1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十九年二月四日(金曜日)午前十時四十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=0
-
001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 是ヨリ開會致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=1
-
002・黒田英雄
○黑田英雄君 私ハ酒稅法ニ付キマシテ一
二政府委員ニ御尋ネシタイト思ヒマス、其
ノ第一ハ酒稅法ノ第四條ニ關シマスル改正
ニ付テヾアリマス、酒稅法ノ第四條ノ第二
項ニ追加規定ヲサレテ居ルノデアリマシテ、
此ノ御趣意ハ、主ニ今日酒類、殊ニ〓酒ハ
食糧ノ關係上非常ニ減石ヲサレルヤウニ
相成ッタノデアリマス、然ルニ一方酒類ノ需
要ト云フモノハ相當多イノデアリマシテ、
勿論私モ酒ヲ皆ニ飮メト云フコトヲ勸メル
譯デハナイノデアリマスガ、成ルベク酒ハ
飮マナイヤウニ注意スルコトハ必要デアル
トハ思ヒマスケレドモ、併シ今日ノ時局重
要ノ產業ニ從事シテ居リマスル者ニ、必要
ナ酒ヲ供給スル、卽チ戰力增强ノ上ニドウ
シテモ必要ナル酒ガアル、其ノ外ニ又國民
ノ戰時生活ノ安定ヲ保チマスルニ上ニハ、
又相當ノ酒ヲ供給スルコトガ必要デアルト
存ジマスルガ、ソレニ對シマシテ、今日酒
精飮料ノ供給ガ、〓酒ノ非常ナル減石ニ依
リマシテ、不足シテ居ル狀態ニアルト私ハ
存ジテ居ルノデアリマス、其ノ爲ニ政府ニ
於カレマシテモ、此ノ四條ヲ改正サレマシ
テ、清酒ニ「アルコール」其ノ他命令ヲ以テ
定ムル物品ヲ加ヘテ增石ノ實ヲ擧ゲヨウト
云フ御考ヘデアルト存ズルノデアリマス、
然ルニ此ノ規定ヲ見マスト、命令ノ定ムル
所ニ依リ〓酒ニ「アルコール」其ノ他ノ命令
ヲ以テ定ムル物品ヲ加ヘタモノハ、詰リ〓
酒ト看做スト云フ御趣意ノヤウデアリマス、
此ノ命令案ヲ拜見シマスト、〓酒ニ混和ス
ル物品ハ「アルコール」ノ外ニ燒酎等ヲ指定
シテ、酒類製造者ヲシテ混和ノ數量、卽チ
「アルコール」又ハ燒酎ハ「アルコール」分ニ
於テ〓酒ト同量以內ニ制限スルト云フコト
ガアルノデアリマシテ、詰リ〓酒ヨリモ半
分以下ノ「アルコール」又ハ燒酎ヲ加ヘタモ
ノハ、此ノ規定ニ依ッテ〓酒ト見ルト云フ御
趣旨ノヤウニ思フノデアリマス、處ガ五條
ニ於キマシテ合成〓酒ノ定義ガ「本法ニ於テ
合成〓酒トハアルコール、燒酎又ハ〓酒ト
他ノ物品トヲ混和シテ製造シタル酒類ニシ
テ、其ノ香味、色澤是ノ他ノ性狀ガ〓酒ニ
類似スルモノヲ謂フ」トアリマシテ、〓酒
ト他ノ物品トヲ混和シテ製造シタモノ、卽
チ改正ノ條文ニアリマスヤウニ、〓酒ニ「ア
ルコール」其ノ他ノ物品ヲ混和スレバ、今
日ニ於テハ合成〓酒デアルトシテ五條ガ直
チニ適用サレルモノト私ハ思フノデアリマ
スガ、〓酒ト他ノ物品ヲ混和シテ合成〓酒
ヲ造ッテ居ッタナラバ、他ノ物品ガ同量以下
デアレバ、今囘ノ改正規定ニ依ッテ〓酒ト看
做サレ、若シ同量ヲ超エル時ハ合成〓酒ト
見ルト云フ風ニ解釋サレルコトニナルノデ
アリマスルカ、其ノ點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=2
-
003・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今ノ御尋ハ、
今囘酒稅法ヲ改正致シマシテ、四條ノ第二
項ニ於キマシテ、〓酒ト看做スモノニ追加
致シマシテ「命令ノ定ムル所ニ依リ〓配ニア
ルコール其ノ他命令ヲ以テ定ムル物品ヲ
加ヘタルモノ亦同ジ」ト致シタ規定ニ關スル
御質問デアリマスルガ、此ノ規定ヲ置キマ
シタ趣旨ハ、御述ニナリマシタヤウニ、最
近酒造用米ハ〓糧事情等ニ依リマシテ、使
用割當高ガ減少致シテ居リマシテ、本酒造
年度ニ於キマシテモ、米穀ヲ使ヒマス數量
ハ八十五萬石デアリマシテ、前酒造年度ノ
百四十餘萬石ニ較ベマスト、四割程度減ッテ
居ル實情デアリマスルノデ、〓酒ノ供給量
ガ勢ヒ減ッテ參リマス、之ニ對シテ合成〓酒
其ノ他ノ增產ヲ圖ルコトニ致シテ居ルノデ
アリマスルガ、此ノ方モ各種ノ事情ニ制約
サレマシテ、思フヤウニ參ラヌ憾ミガアリ
マスルノデ、何トカ〓酒ノ供給量ヲ增スト
云フコトヲ考ヘタ次第デアリマス、ソレガ
爲ニハ〓酒ニ「アルコール」ヲ混和シテ增量
スルト云フコトガ考へラレルノデアリマシ
テ、其ノ方法ト致シマシテハ旣ニ前年實行
シテ居リマスル〓酒醪ニ「アルコール」ヲ添
加シマシテ、調熟セシムル方法ニ依ッテ
行ッテ參ッテ居リマスルコトハ、御承知ノ通
リデアリマス、今年モ此ノ方法ニ依リマシ
テ〓酒ノ增產ニ努メタイト思ヒマシテ、目
下努力ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、原
料「アルコール」ノ生產、輸送竝ニ製造ノ時
期技術、設備ノ許ス限リハ此ノ方法ニ依
ルノデアリマスルガ、釀造ノ時期ガ比較的
短期間ニ制約サレテ居リマスル關係上、此
ノ方法ノミヲ以チマシテハ所期ノ目的ヲ十
分ニ達シ得ナイト云フ憾ミガアリマスルノ
デ、成製後ノ〓酒ニ「アルコール」等ヲ混和
致シマシテ、增量スル方法ヲ併セ用ヒマシ
テ〓酒ノ供給量ヲ殖ヤシタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス、其ノ場合ニ於キマシテ〓
酒ヲ基礎ト致スノデアリマスルガ、餘リ各
種ノモノヲ混和スルト云フコトニナリマス
ルト、〓酒本來ノ定義カラ著シク離レルト
云フコトニナリマスルノデ、混和スベキ物
品ヲ命令ヲ以テ指定スルコトニ致シマシテ、
「アルコール」ノ外ニハ差當リマシテハ、新
式燒酎ヲ認メルト云フコトニ致シテ居ルノ
デアリマス、此ノ新式燒酎デアレバ度數ガ
低イト云フダケデ、實質ハ「アルコール」ト
變リガナイモノデゴザイマス、而モ其ノ場
合ニ於キマシテ「アルコール」ヲ加ヘマスル
限度モ、只今御話ノヤウニ〓酒ト同量以內
ニ制限スルコトニ致シマスレバ、米ノ使用
ニ依ッテ生ジマスル「アルコール」分ノ不足
ヲ補フ程度デアリマスルカラシテ、〓酒ノ
定義ニ入レテ差支ナイト、斯樣ニ存ジマシ
テ所謂看做ス〓酒ノ範圍トシテハ此ノ程度
