第84回帝国議会　衆議院　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案外一件委員会　第4号　昭和19年2月1日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十九年二月一日（火曜日）午前十時三十八分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　深澤吉平君
  　理事　小笠原八十美君　理事　杉山元治郎君
  　　理事　成島勇君　理事　野村嘉久馬君
  　　理事　森口淳三君
  　　　　赤城宗徳君　　　五十嵐吉藏君
  　　　　岡田啓治郎君　　　長内健榮君
  　　　　加藤知正君　　　金子彦太郎君
  　　　　北勝太郎君　　　小平權一君
  　　　　河野一郎君　　　高岡大輔君
  　　　　津崎尚武君　　　恒松於莵二君
  　　　　中越義幸君　　　野田正昇君
  　　　　平野力三君　　　深水吉毅君
  　　　　二田是儀君　　　本多鋼治君
  　　　　松原五百藏君　　　前川正一君
  　　　　三宅正一君　　　森川仙太君
  　　　　山口左右平君　　　山田六郎君
  　　　　吉田賢一君　　　吉植庄亮君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　大藏書記官　池田勇人君
  　　　　　　　　農商次官　石黒武重君
  　　　　　農商省總務局長　重政誠之君
  　　　　　農商省農政局長　石井英之助君
  　　　　　農商省山林局長　西村彰一君
  　　　　　農商省纖維局長　山口喬君
  　　　　　農商省物價局長　梶原茂嘉君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　　内務書記官　沼越正己君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　絲價安定施設法廢止及蠶絲業統制法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）

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• 001・深澤吉平

  ○深澤委員長　是ヨリ委員會ヲ開キマス、
  質問通〓ノ順ニ依リマシテ發言ヲ許シマ
  ス-高岡君

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• 002・高岡大輔

  ○高岡委員　先ヅ御伺ヒ致シタイコトハ〓
  糧問題デアリマスガ、〓糧問題ノ確保ニ付
  キマシテハ、昨日ノ貴族院ノ豫算總會ニ於
  テ、總理大臣ハ戰時行政職權特例ヲモ發動
  スルト云フヤウナコトマデ言ツテ居ラレマ
  ス、隨テ此ノ問題ハ非常ニ重大問題デアリ
  マス、昨日ノ本委員會ニ於テ同僚前川君カ
  ラ質疑ガアリマシタガ、政府ハ之ニ對シテ
  御答ヘニナツテ居リマセヌ、ト云フノハ昨
  年ハ慥カ農林大臣ハ仰シヤツタヤウニ記憶
  シテ居リマスガ、十九年度ノ米穀ノ自給數
  量ト云フモノハドウナツテ居リマスカ此ノ
  點ヲ重ネテ御質問致シマス

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• 003・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　十九年度ノ自給數量ト云
  フモノハ是ハ昨日モ申上ゲマシタヤウニ
  全體ト致シマシテ從來ノ如ク外米ヲ入レル
  ト云フコトヲ勘定カラ全然除ケテ今立テヽ
  居ル譯デアリマスガ、此ノ場合ニ於キマシ
  テ極ク常識的ニ申シマスルト、一面ニ於テ
  或ル程度ノ內地ニ於ケル供出ノ確保ヲ圖ル
  ト云フコト、ソレカラ麥ニ付キマシテ或ル
  程度從來ノ作付ノ奬勵其ノ他ニ依リ增產ヲ
  圖リマシテ、之ニ付テ供出ノ確保ヲ圖ル、
  尤モ此ノ麥ニ付キマシテハ從來カラ生產量
  全體ニ對スル供出ノ割合ハ米ナドトハ非常
  ニ違ヒマシテ、割合ハ可ナリ低イ所ニアリ
  やっ、ト云フノハ農家ニ於ケル自家用ノ色
  色ノ用途ト云フヤウナモノヲ考ヘマシテ、
  供出ノ程度ハ米トハ非常ニ違フノデアリマ
  ス、十九年度ニ付キマシテモヤハリ同ジヤ
  ウニ考ヘマシテ、其ノ點ニ付テ特ニ嚴シイ
  供出ヲ求メルト云フヤウナコトハ恐ラクナ
  イト考ヘマス、是ハ計畫上モ左樣ニ考ヘテ
  居ル譯デアリマス、併シ全般トシテハ增產
  ヲ圖リマシテ、兎ニ角昨年ノ麥ノ供出量ト
  云フモノハ、御承知ノヤウニ麥全體ノ生產
  量モ十分デハアリマセヌデシタノデ、可ナ
  リ低イ所ニナツテ居リマスガ、恐ラク本年
  ハ或ル程度增大スルコトヲ見込ンデ居リマ
  ス、ソレト朝鮮ヨリノ內地ヘノ移入、ソレ
  カラ滿洲カラノ食糧ノ供給、是ハ實ヲ申シ
  マスト、例年相當ノ分量ノモノガ內地へ供
  給サレテ居ルノデアリマス、何レカト申ス
  トソレハ主トシテ色々ノ副食物、國民全體
  ノ必需ノ副食物其ノ他トナツテ實ハ我々ノ
  食糧ニ供シテ居ル譯デアリマス、之ヲ大體
  ヤハリ從來通リ其ノ方面ニ使ヒマシテ、更ニ
  デ洲ハ幸ヒニ昨年ハ豐作デモアリマシタノ
  滿又滿洲ニ於ケル供出モ順調ニ行ツテ居
  ルモノデアリマスカラ、滿洲國トサレマシ
  テモ極力我ガ國ニ供給シヨウト云フコトデ
  努力ヲシテ居ラレルノデアリマス、ソレニ
  依ツテ其ノ方面カラ相當纒ツタ程度ノ供
  給增ヲ見込ミ得ル狀態ニアリマス、併シ是
  モ結局ノ所ドノ位參リマスカ、寧ロ悲觀的
  ト云フヨリハ、樂觀的ニ今私共ガ或ル程度
  ノコトヲ見込ンデ居ル以上ニ、或ハ狀況ニ
  依ツテハ供給シテ貰ヘルカモ知レナイト云
  フ位ナ狀況ニナツテ居ルヤウニ承知致シテ
  居リマス、彼此レ致シマシテ、從來外米ニ
  依ツテ補塡シテ居ツタ所ヲ是等ノ供給ニ依
  ツテ相當ニ補塡シ、更ニ例ヘバ芋類等ノ混
  食ト言ヒマスカ、所謂綜合食糧化ト云フコ
  トヲ或ル程度ニ見込ミマシテ、旁〓以テ外米
  ニ依存致シマセヌデ需給ノ全體ガ釣合ガ取
  レルコトニナル、斯ウ云フコトニナツテ居
  ル譯デアリマス、尙ホ申落シマシタガ、臺
  灣カラモ多少ナリ昨年ヨリハ餘計ニ供給サ
  レルノデハナイカト云フコトヲ見込ンデ居
  ルノデアリマスガ、是ハ全體トシテ大シタ
  大キナ數字トハ我々モ考ヘテ居ラナイノデ
  アリマス、唯ソレヲナゼハツキリ言ヘナイ
  カト云フコトニ付キマシテハ、今事ノ中途
  ニアリマスルシ、實際ノ實行上ニ於テ今マ
  ダ申上ゲル段階ニナツテ居ラナイト云フ點
  ヲ、色々チ狀況ヲ御考ヘ戴キマシテ御諒承
  願ヒタイト思フ譯デアリマス

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• 004・高岡大輔

  ○高岡委員　只今御說明ヲ聞キマスト극
  ングーン」米ヤ「バンコック」米ハ勘定シナイ
  ト云フコトデアリマスガ、最近デハコン
  グーン」米ノ持出ガ非常ニ困難ナ狀況ニア
  ルコトハ私ガ言フマデモアリマセヌ、併シ
  昨年ノ秋カラハ「ラングーン」米ノ移動ガ可
  能ニナツタト私ハ聞イテ居リマス、「ラン
  グーン」米ニシロ「バンコック」米ニシロ、
  御承知ノヤウニ十七年度ニハ「タイ」國ノ洪
  水ノ爲ニ餘リ穫レナカツタノデアリマスガ、
  昨年ハ洪水ノアツタコトヲ聞キマセヌノ
  デ、「ラングーン」米ニシロ、「バンコック」
  米ニシロ相當ニ餘剩分ガ出ハシナイカ、ソ
  レヲ日本ガ從前ノ行キ方ト變ヘテ之ニ賴ラ
  ヌコトニナリマスト、現地ノ消費ト云フコ
  トヲ考ヘナクテハイケナイノデアリマスガ、
  東亞共榮圈建設トカ、大東亞五大原則ニ則
  リ、「タイ國」デモ相當困ルノデハナカラウカ
  ト云フ氣ガシマス、サウ云フ面ニ對シテハ
  農林當局ハドウ云フ御考ヘヲ持ツテ居ラレ
  マスカ、其ノ點ガ一ツト、モウ一ツ今ノ食
  糧確保ト云フコトハ臺灣、朝鮮、ソレニ半
  島人ヲ滿洲ニ移シテノ開墾ニ依ル滿洲國ニ
  於ケル食糧增產ト云フコトダケデ日本ノ食
  糧確保ヲスルト云フ意味ニ諒解シテ宜シイ
  ノデアリマスカ、其ノ點ヲ併セテ伺ヒタイ
  ト思ヒマス

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• 005・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　「タイ」或ハ佛印ニ於ケル
  米ノ生產ハ申スマデモナクソレ〓〓ノ地域
  ニ於ケル消費量以上ノモノガアルノデアリ
  マシテ、之ニ付キマシテハ〓糧特別會計ニ
  於キマシテ相當ナ數量ヲ向フデ買込ンデ、
  現地ニ於キマシテ南方諸域其ノ他必要ナ
  ル向々ニ併給ノ出來ルヤウニ致シマスルト共
  ニ、一面ニ於テ現地ノ生產ノ減退ヲ來スコトノ
  ナイヤウニ、或ハ又佛印ナリ「タイ」ナリノ農
  民ノ生產意欲ヲ殺ガナイヤウニト云フ趣旨
  ヲ以チマシテ買入ヲ致スコトニナツテ居リ
  マス、併シ御承知ノヤウニコチラニ米ヲ持
  ツテ來ルニ付キマシテハ相當ナ船腹ガ要ル
  ノデアリマシテ、是ハ飛行機ノ增產ノ爲ノ
  「ボーキサイト」ノ原料ヲ南方カラコチラヘ
  入レテ來ルト云フコトト直接ニ競合ヲ來ス
  ノデアリマス、今日ノ場合飛行機ノ大增產
  ガ要請サレマシテ、著々トシテソレガ進行
  致シテ居ル此ノ際ト致シマシテ、出來ルモ
  ノナラバ食糧ノ如キモノヲ手許ニ於テ我々
  ガ確保シテ、ソレニ依ツテ浮カス船腹ヲ以
  テ飛行機ノ大增產ナリ、或ハ更ニ南方第一
  線ニ對スル補給ノコトニ船腹ヲ繰合セルト
  云フコトガ、今囘ノ外米依存ヲ脫却セント
  シタ大キナ理由デアリマス、船腹トシテド
  ノ位ノモノガ米ト「ボーキサイト」ノ輸送ト
  ノ間ニ比較ガ出來ルカト申シマスト、飛行
  機ノ大小ニ依ツテモ違ヒマセウガ、或ル計
  算ニ依リマスルト、丁度米ノ百六十石ヲ輸
  送スル船腹ヲ以テ飛行機一臺分ノ原料トナ
  ル「ボーキサイト」ガ輸送サレルコトニナル
  ノデアリマス、デアリマスルカラ、大體ニ
  於テ假ニ五百萬石ノ米ヲ輸送スル船腹ヲ、
  米ノ輸送ニ代ヘテ、飛行機ノ材料タルベキ
  「アルミニユーム」ノ原料デアル「ボーキサ
  イト」ヲ輸送スルト致シマスレバ、大體飛
  行機三萬臺分位ノ原料ガ輸送サレルコトニ
  ナル譯デアリマス、併シ食糧ト云フモノハ
  勿論戰力ノ根柢トナリマスル極メテ重要ナ
  モノデアリマスルカラ、出來ナケレバ是ハ
  致シ方ナイコトデアリマスガ、色々苦心ヲ
  致シマシテ我々モ計畫シ、又地方、外地、
  或ハ滿洲國等ノ官民ガ今日ノ食糧ノ確保、
  殊ニ外米依存ヲ脫却致シテノ〓糧ノ確保ノ
  重要性ヲ先般來、深ク認識致サレマシテ、
  其ノ計畫ニ協力ヲ寄セテ居ラレマスルノデ、
  幸ヒニシテ今申シタヤウナコトガドウニ
  カナシ得ルト云フヤウニ見込マレルニ至ツ
  タノデアリマス、此ノ點農商大臣モ他ノ機
  會ニ於テ非常ニ喜バシイコトデアルト云フ
  コトヲ申シテ居ラレルノデアリマス、左樣
  ナ次第デアリマシテ此ノ際ト致シマシテハ
  廣ク戰爭遂行ノ觀點カラ斯樣ニ致スコトガ
  極メテ必要デモアリ、又得策デアルト考ヘ
  テ居ル次第デアリマス、ソレカラ滿洲ノ增
  產ノコトニ付キマシテ、朝鮮半島ノ人ヲ入
  レテ、云々ト云フ御話ガゴザイマシタガ、
  是ハ結局食糧ノ自給ノ關係カラ言ヒマスル
  ト、二十年度以降ノコトデアリマシテ、昭
  和十九米穀年度ニ於ケル食糧ノ自給ニ付キ
  マシテハ、色々ト各方面デ進メテ戴イテ居
  ル所ノ〓糧增產-麥ハ別デアリマスルガ、
  此ノ秋以後ニ穫レマス所ノ食糧增產ノ計畫
  ト云フモノハ關係ガナイ譯デアリマス、是
  ハ結局次ノ年度ニナツテ初メテ收穫量ガ自
  給ノ計算ノ上ニ入ツテ來ルノデアリマス、
  十九米穀年度ト致シマシテハ是マデヤツテ
  來マシタ色々ナ增產實行ノ效果ト、ソレカ
  ラ、今後ト致シマシテハ昨日モ御話ノアツ
  タヤウナ、例ヘバ春馬鈴薯デアルトカ、現
  ニ今進メテ居ル所ノ麥作等ノ收穫、是ガ入
  ルダケデアリマシテ、隨ヒマシテ、此ノ自
  給ノ計畫ヲ立テルニ當ツテハ、新シイ努力
  ニ依ツテ十九年度ノ自給ヲ改善スル餘地ガ
  割合ニ少イノデアリマス、詰リ是マデノ生
  產ノ成果ガ其ノ供給面ニ働ク大部分ノ要素
  ニナルモノデスカラ、是ガ若シ今日マデノ
  生產ノ狀況ガ非常ニ惡カツタト云フヤウナ
  コトニナリマスト、如何ニ焦ツテモ外米依
  存ノ脫却ガ出來ナイ譯デアリマスガ、幸ヒ
  ナル哉滿洲ニ於テモ相當ナ豐作デアリマシ
  タシ、其ノ他ノ地域ニ於テモ十分トハ申セ
  マセヌケレドモ相當ナ收穫ガアリマシタノ
  デ、斯ウ云フ計畫ガ立チ得ルコトニナツタ
  譯デアリマス、其ノ點ハ洵ニ幸ヒデアツタ
  ト私共モ感ジテ居ル次第デアリマス

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• 006・高岡大輔

  ○高岡委員　今ノ御說明ニ依リマスト日本
  ハ外米ニ依存シナイ、而モ十九年度ノ米穀
  自給ノ數量ニ對シテハ滿洲ノ增產モ計畫ニ
  入レテナイ、サウシマスト何トシテモ內地、
  朝鮮、臺灣ニ於テ必要量ヲ作ラナクチヤイ
  カヌト云フコトニナルノデアリマスガ、ソレ
  ニ付テ私一寸角度ハ違ヒマスケレドモ、供
  出ニ付テ一ツ御尋ネシタイ、供出ニ付テ私
  ガ敢テ御尋ネシマスコトハ、是ノヤリ方如
  何ニ依ツテハ今日以上ニ米ガ多ク穫レルノ
  デハナカラウカト云フ氣ガスルカラデアリ
  マス、此ノ問題ハ昨日モ論議サレタノデア
  リマスガ、私ハ此ノ供出割當ヲ春先ニシタ
  ラドウカト云フ氣ガ致シマス、尤モ供出米
  ノ割當ヲシマスニハ最初カラ現下ノ國情ヲ
  說イテ、各部落ニソレ〓〓責任ノ擔當者ヲ
  設ケ、責任量ヲ定メテ農民ニ之ヲ命ズルノ
  デハナクシテ、農民ヲシテ御奉公ノ念ニ燃
  エシメル、農家ハ御承知ノヤウニ非常ニ計
  畫的ナモノデアリマシテ、ヨク田舍デ聞ク
  言葉ハ、オ正月ノ雜煮ヲ食ベル時ニ一年中
  ノコトヲ考ヘルト申シマスガ、春先ニ供出
  米ノ割當ガ決リマスレバ、農民ハドウシテモ
  ソレダケノモノハ作ラナクチヤイカヌト云
  フコトデ農業ニ獻身努力スルト云フ結果ニ
  ナリハシナイカト云フ氣ガ致シマス、而モ
  私ハ重工業ニ於テ今日見ルガ如ク、其ノ割
  當量以上ノ物ヲ作ツテ居リマスガ、ソレニ
  對シテハ高能率主義ト言ヒマスカ、ソノ以
  上ノ米ニ對シテハ二重價格制ヲ執ルト云ヒ
  マスカ、農民ニ希望ヲ持タセルト云フカ、
  張合ヒヲ持タセルト云フカ、サウ云フ意味
  デ米ト云フモノニ對シテノ今マデヤリ來ツ
  タコトハ、最初ノ時ハ大分失敗シタヤウデ
  アリマス、昨年ハ一部ノ例外ヲ別トシマス
  レバ全國的ニハ稍無事デアツタノデアリ
  マスガ、今年ハ一ツ供出米ノ問題ニ付テ新
  タナル工夫ヲサレタラドウカト云フ氣ガ致
  シマス、此ノ問題ニ付テ一ツ政府ノ御所見
  ヲ伺ヒマスト同時ニ、米ノ二重價格ト云フ
  コトニ付テドウ云フ御考ヘヲ御持チデアル
  カ、此ノ點モ併セテ御質問致シマス

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• 007・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　此ノ供出ノコトニ付キマ
  シテハ、洵ニ御說ノヤウニ、第一ノ要諦ハ、
  眞ニ全國農家ガ奉公ノ念ニ燃エマシテ供出
  ノコトニ當ルヤウナ風ニ馴致致スコトガ最
  モ必要ナコトデゴザイマス、我々ヨク聞ク
  コトデアリマスガ、此ノ點ニ付キマシテハ
  全國ノ農家ハ何レモ今日ノ時局ノ重大性ヲ
  能ク認識致シマシテ、サウ云フ趣旨ニ於テ
  ハ誰一人異存ガナイヤウニ聞イテ居ルノデ
  アリマス、唯其ノ場合ニ於キマシテ、近〓、
  近在、隣近所ノ間ニ何カ不公平ナ扱ヒガア
  ルト云フヤウナ風ニ感ズルト、ソコニサウ
  云フ氣分ヲ阻碍スルヤウナ虞ガアルト云フ
  ヤウニ聞クノデアリマス、此ノ點ガイツモ
  實際ノ實行上ニ於ケル難カシイ點ニナルヤ
  ウニ存ズルノデアリマス、私共實際感激シ
  テ居リマスコトハ、例へバ昨年ノ供出ノ場
  合ニ於キマシテモ、米ノ價格ノ改訂ガアリ
  マシタ後ハ、ホンノ數日間ハ多少供出ガ澁
  リマシタケレドモ、却ツテ又其ノ勢ヒヲ盛
  リ返シテ供出ガ盛ンニ行ハレタト云フヤウ
  ナ所ガ洵ニ農家ラシイ現象デアリマシテ、
  私共トシマシテ非常ニ感激致シタノデアリ
  マス、ソコデ御說ノヤウニ供出ノヤリ方ト
  云フコトニ付キマシテハ、私共過去ニ於ケ
  ル經驗ニ徵シテ、改善スベキモノハ改善ヲ
  スルト云フコトニ付テハ常ニ考慮致シテ居
  ル點デアリマス、隨ヒマシテ今後ト雖モ色
  色ナ點ニ付テハ十分考ヘテ參リタイト思フ
  ノデアリマスガ、唯御說ノ差當リ米ノ供出
  割當ヲ春先ニ於テ實行スル、或ハ又割當以
  上ノ生產ニ付テ特別ナ價格ヲ出スカドウカ
  ト云フ點ニ付キマシテハ、先ヅ第一ニ事前
  ノ供出割當ニ付テ申シマスルニ、此ノコト
  ハ可ナリ前カラ意見ノアツタ所デアリマシ
  テ、或ル方面ニ於テハ可ナリ强ク要望サレ
  テ來タノデアリマスガ、最近ニ於テハ相當
  廣ク之ニ付テノ御意見ガ出テ參ツテ居リマ
  ス、我々ト致シマシテハ、申スマデモナク
  日本全國ノ豐凶ハ、地方ニ依リマシテ殆ド
  例年必ズ大ナリ小ナリ多少ノ災害ガアリマ
  スルシ致シマスノデ、サウ云フモノヲ見込
  ンデ一體ドウ云フ割當ヲスベキデアルカト
  云フヤウナコトカラ、又其ノ割當ト、偖テ
  愈〓出來秋ニナリマシテカラノ供出ノ實行ト
  云フコトニ付キマシテ、餘計ニ穫レタト云
  フ場合ニ付テノコトハ姑ク置キマシテ、思
  ヒノ外ニ穫レナカツタヤウナ場合ニ於テド
  ウ云フ所置ヲ執ルカ、サウシテソレガ全體
  ノ需給ノ計畫ノ上ニドウ云フ影響ガ及ンデ
  來ルカ、其ノ場合ノ處置如何ト云フヤウナ
  コトヲ、一通リ全體ニ付テ睨ミ合セテ考ヘ
  テ見マセヌト、是ハサウ簡單ニ決心モ付キ
  兼ネル譯デアリマシテ、實行上ノ諸般ノ點、
  ソレカラ軈テソレガ影響シテ現ハレル所ノ
  需給計畫ノ立テ方、色々ナコトヲ十分一ツ
  檢討シテミタイト考ヘテ居ルヤウナ次第デ
  ゴザイマス、此ノ際ト致シマシテハ此ノ程
  度ノコトヲ申上ゲルニ止メタイト存ズルノ
  デアリマス
  ソレカラ價格ノ問題ニ付キマシテハ、是
  ハ此處デ意見ヲ申セト言ハレマスレバ、價
  格ニ付キマシテハ、現行ノヤリ方ニ付テ、
  此ノ際之ヲドウ斯ウ變ヘヨウト云フコトハ
  今ノ所考ヘテ居ラナイト云フコトヲ申上ゲ
  ル外ハナイト存ズルノデアリマス

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• 008・高岡大輔

  ○高岡委員　私ガ春先ニ供出米ノ割當ヲ願
  ヒタイト云フコトハ、ソレ(ガ其ノ後ノ天候
  其ノ他ニ依ツテ支配サレ、非常ナ危險率ノ
  アル農業企業ト云フモノニ對シテ出來ナイ
  斯ウ云フ御答辯デアリマスガ、ソレナラバ
  春先ニ、豫想割當ト云ヒマスカ、豫約割當
  ト云フカ、大體オ前ノ所ハ是ダケダゾト云
  フ割當ヲナサツタラドウカ、サウシテソレ
  ガ其ノ後ニ於テ非常ナ天災ニ依ツテ減收シ
  タト云フ場合ニハ、其ノ所カラ是ダケヲ引
  クトカ乃至ハ出來レバ少シ足ストカ、大體
  ドノ程度ト云フコトハ、天災トカサウ云フ
  不可抗力ニ依ツテ生ズルヤウナコトヲ例外
  トシテ考ヘマスレバ、春先ニ大體割當ト云
  フモノハ出來ルト云フ氣ガ私ハ致シマス、
  此ノ點モウ一度御尋ネ致シマス
  ソレカラ米價ノ二重價格ト云フ問題ニ付
  テ、サウ云フコトハ考ヘテ居ナイ、斯ウ御
  答ヘニナツタノデアリマスガ、ソレナラバ
  私ハ農村ニ對シテ、農民ノ生活必需品ト云
  ヒマスカ、野良着トカ、股引トカ、アヽ云
  ツタヤウナ農民ガ農業ヲヤツテ行キマス上
  ニドウシテモ必要ナ、端的ニ言ヒマスレバ
  紺ノ純綿ト云ツタヤウナモノヲ配給スルト
  云フ、是ハ本會議デモ物々交換ガドウ斯ウ
  ト云フコトガ論議サレテ居リマスケレドモ、
  個人的ノ物々交換ハ出來ナイニシマシテモヽ
  斯ウシタ面ニ於テ政府自ラガ農民トノ間ニ
  配給ト云フコトヲ考ヘルコトハ、決シテ單
  ナル個人間ニ於ケル物々交換トハ其ノ內容
  ヲ異ニシテ居ルノデアリマスカラ、サウ云フ
  點ニ付テ、一ツ政府ガ、農民ニ對シテー
  此ノ際國家ノ重大任務ヲ果シテ居リマス農
  民ニ對シテ、親心ヲ持ツト言ヒマスカ、サ
  ウシタ點ヲ御考慮願ヘルカドウカ、此ノ點
  ヲ重ネテ御尋ネ致シマス

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• 009・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　早期ノ謂ハヾ事前ノ割當
  ガ出來ナイト私ハ申上ゲタノデハナイノデ
  アリマシテ、色々深ク〓究ヲスルコトガア
  ルノデ、一ツ〓究シテミタイト云フ趣旨ノ
  コトヲ申上ゲタノデアリマス、サウ消極的
  ニ申上ゲテ居ル譯デハアリマセヌガ、ヤツ
  テミマセウト云フコトヲ申上ゲルニ至ラ
  ナイ程度ノコトヲ申上ゲタ次第デアリマス、
  其ノ點御諒承願ヒタイト思ヒマス、ソレカ
  ラ生活必需品ト申シマスカ、寧ロ今ノ野良
  着ノヤウナモノナラバ、生產ノ爲ノ謂ハヾ
  作業衣デアリマスガ、此ノ種ノモノニ付テ
  ハ我々ト致シマシテハ衣料ノ種類トシテハ
  最モ優先的ニ考ヘテ居リマシテ、今後ト雖
  モ相當ノ數量ハ確保致シマシテ供給ヲ致シ
  タイト考ヘテ居リマス、唯綿ト云フコトニ
  ナリマスト御承知ノヤウニ軍需其ノ他ノ關
  係モアリマシテ、中々思フニ任セヌヤウナ
  實情デアリマスガ、兎ニモ角ニモ各種ノ生
  產用ノ必需品ニ付キマシテハ、此ノ決戰下
  ニ於テ許ス限リニ於テ極力供給ヲ致シタイ
  ト考ヘテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=9

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• 010・高岡大輔

  ○高岡委員　農民ノ生活必需品ト云フモノ
  ハ實際今日ノ所相當窮屈ニナツテ居リマス、
  以前デスト夜具、蒲團ヲホゴストカ、乃至
  ハ風呂敷ヲ更生スルトカ云ツタヤウナ工合
  デ作ツテ參ツタノデアリマスガ、モウ今日
  デハ斯ウ云フモノモ愈〓窮屈ニナツテ參リマ
  シタノデ、其ノ點ハ一ツ十分御考ヘヲ願ヒ
  タイト思ヒマス、今農村ニ參リマスト「ビー
  ル」ダトカ、白砂糖ダトカ、サウ云ツタヤウ
  ナ大シテ農民ノ有難ガラナイモノガ大分配給
  サレテ、製炭業者ニ御褒美ダト言ツテ「ビー
  ル」ヲ配ツタケレドモ、「ビール」ノ空壜ヲ
  持ツテ來ナケレバヤラナイト云フノデ、貧
  乏德利ニ移シテ、ソレヲ一週間モ經ツテ細
  君ガオ燗ヲシテ亭主ニ飮マセタト云フヤウ
  ナ悲喜劇ガ行ハレテ居ル譯デアリマスガ、
  斯ウ云フ、紙ノ上ノ公平デアリマセウケレ
  ドモ、コンナ公平ハ農山漁村民ニハ迷惑ナ
  ノデアリマスカラ、斯ウ云フ御褒美デナク
  シテ、野良着トカ、股引トカ、地下足袋、
  斯ウ云フヤウナ本當ノ農山漁村民ノ必要物
  資ヲ一ツ十分親心ヲ以テ配給ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス、更ニ私山村ニ於テ聞ク話ハ
  柴ノ問題デアリマス、此ノ柴ハ山村ニハ
  非常ニ山積シテ居リマス、私ノ〓里ノコ
  トヲ言ツテ甚ダ恐縮デアリマスガ、新潟
  市民ノ中ニハ或ル一部ノ者デアリマス
  ガ、非常ニ薪炭ニ困ツテ居リマス、中一
  甚ダ極端ナ例ヲ申上ゲマスト、子供ガ生レ
  タケレドモ、產湯ヲ沸カス薪ガナイノデ、
  オ嫁ニ來ル時ニ持ツテ來タ簞笥ヲ壞シタ
  リ、張板ヲ壞シタト云フヤウナ、新潟市ノ
  一部ニハ非常ニ薪炭ノ窮屈ヲ感ジテ居ル面
  ガアリマス、然ラバ山村ニソレダケノ薪炭
  ガナイカト言ヒマスト、山ノ方ニハ山積ニ
  ナツテ居ル、何故ソレガ出ナイノカ、何故
  サウ云フモノガ配給ニナラナイノカト言ヒ
  マスト、配給機構ガ巧ク行ツテナイノモ一ツ
  デアリマスガ、此ノ例ヲ柴ニ取ツテ見マス
  ト、實ニ滑稽ナヤウナコトガ聽カサレルノ
  デアリマス、卽チ柴ノ大キサハ最近一寸カ
  ラ八分ニ詰メラレテ居リマス、所ガ柴ヲ伐
  リマス場合ニ、一々物差ヲ持ツテ寸法ヲ量
  ル譯ニハ行キマセヌノデ、多少大キナノモ
  ソコニ入ツテ居リマス、所ガ愈〓柴柴束ネ
  テ里へ下リテ來テ警察ノ前ヲ通ルト云フト、
  警察官ガ出テ來テ、其ノ中ノ大キナヤツヲ
  寸法ヲ計ル、而モ其ノ柴ガ工場製品ノヤウ
  ニ丸イナラ兎モ角モ、中ニハ楕圓形モアリ
  マセウシ、色々ノ形ガアル、ソレヲ警察官
  ガ長イ方ノ寸法ヲ取ルモノデスカラ、八分
  ダト思ツテ來マシテモ、九分ダツタリ一寸
  ダツタリスル、其ノ爲ニソレヲ引ツコ拔ク、
  警察ニ引張ル、一々調ベル、色々ナコトデ、
  ソンナコトダツタラ持ツテ行ツテモ手間暇
  ガ合ハヌト云フコトデ、山ノ人ハ柴ヲ持ツ
  テ下リヌト云フヤウナコトカラ、柴ガ山ノ
  方ニハ山積ニナツテ居リマス、又製炭ノ方
  ヲ見マスト、自家用製炭ノ方ニハ大分叺ガ
  〓ツテ居リマスケレドモ、普通一般ノ方ニ
  ハ叺ノ配給ト云フモノガ非常ニ少ウゴザイ
  やくろ、コンナヤウナコトデ、山ノ方トシテ
  ハ出來ルダケ之ヲ金ニ換ヘタイト云フ氣持
  デハ居リマスモノノ、サウシタヤウナ唯紙
  ノ上ダケノ問題デ、相當隘路ト言ヒマスカ、
  サウ云フ風ナモノガ窺ハレルノデアリマス、
  端的ニ申上ゲマシテ柴ノ規格ト云フモノヲ
  緩メルトデモ言ヒマスカ、モツト常識的ニ
  取締ヲシテ下サルヤウナ御方針デアリマス
  カドウカ、此ノ點一ツ御伺ヒ致シマス

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• 011・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ柴ノ規格ノ取締ノ
  コトノ御話ガゴザイマシタガ、少シ言ヒ過
  ギカモ知レマセヌガ、實際的ニ申上ゲマス
  レバ、假ニ八分ニ規格ガ制限サレテ居リマ
  シテモ、ソレヲ一寸位アルカラト云ツテ取
  締ルト云フヤウナコトハ、是ハ恐ラク極メ
  テ非常識ナモノデアリマシテ、我々トシマ
  シテモサウ云フコトマデ抑制致シテ居ラナ
  イ譯デアリマス、左樣ナコトガ各方面ノ末
  端ニアルヤウデアレバ、要スルニ行政ノ常
  識ノ問題ニナル譯デアリマシテ、ドウ云フ
  風ニ致シテ宜シイカ、我々ト致シマシテモ
  能ク氣ヲ付ケマシテ、左樣ナコトノナイヤ
  ウナ風ニ、中央トシテ盡スダケノコトハシ
  タイト思ヒマス、尙ホ此ノ種ノコトハ若シ
  願ヘレバ地方ニ於テ解決ガ付カナイモノダ
  ラウカト云フコトヲ、私共ノ感想トシテハ
  持ツテ居ル譯デアリマシテ、併セテ申上ゲ
  ル次第デアリマス

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• 012・高岡大輔

  ○高岡委員　實際ノコトヲ言ヒマスト、私
  ハ中央デハ熱心ニ國民生活ヲ御考ヘニナツ
  テ、色々起案ナスツテイラツシヤルノデア
  ツテ、是ハ決シテ惡意デナスツテ居ルトハ
  考ヘマセヌ、併シ善意デナスツテ居ルコト
  ガ實際末端ニ行キマスト、惡政ト言フト言
  葉ガ惡イノデアリマスガ、惡政ノ場合ガア
  リマス、私之ヲ善意ノ惡政ト言フノデアリ
  マスガ、此ノ善意ノ惡政ヲ如何ニシテ然ラ
  バ矯メルカト云ヒマスト、私ハ端的ニ言ヘ
  バ各省ノ書類ノ數ヲ少クスルコトデアル、
  斯ウ考ヘマス、餘リニモ今日ハ書類ガ多過
  ギル、餘リニモ細カイ所マデ色々ナコトヲ
  起案サレルモノデスカラ、末端ニ行ケバ行
  ク程窮屈ヲ感ズルノデアリマシテ、此ノ戰
  時下ニ於テ唯一途ニ勝タナケレバイカヌト
  云フ時ニ、サウ云フ細カイトコマデ規格ヲ
  定メルト云フコトハ、益〓國民生活ニ私ハ窮
  屈ヲ感ゼシムルノデハナカラウカト思フ、
  聞ク所ニ依リマスト、農商省ハ文書ノ數ガ
  四割減ツタ、五割減ツタト云フヤウナコト
  ヲ聞クノデアリマスガ、更ニサウシタコト
  ヲ日本ノ行政ノ全面ニ亙ツテ、所謂紙ノ節
  約ニモナルノダカラ、サウシタ文書ト云フ
  モノヲ出來ルダケ大マカニナサランコトヲ
  切望シテ已ミマセヌ
  時間ガアリマセヌノデ一々御答辯ヲ求メ
  ル譯ニ參リマセヌガ、次ハ魚ガ大分此ノ頃
  陸ノ上ヲ泳イデ居リマス、所謂闇デ賣ラレ
  テ居ル、此ノコトヲ私段々聽イテ見マスト、
  結局油ノ問題デアリマス、漁村ニ對スル油
  ノ配給ガ滿足デナイ、ソコデ私ノ地方ハ小
  サナ油井戶ガ大分アチコチニアリマス、ソ
  レデ漁村ノ人ハ其ノ油井戶ヲ買收シテ居リ
  マス、買收ト言ヒマスカ、買取ツテ居リマ
  ス、ソレデ大體ノ闇相場カドウカ分リマセ
  ヌガ、日產一斗ノ井戶ハ千圓シマス、隨
  テ日產一石程出ル油井戶ハ一萬圓シテ居リ
  マシ、併シサウ云フ井戶ハ大仕掛カト云ヒ
  マスト、實ハ御承知ノ上總掘リトカ、サウ
  云ツタ手掘リノ極ク簡單ナモノヲ、門前ノ
  小僧習ハヌ經ヲ讀ムデ、私等ノ如キ石油縣
  デアリマスト、一寸シタノガ眞似テ、簡單
  ナ鑿井ヲヤツテ石油ヲ掘ツテ居リマス、其ノ
  石油井戶ヲ目掛ケテ漁師ガ之ヲ買取ル、併
  シ漁師ガソレヲ掘ル譯ニ行キマセヌノデ、
  今マデヤツテ居ツタ人ニ御願ヒスル、サウ
  スルト今マデ井戶ヲ持ツテ居ツタ者ハ、
  萬圓カナンカノ財產ヲ造ツタ上ニ、今度ハ
  月給取リトシテ每日働ク、斯クシテ石油ガ
  非常ニ高クナツテ居リマス、此ノ高イ油ヲ
  漁ニ使ヒマスノデ、結局魚ト云フモノハ今
  ノ公定價格デ賣ツタノデハ引合ハヌ、横浜
  動カサナクチヤナラヌト云フ結果ガ生レ
  テ居ルヤウニ私ハ考ヘルノデアリマス、サ
  ウ致シマスト、是ハ政府ガ取締ラレヽバ、
  油ガナイノヂヤナイ、サウヤツテアルノデ
  スカラ、其ノアル油ヲ政府ノ所謂管理如何
  ニ依ツテハ、モツト魚ガ公定價格ト云
  ヒマスカ、潤澤ニ各家庭ニ廻ルノデハ
  ナカラウカ、魚ノ問題ニ付テモ色々施
  策ヲ講ジナケレバナリマセヌガ、其ノ
  一ツトシテ油ニ對シテノ農商省當局ノ御配
  慮ガアツテ然ルベキダト私ハ考ヘマス、此
  ノ油ニ對シテ將來何カ一ツ政府ノ御考ヘト
  云ヒマスカ、御計畫ガアリマスレバ、此ノ
  際伺ヒタイト思ヒマス

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• 013・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御話ノ如ク現在漁業用ノ
  燃油ノ從來ニ比較シマシテ非常ニ減ツテ居
  リマスコトガ、水產ノ增產ノ上ニモ、又全
  國漁民ノ生產活動ノ上ニモ非常ナ困難ナ問
  題ニナツテ居ルノデアリマス、此ノ場合我
  我ト致シマシテハ、國全體ノ戰爭遂行上ノ
  觀點カラ、許サレル限リニ於キマシテ成ベ
  ク、國民榮養食糧タル水產ノ確保ノ爲メデ
  アリマスカラ、油ノ供給ヲ少シデモ潤澤ニ
  致シタイト云フ趣旨ヲ以チマシテ、其ノ方
  面ニ於テモ絕エズ努力ヲ致シテ居ル譯デア
  リマス、尙ホ一面ニ於キマシテ、油ノ代用
  燃料ヲヤハリ漁船ニ於テモ使フベク、豫テ
  代用燃料裝置ノ漁船ヘノ取付ニ付キマシテ
  助成ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
  尙ホ今御話ノ極ク限ラレタル油ノ產地方面
  ニ於ケル問題ニ付キマシテ、我々ト致シマ
  シテモ尙ホ能ク〓究シテ見タイト考ヘテ居
  リマス

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• 014・高岡大輔

  ○高岡委員　話ハ大分飛ビマスガ、政府デ
  ハ帝都空襲必至ト云フコトヲ申サレテ居リ
  マス、戰局ノ推移如何ニ依ツテハ或ハ帝都
  ハ空襲サレルカモ知レマセヌ、其ノ空襲サ
  レタ場合ニ東京ガドウナルダラウカト云フ
  ヤウナコトハ、內務省ノ政府委員ガ御見エ
  ニナツタ上デ御聽キ致シマスガ、其ノ時此
  ノ都會カラ避難トデモ言ヒマスカ、帝都カ
  ラ參リマス所ノ地方ニ於ケル米穀ノ食糧問
  題ハドウナルカ、私ハ昨年七月東京ヲ引拂
  ツテ〓里ヘ歸ツタノデアリマスガ、供出モ
  大分致シマシタ爲メカ、私等家族數人ノ者
  ガ一箇月足ラズ滯在スルノニ對シテ、兄ノ
  家ノ下男ガ分家ヲズツト少シヅヽ徵發シテ
  來ナケレバ、我々家族ノ食フ物ガナイト云
  フ程、相當窮屈ニナツテ居リマスノデ、サ
  ウシタ場合ニ於ケル帝都ノ方ハ兎モ角トシ
  マシテ、地方ノ食糧問題ノ面ニ付テ農林當
  局ノ御所見ヲ一ツ伺ヒタイノデアリマス

