第84回帝国議会　衆議院　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案外一件委員会　第3号　昭和19年1月31日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十九年一月三十一日（月曜日）午前十時二十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　深澤吉平君
  　理事　小笠原八十美君　理事　杉山元治郎君
  　　理事　成島勇君　理事　野村嘉久馬君
  　　　　赤城宗徳君　　小笠原八十美君
  　　　　長内健榮君　　　加藤知正君
  　　　　金子彦太郎君　　　北勝太郎君
  　　　　河野一郎君　　　杉山元治郎君
  　　　　田中源君　　　高岡大輔君
  　　　　津崎尚武君　　　恒松於莵二君
  　　　　中越義幸君　　　成島勇君
  　　　　野田正昇君　　　野村嘉久馬君
  　　　　平野力三君　　　深澤吉平君
  　　　　二田是儀君　　　本多鋼治君
  　　　　松原五百藏君　　　前川正一君
  　　　　三宅正一君　　　森川仙太君
  　　　　山口左右平君　　　山口馬城次君
  　　　　山田六郎君　　　吉田賢一君
  　　　　吉植庄亮君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　農商次官　石黒武重君
  　　　　　農商省總務局長　重政誠之君
  　　　　　農商省農政局長　石井英之助君
  　　　　　農商省水産局長　井出正孝君
  　　　　　食糧管理局長官　湯河元威君
  　　　　　通信院業務局長　中村純一君
  　　　　　　　　陸軍大佐　二宮義清君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　絲價安定施設法廢止及蠶絲業統制法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）

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• 001・深澤吉平

  ○深澤委員長　是ヨリ開會致シマス、質疑
  ニ入ルニ先ダチマシテ皆サンニ御諮リ致シ
  マスガ、重複ヲ避ケル爲ニ一度質問終了シ
  タコトニ對シマシテハ、委員長カラ御注意ヲ
  申上ゲマスカラ、其ノ點御省略下サルヤウ
  ニ御含ミヲ御願ヒ致シタク存ジマス、ソレ
  カラ出席ナサレナイ爲ニ先ノ質疑ヲ御知リ
  ガナク、更ニ重ネテ重複質疑ヲナサル方
  ガ往々アルヤノ如ク從來承知シテ居リマス
  ガ、此ノ點モ皆サンニ御注意ヲ御願ヒ致シ
  テ置キマス、是ヨリ質疑ニ入リマス-吉
  田賢一君

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• 002・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　質疑ニ先ダチマシテ、資
  料ヲ要求シテ置イタノデスガ、マダ受取リ
  マセヌ、出來ルダケ早ク渡リマスヤウニ御
  計ラヒヲ願ヒマス

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• 003・深澤吉平

  ○深澤委員長　承知致シマシタ

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• 004・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　ソレデハ是カラ質疑ヲ致
  シマス、時局下戰力增强ノ二大根幹ト致シ
  マシテ、航空機中心ノ兵器ノ增產ト、一方
  食糧ノ增產確保、是ハ戰爭完遂必勝ノ爲メ
  不可缺ノ要點デアリマスコトハ、今更申ス
  マデモゴザイマセヌ、就キマシテ此ノ現下
  農業ノ最大ノ使命デアリマスル食糧增產ノ
  目的達成ノ爲ニ、例ヘバ寒暑モ晝夜モナクシ
  テ增產ニ努力セラレル全國ノ農家各位ニ對
  シマシテ、洵ニ國民トシテ感激ト感謝ヲ致
  シテ居ル譯デアリマス、一面又御國ノ大御
  寶ノ聖戰下ノ姿ト致シマシテ、此ノ上ナキ
  有難キ情景デアルト考ヘマス、斯ウ云フ感
  激ヲ以チマシテ私ハ以下數點ノ食糧諸般ノ
  農政問題ニ付キマシテ、政府ノ御意向ヲ伺
  ヒタイト思ヒマス
  先ヅ第一ハ昭和十九米穀年度ニ於ケル內
  地ノ主要食糧ノ生產計畫ノ〓要ニ付キマシ
  テ豫メ御說明ヲ願ヒマス

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• 005・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今御質問ノ昭和十九年
  度主要食糧生產計畫ノ〓要ニ付テノ御尋ネ
  デゴザイマスガ、十九米穀年度ニ於キマシ
  テハ、御承知ノヤウニ昨年來特ニ力ヲ入レ
  テ參リマシタ當面ノ各種ノ增產施設、之ヲ
  更ニ敷衍續行致シマスコトガ大體全體トシ
  テノ骨子ニ相成リマシテ、增產ノ計畫ヲ進
  メテ參リタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
  ソコデ是ガ具體的ナ實行方策ニ付キマシテ
  ハ或ハ旣ニ豫算ニ盛リマシテ御協賛ヲ求メ
  テ居リマスモノモアリマスシ、尙又今後ニ
  亙リマシテ種々實行ヲ進メテ行キタイト考
  ヘテ居ルモノモアリマス、左樣ニ致シマシ
  テ更ニ又地方ニ亙ツテ行政トシテドウ云フ
  具體的ナ實行ヲ遂ゲテ參ルカ、例ヘバ米ノ
  生產ノ割當ヲ各府縣ニ亙リマシテ大體計畫
  上致シマス、或ハ又芋其ノ他ノモノニ付テ
  致スノデアリマスガ、米ノ生產ノ割當ノ如
  キモ、是ハ今折角手續ヲ進メテ居リマスガ、
  マダ各府縣ニ亙リマシテ之ヲ割當ヲスルマ
  デニハ至ツテ居リマセヌ、唯其ノヤリ方ト
  致シマシテハ豫テ他ノ機會ニ於テ大臣カラ
  モ申上ゲテ居リマスヤウニ、從來ニ比較致
  シマシテ一層生產ノ計畫或ハ生產目標ヲ實
  際的ナ目標ニ近カラシメントスルコトニ考
  慮ヲ加ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、斯
  樣ニ致シマシテ、或ハ生產ノ計畫目標ハ、
  數量ニ於テ場合ニ依リマスト多少從來ヨリ
  モ減ルカモ知レナイ、併シ其ノ趣旨ハ何處
  マデモ實行ヲ期スルト云フコトヲ願ツテ考
  ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、ソレカラ
  麥ニ付テハ御承知ノヤウニ旣ニ作付モ致シ
  マシタシ、其ノ作付致シマシタ麥ニ付テハ
  更ニ手入ヲ能クスルコトガ必要デアリマス
  ノデ、ソレニ付テノ運動ヲ全國ニ亙ツテ致
  スベク、既ニソレ〓〓處置ヲ致シテ居リマ
  ス、ソレカラ結局御質問ノ御趣旨ガ或ハ數
  字的ナコトニ亙ル點モゴザイマスルト、尙
  ホ能ク御相談ノ上ノコトニ致サナケレバナ
  リマセヌガ、大體サウ云フヤウナ譯デアリ
  マシテ、御承知ノ旣ニ實行シテ居リマスル
  土地改良ノ效果ト云フモノモ或ル程度見込
  ミ、又從來カラ色々ヤツテ居リマスコトヲ
  更ニ其ノ儘進メル、或ハ又雜穀等ノ增產ノ
  爲ノ簡易ノ開墾ト云フヤウナ仕事ニ付キマ
  シテハ、昨年實行シマシタ倍額ノ仕事ヲ實
  行スルト云フヤウナ風ニ、ソレ〓〓計畫致
  シテ居ルヤウナ次第デアリマス

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• 006・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　數字的ノ大體ノ御計畫ガ
  伺ヒタカツタノデアリマスノデ、只今仰シ
  ヤツタ相談ノ上ト云フコトデスガ、御相談
  ノ上適當ノ機會ニ大臣カラ御說明願ツタラ
  ト思ヒマス、是ハ各位ノ御質問ノ相當基本
  的ナ資料ニナルト思ヒマスノデ、是非願ヒ
  タイト思ヒマス
  サウスルト米ニ付キマシテハ、昨年ハ七
  千百五十九萬石ト云フコトデアリマスガ、
  大體昨年ヨり、數年來ノ實績ニ徵シテ幾ラ
  カ下ルト云フヤウナ、今ノ所御見透シト、
  斯ウ了承シテ宜イノデアリマスカ

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• 007・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　內々部內デ相談シテ居リ
  マス所ハ、極ク僅カデハアリマスケレドモ、
  多少內輪ノコトヲ考へテ居リマス

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• 008・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　生產計畫ト云フモノハ
  大體ノ數字ヲ政府ガ發表セラレマシテ、每
  年ソレニ屆カナイト云フ實績デアルト云フ
  コトニナリマスルト、第一ハ政府ノ聲明ニ
  對スル國民ノ信賴感ヲ薄ラグコトニナリ、
  第二ニハ國民ヲ、又農家ヲ、實現不可能ノ
  一ツノ目標ニ引付ケテ指導スルノデハナイ
  カト云フヤウナ、疑念ヲ持タスヤウナ間〓
  ヲ生ズル虞モナイデハナイト思ヒマスノデ、
  此ノ點每年議會ニ於キマシテモ論議ノ一目
  標ニナツテ來タノデアリマス、幸ヒニモ實
  際ニ出來ルダケ近イト云フ生產目標ヲ御立
  テニナルト云フコトデアリマスト、又左樣ナ
  趣旨デ公ニナサルト云フコトデアリマスト、
  是ハ一大進步デゴザイマス、是ハ我々大變
  共鳴スル所デアルノデアリマス、ソコデ全
  體ノ數字ハ別ノ機會ニ御說明下サルト云フ
  コトデアリマスカラ、其ノ時ニ讓ルコトニ
  致シマス、ソコデ私ノ質疑ハ各論ニ入ツテ
  來ルノデアリマス、以下數箇ノ質疑ヲ致シ
  マス上ニ流レテ居ル一ツノ理念、狙ヒガア
  ルノデアリマス、ソレハ農業勤勞ヲ主題ニ
  致シマシテノ增產對策ト健兵健民ノ國策ノ
  觀點カラスル增產對策、斯ウ云フ二ツノ思
  想ガ流レテ居ル譯デアリマスルノデ、豫メ
  御諒承願ツテ置キタイト思フノデアリマス
  ソコデ第二ニ御質問申シタイノハ、農業
  勤勞ヲ確保スルト云フ觀點カラ、農產物價
  ニ付キマシテ全面的ニ之ヲ再檢討シ、是正
  スルコトガ此ノ際必要デハナイカ、增產對
  策トシテ最モ緊要ナル一重點デハナイカト
  考ヘル譯デアリマス、私ノ卑見ヲ聊カ開陳
  致シマシテ併セテ御所見ヲ伺ヒタイノデア
  リマス、今日ノ農家ハ冒頭ニ申上ゲマシタ
  如クニ、唯死物狂ヒニ皇國ノ農業增產ノ尊
  イ使命ヲ果シツヽアル譯デアリマス、隨テ
  農民ハ例ヘバ損益或ハ利害分配ノ代償、サ
  ウ云ツタコトニ依ツテ農業ヘノ熱意ヲ左右
  セラレルモノデナイコトモ私ハ信ジテ居リ
  マス、併シナガラ國ノ政治ト致シマシテハ、
  如何ニスレバ增產意欲ノ昂揚ガ出來ルカ、
  如何ニスレバ農家ノ誠意ト熱意ヲ勤勞ニ對
  シテ向ケルコトガ出來ルカ、之ニ對シテ公
  正、剴切ナ處分ヲ與ヘルカ、斯ウ云フコト
  ニ付キマシテハ國ノ政治トシテハ最モ心ヲ
  拂ハネバナラヌモノト思フノデアリマス、
  サウシテ初メカラ農家ハ愈、、其ノ使命ノ達成ニ
  安ンジテ盡シテ行ク譯デアラウト存ジマ
  ス、所ガ實際ニハ農家ノ現在ノ實質賃金ガ、
  例ヘバ他ノ各產業、軍需產業等ニ比較致シ
  マシテ著シク低位ニアルト云フ事實ハ免ル
  コトガ出來マセヌ、軍需工場ニ致シマシテ
  モ、軍ノ作業廳ニ致シマシテモ、亦一般ノ
  屋外勤勞、或ハ同ジ農村ニ致シマシテモ、
  運搬業ノヤウナモノト比較致シマシテモ著
  シク低イ、又一般ニ賃金ハ現金給與ニナリ、
  農業ハ農產物收得ニ依ツテ勤勞ノ報酬ガ得
  ラレル、或ハ又一般ノ賃金ハ現金給與ナル
  爲ニ實收賃金ニ闇ガ行ハレルコトガ隨分少
  カラヌノデアリマス、農業ニ於キマシテハ
  雇入賃金ハ別ト致シマシテ、自家勤勞ノ賃
  金換價ニ付キマシテハ、米作農業ヲ主トス
  ルモノニ付テハ闇ト云マモノガアリマセヌ、
  斯ク致シマシテ一部ノ都市附近ノ蔬菜農家
  ハ別ト致シマシテ、米ヲ主トスル專業農家
  ニ付キマシテハ、實際ニ眞面目ニ食糧ヲ增
  產スレバスル程低收入ヲ忍バネバナラヌ、
  斯ウ云フ實情ニアリマス、隨テ其ノ爲メ過
  勞ニモナリマセウ、榮養不良ニモナラウ、
  或ハ厭農又ハ減產、延イテハ離農、斯ウ云
  フヤウナコトヲ餘儀ナクスル傾同ハ私共ノ
  目擊スル所デアリマス、ソコデ問題ハ此ノ
  時局下ノ大切ナル、國家要請ニ應ズル食糧
  生產ノ農家ガ斯樣ナ立場ニアルト云フコト
  ハ不合理、矛盾モ甚シイデハナイカ、ドウス
  レバ此ノ農家ノ勤勞ヲ保護スルコトガ出來
  ルカ、確保スルコトガ出來ルカト云フ問題
  ニ進ムト思フノデアリマス、又他ノ資材、
  農地、色々ナ觀點カラスル增產對策モアリ
  マスガ、此ノ勤勞ノ面カラスル增產對策ニ
  付テモツト掘下ゲテ、突込ンデ確乎タル方
  策ヲ立テルト云フコトガ、今日喫緊ノ重要
  事デアラウト考ヘルノデアリマス、此ノ意
  味ニ於テ是等ノ農家ノ勤勞ヲ如何ニシテ保
  護シテ行クカ、如何ニシテ之ヲ增產ノ上ニ
  現ハスベキカ、斯ウ云フコトニナリマスガ、
  此ノ確保スル面ニ付キマシテハ過般モ農業
  要員ノ指定等ノ措置ガアリハ致シマシタケ
  レドモ、是ハ法制的ナ趣旨ヲ含ンデ居リマ
  スノデ、私ノ茲デ取上ゲタイノハ、勤勞保
  護ノ結論ハ農家ノ勤勞ニ對スル報酬ガ適正
  デナケレバナラヌデハナイカ、此ノ點ニ付
  テノ深イ親心ヲ政策ノ上ニ表ハスベキデア
  ラウ、報酬ガ適正デアリヤ否ヤト云フコト
  ハ、生產物ノ價格ノ問題ニ第一指ヲ屈サネ
  バナラヌノデゴザイマス、然ラバドウスレ
  バ宜イカト云フコトニナリマスルト、ソレ
  ハ例ヘバ米麥等ノ價格決定ニ付キマシテハ
  色々ナ規準標準事項等ガアリハ致シマスル
  ケレドモ、此ノ際ハ全面的ニ米麥ト云ハズ、
  甘藷、馬鈴薯其ノ他畑作物ニ全面的ニ再檢
  討ヲ致シマシテ、勤勞ノ適正ナル報酬トシ
  テ如何ナル數字ヲ形成スルコトガ宜イノデ
  アルカ、斯ウ云フ點ニ突込ンデ行クベキデ
  アラウト存ジマス、私ハ勤勞ノ方ノ觀點カ
  ラ致シマスルト、是ハ劣等地ノ報酬ヲ基準
  ニスベカラザルハ勿論デアリマスガ、ト云
  ツテ中庸生產費ト云フモノニ付キマシテモ、
  農業ニ於キマシテハ一應ノ問題ガアラウト
  存ジマス、寧ロ優良ナル耕地ノ平均勞賃ト
  云ツタモノヲ確保スルト云フ意味ニ於キマ
  シテ、農產物ノ價格ヲ形成サスベキデハナ
  カラウカ、斯ウ云フ風ニ思ハレルノデアリ
  マン·今日ノ農家ガ通常ノ生活ヲ致シマス
  ルノモ、今ノ賃金統制令ニ依リマシテ、大
  體最高ガ三圓五十錢位ニナツテ居リマスル
  ガ、是ガ通常ノ他ノ產業ノ賃金ト比較シ、
  一般物價ト比較シ、又代用品ノ粗惡品ト比
  較シ、代用品ニ非ズトモ粗惡品ト比較シ、
  等々致シマスルト、此ノ賃金ヲ以テ致シマ
  シテハ、通常ノ生活ハ出來ナイノデアリマ
  ス、デアリマスルノデ、私ハ此ノ賃金統制
  令ニ依ル賃金ノ引上ト云フコトモ一ツノ狙
  ヒニナリマスルガ、是ガ適當ナ額ニ引上ゲラ
  レマシテ、農家ガ生產ヲ安ンジテナシ得ル
  優良耕地ヲ耕シマシテ、相當額ノ賃金ヲ得
  ルト云フ其ノ基準ニ立ツテ引合ツテ居ルカ
  否ヤ、生產費ヲ償フヤ否ヤ、適正ナ勤勞報
  酬ガ與ヘラレテ居ルカ否ヤヲ檢討スベキデ
  アラウ、斯ウ考ヘルノデアリマス、サウ云
  フ見地カラ此ノ際全體的ニ農產物ニ付キマ
  シテ價格ノ再檢討ヲスルコトガ必要ト考へ
  テ居ルノデアリマスガ、政府ノ御所見ハ如
  何デアリマセウカ

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• 009・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　非常ニ廣イ意味ノ御質問
  デアリマシテ、或ハ十分ナ御答ヘニ差當リナ
  ラナイカモ知レマセヌガ、此ノ勤勞報酬ノ
  適正ヲ圖ル、其ノコトノ爲ニ農產物價ニ付
  テノ適正ヲ期スルト云フコトハ洵ニ御趣旨
  ハ御同感デアリマシテ、我々モ大體サウ云
  フヤウナ觀點カラ、從來價格ノ問題ニ付テ
  モ見テ居ル積リデアリマス、モウ國家ノ爲
  ニ此ノ際必要ナ物資ノ生產ヲ確保スル爲ニ、
  此ノ生產ヲ阻碍サレルヤウナ不都合ナ價格
  ニシテ置クト云フコトハ勿論宜シクナイノ
  デアリマシテ、其ノ點ニ付テハ常ニ適正ヲ
  期シテ居ル譯デアリマス、所デソレハ個々
  ノモノニ付テハ左樣デアリマスガ、此ノ際
  農產物價全體ニ亙ツテ、全體ガドウモ低ク過
  ギル、全體的ニ農產物價ヲモウ少シ上ゲタ
  ラドウカト云フ御趣旨デアルト致シマスレ
  バ、今日ノ所、私共ト致シマシテハ、ソコ
  マデハ考ヘテ居リマセヌ、御承知ノヤウニ、
  今日此ノ決戰下ニ於キマシテ、決戰下ノ勤
  勞觀念ハ何ト言ヒマシテモ、總テノ產業ニ
  互ツテ、筋合トシテ先ヅ以テ此ノ際此ノ決
  戰下ヲ切拔ケルト云フ精神ニ基カナケレバ
  ナリマセヌ、唯御話ノ如ク、其ノ間サウ云
  フ精神ヲ却テ阻害スルコトノナイヤウニ、
  又經濟的面カラ裏付ケヲシテ行クト云フコ
  トニナラウト思フノデアリマス、例ヘバ米
  ノ價格ナドニ付キマシテモ、只今御話ノヤ
  ウナ算定トハ我々寧ロ違ヒマシテ、多少條
  件ノ惡イ所デモ今日ノ場合ニ於テハ生產ヲ
  遂ゲテ行カナケレバナラナイト云フノ
  デ-極メテ最劣等ナ所ハ仕方ガアリマセヌ
  ガ、全體カラ見マシテ多少惡イ所デモ償ツテ行
  ケルト云フヤウナ所ヲ狙ツテ致シテ居ルヤ
  ウナ譯デアリマス、繰返シテ申シマスト、
  個々ノ物資ニ付キマシテハ此ノ際色々ト檢
  討致シタイト考ヘテ居ルモノモゴザイマス
  ケレドモ、全般ト致シマシテハ、何トカ一
  ツ此ノ際ハ今日ノ水準ヲ以テ增產ニ進ンデ
  戴キタイト云フコトヲ切ニ祈ル譯デゴザイ
  マス、軍需產業方面ニ於ケル收入トドウ
  モ不釣合デアルト云フコトニ付キマシテ
  モ、餘リ正確ナ全般的ナ調査モ致シテ居リ
  マセヌガ、私共モ多少サウ云フ感ジヲ致シ
  テ居リマスルシ、間々サウ云フ實例モ聞ク
  譯デアリマス、此ノ方面ハ御承知ノヤウニ、
  今非常テ混雜ヲシナガラ、急遽此ノ決戰ノ
  時ニ間ニ合ハセヨウトシテ、マア謂ハバ相
  當ナ無理ヲヤツテ居ル時期ト思フノデアリ
  マス、斯ウ云フ時期ニハ、將來ヤハリ相當
  整理シナケレバナラナイヤウナ色々ナ事柄
  モ事實發生シテ居ルト思フノデアリマスガ、
  ソレヲ今直チニ採リマシテ、ソレヲ當然ノ
  モノトシテ、又ソレト比較シテ、コチラノ
  整然トシタ全般ノ體制ヲ押上ゲテ行クト云
  フコトハ、此ノ際トシテハ如何デアラウカ、
  寧ロサウ云フ軍需產業ナラ軍需產業方面、
  其ノ他ニ於ケル、今日混雜致シマシタ點ヲ
  成ベク早ク一ツ整然タル體制ニ持チ直シテ
  貰フト云フコトガ-或ハサウ云フコトハ
  出來ナイカモ知レマセヌガ-差詰メ先ヅ
  以テソコニサウ云フ問題モ殘ツテ居ルト云
  フコトヲ私共トシテハ考ヘナケレバナラヌ
  ノデハナイカト云フ風ニ私トシマシテハ考
  ヘテ居ルノデゴザイマス

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• 010・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　農村デ農業ノ賃金ヲ、賃
  金トシテ引上ゲルト云フコトハ、結局日傭
  勤勞ノ激減シテ居リマスル現狀ニ於キマシ
  テハ、農產物ノ生產費ノ引上ゲト云フコト
  ニ歸著スル外ナイノデアリマス、隨テ同ジ
  勤勞トハ言ヘ、根本的ニ都市、工場、鑛山
  ト性格ガ違ツテ居ルコトハ之ヲハツキリサ
  セテ置カヌト間違フト思フノデアリマス、
  ソコデ報酬ヲ多ク與ヘルト云フヤウナコト
  ニナルト精神ガ幾ラカ弱クナリハシナイダ
  ラウカ、農村ノ持ツテ居ル傳統的ナ日本精
  神ガ麻痺スルコトニナリハシナイカト云フ
  議論ヲナス一派ノ人ガアリマスケレドモ、
  是ハ杞憂ニ過ギナイト思フノデアリマス、
  今日ハ要スルニ公正ナ處遇ヲ與ヘルト云フ
  コトガ政治ノ要諦デゴザイマス、デアリマ
  スルカラ、將來軍需產業ノ勞賃ガ整理サレ
  ルノデアラウ、現狀ハ無理デアル感ガアル
  ト云フヤウナコトデ、今ノ農業生產、殊
  農業勤勞ヲ保護確保スルト云フコトハ、是
  ハマア政府ニ於キマシテ法制的ナ手段ナン
  カ御執リニナツテ出來ル御自身ガアルノカ
  モ存ジマセヌケレドモ、實際ト致シマシテ
  ハ、ヤハリ實情ニ卽應シマシテ公正ヲ期ス
  ルト云フコトガ此ノ際最モ妥當安全デハナ
  イカト考ヘルノデアリマス、デアリマスノ
  デ例ヘバ價格ノ引上ト云フコトデナクテモ、
  二重價格デモ宜イノデアリマス、極端ナ例
  ヲ以テ申シマスルナラバ、價格問題ハ現金デ
  ハナシニ物ヲ以テ代金ニ代ヘルト云フヤウ
  ナコトモ工夫創意ノ餘地ハナイデハナイト
  思ヒマス、例ヘバ農家ノ生活必需品ヲ供出
  ニ對シテ何程ヲ給與スルト云フガ如ク、サ
  ウ云フヤウナ色々ナ工夫ガ此ノ際ハアルノ
  デアリマスカラ、單ニ價格引上ト云フ單純
  ナ方法ニ膠著スル必要ハナイト思フノデア
  リマス、何レニ致シマシテモ勤勞ヲ農村ニ
  確保シテ置クト云フコトニ付テ、價格ノ面
  カラ此ノ際至急ニ相當突込ンデ施策ヲナス
  ノデナケレバ、農業要員トシテ藏ツテ置ク
  ト云フヤウナコトヲシテ居ツテハ迚モ困難
  ダト思ヒマス、最近ノ實例デスガ、私三重
  縣ヲ旅行シマシタ時ニモ、四度草ヲ取ルノ
  ヲ二度ニ省略シテ、或ル軍需產業ノ方ニ働
  キニ參リマスト一日十三圓デス、サウ云フ
  ノデ相當數ガ其ノ方へ流出シテ居ル實情ガ
  アツタノデゴザイマス、是ハ其ノ十三圓ガ
  不當デアルトモ考ヘマスルケレドモ、現在
  ノ實情ハ斯クノ如キ事例ガ少カラズアルノ
  デゴザイマス、其ノ軍需產業ノ誘引ト云ヒ
  マスカ、吸收力ハ農村ヘ强力ニ働イテ居ル
  ノガ實情デアリマスノデ、之ヲ防禦スルト
  云フ觀點カラ是非トモ相當ナル突込ンダ物
  價對策ヲ御執リニナラネバナルマイト思フ
  ノデアリマス、御意見ガアリマシタラ、重
  ネテ御伺ヒシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=10

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• 011・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農民ノ立場ト云フモノハ、
  ヤハリ長キニ亙ツテ一ツノ安定ヲ持チ、サ
  ウシテ、健全ナ發展ヲ遂ゲルト云フコトノ
  爲ニ、我々ト致シマシテハ單リ價格ノ面バ
  カリデナク、色々ナ面カラモ施策ヲ講ジテ
  居ル譯デアリマス、又物資ノ供給面ニ付キ
  マシテモ、色々ト御話ノヤウニ處置ヲ致シ
  テ居リマス、併シ其ノ物資ノ供給ニ付テノ
  或ル種ノ特別ナ考慮ト云フヤウナモノモ、
  御話ノ例ニ假ニ取ツテ見マシテモ、特別ナ
  場合ニ於ケル他ノ勤勞收入ノ非常ニ有利ナ
  場合ト云フヤウナモノト比ベテ見マシタナ
  ラバ、是ハ迚モ競爭ハシ得ナイヤウニモナ
  ル譯デアリマス、斯ウ云フ面ニ付キマシテ
  ハヤハリモウ少シ-御話ノ點モソコニア
  ルト思ヒマスガ、金錢收入ト云フヤウナコ
  トバカリデハナク、物資、更ニ又進ンデハ
  今私ガ申上ゲマシタ長キニ亙ツテノ一ツノ
  健全ナ發展ニ付テノ色々ナ施設ト云フヤウ
  ナモノトカ、又農業本來ノ一ツノ特異ナ長
  所トカ、色々ナ點カラ相關聯シテモ考ヘナ
  ケレバナラヌノデハナイカト思フノデアリ
  マス、一方ハ先程モ申シマシタヤウニ、兎
  ニ角今色々ト派生シテ起ツテ居ル特異ナ現
  象ヲ直チニ捉ヘテ、ソレト比較ヲ致シマス
  コトハ無理ナヤウニ思フノデアリマス、他
  面ニ於テ御承知ノヤウニ徵用サレテ行ツテ
  居リマスヤウナ者ニ付キママシテハ、又逆
  ナ現象モ可ナリ聞イテ居リマスヤウナ譯デ
  アリマス、此ノ點ニ付キマシテハ、勿論御
  話ノヤウニ我々トシマシテモ非常ニ重要ナ
  問題ダト考ヘテ居リマシテ、今後モ出來ル
  ダケ色々ナ面カラ〓究モ致シ、處置スベキ
  モノハ處置致シテ參リタイトハ思ヒマスケ
  レドモ、大體先程申シマシタヤウニ考ヘテ
  居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=11

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• 012・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　重要ナ問題トシテ更ニ善
  處シテ戴キマスト大變結構デアリマス、少
  シク私ノ言ヒ方ガ拙カツタノデ多少誤解ヲ
  受ケタカモ知レマセヌガ、私ノ究極ノ狙ヒ
  ハ、長キニ亙ツテ通常ノ正シイ生活ヲナシ
  得ルト云フ點ヲ狙ツテ居リマスノデ、何ニ
  モ闇賃金ト競爭シテ値上シロト云フヤウナ
  意味ハ毫末モ持ツテ居リマセヌ、惡イ一面
  ノ例ヲ引イテ、他ノ牽引力ヲ例示シタニ過
  ギナイノデアリマスカラ、一ツ御諒承ヲ願
  ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ之ニ關聯シマシテ斯ウ云フ點ハ
  如何ナモノデセウカ、一ツ提案ヲ申上ゲテ
  御所見ヲ拜聽シタイ、色々ト作付ノ轉換ダ
  トカ等々ニ依リマシテ、〓糧增產上政府ガ
  一定ノ物ノ生產ヲ奬勵サレル場合ニ、從來
  作ツテ居リマシタモノト比較シテ一定標準
  以下ノ收入トナツテ損失ヲ來ス、勤勞報酬
  ガ激減スル、或ハ「マイナス」ニナルト云フ
  ヤウナ極端ナ例モアルヤウデスガ、斯ウ云
  フヤウナ場合ニハ一種ノ補償制度トデモ申
  シマスカ、サウ云フ制度デモ執ルト云フヤ
  ウナコトヲシテ、政府ガ奬勵シタコトニ依
  ツテ生ズル損害ヲ塡補シテヤル、桑ノ掘返
  シ等モサウデアリマスシ、或ハ此ノ間モ甲
  州ヘ參リマスト、葡萄園ノ整理ニ付キマシ
  テサウ云ツタコトヲ大變心配シテ居ラレマ
  シタガ、之ニ類スルモノガ將來相當アルダ
  ラウト思ヒマスガ、一種ノ補償制度ヲ御立
  テニナルト云フコトハドンナモノデゴザイ
  マセウカ、一ツ御意見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=12

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• 013・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ點ハ昨年中ニ致シ
  マシタ作付轉換ノ場合ニ於キマシテモ、若
  干考慮ハ致シテ居ルノデアリマス、唯其ノ
  場合ニモ從來或ル種ノ作物ヲ作ツテ居ツテ
  非常ナ收入ヲ得テ居ツタ、假ニソレヲ此ノ
  際ノ必需作物ニ轉換スルト云フコトニナリ
  マシタ場合ノ其ノ差額ノ補償ト云フコトニ
  ハ相成ツテ居リマセヌ、是ハマア色々ナ考
  ヘ方ガアルノデアリマスガ、私共、大分前
  カラノ生產統制令ノ運營ニ付テノ政府部内
  ニ於ケル論議ナンカノ色々ナ沿革モアルヤ
  ウデスガ、サウ云フコトハ姑ラク拔キニ致
  シマシテ、先達テ果樹園等ノ轉換ニ付テ御
  承知ノヤウニ反當或ル程度ノ其ノ種ノ金
  ヲ出スコトニ致シマシテ-ソレハ慥カ反
  當百五十圓見當ヲ考へタノデアリマスガ、
  是ハ今御話ノヤウナ風ニキチント從來ノ收
  入ト其ノ後ノ收入トノ差額ト云フヤウナコ
  トニハ勿論ナツテ居リマセヌ、是ハ一面ニ
  於キマシテハヤリ方ノ規模ニモ依ルト思フ
  ノデアリマス、今囘ノヤリ方ノ規模ト云フ
  モノガ、大體ニ於キマシテ全般ニ對スル率
  ヲ餘リ急激ナコトヲ考ヘテ居リマセヌ、謂
  ハバ極ク穩健ナ轉換ヲヤリマスヤウナ譯デ
  アリマスノデ、サウナレバ兎ニモ角ニモサ
  ウ云フ從來ノ或ル種ノ果樹ノ如キモノニ付
  テハ相當ナ收入ガアル譯デアリマスシ、過
  去ニ於テモアリマシタシ、又是カラ先ニシ
  マシテモ、サウ何モ根コソギ廢メテシマフ
  譯デナク或ル程度ノモノハヤル譯デアリマ
  スカラ、此ノ點ハサウ個々ノ農家ニ對シテ
  エライ影響ヲ持ツモノトモ考ヘラレナイ、
  又同ジク轉換スルニシマシテモ比較的老廢
  シマシタ場所ヲヤツテモ、又サウデナクテ
  モ、兎ニ角必需食糧生產ノ上ニ寄與シ得レ
  バ宜シイノデアリマシテ、ソレ等ニ付テモ
  全國ニ亙ツテヤル場合ニ於テハ相當ノ考慮
  モ拂ヘルノデハナイカ、彼此レ色々ナコトヲ
  考ヘマシテ、アノ程度ガ妥當デアルト考ヘ
  タヤウナ譯デアリマス、又今日ノ價格ト云
  フモノガ、本當ニ先程カラ御話ノヤウテ趣
  旨ヲ以テ國家トシテ是非是ダケノ價格デナ
  ケレバナラヌト云フ價格ト云フモノハ色々
  ナモノヲ檢討シテ參リマスト、情勢ニ依ツ
  テ段々變化シテ參リマス、左樣ナ譯デアリ
  マスルシ、又今後ノ果樹園ナラ果樹園ノ經
  營ト云フコトヲ考ヘテ見マスルト輸送ノ關
  係或ハ、各種ノ資材ノ入手ノ關係トカ、色々
  一
  ナコトモ考ヘラレル譯デアリマシテ、彼
  此レ致シマシテ先達テハアノ程度ノ分ガ妥
  當デアルト云フコトヲ考ヘタヤウナ譯デア
  リマス、デアリマスルカラ、御質問ノ點ニ
  付キマシテハ、色々ナ狀況ヲ考ヘマシテ、
  妥當ナ程度ニ御話ノヤウナ點モ織込ンデ考
  ヘテ居ルト云フコトヲ申上ゲテ宜カラウカ
  ト思ヒマス

