ及バザル自然、其ノ他ノ變化モアリ
マスルシ、又人々ノ覺悟、決意、意思ノ力、
是等ニ依ッテノ變化モ、强クナル方モ弱クナ
ル方モ多分ニアルノデアリマス、ソレデ
我ガ政府ノ考ト致シマシテハ、是ハ所謂
施政方針ノ演說ニ總理大臣モ其處デ言明
ガアリマシタヤウニ、今年ハ決戰ノ年デ
アル、戰爭ノ勝敗ヲ決スルノニ極メテ重
要ナル方向ガ、右カ左カ決ル年デアル、
皇國ノ運命、東亞ノ運命ヲ左右スル年デア
ル、此ノ點ガ極メテ强調シテアリマスト共
ニ、持久ノ態勢ヲ必ズ同時ニ持タナケレバ
ナラヌ、決戰デアルカラ、後ハモウドッチカ
ニ決ッテ樂ニナル、無論我ガ國家國民トシテ、
勝ツト云フコトノ決意ニ間違ヒハナイノデ
アリマスルガ、今年デ、決戰デ勝ッテシマッテ
後ハ平和ニナルトカ樂ニナルトカ云フコト
ヲ豫期シテ毫モ萬事ヲ考ヘテ居リマセヌ、
同時ニ敵ガ如何ニ持久戰ノ方策ヲ取ッテ參
リマセウトモ、十分之ニ對抗致シマシテ、
最後ノ勝利ヲ得ルト云フ決意ト此ノ決意ニ
應ズルダケノ施策ヲ爲シテ參リタイ、決戰
ノ年デアルト同時ニ持久ノ策ヲ講ジテ參リ
タイト云フ意味ヲ强調致シテ居ルト思フノ
デアリマス、私共目下其ノ考デ進ンデ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=5
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006・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 能ク御趣旨ハ分リマ
シタ、ソレニ付キマシテ、此ノ間モ頻リニ
大藏大臣ガ繰返シテ御述ベニナリマスヤウ
ニ財政問題ハ同時ニ思想問題ダト云フコ
トデ、是モ御尤モト思フ、無論誰モ不贊成
ノ者ハナイ、皆サウ思ッテ居リマスガ、如何ニ
モ近頃經濟上ノ不安ト云フモノガ大分アル、
是ハ擔稅ヲスル上ニ於テ非常ナ妨碍ニナラ
ウト思フ、戰爭ヲシテ皆多クノ子弟ヲ戰場
ニ送ツテ居ル、又徵用モサレテ居ルト云フ
ヤウナ狀態デアル、稅ハ上ツテ行ク、商賣
ハシニククナッテ行クト云フヤウナ今日ニ
於キマシテ、餘程國民ノ負擔ト云フモノハ
苦シイト思フ、尤モ好イ處ハ、大變好イ處
モアリマス、是ハモウ申上ゲル迄モナイ、
惡イ處バカリ見ルベキモノデナイ、是ダケ
ノ金ガ撒布サレテ居ルノデスカラ、好イ人
ハ非常ニ好イコトハ是ハ分リ切ツテ居リマ
ス、ソレニシテモ、ドウモ經濟上ノ不安ガ
アルト云フ點ハ甚ダ面白クナイコトト思ヒ
マス、戰爭負擔ノ上ニ財政上ノ負擔ガアリ、
其ノ上ニ又サウ云フ不安ヲ精神ニ持ツト云
フコトハ宜クナイ、不安ハ何處カラ來テ居
ルノカト云フト兎角近頃ハ財產權ト云フ
モノガ無視サレル傾キガアル、好イ處ハ馬
鹿ニ好ウゴザイマシテ、企業整備ニ例ヲ取
リマスガ、企業整備ノ場合ナドデモ、設備
モ何モナイ工場ヲ何百萬圓ニ買ッタト云フ
ヤウナ例モアリ、御承知ノ通リ發送電デ炭
山ナドヲエライコトヲヤッタ例ナドモアリマ
スケレドモ、一般的ニ申シマスト、戰爭ダ
カラオ前達ノ財產ハ提供シテシマッタッテ宜
イヂヤナイカ、何百圓ノモノヲ五十圓ト買
ハレヤウガ、ソレヲ承知シナイノハ非國民
ダ、オ前ノ所ノ建物ハマダ一人ヤ二人ハ入ル
處ガアルカラ、何デモ彼デモ同居人ヲ入レロ、
其處ニ病人ガアラウガ何ダラウガ、ソンナ
コトハ構ハナイ、サウ云フヤウナ風潮ガ非
常ニ强イ、是ハ今ノ御話ノ持久戰ヲヤッテ行
ク所以デナイト思フ、持久戰ヲヤッテ行カウ
ト云フコトニ付テハ、サウ云フ權利ハ最モ
重ンジテ、サウシテ私有財產權ハ確カニ守
ラレルンダ、無論法律ノ命ズル所ニ依ッテ徵
用モサレル、大イニスベシ、勿論稅ヲ增加
サレタ以上ハ、稅ハ拂ハナケレバナラス、
當リ前ノコトデスケレドモ、稅以外ノソン
ナ妙ナ負擔ガ來ルト云フコトハ甚ダ面白ク
ナイ、是ハ財政上カラ見テ、財政ガ一ツノ
思想問題デアルト云フ點カラ見テ甚ダ面白
クナイ現象ダト思フノデスガ、サウ云フ點
ハドウ云フ風ニ御考ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 經濟問題、財政
問題ガ精神ノ問題デアルト云フコトヲ申上
ゲマスルノハ、今更長ク御說明ヲ申上ゲル
迄モナイノデアリマスルガ、之ヲ純經濟問
題ト致シマスレバ、國民ノ間ニハ相當多額
ノ收入ガアリ、又十分ノ財產モアリマシテ、
今更其ノ收入ヲ貯蓄致シマシテ國民貯蓄
ノ增加ヲスル必要モナイ、又大イニ勤勞ニ
勵マナケレバナラヌト申シマスルカ、十分
ノ財產收入ヲシテ今更働ク必要ガナイト云
フヤウナ面モ多分ニアルト思ヒマシテ、平
時ニハソレデモ好イト申シテモ宜イコトモ
アルノデアリマスルガ、現在ニ於キマシテ
ハ其ノ個人ノ經濟狀態如何ニ拘ラズ、出來
ルダケ靑年壯年ハ固ヨリ、老人モ子供モ婦
女子モ全力ヲ揮ッテ直接或ハ間接ニ、卽チ直
接戰力增强ニ必要ナル生產ニ從事スルコト
ガ出來ナケレバ、間接ニサウ云フ生產ニ對
スル勞務ノ供給率ガ上ルヤウニ他ノ方面ニ
於テモ努力ヲスル、是ガ必要デアリマスル
シ、全ク簡素ナル決戰下ノ生活ヲ送ッテ、資
金勞力、物資ニ剩餘ヲ生ゼシメテ、之ヲ
決戰生產ノ生產要素タラシムル必要ガアル、
全ク之ヲヤリマスルコトハ、所謂個人的ノ
經濟、算盤デハドウシテモ出テ來ナイノデ
アリマス、ドウシテモ戰爭ニ勝ツ、御上ノ
爲ニ御國ノ爲ニヤルノダ、東亞民族ノ爲ニ
ヤルノダト云フ此ノ精神上ノ思想ガハッキ
リ確立致シマシテ、其ノ上ニ盛リ上ル力デ
ゴザイマセヌケレバ、到底出來ナイト思フ
ノデアリマス、工場ニ於キマシテ一ツノ
振ル槌ノ力モ、唯生活ノ爲ナラバ、サ程迄
力ヲ入レナクテモ勞務者ハ生活ハ出來ルノ
デアリマス、サウデナクテ眞ニ勝ツ爲ノ生
產ヲヤルト云フコトデ現在ノ生產モ出來マ
ス、貯蓄モ出來マスシ納稅モ圓滑ニ行クト
思フノデアリマスルカラ、此ノ意味ニ於キ
マシテ全ク平時的デナイ、眞ノ精神ノ問題
ガ其ノ根本ヲ成シテ居ルト云フ觀點デアリ
マシテ、固ヨリ當然ナコトデアルノデアリ
そう、然ラバ精神ノ問題デアルカラ、何デ
モ精神ダ、所謂物質的、經濟的ノ考慮ヲ拂ハ
ヌデ宜イカト申シマスレバ、ソレハ大變ナ
間違ヒデアリマシテ、極メテ正確ナル實際
上ノ手段ニ付キマシテ、考慮ヲ拂ハナケレ
バナラヌノデアリマス、政府モ能フ限リ其
ノ考慮ヲ拂ッテ居ル積リデアリマス、例ヘバ
勝チ拔キマスル爲ニ財物ヲ國家ニ捧ゲル、
是ハ捧ゲキリノモノハ所謂租稅デアリマ
ス、租稅以上ニ國家ハ要求スルモノハアリ
マセヌ、又貯蓄ハ必要デアリマス、是ハ其
ノ購買力ヲ戰時中ニハ戰爭購買力、政府購
買力、軍購買力ニ向ケナケレバナラヌ、ド
ウシテモ貯蓄シテ貰ハナケレバナラヌノデ
アリマスルガ、ソレハ貯蓄デアリマシテ、或ハ是
ガ預金ノ形態ト致シマシテモ、公債、社債ニ
致シマシテモ、其ノ元利ハ拂ハルベキモノ
デアリマス、ソコラノ限界ハ十分ニ堅ク取ッテ
行ク方針デアリマス、獻金ノ如キハ是ハ全ク
其ノ當事者ノ麗シイ精神カラ來ルコトデアリ
マシテ、決シテ私ハ政府モ又他ノ國民モ、之ヲ
所謂强要スベキモノデハナイ、心カラ自分
ニソレダケノ餘裕ガアリ、進ンデヤラウ、斯
ウ云フ心カラ來ルノデアリマシテ、是ハ決シ
テ他カラ强フベキモノデハナイト思ヒマス、
眞ニドウシテモ强ヒラレテモヤラナケレバ
ナラヌモノハ所謂租稅、是ト同ジ性質ヲ有ッ
テ居リマスル國家、地方團體ノ收入デアリ
マス、ソレカラ元利ハ返リマス、併シドウ
シテモヤッテ貰ハナケレバナラヌノハ貯蓄
デゴザイマス、從ッテ國家ガ必要ナルモノヲ
國民ノ財產ヲ場合ニ依レバ買ハナケレバナ
ラヌカモ知レヌ、是ハ平時デモ公益公共上
ノ必要ガアレバ、所謂公用徵收ト云フ制度
モアル位デアリマシテ、戰時ニ於キマシテ
ハ、有ラユルモノヲ戰爭ニ勝ツ爲ニ、最モ
主ナルモノハ戰時ニ必要ナル軍需品其ノ他
ノ生產ノ爲、又其ノ輸送ノ爲ニ向ケナケレ
バナリマセヌシ、例ヘバ防空ノ爲ニ疎開ト
云フコトガアリマスレバ、必要ニ應ジテハ
建物モ取拂ハナケレバナラヌノデアリマス、
是等ノコトニ對シマシテハ、正シキ適當ナ
ル對價ハ必ズ拂フ、費用ガ要ル場合ニハ之
ヲ補償スル、此ノ方針デ行ッテ居ルノデアリ
マス、若シモソレニ付テ何カ有リトスレバ、
サウ云フ對價ヲ求メル、財物ヲ公ノ意味ニ
提供スル人ガ平時的ノ考デ高ク賣リタイ、
高イ對價ヲ貰ヒタイト云フ場合ニハ、ソレ
ヲ正當ナ、適當ナ程度ニ止メタイ、是ハ政
府デモサウ云フ意思ハアリマスケレドモ、
無暗ニ之ヲ安ク引下ゲテ行クト云フヤウナ
考ハ毫モナイノデアリマス、實際ニ於キマ
シテモサウ云フコトハナイト存ジマスルガ、
多數ノ當事者關係者ノ間デアリマスルカ
ラ、萬一左樣ナ考へ違ヒデ、單純ニ御國ノ
爲ナラバ何デモ宜イト云フヤウナコトガアッ
テハナラナイト思ヒマスルカラ、尙今後モ
其ノ點ニハ十分ニ注意ヲシテ參リタイト思
ヒマス、住宅ノ問題ニ付キマシテモ、人口
ハ殖エマス、併シナガラ住宅ヲ增加スル爲
ノ木材其ノ他ノ資材ガ他ノ戰力增强ノ爲ニ
必要デ、住宅建築ナドニ向ケ得ル餘裕ノ甚
ダ乏シイコトハ今更申ス迄モナイ所デアリ
マス、然ルニ其ノ上ニ人口ノ增加モ一般的
デアリマセヌノデ、例ヘバ大キナ軍需工場
ガ興リマスト云フヤウナ特殊ノ地域ニハ、
急激ニ勞務者等ノ需要ノ增加デ、住宅ノ拂
底ガ起ルト云フヤウナ譯デアリマス、非常
ニ其處ニ困難性ガアルノデアリマス、ソコ
デ一面是等ノ地域ニ於キマシテ、勞務者住
宅ノ供給ニ努メテ居リマスルケレドモ、何
樣木材其ノ他ノ點ニ於キマシテ、平素ヨリ
增產ヲ致シテ居リマシテモナカ〓〓及ビモ
付カナイノデアリマスカラ、在來ノ住宅ヲ
成ルベク活用シテ行クト云フコトニハ是
亦出來ルダケ努メナケレバナラヌノデアリ
そく、併シナガラ此ノ同一ノ家屋內、家庭
內ニ同居者ヲ强ヒルト云フガ如キコトハ、
嚴ニ戒愼ヲ致シテ居ルノデアリマス、其ノ
點ニ付キマシテハ、是ハ稍、內輪話ニナルヤ
ウデアリマスガ、總理大臣ハ特ニ左樣ナコ
トハ我ガ國ノ家族制度、斯ウ云フコトカラ
考ヘテモ十分ニ注意ヲシテ行カナケレバナ
ラヌ、注意ト云フ以上、寧ロ左樣ナコトハ
避ケテ行キタイト云フ考ガ非常ニアリマス、
單リ是ハ總理大臣ノミナラズ皆同感デアリ
マシテ、非常ニ其ノ點ニハ注意ヲ拂ッテ居
リマス、斯ウ云フ考デアリマス、今御話ノ
ヤウナコトハナイトハ存ジマスケレドモ、
尙多數ノ關係當事者ノコトデアリマスカラ、
左樣ナコトガアリマセヌヤウニ、今後モ十
分ニ注意ヲ拂ッテ參リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=7
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008・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 モウ一ツ御尋ヲシタ
イノハ徵用者ノ所得ノコトデスケレドモ、
是モ同ジヤウナ關係デ、大分澤山貰ッテ居ッ
タノモ一定ノ額シカ貰ヘナイト云フヤウナ
建前ニナッテ居リマス、中ニハ兵隊ト同ジニ
見レバ宜イヂヤナイカト云フヤウナ話モア
リマスケレドモ、徵兵ト徵用ト一緒ニ見ル
ベキモノデモナイト思ヒマス、ソンナ議論
ヲシテモ仕方ナイ、同ジニ見ルベキデハナ
イト思ヒマス、矢張リ財產ガ相當ノ値デ買
ハレルモノナラバ、勤勞モ相當ノ値デ買ハ
レルベキモノヂヤナイカ、ソレヲ賃銀ノ形
デ出シテイケナケレバ、又外ノ形デ出スコ
トモ今デモヤッテ居ラレマス、其ノ爲ニ所得
ガ減ルト云フノハ、矢張リ同ジヤウニ考へ
テ、穩カデナイコトヂヤアルマイカト思ハ
レルノデスガ、三百圓モ四百圓モ所得ガア
ル者ヲ連レテ來ルノハ不經濟デスケレドモ、
ドウモ已ムヲ得ナイ、足リナイ時ハ仕方ガ
ナノイ、徴用スルコトガ必要ダカラ差支ナイ
ト思ヒマス、併シ其ノ爲ニ收入ハ三分ノ
カ四分ノ一ニ減シテシマフト云フコトハ穩
カデナイト思ヒマス、ソレデ其ノ點ト、尙
只今家屋ヤ又企業設備ノコトデ色々御答モ
アリマシタガ、實際國民ハ······國民ハト言ッ
テモ一同ヂヤアリマセス、或場合ハ隨分困ッ
タ場合モ生ズルノデスガ、サウ云フヤウナ
場合ハ、何カソレヲ救濟スルヤウナ方法ガ
アリマスマイカ、今ノヤウヂヤナカ/〓救濟
法ガチヨット立タナイ、地方廳カラデモ言ッ
テ來ルト皆泣寢入リニナッテシマフ、甚ダソ
レハ面白クナイト思ヒマスガ、ソンナコト
ハ何カ御考ガアリマセウカ、如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 徵用ニ付キマシ
テハ、今御話モアリマシタヤウニ、他ニ於
テ相當多額ノ所得ガアッタ人ガ、徵用セラレ
テ或事業場デ働クト致シマシテ、其處ニ於
ケル能率ニ對スル報酬ト云フモノガ、從來
ヨリ甚ダ少イト云フ場合ハ十分有リ得ルノ
デアリマスルガ、其ノ場合ニ於キマシテハ、
其ノ收入ノ減少シマシタ差額ヲ或程度補塡
致シマス爲ニハ、今國費モ相當出シマシテ、
組織モ出來テ居ルノデアリマス、併シナガ
ラ徴用ト云フモノガ我ガ國デハ新シイ制度
デアリマス爲ニ、現在ノ事柄ガ經濟的ニ考
ヘマシテモ又精神的ニ考ヘマシテモ、總テノ
點カラ完全ニ行ッテ居ルカト言ヘバ、改善ヲ
要スル餘地ガ多々アルト思ヒマス、厚生省
ニ於キマシテモ、徴用ト云フモノニ對スル
物質的待遇其ノ他ハ、精神的、物質的各方
面カラ考ヘマシテ、更ニ之ヲ改善スベク銳
意考究ヲ致シテ居ルノデアリマス、唯從前
ニ於ケル所得其ノ儘確保出來ルカドウカト
申シマスレバ、是ハ任意ノ勞務ノ就業トモ
違ヒ、又軍ニ召集、應召サレタ場合ト全然
同ジト言ヘナイコトモ御說ノ通リデアリマ
スガ、軍ノ應召ノ場合ニ致シマシテモ、從
來ノ所得ガ確保サレルト云フ譯ニハナカ
ナカ參ラナイノデアリマス、會社ナドニ從
