第84回帝国議会　衆議院　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案外一件委員会　第5号　昭和19年2月2日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十九年二月二日（水曜日）午前十時二十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　深澤吉平君
  　理事　小笠原八十美君　理事　杉山元治郎君
  　　理事　成島勇君　理事　野村嘉久馬君
  　　理事　森口淳三君
  　　　　赤城宗徳君　　　五十嵐吉藏君
  　　　　岡田啓治郎君　　　長内健榮君
  　　　　加藤知正君　　　金子彦太郎君
  　　　　北勝太郎君　　　小平權一君
  　　　　河野一郎君　　　田中源君
  　　　　高岡大輔君　　　津崎尚武君
  　　　　恒松於莵二君　　　中越義幸君
  　　　　野田正昇君　　　平野力三君
  　　　　二田是儀君　　　本多鋼治君
  　　　　松原五百藏君　　　前川正一君
  　　　　三宅正一君　　　村上國吉君
  　　　　森川仙太君　　　山口馬城次君
  　　　　山田六郎君　　　吉田賢一君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　内務省警保局長　町村金五君
  　　　防空總本部總務局長　上田誠一君
  　　　　　　　　農商次官　石黒武重君
  　　　　　農商省總務局長　重政誠之君
  　　　　　農商省農政局長　石井英之助君
  　　　　　農商省山林局長　西村彰一君
  　　　　　農商省水産局長　井出正孝君
  　　　　　農商省纖維局長　山口喬君
  　　　農商省生活物資局長　難波理平君
  　　　　　農商省物價局長　梶原茂嘉君
  　　　　　　　馬政局長官　岸良一君
  　　　　　食糧管理局長官　湯河元威君
  　　　　　　　農商書記官　笹山茂太郎君
  　　　　　軍需省電力局長　塩原時三郎君
  　　　　　企業整備本部長　難波經一君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　　農林書記官　森肆郎君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農林中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　絲價安定施設法廢止及蠶絲業統制法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）

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• 001・深澤吉平

  ○深澤委員長　是ヨリ開議致シマス-高
  岡君

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• 002・高岡大輔

  ○高岡委員　食糧增產ニ付テノ論議ハ大分
  進メラレテ參ツタノデアリマスガ、食糧增
  產ト云ヒマシテモ結局色々ノ面カラ考ヘテ
  行カナケレバナラヌノデアリマスガ、其ノ
  一ツトシテ、勞力ノ不足ト云フモノヲ何ト
  カ補ツテ行ク、結局是ハ機械化ニ依ルト云
  フコトガ一ツノ行キ方デアラウト考ヘマス、
  所デ最近ハ各種各方面ノ企業整備ト云フモノ
  ガ大分ナサレテ居ルノデアリマスガ、此ノ
  企業整備ニ依ツテ浮イタトデモ申シマスカ、
  不要ニナリマシタ「モーター」ヲ始メトシテ、
  其ノ他ノ規模ノ餘リ大キクナイ機械類ガ大
  分餘ツテ參リマシタ、此ノ機械ヲ一ツ農村
  ニ振向ケルト云フコトガ、私今日ノ食糧增
  產ノ問題ニ對シテ相當重要ナコトデハナカ
  ラウカ、斯樣ニ考ヘザルヲ得ナイノデアリ
  さく、例ヘテ申シマスト云フト、纖維工場ト
  云ヒマスカ、紡績工場ニアリマス二、三馬
  力ノ「モーター」、而モ之ニハ御承知ノヤウ
  ニ「ベルト」ガ大分アリマスノデ、サウシタ
  「ベルト」ノ多クアル斯ウシタ小馬力ノ「モー
  ター」ヲ農村ニ移スコトガ必要デアル、去
  年ノ秋ノ早場米ノ供出ヲシマス場合モ、
  勞力ガ足リナクテ大分農民ガ困ツテ居ツタ
  ヤウナ向モアリマスノデ、斯ウシタ機械ヲ
  農村ニ移シマスト、サウ云フ場合ニ非常ニ
  勞力ノ不足ガ補ハレテ行クノデハナカラウ
  カ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、サウ申上
  ゲマスト云フト、今日ハ飛行機ヲ造ラナクテ
  ハナラヌ、彈丸ヲ造ラナクテハイケナイノ
  デ、農村ノ米ナドト云フモノノ調製ハ何ト
  カ夜ヲ日ニ次イデモ人間ノ力ヲ以テヤレ、
  斯ウ仰シヤルカモ知レマセヌケレドモ、サ
  ウシタ機械類ヲ農業用ニ使ヒマスコトハ一
  年ノ中僅カナ期間デアリマスノデ、其ノ殘
  ツタ期間ト云ヒマスカ、其ノ機械ノ遊ンデ
  居リマス期間ハ、之ヲ武器ノ部分品ヲ造
  ル工場ニシタラドウカ、斯ウ言ヒマスコト
  ハ、今盛ンニ勤勞報國隊トカ其ノ他ニ依ツ
  テ農村ノ勞力ガ都市ノ重工業地帶ニ吸引サ
  レテ參リマスケレドモ、是ハ或ル限度ガア
  リマス、ドウシテモ一面ニ於テ食糧ヲ確保
  シテ行クト云フニハ、農村ニハ如何ニ年老
  イタトハ云ヒナガラ、オ爺サン、オ婆サン
  モアリ、又動員ニ掛ラナイ年若イ子供モア
  リマス、國民學校ニ通ツテ居リマス學徒ノ
  如キモ斯ウシタ機械ガ農村部落ニアリマス
  しく、簡單ナ武器ノ部分品ト云フモノハ斯
  ウシタモノノ手ニ依ツテ相當製造シ得ル、
  斯樣ニ考ヘルノデアリマス、一億戰鬪配置
  ニ就ケト云フヤウナコトガ言ハレテ居リマ
  ス今日、日本ノ農村マデモ擧ゲテ兵器廠ニ
  スルト云フコトヲ考ヘナケレバナラナイノ
  デハナカラウカト思ヒマス、サウ申シマスト、
  農村ノ人達ハ素人デ間ニ合ハヌ、斯ウ仰シ
  ヤルカモ知レマセヌケレドモ、素人ト玄人
  ノ區別ハ私ハ斯樣ニ考へテ居リマス、卽チ
  素人ト玄人トハドウ云フモノガ素人デア
  リ、ドウ云フモノガ玄人デアルカト言ヒマ
  スト、今日ノヤウナ此ノ戰時下ニ於テハ
  權利義務ヲ徒ラニ主張スルヤウナモノハ素
  人デアリ、眞ニ總テヲ天皇ニ歸一シ奉ルト
  云フ、國家ニ誠心誠意魂ヲ打込ンデ御奉公
  スルト云フモノハ、短時日ノ間ニ玄人ニナ
  リ得ルト私ハ思フ、農民ノ眞劍チ今日ノ姿
  ヲ見マシテ、假ニサウシタ武器ノ部分品ヲ
  造リマスコトガ、農民ノ仕事カラハ非常ニ
  懸ケ離レテ居ルヤウニ一應ハ考ヘラレマセ
  ウケレドモ、農民ノ今日ノ眞劍ナル姿ヲ見
  マスト、是等ノモノハ短時日ノ間ニ、一人
  前ノ職工ト云ヒマスカ、武器ノ部分品ヲ造
  ルダケノ腕ハ出來ルモノダト云フヤウニ
  私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付
  テ一ツ政府當局ノ御所見ヲ伺ヒタイ

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• 003・塩原時三郎

  ○鹽原政府委員　私ハ軍需省ノ電力局長デ
  ゴザイマスカラ、農村ノ機械化ト云フコトノ
  一部分ダケ御答ヘ致シマス、只今ノ御話
  ハ、私共全面的ニ同意スル所デゴザイマシ
  テ、全ク御話ノヤウナ考ヘデ今モ致シテ居
  ルノデアリマス、今日農村ノ勞力ガ甚ダ逼
  迫シテ、食糧增產ニモ差支ヘノアルト云フ
  今日デアリマスカラ、一方ニ於テ電力モ中
  中不足デアリ、又資材モ決シテ不足デナイ
  トハ言ヘナイ時期デアリマスケレドモ、出
  來ルダケ農村ヲ電氣化致シマシテ、サウシ
  テ或ハ耕作ニ、或ハ灌漑ニ、或ハ脫穀其ノ
  他ニ電力ヲ使ヒマシテ、農村ノ勞力ノ不足
  ヲ補ツテ生產ヲ上ゲルト云フコトヲ積極的
  ニ指導ヲシテ居ルノデアリマス、殊ニ今御
  話ノアリマシタヤウニ、色々ナ所デ企業整
  備ニ依リマシテ小型ノ「モーター」ナドガ出テ
  參リマスガ、是ハ農村ノ電化ニハ至極役ニ
  立ツモノデアリマシテ、出來ルダケ之ヲ利
  用シ、且又移動的ナ指導班ノヤウナモノヲ
  作リマシテ、積極的ニ農村ニ行ツテ指導シ
  テ、出來ルダケ之ヲ廣ク行ハセルヤウニ指
  導致シテ居リマス

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• 004・高岡大輔

  ○高岡委員　之ニ附加ヘテ一寸御尋ネ致シ
  マスガ、現在手持ノ農村部落ニアリマスル
  小型「モーター」其ノ他ノ機械類ハ企業整備
  ト云フヤウナ形デ御取上ゲニナルヤウナコ
  トガアリマセウカドウカ

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• 005・難波經一

  ○難波(經)政府委員　私ハ企業整備本部長
  デアリマス、「モーター」ノ轉用ニ付テ御答
  ヘ致シマス、現在マデ企業整備ニ依ツテ出
  テ參リマシタ「モーター」ノ總數ハ、實ハ工
  場ノ附屬設備ト見ラレル「モーター」ガ相當
  多數ゴザイマシテ、是ハ工場ヲ轉用スル上
  ニ離スベカラザルモノデゴザイマスノデ、
  是等ノ轉用ハ今工場ト同時ニ轉用スル方ニ
  考ヘテ居リマシテ、別ニ離シテ轉用ハ出來
  マセヌガ、ソレ以外ノ工場ノ固有設備ト目
  サレル以外ニ相當量ノ「モーター」ガゴザイ
  Vマ、正確ナ總數ハ一寸手許ニ數字ガゴザ
  イマセヌガ大約-臺ニ上ルト思ツテ居リ
  マス、其ノ-臺ノ中現在マデ農商省ノ
  關係ニ御渡シスルト決ツテ居ルノハ、旣
  -臺ゴザイマス、是等ハ全部ガ農村電化
  ニ向ケラレルトハ言ハレナイカモ知レマセ
  ヌガ、殆ドソレハ農村電化或ハ農地開發ト
  カ云フ方面ニ振向ケラレルモノト考ヘテ居
  リマス、尙ホ其ノ-臺ノモノヲモツト轉
  用シタラドウカト云フ御希望モゴザイマセ
  ウケレドモ、實ハ此ノ企業整備ニ依ツテ生
  ズル「モーター」ハ全部陸軍ニ寄越セ、全
  部海軍ニ寄越セ、或ハ又軍需方面ニ寄越セ
  ト云フノデ、何萬臺アツテモ實ハ十分トハ
  申セナイノデアリマス、ソレデ現在マデノ
  轉用ノ實際ノ運用ノ狀況ヲ申上ゲマスト、陸
  海軍需、之ヲ一定ノ比率ニ依ツテ分配シ
  テ居ルヤウナ狀況デゴザイマス、其ノ軍需
  方面ノ中カラ、更ニ又割イテ之ヲ農商省ノ
  方ニ御分ケシテ居ルノデアリマス、現在マ
  デニ-臺以上ヲ振向ケテ居リマスノハ、
  或ハ絕對數トシテハ少イカモ知レマセヌケ
  レドモ、我々トシテハ特ニ農村電化其ノ他
  ニ注目致シマシテ、全部寄越セト云フヤウ
  ナ各方面カラノ御要求ヲ、特ニサウ云フ率
  デ以テ分ケ、又其ノ率デ分ケタモノノ一
  般生產擴充方面カラ、更ニ之ヲ農商省ノ方
  ヘ分ケテ居ルヤウナ狀況デアリマシテ、我
  我トシテハ先程電力局長ノ申サレタヤウニ、
  農村電化其ノ他電力ノ有效活用ニ付キマシ
  テハ、十分考慮致シテ居ル積リデゴザイマ
  ス、ソレカラ今後農村方面ニアル27
  ター」ヲ、企業整備ニ依ツテ徵發スルノデハ
  ナイカト云フ御話ガゴザイマシタガ、所謂今
  囘ノ戰力增强企業整備ノ重點部門ハ、第
  種工業部門デゴザイマス、其ノ第一種工業
  部門ノ業種中、農村ニ散在シテ居ルヤウナ
  業種モゴザイマスケレドモ、是ハ又工業部
  門ト全部稱シテモ宜イト思ヒマス、ソレカ
  ラ第三種工業部門ニ付テ申シマシテモ、特
  ニ農村カラ取上ゲルヤウナ業種ハサウナイ
  ト私ハ考ヘテ居リマス、尙ホ第三種工業部
  門ニ付テハ、現在マデ二十三業種程整備ヲ
  示達シテ居リマスガ、尙ホ今後モ必要ニ應
  ジテハ出テ來ルカモ知レマセヌ、ソレ等ノ
  ふモノガ偶〓農村ニ散在シテ居ツテ、農村カラ
  徵發スルヤウナ風ニ御考ヘニナル場合ガナ
  イトハ限リマセヌケレドモ、唯農村カラ
  「モーター」其ノ他ノ遊休施設ヲ取上ゲルト
  云フヤウナコトハ、今マデノ所絕對ニナイ
  ト私ハ考ヘテ居リマス

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• 006・高岡大輔

  ○高岡委員　今ノ御答辯デ能ク分リマシタ
  ガ、今後ト雖モ私ハ相當ノ小型「モーターL
  ガマダ出ルノデハナイカト云フ氣ガシマス、
  ソレハ例ヘテ言ヒマスト、街ニアルオ菓子
  屋サン、コンナモノハ裏ノ方ニ一寸飴ヲ
  作ル極ク小型ノ「モーター」ガアリマシテ、
  之ヲ軍需工場ニスル程ノ大キナ建物デモア
  リマセヌ、サウシタモノガ時代ノ逼迫感ニ
  連レマシテ、相當今後モ出テ來ルト思ヒマ
  スノデ、十分政府當局ノ御配慮ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス、ソレカラ附加ヘテ御願ヒシタ
  イノデアリマスガ、ドウヤツタラサウ云フ
  機械ヲ手ニ入レ得ルノカ、農村ガ貰ヒ得ル
  ノカ、其ノ處置ニ付キマシテハ軍需省カラ
  地方廳へ、地方廳カラ各市町村長ヘ十分一
  ツ徹底サシテ戴キマスヤウニ、其ノ問題ニ
  付テ篤ト御配慮ニ預カリタイト思ヒマス
  次ハ防空問題デアリマスガ、政府ハ總理大
  臣ヲ初メトシ幾多ノ場合ニ帝都空襲必至ト
  云フコトヲ言ハレテ居リマス、所デ帝都空
  襲必至ト云フ言葉ヲ言ハレマシテモ、ソレ
  ヲ唯聞イテ居ルダケデハ濟ミマセヌノデ、
  之ニ對シテ對應策ヲ講ジナケレバナリマセ
  又、昨日モ私農商省當局ニ聽キマシテ、サ
  ウシタ帝都空襲ニ關聯シテノ人口疎開ノ面
  カラ、地方ニ於ケル食糧ハドウカト云フコ
  トヲ聽イタノデアリマスガ、若シモ帝都カ
  ラ女子供ト云フモノヲ地方ノ〓里ニ歸スト
  云フヤウナコトヲ御考へニナルトシマスト、
  相當地方ノ食糧問題モ十分ナル用意ヲ必要
  トスルカト思ヒマス、此ノ點ハ農商省ノ方デ十
  分アルトノ御話デアリマスカラ宜シウゴザ
  イマスガ、帝都空襲ダケデハナカラウト私
  ハ思ヒマス、ソレハ成程人口ノ密集シテ居
  リマス帝都ヲ初メトシテノ大都會ノ空襲モ
  アルデアリマセウガ、モウ少シ考ヘテ見マ
  スト、私ハ日本ノ工業力ノ源泉ヲ斷ツト云
  フ意味デ山林ヲ燒キハシナイカ、ソコデ山
  林ノ防空防火設備ト云フモノガ今日必要デ
  ハナイカト考ヘマス、敵モ發電所ヲ目掛ケ
  ル乃至ハ山林ヲ目掛ケルト云フ場合モアリ
  得ルト思ヒマスノデ、山林ニ對シテノ防火
  施設ト云フモノハ、果シテドノヤウニナサツ
  テイラツシヤイマスカ、此ノ點ヲ御伺ヒシ
  タイノデアリマス

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• 007・町村金五

  ○町村政府委員　山林ノ消防防火ト云フコ
  トガ、洵ニ困難ナ問題デアルコトハ御承知
  ノ通リデアリマス、內務省ニ於キマシテモ
  從來カラ山林消防ニ付テハ色々苦心モ致シ、
  各地ニソレ〓〓ノ訓練ナドモ施シテ參ツテ
  來テ居ルノデアリマスガ、今日マデノ所必
  ズシモ此ノ方法ヲ以テスレバ、極メテ的確
  ナ確實ナ消防方法デアル、或ハ防火ノ方法
  デアルト云フヤウナモノガ、十分ニ確立サ
  レテ居ナイト云フコトハ、洵ニ遺憾ニ存ジ
  テ居ルノデアリマス、併シナガラ大體今日
  マデヤツテ居リマシタ所デ最モ效果ノアル
  方法ハ、申スマデモナク山林地帶ニ相當大
  規模ナ防火線ヲ設ケルト云フヤウナコトガ、
  最モ有力ナ方法デアルト云フコトハ、今日
  マデノ經驗上、實證サレテ居ルノデアリマ
  ス、今日農商省ニ於キマシテモ、山林經營
  ニ當リマシテハ、常ニ風向キ或ハ其ノ他ノ
  事情ヲ考慮致シマシテ、防火線ノ設定ト云
  フコトニ相當努力ヲ致シテ居ルヤウニモ承
  知ヲ致シテ居リマス、又一面今後ノ空襲對
  策ト致シマシテ、我々モ深ク注意ヲ致シテ
  居リマス問題ハ、都市ト農山村ニ於キマス
  ル防空ノ對策ト云フモノニハ自ラ差異ガ
  ナケレバナラヌコトハ申スマデモナイノデ
  アリマス、隨ヒマシテ、所謂農山村ト云フ
  方面ニ對シマシテ、都會ト同樣ナ防空對策
  ヲ以テ臨ムト云フコトハ、固ヨリ不適當デ
  アルト云フ風ニ考ヘマシテ、最近特ニ山村
  ニ對シマシテハ、山林消防方面ニ相當ナ力
  ヲ講ズルヤウニシナケレバナラヌト云フ趣
  旨ヲ以チマシテ、特ニ全國ノ地方長官ニモ
  訓令致シマシテ、其ノ方面ニ一段ト力ヲ用
  ヒルヤウニ示達ヲ致シテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス、唯先程モ申上ゲマシタ通リ、單
  ナル訓練ヲ命ジマシタダケデハ實ハ中々實
  效ハ擧リニクイヤウニモ考ヘラレマス、此
  ノ點ハ各種ノ實情ニ應ジマスルヤウ、ソレ
  ゾレ從來ノ經驗ヲ活カシマシテ、空襲モ或
  ハ山林ニ對シテモアリ得ルト云フ考ヘノ下
  ニ、ソレ〓〓各地方當局ニ土地ノ事情ニ適
  スルヤウナ方法ヲ講ゼシメルヤウニ、目下
  銳意進メテ居ルヤウナ次第デアリマス

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• 008・高岡大輔

  ○高岡委員　只今山林ニ對シテノ防火線ノ
  御話ガアリマシタガ、私ハ山村ニ參リマシ
  テ色々話ヲ聞キマスコトハ、林道ノ問題デア
  リマス、此ノ林道ヲ唯單ニ今マデノヤウナ
  經濟的ナ見地カラノミ林道ノ規格ヲ定メズ
  ニ、防空、防火ト云フ點カラ、モウ少シ林
  道ト云フモノヲ其ノ方面ニモ使フベク、風
  向トカ乃至ハ山ノ傾斜トカ色々ナ點カラ考
  慮シマシテ、農商省ト御協力ノ上デ、林道
  開發ト云ヒマスカ、其ノ面ニ一段ト御努力
  アランコトヲ切望シテ已ミマセヌ、更ニ私
  ハ只今モ御話ニアリマシタヤウニ、都會ト
  農山漁村ニ於ケル防空其ノ他ノコトニ於テハ、
  自ラソコニ差異ガアリ、又ナケレバナラヌ
  ト云フコトヲ仰シヤツタノデアリマスガ、
  マダ地方ニ行ツテ見マスト、大都市ト同ジ
  ヤウナ防空演習ヲ盛ンニヤツテ居ル、朝カ
  ラ晩マデ女子供ガモンペヲハイテ出テ居ル
  ガ、是等ハ全ク戰力ガ減退スル一方デアリマ
  シテ、戰力ヲ增强スルト云フ面カラ懸離レテ居ル
  ノデハヲイカト云フ氣ガ致シマス、防空演
  習ト云フモノハ僅カ一時間足ラズノ間ニ
  切ノコトヲ處理シ得ル、平生ニ還ル、假令
  敵機ガ來テ爆彈ヲ落シテ行ツテモ、其ノ處
  理ヲ濟マセル、如何ニ早ク身仕度ヲシ、如
  何ニ早ク消火ヲシ、如何ニ早ク元ニ還ルカト
  云フコトガ防空演習ノ狙ヒデナクチヤナラ
  ヌニモ拘ラズ、徒ラニ一日中防空演習デア
  ツチコツチ飛廻ツテ、空ノバケツヲ振廻シ
  テ居ルヤウナ面ガ大分アルヤウデアリマス
  カラ、益〓戰力ヲ增强シ、食糧ヲ增產スル
  ト云フ差迫ツタ眞劍ナ今日ニ於テ、防空演
  習ニモ一段ノ御考慮ヲ拂ツテ戴キタイト思
  ヒマス、ソレニ私考ヘテ居リマスコトハ、
  農村ニハマダ指導者ガ大分缺ケテ居リマス、
  農村ハ言葉ヲ換ヘテ言ヒマスレバ指導者ヲ
  欲シテ居リマス、一體世界ガドウナルノデ
  アラウ、戰爭ガドウナルノデアラウト云フ
  ヤウナコトニ大分農山漁村デハ色々ノコト
  ノ指導ヲ欲シテ居ルノデアリマス、此ノ際
  都會ニ於ケル恩給生活者ト云ヒマスカ、サ
  ウシタ者ハソレ〓〓〓里ニ歸リマスヤウニ
  御配慮ニ預リタイト云フ氣ガシマス、サウ
  申上ゲマストサウ云フ方々ハキツト自分ノ
  子供達ノ〓育問題デ中々簡單ニ〓里ニ歸レ
  ナイ、斯ウ仰シヤルカモ知レマセヌケレド
  モ、私ソレハ理窟ニハナラヌト思ヒマス、
  私ハ農村ニ生レテ農村ニ育ツタ人間デアリ
  マスガ、地方ノ中學校ヲ出マシテ、ソレカ
  ラ笈ヲ負ウテ東京ニ出テ來タ、總テ今ノ人
  達ハサウ云フ人達ガ多イノデアリマシテ、
  家庭ガ地方ニアルカラ子女ノ〓育ガ出來ヌ
  ト云フコトハ絕對ニアリマセヌ、私ハ子女
  ノ〓育ニ名ヲ藉リテ地方ニ歸レナイト言フ
  人ハ、實際ノ所ハ低利資金デ建テマシタ自
  分ノ住宅ノ問題、又地方ニ行キマスレバ非
  常ニ生活費ガ掛ル、所謂立派ナ人デアツテ、
  公債ヲ買フニモ貯金ヲスルニモ、寄附ヲス
  ルニモ澤山出サナクチヤイカヌ、東京ノ生
  活ヨリハ〓里ニ歸レバ生活費ガ掛ルト云フ
  ヤウナ經濟問題ガ相當大キナ理由デハナイ
  カト云フ氣ガスルノデアリマス、地方ヘ行
  ケバドウシテモ費用ガ掛ルト云フヤウナコ
  トヲ御考ヘニナルト同時ニ、マダ地方へ行
  キマスト、ウダツガ上ラヌ、東京ニブラノ
  シテ居レバ何トカ又何處カニロガ見付カル
  ケレドモ、地方ニ行ツテシマツタンデハ最
  早迚モ出世ノ見込ガナイト云フヤウナ御考
  ヘガアルノデハナイカト云フ氣ガスルノデ
  アリマスガ、ソンナコトデハ滅私奉公ダト
  カ、乃至ハ何々報國ダナドト指導者振ツタ
  コトヲ仰シヤル資格ハナイト私ハ思ヒマス、
  今日國民ガ擧ゲテ決戰段階ニ是カラ入ツテ
  行キマスト云ワ時ニ、サウシタ中央ニ於テ
  曾テハ官吏ヲヤリ、曾テハ軍人ヲヤツタサ
  ウ云フ人達ハ、宜シク〓里ニ歸ツテ、〓黨
  ノ子弟ヲ指導シ、〓黨ノ連中ニシツカリト
  時局ヲ認識サセ、益〓日本ノ底力ヲ出サセル
  ヤウニ、人口疎開ノ面カラシマシテモ、其
  ノヤウナ御考慮ガアツテ然ルベキダト思ヒ
  マスガ、政府當局ノ御所見ヲ伺ヒタイ

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• 009・町村金五

  ○町村政府委員　農村ノ防空訓練ノコトニ
  付キマシテ、私カラ御答ヘ申上ゲテ置キマ
  ス、先程モ申上ゲマシタ通リ今日ノ空襲判
  斷ト云フヤウナモノカラ致シマシタ時ニ、
  大都會ト或ハ工業地帶若シクハ農村トノ間
  二、自ラ防空訓練ノ方法等ニ付キマシテモ
  差等ノアルベキコトハ當然デアルノデアリ
  マス、隨ヒマシテ是ガ動モ致シマスルト全
  國畫一ニ流レテ居ルト云フヤウナ實情ノア
  リマシタコトハ我々モ夙ニ認メテ居ツタ
  所ナノデアリマス、隨ヒマシテ防空總本部
  ガ設立サルヽコトニ相成リマシテ以來、銳
  意此ノ問題ニ付キマシテモ種々檢討ヲ加ヘ
  マシタ結果、先般此ノ一月勾々デアリマシ
  タガ、此ノ際農村等ニ於キマスル防空訓練
  ノ如キハ寧ロ之ヲ思切ツテ止メサセル、サ
  ウシテ農村民ハ專ラ增產ニ邁進スベキモノ
  デアルト云フ、從來ノ行キ方ニハ相當ナ方
  向轉換ヲ致シマシタヤウナ通牒ヲ全國ノ地
  方長官ニ發シマスルト同時ニ、更ニ警察部
  長會議ヲ一月ノ中旬ニ開催致シマシテ、此
  ノ會議ノ席上ニ於キマシテモ防空總本部ノ
  意ノアル所ヲ徹底シタノデアリマス、隨ヒ
  マシテ今後ニ於キマシテハ餘程防空訓練ノ
  ヤリ方モ重點的ニ各地方ノ實情ニ適應スル
  ヤウニ變ツテ參ルコトト存ジテ居ルノデア
  リマス、今ノ所ハマダ其ノ結果ガ現ハレテ
  居ラナイカモ存ジマセヌ、近クサウシタ方
  向ニ向ツテハツキリトシタ方針ノ下ニ各地
  ノ防空訓練ガソレ〓〓地方ノ實情ニ適應ス
  ルヤウニ行ハレルコトニ相成ルト存ジテ居
  リマス、左樣御諒承願ヒマス

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• 010・上田孝吉

  ○上田政府委員　改メテ申上ゲルノモ如何
  カト存ジマスガ、話ノ都合カラ申上ゲ
  マス、疎開ヲヤリマス狙ヒ所ヲ先ヅ申
  上ゲナイト御話シニクイヤウニ思ヒマ
  スカラ申上ゲマスガ、御承知ノ通リ日本ノ
  高度國防國家トシテノ態勢カラ見マシタラ
  今日ノ都市構成ノ現狀ト云フモノハ、御案
  內ノ通リ或ル地域ニ非常ニ過密ナル人口ガ
  集中シテ居ルト云フ點ガ一ツ、又同時ニ其
  ノ地域ガ極メテ破壞サレ易イ、燃エ易イ木
  造住宅ヲ以テ充滿シテ居ルト云フ事實ガ一
  ツアル譯デアリマス、此ノ二ツノ點ガ防空
  的ニ見マシテ申サバ日本ノ非常ニ困ツタ點
  デアルト云フコトハ、ドナタ樣モ御異存ノ
  ナイ所ト思ヒマス、ソコデ問題ハ斯ウ云フ
  空襲必至ノ段階ニ臨ミマシテ、此ノ因ツタ
  點ヲ出來ルダケ解消シタイト云フ點ニアル
  ノデアリマシテ、隨テ結論ハ人間ヲ出來ル
  ダケ分散シ、建物ヲ出來ルダケ除却ヲシテ、
  爆彈、燒夷彈ノ命中確率ヲ少クスル、建物
  ニ於キマシテモ、人ニ於キマシテモ被害確
  率ヲ減少スルト云フコトニ眼目ガアルコト
  ハ申上ゲルマデモナイコトデアリマス、然
  ル所此ノ問題ハ動モシマスルト、軌道ヲ外
  レマスルト、一面又憂フベキ事態ニ相成ル
  ノデアリマシテ、其ノ點カラ是ハ飽クマ
  デモ國民ノ戰鬪配置ノ配置替ヘト云フ見地
  カラ之ニ臨ンデ居ル譯デアリマシテ、決シ
  テ逃避ヲスルトカ、囘避ヲスルト云フ思想
  ハ全然初メカラ考ヘテ居ラヌノデアリマス、
  左樣ナ見地カラ積極的ニ戰力增强、二貢獻ス
  ベク、現在ノヤウナ狀態ヲ改善シヨウ、斯
  ウ云フコトニアル譯デアリマス、其ノ意味
  ニ於キマシテ各方面ニ向ツテ昨年末以來宣
  傳モ致シ、啓發指導モ致シテ居ル譯デアリ
  マス、幸ヒニ各方面トモ此ノ趣旨ニ御共鳴
  ヲ戴キマシテ、中央各省ハ固ヨリノコト、
  各團體ニ於キマシテモ、又朝野ノ各方面ニ
  於キマシテモ、此ノ趣旨ヲ非常ニ共感サレ
  マシテ、非常ナ御支援ヲ賜ハツテ居ル譯デ
  アリマシテ、逐次此ノ考ヘ方ガ全國民ニモ
  擴マルコトヲ强ク私共ハ希望ヲ致シテ居ル
  ノデアリマス、幸ヒニシマシテ只今ノ所是
  レ亦國民ノ感覺ニピツタリ合ヒマシテ、逐
  次今申上ゲマシタヤウナ考ヘ方ガ各方面ニ
  徹底ヲ致シ、段々サウ云フ趣旨カラ進ンデ
  疎開ヲスルト云フ機運ガ出來テ參リマシタ
  コトハ、非常ニ御同慶ノ次第デアリマス、
  私共トシマシテハ其ノ趣旨ニ於キマシテ此
  ノ國民指導ヲ致シタイト考ヘテ居リマスガ、
  各位ニ於カレマシテモドウゾ此ノ疎開ノ思
  想的根柢ト云フモノヲシツカリ把握サレマ
  シテ、各方面ノ御指導ニ御當リ願ヒタイト
  云フコトヲ切ニ御願ヒ申上ゲル次第デアリ
  そく、ソコデ御質問ノ點ニナリマスルガ、
  御質問ニ依レバ何カ人ヲ指定シテ疎開ヲ進
  メタラドウカト云フヤウナ御趣旨ノヤウニ
  モ存ジマシタ、然ル所此ノ問題ハ實ハ甚ダ
  困難ナ問題デアリマス、防空法ノ法規ノ上
  デハ個人々々ヲ指定致シマシテ、地方ニ轉
  出スルコトヲ命ジ得ル規定ハゴザイマス、
  併シナガラ是ハ最後ノ手段デアリマシテ、
  私共ハ左樣ナ法規ニ囚ハレルコトナク、各
  方面ノ方々ノ自發的ナル發奮ニ依リマシテ、
  此ノコトハ相當ニ行ハレ得ルモノト確信ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、只今御話ノ如ク、
  帝都其ノ他ノ大都市ニ爲スコトモナクブラ
  ブラシテ居ルコトハ、此ノ戰時非常ノ場合
  ニ洵ニ國家ニ對シテ相濟マヌト云フ氣持ヲ
  自ラ起サレルモノト存ズルノデアリマス、
  左樣ナ人々ハ進ンデ地方ニ轉出サレマシテ、
  地方ノ子弟ヲ〓導セラレ、或ハ地方ノ農林
  水產業ニ從事セラレル、或ハ地方ニ分散致
  シマシタ各般ノ工業ノ部門ニ工員トシテ若
  シクハ職員トシテ御參加ニナリマシテ、所
  謂戰力增强ノ面ニ積極的ニ御活動ニナルト
  云フコトハ、是ハ今申シマシタヤウナ考ヘ
  方ガ徹底致シマスレバ、各自々々ニ於テ自
  ラ御判斷ニナリマシテ、御處置ノ付クコト
  ト存ジマスノデ、一々玆ニ名指シヲ致シマ
  シテ、命令ヲ下スコトハ差控ヘタイト存ジ
  テ居ル次第デゴザイマス、只今ノ所斯樣ナ
  見地カラ地方ニ進ンデ轉出セラレル機運ガ
  非常ニ釀成サレマシテ、現ニ實例モ多々生
  ジテ參ツテ居リマス、私共ハ飽クマデモ所
  謂地方ニ逃避スルト云フコトデナク、地方
  ニ出テ參リ、ヨリ一層戰力增强ノ爲ニ貢獻
  スル、斯ウ云フ根柢ヲ踏ミ外サナイコトヲ
  强ク希望シテ居ル次第デアリマス、此ノ趣
  旨ニ於キマシテ只今仰セノ如キ境遇立場ノ
  人々ガ、進ンデ地方ニ轉出セラレマスコト
  ヲ今後モ極力勸奬致ス考ヘデアリマス

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• 011・高岡大輔

  ○高岡委員　只今政府委員ノ御答辯ニ依リ
  マシテ能ク了承致シマシタガ、先程モ申シ
  マシタヤウニ農村ガ指導者ヲ欲シテ居ルト
  云フコトハ、モウ一ツハ空襲其ノ他ニ於テ
  如何ナル事態ガ起キマシテモ、農山漁村ガ
  シツカリト慌テフタメキヲシナイヤウニ、
  其ノ時ニ色々ノ話ヲシテ聽カセル人ハドウ
  シテモ私ハ必要ダト思ヒマス、サウ云フ色
  色ノ意味カラモ言ハレマセウガ、其ノ意味
  カラダケデモ、一ツ今マデ國家ノ爲ニ大イ
  ニ樞機ニ參與サレテ居ツタ方々ハ、此ノ際
  〓里ニ歸ツテ、郷黨ノ子弟ヲ養フト云フコ
  トニ御發奮ナサルヤウニ、政府當局モ御配
  慮ニナツテ然ルベキデアル、斯樣ニ考ヘテ
  此ノコトヲ申上ゲルノデアリマス、尙ホ防
  空演習モ今後大分變ルト云フ御話ヲ聽キマ
  シテ了承シタノデアリマスガ、從來ハ山村
  ニ於テハ炭燒キニ行キマス場合ナドハ、夜
  中ノ三時四時ニ起キテ出掛ケナケレバ少シ
  奧ニ參リマス時ナドハ間ニ合ハナイ、所ガ
  山道ノコトデアリマスカラ、松火ヲ焚イテ
  行ク、其ノ場合ニ防空訓練ノ日デアリマス
  ト、松火ヲ點ケテハイカヌト云フノデ、途
  中デ警察官ニ叱ラレテ、松火ヲ消シテ行ツ
  タ所ガ、谷底ニ落チタト云フヤウナ色々ナコ
  トガアリマスノデ、防空演習其ノ他ニ付テ
  モ今後十分ノ御配慮ニ預リタイト思ヒマス、
  是デ私ノ質問ヲ打切リマス

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• 012・深澤吉平

  ○深澤委員長　小笠原委員

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• 013・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　實ハ私モ農商省ノ方ノ
  關係ヲ御願ヒシテ居ツタノデスガ、マダ御
  見エニナリマセヌカラ馬政局ノ方カラ先ニ
  ヤルコトニ致シマス、實ハ馬ノ畜力利用ノ
  方カラ御伺ヒシタノデスガ、馬政局ト申上
  ゲテモ馬政局ガ馬ノ方ヲ全般ニ亙ツテオヤ
  リニナツテ居ルカドウカ分リマセヌ、畜力
  利用ノ方ハ他ノ部門ニ屬シテ見タリ、或、
  小運送ノ方ハ鐵道ノ方ニ關係ガアツタリ、
  又馬ノ最モ大切ナ排泄物ノ肥料、斯ウ云フ
  方面ガ又他部門ニ屬シテ見タリ、中々馬ト
  申シテモ複雜ナ關係ガアリマスノデ、果シテ
  畜力利用ト云フ關係ガ馬政局長官ニ當ルカ
  ドウカ分リマセヌ、併シナガラドウ言ヒマ
  シテモ馬ノ問題ハ、畜力利用ト云フコトニ
  重大ナ關係ガアリマスノデ、特ニ馬政局ノ
  方デ其ノ中ノ大半ヲオヤリニナツテ居ラレ
  ルヤウデアリマスカラ、先ヅ畜力利用ノ方
  ニ付テ伺ヒタイト思ヒマス、現下多數ノ靑
  少年ガ戰線或ハ產業陣ニ應召ノ結果、銃後
  ハ勞力ノ不足ヲ來スコトハ當然ノコトデア
  リマスガ、之ヲ補フ途ハ畜力ノ利用、特上
  農耕馬ニ依ル勞力ノ補給ノ問題デアルト思
  フノデアリマス、從來ノヤウニ農耕馬ノ取
  扱關係ヲ男手ニノミ委ネテ居ツテハ戰時
  食糧增產ハ思ヒモ寄ラヌコトデアリマシテ、
  ドウシテモ老幼婦女子ニ依ツテ容易ニ之ヲ
  使役スルヤウニ、馬ノ鍛鍊、馴致ヲシナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、此ノ目的ヲ
  達成スルニハドウシテモ中央馬事團體ヲ初
  メ、地方ノ馬事團體ノ方面ニモ指導員ヲ設
  ケテ置イテ、此ノ指導ノ徹底ヲ期サナケレ
  バナラヌト思フノデアリマス、特ニ馬商、
  家畜商デアリマス、家畜商ハ全國デ一萬五
  千人以上モアルノデアリマス、又此ノ家畜
  商ノ背後ニハ馬ノ取扱ニ訓練サレテ居ル者
  ガ相當數全國ニアルト思ヒマス、其ノ連中
  ヲ唯配給トカ、育成トカ云フコトニ任セテ
  置カヌデ、之ニ少シ時局向ノ訓練ヲスレバ、
  直チニ指導スル立場ニナリ得ラレルト思フ
  ノデアリマスカラ、是等ヲシテ此ノ農耕馬
  ノ訓練指導ノ任ニ當ラシメルヤウナ方策ヲ
  執ルナラバ、此ノ場合勞力問題ハ非常ニ助
  カルデアラウト思フノデアリマスガ、先ヅ
  其ノ點ヲサウ云フコトニ仕向ケル考ヘガア
  ルカドウカト云フコトヲ一點伺ヒタイ
  ソレカラ國有種牡馬デアリマスガ、斯
  ウ云フモノモ中間種ヲ國策ノ目的トシテ居
  ツテ、輓馬系ノモノヲ相當數所有サレテ居
  ルノデアリマス、斯ウ云フ國有種牡馬モ唯
  運動スルニ一頭ノ馬ニ一人張切ツテ、昔ノ
  ヤウナ乘馬運動ヲシテ居ルヤウナ傾向ガア
  ツタノデハ、今日最モ時局遲レデアルト考
  ペルノデアリマシテ、假ニ然ル場合ハ種馬
  所ノ近所ガ爆擊サレテ避難スル場合ニ、
  頭ノ馬ニ對シテ一人デ引張ツテ居ルト云フ
  ヤウナ狀況デアルナラバ、是ハ非常ニ大キ
  ナ過チヲ來スノデアリマシテ、常ニ是等ヲ
  シテ輓馬ニ使フヤウニ、馬車馬ニ使フヤウ
  ニ訓練ヲシテ置ク必要ガアル、若シイザト
  云フ場合ニハ是等ニモ相當積載ヲセシメ
  テ、サウシテ一頭デ何頭分モ働カセルト云
  フ準備ヲシテ置ク必要ガアル、殊ニ馬自體
  ノ輓曳力ヲ增スト云フコトガ、輓馬ノ方針
  デアラレルノデアリマス、隨テ馬ノ爲ニモ
  非常ニ有效ダト考ヘルノデアリマシテ、斯
  ウ云フ方針ガマダ黴底シテ居ラヌヤウニ思
  ハレルノデアリマス、此ノ國有種牡馬ノ利
  用ト云フコトニ對シマシテ、今後ドウ云フ
  コトニナサルカト云フコトデアリマス、サ
  ウシテ其ノ馬ハ一體軍用保護馬デアリマシ
  テモ、其ノ他ノ馬デアリマシテモ、相當農
  耕訓練ノ徹底ヲ圖ルト云フコトニシナケレ
  バナラヌノデ、卽チドンナ子供デモ女デモ
  年寄デモ、十分自分ニ操縱出來ルヤウナコ
  トニ、馬其ノモノヲ訓練付ケテソレヲ配給
  スルト云フコトニシナケレバ、荒馬ヲ引渡
  シタダケデハ、是ハドウニモナラヌ、馬自
  體ニ對シテモ關心ヲ持夕ナクナルト云フコ
  トニナルノデアリマスガ、農村ニ對シテ愛
  馬思想、其ノ他ノ馬ノ利用ト云フコトヲ深
  ク認識セシメル爲ニハ、ヤハリ馬其ノモノ
  ヲ誰デモ操縱出來ルヤウニ訓練付ケテ、以
  テ配給スルト云フコトノ制度ヲ設ケテ置ク
  ノガ、目下ノ非常ナ急務デアルト思フノデ
  アリマス
  ソレカラ小運送ノ方ハ、是ハ鐵道ニ屬ス
  ル問題カモ知レマセヌガ、併セテ伺フノデ
  アリマス、今內務省ニ防空關係ノコトヲ同
  僚カラ御尋ネシマシタガ、一體空襲ガアツ
  タ時分ニ、鐵道ガヤラレタ、自動車ガヤラ
  レタト云フ場合、或ハ電力ガドウカナツタ
  ト云フヤウナ場合ニハ、何デ輸送スルカト
  云ヘバ、馬ノ外ナイト思フ、牛モ多少アル
  ケレドモ、主タルモノハ馬デアル、今日デ
  ハ鐵道輸送モ非常ニ困難ヲシテ居ルノデア
  リマスカラ、馬ヲ目下利用シテモ、假ニ靑
  森カラ東京マデニシタ所デ、馬車百臺ヲ拵
  ヘテ置クナラバ、驛傳的ニ十三日デ、一二〇
  一「トン」デモ百「トン」ハ到著シ得ラレル、
  サウ云フコトヲ訓練シ、準備ヲシテ置カヌ
  デ、一朝有事ノ場合ニドウシテ輸送ヲ完備
  スルカ、小運送ノ完備ハドウナルカ、又輸
  送ノ完備ハドウナルカト云フコトデアリマ
  ス、サウ云フ場合ニ馬ヲ取扱ツテ見テモ、
  ドノ馬モ役ニ立タヌ荒馬デ手ヲ著ケラレヌ
  ト云フコトニナツタラ、馬ノ價値ハドウ云
  フコトニナル、イザト云フ場合デモドウニ
  デモナルト云フ準備ヲシテ置カヌト云フコ
  トデアリマシタナラバ、實ハ馬ニ對スル所
  ノ國民ノ信賴ト云フコトニモ相當ニ關係シ
  テ來ルト思フノデアリマス、サウ云フコト
  ノ準備モシツカリヤラナケレバナラヌト思
  フ、鐵道ハ小運送ノコトヲヤツテ居ルカラ、
  馬車ノコトニ關係スルト言ヒマスガ、馬ノ
  コトナドハ分ルモノデアリマセヌ、却ツテ
  要ラザルコトニ手ヲ著ケテ、小運送ヲ阻害
  スルコトガアル位ノモノデアリマス、其ノ
  馬ハ物ヲ食フ、中々取扱フノモ面倒ダガ、
  全部馬政局デ指導シテヤラナケレバドウニ
  モナラヌモノダト私ハ考ヘテ居ルノデアリ
  マス、サウ云フ準備スラチツトモ見エナイ、
  ソレカラ馬事會ナドガアリマシテモ、サウ
  云フ團體アタリデ斯ウ云フ輸送關係ニ輓馬
  ヲ利用スル準備等モ、今日備ヘテ置カヌト
  云フコトデハ、ドウモ心細クテ仕樣ガナイ
  ト思フノデアリマスガ、斯ウ云フコトニ對
  シマシテ馬政局アタリデ何カ御考ヘガアル
  カドウカヲ伺ツテ置キタイノデアリマス
  次ニ馬ノ價格デアリマス、馬ノ價格ト云
  フモノハドウモ私ハ何囘モ不審ヲ持ツテ居
  ルノデアリマスガ、今ノヤウナ訓練馴致ノ
  最モ急ヲ要スル場合、勞力問題ノ解決ヲ要
  スル場合ニハ、特ニ訓練馴致ノ宜シキヲ得
  タ馬ハ、相當ノ價格ヲ與ヘテモ宜イト思フ、
  卽チ能力價格ヲ附ケテモ宜イト思フ、ソレ
  カラ荒馬モ九百圓、訓練馴致ヲシタ馬モ九
  百圓ト言フカラ、馬商ナドハ訓練ヲスル氣
  ニナラナイ、人間ニスレバ熱練エガ一日八
  圓ダカラ、初任給モ八圓デアルト云フコト
  ニスレバ、働ク者ガナイト云フコトニナル、
  馬ニシテモ同樣デアル、其ノ能力價格ガ面
  倒ダト言ツテ、馬政局アタリデ之ヲ設定シ
  ナイデ置イタラ、何時マデ經ツタラ馬ノ値
  打ガ出ルカ、分ラナクナル、是ハ早急ニ能
  力價格ト云フモノヲ定メテ、相當訓練シタ
  馬ニ對シテハ相當ノ報奬ヲ與ヘル、隨テ其
  ノ報奬ヲ見込ンデ皆ガソレニ向ツテ訓練馴
  致ヲシテ、馬ノ配給ノ任ニ當ルト云フヤウ
  ナコトヲ引張リ出シテヤラセルヤウナ方法
  ヲ執ラナケレバ駄目ダト私ハ考ヘテ居ルノ
  テアリマス、ソレニ對スル馬政局長官ノ御
  考ヘヲ伺ツテ置キタイノデアリマス、モ
  ウ一ツハ馬ノ公定價格ノ「其ノ他ノ馬」デア
  リマス、「其ノ他ノ馬」ト云ツテモ不具馬ヲ
  言フノデハナイ、體高ガ高イ馬デアリマス、
  體高ガ高過ギテ馬政方針ニ基カナイト云フ
  ノデ四百圓ニシテ置ク、所ガ馬車ヲ引張ラ
  セルト何百貫ト云フモノヲ輓ク、一等馬ノ
  三倍ハ引張ル、ソレガ四百圓デ抑ヘテアル、
  所ガ闇デハ四、五千圓デ取引シテ居ル、馬ガ
  立派デアルシ、積載量ハ多イシ、輓曳力ハ
  强イシ、斯ウ云フ良イ馬デアルカラ皆高ク
  取引スルノハ當然デアル、此ノ價格ヲナゼ
  「其ノ他ノ馬」ニシテ抑ヘテ置クカト云フコ
  トニ甚ダ不審ガアル、サウ云フコトヲ申上ゲ
  ルト馬政局長官ハ必ズソレハ馬政方針ニ基
  カナイ、値段ヲ上ゲルト必ズサウ云フモノ
  ガ澤山出テ困ルカラト斯ウ仰シヤルカモ知
  レマセヌケレドモ、ソレハ當ラナイ、ナゼ
  當ラナイカト云フト全部種牡馬ト云フモノ
  ハ國有デアル、國有種馬ヲ配合スル權利ハ
  種馬統制法ニ依ツテ一本ニナツテ居ル、隨
  テ政府ガ配合スルノデアルカラ、大キナ馬
  ガ出ヤウガナイ、ソレガ偶、誤ツテ出タモノ
  ガ大キナ强イ馬ニナツテ居ルノデアルカラ、
  ソレガ奬勵ト云フコトニモナラナイノデア
  ルカラ、出サウトシテモ民間デハ出セナイ、
  ダカラ其ノ心配ガナイ、殊ニ今日ハ「トラッ
  ク」ノ積載量モ全廢シテマツテ何「トン」デモ
  付ケロト云フコトニナツテ居ル、ダカラ馬
  車ノ積載量モ運ベルダケ運ベト云フコトニ
  ナツタナラバ、サウ云フ馬ニ運バセテドン
  ドンヤツタ方ガ宜イト思フ、其ノ馬ヲ急ニ
  淘汰スル位マデニ壓迫シナケレバナラナイ
  理由ハ何處ニアルカト云フコトニ私ハ不審
  ガアルノデアリマスガ、先ヅ今申上ゲタ點
  ヲ御答辯願ツテ、アトハ次ノコトヲ申上ゲ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=13