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• 014・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　今ノコトハ今後色々作付
  ノ轉換ヲサセタリ、普通ノ作物ノ轉換等ヲ
  サス上ニ於テ相當御考慮ニナツテ置クコト
  ガ「スムース」ニ行クノデハナイカト思ヒマ
  スノデ、重ネテ希望ヲ申上ゲタ次第デアリ
  マス
  第三ニ、增產對策トシテノ無畜農家ノ解
  消對策ニ付テ御尋ネヲシタイノデアリマス
  ガ、政府ニ於テハ夙ニ畜產ノ五箇年計畫ヲ
  策定ニナリマシテ、重要國策トシテ畜產ニ
  努力シテ居ラレマスコトハ洵ニ多トスル所
  デアリマスルガ、今日ノ勤勞不足ノ狀況ニ
  鑑ミマシテ、又畜產食物等ノ拂底致シテ居
  リマス窮窟ナ狀況ニ鑑ミマシテ、無畜農家
  ヲ解消スルト云フ方向へ更ニ積極的ニ施策
  ヲ立テ、是ガ推進ヲ御圖リニナル必要ガア
  ルノデハナイカト思フノデアリマス、就キ
  マシテハ根本ニ斯ウ云フ風ニ構想スルコト
  ガ重要ト考ヘルノデアリマス、畜產ノ確保
  增强ハ歸スル所飼料ノ確保ニアル譯デアリ
  やく、所ガ現下ノ飼料ノ狀況ニ付テ見マス
  レバ、斯ウ云フ飼料ニ全然依存スルト云フ
  コトハ不可能ナ事實デアルコトハ勿論デア
  リマス、斯ウ云フ風ニ逼迫ヲ致シテ居ル現
  狀ニ於キマシテハ、根本トシテ人間ノ食糧
  ト、人間ノ爲ニ農產物ヲ生產シテ吳レ、又
  物資ヲ運搬シテ吳レ、肉食ヲ供給シテ吳レ
  マスル此ノ動物ノ食糧、此ノ面ヲ合理的ニ
  計畫的ニ生產配分スルト云フコトガ、一 四
  國民ノ〓糧確保ノ所以デモアルシ、他面動
  物飼料ヲ確保スルト云フ意味ニナリマスル
  ノデ、此ノ限界線ニ付キマシテ一層合理的
  ニ計畫ヲ策定シテ行クト云フコトガ必要デ
  ナイカト思フノデアリマス、ソコデ此ノ際
  具體的ニ全國ニ先ヅ牛ヲ農家ニ一頭ヅヽ必
  ズ飼育スルト云フコトヲオヤリニナツテハ
  如何ナモノデアラウカ、二百四五十萬頭ノ
  牛モアルヤウデアリマスケレドモ、兎モ角
  一頭飼フト云フコトニ致シマスト、ソレニ
  依ツテ得ラレル肥料、或ハ勤勞ヲ增强スル
  等々ノ效果ハ偉大ナモノデアラウト思フ、
  今兵庫縣ノ農業會ニ於キマシテハ相當努力
  致シマシテ、一頭ニ對シマシテ荒蕪地ヲ五
  畝開墾セシムル、開墾シタ荒蕪地ニ於キマ
  シテハ凡ユル飼料作物ヲ年中巧ク輪作スル、
  斯ウ云フコトヲ勸奬シツヽ、指導シツヽア
  ル譯デアリマス、是ハ非常ニ面白イ著想デ
  モゴザイマスシ、實現可能ナ方法デモアリ
  マスシ、又此ノ際ト致シマシテハ無畜農家
  解消ノ全國的ナ對策トシテ適切ナモノデハ
  ナイカ、斯ウ思フノデアリマスガ、御所見
  ハ如何デアリマセウカ
  ソレカラ最近粉碎飼料ガボツ〓〓出ダシ
  マシタ、是ハ洵ニ有望ナ、又洵ニ必要ナコ
  トデゴザイマスガ、此ノ粉碎飼料ニ付キマ
  シテハ、例ヘバ一部ノ會社ナドニ簡單ニヤ
  ラスト云フヤウナコトデハナクシテ、全國
  的ニ簡單ニヤリ得ルヤウナ方法ヲ普及致シ
  マシテ、之ヲ製造セシメルコトニシテハド
  ウカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、政府ニ
  於キマシテハ十分飼料ノ榮養價値-澱粉
  ニ致シマシテモ、蛋白飼料ニ致シマシテモ、
  其ノ含有シテ居ル榮養價値ニ付キマシテハ
  色々ト詳細ニ御〓究濟デアリマスノデ、廣
  ク此ノ粉碎飼料ヲ活用スルト云フ方法ヲ此
  ノ際講ゼラレテ御指導ニナツテハ如何カ
  ソレカラ飼料ヲ中心トスルノデアリマス
  ガ、指導關係ニ於キマシテ、農業技術員ガ
  從來米麥生產ヲ主トシタ關係上、ドウモ私
  共步イテ見タ所ニ依レバ-是ハ見聞ガ狹
  イノカモ存ジマセヌガ、畜產ニ對スル造詣、
  知識、技術等ガ割合薄イノデアリマシテ、
  是ハ全體ガサウ云フ傾向デアレバ洵ニ遺憾
  ト存ジマス、是ハ沿革上サモアルベキコト
  ト考ヘマス、デアリマスカラ此ノ際積極的
  ニ農業技術員ヲ出シマシテ、現地第一線ノ
  指導者ノ名實共ニ資格ヲ持タセ、技術ト知
  識ヲ持タセテ行クト云フコトニシテハドウ
  カ、ソレカラ前ニ申シマシタ一頭五畝分ノ
  開墾デアリマスガ、此ノ際ハ特別ニ何カ國
  庫デ補助ヲスルト云フヤウナ方法デモ御執
  リニナレバ宜イノデハナイカ、適當ナル補
  助ヲスルコトニ依リマシテサマデ困難デナ
  イト思ヒマス、若シ全國デ一戶一頭ヅヽ
  牛ヲ飼フコトガ出來マシタナラバ是ハ大變
  ナモノデアリマシテ、勤勞力ニ致シマシテ
  モ、肥料ノ增產ニ致シマシテモ大貢獻デア
  リマスノデ、以上愚見ヲ述ベテ御所見ヲ伺
  ヒタイト思ヒマス

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• 015・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　此ノ畜產ノ增殖或ハ無畜
  農家ノ解消ト云フヤウナ點ニ付キマシテノ
  段々ノ御話、洵ニ御同感デアリマシテ、實
  ハ打明ケタコトヲ申上ゲマスト、今囘ノ農
  商省關係新規豫算及ビ追加豫算ヲ通ジマシ
  テ色々ト新シイコトヲ計畫シテ居リマスケ
  レドモ、畜產關係或ハ飼料關係ノ方デ多少
  手薄デハナイカト實ハ私共モ思ツテ居リマス、
  ト云フノハ色々ト實行上ノ諸點ヲ考ヘテ案
  ヲ立テヽ居リマシタガ、成案ヲ得マシタモ
  ノニ付テ豫算化ハ致シマシタケレドモ、ソ
  レデハマダ多少足ラヌト云フ風ニ實ハ考ヘ
  マシテ、今折角更ニ追駈ケテ色々ト計畫考
  究ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、所
  デ飼料ノ關係ニ付キマシテ-是ハ結局飼
  料ノ問題ニナツテ來ルノデアリマスガ、之
  ニ付テ更ニ計畫的ニ食糧トノ間ニ配分ヲ考
  ヘ、是ガ生產ニ努メタラドウカト云フ御話
  ニ付キマシテハ洵ニ御尤モデゴザイマス、
  是ハ單リ飼料作物ノミデハアリマセヌノデ、
  主要食糧カラ見レバ全般的ニ考ヘテ、順位
  ハ劣ツテモ或ル程度ノ數量ハドウシテモ確
  保シナケレバナラヌト云フヤウナ作物ハ此
  ノ外ニモアルノデアリマス、最近ニ於キマ
  シテ御承知ノヤウナ食糧關係カラシテ、主
  要食糧ノ增產ガ非常ニ唱ヘラレルト云フコ
  トノ爲ニ、場合ニ依リマスト、局部的ニナ
  クチヤナラヌヤウナ他ノ作物ガ不當ニ生產
  ヲ抑制サレルヤウナコトニナル事實ガナイ
  トモ申セナイノデアリマス、ソコデ我々ト
  致シマシテモヤハリ全般的ニ計晝ヲ立テマ
  シテ-斯ク申シマシテモ尙當初ハドウシ
  テモサウ細密ナコトハ出來マセヌデセウガ、
  兎ニ角綜合的ナ觀點カラノ計畫ヲ立テマシ
  テ進ンデ參ルコトガ必要ダト云フコトヲ最
  近特ニ痛感シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
  ソコデ飼料ニ付キマシテモ、色々ノ方法ヲ
  立テマシテ是ガ必要量ヲ確保スルコトニ
  努メタイト考ヘテ居ルノデアリマス、荒蕪
  地ニ之ヲ作ルトカ、或ハ普通ノ耕地トシテ
  ハ利用サレナイヤウナ方面、色々ノ地積ガ
  ゴザイマスガ、サウ云フモノヲ利用致シマ
  シテ、新タナル增產ヲ食糧ト並行的ニ必要
  ナル限度ニ於テヤツテ參ルト云フヤウナコ
  トニ付キマシテハ、是ハ或ハ種ノ供給カラ
  始メマシテ、適當ナ案ガ立チマスレバ助成
  金モ結構デアリマセウシ、色々ナ方法ヲヤ
  ツテ參リタイト考ヘテ居リマス、兵庫縣ニ
  於ケル實情ヲ擧ゲテノ御話デアリマシタガ、全
  國畫一的ニ同ジヤウナ譯ニモ參リマスマイケ
  レドモ、今日一ツノヤリ方トシテ洵ニ結構
  ナ方法ダト考ヘルノデアリマス、粉末飼料
  ニ付テノ御話ガゴザイマシタガ、結局是ハ
  其ノ內容如何ニ依ルノデアリマスルガ、色々
  ナモノヲ集メテ、食糧ニハナラヌガ飼料
  トシテハ結構デアルト云フヤウナモノヲ玆ニ
  集メマシテ、之ヲ飼料トシテ利用シテ參ル
  ト云フコトハ大變結構ナコトダト思ヒマス、
  殊ニ又一般ノ農業指導員ニハ畜產ノ知識ヲ
  持タセル必要ガアルト云フヤウナ御話モア
  リマシタガ、御同感デアリマシテ、我々ト
  致シマシテモサウ云フコトニ努メテ參リタ
  イト思ヒマス、最近殊ニ町村農業技術員ア
  タリガ簡易ナサウ云フ方面ノ知識ヲ得ル爲
  ノ講習ヲ受ケマシタリ、試驗ヲ受ケタリシ
  テ居リマス、此例ハ實際問題トシテ可ナリ
  殖エテ參ツテ居ルヤウニ存ズルノデアリマ
  ス、是ハ一ツノサウ云フ傾向ガ既ニ出來テ
  居ルヤウニ思ヒマスガ、尙ホ此ノ點ニ付テ
  我々ト致シマシテモ努力致シテ行キタイト
  考ヘマス

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• 016・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　第四ニ自作農創定維持對
  策ニ付テ伺ヒタイト思ヒマス、ソレハ過
  般豫算委員會ニ於キマシテモ種々質疑應答
  ガアツタノデゴザイマスルガ、私ハ又別ナ
  觀點カラ此ノ問題ニ付テ檢討ヲ重ネタイト
  思フノデアリマス、土地ニ對スル愛著、土
  地ヲ愛スルト云フコト、突詰メテ更ニ申セ
  バ眞ノ父子的ナ關係ニナルト云フコトガ農
  業ノ根本デアラウト考ヘラレマス、ソコデ
  旣ニ大臣モ御說明ニナツテ居リマシタガ、
  耕地ヲ耕作者ニ持タスト云フコトヲ主體ト
  スル、是ハ當然ノコトデアラウト存ジマス、
  ソコデ私ハ自作農創定ノ政策ニ付キマシテ、
  過去十數年ノ間ノ結果カラ見ルト、數字的
  ニ面積ノ上ニ於テ餘リ芳シイ成績ヲ得テ居
  ラヌト云フ原因ハ那邊ニ」アルカ、障碍トナ
  ル所ハ何處ニアルカ、結論トシテ必要デア
  リ、自作農創定ヲ大々的ニシナケレバナラヌト
  ト云フコトニハナリマスケレドモ、何故ソレナ
  ラバ成績ガ擧ツテ來ヌカ、斯ウ云フコトヲ突
  詰メテ考ヘマスト、最後ハ是ハ持ツテ居ル地
  主側ノ協力ガ積極的ニナカリシコトヨリ色々ナ
  障碍ガ起リツヽアル、斯ウ云フコトガ可ナリ大
  キナ原因デアルカノヤウニ考ヘルノデアリマス、
  ソコデ政府ニ於テモ、此ノ度一段ト之ヲ强化
  推進スル爲ニ、或ハ手續ノ簡素、或ハ其ノ
  他ノ手段ヲ御執リニナツテ居ル譯デゴザイ
  マスルケレドモ、是ハ增產ノ對策ト致シマシ
  テモ、又農業ヲ健全ナル狀態ニ置クト云フ
  觀點カラシマシテモ、又皇國標準農村ノ建
  設ノ觀點カラ致シマシテモ、何レノ觀點カ
  ラ致シマシテモ、非常ニ重要ナ近來ノ農業
  乃至ハ農地國策ノ一ツデアラウト考ヘルノ
  デアリマス、ソコデ伺ヒタイコトハ、政府
  ノ方針ト致シマシテハ、村內ニ於テハ大半
  ヲ自作ガ占メテ、然ル上自小作、其ノ上地
  主數カラ言ヘバ斯ウ云フヤウナ順序デ村
  ガ構成サレル、斯ウ云フヤウニ御考ヘニナツ
  テ居リマスデセウカ、私ハ大體ニ於テサウ
  云フ御考ヘニナルベキダト云フ觀點ニ立ツ
  テ居ルノデアリマス、居リマスノデ、サウ
  云フコトニ大體觀點ヲ置キマスト、最モ推進
  シ得ル方法ハ幾多手段ガアルモノト思ハレ
  マスノデ、其ノ點如何ナモノデアリマセウ
  カ、先ヅ伺ツテ見タイノデアリマス

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• 017・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　健全ナ農村トシテノ有リ
  姿ト云フモノハ、是ハヤハリ從來ノ沿革ノ
  上ニドウシテモ立チマスノデ、一〓ニハ勿
  論申セマセヌケレドモ、マアソレヲ抽象的
  ニ考ヘレバ、丁度ヤハリ御話ノヤウナモノ
  デハナイダラウカト云フ風ニ私共モ存ジマ
  ス、所デ之ヲ推進スル方途ト致シマシテ、
  ドウ云フコトヲ政府トシテハ考ヘテ居ルカ、
  或ハ大イニ推進シタラドウカト云フコトニ
  付キマシテハ、御承知ノヤウニ、又今御話
  ノヤウニ、從來自作農創設ニ付キマシテハ、
  政府ノ一ツノ農業政策ノ大キイ基本的ナ方
  針ノ一ツトシテ進メテ居リナガラ、事實割
  合捗ラナイト云フコトニ付キマシテハ、色々
  障碍ガアリマシタヤウナ譯デ、逐次此ノ
  障碍ヲ除去シテ參リマシタヤウナコトデア
  ヨノマス、唯併シ是ハ地方ノ樣子ヲ聞イテ見
  マスト、所ニ依ツテ色々サウ云フ氣分ガ違
  フノデアリマシテ、餘リ一〓ニハ申セマセ
  ヌケレドモ、大體ノ感ジトシマシテハ、今
  囘執リマシタヤウナ處置ヲ致シマシタ以上
  ハ、割合ニ今度ハ進ムノデハナイダラウカ
  ト云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマスケレド
  モ、併シ又場所ニ依リマスト、アレデモ中々
  進マナイト云フ所モアラウカト思ヒマス
  ノデ、我々ト致シマシテハ一面ニ於テ御承
  知ノヤウニ昨年カラ皇國農村ノ確立促進ノ
  一方策トシマシテ、標準農村ノ設定ト云フ
  コトヲ致シマシタガ、標準農村ニ於キマシ
  テハ色々ノ仕事ヲヤルノデアリマスケレ
  ドモ、一ツニハ自作農創設ノ事業ノ如キヲ
  其ノ仕事ノ重要ナルモノトシテ取上ゲルコ
  トニ相成ツテ居ルノデアリマシテ、現ニ本
  年度ニ於テ決定ヲ見マシタ全國ノ標準農村
  ニ於キマシテモ、其ノ指導者ガ先般モ會合
  致シマシテ、是等ノ點ニ付テ檢討致シタヤ
  ウナ譯デアリマス、明年度モ更ニ三百町村
  ヲ全國ニ指定致シマシテ、本年度指定ノ分
  ト合セテヤハリ此ノ創設事業ノ推進ノ上ニ
  ハ相當ニ役立ツテ行クノデハナイダラウカ、
  斯樣ニ存ジテ居リマス、斯クテ豫算上ノ措
  置或ハ法制上ノ措置ナド關聯サセテ今申シ
  タヤウナ農村確立ノ一ツノ運動ト云フヤウ
  ナモノガ總テ相俟チマシテ、自作農創設ノ
  コトガ、玆ニ從來ニ比較シマシテ、規模モ
  相當擴マリ、又堅實ニ圓滿ニ進ンデ行クノ
  デハナイダラウカ、斯樣ニ私共トシテハ期
  待致シテ居ル次第デアリマス

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• 018・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　二三ノ縣ヲ廻ツテ聞キマ
  スルト、何處トハ申兼ネマスケレドモ、ド
  ウモ政府ノ方デ昨年モ自作農創設ヲ推進ス
  ル新タナル態度ヲ表明セラレタヤウダガ、
  何トモ政府自身ガ積極的デナイト云フ感ジ、
  地方ノ官廳ニハピント來テ居ラヌト云フ、
  サウ云フ感ジデ同ジヤウナ囘答ヲ二三ノ縣
  デ得タノデアリマスガ、是ハ中央ノ御意向
  ガ地方ニ滲透シテ居ラヌト云フコトニナル
  ノカ、或ハ誤解、不徹底ト云フコトデアル
  カモ知レマセヌガ、此ノ點ニ付テハ政府ガ
  積極的ニ自作農創設ノ事業ヲ推進ナサルト
  云フ趣旨、精神ノ程ヲ滲透スルヤウニ、段
  ノ工夫ガ望マシイノデアリマス、確ニ政府
  ノ態度ガ餘リハツキリセヌト云フヤウナ感
  ジヲ地方デハ受ケテ居ルヤウニ見テ來タノ
  デアリマス、是ハ御希望ヲ申上ゲテ置キマ
  ス、ソレカラ補助ノ側ニ於キマシテ、ヤハ
  リ自作農創設ニ多少何程カノ補助、補償ガ
  サレルニ致シマシテモ、ヤハリ此ノ際金ヨ
  リモ物、物ヲ持ツテ居ル方ガ宜イト云フ氣
  持モ手傳ヒマスノカ、重大ナル增產國策、
  皇國ノ基本ヲ構成スルト云フ趣旨ガ、地主
  ニ對シテモ寧ロ不徹底ノヤウニ考ヘマス、
  是モソレ〓〓ノ縣廳デハ何カ骨ハ折ツテ居
  ルヤウデアリマスケレドモ、ヤハリイザヤ
  ル時ニナリマスト、地主ニ此ノ趣旨ガ徹底
  シテ居ラヌト云フコトガ一樣ノ障碍ノヤウ
  ニ考ヘラレマス、之ニ對シテ何カ御考ヘハ
  ゴザイマセヌカ
  ソレカラ實例ト致シマシテ、先般岐阜縣
  ノ飛驒ノ或ル村デアリマスガ、昭和十一年
  マデハ米ガ四千五百石シカ穫レナカツタ、
  所ガ十三年ニ大抵自作農ニナツテシマツタ
  ノデ、六千五百石ヲ收穫シテ居ル村ガアリ
  マス、是ハ、完全ナル農村ハ農業ニ於テハ
  耕ス者ガ土地ヲ持ツコト、經濟ニ於テハ負
  債ヲナクシ、部落ノ財產ヲ持ツコト、部落
  ハ病氣ヲナクスルコト、斯ウ云フヤウナ標
  語ヲ揭ゲテ猛烈ニ自ラ全國ニ模範的ノコト
  ヲヤリツヽアリマスガ、此ノ基本ヲナシマ
  シタノハヤハリ自作農創定、ソレガキツカ
  ケニナツタサウデアリマス、岡山縣ノ川上
  郡ニ於キマシテモ同ジヤウナ村ガゴザイマ
  シテ、大半自作農デアリマス、大體八百「メー
  トル」程ノ高原地帶デアリマスガ、是ガ前
  ニハ反二石程シカ出來ナカツタノガ、大半
  自作ニナリマシテ以來或ル靑年團ノ持ツテ
  居リマスル田ノ如キハ三一石五斗モ穫レテ居
  ル、是ハ勤勞ノ集中等モアリマスケレドモ、何
  レニシマシテモ自作農ニ大半ニナツタト云
  フノデ、農村ニ於ケル力ノ入レ方ガ變リマ
  シタ、斯ウ云フ實例ガ澤山ニアル譯デアリ
  マス、斯ウ云フコトガ指導者及ビ有力者、
  地主、村ノ全體ニ滲透シテ行クト云フコト
  ガ、强權ニ依ラザル手段トシテハ先ヅ以テ
  執ラルヽ方法デナイカ、十分ニ納得サス
  ト云フコトニ付テ更ニ格段ノ努力ガ要ルノ
  デハナイカト考ヘルノデアリマス、之ニ對
  スル御所見ト、ソレカラ從來ハ村單位デ考
  ヘタヤウデアリマスガ、アツチコツチヲ廻
  ツテ見タ實績ニ依リマスト、村單位ニシマ
  スト、權力ヲ背景トスル感ジヲ地主ニ與ヘ
  マスノデ、サウデナクシテ部落ヲ單位ニシ
  テ行クコトガ非常ニ宜ササウデアリマス、
  斯ウ云フコトニ付テハ如何、ソレカラ資金
  關係ニ付キマシテハ村ノ信用組合ノ金ヲ使
  フト云フ方針ヲ積極的ニ立テマスト、村全
  體ニ責仕ガ共同ニ懸ツテ來マスノデ、巧ク
  行クヤウデアリマス、斯ウ云フ實例モ多々
  アルノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付テノ御
  意見ハ如何デアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=18

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• 019・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　大體今日ノ場合、地主ノ
  方面ニ於キマシテモ、是ハ程度問題デアリ
  マシテ、或ル程度ハ土地ヲ持チタイト云フ
  ヤウナ希望ノ人ガ多イヤウデアリマスガ、
  相當自分ノ土地ヲ分ケテ行ツテモ宜シイト
  云フ風ニ考ヘテ居ル者モ多イヤウデアリマ
  ス、併シ又御說ノヤウニ、ヤハリ全體的ニ
  見テ手放シタクナイト云フ向キモアラカト
  思フノデアリマスガ、之ニ付キマシテハ、
  ヤハリ自作農タルベキ人ニ對スル同情ト云
  フカ、サウ云フ人ヲ一ツマアシツカリシタ
  自作農ニシテヤラウト云フ對人的ナ、從來
  カラノ關係、其ノ他カラ出ル溫情ト云フ
  ヤウナモノノ外ニ、ヤハリ村全體ノ爲トカ、
  就中此ノ際ニ於ケル食糧增產ノ爲メトカ云
  フヤウナ所カラ、マア一肌脫グト云フヤウ
  ナ考ヘデ、御話ノヤウニ自作農創設ニ地主
  ノ方々ガ協力サレルヤウニ進メテ參ラナケ
  レバナラヌト思ヒマス、是ニハ先程モ申シ
  マシタヤウニ、結局ヤハリ村ノ仲間ナリ何
  ナリガ一〓ニナツテ、オ互ヒ樣ノ話トシテ、
  地主ノ人ニモ說イテ行クト云フ風ニ進メテ
  行クノガ宜イト思フノデアリマス、サウ云
  フコトニ付キマシテハ、我々モ先程カラ申
  シマシタヤウニ、色々ノ施設ヲ通シ、或へ
  施設以外ニモ出來ルダケ一ツ進メテ參リタ
  イト考ヘマス
  ソレカラ又村單位デヤルヨリ部落ノ方ガ
  宜シイト云フ御話デアリマスガ、村ナラ、權
  力ト云ヒマシテモ大シタ權力デモナイヤウ
  デアリマシテ、私共宜シイノデハナイカト
  思ツテ居リマシタガ、或ハソレハ部落ノ方
  ガ一層シツクリ行ツテ宜シイト云フコトモ
  勿論アラウト思フノデアリマス、御說ノ點ハ
  今初メテ伺フノデアリマスガ、能ク一ツ私
  共ノ方ニ於テモ〓究シマシテ、サウ云フコ
  トノ方ガ良ケレバ、左樣ナ風ニヤツテ行ツ
  テ結構ダト思フノデアリマス
  ソレカラ村ノ信用組合ヲ資金融通ノ上ニ
  利用スルト云フコトハ、是ハ私共トシマシマ
  テハ殊ニソレヲ希望致シテ居リマス、現在
  ノ自作農創設ノ資金融通ノ途ハ、此ノ信用
  組合ヲ通シテノ資金融通ノ途ト、モウ一ツ
  ハ御承知ノ勸銀カラ行クノモアリマスガ、
  結局ヤハリ信用組合ヲ利用スルコトヲ本筋
  ト致ス譯デゴザイマシテ、是ハ御說ノヤウ
  ニ我々ノ方モ今考ヘテ居ル譯デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=19

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• 020・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　今年四萬五千町步ノ御計
  畫ヤニ拜承シテ居リマスルガ、今ノ現狀ヲ
  以テシテハ、過去ノ實例ニモ徵シマシテ、
  中々實現困難ト我々心配致シテ居リマス、
  此ノ際拍車ヲ掛ケル意味ニ於キマシテ、地
  方協議會デ土地改良ニ對シテ全國的ニ大々
  的ナ施策ガ實施サレツヽアリマスル如クニ、
  此ノ問題ヲ地方ノ實情ニ卽應スルヤウニ扱
  フベク積極的ニ御指示ニナルト云フコトモ、
  此ノ際ノ一ツノ行キ方デハナイカ、尤モ地
  方ニ依リマシテハ相當具體的ニ取上ゲラレ
  テ居ル所モアリマスルケレドモ、內容ハ要
  スルニ一應ノ話合ヒニ過ギマセヌ、土地改
  良ノ如キ、熱意ヲ以テ大々的ナ計畫ト云フ
  風ニ行ツテ居ル所ハ實際ハゴザイマセヌ
  其ノ方へ御取上ゲニナツテ、然ルベク御指
  示ニナルト云フコトガ、本年ノ計畫ヲ實現
  スル一ツノ道デハナイカ、斯ウ云ウ風ニモ
  考ヘテ居リマス、之ニ對シテ一應伺ツテ置
  キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=20

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• 021・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハ問題ノ性質上、勿論
  中央或ハ府縣アタリノ指導モ必要デゴザイ
  マスガ、結局ヤハリ村本位ト言ヒマスカ、
  農村々々デ進メテ參ルト云フ風ニスルコト
  ヲ中心ニ致シテヤツテ參リタイト思フノデ
  アリマス、昨年來ノ經過ヲ申シマスト、御
  承知ノヤウニ當面ノ食糧ノ應急增產ノ問題
  ガアリマシタリ、色々致シマシタシ、ソレ
  カラ又今囘初メテ解決ヲ幾分得マシタ所ノ
  價格上ノ色々ノ問題トカ云フヤウナコトガ
  マダ解決サレテ居リマセヌデシタノデ、折
  角昨年或ル一ツノ目標ノ下ニ新タニ自作農
  創設ノコトニ付テ計畫ヲ致シマシタガ、ソ
  コニ多少足踏ミ的ナ狀況ノアリマシタコト
  ハ私共自身モ能ク感ジテ居ルノデアリマス、
  是等ノ點ガ茲ニ相當解決サレマシタ今日ト
  致シマシテハ、今後ハ相當進ンデ參ルノデ
  ハナカラウカト云フ風ニ考ヘテ居リマス、
  唯政府內部ノ進メ方ノ處置トシテドウ云フ
  ヤリ方ヲ執ルカト云フヤウナコトニ付キマ
  シテハ、是ハ急速ニヤラナケレバナラナカ
  ツタモノデスカラ、色々ト取急イダ措置ヲ
  執リマシタガ、アノヤリ方自身ニ付テハ政
  府内部デモ色々ト見方ガアル譯デアリマス、
  尙ホ今御意見ノアリマシタ點モ十分考慮致
  シマシテ、今後善處致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=21

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• 022・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　只今地方協議會デヤツタ
  ラ如何カト申シマシタ所以ハ、實際ニ於キ
  マシテハ各縣廳ノ其ノ係リノ課長トカ技師
  ガ擔當シテ居ルダケデ、部長モ知事モ本當
  ハ能ク知ラヌノガ實情デアリマス、サウ云
  フコトデハ國策トシテ此ノ事業ヲ推進スル
  コトハ出來ナイト考へマスノデ、申上ゲタ
  次第デアリマス、尙ホ能ク御考慮ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス
  自作農問題ニ付キマシテハ維持ノ問題モ
  アリマスケレドモ、私ハヤハリ主トシテ創
  設ニ重點ガアツテ、創設ノ施策ガ相當强力
  ニ推進サレナケレバ此ノ對策ハ駄目ダト云
  フ考ヘヲ持ツテ居リマスノデ、以上申上ゲ
  タヤウナ點ニ質問ヲ限ツテ置キタイノデア
  リマス
  第五ト致シマシテ農村ノ勤勞ガ激減シツ
  ツアルニ對スル二三ノ對策ニ付テヾアリマ
  ス、是ハ最近ノ極端ナ數字ヲ申シマスト、
  十四年ノ二月カラ十六年ノ二月マデノ間ニ
  離農致シマシテ他業ニ轉ジテ居ル者ノ八割
  ガ十六歲カラ三十五歲ト云フコトニナツテ
  居ル、ソレカラ農村構成モ、所ニ依リマシテ
  ハ男ガ四割五分、女ガ五割五分ト云フ風ニ
  引繰返ツタ地方モアリマス、斯ウ云フ實情
  デアリマスノデ、此ノ際勤勞確保ニ關シテ
  次ノ二三點ニ對スル政府ノ所見ヲ伺ヒタイ
  ノデアリマス、部落單位ニ責任生產計畫ノ
  體制ヲ確立スルト云フコトガ今日程急務ナ
  コトハゴザイマセヌ、詰リ生產目標ノ作定
  ヲ致シマシテ、必要勤勞力、畜力、農機具、
  電力等ノ普及、動員、準備、配置、又是等
  ニ對スル村外カラノ補給、協力、斯ウ云フ
  コトニ付キマシテ、主トシテ勤勞ヲ中心ト
  シテノ部落ノ責任生產計畫體制ノ確立デア
  リマス、之ヲ助長スルコトガ今日ノ急務デ
  ハナイカト思ヒマスガ、如何デスカ、第二
  ハ共同作業ノ整備ト充實ノ問題デアリマス、
  之ニ付キマシテハ此ノ際更ニ强力ニ推進整
  備ヲ致シマシテ、特ニ植付、收穫等ハ勿論
  デアリマスガ、モツト廣イ範圍ニ於キマシ
  テ、或ハ副業等ニ至リマスルマデ可能ナ範
  圍ニ人力、畜力、農機具等、凡ユルモノヲ
  動員シテ共同作業ヲ推進シテハドウカ、是
  ハ根本ノ精神ハ家族制ニ依ル隣保協助ノ發
  展トシテ、勞力ノ減少ニ依リマス今ノ農業
  力ノ補强工作ト云フ意味合ニ基クノデアリ
  マス、其ノ次ニ農業電化ヲ促進シテハドウ
  カ、是ハ難カシイヤウデアリマスケレドモ、
  最近兵庫縣アタリデボツ〓〓ヤラレテ居ル
  ノデアリマスガ、配電會社ガ協力スレバ一
  擧手一投足デ簡單ニ電化スルヤウデアリマ
  ス、一人位配電會社カラ人ガ參リマシテ、
  晝線ヲ付ケ、機械ノ設備ヲシテ、副業マデ
  動力デヤツテ居ル村ガアリマス、是ガ爲ニ
  「メートル」線ニ切替ヘマシタノデ普通ノ電
  燈マデ一割節約シタ、是ハ資材等ノ問題ヲ
  非常ニ喧シク言フ人ガアリマスケレドモ、
  實際ハ配電會社ガ少シ協力スレバ簡單ニ出
  來マスノデ、積極的ニ推進シテハドウカ
  ソレカラ協力態勢ノ改善對策ト致シマシテ、
  學徒、一般市民等ノ協力ニ付テ事前訓練ヲ
  是非厲行スルコト、最近到ル處デ聽クコト
  デアリマスガ、田植ヱヤ收穫ニ際シテ、稻ノ
  苗ヲ折ツテシマツタリ、或ハ籾ガ零レテ落
  チテシマツタリスルコトヲ笑ツテ濟マスヤ
  ウナ協力隊ガアルノデアリマスノデ、ッ
  事前訓練ヲ知識技術ノ上ニ付テ是非考慮シ
  テ戴キタイ、ソレカラ靑少年學徒ニ付テハ
  特ニ感激性ト集團性ヲ利用致シマシテ、其
  ノ結集セル勞力ヲ重點的ニ運搬トカ土工等
  ニ主ニ用ヒル、之ニ付テハ山林局長等カラ
  通牒等モ出テ居ルヤウデアリマスケレドモ、
  實際ハマダ徹底致シテ居リマセヌノデ、重
  點的ニサウ云フ方面ニ用ヒルヤウニシテハ
  ドウカ、ソレカラ農業者ノ移動勤勞班デア
  リマスガ、岡山縣アタリデハ隨分成績ヲ擧
  ゲテ居ル村ガアル、之ニ付キマシテハ遠方
  ニ移動シタヤウナ時ニハ、相當交通費ノ補
  助ヲシテハドウカ、若干報酬ハ貰ツテ居リ
  マスケレドモ、事實ハ少シモ懷ロニ入ラナ
  インデアリマスカラ、其ノ邊ノコトヲ御伺
  ヒシテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=22

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• 023・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　勤勞關係ニ付テノ段々ノ
  御質問デゴザイマスガ、部落ノ責任計畫體
  制確立ト云フヤウナ御趣旨ノ御質問ニ付キ
  マシテハ現ニ相當ニ纏ツタサウ云フヤウナ計
  畫的ノ仕事ラヤツテ居ル所モ間々アルノデ
  アリマスガ、今後斯ウ云フコトノ指導ニ付
  テハ形式的ニ流レナイヤウニ、餘リ難カシ
  イコトヲ全國ノ農村ニ求メマシテモ、恰好
  ダケ作ツテ實ガ伴ハナイト云フヤウナコト
  ニナル譯デアリマシテ、是ハ專ラ一ツ實質
  的ニ行キマスヤウニ出來ルダケノコトハ指
  導シテ行キタイト存ジテ居リマス、何處マ
  デモ形式ニ流レナイヤウニ氣ヲ付ケテ參リ
  タイト思ヒマス、共同作業ノコトニ付キマ
  シテハ從來カラ奬勵致シテ居リマスガ、御
  話ノヤウニ今後益〓是ハ努メテ參ラナケレバ
  ナラナイト考ヘテ居リマス、農業電化ニ付
  キマシテモ御話ノヤウニ最近供給面ノ方カ
  ラモ之ニ相當協力ヲシテ吳レマス、我々ト
  致シテモ努メテ是ハ促進シテ參リタイト思
  ヒマス、勤勞奉仕其ノ他ノ農村ニ對スル勤
  勞協力ニ付キマシテハ、從來カラ見ルト段々
  ト有效ニ働イテ居ルヤウデアリマシテ、多
  クハ勤勞協力ヲ受ケマシタ農村ノ方カラ感
  謝喜ビノ事例ヲ聽イテ居ルノデアリマスガ、
  尙ホ今後一層是ガ有效ニ動クヤウニ、此ノ
  上トモ努メテ參リタイト思ヒマス、移動勞
  働ニ付キマシテハ我々トシマシテモ今御話
  ノヤウニ交通費ノヤウナモノハ慥カ補助ガ
  行ツテ居ルト思ツテ居ルノデアリマスガ、
  尙ホ能ク實情ヲ調ベテ見タイト思ヒマス、
  其ノ程度ノコトハ現ニ處置致シテ居ル積リ
  デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=23

