1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
農業團體法中改正法律案(政府提出)(第八號)
水産業團體法中改正法律案(政府提出)(第九號)
戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出)(第三號)
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昭和二十年十二月十日(月曜日)午前十時三十一分開議
出席委員左の如し
委員長 川崎巳之太郎君
理事 仲西三良君 理事 松延彌三郎君
理事 北勝太郎君
石坂養平君 今尾登君
宇田耕一君 岡田啓治郎君
楠美省吾君 鈴木重次君
中瀬拙夫君 濱地文平君
別所喜一郎君 森川仙太君
山田六郎君 安孫子孝次君
青山憲三君 大石大君
眞藤愼太郎君 奧野小四郎君
川俣清音君
出席國務大臣左の如し
農林大臣 松村謙三君
出席政府委員左の如し
農林政務次官 紅露昭君
農林參與官 子爵 北條雋八君
農林省總務局長 楠見義男君
農林省山林局長 黒河内透君
農林省水産局長 笹山茂太郎君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
農業國體法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=0
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001・川崎巳之太郎
○川崎委員長 それでは只今より開會致します、大臣に質問をなさりたい御希望の方が大分ございますが、大臣は農地法の委員會が締括りになりさうなので、一寸今手を外せない、けれども必ず來る、併し其の時間は分らないと云ふことでございまするから、大臣にばかり御尋ね下さる方は後廻しにして戴いて、大臣にも外の政府委員にもと云ふ方は、外の政府委員、紅露政務次官及び其の他の方に御聽きを願ひます、それでは只今から質疑申出の順序に依りまして質問を許します――川俣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=1
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002・川俣清音
○川俣委員 私は大臣に對する質問は保留致しまして、其の他の點に付て政府委員から御答辯を願ひます、第一に御尋ねしたい點は、現在の農業會に關係致して居りまする役職員の俸給がどの程度になつて居るか、此の點に付て御尋ね致したいのであります、大體農業會の役員及び職員は非常に俸給が安いと言はれて居るのであります、而も其の標準は大體地方警察官並みであるとも言はれて居ります、此の俸給の大體の平均高を御尋ね致すのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=2
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003・楠見義男
○楠見政府委員 現在の農業會役職員の俸給の程度でありますが、御承知のやうに、又今御述べになりましたやうに、極めて安いことは事實であります、是は從來からの農會なり、産業組合が農業會に統合せられまして、其の統合せられました際にも、農業團體が統合することに依つて、結局從來の會員の賦課金なり其の他の費用が嵩まないやうにと云ふことを最も大きな念願にしたのであります、勿論戰時中色々の戰時手當其の他の關係、それから又兩團體を統合し、其の他の養蠶業組合とか、茶業組合とか、畜産組合とか、斯う云ふやうな一般の他の團體を統合致しました結果、或る程度其の間に調整を取りまして、隨て俸給等に付きまして――是は主として手當が多いと思ひますが、値上りを見たことは事實であります、併しさう致しましても、結局他の者に比べますと、著しく低いのではないか、斯う云ふ風に考へて居るのであります、併しながら又一面から申しますと、色々農民の爲に指導者として、特に役員に於て然りでありますが、從來名譽職式の人々が急に相當多額の報酬を取ると云ふやうなことになりますと、一般の農民に對する指導の影響と申しますか、さう言ふ點から考へましても、色々考慮をしなければならぬ點がありますので、大體從來の傾向を辿つて居る譯であります、平均俸給の點でありますが、今、申上げましたやうな徑路で參つて居りますので、正確なことは分らないのでありますが、我々特に職員就中最も重視を致して居りまする指導職員、技術員とか其の他の指導員でありますが、是等の人々の平均俸給は、御述べになりましたやうに、他の學校教員其の他と比べまして、相當低いのではないかと云ふ風に考へられましたので、是は豫算に於て補助職員になつて居るのでありますが、其の補助の金額單價に付きましても、年々大藏省と折衝致しまして、上げて貰つて參つたのであります、併しながら尚ほ不十分であらうと思ひますが、現在は大體六十五圓から七十圓、是は勿論俸給で、其の外に家族手當とか、戰時手當と云ふやうなものを農業會の方で出して戴いて居るのでありますが、基本俸給の豫算上の單價としましては、今申しましたやうに六十五圓、是は併し平均でありますから、それよりも高い人も勿論あらうと思ひますが、大體さう云ふやうな傾向になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=3
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004・川俣清音
○川俣委員 更に御尋ね致したいのですが、今の御説明に依ると、役員は名譽職であるのみならず、農民の指導者であるから、或る程度に給料を制限しなければならないものである、尚ほ其の陰には一方に於て他の收入を持って居るから、役職員は名譽職であつて然るべきだ、隨て俸給と云ふべきものも安いのが當然であると云ふやうな御答辯であります、地方の所謂職員に付ては安いことは安いが、是が改善に付て考慮されると云ふことでありますが、概して農業會關係の役員及び職員の給料の安い點は、一體何處にあるか、根據を何處に置いて居らるるか、即ち役員は名譽職である、他に職業を持つて居ると云ふ點に重きを置いて居らるるのであるか、又職員の場合でも、地方に於ける有力者であるから片手間である爲に、或る程度給料の安いことは已むを得ない、斯う云ふ風に御考へになつて居るのでありますか、此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=4
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005・楠見義男
○楠見政府委員 先程私御説明申上げました點で不十分の點があつたやうであります、只今の御質問でありますが、役員の俸給の基礎は結局是等の團體は申上げるまでもなく、相互組織と申しますか、農民自身の爲の會でありますから、結局其の俸給は其の會員である農民から取ることになる譯であります、隨て其の役員の俸給が高いと云ふことは、結局それだけ會員の負擔力を増すと云ふことになる譯であります、尤も色々事業をやりまして――從來産業組合等に於きましても、色々の事業をやつて居るのでありますが、此の方面の收入と申しますか、收益で以て或る程度相當の俸給を賄へると思ふのでありますが、指導部面だけの事業で申しますと、結局會員に行かざるを得ないと云ふことになる譯であります、そこで現在は御承知のやうに、指導事業、經濟事業と云ふやうなものを綜合してやつて居る譯でありますから、結局役員の俸給に付きましては、其の農業會の經濟力と云ふやうなものに根據を置かざるを得ないと云ふ譯であります、併し先程申しました職員、特に指導職員と云ふやうなものに付きまして、總てを會員たる農民に負擔させると云ふことは、一面に於きまして政府の色々な増産施策、其の他の施策を、是等の人々を通じ農業會に御實行願ふ譯でありますから、其の裏打ちと致しましても、國庫から相當額の補助金を出して居るのでありますが、役員等に付きましては、大體只今申上げましたやうなことになるのではなからうか、斯樣に考へる、譯であります、隨ひまして名譽職に根據を置くか、或は片手間で他に俸給があるから安いと云ふ點、さう云ふ點に根據を置くかと云ふ御尋ねでございますが、經濟的の俸給の問題に付きましては、只今申上げましたやうなことで御諒承願へると思ふのであります、先程出來るだけ安い方が宜いのではないかと云ふことを申上げましたのは、別に法規上其の他で制限して居る譯ではございませぬが、結局役員と農民、指導者と被指導者と云ふ立場から行きますと、人情と致しまして、出來るだけ安い方が農民も氣持が好いのぢやないか、又指導する面から行きましても宜いのぢやないか、是は併し指導と申しましても、指導員等の職員を指して居るのではございませぬで、役員のことを私は申上げて居る鐸であります、併し役員の中でも、厖大な最近の農業會の仕事に專念して行く所謂專務理事、産業組合當時に於きまする專務理事、現在でも專務理事的の人が居りますが、專念して農業會の仕事をやつて戴くと云ふ場合には、相當の俸給を以て迎へませぬと、結局農業會は人を得られぬと云ふことになりますので、是等の人々に對しましては、他と均衡を保てる相當額の俸給を出すべきものであらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=5
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006・川俣清音
○川俣委員 最後に私の考へ方を申上げて、もう一度御尋ねしたいと思ひますが、其の前にもう一點御尋ねして置きたいのであります、今色々な統制會が段々解消になつて居りますが、元の軍需省、今の商工省所管内に於ける現存せる統制團體、或は統制會等も、役員は他の職業に就くことを大體禁じられて居るやうであります、農林省所管の農業會だけは、他の職業と兼務することが許されて居るやうでありますが、此の點に付て農林省としてはつきりした今までの態度を御決めになつたことがございますか、此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=6
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007・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ致します、結論を先に申上げますと、結局適當な人を適當な「ポスト」に就いて戴くと云ふことから致しまして、農林省と致しましては、其の方針で進んで居る譯であります、隨て統制會社或は農林省所管の統制團體等に於きましては、一般の統制會社令に基きまして就業禁止を法規上致しまして、其の除外例を主務大臣の認可或は許可と云ふものに掲げて居る譯でありますが、さう云ふ最初に申上げました結論の趣旨で以てやつて居る譯であります、農業會關係に付きましても同樣であります、結局是は御承知のやうに下からずつと系統的に參つて、中央の農業會を構成して居るのでありますが、具體的に適當な人を選ぶと云ふことになりますと、他の一般の産業に於きますと同樣でありまして、中々適當な人が得られない場合が多いのであります、隨て最初に申上げましたやうな方針で以て、適當な人は、御本人には忙しくて御氣の毒でありますけれども、就いて戴くと云ふやうな方針で進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=7
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008・川俣清音
○川俣委員 私の今御尋ねしたのが簡單でありました爲に、十分な御答辯を得られなかつたのでありますが、農林省の管轄内に於ける他の統制團體に付ては、或は兼務を許して居らないと私共大體承知をして居るのでありますが、農業團體だけは此の點が認められて居るのではないかと私共思つて居るのであります、と云ふのは、恐らく各府縣の農業會長には他の重役、地方銀行の重役とか、地方鐵道の重役等を兼ねて居る人が相當あるのではないか、或は其の他の營利會社、團體の役員になつて居る人が相當數あるのではないか、私今最近の統計がございませぬので持つて來て居りませぬが、大體全國の農業會長の六割は、斯う云ふ團體に關係して居られると、私共想像致して居ります、最近の統計がありませぬから明瞭でありませぬが、大體に於て農林當局は如何に御觀察になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=8
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009・楠見義男
○楠見政府委員 農業會の役員の他の職業に從事する點でありますが、是は斯う云ふ風に御諒承願へれば宜いのではないかと思つて居ります、それは農業會を農民の爲の綜合的な又自治的な會とする、さうしまして、此の系統的に市町村から道府縣、それから中央の機關を構成すると云ふことになつて參りますと、結局個々の一番下の市町村の農業會の會員の中から適當な人々を理事に選ぶ、又會長、副會長に選ぶ、それから其の人々の中から道府縣の理事或は幹事を選ぶ、其の選ばれた人の中から又中央の人々を選ぶ、斯う云ふことになつて參りますと、結局一番下の農業をやり、又直接間接に村に居つて農業に從事する人々を市町村にも引摺り出し、又道府縣或は全國の團體にも引出す、斯う云ふことにならざるを得ないのであります、隨て現在の今御審議を御願ひしつつある改正法に於きましては、市町村の方は會員の中から理事を選擧する、尤も其の結果常務的に會の仕事に從事する適當な人が得られないと云ふ場合には、一名だけを限りまして、特別の措置を講じて居ります、兎に角下の方はさう云ふことに依つて會員の中から會員が理事を選ぶと云ふことに致して居るのであります、併し今申上げましたやうに、此の系統團體を下から積上げて行きます場合に、下からの人を順次上の團體の理事或は監事に持つて行く、而も出來るだけ常勤的に會の仕事をやつて戴くことになりますと、實際問題としては御想像願へると思ひますが、會を運營して參ります場合に於ては、非常に困難な事態が生じて參るのであります、隨て現在も中央の團體の如きは、例へば現行法の農業團體法五十六條では、「理事長及理事は他の職務又は商業に從事することを得ず、但し主務大臣の認可を受けたるときは此の限に在らず」と云ふやうに、一般の法制と同じやうに、他業務就業禁止の制限の規定を設けて居るのでございます、結局只今申しましたやうなことで、他と方面の有識者、特に農業關係に造詣の深い、又理解の深い人を選ぶ、斯う云ふことにならざるを得ないと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=9
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010・川俣清音
