第87回帝国議会　貴族院　戦時緊急措置法案特別委員会　第1号　昭和20年6月12日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　付託議案
  ○戰時緊急措置法案

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• 001・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　ソレデハ
  是ヨリ戰時緊急措置法案特別委員會ヲ
  開會致シマス、私委員長ノ席ヲ汚スコ
  トニナリマシタガ、甚ダ不慣デアリマ
  シン(屆カナイ點ガ多イト思ヒマス、
  ドウカ皆樣方ノ御協力ニ依リマシテ議
  事ヲ進メルヤウニ致シタイト思ヒマ
  ス、就キマシテハ付託議案ノ審議ニ入
  ルニ先立ツテ御諮リシタイコトガゴザ
  イマス、御承知ノ如ク、委員會ニ關ス
  ル規定竝ニ先例ト致シマシテハ、付託
  事件ノ外ニ亙ツテ審査ヲスルコトハ出
  來ナイコトニナツテ居ルノデアリマス
  ルガ、今囘戰時緊急措置法案ノ提出ヲ
  見ルニ至リマシタニ付キマシテハ、其
  ノ根柢トモ謂フベキ一般的情勢ニ迄及
  ンデ相當廣範圍ニ審査スル必要モ起リ
  得ルコトト存ゼラレマスカラ、時局上
  已ムヲ得ナイ措置ト致シマシテ、又今
  後之ヲ以チマシテ一般的ナ先例ト致サ
  ナイト云フ前提ノ下ニ、本案ト關聯性
  ヲ持ツモノト認メラレマスル御質疑ニ
  關シマシテハ、相當廣範圍ニ之ヲ御許
  シスルヤウニ取計ラツテハ如何カト存
  ズルノデアリマス、御異議ハゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 002・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　御異議ナ
  イト認メマス、尙サウ云フ譯デゴザイ
  マスカラ、從ツテ御質疑モ多岐ニ亙ル
  ト考ヘラレマスルノデ、審査ノ整理促
  進上、通〓順ニ依リマシテ御質疑ヲ御
  許シスルコトガ適當カト考ヘルノデア
  リマス、就キマシテハ御質疑ノオアリ
  ノ方ハ、直チニ御通告ヲ御願ヒ致シタ
  イト存ジマス、右議案ニ對スル當局ノ
  御說明ヲ是ヨリ御願ヒスルコトト致シ
  マス

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• 003・鈴木貫太郎

  ○國務大臣(男爵鈴木貫太郎君)　戰時
  緊急措置法案ノ提案理由ヲ御說明申上
  ゲマス、現下我ガ國ノ當面致シテ居リ
  マスル危急ヲ克服シ、征戰ノ目的ヲ達
  成セムガ爲ニハ、戰力ノ集中發揮ニ必
  要ナル各種事項ニ關シマシテ、政府ニ
  於テ應機ノ措置ヲ迅速果敢ニ講ズルコ
  トガ、最モ必要ナルハ申ス迄モナイコ
  トデアリマスルガ、今日各種ノ法制ハ
  極メテ複雜デアリマシテ、爲ニ戰時下
  行政ノ機動的ナル、運營ニ支障ヲ生ズ
  ル虞ガ尠クナイノデアリマス、而シテ
  具體的必要ノ生ジタル都度、法令ノ改
  正ヲ行ヒ、然ル後措置ヲ講ジテ行クノ
  デハ、到底當面ノ必要ヲ滿足セシムル
  コトヲ得マセヌ、又法律ヲ以テ規定ス
  ルヲ要スル事項ニ關シマシテモ、事情
  ノ急迫ニ依ツテ、事實上帝國議會ヲ召
  集シ得ヌコトモアリ、又一々法律ヲ以
  テ帝國議會ノ協賛ヲ經、然ル後實施シ
  行クト云フ暇ノナイ場合モ豫想スルコ
  トガ出來ルノデアリマス、仍テ茲ニ本
  法ノ制定ヲ仰ギマシテ、大東亞戰爭ニ
  際シ、國家ノ危急ヲ克服スル爲ニ緊急
  ノ必要アルトキハ、政府ハ他ノ法令ノ
  規定ニ拘ラズ、軍需生產ノ維持及增
  强、食糧其ノ他生活必需物資ノ確保、
  運輸通信ノ維持及增强、防衞ノ强化及
  秩序ノ維持、稅制ノ適正化、戰災ノ善
  後措置等戰力ノ集中發揮ニ必要ナル諸
  般ノ事項ニ關シマシテ、應機ノ措置ヲ
  講ズル爲必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分
  ヲ爲シ得ルコトト致サムトスルノデア
  リマシテ、本法ノ定ムル所ニ依リマシ
  テ、豫メ非常應急ノ措置ニ關スル大綱
  ヲ定メ、現實具體ノ個々ノ必要ガ生ジ
  マシタル都度、直チニ應機ノ措置ヲ講
  ジ得ルコトトシ、國民ヲシテ政府ノ措
  置ニ對應スルノ準備ヲ爲サシメ、同時
  ニ行政官廳ヲシテ之ガ適切ナル運營ニ
  十分ノ用意ヲ爲サシメタイト考ヘルノ
  デアリマス、卽チ本法第一條ハ、本法
  ガ大東亞戰爭中ノ應急立法ナル旨ヲ明
  カニシ、且本法適用ノ目的トナル事項
  ヲ定メマシタ、第二條ハ、本法ニ依ル
  處分ニ因リマシテ生ジマシタ損失ハ之
  ヲ補償スルコトヲ得ルコトトシ、其ノ
  細則ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メルコトト致
  シマシタ、第三條ハ、本法ニ依ル命令
  又ハ處分ニ違反シタル者ニ對スル罰則
  ヲ定メ、第四條ハ、本法ニ依ル措置ノ
  重要ナルモノニ付キマシテ、戰時緊急
  措置委員會ニ報告シ、其ノ意見ヲ聽ク
  コトト致シマシタ、第五條ハ、本法施
  行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
  ヲ定メルコトト致シタノデアリマス、
  之ヲ要スルニ、本法ハ先程本會議ノ議
  場ニ於テモ申上ゲマシタ通リ、此ノ戰
  爭ニ勝チ拔クト云フ國家ノ急務ニ對應
  スル眞ニ緊急已ムヲ得ザル措置デアリ
  マシテ、政府ハ本法制定ノ曉ハ、十全
  ナル責任ノ下ニ、能ク本法ノ趣旨ニ鑑
  ミマシテ、施策ノ實施ニ萬遺憾ナキヲ
  期スル覺悟デアリマス、尙本法案中、
  衆議院ニ於キマシテ一部修正ガゴザイ
  マシタガ、政府ニ於キマシテハ之ニ同
  意デゴザイマス、何卒宜シク御審議ノ
  程ヲ御願ヒ申上ゲマス

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• 004・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　議事ノ進行ニ付キ
  マシテチヨツト御願ガアリマス、先程
  委員長ノ仰セデハ、質問ハ通告ヲシテ
  吳レ、今迄何人御通告ガアルカ知リマ
  セヌガ、委員長ノ此ノ議事ノ統制上ノ
  御方針、又此ノ問題ノ重大性ニ鑑ミマ
  シテ、相當御質問者ガ多イト考ヘマス、
  私モマダ通告ハ申上ゲテ居リマセヌ、
  極メテ大切ナ時機デアリマスルカラ、
  徒ニ時間ヲ費スヤウナ御質問ハ致シタ
  クナイト思ヒマスノデ)前ノ方々ノ御
  質問ヲ能ク承リマシテ、場合ニ依ツテ
  ハ御質問ヲ申上ゲルト云フヤウナコト
  ニ致シタイト思ツテ居リマス、唯、此
  ノ御質問者ガ多イダラウト云スコトノ
  下ニ、ドウカ十分時間ノ點ニ於キマシ
  テ政府竝ニ委員長ニ於キマシテ、此ノ
  審議ニ十分ナ時間ヲ御與ヘ戴クト云フ
  コトヲ豫メ御願ヲ申上ゲテ置キタイト
  存ジマス

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• 005・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　承知致シ
  マシタ、法制局長官

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• 006・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　本案ニ付キ
  マシテ、衆議院ニ於キマシテ一部ノ修
  正ガゴザイマシタ、ソレハ第四條ノ第
  一項ニ、「之ヲ戰時緊急措置委員會ニ報
  告スベシ」、斯ウアリマスノヲ「戰時緊
  急措置委員會ニ」ト云フ下ニ、「諮問ス
  ベシ但シ已ムコトヲ得ザル場合ニ於テ
  ハ事後ニ之ヲ報〓スベシ」、卽チ全文ヲ
  讀ミマスト「第一條ノ規定ニ基ク措置
  ニシテ重要ナルモノニ付テハ政府ハ勅
  令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ戰時緊急措置
  委員會ニ諮問スベシ但シ已ムコトヲ得
  ザル場合ニ於テハ事後ニ之ヲ報告スベ
  シ」、斯樣ニ第一項ガ修正ニナリマシタ
  ノデアリマス、此ノ修正ハ、衆議院ニ
  於テ政府ガ原案ニ付テ說明致シマシタ
  所ト、趣旨ニ於テ異ル所ガゴザイマセ
  ヌノデ、政府ハ之ニ對シテ同意ノ意向
  デアリマス、此ノ點ヲ申上ゲテ置キマ
  ス

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• 007・阿南惟幾

  ○國務大臣(阿南惟幾君)　御要求ニ依
  リマシテ、現戰局ガ本案ヲ必要トシテ居
  ル急迫セル狀況デアルト云フコトヲ申
  上ゲル譯デゴザイマス、但シ大體ノ戰
  況ニ付キマシテハ本會議ニ於キマシテ
  申述ベマシタノデ、詳シイコトハ避ケ
  マシテ、主トシテ敵狀、就中、其ノ企
  圖ノ判斷ニ付テ申上ゲタイト思ヒマ
  ス、敵ノ侵寇ハ御承知ノ如ク極メテ急
  「テンポ」デゴザイマス、ソコデ其ノ侵
  寇方向竝ニ時期ニ付テ先ヅ申上ゲマ
  ス、沖繩作戰ノ狀況ハ現在旣ニ首里、
  那覇ノ線ヲ撤シマシテ、後方糸滿ノ大
  體東西ノ要地ヲ占領シ、玆ニ戰線ヲ整
  理シマシテ、飽ク迄組織アル所ノ抵抗
  ヲ續行中デゴザイマス、而シテ昨今陸
  軍トシマシテハ、出來ルダケノ努力ヲ
  致シマシテ、物量ヲ陸上友軍ニ輸送ヲ
  シテ居ル譯デゴザイマスガ、敵ノ妨害、
  地形ノ困難、地形ノ困難トハ飛行場ガ
  旣ニ大部分敵ニ取ラレテ居リマスノ
  デ、是等ノ關係上、物量ノ輸入ハ非常
  ニ困難ヲ極メテ居リマスガ、萬難ヲ排
  シテ實行中デアリマス、從ツテ此ノ戰
  況ノ推移如何ニ拘ラズ、今後敵ハ決戰
  ヲ急グ餘リニ、沖繩ノ戰局ニ拘泡スル
  コトナク、或ハ本土ニ對シ上陸ヲ企圖
  シ來リ、一擧決戰ヲ求メテ、戰爭ヲ終
  局ニ導カムトスルノ企圖ガアルノデハ
  ナイカト豫想セラルヽノデアリマス、
  而シテ其ノ侵寇方面ハ何處カ、斯ウ申
  シマスト、是ハ今日言明ヲ致スコトヲ
  避ケタイト思フノデゴザイマスガ、大
  體御想像ニ難クナイト思フノデゴザイ
  マシテ、敵ト致シマシテハ我ガ本土ノ
  一角ニ兎モ角モ足ヲ掛ケルコトヲ急グ
  ト云フ狀況デアルコトガ、戰局ノ急迫
  ヲ證明シテ居ルト思フノヂアリマス、
  第二ニ其ノ時期ハ何時カ、斯ウ云フコ
  トニナリマスガ、其ノ時期モ只今申述
  ベマシタ如ク、沖繩ノ戰況ノ如何ニ拘
  ラズ、決戰ヲ急グト云フ判斷カラ申シ
  マスト、其ノ時期ハ必ズシモ遠クナイ、
  或ハ非常ニ早ク來ルノデハナイカト云
  フ判斷モ爲シ得ルノデアリマス、從ツ
  テ軍ト致シマシテハ、極メテ早期ニ來
  テモ、之ニ應ズルノ準備ヲシナケレバ
  ナラヌツデゴザイマス、其ノ次ニ申上ゲ
  タイコトハ、空襲ノ激化デアリマス
  敵ノ空襲企圖ニ關シマシテハ、過般モ
  申上ゲタ通リデゴザイマスガ、今後愈〓、
  之ノ激化ハ何人モ御想像ニナツテ居
  ラレル通リダト存ジマス、而シテ敵ハ
  本土ノ何レニ來ルヤ、敵ノ今後、本土
  上陸企圖トニ非常ニ關聯ヲ持ツテ居ル
  ノデハゴザイマスケレドモガ、何處ニ
  上陸スルト致シマシテモ、昨年六月米
  英軍ガ「フランス」ノ北海岸ニ上陸ヲス
  ルニ先ンジマシテ、大空軍ノ力ヲ以テ
  徹底的ニ「ドイツ」軍ノ背後ノ陸上交通
  遮斷竝ニ軍需生產ノ破壞ニ非常ナル力
  ヲ用ヒタコトハ我々トシテ深ク考ヘナ
  ケレバナラヌ所デゴザイマス、而モ只
  今申シマシタ通リニ、上陸ノ時期ガ比
  較的早イト判斷セラルヽニ於キマシ
  テ、急「テンポ」ニ斯クノ如キ交通破壞、
  軍需生產ノ破壞妨害ニ努メ來ルコトヲ
  豫期シナケレバナリマセヌ、以上ノ如
  キ必然到來スベキ情勢ノ推移ヲ考ヘマ
  スト、今ヤ從來ノ平時的ナ中央集權的
  法律ヲ基礎ト致シマシテ行ヒマス所ノ
  行政措置ヲ以テシテハ、到底戰機ニ投
  ジ敏活ナル本土ノ戰場態勢ヲ確立スル
  コトハ、殆ド不可能デアルト言ハネバ
  ナラナイノデゴザイマス、又今後ノ戰
  況ノ推移ハ、吾人ノ企圖、豫想ト或ハ
  違ヒマシテ、突發的ナル必要ニ迫ラルヽ
  場合ガ多キコトヲモ併セ考ヘマス時
  ニ、一々議會ヲ開キマシテ、御審議ヲ
  御願ヒスルガ如キコトハ戰局ノ實情
  ニ適セザルモノガアルコトハ明カデア
  リマス、是レ本案ヲ今囘御願ヒシタ理
  由デアルト思フノデゴザイマス、戰局
  ノ現況ヲ申述ベマシテ、御參考ニ致シ
  タイト思ヒマス

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• 008・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　外務大臣
  ヨリ御話ヲ伺ヒマスニ付キマシテハ
  祕密會トナスベキ要求ガアリマシタ、
  議事ヲ祕密會ト致スコトニ御異議ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 009・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　御異議ナ
  イト認メマス、是ヨリ祕密會ニ移リマ
  ス、就キマシテハ議員、國務大臣、政
  府委員及議事ニ關係アル方以外ノ方ノ
  御退場ヲ願ヒマス
  午前十時三十四分祕密會ニ移ル
  午前十一時二十六分祕密會ヲ終
  ル

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• 010・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　ソレデハ、
  之ニテ祕密會ヲ閉ヂマシテ、是ヨリ通
  告順ニ依リマシテ御質問ヲ許シタイト
  思ヒマス、會期モ本日一日ノコトデア
  リマスシ、又此ノ重要問題ニ付キマシ
  テハ、委員各位ニ於カレテモ御質問ガ
  色々オアリダラウト考ヘマスルカラ、
  一人ノ御質問ハ成ルベク餘リ長時間ニ
  亙ラナイヤウニ、又質問ガ重複スルヤ
  ウナコトノナイヤウニ御配慮ヲ願ツタ
  ラ審議ノ都合モ好カラウト思ツテ居リ
  RT @デハ山岡君

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• 011・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　私ハ先ヅ內閣總理大
  臣ニ對シテ御尋ヲ致シタイノデアリマ
  ス、御說明ノアリマシタルヤウニヽ時
  局ハ極メテ緊迫致シマシテ、之ニ對ス
  ル首相ノ信念ハ、本會議ヂモ御說明ガ
  アリ、此ノ席デモ御說明ガアリマシタ
  ノデ、能ク了解ヲ致シマス、ノミナラ
  ズ、本日ハ陸軍大臣、外務大臣ヨリモ、
  軍事外交ニ關シマジテ、極メテ急迫セ
  ル狀態ノ御話ガアリマシタ、我々國民
  モバタ今日ノ事態ハ容易ナラヌ切迫シ
  タルモノデアルト感ズル次第デアリマ
  ス、是故ニ國務ノ遂行ハ極メテ敏活デ
  ナケレバナラヌコトハ申ス迄モナイコ
  トデアリマス、此ノ敏活ナル遂行ガ大
  東亞戰爭以來必要デアツタニ拘ラズ、
  今日迄敏活デナカツタ、何ニ因ルカト
  申セバ、色々アリマセウ、扱フ人ノ間
  題モアリマセウ、併シ法網繁クシテ、
  簡素ニ仕事ガ出來ナイト云フ所ガ、非
  常ナ禍ヲシテ居ルト考フルノデアリマ
  ス、玆ニ政府モ顧ル所アリ、本案ガ提
  出サレタコトト思フノデアリマス、提
  案理由ノ御趣旨、又本案ノ提出サレタ
  動機ニ付テハ全然同感デアリマス、唯
  本案ヲ以テ此ノ緊急ナル狀態ニ應ジ得
  ルヤ、玆ニ疑ヒナキ能ハズデアリマス、
  故ニ斯ウ云ツタ事柄ニ付テ少シク申上
  ゲテ、然ル後ニ質問自體ヲ申上ゲテ見
  タイト思ヒマス、元來、現在ノ如クニ
  法網ガ繁クナツタ狀態ト云フモノハ
  是ハ數年前ニ輸出入品等臨時措置ニ關
  スル法律ニ依ツテ、商工省令百數十、
  農林省令數十、二百以上ノ省令ヲ發布
  シント、經濟統制其ノ他ニ及ンダノデア
  リマス、其ノ後ニ於テ國家總動員法ガ
  發令サレマシテ、ソレヲ此ノヤウナ厖
  大ナル法規トナツテ居リマス、之ヲ見
  マスルト云フト、各條ニ對スル勅令ア
  リ省令アリ、而シテ書式ガアル、其ノ
  少シデモ違ツタ時ニハ、總テ仕事ガ出
  來ナイ、是デハ國民モ役人モ、簡單ニ
  迅速ニ仕事ノ出來ル筈ガナイノハ當然
  ノコトデアリマス、此ノヤウナ厖大ノ
  モノヲ作ツテ、是ハ總動員法ヲ制定シ
  タ時ニハ、政府ニ一任シテ、政府ハ簡
  單明瞭ニ仕事ヲスルヤウニ、斯ウ云フ
  爲ニ政府ニ於テモ要求シ、我々議會人
  トシテモ其ノ意味ニ於テ協質ヲ與ヘ
  タ、然ルニモ拘ラズ、斯クノ如ク〓ニ
  入リ細ヲ穿ツタ法規ヲ作ツタ、少シ言
  葉ガ强クナリマスルガ、精密煩瑣言語
  ニ絕スト、斯ウ申シテ殆ド宜シイ狀態
  デアリマス、平時ナラ此ノヤウニ綿密
  ナル規定ヲ作リ、嚴格ニ正確ニ仕事ガ
  出來マスルカラ、是ガ國民ノ爲ニモ役
  人ノ爲ニモ宜シイノデアリマス、戰時
  ハ少シハ其ノ間堅實ヲ缺クコトガアリ
  マシテモ、寧ロ迅速ニ焦眉ノ急ニ間ニ
  合フト云フコトヲ要旨トシナケレバナ
  ラナイノデアル、其ノ事ガ少シモ充サ
  レテ居ラナイ、其ノ弊ガ旣ニ數年前カ
  ラ現レテ居ツタ、東條內閣ニ於テ、小
  磯內閣ニ於テ、是等ノ法規ガ複雜煩瑣
  デ行政ガ進捗シナイカラ簡素ニシナケ
  レバナラヌト云フコトガ考ヘラレ、議
  會ニ於テモ其ノ度每ニ論議サレ來ツタ
  問題デアリマス、而シテ此ノ事ハ、誰
  ガ一體斯樣ニシタノダ、之ヲ能ク考ヘ
  ネバナラヌノデス、議會ニ於テハ政府
  ニ緊急處置ヲ一任シテアルノデアリマ
  ス、輸出入品等臨時措置法、又總動員
  法其ノ他ノ法規ニ依ツテ、政府ニ於テ
  自ラ煩瑣ナ規定ヲ作リマシテ斯クノ如
  クナツタノデアリマス、實ハ政府自體
  ガ斯クノ如キ煩瑣ナ勅令以下ノ法令ハ
  自ラ御改メニナレバ出來ルコトナノデ
  アリマス、ソレヲ今日迄少シモ企テヽ
  居ラナイ、故ニ斯樣ニ法規ガ複雜煩瑣
  ニナツテ、仕事ガ迅速ニ行カナイカラ
  ト云フノデ、此ノ法案ヲ提出サレテ議
  會ニ協賛ヲ求メルト云フコトデアリマ
  元々、是ハ少シク其ノ筋ガ違ツタト私
  ハ申シテ宜カラウト思フノデアリマ
  ス、政治ノ上カラ申シマシテモ、政府
  ニ一任シテ居ラナケレバ、事變又ハ戰
  時ノ狀態ニ適應シナイカラシテ、左樣
  ニ取計ラヘト云フコトデ議會ハ協贊ヲ
  與ヘタ、十分ナ協賛ヲ與ヘタ、ソレヲ
  爲サズシテ、此ノヤウナ急迫場面ニ於
  テ仕事ガ迅速ニ行カナイ、此ノ事ヲ緩
  和スルガ相當ナリトシテ議會ニ言ハレ
  ルト云フコトハ、政治道德ノ上カラ申
  シテモ、如何デアラウカトサヘ私ハ申シ
  テ宜シイト思フノデアル、例ヘテ申セ
  バ縣知事ガ縣令ヲ濫發シテ、ドウニ
  モナラナクナツテ内務省ノ救ヲ求メ
  ル、譬ヘバ少シ違フカモ知レマセヌガ、
  似タヤウナ形デアルヤニ私ハ考ヘマ
  ス、此ノ法案ハ、過去ニ於ケル法律ニ
  依ツテ委任セラレマシタル複雜煩瑣ナ
  法網ニ依ツテ政府自ラ自繩自縛ニ陷ツ
  テ居ル、其ノ上ニ更ニ法網ヲ作ラムト
  スルノデアリマス、此處ノ所ガ私ハ問
  題ダト思フノデス、非常ナ複雜煩瑣ナ
  法網ガ此處ニアル、其ノ上ニ更ニ命令
  ヲ出シテ豫メ準備ヲナサルト云フ此ノ
  席デノ御說明デアリマス、豫メ準備ヲ
  スルト云ツタラバ、今日迄、明治以來
  ノ法制ノ上ニ此ノ事變戰時ノ狀態ニ於
  テ發布シタル法令ト云フモノハ實ニ複
  雜多岐デアル、其ノ上ニ更ニ法令ヲ豫
  メ作ツテ、サウシテ緊急ニ應ジヨウト
  云フ御考デアリマスルガ、過去ヲ全然
  見ナイデ新ラシク作ルト申シテ見タ所
  デ、ソレハサウ行クモノヂヤナイ、ド
  ウシテ見タ所デ、過去ヲ振リ返ツテ見
  テ是ハイカヌ、アレハイカヌト云ツ
  テ、各種法令關係ノ上ニ法令ヲ作ラナ
  ケレバナラヌ、ダカラ、豫メ作ツテ急
  ニ應ズルト云フ御說明デアリマス、豫
  メ作ツテ居ルト云フコトガ一體ドレダ
  ケノコトデアルカ、私ヲシテ言ハシム
  レバ、曩ニ防空法ヲ作リマシタ、其ノ
  施行勅令以下ヲ作ルノニ數箇月ヲ要シ
  テ居ル、其ノ間ニ疎開ト云フコトハ出
  來ナカツタ、是等ガ今日東京都ニ及シ
  タ害ノ一因デアルト私ハ思フ、防空法
  ガ出來タラ直チニ何故疎開ニ取掛ラナ
  イカ、勅令ヲ作リ、省令ヲ作リ煩瑣ナ
  モノヲ拵ヘテ居ル、其ノ家ノ鑑定其ノ
  他賠償、承諾、斯ウ云フコトデ荏苒時
  ヲ送ツテ、遂ニ東京都ノ今日ノ狀態ニ
  ナツタ、若シ大疎開ヲシテ居ルナラバ、
  相當ナ部分ハ健在デアルト私ハ信ズル
  ノデアリマス、斯ウ云フ風デ又今度法
  令ヲ作ラレテ居ル間ニ、敵ハ、陸相ノ
  御說明ノヤウニ、ドシ〓〓侵寇シテ
  來ル、地方ノ中小都市ガ如何ニナルカ
  ト云フコトハ私ノ申ス迄モナイ所デア
  ラウト思ヒマス、之ヲ私ハ憂フル、故
  ニ法令ヲ制定シテ屋上屋ヲ架スルト云
  ス、斯樣ナコトヲナサルト云フコトガ
  良イノデアルカ惡イノデアルカヲ、申セ
  バ私ハ簡單明瞭ニ、例ヘバ此ノ法律ヲ
  以テシテモ臨時必要ナル措置ヲ爲スコ
  トヲ得ト、コヽ迄御進メニナルコトガ
  必要デアル、サウスレバ、必要ニ應ジ
  テ閣議デ御決定ニナツテ、臨時必要ナ
  ル措置ヲ執ツテ、屢〓閣議デ色々ナ要
  綱ヲ御作リニナリマフルガ、ソレナラ
  バ臨時必要ニ從ツテ進ムノデス、法制
  局ニ於テ法令ヲ作ル、一體何時ソレハ
  出來ルカ、ソレヲ待ツテソレニ基イテ
  閣議ヲ開ク、ソレ迄果シテ敵ノ攻擊ハ
  延ビテ居ルカ、私ハソレヲ憂フル、今
  日ノ陸相ノ御說明ニ依リ、又一般ノ事
  態カラ申シテモ、モウ殆ド時ヲ剩サズ
  速カニ侵寇シテ來ルト考ヘマス、ソレ
  故ニ斯ウ云フ風ナ法令ヲ作ルト云フガ
  如キコトハ、是ハ過去ノ法治制度ノ因
  習ニ囚ハレテ居ルモノデアリマス、法
  令萬能ノ病弊カラ未ダ蟬蛻スルコトガ
  出來ナイノデアリマス、是ハ大事ノコ
  トデアリマス、今日ハ國家危急ノ本當
  ノ關頭デアリマス、法令ガ何デアリマ
  元々、法令ハ國家在ツテノ法令、法令
  ノ爲ニ國家ナドハアリマセヌ、然ラバ
  法令ト云フヤウナコトノ關係デナク、
  過去ノ議會ヨリ委任セラレタ法規ニ依
  ツテ、政府ハ何事デモ出來ルノデアリ
  マス、唯僅カニ法律關係デ出來ナイ事
  柄ガアリマス、ソレハ極ク僅カデアリ
  いいで、首相ノ御說明ニナツタ法律關係
  ハ出來ナイカラ、豫メ議會カラ協賛ヲ
  求メテ置クト云フ仰セデアリマスガ
  ソレハホンノ僅カデアル、アトハ皆政
  府ニ一任シテアル、一任シタ政府ガ勅
  令ヲ動カスナリ、ドウサレルナリ、新
  ラシク立テルナリサレルナラバ、ソレ
  デ出來ルコトデアル、今日ハサウ云フ
  風ニシテドシ〓〓ト事務ヲ遂行ナサル
  ベキ時デアツテ、法治制度ノ病弊ニ囚
  ハレテ、過去カラ積上ゲテ來タ上ニ立
  ツベキ時デハアリマセヌ、サウ云フモ
  ノカラ全然離レテ、サウシテ臨時措置
  ラ爲スベキモノデアルト考ヘマス、故
  ニ臨時措置ヲ爲スト云フコトニハ、趣
  旨ニハ、私ハモウ少シモ異議ハナイ、
  否、モツト進ミタイ、玆ニ憲法三十一
  條デ非常大權ヲ行使シタラ宜イ、ソレ
  ハ必要ガアレバ政府モ行使サレルト云
  フ,段々衆議院デノ御說明デアルヤニ
  承知シテ居リマス、今日迄旣ニ議會
  ガ一任シタル法規ヲ活用スレバ、何デ
  モ出來ル、否、少シ位違ツテミタ所デ、
  誰モ之ヲ咎ムベキ者ハナカラウト思
  フ、戰爭ノ目的ヲ達成スル爲ニナサツ
  タコトデアレバ、何人モソレハ結構デ
  アルト言フダケデアラウト思フ、然ル
  ニ、斯クノ如キ法案ヲ御出シニナツテ、
  過去ノ法令ノ上ニ腐心ヲナサルト云フ
  コトハ、マダ囚ハレテ居ルノデアルヽ
  此ノ法令ヲ出サナケレバ出來ヌト云フ
  狀態デハアリマセヌ、戰爭目的ノ爲ニ
  何デモナサツテ宜シイノデアル、私ハ
  左樣ニ考ヘマスルカラ、玆ニ總理大臣
  ニ御尋ネ致シタイコトハ、寧ロ此ノ法
  案ハ法令ヲ作ルト云フノデスガ、卽チ
  命令ヲ作ルト云フノデスガ、閣議ノ決
  定其ノ他デ必要ナ措置ヲ爲スト云フコ
  トダケニ修正ヲサレテ、其ノ建前ニ立
  ツコトガ宜カラウト思ヒマス、又一面
  ハ今日迄ニ發布致シマシタル勅令以下
  ヲ整備致シマシテ、是モサウムヅカシ
  イコトデハアリマセヌ、同意法ナラバ
  僅カノ條文デアリマス、其ノ勅令省令
  ニ手ヲ入レレバ、ソレデ宜シイ、コン
  ナ際ニハドシ〓〓變ヘタラ宜シイ、サ
  ウ云フ所ヲ少シモナサラズシテ、困ツ
  タ〓〓ト考ヘナサルト云フコトハ、筯
  ガ少シモ立タヌコトデアルト考ヘマ
  ス、ダカラ、其ノ點ニ付テ首相ノ御筋
  ヲ承リタイ、次ニハ戰爭ノ遂行ニハ幾
  多ノ條件ガ必要デアリマスルガ、其ノ
  中此ノ法案ニモアリマスルヤウニ、軍
  需生產ト生活必需品ノ確保ト云フコト
  ハ、最モ重要デアルト私ハ思ヒマス、
  本法案ノ成立ヲ俟ツテ、命令ヲ具備シ
  テっサウシテ地方ノ中小都市ニ於ケル
  資材ヲ確保スルト云フガ如キコトハ、
  私ハ許サレナイコトダト思フ、此ノ法
  令ヲ作ツテ命令ヲ作ルコトヲ俟タヌ
  デ、總理大臣ノ權能ニ依ツテ防空法其
  ノ他ノ法規ヲ活用セラレテ、一刻モ速
  カニ地方ノ中小都市ヲ疎開セラレテ、
  サウシテ其處ニ於ケル家財中生活必需
  品、而シテ航空其ノ他軍需ノ資材ヲ田
  舍ノ村ニ或ハ地下ニ、確保セラレルコ
  トヲ痛切ニ私ハ感ジマス、若シ然ラズ
  シント。大都市ニ於ケルガ如ク疎開ト云
  フコトハ、生產ヲ一時阻害スルカラ、
  ナカ〓〓大疎開ガ出來ナイト云ウテ遂
  ニ大都市ヲ烏有ニ歸セシメタ、斯樣ナ
  コトヲ再ビナサルト云フコトガアリマ
  スルナラバ、我ガ國ノ國內ニ於ケル資
  材ト云フモノハ、全ク言葉ヲ强クスレ
  バ皆無ニナル、大都市ノ損失ハ先ヅ半
  バ、私ハ地方中小都市ニ於ケル資材ガ
  半バアルト信ジマス、ソレヲ鈴木總理
  大臣ヨリ地方長官ニ命ゼラレテ、豫算
  ヲ與ヘ命令ヲ與ヘ、緩急宜シク都道府
  縣ノ民ト共ニ疎開シ資材ヲ確保セヨト
  御命令ニナルコトガ、私ハ一日一刻ヲ
  待テヌト考ヘマス、此ノ事ダケハ私ハ
  ·深ク信ジマスルノデ、今日迄モ其ノ向
  キノ方ニハ申上ゲテ居ルノデアリマ
  ス、併シ運ンデ居リマセヌ、大都市ノ
  場合ニ於テハ、マダ〓〓地方ニモアル
  カラ渾バナクトモ政府ノナサルコトデ
  アルカラ、我々ハマア努力スル、職域
  奉公ダケシテ居ルガ宜イノデアリマ
  ス、今日ハソレデハ濟ミマセヌ、地方
  ニ於ケル資材ヲ失ツタ時ニ、戰爭遂行
  ト云フコトハ果シテドレダケノ阻害ヲ
  受ケルカ、ソレ以上申ス必要ハアリマ
  セヌ、戰爭ヲ今後遂行スル爲ニハ、地
  方中小都市ニ於ケル資材確保ノ一點ニ
  アルト申シテモ過言デアリマセヌ、ド
  ウシテモ是ハ速カニ命ヲ御下シニナ
  リ、豫備金ナリ何ナリ豫算ヲ御出シニ
  ナルヤウ、豫算トカ何トカコダハツテ
  居ル時デハアリマセヌ、資材ノ確保ト
  云フコトガ本當ノ一ツノ目標トサレニ
  ヤナラヌ、然ルニ政府ハ閣議ヲ以テ、
  曩ニ地方中小都市ノ疎開ハ一時止メル
  ト御決定ニナツタ、此ノ事ハ一體如何
  ナル意味デサウ云フヤウナコトヲナサ
  ツタノデアリマスカ、私共ニハ少シモ
  了解出來マセヌ、大都市ノ疎開ヲ逡巡
  日ヲ曠ウシテ、遂ニ總テ烏有ニ歸シタ、
  此ノ手本ガ其處ニアルデハアリマセヌ
  カ、地方ノ中小都市ノ如キ疎開スルト
  言ツテモ何デモナイ話、地方人ハ待ツ
  テ居リマス、何故早ク豫算ヲ出サヌカ、
  何故早ク命令ラ出シテ吳レヌカ、地方
  ノ都市デハ待ツテ居ル、サウシテ政府
  ハ少シモ進マナイ、今度斯ウ云フ議案
  ヲ出シテ是カラ命令ヲ作ラウ、是デハ
  今日迄失敗シタ跡ヲ又辿ルダケデス
  是コソ過去ノ成跡ニ鑑ミマシテ、頭ヲ
  新ラシクシテ仕事ヲ進メナケレバナラ
  ヌ、今月ハ時ダト思ヒマス、其ノ大都
  市ノ疎開ニ付テ右申シタ通リノコトヲ
  亦中小都市ニ對シテ、閣議ヲ御決定ニ
  ナル、斯ウ云フコトハ、速カニ御取消
  ニナルナリ、或ハ外ノ方法ヲ御執リニ
  ナルナリ、或ハ旣ニ御執リニナツテ居
  ルカ知レマセヌ、私ハ其ノ後ノコトヲ
  承知致シマセヌ、デアリマスルカラ
  其ノ疎開資材確保ノ爲ニ、萬全ノ策ヲ
  御執リヲ願ヒタイガ、總理大臣ノ確信
  ノアル所ヲ承リタイノデアリマス、斯
  樣ナコトヲ申上ゲル點ハ、全ク時局ノ
  緊急狀態ハ政府モ仰シヤル通リ、我々
  痛切ニ感ジマス、然ルニドウモ行政ハ
  過去ノ狀態ニアツテ、殊ニ防空法ノ動
  キガ非常ニ緩漫デアリマス、ソレガア
  ルカラ私ハ之ヲ繰返シテ言ツテ居ル次
  第デアリマス、ソレカラ次ニ御尋ネ致
  シタイ點ハ、國務ノ遂行ノ敏活化ノ問
  題デアリマス、是ハ如何ニシタラ宜シ
  イカ、モウ前ノ歷代的內閣モ御考ヘニ
  ナリ、鈴木首相御就任早々、官吏ノ問
  題ニ付テ懲戒處分ヲ變へ、任用令ヲ變
  ヘ、更ニ又地方總監ヲ御作リニナツテ、
  色々ト御苦心ニナツテ居ル點ハ能ク私
  ニ分リマス、併シ斯ウ云フコトデ界シ
  テ今日迄ノ行政狀態ヲ變ヘルコトガ出
  來ルカ、之ヲ御考ヘ願ヒタイ、過去ニ
  於テ戰時行政特例ヲ作ル、其ノ他色々
  ナ臨時措置ヲシテ、少シモ下ニ徹底シ
  テ居ナイ、少シモ行ハレテ居ナイ、殊
  ニ許可認可ノ如キ、一箇月ヲ經過スレ
  バ認可許可アリタルモノト看做スト云
  フ勅令ヲ作ツテ、少シモ之ヲ行ツテ居
  ナイ、斯ウ云フコトデハ、何ヲナサツ
  テ見タ所デ結果ヲ擧ゲルコトハ出來マ
  ぜん、アノ勅令ヲ若シ本當ニ活用ヲナ
  サツタナラバ、ソレダケデモ行政ハ敏
  活ニナル、何處カガ徹底シナケレバ役
  ニ立タヌト思フ、卽チ政府ノ政治性ガ
  事務ノ腦髓ニ滲透シテ行カナケレバナ
  ラヌト思フノデス、事務ハ明治以來持
  續性ヲ持チマシテ、所謂行政組織、官
  僚是ハ實ニ堅實デアリマス、此ノ仕
  事ノ堅實サハ、恐ラク何處ノ國ニ比較
  シテモ負ケハ取リマセヌ、實ニ堅實デ
  アリマス、ソレガ今日ハ病ラ成シテ居
  ル餘リニ堅實デアル、ドウ云フ譯カ
  ト云フト、政府ハ政治ヲナサル、其ノ
  政治性ガ腦髓ノ中ニ入ッテ行カナイ、
  過去ハ、役人ハ政治ヲ談ズベカラズ、
  斯ウ云フコトガ明治ノ時代ニアリマシ
  タガ、明治初年ノ人ハ皆政治ヲ心得テ
  居ル、ダカラ縣知事デモ政治ガ分ツテ
  居ル、今日デハ縣知事ハ事務官デアル、
  斯ウ云フ所ニ私ハ病ガアルト思ヒマ
  ス、矢張リ政治ト云フモノヲ考ヘテ、
  國家全局ノコトヲ知ツテ、サウシテ政
  府ガ訓令シタラ、ソレガ如何ナル趣旨
  デアルカト云フコトガハツキリト會得
  出來ルヤウナ素養ヲ持ツヤウニシナケ
  レバナラヌト思フ、ダカラ、事務組織
  ノ上ニ政治ガ滲透シテ行カナケレバナ
  ラヌ、而シテ政府ハ、一面ニハ議會ノ
  政治的協力ヲ得テ益〓政治力ヲ强化
  シ、其ノ力ヲ行政ノ事務ノ上ニ滲透セ
  シムル、斯ウ云フ途ヲ執ラナケレバイ
  カヌト思フ、是ハ唯抽象的ノ言葉デア
  リマスガ、一二ノ例ヲ申シマスト、凡
  ソ事件ト云フモノヲ受付ケテ官ノ仕事
  ニナル、其ノ結末ヲ著ケルノハ何時ダ
  ト云フコトガ、·主務大臣、政府ニ分ラ
  ヌト云フコトハナイ、ドウモ過去ハサ
  ウ云フコトガ分ツテ居ラヌノデス如
  何ナル事務ガ受付ケラレテ、如何ナル
  時ニ濟ンデ居ルカ、數箇月來、許可認
  可ノ申請ヲシテ、許可スルトモ認可ス
  ルトモ決ツテ居ナイ、斯ウ云フ狀態デ、
  コンナコトヲ持續シテ居ツテ、緊迫セ
  ル時局ニ對應スルコトガ出來マスカト
  言ツテモ其ノ答ガ出テ來ヌト思フ、デ
  アリマスルカラ、一ツ一一ツノコトデモ、
  運營シテ居ルコトガ濟ンダカドウカト
  云フコトガ、主務大臣、政府ニ分ル途
  ヲ講ゼラレタダケデモ迅速果敢ニ動ク
  ト信ジマス、其ノ例ヲ申上ゲマスト、
  尙斯ウ云フコトガアル、是ハ餘程小サ
  イ例デスガ、出征兵士ガ切符ヲ買ヒニ
  行ツタ、割引劵ヲ持ツテ來イ、イヤ、
  割引劵ハ戴イテ居ナイ、イヤイカヌ、
  持ツテ來イ、又他ノ驛ニ行ツタラ、矢
  張リ同ジコトデアル、一體何タルコト
  デアリマスカ、出征兵士ハ御國ノ爲ニ
  速カニ出テ征カウト云フノデ、切符ヲ
  買ヒニ來タノデアル、先般鐵道ニ問題
  ガ起キマシテ、ソレカラ切符ヲ賣ル驛
  ヲ制限シテシマツタ、此ノ非常時ニ於
  テ、交通スル人ハ全ク不便ヲ感ジテ、
  長イ行列ヲ作ツテ居ル、斯ウ云フコト
  デハ全ク是ハ戰時行政ニハナリマセ
  又、又此ノ保險金額、强制疎開ノ費用
  支拂デアリマスガ、保險金ハ會社ニ依
  ツテ支拂ハレマス、割合ト早イヽ强制
  疎開ノ費用ノ方ハ行政廳ノ方カラ支拂
  ハレル、ドウモ暇ガ掛ツテ仕樣ガナイ、
  斯ウ云フ點ニ付テハ何等カ適當ナル御
  考ヲサルヽ必要ガアルト思ヒマス、地
  方ノ總監ニ對シテ權限ヲ委讓サレルト
  云フノデアルカラ、是非此ノ點ニ付テ
  ハ十分ナル政治性ヲ付與セラレルコト
  ヲ必要ナリト思ヒマス、以上ノ點ニ付
  テ、私ハ總理大臣ノ確信ヲ伺ヒタイノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=11