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• 024・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　榮養確保ノ觀點カラ此ノ
  際滿洲カラ相當大量ニ大豆ヲ輸入スル計畫
  ヲ立テタラドウカ、斯ウ云フコトヲ御提案
  シタイ、滿洲カラ大豆、大豆粕ヲ入レルコ
  トニ付テハ例年相當アルノデアリマスガ、
  榮養ノ現狀ニ鑑ミマシテ、榮養ノ保有量蛋白
  八割、脂肪一割八分ヲ持ツテ居リマス大豆、
  是ハ滿洲ニ於テハ今年ハ若干不作ノヤウデ
  アリマスケレドモ、全體ノ輸出能力ハ相當
  アルト見込ンデ居リマス、輸送ニ付テモサ
  ウ難カシクナイ、船腹關係モソンナニ要ラ
  ナイデ行クト思ヒマス、斯ウ云フコトハ今
  直グ御答辯ヲ戴カヌデモ宜シウゴザイマス
  ノデ、日滿ノ大豆ニ付テノ〓究會モ出來テ
  居ル情勢デアリマスカラ、是非取急イデ御
  〓究ヲ願ヒタイト思ヒマス、今日ノ榮養ノ關
  係ニ付キマシテ蛋白ト脂肪ノ攝取量ガ非常
  ニ少イト云フコトニ付テハ、國民保健上モ
  相當憂慮シナケレバナラヌ事態デナイカト
  考ヘル際、適切ナル一案デナイカト思ヒマ
  スノデ、是ハ御答ヘヲ求メルノデハアリマ
  セヌケレドモ、ドウゾ一ツ特段ノ御〓究ヲ
  願ヒタイト存ジマス
  配給ノ點ニ付キマシテ御尋ネシテ見タイ
  ト思ヒマス、現在ノ食糧配給ハ第一ハ主ト
  シテ主要食糧、或ハ副食物等ノ配給量ニ於
  テ、必要ナ國民ノ榮養素攝取量ト認メルヤ
  ドウカ、現實ニハ配給以外ノ物資ニ依ツテ、
  必要量ヲソレ〓〓確保シツヽアリトスルナ
  ラバ、政府ハ之ニ對シテ何等カノ對策ヲ御
  執リニナル必要ハナイカ
  次ハ農產物或ハ水產物、畜產物等ニ致シ
  マシテモ、產地ニ滯積シ、偏在シテ居ル事
  實ガ隨分アルノデゴザイマシテ、昨年ノ山
  陰地方ニ於テ獲レタ鯖ノ如ク、或ハ千島デ
  獲レタ鯨ノ爲ニ北海道ガ鯨デ氾濫致シマシ
  タ如ク、或ハ千葉ニ於テハ千葉カラズツト
  奧ニ入リマスト牛乳ナドガ自由販賣デ無制
  限ニアルノデアリマス、其ノ他鰮ニシテモ
  昨年ノ伊豆半島ノ如キハ相當ナモノデアツ
  タヤウデアリマス、斯ウ云フヤウニ非常ニ
  偏在シ、腐敗シテ居ルヤウナ事實ガアリマ
  スガ、之ニ對シマシテハ特段ノ工夫努力ヲ
  ナサル必要ハナイカ
  ソレカラ末端ノ配給機構ニ付キマシテ、
  是ハ時間ガアリマセヌカラ此ノ程度ニ致シ
  テ置キマスガ、末端配給ニ付キマシテハ、
  私ノ結論ハ町內會ニ一ツ責任ヲ持タスヤウ
  ナ組織ニシテハドウカト思フノデアリマス、
  サウシテ町內會ニ配給業者ヲ加ヘテ、主體
  ハ町內會ニスル、サウシテ仕入數ト價格ノ
  公開、町內會ノ協力、是ガ末端配給ヲ確實
  ニスル要件デアラウト存ジマス、今六大都
  市デ行ツテ居リマスノハ、一長一短ガアリ
  マイク、仕入ノ量ノ公開ト價格ノ公開ト町內
  會ノ主體的ナ協力、此ノ點ニ於テ缺ケル所
  ガアルト存ジマス、此ノ末端配給ニ付テ御
  伺ヒヲシタイト思ヒマス
  ソレカラ都市ノ配給ニ付テ數千ノ公營食
  堂ヲ設ケ、主トシテ外食劵デ食ハスト云フ
  コトニシテハドウカ
  尙ホ一般ノ勤勞者ニ對スル米ノ特配ニ付
  キマシテハ、鑛山、鐵鋼業、造船、炭礦、
  炭燒、港灣荷役或ハ木材ノ伐採等七種ニ限
  ツテ重筋勞務者トシテ四合ノ上ニ更ニ一合
  ノ特配ガアルノデアリマス、其ノ他ニ付キ
  マシテハ御承知ノ通リ普通トカ特別配給ト
  カアリマスガ、最近ノ實例ニ徵シテ見マス
  下、同ジク工場ニ於キマシテモ三貫カラ十
  五貫位ノ水雷ヲ造ツテ居ルヤウナ所ハ特配
  ガナイノデアリマス、或ハ某會社、例ヘバ
  日本樂器ノ如キ、彼處デ飛行機ノ色々ナ資
  材ヲ造ツテ居リマシテ、旋盤モ裝備シテヤツ
  テ居ルノデアリマスガ、是ガ輕筋勞者トシテ
  ノ配給シカ受ケテ居ラヌ、デアリマスカラ
  此ノ配給ニ付テハ實質的ニ、職種ノ實際ニ
  適合スルヤウニ一ツ御改正ニナツテハドウ
  カ、斯ウ云フ趣旨デアリマス、以上ノ點ニ
  付テ一括シテ御答ヘヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=24

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• 025・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　榮養上ドノ位ノ量ガ必要
  デアルカト云フコトニ付キマシテハ、私共
  モ一ツノ大キナ問題トシテイツモ色々ナ學
  者ノ說ヲ聽イテ居ルノデアリマスガ、足八
  色々說ガアリマシテ、一〓ニハ申セナイノ
  デアリマス、所デ總テノ食糧品ヲ總テ配給
  デ纏メテ行クト云フコトニ付テハ、御承知〓
  ノヤウニ實際問題トシテ不可能ナ所モアル
  ノデアリマス、併シ所謂主要〓糧以外ノ副
  食物デアリマシテモ、就中主要ナル一般的
  ナモノニ付キマシテハ申スマデモナク必要
  ナルモノヲ配給シテ、或ル程度兎ニ角食生
  活ヲ安定サセルコトガ必要デアリマシテ、
  此ノ點ニ付キマシテハ今後トモ現狀ニ對シ
  テ出來ル限リノ改善ヲ努メテ參リタイト考
  ヘテ居リマス、產地ニ物ノ一時的ナ滯積、
  偏在ト云フコトハ、是ハ或ハ其ノ物ノ耐久
  力ノナイ、腐敗ノ早イト云フヤウナ關係ト
  カ、其ノ季節ノ關係トカデ、或ル場合ニ於
  テハサウ云フ觀點カラ已ムヲ得ナイ場合モ
  アリマス、就中今日ノ如キ輸送力ノ狀況ニ
  於キマシテハ、殊ニ水產ノ如キ急ニ大量ノ
  入荷ガアルヤウナモノニ付キマシテハJe兎
  モスルト已ムヲ得ナイト申スベキ場合モ餘
  程アルノデアリマス、我々ト致シマシテハ
  若シ事前ニサウ云フコトガ考ヘラレル場合
  ニ付テハ、ソレニ對シテ凡ユル手段ヲ講ジ
  テ參リタイト思ヒマス、事後ニ於キマシテ
  モサウ云フ事態ヲ承知致シタ場合ニ於キマ
  シテハ、輸送關係等ニ付キマシテモソレゾ
  レノ關係當局ト十分連絡致シマシテ、努メ
  テ今日ノヤウナ場合食糧ノ十分利用サレル
  ヤウニ努力ヲ致ス考ヘデアリマス、現ニ具
  體的ナ各種ノ場合ニ付キマシテ、マダ十分
  トハ申セマセヌケレドモ、色々ト承知致シ
  マシタ場合ニハ其ノ地方ノ具體的ノ場合ニ
  付テモ努力ヲ致シテ居ル積リデアリマス、
  尙ホ今後モ努メテ參リタイト思ヒマス
  末端配給ニ付キマシテハ、御說ノヤウナ
  コトモ、所謂一ツノ公共性ヲ與ヘルト云フ
  點デ考慮スベキ點デゴザイマス、唯現狀ニ
  對スル差當リノ改善策トシマシテハ、今御
  話ノヤウナ點モ加味致シマシテ、我々トシ
  テハ逐次改善ヲ加ヘタイト考ヘテ居リマス、
  公益食堂ト云フヤウナ趣旨ノコトモ結構ダ
  ト思フノデアリマシテ、東京都ノ如キニ
  於キマシテモ、或ル種ノ團體ガ左樣ナコト
  ヲ今企圖シツヽアリマスガ、今後ノ發展ヲ
  我々モ期待致シテ居リマス
  勤勞者ニ對スル特配ト職種ノ關係ト云フ
  コトニ付キマシテハ、是ハ軍需省其ノ他ト
  モ能ク協議致シマシテ、我々ト致シマシテ
  モ是ガ適正ニ參リマスコトヲ最モ希望シテ
  居ルノデアリマシテ、時ニ依リマスト必ズ
  シモソンナ特配ナンカ必要ノナイ向ニモ特
  配ガ行クノデハナイカト云フコトモ亦他面
  言ハレテ居ル點モアルノデアリマシテ、此
  ノ凹凸ハ何レニシマシテモ適正ヲ期サナケ
  レバナラナイノデアリマシテ、今後共ニ努
  力ヲシテ參リタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=25

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• 026・吉田賢一

  ○言田(賢)委員　尙ホ大臣ガ見エマシタ折
  ニ質問ヲ御許シ願フトシテ、一應是デ終リ
  マス

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• 027・深澤吉平

  ○深澤委員長　皆サンニ御諮リ致シマスガ、
  多數質問者ガアリマスノデ、皆サンノ熱心
  ナ質疑ヲ盡スニハ勢ヒ時間ヲ制限シテ簡潔
  進捗ヲ圖リタイト思ヒマス、就テハ一人應
  答共一時間位デ盡シタイト思ヒマスガ、皆
  サンノ御意見ハ如何デスカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

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• 028・深澤吉平

  ○深澤委員長　ソレデハ左樣取計ヒマス、
  是ニテ休憩致シマス午後一時ヨリ開會致シ
  マス
  午後零時十一分休憩
  午後一時二十一分開議

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• 029・深澤吉平

  ○深澤委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス、通告順ニ依ツテ質疑ヲ許シマス-前
  川君

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• 030・前川正一

  ○前川委員　細カイ數字ニ亙ツテマデハ質
  疑ハ致シマセヌ、先程吉田君ノ質問ガゴザ
  イマシタガ、總理大臣及ビ農林大臣トモ今年
  ノ食糧ニ對シテハ絕對不安ハナイ、割當ノ配給
  量ダケハ確保スルト云フコトデアリマスガ、戰
  時〓糧施策ノ一番ノ狙ヒハ、需要量ノ確保ト
  安全感デアラウト思ヒマス、ソレニ付テ大體
  今マデノ米ナドノ勝負ノ付イテ居リマス點
  デハ問題ハゴザイマセヌガ、未決定ノモノハ
  今年ノ春馬鈴薯ト、今ヤツテ居ル麥ノ生產量
  ト、デアリマス、政府提出ノ資料ニ依レ
  バ、十九年度一年間ノ馬鈴薯ハ大體九億
  貫ト見込ンデ居リマスルガ、春ノ馬鈴薯ハ
  大體ドノ程度ヲ考ヘテ居リマスカ、斯ウ云
  ツタモノガ問題ニナルダラウト思ヒマス、
  二百萬町步ノ麥ノ作付計畫ノ中デ、大體幾ラ
  作付ガ出來テ居ルカ、麥ハ大體肥料デ作ル
  ノデアリマスガ、肥料ノ配給ヲ相當行ツテ
  居ルカドウカ、又管理ハ相當ヤツテ居ルヤ
  ウデアリマスガ、斯ウ云フ點カラ麥ノ今年
  ノ狙ヒガ昨年ニ比ベテドノ位殖エテ來ルダ
  ラウカト云フコトヲ御示シ願ヒタイ、ソレ
  ト春馬鈴薯ノ大體ノ見込ト、ソレカラ今政
  府ニ於テ雜穀ヲ各地ノ荒廢地デヤラレルト
  云フコトデアリマスガ、是ノ見込生產量、
  ソレカラ早場米等ノ手當ヲ今年ハシナクテ
  モ行ケルノカ、ヤハリヤラナケレバナラヌ
  ト思ヒマスガ、之ニ關シテノ手當ヲヤルカ
  ドウカト云フコト、ソレカラ滿洲ハ大體ニ
  於テ既ニ一月五日マデニ豫定量ノ收買ヲ終
  ツテ居リマス、其ノ後二割以上ノ收買ヲヤ
  ツテ居ルヤウデアリマス、是ハ非常ナ成功
  ダト思ヒマスガ、旣ニ契約セルモノ以上ニ
  滿洲カラ日本ニ來ル見込ガアルノカドウカ、
  臺灣ノ二期作ハ餘リ芳シクゴザイマセヌ
  ガ、ソレ等モ期待シ得ルノカドウカ、朝鮮
  モ期待シ得ルカドウカ、斯ウ云フ點ニ付テ
  モウ少シ數字ヲ、其處マデ行カナケレバ分
  リ得ル程度デ宜シウゴザイマスガ、御示シ
  ヲ願ヒマス、サウスレバ國民ハ總理及ビ農
  商大臣ノ言明ヲ、更ニ一層確信ヲ以テヤツ
  テ行ケルコトニナルト思ヒマスノデ、御示
  シヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=30

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• 031・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　昭和十九米穀年度ノ〓糧
  事情ニ付キマシテハ、豫ネテ農商大臣カラ
  豫算總會ニ於テ申上ゲテ居リマスシ、今日
  ノ所數字ニ亙ツテソレ以上ノコトヲ申上ゲ
  ル段階ニモナツテ居リマセヌガ、一應私カ
  ラ今ノ御質問ニ對シテ大體ノ感ジヲ申上ゲ
  タイト存ジマス、御話ノ如ク本年ノ食糧狀
  況ニ付テハ、結論トシテ豫ネテ大臣モ御話
  ニナリマシタ通リ、ヤツテ參レルト云フ見
  當ヲ付ケテ居ル譯デアリマス、併シナガラ
  ソレニハ前提ノアルコトハ勿論當然デアリ
  マス、旣ニ收穫シ終ヘタ食糧ダケヲ以テ賄
  フ積リデ居ル譯デハ勿論アリマセヌシ、ソレ
  カラ又收穫シタ食糧ニシテモ、之ヲ國民全
  般ニ供給スルニ當ツテハ、或ル數量ノ農家
  ヨリノ供出ト云フコトガ必要デモアリマス、
  現ニ米ノ供出ニ付テハ全國ノ農家ノ其ノ供
  出ヲ-殊ニ此ノ決戰下ニ於ケル現時局ヲ
  前提トシテ供出ニ努メテ貰ツテ居ル譯デア
  リマス、我々トシテハ申スマデモナク、此
  ノ現段階ニ於ケル食糧ノ重要性、又〓糧政
  策ノ完遂上米ノ供出ノ必要ナル所以ヲ、地
  方行政官廳或ハ市町村或ハ農業團體、凡ユ
  ル方面カラ農村農家ノ方々ニ徹底ヲ期シテ
  戴キマシテ、サウシテ其ノ奉公心ニ愬ヘテ
  供出ヲ願ツテ居ル譯デアリマス、我々トシ
  テハ全國農民ノ奉公心ニ深ク信賴ヲ致シマ
  シテ、此ノ我々ノ考ヘテ居ル供出ノ成果ヲ
  結局ニ於テ達成スルコトヲ期待シテ居ルヤ
  ウナ次第デアリマス
  又今年ノ麥作ニ付キマシテハ、御話ノ如
  ク二百萬町步ノ作付ヲ大體ノ目標トシテ、
  先ヅ以テ作付ノ奬勵ヲ官民各方面ノ協力ニ
  依ツテ全國ニ亙ツテ運動ヲ展開致シマシタ、
  其ノ結果ハ、是モ何カノ機會ニ或ハ大臣カ
  ラ御話ガアツタカト思ヒマスガ、百九十數
  萬町步ノ作付ガ出來テ居ルヤウニ承知致シ
  テ居リマス、是等ノ成果カラ見マシテ、我々
  ト致シマシテハ、今後ノ天候ノ關係等色々
  ゴザイマセウガ、同時ニ麥作ニ付テハ手入
  等モ非常ニ必要デアリマスノデ、其ノ手入
  レニ付テノ運動モ現ニ展開シツヽアリマス、
  ソレト肥料關係、色々ナコトヲ考ヘマシテ
  モ、或ル程度ノモノヲ我々トシテハ終局ノ
  收穫トシテ豫想シテ居リマス、左樣ナモノ
  ノ一ツノ比較的堅ク踏ンダ豫想見込ノ上ニ
  於テ、需給全般ノ見透シト云フモノヲ立テヽ
  居ル譯デアリマス、サウシテ結論ニ於テ大
  臣ノ言ハレタヤウニ、先ヅ不安ハナカラウ
  ト云フ風ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、今日ノ
  決戰下ニ於キマスル銃後凡ユル生產ノ問題
  ニハ、國民全般就中其ノ生產ノ衝ニ當ル向々
  ノ絕大ナル決戰的努力ナクシテハ、國家ノ
  要請スル所ガ達成セラレナイコトハ當然ノ
  コトデアリマス、是ハ一面ニ於テ我々トシテ
  常ニ此ノコトニ付テ國民全般ノ協力ニ愬ヘテ
  居ル次第デアリマシテ、勿論ソレヲ前提ニ
  致シマシテノ食糧對策デアル譯デアリマス
  馬鈴薯ニ付キマシテハ、春馬鈴薯ガドノ
  位ニナルカト云フコトハ、私今手許ニ見込
  ヲ持ツテ居リマセヌノデ、後刻調ベマシテ
  カラ申上ゲタイト思ヒマス
  雜穀ニ付キマシテハ大體ニ於テ應急增產
  對策ノ一環トシテノ五萬町步ノ作付ヲ致シ
  マシタガ、本年ハ豫算上ソレヲ倍ニシテ十
  萬町步ヲ見込ンデ居リマス、最近之ニ付キ
  マシテ地方ニ督勵スル場合ニ是レ以上出來
  レバ益〓良イノデアルカラ、出來ルダケノコ
  トヲヤツテ貰ヒタイト云フコトデ進メテ
  見タイト考ヘテ居リマス、大體ヤハリ昨年
  程度ノ簡易開墾ノ奬勵金モ出シマスシ、其
  ノ結果十萬町步ニナレバ、以上ニナツタダ
  ケノ補助金ナリヲ交付スルコトニ考ヘテ居
  リマシテ、今日ノ如キ增產意識ノ昂揚シマ
  シタ事情ノ下ニ於キマシテハ、相當ノ成果
  ガ擧ゲラレルノデハナイカト思ツテ居リマ
  ス、併シ先般大臣ガ需給ノ計畫ヲ立テラレ
  マシタ場合ニ於テハ、此ノ雜穀增產ハ取敢
  ズ計畫ノ中ニ入レテ居ラナイ筈デアリマシ
  テ、我々ト致シマシテモ今ノ所ソレハ計數
  上ニハ計上シテ居リマセヌ、ソレカラ事情
  トシテ早場米ノ供出ト云フコトハ勿論ヤラ
  ナケレバナラヌコトデアラウト思ハレル譯
  デアリマス
  ソレカラ滿洲ニ於テハ御話ノ如ク、狀況
  ハ順調デアルヤウデアリマシテ、之ニ付テ
  モ或ル程度ノ期待ヲ我々トシテハ持ツテ居
  ルノデアリマス、滿洲官民共ニ熱心ニ出來
  ルダケ協力ヲシテ行キタイト云フ意向ノヤ
  ウデアリマシテ、結局ニ於テドノ位ニナル
  カト云フコトハ今ノ所ハ分リマセヌケレド
  モ、計算上ハサウコチラデハ過大ニハ見積
  ツテ居ラナイ筈デアリマス
  臺灣ハ御承知ノヤウニ全體ノ數量ノ少イ
  所デアリマシテ、何レニシテモサウ大キナ
  動キニナル譯デハアリマセヌケレドモ、之
  ニ付テモ臺灣トシテハ相當ノ努力ヲ拂ハレ
  ル見込デアリマシテ、前年ヨリハ或ル程度
  良クナルコトダケハ我々トシテハ期待シテ
  宜カラウト考ヘテ居ル譯デアリマス
  朝鮮ニ於キマシテモ非常ナ努力ダト思ヒ
  マスガ、是モ相當ナ努力ヲシテ貰フト云フ
  コトヲ前提ニシテ我々ハ需給ノ考ヘヲ立
  テヽ居ル譯デアリマス、今後トモ朝鮮ノ官民
  ガ內地ニ對スル食糧ノ移出ニ對シマシテ懸
  命ノ努力ヲ拂ツテ戴クコトヲ我々トシテハ
  深ク期待シテ居ル次第デアリマス、大體サ
  ウ云フ狀況ニナツテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=31

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• 032・前川正一

  ○前川委員　戴イタ資料ニ依リマスト、十
  九年度ノ馬鈴薯ハ九億八百萬貫ト云フコト
  ニナツテ居リマスガ、此ノ中デ春馬鈴薯ハ
  大體ドノ位ニナリマスカ、今マデノ割合カ
  ラ行キマスト、秋ニ比ベテ春ノ方ガグント
  收穫ガ多イノデアリマスガ、是ハ六割以上見
  テ宜イノデハナイカト思ヒマスガ、其ノ邊
  ノ〓算ハドンナ風デスカ

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• 033・重政誠之

  ○重政政府委員　大體馬鈴薯ハ御見込ノ通
  リ春ガ大部分デアリマス、殊ニ今囘ノ第二
  次〓糧增產計畫ニ於キマシテ十九米穀年度
  以後ニ役立ツ芋ノ關係ハヤハリ春馬鈴薯ニ
  ナリマス、從來ノ率ヨリ春馬鈴薯ノ方ガ恐
  ラク多イコトト考へマス、今ハツキリシタ
  數字ハ持ツテ居リマセヌ

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• 034・前川正一

  ○前川委員　大體今年新シク簡易開墾スル
  五萬町步ヲ作付ケシテ其處カラ出テ來ルモノ
  ヲ此ノ數字以外ニ入レテ行クコトガ出來ル、
  ソレカラモウ一ツハ、麥ノ增產ガ或ル程度
  マデ期待セラレル、ソレカラ春馬鈴薯ガ今
  年土地改良ニ依リマス作付反別カラ出テ來
  ル、是ノ增產モ見込マレル、斯ウ云フ所ニ
  十九米穀年度ノ困難ガアツテモ之ヲ打開シ
  テ行ク途ガ發見サレルノデハナイカト考ヘ
  ル、更ニ滿洲ノ最近ノ增產等ヲ考ヘレバ、ソ
  コニモ相當ノ期待ガ持テル、我々ハ今ノ說
  明カラ斯ウ云フ期待ヲ持ツコトニナルノデ
  アリマスガ、大體斯ウ云フコトハモウ少シ
  明確ニ示シテ戴ケマスト國民ハ皆納得シ得
  ルト思フノデアリマス、大臣ノ言明洵ニ結
  構デアリマスケレドモ、今マデハ動モスル
  ト數字ニ基礎ヲ置イテ知ラウトスル癖ガ國
  民ニアツタト思ヒマスノデ、特ニ米ヲ中心
  トシテ考ヘテ居ツタモノガ、米以外ノ芋デ
  アルトカ雜穀デアルトカ云フモノガ段々其
  ノ中ニ加算サレテ一ツノ數ニ合シテ來テ居
  ルコトニナツテ居リマスノデ、農民モ其ノ
  政府ノ言葉ヲ體シテ頑張ルノデアリマスガ、
  餘リ調子ガ好イト云フコトヲ-是ハ對外
  的ナ關係モアリマスガ、國內ニ餘リ好イト
  云フコトヲ言ヒ過ギルト、農民ノ生產意欲
  ガ鈍ルト云フコトモ考ヘラレル、此ノ點非
  常ニ「デリケート」ナ問題デアリマスガ、春馬
  鈴薯ナラ春馬鈴薯、簡易開墾地ナラ簡易開
  墾地、求求ルモノ、箇々ニ付テ政府ハ農民
  ニ對シマシテ十分ナ激勵ナリ生產意欲ヲ高
  メル方法ヲ、各箇擊破ノヤウナ形ニ於テ御
  執リニナルコトガ、十九米穀年度ヲシテ堅
  實ナモノニセシメルコトニナルノデハナイ
  カト考ヘルノデアリマス、今後ノ政府ノソ
  レ等ニ對スル處置、又ハ御考ヘガアレバ伺
  ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=34

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• 035・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　此ノ十九米穀年度ニ於キ
  マスル給供面トシテ、ヤハリ何ト云ツテモ
  大キイモノハ內地ニ於ケル米ノ供出デアリ
  マシー是ガヤハリ何ト云ヒマシテモ全般的
  ニハ最モ重要ナ點デハナカラウカト思フノ
  デアリマス、ソレト、此ノ麥ノ增產、芋其
  ノ他ノ各種ノ作物ノ增產供出ト云フコトニ
  ナル譯デアリマス、御話ノ如ク食糧問題ニ
  付テノ論議ト云フモノハ非常ニ微妙ナ關係
  ガゴザイマス、是ハ本會議ニ於キマシテ總
  理大臣カラヤハリ食糧關係ニ付テ答辯ガア
  リマシタガ、アノ答辯ノ中ニ其ノ關係ハ能
  ク現ハレテ居ルト思フノデアリマス、農商
  大臣トセラレマシテハ、數字的ナ途中ノ經
  過ヲ省略シテ、最後ノ結論的ナ見透シヲ先
  般言ハレタ譯デアリマス、ドウカ御話ノ如
  ク此ノ關係ハ常ニ如何ナル場合ニ於キマシ
  テモ微妙ナ關係ニアリマスノデ、關係方面ハ
  總テ兩面カラ考ヘラレル場合ニハ、自ラノ
  責任ノ面ヲ常ニ强ク感ジテ考ヘナケレバナ
  ラナイト思ヒマス、例ヘバ今日ノ戰爭ニ於
  ケル必勝ノ信念ト云フコトヲ、我々ハ堅持
  シテ居ル譯デアリマスガ、必勝ノ信念ガア
  レバモウ何モシナクテモ必ズ勝ツニ決マツ
  テ居ルト云フヤウナコトハ、恐ラク前線ノ
  將兵ハ誰シモ考ヘテ居ラヌダラウト思ヒマ
  ス、我々ハ必勝ノ信念ヲ持ツテ居ルカラモ
  ウ何モシナクテ宜イト云フノデハナクテ、
  凡ユル困難ヲ凌イデ、必勝ノ信念ヲ實現ス
  ベク努力スルコトヲ、前線ノ將兵ハ念願シ
  テ居ラレルダラウト思フノデアリマス、食
  糧ノコトニ携ハル場合ニ於キマシテ、我々
  官ニ在リマス者ハ、色々各方面ノ御意見等
  ヲモ伺ヒマシテ、其ノ施策ノ十全ヲ期スベ
  〃、常ニ改善ニ改善ノ努力ヲ拂ハナケレバ
  ナラヌト思ヒマスシ、又供出ノコトニ携ハ
  ラレル農家ノ方々ハ、彌ガ上ニモ此ノ供出
  ニ努メテ戴カナケレバナリマセヌ、增產ノ
  コトニ關スル者ハ、其ノ增產ヲ求メラレル
  以上ニ增產スベク、兎ニ角出來ルダケノ努
  力ヲ拂ハナケレバナラナイト思フノデアリマ
  ス、凡ユル努力ヲ拂ヒマシテ、ソコニ決戰
  下ニ於ケル總テノ國家ノ要請ト云フモノハ
  達成サレルト考ヘラレルノデアリマス、此
  ノ點ニ付キマシテハ皆樣方ノ又此ノ上トモ
  ノ御指導ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=35

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• 036・前川正一

  ○前川委員　農民ハ今日ノ食糧問題ガドレ
  程重要デアルカト云フコトヲ能ク知ツテ居
  ルノデアリマス、食糧ソレ自身ガ既ニ戰力
  ダト云フ位ニ考ヘテ居リマス、供出等ニ於
  キマシテモ、相當進ンデ、自分ノ食サヘモ
  割イテ行クマデノ熱意ヲ皆持ツテ居ルノデ
  アリマス、サウ云フコトニ付キマシテ、我々
  地方ニ居リマス者ハ、農民ノ熱意ダケハ
  强ク認メテヤツテ宜イト思ヒマス、尙ホ供
  出ノ問題ガ出マシタノデ、ソレニ關聯シテ
  一應御尋ネシタイト思ヒマスガ、大臣ハ曾
  テ斯ウ云フコトヲ言ハレタト思ヒマス、供
  出ノ具體的方法ハ、何處マデモ農村事情ニ
  卽シテヤラナケレバナラヌト云フヤウナコ
  トヲ言ハレタト思フノデアリマスガ、是 六
  ドウ云フコトヲ意味シテ居ルダラウカ、昨
  年ノ供出ノ方法モ一ツノ方法デアツタノデ
  アリマス、一昨年ノ供出方法モ一ツノ方法
  デゴザイマシタガ、又新シイ一ツノ供出ノ
  方法ガ玆ニ强ク論議サレテ來テ居ルト思ヒ
  マス、所謂生產責任制ノ確立トデモ申シマ
  セウカ、大體土地ノ地力ト云フモノハ分ツ
  テ居ルノデゴザイマシテ、其ノ土地一枚々々
  ニ於テ皆地力ガ違ヒマス、ソレニ對シマ
  シテ政府ガ各機關ヲ通ジテ其ノ土地ノ生產
  計畫ハ是ダケノモノデナケレバナラナイ、
  之ニ對スル供出ノ責任數量ハ是ダケデアル
  ト云フヤウナコトヲ、各系統機關ヲ指導監
  督サレマシテ、前以テ作付前ト云フカ營農
  前ニ御決メヲ願ツテ、農民ハ今年ハ是ダケ
  ノモノヲ作ルノダ、サウシテ此ノ中カラ是
  ダケハ出スノダト云フ計畫ノ下ニ營農ガ續
  ケテ行カレル、サウシテソコデ出來上ツテ
  來タモノカラ、政府ノ割當テマシタ供出量
  ダケハ必ズ之ヲ納メル、ソレ以上ニ餘裕ガ
  アルナラバ、更ニソレ以上供出ヲシテモ宜
  イト云フヤウナ行キ方ガ、一ツノ新シイ責
  任ヲ各自農民ガ持ツ所ノ供出ノ體制デハナ
  イカト思フノデアリマスガ、サウ云フコト
  ヲ假ニ致シマスト、農民ハ勿論責任ヲ持ツ
  テ此ノ供出ニ盡力致シマスガ、政府モ亦同
  ジク割當ヲ致スト同時ニ、資材、肥料トカ、
  サウ云フヤウナコトニ對シマシテモ十分ナ責
  任ヲ以テ之ニ御盡力ヲ願フ、各地方ノ當局若
  シクハ農業會等ニ於テモ各、〓責任ヲ以テヤツ
  テ戴ク、農民ハ各個ニ於テ責任ヲ持ツテ生
  產ト供出ニ當ル、斯ウ云フコトニ致シマス
  コトガ、恐ラク過去二年間ヤリマシタ供出
  ニ比ベテ、最モ妥當性ノアル供出方法デハ
  ナカラウカト云フヤウナ感ジガ致スノデア
  リマス、尙ホ供出數量以上ニ農民ガ進ンデ
  供出ヲスルト云フヤウナ場合ニハヨク申
  サレマス所ノ報奬制度等ヲ御考ヘ願フコト
  ガ出來マスレバ、是ハ農民ノ非常ニ大キナ
  勵ミニモナルノデハナイカト云フ風ニ考ヘ
  ルノデゴザイマス、十九米穀年度ノ、今日
  ノ供出ニハ既ニ間ニ合ヒマセヌケレドモ、
  來年度ノ供出ニ於キマシテハ、斯樣ナ方法
  ヲ御執リニナルコトガ、供出ヲ非常ニ滑ラ
  カニスルノデハナカラウカト云フコトヲ考
  ヘルノデアリマスガ、之ニ對シマシテノ政
  府ノ御意見ヲ御伺ヒシタイト思フノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=36

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• 037・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　供出ノコトニ付キマシテ
  ハ色々御話スベキ點モアリマスガ、最後ノ
  御質問ノ點デアリマスガ、此ノ點ニ付キマ
  シテハ、曩ニ豫算分科會ニ於キマシテモ御
  發言ガアリマシタ、ソレニ對シマシテハ
  豫テ久シクサウ云フヤウナ意見モアリマシ
  タシ、殊ニ最近各方面ノ權威アル方面カラ
  左樣ナ御意見ガアリマシタノデ、之ニ付キ
  マシテハ十分我々ノ方ト致シマシテモ檢討
  致シタイト考ヘテ居リマス、今直チニ之ヲ
  實行スルト云フコトヲ申シマセヌ所以ハ、
  當時ニモ申シタコトデアリマスガ、實行上
  ノ諸點ニ付キマシテ、具體的ナ考慮ヲ拂フ
  必要ガアリマスノデ、一ツ其ノ點ニ付テ十
  分踏込ンダ〓究ヲサセテ戴キタイト云フ次
  第デアリマシテ、今日ノ場合此ノ程度ノ御
  答ヘデ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=37

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• 038・前川正一

  ○前川委員　此ノ問題ハ農民自身モ非常ナ
  關心ヲ持ツテ居リマス爲ニ、政府トシテモ
  ハツキリシタ御話ヲ願フコトガ宜イト思ヒ
  マスガ、何レ、落着ク先ハサウ云フ方面ニ行
  クノデハナイカト云フ氣ガ致シマス、實行
  上ノコトニ付キマシテハ農民ヲ勵マシナ
  ガラ供出ヲサセ得ルヤウナ方法トシテ、斯
  樣ナ案ガ可ナリ强ク論ゼラレテ居リマスノ
  デ、ドウカ實現ガ出來マスヤウニ御盡力ヲ
  願ヒタイト思ヒマス
  尙ホソレニ續キマシテ十九米穀年度ニ多
  少關係ガアルカト思ヒマスガ、今年ノ甘藷
  ノ生產高ハ殆ド豫定數量ニ近イモノガ出來
  テ居ル、或ハモツト出來テ居ルト思ヒマス、
  然ルニ政府ノ買上量ハ割合ニ少イノデアリ
  やっ、是ハ色々說明ヲ承リマスト、輸送ガ
  可ナリ困難デアル、水分ガ多イノデ經濟輸
  送ガ出來ニクイ、腐敗ヲシ易イト云フヤウ
  ナ理由デ、農民ニソレヲ食ハシテ、其ノ代
  リニ米ヲ出サセル、斯ウ云フ御話デアリマ
  スガ、此ノ諸ノ斯ウ言ツタ特性ヲ能ク活カ
  シテ一ツ考ヘラレルコトハ、生產時期ニ農
  家ガ各個ニ貯藏スルヤウナ新シイ設備マデ
  造ツテ貯藏スルコトデナクシテ、出來得ル
  限リ生產期ニ於テ供出スル、而モ供出サレ
  タ生諸ハ、食糧營團ヲ通ジテ配給シ得ルモ
  ノハ出來ルダケ配給シマスガ、ソレ以上ノ
  モノハ國民學校ノ學童ヲ動員スルナリ、非
  農家ノ勞働力ヲ動員致シマシテ、能ク言ハ
  レマス賽ノ目ニ切ツテ之ヲ乾燥スルトカ、
  千切ニ切ツテ乾燥スルトカ、或ハ藷米ト云
  フヤウナ乾燥貯藏ノ出來ル方法ヲ御執リニナ
  ル、或ハ澱粉ニスルトカ方法モゴザイマセ
  ウガ、サウシテ主要食糧ノ方ニ之ヲ御廻シ
  ニナルヤウニ致シマスト、藷ノ持チマス主
  要食糧トシテノ役割ガ非常ニ大キクナツテ
  來ルノデハナイカト思フノデアリマス、今
  年ハ色々ノ事情デ時期ガ多少遲レタ關係カ、
  サウ云フ點ガ不十分デアツタヤウニ思ハレ
  ルノデアリマスガ、一ツ來年度ニ於キマシ
  テハ、斯ウ云ツタ芋ヲ出來得ル限リ多ク主
  要食糧トシテ確保スルヤウナ、色々ナ具體
  的ナ施設ヲ御執リニナルコトガ必要デハナ
  イカト思ツテ、政府ノ御所見ヲ御伺ヒスル
  次第デアリマズ

