1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
農業團體法中改正法律案(政府提出)(第八號)
水産業團體法中改正法律案(政府提出)(第九號)
戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出)(第三號)
蠶絲業法改正法律案(政府提出)(第一七號)
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昭和二十年十二月十一日(火曜日)午前十時二十一分開議
出席委員左の如し
委員長 川崎巳之太郎君
理事 仲西三良君 理事 松延彌三郎君
理事 北勝太郎君
安倍寛君 愛野時一郎君
五十嵐吉藏君 石坂養平君
今尾登君 宇田耕一君
岡田啓治郎君 楠美省吾君
鈴木重次君 田嶋榮次郎君
濱地文平君 別所喜一郎君
山田六郎君 安孫子孝次君
青山憲三君 大石大君
眞藤愼太郎君 唐橋重政君
二田是儀君 川俣清音君
同日委員加藤宗平君辭任に付其の補闕として唐橋重政君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
内務大臣 堀切善次郎君
出席政府委員左の如し
大藏省外資局長 野田卯一君
司法省政務次官 手代木隆吉君
農林政務次官 紅露昭君
農林參與官 子爵 北條雋八君
農林省總務局長 楠見義男君
農林省山林局長 黒河地透君
農林省水産局長 笹山茂太郎君
農林省蠶絲局長 山添利作君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
農業團體法中改正法律案(政府提出)
水産業團體法中改正法律案(政府提出)
戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出)
蠶絲業法改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=0
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001・北勝太郎
○北委員長代理 それでは是から農業團體法中改正法律案委員會を開會致します――紅露政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=1
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002・紅露昭
○紅露政府委員 蠶絲業法改正法律案の提案の理由を説明申上げます、蠶絲業法改正法律案の提案の理由に付きまして、本會議に於きまして其の趣旨とする所を申述べたのでありまするが、此處には本法案の主たる内容を擧げて御説明申上げたいと存じます
本法案の主たる内容の第一は、日本蠶絲統制株式會社の解散及び之に伴ふ善後措置であります、日本蠶絲統制株式會社は蠶絲業統制法に基き設立せられ、蠶種、繭及び生絲の一手買入及び賣渡竝に繭絲價格の安定施設等斯業統制の中樞機關として運營致して參ったのでありますが、今般聯合軍最高司令部よりの指示もあり、解散致すことと相成ったのであります、之に伴ひまして現在同社の保有して居ります繭絲價格安定資金に付きましては、本施設の目的と由來に鑑みまして、同資金は目下關係蠶絲業者に於て設立の準備を進めて居りまする蠶絲業新團體に之を承繼せしむることとし、其の際税法上特別の措置を講ずることと致したのであります、又日本蠶絲統制株式會社の性質に照しまして、其の清算に付ては所要の行政上の監督を致すことと致したのであります、而して統制會社の解散に伴ひまして、蠶絲統制法は其の大半の目的を喪失致しますので、之を廢止することと致し、同法中蠶絲の需給調整又は輸出の振興上必要なる命令、繭檢定及び生絲檢査竝に蠶絲業の企業許可に關する規定等は、之を本法案中に移して、輸出向生絲の増産竝に其の確保等、現下に於ける蠶絲業の目的達成を圖つて參ることと致したのであります
第二は蠶絲團體制度の整備であります、戰時中に於ける蠶絲業統制機構は之を廢止致しますると共に、今後に於きましては、關係者の自由且つ活溌なる自主的運營に依りまして、蠶絲業の秩序ある發展を圖ると共に、國家の期待する要請を果して參らねばならぬのであります、此の目的の爲に新たに蠶絲業に關する指導奬勵及び統制を行ふと共に、當面輸出生絲確保の爲めどうしても必要である生絲の統制賣買をも行ふ所の蠶絲業會の制度を設くることと致したのであります、此の團體は曩に申しましたやうに目下業者の間に其の設立の準備を致して居るやうな次第であります、又此の團體が成立致しますると、自然蠶絲業組合法に基きます日本中央蠶絲會も其の存在理由を喪失することになりますので、是は解散を致すことに致したのであります
第三は、原蠶種管理制度の改正であります、御承知のやうに從來原々蠶種の製造配付は、政府以外には出來ないことになつて居るのでありますが、管理法施行以來十年、今では蠶種業界も面目を一新致して居りまして、同法は一應其の目的を達成しましたこと、竝に今後急速に優良蠶品種の發見及び其の普及を促進する爲には、民間に於ける優良原々蠶種の選出育成者に對して、其の製造配付をなし得ることに致して參ることが適當と認めまして、其の改正を致しました、同時に民間發見の優良品種に付ても、其の普及を確保する意味に於きまして、原々蠶種の選出育成者に其の公開を應ぜしめますと共に、政府に於きましても選出育成者より蠶品種の提出を求め、原々蠶種の製造配付をなし得ることと致したのであります、尚ほ從來の如き原蠶種の譲渡の禁止は之を廢し、自由とすることと致したのであります
第四は、蠶種に關する制度の改正であります、從來蠶種製造業は地方長官の免許する所となつて居たのでありますが、蠶種製造業の現状と、今後蠶種の需給は之を全國的に勘案するの必要性に鑑みまして、今囘其の許可を地方長官より主務大臣に移すことに致したのであります
次に蠶種の檢査制度でありますが、現在蠶種は原則として都道府縣に依る官行檢査に依り、例外的に業者又は其の團體の自治檢査を認めて居りますのを、今後は廣く自治檢査を認むることとし、別に新たに都道府縣の監督檢査の制を設けんとするのであります
以上が本法案の大體の骨子とする所でありますが、蠶絲業は農村經濟の重要なる一環を成します養蠶業を初めとし、蠶種、製絲、輸出等、之に關與する部面は洵に廣汎でありまして、我が國産業中、最も特異にして且つ主要なるものであります、今後は更始一新、關係業者の協力一致に依りまして、安定したる基礎の下に其の囘復發展を圖り、以て我が國經濟再建の爲め斯業に與へられたる使命の遂行に萬全を期したい所存であります、何卒御審議の上速かに御可決下さらんことを熱望致す次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=2
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003・北勝太郎
○北委員長代理 愛野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=3
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004・愛野時一郎
○愛野委員 今までの農業會は、戰時農業政策の遂行上、必要以上に官僚的な、又指導者原理が含まれて居つたので之を改廢する必要は十分認めるのでありますが、私が御伺ひ致したいと思ひますのは、此の自主的な協同體的な組織に改廢する場合に於て、例へば畜産とか、或は茶業とか、さう云つたものが獨立的になつて、今までの農業會の面で一括的に統制せられて居つたやうなものが將來個々にばらばらに離れて行くやうな傾向がありますが、さう云ふ指導的な考へ方を農林省で御持ちになるかどうか、斯う云ふ點を聽いて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=4
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005・楠見義男
○楠見政府委員 農村に於きまする各種團體が分立致しまして、其の爲に種々の弊害を生じて參りましたことは御承知の通りであります、勿論例へば畜産でありますとか、茶業或は養蠶等それぞれの團體が分立致しましたに付きましては、それ相當の理由もあり、又それ等の團體の存在が各關係致して居りまする産業の發達に相當の貢獻を致したことも亦事實であります、併しながらそれぞれの産業が或る程度の高度に發展を致しました結果、そこに生じたものは最初に申上げましたやうな各農家の非常な煩雜さであり、又指導の不統一と申しますか、綜合性を缺く爲の色々の弊害が生じて參つたのであります、隨ひまして一面に於ては各種團體に付て又元のやうに分裂すべきであると云ふやうな考へ方もあるのでありますが、現在私共考へて居りますことは、此の食糧事情の下に於て、而して又現在の農業の段階に於て、之を元に戻すと云ふことは決して適當なる策ではない、分立をする人々の間の意向としましては、折角分れて居つたものが一緒になつた爲に一つの大きな政策の爲にそれぞれの他の分野の産業が壓迫される、隨て正當に利益も代表せられないし、又其の産業の發達にも支障があると云ふやうなことを言はれるのであります、併し統合の問題は御承知のやうに漸く二年を經たばかりでありまして、而も其の間は戰爭中であつた譯でありますが、是から段々と此の農業會の何と申しますか、御家風と云ふやうなものも減つて參らうと思ひまするし、今申上げましたやうな色々の不十分な點は今後の運營でやつて行ける、隨て現在と致しましては、政府は此の形態で以て進んで參りたい、斯樣に只今の所考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=5
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006・愛野時一郎
○愛野委員 只今の御答へは私は非常に滿足するものであります、農業政策は綜合的に行かなければならぬのであつて、茲に各種各樣な發達を致して來ましても、却て地方に於ける指導者は其の煩雜さに迷ふと同時に農村内に煩雜さとそれから勢力的な抗爭と云ひますか、さう云ふものを卷き起すだけで、大して效果はない、農業會が或る一定の歴史を經て逐次力を得て來るならば、綜合的な農村政策は立ち得るものと私は思ふやうな次第であります、其の點に於て私は滿足を得ましたが、茲に一つ考へて貰はなければならぬことは、現在の所謂森林組合と、自主化された農業會との連繋の問題であります、大體現在の日本の森林は、非常に何と申しますか、都會の、或は其の森林地帶の人口と離れた、所謂資本家の投資客體になつて居ることは、既に御承知のことであらうと思ふのであります、此の森林の行政も現在の農地制度式な方法に改められるのと同時に、山嶽地帶の勞務、或は其の他の色々な關係もありますが、特に勞務の關係に於て、私は平地農村との結合ひを十分に考へて見なければならぬのではないかと思ふ、現在のやうに非常に濫伐が行はれました場合には、特に出水氾濫等に依つて迷惑を蒙つて居るものは平地農村であります、森林のある地方には割合勞務が少いのでありますから、植林等の如き場合に於ては、學徒動員とか色々なことで戰時中行はれましだけれども、十分な植林が出來兼ね、或は森林の手當が旨く行かないと云つたやうな状況であるのでありまして、どうしても私の考へ方と致しましては、森林組合と農業會と合體せしめるやうな方向に持つて行く、そして平地農業の勞働時間の切れ間と申しますか、空間と申しますか、其の期間に山林の方の手當をすると云つたやうな考へ方を御持ちになつて居るかどうか、此の點を一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=6
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007・楠見義男
○楠見政府委員 森林組合と農業會との連繋の問題でありますが、特に森林を近間に控へた農業會に付きましては、御話の如く土地の問題、開墾の問題、或は勞務の問題、其の他種々の問題に於て、極めて密接なる關係を持たなければならぬことは御話の通りであります、隨て此の關聯性をより高度にやつて參ると云ふことに付ては、全く愛野さんと私は同感であります、唯農業會と森林組合を合體して、農業會が森林の事業もやると云ふことになりますと、是は昨日も實は申上げたことでありますが、結局原始産業としての森林、水産、農業と云ふやうなものの一體化の問題も同時に論議の對象になる譯であります、結局農業會としてどの程度の分野で以て其の會の構成とし、又最も力を入れて行くべきかと云ふことになりますと、結局私は現在の情勢に於きましては、農業會は現在のやうな行き方で行くのが最も適當ではなからうか、併し御話の如く山林と農業、或は海岸寄りの地域に於ける農業と水産、所謂半山半農、半農半漁と云ふやうな所に於きましては、それぞれの業態の間に於きまして密接なる關係を持ちませぬと、結局勞務の問題に於きましても、少からぬ支障を生じて參るのであります、隨て組合形態としては別個の形態を存置すべきであると思ひますが、併し組合間の連繋と云ふことに付きましては、今後はより一層密接なる關係を持たなければならぬと云ふ風に考へて居るのであります、其の兩者の間の連繋の問題に付きましてそれぞれ上の系統の所で是が運營に付て十分の指導と申しますか、肝煎りを致す必要も生じて參るとも思ひますし、又行政官廳の面に於きましても、從來のやうな色々複雜な手數の掛る指導行政、或は監督行政と云ふものは、寧ろ今後はさう云ふやうな方面に特に力を入れて參る必要がある、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=7
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008・愛野時一郎
○愛野委員 それから現在の農業會の變革後の清算の問題でありますが、例へば滿洲の公債其の他に付ては誰か聽かれましたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=8
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009・北勝太郎
○北委員長代理 それは昨日質問がありました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=9
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010・愛野時一郎
○愛野委員 滿洲其の他の社債、公債の問題に付ては質問があつたさうですから、私は改めて御伺ひ致しませぬが、戰時中農業會は極めて大きな役割を持つたと私は思ふのであります、隨て或る場合に於きましては、必ずしも農業會でやるべきでない――或る意味に於ては戰時的な國家施策に追隨する爲め知事其の他の指導に依つて更に積極的な意味合の仕事を行つた農業會は各所にあるだらうと思ふのであります、私は佐賀縣の農業會長をやつて居りますが、例へば佐賀縣の農業會に於ける鹽田事業の如きは、農業會だけで二十五町歩やつて居る、其の他例へば切削油の問題であります、是は菜種油の如きものが機械の切削油の原料になつて居る、菜種油を取らしては、非常に困ると云ふので、縣其の他と諮つて松葉から切削油を作ると云ふやうな事業をやつたのでありますが、斯う云つたものが終戰に依つて假に相當打撃を受けたと云つた場合には、どう云ふ風に御取扱になりますか、其の點も一つ伺つて見たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=10