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• 012・鈴木貫太郎

  ○國務大臣(男爵鈴木貫太郞君〕　御答
  ヘ申上ゲマス、國家總動員法等ニ依リ
  マシテ各種ノ統制法規ガ制定サレマシ
  テ、之ガ爲ニ却テ國務ノ進行ニ支障ヲ
  來シテ居ルト云フヤウナ御話デアリマ
  久々、ドウモ左樣ナ點モアルト存ジマ
  ンと、此ノ點ニ付キマシテハ、目下法
  制局ヲ中心ト致シマシテ之ガ整理ヲ取
  急ガシテ居ル次第デアリマス、併シ戰
  時緊急措置法案ハ、國家總動員法デハ
  處理出來ナイコトガアリマス爲ニ、又
  處理出來マシテモ、迅速簡單ニ處理シ
  タイ爲ニ、本案ヲ提出シタ次第デアリ
  Wv.b.又閣議決定等デ處理出來マス問
  題ハ、勿論ソレニ依ツテ著々處理致シ
  テ居リマス、第二點ニ、戰時緊急措置
  法ノ制定ヲ待ツテ居ツテハ間ニ合ハナ
  イデハナイカト云フヤウナ御話ヲ承リ
  マシタガ、勿論急速ニ實施ヲ要スルモ
  ノハ出來ルダケ取急ギ實施シテ居リマ
  スガ、ソレニ付テ尙法的措置ヲ必優ト
  スルモノモアリマスノデ、本案ヲ提出
  シタ次第デゴザイマス、第三點ノ國法
  運營ノ迅速ヲ期スルヤウニトノ御話ニ
  ハ、全ク御同感デゴザイマス、本案モ
  其ノ目的ノ爲ニ提出シタ次第デアリマ
  元カ、御話ノ如ク、法律ガ制定セラレ
  マシテモ、是ノミデハ迅速ヲ期セラレ
  ルモノデハナイト存ズルノデアリマ
  ス、是ハ其ノ衝ニ當ル者ガ迅速果敢ニ
  處理スル心掛ケガ緊要ト存ジマスノ
  デ、此ノ點ニ付テハ始終激勵ヲ致シテ
  居リマス、尙今ノ御話ノ中ニ、中小都
  市ノ疎開ニ付テ、一時之ヲ中止シタ爲
  ニ御疑問、御尋ガアリマシタガ是八、
  改メテヤル必要ガアルノデ、一時中止
  ヲ致シマシタノデアリマス、ソレカラ
  資材ノ疎開等ノ問題ハ只今實ハ實行シ
  テ居リマシテ、相當ノ資材ガドン〓〓
  出テ參ツテ居リマス、併シソレニシマ
  シテモ矢張リ結局法的處置ノ必要ノコ
  トガアリマスノデ、此ノ法案ニ依リマ
  スレバ、ソレガ尙更完全ニ行クト思ツ
  テ居リマス、尙詳シイ所ハ關係大臣カ
  ラ御答スルコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=12

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• 013・安倍源基

  ○國務大臣(安倍源基君)　資材ノ確保
  竝ニ中小都市ノ疎開ニ關スル御質問デ
  ゴザマスルガ、去ル四月ニ閣議決定ニ
  於キマシテ、人員疎開ニ付キマシテハ
  老幼病者、或ハ妊產婦ト云フ風ナ者ニ
  付キマシテハ今後ドシ〓〓疎開セシ
  ムルケレドモガ、其ノ他ノ人ニ付キマ
  シテハ一應疎開ヲ差止メルト云フ處置
  ヲ講ジマシタガ、是ハ三月十日ノ例ノ
  東京ニ於ケル大空襲以後、大都市カラ
  地方ノ中小都市ヘ又中小都市カラ農村
  ヘト云フ風ナ人員ノ疎開ニ付キマシ
  テ、動モスレバザハツイタ傾向ガアツ
  タ爲ニ、サウ云フ措置ヲ執ツタノデア
  リマス、アノ閣議決定ハ、人員疎開ニ
  付テ主トシテ決定シタノデアリマスル
  ガ、資材確保ノ觀點、或ハ地方中小都
  市ノ防衞ト云フ建前カラ、建物疎開ニ付
  キマシテハ、御說ノ通リニマダ〓〓必
  要ガアルト信ジラレマスノデ、先般來
  ソレニ付キマシテ檢討シマシタ結果、
  相當多數ノ家屋ヲ主トシテ地方ノ中小
  都市ニ於テ疎開セシムル、而シテ重要
  施設竝ニ重要建築物ヲ保護シ、又資材
  ヲ確保スルト云フ措置ヲ政府ノ方針ト
  シマシテ決定シマシテ、著々之ヲ實行
  ニ移スベク今ヤツテ居リマス、此ノ次
  ハチヨツト速記ヲ止メテ戴キタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=13

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• 014・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記中止
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=14

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• 015・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記開始

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=15

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• 016・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　總動員ニ關シマスル
  本案トノ關係ニ付テ總理大臣カラ御答
  ガアリマシタガ是ハ未ダ滿足スルモノ
  デハアリマセヌガ、總理大臣ニ法律ノ
  コトヲ伺フコトハ寧ロ滴當デナイト考
  ヘマスノデ、是ハ後ニ伺フコトニ致シ
  さくら而シテ資材ノ確保デアリマスル
  ガ、資材確保ノ點ハ私ハ今日實際ヲ見
  テ居リマスルガ、矢張リ建物ヲ疎開ス
  ル、同時ニ疎開ト云フ動キガ地方ニ現
  レヌケレバイカヌト思フ、處ガ、少シ
  モ現レテ居リマセヌ、チヨツト速記ヲ
  御止メヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=16

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• 017・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記中止
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=17

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• 018・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記開始

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=18

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• 019・安倍源基

  ○國務大臣(安倍源基君)　只今ノ御質
  問デゴザイマスルガ、地方ノ事情ニ依
  ツテモ色々違ヒマス、建物ノ疎開ノ爲
  ニ要スル勞務、其ノ他ノ各般ノ事情ヲ
  考ヘマシテ速カニヤル考デアリマシ
  テ、モウ一通リ地方カラハドウ云フ場
  所ヲ、ドウ云フ範圍ニ於テ疎開スルト
  云フコトハ、地方ノ意見モアリマスシヽ
  ソレニ基キマシテ、本省ニ於キマシテ
  方針ガ決定シテ居リマス、出來ルダケ
  速カニ之ヲ實行シタイト考ヘテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=19

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• 020・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　大體ノ質問ハ此ノ程
  度デ、法案自體細カイコトハ法制局長
  官ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマス、其ノ
  一點ハ、右ニ段々申上ゲマシタヤウニ、
  總動員法其ノ他ノ法律ニ依ツテ政府ニ
  委任セラレタルモノデ、卽チ勅令以下
  ノ立法ガ今日ノ法制ノ複雜煩瑣ヲ來シ
  テ居ルノデアリマス、ダカラシテ、政
  府ガ勅令ヲ以テ適當ナ措置ヲナサレ
  バ殆ド總テノコトハ私ハ出來ルト云
  フ法理上ノ見解デアリマス、議會ヲ煩
  ス法案ト云フモノハ、總理ノ御述ベニ
  ナリマシタ通リ法律ノ關係ダケデ其其
  ノ部分ト云フモノハ極ク僅カデアルト
  私ハ考ヘマスルガ、政府委員ノ御意見
  ハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=20

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• 021・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　現在國家總
  動員法、或ハ其ノ以前ニ於キマシテハヽ
  先程御話ニナリマシタ輸出入品等臨時
  措置法其ノ他所謂委任立法ト云フモノ
  ハ、相當廣汎ニ制定ヲセラレテ居リマ
  スルコトハ事實デアリマス、併シナガ
  ラ是等ノ廣汎ナ委任立法ヲ致シマシテ
  モ、其ノ範圍ハ自ラ限定セラレテ居リ
  マスルノデ、是等ノ委任立法ノミヲ以
  テ致シマシテモ、當面ノ急ニ應ズルコ
  トガ出來ナイ事項ガ色々ゴザイマス、
  併シナガラ此ノ緊急措置法ハ、ソレ等
  ノ事項ノ範圍ノ問題モゴザイマスシ、
  尙其ノ外、例ヘバ總動員法トノ關係ヲ
  考ヘテ見マスルト、法律ノ目的ト云フ
  ヤウナ點ニ於テ、相當ニ違ツテ居リマ
  スルノデ、其ノ目的ヲ達スル手段ニ於
  キマシテモ、是等ノ法律、旣存ノ法律
  トノ間ニ於テ、色々相違ヲスル所ガゴ
  ザイマスルノデアリマス、是等ノ手段
  ノ點ノ相違等ニ付キマシテハ、又御質
  問ニ從ヒマシテ御答ヲ致スコトト致シ
  マシテ、爲シ得ベキ項目、範圍其ノモ
  ノニ付キマシテモ、國家總動員法等ニ
  於テ、委任ヲセラレテ居リマスル事項
  ダケデ足リルノデハナイノデゴザイマ
  シント、本法案ハ時局ノ緊切ナル要請ニ
  應ジマスル爲ニハ、其ノ以外ニ付テモ
  或程度廣汎ニ委任ト申シマスルカ、之
  ヲ御認メ願ヒタイ、斯樣ナ趣旨デゴザ
  イマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=21

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• 022・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　其ノ項目ニ付キマシ
  テ本案ヲ見マスルト云フト、軍需生產、
  食糧、運輸通信、防衞强化、是等ハ旣
  ニ他ノ法律デ相當私ハ賄ヘルト考ヘマ
  ス、稅制ノ適正化ニ付テハ少シ緣遠イ
  ヤウニ思ヒマス、又戰災ノ善後措置ト
  云フコトモ、是モ亦新シイコトデゴザ
  イマセウ、ガ、併シ最モ重要ナルコト
  ハ生產增强、食糧、運輸通信ノ問題、
  此處ニ在ルト思フノデアリマス、ソレ
  故ニ私ハ申スノデス、此ノ法令ヲ更ニ
  作ツテソレカラ國務ヲ遂行スルト云フ
  ノデハ、此ノ緊迫シタル事態ニ全ク遠
  ザカツテ居ル、適合シテ居ナイノデア
  リマス、然ラバ是等ノ法令ヲ何處迄御
  作リニナツテ運營ガ出來ルト御考ニナ
  八七、若シ私ノ考ヘルガ如キ緊急狀態
  ニ置カレルナラバ、ドレダケノ制定ガ
  出來ルカト云フコトヲ承リタイノデア
  リマス、具體的ノ御話ヲ伺ヒマセヌト、
  斯ウ云フ場合ニ抽象的ノ御話ヲ伺ツテ
  モ、一向役ニ立タヌノデアリマス、而
  シテ私ハ尙玆ニ附加ヘテ申上ゲタイコ
  トハ緊急對策デアルカラ、誠ニ簡素
  化シタモノデナケレバナリマセヌ、此
  ノ故ニ現在ノ煩瑣ナ狀態ニ旣ニ入ツテ
  困ツテ居ル、ソレカラ後ヘ下ツタラ宜
  1後ヘ下レバ廣イ動キノ出來ル所ガ
  アル、其處ヘ下ラズシテ、更ニ此ノ煩
  瑣ナ所カラ向フヘ出テ行ツテ、今一ツ
  何カノ煩瑣ナモノヲ作ラウ、此ノ根本
  的ノ考ヘ方ガ間違ツテ居ル、ソレガイ
  カヌ、後へ返ツタラ宜シイヽ其處ガイ
  ケナイノデアリマス、而シテ更ニ法令
  ヲ出シテ行クト云フコトニ付テ、之ガ
  一度法令ヲ出スト云フ場合ニナリマス
  トヽナカ〓〓サウ單純ニ行ケルモノヂ
  ヤナイ、ソレガ單純ニ行ケルト云フナ
  レバ、現在ヲ變ヘレバ宜イ、其處ガ私
  ニハ甚ダ疑問ノ所ナノデアリマス、ド
  レダケノ期間ヲ以テ出來ルカ承リタ
  イ

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• 023・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　只今項目ノ
  點ニ付テ、例ヘバ防衞ノ問題トカ、或
  ハ稅制ノ適正化ノ問題デアリマスルト
  カ、或ハ戰災ノ善後措置、是ハ御話ノ
  通リ從來ノ委任立法ノ中ニハ、大體ニ
  於テ存在ヲ致シテ居ナカツタ事柄ト存
  ジマス、併シナガラ肝腎ノ只今山岡サ
  ンカラ御話ニナリマシタ軍需生產ノ維
  持增强、食糧ノ確保ト云フヤウナ問題
  ニ限ツテ考ヘテ見マシテモ、矢張リ從
  來ノ委任立法ニ於テハ、ソレ〓〓限定
  ガゴザイマスルノデ、當面ノ要求ニ應
  ジマスル爲ニ、更ニ或程度廣汎ナ措置ヲ
  爲シ得ル、根據ヲ認メル必要ガアラウ
  ト考ヘマシタノデアリマス、問題ハ法
  令ノ山積ヲ致シテ居リマスルコトガイ
  ケナイノデアツテ、現在デハ法令ノ簡
  素化ヲ圖ルコトガ必要デアル、然ルニ
  更ニ新ラシイ法律ヲ重ネルコトハ如何
  ナモノデアラウカト云フ御質問デゴザ
  イマスガ、仰セノ通リ現在法律制度ガ
  非常ニ複雜ヲ致シテ居リマスルト云フ
  コトハ事實デゴザイマス、是等ノ複雜
  ヲ來シタト云フ根本ノ原因ハ矢張リ其
  ノ諸般ノ情勢、殊ニ經濟方面ニ付テ統
  制ヲシテ行カナケレバナラヌ必要ニ基
  イテ、法令ガ複雜ニナツテ參リマシタ
  コトハ勿論デゴザイマスルガ、現段階
  ニ於テ、是等ノ複雜ナル統制法規等ヲ
  簡素化スル必要ガアリマスルコトハ仰
  セノ通リデゴザイマス、唯簡素化ヲ致
  シマスルニ付テハ、矢張リ正當ナル方
  法ニ依ツテ簡素化ヲ圖ル必要ガゴザイ
  マスルノデ、其ノ簡素化ヲ圖ル途ヲ本
  法案ニ於テ附ケヨウト云フノガ、本法
  案ノ一ツノ狙ヒ所デアルト存ジマスノ
  デアリマス、卽チ本法案ニ於キマシテ、
  政府ハ他ノ法令ニ拘ラズ、必要ナル措
  置ヲ爲スコトガ出來ルコトト致シテ居
  リマスルノハ、例ヘバ軍需生產等ノ場
  合ニ於キマシテ、煩瑣ナル統制法規ヲ
  緩和、撤廢ヲスルト云フヤウナ、應機
  ノ措置ヲ爲スト云フコトガ、此ノ法案
  ニ依ツテ可能ニ相成ルコトト考ヘルノ
  デアリマス、大體是等ノ簡素化ヲ圖ル
  場合ニ於テ、今度手段デゴザイマスガ、
  非常ニ又法律ヲ作ツタリ何カシテ、間
  ニ合ハナクナルンヂヤナイカト云フ御
  話デゴザイマス、物ニ依ツテ勿論、併
  シナガラ必要ナル法律ハ、簡素化ノ爲
  ニモ作ツテ參ラナケレバナリマセヌト
  思ヒマスガ、事態ノ緊急ノ場合ニ於テ、
  應機ノ措置ヲ爲シテ參リマスル場合ニ
  ハ、仰セノ通リ法規命令ヲ出スト云フ
  バカリニ限ラナイデ、隨時必要ナル處
  分ヲ爲スト云フコトモ、全ク仰セノ通
  リ必要デアラウト考ヘマスルノデ、從
  來ノ此ノ種ノ法律ニ於キマシテハ、單
  ニ或ハ勅令ヲ發スルコトヲ、委任ヲス
  ルト云フヤウナ點ニ止ツテ居リマスル
  ガ、ゝ本法ニ於キマシテハ法規命令ヲ發
  スル以外ニ、他ノ法令ニ拘ラズ、應機
  ノ處分ヲナシ得ルヤウニ致シテ居リマ
  スルノデ、是等ノ點ハ山岡委員ノ仰セ
  ニナリマシタ趣旨ガ、本法ニ依ツテ實
  現セラレマスルコトト考ヘテ居ルノデ
  アリマス

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• 024・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　總動員法其ノ他ニ於
  テハ、事項ガ限定サレテ居ルカラ、ソ
  レデ足ラナイ部分ガアル、斯ウ云フ風
  ニ言ハレル、其ノ點ニ付キマシテハ
  私モ先頃カラ申シテ居ル、極メテ僅カ
  ノ部分デ、總動員法ニ手ヲ入レレバ、
  十分ニ動クシ、又ドウモ御說明ニ依レ
  バ過去ノ法規ニ囚ハレテ、法制ヲ整備
  シテ形ヲ何處迄モ附ケヨウト云フ御考
  デアル、斯ウ云フ際ニハサウ云フコダ
  ハツタコトデナシニ、思ヒ切ツタ措置
  ヲスルト云フ御考ヘ方ヲサレルノデア
  ルカ、矢張リ過去ノヤウニ、一々法令
  ヲ拾ッテ考ヘテ行カレルデアルカ、少
  シ諄イヤウデアリマスガ、重ネテ其ノ
  點ヲ御尋ネ致シマス、更ニ處分ノ問題
  ニ觸レテ參リマシタカラ、玆ニ私モ承
  ルノデアリマスガ、處分ト云フコトハ
  一體如何樣ナコトヲナサレルノデアル
  カ、二三ノ例ヲ御示シヲ願ヒタイ,何故
  サウ云フコトヲ申スカ、是ハ政府ノ面
  カラ御考ヘニナツテ、過去ノ法令ガ複
  雜煩瑣デ、國民ハ全ク拘束セラレテ·一
  步モ動カナイト言ウテ宜シイト云フヤウ
  ナ狀態ガ今日デアル、ソレ故ニ政府ハモ
  ウ少シ自由ニ動イテ、軍需品ノ買入レ
  其ノ他ニ付テモ、自由ニシタイト云フ
  コトガ、此ノ中ニ含ンデ居ルト私ハ考
  ヘテ居リマス、國民ハ主タル問題ハ生
  活問題ニアリマスガ、生活問題ニ付テ、
  モウ少シ、闇トカ何トカ云フコトヲ、
  言ハレナイヤウニ行キタイト、賣ル方
  モ買フ方モ考ヘテ居ル、ソレガ今日ハ
  サウ云フ風ニ行カヌノデアル、政府ハ
  處分ニ依リマシテ、此ノ法ニ依ツテ、
  之ヲ正則化シテ參リマス、國民ニハ其
  ノ途ガナイ、デアリマスカラ、全ク片
  手落デアル、又、片手落デアルカラ法
  令ヲ出シテ、政府モ國民モ拘束スル、
  サウナレバ國民モ平等ナ動キガ出來マ
  スカ、サウナレバ法令ノ上ニ法令ヲ作
  ル、サウ作ラヌト云フ御話デアリマス
  ルガ 。サウナツテ來ル、ソレデ國民ノ
  方ヲ顧ミテ、法令ヲ相當作ラネバナラ
  ヌト云フコトニ、私ハ落チルト思ヒマ
  ス、國民ノ側ニ付テハドウ考ヘルカ、
  其ノ點ヲ承リタイ

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• 025・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　思ヒ切ツタ
  措置ヲスル必要ガアルノデハナイカト
  云フ御話ハ、誠ニ御尤モナ點ト存ジマ
  スルノデ、此ノ法律案ニ於キマシテハ
  出來ルダケ簡素ナ、簡素ト申シマスル
  カ、敏速ナ措置ヲナスコトガ出來ルヤ
  ウニ致シマスル爲ニ、先程カラ御說明
  ヲ申上ゲテ居リマスルヤウニ、外ノ立
  法トハ違ヒマシテ、此ノ法律ニ於キマ
  シテハ「必要ナル命令」ヲ發スル、此ノ
  命令ハ省令其ノ他ノ、勅令以外ノ簡便
  ニ敏速ニ發シ得ラレマス法規命令ヲ豫
  想致シテ居リマスルシ、更ニ敏速ニ措
  置ヲヤルコトヲ一層確保致シマスル爲
  二、「處分ヲ爲スコトヲ得」ト云フコト
  モ規定ヲ致シテ居リマスノデ、此ノ點
  ハ山岡委員ノ仰セニナリマシタ通リノ
  趣旨ガ規定サレテ居ルト思ツテ居リマ
  ス、處分ト云フノハドウ云フモノガア
  ルカト云フコトヲ事例ヲ擧ゲロト云フ
  御話デゴザイマスガ、只今問題ニナリ
  マシタ事項ニ卽シテ御話ヲ申上ゲマス
  ルト、例ヘバ統制法規ガ非常ニ複雜ニ
  ナツテ居ル、之ノ適用ヲ排除シテ、簡
  便ニ致シテ行カウト云フ場合ニ、色々
  ノ方法ガゴザイマセウ、例ヘバ現在ノ
  統制法令ノ例外ノ法規ヲ作ルト云フコ
  トモ一ツノ方法デゴザイマセウ、又サ
  ウ云フヤウナ法規ヲ作ラナイデ、現實
  ノ場合ニ法規ノ適用ヲ撤廢ヲスル、個
  個ノ場合ニ旣存ノ法規ラ依ラナイデ宜
  イト云フヤウナ事例ニ依ツテ旣存ノ法
  規ガ適用ヲ排除セラレルト云フコトモ
  ゴザイマシテ、斯樣ナ場合ニ於キマシ
  テハ、極メテ敏活ニ目的ガ達成サル
  下、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス

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• 026・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　ドウモ御說明ガ徹底
  シマセヌデ、重ネテ聽カナケレバナラ
  ヌノデスガ、ドウカ私ノ御尋ネスルコ
  トニピツタリ合ツテ御說明願ヒタイト
  思ヒマス、處分ノ內容ニ付テハ一應分
  リマシタガ、處分ト云フコトデ參リマ
  ス、政府ノ方ノヤリ方ハ出來ルガ、
  國民ノ方ノ側ハドウ云フヤウニナルカ
  ト云フ點ニ付テ適切ナ御答ガナイノデ
  アリマス、此ノ點ヲドウ云フ風ニナサ
  ルノデアルカ、ハツキリト承リタイ、
  ソレカラ又何時頃迄ニ、此ノ法律ガ協
  贊サレタ後ニ實施ニ入リ得ルカ、卽チ
  命令ガ何時迄掛ルカ、ソレヲハツキリ
  御答ヘ願ヒタイト思ヒマス

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• 027・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　政府ノ方ハ
  是デ色々撤廢ヲスル或ハ色々ノ措置ヲ
  スルコトガ出來ルガ、國民ノ方ハドウ
  カト云フ御尋ネデゴザイマス、或ハ私
  ガ了解ヲ違ヘテ居ルカモ知レマセヌ
  ガ、出來ルダケ國民ノ方面ノ意向モ承
  ルト云フ必要ヲ感ジマスルノデ、此ノ
  第四條ニ於キマシテ一ツノ委員會ヲ作
  リマシテ、出來ルダケ之ニ對シテ諮問
  ヲ致シマシテ、適當ナ措置ヲ致シテ參
  リタイ、斯樣ナ考デ居ルノデアリマス)
  尙此ノ法律ノ施行ニ付キマシテハ、若
  干ノ勅令ノ御制定ノ手續トカ云フ準備
  ガ掛リマスガ、併シナガラ此ノ法律ガ
  御協賛ヲ得マシタナラバ、時ヲ移サズ
  之ヲ施行ヲ致シテ參リタイ、斯樣ナ考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=27

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• 028・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　時ヲ移サズ運營シテ
  參ルト云フコトハモウ當然デ、此ノ法
  律自體ハサウデアリマスガ、命令ヲ出
  シント。相當ニ整備シナケレバ豫期ノ目
  的ヲ達セラレナイ、又其ノ命令ヲ出シ
  テ、相當ニ複雜煩瑣ナ過去ノ法令カラ
  離レルコトノ出來ル時ハヽ一體何時頃
  迄ニソレガ出來ルカ、其處ヲ御說明下
  サラヌト少シモ了解出來マセヌ、ソレ
  カラ今一ツ特ニ承ツテ置キタイコト
  ハ、此ノ點ガ政府ト御考ガ違ツテ來ル
  所デアリマスガ、私ハ、勅令ヲ以テ、
  勅令、省令等ニ委任シテアル、ソレデ
  アリマスカラ、委任立法ニ依ツテ複雜
  煩瑣ニシタノデアルカラヽ其ノ複雜煩
  瑣ハ政府自ラガ勅令、省令等ヲ以テ排除
  シ變更スレバ出來ル、然ラバ此ノ法律
  ノ賄フ部分ト云フモノハ、極ク少イモ
  ノダト、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマ
  天下ろ又今後此ノ法律ニ拘ラズ、理論
  ノ上カラ勅令ヲ以テ其ノ煩瑣ナ關係
  ヲ、前ノ總動員法等ニ於ケル委任ノ力
  ニ依ツテ變更、廢止スルコトガ出來ル、
  斯ウ云フ風ニ考ヘマスガ、其ノ點ニ付
  テ御意見ヲ承ツテ置キタイ

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• 029・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　過去ノ色々
  ノ法律ニ依ツテ委任セラレテ居リマス
  ル事項ガ複雜化ヲ來シテ居ル、ソレヲ
  排除致シマスルノハ、矢張リ總動員法
  等ノ委任ニ依ツテ勿論出來ル部分ガ多
  カラウト存ジマス、併シナガラ、總動
  員法等ニ規定ノナイ事項ガ度々申シマ
  スルヤウニ色々ゴザイマスルノデ、是
  等ノ點ニ付テハ自然新ラシイ立法ガ、
  其ノ部分ニ付テダケ考ヘテ見マシテモ
  必要ニナツテ參リマスルノデ、又總動
  員法ニ付テダケ申上ゲマシテモ、總動
  員法ニ於テハ勅令ヲ以テ規定ヲスルト
  云フコトニナツテ居リマス、從ツテ新
  ラシイ勅令ヲ以テ過去ノ勅令ヲ排除ス
  ルコトハ出來マスガ、勅令デナケレバ
  ナリマセヌノデアリマス、本法ニ於キ
  マシテハ必ズシモ勅令ニ依ラナイデ、
  或ハ命令ニ依リ、或ハ非常ナ時局ガ切
  迫致シテ居リマスル場合ニ於テハ、地
  方總監府令ト云フヤウナモノデモ撤廢
  ガ出來ルト云フ風ニナツテ居リマシ
  テ、其ノ段階ノ關係ニ於テモ排除ノ簡
  易化ト云フモノガ、本法ニ於テハ認メ
  ラレテ居ルノデアリマス

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• 030・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　私ハ尙此ノ第一條第
  六ノ「戰災ノ善後措置」、此ノ點ニ付テ
  一ツ具體的ノ事項ヲ承リタイ、此ノ善
  後措置ト云フモノハ如何ナル範圍迄ヲ
  想像セラレテ居リマスカ、其ノ一ツト
  シント、土地ノ利用ノ問題、地代ノ問題
  ト云フヤウナモノガ先般ノ豫算委員會
  ニ於テ司法大臣ヨリ御答ガアツテ、至
  急ニ措置ヲスルト云ツテ、今日迄措置
  ガナイ、ソレ等ノ措置モ此ノ中ニ入ツ
  テ居ルカ、又入ツテ居ルトスルナラバ、
  此ノ法令デ動クコトニナリマスルカ、
  ドノ程度ニ進行シテ居ルカ、斯樣ナコ
  トハ速カニ措置ヲセラレル、ドウモナ
  サツテ居ルコトガ總テ平時的デアル
  少シモ戰時緊急事態ニ對應シテ居ラヌ
  ト云フヤウナ感ガアリマス、其ノ點ノ
  御說明ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=30

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• 031・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　只今ノ御尋
  ハ)先般ノ通常議會ノ豫算委員會ノ席
  上ニ於テモ御答ヘ致シマシテ、其ノ後
  關係各省ノ間ニ協議ヲ致シテ居ツタノ
  デアリマスガ、何分ニモ利害關係ガ非
  常ニ面倒デアリマシテ、協議ガ纒ラズ
  ニ其ノ遲延シタコトヲ私モ甚ダ恐縮致
  シテ居リマス、大體ニ於テ近ク纒リ得
  ルト思ヒマスカラ、本法ガ成立致シマ
  シタナラバ、第六號ノ戰災ノ善後措置
  ニ於キマシテ、戰災地ニ於ケル動產、
  不動產、所有權ノ問題トカ、或ハ賃借
  權ノ存否ノ問題、或ハ停止ノ問題等ニ
  付キマシテ、至急措置致ス考デ居リマ
  ス

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• 032・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　私ハ皆樣ノ御質問モ
  ゴザイマセウト思ヒマスノデ、此ノ程
  度デ、一應質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=32

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• 033・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　休憩ヲ致
  シマス、午後ハ一時三十分カラ開會致
  シンズ
  午後零時二十九分休憩
  午後一時四十五分開會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=33

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• 034・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　是ヨリ午
  前ニ引續イテ再開致シマス、通告順ニ
  依リマシテ、穗積男爵