ハ適當デアラウト考ヘタ次第デアリマス、
其ノ他ノ物品ヲ混和スルコトニナリマスル
ト、御說ノ通リ合成清酒トノ分界ガ分リニ
クヽナル、斯ウ云フ點ハ十分ニ考慮シテア
ル次第デアリマス、尙合成〓酒ノ方ノ定義
モ、〓酒ト他ノ物品トヲ混和シテ製造シタ
ル酒類ト云フ規定ガゴザイマスルガ、是ハ
矢張リ第四條ニ於キマシテ〓酒ト云フモノ
ノ定義ガ決ッテ、其ノ後ニ其ノ〓酒ト他ノ
物品トヲ混和シタモノハ合成〓酒ニナル、
斯ウ云フコトニ解釋サレルノデアリマスル
カラ、今囘第四條ガ幾分擴張セラレマシテ
千、ソレハ其ノ擴張ニ依ッテハ尙〓酒デア
ル、其ノ擴張サレタ〓酒ト、更ニ他ノ物品
ヲ混和シタ場合ニ於テ初メテ合成〓酒ニナ
ル、斯樣ニ解釋致シテ居ル次第デアリマス、
尙「アルコール」分ニ於テ〓酒ト同量以內ニ
制限スルコトニ致シテ居リマスルカラシテ、
ソレ以上ノモノハ出ナイ、從ッテ〓酒ノ範圍
ヲ逸脫シナイヤウニ十分取締ッテ參ル積リ
デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=3
-
004・黒田英雄
○黑田英雄君 マダ質問ハ續キマスケレド
モ、中止シマシテ、後デ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=4
-
005・松本烝治
○松本烝治君 私ハ本法案中所得稅法ノ第
八十二條ニ一項ヲ加ヘテ居リマスル其ノ點ニ
付キマシテ、大藏大臣及內務大臣ノ御意見
ヲ伺ヒタイノデアリマス、其ノ規定ヲ讀ミ
マスルト、「稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上
必要アルトキハ納稅義務者ノ組織スル團體
又ハ町內會部落會其ノ他此等ニ準ズル團體
ニ對シ其ノ團體員ノ所得ニ付質問スルコト
ヲ得」ト云フコトニナッテ居リマス、之ヲ法律
的ニ解釋シテ見マスルト、稅務署長又ハ其ノ
代理官ガ此ノ規定ニ依リマシテ質問ヲスル
權利ヲ得ル譯デアリマス、サウナリマスレ
バ、其ノ結果トシテ此ノ質問ヲ受ケタ者ガ、
其ノ質問ニ對シテ答申ヲスル公法上ノ義務
ヲ生ズルコトハ當然ダラウト思ハレルノデ
アリマス、尤モ此ノ質問ニ對シテ答申ヲシ
ナイ場合ナドニ付キマシテハ、制裁ノ規定
ハゴザイマセヌケレドモ、併シ質問ヲ法律
ガ認メテ居リマスル以上、之ニ對シテ答申
スル義務ノ生ズルコトハ當然デアラウト思
ヒマス、其ノ答申ノ義務ガアルト云フコト
ニナリマスレバ、此ノ質問ヲ受ケマシタ所
ノ町內會部落會等ノ役員ナドハ、其ノ義務
ヲ果タス爲ニ必要ナル調査ヲ致シマスト云
フコトハ、是ハ公法上ノ義務ヲ果タス爲ニ必
要ナル範圍ニ限リマシテハ、適法ナモノト
見ナケレバナラヌノデアリマス、卽チ通常
ノ場合ニ於テハ失禮ナコトヲ他人ニ申スト
カ、或ハ他人ニ色々訊クトカ云フヤウナコト
ガ出來マセヌト致シマシテモ、此ノ場合ニハ
公法上ノ義務ガアル以上、其ノ義務ヲ果タ
スニ必要ナル範圍ニ於キマシテ、色々ノコ
トヲ致シマスコトガ適法視サレルコトニナ
ルノハ、法律上當然ダラウト思ハレルノデ
アリマス、斯クノ如ク解シテ參リマスト、
此ノ義務ヲ非常ニ重ク考ヘマスル團體ノ役
員ナドガ、或ハ熱心ノ餘リ行キ過ギタコト
ヲスル虞ガ相當有リ得ルト思ハレルノデア
リマス、卽チ何トカシテ此ノ質問サレタ事
項ニ對シテ正確ナル答申ヲ致シタイト云フ
熱心ノ餘リ、面會ヲ欲、セザル人ニ無理ニ面
會ヲ求メルトカ、或ハ病人ニ對シテ容赦モ
ナク質問スルトカ詰問ヲスルト云フヤウナ
コトモアルカモ知レヌ、其ノ他探偵ガマシ
キ行動ヲスルト云フヤウナコトモ有リ得ル
コトト思ハレマス、更ニ又之ヲ濫用スルヤ
ウナ者ガアリマシタナラバ、私怨ヲ晴ラス
爲ニ非常ニ酷イコトヲ探リ出シテ、サウシ
テ之ヲ申立テル、或ハ虚僞ノコトヲ拵ヘ出
シテ答申スル、場合ニ依リマシテハ之ヲ他
ノ犯罪ノ手段ニスルコトモナイトハ言ヒ兼
ネナイノデアリマス、斯クノ如キコトハ委
員會ニ於キマシテ多數ノ委員ガ相當是ハ憂
慮スベキコトデアルト云フコトニ考ヘマシ
テ、旣ニ幾多ノ質問ガアッタコトハ、大藏大
臣ノ御承知ト考ヘテ居ル所デアリマス、サ
ウ云フコトニナリマシテ如何ニ此ノ法條ヲ
取扱フカト云フコトニ付キマシテ、相當議
論ガ有リ得サウニ考へラレマシタノデ、委員
長ノ御取計ヒニ依リマシテ、昨日午後大多
數ノ委員ガ集マリマシテ懇談會ヲ開キマシ
テ、相當評議ヲ致シタノデアリマス、其ノ
結果トシマシテ到達シマシタ所ノ我々多數
ノ者ノ意見ハ、此ノ際此ノ稅務署長又ハ其
ノ代理官、卽チ其ノ質問ヲスルヤウナ人ニ
對シマシテ、相當强イ訓令ヲ出シテ戴イテ、
行キ過ギノナイヤウニシテ戴クノガ宜カラ
ウト云フコトニナッタノデアリマス、間違ヒ
ヲ避ケマス爲ニ、懇談會ニ於キマシテハ文
章的ニ致シマシタカラ、ソレヲ先ヅ朗讀致
シマシテ、多少釋明ヲ加ヘテ見タイト思ヒマ
ス、朗讀ヲ致シマスルト、「所得稅法第八十二
條第二項ノ規定ニ依リ同項所定ノ團體ニ對
シ質問スル事項ハ團體員及其ノ家族ノ住所、
氏名其ノ他團體ノ役員ガ特ニ調査ヲ遂グル
コトナクシテ答申スルコトヲ得ベキ範圍ニ
限ルモノトシ答申スル爲戶々ニ就テ調査質問
ヲ爲スガ如キコト無カラシムル樣十分注意
スベキ旨ノ訓令ヲ發シ嚴ニ之ヲ遵守セシム
ルコト尙右訓令ハ適當ノ方法ニ依リ之ヲ公
示スルコト」ト云フコトデゴザイマス、多少
說明ヲ加ヘマスルガ、此ノ懇談會ニ於キマ
シテハ、何カ施行規則其ノ他法令ニ依リマ
シテ質問事項ヲ列擧シテ制限スルト云フコ
トモ一策デアラウト云フノデ、種々考ヘタ
ノデアリマスルガ、ドウモ列擧致シマスル
ト、大都會トカ、或ハ村落ト云フヤウナ所
デ、多少事情モ違フノデアリマスカラ、普
ク之ニ適應スルヤウナ事項ノ列擧ノ仕方ハ
ムヅカシイノデアリマス、動モスレバ琴柱
ニ膠スル嫌ヒガ出テ來ルノデアリマス、而
モ法律的ニ考ヘマシテモ、第八十二條ノ只
今讀ミマシタ法文案ハ「其ノ團體員ノ所得
ニ付質問スルコトヲ得」ト書イテ居リマ
シテ、其ノ質問ノ出來ル〓ト云フ權限ヲ法律
ガ與ヘテ居ルノハ、廣ク與ヘテ居ルノデア
リマス、之ヲ命令ニ委任スルコトハ何等此
處ニ書イテアリマセヌカラ、命令ニ委任ナ
キニ拘ラズ、命令デ之ヲ狹ク制限スルコト
ハ、或ハ法律論トシテモ相當ニ考ヘナケレ
バナラヌコトガアルカモ知レヌ、サウ云フ
コトニ致シマスル爲ニハ、或ハ命令ノ定ムル