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• 015・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　都民ノ地方分散、殊ニ今
  御話ノヤウナ非常ノ事態ニ於キマシテ地方
  ニ分散致シマシタ場合ノ食糧ノ供給ニ付キ
  マシテハ、勿論萬全ヲ期シテ居リマス、御
  說ノヤウニ、大體地方ニ於キマシテハ或ル
  程度ノ食糧ハ常時デゴザイマスルシ、ソレ
  カラ今ノ御話ノヤウナコトニ依リマシテ人
  ロガ增加致シマシタヤウナ場合ニ於テハ
  /
  地方々々ノ消費割當ノ數量ノ如キモノヲ全
  國的ニ按配致シマシテ、殖ヤスコトノ處置
  モ執ル譯デアリマシテ、其ノ點ニ付テハ御
  心配ハナイト存ジマス、殊ニ假リニ帝都空
  襲ノヤウナ場合ニ於キマシテ、一般ニ或ハ
  餘リ遠クナイ關東近在ノ都市等ヘ避難ノ人
  ガ參ルコトモ考ヘラレルコトデアリマス、
  最近我々ト致シマシテモ、非常時用ノ〓糧
  ノ用意ト云フモノニ付テハ、例ヘバ帝都ニ
  付テ考ヘレバ、獨リ帝都自體ニ付テノミナ
  ラズ、左樣ナ一應考ヘラレル避難先ト云フ
  ヤウナモノニ付テモ相當ナ用意ヲスル必要
  ガアラウト云フ風ニ考ヘマシテ、左樣ナ風
  ニ今色々ト處置ヲ致シテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス

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• 016・高岡大輔

  ○高岡委員　此ノ人口疎開ノ問題ハ內務省
  ノ方ガ見エテカラノコトニシマシテ、次ノ
  事項ヲ飛ビ〓〓ニ御尋ネ致シタイト思ヒマ
  ス、是ハ最初ニ私ガ〓糧問題ニ付テ御尋ネ
  致シマシタガ、結局增產シナケレナラバヌ、
  此ノ增產ノ面ニ付テ農村ノ工業化、農村
  電化ト言ヒマスカ、此ノ問題ハ軍需省ノ方
  ガ見エテカラ御尋ネシタイト思フノデアリ
  マスガ、此ノ問題ニ對シテノ農商省關係ノ
  點ヲ、石黑次官ニ御尋ネ致シマス、ソレハ
  農村電化乃至農村工業化ト言ヒマシテモ、
  戰時下デアツテ色々ノ面ガ窮屈ダ、斯ウ
  仰シヤルカ知リマセヌガ、是ハ私考ヘヤ
  ウニ依ツテハ出來ルト云フヤウナ氣ガ致シ
  マス、ソレハ今各地デ輕工業ノ企業整備ヲ
  ヤツテ居リマス、此ノ企業整備ニ依ツテ二、
  三馬力ノ「モーター」ト云フモノガ大分浮イテ
  居リマス、而モ機屋サンニアリマス2H1
  ター」デアリマスト、「ベルト」ガ大變數ガ多イノ
  デアリマスカラ、之ヲ農村ニ持ツテ行キマ
  スニハ恰好ノ代物デアリマス、之ヲ農村ヘ
  持ツテ行キマスト、去年ノ秋ノ供出ニハ勞
  力ノ不足カラ大分斯ウシタコトガ問題ニナ
  ツタノデアリマスガ、サウ云フモノガ全般
  的ニ普及サレテ居リマスト、供出ノ場合モ
  大變都合好ク參リマスシ、又農村デ以テサ
  ウ云フモノヲヤラヌ、米ヲ調整スル必要ノ
  ナイヤウナ、所謂機械ノ農閑期トデモ言ヒ
  マスカ、サウシタ場合ニハ之ヲ兵器ノ部分
  品工場ニ返セバ濟ム譯デアリマス、此ノ農
  村ノ工業化ト言ヒマスカ、電化ト言ヒマス
  カ、サウシタ面ニ付テノ農商省當局ノ方ノ
  御意見ヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス

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• 017・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ農村電化ニ付テノ
  御質問デゴザイマスガ、御話ノ中ノ、ソレ
  ニ依ツテ又別途農村ニ於ケル工業化ヲ圖ル
  ト云フ點ニ付テ、私共ノ方ト致シマシテ御
  答ヘスベキ用意モゴザイマセヌガ、其ノ他
  ノ點ニ付キマシテハ、御話ノ點全ク御同感
  ニ存ズルノデアリマシテ、農村ノ電化、只
  今全國何處デモト云フ譯ニモ參ラナイト思
  ヒマス、サウ云フ便宜ノアル方面ノコトデ
  ハアリマスケレドモ、是ハ極力勸メルヤウ
  ニ私ノ方ト致シマシテモ努力致シタイト思
  ツテ居リマス

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• 018・高岡大輔

  ○高岡委員　ソレカラ極ク小サナ問題デア
  リマスガ、例ノ供出米ニ對シマス補給金ノ
  問題デアリマス、此ノ補給金ノ問題ハ、農
  家ハ大分此ノ頃支出ガ增シテ居リマス、唯
  單ニ生活ノ問題ダケデナク、時ニハ公債モ
  買ハナケレバナラズ、貯金モシナケレバナ
  ラヌト云フコトデ、農家ノ支出ハ大分增シ
  テ居ルノデアリマスガ、幸ヒニモ補給金ニ
  依ツテ農家ハ潤ウテ居リマス、併シ其ノ補
  給金ナルモノハ信用組合ヘオ預ケト言ヒマ
  スカ、貯金サセラレテ二箇年ノ据置デアリ
  マス、一方農民ノ支出ガ非常ニ多イ、手持
  チニハナイ、借リナケレバナラヌ、自分デ
  補給金ヲ貯金シテ置キナガラ、一方ニ於テ
  借リナケレバナラヌ、預入レル利子ト借入
  レル利子ニ非常ニ差ガアルト云フコトガ言
  ハレテ居ルノデアリマスガ、日常生活ノ贅
  澤面ニ於テ金ガ要ルカラト言フノデ補給金
  ヲ取下ゲルト云フコトハ、是ハ考ヘナクテハ
  イケナイデアリマセウ、併シ公債ヲ買フト
  カ乃至ハ貯金ヲスルトカ、乃至ハ肥料ヲ買
  フ資金トカ云フヤウニ、決シテ贅澤デモ何
  デモナイヤウナモノハ、補給金ヲ下ゲルト言
  ヒマスカ、補給金ヲ補給金トシテ預入レテ、
  別ニ信用組合カラ借リルト云フコトニシナ
  イデ、其ノ補給金ノ所カラ其ノ儘ソレダケ
  ノ金額ヲ受取リ得ルト云フヤウニ、一ツ御
  配慮ニ預リタイト思フノデアリマスガ、政
  府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 019・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ御話ノコトハ私共
  モ左樣ニ存ズルノデアリマス、其ノ程度ノ
  コトニハ行ツテ居ルノデハナイカト思フノ
  デアリマスガ、若シ左樣ナ風デナイト致シ
  マスレバ、尙ホ貯蓄奬勵ノ方面ノ當局トモ、
  能ク相談ヲ致シテ見タイト存ジマス、サウ
  シテ今ノ御話ノヤウナコトニハ處置ノ出來
  ルヤウニ致スノガ至當デハナイカト私共モ
  存ズルノデアリマス

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• 020・深澤吉平

  ○深澤委員長　高岡サン、先程御要求ノ防
  空總本部局長、軍需省ノ政府委員ハ貴族院ノ
  關係デコチラヘ出ル時間ガナイト云フコト
  デアリマス、適當ノ機會ニ讓ツテ下サイマ
  セヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=20

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• 021・高岡大輔

  ○高岡委員　畏マリマシタ、其ノ問題ハ保
  留致シマス、ソレナラバ時間モ參リマシタ
  カラ、大體私ノ質疑ヲ終リマスガ、今仰シヤ
  ツタヤウニ中央デハ決シテ國民ガ困ルヤウ
  ナコトハ、毛頭御考ヘニナツテ居ラナイノ
  デアリマスガ、ドウモ末端へ行キマスト、
  中央カラノ命令ヲ非常ニ堅ク受入レマスノ
  デ、大分色々ノコトガアリマス、此ノ點一
  ツ十分御配慮ニ預カツテ、昨日モ御答辯ガ
  アリマシタヤウニ嚙ンデ含メルヤウニ、十
  分懇切丁寧ナ指令ト言ヒマスカ、指揮ヲ執
  ラレンコトヲ切望シテ已ミマセヌ、日本ノ
  農民ハ此ノ日本ニ生レタ幸福ヲ感ジ、祖先
  ノ遺シタ美田ヲ更ニ耕シテ、之ヲ子孫ニ遺
  スト云フ所ニ日本ノ農民道ガアリ、ソレ故
  ニコソ朝ハ早クカラ夜遲クマデ、孜々營々
  トシテ働イテ居ルノデアリマシテ、決シテ
  割增金トカ賞與トカ恩給トカ云フモノヲ目
  掛ケテ、農民ハ農民生活ヲ送ツテ居ルノデ
  ハアリマセヌ、若シモ此ノ日本ノ農民道ガ
  廢頽スルヤウナコトガアリマスレバ、國家ノ
  一大事デアリマス、ドウカ一ツ農村問題ニ
  付キマシテハ農民ノ氣持ヲ十分御考ヘ願ヒ
  マシテ、今日ノヤウニ〓糧問題ノ大切ナ、
  食糧ハ兵器ニシテ農場ハ軍需工場ダトサヘ
  言ハレテ居ル今日、十分農山漁村民ニ對シ
  テノ親心ノ行政ヲ切望シテ私ノ質問ハ是デ
  終リマス、尙ホ一ツ申上ゲマスガ、例ノ軍
  需省ト内務省ノ關係ハ後程政府委員ノ見エ
  マシタ時ニ發言ヲ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=21

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• 022・深澤吉平

  ○深澤委員長　是デ休憩致シマス、午後一
  時ヨリ再開致シマス
  午前十一時四十分休憩
  午後一時十一分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=22

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• 023・深澤吉平

  ○深澤委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス-北勝太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=23

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• 024・北勝太郎

  ○北(勝)委員　私ハ農商當局ニ御伺ヒ致シ
  タイノデアリマス、食糧生產ノ重大要素デア
  ル農業勞力ハ、是ハ今後益〓行詰ツテ來ル
  ト云フコトハ必然デアルト思ヒマス、又決
  戰段階ニ入リマシタ今日ニ於テハ思ハザル
  變化モアリ勝チデアラウコトハ今日カラ
  豫期シナケレバナラヌコトデアルト思フノ
  デアリマス、此ノ對策ハ必ズシモ過去ノ例
  ヲ以テ之ヲ律スル譯ニハイカヌ、ドンナコ
  トガ生ジテモ斷ジテ手違ヒヲ來タサナイヤ
  ウナ十二分ノ用意ガ要ルト思フガ、之ニ付
  テ農林當局ハ此ノ問題ニ對シテ如何ナル新
  手ヲ打タレル積リデアルカ、之ヲ伺ヒタイ
  ノデアリマス、更ニ時間ノ關係デ引續キ御
  尋ネシテ置キタイノデアリマスガ、此ノ農
  業勞力ノ問題ニ關シマシテハ昨日カラ各委
  員諸氏ガ隨分述ベラレテ居リマスガ、ソレ
  以外デ私ノ氣付イタ二、三ノ點ヲ此處デ
  伺ツテ見タイト思ヒマス、食糧ノ重要性ニ
  付キマシテハ、今日誰モ知ラヌ者ハナイ、
  又之ヲ叫バナイ者ハナイ有樣デアリマシテ、
  卑近ナ例デアリマスガ、昨今三人寄レバ其
  ノ人ノ話題ノ七、八分マデハ此ノ問題デ持
  切リデアルト云フヤウナ狀況デアリマス、
  殊ニ都市ニ於テハ此ノ話ガ極メテ深刻ナル
  モノガアルノデアリマス、而モ今後起ルベ
  キ色々ナ惡條件ヲ考慮ニ入レマスルト、是ハ
  何人ト雖モサウ簡單ナコトデナイ位ノコト
  ハ分ツテ居ル筈ダト思フノデアリマス、昨
  日モ石黑次官ノ御答辯ニモアリマシタ通リ、
  食糧ハ國民全體ガ決死ノ努力ヲスルコトニ
  依ツテ初メテ安全デアリ、大丈夫ニナルノ
  デアリマス、サウ云フヤウナ狀況デアルニ
  拘ラズ、此ノ場合農民以外ノ者デ、應急的
  ニデモ、サウ云フ大事ナ問題デアルカラ、
  自ラ手ヲ下シテ直接ニ食糧生產ヲシヨウト
  云フ者ガ一向見當ラナイ、是ハ或ハ國民ノ
  大部分ハ、今後モ百姓ヲ鞭撻サヘスレバ今
  マデ通リノ食糧ガ生產サレル、斯ウ思ツテ
  居ルノデハナカラウカ、或ハサモナケレバ
  斯ウ云フ大事ナ問題デアルカラ、政府ガ放
  ツテハ置カナイ、何トカシテ吳レルダラウ、
  ドウニカナルダラウ、斯ウ云フヤウニ他ニ
  バカリ依存スル所ノ考へカラ來テ居ルノデ
  ハナカラウカ、尤モ重要ナ工業ヤ、重要ナ
  職域ニ從事シテ居ル人々ニハ、是ハ一心不
  亂ニ他ヲ顧ズヤツテ貰ハナケレバナラナイ
  コトハ當然デスガ、併シナガラ其ノ他ノ部
  門ニ於ケル比較的重要ナラザル立場ニアル
  人達マデモ之ニ便乘シテ、サウシテ呑氣ニ
  構ヘテ居ラレテハタマラヌト思フノデアリ
  やっ、人ハ生キテ居ル以上ハ食ハナケレバ
  ナラナイ、自分ノ食物ハ自分デ保障出來ル
  ヤウニ、自ラ耕作スルノデナケレバ相濟マ
  ヌト云フ積極的ナ考ヘ方ガ此ノ際當然起ラ
  ナケレバナラヌ、又起サナケレバナラヌ、
  斯ウ云フ工合ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
  然ルニ是等ノ人々ハ餘リ呑氣過ルヤウデア
  リマスガ、此ノ點ニ付テ、因ヲ來ル原因ガ
  那邊ニアルカ、之ヲ探究シナケレバナラヌト
  思フノデアリマス、當局ハ之ニ對シテ、之ヲ
  如何ニ見、且ツ之ニ對シテ如何ナル用意ヲ持
  ツテ居ラレルカ、之ヲ一ツ承ツテ置キタイ
  其ノ第二ハ、勞力ノ給源トシテ著眼シナ
  ケレバナラヌモノハ、私ハ今度ノ都市疎開
  ト市民ノ農村移住ト云フコトデアルト思フ
  ノデアリマス、疎開ハ飽クマデモ生產的ノ
  疎開デナケレバナラヌ、卽チ市民ノ中ノ先
  程モ申シマシタヤウニ比較的重要ナラザル
  立場ノ人々ノ收容地ハ之ヲ農村ニ選ブト云
  フコトガ大事デアル、殊ニ東北、北海道ノ
  ヤウナ人口ノ少イ所ヲ選ンデ、半バ是ハ强
  制的ニヤラナケレバ出來ヌト思フノデアリ
  マスガ、サウ云フヤウナ應急的ナ處置トシ
  テ强制的ナ移住ヲサセルト云フコトガ必要
  デアルト思フノデアリマス、疎開ハ能フベ
  クンバ卽刻行フベキデアル、是ハ單ニ防空
  上ノ見地カラダケデハナイノデアリマシテ、
  食糧戰ニ勞力ヲ補給スルト云フ上カラモ、
  食糧其ノ他ノ都市ヘノ輸送量ノ減少ト云フ
  ヤウナ各種ノ立場カラ見テ、是ハ一石二鳥
  三鳥デアル、斯ウ云フ工合ニ考ヘルノデア
  リマス、此ノヤリ方トシテハ、丁度軍隊ノ
  宿舍割ノヤウニシタ方ガ宜イト私ハ思フ、
  各町村ニ割當テル、サウスルコトガ最
  モ手取リ早ク解決付クト思フノデアリ
  きく、割當テラレタ町村長ハ、企業整備ノ
  結果農村ノ市街地ニハ隨分空イテ居ル家ガ
  アル、或ハ又部落ノ集會所、或ハ農村ニ澤
  山アル各寺院等ノ利用、斯ウ云フコトハ、
  勿論場合ニ依レバ、廣イ家ヲ持ツタ農家
  ニ割當テヽモ宜イ、サウ云フコトモ出來
  ルト思フノデアリマス、農業勞力ト云フ
  モノハ、是ハ私ガ申スマデモアリマセヌガ、
  特ニ都會ニ於ケル婦女子ヤ或ハ老人、或
  子供ノ力マデモ活用出來ルノデアリマスカ
  ラ、是コソ所謂一億戰鬪配置ニ就クモノデ
  アルト深ク信ズルノデアリマス、前線デ屢〓、
  崇高ナル玉碎ノ悲報ヲ聞ク度ニ、我々ハ國
  內モ戰線デアルト云フ言葉ニ相應ハシク、
  婦人モ、老人モ、子供モ、齒ヲ食ヒシバツ
  テ戰フ、是ガ爲ニ自分等ノ持ツテ居ル勞働
  力ヲ最大ニ强化シナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、鐵ハ熱シタ時ニ打タナケレバイケナイ、
  此ノ機ヲ逸シテハナラヌト思フノデアリマ
  シテ、此ノ點ニ對スル政府ノ用意ヲ伺ツテ
  置キタイト思フノデアリマス
  其ノ三ハ農村ニ於ケル非農家ノ勞力ノ動
  員デアリマス、此ノ非農家ノ、遊ンデ居ル
  ト云フト語弊ガアルカモ知レマセヌガ、併
  シ今日ノ狀況デハマダ非農家ノ人達ガ其ノ
  勞働力ヲ最高度ニ發揮シテ居ルトハ言ヘナ
  イノデアリマシテ、此ノ最高度ニ發揮シテ居
  ナイ勞働力ヲ效率的ニ使ハナケレバナラ
  又、サウ云フ工合ニシマスト、此ノ勞働力
  ト云フモノハ可ナリノ數字ニ上ルト我々ハ
  實ハ每日觸レテ居ル、是ハ農村ノ非農家ノ
  實情カラ、判斷スルコトガ出來ルノデアリ
  N 、 、此ノ際是等ノ人達ノ一大奮起ヲ促シ
  マシテ、其ノ勞働力ヲ更ニ强化シマシタナ
  ラバ、生產ノ增强ノ面トナル點ガ少クナイ
  ノデアリマシテ、此ノ點ニ對スル政府ノ御
  所見モ伺ヒタイト思フノデアリマス、私ハ
  先ヅ是等ノ非農家ガ從來行ツテ居タ所ノ勞
  力奉仕、此ノ勞力奉仕ト云フヤウナ觀念ハ、
  今一步進メナケレバイカヌ、今勞力奉仕ト
  云ツテ居リマスガ、御手傳ヒダト考ヘテ居
  ル面ガ少クナイト思フノデアリマシテ、私
  ハ出來得ベクンバ是等ノ人達ハ、自分ノ食
  糧位ハ自分デ自ラ耕作スルヤウニアリタイ、
  其ノ意思サヘアレバ方法ハ幾ラモアル、是
  ハ町村ノ農業會等ニ御話ニナレバ、幾ラモ
  方法ハアルト思フ、現在勞力不足ノ爲ニ土
  地ガ荒レテ行ク面ガ澤山アルノデアリマス、
  縱ンバ荒レナイマデモ耕作ガ粗笨ニナツテ
  收穫ガ減ルト云フ面ガ澤山アルノデアリマ
  スカラ、ソコデ是非之ヲサウ云フ工合ニシ
  タイ、又併シソレデモサウ云フコトガドウ
  シテモ出來ナイ人達ノ勞働力ト云フモノヲ
  更ニ有效ニ使フ爲ニ、今後ノ〓糧戰ニ有效
  ニ使フト云フ爲ニ、一番良イ方法ハ、ソレ
  等ノ人達ノ仕事ヲスル場所、或ハ每日ノ勞
  働デモ宜イノデアリマスガ、其ノ每日ノ勞
  働ヲ一ツ當面ノ生產責任者デアリマス町村
  農業會ニ自發的ニ一任サセル、自分ノ勞働
  力ハ帳面ニ付ケ出シテ置イテ、サウシテ每
  日農業會ノ指圖ニ依ツテ最モ有效ニ之ヲ働
  カセルト云フコトガ必要デアルト思ハレル
  ノデアリマス、此ノ點ニ關スル御意見ヲ承
  リタイ
  更ニ第四番目トシテハ勞力不足ノ問題ノ
  解決ノ一策ト致シマシテ、比較的耕作ニ勞
  力ヲ要シナガラ實ハ左程榮養價値ノナイ所
  謂高等ナ野菜等ノ栽培ヲ禁止スル考ヘハナ
  イカ、旣ニ西瓜、「メロン」等ニ付テハ禁止
  サレテ居ルガ、是ハ所謂贅澤禁止ト云フヤ
  ウナ意味デアツテ、必ズシモ勞力關係カラ
  デハナイト思フノデアリマス、ソコデ私ハ
  勞力面カラ見タ所ノ不經濟ナモノ、是ノ耕
  作ヲ禁止スル、或ハ制限スルト云フヤウナ
  コトガ此ノ際必要ダト思フ、平時ナラバ生
  活ノ裕リト云フヤウナコトヲ言フノデアリ
  マスガ、此ノ場合生活ノ裕リト云フヤウナ
  コトハ犧牲ニシナケレバナラヌノデアリマ
  シテ、小サイヤウダケレドモ、是ハ我々農
  村ニ居ル者トシテハ大キイ影響ガアルノデ
  アリマス、所謂儲カルト云フト近頃流行スル
  闇デ出スト云フヤウナコトガアル、サウシ
  テ農村ノ勞力ヲ攪亂スルト云フヤウナ結果
  ニ陷ツテ居ルノデアリマシテ、斯ウ云フ問
  題ニ付テモ一ツ承ツテ見タイト思フノデア
  リマス、以上四ツノ點ニ付テ御答辯ヲ願ヒ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=24

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• 025・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御說ノ如ク農業勞力ノ今
  後ハ申スマデモナク決戰ノ進ムニ從ヒマシ
  テ、一層逼迫致スコトガアリコソスレ、緩
  和スルト云フコトハ想像シ得ナイノデアリ
  やく、之ニ對シマシテ而モ食糧ノ必要ナル
  數量ヲ確保スル爲ニハ、此ノ勞力面ニ對ス
  ル方策ヲ必要トスルノデアリマス、我々ト
  致シマシテ今日考ヘテ居リマスルコトハ
  只今此委員ハ何カ新シイ手ハナイカト云フ
  御尋ネデアリマシタガ、特ニ新シイ手モゴ
  ザイマセヌノデスガ、最近閣議ニ於テ決定
  致シマシタ戰時農業要員制度ニ依リマシテ、
  現ニ農村ニ於ケル所ノ必要ナル農業上ノ勞
  力ハ之ヲ確保スル途ヲ講ジマスルト共ニ、
  從來カラノ只今御話ノヤウナ學徒其ノ他非
  農家ノ農村ニ對スル勤勞奉仕ヲ益~計畫的ニ
  且ツ組織的ニ活カスヤウニ致シマシテ、其
  ノ能率ヲ向上サセ、有效ナル働キヲシテ貰
  フト云フコトニ努メタイト思フノデアリマ
  ス、尙ホ農村ニ於ケル農業勞力ノ能率ヲ高
  メマス爲ニハ、今日資材ノ乏シイ折柄デハ
  アリマスケレドモ、出來得ル限リニ於テ必
  要ナル農機具ノ確保ヲ圖リ、或ハ先程來他
  ノ委員ノ御質問ノ中ニアリマシタヤウニ、
  便宜ナ所ニ於テハ農村ノ電化ノ普及ヲ圖リ
  マシテ、能率ヲ高メルヤウナコトヲ致ス、
  特ニ又是モ他ノ委員ノ話ニアリマシタヤウ
  ニ、近來ニ於ケル農村勞力ノ寧ロ過半トモ
  言フベキモノハ女子勞力ニアルノデアリマ
  シテ、此ノ女子勞力ヲ今後愈〓農業ノ上ニ有
  效ニ働イテ貰フベク此ノ女子ノ鍊成、或ハ
  或ル種ノ作業ニ付テノ女子作業ノ訓練ト云
  フヤウナコトモ進メテ參ル、例ヘバ馬耕ノ
  如キ作業技術ニ付キマシテ女子ノ訓練ヲ致
  シテ參ルト云フ風ニ致シタイト思フノデア
  リマス、尙ホ今囘ノ追加豫算ニ於キマシテ、
  食糧增產隊三萬人ノ編成ト云フモノヲ計上
  致シテ居リマスガ、是ハ此ノ十八年度ニ於テ全
  國ニ亙リ約四千名ノ增產隊ヲ編成致シタノ
  デアリマスガ、之ヲ一擧今囘三萬人程度ニ
  殖ヤシタイト云フ風ニ計畫致シテ居ルノデ
  アリマス、大體ニ於テ從來カラ農村ニアル
  人々ヲ以テ結集スルノデアリマスガ、農村
  ニ於ケル例ヘバ先般來致シテ居リマス土地
  改良其ノ他〓糧增產上有效ナ事業デアツテ、
  而モ一時ニ相當多數ノ勞力ヲ其處ニ集中ス
  ルノデナケレバ、之ヲ實現スルコトガ出來
  ナイト思ハレルヤウナ事柄ガ所々ニアル譯
  デアリマスガ、左樣ナ方面ニ玆ニ一ツノ纏
  ツタ勞力ヲ集中致シマシテ、其ノ打開ヲ圖
  ルト云フヤウナコトニ使ヒマスニハ斯ク
  ノ如キ相當數ノ人ヲ以テ致ス所ノ隊組織ト
  云フモノガ有效デアルト云フコトヲ考ヘラ
  レルノデアリマシテ、其ノ意味合ニ於キマ
  シテ只今御話シタヤウニ、今囘此ノ規模ヲ
  大イニ擴大致スコトニ致シタヤウナ譯デア
  リマス、農家相互間ニ於ケル移動勞働等モ
  豫テ致シテ居ル所デアリマスガ、ソレ等ノ
  事柄ハ一面從來カラノ施設デハアリマスケ
  レドモ、ソコニ今申シマシタヤウナ多少ノ
  新シイコトモ加味致シマシテ、此ノ際勞力
  ノ確保ニ努メテ參リタイト考ヘテ居ルノデ
  アリマス
  次ニ段々ノ御質問デアリマシタガ、第
  點ノ都市等ニ於ケル農民以外ノ者ガ〓糧增
  產ニ農民ト其ニ決死ノ努力ヲ拂フ必要ガア
  ル、之ニ對シテドウ云フ風ニ考ヘルカト云
  フ御話デアリマスガ、最近ニ於キマシテハ、
  農村ノ農繁期ニ都市ノ方カラ勤勞報國隊其
  ノ他ノ編成、或ハ左樣ノ隊組織ニ依ラズシ
  テ農村ノ所謂手傳ヒニ出ル者ガ相當アルノ
  デアリマスガ、ソレハソレトシテ今後益〓ヤ
  ツテ貰フヤウニ努メテ參ル積リデアリマス
  ガ、尙ホ都市其ノモノニ於キマシテモ、出
  來ル限リ食糧ヲ生產シテ參ルト云フコトガ
  必要ト考ヘラレルノデアリマス、例ヘバ大
  都市ニ於キマスル蔬菜ノ供給確保ト云フコ
  トニ付キマシテハ、一面ニ於テ都市近傍ニ
  於テ能率ノ高イ蔬菜栽培ヲ進メテ行クコト
  ニ付テ今後新シク施設シテ參リタイト思ツ
  テ居ルノデアリマス、同時ニ我々東京都ノ
  當局トモ話合ツテ居ルノデアリマスガ、都
  市ニ於ケル自給菜園ノヤウナモノニ付キマ
  シテモ、農商省ト致シマシテハ今後更ニ積
  極的ニ計畫的ニ一ツ指導ヲ地方當局ト共々
  ニ加ヘテ行キタイト云フヤウニ考ヘテ居リ
  マス、例ヘバ蔬菜ノヤウナモノハ、御承知
  ノヤウニ一年ノ期間ヲ見渡シテ見マスト、
  或ル時期ニハ相當ニ農村デ生產サレテ入ツ
  テ來ルノデアリマスガ、或ル時期ニハ所謂
  端境期デ割合少イト云フヤウナコトヲ見究
  メマシテ、寧ロ都市住民ヲシテ自ラ或ル程
  度ノ生產ヲ致シテ參ルト云フヤウナコトニ
  ナリマスヤウナ一ツノ指導ヲ加ヘテ行クト
  カ、或ハ又作物ノ種類ニ依リマシテハ、何モ
  纏マツタ群地ト云フヤウナモノデナクテモ、
  家ノ間ノ僅カバカリノ空地ヤ何カデモ利用
  シマシテ、相當有效ニ生產ノ擧ゲラレルヤ
  ウナ種類ノモノモアルノデアリマスガ、サ
  ウ云フヤウナモノニ付テ、種子ノ配付デア
  ルトカ其ノ他適切ナル指導ヲ加ベマシテ、
  サウシテ出來ル限リ平生ノ暮シノ合間々々
  ニ食糧ノ生產ノ出來ルヤウナ風ニ積極的ニ
  一ツ指導ヲ加ヘテ行キタイト云フコトデ今
  色々ト相談モ致シテ居ルヤウナ次第デアリ
  マス
  農村勞力ノ確保ノ見地カラモ都市ノ疎開
  ニ付テ考ヘルベキデハナイカト云フ御話ガ
  ゴザイマシタ、御尤モナ御意見デアルノデ
  アリマスガ、唯殊ニ本年ニ於ケル防空ノ見
  地カラスル所ノ都市疎開ノコトハ極メテ急
  ヲ要スル事柄デモアリマス、此ノ間ニ於テ
  御話ノヤウナ事柄ニ付テハ、私共ト致シマ
  シテモ十分其ノ方面ノ當局トモ話合ツテ見
  ル積リデハ居リマスケレドモ、差當リノ場
  合ニ付キマシテハ、或ハ御意見等ノコトニ
  付テ十分ニハ參ラナイカモ知レマセヌ、兎
  ニモ角ニモ御意見ノ點ニ付キマシテハ、此
  ノ方面ノ事ノ運ビ上ニモ十分考慮致スヤウ
  ニ政府部內ニ於テ計ラツテ參リタイト考ヘ
  マス
  農村ニ於ケル非農家ノ動員ノコトニ付キ
  マシテハ、或ハ燈臺下暗シト云フカ、餘リ
  農村自體ニ入ツテ居ルガ爲ニ却テ十分農業
  ノ上ニ使ハレナイト云フヤウナコトモアラ
  ウカト思ハレルノデスガ、御承知ノヤウニ
  一般ノ勤勞動員或ハ其ノ方法トシテノ勤勞
  報國隊ノ活動ト云フヤウナ仕事ノ進メ方ノ
  上ニ於キマシテモ、農村ニ於ケル人々ノ
  勤勞ヲ農業ノ上ニ用ヒルコトハ尤モ手近カ
  デアツテ有效ナ譯デアリマスノデ、此ノ方
  面ノ事柄ニ付キマシテモ、一般勤勞ノ擔當
  當局トモ十分相談ヲシテ參リタイト存ジマ
  ス
  勞力不足ノ一ツノ對策トシテノ作物ニ付
  テノ規正ノコトデアリマスガ、之ニ付キマ
  シテハ凡ユル方面カラ色々ノ作物ニ付テ格
  段ノ向上ヲ圖ラナケレバナラナイ今日ニ於
  キマシテハ、此ノ限ラレタル土地ナリ勞力
  ヲ最モ有效ニ使フト云フ觀點カラ致シマシ
  テ、蔬菜其ノ他ノ價格政策其ノ他ニ於テモ、
  國家的ニ見テ之ヲ奬勵スベキモノ、或ハ比
  較的奬勵スベカラザルモノト云フヤウチモ
  ノニ分ケテ考慮シタラドウカト云フヤウナ
  コトガ、部內ニ於テモ或ハ一般ニモ色々ト
  論ゼラレテ居ルノデアリマス、御話ニ列擧
  セラレマシタヤウナ種類ノモノニ付テハ大
  體ニ於テ論ガナイ、軍需其ノ他ニ特別ニ要
  ル場合モアリマスガ、殆ド論ガナイノデア
  リマス、其ノ他多クノ蔬菜ニ付テハ、或ル
  種ノ觀點カラ見ルト、是ハ必要デアル、又他
  ノ觀點カラ見ルト是ハ極メテ有效デアル
  ト云フヤウナ譯デ、中々今日現ニ栽培セラ
  レテ居ル所ノ多クノ蔬菜ニ付テ、徹底的ニ
  禁止シナケレバナラナイト思ハレルヤウナ
  モノモ比較的少イノデアリマス、ケレドモ、
  兎ニモ角ニモ單リ御話ノ勞力ノ面カラバカ
  リデナク、耕地ノ關係カラ言ヒマシテモ、
  今後相當斯ウ云フ面ニ付テ規正ヲ加ヘテ行
  ク必要ガアル、其ノ規正ノ方法トシテハ或
  ハ御話ノヤウナ絕對禁止ノ方法ヲ執ルカ、
  或ハ價格的ナ措置ヲ講ズルカ、或ハ又特殊
  ナ作物ニ付テハ、例ヘバ地方長官ノ特別ノ
  許可ヲ要スルト云フヤウナ方法ヲ執ルカ、
  色々ゴザイマスガ、何レニ致シマシテモ、
  今日ノ段階ト致シマシテハ、御話ノヤウナ
  方向ニ進ムベキモノダト我々モ考ヘテ居ル
  譯デアリマス、此ノ點ニ付テハ十分御意見
  ノ點ヲ考慮致シテ參リタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=25

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• 026・北勝太郎

  ○北(勝)委員　內務省ノ方ガ見エテ居ルサ
  ウデアリマスカラ、其ノ方ヲ先ニ御伺ヒ致
  シマス、北海道ニ於ケル土功組合乃至水利
  組合ニ付テヾアリマス、土功組合ノ救濟ハ
  多年ノ懸案デアツタノデアリマスガ、今囘
  ハ北海道長官ヲ初メ、政府當局ノ多大ナ御
  盡力ニ依ツテ解決ノ曙光ヲ見出シタヤウデ
  アリマシテ、洵ニ國家ノ爲御同慶ニ存ズル
  ノデアリマスガ、唯此ノ際私ノ伺ツテ置キ
  タイコトハ今度ノ救濟ニ依リマスト、其ノ
  對象ニナツタ組合ガ八十餘ノ組合ダト云フ
  コトデアリマス、其ノ中ニハ水田ニ適シナ
  イ地帶デ之ヲ畑ニ還元セシムルモノ、或、
  非常ニ低位生產地帶デアツテ、負擔ニ堪ヘ得
  ナイモノ、是等ノモノヲ救濟セラレルト
  云フノデアリマスガ、併シ今對象ニサレマ
  シタ八十幾組合ノ外ニモ同ジヤウナ條件ノ
  組合ガ相當アル、例ヘバ一組合全部デハア
  リマセヌガ、其ノ中ノ三分ノ一ナリ、四分
  ノ一ナリガ非常ナ冷濕地デアツテ、對象ニ
  ハサレテ居ナイガ、今對象ニサレテ居ル組
  合ト何等選ブ所ノナイ組合ガアリ得ル譯デ
  アリマス、斯ウ云フヤウナモノニ對シマシ
  テハ、今度ノ豫算ノ施行上ニ於テ、地方長
  官等ニ彈力性ヲ持タセテ、限定サレタ八十
  組合ニ限ラズ、將ニ荒廢ニ瀕シヨウトスル
  モノガアルナラバ、之ヲ一ツ助ケテ、米ノ
  生產ヲ增强サセルト云フ工合ニサセテ貰フ
  コトガ出來ルノデアルカドウカ、此ノ點ヲ
  一ツ伺ツテ置キタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=26

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• 027・深澤吉平

  ○深澤委員長　只今ノ質疑ニ對シテハ內務
  省ノ沼越說明員ガ答辯致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=27

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• 028・沼越正己

  ○沼越說明員　只今ノ北議員ノ御尋ネニ御
  答ヘ致シマス、御話ノヤウニ北海道ノ土功
  組合ノ更生ヲ圖ルト云フコトハ北海道トシ
  テ多年ノ懸案デアリマシテ、昭和二十年度
  ノ豫算カラ根本的ナ更生ヲ圖ツテ行ク〓ガ
  付イタト考ヘテ居リマスガ、御話ノヤウニ
  北海道ノ土功組合ハ其ノ創立ノ當初カラ若
  干見込ニ違ツタ點モアルト思ヒマスルシ、
  其ノ後連年凶作ヤ不作ガ繰返シテ襲ツテ參
  ツタト云フヤウナ事情カラシテ經營困難ニ
  陷ツテ、相當多額ノ負債ニ因ツテ居ルヤウ
  ナ實情ニアルノデアリマス、勿論一ツノ組
  合ノ中ニ相當立派ナ土地モアリマセウシ、
  場合ニ依リマシタラ水田ニハ不適當ナ土地
  ヲ澤山持ツテ居ル組合モアルト思フノデア
  リマスガ、差當リ二十年度以降カラ更生ヲ
  圖ツテ行キタイト思ヒマスルノハ、一組合
  ノ中デ非常ニ澤山ナ部分ガ斯樣ナ不適當ナ
  耕地ヲ持ツテ居リマスヤウナ組合カラ漸次
  助成シテ行ク、併シ第一期ノ計畫ニ於テ全
  部不適當ナ土地ノ更生ヲ圖ツテ行クト云フ
  コトハ、豫算ノ關係等カラシテ困難ガ伴ツ
  テ居ルノデアリマシテ、一ツノ土功組合ノ
  中デ左樣ナ不適當ナ耕作地ヲ持ツテ居リマ
  スモノノ多イモノカラ逐次是ガ更生ヲ圖ツ
  テ行キタイ、斯ウ云フヤウナ趣旨ニ於キマ
  シテ本年度以降ノ豫算ヲ計上シテ居ル譯デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=28

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• 029・北勝太郎

  ○北(勝)委員　重ネテ御伺ヒシマスガ、實ハ
  豫算ノ關係デ最初カラ全部出來ヌト言ハレマ
  スガ、サウ云フヤウナ土地ハ相當今離農者
  ガ出來掛ツテ居ル、此ノ決戰段階ニ於テソ
  レヲ防グコトガ出來ナイト云フト、漸クノ
  食糧對策モ實ハ六菖十菊ニナツテシマフノ
  デアリマシテ、出來得レバ地方長官等ハ其
  ノ內容ハ分ルノダカラ、一ツ八十組合ノ外
  ニモ斯ウ云フモノガアルナラバ、應急策ト
  シテ此ノ豫算ノ範圍內デソレモ救濟シテ、
  ミス〓〓目ニ見エタ離農ヲサセヌト云フコ
  トガ所謂決戰段階ニ於ケル行政措置デハナ
  イカト思フノデアリマシテ、此ノ點ニ關シ
  マシテモウ一應御考ヘヲ願ヒマシテ御答辯
  ヲ得タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=29