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011・楠見義男
○楠見政府委員 戰時中に於きましては、獨り主要食糧の問題だけに限りませぬで、他の食糧關係、例へば只今御話の鹽田事業と云ふやうなことに付きまして、最も的確に又最も速かに御願ひ出來る團體として、農業團體に相當のことを御願ひしたのであります、又食糧以外の問題に付きましても、例へば只今御話の如き切削油の問題、根本的にはもつと大きな問題として松根油の非常増産、斯う云ふやうなことも御願ひしましたし、更に又雜纖維の問題に付きましても御願ひを致したのであります、勿論是等の仕事に付きましては、所に依りましては農業會に取つては相當大きな負擔であり、又勞力を御掛けしたことと思ふのであります、政府と致しまして其の時の急迫せる状況を打開する爲に、國策として農業團體に御願ひした事柄、是等の事柄に付ての跡始末に付ては、勿論申上げるまでもなく、政府としては責任を以て處理すると云ふ風に考へて居りますので、其の點は左樣御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=11
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012・愛野時一郎
○愛野委員 大體私の質問は此の程度で終りたいと思ひますが、私の希望致します所は、今後農業會は土地の問題等に絡みまして、事務的にも極めて煩雜になつて來るだらうと思ひます、それから私が農業會の運營に當つて、農業會の最もやりにくい點は何であるかと申しますと、農業會と云ふ所は財源がありませぬ、是は自治體になつて見ても、自治化すればする程、運營上困つて來るのは財源の點であらうと思ひます、所謂増産奬勵其の他は政府の補助金に依つてやるのでありますが、是は口で食べて、汚い話でありますが、後ろから出すと云ふ風な譯で素通りである、其の間には何等財源的なものは浮んで來ないのが本當であります、唯農産物資の販賣手數料とか、さう云つたやうなものに依つて財源はあるのであります、それだけでは、例へば自治化されても技術員の向上の問題とか、或は農業技術の積極的な改革とか、其の他政治面に於ける農民團體の活躍に對する補助とか、さう云つたものはさう出來て來ないのであります、然るに農業會の指導と致しましては、極めて事業的には制約されて居るのでありまして、此の點は私は理論的に考へて見ても、農村に對しては都市の工業生産物は相當高い價格に依つて農村を搾取して金を持つて行く、農村の結集した團體は出來るだけ農村の生産に必要なものだけに事業的には止められて居ると云つたやうな、極めて農業會の運營の上に於て制約されたことになつて居るのであります、隨て今の儘の形でやつて行くならば、農村が漸次都市に資金を吸收される一つの原因にもなつて行くだらう、私はもっと農民の經濟活動の面を積極的に相當廣範圍に活動し得るやうな權利を農民に與へねばならぬのではないか、斯う云う風に考へるのであります、其の點に付てどう御考へになりますか、此の問題は私は農民が協同自治の立場に立てば立つ程難かしい問題に實際の面としてはなつて來ると思ふ、現在の農業會でも技術員の報酬を農業會獨自の資金に依つて、假に年に一人當り十圓づつ上げても、もう既にそれだけ穴が開く、やはり中央官廳から金を貰って行かなければ實行出來ないと云ふ状態にある、其の點に付てどう云ふ風に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=12
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013・楠見義男
○楠見政府委員 農業會の經營の問題でありますが只今御述べになつたやうに現在農業會の事業として指導事業と經濟事業がございます、指導事業の方は、どちらかと申しますと、是は金が要るばかりで收入が伴はない、併し指導事業の結果は、個々の農民自體がそれだけ産業が改良され、又其の他の點に於て發展を見る譯であります、併し農業會自體としましては、寧ろ出るばかりで、金は入つて來ない、結局經濟事業に重きを致さなければならぬ、斯う云ふやうな情勢である譯であります、而も此の經濟事業に付きましては、從來の公定價格制度の結果は、出來るだけ手數料も低目にして居ると云ふことから致しまして、益益農業會の經營が苦しくなつて居ることも事實であります、そこで今後の農業會の經濟面から見た運営の方向は、どう云ふ方向に持つて行くべきであるかと云ふことになりますと、結局從來通りに、指導事業には多くを期待出來ないから、經濟事業に中心を置いて參らなければならぬと思ふのであります、併し經濟事業に付きましても、是は昨日も此の席で大臣から申上げたのでありますが、農業會が經濟事業を營みます場合に、出來るだけ收入を多くすると云ふ觀點のみに立つて、凡ゆる産業に手を出すと云ふことに付ては、是は如何なものか、斯う云ふ風に我々も考へて居るのであります、飽くまで其の中心は農産物の加工事業と云ふ點に重點を置いて、出來るだけ其の加工に依つた收益を以て其の運營の財源にして行く、又それが結局農産物をそれだけ高く有利に販賣出來ることになる譯でありまして、我々と致しましては、此の加工事業に出來るだけ力を注いで參りたい、此のことが實は又今後の農村に於きまする農工調整の問題であり、更に又農業の機械化科學化に依る農村人口の包容と云ふ觀點から申しましても、是非此の加工事業と云ふものに力を注いで參らなければならぬのではないか、斯う云ふ風に考へて居る譯であります勿論其の加工事業以外の生産物の販賣に關する手數料の問題、是も昨日申上げたことでありますが、例へば米の販賣手數料の如きも、本年から食糧需給特別會計で負擔することに致したのでありますが、斯う云ふやうな手數料の額の問題、竝に負擔の問題、斯う云ふやうなことも併せて考慮しなければならぬとは存じて居りますが、併し積極的な方面としましては、生産物の加工方面、此の方面に特に力を注いで參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=13
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014・愛野時一郎
○愛野委員 農兵隊を解散するやうな氣持はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=14
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015・楠見義男
○楠見政府委員 農兵隊の問題に付きましては、是は戰爭中も御承知のやうな非常な效果を擧げたのでありまするし、又農村の中堅青年としての今後の考へ方から申しましても、是非存續はしたい、斯樣に考へて居るのでありますが、唯名稱が農兵隊と云ふことになつて居りますので、名稱は此の時代に於きましては改めた方が宜いとは存じて居ります、或は食糧増産隊と申しますか、斯う云ふやうなことで存續さして行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=15
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016・愛野時一郎
○愛野委員 私は戰爭中も農兵隊は餘り役に立つて居ないと思つて居る者の一人であります、特に農兵隊と申しますか、二年か集團的に訓練された爲に、實質的な生産面に對する勞務に不足を來して居る事實は澤山あるのであります、而も今日に於ては、特に終戰後の農兵隊の所謂隊氣と云ひますか、士氣と云ひますか、相當頽廢した面も、名前は指しては申しませぬが見受けられるのであります、是こそ所謂官僚指導をなされて、特に民間の農業會あたりに依つて指導するやうな自治的な方法になされた方が效果が上りはせぬかと思ふのでありますが、如何なるものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=16
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017・楠見義男
○楠見政府委員 戰爭中の農兵隊に付きましては、是は只今御述べになりましたやうに色々指導者の面で――勿論是は特に増産を主にした組織であつたのでありますが、指導者の面に於て動もすれば餘りに精神的に流れ、或は又餘りに軍隊規律的に流れました爲に、さう云ふやうな弊害のあつたこともあらうと思ふのでありますが、併し其の實體に於きましては、相當むづかしい、又急を要する事業に對して、若い青年達が特に突貫工事で大きな土地改良事業をやりましたり、其の他のむづかしい土地の關係の仕事をやり遂げた事例も少くないのであります、是からの行き方に付きましては、從來のやうな長い期間に於ける組織、竝に主として軍隊的の規律を中心とした指導の問題、斯う云ふやうな問題は勿論拂拭して參らなければならぬと思ふのでありますが、併し土地改良とか、開墾とか、色々な問題で機動的に使はなければならぬことも多いかと思ふのであります、勿論只今御述べになりました通りに、此の動かし方に付ては、農業會と云ふものと密接なる關係を持つて參りませぬと、其の效を擧げ難いことは御話の通りであります、隨て是からの行き方は農事技術と云ふものを中心に致しまして、短期間の訓練を施して參る、斯う云ふ行き方で進みたいと思ふのでありますが、同時に是が運營と云ふことになりますと、農業會或は農事試驗場と云ふやうな所と特に緊密な連絡を執つて運營して參りたい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=17
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018・愛野時一郎
○愛野委員 食糧管理局長官はおいでではないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=18
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019・北勝太郎
○北委員長代理 今呼びに參りますから、では其の間鈴木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=19
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020・鈴木重次
○鈴木(重)委員 法案に付きましては、運營上に宜しきを得るやう、尚ほ補填すべき點があると思はれますが、準則等を出される御意思がありますか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=20
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021・楠見義男
○楠見政府委員 出來るだけ農業會の方々の御便宜を圖ります爲に、參考として從來のやうに準則を作りまして、何等かの參考の資に供したいと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=21
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022・鈴木重次
○鈴木(重)委員 食糧の生産に付きましては、國民の食糧の自給自足を圖る面と、農民の生活安定を圖る面とを考へなければならぬと思ふのでありますが、先づそれに付きまして、食糧の自給自足の點より致しまして、主要食糧品の需要見込高、之には酒、味噌、醤油、斯う云ふやうなものも含めたる總量を御示しを願ひ、又之に對しまして生産し得べき目標を御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=22
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023・楠見義男
○楠見政府委員 只今の鈴木さんの御質問に對しましては、食糧管理局長官から御答へ申上げた方が適當であるかと思ひますが、一應私から申上げまして、補充的なことは、後程食糧管理局長官の方から申上げて戴くことに致したいと思ひます、現在の食糧需要の面でありますか、總額は二合一勺の「ベース」で申しますと、七千八百二十一万石、斯う云ふ風になつて居ります、其の内譯は、只今御尋ねの酒造用米は八十五万石になつて居ります
〔北委員長代理退席、委員長著席〕
是は一時は四百万石乃至四百五十万石使つて居りました、それを段々と食糧事情が窮屈になりますので、此處まで下げたのでありますが、更に最近の事情から致しまして、只今申上げた八十五万石は更に二十万石程度は節減する、斯う云ふ方向で現在進んで居ります、それから味噌其の他の用途でありますが、是は百五万石、斯う云ふ風になつて居りまして、大體味噌の方面は、此の百五万石の中の五十万石で、其の他の五十五万石は船舶の用でありますとか、或は刑務所の方面に廻しますとか、斯う云ふものを含ませまして百五万石になつて居るのであります、それから翌年への繰越を二百五十万石見て居るのであります、今申しました翌年の繰越、味噌其の他の用途、或は洒造用と云ふものを除きましたものが、全體の食糧の配給になる、或は農家の消費になる、斯う云ふ風に需要面では見て居るのであります、供給面に付きましては、何と申しましても一番大きなものは本年の産米であります、是は我々としましては今年の收穫の見込を一應四千二百九十六万石、斯う見て居りまして、其の中から前年度に早食ひをしましたものを約二百八十万石引いた殘りを、本年の食糧供給面に充てて居るのであります、同時に來年の米の早食ひを二百八十万石見て居るのであります、それ以外に麥類に付て七百五十万石、是は米換算でありまして、大體玄麥で申しますと千万石程度にならうと思ひますが、麥類で米換算が七百五十万石、藷類で三百五十万石餘見て居ります、それ以外に未利用資源としまして約百万石、それから大豆であるとか其の他の雜穀、斯う云ふものを百六十五万石、結局總計して供給面は五千九百二十九万石、斯う云ふ風になるのでありまして、差引不足致しますのが一千八百万石餘、斯う云ふことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=23
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024・鈴木重次
○鈴木(重)委員 將來主要食糧として生産し得べき御見込總量は如何でありますか、更に今後外地より歸りまする在外同胞竝に歸還兵士等もあるでありませうが、左樣なるものの歸りました後に於ける總需要量はどんなものでありませうか、さう云ふ御見込を伺ひたい、要するに質問の目的は、現在の耕地を以て、或は今後に開墾し得べき政府の計畫に依る増收等も合せて、需要量を果して充し得るか否か、此の點に付ての政府の御見解を伺ひたいと云ふのが、私の質問の目標であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=24
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025・楠見義男