事項トカ何トカ云フヤウナコトヲ此處へ入レナ
ケレバナラヌト云フ修正ノ必要ナドモ生ジテ來
ルノデアリマス、旁〓懇談會ニ於キマシテハ是ハ實
際ノ運用ニ於テ間違ヒノナイヤウニシテ貰ヒタ
イ、ソレハ只今讀ミマシタヤウニ特ニ調査
ヲ要スルヤウナコトヲ質問致シマスト云フ
コトニナリマスルト、ドウシテモ特ニ調査
ヲシナケレバ答申ノ義務ヲ果タシタコトニ
ナリマセヌカラ、色々調査ヲスル、其ノ調
査ヲスル結果トシテ、弊害ヲ伴フト云フコ
トニナルノデアリマス、仍テ此ノ特ニ調査
ヲ遂グルコトナクシテ答申スルコトヲ得ベ
キ範圍ニ限ルト云フコトニシテ戴キタイ、
サウ云フヤウニ十分ナル訓令ヲ出シテ間違
ヒノナイヤウニシテ戴キタイ、殊ニ此ノ戶
戶ニ就テ調査質問ヲ爲スガ如キコトナカラ
シムルヤウ、十分注意スベキ旨ノ訓令ヲ稅
務署長等ニ出シテ戴キ、サウシテ嚴ニ之ヲ
遵守セシメテ戴キタイト云フノデアリマス、
嚴ニ之ヲ遵守セシムルト云フコトハ餘計ノ
ヤウニ見エマスルガ、訓令ヲ出シテ戴ケバ
勿論遵守サルベキモノデアリマスルガ、近
頃官廳ノ實際ヲ見マスルト、動モスレバ中
央ノ御當局ノ意思ガ末梢ノ處迄徹底シナイ
コトモアルヤウデアリマス、訓令ノ出シッ放
シデハナク、嚴ニ遵守セシムルヤウニ十分
ナル御用意ヲシテ戴キタイト云フ趣意デア
リマス、尙右訓令ハ適當ノ方式ニ依リ之ヲ
公示スルコトト申シマスノハ、訓令ガ出マ
シテモ一般ニ知レ亙リマセヌト、變ナコト
ヲ調査サレタヤウナ時ニ、之ニ對シテ抗議
ヲ言フコトヲ人ガ知ラナイト云フコトデハ
困リマスノデ、適當ノ方法ニ依ッテ公示ヲ
シテ戴キタイ、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ル
次第デゴザイマス、大藏大臣ニ對シマシテ
ハ此ノ多數ノ者ガ相談ヲ致シマシテ、私
ガ代ハルト申スト語弊ガゴザイマセウガ、
多數ノ者ノ御意嚮ヲ代表シテ此處ニ伺フ次
第デゴザイマス大藏大臣カラ此ノ事ニ付
テノ御意見ヲ伺ヒタイノデアリマス、尙內
務大臣ニ同時ニ質問ヲ續ケテ申上ゲタ方ガ便
宜カト思ヒマス、之ヲ申上ゲマス、斯ウ云
フコトニ大藏當局ノ方デハ御注意ヲシテ戴
キマシテモ、町內會トカ部落會トカ云フヤ
ウナモノヲ直接ニ監督スル方ハ、是ハ內務
御當局ノ御擔任カト考ヘルノデアリマス、
假ニ斯ウ云フヤウナ訓令ガ稅務署長等ニ出
サレマシテ、稅務署長等ハ特ニ戶々ニ付テ
質問ヲスルヤウナ質問事項ハ出サレナイト
云フコトニナリマシテモ、或ハ時ニハ誤ッテ出
サレルコトガアルカモ知レズ、假ニサウ云
フモノヲ出サレナイトシマシテモ、之ヲ受
ケラレタ町內會トカ、部落會トカ云フ所ノ
役員等ガ、或ハ趣旨ヲ誤ッテ行キ過ギタコト
ヲスルト云フヤウナコトガアッテハ困ラウ
ト考へ、多數ノ意見ハサウ云フコトニ付テ
相當ニ心配ヲ致シタノデアリマス、是ハ稍〓、
神經過敏ノヤウニ御聽取リニナルカモ知レ
マセヌガ、此ノ趣旨ヲ尙少シ申上ゲタ方ガ
宜イカト思ヒマス、ソレハ外デモアリマセ
ヌガ、近來個人ノ法律上持ッテ居リマスル
自由トカ財產トカニ對スルヤウナ權利ヲ侵
犯スルヤウナ行爲ヲ致シマスルコトハ、目
的ガ善イト云フヤウナ時ナラ差支ガナイト
云フヤウナドウモ考ガ相當擴ガッテ居ルノ
デハナカラウカ、サウ云フコトヲ相當見受
ケル、何等職權ガナイト思フヤウナモノガ、
矢張リドウモ行キ過ギタコトヲスルコトガ
アリマス、或ハ又職權ノアル官憲ノ行爲ニ
於テモ、勿論行キ過ギガアルヤウニ考ヘテ
居リマス、マア例ヘバ一例ヲ擧ゲテ申シマ
スルト、私共澤山サウ云フコトヲ見聞シテ
居リマスガ、私ノ知ッテ居ル者ナドデ、先日
子供ガ急病ヲシマシタノデ、女中ヲ藥屋ニ
走ラシタノデアリマス、何時迄經ッテモ歸ッ
テ參ラヌ、何力平常ノ時ノ數倍ノ時間ヲ要
シテ初メテ歸ッテ來タ、ドウ云フコトカト云フ
ノデ聽キマシタラ、恰モ其ノ途中ニ防空演
習ガアッテ、其處へ「モンペ」ヲ履カズニ行ッタ
ト云フノデ、何カ腕章ヲシタ人ガ捉マヘテ
シマッテ、ソレカラ非常ニ急グ理由ヲ申シテ
モ聽カナイ、放サナイデ非常ナ長講一番色
色防空ニ付テノ訓戒ヲ與ヘラレタ、ソレガ
一箇所デナク二箇所デヤラレタノデ、其
/四郎、何十分カヲ要シテシマッタト云フヤ
ウナコトデアリマシタ、幸ニシテ其ノ病人
ハ大シタコトガナクテ濟ンダカラ良カッタ
ガ、是ガドウモ手遲レデ死ニデモシタラ、
一體誰ガ責任ヲ負ウテ吳レルダラウカト云
フコトヲ泌々ト言ッタ話ヲ直接ニ聽イテ居
リマス、又傳聞シマスル所ニ依リマスルト、
東京カラハ非常ニ遠イ處ノヤウデアリマス
ガ、或都會ニ祭ガアッテ、其處ヘ附近ノ田舍
ノ娘達ガ、綺羅ヲ飾ッテ出テ參ッタ、サウス
ルト、何カ船カラ揚ガル所カ何カニ鋏ヲ持ッ
タ團體員ガ控へテ居ッテ、其ノ袂ヲ皆切ッテ
シマッタ、ソレデマア其ノ切ラレタ女達ハ
泣イテシマッテ、モウ祭ヲ見ルドコロデナク
テ、這々ノ態デ歸ッタト云フヤウナコトヲ、
親シク見聞シタ人カラ私ハ話ヲ聽キマシタ、
マアサウ云フヤウナ例ヲ擧ゲマスルト枚擧
ニ遑ナシト言ッテ宜シイノデアリマス、斯ク
ノ如キコトガ段々行ハレテ參リマスルト、
憲法及ビ法律ニ依ッテ我々ノ與ヘラレテ居
リマスル自由トカ或ハ財產ト云フヤウナコ
トニ關シテ持ッテ居リマスル權利ハ、濫リニ
權限ノナイ者ニ依ッテ侵犯サレ、目的サヘ善
ケレバ構ハナインダト云フヤウナコトニナ
リマス、本當ニ目的ガ善ケレバ宜シウゴザ
イマスルガ、必ズシモ目的モ善クナイカモ
知レズ、又之ヲ濫用スル者ガアリマシタ
ラバ、實ニ危險千萬デアリマス、サウ云フ
コトニ世ノ中ガナッテ參リマスレバ、一朝非
常ナル事ガ起リマシタ時ニハ、治安ノ維持
ト云フコトニ非常ナ影響ガアルンヂヤナカ
ラウカ、相當是ハ大事件ニナル虞ガアリハ
セヌカト云フコトヲ心配シテ居ルノデアリ
やべり、サウ云フヤウナ見地カラ見マシテ、
此ノ規定、大シタコトニハ見エマセヌケレ
ドモ、町內會部落會等ノ役員其ノ他ノ者ガ、
之ニ依ッテ公々然ト何カ搜査ガ出來ル、臨檢、
搜査、詰問ト云フヤウナコトガ出來ルカノ
如ク、若シ誤ッテサウ云フコトヲスル者ガア
リマシタナラバ、是ハ非常ニ困ッタコトニナ
ルト考ヘラレマス、サウ云フヤウナコトハ
萬ナイコトト思ヒマスルガ、尙此ノ法案ガ
法律ニナリマシテ實施サレマスル際ニハ、內
務御當局ノ方カラ直接、斯ウ云フヤウナ團
體ヲ監督スル所ノ行政機關ニ對シマシテ、