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• 039・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御話シノ簡易ナル加工ヲ
  芋ニ付テ實施スルコトハ、貯藏ノ面カラ云
  ヒマシテモ、輸送ノ面カラ云ヒマシテモ便
  利デアリマスカラ、結局ニ於テ是ノ利用ノ
  便利ヲ得ル譯デアリマシテ、此ノ點昨年ハ
  兎モ角急ニ新シクサウ云フ食糧ノ切干ノヤ
  ウナモノヲ始メマシタ關係上、例ヘバ機械
  ノ行キ渡リガ遲カツタトカ色々ナコトガア
  リマシテ、マダ十分ナル成績ヲ擧ゲテ居ラ
  ヌヤウニ思フノデアリマス、今年ハ此ノ點、
  昨年ノ經驗ニモ徵シマシテ、一層擴充シテ
  參リタイト考ヘテ居リマス

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• 040・前川正一

  ○前川委員　主要食糧ニ付テ色々伺ヒマシ
  タガ、私戰時下ノ食糧問題ヲ本當ニ解決シ
  テ行キマス最モ大キナ問題、政府ガ御執リ
  ニナツテ居ル食糧增產ノ計畫ハ、是ハ昔力
  ラ仕來リノ耕種改善トカ何トカ云フヤウナ
  方法モアリマスルシ、更ニ又其ノ上ニ支那
  事變後起キテ參リマシタ惡條件ヲ克服スル
  ガ爲ニ多クノ法令ガ出來、又保護政策ガ執
  ラレテ居ルノデアリマスガ、最近又新シイ
  一ツノ進ミ方トシテ、食糧增產ノ一番大キ
  ナ根本的ナ問題デゴザイマスル土地ノ問題
  ニ對シテ、自作農創設維持ノ政策ヲ非常ニ
  擴大强化サレマシテ、政府ガ此ノ方面ニ勇
  敢ニ進マレヨウトシテ來マシタコトハ、洵
  ニ慶賀スベキコトデアルト思フノデアリマ
  ス、昨年以來自作農創設ノ計畫ガ非常ニ大
  キクナリマシテ、農民ハ此ノ政府ノ意圖ヲ
  體シテ土地ヲ持チタイ、土地ヲ持ツコト
  ニ依ツテ土地ノ生產力ガ確カニ高マツテ來
  ルコトハ午前中吉田委員カラモ御話ガアリ
  マシタヤウニ現實ノ問題デアリマス、サウ
  云フ意味カラ農民ハ非常ニ土地ヲ欲シテ居
  ル、買ヒタガツテ居ル、安定セル土地ノ上
  ニ於テ農耕致シタイ、ソシテ食糧增產ヲシ
  タイ、斯ウ云フ非常ニ念願ノ强イモノガア
  ルノデアリマスガ、實際上ノ問題ニ打突カ
  リマスルト、地主ガ此ノ土地ヲ餘リ賣ラウ
  トシナイ、是ガ今日ノ難點ナノデゴザイマ
  シテ、ソレヲ打開スル爲ニハ政府ハ此ノ度
  水田ニ對シテ反當百五十圓ノ補給金ヲ御出
  シニナツテ、此ノ間ヲ切リ開イテ行カレヨ
  ウトスル、是モ一ツノ案デアリマシテ、結
  構ナコトトハ思フノデアリマス、ケレドモ
  ドウモ百五十圓程度ノ金デ此ノ途ガ切リ開
  カレルカドウカト云フコトヲ考ヘテ見マス
  ルト、稍〓首ヲカシゲナケレバナラヌ點モ殘
  ルト思ヒマスノデ、出來ルコトナラ、村上
  居ラナイ地主デアルトカ土地ヲ相當澤山持
  ツテ居ツテ、土地ノ十分ノ見廻リガ出來ナ
  イト云フヤウナ地主ニ對シテハ、モウ少シ
  積極的ニ土地ヲ賣ラスヤウナ勸奬ヲスルヤ
  ウニ、一ツ政府自身ガ强イ意見ヲ御持チ下
  サルコトヲ私ハ特ニ御願ヒシテ置キタイト
  思フノデアリマス
  尙ホソレニ次イデ御尋ネ致シタイ點ハ
  反當百五十圓御出シニナリマスガ、是ハ土
  地ノ賣買價格ニ比例シテ御出シニナルノデ
  セウカ、ソレトモ全部平均シテ水田ナラ一
  反ニ對シテ百五十圓ト云フヤウニ御出シニ
  ナルノカドウカ、尙ホ此ノ金ハ地方カラ申
  込ンデ來夕割當ノ自作農反別ニ應ジテ一括
  シテ各府縣廳ニ御出シニナツテ、其ノ府縣
  ニ於テソレヲ其ノ土地ノ價格等ニ應ジテ適
  宜ニ割ツテ渡シテモ宜イノデアリマスカ
  第三ノ點ハ自作農創設維持資金ノ金ヲ借
  ラズニ土地ヲ賣買シタ場合ニモ、百五十圓ト
  云フモノハ政府ガ出スノカドウカ、又自作
  農創設維持ノ事業ニ基イテヤルノダケレド
  モ、政府カラ金ヲ借リズニヤル、自分ノ有金
  デ直グ金ヲ拂ツテ行クト云フヤウナ場合ニ
  於テモ、此ノ百五十圓ト云フ補給金ハ御出
  シニナルノカドウカ、是等ノ點ニ付テ御伺
  ヒシタイト思フノデアリマス

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• 041・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　三四ノ點ニ亙ツテノ御
  質問デゴザイマスガ、詳細ノコトハソレ〓
  ノ手續ヲ經マシテ決定スル譯デアリマス、
  大體ノ考へ方ト致シマシテハ、水田ニ付テ
  ノ百五十圓ト云フ一ツノ目安ハ、是ハ大體
  平均ノ目安デアリマシテ、其ノ狀況ニ依リ
  マシテ是ガ多少ノ動キヲスルコトハ當然ト
  考ヘテ居リマス、具體的ナ或ル田畑ニ對スル
  サウ云フ補給金ヲドノ位出スカト云フコトハ
  是ハ結局大體ノ方針ヲ立テマシタナラバ)
  ソレ〓〓地方ニ於テ適宜運營シテ貰フト云フ
  コトヲスル外ハナカラウト考ヘテ居リマス
  ソレカラ自分ノ金デ自作農ニナラウトス
  ル者ニ付テ、サウ云フ人ガ土地ヲ買フ場合
  ニ付テノ補給ノコトデアリマスガ、此ノ問
  題ニ付テモ左樣ナコトノ出來ルヤウナ風
  ニ、豫算ノ運營ノ方途ヲ考へタイト今考ヘ
  テ居リマス、或ル方法ガ執レルノデハナイ
  カト思ツテ居リマス

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• 042・前川正一

  ○前川委員　此ノ百五十圓ガ左樣ナ意味デ
  效果ヲ奏スルコトヲ非常ニ期待シテ居リマス
  ガ、前ニ申シマシタヤウニ、政府ハモツト
  積極的ニ自作農創設ヲヤル熱意ヲ持ツテ居
  ルノダト云フコトヲ地方ノ者ニ十分力强ク
  示サレルヤウニ御盡力ヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス、吉田委員ノ說ト同ジデ、非常ニ重要ナ
  點デゴザイマス、土地ヲ賣ル時期ガ來タ、
  賣ラネバナラヌト思ツテ居ツタ人達ガ、今
  日尻込ミヲシテ居ルヤウナ狀態ガアルコト
  ヲマヽ見受ケマスノデ、ドウカ强ク響クヤ
  ウニ御願ヒ致シマス
  尙ホ土地ヲ買ツテ自作農ニナリマシタガ、
  色々ナ家庭ノ事情等ニ依ツテ、特ニ金錢關
  係ニ於テ土地ヲ又手離サナケレバナラナイ
  ト云フヤウナ窮迫シタ事態ニ出會ツタ場合
  ニ、再ビ小作人ニ落チナイヤウニスル、防
  止方法、維持ノ方面ガ今マデ動モスレバ輕
  視サレテ來タノデハナイカト思ヒマス、長
  イ間ノ自作農創設ノ運動デ、政府ニハ御盡
  力ヲ願ヒマシタガ、落チテ行ク者ガ非常ニ
  多イノデアリマス、結局差引致シマスト、
  餘リ澤山殘ツテ居ナイヤウナ實情ニゴザイ
  マスガ、特ニ戰時農業要員ノ指定ト云フヤ
  ウニ-恐ラク是ハ農家經營者ヲ指定サレ
  ルト思ヒマスガ、一應斯樣ナ方法モ出來テ
  參リマスト、土地ニ安定ノ出來ル一ツノ立
  場ガ出來ルノデアリマス、其ノ人達ハ更ニ
  又土地ヲ續ケテ持ツテ行ケル、土地ノ異動
  ガナクヤツテ行ケルト云フコトニナリマス、
  若シ土地ヲ手離サネバナラヌト云ツタヤウ
  ナ場合ニ、農林中央金庫等ヲ利用シテ、一ツ
  ノ農地金庫的ナ役割ヲヤラスヤウニスルカ、
  何カノ方法デ土地ヲ何處マデモ確保シテヤ
  ルノダト云ツタヤウナ金融方面ノ措置ヲ御
  執リニナルト云フコトガ、文字通リノ本當
  ノ自作農維持ニナルト思フノデアリマス、
  是等ニ付キマシテ農林中央金庫ノ運營若シ
  クハ其ノ他農地金庫トデモ云ツタヤウナ內
  容ヲ持ツタ金融對策ヲ御考ヘニナツテ居ル
  カドウカ、私ハ是ハ是非必要ダト思ヒマス

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• 043・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御尤モナ御意見デゴザイ
  マシテ、之ニ付テハ從來カラモ政府トシテモ
  自作農創設維持事業ト云フヤウナ言葉ヲ使
  ツテ居リマスヤウニ、此ノ維持ノ爲ニモ低
  利ノ資金ノ融通ヲ致シマシテ、今御話ノヤ
  ウナ場合ニ於キマスル自作農ノ維持ヲ圖ツ
  テ居ル譯デアリマス、ソコデ金融ノ爲ニ農
  林中央金庫ガ十分ナル活動ヲスルヤウニト
  云フ御意見モ至極御同感デアリマシテ、中
  央金庫ノ當局ト致シマシテモ、自作農ノ創
  設維持ニ付テハ特ニ今後力ヲ入レタイト云
  フ風ニ申シテ居ラレルノデアリマシテ、我
  々トシマシテモ此ノ活動ニ期待ヲ致シテ居
  ルヤウナ次第デアリマス、尙ホ十分ト督勵
  シテ參リタイト思ヒマス

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• 044・前川正一

  ○前川委員　現實ノ問題トシマシテ、農林
  中央金庫等ハ金ハ出スガ手續ガ非常ニ煩瑣
  デアツタリ、又取扱ヲ致シマスル地方ノ金
  融機關、信用組合ガ手數料關係等デ大シテ
  之ニ力ヲ入レラレナイト云フ實際問題デア
  リマス爲ニ能率ガ殆ンド上ラナイ、農民ハ
  少シウルサク言ハレルト止メテシマフノデ
  アリマス、モウ少シ積極的ニサウ云フ機關ガ
  活動出來ルヤウニ手續其ノ他色々御考慮ヲ
  願ヒタイト思ヒマス
  次ニ畜產ノ問題デアリマスガ、是ハ先程
  モ御話ガゴザイマシタカラ、重複シナイヤ
  ウニ結論ダケヲ申述べタイト思ヒマス、濃
  厚飼料ガ人間ト家畜ノ間ニ爭奪戰ヲ始メ
  ル-是ハ日本ハ外國程强クハゴザイマセ
  ヌケレドモ、現實ニ衝突シテ居リマス、是等
  ニ付テモ或ル點マデ濃厚飼料ノ確保ヲ御考
  慮願ハナケレバ、日本ノ今日ノ所謂化學肥
  料ノ不足、地力ノ荒廢、殊ニ地力ノ酸性化
  ト云フ方面カラ言ヒマシテ、有機質肥料ト
  云フモノガ地力ノ囘復ニ非常ニ大事ナコト
  デアリマス、堆肥、厩肥ノ增產ヲ非常ニヤ
  ツテ居リマスガ、ソレニシテモヤハリ畜力
  ト云フモノガナケレバ出來マセヌ、勞力ノ
  點カラ見テモ肥料ノ點カラ見テモ、有畜農
  業ト云フモノガ今日ノ標準農村ノ施設ノ中
  ニ於テモ非常ニ大キナ特色ヲ持ツタモノニ
  ナツテ來ルノデハナイカト思ヒマス、特
  家畜自身ガ食糧トシテ動物性脂肪及ビ蛋白
  質ノ價値ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、色
  々ノ面カラ有畜農業ノ問題ハ重要視シナケ
  レバナラヌト思ヒマス、ソレデ此ノ濃厚飼
  料ノ手當ヲ願フト同時ニ、自給飼料ニ依ラ
  ナケレバナラヌト思ヒマス、自給飼料ノ增
  產對策トシテハ山林局ナリ林業試驗場ナリ
  ガ大イニ協力シテ積極的ノ活動ヲ願ハナケ
  レバナラヌ、今日林業試驗場ニ深山白萩ガ
  五十萬本アルラシイ、之ヲ有畜農業ノ盛ン
  ナ村ニ配給スレバ、是ガ飼料價値ハ相當ナ
  モノデアリマス、サウ云フコトガアルコト
  ヲ我々地方ニ於テハ知ラナイノデアリマス
  カラ、林業試驗場トカ山林局ニ於テハサウ
  云フコトニ付テ御盡力ヲ願ヒ、是ノ指導强
  化ニ付テノ御援助ヲ願ヒタイノデアリマス、
  尙ホ牧草ノ種子トカ苗ノ幹旋又採種圃等ヲ
  增設シテヤツテ行クコトニ對スル御援助モ
  願ヒタイ、今日北海道邊リノ「クロバー」ノ
  種モ、皆「ブロック」ニナリマシテ殆ド出テ
  參リマセヌ、政府ニ於キマシテハ種子、苗
  等御斡旋ヲ願ヒタイノデアリマス、尙ホ國
  有林野ヲ採草地若クハ放牧地トシテ積極的
  ニ御開放願ヒタイ、是ガ出來レバ飼料ノ問
  題モ解決セラレルコトニナルト思フノデア
  リマス、尙ホ「サイロ」ノ問題デアリマスガ、
  是ハ大分普及シテ參リマシタケレドモ、「セ
  メント」ガナイ爲ニ三和土デヤツテ居ル、是
  ハ資材ガ非常ニ樂ニナツテ來タト思ヒマス
  ガ、是モモウ少シ積極的ニ御奬勵ヲ願ヒマ
  スナラバ、可ナリ急場ノ飼料ガ間ニ合フコ
  トニナルト思ヒマスノデ、サウ云フ方面ノ
  資材ノ手當等モ十分願ヒタイ、尙ホ草刈ノ
  問題デ學徒ヲ動員シテ居リマスガ、草刈ニ
  學徒ヲ動員致シマス場合ニ、山間ノ方ハ割
  合良イノデアリマスガ、平坦地ニ參リマス
  ト輸送力ノ關係デ巧クイカナイト思ヒマス、
  相當努力ハサレマシテモ效果ノ十分ニ擧ラ
  ナイ所ガ所々見ラレマスガ、モウ少シ計
  畫的ニ學徒ノ草刈動員ト、有畜農業其ノ他
  ト結付クヤウニ、具體的ナ案ヲ御立テヲ願
  ヒタイト思フノデアリマス、是等ニ付テ御
  意見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=44

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• 045・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　濃厚飼料ニ付キマシテハ
  御話シヤウニ食糧トノ關聯ニ於テ或ル意味
  ニ於テハ食糧增產ノ一部トマデモ考ヘナケ
  レバナラヌト極言シテモ宜イ位ダト思フノ
  デアリマス、ソレデ林業試驗場其ノ他ノ各
  方面十分連繫ヲ執リマシテ努力ヲ致ス積リ
  デ居リマス、此ノ增產ニ付キマシテハ總テ
  左樣デアリマスルガ、種子ノ確保ガ必要デ
  アリマシテ、現ニ我々ト致シマシテモサウ
  云フヤウナ見地カラ色々ナ種ノ確保ニ努メ
  テ居リマスガ、今後トモ一ツ努力ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、「サイロ」ノ普及ニ付キマシテハ、
  本年度ハ其ノ中途カラ施設ヲ擴大致シマシ
  テ、大體六萬五千基程ノ「サイロ」ノ新設ヲ
  致シタヤウナ次第デアリマスガ、現ニ或ル縣
  ノ如キハ、一年デ二萬基ノ「サイロ」ノ增設ヲ
  十八年度ニ於テヤツタ所モアリマス、是一
  一萬基ハナンデモ中央ノ補助ニ依リ他ノ一
  萬基ハ縣自ラ助成金ヲ出シテヤツタト云フ
  話デアリマシテ、隨テ縣ノ助成ノ一萬基ヲ
  加ヘレバソレダケデモ昨年ハ七萬五千基增
  設サレタ譯デアリマス、本年モ豫算トシテ
  ハ六萬五千基ノ新設ヲ計晝致シテ居リマス
  ガ、是モ幸ヒニ地方ニ於テソレ以上ノ實績
  ガ擧リサウデアレバ、豫算措置トシテハ必
  ズシモ此ノ豫算ニ囚ハレズニ、ソレ以上ノ
  コトモヤリタイト云フ位ニ今考ヘテ居ルノ
  デアリマシテ、一ツ極力普及ヲスルヤウニ
  色々ナ方面カラ計畫ヲ進メタイト思ヒマス、
  草刈ニ付テノ學徒ノ動員ノコトニ付キマシ
  テハ、豫テ他ノ委員會ニ於テモ色々御意見
  モアリマシタノデ、今年ハ去年ノ經驗ニ徵
  シマシテ、一層效果的ナ實行ヲ期スルヤウニ
  取計ラヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=45

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• 046・前川正一

  ○前川委員　學徒ノ動員ニ付キマシテハ
  是ハ相當大キナ問題ニナツテ居リマスガ、
  結局ニ於テ學徒ハ多數動員サレテ居リマス、
  旣ニ學徒ノ先輩ハ前線ニ銃ヲ執ツテ立ツテ
  居リマス、今銃後ニ於テ勉學ニ勵シムト云
  フコトモ必要デゴザイマセウガ、勤勞モ大
  事ナコトデアリマス、今日ノ學徒ノ勤勞ハ、
  實際ハ田舍へ通ウテ勤勞奉仕ニ出掛ケマス
  爲メニ案外能率ガ上ラヌ場合ガ多イ、ソレ
  デ出來マスナラバ農村ノ寺トカサウ云フ所
  ニ一定期間宿泊シテ、サウシテミツチリト
  勤勞奉仕ヲヤル、若シ其ノ間ニ於テ餘裕ガ
  アレバ先生ハ其ノ寺等ヲ利用シテ學校デ
  ヤルヤウナコトヲ更ニヤツタツテ宜イト思
  フノデアリマス、今マデノヤウニゾロ〓〓
  ト田舍へ出掛ケテ行クノデナク、計畫的ニ
  宿泊シテ農村ニ落著イテヤル、旣ニヤツテ
  居ル所モアルヤウデアリマスガ、中等學校
  ノ生徒ナドハヤツテ居ラヌ所ガ多イノデア
  リマスガ、サウ云フヤウナ積極性ヲ以テオ
  ヤリニナルコトヲ此ノ際御考慮ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス
  尙ホ水產局長ガ御見エニナリマシタカ
  ラ、水產局長ニ御尋ネ致シタイト思ヒマ
  スガ、去年ハ淡水魚ヲ非常ニ增殖ヲ圖ラ
  レル御方針ヲ御執リニナリマシタガ、今
  年ハ可ナリ淡水魚ハ多クナツタトハ思ヒマ
  スガ、十八年度ノ內水面ノ魚獲高ガドレ位
  アツタデセウカ、奬勵シタ割合ニハ殖エテ
  居ラヌノデセウカ、ソレカラ十八年度ノ
  一般水產魚獲高モ伺ヒタイト思ヒマス、是
  ハ蛋白ト脂肪ノ給源デアリマシテ、非常ニ
  國民ノ關心ヲ持ツテ居ル部面デアリマスカ
  ラ、特ニ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=46

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• 047・井出正孝

  ○井出政府委員　昨年ニ於キマス內水面ノ
  生產高ニ付キマシテハ總數量ハ今此處ニ
  準備致シテ居リマセヌガ、大體昨年臨時議
  會ニ於キマシテ追加豫算ノ御協贊ヲ得テ實
  施致シマシタ水田及ビ河川湖沼ニ放流スル
  鯉ヲ主力ニシマス內水面ノ增殖施設ニ付キ
  マシテノ成績ヲ申上ゲマスレバ、大體放流
  致シマシタ魚苗ノ數ガ十九億四千萬尾デア
  リマス、昨年之ニ依リマシテ、前年來色々
  鯉ヲ增殖シテ居リマスガ、其ノ結果モ入ツ
  テ居ルト思ヒマスガ、大體鯉ニ付テ上リマ
  シタ成績ハマダ多少數字ノハツキリシテ居
  ナイ所モアリマスガ、大體六千萬貫位ハ生
  產ガ上ツテ居ルヤウニ見テ居リマス、放ツ
  夕鯉ノ本當ニ成育シテ一年鯉トシテ收獲サ
  レマスノハ、今年ニ入ツテカラノモノニナ
  ラウト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=47

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• 048・前川正一

  ○前川委員　序ニ昭和十八年度ノ全體ノ漁
  獲高ハ前年ニ比シテドウナツテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=48

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• 049・井出正孝

  ○井出政府委員　昭和十八年度ノ總體、海
  及ビ淡水全體ヲ引ツ括メテノ生產數量ハ、
  是ハ介類ヲ大體寄セタモノデアリマスガ、
  只今ノ所約九億貫ニハ上ルモノト豫想シテ
  居リマス

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• 050・前川正一

  ○前川委員　生鮮魚介類ノ方面ハ政府ノ御
  苦心ニ依ツテ段々漸增シテ行キツヽアリマ
  シテ、其ノ點喜ブベキモノダト思フノデア
  リマス、特ニ內水面ノ利用ハ最モ確實性ヲ
  持ツテ居ルノデアリマシテ、特ニ是ハ前カ
  ラ政府ニ御盡力ヲ願ツテ居ツタノデアリマ
  スガ、ソレガ漸次效果ヲ奏シテ居ルト云フ
  コトハ非常ニ慶賀スベキコトダト存ジマス、
  尙ホ今後モ一層御努力ヲ願ヒマス、長野縣
  野澤町ノ如キハ非常ニ成功シテ居リマシテ、
  米ノ收穫高モ三四割ノ增收デアリ、反當二
  三十貫ノ鯉ヲ獲ツタ、斯ウ云フ例ハ他ニモ
  澤山ゴザイマス、特ニ濕田地帶ガ各方面ニ
  アルノデアリマスカラ、サウ云フ方面ニ今
  後積極的ニ御奬メヲ願ヒタイ、村ニ行ツテ
  其ノ話ヲ致シマスト皆ヤル氣ニナルノデア
  リマス、但シ鯉苗ガ何處ニアルノカ、ドウ
  云フ手續ヲスルノカト云フコトガ問題ニナ
  ツテ居ルノデアリマス、此ノ點ハ少シ親切
  ニ御指導御努力ヲ願ツタナラバ、今日ノ農
  民ハ進ンデソレニ應ズルト思ヒマス、ドウ
  カ一ツ痒イ所ニマデ手ガ屆クヤウナ御斡旋
  御盡力ヲ今後モ願ツテ參リマスト、此ノ內水
  面方面ノ漁獲高ハ日ヲ逐ツテ上ツテ來ルコ
  トハ間違ヒナイト思フノデアリマシテ、特ニ
  御盡力ガ願ヒタイト思フノデアリマス、尙ホ
  昨年ハマダ鯉苗ニ付テノ地方ノ割當ハ動〓ト
  モスルト時期ガ遲レテ不十分デアツタト云
  フコトハ間違ヒナイノデアリマス、ソレデ
  モ此ノ程度上ツテ來テ居ルノデアリマスカ
  ラ、前以テ十分ヤリマスト其ノ效果ハ大ナ
  ルモノガアルト思フノデアリマス、國民モ
  期待ガ持タレルノデアリマスカラ、今後ノ
  御努力ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
  尙ホソレニ付テ鮮魚ノ集荷ニ付テ御尋ネ
  シタイノデアリマス、今日出荷統制ガ確立
  サレテ居ルヤウニ見エマスガ、事實上サウ
  巧ク行ツテ居ナイヤウニ見エル節々ガ澤山
  ゴザイマス、瀨戶內海邊リニ於テモ沖買ト
  云フモノガ可ナリ行ハレテ居リマスガ、其
  ノ沖買サレタ魚ガ何處ニドウ流レテ行クカ
  ト云フコトハ分ラナイ、ソレカラ配給業者
  ガ直チニ產地ニ買付ケニ行ク場合ガアツテ、
  船デ消費地へ運ンデ來ルト、其處デハ米ノ
  二三斗、酒ノ四五升モヤラナケレバ持ツテ
  來ナイ、油ヲヤルト云フ無理ナコトヲヤル
  所ニハ魚ガ集ツテ來ル、斯ウ云フ殘念ナ事
  實ガ見受ケラレマス、是ハ出荷統制ヲ鞏固
  ニシテ戴キマシテ、サウ云フ歎カハシイ事
  實ヲナクシテ、魚ガ計畫通リ集ルヤウニ努
  力ヲ願ハナケレバナラナイヤウニ思フノデ
  ゴザイマスガ、是ガ爲ニ結局廻ラヌデ宜イ
  所ニ魚ガ〓ツテ、必要ナ所ニ〓ラヌト云フ
  ヤウナ傾向ガアル、今稍〓改善サレ掛ケテ居
  リマスガ、マダ多少殘ツテ居ル部分ガアル、
  今後此ノ出荷統制ノ方面ヲ强化サレルト云
  フ點ニ付テノ御方針ガアリマスレバ、其ノ
  方針ヲ伺ツテ置キタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=50

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• 051・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先般ノ豫算分科會ノ時ニ
  蔬菜ニ付テノ御質問ガアリマシテ、其ノ時
  蔬菜ニ付テハ申上ゲマシタガ、鮮魚、蔬菜
  等ノ出荷ニ付キマシテ、出荷者自體ハ或ハ
  水產關係ノ出荷團體デアリ、或ハ農業方面
  ノ農業會等デアリマシテ、是ガ出荷其ノモ
  ノノ責任ヲ負フノデスガ、其ノ督勵ノ責任
  ヲ從來地方廳ニ於キマシテ必ズシモ持ツテ
  居リマセヌデシタ、之ニ付キマシテ今後近
  ク地方廳ガ督勵ノ責任ヲ深ク體スルヤウナ
  コトニ改メテ參リタイト今考ヘテ居リマス、
  是ニ依ツテ出荷ニ付キマシテノ、謂ハバ統
  制强化ノ實質的ナ一ツノ相當ナ效果ヲ擧ゲ
  得ルノデハナカラウカト云フコトヲ期待シ
  テ居ル譯デアリマス
  ソレカラ今一ツハ、今御話ノ點ニ關聯シ
  テノコトデアリマスガ、蔬菜ニシテモ同樣
  デアリマスガ、殊ニ魚介藻類ナドニ付キマ
  シテハ地方ノ狀況ニ依ツテ非常ニ事情ガ違
  フノデアリマシテ、餘リ窮屈ナコトヲ致シ
  マシテモ徒ラニ窮屈ニナルバカリデアツテ、
  必ズシモソレガ他ノ大消費地等ニ出荷セ
  ラレル數量ノ上ニ好イ影響ヲ與ヘナイヤウ
  ナ所デ徒ラニヤカマシクシテ見テモ仕方ガア
  リマセヌ、ソコデ此ノ出荷配給ノ統制ノヤ
  リ方ニ付キマシテ餘程思切ツテ地方ノ狀況
  ニ應ジテサウ云フ統制ヲ强化スルナラ强化
  スル、或ル程度弛メルナラ弛メルト云フコ
  トガ出來ルヤウニ地方長官ニ其ノ處置ヲ任
  セルヤウナ規則ノ改正ト云フコトヲ今實ハ
  考慮致シテ居リマス、現在ノ實情ヲ言ヒマ
  スト、現行法ノ上デモ例外ト言ヒマスカ、
  地方長官ガ特ニ必要ト認メレバ、ドウ云フヤ
  ウニデモ出來ルヤウニナツテ居ルノデアリ
  マスケレドモ、一應原則的ニハ全國一樣ニ
  十貫目ハドウダトカ、八貫目ハドウダトカ
  ト云フヤウナコトヲ決メテ居ルモノデアリ
  マスカラ、大體ヤハリ右ヘ準ヘデ、ソレガ
  何處デモ實行サレテ居ルト云フヤウナコト
  ニナツテ居ルノデアリマス、法制的ニ言フ
  ト、何モ强ヒテ改メル必要ハナイノデスケ
  レドモ、併シソレハヤハリ行政ノ指導ノ一
  ツノ方式ノ問題ニナリマスカラ、ソコラ邊
  ノ事情モ考慮致シマシテ、規則ノ改正ヲヤ
  リ、嚴重ニ統制ヲスルコトノ必要ナ地方ニ
  於テハ何處マデモ嚴重ニ統制ガ出來ル、サ
  ウ云フ必要ノナイ所デハ緩メルコトモ出來
  ルト云フ風ニ、地方長官トシテハ當然ソレヲ
  考慮シテヤルベキモノデアルト云フヤウナ
  趣旨ニ於テ、規則ノ適當ナル改正ヲ致シタ
  イト云フコトデ、今折角準備ヲ進メテ居ル
  譯デアリマス

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• 052・前川正一

  ○前川委員　是ハ食料品ノ中デ最モ複雜ナ
  方面デゴザイマシテ、其ノ地方ノ實情ニ合
  ウタ統制ヲ執ラスコトハ結構ト思ヒマスガ、
  ソコデ一ツ考ヘラレルコトハ、動モスルト、
  曾テ一時ゴザイマシタ「ブロック」的ナ傾向
  ガ又出テ來ハシナイカト云フコトヲ考ヘテ
  置カナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  生產地ハ惠マレルガ、消費地ハ惠マレナイ
  ト云ツタヤウナコトニナリマスト、サウ云
  フ場合ニ中央ノ壓力ガ相當加ハラナケレバ
  ナラナイト思ヒマスノデ、十分其ノ點ヲ御
  考慮願ヒタイ
  尙ホ靑果物ノ御話モゴザイマシタガ、靑
  果物ノ實情ヲ見マスルト、地方ヘ參リマス
  下、自家消費ノ目當デ作ツタモノガソレ以
  上出來テ來ル、大抵ハ餘裕ガアルノデアリ
  マスガ、ソレヲ態〓村ノ出荷組合マデ持ツ
  テ行ク勞力ガナイノデアリマス、拔イテ、
  洗ツテ、束ニシテ、サウシテ出荷組合マデ
  持ツテ行クト云フコトハ出來ナイ、自分ノ
  家ニハ柿ガ四五貫アルケレドモ、是ハ〓ツ
  テシマハズニ、半分位ハ賣ツテモ宜イガ、
  出サウト思ツテモ、誰カ取リニ來レバ出ス
  ケレドモ、取リニ來ナケレバ、過剩ニナツ
  テモ食ツテシマフ、蔬菜ニシテモ其ノ通リ
  デアリマス、斯樣ナ量ハ全國的ニハ相當ア
  ルノデアリマス、各農家ニ至ルマデ集荷ノ手
  ガ伸ビルヤウナ方法ヲ、特ニ靑果ノ場合ニ
  ハ考ヘナケレバナラヌノデハナイカ、魚ノ
  場合ハ大體ニ於テ一定ノ場所ニ集中シテ參
  リマスルカラ、是ハ方法ガアルト思ヒマス
  ケレドモ、靑果ノ場合ハ農家各戶ニ集荷ノ
  手ガ伸ビルヤウナ方法ヲ考ヘルコトガ、最
  モ量ヲ殖ヤスコトニナルノデハナイカ、サ
  ウ云フ手ヲ打テバ、量ガ案外纏マルノデハ
  ナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘマス、村ノ出荷
  組合等モ段々强化サレテ居リマスケレドモ、
  ソコマデ人手ガアリマセヌ、結局、其處ニ
  集ツテ來タモノダケヲ集メテ、何處カノ市
  場ヘ持ツテ行クト云フ形ニナツテ居ルノガ
  現狀ナノデゴザイマス、此ノ點ニ付キマシ
  テハ魚ト靑果トヲ同ジヤウニ御考ヘニナラ
  ヌヤウニ、地方ノ情勢ニ合セテオヤリニナ
  ルナラバ、サウ云フコトモ考慮シテ戴キタ
  イ、斯ウ思フノデアリマス
  尙ホ私ハ食糧營團ノ問題ハ、此ノ前ノ委
  員會ノアリマシタ時ニモ御尋ネシタノデゴ
  ザイマスルガ、主要食糧ハ旣ニ營團組織ニ
  ナリマシテ、國民ハ其ノ配給ニ對シテハ殆
  ド不安ヲ持ツテ居リマセヌ、所ガ生鮮〓料
  品ニナリマストドウモ巧ク行カナイト云フ
  コトガ言ハレルノデアリマシテ、先日來色々
  新聞デ見マスルト、公共性ヲ持タストカ、
  法的性格ヲ持タスト云フ御話ガアツタノデ
  ゴザイマスガ、是ハ思ヒ切ツテ營團的ナ所
  マデオヤリニナル積リデスカ、ソレトモソ
  コマデハ行カナイガ、何カ他ノ手ヲ打ツノ
  デゴザイマスカ、ドウ云フヤウニ御考ヘニ
  ナツテ居リマスカ、此ノ點ヲ御伺ヒ致シタ
  イ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=52