事シテ居ル人ノ中ニハ、會社カラ俸給ノ差
額ヲ支給サレル場合モアリマスガ、其ノ他
ノ自分デ事業ヲ致シテ居リマスヤウナ場合
ニ付キマシテハ、ナカ〓〓サウモ參リマセ
ヌ點ガアリマスコトモ、現在其ノ通リデア
リマス、必ズ從來ノ所得ヲ確保スルト云フ
コトハ未ダ餘程〓究ノ餘地ガアルト思ヒ
マスガ、現在以上ニ尙改善ヲシテ、特ニ徵
用ト云フモノノ國家的精神的意義ト云フコ
トニ付テ、尙之ヲ闡明シ、給與制度ガソレ
ニ應ズルヤウナ方向ニ向ッテ、一段ト改善ヲ
加へテ行カナケレバナラヌト、斯ウ考ヘテ
居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=9
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010・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 今ノ企業設備ヤ不動
產ノ收用又ハ其ノ他ノ點ニ付キマシテ、殆
ンド私有財產無視ノヤウナ態度ヲ執ッテ來
ル場合ガ官公吏其ノ他ニアルノデスガ、サ
ウ云フモノハ何カ救濟方法ハアリマスマイ
カ、簡易ナ救濟方法ガナイ爲ニ泣寢入リヲ
スル場合モ隨分澤山アルノデスガ、サウ云
フ點ハ、或ハ大藏大臣ニ伺フノハ少シ惡イ
カモ知レマセヌケレドモ、是モ私有財產確
保ノ點カラ見テ、又擔稅力ノ點カラ見テ、捨
テテ置クコトハ出來ナイダラウト思ヒマス
ガ、如何ナモノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=10
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011・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 企業整備ノ大キ
ナ工場ノ賣買等ニ付キマシハ、先程御話申
シタ通リ、寧ロ非常ナ高値ニ賣買サレテ居
ル、賣ル方ガ强クナリマシテナカ〓〓話ガ
決リニクイ點ガ實際ハアルノデアリマス、
今囘議會ニ提出シタ企業整備資金措置法ノ
改正、是ハ寧ロ追加デゴザイマスガ、雙方
ノ話ガ纏マラヌ場合ニハ政府ノ方デ其ノ
値段ガ決マルヤウニスル、此ノ改正ニ付キ
マシテハ既ニ貴族院デハ御可決ニナリマシ
テ、只今ハ衆議院ニ參ッテ居ルヤウナ次第デ
アリマス、ソレカラ小企業ト申シマスカ、
所謂小賣商其ノ他ノ企業整備ニ付キマシテ
ハ、是ハ現在ノ非常ナ軍ノ動員、及飛行機
其ノ他ノ製造能力ノ增加ノ爲ノ勞力ノ必要
カラ申シマシテ、ドウシテモ氣ノ毒ナガ
ラ從來ノ仕事ニ從事シテ居ッテ貰フコトガ出
來ナイ、斯ウ云フ面ガ非常ニ多イノデアリ
マス、又申上ゲル迄モナク從來ノ營業、ソ
レニ扱フ商品、其ノ生產力ヲ戰爭ニ必要ナ
ル兵器彈藥ノ生產力ニ向ケル、サウスルト
扱フ品物ガ非常ニ減少スル、從來ダケノ營
業者ノ數ヲ維持シテ行ケナイ、公ニ申シテ
モ維持シテ行ケナイ、又當業者カラ申シテ
モ從來ダケノ數デハ迚モ收益ガ擧ラヌト云
フ時代デ、ドウシテモ從來ノ店舗設備ヲ賣
ル、商品ヲ賣拂フト云フコトガ必要デアリ
マス、是ハ其ノ事業ニ從事シテ居ル人ニモ
是非必要ニナルノデ、ソレニ付キマシテハ
大キナモノハ產業設備營團デ買上ゲマ
スト云フコトモアリマスルガ、小サナモノ
ハ國民更生金庫ノ働キニ依リマシテ
其ノ實價値如何ニ拘ラズ相當ナ價格デ、極
端ニ言ヘバ天秤棒一本ヲ何百圓デ買フ、買
フト申シマスヨリモ從來ノ企業ノ利益、
企業ガナクナレバ事業ガ出來ナクナルト云
フコトヲ考ヘテ、一種ノ補償ノヤウナ風ニ
買ヒマシテ、而シテ其ノ買取ッタ設備ハ、何
百圓デ買ッタモノガ何圓ニナラナイ場合デ
モ、結局其ノ差額ヲ追徵シナイト云フガ如
キ色々方法ヲ講ジテ居ルノデアリマス、兎
ニ角新シイコトデアリマスルカラ、整備サ
レル人々モ十分ニ理解ガ行カヌ、又多數ノ
整備ヲ致スノデアリマスカラ、或ハ十分ニ
趣旨ヲ了解シテ貰フコトガ出來マセヌト、
或ハ手續ノ持ッテ行キ方ガ同ジコトデモ、所
謂手荒ク感ズルト云フ場合ガ往々ナキニシ
モアラズト存ジマス、併シ現在ニ於キマシ
テハ、ソレ等ハ餘程公ノ統制團體ヤ地方廳
ナドデモ注意シテ參ッテ居リマス、又國民更
生金庫デモ深切ニ行ッテ居リマスノデ、餘程
從來ヨリ變ッテ來タトハ存ジマス、尙ソレ等
ノ事項ニ付キマシテハ、常ニ氣ノ毒ナル國
民ノ層デアリマスルカラ、深切丁寧ニ扱フ、
深切心ト云フコトニ付キマシテ大イニ重點
ヲ向ケルベキ方面デアルト考ヘテ、關係機
關ヲ十分ニ督勵ヲ致シテ居ル次第デアリマ
ス、ドウシテモ關係者ガ其ノ氣持ニナリマ
セヌト、是ハ結局イケマセヌ、地方廳其ノ
他ノ當事者ガ十分其ノ心持ヲ持チマスヤウ
努メテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=11
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012・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 丁度十二時ニ
ナリマシタカラ、之ヲ以テ休憩ト致シマシ
テ午後ハ正一時半カラ再會致シマス
正午休憩
午後一時三十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=12
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013・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 午前ニ引續キ
マシテ、本委員會ヲ再開致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=13
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014・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私ノ質問ガチヨット
殘ッテ居リマスルノデ、ソレダケ補ッテ置キ
マス、先程經濟不安ノコトヲ申上ゲタノデ
スガ、尙ソレト同ジヤウナコトガチヨイ/
澤山ゴザイマスケレドモ、極ク端折リマ
シテ、特殊會社ト特殊法人デスガ、アレ
ニ對スル政府ノ負擔ト云フモノガナカ〓〓
大變ナモノデス、處ガアノ特殊會社、特殊
法人ト云フノハ、御承知ノ通リ官吏ノ隱居
所ニナッテ居リマス、此ノ官吏ノ隱居所ニ付
キマシテハ、曾我子爵アタリカラ非常ニ
アレヲヤカマシク言ハレテ、一時大分其ノ
弊ガ直ッテ來タノデスガ、又始ッテシマッテ、
モウ殆ド一ツ出來レバ、必ズ官吏ガ其處へ
行クト決リ切ッテ居ル、ヒドイノニナルト誰
ガ行ク迄決ッテ居ル、サウシテソレハ月給ダ
ケノ損失ナラバ宜イノデスガ、兎角サウ云
フ人達ハ、私達ノ聞ク所ニ依リマスルト、
隨分經理上面白カラザル擧動ニ出テ、厄介
扱ヒサレテ、月給ダケノ損失デ濟マナイヤ
ウナ譯ナノデス、斯ウ云フ弊ハ早ク一掃シ
マセヌト云フト、折角國民ガ澤山稅ヲ納入
シテモ、〓フ物ヲ食ハズニ納入シテ見テモ、
コンナ所ニ濫費サレルト云フヤウナコトデ
ハ、自然精神上面白カラザル影響ヲ來スダ
ラウト思フノデスガ、其ノ點ヲ何トカ御考
慮願ヒタイト云フコトト、ソレカラモウ一
ツハ徵用ノ問題デアリマスガ、徵用ノ所得
デアリマスガ、是ハ午前中ニモ伺ヒマシタ
ケレドモ、能ク盡シテ居リマセヌカラ重ネ
テ伺ヒマスガ、速記ヲ止メテ戴キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=14
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015・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=15
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016・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=16
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017・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 其ノ點ヲ一ツ御答ヲ
願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=17
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018・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 特殊會社等ノ重
役理事者ニ付キマシテハ、只今ノ御說ノヤ
ウナコトヲ時々拜聽致スノデアリマスガ、
此ノ人選ニハ餘程注意致シテ居リマシテ、
現職官吏ガ辭メテ行クト云フコトニ付キマ
シテハ寧ロ原則トシテ止メテ居リマス位
デアリマス、併シ過去ニ官吏ヲヤッタコトノ
アル人ガ皆イカヌト云フ譯デモアリマセヌ
ノデ、實際役ニ立ッテ大イニ活動シテ居ル人
モ隨分アルノデアリマス、一切役人ノ經歷
ノアル者ハ入レナイト云フ譯ニハ無論參リ
マセヌ、特殊會社ノ能率ニ付キマシテハ隨
分色々言ハレテ居リマスルシ、又サウデハ
ナイカト思ハレル點モアリマスルガ、何サ
マ特殊會社ノ仕事ハソレ〓〓使命ヲ持ッテ
居ルノデアリマシテ、唯會社ノ所謂營業利
益ガ餘計上ルト云フヤウナ觀點ノミデ判斷
ハ致シニクイ點ガナカ/〓多イノデアリマ
ス、官廳ニ致シマシテモ、經理ニ付キマシ
テ唯金錢ノ經費ノ多寡、使ヒ方ノミデハ批
判ハ出來マセヌ、行政ノ成果ガドウデアル
カト云フ點ニ顧ミナケレバナラナイノデア
リマス、此ノ意味デナカ〓〓困難デアリマ
ス、民間ノ所謂營利會社デアリマスルト、
結局利益ガ上ッタカ上ラヌカデ批判ハ出來
マセウ、尤モソレモ今日ノ如キ技術上ノ國
家性ヲ多ク認メナケレバナラナイ時ニ當リ
マシテハ必ズシモ利益ノミデ批判スルト
云フコトハ當ラナイ譯デアリマス、特殊會
社ハ一層其ノ程度ガ濃イ關係ニアリマスノ
デ、所謂非能率的ト云フコトモ單純ニハ判
斷シ難イノデアリマス、相當ニ結果ヲ擧ゲ
テ居ルモノモアルト思ヒマス、又會社ニ依
リマシテハ、所謂俗ニ申ス採算ノ合ハナイ
コトヲヤラセル爲ニ出來テ居ル會社モアリ
マシテ、唯損益勘定カラノミ批判出來ナイ
コトハ當然デアルノデアリマス、唯ソレデ
アリマスカラ、損益勘定デ批判出來ナイト
云フ面カラ、所謂幾ラカ緊張ヲ缺クト云フ
コトハ、亦人間ノ通有性トシマシテ無キニシ
モ非ズデアリマスガ、只今、人ニ致シマシ
シテモ官廳デモ所謂簡素化致シマシテ、是
ハ何モ好ンデスル譯ヂヤアリマセヌガ、人
的資源ガ戰爭ノ時ハ非常ニ不足デ、是ハ極
メテ重要デアリマスノデ、難キヲ忍ンデヤッ
テ居ルノデアリマスガ、是等ハ特殊會社法
人ニモ同樣ニ之ヲ行ハシムル方針デ參ッテ
居リマス、十分此ノ運用ニ注意ヲ致シテ參
リタイト思ッテ居リマス、徵用ニ付キマシテ
ハ、速記ヲ止メテ御懇談ガアリマシタノデ、
私モ速記ヲ止メテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=18
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019・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=19
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020・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=20
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021・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 特殊會社ニ付キマシ
テハヨク私ノ申上ゲタ事例モ澤山耳ニシ
テ居ルカラ〓究シヨウト云フ御話デ、此ノ
點ハ誠ニ結構ナ事ト思ヒマス、又徵用ニ付
キマシテモ、色々ナ處ニ色々不備ナ點モア
ルカラ、之モ十分〓究ヲショウト云フコト
デゴザイマシタノデ、ソレデ私ハ此ノ質問
ハ止メテ置キマス、マダ他ニモ伺ヒタイ事
ガゴザイマスガ、是ハ又後ノ機會ニ讓リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=21
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022・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ハ大藏大臣ガ、今度ノ
增稅ニ付テノ財政關係カラ見、又今日ノ戰
局ノ狀態カラ考ヘラレテ、此ノ增稅案ヲ御
立テニナリ、又將來增稅ニ付テノ見透シ等
ヲ御附ケニナッテ今日御提出ノ法律ガ出タ
モノト考ヘマスガ、此ノ內容ニ付キマシテ
ハ、事前審査及ビ本會議竝ニ先刻ノ大藏大
臣ノ御說明デ大體了承シ、專ラ所得稅其ノ
他法人稅等モ擔稅力ノアル者ニ課稅ヲシ、
又或モノニ付テハ從來各所デ意見ガアッタ緩
和規定ヲ設ケ、若シクハ稅ノ賦課徴收制度
ノ簡素化等ヲ根本ノ趣旨トナサレテ此ノ案
ガ出來タト云フコトハ、內容カラ判斷シ得
ルノデアリマス、今日御承知ノ如ク深刻ナ