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=34

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• 035・穂積重遠

  ○男爵穗積重遠君　私ハ議會ニ於キマ
  シテハ新參者デアリマシテ、總テノ慣
  例其ノ他ヲ存ジマセヌ、唯チヨツト奇
  妙ニ感ジマスコトハ世間デハト申シ
  マスカ、私ガ長年居リマシタ大學關係
  ナドデハ、全體質問ノ方ハ短クテ、說
  明ノ方ガ長クアルベキ筈ダト思ヒマ
  ス、處ガ、此ノ委員會等デ伺ツテ居リ
  マスト、ソレハ勿論サウ云フ必要ガア
  ツテノコトデアリマスガ、質問ガ可ナ
  リ長クテ說明ハ割合ニ短イト云フヤウ
  ナ場合ガ多イノデアリマス、又モウ一ツ
  ハ、委員會ノ重キヲ置ク所ハ、質問固ヨ
  リ大事デアリマスケレドモ、後ノ討論
  ノ方ガ大事ダト思フノデアリマス、私
  ハ寧ロ討論ノ時ニ少シ時間ヲ戴イテ、
  其ノ時ニ一言サシテ戴キタイト思ヒマ
  スノデ、質問ハモウ趣意ノ分ル程度デ、
  極メテ簡單ニ申上ゲマス、唯、質問ガ
  短イカラ答辯モ短クテ宜イト御考ヘ下
  サラナイデ、御答辯ノ方ハ、徒ニ長イ
  コトヲ求メルノデハアリマセヌケレド
  〓、相當納得ノ行ク御答辯ヲ戴キタイ
  ト思フノデアリマス、マダ總理ハオイ
  デニナリマセヌガ、何レ私ノ伺フノハ
  法律問題デアリマスカラ、總理ニ御答
  辯ヲ顯ハウトハ思ヒマセヌ、併シ穗積
  ガ斯ウ云フコトヲ申シテ居ツタト云フ
  コトヲ、ドウゾ後デ御傳ヘ戴キタイト
  思フノデアリマス、先ヅ第一ニ伺ヒタ
  イコトハ、簡單ニ申シマスト、本法案
  ハ憲法ノ實質上、適法ナリヤ、斯ウ云
  フコトデアリマス、成ル程法律ノ形式
  トシテ斯ウ云フコトラサレル、形式ハ
  適法ト言ツテ宜イカモ知レマセヌガ、
  果シテ憲法ノ規定上或ハ規定ニハツキ
  リ現レテ居ナクテモ、精神上立憲政治
  ノ根本ノ考ノ上カラ適法ノコトデアル
  カ、法制局長官ハ正當ナ方法ニ依ル簡
  素化ト、斯ウ言ハレマシタ、併シ是ガ果
  シテ本當ニ正當ナ方法デアルカ、之ヲ
  一ツ伺ヒタイ、細カイコトハ又色々後
  ニ御議論モ出マセウガ、要スルニ非常
  ニ範圍ノ廣イ委任立法デアリマシテ、
  新聞ナンカデモ全權委任法ト書イテア
  リマス、委任立法ノ限界ハ何處迄カ、
  相當前カラ是ハ議論ノアル所デアリマ
  シン、例ノ所謂六三問題ト言ハレマシ
  タ臺灣ノ律令ノ問題ナドノ當時カラヤ
  カマシイノデアリマス、私事ヲ申シテ
  ハ恐レ入リマスガ、私ノ叔父ノ穗積八
  束ガエラクヤカマシク申シマシテ、臺
  灣ニ怪物アリ、法律ニ非ズ、命令ニ
  非ズ、律令ト自ラ號シテ、白晝橫行シ
  云々明治ノ聖代ニ源三位賴政ナキカ、
  嗚呼源三位賴政ナキカト云フ文章ヲ書
  キマシタ、私ハ當時學生デアリマシテ、
  今デモ其處ダケハ覺エテ居ルノデアリ
  マスガ臺灣朝鮮デ問題ニナツタコト
  ヲ、或意味デ全國的ニ行ハウト云フコ
  トニナルノヂヤナカラウカ、成ル程事
  項モ限ツテアル、範圍モ限ツテ居ル、
  ケレドモ、其ノ事項ト云フノハ非常ニ
  廣イ事項デアリマス、戰爭ニ關スルト
  云フコトデアリマスガ、今日ノコト一
  トシテ戰爭ニ關スルコトデナイモノハ
  ナイノデアリマス、竝ベテアル事項モ
  多イ、オシマヒニ其ノ他ト、斯ウアル、
  モウ至ラザルハナイノデアリマス、サ
  ウ云フ廣イ委任立法ト云フモノガ果シ
  テ憲法ノ精神上、適法デアルカ、之ヲ
  一ツ司法大臣或ハ法制局長官カラ明確
  ニ伺ヒタイト思フノデアリマス、私ハ
  寧ロ憲法ノコトハ一向心得ナイト申サ
  ナケレバナラヌノデアリマスガ、專門
  ノ民法ダツテ心得テ居ル譯デハナイ
  ガ、例ヘバ人ニ委任スル、或事柄ニ付
  テ委任スルト云フコトハ固ヨリ適法デ
  アリ、契約ハ有效デアリマスガ、俺ノ
  總テノコトヲオ前ニ任セルヽ一身ノコ
  ト總テヲオ前ニ任セルト云フ、サウ云
  フ委任契約ガ果シテ有效ナノカドウ
  カ、ソレハ卽チ其ノ人ノ人格ラ減スル
  コトニナルノヂヤナカラウカト云フ氣
  持モ致スノデ、民法ト憲法ト竝ベテ申
  スノデハアリマセヌガ、苟モ憲法ガ法
  律命令ノ區別ヲ立テテ、法律ハ是ダケ
  ノコトヲスル、其ノ以外ハ命令ニナツ
  テ居ルト云フ時ニ、總テノコトヲ命令
  デト云フコトヲ法律ヲ以テ決メルト云
  フコト、或ハモウ一步言ヘバ、議會ガ、
  ソレハモウスツカリ任セルト云フコト
  ガ果シテ適當デアルカドウカ、此ノ法
  律ヲ出サレタノガ議會ヲ尊重シテノ
  話御趣意ハ能ク分リマスガ、果シテ
  尊重ニナルノデアラウカ、政府ノ方ト
  シテハ議會ヲ尊重ナサルカモ知ラヌ
  ガ、議會トシテ自ラ輕ンズルコトニナ
  ルノヂヤナイカ、サウ云フ氣持モ致ス
  ノデアリマス、其ノ邊ノ所ヲ一ツ伺ヒ
  タイノデアリマス、モウ一ツノ問題ハ、
  丁度先程山岡先生ノ言ハレマシタコート
  デアリマスガ、此ノ緊急ノ狀態ニ應ジ
  テ、本案ヲ出スト、斯ウ云フコトデア
  ルガ本案ヲ以テ.此ノ緊急ノ狀態ニ應
  ジ得ルヤ、是ハ却テ更ニ法網ヲ作ラム
  トスルモノ、屋上屋ヲ架スルモノデア
  リ、過去ノ法治制度ノ因襲ニ捉ハレル、
  サウシテ又實際カラ見ルト此ノ法律ノ
  賄フ部分ハ極メテ少イ、一體何ノ必要
  アツテ出スノカ、斯ウ云フ御質問デア
  ツタノデアリマス、私モソレハ一ツ伺
  ハウカト思ツタノデアリマスガ、其ノ
  細カイ點ハ先程色々御話ガアリマシタ
  ガ、山岡先生ハ法令ヲ作ラズシテ、臨
  時緊急ノ措置ヲシロ、サウ云フ方法ハ
  ナイカ、思ヒ切ツタ措置ヲ此ノ際執ル
  必要ハナイカト云フコトデアリマス、
  ソンナラドウ云フ方法ガアルカ、勿論
  思ヒ切ツタ措置ナルモノハ、唯何等ノ
  根據ナク、憲法ノ全然認メザル措置デ
  アツテハ相成ラヌ、然ラバ憲法ニサウ
  云フ方法ハナイカ、卽チ憲法三十一條
  ノ非常大權、是デヤナイカ、山岡先生
  ノ御議論ヲ伺ツテ居ルト、ドウシテモ
  非常大權ト云フ所ヘ行カナケレバナラ
  ヌ、非常大權ト云フコトヲチヨツト言
  及サレマシタガ、ソレデ終ツタノデ山
  岡先生ノ御趣意ハ分リマセヌガ、アヽ
  云フ風ニ論ジテ行ケバ或場合ニハ此ノ
  法案デハ間ニ合ハナイ、ドウシテモ憲
  法三十一條デ行カナケレバナラヌノヂ
  ヤナイカ、斯ウ云フ風ニドウモナリサ
  ウデアル、實ハ私ハソレヲ思ツテ居タ
  ノデアリマス、殊ニ先程陸軍大臣、外
  務大臣ノ御說明ヲ伺ヒマシテ、愈〓サ
  ウダト云フコトヲ痛感スルノデアリマ
  六々、此ノ點ハ總理ニ伺ヒタイノデア
  リマスガ、總理ノ御決心如何、固ヨリ事
  非常大權デアリマシテ、御上ノ思召ニ出
  ルコト、彼此申上ゲルコトデハアリマ
  セヌガ、輔弼ノ責アル總理大臣トシテ
  ハ、適當ナル時機ニ適當ナ奏請ヲナサ
  ル御責任ガアルノデハナイカ、マダ其
  ノ時機デハナイト御思ヒニナルノカ、
  或ハ其ノ必要ハ全然ナイ、是デ濟ムノ
  ダト御思ヒニナルノカ、ソコラ邊ヲ實
  ハ伺ヒタイノデアリマスガ、第二點ハ
  非常大權ニ關スル政府ノ御考如何、直
  チニソレヲ奏請ナサイト、其處迄申ス
  ノデハアリマセヌガ、一體ドウ考ヘテ
  居ラレルノカト云フコトヲ伺ヒタイ、
  一體法律論トシマシテハ、非常大權ハ
  サウ云フ廣イモノヂヤナイ、第二章ノ
  終ヒニクツ付イテ第二章ノ權利ノ保障
  ダケニ關スル問題ダト云フ議論、或、
  是ガ今迄ノ通說カモ知リマセヌ、私
  專門外デアリマスカラ深ク分リマセヌ
  ガ、ソレデハ非常大權ト云フ名前モ學
  者ガ附ケタ名前デアリマスガ、ドウモ
  大シタコトデモナイヤウニモチヨツト
  思フ、ソレダケノコトナラ今迄旣ニ國
  家總動員法其ノ他デ大抵片附イテ居ル
  コトデハナイカト思フノデ、三十一條
  ノ文章ノ上カラ見マシテモ、「本章ニ揭
  ケダル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合
  二四分-天皇大權ノ施行ヲ妨クルコト
  ナシ」先ヅ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ
  天皇大權ノ施行ガアツタ場合ニ、此ノ
  本章ハソレヲ妨ゲナイト云フノデ、何
  カ根本ニ非常大權ノ發動ト云フモノガ
  アルノヂヤナイカ、ソレデナケレバ意
  味ヲナサヌノヂヤナイカ、非常大權ガ
  發動サレタナラバ第二章ナンカ問題デ
  ナイ、斯ウ云フコトデナイト意味ヲナ
  サヌト思フノデアリマス、又兎ニモ角
  ニモ憲法解釋ノ權威原典トシテ宜シイ
  伊藤公ノ憲法義解ニ「非常ノ變局ノ爲
  ニ非常ノ例外ヲ揭クルコトヲ怠ラス··
  國家及國民ヲ救濟シテ其ノ存立ヲ保
  全スル爲ニ唯一ノ必要方法アリ···
  國家ニシテ若此ノ非常權ナカリセハ國
  權ハ非常ノ時機ニ際リテ其ノ職ヲ盡ス
  ニ由ナカラムトス」、斯ウ三十一條ノ所
  ノ解釋ニ書イテアルノデアリマス、唯
  第二章ノ臣民ノ權利保障ヲ除クト云フ
  ダケノ意味ニハ餘リ言葉ガ强過ギルノ
  デアリマス、矢張リ斯ウ云フ根本ノ問
  題ガ考ヘラレテ居ルノヂヤナカラウ
  カ、是ハマア憲法義解ダケノ話デアリ
  マスガ、其ノ方ノ專門ノ學者達ノ說明
  ニ依ルト、憲法義解ノ本ニナツテ居ル
  色々ノ文書等ニサウ云フ考ガ非常ニ强
  ク表レテ居ルト言フ、是ハ私自身デ調
  ベタノデアリマセヌカラ、强ヒテ申上
  ゲマセヌガ、ドウモサウ云フコトニ考
  ヘナイト、非常大權ト云フモノノ意味
  ガ分ラヌノヂヤナイカ、コンナ風ニ思
  ヒマス、ソコデ政府ハ此ノ非常大權ヲ
  ドウ解釋シテ居ラレルカ、若シ畏クモ
  サウ云フ御發動ガアツタ場合ニ、政府
  ハ直チニソレヲ承ル用意ガアルカ、憲
  法第三十一條ニハ唯消極的ニ「妨クル
  コトナシ」トアルダケデ、非常大權ノ
  御發動ガアツタラ、ドウ云フ建前デ行
  クノカ、ドウ云フ組織デ行クノカト云
  フヤウナコトハ一向表レテ居リマセヌ
  シ、今迄ノ憲法學者モソレハ考ヘテハ
  居ラレマセウガ、著書等ニハ其處ハ
  表レテ居リマセヌ、サウ云フ御用意ガ
  出來テ居ルノカ、此ノ場合デアルカラ
  明日ニモ非常大權ト云フ仰出サレガ
  アルカモ知レヌ、其ノ時政府ハ直チニ
  ソレヲ御受ケシテ著々ト政治ニ實現ス
  ル御用意ガアルノカドウカト、伺ツテ
  ハ失禮デスガ、アルデゴザイマセウ
  サウ云フコトヲ伺ヒタイノデアリマ
  ス、要スルニ、私ノ伺ハムトスルコト
  ハ本法案ガ本當ニ適法カドウカ、而シ
  テ又本法案ナドノ場合ニハ百尺竿頭一
  步ヲ進メテ、一步ドコロデハナイ、飛
  躍シテ非常大權ト云フヤウナ所ヘ行ク
  ノヂヤナカラウカ、サウ云フコトガ考
  ヘラレル時機デハナイデアラウカ、又
  其處ヘ行カナクテハ枝葉ノ問題デ、根
  本ノ問題ガ解決シナイノデハナイカ、
  根本ノ問題ハ何カト云フコトハ、私ハ
  此處デ大シテ申上ゲマセヌガ、常ニ言
  ハレル軍官民ノ一致、國務ト統帥ト云
  フヤウナ根本間題ヲ本當ニ解決スル爲
  ニハ、唯吻合調整ト云フヤウナ二ツ列
  ベテ口ヲ合ハセルト云フコトデナシ
  二、モツト根本的ナ斷然タル御處置ガ
  要ルノヂヤナイカ、根本ノ建直シガ要
  ルノヂヤナイカ、玆ニ一億ノ國民ガ仰
  ギ望ンデ居ルノハ大號令ノ出ルコト、
  大號令ガ出テ民心ヲ一新スルト云フコ
  トガ、今日ノ場合ニ非常ニ大事ナコト
  デ、國家總動員法デハ足リナイカラ、
  モウ一ツ戰時緊急措置法ヲ作ル、ソレ
  ハ事務ノ取扱ノ上カラハ、宜イカモ知
  レヌガ、是デハ民心ヲ一新スル大號令
  ニハナラナイノヂヤナイカ、其ノ點ノ
  御考ハ果シテドウカ、マダソンナ時機
  デハナイ、是デ片附クノダト云フコト
  デアルノカ、ソコラ邊ヲ伺ヒタイ、私
  ハ飽ク迄モ法律家デアリマスカラ、ド
  ンナコトガアツテモ憲法ヲ踏ミ外シタ
  クナイト思ヒマス、委任立法々々デ段々
  擴メテ行ツテ、思ハズ憲法ノ埓外ニ
  出ルコトヲ非常ニ恐レル、憲法ハ初メ
  カラチヤント斯ウ云フコトヲ豫期サレ
  テ居ル、斯ウ云フ場合ニハ非常大權デ
  行クノデアルゾヨト云フコトヲ御示シ
  ニナツテ居ルノデアリマスカラ、ソレ
  デ行ケバ何モ憲法ノ外ヘ出ル危險ハナ
  イ實際ソレヲヤツテドレダケノ效果
  ガアルト云フコトハ、ヤリ方ト、根本
  ノ人ノ問題デアリマスガ、併シ安心シ
  テ憲法上適法ナリト云フコトデ行ケル
  途ハ其處ニアルノデアル、委任立法、
  此ノ位ナラ宜インダト云フヤウナ言ヒ
  譯ヲシナイデ安心シテ行ケル途ハ其處
  ニアル、又今日ヲ措イテソレヲ働カセ
  ル時ガアルデアラウカ、其處迄ノ事態
  ニチツタコトハ御互ニ非常ニ遣憾トス
  ル所デアリマスガ、今日コソサウ云フ
  非常ノ、文字通リ非常大權ヲ發動サセ
  ル時機ヂヤナイカト云フコトヲ、私
  國家ヲ憂ヘル餘リニ痛切ニ考ヘルノデ
  アリマス、サウ云フ問題ヲ此ノ貴族院
  デ捲起スト言ヒマスカ、非常ニ恐縮ヲ
  致シマスガ)併シ今日其ノ問題ヲ論ゼ
  ズシテ何ヲ論ズルカト云フヤウナ氣持
  ガ致スノデアリマシテ、敢テ新參者ガ
  何カヲ申出デテ居ルヤウナコトデアル
  ノデ、其ノ邊ノ私ノ氣持ヲ御酌ミ下サ
  ツテ、一ツ御互ヒ同士、法律家トシテ
  成ル程ト私ニ言ハセルヤウニ、ソレデ
  安心致シマシタト言ハセルヤウナ御答
  辯ヲ伺ヒタイノデアリマスゝ序ニモウ
  一ツ、チヨツト問題ヲ外レルヤウナコ
  トデアリマスガ、情報局總裁ニ伺ヒタ
  イノデアリマス、私今朝「ラヂオ」ノ放
  送ヲ聽イテ居リマスト、今日ノ議會ノ
  日程ヲ放送シテ居リマシタノデ、唯何
  デモナイコトニ聽イテ居リマシタガ、
  今朝聽イテ居リマスト、今日九時カラ
  貴族院ハ本會議ヲ開イテ、コレノ分か
  濟ンデ委員付託ニナツテ、本會議ハ一
  旦休憩シテ、委員會ノ決議ヲ待ツタ上
  ニ再開シテ、サウシテ委員長報告通リ
  可決確定ノ豫定デアルト、斯ウ言ウテ
  居ル、何時デモサウ云フ風ダ、新聞モ
  サウデス、是ハ小サイコトデモ私ハ甚
  ダ怪シカラヌコトダト思フノデス、サ
  ウ云フコトヲ初メカラ決メテ可決確
  定、場合ニ依ツテハ、全會一致ヲ以テナ
  ンテ書イテアルコトガアリマスガ、サ
  ウ云フコトヲ新聞ナリ、「ラヂオ」デ聽
  イタリ、書クト云フコトハ、ヤカマシ
  イコトヲ言フト、議會ノ審議權ノ冒瀆
  デアルト斯ウ申シテモ宜イノヂヤナイ
  カ、サウ云フコトヲ聽クト何カシラ皆
  ガサウ云フ氣持ニナツテ、政府ノ出シ
  タモノハ皆通ルノダ、一モ二一ナナイノ
  ダト云フヤウナ氣持ニナル、是ガ私ハ
  寧ロ恐ルベキコトヂヤナイカト思フ、
  今日ノ場合政府ガ最善ヲ盡シテ出サレ
  タモノハ、我々敬意ヲ以テ協賛ノ責ヲ
  盡スベキモノデアリマスケレドモ、其.
  處ガ議會ノ役目デアリマスカラ、議論
  モシナケレバナラヌ、場合ニ依ツテハ
  修正モシナケレバナラヌ、場合ニ依ツ
  テハ已ムヲ得ズンバ否決モシナケレバ
  ナラヌ、ソレガ我々ノ御奉公デアル、
  斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、大事ナ
  法案ダカラト言ヘバ、大事ナラ尙更ト
  云フ風ニモ考ヘル、何モ「ラヂオ」ノ放
  送ノ責ヲ直グ情報局總裁ニ持ツテ行ク
  譯デハアリマセヌガ、サウ云フ方面ノ
  御取締デアリマスカ、前ニハ其ノ方面
  ノ首腦部デアラレタ下村總裁デアリマ
  スカラ、サウ云フ點如何ニ御考ヘカ、今
  後其ノ點ヲ何カ御注意デモナサルノデ
  アラウカ、又、序ナガラ申上ゲマスガ、
  私達ハ矢張リ議會審議權ノ尊重ガ根本
  問題デアリマス、如何ナルコトガアリ
  マシテモ、私共ハ法律家トシテ法律ヲ
  踏ミ外シタクナイノデアリマス、ソレ
  ハ困ル場合ハアル、孔子ガ匡デ苦ンダ
  時ニ、弟子ノ子路ガ大イニ憤慨シテ、
  君子モ亦窮スルコトガアルカ、孔子答
  ヘテ曰ク、君子固ヨリ窮ス、小人窮ス
  レバ斯ニ濫ス、日本ハ神國デモ困ルコ
  トガアル、困ツテ濫レテハイケナイ、
  困ツタカラト云ツテ何モ彼モ滅茶苦
  茶ニナリ、道義地ニ落チ、法律モ滅
  茶苦茶、ソレデハ相濟マヌ、ソレデハ
  神國日本デアリ得ナイ、斯ウ思フノデ
  アリマスルカラ、飽ク迄モ憲法的ニ行
  キタイ、ソコデ此ノ問題モ、或ハ憲法
  違反ヂヤナカラウカト云フヤウナ、此
  ノ法案、而モソレガドレダケ役ニ立ツ
  カト云フコトモ議論サレル、此ノ法案
  ヲ出サレル位ナラ、モウ百步千步、飛
  躍サレル氣持ハナカツタノデアリマセ
  ウカ、其處ニ此ノ憲法ノ豫期サレテ居
  ル坦々タル大道、關達無礙ニ十分腕ヲ
  揮ヒ得ル大道ガアルノヂヤナイカ、其
  ノ點ヲ如何ニ御考ニナルカ、其ノコト
  ヲ私ハ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=35

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• 036・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　御答ヘ致シ
  せい、穗積男爵ノ最初ノ第一ト第二ノ
  御質問ハ法律ノ問題ノヤウデアリマス
  カラ、私ヨリ御答ヲ申上ゲタイト存ジ
  おとろ。第一ノ御尋ハ、本法ハ其ノ實質
  ニ於テ憲法精神ニ反スル所ハナイカ、
  餘リニ抽象的ニ命令委任スルノハ一體
  憲法ノ精神ヂヤナイト云フ御意見デア
  ツタヤウニ承ツタノデアリマス)此
  點ニ付キマシテハ、本法提出ニ付キマ
  シント政府ト致シマシテモ、篤ト〓究
  致シタノデアリマスルガ、政府ノ所見
  ト致シマシテハ、本法ハ第一條ニ於キ
  マシテ、「大東亞戰爭ニ際シ」ト云フ時
  期ヲ劃シテ居リマシテ、此ノ戰爭中ニ
  於テノミ有效ナル法律ダト云フ時期的
  ノ制限ヲ加ヘテ居リマス、又次ニ「國
  家ノ危急ヲ克服スル爲緊急ノ必要アル
  トキハ」ト揭ゲマシテ、此ノ法律ノ目
  的ヲ揭ゲ、條件ヲ明カニ致シテ居ルノ
  デアリマス、左樣ナ場合ニハ政府ハ他
  ノ法令ノ規定ニ拘ラズ、「應機ノ措置ヲ
  講ズル爲必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分
  ヲ爲スコトヲ得」、ト云フコトニ致シマ
  シテ、其ノ命令又ハ處分ノ內容タル事
  項ニ付キマシテハ、第一號ヨリ第七號
  ニ亙ツテ具體的ニ之ヲ揭ゲテ居ルノデ
  アリマス、勿論第七號ハ稍〓廣汎ニ瓦
  ツテ居ルコトハ、只今男爵御指摘ノ如
  クデアリマスルガ、之ニ條件ヲ附シマ
  シテ、戰力ノ集中發揮ニ必要ナル事項
  ト云フコトヲ規定致シテ居ルノデアリ
  マシテ、政府ト致シマシテハ、具體的
  ニナツテ居ル以上、憲法ノ精神ニ反ス
  ル所ナシト考ヘタ次第デゴザイマスゝ
  勿論法律デアリマスカラ、常時立法ノ
  如ク總テノ事項ヲ具體的ニ書クト云フ
  コトハ固ヨリ好マシイコトデモアリ、
  最モ適切ナコトデモアリマスルガ、現
  在ノ時機ノ段階ニ處シマシテ、此ノ非
  常時局ヲ克服スルニ法規的ノ措置トシ
  テハ、此ノ程度ノ法律ガ是非トモ必要
  デアルト云フ考カラ、之ヲ立案シタ次
  第デアリマス、第二ノ御質問ハ、今日
  ノ緊急事態ハ之デ賄ヘルカ、憲法三
  十一條ノ非常大權ノ發動ヲ奏請スベキ
  デハナイカト云フ御質問ト承ツタノデ
  アリマス、只今ハ固ヨリ戰時デアリマ
  シント、憲法第三十一條ノ、第二章ノ條
  規ニ付テハ天皇大權ノ行使ヲ妨ゲル
  コトナシト云フ法條ニ該當スルト存ズ
  ルノデアリマス、非常大酒ヲ奏請スル
  コトモ亦一ツノ事柄デアルトハ考ヘマ
  スルガ、我々ト致シマシテハ、先ニモ
  總理大臣ヨリ申上ゲマシタル如ク今日
  ノ事態ニ於テハ先ヅ此ノ法律ニ依ツテ
  此ノ法律ノ制定ヲ仰ギマスルナラバ、
  大體ニ於テ今日ノ時局ハ乘切リ得ルト
  云フ考デ之ラ致シタノデアリマシテ、
  而モ政府ノ意圖スル所ハ議會ヲ尊重
  シ、出來得ベクンバ、法律事項ハ矢張
  リ法律ヲ以テ、議會ノ協賛ヲ經タ法律
  ヲ施行シ、之ニ依ツテ事ヲ行ハムトス
  ル趣旨デアリマス、勿論過般來、學界
  ノ一部ノ有力ナル方々ニ依ツテ憲法第
  三十一條ノ非常大權ノ發動ヲ奏請スベ
  シト云フ御議論モ承ツテ居リマスル
  シ、又貴衆兩院議員ノ或方々ニモ、左
  樣ナ御意見ヲ御持チニナル方ガアルト
  云フコトモ承ツテ居ルノデアリマス、
  唯此ノ第三十一條ニ付キマシテハ、先
  刻穗積男爵仰セノ如ク、未ダ之ヲ發動
  セラレタ事例ヲ見ナイノデアリマシ
  テ、如何ナル形式ニ於テ、如何ナル形
  ニ於テ御發動ガアルベキモノカ、ソレ
  等ノ點ニ付キマシテハ、政府ハ先般來、
  篤ト考究ヲ致シテ居ルト云フコトダケ
  ヲ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=36

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• 037・下村宏

  ○國務大臣(下村宏君)　議事日程ノ放
  送ニ付テ穗積男爵カラ御質問ガアリマ
  シタカラ御答ヲ致シマス、是ハ問題ノ
  通リ、放送ニ限ラズ新聞モ同樣デゴザ
  イマス、說明ノ方ガ寧ロ長クナツテ宜
  イト云フ御許シデスカラ、此ノ機會ニ
  チヨツト申上ケテ置キマスガ、大體「ニ
  ユース」ノ報道ト云フ時ニ見越シ記事
  ト云フコトガイツモ問題ニナツテ、報
  道スル方ノ側カラ言ヒマスト、イツモ
  事後バカリヲ書イテハ居レナイノデ、
  ドウシテモ見越シ記事ト云フモノガ絕
  エズ出テ參リマス、之ヲ全然止メルト
  云フコトニハ無論參リマセズ、少シ餘
  分ニナリマスガヽ此ノ見越シ記事ニ依
  ツテ相當色々ト迷惑ヲ來シタリ、之ヲ
  差控ヘテ是正ヲシナケレバナラヌト云
  フコトハ、殊ニ過去ニ於テ多カツタ、
  又一番影響ノ多イノハ私、新聞生活
  ヲシテ居リマシタガ、選擧ノ場合ナド
  ハ一番多イノデアリマス、ト言ツテ、之
  ヲ何ニモ見越シ記事ナシニ、唯競爭シ
  テ居ルノダト云フダケデハイカヌカ
  テ、誰ガ有望デアルトカ、有望デナイ
  トカ云フコトガ必ズ見越シ記事ニ出ル
  ノデアリマス、又之ヲ全然裁セナイト
  云フ譯ニハ參リマセヌ、是ハ選擧ノ場
  合デアリマスガ、全ク見込ミナイト書
  カレルト、モウアレハ幾ラ札ヲ入レテ
  モ駄目ダト言ツテ、誰モ入レナクナリ
  マス、又當選確實ト言ハレルト、アノ
  人ガ確實ナラ、確實デナイ方へ札ヲ入
  レヨウト云フコトデ、確實ト書カレタ
  爲ニ却テ落チル場合モアリマス、候補
  者ノ方カラ言ヒマスルト、新聞デ五分
  五分ダト言ハレルノガ一番期待スル所
  ニナツテ居ツタノデアリマス、是ハ先
  ヅ選擧ダケノ問題デアリマスガ、要ス
  ルニ見越シノ記事ト云フコトハ、丸デ
  止メラレナイシ、偖テソレガ外レマス
  んた可ナリ御迷惑ヲ掛ケルノデアリ
  やく、今日ハ新聞ノ競爭ガ昔ノヤウデ
  アリマセズ、統制ガ取レテ居リマスノ
  デ、大〓ノ記事ハ同盟通信、通信ハ總テ
  同盟通信ヘモウ今日ハ続制サレテ居リ
  そ い、ち、ソレニ極メテ少數ノ新聞社ガ此
  ノ「ニュース」ヲ出ス所ニ、事情ヲ聽イ
  テ打合シテ、先ヅ斯ウモ見越サウト云
  フノガ新聞ニモ出、又ソレニ依ツテ放
  送サレテ居ルノガ現狀デアリマス、御
  話ノ通リ事柄ガ帝國議會ノ議事デアリ
  マスルカラ、無論是ガ兩說相對立シテ
  問題ニナツテ居ルト云フヤウナ時ニ
  可決スルノダトカ否決スルノダトカ云
  フヤウナコトハアリヤウモアリマセヌ
  ガ、大體斯ウナルノデアラウト云フ見
  越シヲ今迄書イテ居ツタノデアリマス
  ガ、只今ノ御質問ヲ承リマスト、事、
  兎ニ角帝國議會ノ議事日程ニ關スルコ
  トデアリマスルカラ、更ニ情報局トシ
  マシテハ、新聞ト言ハズゝ放送等各方
  面へ十分檢討ヲ加ヘマシテ御趣旨ニ副
  フヤウニ致シタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=37

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• 038・穂積重遠

  ○男爵穗積重遠君　御答辯承リマシ
  テ、後ハ議論ニナリマスカラ、其ノ時
  ニ讓リタイト思ヒマスガ、是ハ幾ラカ
  小サイコトデアリマスガ、矢張リ根本
  問題ニ或程度關係シマスカラ、法制局
  長官ニ伺ヒタイ、詰リ此ノ法案ノ第四
  條ニ對スル衆議院ニ於ケル修正デアリ
  やく、報〓ヲ諮問ト變ヘタ、後ニ但シ
  ガ附イテ居リマスケレドモ、二字取變
  ヘタ、サウシテ法制局長官モ、是ハ政
  府モ初メカラサウ云フ考デ、政府ノ意
  圖シタ所ト違ツテ居ナイノダト云フ御
  說明デアリマシタガ、如何ナモソデア
  リマセウカ、斯ウ申上ゲタイノデアリ
  さい。大變ナ違ヒヂヤナイカ、是デ、
  サナキダニト申シテハ失禮デスガ、又
  働キガ幾ラカ弱イカト云フコトヲ山岡
  先生モ言ハレタノガ、尙弱クナルノデ
  ハナイダラウカ、報〓デ以テドン〓〓
  ヤツテ、報告デ濟ムコトヲ、兎ニ角但
  シ書ハ附イテ居リマスケレドモ、其ノ
  諸問スベシ、諮問シテ其ノ意見ニ從フ
  カドウカハ問ハヌニシテモ、兎ニ角諮
  問シナケレバヽ違法ダヽ斯ウ云フコト
  ニナルコトハ、非常ニ行政ノ活動ヲ妨
  ゲル、是ガ平時ナラ然ルベキコトデア
  リマスケレドモ、此ノ緊急ノ際ニゝ敏
  速果敢ヲ要スルト云フノデ設ケラレタ
  折角ノ此ノ法案ニ、其處ヲ讓歩サレル
  ト云フコトハ、一體ドウ云フコトデア
  ルカ、此ノ法案ニ對スル十分ナ御自信
  ガマダ無イヤウニ、失禮ナガラ窺ハレ
  ル、其ノ點ハモウ一度御說明戴キタイ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=38

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• 039・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　今朝程衆議
  院ノ修正案ガ原案ト趣旨ニ於テ大シ
  タ異ナル所ガナイト云フコトヲ申上
  ゲマシタノデアリマスルガ、先ヅ原
  案ノ趣旨ヲ御說明申上ゲタイト存ジマ
  スノデアリマス、此ノ原案ノ第四條ノ
  第一項ニ於キマシテ「勅令ノ定ムル所
  ニ依リ之ヲ戰時緊急措置委員會ニ報〓
  スベシ」斯樣ニナツテ居リマスルガ、
  此ノ報告ト云フノハ單純ニ事實ヲ知ラ
  セルト云フ意味デナクテ、委員會ニ報
  〓ヲシテ其ノ意見ヲ求メル、其ノ意見
  ヲ求メル爲ニ報〓ヲスルト云フヤウナ
  意味デ立案ヲ致シマシタノデアリマ
  ス、ソコデ勅令ヲ以テ其ノコトヲ明定
  致ス、言葉ヲ換ヘテ申シマスルナラバ
  勅令三於テ事前ニ報〓ヲ致ス、若シモ
  事前ニ報〓ヲシ難キモノニ付テハ事後
  ニ報告ヲスル、斯ウ云フ風ニ勅令ヲ以
  テ規定ヲ致シタイト考ヘテ居リマシタ
  ノデアリマス、而シテ「戰時緊急措置
  委員會ニ關スル規程ハ勅令ラ以テ之ラ
  定ム」ト云フ第二項ノ規定ガゴザイマ
  シントー此ノ第二項ノ勅令ニ於キマシテ
  ハヽ委員會ノ組織デアリマスルトカ、
  委員會ノ權限、一般ノ此ノ種ノ例ニ從
  ヒマシテ、委員會ノ組織或ハ權限ヲ勅
  令ヲ以テ明定ヲ致サウ、斯樣ニ考ヘテ
  居リマシタヽ而シテ其ノ勅令ニ於キマ
  シテハ此ノ委員會ハ第一項ニ依リマシ
  テ、報〓ヲ受ケタ事項ニ付キマシテ
  調査審議ヲ致シマシテ、意見ヲ政府ニ
  提出スルコトガ出來ルト云フコトヲ規
  定致シマスト同時ニ、其ノ委員會ハ本
  法ニ關聯ヲスル重要ナ事項ニ付テハ政
  府ニ建議ヲスルコトガ出來ルト云フコ
  トモ明定ヲ致シタイト考ヘテ居リマシ
  タノデアリマス、此ノ報告ト云フノハ
  只今申上ゲマシタヤヴニ意見ヲ聽ク爲
  ニ報告ヲスル、而シテ意見ヲ聽キマシ
  テモ聽キ放シデハイケナイノデゴザイ
  マスカラ、換言スレバ、出來ルダケ其
  ノ意見ヲ尊重シテヤツテ參リタイ、從
  ツテ之ガ爲ニハ出來ルナラバ事前ニ報
  告ヲスル、併シナガラ此ノ措置ハ極メ
  テ緊急ヲ要スル應機ノ措置デアリマス
  カラ、多クノ場合ニ於テ已ムヲ得ズ事
  後ニヤル場合モアルコトガ豫想セラレ
  マスルガ、出來ルダケ事前ニ報〓ヲ致
  シマシテ意見ヲ聽ク機會ヲ與ヘル、ソ
  レニ依ツテ其ノ意見ヲ十分ニ尊重致シ
  テ參リタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマシタ
  ノデアリマス、事後ニ報告ヲスルト云
  フ意味モ單純ナ報〓デナクテ、其ノ事
  後ニ報告致シマシタ後ニ於テ向フデ色々
  意見ヲ調査ヲ致シマシテ、其ノ結果
  ガ政府ニ提出セラレ。マシタ場合ニ於
  テ、事前ニナシタ措置ガ尙將來ニ效力
  ヲ生ジマスル場合ニ於テハ、將來ニ對
  スル一ツノ參考トナシ、又其ノ措置ガ
  旣ニモウ效力ガ發生ヲシテシマヒマシ
  テ、無クナツテシマツテ居ル、斯ウ云
  フ場合ニハ是ハ直接ニ如何トモ致シ難
  キコトニナリマスルガ、ソレデモ將來
  同樣ノ場合ニ付テノ一ツノ參考ニ致
  ス、要スルニ此ノ報告ハ意見ヲ求メル
  ト云フヤウナ意味ノ報告デゴザイマシ
  タノデアリマス、從ツテ之ヲ諮問ヲス
  ル、而シテ已ムヲ得ザル場合ニ於テハ
  事後ニ報告ヲスル、斯ウ云フコトデゴ
  ザイマスルカラ、大體ニ於テ其ノ趣旨
  ニ於テハ異ナル所ガナイノヂヤナカラ
  ウカト、斯樣ニ申上ゲタノデアリマス、
  尙斯樣ナ手續ヲ致シマスコトガ行政ノ
  敏活ヲ妨ゲルノデハナイカト云フ御趣
  旨デゴザイマスガ、是ハ事ノ敏活ヲ要
  シンチ此ノ諮問ノ手續ニ依リマシテ其
  ノ敏活ヲ阻害ヲスル、斯ウ云フ場合ニ
  於キマシテハ勿論是ハ諮問ヲ致サナイ
  デ措置ヲ爲スコトヲ妨ゲナイ、已ム
  ヲ得ザル場合ニ於キマシテハ事後ニ於
  テ報告ヲスルト云フコトガ認メラレテ
  居リマスノデ、此ノ規定ノ修正前、或
  ハ修正後、何レニ於キマシテモ行動ノ
  敏活ヲ阻害ヲスルコトハナカラウト、
  斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=39

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• 040・穂積重遠

  ○男爵糖積重遠君　モウ一ツ簡單ニ伺
  ヒタイノデアリマス、サツキ一寸私ガ
  伺ツタコトデ御答ガ洩レテ居ルノハ、
  此ノ三十一條ノ規定ハ第二章ノ權利保
  障ダケノ規定ナノカ、或ハモツト根本
  ニ何カアルノカ、其ノ點ニ付テノ御見
  解ヲ、唯結論ダケヲ伺ツテ、後ノ議論
  ノ參考ニシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=40

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• 041・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ非常大
  權ノ範圍ノ問題、又先程御話ニゴザイ
  マシタ非當大權御發動ノ場合ノ色々ノ
  組織ノ問題、是ハ範圍ノ問題等ニ付テ
  ハ從來カラ色々研究ヲセラレタモノ
  モゴザイマスノデアリマスルシ、又後
  ノ部分ニ付キマシテハ、近時殊ニ各方
  面ニ於テ有力ナル方々ガ御研究ニナツ
  テ居ラレマスルノデヽ非常大權ノ御發
  動ト云フコトハ是ハ極メテ重要ナ事
  柄デゴザイマシテ、政府ハ其ノ場合ニ
  對シマシテ十分ノ考究ヲ只今致シテ居
  リマスルノデアリマス、唯、只今ノ段
  階ニ於キマシテ、此ノ非常大權ガ第二
  章ニ限ラレルカ否カト云フヤウナ事柄
  ニ付テハ御答ヲ差控ヘタイト存ジマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=41

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• 042・穂積重遠

  ○男爵穂積重遠君　議論ハ留保サセテ
  戴キマシテ、質問ハ是デ一應終リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=42

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• 043・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　靑木一男
  君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=43

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• 044・青木一男

  ○靑木一男君　只今ノ穗積男爵ノ御質
  問ニ關聯シテ一點ダケ、若シ御答ガ願
  ヘレバ御答ヲ戴キタイト思ヒマス、憲
  法第三十一條ノ非常大權發動ノ場合ニ
  於ケル國務大臣輔弼ノ關係ハ、他ノ國
  務ニ關スル輔弼ト其ノ性質及ビ形式等
  ガ違フカドウカ、此ノ點ニ付テ若シ御
  答辯ヲ得ラレヽバ、御答辯ヲ得ナクテ
  モ結構デアリマスガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=44

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• 045・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　只今靑木委
  員ノ御質問ニナリマシタ事項モ、先程
  穗積委員ニ對シテ御答ヘ致シマシタト
  同樣ニ、非常大權ノ御發動ノ場合ニ關
  聯ヲ致シマスル問題デゴザイマシテ
  此ノ點ニ付テハ從前カラ政府ニ於キマ
  シテハ、十分諸般ノ考究ヲ遂ゲツヽア
  リマスルノデゴザイマスルガ、只今此
  ノ點ニ付テ御答ヲ致シマスルコトハ差
  控ヘタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=45

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• 046・青木一男

  ○靑木一男君　本法ト憲法上ノ立法事
  項ノ範圍トノ關係ニ付テ御伺ヒ致シマ
  ス、本法第一條ニ依リマスルト、號
  カラ七號迄此ノ國權發動ニ關スル目的
  ハ列擧サレテ居ルノデアリマスガ、國
  家總動員法ノ場合ト違ヒマシテ國權發
  動ノ形態、卽チ如何ナルコトヲ命令シ、
  或ハ臣民ニ如何ナル行爲ヲ禁止、制限
  スルト云フコトノ規定ガナイノデアリ
  Wvb.從ヒマシテ、此ノ一號カラ七號
  迄ノ目的ヲ以テスル場合ニハ、如何ナ
  ル形ノ國權ノ發動モ出來ル、非常措置
  ガ出來ルコトニナルノデアリマシテ、
  其ノ範圍ハ極メテ廣イト思フノデアリ
  マス、ソコデ御伺ヒスルノデアリマス
  ガ、此ノ戰時緊急措置法ノ網羅スル範
  圍ハ、帝國憲法第二章臣民ノ權利義務
  ノ條項全部ニ及ブモノデアルカドウ
  カヽ或ハソレハサウ廣クハ考ヘナイ、
  漏レテ居ルモノモアルノデアル、其ノ
  漏レテアルモノヲ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=46

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• 047・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直義君)　此ノ法律ガ
  憲法上ノ委任命令トシテドウ云フ關係
  ニナルカト云フコトニ付キマシテハ
  先程司法大臣カラ御答ヘヲ申上ゲマシ
  タ通リデゴザイマス、此ノ法律ニ基キ
  マシテ、具體的ニ國民ニ對シマシテ色々
  ノ制限又ハ禁止ヲ致シマスル行爲ノ
  態樣ト申シマスルカ、之ニ付キマシテ
  憲法第二章ノ全部ニ及ブカ、或ハ其ノ
  一部デアルカト云フ問題ハ具體的ノ問
  題ニ依ツテ決定ヲセラレルコトト存ジ
  せいろ、法律其ノモノトシテハ憲法ノ第
  二章ノ中ノドノ部分ニ限ルト云フ意味
  ハゴザイマセヌ、併シナガラ事ノ性質
  ニ依ツテ自ラ限定ハセラレルコトト存
  ズルノデアリマス、委任命令ト致シマ
  シテ範圍ハ非常ニ或程度包括的デハゴザ
  イマスルガ、此ノ法律ガ制定セラレマ
  シタ場合ニ於キマシテハ:此ノ法律ヲ
  實行シテ參リマスル措置ト致シマシ
  テ、本法末條ニ於テ、本法施行ニ關シ
  必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メ
  ル、斯樣ニ致シテ居リマスルノデ、其
  ノ勅令ヲ以テ是ハ色々外ニモ規定ヲ致
  シマスルガ、大體ニ於テ此ノ勅令ノ中
  ニ、此ノ法律ニ基イテ、如何ナル態樣
  ノ行爲ヲ豫想ヲスルカト云フコトハ
  或程度勅令ヲ以テ明定ヲ致ス豫定デア
  ルノデゴザイマス、只今靑木委員カラ
  ノ御質問ノ憲法定二章トノ關係ニ付
  テ、ドノ事項ドノ事項ニ限ラレルカト
  云フト、目的ノ方カラ、或ハ本法第一
  條ニ揭ゲテアリマスル事項ノ方カラノ
  制限ガゴザイマスルガ、條文ノ方カラ、
  ドノ條文トドノ條文ニ限ルト云フ方面
  ノ制限ハ考ヘテ居ラヌノデゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=47

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• 048・青木一男

  ○靑木一男君　尙ソレニ關聯致シマシ
  テ、本法ニ依リマシテ憲法第二章以外
  ノ事項ニ亙ツテ、此ノ法律ノ發動ガ豫
  想サレルノデアリマスガ、其ノ點ヲ伺
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=48

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• 049・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　憲法第二章
  ニ具體的ニ揭ゲテアリマス事項以外ニ
  於キマシテモ、同樣ノ性質ノ事柄ニ付
  キマシテハ、此ノ法律ノ及ブ場合ガ存
  在ラスルモノト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=49

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• 050・青木一男

  ○靑木一男君　次ニ此ノ條文ノ解釋ニ
  付テ、一二法制局長官ニ御伺ヒヲ致シ
  さゝ、第五條ノ「本法施行ニ關シ必要
  ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云
  フ、其ノ勅令ノ中ニハ第一條ノ發動サ
  レル場合ノ準據法タル勅令モ含ム意味
  デアリマスカ、先程ノ說明ニ依リマス
  下或ハ含ムヤウニモ伺ヒマシタガ、
  ソレナラバ、國家總動員法ノヤウニ第
  一條ニ「勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト斯ウ
  御書キニナル方ガ簡單明瞭デアリマス
  ガ、其ノ何レデアリマスカヲ御伺ヒ致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=50

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• 051・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ第五條
  ノ勅令ハ本法全部ニ付テ施行ニ必要ナ
  ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メル、斯樣
  ナ趣旨デゴザイマスルカラ、御話ノ通
  リ第一條ニ關聯ヲ持ツテ居リマスル部
  分モ此ノ勅令ノ重要ナル構成部分ニ相
  成ルト考ヘテ居リマスルノデアリマ
  ス、而シテ第一條ノ先程申シマシタヤ
  ウナ行爲ノ態樣ト云フヤウナモノノ外
  ニ、例ヘバ第一條ノ「政府」トアリマス
  ルノハ、現實例ヘバ行政官廳ニ付テ申
  シマスルナラバ、中央ノ行政官廳ノミ
  デアルカ、或ハ地方ノ行政官廳モ含ム
  カト云フヤウナ問題モ此ノ第五條ノ勅
  令ヲ以テ明定ヲ致シタイト、斯樣ニ考
  ヘテ居リマス、繰返シテ申シマスルナ
  ラバ第五條ノ本法施行ニ關シ必要ナ
  ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メル、此ノ
  勅令ハ靑木委員ノ仰セニナリマシタヤ
  ウナ事項全部ヲ規定致ス豫定デゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=51

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• 052・青木一男

  ○靑木一男君　簡單ニ繰返シテ御尋ネ
  致シマスガ、然ラバ此ノ第一條ニ國家
  總動員法ト同ジヤウニ勅令ノ定ムル所
  ニ依リト規定サレナカツタ理由ハ何レ
  ノ點ニアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=52

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• 053・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　ソレハ規定
  ノ書キ方ノ問題デゴザイマシテ、第五
  條デ總テヲ網羅シテ書キマスレバ、總
  テ包括セラルヽコトト考ヘテ、左樣ニ
  致シマシタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=53

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• 054・青木一男

  ○靑木一男君　ソレナラバ第二條以下
  ニ依ツテハ、勅令ノ定ムル所ニ依リト
  云フコトニ皆ナツテ居ルノデアリマス
  ガ、ソレトノ權衡上、第一條ダケヲ除
  イタノハ、何カ理由ガアルノデアリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=54

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• 055・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　特別ニ第一
  條ダケ拔イタト云フヤウナ意味ハゴザ
  イマセヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=55

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• 056・青木一男

  ○靑木一男君　次ニ第四條ノ重要ナル
  モノニ付テハト云フ其ノ重要ナ意味ヲ
  御伺ヒシマス、卽チソレハ事項ノ性質
  ニ依ルノデアルカ、或ハ形式ニ依ルノ
  デアルカ、卽チ此ノ非常措置ノ行ハレ
  ル形ガ、例ヘバ法規命令ト云フヤウナ
  場合ニ此ノ委員會ニ諮ヶルト云フ意味
  デアリマスカ、ソレトモ事柄ガ重要ナ
  ル場合ニハ諮ケルト云フ意味デアリマ
  スカ、或ハ其ノ兩者デアリマスカヲ御
  伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=56

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• 057・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ重要ナ
  ルモノガ何デアルカト云フコトハ、是
  モ矢張リ勅令ノ定ムル所ニ依リ、此ノ
  勅令デ以テ明定ヲ致ス豫定ニ相成ツテ
  居リマス、而シテ實質ニ於テ如何ナル
  モノヲ重要ナルモノト指定ヲスル豫定
  デアルカト云フ御話デゴザイマスル
  ガ、大體此ノ重要ナルモノト申シマス
  ルモノハ、此ノ法律ガナカツタナラバヽ
  本來法律ノ手續ヲ必要トスル、斯ウ云
  フヤウナ場合ヲ重要ト豫想ヲ致シテ規
  定ヲ致シタイト考ヘテ居リマスルノデ
  アリマス、併シナガラ重要ノ中ニハ、
  左樣ナ場合ノ外ニ、或ハ立法的ノ法律
  ヲ要スル事項以外ニ法律ヲ要スル事項
  デハナイガ、事ノ性質トシテ社會的ニ
  見テ極メテ重要ナル影響ヲ有スルモ
  ノ斯樣ナモノモ矢張リ此ノ重要ナモ
  ノトシテ、此ノ諮問或ハ報告ヲ受クベ
  キ客體ト指定ヲ致シタイト考ヘテ居リ
  マスルノデアリマス、又法規命令デナ
  クシテ、處分的ノモノデゴザイマシテ
  モ、其ノ效果ガ廣汎ニ全國的ニ行ハレ
  ルト云フヤウナ場合アリト致シマスル
  ナラバ、之モ矢張リ諮問事項、報〓事
  項ノ中ニ入レテ勅令ノ中ニ規定ヲ致シ
  タイト、只今ノ處左樣ニ考ヘテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=57