○楠見政府委員 端的に申しますと、只今申上げましたやうに本年は一千八百万石餘不足して居るのであります、併し米の産額に於て御承知のやうに、慥か昭和十三年だと思ひましたが、七千万石以上穫れた年があるのであります、本年は先程申上げましたやうに四千二百九十万石、約四千三百万石でありますから、其の最高の時と本年とを比較しますと、其の間に二千七百万石の差があるのであります、そこで勿論先程申上げましたのは二合一勺が「べース」でありますから、是で以て十分とは決して思つて居らないのでありますが、假に現在の千八百九十万石の不足を、今申しました二千七百万石との差額に比較致しますと、米の産額がそれだけ出來れば當然本年は輸入問題に付て騒がなくてもやつて行ける、斯う云ふことになる譯であります、隨て結局問題は國内の生産額がどの程度に行けるかと云ふことが一番大きな問題である譯でありますが、此のことは先般本會議以來大臣其の他の政府委員から申上げて居るのでありまして、結局肥料の問題に大きな影響を持つと思ふのであります、肥料が潤澤に參り、天候が好ければ只今申しましたやうに七千万石近い生産を擧げ得たのであります、隨て一面に於て米竝に麥と云ふやうな主要食糧に付ての肥料の手當に付て、早急に肥料工業の復舊擴充に努力を致して居りますことは御承知の通りであります、一面五箇年計畫を以ちまして土地の開拓事業を致して居るのでありますが、大體其の完成の曉には、現在に比べて千万石以上の増收が出來る譯であります、勿論新しい開拓地でありますから、土地の生産力も從來の既耕地に比べますと相當に落ちるのでありまして、之に對しては色々有畜農業に依る自給肥料の確保、或は出來得れば化學肥料の補給と云ふことも併せて考慮しなければならぬと思ふのであります、それ等の條件が適ひますれば、結局此の方面でも千万石以上の増收は期待出來る、隨て供給面に於てさう云ふやうな方策を講じて參りますと、一方の需要面の増加と云ふ面で、海外の在留邦人の歸還或は在外部隊の歸還と云ふことの外に、自然人口増が大體一〇%から一五%あるのでありますが、斯う云ふ自然増加を一方の需要面に考へて參りますと、必ずしも需要供給はさう樂に參らぬと思ひます、併し極く少量の節約を以て、我慢し得る程度の不足で以て大體はやつて行けるのではなからうか、斯う云ふ見透しを立て、居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=25
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026・鈴木重次
○鈴木(重)委員 大體食糧の需給は將來見込が立つのだと云ふことに拜承致しました、併しそれが先づ出來ると云ふことは、今机上で計畫される所のものでありまして、果して是が左樣に參るかどうか、是は我々としては極めて不安に思つて居ります、殊に今後百五十万町歩の開墾を計畫されて居る、此の開墾の中、東北、北海道等に於ては、私事情を能く存じませぬが、相當の有利な土地もありませうが、其の他の方面に於ては、開墾と云ふのはそれ程有利な土地はもう既にないと思はれる、隨て將來の反當收量等は極めて少いものではないか、唯其の間に於て干拓事業は相當有利である、其の干拓の點に付て政府は特に力を御用ひになる御意思はないか、而も承る所に依れば、之を開發營團等やらせると云ふ御方針のやうでありまするが、五百町歩以上の耕地面積を得るのでなければ營團としてはやらない、それ以下のものは誰がやるか、恐らくは斯樣な特殊の技術を要するものを補助金等に依つて市町村にやらせようと云つて見ても、是は中々簡單に參らない、此の干拓に關するものは十町歩位より以上は總て之を政府事業とするか、或は開發營團に經營させるか等の方法に依つてやらせるの御意思はないか、此の點に付て御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=26
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027・楠見義男
○楠見政府委員 干拓の問題でありますが、御述べになりましたやうに、山林原野の開拓に比較致しまして、干拓が極めて有利であり、又此の點に相當力を入れて參らなければならぬと云ふことに付ては、全く其の通りであります、結局此の干拓に付きましては、是も御承知のやうに、本年中に色々調査を致しまして、明年から著手し、約十万町歩を目途に計畫を致して居るのであります、そして此の干拓の主體としては、決して農地開發營團のみと限つて居らないのでありまして、國營も勿論考へて居りますし、國營の場合に於きましても、現在内務省なり、或は運輸省方面で持つて居ります、技術力或は機械力と云ふものも總動員致しまして、此の方面に力を注いで參ると云ふことで、先般も土地の開發に關する緊急確保方策と致しまして、閣議の御決定も御願ひ致しまして、内務省なり、運輸省なり、農林省なり其の他の各方面の國の技術力を之に集中して、出來るだけ早く此の實を擧げる、斯う云ふ方向へ進んで參つて居る譯であります、御話の如く干拓は最も有望であらうと思ひます、特に此の點に付ては開拓局に於きましても力を注いで居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=27
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028・鈴木重次
○鈴木(重)委員 尚ほ食糧の不安に付きましては、私共唯耕地の擴張或は其の耕地の反當收量の増加と云ふやうなること以上に、他に御計畫があつて然るべきものと思ふのです、それに付て先づ先般新聞等で散見したのでありまするが、戰時中陸軍の方の研究になる空氣中の窒素を利用したる化學食品、詰り蛋白給源を得んとするものと思はれまするが、此の方面に對する政府の御執りになる御方針、或は研究の程度が何處まで進んで居るものか、斯う云ふ點に付て御伺ひしたいのであります、尚ほ此の點に付ては鈴木梅太郎博士が逝去せられまする數旬前のことであります、私共衆議院議員が同博士の御講演を承つたのでありますが、博士自身としては葉緑素は蛋白給源の最も重要なるものである、自分は近く之を企業化して食糧の不足を補ひたい、斯う云ふやうな點を講演の中に述べられて居ります、斯樣なる點に付て政府は御考慮の御意圖がないかどうか、要するに斯樣なる方面が解決致しますれば、日本の現在の食糧は極めて將來に安定感を持つ感じがするのであります、經濟的に考へて見ましても、今不適當なる土地を多く開墾することを考へますれば、之に相當の補助を與へ、或は其の他の資金を融通する等、相當の援助を與へて生産化せしめることは、極めて重要だと考へますが、此の方面に對する御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=28
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029・楠見義男
○楠見政府委員 食糧不足の現状に對しまして、是が補給源を凡ゆる方面に求めなければならぬことは勿論でありまして、隨ひまして一方に於て土地からの増收を期待すると同時に、未だ曾て利用せなかつた所謂未利用資源と申しますか、斯う云ふ方面の積極的な開發、更に色々御述べになりましたやうな全然新しい分野に於ける化學的の研究、斯う云ふ方面にも力を注いで參らなければならぬと思ふのであります、隨ひまして我々現在食糧事情を預つて居りまする農林省と致しましては、御述べになりましたやうに、各方面の資源を、又各方面の研究の結果なり或は創意を出來るだけ多く取入れて、何とかして此の方面の未利用資源に依る増加を圖りたいと實は考へて居るのでございます、隨て只今御述べになりました空中窒素の問題、是も御話の如く陸軍に於て研究の途上にあつたのでありますが、まだ其の確たる成果は得て居らないのであります、之に對しましても大臣自ら色々是等の話を聽き、出來るだけ此の實現を冀つて居るのであります、何分まだ成果は上つて居りませぬし、一面是等のものに付ては同時に或る程度空腹感を滿たす、單に實驗の結果蛋白源が出來た、榮養源が出來たと云ふことになりましても、同時に或る程度の空腹感を滿たし得る體のものでなければならぬと思ふのであります、それ等のものを他のどう云ふものと一緒にして食用に供するかと云ふことも、併せて研究しなければならぬ問題であらうと考へて居ります、隨て現在は例へば木材の纖維素を食糧化することに付ても、現に研究を進めて居るやうな次第であります、勿論まだ此の工業化と云ふ所までは至つて居りませぬが、さう云ふ方面にも特に力を入れて居るやうな次第であります、要しまするに既存の食糧以外に未利用資源或は未開發源と申しますか、斯う云ふ方面の食糧化と云ふことに付て全力を注ぎ、又各方面の創意工夫を取入れて參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=29
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030・鈴木重次
○鈴木(重)委員 只今御話の空腹感を感ずるものではいけないから、斯樣な食糧に付ては尚ほ是のみではいけないと云ふ御話であります、御尤もでありますが、大體日本人の食べて居ります食糧と云ふものは、今は二合一勺で、極めて空腹感を感じて居るのでありますが、元來食糧と云ふものは、之を外人等の食糧に比較すると非常に多量に食して居る、是は醫者の何れも口にする所であります、農村の者は殆んど胃擴張をやつて居る、殊に間食等を多く食しまする者は、極めて腸胃に障碍を與へ易いと考へられるのでありまして、五十歳頃になれば大抵は胃腸病の爲に相當困難な状態に陷るのであります、斯樣な點より考へまして、私共は量と云ふことのみよりも、一面質と云ふことを此の際食糧に付ては考へなければならない、是が極めて重大なことである、現在聯合軍が進駐して參つて居りまして、彼等が晝食等に攝つて居る食糧を見ますると、其の量と云ふものは極めて少いのであります、恐らくは私等が此の議員食堂で食べる所の一食分に相當する程度の量であります、唯其の間に於ける榮養的價値は極めて大である、此の點で考へますれば、我々は質の改善を圖ることは極めて重要なことでありまして、必ずしも米の生産と云ふことのみに依存すると云へば食糧問題は極めて解決しにくいが、現在の食糧を以てして之に更に質の改善を以て與へるならば、必ずしも日本の食糧解決の問題はそれ程困難な問題ではない、左樣に私共は考へるのであります、殊に米のみに依存せずして、麥を多量に生産すると云ふことになれば、我が國の麥の生産に對しては前途極めて有望なる點があります、簡單に増産と云ふものが出來るのであります、指導宜しきを得るならば、それ程困難な問題ではない、更に最近に於ける甘藷の増産が今日のやうな趨勢で進みますならば、是も極めて有望であります、先程食糧計畫として御述べになりましたあの數字から考へますると、現在の日本の生産し得べき麥の生産數量は遙かに大きな數字に上り得る、更に甘藷に至つても、驚くべき厖大なる數を擧げ得るのであります、隨て之に對する質の點を今少しく考へますならば、私は食糧問題と云ふものに對しては、直ちにとは參りますまいが、將來に對しては相當な見込を置き得るのではないか、そこで問題は私は質の點にあると思ふ、隨て既に研究が遂げられて居る筈の鈴木博士の葉緑素に依る蛋白給源の如きは、政府が進んで生産に御努めになることが極めて急務でないかと、斯樣に考へるのであります、我が國の食糧を考へますると米、麥、甘藷、總て是れ澱粉質のものばかりであります、蛋白質方面に於ての大なる缺乏があることだけは、是は爭ふべからざる事實であります、隨て之に今後水産、畜産或は先刻の科學的方面のものを合せますれば、漸次食糧の改善指導に依つて空腹感を感ずることも、又其の間に習慣付けられて來るかと考へまするので、此の際特に蛋白給源に對する方面の食糧に政府の方に於て努力せられんことを希望致して置きます
次に農地調整法に關係して新聞紙上に發表されましたる適正農家の耕地面積があります、それに依りますると、地方に依りまして稍稍差異がありまするが、長崎縣の如きが其の面積の最も狹少なるものでありまして、最低一町、斯樣なる所の適正農家の面積は勿論其の地方々々の耕地の狹廣に依りまして決定されたるものとは察せられまするが、大體此の適正農家の標準を決められましたる其の基準を御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=30
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031・楠見義男
○楠見政府委員 それは他の政府委員から御答へ申上げた方が適當かと思ひますが、一應私の存じて居る程度で申上げて置きたいと思ひます、各地方に付きまして、農家の適正規模を自作農創定に當つて一應の基準を決めて居りますのは、是は大體北海道から九州に亙りまして、其の地方の農業生産事情、即ち畑作と水田、又其の耕作の上に於きまする一毛作なり、或は二毛作と云ふやうな點、或は又都市附近に於ける野菜の畑の關係、斯う云ふやうな點を睨み合せまして、それぞれ各地方地方の實情に即應した規模を決めて居るのであります、隨て最高は北海道の八町乃至十五町歩と云ふ所から、只今御述べになりましたやうな一町程度の所までを一應の基準として決めて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=31
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032・鈴木重次
○鈴木(重)委員 適正農家の基準を定められると申しまする時には、此の適正農家なるものは、之に依つて大體生活の安定を得なければならぬと云ふことは當然と思ひます、左樣に考へますると、假に此の適正農家の面積を左樣に致せば、あとに殘る所の農耕地を以て政府は現在の農村の農民、更に此の上に歸還兵其の他を農村に於て生活せしめようと考へられるのだと存じますが、それ程大したる耕地の餘裕はない、如何樣にして左樣なる者に職を與へんとするか、兎に角政府は人口の再分配を此の際農地調整法案と共に御考慮になつて居ることと考へられます、其の人口の再分配に對する政府の成案を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=32
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033・楠見義男
○楠見政府委員 適正規模の問題に付きましては、只今申上げましたやうな各地方毎の一應の基準を作つて居りまして、出來るだけ其の基準に近いやうに今後は指導して參らなければならぬと思ふのでありますが、併しそれ以外のものに付きまして、例へば多數の復員軍人なり、或は其の他の人口を農村に包容して行くと云ふことになつて參りますると、勢ひ新しい耕地を耕し、更に又それ以外に於きましても、農村に色々の工業を起しまして、所謂農工協力と申しますか、農工一體と申しますか、農業の機械化と申しますか、斯う云ふ點に於て相當の人口の包容力を考へて行くと云ふやうな方向に進まなければならぬと思ふのであります、勿論考へ方としては、農村は何でも彼でも此の人口を包容する、現在の此の限られた耕地に包容すると云ふことではございませぬで、新しい仕事、其の方面にそれ等の人口を包容して行く、斯う云ふやうな根本の考へ方で進むべきであらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=33
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034・鈴木重次