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• 014・岸良一

  ○岸政府委員　畜力利用ノ關係カラ申上ゲ
  マスガ、馬ノ特性トシテ畜力ヲ活カスト云
  フコトハ最大ノ急務ナノデアリマスカラ、
  畜力ノ利用ニ付キマシテハ前々カラ色々骨
  ヲ折ツテ居ルノデアリマス、全國ニ旣ニ八
  箇所ノ役馬利用指導所ヲ作ツテ、其ノ關係
  ト技術ノ傳習ニ當ツテ居リマス、此ノ關係
  ニ於キマシテ先程御尋ネノアリマシタ女子
  動員ノ關係ヲ來年度カラ强化シテ、農村ニ於
  ケル女子勞力ノ增產部門ヘノ效率化ヲ圖リ
  タイト考ヘテ居リマス、ソレト關聯シテ先
  程家畜商等ニ技術ノ傳習ヲヤツテ之ヲ指導
  員ニ利用シテハ如何、斯ウ云フ御話デアリ
  マスガ、勿論家畜商デアラウト何デアラウト
  十分技術ニ堪能ノ人デアルナラバ活用シテ
  宜イ、又サウ云フモノニ機會ヲ與ヘルコト
  ニ付テハ異存ハゴザイマセヌ、唯サウ云フ
  モノニ限ツテ之ニ資格ヲ與ヘテヤルト云フ
  コトハ何處デモ此處デモヤレルト云フ問題
  デナイノデアリマスカラ、是ハ地方的ノ事
  情ニ依リマシテ其ノ必要ガアルト思フ所ニ
  ハサウ云フ風ナ途モ執ラセ得ルヤウニ考ヘ
  タイト思ツテ居リマス
  尙ホ畜力利用ニ付キマシテハ、來年度ニ
  於テハ農業方面ノ勞力ノ關係及ビ現在ノ少
  運搬ノ關係等カラ考ヘマシテ、私共極力之
  ヲヤリタイト考ヘテ居リマス、農業經營ノ
  方カラ言ヒマスレバ、一番勞力ノ要ル、而
  モ仕事ヲスル上ニ困難ナ時期、詰リ水田ノ
  中耕除草ニ對シテ從來カラヤツテ居リマス
  水田中耕除草ノ仕事ヲ畜力ヲ利用シテモツ
  ト繁行スルヤウニ農政局ト連絡シテヤツテ
  居リマス、今マデニ約十萬町步トナツテ居
  リマスガ、來年度ノ希望ハ二十五六萬町步
  デアリマスノデ、此ノ方面ニ力ヲ入レタイ
  ト思ツテ居リマス、是等ノ關係ハ資材ノ關
  係ガアリマスガ、資材ノ關係デ全部希望ヲ
  滿タスヤウニ出來ルカドウカ分リマセヌガ、
  出來ルダケ澤山出來ルヤウニヤリタイト考
  ヘテ居リマス、ソレカラ只今ヤツテ居ルノ
  デハ、旣ニ終リマシタガ、麥作モ農政局ト
  協力致シマシテ、畜耕ヲヤリ、又畜耕ノ訓
  練モヤツテ居リマス、農業經營ノ方面ニ於
  テモ勞力ガ足ラナクナツテ參リマスノデ畜
  力ヲ利用スル方面ニ付テ相努メタイト思ツ
  テ居リマス、運搬ノ關係ニ付キマシテハ來
  年度ノ豫算ニ、極ク僅カデアリマスルガ、
  馬ノ勞力、勤勞動員ノ金ヲ取リマシテ、馬
  移動班ノ錬成ヲ行ツテ、ソレニ依ツテ現在
  ノ輸送關係ニ協力シタイト考ヘテ居リマス、
  實際カラ言フトモツト大規模ニヤラナケレ
  バイカヌト思ヒマスガ、今ノ豫算ヲ中心ニ
  シテ更ニ現在ノモノヲ運營シテ之ヲ繁行ス
  ル、又他ノ方面ト協力シテ、之ヲ大キクヤ
  リタイ、斯ウ考ヘテ居リマス
  是等ニ關係シテ小運送ノ問題デアリマス
  ガ、小運送ノ關係ニ於テハ運通省ト常ニ能
  ク連絡ヲ執リマス、隨ヒマシテ先程御懸念
  ノアリマシタ馬ノ使用管理等ニ付テハ十分
  私ノ方デ團體ヲ通ジテヤル考ヘヲ持ツテ居
  リマス、馬事會等ニ於キマシテモ今囘機構
  ヲ直シマシタ際ニモ、輓馬課ヲ作リ、之ヲ
  通ジテ一層其ノ方面トノ連絡及ビ指導ヲ緊
  密ニシタイト考ヘテ居リマス
  尙ホ馬ノ利用ニ關係シテ、國有種牡馬ノ
  訓練、或ハ軍用保護馬ノ訓練ト云フコトニ
  付テ御話ガアリマシタガ、是等ニ付テハ極
  力サウ云フ風ニ仕向ケテ行ク積リデアリマ
  ス現ニ地方ニ依ツテハ旣ニ國有種牡馬等
  ニ付テハ相當利用シテ居ル所モアルヤウデ
  アリマス、是モ限度ガアリマシテ、種馬能
  力ヲ阻碍シテイ限度ニ於テ考ヘテ行カナケ
  レバナラナイト思ヒマスガ、其ノ利用スル
  ト云フ方向ニ付テハ異存ガナイノデアリマ
  ス、尙ホ軍用保護馬等ニ付キマシテハ、十
  八年度カラ駄載運搬ニ關スル班ヲ編成シテ、
  總數ノ約一割ニ當ルモノニ訓練ヲ施シ、駄
  載運搬ノ能力向上、特ニ集團行動ニ對スル
  能率ノ向上ヲ圖ルヤウニ努メテ參ツテ居ル
  ノデアリマス、隨ヒマシテ必要ニ應ジテハ
  是等ノ班ヲ動員シテ滯貨物資等ノ運搬ヲヤ
  ラウト云フ考ヘデ居リマス、此ノ點ニ於テ
  全面的ニ協力出來ルト思ヒマス、唯實際問
  題ト致シマシテ、全部ノ馬ガ斯樣ナ訓練ヲ
  經テ居ラナイ、特ニソレガ集マツテ動クト
  云フ場合ニ於テハ色々故障ガ出テ來マスノ
  デ、ヤハリ一通リノ訓練ヲシテ全面的ノ活
  動ニ移ラナケレバナラヌ、斯ウ云フ風ニ考
  ヘテ居リマス、之ヲ要シマスノニ、私共ハ
  現下ノ事情ニ卽シテ畜力ノ利用ヲスルコト
  ニ於テ全面的ニ努力ヲ致シテ行キタイ、之
  ニ對シマシテハ人馬共ニ對スル訓練ヲヤ
  リ、サウシテ其ノ能率ヲ上ゲルヤウニシテ
  行キタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス
  第二ノ御尋ネノ馬ノ價格、其ノ一ツノ能力
  價格ノ問題デアリマスガ、是ハ昨年モ御尋
  ネガアリマシテ、私共モ色々〓究シテ居リ
  マス、洵ニ御說ノ通リデアリマシテ、馬ノ
  價格等モ他ノモノト同ジヤウニ、其ノ品質
  如何ニ依ツテ價格ニ上下ガアツテ然ルベキ
  モノデアリマスガ、何分ニモ能力價格ヲド
  ウ云フ風ニ決メルカト云フコトガ中々難カ
  シイ問題デアリマス、現在ノ取引ニ於テモ
  是ハ相手方ノアルコトデアツテ、之ヲ使ツ
  テ見テ良イトカ惡イトカ云フコトハ取引ノ
  間ニオ互ヒニ判定ガ出來ルノデアリマス、
  特ニ種馬所ノ諸君デアレバ其ノ道ニ堪能ナ
  者デアリマスカラ、自然ソコニ判定ガ行ハ
  レ得ルンヂヤナイカ、斯ウ考ヘル、價格ノ
  最高價格ガアレバ其ノ範圍內ニ於テソレ
  ゾレノ判定ガサレテ、サウシテ取引サレル
  モノダト考ヘルノデアリマス、尙ホ是等ニ
  付テ良イ案ガアレバ私共ハ〓究ヲシテ見タ
  イ、斯ウ考ヘテ居リマス
  ソレカラ第二ノ問題ノ、其ノ他ノ馬ノ中
  ノ過高過大ノモノノ値ガ安イヂヤナイカ、
  過高過大ノモノガ正當ナ取扱ヲ受ケテ居ナ
  イヂヤナイカト云フヤウナ御話デアツタラ
  ウト思ヒマスガ、只今過高過大ノ馬ニ付テ
  ハ產業上ノ用途ヲ考慮シテ、例外許可ニナ
  ツテ居ルト思ヒマス、是等ノ制度ハ初メノ
  方針デハ取扱ヲ止メルヤウニナツテ居ツタ
  ト思ヒマスガ、現在輸送其ノ他ノ實情ガア
  リマスノデ、是等ノモノヲドウ云フ風ナ見
  方カラ取扱ツテ行クカト云フコトハ折角〓
  究ヲ致シテ居リマス、併シ根本ニ於テハ、
  先程小笠原委員カラ申サレタヤウニ、私共
  トシテハ我ガ國ノ產馬ノ中心ガ軍事上ノ有
  能馬ヲ作ルト云フコトニアルノデアリマス
  カラ、其ノ價格ヲ中心トシテ考ヘテ行カナ
  ケレバナラヌ、其ノ點ニ於テハ私共ノ考へ
  ハ變リハナイノデアリマスガ、只今ノヤウ
  ナ特殊ノ事情ヲ考ヘテ來マスルト、是ハ價
  格デ調節ヲスルガ宜イカ、或ハ是等ノモノ
  ヲ取扱フ何カ配給ノ機構ナリ其ノ他ニ付テ
  考ヘナケレバイカヌカ、是ハ併セテ〓究致
  シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 015・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　大體御答辯ニ依リマシ
  テ分リマシタガ、唯最後ノ過高ノ馬ニ特別
  許可云々ト云フ御答辯ガアリマシタガ、其
  ノ特別許可ヲヤツテ居ラヌ、是ハ馬政局通
  牒ニ依ツテイカヌト云フコトデ、絕對ニ四
  百圓ニ釘付ケサレテ居ルト云フ今日ノ狀況
  デアリマスノデ、尙ホ其ノ點ヲ御調ベヲ願
  ヒタイ
  次ニ伺ヒタイコトハ馬ノ生產ニ付テデア
  リマスガ、此ノ生產ニ對シテ非常ナ力ヲ入
  レテ增產奬勵ヲヤラレテ居リマスガ、併シ
  增產ヲヤツテ指導シテ居ル反面ニハ、量ノ
  多數ノ上ニ重點ヲ置イテ、質ノ問題ガ閑却
  サレテ居ルヤウナ觀ガアリマスルノデ、其
  ノ點ヲドウカ一ツ御〓究ヲ願ヒタイノデア
  リマス、ソレニ重大關係ノアルモノハ種牡
  馬デアリマス、種牡馬ハモウ種馬統制法制
  定以來國有一點張リニナツタノデ、隨テ購
  買モ國ガ一本デナサレテ居ルノデアリマス、
  所ガ購買價格ガ安イ爲ニ、ドウシテモ種牡
  馬ノ立派ノモノガ手ニ入ラナイ、入ラナイ
  ンヂヤナイ、作レナイ、今ハ「アングロノ
  ルマン」ト云フ國策ノ最モ重點ニ置ク種牡
  馬デアツテモ、今度輕種ノ方ニ相當ニソレ等
  ヲ配合スルコトニ相成リマシテ、種牡馬ヲ
  何處ニ求メルカト云フコトガ一番難問題デ
  アルダラウト思フノデアリマス、所ガ其ノ
  種牡馬ハ外國カラハ只今輸入ガ駄目デアル
  シ、隨テ國內ニ於テ生產シナケレバナラヌ、
  サリトテ是ハ國有ノミニ依ツテ生產シ得ル
  カト言ヘバ、サウデハナイ、多數ニ民間デ
  生產ヲシテ居ルノデアリマス、所ガ體幅骨量
  ニ富ム馬ト云フ方針ニ基ク爲ニ、配合カラ
  體內ノ榮養カラ考ヘテ、發育狀況ニ依ツテ
  之ニ相當濃厚飼料ヲ與ヘテ、サウシテ發育
  旺盛ナ場合ニ努メテ之ニ對シテ重點的ニ體
  幅骨量ヲ改良シテ行クト云フコトニナラナ
  ケレバ、ドウシテモ馬ハ一定ノ期間ヲ經過
  スルト立派ナ馬ガ出來ナイコトハ御承知ノ
  通リデアリマス、所ガサウシテ居ルト馬ノ
  購買價格ニハ合ハナイ、隨テ政府ヲ胡麻化
  シテシマツテ、體幅骨量ニ富ム馬ト云ヘバ
  自然太イ所ノ「ペルシュロン」ノ血液濃厚ナ
  モノ-或ハ血液濃厚ダト言ヘバ購買シナ
  イカラ、血液濃厚ナラザルモ、ソレニ似寄
  ツタモノヲ眞似テ來テ、サウ云フ種馬ヲ賣
  付ケル、ソレヲ宜イコトニシテ買ツテ居ル
  カラ、イツマデ經ツテモ改良ニナリハシナ
  イ、デスカラ購買價格ニ對シテハ相當ニ考
  慮サレテ、今斯ウ云フ時期ニナレバ-十
  年前ト同ジ價格ニ依ツテヤツテ居ルノハ馬
  バカリダト思フ、殊ニ種馬ニ重點的ニ大キ
  ナ豫算ヲ持ツテ是等ヲ購買スルト云フコト
  ハ、是ハ低物價堅持ノ建前ニ合致スルト思
  フ、種ノ良イモノヲ置イテ、サウシテ生產
  シタモノハ全部公定價格ノ最高ニ達スル馬
  ガ揃フト云フコトハ、是ハ馬生產ノ目的ニ
  モ適ヒ、公定價格、低物價堅持ノ建前ニモ
  合致スル所以ダト思フ、ソレヲ唯數バカリ
  殖ヤシテ、役ニ立タナイ馬バカリ何頭アル
  カ、ソレバカリ多イデハナイカト云フコト
  サヘ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、現在軍
  馬ニナラヌ馬ガ相當アル、軍馬ニナラヌ馬
  ハ農耕馬ニ飼育シタツテ半分ノ働キガ出來
  ナイト云フコトハ御承知ノ通リデアル、結
  局ハ何處ヘ行ツテモ種牡馬ト云フ所ニ重點
  ヲ置カナケレバナラヌト思フ、是ハ能ク長
  官モ御承知ノ通リデアラレルト思ヒマス、
  ソレガ種牡馬ヲ購買スル費用等ガ、中々馬
  政局內ノ內容ヲ見ルト種馬所ノ方ノ經濟關
  係ガ窮屈ニナツタト云フノデ、種牡馬ニ食込
  ンデ三割頭ヲ撥ネテソツチニ流用シテ、種
  牡馬ガ犠牲ニナツテ居ルト云フコトハ中々
  以テ大變ナコトデアリマス、是ハ馬政局デ
  ハ是レ以上ノ馬產ノ隘路ハナイノデアリマ
  スカラ、之ヲ急速ニ打開シ、種牡馬ニ對シ
  テ重點ヲ置キ、モツト豫算ヲ高メテ、サウ
  シテ馬ハ質ノ問題ニ重點ヲ置イテ、種馬ヲ
  揃ヘルト云フコトニ御方針ガナケレバナラ
  ヌト斯ウ思フノデアリマス、是ハ決算ノ方
  デモ何カ問題ニナルトカ承ツテ居リマスガ、
  長官ハ今年アタリカラ重點的ニ何カ種牡馬
  ノ方針ニ付テ、競馬中止ト共ニ改メテ御考
  ヘニナツテ居ルコトガアリマスレバ、其ノ
  點ヲ承リタイノデアリマス

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• 016・岸良一

  ○岸政府委員　增產ノ問題ト關係シテ種牡
  馬ノ購買價格ノ御尋ネデアリマスガ、成程
  增產ヲ强行シテ居ル爲ニ、或ハ多少質ノ劣
  ツタ馬ガ出來テ居ルト云フコトモアラウカ
  ト思ヒマス、併シ大體ニ於テ私ハ順調ニ行
  ツテ居ルト思ツテ居リマス、生產頭數等モ
  數字ハ申上ゲラレマセヌケレドモ、事變前
  ニ比ベマスレバ非常ナ增加ヲシテ居リマス、
  隨ヒマシテ今年度ノ總頭數ノ如キハ支那事
  變ノ始マル前ノ數字ニ近ク囘復シテ居ルヤ
  ウナ譯デアリマス、是ハ產馬關係者ノ非常
  ナ御努力ニ依ルモノダト思ヒマス、私共モ
  小笠原サンノ仰シヤイマシタ質ヲ向上スル
  ト云フコトニ付テハ、是ハ十分注意シテ行
  カナケレバナラヌト思フ、此ノ點ハ增產ノ
  場合ニ付テモ、育テ上ゲルモノガ無駄ノナ
  イヤウニシテ行クト云フ考ヘ方ヲ十分加味
  シテ行キタイト思ツテ居リマス、之ニ關聯
  シテ種牡馬ノ御話ガアリマシタガ、成程種
  牡馬ハ蕃殖ノ基礎ニナルノデアリマスカラ
  現在ノ施設ニ於テモ重點ヲ置イテヤツテ居
  リマス、此ノ價格ガ安イト云フ點ハ只今モ
  御話ニナツタ通リデアリマシテ、是等ハ私
  共トシテモ何等カノ對策ヲ考ヘナケレバナ
  ラヌト思ツテ居リマス、唯御承知ノヤウニ
  是ガ種馬所ノ經營ト絡ンデ居ルノデアリマ
  シテ、是等施設ノ經費ハ沿革的ノモノデアツテ
  只今ノ事情デ見マスト其ノ經營ヲヤツテ行
  ク上ニ於テ非常ニ困難ナ事情ガアルノデア
  リマス、隨ヒマシテ先程御話ノヤウナ一部
  ノ動物購買費デアルトカ、或ハ他ノ費用ヲ
  差繰リマシテ、場所經營維持ノ方向ニ廻シ
  テ居リマス關係カラ、實ハ頭數ヲ豫定通リ
  ニ買ツテ居ラヌ、買入レルモノニ付キマ
  シテハ十分其ノ內容ヲ調ベマシテ、サウシ
  テ將來種牡馬トシテ十分働ケルモノニ重點
  ヲ置イテ、選擇シテ買入レテ居ルヤウナ事
  情デアリマス、是等ノ點ニ付キマシテハ種
  牡馬ノ購買價格ヲ上ゲルト云フコトニスル
  カ、或ハ又他ノ方面デ調節スルカ、何レニ
  シマシテモ一般ノ馬ノ價格トノ調整ニ付テ
  十分考ヘテ行キタイト思ツテ居リマス、實
  ハ昨年モ問題ニナリマシテ、何トカ此ノ點
  ヲ調整シテ行キタイト云フ考ヘカラ、二歲
  馬デ民間デ育成シテ行クモノニ付テハ、日
  本馬事會ヲ通ジマシテ、其ノ飼育費ノ一部
  ヲ助成シテ、幾分デモ其ノ點ヲ緩和スルト
  云フ風ナコトヲシタノデアリマス、是ハ恐
  ラク相當ノ效果ガ上ツテ居ルト思ヒマスガ
  斯ウ云ツタヤウナ考ヘ方ニ依ツテ調節ヲス
  ルト云フコトモ必要ガアルノデハナイカト
  思ヒマス、是等ノ點ニ付テハ十分御趣旨ノ
  存スル所ヲ考ヘテ、〓究致シタイト思ツテ
  居リマス

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• 017・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　馬ノ生產ニ對シテ、其
  ノ數ヲ增加シテ行クト云フコトハ、ソレハ
  御說ノ通リデアリマス、唯質ノ問題ニ對シ
  テハ、仰セノ通リ種牡馬ノ基礎ヲ成スモノ
  デアリマスカラ、有能ナ立派ナ種牡、馬ヲ作
  ルト云フコトニサヘ努メテ戴ケバ、價格ガ
  ドウノ斯ウノト云フ問題デハアリマセヌ、
  併シナガラ結局ソレハ價格ノ問題ニ行クト
  思フノデアリマス、又價格ノ問題モ餘リ長
  イ間釘付ケニサレテ居ルト云フコトモ、相
  當ニ考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、ドウカドノ途十分ニ〓究サレマシテ、
  急速ニ此ノ問題ヲ解決シテ戴カナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマス
  次ニ伺ヒタイノハ今度ノ競馬休止ニ依ル
  問題デアリマス、競馬開催ヲ休止ニナルト
  同時ニ、閣議ニ於テ大臣ハ輕種「サラブレツ
  ド·アラブ」「アングロ·アラブ」ガヤハリ
  國策トシテ必要ダト云フコトニ御決定ニナ
  ツタノデアリマスガ、其ノ輕種ガ必要ダト
  云フコトハ、是ガ馬改良ノ原々種トナリ、
  軍馬ノ生產改良ハ固ヨリ、有能ナ農輓馬改
  良ノ根幹デアルト云フコトニ付キマシテハ
  時々我々モ伺ツテ分ツテ居リマスガ、然ラ
  バ輕種ガ直接馬トシテノ必要ガナイカドウ
  カト云フコト、今デナクテモ、又軍ノ作戰
  上トカ或ハ何カニ依ツテ、將來必要ナ場面
  ガアルカラ、ドレダケ保持シテ置カナ
  ケレバナラヌノダト云フ方針デアルノカ、
  或ハ又輓馬トシテ「アングロ·ノルマン」ヲ
  作ルニハ輕種ノ血液ヲ必要トスルカラト云
  フコトニナリマスレバ、ドレダケノ血液ヲ
  必要トシタモノガ國家ノ馬政方針デアルカ
  是ハ中々面倒ナ問題デ、面倒ナ問題デアレ
  バアル程、ヤハリ政府ノ方デ此ノ方針ヲハ
  ツキリシナケレバ、生產者ノ方ハ間誤ツク
  ノデアリマス、現在分ツテ居ル人ハ恐ラク
  アリマスマイ、然ラバト言ツテ此ノ血液ノ
  コトヲヤカマシク言ハヌカト言ヘバ、種馬
  統制ノ關係カラ云ツテモ、ヤハリ輕種ノ血
  液ガドレダケ入ツタモノハ呼馬ニナル、ド
  レダケ入ツタモノハ抽籤馬ニナル、或ハド
  レダケノ血液ノモノハ除外サレルトカ、色
  色血液關係ヲヤカマシク言ツテ居ツテ、サ
  ウシテ唯此ノ輕種ノ問題ダケニ限ツテ、之
  ニ對シテハドンナ馬產ノ大家デモ答辯ガ出
  來ナイヤウナ今日ノ狀況デアリマス、現
  日本競馬會ノ競馬ヲヤツテ居ル馬產部長モ
  此ノ間エライ物知リ顏デ御說明ガアツタノ
  デアリマスガ、其ノ場合ニ私其ノ內容ニ
  付テ聽イタラ、更ニ分ラナイト云フヤウナ
  狀況デアルノデアリマス、ソレデハドウモ
  民間ノ方デハ今後此ノ輕種ヲ維持シテ行ク
  上ニ於キマシテモ、迷ヒヲ生ズル、是ハ輕
  種ヲ止メル爲ニ一時的ナ方便ニヤツテ居ル
  ノカト云フ疑ヒヲ持ツテ見タリ、或ハ又輕
  種ハ將來競馬ガ再開セラレナイヤウナコト
  ニナルト、不必要ニナルノデハナイカト云
  フ考ヘヲ持ツテ見タリ、色々ソコニ不安ヲ
  生ズル問題ガ出來テ參リマスカラ、何レ〓
  議デ御決メニナツタコトハ、政府ノ方デ御
  決定ノ内容モアルダラウト思ヒマスカラ、
  此ノ委員會ラ通シテドウカ其ノ點ヲ明確ニ
  シテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=17

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• 018・岸良一

  ○岸政府委員　輕種ノ必要性ニ付テノ御尋
  ネデアリマスガ、競馬ハ大體一面華ヤカナ
  部面ガアリマスカラ、兎角閑却サレ勝デア
  リマスケレドモ、ソレハ輕種ノ維持ラ主ニ
  シテ、輕種ノ能力ヲ檢定スル一ツノ實行機
  關デアリマス、其ノ關係ニ於テ今日マデヤ
  ハリヤツテ來テ居ル譯デアリマス、是ハ馬
  政方針ノ中ニモハツキリ分ツテ居リマスシ、
  競馬法ノ中デ競馬會ノ使命等ニ付テ見ラレ
  テモ御分リニナツテ居ルコトダラウト思ヒ
  マス、是ハ御說明申上ゲルマデモナイノデ
  アリマス、輕種ノ必要性ガドウナツテ居ル
  カトノ問題ニ付テハ、閣議デ御決定ヲ願ツタ
  如ク我々トシテハ輕種ハ必要デアルト考へ
  テ居ル譯デアリマス、ソレガ直接利用サレ
  ルノデ必要デアルカ、或ハ馬ノ改良ノ上デ
  必要デアルカト云フコトニナリマスト、只
  今ノ狀態デハ直接之ヲ利用スル部面ハ少イ
  ノデアリマシテ、我々ノ方ト致シマシテハ
  馬ノ改良上日本ニ之ヲ維持シテ行クト云フ
  コトガ必要ダト考ヘテ居ルノデアリマス、
  是ハ飼ツテ居ル馬種ヲ通ジテ、我々ガ檢討
  致シテ見マスノニ、輕種ノ入ツテ居ラヌ馬
  種ト云フモノハ殆ドナイノデアリマス、是
  ハ結局輕種ノ持ツ持久力、運動性、又ヨク
  馬ニ言ハレマス所ノ悍威ト云フコトガアリ
  マス、是ハ困難ニ際シテ最大能力ヲ出スト云
  フ性能ヲ言フノデアリマスガ、之ヲ與ヘル
  ノニハ、輕種ヨリ外ニナイト考ヘテ居ルノデ
  アリマシテ、之ヲ維持シテ行クト云フコト
  ハ、將來ニ於ケル軍馬ノ維持カラ見マシテ必
  要ダト思フノデアリマス、現在ハ中間種ヲ
  中心トシテノ有能馬ノ造成ヲヤツテ居リマ
  スケレドモ、過去ニ於キマシテ馬ノ改良カ
  ラ御覽ニナレバ是ハ小笠原委員ニ御說明
  スルマデモナク、如何ニ多クノ輕種ノ血液
  ガ日本ノ軍馬ノ造成上ニ役立ツタカト云フ
  コトハ御分リニナルト思ヒマス、只今ハ早
  ク體幅骨量ヲ增ス爲ニ御話ノヤウニ重イ血
  ガ入ツテ居リマスガ、是ガ或ル時代ニナツ
  テ度ヲ過ギマスレバ、之ニ對シテ輕種ノ血
  液ヲ入レテ維持シテ行クト云フコトヲヤラ
  ナケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナ爲ニ、ド
  ノ位ノ數ヲ殘シタラ宜イダラウカ、ドノ位
  ノ規模デ之ヲ維持シタラ宜イダラウカト云
  フ點ヲ考ヘ、大體ノ目安ヲ決メマシテ、サ
  ウシテ今囘ノ輕種ニ對スル措置ニ於テ一定
  數ノ輕種ヲ維持シ、之ニ對シテ能力檢定ヲ
  行ヒ、將來ニ備ヘルヤウニシテ行カウ、斯
  ウ云フ考ヘデ進ンデ居ル譯デアリマス、決
  シテ輕種ガ不必要デアルトカ、或ハ臨時的
  ノモノデアルト云フ考へ方デハゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=18

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• 019・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　ソレハドナタモ中々難
  カシイ問題ダト云フコトニ聞イテ居リマス
  ガ、サウスルト政府ノ方デモハツキリ輕種
  ト云フモノノ配合關係ノ方針ト云フモノハ
  國策トシテ玆ニマダ定ツテ居ラヌト云フコ
  トニ承ツテ宜イノデゴザイマセウカ、又ソ
  レハ實際必要デアツテ、體幅骨量ヲ得ル爲
  ニ重種ノ配合ヲシテ居ルカラ、イツカノ時
  代ニハ相當重クナツテ、或ル時代ニ戾ス爲
  ニ輕種ノ血液ヲ必要トスル、斯ウ云フ御話
  デアリマシタガ、現在デアツテモ重過ギル
  方ニナツテ居ル馬モ多數アリ、輕過ギル方
  ニナツテ居ル馬モ相當數アル、然ラバト言
  ツテ種馬統制法改正以來ト云フモノハ、輕
  種ヲ直接配合シタモノハ全國デ一頭モナイ、
  サウナツテ來ルト、實際馬ヲヤツテ居ルモ
  ノハ仰セニナツタヤウナ馬ヲ何處デ使フカ
  ト云フ疑問ヲ持ツ、ダカラ政府ハドウ云フ
  中間種ト云フモノハ國策トシテ必要ダ、是
  ハ軍馬トシテ將來必要ダト云フコトヲ、チ
  ヤント陸軍省ノ方ト連絡ヲ取ラレマシテ方
  針ヲ決メテ御定メニナツテ閣議ニ掛ケタモ
  ノナリト私ハ信ジテ居ツタ、所ガソコマデ行
  ツテ居ラヌ、將來御〓究ナサルノダト云フ
  コトナラ、是ハ議論ヲシタ所デ仕方ガナイ
  カラ、篤ト御〓究ヲサレテ、早ク今ノ輕種
  ノ馬ヲヤツテ居ル方面ニ對シテ、全般的ニ
  指導シテ行カヌト、輕種ト云フモノヽ取扱ヒ、
  行キ場ニ困ツテシマフ、又輕種ヲ取扱フ方
  ノ輓馬ヲ取扱フ連中モ、ドウ云フ馬ガ宜イ
  カ實際迷ヒヲ生ズルト云フ結果ニナル、尤
  モ是ハ細カイコトデアルシ、重要ナコトデ
  アルケレドモ一般ガマダ分ラナイデ居ルカ
  ラ宜イ、併シ是ハ段々〓究ガ進ンデ來ルト
  サウ云フモノニ段々近クナツテ居ル、下カ
  ラ騒ガレテカラデハ非常ニヤリニクイコト
  ガアルノデアリマスカラ、ドウセ必要ダト
  云フコトハ、我々モ直接必要ダト考ヘテ居
  リマス、今ノ場合ハ論議スル場合デナイカ
  ラ私ハ控ヘマスケレドモ、兎ニ角其ノ御方
  針ダケハ確立シテ戴キタイ、斯ウ思フノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=19

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• 020・岸良一

  ○岸政府委員　一寸小笠原委員ニ申上ゲマ
  スガ、成程血液ノ關係ヲドウスルカト云フ
  コトハ非常ニ科學的ニ難カシイ問題デス、
  サウ算術形式デ行カナイト云フコトハ私ガ
  申上ゲルマデモナク能ク御存ジダト思ヒマ
  ス、隨テソレヲ方式デ表ハストカ色々ヤル
  コトハ實ヲ言フト中々出來ナイノデス、實
  際カラ行キマスト、御話ノヤウニ日本ノ馬
  ノ改良過程デ非常ニ澤山ノ輕種ガ入ツテ居
  ル、現在牝馬トシテハ今ノ御話ノヤウニ重
  クナツテ居ル分モアルシ、輕クナツテ居ル
  分モアル、サウ云フ分ニ對シテ今急ニ輕種
  ヲヤルト云フ必要ハナイト思フ、現在政府
  ノ持ツテ居ル種牡馬ノ中デモ輕種ノ血液ノ
  濃厚ナモノガ非常ニ多イノデアリマス、差
  當リハサウ云フモノノ配合ニ依ツテモ今ノ
  重イモノヲ矯正シテ行クコトハ出來ル、若
  シソレガ或ル年數經ツテ淘汰スルヤウニナ
  レバ、只今ノ輕種ヲ中間ニ使ツテヤルト云
  フ種牡馬ヲ作ルコトヲヤラナケレバナラヌ、
  其ノコトハ先程申上ゲマシタ時期ヨリモツ
  ト早ク來ル、斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=20

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• 021・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　能ク分リマシタガ、兎
  ニ角血液ノ問題ハアナタハ中々難カシイ
  ト仰シヤルケレドモ、馬產ノ方ヲ取扱ツテ
  居ルアナタノ下ノ、本當ノ技師ノ連中ガ、
  他ノ方ニ於テ血液ヲ無暗ニヤカマシク言ツ
  テ、何「パーセント」ハドウダト非常ニ窮屈ニ
  ヤツテ居ルコトハ御存ジノ通リ、サウシテ
  重要ナル輕種ノ所デハ尙ホ迷フト云フコト
  ヲ申上ゲタノデ、ソコハ論議シマセヌカラ、
  ドウカ御〓究ヲシテ戴キタイ、今御答辯ニ
  ナツタヤウニ、輕種ガ國策上必要デアルト
  云フコトデアレバ、是ガ馬ノ改良增殖上絕
  對ノ必要條件デアルノデアリマス、サウシ
  テ競馬ト云フモノハ優良ナ輕種種牡馬取得
  ノ唯一ノ機關デアツタノデアリマスガ、今
  度是ガ中止ニナツタ、開催停止ノ關係デ、
  輕種ノ價格ト云フモノハ全國的ニ見テ相當
  下落ヲ來シテ居ルコトハ御承知デアリマス、
  輕種ノ生產ノ方ノ熱意モ相當ニ冷メテ居
  ル、其ノ生產スル者ヲシテ相當ニ動搖セシ
  メテ居ルノデアリマスガ、洵ニ此ノ點ハ憂
  慮スベキ事態デアルト思フノデアリマス、
  承ル所ニ依リマスト、今後東京、京都ノ二
  箇所ニ於テ輕種ノ能力〓究ヲナサルト云フ
  コトヲ聞イテ居リマスルガ、此ノ二箇所ノ
  ミデ實際輕種ニ對スル所ノ一般ノ熱意ト云
  フモノヲ維持、昂揚セシメルコトガ出來ル
  カドウカト云フコトヲ甚ダ疑ツテ居ルノデ
  アリマス、此ノ能力檢定ノ施設モ、是ハ相
  當ニ賞金ノ增加ヤ其ノ他必要ナ方策ヲ執ラ
  ナケレバ其ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナイ、
  斯ウ思フノデアリマスガ、政府ノ方デ輕種
  種馬ニ對スル能力檢定ノ規模方策ヤ輕種種
  馬維持ノ方策ト云フモノハ定マツテ居ラレ
  ルコトト思フノデアリマス、其ノ問題ヲ御
  說明願フコトガ一ツ
  ソレカラ能力檢定ニ對シテ是マデ非常ナ
  疑問ガアツタノデアリマスガ、種馬統制法
  ニ依ルト、輕種デアツテモ體幅骨量ニ富ム
  馬ヲ拵ヘロト云フコトデ方針ヲ定メテ居ラ
  レタ、所ガ實際競馬ノ方デ購買シタノハ走
  力一點張、速イ馬ヲ買フト云フコトニナツ
  タ、尤モ走力關係ノ競爭ニ重點ヲ置イテヤ
  ツタカラソレハ言フマデモナイ、サウスル
  ト政府ノ說明ノ種馬統制法ニ依ル方針ト相
  反スルコトノ〓究ヲ是マデヤツタヤウニ私
  ハ見テ居ルノデアリマス、今後斯ウ云フ大
  キナ切替ヲスル場合ニ、此ノ點ヲ改メナイ
  ト、政府ノ方針ト競馬ト云フモノト相反ス
  ルコトニナリマスト、國策上由々シキ問題
  ト思フノデアリマス、此ノ能力檢定ト云フ
  コトハ、走ツテ速ケレバ宜イト云フコトニ
  重點ヲ置クカ、能力ノ中ニモ體力ガ備ハツ
  テ、政府ノ方針通リ、體力、骨量、體高、
  一切ノ問題ハ馬政方針ニ適ツタモノガヤハ
  リ能力ノ檢定ニ合致シタモノダト云フコト
  ニ重キヲ置クカ、其ノ檢定方法モ明確ニシ
  ナイト、今マデノ實際問題ニ依ツテ迷ヒヲ
  生ジタコトヲ明カニシナケレバナラヌ、斯
  ウ思フノデアリマス
  ソレカラ是マデ競馬ト云フモノハ馬事振
  興ニ多大ナ貢獻ヲナシテ、殊ニ收入關係ニ
  於キマシテハ、直接馬事振興ニ振向ケテ使
  用セラレタル金ハ四百萬圓、ソレカラ政府
  ノ納付金ガ三千萬圓、其ノ他馬劵稅等ニ依
  ツテ收入シタモノハ尙ホ三千萬圓以上ニナ
  ツテ居ルノデアリマス、是等ハ間接ニ馬事
  各般ノ豫算ノ財源トナシ居ル狀態デアルノ
  デアリマス、此ノ財源ハ一朝ニシテ消滅シ
  テシマツタノデアリマスガ、今日ノ馬生產
  事業ハ、軍馬資源ノ涵養、食糧增產、輸送
  力ノ增進等ノ爲ニ益〓擴充强化ヲシナケレ
  バナラナイ場合デアリマスカラ、殊ニ競馬
  ニ依ル收入ガナクナツタトシテモ、馬事一
  般ノ施設ニ對シテ惡影響ヲ及ボスヤウナコ
  トガナイヤウニ努メテ居ラレルト考ヘテ居
  ルノデアリマスガ、先ヅ大キナ切替ニ依ツ
  テ政府ノ方デ之ニドウ云フ對策ヲ執ツテ、
  元ノヤウナ豫算面ニ對シテ關係ノナイヤウ
  ナコトニ御努メニナツテ居ルカヲ伺ヒタイ
  ノデアリマス
  ソレカラ輕種ノ方ノ今マデノ所有者關係
  ガ今申上ゲタ通リニ大分動搖ヲ來シテ居ル
  ノデアリマシテ、是等ノ生產者ニ對シテ補
  助ノ豫算等モ御取リニナツテ居ルノデアリ
  Wくり、ソレ等ヲ具體的ニ申セバドウ云フ方
  策ニ依ツテ食ヒ止メルコトニナルカ、此ノ
  補助政策ヲ誤ルトスルト、相當ニ輕種ノ生
  產方面ニ影響ガアルヤウニ考ヘラレルノデ
  アリマス、ソレ等ノ問題ヲ併セテ御答辯ヲ
  願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=21

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• 022・岸良一

  ○岸政府委員　第一點ノ輕種ノ價格維持、
  是ハ要スルニ輕種維持ノ問題ダト思フノデ
  アリマスガ、是ハ勿論從來ハ競走賞金ニ依
  ツテ維持サレテ居ツタノデアリマスシ、大
  體私共ノ考ヘ方モ、檢定ヲヤリマス、其ノ
  結果トシテ賞金ヲ出ス、ソレヲ通ジテ維持
  ヲ圖ツテ行ク、是ハ同時ニ今マデノ輕種ニ
  關係シテ居タ人々ノ興味ヲ依然此ノ問題ヲ
  中心ニシテ繫イデ行ツテ、サウシテ全體ト
  シテ輕種ノ維持ヲ圖ラウト云フ考ヘデアリ
  マスルカラ、ソレヲ通ジテヤラウト云フ考
  ヘデ居リマス、又之ニ對シマシテ或ハ「アン
  グロアラブ」系、或ハ「アラブ」系ノモノニ付
  キマシテハ競馬會ヲシテ買取ラス、サウシ
  テ從來ヤツテ居リマスヤウニ同好者ニ配付
  ヲシテ行クト云フヤウナコトヲシテ、生產
  ノ維持ニ資シタイ、尙ホ今囘ハ生產維持ノ
  關係ヲ考ヘマシテ、必要ニ應ジテハ競馬會
  ヲシテ「サラブレツド」系ノモノヲモ購入シ
  得ル途ヲ開クコトニ致シテ居リマス、是等
  ノモノニ依リマシテ、私ハ輕種ノ維持ヲ致
  シテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス、價格
  等ニ付テハ、或ハ打明ケタコトヲ御話スレ
  バ、多少ノ影響ハアルカト思ヒマスルガ、
  是等ノコトヲヤツテ行キマシタナラバ、大
  體サシタル影響ガナクテ行キ得ルノデハナ
  カラウカト思ツテ居リマス、是ハ色々各方
  面ノ情勢モ聞イテ居リマスガ、行ケルンヂ
  ヤナイカト考ヘテ居リマス、將來ニ於キマ
  シテハ色々事情ニ從ヒマシテ私共モ方法ヲ
  考ヘテ行キタイト思ツテ居リマス、能力ノ
  檢定ハ輕種ナルモノノ造成ノ經過カラ考ヘ
  テ、是ハヤハリ競走ニ依ル外ナイノデアリ
  マス、今囘ノ變革ニ際シマシテ勿論御話ノ
  ヤウナ體幅骨量共ニ富ムモノデ、其ノ素質
  ガ先程ノ有能馬造成上役立ツテ行クト云フ
  ヤウナモノヲ造ラナケレバナラヌノデアリ
  マスカラ、御話ノ點等ニ付キマシテハ、種
  馬檢定ノ際ニ十分考ヘテ眞ニ能力檢定ニ相
  應シイモノヲ選ビ出シテ行クト云フ考ヘデ
  居ル譯デアリマス、ソレカラ從來ノ競馬收
  入ガ馬事振興ニ貢獻シタ、隨テ是ガ止マツ
  タナラバ一般財政上ニ影響ガナイカト云フ
  ヤウナ御尋ネデアツタト思ヒマスガ、是
  ハ此處デ御說明申上ゲルマデモナク、直接
  間接色々ニ潤ツテ居ツタ譯デアリマス、併
  シ今囘戰力增强ノ爲ニ之ヲ一時停止スルノ
  デアリマシテ、之ニ代ルベキ施設ヲ取ツテ
  ヤルヤウニナツタノデアリマスルノデ、只
  今ノ御懸念ノヤウナ點ヲモ考ヘテヤツテ居
  ル譯デアリマス、勿論豫算等ノ考へ方ニ付
  テモ、現在國防上其ノ他輸送上必要ナル部
  面ニ對シテ、必要ナルモノニ付テハ是ハ當
  然出シテ行ク筋合ノモノデアルト思ツテ居
  リマス、是ハ今囘ノ競馬停止ニ付テモ、勿
  論サウ云フ點ハ考慮シテ行キタイト思ツテ
  居リマス、將來我々トシテモ違算ノナイヤ
  ウニシテ行キタイト考ヘテ居リマス
  尙ホ今回ノ競馬停止ニ依リマシテ競走馬
  ガ減ルト云フヤウナ關係デ、輕種ノ一部ニ整
  理サレルモノガアル、是等ニ對スル救濟ヲド
  ウシテ居ルカト云フ御尋ネデアツタト思ヒ
  マスガ、是等ニ付テハ色々ナ方面カラ其ノ影
  響ノナイヤウニ努メタイト思ツテ居リマス、
  勿論可ナリ金ヲ掛ケテヤツテ居ル仕事デア
  リマスノデ、其ノ影響ヲ全然ナクナスト云
  フ譯ニモイカヌト思ヒマスガ、出來ルダケ
  ノコトヲヤルト云フコトデ進ンデ居リマス、
  競走ニ參加シテ居ルモノノ中デ止マルモノ
  ニ付キマシテハ、或ハ其ノ販路ヲ斡旋シタ
  リ、或ハ必要ニ應ジテ其ノ一部ヲ競馬會ニ
  購入サセタリ、或ハ全然止マルモノニ付テ
  ハ助成金ヲ出シマシテ、サウシテ此ノ打撃
  ノ一部ヲ緩和スル考ヘデヤツテ居リマス、
  ソレカラ一番困ルノハ生產シテ二歲三歲、
  ソレカラ今年ノ春生レルト云フヤウナモノ
  ニ付キマシテモ、只今申上ゲマシタト同ジ
  ヤウニ、或ハ其ノ販路ニ付テ朝鮮、臺灣
  行キノモノニ努メ、或ハ他ノ用途ニ向ケル
  モノニ付テ之ヲ配慮スルト云フ外ニ、競走
  中ノ馬ト同ジヤウニ値下リニ對シマシテ、
  金額ハ少イノデアリマスガ、補助金ヲ交付
  スルコトニシテ居ルノデアリマス、是ハ色
  色ノ方面カラ損失ヲ少クスルヤウニスルト
  云フ考ヘデヤツテ居リマス、尙ホ其ノ他輕
  種ノ殘ルモノニ付テハ成ベク中間種種牡馬ニ
  供用シテ行ク、是ハ私モ各地ヲ步イテ當ツ
  テ見マシタケレドモ、一部デハ中間種種牡
  馬ニ供用シテ吳レルヤウニ希望シテ居ル所
  モアリマシテ、ソレ等ニ對シテ中間種種牡
  馬ニ供用スル、是等ニ付キマシテハ又他ノ
  方面カラモ援助シテ、今ノ損失ヲ成ベク少
  イヤウニシヨウト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=22