○川俣委員 大體の農林省の御意向が分りましたので、更に進んで御尋ね致したいと思ひます、段々の説明で農林省の意圖が分つて參りましたが、其の反面段々誤解を強めて參つて居る點があるのではないかと私は思ふのです、其の點は所謂役員と稱せられる農民を指導する地位に在る者は、出來るだけ會員の負擔を輕くして行かなければならぬと云ふ點、隨て他に兼業するやうな場合でも出來るだけ農林省は優秀な人であるならば此の兼業も認めて行くと云つた方針を過去に執つて來られた、今後はそれが下から上つて行くのであるから、大體それは民主的な意向に任せる、斯う云ふ風に御聽き致したのであります、そこに私は非常な缺陷を持つて居るのではないかと思つて居るのであります、一體本當に民主的な自治的な、團體でありまするならば、是は民主的、自治的の團體の役員と云ふものは下の者に――農民に使はれると云ふことが大きな目標でなければならぬと思ふ、俺は金を持つて居つて、他に營業を持つて居るから安い金で役員になつて居るのだ、だから俺の指導を受けろ、是が今までの農業團體の持つて居つた根本的の缺陷であると思ふ、其の大きな一例と致しまして、是は農林省に關係のない舊軍需省に關係して居る統制會社のことですが、私は時に名前を避けますが、軍需省の中に於ける優秀な統制會社として鐵鋼關係の熔鑛爐に使ふべき資材の製造會社があります、此の役員は社長初め役職員が全部殆ど無報酬で仕事をして居つたのであります、之を以て軍需省は模範的な統制會社なりとして稱揚致して居つたのでありますが、段々資材が窮屈になりまして、石炭の配給を得ますると云ふと、此の石炭の流れ方が此の重役の關係致して居る方面の會社にのみ流れる、最後に企業整備が起りました時には、是は議會でも問題になつたのでありますが、此の社長及び重役の關係致して居りませぬ會社は全部整備になりました、成程俸給は會社から貰つて來て居る、統制團體の關係の會員から一錢も取つて居らないと云ふ、模範的な統制團體であると表面見えて居りましたけれども、内容は會員から俸給を受けて居りました、最初から最後まで徹底した會社の御用振りを勤めたことに依つて、其の社長が遂に辭めることになつたのであります、斯う云ふ例を見るのであります、一方地主と云ふ一つの勢力を持つて、其の小作料を同じ會員から取立つる方法に付て、會費として取立てるか、小作料として取立てるか、此の二方面から取立てて居る、農林省は農業團體の會費は、所謂會費として銘を打たなければ、是は負擔でないと御考へになつて居るかも知れませぬけれども、是は會費及び小作料と云ふ二つの點から會費を取立てて居つた、隨て會費が安いから、役職員の給料が安いと云ふことは、決して私は成立たぬと思ふ、一方役職員の地位を利用して小作料と云ふものを確實に取ることに致しまして、給料以上のものが確保されて居る、此の點を恐らく見逃して居つたのではないかと思ふ、もう一つ所謂專任に當つて居ります技術的な職員、是も一方に於ては地主であり、一方に於ては地方の有力者であると言はれて居ります人人が、相當澤山参加せられて居るのであります、是は私は必ずしも排撃するものではありませぬけれども、專業である所の農業指導から受ける所の俸給が少い爲に、自分の土地を持つて居ります其の土地の方から上がる收入を増加すると云ふことになりますると、やはり會員である農民から取つて參らなければなりませぬ、隨て是等の職員の俸給と云ふことも、私は二つに見なければならぬと思ふ、全く地主でもない所の職員は、是は私は非常に給料は安いものだと思ひますけれども、是は名譽職であるから安いと云ふやうな關係に於て職員になつて居ると思ひますが、其の名譽職たる者は決して世間に於ける名譽職ではなくして、やはり俸給を――殊に會員であるべき農民から、――之を強い言葉で言へば搾取すると云ふ言葉が使はれるかも知れませぬけれども、私は其の言葉を避けましても、やはり兩面から給料を取つて居る、斯う見なければならぬと考へて見ますと、茲に農業會を民主的にすると申されましても、此の根本の考へ方を是正して參りませぬければ、形は民主的だと申しましても、眞に農民に基礎を置かない考へ方である、役職員を決められ、或は職員の給料等に於て御考慮になるに付きましても、そこに根據を置くことに依つて民主的になるものと云ふ考へ方をしなければ、根本的に形式的な民主主義でありまして、實際的な民主主義にならないと考へるのでありますが、此の點に關する所懐を政府委員に質し、更に此の點に付ては大臣にも御尋ね致したいと思ひますが、此の點に付て御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=10
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011・楠見義男
○楠見政府委員 只今御述べになりました中で、特に市町村農業會のことを盛んに御話だと存じますが、役員が名譽職として俸給は取つてない、併し役員たる地位に於て小作料の確保に相當の影響力を持つて居る、結局それだけ會員から自分の俸給の根源を確保して居る、斯う云ふやうな點であります、が、此の點に付きましては、色々見方もあらうと思ひますし、又此處で其の點を申上げますと議論になりますので、省略させて戴きたい思ひますが、結局御述べになりました役員が、會の爲に――商工省の統制會社の例を取つての御話でございますが、さう云ふ風に無報酬なるが故に、會の爲に働いてやつて居ると云ふ考へが出がちなこともあるのでありますが、根本的の考へと致しましては、我々は指導員或は專務的の職員等、純職員的の色彩の強い人々は是は農業會の負擔能力の關係もございますが、出來るだけ俸給は良くして上げたい、隨て此の點に於て國庫補助の點に付ても、相當連年努力を致して居りますことは御承知の通りであります、それ以外の所謂從來の名譽職式の色彩の強い役員の方々でありまするが、是は先程來申上げまするやうな意味から致しまして、出來るだけ俸給は安くして、我慢をして戴きたい、勿論今の專務的にやつて戴かなければならぬ專務理事のやうな人は別でありますが、それ以外の人は出來るだけ一つ安くして戴く、さうして其の考へ方は、俸給が安いから働いてやつてやると云ふやうな氣持でなくて、眞に農を愛し、農の爲に盡して戴くと云ふやうな人を廣く求め、之を會の從來のやうな行政官廳から押付けるとか何とか云ふやうな任命、認可の方針を止めまして、眞に農民の輿望を受けた、それ等の方になつて戴く、斯う云ふやうな考へ方で進んで参りたいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=11
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012・川俣清音
○川俣委員 此の點に付きましては、又大臣に重ねて御尋ねすることに致しまして、此の點に付ての質問は是で終ります
次の御尋ねに入りたいと存じます、米が生産されて是が消費者に移りまする間の國家で保管されて居る貯藏の途中に於て損失して參ります米高を、どの程度に御考へになつて居りますか其の點を御伺ひ致します、生産者から農業倉庫に入り、農業倉庫から營團に入りまする間に於ける貯藏中に於ける損失米をどの程度に見て居られるか、十九年度産米に於て幾ら、二十年度産米に於て大體豫想せられて居ります高を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=12
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013・楠見義男
○楠見政府委員 此の點は正確なことは私承知致して居りませぬが、併し今までの例に徴しまして、大體貯藏中の輸送も含めまして、農家から農業倉庫に入り、それから輸送手段を經まして消費者の手に入ると云ふまでの間に、是は物に依つて違ひますが、大體減耗率と申しますものは一%から三%、斯う云ふやうな間であらうと存じます、尤も特別にひどい減耗率の高いものも農産物の種類に依つてはございますが、大體穀類に付ては、今申しますやうに一%から三%と云ふやうな風に承知致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=13
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014・川俣清音
○川俣委員 私の御尋ね致して居りますのは、主として米であります、其の意味の御答辯を願ひたいのであります、穀類の減耗率を今御述べになりましたのでありますが、是は營團に渡るまでの減耗率でありますか、或は消費者に渡るまでの減耗率を含めてのものですか、此の點を御尋ね致します、もう一つは減耗率と云ふものは、本當の意味の減耗率であるか、或は計算上の減耗率であるかと云ふ點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=14
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015・楠見義男
○楠見政府委員 先づ第一點の御尋ねは、營團に渡るまでと承知致して居ります、それから減耗率の意味でありますが、是は何と申しますか、俗に目減りと稱するものであります、例へば乾燥率が其の間に殖えて參りますとか、自然荷零れが大體通常の輸送手段で行くと是位の荷零れがあると斯う云ふやうな純客觀的な經驗的な率から見た點を申上げて居るのであります、それ以外の色々の人爲的の手段を以ての減耗率は、是は勿論入つて居らないことは申上げるまでもないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=15
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016・川俣清音
○川俣委員 更に御尋ね致します、さう致しますと此の減耗率と云ふものは、自然に農民に先に負擔させて居るものと普通考へられて居るのでありますから、營團に渡るまでは實質的には是等の減耗はしないものと了解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=16
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017・楠見義男
○楠見政府委員 質問の御趣旨が一寸分りませぬが………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=17
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018・川俣清音
○川俣委員 それでは更に申上げます、農民から生産米として檢査を受けて御取りになる場合は、既に此の減耗率を見込んで増量されて居る筈であります、随て増量の分だけが減耗して營團には正味のものが渡る、斯う云ふ風に考へべき減耗率だと存じますが、それ以上に更に減耗すると云ふ風に御考へでありますか、此の點を………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=18
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019・楠見義男
○楠見政府委員 大體今御述べになつたやうなことであらうと思ひますが、唯是は私所管外になることでありますから、必要があれば別の機會に食糧管理局の方からでも御答へさせて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=19
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020・川俣清音
○川俣委員 私の御尋ね致したいのは、實はこんな小さい點ではないのですけれども、是から御尋ねしないとはつきりして參らないので御尋ねするのでありますが、大體或る程度の減耗率と云ふものを生産者に負擔を掛けて居る譯であります、所が更に營團から消費者に渡る場合には、又之に一定の減耗率を見て居る、此の點に非常な不合理があるのぢやないかと云ふ點を、私は數字的に明確に致したいと云ふ考へなのであります、隨て此の點に付ては後程でも、管理局からおいでになつた時に御尋ねすることに致します、隨て政務次官もおいでになりますけれども、一體聯合軍と折衝されて居りますのに、此の點を御考慮にならないで、本當の生産高と消費者へ渡ります間になくなつて居ります米と云ふものを、どう云ふ風に計算されて、聯合軍に對して交渉になつて居りますか、此の點は計算なしに交渉されたか、恐らく斯う云う點に付ても細目に亙つて計算になつて居る筈だと思ひますが、どう云ふ計算をされて交渉されましたか、此の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=20
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021・楠見義男
○楠見政府委員 一般的の考へ方でありますから、其の點に付て私から申上げます、結局從來のやり方は動もすると生産者に相當強い負擔を掛ける、又一面是は消費者に行く場合に消費者にもそれ相當の負擔を掛けて居ると云ふやうな點が先づ第一點の御尋ねのやうに伺つたのであります、是は或る意味に於て従來の商習慣から考へまして、生産者に負擔を掛けて居つたものも少くないのであります、併し段々と情勢が變つて參りましたので、例へて申しますと、農業會等の販賣手數料の問題でありますが、御承知のやうに、米は委託販賣で以て農業會が政府に賣ることになつて居るのでありますが、野菜にしましても市場會社に賣る場合に、仕切値の中に産地の出荷團體の手數料が入るか、或は外枠になるかと云ふやうなことが問題になつたことがあるのでありますが、大體の傾向と致しましては、是等は從來商習慣としては、さう云ふ風になつて參つて居つたものも多かつたのでありますが、最近の傾向は、農民側或は其の他の生産者側から見ますと、結局公定價格が決まり、其の公定價格の中に手數料等が食込んで居る、寧ろ是は消費者の側に於て負擔すべきではないかと云ふやうな考へ方が非席に強く起つて参つたのであります、是は一般の需給状況を反映した賣手、買手の立場の強弱と申しますか、さう云ふやうな關係もあらうと思ふのでありますが、兎に角最近の食糧事情の下に於きましては、生産者側のさう云ふ要望が非常に強いのであります、是が又増産意欲に少からぬ影響がある譯であります、隨て最近の傾向と致しましては、從來のさう云ふやうな生産者の負擔のものは、出來るだけ消費者負擔に轉嫁して行く、斯う云ふやうなことになつて居るのであります、唯米のやうに一般家計費との關係から致しまして、それだけのものを其の儘消費者に掛けることが極めて困難であると云ふやうな場合には、結局中間に於て政府が補償金と申しますか、補給金をそれだけ多く見て出す、先程申上げましたやうな農業會の販賣手數料と云ふやうなものを結局政府が持つ、斯う云ふやうなことになつたのであります、此の傾向はやはり今後續くのではないか、大體さう云ふ方向で行くのではないか、斯う云ふ風に考へられます、又消費者に對する負擔の問題に付きましても、結局是は消費者の負擔し得る限度と云ふものの一應の見透しと、それから現實に出て參ります負擔額と云ふものとの差額を政府が見るか見ないか、結局是も大體政府が見ると云ふのが、今までの行き方であります、此の點に付ては現在の經濟事情等に依りまして、多少考へ方があるかとも存じますが、大體方向としては、さう云ふ方向でないかと考へるのであります
それから第二點の聯合軍側に對する要求の問題でありますが、細かい數字は私只今持つて参つて居りませぬですが、大體の考へ方は斯う云ふ風に致して居ります、それは國内の供給力、即ち米、麥或は大豆、雜穀等の穀類、それから甘藷、馬鈴薯等の芋類、其の外水産物、畜産物、斯う云ふやうな全體の供給力を想定致しまして、其の中で可食歩合と非可食のもの、例へば麥で申しますと、是だけの生産額が豫想される、其の生産額の中で食糧として廻すものは是だけ、家畜の飼料其他「ビール」用とか、色々の純食糧以外のものがある譯でありますが、さう云ふ方面に廻るものは是だけ、結局可食歩合を見まして、其の可食歩合の總計で以て人口一人當り一日何「カロリー」が取れるか、此の「カロリー」では結局國民は生命を維持出來ない、隨て是だけのものは最低輸入を懇請して行きたい、斯う云ふやうな建て方でやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=21
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022・川俣清音