○鈴木(重)委員 只今の御答辯に依りますれば、現在の農地調整法に對しては、まだ人口再分配に對する政府の方に於ける確たる案の御持合せがないのではないかと考へられるのであります、此處で繼續して之を掘下げて御尋ね致してもどうかと考へまするので、此の點は一應措きます、私の考へに依りますると、どうも今御答辯になりましたやうに、現在の農地調整法案のやり方だけで以て、現在の農村に於ける所の農民、更に之に追加し來るべき所の、今後農村に入るべき人口等を考へまして、何れにしましても、今の農地調整法案には更にもう少し考慮を拂ふべき必要があるのではないか、先刻同僚愛野君より質問致しましたる森林組合の問題、詰り山林等を此の農地の中に加へて、自作農等に對して相當の考慮をなすの必要がないかと云ふことを考へるのであります、そこで是は農業團體の構成の中に森林組合を入れるか入れないかと云ふ點と關聯致しまするので、今の農地調整法の方は此處では一應質問を止めまして、農業團體に森林組合を入れるかどうか、此の點を御尋ねしたい、昨日川俣君の質問に封して、森林組合を農業團體に入れると云ふことの考へはないと云ふ御答辯でありました、今日も森林組合と云ふものは入れないで、現在の儘で行きたいと云ふ御答辯を繰返されました、是は何度御尋ねしても其の通りかと考へますが、之をもう少し考へて見ると、全國的に考へて見て大きな森林地帶の所に於ては、成程森林組合と云ふのは獨自の經濟で立つて行くでありませう、又森林組合にして林業を以て生活して居る人も相當ありませう、併ん全國的に考へて見ますると、森林組合と云ふものは各町村の單位團體に於きましては、是は中々其の組合自體の經濟的の方面に於て運營不可能の状態であります、隨て何れか今少しく財源のある方面に併合されるか何とか考へなければ、森林組合自體は遠からず自滅する、さうでなければ組合員たることを組合員自體が極めて嫌ふのであります、さう云ふ運命に立至る一方、此の農民側に於きましては必ず或る程度の耕地は持つて居つても、山林に接觸して居る方面の農民が是非此の山林の何程かを所有することは、確かに農家の生活に相當安定を致します、薪炭を得るに致しましても、其の他何れに致しましても、此の山林と云ふことの必要があるのであります、殊に堆肥を増産する時に丁度牧野があると同様に、此の山林を必要とし、或は自家用の薪炭を得ると云ふ方面にも利用があり、或は耕地稍稍大なれば植林も致すのでありませう、一例を申して見ますと、長崎縣の壹岐郡であります、壹岐郡に於ては明治の初年まで十年毎に耕地を再分配を致して、農民の生活安定を圖つて來た、斯う云ふ特殊の所であります、個々の經營としては必ず宅地の前に畑を置き、それに接續する所の土地を耕地として耕さしめ、其の宅地の裏に當つて必ず適當な山林を配置してあります、極めて私は用意周到なる農民に對する治績であつたと、舊幕時代のやり方を稱讚して居ります、さう云ふ點もあります、隨て土地が斯樣に複雜であればあるだけ、斯くの如き地形錯雜の極めて狹小な土地に住する小農民の爲に、林業と云ふものをも加へて考慮する農地法が我々は望ましいのである、大なる平野のある所だけを考へれば、今の農地法案で結構、大なる林業の出來る所であれば、森林組合結構である、併しながら其の雙方を除いたる後の大部、寧ろ私は全國的に考へますならば、此の森林と耕地とを結付けて考へることの出來る小農民と云ふものは極めて多いであらうと思ひます、其の比率を私は持ちませぬが、兎に角是は我々が机上で想像しても當然だと考へるのであります、隨て此の農地問題に付て必ず森林をも之に加へて或る程度のことを調査して行くと云ふことが一つの希望でありますが、此の點に付て一つ御尋ねを致したい
更に此の森林組合なるものは、今のやうな意味に於て、組合自體の經濟的方面の點より考慮致し、更に小農民の經濟を考慮する點より致しまして、森林組合なるものを農業團體の中に包含せしむる、斯う云ふやうなことを御考へになる譯には參りませぬか、更に之を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=34
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035・楠見義男
○楠見政府委員 農家の生活を維持して行く上に薪炭林と申しますか、さう云ふやうなものを設置する必要がある、斯う云ふやうなことを中心としての第一の御話でありますが、新らしく土地開發を致しまする百五十町歩の開發計畫に於きましては、勿論耕地と有畜農業竝に薪炭林、斯う云ふやうな組合を考へて參つて居るのですが、既存土地に付ての問題に至りましては、極めて重大な問題でありますので、尚ほ能く研究さして戴きたいと存ずるのであります、森林組合と農業會の關係に付きましては、今日の情勢に於て如何か、唯其の間の連繋と云ふことには、勿論十分の力を入れて貰はなければならぬと思ひますが、一般的に農業會が森林の事業までもやると云ふやうな考へ方に付きましては、只今の所之を致して居らないのであります、唯山寄地帶に於ける森林と農業の關係、此の點に付ては十分連繋を考へて參りたいと思ひます、御趣旨の點は能く拜聽致しましたので、尚ほ今後の研究に御任せ願ひたいと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=35
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036・鈴木重次
○鈴木(重)委員 家畜保險組合、農業保險組合、此の二つの保險組合は、やはり森林組合同樣、地方に依りまして、多くは其の經濟的の關係より致しまして、獨立的に存在することは極めて困難なるものであります、現在に於きましても、家畜保險と云ふのは郡單位で之をやつて居るやうでありますが、此の地域に於きまして之をやると云ふことは極めて困難である、私此の家畜保險を一時擔當して居つたことがありますが、政府筋より話を伺つて見ても、全國的に極めて經濟困難だ、斯う云ふのであります、農業保險に致しましても、大體單獨で行くことが困難なる爲に、多くは都道府縣の農業團體に大體合併して居るやうな姿を持つのであります、尚ほ會長等の選擧の關係等より致しまして、是が別個の世帶を持つことに相成りますと極めて經濟困難であります、本省に於ける立場は異つて居りますけれども、末端では家畜保險竝に農業保險と云ふものは、やはり農業團體と共に行くことが極めて經濟的であり、人的資源に於ても互ひに相融通するの途が開け、極めて便宜でありますが、之を農業團體に包含せしめて將來經營するの途を御開きになる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=36
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037・楠見義男
○楠見政府委員 家畜保險或は農業保險組合の經營が、非常に困難であると云ふことを中心としての御話でありますが、是は御承知のやうに、例へば家畜保險組合を郡單位の組合に致しましたのは、一面に於て此の保險事業を致しますると同時に、一面保險を通じて色々衞生指導をやつて行くと云ふやうな指導の方面のことも考慮に入れて、郡單位の組合が出來たのであります、是等の事業に付きましては、是も御承知のやうに、國が再保險を致して居るのであります、結局結論として組合の經營が困難であると云ふことは、保險料率の問題が一番大きな問題ではないかと思ふのであります、組合がやつて行ける程度のものに致しますると、結局保險料金を高くしなければならぬ、さうなつて參りますると、直接の家畜飼養者なり或は農家なりと云ふものが、相當大きな負擔になる譯であります、是等の觀點から、出來るだけ保險料率を安くする、同時に國家が再保險で以て或る程度の「カバー」をすると云ふやうなことになつて居るのであります、そこで農業會との合體の問題でありますが、それ等の根本的な事業が變革を見ませぬ限りは、やはり農業會に包含せられましても、同樣な問題が殘存するものと思ふのであります、隨て是等の點には根本的に考慮を要する點があらうと思ひます、それはそれと致しまして、農業保險の事業或は家畜保險の事業と云ふものを農業會に包含すると云ふ方向に付ては、私は將來はさう云ふ方向へ進むべきものであらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=37
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038・鈴木重次
○鈴木(重)委員 次に市町村と云ふ農業單位團體に付ての質問を致したいのでありますが、現在の市町村農業團體に於ての指導、其の指導部と云ふものの經濟は極めて困難であります、恐らくは若し指導部だけが分離して居るとしまするならば、其の經濟は形式だけに止まる仕事でなければやつて行けない、其の原因は何處にあるかと言へば、即ち農業保險の負擔が極めて多額に上るからであります、今日恐らくは全國此の農業保險の負擔の爲に、農業保險の存續を望む者は私はないと考へる、農業保險の一番農民に歡迎せられない點はどう云ふ點かと云ふと、此の負擔の大きいと云ふことであります、第二は最も農業の忙しい時期に、此の保險問題で數多の人を動員しなければならぬと云ふ不便な點であります、更に其の事務の煩瑣な點であります、さうして其の上に農業保險金が交付せらる、ことが實に遲れるのであります、一年經つて昨年の保險金が尚ほ今に渡らない、現在長崎縣に於きましては、昭和十九年の保險金が、私が上京するに至るまで尚ほ政府の方よりの送金がないのであります、隨て一時立替として、一時借入金を議決して交付すると云ふやうな手續を執ると云ふ始末であります、兎にも角にも、此の農業保險の負擔金が存在する限り、町村農業會と云ふものは、經濟部の收益のあるものは兎に角ないものは恐らくは他の指導方面の活動も、總ての方面に於て活動は一切出來ないと云ふのが現状であると私は申して宜いと思ふ、此の際農業保險と云ふものに對しては、寧ろ廢止を希望する者さへあると云ふ情勢でありますから、此の農業保險に對するもう少し根本的な改正を私は要望したいのでありますが、政府は斯樣なる點に付て御認めになつて居るかどうか、更に之に對する改正の御意思を持つて居られるかどうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=38
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039・楠見義男
○楠見政府委員 農業保險制度を創設致しますまでには、多年農民側からの猛烈なる要求がございまして、此の制度を政府として採用するに致りますまでにも、尚ほ七、八年の年月を要して諸般の準備を整へて、此の制度を施行することになつたのであります、結論と致しましては、結局先程申上げましたやうな危險率の算定、竝にそれに伴ふ保險料金の問題、是が一番大きな問題であります、普通の營業保險のやうな建前で參りますと、結局農家の負擔と云ふものは、現在以上に相當甚だしくなるのでありまして、隨て國家が或る程度の負擔を持つて、一般農家の負擔を輕減して居る、斯う云ふ情勢になつて居るのであります、唯此の保險を實施して參ります上に於て色々な手數が掛り、又色々保險金の交付の時期が遲れると云ふやうな點に付きましては、御話の如き事例も絶無とは申されないと思ふのであります、結局是は組合なり或は政府に於きまする手續が遲れると云ふやうな點であらうと思ふのでありまして、是等の點に付ては十分改善をすべきことであらうと存じて居ります、同時にそれ以外のことに付きましても、保險が眞に企圖致します目的を達成致しますやうに、改善すべき點は今後尚ほ研究を重ねて參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=39
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040・鈴木重次
○鈴木(重)委員 農業保險は保險法改正の當時、東北地方の冷害或は關西方面の稻熱病、之を是非取上げて戴きたいと云ふことが委員總ての希望であつたのでありまするが、色々と是には理由があつて遂に之を採擇しないと云ふことでありました、併し若し此の冷害竝に稻熱病等を此の保險より除外しての保險法であるならば、私の考へる限り此の農業保險は撤廢されるが此の際宜いのではないか、斯う云ふ氣持を持つて居ります、どうぞ此の點に付て政府の方に於ては更に御研究を御願ひ致して置きます
最後に農業團體と府縣方面に於ける指導のことでありまするが、指導事業の一元化を圖らなければ、現在の如き二元的の指導を致しますことは、地方に於ては其の指導方針も一定せず、且つ摩擦があつて極めて遺憾の點が多いのであります、本會議或は他の委員會に於きまして、此の指導方面に付ては之を市町村長の方に指導權を移すやうにと云ふやうな意見も出たやうでありますが、現在のやうに農業團體法案に既に指導に關する施設を設けてあります以上は、私は府縣は計畫、指導の面に於て、政府の意を體して農業團體に向つて指導と監督を致すと云ふことに止め、最下部の指導は總て農業團體方面に一元的に之をやらせる、斯樣な方法に御改め下さるならば、總ての點に於て極めて能率的であり、又人的方面に於ても極めて經濟的であります、現在のやうな二元的の行き方は決して執るべきでないと感ずるのであります、之に對する御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=40
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041・楠見義男
○楠見政府委員 指導事業の一元化の問題でありますが、御答へを致します前に、私共農業團體の問題に付て、斯樣に考へて居るのであります、それは現在の農業團體の指導事業と經濟事業を分離すべしと云ふ議論も一部にあるのであります、それに對して我々は現在の情勢に於きましては、經濟事業と指導事業は分離することが出來ない、寧ろ分離すべからざるものであると考へて居るのであります、隨て今後の農業團體は少くとも經濟事業と指導事業とを併せ竝行して、其の事業の中樞の仕事として進んで參ると云ふことに方向附けたいと考へて居るのであります、さう致しますと、結局只今御尋ねの行政官廳の指導と農業會の指導と云ふ關係は、只今申上げました我々の農業團體に對する考へ方を以て律しますれば、當然そこに結論が出て參ると考へて居るのであります、即ち行政官廳に依る指導は、一般の大綱と申しますか、大きな方針と申しますか、さう云ふ大綱の指導に止めて、實際の指導は專ら農業會の方々に當つて戴くと云ふ方向に進むべきであらうと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=41
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042・鈴木重次
○鈴木(重)委員 終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=42
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043・川崎巳之太郎
○川崎委員長 それでは午前の質疑は是で終り、休憩に入りまして、午後一時半から開會致したいと思ひます
午後零時六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=43
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044・会議録情報2
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午後二時十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=44