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• 023・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　只今ノ御答辯デ大體分
  リマシタガ、今後トモ輕種ニ依ル輕乘馬種
  牡種馬等ノ購買ハ、競馬會ニヤラセルト云
  フ御話デアリマシタガ、今度ハ政府ノ金デ
  オヤリニナルカラ、政府自身購買ニナツテ、
  政府ノ方針ニ基ク馬ヲ買ツテ、サウシテ競
  馬會ニソレヲ贈與スルトカ、或ハ配置スルト
  云フコトノ方法ヲ執ラレル方ガ得策デハナイ
  カト考ヘルノデアリマスガ、一體購買スル
  ト云ツテモ、相當ノ人件費モ必要トスルノ
  デアリマス、今日各購買地カラ購買スル場
  合ニハ馬政局カラモ、或ハ其ノ他馬ノ關係
  ノ役人ガ多數出張シテ居ラレルノデアリマ
  ス、殊ニ競馬會カラモ此ノ勞力不足ノ場合
  ニ一頭、二頭或ハ三頭、四頭ノ馬ヲ買フ爲
  二、一人ヅヽ各地域ニ出張スルト云フヤウ
  ナコト、コンナコトハ今日デハ許サレナイ
  事情ニアルト思フノデアリマス、ナゼ競馬
  會ニヤラセナケレバナラヌカト云フ事情ト、
  之ヲ購買スルト政府ノ方デ補助ト云フコト
  ニナルノデアリマセウガ、隨テ中々競馬會
  トナルト能力檢定ト云フコトハ走力檢定ニ
  重點ヲ置クノデアリマシテ、只今御答辯ヲ
  戴イタヤウナ政府ノ方針ノ體幅骨量ニ富ム
  ヤウテ種馬ト云フモノハ値段モ安ク、又購
  買ヲ忌ムヤウナ關係モ今マデニモアツタノ
  デアリマス、サウ云フ點ヲ此ノ際ニ改メナ
  ケレバイカヌダラウト思フノデアリマス
  尙ホ競馬ノ將來ノ問題デアリマスガ、ヤハ
  リ競馬ニ依ル馬改良ト云フコトニ、是ハ從
  來ノ重點ヲ此處ニ置イテヤツテ來タノデア
  リマス、將來ドウシテモ競馬ニ依ツテ馬ノ
  改良ノ財源ニスルト云フヤウナコトノ大キ
  ナ考ヘガアルトスレバ、ドウシテモ此ノ戰
  爭事情ガ止マルト競馬ヲ再開シナケレバナ
  ラヌ、再開スルトスレバ、今施設等モ中々
  變ツテ居ルノデアリマセウカラ、相當ナ金
  額ニ上ル準備モ要ルト思フノデアリマス
  サウ云フコトノ準備ガ出來テ居ラレルカド
  ウカ、假ニ之ヲ再開スルトシテモ今ノ競馬
  會ノヤウナ制度ニシテオヤリニナツテ宜イ
  カドウカ、相當ニ此ノ際大キナ改革ヲシナ
  ケレバナラヌ問題ヂヤナイカト考ヘルノデ
  アリマス、餘リ國民ニヲカシナコトヲ見セ
  付ケルコトハ、法律ガ幾ラアツテモ、思想
  問題トシテ宜クナイト思フノデアリマス、
  競馬ニ依ル收得金ト云フモノハ取リモ直
  サズ法律ガ許シテ居ルケレドモ、一種ノ賭
  博デアツテ、大キナテラ錢ヲ取ルト云フコ
  トニ過ギナイノデアリマス、其ノ收入ニ依
  ツテ馬ノ改良ヲヤツタナント云フコトモア
  ルケレドモ、改良シタ外ニモ競馬會ハ大キ
  ナ金ヲ儲ケテ居ルノデアリマス、其ノ儲ケ
  テ居ル所ニ馬政局長官ヲヤツタ者ガ辭メル
  ト辷リ込ンデ入ツテシマフ、或ハ馬產部長
  ヲヤツタ者ガ辷リ込ンデ、一年カ半年ヤツ
  テ辭メレバ十萬圓退職金ヲ貰フ、ソンナコ
  トヲ見セ付ケラレテ居ル馬ノ生產者ハドウ
  思ヒマス、ソレデ地方ノ馬事團體ノ產馬組
  合ナンカハ冷笑シタ、是ハ輕種ノ生產地デ
  アルカラ多額ノ援助ヲシテ貰ヒタイト願ヒ
  出タガ、ソレニ對シテ政府ガ許サヌト言ツ
  テ、多寡ノ知レタ二千圓出シテ是デドウカ
  ヤツテ吳レト言フ、自分達ガ貰フ時ニハ十
  萬圓モ貰ツテ知ラヌ顏ヲシテ居ル、ソンナ
  コトデ競馬會ニ同情スル連中ナドハ一人モ
  アリマセヌ、アナタ方監督ノ地位ニ立ツテ
  居ル方々ガサウ云フコトデハ馬ヲヤツテ居
  ル者ハシツカリヤラヌデヾソンナ連中デハ
  迚モ競馬ナンカヤレルモノデハアリマセヌ
  カラ、相當此ノ問題ニ對シテハ御考ヘヲ願
  ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、隨
  テ今日競馬ノ方ハ中止ニナツタガ、無論是
  ハ軍ノ方ノ要求トカ色々ナコトデヤツタノ
  ダラウケレドモ、之ニ對シテハ誰モ同情ヲ
  寄セテ居ラヌ、全國デ實際輕種ヲヤツテ居
  ル者スラ不滿ヲ持ツテ居ル、一體競馬ノ方
  ノ連中ガボヤ〓〓シテ居ルカラ、コンナコ
  トニナツタンダト不平バカリ言ツテ居ル狀
  況デアル、ヤハリ競馬會ノ中ニモ有力ナ人
  物モアリマスシ、馬事方面ニ對シテ非常ニ
  貢獻シタ方々モアルコトハ分ツテ居リマス
  ガ、中ニハ雲助大臣モ居ルコトヲ見逃シテ
  ハナラヌ(笑聲)ソコハ監督ノ上カラ十分一
  ツ御取締ヲ願ヒタイノデアリマス、其ノ點ヲ
  申上ゲテ置キマス、競馬ノ中止ノ問題ハ此
  ノ程度ニシテ打切ルコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=23

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• 024・岸良一

  ○岸政府委員　再開ノ問題デスケレドモ、
  是ハ既ニ新聞等ニモ出シテ居リマスガ、今
  度ハ戰力增强ノ爲ニ其ノ設備ヲ持ツテ行ク
  譯デアリマスカラ、是等ノ利用ニ付テモ大
  體關係方面ト協定ガ出來テ居リマス、サウ
  云フ事情ガ去レバ是ハ當然ヤリタイト考ヘ
  テ居ル譯デアリマス、ソレ等ノ準備ニ付テ
  ハ今囘ノ措置ヲスル際ニ基本ノ資金ハ之ヲ
  確保シテ-其ノ運營ノ仕方ハ別デス、ケ
  レドモ、確保シテ行クコトニナツテ居リマ
  スカラ、其ノ點ハ心配ナイト思ヒマス、競
  馬會ノ內容ニ付テ色々御話ガアリマシタガ
  必ズシモソレガ私ハ全部當ツテ居ルカドウ
  カ分リマセヌガ、私共トシテハ十分監督シ
  テ居ル積リデアリマスカラ、御諒承願ヒタ
  イ、又將來ニ對シテハドウ云フヤウナ機構
  デ仕事ヲスル、競馬ヲスルトカ、或ハドウ
  云フ風ニシテヤツテ行クカト云フコトハ十
  分考ヘテ行カナケレバナラヌト思ツテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=24

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• 025・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　モウ一ツ簡單ニ伺ヒマ
  ス、今ノ馬事會ノ問題デアリマスガ、是ハ馬
  事團體ヲ統合シテ競馬會モ此ノ中ニ統合サ
  レタ筈デアリマスガ、然ルニ競馬會ノ方ハ
  輕種ガ我物顏ノヤウニオヤリニナルシ、又
  政府ノ方モ是ハ競馬會ニヤラセルト云フコ
  トニナツテ居ルノデアリマス、馬事團體統
  合ノ馬事會ノ立場ト云フモノハ、輕種ニ對
  シテ分離シタモノニナルノデスカ、ソレニ
  對シテ指導力ガチツトモナイコトニナルノ
  デスガ、其ノ點ヲハツキリシテ貰ハヌト、
  馬事會ト云フモノハドウシテモ競馬ノ勢ヒ
  ニ引カレテ、統合ハシタガ實際ハ分離シテ
  居ルヤウナ感ジガ致スノデス
  モウ一ツハ馬事會ノ運營デアリマスガ、
  之ニ對シテ役人ノ古イ方々ガ澤山居ツテ民
  間ノ理事ガ一人カ二人デアル、而モ理事會
  ガ偶ニ開カレテ幾ラ發言シテモ用ガ足リヌ
  狀況デアル、又各地方ノ聯合會長ノ會議ガア
  ツテモ皆オツカナビツクリデ發言スル者ガ
  ナイ、是ハ御承知ノ通リデアル、アノヤウナ狀
  態デハ下情上通ナント云フコトハ出來ナイ、
  何故言ハナイカト云フト皆恐レヲナシテマシ
  フ、憎マレロヲ利クト何カデ又叩カレルトイ
  カヌト云フノデ皆引込ンデシマフ、是ハ率直
  ニ申上ゲマスガ、モウ少シ改良シテ民間事
  情ヲモツト織込ンデ貰ヒタイ、今デハ農林
  省ノ事務ノ出店ノヤウナ恰好デアル、アナ
  タ方モ軍ノ方デモ能ク內容ハ御分リデセウ
  ケレドモ、第一線ノ移リ變リト共ニ民間事
  情ガ非常ニ變ツテ居ルノデアルカラ、モウ
  少シ民間事情ヲ織込ンデ、民間事情ガ率直
  ニアナタ方ニ反映スル機關ニシテ欲シイト
  思フノデアリマス、モウ少シ之ニ對シテ改
  良ヲ加ヘル御方針ガアルカナイカ、ソレダ
  ケヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=25

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• 026・岸良一

  ○岸政府委員　馬事會ノコトヲ御話ガアリ
  マシタガ、民意ヲ反映スル所ガナイト云フ
  御話デアリマスガ、私就任以來成ベク御話
  ノヤウナ趣旨デ指導ヲシテ參ツテ居リマス、
  勿論十分デナイト感ゼラレルデアリマセウ
  ガ、將來トモ其ノ點ハ十分考ヘテ行カナケ
  レバナラヌ、其ノ點ニ付テハ異存ハゴザイ
  マイム

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=26

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• 027・深澤吉平

  ○深澤委員長　午後一時マデ休憩致シマス
  午後零時六分休憩
  午後一時二十五分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=27

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• 028・深澤吉平

  ○深澤委員長　休憩前ニ引續キ開會致シマ
  ス-河野君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=28

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• 029・河野一郎

  ○河野(一)委員　是ヨリ數點ニ亙ツテ農商
  當局ニ御尋ネヲ致シタイノデアリマスガ、
  質問ニ入ルニ先ダツテ一言御願ヒ申上ゲテ
  置キタイト思ヒマス、第一ハ時間ニ制限ガ
  アリマスカラ御答辯ヲ成ベク簡潔ニ願ヒタ
  イ、第二番目ニハ我々ハ希望ヲ申上ゲル
  ノデアリマスカラ、希望的御答辯ハ差控ヘ
  テ戴キタイ、具體的ニ申シマスト、斯ウシ
  テ欲シイト云フ希望ニ對シテ、サウヤリタイモノ
  デアルト云フヤウナ答辯デハ答辯ニナラヌ、
  ソレハ出來ルカ出來ヌカト云フコトヲ御答
  辯願ヒタイ、是ハ次官ガオイデノ時ニ特ニ
  申上ゲタカツタノデアリマスケレドモ、昨
  日ノ同僚ノ質問ニ對シテ御答ヘニナツテ居
  ルコトデモ、ヤル意思モナイコトヲヤル積
  リデアルト云フヤウナ答辯ヲシテ居ラレル
  ヤウニ見受ケラレル點ガアル、サウ云フコ
  トガ新聞ニ載ルト、農民ヲ迷ハス、例
  擧ゲマスト、豆粕ノ配給ヲ飼料ニスルヤウ
  ニシテ吳レト云フ質問ニ對シテ、サウスル
  積リデアルト云フヤウナ答辯ヲシテ居ラレ
  マスガ、本當ニサウ云フコトヲヤル積リデ
  アルカドウカ、私ハ疑ヒヲ持ツ、農商省ハ
  サウ云フコトヲヤル積リハナイト思ヒマス、
  現ニヤツテ居ラヌ、ヤラヌコトヲヤルヤウ
  ニ答辯スルノハ、非常ニ農民ヲ迷ハス、私
  モ是カラ具體的ノ問題ヲ色々御尋ネスルノ
  デアリマスガ、其ノ際ニ、ヤラヌコトハヤ
  ラヌ、出來ヌコトハ出來ヌト御答辯願ヒタ
  イ、此ノ二ツノ點ヲ特ニ御願ヒ申上ゲテ質
  問致シマス
  第一ハ、現在行ツテ居ラレマスル米ノ供
  出方法ニ付テハ、既ニ色々各縣ノ事情モ御
  分リデゴザイマセウシ、今後ニ於テ麥ノ供
  出其ノ他ニ付テ改善ヲシナケレバナラヌ點
  ガアルト考ヘルノデアリマス、今年ノ供出
  ノ方法ハ巧クナカツタ、是ハ政府モ一應御
  認メニナルト思ヒマスケレドモ、ドウ云フ
  點ガ拙カツタト考ヘテ居ラレルカ、ドウ云
  フ點ヲ直サウトシテ居ラレルカ、又是ガ此
  ノ儘デ出來秋マデズル〓〓行ツテシマツテ
  サウシテ地方ノ役人ヲ集メテ斯ウ云フ方法
  デ供出シロト云フコトヲ命令サレル、ソレ
  ガ譯ノ分ラヌ儘ニ、農民ニ向ツテオ前ハ是
  ダケ供出ヲスベキダト云フ命令ニナツテ
  來ル、是ハ非常ニ農民トシテ不可解ナ點ガ
  多イシ、供出ノ熱意ニ關係スルト思ヒマス
  カラ、此ノ機會ニ政府ノ所見ヲ承ツテ置キ
  タイト思ヒマス
  時間ヲ儉約スル意味ニ於テ續ケテ申上ゲ
  タイコトハ、一方ニ於テ農村ノ各人ノ保有
  量ヲ細カク決メナガラ、其ノ保有量ノ中カ
  ラ三割ヲ供出シロ-是ハ地方ニ依ツテハ
  サウ云フ命令ニナツテ居ル-ト云フヤウ
  ナコトヲシテ居ラレルガ、是デハ一體保有
  量ハ何ノ意味カ譯ガ分ラナクナツテ來ル、
  ソレ位ナラ初カラ保有量ヲ變ヘテシマツタ
  ラ宜イ、保有量ニ對シテ三割出スノダト云
  フコトナラバ、ソレダケ保有量ヲ殘スコト
  ハ要ラヌ、殘スコトハ要ラヌナラ要ラヌヤ
  ウニ決メテシマヘバ宣イ、一體ドツチガ主
  デアルカ、保有量ガ絕對主デアツテ、三割
  出スノガ從デアルカ、ソレトモ各縣デヤツ
  テ居ルヤウニ初カラ三割クツ付ケタモノデ
  ヤルノカ、將來ハドウスル積リデアルカ、
  斯ウ云フ點ニ付テドウ御考ヘデアルカ
  更ニ斯ウ云フヤウナヤリ方ヲ致シマスト
  縣ト縣トノ境ノ村デハ、アチラノ縣デハ斯
  ウ云フヤリ方、コチラノ縣デハ斯ウ云フヤ
  リ方ダト云フヤウニ、非常ニヤリ方ニ違ヒ
  ガアル、又各村々トノ間ニモ違ヒガアル、各
  農家每ニ違ヒガアル、斯ウ云フヤウナコト
  デハイカヌ、是ガ個人ノ發意ニ依ツテ違ヒ
  ガアルノナラ結構デアルガ、上カラノ命令
  トシテノ供出方法ニ違ツタ所ガアルノハ適
  當デハナイト云フヤウニ私ハ思フノデアリ
  マスガ、是等ニ對スル御所見如何デアリマ
  セウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=29

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• 030・湯河元威

  ○湯河政府委員　米麥ノ供出方法ニ付キマ
  シテハ、實ハ吾々モ非常ニ注意深クヤツテ
  來タ積リデアリマスガ、何シテモ色々複雜
  ナ事情ガゴザイマスノデ、是ガ改善ニ付テ
  ハ絕エズ考ヘテ居ルノデアリマシテ、每年
  供出ヲ命ズル際ニ、供出方法ニ付テノ要綱等
  ハ書換ヘテヤツテ居リマス、昨年モ書換ヘ
  マシタガ、今年モ只今ヤツテ居リマス實情
  ハ周密ニ調査致シマシテ我々ノ見ル所、又
  地方ノ其ノ衝ニ當ル人々乃至ハ本當ノ生產者
  農家ノ人達ノ氣持等モ能ク酌ミ取リマシテ、
  ソレデ改善スベキ點アラバ私共トシテハ飽
  マデモ之ヲ改善シテ、實情ニ適スルヤウニ、
  供出ガ滑カニ氣持好ク參リマスヤウニ處理致
  シタイト思ヒマス、具體的ニ只今ドウ斯ウ
  ト云フコトニ付キマシテハ供出ノ最中デ
  ゴザイマシテ、只今我々ガ一、二ノ點ニ付キ
  マシテ意見ヲ申上ゲルコトモドウカト思ヒマ
  スノデサウ云フ氣持デ以テ處置シテ居リマ
  スコトヲ御諒解戴キタイノデゴザイマス、
  今後トモ勉强シテ參ル積リデゴザイマス
  保有量ニニ付キマシテノ御質疑デゴザイマ
  スガ、實ハ保有量ト申シマスモノハ、農家ノ生
  活ヲ完全ナラシムル爲ニ米ヲ全部供出セシム
  ルコトハ宜クナイト云フノデ認メタ保有量
  デゴザイマスガ、是モ過去二、三年ノ經過ニ徵
  シマシテ、實ハ〓糧事情ノ推移ニモ顧ミマ
  シテ、色々ニ動イテ來テ居ルノデゴザイマ
  ス、初メハ保有量ト云フモノハ之ヲ米デ殘
  スト云フコトニ非常ニ强イ感ジガゴザイマ
  シタガ、其ノ後ノ情勢ヲ見テ居リマスト、ソ
  レヲ殘シテ供出ヲ求メマシテハ足リマセヌ
  ノデ、配給ノ上ニ於キマシテモ所謂綜合配
  給ヲシテ居リマスノデ、保有量ノ上ニ於キ
  マシテモ、農家ノ手許ニゴザイマス所ノ米
  以外ノ〓糧ノ賦存狀況ヲ考ヘマシテ保有量
  ノ算定ヲサセル、サウ云フヤウナ供出ヲ求
  メテ居ルノデゴザイマス、考ヘ方トシマシ
  テハ三割ヲ保有量ノ中カラ出セト云フヤウ
  ナ趣旨ノ指導デハゴザイマセヌ、各〓ノ農家
  ノ米以外ノ、米ニ代替シ得ル食糧ノ賦存狀
  況ヲ見テ、保有量ト睨ミ合セテ、此ノヤウ
  ナモノヲ出シテ吳レト云フ趣旨ノ指令ヲ致
  シテ居ルノデゴザイマス、今後此ノ保有量
  ノ點ニ付キマシテハ、色々事情ノ移リ變リ
  モゴザイマスノデ、先程申上ゲタコトト同
  ジヤウニ十分注意シテ處理シテ參ル積リデ
  ゴザイマス
  ソレカラ地域的ニ供出ノ度合等ガ違ツテ
  居ルト云フ御指摘デゴザイマスガ、是ハ指
  導ノ態度ト致シマシテハ、實ハ我々ハ一本
  ノ指導ヲシテ居リマス、無論地方ノソレム
  ノ實情ニ卽應シタコトハヤツテ吳レ、斯ウ
  申シテ居リマスガ、供出ノ指導致シマスル
  要綱等ハ、農商省ニ於キマシテモ可ナリ細
  カク認メテ地方ニ渡シマシテ、ソレノ實施
  ニ當リマシテノ細カナ注意ヲ致シテ居ルノ
  デアリマス、サリナガラ澤山ノ事例ノ中デ
  ゴザイマスノデ、或ハ境ヲ接シタ所ニ於テ
  凸凹等ガアリマシテ、非常ニ思ハシカラヌ
  結果ヲ來シテ居ルヤウナ實例ガアラウカト
  存ジマスガ、是等ノ點ニ付キマシテハ、供
  出ヲ圓滑ナラシムル上カラ申シマスト、色々
  不都合モゴザイマセウカラ、尙ホ注意シ
  テ參リタイト思ツテ居リマス

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• 031・河野一郎

  ○河野(一)委員　今ノ御答辯ヲ伺ツテ居リ
  マスト私ハ非常ニ疑問ヲ持チマス、是ハ次
  ノ質問デ御答ヘヲ願ヘレバ宜シイノデス
  ガ、サウスルト政府ニ於キマシテハ、我々
  ガ稱シテ還元米ト言ツテ居リマスガ、本年ハ
  農村ニ對シテ還元米ヲドノ位用意シテオイ
  デニナルノカ、還元米ヲスル意思ガアルノ
  カナイノカ、之ニ付テ具體的ニ御說明ヲ願
  ヒマセヌト、農村ニハ此ノ問題ニ付テ色々
  ナ話ガアリマスカラ、後ニ迷ヒノ殘ラヌヤ
  ウニ御答辯願ヒタイト思ヒマス

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• 032・湯河元威

  ○湯河政府委員　此ノ點ハハツキリ申上ゲ
  テ置キタイト思ヒマスガ、米ノ還元配給ハ
  ヤラナイト云フコトヲ、供出ノ當初カラ地
  方ニサウ云フ指示ヲ致シテ居リマス、地方
  ニ於キマシテモ其ノ積リデ生產者ヲ指導シ
  テ居ルコトト信ジテ居リマス、此處ハ併シ
  具體的ニハツキリ申ゲ上マスガ、凡ソ米ノ
  供出ヲ求メマシテ而モソレガ取過ギデアツ
  タ、ソレヲ農家ニ戾スト云フコトニナリマ
  スト、徒ニ手數ガ掛カルバカリデナク、供
  出スル人ニ於テモ色々非常ニ氣持ノ惡イ所
  ガ出來マスノデ、尙ホ經濟的ニ申シマシテ
  モ、補給金等ノ問題ガゴザイマスノデ、我
  我ト致シマシテハ還元配給ト云フコトハヤ
  リタクナイ、斯ウ云フノデアリマス、サリ
  ナガラ元々農家ニ一年分ノ飯米ヲ持ツテ居
  ナイ者ガアリマス、之ニ對スル配給ハ從來
  トモゴザイマス、サウ云フ農家ニ對スル米
  ノ配給ハ考ヘテ居リマス、政府ガ一旦取上
  ゲタモノヲ戾スト云フ意味ニ於テノ、二重
  ノ手數ニナル米ノ還元配給ト云フコトハヤ
  ラセタクナイ、又ヤラセテハ面白クナイト
  云フノデサウ云フ指示ヲ致シテ居リマス、
  隨ヒマシテ御質問ノヤウナ還元配給米ハ幾
  ラ用意シテ居ルカト云フコトハ、我々トシ
  テハサウ云フモノノ具體的ノ用意ハアリマ
  セヌ、昨年アタリ還元配給ト云フモノニ付
  テ地方デ色々聲ガ出マシタ、サリナガラ先
  程申上ゲマシタヤウニ、農家ニハ米ヲ持ツ
  テ居ラズ、初メカラ供出ノ出來ナイ者ガゴ
  ザイマスガ、之ニ對スル配給ト、米ヲ出シ
  過ギタ爲ニ米ヲ又還元シナケレバナラヌ農
  家トゴチヤ〓〓ニナツテ居リマシテ、實情
  ニ於テ還元配給米ガ幾ラト云フコトハ非常
  ニ算定ガ困難デアリマス、併シナガラ昨年
  ノ供出ノ上ニ於テハ還元配給ガ行ハレテ居
  ツタト云フコトヲ我々モ知ツテ居リマス、
  今年ナドニ於テモ、若シモ米ノ供出ガ先程
  申シタヤウニ、米以外ノ需給ノ狀況ヲ見合
  ハシマシテ、供出ヲ致サセテ居リマス、或ハ
  今後ノ麥ノ引當、甘藷ノ引當デ進ンデ居ル
  ノデアリマシテ、是等ニ付キマシテ、外ノ
  食糧ガ手ニ入ラナカツタ、或ハ不作ダツタ
  ト云フコトデ、米ヲ出シタ農家ニ又食糧ヲ
  補給シテヤラナケレバナラヌコトモアラウ
  ト思ヒマス、我々ト致シマシテハ還元米ハ
  ナイト云フ方針ヲ執ツテ居リマスノデ、出
  來レバサウ云フコトハナカラシメテ行キタ
  イト存ジマスガ、都會地ニ於テモ綜合配給
  ヲヤツテ居ル際デアリマスカラ、寧ロ米以
  外ノモノヲ以チマシテ農家ニ〓糧ヲ補給シ
  テヤルト云フコトノ方ガ宜イト、斯ウ考ヘ
  テ居リマス、實情ニ卽應シテ能ク考ヘマス

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• 033・河野一郎

  ○河野(一)委員　サウスルト今ノ御答辯ヲ
  明瞭ニ致シマスガ、斯ウ諒承シテ宜シウゴ
  ザイマスカ、少クトモ米ヲ供出シタ農家ニ
  ハ米ノ配給ハナイ、長官ノ御話ノ飯米ノ足
  ラナイト云フコトハ、要スルニ自分デ作ツ
  タモノガ自分デ食フダケニ足ラナイ者ニハ
  ヤル場合ガアル、供出シナイ人ニ配給スル
  場合ハアルケレドモ、自分デ米ヲ作ツテ居
  ツテ、一旦供出シタ人ニ米ガ還元サレルコ
  トハアリ得ナイ、斯ウ諒承シテ宜シイノデ
  スカ

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• 034・湯河元威

  ○湯河政府委員　保有米ノ制度ト還元米ノ
  建前カラ申シマシテ、建前ハサウナツテ居
  リマス、我々ハ出來ルダケサウ云フコトニ
  ナルヤウニシタイト考ヘマス

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• 035・河野一郎

  ○河野(一)委員　今ノ政府ノ御考ヘガ、其
  ノ儘地方ニ傳ハリマスト非常ニ大キナ問題
  ニナルト思フ、全國トモ今食糧管理局長官
  ノ御考ヘナリ、御話ニナツテ居ルヤウナコ
  トハ斷ジテ考ヘテ居ラヌ、地方長官ハ絕對
  ニサウ云フコトヲ以テ指導シテ居ラナイノ
  デス、是ハ行政ノ誤リデアリマス、農商省
  ガ若シサウ云フコトハ絕對ヤラヌト云フ御
  考ヘナラバ、地方長官ニ供出ノ命令ヲサレ
  ル時ニ、其ノ點ヲナゼモツト徹底的ニ能ク
  言ツテ置カナカツタカ、少クトモ各農家ニ
  ハ-斯ウ言フ河野一郞モ、後カラ配給ス
  ルカラ一應出セト云ハレタノデ出シテ居リ
  マス、私ハ配給ヲ受ケル積リデ居リマス、
  是ハ獨リ私ダケデハナイ、多數ノ農家ガサ
  ウナンデアルソレヲ全然配給ヲスル意思ナ
  シ、萬々已ムヲ得ザル場合ハ例外ガアルカ
  モ知レナイガ、一應サウ云フコトヲヤル意
  思ハナイノダト云フヤウナコトデアリマス
  レバ、全國ノ農民ヲ誤ラスコト甚ダシイモ
  ノデアリマス、若シサウ云フヤウナコトヲ
  直チニ御訂正ニナラナケレバ、今マデハド
  ウデアツテモ、今日直チニ、今年ハ間違ツ
  タ、還元シテヤルノダト云フヤウニ、其ノ
  思想ヲ御訂正ナサリ、還元米ノ用意ヲナサ
  ラナケレバ、農民ハ政府ニ對シテ非常ニ不
  滿ヲ持チマス、何デモ宜イカラ一應數字ヲ
  揃ヘロト云フコトデ揃ヘタ、出來ルダケオ
  粥モ食ツテ居リマス、色々ナ雜穀モ使ツテ
  居ル、何トカシテ食ヒ延バシヲシナケレバ
  ナラヌト云フコトヲ考ヘテ食ヒ延バシヲシ
  テ居ル、如何ニ食ヒ延バシヲシテモ足ラヌ
  程度ニ供出ヲシテ居リマス、保有量ノ三割
  ヲ加ヘタモノデ是ダケ出セト云フコトデ命
  令ガアツタ、具體的ニ供出ノ方法ヲ私ガ承
  ツタノハ其ノ爲デアル、保有量ト云フコト
  ガ全然考慮ニ入レラレテ居ラナイ所ガ相當
  ニ多イ、全部トハ申サナイ、縣ニ依ツテ違
  フガ、少クトモ我ガ神奈川縣ノ如キハサウ
  デアル、上カラ縣ヘ、縣カラ地方事務所
  ヘ、地方事務所カラ町村ヘ向ツテ來タ場合
  ニハオ前ノ保有量ハ幾ラダ、オ前ノ穫
  レ高ハ幾ラ、其ノ差額ハ斯ウダケレドモ
  其ノ三割ヲ出シテ吳レト云フヤウナコト
  ヲ言ウテ來ナイ、オ前ノ村カラハ幾ラ供出
  セヨ、私ノ方ノ豐川村デハ一萬何千俵供
  出セヨト言ツテ居ル、其ノ算定ノ基礎ハ
  ドウダト言ツテモ分ラナイ、ソレガ實情
  デアル、私ノ村カラ幾ラオ米ガ穫レタカ
  ト云フコトガ分ラナイ、ソレガ實情デア
  ル、ダカラ後カラ還元シテヤルカラ此ノ際
  出セト言ツテ、警察、巡査ト村長サンガ來
  テ、一應是ダケノ量數ヲ揃へテ出セト云フ
  ノデ、私ノ村デハ全部供出シタ、ケレドモ
  私ノ村ノ村民ニ關スル限リ還元米ガアルト
  云フコトヲ固ク信ジテ居ル、私自身モサウ
  思ツテ居ル、ソレヲ今此處デ長官ガサウ云
  フコトハヤラナイト云フヤウナコトヲ言ハ
  レタナラバ、一體百姓ハドウナリマスカ、
  是ハ速カニ次官、大臣ト御相談ノ上、御協
  議ノ上、御變ヘニナルガ宜シイ、變ヘテモ
  ウ一遍聲明サレ直スガ宜シイ、然ラザレバ
  米ハ此ノ儘農民ニ還元ハシナイ積リダト云
  フコトガ傳ハツタナラバ、全國ノ農民ハド
  ンナニ失望スルカ分ラナイ、サウ云フ問題
  ガ行詰ツテ大問題ガ起ツテハ困ルト思ツタ
  カラ、特ニ此ノ問題ヲ承ツタノデアル、恐
  ラク今長官ガ御考ヘニナルヤウニヤラレル
  コトガ政府トシテハ當然ナンデス、當然デ
  アルガ、縣若シクハ其ノ下ノ役人ガ今年ノ
  農村ノ供出ヲ指導サレタ實情ハ今私ガ申上
  ゲタヤウニ、還元配給ヲヤルカラ出セト云
  フコトデ出シタ、其ノ食ヒ違ヒヲ何處デ調
  整スルカト云フコトヲ速カニ御考ヘニナル
  ガ宜シイ、是ハ重ネテ申上ゲテ置キマス
  次ノ質問ヲ致シマス、サウ云フヤウナ譯
  デアリマシテ、麥ノ供出ニ當リマシテハ速
  カニ案ヲ御決定ニナルガ宜シイ、能ク考ヘ
  ルトカ、能ク〓究シテトカ、先日ノ同僚ノ
  質問ニ對シテモ麥ハ此ノ程度ノ供出デアル
  カラト云フコトデアリマシタガ、去年ハ成
  程少カツタ、成程少カツタガ今年ハ米ノ方
  ノ事情カラ考ヘマシテ、去年ヨリモツト餘
  程供出ヲサセヌト政府ノ方ノ算盤ガ合ハナ
  イノデハナカラウカト思フ、政府ハ既ニ算
  盤ヲ持ツテ居ルノデ、ソレダケノモノヲ供
  出サセヨウトスレバ各府縣ニ又割當ヲナサ
  ルデセウ、割當ヲナサル場合ニ、其ノ基準
  ヲドウ云フ風ニシテ供出サセルカト云フコ
  トヲ、具體的ニ明瞭ニ生產者ノ納得ノ行ク
  ヤウニシテオヤリニナルガ宜シイ、其ノ埓
  內ニ於テ地方ノ實情ニ合フヤウニシテヤラ
  セル必要ガアル、而モ今度ハ中央農業會ノ
  ヤウナ有力ナ團體ガ出來テ居ル、各府縣ニ
  モ立派ナ農業會ガ出來テ居ル、是等ト相並
  行シテヤルガ宜シイ、今マデノヤウナ地方
  長官一本デオヤリニナルノハ間違ヒデアル
  生產ノ責任ヲ持ツ農業會、其ノ他各系統組
  織ヲ同時ニ呼ンデ、同時ニヤラセルガ宜シ
  イ、官僚一本デ行カズニ、新シイ今度ノ機
  構ヲ使ヘバ宜シイ、サウシテ此ノ方面カラ
  モ十分諒解ヲ得テ、官僚ダケノ無理ナ所ヲ
  此ノ方面デ調節シテヤルヤウニヤルガ宜イ、
  麥ハ米ヨリモ更ニ難力シイト思ト、デアル
  カラ之ニハ速カニ案ヲ御立テニナルガ宜シ
  イ、大體デモ宜シイカラ、若シ案ガアルナ
  ラバ此ノ際御說明ヲ願ヘレバ結構デアルト
  思フ

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• 036・湯河元威

  ○湯河政府委員　麥ノ供出ノコトニ付キマ
  シテハ遺憾ナガラ只今マダ御說明申上ゲル
  ヤウナ案ヲ持ツテ居リマセヌガ、關係當局
  ト致シマシテ、只今ノ河野委員ノ御話ニ依
  ツテ、私モ今年ノ麥ノ供出ガ色々ノ問題ヲ
  包藏シテ居ルダラウト今カラ考ヘテ居リマ
  ス、實ハ米ノ供出ヲ色々指導致シマシタ當
  初ヨリ、米ト麥トノ兩方ハ相當相關關係ガ
  ゴザイマスノデ、ドウシヨウカト色々考ヘ
  テ居ルノデアリマス、考ヘ方ト致シマシテ
  ハ米ノ方ハ自家保有米ヲ殘シテ、其ノ自
  家保有米ニハ先程申上ゲマシタヤウニ必ズ
  シモ米ノミノ基準量デナク考ヘテ居リマシ
  テ、ソコニ麥ガ織込マレテ居リマス、又芋
  ガ織込マレテ居リマス、併シ麥ノ方ハ何ト
  申シマシテモ其ノ自家保有米以外ハ全部出
  シテ吳レト云フノデ相當强ク要請ガ行ツテ
  居リマス、麥ノ方ハ之ヲ生產致シマシタ農
  家ノ立場カラ致シマシテモ米程キツク考ヘ
  テナイダラウト思フノデアリマス、現ニ昨
  年ノ如キ、麥ノ供出ニ付キマシテ米トハ餘
  程手心ガ變ツテ來テ居ル、併シ一面カラ申
  シマスルト河野委員ノ御話ノ如クニ、今年
  ノ米ハ相當窮屈デアリマスカラ、麥モ相當
  取ラナケレバナラヌト考ヘマスガ、實ハ今
  播種シテ居リマス狀態カラ直グ是ダケハ是
  ガ非デモ取ルノダト云フコトヲ指示致シマス
  コトガ宜イカドウカ、米ノ供出ガ今進行シ
  テ居ル際デアリマスカラ、麥ノ供出ヲ今直
  グ指示スルト云フコトニ付テ我々トシテ若
  干ノ躊躇ガアリマス、併シ一面カラ申シマ
  スト麥ノ如キハ殊ニ農家ノ出ス分量ヲ早ク
  決メタイ、其ノ分ハ謂ハバ農家ガ自分ノ家
  ノ自家用ニモ樂ニ使ヘルヤウニシテ欲シイ、
  橫流シハナイトシテモ、自家用ニ付テハ米
  程嚴格ナ自家保有量ヲ置クコトノナイヤウ
  ニシテ欲シイト云フ希望モアルヤウデアリ
  マス、是等ノ點ガ麥ノ供出ヲ色々指導致シ
  マス上ニ於テ能ク考ヘラレナケレバナラヌ
  點ダト承知致シテ居リマス、麥ノ供出ニ付キ
  マシテハ一昨年來少シヅヽ米ノ供出ノ後ヲ
  追ツテヤツテ來テ居リマスガ、米程深刻ニ
  マダ〓究シテゴザイマセヌ、我々ト致シマ
  シテハ後レ馳セナガラ麥ニ付キマシテ今後
  御話ノ如ク速カニ案ヲ決メマシテ、指導ヲ
  誤リナキヤウニシタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=36

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• 037・河野一郎

  ○河野(一)委員　農產課長ニ一寸御尋ネシ
  マスガ、肥料ヲヤルコトトヤラナイコト、
  肥料ノ量ト收穫量トノ關係ヲ一ツ伺ヒタイ
  ノデアリマス、今年ノ麥ノ作付ハ非常ニ巧
  ク良ク行ツテ居ルヤウデアリマスガ、一 町
  肥料ガチツトモ行カナイ、是ダケ植付ケテ
  居ルカラ是ダケ增產ニナル筈ダト云フヤウ
  ナコトヲ頻リニ聽カサレテ居リマスケレド
  モ、今ノヤウナ肥料ノヤリ方デ一體麥ガ豫
  定通リ穫レルカドウカ、是ハ長年ノ御經驗
  カラ申シマシテ、是レ位ノ作付反別デ是レ
  位ノ肥料ノ量ダツタラ先ヅ天候ノ好イ惡
  イハ別トシテ、平年作トシテ考ヘテ一體何
  割位減ルダラウ、肥料ガ普通ノ年ノ三分ノ
  一位ニ今年ハナツテ居ル、三分ノ一位シカ
  化學肥料ガ行カナイノダカラ、麥ノ量ハ
  體ドノ位減量スルダラウト云フコトガ分ル
  ダラウト思フ、ソレカラ麥ニハマサカソン
  ナ馬鹿ナコトハナイダラウト思ヒマスケレ
  ドモ、今マデ世間デ言ハレル點ハ、肥料ヲ
  非常ニ輕ク見テ、唯麥蒔サヘスレバ餘計穫
  レルト云フヤウナコトヲ無暗ニ强調サレル、
  サウ云フコトデ收穫量ヲ見當ヲ付ケテ、府縣
  等デ割當ヲシテヤリマスト、農家トシテハ
  又非常ニ失望シナケレバナラヌヤウナコト
  ニナルノデ、玆デ農產課長ハ技術者トシテ
  儼トシテ技術的良心ニ於テ、是ダケノ肥料
  ナラバ是レ位シカ穫レマセヌヨト云フコト
  ヲ言ウテ戴キタイト思フ、一ツソレ等ノ點
  ニ付テ御所見ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=37

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• 038・深澤吉平

  ○深澤委員長　只今ノ質疑ニ對シテハ森說
  明員ヨリ答辯ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=38

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• 039・森肆郎

  ○森(肆)說明員　御尋ネノ點デアリマスガ、
  今年ノ麥作ニ付キマシテハ、肥料ノ狀況ガ
  御承知ノ通リ非常ニ窺屈ニ相成リマスノデ、
  實ハ昨年ノ春以來蒔付面積ヲ如何ニスベキ
  カト云フコトニ付テ、愼重ニ反復〓究ヲ致
  シタノデアリマス、肥料ガ減少致シマスレ
  バ、寧ロ面積ヲ縮メテ集約的ナ栽培ヲスル
  方ガ、全體ノ生產量ニ於テ適當デアルト云
  フ見解モアルノデアリマス、色々愼重考慮
  ヲ致シタノデアリマスガ、結局肥料ノ供給
  量ガ減ジマシテモ、ヤハリ面積ヲ出來ルダ
  ケ擴張スルト云フコトガ、反當ノ平均收量
  ハ落チマスガ、全體トシテハ收穫量ガ增加
  シ得ル、斯樣ナ結論ニ到達致シマシテ、極
  力面積ヲ擴張致シタイ、斯ウ云フ計畫ヲ立
  テマシテ、各方面ノ協力ヲ得テ蒔付ヲ致シ
  タノデアリマス、隨ヒマシテ御話ノ通リ肥
  料ノ供給量ガ相當ニ減ツテ居ル、殊ニ麥作
  ニ於キマシテハ稻作以上ニ肥料ヲ要求スルコ
  トガ强イノデアリマス、肥料ノ供給減ノ爲
  ニ反當收量ハ、天候ガ平年ニ經過致シマシ
  テモ、相當內輪ニ見積ラナケレバナラナイ
  ト云フコトハ十分考ヘテ居ルノデアリマス、
  唯然ラバ具體的ニ、今年ノ收穫見込トシテ
  反收ヲ幾ラニ見ルカト云フ數字ニ付キマシ
  テハ、マダ此處デ申上ゲル所マデ參ツテ居
  ラヌノデアリマス、相當內輪ニ見積ルベキ
  モノト云フコトハ十分考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=39

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• 040・河野一郎

  ○河野(一)委員　後刻肥料ノ問題ヲ御尋ネ
  スル時ニ、具體的ニ數字ヲ申上ゲテ御尋ネ
  シヨウト思ヒマスケレドモ、今モ御話ニア
  リマシタ通リニ、麥ノ蒔付ヲ減シテモ反當
  リ肥料ヲ或ル程度ヤツタ方ガ宜イト云フヤ
  ウナ議論モ屢〓アル、個々ノ農家モサウ申シ
  テ居リマス、個々ノ農家デモ肥料ガ是ダケ
  シカ來ナイノナラ、是ダケシカ播カナイ方
  ガ宜イト云フヤウナ農家モ相當アリマス、
  併シ天候等ノ關係デ餘計作ツテ置イタ方ガ
  危險ガ少イト云フコトモアリマセウシト云
  フヤウナコトデ、今年ノヤウナ施設ニナツ
  タノデアリマシテ、是モ色々御考ヘノ上デ
  ゴザイマセウケレドモ、何レニシマシテモ、
  今農產課長ノ御話ニモアリマシタ通リ、肥料
  ノ量ガ收穫量ヲ或ル程度決定スルト申シテ
  モ、私ハ差支ヘナイト思フ、是ハ寧ロ蒔付面
  積ガ廣イ狹イト云フコトヨリモ、肥料ノ增
  減ガ、麥ニ關スル限リ或ル程度收量ヲ左右ス
  ルモノト考ヘルコトモ一ツノ見方デアルト
  サヘ思ヘル、其ノ位ノ要素ガアリト致シマス
  レバ、政府ニ於キマシテハ一體此ノ麥肥
  ヲドノ位配給ナスツタカト云フコトハ、自
  分ノ胸算用デ、スツカリ御分リデアル、シテ
  見レバ今年ノ麥ニ對スル期待ト云フモノガ、
  最近各方面デ言ハレテ居ルヤウナコトヲ期
  待シテ宜シイカドウカト云フ所ニ、非常ニ
  私ハ疑問ガアルト思フ、ノミナラズ、此ノ
  際特ニ麥ノ供出ニ向ツテ政府ニ御考慮ヲ煩
  ハシタイト思ヒマスコトハ、農家ハ麥ヲ作
  ツテ、勿論食糧其ノ他色々ノ方面ニ使ヒマ
  スト同時ニ、家畜飼料方面ニ之ヲ向ケルト
  云フ所ニ非常ニ大キナ要素ヲ持ツテ居ルノ
  デアリマス、所ガ是ハ私專門家デアリマセ
  ヌカラ能ク知リマセヌガ、從來デアリマス
  レバ麥ヲ一俵粉ニ致シマスレバ、粉ガ七十
  五、六 つパーセント」麩ガ二十四、五「パーセ
  ント」出タノガ普通ダサウデアリマス、所ガ
  今日ハ、其ノ二十四、五つパーセント」出タ
  麩ヲ、粉ガ九十四、五ツパーセント」デ麩ガ
  四、五パーセント」マデ挽クサウデアリマ
  ス、隨テ玄米食ノ可否ハ先日モ問題ニナツ
  タヤウデアリマスガ、是ハ內閣ノ方針デア
  ルカラ姑ク措キマシテ、麥ノ皮マデ人間ガ
  食ハナケレバナラヌト云フ政府ノ御決定ハ
  ナイノデアリマス、麩マデ人間ガ食ハナケレ
  バナラヌト云フ御決定ハナイノデアリマシ
  テ、麩ハ家畜ノ食ベルモノナリ、粉ハ人間
  ノ食フモノナリト云フ限界ヲ明瞭ニ政府ガ
  指導サレマスレバ、麥ヲ家畜ガ食べ、麩ヲ人
  間ガ〓フト云フ矛盾モナシニ、今日ハ行ケ
  ルト思フ、之ヲ供出ノ場合ニ政府ガ御考へ
  ニナリマシテ、若シ何俵麥ヲ供出シタモノ
  ハ何俵ノ麩ヲ必ズ還元シテヤルト云フコ
  トヲ御約束ニナレバ、農家ハ相當飼料ノ點
  ニ於テ安心シテ麥ノ供出ヲスルト思フ、サ
  ウシテ之ヲ製粉會社ニ渡シマス時ニハ製
  粉會社ニ二十四、五「パーセント」ノ麩ヲ還
  元スベシト云フ命令附デ渡シテヤル、サウ
  シテ出來タ麩ヲ農家ニ還元シテヤル、若シ
  政府ガソコマデ踏込ンデ御考ヘニナレバ、
  麥ノ供出ニ對シテ相當ノ効果ガ私ハアルト
  思フ、之ヲオヤリニナルカドウカ、私ハヤ
  ツテ戴キタイト思ヒマスガ、政府ハドウデ
  アリマスカ、更ニ若シソレガ出來ヌトナリ
  マスレバ、家畜ノ有無ト云フコトヲ-是ハ農
  林省ガ縣別ニ割當テラレル場合ニハ、縣別
  ノ家畜ノ數量ヲ麥ノ供出ノ數量ノ考慮ノ中
  ニ深ク御入レヲ願ヒタイ、强ク御考ヘヲ願
  ツテ、各縣及ビ各農家ニ對シテ供出量ヲ決
  定スル際ニ、家畜ノ有無ト云フコトヲ十分
  考慮ニ入レテ御決定ヲ願ヒタイト思フ、之
  ニ付テドウ云フ御考ヘデアルカ承リタイ

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• 041・湯河元威

  ○湯河政府委員　麥ガ家畜飼料トシテ農家
  ガ特ニ深イ關心ヲ持ツテ居ルコトハ能ク承知
  シテ居リマス、最近製粉ノ步留リガ實行上
  若干上ツテ居ルト思ヒマスノデ、麩ガサウ
  云フ意味ニ於テ若干減ツテ居ルカト思ヒマ
  ス、又一般ノ飼料ソレ自身ガ全體ニ窮屈ニ
  ナツテ居リマス事情カラシテ、麩ノ需要ト
  云フモノガ多クナツテ居ルカト存ジマス、
  ソレデ只今河野サンノ御話ノ如ク麥ヲ出シ
  タ人ニ製粉ノ麩ヲ必ズ戾スト云フコトハ是
  ハ一ツノ御考ヘダト存ジマスルガ、實行上
  ニ於キマシテハ、今マデマダソコマデ緻密
  ニヤツテ居リマセヌノデ、ソコマデ直グ出
  來ルカドウカニ付キマシテハ、私此處デ一寸
  申上ゲニクイノデアリマス、其ノ御希望等ニ付
  キマシテハ十分私共トシテハ參考トシテ考ヘタ
  イト思ヒマス、尙ホ麥ノ供出ヲ割當テマス際
  ニ、家畜ノ飼料ノ需要モ算定シテト云フ御
  話デゴザイマシタガ、是ハ洵ニ御尤モダト
  思ヒマス、吾々ハ昨年ノ麥ノ供出ヲ指導致
  シマス時カラ、サウ云フ心持ヲ取入レマシ
  テ色々ヤツテ參リマシタ、唯家畜頭數ノハ
  ツキリシタ調ベ等ニ若干ノ實行上ノ難點ガゴ
  ザイマスルガ、併シ今御話ノ趣旨ハ今後ハ
  ヤハリ取入レテ、出來ルダケ完全ニヤツテ
  參リタイト思ツテ居リマス