○川俣委員 是は政府委員には一寸無理かも知れませぬが、もう一つ御尋ねしたい、私は前段の生産者と消費者の間の費用の負擔の問題を中心に論じて居るのではない、現物の米の行方を大體中心に置いて御尋ねして居るのであります、所謂生産者である所の農民から取らるる場合の石當りの重量と、消費者に渡ります石當りの重量との問に大きな開きがある、此の開きをどう云ふ風に計算されて居るか、是は所謂自然に減耗したと云ふ計算なのか、或は是が何處かへ紛失してしまつたものとするのか、或は營團等に於て是が行方を眩まして居るのかどうか、斯う云ふ點を突止めたいと云ふのが主たる眼目でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=22
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023・楠見義男
○楠見政府委員 其の點に付きましては、別の機會に食糧管理局の方から御答へを致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=23
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024・川俣清音
○川俣委員 私は數量ははつきりしませぬでも、大體聯合軍と交渉される場合に於て、日本の生産高から消費者へ渡るまでの間の數量と云ふものが、一應明瞭になつて居なければ、交渉が出來なかつたのぢやないかと存じますが、此の點はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=24
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025・楠見義男
○楠見政府委員 其の點に付きましては、先程申上げました人爲的に依る減耗と云ふものは一切見て居りませぬ、と申しますことは、結局人爲的の減耗があると致しますれば、それは國内問題として日本側に於て當然それ等の減耗を防止すべき筋合のものでありますので、到底聯合軍側が容認すべき筋合のものでなからうと存じます、隨て供給量としては、生産の數量を出しまして、それを先程申しましたやうな可食歩合と云ふやうなものの全量を擧げて食糧の供給源にして居ると云ふやうな計算に立つて其の儘聯合軍に出して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=25
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026・川俣清音
○川俣委員 さうすると、消費者の「カロリー」は、一體二合一勺と決められた場合に、重量で行つて居りますか、二合一勺と云ふので行つて居りますすか、其の「カロリー」の計算の根據は「グラム」で行つて居りますか、それとも二合一勺が何「グラム」になると云ふ計算で參つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=26
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027・楠見義男
○楠見政府委員 それは重量、即ち「グラム」で以て計算して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=27
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028・川俣清音
○川俣委員 さうすると二合一勺は何「グラム」と云ふ計算ですか、私の御伺ひしたいのはさう云ふ小さい點ぢゃない、農民から取る場合の一石の「キログラム」の換算と、消費者へ渡る場合の一石の「キログラム」との間に相違がある爲に、其の點を御尋ねしたいのです、農民から取るのは一石の「カロリー」は是だけだ、消費者に渡る一石の「カロリー」は是だけだ、其の間に減るんぢゃないかと思ひますので、其の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=28
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029・楠見義男
○楠見政府委員 正確なことを只今私覺えて居りませぬが、大體二合一勺は千「カロリー」程度になるのではないかと思つて居りますが、是は先程申上げましたやうに二合一勺は二百九十七「グラム」でありまして、「カロリー」計算としては其の「グラム」を基礎にして出して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=29
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030・川俣清音
○川俣委員 其の二百九十七「グラム」と云ふと、農民から政府が受取られた場合の重量と茲に差が出て來て居ります、是は何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=30
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031・楠見義男
○楠見政府委員 結局先程來申上げますやうに、一人一日、日本人の平均の「カロリー」を聯合軍に對して出して居るのであります、隨て斯う云ふやうな説明の仕方に致して居ります、先程來申上げますやうに、全供給量を想定人口で割りまして、米は假に四千二百万石、甘藷は十三億一千万貫と假に致しますと、其の中から食糧としては例へば七億になる、之をそれぞれの物を「トン」に換算を致しまして、そして其の全體の「カロリー」を總「カロリー」とする、隨て何兆と云ふやうな天文學的の數字になるのでありますが、それを人口で割ると、例へば最近御聞きのやうな、一人當り千三百二十五「カロリー」になる、斯う云ふことで出して居るのであります、併し是は平均でありますから、結局農家としては之を超過し、都市としてはそれ以下になつて居ると云ふことは、結局現在の配給量と云ふものを基礎に致して居るからであります、そこで御尋ねのやうな趣旨から申しますと、人爲的に減耗したものはどう云ふ風になるかと云ふ點が問題になるのでありますが、聯合軍に對しまする提出資料としましては、只今申上げましたやうな總括的の點で、唯都市がそれの平均よりも落る、農村は是よりも多い、隨て都市の缺乏を救ふ爲には、更に平均率で見て、假に三百万「トン」と云ふことであれば、是が最低でそれ以上のものを入れて貰ひたい、斯う云ふやうな交渉を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=31
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032・川俣清音
○川俣委員 私の質問が一寸理解されて居らぬやうですが、後の政府委員の御答辯の爲にも此の點理解して戴きたい、農民から供出さして參りますのは俵詰でありまして、俵詰以外には御取りになつて居らぬ隨て一俵石とは申しながら基礎は一俵である、此の一俵は最近では大分減つて居りますが、全國平均十六貫七、八百から十七貫、隨て是は六十二「キロ」乃至六十二「キロ」半あるものと見なければならぬ、之を大體農林省は六十「キロ」入として取扱つて居られる、即ち内容的に桝目から言ひましても大體四斗一升入つて居る、之を四斗入なりとして計算されて居るのでありますから、既に減耗率と云ふものは一升なら一升を見て居られる、又「キロ」の上から見ますと六十二「キロ」入つて居るものを六十「キロ」なりとして居る、そこで「キロ」の方からも既に目方の減耗を見て居られる、其の六十「キロ」が消費者に渡る時には更に低下しなければならないと云ふ根據がどうも明瞭になりませぬ、此の點御尋ね致して居るのであります、現に今日市場にあります營團の米に付て桝目を重量にしてお計りになりましても分ります通り、あのやうな乾燥状態の惡い米を以て重量を換算されて居りますと非常な開きになる、是は何處の營團を御取上げになりましても明瞭でありますから、私は茲に詳しく申上げませぬけれども、北の點に對して改めて御答辯を得たいと思ひます
更に進んで御尋ね致したいのは、農業會が將來發展致しまする途上に於きまして、今までは農業と云ふものが勿論農村の主體でありまするから、農村内に於ける農村民と云ふものは、皆農業をやつて居ると云ふ考へ方で、大體出來て居るのではないかと思はれますが、今後の日本の趨勢から見まして、必ずしも農業をやらない農村民と云ふものも、相當出て參るのではないかと考へるのであります、例へば今後政府の考へ方に致しましても、まだ地主が存在致すのでありまして、而も其の地主は自ら耕作せずに人に作らせる、或は人を雇つて作らせる、斯う云ふ考へ方が殘つて居る譯であります、農村の中に於ける者必ずしも農業を主體として居る者ばかりではない、農業をしない所の人々も澤山居ると云ふことを考慮しなければならぬと思ひますが、其の場合に於ける農村の建て方と致しまして、眞に協同體としての農村と云ふものを考へて行かなければならぬと思ひますが、其の考へ方と、此の農業團體法の改善の面からとどうも兩立しないやうに考へますが、其の點に付ての當局の御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=32
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033・楠見義男
○楠見政府委員 農業團體の構成の問題でありますが、是は御承知のやうに現在は當然會員と任意會員に別けて居るのであります、當然會員は農業を主體にして居る者でありまするし、任意會員に付きましては其の地區内に住所を有して居る者或は其の他の者で、農業に密接なる關係を有する者、斯う云ふことになつて居るのであります、今後の農業會の行き方に付てどう考へるかと云ふことでありますが、私の考へと致しましては、農業會でありまする以上、勿論只今御説にもございましたが、其の會員の主體は飽くまで農業者でなければならぬと思ふのであります、併し今後の農業會の發達と云ふことになりますと、廣く他の部面、例へば農工調整等の問題も起つて參つて居りますが、さう云ふやうな工業の方面で特に農業に密接なる闘係を有して居られる人々、或は町村の中で現在も學校の先生とか校長さんとか色々農業に密接な關係を有して居られる方も入つて貰つて居りますが、兎に角是からの食糧事情、食糧問題を突破して參ります上に於ては、凡ゆる人々が總力を擧げて此の方面に向はなければならぬと思ふのてありまして、隨て其の爲にそれを強調致す餘りに、農業團體の構成が曖昧になることは困ります、隨て飽くまでも主體は農業者でありますが、併し今申しますやうな今後の見透しと云ふことから考へて參りますと、出來るだけそれ等の關係の人々も入つて戴いて、總力を以て農業の増産に進んで行くと云ふことが必要ではなからうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=33
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034・川俣清音
○川俣委員 大體私共の考へと同じう致して居るのでありますが、更に進んで御尋ね致したいと思ひます、今日まで執りました農業團體の行き方と云ふものは、非常に排他的でありまして、世間で言はれて居ります農本主義と云ふものは、非常に排他的な色彩を強く持つて居る、而も其の排他的な農本主義を農業團體が最も強く要望すると云ふ形を取つて居りましたのが過去の農業團體であつたと思ふのであります、そこで考へなければならぬことは、一體日本の將來を考へて見ます時に、速かに日本が世界の中の一員として獨立國家を形成する上からも、果して日本を農業國にすることに依つて、世界の一員たる獨立國としての體裁を保つ國家になり得るかどうかと云ふことが、大きな懸案でなければならぬと思ふのであります、私は日本が原始的な農業國になればなる程、獨立性を獲得する時期を段々と失ふのではないかと云ふことを憂ふるのであります、隨て原始的な農業に戻ることではなくして、今まで商工業に隷屬して居た農業が、寧ろ農業が商工業を隷屬させて行く逆な立場に立つて工業及び商業の分面を農村が之を受持つて行くと云ふ風にして、日本の農業を高度に高めることに依つてこそ、日本が獨立國家を形成する上の一つの要素になるのぢやないか、隨て徒らに開墾をすると云ふことを以て事足れりとするやうなことであるならば、愈愈原始農業に入つて行く、例へば開墾と云ふことに力を入れて參りますと、是は今日の状態に於きましては力の分散であります、肥料、資材の分散でありまして、決して生産能率を高めて行くと云ふことにはならないと思ひます、日本の將來の農業と云ふものは、成べく多數から少數になつて、生産率を高めて行くと云ふことでなければならぬ、今の状態を見ると、各各が食つて行く爲の農業でありまして、一般の國民を養ふ所の農業ではないのであります、多くの人々が成べく自分だけが食へれば宜いと云ふ農業になりつつある、隨て國民擧げて食糧生産に從事しなければ食糧が出來ないと云ふことでありますれば、私は是は獨立國家になり得る態勢ではないと思ふ、出來るだけ農民と云ふものは、農産物の生産者と稱するも、市場性のある所の農産物を多く作る、茲に農業の行き方を變へて參らなければならぬのぢやないか、今の農業は段々市場性を持たない所の農産物、生産は多いと言ひながら市場性のないものが殖えて行く、徒らに生産高が殖えましても、市場性を持つて居なければ、國家、國民を養ふ所の基礎にはならない、農民が國家の爲に働いて居るのだと申しましても、是は國家の爲に働いて居るのではなくて、半分以上は自分の爲に働いて居る、市場性を持つたものを澤山出すことに依つて、初めて國家、國民の爲に働いて居ると云ふことが言へる、生産の半分或は何割と云ふものを自己消費するのでありますれば、是は國家の爲に働いて居ると云ふことにはならない、隨て生産の多いと云ふことよりも、市場性を持つた生産高が多いと云ふことになつて行かなければならぬ、所が農林省の考へ方は、お互ひに食ふ物が食ひたいなら開墾せい、或は作れと云ふことであつて、決して市場性を高めると云ふことを考へて居られないやうに見受けられますけれども、此の點に對する御見解を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=34
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035・楠見義男
○楠見政府委員 從來の排他的の農本主義と云ふ點に付ての御話でありますが、是は申上げるまでもなく、純粹の農本主義と云ふ意味は決して排他的の意味を持つて居らぬと思ふのでありますが、説く人、又之を考へる人に依りまして色々の見解の相違を生じ、結局今御話になりましたやうな排他的な農本主義が強かつたのも事實であります、而も此の排他的な農本主義が農業の科學的な進歩を非常に遲らせたと云ふことも亦事實である譯であります、私共は勿論此の農本主義に付きましては、先程も申上げますやうに、他の部面の長所を十分採入れ、又商工と農との一體化と申しますか、斯う云ふ意味に於て農本主義と云ふものを考へて行かなければならぬことと思ふのであります、農業國として日本をどう云ふ風に進めて行くかと云ふ問題でありますが
〔委員長退席、北委員長代理著席〕