ル決戰段階ニ入ッテ、此ノ戰費ヲ調達セラレ
ルコトノ御苦心ハ、我々ハ想像ニ餘リアル、
子々孫々ニ殘ス公債政策一方ヂヤ無論イカ
又、又借入金モ程度ガアル、一般會計ノ繰
入モ程度ガアリマセウ、故ニ此ノ大戰費ヲ
支出スル爲ニハ、現在ノ國民ガ相當ノ負擔
ヲシテ、戰局ノ進展ニ寄與セナケレバナラ
ヌト云フコトハ、何人モ考ヘテ居ル處デア
リマスカラ、增稅其ノモノニ付テ何等ノ反
對ノ意見ガアル譯ハナイト思フノデアリマ
スガ、併シ玆ニ政治上、社會上、或ハ現下
ノ悽愴苛烈ナル決戰ニ直面シマシテ考フベ
キコトハ、矢張リ國民ガ喜ンデ此ノ擔稅ヲ
シ、又憲法上ノ納稅ノ義務ヲ完全ニ果スコ
トヲ矜持トスル氣分デ進マナケレバナラヌ、
サウ云フヤウニ進メサセナクテハナラヌト
思フノデアリマス、其ノ點カラ考ヘマスト、
單ニ戰局ガ苛烈悽愴デアルカラ、何デモ彼
デモ財產ヲ投ゲ出セト云フ一點張リデハイ
カヌノデアリマスカラ、其處ニ財政當局ノ
苦心ノ跡ガ見ラレル譯デアリマス、內容ニ
付テ檢討シテ見マシテ、私ハ隨分御苦心ノ
跡ガ殘ッテ居ルコトヲ了承スルノデアリマ
ス、ガ此ノ增稅ト、又將來ニ於ケル戰費ノ
調達上、更ニ增稅若シクハ新稅ヲ創設スル
ト云フヤウナコト迄モ御考ニナッテ居ルコ
トト考ヘマス、是等ノ點ニ付テ御漏シガ出
來ルナラ、一ツ腹藏ナキ御高見ヲ御漏シ願
ヒタイ、詰リチヨット私ガ考ヘマシテモ、今
日所得稅、此處ニ出テ居リマス消費稅其ノ
他ガ增シテ來マスルト、矢張リ國民ノ生活
ヲ、是ハ大藏大臣ノ御說明ガアッタヤウニ、
成ルベク贅澤ヲサセナイ、切リ詰メサシテ
サウシテ貯蓄ヲシ、一方ニ於テ稅ヲ出シ、
此ノ決戰下ニ於テハ國民ハ非常ニ困苦缺乏
ニ耐ヘテ行ケト云フ御方針ハ、是ハ何人モ
異存ノナイ所デアリマスケレドモ、國民悉
クハサウハ行カナイ、現ニ我々ガ一部ノ方
面ノ生活狀態ヲ調ベテ見マスレバ、矢張リ
生活ニ苦シンデ居ル、低物價政策デアリマ
スケレドモ、事實ハ低物價ニ非ズシテ高物
價ニナッテ居ル、併シ統制經濟デアリマスカ
ラ、若干闇其ノ他ニ於ケル所ノ物價ノ程度
ニ依ッテ直チニ惡性「インフレ」ガ來ルトハ
考ヘマセヌガ、兎ニ角政府ノ期待セラルヽ
ヤウニ低物價デハ進ンデ居ナイ、生活狀態
ハナカ〓〓自由經濟時代ノ二倍三倍ニナッ
テ居ルト云フコトハ事實デアリマス、斯ウ
云フ點カラ考ヘテ見マシテモ、增稅ヲシテ消
費方面デ節約ヲシテ、或ハ遊動資金ノナイ
ヤウニ、又アルダケ貯蓄スルヤウニ、又稅
モ滯納ガナイヤウニシテ行ケバ宜イノデア
リマスガ、ナカ〓〓サウハ行カヌヤウナ點
モアッテ、生活ニ苦シイ餘リ、此處ニ思想上
ニ影響ガアッテハナラヌ、又此ノ納稅ハ憲法
上ノ義務トシテ喜ンデ納メルト云フ氣分ヲ
何處迄モ今日昂揚シテ行カナケレバナラヌ
ノニ、却テ反對ノ效果ヲ來スヤウナコトガ
アッテハナラヌ、色々サウ云フ所カラモ亦檢
討シ、考ヘテ行ク必要ガアルト思フノデア
リマスガ、旣ニ政府ハサウ云フ點モ十分御調
査ニナリ、又增稅ニ對スル所謂國民擔稅力
ヲ能ク御調ニナリ、更ニ新シイ稅ヲ設ケル
コトモ十分ノ檢討ヲ要スル意味デ、先ニ延
バシテオイデニナルト云フ所カラ見マスレ
バ、私ハ御提出ニナッタ案ニ對シテハ、彼此
意見ヲ申上ゲル程ノコトハナイトハ信ジマ
スケレドモ、之ヲ審議スルニ當ッテ、財政大
臣トシテ增稅ニ對スル、所謂戰時財政ノ軍資
金調達ノ上カラ著眼シタ增稅、之ニ付テノ
何ト申シマスカ、理念ト申シマスカ、將來
ノ見透シト申シマスカ、斯フ云フ點ニ付テ
腹藏ナキ御意見ヲ承リタイト思フノデアリ
マス、此ノ點ニ付テ取敢ズ御話ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答へ申上ゲマ
ス、戰時ニ於テハ財政ガ非常ニ重要サヲ增
シテ參ルノデアリマス、平時ニ於キマシテ
全國家ノ國民ノ經濟ノ活動ノ中デ、ソレガ
政府トシテ所謂法律上ノ意味ノ國ノ需要、
國ノ消費ニ當リマスル部分ハ極クマア僅カ
デアリマス、國民所得ノ或ハ一割デアルト
カ二割ナドニハナカ〓〓參リマセヌ次第
デアリマス、處ガ本年度ノ如キハ國家ノ財
政ハ大約五百十億圓デアリマス、國民所得
モ大イニ增加致シマス見込デアリマスガ、
六百億圓ニナル、唯豫算ト國民所得トヲ比
較致シマスレバ、全國民ノ所得ノ八割以上
モ國費ガ必要デアルト云フヤウナ次第デア
リマス、唯大東亞戰爭ノ進展ニ應ジマシテ、
經濟ノ基盤ガ共榮圈內各域ニ擴ガリマシタ、
其ノ爲ニ七十億圓ト云フモノハ外デ調達ス
ルコトガ出來マス、又若干雜收入的ノ、特
ニ國民ノ負擔トシテノ意味合デナイ收入モ
考ヘラレマシテ、他ノ機會ニモ申上ゲマシ
タヤウニ、四百二十五億圓ト云フモノハ財
政資金トシテ要ル譯デアリマス、是ハ矢張
リ全國民所得ノ七割强ノモノガ財政資金ト
シテ要ル譯デアリマス、非常ナ大部分ヲ財
政ガ國家經濟ノ中デ占メルコトニナリマス、
又國民所得モ財政ノ需要ヲ充足スル爲ニ殖
工、又殖エナケレバナラヌト云フ場面ニナ
リマス、是ダケノ多クノ國費ガ使ハレマス
ノニハ、飛行機其ノ他ノ兵器、軍需品ノ增
產ヲシナケレバナラヌト云フコトガ、同時
ニ財政ノ增加、國民ハ之ヲ造リ拔カナケレ
バナラヌ、國民所得ノ增加モ平時ノ如ク漫
然ト、自然ノ經濟ノ發達トシテ增加スル
ト云フコトデナク、厭ガ應デモ米英ニ勝チ
マスル必要ナルダケノ飛行機、軍艦、戰車
大砲、之ヲ造リ上ゲナケレバナラヌ、造リ
上ゲレバ、國家ハ只デ働カス譯デアリマセ
ヌノデ、相當ノ對價ガ出マスノデ、國民所
得モ殖エルト云フ位ノコトデアリマス、ソ
ヨシリ、國家經濟ノ中デ非常ニ財政ガ重要ナ
ル部分ヲ占メマス、此ノ全部ノ賄ヲドウシ
テ付ケテ行クカト云フコトガ、財政ノ重大
ナル問題デアリマス、ソレニハドウシテモ、
十九年度デ申シマスレバ四百二十何億ト云
フ財政資金ヲ作ラナケレバナラヌ、更ニ今
年度ノ如キハ、比較カラ申シマスレバ、所
謂生產力ノ擴充ト云フモノハ比較的少イノ
デアリマス、詰リ明日ノ生產ノ爲ノ生產力、
明日ト言ヘバ無論明年以後デアリマス、ソ
レヲヤルコトモ大切デアリマスガ、今生產
ヲスルコトガ大切デアル、今飛行機ヲ作ル
コトガ大切デアル、五年後ニ出來ル飛行機
ノ設備ヲ作ル爲ニ、其處ニ資材ヲ持ッテ行キ
勞務ヲ持ッテ行キ金ヲ持ッテ行キマス、其
ノ結果、今出來ル飛行機ノ數ガ少クナッタノ
デハ寧ロイケナイ狀態デアル、ソレデ生產
力擴充資金ハ割合少イノデアリマスガ、ソ
レデモ少クモ六十億ハ豫定シテ置ク必要ガ
アル、合セテ四百八十億、國民所得ノ八割
ハ財政資金或ハ財政資金ニ準ズルモノトシ
テ之ヲ作ッテ行カナケレバナラヌ、サウシナ
ケレバ金ノ方面デモ戰爭ガ出來ナイ、之ヲ
何トシテモ作リ上ゲルト云フコトガ財政ト
シテ必要ナ譯デアリマス、例年其ノ方針デ
參リマシタ譯デアリマス、之ガ爲ニハ、先
ヅドウシテモ是ハ租稅及國債ニ依ル外ハナ
イノデアリマス、兩者ヲ如何ニ區分スルカ
ト云フコトハ第二ト致シマシテ、總額ハド
ウシテモ作ラナケレバナラヌ、是ハ第一ノ
必要デアリマス、其ノ爲ニハ、モウ單純ニ
唯金ノコトダケ考ヘテ居ル譯ニ參ラナイノ
デアリマシテ、國民ノ所得ガ六百億アル、
是ハ細カク申上ゲマスレバ用役所得、振替
所得等モアリマスガ、大體ニ於テ是ハ生產
ニ依ル所得デアリマスガ、ソンナ澤山國民
ハ働キ出ス、作リ出ス收入ガアルト申シマス
ガ、之ニ依ッテ作ルモノハ、平時ナラバ是ハ
國民ガ食ベルモル、着ルモノ、觀テ娛シム
モ)、所謂生活ノ消費ニ充テルモノヲ大部
分作ル譯デアリマス、今ハ、サウ云フモノ
ヲ作ルノニ役立ツ勞力、ソレニハ電氣モ要
リマス、石炭モ要リマス、工場モ要リマス
ガ、ソレヲ皆擧ゲテ軍需品ノ生產ニ向ケル
ノデアリマス、生產其ノモノハ非常ニ何百
ト出來マスガ、是ハ軍需生產デアッテ、國民
ノ生活ニ充テルモノハ平時ヨリ遙カニ少イ
モノシカ作ラナイ、購買力ノ方向ヲ規正シ
ナケレバナラヌシ、ソレニ應ジタ國民ノ生
活態度ト云フモノガ執ラレナケレバナラヌ、
詰リ金ガ動ク元ノ「スヰッチ」ノ切リ方、又管デ
申セバ、ドノ位流レルト云フ其ノ元カラ變
ヘテ掛ルト云フ施策ガ必要デアリマス、其
ノ意味ニ於キマシテノ勤勞ノ增强、消費ノ
節約、是カラ起ル貯蓄、又納稅、此ノ觀點
ニ入ッテ施策ヲシテ行カナケレバナラヌト云
フコトヲ根本ノ方針ト致シテ居リマス、其ノ
方針ハ國民トシテハ相當困難デアリマス、
多クノ收入ヲ得、而モ費スコト少ク行カナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ面ガ重大ナル困難
ガアルノデアリマスガ、ソレヲヤラナケレ
バナラヌ、併シ其ノ收入ノ增加ト云フコト
ハ、又一面カラ申セバ、是ハ今ノ御說ニモ
アリマシタト思ヒマスガ、勿論全部ニ均分
ニ參リマセヌ爲ニ、一方デハ非常ニ增加ス
ル人ガアルガ、一方デハ增加セズ、場合ニ
依レバ減少シ、而モ物價ハ相當高クナッテ
困ルト云フ、此ノ面ガ一方ニアリマス、ソレ
等ノ點ノ調節ヲ十分ニ考ヘテ參ラナケレ
バナラヌ、斯ウ云フ點ガ大キイノデアリ
マン。從ヒマシテ稅制ヲ考ヘル上ニ於キ
マシテモ、國民生活ノ必需品ニハ殆ド手
ヲ著ケナイデ行キタイト云フコトガ、重
要ナル一ツノ觀點ニナッテ居リマス、今
物品稅或ハ遊興飮食稅等、支那事變以後起
リマシタ一聯ノ新稅デアリマスガ、是等ハ
徵稅モ簡單······收入ノ增加ト云フ點カラ申
シマスナラバ、所謂賣上稅、取引稅ト云フ
ヤウナ總テノ商品ニ課稅致シテ參リマスコ
トガ、簡單ニシテ多額ノ增收ヲ得ル所以デ
アリマス、併シナガラサウ致シマスレバ、
其ノ消費ノ性質ニ應ジテ區分ヲ設ケルコト
ガ非常ニ困難デアリマスル爲ニ、所得ノ增加
シマシタル階層ニ取ッテハ何デモナイカモ
知レマセヌガ、所得ノ增加ガ國民ノ全部ニ
一樣ノ割合デ參リマセヌ爲ニ、一部ノ國民
ニ取リマシテハ非常ナル困難ヲ覺エル、斯
ウ云フコトニモ相成ルノデアリマス、ソコ
デ課稅上ノ各種ノ困難ヲモ忍ビマシテ、只
今ノヤウナ奢侈的課稅ノ方向ヲ採用致シテ
居ル譯デアリマス、將來ノコトヲ御約束申
上ゲル譯ニハ參リマセヌガ、是ガ少クトモ
今日迄一般的ニ賣上稅ヤ取引稅ノ如キ制度
ヲ採用シテ居ラヌ重大ナル理由デアリマス、
ソレカラ今ノヤウニ所得ハ增大ヲ致シマス、
全國トシテ見マスレバ、····是ハ增大サセ
ナケレバナラヌ、併シ所得ノ增加スル階級
ニ取リマシテハ、所得ハ增加シテモ、所謂
生活ノ程度ハ上ゲナイ、否、寧ロ切下ゲテ、
玆デ多額ノ貯蓄ヲ作ラナケレバナラヌ、斯
ウ云フ必要ガアル譯デアリマス、又收入ノ
サシテ增加セザル方面ニ於キマシテモ、
方消費ヲ非常ニ切詰メテ行クト云フ必要性
ガ非常ニ强イノデアリマス、出來レバ其處
ニ財產ノ增加ト云フコトガ、各國民ニ取ッテ
起ル事象ニシナケレバナラヌ、而モ其ノ財
產ノ增加ハ、不動產ハ新タニ是ガ出來ル譯
デモアリマセヌ、土地ガ增加スル譯デモア
リマセヌ、皆是レ或ハ國債、或ハ時局ニ必
要ナル產業······是ハ單リ內地ノミナラズ、
外地又ハ滿洲、支那、南方ニモ興リマスル
ガ、是等ノ多クノ企業ノ株式デアリ、社債
ニ應ズルト云フ性質ノモノデアリマス、又
國民蓄積トシマシテハ、預金ガ殖エテ、其
ノ預金ガ社債、株式、公債ニモ代ルト云フ、
結局預金、有價證劵ト云フ形ノ財產ノ增加
ト云フコトハ極メテ必要ナノデアリマス
其ノ理由カラ申シマシテ、財產稅ヲ起スト
云フコトニ多分ニ躊躇シマスル原因モアルノ
デアリマス、財產稅ヲ多ク議論サレマスル
ガ、財產稅ハ是ハ寧ロ富ノ分配ニ對スル調
節デアリマス、所得ガアルカラ掛ケルト云
フ譯デモナク、所得ガアルナイニ拘ラズ、
所得ハ所得トシテ、アレバ掛ケルガ、其ノ
他財產ガアルカラ掛ケルト云フ譯デアル、
寧ロ今申シタ意味ノ財產ノ增加、大變大キ
ナ金持ガ出來テモ結構デアリマスガ、寧ロ
國民一般ガ所謂恆產ノアル程度ニ行キタイ、
是ガ國家ソレ自身ノ需要ヲ充シ、國家ノ榮
エル所以デアリ、又國家ヲ構成スル各國民
ガ堅實ニナル所以デアリマス、之ヲ考ヘマ
スレバ五千圓、一萬圓、二萬圓、皆國民ガサ
ウ云フ風ニ主トシテ國債、社債、株式等デ
持ツヤウナコトニナリタイト云フコトデア
リマス、財產稅ヲ掛ケレバ結局不動產トサ
ウ云フモノヲ狙フ外アリマセヌ、非常ナ手
數ガ要ッテ、而モ是ガ不動產重課ト云フコト
ニナレバ、結果ハ餘リ好マシクアリマセヌ、
今ノ有價證劵ニ對シテノ課稅ト云フコトニ
對シマシテモ、今申上ゲマシタヤウナ邊デ
ドウカト思ハレル點ガアルノデアリマス、
其ノ上ニ是ハナカ〓〓手數ヲ要スルモノデ
アリマス、從ッテ財產稅ト云フコトニ付キマ
シテハ、一方色々議論モアリ、又其ノ議論
ニ大イニ參考ニナルト申シマスカ、採ルベ
キ點ガ無論ナイトハ言へナイノデアリマス
ガ、多分ニ今日デハ躊躇スル理由モアルト
思フノデアリマス、大體戰時低物價ト申シ
マスルガ、低物價ト云フコトハ言葉トシテ
ハ正確デアリマセヌ、是ハ主トシテ物ノ勢
ヒカラ出タ言葉デアリマス、勢ヒカラ出タ
ト云フコトハ多少不完全デ、是ハ說明ガ要
リマスガ、戰時ニハ物價ハ露骨ニ申シテ高
クナルノデアリマス、戰爭スル爲ニハ飛
行機ハ五萬アッテモ十萬アッテモ、モウ宜イ、
要ラナイト云フコトハナイ、大砲モサウデア
リマス、戰車モサウデアリマス、日本ガ非常ナル
軍需品ノ增產ヲヤッテ居ル、是ガドレダケ出
來ルカト云フコトヲ示スノハ戰力ヲ示ス譯デ
アリマシテ、祕密デアリマスガ、誰ガ想像シテモ
平時ニ比ベテ數十倍、數百倍生產シテ居ル
ト云フコトハ明瞭デアリマス、ソレダケ生
產ガ殖エテモ是ハ足リナイノデアリマス、
デアリマスカラ平時的ニ物價ガ放任サレテ
居レバ、是ハ戰用品、軍需品其ノモノノ昂
騰ト云フコトガ起リマス、又國民ノ生活必
需品、或ハ奢侈的ナモノモ、兎ニ角生活ニ必