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045・川崎巳之太郎
○川崎委員長 只今より午前に引續き開會致します、委員諸君に申上げます、此の委員會は御存じの通り四つの法案を併託せられて居るのでございます、即ち第一は農業團體法中改正法律案、第二は水産業團體法中改正法律案、第三は戰時森林資源造成法中改正法律案、第四は蠶絲業法改正法律案、此の四つの議案を併託せられて居るのでございまするし、隨て政府側に於きましては、此の四つの法案に對する當該當局の方が答辯の爲に出席して居られます、只今まで、昨今兩日主として農業團體法中改正法律案の御質問がございましたが、是も尚ほ續けますけれども、同時に其の他の三つの法案に付ても一つ混ぜこぜに御質疑を願ひます、此のことを申上げまして、通告の順序に依りまして、只今より大石大君に御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=45
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046・大石大
○大石(大)委員 農林大臣見えぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=46
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047・川崎巳之太郎
○川崎委員長 大石君から内務大臣、司法大臣の出席要求もございましたが、兩大臣御見えになる機會がございませぬ、農林大臣に付ては今交渉して見ますから、其の他の政府委員に對して御質疑の點があらば、其の點を今仰しやつて下さるやうに願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=47
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048・大石大
○大石(大)委員 それでは政府委員に御尋ねを致しまする事項のみ付て質問を致します、政府は曩に新聞に発表致して居りますが、籾摺の一元化をやる、一定の場所に籾を運ばして、そこで脱穀をやる、斯う云ふことが新聞に發表されましたが、それはおやりになることになつて居るのでせうか、それを先づ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=48
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049・楠見義男
○楠見政府委員 籾摺の一元化に付きましては、實は食糧管理法の第九條に於きまして、籾の加工に關する制限の規定があるのでありますが、それに基きまして、食糧管理法施行規則に、只今御述べになりましたやうな籾摺の制限の問題を新たに加へたのであります、此の籾摺の問題は、生産量を明確にし、又戰時中に於きましては、寧ろ勞力の節約と云ふやうなことから致しまして、更に又機械化、電力化と云ふやうな觀點からも致しまして、色々斯う云ふ問題があつたのでありますが、食糧管理を愈愈強化して參りまする今日の實情から致しまして、先程申上げましたやうな法律の規定に基いて、今般施行規則を改正すると云ふことになつたのであります、其の内容は、農業會なり、農事實行組合、或は地方長官が指定致しまする籾摺業者、斯う云ふやうなそれぞれの籾摺所に於きまして共同籾摺をして行く、尤も地方の實情に依りまして、さう云ふやうなものもないと云ふ場合には、適宜の方法を地方長官に於て講じさせる、斯う云ふ風に、大體地方の實情に即した方針で以て籾摺の統一と言ひますか、制限を考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=49
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050・大石大
○大石(大)委員 地方の情勢に依りまして左樣な方法を執りますことが、或は籾摺の能率増進ともなるかも知れませぬが、先づ四國方面のことを申上げようと思ひますが大體農民の聲は非常に之には反對であります、又寄り寄り私共知合の議員に聽いて見ましても、同じ聲があるのであります、御承知の通り農村には小運搬を致しますのには「リヤカー」とか其の他の機械等もありますのですが、戰爭の爲に左樣な物がなくなつてしまつて居る、此の籾を一定の場所に運んで更に又米を持つて歸らなければならぬ、非常な手數が掛りますると同時に、山村などに參りますならば、小さい山を越えて向ふに持つて行かなければならぬと云ふ問題も起りはせぬかと思ひます、さう云ふ點から見ましても、私は甚だ策の得たものではない、斯う云ふ風に考へます、もう一つさうすることが米の實收の額をはつきり掴むことが出來る、一定の場所に籾を運ばせまして籾を摺る、さうするならば何がしと云ふものは法定の保有米は是しかない、それだけ殘してあとは管理米にすると云ふことになりますれば、洵に便利でせう、併しながら農林大臣が機會ある毎に、米の供出は農民の同胞愛に愬へて極めて圓滿の間に、寧ろ農民の自主的な供出を望む、從來の如き強權の發動は一切しない、斯う言はれて居る、洵に米の供出に一段と民主性を加味した志でありまして、私共喜んで居るのでありまするが、今の此の一元化をやつて管理米を確保すると云ふことは、農林大臣の御話と少し違 はせぬか、非常に官僚的な獨善的な考へ方ではないか、斯う思ふのであります、今一般農民の考へ方は、戰爭中とは變つて居ります、そこへ持つて來て籾を一定の場所に持つて來させる、さうして其處で摺らして管理米を確保すると云ふやうな方法に出ますと、非常に私は供出の成績が惡くなりはしないか、斯う云ふことを心配するのであります、さうして又成程強權の發動はしない、警察權の發動は致しませぬが、それよりももう少し上手にさう云ふ權力とか云ふものを後の方に引込めて置いて、さうして否應なしに取上げて行く、斯う云ふ風に農民が感ずる、斯う云ふことを考へる時に同胞愛に愬へて供出させることと、此の籾摺の一元化と云ふ政府の趣旨とは非常に開きがある、隨て農民の感情を非常に惡くして、是が延いて増産意欲の減退となり供出に對する熱意がなくなるのではないかと云ふことを心配する者でありまするが、政府の御所見はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=50
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051・楠見義男
○楠見政府委員 籾摺の今囘の制限に依りまして、個々の農家が非常に手數が掛るではないかと云ふことを中心としての御話でございますが、實は從來も此の巡囘籾摺業者と申しますか、斯う云ふやうな機關が個々の農家に廻つて居つた事例もあるのでありまして、農事實行組合等に於て新たにさう云ふ設備を設ける所は別でありますが、さうでない所は、勿論農事實行組合が設けると云ふ場合も、お互ひの組合員は協同で以てさう云ふ新しい機械を購入し、又は搗精を實施する譯でありますが、さう云ふ話合ひの付て居らない所、即ち個々の農家に廻る所には、從來の巡囘致して居りました籾摺業者を地方長官に於て指定する、斯う云ふことになる譯でありまして、只今御話の如く一山越えて米を持つて行く、又摺らしたものを持つて歸ると云ふやうな、農家に著しく手數が掛ると云ふやうなことは、極力避けなければならぬと思ふのであります、それから籾摺の問題と同胞愛に愬へての供出責任との問題であります、是は矛盾するのではないかと云ふやうな御尋ねでありますが、實は此の籾摺の問題に付きましては、色々從來から生産量に對する農民の報告と云ふもの、又之を供出せしめる方面に於きまする其の希望と云ふ點に於て、實收高を中心と致しまして、色々紛爭のありましたことは御承知の通りでございます、隨て斯う云ふ點に付てははつきりとした基礎の上に於て、お互ひが話合つた方が宜いのであります、生産量が一方ではあると言ひ、一方ではないと言ふ、結局現實の問題としては中々それがはつきり致しませぬ爲に、お互ひが却て迷惑を生ずると云ふやうな事態も少くなかつたのであります、隨てさう云ふ點ははつきりして、其のはつきりした基礎の上で話合ひをすると云ふことが、色々な弊害を生じない本ではないかと云ふやうなことを考へて居るのであります、勿論之に依つて從來のやうな風に官僚的に此の事を考へて居ると云ふやうなことは毛頭ないのであります、寧ろ只今申上げますやうに、實體をはつきりとして、其のはつきりした實體の上に於て、お互ひに能く話合ひ、又農林大臣が豫ね豫ね言はれて居りますやうに、此の食糧事情の下に於て、農家の同胞愛に愬へて供出をして戴かうと云ふ點とは矛盾せずに、寧ろさう云ふ意味に於て此の問題を考へて參りたい、斯樣に考へて居りますので、左樣御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=51
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052・大石大
○大石(大)委員 さう致しますと、從來の如く籾摺業者と云ふものが機械を背負つて戸々を廻つて行くことも御認めになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=52
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053・楠見義男
○楠見政府委員 それは地方長官に於て指定する籾摺業者と云ふ言葉を食糧管理施行規則の中に謳つて居るのでありますが、是は從來の業者を地方長官に於て指定する、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=53
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054・大石大
○大石(大)委員 指定することは分りましたが、一定の場所に持つて來なくとも、各農家に就て其の業者が背負つて行くことは差支へないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=54
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055・楠見義男
○楠見政府委員 御話の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=55
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056・大石大
○大石(大)委員 一定の場所に集めまして摺る場合もあらうと思ふのでありますが、それは總て生産の量をはつきりと掴むことが趣旨だと仰せられますと、其の數量の報告と申しますか、それ等は籾摺業者がやるのでありますか、誰か監督が附くのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=56
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057・楠見義男
○楠見政府委員 是は御承知のやうに各市町村には食糧檢査員と云ふ者が居ります、其の實體に付きましては、食糧檢査員が之を認定すると云ふことにならうかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=57
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058・大石大
○大石(大)委員 地方木材會社が總ての木材を扱つて居るのでありますが、此の木材會社のあるが爲に、もう植林はしないと云ふやうな聲も相當高いのであります、例を申しますと、軍需品を積出したのでありますが、公定價格で山主が賣る、さうして搬出が非常に急を要するものでありますから、總ての運賃が闇である、さうして今度山主に金を拂ふ時には逆算して持つて來ますから、甚だしい例は、山を賣りまして自分の手に入つたのはたつた四百二十圓、所得税は二千五百圓位、斯う云ふものがあります、さう云ふ譯で地方木材會社に對しましては一般の植林者、山村の農民は非常に反感を持つて居る、斯う云ふことがありましたので、如何に伐つた跡へ植林など督勵致しましても、思ふやうに成績が擧らぬと思ふ、聞く所に依りますれば、斯う云ふ統制會社は廢止されるやうなことを聞くのでありますが、政府の方に何かさう云ふ御詮議があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=58
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059・黒河内透
○黒河内政府委員 戰時中の非常伐採の過程に於て只今御示のやうな事例が甚だ多く、殊に山元に於ける立木の價格が非常に安くなつたことを我々も聞いて居りますので、此の度の價格改訂に於きましては、それ等の點も考慮致しまして、物價の趨勢に應じて當然立木所有者が享受し得べき立木價格と云ふものを確保するやうに致したいものと考へまして、左樣な見地から此の度價格改訂を致した譯でありますが、地方の状況に依りましては、尚ほそれを以て不十分な點があるかも知れませぬけれども、大體さう云ふ風なことを目標として、價格改訂を致した次第であります、尚ほ地方木材會社の將來の問題に付きましては、只今のやうな觀點から致しまして、地方木材會社に對して、色々非難をして居る向も聞及んで居る譯でありますし、又他の面から色々風評のあることも聞いて居ります、其の中に全部が全部地方木材會社其のものの責に歸すべきものでなくて、、只今も大石さん御話になりましたやうに、非常の措置の爲に輸送其の他に非常な入費が掛つたと云ふやうな事情の爲め、山元に迷惑を掛けた、其の結果が地方木材會社の不當の處置と云ふ風に誤解された爲に起つて來て居る風評もありませうし、又我々の聞及んで居る所に依ると、軍需優先の爲に一切の民需を斥けて、是は又統制規則から言へば當然の施策であつたのでありまするが、さう云ふことの爲に、地方木材會社に對して色々批評を受けて居ることも聞いて居る譯であります、固より其の外に地方木材會社自體の内部の色々な事務上の關係其の他から思はざる迷惑を國民に掛けて居るのもあると思ひます、それ等の點は色々木材會社の事情に依つても違ふと思ひます、是等の處置に付きましては、今度の統制規則の改正に依つて、地方の状況に應じて――價格を一元化して參りますと、其の爲に却て生産意欲を落し、或は又地方の必要な方面に對する供給が不圓滑になると云ふやうなことがありましてはと存じまして、地方長官に於て地方の實情に即するやうに處置して貰ふやうに一應改正して居る譯であります、今後の處置、即ち更に一段と進んだ地方木材會社の處置に付きましては、尚ほ能く考慮致しまして、地方の實情に即するやうな處置を執り遺憾なきを期して參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=59
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060・大石大
○大石(大)委員 適地適作のことに付きまして、午前中角君から御尋ねがあつたやうでありますが、此の生産統制と云ふものは、今後もまだ續けて行かれる積りでありますか、近く御止めになるか、それを先づ承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=60