勿論大體の趣旨に付きましては私共も同樣に考へて居るのでありますが、御承知のやうに問題は單位面積から生ずる生産量でどれだけの他の人口が包容出來るかと云ふことが問題であります、結局是も御承知のやうに世界で日本が一番其の率が低いのであります、是は水田經營を其の特質と致して居りまする日本農業の特質である譯でありますが、併し一面から考へますと、此の特質は特質として將來も續けて行つて差支へないものかどうか、出來る限り之を改善する餘地のないものかどうかと云ふことになりますと、是は御説のやうに出來るだけ單位面積の生産量で以て、出來るだけ多くの人を養ふと云ふことになりませぬと、供出の問題に致しましても、或は是から大きな問題として全人口を此の國内で包容して行くと云ふ上から申しましても、結局此の點に思ひを致さなければならぬことは當然であります、隨て現在の此の單位當りの生産量を以て、生産農民が相當の量を其の中から自己の食糧として取上げると云ふことは、結局は周密的に其の生産に自己の肉體勞力を餘計に掛ける、其の爲に攝取すべき「カロリー」が多くなつて參りまして、所謂、一升飯と云ふやうな言葉が出る程に、どうしても働けば働く程、其の働く給源としての食糧を多く攝取らなければならないと云ふ結果になる譯であります、隨て此の部面には凡ゆる機械力或は家畜の力を入れ、又之を多角經營として農業をやつて行くと云ふことにしなければ、どうしても將來の日本はやつて行けないのではないかと考へる譯であります、農業國として立つて行くと云ふ意味も、斯う云ふ意味に於て我我は考へなければならぬと思ふのであります、唯具體的の問題として、開墾の問題を例としての御話でありますが、兎に角斯う云ふやうな情勢になつて參りましたので、出來るだけ人口を此の本土内に包容して行かなければならぬ、さうなつて參りました場合に、近き將來に於て商業の方面にどれだけの人口が包容出來るか、或は重工業自體も非常に行先ははつきり致さないのでありますが、重工業にどれだけが包容されるか、輕工業にどれだけが包容されるかと云ふことになりますと、是は極めて難しい問題になる譯であります、と同時に只今私が申上けましたやうな意味に於ける農業立國として考へて參りまする場合に、出來るだけ之を土地に包容し、而き出來るだけ生産力を上げる、其の生産力を上げる方向は、先程申上げましたやうに、他の人口を出來るだけ包容する、それには色色の部面を取入れて考へて行くと云ふやうな方向に行かざるを得ないのではないかと云ふ考へ方で、現在農林省としては色々な方策を考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=35
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036・川俣清音
○川俣委員 政府委員の御考へは大體其の感を一にするのでありますが、一寸見解の異る點を申上げたいと思ひます、農林省が他の重工業、他の商業部面に於ける包容人員を豫定されないで、農業の方面に多く向けなければならない、斯う云ふ風に御考へのやうでありますが、私は是は誤つて居るのではないかと思つて居ります、と云ふのは、今食糧難の爲に農村へ人口の移動が行はれて居るのでありまして、農業生産を高める上から移動して居るものではなく、又生産を高める上から決して包容されて居るものではないと考へて居ります、現實の食糧事情の困難から來て居るのでありまして、其の對象から出て居るものではないと想定致して居るのであります、若しも私共に考へさせますならば、今日に於て最も必要なものは日本に於ける凡ゆる原料資源の開發であります、此の開發に國民を分配させると云ふ考へ方が最も必要であります、資源の開發に十分な人の配合が出來ないのは、食糧の事情がさせて居るのでありまして、此の食糧事情の結果、國民をして正當な日本の資源開發の上に必要な人口の配置が出來ないと云ふ所に、私は寧ろ惱みがあると思ふ、隨て現實の食糧難の爲に農村に於て人口を吸收するのであると云ふ考へ方でないと、農村に於て出來るだけ多くの人を吸收することが、單に農産物の價格を上げる上からであると云ふことなりますれば、消費量こそ殖えて參れ、決して市場性のある農産物は殖えて參らぬと思ひますから、此の點は御答辯は要りませぬけれども、私の考へを御參考までに述べて置きます、御答辯の中から更に進んで御尋ね致したいのは、此の農業團體の主體を大體に於て自作農に置いて居られるのだらうと思ひますが是は大臣に御答辯を願ふ方が適當だと思ひますが、局長にも此の點を御尋ねして置きたいのです、私は自作農と米の供出とは對蹠的なものである、自作農になることに依つて圓滿な供出が出來ると大臣は度々の委員會及び他の機會に於ても述べて居られますが事務當局も亦大臣と見解を同じくされて居るのかどうか、比の點を御尋ね致したいのであります、即ち自作農とは先にお話致しました如く、其の本質は自ら耕して自ら食ふ、自給自足の建前であると思ふ、隨て自作農の建前は他の人々より多く生産をなす代り、又他の人々よりも多く其の生産物を消費する、所謂自分のものは自由處分が出來ると云ふ所に自作農の考へ方がある、自分のものを自由に處分したいと云ふことと、供出とは非常な對蹠的なものだと思ふ、隨て自作農の謂ふ供出は、供出ではなく、白分が食ふだけのものを食つて賣ると云ふのであるから、所謂政府に對する販賣米であつて、政府、消費者の謂ふ供出ではない、消費者及び政府の謂ふ供出は、農民の生産した中から、所謂飯米まで寄越せで、一定の飯米も與へない、斯樣に飯米を制限する所に政府、消費者の謂ふ供出がある、それと自作農の本質とは對蹠的のものであると私は考へますが、此の點に付て事務當局は如何なる御考へを持つて居るか、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=36
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037・楠見義男
○楠見政府委員 重大な問題でありますから、大臣なり他の政府委員から御答へ申上げた方が宜いと思ひますが、一應我々事務として共通的に考へて居ることを、何等かの御参考に申上げて置きます、自作農になると、供出米が確保されると云ふことを考へて居るのは、結局從來の地主の飯米、保有米が減少すると云ふことが一つ、もう一つは結局自分達の土地となると云ふ勵みが出て參る譯でありますから、偶偶増産をすればそれだけ食糧が多くなるではないか、自分の消費する食糧が多くなるではないかと云ふことでありましたが、此の點に付ては出來るだけ他の機械力などを取入れて、出來るだけ其の方の改善をして戴く、同時に自分の土地でありますから、生産力を上げることに付て色々の創意工夫をして戴く、又獨り米のみではなく、麥なり甘藷なり其の他色々の作付に付ての工夫をして戴いて、出來るだけ國の必要とする、現在の食糧事情から見ての必要な食糧を出して載くと云ふ上に於て、自作農となつた場合に、之に期待する所が極めて多いし、又現在の食糧事情から見て、自作農の方々はさう云ふ點に付てやつて戴けるのではないか、斯う云ふことを言つて居るのではないかと思ふのでありますが、先程も申上げましたやうに、此の問題は重要でありますから、別の機會に大臣からでも御答へ願ふやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=37
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038・川俣清音
○川俣委員 事務當局に是れ以上御尋ねすることは御無理と思ひますし、又御考へがあつても御述べになりにくいと思ひます、唯誤解のないやうに致して置きたいのは、私は今年の供出には、或は自作農を創定することに依つて、今年一年とか、來年は或は供出量が殖えることは是は想定されます、今まで中々得られないものが得られると云ふやうな喜びから、是は一時的現象として供出が圓滿に行くと云ふことはあり得るかも知れない、併しそれは一時的現象である、根本的には、大體に自作農の本體と云ふものは土地を自由にして自由處分を許す所に自作農の喜びがある、自分のものでありながら自由處分が出來ないと云ふことになれば、名は自作農であつても自作農の本體ではない、自作農の本體は土地を自由に處分し、自由に耕作し、自由な考へ方に依つて色々な耕作物を作ると云ふ所に自作農の本體がある、作付が制限され、或は供出が命令され、色々なことが起つて參りますると、名は自作農であつても本體は自作農でないと云ふことになる、隨て自作農主義と云ふものではなくして、別の方に段々進んで來て居ると云ふことを私は申上げて議論をしたのでありますから、此の點に付ては大臣に御尋ねすることに致しまして、私の質問は是れ以上此の點に付ては進めませぬ、普通農業と云ふ中には山林業も農業と云ふ風に言はれて居ります、勿論牧畜等も農業に入れて居りますが、將來の山林業、牧蓄業と本團體との關係は如何にされる考へ方をして居られますか、此の點に付て御尋ねします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=38
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039・楠見義男
○楠見政府委員 一般の山林と農業との團體上の取扱でありますが、之に付きましては、我々としては現在の所從來通りの方法で以て何等方法を變へない積りで參つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=39
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040・川俣清音
○川俣委員 御變へにならないと云ふ一應の根據の御説明を願ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=40
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041・楠見義男
○楠見政府委員 結局廣義の意味に於きましては、御話のやうに農業も山林も原始産業としての共通點はあるかと思ひますが、併しそれぞれの立場と云ふか、事業の特質と申しますか、一般の普通の農業に付きましては、例へば農事と養蠶とか、其の他の耕種農業に於きましては、共通的なものが極めて濃厚でありまするし、又團體構成として考へて見まする場合に於て、從來の方式が現在の所では適當であらうかと考へるのであります、然らば山林は原始産業として考へなければならぬと云ふことになりますと、同樣に又水産も原始産業として考へると云ふことになりまして、結局團體構成として斯くの如き厖大なる構成を適當とするかどうかと云ふことになりますと、私共としては現在は先程申上げたやうに、現行通りで宜いのではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=41
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042・川俣清音
○川俣委員 もう大體時間になつたやうでありますから、私の質問は他の政府委員と大臣に御尋ね致したいと思ひますので、是れ以上の質問は保留致します、是で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=42
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043・北勝太郎
○北委員長代理 それでは午後一時まで休憩致します
午前十一時五十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=43
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044・会議録情報2
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午後一時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=44
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045・北勝太郎
○北委員長代理 それでは午前に引續き會議を開きます――岡田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=45
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046・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 私は大臣に質問を致したいと思ひますが、時間經濟を重んじまして農業團體に關する一點だけの御尋ねを致したいと思ひます、戰時中國策協力機關としての役割を演じて參つた農業會が、終戰の結果民主主義に基調を置きまする爲に、其の性格が自主的協同組織となると云ふことは、是は當然であると思ふのであります、隨て官治統制から自治統制に移ること、又役員の選擧が概ね官選であつたのが、是が公選に改められると云ふことも、亦必然の歸結であると思ふのであります、所で比の政府の改正原案を見ますると、農業團體法の第三十八條即ち郡支部設置に關する規定が廢止されて居るのでありまするが、是はどう云ふ理曲で廢止になつたのか、此の場合に一應當局の御説明を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=46
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047・楠見義男
○楠見政府委員 現在の規定で道府縣農業會は會則で以て、郡の區域或は之に準ずる區域、又は農林大臣の指定致しまする市の區域に支部を設置することが出來る、さうして其の設置した支部長は理事を以て之に充てる、斯う云ふ規定がある譯であります、勿論我々と致しまして、今後の農業指導或は農業發達を期しまする上に於て、道府縣農業會と市町村農業會との間に從來の支部のやうな組織が設けられることが、實際問題として指導上非常に便利であり、又或る場合には必要であらうとも存ずるのであります、併しながら現在の規定は御承知のやうに、どちらかと申しますと、支部長を理事で充てると云ふことに重點があるやうにも思はれるのであります、只今も御述べになりましたやうに、農業會の目主性を尊重すると云ふ建前から行きまして、支部を設ける場合の其の區域の問題、或は其の設置されました支部の長たる支部長を理事でも宜ければ職員でも宜い、是等は現在のやうに法制上義務付けまして、一定の型に嵌めて一致しますよりも、寧ろ道府縣農業會の自主的の氣持でやつて戴く、其の爲には法制上の斯くの如き強制的の規定を廢める、斯う云ふやうな考へで此の規定を廢することになつたのであります、要しまするに支部長の設置に付て、又區域に付て支部長を役員にするか職員にするかと云ふことは、擧げて道府縣農業會の意思に御一任する、併し私共の考へ方としては、先に申上げましたやうに、どうしても指導上支部は必要ではなからうか、勿論各地域に依つて、地方の實情に依つて差異はあらうと存じますが、指導上は斯う云ふものは必要ではなからうかと考へて居ります、只今申上げましたやうな趣旨で此の規定を削除する、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=47