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• 053・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先程魚類ノ出荷統制ノコ
  トニ付テ私ガ申シマシタコトニ關聯シテ「ブ
  ロック」ノ御話ガアリマシタノデ、一應ソレ
  ヲ申上ゲマスガ、出荷督勵ノ責任ヲ地方長
  官ニ持タセルト云フコトハ、詰リ生產地方
  カラ主要ナル消費地ヘノ出荷數量ヲ大體豫
  定サセル譯デアリマスガ、是ハ是非トモヤ
  レ、アト管內ニ於ケル配給ニ付テノヤリ方
  ハ是ハ任セル、斯ウ云フヤウナヤリ方ニス
  ル譯デアリマシテ、ソレニ依ツテ今ノ大消
  費地へノ入荷ハ寧ロ確實ニシ得ル積リデ居
  リマス、ソレカラ蔬菜ノ集荷ノコトニ付
  テ、今ノ御話ノヤウナ極ク小量ノ餘リ荷ヲ
  成ベク方々ニ有效ニ使フヤウニスルト云フ
  コトハ、是ハ至極御尤モナ御話デアリマス
  ガ、之ニ付テハ其ノ村ノ出荷團體デアル農
  業會サヘモ纏メラレナイモノヲ、今度ハ又
  ヨソカラ極ク零細ナモノヲ搔キ集メルベク
  人ガ出テ行ク、農家ニハサウ云フ僅カナモノ
  ヲ農業會ナラ農業會ノ所マデ持ツテ出ルコ
  トモ出來ナイ-ヤラナイカラ出來ナイノ
  デ、ヤレバ出來ルノデハナイダラウカト云
  フコトモ一面私ハ感ズルノデアリマスガ、
  寧ロヨソカラ僅カバカリノモノヲ集メル人
  ヲ廻ハシテ來ルヨリモ、農家ノ序デノ時
  ニ持ツテ行ツテ貰ツタラドウカト云フ風ニ
  感ジマス、併シソレハ兎モ角ト致シマシ
  テ、極ク地方ノ、大消費地ト違ツタ需給關
  係ニアル所ニ於テハ、ヤハリ狀況ニ應ジテ
  蔬菜ナドニ付テモ餘リ統制ヲヤカマシク言
  ハナイデ、何カソコニサウ云フ零細ナ生產
  物ノ利用ノ利クヤウナ風ニヤツタ方ガ宜
  イノデハナイダラウカ、是モヤハリ魚ト其
  ノ趣旨ニ於テハ同ジコトデアリマシテ、
  大消費地向ケノ集荷配給ニ付テノ統制ト、
  ソレカラ極ク地方ニ散在シテ居ル中小都市
  向ノ集荷配給ノコトト、ヨク兩面カラ混同
  シテ論ゼラレルノデアリマシテ、大消費地
  デヤツテ居ルコトヲ見テ、中小都市デー
  色々事情モアルデセウガ、ツイ眞似ヲシテ
  ヤリ損ツテ見タリ、ソレカラ中小都市デ斯
  ウ云フヤウニヤツテ非常ニ工合ガ宜イカ
  ラ、東京デモヤツテ見タラト言ハレテモ、
  地面ノ廣サカラ、人口ノ違ヒト云ヒ、マル
  デ違ツテ居ツテ凡ソ當嵌ラヌヤウナコトニ
  付テモ、熱心ニ論ゼラレルト云フヤウナコ
  トガ往々ニシテアルノデアリマス、私共ハ
  ソレ〓〓ノ狀況ニ應ジテ是ハ變ヘテ行カナ
  ケレバナラヌデハナイカ、又或ル方法ヲ執
  ツテヤツタ段階ニ於テ生ズル弊害ト云フヤ
  ウナモノニ關聯シテモ亦、ソレ〓〓ノ手
  ヲ打ツテ行カナケレバナラヌデハナイカト
  云フヤウニ考ヘテ居ル譯デアリマス、尙ホ
  生鮮〓料品ノ末端配給ニ付テノ公共性ヲ與
  ヘル云々ノコトニ付キマシテハ、今ハマダ
  內輪ノ吾々ノ考ヘデアリマスガ、差當リ考
  ヘテ居ルコトハ、全面的ニ機構ヲ變ヘテシ
  マフト云フヤウナコトデハナク、現在機構
  ノ中ニ左樣ナ性格ノ配給方法ト云フモノヲ
  組入レテ行ツタラドウダラウカ、是ガ先ヅ
  差當ツテノヤリ方デハナイダラウカト云フ
  風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレニ依ツ
  テ一面ニ於テハ現在ノ機構ニ一ツノ刺戟ヲ
  與ヘ、今日ノ場合ニ於ケルソレ〓〓ノ職域
  ニ働ク者ノ國家公共ニ對スル責仕ト云フモ
  ノヲ自覺シテ貰フ、サウ云フ趣旨ニ於ケル
  刺戟ヲ與ヘル意味ニ於キマシテモ、何カサ
  ウ云フヤウナ方法ヲ執ツタラドウダラウ
  カ、ヤツテ見テ其ノ狀況ニ於テ更ニ如何ナ
  ル政策ニ發展シテ行クカト云フコトハ、次
  ノ段階ニ於テ考ヘルベキコトデハナカラウ
  カト云フ風ニ考ヘテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=53

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• 054・前川正一

  ○前川委員　大都市近クノ靑果ヲ主ニヤツ
  テ居ル農村ニ於テモ、ヤハリ主要食糧ニ重
  點ヲ置イテ居ル農家ハアル筈デス、全部ガ
  蔬菜ヲ作ツテ居ルト云フ譯デハナイ、是人
  地方ニ於テモ各農家一戶々々デ皆性格ヲ異
  ニシテ居ル、反別モ違フノデアリマシテ、
  サウ云フ小サナモノノ餘リ荷ト云フノヲ
  考ヘテ見マス時ニ、是ハ相當ノ量ニナルノ
  デハナカラウカ、農業會ノ手ガ十分アツテ
  ヤツテ戴ケルナラ結構デアリマスガ、若シ
  イカナケレバ、ソレニ對シテ卸賣ノ一ツノ
  組織ト云ツタヤウナモノガ、援護者ト云フ
  ヤウナ意味カ、若シクハ使用人ト云フヤウ
  ナ形デモ宜イ、是ガ仕事ヲシテ行ク、色々
  ナ方法ハ地方デ違ツテ來ルカモ知レヌト思
  フノデスガ、サウ云フヤウナ各農家ノ一戶
  一戶ニマデ手ガ屆クヤウナコトヲヤルコト
  ニ依ツテ、大消費地近クニアツテモ私ハ相
  當荷ガ集マルノデハナイカト考ヘテ申上ゲ
  タ譯デアリマス
  ソレハソレト致シマシテ、尙ホモウ一ツ
  御尋ネシテ置キタイ點ガアリマス、今
  ノ食糧品ノ中デモ通帳制ニ依ルモノト登
  錄制ニ依ルモノ、若シクハソレ〓〓ノ系
  統ニ依リマス組合カラ切符ニ依ツテ配給
  シテ來ル場合色々アルト思ヒマス、中ニハ
  自由販賣モアリマス、其ノ中デ通帳制ニ依
  ルモノハ大體主要食糧ダト思フ、主要食糧
  以外ノ生鮮〓料品等ハ登錄制ニ依ツテヤツ
  テ居リマスガ、是ハ別ニ地域的デモナイ、
  玆ニヤハリ行列ト云フモノガ解消サレテ居
  リマセヌ、今日婦人ノ勞力ヲ必要トサレテ
  居リマス時、是ダケハ生活ニ必要ナモノダ
  ト云フ物ダケハモツト綜合的ニ配給ノ方
  法ヲ付ケルコトガ、此ノ際一般家庭ノ主婦
  ノ時間ヲ救フ意味ニ於テ、色々ナ點カラ申
  シテ必要ナコトデハナイカト思ヒマス、福
  島縣下ニ於テハ海苔ヲ配給スルト、ドウシ
  テ此ノ頃ノチリ紙ハコンナニ惡クナツタノダ
  ラウト云ツタト云フ話モアリ、山村ニ牛肉
  ノ切符ガ行クト、村長サンニ是ハドウシテ
  モ買ハナケレバナラヌノカト尋ネナケレバ
  ナラヌヤウナ機械的ナ配給ハ大イニ考ヘナ
  ケレバナラヌト思フ、何カ綜合配給ニ付テ
  ノ政府ノ御意見ガアリマシタラ伺ヒタイト
  思ヒマス

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• 055・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハ通帳制トカ、登錄制
  トカノ區別ニ依ル譯デモ必ズシモナイヤ
  ウニ思ヒマスガ、例ヘバ登錄制ニ依リマシ
  テ隣組ガ輪番デ或ル時間ヲ決メテ買ヒニ行
  ク、其ノ時間ニ隣組ノ中デ手ノアル者ガ他
  ノ人ノ爲ニ買ヒニ行クト云フヤウナ風ニ今
  現ニヤツテ居リマスガ、サウ致シマスト餘
  リ行列モ長クナラナイ、登錄ニシマシテモ、
  時間モ決メナイデ、サアト云フコトデ客ヲ
  迎ヘルヤウデアリマスト、是ハ行列ニナル
  譯デアリマス、此ノ邊ニ付キマシテハ末端
  配給ノコトハ段々經驗モ積ミマシタシ、業
  者モ亦監督官廳ノ方モ色々處置ヲ講ジテ、
  最近計畫的ニ配給シマスモノニ付キマシテ
  ハ殆ド長イ行列ハ見ラレナイヤウニチツテ
  居ル譯デアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ
  尙ホ我々今後共努力致シタイト考ヘマス
  ソレカラ地方ノ事例ヲ御擧ゲニナリマシ
  テ非常ニ事情ニ副ハナイ供給ガ行ハレタコ
  トノ御話ガゴザイマシタガ、ドウモ最近地方
  廳ノ下級ノ係官等ガ應召其ノ他デ不慣ナ人
  ガ多イ爲ニ、往々ニシテ極メテ機械的ナ取扱
  ヒヲスルコトガ間々アルヤウニ聞クノデア
  リマス、是ハ勿論中央ノ方針デモナケレバ地
  方廳ノ方針デモナイノデアリマシテ、此ノ點
  ニ付キマシテハ十分氣ヲ付ケナケレバナラ
  ナイト思ヒマス、最近部內デモ申シテ居ル
  コトデアリマスガ、何カト地方ニ對スル指
  令ヲヤル場合ニ、以前ハ大體能ク事情ニ通
  ジタ主任官ガ、ソレヲ見タノデアルガ、此
  ノ頃ハドンナ譯ノ分ラヌ者ガ見ルカモ知レ
  ヌノダカラ、嚙ンデ含メルヤウニ詳細ナ指
  示ヲシナケレバナラナイト言ツテ居リマ
  ス、今後トモ相成ルベクハサウ云フ風ニ致
  シマシテ、地方ニ於ケル末端配給ニトン
  デモナイヤウナ事ノ行ハレナイヤウニ、
  一ツ督勵シテ參リタイト思ツテ居リマ
  ス

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• 056・前川正一

  ○前川委員　今末端ノ組織ニ付テノ御話ガ
  ゴザイマシタガ、私ハ違ツタ方面カラ末端
  ノ見方ガアルト思フ、例ヘバ政府デ色々ナ
  施策ニ付キ具體的ナ案ヲ御立テニナル、ソ
  レヲ地方廳ハ村へ持込ム、結局農事實行組
  合ノ人達、若シクハ農會技術員ガ具體的ニ
  ハ村內ヲ走リ〓ツテ指導スルノデアリマス
  ガ、今日ノ農會技術員ト云フモノハ大分良
  クナツタトハ申シマスケレドモ、實情ヲ見
  マスト若イ人、學校ヲ出タテノ能ク物ノ分
  ツテ居ナイ人ガ多イ、待遇モ非常ニ惡イカ
  ラ無理モナイト思ヒマスガ、農事實行組合
  長ノ如キハ非常ニ多忙デゴザイマシテ、自
  分ガヤラウト思ヒマシテモ中々身體ガ蹤イ
  テ參ラナイト云フヤウナ實情ニゴザイマス、
  政府ガ色々ナ案ヲ御立テニナツテ農村ヲ督
  勵シマシテモ、最後ノ農民ニ直接接スル最
  前線部隊ノ人達ガ困憊シテ居ルヤウナ狀態
  デハ仕方ガナイ、出來マスルナラバ是等最
  前線ニ居リマスル實行組合長デアルトカ、
  農會ノ技術員デアルトカ、斯ウ云フ人達ガ
  モツト積極的ニ活動ガ出來ルヤウニ、又政
  府ノ方針ヲ間違ヒナク一人々々ノ農民ニ持
  込ムコトガ出來ルヤウニ、十分ナ鍊成ト待遇
  其ノ他色々ナ方面ニ付テ御考へ願ヒタイ、
  農業ハ工業生產ト違ヒマシテ、資材ト勞力
  ガアレバ出來ルト云フモノデハナイ、人
  一人ノ農民ノ生產意欲ガ燃エ上ツテ來ナケ
  レバ增產ニナラナイ、一人々々ノ農民ヲ起
  チ上ラシメル一番ノ最前線ニ立ツテ居ル是等
  ノ人達ノ活動力ニ俟ツ所極メテ大ナルモノガア
  ルト思ヒマスノデ、是等ノ人達ガ活動出來ルヤ
  ウニ是非御配慮ヲ御願ヒシタイト思ヒマス
  尙ホ續ケテ次ノ質問ヲ申述ベタイト思ヒ
  NY,今日ノ勞力不足ノ農村ニ於キ
  マシテ、農村勞力ノ半分以上ハ婦人ノ力
  ニ依ツテ居ルト思フ、所ガ最近農村婦人ノ
  色々ノ聲ノ中デ、特ニ大キイノハ斯ウ云フ
  コトデアル、男ニハ酒ノ特配ガアル、煙草ノ
  特配ガアル、作業衣ハ衣料切符ナシデ渡ツテ
  來ルケレドモ、女ノ方ニハ何モナイ、是ハ
  私共聞イテ見テ本當ノ聲ヂヤナイカト思
  フ、笑ヒ事デハアリマセヌ、モンペイニシ
  タツテモウ殆ド古イモノハ潰シテシマツテ
  ナイ、綿ネルノヤウナモノダツテ實際必要
  デアルガ餘リナイ、特ニ婦人カラ斯ウ云フ
  聲ヲ聞ク度ニ尤モト思フノデアリマスガ、
  最近特ニ大キナ役割ヲ持ツテ居リマス農村
  勞力ノ重要ナル面ヲ占メテ居リマス婦人ニ
  對シマシテ、一ツ政府ノ溫カイ親心ヲ御示
  シニナルコトハ是ハ農民ヲシテ下カラ盛
  リ上ラセ、奮起セシムル大キナ力ニナルノ
  デハナイカト思ヒマス、何カ案ガゴザイマ
  シタラ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=56

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• 057・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御說ノヤウニ現在ノ農村
  ニ於ケル勤勞ノ恐ラク半バ以上ハ婦人デハ
  ナイカト云フコトハ、正ニ左樣デハナイカ
  ト思ヒマス、隨ヒマシテ今日ノ農民ノ增產
  ニ對スル努力ヲ感謝スルトカ、其ノ他色々
  ナコトヲ我々言フ場合ニ於テ、常ニ農村婦
  人ノ勤勞ト云フモノニ付テ看過スルコトハ
  出來マセヌ、我々ト致シマシテハ、近來農
  村ニ於ケル婦人ノ鍊成トカ云フヤウチ面カ
  ラ、農村婦人ニ對スル期待ヲ大キク持チマ
  シテ色々ト施設ヲ致シテ居リマス、或ハ馬
  耕ノ技術ニ對スル婦人ノ訓練デアルトカ、
  色々ナコトヲ致シテ居ルノデアリマスガ、
  尙ホ御說ノヤウナ點ニ付キマシテモ洵ニ考
  ヘナケレバナラヌノデアリマス、從來カラ
  例ヘバ作業衣ノ配給ト云フヤウナ場合ニ
  於テモ、婦人用ノモノト云フヤウナ觀點カ
  ラノ考慮ハ勿論拂ツテ居リマスケレドモ、
  尙ホ今後物資ノ特配等ノコトニ付キマシテ
  モ、是ハ中々難カシイノデハアリマスケレ
  ドモ、十分一ツ考慮シテ參リタイト思ヒマ
  ス御注意ノ點ハ深ク感謝致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=57

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• 058・前川正一

  ○前川委員　マダ二、三點アリマスガ、關聯
  シタ場合ニ御許シヲ願フコトニ致シマシ
  テ、大臣ニ對スル二、三ノ質問ヲ保留シテ、
  是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=58

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• 059・深澤吉平

  ○深澤委員長　森川委員

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=59

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• 060・森川仙太

  ○森川委員　私ハ先ヅ第一ニ軍御當局ニ對
  シテ御伺ヒ致シタイト思ヒマス、ソレハ第
  一線ニ於ケル衞生狀態、特ニ南方ノ風土病
  ニ關シテデアリマス、現下ノ悽愴苛烈ヲ極
  メテ居リマスル戰局ニ於テ、南方ニ於テ一
  機デモ多クノ飛行機ヲトノ要求ニ依リマシ
  テ、航空機ノ飛躍的大增產ガ計畫セラレマ
  シテ、全國民擧ゲテ之ニ協力致シテ居ルノ
  デアリマス、而モ幸ヒニシテ其ノ成果ガ大
  イニ擧リツヽアリトノ聲明ヲ聽キマシテ、
  國民ト共ニ非常ナル喜ビヲ感ジテ居ルモノ
  デアリマス、然ルニ此ノ焦眉ノ要求ト相俟
  ツテ、一人デモ多クノ戰鬪力ヲ保持スルコ
  ト、第一線ニ於ケル兵士ノ健康ヲ守リ拔ク
  コトモ亦極メテ緊切デアリ、且ツ嚴肅ナ問
  題デアラウト存ジマス、陛下ノ股肱トシテ
  勇躍戰線ニ就イテ奮戰スル勇士ガ、アノ强
  烈ナ精神力ヲ以テ致シマシテモ、又如何ニ
  留意シマシテモ尙且ツ完全ニ避ケルコトノ
  出來ナイ戰地ノ風土病ニ罹ツテ、鬼畜米英
  軍ヲ眼前ニシナガラ思フ通リニ活動スルコ
  トガ出來ズ、或ハ戰線ヨリ後退ヲ餘儀ナク
  セラレ、又彈丸ナラヌ病菌ノ爲ニアタラ尊
  キ一命ヲバ落スト云フヤウナ悲痛極マリナ
  イ心事ヲ思ヒマスル時ニ、洵ニ斷膓ノ感ナ
  キヲ得ナイノデアリマス、南方戰線ニ於テ、
  特ニ「ニューギニア」、「ソロモン」ニ於テ猖
  獗ヲ極メテ皇軍ノ將士ヲ惱マシテ居リマス
  ノハ、何ト云ツテモ風土病ノ「マラリア」ト
  「デング」熱デハナイカト思フノデアリマス、
  現ニ米國ノ雜誌ノ報ズル所ニ依リマシテモ、
  敵米軍モ非常ニ深刻ニ惱ンデ居ルヤウデア
  リマス、米軍ノ「マラリア」罹病患者ガ會テ
  ノ「バタアン」半島ニ於テハ八五%現在ノ西
  南太平洋戰線ニ於テハ五〇%デアツテ、是ガ
  豫防、治療ニ對シテハ朝野ヲ擧ゲテ大童ノ〓
  究ヲ續ケツヽアルトノコトデアリマス、是
  等ニ關シテハ我ガ軍衞生當局ガ深甚ナル〓
  究ト、挺身的ナ御努力ヲ拂ハレツヽアルコ
  トニ對シテハ、常ニ滿腔ノ敬意ト感謝ヲ表
  シテ居ルモノデアリマスガ、現在軍當局ガ
  「マラリア」及ビ「デング」熱其ノ他ノ風土病
  ニ對シテ執ラレツヽアル對策ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス

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• 061・二宮義清

  ○二宮政府委員　御說ノ通リニ病氣ニ依ツ
  テ働ケナクナルト云フコトハ軍トシテ非常
  ニ痛イ所デアリマシテ、大東亞戰前カラ此
  ノ點ニ付テハ十分準備ヲシテ參リマシタ、
  唯何トシテモ作戰地域ガ段々擴ガツテ參リ
  マシテ、殊ニ今言ハレマシタ「ソロモン」
  「ニューギニア」ト云フヤウナ地域ハ非常ニ瘴癘
  未開ノ地デアリマシテ、段々斯ウ云フ風ニ
  地域ガ擴大シテ、今仰シヤツタヤウナ
  ラリヤ」「デング」熱ト云フヤウナモノガ凡
  ユル準備對策ニ拘ラズ相當發生シテ居リマ
  ス、之ニ對シマシテバ勿論衞生機關ヲ充實
  致シマスシ、ソレカラ各種ノ方法、例ヘバ
  一般衞生ト云フヤウナモノニ關スル命令ハ
  元來作戰命令ニハ謳ツテ居ラナイモノデア
  リマスガ、作戰命令ニ於テ「マラリヤ」ノ豫
  防ト云フヤウナコトニ付テ重要ナ命令ヲス
  ル、今ノ御說ノヤウニ、「アメリカ」兵アタ
  リデモ土ノ上ニ寢テハイカヌ、必ズ樹ノ上
  ニ寢ロト云フヤウナコトヲ具體的ニ指示シ
  テ居リマスガ、我ガ國ニ於テモ「マラリヤ」
  ナリ「デング」熱ニ對スル一般兵ノ心得其ノ
  他ニ於テハ御話ノヤウナ特殊ノ方法マデ講
  ジテヤカマシク注意ヲシテ居リマス、尙ホ
  衞生工作トシテ、現地住民ニ對シテモ或ハ
  衞生思想ヲ普及サセルトカ、サウ云フヤウ
  ナ衞生工作ヲ十分ニ强化シテ居リマス、尙
  ホ現地ニ卽應スル所ノ健兵對策ト云フヤウ
  ナコトモ十分ニヤリマシテ、人的戰力ノ維
  持增進ニ努メテ居リマスノデ、今ノ所〓シ
  テ申セバ憂慮スベキ狀態デゴザイマセヌ、
  疾病豫防ノ對策トシテハ風土病デアル「マ
  ラリヤ」、急性傳染病等ノ豫防ニ重點ヲ置イ
  テヤツテ居リマス

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• 062・森川仙太

  ○森川委員　此ノ風土病ニ對スル工作トシ
  テハ豫防ト治療ノ二面ガアリマスガ、治療
  ニハ「キニーネ」、豫防トシテハ除蟲菊ノ製
  劑ガ近代科學ニ於テハ最モ有效トサレテ居
  リ、而モ其ノ「キニーネ」、除蟲菊ノ二藥劑
  ノ我ガ勢力圏內ニ於テ確保サレテ居ルコト
  ハ喜ブベキコトデアルト思フノデアリマス、
  併シ此ノ除蟲菊製劑ノ需要ガ非常ニ增大シ
  テ居ルノニ反比例シテ生產ハ非常ニ激減致
  シテ居ルノデアリマシテ、戰地ニ於テモ相
  當ノ不足ヲバ來シテ居ルヤウニ聞イテ居リ
  マス、私共當業者カラ見マスレバ、本年ハ
  何ト申シテモ原料ト製品其ノ他ハ相當昨年
  ヨリノ繰越品ガアリ、「ストック」ガアリマ
  シタガ、旣ニ其ノ繰越品ハ皆無トナリ、又
  生產モ一層減少ヲ豫想サレテ居ル今日、明
  年度以降ドウシテ對處サレルカ、洵ニ憂慮
  ニ堪ヘナイモノガアリマス、軍ニ於テハ除
  蟲菊製品ノ必要性竝ニ現在ノ供給狀態ニ滿
  足シテ居ラレルカドウカ、將來ニ對シテド
  ウ云フヤウナ考ヘヲ持ツテ居ラレルカ、御
  所見ヲ伺ヒタイ

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• 063・二宮義清

  ○二宮政府委員　陸軍ニ於キマシテハ除蟲
  菊ノ製品デアル蚊取線香、除蟲劑原料、農
  藥原料、斯フ云フモノハ特ニ南方アタリニ
  於テハ非常ニ切實ニ必要ヲ感ジテ居リマス、
  其ノ需要額モ段々ト相等厖大ナ數字ニ上
  ツテ居リマス、是ガ取得ト云フコトハ逐次
  困難ヲ加ヘテ參ツテ居ルノガ實情デアリマ
  シテ、是等ニ關シマシテハ國民ノ除蟲菊ト
  云フモノニ對スル關心モ薄イヤウデアリマ
  スカラ、サウ云フ方モシツカリヤツテ貰フ
  ヤウニ又サウ云フ點ニ付テ心配ヲシテ戴
  クヤウニ、農商省トモ十分協議ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、尙ホ一部ハ南方ノ現地デモ何
  トカシテヤルト云フコトモ考ヘテ居リマス
  ガ、マダ是ガドレダケ穫レルカト云フコト
  ニ付テハ十分南方ニ付テハ見込ガ立ツテ居
  リマセヌ

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• 064・森川仙太

  ○森川委員　次ニ農商御當局ニ對シテ御伺
  致シタイノデアリマス、私ハ特殊農產物デア
  ル除蟲菊ノ增產對策ニ付テ伺ヒタイノデア
  リマス、主要食糧ノ確保ガ戰爭遂行上重大
  ナル要件デアルコトハ今更申上ゲルマデモ
  アリマセヌ、政府モ是ガ增產ニ全力ヲ傾到
  シテ居ラレル結果、過日來〓糧ニハ絕對
  不安ナシトノ聲明ヲ總理大臣竝ニ農商大臣
  ヨリ數次ニ亙ツテ承リ、全國民ハ非常ニ安
  堵ヲ致シタノデアリマス、此ノ點ニ付テハ
  特ニ農商當局ノ御苦心ニ對シテ衷心ヨリ感
  謝ノ意ヲ表スル者デアリマス、戰時下各種
  農作物ノ計畫的ニ栽培セラレルニ際シマシ
  テ、食糧ノ生產ヲ超重點的ニスルコトハ當
  然デモアリ、勿論爾カシナケレバナラナイ
  ノデアリマスルガ、併シ私ハ特ニ小ナル犠
  牲ニ於テ最モ大ナル效果ヲ擧ゲ得ル緊急不
  可決ナル重要特殊農作物ニ付テハ、ソコニ
  特段ノ御考慮ヲ煩ハス必要ガアルコトヲ
  痛感シテ居ル者デアリマス、私ハ其ノ代
  表的ナモノノ一ツトシテ除蟲菊ヲ擧ゲ
  タイノデアリマス、聊カ私ノ卑見ヲ申
  述ベナガラ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
  先ヅ除蟲菊ノ害蟲驅除ノ藥劑トシテノ問
  題デアリマス、抑、〓主要食糧增產確保ノ爲ノ
  最大條件タル肥料其ノ他資材竝ニ勞力關係
  等ニ於テモ甚ダ十全ヲ期シ得ナイ狀態ニア
  ル今日、是ガ所期ノ目的ヲ達スルニハ幾多
  ノ困難ヲ克服シナケレバナラナイノデアリマ
  ス、土地ノ改良、耕地ノ擴張、技術ノ進步
  等、積極的ナ增產對策ハ申スマデモアリマ
  セヌガ、更ニ病害蟲ノ驅除撲滅ノ如キ消極
  的增產對策ニ至ルマデ、凡ユル方策ヲ立テ
  テ是ガ實現ニ邁進シナケレバナラヌト思フ
  ノデアリマス、而シテ此ノ主要食糧ノ中核
  ヲ成ス米穀ノ害蟲トシテ最モ恐ルベキモノ
  ハ何ト言ツテモ浮塵子デアリマス、餓死巷
  ニ充ツト言ハレタ享保年間ノ大兇作等ノ歷
  史ニ見マシテモ、是ハ天候ノ不良等ニ因ツ
  タコトハ勿論デアリマスガ、其ノ最大ノ原
  因ハ殊ニ害蟲ノ被害デアリ、特ニ浮塵子ノ
  災害デアツタノデアリマス、而モ此ノ浮塵
  子ニ對シテハ除蟲菊加用石油劑ガ殆ド唯一
  無二ノ藥劑トナツテ居ルノデアリマス、專
  門家ノ調査スル所ニ依リマスト、我ガ國ニ
  於テ普通一箇年間ニ於テ除蟲菊ノ使用ノ爲
  ニ被害ヲ免レツヽアル、卽チ增收ヲ得ツヽ
  アル數量ハ米八十三萬七千石ノ增收ヲ得テ
  居ルト推定シテ居リマス、我々ノマダ記憶
  ニ新シイ昭和十六年ノ實收ノ五千五百萬石
  シカナカツタアノ大不作ノ年ニ於ケル浮塵
  子ノ被害ハ、百七十萬石ト推定サレテ居ル
  ノデアリマス、當時幸ヒニ除蟲菊ノ原料ハ
  非常ニ豐富デアツタノデアリマスガ、唯製
  造ガ間ニ合ハナカツタ爲ニ十分防除ノ目的
  ヲ達スルコトガ出來ナカツタノデアリマス
  ガ、併シ此ノ程度デ其ノ被害ヲ喰止メ得タ
  ノハ私ハ除蟲菊ノ力デアラウト思ヒマス、
  私ハ思ウテ玆ニ至リマスル時ニ斯ウシタ
  危局ニ際シテ若シ萬一浮塵子ノ大發生デモ
  見ルコトガアツタナラバ、洵ニ由々シイ〓
  糧上ノ大問題ヲ起スノデハナイカト私ハ憂
  慮ヲ致シテ居ル者デアリマス、併シ主要副
  食物ノ野菜ノ害蟲驅除、ソレカラ「ビタミ
  ン」ノ供給源デアル果實ノ害蟲驅除ト云フ
  コトニ除蟲菊ガ如何ニ必要デアルカト云フ
  コトハ、連年ノ莫大ナル需要統計ガ之ヲ明
  カニ示シテ居ルノデアリマス
  ソレカラ第二ハ軍需用除蟲菊ノ問題デア
  リマスガ、軍當局ガ只今本席デ御述ベニナ
  リマシタ通リ、南方戰線ニ於テ「マラリヤ」或
  ハ「デング」熱等ノ風土病ノ豫防ニ對シテ如
  何ニ除蟲菊ガ必要デアルカト云フコトハ、
  ハツキリト致シタノデアリマス、最近一部
  ノ人々ノ間ニ於テハ除蟲菊ハ兵士ヲ造ルト
  云フ聲サヘアルノデアリマス、卽チ若シ除
  蟲菊ガ十分ニ補給サレテ、罹病患者ヲ五割
  ニ減少セシメル、更ニ進ンデ若シ三割ニ之
  ヲ喰止メルコトガ出來ルト考ヘタナラバ
  洵ニ莫大ナル戰鬪力ガ得ラレル譯デアリマ
  シテ、其ノ結果ニ於テハ兵士ヲ造ルト云フ
  言葉モ決シテ奇矯ナ言デハナイト思フノデ
  アリマス
  ソレカラ第三ニハ此ノ除蟲菊ノ國民保健
  ニ關スル問題デアリマスガ、特ニ私ノ心配
  シテ居リマスノハ、一般國民ノ蚊帳ガ不足
  デアリ、或ハ除蟲菊ノ蚊取線香ガナクトモ、
  或ル程度辛抱ガ出來ルト致シマシテモ、私
  ガ一番困ルト思ヒマスノハ軍需重點工場、
  或ハ航空機製造工場デアルトカ、兵器製造
  工場デアルト云フヤウナ工場デ夜業スル場
  合ニ、蚊ノ襲擊ヲ受ケタナラバ非常ナ能率
  ノ低下ヲ免レナイ、ソレバカリデナク、最
  近ドン〓〓徵用ヲ取ツテ居ラレルヤウデア
  リマスガ、徵用シタ人數ニ應ジテ蚊帳ノ準
  備ガアルカナイカト云フコトヲ憂フルノデ
  アリマス、私ハ恐ラク蚊帳ノ準備ハ難カシ
  イト思フ、此ノ蚊帳ノ準備ガナイ場合ニ一
  晩中安眠出來ナカツタナラバ、此ノ工員達
  ノ翌日ノ能率ニドンナ影響ヲ及ボスカト云
  フコトハ、私ガ論ズルマデモナク判然ト致
  シテ居ルコトト思ヒマス、此ノ三ツノ點、
  其ノ外大東亞共榮圈內ニ於ケル交換物資ト
  シテノ必要性ヲ考ヘマス時ニ、私ハ除蟲菊
  ハ此ノ戰ヒヲ遂行スル爲ニ極メテ重要ナ
  物資ノ一ツデアルト斷ジテ差支ヘナイト確
  信シテ居ルノデアリマス、然ルニ生產ノ實
  數ハ昭和十四年、十五年、十六年當時ニ於
  テハ二百五十萬貫乃至三百萬貫ノ生產ガア
  ツタガ、昭和十七年度ニ於テハ一一百萬貫ニ
  下リ、十八年度ニ於テハ僅カニ百五萬貫ニ
  ナツテ居ルノデアリマス、若シ此ノ趨勢ヲ
  以テ此ノ儘放任シタナラバ、私ハ恐ラク全
  滅ヲ免レナイノデハナカラウカト考ヘテ居
  ルノデアリマス、農商省當局ハ此ノ除蟲菊
  ノ重要性ヲドンナ風ニ考ヘテ居ラレマス
  カ、又現在ノ供給狀態ヲ如何ニ御考ヘニナ
  ツテ居ルカ、更ニ政府ニ於テハ之ニ對シテ
  何等カノ對策ヲ講ゼラレテ居ルカ、又將來
  モ講ゼラレルカト云フコトニ付テ其ノ內容
  ヲ伺ヒタイ

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• 065・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御說ノヤウニ軍需ノミナ
  ラズ、農藥關係トシテ除蟲菊ガ非常ニ重要
  デアルト云フコトハ私共モ能ク承知ヲ致
  シテ居リマス、最近往々ニシテ一部ノ地方
  ニ蔬菜ナドニ付テ病蟲害ガアリマシタヤウ
  ナ場合ニ、其ノ方面ノ人々ガ、ドウモ近頃
  ノ農藥ニハ、十分ナ除蟲菊ガナイモノダカラ
  效キ目ガ薄イノデハナイダラウカト云ワヤ
  ウナ話ヲスル向モゴザイマシタヤウナ譯
  デアリマス、軍需ト併セテ農藥關係ノ除蟲
  菊ト云フモノハ是非トモ必要量ハ確保シナ
  ケレバナラヌ、食糧增產ノ爲ニモ極メテ重
  要デアルト云フコトヲ考ヘテ居リマス、ソ
  レニ加フルニ今御話ノヤウニ、尙ホ一般ノ
  民需ニモ或ル程度ノ必要ハアル譯デアリマ
  ス、結局ニ於キマシテ私共ト致シマシテモ、
  ドウモ昨年程度ノ生產デハ困ルノデハナイ
  カ、是ハモウ增產ヲシナケレバナラヌ時期
  ニ達シテ居ルト云フコトヲ數字的ニモ考ヘ
  テ居ル譯デアリマス
  〔委員長退席、杉山委員長代理著席〕
  此ノ除蟲菊ニ付テノ生產ノ確保ト云フヤ
  ウナコトモ、實ハ私共ガ最近農作物ニ付テ
  綜合的ナ生產計畫ヲ立テナケレバナラヌト
  云フコトヲ痛切ニ感ジテ居リマス具體的ナ
  實ハ理由ノ一ツデアルノデアリマス、米
  麥ヲ中心トスル主要〓糧增產ガ極メテ必要
  デアリマシテ、其ノ爲ニ從來カラ相當其ノ
  方面ノ增產ヲ奬勵シテ參ツタノデアリマス
  ガ、是モ相當ナ效果ヲ擧ゲテ參ツタト思フ
  ノデアリマス、是ニ至リマシテ、ヤハリ其
  ノ外色々ナコトガ、世間ノ一般ノ人ガツイ
  氣ガ付カズニ居ルガ、實ハ〓リ廻ツテ重要
  ナ食糧增產ナリ、或ハ戰力增强ノ上ニ響イ
  テ來ルト云フヤウナモノ、是ハ地方々々ノ
  行政廳アタリデモ餘リ深ク感ジナイデ居ル
  ノガ、全國的ニ纒メテ見ルト重要デアルト
  云フモノガ、間々除蟲菊以外ニモアルノデ
  アリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、今後
  ハ愈〓主要〓糧ハ勿論中心デアリマスガ、關
  聯シマシテ綜合的ニヤハリ國家トシテノ必
  要ナル作物ノ增產ニ努メテ參ラウト存ジマ
  シテ、サウ云フ態勢デ進マウトシテ居リマス、
  尙ホ極ク僅カデハアリマスケレドモ、明年
  度ノ追加豫算ニ於キマシテ、特ニ除蟲菊應急
  增產ノ爲ニ、若干地方廳ノ其ノ方面ノ事務
  費ト云フヤウナモノヲ生產府縣ニハ補助ヲ
  致シマシテ、囑託其ノ他適當ナ人ヲ配置ス
  ルナラ配置サセマシテ、特ニ除蟲菊ノ生產
  確保ノコトニ付テ地方廳ニモ努力ヲサセタ
  イト云フ趣旨ヲ以チマシテ、僅カデハアリ
  マスガ、經費ノ若干ヲ計上致シテ居ルヤウナ
  譯デアリマス、斯樣ナ次第デ我々ト致シマ
  シテモ、御說ノヤウニ除蟲菊ノ生產確保ニ
  ハ努メルベク現ニサウ云フ風ナ具體的ナ處
  置モ講ジテ居ルヤウナ次第デアリマス