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• 058・青木一男

  ○青木一男君　今ノ御答辯デ私、チヨ
  ツト疑問ヲ持ツタノデアリマスガ、立
  法事項ニ關スルヤウナコトヲ諮問スル
  ト言ハレマスト、此ノ本法ノ發動ト云
  フコトハ、ソレ以外ノ國權ノ發動、卽
  チ政府ノ行政行爲、或ハ官制大權ノ系
  統ニ屬スル各種ノ行爲ニ付テモ、此ノ
  法律ニ依ツテ發動サレルモノカノ如キ
  印象ヲ受ケタノデアリマスガ、サウ云
  フ廣イモノデゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=58

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• 059・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　官制大權ニ
  關スルヤウナ事項ハ勿論此ノ法律トハ
  關係ノナイモノデゴザイマス、唯立法
  事項ト申シマシタノハ、第一條ニ於キ
  マシテ「命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコ
  トヲ得」、斯ウゴザイマスカラ、大體報
  告ヲ致シマス、或ハ諮問ヲ致シマスル
  モノハ、此ノ命令ト云フ方ニ該當スル
  ト存ジマスガ、處分ト云フモノデモ事
  ノ極メテ重要ナモノ、卽チ效力ノ全般
  的ニ及ブト云フヤウナモノガ若シアリ
  マスナラバ、言葉ヲ換ヘテ申シマスナ
  ラバ、處分デアリマシテモ、特ニ諸般
  ノ點カラ見テ重要ト認メラレルモノ
  ハ、矢張リ報〓ヲセシメヨウト云フコ
  トヲ申上ゲタダケデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=59

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• 060・青木一男

  ○青木一男君　次ニ大藏大臣ニ此ノ五
  號ノ稅制ノ適正化ト云フ言葉ノ意味ヲ
  御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=60

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• 061・廣瀬豐作

  ○國務大臣(廣瀨豐作君)　只今御質問
  ニナリマシタ第五號ノ稅制ノ適正化ニ
  付テ御說明致シタイト思ヒマス、大體
  本法ノ立案ニ當リマシテ、稅制ノ適正
  化ト云フコトヲ入レマシタ根本ノ事由
  ト致シマシテ、最近徵稅機關タル稅務
  署或ハ郵便局、銀行等ノ人手不足ガ非
  常ニ甚ダシクナリマシテ、今日ノヤウ
  ナ複雜ナ稅制ノ下ニ於テ、ソレヲ完全
  ニ渾用シテ徵稅ヲ行フト云フコトガ非
  常ニ困難ニナツテ來タノデアリマス、
  更ニ最近ノ情勢カラ見マシテ交通機關
  ノ今後一層ノ困難、或ハ通信ノ困難、
  又資材ノ不足等カラ起リマス所ノ、紙
  其ノ他ノ物資ノ不足ト云フコトヲ考ヘ
  マスルト、此ノ際租稅制度ヲ極力簡素
  化シテ行ク必要ガ生シタノデアリマ
  ス、ソコデ此ノ稅制ノ適正化ト申シマ
  スノハ、主眼點ヲ稅制ノ簡素化ト云フ
  所ニ置キマシテ、ソレニ合セマシテ、
  若干課稅制度ノ適正ヲ圖ルト云フコト
  モ考ヘ合セマシテ、而モソレガ此ノ時
  局下ニ於キマシテ特ニ必要ニ迫ラレテ
  居ルモノダケヲ實施シタイ、斯ウ云フ
  氣持デアリマス、卽チ一番ニハ稅額ガ
  比較的少イノニ拘ラズ、課稅上ノ手數
  ガ非常ニ煩瑣デアルト云ツタヤウナ印
  紙稅或ハ電氣瓦斯稅ト云フヤウナ稅ノ
  課稅ヲ此ノ際一時停止ヲ致シタイ、ソ
  レカラ又第二ニ於キマシテハ源泉課稅
  ノ分類所得稅及ビ間接稅ノ徵收手續ヲ
  簡素化致シマスル等、賦課徴收上ノ官
  ノ方モ民ノ方モ雙方ノ手數ヲ省略シタ
  イ、斯ウ云フ考ヲ第二ニ持ツテ居ルノ
  デアリマス、ソレカラ又、第三ニハ最
  近新興所得階層ニ於キマシテハ、時局
  ニ依リマシテ所得ノ激增ラ來シテ居ル
  モノト認メラレルモノガ相當アルノデ
  アリマス、併シナガラ現在ノ稅制ニ於
  キマシテハ、御承知ノヤウニ實績課稅
  デアリマスル爲ニ、其ノ激增シマシタ所ノ
  所得ヲ當該年度ニ補足スルコトガ困難
  ナ場合ガアルノデアリマス、是等ニ對
  シマシテハ課稅方法ヲ改メマシテ、成
  ルベク所得ノ入ツタ年ニ、之ヲ補足ヲ
  スルト云フヤウナ方法ヲ執リタイ、斯
  ウ云フヤウナ考ヲ以テ立案ヲ致シタモ
  ノデアリマシテ、之ニ依リマシテ或ハ
  新稅ヲ創設致シマストカ、或ハ稅率ヲ
  變更スル、卽チ增稅ヲ意味スル所ノ稅
  率ヲ變更スルト云フヤウナ一般的ナ稅
  制改正ハ考ヘテ居ナイノデアリマスヽ
  此ノ點ハ本法ノ施行勅合ニ、斯ウ言ツ
  タヤウナ新稅ノ創設、又ハ稅率ノ變更
  ハ此ノ稅制適正化ノ言葉ノ意味ノ下ニ
  於テハ行ハナイト云フコトヲ勅令ニ明
  定シタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル次
  算デアリマス、尙今抽象的ニ申上ゲマ
  シタガ、尙モウ少シ具體的ニ、ソレデ
  ハドウ云フヤウナコトヲ考ヘテ居ルカ
  ト云フコトニ付テ、具體的ニ申上ゲタ
  イト思フノデアリマスガ、卽チ手數ガ
  掛ル割合ニ稅額ガ少イ稅ト申シマス
  ト、現在配當利子特別稅.外貨債特別
  稅有價證劵移轉稅、建築稅、電氣瓦
  斯稅、印紙稅、廣告稅、馬劵稅、斯ウ
  言ツタヤウナモノデアリマスガ、是等
  ノ課稅ハ當分ノ內之ヲ停止シタイ、斯
  ウ云フ考ヲ持ツテ居リマス、ソレカラ
  分類所得稅ノ課稅ニ付テ一層簡素適正
  ナラシムルト云フコトノ中ニハ、第一
  番ニハ御承知ノヤウニ、今日此ノ國債
  證劵ニ對シテ利札ガクツ附イテ居ルノ
  デアリマスガ、此ノ利札ニハ一々分類
  所得稅ガ掛ルノデアリマス、之ヲ徵收
  スルト云フコトハ郵便局、或ハ銀行等
  ノ手數ガ大變ナコトニナリマスノデ、
  今後ハ何トカ之ヲ、詰リ國債利子ト云
  フモノヲ稅額ニ相當スルダケ利子ヲ下
  ゲテ、國債ヲ無稅ニスルト云フコトヲ
  考ヘテ行キタイト云フコトモ一ツアル
  ノデアリマス、ソレカラ甲種ノ勤勞所
  得ニ對スル稅金ノ徵收方法ヲ簡素化ス
  ル、例ヘバ每月動勞所得ニ對スル稅金
  ヲ今迄徵ツテ居リマシタノヲ、數箇月
  纒メテ徵ツテモ宜シイト云フヤウナコ
  トモ、号今後決メテ參ツタラバドウカト
  云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、又
  間接稅ニ付キマシテモ、申告納稅制度
  ト云フモノヲ設ケテ行キタイト云フコ
  トヲ考ヘテ居リマス、ソレカラ又已ム
  コトヲ得ザル時ニハ、納期ニ付キマシ
  テモ現行法トハ違ツタ納期ヲ特例トシ
  テ定メルト云フコトモ考ヘテ居ルヤウ
  ナ次第デアリマス、又納稅切符ノ使用
  ヲ停止致シマシテ、證紙ノ切手貼用範
  圍ヲ出來ルダケ縮小スル、是等ハ何レ
  モ徵收手續ニ付テ、之ヲ簡素化スル措
  置デアリマス、之ニ先程申シマシタ新
  興所得階層ノ所得ニ對シテ、課稅方法
  ヲ變更スル、此ノ範圍ニ於テ第五號ハ
  考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 062・青木一男

  ○靑木一男君　此ノ委員立法ニ依リマ
  シテ、政府ガ或ハ直チニ、或ハ直チニ
  デナクテモ、將來斯ウ云フ事項ニ付テ
  斯ウ云フ事柄ヲ具體的ニ實行シテ行キ
  タイト云フ腹案ガアラウカト思ヒマ
  ス、只今大藏大臣カラハ其ノ點ニ觸レ
  テ御說明ヲ伺ツタノデアリマスガ、軍
  需農商、運輸、內務、各大臣カラ、
  若シ御腹案ガアリマシタラバ、其ノ大
  要ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス、若シ大
  藏大臣カラモ更ニ追加スルモノガアリ
  マシタラ、御伺ヒ致シマス

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• 063・豐田貞次郎

  ○國務大臣(豐田貞次郞君)　只今ノ御
  質問ニ御答ヘ申上ゲマス、軍需生產ハ
  御承知ノ通リ非常ニ多種多樣ナ要素ノ
  綜合デアリマスルノデ、之ガ維持增强
  ハ各種ノ觀點カラ之ヲ見ナケレバナラ
  ヌノデアリマスルガ、只今御質問ノ點
  ニ付キマシテハ、私ハ次ノヤウナコト
  ヲ考ヘテ居リマス、何ト申シマシテモ
  此ノ生產人ノ生產意欲ヲ〓メマスルコ
  ト、又敢鬪精神ヲ〓場致シマスルコト
  ガ非常ニ大事デアリマスノデ、其ノ意
  味カラ申シマシテ、出來マスレバ此ノ
  生產從事者ハ或地域ニ居住ヲ制限スル
  トカ、或ハ指定スルトカ云フコトガ
  ドウモ昨今〓情勢ニ於キマシテ必要ト
  考ヘテ居リマス、又生產責任者ガ或ハ
  生產擔當者ガ、飽ク迄モ生產ヲ完遂致
  シマスル爲ニハ、此ノ從事者ヲ懲戒シ
  得ルコトガ必要デアリマスルノデ、其
  ノ懲戒權ヲ與ヘタイ、今日迄極ク少イ
  懲戒權ヲ持ツテ居リマスルガ、其ノ懲
  戒權ヲバ更ニ之ヲ擴大致シタイ、又同
  時ニ生產責任者自體ガ不適任ナ場合ニ
  於キマシテ、之ヲ免ジマスルコトハ、
  只今ノ法規ニ於キマシテハ出來ナイコ
  トハゴザイマセヌガ、最モ適當ト認メ
  マスル者ヲ任命スルト云フコトガ出
  來マセヌノデ、之ヲ一ツ今後ノ事態ニ
  於キマシテドウ致シマシテモ政府ガ任
  命スル力ヲ持ツト云フコトガ必要ト考
  ヘテ居リマス又御承知ノ通リニ段々
  ト資材等ガ窮屈ニナルノデアリマスル
  ガ、此ノ場合ニ於キマシテ事業場或ハ
  工場等ニ於キマシテ、或ハ防空施設ヲ
  完璧ニスルトカ或ハ又從業員ノ福利施
  設ヽ厚生施設ヲ致シマスルニ付キマシ
  テモ、是等ニ要シマスル資材其ノ他ガ
  ナカ〓〓個人企業者デハ賄ヒ切レマセ
  ヌノデ、之ヲ官ノ力ヲ以チマシテ建設
  致シマシテ、ソレヲ出來マスレバ無償
  デ企業家ニ拂下ゲテヤルト云フ風ナコ
  トモ、此ノ隣速カニヤツテ行キタイト
  考ヘテ居リマス、是等ノ點ニ付キマシ
  テハ、實ハ私モ最近迄產業ノ一面ヲ預
  ツテ居リマシテ、是等ノコトノ出來マ
  スルコトニ付キマシテ、軍需當局ニ色々
  御進言モ申上ゲテ居リマシタガ、ナ
  カナカ實行出來ナカツタノデゴザイマ
  っとり、之ニ付キマシテハ或ハ總動員法
  等ノ適用ガ或制限ヲ受ケマシテ出來ナ
  カツタヤニ承知致シテ居リマスルノ
  デ、今申シタヤウナ法律ガ出來マスレ
  バ、此ノ法律ヲ根據ト致シマシテ急速
  ニ實行致シタイ、併シナガラ一番大キ
  ナ狙ヒハ、今後ノ時局ノ進展ニ依リマ
  という不測ノ事變ガ起キテ來ルコトガ
  豫想サレマスノデ、其ノ際ニ軍需生產
  ニ必要デアリマスル人、設備、機械等
  ニ付キマシテ、急速果敢ニ處理ヲ致シ
  マスルコトガ最モ重要ト考ヘマスノ
  デ、軍需生產ノ維持增强ノ見地カラ此
  ノ委任立法ノ成立ヲ希望スル次第デゴ
  ザイマス

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• 064・石黒忠篤

  ○國務大臣(石黑忠篤君)　食糧ノ確保
  其ノ他ニ關シマシテモ、農商省ト致シ
  マシテハ、本法制定ニナリマスレバ、
  速力ニ又果敢ニ本法ノ適用ヲ極メテ敏
  速ニ圖リマシテ、實現ヲ致シテ參リタ
  イト思ツテ居リマス、先般カラ國家總
  動員法等ヲ以テ大體出來ルコトガ多イ
  ヤウニ考ヘラレルト云フ御話モゴザリ
  マスルガ、御承知ノ通リニ、國家總動
  員法ハ昭和十三年ニ制定セラレマシ
  テ、其ノ後改正ガ屢〓加ヘラレテ居リ
  マスルケレドモ、制定ノ本旨ガ當時ノ
  情勢ヲ御承知ノ通リ、食糧問題等ニ付
  テ今日程切迫シタ情勢ノ下ニ於テ制定
  セラレタモノデハゴザリマセヌ、寧ロ
  兵器、軍需關係カラ致シマシテノ非常
  立法デアツタコトヲ御記億戴イテ居ル
  コトト存ズルノデアリマス、從ツテ國
  家總動員物資ト致シマシテ、食糧モ擧
  ゲテアルコトハアルノデアリマス、又
  國家總動員物資ノ生產ト致シマシテヽ
  農業モ入ルコトニナツテハ居リマスケ
  レドモ、此ノ方面ニ關シマスル同法ノ
  規定ハ、決シテ十分ナルモノデハナイ
  ノデアリマス、自カラ別系統ヲ成シテ
  居ルノデアリマス、其ノ後ニ國家總動
  員法ニ基キマシテ、臨時農地等管理令
  ト云フ勅令ガ總動員法ノ下ニ出テ居リ
  そく、出テ居リマスガ、是モ昭和十四
  年ノ制定デアリマシテ、軍需兵器ノ生
  產ノ爲ニ有ラユル手段ヲ此ノ方面ニ向
  ケテ居ル時代デアリマス、從ツテ農業、
  農地ノ方面ニ於キマシテハハ勞力ニ於
  テ、土地ニ於テ、總テ之ヲ動員シテ軍
  需工業ノ生產ニ向ケテ行クト云フ法デ
  アリマス、其ノ場合ニ於テ、其ノ間ノ
  調整ガ調子ヲ外スヤウニナリマスト云
  フト、及ビモ付カヌコトニナツテハイ
  カヌト云フ所カラ、稍〓消極的ニ農地
  ヲ守ル意味ノ農地等管理令ガ出テ居ル
  ト云フヤウナ狀態デアリマス、併シ今
  日ハ是トハ全ク〓糧ノ事情ハ狀況ヲ異
  ニシテ、我ガ國ノ〓糧問題ガ昭和十四
  年ノ秋ノ朝鮮ノ不作カラ出發ヲ致シマ
  シー、年一年ト困難ニナツテ參リマシ
  タガ、本年ハ實ニ非常ナ時期ニ際會シ
  テ參ツテ居ルノデアリマス、國內ニ於
  テ國民ノ總テノ食糧ヲ自給シナケレバ
  ナラヌト云フコトガ、今後ノ絕對ノ命
  令デアルト私ハ信ジテ居ルノデアリマ
  ス、此ノ絕對ノ命令ヲ僅カ國土ノ十六
  「パーセント」ノ農地ヲ以テ擧ゲナケレ
  バナラヌ、併シ我ガ國ノ農業ハ今日迄
  有ラユル方面ニ勞力ヲ出シ、地力ヲ出
  シ、サウシテ能ク耐ヘテ來テ居リマス、
  足ラザル所、稍〓一割見當ノモノヲ外
  カラ入レレバ宣シイト云フ狀態ニナツ
  テ居ルノデアリマス、併シ之ヲドウシ
  テモ國內デ以テ足ス外方法ガナイ、ソ
  レガ足セナケレバ國ガ亡ビルノダ、斯
  ウ云フ時ニナツタ以上ハ、玆ニ國中ノ
  平野ガ總テ拓カレテ居ルトカ、新ラシ
  ク拓ク所ハ引合ハナイトカ、勞力ノ上
  ニ於テ困難ガアルトカト云フヤウナコ
  トヲ言ツテ居ル譯ニハ參リマセヌ、十
  六「パーセント」以外ノ土地ガ未ダ耕サ
  レズシテアルト云フコトガ今後ノ我國
  ノ運命ヲ擔ツテ行ク、實ニ有難イ未開
  ノ資源デアルト云フ考ヲ以テ之ヲ活用
  シテ行クト云フ積極的ノ手段ニ出ル爲
  ニ、開墾、土地改良、有ラユル權利ノ
  分合交換、土地ノ讓渡、讓受ノ命令ト
  云フヤウナコトヲ本法ニ依ツテ果斷ニ
  ヤツテ參ルコトガ、唯一ノ〓糧問題解
  決ノ根本點デアルト私ハ考ヘテ居リマ
  ス

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• 065・小日山直登

  ○國務大臣(小日山直登君)　渾輪省ト
  致シマシテハ只今ノ御尋ニ對シマシテ
  ハ、次ノヤウニ申上ゲタイト思フノデ
  アリマス、最近ノ空襲ノ激化ニ伴ヒマ
  シテ、段々鐵道ノ破壞モ非常ニ多クナ
  ツテ參ツタノデアリマス、先ニ國家總
  動員法ノ制定ノ時代ハ寧ロ國家ノ有ラ
  ユル方面ノ戰力ヲ動員致シマシテ、輸
  送ノ、ト申シマスヨリモ輸送力ノ增强
  ヲ積極的ニ圖ルニ重點點アツタヤウニ
  モ思ハレマスシ、又其ノ當時ノ事情ハ
  サウ云フヤウナコトニ相當ナ力ヲ注ガ
  レタヤウニ思フノデアリマス、併シ今
  日ノ段階ニ至リマシテハ、積極的ニ輸
  送力ヲ增强スルト申シマスヨリモ、急に、
  激化スル此ノ空襲ノ破壞力ニ對シテ
  如何ニ運輸力ヲ維持シテ行クカ、又計
  畫的ノ空襲ヲ豫想サレル今日ニ於テ、
  之デ如何ニシテ戰ツテ行クカト云フコ
  トニ重點ガアルノデアリマス、ソレト
  同時ニ本土ノ或ハ敵ノ上陸作戰等ヲ豫
  想致シマス場合ニハ、作戰用兵ト運輸
  ノ輸送計畫トハ全ク表裏一體ヲ致シテ
  居ルノデアリマシテ、相當ノ空襲激化
  イ、戰ノ破壞ノ激シクナツタ時ニハ
  宛ラ所謂戰場化シタ、野戰鐵道ノ使命
  ノ如ク、作戰ト表裏一體ヲ成シテ此ノ
  輸送ノ維持ニ努メナケレバナラヌト考
  ヘテ居ルノデアリマス、サウ云フコト
  ニナリマスト、或ハ鐵橋ノ破壞デアリ
  マストカ、線路ノ破壞ト云フヤウナコ
  トニ對シマシテ、ソレ〓〓ノ資材等ハ
  準備致シテ居リマスガ、ドウ云フ場合
  ガドウ云フヤウナ形ニ於テ破壞サレル
  カガ、ナカ〓〓豫想ガ附カナイモノガ
  アルノデゴザイマス、サウ云フ際ニ鐵
  橋ガ破壞サレタ場合ニ木橋ヲ以テ之ニ
  代ヘル架橋工事等ニ付テ、或ハ近間ノ
  他ニ用意サレタ所ノ木材ニシマシテ
  干、或ハ其ノ土地ノ一部ヲ使用シ、或
  ハ畠ヲ壞シ、山ヲ碎イテモ、土砂ヲ採
  リ石ヲ採リ出シテ、ソレ等ノ線路、鐵
  橋ノ應急復舊ヲ圖ラナケレバナラナイ
  ト云フヤウナ實情ガ多々起ツテ參ルノ
  デアリマス、サウ云フ際ニ此ノ法規ヲ
  運用致シマシテ、敏速果敢ナ鐵道輸送
  力ノ維持增强ヲ保チタイト云フノガ、
  大體此ノ法案ノ御協賛ヲ願ヒタイト思
  ヒマス要旨デゴザイマス

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• 066・安倍源基

  ○國務大臣(安倍源基君)　防衞ノ强化
  及秩序ノ維持ト云フ問題ニ付キマシ
  テ、大體只今ノ處考ヘテ居ル程度ノ事
  項ニ付キマシテ、二三申上ゲタイト思
  フノデアリマス、敵ガ或ハ上陸スルダ
  ラウト云フ風ニ豫想セラルベキ沿岸地
  域トカ、其ノ他防衞上必要ナル地域ニ
  於キマスル住民ノ移住、避難等ノ實施
  ニ當リマシテ、之ガ圓滑適正ヲ期スル
  爲ニ、或ハ住民ノ移住、避難等ヲ强制
  スル要ガアルト思ヒマス、又移住者、
  避難者等ノ收容ニ關シマシテ、家屋、
  物件等ノ收用、施設ノ收用、使用ヲ
  爲スコトガアルト云フヤウナ場合モア
  ルト思フノデアリマス、又沿岸警備、
  其ノ他ノ警備ノ實施ニ當リマシテ、團
  體又ハ住民ヲシテ警備ニ協力セシムル
  爲ノ必要ナル措置ヲ執ル、及萬々一逃
  避的態度ニ出ヅル者ニ對スル强制的退
  去禁止ノ措置ヲ執ルト云フヤウナ場
  合或ハ防衞ノ爲必要ナル刀劍其ノ他
  ノ銃器等ノ所有者ニ對シマシテ、之ガ
  供出ヲ爲サシムル爲ノ强制的措置ヲ講
  ズルト云フヤウナ場合ガ考ヘラレルト
  思ヒマス、之ガ防衞ノ强化ト云フ問題
  ニ付キマシテノ只今考ヘラレル問題デア
  リマス、秩序ノ維持ト云フ事項ニ付キ
  マシテハ、是ハ社會秩序ト經濟秩序ト
  ノ二方面ガ考ヘラレマスルガ、私ハ社
  會秩序ノ點ニ付テ申上ゲタイト思ヒマ
  ス、戰局ノ急迫ニ伴ヒマシテ、國民生
  活ノ確保上必要アル場合ニ於テ、或種
  ノ營業ノ繼續、再開等ニ關スル强制的
  ノ措置ヲ講ズル要ガアル場合モアル
  シ、又救護ノ爲ニ必要ナル食糧、衣料
  或ハ藥品等ノ所有者ニ對シマシテ、之
  ガ供出ヲ爲サシムル爲ノ强制的措置ヲ
  講ズルト云フヤウナ場合モアルト考ヘ
  ラレルノデアリマス、其ノ他今後ノ戰
  局ノ進展ニ伴ヒマシテ、今申上ゲマシ
  タ事項ノ外ニ軈テハ考ヘラレルコトモ
  色々アルト思フノデアリマスガ、只今
  豫想シ考ヘテ居ルモノハ是位デアリマ
  ス

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• 067・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　第六號ノ戰
  災ノ善後措置ニ付テ御答へ申上ゲマ
  ス、先刻山岡博士ノ御質問ニ對シテチ
  ヨツト御答ヘ申上ゲマシタ所デアリマ
  スカ、差向キ至急解決シナケレバナラ
  ナイノハ戰災地ノ土地ノ動產竝ニ不
  動產ノ所有權竝ニ其ノ使用權ノ問題及
  旣存ノ賃借權ノ問題、又之ニ關スル賃
  料ノ問題、是等ハ何レモ御承知ノ如ク
  立法事項デアリマスカラ、法律ヲ以テ
  スルニアラザレバ措置シ得ナイノデア
  リマス、而モ國家總動員法等ノ條項ニ
  依リマシテハ之ヲ措置スル方法ガゴ
  ザイマセヌノデ、本法ガ制定致シマス
  レンド。至急此ノ第一條第六號ニ依リマ
  シテ其ノ措置ヲ講ジタイト考ヘテ居リ
  マス

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• 068・廣瀬豐作

  ○國務大臣(廣瀨豐作君)　第四號ノ秩
  序ノ維持ノ中ニハ、經濟秩序ノ維持ト
  云フ意味ガ入ツテ居ルノデアリマス、
  是ハ今後戰禍ノ擴大ト云フコトノ情勢
  ヲ想像シテ見マスト、經濟秩序ノ混亂
  ヲ色々來スト云フコトガ考ヘラレルノ
  デアリマス、ソコデ必要ノ場合ニ於キ
  マシテハ、是等ノ秩序ヲ維持スル爲ニ
  必要ナル措置ヲ執ラナケレバナリマセ
  文、例ヘバ金融機關ノ店舗又ハ責任者
  ガ全滅ヲ致シタト云フヤウナ場合ニ於
  テハ、其ノ銀行ノ預金債務、全部ヲ日
  本銀行又ハ他ノ銀行ニ肩代リヲサセ、
  預金者ヲ安心サセルト云ツタヤウナコ
  トヲ考ヘル必要ガアルト思フノデアリ
  マイク。ソレカラ又手形、小切手、社債、
  株式ト云ツタヤウナモノガ澤山喪失サ
  ど ず斯ウ云ツタ場合ニ於テ是等喪失
  シマシタ所ノ手形、小切手等ト云フ
  モノヲ如何ニシテ救濟スルカト云フ問
  題ガ起ツテ來ルカト思ヒマス、斯ウ云
  ツタ場合ニ於テハ簡單ニ代リ證劵ヲ發
  行致シマシテ、ソレヲ有效ナルモノト
  シテ國家ガ認メテヤル、サウシテソレ
  ガ流通スルコトニ依ツテ若シ損失ガ生
  ジマシタ場合ニハ國家ガソレヲ補償
  スル、斯ウ云ツタ制度ヲ樹テマシテ、
  是等有價證券ノ秩序ヲ維持スルト云フ
  ヤウナコトモ必要デアラウカト思フノ
  デアリマス、是等ノ事項ハ現在ノ國家
  總動員法ノ規定ニ依ツテハ行ヒ得ナイ
  所デアリマシテ、今度本法ガ成立シマ
  スレバ、此ノ根本法ノ適用ニ依ツテ是
  等ヲ機ニ應ジテ措置スルコトガ出來
  ル、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル次第デア
  リマス、尙、先程第五號、卽チ稅制ノ
  適正化ノ問題ニ付テ具體的ニ考ヘテ居
  リマスコトヲ御話シ申上ゲマシタガ、
  只今ノ處、私ト致シマシテハ、先程申
  シマシタ範圍ニ於テ考ヘテ居リマシ
  テ、是ハ餘リ擴ゲナイ方ガ適當カト存
  ジテ居リマス

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• 069・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　只今各項目
  ニ付テ御說明ガゴザイマシタガ、尙第
  一條全體ニ付テ附加致シテ御說明致シ
  タイト存ジマス、ソレハ此ノ第一條ガ
  只今說明ヲ申上ゲマシタヤウナ事項ニ
  付テ色々適用セラレテ參リマスルコト
  ト存ジマスルガ、尙將來ニ於キマシ
  テ此ノ法律ノ一ツノ狙ヒ所ト致シマシ
  テハ、地方ニ於テ此ノ法律ガ發動セラ
  ルヽ場合ガ色々アラウト思ヒマスルノ
  デアリマス、第一條ニ於テハ政府ハ是々
  ノ措置ヲ爲スコトガ出來ル、「命令ヲ發
  シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得」ト致シテ
  アリマスルガヽ此ノ政府ノ中ニハ中央
  ノ政府ノミナラズ、地方ノ行政官廳、
  卽チ行政官廳ト申シマシテモ、地方總
  監ヲ豫想致シテ居リマスルノデアリマ
  ス、尤モ地方總監ハ常ニ本法ヲ發動シ
  得ルモノデハ勿論ナナノデアリマシ
  テ、將來或ハ事態ガ急迫ヲシテ參リマ
  シント、交通通信等ガ連絡困難トナリマ
  シタヤウナ場合、其ノ他已ムヲ得ナイ
  場合ニ於キマシテハ、中央カラ一々措
  置ヲシテ參リマスルノデハ間ニ合ハナ
  イドウシテモ現地ニ於テ或ハ自立自
  戰態勢ヲ確立スルコトガ必要デアル、
  斯ウ云フヤウナ場合ガ場合ニ依ツテハ
  之ヲ豫想シナケレバナラナイノデアリ
  やく、斯ウ云フ事態ニ對應致シマスル
  爲ニ、先ヅ第一ニ、今般勅令ノ制定、
  官制ノ制定ヲ仰ギマシテ、現在地方ニ
  地方協議會ト云フ制度ガゴザイマシタ
  ガ、此ノ地方協議會長ノ管轄區域ト申
  シマスルカ、全國八地域ニ對シマシテ、
  協議會制度ト云フモノヲ廢止ヲ致シマ
  シテ、新タニ相當强力ナル地方總監制
  度ト云フモノガ設ケラレマシタノデア
  リマス、是ハ官制ニ依ツテ設置セラレ
  タノデアリマスルガ、ソレニ對應シテ
  將來此ノ地方總監ガ、只今申シマシタ
  ヤウナ事態極メテ急迫ヲシタ、斯ウ云
  フ場合ニ於キマシテハ、此ノ法律ニ基
  イテ各地方々々ニ於テソレ〓〓緊急已
  ムヲ得ザル措置ヲ爲シ得ルヤウニスル
  必要ガ發生ヲシテ參リマスル場合ガ
  場合ニ依ツテハ生ズルノデナカラウカ
  ト考ヘルノデアリマス、此ノ政府ト申
  シマスルノニハ左樣ナ意味合ノモノガ
  包含セラレテ居リマシテ、是等ノ地方
  ニ於テ本法ヲ發動スル、斯ウ云フヤウ
  ナ場合ノ條件等ニ付テハ繰返シテ申シ
  マスル末條ノ勅令ヲ以テ明定ヲ致ス豫
  定ニ相成ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=69

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• 070・青木一男

  ○靑木一男君　最後ノ法制局長官ノ御
  說明ニ關聯シテ御伺ヒ致シマスガ、本
  法ニ基ク命令處分ヲ爲シ得ル地方官廳
  ハ地方總監ニ止ルノデアリマスカ、更
  ニ再委任等ニ依ツテ其ノ下部機構等ニ
  迄及ブノデアリマスカ、又ソレ等ノコ
  トハ勅令ニ依ツテ規定サレル方針デア
  リマスカヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=70

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• 071・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　只今御質問
  ノ點ニ付キマシテハ、只今ノ處、地方
  ノ官廳ト致シマシテハ地方總監ノミト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=71

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• 072・青木一男

  ○靑木一男君　地方總監ハ矢張リ法規
  命令ヲ出スコトヲ豫想サレテ居ルヤウ
  デアリマスガ、法規命令ニ基カヌデ、
  直接本法ニ基イテ處分ヲ爲スコトヲ豫
  想サレマスカドウカヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=72

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• 073・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　法規命令ガ
  本體ト思ヒマスガ、必要ニ依リマシテ
  ハ處分ヲ爲ス場合モ可能デアルト考ヘ
  マン·是等ノ具體的ノ權限行使ニ付キ
  マシテハ尙勅令ヲ以テ明定ヲ致シタ
  1斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=73

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• 074・青木一男

  ○靑木一男君　私ハ總理大臣ニ一點御
  伺ヒ致シマス、ソレハ行政權ノ地方委
  讓ニ關スル問題デアリマス、今囘地方
  總監ヲ設ケラレ、相當廣汎ナル行政權
  ヲ此ノ總監ニ御委任ニナルヤウニ伺ツ
  テ居ルノデアリマス、又本法ノ運用ニ
  當リマシテモ、今後非常事態ガ發生シ、
  直接中央ノ指揮ヲ俟タズシテ、地方總
  監或ハ其ノ他ノ下部機構ガ獨自ノ裁量
  ニ依ツテ臨機ノ措置ヲ執ルコトガ多々
  豫想サレルノデアリマス、是ガ本法制
  定ノ一ツノ理由デアルトモ考ヘルノデ
  アリマス、ソレニ付テ若干私ノ意見モ
  混ヘテ總理大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイト
  思フノデアリマスガ、從來我ガ國ノ行
  政ガ中央集權ニ過ギ劃一ニ流レテ居ツ
  テ實情ニ副ハナイ、或ハ臨機ノ狀態ニ
  間ニ合ハナイト云フヤウナ事態ノアツ
  タコトハ、私共モ之ヲ認メルモノデア
  リマス、從ヒマシテ斯ウ云フ時局ニナ
  リマシテ特ニソレ等ノ缺點ヲ急速是正
  スルノ必要ハ、誠ニ同感ト存ズル次第
  デアリマス、併シナガラ、事ニハ自ラ
  限界ガアルノデアリマシテ、有ラユル
  良イ施策モ行過ギハ是正セネバナラヌ
  ト思ヒマス、先程申シタ如ク、從來ノ
  弊害トシテ中央集權ニ過ギタ點ヲ直ス
  コト、或ハ戰局ノ推移ニ應ジテ地方ニ相
  當ノ權限ヲ認メナケレバナラスト云フ
  必要ニ應ズルノ措置ハ、是ハ固ヨリ必
  要デアリマスガ、然ラズシテ單ニ、行
  政權ハ地方ニヤラセルコトガ宜シイ、
  地方ニ委讓スルノガ宜シイト云フヤウ
  ナ觀念論ノ下ニ行過ギニ陷ルコトハ
  是ハ嚴ニ戒メネバナラヌト思ヒマス、
  我ガ國ハ米國ヤ「ドイツ」ノ如キ聯邦デ
  ハナイノデアリマシテ、政府ガ儼乎ト
  シテ强力ナル行政權ヲ把握シテ居ルト
  云フコトガ、行政ノ實績ヲ擧ゲル一ツ
  ノ大キナ基礎デアルコトハ、今日モ變
  リハアリマセヌ、此ノ點ニ付キマシテ、
  政府ガ實權ヲ失ヒ、地方ニ其ノ威力ガ
  及バナイト云フヤウナ弊害ニ陷ルコト
  ハ、今ヨリ嚴ニ愼マナケレバナラヌト
  思ヒマス、此ノコトハナカ〓〓限界ト
  シテムヅカシイ點ガアラウト思ヒマ
  ス、併シ其處ガ政府ノ責任デアリマシ
  テ、其ノ必要ナル限界ト云フモノヲ自
  ラ能ク判斷サレテ、善處サレムコトヲ
  希望スルモノデアリマス更ニソレニ
  附帶致シマシテ地方官廳ノ權限ガ非常
  ニ强大トナリマスレバ、玆ニ官吏ノ心
  構ヘ、第一線行政ニ當ル官吏ノ心構ヘ
  ニ付テ、之ニ應ズルノ改革、矯正、反
  省ヲ必要トスルト考ヘルノデアリマ
  ス、動モスレバ專斷ニ陷リ、法規ノ濫
  用ニ陷リ、下剋上ニ陷リ、幾多ノ弊害
  ガ豫想サレルノデアリマシテ、是等ノ
  コトモ今日ヨリ十分中央ニ於テ之ヲ引
  締メテ、斯クノ如キ弊害ニ陷ルナキヲ
  期セネバナラヌト思フノデアリマス、
  是ハ今囘ノ地方行政機構ノ改革及ビ本
  法ノ施行ニ關聯シテ私ノ最モ强ク感ズ
  ル點デアリマスノデ、之ニ對スル總理
  大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイト存ジマス

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• 075・鈴木貫太郎

  ○國務大臣(男爵鈴木貫太郞君)　御答
  ヘ致シマス、只今ノ靑木君ノ御尋ハ
  本法施行ニ關シマスル地方廳ノ權限ニ
  付テ御質問デアリマシタガ、此ノ點ハ
  誠ニ御尤ナコトデアリマシテ、地方總
  監府ノ運營ニ付キマシテハ、之ガ設置
  ノ本來ノ趣旨ヲ逸脫シテ行過ギニ亙ラ
  ヌヤウニ十分注意ヲ加ヘタイト思ヒマ
  ス、尙又官吏ノ行政運營ノ上ニ付テノ
  御心配ニ付キマシテモ、實ハ今日迄モ官
  吏ノ綱紀ノ肅正ニ付キマシテハ、私、
  就任ノ當時カラ非常ニ憂ヘタ所デアリ
  マシテ、今日迄其ノ點ニ付キマシテ
  官吏登庸ノ途ヲ廣ク拓キマシタリ或
  ハ是迄懲罰處分ガ懲罰令ガアル爲ニ遲
  滯致シマシテ早ク實行ノ出來ナイヤウ
  ナ點モアツタノデアリマシテ、是モ改
  正ヲ致シマシテ、速カニ信賞必罰ヲ行
  フ途モ拓イタノデアリマシテ、尙又此
  ノ點ニ付キマシテハ、各大臣ニモ吳々
  モ此ノ信賞必罰ヲ嚴行スルコトニ付キ
  マシテ再々希望ヲ求メタノデアリマ
  ス、又過日地方長官ノ集リニ於キマシ
  テモ、嚴ニ此ノコトニ付テ訓戒ヲ致シ
  タヤウナ次第デアリマス、段々此ノ點
  ニ付キマシテモ相當改善サレルモノト
  考ヘテ居リマス、尙此ノ後ニ於キマシ
  テモ、只今ノ御趣意ニ背カナイヤウニ
  努メタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=75

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• 076・青木一男

  ○靑木一男君　最後ニ、私ハ先程ノ運
  輸大臣ノ御說明ニ關聯シテ一點ダケヲ
  希望ヲ加へテ御尋ネ致シマス、敵ノ空
  襲下、其ノ他戰局ノ推移ニ依リマシテ、
  我ガ國ノ交通、運輸ガ地方的ニ障碍ガ
  生ジ、分斷ヲ受ケルト云フ危險ニ付キ
  マシテハ、先程運輸大臣ノ述ベラレマシ
  タ通リデアリマシテ、此ノコトハ交通、
  渾輸、我ガ國ノ現狀、殊ニ海上ノ輸送
  及「トラツ、ク」ニ依ル輸送ノ甚ダシク不圓
  滑ニナツテ居リマスル今日ニ於テ、鐵
  道輸送ノ負擔シテ居ル責務ハ、國防上、
  產業上、國民生活上絕大ナルモノト私
  ハ考ヘルモノデアリマス、固ヨリ交通、
  運輸ガ破壞サレタ場合ノ臨機ノ措置ニ
  付テハ、是ハ本法、其ノ他ニ依ツテ十
  分御考ニナツテ居ルコトト思ヒマス
  ガ、私共ノ希望ヲ申上ゲマスレバ、ド
  ウカ此ノ防禦ニ付テ是非共十分力ヲ人
  レテ戴キタイ、今日十分努力サレテ居
  ルデアリマセウガ、此ノ上トモ最重點
  ヲ、此ノ鐵道幹線ノ防禦ニ置イテ戴キ
  タイト云フコトヲ痛感スルモノデアリ
  マス、更ニ是ガ破壞サレタ場合ノ復舊、
  補修ニ付キマシテハ先程運輸大臣カラ
  御說明ガアリマシタガ、本日迄資材其
  ノ他ニ於テ相當窮屈ヲ感ゼラレテ居ル
  コトト思ヒマスカラ、運輸當局ト致シ
  マシテハ、有ラユル手段ヲ講ジテ、今
  カラ其ノ用意ヲシテ戴キタイ、此ノ點
  ヲ特ニ私ハ先程ノ御說明ニ關聯シテ痛
  感スルモノデアリマス、此ノ點ニ付テ
  若シ運輸大臣ノ御所見ヲ伺ヘレバ仕合
  セデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=76