要ナルモノモ、同樣若シクハ以上デアリマ
シテ、戰時ニハ今申シタヤウニ軍需品ヲ造
ル爲ニ國民ガ働クノデ所得ガ殖エルノデア
リマス、殖エタ所得ヲ持ッテ居ッテ、生活
ニ必要ナル物資ノ生產ハ甚ダ少イノデアリ
マスカラ、是ハモウ生活消費ニ要リマスモ
ノダケデ言ヘバ、自由ニシテ置ケバ、金ト
物トノ調和ガ出來ル筈ガナイノデアリマス、
非常ナル其處ニ其ノ面ニ於テモ物價ノ暴騰
ト云フコトガ起ルノガ自然デアリマス、併
シ是ガ起リマシテハ、モウ騰貴底止スル所
ヲ知ラズ、所謂惡性「インフレ」ニナルノデ
アリマスカラ、之ヲ上ガラムトスル危急ヲ
一生懸命引止メルノデアリマスカラ、低ク
置キタイト云フコトカラ低物價ト申シマス
ノデ、低クシタイト思ツテ引止メラレテ居
ルノデアリマシテ、日本等モ隨分上ガツテ
居リマシテ、公定物價ハ支那事變ガ始ツテ
以來幾割、歐洲戰爭開始以來マダ三割ニナ
ラヌト云フコトヲ申シマスト、ナアニ闇ガ
アルカラサウ云フコトヲ言ツテモドウナル
カト云フコトニナリマスガ、併シ闇ハ世界
何處ニモアル譯デアリマス、ソレデ公定物
價指數デ比較スレバ、マア「ドイツ」ノ次ハ
日本ガ良イ狀態デアル、「イギリス」ガ稍〓日
本ニ似、米國ハ騰貴率ガモット多イ譯デア
リマス、併シ「ドイツ」ニ於テハ是ガナカ
ナカ物價モ數字ダケデハ言ヒ得マセヌノ
ハ、「ドイツ」ハ生產費ヲ少クスル爲ニ租稅
ヲ減免ヲシテ居リマス、サウ云フ關係デ稍、く
實際ヨリハ低ク見エル點モアラウカト存ジ
マス、今「ドイツ」ハ歐洲戰爭始ッテ以來百
分ノ八ノ增加、日本ハ二十八ノ增加ト機械
的ニ出マスガ、ソレハ實際ハ「ドイツ」ハ十
三カ十五デアルカモ知レマセヌ、併シ日本
モ非常ニ闇ガアルヤウデアリマスガ、是ハ
公定物價ハ左樣ナ次第デアリマス、闇モ色
色アリマスガ、チヨット速記ヲ止メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=23
-
024・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=24
-
025・二荒芳徳
○員員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=25
-
026・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 所謂俗ニ新興階
級ト申シマスルカ、詰リ從來日傭ヒ勞働者
ノ方面デゴザイマスルト、是ハ課稅上實際
ニ之ヲ捕捉シヨウト云フ、固イ突キ詰メタ
考ノ必要ガナカッタト思ヒマス、一日ニ二圓
五十錢位ノ賃銀ノ者ハ決シテ高イ方デモ平
均ナカッタノデアリマス、ソレガ每日殘ラ
ズ働キマシテモ月七十五圓ノ譯デアリマス、
サウ云フ者ハ雨天ガアル、色々休日ガアル、
又傭ヒ手ガナイ、月ニ二十日位シカ日ガナ
イ、其ノ上ニ別ニ賞與ト云フモノモナイノ
デアリマス、サウスルト約六十圓、年ニシ
テ七百二十圓、ソレガ又扶養家族ノ控除デ
モアルト云フ、サウ云フ人ハ相當家族ノア
ルノガ普通デアリマスルカラ、大體ハ所得
稅ナドガ掛ル程度ニ行ッテ居ナイ、斯カルモ
ノハ所謂附加課稅デ取レバ宜シイガ、サウ
比較的强力ナ階級ニシテ稅ヲ取ルトガ何ト
カ言ッテ、餘リ考ヘヌデモ宜イ階級ニアッタ
ト思フノデアリマス、ソレガ時局ノ變化ニ
依リマシテ賃銀ノ單價モ隨分騰ッタ、單價ガ
騰ルバカリデナク、モウ所謂仕事ノ無イ日
ト云フモノガナクナッタ、自分デモウ金ガア
ルカラ遊ビタイ、賴ム方カラ言ヘバ大工デ
モ左官デモ、手ノ足ラヌダケノ申込ミガア
ル譯デス、是ハ多數ノ勞力ガ第一線ニ非常
ニ多ク動員サレ、軍需產業ニ動員サレテ、
非常ニモウサウ云フ風ナモノハ足リナイ譯
デアリマス、軍需產業方面デモ足リナイ、
或ハ普通ノ大工、左官、植木屋、サウ云フ
モノハ殊ニ足リナイ、モウ此處デ一年
中····出來レバ一日ヲ二日ニ働イテモ宜イ位
ナ仕事ガアル、單價ガ矢張リ稼働日數ガ殖
エマシタカラ、十分ニ課稅ノ圈內ニ入ッテ宜
シイ狀況ノモノガ非常ニ殖エタ譯デアリマ
ス、處ガ之ヲ附加課稅デ認定ガ行クカト云
フト實際ニ出來マセヌ、サウカト云ッテ官吏
デアルトカ、會社員デアルトカ、工場勞務
者ノ如ク、今ノ分類所得稅ヲ取リマスヤウ
ニ源泉デヤルト云ッテモ困難デアリマス、何ト
カヤリ方ヲ變ヘナケレバナラヌ、斯ウ云フ
場面ガ出來テ參リマシタ、是ガ所謂今囘ノ改
正案ニ於キマスル丙種ノ事業所得ト云フ
モノデアリマス、事業所得ト申シマスルガ、內容
ハ全ク勤勞所得デゴザイマス、サウシテ困難
デハアリマスルガ、給料ノ支拂者、斯ウ云
フモノモ事實上親方トカ勞力供給業者等ガ、
實際ハ相當アル譯デアリマスルカラ、又サ
ウ云フモノモ、產報トカ色々ナモノノ組織ガ
活動ヲシテ居リマスノデ、比較的捕捉ヲシ
易イ狀況デアリマス、ソレニ努メマシテ、
其ノ源泉課稅ノ掛ケ方モ亦事情ガ違ヒマス
カラ、從來工場、會社、官廳等ト違ッタ、比
較的簡單ナ控除其ノ他デ參リタイト云フ、
新構想ヲ茲ニ出シマシタヤウナ譯デアリマ
ス、處ガ斯ウ云フ風ニ日傭勞働者ダケデハ、
新興階級ト云フモノハ濟マナイノデアリマ
シテ、小企業家ト申シマスルカ、製造業ニ
シマシテモ、運送業ニシマシテモ、又斯ウ
云フ勞務供給ノ親方ニシマシテモ、自分ガ
一ツノ小サイナガラモ企業、事業ヲヤル、
斯ウ云フ面ガナカ〓〓收入ノ多イ者ガ澤山
出テ參リマシタ、是ハドウシテモ今ノヤウ
ナ源泉課稅デ行ク譯ニ行キマヌヌ、所謂附
加課稅デ行ク外テイ、之ニシマスト、稅法
ヲ變ヘテドウヤルト云フコトハドウモ今迄
發見シマセヌ、所得ガドレダケアルカト云
フコトヲ認定スルニ必要ナル資料ヲ取ルト
云フ面、是ハ今囘ノ改正法デモ規定ヲ致シ
テ居リマスルガ、大體從來ノ所謂附加課稅
デ取ル外ナイ、ソレヂヤドウスルカト云フ
ト、今迄サウ云フモノハ稅務署ノ署員ガサ
ウ云フモノヲ對象ニシテ稅ヲ取ルト云フコ
トニ慣レテ居ナイ、事情ガ十分ニ分ッテ居ナ
イ、月給取トカ從來カラノ商賣ナラ、其ノ
所得ヲ正確ニ捉ヘルコトハ從來カラ慣レテ
居リマスカラ、訓練ガ出來テ居リマス、サ
ウデナイモノガ出テ來タノデアリマスカラ、
是ハ稅法ノ問題ト言フヨリモ稅務署ノ人ノ
頭ヲ、知識ヲサウ云フ方面ニ向ケテ、課稅
ノ實際デ捕捉スル方向ニ進マナケレバナラ
又、斯ウ存ジテ居リマス、ナカ〓〓困難デ
アリマスルガ、其ノ方面ニ色々〓究ヲ進メ、
步ヲ進メテ參リタイト思ヒマス、是等ガ又
今年一年、或ハ先モ實行シテ見マシテ、其
ノ結果更ニ是ガ法律ノ上デ、制度ノ上デ斯
ウシタラバ其ノ捕捉ガ正確ニ行ク、十分行
クト云フヤウナコトヲ發見致シマスレバ、
是ガ將來ノ稅制ノ上ノ一ツノ問題ニモナリ
得ル點デアリマス、一番重要ナノハ、矢張
リ今申シタ所得ノ增加シマスル層ガ變ッテ
來テ、課稅ヲシテモ宜イ、課稅ヲシナケレ
バナラヌモノガ、從來餘リ眼ヲ著ケテ居ナ
カッタ方面ニ是ガ相當ニ澤山出テ來タ、其ノ
方ヲ的確ニ捕捉シテ行クト云フコトガ重要
ナル一點ト存ズルノデアリマス、是ハ貯蓄
ノ問題デモ同樣デアリマシテ、二百三十億
ガ二百七十億ニナリ、二百七十億ガ三百五
十億ニナル、此ノ割合デ各個ニ均分ニ增シ
マシタラ、是ハ行詰ルニ決ッテ居リマス、所
得ノ增加ノ割合ガ一樣デナイノデアリマス
カラ、ソコノ區分ヲ著ケテ進ムト云フコト
ガ大切デアリマス、是ハナカ〓〓困難デア
リマスルガ、矢張リ稅ト同ジク其ノ方ニ施
策ヲ進メナケレバナラヌ、斯ウ云フ風ニ考
ヘテ居リマス、大體··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=26
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027・三井清一郎
○三井〓一郞君 只今藏相ノ增稅案ヲ御樹
テニナル心構ヘニ付テ、腹藏ナク諄々ト御話
ニナッタ點ハ有難ク感ジマスガ、同時ニ將來
ノ新稅等ニ付テ御意見ヲ承ッテ非常ニ安心
ヲシタノデアリマス、無論新稅ニ付テハ將來
御〓究ニナルノデアリマセウガ、先ヅ私等ノ
新聞等ニ出タリ、或ハ若干ノ人ノ言フ所ノ
財產稅ノ創設ナドト云フコトヲ聞キマシテ、
私ハ非常ニ不愉快ノ感ヲ持ッテ居リマスガ、
只今藏相ノ御說明ヲ承ッテ非常ニ安心ヲシ
タノデス、我ガ國ノ此ノ家族制度ガ發達シ
テ、祖先崇拜ノ觀念ハ所謂肇國ノ精神、之ヲ
何處迄モ〓揚シテ大東亞建設ニ邁進セナケ
レバナラヌ時ニ於テ、祖先ノ遺シタ財產ヲ
一々調ベラレテ憲法ノ保障アルニモ拘ラズ
調ベテ、刀一本持ッテ居ルノデモ價ヲ決メテ
財產稅ヲ課スルト云フヤウナ新稅ハ、私、
甚ダ面白クナイト考ヘテ居ルノデアリマス、
此ノ財產稅ナドニ付テ御〓究ニナリ、又是
ハ餘程考慮ヲ要スルト云フ御意見ハ、私ハ非
常ニ滿足スル次第デアリマス、尙此ノ稅法
ノ案ニ依リマスト、詰リ今日ノ免稅點ヲ引下
ゲルヤウナ事ヲナサッテ居ナイト云フコトハ
只今御說明ガアリマシタ、下級所得者ヲ保
護スル所以デアリ、此ノ點ニ付テモ私ハ嬉
シク感ズルノデアリマス、唯是ハ解釋ヲ異
ニスル點デアリマスガ、藏相ハ生活費ニ或
程度ハ所謂統制ノ爲ニ思ウタ程ニ高クナラ
ヌヤウナ御考ヲ持ッテ居ラレヤセヌカト云
フ感ジガシタノデアリマスルケレドモ、是
ハ一ツ其ノ點ハ農商省或ハ厚生省、其ノ他
關係省ノ方デ良ク調ベテ居ラレマセウガ、
ナカ〓〓我々モ餘程良ク調査シナイト云フ
ト、其ノ事ハ徹底的ニ申サレヌノデ、具八
此ノ程度デ止メテ置キマス、次ニ新稅ヲ考
ヘル人ノ中ニハ、國民稅トカ公民稅トカ云
フヤウナ考ヲ持ッテ居ル人モアルノデ、現ニ
衆議院ノ增稅案ノ委員會デモ、其ノ意見ガ
出テ居ッタヤウデアリマス、私ハマダ詳シク
讀ンデ居リマセヌガ速記ニモ載ッテ居ル、處
ガ現ニ市民稅或ハ國民稅ト云フカ都民稅ト
云フカ、サウ云フ稅ハ地方稅トシテ賦課シ
テ居ル、委員長速記ヲ止メテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=27
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028・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=28
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029・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=29
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030・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今市民稅、東京
ハ都ニナリマシテ都民稅ニ付テ御話ガアリ
マシタガ、東京ノ現在ノ都民稅ハ國稅ノ中
ノ所得稅、其ノ中ノ綜合所得稅、ソレト家
屋ノ賃貸價格、二ツノ基準デ是ガ定メラレ
テ居リマス、ソレデ此ノ二ツノ基準ヲ採用
シテ都民稅ヲ高ムルコトノ可否、是ハ今其
ノモノトシテハ私ハ可否ノ論ハ差控ヘルノ
ガ適當デアリマス、是デ以テ有ラユル者ノ
貯蓄ナリ、ソレカラ外ノ寄附ナリノ各戶ノ
割當ノ標準ニスルト云フコトハ、是ハ極メ
テ當ヲ得ザル場合ガ非常ニ多イノデアリマ
ス、各町內會等ノ實情ヲ見マシテモ、相當
ニ行キ屆イタ町內會長等ハ、此ノ標準ニ依ツ
テハ貯蓄ヤ寄附ニ無理ガアルト云フノデ、
色々他ノ標準ヲ考ヘテ、其ノ標準ニ依ッテ
極メテ好イ結果ヲ擧ゲテ居ル所ガ相當アル
ヤウデアリマス、デ此ノ事ハ何モ都民稅ノ
決メ方ガ直グ惡イト云フ結論ニハナラヌト
思ヒマスルガ、貯蓄等ノ場合ニハ、是デ行
ケバ非常ニ不合理ガ多イノデアリマス、都
民稅ダケナラバ金額ガサウ多額ニ上リマセ
ヌカラ、ソレデ宜シウゴザイマスガ、其ノ
何倍ト云フモノガ一月置キニ公債消化ノ割
當ガ來ル、每月當然貯蓄ヲシナケレバナラ
ヌト云フコトニナリマスト、無理ガ出來マ
スノハ、ソレハ色々理由ガアリマス、是ハ
稅自體ノ面ニモ關係ガアリマスガ、貯蓄ノ
點ヨリ申シマスレバ、今囘ノ改正案ニモ一
ツ出タ所ガアリマスガ、假ニ今滿洲、支那
等ニ在リマシテ、相當ノ所得ノアッタ人ガ
內地ニ歸リマシテ、會社ヲ轉勤シテ相當ノ
所得ガアルトシマス、綜合所得稅ハ前年度
ノ所得ヲ基準ニシテ掛リマスカラ、歸ッタ年
ハ稅ハチットモ掛リマセヌ、翌年モ半年シカ
居ナイコトニナリマスカラ半分シカソ低イ
稅デアル、サウスルト云フトソレデ以テ都
民稅其ノモノガ決メラレテシマフ、其ノ割
合デ行クト云フト非常ニ其ノ人ハ低イ稅シ
カ掛ケナイノデアリマスガ、今日綜合所得
稅ハ綜合所得デ參リマスルガ、是ハ其ノ家
ノ生計狀態ト云フコトニハ、關係ガ比較的
少イノデアリマシテ、同ジ收入ガアリマシ
テモ、家族ノ數ノ多寡、同ジ家族ノ數デア
リマシテモ其ノ狀態、例ヘバ高級ノ學校ニ
行ク子供ガ多イトカ少イトカ、或ハ病人ガ
アリマスルトカ、色々最低限度ノ經費ニ致
シマシテモ狀況ガ違ヒマス、又住宅ヲ自ラ
所有シテ居ル者モアレバ、高キ家賃ヲ拂ッテ
借リテ居ル者モアリマス、又色々實物收入
ノ多寡モアリマス、只今ノ如ク非常ニ高度
ノ貯蓄ヲシマスル場合ニハ、最少限度ノ生
活ヲシテ、殘リハ稅金ヲ拂ッテ、アト全部貯
蓄スルト云フ時ニ於キマシテ、此ノ收支ノ
狀態ヲ考ヘナケレバナラヌノデアリマス、
都民稅ハ其處迄ハ考ヘル組織ニナッテ居ナ
イノデアリマス、是等ノ點ガ大變ニ實情ニ
合ハナイ譯デアリマス、デ貯蓄ノ方ノ指導
ニ致シマシテモ、ソレ等ヲ如何ニ斟酌シテ
行クカト云フコトニ付テ出來ルダケノ努力
ヲ拂ッテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、有ラ