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• 030・沼越正己

  ○沼越說明員　重ネテ御答へ申上ゲマス、
  只今御說明申上ゲマシタノハ、土功組合自
  體ガ非常ニ經營困難ニ陷ツテ居ル、之ヲ政
  府ノ力ヲ以テ更生ヲ助ケテ行キタイト云フ
  點カラ申上ゲマシタノデ、他ノ方面ニ於キ
  マシテ御存ジノヤウニ土地改良ノ問題ガ全
  國ニ亙ツテ行ハレテ居リマス、北海道ニ於
  キマシテモ農商省ノ第二次ノ食糧增產對策
  ト相呼應致シマシテ、五箇年計畫ヲ以テ現
  ニ土地改良ヲ實施シツヽアルノデアリマス
  ガ、斯ウ云フ點ニ於キマシテモ土功組合ノ
  一部ノ土地ガ更生シテ行クコトガ考ヘラレ
  ルノデアリマス、他ノ方面ニ於キマシテ自
  作農ノ創設ヲ圖ツテ行クト云フヤウナ問題
  ニシマシテモ、勿論此ノ戰時下ノ增產ニ付
  テハ農民ノ奮起ニ俟ツ點ガ多イノデアリマ
  スガ、自作農ヲ擴張シテ參リマスコトハ此
  ノ點ニ於キマシテ非常ニ效果ガアルト考ヘ
  ラレルノデアリマシテ、斯樣ナ一般農林行
  政上ノ施策モ加味サレテ參リマシテ、他ノ
  方面カラ更生ヲ考ヘラレル場合モアルト思
  ヒマスガ、御說ノ通リ全體ニ於テ低位生產
  ノ土地ヲ持ツテ居リマスル組合、或ハ農家
  ニ付テ、此ノ問題ハ戰時下ノ增產ノ要請ト
  睨ミ合セテ十分ナ考慮ヲ拂フ必要ガアルト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=30

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• 031・北勝太郎

  ○北(勝)委員　土功組合ハ御承知デモアリマ
  セウガ良イ土地モ惡イ土地モ均等賦課ナノ
  デアリマス、大體土功組合ガ良イ土地ノ多
  イ所ハ救濟シナイト言ハレルコトハ是ハ不
  均等賦課ノヤレル場合ノ話デアツテ、均等
  賦課ヲ原則トシテ居ル今日ニ於テハソレハ
  不可能ナコトデアル、ソコデ土功組合自ラ
  サウ云フモノヲ救ウテ行ク途ハナイノデア
  リマス、更ニ土地改良ノコト、自作農ノコ
  ト、是ハ當然ノ仕事デアリマスガ、併シ土
  地改良ノ如キハ是ハ半永久的ノ仕事デアツ
  テ、サウ全耕地面積ニ對シテ一遍ニヤレル
  モノデハナイ、或ハ五年ト言ハレマスガ、
  五年デ土地改良ガ終ルモノデハナイノデア
  リマシテ、而モサウ云フヤウナ惡イ土地ハ
  同ジ土地改良デモ著手スル速度ガ遲イ、サ
  ウ云フヤウナ關係ガアリマシテ、其ノ間ヲ
  持チ堪ヘルコトガ出來ナイカラ農家ガ離農
  スル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、
  ソコデ土功組合救濟ト云フコトガ目的デア
  ルノデアリマスカラ、隨テ其ノ目的ハ何處
  ニアルカト云ヘバ增產--減產ヲ來サナイ
  ヤウニスルコトガ根本目的デアル、其ノ根
  本目的ニ反シナイ限リニ於テハ、此ノ豫算
  ノ範圍內ニ於テ地方長官ニ其ノ活用ヲサ
  セル、豫算ノ執行ヲ活用サセテ、減產ニナ
  ラヌヤウニサセルト云フコトハ當然ヤラナ
  ケレバナラヌコトダト思フノデアリマスガ、
  此ノ點ニ關シテモウ一應御答辯ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=31

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• 032・沼越正己

  ○沼越說明員　豫算ノ執行其ノ他ハ全部北
  海道長官ニ一任シテ、北海道長官ノ御意見
  ヲ本ニシテヤツテ行キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=32

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• 033・北勝太郎

  ○北(勝)委員　內務省ノ方ハソレデ終リマ
  シテ、次ハ農商省ノ當局ニ伺ヒマス、今囘
  生マレ出タ農業會ノ新シイ指導精神ハ何處
  ニアルカ、從來產業組合ニハ共存同榮ト云
  フ一ツノ指導精神、旗幟ガアツタノデアリ
  やっり、併シ是モ時代ノ推移ト共ニ過去ノモ
  ノニナツテシマツタノデアリマシテ、能ク
  之ヲ仔細ニ掘下ゲテ見マスト、其ノ根本ニ
  於テ個人主義思想ニ立脚シタ點モアツタノ
  デアリマス、ソレガ爲ニ此ノ指導精神ニ多
  少缺陷ガナカツタトハ言ヘナカツタノデア
  リマスガ、ソレガ爲ニ或ハ團體個人主義ニ
  陷ツタト云フヤウナコトモアリマス、ソレ
  ガ爲ニ又對立觀ヲ釀成サシタコトモアツタ
  ノデアリマスガ、ソレハ兎ニ角トシテ、產
  業組合ニハ共存同榮ト云フ指導精神ノハツ
  キリシタモノガアツタノデアリマス、新時
  代ノ要求ニ從ツテ生レ來マシタ農業會ニハ、
  如何ナル指導精神、如何ナル旗幟ヲ以テ進
  マサウト云フノデアリマスカ、是モ伺ツテ
  置キタイト思ヒマス、ソレト同時ニ新時代
  ノ商業組合ノ指導精神、旗幟、是モ同ジ意
  味ニ於テ承ツテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=33

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• 034・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御話ノ農業會ノ指導精神
  ハ、ヤハリ其ノ時ノ國家情勢ニ應ジマシテ、
  自ラソコニ變遷スベキ相對的ノモノト、又
  絕對的ノモノトアラウト存ジマスガ、私共
  一應此處デ申上ゲルコトハ、兎ニ角我ガ國
  ノ農業ト云フモノハ、謂ハヾ國民生活ニ於
  ケル一ツノ中樞トシテノ產業タル重責ガア
  ルト思フノデアリマス、サウ云フ一ツノ農
  業ト云フ各種產業部門間ニ於ケル特殊ノ地
  位ヲ顧ミテ、其ノ國家ニ對スル責務ノ遂行
  ヲ圖ルト云フコトガ、結局農業會トシテノ
  不變ノ一ツノ指導精神デアルベキデハナイ
  カト思フノデアリマス、殊ニ此ノ決戰下ニ
  於キマシテハ、農業會ト致シマシテハ其ノ
  農業ノ本來ノ精神ニ基キマシテ、食糧增產
  ト云フ面ニ付キマシテ、或ハ〓糧以外ノ必
  需作物ノ增產ト云フヤウナ事柄ニ付キマシ
  テ、特ニ此ノ際最大ノ努力ヲ拂フト云フコ
  トニアルノデハナカラウカト思フノデアリ
  マス、勿論農村ノ確立ト云フヤウナコトモ
  ゴザイマスガ、是ガ本來ノ絕對的ノ使命デ
  アラウト思ヒマス、此ノ際トシマシテハ、
  就中當面ノ急デアル食糧增產ノコトニ懸命
  ノ努力ヲ拂フト云フ所ニ、農業會ノ指導精
  神ガアルノデハナイカト思フノデアリマス
  商業ニ付キマシテハ、是ハ一〓ニモ申セ
  マセヌガ、大體以前ニ於キマシテ所謂利益
  追求-是モ絕對的ナ意味ニ於テ申スナラ
  バ必ズシモサウデハナカツタト云フ色々ナ
  條件モ付ク譯デアリマスガ、極ク簡單ニ申
  上ゲマシテ利益追求ト云フコトデアツタト
  致シマスナラバ、今日ノ場合ニ於キマシテ、
  此ノ商業ト云フモノハ、所謂配給ト云フコ
  トニ付テノ國家ノ必要ナル部面ヲ擔當シテ、
  之ヲ國家ノ要請ニ副ウテ適正ニ行フト云フ
  コトニアルダラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=34

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• 035・北勝太郎

  ○北(勝)委員　次ニ承リタイコトハ、農村
  ニ於ケル各種資材竝ニ生活必需品ノ配給ニ
  付テヾアリマス、我々農民ノ見ル所デハ、
  從來政府ガ農村ニ對シテ執ツテ來タ所ノ各
  種ノ農業資材、或ハ生活必需品ニ對スル配
  給ニ付テハ、事每ニ配給主生產後ノ政策ヲ
  執ツテ來ラレタト云フヤウニ思ハシメルモ
  ノガアツタノデアリマス、斯ク申シマスト
  御叱リヲ受ケテ、ソンナ馬鹿ナコトガアル
  カ、當局ハ生產配給ノ兩全ヲ期シテヤツテ
  居ル、斯ウ云フ御答辯ハ當然受ケルデアラ
  ウト思フノデアリマス、併シ生產ノ絕對量
  ガ減少シマシテハ、如何ニ力ヲ配給ニ注イ
  デモ滿足ナル結果ハ得ラレナイト云フコト
  ハ、自明ノ理デアルノデアリマス、ソコデ
  絕對量ノ增加コソ、其ノ基本要件デナケレ
  バナラヌト思ヒマス、生產ニ主力ヲ注ギ配
  給ハ此ノ生產ニ從屬スル所ノ、卽チ生產主
  配給從ノ力ノ注ギ方デナケレバナラヌ、サ
  ウデナケレバ眞ノ生產配給ノ兩全ヲ期スル
  コトハ出來ヌト考ヘテ居ルノデアリマス)
  然ルニ往々農村ニ於テサヘ之ヲ逆ニスルカ
  ラ、生產ガ減ジテ、實ニ見兼ネルモノガア
  ルノデアリマス、是ハ配給ニ主力ヲ注イダ
  所ノ誤レル觀念、又小サイ範圍ノ見方カラ
  シタ所ノ公平觀カラ來タモノデアツテ、私
  ハヨク聞クノデアリマスガ、業者モ國民デ
  アル以上之ヲ救ハナケレバナラヌト云フ安
  價ナ同情心、此ノ同情心ガ或ハ都市ニ於ケ
  ル配給ノ重大性ニ便乘シテ、複雜ナ農村ノ
  配給ト混線シタト云フ、色々ノ錯誤カラ來
  タ結果デアラウト思ハレルノデアリマス、
  全國民ノ生命ヲ繋グベキ此ノ重大ナ食糧生
  產ニ對シマシテ、斯ウシタ對立觀トカ或ハ
  安價ナル同情論ト云フモノハ一掃シナケレ
  バナラヌ、生產上農業會等デ配給シタ方ガ
  便利デアルモノハ、生產資材ト云ハズ生活
  必需品ト云ハズ、何デモ之ヲ農業會ニ委讓
  サセテ、生產ト配給ト一貫シタ方法デヤラ
  セマシテ、眞ノ增產ヲ擧ゲルヤウニサセル
  コトガ先決要件デアラウト、斯ウ云フ風ニ
  思ハレルノデアリマス、此ノ事ニ付キマシ
  テハ古イ產業組合時代ニヨク聞カサレタ言
  葉デ、業者側ノ言ヒ分デアリマスガ、企業
  整備モ宜イケレドモ、其ノ後ニ產業組合ガ
  進出スルノデハ泣イテモ泣キ切レヌト云フ
  言葉、此ノ對立觀カラ來タ所ノ感情論、是
  ガ臆面モナク飛出スト云フヤウナ狀態デア
  ルノデアリマス、我々ハ此ノ重大ナ將ニ食
  糧ノ危急ヲ招來セントスル大切ナ時ニ、個
  人的ナ慾得感情ナドハ第二第三モノデアル、
  今後左樣ナコトハ考ヘラルベキデハナイ、
  寧ロ唯此ノ際ハ滅私奉公アルノミト云フ位
  ニ思ツテ居ルノデアリマス、ソコデ如何ニ
  シテ生產ヲ便利ニシ、貴重ナ農民ノ勞力ヲ無
  駄ヲサセズシテ增產ヲサセヨウカト云フ此
  ノ一途ダケデアルト、斯ウ私ハ思フノデア
  リマス、一部ノ犧牲者ハ是ハ別ニ救濟ノ方法
  ヲ設ケテ、國民大多數ヲ活カスベキデアル
  ト思フ、斯ウ云フヤウナ大キナ意味ニ於ケ
  ル公平論ニ立歸ラサナケレバナラヌ、此ノ點
  ニ付テ多年我々ガ呼ビ續ケテ來マシタ所ノ
  肥料ノ配給、是ハ最近幸ヒニ農業團體ニ
  元化サレタノデアリマシテ、結構ナコトト思
  ヒマスガ、併シナガラ是ハ遲カツタ、所謂後
  手ニナツテシマツタノデアリマス、全ク行詰
  ツテシマフマデ之ヲヤラレナカツタト云フ
  コトハ、生產ノ增强上洵ニ私共ハ遺憾千萬ニ考
  ヘテ居ルノデアリマス、肥料以外ノモノニ付
  キマシテモ、農村ニ於テハ所謂業者ノ配給ノ
  爲ニ現在如何ニ農家ガ貴重ナ努力ヲ無駄ニ
  シテ居ルカ、又必要ナモノガ必要ナ時ニ必要
  ナ量行渡ラズニ、如何ニ苦杯ヲ嘗メツヽア
  ルカト云フコトハ、是ハ一般ニ知ラレテ居ナ
  イ、生產責任制ノ叫バレル所以ノ一ツモ實
  ハ、茲ニアルト思ハレルノデアリマス、分リ易
  イ一例トシテ、私ハ野鍛冶ノ問題、或ハ、農
  具修繕工ノ問題ヲ一ツ例ニ擧ゲテ見タイト
  思フノデアリマス、是等ノ仕事ヲ農業者ノ
  團體ニ從屬シテ居ツタモノカラ取上ゲテ、
  サウシテ最下部ノ町村ニマデ實ハ業者ノ組
  合デヤラスヤウニナツタ、之ガ爲ニ直接ニ
  之ヲ監督スル人ガナクナツタ、彼等ノ一人
  天下ニナツタ、農家ノ生殺與奪ノ權ハ彼等
  ガ握ル、質ノ惡イノニナリマスト、幾ラ修
  繕製作ヲ賴ンデモ、自分ノ氣ニ入ツタモノ
  デナケレバ、忙シクテ出來ナイト云フコト
  ニカコツケテ、何トシテモヤツテヤラヌ、
  ソレガ爲ニ往々時期ヲ失シテシマフ、ト云
  フヤウナコトニナツテ居リマス、近頃ハ是
  等ノ連中ガ、謂ハヾノサバツテトデモ言ヒ
  マスカ、米ヲ持ツテ來イ、餅ヲ搗イテ持ツ
  テ來イ、サウスレバ拵ヘテヤル、ト云フヤ
  ウナ例ハ少クナイ、斯ウ云フヤウチ狀況デ
  アリマス、サウシテ彼等ハ金ヲ儲ケテドウナ
  ルカト云ヘバ、金ガ儲カレバ儲カル程働カ
  ナイ、公定價格デ儲カラナイモノハ造ラナ
  イ、斯ウ云フヤウナコトニナツテ居ルノデ
  アリマシテ、大切ナ農具ガ適期ニ使へナイ、
  斯ウシタ例ハ單リ農具ダケデハナイノデア
  リマス、近頃ハ此ノ外ニ配給業者ガ大分役
  人振ツテ、不親切ニナツテ來タト云フヤウ
  ナコトガアル、斯ウ云フヤウナ關係カラ農
  業生產ヲ妨ゲテ居ルコトハ、實ニ見ルニ見
  兼ネルモノガアル、又サウデナクテモ、業
  者ノ中ニハ何等勞セズシテ、所謂「トンネ
  ル口錢ヲ取ツテ居ル者ガ居ル、是等ノ者
  ハ小サイコトノヤウデハアルガ、全ク農民
  ノ生產意慾ヲ阻害シテ、眞面目ナ農民ノ心理
  ニ非常ニ惡影響ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、
  デ農業資材ハ勿論、生活必需品ノ配給モ生
  產者側ニ行ハシムルコトガ生產上便利ナモ
  ノハ、增產上ノ見地ニ於テ之ヲ任セナケレ
  バナラヌト云フコトヲ主張セズニハ居ラレ
  ナイノデアリマス、所謂生產主配給從、或
  ハ言葉ノ使ヒ方ガ惡イカモ知レマセヌガ、
  サウ云フ行キ方ニ改メテ、是カラ來ル所ノ
  生產ノ隘路ヲ打開スルコトガ必要デアルト
  痛感スルノデアリマスガ、此ノ點ニ關シテ農
  商省ノ御意見ヲ承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=35

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• 036・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　此ノ生產ト配給トノ關係
  ニ付キマシテハ、是ハ極端ニ申シテモ又少
  シ語弊ガアリマスガ、大體論トシマシテハ、
  農ニシマシテモ、工ニシマシテモ、今日ノ
  場合ハ生產ガ御說ノ如ク主デアリマシテ、
  配給ガ謂ハバ從ト云フコトハ、是ハ申スマ
  デモナイコトト存ズルノデアリマス、ソコ
  デ配給ハ生產ナリ、或ハ又必要ナル國民ノ
  生活ノ爲ニ適正ニ運行サレナケレバナラナ
  イ、唯其ノ間ニ於テ必ズシモ十分デハナイ、
  或ハ適當デハナイト云フヤウナ事態ガアル
  ト致シマスル場合ニ於テハ、ソレガ或ル場
  合ニハ過渡的ノ現象デアルト云フ場合モア
  ル譯デアリマス、先程カラ御話ノ、例ヘバ
  肥料ニ付テノ狀況ニ付キマシテモ、アヽ云
  フヤウナ、今囘出來上リマシタヤウナ事柄
  ニ付テハ、隨分久シキニ亙ツテ話ハ色々ト
  アリ、大體サウ云フ方向ニ向イテ居ナガラ、
  細カイ點ニ付テ色々話ガ纒マラナイト云フ
  ヤウナコトカラ、其ノ機運ニ至ラナカツタ
  ト云フヤウナ時期モ相當長カツタヤウデア
  リマス、左樣ナ譯デアリマシテ、過渡的ナ
  現象トシマシテ必ズシモ是ガ適當デアルト
  ハ思ハレナイコトデモ是ガ行ハレテ居ルト云フコ
  トモアリ得ルノデアリマス、ソレ〓〓ノ部
  面ノ實情ニモ依リマスガ、之ヲアマリニ早
  急ニ決メマシテモ致シ方ノナイヤウチ場合
  モアルノデアリマス、尙ホ生產ノ爲ノ配給
  ト云フコトデアリマシテモ、是ハヤハリ實
  質的ニ考ヘナケレバナラナイノデアリマシ
  テ、詰リ形式的ニ生產ノ爲ニナツテ居ル、併
  シナガラ實質的ニハ必ズシモ生產ノ爲ニハ
  ナツテ居ラヌト云フヤウナ事態ガ起ツテモ
  相成ラヌノデアリマス、假リニ例ヘバ農業
  會ナラ農業會ガ之ヲ運營スル、ソレダケノ
  形式デ以テモウ萬事解決シタカト云ヘバ、
  勿論サウデハナイノデアリマシテ、農業會
  ノ運營其ノモノガ又更ニ適切ニ行ハレナケ
  レバナラナイ、是ハ當然デアリマス、ソコ
  デ假リニ、例ヘバ農業會ニ於テ適切ニ運營
  サレルト云フコトヲ實現スル爲ニハ、ヤハ
  リソコニ今直チニサウ云フコトヲ實現スル
  ト云フコトハ困難デアルト云フヤウナ、事
  實上ノ事態モ亦部門ニ依ツテハアリ得ル譯
  デアリマス、旁〓致シマシテ、私共ト致シマ
  シテハ、要スルニ此ノ必要ナル農業生產ガ
  實際ニ於テ最モ便利ニ運營サレルヤウニ、
  配給ノ方ナリ、何ナリニシマシテモ考ヘナ
  ケレバナラナイ、必ズシモ形式ニ依リマ
  シテ實質ヲ忘レテハナラナイト云フ風ニ考
  ヘル譯デアリマス、左樣ナ譯デアリマシテ、例
  ヘバ或ル種ノ物ノ配給ニ付テハ、從來ノ經
  驗ナラ經驗ヲ用ヒル必要ガアルト思ハレル
  場合ニ付テハ、サウ云フ經驗ノアル者ヲ其
  處ニ用ヒル、或ハ形式上ト云ヒマスカ、制
  度トシテハ必ズシモサウデナケレバナラヌ
  ト云フコトガナクテモ、當面ノ實情カラ見
  マシテサウ云フヤウナコトヲ致ス場合モア
  リ得ル譯デアリマス、尙ホ從來ノ機構ガ改
  變サレルト云フ場合ニ付テハ、ソレ〓〓〓
  手當モ必要ナ場合モアリマス、彼此レ致シマ
  シテ、農村ノ配給物資ニ付キマシテモ、玆
  ニ色々ノ形態ガアル譯デアリマシテ、總テ
  ノモノガ必ズシモ一樣ニハ行ハレテ居ラナ
  イト云フコトニナル譯デアリマス、併シナ
  ガラ、狀況ヲ能ク見ナガラ、我々トシマシ
  テハ生產ノ爲ニ配給ガ適正ニ行ハレマスル
  ヤウニ、總テノ部門ニ付キマシテ今後トモ
  十分氣ヲ付ケテ參リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=36

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• 037・北勝太郎

  ○北(勝)委員　次ニ政府ハ北海道竝ニ樺太
  等ノ〓糧問題ニ付テドウ考ヘルカト云フ點
  ニ付テ伺ヒタイト思ヒマス、農作物ハ天候
  ニ左右セラレルモノデアリマスガ、北海道
  ノ稻作ノ如キハ、實ハ耕作ノ限界點ニ近イ
  溫度ノ下ニ耕作サセラレテ居ルノデアリマ
  ス、ダカラ不祥ナ言ヒ分ノヤウデアリマス
  ガ、今マデノ經驗カラ言ツテモ何時不作ガ
  來ヌトハ言ハレヌノデアリマスガ、此ノ間
  モ農商大臣ハ敵前作戰ニ於テ雪害ヲ生ゼシ
  メナイコトガ、食糧生產戰ノ要訣デアルト
  云フ工合ニ言ハレテ居ツタ通リデアルノデ
  アリマス、斯ウ云フヤウナ點カラ北海道竝
  ニ樺太ノ食糧問題ニ付テドウ云フ考ヘヲ持
  ツテ居ラレ、又ドウ云フ對策ヲセラレルノ
  デアルカ、北海道デハ稻ノ不作ガ生ジ易イ、
  稻ノ不作ノ年卽チ低溫ノ年ニハ馬鈴薯、燕麥
  ノ收穫ガ多イ、斯ウ云フコトニナツテ居ルノ
  デアリマス、全ク米ト反對ノ性資ヲ持ツテ
  居ル、去年ハ特ニ稻ガ良カツタガ、溫度ガ高
  カツタ爲ニ燕麥ハ曾テナイ不作デアツタ、
  又馬鈴薯モ二度芽ガ出タリシテ、不作ニナ
  ツタト云フヤウナ關係ヲ持ツテ居ルノデア
  リマス、ソコデ米ガ一粒モ假ニ穫レナイト
  シテモ、實ハ馬鈴薯ト燕麥ヲ素ニシタか て
  トミル」、靑菜ダケアレバ人間ハ十分健康ガ
  保持サレルト云フコトハ、旣ニ是ハ實驗濟
  ミノコトデアルノデアリマス、之ヲ常用ニ
  シテ居ル國モアルト云フコトガ、此ノ間モ新
  聞ニ出テ居ツタヤウナ狀況デアルノデアリ
  そう、此ノ場合依然トシテ北海道或ハ樺太
  ニ於テ米〓ヲ中心トシタ食糧政策ハ、是尺
  考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  萬一ノ場合ニ於テ北邊ノ地ニ於ケル米〓ハ
  勿論、一般住民ノ食糧トシテドンナコトガ
  アツテモ手違ヒヲ來サナイ用意トシテハ、
  米作ト同時ニ此ノ馬鈴薯、燕麥ノ耕作反別
  ヲ擴張シテ行カナケレバナラヌシ、ソレヲ
  擴張シテモ差支ヘナイヤウニ、公定價格其
  ノ他ニ於テ之ヲ引合フヤウニシテヤルト云
  フコトガ、極メテ大事ナコトダト思フノデ
  アリマス、燕麥ハ貯藏ガ利クノデアリマス、
  家畜ノ飼料トシテ幾ラモ用途ガアルノデア
  リマスガ、是ハ別トシマシテ貯藏ノ利カヌ
  馬鈴薯ニ付テハ、此ノ際特別ノ處置ガ必要ニ
  ナツテ來ルト思ハレルノデアリマス、米ガ澤
  山穫レタ年ニハ、寧ロ私ハ米ヲ貯藏シテ、米
  ヲ食フコトハ後廻シニシテ、馬鈴薯ヲ先ニ
  食フト云フ食習慣ヲ作ルト云フコトガ極メ
  テ大事ダト思ヒマス、サウシタ訓練、或
  料理ノ講習等モ必要ニナツテ來ルト思フノ
  デアリマス、更ニ冬季ハ冷凍芋ヲ使用サセ
  ル、今夕張邊リデハ盛ンニ北海道デ凍ツタ
  芋ヲ其ノ儘配給シテ居ルガ、此ノ間新聞デ
  見テモ、結構食へルト言ツテ新聞ニ出シテ
  居ルヤウナ狀況デアリマス、サウ云フヤウナ
  方法、或ハ夏マデ持越サス爲ニ貯藏室ヲ造
  ラセル必要ガアル、是ハ大規模ナ貯藏室ガ簡
  單ナ方法デ出來テ居ル、「アメリカ」邊リノ
  例ヲ澤山聞イタノガアルノデアリマスガ、サ
  ウ云フヤウナ行キ方モシナケレバナラヌ、
  ソレガ爲ニハ斯ウシタ貯藏室ノ築造ニ對ス
  ル補助、ソレカラ澱粉製造ヲサセルコトハ
  勿論、小規模ナ家庭デ行フ所ノ冷凍、乾燥
  馬鈴薯、是ハ殆ド機械ガ要ラズニヤレルノ
  デアリマシテ、是モ各農家或ハ北海道住民ガ
  ヤレバ、隨分冬季ノ間ニヤレル仕事ナノデ
  アリマスガ、斯ウ云フヤウナモノヲヤラセルト
  云フヤウナコトガ必要ニナツテ來ルト思フ
  ノデアリマス、隨テ斯ウシタモノニ奬勵的ナ
  ツノ公定價格ト云フモノガ設定サレナケレバ
  ナラヌ、是ガ設定サレナイカラ何時マデモ
  斯ウ云フモノガ發達シナイト云フコトニナツ
  テ來ル、サウシテ食糧ハ安全感ガ保タレナ
  イト云フコトニナルノデアリマシテ、是ハ特
  ニ急務中ノ急務ト思フノデアリマスガ、此
  ノ點ニ付テ農商省ノ御意見ヲ承ツテ置キタ
  イト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=37

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• 038・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　戰局ノ推移ニ依リマスト、
  非常ナ場合モ覺悟致サナケレバナラヌノデ
  アリマシテ、左樣ナ場合ニ於キマシテハ全
  國ノ生產食糧ヲ、何處ヘデモ萬遍ナク公平
  ニ分ケテ食フト云フコトハ申スマデモナ
  ク考ヘラレナイコ〓デアリマス、隨ヒマシ
  テ所謂〓土食ト云フヤウナ事柄、是ハ古ク
  カラ北海道ノ方々ナドカラモ唱ヘラレテ居
  ツタコトデアリマスガ、此ノ決戰下ニ於キ
  マシテ、新シイ意味ヲ以テ、ヤハリ其ノ〓
  土食ノ奬勵ト云フコトガ必要ニ相成ツテ居
  リマス、北海道等ニ於ケル食糧ニ付キマシ
  テハ、只今北委員ノ御說ノ通リノ關係ニア
  ラウカト思フノデアリマスガ、只今ノ御意
  見等モ能ク參酌致シマシテ、殊ニ交通關係、
  又北方最前線ニ近イ北海道、樺太ノ食糧ニ
  付キマシテハ、此ノ事態ニ卽應シタヤウニ
  我々トシテモ萬全ノ方途ヲ講ジタイト思ツ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=38

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• 039・北勝太郎

  ○北(勝)委員　牛乳ノ增產ハ決戰下ノ至上
  命令デアリマシテ、ソレカラ出來ル「カゼ
  イン」ハ現下極メテ重要ナ軍需品デアルコ
  トハ、私カラ申上ゲルマデモナイト思フノ
  デアリマス、卽チ幾ラアツテモ足ラナイト
  云フ狀況デアルノデアリマシテ、爲ニ大切
  ナ育兒用ノ煉粉乳劑、之ヲ犧牲ニシナケレ
  バナラヌト云フヤウナ狀況ニナツテ居ルノ
  デアリマス、然ルニ此ノ大事ナ牛乳ガ、當
  局ハ既ニ御承知ト思フノデアリマスガ、昨
  年ノ四五月以來急ニ減產ノ傾向ヲ迪ツテ來
  テ居ルノデアリマス、是ハ洵ニ殘念至極ナ
  コトデアルノデアリマスガ、是ガ原因ハ一
  ニ乳價ガ安イ爲デアルト云フコトハ、ハツ
  キリシテ居ルノデアリマス、生產ヲスレバ
  スル程實ハ赤字ガ出ル、私ハ現ニ一年中ヲ
  通ジテ一石以上ノ牛乳ヲ出シテ居リマス、
  普通ノ農業ト共ニ畜產ヲヤツテ居ルノデア
  リマシテ、一石以上ノ牛乳ヲ出シテ居ルガ、
  出セバ出ス程赤字デアル、實際ノ體驗者デ
  アル、斯ウ云フ點カラ多クノ農家ハ之ヲ繼
  續スルコトガ出來ナイト云フヤウナ狀況ニ
  ナツテ居ル、今牛ハガラ〓〓ニ瘠セテシマ
  ツテ居ルト云フヤウナ狀況ニナツテ居ルノ
  デアリマス、此ノ價格ヲ適正ニスルト云フ
  コトガ、ドウシテモ生產ヲ增加サセル手段、
  要件デアリマス、ナゼカト云フト乳牛飼ヒ
  ノ九割九分マデハ飼料代デアル、デアリマ
  スカラ是ノ價格ガ適當ニナラナケレバ、他
  ノ農業ノヤウニユツクリシタヤウナコトヲ
  考ヘテ居ル譯ニイカヌノデアリマス、ソコ
  デ考ヘテ見マスト、牛乳竝ニ乳製品ノ價格
  ハ一昨年ノ五月ニ改正サレタキリデアリマ
  シテ、其ノ後一向手ガ著イテ居ラヌ、昨年
  米ニ大幅ノ奬勵金ノ出ル等ノコトガアリ、
  或ハ勞働賃金ノ高化、各種物價指數ノ漸騰、
  是等ノ點カラ見マシテドウシテモ牛乳ガ最
  下位ニアル、隨テ是ガ減產スルト云フコト
  ニナツテ居ルノデアリマシテ、是ハ戰力增
  强ノ上ニ重大ナ關係ガアルト思ツテ居ルノ
  デアリマス、ソコデ此ノ乳價ニ甚ダシイ無
  理ガアルノラドウシテモ直サナケレバナラ
  又、是ハ當局モ認メテ居ラレルダラウト
  思フ、速カニ之ヲ適正ニスルコトガ必要デ
  アルト思フノデアリマスガ、之ニ對スル當
  局ノ御意見ヲ承リタイ、又牛乳增產ノ爲ニ
  ハ飼料問題ノ解決ヲ要スルノデアリマス、
  乳牛ハ他ノ家畜ト違ヒマシテ、濃厚飼料ヲ
  要スルコト最モ大ナルモノデアルノデアリ
  マス、卽チ粗飼料ダケデハ乳ハ出ナイ、濃
  厚飼料卽牛乳ト言ツテモ官イ位ノモノデ
  アルノデアリマス、然ルニ今日此ノ飼料難
  ハ世間公知ノ通リデアルノデアリマスガ、
  兎角計畫生產ニ於テハ此ノ飼料作付ニ對シ
  テハ、昨日モ御話ガアリマシタガ、ドウモ
  閑却サレ勝チデアル、農業技術者ハ動モス
  レバ植產技術員デアツテ、畜產ノ技術員デ
  ハナイト云フヤウナ關係ガアツテ、我々ハ
  常ニ之ヲ遺憾ニシテ居ツタヤウテ狀況デア
  ルノデアリマス、ソコデ此ノ飼料ノ耕作面
  積ノ增加竝ニ巧妙ナ飼料ノ耕作方法ノ指導
  竝ニ現下一番大事ナ濃厚飼料トシテ、貴重ナ
  性質ヲ持ツテ居ル大豆粕ヲ田畑ニ直接肥料
  トシテバラ撒クヤウナコトヲサシテ置クコ
  トハ、洵ニ不經濟ナ話デアリマス、是ハ是
  非一旦家畜ノ腹ヲ通シテ之ヲ肥料化スル、
  何モ肥料成分トシテ變ラナイ、寧ロ良クナ
  ル位デアリマス、斯ウシタ大豆ノ養分ヲ二
  重ニ利用スルコトガ極メテ大事グト思ヒマ
  スガ、當局ハサウシタ方法ヲ執ラレマシテ、
  當面ノ牛乳需要ヲ充タサセルト同時ニ食
  糧增產ニナル、斯ウ云フ方法ニ力ヲ入シラ
  レル御考ヘハナイカ承リタイ

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• 040・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御說ノ如ク「カゼイン」ノ
  增產ハ、今日緊急ノ必要ガアルノデアリマシ
  テ、之ニ付キマシテハ我々ト致シマシテモ
  一ツノ明確ナル計畫ノ下ニ、此ノ遂行ヲ今
  期シツヽアルノデアリマス、唯御話ノ中ニ
  育兒用ノ煉粉乳ヲ犧牲ニスルモ已ムヲ得ナ
  イト云フヤウナ御話ガアリマシタガ、「カゼ
  イン」ノ增產ハ致シマスガ、今日ノ場合育兒
  用ノ煉粉乳ノ供給ハ絕對ニ確保スル考ヘデ
  アリマスカラ、其ノ點ダケハ餘談デハアリ
  マスガ序ヲ以テ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
  ス、併シナガラ同時ニ「カゼイン」ノ增產ニハ
  今日國家ノ必要トスルモノニ付テ、繰返シ
  テ申上ゲマスガ、計畫的ニ確實ナル增產ヲ
  圖リタイト考ヘテ居リマス、就キマシテハ
  御話ノ點一括シテ申上ゲマスガ、色々ト是
  ガ達成上問題ガアル譯デアリマス、之ニ付
  テハ我々ト致シマシテモ必要ナル解決ハ必
  ズ之ヲ圖リタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、
  尙飼料ニ關聯致シマシテ今ノ大豆粕ヲ直接
  田畑ニヤルノハ不經濟デアルカラ、家畜ノ
  腹ヲ通シテト云フ御話デアリマシタガ、肥
  料トシテ用ヒルニシマシテモサウ云フ道順
  ヲ踏ムコトガ極メテ適切デアル譯デアリマ
  ス、從來カラサウ云フ趣旨ヲ以チマシテ實
  際肥料トシテ配分サレタモノモ、事實有畜
  農家ニ於キマシテハ、御話ノヤウナ筋道ヲ通
  ツテ結局肥料ニナツテ居ルダラウト思ヒマ
  スガ、我々ト致シマシテモ先達テ來色々部
  內デ、此ノ際ハ寧ロ斯フ云フコトハ明確ニ
  シタラドウカト云フコトモ實ハ相談シ合ツ
  タノデアリマス、兎ニモ角ニモ「カゼインㄴ
  增產ノ爲ノ牛乳ノ增產ト云フコトニ付キマ
  シテハ十分必要ナル處置ヲ講ジタイ、斯樣
  ニ考ヘテ居リマス

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• 041・北勝太郎

  ○北(勝)委員　是デ暫時大藏當局ノ御出席
  マデ質問ヲ留保致シマス

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• 042・深澤吉平

  ○深澤委員長　其ノ間、深水サン

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• 043・深水吉毅

  ○深水委員　私ハ農業會ノ餘裕金ノ利用ニ
  付テ農商當局ノ御意見ヲ承ツテ見タイ、今
  日マデノ產業組合ガ、農業ノ上ニ寄與貢獻
  致シタコトハ申スマデモアリマセヌガ、產
  業組合ハ段々發展シ非常ニ今日デハ健全ニ
  ナツテ居ルノデアリマス、然ルニ今囘農業
  會ノ方ニ合併シテ經濟部トナリマシテ、其
  ノ使命ハ益〓重大トナリ責任ハ增大シテ來
  タノデアリマス、然ルニ經營上カラ見ルト、
  貯金ハ增大スル一方デアリ、借入者ハ餘リ
  ナイト云フ狀況デアリマス、又從來ハ購買、
  販賣等ニ依ツテ利益ヲ得タノデアリマスガ、
  今日ハ御承知ノ通リ物ガ旣ニナイノデアリ
  マスカラ、之ニ依ツテ利潤ヲ得ルト云フコ
  トモ殆ド望ミ得ナイノデアリマス、勿論利
  益本位ノモノデハナイノデアリマスガ併シ
  立チ行クヤウニシテ行カナケレバナラヌノ
  デ、當業者ハ相當努力シテ居リマス、一方
  ニ於テハ時局柄待遇等モ相當改善シテ行カ
  ヲケレバナラヌノデ、洵ニ苦心慘憺ノ狀況
  デアリマス、當局デハ從來產業組合ニ付テ
  公債及ビ預金ノミ奬勵シテ、其ノ他ノモノ
  ハ所有スルコトヲ殆ド禁ジテ居ツタ、斯ウ
  云フコトデハ今後ノ經營洵ニ困難ト思ヒマ
  ス、勸業債劵、興業債劵トカ云フモノヲ持
  ツコトヲ今後御認メニナリマスカ、サウデ
  ナク從來通リノ方針トスレバ、如何ナル經
  營ノ方針ヲ執ルベキデアルカ、是等ニ付テ
  ノ御所見ヲ伺ヒタイ

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• 044・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　各團體ノ農業會ノ餘裕金
  ニ付テハ御話ノ如ク金利ハ極メテ多額ニ上
  ボツテ居リマシテ、之ニ對スル指導方針ト
  シテハ、今御話ノ如ク大體ニ於キマシテ公
  債、其ノ他確實ナル有價證券或ハ系統上級
  機關ニ對スル預金ナドヲ以テ大部分ヲ充テ
  ルト云フ譯デアリマシテ、御說ノ如ク經營
  トシテ中々困難ナ點モアラウト思ヒマス、
  之ニ付キマシテハ、今餘リ簡單ニ申上ゲル
  譯ニモ參ラナイノデアリマスガ、經營上ノ
  色々ノ困難ハ我々モ十分想像致サレルノデ
  アリマス、尙ホ今後何等カ考慮ガ出來ルナ
  ラバ、組合經營ノ堅實サヲ阻害スルヤウナ
  コトガアツテハナリマセヌガ、何等カ考慮
  致シタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、此ノ
  際ハ此ノ程度デ御諒承願ヒマス

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• 045・深水吉毅

  ○深水委員　何等カノ考慮ト申シマスト、
  追求スル譯デハアリマセヌガ、補助金ヲ增
  ストカノ方法ダラウト思ヒマスガ、目下ノ
  系統預金トカ公債トカ云フ以外ハ成ベクス
  ルナト云フ御意思ニハ變リナイノデアリマ
  スカ

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• 046・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　考慮ト申シマシテモ、補
  助金ト云フヤウナコトハ考ヘラレナイノデ
  アリマス、ヤハリソコニ制限ト申シマスカ、
  ソレノ適當ナル緩和ノコトヲ考慮スベキデ
  ハナイカト思ツテ居リマス