適當ニ豫防取締ノ方法ヲ講ズルヤウニ、御
訓令其ノ他御指揮ガアルコトヲ希望スルノ
デアリマス、サウ云フコトガ矢張リ多數ノ
者ノ意嚮デアリマシタ、此ノ點ニ付キマシ
テ內務大臣ノ御所見ヲ伺ヒマス、此ノ大藏
大臣及ビ內務大臣ノ御答辯ヲ俟チマシテ後、
此ノ法條ニ付テノ贊否ニ付テ我々ノ意見ヲ
定メタイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=5
-
006・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答ヲ申上ゲマ
ス、只今松本委員ヨリ御述べニナリマシタ
今囘ノ改正法案ニ於キマスル所得稅法第八
十二條第二項ノ規定ノ運用ニ關シマスル
御意見デアリマスルガ、政府ト致シマシテ
ハ同項所定ノ團體ニ對シ質問致シマス
ル事項ハ、團體員及ビ其ノ家族ノ住所、氏名
其ノ他團體ノ役員ガ特ニ調査ヲ遂グルコト
ナクシテ答申シ得ベキ範圍ニ限リマシテ、
答申ノ爲ニ戶々ニ付テ調査質問ヲナスガ
如キコトナカラシムル、斯ウ云フ御希望
ト政府ノ意圖致シテ居リマスル所ハ全ク同
樣デゴザイマス、從ヒマシテ施行ニ當リマ
シテハ、此ノ點十分注意ヲ致スベキコトノ
訓令ヲ發シマシテ、嚴ニ之ヲ遵守セシムル
コトト致シマス、尙右訓令ハ官報登載等ノ
方法ニ依リマシテ、之ヲ公示致ス考デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=6
-
007・安藤紀三郎
○國務大臣(安藤紀三郞君) 只今內務大臣
ニ對シテ特ニ御希望御注意ノゴザイマシ
タ點ハ篤ト了承致シマシテゴザイマス、先
般來此ノ問題ニ付テ委員ノ皆サン方カラ色
色御論議ガアリ、御審議ヲ重ネテ居ラレル
コトヲ承ッテ居リマシテ、サウ云フ御質問
ナリ、御意見ナリノ由ッテ來ル所モ私ハ篤ト
承知致シテ居リマス、從ヒマシテ只今御意
見御希望ノゴザイマシタ如ク、特別ニ此ノ
機會ニ於キマシテ町內會部落會等ノ指導ニ
關シテ、ソレ〓〓各地方廳ニ注意ヲ喚起致
シマシテ、一層從前屢〓見聞致シテ居リマス
ル弊害ヲ此ノ機會ニ少シデモ除クヤウニ努
力ヲ致シタイト存ズル次第デゴザイマス、
色々從來モ手段方法等ヲ經ズシテ、却テ隣
保共助ノ上下ヲ紊ルガ如キ事柄ノ數々存ス
ルコトヲ承知致シテ居リマスガ、今後一層
氣ヲ附ケマシテ、是等ノ指導ヲ督勵スルコ
トニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=7
-
008・松本烝治
○松本烝治君 私ト致シマシテハ只今ノ兩
大臣ノ御答辯ニ滿足致シマシテ、私ノ質問
ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=8
-
009・河田烈
○河田烈君 私ガ伺ヒタイト存ジマスノハ、
今囘提案サレマシタ所ノ稅法ノ條文ニ直接
關係シテ居ルノデハゴザイマセヌケレドモ、
本委員會ニ於テ先般來ノ御審議ノ模樣ヲ見
マスルト、昨年旣ニ成立致シマシタ所ノ納
稅施設法ニ關スル點ニ付キマシテ、町內會
部落會ニ於テ納稅團體ヲ組織シタ場合ニ、
其ノ町内會部落會ノ今日ノ現狀ニ於テ、之
ガ納稅資金ニ對スル保管ノ責任ガ如何ナル
狀態ニナルカト云フコトノ懸念ガ起ッテ居ル
ノデアリマス、是亦無理カラヌ御懸念ト思
ヒマスルノデ、縷〓へ、政府當局カラ御答辯ガゴ
ザイマシタガ、此ノ場合更ニ明瞭ニ御考ヲ
伺ッテ置キタイト思フノデアリマス、卽チ繰
返シテ申スヤウデアリマスガ、町內會部落
會等ニ於テ保管シテ居ル所ノ納稅資金ヲ亡
失シタル場合ノ責任如何ト云フ點ニ付テデ
アリマスガ、之ニ對スル明確ナル御答辯ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=9
-
010・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答ヲ申上ゲマ
ス、只今河田委員ヨリ御質問ガアリマシタ
町內會部落會ニ於テ保管ヲ致シマシタ納
稅資金ガ亡失致シマシタ責任ニ關シマスル
點ニ付テ御答ヲ申上ゲマス、町內會部落
會ガ納稅事業ヲ行ヒマスル場合ニハ、納稅
事業ノ利用ノ範圍、納稅資金ノ蓄積及ビ管
理租稅等ノ納付方法等ニ關シマシテハ、
規約ヲ定メマシテ屆ケ出シムルト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、是ハ施行ノ大藏省
令第三條デ、納稅資金ノ亡失ノ場合ニ於ケ
ル責任關係ニ付キマシテハ、右ノ規約ニ定
メテアリマス時ハ、其ノ定メニ依リマシテ
決スベキモノト存ジマス、豫メ規約ニ其ノ
點ガ定メテアリマセヌ場合ニハ、利用者タ
ル會員ノ協議ニ依リ決セシムベキコトニ相
成ル譯デアリマス、尙實際問題ト致シマ
シテハ市町村ヲシテ徵稅交付金ノ一部ヲ
以テ其ノ亡失ノ損失ヲ補塡セシムルコトト
致シマシテ、善良ナル納稅者ニ迷惑ヲ及ス
ガ如キコトノナキヤウ善處スル考デゴザ
イマス、又納稅施設法ノ第一條ノ規定ニ依
リマスレバ、納稅ニ關スル事業ヲ行フ者ハ
町內會、部落會トナッテ居リマス、町內會
部落會ガ事業ヲ開始スル時ハ、當然全部ノ
會員ガ之ニ加入スルガ如クニモ見ラレルヤ
ウデゴザイマスルガ、行政ノ運營ニハ、納
稅事業ニ關スル規約、是ハ施行規則ノ第三
條ニアリマスガ、此ノ規約ヲ定メマシテ、
之ガ利用ヲ申出タル者ノミヲ利用者トスル
モノデアリマシテ、任意的性質ノモノデア
リマス、從ッテ之ガ加入ヲ强制スルコトナキ
ヤウ運用シツヽアルノデアリマシテ、今後
モ同樣ノ方針デ進ム積リデアリマス、併セ
テ此ノ點ヲ申上ゲテ置キタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=10
-
011・河田烈
○河田烈君 只今大藏大臣ノ御答辯ニ依リ
マシテ、納稅組合ニ於テ、此ノ場合町內會
竝ニ部落會ガ具體的ノ問題ニナッテ居リマス
ガ、保管スル所ノ資金ノ亡失ニ對スル救濟
方法ニ付キマシテハ、只今ノ御答辯ニ依リ
マシテ、行政ノ實際ノ運營ニ於テ之ヲ救濟
スル所ノ相當ノ御用意ノアルコトハ了承致
シマシタ、併シナガラ私ノ考ヘマス所ニ依
リマスト、既ニ亡失ヲ生ジタル場合ニ、之
ガ救濟ノ途ヲ講ズルト云フコトニ先立チマ
シテ、寧ロ斯クノ如キ亡失ノ事故ノ發生シ