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• 066・森川仙太

  ○森川委員　只今ノ御答辯ニ依ツテ農商當
  局ガ除蟲菊ノ必要性ヲ御認識戴イテ、色々
  御對策ヲ講ジテ戴イテ居ルコトハ洵ニ感謝
  ニ堪ヘナイノデアリマス、只今御話ノアリ
  マシタ綜合計畫ト云フ問題デゴザイマスガ、
  是ハ色々ナ點カラ色々御檢討ニナラナケレ
  バナラヌト思ヒマスルシ、又此ノ間モ豫算
  委員會ノ分科會ニ於テ、農商大臣カラ色々
  打割ツタヤウナ御話モアツタヤウニ伺ツテ
  居リマス、ソレ等ノ點カラ考ヘテ、綜合計
  畫ヲヤラレル場合ニ能ク御考ヘ戴カネバナ
  ラヌト思フ、實際ニ於テ割當綜合生產計畫
  ヲ立テヽ戴キマシテモ、麥類トカ芋類トカ、
  主要農產物ニ壓倒サレテ、除蟲菊ノ如キ特
  殊ナモノハフツ飛バサレテシマフ點ガ多分
  ニアルノデアリマス、其ノ點ヲ特ニ御注意
  戴カネバナラヌト思フ、其ノ實際ヲ申上ゲ
  マスト、現ニ除蟲菊ハ一昨十七年ノ九月二
  十八日附デ農政局長ノ生產割當命令ガ各府
  縣ニ出サレタノデアリマスガ、ソレデ見マ
  スト、大體昭和十八年度ニ於テハ二百五十
  萬貫見當ノ生產ヲ割當テラレタト思ヒマス、
  是ガ實施ノ結果ハ意外ニモ十八年度ニハ割
  當ノ半額ニモ足リナイ百五萬貫シカ穫レナ
  カツタ、昨年ハ未曾有ノ早魃トカ色々天候
  不良ノ關係モアツタノデアリマスガ、少クト
  モ五、六十萬貫ノ天候ニ依ル減收ガアツタ
  ノデアリマスカラ、一〓ニ申セナイト思
  ヒマスガ、實際ニ於テ二百五十萬貫ノ割當
  ヲシタ場合ニ、大體植付面積ハドノ位ナケ
  レバナラヌト云フ植付面積ガ、果シテ確保
  サレテ居ツタカト云フコトヲ考ヘマス時ニ、
  私ハ綜合計畫ノ所謂不徹底ナ點ガアツタト
  思ヒマス、私ハ此ノ除蟲菊ノ重要性ヲ御認
  識戴イテ、最低生產量ノ割當ヲ確保サレン
  トスルナラバ、今少シ徹底シタ認識ノ下ニ、
  確實ニ實行出來ル案ヲ御立テニナラナケレ
  バナラヌト思フノデアリマス、元來除蟲菊
  ノ需要ハ年々增加シテ居リマシテ、現在ニ
  於テ若シ此ノ儘放ツテ置イタナラバ、大體
  ニ於テ五百萬貫位ノモノハ確實ニ要ルト考
  ヘマス、今日戰時下ニ於ケル第一次目標ト
  シテノ軍需、農藥、ソレカラ巳ムヲ得ザルモ
  ノヲ合セマシテ二百五十萬貫ハ絕對必要
  ダラウト思ヒマス、所ガ此ノ程度ニ必要
  ナル生產量ヲ確保スル爲ノ耕地面積ハ、
  大體ニ於テ二萬町步アレバ足リル譯デアリ
  マスガ、此ノ內除蟲菊ノ爲ニ十八年度ニ於
  テ大體確保サレタト見ラレテ居リマス面
  積ハ一萬四千町歩デ、大體ニ於テアト六千
  町步アレバ、若シ是ガ完全ニ植付ケラレヽ
  バ計畫ガ完成スルコトト思ヒマスガ、此
  ノ六千町步ガ所謂食糧增產ト競合スル譯
  デアリマス、殊ニ麥豆ノ類ト競合シマス、
  尙ホ今少シ突込ンデ考ヘマスト、北海道
  ニ於ケル除蟲菊ノ栽培地ハ元來荒蕪地ヲ利
  用活用シテ居ル、他ノ食糧品ノ栽培ニ適當
  シナイ土地ヲ除蟲菊ニ使ツテ居ルノデア
  リマス、隨テ今後北海道ニ於テ增產ヲ豫想
  サレル二、三千町步ヲ別ト致シマスト、殘ル
  モノハ、問題ハ和歌山、岡山、愛媛、香川、
  廣島等ノ內地ノ數縣ニ於ケル三千町步乃至
  四千町步ヲ如何ニスルカト云フ問題ニ私ハ
  懸ツテ來ルト思ヒマス、此ノ反別ヲ現下ニ
  於ケル麥ノ作付反別百九十萬町步ニ比ベマ
  スト極メテ僅カナ問題デアリマス、麥ガ假
  ニ一反步一石トシマシテモ、四千町步デ約
  六萬石ノ減少ヲ見ルダケノ問題デアリマス、
  此ノ僅カナ犧牲ニ於テ戰時完遂上最モ重要
  ナ資材ヲ確保シ得ルト云フコトハ、國家トシ
  テドチラガ實益ガアルカト云フ點モ御考ヘ
  戴キタイノデアリマス、現ニ滿洲ニ於テハ
  除蟲菊ノ重要性ヲ認識シマシテ、三箇年デ
  三十萬貫栽培ヲ物動計畫ニ計上シテ居ルト
  聞イテ居リマス、政府ハ農作物其ノ他ニ關
  スル綜合制ヲ樹立シ、國策上必要缺クベカ
  ラザル特殊農作物ニ付テハ、其ノ生產ヲ確
  保スルト云フ考ヘ方デ進ンデ戴カナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマスガ、之ニ對スル
  農商當局ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 067・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先程申上ゲマシタヤウナ
  譯デアリマシテ、必要ナル作物ハ、ソレガ
  主要食糧デアルト或ハ主要食糧ニアラザル
  トヲ問ハズ、絕對必要量ハ確保センケレバ
  ナラヌノデアリマス、サウ云フ觀點カラ致
  シマシテ、今御話ノヤウナ數量ノモノハ大
  體何トカ生產ヲ確保致シタイト考ヘテ居リ
  やく、唯其ノ方法ト致シマシテ、現ニ生產
  シツヽアル主要食糧マデ犧牲ニスルカ、マ
  ダ他ニ何カ方法ガナイカ、是ハ實際ニ卽
  シマシテ適當ナル措置ヲ講ジタイト存ズル
  ノデアリマス、何レニシマシテモ兎ニ角御
  話ノヤウナ大體ノ程度ノモノハドウシテモ
  必要カト思フノデアリマシテ、斯ウ云フ程
  度ノモノハ確保致シタイト考ヘルノデアリ
  マス

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• 068・森川仙太

  ○森川委員　十九年度ノ除蟲菊ノ生產割當
  額ハ、大體二百六十六萬一千七百貫トナツ
  テ居リマスガ、現在ノ狀態カラ見ルト、數
  量ハ兎モ角トシテ本年度位ノモノガ出來ル
  ト宜イト考ヘテ居ルノデアリマス、然ラバ
  何ガ故ニ生產ノ計畫ト實際トニ食違ヒガ起
  ツテ居ルカト云フ點ヲ少シ突込ンデ〓究シ
  テ見タイト思フノデアリマス、先ヅ第一ニ
  私ハ末端ノ關係者ガ認識ガ不徹底デアルト
  云フコトガ第一ダラウト思ヒマス、現ニ私
  ノ居縣ノ和歌山縣ノ例ヲ見レバ一番分リマ
  スガ、和歌山縣ハ十九年度ノ割當量ガ二十
  九萬三千七百貫トナツテ居リマス、其ノ作
  付面積ハ九百二十四町步デアルノデアリマ
  ス、縣當局ハ此ノ生產割當ヲ受ケマスト、
  ソレ〓〓各栽培町村ニ之ヲ割當テタノデア
  リマスガ、末端ノ關係者、或ハ農會長トカ、
  或ハ町村長トカ云フモノガ之ヲ遵奉シテ居
  ナイノデアリマス、徒ラニト云ツテハイケ
  マセヌガ、食糧增產ニ力ヲ入レ過ギテ、除
  蟲菊ヲ止シニシテシマツタト云フヤウナ實
  情ニアリマス、其ノ甚シキニ至リマシテハ、
  除蟲菊ヲ作ツタノヲ麥ヲ作ツタモノト同ジ
  ニ見テ、麥ノ供出ヲ除蟲菊ノ栽培面積ニマ
  デサシタ、其ノ除蟲菊ヲ作ツタ農家ハ麥ヲ
  他カラ買ツテ供出シナケレバナラヌト云フ
  ヤウナ實情ニアルノデアリマス、コンナコ
  トデハ本當ニ割當ノ正確ガ期セラレナイト
  思フノデアリマス、又中國ノ或ル縣ノ如キ
  ハ、折角丹精シテ作リ上ゲタ除蟲菊ガ本年
  花咲クト云フ苗マデモ引拔カシテ、食糧增
  產ヲ圖ツタト云フヤウナ實例モアルノデア
  リマス
  第二ハ栽培者ノ〓糧ノ不安ト云フ點モ考
  ヘテヤツテ貰ハナケレバイカヌト思ヒマス、
  前申上ゲマシタ通リ、戰爭遂行上極メテ重
  要ナ物資ヲ生產スル農家デアリマスカラ
  之ニ對シテハ最前次官カラ綜合生產ヲ考ヘ
  ルト云フ御話ガゴザイマシタガ、綜合生產
  ヲ御考ヘニナルト同時ニ、綜合供出ト云フ點
  マデ御考ヘヲ戴キタイ、假ニ最モ必要ナ農
  作物ヲ作ツテ之ヲ供出シタ場合ニハ、米ヤ
  麥ヲ出シタト同ジヤウニ認メル、斯ウ云フ
  點モ考ヘテ戴カナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス、是等ノ點ヲ勘案致シマシテ、實
  際除蟲菊ヲ作ツタ農家ニ對シテハ、或ル場
  合ニハ麥トカ諸ノ供出ヲ考ヘテヤル、實際
  見マスト、農家デ除蟲菊ヲ作ツテ居ルモノ
  ハ全部自分ノ耕地ヲ使ツテ居ルノデハナイ
  ノデアリマス、大體穫ルニシテモ半分シカ
  作ラナイノデアリマスカラ、實際ノ施策ト
  シマシテハ、半分麥ナリ藷ヲ作ツタラ、其
  ノ半分ノ麥ナリ藷ナリノ供出ヲ或ル程度考
  ヘテヤルト云フコトデ私ハ此ノ目的ヲ達ス
  ルト思フノデアリマス、ソレカラ第三ハ肥
  料ノ增配ノ問題デアリマス、廣島、岡山ノ
  三備地方ニ於キマシテハ、除蟲菊一貫匁ヲ
  生產スルニ要スル肥料ノ量ハ、窒素五十匁、
  燐酸ガ四十匁、加里ガ百二十匁必要ダトサ
  レテ居リマス、ソレニ對スル配給ガ廣島縣
  アタリハ大體二割位ノ配給ヲサレテ居ルヤ
  ウデアリマス、縣ニ依リマシテハ全然肥料
  ノ配給ガ除蟲菊ニ對シテハサレナイ縣モア
  ルノデアリマス、麥ハ所要量ノ大體六割ノ
  肥料ガ配給サレテ居ルヤウデアリマスカラ、
  麥並ミマデセメテ上ゲテ戴キタイ、斯樣ニ
  考ヘルノデアリマス、之ヲ要スルニ除蟲菊
  ノ栽培ニ最モ要請サレルモノハ、官民共ニ
  除蟲菊ニ於ケル現在ノ重要性ヲ十分ニ認識
  シテ戴キタイト思ヒマス、國家トシテ最低
  所要限度マデハ、食糧又ハ兵器ト同樣ニ此
  ノ生產ヲ絕對確保スルト云フコトニアルノ
  デアリマス、隨テ耕地ノ實際的獲得、肥料
  ノ增配、食糧ノ勘案等ニ付キマシテハ、食
  糧作物ノ作物ノ生產ト同一ナ待遇ヲ與ヘラ
  レタイト思フノデアリマス、是等ノ點ニ付
  テハ最前カラ色々御方針ヲ伺ツテ居リマス
  カラ、御答辯ヲ伺フマデモナイノデアリマ
  スガ、十分ニ御考慮ヲ戴キタイト思フノデ
  アリマス
  ソレカラ最前次官ノ御話ガアリマシタガ、
  食糧ノ競合スル點ニ何トカ考ヘガアルノデ
  ハナイカト云フ御考ヘノヤウニ承ツタノデ
  アリマス、私モ實ハ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、除蟲菊ハ幸ヒニシテ他ノ作物ト違ツテ
  荒蕪地デモ比較的利用サレマスノデ、或ル
  場合ニハ商業報國隊等ヲ作ツテ、未開墾地
  ヲ開墾サセルト云フ方法モ一ツノ方法ダラ
  ウト思ヒマス、モウ一ツ考ヘラレルノハ、
  一番手取リ早イト思ヒマスノハ、煙草ハ四
  萬五千町步ノ栽培地ヲ占メテ居ル、其ノ一
  割ダケ除蟲菊ニ廻シタラドウカ、一割デ四
  千五百町步ダケ廻シテ戴ケレバ此ノ問題ハ
  早速ニ解決スルト思フノデアリマス、彼ノ前
  線ニ於テ忠勇ナル兵士ガ日夜蚊其ノ他ノ害蟲
  ノ爲ニ苦勞シ、勞苦ヲ嘗メツヽアルコトヲ思
  ウタナラバ、恐ラク日本國民デアルナラバ、
  私ハ煙草ノ一割位ノ節約ハ何時デモシテ戴
  ケルト考ヘルノデアリマス、斯ウ云フ意味カ
  ラ申シマシテ、是ガ一番手取リ早イ方法デ
  ハナイカト思ヒマス、其ノ他除蟲菊ノ生產ニ
  隘路トナツテ居リマスノハ、公定價格ガ安過
  ギルト云フコトモアリマス、是ハ勿論九·-
  八ノ「ストップ」令當時八圓五十錢デアツタ
  ノニ今ハ七圓、二割モ安イ、恐ラク他ノ物
  資デ九·一八ヨリ二割モ安イト云フモノハナ
  イト思ヒマス、私ハ恐ラク除蟲菊ハ安イコ
  トハ安イガ、農民ガ除蟲菊ニ對シテハツキ
  リシタ認識ヲ持ツテ貰ヘバ、純心ナル氣分
  ヲ以テヤツテ吳レルモノト信ズルノデアリ
  マス、其ノ例トシマシテ過日某除蟲菊ノ主
  產地デ、陸軍、海軍ノ關係者ガ講演會ヲ開
  イタコトガアリマス、其ノ時ニ陸軍ノ或ル
  方ガ「マラリヤ」デ微熱ノアル身ヲ以テ、白
  鉢卷デシツカト引締メテ飛行機ノ「ハンド
  ル」ヲ持ツテ飛出テ行ク、アノ悲壯ナ姿ヲ考
  ヘタラドウカト言ハレタ時ニ、其處ニ集ツ
  テ居ツタ澤山ノ農民ハ泣イテ感激シタノデ
  アリマス、我々ハジツトシテ居ラレナイ、
  ソンナニ除蟲菊ハ大事デアツタノカト言ツ
  テ泣イテ感激シテ居ツタ、其ノ場カラ直チ
  ニ仕事着ノ儘上京シテ參リマシテ、當局ニ
  其ノ對策ヲ相談ニ來タト云フ嚴肅ナ實例ガ
  存シテ居ルノデアリマス、御承知ノ通リ元
  來除蟲菊ハ栽培ヲ始メテ收穫ヲスルマデニ
  三箇年ノ日子ヲ要スルノデ、一日モ早ク對
  策ヲ立ツテ戴カナケレバナラヌト思ヒマス、
  是等ニ付テモウ御所見ハ大體伺ツテ居リマ
  スガ、總括的ニ何カ御考ヘガアレバ承リタ
  イト思ヒマス
  〔杉山委員長代理退席、委員長著席〕

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• 069・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　除蟲菊ノ生產ノ重要性ト
  云フコトニ付テノ末端ニ於ケル認識ノ徹底
  ト云フコトニ付テハ、洵ニ御同感ニ存ズル
  ノデアリマス、農業生產ノ關係ニ於テハ色
  色ノ問題モアリマスケレドモ、同時ニ今御
  話ノヤウナ點ガ極メテ重要デアリマス、尤
  モ今日ノ如キ決戰下ニ於ケル戰力增强ノ爲
  ノ生產ニ付テハ農業バカリデハナイ、他ノ
  方面ニ於テモ總テ同樣トハ思ヒマスケレド
  モ、殊ニ農業ノ方面ニ於テハ重要デアルト思
  フノデアリマシテ其ノ點ニ付テ或ハコヽ
  二三年ハ除蟲菊ニ付テ申セバ認識ガ足ラナ
  カツタト云フ點ガ確カニアラウト思ヒマス、
  我々ト致シマシテモ關係ノ方々ト協力致ジ
  マシテ、十分サウ云フ認識ヲ確實ニ致シマ
  スヤウナ處置ヲ講ジタイト思ヒマス

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• 070・森川仙太

  ○森川委員　私ハ是デ終リマス

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• 071・深澤吉平

  ○深澤委員長　平野委員

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• 072・平野力三

  ○平野委員　一寸質問ニ入ル前ニ委員長ニ伺
  ヒマスガ、大臣ハ御出席ニナラヌノデスカ

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• 073・深澤吉平

  ○深澤委員長　今日ハ大臣ハ時間ノヤリ繰
  リガ付キマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=73

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• 074・平野力三

  ○平野委員　サウスルトイツ御出席ニナリ
  マスカ

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• 075・深澤吉平

  ○深澤委員長　ソレハ今交涉中デスガ、追
  ツテ御知ラセ致シマセウ

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• 076・平野力三

  ○平野委員　私ハ主トシテ土地制度ニ關ス
  ル問題ニ付テ農商省ノ根本方針ヲ尋ネタイ
  ト考ヘテ居リマスノデ、實ハ大臣ノ御出席
  ヲ是非御願ヒシタ譯デアリマス、併シ只今
  委員長ノ御話ノヤウニ本日御出席ガナイサ
  ウデアリマスカラ農商次官ノ御答辯ヲ得ラ
  レマスル範圍內ニ於キマシテ本日質疑ヲ致
  シマス、大臣ニ關スル部分ダケニ付キマシ
  テハ、大臣御出席ノ上御質問致シタイト斯
  樣ニ存ジマス
  先ヅ第一ニ農商次官ニ御尋ネヲシテ見タ
  イト思フコトハ、今囘追加豫算デ百五十萬
  圓ノ費用ヲ御取リニナツテ、之ヲ自作農奬
  勵ノ費用トシテ土地價格ノ差ヲ補フト云フ
  御說明デアリマス、之ニ對シテハ先程本委
  員會ニ於テモ言田賢一君、前川正一君、又
  豫算總會ニ於テハ佐々井一晁君ナドヨリ色
  色質問ガアツタノデアリマスガ、當局ノ此ノ
  百五十萬圓ノ使用方法ニ關シマシテハ未ダ
  明瞭ニ相成ツテ居リマセヌ、私考ヘマスル
  ノニ、此ノ百五十萬圓ノ追加豫算ヲ以チマ
  シテ、四萬五千町步ノ自作農創定ヲ今年ヤ
  ルト云フ御說明デアリマスガ、一反平均百
  五十圓ノ補助ト云フコトデアリマスナラバ、
  此ノ百五十萬圓ノ費用ト云フモノハ僅カニ
  一千町步ニ對スル費用ヨリ及バナイノデア
  リマス、隨ヒマシテ此ノ百五十萬圓ノ費用
  ヲ以テシテ四萬五千町步ノ自作農創定ヲナ
  サルト云フ、農商當局ノ具體的ナル手段方
  法ニ付テ先ヅ御尋ネヲ致シタイト思フノデ
  アリマス

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• 077・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　數字ニ付テノ御尋ネデゴ
  ザイマシテ、細カイ算定ノ基礎ヲ申上ゲル
  ト大變結構デアリマスガ、今私ハ手許ニ持
  ツテ居リマセヌノデ、大體ノ考ヘ方トシテ
  ノ御答ヘヲ申上ゲタイト思ヒマス、詰リヤ
  リ方トシマシテハ、水田一反百五十圓ノ補
  給ヲドウ云フ方法デヤルカト申シマスト、
  假ニ其ノ百五十圓ノ金ヲ二十五箇年賦ナラ
  バ二十五箇年賦デ借リマシタ場合ニ、年々
  償還金ガアリマスガ、其ノ償還金ヲ年々國
  庫ガ補給ヲシテ參ルト云フコトニナルノデ
  アリマス、デアリマスカラ初年度ニ於テハ
  多分極ク僅カノ利子ノ補給ト云フコトニナ
  ルヂヤナイカト思ヒマス、ソレカラ換算シ
  テ參リマスト、確カニ四萬五千町步程度ヤ
  レル筈ニナルノデアリマス

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• 078・平野力三

  ○平野委員　實ハ私ガ農政局長モ御出席ヲ
  要求シタノハ其ノ點ナンデアリマシテ、多
  分百五十萬圓デヤレル筈デアルト云フ風ナ
  御答辯ダケデハ、實ハ十分滿足出來マセヌ
  ノデ、苟モ追加豫算トシテ非常ナ鳴物入リ
  デ御取リニナリマシタ百五十萬圓ハ、是レ
  是レ斯樣ナル數字ノ上ニ於テ四萬五千町步
  ダケノ自作農ニナル、斯ウ云フ御說明ヲ願
  ハナケレバ審議ニハナラヌト考ヘマスノデ、
  一ツハツキリ願ヒタイト思ヒマス

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• 079・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　洵ニ御尤モデアリマシテ、
  此處ハ豫算ノ分科會デハアリマセヌケレド
  モ、今暫ク御待チヲ願ヒマスレバ、モウ少
  シ數字的ノ御答ヘノ出來ル資料ヲ取寄セタ
  イト思ヒマス

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• 080・平野力三

  ○平野委員　ソレデハ其ノ用意ノ出來ルマ
  デ次ノ質問ヲ致シタイト思ヒマス
  ソコデ次官ニ斯ウ云フコトヲ一ツ御伺ヒヲス
  ルノデアリマスガ、新聞紙ニ依リマシテ、政府
  ガ今回自作農創定ニ對シテ國庫補助ヲ行フ、
  其ノ金額ハ大體百圓カラ二百圓ノ間デアル、
  仍テ百五十圓ト云フコトガ議會デ明瞭ニナ
  ツテ來タノデアリマス、農商當局ハ之ニ依
  ツテ相當自作農創定ガ推進スル、斯ウ云フ
  可ナリ自信ヲ御持チニナツテ居ルヤウニ、
  我々ハ凡ユル機會ニ於テ御說明ヲ聽イタノ
  デアリマスガ、實ヲ申シマスト、之ニ對シ
  テハ逆ノ結果ガ此ノ頃私共ノ方ニ段々入ツ
  テ居ルノデアリマス、其ノ一ツノ例ヲ申シ
  マスト、山梨縣ニ於キマシテ、村ヲ申シ
  マスト御影村ト云フ村デアリマス、此處ニ
  十町步程ノ不在地主ガアリマシテ、此ノ人
  ガ六十人程ノ小作人ニ十町步ノ土地ヲ細分
  シテ、是ガ二三年來縣當局ノ斡旋ニ依リマ
  シテ、稍〓土地ヲ賣ツテモ宜イ、斯ウ云フヤ
  ウナ話合ニナリ掛ケテ居リマシタモノガ、
  今度議會デ百五十圓補助金ガ貰ヘルト云フ
  ナラバ一寸待ツタト云フコトデ、斷ツテ來テ
  居ル、モウ一ツ、是ハ尤モ二三日前カラノ
  問題デアリマスガ高知縣ノ長岡郡長岡
  村-是ハ當局ハ御承知デゴザイマセウガ、
  皇國農村ニ御指定ニナリマシタ村デアリマ
  スノデ、是ハ高知縣ニ於ケル代表的ナモノ
  デアル、其處ノ代表的地主サンガ、其ノ土
  地ヲ賣ツテモ宜イト云フ契約ガ殆ド成立ヲ
  シテ居ツタモノガ、正確ニ申シマスト數日
  前ニ、百五十圓補助金ガ貰ヘルト云フコト
  ナラバ其ノ契約ハ一應解除シテ吳レト云フ
  コトデ、斯ウ云フ傾向ガ段々ニ現ハレテ居ル
  ノデアリマス、當局ガ昨年ノ十二月二十八
  日ノ閣議デ決メマシテ、慥カ二十九日デア
  ツタト考ヘマスルガ、農林省ガ國庫補助ヲ
  行ツテマデ自作農創定ヲスルト云フコトハ、
  相當ニ熱意ノアル所デアルト云フ考ヘ方ヲ
  以チマシテ、私共知合ヒノ各農村ヘ向ツテ
  大體ニ於テ問合セヲシテ見マシタ、其ノ問
  合セト致シマシテハ、今囘八十四議會ニハ
  斯樣ナル豫算ガ出ルヤニ我々ハ聞イテ居ル、
  ソコデ國庫補助ニ付テハ大體百圓カラ二百
  圓位デアル、又地方長官等ガ相當之ニ向ツ
  テ勸奬シテヤツテ吳レルラシイ、尙ホ自作
  農創定ガ果シテ之ニ依ツテ出來ルデアラウ
  カドウデアラウカ、アナタノ村ノ地方ニ於
  ケル實情ヲ知ラセテ貰ヒタイト云フ照會狀
  ヲ發シマシタニ對シマシテハ、大半百五十
  圓位ナ程度ノ費用デハ地主ガ賣ルニ至ルニ
  ハ不十分ダ、隨テ强制力ヲ以テ賣レト云フ
  コトデアルナラバ別問題デアルガ、單ニ此
  ノ程度ノ補助金ヲ以テシテハ自分達ノ村ニ
  於テハ中々地主ハマダ賣ラナイ、斯ウ云フ
  囘答ニモ實ハ多數接シテ居ルヤウナ譯デア
  リマス、當局ハ自作農創定ニ對シテ相當ニ
  乘出シテ居ルト云フ抽象論ニ付テハ是ハ了
  承スルノデアリマスガ、具體的ニ此ノ百五
  十圓補助スルト云フコトニ依ツテ、寧ロ先
  程二ツノ例ヲ擧ゲマシタ逆ノ現象ガ現ハレ
  テ居ルコト、及ビ私ガ自分デ照會ヲシテ多
  數返事ガ參ツテ居ルヤウナ斯ウ云フ事態ニ
  付テ、農商次官ハ何ト考ヘテ居ラレルカ、
  又斯ウ云フ問題ニ付テハ如何ナル御方策ヲ
  今後執ラントセラルヽカト云フコトニ付テ、
  此處デ御伺ヒヲ致シタイト思フノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=80

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• 081・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　前段ノ點ニ付キマシテハ、
  一時的現象トシテ左樣ナコトモアルカト思
  フノデアリマスガ、我々ト致シマシテハ是
  ガ實行ヲ急速ニ進メル積リデ居リマスルシ、
  斯ウ云フ方策ヲ進メマシタ上ニ於テハ、勿
  論今御話ノヤウナ具體例ニ付テモ一時止マ
  リマシタモノガ進ンデ參リマセウシ、ソレ
  カラ又從來ハ到底賣買ノ問題ニナラナカツ
  タヤウナ所モ賣買ガ行ハレルヤウナコトニ
  モナラウ、結論ニ於テハ結局ヤハリ之ニ依
  ツテ此ノ事業ハ推進サレテ行クモノト存ジ
  テ居リマス、ソレカラ百五十圓ガ足ルカ足
  ラヌカト云フヤウナ事柄ニ付キマシテハ、
  是ハ我々トシテモ豫テ御答ヘモ致シマシタ
  ヤウニ一ツノ平均デアリマシテ、狀況ニ依
  リマシテ多少ヤハリ色々ト動カシ得ルモノ
  デハナイダラウカトモ考ヘテ居ル譯デアリ
  マス、ソレカラ尙ホ實際ニ卽シマシテハ色々
  ヤハリ地方ノソレ〓〓ノ具體的ナ狀況ニ
  應ジテ處置スベキ事柄モアリ得ルノデアリ
  マシテ、今度ノ此ノ措置ハ其ノ他色々ノ之
  ニ關聯シテ執リマス措置ト併セテ相當ナ效
  果ガアルモノト實ハ私共考ヘテ居ルノデア
  リマス、併シ出來ルダケヤツテ見テ、其ノ
  結果ヲ見タイト思ヒマス

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• 082・平野力三

  ○平野委員　此ノ御答辯モ何ダカ見込ガア
  ルダラウト云フ御答辯デアツテ、確信ヲ持
  ツテ斯樣ニナルト云フ御說明デハナイノデ
  アリマシテ、今少シ掘下ゲテ御問ヒヲシタ
  イト思ヒマス、斯ウ云フ囘答ガ出來テ居ルノ
  デス、一反歩六百圓ノ土地デ小作料ヲ一石二
  斗納メテ居ル所ガアル、是ハ地主ノ收入トシ
  テハ約六十圓、內五圓ガ公租公課デ、純益五
  十五圓トナツテ居ル、而モ國庫補助金ヲ二百
  圓貰ツタトシテ八百圓、公債ニ換ヘマシテ
  モ其ノ利子ハ三十二圓デ、從來ノ小作料ヲ
  貰ツタヨリ二十三圓減收ニナルカラ、個人
  主義ノ强イ地主ガ、地方長官等ノ勸奬位デ
  土地ヲ賣却スルト云フ考ヘ方自體ハ洵ニオ
  目出タイ考ヘ方デアル-是ハマア文書ハ
  色々アリマスガ、是ハ私ガ實際計算ヲ致シ
  マシテモ、中庸ノ土地ト致シマシテモ一反
  五百圓、小作料ガ一石、此ノ一石ノ小作料
  ガ四十六圓、公租公課ガ六圓デ、四十圓ノ
  純益デス、當局御說明ノ百五十圓ノ補助金
  ヲ地主ガ貰ヒマシテ六百五十圓、三分五厘
  ノ利子ヲ支拂ヒマシテ二十二圓七十五錢
  ダカラ、十七圓二十五錢ニナリ、ヤハリ此
  ノ五百圓ノ土地ニ百五十圓ノ補助金ヲ貰ツ
  テモ從來ノ小作料ヲ取ツテ居ツタ方ガ宜イ
  ト云フコトニナル、玆デ御考ヘヲ願ヒタイ
  ノハ、土地ノ所有者ニ對シテ、諸君ハ利益
  ヅクデ自作農創定ヲ考へテハイケナイノ
  ダ、唯百五十圓ト云フコトハヤラヌヨリハ
  ヤル方ガ宜イカラヤルノデアルガ、併シ賣
  レルモノナラ成ベク賣レト云フヤウナ甘イ
  コトダケデモ地主ガ土地ヲ賣ルト云フ考ヘ
  方ヲ當局ガ持ツテオイデニナルト致シマス
  ナラバ、是ハ多少認識ガ違フノデハナイ
  カ、私ハ農業政策トシテ國費ハ僅カ百五十萬
  圓デハアルガ、地主ノドレダケノ差額ノ費
  用ヲ補フト云フ是ダケノ政策ヲ御執リニナ
  ル反面ニハ、地主ハ是レ〓〓ノ土地ヲ賣
  V、例ヘバ不在地主ニ對シテハ、モウ今日
  ニ於テハ土地ヲ賣ルベシト云フ命令ヲ出ス
  法令ニ比例シテ是ダケノ補助金ヲ出ス、斯
  ウナラナケレバ是ハ政策トシテノ價値ガナ
  イノデハナイカ、賣レト云フコトヲ言ハナ
  イデ唯補助金ヲ出ス、而モ中途半端ニ、利
  益デ誘導スル點ニ於テイ非常ニ不徹底デア
  ル、幾ラカ補助金ヲヤルト云フヤウナ甘イ
  コトデ、片方ニ土地ヲ賣レト云フヤウナ强
  制權ノナイト云フヤウナコトデ自作農ノ創
  定ヲ推進スルト云フ御考ヘデアルト致シマ
  スレバ、遺憾ナガラ今日ノ農村ノ實情ニ相
  當認識ヲ缺イテ居ルノデハナイカト考ヘラ
  レルノデアリマス、ソコデ補助金ノコトハ
  是ハ御出シニナツタモノデアリマスル
  シ、議會モ通ツタコトデアリマスルガ、之
  ニ相比例シテ大地主ニ對シテ土地ヲ賣レト
  云フ法律ヲ一本御制定ニナルダケノ御意思
  ガナイカドウカ、之ヲ一ツ御尋ネスルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=82

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• 083・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　其ノ點ニ付キマシテハ食
  糧增產ノ國家要請ニ基イテ、狀況ハ色々ア
  リマセウガ、地主ノ側ニ於キマシテモ相當
  ニ協力シテ貰ヘルモノト考ヘテ居ル譯デア
  リマス、ソレカラ此ノ際法令ヲ以テ之ヲ强
  制スルト云フコトニ付テハ、別段考ヘテ居
  リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=83

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• 084・平野力三

  ○平野委員　新シイ獨立ノ法律ヲ御出シニ
  ナルト云フコトハ私ハ正シイト思フ、マダ
  議會ノ會期モ三月一杯アリマスノデ、大臣
  御出席デアルナラバ此ノ點ヲハツキリ問ハ
  ウト思ツテ居ツタノデアリマスガ、獨立ノ
  法律ヲ一本御出シニナツテ、此ノ補助金ヲ
  活力シテ行カレルト云フコトハ、私ノ非常ナ
  希望ナノデス、ソコデ若シ獨立ノ法律ガ出
  セナイ場合ニ、現行法ノ上ニ於テ此ノ豫算ヲ
  活カシテ行カレルト云フ途ガ、私ノ〓究ニ
  依レバ二ツアル、第一ハ農地調整法ノ第十
  二條ノ活用デアリマス、ソレカラモウ一ツ
  ハ國家總動員法ノ第十三條、此ノ二ツデア
  リマス、御問ヒヲスルノハ、此ノ農地調整
  法第十二條ヲ活用シテ、折角御取リニナツ
  タ豫算ヲ活カシテ、自作農創定ガ完全ニ參
  リマスヤウニオヤリニナル意思ガアルカナ
  イカ、又農地調整法第十二條ヲ發動セラレ
  テオヤリニナル意思ガナイト云フコトデア
  リマスレバ、國家總動員法ノ第十三條ヲ活
  用セラルヽ意思ハナイカ、ソコデ農地調整
  法ノ第十二條ト云フモノハ、此ノ法律ガ議
  會ニ出マシタ時ニ我々ガ隨分議論ヲ致シマ
  シテ、當時司法當局カラモ斯ウ云フ附帶ノ
  說明ガアツタノデアリマス、卽チ農地調整
  法ハ傳家ノ寶刀トシテ中々拔カナイ、併シ
  傳家ノ寶刀ト云フモノハ拔クベキ時ニハ正
  ニ拔クノデアル、拔カザルモノハ傳家ノ寶
  刀デハナイト云フコトノ當時ノ政府委員ノ
  說明ガ速記錄ニモ載ツテ居ルノデアリマ
  ス、土地問題ニ關スル農地調整法ニ依ル
  調整問題ガ茲ニ持上リマシタ時ニ於テ、
  此ノ地主ノ土地ヲ賣ツテ自作農ニスルト
  云フコトニ依ツテ明カニ皇國農村ガ確
  立シ、又自作農ニナルト云フコトニ依ツ
  テ、當局御信念ノヤウニ食糧ノ增產ニナ
  ルト云フコトデアレバ、此ノ十二條ノ傳家
  ノ寶刀ヲ御拔キニナツテ、此ノ豫算ト睨ミ
  合セテオヤリニナル所ノ意思ガアルカナイ
  カ、之ヲ一ツ御答へ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=84