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• 077・小日山直登

  ○國務大臣(小日山直登君)　只今ノ本
  土ガ空襲サレ、又分斷サレルヤウナ場
  合ニ對シテ萬遺漏ナキコトノ御要望ガ
  アリマシタノデアリマスガ、誠ニ御尤
  モナ御要望デアリ、又私共ト致シマシ
  テモ、日夜其ノ點ニ付テ努力致シテ居
  ル所デアリマスガ、ソレニ對スル大體
  ノ考ヘ方ヲ申シ述ベテ見タイト存ジマ
  ス、空襲ガ激化致シマシテ破壞ニ對ス
  ル復舊等ヲ迅速ニ致シマス前ニ我々運
  輸ノ當局ト致シマシテハ、申サバ待ツ
  アルノ備ヘガ大切デアルト考ヘマシ
  テ、只今主トシテサウ云フ方面ニ努力
  致シテ居ル所デアリマス、其ノ大要ヲ
  申上ゲマスルト、先ヅ防衞ノ態勢デア
  リマス、是ハ勿論軍防衛ト密接ノ關係
  ヲ執ツテ致シテ居ルノデアリマスガ、
  同時ニ自家防衞態勢ヲ强化スルコトガ
  必要ナクデアリマス、-尙サウ云フ
  ヤウナ事ノ爲ニ、鐵道ト致シマシテハ
  萬一ニモ備ヘナケレバナリマセヌノ
  デ、地方ガ分斷セラレルヤウナコトガ
  アリマシテモ、地方ハ地方トシテ十分
  ナル其ノ輸送ノ任務ヲ果スベク、先程
  御話ガアリマシタガ、地方鐵道局方面
  )、イザト云フ場合ニ備へルダケノ
  權限ノ委讓等モ十分考慮致シテ居ルノ
  デアリマス、併シナガラ、鐵道ノ狙ヒ
  ハ何處迄モ一貫性ヲ持ツタ輸送デアル
  コトガ必要ナノデアリマシテ、飽ク迄
  そ破壞箇所ハ復舊致シマシテ、一貫的
  ノ輸送ニ努力シナケレバナラヌノデア
  リマス、之ガ爲ニハ只今申シマシタ部
  隊ノ編成トモ相俟チマシテ、各鐵道局
  相互ノ間ノ連繫ヲ以チマシテ、機動的
  ノ復舊部隊ヲ編成シ、訓練シ、其ノ資
  材等ノ準備ヲソレ〓〓ニ配置致シテ居
  ルノデアリマス、斯クノ如キ態勢ヲ以
  テ、イザト云フ場合ニハ、全力ヲ復舊
  ニ注ギ、車輛等ニ付テハ、總テ今日ハ
  新造ヲ止メマシテ、修繕材料ノ强化ニ
  當ツテ居リマスノデ、總テソレ等ノ車
  輛等ノ問題ニ付テハ修繕ニ重點ヲ置イ
  テ、其ノ方ノ施設ヲ强化致シテ居ルノ
  デアリマス、-鐵道自體ノミナラズ、
  或ハ小運送等ニ於ケル自動車其ノ他ノ
  輕車輛等ノ輸送ヲ强化スルコトガ必要
  ナノデアリマシテ、是等モ陸軍大臣ト
  モ能ク相談ヲ遂ゲマシテ、是等ノ自動
  車或ハ輕車輛ノ不斷カラノ强化ナル修
  繕態勢、或ハ是等輸送力ヲ增强スル態
  勢ヲ强化スル事柄モ、旣ニ陸軍省トモ
  話合ガ付キマシテ、近クソレ等ノ實現
  ヲ見ル豫定ニシテ居リマス、左樣ナコ
  トニ致シマシテ鐵道ガ中斷サレタ場合
  :、之ヲ中繼スル所ノ小運送事業、就
  中自動車輸送力等ノ强化ヲ圖ルコトガ
  必要デアリ、イザト云フ場台ニ之ヲ以
  テ中斷ノ衝ニ當ルコトガ必要ナノデア
  リマス、尙又場所ニ依リマシテハ海上
  ノ小運送、所謂機帆船デアリマストカ
  木造船、有ラユル輸送力ヲ動員致シマ
  シン、ソレ〓〓ノ地點々々等ニ對シ、
  ソレ〓〓ノ計畫等モ致シツヽ、有ラユ
  ル方面ト協力致シマシテ、飽ク迄モ一
  貫的ノ輸送ノ强化ヲ進メテ行クコトニ
  狙ヒヲ持ツテ居ル譯デアリマス、併シ
  ナガラ其ノ狙ヒノドノ部分カニドウシ
  テモ相當ノ破壞ノアリマシタ場合ニ
  ハ、ソレ等ノ地方的局部ノ運用ニモ事
  缺カナイヤウナ處置ヲ執ツテ善處致シ
  タイト努力致シテ居ル譯デアリマス、
  御尋ニ對シマシテ、大體只今考ヘテ居
  リ、施策ヲ致シテ居リマス所ノ大要ヲ
  申上ゲタ次第デゴザイマス、只今注意
  ガアリマシテ、私ノ申シタ部分デ少シ
  軍事機密ニ亙ル部分ガアルサウデアリ
  マスガ、其ノ部分ハ速記カラ除カセテ
  戴クヤウニ御願ヒ致シマス

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• 078・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　只今ノ運
  輸大臣ノ御希望ハ認メテ差支ナイヤウ
  ニ思ヒマスガ、如何デスカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 079・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)ソレデハ　委員長ニ御任セ戴キタイト思ヒマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 080・青木一男

  ○靑木一男君　私ノ質問ハ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=80

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• 081・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　チヨツト、關聯質問
  ヲ御許シ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=81

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• 082・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　マダ後ニ
  二三人アリマスカラ、後ニ御願ヒシタ
  イト思ヒマス、井由男爵

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• 083・井田磐楠

  ○男爵井田磐補君　私ハ專ラ司法大臣
  ニ御伺ヲ申上ゲルコトニ致シタイト思
  ヒマス、總理大臣ニ於カレマシテ、其
  ノ御答辯ニ關聯シマシテ、何等カ御意
  見デモゴザイマスレバ、尙承ルコトガヽ
  出來マスレバ結構ト存ジマスヽ私ノ御
  尋ハ豫メ本法律案ノ本質的ナ意義ヲ御
  伺ヲスルト云フ風ナ問題ヲ第一ニ揭
  ゲ、第二ハ、非常大權ノ御見解ト云フ
  ヤウナコトヲ御尋ニ出シテ置イタノデ
  アリマス、大體私ノ御尋ニ關聯致シマ
  シテハ、旣ニ前質問者ニ於キマシテ、
  言葉コソ違ヘ、同ジヤウナ意味ニ於テ
  御尋ガアリマシタノデ、大體、私ハ政
  府ノ御考ノアル所モ略〓分ツタノデゴ
  ザイマスルケレドモ、私ハ一向憲法上
  ノ知識ヲ持タナイ爲ニ、更ニ同ジヤウ
  ナコトヲ御尋ネ申上ゲル次第デアリマ
  ス、從ヒマシテ、ドウカ私ニハ餘リ專
  門的ニ御答辯ヲ戴カナイデ、十分、分
  ルヤウニ一ツ御願ヲ申上ゲタイノデア
  リマス、穗積男爵ノ御尋ノ中ノ、本法
  ハ果シテ實質上適法デアルカ否カト云
  フ御尋ハ、蓋シ私ノ第一ノ質疑ト同意
  義ノモノト考ヘラレルノデアリマス、而
  シテ尙ドナタデゴザイマシタカノ御尋、
  ニ對シマシテ、司法大臣ノ御答ハ、本
  法ハ議會ヲ尊重シテ居ルモノデアルト
  云フ御答ヲ、此ノ第一條ニ付キマシテ
  御說明ヲ得タ次第デアリマス、確カ其
  ノヤウニ心得テ居リマス、少シ意見ガマ
  シクゴザイマスルガ、大權ニ依リマシ
  テ御定メニナリマシタ此ノ立法ノ府、
  卽チ議會ガ、自ラ立法ニ參ズベキ權限
  ノ殆ド全部ヲ擧ゲテ政府ニ御委任スル
  ト云フコトハ、議會ト致シマシテハ、
  此ノ時局ト云フコトヲ除キマシテ、所
  謂非常ノ變局ト云フ憲法義解ノ言葉ヲ
  離レマシテ考ヘマスル時ニ、是ハ議會
  自ラノ自殺行爲ヲ、玆ニ政府ト共ニ御
  協力ヲ申上ゲテ、此ノ法律ヲ玆ニ御討
  議ヲ申上ゲテ居ルト云フ風ニ私ハ考ヘ
  ラレルノデアリマス、然ル限リニ於キ
  マシテ、是ハ此ノ立法ヲ玆ニ御討議ヲ
  致シマスルコトハ、政府ノ御考ハ又之
  ヲ御伺ヒ致シマスルノニ難クナイ點ハ
  ゴザイマスルケレドモ、斯樣ナ、今私
  ノ申上ゲマシタ見地カラ考ヘマスル時
  二、是ハ議會ノ尊重デハナイト云フコ
  トヲ敢テ申上ゲタイト思フノデアリマ
  入、私ガ先ヅ玆ニ於テ此ノ法案ノ本質
  的ノ意義ヲ御伺ヒ致シタノハ、斯ウ云
  フ點カラ御尋ネシタ次第デゴザイマ
  ス、尙第二ノ非常大權ノ解釋ト云フコ
  トニ付キマシテハ、政府委員ノ御答ニ
  依リマスルト、非常大權ニ付テハ目下
  研究調査中ト言ハレマスルノデ、從ツ
  テ是ハ今此處デ御答辯ヲ差控ヘル方ガ
  宜イト云フ御答デゴザイマシタ、是亦、
  多少私ノ意見ヲ添ヘテノ御尋デゴザイ
  マスルガ、此ノ立法ハ大權ノ御示シニ
  ナリマスル件ヲ、政府ト議會ガヤリ取
  リヲ致シマシテ、大權ノ御發動ニ依ラ
  ズシテ、政府ニ議會ノ權能ヲ御委讓ス
  ルト云フコトニナルヤウニ私ハ考ヘル
  ノデアリマス、從ヒマシテ此ノ法案ヲ
  御出シニナルニ付キマシテハ、此ノ法
  案ト非常大權トノ關係ハ極メテ密接不
  離ナモノガアリマス、何處迄ガ此ノ法
  律案ノ範圍デアルカ、段々之ヲ擴張シ
  テ行キマスル時ニ、所謂此ノ非常ノ變
  局ニ際スル非常ノ例外ヲ御認メニナリ
  マシタ非常大權御發動ノ範圍ニ迄是ハ
  及ブベキ性質ノ法律案ヲ、玆ニ審議シ
  テ居ル如キ感ヲ與ヘラレテ居ルノデア
  リマス、デ、然ル限リニ於キマシテ、
  此ノ法案ハ非常大權ノ意義ヲシツカリ
  ト明カニシテ置イテ戴キマセヌト、此
  ノ際ニ於テ之ヲ明カニシテ戴クコト
  ガ私共ノ此ノ法案ヲ審議スル上ニ付
  テノ非常ナ材料ト申シマスカ、審議ノ
  上ニ私共ノ判斷ノ材料ニナルノデアリ
  W で 8.ソレヲ目下御研究中デアルト云
  フコトニ於キマシテ、今日最モ大切ナ
  非常大權ノ御說明ヲ此ノ席上ニ於テ伺
  ヒ得ナイノハ、頗ル遺憾デアリマスガ、
  少シク御尋ヲ變ヘマシテ、少クトモ此
  ノ法案ト非常大權トノ關係ト云フコト
  ハ御返事ヲ戴クコトガ出來ルト思フノ
  デアリマス、大體此ノ二點ヲ御伺ヒ申
  上ゲタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=83

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• 084・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　只今ノ御尋
  ハ先ヅ本法ト非常大權トノ關係ニ付テ
  デアリマスガヽ憲法第三十一條ノ大權
  事項ハ固ヨリ事大權ニ屬スルコトデア
  リマシテ、本法ハ立法事項ヲ議會ノ協
  贊ヲ經テ行フト云フノデアリマスカ
  ラ天皇大權ノ事項ト截然タル區別
  ガアルト云フコトハ、是ハ當然ノコト
  ト存ジマス、固ヨリ現在ハ戰時デアリ
  マスカラ、此ノ時局ヲ乘切ルニドウシ
  テモ必要デアルト云フコトニナリマス
  レバ、政府トシテハ第三十一條ノ大權
  ノ御發動ヲ奏請スルト云フコトモ考ヘ
  得ラレルコトデアリマス、併シナガラ
  時局ノ段階ガ、若シ政府ガ法律ラ制定
  シ、議會ノ協賛ヲ經テ、法律ヲ以テ此
  ノ時局ヲ乘切ル措置ガ出來得ルトスル
  ナラバ、左樣ナ措置ヲ執ルノモ是亦一
  ツノ方法デアルト存ジマシテ、玆ニ於
  テ政府ハ、現在ノ時局ノ段階ニ於テ之
  ヲ乘切ル措置ヲスルニハ、法案ヲ提出
  シ、議會ノ協賛ヲ經テ、立法手續ニ依
  ツテ諸般ノ措置ヲ講ズルノガ適當デア
  ルト考ヘマシテ、本法ノ立案ラ致シ、
  提案スルニ至ツタ次第デアリマス、大
  權發動ノ問題ニ付キマシテハ、先刻モ
  申シマシタ通リ、目下政府トシテモ之
  ニ付テ考究中デアリマシテ、內容ニ付
  テハ申上ゲ兼ネルト云フコトヲ法制局
  長官カラモ申上ゲタ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=84

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• 085・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　是ハ只今ノ御話ニ
  附帶シテ想ヒ起スコトデゴザイマス
  ガ、此ノ非常ノ變局ニ際シテ、議會ノ
  運營ト云フコトニ付テ何等カ政府ニ於
  カレテ御考ヲ御持チデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=85

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• 086・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　議會ノ運營
  ト云フコトニ付テ別ニ方法ヲ變ヘルト
  云フヤウナコトハ、政府ハ只今考ヘテ
  居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=86

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• 087・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　一應是デ私ノ御尋
  ハ終リト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=87

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• 088・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　私ハ極メテ幼稚ナ問題
  ニ付テ法制局長官ノ御〓ヲ受ケタイト
  思ヒマス、ソレハ第一條ニアル處分ト
  云フコトデアリマス、私共V是迄ノ知
  識ニ依リマスルト、人民ノ作爲不作
  爲ノ義務ハ、法規ニ依ツテ束縛セラレ、
  又治者ガ之ニ對スル措置ハ、法規ニ依
  ツテ執行サルヽモノト思ツテ居ルノデ
  アリマス、然ルニ本法ヲ見マスルト何
  等法規ニ依ラズシテ、直接直チニ處置
  ヲスルコトガ出來ル、處分ヲスルコト
  ガ出來ル、斯ウ云フ例ハ今迄ノ立法ニ
  私ハ初メテ見ルヤウナ氣ガシ、極メテ
  其ノ法制ノ知識モ少ナウゴザイマスカ
  ラ實例ヲ知リマセヌガヽ若シ實例ガア
  リマシタラ、先ヅ以テソレカラ伺ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=88

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• 089・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ第一條
  ニハ仰セノ通リ「處分ヲ爲スコトヲ得」
  ト、斯樣ニ書イテ居リマス、併シナガ
  ラ比ノ處分ヲ致シマスル色々ノ條項ニ
  付キマシテハ、先程カラ御話申上ゲテ
  居リマスルヤウニ、第五條ノ施行ニ關
  スル勅令ニ於テ或程度詳シク規定ヲ致
  シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、第一
  條ハ、此ノ處分ノ關係ニ於キマシテハ
  大キナ枠ヲ決メテ居ルト云フ風ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=89

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• 090・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　ドウモ只今ノ御說明ハ
  十分ニ了解シ兼ネマス、一體此ノ立憲
  政治ノ常識ト云ヒマスカ、常則ト云ヒ
  マスカ、或ハ法治政治ノ常則ト云ヒマ
  スルカ、サウ云フ言葉ハ兎モ角モ、人
  民ハ法規ニ依ツテ支配サレ、法規ニ依
  ツテ處分サレルト云フコトガ今日ノ常
  識デアルト思フノデアリマス、法規ヲ
  俟タズシテ直グニ處分サレルト云フコ
  トハ暴政デハナイカ、「テロ」政治ニ近
  イモノデハナイカト私共ハ思フ、例
  バイキナリ或官憲ガ或人ノ所ヘ何等根
  據ナクシテ侵入シテ、其ノ人間フ逮捕
  監禁スルト云フヤウテコトハ、是ハ法
  規ニ依ラザル處分ト云フコトハ、甚ダ
  今日ノ常識ニ於キマシテハ考ヘラレナ
  イ狀態デハナイカト思フノデアリマ
  ス、デアリマスルカラ、多クノ法規ノ書
  キ方ハ所謂、外國語ヲ使ツテハ惡ウゴ
  ザイマスガ、「ノルム」ヲ設定シテ、卽
  チ法規ヲ設定シテ、其ノ設定シタ法規
  ニ背クカ從フカト云フコトニ依ツテ支
  配サレルモノト私ハ思フノデアリマ
  ス、處ガ、此ノ條文ヲ見マスト、成ル
  程第五條ニ施行ニ關スルコトハ勅令
  ヲ以テ定ムト云フカラ、ソレニ一切任
  シテアルノダカラ、ドウナルカ分ラヌ
  ト云フヤウナコトノ意味ノヤウニ聞エ
  マスガ、ソレデハドウモ法律ノ、所謂
  立憲的ト云フカ、法治的ト云フカ、サ
  ウ云フ性質ニ甚ダ缺ケルモノデハナイ
  カト私共ハ思フノデアリマス、命令ノ
  定ムル所ニ依リ何々、法律ノ定ムル所
  ニ依リ何々ト云フコトガ皆書イテアル
  ヤウデアリマスルガ、此ノ法律ニ依リ
  マスルト第二條ニモ第三條ニモ命令又
  ハ之ニ依リ爲ス處分、或ハ又同條ノ規
  定ニ依リ爲ス處分ト斯ウアツテ、命令
  ニ基カナイ處分、卽チ官ガ何等ノ法規
  的根據ナクシテヤル處分ニ背イタ者ニ
  對スル罰則ガ揭ゲテアルト云フコト
  ハ、ドウモ私共トシテ立憲政治ノ常識
  ニ甚ダ反スルモノデアルヤウニ思ヒマ
  天カ、實ハ衆議院ニ於ケル議論ナド聽
  ク暇ガアリマセヌカラ、同ジヤウナコ
  トヲ重複シテ御伺ヒスルト云フコトガ
  アルカ知レマセヌガ、ドウカ此ノ點ニ
  付テ、モウ少シ詳シク御伺ヒシタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=90

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• 091・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　仰セノ通リ、
  第一條デ勅令ノ定ムル所ニ依ルトアリ
  マスレバ、或ハハツキリ致シタカト思
  ヒマスガ、意味ハ先程靑木委員ニ對シ
  テ御答へ致シマシタト同樣ニ、本法施
  行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
  ヲ定ムト致シマシテ、第一條ノ施行ニ
  關シマスル詳細ノ點ハ勅令ヲ以テ之ヲ
  明定致シタイ、左樣ニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス

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• 092・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　施行ノ勅令ト云フ御話
  デアリマスガ、施行ノ勅令ハ執行スル
  手續ノコトガ主ニ含マレテ居ル、其ノ
  本體タルドウ云フ法規ニ依リ、ドウ云
  フコトヲ遵守シナケレバナラヌ、ドウ
  云フ作爲不作爲ノ義務ガアルト云フコ
  トヲ決メルコトガ、執行手續ノ勅令ニ
  依ツテ決マルト云フコトハ、少シドウ
  モ亂暴ナ立法デハナイカト私共感ズル
  ノデアリマスガ、サウ云フコトハ今迄
  ノ法制ニ餘リ無イヤウニ、私共法制ノ
  經驗ガアリマセヌカラヽ貧弱デアリマ
  云々、餘リ無イヤウニ感ズルノデアリ
  マスガ、此ノ法ニ於テ初メテ現レタヤ
  ウニ思ツテ、頗ル奇怪デアル、危惧ノ
  念ニ堪ヘヌノデアリマス、事ノ序ニ少
  シ冗漫ニナリマスケレドモ、實例ニ付
  テチヨツト司法大臣カ內務大臣カ或ハ
  陸海軍大臣カ、兎ニ角警察ニ關係ノア
  ル大臣ノ說明ヲ伺ヒ得レバ大變結構ト
  思ヒマス、私、事實ハ知リマセヌガ
  坊間ニ傳フル所ニ依ルト、或現職ノ勅
  任官ガ、勅許ヲ經ズシテ捕ヘラレタト
  云フノハヲカシイケレドモ、捕ヘラレ
  タトカ何トカ云フコトヲ頻リニ噂シテ
  居ル者ガアリマス、又或相當ナ名士ガ
  何カ分ラヌケレドモ、イキナリ捕ヘラ
  レテ拘禁サレテ居ルト云フヤウナ噂ヲ
  頻リニ聞クノデアリマス、是ハ私、チ
  ヨツトモ事實ニ付テハ詳シイコトハ、
  知リマセヌガ、サウ云フ危惧ノ念ガ相
  當廣ク噂ニ傳ツテ居ルヤウナ際ニ、政
  府ガ法規ニ依ラズシテ處分ヲ爲ス、其
  ノ處分ニ背イタ者ハ是ダケノ罰ヲ科ス
  ル〓ドウモ少シ暗黑政治ノ謳ツテ居ル
  ヤウナ虞ヲ懷ク憂ガアリハシナイカ、
  サウトハ申シマセヌケレドモ、サウ云
  フ點ニ付テモウ少シ此ノ法文ヲ何トカ
  ナラナイモノデアリマセウカ、私共ハ
  其ノ點ニ付テ非常ニ疑ヲ持ツテ居ルノ
  デアリマス

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• 093・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　只今ノ御質
  問ノ前提トシテ、先程ノ御說明ニ付テ
  モウ一度申上ゲマスガ、第五條ハ施行
  ニ關シ必要ナル事項トアルカラ、是一
  施行手續ヲ決メタノデハナイカト云フ
  御話デゴザイマス、併シナガラ法律ノ
  唯單純ナル施行手續デゴザイマスナラ
  バ、是ハ憲法ノ第九條デ當然ニ規定ガ
  出來ルノデゴザイマス、玆ニ特ニ法律
  ノ中ニ「必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
  ヲ定ム」ト云フノハ、法律ヲ以テ定ム
  ベキ事項ヲ勅令ヲ以テ委任ヲスル、所
  謂委任立法ノ形デ規定シテ居リマスル
  ノハ、此ノ勅令ヲ以テ第一條ニ關スル
  制限的ノ事項ハ勿論定メルコトガ出來
  ル、斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=93

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• 094・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　然ラバ第一條ニ何故命
  令ノ定ムル所ニ依リ處分ヲ爲スコトヲ
  得ト云フ風ニ御書キニナラナカツタノ
  デアリマセウカ、イキナリ處分ヲ爲ス
  ト云フコトヲ、第一條ニ法律トシテ御
  謳ヒニナツタ、其ノ理由ハ何處ニ在ル
  ノデゴザイマセウカ

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• 095・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ法律ノ
  施行ニ關シテ定ムベキ事項ハ、外ニモ
  色々ゴザイマス、例ヘバ先程御話ヲ申
  上ゲマシタ政府ト云フモノガ、ドレト
  ドレトデアルカト云フヤウナコトモ、
  例ヘバ行政官廳ニ付テ申シマスルナラ
  バ、中央ノ所管主務大臣ノ外ニ地方總
  監ニ之ヲ限ルト云フヤウナコト、其ノ
  色々規定ヲスベキ事項ガアリマスルノ
  デ、一括シテ規定ヲ致シマシタ次第デ
  ゴザイマス

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• 096・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　處分ト云フ
  コトニ付キマシテ、或ハ之ニ依ツテ逮
  捕監禁審問ヲスルノデハナイカト云フ
  ヤウナ御疑ヒ、御質問ガアツタヤウデ
  アリマス、本法ニ依リマシテハ固ヨリ
  逮捕監禁審問處罰等ハ致スコトヲ考ヘ
  テモ居リマセヌシ、又條文ノ上カラモ
  左樣ナ解釋ハ致スベキモノデハナイト
  存ジテ居リマス、勅許ヲ經ズシテ勅任
  官ヲ起訴シタ事實ガアルノデハナイカ
  ト云フ御尋デゴザイマシタガ、先般或
  勅任官ヲ起訴シタ、言論事犯デ起訴シ
  タ事實ハゴザイマスルガ、現職ノ勅任
  官ヲ拘束スル、或ハ起訴スル場合ニ勅
  許ヲ經ルト云フ手續ハゴザイマセヌ、
  併シ其ノ勅任官ヲ起訴スルニ至リマシ
  タノハ、固ヨリ適法ナル手續ヲ經テ起
  訴致シタノダト云フコトヲ御了承ヲ願
  ヒタイト思ヒマス

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• 097・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　只今ノ司法大臣ノ御答
  辯デ了解致シマシタガ、併シ防衞ノ强
  化秩序ノ維持等ノ項目カラ見マスレ
  バ、此ノ必要ニ依ツテ處分ヲ爲スト云
  フコトハ、此ノ法律ガ出レバ、私ハ想
  像シ得ル事柄デアルト思フノデアリマ
  ス、只今司法大臣ハ、此ノ法律ヲ讀ン
  デモサウ云フ懸念ハ起ル筈ガナイ、又
  サウ云フ適用ノアル筈ガナイト云フヤ
  ウニ仰セラレマシタガ、ドウモ此ノ第
  四條ノ、防衞ノ强化及秩序ノ維持、サ
  ウ云フコトハ最モ起リ易イ源泉地ノヤ
  ウナ感ジヲスルノデアリマスガ、如何
  デゴザイマセウカ

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• 098・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　防衞ノ强化
  及秩序ノ維持ト云フ文字ノ意味ニ、只
  今ノヤウナ逮捕監禁審問等ノ意味ガ全
  然含ンデ居ラヌト云フコトヲ言明致シ
  テ置キマス

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• 099・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　私ハ少シ言葉ガ足リマ
  セヌカモ知レマセヌガ、防衞ノ强化及
  秩序ノ維持ト云フコトニ、其ノ文字ニ
  處分ト云フ意味ガ含マレテ居ルカ否カ
  ト云フコトヲ申シタノデハナイ、斯ウ
  云フ事項ニ關シテ處分ヲシ得ルト云フ
  トノ法規ガ出レバ、斯ウ云フ事項ニ關
  シテハ斯ウ云フ事件ガ最モ起リ易イ境
  遇ニアルノデハナイカト云フコトヲ御
  尋ネシタノデ、只今ノ司法大臣ノ御話
  ハ、防衞ノ强化及秩序ノ維持ト云フ文
  字ノ中ニ、處分ヲスルト云フ權能ヲ規
  定シテアルモノデハナイト云フ御答デ
  アリマスガ、ソレハ少シ見當違ヒデア
  リマス

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• 100・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　本法ハ行政
  上ノ處分ヲ意味シマスノデ、司法上ノ
  處分ハ含マレナイノデアリマス、何レ
  其ノ點ハ勅令ニ於テ明カニシヨウト思
  ツテ居リマス

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• 101・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　是カラハ議論ニナリマ
  スカラ止メマスガ、最後ニ一ツ、「政府
  ハ必要ナル命令ヲ發シ」ト第一條ニア
  リマスガ此ノ委任法律ハ、勅令以下
  ノ命令デヤルノデアリマスカ

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• 102・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　此ノ命令ノ
  中ニハ勅令以下ノ命令、卽チ省令デア
  リマスルトカ、或ハ先程來御話ヲ致シ
  テ居リマスル地方總監府デ、今度出來
  マシタ地方總監府令ト云フヤウナモノ
  等ヲ包含致シテ居ルノデアリマス

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• 103・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　サウシマスルト、前文
  ノ「他ノ法令ノ規定ニ拘ラズ」斯ウ云フ
  コトガ出來ルト云フコトニナリマス
  ト、省令ヲ以テ勅令ヲ廢止參ルト云フ
  コトガ出來ルト云フ結果ニナリハシマ
  セヌカ、法律ハ法律自身ガサウシテ吳
  レテモ宜イト云フ委任ヲシテ居リマス
  ルカラ、合法的デアリマスガ、勅令ハ
  此ノ法律ニ依ツテ、省令ニ依ツテ廢止
  サレテモ宜イト云フコトハ、勅令自身
  ハ明言シテ居ラヌ法令ト云フ方ハ委
  任ニ依ツテ省令デ廢止シテ吳レテモ構
  ハヌゾト云フコトヲ自ラ言ツテ居ルノ
  デアリマスカラ構ハナイガ、命令ニナ
  ルト上下ノ關係ガアルカラ、省令ヲ以
  テ勅令ヲ廢止若シクハ變更、廢止ハ少
  シ言葉ガ過激デアリマスガ、變更スル
  コトガ出來ルト云フコトノ結論ニナ
  ル、斯ウ云フコトニ歸著スルノデハナ
  イカト思ヒマス

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• 104・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ命令ト
  云フ中ニハ、勅令モ勿論入リマス、尙
  此ノ命令ノ勅令ニ對シマシテ、下ノ省
  令デ場合ニ依ツテ特例ヲ設ケルト云フ
  ヤウナコトモ發生ヲシテ參ル場合モア
  ラウカト思フノデアリマス

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• 105・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　サウ致シマスルト、上
  下ノ關係、命令系統ノ關係ガ全然紊レ
  ルト云フ處ガアリハシナイノデアリマ
  セウカ、ソレカラモウ一ツ、若シ今度、
  法律ノ方デアリマスケレドモ、法律ガ
  此ノ省令デ以テ改廢サレルト云フコト
  デアリマスレバ、過日通過シタ裁判所
  構成法ノ特別ノ法律ナドハ要ラナイ、
  司法省令ヲ出セバ裁判所ヲ何處ヘ開イ
  テモ宜イト云フコトニナツテ、アノ法
  律ハ要ラナイノデハナイカト思ヒマス
  ガ、其ノ點ハ如何デスカ

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• 106・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　御答ヘ致シ
  さく、本法ハ間ヨリ行政上ノ命令ナリ
  處分デアリマシテ、先般御協賛ヲ戴キ
  マシタ裁判所構成法ハ裁判手續ニ關ス
  ル司法ノ問題デアリマシテ、固ヨリ本
  法トハ全ク關係ガナイノデアリマスカ
  ラ、從ツテ本法ノ適用ニ依ツテ、裁判
  所構成法ヲ司法省令等ニ依ツテ變更ス
  ルト云フヤウナコトハ、到底法規上許
  サレナイコトデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=106

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• 107・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　只今ノ御說明承服致シ
  兼ネマスケレドモ、第一條ハ法律デア
  リマスカラ、法律ガ、政府ノ命令ニ依
  ツテ他ノ法律ヲ廢止シ得ル、變更シ得
  ルト云フ罐能ヲ之ニ與ヘレバ、裁判所
  構成法デモ何デモ變更出來ルモノト私
  ハ思ヒマス、ソレカラ今ノサウ云フ事
  件ハ全ク關係ガナイト言ハレマスケレ
  ドモ、六ノ戰災ノ善後措置等ニ付キマ
  シテハ、色々裁判事項ヤ、登記事項ヤ、
  裁判所構成法ヤラニ關係スル事件ガ起
  ツテ來ルト思ヒマス、其ノ場合ニ此ノ
  法ノ適用ガアレバ、此ノ間ノ裁判所構
  成法ノ一々ノ細カイ法制ノ改正ハナク
  トモ、是デヤレル、又ソレガヤレナケ
  レバ此ノ法律ヲ大騒ギシテ出ス必要ハ
  何モナクナルノヂヤナイカ、サウ云フ
  コトガヤレルカラ非當臨時措置デアツ
  テ、殆ド議會ノ權能ヲ大部分停止スル
  ト云フヤウナコトモ、サウ云フ非常ナ
  措置デアルカラコソヤルノデアリマ
  ス、ソレハ全ク出來ナイ、サウ云フコ
  トハ通常ノコトデヤルノダト云フコト
  ナラバ、此ノ法ノ制定ノ理由ガ極メテ
  薄弱ノモノニナルト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=107

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• 108・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　本法ニ依リ
  マシテ命令又ハ處分ニ依ツテ法律ニ特
  例ヲ設ケ得ルコトハ此處ニ揭ゲマシタ
  第一號乃至第七號ニ關スル事項ニ限定
  サレルノデアリマス、此ノ各號ノ事項
  ニ見マシテモ、司法裁判ニ關スル問題、
  司法手續ニ關スル問題ハ含マレナイコ
  トハ極メテ明瞭デアルト存ジマス、從
  ツテ本法ヲ提案スルニモ拘ラズ、先般
  裁判所構成法竝ニ戰時民事特別法、戰
  時刑事特別法等ノ裁判手續ニ對スル特
  例ノ法律ヲ提案致シタヤウナ次第デゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=108

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• 109・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　是以上ハ議論ニ亙リマ
  スカラ、私ノ質問ハ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=109

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• 110・小原直

  ○小原直君　第一ニハ、本法案ノ第一
  條ニ國家ノ危急ヲ克服スル爲緊急ノ必
  要アルトキハ政府ハ他ノ法令ノ規定ニ
  拘ラズ、應急ノ措置ヲ講ズル爲ニ必要
  ナル命令ヲ發スルコトガ出來ルト、斯
  ウアルノデアリマシテ、憲法ノ緊急勅
  令ノ場合ノ如ク、帝國議會閉會ノ場合
  ニ於テト云フヤウナ條件ガ附イテ居リ
  マセヌノデアリマスルカラ、恐ラクハ
  ソンナ考ハナイノカモ知レマセヌガ、
  帝國議會ガ通常ニ開會セラレテ居ル場
  合ニ於テモ、尙本法ニ依ツテ政府ハ此
  處ニ列擧シタ事項ニ關シテハ命令ヲ發
  スルコトガ出來ルト云フ御趣意デアリ
  マセウカ、ソレトモ議會開會中ニハ一
  切左樣ナコトハヤラナイデ、是ハ帝國
  議會ノ協賛ヲ經タ法律ニ依ルノデアル
  ト云フ御趣意デアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=110

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• 111・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　帝國議會ガ
  開會セラレテ居リマスル場合ニ、帝國
  議會ノ協賛ヲ得テ普通ノ手續ヲ以テヤ
  リ得マスル場合ハ、勿論本法ガ制定ニ
  ナリマシテモ、出來ルダケ左樣ナ手續
  ニ依ツテ參リマスルコトガ、當然デア
  ラウト存ジマス、唯、今後事態ガ非常
  ニ急迫ヲ致シテ參リマシテ、例ヘバ本
  邦ノ或一部局ガ急迫シタ事態ニ當面ヲ
  致シマシテ、外部トノ交通ガ杜絕ヲス
  ルト云フヤウナ場合モ、或ハ起リ得ナ
  イトモ限ラレナイノデゴザイマシテ、
  斯樣ナ場合ニ於キマシテハ、其ノ地區
  ノ地方總監等ガ應機ノ措置ヲ爲スコト
  ハ或ハ帝國議會ノ開會中ト云フヤウ
  ナ場合ニ於テモ、起リ得ルカト存ジマ
  ス、併シナガラ先程申上ゲマシタヤウ
  二、議會ガ開カレテ居ツテ、議會ノ正
  規ノ協賛手續ヲ經テ行フコトガ可能ナ
  場合ニ於キマシテハ、固ヨリ左樣ナ手
  續ニ依ツテ參リマスルコトハ、當然デ
  アラウト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=111

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• 112・小原直

  ○小原直君　只今ノ政府委員ノ御辯明
  ハ了承致シマシタガ、必ズ此ノ御言明
  ノ通リニ帝國議會開會中、已ムヲ得ザ
  ル場合ハ只今言ハレタ通リ、臨機ノ措
  置ヲ執ルコトモアルト思フノデアリマ
  スルガ、然ラザル限リハ、必ズ議會ノ
  協賛ヲ經ルト云フコトニナサルベキデ
  アリ、又サウ希望スルノデアリマス、
  ソレカラ次ニ第二點デ御尋ネ致シタイ
  ノハ、第一條ノ第七號ニアル勅令ヲ以
  テ指定スルトアリマスルガ、是ハ如何
  ナル事項ヲ指定セラレルノデアリマセ
  ウカ、大體御準備ガアルデアリマセウ
  カラ、其ノコトヲ御尋ネ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=112

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• 113・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ第七號
  ハ此ノ法律ガ實ハ只今ノ極メテ超非
  常時的狀態ニ應ジマスルガ爲ニ制定セ
  ラレルモノデゴザイマシテ、大體ニ於
  テ第一號カラ第六號迄ニ重要ナル事項
  ハ列記セラレテ居ルコトト存ジマスル
  ガ、事態ノ變轉ニ應ジマシテ、色々場
  合ニ依ツテ發生ヲスルコトガアル、斯
  樣ニ考ヘマシタノデ、第七號ヲ設ケマ
  シタノデアリマス、併シナガラ現實ニ
  於テ此ノ第七號ニ基イテ、現實勅令ヲ
  御制定願ヒマスルコトハ、結果ニ於テ
  重要ナル影響ヲ持ツテ參リマスルノ
  デ、此ノ勅令ヲ御制定ヲ仰ギマスル場
  合ニ於テハ、後ニ規定ヲ致シテ居リマ
  スル委員會ニ付議シテ、委員會ニ出來
  ルダケ諮問ヲ致シマシテ、其ノ意見ヲ
  聽イテ決定ヲ致シタイ、是ハ勅令デゴ
  ザイマスルガ、斯樣ニ勅令ヲ以テ明定
  ヲスルト云フ豫定ヲ致シテ居リマスル
  ノデアリマス、從ツテ第七號デ只今直
  グ、何ヲ發動スルカト云フコトヲ御說
  明ヲ致シマスルコトハ多少困難ト存ジ
  マスルガ、併シナガラ此ノ第一號カラ
  第六號迄ニ揭ゲラレテ居リマセヌ事柄
  デ、非常ニ是非矢張リ緊急ヲ要スルモ
  ノデハナイカト云フ、只今考ヘテ見マ
  スル事例ヲ申上ゲマスルト、例ヘバ統
  制或ハ取締法規ガ現在極メテ複雜ニナ
  ツテ居リマスルノデ、此ノ統制又ハ取
  締法令ノ簡素化ト云フヤウナコトヲ、
  取敢ズ實行シテ參ルコトガ必要デハナ
  カラウカ、先程大臣カラ御話ガゴザイ
  マシテ、目下法制局ニ於テ統制法令ノ
  簡素化ト云フヤウナコトヲ色々研究致
  シテ居リマスルガ、其ノ成案ガ出來テ
  實施ヲ急ヲ要スルト云フ場合ニ於キマ
  シテハ、場合ニ依ツテ此ノ第七號ノ規
  定ニ依ツテ、之ヲ實施スルコトノ必要
  モ生ジテ參ルノデハナカラウカ、斯樣
  ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=113

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• 114・小原直

  ○小原直君　次ニ御尋ネスルコトハ
  先程澤田委員カラ一部質問ガアツテ、
  答辯モアツタノデアリマスルガ、此ノ第
  一條ニアル他ノ法令ノ規定ニ拘ラズ、
  命令ヲ爲スコトガ出來ル、斯ウアリマ
  スルト云フト、既ニ帝國議會ノ協賛ヲ
  經タ旣存ノ法律ヲ、今度出ル法律ノ命
  令ニ依ツテ改廢出來ル、廢止モ改變モ
  出來ル、斯ウ云フコトニナルノデハナ
  カラウカト思フノデアリマスルガ、其
  ノ點ハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=114

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• 115・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　旣存ノ法律
  ニ異ナルヤウナ命令ヲ出ス必要モ、場
  合ニ依ツテハ發生ヲスルノデハナカラ
  ウカト考ヘマス、併シナガラ是等ハ玆ニ
  揭ゲテ居リマスルヤウナ、眞ニ緊急已
  ムヲ得ザル事態ノアリマスル場合ニ、
  限定ヲセラレルノデアリマシテ、又他
  面カラ申シマスルナラバ、度々申上ゲ
  マスルヤウニ、交通ガ杜絕シテ、中央
  的ノ措置ヲ仰グコトガ出來ナイヤウ
  チ、特別ノ事態ガ發生シタ、斯ウ云フ
  ヤウナ場合ニ於テハ、臨機ノ措置トシ
  テ、現存ノ法律ノ規定ガアリマシテモ、
  ソレニ異ナルヤウナ定メヲナスヤウ
  ナ、已ムヲ得ナイ事態ガ或ハ場合ニ依
  ツテ起リ得ルデアラウト考ヘマス、本
  條ハ斯樣ナ緊急已ムヲ得ザル場合ニ對
  シテハ、出スヤウナ事態モ發生シ得ル
  ノデハナカラウカ、斯樣ニ考ヘテ居リ
  マス

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• 116・小原直君

  ○小原直君　御說明ハ分リマシタガ、
  サウスルト此ノ法律ニ依ツテ出來ル勅
  令デ、旣存ノ法律ヲ廢止スルト云フヤ
  ウナコトラヤラナイト言ハレルノデア
  リマスカ

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• 117・政府委員(村瀨直養君)