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061・楠見義男
○楠見政府委員 生産統制と申しますか、所謂綜合作付割當の問題でありますが、此の點に付きましては、此の食糧事情が窮迫して居ります現在の情勢の下に於きましては、尚ほ今後も繼續して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=61
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062・大石大
○大石(大)委員 私の御尋ね致したいのは割當もあります、高知縣の事のみ申上げて洵に恐縮ですけれども、高知縣は米が足らぬで相當農林省に今度あたりも御迷惑を申込んで居ると思ひますが、御承知の通り、高知縣は從來二期作をやつて居つた、私共青年の當時は百姓をして居りましたが、其の時分には一期作に適當する稻をよう發見しなかつた、そこでやはり麥を作りまして晩稻をやつて居つた、、所が三年に一遍か五年に一遍かは、あの季節の颱風に襲はれまして收穫皆無だつた、そこで色々研究を致しました結果、あの衣笠早稻と云ふものを發見した、是は衣笠と云ふ部落の篤農家の吉川と云ふ人が發見したものであります、七月頃に穗が出て熟れる、それを氣違ひ穗と稱して居りますが、之を色々配合をして七月中に收穫の出來るあの衣笠早稻を拵へて、爾來二期作になつた、所が森田とか云ふ農業課長が來られて、此の高知縣の平野には晩稻を作つて麥を作れば一擧兩得である、而も此の早稻を晩稻に變へるならば十万石の増産が出來る、斯う香川縣と比較しての話で、そこで、農民側は反對した、是は永い間の經驗で、晩稻は宜い場合もあるが三年か四年には必ず一遍穫れぬ、之を以て反對した、所が、沖野知事が見えて之を強行しようとして、晩稻に變へたが宜いかどうかと云ふので審議會を作つた、其の審議會には篤農家、百姓、農業會長、町村長會長であるとか云ふやうな人が入つて、遂にやることになつて縣令を發布した、所が其の縣令を出して強行した年から今年に掛けて三年間穫れた、今年は皮肉にも早稻は非常に良かつた、漸く私共が知事に交渉して、三割だけは二十年度に作らさうと云ふことになつて作らせた、其の三割は大豐作、けれども是が三万五千町歩の水田の中たつた三割ですから一万二千町歩、あとは全部晩稻、所が本年は二度ともやられまして、御承知の通り皆無である、洵に甚だしいのは安藝郡と云ふ郡の百姓共は、如何に縣令が出ても作らない、晩稻はやらない、皆一緒に入らう、此處まで決心して早稻の苗代を作つた譯でありますが、巡査が苗代を切つてしまつて、やはり晩稻を作らしたが、是も皆無である、そにで郡民が憤慨しまして、地方事務所に押掛けて行つて地方事務所の責任を問うた、事務所長は何處かへ逃げた、其の急報に接しまして知事が駈付けて行きまして、平謝まりに謝まつて其の場は濟んだ、其の知事は今厚生省に來て居る、斯う云ふやうな譯でありまして、何と云ふ種類を作れと云ふやうに作付を統制せられますと、農民はそこにちつとも自主的な工夫もせなければ、創意もなくなつてしまふ、隨て生産意慾がなくなるのでありまして、是が非常な減産となり、又是が供出の不成績となるのであります、高知縣のやうなああ云ふ一種變つた風土氣象の所へ、他から持つて來られまして、自分の經驗を其の儘活かし得ぬやうなことを強ひるが如きは破棄すべきことだと思ひます、其の意味に於きまして私は比の作付統制に對して御尋ねした譯であります、どうか今後はさう云ふ無理のないやうに願ひたい、やはり地方にはそれだけの理由があつて、永い間の百姓の經驗に依つてやつて居りますから、其の經驗を活かして行く、體驗を活かして行くと云ふことに御考へを願ひたい、是は三年間穫れずして農林省には二十万石以上も御厄介を御願ひ申して居る關係上申す譯であります
そこで私は第二に御尋ねしたいと思つて居りましたけれども、此の調子では何時大臣が來られるか分りませぬので、事務當局の方に御尋ねしたい、併し事務當局の方からどう云ふ御答へを受取りましても、實は失禮ですが納得出來ぬと思ひますから、此の際政務次官の方に御尋ね致したいのであります、私の御尋ね致しますのは、地租法の第七十條の第二項に規定せられて居ります所の永小作權の問題であります、此の永小作權がどう云ふ沿革と又どう云ふ歴史を持つかと云ふことは申上げませぬ、之を申上げますと相當時間を要しますので之を省きますが、要するに此の舊慣たる永小作權と云ふものは、永小作權者たるものは祖先に之を受けて所有する不動産だと、自分ではさう云ふ觀念であります、其の通りであります、元々民法に所謂永小作權とは全然性質を異にするものであります、主として開墾に依る土地であります、藩政の時分に於きましては、開墾の土地を拂下げましても、やはり門地門閥でなければ開墾土地の拂下は出來なかつた、そこで百姓は門地門閥の名前を借りて開墾土地の拂下を受けて、自己の勞力と資金で開墾したものであります、是は先刻御承知の通りであります、さうして名義料として僅かの米を盆若しくは節季に持つて來て居つた、所が明治七年の地租改正の時に、政府が地券と云ふものを發行した、所が政府に引繼ぎました所の土地臺帳と云ふものは藩主の大名の時にやつたので、藩主が持つて居つた、藩主の所では其の土地の名義は即ち門地門閥のものになつて居りまして百姓のものではない、そこで地權は名前を貸した人の方に行つてしまつた、さうして之を奇貨として名前を貸して居つた者は俺の所有權だと言ひ出した、其の時に訴訟を起しまして所有權を獲得した者もありますが、何と云つても封建の因襲粉紛たる時代で、多くの豪士とか御用商人とか云ふやうな者に對しまして訴訟なんかようしない、さうして他に擔保に入れるとか讓渡すとか、相續するとか云ふ場合に名前の切替をして居らぬのであります、其の都度いや五升上げよう、三升上げようと云ふのであつたが、所謂永小作料を引上げることとして大抵三、四斗、五斗上げた、是は全國的にさうであります、所が是が民法の發布に依りまして、所謂民法に謂はれる永小作となつてしまつた、民法の永小作權は御承知の通り設定行爲に依るのでありますが、是は設定行爲ではない、元々さう云ふ關係から來て居る、所が民法に依りますと、永小作權の期限は五十年となつたのでありますから、斯う云ふ性質を持つて居る永小作權は、其の民法に依つて支配されたら大變でありますから、そこで民法施行法の第四十七條に規定せられたのであります、四十七條の第三項を設けたのであります、是は明治三十一年の民法發布の時に問題が起りまして、私共まだ未成年の時代でありましたけれども、此の運動に參加したのでございます、民法施行法の四十七條の第三項には「民法施行前に永久存續すへきものとして設定したる永小作權は民法施行の日より五十年を經過したる後一年内に所有者に於て相當の償金を拂ひて其消滅を請求することを得若し所有者か此權利を抛棄し又は一年内に此の權利を行使せさるときは爾後一年内に永小作人に於て相當の代價を拂ひて所有權を買取ることを要す」、斯うなつて居ります、其の五十年が明後年になつて居るのであります、昭和二十二年の七月十日で期間が滿了する、是は第五十一議會以來問題になつて居て、第五十一議會の若槻内閣の濱口大藏大臣が租税の改革をやつた、其の時に二百圓以下の自作農は免税すると云ふ制度を設けた、所が此の永小作權者は税を納めることになつて居る、總ての公課を負擔して居る、是が拔けて居る、それで私より之を質問致しまして、色々の論爭の結果、今の町田忠治君と、原脩次郎君とが、私と大臣の間に仲裁に入つて一つの法律案を作つた、其の法律案が今の地租法の第七十條の二項であります、第五十一議會當時は地租條令がなかつたから、大正十五年法律第七十號は單獨法で永小作權を認めた、今度地租條令が廢止になつて地租法が出來た時に、其の儘其の法文を現在の七十二條に入れてある、之に依つて自作農を生み出した、前者に於ての此の永小作權が自作農になつて居る、其の後此の永小作權が、繼續して耕作する者で耕作すると云ふ意思があるならば、地主は拒むことが出來ないと云ふ改正法律案を屡屡出したのでありますが、是も衆議院は通過したが、貴族院の方で閊へた、所が町田農相の時代に小作法を出された時に、是と竝行致しまして、永小作權整理要綱と云ふものを作られた、是も議會に出すに至らずして終つた、其の後起つた問題は、現在の農地調整法であります、是が有馬農相時代に井野君が次官の時にやられた、そこで此の永小作權が問題になつた、委員會ではあの農地調整法を修正致しました、民法施行法第四十七條の第三項の規定があるのだから、五十年の期間が滿了の時に永小作權者が繼續して耕作をする意思がある時に於ては、地主は之を拒むを得ずと云ふ條項を加へると云ふ修正を提出した、所が其の時に有馬氏は明年必ず單獨法を出すから、是は無修正で通過して呉れと云ふことで、委員會に於て承諾したのであります、所が翌年は支那事變となりまして、事變後まで待つて呉れと云ふので、今日になつて居るのであります、此の永小作權者は一つの自作農であります、所が今日の時勢から申しまするならば、五十年の曉に地主に取上げられるとも思ひませぬが、民法の四十七條の三項が嚴として生きて居る間は不安に堪へませぬ、のみならず銀行とか、さう云ふ機關に擔保に入つて居つた、所が段々と期限が切迫して參りましたから、銀行は擔保に取らぬ、非常に安くなつた、斯う云ふ譯でありまして、まあ、昭和二十二年のことであるから、さう急がなくても宜いと何時も言はれることでありますが、不安で色々の面に支障が起つて居る、今日自作農創定にあれ程力を入れて居るのでありますが、此の永小作權はさう云ふ歴史を持つて居りまするし、さう云ふ沿革も持つて居るのでありますから、此の際農林當局の方に於きましては、どう云ふ御考へであるか、勿論此の法の改正は司法省に屬しませうが、司法省と其のことを今御話になつて居るか、又之を近くなさるかどうかと云ふことを一つ聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=62
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063・紅露昭
○紅露政府委員 御答へ致します、大石委員から縷々御述べになりました民法施行法第四十七條の永小作權に付きましては、政府に於ても決して無關心で居る譯ではありませぬ、然らば今後如何なる措置を執る積りかと云ふやうな御尋ねでありましたが、無論此の法律の改正を致すと致しますれば、管轄廳である所の司法省の所管になりまするが、沿革と云ひ、其の他色々御述べになりました事情から致しまして、政府と致しましては永小作權の消滅の時期までには、必ず責任を以て司法當局とも十分連絡を取り、出來るだけ速かに成案を得まして、是が取扱に付ては遺憾なきことを期したいと考へて居ります、尚ほ御述べになりましたやうな御趣旨に付きましては、十分考慮に入れまして研究することに致したい、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=63
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064・大石大
○大石(大)委員 大體申しまするならば、今度の農地調整法の改正の際に、是はどうしても織込まなくてはならぬ性質のものだと思ひます、固より民法の問題でありまするけれども、どうしても此の農地制度の斯くの如き法案が出來ます時に入るべき筈になつて居つたものが一時延びたのであります、其の委員會に於て伺ひたいのでありますけれども、私は委員ではありませぬから其の委員會に於ての發言の機會はありませぬが、もうちやんと調査は濟んで居る、是は山本悌二郎君が農林大臣の時の問題で、砂田重政君が參與官でありましたが、當時全國の永小作權の整理要綱を拵へる爲に、私委員に頼まれまして、其の當時農林省にも行つたのであります、又裁判所の方に行きましても、特に高知縣が是は一番多いのでありますから、司法省の指示に依りまして、堀と云ふ裁判所長から特に私に話がありました、それで裁判所に於きまして、斯うした沿革であると云ふことを話しまして、向ふは之に付ての「パンフレット」も作りました、其の後此の永小作權に付きましては、司法省でも出して呉れるかも知れない、殊に大森と云ふ人が次官の時に必ずやると云ふので調査も出來て居つた、さう云ふやうに準備が出來て居つたのでありますから、どうか無理は申しませぬが、此の機會に現在審議中のあの調整法に一項を加へて貰ふことが出來ますならば、洵に結構と思ひます、是は希望として申上げて置きます
それから是は内務大臣に御尋ねする積りでございますけれども、事農村に關することでございますから、あなたの所管ではないかも知れませぬが、皆迷つて居りますので御伺ひ致します、是は事務當局の方でも結構でございますが、實は先月の十九日に高知縣の長岡郡長岡村に一つの災害事件が起きたのであります、御承知の通り土佐には「アメリカ」軍が上陸すると云ふので、而も又一番穀倉とも言はれる平野に上陸すると云ふことで、平野一面背面の山岳に對しましても厖大なる防備をやつた、隨ひまして終戰となりますと、兵器彈藥と云ふものが澤山ある、そこで長岡村と云ふ所に海軍の通信隊がありまして、是が此の近傍の砲彈を集結して山の如く積上げた、迚も廣い所に澤山積上げた、それを勤勞奉仕に依りまして分解をしまして、火藥は穴を掘りましてそれに入れる、之を毎日やつた、其の日も監督と稱する者が來て、其の日の勤勞奉仕に來ました何十人かの人間に、其の砲彈の解體竝に彈藥火藥の運搬と云ふことをさせて居つたが、其の監督の人が脇に行つてしまつた其の間に、奉仕に來た者が無暗に入れ始めたので、其の近傍の野良で仕事をして居りました農民共が聲を擧げて之を制した、其の制止と同時に一ぺんに火が燃え上りまして、數日來あの廣い面積を火藥を擔いで來る間にあちこちに落ちて居た爲に一面に天に冲する火が揚つた、五町位距てて麥蒔をして居つた者が、其の火の立つた方に向いて居つた爲に其の頬が燒けて居ります、是は大變だと云ふので、皆壕のある者は防空壕へ入る、或は木の根に隱れ、或は川に入つて身體を伏せる、さう云ふやうな譯で人畜の死傷は――死んだ者はありませぬが、負傷者の數は澤山ある、所がそれが遂に分解をせない砲彈に移つたものでありますから、どんどん爆發する、午前の十時から晩の十時過まで、砲彈が四方八方に飛ぶ、全壞して跡形も無い家は十五、六軒であります、半壞は一里四方に及んで居ります、建具がなくなつた、天井が飛んだと云ふものは一里四方にある、殊に彈丸が西南に向いて居つたさうでありますから、西南に向つて彈丸が三里位飛んで居る、大砲の彈丸が飛んで來て、梁なり柱なりを貫くから忽ち壞れる、それから全部燒けて跡方もなくなつた家は僅か八軒ですが、何分にも海軍のさう云ふ施設がありまするから、戰爭中は幾らか食糧なり衣類等が疎開してありましたが、終戰になつて皆持つて歸つた、それが火が揚ると皆避難して彈丸がどんどん來るものですから何も出すことが出來ないで丸燒、又稻は苅つて田圃に置いてあつたが皆燒けてしまつた、さうして其の附近の田はもう硝子の割れさしと砲彈の破片で埋まつてしまつた、桑園は皆燒けてしまつた、斯う云ふ譯で非常に慘憺たる情勢であります、どう云ふものか所轄の警察では巡査部長が二名來ただけで、誰も來ない、實は私も家の飛んだ被害者の一人でありますが、進駐軍に話して見ると、進駐軍は全部海底に沈めて處理することにして居つた、所が日本の政府が眞鍮の冶金が欲しいから呉れと言ふので任せた、だから俺等の責任ではないと云ふ話です、縣の方でも一向責任がない、兎に角斯う云ふ大きな災害が起つたのでありますから、皆責任を囘避して居る、一體是は何處に責任があるか、其の責任の所在を伺ひたいのが要點で、内務大臣に伺ひたいのでありますが、内務大臣が居なければ國務大臣として御答へを願ひたいと思ひます、急を要するのでありますから、何とか之を救濟の途はないものであるか、縣に行くと戰爭中ならば戰災者救濟で行くが、戰爭が濟んでしまつたから駄目だと言ふ、災害の跡に「バラック」が建つて居るが、坪七百圓、私が見積つた所「バラック」同樣のものを建てても百万圓やそこらでは出來ぬ、壞れた坪數がはつきりしませぬし、私も僅か三日しか其處に居りませぬから調べが付いて居りませぬが、是は皆叩かれ損、戰に勝たうと思つてあの邊の百姓が盛んに鐡砲の彈丸を運んだが、今度其の彈丸で皆やられた、是で非常に憤慨して居る、是が此の儘顧みられないならば米の供出はしない、米は作らぬと言つて居りますが、それが相當廣い範圍に亙つて居ります、百姓のことでありますから、農林省に於ても何か御心配願ひたいと思ひます、一體是は何處に責任がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=64