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048・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 只今の御説明で或る程度諒承致したのでありますが、今の御説明にありました如く、實際問題と致しまして、町村農業會の指導竝に農業の發達、殊に最も重要なる食糧の増産竝に供出と云ふ面に關しましては、府縣農業會と町村農業會との中間に郡支部がありまして、是等の指導に貢獻致して居る所の事實、而も其の效果は私は實に顯著なものがあると信じて居るのであります、又之を取つてしまふと、實際を言ふと府縣から直ぐ町村農業會と云ふことになると、事實問題としては指導の徹底を期することは斷じて出來ないと、私は考へて居るのでありまして、さう云ふ場合に郡支部を廢してしまふことは大きな問題だ思ふのであります、尤も此の會則には「道府縣農業會は會則の定むる所に依り郡の區域(北海道に在りては北海道廳支廳長の管轄區域とす)若は之に準ずべき區域又は主務大臣の指定する市の區域に支部を設置すること得」と云ふのでありますから、第三十八條の規定は任意的の規定になつて居るのであります、今御説明のあつた如く、理事を以て支部長に充てると云ふことの別個の規定があるのでありますが、其の點は廢されると致しましても、或は改正されると致しましても、職員を以てやることも宜からうと思ひますが、私は少くとも此の規定が任意規定であるならば、故らに之を廢止する必要はないではないかと思ふのでありますが、此の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=48
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049・楠見義男
○楠見政府委員 是は解釋の上から見れば、或は只今岡田さんから御述べになりましたやうな點もあるのでありますが、此の規定の成立ちが二項を主に致しまして第一項を考へられたやうな經過的な意味もあるのでありますが、併し其の經過的の意味は別と致しまして、出來た法文に付ての解釋を致します場合に於て、會則の定むる所に依つて、只今御述べになつたやうに任意規定になつて居る、併しながら唯條件が附いて居るのでありまして、三十八條の一項で御覽願ひますやうに、其の區域と云ふものは郡の區域、或は多少それを擴げても、或は狹めても、郡の區域に準ずべき區域を先づ一つの制限に致して居る譯であります、其の次は主務大臣の指定する市の區域、斯う云ふやうな二つの制限を以ちまして、其の制限の下に設置を自由に致して居るのであります、今囘の此の改正案に於きましては、是等の二つの制限をいつそのこと廢しまして、道府縣農業會が會則で自由に定めて戴く、斯う云ふ風に致したのであります、併しながら根本の趣旨は、先程も申上げましたやうに、市町村農業會の指導を致して參ります上に於ては、どうしても斯う云ふ中間的のものは必要であらう、斯う云ふやうに考へて居りますので、道府縣農業會の支部の設置と云ふことに付きましては、我々としても出來るだけさう云ふ風に勸奬し、又設置を御願ひ致したい、斯樣に考へて居る譯でありますが、法制上の制限は、先程來申上げますやうな意味から致しまして、之を削除致した方が宜からう、斯う云ふ趣旨でありまして、三十八條を削除することに依つて、政府は支部の設置を考へないのではないかと云ふやうな誤解もございますので、それ等の點は篤と團體方面にも其の趣旨を明かにして、農業指導の上に於ては、支部は全然不必要なものとは政府は考へて居らぬ、寧ろ、制限は撤廢した、自由の下に於て出來るだけ支部は設置して戴く、斯樣に致して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=49
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050・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 支部を設置すると云ふことに對しては、寧ろ其の必要は痛感して居るが、法制的に考へて此の條文は削除すると云ふのでありまして、是は能く分りました、今強調されましたから分りましたが、唯之を削除されると云ふことになりますと、今日實際的に言つて最も必要な機關である郡の支部と云ふものは必要ないぢやないかと云ふことを一般的に誤解される虞が多分にあると思ふのでありまして、私は其の意味に於て此の點を明かに致したいと思つたのであります、さうしますと、團體法からは削除するが、道府縣の農業會の會則の中に於ては、此の規定は自主的に設けることを希望する、歡迎すると云ふ風に解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=50
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051・楠見義男
○楠見政府委員 さう云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=51
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052・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 それではつきり致しましたが、私は此の農業團體の郡支部の廢止と云ふことは實に大事な問題であつて、是がなくなつてしまひますと、今日叫ばれて居る所謂官僚獨善、なぜ官僚獨善と言ふかと云ひますと、郡には概ね地方事務所はありますが、地方事務所に對しても今日色々存廢論はありますが、郡支部は農業團體でなくなると云ふことになりますと、今日の此の民主主義化に於ける時勢の要求にも背馳する點があると云ふことも考へなければならぬと思ひますし、若し地方事務所があつて、世間傳ふるが如く假に官僚獨善を強化すると云ふ結果になりますならば、斷じて許すぺからざることであると思ふのであります、此の點から考へましても、私は此の農業團體の支部と云ふものは、規定の如何に拘らず、自主的に、積極的に設置する必要があると云ふことを、強く信じて居るのであります、幸ひ當局に於ても其の必要を痛感されて居ると云ふのでありますから、私の憂へる所は輕減されることになるのであります、そこで更に進んで一應承つて置きたいのは、此の團體法制定前までは、今申上げる通り郡には郡の農業會と云ふものがあり、或は養蠶組合、或は畜産組合と云ふやうなものがあつたのでありますが、是は團體法の制定と共に全部統合して支部になつたと云ふ經過を辿つて居りますが、私は實際其の重要性、必要性と云ふ點から言ふならば、寧ろ是は昔の如く、支部と云ふものはなくしても、寧ろ郡農業會として之に法人格を附與し、さうして自主的、民主的にやらせる方が適切ではないかと云ふ考へを持つて居りますので、此の點に付て參考までに伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=52
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053・楠見義男
○楠見政府委員 其の問題に付きましては、團體、特に系統組織の問題に觸れますので、只今の所まだはつきりとした考へ方を持つて居らないのでありますが、考へ方と致しましては、從來の考へ方のやうに、下から段々と盛上つて行く場合に、市町村と道府縣との間に一つの系統機關を設けると云ふ下から盛上る考へ方としては、さう云う考へ方も確かに一つの長所を持つて居ると思ふのであります、又從來の道府縣農業會に、郡支部の如く色々生産上の技術其の他の指導を致して參りまする上に於て、其の指導が徹底し又道府縣農業會の一つの狙ひでありましたやうな各部門別の指導の綜合性と申しますか、指導の統一と云ふ觀點から申しますと、道府縣農業會の支部として郡區域のものを認めて行くと云ふ考へ方も、一つの長所のある考へ方と思ふのであります、そこで此の規定を廢除致しました場合に、新たなる問題として郡農會と云ふものを設ける、それを只今申しました前者の考へ方で見るか、或は又後者の考へ方で以て郡農會と云ふものを考へて行くかと云ふことになりますと、是は相當愼重に考慮しなければなならぬ問題であらうと思ひます、同時に一つの農業會として一律的に郡農業會を法律上一つの形態としてはつきりと認めると云ふことに付ては、系統組織がそれだけ多くなると云ふやうな考へ方も亦考慮しなければならぬと思ふのであります、是等の點に付きましては、尚ほ十分我々としては研究を致したいと思ふのでありますが、それまでは從來のやうな道府縣農業會の支部として見て行くと云ふ風に取扱つて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=53
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054・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 私は御親切なる御説明に依りまして、郡支部の規定は削除するが、郡支部は今日食糧問題が最も重要であるから、是は自主的に設置することを當局としても最も痛感致して居るのであると云ふ風に了解致しまして、質問は今日は是れだけに致し爾餘の質問は保留致したいと思ひます、尚ほ配つて貰つた圖解の中に市町村農業會と云ふ横から點線で持つて行つて、それに漁業會と負債整理組合等と云ふのがある、漁業會と云ふのは農林中央金庫の方から續いて來て居るものでありますが、是は市町村農業會の下部組繊ではない、是は農林中央金庫の下の市町村漁業會として現在存立致して居るので、市町村農業會の下に漁業會と云ふものが系統機關として隷屬して居るのでないと云ふのが事實ですから、是は訂正願つて置かないといけないと思ひます、參考までに申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=54
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055・楠見義男
○楠見政府委員 此の關係は系統機關として漁業會或は負債整理組合の問題、特に漁業會に付ては水産業團體の方の系統機關に屬して居るのであります、是は岡田さんの仰しやつた通りであります、唯茲に點線が書かれてありますのは、例へば負債整理組合でありますとか、其の外法人の任意加入の途が設けられて居るのでございます、是は法律の十五條に命令を以て定むる法人で、行政官廳の認可を受けたもの即ち法律を以て定むる法人としましては、産業組合、漁業會、漁業組合、負債整理組合、斯う云ふやうな法人か農業會の任意會員となることが出來ると云ふ規定に基きまして、茲に點線を書いたのであります、此の任意加入の趣旨は、御承知のやうに農業と密接なる關係にあると云ふやうなことから致しまして、其の法人の加入の途を設けたのであります、隨て此の點線はさう云ふ意味に於て書いたのであります、系統機關としては全然岡田さんの仰しやるやうに我々も考へて居りますので、其の點御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=55
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056・北勝太郎
○北委員長代理 松延彌三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=56
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057・松延彌三郎
○松延委員 私本日遲刻致しましたので、或は他の委員の方から御尋ねがあつたかも知れませぬが、重複しましたら御許しを願ひます、御尋ねしたいことは、團體法の改正案に直接には關係ございませぬが、又一面から考へますると、國家的の大きな問題かとも思ひまするから、此の機會に御尋ねするのはどうかと思ひますが、私としまして他に當局の大體の御方針を御伺ひする機會はございませぬので、此の機會に簡單に御尋ね致します、それは府縣農業會或は市町村農業會に於て多くの有價證券を保有して居るのであります、此の有價證券の中國内關係のものは問題ないとしまして、國外關係のもの、例へば滿鐵とか或は東拓等の社債を相當多數に持つて居るのでございます、是等が將來どう云ふことになりまするか、又政府として之に對してどう云ふ方針を持つて居られるかと云ふことを大體御尋ねしたいと思ひます、私は福岡縣でございますが、他の方面はどうか知れませぬが、私の方の地方の市町村農業會は此の數年來非常に經濟的に經營難に陷つて居ります、話は細かくなるかも知れませぬが、私も實は小さい町の農業會長をやつて居ります、大體二百五十萬圓ばかりの預金を持つて居りまして、一般的の貸付と云ふものは殆どございませぬ、詰り戰時に依りまして産業資金と云ふものが殆ど不必要になつて居ります關係上、金融機關の一斑を受持つて居る農業會としての機能が殆ど杜絶して居る形でございます、二百五十万圓の預金の中約百万圓は縣農業會に預金し、約百五十万圓即ち限度の許す限り有價證券を買入れて居るのであります、さうして其の利鞘に依りまして、漸く經營を立てて居ると云ふやうな實情になつて居るのでございます、而も滿鐵、東拓等の社債が相當部分を占めて居る、是がどうなるかと云ふことに付きましては、非常に農業會として憂慮して居る譯でございます、固より斯う云ふ敗戰の豫想せざる現實に直面しまして、單に地方の農業會會員の利害のことを云々すべきではないと思ひまするが、若し其の元利、少くとも利息でも配當がないと云ふやうなことになれば、忽ち經營難に陷ると云ふやうなことになつて來るのは、火を睹るよりも明かでございます、多くの會員からも此の點に付て色々質問を受けるのでございます、私等としては全く見當も付きませぬ、之に付て大體どう云ふ風なことになりまするか、又政府としてどう云ふ風な御考へでございますか、若し御伺ひ出來るならば御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=57
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058・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、御心配の點は私共も同樣にさう云ふ事情のあることを承知致して居るのであります、御承知のやうに、從來農業會の貯金に付きましては、出來るだけ資金の集中と申しますか、中央に資金を集めまして、それを農林中央金庫で出來るだけ有利に運用する、斯う云ふ建前であつたのであります、此の趣旨は、勿論地方にも個々的には一般の經濟事情に詳しい首腦者も居られるのでありますが、併し全般を通じて見ますと、國内事情に明るくても、或は國外事情にはさう精しくないと云ふやうなこともありまするし、得てして此の資金運用になつて參りますと、經理面で出來るだけ稼がうと云ふことは、經理者として當然のことでありますので、其の考へ方が少しでも逸脱してひどくなつて參りますと、其處にどうしても危險性も伴つて來る、そこで最初に申上げましたやうに、出來るだけ貯金に付きましては資金集中の方針を執り、更に組合金融統制會等を設けまして、中央地方で御相談相手になつて居つたのであります、さう云ふ御相談の體制を持つて居りましたけれども、併し其の御相談にも乘つて戴かずに、自由に運用をせられた向きもある譯であります、そこで只今御述べになりましたやうな比較的確實な、公債と餘り變らないやうな信用度のある社債を取られた所もありまするし、又中には少々危險性のあるものを買はれた向きもある譯であります、獨り國外だけでなく、國内でもさう云ふ問題もあるやうであります、併し今御述べになりましたやうな國外の――支那或は滿洲、朝鮮、斯う云ふやうな所の社債を買はれた向きに付ては、全般的に大藏省として此の問題の處理に當つて居る譯でありますが、併し農林省と致しましても特に此の基本が單り此の農業會の經營とか何とか云ふことよりも、更に遡つて一般農民の貯金の問題でありまして、相當是は愼重に、又其の立場に立つて此の處理の問題を考へなければならぬと思ふのでありまして、隨て大臣もさう云ふ積りで居られまするし、我々事務の方と致しましても、是等の資産の凍結と云ふことに依つて農民が苦しみ、又農業會が其の經營の上に於て大きな支障を來すと云ふやうなことのないやうに、出來るだけの善後措置を講じて參りたい、斯樣に考へて居ります、どうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=58