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• 042・河野一郎

  ○河野(一)委員　次官ニ一寸御答辯ヲ煩ハ
  シマスガ、今私ガ長官ニ申上ゲタヤウニ、
  此ノ七十六ニ二十四ト云フコトハ專門家ニ
  聽イタノデス、サウ申シテ居リマス、ソレヲ
  今日ハ九十幾ツニ對シテ僅カニ四、五%ニ引
  上ゲテ居ルト云フコトモ、是ハ有力ナ製粉
  會社ノ調査デアリマスカラ、絕對ニ間違ヒ
  ナイト思フ、二〇%兎ニ角家畜ノ食フモノ
  ヲ現在人間ガ食ツテ居ル、是ハ事實ナノデ
  ス、無理ニ家畜ノ食フモノヲ人間ガ食フ必
  要ナシ、又人間ノ食フベキモノヲ、現在政
  府ガヤツテオイデニナルヤウニ家畜ニ食ハ
  ス必要ハナイ、是レ程事理明白ナコトハ私
  ハナイト思フ、是ハヤルカヤラナイカノ問
  題デアル、ヤラウト思ヘバ出來ヌコトハナイ、
  製粉會社ニ二十何「パーセント」ノ麩ヲ戾セ
  ト云フ命令ヲ出サレテ、製粉會社ガソコデ
  機械ヲ止メ、篩ヲ止メテ、戾シテ吳レヽバ
  宜イ、之ヲ餌トシテ家畜ニヤレバ宜イ、ソ
  レヲ製粉會社ニ步留リ良ク〓〓ト云ツテ引
  上ゲルカラソンナコトニナル、ソコマデ挽
  カス必要ハナイ、一方ニ於テ家畜ニ麥ヲ食
  ハサヌカト云フト、食ハシテオイデニナル
  ト云フコトモ事實デアル、ソンナ馬鹿ナコ
  トハオヤリニナラヌガ宜イ、ダカラ此ノ切
  替ヲヤルカヤラヌカノ問題デアル、別ニ〓
  究モナケレバ調査モナケレバ、何モ別ニ考
  ヘル必要ノナイコトデアルヤルカヤラヌ
  カト云フコトデアル、是非之ヲオヤリニナ
  ル勇氣ガアツテ欲シイ、之ヲオヤリニナル
  勇氣ガアリマセヌデ、食糧ノ積リデ供出シ
  タ麥ガ餌ニナツテ來ルナラバ、ソンナ麥ハ
  出サヌゾト云ツテ農家カラ反對サレテモ、
  農商省トシテハ答辯ノ辭ハナカラウト思
  フ、ダカラ速カニサウ願ヒタイト思ヒマス
  ガ、ヽ次官ノ所見如何

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• 043・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　現在ノ段階ニ於キマシテ、
  人ノ〓糧ト家畜ノ餌料ト云フモノガ、裏に
  於テ少クトモ相共通シテ居ルト云フ關係ニ
  愈〓ナツテ參ツテ居ルト云フコトハ-茲ニ
  有機肥料モ一ツ加ハリマスガ、我々モ深ク
  左樣ニ感ジテ居ル所デアリマス、隨ヒマシ
  テ飼料ノ相當程度ノ確保ト云フコトニ付キ
  マシテハ、色々ト處置シナケレバナラヌト
  考ヘマス、所デ只今ノ御質問ノ一點デアリ
  マスガ、之ニ付キマシテハ、斯ウ云フコト
  ガアラウト思フノデアリマス、詰リ何レカ
  ト申セバ、麩ヲ食フヨリモ麥ノ大事ナ所ヲ
  人間ガ食ヒタイ譯デアリマスガ、同時ニ兎
  ニ角一應出サセテ、今度麩ヲ元ノ供出シタ
  農家ニ綺麗ニ返スト云フコトハ、一面ニ於
  テ輸送ノ關係トカ、又ソレノ手續上ノ、全
  部帳面ニ付ケテ置イテキチントヤツテ行カ
  ナケレバナラナイコトトカ、要スルニ實行
  上ノ手間ノ關係モ相當ニアラウト思フノデ
  アリマシテ、結局是ハ程度ノ問題デアリマ
  スガ、我々トシテハ先程長官ノ答辯ノ中ニ
  モアリマシタヤウニ、昨年ノ麥ノ供出ノ場
  合ニ於テモ、是ハ相當ニ農家ニ麥ヲ殘シタ
  積リデ、アレダケノ供出ヲシテ貰ツタ譯デ
  アリマス、今年ニシマシテモ昨日モ他ノ
  機會ニ御答辯ヲ致シタノデアリマスガ、ヤ
  ハリ相當ナモノハ農家ニ殘シタイト云フコ
  トヲ考ヘテ居ルノデアリマシテ、其ノ關係
  カラ言ヒマスト、麩ヲ食フノモ辛イ話デハ
  アリマスガ、ヤハリ手順ノ關係カラ言ヒマ
  スト、是ハ程度問題デハアリマスガ、繰返
  シテ申シマスガ、必ズ麩ヲ綺麗ニ還元シテ
  中味ダケヲ人間ガ食フ、サウシテ麥ノ供出
  ヲ極力餘計ニスルガ宜イカ、或ハ或ル程度
  ハ其ノ場デ農家ニ麥ヲマル〓〓殘スノガ宜
  イカト云フコトハ、差詰メヤハリ手續上ノ
  問題其ノ他ヲ能ク調ベテ見マセヌト、概
  ニ早速ヤラウト云フコトモ申上ゲ兼ネルト
  思フノデアリマス、此ノ際トシマシテハ是
  ハ左樣ニ考ヘマス

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• 044・河野一郎

  ○河野(一)委員　政府ノヤル氣ノナイコト
  ヲ、私ガヤレ〓〓ト言ツタ所デ仕方ガナイ
  ノデスカラ、ドチラガ良イカ惡イカハ國民
  ノ判斷ニ俟ツト云フコトデ、次ノ問題ニ移
  リマス、但シ申上ゲテ置キマスガ、〓糧
  トシテ、農家ガ供出シタ麥ガ、餌ノ方ニ流
  レテ行ツテ餌ニナルト云フコトハ、私ハ感
  心出來ヌト思フ、是ハ次官モ御考慮願ヒマ
  セヌト、今ノヤウニ農村ニ其ノ儘殘シテ置
  クナラバ是ハ別デスガ、食糧ダト云ツテ供
  出サセタモノガ、餌ニナツテ戾ツテ來ルナラ
  バ、麩ト粉ヲ挽キ別ケテ、麩ヲ餌ニ廻シタ
  方ガ宜イ、是ダケハ議論ノ餘地ガナカラウ
  ト思フ、サウ云フ點ヲモウ一遍御考ヘニナ
  ツテ、玆デハ直チニヤレト言ツテモ、實行
  ガ遲レルト又文句ガアルカラト云フヤウナ
  コトモアリマセウカラ、成ベク早クオヤリ
  ヲ願ヒタイト云フコトデ次ノ御尋ネニ移リ
  マス
  次ハ是ハ一ツ特ニ御願ヒデアリマス、先
  日或ル篤農家ニ會ヒマシタ所ガ、麥ノ供出
  ノ時期ヲ競爭サセルコトハ非常ニ困ル、例
  ヘバ供出量ガ全部百「パーセント」ニナツタ
  ナラバ酒ヲヤルトカ、菓子ヲヤルトカ云フ
  ヤウナコトヲヤツテ、オ前ノ村ハ大變結構
  ダト云ツテ褒メラレルヤウナコトヲサレ
  ルコトガ非常ニ困ル、ト言ヒマスノハ御承
  知ノ通リ麥ヲ調製致シマス時期ハ、農家モ
  非常ニ忙シイ時デアリマスガ、麥ハ乾シニ
  依ツテ看貫ガ非常ニ減ツタリ殖エタリスル、
  ダカラ若シ怠ケ者ノ農家ガアツテ、碌ナ調
  製ヲシナイデ乾シヲ弱クシテ持ツテ行ケバ、
  目方ガ多クテ上等ノ麥デ通ル、ソレヲ產業
  組合ナリ農會ノ倉庫ニ詰メテシマフト云フ
  ヤウナコトハ、將來非常ニ保存上モ惡イシ、
  サウ云フ怠ケ者ニ調製ヲサセルコトハ非常
  ニ惡イ結果ヲ奬勵スルコトニナルカラ、是
  ハ供出ノ上カラ申シマシテ、政府ハ書類ノ
  上デ供出ヲ整ヘサセルト云フコトニシテ、
  一旦私ハ是ダケ供出致シマスト云フ約束ヲ
  サセテ、サウシテ現物ハモツト後カラユツ
  クリ手ノ空イタ時ニ調整シテ出セバ宜イト
  云フコトニ變ヘテ戴キタイト云フコトガ、
  切ナル希望デアリマスカラ、今年ハ是非實
  行シテ戴キタイ、要スルニモウ一遍申シマ
  スト、イツ何日マデニ併出シロト云フコト
  ヲヨクヤツテ居リマス、成ベク早ク供出ノ
  數量ヲ其ノ部落實行組合デ調ベヨト云フコ
  トヲヤツテ居リマスガ、サウスルト調製ガ
  惡クテ詰ラヌ麥ヲ早ク持ツテ來タ者ガ褒メ
  ラレルヤウナコトニナリマスカラ、非常ニ
  結果ガ惡イ、ダカラ是ハ幾ラ出セト帳簿ノ
  上デ約束スレバ、嘘ハ決シテ申シマセヌカ
  ラ、帳簿ノ上デ揃ヘサヘスレバ宜イ、供出
  ハ後カラ適當ナ時期ニ何時デモ宜イト云フ
  ノデ、供出ノ時期ハ成ベク先ニ置イテ數量ト
  現物ガ揃ヘバ宜イト云フ供出方法ニ變ヘテ
  戴キタイト云フコトデアリマスカラ、此ノ
  點ハ是非實行シテ戴キタイト思ヒマスガ、
  尙ホ御所見ガアリマシタナラバ承リタイト
  思ヒマス

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• 045・湯河元威

  ○湯河政府委員　只今ノ御話ハ供出ヲ引受
  ケテ居ラレル農家カラ云ヘバ、一應御尤モ
  ノヤウニモ思ハレマスガ、是ハ實行上ニ於
  キマシテ、只今ノ所オイソレト贊成出來兼
  ネルカトモ思フノデアリマス、供出量ト云
  フモノハ、供出ノ割當ト申シマスカ、之ヲ
  決定スル時ガゴザイマスノデ、ソレハ必ズ
  引受ケテ貰ツテ居ル積リデゴザイマスガ、
  實行上ニ於キマシテ、其ノ後ノ食込ミダト
  カ、其ノ他ノ事情カラ或ハ橫流シヲ誘惑サ
  レルトカ色々ナコトガゴザイマシテ、ドウ
  モ完遂ニ至ラナイ點ガゴザイマス、御話ノ
  如ク忙シイ爲ニ怠ケ者ガ麥ヲ碌ニ乾サズシ
  テ出スト云フコトハ大變愚ナコトデゴザイ
  マスノデ、供出ノ時期ハ其ノ地方ノ農家ノ
  實情ニ能ク適應致シマシテ、必ズシモ競爭
  的ニ早ク出サナケレバナラヌト云フコトデ
  ナク、出來ナイ時期ヲ定メルコトノナイヤ
  ウニ指導致シマシテ、ヤハリ供出ト云フモ
  ノハ、現物供出ニ依ツテ管理ノ方ニ移サレ
  タ時ヲ以テ完了ト云フ風ニ致シタイト考ヘ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=45

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• 046・河野一郎

  ○河野(一)委員　一寸誤解ガアルヤウデス
  ガ、早ク供出ヲ揃ヘタモノヲ一等賞ニシテ
  ヤルト云フアノ點ニ、實行組合長ハ非常ニ迷
  惑ヲ感ジテ居ル、斯ウ云フコトデアリマス、
  其ノ際ニハ、供出量ガ百「。パーセント」揃フノ
  ハ書類ノ上デ揃ヘバソレヲ一等賞ニシテヤ
  ルト云フコトニ變ヘテ戴キタイト云フコト
  デアリマス、惡イ物ヲ皆デワツト持ツテ行
  ツテ、俵擔ギノ競爭ノヤウナコトニナルト
  非常ニ困ルノデアリマス、デスカラ產業組
  合、農會ノ倉庫ニ揃ハナクテモ、各農家ノ
  納屋ニアル物デモ、一旦出スト言ツタ以上
  ハ決シテ間違ヒナイノデアリマスカラ、ソ
  レデ一等二等ヲ決メルヤウナ風ニ、若シヤ
  レルナラバシテ欲シイ、斯ウ云フコトデア
  リマスカラ、供出ガ餘リ遲レテハ困ルト云
  フコトハ御尤モデゴザイマセウシ、從來ノ
  事務上ノ手續ハ宜シイノデアリマスケレド
  モ、サウ云フ表彰方法ヲ御執リニナル時ニ
  ハサウ云フ點ヲ注意サレヌト、却テ惡イ
  モノガ一等賞ニナルト云フノガ今日ノ現狀
  ダト云フコトヲ私ハ聽カサレマシテ、尤モ
  ダト思ヒマシテ御取次ヲスル譯デアリマス
  カラ、サウ御心配ニナラズニ特ニ御考慮ヲ
  煩ハシタイト思フノデアリマス
  次ニ御尋ネシタイノハ甘藷ノ問題デアリマ
  ス、薩摩芋ハ非常ニ難カシイノデイツニナツテ
  モ芋ガ腐ル、芋ガ腐ルト云フ話ガ消エナイノ
  デアリマスケレドモ、一體薩摩芋ノヤウニ水分
  ノ六五%カラ六七%モアルヤウナモノヲ食糧
  トシテアツチコツチ持運ブコトガ間違ヒダ
  ト私ハ思フノデアリマスガ、之ヲ依然トシテ
  主要食糧ノ中ニ取入レテ大都市ニ斯ウ云フ
  モノヲ配給シナケレバナラヌカノ如クニ御
  考ヘニナツテ居ル所ニ非常ニ間違ヒガアル、
  少シ言葉ハ强過ギルカモ知レマセヌガ私ハ
  サウ思フ、政府ハ主要食糧ノ中ニ取入レテ、
  之ヲ芋會社デアルトカ食糧營團デアルトカ
  云フモノニグル〓〓〓ツテ持ツテ步イテ居ル
  中ニ腐ツテシマフ、一體水分ノ六十何「パー
  セント」ト云フ水ヲ運ブヤウナ品物ヲ輸送
  力ノナイ今日ニアツチコツチ持ツテ步クコ
  トガ間違ヒダ、例ヘバ北海道デ馬鈴薯ガ澤
  山出來ル、北海道ノ馬鈴薯ヲ此ノ輸送力ノ
  ナイノニ靑函連絡ヲ通ツテ東京マデ持ツテ
  來テ〓糧ノ中ニ混ゼテ食ハスト云フヤウナ
  コトガ一體間違ヒナノダ、〓土食ノ奬勵ト
  カ何トカ色々仰シヤイマスケレドモ、依然
  トシテ政府ノ打ツテオイデニナル手ハサウ
  云フ手デアル、斯ウ云フコトガ非常ニ間違
  ダト思フ、斯ウ云フ水分ノ多イモノハ少ク
  トモ何里四方デ食ベテシマフベキモノダ、
  此ノ近在デ食フベキモノダ、芋ノ奬勵ヲス
  ルニモ一體消費地ト見合セテ奬勵ヲスベキ
  ダ、何處デモ作レル所ニハ無暗ニ作ラセル、
  サウシテ輸送力ノアルノモナイノモ構ハズ
  ニヤルカラ腐ツテシマフ、若シソレヲオヤ
  リニナルナラバ公定價格ヲモウ少シ御〓究
  ニナツテ、干芋ニ付テハ思ヒ切ツテ値ヲ上
  ゲテヤレバ生芋ノ供出ハ殆ドナクナツテシ
  マヽ、生芋ハ大體自分ガ食ツテ、賣ルモノ
  ハ全部干芋ダト云フ位ニシテ、干芋ノ値ヲ
  上ゲテヤルトカ何トカ操作ヲナサイマセヌ
  ト、イツマデ經ツテモ今日ノ如クニ水ヲ運
  ンデ水ガ腐ツテ其ノ水サヘ飮メナクナル
  サウ云フ馬鹿ナ手ハ速カニ廢メルベキモノ
  ダト思フノデアリマスケレドモ、之ニ對ス
  ル所見加何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=46

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• 047・湯河元威

  ○湯河政府委員　芋ハ水分ヲ含ンデ居リマ
  スノデ管理スル上カラ申シマシテ洵ニ扱ヒ
  ニクイノデアリマスガ、只今河野委員ノ御
  話ノ如ク、是ハ成ベク其ノ生產現地ニ於キマ
  シテ消費シテ戴クコトガ食糧管理上望マシ
  イ、サウ云フ意味ヲ以テ指導シテ行クノデゴ
  ザイマスガ、併シ一面カラ申シマスト薩摩
  芋ノ如キ都會地ノ人々モ相當欲シイト言ツ
  テ居ル、是ハ生芋ガ欲シイト云フ意味ラシ
  イノデ、少シ無理シテ運ンデ居リマスガ、
  斯ウ云フコトハ食糧ノ管理カラ申シマズレ
  バ成ベク芋ハ所謂〓土食ニ依ツテ消費サセ
  テ、米ノ如ク管理シ易イモノヲ方々ニ持ツ
  テ廻ルト云フコトニナリマスレバ腐敗等モ
  少クナリマスノデ、サウ云フ風ニ持ツテ行
  キタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=47

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• 048・河野一郎

  ○河野(一)委員　ソレニハ御希望ニ副フヤ
  ウニ干芋ノ値ヲモツト思ヒ切ツテ上ゲテヤ
  ル、サモナケレバ思ヒ切ツテ奬勵金ヲ出ス
  ト云フヤウナ手ヲ打タズニ、是ガ欲シイ、
  アレガ欲シイト言ツテモ、出來ルモノヂヤ
  ナイ、都會デ芋ガ〓ヒタイト言フカラ芋ヲ
  運ンデヤツテ居ルト云フコトハ凡ソ今日ノ
  實情ニ卽シナイト思フ、サウ云フコトデナ
  シニ、一ツ今年ノ芋ノ出來ルマデニハ干芋
  ノ値ヲ上ゲテ欲シイ、今ノヤウニ農村ノ犧
  牲ニ於テアノ面倒ナモノヲボチ〓〓切ツテ
  出セト云フヤウナ命令的ナコトハ御廢メ下
  サイ、サウシテ食糧ガ入用ナノダ、腐ラナ
  イモノガ入用ナノダト云フコトナラバ、獎
  勵金デモ價格政策ナリ然ルベキ方法デ實行
  サレタラ宜シイト私ハ思フ、其ノ手ヲ打タ
  ズニ、唯農村ノ負擔、農村ノ犧牲ニ於テ、
  都會ノ者ガ食ヒタイカラ運ンデヤルノダト
  云フヤウナコトデハ、凡ソ我々ト勘所ガ違
  フノデアリマシテ、是ハ一ツ賢明ナル食糧
  管理局長官モ速カニ頭ノ切替ガ願ヒタイト
  思フ、サウ云フ御答辯デハ非常ニ迷惑スル、
  次ノ芋ノ時期マデニハ何トカ一ツ今私ノ申
  上ゲタヤウニシテ欲シイ、是ハ鐵道邊リカラ
  モ苦情ガ來ルト思フ、私ハ若シ農林省デオ
  ヤリニナラナケレバ鐵道省ヘ行ツテ火ヲ付
  ケル、アンナ馬鹿ナモノヲ運ブナ、水ヲ運
  ンデ居ルデハナイカ、斯ウ云フ馬鹿ナコト
  ハ御廢メニナツタガ宜シイ、唯〓糧ダカラ
  押セバ押セルデ、方々デ押シテ廻ル、是ガ
  イカヌノデス、直グ御變へニナルガ宜シイ
  ト私ハ思フ、若シサウデナケレバ之ヲ澱粉
  ニ直シテ、先程來申シマスヤウニ芋ヲ澱粉
  ト餌トニ分ケテ、人間ノ食フモノト、家畜
  ノ食フモノトニ明瞭ニ分ケル、サウ云フ政
  策ヲ御立テニナルカモウ少シ工夫ナサレバ
  直グ出來ル仕事ガ澤山アルト思フ、是等ヲ
  チヤントオヤリニナルカナラナイカノ違ヒ
  デスカラ是非國家ノ爲ニ實行シテ戴キタイ
  ト思フ、特ニ芋ノ澱粉ノ如キ、北海道ノ馬
  鈴薯ヲ東京マデ運ブト云フコトヲ止メテ、
  北海道デ澱粉ヲ造ツテ、之ヲ魚ヲ混ゼテ肉
  ノ團子ヲ作ルト云フコトニナツタナラバ
  量ハ少クナルシ、輸送ハ簡單ニナツテ、效
  果ノ擧ルコトガ直グニ出來ルト思フ、サウ
  云フコトヲオヤリニナラヌデ、國民ヲ指導
  サレルヤウナ顏ヲサレルノハ少シ無理ヂヤ
  ナイカト思フ、是ハ速カニ實行シテ戴キタ
  イ
  次ニ肥料ノコトニ付テ少シ承リタイト思
  フ、食糧ノ配給ノコトニ付テ色々申シマス
  ケレドモ、何シロ少イモノデアリマシテ、
  之ヲ如何ニシテ增產スルカト云フコトニナ
  ルト肥料ガナイ、先日來議會ノ模樣ヲ承ツ
  テ居リ、大臣ノ御答辯等ヲ承ツテ居リマス
  ルト、肥料問題ハ春風駘蕩ノ如キ感ヲ與ヘ
  テ居ル、我々日曜日ニ農村ニ歸ツテ見ルト、
  大分肥料モ宜イヤウデ結構デゴザイマスネ
  ト言フ、甚ダ結構デアルカナイカ、農政局
  長カラ今日ノ肥料ノ實情ヲ承リタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=48

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• 049・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　最近ノ肥料需給ノ狀
  況ハ絕對春風駘蕩タル狀況デハゴザイマセ
  又、私共トシテハ、此ノ〓糧增產ガ大切ナ
  時ニ、何ト申シマシテモ肥料ノ配給量ヲ或
  ル程度確保致サナケレバ、他ノ施策ガ十分
  ニ其ノ效果ヲ產ンデ參リマセヌカラ、何ト
  カシテ必要量ヲ確保致シタイト云フコトデ、
  軍需省トモ相談シテ非常ニ苦心シ、努力致
  シテ居ルノデアリマス、其ノ實態ハ甚ダ困
  難ヲ致シテ居ル實情デゴザイマス、若シモ
  左樣ナ若干氣ノ樂ニナルヤウナ印象ヲ與ヘ
  テ居ルト云フコトガゴザイマスレバ、私共
  トシテハサウデナイ方ガ宜シイノヂヤナイ
  カト考ヘテ居ル譯デアリマス、數字ノ關係
  等詰メテ考ヘテ見マスルト、是カラ中々容
  易ナラザル努力ヲシナケレバナラヌシ、又
  政府全體トシテハツキリシタ認識ノ下ニ餘
  程ノ覺悟ヲ以テ對處シナケレバナラヌト考
  ヘテ居リマス、ソレダケ御答ヘシテ置キマ
  ス

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• 050・河野一郎

  ○河野(一)委員　サウシマスト大臣ガ豫算
  總會デ述ベラレタノハ噓ダ、アレハ違フト
  云フコトニナリマスガ、是ハ適當ナ時ニ訂
  正シテ貰ヒマセヌト、新聞ニハ資材ハ手配
  シタ、八月頃ニナレバ何トカ去年ヨリ餘計
  配給ガ出來ルヤウニナルカモ知レヌ、要ス
  ルニ少イト云フ字ハ使ツテ居ナイ、是ハ一
  體ドウシタコトデスカ

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• 051・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　大臣ノ御答辯ノ趣旨
  モ決シテ樂ニ是ガ好轉スルト云フコトヲ御
  話ニナツテ居ルノデハナイト存ジマス、申
  上ゲマシタ趣旨ハ、御承知ノ通リ此ノ資材
  ノ配給ヲ確保スルト云フ所ニ、現在ノ肥料
  ヲ增產スル爲ノ、又生產確保ヲ圖ル爲ノ重
  要ナ「ポイント」ガゴザイマスノデ、其ノ點
  ニ付テ軍需省方面トモ過般來色々協議ヲ致
  シマシテ、ソレニ付テノ當面ノ補給用資材
  ノ手當ニ付テ目當ガ付イタト云フ意味ノコ
  トヲ御答ヘニナツタモノト思ツテ居ルノデ
  アリマス、第一段ハ其ノ問題ト、次ハ現在
  建設中ノ工場ノ完成期ヲ繰上ゲルト云フコ
  トニ努力シタイ、第三段トシテハ新規ノ擴
  充ノ問題ヲ取上ゲテ、之ヲ急速ニ實現ノ〓
  ニ就カセルヤウニシタイト云フコトノ御話
  ガゴザイマシテ、サウシテ之ニ付テハ軍需
  省方面モ非常ナ熱意ヲ以テ努力ヲシテ居ラ
  レルノデアル、尙ホ今後努力ヲシタイ、斯
  ウ云フコトヲ御話ニナツタヤウニ存ジテ
  居ルノデアリマシテ、樂ニドウ斯ウト云フ
  コトデハナイト云フ風ニ私ハ存ジテ居リマ
  ス

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• 052・河野一郎

  ○河野(一)委員　今私ノ申シタ大臣ノ御話
  ハ、只今石井サンカラ承ルト、サウ云フ希望
  ヲ持ツテ居ルト云フコトノヤウニ私ハ思へ
  ル、希望デハ肥料ハ效カナイノデアツテ、
  現實ニヤルカラ肥料ガ效クノデス、所ガ其
  ノ現實ハ一體ドウダ、是ハ一ツ承ツテ見タ
  イト思ヒマスガ、前ノコトハドツチデモ宜
  シイ、差當リ現物デ正月ノ肥料ノ製造ノ工
  合ハ一體ドウナツテ居ルカ、硫安ト石灰窒
  素ト過燐酸ト云フヤウニ分ケテ、一月ノ生
  產ハ一體ドンナ狀態ニナツテ居ルカ、尙ホ
  將來是ガドウ云フ見透シデアルカト云フコ
  トノ御說明ヲ承リタイト思ヒマス

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• 053・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　當面一月ノ生產狀況
  ニ付テノ御尋ネデアリマスガ、之ヲ昨年ト
  本年トノ生產實績ニ付テ比較シテ考ヘテ見
  マスト、硫安ニ於キマシテハ、昨年ヨリモ一
  月ノ生產實績ハ減少ヲ致シテ居リマス、石
  灰窒素ニ於キマシテハ、大體前年程度ノ生
  產ヲ上ゲ得ルノデハナイカト云フ風ニ見テ
  居ルノデアリマス、ソレカラ過燐酸-無
  機ノ燐酸肥料ノ方ハ一月ドノ位ノ見込ニナ
  ルカト云フコトハ、只今ハツキリ見透シガ
  付キ兼ネテ居リマスケレドモ、大體燐礦石
  ノ配給ノ狀況ガ御承知ノヤウデアリマスカ
  ラ、先ヅ昨年ヨリモ減ルモノト覺悟シナケ
  レバナラヌノデハナイカト思ツテ居リマス、
  若シ具體的ノ數字ト云フコトデアリマスレ
  バ速記ヲ止メテデモ申上ゲタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=53

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• 054・河野一郎

  ○河野(一)委員　具體的ノ數字ヲ承ルノハ
  結構デアリマスケレドモ、私ハ昨年ヨリ殖
  エル、減ルト云フコトハドツチデモ宜シイ、
  ソレヨリモ今年政府ガ配給ヲスルト言ツテ
  農村ヘ約束サレテ-約束ト云フノハ少シ
  語弊ガアルカ知ラヌガ、計畫委員會デ今年
  ハ斯ウ云フヤウニ肥料ヲ分ケル豫定ダト仰
  シヤツタダケノモノヲ、一體分ケルコトガ
  出來ルカドウカト云フコトヲ心配スルノデ
  アリマス、其ノ責任ガ持テルカドウカト云
  フコトノ御答辯ヲ承レバ宜イ、少イ點ハソ
  レハ少ケレバ困ルノデスガ、果シテ其ノ責
  任ガ持テルカ、其ノ點ハドウナルノデアリ
  マスカ、一體石灰窒素デモ過燐酸デモ、昨
  年ヨリ減ルナアト云フヤウナ見當デハナイ
  デスカ

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• 055・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今一月ノ生產狀況
  ニ付テ申上ゲタノデアリマスガ、一、七月
  ノ既ニ府縣ニ配當シマシタ各種肥料ノ割當
  量ノ確保ハ、何トシテデモヤラナケレバナ
  ラナイ問題デゴザイマシテ、資材ノ手當ノ
  問題ナドモ、モウサウ云フ所カラ尻ガ詰ツ
  テ居ルト云フ意味ニ於テ計畫ヲシ、又努力
  モ致シテ居ル譯デアリマス、勿論一月ダケ
  ノ樣子デゴザイマスカラ、之ヲ本ニシテド
  ウ斯ウト云フコトヲ申上ゲル譯ニモ參リマ
  セヌガ、併シ各種ノ條件ト云フモノハ、自
  然ノ狀態ニ於テハ好轉ヲスル見込ハナイト
  見ナケレバナラヌ情勢デゴザイマスカラ、
  ドウシテモ玆デ格段ノ緊急ノ措置ヲ執ツテ
  參ルコトガ必要デアルト思ツテ居ルノデア
  リマス、ソレヲ目途ト致シマシテ、只今軍
  需省ノ方トモ打合セヲ進メテ居ルト云フコ
  トデアリマス、左樣ニ御諒承ヲ願ヒマス

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• 056・河野一郎

  ○河野(一)委員　私ハ肥料ノ話ヲスル場合
  ニ、製造業組合ヘ參リマシテモ、化學統制
  會ヘ參リマシテモ、其ノ他民間ノ有力ナ會
  社ノ技術者ト會ツテ話ヲシテ見マシテモ、
  今ノ農政局長ヲ御話ヨリモ、モツト〓〓非
  常ニ深刻ナ話バカリ聞クノデアリマス、政
  府ニ話セバ少シハ良イ話モ出ルダラウト云
  フ氣持モスルノデスガ、良クナル目途ガナ
  イト云フヤウナコトデスト、是ハ非常ニ困
  ルト思フ、現ニ一月ノ製造量デモ-大摑
  ミノ數字ナラ擧ゲテモ宜イダラウト思ヒマス
  ガ、何處へ行ツテ聞イテモ、先ヅ硫安デ七
  萬「トン」ヲ割ルト云フコトガ常識ノヤウデ
  アリマス、政府ノ見當ヲ付ケテ居ラレル豫
  定ノ製造數量ヨリモ大分低イヤウデアリマ
  ス、ソレカラ麥ニ一番必要ナ過燐酸ニシテ
  千、一月ニ於テ先ヅ一萬五千「トン」マデハ
  難カシカラウト云フヤウナコトヲ言ツテ居
  ルサウ云フヤウナコトデスト、全國ノ農
  家ハ非常ニ失望スルト思フ、幾ラ一生懸命
  働イテモ、コンナ雀ノ淚程ノ肥料デハ話ニ
  ナラヌト思フ、試ミニ私ガ聞キマシタ數字
  デモ、私ハ是レ程ヂヤナイト思ツテ居ツタ
  ノデスガ、偶ニ表ヲ見テ驚キマスコトハ、
  過燐酸デモ一、七デ七十五萬「トン」位先ヅ普
  通ハ配給シテ居ツタ、ソレガ今日ドウカト
  云フト、十五、六萬「トン」マデ減ツテ來テ居
  ル、是デ米ヲ穫レ、麥ヲ穫レト仰シヤツテ
  モ無理ダト云フ氣持ガ致シマスガ、一體ド
  ウデスカ、七十五、六萬「トン」配ツテ居ツ
  タモノガ、十五、六萬「トン」ノ過燐酸ニナ
  ツテ、ソレデ一體尙且ツ穫レト云フ指導ガ
  農產課長果シテ出來ルカドウカ、農產技術
  上一體サウ云フコトガ可能カドウカ、硫安
  ニシマシテモ八十二、三萬「トン」使ツテ居
  ツタモノガ-是ハ私ノ申スノハ一、七ノ
  數字デス、八十二、三萬「トン」使フコトガ
  常識デアツタ硫安ガ、今日四十萬「トン」程
  度、半分マデモ行カナイト云フコトデ、ソ
  レデ一體穫レト云ツテモ、穫レルト思フコ
  トガ私ハ間違ヒダト思フ、暗渠排水、客土、
  何レモ結構ナコトデゴザイマセウケレド
  モ、少クトモ肥料行政ノ重要性ニ鑑ミテ、
  モツト此ノ角度ヲ上ゲナケレバ增產ハ期セ
  ラレヌト私ハ思フ、所ガ私ガ今申上ゲルヤ
  ウテ半分若シクハ三分ノ一以下ニ數字ガ減
  ツテ居ル、ソコマデ化學肥料ガ追詰メラレ
  テ來テ居ルト云フ時ニ、イヤソレハサウダ
  ケレドモ、他ニ斯ウ云フ手ガアルト云フ手
  ガアレバ承リタイ、若シクハ他ニ大シタ手
  モナイノダト云フコトデアレバ、ソレデ〓
  糧ヲ穫ラウト云フコトハ非常ニ間違ヒダト
  思フ私ノ考ヘニ對シテ、御所見ヲ承ツテ見
  タイト思フ

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• 057・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　數字ノ問題ニ付キマ
  シテハ、又別ニ適當ニ御話ヲシテ見タイト
  考ヘテ居リマス、燐酸肥料ニ付キマシテハ
  御承知ノヤウニ燐礦石ノ品位ガ非常ニ下ツ
  テ居リマスノデ、過燐酸ダケデ比較ヲ致シ
  マスヨリモ、ヤハリ特殊化成ノ方へ〓ルモ
  ノガ相等ニゴザイマスカラ、無機ノ燐酸肥
  料全體ノ比較ヲ致シマス方ガ、大體ノ傾向
  ヲ知ル上ニ於テ宜シイヤウナ狀態ニナツテ
  居ルト思ヒマス、其ノ點ハ又〓究ヲシテ見
  タイト思ヒマス、ソコデ肥料ガ斯ウ云フ狀
  況ニナツテ來テ生產ノ確保ガ出來ルカ、之
  ヲ增加サセル方法ガハツキリ立ツテ居レバ
  宜シイ、然ラズシテ如何ナル方法ガアルカ、
  斯ウ云フ御尋ネノヤウニ窺ヒマシタガ、私
  共トシマシテハ、勿論他ノ方法モ講ジマス
  ケレドモ、有機、無機、通算ヲ致シマシテ、
  配給肥料ト云フモノノ數量ヲ或ル程度ニ確
  保スルト云フコトハ、何トシテモ必要ナ絕
  對ノ要件デアルト思ツテ居ルノデアリマス、
  勿論自給肥料ノ增產ナリ、ソレカラ所謂乾
  土ヲスルトカ、燒土ヲスルトカ、或ル程度
  燻炭的ナモノヲ農村ニ於テ實行セシメルト
  カ云フヤウナ凡ユル方法ハ、此ノ際モウ全
  部ヤツテ見ナケレバナラヌトハ思ヒマスケ
  レドモ、全體ノ計畫トシテソレニ多クヲ依
  存スルコトハ非常ニ危險デハナイカ、勿論
  努力ハ願ヒマスケレドモ、一方ニ於テ配給
  肥料ノ或ル程度ノ確保ト云フコトハ、私共
  トシテハ何トシテモヤラナケレバナラヌト
  思ツテ、努力ヲ致シテ居ルノデアリマス、
  肥料ガ少イ場合ニソレヂヤドウ云フコトヲ
  スルカト云フコトニナレバ、是ハモウ御承
  知ノ通リ、自給肥料ト云フモノハ、是非ト
  モヤラナケレバナラヌ、是ハ結局農村勞力
  ノ問題ニナツテ參リマスカラ、其ノ方面ニ
  各方面カラノ勞力ヲ持ツテ行ク、殊ニ國民
  學校或ハソレ以上ノ學校ノ學徒ヲ此ノ際極
  力動員シテ、自給肥料ノ原料トナルモノハ
  全部搔キ集メル、沼ノ泥ハ搔キ上ゲル、溝
  ノ土モ浚フト云フヤウナ細カイコトヲ、總
  テヤツテ見ルコトヨリ致シ方ガナイト思フ
  ノデアリマス、サウ云フコトニシマシテ、
  自給肥料ノ增產ヲ圖リ、ソレカラ此ノ際斯
  ウ云フ時期デアリマスカラ、後ノコトハ後
  ノコトトシテ、兎モ角土壤ノ生產力ヲコヽ
  短期間ハモウ出シ切ツテモ宜シイト云フ位
  ノ積リデ、乾土モヤレバ何モヤルト云フヤ
  ウナコトヲシナケレバナラヌト思フノデア
  リマス、偶〓此ノ暗渠排水ノ如キモノモ、各
  種ノ效果ハゴザイマスケレドモ、其ノ中ニ
  於テ乾土的ノ效果ガ相當大キイ、サウシテ
  土壤中ノ肥料成分ヲ有效化セシムルト云フ
  コトニ、相當大キナ效果モゴザイマスカラ、
  斯ウ云フコトモ一ツヤツテ、兎モ角土地ノ
  力ヲコヽ一年ナリ二年ナリノ間ニ、ウント
  發揮サセルト云フヤウナ措置ヲ講ジテ參
  ル、斯ウ云フコトヲ致シタイト考ヘテ居ル
  ノデアリマス、併シ配給肥料ノ或ル程度ノ
  確保ト云フコトハ、是ハ何トシテモヤラナ
  ケレバナラヌト云フ積リデ努力ヲ致シテ居
  ル譯デアリマス

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• 058・河野一郎

  ○河野(一)委員　是モ先程申上ゲタヤウ
  ニ、御希望ダケデ實際ハドウシテモ出來テ
  居ナイ、色々ナコトヲオヤリニナリマスケ
  レドモ、問題ハ石炭ガアレバ電氣モ出來ル
  シ硫安モ出來ルノダカラ、何モ農村ノコト
  ヲ農村ダケノ狹イ範圍デ、溝ノ土ヲ浚ツテ
  見タリ木ノ葉ヲ搔集メテ見タリスルト云フ
  ヤウナ線ノ細イコトヲ考ヘナイデ、モウ少
  シ綜合的ニ考ヘテ行クト云フコトヲ農商省
  デ考ヘテヤラレタラドウカ、本當ニ化學肥
  料ガナケレバヤツテ行カレナイト云フコト
  ナラ、其ノ建前デ軍ノ方ト相談シテ、例ヘ
  バ燐灰石デ宜シケレバ海州ノ近所ノ匪賊ヲ
  追拂ツテ持ツテ來ルトカ、老開ノ方ノ防備
  ヲモツト强クシテ貰ツテ持ツテ來ルトカ云
  フヤウニシテ、モウ少シ大キク考ヘテオヤ
  リニナル方ガ宜イデハナイカ、唯肥料ガナ
  イカラソレ暗渠排水ダ、ソレ乾土ダト云フ
  ヤウニ、自分ノ內輪デ細イ線デ片付ケヨウ
  ト云フ所ニ私ハ無理ガアルダラウト思フ、
  之ヲモウ少シ廣ク大キク眺メテ、本當ニ有
  效適切ナ所ニグツ付ケルト云フコトヲ御考
  ヘニナル必要ガアルノデハナイカ、ソレニ
  ハ今申上ゲタヤウニ、如何ニ言ツテモ肥料
  ガ餘リニモ少ナ過ギルコトヲ、モウ少シ農
  產課長以下技術者方面モ篤ト御考慮戴キタ
  イ、農產課長ハ是ダケ肥料ガ減ツテハ、果シ
  テ農產課長ノ責任ガ勤マルカドウカト云フ
  氣持モスル、米ハ七千百萬石ガ生產目標デ
  アル、麥ハ幾ラガ生產目標デアルト云フコト
  ヲ言ツテ、其ノ生產目標ト云フ數字ハ生マ
  レテ出テ來ルガ、ソレガ今ノ肥料狀態デ出
  來ルヤウナラ、今マデ無駄ナ肥料ヲ使ハシ
  テ居ツタト云フ、技術的ナ「ヂレンマ」ニ陷ル
  ノデハナイカトサヘ考ヘルノデアリマス、
  斯ウ云フ點ニ付テハ技術家トシテ儼タル立
  場ニ立ツテヤツテ戴キタイ、事務官ガ追込
  マレタ時ニ技術家ガ其ノ尻拭ヒヲシテ、ヤ
  レ乾土デゴザイ、何デゴザイト云フ理窟ヲ
  付ケテヤルト云フコトハ技術者トシテ執ル
  ベキ態度デハナイト思フ、技術者ハ儼タル
  立場ニ立ツテヤツテ戴キタイト思フ、是ダ
  ケナケレバヤレヌ、是レダケナケレバ〓糧
  增產ノ目標ハ達セラレマセヌト云フコトヲ
  儼トシテ主張シテ貰ヒタイ、ナケレバナイ
  デ理窟ヲ付ケテ、今ノ農政局長ノ御話ノヤ
  ウニ、事務官ニサウ云フコトヲ〓ヘ込ンデ、
  事務官ガ答辯出來ルヤウニ持ツテ行クト云
  フコトハ、技術者トシテハ間違ヒデアルト
  思フ、技術者ハ技術者トシテノ見識ガナケ
  レバナラヌ、其ノ見識ガ一番缺ケテ居ルト
  思フカラ、日本農業界ニ於ケル見識ト云フ
  モノヲ非常ニ〓揚シテ貰ヒタイト思フ、其
  ノ意味デ特ニ農產課長ノ御出席ヲ煩ハシタ
  ノデアリマス、是ハ特ニ御考慮ヲ願ヒタイ、
  ナケレバナイデ後カラ技術者ガ理窟ヲ付ケ
  テアレデモ宜カラウ、是デモ宜カラウト云
  フコトデ農村ニ全部持ツテ來ラレルコトハ、
  農村デハ非常ニ困ル、長年我々ノ尊敬スル
  技術ノ立場ニアル方ハ儼トシテ主張シテ戴
  キタイト思フ、ドウカサウ云フヤウニ御考
  慮ヲ煩ハシタイ
  其ノ次ニ御尋ネシタイノハ、肥料ノ問題
  ハ何レ他ノ機會ニ申上ゲルコトモアラウト
  思ヒマスシ、大臣ニモ直接申上ゲル積リデゴ
  ザイマスカラ此ノ程度ニ致シマスガ、私ガ
  心配致シマスノハ今言フヤウニ肥料ガチイ
  カラ、ソレヲ土地改良ノ方ニ持ツテ行ツタ、所
  ガ土地改良ハ今仰シヤルヤウニ乾土ノ點ニ
  重點ヲ持ツテ行ツタガ、果シテ今年ノ乾土政
  策ハ用水ノ點ニ於テ不安ハナイカ、今年若シ
  早害トマデ行カナイマデモ用水ニ不安ハナ
  イカ、其ノ準備ハ十分ニアルノカ、農村ニ
  參リマスト一部ニハ其ノ點ニ非常ニ不安ノ
  聲ヲ聞キマス、併シ今日全國ヲ擧ゲテ暗渠
  排水、暗渠排水ト云フ聲ノ高イ際デアリマ
  スカラ、ヤレ〓〓ト云フ勢ヒデ氣合ヲ掛ケ
  テヤツテ居リマスガ、此ノ暗渠排水ヲヤリ
  マシタ所ガ、植付ニ當ツテ旱リデ植付ケ得
  ナイト云フ場合ニハ、其ノ計畫ハ一體善イ
  ノカ惡イノカ、是ハ我々素人デ分リマセヌ
  シ、勿論專門的ナ技術モ持合セマセヌガ、
  斷ジテ心配ナシナラナシト云フコトヲ明瞭
  ニ仰シヤツタ方ガ、暗渠排水ヲ推進スル上
  ニ於テ非常ニ宜シイト思フカラ、今日ノ政
  府ノ計畫通リ暗渠排水ヲ遂行シテモ、今後
  ノ用水ニ於テ心配ナシト云フコトヲ言明セ
  ラレル必要ガアルト思フ、今日農村デハ非
  常ニサウ云フ聲ヲ聞キマスガ、果シテサウ
  云フ確信ガアリヤ否ヤト云フコトヲ御伺ヒ
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=58

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• 059・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　昨年決定ヲ致シマシ
  テ只今實行中デアリマス、土地改良ノ事業
  ハ、暗渠排水ト云フコトガドウ云フ關係デ
  アリマシタカ、非常ニ一般ノ注目ヲ惹キマ
  シテ、土地改良ト云ヘバ暗渠排水ト云フ風
  ナ印象ヲ與ヘテ居リマスルガ、計畫ノ內容
  ト致シマシテハ小用排水、溜池ノ仕事、ソ
  レカラ用排水ノ水路ノ問題ト云フ小用排水
  ノ事業分量ガ非常ニ多イノデアリマス、御
  話ノゴザイマシタ暗渠排水ノ施工後ニ於ケ
  ル用水ノ問題ト云フモノハ御說ノ通リ非常
  ニ大キナ問題デアリマスカラ、當初我々ト
  シテ計畫シマシタ時ニ、其ノ點ヲ十分考ヘ
  タノデアリマス、ソコデ各地元ノ村々ニ於
  キマシテハ水ノ關係ハ全體ノ非常ナ大キナ
  關心事デアリマスカラ、苟モ水ニ不安ガア
  しょう暗渠排水ヲヤリタイト言ツテモヤラ
  ナイト云フ關係ガアルト存ジマスガ、之二
  對シテ事業上ニ於テ事業分量ヲ確保スル爲
  ニ、地元ニ於テ水ノ心配ガアツテモ、或ル
  仕事ヲヤラセルヤウナコトヲスルト云フコ
  トガ、ソコニ一ツノ問題ガアラウト思ヒマ
  スノデ、中央デ二囘集リマシタ時ニ、特
  其ノ點ハ話ヲ致シマシタト共ニ、「ブロック」
  會議ヲヤリマシタ時モ、其ノ點ニハ十分ニ
  念ヲ入レテ話ヲシタノデゴザイマス、ソレ
  カラ又實際ノ計畫トシマシテモ、暗渠排水
  ノ事業面積ノ約半分ハ必ズ小用排水ヲ伴
  フ事業面積トシテ、私共ハ計晝ヲ致シテ居
  リマス、ソコデ事業量ハ或ル面積ニ付テ暗
  渠排水ヲヤリマスレバ、殆ド小用排水ノ仕
  事ハ半分ハ必ズ伴フモノト云フ計畫ノ下ニ、
  事業分量ノ割當ナリ、資金ノ割當ナリ
  ヲ致シテ居リマス、半分程度ニ考ヘ
  テゴザイマスルシ、實行上モ村ノサ
  ウ云フ心配ヲ無視シテヤルヤウナコトノナ
  イヤウニト云フコトヲ再々申シテ居リマス
  カラ、水ノ關係ニ付テハ當初カラ愼重ニ考
  ヘマシテ、私共トシテハ其ノ點ニ不安ハナ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ今後ニ
  於キマシテモ十分其ノ點ハ注意ヲ致スベキ
  要點ト考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=59