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065・紅露昭
○紅露政府委員 御答へ申上げます、大石委員から今色々御述べになりました高知縣に於ける災害に付きましては、私も初めて承知したのでありますが、どうも事の起りが假令人爲上の取扱ひの粗漏の點にあつたと致しましても、其の起つた災害に付て、殊に其の被害者に取つては自然災害と略略同樣に考へて然るべきでないかとも思はれるのであります、併し唯自然災害と同樣に扱つて然るべきかどうかと云ふことに付ては、是れ亦重大な問題であると思ふのであります、そこで此の措置をどうするかと云ふことに付きましては、どうも是は内務省で御取扱になるのが當然かと思ふのでありまして、唯其の結果が農作物に被害が及んだと云ふのであつて、是が措置は寧ろ内務省當局の御取扱になるべきものでないか、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=65
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066・大石大
○大石(大)委員 私もさう思つて、今朝から内務大臣の御出席を要求して居りますけれども、見えないやうですから、御參考までにと思つて申上げた次第です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=66
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067・紅露昭
○紅露政府委員 尚ほ私の方から内務省の方へも連絡を取りまして、御質問のことに付きましては御答辯申上げるやうに致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=67
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068・大石大
○大石(大)委員 午前中に鈴木君の質問の中で、適正規模の御尋ねをしたやうでありますが、之に對しまして、事務當局から御答辯を得て居りました、御承知の通り復員或は在外同胞の歸還竝に都市等よりの疎開等に依りまして、農村には段々と人口、戸數が殖えつつあるのであります、又今後も殖える情勢にあることは御承知の通りであります、そこで適正規模に付きましては、地方々々に於て其の反別が違ふやうでありますが、四國地方で見ますと一町五反歩と云ふやうに新聞で見ましたが、現在の四國地方に於きまする一戸當りの耕作面積は七反位であります、さうしますと、之を政府の考へて居ります通り一町五反と云ふ農家が出來ると致しますと、半分が何處かへ分村しなければならぬ、或は農を廢めなければならぬ、終戰前までは滿洲に對して隨分分村をやりましたが、今後は行先がなくなつて居ります、適正規模をやれば勢ひ農家の戸數を減らさねばならぬ、何處へ持つて行くか、之に對しまして御計畫があるなら伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=68
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069・楠見義男
○楠見政府委員 自作農創定の場合の適正規模と致しまして、一應北海道から九州に亙るまでの間に於て、畑作、或は水田、或は一毛作、二毛作、都會の周邊と云ふやうな、色々のことを考慮致しまして、一應の標準は、只今御述べになりましたやうに四國では一町五反と云ふやうな基準を決めて居るのでございます、隨て出來るだけ斯う云ふ標準に付きまして考慮して參りたいと考へて居りますが、一面只今御述べになりましたやうに、今後の復員、或は歸還、更に又人口増と云ふやうなことから考へて參りますると、唯理窟通りに之を考へて參りますと、今御述べになりましたやうな事態が縣念せられる譯であります、隨て理想と申しますか、一應の標準はさう云ふ所に置いて居るのでありますが、農村に於きまする現在の人の包容力をどう云ふ風に活かして行くかと云ふことになつて參りますと、是も午前中に申上げたのでありますが、出來得る限り農村に於て他の機械力なり工業力、或は電化と云ふやうなものを取入れますと同時に、農作物の加工に付て、之を高度化して行くと云ふことに依つて、結局農村の經營を多角化して參る、之に依つて人口の包容力を増して行く、標準としては先程申上げた通りでありますが、假に其の標準に達せなくても、今申上げましたやうな方途で以て多角化して參る、それに依つて人口包容力を維持して參らう、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=69
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070・大石大
○大石(大)委員 一應は左樣に受取れるのでありますが、併し實際問題として、私の村は皇國農村として、模範村として適正規模をやつたのでありますが、少くとも政府の欲する適正規模通りにやりますと、五百戸何處かに行かなければなりませぬ、それが閊へて今困つて居ります、恐らく私は四國あたりの情勢から見まするならば、何と申しましても百姓は半分廢めなければならぬ、百戸ある戸數はどうしても五十戸にしなければならぬ、其の五十戸が農村工業化に依つてそれだけの過剩の戸數を消化して行く、それで又生活が安定して行かれる、一應書面の上ではさうでありますが、實際は出來ぬと思ふ、さればこそ是までは多く滿洲の方へ行つた、又或は北海道其の他に餘地があるかも知れませぬけれども、あの一昨日か新聞に出た通りの適正規模でありますと、一體現在の農家戸數が幾ら位に縮まるのでありませうか、概括の數字がございますれば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=70
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071・楠見義男
○楠見政府委員 一應最高標準面積として御示しして居るのでありますが、之に依つて農家戸數がどれだけになるかと云ふことに付きましては、只今其の資料を持つて居らないのであります、併し現在の農村の全人口の産業別配分と申しますか、農業に於て包容して居まする全人口は、農業に付きましては四割三分を包容致して居るのであります、更にそれ以外に新しく御承知の土地開發と云ふことに依りまして、百万戸、一戸假に五人平均と致しますと五百万人と云ふものが今後包容せられべき人口であらうと思ふのであります、そこで然らば現在の四割三分を包容して居りまする農村人口を、適正規模と云ふ觀點から今直ちに一律に之をやる結果、餘つた人口をどうするかと云ふことになりますと、寧ろ方法としては逆のやうな方向にならざるを得ないのであります、隨て農村に於ては結局現在の是等の人々をどう云ふ風にして包容して行くかと云ふことになりますると、私が先程申上げましたやうに、農村に於てそれ等の人々を包容するに足る新たなる産業或は工業と云ふやうなものを興して、之に依つて包容して行くと云ふことにならざるを得ないのではないか、斯樣に考へて居るのでありまして、結局今後の施策の方向はさう云ふ方向に進むべきであらう、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=71
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072・川崎巳之太郎
○川崎委員長 此の際委員長から委員諸君にちよつと申上げて置きたいことがあります、今より約二十分位の後選擧法中改正法律案が委員會が終つて本會議に廻るさうです、是は今囘提出された政府の重要法案の中の最も重要なもので、開院式の御勅語にも特に名指して示されて居るのでございますから、本議場へ皆樣がおいで下さることも結構であると思ひますのでそれまでの間此處の質問應答を續けます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=72
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073・大石大
○大石(大)委員 簡單に御尋ね致します、さうすると適正規模を實現するならば、農家戸數が現在より減ると云ふことは御考へになつて居られますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=73
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074・楠見義男
○楠見政府委員 現在の状態で、先程申上げたやうな色々の手段を講ぜず、現在の儘で參りますと、結局人口を減らさざるを得ないと云ふ結果にならうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=74
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075・川崎巳之太郎
○川崎委員長 尚ほちよつと申上げますが、大藏省から特に外資局長が見えて、外國に於ける邦人の資産に付ての御尋ねに對して答辯を致したいと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=75
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076・別所喜一郎
○別所委員 本問題に付きましては、昨日松延委員より御質問がありまして、一應政府委員より御囘答になつたのでありますが、之を以て滿足することが出來ず、大藏當局の御答辯を要求して置いたのであります、農業會經濟部の融資の運用に付きましては、政府の指示に從ひまして、外地の半官會社の社債を多く所持して居つたのであります、其の外地の社債が今後如何に處置せらるるかと云ふことは、農業會經濟部の運營の上に付きまして、重大なる關係を持つのであります、それは啻に農業會だけの問題ではありませぬけれども、今囘農業團體法が改正になり、理事監事等も民選を新たに致しますことに付きましては、其の基礎に付て非常な心配を持ち、恐らく是が大きな障碍になるのではないかと思はれる點もありますので、此の際外資局長の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=76
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077・野田卯一
○野田政府委員 此の際外地關係の社債、株式を所有して居られる數は非常に多いのであります、外地關係の社債で内地で發行されたものが、恐らく百億を超えるのであります、株式も相當巨額に上つて居ります、只今の所では聯合國の方針が、日本の國又は日本人が所有して居ります在外財産は取上げて賠償に充當すると云ふことを申して居ります、隨ひまして外地に色々な――滿鐵であるとか、或は北支那開發、中支那振興其の他幾多の事業を營んで居る會社があるのであります、其の會社の各種の事業なり財産なりが、本當に全面的に賠償に充當せられて來ると云ふことに相成るのであります、就きましては、斯う云ふ會社の債券を持つて居る、又は其の株主であると云ふ人達は、如何なる處置を執るかと云ふことに付きまして、政府部内に於きましても、非常に愼重な考慮を運らして居るのでありますが、其の金額を全部見積りますと、非常に多くのものになると思ひます、又之に對して政府が如何なる措置を講ずるかと云ふことに付きましても、日本の政府だけで獨斷的に決められないやうな事情もあるのであります、色々と考慮して居るのでありますが、大體の政府の氣持と致しましては、何等かの補償なり何なりの措置を講じなければならぬと思つて居ります、尤も其の金額とか、或はどう云ふ條件でどの範圍であると云ふことに付ては、財政の負擔其の他の各地の情勢に伴ひ、補償措置等がありまして、そこらの關係とも睨み合せて、愼重に考へて行きたい、只今の所では内容はまだ申上げるに立至つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=77
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078・大石大
○大石(大)委員 まだ三點位御尋ねしたいことが殘つて居ります、之は是非大臣に伺ひたいと思ひます、大臣の質問を保留致しまして、是で私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=78
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079・川崎巳之太郎
○川崎委員長 それでは五十嵐君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=79
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080・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 此の機會に於きまして蠶絲業關係の點に付きまして御尋ねを致したいと思ふのであります、第一點は繭の増産と農業會との關係でありますが、此の點に付きましては、次官に於て御答へを願ひたいと思ひます、政府は終戰後に於ける繭増産の重要性に鑑みまして、養蠶系統を農業會より速かに分離すべきものである、斯樣に私は固く信ずるのでありまするが、此の點に關する政府の御所見を御尋ね致したいのであります、今後の蠶絲業と云ふものが、日本の經濟再建の上に果すべき役割は極めて大きなものがあり、就中聯合國よりの食糧等の輸入の見返り物資として、一段と其の重要性を加ふることは、多言を要しないのであります、然る所、現在の機構に於ては養蠶系統の活溌なる活動を促進し、又同時に蠶絲業諸施策の適切なる實施を望むことは到底困難な状態にあるのであります、尚且つ現在の機構に於きましては、養蠶意慾の昂揚を望むと云ふことは、洵に無理な實情に相成つて居るのであります、斯う云ふことを考へて見ますると、繭増産と云ふ終戰後に於ける新しき事態に對處する爲に、私は速かに農業會から養蠶系統と云ふものを分離すべきである、斯樣に存ずるのでありますが、此の點御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=80
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081・紅露昭