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• 047・深澤吉平

  ○深澤委員長　大藏省政府委員ガ見エマシ
  タカラ、北君

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• 048・北勝太郎

  ○北(勝)委員　今囘ノ稅法改正ニ依ツテ農
  業會或ハ信用組合、是等ノ貯金ノ中ノ當座
  貯金、或ハ定額貯金、斯ウ云フモノノ外ノ
  貯金ハ一齊ニ課稅セラレルコトニナツタノ
  デアリマスガ、信用組合ノ貯金或ハ農業會
  ノ貯金ト云フモノハ小額貯金ガ非常ニ多イ、
  家族貯金ダトカ、或ハ備荒貯金ダトカ、貯
  金ノ種類ハ二十モ三十モアル、サウシテ口
  座モ色々ニ分レテ居ルト云フヤウナ狀況ニ
  ナツテ居ルノデアリマス、今囘ソレガ課稅
  ノ對象物ニナリマス爲ニ、一々貯金者ノ名
  前ト金額ヲ書イテ、稅務當局ニ出サナケレ
  バナラヌト云フコトニナルノデアリマスガ、
  御承知ノヤウニ近來農業會ニ於テモ、或
  信用組合ニ於テモ、人手ガ非常ニ不足シテ、
  慣レタ事務員ガ居ナイト云フヤウナ關係
  デ、現在ノ仕事サヘ背負ヒ兼ネテ居ル狀況
  ナノデアリマス、ソレニ今斯ウ云フヤウナ
  仕事ガ加ハツテ來マスト、之ヲヤツテ行ク
  コトハ實ニ不可能ニナツテ來ルノデアリマ
  ス、サウスルト結局ドウナルカト云フト
  サウ云フヤウナ貯金ハ拒マナケレバナラヌ、
  自分デ扱へナイモノハ囘避スルト云フヤウ
  ナコトニナツテ來マスト、貯金奬勵上重大
  ナ惡影響ヲ來スト思ハレルノデアリマス、
  隨テ此ノ際何カ之ニ對シテハ一ツ便法ヲ與
  ヘルコトヲ御考ヘヲ願ヒタイ、我々ノ希望ス
  ル所ハ五千圓以下ノ是等ノ貯金ニ對シマシ
  テハ、其處ノ信用組合、農業會等ニ課稅ヲ
  代納サセル、サウシテ其ノ代納シタモノニ
  付キマシテハ、其ノ農業會、信用組合等ガ
  其ノ貯金者カラ差引クト云フヤウナコトデ、
  事務ヲ成ベク簡素ニサシテ戴カナケレバ
  運用ガ出來ナイト云フヤウナ狀況ニアルノ
  デアリマス、此ノ點ニ關シマシテ當局ノ御意
  見ヲ承ツテ見タイト思ヒマス

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• 049・池田勇人

  ○池田(勇)政府委員　御答へ申上ゲマス、
  今囘ノ增稅案ニ當リマシテ、從來課稅外ニ
  置イテ居リマシタ農業會或ハ市街地信用組
  合ノ預貯金、又ハ貯蓄銀行ノ据置貯金等ニ
  付キマシテ、新タニ課稅ヲ致シマス趣旨ハ
  各方面ニ增稅ヲ行ヒマス此ノ際ト致シマシ
  テハ、今度ノ增稅分ダケ、卽チ百分ノ五程度
  ノ分類所得稅ヲ負擔シテ戴キマシテ、各種
  預貯金ノ權衡ヲ執リタイ、斯ウ云フ趣旨デ
  課稅ヲ致スコトニ致シタノデアリマス、隨
  ヒマシテ、農業會或ハ市街地信用組合等
  ニ於キマシテハ、從來五千圓ヲ超エルモノ
  ニ付キマシテハ課稅シテ居ツタノデアリマ
  スルガ、預貯金ノ大部分デアル五千圓以下
  ノ貯金ニ對シマシテ新タニ分類所得稅ヲ課
  稅シ、サウシテ色々ノ難カシイ計算ヲ致シ
  マスコトハ、サナキダニ事務簡素化ノ叫バ
  レテ居ル今日、非常ニ難カシイコトデアル、
  斯ウ云フ風ニ想像致シマシタノデ、一應所
  得稅ニ於キマシテ分類所得稅ヲ百分ノ五課
  稅スルコトニ致シマシタガ、臨時租稅措置
  法ニ於キマシテ百分ノ五ノ稅率ヲ百分ノ四
  マデ下ゲ得ル、隨テ稅引計算ハ或ハ元本百
  圓ニ對シマシテ十三錢トカ或ハ十五錢トカ
  云フヤウナ方法ヲ講ジ、又別ノ方法デ小數
  點二桁或ハ多クテモ三桁位ノ稅引利率デ行
  ク、斯ウ云フ風ナ方法ヲ講ズル積リデ、措
  置法ニ百分ノ四マデ低下シ得ルト云フ規定
  ヲ置イタ次第デアリマス、我々ト致シマシ
  テモ、出來ルダケ手數ヲ省クヤウナコトハ
  今後モ〓究シテ行キタイト思ヒマス、尙ホ
  五千圓以下ノモノニ付キマシテ、預金者個
  個別々ノ資料ヲ稅務署ニ通知スルノハ厄介
  デアルト云フ御尋ネデアリマスガ、今囘五
  千圓以下ノモノニ付キマシテハ、綜合所得
  稅ヲ課稅シナイト云フ規定ヲ置キマシタノ
  デ、五千圓以下ノモノニ付キマシテ、個々
  ノ人ノ預金高或ハ支拂利子額ヲ御通知シテ
  戴クコトハ要ラナクナリマシタ、其ノ他農
  業會等ガ預金者ニ代ツテ稅金ヲ納メテ、サ
  ウシテ利子支拂ノ時ニ預金者カラ其ノ代納
  シタ稅ヲ取ルト云フ考ヘ方ハ、先程申上ゲ
  タヤウナ稅引所得デ計算スル、是デ御諒承
  願ヘルコトト思ヒマス

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• 050・北勝太郎

  ○北(勝)委員　尙ホ私ハ質問ヲシタイコト
  ガアリマスガ、大臣ガ御見エニナリマセヌ
  カラ、大臣ガ御見エニナツタ時ニ質問ヲス
  ルコトニ致シマシテ保留致シマス、又競馬
  ノ問題デ御尋ネシタイト思ヒマシタガ、專
  門家ノ小笠原サンガオヤリ下サルト云フコ
  トデアリマスカラ、私ハ之ヲ遠慮スルコト
  ニ致シマシテ、一應是デ私ノ質問ハ終リマ
  ス

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• 051・深水吉毅

  ○深水委員　私ハ農工竝立ト申シマスカ、
  農工兩全ト申シマスカ、其ノ方針ニ付テノ
  御所信ヲ承ツテ見タイト思ヒマス、申スマ
  デモナク、戰力增强ノ基盤ヲ成スモノハ〓
  糧デアリマスガ、近來工業ノ農村ヘノ進出
  ト云フモノガ實ニ目覺シイノデアリマス、
  是ハ勿論戰力增强上必要ナコトデアリマス
  ノデ、農村トシテモ之ヲ排斥スベキモノデ
  ハアリマセヌガ、併シ從來カラモ農村ニ工
  業ガ興ツテ來タ場合、其ノ農村ヲ工業ニ向
  ケルノデアルカ、農業ニ向ケルノデアルカ、
  又農業モ工業モ竝立シテ行カナケレバナラ
  ヌト云フ場合ニ於テ、ドウ云フ方針ヲ執ル
  ガ宜イノデアルカ、當局ハドウ御考ヘニナツ
  テ居ルカ、例ヘテ申シマスレバ農村ニ工業
  ガ興ツテ來タ場合ニ、半農、半工主義ヲ執
  ルノガ適當デアルノカ、或ハ或ル一縣ニ於
  テハドノ町村ハ工業地帶ニスル、ドノ町村
  ハ純農業地帶ニスルトカ云フヤウニ、地域
  主義ヲ執ルノガ適當デアルノカ、勿論皇國
  農村ノ確立ト云フ立場カラ見マスレバ、地
  域主義ガ適當デアルコトハ申スマデモアリ
  マセヌガ、農工相互ノ理解ト云フコトガ、又
  一面增產上ニ及ボス效果モ非常ニ大キイト
  思ヒマス、現ニ私共地方ニ於キマシテ、休
  閑地ニ對スル工業者、商業者等ノ耕作ヲ試
  ミルコトガ行ハレルヤウニナリマシテカラ、
  工業、商業者ノ農ニ對スル理解ガ非常ニ高
  マツテ參リマシテ、隨ヒマシテ是ガ農業ニ
  對スル協力ト云フヤウナコトモ、或ル程度
  進ンデ行ツタヤウニ思ヘルノデアリマス、
  斯樣ナ點カラ見マスルト、農工理解ト云フ
  點ニ重キヲ置キマスレバ、ヤハリ半農、半
  工ト云フヤウナコトデモヤツテ行ケルノデ
  ハナイカトモ思ヒマスガ、何分ニモ勞力不
  足ト云フコトガ增產上ノ一大隘路デアリマ
  スノデ、之ヲドウ云フヤウニ指導スベキカ、
  此ノ農工竝立若シクハ農工兩全ト云フコト
  ニ對スル當局ノ御所見ヲ承ツテ置キタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=51

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• 052・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農工調整ノ問題ハ色々ナ
  點ガゴザイマスノデ、我々ト致シマシテモ實
  ハ現在所謂調査ノ時代デアリマシテ、今囘
  ノ慥カ追加豫算デアリマシタカニモ、之上
  付テノ若干ノ費用ヲ計上致シテ居ルヤウナ
  次第デアリマス、色々ノ狀況ニ依リマシテ
  一〓ニモ申セナイノデアリマスガ、一般的
  ナ觀點カラ申シマスト、農村ノ確立、又健
  全ナ農民ヲ我ガ民族ノ中核トシテ、之ヲ維
  持致シタイト云フヤウナ觀點カラ見マスル
  二、或ル數ノ所謂專業農家ヲ農村ニ於テ維
  持致シタイト云フコトヲ、我々トシテハ基
  本的ニハ考ヘテ居ル譯デアリマス、是ハ全
  國ノ農村ニ亙リマシテ、專業ノ堅實ナル農
  家ヲ維持致シタイト云フコトヲ考ヘテ居ル
  譯デアリマス、唯御話ノ如ク、最近ノ時局
  ノ要請ニ基ク急激ナル工場ノ發展、殊ニ其
  ノ地方分散ト云フコトニ關聯致シマシテ生
  ズル所ノ、現實ノ農工接觸地帶ニ於ケル行
  キ方トシテハ、ドウ云フコトヲ考ヘルカト
  申セバ、我々ト致シマシテハ、耕地關係ト
  シテハ努メテ此ノ際最小限度ノ土地ヲ工場
  トシテ使ツテ貰ヒタイ、必要已ムヲ得ナイ
  程度ノ土地ヲ使ツテ貰ヒタイ、人員ニ付キ
  マシテモ又同樣ニ考ヘルノデアリマス、併
  シ或ル程度ノ必要ナルモノハ、農工兼業ニ
  ナルト云フコトハ、是ハ必至ノ情勢デアリ
  マス、此ノ場合ニ付キマシテハ、我々ハ其
  ノ爲ニ此ノ際少クトモ農業生產ノ低下ヲ來
  サナイヤウニ、致シタイト云フノガ主タル
  要點デアリマス、尙ホ農村ニ於テ工業ニ從
  事スル所ノ、殊ニ靑少年ガ之ニ依ツテ健康
  ヲ害スルト云フヤウナ事柄ニ付キマシテハ、
  努メテ之ヲ避ケタイト云フ風ニ考ヘテ居ル
  譯デアリマス、左樣ナ觀點カラ致シマシテ、
  工場ノ進出シタル農村地帶ニ於ケル關係ヲ、
  今後如何ニ持ツテ行クベキデアルカト云フ
  コトニ付キマシテハ、重ネテ申上ゲマスル
  ガ、今種々色ンナ變ツタ狀況ニ付テ調査〓
  究ヲ致シテ居ル次第デアリマス、御話ノ如
  ク、或ル實例ニ於キマシテハ、例ヘバ村中
  ガ兼業ニナル-村中デモナイカモ知レマ
  セヌガ、大部分兼業ニナリマシテ、擧村一
  體トナツテ、工業ニモ從ヘバ又農業モシツ
  カリヤルト云フヤウナ風ニシテ、而モ指導
  者宜シキヲ得テ、工業モヤルケレドモ、農
  業ノ方モ立流ニヤツテ行ク、サウシテ例へ
  バ農繁期ノヤウナ時ニハ、殆ドモウ工場全
  體ガ農業ノ爲ニ便宜ヲ與ヘテ、謂ハバ休メ
  ト言ハンバカリナ處置ヲ講ズルト云フ風ニ
  シマシテ、農村トシテノ從來ノ農業生產上
  ノ力モ餘リ落サズ、而モ工場モシツカリ、
  農村ニ嵌ツテ居ルト云フヤウナ例モアルヤ
  ウデアリマス、併シ又殆ドモウ村中ノ人ガ
  工業ニ關係シテ、農村トシテノ從來ノ堅實サ
  ヲ失ツテシマツタト云フヤウナ例モアリマ
  スシ、其ノ邊ノ所ハ、中々一〓ニ申セナイ
  ノデアリマシテ、我々ト致シマシテハ先程
  モ申シマスヤウニ、全國的ナ基本的ナ考ヘ
  ヲ一方ニ持ツテ居リナガラ、同時ニ斯ウ云
  フ已ムヲ得ザル事態ニ付キマシテモ、今折
  角調査致シマシテ、適當ナ指針ヲ得タイト
  考ヘテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=52

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• 053・深水吉毅

  ○深水委員　農工接觸地帶ニ於キマシテハ
  農業要員確保ノ制度ガアルニ致シマシテモ、
  何ト申シマシテモヤハリ農業會ト申シマス
  カ、サウ云フモノト工業會社トノ間ノ理解ニ
  依ツテ、相互援助ノ態勢、半農半工ト云フ
  コトガ、ドウモ純農村ノ人ノ考ヘルヨリモ案
  外巧ク行クノデハナイカ、斯ウ云フ實際ニ付
  テノ考ヘヲ私ハ持ツテ居リマス、是等ノ點
  ニ付キマシテモ只今御話ノヤウニ十分御調
  査御〓究ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス
  尙ホモウ一ツ御伺ヒ致シタイコトハ、食
  糧政策トシテノ雜穀增產ニ付テデアリマス、
  先程北委員カラ供出配給ノ農業會ヘノ一元
  化ト云フヤウナ御話ガアリマシタ、私共洵
  ニ同感デアルノデアリマスガ、之ニ付キマ
  シテハ色々質問應答ガアリマシタカラ、私
  遠慮致シマスケレドモ、配給消費ノ面ニ於
  テ千篇一律的ノ配給、言葉ヲ換ヘテ申シマ
  スト公平ノ不公平ト云フコトガ、非常ニ禍
  ヲシテ居ルノデハナイカ、眞ノ公平ト云フ
  コトハ或ル程度ノ公平ナ所カラ生マレルノ
  デアリマス、從來食ベテ居ツタモノ等ヲ十
  分考慮シタ上ノ配給ト云フモノガ考ヘラレ
  ナケレバナラヌノデハナイカ、例ヘバ純農村
  デハナク漁業村デアル地方デハ-私ハ九州
  デアリマスガ九州地方ノ漁村デハ殆ド甘藷
  デ、米ト云フモノハ滅多ニ食ツタコトハナ
  イ、併シ其處デハ山村ヨリモ非常ニ魚類ガ
  多イ爲ニ脂肪蛋白質ヲ攝ルカラ、年中甘藷
  バカリ食ツテ居ツテモ、體力ノ上ニ於テハ
  非常ニ立派デアルト云フ例ハ幾多アルノデ
  アリマス、サウ云フ所ニモ千篇一律ニ米ヲ
  配給シテ居ル爲ニ、段々サウ云フモノガ米
  ヲ食フ習慣ヲ助長シテ行ク、サウ云フコト
  ガ米不足、食糧不足ト云フコトニ重大ナ關
  係ガアルノデアリマス、モウ少シ斷乎タル
  處置ヲ執ツテ、眞ニ足リナイ者ニハ足リル
  ヤウニ、又食ベナイデ補ヘル者ニハ、其ノ
  ヤウニ配給ヲシテ行カナケレバナラヌノデ
  ハナイカト思フノデアリマス、特ニ九州地
  方ニ於キマシテハ、二十年位前マデハ非常
  ニ雜穀ヲ餘計食ベテ、殆ド米ト云フモノハ
  食ハナカツタノデアリマス、勿論食ハナイ
  コトハナイガ非常ニ少ク食ベテ居ルノデア
  リマス、尤モソレ等ノ點ハ價格ノ問題等ガ
  非常ニ關聯シテ居ツタト存ジマスノデ、成
  ベク百姓ハ安イモノヲ食ツテ、高イ米ヲ出
  スト云フ狀態デアツタ、ソレガ今日デハ米
  ノ値段ガ非常ニ安イカラ、米ヲ食ヘト云フ
  コトモアリマスシ、又一方配給關係等モ影
  響シテ居ルヤウニ思ヒマスガ、此ノ雜穀食
  ヲ奬勵スルト云フコトハ最モ大事ナコトデ
  アリマシテ、近來ノヤウニ增產ノ奬勵、消費
  ノ節約奬勵ト云フコトモ、勿論是ガ一番根
  本デアリマスガ、國民ノ半數ヲ持ツ所ノ農
  民ガ二十年、三十年前ノヤウナ雜穀〓ニ徹
  底スルト云フコトニナレバ、非常ナ增產トナ
  ルノデハナカラウカト思ヒマス、此ノ點ニ
  付テ配給制度ノ根本的ノ改廢ヲナサル意思
  ハナイカ、此ノ點ヲ承リタイ
  尙ホ之ニ關聯致シマシテ雜穀ハ勿論畑ニ
  出來ルモノデアリマスケレドモ、山林燒畑
  ニモ出來ルノデアリマス、特ニ南九州地方
  ニ於キマシテハ、燒畑利用ニ依ル所ノ雜穀
  ガ百姓食ノ大部分ヲ占メテ居ツタノデアリ
  マスルガ、當局ト致シマシテ燒畑作ヲ非常
  ニ奬勵スルト云フヤウナコト、之ニ對スル
  施策ニ餘リ見ルベキモノガナイヤウニ考へ
  テ居リマス、此ノ燒畑ニ對スル雜穀ト云フ
  モノハ一面カラ申シマスルト、植林政策ノ
  上カラモ非常ニ結構ナコトデ、謂ハバ一石
  二鳥ノヤリ方デアリマスガ、雜穀〓ノ奬勵
  ト共ニ、燒畑ニ對スル考ヘ方ヲドウ云フ風
  ニシテ行クベキカト云フコトニ付テ、今少
  シク御考慮ヲ仰ギタイト思フ譯デアリマス、
  私ハ此ノ際雜穀ヲ奬勵シテ、農民ヲ雜穀食
  ノ昔ニ戾スト共ニ、植林政策ヲ助長シ、國
  ノ〓糧政策ニ大イニ貢獻シテ行ク爲ニ、燒
  畑ニ對スル雜穀ニ對シテ供出免除ノ御意思
  ハナイカ、又サウシテ戴キタイト思フノデ
  アリマスガ、サウ云フ御考ヘハナイカドウ
  カト云フコトヲ御伺ヒシタイ
  ソレカラ是ハ小サイコトデアリマスガ、
  燒畑ヲ奬勵致シマスレバ、ドウシテモ火入
  ノ問題ガ一番大事ナ問題デアリマスガ、是
  ハ地方廳ノ問題デアルカ、或ハ省令デ出テ
  居ルノカ存ジマセヌガ、兎ニ角今日デハ之
  ニ對スル規則ガ非常ニ喧シイ、晝デナケレ
  バナラヌ、何月何日、屆ヲシテ許可ヲシタ
  日デナケレバ燒畑ハ出來ヌ、斯ウ云フ風ニ
  ナツテ居リマス、是ガ非常ニ雜穀增產ヲ阻
  碍シテ居ルト思ヒマス、元來オ上ノ方デハ
  晝デナケレバ危險ダ、斯ウ云フ考ヘカラ、
  夜ノ燒畑ヲ禁ジテ居ラレルト思ヒマスケレ
  ドモ、實際問題トシテハ燒畑ト云フモノハ、
  山林ハ夜燒カナケレバ危險デアル、晝デハ
  危イ、晝ハ火ガ見エナイ、陽ガカン〓〓照
  ツテ居ル時ニ火ヲ付ケタナラバ、其ノ火ハ
  光線ト緩和スルト申シマスカ、見エナイノ
  デアリマシテ、ソレガ一番危險デアツテ、
  夜火ヲ付ケナケレバイカヌ、ソレヲ現在全
  國デアリマスカ、私共ノ附近三箇縣ニ於テ
  ハ晝デナケレバ許サヌト云フヤウナ矛盾
  シタヤリ方ヲヤツテ居ル、又斯ウ云フ燒畑
  ヲ日時ヲ限ツテ許スト云フヤウナコトデ、
  警察官ガ見ルノニ便利ナ日ト云フヤウナコ
  トデハ、風ノ吹ク日モ、雨ノ降ル日モ豫想
  ハ出來ナイノデアリマシテ、決メラレタ日
  ニ出來ナイ、又許サレタ日ガ暴風デアルト
  云ツタヤウナ時ニハ止メマスガ、大抵ナ風
  デハ、今日ハ許サレタ日ダカラヤラナケレ
  バナラヌト云フヤウナコトニナツテ、洵
  矛盾シタ結果ヲ生ズルノデアリマス、若シ
  山畑ニ產スル雜穀ト云フモノガ相當食糧政
  策ニ貢獻シ得ルト云フ御考ヘデアルナラバ、
  是等ノ點ニ付テモ、小サイコトデアリマス
  ルケレドモ、十分ノ御〓究ヲ願ヒタイト思
  フノデアリマス、兎ニモ角ニモ雜穀〓ノ奬
  勵ト云フコト、ソレニ付テハ山畑ニ對スル
  雜穀ヲウント奬勵スルト云フコト、ソレニ
  付テハ是ハ畑ニ作ル物ト違ツテ別個ノモノ
  デアリマスカラ、供出ヲ免除シテ戴クト云
  フヤウナコトノ御意思ハナイカ、ソレ等ノ
  點ヲ御伺ヒ致シマス

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• 054・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　燒畑、切替畑ニ雜穀ヲ作
  ルコトノ奬勵ニ付キマシテハ、昨年ノ春應
  急增產對策ヲ立テマシタ際ニモ考慮致シマ
  シタ重要ナ點デアリマシテ、之ニ付キマシ
  テハ簡易ノ開墾ノ助成、或ハ種子ノ供給ト
  云フヤウナコトモ致シタ譯デアリマス、本
  年モ亦更ニ規模ヲ大ニシマシテ、之ヲ實行
  致シタイト考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマ
  ス、所デソレニ關聯致シマシテ御質問ノ火
  入ノコトニ付キマシテハ、是ハ何デモ聞イ
  テ見マスト、昨年ノ春三月頃御說ノヤウニ
  非常ナ乾燥ヲ致シマシタ後デ、全國ニ山林
  ノ火災ガ相當ニゴザイマシテ、例年ニナク
  此ノ被害ガ甚大デアツタノデアリマス、慥
  カアノ頃カラカ又火入等ニ對スル取締ヲ嚴
  重ニ致シタト云フヤウナコトヲ一寸聞イタ
  ノデアリマス、今御說ノヤウナヤリ方デ事
  ノナイヤウニ嚴重ニ取締ヲヤルト云フ方
  法或ハ何カモツト違ツタ方法ヲ以テ、例
  ヘバ責任者ニ對シテ嚴重ナ責任ヲ負擔サセ
  ルト云フヤウナ方法トカ、何カ方法ガアラ
  ウカト思フノデアリマス、其ノ邊ニ付キマ
  シテ御話ノ點ハ能ク〓究致シマシテ、適切
  ナ處置ヲ講ジタイト思ツテ居リマス、尙ホ
  左樣ヲ所ニ出來夕雜穀ノ供出ノ免除ト云フ
  御話ガゴザイマシタガ、現在ノ所雜穀ニ付
  テハ米麥等ノ供出トハ多少行キ方ガ違ツテ
  居リマシテ、或ハ地方廳アタリデ何等カ特
  別ナ規則上ノ供出ヲ求メテ居ルカモ知レマ
  セヌガ、全國的ナ處置トシマシテハ、餘程
  ヤリ方ハ違フノデアリマスガ、隨ヒマシテ
  サウ嚴重ナ供出ト云フヤウナコトモナク、
  延イテ免除スルトカシナイトカ云フヤウナ
  問題ハ餘リナイノデハナカラウカト思フノ
  デアリマスガ、要スルニ御說ノヤウニ特殊ノモ
  ノハ別トシマシテ雜穀ノヤウナモノニ付テハ,
  成ベクヤハリ地元ノ農家其ノ他ニ於テ作ツ
  タ物ハ自家ノ食糧ニスルト云フヤウナコト
  ヲ主ニシテ考ヘルベキカト思ヒマス、尤モ
  蕎麥ノヤウナモノデシタラ、是モヤハリ相
  當農村ニ殘スノデハアリマスケレドモ、或
  ル程度ノモノハ都會地ニ集メタイト云フ希
  望ヲ持ツテ居リマス、大體左樣ナ考ヘヲ持
  ツテ居リマスノデ、特ニ畑トサウ云フ所ノ
  モノトノ區別ヲシマシテドウ斯ウスルト云
  フ程ノ處置ハ必要ハナイデハナイダラウカ
  ト云フ風ニ存ズルノデアリマス、尙ホ能ク
  一ツ〓究シテ見ルコトニ致シマス

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• 055・深水吉毅

  ○深水委員　只今ノ御答辯ノ中、昨年來大
  イニ奬勵シテ居ルト云フ御話デアリマスガ、
  アノ開墾ノモノト、私ノ言フ燒畑ト云フノ
  ハ又別箇ニ全然山林ノ伐ツタ後ヲ直グ燒
  イテ、二年カ三年其ノ儘開墾モ何モセズ、
  サウシテ詰リ燒イタ灰ニ粟ヲ植ヱル、隨テ
  燒イタラバ直グ灰ガアル內ニヤラナケレバ、
  一雨降ツタラヤハリ耕サナケレバ出來ナイ
  ノデス、灰ニ植ヱタ粟、稗等ガ直グ根ヲ下
  シテ行ク所ノ舊來ノ燒畑、是ハ非常ニ簡單
  デス、何モ耕ス必要ハナイノデス、是ハ南
  九州ニ於テハ從來相當ノ產額ガアルト信ジ
  テ居リマス、是ガ段々火入レ等ノ關係デ出
  來ナクナツテ、助成ヲシテ戴ク方ハ、是一
  山林ノ開墾デアリマシテ、ソレデハナイノ
  デス、其ノ點ハ又御考ヘ置キヲ願ヒタイト
  思ヒマス、是ハ其ノ程度ニ致シマシテ、最
  後ニ燒畑問題ニ關聯シテ、自給肥料增產ニ
  付テ御伺ヒ致シタイト思ヒマス、ソレハ山
  林ト菜種栽培ノ問題デアリマス、只今申シ
  マスヤウニ、南九州地方ニ於キマシテハ、
  昔ハ非常ニ交通不便ノ山林地帶ハ、立木ノ
  儘燒イテ、ソレニ粟トカ或ハ稗トカ云フヤ
  ウナモノヲ播イタノデゴザイマスガ、今日
  デハ山林ガ伐ラレタ場合ニ於テ、其ノ伐ラ
  レタ跡ヲ燒イテ、其ノ儘直グ粟ナドヲ植ヱ
  ル、ソレデ唐芋デアルトカ、蕎麥デアルト
  カ云フヤウニ、ソレヲ耕ス必要ハナイノデ
  アリマス、此ノ燒畑ト云フモノノ產額ハ
  南九州ニ相當多クアルヤウニ思ヒマス、其
  處ニ菜種ヲ非常ニ從來作ツタモノデアリマ
  スガ、是ハ福岡縣等北九州ニナリマストヤ
  ハリ畑ニ作リマスガ、南九州ニ於キマシテ
  ハ畑ハ總テ麥ヲ作ツテ、山林ニ持ツテ行ツ
  テ菜種ヲ作ルト云フノガ從來ノ習慣デアリ
  マシタガ、近來油ノ問題ガヤカマシクナル
  ト共ニ、山林ニ對シテ菜種ヲ拵ヘルコトガ
  非常ニ激減シテ參リマシタ、一體百姓ハ、
  此ノ菜種ヲ山林ニ作ルト云フコトハ、油モ
  勿論欲シイノデアリマスケレドモ、併シ其
  ノ粕ヲ取ツテ油粕ヲ肥料ニスルト云フノガ
  大體百姓ノ目標デアリマス、此ノ油ト云フ
  ノハ、今日デハ燃料ニモ大切デアリマスシ、
  又食料油トシテモ非常ニ大切デアリマスガ、
  今日デハ自家作油ヲ認メテ居ナイ關係上、
  山林ニ對スル燒畑ニ依ル所ノ菜種ノ增產ト
  云フモノヲ非常ニ阻碍シテ居ルト思ヒマス、
  一般植物油ハ、聞ク所ニ依リマスト、一石
  以上ノ供出ニ對シテハ二升四合カノ增配ガ
  アルコトニナツテ居ルヤウデアリマスガ、
  現在菜種ニ付キマシテハ全部供出サレルノ
  デアリマス、是ハ軍關係ノ油ノ關係デアリ
  マセウ、全部供出サレルノデアリマシテ、
  其ノ搾リ粕モ戾ツテ來ナイノデアリマス、
  ソレデ此ノ菜種ノ耕作者ニ對シマシテハ
  油モヤハリ一石ニ對シテ二升四合ナラバ二
  升四合ノ增配ヲシテ貰フ、或ハ菜種ヲ搾ツ
  タ自家肥料ニ付テハ之ヲ全面的ニ認メル
  ト云フヤウナ奬勵ノ方法ハ出來ナイモノデ
  アラウカ、是ハ南九州全體ニ對シテ大變ナ
  增產ニ關係ガアル問題デアリマスガ、御所
  見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

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• 056・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農村カラノ生產物ニ付キ
  マシテ、軍需其ノ他必要ナル向キニ是ガ供
  -
  出ヲ集中スルト云フコトノ爲メノ色々ノ統
  制ソレガ却ツテ農家ノ自家用トシテノ希
  望ヲ妨ゲマシテ、延イテハ遡ツテ其ノ生產
  ヲ阻碍スルト云フヤウナ問題ハ色々アルノデ
  アリマシテ、其ノコトニ付テハ何カソコニ
  ヤハリ農家ニ留保サセルヤウナ途ヲ講ジタ
  ラドウカト云フコトヲ能ク言ハレルノデア
  リマス、之ニ付キマシテハ旣ニ暫ク前カラ
  一部左樣チ取扱ヲシテ居ル物資モアリマス
  ガ、サウデナイ物モアル譯デアリマス、菜
  種ノ如キハ其ノ一例デアリマス、最近ノコ
  トデアリマスガ、ヤハリ或ル軍ノ方面ニ納
  メル物ニ付テ、農家デ保有スルコトヲ認メ
  ル途ヲ開イタノデアリマス、所ガ非常ニ其
  ノ希望ガ多クテ、軍用關係ノ要望ニ至ラザ
  ルコト甚ダシイト云フヤウナコトニナツテ
  シマツタ例モ實ハアリマス、中々コヽマデ
  押詰ツタ今日トシマシテ、寧ロ菜種ハ足ラ
  ナイ位ニ要望サレテ居ルノデアリマスカラ、
  其ノ間ノ處置トシマシテハ餘程愼重ヲ要ス
  ルノデアリマスガ、大體ノ考ヘ方トシマシ
  テハ、是ハ實際農家自身ガ眞ニ要ルヤウナ
  物ニ付キマシテハ、何カヤハリ或ル程度農
  家ニ保有サセルト云フ途ヲ講ジタイ、是モ
  農家カ單ニ從來ノ慣習上贅澤ナコトヲ希望
  スルト云フヤウナコトデアレバ、此ノ際ト
  シテ我慢ヲシテ貰ハナケレバナリマセヌケ
  レドモ、ヤハリ農家ニ必要ナル生產ノ爲メ
  ノ物資デアルトカ或ハ生活上ドウシテモ
  必要ナ物デアルトカ、ソレガ又簡單ニ自分
  ノ手許デ得ラレル、サモナケレバ他所カラ
  デモ買ツテ來ナケレバナラヌト云フヤウナ
  コトニ關聯シテノ必要ナ物資デアレバ、御
  說ノ如ク或ル程度保有スルコトヲ認メルコ
  トハ、是ハ物ノ動キヲ餘計ニシナイデ濟マ
  セルトカ色々ナ點カラ云ヒマシテ、結構ナ
  コトデアラウト思ヒマス、菜種モ其ノ一ツ
  ノ問題デアルノデアリマスガ、唯現在ノ所
  ハ需給ノ關係ガ餘裕ガナイ爲ニ、事ハ能ク
  分ツテ居リナガラ一寸踏ミ出シ兼ネテ居ル
  ノデアリマスガ、併シ是モ一ツ今年ハ又十
  分考ヘテ見タイト思ヒマス

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• 057・深水吉毅

  ○深水委員　只今御答辯ヲ承リマシタガ、
  先程私ハ此ノ供出免除ト云フコトヲ、燒畑
  ニ付テ御考慮願ヒタイト云フコトヲ申シマ
  シタガ、ソレト同ジコトデ只今ノ菜種ノ問
  題モ、普通ノ所ニ甘藷作ノ代リニ拵ヘルヤ
  ウナモノハ、ソレハヤハリ全部出スコトハ
  當然ダト思ヒマスガ、燒畑等ニ拵ヘマスモ
  ノハ、今ノ現狀カラ見マスレバ、之ヲ粕ノ
  肥料モ取レナイ、油ノ增配モシナイト云フ
  コトデアレバ、全然作ル者ハナクナルト云
  フ狀況デアリマスカラ、却ツテ國全體ノ上
  カラ油ニ非常ナ支障ヲ來スデハナイカト思
  フノデ、十分御調査御〓究ヲ願ヒタイト思
  ヒマス、私ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=57

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• 058・深澤吉平

  ○深澤委員長　加藤君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=58

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• 059・加藤知正

  ○加藤(知)委員　私ハ此ノ絲價安定施設法
  廢止及蠶絲業統制法中改正法律案ノ上程ニ
  際シマシテ是ガ關聯事項ト致シマシテ、數
  項ノ御質問ヲ申上ゲタイト存ジマス
  第一ニ御伺ヒシタイノハ產繭額ノ目標ニ付
  テデゴザイマス、御案內ノ如ク昭和八年度ニ
  ハ我ガ國ノ產繭高ハ一億萬貫デアツタノガ、
  昭和十四年度ニハ九千萬貫トナリ、十五年度
  ニハ八千七百萬貫、十六年度ニハ六千九百萬
  貫十七年度ニハ五千五百萬貫、十八年度
  ニハ五千四百萬貫ト云フヤウニ後退又後退、
  漸減ノ一途ヲ迪ツテ居リマス、政府モ亦產
  繭目標ヲ九千三百萬貫臺カラ八千萬貫臺、
  七千三百萬貫臺、六千三百萬貫臺、五千三百
  萬貫臺トドン〓〓切下ゲテ居ルノデアリマ
  ス、若シ此ノ勢デ停止スル所ガナカツタナ
  ラバ、遠カラズ我ガ國ノ產繭高ハ殆ド絕滅
  ニ近イモノニナリハセヌカトノ懸念ガアル
  ノデゴザイマスガ、政府ハ此ノ點ヲ如何樣ニ
  御考ヘデゴザイマセウカ、產繭ノ狀態斯クノ
  如クニシテ、更ニ他ノ纖維、卽チ羊毛、綿
  縫人絹、麻等ノ最近ニ於ケル各纖維ノ狀
  況カラ之ヲ觀察シマスルト、此ノ大東亞戰
  爭ガコヽ一年ニ濟メバ兎モ角、若シ是ガ更
  ニ今後五年、十年ト、續クモノト致シマス
  ルナラバ、我ガ國民生活上衣料問題ニ於テ
  由々シキ問題ガ起リハセヌカ、就中軍需關
  係ニ於テ容易ナラザル大問題ガ起リハセヌ
  カト云フコトヲ私ハ私カニ之ヲ心配致シテ
  居ルモノデアリマス、然ル所去月二十九日、
  此ノ席上ニ於キマシテ山崎農商相ハ此ノ絲
  價安定施設法ノ廢止ニ關スル理由ヲ御述べ
  ニナリマシテ、我ガ國ノ蠶絲業ハ今ヤ輸出
  產業ト云フ昔ノ姿ヲ全然脫却シテ、國策纖維
  品ノ立場ニ於テ、特ニ軍需ノ充足ナリ、民需ノ
  補給充足ト云フヤウナコトニ、其ノ使命ヲ
  果シツヽアルヤウナ次第デアルト申サレタ
  ノデアリマスガ、陸軍製絨廠長〓水陸軍中
  將ハ、地方蠶絲關係官竝ニ道府縣養聯資源
  委員會議ノ席上ニ於キマシテ次ノヤウナコ
  トヲ申サレタノデアリマス、日本ニハ養蠶
  ガアル、軍ノ需要ガドレ位アルカト云フコ
  トニ付テ詳シク申上ゲル譯ニハ參リマセヌ
  ガ、大體御話シマスト、軍部其ノ他總體量
  ノ或ル「パーセント」ヲ絹トシテ使フトスレバ
  單纖維デ○○萬貫、繭トシテ○○○萬貫必
  要トナツテ居ルノデアリマス、更ニ其ノ使
  用量ヲ增加シテ〇〇%ノ短纖維ヲ使フトス
  レバ○○○萬貫、繭ニシテ〇、〇〇〇萬貫必
  要トナリマス、所ガ現在繭ハドノ位出來ル
  カト言ヘバ、本年ノ生產目標ハ-是ハ昨
  年ノコトヲ言フノデアリマスガ-六千三
  百萬貫ト聞キ及ンデ居ルノデアリマス、企
  畫院ノ物動計畫ハ○○○○萬貫トナツテ居
  マスカラ、是ダケデハ私ノ方デ要求スル量
  ニハ足リナイコトニナルノデアリマス、併
  シ現在ノ所私共ノ方デ今直チニ〇〇%費消
  スルト云フコトハ困難デスカラ、サウ差迫
  ツタ問題デハナイノデアリマスガ、是デハ
  ドウシテモ〇〇%使ハネバナラナイコトニ
  ナルト思フノデアリマスノデ、繭ハ少クト
  モ春夏秋合ハセテ一億萬貫ヲ目標トシテ生
  產シテ戴カナケレバナラナイノデアリマス、
  サウナツテコソ初テ安心シテ戰ガ出來ルノ
  デアリマスカラ、是ダケノ繭ハ我々ガ引受
  ケタト云フコトデ、頑張ツテ貰ヒタイト思
  フノデアリマス、云々ト斯樣ニ申サレタノ
  デアリマス、此ノ〓水陸軍中將ノ話ニ依リ
  マスト、一億萬貫ノ繭ヲ生產セナケレバ安
  心シテ戰ハ出來ナイト云フコトニナルノデ
  アリマス、此ノ際我々ハ繭一億萬貫ノ生產
  目標ヲ揭ゲルト同時ニ、之ヲ實績ニ現ハス
  爲ニ大イニ努力シナケレバナラヌト思フノ
  デアリマス、然ルニ政府ハ昨十八年度ノ繭
  生產目標ヲ六千三百萬貫ト揭ゲラレタガ、
  十九年度ノ繭ノ生產目標ヲ五千三百萬貫ト
  切下ゲ、一擧ニシテ一千萬貫カラ切下ゲラ
  レタノハ如何ナル理由ニ基クノデゴザイマ
  セウカ、假令如何ナル理由ガアリ、根據ガ
  アルト致シマシタ所デ、餘リニモ軍ノ要求
  スル目標ト、農商省ノ生產目標トニ於テ大
  ナル差ガアリマスノデ、是ガ奬勵ノ位置ニ
  立ツ者ハ大イニ迷ハザルヲ得ナイコトニナ
  ルノデアリマス、ソコデ我々ガ申上ゲルマ
  デモゴザイマセヌガ、今ハ大東亞戰爭ノ眞
  最中デアリ、何事モ戰爭本位デ行カネバナ
  ラヌ今日ノコトデアリマスカラ、軍需方面
  ニ於テ一億萬貫以上ノ繭ヲ生產シテ貰ハネ
  バ安心シテ戰ハ出來ヌト申サルヽ以上ハ、
  繭絲業ヲ五大重點產業ト同樣ニ之ヲ取扱ヒ、
  一億萬貫生產目標ヲ立テテ、百四十餘萬戶ノ
  養蠶業者ヲシテ感奮興起其ノ生產目標ニ突
  進猛進セシムルヤウニ仕向ケラレルコトガ
  本當デハナイカト考ヘルノデアリマスガ、
  政府ノ御考ヘハ如何デゴザイマセウカ、先
  ヅ以テ之ヲ御伺ヒ申上ゲタイト思フノデゴ
  ザイマス
  〇山(喬)政府委員產繭確保ニ付キマシテ
  只今御話ガアリマシタガ、我々モ最近及ビ
  今後ノ見透シトシマシテノ纖維事情カラ見
  マシテ、ドウ云フ考ヘヲ持ツテ居ルカ、具
  體的ニ本年度ノ產繭高ヲドウ云フ風ニ狙ヒ
  ヲ付ケテ、ドウ云フ風ニ實現シテ行クカ、
  斯ウ云フ風ナ觀點カラ見マスト、色々具體
  的ナ事情ガアリマスノデ、只今御話ノヤウ
  ニ五千三百萬貫ト致シタノデアリマス、御
  說ノ通リ最近コヽ四、五年ノ傾向ヲ見マスト
  漸次是ガ減少シテ居ルヤウナ次第デアリマ
  ス、唯十八年ハ六千三百萬貫ヲ目標ト致シ
  テ居ツタノデアリマスガ、今度ノ五千三百
  萬貫ト云フモノハ、實ハサウ云フ意味ノ一
  應ノ目標ニシヨウト云フ意味デアリマセヌ
  デ、昨年ハ六千三百萬貫ノ目標デ、實收ガ五
  千四百萬貫デアツタノデアリマス、此ノ實
  收五千四百萬貫ト睨ミ合ハセマシテ、決定
  致シマシタノガ前十八年末デアリマスガ、
  其ノ當時ノ色々ノ調査カラ大體五千三百萬
  貫ノ實收ハ確實デアル、斯ウ云フヤウナ見
  當デアリマシタノデ、此ノ五千三百萬貫ヲ
  摑マヘマシテ、少クトモ之ヲ割ラナイヤウ
  ニ、是ガ目標ト云フ意味デナク、之ヲ必ズ實
  現スル計畫數量、斯ウ云フ風ナ考ヘデゴザ
  イマス、ソレガ一ツ、モウ一ツハ御話ノ通
  リ民需ノミナラズ軍需ノ關係カラ言ヒマシ
  テモ、絹纖維ノ方ハ勿論多々益〓辨ズルヤ
  ウナ需給狀況デアリマスノデ、從來ハ纖維
  ノ物動計畫トシマシテハ棉花、「スフ」、人
  絹等ハ物動物資トシテ取扱ツテ居ツタノデ
  アリマシテ、絹纖維ノ方ハソレトハ多少取
  扱ヲ異ニシテ居ツタノデアリマスガ、今度
  ハ是モ物動物資ニ組入レマシテ計畫ヲ立テ
  タ以上ハ、其ノ計畫ノ遂行ヲ必ズ確實ニヤ
  ツテ行クト云フ趣旨ニ於テ、サウ云フ意味
  ニ於ケル取扱ノ心構ヘヲ變ヘテ行ク、斯ウ
  云フ風ナ心組ミデ實ハ色々考ヘテ居ルヤウ
  ナ次第デゴザイマス、尙ホ五千三百萬貫ノ
  計算ノ基礎ニ付キマシテハ、色々ナ點ヲ考
  ヘマシテ、反當收繭量、勞務關係、桑園ノ
  關係、其ノ他資材ノ關係等カラ見マシテ、
  ドウセ色々ナ條件ガ良クアリマセヌ、併シ
  其ノ惡條件ノ下デ、新シイ創意工夫ニ依リ
  マシテ之ヲ出來ルダケ改善致ス、サウ云フ
  點ヲ睨ミ合セマスト、五千三百萬貫ヲ是非
  達成スル、斯ウ云フ趣旨ニ於テ之ヲ決定致
  シマシタヤウナ次第デゴザイマス