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• 060・河野一郎

  ○河野(一)委員　現ニ私ノ〓里ニ於キマシ
  テモ、用水ヲ是非ヤツテ欲シイト云フコト
  ヲ農林省ニ御願ヒモシテアリマシタガ、其
  ノ用水關係ノ仕事ハ今以テ出來ナイデ、暗
  渠排水ノ仕事ダケ其ノ關係ノ町村ガヤリマ
  スノデ、町村長ガ非常ニ心配シテ居ル、是
  ハヤツテ宜イモノカ惡イモノカト云フコト
  ヲ心配シナガラヤツテ居ルト云フヤウナコ
  トモアリマスカラ、今後サウ云フヤウナ地
  方ガアリマシタラ、篤ト農商省トシテハ御
  考慮アツテ然ルベキデアルト考ヘマスノデ
  申上ゲタノデ、是非ソレ等ノ點ハ特別ヲ御
  配慮ヲ煩ハシタイト思フ、長クナツテ恐縮デ
  スガ、モウ一、二點御許シヲ願ヒタイ、次ニ御
  尋ネシタイノハ、自作農創定ノコトデアリ
  マスガ、此ノ自作農創定ハ同僚カラ色々御
  尋ネガアツタヤウデアリマスケレドモ、私
  ハ別ノ觀點カラ一、二御尋ネシテ見タイト思
  フ、ト申シマスノハ、今日ノ地方ノ經濟事
  情カラ考ヘマスト、少クトモ曾テ數年前ニ
  自作農創定ガ色々議會デ喧シカツタ當時カ
  ラ引續イテ今日マデ來テ居リマスル其ノ過
  程ニ於テ、農家ニ金ガナイカラ政府ノ金デ
  自作農ヲ創定シテ、自作農家ヲ作ラウト云
  ツタコトガ抑〓ノノメメアリマス、其ノ觀念
  ヲ何時マデモ持ツテオイデテ、今日デモ農
  家ニ金ガナイカラ金ヲ出シテ自作農ヲ創定
  シテヤラウト云フヤウナ考ヘ方ハ、多少急
  處ニハ反シテ居ルノヂヤナカラウカト思フ、
  自作農ガ良イ、良イガ、ソレガドウシテ出
  來ナイカト云フコトノ今日ノ一番ノ難點ハ、
  買手ガアツテモ田畑ノ賣手ガナイト云フ所
  ニ、其ノ大部分ト云フヨリモ、殆ド全部ノ
  原因ガアルト私ハ思フ、ソレノ證左ト致シ
  マシテハ、公定價格デ取引サレテ居ル土地ガ
  果シテアラウカドウカ、ソレハ餘リ露骨
  ナ話デスケレドモ、公定價格デ取引スル土
  地ト云フモノハ恐ラクナカラウト思フ位
  ヂヤナイカト思フ、公定價格デ土地ガ取引
  サレナイデ、公定價格ヲ非常ニ上廻ル、現
  ニ政府デモ今度百五十圓ナリ九十圓ナリ出
  サウト云フコトハ、其ノ事實ヲ御認メニナ
  ツテ居ルカラダト私ハ思フ、ソレ位賣手ガ
  ナクテ買手ガ多イ、シテ見レバ今度此ノ計
  畫ヲ御進メニナルニハ其ノ點ニ付テ深キ思
  案ガナケレバナラヌ、而シテ今申上ゲタヤ
  ウナ事實カラ推論致シマスレバ、百五十圓
  トカ九十圓トカ云フ補助金ノ額ノ決定ガ妥
  當ナリヤ否ヤト云フコトニ、此ノ事業ガ遂
  行サレルカ否カガ懸ツテ來ルト思フ、是ガ
  賣手ノ滿足スルダケノ補助金デアレバ賣手
  ガ出テ來ル、公定價格「プラス」百五十圓ト云
  フモノガ滿足スル値段デアレバ出テ來ルト
  私ハ思フ、一體百五十圓、九十圓ト云フモ
  ノハ目ノ子勘定デ斯ウ云フ金額ヲ御出シニ
  ナツタノカ、ソレトモ相當ノ計數的基礎ガ
  アツテ御出シニナツタノカ、之ニ付テ少シ
  詳シク御說明願ヒタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=60

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• 061・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　自作農創設促進ノ關
  係ニ於キマシテ解決ヲ要スル問題ハ、只今
  河野委員カラ御話ニナリマシタヤウニ、土
  地價格ト云フモノニ付テノ問題ガ大キナ一
  ツノ問題デアルコトハ御話ノ通リデアリマ
  ス、此ノ問題ニ付テ解決ヲ致シタイト考ヘ
  マシタノガ國ノ補給金ノ問題デアリマス、
  之ニ付テ水田ニ於テ平均百五十圓、畑ニ於
  キマシテ平均九十圓ト云フ見當ヲ付ケマシ
  タ基礎デアリマスガ、是ハ勿論豫算上ノ單
  價デゴザイマシテ、實行上ニ於キマシテハ、
  地方ニ依リ、又其ノ個々ノ農地其ノモノニ
  依リマシテ、相當ノ相違ヲ生ズルコトハ勿
  論デアリマスガ
  〔委員長退席、杉山委員長代理著席〕
  私共トシテハ平均致シマシテ百五十圓、九
  十圓ト云フモノデ運用上ハ此ノ價格問題ニ
  付テノ解決ガ付クモノト思ツテ居ル譯デア
  リマス、ソコデ此ノ實行上ノ問題ヲ先ヅ御
  聽取リヲ願ツテ置キタイト思ヒマスガ、此
  ノ差額ニ付テノ國ノ補給ト云フモノノ考ヘ
  方ノ基礎ハ、旣ニ申上ゲタト思ヒマスガ、
  土地所有者ノ側カラ見マシテ適當ナル小作
  料ヲ基礎ニ致シマシテ、之ヲ採算上ソレダ
  ケノモノヲ生ンデ來ル農地トシテハドノ位
  ノ價格デアラウカト云フ價格、詰リ土地所
  有者ノ側カラ見テ採算上此ノ程度ヲ以テ妥
  當トスルト云フ價格ト、ソレカラ耕作者ノ
  側トシテ將來ノ農業經營ヲヤツテ行ク上ニ
  於テ適當ト考ヘラレル價格、是ハ大體統制
  價格ガソレニナルト思ヒマスガ、其ノ差額
  ヲ國ガ補給スル、斯ウ云フ考ヘ方ヲ以テ計
  畫ヲ致シタノデアリマス、デ此ノ百五十圓
  ト云フモノヲ考ヘマシタノハ、詰リ豫算上
  ノ平均ノ單價トシテ見當ヲ付ケル譯デアリ
  マスカラ、個々ノ農地ニ付キマシテハ是ハ
  先程モ申上ゲタヤウニ非常ニ色々ナ軒軽ガ
  アラウト思ヒマスガ、豫算ノ建前トシマシ
  テハ先ヅ全國平均デ之ヲ考ヘテ行クヨリ仕
  方ガナイ、ソコデ全國平均ニ致シマシテ、
  水田ニ於テハ普通ノ小作料ト云フモノヲ約
  四割位ニ見ルノデアリマス、此ノ四割ト云
  フモノヲ平均ノ小作料ト見マシテ、之ヲ米
  價デ還元ヲ致シテ、サウシテ土地所有者ノ
  負擔スル公租公課ヲ引キマシテ、之ヲ普通
  ノ利廻リデ逆算ヲスルト云フ計算ヲヤツタ
  ノデアリマス、サウシテ出シマシタ價格ト、
  ソレカラ現在ノ統制價格ノ全國平均ト云フ
  モノノ差額ヲ見マスルト、大體是ガ百五十
  圓見當ニナリマスノデ、豫算上ハ百五十圓
  ト云フモノヲ出シタ、斯ウ云フ關係ニナツ
  テ居ルノデアリマス、畑ハ現在全國的ノ水
  田ノ統制價格ト畑ノ統制價格トノ比率ガゴ
  ザイマスカラ、其ノ比率ヲ使ヒマシテ、畑
  ノ方ノ差額ヲ出シタ、ソレガ九十圓ニナツ
  テ居ル、ソコデ切リノ宜イ所デ、百五十圓、
  九十圓ト云フ所ヲ以テ豫算ノ單價ト致シタ、
  運用上ハ其ノ範圍內デ先程申シマシタ趣旨
  ノ達成出來ルヤウナ運用方法ヲ考ヘタイ、
  是ハ十分〓究ヲ要スル問題デアリマスカラ、
  能ク〓究ヲ致シマシテ、實情ニ合フヤウナ
  合理的ナ方法ヲ發見シタイト云フ風ニ考ヘ
  ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=61

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• 062・河野一郎

  ○河野(一)委員　サウシマスト今ノ計算ノ
  方法デ最高ノ補助率モ決マルト云フヤウニ
  考ヘテ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=62

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• 063・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　最高ノ補助率ト申シ
  マスカ、土地ニ依リマシテハ百五十圓ヨリ
  モ更ニ高イ補給金ヲ出サナケレバナラナイ
  所ガ出テ來ルデアラウ、是ハ當然サウ考へ
  テ居リマス、此ノ間次官カラ御答辯ガアツ
  タヤウデアリマスガ、其ノ差額ニ相當スル
  モノヲ耕作者ガ買入レマスル統制價格ノ上
  ニ「プラス」シテ、サウシテ土地所有者ノ側
  ニハ賣買ノ際ニ一時ニ全部行クヤウニスル、
  サウシテ此ノ差額ニ付テ、是ハ自作農創設
  事業者ト云フモノガゴザイマス、市町村農
  業會等ガアリマスガ、此ノ市町村農業會
  ガ一時金ヲ借リテ拂ツテヤル、其ノ借リ
  夕金ヲ年々返シテ行ク、其ノ金ヲ政府デ補
  給シテ行ク、斯ウ云フ建前ヲ執ツテ行キタ
  イト云フノデアリマシテ、勿論百五十圓ヨ
  リ高イモノモ出テ參リマス、ソレヲ平均シ
  テ考ヘテ見マスト、此ノ百五十圓ト云フモ
  ノハ、統制價格ノ全國平均ニ對シマシテ二
  割五分以上ノ比率ヲ持ツコトニナルノデア
  リマス、デアリマスカラ、先ヅ單價トシテ
  ハ私共ハ妥當ナ所ヂヤナイカト思ツテ居ル
  譯デアリマス

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• 064・河野一郎

  ○河野(一)委員　私ハ實情カラ申シマスレ
  バ、計算ハ成程御尤モト思ヒマスケレドモ、
  實情ハ今ノヤウナ値段デハ中々動カナイ、相
  當ソコニ他ノ壓力ガナケレバ動カナイ、是ハ
  遺憾ナガラ平野委員ト同樣ナ見解ヲ持ツ者
  デアリマス、今日ノ地方ノ土地ノ賣買價格ヲ、
  闇カ何カ、他ノ目的ノ違フ場合等ニ於テ、農
  商省デ許可サレタ場合ノ價格等カラ見合セ
  マシテ、到底サウ云フ値段デ動クモノデハ
  ナイ、是ハモウ少シ農商省デ、次ノ機會ニ
  ハ御考ヘ直シニナラナケレバ、所期ノ目的
  ハ達セラレナイト云フ見解ヲ持ツノデアリ
  マス、尙ホ此ノ際念ノ爲ニ承ツテ置キタイ
  ト考ヘマスノハ、適正小作料ト申シマスカ、
  適當ナル小作料ト申シマスカ、是ハドウ云
  フ御見解デアリマスカ、今御話ノ中ニ適當
  ナル小作料云々ト云フ御言葉ガアツタノデ
  アリマスガ、ソレハ一體ドウ云フノガ適當
  ナル小作料デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=64

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• 065・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　適當ナル小作料ト申
  上ゲマシタノハ、先ヅ〓〓現狀ニ於キマシテ
  モノヲ考ヘル場合ニ適當ナル小作料、斯ウ
  言フト甚ダ抽象的デ恐縮ナ言ヒ分ノヤウニ
  聞エマスガ、適正小作料トカ、公正ナル小
  作料トカ、色々意見ガゴザイマス、其ノ理
  論ノ組立テノ基礎ニナツテ居ル事項ニ付テ
  ハ、申スマデモナク非常ニ色々ナ問題ガア
  ル譯デアリマシテ、一ツノ理論的ナ構成ノ
  下ニ組立テラレタ公正ナ小作料トカ、適正
  ナル小作料トカ云フ意味デナシニ、一ツノ
  達觀ト申シマスカ、尋常ニ於テ見透シトシ
  テ適當ナル小作料ト云フモノガ御承知ノ通
  リデゴザイマスカラ、ソレヲ押ヘタ譯デア
  リマシテ、エラク理窟張ツタ公正小作料ト
  カ、適正小作料デナイト云フ意味ニ於テ適
  當ナル小作料ト云フコトヲ申上ゲタノデア
  リマス、ソレカラ一寸恐レ入リマスガ、先
  程價格ニ付テソレデハドウダラウカト云フ
  御見解ガゴザイマシタガ、是ハ御意見ノ問
  題デアリマスケレドモ、是ハ非常ニ地方地
  方ニ依リマスガ、地方ト云フヨリモ地帶ニ
  依ルト思ヒマスガ、私共トシテハ是デ相當
  ニ滿足スル補給金ニ現實ノ問題トシテハナ
  ルダラウト思ツテ居リマス、相當協力的ナ
  現象モゴザイマスカラ、出來ル限リ努力シ
  タイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=65

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• 066・河野一郎

  ○河野(一)委員　ソコデ私ハ掘下ゲテ適當
  ナル小作料ト云フモノハドウ云フモノカト
  云フコトヲ伺ツタ、適當ナル小作料ノ解釋
  如何ニ依ツテハ此ノ百五十圓ノ平均デ、最
  高ハモツト多クナルト云フ計算ガ付クト思
  フ、デスカラ此ノ適當ナル小作料ト云フモ
  ノヲ非常ニ低イ所ニ見當ヲ付ケテ、是ガ適
  正ダト云フ所ニ押ヘレバ、現在ノ公定價格
  ト幾ラモ違ハナイ計算ニナル、サウスルト
  低イ所ハ百五十圓カ七、八十圓ニモナリマ
  セウシ、相當高イ所ヲ適當ナル小作料ト石
  井サンガ達觀シテオイデニナレバ、百五十
  圓ガ二百五十圓ニモナルト云フ計算ガ出テ
  來ル、ソレマデハ出シテモ適當ダト云フコ
  トニナリマスカラ、是ハ行政上ノ運用デ、
  石井農政局長ノ達觀如何ト云フコトヲ質問
  シナケレバナラヌコトニナツテ來マス、所
  ガ是ハ今申スヤウニ、此ノ百五十圓ガ平均
  デアツテ、此ノ補助金ノ率ヲ決メル基準ノ
  小作料ニナルノデアリマスカラ、是ガ總テ
  農政局長ノ決裁ヲ經ルナラバ宜シイガ、全
  國各地ノ農地委員會カ何カデヤルコトニナ
  ルト、今ノヤウナ達觀ガ非常ニ區々ナ達觀
  ニナル虞ガアルト思フ、是ハ或ル程度ノ枠
  ガ必要デハナイカ、ナゼサウ云フコトヲ言
  フカト云ヘバ、昨年ノ秋以來少クトモ我ガ
  神奈川縣ニ於テハ小作官ト農村トノ間ニ小
  作料ニ付テ非常ニ不愉快ナ問題ガアツタ
  〔杉山委員長代理退席、委員長著席〕
  是ハ一遍石井サンノ所ニ懇談ニ出ヨウト思
  ツタノデアリマスガ、止メタノデアリマス、
  サウ云フ問題ハ私ノ縣ダケデハナイト思フ、
  ダカラ私ハ申上ゲルノデ、此ノ適當ナ小作
  料ヲ達觀スルト云フコトハ、アナタガ御使
  ヒニナルナラ宜シイガ、極ク系統ノ低イ所
  ノ今日ノ官吏ハ中々威勢ノ良イコトヲヤ
  リマスカラ、ソレ等ガ達觀シタ小作料ト云
  フヤウナコトデ認定ヲスルコトハ非常ニ危險
  ガアル、共產黨ノ一步手前マデ行ク、私ハ
  露骨ニ申シマス、デアリマスカラ私ハ嚴ニ
  是ハ戒メテ貰ヒタイト思フ、是ハアナタナ
  ラバ、達觀シタ小作料ト言ヘバ君ニモ分ル
  ダラウト云フコトデ、私モ分ツタヤウナ顏
  ヲシマスケレドモ中々分ルモノデハナイト
  思フ、是ハ若シ今日ノ機會デイケマセヌケ
  レバ、明日大臣カラデモ然ルベク明瞭ニシ
  テ戴ク必要ガアル、此ノ數字ガ出マス以上
  ハ、是ガ恐ラク議會後ニハ何等カノ形デ地
  方ニ通牒サレル、達觀シタ適當ナ小作料ト
  云フ字デ行キマスト、非常ニ間違ヒガ起リ
  マスカラ、我々ノ了承シタ程度ニ分ラシテ
  戴カヌト困ルト思フ、デスカラ今御答辯ガ
  ナケレバ、明日大臣ノ御出席ノ際ニ、大臣
  カラデモ結構デアリマスカラ、此ノ小作料
  ニ付テハ、現在ノ小作料ヲ以テ云フノデア
  ルカ、現在ノ小作料ノ中デ特ニ斯ウ云フヤ
  ウナ不合理ナモノニ付テハ是正シタ小作料
  トカ何トカ云フ條件ガ付カナイトイカヌト
  思フ、是ハ恐ラク此處ニ御同席ノ諸君モ御
  同感ダラウト思フ、是ハ是非サウ云フヤウ.
  ニ願ヒタイト思フノデアリマス

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• 067・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今御尋ネノ點ハ、
  御說ノ通リ、非常ナ重要ナ點デゴザイマシ
  テ、此ノ見方如何ト云フコトガ、相當ニ結
  果ニ影響スルコトハ,御話ノ通リデアリマ
  ス、此ノ見方ハ、先程非常ニ失禮ナヤウナ
  コトヲ申上ゲマシタガ、氣持ハ御酌ミ取リ
  戴ケタカト思フノデアリマス、私共ガ此ノ
  百五十圓ト云フモノノ見當ヲ付ケマス時ノ
  基礎トシテ一ツノ數字ガアル、ソレガ先程
  申上ゲマシタヤウナコトナノデアリマスカ
  ラ、今後之ヲ實行致シマス場合ニハ、ハツ
  キリトシタ、出來得ル限リ全國一律ニ適用
  ニナリマスヤウニ、場合々々ニ依ツテ裁量
  ノ範圍ガ非常ニ大キイト云フヤウナコトノ
  ナイヤウニ、具體的ナ計算方法ハ決メテ參
  リタイト思ツテ居ルノデアリマシテ、私共
  トシテモ今御話ノ點ハ全ク御同感デゴザイ
  マス、其ノ他ニモ色々複雜ナ問題モゴザイ
  マスカラ、私共トシテハ、役所ニアル農地
  審議會等ニ於キマシテ、十分具體的ナ此ノ
  交付方法ハ御〓究ヲ願ツテ、サウシテ豫算
  ノ運用ニハ遺憾ノナイヤウニ、重要ナ問題
  デゴザイマスカラ、措置ヲシテ行キタイト
  考ヘテ居ルノデアリマス、ドウゾ左樣ナ意
  味デ御聽取リヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=67

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• 068・河野一郎

  ○河野(一)委員　ソレハ自作農ヲ創設サレ
  マスノニ、ドウシテモ是ハ政府ガ觸ルマイ
  ト思ツテモ觸ラナケレバナラヌ問題ハ、標
  準農家ノコトデアリマス、適正規模農家ト
  申シマスガ、標準農家ヲドウスルカト云フ
  コトヲ御決メニナラナケレバ、一體何町步
  マデノ農家ヲ自作農家ニシテ、金マデヤツ
  テ田ヲ持タセルカト云フコトガ決マツテ來
  ナイ、例ヘバモツト持チタイト申セバ、二
  町步デモ三町歩デモ持タセルカト云フヤウ
  ナコトニナツテ、現ニ同僚吉植君ノ如キ二
  十町步作ツテ居ツテモ自作農家デアル、サ
  ウ云フモノハ一體ドウスルノカ、是ハ適正
  規模農家ヲ或ル程度ニ政府ガ御決定ニナリ
  マセヌケレバ、現在ノ標準農村ニ付テモ政
  府ハ非常ニ御困リノヤウデアリマスガ、是
  ハドウデモ斯ウデモ決メナケレバナラヌ、
  問題ハ後〓シニ延バサズニ御決メニナツタ
  ラ宜シイト思フ、後カラ變ヘラレルコトハ
  宜シイ、今度ノ自作農創定ニ當ツテモ、サ
  ウ云フヤウナ面倒ナ問題ニナルト、地方デ
  然ルベク事情ニ卽應シテト言ツテ逃ゲラレ
  ルコトハ、私ハ宜イコトデハナイト思フ、
  地方ニ任セテ良ク行ケバ宜イケレドモ、良
  ク行ツタ場合ハ少イ、地方ニ任セレバ、變ナ
  コトニナツテ區々ニナツテシマフ場合ガ
  相當ニアル、或ル一定ノ枠ノ中ニ於テ地方
  ノ實情ヲ加味シテヤラセルヤウニシナケレ
  バイカヌト思フ、是ハ一ツ自作農ヲ創設ス
  ル場合ニ於キマシテモ、其ノ創設シタ農家
  ガ直グ其ノ地所ガ何處へ行ツテシマツタカ
  分ラヌト云フヤウナ、過去ノ實績等カラ見
  ルト、甚ダ面白クナイ場合ガ相當アルヤウ
  ニ私ハ聞イテ居ル、シテ見レバ、今囘ノ如
  〃、積極的ニ政府ガ乘出シタ場合ニ於テ、
  今後ノ處置乃至ハ政府ノ理想等ガ、相當明
  確ニ示サレテ居ラナケレバナラヌト私ハ思
  フ、所ガ斯ウ云フ重大時局デアリマスカラ、
  私共ハ先ヅ政府ヲ信賴シテ、大抵ノコトハ
  先ヅヤツテ御覽ナサイト言フノデアリ、マス
  ケレドモ、併シ是ハ一日モ早ク御決メニナ
  ル必要ガアルト思フ、之ニ付テノ御所見ハ
  ドウデアルカ、私ノ氣持トシテハ、最後マ
  デ申上ゲテシマヒマスガ、サウ云フ適正規
  模ノ農家ヲ御〓究ニナリ、御決定ニナリマ
  ス際ニハ、家畜ノ種類ハドウ云フモノヲ取
  入レルカ、今日自作農創設、自作農創設ト
  云フコトデ、田畑ノコトバカリ力ヲ入レテ
  オイデニナルヤウデアルケレドモ、家畜ノ
  面ハ農業經營ノ上ニ於テドウ云フ風ニ考ヘ
  テ、オイデニナルカト云フ結論ニ行キタカツ
  タノデアリマスガ、併シ時間ガアリマセヌ
  カラ結論ヲ申上ゲルノデアリマスガ、今年ノ
  豫算ヲ見マシテモ、畜產關係ノ新規要求僅
  カ七萬圓カ八萬圓ト云フヤウナコトデアル、
  而モ農林大臣ハ畜產ヲ振興シテ自給肥料ノ
  奬勵ヲ致シマスト云フヤウナ答辯ヲサレル、
  然ルニ一枚メクツテ見タラ七萬圓、八萬
  圓デハ餘リニヒドイト思フ、サウ云フ技術
  ハ、我々實際裏ノ裏ヲ色々考ヘテ居リマス
  者トシテハ、非常ニ滑稽デモアリ、迷惑デ
  モアルト思フ、苟モ農林大臣ガ、畜產ヲ振
  興シテ自給肥料ヲ奬勵致シマスト言フナラ
  バ、何千萬トマデハ行カナクトモ、少クト
  モ何百萬カノ金ヲ出サレルノデナケレバ、
  農林大臣ノ演說ノ種ニハナルマイト思フ、
  僅カ七萬圓カノ新規豫算ヲ取ラレテ、ソレ
  ヲ種ニシテ演說サレルノハ、山崎サンモ餘
  リニ小サ過ギルト思フ、斯ウ云フコトハ
  要スルニ答辯ノ技術ニアラズシテ、實行ノ
  問題デアリマス、デスカラ自作農ヲ創設ス
  ルニ當リマシテモ、今言フ通リ掘リ下ゲタ
  所ヲシツカリ握ツテヤツテ戴キタイ、同時
  ニモウ一ツ御願ヒ致シテ置キマスコトハ
  食糧管理局長官ハ歸ラレマシタケレドモ、
  最近甚ダ怪訝ニ堪ヘマセヌコトハ、食糧問
  題ガ斯ウ云フ風ナ事情ニナリマス前ト今日
  ト、家畜頭數ニ於テ私ハ變化ハナイト思フ、
  殖エテ居ツテモ減ツテハ居ラヌ、牛ハ殖エ
  テ居リマス、豚ガ一部減ヅテ居リマス、併
  シ鷄ハ現狀維持ト云フヤウナコトカラ參リ
  マスト、餌ノ點ニ於テ少シモ減ツテ居ラナ
  イ、唯政府ノ飼料政策ガ低調デアツテ、飼料
  ノ配給ガ少クナツテ居リマスガ、生キテ居ル
  家畜ノ食フ量ハ變ツテ居ラヌト思フ、配給
  飼料ハ減ツテ居ツテモ、家畜ハ必ズ同ジニ食
  ツテ居ル、サスレバ依然トシテ食ツテ居ル
  家畜ノ飼料ガ、海外カラ入ツテ參ツタ分ダ
  ケハ國內ノ食糧ヲ食ツテ居ルト見テ差支ヘ
  ナイト思フ、海外カラ飼料ヲ入レズニ、家
  畜ノ頭數ハ其ノ儘デアツテ、サウシテ政府
  ノ配給スル量ガ減レバ、ソレダケ食糧ニ多
  量ニ食込ムト見ルコトハ當然デアルガ、食
  糧管理局長官ハ、米ガ幾ラデ、麥ガ幾ラデ、
  甘藷ガ幾ラデ、雜穀ガ幾ラデト言ツテ、目
  ノ子ノ算盤ノ、机ノ上ノ計算ハサレルノデ
  アリマスガ、尻カラソレヲ家畜ガ食ツテ居
  ルコトハ計算ノ中ニ入ツテ居ルカト云フコ
  トヲ突込ンデ質問シタカツタ、海外カラ此
  ノ飼料ガ入ツテ居ツタ、ソレガ、外米依存
  ヲ脫却シタト同時ニ、我ガ國ノ食糧ノ中ニ
  食込ンデ居ル、若シ家畜ガ減ツテ居ルナラ
  宜シイガ、減ツテハ居ラヌト私ハ思フ、又
  減ルベキモノデナイト思フ、減ツテ居ラヌ
  トスレバ、ソレダケ食糧ヲ食ツテ居ル、ソ
  レダケ食糧ニ穴ガ開イテ居ルト云フ事實ヲ
  政府ハドウ御覽ニナルカ、何ト御考ヘニナ
  ルカト云フコトヲ少シ强ク御〓究ヲ願ツテ、
  サウシテ食糧ト飼料トノ關係ニ付テ更ニ一
  段ノ御〓究ヲ煩ハシタイト思フ、今日ノ如
  クデアリマスレバ、今マデ政府ハ月ニ三萬
  「トン」乃至四萬「トン」ノ飼料ヲ配給シテ居ツ
  タモノガ、今日ハ十萬「トン」シカ配給シテ
  居ラナイ、配給量ハ減ツテ居リマスガ、家
  畜ハ〓ツテ居リマス、何ヲ食ツテ居ルカ、
  之ニ付テ食糧管理局長官ハドウ云フヤウナ
  見解ヲ持ツテ居ラレルカ、餘程突込ンデ御
  考ヘニナリマセヌト、山崎農商大臣ハ〓糧
  ニ不安ナシト申サレルガ、其ノ食糧ノ計算
  ノ中ニハ、家畜ガ食ツテ居ル分ガ入ツテ居
  ルカト云フコトヲ申上ゲナケレバナリマセ
  ヌカラ、之ニ付テハ農政局長ニ特ニ御配慮
  ヲ煩ハシマシテ、飼料政策ヲモツト〓揚シ
  テ戴キタイ、今日ノ如キコトデハ〓糧ノ上
  ニ非常ニ誤差ガ出テ來ルト云フコトヲ申上
  ゲマシテ、御所見ガアレバ承ルコトニシテ、
  是デ私ノ質問ハ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=68

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• 069・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　第一點ノ適正規模農
  家ノ問題デアリマスガ、是ハ端的ニ適正規
  模ト云フモノハドノ位デアルカト云フコト
  ニ觸レタ解決ハマダヤツテ居リマセヌケレ
  ドモ、昨年自作農創設事業ノ實行方法ニ付
  キマシテ、或ル程度ノ轉換ヲ行ヒマシタコ
  トハ御承知ノ通リデアリマス、アノ時ハ自
  作農創設資金ニ利子補給ヲ加ヘルト云フコ
  トヲ眼目トシテ考ヘマシタガ、其ノ際從來
  自作農創設資金融通ノ限度ト云フモノハ、
  一ツノ創設ノ農家ニ付テ金額ヲ以テ制限ヲ
  加ヘテ居ツタノデアリマス、自作農創設ノ爲
  ニ融通スル資金ハ、一戶ニ付テ何圓ト云フ
  コトヲ限度ニシテ押ヘテ居ツタノデアリマ
  ス、之ニ依ツテ間接ニ面積ヲ押ヘルト云フ
  方法ヲ執ツテ居リマシタガ、昨年此ノヤリ
  方ヲ換ヘマシテ、創設資金融通ノ對象トナ
  ル農地ノ最高標準面積ト云フモノヲ地方廳
  ト農林省トデ打合セテ決メル、其ノ範圍內
  ノ面積ヲ購入スル者ニ付テハ國ガ利子補給
  ヲスル安イ資金ヲ貸サウ、斯ウ云フコトニ
  致シタノデアリマス、之ニ依リマシテ既ニ
  各府縣トモ自作農創設資金融通ノ最高標準
  面積ト云フモノヲ決メマシテ、私共ノ方ト
  打合セヲシテ大部分決マツテ居リマス、是
  ハ今申シマシタヤウニ一ツノ最高標準面積
  デアリマシテ、ソレガ其ノ儘適正規模ト考
  ヘル譯ニハ參リマセヌケレドモ、其ノ程度
  ノ面積ヲ自作農地トスル爲ニ買フ場合ニハ
  國ハ助成ヲスル、斯ウ云フコトニスル面積
  デアリマスカラ、之ニ依リマシテ間接ニ適
  正規模ト云フモノニ對スル具體的ナ囘答ト
  モナル譯デアリマス、サウ云フコトニ致シ
  テ居リマスルノデ、自作農創設ニ關シマシ
  テハ標準ノ規模ト云フモノハ只今地方別
  ニ決定ヲ致シテ居ル譯デアリマスカラ、左
  樣ニ御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、隨テ其
  ノ面積ヲ超エルモノニ付テハ、國トシテ特
  別ニドウ斯ウト云フコトヲ考ヘル範圍デナ
  イ、斯ウ云フコトニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス
  ソレカラ農家ノ經營ノ規模、經營態樣ト
  家畜トノ問題ニ付テ御尋ネデアリマシタガ、
  之ニ付キマシテハ適正經營農家ト云フモノ
  ヲ一ツ創定致シマシテ、標準農村設定ノ場
  合ニ付キマシテモ、適正經營農家ト云フモ
  ノノ關聯ヲ考ヘテ色々ナコトヲ計畫シテ居
  ルノデアリマスガ、其ノ適正經營農家ノ內
  容トシテ、其ノ農家ノ農業經營ハ家畜飼養
  ヲ伴フ經營ダト云フコトヲ一ツノ要件トシ
  テ考ヘテ居ルノデアリマス、家畜ノ飼養ト
  云フコトヲ農業ノ經營上農家トシテハ必ズ
  伴ハセルコトヲ適正ナル經營ト考ヘルト云
  フコトヲ明確ニ致シテ居ル譯デアリマス、
  勞力ノ關係、肥料ノ關係、地力培養ノ關係
  カラ申シマシテモ、家畜ノ關係ト云フモノ
  ハ特ニ重要視スベキモノト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、飼料ノ關係ニ付キマシテハ從來
  トハ違ツテ餘程考ヘテ參ラナケレバナラヌ
  時期ニナツテ居ルト思ヒマスノデ、十分考
  ヘテ參リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=69

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• 070・深澤吉平

  ○深澤委員長　小笠原君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=70

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• 071・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　食糧增產竝ニ配給問題
  ハ本議會ニ於テモ焦點トナツテ論議サレマ
  シテ、當局カラモ色々ノ角度カラ熱心ニ御
  答辯ヲ得タノデアリマス、此ノ食糧確保ノ
  問題ニ付テハ、自作農ノ問題モアリマスシ、
  又小作料ノ數量ノ問題モアリ、或ハ又金肥
  ノ增產竝ニ是等ノ配給機構ノ改善等ガ先般
  來本會議竝ニ委員會デ論議サレタノデアリ
  マスガ、マダ其ノ論議ノ盡サレナイ問題デ
  只今河野君カラ申サレタ通リ飼料問題トカ
  肥料問題ガ殘サレテ居ルヤウニ思ハレルノ
  デアリマスシ、私モ亦此ノ點ガ非常ニ不徹
  底ノ感ガアリマスノデ、其ノ點ニ付テ私ハ
  御伺ヒシタイト思フノデアリマス、〓糧ノ
  增產ト云フノハ結局有效ナル肥料ヲ增產シ
  テ、適切ナル方法ニ依ツテ施肥スルコトニ
  依ツテ解決ガ付クト思フノデアリマスガ、
  是等ト關聯致シマシテ、家畜ノ飼料ノ問題
  ヲ如何ニ解決スルカト云フコトヲ考ヘナケ
  レバナラヌト私ハ思フノデアリマス
  先ヅ私ハ肥料ノ問題カラ御尋ネ致シマス
  ガ、化學肥料ノ方ハ、勿論增產ト云フコト
  ガ必要デアリマセウガ併シナガラ今日ノ
  狀況下ニ於キマシテハ、資材ノ種々ナル困
  難ヲ伴フバカリデナク、是等ノ設備能力ヲ
  濃
  擧ゲテ飛行機ヤ軍需品ノ製作方面ニ振向ケ
  テ、殊ニ此ノ戰爭ガ續ク限リハ刻一刻ト金
  肥ノ方ハ窮迫シテ來ルヂヤナイカト思ヒマ
  ス、隨テ〓糧增產ニ付テハ、自給肥料ノ方
  ニ〓究工夫ヲ凝ラスコトニ俟タナケレバナ
  ラヌダラウト私ハ考ヘル、ソコデ政府ノ方
  ニ於テハ、〓糧增產ノ爲ニ先刻河野君カラ
  申サレタ土地改良、暗渠排水等ニ重點ヲ置
  イテ相當多額ノ豫算ヲ盛ラレテ居リマスガ、
  是モ結構ナコトト思ヒマス、併シナガラ是
  ガ完成致シマスト、只今石井局長サンノ御
  答辯ノ通リ一層肥料ノ吸收力ガ增シテ參リ
  マシテ、隨テ暗渠排水ガ完成スレバ、施肥
  ガ之ニ伴ハナケレバ增產ノ目的ヲ達セナイ
  ト私ハ考ヘマス、サウシテ然ラバ此ノ肥料
  ヲ如何ニスルカト云フコトデアリマスガ、
  今申シタヤウニ金肥ノ入手困難ノ場合ニハ、
  自給肥料ノ增產ト云フモノニ暗渠排水其ノ
  他土地改良問題ニ伴フ熱意ガ並行シナケレ
  バ目的ヲ達シテ行ケナイト私ハ思フノデア
  リマス、此ノ問題ハ案外取殘サレテ居ルヤ
  ウデ、只今河野君カラ申サレタ豫算ノ上デ
  モ僅ニ七萬圓カ幾ラカ盛ラレテ居ルヤウデ、
  又只今石井局長ノ御答辯ニアツタ通リ、溝
  ヲ浚フトカ何ヲ浚フトカ、サウ云フ問題デ
  ハ解決ガ付クモノデハナイト思フノデアリ
  マーン、一口ニ自給肥料ト申シマシテモ色々
  種類ガアルノデアリマスガ、大體堆肥、厩
  肥、魚肥トカ、綠肥トカ、鷄糞トカ、蠶糞ト
  カ、灰類等ガ主ナルモノデアルト思フノデ
  アリマス、隨テ此ノ中デ最モ自給肥料ノ多
  クノ增產ニナルノハ堆厩肥ガ問題ニナルト
  思フノデアリマス、此ノ堆厩肥ハ農家經
  濟農地ノ地力培養ノ效果ニ對シテハモ
  ウ御〓究濟ミノコトト思フノデアリマス、
  又他ノ一般肥料、特ニ化學肥料トノ配合ニ
  依ル成分ノ增進ト云フヤウナコトヤ、堆肥ノ
  極メテ重要ナコトニ對シテハ色々御〓究ナ
  サレテ居ルコトト思ヒマスルガ、併シナガ
  ラ此ノ科學性ト云フコトニ付キマシテハ、
  相當發達シタ農業地方面ヲ除イテ、御役人
  ノ方々デアツテモ、或ハ一般農家デアツテ
  モ、中々其ノ數量ノ增產ト云フコトニハエ
  ライヤカマシイコトヲ申サレテ居リマスケ
  レドモ、效果ト云フコトニ對シテハマダ認
  識不足ノヤウナ感ガ致シマスノデ、是ハ結局
  指導力ノ足ラザル所ニアルト私ハ考ヘルノ
  デアリマス、如何ニモ堆肥ヲ造成スルニハ
  其ノ原料トシテ厩肥ト云フモノガ絕對必要
  デアルコトマデハ分ツテ居ラレルヤウデア
  リマスガ、併シナガラ之ヲ堆積スルニ對シ
  テハ、唯雨曝シニシテ居ツテ肥料分ヲ減退
  シテシマフト云フヤウナコトモアルノデア
  リマス、之ニ一寸屋根ヲ掛ケルト幾分之ヲ
  防止スルコトガ出來ル、今日ノヤウニ木材
  ノ配給ガ窮屈ニナツタ時ニハ、或ハ土ヲ被
  セテ置ケバ相當效果的デアルトカ、或ハ尿
  ハ尿溜ニ注入シテ置イテ、之ヲ液肥ニシテ
  ソレ〓〓堆肥ノ切替ヘノ場合ニ時期ヲ見テ
  宜シキヲ得ルト云フト相當效果的デアル、
  色々此ノ問題ニ對シテハ同ジ政府デモ陸軍
  ノ方ノ軍馬補充部ノ支部トカ、或ハ又農林
  省ノ種畜場トカ、或ハ農事試驗場トカ云フ
  方面ニ於テハ、ソレ〓〓大キナ〓究ガ積マ
  レテ居ルト思フノデアリマスガ、是等ノ〓
  究ヲ部分的ニ指導シテ居ル感ガ多分ニアル
  ノデアリマス、此ノ點モウ少シ指導力ノ强
  化ヲ圖ツテ、色々全國的ニ〓究ノ積ミマシ
  タモノヲ綜合致シマシテ、國家ノ凡ユル指
  導方面ニ對シテ、急速ニ此ノ有效肥料ノ增
  產ニ努メル必要ガ今日アルヤウニ思ハレル
  ノデアリマスガ、ドウモ厩肥、堆肥ノ問題
  ニナルト各縣廳アタリデモ唯何萬貫トカ何
  千貫トカ云フ數量ニ付テノミ熱心ニ御調べ
  ニナツテ、ソレハ多分アナタ方ニ其ノ報〓
  ヲサレテ居ルヤウデアリマス、併シナガラ
  是ガ一體有效カ無效カト云フコトノ效力ニ
  關スル問題ニ對シテハ、チツトモ御調査ニ
  ナツテ居ラヌヤウデアリマス、同ジ厩肥ノ
  中デアツテモ、馬ノ厩肥、牛ノ厩肥、豚ノ
  厩肥、ソレ〓〓熱度モ違ツテ居リマスシ、
  又效力關係モ相當ノ幅ガアル筈デアリマス、
  ソレ等ヲ能ク〓究シテ適切ナル施肥ヲスル
  コトニ努メルナラバ、是ハ相當有效ダト思
  フノデアリマス、而モ是等ニ對スル指導機
  關ト云フモノガ、農商省ヘ行ツテモ一技師
  ガ擔任シテ居ルト云フヤウナコトデ、斯ウ
  云フ重要ナ堆肥ノ關係ニ對シテ課長ト云フ
  方モ居ラレナイ、又縣廳方面ヘ行ツテモ、兼
  任シテ居ル一技師アタリガ居ツテ指導シテ
  居ル、而モ實際ノ實驗ヲヤツテ居ル農事試
  驗場ノ方ハ唯指導ヲシテ居ツテ、一方學校
  出ノ若イ連中ガ數量ノミ調ベテ步クト云フ
  ヤウナコトデハ、全ク今日ノ時局ニ勿體ナ
  イ話ダト思フノデアリマス、今溝ヲ浚フト
  カ何トカト云フコトヨリモ、寧ロ、堆肥ノ有
  效無效ト云フコトニ付テ特ニ御〓究ヲ戴カ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、勿論
  農商省デモ堆肥盤トカ、或ハ厩舍床ト云フ
  コトニ付テ指導サレテ居ルヤウデアリマス
  ケレドモ、至ツテ是ハマダ振ハナイ關係ガ
  アリマシテ、堆肥盤ナドデモ「セメント」ガ
  不足デ人手困難ナ今日デアリマスガ、其ノ
  代リニ色々ナ粘土等モ使用スルコトガ出來
  ルノデアリマス、是等ノ指導ニ於テモマダ
  至ツテ幼稚ナヤウナ感ガアリマスルガ、是
  ハ同ジ政府部內ニ於テモソレ等ノ相當ナ〓
  究ヲ積マレタ部分ガアルト思ヒマスカラ、
  之ヲ急ニ取纏メマシテ、全國ノ農業會其ノ
  他ノ指導方面ニ徹底セシメテ、國民運動的
  ニ自給肥料ノ增產ヲスルト云フ御計畫ハナ
  イノデアリマセウカ、先刻モ河野サンカラ
  申サレタ通リ、大臣モ自給肥料ノコトニ對
  シテアヽ云フ聲明ヲサレテ居ルノデアリマ
  スカラ、何カソコニ御計畫ガアラレルヤウ
  ニ思ヒマスガ、其ノ點ヲ一寸承リタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=71

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• 072・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　現在ノ肥料事情ノ下
  ニ於キマシテハ、自給肥料ノ增產、堆厩肥
  ノ增產ニ凡ユル工夫ヲ凝ラシ、之ヲ强
  力ニ實現セシメマスコトノ必要ハ、仰セノ
  通リニ私共考ヘテ居ルノデアリマス、先程
  溝ヲ浚フト云フヤウナコトヲ申上ゲマシタ
  爲ニ、誤解ヲサレタノダト思ヒマスガ、自
  給肥料ノ問題トシテハ、堆厩肥ノ增產一本
  ニ主力ヲ置イテヤルベキコトハ私共當然ト
  考ヘテ居リマス、先般大臣モ御話ニナリマ
  シタヤウナ趣旨ノ下ニ、目下自給肥料ノ增
  產ノ方策ト云フモノヲ折角〓究ヲ致シテ色
  色ナ準備ヲ致シテ居ルノデアリマス、近ク
  成案ヲ得マシテ、各方面ノ御協力ノ下ニ實
  行致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、尙
  ホ先程暗渠排水等ノ實行ト關聯致シマシテ
  肥料ノ問題ニ付テ御話ガゴザイマシタガ、
  暗渠排水ヲ實行致シタ直後ニ於キマシテハ
  ソコヘ肥料ヲ從來ヨリ以上ニ施用スルト云
  フヤウナコトハ寧ロ危險デアリマス、暗渠
  排水ヲ致シマシタ所デハ寧ロ肥料ヲズツト
  節限致サナイト、危險ヲ生ズルト云フ風ニ
  見テ居ルノデアリマシテ、其ノ點ヲ申上ゲ
  テ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=72

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• 073・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　其ノ暗渠排水ノ問題デ
  アリマスガ、肥料ヲ控ヘ目ニスル從來アル
  所ノ表土ハ色々ナ吸收力ガアルカラ、却テ
  施肥ヲスルコトハ宜シクナイト云フコトニ
  付キマシテハ化學肥料ニ於テモ、厩肥、
  堆肥ニ於テモ同樣ニ御考ヘデスカ、其ノ點
  餘程違フヤウニ思ハレマスガ、ソコハ大キ
  ナ誤解ガアツテハイケマセヌカラ、明確ニ
  シテ貰ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=73

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• 074・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今申上ゲマシタ點
  ハ、主トシテ配給肥料ノ問題デアリマシテ、
  堆厩肥ノ問題ニナレバ若干事情ヲ異ニ致シ
  そう、此ノ問題ニナリマスルト、土地々々
  ニ依リマシテ餘程手加減ヲ要スルヤウデア
  リマスカラ、一〓ニ其ノ直後ニ於テハ餘計
  ニヤル方ガ宜イトカ、或ハ減ラシタ方ガ宜
  イトカ云フコトヲ、堆厩肥ニ付テハ申ス譯
  ニ參ラヌヤウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=74