ナイヤウニ防止シ得ルヤウニ致シテ置クコ
トガ大事ヂヤナイカ、卽チ其ノ規約等ニ
於キマシテ、斯クノ如キ事故ノ發生防止ノ
規約ヲ定メルト云フコトガ寧ロ宜シイノ
デハナイカト思フノデアリマス、就キマシ
テハ、私ハ實見致シテ居リマセヌケレド
モ、聞ク所ニ依リマスト、旣ニ組織セラレ
タ所ノ町內會部落會等ニ於テ組織セル納稅
團體、納稅組合ニシテ、其ノ規約ノ定メ方
ニ依リマシテ、現金ノ取扱ヒハ非常ニ危險
デアルト云フノデ、實際ニ於テハ全然直
接現金ヲ取扱ハナイト云フ方法ヲ採ッテ居ル
モノモアルト承ッテ居リマス、又今大臣ノ
御答辯ニモアリマシタヤウニ、利用者ト云
フモノニ付キマシテハ、大臣ノ御答辯デハ
是ハ强制的ニ非ズシテ、町內會部落會ノ
全員ガ當然利用者トナッテ納稅組合ニ入ル
譯デハナイト云フコトデゴザイマシタガ、
全部ガ會員トナッテ利用スルニシマシテモ、
其ノ利用者ニ於テ納稅スル所ノ稅種ヲ選擇
致シマシテ、比較的多額ノ稅金ニ付テハ自
身デ納稅ヲスル、納稅團體員デハアルケレ
ドモ、其ノ規約ニ於テ利用者ノ姓名ヲ屆ケ
出ルニ當リマシテ、稅種ヲ選擇シテ屆ケ出
テ居ルト云フヤウナ實例モ伺ッテ居ルノデア
リマスガ、斯ウ云フヤウナ方法ヲ採リマスル
ト、多額ノ納稅資金ノ亡失ト云フヤウナ憂
ヲ除去スルコトガ出來ルノデハナイカ、併
シナガラ納稅者ニ多イ所ノ極メテ零細ナル
納稅者、或ハ多クノ金額ヲ納稅スル人ノ多
イ所、或ハ農村或ハ市街地等ニ依リマシテ、
必ズシモ一定ニハソレハ出來ナイダラウト
思ヒマスノデ、其ノ實情ニ極メテ良ク卽ス
ルヤウニ、模範的規約ノヤウナモノヲ數種
各事情ニ適シテ居ルヤウニ各關係當局ニ於
テ十分審議セラレマシテ、ソレヲ御手本ト
シテ此ノ納稅團體ヲ組織スルヤウニ指導セ
ラレタラ如何デアルカ、先ヅ發生シタ所ノ
亡失等ノ事故ヲ救濟スルニ先立ッテハ、寧
ロ今假ニ申上ゲマシタヤウナ例モアルヤウ
ニ聞キマスカラ、之ヲ防止シ得ルヤウナ規
約ヲ持ッテ居ル所ノ團體ヲ組織スルヤウニ
十分指導セラレテハ如何カト思フノデアリ
W. .是ハ只今多少具體的ニ細カク申上ゲ
マシタガ、要ハ、納稅施設法ノ第一條ニ本
法ニ於テ納稅團體トハ團體員ノ命令ヲ以テ
定ムル租稅公課ノ納付ヲ容易確實ナラシム
ル爲當該租稅公課ノ納付又ハ其ノ納付資金
云々、斯ウナッテ居リマシテ、納稅施設法ノ
納稅團體ハ租稅公課ノ納付ヲ確實ナラシメ
ルト云フコトノ精神ガ、明瞭ニ第一條ニ謳ッ
テアルノデアリマス、此ノ精神ニ基キマシ
テ租稅公課ノ納付ヲ容易確實ナラシメルヤ
ウニシナケレバナラヌト云フコトガ精神デ
アリマス、其ノ組織ガ或ハ放漫デアリ、粗
笨デアリ、或ハ不用意ノ爲ニ、納稅團體ヲ
組織シタ爲ニ、却テ容易ナルドコロデナク
不便ニナリ、確實デナク却テ不確實ノヤウ
ナ結果ヲ誘致スルト云フコトハ、全ク此ノ
納稅施設法ノ精神ニ反スルノデアリマス、
斯カルコトノナイヤウニ徹底的ニ指導シ、
又此ノ納稅團體ヲ利用セラルヽコトガ、寧
ロ肝要デアルト考ベルノデアリマス、此ノ
點ニ付テ政府ノ御所見ヲ明カニ伺ッテ置キ
タイト思ヒマス、只今內務大臣ノ御言葉ニ
モ、或ハ町內會、部落會等ノヤリ方ニ依ッ
テ、却テ隣保共助ノ美風ニ害ヲ及スヤウナコ
トガアッテハ、精神ニ反スルカラ、ソレヲ
十分注意ヲシ警戒スルト云フ御話ガアリマ
シタ、此ノ町內會部落會ニ於テ組織スル
所ノ納稅團體ニ於テモ同樣デアリマシテ、
却テ之ガ爲ニ隣保共助ヲ良ク育成シテ完全
ナルモノヲ養成セシムルノニ····、其ノ缺陷カ
ラ隣保共助ノ美風ヲ害スルコトガアッテハ、
却テ納稅施設法ノ精神ニ反スルト思ヒマス、
此ノ點ハ十分注意セラレタイト思ヒマス、
此ノ點ニ關スル政府ノ所見ヲ明カニシテ置
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=11
-
012・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ河田委員
ヨリノ御尋ニ付キマシテ、御答ヲ申上ゲタ
イト思ヒマス、納稅組合ニ於テ保管ヲ致シ
マスル資金ヲ亡失致シマシタ場合ニ、適當
ナル措置ヲ講ズベキコトハ勿論デアリマス
ルガ、ソレ、ヨリモ寧ロ斯カル事態ノ發生ヲ
シナイヤウナ方策ヲ取ル必要ガアル、豫メ
亡失ノ危險ガナイヤウニ、未然ニ適當ナル
處置ヲ講ズベキデアルト云フ趣旨ノ御尋ネ
デアリマス、全ク其ノ點ハ御意見ノ通リニ
感ジテ居リマシテ、其ノ點ガ極メテ肝要ト
存ズルノデゴザイマス、其ノ爲ニハ、只今
ノ御話ニモアリマスルヤウニ、實際ニ適當
致シマスル模範規約ノヤウナモノヲ〓究ノ
上、是モ色々ノ場合ガゴザイマセウカラ、
數種類モ作成ヲ致シマシテ、ソレヲ一般ニ
廣ク周知セシメマシテ、各納稅團體ノ仕事
ノ運用ガ適當ニナリマスルヤウニ、豫メ事
故ガ發生シナイヤウナ方法デ運用ガ出來マ
スルヤウニ、努力ヲ致シタイト存ズルノデ
ゴザイマス、納稅團體ノ組織ガ實情ニ適シ
マセヌ爲ニ、却テ或ハ不便又不確實ナ事ガ
出來マスルヤウナコトヲ誘致スルト云フコ
トガアッテハ、誠ニ不都合ナルコトデゴザイ
マスルカラ、左樣ナ事ガナイヤウニ十分指
導シテ參リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=12
-
013・河田烈
○河田烈君 了承致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=13
-
014・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) ソレデハ黑田
委員、御質疑ヲ御續ケヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=14
-
015・黒田英雄
○黑田英雄君 先程ノ私ノ質問ニ對シマシ
テノ政府委員ノ御答辯ニ依リマシテ、稅法
ノ第四條ノ第二項ニ追加セラレマシタ御趣
旨ト解釋ニ付キマシテハ、能ク了承致シマ
シタ、私ノ考ヘテ居リマシタ通リデアルト
思フノデアリマスルガ、ソレニ付キマシテ、
御說明モゴザイマシタガ、稅法ノ第五條ノ
合成〓酒ノ問題デアリマスルガ、今日迄ハ
合成〓酒ト致シマシテハ、法律上ハ〓酒ニ
「アルコール」ヲ混合シテモ、合成〓酒ト認メラ
レテ居ッタモノデアルト思フノデアリマス、
現ニ以前ニハ〓酒ニ「アルコール」ヲ混ジタ