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• 060・加藤(知)委員

  ○加藤(知)委員　此ノ問題ハ愼重ニ取扱ハナ
  ケレバナラヌ問題デアリマスカラ、更ニ論
  議ヲ進メテ色々伺ツテ置キタイト思ヒマス
  ガ、此ノ程度ニ止メテ置キマス、唯併シ軍
  ノ要求ガ一億萬貫以上アツテモ尙ホ足リナ
  イト言ハルヽ此ノ場合、現ニ一昨日モ或ル
  所デ〓水中將ハ同樣ノコトヲ御演說ニナリマ
  シテ、如何ニ軍ガ我ガ蠶絲ニ對シテ大ナル
  期待ヲ持ツテ居ラルヽカト云フコトガ想像出
  來ルノデゴザイマスカラ、ドウカ農商省デハ
  軍ノ方ト能ク御交渉ニナリ、成ベク軍ノ期待
  ニ副フヤウニ致サレタイ、我々ハ國民ノ一人
  トシテ切ニ之ヲ要望スル次第デアリマス
  次ニ御伺ヒヲ致シタイト思ヒマスコトハ、
  桑園整理ノ理由ニ付テデアリマス、產繭額
  減少ノ情勢ハ只今申上ゲタ通リデゴザイマ
  スガ、其ノ減少ノ原因ハ一體何處ニアルノ
  デゴザイマセウカ、繭價ノ割安カラ蠶絲業
  ノ前途ニ對スル危惧、勞力、肥料其ノ他ノ
  生產資材難ノ爲メ等々、減少ノ原因トシテ
  澤山列擧セラレテハ居リマスガ、併シナガ
  ラ產繭額ニ急減少ヲ來シタ最モ大キナ原因
  ハ、去ル昭和十四年度ニ一一千二百五十町步、
  同十五年度ニ一萬三千町步、十六年度ニ一
  萬五千五百町步ト矢繼ギ早ニ桑園ノ大整理
  ヲ行ハレタコトニ存スルコトハ爭フベカラ
  ザル事實デアルト思フノデゴザイマス、斯
  カル事實ヲ御承知ノ政府ガ又々此ノ十九年
  度ニ於テ七千町步ノ桑園ヲ整理セシムベク
  旣ニ其ノ指令ヲ各府縣ニ對シテ發セラレタ
  ト云フコトデゴザイマスガ、如何ニ食糧增
  產ノ爲メナリトハ申セ、軍ノ要求繭一億萬
  貫トアル今日、敢テ此ノ擧ニ出デラレル
  コトハ、私ハ如何ニシテモ了解ニ苦シム
  所デゴザイマス、七千町步ノ耕地ハ、敢
  テ桑園ヲ潰サズトモ、他ニ容易ニ之ヲ求
  ムルコトガ出來ナイデゴザイマセウカ、少
  シ助成金ノ割合ヲ良クシマスルナラバ、七
  千町步ハ愚カ何萬町步デモ容易ニ開墾シ得
  テ、之ニ依ツテ食糧增產ノ目的ニ資スルコ
  トガ出來ルト我々ハ考へルノデゴザイマス、
  桑園ヲ新設スルニ致シマシテモ中々急ノ間
  ニ合ハナイコトハ御承知ノ通リデゴザイマ
  ス、少クトモ三四年ヲ經過シナケレバ滿足
  ナ收葉量ヲ擧ゲルコトノ出來ナイコトハ
  私ガ改メテ申スマデモゴザイマセヌ、ソレ
  ヲ能ク御承知ノ政府當局ガ敢テ此ノ際七千
  町步ノ桑園ヲ整理サレルト云フコトニハ、
  何カ他ニ深イ理由ガアルモノト思ハレルノ
  デゴザイマスカラ、其ノ理由ヲ我々ノ了解
  出來ルヤウニ一ツ御說明ヲシテ戴キタイト
  思ヒマス
  尙ホ桑園整理ト云フコトガ養蠶家ノ心理
  狀態ニ大影響ヲ與フル、其ノ上ニ更ニ養蠶
  農家ヲシテ厭蠶氣分ヲ惹起セシムル事實ヲ
  一ツ申上ゲマシテ、政府當局ノ御一考ヲ煩
  ハシタイト思フノデアリマス、ソレハ外デ
  ハゴザイマセヌ、以前トハ違ヒマシテ養蠶
  業者ガ〓ヲ飼フコトヲ大層臆劫ニ思フヤウ
  ニナツタノデアリマス、其ノ上收納工場地
  盤割ト云フモノガ出來マシタ結果トシテ、
  養蠶業者ノ所屬工場ガ決マリマシタノデ、
  製絲家ノ立場カラ云ヘバ、其ノ所屬養蠶家
  ハ自家藥籠中ノモノト云フヤウナ譯デ、オ
  役人樣ニデモナツタヤウナ心持デ、養蠶家
  ニ對スル態度ガ不親切トナツタト言ハルヽ
  ノデアリマス、中ニハ頗ル橫柄ナ者モアル
  ト言ハレマス、勿論全部ノ製絲家ガサウナ
  ツタト申スノデハアリマセヌガ、大部分サ
  ウナツタト言ハレテ居ルノデアリマス、昔ノ
  特約時代ノコトヲ忘レナイ養蠶家トシテハ、
  如何ニモ癪ニ觸ルコトガ多イノデ、アヽ詰
  ラヌト云フ感ジヲ起ス者ガ少クナイト言ハ
  レテ居ルノデアリマス
  〔委員長退席、杉山委員長代理著席〕
  斯クテ粒々辛苦ノ結果、漸クニシテ取上ゲ
  タ繭ヲ製絲家ノ手ニ渡シマシテモ、直チニ
  其ノ繭代金ハ貰ヘナイノデアリマス、繭檢
  定ノ濟ムマデハ貰ヘナイノデアリマス、所
  ガ其ノ繭ノ檢定ガ容易ニ濟マナイノデアリ
  マス、以前ハ庭先賣買デ製絲家ノ方カラ養
  蠶家ノ方ヘ出掛ケテ行キ、繭ノ賣買契約ガ
  濟ムト同時ニ繭代金ハ直チニ養蠶家ノ懷ロ
  ヘ入ツタノガ、今度ハソレトハ反對ニ養蠶
  家ノ方カラ出掛ケテ行カネバナラナイ、收
  納工場ノ遠イ所ハ二里モ三里モ擔イデ行カ
  ネバナラナイ、頭ヲペコ〓〓下ゲテ之ヲ納
  メ、而モ繭檢査ノ濟ムマデハ其ノ代金ヲ貰
  ヘナイト來ルカラ、甚シイノニナルト一箇
  月餘モ其ノ代金ヲ貰ヘヌコトニナルノデア
  リマス、ヤレ規則ダ、ヤレ法律ダ、ヤレ統
  制ダト質朴ナ養蠶業者ニ對シテ凡ユル方面
  カラ嫌ガラセヲヤルカラ、養蠶業者ニスレ
  バ、ナアニ寢ル目モ寢ナイデ蠶ヲ飼ツテコ
  ンナ嫌ガラセヲヤラレテ堪ルモノカ、蠶バ
  カリガ職域奉公デモアルマイ、何ヲヤツテ
  モ同ジ職域奉公ナラ、樂ヲシテ澤山オ金ノ
  取レル方へ行カウデハナイカト、斯樣ニ考
  ヘル者ガ近頃中々多クナツテ來タノデアリ
  マス、今ハ大東亞戰爭ノ眞最中、一國ノ興
  廢ヲ賭シテ戰ツテ居ル今日、左樣ナ不心得
  ノ考ヘヲ起スナドトハ以テノ外ダ、不都合
  ナ奴ダト叱ツテ見タ所デ、現在ノ機構ガ今
  申上ゲタヤウナ風ニナツテ居ツテノコトデ
  アツテ見レバ、第三者ノ立場カラ之ヲ見レ
  バ、寧ロ叱ル方ガ無理ト言ハレテモ仕方ガ
  ナイト思フノデアリマス、桑園整理ト相俟
  ツテ是等ノ問題ガ產繭減少ノ要因トナツテ
  居ルコトヲ政府當局ハ如何樣ニ御考ヘデア
  リマセウカ、東條首相ハ事務簡捷ト云フコ
  トヲヨク申サレマスガ戰時體制下養蠶デア
  ル以上ハ、樂ニ蠶ノ飼ヘルヤウニスル譯ニ
  ハ行カナイデゴザイマセウカ、食糧增產ハ
  今日最モ大切ナ問題デアリマスカラ、其ノ
  爲ニ桑園ノ整理ヲナサルコトニ私決シテ反
  對ヲシテ申上ゲルノデハアリマセヌ、唯產
  繭減退ノ隱レタル事實ノ一例トシテ以上ノ
  コトヲ御參考マデニ申上ゲタニ過ギマセヌ、
  農商省當局ハ能ク此ノ事實ヲ御調査ニナツ
  テ善處セラレタイト思フノデアリマスガ、
  之ニ對シテ御所見ヲ御伺ヒ申上ゲタイノデ
  ゴザイマス

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• 061・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　今囘ノ桑園ノ整理ノ
  理由デアリマスガ、是ハ特ニ私カラ細カク
  申上ゲルマデモナク、第二次〓糧增產ノ必
  要ト云フコトノ爲ニ、農商省ト致シマシテ
  ハ全體的ニ〓糧增產ノ貫徹ト云フコトノ爲
  ニ凡ユル角度カラ〓究致シマシタノデアリ
  マシテ、其ノ結果、勿論桑園ノ部面ノミデ
  ハナク、各方面ノ耕地ノ總力ヲ食糧增產ノ
  面ニ出來ルダケ、事情ノ許ス限リ之ヲ向ケ
  テ行クト云フ風ナ意味ニ於キマシテ、各方
  面ソレ〓〓考慮ヲ致シタノデアリマシテ、
  御說ノ如ク桑園ノ方ハ順次最近ノ情勢カラ
  見マスト減少ノ已ムヲ得ザル狀態デアリマ
  シテ、是ガ御話ノヤウニ養蠶農家ノ心理ニ
  及ボス影響ハ極メテ强イノデアリマス、出
  來ルダケ之ヲ避ケタイト云フ氣持ハアルノ
  デアリマスガ、一面食糧事情ノ重要性、其
  ノ他ノ事情ニ依リマシテ今囘モ成ベク少イ
  數量ノ整理ト云フコトニ致シタヤウナ次第
  デアリマス、尙ホ約七千町步ノ整理ヲ致シ
  マスルガ、此ノ代リト致シマシテ約三千町
  步ノ未利用地、未開墾地ヲ、桑園ニ適スル
  場所デサウ云フモノヲ桑園ノ方ニ出來ルダ
  ケ活用スルヤウニト云フ風ナ意味デ進メテ
  居ルヤウナ次第デゴザイマス
  ソレカラ第二點ノ、サウ云フコト、其ノ
  他繭代金ノ關係等カラ來マス、養蠶農家ニ
  及ボス心理上ノ問題デアリマスガ、是モ御
  說ノ通リ、我々モ洵ニ心配シテ居ル點デア
  リマス、併シナガラ第一點トシマシテソコ
  ニ已ムヲ得ザル事情ガアリマスノデ、ソコ
  ハ一ツ最小限度ノ桑園ノ整理ヲヤリマシテ、
  ソレカラ來ル心理的惡影響ハ出來ルダケ之
  ヲ除クベキ方策ヲ考ヘテ居ルノデアリマス、
  例ヘバ只今御話ガ出マシタヤウニ、現在ノ
  絹纖維ノ性格、必要性、殊ニ戰力トシテノ
  必要性ト云フ風ナコトヲ一層周知徹底セシ
  メマスル最モ效果的ナ方法ヲ講ジマシタリ、
  又隨ヒマシテ產繭確保ノ效果ト申シマスカ、
  サウ云フ意味デ養蠶ノ結果ニ對シマスル國
  家的ナ報奬ト云フ風ナ制度モ色々併セマシ
  テ、桑園ハ減ツタケレドモ、是ハ事情已ム
  ヲ得ザルコトニ屬スルノデ、其ノ關係ハ巳
  ムヲ得ナイガ、併シナガラ養蠶ノ重要性ハ
  斯樣ニアルノダ、隨テ產繭ニ對シテハ斯ウ
  云フ風ナ國家又ハ色々ナ團體ニ於テ大キナ
  期待ヲ持ツテ居ルノダト云フコトヲ能ク知
  ラシムルヤウナ方法ヲ併セ行ヒマシテ、出
  來ルダケ養蠶精神ノ〓揚ヲ圖リタイ、斯樣
  ニ思ツテ居ルノデアリマス、全ク御說ノ通
  リ考ヘテ居リマスノデ、尙ホ能ク是ガ實效
  ノ擧リマスヤウニ色々ナ方法ヲ考ヘタイト
  思ヒマス

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• 062・加藤知正

  ○加藤(知)委員　次官ニ御尋ネシタイノデ
  スガ、次官ハドウセラレマシタカ

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• 063・杉山元治郎

  ○杉山委員長代理　一寸御待チ下サイ、其
  ノ項ヲ保留シテ置イテ次ノ質問出來マセヌ
  カ

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• 064・加藤知正

  ○加藤(知)委員　モウ僅カデアリマスカラ、
  次官ニ答辯ヲ求メタイノデアリマス

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• 065・杉山元治郎

  ○杉山委員長代理　次官ハ今探シニ行キマ
  シタ-次官ガ見エマシタカラドウゾ、加
  藤委員

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• 066・加藤知正

  ○加藤(知)委員　次ニ御伺ヒ申上ゲタイノ
  ハ五千三百萬貫ト云フ繭ノ生產目標ヲ揭
  ゲラレマシタ以上ハ、如何ニシテ其ノ實績ヲ
  擧ゲ得ルカト云フコトヲ御伺ヒシタイノデ
  アリマス、ドウシテ其ノ實績ヲ擧ゲルカ、
  斯ウ云フコトヲ御尋ネ申上ゲタイ、本年度
  ノ桑園反別ハ三十八萬町步位トハ存ジマス
  ガ、ドノ位アルカシツカリ分リマセヌノ
  デ、假ニ四十萬町步ノ桑園トシテ平均反當
  十五貫ノ繭ガ取レルトシマスレバ、六千萬
  貫ノ繭ガ取レル計算ニナルノデアリマス、
  併シ今日ノ桑園ハ色々ノ意味ニ於キマシテ、
  恐ラク平均十二貫位ノモノデハナカラウカ
  ト推測スルノデアリマスガ、若シ其ノ推測
  ニシテ違ハヌトシマスレバ、四千八百萬貫
  ノ繭ガ取レルコトニナリマス、目標ヨリモ
  五百萬貫ノ不足トナルノデアリマスガ、其
  ノ五百萬貫ノ繭ハドウシテ增產スルカト云
  フコトガ問題ニナルト思フノデアリマス、
  况ンヤ此ノ四十萬町步ノ桑園デ軍ノ要求セ
  ラルヽ一億萬貫ノ繭ヲ取上ゲヨウト云フコ
  トニナルト、反當二十五貫ノ繭ヲ取上ゲナ
  ケレバナラヌコトニナリマス、假ニ勞力ハ
  充分、間ニ合フト致シマシテモ、桑園ノ實力
  ガ果シテ之ヲ許スヤ否ヤ、反當收繭量ノ多
  イ桑園ハ〓糧增產ノ爲ニ整理セラレ、現存
  ノ桑園ハ漸ク反當十二三貫ノ實力シカナイ
  モノガ大部分ヲ占メテ居ルトシマスレバ、
  斯カル桑園カラ一億萬貫、反當二十五貫ナ
  ドト云フコトハ全ク机上ノ計算トナリマス、
  五千三百萬貫、反當十三貫ノ繭モ動トモス
  レバ、其ノ實績ニ於テ及バザルコト遠シデ
  アツタトノ歎聲ヲ發スルコトニ相成リハシ
  ナイカト心配スルノデアリマス、併シ一億
  萬貫ハ將來ノコトト致シ、現實ノ問題トシ
  テハ旣ニ五千三百萬貫ト目標ヲ定メタ以上
  ハ、否ガ應デモ此ノ目標ダケハ實績ニ現ハ
  サナケレバ、洵ニ申譯ノナイコトト思フノ
  デアリマスガ、政府當局ハ此ノ點ヲ如何樣
  ニ御考ヘデゴザイマセウカ、又如何ニシテ
  其ノ實績ヲ擧ゲヨウトセラルヽノデアリマ
  セウカ、其ノ實績ヲ擧ゲラルヽ方法手段ヲ
  若シ伺フコトガ出來ルナラバ、具體的ニ
  ツ御示シヲシテ戴キタイト思フノデゴザイ
  マス、併シ何ト言ツテモ增產ト云フコトニ
  ナルト、問題ハ勞力ト肥料ノ二ツニ歸著ス
  ルモノト思ヒマスノデ、之ニ對スル私ノ卑
  見ヲ一ツ申上ゲタイト存ジマス
  先ヅ勞力ノ問題ハ勤勞奉仕令ニ依リマシ
  テ都市ノ遊閑者ヤ學童ヲ動員シテ養蠶業者
  ノ爲ニ働カシメ、肥料ノ問題ハ自給肥料卽
  チ堆肥、厩肥、綠肥等ノ外、燻炭肥料ヲ大
  イニ使用セシムルヤウニ方策ヲ立テラレタ
  イト思フノデゴザイマスガ、如何デゴザイ
  マセウカ、此ノ燻炭肥料ニ付テハ私昨春來
  喧シク申上ゲテ居ツタノデゴザイマシテ、
  次官ハ此ノコトハ十分能ク御承知ノコトデ
  ゴザイマス、私ノ今日マデ調査〓究致シタ
  所ニ依リマスト、全ク燻炭肥料ハ百利アツ
  テ一害ナキ肥料デアルト云フコトヲ私ハ玆
  ニ斷言スルノデアリマス、之ヲ稻作ニ施セ
  バ所謂健苗健稻ノ實績ガ擧ガツテオ米ノ
  大增產トナリ、之ヲ桑園ニ施セバ、收穫量
  ノ增加トナリテ、健蠶良繭ノ多收穫トナル
  ノデゴザイマス、私ハ此ノ十九年度以後ノ
  稻作及ビ桑園ニハ、堆肥、厩肥其ノ他ノ自
  給肥料ト共ニ是非此ノ燻炭肥料ヲ使用セシ
  ムルヤウニ致シタイト云フコトヲ切願致シテ
  居ルノデゴザイマスガ、之ニ對スル政府ノ
  御所見ヲ御伺ヒ申上ゲタイト思フノデゴザ
  イマス

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• 067・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　加藤委員御心配ノヤウニ、
  產繭確保ハ中々容易デハゴザイマセヌ、同
  時ニ一面ニ於テ需要ノ方面モ極メテ逼迫致
  シテ居リマスノデ、是ガ增產ニ付キマシテ
  ハ特段ノ處置ヲ講ジナケレバナラヌ段階
  ニ立ツテ居ルト思フノデアリマス、我々第
  一點ト致シマシテハ、此ノ增產ノ爲ニハ何
  ト申シマシテモ養蠶農家自體ガ、養蠶ノコ
  トガ今日ノ場合此ノ戰爭遂行ニ直接極メテ
  緊切ナル關係ノアル事柄デアル、是ガ增產
  ハ是非トモ達成セネバナラヌト云フソコニ
  强イ熱意ヲ持ツテ事ニ當ルヤウニ指導致シ
  マスルコトガ、近年ノ養蠶ノ狀況等カラ照
  シ合セテ見マシテモ、極メテ必要デアルト
  存ズルノデアリマス、尙ホ今御話ノ如ク勞
  力ノ點ニ付テノ補給ノコト、或ハ殊ニ又肥
  料關係、是ハ主要食糧方面ノ肥料ノ狀況モ
  決シテ樂デハゴザイマセヌノデ、桑園等ニ
  於キマシテモ御話ノ如キ自給肥料ノ增產ニ
  依ツテ、桑ノ增產上必要ナル養分ヲ補給ス
  ルコトヲ考ヘナケレバナラナイ、是ガ爲ニ
  ハ丁度今御話ノヤウニ堆厩綠肥、ソレカラ
  私共ハ燒土ト云フヤウナ方面カラ今年ハ一
  ツ奬勵致シタイト思ツテ居リマスガ、ソレ
  ガ又同時ニ加藤委員ノ御話ノ燻炭ガ出來ル
  コトニモナルノデアリマシテ、燻炭ノ方面
  カラ云ヘバ燻炭、燒土ノ方面カラ云ヘバ燒
  土ト云フコトニナリマスガ、簡易ナル燒土
  ヲ致シマシテ、土其ノモノヲ燒イテ肥料分
  ヲ還元スル、ソレニハ又御話ノ如ク燒土ヲス
  ル爲ノ材料トシテ色々ノ草木等ヲ用ヒマシ
  テ、サウシテ今ノ燻炭ガ出來ルト云フコト
  ニモナル譯デアリマス、兩々相俟チマシテ
  土其ノモノヲ燒キ、又同時ニ燻炭モ出來テ
  養分ヲ補給スルト云フコトニナラウト思ヒ
  マス、尙ホ從來カラ相當ニ奬勵シテ居リマ
  スガ、綠肥ノ栽培ノ如キモ桑園ニハ最モ適
  切テアリマス、之ニ付テハヤハリ種ノ確保
  ト云フコトニ付テ或ル程度ノ限度ガアルノ
  デアリマスガ、何トカシテ最大量ノ種ヲ集
  メテ綠肥ノ栽培ニ依ル肥料分ノ補給ヲ十分
  ニ致シタイト思フノデアリマス、尙ホ堆厩
  肥ニ付キマシテモ、御說ノ通リデアラウト
  思ヒマス、尙ホ其ノ他ニモ色々ゴザイマス
  ガ、御說ノ點ニ付キマシテ一應御答ヘ致シ
  マス

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• 068・加藤知正

  ○加藤(知)委員　私ハ此ノ際次官ニシツカ
  リト御伺ヒシタイト思フノデアリマスガ、
  今ノ燒土ト燻炭肥料トノ關係ニ付テデアリ
  マスガ、燻炭肥料ノ如何ナルモノデアルカ
  ニ付テ、失禮ナガラ能ク諒解ヲ戴イテ居ナ
  イカノ如ク考ヘラレル、甚ダ失禮ナコトヲ
  申スヤウデアリマスガ、實際燻炭肥料ニ付
  テイカヌナライカヌ、斯ウ云フ點ガアルカ
  ライカヌト云フ風ニ仰シヤツテ戴クト非常
  ニ宜イト思フ、良イナラ寧ロ大イニ力ヲ入
  レテ此ノ際ヤラレテハドウカ、御承知ノヤ
  ウニ硫安肥料ハ昨年慥カ百三十萬「トン」ト
  思ツテ居リマスガ、本年ハ八十萬「トン」、
  又加里ヤ硫酸肥料ハ殆ド見込ガ立タナイ、
  肥料ヲヤラナイデ米ナリ桑ナリヲ十分ニ穫
  ラウト云フコトハ餘リニ蟲ノ好イ話デアル、
  ト言ツテナイモノヲヤルト云フ譯ニ行カナ
  イ、デアリマスカラ幸ヒニ燻炭肥料ト云フ
  モノガ農家ノ手ニ於テ容易ニ製造スルコト
  ガ出來ルノデアリマスガ、燒土ヲ全耕地ニ
  澤山之ヲヤルヤウニ造ラシムルコトハ一寸
  容易デナイ、併シナガラ燻炭ハ政府ガ一タ
  ビ肚ヲ決メテ、ドウシテモ之ヲヤラセヨウ
  ト云フ御考ヘニナレバ、必ズヤ多量ノ燻炭
  ヲ造ラシムルコトガ出來、同時ニ燒土モ相當造
  ルコトガ出來ルノデアリマス、卽チ國有林野
  ノ一部ヲ開放シテ、雜草ナリ雜木ナリヲ伐採
  シテ之ヲ燻炭ニスル、立木ノ下刈ヲヤラセテ之
  ヲ燻炭ニナサシムレバ立木ハズン〓〓成長
  シテ良クナリ、而シテ農家ハ燻炭ト云フ貴
  重ナ肥料ガ得ラレル、是ハ國有林野ニ限ツ
  タコトデアリマセヌガ、兎ニ角山ノ樹木ノ
  下刈ヲヤレバ荊棘デアラウガ葦デアラウガ
  萱デアラウガ、何デモカデモ大抵ノモノハ
  燻炭ニスルコトガ出來ル、一面ニ於テハ仕
  立テヨウトスル其ノ樹木ガ立派ニ早ク成長
  スルコトニナルカラ、一石二鳥ノ働キガソ
  コニ現ハルヽコトニナルノデアリマス、ソ
  コデ燻炭肥料トハ如何ナルモノデアルカト
  云フニ、燻炭ノ中ニハ御承知ノヤウニ窒素、
  燐酸、加里ト云フ三要素ガ含マレテ居ル、
  尤モ其ノ窒素ハ不溶解性ニナツテ其ノ働キ
  ヲ現ハサヌケレドモ、燐酸ト加里ハ六割以
  上ハ可溶性トシテ立派ニ效果ヲ奏スルト云
  フコトハ、是ハ學者ノ實驗ニ於テ證明サレ
  テ居ル、デアリマスカラ燐酸、加里ノ少イ
  今日ニ於テ、之ヲ燻炭ニ依リ補充シテヤレ
  バ立派ナ米ガ出來ル、立派ナ桑ガ穫レル、現
  ニ郡是株式會社デ桑園ニ付テ色々ナ試驗ヲ
  ヤラレタ
  〔杉山委員長代理退席、委員長著席〕
  所ガ燻炭肥料ヲヤツタモノト、ヤラナイモ
  ノトノ比較試驗ノ成績ヲ聞イテ見マスト、
  ヤラナイ方ノ桑葉ノ重量一匁ニ對シテヤツ
  タ方ノ重量ハ七匁ト云フ格段ノ差ガアルト
  云フノデアリマス、實驗ノ結果サウ云フ成
  績ノアルコトヲ我々ハ聞イテ居ルノデアリ
  マス、又稻ノ苗ノ如キモ燻炭肥料ヲヤレバ
  非常ニ丈夫ニ育ツノデアリマス、卽チ燻炭
  ヲヤツタ所ノ苗ハ全ク其ノ根ノ張方ガ違フ
  ノデアリマス、故ニ病蟲害ニモ侵サレ難イ
  ト云フ、サウ云フ健カナ立派ナ苗ガ出來ル
  ノデアルカラ、若シ之ヲ全國ノ稻作ニ全部
  之ヲ施スト云フコトガ出來ナケレバ、セメ
  テハ苗代ダケデモ此ノ燻炭ヲヤラセタナラ
  バ、ドレダケ助カルカ分ラヌ、御案內ノ如
  ク一昨年ハ五風十雨ト云フ非常ニ順調ナ氣
  候デアツタ、所ガ昨年ハ大旱魃デアツタ、
  併シ早魃ニ凶作ナシデ相當ノ收穫ハアツタ
  ケレドモ、本年ハドウナルカ分ラヌ、斯ウ
  云フ危險ナ氣候ヲ眼前ニ控ヘテ居ツテ、是
  等ニ對シテ何等策ノ施ス所ガナイトアツテ
  ハ私ハ相濟マヌト思フ、幸ヒ燻炭肥料ナル
  モノヲヤリマシテ、サウシテ立派ナル苗ヲ
  育テテ之ヲ移植セシムルヤウニシテ置ケバ、
  或ル程度マデハ早害ニモ、冷害ニモ、又病
  蟲害ニモ堪ヘルコトニナルカラ今カラ其ノ
  手順ヲ盡サシムベク奬勵ノ方針ヲ立テラレ
  テハ如何デアリマスカ、若シ燻炭肥料ガイ
  ケナイト云フ說ヲナス者ガアリマスナラバ、
  私ハ堂々ト其ノ御說ヲ伺ヒタイノデアリマ
  ス、私ガ此ノコトヲ敢テ申上ゲル所以ノモ
  ノハ、凡ユル方面カラ之ヲ調査シテ、モウ
  間違ヒナイト云フ確信ガ付イタカラ申上グ
  ルノデアリマス、昭和十九年度ハ〓糧ノ決
  戰期デアルト言ハルヽ程此ノ大切ナル場合
  デアリ、又產繭五千三百萬貫ト目標ヲ揭ゲラ
  レタ此ノ場合、是非トモ此ノ燻炭肥料ヲ大
  大的ニ奬勵サレタイト考ヘルノデアリマス、
  併シ若シ次官ニ於カレマシテ、是ハ斯ウ云
  フ意味ガアルカラ今奬勵スル譯ニ行カヌト
  云フ御意見ガアルナラバ、此處デハツキリ
  言ツテ戴キタイ、若シサウデナカツタナラ
  バ、是ハ大イニヤラウト云フコトデ一ツヤ
  ツテ戴キタイ、私ハ是ハ國家ノ爲ニ本當ニ
  熱意ヲ以テ申上ゲル次第デアリマスカラ、
  之ニ對スル次官ノ御所見ヲ今一應改メテ御
  伺ヒ申上ゲタイト思ヒマス

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• 069・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　本年ノ〓糧其ノ他農產增
  產ノ爲ニハ肥料方面ニ付テ格段ノ措置ヲ講
  ズル必要ガアルト云フコトヲ豫ネテ痛切ニ
  感ジテ居リマシテ、現ニ色々ト準備中デア
  リマスガ、其ノヤリ方トシテハ、兎ニ角凡
  ユル方法ヲ執ツテ見タイト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、左樣ニ致シマシテ、御話ノ燻炭
  ノ如キモノモ、是レ亦其ノ中ニ込メテ參リ
  タイト思ツテ居リマス、先達テモ私ノ所ヘ
  都市塵埃ヲ以テ燻炭ヲ作ルコトニ付テノ話
  ガアツタノデアリマスガ、其ノ具體的ナ內
  容ハ此ノ場合省略致シマスケレドモ、大變
  結構ナコトニ聽イタヤウナ次第デアリマス、
  單リ燻炭ノミナラズ、他ノコトモアリマス
  ケレドモ、此ノ燻炭ノ利用ト云フヤウナコ
  トニ付キマシテモ、勿論考ヘテ參リタイト
  存ジテ居リマス、只今燒土ノコトニ付テ申
  上ゲマシタガ、是ハ所在ノ桑畑デ燒土ヲヤ
  ルコトモ奬メタイト思ヒマス、是ハ土其ノ
  モノニアル所ノ、就中加里等ノ肥料分ノ還
  元ガ出來マシテ、サウシテ成育ノ上ニ效果
  ガアル譯デアリマシテ、從來モ地方ニ依リ
  マシテ左樣ナコトヲヤツテ居リマスノデ、
  サウ云フコトモ考ヘテ居リマス、是ハ殊ニ
  豫算ノ上ニ出テ居ルモノデアリマスカラ、
  其ノコトニ付テ御話ヲ申上ゲタヤウナ次第
  デアリマス、御諒承願ヒマス

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• 070・加藤知正

  ○加藤(知)委員　重ネテ御願ヒ致シマスガ、
  是非此ノ燻炭肥料ニ付テ再檢討ヲシテ、是
  ガ良イト云フコトガ分ツタナラバ、一ツ極
  力御奬勵ヲ願ヒタイト思ヒマス
  次ニ御伺ヒ申上ゲタイコトハ指導員ノ問
  題ニ付テデアリマス、御承知ノヤウニ日本
  蠶絲統制會社カラ舊全養聯ノ方ニ年々三百
  八十萬圓ヲ助成シテ、全國養蠶指導網ノ完
  璧ヲ期スルコトニナツテ居タノデスガ、其
  ノ全養聯ガ中央農業會ニ統合サレタ結果ト
  シテ、其ノ三百八十萬圓ノ助成金ハドウ云
  フコトニナルノデゴザイマセウカ、聞ク所
  ニ依レバ、統制會社ハ此ノ三百八十萬圓ヲ
  以テ會社自體ニ指導員ヲ置イテ、蠶絲業ノ
  改善發達ヲ圖ルトノコトデアリマス、是ハ
  事實デアリマセウカドウデゴザイマセウ
  若シソレガ實際デアルトスレバ、此ノ助成
  金ニ依ツテ指導員ヲ置キ、又指導員給ヲ幾
  分助ケテ置イタ所、例ヘバ舊全養聯、卽チ
  今ノ中央農業會養蠶部ノ如キハ、指導權ハ
  與ヘラレテ居ツテモ、是ガ實行ニ於テ容易
  ナラザル支障ヲソコニ來スコトニナルト思
  フノデゴザイマスガ、此ノ場合ニ於テ私共
  ノ考ヘカラ申シマスレバ、ヤハリ從前ノ如
  ク引續イテ此ノ助成金ナルモノハ中央農業
  會ノ養蠶部へ交付セラルヽコトニスルコト
  ガ穩當デハナカラウカ、斯樣ニ考ヘマスガ、
  此ノ點ニ付テ政府當局ノ御考ヘハ如何デゴ
  ザイマセウカ、之ヲ先ヅ以テ御伺ヒ申上ゲ
  タイ、尙ホ此ノ道府縣農業會ハ、縣農會
  或ハ縣養聯、畜產組合、茶業組合、產業組
  合ト云フヤウナ、各團體ガ統合シテ出來テ
  居ルコトハ今更申上ゲルマデモゴザイマセ
  ヌ、是等ノ各團體ノ從來ノ技術員、指導員ト
  云フモノニハ皆同一ノ資格ヲ與ヘ、同一ノ
  待遇ヲ與ヘラルヽコトガ穩當デハナカラウ
  カ、私共左樣ニ考ヘルノデゴザイマスガ、
  之ニ關スル政府當局ノ御考ヘヲ御伺ヒ申上
  ゲタイト存ズル次第デアリマス

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• 071・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　從來ノ養蠶業組合ガ農業
  會ニ統合セラレマシタ結果ハ、從來ノ養蠶
  業組合ノ仕事ハ農業會ニ於テ引受ケテ立派
  ニ之ヲ遂行シテ戴カナケレバナラヌノデア
  リマス、然ラズンバ農業會ガ養蠶業組合ヲ
  統合致シマシタ目的ハ、少クトモ一部ハ達
  セラレヌコトニナル譯デアリマス、自然致
  シマシテ、只今ノ御質問ノ點ニ付キマシテ
  ハ、細カイコトハ私詳カニ致シマセヌガ、
  筋ト致シマシテハ、是ハ農業會ニ於テ引續
  キ運營セラレテ然ルベキモノナリト考ヘル
  ノデアリマス、次ニ道府縣農業會ノ技術員
  ノ待遇ノコトデアリマスガ、申スマデモナ
  〃、是モ御話ノヤウニ、同一ト云フノハド
  ウ云フ意味デアルカ存ジマセヌガ、大體通
  常ノ考ヘトシテ、同ジヤウニ待遇スルコド
  ハ、是ハ當然ノコトデアル譯デアリマス、
  唯何ト申シマシテモ、ツイ本年度ニ統合致
  シタバカリデアリマスシ、多クサウ云フヤ
  ウナ場合ニ於キマシテハ、從來ノ或ル程度
  ノ沿革ト云フヤウナモノハ、是ハ段々圓滑
  ニ統合ノコトガ實質的ニ進ンデ行クト云フ
  爲ニハ、ヤハリ相當十分ニ考慮致サナケレ
  バナラヌノデアリマス、左樣ナ次第デアリ
  マスノデ、此ノ際過渡的ニ色々違ヒガ起ル
  ト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ヌデハナイカ
  ト存ズルノデアリマス、一應左樣ニ考ヘマ
  ス

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• 072・加藤知正

  ○加藤(知)委員　マダ色々御尋ネ致シタイ
  コトガゴザイマスケレドモ、是ハ大臣ニ付
  テ御尋ネシタイト思ヒマス、私ノ質問ハ一
  應茲デ打切リマシテ、後日大臣御出席ノ際
  ニ時間ヲ御與ヘ下サルコトヲ御願ヒシテ置
  キマス