  ○政府委員(村瀨直養君)　緊急ノ必要
  ニ應ズル特別ノ措置デゴザイマスルカ
  ラ、其ノ必要ノアリマスル場台ニ於テ
  ハ又其ノ法律ヲ廢止シナケレバナラ
  ヌト云フヤウナ必要ガアリトスルナラ
  バ法律上ハ不可能デハナイト存ジマ
  スルガ、形式的ニ廢止ヲスルト云フコ
  トハ出來ナイト存ジマスルガ、其ノ內
  容ニ付テ、ソレ等ノ法律ノ內容ト異ナ
  ルヤウナ定メヲナスト云フコトハ、此
  ノ規定デ可能デアラウト考ヘマス

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• 118・小原直君

  ○小原直君　是以上ハ議論ニナリマス
  ルケレドモ、現存ノ法律ト異ナツタ規
  定ヲ、此ノ命令デ出スコトガ出來ルナ
  ラバ、旣存ノ法律ヲモ廢止若シクハ改
  メテモ宜イノデハナイカト思フノデア
  リマスガ、モウ一應伺ヒマス

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• 119・政府委員(村瀨直養君)

  ○政府委員(村瀨直養君)　形式的ニ既
  存ノ法律ヲ改メルト云フコトハ、此ノ
  法律デハ出來ナイト云フ風ニ只今ハ考
  ヘテ居リマス

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• 120・小原直君

  ○小原直君　其ノ理由ハ何處ニアリマ
  スカ

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• 121・政府委員(村瀨直養君)

  ○政府委員(村瀨直養君)　是ハ法律ノ
  委任ニ基イテ、委任命令ノ性質上、左
  樣ニ相成ルノデハナカラウカト考ヘテ
  居リマス

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• 122・小原直君

  ○小原直君　マァ今ノ問題ハ、ソレ以
  上ハ議論ニナリマスカラ、ソレデ終リ
  マス、次ニ本法ニ基ク命令ハ、地方總
  監モ發シ得ルト云フコトデアリマスル
  ガ、實ハ地方總監ガ、本法ニ依ル法律
  ニ代ハルベキ命令ヲ發スルト云フヤウ
  ナコトハ、總監ニ與ヘル權限ガ廣過ギ
  ハセヌカ、强過ギハセヌカト云フ感ジ
  ガスルノデアリマス、併シ必要アツテ、
  今後ノ戰局如何ニ依ツテ、本土中色々
  ノ地域ガ分斷サレルヤウナ場合ニ於テ
  ハ)萬已ムヲ得ザル場合ガアルカモ知
  レナイト思フノデアリマスルカラ、是
  亦、已ムヲ得ザルコトト思フノデアリ
  マスルガ、併シソレニシテモ、左樣ナ
  場合ニ於ケル中央官廳ノ監督ト云フモ
  ノハ、相當强ク持タレナケレバ、ナラ
  ヌト思フノデアリマス、此ノ點ニ關シ
  テ如何ナル監督、手續ヲ執ラレルノデ
  アリマセウカ

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• 123・政府委員(村瀨直養君)

  ○政府委員(村瀨直養君)　是カラノ行
  政ノ大體ノ行キ方ヲ考ヘテ見マスル
  下、又現內閣ニ於テハ左樣ナ方針ヲ採
  用致シテ居ルノデアリマスルガ、段々
  ニ事態ガ緊迫ヲシテ參リマスルト、多
  クノ行政措置ト云フモノハ現地ヲ中心
  トシテ行ハレナケレバナラナイ、斯樣
  ニ考ヘラレルノデアリマス、從ツテ出
  來ルダケ中央ヲ簡素化ニ致シマシテ、
  仕事ヲ地方ニ委讓ヲスル、是モ先程靑
  木委員ノ仰セニナリマシタヤウニ、經
  常的ノ制度トシテ左樣ニ致スノデハナ
  イノデアリマシテ、當面應急ノ體制ト
  致シマシテ、中央ヲドウシテモ簡素化
  ヲ致シマシテ、地方ニ權限ヲ委讓スル
  ト云フコトハ只今必須ノ趨勢デアルト
  考ヘルノデアリマス、此ノ場合ニ構想
  ト致シマシテハ、中央ハ大體ニ於テ企
  畫ト査察ヲ中心トシテ中央ノ官廳ガ職
  權ヲ行ヒ、實質ノ行政ハ出來ルダケ地
  方ニ之ヲ委讓スル、斯ウ云フヤウナ方
  針デ只今進ンデ參ツテ居ルノデアリマ
  ス、左樣ニ致シマスルト、地方ニ非
  常ナ權限ガ增大致シマスルノデヽ只今
  申シマシタヤウニ、監査査察ト云フコ
  トガ中央ノ重要ナル使命ト相成ルノデ
  ゴザイマス、現實制度上ノ問題トシテ
  ハ、地方ノ地方總監ニ對シマシテ、勿
  論法制上ニ於テ中央ハ監督權ヲ持ツテ
  居ル、從ツテ其ノ爲シタ處分ガ適當デ
  ナイト云フ場合ニ於キマシテハ取消ヲ
  スルト云フ權限モ官制ノ上ニ於テ認メ
  ラレテ居ルノデアリマス、制度上ハ左
  樣ニナツテ居リマスルシ、制度運營ノ
  實際トシテハ、今後ノ中央ノ官廳ト云
  フモノハ其ノ一半ノ使命ト致シマシ
  テ、左樣ナ監督、或ハ査察ト云フモノ
  ヲ中心トシテ運營ヲセラレルコトト考
  ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=123

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• 124・小原直君

  ○小原直君　次ニ農商大臣ニ御尋ネ致
  シタイト思ヒマス、先程靑木委員ノ質
  問ニ對シテ食糧事情ノ窮迫ナルコトハ
  御話ニナツテ分ツタノデアリマスル
  ガ、現下ノ主要食糧ノ需給情勢ガドン
  ナ風ニナツテ居リマスルカ、今年ハ御
  承知ノ通リ麥作ハ非常ニ不良デアリ、
  而シテ氣候モ亦不順デアリマスルガ爲
  ニ今後ノ米作等ニ對シテモ頗ル縣念
  ヲサレテ居ルノデアリマス、斯樣ナ狀
  態ニ於テ此ノ主要食糧ノ需給如何ハ戰
  力增强、國民ノ戰意〓揚ノ上ニ大ナル
  影響ヲ持ツノデアリマシテ、私共ハ之
  ニ付テ農商大臣ト共ニ非常ナ憂ヲ持ツ
  テ居ルノデアリマスカラ、此ノ際其ノ
  需給ノ〓略、而シテ之ニ對スル對策ヲ
  如何ニ爲サレルノデアルカト云フコト
  ヲ搔摘ンデデ宜シウゴザイマスカラ伺
  ヒタイト思ヒマス、サウシテ續イテ最
  近ノ空襲ニ因ツテ生ジタ食糧ノ被害狀
  況及ビ之ガ對策ニ付テモ併セテ御說
  明ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス、此ノ
  問題ハ事ノ機密ニ關スルモノモアルデ
  アリマセウカラ、速記ヲ中止スルナリ、
  其ノ他適宜ノ處置ヲ執ルコトヲ委員長
  ニ御任セ致シマス
  國務大臣(石黑忠篤君)我ガ國ノ農
  業ニ於キマシテ、事變後累年惡條件ガ
  累加致シマシテ、或ハ人力ノ上ニ於キ
  マシテモ、肥料ノ上ニ於キマシテモ、
  僅カナル農地ノ面積ノ上エ於キマシテ
  モ、大キナ惡條件ガ累加致シテ參ツテ
  來テ居ルノデアリマス、年柄モ必ズシ
  モ好イ年ガ續イテ居ルノデハゴザイマ
  セヌガ、併シ其ノ結果、農業總生產ノ
  量ハ漸減致シテ居ルノハ、是ハ已ムヲ
  得ヌコトト思ヒマス、併シ米麥、甘藷、
  馬鈴薯ト云フ、所謂主要食糧ト云フ範
  園ニ於キマシテハ事變前ノ生產量ヲ
  〓ネ維持シテ居ルト云フコトハ、是尺、
  政府ノ、歴代ノ內閣ノ農業ノ政策ガ主
  要食糧ニ重點的施設ヲ傾注シタコト
  下、本邦ノ農業ガ家族勞働ヲ主トシテ
  居リマスル小農經營デァルト云フ特
  質、農民ノ異常ナル報國精神ニ燃エタ
  努力トノ結果、事變前ノ〓ネ主要食糧
  ノ生產額ヲ今日迄維持シテ來テ居ルト
  云フコトハ御認メヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス、併シ之ヲ以テ國ノ需要ガ
  總テ充タサレテ居ルカト申シマスト云
  フト、決シテ充タサレテ居ルコトハゴ
  ザリマセヌ、內地以外カラ、事變前ニ
  於キマシテハ外地カラ、事變後、昭和
  十五米穀年度以後ハ南方外國米ニ依リ
  マシテ、朝鮮ノ不作ノ缺陷ヲ充タシテ、
  ズツトヤッテ來テ參ツテ居ルト云フヤ
  ウナ情勢デアリマシタ、ソレガ南方ト
  ノ海上交通ガ、御承知ノ通リニ漸次ニ
  困難ニナツテ參リマシタノデ、昭和十
  八年ヨリ日滿ヲ通ズル食糧絕對自給ト
  云フ、國內戰時態勢强化ト云フ政府
  ノ各種ノ施策ノ中ノ大キナ一ツノ具體
  的目標ガ示サレマシテ、之ニ努力ヲシ
  テ參ツテ來テ居ル、斯ウ云フ狀況デア
  リマシタガ)昨年ノ夏以來、此ノ日滿
  ヲ通ズル食糧ノ絕對自給ト云フコトモ段々
  ト困難ニナツテ參ツテ來タノデゴザ
  イマス、是ハ戰局ノ推移ガ誠ニ已ムヲ
  得ザル海上輸送ノ困難ヲ齎シ來ツタノ
  デアリマシテ、已ムヲ得ナイコトト存
  ズルノデアリマス、本二十米穀年度ノ
  需給ノ推算ヲ致シマスルト云フト、從
  來ニアリマセヌデシタヤウナ困難ニ米
  穀年度初頭カラ我々ハ逢著ヲ致シタノ
  デ、ト申シマスノハ、日滿ヲ通ズル食
  糧絕對自給ト云フコトデ進ンデ參リマ
  シタモノガゝ滿洲カラ主要數量ヲ持チ
  來スコトガ出來ナイト云フコトモ明カ
  ニナリマシタ譯デアリマス、滿洲自體
  ニ於キマシテハ一昨年ニ次ギマス昨年
  ノ豐作ガ、內地ニ向ケマシテノ糧穀ノ
  輸送ヲ十分ニ充タシ得ル程ノ收穫ヲ得
  テ居ルノデアリマス、而シテ收買ノ豫
  定ノ數量ノ上ニ尙〇〇「トン」ノ收買ヲ
  旣ニ餘計ニ終了シテ居ルト云フヤウナ
  情勢デアリマシテ、滿洲內各地ノ停車
  場ニハ相當ニ糧穀ノ野積ヲ見テ居ツ
  テ輸送ヲ待ツテ居ルト云フヤウナ狀態
  デアリマス、併シアチラニ幾ラ出來テ
  居リマシテモ、コチラニ持ツテ參ラナ
  ケレバ問題ノ解決ニハ一向ニナラナイ
  ノチ、此ノ間ノ輸送ノ狀態ノ改良ト云
  フコトガ非常ニ大キナ問題ニナツテ居
  ルコトハ、大陸物資輸送ノ問題ニ關シ
  マシテ、先般大本營ニ海運總局ガ設置
  セラレテ、國務大臣兩名ガ分レテ、日
  本海沿岸諸港ノ港灣設備ニ付テノ特別
  ノ査閱ヲサレタト云フヤウナコトニ付
  テ略〓推知シテ戴クコトガ出來ヨウト
  思ヒマス、サウ云フヤウナ點ガ本二十
  米穀年度ノ當初カラ、此ノ米穀年度ハ
  餘程食糧問題上ハ重大ナ時斯デアルト
  云フ時期ニ到達シタト云フコトヲ想像
  セシメラレタノデアリマス、只今ノ內
  地ノ需給ノ關係ヲ數字デ申シマスト云
  フト、供給ノ見込高ガ〇〇石ト云フモ
  ノニ對シマシテ、需要ノ見込高ハ〇〇
  石デアリマス、差引不足ノ見込高ガ○
  ○石ト相成ツテ居リマス、此ノ大イナ
  ル不足ノ見込高ニ關シマシテハ、色々
  ノ方面カラ、一面供出ノ供給ノ方面、
  他面消費ノ方面、兩方カラ攻メマシテ、
  不足額ヲナクシテ行ク外ナイノデアリ
  やく、幽靈人口ノ整理ト申シテ居リマ
  スコト、卽チ不正確ナル消費人口ヲ出
  來ルダケ正確ニシテ正シテ參ツテ行ク
  コト、或ハ配給量ノ合理的調整、詰リ
  配給階段ノ整理、勞務特配デアルトカ、
  職場ノ配給デアルトカ云フヤウナコト
  ヲ適正ニ整理致シテ參リマスコト、或
  ハ業務用米ト稱シテ飮食店ニ出シテ居
  リマシタモノヲ壓縮ヲ致シマシテ、外
  食劵制度ヲ出來ルダケ厲行致スト云フ
  ヤウナコトヲ致シ、又農村ニ於キマシ
  テハ、供出米モ强ク出シテ居ル農家モ
  アレバ、色々ナル關係カラソレガ比較
  的緩ク行ツテ居ル農家モアリ、又部落
  ニ依ツテノ違ヒモアルト云フヤウナコ
  トヲ調整致シマス所ノ、所謂調整米ノ
  積立造成ヲスル、或ハ昨年產ノ麥ヲ飯
  ニ混ゼテ食フコトヲ豫定ヨリモ餘計强
  行致スト云フヤウナコトヲ致シ、或ハ
  防空關係ニ於キマシテ備蓄ヲ致シテ置
  キマシタモノヲ、已ムヲ得ズ、又事情
  ノ變化ニ應ジマシテ放出ヲ致スト云フ
  ヤウナコトモヤリマシテ、〇〇石ノ補
  塡ヲ是等ノ方法ヲ以テ講ズル積リデ居
  リマス、斯樣ナ方法デ調整ヲ致シマシ
  テモ、尙○○石見當ハ之ヲドウシテモ
  満洲ノ糧穀及朝鮮米ノ移輸入ニ依ツテ
  充タサナケレバナラヌ情勢デアルノデ
  アリマス、然ルニ先ニ〓括的ニ申上ゲ
  マシタヤウニ、滿鮮穀類ノ移輸入ガ、
  本年度ニ於キマシテハ斯樣ニ重大デア
  ルノニ拘ラズ、非常ニ困難ニナツテ來
  テ居ルノデアリマシテ、本年度ノ物資
  動員計畫ノ上ニ於キマシテ、大陸糧穀
  其ノ外軍需必要物資ノ移輸入ガ如何ナ
  ル割合ニ、如何ナル順位ニ於テ決メル
  カト云フコトニ付テ、非常ニ大キナ困
  難ヲ覺エタノデアリマス、現內閣成立
  ノ時迄、實ハ物資動員計畫ハ其ノ爲ニ
  立タナカツタト云フヤウナ狀況デアル
  ノデアリマス、此ノ頗ル減少致シマシ
  タ船腹ヲ、大陸物資ノ輸送ニ如何ニ分
  ケルカト云フ問題ニ當リマシテ、現內
  閣ニ於キマシテハ-滿洲糧敷ノ輸入
  ト云フコトニ配船ヲ致スコトニ決定ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、併シナガラ
  船腹ハ決シテ增加ヲ致スノデハアリマ
  七ヌ、是ハ減少スルトモ增加ハ致サナ
  イノデアリマス、而モ海上ノ危險ハ增
  加ヲ致シテ居ルノデアリマス、尙本土
  作戰ニ備ヘマシテノ軍需生產ノ確保ヲ
  致ス爲ノ大陸資材ノ輸入及本土作戰ニ
  關シマシテ、特別、相當數量餘計要リ
  マス所ノ軍用ノ糧穀ノ需要ノ增大ト云
  フヤウナコトガ、此ノ困難ナ事情ヲ一
  層一般主要食糧ト致シマシテノ滿洲
  糧穀ノ輸入數量ニ對シマシテ掛ツテ參
  ル譯デアリマス、斯ウ云フ苦シイ狀態
  デアリマシテ、詳シイ數字ヲ申上ゲル
  コトハ差控ヘマスガ、色々ナ差引ヲ致
  シマシテ、結果ニ於キマシテハ〇〇石
  見當ノ米換算ノ主要食糧ガドウシテモ
  不足ニナルト云フ勘定ニナルノデアリ
  そしろ。是等ノ大イナル不足量ヲドウシ
  テ補塡ヲシテ行クノカト云フコトニ關
  シマシテハ、輸入ガ困難デアリマスル
  カラ、サツキ申シマシタヤウナ手段ヲ
  旣ニ講ジテ、極力ヤツテ來テ居ルノ
  デアリマスガ、尙ソレダケノ不足ガ輸
  入ニ努メテモ出ルト云フコトニナリマ
  ス結果ハ、關係各方面ノ格段ノ協力ノ
  下ニ於テ、勞務特配ノ整理ノ徹底的厲
  行ヲスル、又農村方面ニ對シマシテ、
  已ムヲ得ズ、配給ヲシテ居リマスル數
  量ヲ出來ルダケ是モ亦壓縮ヲ致ス、都
  道府縣一般配給豫定量ト致シテ居リマ
  スルモノモ、出來ルダケ之ヲ差控ヘル
  ト云フ方法デャッテ參ル外方法ハナイ
  ノデアリマス、之ヲ實行致シマスニ付
  テ、更ニ本年ノ特殊ノ事情ト致シマシ
  テノ困難性ハ、人口ノ配置ト云フモノ
  ガ)空襲ニ依リマシテ、非常ナ變化ヲ
  急速ニ來シテ居ルト云フコトデアリマ
  ス、實ハ今日ニ於キマシテ正確ナル人
  口ノ配置ヲ知ルニハ術ガナイト云フ狀
  況デアリマス、サウ云フ場合ニ於ケル
  食糧ノ配給ト云フモノハ、從來ノ配給
  トハ餘程方法ヲ變ヘテ考ヘナケレバナ
  ラナイ、方法ヲ變ヘテ考ヘルト云フコ
  トハ、結局量ニ於テハ相當ノ量ヲ餘裕
  ヲ取ツテ考ヘナケレバナラヌト云フ困
  難性ガ、玆ニ又增シテ參ツテ來テ居ル
  ノデアリマス、是等ニ關シマシテ、私
  共ハ地方長官ヲ督勵ヲ致シマシテ、出
  來ルダケノコトヲ致スベク、旣ニ著手
  ヲ致シテ居リマス、供給方面ニ於キマ
  シン、馬鈴薯及ビ麥類ノ供出促進、甘
  諸早掘リ供出ノ强化、詰リ長ク置ケバ
  餘計穫レテモ、餘計穫ルガ爲ニ長ク待
  ツテ居ルコトハ出來ナイト云フ狀況ヲ、
  有リノ儘ニ認メテ、早ク、出來タナラ
  バ直グニ掘ツテ食フト云フコトヲヤラ
  セル以外ニ方法ハナイ、尙米ニ關シマ
  シテモ、本年產ノ米穀ノ早期供出促進、
  米ノ早食ヒト云フコトヲ、例年ヨリ
  モ餘計ニヤルト云フコトデ、突如トシ
  テ現レマシタル困難ヲ來年ニ分擔ヲシ
  テ貰フト云フヤウニ、或程度來年賴ミ
  ニシテ行ク以外ニ方法ハアリマセヌ、
  斯樣ナ方法ヲ併用致シマシテヤツテ參
  リマス以外ニ、〓糧ノ問題ト云フモノ
  八生產ニ付テ季節ガ決定ヲスルノデ
  アリマスカラ、外カラ出來テ居ルモノ
  ヲ持ツテ來ル以外ハ方法ハナイノデア
  リマス、成ル程、色々植物ノ今迄利用
  シテ居ラレテイ所ノ部分ヲ粉ニシテ混
  ゼテ食ヘバ、幾分ノ榮養ニモナリ、尙
  榮養ニナラナクテモ腹ヲ滿スト云フ、
  食慣習ノ上ニ於テ裨益スル所ガナイデ
  ハアリマセヌカラ、ソレ等モ併用致シ
  マスガ、併シ大體ノ筋ニ於テハ、以上
  申シタヤウナ方法ヲ執ル以外ニナイノ
  デアリマス、サウナツテ參リマスト、
  ソレダケデ以テ本年ノ需給ノ調整ガ果
  シテ取レルカドウカト云フコトニ關シ
  マシテハ、大イナル不安ヲ未ダ御持チ
  ニナルコトト存ズルノデアリマスガ、
  此處デ配給ノ基準ノ數量ヲ切下ゲルカ
  ドウカト云フ問題ガアルノデアリマ
  ス、配給ノ基準ノ量ヲ切下ゲルト云フ
  コトハ、是ハ非常ニ大キナ問題デアリ
  きぐ、食糧問題主管ノ大臣ト致シマシ
  テハ、事態ガ大體ニ於テ明カニナツタ
  ル以上、其ノ大體ノ事情ヲ國民ヲシテ
  了得セシメテ、サウシテ成ルベク早ク配
  給ノ量ヲ已ムヲ得ザル程度ニ於テ、最
  小限度ニ於テ引下ゲテ、サウシテ先ヲ
  一日モ長ク持タセルト云フコトニヒタ
  向キニ行クノガ當然ノコトト考ヘルノ
  デアリマスガ、此ノ問題ハ國政全般ノ
  上ニ於テモ大キナ關係ヲ持ツノデアリ
  マスノミナラズ、今日ニ於キマシテ
  ハ、作戰ノ上ニ於キマシテモ、國民戰
  意ノ上ニ於テ大キナ關係ヲ持ツノデア
  リマスカラ、單ニ食糧管理ノ面カラノ
  ミ之ラ考ヘテ決定シテ行ク譯ニハ參リ
  マセヌ、是等ノ事情ハ陸海兩軍部ニ於
  キマシテモ、能ク事情ハ了得サレテ居
  リマス、國民生活ノ確保ト云フコトニ
  關シマシテ、最近程陸海兩軍部ノ思ヒ
  ヲ深ク此ノ方面ニ致サレテ居ルコトハ
  ナイヤウニ考ヘマス、事態ニ應ジテハ
  特ニ本土作戰用トシテ保有スル所ノ糧
  穀ヲモ、ソレヲ以テ必要ナル協力ヲ爲
  ス用意ガアルト云フコトニ話ヲ附ケテ
  居リマス、斯樣ニ致シマシテ、軍モ官
  モ民モ總テガ此ノ事態ニ對シマシテ
  協力ヲシテヤツテ參リマスルナラバ
  本年度ノ食糧ニ付テハ私ハ國難ヲ切
  拔ケテ行クコトガ出來ルト確信ヲシ
  テ居リマス、本年ヨリモツトムヅカ
  シイ問題ハ來年デアリマス、來年ノ〓
  糧ヲドウスルカト云フコトハ、作物ノ
  耕作ノ季節ノ關係カラ申シマシテ、現
  內閣ガ全幅的ニ力ヲ盡シ得ル米穀年度
  ナノデ、之ニ對シマシテハ、玆ニ御協
  贊ヲ願フ爲ニ提出致シテ居リマス法案
  ニ依リマシテ、果敢ニ國土ノ開發改良、
  其ノ他農耕ニ付テノ强力ナル實行ヲヤ
  リマシテ、幸ニシテ我々ニ剩サレテ居
  ル所ノ國土ノ大イナル餘地ヲ以チマシ
  テ、順次ニ解決ヲシテ行クト云フコト
  ニ進ミタイト思ツテ居リマス、又之ヲ
  以テ進ミ得ルト私ハ確信ヲシテ居リマ
  ス、唯是等ニ關シマシテハ、色々ナル
  平時ノ考ガ殘ツテ居リ、平時ノ耕地ノ
  補償規定等ガ殘ツテ居リマスノデ、ソ
  レ等ニ連關シマシタモノヲ敏速適當ニ
  整理ヲスル權能ヲ得ナケレバナラナイ
  ノテアリマス、之ヲ得テ、初メテ此ノ
  我々ニ殘サレタル國土ノ力ヲ、皇國ノ
  農民ノ力ヲ以テ開發ヲ致シテ刻下ノ食
  糧難局ヲ打開致シ、進ンデ新ラシイ意
  味ノ皇國ヲ培養致シ育成致シテ行ク基
  ヲ作ルコトガ出來ルト確信致シテ居リ
  R v.8.以上申上ゲマシタ物動等ノ數字
  ノ機密ニ亙ルモノハ速記ヨリ削除スル
  コトヲ御認メヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=124

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• 125・小原直

  ○小原直君　農商大臣カラ極メテ詳
  細御深切ニ御說明ヲ戴イテ有難ウゴ
  ザイマシタ、次ニ軍需大臣ニ極メテ簡
  單ナコトヲ御尋ネ致シマスガ、今次ノ
  戰災ニ依ツテ、主トシテ帝都ニ生ジタ
  鐵屑ハ非常ノ量デアラウト思フノデア
  リマス、之ヲ以テ現下最モ心配サレテ
  居ル製鐵ヲ速カニ增强サレルト云フコ
  トハ、大切ノコトデアラウト思フノデ
  アリマシテ、恐ラクハ旣ニ何等カノ御
  運ビヲナサツテ居ルノデアラウト思フ
  ノデアリマスガ、如何デアリマスカ、
  而シテ之ニ依ツテ生ズベキ製鐵ノ量
  或ハ屑鐵ノ量ハドレ程ノモノデアリマ
  セウカ、是モ亦數字等ノコトハ機密ニ
  亙ルデアリマセウカラゝ速記等ハ削除
  サレルコトヲ適當ニ委員長ニ御願ヒ致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=125

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• 126・石黒忠篤

  ○國務大臣(石黑忠篤君)　チヨツト私、
  御答ヲ落シマシタカラ、先程小原委員
  カラ空襲ニ依ツテ食糧ノ滅却シャタ量
  一、ドノ位カト云フ御尋ガゴザイマシ
  タ、是ハ御心配ニ及ビマセヌ、食糧管
  理局ガ燒ケタトカ、或ハ深川ノ倉庫ガ
  燒ケタトカ云フ報道ガ傳リマシタガ
  深川ノ倉庫ハ極メテ一部分ノ精白工場
  ガ燒ケタダケデアリマシテ、米ハ一俵
  モ燒ケテ居リマセヌ、ソレ以外所々デ
  燒ケテハ居リマスガ、御心配ニナルヤ
  ウナ數量ハ只今迄ハ燒ケテ居リマセ
  ヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=126

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• 127・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　チヨツト
  御諮リ致シマス、今農商大臣ノ言ハレ
  タ物動ノ計畫ニ關スル數字等ハ、速記
  錄カラ省キタイト云フ申出ガアリマシ
  タガ、其ノ通り取計ラツテ御異存ゴザ
  イマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 128・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　ソレデハ
  委員長ニ御委セ願ヒマス

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• 129・豐田貞次郎

  ○國務大臣(豐田貞次郞君)　只今ノ小
  原委員ノ御質問ニ御答へ致シマス、ド
  ウカ一ツ速記ノ中止ヲ

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• 130・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記中止
  〔速記中止〕

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• 131・小原直

  ○小原直君　軍需大臣ノ御答辯能ク分
  リマシテ有難ウゴザイマシタ、私ノ質
  問ハ是デ終リマス

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• 132・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　山岡君

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• 133・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　大藏大臣ニ、此ノ牽
  連シタ事項ノ質問ヲ致シタイト思ヒマ
  ス、極ク僅カナヤウナ事柄デアリマス
  ガ、公債等ノ分類所得ノ關係ヲ簡易ニ
  スル爲ニ利子ニ觸レル、斯ウ云フ御話
  デ、私ノ聽キ取リマシタノハ、無利子
  ト云フヤウナ御言葉モアツタヤウデア
  リマスガ、併シソレガハツキリ致シマ
  セヌ、其ノ利子ニ觸レルト云フコトヲ、
  サウ云フ簡單ナ御言葉デ說明サレテ
  ハ、是ハ國民ノ間ニ非常ニ不安ヲ起ス、
  サウ云ツタヤウナ氣分ガアル所ヘ、責
  任當局トシテ左樣ナコトヲ仰シヤルコ
  トハ如何カト思ヒマスノデ、其ノ利子
  關係ニ付テ、御說明ヲ伺ハシテ戴キタ
  イノデアリマス

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• 134・廣瀬豐作

  ○國務大豐(廣瀨豐作君)　先程御說明
  致シマシタノニハ、無利子ト云フコト
  ハ申サナカツタ積リデアリマス、詰リ
  利子ヲ稅金ニ相當スルダケ下ゲルト云
  フ意味デアリマス、只今ノ三分六厘程
  度ノ基礎ヲ若干、何厘カ下ゲルト云フ
  コトデアリマスノデ、是ハマダ研究シ
  テ居リマスガ、サウデモシナイト利札
  ノ整理ガナカ〓〓出來ナイト云フ窮境
  ニ立ツテ居リマスノデ、今〓究シテ居
  ル其ノ案ガ熟スレバ、或ハ實行ニ移ス
  カモ知レヌ、斯ウ云フ意味ノコトヲ申
  上ゲタノデアリマス

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• 135・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　只今藏相ノ御說明ハ
  能ク了解致シマシタ、次ニ牽連事項ト
  シテデアリマスガ、此ノ政府ト云フ文
  字ノ含蓄スル意義ニ付テ、法制局長官
  ハ、政府ハ、政府以外ニ入ッテ居ルト
  云フ、卽チ地方總官ヲ含メル積リダ、
  是ハサウ云フ御積リデアツテモ、政府
  ト云フ字ハ自然ニ今日迄ノ用例ハ決ツ
  テ居ルノデ、サウ云フ風ニ延長シテ勅
  令デ定メルト云ツテモ、第一條ガ其處
  ヲ含ンデ居ラナケレバ定メルコトハ出
  來ナイ譯デアリマス、此ノ總動員法等
  ニ於テ朝鮮總督トカ、或ハ其ノ他アリ
  マスガ、是ハ元々其處ニ根據ガ律令ト
  カ、制令トカ、或ハ關東州ハソレ〓〓
  勅令デ行クトカ云フ關係デ出來テ居ル
  ノク、總動員法ノ主管官廳ハ色々アリ
  マスケレドモ、今度ノハ全ク初メテノ
  事柄デアツテ、地方廳ガ政府デアルト
  云フ風ナコトハドウモ觀念上カラ出テ
  來ナイノデアリマス、觀念上出テ來ナ
  イモノヲ、若シ左樣ナコトガ勅令デ出
  來ルトスルナラバ、知事ニモ出來ル、
  此處ハ先刻來相當、向キハ違ヒマスル
  ケレドモ、サウ云フ低イ官廳等ガ重イ
  仕事ヲシテ良イトカ惡シイト云フ質問
  應答モアリマシタヤウナ譯デ、其ノ論
  議ヲ延バセバ、知事モ亦政府デアルト
  云フ風ナコトニナルノデスガ、ドンナ
  風ニ御考ニナリマスカ、ハツキリ御說
  明願ヒタイ

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• 136・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　此ノ政府ノ
  中ニ、地方ノ行政官廳ガ入リ得ルト云
  フコトハ、是ハ只今御引用ニナリマシ
  タ外ノ法令ニ澤山例ガアルノデアリマ
  シテ、一例ヲ擧ゲテ申シマスレバ、只
  今御引例ニナリマシタヤウナ國家總動
  員法ノ政府、澤山使ツテ居リマスルガ、
  其ノ中ニ地方長官ト云フヤウナモノガ豫
  想セラレテ居リマスヤウナ場合モ色々
  アルノデアリマス、ソコデ此ノ政府
  ト云フノヲ放ツテ置ケバ地方長官ナ
  ンカモ人ルノヂヤナイカト云フヤウナ
  御質問デゴザイマスルガ、是ハ度々申
  シマスルヤウニ、第末條ノ勅令ヲ以テ、
  此ノ政府ト云フノハ、行政官廳トシテ
  ハ中央ノ各省大臣ト、地方デハ地方總
  監デアルト云フコトヲ、勅令ヲ以テ明
  定ヲスル、斯ウ云フ豫定デアリマスノ
  デゴザイマス、尙先程小原サンカラ御
  質問ノゴザイマシタ法律ヲ廢止スルヤ
  ウナコトガ出來ルカト云フコトニ付
  テ、御答辯ガ言葉ガ足リマセヌデ補足
  ヲサシテ戴キタイト存ジマス、ソレハ
  委任命令デアルカラ出來ナイト申シマ
  シタガ、其ノ本法ノ委任命令ハソコヲ
  豫想シテ居ナイ、斯ウ云フ意味デ、卽
  チ本法デハ、他ノ法令ニ拘ラズ是レ
  是レノ命令ヲ發シ又處分ヲ爲スコトヲ
  得、卽チ內容的ニ他ノ法令ガアツテモ、
  ソレト異ナルヤウナ命令ガ出來ルト云
  フノデアリマス、ソレヨリモ進ンデ其
  ノ法律其ノモノヲ廢止スルトカ云フ所
  迄ハ、此ノ條文ノ委任ハ及バナイ趣旨
  デアル、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス

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• 137・小原直

  ○小原直君　チヨツト今ノ御答辯ガア
  リマシタカラ、法令ノ規定ニ拘ラズ命
  令ヲ發スルコトガ出來ル以上ハ、ソレ
  ト異ナリタル法令命令スラ出來ルノデ
  アリマスカラ、廢止モ變改モ出來ルモ
  ノト思フノデアリマスガ、是ハ議論デ
  アリマスカラ、ソレ以上ハ申上ゲマセ
  ヌ

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• 138・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　今ノ政府ト云フ含蓄
  ノ意味デアリマスルガ、是ハ十分御研
  究ヲ願ツテ、此ノ政府ト云フ主體カラ
  勅令ヲ以テ下ノ官廳ニ委任スル譯ニナ
  レバ、ソレハ出來マセウケレドモ、イ
  キナリ此ノ政府ト云フモノガ廣ク人ツ
  テ居ルノダト言ツテ勅令ヲ定メルト云
  フヤウナ行キ方ハ、サウ、今迄ノ總動
  員法アタリノ行モ方ヂヤ、直直ニ出テ
  來ナイノデアリマスカラ、然ルベク御
  考ヲ煩シタイ、一時中,私ノ關聯シタ質
  問ハ打切リマス

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• 139・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　明石男爵

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• 140・明石元長

  ○男爵明石元長君　總理ヲ煩シマシ
  テ、恐縮デアリマスルガ、鹿爪ラシク
  御答辯ヲ御願ヒスルト申上ゲマスルヨ
  リモ、總理ノ御心ノ中ヲ伺ヒタイト思
  フノデアリマス、ソレハ今日私ガ一番
  憂フル所ハ、國民ノ道義心ノ低下ト云
  フ問題デアリマス、道義心ト言フモノ
  ハ要スルニ自發心、其ノ自發心ガ失
  ハレテ行クト云フコトハ闇ヲヤルト
  カドウトカ云フヤウナ細カイ問題デ
  ハゴザイマセヌ、先程モ陸軍大臣ノ
  御話ニモアリマシタヤウニ、敵ガ本土
  ニ上陸スルト言フヤウナ場合ニ全體
  トシテ國民ノ自發心ヲ失ハレテ行クト
  云フコトニ相成リマスルト、是ハ極端
  ニ申シマスルト、敗戰態勢ト言フ外ハ
  ナイノデアリマス、道義心ガ失ハレテ
  居ルト言フヤウナコトハゝ左樣ナ意味
  合ニ相成ルト思ヒマス、ドウシテ斯ウ
  云フコトニナツテ居ルカト申シマスル
  ト、是ハ法ニ依ル政治、而モ官僚ニ依
  ツテ考ヘラレタ國民ノ實體ニ副ハナイ
  政治ガ行ハレルカラ、ソコデ道義心卽
  チ自發心ノ低下ヲ來シテ居ルノダト考
  ヘマス、總理ハ克ク國體ヲ明徵ニシ、
  名分ヲ正シト云フコトヲ申サレマスル
  ガヽソレハ何故此ノ際ニ申サレナケレ
  バナラナイカト云フコトヲ考ヘマスル
  ト此ノ道義心ノ確立ノ根本ガ見失ハ
  レテ居ル、卽チ大御心ノマニマニ行ハ
  レナケレバナラヌ政治ガ、何カ中間ニ
  アルモノノ爲ニ大御心ノマニマニ下ニ
  透徹セズ、サウシテ國民ヲシテ自發心
  ヲ起サシメナイヤウナ形ニ、今日ノ非
  常事態ガナツテ居ル、斯ウ云フ風ニ考
  ヘザルヲ得ナイノデアリマスルガ、此ノ
  道義心ヲ確立スルト云フコトハ、今日
  ノ事態デハ總理ガ御話ヲナサツタリ、
  或ハ信賞必罰ヲ申サレル、或ハ多少ノ
  ソレヲナサレルト云フコトダケデハ、私
  ハ確立シ得ナイト存ジマスルガ、總理
  ハ其ノ點ハ如何ニ御考ヘニナリマスデ
  セウカ、私ハ唯、此ノ一點ノ御心境ヲ
  伺ヒタイト思ヒマス

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• 141・鈴木貫太郎

  ○國務大臣(男爵鈴木貫太郎君)　御答
  ヘ致シマス、道義心ノ低下ニ關シマス
  ル御心配、)私モ明石君ノ言ハレル通リ
  ト、同感ニ思ヒマス、此ノ點ニ付キマ
  シテハ、私モ夙夜心ヲ碎イテ居ル問題
  ノ一ツデアリマスガ、是ハ矢張リ要ハ
  掛ケ聲バカリデハナク、上カラ實踐躬
  行ヲ努メテ行カナケレバナラヌコトト
  存ズルノデアリマスガ、是ガ爲ニハ
  矢張リ國民ノ模範タルベキ官吏ガ先ヅ
  反省致サナケレバナリマセヌ、ソコデ
  官紀ノ振肅ガ其ノ要點デアラウト思フ
  ノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテモ、
  具體的ノ說明ハ曩ニ靑木君ノ御質問ニ
  御答ヘ致シタ通リデアリマス、尙此ノ
  道義心ノ〓揚ニ付キマシテハ、又一方
  ニ於テ大イニ社會、〓育ニ力ヲ致スノ
  外ナイト思ヒマス、是ハ國民義勇隊ノ
  運營等ニ當リマシテモ、此ノ戰意ノ〓
  揚ヲ期スルコト、是ト表裏一體ノ關係
  ニ於キマシテ、此ノ點ニ十分ノ努力ヲ
  盡シテ參リタイト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=141

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• 142・明石元長

  ○男爵明石元長君　私ガ御質疑申上ゲ
  マシタ心持ハ後程別ノ機會ニ更ニ申
  上ゲタイト存ジテ居リマスノデ、私ノ
  質問ハ是デ終リマス

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• 143・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記中止
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=143

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• 144・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記開始
  ソレデハ委員ノ御通告ハ大體終了致シ
  マシタガ、外ニ御質問ハゴザイマセヌ
  カ

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• 145・河井彌八

  ○河合彌八君　チヨツト

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=145

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• 146・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　河合君ニ
  伺ヒマスガ、ドナタニ

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• 147・河井彌八

  ○河合彌八君　總理ニ對スル質問デア
  リマセヌ、第四條ノ戰時緊急措置委員
  會ト云フモノノ構成ヲドウ云フ風ニス
  ルカト云フ荒ラマシノ說明ヲ伺ヒマ
  入、ソレカラ第二ニ、先刻ノ御說明ノ
  中ニ地方總監府令ト云フモノガ出テ居
  ルト云フ場合ニ於キマシテ、其ノ地方
  總監府令ハドウ云フ委員會ニ諮問スル
  ト云フヤウナコトガアルノデアリマス
  カ、其ノ御考ヲ伺ヒタイ、此ノ點ニ付
  キマシテハ、マダ御說明ガナカツタト
  思ヒマスカラ、御伺ヒスル次第デアリ
  マス