モノモアッタヤウニ聞及ンデ居ルノデアリ
マスルガ、其ノ成績ガ面白クナイノデ、今
日ハ止メラレテ居ルヤウニモ存ズルノデア
リマス、サウ云フ風ニ、第五條ニ旣ニ合成
〓酒トシテ認メラレテ居ルモノノ中カラ引
出シテ、今囘〓酒ニ「アルコール」、燒酎ヲ
混合シタモノヲ以テ〓酒ト看做スト云フコ
トニ御實行ニナッタコトハ、ドウモ立法トシ
テハ餘リ面白クナイヤウナ立法ノヤウニ存
ズルノデアリマス、併シ只今ノ御說明デ分
リマシタカラ、是ハ別ニ御答辯ハ要リマセ
ヌガ、立法トシテハ少シ拙デハナイカト考
ヘテ居リマス、是ハ意見デアリマス、次ヘ
御尋ネシタイノハ矢張リ酒ニ付テヾアリマ
スガ、其ノ前ニチヨット砂糖消費稅ニ付テ御
伺ヒシタイノデアリマス、砂糖消費稅ノ方
ノ第四條ノ三ノ改正案デアリマスルガ、「製
造場又ハ保稅地域ヨリ引取ラルル砂糖、糖
蜜又ハ糖水ノ斤數ノ算定ニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」ト今度改正ニナリ
マシテ、其ノ命令ノ案ト致シマシテ御示ニ
ナッテ居ル所ニ依リマスト、「一定ノ包裝ヲ爲
シ移入場ヨリ引取ラルヽ砂糖ニシテ其ノ包
裝ノ種類竝ニ一包裝每ノ容量及取引斤數ニ
付大藏大臣ノ承認ヲ受ケタルモノノ斤數ハ
其ノ取引斤數ニ大藏大臣ノ定ムル斤數ヲ加
ヘタルモノニ依ルコト」ト云フヤウニ規定セ
ラレマシテ、チヨット讀ミマシテ甚ダ分リニ
クイノデアリマスガ、是ハ從來問題トナッテ
居リマシタ砂糖、糖蜜、糖水等ガ、引取リ
マシテ後ニ色々水分ノ發散等ニ依ッテ斤數
ニ變化ヲ來ス爲ニ、其ノ缺減ヲ補フ增シ目
ヲ認メルト云フヤウナ御趣旨デアルモノデ
アリマスカ、チヨット其ノ解釋ニ付テ御說
明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=15
-
016・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今御尋ノ點ハ、
現在內地移入糖ノ課稅ニ當リマシテハ、移
入場ニ庫入レノ際ニ箇々ノ實量ヲ秤量致シ
テ居ルノデアリマス、實際ノヤリ方ハ本船
別承認書一通每ニ總數ノ百分ノ五程度ヲ秤
量致シマシテ、ソレニ依ッテ推算致シテ居ル
ノデアリマスルガ、此ノ事ハ官民共ニ相當
煩雜ナ手數ヲ要シマスルシ、重要港灣ニ於
キマスル荷役能率ニモ影響ヲ及スト云フヤ
ウナ關係モアリマスルノデ、此ノ際課稅手
續ノ簡素化ヲ圖リマスル爲ニ庫入レノ際ノ
實量檢査ハ原則トシテ之ヲ廢止シマシテ、
取引斤數ヲ基準トシテ課稅シヨウト云フノ
デアリマスルガ、內地移入糖ハ臺灣ヲ出マ
シテ運搬中ニ量ガ減ルト云フコトガゴザ
イマスルノデ、其ソ點ヲ考慮シマシテ、或
程度ノ入目ガ入ッテ居ル譯デアリマス、斯ク
致シマシテ、現地製造場カラ引取ラレテ參
ルノデアリマスルガ、ソコデ入目斤數ガ內
地ニ到著致シマシタ場合ニ、或程度減ッテ居
リマス、ソコデ今囘ノ改正ニ依リ課稅ニ當
リマシテハ、取引斤數ニ對シマシテ、命令
ヲ以テ定メル數量ヲ加ヘタモノヲ以テ課稅
斤數ニ致スト云フコトニ改メタイノデアリ
マン、卽チ一定ノ包裝ヲ致シマシテ、移入
場カラ引取ラレル砂糖ニ付キマシテ、取引
斤數等ニ付テ大藏大臣ノ承認ヲ得タモノ、
例ヘバ是ハ木綿袋ノ五十斤俵デアルトカ、
或ハ麻袋入リノ百五十斤俵デアルトカ云フ
ヤウナ一定ノ包裝ヲシタモノデ、大藏大臣ノ
承認ヲ得テ居リマスル取引斤數ノ定ッタモノ
ニ付キマシテハ、ソレニ更ニ一定ノ斤數ヲ
加ヘタモノヲ以テ課稅ノ基本ニ致シタイ、
其ノ基本斤數ト申シマスノハ、或期間調査
致シマシテ、製造場カラ內地ノ移入場ニ入ッ
テ參リマスル間ニ缺減ガ生ジマシタナラバ、
例ヘバ五十斤俵ニ對シテ五十斤五分入ッテ居
ルケレドモ、ソレガ移入場ニ到著シタ當時
ニ於テ數量ヲ檢査シテ見タ處ガ、五十斤三
分三厘ニナッテ居ルト云フ時ニ於テハ、或期
間ハ五十斤三分三厘ヲ以テ課稅ノ基礎トス
ルト云フコトニナリマスレバ、手數ガ餘程
省ケルト云フ處カラ今囘改正ヲ致サウト致
シテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付キマ
シテハ、法令ノ根據ナクシテ斯カル簡易ノ
課稅方法ヲ行ヒマスルコトハ異論モゴザイ
マセウト考ヘマシテ、特ニ之ヲ法令ニ明カ
ニ致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=16
-
017・黒田英雄
○黑田英雄君 只今ノ御說明デハチヨット
マダ分ラヌ處ガアルノデアリマスルガ、
詰リ五十斤入リダト云フコトデアレバ、
ソレニ缺減ヲ見テ五十五斤ナラ五十五斤入
レテアッテデスネ、ソレヲ五十斤ノ量トシテ
見テ、大藏大臣ノ承認ヲ得テ居レバ五十斤
ノ砂糖消費稅ヲ課稅スルノデスカ、ソレガ
現實五十一斤アッテモ五十斤トシテ課稅スル
ト云フ御趣旨デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=17
-
018・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 只今ヤッテ居リ
マスルコトハ、例ヘバ五十斤俵ニ對シマシ
テ、五十斤五分入レマシテ、臺灣ヲ積ミ出
シテ內地ノ港ニ來ルノデアリマス、其ノ
間ハ未納稅デアリマス、內地ニ於テ移入場
カラ引取ル時ニ初メテ課稅スルノデアリマ
ス、サウスルト、移入場ヲ出ル時ニ實量ヲ
檢査スルノデアリマスルガ、實際ヤッテ居リ
マスノハ、移入場ニ入レル時ノ斤數ヲ以テ
大體移入場ヲ出ル時ノ斤數ト致シテ居ルノ
デアリマス、其ノ移入場ニ入ル時ニ箇々ノ
俵ヲ原則トシテ調ベル、實際ハ先程申上ゲ
マシタヤウニ、百分ノ五程度調ベテソレデ
推定スルノデアリマスガ、其ノ場合ニ於テ
或俵ハ五十斤一分入ッテ居ッタ、或俵ハ五十
斤四分入ッテ居ッタト云フ風ニ箇々ニ出テ參
リマシタモノヲ計算シマシテ、此ノ一囘分
ノ引取ノ實量ハ幾ラデアルト云フコトヲ決
メル譯デアリマス、從ヒマシテ、或引取ハ
五十斤三分五厘デアッタ、或引取ハ五十斤三
分ニナッテ居ルト云フ風ニ、本船別承認書一
通每ニ實量ガ違ッテ參ル譯デアリマス、ソレ
ハ非常ニ手續ガ、官民ノ手數ガ煩雜デアリ
マスルカラ、今度ハ改正スルノデアリマス
ガ、其ノ場合ニ於テ五十斤俵ニ入目ガ入ッテ