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• 073・深澤吉平

  ○深澤委員長　赤城宗德君

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• 074・赤城宗徳

  ○赤城委員　私ハ第一番目ニ戰時農業要員
  ノ指定ノ問題デゴザイマスガ、此ノ範圍ヲ
  ドウ云フ風ニ行フノデアルカ、丁度昨年十
  二月二十八日ニ食糧自給態勢强化對策要綱
  ガ發表サレマシタガ、其ノ際ニ戰時農業要
  員ヲ指定スル、是ハ農業ヲ軍需工業ト同列
  ニ取扱ハレルコトニナリ、非常ニ農業者ニ
  矜恃ト責任ヲ與ヘルト云フ點デ、立派ナコト
  ダト考ヘテ居ルノデスガ、其ノ要綱ニ依ツ
  テ見マスト、要員ノ指定ハ離農統制ヲ受ケ
  居ル者ニ付テ行フ、斯フ云フコトニナツテ
  居リマシテ、離農統制ヲ受ケ居ル者ハ、農
  業生、產統制會、及ビ同施行規則ニ依ツテ、耕
  作面積三反歩以上ノ者ト、ソレカラ同一世
  帶ニ住居スル者ニシテ、一年間九十日以上
  農業勞働ニ從事スル者、斯フ云フコトニナ
  ツテ居ルヤウデアリマス、此ノ從來離農統
  制ヲ受ケテ居ル者ハ、大體徵用ノ適用ハナカ
  ツタヤウデアリマスガ、併シ規則カラ云ヘ
  バ、徵用セラレタ場合ハ離農統制ノ制限ノ
  適用ハナイコトニナツテ居リマスノデ、三
  反步以上ノ耕作者モ徵用サレル場合モアル
  ノデアリマスガ、今度要員指定ニ依リマス
  下、徵用ヨリ除外サレルコトニナツテ居ル
  ヤウデアリマス、是ハ國家ノ勞務動員計畫
  ト云フ點カラ考ヘテ、一體ドノ程度ノ者ヲ農
  業要員ニ指定サレル積リナノカ、北海道ノ
  石炭山ナドニ行ツテ見ルト、御承知ノ通リ
  彼處デモ勞務ハ不足シテ居ル、ソレデ何處
  ノドウ云フ層ノ人ガ一番欲シイカト云フト、
  石炭山ナラ石炭山デハ腰ヲ使フ點ニ於テ農
  業者ガ宜イト云フ譯デ、農業者ノ方ニ石炭
  山ニ入ツテ吳レヌカト云フ誘ヒヲ掛ケル場
  合ガアルノデ、農業者モ大キイ農業ヲシテ
  居ルナラバ宜イケレドモ、三反步カ四反步
  位ノ農業ヲシテ居ツテモ、暮シガ立タヌ、
  實ハ山ナラ山ニ思切ツテ行キタイ、併シ離
  農制限ニ引掛ツテ山ニモ行ケナイ、農業生
  產ニ對シテモ全面的ニ寄與出來ナイ、サリ
  トテ鑛山工場等ニ行ケナイ、斯ウ云フ場合
  モ相當アルダラウト思ヒマス、斯ウ云フ所
  ヲ國家的ニ睨ミ合セテ、勿論農業要員ヲ指
  定ナサル場合ニ御決メニナルコトト考ヘマ
  スガ、大體ドウ云フヤウナ御考ヘデアリマ
  スカ、ソレヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 075・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ノ運營ノ細目ニ付キマ
  シテハ、今後ノ處置ニ俟ツベキデゴザイマ
  スガ、ヤリ方ト致シマシテハ、地方々々デ
  地方ノ實情ニ卽シマシテ、離農統制ヲ受ケ
  居ル者ニ付テ、其ノ範圍ヲ地方ニ於テ指定
  スルコトトナツテ居ルノデアリマス、ソレ
  カラ後ノ運營ノコトデアリマスガ、是ハ今
  私ガ細目ニ亙ツテ假定ヲ設ケテ申上ゲテ、
  或ハ多少間違ツタコトヲ申上ゲルカモ知レ
  マセヌガ、ソレハ御許シヲ願フコトトシテ、
  大體ノ感ジヲ申シマスト、此ノ離農統制ヲ
  受ケ居ル者ニ付キマシテ、是ハ地方ニ任セ
  マスカラ、多少二、三ニナルカモ知レマセ
  ヌガ、兎ニ角其ノ範圍ニ於テ戰時農業要員
  ヲ指定スル、尙ホアノ閣議決定ニモアリマ
  スヤウニ、其ノ他ニ其ノ村ニ於テ食糧增產
  上缺クベカラザル任務ヲ擔當スル者ニ付テ
  モ、ヤハリ戰時農業要員トシテ指定スル譯
  デアリマスガ、左樣ナ戰時農業委員ニ付キ
  マシテ、御話ノ如ク、本人ガ自分ノ生產ノ
  規模モ非常ニ小サイ、ソレデヨソヘ行ツテ
  他ノ仕事ヲヤリタイト云フ希望ガ假ニ出テ
  來タト致シマス、希望ダケデハ假ニソレ
  ハ認メナイト致シマシテモ、一方ニ於テ地
  方ノ鑛工業万面ニ於テモ、御承知ノヤウニ
  相當ニ勞務ヲ必要トシテ居ル、其ノ場合ノ
  調整ヲドウスルカト云フコトニナリマスト、
  結局村ナラ村デ、其ノ村デ擔當シテ居ル食
  糧增產ナリ、何ナリノ農業生產上ノ任務ガ
  アル、其ノ一人ノ人ガ離レテモソレヲ補
  充スル途モアルシ、出テ行ツテモ差支ヘナ
  イ、本人モ出テ行キタイト云フヤウナコト
  デアリマシタ場合ニハ、恐ラクハ先ヅ以テ
  要員ノ解除ト云フヤウナコトヲヤルノデハ
  ナカラウカト思フノデアリマス、併シソレ
  ハ其ノ村ナリ其ノ地方ニ於テ〓糧增產上ノ
  責任ヲ押ヘテ居ルノデアリマシテ、之ヲ十
  分實行シテ行ケルト云フコトガ、其ノ村ノ
  中デモ農業會其ノ他デ十分協議致シマシテ、
  サウシテサウ云フコトガ宜シイト云フコト
  ニナツタ場合ニ於テ解除シ、サウシテ然ル
  ベキ方面へ向イテ行クト云フヤウナコトニ
  ナルベキデハナイダラウカ、斯樣ニ私共ハ
  考ヘテ居ルノデアリマス、勿論、應召モア
  リマセウシ、色々ナコトガアツテ、一タビ
  要員ニ決メタ上ハ、何ガドウナラウトモ、
  是ハ絕對ニ動カシテハナラヌト云フベキモ
  ノデハナイダラウト思フノデアリマス、併
  シ又サウ何デモ彼デモ希望ガアレバ動カセ
  ルト云フノデハ是ハ何ニモナリマセヌ、
  是ハドウシテモ生產、ソレカラ其ノ村ノ中
  ノ勞力全般ト云フモノト睨ミ合ハセマシテ、
  適切ナル措置ガ講ゼラレテ行クベキモノダ
  ト、斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリマス

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• 076・赤城宗徳

  ○赤城委員　ソコデ考ヘラレルノハ、生產
  性ノ非常ニ低位ナル農家-是ハ屢〓問題ニ
  ナツテ居ルコトト思ヒマスガ、兼業農家ト
  カ、生產性ノ非常ニ低イ農家ヲドウ云フ風
  ニ處置シテ行クカ、之ヲ一ツ御聽キシタイ
  ノデス、生產ハ勿論生產シタモノヲ供出ス
  ルコトニ依ツテ國家的責任ヲ全ウスル、ダ
  カラ供出ノ完遂ガナケレバ、生產ト云フモ
  ノノ完遂ニハナラヌト云フ風ニ我々ハ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、然ルニ一箇年ノ保有
  米ヲ殘シテ、更ニ供出出來得ル農家ト云フ
  ノデ、初メテ是ハ國家的ナ責任ヲ持ツテ居
  ルモノト思ハレルノデアリマスガ、一箇年
  ノ保有米モ殘セナイ、供出モ出來ナイ、斯
  ウ云フ農家ガ非常ニ殖エテ居ルコトハ當局
  デ御承知ノ通リダト思フ、昭和十五年ニ兼
  業農家ガ五四·三%デアツタモノガ、昭和十
  六年ニハ五八%、昭和十七年ニハ六一·五%、
  斯ウ云フ風ニ非常ニ增加シテ居リマス、殊
  農業ヲ從トスル、斯ウ云フ農家ガ大變殖エ
  テ來マスルト、生產ガ非常ニ減ル、自分ノ
  飯米ダケヲ確保スレバ宜イ、供出ノ責任ハ
  持タヌト云フ考ヘガ强クナリマスノデ、國
  全體ト致シマシテハ、非常ニ食糧ノ生產ニ
  影響ガアル、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、斯ウ云フヤウナ小サイ面積ヲ耕
  作シテ居ル農家ハ、米ノ供出ナドニ當リマ
  シテモ、從來ナラバ地主ニ小作米ヲ納メル、
  勿論農業會デ是ハ代ツテ取立テルヤウナ形
  ニナツテ居リマスガ、從來ナラバ小作米ト
  シテ之ヲ納メル、其ノ小作米トシテ納メタ
  モノハ、國ノ方ヘ供出スルト云フ形ニナツテ
  居ルノデスガ、現狀ハ一年分ダケノ飯米ヲ
  保有シタイト云フコトデアリマスカラ、自
  分デ飯米ヲ保有シマシテ、地主ノ方ヘハ金
  デ納メルト云フコトニナルノデアリマスカ
  ラ、是等ノ生產ヲシタモノハ供出ノ米ノ中
  ニ入ラナイ、從來自由取引時代ニ三千二百
  萬石位ノ米ガ出廻ツテ居ツタノデアリマス
  ガ、現在供出ト云フコトヲセズニ捨テヽ置
  イタナラバ、是ハソレヨリ餘程減ツテ來ル
  ダラウ、ソレハ誰モ自分ノ飯米ヲ確保シヨ
  ウト云フコトニナリマスノデ、捨テヽ置イ
  タナラバ、自由販賣時代ニ動イタ米ヨリモ
  少イノデハナイカ、ソレガ四千萬石以上ノ
  供出ヲスルト云フコトニナツテ居ルノデア
  リマスカラ、非常ニ骨ガ折レル、其ノ骨ノ
  折レル一ツノ原因ノ中ニハ、ヤハリ小サイ
  農家ト云フカ、農業ヲ本當ニヤラナイ、飯
  米ヲ確保スル程度ノ農業者ガ非常ニ殖エテ
  來テ居ル、先程モ御話ガアリマシタヤウニ
  農工一貫ト云フカ、農工調整ト云フヤウナ
  點デ是ハ相當大キナ問題デアルト思ヒマス
  ガ、農村ニ取ツテモ相當迷惑ナ存在ニナツ
  テ居ルヤウニ考ヘラレル點モアリマス、此
  ノ點ニ付キマシテ當局デハドウ云フ御方針
  デアルカ、一ツ御聽カセ願ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 077・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　之ニ付キマシテハ閣議決
  定ノ中ニモ、耕作農地ノ生產力ノ發揮ヲ怠
  ル農家ニ付キマシテ、〓糧增產上特ニ必要
  ガアルト認メマシタ時ニハ、現行ノ臨時農
  地等管理令第八條ト云フ規定ノ運用ニ依ツ
  テ、其ノ農地ノ耕作管理ニ付キ適當ナル措
  置ヲ講ズルト云フコトヲ、閣議決定ノ中ニ
  謳ツテ居ルノデアリマス、今日モ丁度其ノ
  コトニ付テノ通牒ヲ發表致シマシタガ、今
  申上ゲマシタヤウナ農地ノ生產力ノ發揮ヲ
  怠ルヤウナ農家ノ耕作地ニ付キマシテハ、
  場合ニ依リマスト他ノ農家ニ其ノ耕地ノ耕
  作ヲサセルトカ、或ハ又團體ニ於テ其ノ耕
  地ノ耕作ヲサセルヤウナコトモナシ得ル譯
  デアリマス、併シソコマデ參リセマスデモ、
  先ヅ以テ生產力ノ發揮ヲ圖ルヤウニ一ツ奮
  發ヲ求メマシテ、併シ勞力ノ關係其ノ他デ
  以テ、現ニ耕作シテ居ル土地全體ヲ耕作サ
  セヨウトスレバ、ドウシテモ粗笨ナ耕作ニ
  ナツテ、地力ノ發揮ヲ十分ニ盡シ得ナイト
  云フヤウナ時ニハ或ハ其ノ耕作ヲスル農
  地ヲ減ラサセルトカ、色々ナ左樣ナ措置ヲ
  講ジマシテ、何トカシテ農村ニ於ケル農地
  ノ生產力ハ十分ニ發揮ヲスルヤウニサレテ
  參ル、斯樣ナコトニ付テ十分適切ナル措置
  ヲ講ズルヤウニ致サセタイ、斯樣ニ考ヘテ、
  丁度ソレニ付テノ通牒モ出シマシテ、其ノ
  コトニ付テ今日モ發表致シタヤウナ次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=77

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• 078・赤城宗徳

  ○赤城委員　當面ノ問題トシテハ今御說明
  戴イタコトデ能ク分リマシタガ、方針トシ
  テハドウ云フ方針デアルカ、當面ノ問題ト
  シテハ能ク分ルノデス、例ヘバ昨年ノ四月
  ノ皇國標準農村確立ノ際ノ要綱ノ中ニ、自
  作農創設維持事業整備擴充要綱ト云フノガ
  アリマス、其ノ中ニ適正經營農家ヲ育成シ
  テ行ク、之ヲ專業農家トシ中堅農家トシテ
  維持育成シテ行クノダ、サウシテ此ノ適正
  經營農家ノ創設上必要アル時ハ現ニ當該小
  作地ヲ耕作スル小作人ニ付キ萬全ノ措置ヲ
  講ジタル上村內ニ居住スル他ノ耕作者ニソ
  レヲ取得セシムル、斯ウ云フコトガ一ツ入
  ツテ居ルコトハ御承知ノ通リデアリマス、
  是ハ皇國農村ノ確立ニ當ツテ、中堅農家ヲ
  育成シテ行ク、一方ニ於テハ地主ニ土地ヲ
  開放サシテ自作農ヲ作ツテ行ク、之ニ依ツ
  テ相當生產モ擧リ、又土地ト農民トノ結付
  キト云フモノガ出來ルト云フ考ヘ方ハ洵ニ
  當然デアリマスルガ、ソレト同時ニ唯或ル
  面積ガ自分ノ所有權ニナツタト云フダケ
  デハナク、或ル程度ノ廣サノ面積ニシテ行
  クト云フコトニナレバドウシテモ小サイ
  農家ニ何カノ措置ヲ執ツテ專業農家ト云フ
  モノガ、育成サレルト云フ形ニナルト思フ、
  昨年ノ皇國農村確立要綱ノ中ニモ、零細農
  ト言ヒマスカ、兼業農家ノ積極的整理ヲ前
  提トシテ-勿論地主ノ土地ノ開放ト自作
  農創設ト云フコトモ缺クベカラザルコトデ
  アリマスガ、此ノ小サイ農家ノ整理ト云フ
  コトモ、相當前提トシテ專業農家ノ維持育
  成ニ乘出スト云フヤウナ方針ヲ示サレタヤ
  ウニ我々ハ見テ居ルノデアリマス、實際皇
  國標準農村ノ指導ニ當リマシテドウ云フ風
  ニサレテ居ラレルカ、或ハ又將來トモ斯ウ
  云フ農家ニ對シテハドウ云フ風ナ方法ヲ執
  ツテ行カレタ方ガ宜イノダラウカト云フコ
  トニ付キマシテ、御考ヘガアリマシタナラ
  バ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=78

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• 079・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　自作農創設ニ關聯シマシ
  テ、適正規模ノ農家ト云フモノニ付キマシ
  テハ、是ハ全國共通普遍ノ一ツノ規模ト云
  フモノハ考ヘラレナイノデアリマス、ヤハ
  リ地方ノ狀況、作物ノ種類其ノ他色々ノコ
  トニ依リマシテ、自ラ其處ニ標準ト云フモ
  ノガアル譯デアリマス、小規模ノ農家、之
  ヲ一ツノ村ニ付テ考へテ見テ、モウ總テヲ
  適正規模ニシテ行ク、餘ツタモノハ外ヘ出シ
  テシマフト云フヤウナコトモ一〓ニハ出來
  ル筈ガナイノデアリマス、唯少クトモ村ノ
  或ル程度中堅的ナ農家ヲ作ツテ參ルヤウナ
  コトニ進ンデ行クト云フ場合モアリマセウ
  シ、或ハ又全體的ニ是ハ十分トハ言ヘナイ
  ケレドモ、一ツノ村トシテハ先ヅ例ヘバ或
  ル程度ノ自小作ナラ自小作ヲ作ルト云フコ
  トガ村ノ將來ノ健全ニ進ンデ行ク第一步デ
  アルト云フヤウナコトデ、サウ云フ方面ヘ
  進ムモノモアリマセウシ、是ハ色々アルダ
  ラウト思フノデス、私自身實ハ深ク〓究モ
  致シテ居リマセヌガ、左樣ニシテ必ズシモ
  常非ニ整然トシタモノハ考ヘラレナイ、殊
  ニ今ノ戰時下ニ於キマシテ、一軒ノ農家ニ
  付テ考ヘテ見マシテモ、其ノ持合セノ勞力
  ト云フモノハ、將來平和ナ時ニ囘復スレバモ
  ウ少シ勞力ハアルンダケレドモ、現狀ニ
  於テハ此ノ程度ニシカイカヌト云フヤウナ
  場合モアリマスシ、兎ニ角今日ノ農村ニ於
  ケル勞力關係ハ或ル種ノ變態狀況ニアルノ
  デアリマスカラ、而モ農家ノ農業經營ト云
  フモノハ、其ノ一軒ノ家ノ人數、或ハ家族
  ノ成長ト云フヤウナモノガ一ツノ大キナ波
  ヲナシテ行クノデアリマシテ、其ノ間ニ處
  シテキチントシタモノガアルト云フ道理ハ
  ナイノデアリマスガ、ヤハリ其ノ狀況ニ應
  ジマシテ、形式的ニ、統計的ニ見タラバ甚
  ダ變デアツテモ、實質的ニ見テ堅實ナル農
  家ヲ作リ上ゲテ行クト云フ風ニ、ヤハリ斯
  ウ云フ時期ノ仕事デアリマスカラ、平面
  的ニ或ル時期ヲ限ツテ考ヘナイデ、相當ナ
  期間ニ跨ツタヤウナ考ヘ方ヲ以テ、農家、
  殊ニ自作農家ノ維持創設ヲ考ヘテ行クベキ
  ヂヤナイダラウカ、斯ウ考ヘマス

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• 080・赤城宗徳

  ○赤城委員　飯米ノ供出ノコトデ一寸觸レ
  タノデスガ、ソレト關係シテ小作料ノ金納
  ト云フ問題デアリマス、是ハ私昨日決算委
  員會ニ出テ居ツタ時問題ニナツタヤウニ新
  聞デ見マシタ、私ハ此ノ點ハ端的ニ言ヒマ
  シテ、金納化スルコトハイケナイト思フ、
  ヤハリ農業人ト云フノハ土地カラ物ヲ產ミ
  出ス、物ト物ヲ產ム心ト、此ノ心ガ土地ト
  結付クト云フコトガ必要デアル、其ノ意味
  デ簡單ニ金納化スルト云フコトハ、從來ト
  モ金錢經濟ノ爲ニ汚濁サレタ農村ヲ更ニ何
  カ物ト離レタヤウナモノニシテ、金サヘ拂
  ヘバ宜インダ、金サヘ取レバ宜インダト云
  フヤウナ形ニシテ行ク虞ガ多分ニアルト考
  ヘルノデアリマス、金ヲ取ルダケナラバ、實
  際農業ヲヤル馬鹿ハナイ、ト言フト少シ言
  葉ガ荒イカモ知レマセヌガ、金ヲ取ルダケ
  ナラバ農業ハヤラヌ、金ヲ取ルナラ外ニモ
  ツト取レル所ガアル、ヤハリ土地カラ物ヲ
  產ミ出ス樂シミト云フカ、此ノ土地トノ結
  付キト云フ所デ、金ニシテハ懷ロニ餘リ入
  ラヌデモ農業ニクツ付イテ居ルト云フ形ガ
  相當多イト思フ、ヤハリ金デ濟マセバ宜イ
  ンダト云フコトニシテ、金々ト云ツテ小作
  料ナラ小作料ヲ金納化スルト云フコトニハ
  相當危險ガアルト思フ、勿論金納化ノ理由
  トシテハ、米麥等ガ段々上ツテ來ル、ダカ
  ラ一俵小作ヲ取ツタノモ金ニスレバ一俵半
  ノ小作ヲ取ツタト同ジヤウナモノデ、自己
  ノ力ニ依ラズシテ小作料ヲ多ク取ル、又小
  作スル方カラ言ヘバ金ニ換算スレバ非常ニ
  多額ノ金ヲ納メル、小作料ガ上ツタト云フ
  形ニナリマスカラ、是ハ金納ニシテ置イタ
  方ガ宜カラウト云フコトデアリマセウケレ
  ドモ、サウ云フ點ナラバ、是ハ全面的ニ小
  作料ノ適正化ト云フコトヲ圖ラレタ方ガ宜
  イノデアツテ、其ノ意味カラノミ金納化ト
  云フコトニ趨ルコトハ非常ニ危險デアル、
  斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、
  實ハ昨日決算委員會ニ出テ居リマシタノデ
  政府御當局ノ御答辯ヲ聽キ洩ラシテ申譯ナ
  イノデスガ、重ネテ一ツ御意見ノアル所ヲ
  御聽カセ願ヒマス

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• 081・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハ昨日モ結論的ニ申上
  ゲタノデアリマスガ、要シマスルニ色々ノ
  見方モアル譯デアリマスガ、農商省トシマ
  シテ今日特ニ小作料ニ付テ金納化ヲ圖ルト
  云フ特別ナル進メ方ヲ致シテ居ラナイノデ
  アリマス、其ノコトヲ申上ゲテ置キマス

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• 082・赤城宗徳

  ○赤城委員　配給ノ點ニ付テ御尋ネシタイ
  ト思ヒマス、配給ノ點ハモウ大體各委員會
  其ノ他デ論議ガ盡サレテ居ルヤウデアリマ
  スノデ、詳シイコトヲ御尋ネスル必要ハナ
  イト思ヒマスガ、先程御尋ネガアリマシタ
  ガ、配給ノ理念ト言ヒマスカ、配給ノ指導
  精神ト云ヒマスカ、サウ云フ點ニ非常ニ誤リ
  ヲ持ツテ居ル點ガアルノデハナイカト云フ
  ヤウニ考ヘルノデアリマス、統制ニナリマ
  シテヨク乏シキヲ憂ヘズ齊シカラザルヲ憂
  フル、斯ウ云フコトガ援用サレテ居ルノデ
  アリマス、先程モ他ノ委員カラ御話ガアリ
  マシタヤウニ、眞實公平デアルナラ宜シイ
  ケレドモ、表向公平ノヤウニ見エテ、實際
  ニハ公平デナイ、斯ウ云フ場合ガ非常ニ多
  イ、乏シキヲ患ヘズ、均シカラザルヲ患フ
  ルンダ、總テニ平等的ニ配給シロト云フヤ
  ウナ指導ヲシマスルト、非常ニ危險ナ思想
  ニ近クナルト思フノデアリマス、物ガ段々
  少クナツテ來ル、戰爭ハ苛烈ニナツテ來ル、
  十人ノ所ヘ手拭一本配給ニナツテ來タ、
  一人ノ者ニダケ配給スレバ九人ノ者ハ必ズ
  快カラズ思フ、ソレデハ均シカラザルヲ患
  フルト云フ譯デ、一本ノ手拭ヲ十本ニ切ツ
  テ與ヘタラバドウナルカ、形ハ非常ニ公平
  デアリマスルガ、ソレデハ其ノ物ガ活キテ
  來ナイ、物ガ不足ニナツテ來ル、戰爭ガ苛烈
  ニナツテ來ルト云フ時ニ一人ノ人ガ一本ノ
  手拭ノ配給ヲ受ケタト云フコトニ付テ、九人
  ノ者ハ非常ニ變ナ考ヘヲ持ツテ來マス、此
  ノ場合ニ乏シキヲ患ヘズ、均シカラザルヲ
  患フルト云フヤウナ思想デ指導シテ行キマ
  スト、配給上カラ思想ノ混亂ト云フコトガ
  非常ニ多クナツテ來ルノデ、私ハ此ノ指導
  精神ヲ一ツ所ヲ得ルト云フ日本的ナモノニ
  變ヘテ見タラドウカト思フ、人モ所ヲ得ル、
  物モ所ヲ得ル、大將ナラ卽チ大將トシテノ
  待遇アリ、或ハ少尉ハ少尉トシテノ待遇
  アリ、兵卒ハ兵卒トシテノ待遇アリ、之ヲ
  ミンナ同ジニシテシマフ、斯ウ云フコトデ
  ナクテ、所ヲ得ル、重筋勞働者ニハ食糧モ
  多ク與ヘテ居リマスシ、サウデナイ者ハ少
  イト云フ風ニ必ズシモ平等デハナイ、併シ
  ナガラ乏シキヲ患ヘズ、均シカラザルヲ患
  フルト云フヤウナ言葉デ表現サレルト、兎
  角皆平均シテ同ジヤウニ配給モ受ケルノデ
  アルシ、同ジヤウナ待遇モ受ケルノデアル
  ト云フヤウナ危險ニ陷リ易イト私ハ考ヘル、
  其ノ點ニ於テドウシテモ物モ人モ所ヲ得
  ル、所ヲ得タ配給ト云フヤウナ指導デヤツ
  テ行キマセヌト、此ノ戰爭ガ苛烈ニナリ、
  又物ガ益〓不足シタ場合ニ、思想上ニ及ボス
  影響ヲ憂フル譯デアリマスガ、此ノ點ニ付
  キマシテ御意見ヲ承リタイト思ヒマス

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• 083・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　配給ノコトハ、是ハ說明
  ニハナリマセヌガ、一口ニ申セバ、要スル
  ニ適正ノ配給ヲスルコトガ必要ナノデアリ
  マッ、結局終局ノ狙ヒハ必要度ニ應ジテ配
  給スルト云フ所ニアルノデアリマス、所ガ
  ドウ云フ方面ニドノ程度ノ必要ガアツテ、
  ドノ方面ハドノ程度ノ必要ニ止マルカト云
  フコトガ、一々巨細ニ見當ガ付カナイ場合
  三、已ムヲ得ナイカラ外ニ手ガナイト云
  フヤウナ譯デ、同ジヤウニ配ル、要スルニ
  左樣ナコトカラ、例ヘバ一人當リ幾ラト云
  フヤウナ配給ノ仕方モ起ツテ來ル譯デアリ
  マス、是ハ〓糧ニシマシテモ、大體其ノ人
  ノ生理カラ言ツテ、多少餘計食糧ヲ必要ト
  スル人モアラウシ、又ソレ程必要デナイ者
  モアラウシ、或ハ平生ノ職業ノ關係カラ言
  ツテ、所謂濃厚榮養的ナ食糧ヲ必要トスル
  者モアラウシ、サウデナイ者モアル、男女
  ノ性別ニ依ツテソレ〓〓多少ノ違ヒガアル
  譯デアリマスガ、之ヲ非常ニ詳細ニヤルト
  云フコトハ事實上不可能デアルト云フヤウ
  ナ所カラ、實ハ味噌ハ一人當リ幾ラトカ、
  醬油ハ幾ラトカ、米ハ年齡ニ依ツテドウト
  カ-唯最近ハ御話ノヤウニ重勞働其ノ他
  ノ關係カラドウスルト云フヤウナコトニナ
  ツテ居ル譯デアリマス、隨ヒマシテ我々トシ
  マシテハ、元々何デモ同ジヤウニ米ヲ食フ
  ノガ一番理想デアルカラ、同ジヤウニ食ハ
  セルノダト云フヤウナ所カラ出發シテ居ル
  譯デハナイノデアリマシテ、唯實行上サウ
  スルコトヨリ外ニナイト云フヤウナ場合ニ、
  サウ云フ風ニヤツテ居ル、若シソレ以上ニ
  特殊ナ標準カラ更ニ一層具體的ニ配給ノコト
  ガ考ヘラレル場合ニハ左樣ナ風ニヤツテ
  居ルト云フコトニナル譯デアリマス、何レ
  ニシマシテモ要スルニ其ノ配給ノヤリ方デ
  アリマス、御承知ノヤウニ現在ノ所マダ配
  給統制ヲ加ヘナイ配給ノヤリ方ト云フモノ
  モアル譯デアリマス、統制配給ト自由配給、
  此ノ兩者ノ關聯ニ付キマシテハ中々難カ
  シイノデアリマシテ、例ヘバ〓糧ニ付テ申
  シマスナラバ、其ノ時々ノ食糧全體ノ需要、
  供給量ノ關係トカ、或ハ又生活環境ガ大
  消費地デアル、又ハ極メテ手近ニ色々ナ生
  產物ガアル地方ノ小都市或ハ農村デアルト
  カ云フヤウナコトカラ致シマシテモ、統制
  配給ニ依ツテ配給スベキカ、統制ニ依ラザ
  ル自由ナ配給ニ依ツテヤルベキカト云フ緩
  急ノ度ガソコニ自ラアル譯デアリマス、私
  共ト致シマシテハ統制配給ノヤリ方自體モ
  サウデアリマスルシ、又統制配給ノ對象ニ
  スベキ物資ニ付キマシテモ、總テノ需給全
  體ト、ソレカラ環境ノ關係等ヲ睨ミ合セマ
  シテ、此ノ決戰下ニ於ケル國民ノ生活ヲ最
  モ決戰下銃後國民ノ活動ノ上ニ相應シイヤ
  ウニ運營サレテ參リマスコトヲ主眼トシテ、
  其ノ時々ノ情勢ニ應ジテ處置ヲシテ行キタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、大體左樣ナ
  コトデアリマス

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• 084・赤城宗徳

  ○赤城委員　ソコデ綜合配給制ト云フモノ
  ガ各方面ニ行ハレテ來タヤウデアリマスガ、
  是ト對應シテ供出側ノ方モ綜合供出制ヲ執
  ラレタラドウカ、例ヘバドノ縣ハ米ハ何百
  萬石、麥ハドレダケ、甘藷ハドレダケ、馬
  鈴薯ハドレダケ、斯ウ云フ風ニ初メカラ綜
  合供出ニシテ、若シ米ノ點デ是ダケ出ナカ
  ツタナラバ、今度ハ麥ノ方デ少シ餘計代ヘ
  テ出シテモ宜イノダ、或ハ甘藷デ代ヘテ出
  シテモ宜イノダ、斯ウ云フヤウナ綜合供出
  制ヲ執ラレタラ宜イノヂヤナイカト考ヘテ
  居リマス、自分ノ村ナドニ於キマシテモ米
  ノ供出ヲ今盛ンニヤツテ居リマスガ、或ル
  部落ニ行ツテ話シマスト、俺ノ方ノ部落ハ、
  甘藷ナラバモツトウント出セルノダケレド
  モ、米ノ點デハ中々困難ダ、片方デハ麥ノ
  時期ニナレバ、麥ナラバ相當出セルノダケ
  レドモ、米ノ點デハ是レダケハ中々困難ダ
  ト云フ風ナ點ガ色々アリマス、是ハ出ス時
  期等ニ依ツテ違ヒマスケレドモ、一應國ト
  シテ大キナ計畫ヲ立テ、縣ニ綜合供出ノ割
  當ト云ヒマスカ綜合供出ヲサセル、ソレヲ
  又村ノ方ニ廻シテ行クト云フ風ナ考ヘノ下
  ニ供出サセタ方ガ、配給ガ旣ニ綜合ニナツ
  テ居ルノデアリマスカラ宜シイノデハナイ
  カト考ヘテ居ルノデスカ、此ノ點ニ付テ御
  意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 085・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　今御話ノ綜合供出ノコト
  ニ付キマシテハ、政府トシテ公ニドウ考ヘ
  テ居ルカト云フコトニ付テハ、マダ申上ゲ
  ル何等ノ用意モナイノデゴザイマスガ、我
  我部內デ色々〓究的ニ話合ツテ居ル事柄ト
  シマシテハ、私共モ一種ノ何カサウ云フヤ
  ウナコトモ次ノ段階ニ於テ考ヘタラ、一面
  ニ於テ〓糧ノ供出ノ絕對量ヲ確保シ得ルシ、
  而モ供出ヲスル側ノ農家トシテモヤリ宜イ
  ト云フ風ナコトデ、非常ニ〓究考慮ノ値打
  ノアル問題デハナイカト云フ風ニ考ヘマシ
  テ、色々話合ツテ居ルノデアリマスガ、唯
  此ノ場合ニ於テ、例ヘバ滿洲國デ出テ來ル
  大豆ト糧穀三品ノ供出ノヤウナコトデアリ
  マスト、何レモ供出ノ時期ガ同一デアリマ
  ス、ソコデ高梁ハ是レ位シカ出セヌケレド
  モ粟ハ是ダケ出ストカ、糧穀三品ハ是ダケ
  ダガ大豆ハ是ダケ出ス、大豆ハ少シシカ出
  セナイガ糧穀三品ヲ出ストカ、是モ餘リ極
  端ニナツテ、大豆ノ供出ガ非常ニ減ルト云
  フコトニナルト困ルコトニナルノデアリマ
  スケレドモ、多少ソコニ食糧トシテ融通ハ
  付ケ易イモノデアリマスカラ、同時ニサウ
  云フモノガ出テ來ル場合ニハ割合ヤリ易イ
  ノデアリマス、所ガ我ガ國ノ食糧ハドウカ
  ト申シマスト、米ノ出ル時期、麥ノ出ル時
  期ソレカラ芋、又春馬鈴薯、甘藷ト云フ
  ヤウナ譯デ、何レモ時期ガ違フノデアリマ
  シテ、例ヘバ此ノ秋ハ是ダケシカ出セナイ
  ケレドモ、來年ノ春ニハキツト出シマスト
  云フヤウナ譯デ、綜合供出ト云ツテ次ノ時
  期ニ一ツ繰延ベルト云フヤウナコトハ、是
  ハ實ヲ申シマスト、全體トシテ需給ノ計畫
  ノ立テ樣ガナイヤウニナル譯デアリマス、
  其處ニ一寸難カシイ點ガアルノデアリマス
  ガ、今御話ノヤウニ秋ニ米ガ出ル、甘藷ガ出
  ルト云フヤウナ場合ニ付テナラバ、或ル程
  度ハソレガ實行出來マス、唯其ノ場合ニ於
  テモ、米ノ方ナラバ保存モ利クシ輸送モ便
  利デアル、甘藷ハト申シマスト、御承知ノ
  ヤウニ、保存ノ上又輸送ノ上ニ非常ニ不便
  ガアルモノデアリマスカラ、政府ト致シマ
  シテハ、現在米ニ付テハ自家ニ或ル程度ノ
  保有ヲ認メテ、アトハドウカ全部出シテ貰
  ヒタイト云フコトデ賴ンデ居ル、甘藷ノ方
  ハドウカト云フト、全國的ニ大體ノ生產見
  込量ニ對シテ四割程度シカ供出ヲ求メテ居
  ナイ、斯ウ云フヤウナコトニナツテ居ルノ
  デアリマシテ、是ハナニモ都會ノ人ニ成タ
  ケ米ヲ食ハサセ、甘藷ハ成タケ農家ニ食ハ
  セルト云フヤウナ趣旨デハ毛頭ゴザイマセ
  ヌノデ、全ク國家ガ食糧ヲ運營シテ行ク上
  ニ、輸送ノ關係、保存關係ト云フコトデ、
  生產農家ニ此ノ點ニ付テノ協力ヲ求メテ居
  ルヤウナ事情ニアルノデアリマス、ソコデ
  今ノ綜合供出ト云フコトニ付テハ、例ヘバ
  麥ノ穫レタ時ニ、麥トシテノ供出ハ本來カ
  ラ言ヘバ是ダケ出セバ宜イノダケレドモ、
  何レ又米ノ供出ガアルコトデアラウカラ、
  豫メ麥ヲ餘計出シテ置キマセウト云フコト
  デアレバ、是ハ大變供出ヲ受ケル側デハ工
  合ガ宜イガ、農家トシテハ中々サウハ行キ
  マセヌ、甘藷ト米ノ關係ニ付テハ先程ノヤ
  ウナコトニモナリマスカラ、彼此レ致シマ
  シテ是ハ實際ノ實行ト云フコトニナルト、
  一體ドウ云フ風ニヤツタラ宜イカト云フヤ
  ウナコトデ、色々考ヘテ居リマス、兎ニ角
  我々ノ仕事ニ關係ノアル事柄トシテ〓究ハ
  致シテ居リマスガ、マダ公ニ此ノ際ドウ斯
  ウシヨウト云フコトヲ申上ゲルマデニハナ
  ツテ居リマセヌノデ、御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=85

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• 086・赤城宗徳

  ○赤城委員　最後ニ御尋ネ致シタイコトハ
  戰爭ノ終ルマデ水陸糯ノ栽培ヲ止メルコト
  ニシタラドウカト云フコトデアリマス、其
  ノ理由ハ、茨城縣ニ於テ、昭和十七年ノ水陸
  糯作付反別ガ二萬三千三百七町、收量ガ二
  十七萬九千四百四十石デアツテ、統計ノ示ス
  所ニ依ルト、一反步當リノ實收高ハ糯ヨリ
  粳ノ方ガズツト多イノデアリマス、ソレデ
  昭和十七年度ノ農林統計カラ拾ヒ出シテ見
  マシタガ、水稻ノ平均反當收穫ガ二石一斗七
  升二合、粳ガ二石二斗一升三合、糯ハ一石七
  斗四升八合、卽チ水粳ハ水糯ヨリモ四斗六
  升五合ダケ收穫ガ多イヤウデアリマス、陸
  糯デハソレ程ノ違ヒハナイヤウデアリマス、
  昭和十六年以前ノ統計ヲズツト見テミマス
  ト、大體粳ノ方ガ二石二斗位糯ヨリモ收穫
  ガ平均シテ多イノデアリマス、斯ウ云フ風
  ニ食糧事情ガ逼迫シテ來タ、船デ外米ナド
  ヲ持ツテ來ルト云フコトノ到底豫期出來ナ
  イ食糧ノ需給カラ言ヒマシテ、非常ニ窮屈
  デゴザイマス、斯ウ云フ時デアリマスノデ、此
  ノ水陸糯ヲ水陸粳ニ替ヘタナラバ-全國デ
  ドレ位ノ町歩ガアルカ分リマセヌガ、百萬
  町歩アリトスレバ-是ハ少シ多イカモ知レ
  マセヌガ、ソレダケデ二百萬石ダケハ捨テテ
  置イテモ自然ニ增收ニナリハシナイカ、殊
  ニ餅ト云フモノハ信仰的ニモ考ヘテ大事ナ
  モノデアリマスガ、實際問題トシテハ田舍デ
  ハヨク之ヲ食ヒ物ノ繫ギダ、繋ギニ食フン
  デ、本當ノ食糧トシテノ外ニ結局食ヒ込ンデ
  シマウンダト云フコトモ言ハレテ居リマス
  ルシ、相當是ハ水粳ノ方ニ替ヘテ見タラド
  ウカ、ソレニ依ツテ自然ニ百萬石位ハ增收
  ニナルノデハナイカト云フ考ヘヲ持ツテ居
  リマス、此ノ點ニ付キマシテ御意見ヲ御聽
  カセヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=86

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• 087・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　實ハ今ノ御話ノ點ハマダ
  考ヘタコトハゴザイマセヌデシタガ、ーソ
  能ク〓究シテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=87