ユル場合ニ市民稅ヲ基礎ニシテ行クト云フ
ヤリ方ハ、是ハ適當デナイ、色々面倒、困
難ハアリマスルガ、其ノ事柄ニ依リマシテ
ハ都民稅ハソレデ宜シイト致シマシテモ、
別ノ標準デアルトカ、或ハ都民稅ヲ基準ニ
シテ割出シタモノニ對シテ增減ノ斟酌ヲ餘
程シテ參ルト云フコトデナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、尙國民稅ト云フコトニ付キ
マシテハ、是ハ色々ノ人ノ說ガアリマシテ、
何ガ國民稅デアルカト云フコトハ一定ハシ
テ居ラナイ次第デアリマスルガ、大體ノ思
想ヲ見マスルニ、此ノ際國民全部ハ皆御國ノ
爲ニ有ラユル意味ニ於テ盡サナケレバナラ
ヌ、然ラバ稅ニ於テモ全部ノ國民ガ之ニ盡
スト云フ意味ニ於テハ、色々所得稅トカ各
種ノ稅ガアリマスルガ、人數カラ言ヘバ
マダ國民ノ多數ト云フモノハ直接稅ハ拂ッテ
ヰナイ、直接ニ自分ガ拂フト云フコトガ精
神的ニモ大切デアリ、又國家ノ收入ガ出來
ル所以デモアル、デ苟モ收入ガアリ得ル年
齡ニ在ル者ハ假令少額デモ之ヲ納メタラ宜
イデハナイカ、ト云フヤウナ思想ガ主ト
シテ一貫ヲシテ居ルヤウニ思ヒマシテ、其
ノ考ヘ方トシマシテハ大イニ尊重ヲシナケ
レバナラヌ面モアルト思フノデアリマス、
唯實際ノ課稅ノ標準ヲ如何スベキカ、徵稅
ノ方法ヲ如何スベキカ、ソレ等ノコトニ付キマ
シテハマダ色々〓究ノ餘地モアルヤウニ思フ
ノデアリマス、或ハ將來〓究ノ題目ニモナラウカ
ト思ヒマスルガ、只今ノトコロデハ現在ノ
案ニモ入レテアリマセヌヤウナ次第デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=30
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031・三井清一郎
○三井〓一郞君 市民稅、都民稅ニ付テノ御
見解ハ私ハ非常ニ喜バシク感ジマス、アレ
ヲ基準ニスルト云フコトハ我々ハ不當ダト
考ヘテ居ル、次ニ具體的ニ入ルンヂヤアリ
マセヌガ、矢張リ一般論トシテ私ハ相續稅
ト云フモノニ付テノ一ツノ考ヲ持ッテ居
ル、今日我國ハ眞ニ自己主義ト云ヒマスカ
自由主義ト云ヒマスカ、其ノ着物ヲ脫ギ捨
テテ建國ノ精神ニ還ッテ、サウシテ此ノ大東亞
戰爭ニ勝チ拔イテ、所謂八紘爲宇ノ精神的
建設ヲナサムトスル時ニ於テ、此ノ祖先崇
拜ノ氣分ヲ銷磨スルト云フコトハ私ハ重大
事ダト考ヘテ居ル、相續稅ガ無暗ニ高ク二
代續クカ三代續クカ、全部ナクナッテ來ル、
或ハ相續稅ハ日本ガ一番低イ、モット課シ
テ、殆ド一旦相續ヲスルト半分以上取ッテ宜
イト云フ議論モアリマス、ソレハ議論ノ立
テ方、國情ガ違ヒマス、西洋ノヤウナ個人主
義デ親モ子モ皆獨立シタ考ヘヲ以テ祖先モ
考ヘナイ、家族ト云フコトノ觀念ガ乏シイ
所デアッタナラバ、是モ稅ヲ取ル上ニ付テ
一ノ有力ナル財源デアリマセウ、ガ我國ノ
此ノ祖先崇拜ノ精神ヲ益〓〓揚シテ今日ノ戰
ニ勝チ拔カナクチヤナラヌ時ニ、無暗ニ相
續稅ヲ上ゲテ、二代目三代目ニハ祖先ノ墓
場ハ倒レテシマフト云フヤウナコトガアッテ
ハナラヌト私ハ思フノデアリマス、併シ現
在此處ニ出テ居リマス相續稅ノ程度ヲ私ハ
否認スルノデハアリマセヌ、此ノ程度ナ
ラ無論宜イノデアリマスガ、將來ニ付テ私
ハ希望的ノ意見ヲ述ベルノデアリマスガ、
是ハ一ツ餘程考ヘテ戴キタイ、兎角思想
方面カラ見マスルト、一方ニ階級ガ上ダト
カ、一方ニ財產ヲ持ッテ居ルトカ、ソレヲ呪
フヤウナ氣分ガ兎角アリ易イ、併シ是ハ私
ハ餘程財產ヲ持ッテ居ル人ハ矢張リ敬意ヲ
拂ッテ財產ヲ持タシテ置ク、活動ヲシテ財產
ヲ作ル人ハ財產ヲ作ラシテ置ク、是ガ他日
國家ニ事有ッタ時ニ役ニ立ッテ居ル、今日我
ガ國ノ此ノ千億以上ノ軍費ヲ賄ッテ尙且ツ
餘裕綽々タルモノハ、此ノ先輩ガ皆活動シ
テ國ノ富ヲ增シテ、所謂個人ノ富、卽チ國
ノ富デアル此ノ富ヲ增シタ結果、國債ニ應
ズル、貯蓄ヲシ、ソレヲ政府ガ利用スル、
サウシテ戰費ヲ賄ッテ行ケルノデアリマス、
此ノ金ヲ儲ケタノヲ單純ナル利潤追求ノミ
ト云ウテ叩クト云フコトハ、私ハ餘程是ハ
考ヘ物デハナイカト思フノデアリマス、故
ニ私ハ斯ウ云フ意味カラシテ、相續稅ノ如
キハ極端ナル課稅ハ餘程〓究ヲ要スルト考
ヘテ居ルノデアリマス、之ニ對スル藏相ノ
所見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=31
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032・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 相續稅ニ對シマ
スル只今ノ御所見、御同感ノ點ガ大分アル
ノデアリマス、前囘ノ增稅案、一昨年ノ增
稅案ニ於キマシテモ、亦今囘ノ增稅案ニ於
キマシテモ、考ヘ方ニ依リマシテ財產ニ相
當ノ負擔ヲ掛ケルト云フ考ヘノ傾向ノ强イ
方カラ見マスルト、他ノ稅ノ增加ノ割合カ
ラ考ヘマスルト、相續稅ノ增加割合ハ大分
輕微デアルト云フコトヲ御感ジニナルト思
フノデアリマス、只今ノ處デ全然財產ト云
フモノニ課稅シナイノダト云フ結論ニ達シ
マスルコトハ、色々ノ觀點カラ見テサウ迄
ハ參ラナイノデアリマスルガ、餘程今御說
ノヤウナ點モ考ヘマシテ、前囘モ今囘モ稅
率等ニ付キマシテハ相當考慮ヲ拂ッタ次第デ
アリマス、御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=32
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033・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ハ只今藏相ノ御說明ガ
アッタ如ク、今囘ノ相續稅ニ付テハ何等異存
ヲ持ッテ居リマセヌ、此ノ程度ハ宜イガ、極
端ナル相續稅ノ課稅ハ同意出來ナイト云フ
心持ヲ持ッテ居ル、ソレダケヲ申上ゲテ置キ
マス、ソコデ此ノ增稅案ガ成立シタ曉ニハ
私ハ此ノ半面カラ、官吏、「サラリーマン」、
或ハ大藏省關係デアリマスト、經理統制令
ヲ改正ヲシテ戴カナケレバナラヌト云フ聲
モ起リマセウシ、官吏ハ增俸シテ貰ハナケ
レバ食ウテ行ケナイト云フ聲モ出ルダラウ
ト思ヒマス、是等ヲ御考ヘニナッテ、此ノ塲
稅ノ結果、平年ニ於テ二十四五億ニナリマ
スカ、サウ云フ類ヲ若干出シテ所謂增稅ハ
シテ大キナ財源ヲ得タガ、又其ノ一部ハサ
ウ云フ方面ヲ潤ヒヲ以テ處理ヲシテ行クト
云フ御考ガアルノダラウト思ヒマスガ、其
ノ點ニ付テ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=33
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034・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 增稅ヲ致シマス
ルノハ、ドウシテモ國民トシテソレダケノ
負擔ヲシテ貰ハナケレバナラヌト云フ考ヘ
方カラ參リマスト、煙草ノ値上ヲ致シマシ
テ、三十錢デアッタ光ガ四十五錢ニナッタ、
金鵄ガ十五錢デアリマシタモノガ二十三錢
ニナリマシタ、煙草代ガソレデ殖エル、是
デハ實ハ困ルノデアリマス、酒ノ稅ガ上ッ
タ、酒代ガ殖エル、是デハ困ルノデアリマ
シテ、少クトモ酒代煙草代ハ前ヨリ分量品
質ヲ下ゲテ、ソレデヤッテ貰ハナケレバナラ
ヌノデアリマス、官吏ナドノ給與ニ付キマ
シテハ、無論十分トハ思ッテ居リマセヌノデ、
併シ是ハ他ノ點カラ考慮致シマシテ、尙改
善スベキモノハ改善スルトカ、色々ソレハ
アラウト存ジマスケレドモ、今囘ノ增稅ハ
是ハ國民ガ負擔ヲシテ貰フ、貰ハナケレバ
ナラヌト云フ點カラ出發致シテ居リマスル
ノデ、之ヲ原因ト致シマシテ、官吏ノ給與
ヲ增シマストカ、或ハ賃金統制令ノ給與ヲ
變ヘマストカ、是ハ致サナイ積リデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=34
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035・三井清一郎
○三井〓一郞君 少シ長クナリマスガ、モ
ウ一項、直接增稅デハアリマセヌ、速記ヲ
止メテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=35
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036・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=36
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037・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ラ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=37
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038・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 私ハ二三御伺ヒシタイ
點ガゴザイマシタガ、其ノ中ニハ多少他ヨ
リ質問モ出マシタノデ如何カト考ヘマスガ、
唯私ハ大キナ問題デハゴザイマセヌケレド
モ、國民生活ニ直面シテノ問題デ、實ハ隣
組ノコトニ付キマシテハ、二三年前豫算總會
ニ於テ隨分細カク述ベマシテ、而シテ其ノ
時分ニ於キマシテハ、或人ハソンナニ言ハ
ヌデモ宜イヂヤナイカ、ソンナモノヂヤナ
イト言ハレタ方モアリマシタガ、最近ニ於
キマシテ隣組ガドンナ風ニナッタカト云
フト、內容ガ低下シタト云フコトヲ言ヒ現
セマスカドウカ存ジマセヌガ、大分色々テ
事ヲ聞クノデアリマス、ソレデ隣組ニ付キマシテ
一ツ二ツ伺ヒタイノデアリマスガ、其ノ一ツ只
今大藏大臣ヨリ御說明ニナリマシタ市民稅、
今日ノ我々ノ都民稅、此ノ割當ノ基礎ト云
フモノハ、私ハ無茶苦茶ト云フコトヲ言ヘ
マスカドウカ知リマセヌガ、隨分亂暴ナモ
ノデアルト云ウヤフナコトヲ聞イタノデア
リマス、マア是ハ忍ブト致シマシテモ、忍ブベ
カラザルモノガ其處ニ一ツ二ツ之ニ伴ッテ
起ッテ來ルノデス、其ノ中ニハ御答辯ニアッ
タコトモアリマスカラ、其處ハ重ネテ申シ
マセヌガ、都民稅ヲ基礎トシテ寄附金ノ强
要ヲスルト云フコトデアリマス、寄附金ト
云フモノハ各人ガ爲シ得ル範圍ニ於テ誠意
ヲ盡シテ之ヲ何スベキモノデナケレバナラ
又、或ハ區ニ於ケル蒸氣「ポンプ」ガ殖エ
ル、火ノ見櫓ヲ造ルノダトカ、ヤレ何トカ、
〓育會ノ鍊成道場ヲ作ルノダト云フヤウナ
意味ノコトデ、是ハ最近ハ多少跡切レテ居
リマシタケレドモ、昨今亦一ツ參ッタ、是ハ
私ハ今日迄能ク分リマセヌ、又調ベテモ居
リマセヌガ、斯ウ云フ風ナコトデス、全國
ニ於ケル監視哨ニ居ル所ノ若イ人達ハ非常
ナ寒サニ震ヘテ居ル、之ニ對シテ寄附金ヲ
御願ヒスルト云フノデス、私ハ居リマセヌ
デシタノデ、家ノ者ガ會ッタノデスガ、ドウ
云フ言ヒ現シ方ヲシタカ知リマセヌガ、具
體的ニ申セバ四百圓寄附シテ戴キタイト云
フ、ソレカラ私ハコンナ關係ガアッテ議會ナ
ドヘ參リマスカラ、又來タラ、誰ガ中心ニ
ナッテヤルノカ何處ガ責任ヲ取ルノカ訊イ
テ置ケト言ッタノデスガ、又來タサウデス、
併シ之モ要領ヲ得マセヌデシタ、其ノ前ニ
私ハ內務次官ニ直カニ伺ッタノデス、全國ト
言ヘバ內務省ガ之ヲ知ッテ居ルカ防空局ガ
知ッテ居ルカ、ドッチカデナケレバナラヌノ
ヂヤナイカト思フノダガ、我々ハ兎角寄附
行爲ニ依ッテ集メラレタ金ガ、ドンナ大キナ
團體ガ今日アルニシテモ、過去ニ於テハ何
カノ問題ヲ皆起シテ居ルト言ッテ宜イ位、我
我ハ過去ニ於テ色々ナ事ヲ聞イテ居ル、同
ジ寄附ニシテモ何ダカ飮ンダリ食ッタリサ
レルノモ厭ナ氣持ダシ、氣持ノ好イヤウニ
シタイト思フノダガ、御存ジデスカト言ッタ
ラ、內務次官ハ知ラヌト言ハレタ、併シナ
ガラ後刻上田君ニ訊イタラ、防空局ガ之ヲ
ヤッテ居リマス、之ヲ許可致シマシタト云フ
ヤウナ話デ、細カイ事ハマダハッキリ致シマ
セヌデシタ、家ヘ歸ッテ見ルト、又來タ者
ガ言フノニ東京都ガヤリマスト言フ、
僕ハ君ヲ疑フ譯ヂヤナイケレドモ、全國ノ
事ヲヤルノニ東京都ガ中心ニナッテヤルノハ
理窟ガ變ヂヤナイカト言ッテ、寄附ハ少シ
バカリ致シマシタガ、サウ云フヤウナ風ニ
寄附金ガ來ル、我々ハ稅金ノ殖エルノハ出
來ルダケ之ヲ納メル、又之ヲ以テ誇リトス
ル位ノ氣分ニナラナケレバナラヌノニ、サ
ウ云フヤウナ割當ガ、不純ト云フコトハ言
ヘマセヌガ、我々ノ頭ヲシテ理解セシメ能
ハザルモノガ其處ニ存在スルコトヲ甚ダ不
愉快ニ思ヒマス、斯ウ云フヤウナ寄附金ナ
ドニ對シテ、大藏省ガ關ハリガアルトカ何
トカ云フコトカラ是ハ伺ッタノヂヤアリマセ
ヌガ、唯サウ云フコトヲ御耳ニ入レテ置ク
ノモ何カニナラウカト思ッテ、斯ウ云フヤウ
ナ點ニ付テモ注意ヲ拂ッテ戴キタイト云フ希
望ヲ申上ゲテ置キマス、モウ一ツ隣組ノ事
ニ付キマシテ、我々ノ同僚ト寄ッテ話ヲシテ
見マスト、此ノ事ハ殆ド皆同ジ意見ヲ持ッテ
居ラレタノデス、隣組ニ於テ納稅ヲ取扱フ
ト云フコトハドウ思フカト言ヒマスカラ、
私ハ大イナル間違ヒデアルト思フ、簡素化
ト云フコトハ、見樣ニ依ッテハ簡素化ニハ相
違ナイケレドモ、是ハ御役人ノ方、稅務署