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• 075・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　私ハ今特ニ堆厩肥ノコ
  トニ付テ御願ヒヲシテ居ルノデアリマス
  カラ、ドウカサウ云フ點ヲ間違ヘナイヤウ
  ニシテ戴キタイト思ヒマス、私技術者カラ
  色々聞イテ見ルト、暗渠排水ヲヤレバヤル
  程ヤハリ堆厩肥ト云フモノガドウシテモソ
  コニ伴ハナイト、早害防止ノ上ニ於テモ、
  冷害防止ノ上ニ於テモ相當ナ問題ガアルト
  云フコトデアリマシテ、ソレデ私ハ御尋ネ
  シタノデアリマス、今御答辯ヲ承ツテモ、
  ヤツテ惡イコトハナイト云フ程度ノ御答辯
  デアリマスガ、サウ云フ點ハ是カラ各府縣
  ニ對シテモ指導力ニ重大ナ關係ガアルト思
  ヒマスカラ、技術者ノ方ト能ク連絡ヲ執リ
  マシテ、暗渠排水ト云ツテモ相當大キナ面
  積デスシ、此ノ施肥ノ方針ガ間違フト大變
  デアリマスカラ、ドウカ此ノ點ハ明確ニシ
  テ戴キタイノデアリマス
  次ニ自給肥料ノ供給者デアル所ノ家畜ハ、
  如何ナル立場ニ置カレテ居ルカト申シマス
  ルト、從來家畜ハ肥料ト勞力ヲ提供スルコ
  トニ依ツテ、農業經營ヲ合理化スルト云フ
  コトデアツタノデアリマスガ、現在ハ單ニ
  農業經營ノ合理化ト云フヨリモ、戰力ノ增
  强ニ一役買ハナケレバナラヌト思フノデア
  リマス、馬ハ第一線ニ於テ戰ツテ居ルコト
  ハ申スマデモアリマセヌ、國內ニ於ケル家
  畜ト云フモノハ職場ニアルト同ジク、戰場ニ
  アルト同ジク、動員サレテ戰ヒ拔カネバナ
  ラヌト思フノデアリマス、隨テ此ノ排泄物ト
  云フモノハ肥料トナツテ直接食糧增產ニ役
  立ツテ居リマス、又肉ノ方面ハ蛋白質ヲ供
  給シ、皮ハ皮革資源トナツテ軍需ニ充テラ
  レテ居ルト云フ狀態デアリマス、殊ニ水產
  ガ或ル程度ノ制限ヲ受ケル今日デハ、牛肉
  ハ國民ノ戰力增强ニ寄與スル所甚大デアツ
  テ、國民ノ保健上、衞生上缺クベカラザル
  モノデアルト思フノデアリマス、殊ニ或ル
  家畜ヨリノ生產物ハ飛行機製作上ノ重要ナ
  ル所ノ藥劑トナツテ居リマス、今ヤ家畜ト
  云フモノハ食糧增產ノ足場ダケデハアリマ
  セヌ、ソレ以上ノ重大ナル所ノ計算ノ出來
  ナイ程ノ役割ヲ持ツテ居ルノデアリマス、
  斯クノ如クシテ畜產ノコトハ皇國ノ隆替ニ
  關スル重大事業デアルト申シテモ過言デハ
  ナイト思ヒマス、隨テ家畜ノ飼料ハ物動計
  畫ニ於テモ重要ナ位置ニ置カナケレバナラヌ
  ト私ハ考ヘテ居リマス、然ルニ我ガ國ノ家
  畜ノ飼料ハ從來ドウナツテ居ルカト申シマ
  スト、元來日本ノ家畜ハ、其ノ飼料ニ付テ
  ハ土地ヲ持タナイ家畜デアツタノデアリマ
  ス、世界デ土地ヲ持タナイ所ノ家畜ハ日本
  ダケデアツタト云フコトヲ聞イテ居リマス
  ガ、併シ以前ニハ濃厚飼料等モ比較的輸入
  ガ容易デアツタ爲ニ、是デ賄ツテ居ツタノ
  デアリマス、イザ戰爭トナリマシテ輸入ガ
  杜絕シテ、飼料ヲ管理スル機關等モ持タナカ
  ツタ關係上、俄然飼料難ニ陷ツタト云フ今
  日ノ狀態デアリマス、卽チ從來工業原料ト
  シテ居タ油ガナクナツタ關係上、之ヲ補給
  スルノニ飼料ニ當テテ居タ米糠カラ五十萬
  「トン」トカ七十萬「トン」トカノ油ヲ搾ルコ
  トニナツタノデアリマス、又大豆粕ヲ飼料
  ニシテ居ツタモノヲ、是モ亦油ヲ採ツテ油
  粕ヲ肥料ニスルト云フヤウナ狀況ニ相成ツ
  タノデアリマス、ソコデ其ノ飼料ノ問題ガ
  起ツテ來ルノハ當然デアリマスガ、而モ人
  間ノ〓糧ガ足ラナクナツタノデ、今度ハ玄
  米食ニナツタ、隨テ糠ガ問題ニナリマシテ、
  是モ亦六十萬「トン」ヲ玄米〓ニ取ラレルト
  云フヤウナ狀況ニ相成ツタノデアリマス、
  更ニ又小麥ノ問題ハ、先刻河野君カラ申サ
  レタ通リ販賣ノ統制强化ニ依ツテ二、三十
  萬「トン」ガ飛ンデシマツタト云フコトニナ
  リマス、結局飼料ト云フモノハ、〓糧ヤ肥
  料ヤ工業原料、各方面カラ槍玉ニ擧ゲラレ
  テシマツタト云フヤウナ現狀デアリマス、
  而シテ之ヲ確保スル所ノ機關ガ何處ニアル
  カト云フコトガ分ラナイヤウナ今日ノ狀況
  デアリマシテ、是ガ爲ニ、飼料ハ特ニ慘メナ
  狀態ニ急迫シテ來ルノハ當然デアリマス、
  而モ戰爭ガ起ツテカラ此ノ問題ハ一層深刻
  ニナツテ今日ノ狀態ニナツテ居ルノデアリ
  せい、斯ウ云フ窮迫シテ來タ飼料問題ニ付
  テ目下色々工夫サレテ、政府デモ石灰藁ナ
  ドノ代用飼料ヲ〓究サレテ居ラレマスケレ
  ドモ、是モ時々刻々第一線ノ事情ガ變ルト
  同時ニ農村ノ事情モ變ツテ居リマス、二、
  三年前ニハ藁ナドモ粗飼料トシテ相當用ヒ
  ラレマシタケレドモ、今日ハ藁工品ハ軍需
  品トナツテ相當數參リマス、又米俵モアナ
  タ方ノ命令デ二重俵ニセイト云フコトデ、
  藁ガ飼料ニナツテ居ルモノハホンノ幾分シ
  カナイノデアリマシテ、非常ニ窮屈ニナツ
  テ居リマス、濃厚飼料ハ勿論粗飼料ト雖モ
  相當窮屈ニナツテ來タヤウナ現狀デアリマ
  ス、又牛馬ノ方ハドウカト言ヘバ、實際牛
  馬車ヲ能ク見テ戴ケバ分ルノデアリマス
  ガ、其ノ活動力ガ大キケレバ大キイ程濃
  厚飼料ガ必要ナノデアリマシテ、濃厚飼料
  ヲ與ヘルコトノ如何ニ依ツテ幼家畜ノ發育
  能率ト云フモノハ定マツテ來ルノデアリマ
  ス、又搾乳關係ニ於テモ、濃厚飼料ノ量ニ
  依ツテ比例的ニ現ハレルノデアル、肉類ノ
  蛋白質、脂肪等モ同ジ關係ニアルノデアリ
  マス、肉類關係モ、私ハ決シテ贅澤ノ爲ニ
  言フノデハアリマセヌ、アヽ云フ飼料ヲ食
  ハセズニ置イタモノヲ屠殺シテ肉ヲ配給シ
  テ、アレガ榮養ニナルカドウカト云フコト
  ハ餘程御〓究ニナラナケレバナラヌト思フ
  ノデアリマス、鮪ノ刺身カ肉ダカ分ラヌヤ
  ウナモノヲ配給スルコトハ、是ハ却テ不經
  濟デハナイカト私ハ思ツテ居ルノデアリマ
  ス、是等ノ點ニ對シテハ相當深ク御考慮ヲ
  戴キタイノデアリマス
  ソコデ是等ノ問題ヲ解決スルニハ、濃厚
  飼料ヲ與フルコトニ依ツテ家畜自體ノ頭數
  ヲ增スバカリデナク、實際有效ナル自給肥
  料ノ造成ヲ促シ、國民ニハ脂肪、蛋白質ヲ
  豐カニ供給スルコトガ出來ルノデアリマシ
  テ、其ノ效果ガ一段ト擧ガルト云フ關係デ
  アリマス、ソコデ斯ウ云フコトヲスルニハ
  ドウスレバ宜イカト云フコトデアリマス、
  先刻色々課長サンカラ御答辯ガアツテ、麥
  ノ問題ノ話ヲ承ツタノデアリマスガ、肥料
  ナシデ反別ヲ多クシタ方ガ增收關係ガ宜シ
  イト云フヤウナ御話ガアリマシタガ、ソレ
  ガドウ云フ關係デサウ云フコトニナルカ分
  リマセヌケレドモ、一體家畜ノ飼料ト云フ
  モノヲ解決サヘスレバ、人間ノ〓糧モ增產
  ニナルシ、其ノ他總テノ肉食物ノ一切ノ問
  題ガ解決スルヤウニ私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、現在私ハ百姓ヲシテ居リマスカラ實驗
  シタ所ヲ申上ゲマスガ、先達テ來飼料問題
  ガ出タ、所ガ當局カラ同僚ノ質問ニ對シテ
  空閑地利用トカナントカ云フ御答辯ガアリ
  マシタガ、サウ云フコトデナク、思切ツテ
  此ノ際立派ナ田畑ヲ二割飼料供給ニ振向ケ
  夕方ガ得策ダト私ハ考ヘル、先刻河野君カ
  ラ質問サレタヤウニ、家畜ハ馬モ牛モ殖エ
  テ居リマス、豚ガ幾ラカ減ツテ居ルト云フ
  位ノ現狀デアリマス、皆食ツテ居ルノデス、
  所ガ是ハ-一番アナタ方ニ分リ易ク言ヘ
  バ斯ウ云フコトガアル、馬ニシロ、田舍ノ
  輓馬ハ丸々太ツテ居ル、都會ノ馬ト云フモ
  ノハガラ〓〓瘠セテ居ル、ソレカラ同ジ
  輓馬デアリマシテモ、田舍ノ馬ハ車ヲ輓キ
  始メテカラ十年輓ク壽命ガアリマス、都市
  ノ輓馬ハ一年半シカ壽命ガナイ、是ハ田舍
  ノ方ハ金サヘ出セバ飼料ガ求メラレルカラ
  丸々太ツテ居ル、都市輓馬ト云フモノハ金
  ヲ出シテモ飼料ガ求メラレナイカラ瘠セテ
  ガラ〓〓ニナツテ居ルノデアル、隨テ生產
  者ハ都市輓馬ニ馬ヲ賣ルコトヲ非常ニ嫌ヤ
  ガツテ居ル、屠場ニ送ルヤウナ感ジガスル
  ノデ嫌ヤガル、ソレハ其ノ筈デス、輓曳力
  ヲ維持スルコトガ出來ル程度シカ飼料ヲ配
  給ヲシナイ、ミス〓〓刻一刻死ニ近イ所ノ
  狀態ヲ持續シテ居ルノデアル、モノヲ〓ハ
  セナイデ殺シニ引張ツテ來テ居ルノデス、
  又都市輓馬ニ地方輓馬ヲ賣ツタ者ハ三箇月
  經テバ自分ノ賣ツタ馬ヲ發見出來ナイ、ソ
  レダケ體形ガ變ツテ來マス、ソレハ穀類ノ
  アル所ハ人間ノ食糧デアラウガナンデアラ
  ウガ家畜ニ與ヘテ居ルト云フコトガ明瞭ニ
  分ツテ居ル而モ內〓デソレヲヤツテ、馬
  ニ籾ナドヲ食ハス爲ニ腰麻、痺病、卽チ腰
  拔病ナドガ出テ色々衞生上ノ大キイ問題ニ
  ナツテ、エライ苦心ヲ致シテ居ルヤウナ狀
  況デアリマス、馬ニ對シハ米糠ナドヲ相當
  配給スルトカ、其ノ他反別ニ依ツテ飼料ヲ
  二割耕作ヲ許スト云フコトニシタナラバ、
  適正ナ玉蜀黍ヲヤルトカ或ハ稗ヲヤルトカ
  各地ニ適シタ飼料栽培ヲシテ飼料ヲ獲得ス
  ル、所ガ殘ツタ反別ニ對シテ、馬ニ付テ申
  上ゲマスガ、馬ハ一日八囘脫糞スル、其ノ
  分量ガ一囘八百匁アツテ、一年ニハ三千貫
  ノ厩肥ガ取レル、其ノ厩肥デ以テ、相當濃
  厚飼料ヲ與ヘタモノナラバ三町步耕作出來
  ル、只ノ放牧馬ノヤウニ餘リ濃厚ナ飼料ヲ
  與ヘナイモノデモ一町步耕作出來ル、ソレ
  等ノ有效ナ肥料ヲ其ノ殘リノ八反步ニ十分
  ナ施肥ヲスルト云フト、一町二反歩ノ總テ
  ノ穀類ハ增收ガ出來ルノデアリマス、之ヲ
  ヤラヌデ、唯アナタ方ノ子分連中ノ第一線
  ノ農會ノ技手トカ、縣廳ノ役人ハ何ト言ツ
  テ指導シテ居ルカト云フト、政府カラ麥ノ
  割當ガ幾ラ來タ、此ノ町村ニハ麥ノ割當何
  町步、君ハ何反步持ツテ居ルカラ何反ヤレ
  私等ノ所ヘモ來ル、君ハ馬鈴薯ヲ作ル所ノ
  畑ハ是ダケヤレト言ツテ、肥料ヲドレダケ
  持ツテ居ルカト云フコトハチツトモ聞キハ
  シナイ、是デ增產ニナリマスカ、肥料ト睨
  ミ合セテチヤント增產計畫ヲ樹テルト云フ
  コトナラ分リマスケドレモ、殊ニ此ノ馬鈴
  薯ナドハ我々地方ノ生產物デアリマスガ、
  是ハ肥料ノ數量ニ依ツテチヤント生產數量
  ガ比例シテ生レルノデアリマスガ、ソレニ
  對シテ化學肥料ハ今御承知ノ通リデアリマ
  シテ、此ノ自給肥料ト云フモノニ對シテド
  レダケ持ツテ居ルト云フコトハチツトモ調
  ペナイデ、唯反別バカリ擴張スルカラ、ア
  ア云フ不作ヲ見ルヤウナ結果ニナルノデア
  リマス、併シ之ニモ大變豚ノ厩肥ハ有效ナ
  ンデアリマスケレドモ、ヤハリ豚ノ方ニ對
  スル食料ガナクナツタカラ、段々減ツテ行
  キマス、左樣ナ關係デアリマスカラ此ノ點
  ハ何力思ヒ切ツテ、空閑地利用ナドト言ハ
  ナイデ、實際ニ土地ノ二割ヲ分割シテ、家
  畜ノ飼料ニ與ヘルト云フコトニシテ、家畜
  ニ依ツテ本當ニ有效ナ自給肥料ヲ造成スル
  ト云フ方針ニ今大急ギデ切替ヘテ、一大國
  民運動ニ依ツテ解決スルト云フヤウナ方針
  ニ進マナケレバ、肥料問題ハ中々-化學
  肥料ニ喰下ツテ居テモ、アナタ方自體モ中
  中容易デハナカラウト私ハ思フ、化學肥料
  ガ出來ルノハ結構デス、是ハ要ラヌトハ言
  ヒマセヌ、出來テ吳レヽバ宜イノデアリマ
  スガ、此ノ場合ニ一方此ノ方ノ問題ニモモ
  ウ少シ力入レテ-私ハモウ大臣ガオイデ
  ニナレバ、自給肥料ノ局長位置イテ、ソレ
  ヲ國民ニ示シテ、是デ行クンダト云フコト
  ニ方針ヲ樹テヽ戴キタイト、斯ウ思フノデ
  アリマスガ、中々畜產ガ肥料供給ノ基デア
  ルナント言ツテ、畜產ニ重點ヲ置クナント
  言ヒマスケレドモ、農商省ヲ見ルト、畜產
  局ヲ廢止シテ、石井サンノ方ニ吸收シテシ
  マツタ、何ガ畜產ニ熱心ダカチツトモ分ラ
  ナイ、地方ノ縣廳アタリニ行ツタツテ、畜
  產ト云フモノニ對シテチツトモ熱意ガナイ
  農業團體ヲ組織シテモ、金融部アリ、農業
  部アリ、色々ナ部門ガアルガ、畜產地方ニ
  於テモ畜產部ト云フモノヲ設ケナイ地方モ
  アル、是デハドウシテ立派ナ肥料ガ出來ルカ
  ドウカ甚ダ疑ハシイ、其ノ點篤ト御〓究ナ
  サレテ、實際ニ自給肥料ガ必要ダ、ドブ浚
  ヒマデシナケレバナラヌ位ニ窮迫シテ居ル
  ト云フコトヲ御認メニナルナラバ、モウ少
  シ有效ナ厩肥ヲ土臺トスル所ノ堆肥造成ト
  云フコトヲ熱心ニ御〓究ニナリ、指導シテ
  力瘤ヲ入レテ政府自體ガ示スト云フコトニ
  シテ、第一線マデ滲透スルヤウニ御努力ヲ
  願ハナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、
  石井局長サンノ之ニ對スル御所見ヲ承リタ
  イノデアリマス

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• 076・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今ノ御說ノ點ハ、
  最近ノ各地ノ事情カラ綜合致シテ考ヘマス
  ルト、餘程深ク〓究ヲ要スル問題ト思フノ
  デアリマス、或ル農地ヲ、空閑地利用ト云
  フヤウナコトデナシニ、旣耕地ニ付テ飼料
  作物ノ栽培ト云フコトヲドウ考ヘルカ、斯
  ウ云フコトデアリマス、外ノ點トモ關聯致
  シマシテ、私共トシマシテハ十分其ノ點ハ
  考ヘテ見タイト思ツテ居リマス、左樣御諒
  承願ヒタイト思ヒマス

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• 077・小笠原八十美

  ○小笠原(八)委員　ソレハ併シナガラ考ヘ
  テ御〓究ナサルト言ヒマスケレドモ、是ガ
  食糧增產ノ最モ急ヲ要スル問題デハナイカ
  ト思フノデアリマスガ、此ノ點ハ一ツ急速
  ニ御〓究ヲ願ヒタイ、實際ニ農林省ガヤツテ
  居ラレタ部門ニ於テモ、八反步ニ施肥宜シ
  キヲ得タ爲ニ、一町二反步ノ增收ヲ得タト
  云フコトノ實證ガアルノデアリマスカラ、
  ソレ等ハ政府部內ニ於テモ〓究ガ直チニ出
  來ルト思フノデアリマス、ソレカラモウ一
  ツ斯ウ云フ場合ニハ東北アタリ冷害違作ト
  名前ヲ附ケマスガ、色々ナコトニ對シテ不
  慮ノ災難ガアルノデアリマスガ、ソレ等ノ
  所ニ於テ此ノ有效ナル厩肥ノ施肥增量ニ依
  ツテ平年作ヲ獲得シタト云フ實例ガアルコ
  トモ、是モ能ク御〓究濟ミダト思フノデア
  リマス、ソレカラモウ一ツハ去年ノ早害デ
  アリマス、之ニ對シマシテ軍馬補充部支部
  デ之ヲ實際ヤツタ所ガ-何處デモ早害ノ
  爲ニ大豆ガ不作デヒドイ目ニ遭ツタ、所ガ
  ソレニ對シテ思切ツテ三倍ノ厩肥ノ施肥ヲ
  斷行シタ所ガ大豆ガ二倍ノ收穫ヲ得タ、私
  ハ現ニ行ツテ見テ說明ヲ聽イテ驚イタ、サ
  ウ云フ風ニ實際ヤツタ所ガ澤山アルノデア
  リマスカラ、此ノ方面ニ對シマシテハ是ハ
  唯〓究ナドト言ハヌデ、實際ニ實行サレタ
  コトヲ、直チニ良イコトハ取入レテ、ドシ
  ドシオヤリニナルコトヲシナケレバ、今ノ
  食糧增產ニ間ニ合ハヌト思フノデアリマス、
  ドウカ其ノ點ヲ御〓究願ヒマス

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• 078・深澤吉平

  ○深澤委員長　杉山サン農政局長ニ御質問
  ガアリマスカ

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• 079・杉山元治郎

  ○杉山委員　私ハ本委員會ニ掛ケラレテ居
  リマスル法案ニ關聯シテ、先ヅ第一ニ極ク
  簡單ニ御質問ヲ申上ゲ、後デ農業政策一般
  竝ニ國民生活ニ付テ御質問ヲ申上ゲテ見タ
  イト存ジテ居リマス、ソレデ法案ニ關シマ
  シテ御尋致シタイ、第一ハ此ノ中央金庫特
  別融資及ビ補償ノ問題デアリマスガ、是ハ
  大臣ノ御說明ニ依ツテ昭和七年ノ農業恐慌
  ノ際ニ組合等ノ金融ガ梗塞シタ時ニ之ヲ緩
  和スル爲ニ始メタ、斯ウ云ウ譯デアリマス
  ガ、ソレガ尙ホ其ノ後持續サレマシテ今日
  ニ及ンデ居ル、特ニ農業團體ノ統合ノ際デ
  アルノデ尙ホ之ヲ延長シテ行ク、斯ウ云フ
  御說明デゴザイマシタガ、若シ然リト致シマ
  スレバ、此ノ融資ノ期間ト云フノハ段々ト
  永引イテ參リマシテ、何時マデモ際限ガナ
  クナルノデハナイカ、此ノ融資期間ニ付テ
  チヤント時期ガ決定サレテ居ルノカ、今度
  ノ決メラレタ時期ガ來マスナラバ、是ハ少々
  決濟ガ出來ナクテモ決メテ引上ゲテシマ
  フ、斯ウ云フコトニナルノカ、其ノ點ヲ一
  ツ伺ツテ見タイノデアリマス

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• 080・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　今囘三年ノ延長ヲ致シマ
  シタノハ、必ズ此ノ三年デアレバ十分デア
  ルト云フコトヨリハ寧ロ從來此ノ法律ノ
  融通期間ニ付キマシテハ段々ニ延長ヲ致シ
  テ參リマシタノデ、從來ノ例ニモ依リマシ
  テ、今囘モ三年ノ延長ヲ致シタ、斯樣ナ次
  第デアリマス

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• 081・杉山元治郎

  ○杉山委員　サウ致シマスト、是ハ唯立法
  上ノ技術デ三年々々ト云ツテ延バシテ行ク
  ノデ、寧ロ是ハ永久ニデモ續ク、斯ウ云フ
  ノカ、私ノ御伺ヒシマシタノハサウデハナ
  シニ、或ル時期ガ來レバ是ハモウ切上ゲテ
  シマフ、斯ウ云フコトニナルノカ、斯ウ云
  フコトヲ御尋ネ致シタノデアリマス

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• 082・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是ハ將來ノコトハ、其ノ
  時ノ狀況ニ依ルコトトモ存ジマスルケレド
  千、筋合ヒト致シマシテハ、何ト申シマシ
  テモ、是ハ特別融通及ビ損失補償ト云フ特
  種ナ金融ニ付キマシテノ政府ノ助成的施設
  デモゴザイマスノデ、何時マデモ之ヲ必ズ
  續ケテ參ルト云フ趣旨ノモノデハナイト思
  ヒマス、性質トシマシテハ、何處マデモ是
  ハ臨時的ナ施設デアルト云フ風ニ考ヘル次
  第デアリマス

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• 083・杉山元治郎

  ○杉山委員　建前ハサウデアラウト存ジマ
  スルガ、內容的ニサウ云フ色々ナ𣏌憂ガ相
  當殘リマスト、ヤハリ又三年々々ト云フヤ
  ウニ延バシテ行カナケレバナラヌカトモ思
  フノデアリマスガ、併シ此ノ點ニ付テハモ
  ウ御伺ヒ致シマセヌ、戴キマシタ資料ニ依
  リマスト、損失補償ヲ致シタモノガ八十三
  件アツテ、其ノ金額ガ百十一萬四千百八十
  一圓三十九錢、斯ウ云フ風ニナツテ居ルヤ
  ウニ見受ケタノデアリマス、此ノ損失補償
  ヲ致シマシタモノノ內容ガドウ.云フヤウニ
  相成ツテ居リマセウカ、監査ノ結果ヲ資料
  ヲ戴キマシタ所ニ依リマスト相當遺憾ナモ
  ノノ數モ多イ、特ニ資產缺陷ノモノガ八%
  アル、斯ウ云フ數字ヲ示サレテ居リマスガ
  八%ト申シマスト、約一割ニ近イモノデア
  リマシテ、決シテ少イ數デハナイト思フノ
  デアリマス、斯ウシタ融資ヲ致シテ居リマ
  スルモノニ對シテノ指導監督ニ付テ、ドウ云
  フヤウニナサレテ居リマスカ、又ドウシテ
  見テモ最後マデ引受ケナケレバナラナイモ
  ノニナルトスルナラバ、是ハ政府ノ責任ニ
  ナツテ來ルノデアリマスガ、其ノコトニ至
  ラナイヤウニドウ云フヤウナ指導監督ヲシ
  テ居ルカ、斯ウ云フ點ニ付テノ政府ノ御意
  見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=83

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• 084・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　申スマデモナク、從來ノ
  農村信用組合ニ對シマシテ特別融通ヲスル
  ニ當リマシテハ、左樣ナ特別融通ヲナサネ
  バナラヌヤウナ事態ニナリマシタ原因等ニ
  付キマシテモ十分見ルノデアリマス、遡ツ
  テドウ云フ事情デサウ云フコトニナツタカ
  ト云フコトハ兎ニ角ト致シマシテ、其ノ組
  合ナラ組合ヲ何トカシテ健全ニ立直ルヤウ
  ニ致シタイ、又ソレガ其ノ農村ニ取ツテ必
  要デアル、又ヤリ樣ニ依ツテハ十分其ノ見
  込モアルト思ハレルヤウナモノニ付キマシ
  テハ、特別ノ融資ヲ致スノデアリマス、迚
  モ見込ハナイト云フヤウナモノニ付キマシ
  テハ、又其ノ農村ニ取ツテ寧ロ其ノ際〓算
  シタ方ガ宜シイト思ハレルヤウナ場合ニハ、
  ワザ〓〓特別融通ヲシテ更ニ先々マデ持ツ
  ツ行クト云フヨリハ寧ロソコデ〓算シテ
  シマフト云フコトモ致ス譯デアリマス、左
  樣ニ致シマシテ、段々ニ融資ヲ繼續シテ行ク
  ノデアリマス、其ノ間ニ於テ、單位、村ノ
  組合デアリマストカ、直接ニハ地方廳ノソ
  レ〓〓ノ係官ニ於キマシテ、融通ヲ致シタ
  中央金庫ノ其ノ方面ノ係リノ方トモ共々ニ、
  其ノ組合ノ更生ニ付テ色々ト指導ヲ致シ、
  常ニ其ノ狀況ニ氣ヲ付ケテ居ルノデアリマ
  ス、其ノ結果、或ル時期ニナツテ狀況ヲ見
  マシテ、是ハ此ノ先此ノ儘又何カノ方法ヲ
  執ツテ融資ヲシテ行ツテモ仕方ガナイ、此
  ノ際此ノ融資ハ一應是デ以テ〓算シタ方ガ
  宜シイト思ハレルヤウナ場合ニ於キマシテ
  ハ、假ニマダ延滯ノ元利ガアリマシテモ、
  初メテ玆ニソレニ對シマシテ處置ヲ致シマ
  シテ、補償ノコトヲ決定スルノデアリマス、
  從來私共モ、全部ガ全部デハゴザイマセヌ
  ガ、相當部分ノ債務ノ補償ノ決定ニ當ツテ
  ノ審査ノ狀況ヲ承知致シテ居リマスガ、其
  ノ場合ニ於テハ、或ハ役員等ニ於テ或ル程
  度ノ責任ヲ持ツタリ、或ハ組合資產其ノモ
  ノニ付テ整理ヲシタリ、色々他面ニ於テ處
  置モ致スノデアリマス、或ハ其ノ組合ニ關
  係ノアル方面カラ寄附金ガ入リマシテ、
  部ノ負債ノ負擔モスル、色々ノ處置ヲ講ジ
  マシテ、ドウシテモ此ノ特融ノ方デモ負擔
  シナケレバナラナイト云フ分ニ付テ負擔ヲ
  致シマシテ、サウシテ其ノ儘其ノ組合ヲ存
  續サセル場合モアリマスシ、又狀況ニ依リ
  マシテ、其ノ村ノ爲ニハ寧ロ此ノ組合ハ解
  散シテ出直シタ方ガ宜シイト思ハレルヤウ
  ナ場合ニハヤハリ解散モサセル、ト云フ
  ヤウナ風ニ、色々ト處置ヲ執ツテ居リマス、
  要シマスルニ此ノ特融ヲヤツテ居ル間ト云
  フモノハ、融資ヲシタ中央金庫ハ勿論ノコ
  ト、地方廳ヲ通シテ官廳方面カラモ色々ト
  常ニ狀況ヲ見テ居リマシテ、又一面更生ノ
  爲ノ指導モ加ヘテ行クト云フヤウナ風ニ、
  色々世話ヲシテヤツテ參ツテ居ルヤウナ次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=84

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• 085・杉山元治郎

  ○杉山委員　色々政府ノ方デ監督指導ヲナ
  サツテ居ル、併シ損失補償ヲシタト云フコ
  トハ、結局色々ノコトモヤツテ見タガ見込
  ガ成立タナカツタ、其ノ結果損失補償ニナ
  ツタ、斯ウ云フヤウニ解シテ宜シウゴザイ
  マズカ
  〔委員長退席、成島委員長代理著席〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=85

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• 086・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　洵ニ御話ノ通リデゴザイ
  マス、サウシテ全體ノ特融ノ從來ノ經過カ
  ラ見マシテ、他ニモ金融界ニ對シテ特融等
  ノコトガ從來行ハレタ例モゴザイマスガ、
  此ノ法律ニ依ル特融ハ私ハ比較的成績ガ好
  イノデハナイカト云フ風ニ思ヒマス、是一
  御手許ニ差上ゲテアル資料ニ依ツテモ御承
  知ノコトト思ヒマスガ、兎ニ角本法施行以
  來五千六百餘萬圓ノ融通ヲ致シマシタ、サ
  ウシテ是ハ先程申上ゲマシタヤウニ、斯ウ
  云フ特融ヲシナイコトニハ其ノ農村ノ組合
  トシテハ中々圓滿ナ事業繼續ガ困難デアル、
  延イテ又農村民全體ニ惡影響ヲ及ボスト云
  フヤウナ場合ニ、特融ヲ致スノデアリマス
  ガ、其ノ結果昭和十八年十月末ニ於キマシ
  テ、殘ツテ居ル融資ハ五百四十四萬六千圓
  程度ニ減ツテ居ルノデアリマス、詰リ五千
  六百餘萬圓ノ融資ノ中デ、逐次ヤハリ返濟
  ガアリマシテ、現在ニ於テハ五百餘萬圓シ
  カ融資ガ殘ツテ居ラナイノデアリマス、而
  モ其ノ間ニ於テ此ノ損失補償ガ百十萬圓程
  度ニ止マツテ居ル、三千萬圓ノ限度ヲ見込
  ンデアリマシタ此ノ融資ガ、其ノ程度ノ現
  實ノ損失補償ニ止マツテ居ルト云フコトハ、
  彼此レ見マシテ、本特融ガ非常ニ成績ガ好
  イデハナイカ、而モ其ノ結果ト致シマシテ
  多數ノ農村組合ノ更生ガ圖ラレテ居ルノデ
  アリマス、此ノ點ハ勿論一面ニ於テ一般ノ
  經濟狀況ノ好轉、就中農村經濟ノ健全化ト
  云フ大キナ背景ガアルコトハ勿論デアリマ
  スケレドモ、其ノ間ニアリマシテ兎ニ角本
  特融ガ有效ニ働イテ來タト云フ、一ツノ數
  字的ナ證左デハナイカト云フ風ニ思ツテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=86

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• 087・杉山元治郎

  ○杉山委員　次ニ簡單ニ御伺ヒシタイノハ
  絲價安定法ガ廢止ニナルノデアリマスガ、
  ソレト表裏一體ト申シマスカ、繭絲價安定
  資金ト云フモノガ一億圓ホドアルヤウニ聞
  及ンデ居ルノデアリマスガ、此ノ繭絲價安
  定資金ト云フ方ハ、此ノ法案ノ廢止ニ依ツ
  テドウ云フ結果ニナルノデゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=87

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• 088・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今御質問ノ安定資金ト
  申シマスノハ、日本蠶絲統制株式會社ガ積
  立テヽ居ル積立金ノコトカト思ヒマスガ、
  ソレハ勿論此ノ法律ノ廢止トハ何等關係ハ
  ゴザイマセヌノデ、寧ロ愈〓此ノ法律ノ廢
  止後ハ日本蠶絲統制株式會社ニ於テ、若シ
  萬一ニモ必要アル場合ニ於テハ安定ノ爲ニ
  働クノデアリマシテ、其ノ爲ノ資金デアル
  譯デアリマス、申スマデモナク今日ノ狀況
  カラ見マスト、少クトモ戰時下當分ノ間ハ、
  左樣ナ建前ニハナツテ居リマスケレドモ、
  左樣ナ安定資金ノ發動ト云フコトハ、恐ラ
  ク先ヅ〓〓餘リナイデハナカラウカト云フ
  ヤウニ思フノデアリマスガ、兎ニ角左樣ニ
  働キ得ルコトニナル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=88

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• 089・杉山元治郎

  ○杉山委員　關係ナイモノナラバモウソレ
  デ結構デアリマス、次ニ御伺ヒ致シタイ問
  題ハ、自作農創設ノ問題デアリマス、豫算
  委員會ナリ又本委員會ニ於ケル平野委員竝
  ニ河野委員ノ質疑ニ依ツテ殆ド盡キテ居リ
  マシテ、政府ノ御意向モ能ク分ツタノデア
  リマスガ、茲デ一應申述ベテ置キタイ點ハ、
  是ハ單ナル一、二議員ノ意向デハナクテ、
  ドウシテ見テモ自作農創定ヲ致シマスノニ
  ハ、何等カ政府ノ强イ手ガ加ハラナケレバ
  巧ク行カナイノヂヤナイカ、斯ウ云フコト
  ハ恐ラク實際ノ衝ニ當ツテ居ル者ノ總テ
  ノ意見デアラウト思フノデアリマス、曾テ
  指定農村ニ指定サレタ村長サン達ガ集マツ
  タ場合ニモ、大體サウシタ意向ガ傳ヘラレ
  タカノヤウニ伺ツテ居ルノデアリマス、左
  樣ナ譯デ我々ガ今申シテ居リマスルヤウナ
  コトハ大體ノ意向デアルガ、併シ政府ノ御
  話デハ、兎モ角モ從來ノ協力ニ依ル方法ニ
  依ツテヤル、サウシテソレモ相當ノ成績ガ
  擧ゲ得ラレル、斯ウ云フ自信ヲ持ツテ居ラ
  レマスノデ、私ハソレモ是非オヤリ戴イテ、
  豫期ノ通リノ成績ノ擧ゲラレルコトヲ念願
  スルノデゴザイマスガ、萬々一政府ノ豫定
  ノヤウニ行カナイデ參リマスナラバ、今多
  クノ者ガ熱望シテ居ルヤウナ點ニ付テ、將
  來考慮サレルヤウニシテ戴キタイ、斯ウ云
  フコトヲ一應申上ゲテ置キタイト思フノデ
  アリマス、之ニ付テノ御意見ガゴザイマス
  ナラバ伺ツテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=89

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• 090・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　豫ネテ私或ハ他ノ政府委
  員カラ申上ゲテ居リマスヤウニ、政府ト致
  シマシテハ協力ニ依リマシテ、今日マデニ
  考ヘテ居リマスル各種ノ方法ニ依ツテ、此
  ノ自作農創設ガ實行シ得ルモノト考ヘテ居
  ル譯デアリマス、將來是ガ更ニ何等カノ方
  法ヲ執ラナケレバナラヌト云フヤウナ場合
  ガアリト致シマシタラ、其ノ場合ニ於キマ
  シデハ、如何ナル點ニ付テ更ニ施設ヲ考ヘ
  ルカ、此ノ場合ニ於キマシテ御說ノヤウナ
  方面ニ新タナ手ヲ打ツカ、或ハ他ノコトヲ
  致シマスカ、是等ノコトニ付キマシテハ、
  ヤハリ其ノ時ノ狀況ニ依リマシテ、十分適
  切ナルコトヲ考慮致シテ參リタイ、斯樣ニ
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=90

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• 091・杉山元治郎

  ○杉山委員　其ノ時ノ情勢ニ應ジテ最モ善
  イ方法ヲ執ツテ戴クコトヲ私共モ念願致シ
  マスガ、併シ多數ノ者ノ意向ガソコニアル
  ト云フコトモ、一應心ノ中ニ御留メ置キ戴
  キタイト思ヒマス
  次ニ〓糧增產ノ上カラ色々不急不要ナ作
  物ガ轉換サレテ參リマシタ、或ハ煙草ナリ
  果樹ナリ蔬菜ナリ花卉ナリ-桑ハ昨日十
  九年度七千町歩ト云フコトガ明カニナリマ
  シタガ、今申上ゲタヤウナ作物ノ轉換面積
  ガ若シ御分リニナリマスナラバ、事務當局
  デモ結構デアリマスカラ伺ハシテ戴キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=91

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• 092・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ御話ハ、最近ニ於
  ケル成績デゴザイマスカ、或ハ今囘ノ計畫
  面積ノ御話デゴザイマセウカ

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• 093・杉山元治郎

  ○杉山委員　計畫面積デモ結構デスシ、最
  近ノ成績デモ結構デアリマス

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• 094・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　最近ノ成績ハ手許ニ於テ
  分リマセヌガ、今囘ノ作付轉換ノ計畫面積
  ヲ申上ゲマスト、桑園ニ付キマシテハ御承
  知ノヤウニ七千町步ヲ整理致シマシテ、新
  タニ三千町步ノ植付ヲ致ス外、差當リ一萬
  町步ノ改植ヲ致スノデアリマス、ソレカラ
  又果樹園ニ付キマシテハ、約四千町步ノ整
  理ヲ致シ、七千町步ノ隔畦拔株ヲ致スノデ
  アリマス、ソレカラ茶園ニ付キマシテハ二
  千町步ニ付テ臺刈ヲ致スノデアリマス、是
  ハ中央カラ數字的ニ示シマシテ作付轉換ヲ
  求メテ居ルモノ、殊ニ本年度ニ於キマシテ
  求メテ居リマスモノノ全體デアリマス、此
  ノ外細カシイモノニ付キマシテハソレ〓。
  地方其ノ他ニ於テ實行致シテ居ルモノモア
  ラウト思ヒマスガ、先般中央カラ地方ニ向ヒ
  マシテ指令致シテ居ルモノハ大要申上ゲタ
  通リデアリマス、尙ホ其ノ外ニモ煙草ノ方ガ
  ゴザイマスガ、是ハ-町步ノ中--町步
  ヲ轉換致スコトニ致シマス、是ハ旣ニ實行
  致シテ居リマス

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• 095・杉山元治郎

  ○杉山委員　大體分リマシタガ、今ノ作付
  轉換ノソレ〓〓ノ面積ニ依ツテ大體豫定サ
  レテ居リマスル生產量ハドノ位ニナツテ居
  リマスカ

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• 096・成島勇

  ○成島委員長代理　杉山委員ニ申上ゲマス、
  今調ベテ居リマスカラ外ノ質問ガアツタラ
  願ヒマス

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• 097・杉山元治郎

  ○杉山委員　數字ハ後デ御伺ヒ致スコトニ
  致シマシテ、次ニ伺ヒタイ點ハ〓糧增產ノ
  上ニ色々ノ隘路ガアル、其ノ一ツトシテ勞
  力ノ不足ノ點ガアルト云フコトハ多クノ同
  僚委員カラモ申サレタ點デアリマスガ、其ノ
  打開ノ一ツノ方法トシテ畜力ヲ應用スル、
  畜力ヲ應用致シマスルノニハ、ドウシテモ
  耕地ヲ集團化シナケレバナラナイト存ズル
  ノデアリマスガ、今日政府ニ於キマシテモ
  耕地ノ交換分合ニ色々ト御努力ニナツテ居
  リマスガ、最近ノ耕地ノ交換分合ノ成績ハ
  ドウ云フヤウニナツテ居ルカ、今ノヤウナ
  奬勵程度デハ成績ハ甚ダ遲々トシテ進マナ
  イノデハナイカ、此ノ際ニ一步進メテ寧ロ
  奬勵金ノ如キモ從來ノヤウナ反當リ一圓ト
  云フヤウナ甚ダ少額ナモノデナシニ、モウ
  少シ增額ヲシ、政府ノ熱意ヲ示シテ參リマ
  スト共ニ、勞力不足ノ際打開ノ一ツトシテ
  是ハ有效適切ナモノデアル、斯ウ云フコト
  ヲモツト指導スル必要ガアルト思フノデア
  リマスガ、此ノ耕地ノ集團化ノ問題ニ付テ
  ノ政府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=97

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• 098・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　洵ニ御話ノ通リ此ノ勞力
  ノ比較的不足勝チナ現在ノ農村ニ於キマシ
  テ、耕地ノ交換分合ニ依ル所ノ所謂集團化
  ハ極メテ效果ノ多イコトデアリマス、之二
  付キマシテハ努メテ之ヲ促進致シテ居ル譯
  デアリマスガ、時ニハ從來我々ノ見テ居リ
  マス所ニ依リマスト、經濟的方面カラノ困難
  ト云フコトヨリハ、何ト言ヒマシテモ事柄
  自體ガ中々難カシイコトデアリマス、村ノ
  中ノ耕地一筆々々ニヤハリソレ〓〓個性ガ
  アリマシテ、之ヲ交換シテ參ルニハ-勿
  論丹念ニ致セバソコニ立派ニ交換ノ標準
  ガアル譯デアリマスケレドモ、何ト云ツ
  テモ事柄自體ガ土地ニ非常ニ執着ノアル
  農家ノコトデアリマスカラ、精神的ニ非
  常ニ難カシイ事柄デアルノデアリマス、
  併シ從來ノ實例ヲ見マシテモ當初容易ニ
  贊成シナカツタ村ノ一部ノ者モ結果ニ於テ
  ハ非常ニ喜ブト云フヤウナコトデ、良イコ
  トニハ違ヒナイノデアリマスケレドモ、要
  スルニ中々踏切リ兼ネルト云フ所ニ難點ガ
  アルヤウニ存ズルノデアリマス、隨ヒマシ
  テ助成ノ方法トカ云フコトヨリハ精神的ノ
  問題-精神ト云ツテモ何モ非常ニ高イ道
  德ト云フヤウナコトデナクテ、ヤハリ村ニ
  於テ指導力ガアリ、斷行力ガアルト云フコ
  トガ必要デアルヤウニ思フノデアリマス、
  私共ト致シマシテモ直接地方廳ニ於テ指導
  致シテ居ルノデアリマスガ、最近或ハ作付
  デアルトカ色々ノ點ニ付テノ應急ノ指導ト
  云フモノガ澤山行ツテ居リマスノデ、或ハ
  地方廳等ニ於キマシテモ斯クノ如キ交換分
  合ニ付テノ指導ト云フコトガ後廻シニナツ
  テ居ルヤウナコトモ或ハアルカモ知レマセ
  ヌ、之ニ付キマシテハ食糧增產ニ付テノ政府
  ノ施設モ御承知ノヤウニ昨年末應急的ノ方
  面カラ段々基本的ナ面へト進ンデ來テ居リ
  マス、是ハ豫ネテ色々御議論モアリマシタ
  ガ、私ハ順序トシテ正シク自然ノ傾向デハ
  ナカツタカト思フノデアリマスガ、左樣ナ
  コトデ最近ニハ御承知ノヤウニ勞力問題ガ
  入ツテ參ツタヤウナ譯デアリマス、從來カ
  ラモ勿論此ノ交換分合ニ付テハ努メテ指導
  致シテ居ルノデハアリマスガ、今後モ更ニ
  一層改メテ十分ナル指導ヲ加ヘルヤウニ努
  力致シタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=98

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• 099・杉山元治郎

  ○杉山委員　今御話ノヤウニ交換分合ノ困
  難ナ一面ハ農民ガ土地ニ執着シテ居ル、斯
  ウ云フ良イ所カラ來テ居ル點モ多々アルト
  思フノデアリマスガ、今日ノヤウナ勞力不
  足ノ際ニ之ヲ打解スル一ツノ途トシテ非常
  ニ良イ方法ガ、例ヘバ一町步平均耕作致シ
  テ居リマス時ニ、現在デハ十七八枚ニバラ
  バラニナツテ居ル、之ハバラ〓〓ニ耕作致
  シマスルノヲ集團化シテ耕作致シマスルノ
  ト、少クトモ一反ニ對シテ一一人三人ノ人ガ
  浮イテ來ル、斯ウ云フコトハ明瞭ニサレテ
  居ル譯デアリマスカラ、斯ウ云フ勞力不足
  ノ際ニ政府ハ尙ホ一層熱意ヲ持ツテ御指導
  戴キタイト思フノデアリマス、助成ノ問題
  デハナイト申シマスガ、是デハ餘リニ少イ、
  ソレデ何カ馬鹿ニサレタヤウナ感ガスル、
  單ニ一圓デハ今日デハ辨當代ニモナラナイ
  ノデ、サウ云フコトデハト云フ話ハ能ク伺
  ヘルノデスカ、出スナラバモツト出スヤウ
  ナ權威ノアルモノニシテ出シテ戴キタイ、
  斯ウ云フ意味ニ外ナラナイノデアリマス
  次ニ御伺ヒ致シタイ點ハ、〓糧確保ノ點
  デ、年々色々ナ御計畫ノ下ニ增產ニ努力セ
  ラレテ居ル點ニ付テハ我々ハ非常ニ多トシ、
  又感謝致シテ居ルノデアリマスガ、內地ノ
  食糧增產計畫ト云フモノハ、天候ニ依ツテ
  多少ノ相違ガゴザイマスケレドモ、兎ニモ角
  ニモ徐々ニ進步發展ハシテ來テ居リマス、所
  ガ何時モ食糧確保ノ上ニ於テ違算ヲ生ゼシ
  メルモノトシテハ、外地ノ生產ガ關係シテ
  來ルコトガ多イ、特ニ朝鮮ノ生產關係ガ內
  地ノ食糧自給ノ上ニ大ナル影響ヲ及ボシテ
  來ル、斯ウ云フコトハ御承知ノ通リデアリ
  マス、ソコデ內地ノ食糧增產計畫ヲ進メテ
  行カナケレバナラナイコトハ勿論デアリマ
  スガ、特ニ朝鮮ニ於テ的確ナ增產ノ方針ヲ
  立テナケレバナラナイト思フノデアリマス、
  生產ノ上ニ於テ非常ナヒドイ高低ノアリマ
  スコトハ政府ノ計畫ノ上ニ於テモ色々ト迷
  惑ヲシ、又國民生活ノ上ニ於テモ色々ノ不
  安ヲ生ゼシメル所以デアルト思ヒマスノデ、
  朝鮮ニ於テモ色々ヤツテ居ルコトハ聞クノ
  デアリマスケレドモ、マダソレガ餘リ確實
  性ヲ有シテ居ラナイヤウナ感ジガ致シマス
  ルノデ、之ニ對スル政府ノ御意見ヲ伺ヒタ
  イコトト、尙ホ此ノ際ニ一步進ンデモ、モ
  ウ內地ハ內地ダケデモ自給ヲスルト云フ點
  ニ付テ食糧增產ノ方針ヲ確立スルコトガ必
  要ダト思フノデアリマス、勿論先年立テラ
  レマシタ十箇年增產計畫ト云フモノガソレ
  ニナツテ居ルコトヲ承知致スノデアリマス
  ガ、併シ今日マデノ情勢ヲ見マスルト、之
  ニ付テモ尙ホ色々ト訂正ヲシナケレバナラ
  ナイ點ガアルノデハナイカト云フコトモ考
  ヘラレルノデアリマス、ソコデ、私ハ一ツ
  ノ希望或ハ提案ヲ申上ゲテ、政府ノ御所見
  ヲ伺ツテ見タイト思フノデアリマス、今日
  內地ノミデ食糧自給ヲスル、其ノ計畫ニ付
  テ政府ノ御方針ハ、ヤハリ水田或ハ畑地ト
  云フモノヲ中心ニ考ヘテオヤリニナツテ居
  ルト思フノデアリマス、私ハ之ヲ平地農業
  ト申シテ居ルノデアリマスガ、平地農業デ
  ハ十五度位マデノ傾斜面シカ使ヘナイト思
  フノデアリマス、又高サモ一千米カ或ハ
  千二百米カト云フ高度ヲ限ラレルト思フノ
  デアリマスガ、此ノ際ニ新シイ一ツノ食糧
  ノ開拓方法トシテ、十五度バカリヂヤナイ、
  二十五度乃至三十度ノ傾斜モ利用シ得ラレ
  ルト云フヤウナ所謂果木ノ栽培デアリマス、
  胡桃デアルトカ、或ハ榧デアルトカ、サウ
  シタ樹木デアリマスガ、是ハ私ハ單ニ空想
  ヲ申述ベルノデハナク、旣ニ御承知ダト思
  ヒマスガ、地中海ノ諸島ニ於テ、例ヘバ「コ
  ルシカ」ノヤウナ所、非常ニ人口ガ多クテ
  耕地面積ノ非常ニ少イ、恐ラク世界一ノ人
  口密度ヲ有シテ居ル是等ノ島々ノ人ガ、ド
  ウシテ生活ヲシ、生存ヲシテ居ルカト云フ
  コトヲ見テミマスルト、今申上ゲタヤウナ
  山地、傾斜面ニ果木ヲ栽培シテ、其ノ果實
  ヲ得ル、或ハ其ノ果實カラ家畜ヲ飼養スル、
  斯ウ云フ方法ニ於テ食糧ノ自給ヲ得テ居ル
  ヤウニ見ルノデアリマス、斯ウシタ點ヲ我
  ガ內地ニモ應用致シマスナラバ、私ハマダ
  マダ食糧ノ得ラレル點ガ多々アルノデハナ
  イカ、又一面サウ云フ風ニ食糧ノ得ラレマ
  スルバカリデナシニ、用材關係ニ於テモ相
  當ノ成績ヲ擧ゲルコトガ出來ルデアラウ、
  斯ウ信ズルノデアリマス、ソレデ政府ハ今
  申上ゲタヤウナ平面的ナ農業ノ增產計畫ヲ
  色々ト御努力ナサルト共ニ、一段ト今申上
  ゲタ傾斜面利用、山地利用ノ爲ニ果木栽培
  ヲシテ、サウシテ日本ノ食糧不足ヲ補フ、
  斯ウ云フ方面ニ今一層ノ御努力ヲセラレテ
  ハドウカト云フ點ニ付テノ政府ノ御意見ヲ
  伺ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=99