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• 088・赤城宗徳

  ○赤城委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=88

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• 089・深澤吉平

  ○深澤委員長　ソレデハ次ハ山田委員

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=89

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• 090・山田六郎

  ○山田(六)委員　米穀供出ノコトニ付テハ
  大分皆サンカラ御問ヒガアツテ、是レ以上
  御聽キスルノモドウカト思ヒマスガ、昨年
  ト今年ト米ノ供出ニ當ツテ見タ結果ガ、ド
  ウシテモ此ノ供出ニ付テハ何トカ考ヘナケ
  レバナラヌ、此ノ儘ニシテ置イテハ恐ルベ
  キ結果ヲ見ルノデハナイカト云フヤウナ心
  配ガアリマス、ソレハドウシテカト云フト
  第一ニ農商省ニ御聽キ致シタイコトハ、今
  年ノ東北全體ガサウ云フ傾向ニアリマスル
  ガ、收穫ガ豫定ヨリ少クテ、配當ヲサレタ供
  出量ダケ出シテシマヘバ、モウ米ハ精々三
  月力、良イ方デ四月一パイデ食ベルノガナ
  クナツテシマフ、ソレデ政府ノ供出ノ方針
  ニ依ツテ保有米ヲ殘シテ置クト云フコトニ
  ナレバ、到底割當テラレタ米ハ出スコトガ
  出來ナイト云フコトニナツタノデアリマス
  ガ、之ニ付テハ東北六縣ガ殆ド同ジ步調ニ
  出タヤウデアリマスガ、兎ニ角後ハドウシ
  ヨウトモ割當ヲ受ケタダケノ米ハ供出スベ
  シト云フコトニナツテ、之ヲ各農家ヲ本當
  ニ强硬ニ說キ付ケテ無理ヤリニ出サセタ、
  ソレデアリマスカラ、或ハ來月一パイデナ
  クナルト云フ人モアリ、或ハ再來月マデ食
  ヘルト云フ人モアルト云フ情勢デアリマス、
  斯ウ云フヤウナコトデ、割當テラレタダケ
  ノモノヲ出スコトガ出來ナイト云フコトハ
  面白クナイカラ、保有米ナドハ第二次ニ
  シテ出セト云フ風ニシテ出サセタノデアリ
  マスガ、多分農商省等ノ豫メ御諒解ヲ得テ
  斯ウ云フヤウナ取扱ヒヲシタノダラウ、斯
  ウ私ハ想像シテ居ル、隨テ今後米ガナクナ
  レバ、是等ノ人々ヲ飢ヱシメルト云フコト
  ハシナイ筈デアルカラ、確カニ農商省ハ配
  給ヲシテ吳レル、斯ウ確信シテ居ルノデア
  リマス、是ハ私共ノ方ノ縣下全體ガサウ確
  信シテ居ル、其ノコトハ無論實行サレルコトト信
  ジテ宜シカラウト思ツテ居リマスガ、其ノ邊ヲ一
  寸御聽キシテ置クコトガ一ツデアリマス
  ソレカラ今一ツハ、色々農家ニ當ツテ
  供出ノコトニ付テ努力シテ見タ結果ハ、ド
  ウシテモ公平デナイ、不公平ダト云フ苦
  情ガ到ル處ニ多イノデス、例ヘバ縣ト縣ト
  ノ間ノ供出ノ步合ガ違フ、或ハ郡ト郡トノ
  間デ、何郡ハ非常ニ樂ダガ、自分ノ方ノ郡
  ハ非常ニ無理ダト云フヤウナコト、或ハ町
  村ト町村ノ間デ不公平ダト云フヤウナコト、
  又町村內ニ於テモ各部落ノ割當ガ不公平ダ
  ト云フヤウナコトガアリマス、ソレハ一部
  落ノ各個人ノ割當ニ於テモヤハリ同ジヤウ
  ナ結果ヲ見テ居ルト云フヤウナコトニナツ
  テ居リマス、公平ヲ期スルト云フコトハ人
  間デハ出來ナイ、若シヤラウトシタナラバ
  今マデノ方法ヲ悉ク打捨テテシマツテ、實
  收穫ニ依ツテ其ノ何割ヲ出ス、或ハ實收穫
  ヲ全部出スト云フコトニナレバ公平ヲ保ツ
  コトガ出來ヤウカト思フノデアリマス、デ
  アリマスカラ今後ノ供出ト云フモノハ、農
  家ノ收穫シタモノノ全部、例ヘバ一月三十
  日ナラ一月三十日マデノ食糧ヲ除ク全部ヲ
  供出スベシト云フコトニシテ、其ノ後ノ米
  ヲ配給スルト云フコトニナレバ是ハ不平ガ
  少イカト思フ、之ニ付テハ實ニ怨嗟ノ聲ガ
  各部落々々ニ充チ滿チテ居ルト云フ地方モ
  アリマス、殊ニ婦人ガ此ノ問題ニ對シテ喧
  シク苦情ヲ言フモノデアリマスカラ實ニ困
  ツタモノデアル、コンナコトヲ繰返シテ居
  ツタノデハ、是ハ今後ノ食糧生產ノ上ニ非
  常ナ惡影響ヲ與ヘルノデハナイカト云フコ
  トヲ心配スルノデアリマス、是ハ寧ロ全收
  穫量ヲ供出セシメテ、サウシテ之ヲ配給ス
  ルト云フコトニナレバ怨嗟ノ聲ハ少クナル、
  是ガ本當ノ公平ナヤリ方ダト思フノデアリ
  マスカラ、全收穫量ノ何割ヲ供出スルト云
  フヤウナコトニシテ、之ヲ實行シテ見ル御
  意思ハナイカト云フコトデアリマス、是レ
  以外ニ私共ハ方法ハナイト思ツテ居リマス、
  併シソレヲスルニハ調製、脫穀ト云フヤウ
  ナ仕事ヲ統制シナケレバ不可能デアリマス
  ガ、大體今日統制サレテ居リマスカラ、今
  一步進メテ之ヲ完全ニ統制シテ貰フト云フ
  コトニナレバ是ガ嚴格ニ行ハレルノデハ
  ナイカト考ヘラレルノデアリマスガ、此ノ
  點ニ付テノ御意見ヲ御聽キシタイト思ヒマ
  ス

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• 091・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　本年ノ供出ノ大體ノ目算
  ハ、御承知ノヤウニ早期割當ヲ致シマシタ
  カラ、要スルニ收穫ヲスル前カラ致シタ譯
  デアリマスカラ、理窟ノ上カラ言ツテモ、
  收穫ト供出トノ關係ト云フモノニ付テ、最
  初決メタモノトノ間ニ多少ノ食違ヒト云フ
  モノハアリ得ルノデアリマス、之ニ付テハ
  供出ノ方法ノ場合ニ於キマシテモ、地方ニ
  依ツテ、相當著シイ災害等ニ依ル變化ニ付
  テハ改訂ヲ加ヘル、併シ多少ノコトナラバ
  本年ハ一ツ其ノ儘實行シテ戴クト云フコト
  ニナツテ居ルノデアリマス、隨テ來月位マ
  デシカ米ガナイ-澤山食ツテシマツタノ
  ハ別デアリマス、或ハ又他ノ方ニ流用シタ
  ト云フヤウナコトナラ別デアリマスガ、通
  常ニ食ベテ居ツテ三月頃マデシカ食ベル物
  ガナイト云フヤウナノハ餘程何カソコニ、
  例ヘバ御話ノヤウニ部落ナラ部落ニ付テノ
  割當ガ特ニ過重デアツタトカ、或ハ部落内
  ニ於ケル個人割當ガ過重デアツタトカ云フ
  ヤウナコトニ端ヲ發シテ居ルノデナケレバ、
  ドウモ災害地デナイ限リサウ云フコトハ考
  ヘラレナイヤウニ思フノデアリマス、隨テ
  私共ト致シマシテハ、例年左樣ナコトニナ
  ルト思ヒマスガ、細目ノ更ニ縣內ニ於ケル
  割當トカ云フヤウナコトハ、是ハ地方ニ任
  セテアリマスカラ、ドウ云フ風ニナツテ居
  ルカ、私自身十分承知致シテ居リマセヌガ、
  我々ノ方カラ見マシテモ、最近多少苦シイ
  カナト思ハレル或ル縣ノ村ノ人ガ參リマシ
  テ色々ト事情話ヲシテ居ラレマシタガ、結
  局村ノ中デ部落割當ナリ何ナリガ巧ク行キ
  サヘスレバ-是ハ少シ無理ダト云フヤウ
  ナコトヲ縣アタリカラモ聞イテ居ル縣デア
  リマシタガ、ソンナニエライ問題ハナイノ
  ダ、唯ソレガヤハリ非常ニ形式的ナ割當ガ
  行ハレル爲ニ、ソコニ不平ガ起ル、出セルケ
  レドモ、アヽ云フノガ居ル以上ハ俺ノ方モ
  ト云フコトデ出サナイ者モアルト云フコト
  ニ端ヲ發シテ居ル、少シ末端ノ供出狀況ヲ
  能ク調ベテ見テ吳レタラドウデアラウカト
  云フヤウナ話モアリマシタ、是ハ地方ニ依
  ツテ色々狀況モ多少違フト思ヒマスノデ、
  一〓ニハ申サレマセヌケレドモ、去年、今
  年ト折角經驗ヲシテ參リマシテ、去年ヨリ
  ハ今年ガ一層實情ニ適シテ居ルノデハナイ
  カト私共ハ想像シテ居ルノデアリマス、勿
  論是ハ難カシイ事柄デアリマスカラ、マダ
  十分トハ申セナイダラウト思フノデスガ、
  此ノ際此ノヤリ方ヲガラツト變ヘテシマヒ
  マシテ、一應全部出サセルトシマシテモ、
  出サナイ者ガアツテ全部出シタト言ツテ居
  レバ、ヤハリソレ切リノ話デアリマスノデ、
  ソコラ邊ノ所ガ非常ニ難カシイノデアリマ
  ス、今此ノ際御話ノ如ク、例ヘバ實收割デ
  ヤルト致シマシテモ、實收ハドウセ外カラ
  想定シマスカラ、反當二石ナリ三石ナリ穫
  レタ、其ノ何割ヲ出セ、卽チ實收幾ラ、結
  局斯ウ云フコトニナラウカト思ヒマスガ、
  是ハ寧ロ逆ニ一層ギコチナクナルコトデア
  リマス、又全部出セト云フコトモ手數ノ掛
  ルコトデアリマシテ、又返シテ貰フ位ナラ
  何モ調製ヲシテ俵裝スル必要モナイノニ、
  俵裝シテ出ス、去年アタリノ還元配給ハ受
  ケタガ、兎ニモ角ニモ出シタト云フ場合ノ
  最モ合理的ダト思ハレル不平ハ、兎ニ角出
  セ、後カラヤルト云フコトデワザ〓〓俵裝
  ヲシテ出シテ、又米ヲ貰ツテ來ル、實ニ此
  ノ際トシテハドウモ政府ハ洵ニ下手ナコト
  ヲヤツテ居ルト云フヤウナ還元配給ヘノ批
  評ハ、役所ノ方トシテハ一番痛イ批評デア
  ル譯デアリマス、デアリマスカラ兎ニ角一
  應全部出セ、又後デヤラウト云フコトハ難
  カシイト思ヒマスシ、ソレカラ今ノ御話ノ
  實收ノ問題モ、結局反當リ何割出セト云フ
  ヤウナコトニナツテ來ルノデ、是モ難カシ
  イ譯デアリマス、デアリマスカラ直接第一
  線デ此ノ供出ノコトニ當ル役人達ノ苦勞モ
  私達トシテハ重々察スル譯デアリマスガ、
  尙ホ我々ト第一線マデノ間ノ連絡ヲ一層緊
  密ニ致シマシテ、何トカ本來ノ狙ヒ所デア
  ルヤウナ行キ方ヲ徹底シマスヤウニ-尤
  モ今年ノ供出ハドウセ多少ハ食込ミニナル
  コトハ、自發供出ヲ求メテ居ル關係モアリ
  マシテ已ムヲ得ナイノデアリマスガ、併シ
  餘リ極端ナコトハ勿論考ヘラレテ居ラナイ
  譯デアリマスカラ、其ノ邊ノ所ノ程ヨリ參
  リマスヤウニ、私共ノ方トシテモ十分地方
  ト連絡ヲ執ツテヤツテ參リタイト思ヒマス、
  併シ地方デ今熱心ニ供出ヲ求メテ居リマス、
  此ノ際ト致シマシテハ、先ヅ以テ地方ニ於
  ケル農家ト供出ヲ求メル方面トノ間デ一ツ
  十分ナル協力ヲセラレルコトヲ御願ヒ申上
  ゲル次第デアリマス

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• 092・山田六郎

  ○山田(六)委員　大抵實情ハ御分リダラウ
  ト思ヒマスカラ、詳シク御話スル必要ハナ
  イト思ツタノデアリマスガ、ソンナ筈ガナ
  イ、來月、再來月アタリデ米ガナクナル
  筈ガナイト云フ意味ノ御話モアリマシタ
  カラ、一例ヲ擧ゲマスト、是ハ私共ノ村
  デスカラハツキリシテ居リマス、私ノ方ハ
  脫穀業者ヲ統制致シマシテ、ソレニ依ツ
  テ經營ヲ致シテ居ルノテアリマス、其ノ
  時分ニ一萬四千二百俵程ノ米ガ出來上ツタ、
  其ノ村ニ殘ツテ居ルモノハ私ノ國デハ
  ボツチヤラト云ツテ居リマスガ、米ト混
  ツテ居ル稻ノ穗ノ短イノヲ集メタモノ、
  サウ云フヤウナモノヲ整理シテ約千俵出來
  化、ソレヲ合セテ一萬五千二百俵ノモノデ
  アリマスガ、ソレニ供出トシテ割當テラレ
  タモノハ一萬三千三百五十俵デスカラ千八
  百五十俵シカソコニ殘ラナイ、所ガ農家以
  外ノモノヲ除イテ、農家ダケデ一箇月五百
  俵ノ米ガ要ルノデアリマスカラ、是ハ十二月、
  月、二月デ千五百俵デアリマスカラ、ソ
  レデ其ノ米ガ全部ナクナル譯デアリマス、
  其ノ外ニ米ガアルカト云ヘバ、是ハアリヤ
  ウガナイノデアリマス、今ノヤウニ脫穀其
  ノ他ヲ統制シテ居リマスカラ其ノ收穫收量
  ハ殆ド分ツテ居ル、デアリマスカラ若シ斯
  ウ云フモノニ對シテ、サウ云フヤウテ處置
  ヲ執ツテマデモ米ヲ集メルコトハ宜シクナ
  イノダ、國ノ食糧政策ニ適ハナイノダト云
  フコトニナリマスレバ、私ハ直グニ電信ヲ
  打チマシテ、米ノ供出ヲ見合セロ、斯ウ云
  フコトヲ言ツテヤツテ管理米ニ移スコトヲ
  阻止致シタイト思ヒマスガ、是ハ放ツテ置
  イテモ宜シウゴザイマスカ

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• 093・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　假ニ其ノ割合ヲ以テ全國
  ノ米ヲ供出サセルト云フコトニナルト、五
  千何百萬石、或ハ六千萬石、其ノ位ノ供出
  ニナル譯デアリマシテ、ドウモ能ク分ラヌ
  ノデアリマス、何カ計算違ヒガアルカ、
  其ノ邊ノコトモ私能ク分リマセヌ、併シ今
  此處へ來テ抽象的ナ話ヲ申上ゲタコトニ依
  ツテドウ斯ウト云フ譯ニモ參ラヌト思ヒマ
  ス、餘程ソレハ特殊ノ例ノヤウニ思フノデ
  アリマスガ、能ク縣ナリ或ハ地方事務所等
  ト村トノ間ニ御相談ニナツテ然ルベキヂヤ
  ナイカト思ヒマス、只今伺ヒマシタ所デハ
  了解ガ出來ナイヤウナ次第デアリマス

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• 094・山田六郎

  ○山田(六)委員　ソレナラ能ク分リマシタカ
  ラ、縣等ト打合セマシテ善後ノ處置ヲ考ヘ
  テ見マセウ、ソレハ私ノ村ノ例デアリマス
  ガ、縣下到ル處ニサウ云フ例ガアラウト思
  ツテ居リマスカラ、尙ホ一ツ御調査ノ上
  デ然ルベク御配慮願ヒタイト思フノデアリマ
  ス萬一是ハ一步ヲ誤リマスナラバ、由々
  シキ問題ガ起ル虞ガアルト私ハ信ジテ居リ
  マス
  其ノ次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、ヨク米
  作業者等ガ私共ニ言ツテ居ルノデアリマス
  ガ、先刻ドナタカノ質問ニ配給問題ガアリ
  マシタ、米作業者ニ對スル必要資材ノ配給
  ト他ノ業者ニ對スル必要資材ノ配給ト均一
  ニシテ欲シイ、斯ウ云フ要求デアリマス、
  是ハ不均一ニシマシテモ農家ニハ流レマス、
  例ヘバ「ゴム」底ノ足袋ノ如キモノ、或ハ其ノ
  他不要ナル酒モアレバ、衣料モアレバ色
  色ナモノガアル、例ヘバ炭礦業者デアルト
  カ、銅鐵等ノ鑛山デアルトカ、或ハ炭
  燒デアルト云フヤウナ各方面ニ特配ト云フ
  モノヲヤツテ居ラレルガ、是ハ重要物資デ、
  特ニ勞働者ニ働カセヨウト云フ意味デヤ
  ルノデアリマセウガ、之ヲ農家ガ見テ非常
  ニ不平ヲ竝ベテ居ル、到ル處ニ其ノ聲ヲ聞
  クノデアリマス、餘計ナモノヲ配給シテモ
  之ヲ物々交換ノ材料ニ使ツテ居テ、實際ニ
  ハ之ヲ農家ニ流シテ居ル、是ハ面白クナイ、
  多クノ農家ガ是デハ色々生活資材或ハ生產
  資材ヲ不平均ニ配給シテ農家ヲ虐待スルト
  云フヤウナ感ジヲ皆起スノデアリマスカラ、
  何トカ是ハ平均ニヤツテ欲シイト思フノデ
  アリマス、鑛山ニ與ヘルモノモ、木材業者、
  製炭業者ニ與ヘルモノモ、成ベク是ハ均一
  ニシテ戴キタイ、農家ガ山ヘ行ツテ石炭ヲ掘
  ツタリ、木材ヲ出シタリシテ居ルノデアリ
  マスカラ、皆同一ニ配給ヲシテ戴キタイ、
  一方ニ奬勵々々ト云フコトモ必要デアリマ
  セウガ、食糧ノ生產ニ付テ奬勵スルコトノ
  必要ナコトハ勿論デアリマスカラ、ソレニ
  ハ是非同一ノ待遇ヲ與ヘテ戴キタイノデア
  リマス、是ハ答辯ハ要リマセヌ、私ノ希望
  デアリマス
  ソレカラ纖維政策ト云フコトニ付テ政府
  ノ御所見ヲ御伺ヒシタイ、纖維類ハ〓糧ニ次
  グモノデアリマシテ、極メテ重要ナル問題
  デアルト思フノデアリマスガ、此ノ纖維ト
  云フモノニ付キマシテハ當業者モ一般社會
  ノ通念モ非常ニ食糧トハ違ツタ考ヘヲ持ツ
  テ居リマス、政府ノ纖維政策ニ對シテモ政
  策ガ鮮明デナイ、デアリマスカラ、現在國
  ハ此ノ纖維政策ト云フモノニ對シテドウ云
  フ考ヘヲ持ツテ居ルノデアルカト云フコト
  ニ付テ一般ハ疑問ヲ持ツテ居ル、斯ウ云フ
  節々ガ非常ニ顯著ナノデアリマス、之ニ付
  テハ先ヅ第一ニ十八年度ノ實績等モアリマ
  セウシ、十九年度ニ於ケル纖維政策ト云フ
  モノニ對シテ案モ出來テ居リマセウカラ
  是等ニ對シテ、詳細ナルコトヲ御聽キスル
  必要ハナイノデアリマスガ、大綱ヲ御示シ
  願ヒタイト思フノデアリマス

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• 095・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　或ハ詳細ニ付テハ纖維局
  長カラ申上ゲルカモ知レマセヌガ、一應大
  要ヲ申上ゲタイト思ヒマス、纖維モ或ハ軍
  需ト民需ノ關係ガアリマシテ、軍需ニ付テ
  モ色々ノ想定ノ下ニ色々ナ必要量ト云フモ
  ノモアリマセウガ、兎ニモ角ニモ現實ノ絕
  對必要量ト云フモノハ是ハ先以テ確保シナ
  ケレバナラヌ、是ハ當然デアリマス、民需
  ニ付テ申スナラバ、國民生活ノ面ニ於ケル
  所謂衣食住ノ三面ヲ考ヘルト、何ト云ツテ
  モ一日モ忽セニスベカラザルモノハ食ノ生
  活デアリマス、是ハ日々ノコトデアリマシ
  テ、ドウシテモ或ル必要量ト云フモノハ確
  保シナケレバナリマセヌ、一方住ノ關係ニ
  ナリマスト、是モ人口增加其ノ他ノ關係カ
  ラ、產業ノ移動トカト云フコトニ關聯シテ
  或ル程度ノモノハドウシテモ確保シナケレ
  バナラヌノデアリマスガ、是ハ簡單ニ住居
  ノ增設ト云フコトモ容易デナイノデ、御承
  知ノヤウナ關係ニナツテ居リマス、衣ノ生
  活ニ於キマシテモ、是ハ又日本人ノ生活ノ
  特質ト致シマシテ、割合ニ衣ノ生活ニハ彈
  力性ガアルヤウニ思ハレルノデアリマス、
  ソコデ衣ノ生活ハ勿論全然之ヲ無視シテ宜
  イ譯デハナイ、必要ナモノハ確保シナケレ
  バナリマセヌガ、其ノ最低ノ必要量ト云フ
  モノニハ非常ニ大キナ幅ノ彈力性ガアリマ
  シテ、國民自體ノ覺悟如何、戰局ノ段階如
  何ニ依リマシテハ相當ニ動カシ得ルモノノ
  ヤウニ思ハレテ居ルノデアリマス、サウ云
  フ觀點カラ致シマシテ、差當リ當面ノ衣ノ
  國民生活ニ付キマシテハ、或ル程度ノ壓縮
  ハ是ハ已ムヲ得ナイト思フノデアリマス、
  其ノ間ニ於キマシテ、申スマデモナク國民
  勤勞ノ確保、戰力增强ノ爲ニスル所ノ各種
  ノ生產ニ國民ガ邁進スルニ付テノ必要ナ衣
  料ノ確保ト云フモノハ、申スマデモナク先
  ヅ以テ必要ナコトデアリマス、ソレカラ又
  人口ノ增加等ノ觀點カラスル所ノ必要ナ衣
  料、姙產婦、或ハ小兒ト云フヤウナ者ニ對
  スル衣料ノ確保ト云フモノモ必要ダラウト
  思フノデアリマス、ソレカラ又斯ウ云フ段
  階ニナリマスト、補修ヲスルト云フコトガ
  我々ノ衣生活ノ上ニ於テ非常ニ大キク取上
  ゲテ行カナケレバナラナイノデアリマシテ、
  是ハ衣料全體ガ相當ニ、謂ハヾ過剩トモ云
  フベキ時カラ見マスト、其ノ補修用ノ資材
  ト云フモノノ需要ハ寧ロ增大シテ來ルトモ
  考ヘナケレバナラナイノデアリマシテ、サ
  ウ云フ觀點カラモヤハリ十分ナ考慮ヲナサ
  ナケレバナラヌ、其ノ他、或ハ申シ殘シガ
  アルヤウニ思ヒマスガ、一二ノ點カラ考ヘ
  テ、ソレ等ノ一般的ナ方針ヲ頭ニ置キマシ
  テ、サウシテ此ノ段階ニ卽應シタ衣料ノ生
  活ト云フモノヲ國民全體ガヤル必要ガアラ
  ウト思フノデアリマス、昨日モ發表シマシ
  タヤウナ譯デ、マダ內容ニ付テ申上ゲル段
  階ニマデハ至ツテ居リマセヌケレドモ、政
  府ト致シマシテハ、今年ノ國民衣料ニ付キ
  マシテハ左樣ナ觀點、其ノ他ノ點カラ色々
  ト準備ヲ進メテ居ルヤウナ譯デアリマス、
  要スルニ必要ナモノハ勿論之ヲ確保シナケ
  レバナラナイト思フノデアリマス

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• 096・山田六郎

  ○山田(六)委員　私ノ御聽キ致シタイノハ
  サウ云フ方面ニアラズシテ、大體計數的ニ、
  例ヘバ今日使ハレテ居ル棉、羊毛、或ハ人
  造絹絲、絹、木綿ト云フヤウナ方面ニ於テ、
  今後ノ纖維對策ニ付テドウ云フ需給ノ關係
  カラ此ノ問題ヲ處理スルカト云フコトニ付
  テノ御意見ヲ御聽キシタイノデアリマス、
  實ハ一昨日モ〓水中將ノ意見ヲ私聽イテ參
  ツタノデアリマスガ、此ノ軍部ノ人々ニ言
  ハシメマスレバ、今日ノ日本ノ纖維ノ事情
  ト云フモノハ非常ナ危機ニ立ツテ居ル、此
  ノ儘ニシテ漫然ト行クナラバ、是ハ恐ルベ
  キ時代ガ來ル、ソコデ例ヘバ桑ノ皮ニシテ
  モ二千萬貫位ノモノハドウシテモ確保シナ
  ケレバナラヌ、繭モ五千三百萬貫ト云フ生
  產目標ヲ政府ハ作ツタガ、是ハ何トカシテ
  一億貫位ニ增大シテ貰ハナケレバ困ルノダ、
  是ハモウ此ノ前途兎ニ角民需方面ニ於テモ
  御話ノ通リデアリマスルガ、軍隊ノ方面ニ
  於テモ種々ナル方面ニ使ハナケレバナラナ
  イシ、今日麻ノ如キモノハ、麻トシテ使フ
  方面ガ非常ニ多イノデ、僅カニ衣料方面ニ
  ハ屑ヲ利用シテ居ル位ノモノデアル、木綿
  ノ見込ミノ薄イコトハ申スマデモナイ、デ
  スカラドウシテモ纖維ト云フモノニ對シテ
  ハ一般ノ人ノ認識ヲ改メテ、全國ノ人ガ本當
  ニ是ハ容易ナラヌコトデアルト云フヤウナ新
  タナル觀點ニ立ツテ此ノ問題ニ努力シテ貰
  ハナケレバナラナイ、斯ウ云フヤウナコトヲ
  繰返シテ盛ンニ說カレテ居ツタノデアリマス、
  陸軍デ之ヲ主張シ、更ニ海軍ハ海軍デ、絹ニ
  對シマシテモ、或ハ桑ノ皮等ニ對シマシテモ、非
  常ナ厖大ナル品物ヲ此ノ際供給シテ貰ハナ
  カツタラバ、是ハ容易ナラヌコトデアルト
  云フコトヲ言ツテ居ラレル、陸海軍ハサウ
  云フコトヲ各所ニ於テ機會アル度每ニ言ツ
  テ居ル、農商省ハ養蠶ノ方ハ五千三百萬貫
  デ宜シイト云フヤウナ方針ヲ立テヽ居ル、
  同一政府デアリナガラ方針ガ大部違ツテ居
  ルト云フ風ニ見エルモノデスカラ、是ハ同
  一政府ナル以上ハ、軍部、農商省ナドハ御一
  〓ニ同ジヤウナ計畫ヲ御立テニナルベキデ
  ハナイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘマスガ、此
  ノ間ニ非常ナ差ガアルヤウニ考ヘルノデア
  リマス、先刻モ御答辯ニナリマシタ中ニモ、
  此ノ桑園ノ減少ト云フノハ食糧ノ爲ニ壓縮
  サレタノデアルト云フヤウナ意味ノ御答ヘ
  ガアリマシタガ、若シ軍部ノ人々ノ唱ヘル
  如キ纖維事情ナリトセバ、食糧方面ト竝ビ
  立ツテ必要ナ資材ニナラナケレバナラヌ、
  然ルニ一方ノ方ハ壓縮サレヽバ減反モスル
  シ、生產ノ減少モ忍ブ、食糧ヲ增產スル爲
  ニハ何モノモナイ、斯ウ云フヤウナコトデ
  ハ雙方ノ間ノ意見ガドウモ不一致ノヤウニ
  考ヘラレマスノデ、若シマダ軍部ガサウ云
  フコトヲ言ツテ居ルナラバ、此ノ軍部ノ主張
  ト農商省ノ御考ヘトヲ一致セシメル必要ガ
  アルノデハナイカ、是ハ政府ノ威信ニモ相
  當影響スルノデハナイカト云フヤウナコト
  ガ考ヘラレルノデスガ、其ノ點ニ付テノ御
  意見ヲ承リタイト思ヒマス

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• 097・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　速記ヲ止メテ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=97

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• 098・深澤吉平

  ○深澤委員長　速記ヲ止メテ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=98

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• 099・深澤吉平

  ○深澤委員長　速記ヲ始メテ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=99

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• 100・山田六郎

  ○山田(六)委員　ソレデハ方面ヲ變ヘマシ
  テ御伺ヒ致スコトニ致シマセウ、近來纖維
  統制會ト云フモノガ內容ガ改マリマシテ非
  常ニ强化致シタイト云フコトデアリマスガ、
  其ノ中ニ蠶絲統制株式會社ト云フモノハ含
  マレテ居ナイノデアリマスガ、ドウ云フ關係
  デ此ノ蠶絲業ガ纖維統制會ノ中ニ入ツテ居ナ
  イノデアリマセウカ、其ノ點ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=100

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• 101・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハマア絕對的ナ問題ヂ
  ヤアリマセヌノデ、詰リ政府ニ於テ如何樣
  ニデモ方針ガ立テラレル譯デアリマス、私
  共實際的ニ考ヘマシテ、從來カラノ各種纖
  維業ノ關係、ソレカラ蠶絲業ノ關係等カラ
  見マシテ、今差當リハ少クトモ纖維統制會
  ト蠶絲統制會社トノ關係ハ密接ナル連繫ヲ
  保ツテ行クノガ最モ此ノ際實際的效果ヲ擧
  ゲルノニハ適當デアラウト考ヘテ居ル譯デ
  アリマス、尤モ此ノ前纖維統制會ノ統合前
  ノ人絹絹統制會ニハ慥カ蠶絲統制會社ガ客
  員トシテ關係ヲ持ツト云フコトニ當時ナツ
  テ居リマシタ、是ハ或ハ實現シナカツタカ
  知レマセヌガ、サウ云フコトニナツテ居リ
  マシタ、今後モ或ハサウ云フヤウナ關係ハ
  結付ケヲスルノガ適當カトモ思ツテ居リマ
  スケレドモ、差當リ兎ニ角少クトモ其ノ程
  度ニ於テ連繫ヲ緊密ニシテ行クト云フノガ
  最モ實際的デアラウト云フヤウニ考ヘテ居
  ルノデアリマス

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• 102・山田六郎

  ○山田(六)委員　今日ノ所デハ養蠶ノ事業
  等ハ、絹織物デアルトカ云フヤウナ觀念ヲ
  以テ取扱フベキモノデナク、國ノ纖維政策
  ト始終一ツニ睨ンデ〓究サルベキデアル、
  隨テ統制會等ニハ當然入ラナケレバナラヌ
  モノデアルト云フ風ニ私共ハ考ヘテ居ツタ
  モノデアリマスガ、之ヲ此ノ埓外ニ置カレ
  ルト云フヤウナコトハ、重要纖維以外ノモ
  ノトシテ取扱ハレルノデハナイカト云フヤ
  ウナ感モアルノデアリマスカラ、之ヲ全纖維
  ノ中ニ一括シテ、總テノ計畫ガ樹立サルベキデ
  アルト云フ風ニ考ヘテ御聽キシタノデアリマス
  其ノ次ニ御聽キ致シタイコトハ、先
  刻加藤君カラ御質疑ニナツタ問題デアリ
  マスガ、繭ノ生產ノ年々減少スルコトハ實ニ
  ヒドイモノデアリマス、最近一千萬貫位ヅ
  減ツテ參リマスカラ、此ノ調子デ行キマスト
  來年ハ四千萬貫位ニ減少スルノデハナイカ
  ト云フ風ニ考ヘラレルノデアリマス、多分其
  ノ位ニナルデセウ、供シ是ハドウシテモサ
  ウ云フ風ニ減ラシテハ相成ラヌ、生產ヲ維
  持シナケレバナラヌト云フ政府ノ强イ御考
  ヘガアツタナラバ、其ノ維持シ得ル政策ヲ
  御立テ下サラナケレバ相成ラヌト思フノデ
  アリマス、然ルニ最近ニ於ケル桑園ニ對
  スル御計畫等ハ全ク減產ニ拍車ヲ加ヘルト
  云フガ如ク我々ハ考ヘザルヲ得ナイノデア
  リマス、本年ハ兎ニ角一萬町步ノ桑園ヲ改
  植スルトカ、七千町步ノ桑園ヲ整理シテ、
  或ハ田トシ或ハ畑トシテ食糧ノ增產ニ充テ
  ル、其ノ外ニ三千町步ノ桑ノ植付ヲ奬勵致
  シテ差引四千町歩ノ不足ヲ來スト云フコト
  ニナルノデアリマス、尤モ是等ハ昭和十八、
  十九年度二箇年ノ計畫デアツテ、來年ニナ
  リマスレバ過不足ガナイ、整理シタダケノ
  桑園ハ殖エルト云フ御計畫モアルト云フコ
  トヲ聞イテ居リマスガ、兎ニ角本年ハ四千
  町步ダケノ桑園ヲ減ラス、此ノ減ラス必要
  ガ何處ニアルカ、又減ラスト云フコトヲ發
  表スルト、サモナクトモ年々一千萬貫以上
  ノ減收ヲ見テ居ルノニ、是ハ愈〓、前途望ミナ
  シト云フヤウナ感ジヲ養蠶家ニ與ヘマシテ、
  養蠶家ハ益〓桑園ヲ減ラシテシマフト云フコ
  トニ相成リ、減產ヲ奬勵スルヤウナ結果ニ
  ナルノデハナイカト云フコトヲ私共ハ非常
  ニ憂慮スルノデアリマス
  ソレカラ今一ツハ、現ニ昭和十七年、十八
  年、此ノ二箇年內ニデモ、全國ヘ奬勵モ何
  モセズニ養蠶家ノ拔取リマシタ桑園ハ少ク
  トモ一萬町步以上ニ達シテ居ルト私共ハ思ツテ
  居ル、ドンナコトヲシテモ一萬町步以上ノ桑園
  ガ拔取ツテアリノデアリマスカラサウ、云フ拔取
  ツタ桑園ヲ計算ニ入レズニ、更ニ其ノ上ニ新タ
  ニ此ノ七千町步ノ桑園ヲ整理スルト云フ御
  見込デアリマスカ、此ノ桑園計畫ハ各府縣
  ニ之ヲ配當サレタヤウデアリマスガ、其ノ
  配當サレタ府縣デ昭和十八年若シクハ十七
  年等ニ養蠶家ガ澤山ノ桑園ヲ整理シテシマ
  ツタ所デハ、假令整理ヲ配當サレマシテモ、
  旣ニ整理濟ミナリトシテ之ヲ放任シテシマツ
  テモ宜シイカ、併シソレハ先ニ養蠶家ガ勝
  手ニ拔イタノダカラ、ソレハ勝手ニ拔カシ
  テ置ケ、割當テタモノハ新タニソレヲ拔クノ
  ダ、斯ウ云フコトニナルデセウカ、御聽キ致
  シタイノデアリマス、若シサウナリトシマツ
  タナラバ、是ハ恐ルベキ結果ヲ來スノデハ
  ナイカト思フノデアリマス、併シ養蠶ト云フ
  モノニ對シテ今後其ノ增產ノ必要ナシト云
  フコトニナレバ、是ハ別問題デアル、併シ
  ナガラドウシテモ生產ヲ確保スル必要アリ
  ト致シマシタナラバ、旣ニ整理シテシマツ
  タモノニ對シテ、更ニ其ノ上ニ整理畑ヲ割
  當テテ整理ヲスル必要ガ何處ニアルカ、斯
  ウ云フコトガ非常ニ懸念サレルノデアリマ
  ス、若シ養蠶家ガ旣ニ整理ヲシマシテモ、
  更ニ其ノ上ニ今度ノ割當ノモノヲ整理スベ
  シト云フヤウナコトノ御計ヒニナリマスレ
  バ、是ハ恐ルベキ結果ヲ來スノデアリマシ
  テ、私ハ其ノ點ヲ心配スルノデアリマス
  ガ、其ノ點ニ付テ御考ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=102

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• 103・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　ドウモ只今ノ御質問ノ御
  趣旨カ能ク分リマセヌノデ、御答ヘガ出來
  マセヌ、惡シカラズ御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=103

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• 104・山田六郎

  ○山田(六)委員　蠶絲統制株式會社ト今度
  出來マシタ蠶絲製造會社ノ關係ニ付テ御尋
  ネシタイノデアリマスガ、巷間傳フル所ニ
  依リマスト、最近出來マシタ蠶絲製造會社
  ト蠶絲統制株式會社ト云フモノガ合併セ
  ラレルトカ云フヤウナ噂ヲヨク聞クノデア
  リマスケレドモ、サウ云フヤウナ御計畫ガ
  農商省內ニオアリニナルカドウカト云フコ
  トヲ御聽キシタイト思ヒマス
  ソレカラ今一ツハ生產ノ確保ト云フ上ニ
  於テ色々ナ隘路ガアツテ、生產ノ確保ガ困
  難デアル、斯ウ思フノデアリマス、其ノ隘
  路ニハ色々アリマセウ、蠶絲業ノ前途ニ光
  明ヲ認メナイト云フヤウナコトモ一ツデア
  リマセウ、又價格ガ引合ハヌト云フヤウナ
  コトモ一ツデアリ、勞力ノ足リナイト云フ
  コトモ一ツデアル、色々ノ關係モアリマス
  ガ、其ノ中ノ一ツニ此ノ最近出來マシタ蠶
  絲製造株式會社ナルモノヲ非常ニ恐怖ヲ抱
  イテ見テ居ル向ガアルノデアリマス、ソレ
  ハドウ云フ譯カト云フト、如何ナル會社ト
  雖モ、何百萬圓、何千萬圓ト云フ資金ヲ擁
  シテ會社經營ヲヤツテ居ルノデアリマスケ
  レドモ、此ノ會社ハ創立スルト同時ニ、而モ
  何千萬、或ハ一億ニ近イ「マイナス」ヲ持ツ
  テ經營スルト云フ會社ナノデアリマス、創立
  ト同時ニ「マイナス」ヲ持ツテ經營スル會社
  ト云フモノハ、是ハ日本ニハ餘リ例ガ少イト
  思フノデアリマス、此ノ會社ハサウ云フ內
  容ニナツテ居ルヤウニ噂サレテ居ルノデア
  リマス、若シ此ノ會社ガサウ云フ內容デア
  ルトスレバ、其ノ內容ハ何人ノ手ニ依ツテ
  補塡サレルカト云フ問題デアリマス、是ハ會
  社ノ株主自身ガ此ノ會社ノ「マイナス」ヲ總
  テ負擔スルカ、或ハ政府、元ノ農林省ガ斡
  旋努力シテ造リ上ゲタ會社デアリマスカラ、
  國家ガ其ノ損失ヲ補塡スベキモノナリトシ
  テ、此ノ會社ノ損失ヲ整理スル方針カ、或
  ハ此ノ損失ハ生產者タル所ノ養蠶家、或
  纖維ノ需要者ノ犠牲ニ依ツテ此ノ缺陷ヲ何
  トカサセナケレバナラヌト云フ風ニモ見ラ
  レルノデアリマスケレドモ、是等ニ對シマ
  シテ政府ハ、此ノ蠶絲製造會社ハ兎ニ角農林
  省ガ作リ上ゲ、育テ上ゲタモノデアリマス、
  之ヲ此ノ儘ニ放任スルコトハ出來ナイト思
  ヒマスガ、是等ニ對シテドウ云フ御處置ヲ
  御執リニナル御考ヘデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=104

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• 105・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　蠶絲統制會社ト製造會社
  ノ合併計畫ト云フヤウナモノハ、現在別段
  ゴザイマセヌ
  次ニ生產ノ隘路ニ付テ、最後ノ點ダケ御
  答へ申上ゲマスガ、此ノ蠶絲製造會
  社ガ成立ノ經過ニ於テ共助金ノ負擔ヲ
  致シテ居リマス、是ガ懸念ノ爲ニ云々ト云
  フ御話デゴザイマシタガ、サウ云フ懸念ヲ
  持ツテ居ルト致シマスルト、洵ニ遺憾デア
  リマス、此ノ蠶絲製造會社ニ付キマシテハ、
  是ハ別段政府ガ之ニ對シテ特別ナル援助ヲ
  シテ、其ノ負債ヲ整理シテヤラウト云フコ
  トハ考ヘテ居リマセヌ、又其ノコトアルガ
  爲ニ、特別ナ、例ヘバ需要者トカ、他ノ方
  面ニ負擔サセテ、ソレニ依ツテドウ斯ウシ
  ヨウト云フコトモ考へテ居リマセヌ、是ハ
  要スルニ多數ノ會社、工場ガ合同致シマシテ、
  比較的少イ設備ヲ以テ合理的ナ生產ヲ遂ゲ
  テ行クト云フコトト、イマ一ツハ、兎ニ角
  サウ云フ經過ヲ以テ出來タモノデアリマス
  カラ、例ヘバ利潤ノ配當等ニ付テモ株主ガ
  十分自肅シマシテ、專ラ差當リハ內容ノ整
  備ニ努メルト云フヤウナ經營方法ヲ執ルコ
  トニ依ツテ、今後漸次進ンデ行カセルヤウ
  ニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマ
  シテ、特ニ此ノ製造會社ノ特殊ノ內容其ノ
  モノヲ理由ニシマシテ、例ヘバ價格ノ引上
  ヲヤルトカ何トカ云フコトハ、絕對ニ考ヘ
  テ居リマセヌ、其ノコトダケヲ御諒承願マ
  ス