居ルカラト言ッテ五十斤デ課稅スルコトハ又
甘過ギルノデアリマス、入目ト云フモノハ
五分入ッテ居ルケレドモ、實際調ベテ見ルト、
五分完全ニ無クナッテ居ルト云フコトハ先ヅ
正常俵ニ付テハナイ、必ズ幾ラカ餘ッテ居
ル、其ノ餘ツテ居ルモノヲ今迄ハ箇々ニ見
付ケテ、平均シテ數量ヲ計算シテ全體ノ數
量ト認定シテ居ッタノデアリマス、今度ハ或
期間ノ平均ヲ以チマシテ、ソレガ先程申上
ゲマシタヤウニ例ヘバ三分三厘デアルト云
フコトデアルナラバ、其ノ後或期間ハ常ニ
五十斤俵ハ五十斤三分二一厘入ッテ居ル、斯ウ
シテ課稅シテ行キタイ、ソレガ事情ニ依ッテ
相當動イテ參ルト云フヤウナコトガア
ルカドウカハ時々檢査シテ調ベテ、ド
ウモ最近ニ於テハ減リ方ガ多イヤウダカ
ラ、三分三厘デハ少シ課稅ガ行キ過ギヂヤ
ナイカト云フコトデアレバ、又調ベタ所ニ
依ッテ、五十斤三分三厘ト云フノヲ變更シ
テ、三分二厘或ハ三分一厘トスルコトモ出
來ル、ソレハ大藏大臣ガ其ノ必要ニ應ジテ
檢査シタ所ニ依ッテ定メレバ爾後ハ其ノ平
均ニ據ッテ行キタイ、斯ウ云フコトデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=18
-
019・黒田英雄
○黑田英雄君 只今ノ御說明デ能ク分リマ
シタガ、次ニ酒稅ニ付キマシテ、一點御尋
ネシタイノデアリマスルガ、今度酒稅ノ稅
率ガ改正サレマシテ、今迄〓酒、合成〓酒其
ノ他ニ付キマシテハ、造石稅、庫出稅トアッタ
モノヲ、造石稅ヲ今囘廢止サレマシテ、庫
出稅一本ニナリ、增稅ヲサレテ居ルノデア
リマスルガ、從來此ノ造石稅ニ付キマシテ
ハ、〓酒ニ付テハ貯藏中ニ滓引減量トカ、或
ハ缺減等ガ生ジマスルノデ、百分ノ七ノ缺
減ヲ見テ課稅ヲサレテ居ラレタヤウデアリ
マスルガ、今囘ハ庫出稅ニナリマシテ、滓
引トカ其ノ貯藏缺減ハ必要ハナイヤウニ思
ヒマスルガ、〓酒ニシテモ合成酒ニシマシ
テモ、庫出シヲシマシテ、消費者ノ手ニ移
ル迄ニハ樽ニ詰メタ酒ニ付キマシテハ、相
當樽ガ吸ヒ取ルトカ、或ハ蒸發スルトカニ
依ッテ相當ノ缺減量ヲ生ズルヤウニ承知シ
テ居ルノデアリマス、サウ云フ場合ニ於キ
マシテハ、其ノ缺減ニ付キマシテハ、是ハ
旣ニ課稅ヲサレテ居ルノデアリマスルガ、大
體酒稅ノ如キ間接稅ニ付キマシテハ、消費
者ニ轉嫁サレルト云フコトガ主デアルト思
フノデアリマス、消費ヲ規正スルトカ、或
ハ購買力ヲ吸收ストカ云フヤウナ目的カラ
見マシテモ、消費者ニ轉嫁サレルコトガ本
來ノ目的デアラウト思フノデアリマススルガ、
其ノ場合ニハ其ノ缺減シマシタ〓酒ニ付キ
マシテハ、何人ガ之ヲ負擔スルノカ、消費
者ハ勿論消費シナイノデスカラ、負擔ハシ
ナイコトニナルノデアリマスカラ、誰カガ
之ヲ負擔シナクチヤナラヌコトニナルノデ
アリマシテ、詰リ自然ニ、無イ所ノモノノ
消費稅ヲ何人カガ負擔シナケレバナラヌト
云フコトニナッテ、非常ナ不合理ヂヤナイカ
ト私ハ思フノデアリマスガ、勿論此ノ間接
稅デモ生產者ガ負擔シテシマッテ、其ノ轉嫁
ガ行ハレナイヤウナ場合ガアルコトハ、是
ハ勿論財政學デモ說イテアルコトデアリマ
スガ、併シ現在ニ於キマシテ之ヲ負擔スル
ト云フコトハ色々ナ生產者或ハ色々ノ階段
ニ於キマシテ、實際ニ於テハ負擔ハ消費者
ニハ轉嫁シナイデ濟マスト云フコトニヤレ
バ出來ルコトト私ハ思フノデアリマスケレ
ドモ、ドウモソレハ餘リ理論上ハ適當デハ
ナイノデアッテ、矢張リ政府ハサウ云フモノ
ニ付テハ消費稅ヲ掛ケナイ、詰リ庫出シサ
レテカラ消費者ノ手ニ渡ル迄ノ一定ノ缺減
量ハアルト云フコトハ理論上認メラレルナ
ラバ、或ハ庫出シノ際ニソレダケノ入レ目
ヲシテ置イテ、ソレニ稅ヲ掛ケナイト云フ
風ニ直シテ行クコトガ、理論上ハ適當デハ
ナイカト云フ風ニモ考ヘルノデアリマスガ、
政府ノ御所見ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=19
-
020・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 酒類ノ中樽詰ニ
シテ出シマスル〓酒、合成〓酒等ニ付キマ
シテハ、樽ガ酒ヲ吸フトカ、或ハ外界ヘ自
然發散スルト云フヤウナコトニ依リマシテ、
或程度自然缺減ヲ生ジマスルコトハ御說ノ
通リデゴザイマス、今囘造石稅ハ之ヲ庫出
稅ニ統合致シマシテ、庫出シノ際ニ之ニ課
稅スルコトニ合理化シタノデアリマスルガ、
庫出シ後ノ缺減ヲドノ程度ノ稅率ニ考慮ス
ルカト云フ問題デアリマスルガ、是ハナカ
ナカ困難ナ問題デアリマシテ、缺減ノ分量
ト云フモノハ容器ノ種類、運搬ノ期間等ニ
依リマシテ箇々ニ違フ譯デアリマス、ソコ
デ消費稅ノ理窟ヲ嚴格ニ貫キマシテ、消費
者ノ消費シナイモノニ付テハ課稅シナイト
云フ方針ヲ取ルト云フコトニナルト、實、
箇々ニ稅率ヲ變ヘルト云フコトニナリマス
ル譯デアリマシテ、サウスルト又價格ガ非
常ニ區々ニナルト云フコトニナル譯デアリ
マス、ソコデソレナラバ平均的ニドレ位減
ルカト云フコトヲ想像シテ、或步合ヲ決メ
ルト云フコトニナリマスレバ、是ハ稅率ノ
盛リ方ニ結局ナッテ來ル譯デアリマシテ、今
囘酒類ニ付キマシテハ或程度稅率ヲ引上ゲテ
アルノデアリマスルガ、見方ニ依リマシテ
ハ自然缺減、其ノ他各種事情ヲ綜合勘案シテ、
適正妥當ナルヤウニ稅率ヲ盛ッテアル譯デア
リマスルノデ、織リ込ミ濟ミトモ言ヘルシ、
或ハソレデハ足リナイト、斯ウ云フ御意見
ガアルカト思ヒマスルガ、我々ノ考ヘ方ト
シテハ、ソレ等ノ點モ考慮ニ入レテ稅率ハ
盛ッタ積リデゴザイマス、尙只今御話ノヤウ
ナ實情ガゴザイマスルノデ、之ニ對シマシ
テハ容器ニ付テモ出來ルダケ改良ヲ加ヘテ
發散ヲ防グト云フコトヲ致シマスルシ、又
輸送、配給日數ノ短縮ニ依リマシテ、缺減
ヲ成ルベク防止スルヤウニモ工夫致ス必要
ガアルト存ジテ居リマス、ソレカラ實際減
リマシタ量ニ對シマシテハ、其ノ損失ヲ補
塡スル方法ト致シマシテハ中間配給機關ノ
中ニ、「プール」平準化ノ計算ヲ設ケマシテ、
例ヘバ大日本酒類販賣會社ニ於テ利益ノ一
部ヲ積ミ立テテ、サウシテ缺減ノアツタ場
合ニ之ヲ地方販賣會社ヲ通ジテ小賣業者ノ
團體ニ金ヲ交付スルト云フヤウナコトモ工
夫致シタイト考ヘテ居リマスルノデ、左樣