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059・松延彌三郎
○松延委員 端的に御尋ねしますが、現實の問題として満鐵とか東拓とかの社債の問題でございます、率直に申しますると、安心して居つて然るべきか、それともまだ見透しが付かないと云ふやうなことでございませうか、今さう云ふことを御尋ねするのは、或は無理かも知れませぬが、零細なる會員として非常にそれを憂慮して居るのでございます、それ等の點に付て出來るだけの御明示が願へれば幸ひと思つて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=59
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060・楠見義男
○楠見政府委員 具體的に此の會社はどうかと云ふことになりますと、私もはつきりした責任ある答辯は致し兼ねるのであります、唯併し總務局長として御答へをすると致しますれば、滿鐵、東拓の如き國家機關に近いやうな組織であつたものに付ては、當然是は先程申上げましたやうな趣旨で考慮されて然るべきものではないか、斯樣に考へて居りますが、併し是は政府として大藏省とか色々の方面との關係もありますので、責任ある御答へを致し兼ねるのであります、總務局長としては左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=60
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061・松延彌三郎
○松延委員 更に御答辯は求めませぬが、御意思のある所十分拜聽致しました、何れにしましても、地方の零細なる預金を吸收して、大體に於て上級團體の指示等に依つて下級の農業會が其の有價證券を買入れた向もあると思ひます、隨て是は寧ろ大藏大臣等の所管に屬することかも知れませぬが、出來る限り不測の損害が農民に及ばぬやうに、萬全の御努力をして戴くやうに希望致して置きます、是で私の質間は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=61
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062・別所喜一郎
○別所委員 關聯質問です、只今松延さんからの御尋ねの問題は洵に重大な問題でございまして、殊に農業團體法が改正せられて、茲に新たに理事監事等の機關が設けられます時に際しましては、其の首腦者を得る點に付きまして、非常に重大な支障になる問題であります、只今政府委員の御答辯では私共安心することが出來ない譯であります、恐らく全國總ての農業會、殊に市町村農業會の會員は、少しも今日までの不安を除去することが出來ない、どうぞ委員長に於かれて、願くば此の問題に付て大藏當局よりはつきりした御見透しを此の委員會に於て御示し下さるやう御骨折を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=62
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063・北勝太郎
○北委員長代理 承知しました、其のやうに取計ひます――次は安孫子孝次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=63
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064・安孫子孝次
○安孫子委員 私の御伺ひしたいことは、馬事團體のことに付てであります、是は曩に團體統合の時にも、問題になつて居つたことと思ひますが、其の當時は馬は軍の方の關係がありますので、團體統合から外されて居つたやうに伺ふのでありますが、既に現在になりますと、軍馬の必要はなくなつたと思ひますので、特に農耕馬として、或は輓馬として、何れも農業者が生産するもので、農業經營と密接な關係があるのでありますから、是は寧ろ農業會に統合さるべきだと考へて居りましたが、第八條の各項がそれぞれ其の儘殘つて居ります理由はどう云ふ譯ですか、それを御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=64
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065・楠見義男
○楠見政府委員 馬の團體に付きましては、統合の際に、軍馬關係があります爲に、農業會の統合から避けたと云ふことでありますが、それは確かに今御述べのやうに一つの大きな理由であつたのであります、隨ひまして今囘軍馬關係がなくなりました今日の状態に於ては、其の一つの最も大きな理由が取れたのでありますから、今囘は其の中へ入れたらどうかと云ふことも、やはり一部の方からはさう云ふ意向もあつたのであります、併し私共が考へて見ますのに、問題は畜産、特に馬産と一般農業經營との關係でありますが、馬の團體と農業會とが二重と申しますか、指導部が重複することになりますと、農民としましては非常に迷惑する譯でありますが、併し馬を此の中に入れることに依りまして、專業の馬産家、或は又輓馬業者も、同樣に農業會の會員として一括して行くことが宜いかどうかと云ふことになりますと、尚ほ此の點は研究を要する事項であらうと思ふのであります、そこで結論と致しましては、現行通りに馬の團體は其の儘に致して置きまして、此の問題に付ては、尚ほ愼重に考究を重ねて參ることに致したいと存ずるのでありますが、それまでの間に於きましては、馬を持つて居る農民に對しまして、此の指導が兩團體から二元的に行くことのないやうに、運用の方面で十分研究考慮を致して、其の不便のないやうに致したい、さうして根本的な團體の問題に付きましては、只今申しましたやうな趣旨から致しまして、尚ほ研究をさして戴きたい、斯う云ふ意味で今日は此の中に入れなかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=65
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066・安孫子孝次
○安孫子委員 今の御話は尤ものやうでありますけれども、馬の殆ど大部分は、農業者の取扱ふものでありまして、極めて少數のものが專門の馬産家になつて居るのであります、又都市の輓馬と云ふものは、無論是は生産者ではないのでありまして、農民が馬の生産育成などと云ふものに力を入れるのでありますから、十分御研究を願ひまして、出來るならば是は農業會に統合してやる方が、適切な生産育成の指導運用が出来ると考へて居りますので、此の點御考究を御願ひ申上げたいと思ふのであります
農林大臣が御見えになつて居りますので、農林大臣に御尋ね申上げたいと思ふのでありますが、農業團體法中改正法律案を此の臨時議會に提出されました所の狙ひは、既に度々御指摘になりましたやうに、急速に農業團體を民主化しまして、團體の自由なる活動を促進して、逼迫して居りまする食糧の増産、供出の圓滑を期するにあることであると思ふのでありますが、唯今囘の法律の改正だけでは、私は農業團體が十分の活動は出來ないやうに思ひます、之に附隨して色々統制の規則とか、或は政府の從來の指導とかに、切替を要する點が多くあると思ふのであります、之に對しましては、恐らくは大臣も或は事務當局に於ても、それぞれ御用意があることと思ふのでありますが、さう云ふ點に付て御尋ね申上げたいと思ふのであります
漠然とさう申上げましても、餘りに廣汎になりますので、少しづづ項を分けまして御尋ね申上げたいと思ふのであります、第一に農業團體が今直面して居りまする最も重要なる責務は、米其の他の農産物の集荷、供出の問題だと思ふのでありますが、現在總力を擧げて懸命の努力を拂つて居りまするが、實績は必ずしも宜しいとは申上げられないやうな状態にあることは、御承知の通りであります、其の不振の原因と致しましては、色々言はれて居るのでありますが、從來のやり方が惡いとか、或は又案外今年の作柄が惡い爲に、割當に比べまして生産量が少く、供出上甚だ困難な状欲にあるとか、或は農家の供出に對する意慾が低下したとか、色々言はれて居りますが、次に申上げる事項も重要な原因と思ふのであります、其の一つは買出部隊の横行に伴ふ所の闇の横流れの問題であります、此の量が決して少なくないと思ひます、是は詳しく申上げなくても十分御分りのことでありますから説明致しませぬが、「トラック」に依つて隨分多量に持つて行く、或は地方に地方に依りましては數百人の團體を以て生産地に參りまして、強要して持出すと云ふやうなこともあるやうな状態でありますので、是ではどうしても供出が十分でないと思ふのであります、之に對しては其の惡質のものに對しましては、どうしても徹底的な取締をしなければならぬと思ふのでありまするが、どうも今までの取締はどつちかと云ふと餘りに緩慢と云ひますか、農業者も買出する人も、是は別に大した惡いことでないやうな考へになつて居るやうな状態になつて居ると思ひます、是ではどうしても供出が出來ないのでありまして、此の際茲に政府の嚴然たる態度が、明かになつて居なければならぬと思ふのでありますが、今の私共の北海道地方の如きは、買出しない者は却て損する、闇で賣らない者は馬鹿を見ると云ふやうな觀念がないとは言へない、どうしても是は嚴然たる態度が必要と思ふのであります、私は決して同情すべきものを取締れとは申上げないのでありますけれども、大口買出、或は「ブローカー」式に何囘も何囘も買漁るやうなもの、或は買溜をするやうなものは、是は取締らなければならぬと考へるのであります、併し如何に取締りましても、之を防ぐことは困難だと思ふのでありまして、結局は私は農業者の協同組合である所の農業會と、消費者の團體とを直結させる、消費者の方と致しましては消費組合、協同組合と云ふものを作らせまして、それを直結するより外に方法がないと考へて居るのであります、昨今各地方に消費組合が澤山出來て居りますが、是は多くは申合せ組合のやうなものでありますから、此の際積極的に政府に於ては消費者の協同組合と云ふものを奬勵致しまして、それには協同組合法と云ふやうな法的根據を與へてやられることがどうかと思ふのであります、之に對して農林大臣の御考へはどうでありますか、御伺ひしたいと思ひます
それから第二に、農業者は現在に於きましては、生産資材も生活資材も、非常に高價な闇値と更に農産物の提供なしでは入手出來ないやうな状態であります、是は前日豫算委員會に於ても農林大臣が御述べになつて居られるので、十分御承知のことと思ふのでありますが、どうしても是は農家の必要な物資を、公定價格で圓滑に入手出來るやうにさせることが、供出促進上絶對に必要であると思ふのであります、政府に於かれましては、目下供出と睨み合せまして、衣料或は肥料等の物資を重點的に配給する方途を講ぜられまして、其の若干は既に農家に入つて居るやうに聞いて居るのでありますけれども、併し斯う云ふことを聲明された時にも、農家は政府の聲明に信用を置かないのであります、新聞に出すよりは先づ品物を持つて來いと云ふやうなことを放言する者が多くあるやうな状態であります、實は此の必需物資を一元的に配給して、農家に公定價格を以て配給出來るやうにすると云ふことは、是は多年の懸案でありますので、既に前内閣の當時に於きましても――先刻農林大臣はそれを農業會をして一元的に配給すると云ふやうなことを發表されて居つたのでありますが、其の當時は農業者も農事の指導者も大いに喜びまして、供出しようと云ふやうな空氣を昴揚したのであります、所が間もなく色々な事情に依りまして、それが駄目になつた爲に、又政府は我々を騙したと云ふやうなことになりまして、憤懣を感じて居るやうな状態であります、それでありますから、今囘大臣が非常に御苦心になりまして、おやりになつたことに對しても、我々の目の前に持つて來なければ、又同じことが繰返されるだらうと云ふやうな氣持を持つて居るのであります、併し非常な御熱心な御努力に依りまして、相當の物資が農村に入ることになることは、何よりも喜ばしいことでありまして、之に依つて供出も段々に促進されることと思ひます、併し私は一歩進めまして、斯う云ふ制度を確立致して戴きたいのであります、農業會を通じまして、一元的に公定價格を以て農業者に配給すると云ふ制度が確立することに依りまして、初めて農業者は安心致しまして、自分も亦公定價格を以て供出すると云ふやうな氣持になり得ると思ふのであります、是がはつきりしないと、やはり一時の便法でやつて居るのではないかと云ふやうな譯で、今までのことが結果に於て不信的な行為になつたのであります、動機に於ては其のことはなかつたと思ひますが、結果に於ては遂に農業者を騙したと云ふことになつたのであります、さう云ふものの信用を取返す爲には、どうしてもさうしなければならぬと思ひますけれども、此の點に對する農林大臣のはつきりした御答辯を戴いて置きたいと思ふのであります、即ち農産物の生産上必要なる生産資材と、農家の生活上必要なる必需品の配給の爲に、生産供出の責任機關たる農業會系統に依り、一元的配給の制度を確立して戴きたい、之に對する大臣の御答へを戴きたいと思ふのであります
次に御伺ひしたいことは、農産物の集荷配給の上に於きまして、食糧管理法や或は雜穀配給統制規則、藷類配給統制規則等の集荷配給上の諸法令に依りまして、農産物を政府で買上げる場合に於きましても、民間需要者の手に入る場合に於きましても、必ず是等の統制機關たる藷會社とか或は肥料會社、衣料統制會社、澱粉統制會社等の單なる企業統制機関の手を經由しなければならぬやうな状態になつて居るのであります、隨て徒らに手數を要し、又其の間に經費、手數料等の負擔が生ずることは當然でありますし、是が農業者の心に割切れ難い感じを與へて居る所の理由であります、隨て生産竝に供出の意欲を低下し、加之農業會の自主的活動を甚だしく妨げて居りまして、食糧の増産上好ましからぬ結果を生じて居ることは、既に周知のことであります、就中藷會社に對する非難は到る處に多いのでありまして、此の點は農林大臣も十分御承知のことであると思ふのであります、又食糧營團の如きも、都市は別と致しまして、農村に於きましては其の仕事を全面的に農業會をしてやられた方が、却て宜しいのではないかと思はれるのであります、それで政府の買收さるべき所の農産物は、農業會から政府へ直接納入するやうな方法を執られてはどうかと思ひます、それ以外のものは直接需要者に――例へば中小工業者に配給すべき所の原料たる農産物の如きは、是等中小工業者の協同組合と云ふやうなものを作らせまして、それに農業會から直接配給すると云ふやうなこと、或は蔬菜青果物の如きは、消費者をして協同組合を作らせまして、さうして農業者の協同組合たる農業會と直接手を握らしめると云ふことにしたならば、どうかと思ふのでありまして、是は他の生産物に付ても同樣なことが言へると思ふのであります、そこで御伺ひしたいことは、官治統制機關たる農村關係の國策會社は之を廢してはどうか、此點に付て御伺ひ申上げたいと思ふのであります、以上三點に付て御答へを戴きたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=66
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067・松村謙三