ノ方カラ見テ簡素化カモ知レナイケレドモ、
其ノ半面ニハ非常ニ複雜テモノガ存在シハ
シナイカ、如何トナレバ、假ニ隣組ノ會ハ
多クハ夜行ハレマスガ、夜會ッテ納稅ヲスル、
或隣組デハ三千圓集ル、コッチハ五千圓集
ル、サウスルト金ヲ預ッタ隣組長ガ其ノ金ヲ
落スト云フコトモアル、又泥棒ノ入ラヌト
云フコトモナイ、併シ納稅者ハソレヲ賴ン
デ居ル、ソレヲ託シタケレドモ、若シ泥棒
ニ入ラレテ、泥棒ガ捕マッテ擧ゲラレテモ、
其ノ金ガナクナッテシマヘバ、國民トシテ國
家ニ對スル納稅ノ義務ハマダ果サレテ居ラ
ナイ、泥棒ガ捕マッテモ稅務署ハ免除シテハ
呉レナイ、納稅ノ義務ハアルカラ、我々ハ
再ビ之ヲ拂ハナケレバナラヌ、サウ云フヤ
ウナ責任ヲ考へ、之ヲ想フ時ニ、サウ云フ風
ナ隣組ノ如キハ無論金庫モナケレバ、何モ
ナイ、年ノイッタ人ヤラ何カガ居ッテ、夜九
時カ十時ニ歸ルカラ何事ガアルカ知レヌ、
ソレニ金額ガ小サナ金ナラ宜イケレドモ、
可ナリ多クノ何千圓、一萬圓近クノ納稅者
ノアルヤウナ處デ、サウ云フヤウナモノヲ
持ッテ來ルノハ、非常ニ危險ヂヤナイカト云フ
ヤウナ話ヲシタラ、偶〓、我々ノ同僚ノ間ニ、
同感デスト云フコトデアリマシタ、是ハ是
非此ノ委員會ニ於テ此ノ問題ヲ申上ゲテ、
サウシテ是ハ强要シナイヤウニシテ行カナ
ケレバナラヌ、必ズ隣組ヲ利用シテ納稅サ
セルト云フコトハ、半面ニ於テ簡素化ト云
フ性質ヲ帶ビテ居ルト同時ニ、非常ニ大ナ
ル責任ガ各都民ニ殘ル、又心配ヲ與ヘル、
又預ッタ人ガ非常ナ災難デアル、惡意ヲ以テ
ヤレバ是ハ仕方ガナイケレドモ、現實ニ落
スト云フコトモアル、ソレデスカラ、ドウ
カ納稅ト云フコトニ付テ必ズ强要シナイ
シナケレバイカヌト云フコトヲ强要サレナ
イヤウニシテ戴キタイ、ソレカラ又隣組デ
今申シタヤウナ前ノ、寄附金ノ割當、市民
稅トカ色々ナモノ、或ハ色々ナ貯金ガアリ
マスガ、ソレ等ニ對シテ其ノ成績ヲ爭フ、
自分ノ組ハ非常ニ良イカラ御褒美ヲ戴イタ
トカ、賞メラレタトカ云フコトデ、隨分無
理ナコトヲ言ッテ來ル場合モアリマスカラ、
ソレ等ニ對シテハモウ少シ上意下達ト申シ
マセウカ、今日デモ隨分極端ニ行ッテ居ル、
恐ラク失禮ナ言ヒ方デアルケレドモ、大藏省
關係ノ方ニ、貯金ノ種類ガ一體幾ラアリマ
スカト突然尋ネタラ、今日ノ貯金ノ數ハ
幾ツ、名前ハ何々ト言ッテ及第スル方ハアル
マイト思ハレル程澤山アル、何トカ貯金何
トカ貯金ト來ル、ソレハ出來ルダケ國民ハ
皆シテ居リマス、實際我々ノ小サナ隣組
デモ可哀サウナ狀態ノ人ガ澤山居リマス、
サウ云フ人ハ我々ガ出來ルダケ力ニナッテ
上ゲテ居リマスケレドモ、ソレニドウモ兎
角隣組長ノ內容ト云フモノガ低下スルト云
フコトヲ申シマシタガ、初メカラ低下シテ
居ル所モアルカモ知レマセヌ、組長トカ副
會長トカ云フノガ、其處ニ非常ナ矛盾ガアル、
今日ノ隣組ヲ理想的ニヤラウト思ッテモ、頭
ノアル人ハナカ〓〓受ケマセヌ、アンナ面
倒ナ複雜ナモノヲ·····之ニハ我々ハ同情
ヲ持ッテ居リマス、能ク理解シテ居リマス、
少シハ無理サレテモ仕方ガナイト存ジテ居
リマスルガ、隣組ヲ表彰スルトカ何トカス
ルト云フコトガアルナラバ、隣組長ノ惡イ
事ヲシタ者ニ罰則ヲ加へルト云フコトモアッ
テ宜イノヂヤナイカ、從ッテ今日ハ反對ノ現
象デハナイカト思フ、此ノ間何カノ機會ニ、
隣組長ニ對シテハ罰則ヲ加ヘナケレバナラ
ナイトカ、誰カ衆議院カ何カデ言ハレタヤ
ウナ風ニ記憶シテ居リマスガ、罰則ト云フ
ノハ、何モ極端ナ罰則デナクテモ宜イケレ
ドモ、何ヲシテモ我々ハ罰セラレナイト云
フ氣分ヲ與ヘルトトンデモナイコトニナ
リヤセヌカ、是等ハ言ヒ現シ方ガ惡ウゴザ
イマシタガ、三ツ四ツ、サウ云フコトニ付
テ申上ゲマシタケレドモ、隣組ニ納稅ヲ取
扱ハシメルト云フコトニ付テハドウ御考ニ
ナッテ居ルカト云フコトヲ、幸ニ大臣閣下ガ
オイデヽゴザイマスカラ伺ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=38
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039・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 戰時ニ於ケル隣
組ト云フコトハ豫テ私ハ重要ニ考ヘテ居
リマス、率直ニ申シマスト、隣組ガウマク
運用ガ必ズ出來ルト言ッタラ、ソレハ不思議
ダト思ヒマス、ドウ云フ指導精神デドウ云
フ働キヲシタラ宜イカ、是等ノ點ニ付不十
分ナ狀況ノ下ニソレガ始ッタノデアリマ
ス、批判的ニ言ヘバ、ウマク行ツタラ寧ロ不
思議ナ位デ、ソンナモノナラ止メルカ、今日
アレガナカッタラ日本ハ運轉シナイ、良カレ
惡シカレ、アレガアッテ働イテ行クト云フコ
トニ依ッテ運轉シテ行ク、例ヘバ適切デナイ
カモ知レマセヌガ、日本ノ統制經濟ハ其ノ
通リデアリマス、昭和十二年、統制經濟ノ
コトハ無用意ニ實ハ始ッタノデス、無用意ニ
始ッタノガ宜イカ、始ッタノガ惡イカ、其ノ
議論ハ別トシテ、事實ハサウナンデアリマ
ス、併シ統制經濟ハ止メラレルカト云フ
ト、止メラレマセヌ、隣組デモ統制經濟デ
モ、批判的ニ申セバ、色々アリマスガ、モ
ウ今日ハ之ヲ能ク育テヽ行ク外ナイ狀況デ
アルノデアリマス、出來ルダケ之ヲ良クス
ルヤウニ政府モ力ヲ致ス、色々其處ガムツ
カシイ、惡イコトモアル、良イコトモアリ
マスガ、之ヲ良クスルヤウニ育テヽ行クト
云フコトガ、私ハ一番必要ナコトデアルト
思フノデアリマス、其ノ意味ニ於キマシテ
ハ同情ヲ以テ見ルノデアリマス、是ハ日常、
周圍ニ接觸スルコトカラ致シマシテ良イコ
ト惡イコトガ響イテ參リマス、之ヲ同情ヲ
以テ見ル、其處ガ實ニムツカシイノデアリマ
スガ、ドウシテモサウ行カナケレバナラヌ、
又事實良イ隣組長ト申シマスカ、良イ首腦
者ガアル所デハナカノ〓色々ノ事ガウマク
行ッテ居ルノモ事實デアリマス、結局マア過
去ノ善惡ニ拘ラズ之ヲ良ク改善シテ行クコ
トガ何トシテモ重大デアルト考ヘマス、今
御示ノ點ニアリマシタ寄附金ニ付テ私共ノ
觀點カラ申シマスト、寄附金ト云フモノハ御
話ノヤウニ其ノ惡意ガナクトモツイ浪費セ
ラレルト言ヘバ言葉ガ强過ギルカモ知レマ
セヌガ、金ノ效率ガ十分ニ發揮セラレズシ
テ行クト云フコトガ隨分アリマス、現在ノ
ヤウナ場合ニハ餘リ寄附金ヲヤリマスノハ
外ニ負擔ノ多イ時デ適當デナイト思ヒマ
スガ、一面又此ノ世ノ中ガ單純デアリマセ
ヌノデ、稅デ、地方稅國稅デ何モ彼モヤッテ
シマフ、後一切、公益公共的ノ事ハ殆ド是
デマア行ケルカト云フコトニナリマスレバ、
是モナカ〓〓一面考へモノノ點モアリマセ
ウ、又寄附金ノ寄附ヲスルト云フ精神的ノ
良イ所モアリマスルノデ、是等ガナカ〓〓
各角度カラ考ヘマスト問題デアリマスガ、
兎ニ角目的ガ明瞭デナク、又集ッタモノガ一
萬圓集メテ本來ノ目的ニハ五千圓カ六千
圓シカ使へナイト云フヤウナコトハ、此ノ
際最モ愼ムベキコトデアル、今ドウ致スト
云フコトハ申上ゲマセヌガ、御話ノヤウナ
點是ハ二三日前ニモ或新聞ニモ書イテ居
リマス、十分ニ私共ノ頭ニ置キマシテ、意
ニ掛ケテ居リマス、適當ナ施策ヲ機會ガア
リマシタラ作リタイト思ヒマス、ソレカラ
納稅ニ付テデゴザイマスガ、是ハ徵稅令書
ヲ傳ヘテ貰ヒマストカ、サウ云フコトニ付
キマシテハ隣組等デヤッテ貰フコトモ適當ト
存ジマス、私共現金ヲ集メテ納稅スルコト
ニ付キマシテハ、全ク御話ノ通リ御同感デ
ゴザイマス、決シテ之ヲ强ヒナイヤウニ致
シマス、ヤルカヤラヌカハ其ノ所々ノ情況
ニモ依リマス、御話ノヤウナ事ガアリマシ
テハ、ソレハ全ク危イコトデアリマス、ソ
レカラ第三ノ貯金デゴザイマスガ、之モ御
話ノヤウナ面ガ十分ニアリマス、又隣組長
ニハ忙シイ人モアリマスシ、專門家デモア
リマセヌカラ、ツイ割當ガ機械的ニナリマ
シテ、一方ニハマダヤレバ出來ルト云フ所
モアリ、一方ニハ非常ニ苦シイ所モアルト
云フ點ガアルノデアリマス、マア實ハ是ハ
後デ皆サンニモ差上ゲヨウト思ヒマスガ、
古イモノデアリマシテ、昨年デアリマス、
ドウシテモ割當ガ機械的ニナル、ソレデ之
ヲドウ適正ニヤルカ、適正ニヤルコトニナ
ルト云フトナカ〓〓複雜ニナリマシテ、餘程
ノ頭ノアル熱心ナ隣組長、町內會長デナイ
ト實ハヤレナイ、其處ニマア惱ミガアルノデ
アリマスガ、ソレニシテモ色々考へル點ハ
考ヘテ貰ハナケレバナラヌト云フノデ、是
ハ非常ニ簡單ナモノデアリマシテ、或ハ御
讀ミ願ハナクトモ、是ハマア分リ切ッタ
コトデアラウカトモ思ヒマスガ、實ハ是
ハ貯蓄奬勵委員會ノ委員ノ諸君及ビ東京
デ貯蓄ノ問題ニ良イ成績ヲ擧ゲ、熱心ナル
町內會長及ビ之ニ準ズルヤウナ人ヲ數十人
集メマシテ、縱橫ニ論議シテ貰ッタ結果、私
自身ガ色々筆ヲ加ヘマシテ、一生懸命ニ拵
ヘマシタ、拵ヘタノガ出來上リマシタノデ、
意思ノアル所ハ熱心ニ御考ヘ下サレバ相當
ニ分ルト思ヒマス、結果ハ十分ニ行ッテ居リ
マセヌガ、氣持ハ斯ウ云フ氣持デヤッテ居ル
ト云フコトノ御理解ヲ願フ參考ニナリマス
カラ、何レ明日デモ取寄セマシテ差上ゲタ
イト思ヒマス、ソレデ貯蓄ニ付キマシテ隨
分各方面デ御苦勞ト存ジマスガ、大體前ニ
モ申上ゲマシタ通リ、國民ノ生產ノ八割ハ
軍需生產デアル、所得ガ多イ人ハモウ收入
ノ九割モ稅デ納メル、殘ッタモノノ八割ヲ貯
蓄ニ向ケル、百ノモノナラ收入ノ一그バ
セント」カ二「パーセント」デ暮シテ居ルト
云フ狀況デ、收入ノ少イ人ハ無論サヴハ參
リマセヌガ、兎ニ角懸命ニ貯蓄ニ向ケル、
而モ自分ノ生活ト云フモノヲ切詰メテ行ク
ニ非ズンバ、此ノ戰時ノ大生產ハ出來ナイ
譯デアリマシテ、是ガ眞ノ戰ノ苦シサガ、
現實ニ戰場ニ銃後ガアルト云フコトヲ其ノ
儘表シテ居ル面デアリマス、ヤリ方ガ拙イ
爲ニ、同ジ靴デモ足ノ恰好ニ合ハセマセヌ
爲ニ豆ヲ拵ヘ、搾リ剝カシテ居ルト云フノ
ガ現狀ダラウト思ヒマス、是モ全國ノ組合
長ガ皆「エキスパート」ニナルコトハ出來マ
セヌガ、結局多少痛ミガアリマシテモ、是
ガ戰爭デアリマスルカラ、各國民ノ御協力
ヲ御願ヒシタイト存ジマス、無用ノ摩擦苦
痛ハ出來ルダケ除クコトニ今後十分ニ努力
シテ參リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=39
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040・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 只今ハッキ。リシタ御返
答ヲ得マシテ、私モ非常ニ有難ク感ズルノ
デアリマス、實ハ隣組ノコトニ付キマシテ
色々申上ゲマシタガ、此ノ前チヨット大臣閣
下ニハ〓究會ノ機會ニ御覽ニ入レタカモ知
レマセヌケレドモ、此ノ隣組カラ來マシタ
モノノ中ニ、公債ニ應ズル能ハザル者ハ云
云ト書イテアッテ、サウシテ更ニ、前項ノ方
法ヲ以テモ到底不可能ナル場合ハ、其ノ已
ムヲ得ザル事情ヲ證スルニ足ル理由書(收支
計算書ノ如キモノ)ヲ持參シテ來イ、町會長
ハ他ノ組合員ト諮ッテ其ノ可否ヲ決スルト、
實ニ亂暴ナ話デス、斯ウ云フモノガ隣組ノ
中ニ〓ッテ來ル、是ダケノ權能ヲ持ッテ居ル
筈ハナイ、實ニ亂暴ナコトデアリマシテ、
斯ウ云フヤウナ越權行爲ハ、是位ハッキリシ
テ居レバ誰ガ見テモ越權行爲デ、是ガ「特」〓
覽板デ來テ私貰ッテ置イタノデス、人ノ家ノ
收支決算書ヲ持ッテ來イ、オ前ハ公債ニ應ジ
ラレルカ應ジラレナイカ俺等ガ寄ッテタカッ
テ調ベル、コンナ亂暴ナコトハナイ、斯ウ
云フヤウナ行爲ガ時々アルノデス、今申上
ゲマシタ頭ノナイ連中ガヤリマスカラ、サ
ウ云フヤウナコトニナッテ命令權ヲ持タザ
リシ者ガ命令權ヲ持ッタ、ソコニ自分ガサウ
言ッチヤ何ダガ、エライ御役人ニナッタト云フ
ヤウナ氣分ガアリ〓〓ト見エル、アリ〓〓
ト見エテ、所謂指導員ガ無闇ニ怒リツケテ
見タリスルカラ、指導員ニ命令權アリヤ否
ヤト云フコトヲ此ノ前內務大臣ニ都制案デ
伺ッタノデスガ、指導員ヂヤナイカ、命令權
ハ何處ニ持ッテ居ルカ、物ノ言ヒ方ヲ氣ヲ附
ケテ言ヒ給ヘト云フコトヲ言ッタコトガアリ
マスケレドモ、サウ云フ亂暴ナコトヲ言ハ
レマスカラ、善良ナル市民ノ頭ニ惡イ印象
ヲ與ヘル、生活難、配給難、色々ナ問題ト
直面シテ、一種ノ大キナ言葉デアリマスカ
知リマセヌガ、國家ニ對スル不滿ヲ持ツ、
國家ヲ呪フヤウナ思想ガ蔓延スルコトヲ非
常ニ心配シテ居ル、隨分國家ヲ呪ウテ居ル
ト云フコトノ現實ヲ申上ゲルコトハ出來マ
セヌガ、何トナク不滿ヲ持ッテ居ル、ソレ
デ今日ハ能ク赤トカ「ユダヤ」ヂヤナイカ
ト云フヤウナコトヲ言フ人サヘアル、サウ
云フヤウナコトニ對シテ、小サナコトガ國
民ノ神經ヲ刺戟スル點ニ於テ、大イニ考ヘ
ナケレバナラヌコトデアルト私ハ思フ、同
時ニ今日、繰返ス必要ハアリマセヌケレド
千、官吏ノ一部ニ不心得ノ者ガアッテ、官吏
ニ對スル問題ガ法律化サレテ來タ、是ハ國
家ノ不祥事デス、本當ノコトヲ言ヒマスレ
バ·····日本ノ如キ國家ニ於テ官吏ヲ懲罰
スル法律ヲ新シク作ッテ發表スルト云フコ
トハ、國家ノ不祥事之ニ過グルモノハナイ、
私ハ官吏公吏ニ對シテハ全幅ノ信賴ヲ置イ
テ居ルコトガ前提デアルト思フ、ニモ拘ラ
ズソレガ法律化サレタト云フコトハ、決シ
テ誇ルベキコトデナク、國家ノ不祥事之ニ
過グルモノハナイト私ハ憂フル者デアリマ
ス、併シ今日ドウシヨウト、ナイヨリハ宜
イト云フコトナラバ、ソレデ宜シウゴザイ
マセウ、併シソンナモノニ括ラレテ、官吏
諸君、公吏諸君ガ立派ナ人ニナルト云フコ
トハ、根本ノ間違ヒデアル、自ラ省ミテ行カ
ナケレバナラナイ、是ニハ或力、或思想ガ