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• 085・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今御話ノ點ニ付キマシ
  テモ、飽クマデモ今日ノ場合ノ國家要請ニ
  應ジテノ地主ノ協力ト云フ所デ之ヲ進メテ
  參リタイト考ヘテ居ルノデアリマシテ、農
  地調整法ノ御示シノ條項ヲ運營スルコトニ
  付テハ考ヘテ居リマセヌ

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• 086・平野力三

  ○平野委員　ソレデハ國家總動員法ノ第十
  三條デアリマスガ、是ハ「政府ハ戰時ニ際
  シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定ム
  ル所ニ依リ總動員業務ニ必要ナル土地若ク
  ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用若ハ收
  用シ又ハ總動員業務ヲ行フ者ヲシテ之ヲ使
  用若ハ收用セシムルコトヲ得」斯ウ云フ規
  定ガアリマシテ、旣ニ是ハ色々ナ方面ニ活
  用セラレテ居ルノデアリマス、閣議ノ決定、
  又新聞紙上ニ依ツテ我々ガ拜見スル所ニ依
  リマスルト、食糧及ビ農場ヲソレ〓〓軍需
  品及ビ軍需工場ト同列ニ之ヲ取扱フコトヲ
  根本トシト云フ決定ガアルノデアリマシテ、
  食糧ト軍需品トヲ同等ニ扱ヒ、又農場ト軍
  需工場ト云フモノヲ同列ニ扱フト云フコト
  ヲ決定セラレテ居リマスル今日ニ於テ、自
  作農奬勵ト云フコトガ政府トシテハソレ程
  信念ノナイ、唯極メテ漫然タル御主張デア
  ルト致シマスナラバ、私ハ敢テ問ハナイノ
  デアリマス、併シ自作農創定ト云フコトガ
  極メテ信念ノ上ニ立ツタ皇國農村確立ノ要
  諦デアルト云フ所マデ論ジテ居ラレマス所
  ノ當局トシテハ、私ハ國家總動員法第十三
  條ノ發動ヲセラレルコトニ依ツテ、土地問
  題ノ處理ヲナサルト云フコトガ決シテ無理
  ナ要求デハナイ、斯樣ニ考ヘマスノデ、之
  ニ付テモ一ツ當局ノ御所見ヲ聽イテ置キタ
  イト思ヒマス

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• 087・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今御尋ネノ點ニ付キマ
  シテモ、前段ノ御尋ネノ點ト大體同樣ニ考
  ヘテ居ル次第デアリマス

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• 088・平野力三

  ○平野委員　段々ニ御尋ネヲシテ居リマス
  ルト、自作農創定ト云フコトニ對スル當局
  ノ具體的問題ト云フコトニナルト、甚ダ用
  意ガ不十分デアリ、又其ノ信念ト致シマシテ
  モ洵ニ十分デナイ、斯樣ニ考ヘザルヲ得ナ
  イノハ遺憾ニ思フノデアリマス、私是ニ於
  テ自作農創定論ト云フモノニ付テ當局ニ今
  少シク本腰デ考ヘテ戴キタイト思フコトハ、
  學者ハ自作農ノ創定ト云フコトニ對シテ二
  ツノ方法ガアルト云フコトヲ指摘シテ居リ
  マス、其ノ二ツノ方法ト云フモノハ直接自
  作農創定及ビ間接自作農創定、斯ウ云フヤ
  ウニ分ケテ居ルヤウデアリマス、是ハ澤村
  博士ノ所論デアリマスルガ、直接創定主義
  ト間接創定主義トノ區別ハ、之ヲ單ニ表面
  的ニ觀察スルナラバ、前者ハ土地ノ所有權
  ヲバ一度地主ヨリ國家又ハ公共團體ノ手ニ
  移シ、然ル後ニ之ヲ再ビ農民ニ移スモノデ
  アル、後者ハ土地ノ所有權ヲ國家又ハ公共
  團體ノ手ヲ經ズシテ地主ヨリ小作人ニ移ス
  モノデアル、斯ウ云フヤウニ二ツノ自作農
  創定ト云フモノニ對シテノ學問上ノ區別ヲ
  シテ居ルノデアリマス、私共ガ日本ノ現實
  ニ卽シマシテ、自作農創定ニ付テ極メテ現
  實カラ眞劍ニ考ヘマシタ場合ノ自作農創定
  主義ト云フモノハ、一應土地ヲ地主ノ手カ
  ラ國家及ビ公共團體ノ手ニ收メテ、順次之
  ヲ自作農ニシテ行クト云フコトガ農地ノ交
  換分合ヲ行ヒ、又時局ニ處シテ自作農創定
  ヲ推進スル上ニ於テ宜イト考ヘマシテ、旣
  ニ農地國家管理案等ヲ今日主張シテ參ツテ
  居ルノデアリマス、併シナガラ當局ト致シ
  マシテハ、此ノ直接國家ガ手ヲ下シテヤリ
  マス自作農創定主義ト云フモノハ御執リニ
  ナラナイノデアリマシテ、依然トシテ間接
  自作農創定デアリマスル所ノ、國家ガ仲立
  ニナツテ自作農創定ヲ進メテ來ラレタ、斯
  ウ云フコトニ相成ルノデアリマス、所ガ此ノ
  間接自作農創定ト云フコトニ付テ、更ニ色
  色〓究ヲ續ケテ見マスルト、假ニ間接ノ自
  作農創定ヲ行フト云フコトニ付テモ、三ツ
  ノ方法ヲ執ラナケレバ、自作農創定ト云フ
  コトハ目的ヲ達シ得ナイト云フコトニ學者
  ハ結論ヲ付ケテ居ル、其ノ三ツノ方法ト云
  フモノハ何デアルカト申シマスルト、第一
  點ハ小作料ヲ相當下ゲルコトニ依ツテ、地
  主ガ土地ヲ持ツテ居ルコトニ付テノ利廻ノ
  採算ガ合ハナクナルカラ、ソレニ依ツテ土
  地ヲ賣ル意識ヲ起サシムル、是ガ一ツ、第二
  ハ土地ニ累進稅ヲ課ケマシテ不在地主デア
  リマストカ、或ハ一定以上ノ廣大ナル土地
  ヲ持ツテ居ルト云フコトハ、累進稅ノ爲ニ
  却テ土地所有ガ利益ガナイト云フ政策ノ爲
  ニ、土地ヲ賣ルト云フ意欲ヲ發生サセル、
  第三ハ先程カラ問ウテ居リマスル所ノ地主
  ニ對シテ土地ヲ賣レト云フ法律ヲ國家ガ出
  ス、此ノ三ツノ方法ノ何レモヲ採用セズシ
  テ、自作農創定ヲ推進スルト云フコトハ
  其ノ效果擧ラザルモノデアルト云フコトハ、
  今日學者ノ〓究ノ上ニ於テ是ガ明瞭ニ說明
  セラレテ居リ、又現實玆ニ展開セラレテ居
  リマス所ノ、政府當局ノオヤリニナツテ居
  リマス自作農創定ト云フモノガ、推進致シ
  テ居リマセヌ所ノ理由ハ是ニアルノデアリマ
  ス、之ヲ世界諸外國ノ例ニ見マスルト、小
  作料ヲ減額スルコトニ依ツテ自作農創定ヲ
  推進致シタノハ「アイルランド」デアリ、土
  地ノ累進稅ニ依リマシテ自作農創定ヲ致シ
  マシタノハ「ニュージーランド〓デアリマス、
  現ニ「ニュージーランド」等ニ於テハ、不在地
  主ニ對シマシテハ普通ノ地主ヨリ更ニ累進稅
  ヲ五〇%增加スルコトニ依リマシテ、自作
  農創定ヲ實際推進致シテ居ルノデアリマス、
  然ルニ現在農林當局ニ依ツテ茲ニ第八十四
  議會ニ此ノ食糧政策ノ重要ナ時期ニ於テ自
  作農ガ一番生產力ガアルト云フ觸出シノ下
  ニ御推進ニナツテ居ル自作農創定ハ凡ソ是
  等ノ議論トハ相反シマシテ、小作料ヲ下ゲ
  ルト云フコトデハナクシテ、寧ロ米價ガ年
  年上ルト云フコトニ依ツテ小作料ハ上ツテ
  來ル、土地ニ累進課稅ヲ課ケルト云フヤウ
  ナコトニ付テハ何等考慮ナク、又地主ニ對
  シテ土地ヲ賣レト云フ獨立ノ法規ヲ御出シ
  ニナラナイコトハ固ヨリ、農地調整法モ國
  家總動員法ト云フモノモ之ヲ發動シナイ、
  一體當局ハ自作農創定ガ之ニ依ツテ出來ル
  ト云フ御考ヘヲ如何ナル根據ニ依ツテ持タ
  レルノカ、先程來吉田君、前川君カラモ御
  質問ガアリマシタヤウニ、地方ニ居ル者ガ
  新聞ダケデ自作農創定ト云フコトヲ見テモ、
  實際ニ於テハ是デハ推進シナイデハナイカ
  ト云フ此ノ疑問ニ對シテ、農商當局ハ今後
  如何ナル方策ヲ以テ解決ヲシテ行カレント
  スルカ、私ハ此ノ際改メテ御答辯ヲ得テ置
  キタイト思フノデアリマス

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• 089・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是等ノ旣ニ執ツテ居リマ
  スル、又現ニ執ラントスル所ノ各般ノ創設
  事業促進ノ施設ト共ニ、關係各方面ノ圓滿
  ナル協力ヲ求メマシテ、之ニ依ツテ創設ノ
  仕事ヲ進メテ參リタイト云フノガ、我々ノ
  現在持ツテ居ル考ヘデアリマス

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• 090・平野力三

  ○平野委員　圓滿ナル協力ト云フ御言葉ハ
  抽象的ニハ固ヨリ贊成デアリマスルガ、旣
  ニ先程來具體的ナ事例ヲ以テ-既ニ自作
  農創定ヲ約束ヲシテ居ナガラ取消ヲシタ、
  又實際問題ト致シマシテ如何ナル方面カラ
  ノ論據ヲ以テシテモ現狀ノ儘ニ於テハ自作
  農創定ト云フモノハ推進力ガ非常ニ乏シイ、
  又過去數年間ノ事例ヲ見マシテモ、當局ガ
  御說明ノヤウニハ自作農ト云フモノハ出來
  テ居ナイ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ參リマシ
  テ、只今ノヤウナ御答辯ヲ得マスルト、更
  ニ改メテ御問ヒヲシテ行カナケレバナラナ
  イト思フコトハ斯ウ云フコトデアリマス、
  農林當局ハ一體自作農創定ト云フコトニ依
  ツテ食糧ガ本當ニ增產ニナルカナラヌカト
  云フコトニ付テ信念ガナイノデハナイカ、
  何カ自作農創定、土地問題ノ解決ト云フコ
  トガ喧マシイカラ適當ナル勘案ヲシテ置カ
  ナケレバ、ドウモ宜シクナイト云フヤウナ
  意味ニ於ケル自作農創定デアツタノデハナ
  イカ、自作農ニスレバ土地ノ生產力ガ高マ
  ルノダ、斯ウ云フコトニ付テ一體自信ヲ持
  ツテ居ラレルノカ、自作農創定ハ今日ノ流
  行言葉ダカラ、然ルベク之ヲヤツテ置カウ
  ト云フヤウナ程度ノ御考ヘデアルトスレバ、
  只今ノ御答辯モ了承出來ルガ、心カラ自作
  農創定、例ヘバ昭和十九年度ニ於テ百萬町步
  ノ土地改良ヲヤラレタヤウニ、百萬町步ノ
  自作農創定ヲ以テ臨ムト云フヤウナコトヲ
  以テ食糧增產ヲ圖ルト云フコトノ御考ヘガ
  ドウモソコニナイノデハナイカ、自作農創
  定ト增產政策ト云フコトニ付テノ當局ノ御
  信念ヲ聽キタイ

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• 091・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　自作農創設ノ事業ハ農村
  ノ確立ト云フ農村恒久策ノ一端トシテ我々
  トシテハ特ニ深ク考ヘテ居ル方策デアリ
  マシテ、是ガ同時ニ食糧增產ノ方ニモ相當
  ナ效果ヲ持ツテ居ル、寧ロ大體サウ云フ風
  ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、勿論御心配ニ
  ナルヤウナ、マア兎ニ角斯ウ云フ旗幟ヲ揭
  ゲテ置ケト云フヤウナコトデハ毛頭ゴザイ
  マセヌノデ、農村ニ於ケル土地關係ノ問題
  ハ此ノ自作農創設ノ線ニ依ツテ進ンデ參リ
  タイト云フ風ニ、豫ネテ農商省トシテハ考
  ヘテ居ル次第デアリマス

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• 092・平野力三

  ○平野委員　其ノ御答辯ハ大體ニ於テ贊成
  ナンデス、又其ノ信念カラ出テ居ラレナケ
  レバナラヌト思フノデアリマスガ、併シド
  ウ考ヘテモ其ノ信念ト具體的ニヤツテ居ラ
  レマスル政策トハ、私共ニハドウモ了承致
  シ兼ネル部分ガアルノデアリマス、當局ガ
  食糧增產上御執リニナツテ居ル可ナリ大キ
  ナ手トシテハ土地改良、ソレカラ空閑地ノ
  利用、是ハ相當オヤリニナツテ居ル、私共
  カラ申シマスルト、空閑地ノ利用モ土地改
  良モ自作農創定ヲ俟ツテ初メテ「レール」ニ
  乘ルノデアル、一番肝腎ナ自作農創定ト云
  フモノハ、或ル意味カラ申シマスト中途半
  端ニシテ置イテ、土地改良、空閑地利用ノ
  ミニ重點ヲ置イテ居ル農商當局ノ農業政策
  上ノ根本思想ト云フモノニ對シテ、私ハ十
  分ナル了承ガ出來ナイノデアル、例ヘバド
  ウデアリマセウ、今期議會ノ御說明ニ依リ
  マスト、土地改良ニ依ツテ昭和十八年度ハ
  約百萬町步デ二百萬石ノ增收ト云フコトデ
  アリマスト、收穫ハ約一割、所ガ土地改良
  ニ當局ガ乘出シテ居ラレル其ノ大掛リナ態
  度ト云フモノハ、私ガ新聞其ノ他ニ依ツテ
  知リ得マシタ範圍ニ於テハ、人員一億三千
  萬人、土管數千萬本、此ノ土管ヲ燒クニ必
  要ナ石炭ガ三萬一千「トン」薪ガ七百萬石、
  木材十五萬石、「セメント」鋼材ノ數字ハ省ク
  ガ相當ニ要スル、國費三億萬圓、農民負擔
  一億五千萬圓、是ダケノ大掛リノ土地改良
  ヲオヤリニナツテ二百萬石、自作農創定ヲ
  百萬町步本當ニオヤリニナツタラ、先程モ
  自作農創定ニ關スル各村々ノ事例ハ前議員
  ニ依ツテ說明サレマシタカラ此ノ席上ニ於
  テハ避ケマスガ、恐ラク農村ニ足ヲ入レテ
  居ル議員諸君ノ中デ、自作農地ト云フモノ
  ガ、小作農地ヨリ收穫ガ上ルト云フコトハ、
  決定的ニ〓究濟ミノ事實デアル、百萬町步
  ノ自作農地ニシテソレカラ二割上ルト云フ
  コトデアリマスナラバ、明カニ四百萬石デ
  アル、土地改良ハ一億三千萬人ト云フヤウ
  ナ大ギナ勞力、此ノ勞力モ單ニ土地改良ダ
  ケデ宜イト云フノデナイ、山林ノ勞働モ之
  ニ吸收シ、炭燒キモ之ニ依ツテ減ル、或ハ
  此ノ勞働ノ爲ニ色々ナ他ノ方面ニモ影響ガ
  來テ居ルト云フコトハ御承知ノ通リデアル、
  土管ノ數千萬本モ簡單デナイ、運搬サレタ
  ル薪、木炭、「セメント」鋼材、而モ國費ハ
  三億萬圓、農民負擔ハ一億五千萬圓、是ダ
  ケノ大掛リノコトヲオヤリニナツテ二百萬
  石御生ミニナツテ居ルノダガ、自作農創定
  ト云フモノハ資材ハ要リマセヌ、「セメン
  さモ要ラナイ、鋼材モ要ラヌ、又國費ニ
  シマシテモ、コンナニ澤山ノ國費ハナクテ
  濟ム、私ノ案ヲ採用セラレルナラバ、聞上
  地主ニ賣レト云フ法律一本デ宜イ、唯ヤラ
  ナイノデハ當局ニ決心ガナイカラ是ガ出來
  ナイ、皇國農村ヲ廻ツテ來ラレタ私ノ尊敬
  シテ居ル櫻井武雄ト云フ農村問題ノ權威者
  ガ居ラレマスガ、此ノ報告書ノ一頁ヲ讀ム
  ト斯ウ云フコトガ書イテアル、其ノ一端デアリ
  マスガ、地主ノ考ヘ方モ最近ハ大分變ツテ
  來テ居ル、二三年前マデハ地主ノ集マリデ
  土地ノ國家管理ナドト言フトオ前ハ危險デ
  アルト言ツタガ、今ハサウ云フ當人デスラ
  此ノ要求ニ對シ贊成シナケレバナラナイヤ
  ウナ場面ニ陷ツテ居ル、是ハ皇國農村ニ於
  ケル新興指導者ガ語ツタト書イテアル、御
  氣付キニナラヌノハ農林當局デハナイカ、
  現實コンナニ多クノ資材ヲ使ツテ二百萬石
  ヲ擧ゲルヨリ、自作農創定、百萬町步ト云
  フコトヲ此ノ八十四議會ニ於テ政府ガ斷行
  セラレテ、サウシテ昭和十九年度ニ於テハ
  百萬町步ノ自作農ガ出來ルト云フコトニナ
  レバ、其ノ出來タ自作農ガ俺ノ地面デアル
  カラ俺ノ本當ノ渾身ノ力ヲ籠メテ土地改良
  ヲヤラナケレバナラヌト云フ意欲ガ盛上ツ
  テ來ル、其ノ意欲ガ盛上ツタ所ニ政府ガ土
  地改良ト出テ行ケバ、新タニ自作農創定、
  土地改良ト云フ手段ニ依ツテ增產ガウント
  出來ル、サウナレバ空閑地ナンカハ空ケテ
  置ク筈ガナイノダカラ自然ニ空閑地利用ガ
  出來ル、難カシイ數學デモ解キ方ニ依ツテ
  中々巧ク行カヌ、解キ方ガ巧ク行ケバ巧ク
  行ク、二ト二ト寄セテ四ヲ掛ケルト云フノ
  ヲ、二ニ四ヲ掛ケテアト二ヲ寄セタノデハ
  數學ノ答ヘガ違ツテ來ル、日本ノ農村ノ此
  ノ零細ナ耕地、高率小作料、斯ウ云フ現實
  ノ農村ニ對シテ打ツベキ手ハ、先ヅ大膽ニ
  百萬町步以上ノ自作農創定ト云フモノヲ一
  擧ニ打ツテ、ソレカラ土地改良へ、空閑地
  利用ニト斯ウ云フ形ニ進ンデ行ツテ初メテ
  我ガ國ノ農業政策ト云フモノガ「レール」ニ
  乘ルト考ヘルノデアリマス、農林當局ノ土
  地改良ニ對スル所ノ熱意ハ、斯樣ナ努力ヲ
  サレテ居ルニ拘ラズ、自作農創定ニ對シテ
  ハロバカリデアツテ、其ノ實ノ伴ハナイノ
  ハ果シテ如何ナル所ニ根據ガアルノデアリ
  マスカ、之ヲ一ツ明確ニ此ノ席上ニ於テ承
  ツテ見タイト思ヒマス

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• 093・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　我々ト致シマシテハ、ヤ
  ハリ今ノ御話ノ自作農地ノ方ガ小作地ヨリ
  モ-結局耕作者ノ努力ガ其處ニ加ハルト
  云フコトニナルノデアリマスカ、生產性ガ
  高イ結果ニナツテ居ルト云フヤウナコトモ
  大體了承致シテ居リマスルシ、其ノ故ニコ
  ソ〓糧增產ノ見地カラモ玆ニ自作農ノ創設
  ヲ促進シタイト考ヘテ居ル譯デアリマス、
  併シ是ハ色々御考ヘモアル譯デアリマシテ、
  御說ノヤウナ御考ヘノ仕方モアラウト思フ
  ノデアリマスガ、我々トシマシテハ、昨年
  來ノ手ノ打チ樣ノ手順トシマシテハ、ナハ
  リアノ場合土地改良ヲヤリマシテ、サウシ
  テ推進シテ行クト云フコトガ順序トシテ然
  ルベキデアツタト云フ風ニ考ヘテ居ル譯デ
  アリマス

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• 094・平野力三

  ○平野委員　是ハドウモ相當ニ御問ヒヲ
  致シマシテモ、結局當局ノ自作農創定ト云フ
  問題ニ付テノ考ヘ方ハ、私共ノ考ヘマス程具
  體的ニ御考ヘニナツテ居ラヌノデアリマス、
  隨ヒマシテ私ハ多少私ノ當局ニ對スル希望、
  注意ト云フヤウナコトニナツテ質疑カラ
  離レル傾向ガアルヤウナ氣ガスルノデアリ
  マスガ、此ノ食糧政策ノ現段階ニ於テ、私
  共ガドウシテモ農林當局ニ要望致シマスコ
  トハハツキリシタル農業政策ノ上ニ於ケ
  ル根本方針ト云フモノガ確立シテ居ラナケ
  レバナラヌト云フ點ヲ深ク考ヘマスノデ、
  今一般當局ニ申述ベテ見タイ、ソレハ單ニ
  土地問題ガ曖昧デアルト云フコトハ-土
  地問題バカリデハアリマセヌ、肥料ノ問題
  デモ農機具ノ問題デモ、集荷カラ配給ニ至
  ル凡ユル重要ナル農業政策ノ場面ニ觸レマ
  シテ、結局何處カニ一ツノ弛ミト好イ加減
  ナ所ガアリマスナラバ、政策ト云フモノハ
  徹底シナイ、今日農村ノ眞中ニ立ツテ本當
  ニ農民ノ氣持ト云フモノヲ氣持トシテ日本
  ノ農業政策ヲ考ヘマス時ニ、凡ユル問題モ
  必要デアリマセウガ、先ヅ土地制度ノ改革
  位ハ之ヲ斷行シテ、ソレカラ次ノ問題ニ移
  ルト云フヤウナ農商省ノ陣營デナケレバ、
  私ハ十分ナル透徹ヲシナイト考ヘルノデ、
  茲ニ甚ダ十分ナル材料デハナイヤウデハア
  リマスガ、私ハ歐米ニ於ケル戰時〓糧政策
  ト云フ書物ヲ見テ居リマシテ、第一次「ヨー
  ロッパ」大戰當時ニ行ヒマシタ「ドイツ」ノ農
  業政策ト「フランス」ノ農業政策ノ中ノ農地ニ
  關スル事項ト云フ部分ヲ讀ムニ至リマシテ、
  ハタト考ヘサセラレル部分ガアリマシタノ
  デ、是ハ農政協會ト云フ所デ發行シテ居ル
  一ツノ資料デアリマスガ、古イモノデハア
  リマスガ、私ハ多大ノ「ヒント」ヲ得マシタノ
  デ、一ツ玆ニ御紹介ヲ致シマシテ、當局ニ考
  ヘテ貰ヒタイ、其ノ中ノ「フランス」ノ方ヲ讀
  ンデ見マスト、此ノ前ノ戰爭ニ於テハ「フラ
  ンス」ハ勝ツタ、其ノ勝ツタ方ノ「フランス」ノ
  土地政策ヲ見マスト、斯ウ云フコトガ書イ
  テアリマス「開戰ト共ニ、一旦激減セシ耕地
  ハ一九一六年ニ至リ漸次增セルニ至リマシ
  タガ、種々ナル原因ニ依リ從來耕地タリシ
  モノニシテ無爲ニ放置セラルヽモノ尙ホ多
  ク加之假令耕地セル處ト雖モ利用ハ戰前
  ノ如ク集約的ナラザルノ憾ミアリ、農務大
  臣ハ此ノ點ニ備ヘンガ爲メ、一九一六年二
  月二日大統領令ヲ以テ各町村ニ農事委員會
  ヲ設置セリ、而シテ本委員ニ對シ耕地ヲ所
  有スル者ノ委託ヲ受クルト否トニ拘ラズ、
  其ノ土地ヲ管理耕作スルノ權限ヲ附與セリ」
  是ハ斯ウ云フ古イ資料デアリマスカラ、解
  釋ノ仕樣ニ依ツテハ色々ニナルノデアリマ
  スガ、私ハ耕地ノ所有者ノ委託ヲ受クルト
  否トニ拘ラズ、生產力ノ上ツテ居ラナイ地
  面ニ對シテハ、此ノ大統領令ニ依ツテ作ツ
  タ農事委員會ト云フモノガ管理耕作ノ權利
  ヲ有スル、是ハ私ガ土地問題ノ專門的ナ目
  カラ見マスト、所有權ト云フモノニ對シテ
  ハ相當大キナル制限デアリマス、所有者ノ委
  託ヲ受クルト否トニ拘ラズ農事委員會ト云
  フモノガ之ヲ管理スル、一九一六年ト云ヘ
  バモウ「ヨーロッパ」戰爭ノ終リ頃デアリマ
  ス、「ドイツ」ノ方ヲ見マスト、ドウモサウ云
  フ部分ガ非常ニ緩ンデ居ル、「聯邦參議院ハ
  一九一四年十月二十八日命令ニ依リ沼澤地
  及ビ荒蕪地ノ改良ヲ目的トスル土地改良組
  合ヲ設立シ之ニ依リ土地改良ニ依ル耕地ノ擴
  張ヲ圖レリ」ソレカラ休閑地ノ利用「國內ニ於
  ケル休閑地ヲ耕作シ燕麥、馬鈴薯、「ライ」麥、
  豆類ヲ栽培スルヤウ農業者ニ勸〓セリ」國有
  林ノ利用「「プロシャ」農務大臣ハ國有林ノ一
  部ヲ開放シテ附近ノ農家ニ豚ノ放牧ヲ許可
  セリ」コンナ程度デアリマス、是ハ餘リ明確ナ
  ラザルヤウナモノデアリマスガ、私ガナゼ此
  ノ材料ヲ當局ニ言フカト申シマスト、農商
  當局ガ土地ノ所有者ノ所有權ト云フモノニ
  對スル考ヘ方トシテ、其ノ所有權ニ觸レル
  コトニ對シテ非常ニ徹底シテ居ラヌ、是ハ
  前議會ニ於テモ私ガ申上ゲタノデアリマス
  ガ、土地所有權ノ中ニ於テ本當ノ耕作者ガ
  所有ヲスル土地所有權ニ對シテハ徹底的ニ
  擁護シナケレバナラヌ、是ハ家產政策ノ形
  ヲ以チマシテ、所謂自作農地ト云フモノハ
  永久ニ自分ノ家產トシテ行ケル位ノ土地ノ
  所有權ヲ-是ハ國家ガ相當補償スル必要
  ガアルガ、生產トハ關係ノナイ、生產力ヲ
  低下セシメテ居リマスルヤウナ所有權ニ對
  シテハ、農地調整法ヤ、國家總動員法ヤ、
  或ハ獨立ノ法律ヲ一本御出シニナツテ、此
  ノ所有權ニ對シテ少シ「メス」ヲ入レル位
  ノコトヲ農商當局ガ考へテ居ラレタナラ
  バ-是ハユル襌ニ考ヘテ居ラレタノデハ土
  地問題モ解決シナイシ、〓糧增產モ不徹底
  ニ終ルシ、戰ニ勝ツ戰時農業體制トシテ十
  分ト云フ譯ニ參ラヌ、私ハ此ノ點ニ於キ
  マシテ單ニ玆ニ百五十萬圓ノ費用云々ダケ
  ヲ初メノ質疑ノ議題トシテ論ヲ進メテ參ツ
  タノデハアリマスガ、根本的ニ農商當局ノ
  此ノ時局ニ對スル心構ヘト云フモノヲ一步
  進メテ見マスナラバ、此ノ土地問題ノ根本
  解決ト云フ點ニ付テ、更ニ一段ト徹底シタ
  ル所ノ信念ノ上ニ立ツテ、全農民ノ前ニ其
  ノ態度ヲ明カニセラルヽ必要ガアルノデハ
  ナカラウカ、私ハ此ノ問題ニ付テ二三ノ地
  方長官ニモ會見致シマシタガ、先程吉田、
  前川兩委員モ言ヒマシタヤウニ、當局ノ肚
  ガ本當ニ据ハツテ居ラヌノデハ、土地ノ所
  有者ニ對シテ自作、農民ニナレト言ツテ勸
  奬スルニシテモ、其ノ勸奬ノ肚ガ決マツテ
  來ナイ、是ハ事實デアリマス、願ハクバ農
  農商當局トシテハ、更ニ諄イヤウデアリマ
  スガ、此ノ自作農創定ト云フ問題ニ付テ今後
  更ニ一段ト努力ヲセラレル所ノ用意アリヤ
  否ヤト云フコトニ付テ、再度御答辯ヲ要求
  シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=94

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• 095・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農業生產ノ指導ナリ、或
  ハ農村ノ將來ニ亙ツテノ一ツノ指針トシマ
  シテ、今我々トシテ誤リナキ方向ニ進ンデ
  居ルト云フコトヲ考ヘテ居ル譯デアリマス、
  所ガ其ノ緩急ノ度合ニ付キマシテハ、例
  バ昨年以來ノ土地改良ノ關係トカ云フコト
  ニ付テ先程モ御話ガアリ、一應御答ヘヲ致
  シタノデアリマスガ、一ツノ理論トシテ立
  テマス場合ニ、何レガ重要ナリヤト云フコ
  トニナリマスト、觀點ニ依リマシテ多少違
  ヒマスケレドモ、或ハ五年乃至六年位ノ耐
  久力シカナイヤウナ土地改良ヨリハ、自作
  農創設ク方ガ重要ナリト云フ風ニモ考ヘラ
  レル譯デアリマス、併シナガラ同時ニ此ノ
  戰時下ノ荒立ツタ情勢ノ下ニ於ケル食糧增
  產ヲ推進シテ行ク上ニ、政府ハ固ヨリノコ
  トデアリマスガ、國民全體ニ亙ツテ一ツノ
  機運ノ上ニ乘ツテ、最モ實際的效果ノ上ル
  ヤウニ我々トシテハ狙ツテ參ラヌケヘバナ
  ラヌノデアリマシテ、サウ云フ觀點カラ私
  モ先程申上ゲマシタヤウニ、前ノ通常議會
  ニ於テ此ノ自作農創設ニ付テノ資金融通ノ
  方法ヲ改訂致シマシテ、ト同時ニ年々ノ自
  作農創設ノ數量的計畫ヲ增大致シタヤウナ
  施設ヲ講ジタノデアリマシテ、サウ云フコ
  トガ本年度ノ初頭ニ於テ實行ニ移サレタ譯
  デアリマスガ、移サレタカト思フト直グソ
  レヲ改訂シテ、コンナ方法ヲ執ルト云フ行
  キ方ハ、實際問題トシテ事實執レヌ譯デモア
  リマスシ、又世間ノ全般的機運ト致シマシ
  テモ旨ク狀況ニ嵌ツタ增產ノ施策ヲ茲ニ講
  ジテ來ナケレバナラヌ譯デアリマス、尤モ
  機運々々ト言ヒマスト、如何ニモ自動的ニ
  右顧左眄スルヤウニ御感ジニナルカモ知レ
  マセヌガ、決シテサウ云フ意味デナク、ソ
  コニ自ラナル流レノ上ニヤハリ我々トシマ
  シテ一ツノナサントスル所ヲ致シマス上ニ、
  斯ウ云フ事態ノ時デモアリマスノデ、最モ
  效果的ノコトニ進ンデ行カナケレバナラ
  ヌ、斯樣ナ觀點カラ致シマシテ、御承知ノ
  ヤウニ、從來段々ノ手順ヲ履ンデ參ツタヤ
  ウナ譯デアリマス、今度御承知ノヤウニ戰
  時農業要員ノ制度デアルトカ、其ノ他種々
  土地ノ高度利用ノ方策トカ、色々ノモノト
  相關聯致シマシテ、更ラ自作農創設ニ付テ
  ノ一層ノ促進ト云フコトヲ、玆ニ新シク又
  取上ゲテ進ンデ參ツタヤウナ譯デアリマ
  ス、之ニ付キマシテハ、色々御意見ニ依リ
  マシテ何レヲ先ニシタ方ガ宜カツタトカ、
  色々アラウト思ヒマスケレドモ、私ノ方ト
  シマシテハサウエラク計畫的ニ斯ウ云フ風
  ニ來夕譯デハアリマセヌガ、先ヅ〓〓是マ
  デ來マシタ、昨年來ノ物ノ手順ト云フモノ
  ハ、正シク然ルベキ手順デアツタト云フ風
  ニ、自分達ノヤツタコトニ付テヾハアリマ
  スケレドモ、考ヘテ居ルヤウナ次第デアリ
  マス、今後ニ付キマシテハ、勿論茲ニ是ダ
  ケ國家ガ補給シテヤルコトデアリマスノデ、
  我々トシマシテモ之ヲ愈、、效果アルベク實
  現シテ參リタイト云フコトヲ念願シテ居リ
  マス、昨年ノ春ノ時ハヤハリ土地ノ價格ノ
  問題ニ付テ彼此レト愈〓、行セントスル時
  ハ色々論議ガアツタノデアリマシテ、サウ
  云フ論議ニ付テハ我々オ互ヒニ御尤モニモ
  思フモノデアリマスカラ、茲ニ推進シテ行
  クノニ、中々難カシイ實質的ノ事情ガアツ
  タ譯デアリマス、今囘其ノ事ニ付キマシテ
  ハ此ノ程度ニ解決ヲ見タト我々ハ感ジテ居
  ルノデアリマス、尤モ今ノ平野委員ノ御話
  ノヤウニ此ノ位ノ程度ノコトデハ駄目ダト
  云フコトガ或ハアルカモ知レマセヌガ、我々
  トシテハ此ノ程度ニ促進方策ヲ新ニ立テ
  マシテ、サウシテ協力ヲ求メテ行クナラバ、
  相當ノ效果ヲ上ゲルデアラウト云フコトヲ
  感ジテ居ルヤウナ譯デアリマス、サウ云フ
  ヤウナ趣旨ヲ以テ今後之ヲ推進シテ行キタ
  イト云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=95