○松村國務大臣 御尋ねに對して御答へを申上げますが、第一の供出の問題でございます、實際御話の通りな次第でございまして、今日非常に苦心を致して居るのでございます、惡質の取締に付きましては、是は取締を忘れて居た如き感じが相當にありましたので、先般閣議の決定を得て取締を更に強化致すこと致したのであります、地方に於きましては既に實行を致して居る所もございます、併しながな此の問題が總て斯う云ふ取締で行き得ないことは御話の通りであるのでありますが、第一は食糧に關する安心感を與へると云ふことが必要でございます、戰爭中も隨分苦しいやり繰りをして來たのでありますが、終戰後の今日となりますと、本當に政治は總てを「ガラス」張りの中でやるやうに、ありの儘の姿を國民に示すことが何よりと存じまして、それで農林省の統計なども、事情をありの儘に發表を致して、何等紛飾する所がないのであります、隨ひまして之に對して或は食糧の將來に大きな危殆を感じまして、買出を焦る、殊に北海道の如きは非常に食糧の切迫感が強く傳はりましたので、特にひどい買出等があるやうでございます、是は一つは總ての事情をありの儘に出したと云ふことでありませう、併しながら此のやうに總て打出して、さうして共に之を何とかして能く繋いでやつて行くと云ふ方途さへ講じましたならば、食糧問題の前途はさう悲觀すべきでもなく行き得る、況や輸入の途も原則的に開かれ、又今後も輸入の數量に付て要請を致しつつあるのでございますから、是が運びますならば、食糧に對する安心感と云ふものを得ることが出來ると思ひまして、兩方相俟つて供出の効果を擧げたいものと考へて居るのでございます
消費組合に付きましては御話の通りでございますが、今日に於てはまだ漸く終戰後の發達に掛るのでありますのと、それからもう一つは主要食糧と云ふものが、生産者と消費者だけの結付きで將來やつて行くことが出來るかどうだか、主要食糧に付ては、私は之を長く強く政府の手に於て統制してやつて行くべきものと考へます、生産者と消費者との間の話合だけ、取引だけに任して置くことは出來ないと考へますが、其の他の面に付きましては大體同感でございます、それから農業者の經濟の面が、今日本當に農業生産物を持つて行かないと物が買へないと云ふやうな非常に不利な條件の下にあり、其の爲に供出等にも大きな影響のありますことは、御話の通り私も承知致して居るのでございます、それに付きまして一元的な配給を農業會でやると云ふ考へ方でございますが、私は地方の實情を見まして、是は肥料其の他の必需品を重點的に農業會を通じて配付することが、今の農業者の取引状態を改善する唯一つの途であることは御話の通りであると存じまして、之に對して出來るだけ必需品を流すやうに努力致して居る譯でごさいます
之をやりませぬと、今のやうな最も惡い取引の姿、在來の姿は消えないと思ひますので、之を取らうと思ふのでございます、唯一元的配給と云ふ言葉に付きましては、私は多少の註釋を要することと考へて居るのであります、即ち農業者に對しては、好むと好まざるとに拘らず農業會だけからしか物を買ふことは出來ないと云ふ制度は、私は餘程考へものであらうと思ひます、農業者の選ぶ所に依つて、農業會からも求められるし、又物に依つては小賣商人からも求め得る、斯う云ふことにして一向差支へないのみならず、其の方が兩者の間に競爭があり、競爭のある所に良い品物を選擇し、之を勉強した値で買へると云ふことがあるのでございまして、農業會だけにしか途を開いて置きませぬと、そこに物事が沈滯をし不勉強になり、さうして農業者の利益にならないことと思ひますので、是は農林省としては主として農業會へ物を流しますが、併し別に商人が地方に於て店舖を開いて同じ品物を賣り、農業者がそれから物を買ふと云ふことは、決して妨げるに及ばない、寧ろそれあるが爲に農業者は選擇の自由を有し、さうして其の結果として農業會の勉強も段段向上し、互ひに切磋琢磨して農業會の健全な發達を其の面に於て遂げることが出來るのではなからうか、斯う云ふ風に考へて居るのでございます、一元的と云ふ言葉に付きまして私の今申しましたやうな意味ならば、御話は全然賛成でございます
其の次の統制配給のことでございますが、之に付きましては私はもう統制の枠を外して然るべきだと思ふものはどしどし外して行つて居るのでございます、併し總てを一時にやると云ふことは相當に影響を及ぼすのでございますから、何分今日までずつと強く統制して來て居り、市場がそれに慣れて居り、其の後の過渡的の措置を要する點もありますので、先づ其の用意の出來たものから外す、斯う云ふことに致して、續々今日まで外して居るのでございます、今後も其の方針を以て進みたいと存じて居るのでございます、食糧營團と農業會との結付き、配給を農業會でやらしたらどうかと云ふ御話は、一種の農村の輿論のやうに聞いて居るのでありまして、此の點に付ては篤と研究を致して此の問題を最も良い形に解決致したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=67
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068・安孫子孝次
○安孫子委員 御懇篤なる御答辯を戴きまして了承致しましたが今の農業會の物資の一元的配給と云ふ意味は、私の申上げる言葉が足りなかつたのでありますが、今の統制物資で入手困難なものにさう云ふやうに御願ひしたのでありまして、自由に入手出來るものは自由に競爭させた方が、無論農業會の繁榮にもなり、又其の結果が圓滑に行くべきものでありますので、さう云ふ意味合に於きまして實は申上げたのでありますが、大臣の御答辯に了承致した次第であります、食糧營團に對しましては、實は是は後から申上げやうと思ふのですが、肥料其の他地力問題と關聯がありますので、是非御願ひ致したいと考へて居る次第であります
次に申上げたいことは、農業生産計畫に付てでありますが、食糧の危機は今年から來年に掛けまして最も困難だと思ひますけれども、決して明年以後に於きましても安心する譯には行かないと思ふのであります、益益増産をして行かなければならぬと思ふのであります、それで明年の生産計畫に對しましては、十分に注意をして萬全を期する要あることは勿論でありますが、殊に農業は自然に支配さるるのでありますから、飽くまでも立地的なものでなければならぬと信ずる次第であります、即ち適地適作は農業經營の鐵則でありますので、それぞれの地方の事情に應じ、其の土地に最も適した作物の種類を選び、其の地方に最適の耕作法、經營法に依つて農業經營をすることは勿論であります、然るに現在までは臨時農地等管理令に依りまして、農産物の種類等が決定されまして、作付の制限禁止と云ふやうなことがありますので、是が爲に自由に作付が出來ないと云ふやうな事實があるのであります、例へば北海道等に於きましては、不毛の水田であつても、之を畑地に還元することが出來ないと云ふやうなことが問題になつて居ります、又昨今の如く非常に飼料の配給の困難な時に水田地方ではどうしても若干の肥料が欲しいと云ふても、肥料を作る爲に水田を畑地に還元が出來ないと云ふことになつて居ります、北海道廳は若干默認の程度で、少し位の栽培は默認して居るやうでありますけれども、結局肥料がなければ米の生産に影響することになるのであります、さう云ふ點は地方の實情に應じて最も有益な生産方法が考慮せらるるのでありますから、其の考へに依つてやり得るやうな状態にしなければならぬのであります、又農業生産統制令に依りまして市町村農業會は、其の地域内に生産さるべき所の農産物の種類、數量又は作付面積等に關しまして生産計畫を立てまして屆け出ることになつて居るのであります、是は計畫をして居るやうに見えますけれども、事實は地方長官が、必要ありと認める時には、計畫の實施又は變更に關して必要な命令をなし得ると云ふことになつて居りますので、實際の生産計畫は政府當局の方針に基きまして、地方長官の強力なる指示の下に致して居る次第であります、是が爲に生産計畫が天降り的の作付計畫になつて居るやうな部分が認められるのであります、隨て其の土地に適しない又經營上困難な作物も作付しなければならぬと云ふことになる、随て適地適作の原則に反するのみならず、特に地力の維持培養の上に於て遺憾な點が多々あります、隨て或る者は形式的に種を播いて、其の後の手入れをしない、さう云ふ状態が過去に於てはあつたのであります、私は此の際斯かる法令を廢して、飽くまでも農業會と農業者の自由意思に依る選擇に依りまして作付計畫を立てさせることが適當でないかと思ふのであります、勿論農業者が勝手に何を作つても宜いと云ふのでなく、懇切適切な指導奬勵に依つて、地方々々の實情と國家の要請とを睨み合せまして適當な作付計畫を立てられることが、生産を増強する上に於て、非席に必要なことと思ひます、のみならず斯う云ふ肥料不足の場合に於て、特に北海道の如く肥料を必要とする地方に於てはどうしても將來地力の培養を考へて、作付をしなければならぬのであるから、さう云ふ場合に於ても好都合に參ると思ひます、又さう自由にさせると、國家が要請する食糧よりは、徒らに高價な、收益の多いものを作付する虞がないでもありませぬが、之には初めに大體の方針が明示され、それに伴つて價格制度――之に付てはあとから御尋ね申しますが、或は必需物資の配給などと睨み合せまして、飽くまでも指導的立場を以て、其の實現を期することが宜しいと思ひます、却て其の方が政府の期待に副ひ得て、生産増強、供出の上に、效果を齎すものと私は信じて居ります、私が申上げたいことは農業者の責任に基く生産計畫を、各地の實情と適地適作に即した計畫を立てさせ、それを基礎として政府の綜合計畫を立て、積極的に農業者の自主的活動を活溌ならしむる方が適當であらうと思ふのであります、隨て總動員法の廢止に伴ひ、或は臨時農地等管理令や農業調整令が廢止されると思ひますが、之に對する大臣の御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=68
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069・松村謙三
○松村國務大臣 大體御話のやうに私も感じて居ります、併し大體の國としての計畫はなくてはなりませぬので、大體の枠は決めて、農業會等をして自治的に計畫を立てて貰ふと云ふ程度の枠は、今後の情勢から見て必要であらうと思ひます、唯今日までのことは戰時中の要請に依つて極めて窮屈な机の上の「プラン」を立てて、之を農家に適地でない所まで押付けたと云ふことは、戰時中あり得たことでありますが、其の爲に色々な點に於て却て生産を相當に阻碍したことがあつたことは勿論であります、總動員法の廢止に伴ひまして、是もどうせ變ることと思ひますが、大體の計畫は政府として農業會等に結付いて行政的にもやり得ることと思ふのであります、それ等のことに付きましては、總動員法廢止の時に能く研究したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=69
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070・安孫子孝次
○安孫子委員 それに關聯して尚ほ農産物の價格の問題に付て御尋ね申上げたいのであります、價格の問題は極めて重要でありますが、又極めて困難な問題でありまして、又極めて複雜な問題であるのでありますが、私は唯農産物の生産増強、供出の促進と云ふ方面から價格問題に對して御尋ね申上げたいと思ふ次第であります、農家の經濟は農産物の價格と、一般の生産資材竝に生活必需品の價格との均衡如何に關係することが極めて大きいのでありますが、從來から農産物は一般價格に比べまして安きに過ぎると云ふ状況であつたのであります、是が爲に農家經濟を窮迫せしめた事實は、是は何人も認めて居る所であると思ふのであります、明治維新以來我が國の經濟、産業、文化の發達は農業者の犠性に依つてなされたと云はれて居るのでありますが、私は其の通りであると思つて居るのであります、元來我が國の農業は全く家族的企業でありまして、所謂生業であります、隨て其の經營に於きましても、其の生活に於きましても、極めて彈力性があるのであります、それでありますから、洵に低廉なる農産物の價格にも甘んじまして、他の商工經濟の爲に常に壓迫を受けながらも、どうか斯うか經營を繼續し來つたのでありますが、今日では最早それが許されない時になつたと思ふのであります、殊に民主的國家建設の上にも、公平なる價格が茲に決められなければならぬと思ふのであります、又斯樣な意味合に於きまして、農家に對しましては、其の努力に相當する代價を農産物の價格の上に於て拂つてやらなければならぬと思ふのであります、斯くしてこそ初めて確乎たる經濟の上に於て農業者は農業生産に精進が出來ると思ふのであります、現在に於きましても、農産物の公定價格は一般の他のものに比して著しく安いと思ひます、隨て當然支拂はるべき所の代價が農家に支拂ひ得ないと云ふやうな状態になると思ふのであります、それで從來の儘補助政策とか、助成政策とか云ふやうなことで引摺つて來たと云ふやうな状態にあるのでは、是は全く封建的な性質を多分に帶びて居るのであつて、決して民主的な政策と言ふことは出來ないと思ふのであります、斯樣な次弟でありますので、私は是は自作農を創定されても、或は農業者の自主的活動の爲に團體法が規定されましても、此の問題が適正に行かなければ、下から盛り上る所の農業者の努力と云ふものは、之を期待することは出來ないと思ふのであります、然るに一方現在に於ては闇値が法外な高價を呼んで居りまして、一俵の公定價格と一升の闇値と比較して、寧ろ一俵の公定價格が安いと云ふやうな状態を示して居るやうな現状でありまして、是では農業者をして安心して農業經營に精進させると云ふことは不可能であります、そこで此の際速かに此の農産物の各種類間の價格の均衡と、農産物と他の物價との價格の均衡を圖らねばならぬと思ふのであります、特に北海道の如き畑作を主とする地方に於きましては、農産物の種類間の價格に於て均衡がなければ、適地適作主義を徹底する譯に行きませぬので、結局高價なものを選んで其の土地に適さないものでも作ると云ふやうになれば、それだけ生産が劣ると云ふことになるのであります、それでありますから、農産物の價格政策に對しまして、どう云ふ御用意があるか、之を御伺ひ申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=70
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071・松村謙三