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• 148・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　第四條ノ戰
  時緊急措置委員會ノ構成其ノ他ニ付テ
  御說明申上ゲタイト存ジマス、此ノ戰
  時緊急措置委員會ノ構成ハ、第四條ノ
  第二項デ勅令ヲ以テ之ヲ定ムト云フコ
  トニナツテ居リマシテ、其ノ勅令ノ內
  容トシテハ此ノ戰時緊急措置委員會
  ハ、是ハ國家總動員審議會等ト違ヒマ
  シテ、專ラ貴衆兩院議員ヲ以テ之ヲ構
  成ヲ致シタイト云フ考デゴザイマス、
  國家總動員審議會デハ貴衆兩院議員ノ
  外ニ關係各廳ノ官吏モ入ツテ居リマス
  んや又各界ノ有識者モ入ツテ居リマ
  スルガ、今般ハ專ラ兩院議員ノミヲ以
  テ之ヲ構成スルヤウニ致シタイト考ヘ
  テ居リマス、委員會ノ議長ハ委員ノ中
  カラ之ヲ選ブト云フコトニ致シタイト
  存ジテ居リマス、又此ノ委員會ノ働キ
  ト致シマシテハ、政府カラ提案ノナイ
  ト云フ場合デモ、議長ニ於テ必要ト認
  メマスル場合ニ於キマシテハ開會シ得
  ルヤウニ致シタイト考へテ居リマス、
  第二點ノ地方總監府令ニ關スル事項デ
  ゴザイマスルガ、此ノ第四條ノ第一項
  ニアリマスル「第一條ノ規定ニ基ク措
  置ニシテ重要ナルモノ」ト云フノハ、
  地方總監府令ニ關スル場合モ之ヲ包含
  ヲ致シテ居ルノデアリマス、而シテ戰
  時緊急措置委員會ト云フノハ中央ニ勿
  論一ツ設ケラレルノデアリマス、從ツ
  テ其ノ間ノ關聯ヲ如何ニスルカト云フ
  問題ガゴザイマスルガ、勿論戰時緊急
  措置委員會ニ諮問ヲ致シ、或ハ事後報
  告ラ致シマスノハ、中央ノ事ノ性質ニ
  依ツテ決リマス所管大臣デアルノデア
  リマス、從ツテ地方總監府令ガ出マシ
  タ場合ニ於テハ、先ヅ地方總監府カラ
  ソレ〓〓ノ仕事ノ性質ニ應ジマシテ、
  ソレ〓〓ノ所管大臣ニ之ヲ報告ヲ致シ
  マシテ、所管大臣カラ此ノ委員會ノ方
  ニ提出ヲスルト云フ豫定ニ相成ツテ居
  リマス、又中央ニ於テ左樣ナ關係ガゴ
  ザイマス、從ツテ場合ニ依リマシテハ
  地方ノ措置デゴザイマスルカラ、制度
  ハ左樣ニ致シテ居リマシテモ、事前ニ
  諮問ヲスルト云フ暇ガナイ場合ガ相當
  多カラウト存ズルノデアリマスルシ、又
  地方々々ニ於テハ、ソレ〓〓ノ事情ガ
  ゴザイマセウト考ヘマスルノデ、其ノ
  事態ニ應ジマスル爲ニ、今般地方總監
  府令ガ制定セラレマスルト同時ニ、地
  方總監府ニハ參與ト云フ制度ヲ設ケマ
  シ()是ハ地方ノ有力者ト申シマスル
  カ、サウ云フ方ヲ委囑ヲ致シテ總監ヲ
  助ケルコトニ相成ツテ居リマスルガ
  此ノ參與制度ガ此ノ場合ニ活用セラレ
  マシテ、各地方總監ガ此ノ法律ニ基イ
  テ、特別ノ措置ヲ致シマスル地方總監
  府令ヲ發スルト云フヤウナ場合ニ於キ
  マシテハ、出來ルダケ其ノ參與ノ意見
  ヲ聽クト云フヤウナ意味ニ於キマシ
  テ參與制度ヲ活用スルコトヲ併セテ
  考ヘテ行キタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=148

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• 149・河井彌八

  ○河井彌八君　大體明瞭ニ承リマシ
  タ、モウ一點伺ヒタイノデアリマスガ
  地方總監府令ト言ヒマスカ、サウ云フ
  モノガ公益ニ反スルトカ、或ハ他ノ法
  規上許スコトノ出來ナイヤウナ事柄ヲ
  規定シタヤウナ場合、或ハ其ノ處分ヲ
  爲シタヤウナ場合ニ付テ、是ガ取消シ、
  或ハ變更ヲ命ズル方法ト云フモノハド
  ウ云フ風ニシテ爲サルノデアリマス
  カ、ソレヲ承リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=149

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• 150・村瀬直養

  ○政府委員(村瀨直養君)　地方總監ノ
  措置ニ對シマシテ、總督ノ方法ト致シ
  マシテハ、地方總監ノ監督ニ關スル規
  定ガゴザイマシテ、主務大臣ハ地方總
  監ノ措置ガ適當デナイト云フ場合ニ
  ハヽ御話ノ通リニ總督上ノ權限ヲ行使
  致シマシテ、取消シ等ノ行爲ヲ爲スコ
  トノ出來ルヤウニ今般ノ勅令ニ於テ明
  定ヲセラレテ居リマスルノデ、此ノ勅
  令ノ適當ナル運營ニ依リマシテ、所期
  ノ目的ヲ達成致シタイト、斯樣ニ考ヘ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=150

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• 151・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　外ニ委員
  ノ方ノ質問ハゴザイマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=151

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• 152・諸橋久太郎

  ○諸橋久太郞君　私ハ現下ノ食糧事情
  ニ付キマシテ、非常ニ考ヘマスルコトハ
  鹽ノ重大性デアリマス、政府ハ如何ナ
  ル御方針ヲ以チマシテ、此ノ鹽ノ需給
  關係ヲ調整スル御考デアリマセウカ、或
  ハ今後時局ノ重大ニ鑑ミマシテ、一層
  ノ製鹽ヲ奬勵ナサル積リデアリマセウ
  カ、ソレ等ノ計畫等ニ付キマシテ拜聽
  シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=152

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• 153・廣瀬豐作

  ○國務大臣(廣瀨豐作君)　鹽ノ問題ニ
  付キマシテハ、多分食料ニ使ヒマス鹽
  ノ問題ダト承知致シマスガ、左樣デゴ
  ザイマスカ

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• 154・諸橋久太郎

  ○諸橋久太郞君　左樣デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=154

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• 155・廣瀬豐作

  ○國務大臣(廣瀨豐作君)　食料鹽ニ付
  キマシテハ、大藏省ガ所管ヲ致シテ居
  リマスル關係上私カラ御答ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、從來日本ノ食料鹽ハ其ノ
  約半額程度ハ、內地デ出來マスル鹽デ
  ハ貼ヒ切レマセヌデ、詰リ大陸鹽、滿
  洲又ハ支那等カラ輸入ヲ致シテ、之二
  依ツテ〓料鹽ヲ賄ツテ來タノデアリ
  マス、然ルニ最近ノ海上交通ノ困難ヲ加
  ヘテ來マシタ關係上、此ノ大陸カラノ
  鹽ノ輸入ト云フモノガ相當壓縮サレザ
  ルヲ得ナイヤウナ情勢ニナツテ參ツタ
  ノデアリマス、又一面內地ニ於キマ
  スル鹽ノ產額ニ付キマシテモ、燃料ノ
  不足、或ハ勞力ノ不足等カラ致シマシ
  テ、近年漸次減產ノ途ヲ辿ツテ參ツタ
  ノデアリマス、從ヒマシテ本年ニ於キ
  マスル食料鹽ノ供給狀態ト云フモノハ
  極メテ逼迫シタ狀態ニナラムトシツヽ
  アルノデアリマシテ、之ニ對シマシテ
  ハ、大藏省ト致シマシテハ先ヅ第一番
  ニ從來鹽ヲ生產シテ居リマス所謂專業
  製鹽ノ向ニ對シマシテハヽ從來ヨリモ
  一層努力ヲ以テ增產ヲ圖ルヤウニ勸奬
  ヲ致シテ居リマス、其ノ勸奬ノ方法ト
  致シマシテハ、鹽ノ買償價格ノ引上ヲ
  行ヒマスルト共ニ、燃料及勞力ノ獲得
  ニ付キマシテハ、大藏省ト致シマシテ
  ハ、有ラユル斡旋ヲ試ミル、斯ウ云フ
  コトニ依リマシテ製鹽家ノ手ニ依ツテ
  出來マスル所ノ製鹽ハ極力之ヲ增產シ
  チ貰ハウト云フコトヲ考ヘニ 居リマ
  ス,次ニソレダケデハマダ不安デアリ
  マスノデ、本年初メテノ試ミデアリマ
  スルケレドモ、從來製鹽ヲヤツタコト
  ノナイ國民ノ海岸地方ニ居ラレマスル
  全部ノ皆樣ニ、鹽ノ必要ナル、而モ窮
  迫セル事情ヲ認識シテ戴キマシテ、所
  謂自給製鹽、素人デアルガ、併シナガ
  ラ有ラユル方法ヲ講ジテ自分デ鹽ヲ拵
  べん、斯ウ云フコトヲ全國的ニ國民運
  動トシテヤツテ貰フト云フコトニ方策
  ヲ樹テマシテ、本年度早々之ガ運動ニ
  著手ヲ致シタノデアリマス、此ノ運動
  ヲ促進致シマスル爲ニ、大藏省內ニ於
  キマシテハ鹽ノ增產本部ト云フモノヲ
  拵ヘマシテ、サウシテ此ノ增產本部ノ
  支部ヲ、只今デハ地方總監府ノアル地
  域ノ下ニ其ノ支部ヲ設ケマシテ、サウ
  シテ本部、支部ノ關係ニ於テ全國的ニ
  此ノ自給製鹽ト云フモノヲヤツテ貰フ
  ト云フコトニシテ居ルノデアリマス、
  其ノ目標ハ本年度內ニ於キマシテ總額
  二十萬「トン」、少クトモ其ノ半分、卽
  チ十萬「トン」ハ供出ヲシテ貰ヒマシヽ
  テ、一般ニ消費セラルベキ鹽ト申シマ
  スカ、配給セラルベキ鹽ノ足リナイ分
  ヘ、其ノ供出サレタ鹽ヲ向ケルト云フ
  コトヲ考ヘテ居ル譯デアリマス、尙又
  現在ノヤウナ海上ノ交通ガ不便ナ時デ
  アリマスルケレドモ、大陸鹽ノ輸入ニ
  付キマシテハ、物動ノ計畫ニ於キマシ
  テモ、出來ルダケ之ヲ優先的ニ考慮シ
  テ貰ヒマシテ、極力萬難ヲ排シテ、有
  ラユル方法ヲ講ジテ輸入ヲ圖ルト云フ
  コトニシテ居ルヤウナ次第デアリマ
  ス、尙、更ニ是等ノ方法以外ニ於キマ
  シテ、所謂機械製鹽、或ハ「ボイラー」
  ヲ利用スルトカ電熱ヲ利用スルトカ云
  ツタヤウナ方法ニ依ツテ、更ニ鹽ノ增
  產ヲ圖リタイト存ジマシテ、一部ニ於
  テハ既ニ之ガ具體方策ニ著手シテ居ル
  分モアルノデアリマスルガ、今後ニ於
  キマシテモ著々、此ノ方面ニモ方法ヲ
  講ジマシテ、機械製鹽ニ依ル鹽ノ增產
  ヲ國內ニ於テ出來ルダケ圖リタイ、斯
  ウ云フ考デ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=155

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• 156・井上匡四郎

  ○子爵井上匡四郞君　軍需大臣ニ御尋
  ネ申上ゲマス、本法ノ目的ト致シマシ
  テ、國家ノ危急ヲ克服スル爲處置スベ
  キ事項トシテ、七項目ヲ擧ゲラレテ居
  ルノデアリマスガ、其ノ第一項目ニア
  ル軍需生產ノ維持增强ト云フコトガ最
  モ必要デ第一ニ擧ゲラレテアルト考へ
  ルノデアリマシテ、又軍需生產ノ維持
  增强ガ思フヤウニ行キマシタナラバ
  戰爭ハ必ズ勝ツト考ヘルノデアリマ
  ス、殊ニ航空機ノ增產ガ思フヤウニ統
  帥ノ命ズル如ク增產ガ出來テ行キマシ
  タナラバ、戰爭ハ必ズ勝ツト考ヘルノ
  デアリマス、貴族院モ豫テヨリ此處ニ
  見ル所ガアリマシテ、貴族院ノ中ニ航
  空機增產對策調査委員會ト云フモノガ
  出來テ居リマシテ、既ニ二十囘近イ會
  合ヲ催シ、政府ノ當局及民間其ノ他學
  者ノ出席ヲ請ヒマシテ愼重ニ調査ヲ進
  メツヽアルノデアリマス、何レ其ノ調
  査ノ結果ハ委員長ガ纒メラレマシテ、
  近イ中ニ總理及關係大臣ノ所ニ御話ニ
  出ラレルコトト考ヘルノデアリマス
  ガ、玆ニ好イ機會デアリマスカラ、大
  體ノ御感想ヲ承ツテ置キタイト考ヘル
  ノデアリマス、是ハ村瀨法制局長官モ
  丁度其ノ委員會ノ副委員長デアラレタ
  ノデアリマシテ、能ク御承知ノコトデ
  アルノデアリマス詳シイコトハ觸レル
  ノヲ避ケマスガ、委員ノ此ノ調査ノ結
  果受ケマス印象トシテ、非常ニ憂慮致
  シマス點ハ、其ノ當局ノ御說明ト業者
  ノ說明ノ間ニ非常ナ差異ガアルコトデ
  アルノデアリマス、此ノ實情ヲ政府ガ
  ハツキリ把握サレナケレバ、如何ニ法
  案ノ完備ヲ期シマシテモ、目的ヲ達ス
  ルコトハ甚ダムヅカシイト考ヘルノデ
  アリマス、其ノ點ニ付テ軍需大臣ノ御
  感想ダケデ宜シウゴザイマス、數量其
  ノ他ハ此處ニ觸レルコトハ避ケマス、
  政府ガ、實際ノ軍需生產ノ狀況、殊
  航空機ノ生產狀況ト云フモノヲ實際ニ
  把握シテ居ラレルカドウカト云フコト
  ニ付テ、御感想ヲ一ツ承ツテ置キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=156

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• 157・豐田貞次郎

  ○國務大臣(豐田貞次郎君)　只今ノ點
  ニ付キマシテ御答ヘ申上ゲマス、チヨ
  ツト速記ヲ止メテ戴キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=157

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• 158・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記中止
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=158

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• 159・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記ヲ始
  メテ、御通告ノ委員諸君ノ御質疑ハ大
  體終了致シマシタノデ、此ノ際委員外
  デアル大河內輝耕子爵カラ質問ヲ致シ
  タイト云フ御希望ノ御申出ガアリマス
  んや、御許シシテ御異議ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=159

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• 160・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　御異議ナ
  イト認メマス、大河內子爵

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• 161・大河内輝耕

  ○委員外議員(子爵大河內輝耕君)　御
  忙シイ際ニ御許可ヲ下サイマシテ〓誠
  ニ有難ウゴザイマス、簡單ニ御尋ヲ致
  シマス、第一ハ、是ハ首相ニ對スル御
  尋デハゴザイマスルガ、政府ノドナタ
  カラ御答ヘ下スツテモ私ノ方ハ宜シ
  イ、唯併シ、ソレハドナタカラ御答ヘ
  下サイマシテモ、政府ヲ代表シテノ答
  辯ト認メマスカラ、ソレハ左樣御承知
  ヲ願ヒマス、第一問ハ、何人ト雖モ今
  日必勝ヲ信ジナイ者ハナイ、此ノ有難
  イ國體ヲ戴キ、此ノ忠勇ナル國民ヲ有
  シ、必ズ此ノ時局ハ我ガ勝利ヲ以テ終
  ルコトハ確信ヲ致シテ居リマス、殊大
  玆ニ最モ欣ブベキコトハ、鈴木總理ヲ
  迎ヘタ一事デゴザイマス、人格高邁、
  識見卓拔、大體ニ通ジテ居ラレル所ノ
  鈴木首相、今日此ノ方ヲ首相トシテ我
  我ガ戴イテ、其ノ指揮ノ下ニ我々ガ職
  域奉公ヲ爲スト云フコトハヽ實ニ天ガ
  日本ヲ救ツタモノデアル、所謂天佑ダ
  ト言ツテモ私ハ·差支ナイト信ジテ居
  ル、此ノ點ニ付キマシテ日本ハ非常ニ
  惠マレタト言ツテ差支ナカラウト存ジ
  W 2.是ハ私、包ミ隱シノナイ所ヲ赤
  裸々ニ之ヲ申上ゲマス、サウデゴザイ
  マスルガ、是ハ政治ハ首相ダケデハ參
  リマセヌ、側近ノ人ノ輔佐ガ必要デゴ
  ザイマス、私近頃ノ情勢ヲ見マスル
  ト云フト、モウ少シ首相ノ側近ヲ强化
  スル必要ガアリハシマイカ、少シク不
  十分ノ嫌ヒガアリハシマイカ、此ノ點
  ニ付テ總理ノ御考ヲ伺ヒタイ、第二ガ
  重臣會議デゴザイマス、重臣會議ハ唯
  總理大臣ヲシタダケノ人ガ出テ居ル、
  併シ總理大臣ヲシナイ人ニモ重臣トシ
  テ差支ナイ方モアリ、或ハ又總理大臣
  ヲシタ方デモ此ノ際ハ遠慮シテモ差支
  ナイ方モアルト私ハ信ズルヽ此ノ點ヲ
  能ク御考ヘ下スツテ、此ノ重臣會議ノ
  改造ヲサレル必要ガアルト思ヒマス
  ガ、此ノ點ハ如何デゴザイマセウカ、
  其ノ次ノ質問ハ國務ト統帥ノ調和デゴ
  ザイマス、之ノ必要ハ何人ト雖モ認メ
  ル所デゴザイマシテ、總理モ御認メデ
  アラウト存ジマスガ、如何ナル方法ヲ
  以テ之ヲセラレルノカ、其ノコトガ伺
  ヒタイ、ソレデ之ニ付キマシテハ一方
  ニ偏シナイヤウニ、例へバ軍事ニ偏ス
  ルトカ云フヤウナコトガナイヤウニ致
  シタイ、卽チ其ノ組織モドウ云フ組織
  ニナリマスカ、何カ國務ト統帥ノ調和
  ニ付キマシテハ、內部內閣ド申シマス
  カ、內閣ノ中ニ內閣ヲ作ルト云フヤウ
  ナ議モアルヤニ伺ツテ居リマスガ、斯
  ウ云フ際ニ陸海軍大臣ノミナラズ、決
  シテ軍事ニ偏スルコトナク、經濟ニ於
  テハ農商大臣、軍需大臣、或ハ厚生大
  臣,運輸大臣、外交ニ於キマシテハ勿
  論外務大臣、財政ニ於キマシテハ大藏
  大臣、是等ノ方ハ無論此ノ中ニ含マル
  ベキモノダト考ヘマス、外ノ方ガイケ
  ナイト決シテ申ス譯ヂヤナイガ、少ク
  よ〓、サウ云フ方ニナツテ戴キタイ、
  ソレナラバ何モ內部內閣トカ小內閣ト
  カ云フヤウナ必要ハナイノヂヤナイカ
  ト仰シヤルナラ、ソレデモ宜シイ、別
  ニサウ云フモノヲ設ケテ吳レト私ハ申
  ス譯ヂヤゴザイマセヌ、一方ニ偏シナ
  イデヤッテ戴キタイ、實例ヲチヨツト
  申上ゲマス、甚ダ卑近ナ例ヲ申上ゲマ
  スカ、斯ウ云フ事實ガアリマス、木材
  ハ足リナイ〓〓ト云フコトヲ頻リニ申
  シマス、木ガ足リナイ〓〓ト言フ、
  然ルニドウ云フ譯カ木ノ權威者、有力
  者ガ一陸軍少尉トシテ召集サレタ、斯
  ウ云フコトハ甚ダ私ハ面白クナイ、斯
  ウ云フヤウオ氣持デオヤリニナルコト
  ハ宜クナイ、一陸軍少尉ヨリモ、更ニ
  木ノ權威者ノ方ガ重大デハアルマイ
  カ、此ノコトニ付テ御答ヲ煩スノデハ
  ナイ、唯氣持ヲ申上ゲルニ過ギナイ、
  ソレカラ次ハ非常大權ノコトデゴザイ
  マく、三十一條ノ發動ヲ要望サレル方
  ガアルト云フコトデアリマスガ、私ハ
  國務ト統帥トノ調和ニ付キマシテ、鈴
  木首相ニ於テハ非常大權ノ發動ガ必要
  デアルト御認メニナリマセウカ、或
  必要デナイト御認メニナリマセウカ、
  或ハ場合ニ依ツテハ必要ナリト御認メ
  ニナリマスカ、此ノ點ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=161

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• 162・鈴木貫太郎

  ○國務大臣(男爵鈴木貫太郞君)　御答
  ヘ致シマス、第一ノ點ニ付キマシテ、
  首相ハ其ノ側近ヲ强化スル意思ナキ
  や。此ノ點ニ付キマシテハ私始メ、
  甚ダ行屆カナイモノデアリマスガ、只
  今各省大臣、又其ノ他各局長アタリモ、
  實ハ非常ナ全力ヲ揮ツテ努力勉勵致シ
  テ居ルノデアリマシテ、誠ニ力ガ足ラ
  ヌヤウニ御感ジニナルカモ知レマセヌ
  ガ、是ハ實ハ私ノ力ノ足リヌコトヲ示
  スノデアリマシテ、甚ダ恐縮ニ堪ヘマ
  セヌガ、只今非常ニ勉强シテ居ル側近
  ヲ迭ヘル意思ハゴザイマセヌ、ドウゾ
  左樣御承知ヲ願ヒマス、ソレカラ第二
  ノ問題ハ、重臣會議ヲ改造スルノ意思
  ナキヤ、此ノ點ニ付キマシテハ、實
  重臣會議ト一般ニ申サレテ居リマスケ
  レドモ、是ハ重臣ト總理大臣ト會議ヲ
  開クト云フヤウナコトデハナイノデア
  リマシテ、一般ニ重臣會議ト申サレマ
  える。實ハ政府更迭ノ場合ニ於キマシ
  テ、只今ノ重臣諸公ガ內大臣ト協議ヲ
  致ス爲ニ、ソレダケノ任務デ御沙汰ヲ
  頂戴シテ居ル方々デアリマシテ、唯其
  ノ時ダケノ御任務デアリマス、併シチ
  ガラ斯カル地位ニ居ラレル方々モ、時々
  ハ矢張リ政府ノ情報モ知ラナケレバ
  ナラズ、又出來ルダケ内外ノ事情或ハ
  戰況ト云フヤウナコトモ承知サレル必
  要ガアルノデアリマシテ、月ニ一囘、
  或ハ二囘、總理官郎ニ會合セラレマシ
  テ、實ハ報〓ヲ申上ゲルダケノコトデ
  アリマス、全ク會議ト云フコトデハア
  リマセヌヽ從ツテ只今、之ヲ改造スル
  ト云フ意思ハ私ニハゴザイマセヌ、併
  シナガラ此ノ御質問ノ裏ニハ今日ノ組
  織ノ上ニ於テ、色々ト御心配ニナツテ
  居ル點ガアルコトヲ想像スルノデアリ
  マスガ、我々モ是ハ如何ニシテ宜イカ、
  今日ハ一ツモ結論ニ達スル所ハナイト
  思ヒマス、御了承ヲ願ヒマス、ソレカ
  ラ統帥ト國務ノ統合ニ付キマシテ、或
  ハ「イギリス」アタリノ實行シマシタ戰
  時內閣ト云ツタヤウナモノヲ作ツタラ
  ドウカト云フヤウナコトモ屢〓聞クノ
  デアリマス、又相當其ノ邊ニ於テ考慮
  モ致シタノデアリマスガ、此ノ點ニ付
  キマシテハ、實ハ立派ニ今日ノ狀態ニ
  於キマシテ、統帥ト國務トノ間ニ關係
  ヲ持チマス所ノ最高戰爭指導會議ガゴ
  ザイマシテ、是ハ勿論作戰ノコトニ付
  テハ統帥部ガヤツテ居リマスガ、更ノ
  今日デハ其ノ統帥部ノ中ニモ首相ガ出
  席スルコトガ出來ルヤウニナリマシ
  テ、丁度日〓戰爭、日露戰爭當時ノ先
  ヅ大本營ト同ジヤウナ體裁ニ迄今日ハ
  ナツテ居リマス、其ノ外ニ今ノ最高指
  導會議ガゴザイマシテ、是ハ統帥部ノ
  參謀總長、軍令部總長、陸海軍大臣ゝ
  ソレカラ總理大臣、外務大臣、是ハ常
  ニ參加致スノデアリマンテ、其ノ點カ
  ラ申シマスト、矢張リ是ガ一ツノ戰時
  內閣デアリマス、ソコデ國務ト統帥ト
  ノ關係ニ付キマシテハ、種々協議ヲ致
  シマシテ、重大ナ案件ヲ決定致シテ居
  ル次第デアリマス、其ノ外ニ於キマシ
  テ、尙必要ニ應ジテ農商大臣、或ハ大
  藏大臣、或ハ軍需大臣ガ出席ヲ致シマ
  シテ、重大ノ案件ヲ協議決定致シテ居
  ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=162

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• 163・松阪廣政

  ○國務大臣(松阪廣政君)　只今ノ第三
  ノ御尋ノ、國務ト統帥ノ調和ノ爲ニモ
  憲法第三十一條ノ非常大權ノ御發動ノ
  必要ヲ認メナイカト云フ御尋デゴザイ
  マシタガ、先程來申上ゲマシタ通リ、
  學者ノ一部其ノ他カラ、非常大權ノ御
  發動ヲ奏請スベシト云フ建白書等モ參
  ツテ居リ、ソレモ承知致シテ居ルノデ
  アリマス、政府ト致シマシテハ、只今
  直チニ非常大權ノ御發動ヲ奏請スルト
  云フ考ハ持ツテ居リマセヌガ、此ノコ
  トニ付キマシテハ篤ト考究ヲ致シテ居
  リマス、目下ノ所デハ本法律案ノ御制
  定ヲ仰ギマシテ、之ニ依ツテ此ノ戰局
  ヲ必勝ニ導キタイト存ジテ居ル次第デ
  ゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=163

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• 164・大河内輝耕

  ○子爵大河內輝耕君　誠ニ明決ナ御答
  デ感謝致シマス、最後カラ申シマスガ、
  司法大臣ハ只今國務ト統帥ニ付テ、非
  常大權ノ調和ヲヤルニ付テハ三十一
  條ヲ發動スル必要アリヤ否ヤハ研究中
  デアルト云フコトニ御話ゴザイマシタ
  ガ、ソレデ了承致シマシタ、ソレカラ
  側近ヲ迭ヘル意見ガナイト總理ハ仰シ
  ヤイマシタガ、側近ノ人ヲ迭ヘロト私
  ハ申シタノヂヤナイ、側近ヲ强化シテ
  戴キタイト申シタノデアリマス、併シ
  是ハ御分リデゴザイマスカラモウ御答
  辯ニハ及ビマセヌ、其ノ外ノコトニ付
  キマシテハ、大〓モウ重ネテ伺フコト
  ハナイト存ジマスガ、今一ツ大藏大臣
  ニ伺ヒタイ、物價ハ非常ニ騰貴シ、「イ
  ンフレ」必至ノ狀態デアリマス、此
  儘ニ置イテ置キマスト公債ヲ引受ケタ
  コトハ實ニ馬鹿々々シイコトニナル、
  初メハ十圓デ買ヘタモノモ、モウ少シ
  經タウモノナラ二十圓、モウ少シ經タ
  ウモノナラ五十圓百圓ニナツテシマ
  フ、サウスルト公債ヲ持ツテ居ツタラ
  コンナ馬鹿々々シイコトハナイ、尤モ
  此ノ點ハ惡ケレバ、速記カラ御除キ下
  スツテモ宜イ、サウ云フ風ニナルト、
  其ノコトハ國民ダツテ馬鹿ヂヤアリマ
  セヌカラ、相當分ツテ居ル筈ナンデス、
  結局是ハ斯ウ云フコトヲシテ居ルト、
  公債ト云フモノハ引受ケテ居ルノガ馬
  鹿馬鹿シイト云フコトニナツテ、現
  我々ノ所デモドウシタラ宜シウゴザイマ
  セウカ、何カ木綿物デモ買ツテ置イテ、
  同積シテ置クノガ一番安全デハアルマ
  イカ、ソレニ付テハ防空壕ヲ掘ツタラ
  ドウダナント云ツタヤウナ、サウ云フ
  ヤウナコト迄隨分聽カレルノデアリマ
  ス、サウ云フコトハ決シテイカヌノデ
  アル、今ノ時局ヲ何ダト思ツテ居ル、
  出來ルダケ公債ヲ引受ケルノガ宜イヂ
  ヤナイカト云ツテ答ヘテハ居リマス
  ガ、ソレハ至極尤モデス、事畫上公債
  ヲ受ケル者ガ無クナルヤウナ虞モアリ
  マスマイケレドモ、ドウモ政府トシテ
  抛ツテ置ク譯ニモ行カヌ、是ハ相當ニ
  「リンク」サセル必要ガアラウト思フ、
  サウシナケレバ現金ヲ持ツテ居ル者
  ハ、實ニ馬鹿々々シイコトニナル、其
  ノ點ニ付テ大藏大臣ノ大體ノ御意見ヲ
  伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=164

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• 165・廣瀬豐作

  ○國務大臣(廣瀨豐作君)　御答ヘ致シ
  マス、御說ノ通リ、現在ノ財政狀態ノ下
  ニ於キマシテハ、今後ニ於テモ國債ヲ
  相當多額ニ發行シナケレバナリマセ
  ヌ、一面ニ於テハ、物價ハ騰貴シテ參
  ツテ居ルノデアリマスカラシテ、部
  ニハサウ云フ考ヘ方ガ生ズル餘地ガ必
  ズシモ無イトハ申シ兼ネルト思フノデ
  アリマス、之ニ對シマシテハ、政府ト
  致シマシテハ一方ニ於テ物價ヲ出來
  ルダケ騰貴セシメナイヤウニ、有ラユ
  ル手段ヲ講ジテ居ル次第デアリマス
  ガ、同時ニ又國債ノ消化ト云フモノヲ、
  出來ルダケ滑カニナラシメルト云フコ
  トニ致シテ、國債ノ不消化ヲ來シ、或
  ハソレガ市場ニ氾濫スルト云フコトノ
  ナイヤウニ致シテ居ルノデアリマス、
  只今大河內子爵ノ仰シヤイマシタヤウ
  ナ事例ハ、戰災ヲ受ケマシタ直後ニ於
  ケル都會ノ方面ニ於テ、若干サウ云ツ
  タヤウナ氣分モアルカトモ思ヒマス
  ガ、之ヲ全國的ニ見マスルト、最近ニ
  於キマスル全國ノ預金ノ狀態等ハ、
  時ハ私共ハ心配ヲ致シマシタガ、存外
  農村方面ニ於キマシテハ銀行預金ノ集
  リ方ト云フモノモ順調デアリマシテヽ
  此ノ方面ニ於ケル貯蓄狀況ト云フモノ
  ハ、相當好成績ヲ示シテ居ルノデアリ
  マンナ、從ヒマシテ、今後ニ於キマシテ
  ハ一層國民貯蓄ノ增强ヲ圖リマシテ
  殊ニ又金融機關ノ方ニ集リマシタ預金
  ニ依リマシテ、主トシテ此ノ金融機關
  ヲ以テ國債ノ消化ヲシテ貰フト云フコ
  トニ致シマシタナラバ、相當順調ナル
  國債ノ消化モ出來得ル、斯ウ云フ風ニ
  考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、尙
  又、郵便貯金ノ增加モ、都會地ニ於キ
  マシテハ最近餘リ芳バシイ狀態デハ
  アリマセヌガ、農村方面ニ於キマスル
  郵便貯金ノ增加ト云フモノモ相當アリ
  マシテ、是ガ預全部ノ資金ト相成リマ
  スナラバ、預全部ニ於ケル國債ノ消化
  ト云フモノモ漸次增加致スノデアリマ
  シント、今年度ニ於テモ相當此ノ方面ニ
  於テ國債ノ消化ラ期待シテ居ルノデア
  リマス、斯クノ如ク致シマシテ、一方
  ニ於テハ貯蓄ニ依ル國民大衆ノ國債ノ
  消化、又一方ニ於テハ金融機開ニ依ル
  國債消化、又一方ニ於キマシテハ預金
  部ニ於キマスル國債消化、此ノ三方面
  カラ國債消化ヲ圖リマシテ、サウシテ
  將來ノ圓滑ナル金融ヲ圖ツテ行キタ
  イ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 166・大河内輝耕

  ○委員外議員(子爵大河內輝耕君)　大
  藏大臣ノ御考ハ誠ニ結構ト思ヒマス、
  サウ云フ狀態ト云フノハ結構デスガ、
  從來一ツノ問題トシテ、今迄、米ガ二
  十圓デ買ヘタモノガ六十圓ニナツタリ七
  十圓ニナツタリスル、ソレ故ニ公債ノ
  所有者ガ自分ダケ宜ケレバソレデ宜イ
  ノダト云フコトデハ、是ハ少シクヲカ
  シナコトニナラウト思ヒマス、是ハ尙
  御研究ヲ願ヒタイト思ヒマス、尙國
  務ト統帥ノ調合ニ付キマシテ、私ハ大
  臣ノ名前ヲ擧ゲマシタガ、只今御答ニ
  依リマシテ、各大臣モ參與シテ居ルト
  云フコトデ、誠ニ結構ニ存ジマスガ)
  私ガ大臣ノ名ヲ擧ゲタノハ、假ニ擧ゲ
  タダケデ、未ダ漏レモゴザイマスシ
  無論思想ノ問題ニ付キマシテハ、內務
  大臣ヤ或ハ又司法大臣、產業ノコトニ
  付キマシテハ厚生大臣、斯ウ云フ方々
  モ矢張リサウ云フヤウナ場合ニハ隔意
  ナキ意見ヲ交換サレルコトガ必要ダラ
  ウカト私ハ思ヒマスノデ、是ハ附加ヘ
  テ置キマス、是デ私ノ質問ヲ終リマス、
  有難ウゴザイマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=166

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• 167・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　之ヲ以テ
  質疑ノ通告ハ全部終了致シマシタ、他
  ニ御質疑ハゴザイマセヌカ、御質疑ガ
  ナイト認メマス、仍テ直チニ討論ニ移
  ルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=167

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• 168・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　御異議ナ
  イト認メマス、就キマシテハ討論ニ參
  加ナサル方ハ御通告ヲ願ヒタイト思ヒ
  さく、先例ニ依リマシテ、先ヅ反對者
  ガゴザイマスレバ、反對者ノ側カラ討
  論ヲ御述べ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=168

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• 169・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　私ハ反對ノ通告ヲ致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=169

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• 170・穂積重遠

  ○男爵穗積重遠君　私ハ本案ニ反對デ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=170

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• 171・青木一男

  ○靑木一男君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=171

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• 172・山田三良

  ○山田三良君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=172

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• 173・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　私ハ贊成ノ意見ヲ述
  ベタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=173

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• 174・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　井田ハ反對デゴザ
  イマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=174

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• 175・明石元長

  ○男爵明石元長君　私モ反對デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=175

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• 176・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　チヨツト議事進行
  ニ付テ、宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=176

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• 177・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　ドウゾ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=177

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• 178・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　私ハ討論ニ先立チ
  マシテ、今、御懇談ヲ御開キ下サル機
  會ヲ與ヘラレル方ガ宜イヤニモ思フノ
  デスガ、如何ナモノデスカ

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• 179・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　速記ヲ止
  メテ
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=179

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• 180・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)速記開始、　是ヨリ引續イテ會議ヲ致シマス、就キ
  マシテハ今通告ニ依リマシテ、先例
  ニ依ツテ反對ノ方カラ先ゾ發言ヲ御願
  ヒシマス、次ニ贊成ノ方ノ御意見ヲ伺
  フト云フ風ニ先例ニナツテ居リマスカ
  ラ、先ヅ穗積男爵

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=180

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• 181・穂積重遠

  ○男爵穗積重遠君　實ハ私ハ先程討論
  ニ時間ヲ戴キタイト申上ゲマシタケレ
  ドモ、大分時刻ガ移リマシタシ、今迄
  ノ御議論デ、又、私ノ申上ゲタコトモ
  趣意ガ御分リ戴イテ居ルト思ヒマスカ
  ラ、率直ニ私ノ結論ヲ申上ゲマズ、卽
  チサツキチヨツト雜談デ申上ゲタヤウ
  二、一ツノ理由ハ、ドウモ長年法律ヲ
  勉强致シマシタ專門家ト致シマシテ、
  此ノ全權委任案ヲ其ノ儘鵜呑ニスルト
  云フコトハ、學者的良心ガ許サナイ、
  反對セザルヲ得ナイ、斯ウ云フ氣持ガ
  致スノデアリマス、ソレハ先程申上ゲ
  マシタコトト、井田男爵モ其ノ點ニ觸
  レラレマシタガ、議會ノ性質權能ト云
  フヤウナ點カラ言ツテモサウデアリマ
  スシ、一方ニ此ノ非當時局ノ際ダカラ、
  其ノヤウナコトハ構ハヌヂヤナイカト
  云フコトニシテモ、ソシナラ是ガドレ
  ダケ效果ガアルノカ、實效ノ問題ニナ
  リマスト、却テ段々今迄ノ御質問ノ中
  ニ現レタヤウニ、井田男爵ヤ、山岡サ
  ソノ言ハレタコトモ其ノ意味デアリマ
  セウガ、ドウモ伺ツテ居ルト、何ダカ
  實效ノ少イト云フヤウナ點ガ質疑應答
  ノ中ニ却テ色々現レテ來テ、或ハ小原
  サンノ御話ノ中ニ、帝國議會ノ開會中
  ハドウダ、開會中ハヤラヌノダト云フ
  ナラバ、ソレナラバ緊急勅令ヲ引續キ
  出セバ宜イト云フコトニナツテ來マス
  シ、或ハ旣存ノ法律ヲ廢止シ得ルカド
  ウカト云フヤウナコトニ付テモ、ドウ
  モ餘リ明確デナイ、ドウモ今迄アル總
  動員法、其ノ他ノ法律カラ稍〓一步進
  メタ位ノ所デ、根本的ノ此ノ時局ニ應
  ズル解決ニナツテ居ナイ、先程ノ質問
  ニ言ウタヤウニ)總理大臣、外務大臣
  カラ伺ツタヤウナ、實ニ憂慮スベキ時
  局ヲ打開スルモノト、ドウモ私ニハ思
  ヘナイ、假令私ガ學者的良心ヲ捨テテ
  贊成スルトシテモ、モツト是ナラバ
  日本ガ救ヘルモノナラバト云フ氣持モ
  致スノデアリマス、ソレナラバサウ云
  フ方法ガナイカト云ヘバ適法ニシテ
  有效ナルベキ、是ハ固ヨリソレガ有效
  デアルカドウカハ、ソレノ組立ノ問題
  二、結局ニ其ノ中心ニ立ツ人ノ問題デ
  アリマスケレドモ、憲法ガチヤント豫
  定シテ居ル三十一條ノ非常大權ト云フ
  モノガアル、其處ヘ行カレルベキヂヤ
  ナカツタカト云フ氣持ガスルノデアリ
  やく、兎ニ角其ノ狀態デアルト私ハ反
  對セザルヲ得ナイ、又情報局總裁ニ「ラ
  ジオ」ノコトヲ申シタノハ、アレハ私
  ノ眞意ハ、議會ノ質問權、總テ此ノ際
  ニ、此ノ情勢デアルカラ。滿場一致デ
  決レバ御目出度イガ、色々議論ガアツ
  テ、反對モアツタト云フコトデモ何モ
  差支ナイ、十分盡サシテ戴キタイ、ソ
  レデ私ハ愈〓ノ場合ニハ反對ヲ表明シ
  ヨウト云フ氣持デアツタノデアリマ
  ス、ドウモ私ノ趣意ハ、今ノ學者的良
  心ハ姑ク措キマシテ、此ノ法案デハド
  ウモ足リナイ、多少ノ役ニハ立ツガ足
  リナイト云フ點ガ一ツアルノデアリマ
  スカラ、マアヽ一應ハ斯ウスルガ、モ
  ウ一步進ムノダ、强ヒテ進ムノデナク
  テモ、必要ナ時局ニナレバ早速、敏速
  ニ進ムノダト云フ政府ノ御考ガアリ
  貴族院モソレハ尤モダ、サウ云フ風ニ
  行ツテ貰ヒタイ是デ一應宜イガ、是
  ダケデ滿足シナイデ、更ニ時局ニ應ズ
  ル有效ナル手段ヲ講ジテ貰ヒタイ、斯
  ウ云フコトノ意思ガ現レテ、私ノ趣意
  ガ其處ニ現レヽバ、贊成致シテモト云
  フ風ニモ考ヘテ居ルノデアリマス、モ
  ツト率直ニ申セバ、附帶決議デモ使ハ
  ウカ、一方ニ於テハ、此ノ法律ヲ實施
  スルニ付テ、憲法ノ範圍ヲ逸脫シナイ
  ヤウニ、十分ニ渾用上ノ注意ヲ望ムト
  云フコトト、一方ニ於テ、時局ニ應ジ
  テ敏速ニ、更ニ一段或ハ何段モ躍進ス
  ル、飛躍スルコトヲ考ヘルヤウニト云
  フ、其處ニ憲法第三十一條ノ適用其ノ
  他ト云フヤウナコトデモ入レヽバ非
  常ニ私ハ結構ト思ヒマスガ、兎ニ角サ
  ウ云フ意味ノ附帶決議ヲ附ケテ戴ケレ
  バト云フノデアリマス、若シドウモソ
  レハイカヌ、此ノ儘ト云フコトニナリ
  マスト、ドウモ私ハ贊成スルコトガ出
  來ナイ、而シテ是ガ通レバ、恐ラク通
  ルデアリマセウ、通レバ、ソレハソレ
  トシテ、モウ一步進ンデ戴キタイト云
  フ意味デ建議案ヲ上程シ、ソレニ付テ
  意見ヲ述ベサシテ戴キタイ、率直ニハ
  最後ノコト迄申スト、私ノ意味ハサウ
  云フ意味デアリマス、左様御承知ヲ戴
  キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=181