働イテ居ル、是ハ我々ガ何ト云フコトハ申
上ゲラレマセヌ、ケレドモ大イニ國民全
體ガ此處ニ緊張スベキ重大ナル性質ノモノ
デハナイカト私ハ思フノデアリマスノデ、
意見ヲ述ベテ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=40
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041・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今曾我子爵
ノ發言ノ中ニ速記錄カラ除キタイト云フ御
要求ガアリマシタガ、除クコトニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=41
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042・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 ドウゾ、全部デモ宜シ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=42
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043・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 事務當局ト打
合セマシテ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=43
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044・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ所謂行キ
過ギニ付キマシテノ御說、誠ニ御尤モデア
リマシテ、私共サウ云フ事實ガナイヤウニ
出來ルダケ指導ヲシ、努メテ居ル譯デアリ
マス、唯一方ニ斯ウ云フ事實モアリマス、
私共認メテ熱心ナ眞面目ナ町內會長其ノ他
ト見ル方カラ、强制權ヲ貰ヒタイト云フ聲
ガ非常ニ多イノデス、ト云フノハ相當ニ金
ガアッテ立派ナ生活ヲシテ、日髮日化粧ノ贅
澤ナ生活ヲシテ居ルガ、絕對ニ貯蓄ニ協力
シナイ、防空ニモ何ニモ出テ來ナイ、サウシ
テオ前一體强制スル權利ガアルノカ、斯ウ
來ル面モアルノデアリマス、之モ事實ダト
思ヒマス、サウ云フ時ニ少シ熱情家ノ町內會
長ニ於テハ、本氣ニヤルノダカラ强制權ヲ
貰ヒタイト言フ、處ガ、是ガ私ハ大事ナル
點ダト思ヒマス、善良デ賢明ナ人ナラバ何
ヲヤラシテモ宜イ譯デアリマスガ、善良ナ
人デモ、所謂熱心ノ度ガ過ギル場合モアリ
マスシ、判斷ノ誤ル場合モアリマス、政府
トシマシテモ隣組、町內會ト云フモノニ對
シテ、所謂强制權、命令權ヲ與ヘルト云フ
コトハ或ハ箇々ノ場合ニハ、ソレガ適當
デアルト思ハレル場合ガアリマシテモ、全
體ノ制度トシテ非常ニ考フベキモノヂヤナ
イカ、御承知ノヤウナサウ云フヤウナコト
ガナイ方針デ行ッテ居リマス、從ッテ罰則ナ
ドノナイ是ハドウシテモ道義的ナ方法デ行
カナケレバナラヌ、サウ云フ基盤ガ其處ニ
ナケレバナラヌト考へテ居リマス、貯蓄ノ
熱心ナ指導員其ノ他カラ、サウ云フ聲ガ出
マスガ、ソレナラバ何度デモ熱心ニ話シタ
ラドウカ、又何度デモ熱心ニ話シテ、能ク分ツ
テ從來非協力ノ人ガ非常ニ協力スルヤウ
ニナッタト云フ例モ隨分アル、此處ハ熱心デ
ヤル、强制デシタモノハ形ダケデ從フノデ
アリマス、ソレガ心カラ戰爭ト云フコトヲ
考へ、國家ノ將來ヲ考ヘ、ドウシテモ出來ル
ダケソレニ努力シナケレバナラヌト云フコ
トヲ考ヘテ貰ッテノ上デナケレバ、本當ノ戰
爭ノ力ニナラナイノデアリマスカラ、極力
强制權ト云フコトデナク、熱心ニ努力ニ依ッ
テ考ヲシテ、サウ云フ考ニナッテ貰フヤウ
ニ盡力ヲシテ貰ヒタイト云フコトヲ申シテ
居リマシテ、其ノ方針デ參リタイ、要ハ互
ニ缺點ヲ擧ゲ反撥致シマスレバ、互ニ缺點
モアル譯デアリマス、寧ロ自分ノ缺點ヲ省
ミテ直シナガラ、相手ノ立場ニ同情ヲシ、
所謂互ニ其ノ芽ヲ伸スト云フ氣持ヲ持ッテ
行カナケレバ、兎ニ角法制ナンテ言フモノ
ハ一ツノ道具ニ過ギナイノデアリマス、
根本ハ其ノ氣持デ參リタイト存ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=44
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045・織田信恒
○子爵織田信恒君 大藏大臣ハマダオイデ
ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=45
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046・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) マダ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=46
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047・織田信恒
○子爵織田信恒君 ソレデハ御質問致シタ
イノデスガ、先程カラノ色々委員ノ御質問
ニモ關聯シテ居ルノデアリマスルガ、先刻
大藏大臣ノ仰シヤイマシタヤウニ、此ノ戰
時下我ガ國ガ自給自足ノ財政體制ヲ立テテ
行クト云フ場合、此ノ增稅ハ免レナイ、是
ハ御尤モデアラウト思ヒマス、當然ノコト
ト思フノデアリマスルガ、矢張リ此ノ增稅
ノ結果ガ國民ノ生活組織デアルトカ、內容
デアルトカ云フモノニ、響イテ來ルコトハ
是ハ當然デアリマス、ソレニ加フルニ先程
チヨット御話ガアリマシタヤウニ、此ノ統制
經濟ノ政策モモット强化シテ參ルダラウト
思ヒマス、自然國民ノ生活ニハ色々ナ影響
ヲ及ス次第デアリマスルガ、矢張リ此ノ統
制經濟、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ一ツノ必要充
足ノ經濟ト申シマスカ、此ノ必要充足ノ經
濟ヲ强化シテ行ケバ、所謂在來唱ヘラレテ
居ッタ一般國民經濟ト云フモノハ枠ヲ嵌メ
ラレ、壓縮サレテ行クト云フノハ、是ハ
般ノ傾向ダト思フ、是亦免レナイ所デアル
ト思フ、ソコデ一方色々ノ生活ノ形態ニサ
ウ云フ影響ガアリマスルト、ソコニ國民ハ
自ラ又不安ヲ懷クコトニモナルノデ、ソコ
デ自然政府御當局ニ於カレマシテモ國民ノ
生活ハ確保スル、或一種ノ「ライン」ヲ確保ス
ルノダト云フコトヲ再三政府トシテモ仰セ
ラレタノハ、其ノ點ノ不安ヲ除去シ、國民
ニ或一定ノ安心ヲ與ヘルト云フ御趣旨デア
ルヤウニ思フノデアリマス、處デ今日迄國
民ノ生活ノ「ライン」ヲ確保スル、或線ヲ確
保スル、其ノ線ト云フコトニ付テ政府御當
局カラ具體的ニ伺ッタコトガナイト思ヒマ
ス、一兩年前カラ或新聞社ノ座談會デ、當
時ノ農林大臣ト商工大臣ト此ノ點ニ觸レテ
チヨット言ハレテ居ッタノハ、其ノ時ノ現狀
ヲ維持スルノダト云フヤウナ御話ガ出テ居
リマス、ソレデハドウモ甚ダハッキリシナイ
ノデアリマス、又或醫學ノ雜誌デアリマシ
タカト思ヒマシタガ、矢張リ此ノ國民生活
ノ確保スベキ「ライン」ト云フノハ、國民ノ
體位ニ影響アル、體位ガ向上シナイデ下ッテ
行クト云フヤウナ生活ガ一ツノ「ライン」デ
アルト云フヤウナ、生理的ナ方面カラ言ッテ
居ルノモアリマシタ、是モ甚ダ徹底シナイモ
ノト思ヒマスガ、又其ノ後或小サナ經濟雜誌
ト思ヒマシタガ、是ハ企畫院ノ或役人ノ方
ガ稍〓具體的ナ意見ヲ吐カレタノヲ私ハ拜見
シタコトガアッタノデアリマス、併シソレハ
立派ナ御意見デアルトハ思ヒマシタケレド
モ、我ガ國ノ實際ノ此ノ社會事情カラ見テ、
果シテ妥當ナリヤ否ヤト云フ點カラ言フト、
直チニハ其ノ御意見ニハ贊成ハ出來ナカッタ、
固ヨリ或一線ヲ抽出シテ玆ニ出スト云フコ
トハ比較的ムヅカシイ、觀念的ニモムヅカ
シイコトトハ思ヒマスケレドモ、併シ或程
度其ノ「ライン」ヲ政府ガ御示ニナルト云フ
コトハ、例ヘバ增稅其ノ他ノ場合ニ於テモ、
政府ハドウ云フ社會層ノドウ云フ線ヲ標準
トシテ政策ヲヤッテ居ルノカ、ト云フコトガ
或程度ハッキリシテ、所謂奢侈デアルトカ無
駄デアルトカ云フヤウナ觀念ガ伴ッテハッキ
リシテ來ルンヂヤアルマイカ、自然國民モ
其ノ「ライン」ヲ設ケテ生活ヲ切下ゲル、ト
云フヤウナ努力モソレニ伴フモノデアリマ
ス、色々ナ誤解モソレニ依ッテ防ガレルンヂ
ヤナイカ、色々ナ施策ヲ爲サル上ニ却テ或
程度ノ「ライン」ヲ示サレ、政策ヲ樹テテ行
カレルコトヲ示サレタ方ガ仕事ガシヨクハ
ナイカ、ト云フヤウナ氣持モ私ハシテ居ル
ノデアリマス、ソレデ無論先程大臣ノ仰セ
ラレマシタヤウニ、此ノ自給自足ノ財政ガ
長期ニ亙レバ、自ラ其ノ「ライン」ノ移動ト
云フコトモ起ルコトハ當然デアリマスルケ
レドモ、大體ニ於テドウ云フ所ヲ狙ッテ國民
ノ生活ノ安定ヲ確保スルト政府ハ御考ニナッ
テ居ルノデアリマセウカ、若シモ承ルコト
ガ出來レバ此ノ機會ニ承ッテ見タイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=47
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048・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御尤ナ御尋デア
リマシテ、率直ニ申上ゲマスト、之ヲ何處
カラ觸ッテ見テモ、是ガ確タル「ライン」デア
ルト云フ、其ノ觸ル所ガ實ハハッキリナイト
思フノデアリマス、普通極ク簡單ニ出マス話
ガ、一體何圓アッタラ生活ガ出來ルノダ、斯
ウ云フ話デアリマス、是ハ今部數ガアレバ
差上ゲヨウト思ヒマスガ、實ニ卑近ナコト
ヲ申上ゲルヤウデアリマスガ、兎ニ角何圓
ト申シマシテモ、一家トスレバ家族ノ人數
ニ依リ年齡ニ依リ性ニ依リ、〓育ヲ受ケル
必要ノ年齡ノ者ガ居ルカ居ナイカニ依リマ
シテ、又高等〓育ヲ受ケテ居リマス場合ナ
ラ、自分ノ住居カラ通學シ得ル所ニ學校ガ
アルカナイカデ、是亦大變ナ差ガアルト思
ヒマス、身體ガ健康デアルカ健康デナイカ
ニ依ッテモ違ヒマス、家屋ノ所有如何、空イ
タ土地ノ有無、菜ッ葉ヲ作ッテ或程度ノ野菜
ヲ自給シテ居ルトカデ、到底此ノ金額デ計
算スルト云フコトハ出來ナイ話ナノデアリ
マス、能ク生活ハ何圓デアル、サウ言フ、
實際ノ政策ニ響キマス上ニ於テ、何圓デア
ルト云フ計算ヲスル以上ハ、餘リ無理ナコ
トハ出來ナイ、今簡單ニ二三ノ例ヲ申上ゲ
マシタガ、ソノコトデモ中間ノモノヲ採ル
ト云フコトニナル、サウスルト其處迄生活
ヲヤッテ宜イノダ、ソレヨリ下ニ行ッテハ無
理ナノダ、斯ウ國民ノ多數ハ取ル、其處ニ
非常ナ間違ガアル、私ハ結局是ハ健康ヲ維
持增進スルコト、第二ノ國民ノ〓養ト云フ
コト以外ニハナイト思ヒマス、→極力其處迄
壓縮サレテ行クベキダト思ヒマス、ソレガ
何デアルカト云フコトニ付テハ、衣生活ハ
何處迄切詰メルノダ、住居生活ハ何處迄切
詰メルノダ、食生活ハ何處迄切詰メルノダ、
サウスレバ食生活モ今ノヤウニ土地ニ依ッ
テ違ヒ條件ニ依ッテ違フ、一家ノ支出ガ何圓
ト決リマセヌ、結局「カロリー」ガドウトカ云
フコトニナル、「カロリー」ガドウトカ申シ
マシテモ、榮養素ノ配分デスガ、單純ナ「カ
ロリー」デハイケナイ譯デアリマス、今日モ
或所デ話ガ出マシタガ、「カロリー」分 2
リー」ト言フガ、アレハ石炭ダケデ宜イヂヤ
ナイカ、サウモ行キマセヌ、結局健康ト第二
國民ノ〓育ト云フ外ハナイト思ヒマス、其
處ヲ金額デ表スコトハ出來マセヌ、寧ロ私
ハ具體的ニ今衣生活ハ斯ウシヨウ、オ互ニ
夏服ハ作ルマイ、〓子ハドウシヨウ、衣料
切符ハ若イ育ツ盛リノ者、働ク者以外ハ使
ハナイヤウニショウトカ、私ハ一々生活ノ
面ニ付テヤッテ行ク外ハナイノヂヤナイカ、
又結婚ノ費用ハドウシヨウ、總テ其ノ面ニ
付テ銃後デ生產ノ爲ニ、前線ニ力ヲ付ケル
爲ニ働ク働キガ停ラナイ、ソレガ出來ルト
云フコト、第二ノ國民ヲ〓育シテ行クト云
フコト以外ハ、モウ具體的ニ一々考ヘテ行
ク外ハナイト思ヒマス、ソレヲ率直ニ申上
ゲマスト、矢張リ之ガ工夫ニ依ッテ違ヒマス、
何ト申シマシテモ人ハ感ジガアリ、惰性
ガアリ、習慣ガアルノデアリマス、何トシ
テモ違ヒマス、三年前ニ出來ナイト思ッタコ
トガ今ハ出來ル、三年前ニハヲカシクハナ
イカト思ッタコトガヲカシクナイ、其處ガマ
ダマダ私ハ考ヘテ行ク餘地ガアルト思ヒマ
ス、衆議院デモ御質問ガアリマシタ、何處
迄切詰メルノダト云フ御質問ガアリマシタ、
今斯ウ云フ卓子掛ガ掛ッテ居リマスガ、是ガ
ナクテモ御互ニ話ガ出來ルヂヤアリマセヌカ、
サウ云フコトガ幾ラモアラウト思ヒマス、
此處デ、國民生活ノ最低生活ノ範圍如何、
ト云フ御質問モ決シテサウ云フ御趣旨デハ
ナカッタノデアリマスガ、私ハ是ハ健康ト
〓育ダケダ、後ハ壓縮出來ルダケ壓縮シテ
行ク、其ノ具體的ナコトハ御互ヒニ社會通
念ニ從ッテ政府モヤリマセウ、又各種ノ團
體モヤリマセウ、矢張リ端カラ實行シテ
行クコトデアル、自分ガ此處迄ハ切詰メルコ
トガ出來ル、此處迄ハ省ケルト思フコトヲ、
ドシ〓〓實行スルヨリ外ナイト思ヒマス、
政府モ確保シタイ最低ノ線ハ今申シタ傾
向デアリマス、食糧政策ニ重キヲ置イテ居
ルノモ、其ノ點カラ參ッテ居ル次第デアリ
V-18ソレト將來ノ國民ノ〓育ト、之ヲ中