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• 106・山田六郎

  ○山田(六)委員　モウ一ツ御伺ヒ致シタイ
  コトハ、蠶絲ノ生產ノ確保ヲシナケレ
  バナラヌト云フ御話デアリマシテ、今ノ桑
  園ノ御計畫ヲサレタ、併シ此ノ桑園ノ計畫ハ
  實際ハ實行出來ナイ、斯ウ云フ風ニ私共
  ハ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレハドウ
  シテ實行出來ナイカト言フト、植ヱヨウ
  トシテモ桑苗ノ生產ガナイノデアリマス、
  此ノ價格政策ト云フモノハ、總テノ物資ヲ
  滅ボシタリ、盛ンニシタリスル非常ナ恐ル
  ベキ力ガアルノデアリマス、農林省ノ今日
  マデノ價格政策ハ、急ニ桑苗ノ生產ヲ撲滅
  シテシマフ實ニ顯著ナ實例デアリマシテ、
  私ノ縣ナドカラ言ヒマスト、六年前ニハ千
  三百萬ノ桑苗ガ出テ居リマシタガ、昨年
  ノ如キハ僅カニ二百萬、ノ桑苗ニナツテシマ
  ツタ、桑苗ノ產地ノ栃木、愛知等モ皆其ノ
  例ニ做ツテ、五分ノ一或ハ六分ノ一ト云フ
  風ニ減少シテシマツテ居リマス、是ハ此ノ
  儘ニシテ置イテハ桑苗ノ供給ト云フモノガ
  全クナクナツテシマフ、ソレデアリマスカ
  ラ、是ハ價格ニ於テ餘リニ低廉ナル結果デ
  アルカラ、此ノ價格ヲ引直シテ欲シイト云
  フコトハ、旣ニ農林省ニ要求致シマシテ、
  二年モ三年モ、年々續ケテ居リマスガ、今
  日尙ホ之ヲ實行サレナイ、物ニ依リマシテハ
  二錢、高クテモ三錢臺ノ桑苗ヲ今日尙ホ賣買
  シテ居ルヤウナ狀態デアリマス、是デハ茄
  子ヤ胡瓜ノ値段ヨリモ安イノデアリマスカラ、
  是ハ誰モ作ル者ガナイノガ當然デアリマス、
  一方ニ於テ價格政策ニ依ツテ桑ノ生產ヲ壓
  縮シテ、一方ニ於テ大ナル反別ノ改植ヲヤ
  ルト云フコトデアリマスカラ、是ハ非常ナ
  無理ナ御計畫ダト思フノデアリマス、此ノ
  計畫ガ果シテ實行出來マセウカ、一寸御聽
  キ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=106

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• 107・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　價格ニ對スル批評ハ、私
  共ノ立場トシテ姑ク控ヘマスガ、桑苗其ノ
  モノノ供給ガ十分ナリヤ否ヤト云フコトニ
  付キマシテハ、私共モ必ズシモ十分トハ考
  ヘマセヌ、殊ニ改植ヲヤラウト云フ此ノ際
  トシマシテハ、極メテ窮屈デアル、併シ方
  法ハナイデハナイノデ、ヤレルト云フ風ニ
  見テ居ルノデアリマス、尙ホ今後桑園ノ能
  率ヲ高メマシテ、產繭ノ確保ヲ圖ルト云フ
  コトノ一ツノ手段ト致シマシテハ、一口ニ
  桑苗ト申シマスガ、御承知ノヤウナ色々ナ
  品種ガアリマスノデ、其ノ中ノ優良ナル桑
  苗ノ養蠶組合等ニ依ル自給ヲ圖ルト云フコ
  トヲ今後一ツ大イニ進メテ參リタイト云フ
  コトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、地方ニ於
  ケル蠶業試驗場等ニ於テ優良ナル品種ノ育
  成ヲシテ之ヲ配付致シマスト共ニ、配付ヲ
  受ケタル養蠶家ノ團體ニ於テ之ヲ共同育成
  ヲシテ自給ヲ圖ル、サウシテ桑園ノ中ノ立
  枯レ等ガ起リマシタ場合ニ簡便ニソレヲ補
  塡シテ行クト云フコトニ依ツテ、桑園ノ老
  廢ヲ防ギマシテ、反當ノ生產效率ヲ高メテ
  行ク、斯ウ云フコトヲ致サウト云フ趣旨ヲ
  以チマシテ、今囘ノ追加豫算ニモ其ノ關係
  ノ新タナル事業ヲ組ンデ居ルヤウナ譯デア
  リマス、兎ニ角山田委員ノ御指摘ノ大體ノ
  狀況ト云フモノハ洵ニ御話ノ通リデアリマ
  シテ、此此點洵ニ遺憾デアリマスガ、今後
  ニ對シマシテハ、今申シマシタヤウナコト
  ヲ產繭確保ノ全般計畫ノ一部ト致シマシテ、
  サウ云フヤウナ方法ヲ以チマシテ、先ヅ苗
  ノ確保ト云フコトモ併セテ實行致シテ參リ
  タイト考ヘテ居リマス、價格ノコトダケハ
  一寸申上ゲルコトヲ控ヘサセテ戴キタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=107

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• 108・山田六郎

  ○山田(六)委員　尙ホ此ノ機會ニ一言申上
  ゲテ御願ヒシテ置キタイト思ヒマス、私ノ
  縣ナドデモ桑苗ハ此ノ調子デ行ケバ殆ド滅
  ビテシマヒマス、桑苗ヲ滅ボシテシマフト
  云フコトハ蠶絲業ノ爲ニ洵ニ遺憾ニ堪ヘナ
  イ、昨年カラ農林省ニ約四囘、私ハ此ノ價
  格ノ更正ニ付テ交渉致シタノデアリマスガ、
  是ハ如何ニモサウデアル、ドウシテモ直サ
  ナケレバイカヌ、最モ近イ將來ニ是ハ直ス
  積リデアルト云フ御話ダケヲ伺ヒマシテ、
  ツイ一週間バカリ前ニモ、ドウシテモ直サ
  ナケレバイカヌト云フ御話デ、ドウモ御話
  ハ直チニ實行スルガ如キ御話デアリマスガ、
  ソレガ三箇月ニナリ、五箇月ニナリ、一年
  ニナルト云フヤウナ傾向ガアルコトハ洵ニ
  遺憾千萬デアリマス、戰時中デアリマスカ
  ラ、斯ウ云フ問題ハ成ルベク早ク御繰上ゲ
  ヲ御願ヒ致シタイト思フノデアリマス
  ソレカラ先刻加藤君カラモ御質疑ガアツ
  タノデスガ、御答辯ガハツキリ聞エナカツ
  タモノデスカラ、重ネテ御伺ヒ致シマスガ、
  巷間傳フル所ニ依ルト、例ノ指導員ノ問題
  デアリマス、アノ指導員ガ年々問題ニナル
  ノデアリマス、昨年モ一昨年モ繰返サレタ
  問題デアリマスガ、曩ニハ全養聯ノ系統組合デ
  指導員ヲ置キ、本年ニナリマスレバ無論農
  業會ニ屬シテ此ノ指導員ヲ置カレル譯デア
  ルト私共ハ信ジテ居ルノデアリマス、併シソ
  レガハツキリシナイ、昨年モ一昨年モ本年
  モ亦同ジコトヲ繰返シテ居ルノデアリマス、
  此ノ繰返スノハ何ノ爲メカト言フト、農業
  指導員ノ方ハ政府デ助成金ヲ與ヘ、戰時手
  當トカ、〓糧增產ノ特別手當ト力更ニ又本
  年ハ一箇月十圓ヅツノ增給ヲスルトカ云フ
  工合ニ、農商省ノ手デ以テ是等ノ給與ノ補給
  ヲヤツテ居ラレル、今ノ養蠶指導員ニ對シ
  テハ政府ガ三分ノ一、アト三分ノ二程ハ統
  制會社ノ手カラ出テ居ルト云フノガ、此ノ間
  題ヲ年々繰返サナケレバナラヌ原因ヲ作ル、
  斯ウ云フ風ニ思フノデアリマス、所ガ一萬
  人モ居ル所ノ指導員ハ何レモ、我々ノ前途
  ハドウナルダラウ、或ハ今度出來タ蠶絲製
  造會社ノ支配ニ屬スルノカ、或ハ日本蠶絲
  統制會社ノ手ニ屬スルノカ、或ハ今マデ通
  リニ養蠶業ノ名ヲ變ヘタ所ノ農業會ニ屬ス
  ルノカ、ドウモ年々ハツキリシナイデ困ル
  ト云フノデ、浮腰ニナルト云フコトハ養蠶
  指導ノ上ニ於テ非常ニ惡影響ヲ與ヘルト云
  フコトヲ私共ハ非常ニ憂慮スルノデアリマ
  ス、デアリマスカラ是ハ本年ドウナルカハ
  ツキリシタコトヲ御聽キスルト同時ニ、今
  後一旦決メタモノハ年々ソレヲ動カサナイ
  ヤウニシテ、暫クハ斯ウ云フ方針デ進ムト
  云フコトニ御願ヒヲ致スコトガ出來レバ非
  常ニ宜シイト思フノデアリマスガ、現在今
  日ニ至ルマデ尙ホ此ノ指導員ヲドウスルカ
  ト云フヤウナ問題ガ未解決ニナツテ居ルガ
  如クニ考ヘルノデアリマス、旣ニ一月デア
  リマスカラ、モウ農業會ト致シテモ此ノ十
  九年度ノ豫算ハ直グニ作ラナケレバナラヌ
  時期ニ到達シテ居ルノデアリマス、此ノ時
  期ニ到達シテ居ツテ、此ノ指導員ガドウナ
  ルカト云フヤウナコトガハツキリ致サナイ
  ト云フコトデアツテハ豫算ノ作リ樣モナイ
  ト云フヤウナ情勢ニナツテ居ルノデアリマ
  スカラ、此ノ點ヲ今一度ハツキリ御話ヲ聽
  キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=108

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• 109・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　養蠶ノ指導員ノ問題ハ先
  程ハツキリ申上ゲタト思フノデアリマスガ、
  要スルニ從來ノ養蠶業組合ノ仕事ハ農業會
  ガ引繼イデ行カレルノデアリマスカラ、農
  業會ニ變ツタガ故ヲ以テサウ云フ事業ノ關
  係ガ變ルベキモノデハナイ、殊ニ農業會ニ
  何カ養蠶業組合ノ仕事ガ丁度變ル刹那ニ脇
  ヘ外レタリスルヤウナコトニナルト如何ニ
  モ統合ノ實ガ擧ラナイヤウナコトニモナル
  ノデアリマシテ、殊更左樣ナコトハヤルベ
  キデハナイト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
  やくう尙ホ將來ニ亙ツテドウダラウカト云
  フ御話デアリマシテ、其ノ點ニ付テノ御懸
  念御尤モデゴザイマスルガ、一體外ノ指導
  員ニ付テ同ジヤウナ問題ハ起ラナイノニ、
  始終養蠶ノ指導員ニ付テ起ルト云フコトニ
  付テハ、私ハ一面ニ於テ此ノ指導員ト云フ
  モノノ最近數年間ノ養蠶關係ニ付テノ立場
  ト云フモノハ非常ニ同情スルノデアリマス
  ガ、段々先程カラモ御話ノアリマシタヤウ
  ニ、此ノ數年間ト云フモノハ洵ニ養蠶關係
  ハダラシナク減產ニ減產ヲ辿ツテ居ル、是
  ハ一般ノ情勢ガ一ツニハソコニアツタノデ
  アリマシテ、其ノ間假ニ一部ノ熱心ナ指導
  員ガ一生懸命ヤリマシテモ斯ウ云フ大勢ニ
  ハ恐ラク抗シ得ラレナカツタデアラウト思
  フノデアリマス、唯サウ云フ狀況ノ下ニ於
  キマシテ、ドウモ減產バカリヤル指導員ヲ
  折角置イテモ效果ハナク、是ハ養蠶組合ナ
  ドニ居ルカラナンデト云フヤウナコトデ、
  色々ナ方面ガ何トカ玆デ產繭確保ヲシタイ、
  頽勢ヲ挽囘シタイト云フ熱意ノ體リ或ハ統
  制會社デ一ツヤツタラモウ少シ效果ガ擧ル
  カモ知レナイ、寧ロ製糸家自ラ指導員ヲ買
  ツテ出テ特約組合ノ指導ヲヤツタラ產繭ノ
  確保ガ期セラレルノデハナイダラウカト云
  フヤウナ色々ナ意見ガ玆ニ起ツテ來ルノデ
  アラウト思フノデアリマス、ソコデ今年當
  リハ下ル所マデ下ツテシマヒマシテ、政府
  トシテ亦一般ニモ此ノ際產繭ノ確保ヲシナ
  ケレバナラヌト云フ一ツノ大キナ機運ガ新
  シク動イテ來タ年ダト思フノデアリマスガ、
  此ノ際指導員諸君モ此ノ氣勢ノ上ニ乘ツテ
  奮鬭シテ貰ヒマシタナラバマダ〓〓ソレハ
  勿論色々手順ガ十分付イテ居ラヌコトモア
  リマスカ皆樣ノ御懸念ニナリマスルヤウニ
  或ハ減ルカモ知レヌ、局長ハ五千三百萬貫
  何トカ確保スルト申シマシタガ、無論其ノ
  意氣込デヤラナケレバナラヌカモ知レマセ
  ヌガ、或ハ減ルト云フコトモナイトモ限ラ
  ヌノデアリマス、ソコノ所ヲ一ツ官民其ノ
  他各方面デ力ヲ合ハサレマシテ、此ノ際努
  力致シマスナラバ相當ノ效果ヲ擧ゲラレル
  ノデハナイカ、批評スルナラバコヽノ所暫
  ク指導員ノ仕事ノ結果ヲ見マシテカラ批評
  シテモ遲クハナイト思フノデアリマス、唯
  御承知ノヤウニ以前製絲家ガ特約組員ニ於
  テ指導致シマシテ、之ニハ一面色々ナ弊害
  モ傳ヘラレテハ居リマスケレドモ、又同時
  ニ相當徹底シタ指導ヲヤツタコトガアルト
  云フコトト比較シテ言フノデアリマスガ、
  事情ガマルデ違ツタ狀況ノ下ニ於テ比較サ
  レタノデハ現在ノ指導員諸君モ氣ノ毒ナ譯
  デアリマス、サウ云フコトヲ考ヘマスナラ
  バ將來ドンナニ能率ガ擧ラナクテモ問題ニ
  ナラナイト云フ譯ニハ行カナイト思ヒマス
  ケレドモ、今年ハ兎モ角ト致シマシテ、將
  來ニ亙リマシテサウ輕々ニ批判スベキモノ
  ヂヤナイヤウニ私ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=109

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• 110・山田六郎

  ○山田(六)委員　只今ノ說明デハツキリシ
  テ安心シマシタ、尙ホ此ノ際二、三御聽キ
  シタイノデアリマスガ、ソレハ此ノ生產ノ
  減少スルノニハ色々ナ原因ガアリマセウ、
  併シ今日マデノ最大ノ原因ハ價格ノ安カツ
  タコト、所謂六十掛ト云フモノヲ長ク維持
  シテ參リマシタ所ニ非常ニ無理ガアツタト
  思フノデアリマス、何ヲ作ルニモ六十掛ト
  云フヤウナ價格デハ比較上餘リ安イ、ソレ
  ガ減產ヲ續ケテ來タ最大ノ原因ダラウト思
  フノデアリマス、丁度桑苗ノ價格ガ桑苗ノ
  生產ヲ減退サセタト同ジヤウナコトニモナ
  ルト思フノデアリマス、ソコデ此ノ生產ノ
  隘路ニナツテ居ルモノハ-先ヅ最モ大事
  ナモノハ指導員デアリマスガ、此ノ指導員
  ノ待遇ノ改善ヲヤラナケレバナラナイ、
  方農業ノ方ニハ待遇ノ改善ヲ著々サレテ居
  リマスケレドモ、養蠶業ノ指導員ニハソレ
  ガナイ、之ヲ是非御考慮ト御願ヒ致シタイ
  ト思フノデアリマス
  イマ一ツノ問題ハ、他ノ食糧ヤ何カニ付テハ
  作付統制令ト云フモノガアリマシテ、ソレニ
  依ツテ食糧方面ノモノハ保護サレテ居リマス
  ケレドモ、桑園ニ對シマシテハ地方長官ノ許
  可ヲ得ナカツタナラバ新ニ植付ガ出來ナイ、
  斯ウ云フ制度ニナツテ居ルノデアリマス、是
  ハ制度ヲ作ツテモ作ラナクテモ影響ガナイ
  ノデス、新ニ容易ニ植ヱ付ケラレマセヌカラ
  影響ガナイデスケレドモ、是ガ他ノ果樹園ト
  同ジヤウニ禁止ノ御取扱ヲ受ケルト云フコト
  ガ繭ノ生產ニ相當ナル影響ヲ與ヘテ居ルト
  思フノデアリマス、政府ハ桑ノ木ヲ新規ニ植
  ヱルコトヲ禁示シタ、許可ガナケレバ植ヱ
  ルコトガ出來ナイト云フ感想ヲ農民一般ニ
  與ヘテ置クト云フコトハ生產ノ上ニ非常ニ
  惡影響ヲ與ヘルモノト考ヘマス、イマ一ツハ、
  食糧ヲ作ル田畑ヲ減ラス、或ハ削減スルニ
  ハ許可ヲ受ケネバナラヌ、桑ノ木ヲ植ヱル
  コトヲ禁止サレテ居リマスケレドモ、桑園
  ヲ廢止スルノハ自由ニ出來ルコトニナツテ
  居ルト云フコトデアリマスカラ、其ノ生產
  ノ確保ヲスル時分ニハ、ヤハリ他ノ食糧ト
  同ジヤウニ一旦桑園トシタモノハ廢止出來
  ナイ、廢止スル際ニハヤハリ地方長官ノ許
  可ヲ受ケルト云フ制度ニシテ戴ケレバ非
  常ニ效果ガアルト思ヒマス、此ノ點ニ付テ
  一方桑園或ハ蠶絲業ト云フモノニ對シテ
  政府ガ種々ナル冷遇ヲ與ヘ、御法度ノ品物
  ヲ取扱フガ如キ法律ノ制限ヲ與ヘテ置ク、
  斯ウ云フノデアリマスカラ生產ノ上ニ非
  常ニ影響ヲ及ボスコト大ナルモノガアル、
  斯ウ云フ風ニ考ヘラレルノデアリマス
  次ノ問題ハ價格ノ問題デアリマスガ、此
  ノ價格モ今日昨年ヨリ十五掛上ツテ、七十五
  掛デアリマス、是ハ全國ノ平均十四匁ト見レ
  バ十貫百五圓ト云フ價格ニナツテ居リマス
  ガ、是ハ他ノ生產品カラ言ヒマスト非常ニ
  安イデアラウト思ヒマス、併シ出來得ベク
  ンバ此ノ價格ヲ引上ゲルコトハ最モ生產確
  保ノ上ニ大ナル效果ガアリマス、是非引上
  ゲテ欲シイト思ヒマス、若モ引上ゲルコト
  ガ出來ナイトスレバ、米ノ如キ色々生產奬
  勵ノ方法トカ何カヲ玆ニ講ジテ戴イタナラ
  バ、生產確保ノ上ニ大キナ働キガアラウト
  思ヒマス、ソレカラ繭ノ檢定、是ハ長イ間
  叫バレテ居リマスガ、之ヲ簡易化スル切歩
  檢定ニシテシマフト云フヤウナコトガ行ハ
  レテ、繭ヲ供出シテ間モナク金デモ貰ヘル
  ト云フコトデアツタナラバ、是モ大層宜イ
  ト思ヒマスガ、生產者ノ心理ニ影響ヲ及ボ
  スコトハ、繭ヲ出シテ少クトモ三箇月位過
  ギナケレバ金ガ手ニ入ラヌ、現在繭ヲ出シ
  タ際ニ、其ノ幾分ヲ貰ヒ、最後ニ又其ノ幾
  分ヲ貫フト云フヤウナ方法ニナツテ居リマ
  スガ是ナドモ檢定方法ヲ切步檢定等ニ直
  シテ戴イテ、ドン〓〓金ヲ支拂フト云フコ
  トニナリマスト非常ニ違フダラウト思ヒマ
  ス、イマ一ツハ蠶種ノ問題デアリマスガ、
  蠶種ハドウシテモ强健ニシテ極メテ飼育シ
  易イ種類ヲ御選ビ下サツタナラバ、非常ニ
  生產ノ上ニ好影響ヲ得ル、昨年ノ晩秋蠶ノ
  如キハ、到ル處ニ違蠶ガ續出シタモノデア
  リマスカラ、斯ウ云フ危險ナコトデハ到底
  養蠶ハ出來ナイト云フヤウナ感想ヲ一般養
  蠶家ニ與ヘタト云フ事實ハ極メテ顯著デア
  リマス、是等ノ各項ニ對シテ是非御配慮ヲ
  願ツテ、一日モ早ク此ノ改善ヲ御願ヒシタ
  イト思ヒマス、此ノ點ニ對シテノ御所見ヲ
  伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=110

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• 111・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　作付制限ノ點ニ關シマシ
  テハ、現下ノ蠶絲事情等ヲ參照致シマシテ
  十分考究致シタイト存ジマス、價格ノ點ニ
  付キマシテハ色々御意見モアラウトハ存ジ
  マスガ、昨年價格決定ヲ致シマシタ當時色
  色調査致シタ點カラ申シマシテモ、今日之
  ヲ引上グベキモノトハ私共考ヘラレナイノ
  デアリマス、檢定ノコトニ付キマシテハ
  落下金其ノ他ノ高級生絲ノ關係モアリマス
  シ、將來十分〓究ハ致シマスケレドモ、當
  面現行ノヤウナコトデ進メテ參リタイト存
  ジマス、種ニ付キマシテハ用途其ノ他色々
  アリマスケレドモ、御話ノヤウニ努メテ强
  健ナ良イ品種ヲ供給スルヤウニ致シタイト
  考ヘテ居リマス

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• 112・山田六郎

  ○山田(六)委員　生產ヲ確保スル上ニ於テ
  イマ一ツ御意見ヲ御聽キ致シタイ、最近養
  蠶實行組合ニ對シテ、市町村農業會ニ協力
  スベキ旨ノ命令ガアツタサウデアリマスガ、
  是ハ勿論斯樣ニシテ戴カナケレバナラヌト
  思ヒマス、ソコデ繭ノ責任供出ト云フカ
  サウ云フコトニ依ツテ責任ヲ持ツテドレダ
  ケノ生產ヲセシメルト云フ一ツノ案ヲ作ツ
  テ戴キ、全國ノ桑園生產量等ニ依ツテ實行
  スルコトニ致シタナラバ、或ル程度產額ヲ
  確保スル上ニ於テ效果ガアラウト考ヘラレ
  マス、大體各町村農會ニ於テ本年ハ特ニ綜
  合農產物ノ生產ヲ決定スルト云フ計畫ガア
  ルヤニ聞イテ居リマスガ、サウ云フコトニ
  ナルト、其ノ町村ノ生產物、食糧其ノ他ノ
  農產物ノ中ニ、繭ノ生產量ヲ限定シ、綜合
  生產ノ中ニ繭ヲ入レルコトヲ御示シ下サイ
  マシテ、繭ノ生產確保ノ上ニ役立テルヤウ
  ニ致シタイト思ヒマスガ、其ノ點ニ付テノ
  御意見ヲ承リタイ

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• 113・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　其ノ點ニ付キマシテハ何
  レカト申シマスト積極的ニ考究シテ見タイ
  ト考ヘテ居リマス、今的確ナコトヲ申上ゲ
  ル段階ニハ至ツテ居リマセヌガ、能ク考ヘ
  テ見タイト思ヒマス

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• 114・山田六郎

  ○山田(六)委員　先刻御尋ネ致シマシタ統
  制會社、蠶絲製造會社ノ問題デアリマスガ、
  昨年春ノ議會當時蠶絲統制會社、蠶絲製造
  會社ガ出來タ時、前農林大臣ハ、全國ヲ眞
  ニ一致出來ルナラバ問題ナイガ、此ノ會社
  以外ニ製絲モアリ種屋モアル、是等ニ對シ
  テ政府ハドウ云フ態度ヲ執ラレルカト云フ
  質問ニ對シテ是ハ極メテ公平無私デアル、
  强イテ合同シロト云フコトハ一言モ政府ト
  シテ言ハナイ、合同シタクナイ者ハ合同シ
  ナクテ宜シイ、合同シタイ者ハシロ、所謂
  來ルモノハ選バズ隨テ此ノ會社設立後ニ當
  ツテ此ノ二ツノ會社ニ對シテハ決シテ偏頗
  ナ取扱ヒハシナイ、全ク平等ノ取扱ヒヲス
  ルノダト云フハツキリシタ御話ガアリマシ
  ク、然ルニ最近ニ至リマシテ、此ノ製造會
  社ノ方ヘ參加シナイ製絲家ノ要望ニ對シテ
  ハ中々其ノ要望ヲ入レナイデ、出來ルダケ
  製造會社ノ利益ヲ擁護スルト云フヤウナコ
  トヲ現實ニオヤリニナツテ居ルガ如クニ感
  ゼラレルノデアリマス、ソレハ色々共助金
  ナドヲ負擔シテ居ルカラ、製造會社ハ容易
  デナイカラ擁護シナケレバナラヌト云フ話
  デアル、是等ハ私考ヘレバ如何ニモ其ノ通
  リデアルガ、例ヘバ長纖維ガ年々生產ガ少
  クナツテ短纖維ガ非常ニ多クナツタ、、又繭
  ノ性質等ニ依ツテ短纖維ノ方ガ宜イノダト
  云フ際ニハ短纖維ニ移リタイト云フ希望モ
  アリマセウ、斯ウナツテ來ルト消費事情等
  ニ於テモ種々轉換スルコトモアリマセウ
  シ、操業其ノ他色々ナ問題ニ關シテ要求ノ
  起ルコトハ當然デアリマスガ、是ハ前ノ農
  林大臣ハ全ク其ノ間ニ何等差別ヲ與ヘナ
  イ、本當ニ神ノ如キ取扱ヲスルト云フ聲明
  ト、今日此ノ大ナル共助金等ヲ負擔致シテ居
  ル會社デアルカラ、之ニ對シテハ相當擁護
  シナケレバナラヌト言ハレル、此ノ二ツノ
  間ニ距離ガアルヤウニ考ヘラレマスガ、是
  ハ今後ドウ云フ御方針ニ依ツテ此ノ二ツヲ
  御取扱ニナリマスカ

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• 115・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　蠶絲製造會社ノ設立ニ付
  キマシテハ當時多數業界ノ方々ノ協議會
  ニ於キマシテ、全員ノ最後ニハ一致シマシ
  タ所デ設立シタノデアリマシテ、其ノ後ノ
  之ニ對スル取扱ハ、協議ノ上ニ於テ定メラ
  レタ所ノ方針ヲ一貫致シテ居ルノデアリマ
  ス、平等ト言ヒマシテモ、詰リアノ製造會
  社ハ斯ウ云フ趣旨ヲ以テ斯ウ云フ仕事ヲヤ
  ラセルベク作ルノダ、强制ハシナイガ、成
  ベク入ルヤウニ、併シ入ラナクテモ宜シイ
  ト云フヤウナコトデアノ會社ヲ作ツタノデ
  アリマス、ソレデ斯ウ云フ風ニヤラセルノ
  ダト云フコトヲ當時業界ニ全般的ニ御約束
  シタコトハ、其ノ後モ引續キ其ノ通リ遂行
  致シテ居ル譯デアリマス、唯細カイ點ニ多
  少取扱ノ誤リト云フモノガ若シアリマスレ
  バ、ソレハ直チニ改メテ行ク譯デアリマス
  ガ、大體ノ趣旨ガ共助金ヲ負擔シテ可哀想
  ダカラドウスルトカ、可哀想デナイカラド
  ウスルト云フノデハナイノデアリマシテ、
  當時アレヲ設立スル時ニ製絲業界全般ニ諮
  リマシテ、御承知ノヤウニ定マツタ所ニ依
  ツテ之ヲ一貫シテ續ケテ居ルノデアリマ
  ス、左樣ニ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 116・山田六郎

  ○山田(六)委員　是ハ繭ノ價格ニ關係ノア
  ル問題デアリマスガ、繭ノ取扱ヤ蠶絲業ノ
  中間ニ色々ナ團體トカ機關トカ云フモノガ
  相當多イヤウニ思ハレルノデアリマスガ、
  是等ヲ悉ク整理統制シテシマヘバ、其ノ間
  ニ價格ニ餘裕ガ生ズルト云フヤウナコトモ
  考ヘラレルノデアリマス、例ヘバ繭ヲ集荷
  スルニ對シマシテモ、種々ナル商業團體ガ
  アリ、或ハ其ノ中ニ又小サナ取扱團體ガア
  ルト云フヤウニ、色々ナ煩雜ナ團體ガアル
  ヤウデアリマスノデ、之ヲ悉ク統制シテシ
  マヒマシテ、例ヘバ繭ヲ集荷スルニハ悉ク
  ガ町村農業會ノ手ニ依ツテ之ヲ供出スル、
  普通ノ繭デモ玉繭デモ屑繭デモ悉ク供出スル、
  サウシテ。是等ノ團體カラ消費機關ニ渡スト
  云フヤウナコトモ一ツノ方法デアリマス、
  サウ云フコトガ今後行ハレマスト、其ノ間
  ニ餘計ナモノガナクナリマスルカラ、價格
  ニ餘裕ヲ生ジテ來ルト云フヤウナ便宜モア
  ルト云フ風ニモ考ヘラレルノデアリマスガ、
  是等ニ付テドウ云フ風ニ御考ヘニナルカト
  云フコトガ一ツデアリマス、ソレカラ今一
  ツハ全國的ト思フガ、私共ノ縣デハ本年ノ
  春繭ハ完全ニ乾燥ガ出來ナイ、或ル地方デ
  ハ發蛾シ、或ハ蛆ヲ出スト云フコトハ是ハ
  已ムヲ得ナイノダト云フ風ニ今日見テ居ル
  ノデアリマス、是ハ實ニ勿體ナイコトデア
  リマスガ、サウ云フ狀態デアリマスカラ、
  之ニ對シテハドウシテモ乾燥ダケハ無事ニ
  ナシ得ル御配慮ヲ是非御願ヒシナケレバナ
  ラヌト思ヒマスガ、是等ニ對シマシテハド
  ウ云フ御對策ガオアリニナリマスルカ、御
  聽キ致シタイト思ヒマス

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• 117・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　取扱機關ヲ簡易ニスルト
  云フコトハ、同時ニ其ノ段階ニ付テノ一種
  ノ全面的企業整備ヲ伴フコトニナル譯デア
  リマシテ、サウ云フ場合ニハ又自ラ補償金
  ノヤウナモノモ出來マスカラ、餘程何カ財
  源ガアリマセヌト、サウ云フモノヲ廢止シ
  テモ直グ價格ノ上ニ影響スルト云フコトハ
  困難デアルト思ヒマス、細カイ點ニ付テ最
  近ノ狀況ハ餘リ審カニ致シマセヌガ、尙ホ
  能ク纖維局ノ方デモ考究ヲ致サセマスガ、
  左樣ナ關係ニナラウト思ヒマス
  尙ホ乾繭ノ實施ニ付キマシテハ、十分乾
  燥用ノ燃料其ノ他ノ確保、ソレカラ一面ニ
  於テハ養蠶ニ付テ斯ウ云フ現況ニ卽應スル
  ヤウナ養蠶ノヤリ方ヲ指導シテ戴ク、是
  農業會ノ方デ指導ナサル上ニ於キマシテモ、
  能ク全國ノ狀況ヲ勘察サレマシテ、養蠶ノ
  團體バカリデナク、アトノ受繼グ方ノ狀況
  モ餘程考慮シテ、サウ云フ養蠶ノ指導ヲサ
  レルコトヲ此ノ際トシテハ望マシイト思ヒ
  さく、ト申シマスノハ、是ハ軍需關係トモ
  關聯スルノデアリマスガ、乾燥裝置ガ色々
  軍關係ノ轉用等ノコトガアルノデアリマシ
  テ、我々モ或ル場合ニハ非常ニ辛イ立場ニ
  立ツノデアリマスガ、又同時ニ此ノ決戰ヲ
  切拔ケル爲ノ必要カラ、或ル程度ノ犧牲モ
  已ムヲ得ナイヤウナ譯デアリマス、此ノ點
  ニ付キマシテハ我々モ注意致シタイト思ヒ
  マスガ、養蠶ノ方面ニ於テモ注意ヲシテ戴
  キ、彼此レ致シマシテ齟齬ノナイヤウニ努
  メテ參リタイト思ヒマス

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• 118・山田六郎

  ○山田(六)委員　今日ノ所デ桑ノ皮ハ纖維
  中ニ於テ數量ニ於テハ殆ド王座ヲ占メテ居
  ルガ如クニ考ヘラレルノデアリマシテ、之
  ヲ今後指導ヲ十分ニスレバマダ〓〓生產ノ
  餘地ガアルノデハナイカト云フ風ニ考ヘラ
  レルノデアリマスルガ、之ニ對シテ特ニ政
  府ガ生產ヲ助成スルコトニ付テ御考ヘハア
  リマセヌカ
  今一ツ之ヲ取扱フニハヤハリ農業團體ニ
  取扱ハシメルコトガ當然ナリト考ヘラレマ
  スガ、其ノ點ニ付テノ御考へガオアリニナ
  ルカト云フコトデアリマス
  今一ツハ、農家ニ桑ノ皮ヲ本當ニ多ク出
  サセルト云フ場合ニ最モ效果的ダト思フノ
  ハ養蠶家ノ勞働服ヲ作リ、ソレヲ養蠶家
  ニ幾分ナリトモ還元シテヤルト云フコト
  デ、若シ是ガ出來レバ生產ニ一層ノ努力ヲ
  スルダラウト思ヒマス、セメテ學童ノ服ダ
  ケデモ宜シイノデアリマスガ、サウ云フコ
  トヲ是非御實行願ヒタイ、サウシテ此ノ生
  產ヲ十分ニサシタイト考ヘテ居リマスガ、
  之ニ對スル御意見ヲ伺ヒタイ

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• 119・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　桑ノ皮ノ利用ニ付キマシ
  テハ、我々モ現ニ致シテモ居リマスルシ、
  將來ニ亙リマシテハ大キナ期待ヲ持ツテ居
  リマス、取扱ハ農業團體ガ扱フト云フコト
  モ適當デアラウト存ジマス、差當リ是ガ奬
  勵ニ付テハ一ツノ運動的ナコトデ進メテ參
  リタイト考ヘテ居ルノデアリマス
  尙ホ作業着ノ還元ト云フヤウナコトニ付
  キマシテハ、實ハ桑皮ヲ利用スルト云フコ
  トガ始マリマシタノハ、慥カ三四年前ダツタ
  ト思ヒマスガ、當時私纖維局關係ニ居リマ
  シテ、還元ノ計ラヒヲシタヤウナ譯デアリ
  NY、數量ハドノ程度ニナツテ居ルカ存ジ
  マセヌガ、今後モ引續キ其ノヤウナ措置ヲ
  致シタイト考ヘマス

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• 120・山田六郎

  ○山田(六)委員　私ハ是デ宜シウゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=120

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• 121・加藤知正

  ○加藤(知)委員　先刻カラ指導員ニ付テ山
  田君カラ色々御尋ネニナツタノデスガ、實
  ハ私モ腑ニ落チナイ點ガ澤山アリマス、ソ
  コデハツキリシテ置キタイノハ、養蠶部ノ
  指導員、作業部ノ指導員、或ハ農會部ノ指
  導員ト云フヤウナ風ニ、總テ區別シテ、手
  當給料ト云フヤウナモノヲ其ノ部〓〓ニ於
  テ心配ヲシテ之ヲ賄フヤウニスル建前デア
  ルノカ、モウ旣ニ農業會ニ各團體ガ統合シ
  テ、渾然一體トナツタ以上ハ、サウ云フ差
  別ハ撤廢致シマシテ、ソレニ要スル所ノ指
  導員養成其ノ他ノ費用ト云フモノハ、農業
  會其ノモノガ心配ヲシテ之ヲ賄フ、若シ足
  リナイ場合ニ於テハ政府ガ之ニ助成金ヲ交
  付シテ、サウシテ賄ハセル、斯ウ云フ風ナ
  建前ニナツテ居ルノカ、ソコヲハツキリト
  伺ツテ置キマスト、先刻私共ガ心配致シマ
  シタ例ヘバ蠶絲統制會社カラ今マデ出シテ
  居ツタ三百八十萬圓ノオ金ノ如キハ、何處
  ヘソレガ行カウトモ別ニ心配ナイコトデア
  リマスケレドモ、若シソレガサウデナク
  テ、各部々々ガ要スル其ノ指導員養成員ノ
  給料其ノ他ヲ賄ツテ心配シテ行カナケレバ
  ナラヌト云フコトニナツテ來ルト、今ノ三
  百八十萬圓ト云フコトガ非常ナ問題ニナル
  ト思フノデス、サウ云フ所ヲ一ツ此ノ場合
  ハツキリト承ツテ置キタイト思フノデゴザ
  イマスガ、ドウゾ御願ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=121

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• 122・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハ私ハ特ニ豫メ〓究シ
  タ問題デハゴザイマセヌガ、例ヘバ農商省
  トシマシテハ、地方廳ニ對スル補助ノ關係
  ニシマシテモ、或ハ更ニ地方廳或ハ中央ノ
  農業會等ヲ通シマシテ末端ノ農業會ニ行
  キマス補助金等ニシマシテモ、從來カラモ
  或ル程度サウ云フ風ニ致シテ居リマスガ、
  今後ハ愈〓一ツ任セテ使ツテ貰ハウト云フヤ
  ウナ考ヘヲ持ツテ居ルノデアリマス、左樣
  ナ觀點カラ申シマスルト、是ハ大體御任セ
  スルト云フコトニナル譯デアリマスガ、唯
  農業會トシテハ統合シテ匆々ノコトデアリ
  マスカラ、農業會自體ニ於キマシテ、サウ
  簡單ニ各部ヲ引括メテヤルト云フコトガ實
  際上困難ダト云フヤウナ場合モアルノデハ
  ナイカト思ヒマス、デアリマスカラ、差當
  リノ所ハヤハリ恐ラク-唯サウシナケレ
  バナラヌト云フコトヲ申スノデハアリマセ
  又、多分サウナルノデハナイカト云フコト
  ヲ申スノデアリマスガ、農業會自體ニ於テ、
  或ル程度部ヲ分ケマシテ運營ヲスルト云フ
  ヤウナコトガ實際行ハレルノデハナイカト
  思フノデアリマス、我々ト致シマシテハ是
  非サウシナケレバナラヌトカ何トカ云フコ
  トハ考ヘテ居リマセヌ、ソレダケ申上ゲテ
  置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=122

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• 123・加藤知正

  ○加藤(知)委員　ドウモ其ノ點ガハツキリ
  シナイノデ洵ニ困ルノデアリマスガ、是ハ
  私ノ希望デアリマス、各團體ガモウ一〓ニ
  ナツタ以上ハ、ソレハモウ農業團體自體ガ
  總テ施設費用共ニ切盛リスベキモノトシマ
  シテ、サウシテ足ラザルモノノ費用ハ政府
  ガ助成スル、斯ウ云フ建前ニシテ戴キタイ、
  サウシナイト先程山田君ノ御述ベニナツタ
  ヤウナ技術者、指導者ノ待遇ガ色々變ツテ
  來ル關係上、不安ノ念ヲ持ツテ、安ンジテ
  其ノ任ニ當ルコトガ出來ナイト云フ結果ニ
  行クノデアリマスカラ、是ハ極メテ大切ナ
  問題ダト思フ、農業團體ハ所謂指導機關ト
  シテ大イニ働カネバナラナイ、其ノ技術員
  指導員ガ不安ノ念ニ驅ラレテ居ル、是デハ
  中々實績ヲ擧ゲルコトハ容易デナイト思ヒ
  マスカラ、其ノ點ハ特ニ御檢討ノ上、我々
  ノ希望通リシテ戴キタイト云フコトヲ御願
  ヒ致シテ置キタイト思ヒマス
  尙ホ委員長ニ御希望申上ゲタイガ、此ノ
  食糧問題竝ニ衣料問題ニ付テハ、實ハ祕密
  會ヲ開イテ戴イテ、十分ニ大臣ト檢討シテ
  見タイト思フコトガ多々アル、カルガ故ニ委
  員長カラ特ニ其ノ點ヲ御心配下サレマシテ、
  大臣ト親シク膝ヲ突合セテ祕密會デ十分檢
  討スル機會ヲ御作リ下サルヤウ特ニ御願ヒ
  スル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=123

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• 124・深澤吉平

  ○深澤委員長　御意見能ク承ツテ置キマス、
  本日ハ是ニテ散會致シマス、明日ハ午前十
  時ヨリ開會ノ豫定デアリマス
  午後六時十八分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00419440201&spkNum=124

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