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• 096・平野力三

  ○平野委員　先程ノ百五十萬圓ノ說明ハ出
  來マセヌカ

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• 097・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先程平野委員ガ御質問ニ
  ナリマシタ百五十萬圓ノ豫算ヲ立テマシタ
  基礎的ノ考ヘ方ニ付テ、一通リ申上ゲタイ
  ト存ジマス、自作農創設ノ計畫面積ハ、先
  程モ申上ゲマシタヤウニ、四萬五千町步デ
  アリマス、豫算ノ上デハ之ヲ大體田ト畑ト
  半々ニ見テ居リマス、畑ノ方ハ、是モ御承
  知カト思ヒマスガ、一反當リ九十圓ト云フ
  コトヲ見込ンデ居リマス、ソコデ之ニ付テ
  假ニ今田ニ付テハ百五十圓、畑ニ付テハ九
  十圓ト云フモノヲ玆ニ補給スルト致シマス
  ト、五千四百萬圓ト云フコトニナル譯デア
  リマス、是ハヤハリ資金ノ融通ノ形ヲ以テ
  行ハレルト見マシテ、最初ノ年ハ實行上ハ
  半年分位シカ實行サレナイ、平均シテ昭和
  十九年度ノ半バカラ行ハレルト見ル、遲ク
  ナルモノモ早イモノモ色々アリマセウカラ、
  平均シテ年度ノ半バカラ始マルト見マシ
  テ、半年分ノ利子ガ考ヘテアルト云フ風ニ
  御覽下サレバ宜シイノデゴザイマス、御承
  知ノヤウニ自作農創設ノ資金融通ノ場合ハ、
  初年度ハ利子ヲ拂フダケデアリマシテ据置
  クノデアリマス、元金償還ト云フモノハ其
  ノ後ニナツテ、少クトモ次年度以降ニナツ
  テカラ起ツテ來ルモノデアリマス、サウ云
  フヤウナ關係カラシマシテ、今ノヤウナ計
  算ヲズツト盛ツテオイデニナリマスト百二
  萬六千圓ト云フモノガ補助金トナル譯デア
  リマス

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• 098・平野力三

  ○平野委員　ソレハ五千四百萬圓ノ利子デ
  スカ

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• 099・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　計算上ハサウデス、ソレ
  デ序ニ利息ヲドノ位見込ンデ居ルカト云ヒ
  マスト、三分八厘デアリマシテ、五千四百
  萬圓ノ半年分ノ三分八厘ノ利息ガ、丁度百
  二萬六千圓ニナル筈デアリマス、計算シナ
  イトハツキリ分リマセヌガ、間違ヒナイト
  思ヒマス

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• 100・平野力三

  ○平野委員　サウシマスト、追加豫算ノ百
  五十萬圓ト云フノハ、永久ニ五千四百萬圓
  ノ利子ト云フ譯デスネ

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• 101・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　追加豫算ハ百五十七萬幾
  ラニナツテ居リマシテ、其ノ中ニハ市町村
  農地委員會ノ活動補助金ト云フヤウナ金モ
  相當ニ組ンデ居リマス、サウシテ今申シマ
  シタ費用ノ點ハ、此ノ活動補助金ナドハ除
  キマシテ、今ノ土地其ノモノニ對スルモノ
  ハ百二萬六千圓ニナツテ居リマス、ソレハ
  今御話ヲシタヤウナ計算ノ下ニ出テ來タ數
  字デアリマス、デアリマスカラ勿論之ニ付
  テハ豫算外國庫負擔ノ契約ガ關聯シテズツ
  ト續イテ居ル譯デス、勿論年次ニ從ツテ此
  ノ金額ハ殖エテ參リマス、隨テ今年創設ス
  ル四萬五千町步ニ付テノ補助ハ、今年ヨリ
  ハ來年ノ方ガグツト殖エマス、後ハ大體均
  シテ行ク譯デス、併シ來年更ニ又創設スル
  モノガアレバ、ソレハ是ト又同ジ金ガ加ハ
  ツテ行ツテ、段々膨ランデ行ク譯デアリマ
  ス

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• 102・平野力三

  ○平野委員　結局五百圓ノ土地ノ賣買ヲ行
  ツタ時ニ、耕作者側タル小作人ハ五百圓ヲ
  公定價格デ出ス、地主ハ其ノ五百圓ニ百五
  十圓ヲ加ヘタ六百五十圓ガ手取リトナル、
  斯ウ云フコトニ實際ノ場合ハナルノデアリ
  マスカ

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• 103・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　色々ノ場合ガアルト思ヒ
  マスガ、大體サウ云フコトデアリマス

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• 104・平野力三

  ○平野委員　其ノ百五十圓ノ利子ノコトハ
  分リマシタガ、其ノ百五十圓ハ何時ニナツ
  タラ決濟出來ルノデスカ

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• 105・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハマダ確定シタ案デハ
  アリマセヌケレドモ、大體一應假ニ考ヘテ
  居ル考ヘ方トシテハ斯ウ云フコトヲ考ヘテ
  居ルンデス、是モ一ツノ方法ダト思フノデ
  アリマスガ、小作人ガ買フ其ノ範圍ノ價格、
  之ニ付テハ自分ノ金ヲ拂ツテモ宜シ、低利
  資金ヲ借リテモ宜シ、サウシテソレハ小作
  人トシテ地主ニ拂フ、ソレト一緒ニ農業團
  體ハ其ノ差額ノ百五十圓ト云フモノヲ何處
  カラカ融通ヲ受ケテ借リテ來テ今ノ小作人
  ガ拂ハウトシテ持出シテ來夕金ト一緒ニシ
  テ拂フ、地主ハソレヲ受取ル、小作人ノ借
  リタ分ニ對シテハ從來通リノ償還ヲズツト
  ヤツテ行ク譯デス、從來ヤツテ居ルト同ジ
  ヤウナ或ル程度ノ利子ノ補給モシマス、同時
  ニ農業會ナラ農業會ガ中間ニ介在シテ、サ
  ウ云フコトヲヤリマシタ分ニ付キマシテハ、
  政府ガ今ノ償還金ニ對スル補給ヲズツトヤ
  ツテ行ク、デスカラ農業會トシテハ事務ハ
  執ラナケレバナリマセヌガ、償還ニ付テハ
  政府カラ補給ヲ受ケマスカラ、何ノ心配モ
  ナイ、斯ウ云フヤリ方ヲヤレバソコニ今申
  上ゲマシタ差額ニ付テノ計算ナドモ非常ニ
  ハツキリシテ來ルト思ヒマス、一應斯ウ云
  フ風ニ考ヘル方モアル譯デアリマス、細カイ
  點ニ付キマシテハ尙ホ財務當局トモ相談シ
  マシテ、實行的ノモノヲ決メタイト思ツテ
  居リマス、今御話シマシタヤウナコトデ筋
  ガ立ツト思ヒマス

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• 106・平野力三

  ○平野委員　結局其ノ百五十圓ト云フモノ
  ハ農業團體カラ借リルナリ、或ハ低利資金
  ヲ借リルナリシテ、其ノ利子ノ心配ハナイ
  ガ、小作人ガ永久ニ借リルヤウニナルト思
  ヒマスガ、サウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=106

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• 107・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　小作人ガ必ズシモ借リル
  ノデハナクシテ、小作人ハ自分ノ金モ出シ
  テ買フノデス、其ノ場合ニ農業會ガ介在シテ
  金ヲ出ス、ソレハ其ノ農業會ノ自己資金デ
  ヤルモノモアルカモ知レマセヌガ、大體金
  ヲ借リテ農業會ガサウ云フ斡旋ヲヤリマス
  カラ、ソレニ對シテ政府ハ契約ヲ結ンデ必
  ズ補給ヲシテヤル、斯ウ云フコトニナル譯
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=107

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• 108・平野力三

  ○平野委員　ドウモハツキリハ致シマセヌ
  ガ、ソレ以上聽キマシテモ要領ヲ得ナイヤ
  ウデゴザイマスシ、時間モナクナリマシタ
  カラ次ノ問題ニ移リタイト思ヒマス
  是ハ簡單ニ聽キマスガ、以上ノ點ニ於テ
  大體當局ノ自作農ニ對スル方針ノ問題モ私
  カラ申シマスト十分デハアリマセヌガ、ソ
  コデ其ノ事前ノ手段トシテ此ノ際小作料ヲ
  金納化ニ全國的ニ改メル、斯ウ云フ處置ヲ
  御執リニナル意思ガチイカ、是ハ私ハ實ハ
  小作料ノ金納化ト云フヤウナコトヲ行フ以
  前ニ土地制度ノ根本改革ヲ行フベキモノデ
  アルト云フ意味ニ於キマシテ、小作料ノ金
  納化ト云フコトハ私トシテハ今マデ餘リニ
  多クハ主張シテ居ラヌノデアリマス、併シ當
  局ガ只今御說明ノヤウニ非常ニ生緩イ、長
  年掛ツテ自作農ニシテ行クト云フ方針デア
  ルナラバ、現在ノヤウナ情勢ニ於テハ小作料
  ノ金納化ヲドウシテモシナケレバナラナイ、ト申
  シマスノハ、昨年ノ米價ノ改正ノ時ニ於キ
  マシテモ、私ノ意見トシテハ生產奬勵金ダケデ
  宜カツタラウト思ツタノデアリマス、所ガ米
  價ガ三圓上リマシタ、其ノ米價ガ三圓上ツ
  タト云フコトニ依ツテ、自作農奬勵ニ對シテ
  ドレダケ大キナ障碍ガアツタカト云フコト
  ハ、私ガ說明スルマデモナク、當局モ十分御
  〓究デアリマセウ、現在ノ地主ハ如何ニ考ヘテ
  居ルカト申シマスト、小作料ハ大體ニ於テ
  「ストップ」令ニ依ツテ「ストップ」シテ居ル、
  併シ小作料ノ率ハ一石ナラ一石ト決マツテ
  居ツテモ、米價ガ段々上ルノダ、斯ウ云フ考
  ヘ方ガアリマスレバ、土地ノ收益ト云フモ
  ノハ段々多クナルト云フコトニナルカラ、
  土地ヲ手放スト云フ意思ハナクナル、ソコ
  デ私ハサウ云フ金納ト云フヤウナ形ニシテ
  置イテカラ地主ガ賣ルト云フヤウナコトデ
  ナク、土地ヲ賣レト云フ法律一本デ行クノ
  ガ日本ノ現實ニ於テハ正シイト思ツタノデ
  アリマスガ、只今縷〓御說明ノヤウナ態度
  デアルナラバ、此ノ際日本ノ現狀ニ於テ執
  ラルヽ手段ハ、小作料ノ全面的金納、是ハ
  ドウシテモ御考ヘニナラナケレバ理窟
  ガ合ハヌ、現ニ既ニ米價ニ對シテハ此ノ議
  會ニ於テモ相當議論ガアツタ、或ハ今年ノ
  四月ノ米價ノ改訂ニ當ツテドウ云フコトニ
  ナルカ、今豫斷ヲ許サヌ現狀ニアルノデア
  リマス、此ノ際當局トシテハ小作料ノ金納
  化ト云フコトヲ行ハレル所ノ決心ガアルカ
  ドウカ
  モウ一ツハ、若シ此ノ金納化ヲマダ行フ
  コトガ出來ナイト云フ御答辯デアルトスルナ
  ラバ、其ノ次ニハ所謂適正小作料ヲ更ニ徹
  底シテ、現在ノ農地公定價格ノ上ニ於テ現
  在ノ小料作ハ幾ラガ相當カト云フ、本當ニ
  根本的理論ノ上ニ立ツタ適正價格ヲ御決メ
  ニナル御考ヘガアルカドウカ、此ノ二點ヲ
  御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=108

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• 109・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　自作農創設ニ關聯シテ、
  小作料ノ金納化ノ考ヘガアルカト云フ御話
  デアリマスガ、今別段左樣ナコトヲ考ヘテ
  居リマセヌ、ソレカラ又之ニ關聯シテノ適
  正小作料制度ヲ一層徵底化サセルヤウナコ
  トヲ考ヘテ居ルカト云フ御話デアリマスガ、
  ソレニ付テモ特ニ今左樣ナコトヲ相談致シ
  テハ居リマセヌ、要スルニ此ノ關係ト云フ
  モノハ非常ニ微妙ナ關係ニアルノデアリマ
  シテ、現ニ或ル地方ノ實例トシテ私ノ聽ク所
  デアリマスガ、小作料ガ下ルト今度ハ逆ニ小
  作人ノ方カラ自作農ニナリ手ガナイ、最近
  モ私ハ或ル地主ニ聽イタノデアリマスガ、
  此ノ人ハモウ自分ノ小作人カラ希望サヘア
  レバ、何時デモ土地ハ賣ル、小作人ノ希望
  スル場合ハ自分ハ全部賣ツテシマフノデア
  ルガ、併シ買ハナイカト言ツテモ、中々買
  ツテ吳レナイト云フコトヲ言ツテ居リマシ
  タヤウナ譯デアリマス、ソレ等ノ關係ハ極
  メテ〓妙デアリマシテ、自作農創設ノ爲ニ
  今小作料問題ヲ餘リ論議シテモ役ニ立タヌ
  ノデハナイカト私ハ思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=109

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• 110・平野力三

  ○平野委員　ドウモサウ云フ御答辯ヲ願フ
  ト、モウ少シ議論ヲ進メナケレバナラヌコ
  トニナリマス、現實自作農ガ一番生產力ガ
  高イコトハ論ヲ俟タヌノデアリマスガ、其
  ノ次ハ小作料ノ高イ所ト小作料ノ安イ所ニ
  於テ生產力ガドウカト言ヘバ、小作料ノ安
  イ所ガ生產力ガ高イ、ソレカラ最近農民離
  村、農業抛棄ト云フ問題ガヤハリ一ツノ大
  キナ農村社會問題ニナツテ居ルノデアリマ
  スガ、農民離村、農業抛棄ト云フモノハ、
  高率小作料ニ依ルコトハ說明ヲ要シナイ、
  現ニ此處ニ一ツ材料ヲ持ツテ居リマス、是
  ハ曾テ新聞ニモ出テ居ツタト記憶致シマス
  ガ、日本ノ一番米作ノ中心地デアル西蒲原
  郡中蒲原郡、北蒲原郡、南蒲原郡、此ノ
  四蒲原郡ニ對シテ、新潟縣農會ノ調査ニ依
  ルト、小作料ノ三〇%ノ所ハ約二石九斗三
  合三二%ニナルト二石六斗五升、三五%
  ニナルト二石五斗九升、三六%ニナルト二
  石五斗三升、斯ウ云フ風ニ小作料率ノ高イ
  所ニ行ク程生產ガ低下ヲ致シテ居ルト云フ
  コトガ新潟縣農會ノ調査ニ於テモハツキリ
  示サレテ居リマスガ、私ガ說明スルマデモ
  ナク、農商當局ハ旣ニ能ク御承知ノ統計デ
  アリマス、隨テ食糧增產ト云フ角度カラ見
  テモ、小作料ニ對スル檢討ト云フモノガド
  ウシテモ必要デアリマス、同時ニ又此ノ際
  當局ニ御考ヘ願ハナケレバナラヌ問題ハ
  單ニ今囘百五十圓ノ補助金ヲ出スコトニ依
  ツテ、自作農奬勵ノ問題ヲ考ヘテ居ラレル
  ヤウデアリマスガ、世間動モスレバ、之
  ヲ以テ政府自ラガ公定價格ヲ蹂躪スルモノ
  デハナイカ、公定價格ト云フモノヲ決メテ
  置イテ、其ノ公定價格ト云フモノハ安過ギ
  ルト云ツテ、百五十圓ノ補助ヲ兎ニ角出ス
  ト云フ行キ方ハ、政府自ラガ公定價格ヲ蹂
  躪スルモノニアラズヤト云フ議論ガアル、
  是モ自作農創定ノ爲ニ玆ニ此ノ問題ガ進メ
  ラレテ居ルノデアリマスケレドモ、私ハ日
  本ノ農政ト云フモノヲ通觀シテ見ル時ニ、
  米價ガ一石五圓デアツテモ小作料ガ一石、
  米價ガ十圓ニナツテモ、三十圓ニナツテモ、
  小作料ハ一定ノ一石ナラ一石ノ基準ヲ置イ
  テ今日マデ日本ノ小作制度ハ來タノデアリ
  マス、此ノ際小作料ノ根本的ナ問題ハ、折
  角當局ガ土地ノ公定値段ト云フモノヲ法制
  ヲ以テ決メラレタノデアルカラ、其ノ公定
  値段カラ割出シテ、今日國債ヲ持タセバ三
  分五厘ダガ、之ニ對シテ一體ドノ位ガ相當
  カト云フコトノ議論ヲ進メラレテ、玆ニ土
  地ニ對スル値段、小作問題、所謂土地制度
  ノ問題ニ對スル根本的ナ考ヘ方ヲ御持チニ
  ナルト云フコトガ當然デアリマシテ、斯ウ
  云フ重大ナ問題ニ付テ、基本的理論ト云フ
  モノヲヨイ位ニ胡麻化シテ、唯一、二ノ氣
  分ヤ、一、二ノソコラノ雜然タル雜音ニ依
  ツテ自作農創定問題、土地ノ價格問題、小
  作料ノ問題等ニ付テ漫然トシテ居ルヤウナ
  コトデアツテハ、農務當局ノ農政問題ニ對
  スル方針ニ、農民諸君ヲシテ信賴セシムル
  ニ足ラヌ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、是
  ハ議論ニナリマシタノデ、之ニ對スル御答
  辯ハ今此處デ承ラナクテモ宜シイノデスガ、
  少クトモ全面的ナル小作料ノ改正、斯ウ云
  フ問題ニ付キマシテハ、自作農創定ト共ニ
  十分ナル御考慮ヲ願ヒタイト云フコトヲ一
  言申上ゲマシテ、此ノ點ノ農商次官ニ對ス
  スル質問ハ止メマシテ、殘餘ノ問題ハ農商大臣ニ
  御伺ヒスルコトニ致シマス
  次イデ農商次官ニ御尋ネ致シマス問題ハ、皇
  國農村ニ對スル問題デアリマス、昨年三百三町
  村ノ皇國農村ヲ建設サレマシテ、是ガマダ一年
  ニハ及ビマセヌケレドモ、。數箇月ノ間色々ナ
  事業ガ行ハレタノデアリマス、此ノ三百箇
  町村ニ對シテ補助ヲサレタ補助金ハ一村大
  體平均シテ約一萬圓程デアルト記憶致シマ
  ス、ソレカラ此ノ、三百箇町村ニ對シテハ、
  土地ノ交換分合或ハ自作農創定ノ促進或ハ
  其ノ他指定町村內ニ於ケル所ノ種々ナル事
  業、斯ウ云フモノヲ御命令ニナリ、又之ニ對ス
  ル所ノ施設ヲサレテ居ルト思ヒマスガ、大
  體ニ於ケル是等ノ補助金ノ使用方法、及ビ
  皇國農村內ニ於ケル自作農創定、交換分合
  等ノ實績ガドノ程度マデ擧ツテ居リマス
  カ、其ノ實情ニ付テ御說明願ヒタイト思ヒ
  マス

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• 111・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農村確立促進ニ關スル事
  業ハ、御承知ノヤウニ本年度カラ開始致シ
  マシタガ、其ノ間昨年ノ春以來、食糧ニ關
  スル應急增產ノ問題ガアリマシタリ、彼此
  レ致シマシタノデ、多少初年度トシテノ事
  業ノ發足ガ遲レタヤウナ譯デアリマスガ、
  慥カ昨年ノ九月デアリマシタカ、此ノ三百
  三町村ノ指定ヲ致シ、其ノ後之ニ付テ此ノ
  新春初頭ニ、其ノ標準農村ノ指導者ノ方々
  ノ協議ヲヤリマシタヤウナ譯デアリマシ
  テ、マダ實ヲ言ヒマスト、ドノ位ニ進ンデ
  居ルカト云フコトニ付テノ資料ヲ持合ハシ
  テ居リマセヌ、或ハ後刻調査致シマシタラ
  何カ或ル程度ノモノヲ申上ゲルコトガ出來
  ルカモ知レナイト思フノデアリマス、其ノ
  點ハ左樣ナ狀況デアリマスノデ、御承知ヲ
  願ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ先程來自作農創設ニ關聯シテ小
  作料ノ彼此レノコトヲ今申上ゲルノハ餘リ
  意味ハナイト云フヤウナコトヲ私ガ申シマ
  シタノハ、本質トシテ意味ガナイト云フ意
  味デハナイノデアリマシテ、要スルニ私共
  ハ極メテ現實的ニ之ヲ圓滿ニ實行シテ行キ
  タイト云フコトヲ考ヘテ居リマスノデ、其
  ノ關係カラ申シマシテモ、此ノ際左樣ナ點
  ヲ論議スルコトガ、私共ノ立場カラ申シテ、
  此ノ事業ノ圓滑ナル遂行上、此ノ際トシテ
  論議スルコトハ意味ガナイヤウニ思フト申
  シタヤウナ次第デアリマス、其ノ點ハ一ツ
  御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 112・平野力三

  ○平野委員　本年モ三百箇町村ノ皇國農村
  ノ指定ヲサレルノデアリマスガ、一體此ノ
  指定セラレル場合ニ於ケル基本的條件ト言
  ヒマスカ、ドウ云フ資格ノ町村ヲ以テ皇國
  農村トセラレテ居ルカ、聞ク所ニ依レバ、
  其處ノ指導者ガ自分ノ村ハ全部自作農ニス
  ルカラト云フヤウナコトヲ引受ケテ、皇國
  農村ノ指定ヲ受ケテ居ル、斯ウ云フ話ヲ可
  ナリ各所ニ於テ聞イテ居リマスガ、無論ソ
  レバカリデハアリマスマイガ、前年ノ三百
  町村ノ實績ガ、ドウナツテ居ルカハ、今明
  瞭ニ言ヘヌト云フ御話デアリマスガ、是ハ
  適當ナ機會ニ御調ベノ上發表願ヒタイト思
  フノト、改メテ昭和十九年ニ指定セラレル三
  百箇町村ノ指定ト云フモノハ、ドウ云フ資
  格ノ町村ヲ基準トシテ之ヲ指定セラレルノ
  デアルカ、指定ノ基準ヲ明カニ願ツテ置キ
  タイト思ヒマス

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• 113・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　今御質問ノ中ニ皇國農村
  何百箇町村ト云フ御話ガアリマシタガ、是
  ハ標準農村ノ趣旨デ仰シヤツタコトト思ヒ
  マック、皇國農村確立ト云フコトハ、要スル
  ニ全國農村ノ確立ノコトヲ意味スル譯デア
  リマシテ、三百町村云々ハ我々標準農村ト
  呼ンデ居リマスノデ、其ノ點ハ御諒承ヲ願
  ヒタイト思ヒマス、選定ノ基準ト云フモノ
  ハ、ドウセ來年度〓々ニ實行ニ移ス場合ニ、
  或ハ本年度ノ經驗ヲ斟酌シマシテ、多少何
  カ考ヘ直ス點モアルカモ知レマセヌガ、大
  體初年度ヤツタバカリデモアリマスカラ、
  來年度ノ指定ハ、ヤハリ今年度ト大體同ジ
  ヤウナ風ニ行クノヂヤナイカト思ヒマス、
  此ノ標準農村ノ事業ニ付テハ、成タケ村ノ
  實際ノ話合ヒノ上ニ仕事ヲヤラセルヤウニ
  シテ、餘リ上カラ所謂指導ハ加ヘナイト云
  フノガ、我々根本的ノ趣旨トシテ體シテ居
  ル積リデアリマスガ、同時ニサウ云フ風ニ
  村ニ委セルニ付テハ、ヤハリ村ニ然ルベキ
  指導者ガアリ、ソレカラ村全體ノ氣分ガ、
  一ツ何トカ村ヲ最近ニ於ケル理念ノ下ニ於
  テ、立派ナ皇國ノ農村トシテ相應シイヤウ
  ナモノヲ立テヽ見ヨウト云フ考ヘヲ持ツテ
  居ルト云フヤウナコトヲ中心ニ致シマシテ、
  事業ノ方デハ結局此ノ農村ノ確立ト云フコ
  トハ同時ニ農家ノ確立デアツテ、初メテ
  農村モ確立スルノダト云フヤウナ觀點カラ、
  事業其ノモノニ付テ今申シマシタヤウニ、
  成タケ村ニ委セテ、所謂指導ハ餘リ加ヘヌ
  ト云フコトニハシテ居リマスケレドモ、自
  作農創設ノ仕事ハ一ツ相當ニヤツテ貰ヒタ
  イト云フヤウナ考ヘヲ、自作農創設事業促
  進ノ觀點カラ持ツテ居リマス、此ノ點ニ付
  キマシテハ、或ハ若干ノ指導ヲ致シテ居ル
  カモ知レヌト云フヤウナ現在ノ狀況デアリ
  マスガ、來年度モ大體同ジヤウニ進ンデ行
  クノヂヤナイカト思ヒマス

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• 114・平野力三

  ○平野委員　モウ一點ダケ簡單ニ伺ヒマス、
  是ハ米ノ供出ニ關聯ヲ持ツ重大ナ問題デア
  リマスノデ、問フノデアリマス、食糧營團
  ニ關スル配給ノ問題デアリマスガ、私ノ調
  ベタ所ニ依リマスト、政府ガ農民カラ買上
  ゲマス米價ハ一石百五十「キロ」ガ六十二圓
  五十錢、政府ガ食糧營團ニ賣リマスノガ、
  同ジク百五十「キロ」四十六圓、食糧營〓ハ
  百五十「キロ」デ四十六圓デ買ヒマシタ米
  ヲ、百四十「キロ」トシテ五十圓デ消費者ヘ
  賣ツテ居ルノデアリマス、玆ニ十「キロ」ト
  四圓ト云フ手數料ト云フモノガ生ズルト云
  フコトニ相成ルト考ヘマス、ドウ云フ譯デ
  百五十「キロ」農家カラ取ツテ行ツタモノ
  ガ、食糧營團ガ消費者ヘ拂フ時ニ十「キロ」
  ト云フモノヲ浮バセナケレバナラナイカ、
  ソレカラ又四十六圓ノモノヲ五十圓、一石
  ニ付テ四圓、果シテ是ダケノ配給其ノ他ノ
  手數料ガ要ルノデアルカドウカ、假ニ之ヲ
  計算致シマスレバ、營團ノ扱ヒマス米ハ、
  恐ラク四千萬石ニ及ビマセウ、政府ノ供出
  豫算定量ト云フモノガ大體四千萬石デアリ
  マスカラ、四千萬石四圓ノ手數量デアリマ
  スナラバ、一億六千萬圓、東京デハ此ノ頃
  一分搗キデアリマスカラ、僅カ一%ヨ
  リ米ガ減ラナイ譯デアリマス、隨テ十半〓
  ロㄴト云フモノヲ米價ニ換算致シマスナラ
  バ、三圓三十錢、假ニ手數料ヲ三圓ト
  致シマシテモ三圓ノ四千萬石ニ於キマシ
  テ一億二千萬圓、是ダケノモノガ果シテ
  搗イテ米ヲ配給スルダケニ必要ナモノデア
  ラウカ、ドウカ是ハ今日血ノ出ルヤウナ思
  ヒヲシテ供出ヲ致シマスル農家カラスルト、
  消費者ニ屆クマデノ間ノ通路經過ト云フモ
  ノニ付テハ相當嚴正ナル批判ガ試ミラレ
  ルト云フコトハ當然デアリマス、又食糧營
  團ガ農民ニ賣ツテ居ル俵ガ一俵三十錢、是
  以外ニモ糠ガアル譯デアリマス、農家ガ搗
  キマス時ニハ、糠代ダケデ搗代位ハアル、
  俵一俵三十錢デ賣リマシテモ、四千萬石ノ
  俵ト云フモノハ相當ナモノデアリマス、今
  日農民ガ俵ヲ作ルニハ一俵一圓五十錢掛ル
  サウデアリマス、半日手間ヲ要スルノデア
  リマス、是等ノ農家ノ非常ナ辛苦ニ對シテ、
  唯抽象的ニ愛國心ニ依ツテ米ヲ出シテ吳レ、
  固ヨリ農家ニ於テハサウ言ハレナクテモ、
  戰線ノ勇士ニ劣ラヌ熱烈ナ愛國心ニ依ツテ
  米ハ供出シテ居リマスガ、農家カラ出テ行
  ツタ米ガ消費者ニ屆ク其ノ順序等ニ付テハ
  監督官廳ノ明確ナ御說明ヲ聽イテ置キマセ
  ヌト、動モスレバソコニ誤解ヲ生ズル虞ガ
  アリマス、私ノ今マデ〓究シタ範圍デハ米
  ニ於テ十「キロ」、手數料ニ於テ四圓、果シ
  テ是ダケノモノガ掛ルヤ否ヤト云フコトニ
  付テ、實ハ能ク分ラヌノデアリマス、足尺
  米ノ供出ト云フ點ニ於テ、又我々ガ農家カ
  ラ質問ヲ受ケタ時ニ斯ウ云フコトヲ明確ニ
  答ヘルト云フコトガ是非必要デアリマスノ
  デ、ハツキリシタ御答ヘヲ得テ置キタイ

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• 115・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ御質問ノ點ニ付テ
  ハ先般モ慥カ院內ニ於テ、一部ノ議員ノ
  方々ト〓糧管理局ノ係官トノ間ニ玄米ニ付
  テノ御話合ヲシマシタ時ニ申上ゲタ筈デア
  リマシテ、其ノ計算ヲ私モ當時聽イタノデ
  アリマスガ、今御話ノヤウナコトハナイヤ
  ウデアリマス、ソンナエライ「マージン」ヲ
  取ツテ居ルヤウナ事實ハナイノデアリマシ
  テ、何カ其ノ邊ニ誤解ガアルヤウニ思ヒマ
  ス、後程正確ニ致シマシテ申上ゲルコトニ
  シタイト思ヒマス

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• 116・平野力三

  ○平野委員　私ハサウ云フ說明ヲ聽イテ分
  ラナカツタカラ聽イテ居ルノデス、百四十
  「キロ」ト云フコトハ間違ヒナイノデス、尙
  ホ驚クベキコトハ、玄米ノ時ニハ四十九圓
  三十錢ト云フコトデ、僅カ七十錢ヨリ違ツ
  テ居ラヌモノヲ搗キモシナイデ玄米ヲ配給
  シテ置イテ、三圓何ガシト云フ手數料ヲ取
  ル、而モ十「キロ」ト云フ差ガドウシテ出ル
  ダラウカ、是ハドウシテモ明カニシテ置イ
  テ貰ハナイト一寸承知出來マセヌ

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• 117・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　其ノ點ハ私共モ是非ハツ
  キリサセテ置キタイト思ヒマス、前囘ノ通
  常議會ノ際ニモ多少問題ノ要點ハ違ヒマス
  ケレドモ同ジ事柄ニ付テノ御質問ガアリマ
  シタ-恐縮デアリマスガ、今手許ニ資料
  ガ見付カリマセヌノデ、他日ノ機會ニ明確
  ニ致シタイト思ヒマス

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• 118・平野力三

  ○平野委員　一應私ノ今日ノ質疑ノ時間ハ
  來タト思ヒマスガ、議事進行ニ關シテ委員
  長ニ一ツ希望ガアリマス、大體各委員ノ質
  問時間一時間ト云フコトニ付テ私ハ無理ヲ
  言フコトハ致シタクナイガ、本日御問ヒ致
  シタ問題ノ二三ノ上ニ御答辯ノ要領ヲ得ナ
  イ部分ガアルノデアリマス、又私ハ其ノ他
  ノ問題ニ付テモ若干是非御尋ネヲシテ置キ
  タイト思フ、是ハ眞ニ國家ノ爲ニ質シテ置
  イテ、是ガ我々議員ノ職責、國民代表トシ
  テノ職責ニモナリ、延イテ〓糧增產ニ貢獻
  スルト云フ信念ノ上カラ質シテ置キタイ點
  モアルノデ、一應申合セニ依ツテ、本日ハ
  此ノ程度ニ致シマスガ、尙ホ適當ナ機會ニ
  關聯其ノ他ニ於テ發言ノ機會ヲ御與ヘ願ヒ
  タイト云フコトヲ御願ヒ致シマスルト同時
  二、尙ホ大臣ノ御出席ノ場合ニ於テハ是非
  二三御問ヒ致シタイ部分モアリマスノデ、
  ドウカ委員長ノ御取計ヒヲ願ヒタイ、本日
  ハ此ノ位デ一應打切リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=118

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• 119・河野一郎

  ○河野(一)委員　私ハ質問ノ通告ヲ致シテ
  アリマスガ、時間モ非常ニ少イコトデアリ
  マスカラ、豫メ委員長ヲ通ジテ私ガ質問致
  シタイ條項ニ付テ政府ニ用意ヲシテ置イ
  テ戴キタイ爲ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
  ス
  第一ハ別ニ是ハ參考資料トシテ配付ノ必
  要ハアリマセヌ、最近五箇年間、或ハ三箇
  年デモ結構デスガ、一月乃至七月ノ窒素、
  燐酸ノ製造量、特ニ今年昭和十九年一月中
  ニ於ケル窒素、硫安、過燐酸ノ製造見込
  量-是ハ製造量ガ確定的ニ分ラナケレバ見
  込量デ結構デス、次ニハ最近三箇年間ノ肥
  料ノ配給量同時ニ飼料ノ原料ノ輸入量、是
  ハ外米ヲ輸入シナイト云フコトヲ頻リニ言
  ハレテ居ルガ、外米輸入ガ內地ノ食糧ニ與
  ヘル影響ト同時ニ飼料ノ輸入ガ減ツタダケ
  ノ數量ガ〓糧ニ影響ガアリマスノデ、特
  此ノ點ヲ御調査置キヲ願ヒタイノデアリマ
  ス其ノ次ニハ飼料政策ノ對象トナルベキ
  家畜ノ數量、鷄ハドノ位飼ツテ居ルカ、牛
  豚ハドノ位ニ見當シテ居ルカト云フコトデ
  アリマス、次ニハ少シ具體的ニ申上ゲマス、
  昭和十八年度ノ農村ヘ對シテ還元配給ト云
  フト惡イカモ知レマセヌガ、米ヲ農家カラ
  一應供出セシメテ更ニ配給シタ數量ハドノ
  位ノモノカ、更ニ又昭和十九年度ニ於テハ
  ドノ位ノ豫定ヲ取ツテ居ルカト云フコトデ
  アリマス、但シ私ハ此ノ際豫メ委員長ニ御
  含ミ置キヲ願ツテ置キマスガ、是等ニ關聯
  シテ質問ヲ申上ゲタイノデアリマスケレド
  モ、是等ノ中デ食糧竝ニ飼料、肥料ノ問題デ
  對外的影響等ガアリマシテ公開ノ席デノ質
  問ヲ差控ヘナケレバナラヌ點ガアリマシタ
  ナラバ、政府ノ方へ豫メ御打合セノ上デ然
  ルベク委員長ノ方デ御處置ヲ願ヒタイ、私
  ノ質問ノ際ニソレダケノコトヲ委員長ニ於
  テ御含ミ置キヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 120・三宅正一

  ○三宅委員　河野君ノ發言ニ關聯シテ御願
  ヒシタイノデスガ恐ラク少シ突込ンデ御
  聽キスルコトニナレバ祕密會ト云フ風ナコ
  トニナルト思ヒマスガ、主要食糧ノ需給推
  算ノ問題、ソレカラ朝鮮、臺灣、滿洲等カ
  ラ入ツテ參リマスル見込ノ問題、是モ祕密
  會デナイト出來ナイカモ知レマセヌガ、適
  當ナ時期ニ相當詳シイ數字ヲ聽カレルヤウ
  ニ委員長ニ於テ御取計ヒヲ御願ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00319440131&spkNum=120

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• 121・深澤吉平

  ○深澤委員長　本日ハ是ニテ散會致シ、明
  日ハ午前十時ヨリ開會致シマス
  午後四時五十九分散會

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