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• 100・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　前段ノ御質問ノ點ハ、最
  近ノ數年ニ於キマシテ、食糧確保ノ見地カ
  ラ見マシテ、外地殊ニ朝鮮ニ於ケル作柄ノ
  不安定ト云フコトニ付テノ對策ト云フ御話
  デアリマスガ、御尤モデアリマシテ、朝鮮
  ニ於キマシテハ御承知ノヤウニ旱害ガアリ
  マスト非常ニ作柄ニ違算ガ生ズルノデアリ
  マス
  〔成島委員長代理退席、委員長著席〕
  此ノ點ニ付キマシテハ總督府ニ於テモ最
  近特ニ深ク之ヲ考ヘ、御承知ノ內地ノ第二
  次食糧增產對策ニ付キマシテ土地ク改良計
  畫ヲ遂行致シマシタ際、之ニ伴ヒマシテ外
  地ニ於テモ食糧增產上ノ土地改良計畫ト云
  フモノヲヤルコトニナツタノデアリマスガ、
  朝鮮ニ於テハ朝鮮特有ノ早害ニ對スル防除
  ノ趣旨ヲ以チマシテ、朝鮮ノ土地改良ハ主
  トシテ水利ノ確保、就中溜池等ノ設置ト云
  フ所ヲ特ニ狙ヒマシテ、今計畫ヲ實行中デ
  アル譯デアリマス、正確ナル數字等ハ私今
  確カト記憶致シテ居リマセヌガ、取敢ズハ
  資材其ノ他ノ關係モ考慮シテ、餘リ大キク
  ナイ所ノ溜池ヲ全道ニ多數ニ作ル、餘リ大
  キクナイモノナラバサウ特別ナ大キナ資材
  モ要ラヌト云フ譯デアリマシテ、時價慥カ
  一萬圓以上ノ溜池ヲ急遽作ルト云フ事柄ガ
  -他ニモ色々ノ施設ガアリマスガ、朝鮮
  ニ於ケル土地改良ノ大キナ要點デアツタヤ
  ウニ思フノデアリマス、尙ホ逐次其ノ後ニ
  於キマシテモ、斯樣ナ方向ニ向ツテ朝鮮ト
  シテハ行キタイト云フヤウナ計畫ヲ持ツテ
  居ルヤウデアリマス、左樣ナ次第デアリマ
  シテ、是ハ洵ニ適切ナ施設デアルト存ジマ
  スルガ、之ニ依リマシテ軈テ餘リ遠カラザ
  ル時ニ於テ、朝鮮ノ作柄モ或ル程度ニ相當
  ナ安定ヲ見ルト云フコトノ實現スルコトヲ、
  私共モ期待致シテ居ル次第デアリマス、ソ
  レカラ食糧ニ付キマシテ內地ハ內地ダケデ
  モ自給ヲスルヤウニト云フ御話デアリマス
  ガ、戰局ノ推移ト申シマスカ、斯クノ如キ
  大戰爭ニ於キマシテハ、凡ユル事態ト云フ
  モノヲヤハリ考ヘナケレバナリマセヌノデ、
  我々モ今日ノ內外地及ビ滿洲ヲ通ズル所ノ
  食糧自給ト云フコトニ付キマシテ、更ニ其
  ノ上ノコトモ密カニ考ヘル譯デアリマス、
  唯今ノ內地ダケニ於ケル自給トト云フコト
  ニ付キマシテハ、實行問題ト致シマシテ、
  サウ簡單ニハ參リマセヌヤウニ存ジテ居ル
  譯デアリマシテ、特ニ實行的ナル成案ト云
  フモノハ未ダ得テ居ラヌノデアリマス、ソ
  コデ只今モ御話ノヤウナ傾斜地ニ於ケル果
  木ノ栽培ニ依ツテ、我ガ國ノ〓糧ノ自給ヲ
  圖ルト云フヤウナコトニ付キマシテハ、或
  ハソレガ可能デアルカ、或ハ數量的ニ不可能
  デアルカ、或ハ之ヲ實現スルニ要スル時期
  的ナ、詰リ年數ヲ要スルト云フヤウナ點、
  其ノ他カラ見マシテ、此ノ際トシテドウデ
  アルカ、斯ウデアルカト云フヤウナコトニ
  付キマシテモ、マタ何等十分ナル考慮ヲ拂
  ツテ居リマセヌノデ、御話ノ點ニ付キマシ
  テハ今後モ一ツ十分〓究シテ見タイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=100

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• 101・杉山元治郎

  ○杉山委員　御話ノヤウニ果木栽培ニハ相
  當ノ年數ヲ要シマスルノデ、戰時下ノ今日
  ニ直グニ間ニ合フモノト云フ點ニ付テハ仰
  セノ通リデアリマス、併シ今後將來ノ問題
  トシテ十分御〓究ヲ戴キタイト思ヒマスシ、
  私ハ或ル種ノ成案ヲ持ツテ居リマスカラ、
  又時期ガ參リマスナラバソレヲ御示シシテ
  見タイト思ツテ居リマス
  次ニ御尋ネ致シタイノハ今御話ノヤウニ
  今日ハ直グニ間ニ合フコトヲヤラナケレバ
  ナラヌト云フコトニ相成ルノデアリマス、
  ソコデ增產ノ方面ニ於キマシテモ、的確ニ、
  而モ有效ニ、直グ間ニ合フト云フ意味デ、
  土地改良ヲオヤリニナツテ居ルト思フノデ
  アリマスガ、私ハ技術方面ニ於テモサウ云
  フモノヲ拾ヒ上ゲテ參リマスナラバ多々ア
  ルノデハナイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居
  ルノデアリマス、例ヘテ申シマスナラバ
  是ハ增收デハナイガ、增收ト同ジ效果ノア
  ルコトデアリマスガ、ソレハ苗代ニ對シテ
  從來ハ非常ニ厚ク播ク慣習ガアルノデアリ
  マス、一坪ニ對シテ六合、七合、甚ダシキ
  ハ八合以上モ播クト云フ厚蒔ノ慣習ヲ持ツテ
  居リマス、併シ良イ苗ヲ得ルニハ、相當薄
  蒔ニシテ管理ヲ良クスルコトニアルコトハ、
  間違ヒナイト思フノデアリマス、私ノ知ツ
  テ居ル篤農家ノ如キハ、常ニ二合播イテ、而
  モ非常ニ良イ收穫ヲ擧ゲツヽアルノデアリ
  Wv.本省ニ於テモ大分此ノコトヲ奬勵サ
  レツヽアルヤウデアリマスガ、若シ今ノ苗
  代ニ播キマスル苗ヲ假ニ二合ハ極端デアツ
  タト致シマシテモ、或ハ三合內外ニ致シマ
  スナラバ、恐ラク籾種ヲ浮カスト云フダケ
  デモ、玆ニ百萬石內外ノ米ガ出テ來ルノデア
  リマス、是ハ極ク簡單ナコトデ、是レ位ノ
  指導ハヤツテ、今日ノヤウニ米百萬石ヲ增
  收致シマス爲ニ、非常ナ御骨折ヲ致シテ居
  ルコトカラ考ヘレバ、無駄ニ捨テテ居ル籾
  種ヲ浮カバスト云フ位ノコトヲシテ、今日
  ノ〓糧ノ確保ノ上ニ資シマスコトハ、熱
  大イニ政府ガ骨ヲ折ツテ戴イテ宜イノデハ
  ナイカト云フヤウニ考ヘルノデアリマス、
  ソコデサウ云フコトノ甚ダ不徹底デアルト
  云フコトハ、要スルニヤハリ農業指導者ノ
  足ラナイ所カラ來ルノデハナイカト思ツテ
  居ルノデアリマスガ、此ノ際ニ私ハ農業技
  術員ノ如キモ、色々ト政府ノ方デ國庫助成
  サレルヤウニハナリマシタケレドモ、モ
  ウ一段ト。之ニ對シテ援助、助成ヲナサル必
  要ガアルノデハナイカ、ナゼカト申シマス
  ト良イ技術員ノ居リマスル町村ハ確カニ
  收穫ノ上ニ於キマシテモ、ヤハリ良イ成績
  ヲ擧ゲテ居ルコトヲ私共ハ常ニ見受ケテ居
  ルノデアリマス、又生產ノ上ニ於テモ其ノ
  通リデアルバカリデナシニ、今申上ゲタヤ
  ウナ無駄ヲモ省イテ行ク、斯ウ云フヤウナ
  點カラ致シマシテ、私ハ農業技術員ヲモウ
  少シ優遇シ、モツト活用セシメルコトガ今
  日ノ急務デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、
  先般私ハ大阪ノ方ノ農業技術員ノ諸君トモ
  會ツテ見タノデアリマスガ、伺ヒマスト、
  大體俸給ハ五、六十圓ト云フ非常ナ安イ月
  給デアリマシテ、今日ハ御承知ノヤウニ小
  學校ノ〓師ノ方ガ段々ト上ゲラレテ參リマ
  シタノデ、農業技術員ハ一番低イ俸給ニナ
  ツテ參ツタト思フノデアリマス、特ニ今日
  ノヤウナ軍需工業方面ニ働キニ行ク場所ガ
  多クナリマシタ時ニ於キマシテハ、續々ト
  其ノ方面ニ流レテ行クト云フ傾向モアリマ
  スノデ、此ノ間モ伺ヒマスト、十年以上勤
  續シテ居ル者ハ五人モナイ、斯ウ云フヤウ
  ナ狀態デアリマシテ、是デハ本當ノ指導ハ
  出來ナイト思フノデアリマス、ヤハリ腰ヲ
  落著ケテ、サウシテ土ニ著イテ指導ヲスル
  ノニハ、ヤハリソレダケノ待遇ヲシ、地位
  ヲ與ヘテヤルヤウニシテ行カナケレバナラ
  又、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、尙ホ先般他ノ方面ヲ步キマシタ時ニモ、
  是ハ序デスカラ御願ヒヲシ、申上ゲテ置キ
  タイト思フノデアリマスガ、村ヲ〓ルニシ
  テモ、ドウモ自轉車ノ「タイヤ」モ中々手ニ入
  ラナイ、闇ナラ或ハ入ルカモ分ラナイケレ
  ドモ、中々入ラナイ、本當ニ農村ヲ指導シ
  テ廻ル我々ニハ、少クトモ「タイヤ」位ハ十
  分デナクテモ補給ヲシテ貰ヒタイ、斯ウ云
  フヤウナコトモ技術員ノ口カラ聞カサレタ
  ノデアリマス、是等ノ點モ御考慮戴キタイ
  ト共ニ、尙ホ是ハ他ノ場所デ誰カカラ御尋
  ネガアツタカト思ヒマスルガ、農業技術員
  ノ如キハヤハリ徵用外ニナルノデゴザイマ
  セウカ、其ノ點モ併セテ伺フコトガ出來マ
  スナラバ、伺ハシテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=101

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• 102・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御話ノ苗代ノ薄蒔ト云フ
  コトハ、稻作ノ上ニ於キマシテ夙ニ非常ニ
  效果ガ多イト認メラレテ居ル點デアリマシ
  テ、從來カラ此ノ點ニ付キマシテハ、相當
  指導奬勵モ致シテ居ルヤウニ私モ聞及ンデ
  居リマス、現ニ數年前ニ私自身地方ニ居リ
  マシタ時ニモ、同ジ水田耕作ノ爲ノ苗ヲ作
  ルノニ、苗代ノ擴張ト云フコトヲ强硬ニ指
  導シタヤウナコトモアルノデアリマスガ、
  元來全國ニ對スル農業技術ノ指導ト云フコ
  トハ、是ハ或ル意味ニ於テ中々難カシイノ
  デアリマス、御承知ノヤウニ日本ノ國ハ南
  北非常ニ氣候ガ違ヒマスシ、又色々ト狀況
  モ違ヒマスノデ、之ニ對スル全國畫一的ナ
  指導ノ範圍ト云フモノハ、サウ廣クハナイ
  ト云フヤウナコトカラシマシテ、先ヅ全國
  的ナ指導トシテハ、ドウ云フコトガ宜イカ
  ト云フト、結局幾ツカ擧ゲラレルノデアリ
  マスガ、其ノ中ノ苗代ノ薄蒔ノ如キハ、是
  ハ正シク何處デヤリマシテモ非常ニ效果ガ
  アルコトデアリマス、此ノ點ニ付キマシテ
  ハ尙ホ十分指導ヲ致スヤウニ努メタイト存
  ジマス、尙ホ其ノ同ジ薄蒔ノヤリ方等ノコ
  トモアリマスケレドモ、此ノ際ハ省略ヲ致
  シマス、所デ末端ニ於ケル技術ノ指導ノ必
  要ト云フコトハ、是ハ御話ノ通リデアリマ
  ス、資材等ノコトニ付キマシテモ、我々ト
  シテモ氣ノ付カナイ所モアリマスガ、今後
  十分努メテ參リタイト存ジマス
  徴用ノコトニ付キマシテハ、尙ホ政府部
  內ニ於キマシテモ、實行上ノコトヲ十分協
  議ヲ重ネテ見ナケレバ分リマセヌケレドモ、
  私共ト致シマシテハ、御話ノヤウナ風ニ致
  シタイト云フ希望ヲ持ツテ居リマス

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• 103・杉山元治郎

  ○杉山委員　食糧管理局長官ニ御伺ヒ致シ
  タイノデアリマスガ、食糧增產ノ消極的ナ
  部面トシテ、詰リ穫ツタモノヲ蟲ナドニ食
  ハサナイヤウニスルト云フコトモ、今日ノ
  一ツノ方法ダト思フノデアリマシテ、現
  持ツテ居ルモノヲ蟲ニ食ハレマスト、ソレ
  ダケ減收シタト同ジコトニナルト思フノデ
  アリマス、ヨク學者ナドノ話ヲ窺ヒマスト、
  假リニ米六千五百萬石アルトスルナラバ、
  一年ニ穀象ヲ初メトシテ、主ナ害蟲ノ爲ニ
  大體四分位食ヒ荒サレル、斯ウ云フ話ヲ聞
  イテ居ルノデアリマス、若シサウダト致シ
  マスルト、ソレガ二百六十萬石ニナルノデ
  アリマシテ、今日ノヤウナ食糧事情ノ際ニ
  ハ由々シイ問題ダト思フノデアリマス、此
  ノ點ニ付テハ食糧管理局デハ、萬全ノ策ヲ
  講ジテ置イテ下サルト信ズルノデアリマス
  ガ、斯ウ云フヤウニ政府米ガ非常ニ增大シ
  テ參リマシタ時ニ、サウ云フヤウナ完全ナ
  倉庫ガアルノカドウカ、又之ヲ驅除致シマ
  ス「クロール·ピクリン」ナドノ藥劑ガ十分
  間ニ合フノデアルカドウカ、サウ云フ點ヲ
  御伺ヒ致シタイト思フノデアリマス、是一
  長官デナイ一般ノ方デアリマスガ、序ニ農
  業藥劑トシテ大分不足ノヤウニ窺ツテ居ル
  ノデアリマスガ、硫酸銅ナリ或ハ砒素劑ナ
  リ、或ハ「デリス」根、或ハ浮塵子ニ對スル
  石油、斯ウ云フモノニ對スル用意ハ出來テ
  居ルノカドウカ、政府ノ是等ニ對シマスル
  點ヲ、序ニ明カニシテ戴ケバ幸ヒダト思ヒ
  マス

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• 104・湯河元威

  ○湯河政府委員　食糧ガ非常ニ大事ナ時ニ、
  蟲ニ食ハセテシマフヤウナコトガアリハ
  シナイカト云フ御心配デ、其ノ點洵ニ恐縮
  ニ存ジマスガ、政府ニ於キマシテモ、其ノ
  點ニ付キマシテハ、米穀統制ヲヤツテ居リマ
  ス當時ニ非常ニ色々〓究シテ參リマシテ、
  倉庫ノ設備ニ付キマシテモ特別之ヲ管理シ
  テ居ル積リデアリマス、只今マデノ所倉庫
  設備ニ於キマシテハ、都會地ニ於キマス倉
  庫ハ相當完全ナモノデアリマシテ、農村ニ
  於キマシテモ農業倉庫ハ相當普及シテ居リ
  マス、尙ホ穀物貯藏倉庫ヲ色々ナ形ニ於テ
  過去ニ於テ助成シタモノガ、只今全部用ヒ
  ラレテ居ルノデアリマスガ、倉庫ノ收容力
  カラ申シマスト尙ホ不足ヲ感ジテ居ル所モ
  アリマス、是等ニ付キマシテハ極力其ノ增加
  ヲ圖ツテ行ツテ居ルノデアリマシテ、一面農家
  ノ倉庫ヲ利用シテ居ルト云フ點ニ於キマシ
  テ、若干サウ云フ風ナ心配ノ點モアラウカ
  ト思ヒマスガ、只今ノ食糧管理ノ實情カラ
  申シマスト、右カラ左ニ米ヲ廻シテ居リマ
  スヤウナ關係上、サウ一箇所ニ長ク米ガ滯
  留スルコトモアリマセヌノデ、サウ大シタ
  心配モナイノデアリマス、穀象等ノ害蟲驅
  除ノ藥品ハ大體ニ於テ足リテ居リマスガ、
  尙ホ此ノ貯藏ノ問題ハ管理上ノ大キナ問題
  デアリマスノデ、色々〓究シテ居ルヤウナ
  次第デアリマス

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• 105・杉山元治郎

  ○杉山委員　今長官ノ仰セラレタヤウニ、
  現在デハ貯藏期間ガ短イカラ、其ノ點ニ於
  テハ多少宜イト思ヒマス、併シ民間ノ倉庫
  ノセイカ知リマセヌガ、農民ノ或ル者カラ
  折角我々ガ供出シタモノガアヽ云フ風ニ蟲
  ニ食ハレテ居ルノデハ非常ニ困ル、斯ウ云
  フ聲ヲ再々聞クコトガアリマシタノデ、
  應念ノ爲ニ伺ツタノデアリマス
  〔委員長退席、野村委員長代理著席〕
  先ニ河野委員カラモ御話ガアリマシタガ、
  食用ニ代替致シマス爲ノ甘藷、馬鈴薯ノ如
  キモ相當ニ腐敗シテ居ルト思フノデアリマ
  ス、是ハ政府ノ方デ御買上ニナツタ後ニ、
  腐敗シタモノニ對スル大體ノ〓數ガ御分リ
  ニナリマセウカ、或ハソレハモウ其ノ儘配
  給シテ居ルカラ、政府ノ方デハ何モ分ラヌ
  ト云フコトニナリマセウカ、其ノ點ヲ御伺
  ヒシタイコトト、河野委員モ御話ガアリマ
  シタヤウニ、アヽ云フ水ノ多イモノヲ持チ
  步キマスコトハ、今日ノ運輸ノ非常ニ逼迫
  シテ居ル時ニハ迷惑デアラウト思ヒマスシ
  サウ云フ意味カラ今切干ナドヲ御奬勵ニナ
  ツテ居リマスガ、天然ノ太陽ニ依ル乾燥デ
  ハ非常ニ時間ガ掛ツテ困ルコトモ多イト思
  ヒマス、多量ニ生產致シマスヤウニ町村ナ
  ドニ御奬勵ニナツテ居ルト思フノデアリ
  マスガ、ヤハリ火力乾燥ノヤウナモノヲ施
  設セシメテ、サウシテ政府ノ要求スル所ノ
  乾燥芋ト云フモノヲ集メラレルヤウニサレ
  テハドウカト思フノデアリマス、若シサウ
  云フヤウナモノヲ地方ノ町村或ハ產業組合
  ナドデ、施設致シタイト云フヤウナコトガ
  アリマシタ場合ニハ、ヤハリ企業整備ノ關
  係ト云ヒマスカ、ソレト何等カ牴觸スルコ
  トガアリマセウカ、自由ニ出來ルカ、此ノ
  點モ若シ御分リニナレバ御〓ヘ戴キタイ

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• 106・湯河元威

  ○湯河政府委員　甘藷ガ腐レ易イモノダト
  云フコトハ、前々サウ云フ積リデヤツテ居
  リマスルガ、ドノ位腐ツテ居ルカト云フコ
  トニ付キマシテハ、一寸只今申上ゲニクイ
  ノデゴザイマスガ、一例ヲ申上ゲマスルト、
  東京ナドニ於キマシテハ大體取扱上諸ト
  云フモノハ此ノ位腐ルノダ、例ヘバ一%位
  腐ルノダト云フコトガ言ハレテ居リマシタ
  時ニ、政府ノ方デ配給致シタ藷ハソレノ半
  分位シカ-「ロス」ニ見込ンダモノノ半分
  位シカ腐ツテ居リマセヌ、併シ決シテソレ
  デ滿足出來ルモノデハゴザイマセヌノデ、
  今後モ十分氣ヲ付ケテ參リタイト思ツテ居
  リマス、又先程御話ガ出マシタヤウニ、成
  ベク產地ニ於テ之ヲ消費スルヤウニ仕向ケ
  テ參リタイト考ヘテ居リマス、ソレカラ甘
  藷切干ヲ作リマスコトニ付キマシテハ、昨
  年以來切干ノ設備機械等ノ助成ヲ致シテ參
  ツタノデアリマスガ、初メテノコトデゴザ
  イマシテ、若干思ノヤウニ行カナイ點ガゴ
  ザイマス、ソレ等ノ點ニ付キマシテハ、今
  生藷ノ儘ノ供出モ認メテ居ルヤウナ次第デ
  ゴザイマス、ソレカラ仰セノ中ニゴザイマ
  シタ火力乾燥ノ切干設備ヲ認メルカト云フ
  御話デゴザイマスルガ、之ニ付キマシテハ
  只今豫算上ノ途ガゴザイマセヌガ、本年ノ
  切干設備普及ノ實情ニ卽應シマシテ、追ツ
  掛ケ適切ナ手ヲ打チタイト考ヘテ居ルノデ
  アリマシテ、能ク調査ノ上決メタイト考へ
  テ居リマス、尙サウ云フモノハ企業整備ノ
  關係上ドウカト云フ御話デゴザイマシタガ、
  是ハ寧ロ產業組合等ノ設備トシテ認メテ參
  リタイト思ツテ居ルノデゴザイマシテ、我
  我ノ方カラ助成スルヤウナコトニデモナリ
  マスレバ、恐ラク何等問題ナイダラウト思
  ツテ居リマス

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• 107・杉山元治郎

  ○杉山委員　次ニ御伺ヒ致シタイ點ハ、戰
  時下ニ於ケル國民ノ最小限度ノ生活ヲ確保
  スルト云フ問題デアリマスガ、此ノ最小限
  度ト云フ基準ハ中々難カシイコトデ、其ノ
  基準ヲ何處ニ決メルカ、一寸困難ト思ヒマ
  スガ、私ハ斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、少クトモ生產力ヲ減退シナイ程
  度ノ榮養ヲ保持シテ、而モ今日ノ厖大ナ戰
  費ヲ負擔シテ行ク、其ノ最小限度ノ生活、
  斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、
  其ノ最小限度ノ生活ヲヤツテ參リマスルノ
  ニ、現在ノ配給量ヲ以テシテ適當デアルカ
  ドウカ、色々此ノ間中モ、榮養ノ點ニ於テ
  モ大丈夫ダ、斯ウ云フ御話モアツタヤウニ
  聞イテ居ルノデアリマスガ、私ハ若シ厚生
  省ノ方ガオイデニナルナラバ、其ノ點モ聽
  キタイト思ツテ居ルノデアリマスガ、私ハ
  先般六大都市ヲ調ベテ見マシタ、勿論此ノ
  數字ハイケナケレバ速記カラ除イテ置イテ
  結構デアリマスガ、斯ウ云フヤウナ狀態ニ
  ナツタト思フノデアリマス、澱粉性ノ食品
  デハ蛋白質ガ二六·六三「グラム」其ノ「カロ
  リー」ガ一三〇二デ、動物性ノ食品デハ蛋
  白質ガ二二·一五「グラム」、、「カロリー」ガ一
  五〇、植物性ノ〓品デハ蛋白質ガ八·四〇
  -1グラム」、「カロリー」ハ八五、外ニ調味料
  全體ト致シマシテ蛋白質ガ一·八九「グラム」、
  「カロリー」ガ一〇七、合計致シマスルト蛋
  白質ガ五九·〇七「カロリー」ハ一六四四、斯
  ウ云フ數字ガ出テ來テ居ルノデアリマスガ、
  是ハ配給量一人當リデアリマス、大體六大
  都市ノモノモ大同小異デアツタヤウニ私ノ
  調ベデハナツテ居ルノデアリマス、是デハ
  ドウモ榮養ノ點ニ於テ相當惡イノデハナイ
  カト云フコトヲ感ズルノデアリマス、先般
  新聞ニ依リマスト、或ル醫者ノ如キハ、ナ
  ニ榮養ハ下ツテ居ルト言フガ、マダ夜盲症
  ニハナツテ居ラヌノダカラ大丈夫ダ、斯ウ
  云フヤウナ御話モアツタヤウデアリマスガ、
  確カニ國民ニハマダ夜盲症ハ出テ居リマセ
  又、サウ云フ意味カラ云ウテ安心ダト思ヒ
  マスルガ、私ハアチコチデ調ベマシタ模樣
  カラ見マスト、體位モヤハリ相當下リツヽ
  アルヤウニ見テ居ルノデアリマス、某國民
  學校ニ於ケル〓師ノ體位ハ是ハ以前ノ標準
  ガナイト比較スルコトガ出來ナイカラ見タ
  ノデアリマスガ、ソレ等ヲ見マスト、平均
  シテ一「キロ」以上體位ガ下ツテ居ル、或ハ
  初生兒ノ如キハ百「グラム」モ少クナツテ居
  ルト云フヤウナ樣子ヲ見ルノデアリマス、
  私ハ併シ是ハ少ナイカライケナイデハナ
  イカト云フノミニ申上ゲルノデハナイノデ
  アツテ、事實上斯ウ云フヤウナ配給狀態ニ
  ナツテ居ル、所ガ是ハ政策上大丈夫ダト斯
  ウ云フヤウニ議會デ仰シヤルナラ意味ハ能
  ク分ルノデアリマスケレドモ、唯是デモ大
  丈夫ダト斯ウ云フコトニナリマスト、相當
  其處ニ考ヘテ置カナケレバナラヌ點ガアル
  ノデハナイカ、ソコデ少クトモ現在ノ配給
  量ハ確保シテ下サル、斯ウ云フコトニ付テ
  私共ガ安心致シテ居ルノデアリマスルケレ
  ドモ、尙ホ此ノ點ニ付テハ十分ノ御配慮ヲ
  願フコトト、尙ホ私ガ此ノコトヲ申上ゲタ
  コトノ一ツハ、今度ノ米穀ノ需給狀態ヲ、
  我々ノ方カラ見テ居リマスト、昨年ノ供給
  量ヨリモ今年ハ恐ラク數百萬石少クナルノ
  デハナイカ、外米ヲ入レナイ關係デサウナ
  ルノデハナイカト斯ウ云フヤウニ豫想シテ
  居リマス
  〔野村委員長代理退席、委員長著席〕
  サウ致シマストソレヲ麥デ代替ガ出來マス
  ナラバ結構デアリマスケレドモ、代替スル
  モノガ他ノモノデサレル、或ハ代替ガ十分
  麥ナリ諸ナリデサレタト致シマシテモ、色
  色主要食糧增產ノ結果、先程モ御話ニナツ
  タヤウニ、蔬菜ナドモ相當轉換サレル其ノ
  結果蔬菜ナドモ相當ニ收穫ガ減ジテ來ルノ
  デハナイカ、其ノ主要食糧ノ足ラナイ所ヲ
  若シ副食物デモ澤山アルナラバ補ツテ行ク
  ト非常ニ都合ガ好イノデアリマス、所ガサ
  ウ云フヤウナ副食物ノモノモ減ツテ參リマ
  スト愈〓生活ノ上ニ困難ヲ生ジテ來ル、此
  處ニモ一ツノ問題ガ起ツテ來ルノデハナイ
  カ、斯ウ云フ意味デ現在ノ配給量ニ付テノ
  十分ノ御考慮ヲ願ヒマスト共ニ、サウシタ
  副食物ノ、所謂蔬菜ナドノ生產ニ付テモ十分
  見透シヲ付ケテ戴キタイト思フノデアリマ
  ス、先般モ大阪附近ニ雜炊、デー」ト云フノヲ
  拵ヘル、斯ウ云フノデ非常ニ奬メテ步イタ
  ノデアリマスガ、異口同音ニ言ハレタコト
  ハ、雜炊ニセヨト言ツテモ雜炊ノ材料ガナ
  イヂヤナイカト申サレタ場合ニ、我々ノ方
  ガ非常ニ困ツタ、斯ウ云フ狀態ニナツテ居
  リマスノデ、此ノ際サウ云フヤウナ食糧ノ
  配給量ニ於テ多少不足ガアルナラバ、之ヲ補
  ツテ行ク色々ノ方面ニ付テノ十分ノ御考慮
  ヲ戴キタイト思フノデアリマス、時間ガ餘リ
  アリマセヌカラ一緒ニ申上ゲテ置キタイト
  思フノデアリマスガ、サウ云フ食糧ノ不足ヲ
  補ヒマスル一ツノ方法トシテ、今日マデ棄
  テラレテ居リマスヤウナモノ、例ヘテ申シ
  マスト團栗ノヤウナモノデモ粉末ニシテ、
  食糧化ヲ致シマスナラバ、相當ノ榮養ヲ補
  給シテ行クコトガ出來ルノヂヤナイカ、斯
  ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス、尙ホ又或ル
  人ノ話ニ依リマスト、桑葉ノ如キモ、若シ
  反當リ二百七十貫ノ桑葉ガアルトスルト、
  之ニ含マレテ居ル蛋白質ガ十四貫アル、大
  豆ヨリモ寧ロ反當リノ蛋白質ガ多イ、斯ウ
  云フヤウナ話モサレテ居リマシテ、蠶ト人
  間ノ競合ナント云フコトハヲカシイノデア
  リマスガ、棄テラレルヤウナ桑ノ葉ガアリ
  マスナラバ、之ヲ粉末化シテ健民「パン」ノヤ
  ウナモノニ入レテ利用シテ行ク、斯ウ云フ
  コトモ致シテ行キマスナラバ、今申上ゲマ
  シタヤウナ榮養量ノ不足ナドモ、十分補ツ
  テ餘リアルモノデハナイカ、サウ云フヤウ
  ナ方面ニ付テノ政府ノ方ノ御〓究ナリ、對
  策ナリガアリマスナラバ、聽カセテ戴ケレ
  バ大變幸ヒダト思フノデアリマス

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• 108・湯河元威

  ○湯河政府委員　只今ノ配給基準量ガ國民
  榮養ヲ確保シテ行ク上ニ於テドウカト云フ
  點ニ付テノ御意見ガ杉山委員カラデゴザイ
  マシタ、從來主要食糧トシテ米ノ飯ヲ食ツ
  テ居リマシタ、此ノ國民ノ食生活上カラ申
  シマシタナラバ、所謂主要〓糧ハ現在ノ配
  給基準量ヲ事缺カサヌヤウニシテ行キタイ
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、一般ノ情勢カ
  ラ眺メテモ、寧ロ其ノ他ノ副食物等ニ於テ
  何トナシニ食ヒ足ラヌモノガアルノデアリ
  マスカラ、是ハ寧ロ其ノ方面カラ補充シテ
  參ルコトガ、國民ノ榮養ヲ確保スル上カラ
  言ツテモ適當デハナイカ、脂肪トカ、蛋白
  トカ、「ヴィタミン」トカ、色々ノ榮養素ハ
  寧ロサウ云フ色々ナモノヲ混ゼ合セテ食フ
  コトニ依ツテ確保出來ルノデアリマシテ、
  徒ラニ、ソレ等ノ物ガ不足シテ居ルカラ米
  ノ配給ヲ殖ヤスト云フコトハ、其ノ方カラ
  見テモ適當デナイ、又主要食糧ノ需給推算
  上カラ言ツテモ、ソレハ相當無理デゴザイ
  マスノデ、我々トシテハ、今ノ最低配給基
  準量ヲ確保シテ參リタイト、斯ウ考ヘテ居
  ルノデゴザイマス、色々足リナイト云フ聲
  モ聞イテ居リマスガ、補充シテ足リナイ點
  ヲ補ツテ參リタイノハ、寧ロ副食物ノ方デ
  ハナイカト思フノデアリマス
  ソレカラ先程御話ノ中ニ出テ參リマシタ
  ガ、最近ノ國民榮養ノ實情ハドウト云フコ
  トニ付テノ御懸念モゴザイマシタガ、是ハ
  中々難カシイ問題ダト思フノデアリマス、
  責任アル厚生當局ヨリ御答ヘガナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマスガ、我々聞イテ居
  ル所ニ依リマスト、今ノ狀態ニ於テ必ズシ
  モ憂慮スベキモノガアルトハ思ツテ居リマ
  セヌ
  ソレカラ尙ホ、斯ウ云フ際ニ今マデ食べ
  テ居ラナカツタ、或ハ棄テテ居ツタヤウ
  ナモノノ中ニ食ヘルモノガアルノデハナイ
  カ、團栗トカ桑葉トカ、其ノ他色々ノモノガ
  アリハセヌカト云フ御氣付キデアリマシテ、
  此ノ點ニ付テハ洵ニ御尤モダト思フノデア
  リマス、農商省ニ於テモ、今度御協賛ヲ御
  願ヒシテ居リマス豫算ノ中ニ、食糧〓究ニ
  付テノ豫算ヲ御願ヒシテアルノデゴザイマ
  スガ、是ハ只今仰セノヤウナ方向ニ於テ、
  國民食糧ノ給源ヲ探究スルコトヲ特ニ使命
  トシテ色々〓究サセタイト考ヘテ居ル次第
  デゴザイマス

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• 109・杉山元治郎

  ○杉山委員　私モ先ニ申上ゲマシタコトハ、
  足ラナイカラ主要食糧ヲ增シテ吳レト云フ
  意味デハナイノデアリマシテ、今日ノ主要
  食糧ノ事情ハ能ク存ジテ居リマス、ソレデ
  斯ウ云フ點ニ缺陷ガアルナラバ、今申上ゲ
  マシタヤウナ、廢棄サレテ居ルモノヲモ利
  用シテ、ソシテ補給シテ行クヤウナ途ヲ講
  ジテヤリマスナラバ、此ノ際國民ノ體位ヲ
  保持シ、又戰力ノ增强ニモナルコトデアル
  カラ、サウ云フ新シイ方面ノ食糧ノ點ヲ是
  非御指導、御〓究ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ譯
  デアツタノデアリマスガ、其ノ點ハ御〓究
  戴イテ居ルト云フコトデアリマスカラ、私
  ハ是レ以上申シマセヌ
  次ニ簡單ニ衣生活ノコトニ付テ御尋ネ致
  シタイト思フノデアリマス、他ノ場所デモ
  衣料切符ノ問題ハ出テ居ツタヤウデゴザイ
  マスカラ、私ハ之ヲ重ネテハ申シマセヌ、
  併シ若シ發行サレルナラバ、斯ウ云フ意圖
  ヲ多クノ國民ガ持ツテ居ルト云フコトヲ一
  ツ御承知願ヒタイト思フノデアリマス、其
  ノ一ツハ御承知ノ制限切符デアリマス、ア
  ノ制限切符ノ物ヲ買ビニ行ク爲ニ國民ガ大
  變ナ行列ヲシテ居ル、或ル百貨店ノ如キハ、
  一階カラ八階ノ屋上マデ登ツテ列ンダケレ
  ドモ尙ホ行列ガ餘ツタ、列ンダケレドモ其
  ノ品物ガ買ヘナカツタト云フ話ヲ聞イテ居
  リマス、サウ云フ譯デ、制限切符ノ品物ハ
  暇ノアル者ハ買ヘルガ、暇ノナイ者ハ買へ
  ナイ、又暇ノアル者ハ大阪デモ京都デモ、
  何處マデデモ行ツテ買フ、斯ウ云フ狀態ニ
  ナツテ居ルノデ、或ル地方デハ其ノ土地ノ
  者デナケレバ賣ラナイ、ト云フヤウナコト
  ヲ地方々々デモシテ居ルト云フヤウナコト
  モ伺ツテ居ルノデアリマス、サウ云フ譯デ
  色々問題ガゴザイマスノデ、若シ制限切符
  ノヤウナモノヲ御出シニナル場合ガアルナ
  ラバ、アノ點數ヲ少クシテモ宜イ、二足三
  足ノモノガ一足ニナツテモ構ハナイカラ、
  出シタ限リニ於テハ必ズ切符ノアル者ハ買
  ヘルヤウニシテ戴キタイ、斯ウ云フ希望ヲ
  非常ニ各地デ伺ヒマスノデ、サウ云フ切符
  ヲ出スカ出サヌカハ能ク存ジマセヌガ、若
  シ出スナラバサウ云フコトニシテ戴キタイ、
  是ハ希望意見デアリマスガ、先ヅ之ニ付テ
  伺ヒタイノデアリマス
  尙ホ最近軍需工場ナドヲ廻ツテ能ク伺ヒ
  マスコトハ、澤山ノ徵用エガ出來タ、所ガ
  之ニ着セル蒲團ガナイ、又此ノ頃デハ增產
  ノ爲ニ深夜業ヲシナケレバナラナイ、深夜
  業ヲ致シマスル關係デ、多數ノ職工ガ家ニ
  歸ルコトガ出來ナイデ工場デ休マナケレバ
  ナラナイ、所ガ或ル工場ノ如キハ間ニ合ハ
  ナイデ、寒イ日ニ莚ヲ着テ寢タト云フヤウ
  ナ事實モアルト云フコトヲ工場カラモ伺ツ
  タノデアリマスガ、ソレデハ相成ラナイノ
  デアリマシテ、サウ云フ徴用工ナリ、或ハ
  發展シテ參リマスル所ノ軍需工場、或ハ深
  夜業ナドヲ致シテ居リマスル場合ニ於ケル
  蒲團ノ對策ヲドウスルカ、工場方面デ申シ
  マスルノニハ、今ノ人絹ノ蒲團デアリマス
  ト、徵用工ニ着セマスト三月デ駄目ニナリ、
  ボロ〓〓ニナツテ跡形モナクナツテシマフ、
  ダカラ今ノ蒲團モ有難イガ、貰フナリ直グ
  駄目ニナツテシマフト云フ譯デ、非常ニ困
  ツテ居ル、斯ウ云フ譯デ、此ノ際ニ先ヅ出
  來ルナラバ多ク持ツテ居ル座蒲團ノヤウナ
  モノモ徵發スルト云フヤウナコトデモスレ
  バ、一般ノ方デモ直グ蒲團デハナイカラ、
  寢ルノニハ影響スルヤウナコトハナイト思
  ヒマスカラ、サウ云フコトデシテハドウ
  カト云フヤウナ話モチヨイ〓〓伺フノデア
  リマスガ、サウ云フヤウナ勞働者ニ對シマ
  ス、所所蒲團ノ問題ニ付テノ御意見、ソレ
  カラ資料ヲ戴キマシタモノニ依リマスト、
  桑ノ皮ヲ供出致シマシタ爲ニ還元サレテ、
  十九年度カラ學童ノ服ガ七十萬着戴ケルト
  云フコトニナツテ居ルノデアリマスガ、是
  ハ非常ニ有難イコトダト思ヒマス、私共ハ
  地方ヲ廻ツテ見マスルト、マダ〓〓野生ノ
  苧麻ナドモ放置サレテ居ツテ之ヲ採取シマ
  スナラバ相當ニ採取出來ルノヂヤナイカ、
  斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、國
  民學校ノ生徒ナドヲ應用シテ採リマスナラ
  バ、マダ〓〓採取ガ出來ルト思フノデアリ
  マシテ、サウ云フヤウナモノヲ尙ホ一層御
  集メニナツテ、サウシテ之ヲ農村ノ學童ニ、
  尙ホ進ンデハ農民ノ作業衣ニ振向ケラレル
  ヤウニシテ戴クコトガ出來ルナラバ非常ニ
  幸ヒダト思フ、先ニ勞働者ノ方ヲ申上ゲマ
  シタガ、農民ノ方モ既ニ蒲國ノ皮ヲ剝イデ
  作業衣ニシテ居ル、其ノ蒲團ノ皮ノ剝イダ奴
  ガ破レテ來テ居ル、斯ウ云フ狀態デ非常ニ困
  ツテ居ルト云フ話モ始終聞カサレマスノデ、
  此ノ際桑皮ニ供出ニ依ル還元ヲモウ層
  多クシテ、此ノ農民ノ作業衣方面ニモ還元
  サレル見込ミハドノ程度ニアリマスカドウ
  カ、御分リニナルナラバ其ノ點ヲ御知ラセ
  戴ケバ幸ヒダト思ヒマス、以上三點ニ付テ
  御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=109

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• 110・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　只今衣料ノ問題ニ付
  テ、制限切符ノ點ニ付テ御話ガアツタノデ
  アリマスガ、是ハ現在出シテ居リマス制限
  切符ニ付キマシテモ、制限切符ト致シマシ
  テハ先ヅ誰デモ或ル程度ノモノハ必要ダト
  云フ特ニサウ云フ性格ノ强イモノニ付キマ
  シテ、同ジ百點ノ中デ更ニ制限ヲ致シマシ
  テ或ル所ニ片寄ラナイヤウニト云フノガ
  第一ノ趣旨デアリマス、第二ノ趣旨ト致シ
  マシテハ、出來ルダケ其ノ制限致シマシタ
  範圍ダケハ是非トモ確保スル、斯ウ云フ趣
  旨ガアルノデアリマス、併シナガラ第二ノ
  方ノ趣旨ハ實際上ノ纖維事情ト致シマシテ、
  モノニ依リマシテ必ズシモ實際上其ノ通リ
  ニ行キ兼ネテ居ル現狀デアリマスガ、現在
  出テ居リマス切符ニ付キマシテモ、サウ云
  フ點ハ色々努力シテ居リマスガ、難カシイ
  點モアルト思フノデアリマス、併シナガラ
  例ヘバ縫絲ノ如キニ付キマシテハ特ニ力ヲ
  入レマシテ、其ノ線ニ添ヒマシテ努力ヲ致·
  シテ居ルノデアリマス、假ニ是ガ全體的ニ
  見マシテ制限切符ニ於テ認メテ居リマス數
  量ガ確保サレタトシマシテモ、使フ方カラ
  見マスト、其ノ時其ノ場所ニ於テ丁度其處
  ニソレダケノモノガアルカドウカト云フコ
  トガ是レ亦第二段ノ問題トシテアルノデア
  リマシテ、サウ云フ點デ結局制限切符ノモ
  ノニ付キマシテハ、或ル所、或ル時ニ於テ
  需給ガピツタリ合ハナイト云フコトガアリ
  マシテ、是ハ結局制限切符其ノモノノ問題
  デナク、更ニ別箇ノ詰リ配給ノ方法、物ヲ
  手ニ入レル方法ト云フモノヲヤハリソコニ
  併セテ考ヘテ行カナケレバナラヌ問題デハ
  ナイカト思フノデアリマス、ソコデ是ハ最
  近新シクヤツタ例デハゴザイマスガ、縫絲
  ニ付キマシテハ隣組ヲ通ジマシテ、制限切
  符ヲ持ツテ居リマス人ニ其ノ範圍內ニ於テ
  隣保團體ヲ通ジテ配給致シマシタ、サウ云
  フ方法ヲ執リマスレバ只今御指摘ノヤウナ
  暇ノアル者ノミガ買ヘルト云フヤウナコト
  ヲ除クコトガ出來ルヂヤナイカト思フノデ
  アリマス、若シ今後モサウ云フ風ナ制限切
  符ヲ出スト致シマスレバ、ヤハリ其ノ物ノ
  流シ方ニ付キマシテ御指摘ノヤウナ點ノナ
  イヤウナ裏付ケル方法ヲ併セテ執ツテ行カ
  ナケレバナラヌデハナイカ、斯樣ニ考ヘテ
  居ルノデアリマス、尙ホ最近「ネル」ニ付テモ
  左樣ナ方法ヲヤツタト思フノデアリマス
  ソレカラ徵用工其ノ他一般勞務者ノ寢具
  ノ點デアリマスガ、是モ色々ノ方法ヲ講ジ
  マシテ、出來ルダケサウ云フ點ニ支障ノア
  リマセヌヤウニ、生產力擴充ノ爲メノ必需
  物資ト致シマシテ色々ナ方法ヲ講ジテ居ル
  ノデアリマス、是ハ最近非常ニ急速ニ徵用
  工ガ增加致シテ居リマスノデ、色々之ヲ裏
  付ケル意味ノ生產ニ付キマシテモ配慮致シ
  テ居ルノデアリマス、唯ヤハリ是モ時期及
  ビ場所的ニ巧マク間ニ合ハヌト云フヤウナ場
  合モ出テ來ルノデアリマスガ、之ニ付キマ
  シテハヤハリ二ツノ問題ガアリマシテ、
  ツハ徵用工、勞務者用ノサウ云フ寢具ノ綿
  ノ問題ト、ソレカラソレヲ入レル夜具地ト
  申シマスカ、此ノ二ツノ問題ガアリマスガ、
  綿ノ問題ハヤハリ徵用工ノ急激ナル增大ト
  云フ點カラ見マシテ、又棉花事情等カラ見
  マシテ相當工夫ヲ要シマス、ソコデ御指摘
  ノヤウナ座蒲團ト云フヤウナモノノ囘收
  ト云フヤウナコトモ是ガ補充ヲスル意味ニ
  於キマシテハ、考ヘラレル一ツノ方法デア
  ルト思フノデアリマス、併シナガラサウ云
  フモノノ囘收ト云フコトハ、色々ノ點ニ於
  テ餘程愼重ニ考ヘナケレバナリマセヌ、併
  シナガラ徵用工其ノ他ノ勞務者ノ寢具ノ充
  足ト云フコトニ付キマシテハ、特ニ大事ナ
  コトデアリマスノデ、色々ノ點ヲ考ヘマシ
  テ一層不十分ナコトノナイヤウニ進ミタイ
  ト思ツテ居リマス、尙ホ徵用工自身デモ出來
  レバ成ベク持ツテ來ルト云フ風ナコトモー
  併シナガラ是ハ持ツテ來ル部分ハ大體ニ於
  テ非常ニ少イヤウデアリマス、併シナガラ
  何カ全然新シク、全部ガ全部支給ヲ受ケル
  ト云フ風ニ、非常ニ寢具資材ガ十分デアル
  ト云フ風ナ考ヘ方デアリマスト、ソレハ餘
  程其ノ方面ノ考ヘ方ナリ取扱方ナリヲ出來
  ルダケ修正ト申シマスカ、考へ直シテヤツ
  テ行クト云フ面モ、多少アルノデハナイカ
  ト思ツテ居リマス
  第三ノ桑皮ノ點デアリマスガ、是ハ御指
  摘ノ通リデアリマシテ、昨年ハ約六百萬貫
  ノ桑皮ガ出タノデアリマスガ、是ハ色々ノ
  纖維事情ノ現狀及ビ見透シカラ見マシテモ、
  今年度ハ勞務等色々ノ問題ガアリマスガ、
  大イニ努力シテ桑皮ノ生產ヲ致シマシテ、
  御話ノヤウナ農村學童及ビ作業衣等ニマデ
  相當是ガ役ニ立ツヤウニ致シタイ、ソレニ
  ハヤハリ桑皮生產ノ爲ニモ還元ト云フ點ヲ
  十分考慮致シタイ、斯樣ニ思ツテ居ル次第
  デアリマス