心トシテ進ミタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=48
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049・織田信恒
○子爵織田信恒君 今ノ大臣ノ御說明モ御
尤モダト思ヒマス、個人々々ニ人ヲ見マシ
タ時ニ、切詰メタ一番「ライン」ガ其處ニ行ク
ノダラウト思ヒマス、先程チヨット申上ゲマ
シタ雜誌ニ出テ居ッタ、多少具體的ノ意見
ト云フモノモ、國民ノ中デモ、個人々々ト
云フヨリモ、國民ノ中デモ壯健ナル兵隊ヲ造
ル、其ノ「ライン」ガ一ツ、ソレカラ農業、工業
ニ對スル勞力ヲ確保スルコト、其ノ體位ヲ
確保スルコト、其ノ「ライン」ガ同時ニ一ツ、
ト云フヤウナ意見ガ其ノ中ニハ出テ居ッタ
ノデアリマスガ、是ハ一ツノ見方デアリマ
スケレドモ、我ガ國ノ社會事情カラ見マシ
テ、サウ云フヤウニ簡單ニ見ルコトガ果シ
テ妥當カドウカ、詰リ私ノ虞レル所ハ餘リ
ニ一種ノ個人主義ト言ヒマスカ、個々ノ人ヲ
見ル時ニ、日本ノ家族制度ト云フモノガ破
壞サレル虞ガアルノヂヤナイカ、是ハ非常
ナ大事ナ點デアリマシテ、日本ハ個人々々
ヲ見ルト同時ニ、其ノ個人ガ集團シテ、ソ
コニ先程カラ御話ノ思想的ニモ、健全ナル思
想ガ其處デ結成サレテ居ル家族生活、家庭
生活ガ破壞サレテハ、日本ノ傳統ノ長所ガ
失ハレルノデハナイカ、或ハ生活ノ程度ヲ
切下ゲテ行クノモ宜イケレドモ、ソレノ
各個人々々ガ持ッテ居ル家族制度ノ精神ガ、
ソレガ爲ニ破壞サレルヤウナ所迄行クコト
ガ、是ガ一ツノ心配ナンデス、ソレカラモ
ウ一ツ、抽象的ニナルカモ知レマセヌガ、
是ハ他ノ委員會デモ私ハ申上ゲタコトデモ
アリマスガ、故人ニナラレマシタ戶田海市
博士ナドモ、日本ノ社會組織ト云フモノハ
何處ニ重點ヲ置クカト云フ時ニ、日本ノ國
デ、今日ヲ成シタ社會層ハ、所謂中堅知識
階級ダ、此ノ中堅知識階級ト云フモノガ我
ガ國ノ獨特ノ社會組織トシテ大事ナ點デア
ル、外國ニ於テハ勞働者階級デアルト云フ
處モアルケレドモ、日本ニ於テハ其ノ意味
ニ於テハ勞働問題ガ起ラナイ、中堅知識階
級ノ問題ガ日本ノ大キナ政治ノ中心ニナル
問題ダ、ト云フヤウナコトガ主張サレテ居ッ
タコトヲ、私ハ最近ニ讀ンダコトヲボンヤ
リ記憶シテ居ルノデアリマスガ、無論今日
其ノ中堅知識階級ト云フモノハ、何處カラ
何處ノ層カト云フコトハ甚ダ困難デアリマ
スルケレドモ、大體サウ云フ考ヘ方ハ日本
ノ國ガ是カラ發展シ、政治ガ圓滿ニ運行サ
レテ行ク上ニ、大事ナ「ポイント」ニナルト云
フ氣ガシテ居ルノデアリマス、自然國民生
活ニ或標準ヲ求メル時ニハ、個人々々ヲ見
テハ是ハピンカラ切リ迄アルノデアリマス、
大體日本人ノ大事ナ層ガ何處ニアルカ、サ
ウシテ或「ライン」ヲ出來ルダケ確保シテ、
無論是ハ時代ノ變化ニ依ッテ、ソレ〓〓其ノ
「ライン」ガ上ガルコトモ下ガルコトモアル、
是ハ當然私モ考ヘラレマスガ、日本ノ社會
ガ健全ニ發達シテ行ク時ニハ、或一ツノ矢
張リサウ云フ大事ナ層、若シクハ先申シマ
シタ家族制度ヲ堅持スル部分ト云フ所ニ、
個人ヲ見ル外ニモウ一ツ寧ロ注意スベキ點
ガアルノデハアルマイカ、斯ウ云フマア氣
持ヲ持ッテ居ルノデアリマス、無論先大臣
ガ言ハレタヤウニソレナラバ「ライン」ヲ決メ
タナラバソレカラ上ノ者ハズット下ゲル
ケレドモ、下ガソレヲ持ッテ行ッテ上ガッタ
ラ仕樣ガナイ、是ハ矢張リ施策ノ上ニ於テ
所謂手加減ハ要ルト思ヒマス、併シ先程大
臣ガ言ハレタヤウニ、最善ノ理想ハ一般國
民ヲシテ恒產アラシムルノダト云フ所ニ、
是亦一ツノ見方デアリマスカラ、是ハ或一
ツノ年月ト云フモノヲカケテ、其處ニ政府
ガ國民生活ノ向上ニ施策ガ行ハレテ行クト
云フコトハ、是亦結構ナコトデアリマシテ、
急速ニソレデ以テ手ヲ緩メルト云フ譯デア
リマセヌケレドモ、何カ其處ニ大事ナ狙ヒ
所ガアルヤウニ思フノデアリマス、ダカラ
先仰ツシヤッタヤウニ、ソンナラバサウ云フ
一ツノ層ノ線ヲ步イタノハ、過去ニ於テハ
其ノ層ガ必要トシテ居ッタト云フヤウナ贅
澤ナコトモ言ヘマスガ、「テーブル·クロスL
コンナモノヲ置イテオイテ宜イノカ······ソ
ンナ譯デアリマセヌ、是ハ戰時下ニ於テ無
クテモ濟ムモノハ要ラナイヂヤナイカ、斯
ウ云フ點ハ混同スルコトナシニ、唯政治的
ニ、若シクハ財政ノ計畫ヲ御樹テニナルヤ
ウナ時ニ、國民ノドウ云フ層ヲ、狙ッテヤツ
テ行ク點ガ將來ノ我ガ國ノ爲ニ最モ有利デ
アルカ、有效デアルカ、ドウ云フ御考ヲ御
持チニナッテイラッシヤルカ、其ノ點ヲ伺ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=49
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050・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) チヨット皆サ
ンノ御含ミノ爲ニ申上ゲマス、大臣ハ他ノ
委員會ニ是カラ御出デニナルサウデアリマ
スカラ、織田子爵ニ對スル御答辯ヲ以テ此
ノ席カラ御退出ニナリマス、從ッテ今日ハソ
レヲ以テ終リタイト思ヒマス、尙明日十時
ニ大臣ハ此ノ席ニ御出席ガ願ヘルサウデア
リマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=50
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051・織田信恒
○子爵織田信恒君 若シモ大臣ガオ急ギデ
アレバ、答辯ハ明日御伺ヒ致シテ宜シウゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=51
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052・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ御質問ハ
家族制度ノ問題デゴザイマスガ、ソレハ政
府ト致シマシテモ、極メテ重大ニ考ヘテ居
リマシテ、現在ノ勞務動員、勞務需要ノ上
カラ申シマシテ、端的ニ言フト、女子ノ徵
用ヲシタイノデアリマス、之ヲ實行セザル所
以ハ總理大臣モ度々話ガアリマシタヤウニ、
實ハ家族制度ノ尊重カラ來テ居ルノデアリ
マス、ドウシテモ家ヲ守ルノハ婦女子デア
リマス、婦女子ノ第一ノ天職ハ家ヲ守ルコ
トデアル、殊ニ戶主其ノ他ノ家族ガ、色々
ノ職域ニ御奉公致スコトガ出來ルヤウニス
ル、是ガ御奉公デアルト云フ根本ノ觀念カ
ラ來テ居リマス、無論其ノ家ヲ守ッタ餘リノ
時間デ外ニ出テ働ク、家ニ居ッテ生產ニ働
ク、是ハ無論必要デアリマス、極度ニヤ
ラナケレバナリマセヌガ、同時ニ家ヲ守ッ
テ、矢張リ戶主其ノ他ノ家族ヲ各〓職職ニ十
分ニ働カセルト云フ、此ノ家族制度ノ觀念
ガ非常ニ考慮サレテ居ルコトガ餘程外ノ國
ト違フノデアリマス、第二ノ國民ノ中ノ狙
ヒト云フ點ニ於キマシテハ······チヨット速
記ヲ止メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=52
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053・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=53
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054・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=54
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055・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣)君) 尙最後ニ是ハ別
ニ御質問ノ主點デモアリマセヌデシタガ、
總テノ國民ガ恒產ガ出來ルト云フコトヲ申
シマシタ、是ハ詰リ現在生活ヲ最小限度ニ
切下ゲルト云フコトハ、收入ガ無クテ最小
限度ノ生活ヲスルト云フノデハナク、相當
ニ皆收入ガアルモノガアル、ナカ〓〓多イ、
殊ニ今迄ナカッタ面ニ多イノデアリマス、
アッテモ生活ハズット切下ゲテ貰ッテ行ク、今
ノ生活ノ苦シサハ平時ト違ッテ、收入ガナイ
爲ニ苦シイカラト云フノデハナク、收入ハ
アルノダ、而モ之ヲ使ハナイ、使フナラバ
國ノ爲ニ役ニ立ツヤウニ使フ、ソレハ生產擴
充資金トナル公債ノ方ニ直接間接向フ、其
處デ恒產ガ出來テ行クト、斯ウ云フ意味デ
アル、結局詰ル所ハ、今ノ戰時ニ於テ國民
ガ本當ニ勝ツ爲ニ、生キル爲ニハ、ドウシテ
モ健全ナ精神ガ出來ナケレバナラヌ、又出
來タ時ニ勝チ拔ケルノデアリマス、ソレカ
ラ又身體ガ健康デナケレバ矢張リ勝テマセ
又、サウシテ今ノヤウニ國民ノ所得ガ大體
ニ於テ增加致シマシテ、切詰メタ生活ヲ致
シマス、ソコデ經濟上ドウシテモ餘裕ガ出
來ルト負擔ト云フモノガナクナル現ニ農村
負債ノ問題、アレ程重要デアッタ農村負債ノ
問題ト云フモノハ、戰爭ニナッテ以來影ヲ潛
メテ居リマス、是ハ何故カ、皆相當蓄積ガ
出來、負債ノ償還ガ出來、負債ノ出來ル原
因デアッタ所ノ、或ハ結婚ニ際シテ、或ハ葬
儀ニ際シテ、色々ノ場合ノ浪費ノ習慣ト云
フモノガ一掃サレテ現在ニナッテ居リマス、
私ハ是ハ眞ノ健民運動デアルト思フ、精神、
肉體、經濟、社會、國民全體ガ皆其處ニ充
足シタ方向ニ漸次ニ向イテ居ルシ、又向カ
ナケレバナラヌ、ソレガ勝テル所以デアリ
マス、勝ッタ時ノ日本ヲ考ヘマス時ニ、國民
ガ皆其ノ意味ニ於テ立派ナ精神、身體、經
濟ヲ有シタモノニナリ、國家ハ有ラユル軍
事、經濟全體ノ面ニ於テ發展シ充實シテ、
本當ニ國民ト國家ト云フモノガ相一致スル
態勢ニナルト思ヒマス、又ナッテ行ク所ニ、
此ノ大キナ勝利ガアリ、建設ガアルト思フ
ノデアリマシテ、國民全體ニ資產ガ出來ル
ト云フ意味ハ、サウ云フ意味ヲ申上ゲテ居
ルノデアリマシテ、ソレ以外ニハ全然他意
ハナイノデアリマス、御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=55
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056・織田信恒
○子爵織田信恒君 今大臣カラ色々御丁寧
ナ御答辯ヲ戴キマシテ有難ウゴザイマシタ、
實ハ最近總テノ見方ガ、物ト云フモノニ餘
リ重キヲ置イテ、人ヲ見ルニモ、個人的ナ
精神的ノ潤ヒト云フモノガ割合ニ淋シイト
云フ感ジヲ近頃持ッテ居ッタノデアリマス、
國民ヲ政府當局トシテ御覽ニナル時モ餘リ
物ニノミ囚ハレナイデ、所謂日本傳來ノ家
族生活、ソコニ個人以上ノ大キナ一ツノ生
活、裕リノアル溫カミノアル生活ヲヤッテ居
ルノデアリマスカラ、サウ云フ一ツノ協力
ヲシテ行ク單位ヲ又御覽ニナッテ是ガ壞レ
ナイヤウニ、是ハ我ガ國ニ於テハ申ス迄モ
ナク非常ニ大キナ力ヲ持ッテ居ッテ、例ヘバ
關東大震災ノ時モ、アノ地方ノ農村ノ家族
ト云フモノガ困ッタノヲ非常ニ包擁シタ、
近クハ靜岡ノ大火ノ時モ救濟資金ヲ出シタ
ガ、殆ド使ハナイデ皆周リノ農村ノ家族
ニ收容サレテシマッタト云フヤウナ、何トモ
言ハレナイ美シイ溫イ一ツノ組織ガ出來テ
居リマスノデ、是ガ又斯ウ云フヤウナ非常
時國家ノ時ニ、最モ有能ニ働ク時ヂヤナイ
カト思ヒマス、此ノ溫イ家族的ノ氣分、先程
言ハレタヤウニ祖先傳來ノ思想ト云フモノ
ガ織リ込マレテ、一ツノ大キナ國家的國民
ノ協力ガソコニ生レテ來ルヤウニ私ハ思ヒ
マス、ドウゾ今後色々サウ云フヤウナ御施
策ヲナサイマス時ニ、サウ云フ點ヲ又頭ニ
入レテ御考へ願ヒタイ、ト云フヤウナ氣持
カラ質問ヲシタノデアリマス、ドウモ有難
ウゴザイマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=56
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057・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) ソレデハ之ヲ
以チマシテ本日ハ散會致シマス、明日ハ午
前十時カラ開會致シマス
午後四時二分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵島津忠彥君
委員
公爵德川家正君
侯爵井上三郞君
侯爵中山輔親君
子爵曾我祐邦君
子爵大河內輝耕君
子爵織田信恒君
子爵柳澤光治君
子爵由利正通君
中川健藏君
三井〓一郞君
男爵小畑大太郞君
松本烝治君
河田烈君
男爵益田太郞君
三浦新七君
黑田英雄君
西野元君
松本學君
竹下豐次君
野村德七君
磯野庸幸君
河西豊太郞君
中山太一君
大藪守治君
國務大臣
大藏大臣賀屋興宣君
政府委員
大藏省總務局長松田令輔君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏省國民貯蓄局長氏家武君
大藏省調査官野田卯一君
大藏書記官池田勇人君
同渡邊喜久造君
專賣局長官濱田幸雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00119440131&spkNum=57
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