○松村國務大臣 物價の問題は是は非常に困難な問題であります、之に付きましては、日本の將來の經濟機構がどう云ふ風になるかと云ふ根本の問題から來る譯でありますが、併しながら日本の經濟機構の問題は、是は世界の風潮を受けることが多い譯でございますから、世界の風潮を見まする時に、日本の將來の經濟機構の行くべき途も分ると思ふのであります、さう云ふ意味合から申して、將來はどう變るか知りませぬが、現在の所に於きましては、此のやうな窮屈な「ドイツ」式と云ふかどうか知りませぬが、統制經濟の基礎に立つ價格統制と云ふものが、どうせ此の儘で行かないことは是は當然のことであります、農産物價も同樣であらうと思ふのでありまして、今日は其の變革の過程にあると考へます、將來の見据えに付ては、さう云ふ状態でありまして分りませぬが、併し私は價格は物に依つて違ひますけれども、大體自由價格に一應は還るものと考へて居ります、隨て農産物の價格に付ても、畢竟遲い早いはあるけれども、そこへ落著くものと考へて居ります、價格の「バランス」を取つて、他の物價と睨み合せ、同じ農産物でも又其の價格の「バランス」を睨み合せて價格を作るなどと云ふことは、今後或る程度まで物價が外された後に於ては出來得ないことでありますので、私は是は自由價格に還るものと考へて居ります、隨ひまして生鮮食料品に付ては、既に外して見たのであります、恐らくは今日値も高いのでありますが、此の形で落著く所へ落著いて安定を得るものと思つて居ります、其の基礎の下に立つて考へます時に、總ての農産物を規則づくめで決めて置いても、是は闇値の問題だけでも到底力を以て抑へることは出來ない問題でありますから、此の點に付ては、私は自由價格へ還るより仕樣がないのだ、斯う云ふ風に考へて居ります、但し其の中でも主要食糧に付きましては、私は是は絶對に國が主要食糧を把握し、統制し、さうして益々完全に把握し、主要食糧の價格も政府の手で握つてやつて行かなくてはならぬのではないか、是は食糧問題のずつと將來のことを考へ、農村を護持して行く上から考へましても、消費者の部面のみならず、生産者の方から言つても、どうしても持つて行かなければならぬ、然らば自由價格のものと此の統制せられた主要物資との價格の「バランス」をどうして取つて行くかと云ふ問題になりますが、是は戰爭中に消えて失せましたが、主要食糧の統制及び價格の公正に付ては、長い日本の經驗がありまして、既に或る程度までの完全とは申されませぬが、完全に近い標準があつた譯であります、御承知のやうな譯でありまして、即ち生産費を見、生計費を見、又物價の趨勢を見て、さうしてそこに年々米麥の値を決めて、それに頗る伸縮性を與へてやつて行く、さうして他の物價と連れて行く、それに還るより外に私は途がないと思ふのであります、但し只今は御承知の通り生産費の調査にしましても、基礎材料が悉く備はらない、其の上物價の指數にしましても、唯机の上で決められた公定價格と云ふものがあるばかりでして、破られた價格と云ふものは幽靈を追ふやうな姿になつて居る譯でありますから、急に正確なものは得られませぬけれども、是が落著きましたならば其の形へ還へるより外に途がない、それに依つて價格の「バランス」を取つて行くのだ、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=71
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072・安孫子孝次
○安孫子委員 價格の問題のやうに非常に大きな問題を申上げても、大臣が御話の通りに中々困難な問題でありまして、私も今大臣が仰しやつたやうに考へて居るのでありますが、併し當面する問題と致しましては、明年の食糧の増産と云ふやうなことに對しまして、價格問題が色々反映すると思ふのであります、何とかしてやはり主要食糧を増産させる方途を講じなければならぬと思ひますので、結局さつき申上げたやうに、一面に於て是は農家の生産資材と必需資材を出來るだけ適正な價格で配給してやつて、其の代り此の主要食糧は適當にお決めになつた價格で供出すると云ふやうな政策が行はれなければ、到底増産が出來ないと思ふ次第であります、御話の如く價格問題は中々困難でありまして、今之を決めて見ても又直ちに變つて來ると云ふやうな状態でありますので、要は農家が安心して損をしないで生活が維持出來、經營が維持出來、それに副つて生産が出來るやうな状態を整備してやると云ふやうな方面に力を注いで行くことが必要ではないかと思ふのであります、それに對して繰返して申上げるやうでありますけれども、生産資材と農家の必需資材は適正な價格を以て、今の經濟事情に於て許す限りに於て圓滑に、昔のやうに闇でなく入るやうな政策を強化して戴きたいと、私は切に御願ひ申上げる次第であります、更に私は農産加工のことに付て少し御尋ねを申上げたいと思ふのであります、農村工業振興に關しましては、先日大臣も御話になつて居られます通りに、農村は之に依つて經濟の確立を圖らねばならぬのでありまするが、特に此の際御伺ひ申上げたいと云ふ事項は、農産物は出來るだけ加工致しまして、「エッセンス」だけを農村に搬出するやうな政策を執らねばならぬと思ふのであります、さうして副産物たる所の殘滓は何れも家畜の飼料なり、又肥料として土地に還元させる、斯う行くべきであると思ふのでありますが、農産物の中に包んで居る成分は、窒素、燐酸、加里の如き非常な肥料分は寧ろ殘滓の中に多いのでありまして、人間に必要なる所の含水炭素と云ふものは却て内容の胚芽の中にあることは申すまでもないのでありまするが、例へば米を搗精致しましても、白米の大部分は水と炭素から成る所の含水炭素であり、糠に窒素、燐酸、加里が最も多く含まれて居るのであります、菜種も同樣でありまして、油菜は含水炭素であつて、土地から吸收した窒素、燐酸、加里は油の滓の中に多量に含まれて居るのでありますから、是等の殘滓は家畜の飼料としてやつて、又肥料として土地に還元させることが經營改善上にも、或は地力の培養上に於ても最も大切なことであります、之をやらせなければ、結局農家は貴重な米とか其の他の穀物を家畜にやると云ふことになり、或は又貴重な大豆を其の儘肥料に使ふと云ふやうな方法を執るのであります、斯樣な技術的見地に立つて國の農業政策と云ふものを樹てるのでなければならぬと思ふのでありまするが、従來は此の點に對して缺くる所があつたやうに思ふ次第であります、それで私は斯樣な見地から先づ米麥等の穀物の精白を全面的に地元の農業會にやらせるとか、さうして糠は飼料とし、又肥料として土地に還元すべきものであると思ふのであります、斯樣な意味に於きましても、米の配給は寧ろ食糧營團でなく、農業會に之をやらせる方が適當であらうと感ずるのであります、特に飼料不足、肥料不足の場合に於きまして、急速に是の實現をして戴きたいと思ふのであります、其の他味噌、醤油の製造、製粉、製飴、大豆、菜種、搾油の如きも、是等は農村振興策として農業會にやらせても宜しいと思ふのでありますが、特に斯樣な考へ方から行きまして、私は差當り農村に於ける所の食糧營團の事業は、之を農業會に移譲して戴きたい、斯う御願ひするのであります、之に對しましては先程大臣から御答へを戴きましたので、どうぞ是は速かにやるやうに御盡力を御願ひ申上げたいと思ふのであります、其の他農村工業として農業會にやらせて宜いものが澤山ありますが、從來農村工業に對する所の御當局の態度は、どちらか云ふと消極的であつたやうに思はれるのであります、併し農林大臣は度々の機會に於きまして積極的な考へを御持ちになつて居るやうでありますから、私共は大臣の御努力に期待して居るやうな次第であります、それで、私の御尋ね申上げたいことは、此の際企業許可令の如きも之を廢しまして、自由活溌にやらせるやうにしたらどうかと云ふことであります、此の點に對しての御答へを戴きたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=72
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073・松村謙三
○松村國務大臣 御答へを申上げますが、農産物の加工事業を農村で起されると云ふことは非常に結構であり、私は是非御願ひ致したいと思ふのであります、農村の工業と申しまして、何か農業者がやるには隨分不適當なことを從來やつて居たのであります、例へて申しますと、組合で機を織つて見たとか、羽二重を織つて見たとか云ふやうなことが私等の所にもありますが、斯樣な商人が術を以てやらねばならぬものを、一面田を作つて、さうしてそれを商人と競爭しようと云ふやうな考へ方では本當の農村工業は起らないのではないか、農村工業の本當の大きな面は、所謂自ら生産したものを自ら出來るだけ加工をすると云ふことが一つの限度であらうと思ひます、もう一つはやはり專門の企業家が農村の家庭工業と結付くと云ふことであらうと思ひます、此の二つの面に將來の農村工業の發展する點があるのでありまして、思ひ思ひの思ひ付きの計畫と云ふものは、是はどう云ふものであらうかと考へて居るのであります、隨ひまして農産物の加工と云ふ間題に付ては、是非おやりを願ひたいのでありますが、實は是は今年ばかりに限りませぬが、將來未利用資源を利用すると云ふことに付ても、御承知の通り政府の方で全國に亙つて計畫は立てて居ります、計畫は立てて居りますが、是は農業會等に於ておやりになるのには最も適當なことでありますので、農業會等に於て進んであれをやつて戴きたいと思ふのであります、之に要する機械其の他に付ては農林省で良いものを斡旋して、十分指導も致す考へでありますから、是は農業會あたりが最も適切なことであらうと思ひますので、是非斯う云ふことはおやりを願ひたいと思ふのであります、尚ほ序に申しますが、但し農業會と云ふものが何も彼も背負ひ込んでやつて行けるかと云ふ問題は、私は大きな問題ではないかと思ふ、是は農業會の方々から言はれることは實に多いのでございます、併しながらそれだけのものを今日農業會の力で背負ひ切れるかと云ひますと、今日の農業會の現状では是は非常に困難ではなからうかと思ふのであります、それは無理もないことでありますので、先づ第一に農業會として選ばれることは、農業會に相應はしい、農業會でなければやれないことから御始めを願ひたい、さうして力が十分あるやうになつたならば、外へ手を出されても宜いけれども、何も彼も引込んでやると云ふ用意が整はない中にやると云ふことになりますと、どれも是も機能を發揮することが出來なくなりますので、私は其の中の最も相應はしいものを農業會の使命としてやつて戴きたい、さう云ふものから始めて戴きたい、それに付ては只今御話の農産物の加工のことなどは最も相應はしいと思ひますので、是非其のやうに指導を御願ひしたいと思ふのであります、米の精白、さうして糠を取ると云ふことに付ては十分考慮を致したいと思ひます、只今の所或は糠までも人間が食はなければならぬと云ふこともありますので、十分の所までは參り兼ねるかも知れませぬが、能く考慮を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=73
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074・北勝太郎
○北委員長代理 安孫子君に申しますが、大臣は他の委員會から是非と云ふことで呼びに來て居るので、其の方へ御出席になると云ふことでありますから、どうぞ御諒解を願つて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=74
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075・安孫子孝次
○安孫子委員 今企業許可令のことを……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=75
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076・松村謙三
○松村國務大臣 企業許可令は撤廢することに内閣の方針が決まつて居るのであります、併しながら時期等に付ては一寸此處で申し兼ねますが、大體撤廢すると云ふやうな考へを持つて居るやうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=76
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077・安孫子孝次
○安孫子委員 大臣にもう少し御尋ね申上げたいのでありますが、保留して置きますから、他の機會に御許しを願ひます
それから政府委員にもう一つ申上げます、農業團體法の十五條の第一項には但し命令を以て定むる法人と云ふことがあります、是は今までの團體法には農事實行組合と養蠶組合が抜けて居るが、今度の法案を見ますと任意加入になつて居りますが、今度の改正法に依つて農事實行組合や養蠶組合は入ることになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=77
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078・楠見義男
○楠見政府委員 團體法の十五條第一項の法人でありますが、是は従來は産業組合と漁業組合、負債整理組合、斯う云ふものが擧げられて居つたのであります、隨て農事實行組合、養蠶組合は加入することが出來なかつたのでありますが、今囘の改正に依りまして、勅令等の改正に依り、農事實行組合の加入を認めて參りたい、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=78
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079・安孫子孝次
○安孫子委員 もう一つ御尋ね申し上げますが、第二十一條の二項に依り賦課金は行政官廳の認可を要することになつたのでありますが、其の金額や徴收方法は農業會が自由にやることになつたのでありますか、もう一つ序に申しますが、農業實行組合は今までは登記をしなければならぬことになつて居りますが、是は事實非常な煩雜で、是が爲に色々罰則を受けると云ふ事實も度々ある、所が法人になつて居なければ、是は團體農業會に入ることが出來ないことになるのでありますが、何か便法を設けられる譯に行かぬものでありませうか、登記をしないで農業會に入るやうな方法は――私には分りませぬけれども、さう云ふ方法があるかどうかと云ふことと、もう一つ農業團體法の施行令とか施行規則と云ふものはどうなつて居りますか、是は一體發布になりますか、之に對する大體見透しが付きましたら伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=79
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080・楠見義男
○楠見政府委員 第一點の賦課金の徴收方法に關する認可に付きましては、今囘の改正で廢止することに致して居るのでありますが、併し大體の賦課金の限度等に付ては、現在も命令を以て一定限度を決めて居るのであります、是は組合員の權利義務に特に重大な關係がございますので、此の點は従來通りの方法で行きたい、斯樣に孝へて居ります
それから實行組合の登記でありますが、是は御承知の通り法人でありますし、第三者保護の關係もありますので、登記をすると云ふことに付きましては、現行法制の下に於きましては困難ではないかと思ひます、併し登記事項に付ては最小限度の是れ以上は簡單に出來ないと云ふ所まで實は簡略に致して居るやうな次第であります、只今申しますやうに是れ以上の簡略性或は法規をなくすると云ふことは、憲法上は難かしいのではないかと考へて居ります
第三點の施行規則の時期でありますが、此の法案が議會を通過致しましたならば、直ぐ準備を整へて出來るだけ年内に間に合へば公布したいと考へて居りますが、是は法制局との打合せをしなければなりませぬので、今の所はつきりとしたことは申されませぬが、私共の方と致しましては出來るだけ年内に出したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=80
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081・安孫子孝次
○安孫子委員 私の地方に於きましては、團體法の總改正をすると云ふやうな聲もありますので、どうしても是非新しい團體法に依りまして委員の改正をやらなければならぬと思ひますが、出來るだけ早く出來ますやうに御骨折願ひたいと思ひます、是で私の質問は終ります、もう少し農林大臣に御伺ひしたいのでありますが、何れ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=81
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082・北勝太郎
○北委員長代理 今日は此の程度で散會することにしまして、明日午前十時から時間レイ行でやりたいと思ひます、どうぞ左樣御承知を願ひます
午後三時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00219451210&spkNum=82
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