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• 111・杉山元治郎

  ○杉山委員　尙ホ家庭燃料ニ付テ伺ヒタイ
  點モアリマスガ、大分時間モ經チマシタカ
  ラ、今日ハ是デ打切ツテ置キマス

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• 112・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先程杉山委員ノ御尋ネニ
  ナリマシタ作付轉換ニ依ル所ノ食糧生產ノ大
  體ノ見込ト云フコトニ付キマシテ、此ノ際
  申上ゲタイト思ヒマス、是ハ勿論ザツトシ
  タ見込デゴザイマスガ、水稻四萬石、甘藷
  四千四百四十萬貫、大豆七萬二千石、蔬菜
  七百二十六萬貫、麥三十一萬七千二百石、
  大體斯ウ云フモノヲ見込ンデ居リマス

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• 113・深澤吉平

  ○深澤委員長　五十嵐委員

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• 114・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　私ハ纖維ニ關スル問題、特
  ニ蠶絲ノ問題ニ付キマシテ二三御尋ネ致シ
  タイト思ヒマス、先ヅ第一ニ承ツテ置キタ
  イコトハ十九年度ノ繭ノ生產目標ヲ五千
  三百萬貫ト云フ風ニ御決定ニナリマシタガ、
  私ハ恐ラク此ノ五千三百萬貫ノ繭ヲ確保ス
  ルト云フコトハ、極メテ困難ナル事情ニア
  ルト思フノデアリマス、昨年ハ六千三百萬
  貫ノ計畫ニ對シマシテ、先般農商省ノ發表
  ニ依リマスルト、五千四百萬貫、卽チ九百
  萬貫ノ減少デアツタト云フコトデアリマス、
  今ノ養蠶方面ノ諸般ノ事情ヲ綜合致シテ見
  マスルト、恐ラク十九年度ニ於キマシテハ)
  更ニ數百萬貫ノ減少ヲ來シハセヌカト云フ
  コトヲ憂ヘテ居ルノデアリマス、ソコデ問
  題ハ五千三百萬貫ト云フ數量ガ多イトカ少
  ナイトカ云フコトデナシニ、五千三百萬貫
  ト云フ生產目標ハ、一體何處マデモ確保シ
  ナケレバナラヌ數字デアルカドウカト云フ
  點デアリマス、各主要纖維ノ事情カラ考へ
  マシテ、今此ノ五千三百萬貫ト云フモノヲ、
  本當ニ確保致サナケレバナラヌ、若シ十九
  年度ニ於テ更ニ數百萬貫モ減少スルト云フ
  コトガアルナラバ、軍需竝ニ生產擴充用ノ
  衣料、或ハ國民生活ノ上ニ於テ絕對ニ缺ク
  コトノ出來ナイ衣料方面ニマデモ、容易ナラ
  ヌ事態ガ起ツテ來ルト云フヤウナコトデア
  ルナラバ、是ハモウ何ヲ措イテモ確保致サ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、併シ
  此ノ目標ヲ立テマシテ、一應此ノ目標ハ立
  テタガ、出來得レバ何トシテモ此ノ目標ニ
  到達シタイケレドモ、他ノ纖維ノ事情デ苦
  シイナガラモ、他纖維ノ調整デ何トカ賄ツ
  テ行ケルト云フ御見込デアルトスルナラバ、
  是ハ今後ノ蠶絲政策ノ上ニ於キマシテ、色
  色變ツタ點ガ起ルト思フノデアリマス、先
  ヅ此ノ點ヲ一ツ承リタイト思ヒマス

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• 115・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　只今ノ點ハ色々ノ事
  情、事情ト申シマスノハ纖維ニ對スル各方
  面ノ需要ノ面カラ致シマシテノ事情ヲ考ヘ
  マシタ結果、ドウシテモ最小限度五千三百
  萬貫ヲ、絹纖維ノ方カラ生ミ出サナケレバ
  ナラナイ、併シナガラ生產ノ方ノ角度カラ
  見マシテ、勞務ナリ資材ナリ桑園事情等カ
  ラ見マシテ、色々困難ナ事情ガアリマスガ、
  需要ノ面カラ見テドウシテモ最小限目標ト
  云フコトデ、一應ノ目標ト云フ線デナク、
  アレヲ切ツテハ困ルト云フ意味ノ五千三百
  萬貫、斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 116・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　大體私モ他ノ主要纖維ノ實
  情等カラ考ヘマシテ、サウ云フ風ニ考ヘテ
  居ツタノデアリマス、若シサウ云フ風ナ方
  向デ進ムト云フコトデアリマスルナラバ
  此ノ際何等カ思ヒ切ツタ手ヲ打タナケレバ、
  迚モ此ノ五千三百萬貫ヲ確保スルコトハ困
  難デアル、斯ウ考ヘルノデアリマス、此ノ
  狀態デ行ツタノデハ恐ラク非常ニ難カシ
  イ、大幅ナ減產ヲ來スデアラウト云フコト
  ヲ心配致シテ居ルノデアリマス、ソコデ產
  繭確保ノ施策ニ付キマシテ二三御尋ネヲ致
  シタイト思フノデアリマス
  其ノ第一點ハ繭ノ價格ノ問題デアリマス、
  現下ノ主要農產物價格ニ比較ヲ致シマシテ、
  繭價ガ低位ニ置カレテ居ルト云フコトハ、
  異論ハナイト思フノデアリマス、ソコデ何
  等カ之ヲ改訂ヲスル御意思ガアルカドウカ
  ト云フ點デアリマス、是ハ昨年ノ春政府ニ
  於キマシテハ、繭ノ必要性或ハ諸般ノ情勢
  ニ依リマシテ、可ナリ大幅ノ値上ヲ致シタ
  ノデアリマスガ、其ノ後ニ於キマシテ米麥
  等ノ値上ガアリ、旁〓經濟界ノ色々ナ事情ニ
  依リマシテ、今日ノ繭ノ値段ハ他ノ重要農
  產物ニ比較ヲ致シマシテ、全ク低位ニアル
  ト考ヘルノデアリマス、ソコデ私ハ實ハ斯
  ウ考ヘルノデアリマスルガ、繭ヲ本當ニ確
  保スル上ニ於キマシテハ、先ヅ第一番ニ繭
  纖維ノ國家性ト云フコトヲ養蠶農民ニ本當
  ニ徹底サセル、更ニ進ンデハ決戰下繭ガ戰
  爭遂行上絕對ニナケレバナラヌモノデアル
  ト云フ點ヲ十分ニ認識ヲサセル、卽チ纖維
  報國ノ精神ヲ〓揚サセルト云フコトデアリマ
  ス、所謂此ノ精神方面ノ面モ積極的ニ推進
  シテ行クト同時ニ、養蠶意欲ト云フモノヲ
  高メナケレバ、何ト言ツテモ繭ノ增產ハ見
  込ハナイ、斯ウ考ヘルノデアリマス、ソコ
  デ養蠶意欲ヲ高メルト云フコトハドウ云フ
  コトカト言ヒマスト、是ハ煎ジ詰メレバ經
  濟問題ニ最モ大キナ關係ヲ持ツテ參ルノデ
  アリマス、卽チ繭價ノ問題デアリマス、併
  シ私ハ繭ノ値段ヲ上ゲタガ爲ニ、直チニ產
  繭確保ガ出來ルト云フヤウナコトハ考ヘテ
  ハ居リマセヌ、ケレドモ兎モ角モ繭價ト云
  フモノガ確カニ養蠶意欲ヲ左右スル重點デ
  アルト云フコトダケハ、是ハ論ヲ俟タヌト
  思フデアリマス、ソコデ低物價政策ノ關係
  ヤラ色々ナ關係ガアラウト思ヒマスルガ、
  併シ本當ニ何トカシヨウト云フ御考ヘデア
  ルナラバ、他ノ重要農產物或ハ他ノ重要產
  業ニ於ケルガ如ク生產奬勵金ヲ出ストカ、
  或ハ補助金ヲ出ストカ云フヤウナ手ハアル
  ト思フノデアリマス、何レニシテモ非常ノ
  際ニ於キマシテハ、何トカ非常ノ手段ヲ講
  ジナケレバ、到底是ハ豫期ノ成果ヲ收メル
  コトハ出來ヌト斯ウ思フノデアリマスガ、
  此ノ點ニ對シマシテドウ御考ヘニナツテ居
  リマスルカ、實ハ昨日繭價ノ問題ニ付キマ
  シテハ山田委員カラ質問ガアリマシテ、之
  ニ對シテ御答辯ガアツタヤウデアリマス、
  ソレニ依リマスト、兎ニ角何等カノ形ニ於
  テ考慮シテ見タイト云フ御話ノヤウニ承ル
  ノデアリマスガ、モウ少シ打割ツテ此ノ點
  ヲ御話願ヒタイト思ヒマス

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• 117・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　五千三百萬貫ヲ是非
  確保ヲ致シタイ、是ガ爲ニハ御指摘ノヤウ
  ニ先ヅ養蠶精神ノ〓揚ト云フコトガ何ヨリ
  モ大事デアリマシテ、之ニハ御話ノヤウニ
  色々ノ手ガアル譯デアリマスガ、其ノ一ツ
  トシテ價格ノ問題ガアル譯デアリマス、ソ
  コデ此ノ價格ニ付キマシテハ昨年引上ガア
  リマシタ、其ノ後他ノ方面ノ農產物ニ付テ
  ノ引上ガアリ、又其ノ他色々ノ事情カラ見
  マシテ、現在ノ値段ガソレデ宜イカドウカ、
  殊ニ是ダケノ生產ヲ確保スルト云フ立場カ
  ラ見マシテ宜イカドウカト云フ問題ハ、確
  カニ一ツノ問題デアルト思フノデアリマス、
  ソコデ昨日モ次官カラ答ヘマシタ通リ、サ
  ウ云フ色々ノ事情ヲ篤ト調査致シ、十分考
  慮ヲ致シタイト思フノデアリマス、唯併シ
  ナガラ此ノ價格ノ問題ハ單ニ此ノノ面ダケデ
  ドウト云フ譯ニ行キマセヌノデ、他ノ色々
  ナ一般的ノ方トノ振合、其ノ他ノ問題ト睨
  ミ合セマシテ愼重ニ決定スベキ事項デアリ
  マスルノデ、サウ云フ意味ニ於キマシテ十
  分考慮ヲ致シテ行キタイ、斯樣ニ考ヘマス

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• 118・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　價格ノ問題ニ付キマシテハ
  玆ニ配付サレタ資料ノ中ニ、昭和十七年繭
  生產費ト云フノガアリマスガ、之ニ依リマ
  スト一貫匁當リ繭ノ生產費ハ十圓二十九錢
  七厘ト云フコトニナツテ居ルヤウデアリマ
  ス、大體昭和十八年度アタリノ全國ノ春、
  秋晩秋三期ヲ通ジマシタ繭ノ賣上平均價
  格ト云フモノハ、凡ソ約十圓見當デアラウ
  ト思フノデアリマス、サウシテ見マスルト、
  繭ノ賣上價格ト生產費ト云フモノガドウニ
  カ釣合フヤウニ一應ハ見エルノデアリマス
  ガ、玆ニ御示シニナツタ生產費ト云フモノ
  ハ、所謂公稱生產費トモ稱スベキモノデア
  リマシテ、實際ノ繭ノ生產ニ當リマシテハ、
  到底此ノ公稱生產費ノ枠ニ嵌マラナイト云
  フ現實ノ場面ガ幾ラモアルト思フノデアリ
  マス、恐ラク其ノ最モ甚ダシイノハ勞務賃
  金デ、勞務賃金ハドウ云フヤウナ基礎デ計
  算サレテアルカ知レマセヌガ、實際問題ト
  シテハ到底之ニハ當嵌マラヌト思フノデア
  リマス、尙ホ假ニドウニカ是ガ生產費ヲ償
  フコトガ出來ルト致シマシテモ、今日ノ養
  蠶家ト致シマシテハ、豐凶常ナラヌ所ノ非
  常ニ危險ナル事業デアルト同時ニ、此ノ收
  益ニ依リマシテ貯蓄モシナケレバナラヌ、
  或ハ債劵モ買ハナケレバナラヌト云フヤウ
  ナ實情ニナツテ居リマスルノデ、今日私共
  ノ耳ニ入ル所ヲ以テ致シマスルト、養蠶農
  民ノ殆ド多クノ人々ハ、先ヅ繭モ百掛ヲ割
  ルヤウデハ迚モ何トモ致シ方ガナイト云フ
  ヤウナコトヲ考ヘテ居ル人モ相當多イヤウ
  デアリマス、是ハ餘リ無茶ナ考ヘ方デモナ
  カラウト思フノデアリマス、兎ニ角此ノ點
  ニ付キマシテハ十分一ツ御考慮ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス
  次ニ第二點ハ勞務ノ問題デアリマス、養
  蠶家、蠶絲業關係者ヲ戰時農業要員トシテ
  指定ヲナサル御考ヘガアルカドウカト云フ
  點デアリマス、申スマデモナク農村ノ中ニ
  モ、食糧ノ生產ト云フコトヨリモ、寧ロ養
  蠶ヲ營農ノ中心トシテ居ルヤウナ地帶ガ、
  是ハ場所ニ依ツテハ勿論アル譯デアリマス、
  ソコデ產繭確保上、是等ノ養蠶農民モヤハリ
  戰時農業要員トシテ指定ヲナサレルコトガ
  必要デアラウト思ヒマスルガ、此ノ點ニ對
  シマシテドウ云フ風ニ御考ヘニナツテ居ル
  カ之ヲ伺ヒタイノデアリマス
  ソレカラ其ノ次ニハ同ジ事柄ノ問題デア
  リマスガ、養蠶ノ指導員關係デゴザイマス、
  國ノ補助ニ依リ、或ハ統制會社ノ助成金ニ依
  リマシテ現在設置ヲ致シテ居ル所ノ養蠶指導員
  デアリマスガ、是ハ私ノ知ル實例ニ依リマスト斯
  ウ云フノガアルノデアリマス、或ル養蠶主
  要縣ノ、而モ養蠶主要郡ノ一例ヲ申シマス
  ルト、郡ノ養蠶業組合ノ町村駐在ノ主任技
  術者デアリマス、此ノ町村主任技術者ノ六
  割マデガ昨年ノ十一、十二ノ兩月ニ掛ケマ
  シテ一度ニ徴用ガ來タト云フ事實ガアルノ
  デアリマス、殆ド其ノ六割ト云フヤウナ徵
  用ガ來マスルト、指導陣營ハ全ク潰滅ニ瀕
  スルヤウナ狀態ニナルノミナラズ、指導者
  モ非常ナ不安動搖ヲ來タシマシテ、是ハ非常
  ニ困ツタ問題デアリマス、御案內ノ通リ技
  術者ト云フモノハ簡單ニ後任者ヲ見付ケル
  ト云フコトハ出來ナイ、簡單ニ補充ハ付カ
  ヌト云フコトヲ考ヘマスト、是等ハ相當養
  蠶意欲ノ上ニモ影響ガアリマセウシ、兎モ
  角モ是ハ相當重要ナ事柄デアリマシテ、是
  等ノ養蠶技術者方面ニ對シマシテモ、之ヲ戰
  時農業要員トドウ結ビ付ケテ御考ヘニナツ
  テ居ルカ、此ノ點ヲ一ツ伺ヒタイノデアリ
  マス

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• 119・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　勞務ノ關係、勞力ノ關
  係デアリマスガ、是ハ產繭確保ノ爲ノ一ツノ
  鈴
  生產條件トシマシテハ、此ノ儘=放置致シ
  マスレバ御指摘ノヤウニ良イ傾向ハ決シテ
  ナイ譯デアリマス、ソコデ農業要員トノ關係ヲ
  ドウ云フ風ニ見ルカ、是ハ只今申上ゲマシタヤ
  ウナ產繭ヲ是非確保スル、斯ウ云フ風ナ見地カ
  ラ見マシテノ勞力問題トシマシテ、今度ノ農業要
  員ト云フモノノ考ヘ方ト結ビ付ケル場合ニ於キ
  マシテ、出來ルダケサウ云ツタ產繭確保ニ必
  要ナル趣旨ニ於テ考ヘルコトガ出來レバト
  ト思ヒマシテ、目下部內ニ於テ色々サウ云フ
  趣旨ニ於キマシテ〓究ヲシテ居ル次第デア
  リマス、唯ソレニ致シマシテモ、勞務問題ハ
  ソレデ完全ニ解決出來ルト云フコトデハナ
  イト思ヒマスルノデ、ヤハリ養蠶方法ナリ
  其ノ他凡ユル角度カラ勞務不足ニ對處シテ
  ノ方策ヲ併セテ講ジナケレバナラヌノデハ
  ナイカ、斯ウ云フ風ナコトモ考ヘテ居リマ
  ス、ソレカラ指導員ノ問題デアリマスガ、
  是モ同樣デアリマスガ、是モ同樣ナ意味ニ
  於キマシテ考ヘナケレバナラヌノデアリマ
  スガ、一面徴用ト云フ問題ハ事柄ノ性質上
  是レ又極メテ重要ナ事柄デアリマスノデ、
  此ノ點ニ付キマシテモ產繭確保ノ見地カラ
  出來ルダケノ善處ヲ致シタイト、斯樣ニ考
  ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=119

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• 120・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　次ハ桑園面積確保ニ關スル
  問題デアリマス、桑園ハ年每ニ減反致シテ
  參リマス、是ハ〓糧ノ關係ト睨ミ合セマシ
  テ已ムヲ得ナイト思ヒマスガ、〓糧關係デ
  是ダケノ面積ヲドウシテモ轉換シナケレバ
  ナラヌト云フコトデアレバ、ドシ〓〓轉換ス
  ル、唯是ダケハ桑園面積トシテ確保シテ行
  クト云フ此ノ殘ツタモノニ對スル何等カノ
  方策ヲ執ラナケレバ、此ノ儘放任シテ置ケ
  バドシ〓〓桑園ハ減ツテ來ルヤウニ思ヒマ
  ス、況ンヤ蠶絲ヲ物動計畫ノ中ニ入レテ計
  畫生產ヲシ、計畫的ニ高度配給ヲシヨウト
  云フコトニナレバ、ヤハリ計畫ト大キナ喰
  違ヒガ出テハ政府トシテモ御困リデアラウ
  ト思ヒマス、ソコデ其ノ方策トシテ桑園ノ
  登錄制ト云フヤウナコトヲ實施ナサル御考
  ヘガアルカドウカ、是ハ極メテ大切ナコト
  デアルト思ヒマスガ、政府委員ノ此ノ點ニ
  對スル御考ヘヲ承リマス

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• 121・山口喬

  ○山口(喬)政府委員　登錄制ノ問題デアリ
  マスガ、是ハ假ニ登錄制ヲスルト致シマシテ
  モ實態調査ト申シマスカ、一々精細ナ調査ガ
  行ハレマシテ臺帳ヲ作ル、斯ウ云フコトニ
  關聯シテ勞力其ノ他中々容易デハナイノデ
  アリマシテ、今日ノ時局下勞力關係等モア
  リマシテ、假ニ之ヲヤルトシテモサウ云フ點
  デ中々容易デナイト思ヒマスノデ、只今ノ
  所登錄制ヲヤルト云フコトハ考ヘテ居ラナ
  イノデアリマス、唯桑園ノ確保ト云フコト
  ハ御話ノ通リ我々モ何トカ方法ヲ講ジナケ
  レバ段々減ツテ參リマスノデ、是ガ養蠶農
  家ニ與ヘル心理作用ノ點モアリ、現實ニ
  ツノ生產條件ニ於ケル惡傾向デアリマスカ
  ラ、之ヲ確保スルコトニ付テ登錄制デナク、
  適當ナ方法ハナイカト折角苦心ヲ致シテ居
  ルノデアリマス、例ヘバ作付統制令ノ改正
  等是モ一ツノ方法カト思ビマシテ、色々
  部內ニ於テ打合セヲ致シテ居ルノデアリマ
  ス

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• 122・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　是ハ別段登錄制ト云フコニ
  限ツタ譯デハナク、要スルニ一定計畫面積
  ノ確保サヘ出來レバ宜シイト思ヒマス、ア
  トハ次官ガ見エマシテカラ質問致シマス

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• 123・加藤知正

  ○加藤(知)委員　山崎農商相ガ〓糧ニ不安
  ナシト仰シヤツタ其ノコトニ付キマシテノ
  資料ノ要求デアリマスガ、一體其ノ不安ナ
  シト云フコトハ內地ニ出來ル米ノ數量、ソ
  レハ十八年度ノ數量ニ基準ヲ置イテノコト
  デアルカドウカ、ソレカラ外米ハ更ニ入ラ
  ヌモノトシテノ計算ノヤウニ伺ツテ居リマ
  スガ、朝鮮臺灣カラドノ位入ツテ來ルカト
  云フ數字、又米ノ外ノ雜穀ハ一體ドノ位見
  積ツテ居ルノカ、更ニ雜穀以外ノ補助食糧
  ト云フヤウナモノハドウ云フモノヲ其ノ中
  ヘ入レテ居ラレルノカ、サウ云フヤウナ數
  字ヲ一ツ詳細ニ伺ヒタイ、ソレカラ又一體
  一人當リドウ云フ風ニ見積ラレテノコトデ
  アルカ、例ヘバオ米ノ如キハ老幼男女悉ク
  ヲ平均シテ一箇年一石一斗前後ト云フコト
  ハ承ツテ居リマスガ、ソレハドウ云フ風ニ
  見積ラレテ居ルカ、ソレニ關スル數字ヲ伺
  ヒタイト思ヒマス

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• 124・湯河元威

  ○湯河政府委員　只今加藤委員ヨリノ御話
  デアリマスガ、實ハ食糧ノ需給事情ニ關シ
  マシテ數字ヲ以テ說明セヨト云フ御話ハ
  色々ノ機會ニゴザイマシタガ、實ハ我々今
  色々ト計算ヲヤツテ居リマスガ、一寸御說
  明致シ兼ネルヤウナ事情ガゴザイマス、
  例ヲ申シマスレバ、昨年穫レマシタ米ノ數
  量ノ如キモ豫想數量シカ分ツテ居リマセヌ、
  又臺灣朝鮮等ヨリ移入スル數量ニ付テモ外
  地ノ當局トマダ折衝中デアリマシテ、數字
  ヲ以テ御說明申上ゲルマデニ至ツテ居リマ
  セヌ、麥其ノ他ノ雜穀類ニ付テモ自給計畫
  ニ於キマスル數字ハ申上ゲラレナイノデア
  リマス、農商大臣ガ〓糧ニ於テ不安ガナイ
  ト云フコトヲ御說明致シテ居リマシタノハ、
  本米穀年度ノ需給事情ヲ達觀致シテ、昨年秋
  穫レマシタ米ガ豫想高ニ於キマシテ約六千
  二百五十五萬六千石デアリマシテ、外地米
  等ニ於テモ豫想ガ分ツテ居リマス、是等ノ
  適切ナル管理ニ依ツテ外米ヲ入レナイデモ
  自給計畫ガ立ツ、斯ウ申上ゲテ居ルノデア
  リマス、併シ之ニ付キマシテハ大臣カラモ
  サウ御話ガアツタト存ジマスガ、中々樂ナ
  コトデハゴザイマセヌノデ、生產者方面ニ
  於キマシテモ供出ナリ今後ノ增產ナリニ十
  分ナ努力ヲシテ貰フ、尙ホ消費者方面ニ於
  キマシテモ、消費規正デ辛抱ヲシテ戴クト
  云フコトデナケレバナラヌ、斯ウ思ツテ居リ
  マス、尙ホソレデハドレダケノ數量ノ需要
  ガアツテ、一人當リ幾ラト見テ食糧ガ足リ
  テ居ルト、新ウ見テ居ルカト云フ御話デゴ
  ザイマスガ、之ニ付キマシテハ大體申上ゲ
  ラレルノデゴザイマシテ、今日消費規正ノ
  基準ト云フモノガ御承知ノヤウニ一人當リ
  幾ラト大體決マツテ居リマス、是ハ各地方
  地方ニ依ツテ色々實情ヲ加味シテ違ツテ居
  リマスガ、其ノ配給量ヲ賄フダケノモノハ
  縣トノ間ニ於テ色々計畫ヲ立テヽ居ルノデ
  アリマス、先程申上ゲマシタヤウナ供給ヲ達
  觀的ニ見比ベマシテ、細心ノ注意ヲ拂ツテ
  行ケバ宜イ、斯ウ思ツテ居ル次第デゴザイ
  マス、數字ヲ資料トシテ御要求ガゴザイマ
  シタガ、ソレヲ御覽ニ入レルコトガ出來マ
  セヌノデ殘念デゴザイマスガ、是ダケノコ
  トヲ申上ゲテ置キマス

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• 125・加藤知正

  ○加藤(知)委員　只今長官カラ昨年ノ米ノ
  生產額ヲ基本トシテ、十九年度ヲ達觀シタ
  云々ト云フ御話ガアリマシタ、是ハ實ハ頗
  ル危險ナ達觀ダト思フノデアリマス、ト云
  フノハ、氣候關係カラ考ヘマシテモ、肥料
  關係カラ考ヘマシテモ、勞力關係カラ考ヘ
  マシテモ、價格ノ上カラ考ヘマシテモ、現
  在ノヤウナ狀態デハ、私ハ昨年ノヤウナ米
  ノ生產額ヲ上ゲルト云フコトハ全ク不可能
  ニ終リハセヌカト云フコトヲ心配スルノデ
  アリマス、デアリマスカラ、此ノ場合ニ於
  テ本當ニ其ノ目的ヲ達シヨウト云フコトデ
  アレバ先刻五十嵐委員カラ御話ニナリマ
  シタ如ク色々ナ條件モアリマスガ、取敢ヘ
  ズ米價ヲ上ゲルコトガ最モ必要ダト思ヒマ
  ス、ソレニ付テ繭ノ生產額モ同ジコトデア
  リマシテ、繭ヲ本當ニ確保シヨウト云フニ
  ハ、之ヲ百掛位ニ上ゲナクテハ當ラヌト思
  ヒマス、デアリマスカラ、繭ノ上ニ付テハ
  今纖維局長カラ考慮シヨウ、斯ウ云フ風ニ
  實ハ伺ツタノデスガ、米ノ方モ、一石百圓
  位ニシテモ、他ノ物價ト比ベマシテ高イコ
  トハナイ、繭百掛ケ、米一石百圓、斯ウ云
  フコトデ一ツ大奮發ヲヤラレヌト云フト、
  中々昨年ノヤウナ生產額ヲ確保スルコトハ、
  事實上困難カト思ヒマスガ、尙ホソレ
  ニ付テ今長官ノ御考ヘハドウ云フ風ニナツ
  テ居ルカ、此ノ場合伺ツテ置キタイト思フ
  ノデゴザイマス

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• 126・湯河元威

  ○湯河政府委員　先程申上ゲマシタコトハ、
  昭和十九米穀年度ノ〓糧需給關係ニ於テ我
  我ハ見透シヲ持ツテ居ル、ソレハ昨年ノ秋
  穫レタ米ヲ消費シテ行ク一年間デゴザイマ
  スカラ、大丈夫ト云フコトヲ申上ゲタノデ
  ゴザイマス、今年ノ秋、ソレコソ天候其ノ
  他ノ事情ガマダ豫測ガ付キマセヌ、植付モ
  シテナイ米ガ大丈夫穫レルト云フコトヲ申
  上ゲタノデハゴザイマセヌ、併シ只今御話
  ノ點ニ付テ簡單ニ申上ゲテ置キマスト、米
  ノ增產ニ付キマシテハ生產當局デ數々ノ手
  ヲ打ツテ居ラレマス、農民ノ生產ノ熱意ト
  共ニ、相當ノ結果ガ出ルダラウト思ツテ居
  ルノデアリマスガ、米價ノ點ニ付キマシテ
  ハ、昨年現行米價ヲ決定致シマシタ際ニ、
  相當思ヒ切ツタ値上ヲ致シタ積リデゴザイ
  マシテ、其ノ節申上ゲマシタヤウニ、餘程
  特殊ノ事情ナキ限リ現行米價ハ之ヲ持續シ
  テ行キタイ、斯ウ考ヘテ居ルノデゴザイマ
  ス、御話ノコトガゴザイマシタカラ、我々
  ノ只今考ヘテ居リマスコトヲ申上ゲテ置キ
  マス

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• 127・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　次ニ次官ニ御尋ネシタイノ
  デアリマスガ、蠶絲類生產割當ニ關スル問
  題デアリマス、其ノ第一點ハ生絲、繭短
  纖維及ビ蠶種ノ生產割當ニ關シマシテ、從
  來ノ實績主義割當ニ譯スルノニ、其ノ成績
  或ハ能率、或ハ地方ノ需給事情ト云フヤウ
  ナモノヲ加味シタ所謂實情ニ卽シタ割當ヲ
  ナスト云フコトガ、蠶絲業維持育成ノ爲ニ
  洵ニ望マシイ割當ノ方法デアラウト考ヘル
  〓デアリマスガ、之ニ對シマシテ如何ナル
  御所見ヲ持ツテ居ラレルカ、ソレヲ承リタ
  イノデアリマス、實績第一主義ノ割當ト云
  フコトハ、是ハモウ一應當然尤モナ話デア
  リマスケレドモ、唯是ノミニ依リマシタ場
  合ニ於キマシテハ、實際問題トシテ各種ノ
  面白カラヌ問題ヲ惹起スルヤウナ場合ガ往
  往アラウト思フノデアリマス、隨ヒマシテ
  今後ノ割當ニ關シマシテハ、先ヅ能率、地
  方ノ需給ノ情勢或ハ成績ト云フコトヲ是非
  加味シテ割當ヲシテ戴キタイト云フ希望ヲ
  持ツテ居ルモノデアリマス、實ハ是ハマア
  何處マデガ本當ダカ分リマセヌガ、或ル方
  面ノ話ニ依リマスト、十八年度ニ某會社ヘ
  割當テマシタ繭ガ操絲シ切レナイデ、恐ラ
  ク此ノ端境期ニ於テ數百萬貫ノ繭ヲ持越サ
  ネバナラヌト云フ實情ニアルヤウナ噂モ聞
  イテ居ルノデアリマス、若シ斯ウ云フヤウ
  ナ噂ニシテ本當デアルトスルナラバ、是 /
  蠶絲業上頗ル遺憾ナ事柄デアルノミナラズ
  大キナ殘繭ヲ持ツテ居ルト云フヤウナ所ハ
  -一方ニ於テハ養蠶農民ニ對シテ繭ハド
  ウシテモ要ルノダ、纖維モ國家ノ爲ニ重要
  ナモノデアル、繭モ兵器ダト云フコトデ增
  產ノ意欲ヲ〓揚セシムルニ對シマシテ、殘
  繭ヲ倉庫ニ積ンデ置クト云フヤウナ事態ヲ
  招來スルコトガアリマスト、養蠶意欲ヲ相
  當抑ヘル、其ノ方面ニモ面白カラヌ影響ヲ
  及ボスト思フノデアリマス、是等ニ對シマ
  シテドウ云フ風ニ御考ヘデアリマスカ、此
  ノ點ヲ御伺ヒ致シタイノデアリマス

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• 128・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　生絲、繭短纖維或ハ蠶
  種ノ生產割當ノコトニ付キマシテハ、是ハ
  大體豫テノ方針通リニ進メテ行クベキモノ
  ダト考ヘテ居リマス、或ル一時ノ狀況ニ依
  リ或ハ一部ノ地方ニ於キマシテ、多少ノソ
  コニ凹凸ガアリマシテモ、是ハ所謂單ナル
  實績主義ト云フ譯デハアリマセヌケレドモ
  兎ニモ角ニモ業界ノ安定ヲ圖リ、サウシテ
  全般ト致シマシテ、此ノ發展ヲ圖ルト云フ
  上ニ於キマシテハ、濫リノ方針ヲ二、三二
  スベキデハナイノデアリマシテ、豫テ執ラ
  レテ居リマス所ノ方針ヲ此ノ際進メテ行ク
  ベキモノダト考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 129・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　今後ノ御方針ニ付テ、大體
  ハツキリ致シマシタガ、割當ニ付キマシテ
  モウ一點伺ヒタイノデアリマス、ソレハ日
  本蠶絲製造株式會社ヘノ生產ノ割當ト會社
  以外ノ業者ヘノ割當ニ於テ、公正ヲ-公
  正ト云フ言葉ガ當ルカドウカ分リマセヌガ
  所謂公平ヲ失スルノ感ガアルノデアリマス
  ルガ、之ニ對シテ如何ナル御考ヘヲ御持チ
  トナツテ居ルカ、ノ此點ヲ一ツ承リタイノ
  デアリマス、昨年ノ春蠶絲業機構改善ノ問
  題ガ起リマシタ當時ニ、時ノ井野農林大臣
  ノ聲明ニ依リマスト-、是ハ此ノ議會ニ
  於テモ此ノ聲明ヲハツキリ致サレタノデア
  リマスルガ、蠶絲類ノ割當ニ關シマシテハ
  今後短纖維ニ關スル限リニ於テハ、會社以
  外ノモノハ增加シタ分ハ全然割當ヲ致サイ
  イ、卽チ短纖維ニ於テハ增加分ハ全部新會
  社ヘ割當ヲ致ス、併シ其ノ代リ會社ニ入ラ
  ナイ業者ニ對シマシテハ、長纖維ニ於テ之
  ヲ補ツテヤル方針デアル、隨テ言換ヘレバ
  繭ノ減產ニ依ル以外ハ會社ヘ入ラナイモノ
  ニ對シテモ何等ノ影響ハ及ボサヌ方針デア
  ルト云フコトヲハツキリ聲明致サレテ居ツ
  タノデアリマス、然ルニ實際ノ割當ニナツ
  テ見マシタ所ガ、短纖維ニ於キマシテ、十
  七年度ノ短纖維ノ製造計畫二百二十五萬貫
  ニ對シマシテ、十八年度ハ三百六十二萬五
  千貫ト云フ風ニ非常ニ殖エタノデアリマス
  卽チ此ノ增加致シマシタル比率ハ、十七年
  度ニ比較致シマシテ十八年度ハ實ニ一六一
  〇一ト云フ數字ニ上ツテ居ル譯デアリマス
  此ノ增加致シマシタ六一ト云フ短纖維ノ增
  加分ハ、是ハ全部新會社へ割當ヲ致サレタ
  モノデアリマシテ、會社以外ニハ全然此ノ
  增加ノ割當ハナカツタノデアリマス、是ハ
  何ト申シマセウカ、聲明通リ實行サレタコ
  トデアリマシテ、蓋シ當然ナ措置デアラウ
  ト思フノデアリマス、所ガ長纖維ヲ見マス
  ルド、十七年度ニ於テハ五十一萬俵ノ計畫
  デアリ、十八年度ニ於キマシテハ是ガ三
  十萬五千俵ニ減少致シタノデアリマス、卽チ
  四〇%ト云フ減少ヲ見ルニ至ツタノデアリ
  マス、ソコデ此ノ四〇%ト云フモノヲドウ割
  當テタカト申シマスルト、會社以外ノモノ
  ニモ同率ニ此ノ四〇%減ト云フ數字デ、卽チ
  六〇%ヲ割當テタノデアリマス、是ハ當時ノ
  聲明ト全ク一致ヲ致サナイ事柄デアリマシ
  テ、當然此ノ長纖維ニ於キマシテハ、繭ノ
  減產率デアル所ノ、十七年度ノ七千三百萬
  貫ニ對スル十八年度ノ六千三百萬貫、卽テ
  一三·七%ノ減少ノ八六·三%ノ割當ハ當然
  是ハ然ルベキダト考ヘルノデアリマス
  然ルノニ八六·三%ノ割當ヲ致サナイデ、僅
  ニ六〇%ノ割當ヲ致シタト云フコトハ、是ハ
  短纖維ノ增加シタ分ハ全部新會社ヘ增加ノ
  割當ヲスル、長纖維ノ方ハ新會社モ然ラザ
  ルモノモ全部減ラシテ同率ニ割當ヲスル、
  斯ウ云フコトヲ實際ニ於テヤツタト思フノ
  デアリマスルガ、是ハドウモ公平ヲ缺イテ
  居ルト同時ニ、豫ネテノ聲明ト大分話ガ行
  違ヒヲ來シテ居ルノデアリマスガ、是等ニ
  關シマシテドウ御考ヘニナツテ居リマスカ
  此ノ點ヲ一ツ承リタイト思ヒマス

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• 130・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　細カイ實情ハ能ク存ジマ
  セヌガ、御話ヲ承ツテ、若シ今御話ノ通リ
  ノ實情デアルト致シマスレバ、是ハ相當ナ
  ル是正ヲシナケレバナラヌト思ツテ居リマ
  ス

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• 131・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　只今ノ御答辯ニ依リマシテ、
  若シ是ガ實際ノ數字デアルト云フコトデア
  レイン何トカ一ツ變ヘテ行カナケレバナラ
  ヌト云フ御話デゴザイマシタガ、大體私ノ
  知ル範圍ニ於テハ、是ガ實際ノ割當數字ト
  ナツテ居ルノデアリマス、ソコデ只今ノ御
  答辯ニ依リマシテ、次官ノ御考ヘハ了承致
  シマシタガ、一體斯ウ云ツタヤウナ割當、
  前ノ前段ノ質問ニ於テ御答ヘガアリマシタ
  ガ、ソレニ依ルト、ヤハリ最初決メタ方針
  ハズツト續ケテ行クンダト云フ御話デゴザ
  イマシタガ、サウ云フ御氣持カラ考ヘマス
  下、此ノ次ノ割當ノ問題モ、當然昨年ノア
  ノ大臣ノ聲明通リ、或ハ農林省內ニ於テ設
  置ヲ致サレマシタル機構改善ノ委員會等ニ
  於テ、此ノ問題ガ屢〓〓、繰返サレテ論及ヲ致サ
  レタノデアリマスガ、ヤハリ是ハ會社デア
  ラウガ、會社デアルマイガ、繭ノ減產以外
  ハ濫リニ率ヲ變ヘヌト云フ御方針デ行クモ
  ノト、斯樣ニ承知ヲシテ宜シウゴザイマセ
  ウカ

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• 132・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　大體今ノ御話ノ通リニ致
  シタイト私ハ思ヒマス、唯例ヘバ、ソコデ
  マルデ事業ヲ止メタ人ガアルトカ、或ハ又
  極端ニ設備ヲ減シタトカ云フヤウナ場合ニ
  付キマシテハ、是ハ又ソレ相當ナル處置ヲ
  執ラナケレバナラヌト思ヒマスガ、大體ニ
  於キマシテ今ノ御話ノ通リデアルベキダト
  私ハ思ヒマス

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• 133・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　次ニ機構ノ問題ニ付テ、御
  尋ネヲ致シタイト思ヒマス、最近蠶絲業關
  係者ノ一ツノ話題トナツテ居リマスル事柄
  ニ、日本蠶絲統制株式會社ト日本蠶絲製造
  株式會社ガ合併ヲスルト云フ話ガ間々アル
  ノデアリマス、而モ一部ニ於キマシテハ此
  ノ兩會社ノ合併問題ニ關シマシテ其ノ可否
  ノ議論ガ行ハレテ居ルト云フヤウナ實情デ
  アリマス、之ニ對シマシテ政府ハドウ云フ
  ヤウナ御考ヘヲ御持チニナツテ居リマスル
  カ承リタイノデアリマスガ、申スマデモナ
  ク統制會社ノ性格ト云フモノト、蠶絲製造
  會社ノ性格ト云フモノハ全ク是ハ異ツテ居
  ルコトハ申スマデモナイコトデアリマス、
  ト同時ニ蠶絲製造會社ト云フモノハ全國ノ
  業者ヲ打ツテ一丸トナシ、全國ノ業者ヲ總
  テ網羅シタ會社デモ何デモアリマセヌデ、
  單ニ全國業者ノ一部分ノ人ガ會社ヲ作ツテ
  居ルト云フ所謂一個ノ事業會社デアリマス、
  單ニ之ヲ對象ト致シマシテ蠶絲統制會社ト
  云フ全日本ノ蠶絲業ヲ締制ヲ致シテ居ル所
  ノ此ノ國策會社ガ合併ヲ致スト云フコトハ、
  是ハ餘程愼重ヲ期サネバナラヌト思ヒマス、
  殊ニ蠶絲統制株式會社ノ如キハ、多數ノ零
  細ナル所ノ養蠶農民ガ零細ナル出資ヲシテ
  立ツテ居ル會社デゴザイマス、私ハ此ノ際
  ハ生產增强ト云フ點ヲ第一義ト致シマシテ、
  餘リ業界ニ、或ハ關係者ニ氣ヲ揉マセナイ
  デ行カナケレバナラヌノデハナカラウカ、
  ソレデ各業者ガ安心ヲシテ全力ヲ生產ニ注
  イデ行クト云フ形ニ於テ御指導ヲナサルベ
  キデアラウ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、隨ヒマシテ今此ノ際兩會社ガ合併ヲス
  ルト云フガ如キハ先ヅ適當デナカラウト、
  斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、之ニ對
  スル御考ヘヲ承リタイト思ヒマス

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• 134・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　元來此ノ蠶絲業ニ付テ、
  今ノ蠶絲製造會社ノ設立ニ關聯シマシテ、
  政府部內ニ於キマシテモ、統制會社トノ關
  係ニ付テノ問題モアツタノデアリマス、是
  ハ成ベク兩者ハ寧ロ同一ニスベキデアルト
  云フ論モアツタ譯デアリマスガ、今日ニ於
  キマシテ只今ノ所、政府ト致シマシテハ
  兩者ノ合併ト云フコトハ考ヘテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=134

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• 135・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　機構ノ問題ニ付テモウ一點
  御尋ネ致シタイノデアリマスガ、是モ近頃
  ニ至リマシテ蠶絲統制會社ヲ纖維統制會ニ
  包括セシムルト云フヤウナ話題ガ一部ニア
  ルノデアリマス、一體蠶絲業ト云フモノハ
  其ノ構成ノ本ハ百數十萬ノ養蠶農民デアル、
  此ノ多數ノ養蠶農民カラ生產サレルモノデ
  アルト云フ所謂蠶絲業ノ特殊性ト云フ觀點
  カラ致シマシテ、纖維統制會ニ入ラナイデ、
  別ニ獨自ノ機構ニ於テ統制運營ヲサレテ參
  ツタノデアリマスガ、是ハ何處カラ出タカ
  分リマセヌガ、兎モ角モサウ云フ論議ガ一
  部アルヤウデアリマス、此ノ點ニ付キマシ
  テモ此ノ際ト致シマシテハ、ドウシテモ改
  組ヲシナケレバイカヌ、或ハ合併ヲシナケ
  レバイカヌト云フ已ムヲ得ナイ事情ガアレ
  バ格別デアリマスガ、然ラザル限リニ於テ
  ハ、成ベク此ノ機構ノ問題ニ手ヲ觸レルコ
  トハ避ケナケレバナラヌト考ヘテ居リマス
  ガ、蠶絲統制會社ト纖維統制會ニ關シテノ
  御答辯ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=135

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• 136・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　纖維統制會ト蠶絲統制會
  社トノ關係ニ付キマシテハ昨日山田委員ノ
  御質問ニ對シテ御答ヘシマシタ通リ、蠶絲
  統制會社ヲ纖維統制會ノ傘下ニ入レルト云
  フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、兩者ノ
  緊密ナル結付キ、連繫ト云フコトハ必要デ
  アルト考ヘテ居リマスノデ、實質的ニハ十
  分一ツ兩者ノ間ノ連繫ヲ執リマシテ、纖維
  業界全般ノ圓滑ナル進展ヲ圖リタイト云フ
  コトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、ソコデ昨
  日御答ヘシマシタ點ヲ繰返シマスレバ、或
  ハ何等カノ茲ニ連繫的ナ意味ニ於ケル結付
  キヲ考ヘルカモ知レマセヌ、通常ノ會員ト
  シテ入レルト云フコトハ考ヘナイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=136

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• 137・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　先程御尋ネヲ致シマシタ割
  當ニ付テノ實績主義ト申シマスカ實績ヲ中
  心トシタ割當ニ關シテモウ一度御尋ネヲシ
  タイト思ヒマス、申スマデモナク蠶絲類ノ
  割當ハ、十三、十四、十五ノ三箇年間ノ實
  績ヲ所謂實績ト致シマシテ割當ヲ致シテ居
  ルト思フノデアリマス、所ガ十三、十四、
  十五ノ過去三箇年間ト其ノ後ニ於ケル所ノ
  情勢ヲ見マスト、可ナリ一部ニ於テハ浮キ
  沈ミモアリ、或ハ一部地域的ニ考ヘテ見マ
  シテモ、相當ナル變化ガ起ツタ譯デアリマ
  スルガ、サウ云フヤウナ觀點カラ考ヘマス
  ト、十三、十四、十五ノ三箇年以後ノ實績
  ト云フモノモ相當加味シテ行ツタ方ガ宜カ
  ラウ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、此ノ點
  今一度諄イヤウデアリマスガ、御答ヘヲ願
  ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=137

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• 138・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　先程モ他ノ委員ノ御質問
  ニ御答ヘシマシタヤウニ、例ヘバ或ル地域
  ニ於キマシテ桑園ノ整理ヲシマシタリ、其
  ノ他今後モ多少ノ變動ガアルダラウト思フ
  ノデアリマスガ、其ノ際ニ一々、狀況ニ應
  ジテドウ斯ウスルト云フコトデアリマシタ
  ラ、極メテ不安定ニナルノデアリマス、相
  當補償ヲスルトカ何トカ云フコトニナレバ
  別デアリマスガ、左樣ナ次第デアリマシテ、
  此ノ際左樣ナ點ニ付テノ變更ト云フコトハ、
  政府ト致シマシテハ考ヘテ居リマセヌ、其
  ノ點ハ一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412939X00519440202&spkNum=138

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• 139・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

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• 140・深澤吉平

  ○深澤委員長　本日ハ是ニテ散會致シマス
  午後六時十六分散會

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