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• 182・青木一男

  ○靑木一男君　私ハ簡單ニ政府ノ原案
  ニ贊成ノ趣旨ヲ述ベマス、只今穗積委
  員ノ御說明ヲ伺ツテ居リマシテ、私ハ
  穗積博士ノ御意見ハ果シテ反對ノ御意見
  ナリヤ、賛成ノ御意見ナリヤ、實ハ聽イ
  テ判斷ニ迷ツタノデアリマス、反對ノ
  御意見ニ條件附キト云フコトハ、私
  アリ得ザルモノデナイカト思フノデア
  リマス、學者ノ良心的立場カラ御反對
  ガアリマシタガ、恐ラク憲法ノ條章ニ
  反スルト云フ意味ニ於テ御反對デハナ
  イカト私ハ拜察致スノデアリマスガ
  其ノ點ニ付キマシテ今度ノ委任立法ハ
  固ヨリ政府ニ與フル權限ノ廣汎ナルコ
  トハ從來其ノ例ヲ見ザル所デアリマス
  ケレドモ、併シ恐ラク國家總動員法ト
  比ベテ見マスト、是ハ程度ノ差デアリ
  さい。國家總動員法ガ貴衆兩院ヲ通過
  シタ法案トナツテ居リマス今日、今囘
  ノ委任立法ヲ以テ憲法ニ反スルト見ル
  コトハ出來ナイト私ハ考ヘルノデアリ
  まぐるソレカラドレダケノ效果ガアル
  カ分ラナイト云フコトヲ以テ反對ノ理
  由ニ爲スコトハ出來ナイト思ヒマス、
  政府ハ之ニ依ツテ時局ヲ乘リ切リ、戰
  時應急ノ措置ヲ講ジテ行カウト云フ御
  說明デアリマスノデ、私共ハ其ノ結果
  ヲ信賴シテ、此ノ法案ヲ認メテ宜シイ
  ト考ヘマス、又憲法ノ第三十一條ノ發
  動ニ依ルガ宜シイ、ソレヲヤラナイカ
  ラ之ニ反對ダト云フコトハ、是ハ私ハ
  反對ノ理由トシテハ頗ル不思議ナコト
  ニナルノデアリマシテ、此ノ法案自體
  イケナイ所ガアレバ反對サレヽバ宜シ
  イノデアリマスガ、他ニ斯ウ云フ途ガ
  アルカラ、ソレヲ通ラナイカライケナ
  ト云フコトヲ以テ反對サレルノハ、
  其ノ理由ヲ知ルニ苦ムノデアリマス、
  今日ハ申上グル迄モナク國家興亡ノ關
  頭ニ立ツテ居ル瀨戶際デアリマス、私
  共ハ今日此ノ戰爭ニ勝ツト云フ一點以
  外ニ何物モナイノデアリマス、政府ガ
  此ノ立法ニ依ツテ此ノ非當時局ニ對處
  シ、戰力ノ集中發揮ニ必要ナル各般ノ
  應急ノ措置ヲ講ジテ行カウト云フ、其
  ノ御考ニ對シマシテハ、此ノ際全面的
  ニ贊意ヲ表シ、大イニ政府ヲ激勵シ、
  以テ戰爭勝利獲得ノ最高最終ノ目的ニ
  共ニ進ミタイト考ヘマス、固ヨリ此ノ
  法律施行ニ付テ私共モ希望ガナイ譯デ
  ハアリマセヌ、權限ノ存スル所責任又
  伴フノデアリマシテ、此ノ絕大ナル權
  限ヲ與ヘラレタル政府ノ責任ハ誠ニ重
  大デアルト考ヘマス、政府ハ此ノ點ニ
  鑑ミ必要ナル場合、本法ノ適切ナル運
  用ニ依ツテ國策戰力ノ迅速ナル增强ヲ
  圖リ、以テ戰爭ニ勝ツテ戴キタイト云
  フコトヲ强ク念願スル者デアリマス、
  ソレト同時ニ本法ハ國家總動員法ト比
  ベマシテ、稍〓其ノ施行ノ形ニ於テマ
  ダ不明瞭ナ點ガアリマス、是ガ一面ニ
  於テ關係政府當局ノ此ノ法律ノ濫用ニ
  ナル端〓トナル虞モナイデハアリマセ
  又、又一面ニ於テハ此ノ法律施行ニ當
  ツテ國民ガ不安ヲ懷クト云フ懸念ガナ
  イデハアリマセヌ、ソレ等ハ此ノ法律
  ノ施行勅令ニ於テ十分意ヲ加ヘテ善處
  シテ戴キタイト思ヒマス、先程ノ法制
  局長官ノ御說明ニ依ツテ、第五條ノ勅
  令ニ依ツテ第一條ノ命令處分ノ準據法
  ヲ與ヘルト云フ御說明ガアリマシタ、
  私ハ其ノ點ヲ特ニ希望致シマス、又地
  方總監ノ出ス命令ニ付キマシテモ、國
  民ニ不安ナキヤウ其ノ點ノ善處ヲ希望
  致シマス、要スルニ此ノ法律ハ傳家ノ
  名刀デアリマス、用ヒ方ニ依ツテ非常
  ナル力ヲ發揮致シマスルト共ニ、一方
  使ヒ方ヲ誤リマスレバ、是ガ兇劍トナ
  ル虞モアリマスルノデ、其ノ點ニ付キ
  マシテハ、政府ノ格段ノ御留意、善處
  ヲ希望致スノデアリマス、ソレダケノ
  希望ヲ附加シマシテ、私ハ政府ノ原案
  ニ贊成致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=182

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• 183・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　私ハ此ノ法律ハドウモ
  ハツキリシナイ法律ダカラ、寧ロ是ハ
  政府トシテハ御引込メニナツテ、議會
  閉會後緊急勅令デ立派ニ御出シニナツ
  タラドウカト、斯ウ思フノデス、ソレ
  ハ此ノ案ニ對スル議論デハナクナツ
  テ、此ノ案ハナイモノト見テノ話ニナ
  リマスカラ、私ハ此ノ案ニ付テノ議論
  ヲ申上ゲマス、ソレハ先刻ノ質問ニモ
  申シマシタ通リ、今ノ所謂立憲政治ノ
  常道ハ、法規ニ依ツテ人民ガ行爲ヲ命
  ゼラレテ居ルノデアルカラ、ソレニ依
  ツテ處罰サレ、賞揚サレ、或ハドウサ
  レルト云フコトハ當リ前デアリマス、
  併シ法規ノ根據ナクシテ、イキナリ處
  分ヲサレルト云フコトハ、是ハ立憲政
  治ノ破壞ダラウト思ヒマス、其ノ點ニ
  於テ私共ハ貴族院議員トシテ、斯ウ云
  フコトニ關シテ便宜上贊成ト云フコト
  ハ、ドウモ良心ガ咎メテ出來ナイノデ
  アリマス、例ハ甚ダヲカシイ例デスケ
  レドモ、家ヲ不燃質物デ造レトカ何ト
  カ云フ命令ガアツテ、ソレニ適合シナ
  イモノヲ造ツタ、ソレデ罰セラレルト
  カ引張ラレルトカ云フコトハ、是ハモ
  ウ當然ノ話デアリマス、併シ交通整理
  ノ爲ニ右側ヲ步クガ宜イカ、左側ヲ步
  クガ宜イカ、是ハ其ノ時ノ人ノ考ヘニ
  依ツテ決ルノデアリマスガ、右側通行
  ト決ツテ居ル時ニ、左側通行ヲシテ叱
  ラレタト云フノハ是ハ宜シイ、併シ右
  側通行トカ左側通行トカ決ツテ居ラヌ
  ノニ、片側ヲ步イタライキナリブン殿
  ラレタト云フニ至ツテハ、是ハ私ハド
  ウモ本當ノ立憲政治デハナイト思ヒマ
  ス、サウ云フ意味カラ行キマシテ、若
  シ此ノ原案ニ處分ト云フ字ガナケレ
  バ私ハ贊成ヲ致シマス、併シ法規ニ
  基カザル處分、勝手ノ、勝手ト云ツテ
  ハ甚ダ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、
  隨意ノ處分ト云フコトガ、玆ニ現レテ
  居ル以上ハ、是ハ立憲政治ノ常道トシ
  テ甚ダ服從シ兼ネル點デアリマス、法
  制局長官ノ御說明ニ依リマスト、第五
  條ノ施行勅令ニ依ツテ何カ決ルカラ安
  心シロト云フコトノ御話デアリマス
  ガ、施行勅令ト云フモノハ、要スルニ
  勅令デアツテモ施行規則デアリマシ
  テ、本體ノ規則デハナイノデアリマス、
  是モ例ハ甚ダ惡ウゴザイマスケレド
  モ、人形ニ着物ヲ着セル、着物ハ施行
  規則デアリマシテ、人形其ノモノデハ
  ナイ、人形其ノモノガ決ラヌデ、着物
  ヲ着セルカラ大抵中ノ人形ハ分ルダラ
  ウト云フヤウナ程度デハ、私共ハ法律
  トシテハ甚ダ以テ不十分ナルモノト思
  フノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテ
  私ハ反對致スノデアリマスガ、此ノ處
  分ト云フ字ガ若シ削ラレルカ、或ハ命
  令ニ規定シタル事項ニ依ル處分ト云フ
  ヤウナ文字ガ入ルナラバ、私ハ贊成シ
  タイト思ヒマス、決シテ是ハ殊更ニ反
  對スルノデハナクシテ、良心的ニ、私
  ハ學者デハアリマセヌケレドモ、議員
  トシテノ良心的反對ヲ致スモノデアリ
  マ大

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=183

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• 184・山田三良

  ○山田三良君　私ハ簡單ニ贊成意見ヲ
  述ベサセテ戴キマスガ、併シ贊成ノ要
  旨ハモウ靑木委員ガ十分述ベラレテ居
  リマスカラ、寧ロ私ハ今迄承リマシタ
  反對ノ御方ニ對シテ、更ニ御再考ヲ煩
  シタイト云フ點ヲ簡單ニ申上ゲタイト
  思ヒマス、ソレハ我々ノ同僚ノ穗積委
  員カラ、此ノ案ニ贊成スルト學者的良
  心ニ反スルカラト、斯ウ申サレマスガ、
  穗積君モ學者デアリマスガ、私モ學籍
  ヲ持ツテ居ル一人デアリマス、此ノ案
  ニ贊成シテ私ノ良心ニ疚シイ所ガアル
  ト云フコトハ一點モ感ジマセヌ、又御話
  ニ依リマスト、昔穗積八束先生ガ委任
  命令ト云フコトヲ非常ニ御嫌ヒニナリ
  マシテ、若シ委任命令ヲ認メルナラバ、
  帝國議會ヲ一日開イテ翌日カラ總テノ
  立法事項ヲ政府ニ委任スル、斯ウ書イ
  タ時ニ帝國議會ノ位置ヲ保ツカ否ヤ、
  斯ウ云ツタ議論ヲサレテ居リマス、サ
  ウ云フ委任立法ナラバ、斷然憲法ノ趣
  旨ニ反シ、不都合デアルト思ヒマス、
  併シ只今ノコトハ、大東亞戰爭ノ戰時
  ニ際シテ、サウシテ是々ノ事項ニ關シ
  テ、今迄ノ現存ノ法律ニ拘泥スルコト
  ガ出來マセヌカラ、玆ニ迅速果敢ナル
  處置ヲ爲スガ爲ニ、或ハ法規ヲ拵ヘ或
  ハ行政ノ處分ヲ爲ス、斯ウ云フ必要ヲ、
  今旣ニ總理大臣以下各大臣カラ懇々ト
  御說明ニナリマシタ所ニ依ツテ、私
  實ニ必要〓クベカラザル目下ノ緊急ノ
  措置デアルト固ク信ズル次第デアリマ
  ス、之ニ贊成致シマシテ何等良心ヲ傷
  ツケヌノミナラズ、之ニ贊成スルコト
  コソ、帝國議會ノ議員トシテノ職責ヲ
  全ウスルモノデアルト確信スル次第デ
  アリマス、此ノ時局ニ際シマシテ、色々
  文句ノ末ニ拘泥致シマシテ、サウシ
  テ之ニ贊成カ否カ、是ハ平時ノ議會ニ
  於テ三十日モ九十日モ議論スル時ナラ
  バ、悠々ト議論ヲ伺ヒタイノデアリマ
  尺々、一日カ二日ノ間ニ、敵前ニ於キ
  マシテ目下已ムヲ得ザル措置ヲ執ラレ
  ルト云フヤウナ法案ニ對シマシテ、サ
  ウ云フ風ナ議論ヲナスベキデハナイト
  思ヒマス、私モ此ノ法案ハ政府ガ咄嗟
  ノ間ニ御拵ヘニナツテ居ルト云フコト
  ハ、法案自身ノ上ニモ現レテ居リマス、
  若シモ十分ナル希望ヲ申シマスナラ
  バ多少ノ字句ノ修正ヲ願ヒタイ點モ
  アルノデアリマスルケレドモ、今日ハ
  サウ云フ問題ニ入ツテ居ル時期デハア
  リマセヌカラ、非常ニ弊害ノナイ限リ
  ニ於キマシテハ原案ノ儘ニ贊成致シ
  マシテ、一日モ早ク其ノ措置ヲ執ラレ
  タイト云フコトヲ希望スル次第デアリ
  やくろ而シテ穗積君ノ御意見ノ分リマ
  セヌ所ハ、豫テ御提出ニナツテ居リマ
  ス憲法三十一條ノ非常大權ニ關スル建
  議案ヲ附帶決議トシテデモ認メテ吳レ
  ルナラバ贊成スル、ソレヲ認メナイナ
  ラバ此ノ案ニ反對スル、斯ウ云フ御結
  論ハ、私ハ何カ御再考ヲ願フノデナク
  テハヽ穗積君ノ名譽ノ爲ニモ默ツテ置
  ケナイト思ヒマス、チヨツト一言申シ
  マスガ、非常大權ノ發動ハ、私ハ文部
  省ノ學術研究會議ノ法律政治學ノ其ノ
  部ノ委員長トシテ、非常大權ノ發動ニ
  關スル學者ノ意見ヲ集メマシテ、サウ
  シテソレヲ內閣總理大臣ニ建議シタノ
  デアリマス、其ノ時ニハ、其ノ研究會
  議ノ會長タル林春雄博士、副會長デア
  ル穗積君ガ同道セラレマシテ、サウシ
  テ總理閣下ニ對シテ、非常大權ヲ此ノ
  際發動セラレルコトガ目下ノ急務デア
  ルト云フコトモ御參考ニ御話申シタノ
  デアリマス、私ノ本來ノ希望ハ、斯ウ
  云フ非常ノ際ニ二日デモ三日デモ臨時
  議會ヲ開カレルコトスラモ甚ダ危ブン
  ダノデアリマス、幸ニ開ケマシタカラ
  誠ニ幸ヒデアリマス、議會ノ開ケナイ
  時ニ當ツテ、悠々トシテ待ツコトガ出
  來マセヌノデ、一日モ早ク非常大權ノ
  發動ヲ奏請セラルベキガ、現局ニ於ケ
  ル內閣ノ責任デハナイカト云フコトヲ
  考ヘマシテ、單ニ學究ノ意見トシテ進
  言シマシタ次第デゴザイヌシタ、處ガ、
  政府ニ於カレマシテハ、是ハ總理カラ
  モ私直接ニ伺ツタ御言葉デアリマス
  ガ、アナタノヤウナ議論ニスルコトモ
  一案デアルケレドモ、奮國妻會ヲ開會
  シ得ル限リニ於テハ、先ヅ帝國議會ノ
  意見ヲ諮ツテ、其ノ意見ニ依ツテ、ソレ
  ト同ジヤウナコトヲ爲シ得ルナラバ、
  尙一層內閣トシテモ、〓會トシテモ適
  當ダラウト思フカラ、其ノ方ヲ採ツタ
  ト云フ御話デアリマス、私ハソレニ對
  シテ敬意ヲ表シマシタ、其處迄議會ノ
  權能ヲ尊重セラレル內閣ト云フモノ
  ハ、誠ニ結構デアリマス、私ハソレハ
  已ムヲ得ナイ時ニ非常大權ト云フコト
  ニナルノデアリマスカラ、議會ヲ開設
  サレテサウ云フコトニナサレマスナラ
  バ誠ニ結構デアリマスト云ツテ、其ノ
  御言葉ニ對シテ敬意ヲ表シタ次第デア
  リマス、然ルニ非常大權ノ議論ノ方ハ
  非常大權ニ依ツテ帝國議會ノ議決權ヲ
  無視スルナラバ構ハナイガ自ラ進ン
  デソレヲ奏請スル、而シテ現在ノ此ノ
  案ニ於キマシテ、多少ノ立法權ヲ或目
  的或期間制限スルト云フガ爲ニ、之
  ニハ反對ダト仰シヤルコトハ、是ハ自
  家撞著ノ議論デアリマシテ、ドウシテ
  モ私共ニハ理解ガ出來マセヌ、デアリ
  マスカラ、私ハ切ニ同僚ノ穗積君ニモ
  御願ヒ申シマス、此ノ際ニ當リマシテ、
  公正會ノ方數名ノ反對ニ依ツテ、全會
  一致ト云フコトデ決議スル案ヲ强ヒテ
  固執シテ、是ナラバ反對デアル、附帶
  決議ガ附クナラバ贊成デアル、サウ云
  フコトヲ仰シヤラズニ、此處ハ國家重
  大時期ニ際シマシテ、私ハ何等此ノ案
  ニ贊成シテ議員ノ良心ヲ傷ケルト云フ
  コトハナイト確信致シマスカラ、ドウ
  カ反對ノ方モ虚心坦懷ニ御再考ヲ願ヒ
  マシテ、全會一致ヲ以テ此ノ案ヲ通過
  セラレルヤウニアリタイト切望スル次
  第デアリマス

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• 185・澤田牛麿

  ○澤田牛麿君　チヨツト辯明ヲ致シマ
  ス、只今山田議員カラ、字句ノ末ニ拘
  泥シテ云々ト云フヤウナ意味ノ御言葉
  ガアリマシタガ、是ハ外ノ方ハ知リマ
  セヌガ、私ニ對シテ向ケラレタナラバ、
  一言辯明シテ置キタイト思ヒマス、字
  旬ノ末デハゴザイマセヌ、字句卽チ主
  義デアリマス、立憲政治ト云フモノハ
  法規ニ依ツテ行ヒ、法規ニ依ツテ處分
  スルノガ立憲政治デアルト、大體私共
  思ツテ居リマス、其ノ御念ガ間違ツテ
  居ルナラバ別問題トシテ、其ノ觀念ガ
  正シイナラバ、法規ニ依ラザル個々ノ
  處分ヲイキナリヤルト云フコトハ、是
  ハ立憲政治ノ常道デナイト思ヒ〓マス
  決シテ私ハ字句ノ末ニ拘泥シテ居ル者
  デハアリマセヌ、立憲政治ノ大義ニ殉
  シン、議員トシテノ良心カラ私ハ反對
  スル者デアリマス

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• 186・井田磐楠

  ○男爵井田磐楠君　私ハ本法案ニ反對
  者ノ一人トシテ玆ニ愚見ヲ述ベルコト
  ヲ御許シヲ願ヒマス、今迄ノ質疑應答
  ノ中ニ、御贊成ノ諸君ノ方面ノ御意見
  ニ於テモ現ハレテ居リマスル如ク、此
  ノ法ナルモノハ、法ノ上ニ法ヲ築クモ
  ノデアル、屋上屋ヲ重ネルモノデアル
  ト云フヤウナ御意見ヲ伺ツテ居ルノデ
  アリマス、誠ニ其ノ感ガ深イノデアリ
  マス、今迄ノ法規ノ複雜、而モソレガ
  時機ニ應ジナイ幾多ノ法案ヲ、此ノ法
  案ニ依ツテ何等カ規制ヲシテ、サウシ
  テ應機ノ措置ヲシテ行クト云フノガ此
  ノ法案ノ眼目デアルヤウニ伺ツテ居リ
  マス、サリナガラ此ノ時局ト云フモ
  ノハ果シテ如何ナル時局デアルカ、私
  ハ憲法義解ノ中ノ第三十一條ノ所ニ使
  ハレテ居ル文字、卽チ非常ノ變局ノ場
  合此ノ非常ノ變局ノ場合ヲ超エテ今
  ヤ國內ガ戰場化シテ居ルノデアリマ
  ス、今日ノ法ハ卽チ明日ノ法ニ非ズ、
  俗ニ謂フ昨是今不是、此ノ法ヲ律シテ、
  果シテ是ガドレダケノ永續性ヲ持ツテ
  行クノカ、ハ是此ノ戰局ノ狀態ヲ顯ミ
  マスル時ニ、誠ニ私ハ寒心ニ堪ヘナイ
  次第デアリマス、此ノ法ガ能ク此ノ戰
  局ヲ律シテ行クカドウカ、頗ル疑ヒナ
  キヲ得ナイノデアリマス、卽チ今日ハ)
  非常ノ變局ノ時ニハ非常ノ例外ヲ考ヘ
  ナケレバナラヌト云フ此ノ場合以上ノ
  場合デアリマス、國政輔翼ノ任ニ御當
  リニナツテ居リマスル各大臣閣下ハ
  此ノ際コソ、所謂第三十一條ノ御發
  動ヲ御奏請ヲ願ヒマシテコソ、最モ此
  ノ時局ニ相應シイ御輔翼デアルト私ハ
  確信シテ疑ハナイノデアリマス、或ハ
  曰ク、此ノ法ハ總動員法ノ上ニ更ニ一
  步ヲ進メタモノデアル、何等ソレト大
  差ナイト云フ御議論モアリマスルケレ
  ドモ、更ニ又此ノ時局ノ進展ヲ見マシ
  タ時ニ、又復、此ノ法ノ上ニ屋上更ニ
  屋ヲ重ネル御考デアリマセウカ、法一
  依ツテ此ノ國家ノ大難局ヲ救ヒ得ル今
  日ハ時機デナイノデアリマス、單ナル
  法ノ制定ニ依ツテ、此ノ大時局ガ救ハ
  ルヽヤウナコトナラバ、誠ニ容易ナコ
  トデアリマス、私ハ斯樣ニ考ヘテ居リ
  マセヌ、斯樣ナ法ニ依リマシテ、此ノ
  時局ガ根本カラ救ハレマスレバ、誠
  私ハ國家ノ幸ヒ是ヨリ大ナルモノハナ
  イト思ヒマス、又首相トシテモ御輔翼
  ノ大任ニ當ラレマシテ、此ノ法ニ依ツ
  テ國家ガ救ハレルト云フヤウニ御考ニ
  ナリマスル大局デアリマスルナラバ)
  私ハ誠ニ仕合セニ感ズルノデアリマス
  んだろ首相初メ各大臣ハ、決シテ斯樣
  ニ此ノ時局ヲ、私共野ニ在ル人間ト違
  ヒマシテ、根本的ニ時局ヲ穿ツテ御認
  識ニナツテ居リマスル責任御當局ノ方
  方ハ、ヨリ以上御心配ナコトト存ジ上
  ゲマス、尙更ニ私ハ議會ノ立場カラ、是
  ハ或ハ私ノ考ヘ方ガ憲法ニ則シテ居ラ
  ナイカモ知レマセヌ、是ハ山田博士ノ
  御叱リヲ蒙ルカモ知レマセヌガ、私
  議會ト云フモノハ大權ニ依リマシテ定
  メラレ、サウシテ憲法義解ニ依リマス
  下、斯ウ云フコトガ書イテアル、失禮
  デゴザイマスルガ、皆樣ガ御承知デア
  リマスルコトヲ一應、憲法義解ヲ申上
  ゲルコトヲ御許シヲ願ヒマス、「蓋議會
  ハ立法ニ參スル者ニシテ主權ヲ分ツ者
  ニ非ス法ヲ議スルノ權アリテ法ヲ定ム
  ルノ權ナシ而シテ議會ノ參贊ハ憲法ノ
  正條ニ於テ附與スル所ノ範圍ニ止マリ
  無限ノ權アルニ非ザルナリ」、斯樣ナコ
  トガ記サレテゴザイマスルガ、斯クノ
  如キ法」參スル所ノ權限ヲ御與ヘニナ
  ツテ居リマスル我ガ議會ガ、今日法ヲ
  是ハ色々ナ事情ガアリ、誠ニ政府ノ御
  提案ニナリマシタ此ノ昨今ノ國家ノ狀
  況誠ニ斯樣ナル法案ヲ御出シニナラ
  ナケレバナラヌト云フコトニ付キマシ
  テハゝ深ク〓〓其ノ御事情ハ御同感ニ
  堪ヘナイ次第デアリマス、サリナガラ
  議會ト致シマシテ此ノ權限ノ殆ド全部
  ト云フモノヲ、又次々ト何處迄モ法ノ
  形ニ依リマシテ之ヲ進メテ行ク所ニ、
  委任立法ノ形式ニ依リマシテ之ヲ進メ
  テ行ク所ニ於キマシテ、帝國議會ト云
  フモノハ自ラ此ノ法案ヲ贊成スルコト
  ニ依リマシテ、自ラ其ノ權限ヲ御返上
  申上ゲルコトニナルト私ハ信ズルモノ
  デアリマス、此ノ議會ヲ御停止ニナル
  ト云フヤウナコトハ、是ハ大權ノ下ニ
  於カレマシテハ、如何樣ニモ御考ヘ下
  サルコトニ於キマシ、テ、何等私共ハ異
  存ノアル者デハナイノデアリマス、併
  シ今日未ダ斯樣ニ議會ヲ御開キ戴イテ
  居リマスル限リニ於キマシテ、我々ハ
  此ノ議ヲ簡單ニ、議會ノ立場ニ於テ御
  贊成ハ直チニ出來兼ネルノデアリマ
  ス、自ラノ權限ヲ政府ト共ニ議シテ、
  此ノ議會ノ權限ヲ御返シ申上ゲルト云
  ツタ感ヲ深クスル者デアリマス、〓
  此ノ法案ヲ御出シニナリマシタ政府ノ
  御意思ニ付テハ、先程モ申シマシタ通
  リ、誠ニ御同情ト云フ言葉ヲ使ヒマス
  カ、餘リ適當ナ言葉デハアリマセヌガ、
  深ク其ノ意ヲ諒トスルモノデゴザイマ
  スルガ、此ノ大難局ヲ打開シテ行キマ
  スルノニハ此ノ法案ヲ御贊成申上ゲ
  テ、サウシテ政府ヲ激勵スルト云フコ
  トデハ、私ハ此ノ時局ハ拔ケテ行ケナ
  イト思ヒマス、靑木君ハ此ノ法案ヲ通
  過サセルコトニ依ツテ政府ヲ激勵スル
  ト仰シヤイマシタケレドモ、私ハ更ニ
  一步ヲ進メマシテ、臺閣諸公ノ大權御
  發動ノ奏請、之ヲ御願ヲ申上ゲマスル
  コトニコソ、此ノ大難局ヲ、御激勵ト
  云フ言葉ハ私ハ御使ヒ申シタクアリマ
  セヌガ、內閣諸公ノ今日ノ此ノ御心勞
  ニ一臂ノ御力ヲ御添へ申シ得ルモノ
  ト、是コソ御添へ申シ得ルモノト、是
  亦確信スル次第デアリマス、マダ一三三
  愚見モ御附加へ申シタイト思ヒマスル
  ケレドモ、私ハ此大戰局、三千年來未
  ダナイ、此ノ大難局、國家危急存亡ノ
  秋此ノ秋ニ於キマシテ、此ノ國家ヲ
  一ツノ法ニ於テ御救ヒ戴クト云フ、此
  ノ法ノ觀念ヲ、今日ハモウ一ツ大キク
  出テ御考ヘヲ願ヒ、今日ノ法ハ明日ノ
  法ニ非ズト云ツタヤウナ、法ニ依ツテ
  ハ國家ハ救ヘナイト云フコトヲ申上ゲ
  マシテ、此ノ法案ニハ御贊成ヲ申上ゲ
  すぐ之ヲ以テ私ノ反對意見ト致シマ
  ス

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• 187・山岡萬之助

  ○山岡萬之助君　私ハ本案ニ贊成意見
  ヲ簡單ニ申述ベタイト思ヒマス、本案
  提出ノ趣旨、卽チ此ノ時局ハ非常ニ緊
  迫シタル、所謂難局デアリマシテ、非
  常手段ニ愬ヘネバナラヌ、卽チ玆ニ緊
  急措置ト云フモノヲ講ズルノ必要アル
  コトニ付テハ、恐ラク何人モ之ヲ是認
  スルモノデアラウト思ヒマス、ソレデ
  アリマスルカラシテ、其ノ趣旨ニ從ツ
  テ本案ヲ御提出ニナリ、其ノ趣旨ニ相
  當スル立案ガ備ハリ、敏速果敢ニ國務
  ヲ遂行スルコトガ出來マスルナラバヽ
  殆ド質疑應答ヲ重ネズシテ、今日ノ此
  ノ緊迫シタル時局、協賛スベキガ當然
  デアリマス、然ルニ政府ハ矢張リ此ノ
  臨時議會ヲ御開キニナル都合カラ、十
  分ナル時ヲ御持チニナラナカツタコト
  ト思ヒマスルノデ、緊急措置ヲ講ジマス
  ル法案自體ハ具體的ニ所謂備ツテ居ル
  ト云フコトガ言ヘナイノデアリマスヽ
  玆ニ於テ衆議院ニ於テモ相當議論ガ交
  換サレタヤウデアリマス、私モ亦疑義
  ヲ此處ニ持チマシテ、總理初メ關係大
  臣又法制局長官ニ色々ト伺ツタ次第デ
  アリマス、稍〓政府ノ考フル所モ了承
  致シマシタ、ドウゾ此ノ質疑應答ノ總
  テノ關係ハ、此ノ委員會ニ於ケルソレ
  等ヲ總テ能ク咀嚼シテ、サウシテ此ノ
  施行ニ關スル勅令、此ノ施行ト云フノ
  モ廣ク解釋シテ、其ノ勅令ニ於テ相當
  迄備ヘテ、此ノ委員會ノ考ヘ方ヲ達成
  スルヤウニ私ハ切ニ希望ヲ致シマス、
  ソコデ、ソレダケ申セバ是以上申サヌ
  デモ宜シイノデスガ、一二私ハ特ニ必
  要ト考ヘル點ヲ申上ゲマス、卽チ屋上
  屋ヲ架スルヤウナコトニシテハナラ
  ヌ、ト云フノハ、過去ノ勅令以下ノ委
  任立法ハ誠ニ議會ノ考フル所ト甚ダシ
  ク反シテ居ルノデアリマス、議會ハ行
  政或ハ政府ニ一任シテ事變又ハ戰時
  ニ際シマシテハ、國務ヲ本當ニ敏速ニ
  シン、國民ト共ニ善處シテ戴ク、斯ウ
  云フ考デ御委任ヲ申シタ處ガ、微ニ
  入リ細ヲ穿チ、複雜煩瑣ナ法制ヲ御立
  テニナツテ、政府御自身モ困ツテ、何
  トカシナケレバナラヌト云フノガ、先
  ニ申上ゲマシタヤウニ歷代內閣ノ考ヘ
  方デアツタ、モウ今日ハ急迫シテ來テ、
  斯樣ナ案ヲ至急ニ御出シニナツタ、ソ
  コデ又命令ヲ發シトアル、此ノ命令ヲ
  發シト云フコトニ付テハ前ノ覆轍ヲ踏
  又く。ドウゾ新タナ考ヘ方ヲ以テ簡
  單明瞭ニ御書キニナツテ、ソレコソ屋
  上屋ノ嫌ヒアルコトヲ十分ニ除ケラ
  レマスルヤウニ御盡力ヲ戴キタイト云
  フコトヲ第一點トシテ希望致シマス)
  次ニ處分ヲ爲ス、此ノ處分ニ付キマシ
  テハ、官ノ方カラ行ケバ、自由ニ何デ
  モ法令ニ拘ラズ出來ル、何デモ出來ル
  ト申シテモ宜シイ、併シ何デモ出來ル
  ト申シタ處デ、矢張リ事ニハ自然ノ條
  理ガアリマス、自然ノ條理ヲ離レタ仕
  事ヲナサル者ハ恐ラクナカラウト思ヒ
  せい、 、條理ハ十分ニ御酌ミヲ願ヒタイ
  ト思フ、同時ニ、今日國民ハ複雜煩瑣
  デ全ク生活上、國家ノ必要ニ應ジテ活
  動セムトシテ得ナイノデアリマス、ダ
  カラシテ、國民ノ活動ヲ敏速果敢ニセ
  ラレル途ヲ講ジナケレバナラナイ、ソ
  レニ付テ又命令ヲ出シテ、國民ノ行動
  ヲ一々律シテハ同ジコトニナル、玆ニ
  於テ其ノ命令ヲ出スニ付テ、私ハ此ノ
  案ノ「措置ヲ講ズル」、法令ニ拘ラズ「措
  置ヲ講ズル」、此ノ邊デ切ツテ置キタ
  イ命令ヲ出ストカ、或ハ處分スルト
  カ云フコトヲ言ハズニ行キタイノデア
  リマス、併シナガラ時局危急デアリマ
  スルカラ、已ムヲ得ナイカラ、命令ニ
  於テ必要ナル措置ヲ爲スコトヲ得ト大
  キク一ツ御書キニナツテ、サウシテ隨
  時各關係官廳カラ、必要ガアツタナラ
  バ閣議ヘ出シテ、其ノ措置ヲ講ズレバ
  處分ハ出來ルノデアリマス、況ヤ例ヘ
  バ要綱ヲ御決メニナルコトモ出來ヌト
  云フコトハアリマセヌ、又、此ノ法案ノ
  趣旨ハ、旣ニ此ノ處分ヲ是認スル以上
  ハ一般措置ト云フモノヲ認メテ當然
  宜シイ、命令ト處分シカナイ、デアリ
  マスルカラ、命令規定ニ於テ適當ナル
  條文ヲ設ケマシテ、必要ガアツタナラ
  バ、閣議ニ依ツテドシノ〓決メテ行ケ
  ルヤウニシテ、徒ニ法網ヲ繁クスルコ
  トヲ御避ケヲ願ヒタイ、之ニ依ツテ國
  民ノ活動ガ、政府ノ希望セラレル通リ
  敏速果敢ニ動ケルヤウニ初メテナルノ
  デアリマス、何卒此ノ委員會ノ十分ノ
  考ノアル所ヲ御酌ミ取リ下サイマシテ、
  此ノ法案ノ運營ニ付テハ本當ニ此ノ精
  神ニ從ツタ、根本ノ趣旨ニ從ツタ通リ
  ニヤツテ戴キタイ、過去ニ於ケル委任
  立法、其ノ他法制ノ建テ方ト云フモノ
  ハヽ誠ニ日本向キデナイ、複雜煩瑣デ、
  斯ウ云フコトハ論理ニ論理ヲ重ネテ誠
  ニ困ルコトデアリマスカラ、今度ノ立
  法ニ於テ本當ニ新ラシキ考ヘ方ヲシテ戴
  キタイノデアリマス、而シテ三十一條
  ノ問題ハ、ズツト附纏ツタ議論デアリ
  マス、私ハ斯ウ思フノデス、本案ヲ玆ニ
  成立セシムルト云フ考ヘ方ハ、三十一
  條ト云フモノハ、臣民ノ權利義務ノ保
  障ヲ大權ニ依ツテ自由ニスルヽ云フノ
  デアル、船ガ難船シタ時ニ、其ノ中ニ
  積ンデアル荷物ヲ捨テテ其ノ船ヲ救
  フ、卽チ國ガ難船シタ時ニ之ヲ救フ、
  ソレコソ本當ニ危急存亡ノ時、今日其
  ノ狀態ナリヤ否ヤ、是ハ判斷ニ屬スル
  ノデアリマス、私共ハ斯ウシテ議會ヲ
  開イテ言論ヲ圖ハシテ居ル、今日、日
  本國ハマダ〓〓サウ云フ難船狀態デハ
  ナイト考ヘマス、政府ハ若シモ、若シ
  モト云フコトモ言ヒタクナイ、難船狀
  態ナドニ日本ガナツテハ相成ラナイト
  私ハ確信致シマスカラ、ドウゾ政府ハ、
  今度ハ最善ノ措置ヲ講ゼラレテ、敏速
  果敢ニ國民ノ行動ヲシテ自由關達ニ行
  ケルヤウニ御苦心ヲ願ヒタイト存ジマ
  ス、之ニ依ツテ本案ノ成立ヲ希望スル
  次第デアリマス

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• 188・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　モウ外ニ
  御發言ハゴザイマセヌカ、討論ハ終結
  シタモノト認メマス、仍テ直チニ採決
  ニ入リマス、衆議院ヨリ送付セラレタ
  ル戰時緊急措置法案ヲ可トスル方ノ起
  立ヲ願ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008702035X00119450612&spkNum=188

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• 189・岡部長景

  ○委員長(子爵岡部長景君)　起立多數
  ニ依ツテ、本案ハ可決セラレマシタ、
  是ニテ本委員會ハ散會致シマス
  午後七時六分散會
  出席者左ノ如シ
  委員長子爵岡部長景君
  副委員長男爵東〓安君
  委員
  侯爵佐佐木行忠君
  候爵池田宣政君
  侯爵大久保利謙君
  伯爵柳澤保承君
  關屋貞三郞君
  子爵井上匡四郞君
  子爵八條隆正君
  子爵澁澤敬三君
  山田三良君
  小原直君
  河井彌八君
  男爵井田磐楠君
  男爵穂積重遠君
  吉田茂君
  靑木一男君
  男爵明石元長君
  山岡萬之助君
  澤田牛麿君
  竹下豐次君
  結城安次君
  諸橋久太郞君
  塩田國平君
  米原章三君
  國務大臣
  內閣總男爵鈴木貫太郞君
  理大臣
  海軍大臣米內光政君
  司法大臣松阪廣政君
  陸軍大臣阿南惟幾君
  軍需大臣豊田貞次郞君
  厚生大臣岡田忠彥君
  國務大臣櫻井兵五郞君
  國務大臣左近司政三君
  國務大臣下村宏君
  大藏大臣廣瀨豐作君
  文部大臣太田耕造君
  農商大臣石黑忠篤君
  內務大臣安倍源基君
  外務大臣兼東〓茂德君
  大東亞大臣
  國務大臣安井藤治君
  運輸大臣小日山直登君
  政府委員
  內閣書記官長迫水久常君
  法制局長官村瀨直養君
  法制局参事官佐藤基君
  同入江俊郞君
  綜合計畫局長官秋永月三君
  綜合計畫局部長美濃部洋次君
  遞信院總裁塩原時三郞君
  外務政務次官子爵伊東二郞丸君
  外務次官松本俊一君
  內務次官灘尾弘吉君
  內務省地方局長入江誠一郞君
  內務省警保局長水池亮君
  防空總本部次長今井久君
  大藏政務次官中村三之丞君
  大藏次官山際正道君
  大藏參與官西川貞一君
  大藏省主稅局長池田勇人君
  陸軍政務次官小山邦太郞君
  陸軍次官柴山兼四郞君
  陸軍參與官子爵大岡忠綱君
  陸軍中將吉積正雄君
  陸軍法務中將藤井喜一君
  海軍政務次官綾部健太郞君
  海軍參與官男爵神山嘉瑞君
  海軍中將保科善四郞君
  司法政務次官濱野徹太郞君
  司法次官黑川渉君
  司法參與官男爵倉富鈞君
  司法省刑事局長船津宏君
  文部政務次官伯爵橋本實斐君
  文部次官藤野惠君
  厚生政務次官三善信房君
  厚生次官中村敬之進君
  大東亞次官田尻愛義君
  農商政務次官上田孝吉君
  農商次官湯河元威君
  農商參與官藤本捨助君
  軍需政務次官野田武夫君
  軍需次官椎名悅三郞君
  軍需參與官三木武夫君
  軍需省總動員局長高嶺明達君
  軍需省整備局長難波經一君
  運輸政務次官眞鍋儀十君
  運輸次官長崎惣之助君
  運輸參與官羽田武嗣郞君

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