御了承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=20
-
021・黒田英雄
○黑田英雄君 只今ノ御說明ニ依リマシテ
御趣旨ハ分リマシタガ、其ノ自然缺減ヲ稅
率デ盛ル際ニ考ヘタトモ言ヘルト云フコト
デアリマスルガ、ソレハ說明ニ依リマスレ
バ考ヘテ居ルノダト云フコトハ言ヘテモ、旣
ニ稅率トナッテ居ル以上ハ、其ノ消費稅ヲ消
費者ガ轉嫁ヲ受ケテ負擔スルト云フコトガ、
私ハ立法ノ御趣旨デアルト云フ風ニ思フノデ
アリマシテ、ドウモ其ノ點ハ了解ニ私ハ苦
シムノデアリマス、ソレカラ尙其ノ負擔ヲ
色々ナ方法デ以テ考慮サレルト云フコトハ
結構デアリマシテ、今日ノ此ノ稅法ニ依リマ
シテハドウモサウ云フヤウニナルト思フノ
デアリマスルガ、併シ之モ實際ノ缺減ニ對
スル稅ノ負擔ガソレデ埋メ合セラレルト云
フソレダケノコトデアッテ、理論トシテハ矢
張リ消費者ニ轉嫁ガ行ハレナイ、詰リ無イ
所ノモノニ對シテ稅ガ掛ケラレタト云フ風
ナ結果ニナルノデアッテ、何トカ是ハ自然缺
減ト云フモノガ、ドレ位出來ルト云フコト
ハ何カ〓究ノ結果明カニナレバ、庫出シノ
際ニソレダケヲ引イテ課稅ヲスルト云フ風
ニスルノガ、理論上ハ適當デハナイカト云
フ風ニ考ヘルノデアリマス、是ハ尙御〓究
ヲ願ヒマシテ、出來ルコトナラバ其ノ方ガ
理論的デハナイカト私ハ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=21
-
022・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 御說御尤モナ點
モアルノデゴザイマスルガ、實行上困難ナ
點モアリマスルコトハ先程申上ゲタ通リデ
ゴザイマシテ、今後ノ問題トシテ尙十分〓
究致シタイト思ヒマス、尙價格ヲ決定スル
際ニ於キマシテ、缺減ト云フヤウナコトモ
考慮ニ入レテ決定スル方法モアルヤウデア
リマスルカラシテ、十分〓究致シタイト思ッ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=22
-
023・黒田英雄
○黑田英雄君 私ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=23
-
024・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 之ヲ以チマシ
テ質疑通告者ノ御質問ハ終了致シマシタ、
別ニ御質疑モナケレバ質疑ハ終了シタモノ
ト認メタイト存ジマス····ソレデハ質疑ハ
終了ヲ致シマシタ、是ヨリ討論ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=24
-
025・徳川家正
○公爵德川家正君 此ノ所得稅外二十九法
律中改正法律案ハ、此ノ大東亞戰爭ニ於ケ
ル我ガ必勝ヲ期シマス上ニ、殊ニ此ノ現段
階ニ於キマシテ最モ必要ナルモノト考ヘマ
シテ、私ハ其ノ全部ニ對シテ贊成ヲ致シマ
ス、此ノ案ガ實施セラルヽニ當リマシテハ、
一般帝國國民トシテ此ノ改正ノ結果タル增
稅ニ對シ、十分其ノ重大ナル意義ヲ認識シ
テ、奮ッテ欣然其ノ義務ヲ果タスコトト思ハレ
やく、又果タスベキモノト考ヘラレマス、
是ト同時ニ、先日來當委員會ニ於テ、此ノ
增稅ノ趣旨ヲ十分活カシテ行クヤウ望マレ
マス熱心ナル御考カラ、種々各委員カラ論
議セラレマシタ諸點ハ、政府ニ於テモ篤ト
之ヲ諒トセラレ、此ノ改正法律ノ實際ノ運
用上、萬遺憾ナキヲ期セラレマスコトト信
ジ、且希望ヲ致ス次第デゴザイマス、以上
ノコトヲ申添ヘマシテ、本案ニ贊成ヲ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=25
-
026・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 他ニ御發言ハ
ゴザイマセヌカ、御發言ナイモノト認メマ
ス、然ラバ是ヨリ採決ニ入リタイト存ジマ
スガ、御諮リヲ致シタイト存ジマスノハ、
本法律案、卽チ所得稅法外二十九法律中改
正法律案、之ニ付キマシテ、採決ニ入リタ
イト存ジマスガ、御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=26
-
027・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 然ラバ所得稅
法外二十九法律中改正法律案、此ノ法律案
ニ對シテ御贊成ノ委員ノ擧手ヲ求メマス
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=27
-
028・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 全員御贊成ト
認メマス、之ヲ以チマシテ本改正法律案ハ
本委員會ニ於キマシテハ可決スベキモノト
決定致シマシタ、之ヲ以チマシテ本委員會
ヲ終了致シマス、皆樣誠ニ御苦勞樣デゴザ
イマシタ、是ニテ散會致シマス
午後零時三分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵島津忠彥君
委員
公爵德川家正君
侯爵井上三郞君
侯爵中山輔親君
子爵大河內輝耕君
子爵織田信恒君
子爵柳澤光治君
子爵由利正通君
中川健藏君
三井〓一郞君
男爵小畑大太郞君
松本烝治君
河田烈君
男爵益田太郞君
三浦新七君
黑田英雄君
西野元君
松本學君
竹下豐次君
中山太一君
大藪守治君
國務大臣
大藏大臣賀屋興宣君
內務大臣安藤紀三郞君
政府委員
內務省地方局長新居善太郞君
內務省警保局長町村金五君
內務書記官大野連治君
大藏次官谷口恒二君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏書記官池田勇人君
同平田敬一郞君
同林修三君
專賣局長官濱田幸雄君
專賣局理事稻森實君
同深澤家治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008401590X00519440204&spkNum=28
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。