○紅露政府委員 五十嵐委員の御質問に御答へ致します、今御尋ねの農業各部門毎の組合の分立の點に付きましては、御承知の通りに、過去に於て分立致して居りました爲に、種々の弊害が之に伴つて起つたのであります、そこで御尋ねのやうな今後見返り物資其の他に付て、養蠶をする上に於て分立をしたのが宜いのではないかと云ふことも、確かに一つの見方とは考へまするが、政府と致しましては、統合致して今日に參つて居りますので、やはり此の儘の形體で進みたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=81
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082・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 私は只今の御答辯とは全く見解を異に致すのでありますが、一體農業團體と云ふものは、戰時中農産物を初めとして、農家の生産するものを統制をして行かうと云ふ大きな狙ひを以て成立を致したのであります、隨て終戰後の今日に於きましては、農業團體が出來た當時の事情とは、全く事情を異にして居るのでありまして、本當に業者の熱意を十分發揮させ、創意工夫を十分思ふやうに事業に伸して行くと云ふ觀點から見ますと、今の農業會の中に包含をされて居つたのでは、到底十分な活動を期待することが出來ぬと云ふのが、是は本當に現在の實情を一應檢討されれば直ちに肯けることであらうと思ふのであります、殊に蠶絲叢主要府縣は之を分離致すべきことを心から希望致して居るのであります、現に末端組織である所の部落に參りますれば、普通農事組合と云ふものに對して、養蠶實行組合が現に存在して居つて活動して居るのであります、併しながら此の養蠶實行組合の活動も、上級機關が悉く農業會の中に包含されて居ります爲に、其の活動を相當束縛され、意の儘に動くことが出來ないやうな實情になつて居るのであります、其の他指導の徹底と云ふ點から申しましても、色々の角度から檢討を致しまして、現在の状態に於きましては、私は繭の増産の上に、少からざる支障を來すと、斯樣に考へるのでありますが、此の點は相當政府に於て御研究になる御考へがあるかどうか、重ねて此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=82
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083・紅露昭
○紅露政府委員 御質問のやうな會の自主的活動に俟つて増産に邁進しなければならぬと云ふことは仰せの通りであります、其の點は政府としても同感であります、併し又一面から考へまして、今日の此の制度に致しましても、是が指導運營に十分留意致しますれば、其の目的を達成し得ると考へて居るのでありますが、御述べの點に付きましては、今後篤と檢討を加へ、善處致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=83
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084・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 第二點は繭の増産と食糧との關係であります、政府は繭を食糧の綜合供出の中に包含せしむる意圖ありや否やと云ふ點であります、實際問題と致しまして、食糧の生産と繭の生産とは兩立することが非常に困難な實情にあるのであります、即ち食糧に重點を置いた場合に於きましては、當然養蠶經營の方面に影響があるのでありまして、現在の状態に見ましても、食糧に急なるの餘り、桑園は年々荒廢の一途を辿つて參つたことは御承知の通りであります、詰り繭増産の上に於きまして、最大の支障は食糧事情が惡化致して居ると云ふ點にあるのであります、そこで繭増産の對策と致しまして、又諸般の情勢から見て、繭は食糧なりと云ふ觀點から食糧の綜合供出の中に之を含めて參つたらどうかと考へますが、其の御意圖がおありになるかどうか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=84
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085・楠見義男
○楠見政府委員 只今五十嵐さんの御話の、繭は食糧なりと云ふ點に付きましては、私共も全く同感でございます、結局食糧を得ます爲に、其の見返り物資として主なるものは申上げるまでもなく生絲であります、隨て我々は此の繭は食糧なりと云ふ觀點に立つて、今後の養蠶に關する施策を考へて參らなければならぬと思ふのであります、そこで今御話の綜合供出制に入れるかどうかと云ふ問題でありますが、現在は食糧農産物の間に於ける綜合供出制を考慮致して居るのでありまして、同じ供出制の中にも、或は繭とか木炭とか色々の問題があるのでありますけれども、現在の綜合供出制は、食糧増産の綜合供出制でありますから、繭に付てそれを綜合供出制の中に入れると云ふやうなことは、實は現在の所考へて居りませぬが、併し根本の考へ方である繭は食糧なりと云ふ觀點から致しまして、或は此の專業養蠶家に關する食糧確保の問題とか、或は其の外色々資材確保の問題、斯う云ふ問題に付きましては、一般の米作農家と云ふやうな人々と同樣の意味で以て、是等に付ては出來る限りの措置を、政府としては講じて參りたいと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=85
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086・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 只今の御答辯に依りますと、綜合供出の中に入れると云ふことは考へて居らぬと云ふ御話でありますが、若しそれが非常に困難である、實現を期する上に於て非常に至難であると云ふことでありますならば、只今御話にありましたやうに、養蠶と云ふものが、從來食糧生産と比べまして、第二次的に取扱はれて居つたのでありますが、是は尤も無理もない次第であつたのでありますけれども、今後は養蠶家、或は蠶種の製造、或は生絲と云ふやうな面に對しましても、此の食糧と云ふことが如何に大きな影響を持つて居るかと云ふことを、十分御考慮なされまして、善處されんことを希望致して置きます
それから第三點は改正法律案と蠶絲業會との關係であります、政府は全國を地區とする中央の蠶絲業會と地方の蠶絲業會との關係を如何に御考へになり、又どう指導をなされんとするかと云ふ點であります、政府に於かれましては、蠶絲業會の改良発達及び統制を圖る目的を以ちまして、第二十九條に於て「蠶絲業會を設立することを得」としてあるのでありまするが、之に依りまして業者は目下中央に全國を區域とする蠶絲業會の設立を急ぎつつあるのであります、唯併し此の中央に於ける蠶絲業會と云ふものに重點を置きまして、一方に地方の特殊事情に基き發生せんとする地方蠶絲業會を輕視するが如きことがあれば、到底是は所期の目的を達することは困難である、斯樣に私は考へるのであります、そこで中央の蠶絲業會と云ふものと、地方の蠶絲業會と云ふものの關係をどう御考へになつて居るか、斯う云ふ點であります、此の點を一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=86
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087・山添利作
○山添政府委員 此の蠶絲業會の制度に付きましては、今までの法人の立法と建方を變へまして、大體法律に於きましては一つの基礎を作る、後の其の基礎の上に立つて如何なる法人組合を構成するかと云ふことは、是は關係業者の自主的の意思に任せてある次第であります、隨て只今御述べになりましたやうに、中央に於て一つの團體を作ると云ふことになつて居ります、此の全國團體に依りまして、全體的の統制を致すのでありますが、偖て繭の増産でありますとか、或は又繭の配給と云ふことになりますと、是は地方々々で處置すべきことも相當あらうかと存じて居ります、隨てさう云ふ地方的の要求に基いて、地方の關係業者が蠶絲業會を作られる、其の必要があり、其の要求を以て作られると云ふことであれば、それを認めて行き、又それを助成して行きたい、斯う云ふ風に考へて居るのでありまして、只今の所私の知つて居ります範圍では全國の蠶絲業會を作り、其の内部機構と云ふことで、地方組織を考へて居るやうでありますが、是が獨立の團體として發展して行き、さうしてそれが中央の團體と繋ると云ふことも亦結構である、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=87
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088・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 法案の第三十條に「蠶絲業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふ」斯うありますが、此の蠶絲業會と云ふのは、中央竝に地方の蠶絲業會を含めたものと解釋して宜しいか、此の點が一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=88
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089・山添利作
○山添政府委員 先程申しましたやうに、此の蠶絲業會の制度は農業團體法でありますとか、或は今までの蠶絲業組合法と云ふ制度と違ひまして、どう云ふ團體をどう云ふ風に作るかと云ふことは法律に特定して居るのでありまして、結局時の要求に應じまして、業者の自由なる創意に基いて必要なるものを作つて行く、斯う云ふことでありますから、今御話のやうに、中央地方を含んで居る、斯う云ふやうに解釋して宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=89
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090・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 第四點と致しまして、日本蠶絲製造株式會社の解散に伴ふ措置に付て御尋ね致したいと思ふのであります、其の第一點と致しましては、共助金に關する事項であります、同會社の共助金として支拂を致しましたる金額は一億五千万圓近くに上つて居るだらうと思はれるのであります、今囘蠶絲會社の解散に依りまして、新たに事業を始めようと思ふものは共助金を返して、さうして復元を致すと云ふことに相成つて居るやうでありますが、此の場合に共助金を返還をして新たに事業を始めると云ふことの出來ない方方、さう云ふ人々が相當あらうと思ふのであります、只今の豫想と致しましては、さうした人は當然共助金の返還は出來ない譯であります、隨ひまして返還不能の共助金と云ふものが約四千万圓見當に上るのではなからうかと豫想せられて居るやうであります、それから更に長纖維から短纖維への製造設備を轉換致しましたそれ等の費用と致しまして、同會社は二千六百万圓を要求致して居るやうであります、共助金の返還不能になる四千万圓を合せますと、六千六百万圓と云ふ數字になるのであります、之を一體どう處置をなされるかと云ふ點であります、同會社は申すまでもなく政府の指導に依りまして設立致されたのでありますが、當時事業の實態から見まして、此の大合同は如何にも行過ぎであると云ふやうな關係から、私共は當時之に反對を致したのでありますが、遂に是は政府の強力なる指導に依つて、企業の大合同をなさしめたのであります、其の後の同社の事業を見ますと、蠶絲類の生産意欲を低下し、更に創意を減殺せしむるに至つたことは、何と申しましても事實であらうと思ふのであります、そこで是等の斯うしたものを處置致しまするのに會社の責任と云ふことは固よりでありますけれども、政府に於きましても、會社創立の經緯に鑑みまして、相當の措置に出づべき責任ありと考へるのでありますが、此の點に關する御考へを一つ承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=90
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091・山添利作
○山添政府委員 只今の蠶絲製造會社の解散に關する問題でありますが、御述べになりましたやうな事情でございまして、蠶絲製造會社は、當時の事情として、又戰爭經濟に即應して蠶絲業を運營すると云ふ意味から、ああ云ふ措置に出ますことは、是は巳むを得ないことであつたと存ずるのでありまして、又其の後に於ける仕事と致しましても、計畫生産を達成すると云ふ上からは、ああ云ふ仕事が必要であつたと考へるのでありますが、それにしましても、何分圖體が大きいと申しますか、さう云ふこともございまして、運營上必ずしも、完全でなかつたと云ふ點は、私共も認めて居るのでありまして、彼此れさう云ふ問題に付きまして、政府と致しましても、相當責任を感じて居るのであります、偖て共助金の問題でありますが、御指摘になりましたやうに、當時と今とを考へますと、繭産額が非常に減つて居ります、隨て共助金の返還が出來ないと云ふ部分を生ずることも亦已むを得ないのであります、併し其の金の出所は、市中銀行から借りたものでありまして、結局是は返して行かなければならぬのであります、そこで蠶絲業界一般の協力に依りまして、何等かの適當の方法に依つて、之の措置を付けなければならぬと、斯う云ふ考へを持ちまして、日本中央蠶絲會の方にそれに付ての意見を求め、目下關係業者に寄つて貰つて相談を致して居る状況であります、さう云ふ方途と旁旁併せまして、適當な措置を執りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=91
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092・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 次に先般「マッカーサー」司令部からの指令に基きまして、政府は蠶絲業公共機關を設けることとなつたと聞いて居りますが、其の作らんとする蠶絲業公共機關と云ふものの性格、竝にどう云ふやうな構想の下に御作りにならんとするか、此の點を承りたいのであります、蠶絲業會と云ふものは、言ふまでもなく業者の自主的なる組織であり、又自治的團體であるのでありまして、隨て今後は蠶絲業の改良、或は發達、それから統制と云ふやうな事柄に關することは、是は大體蠶絲業會に行はしめると云ふことであらねばならぬと考へるのであります、それで蠶絲業公共機關の設立に依りまして、其の結果が蠶絲業會の行ふべき事業と競り合ひをする、或は摩擦を生ずるやうなことがあつてはならぬと思ふのであります、隨て此の際に於て、蠶絲業公共機關と云ふものの性格、竝にどう云ふやうな構想に依つてお作りになるか、此の點を明かにされたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=92
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093・山添利作
○山添政府委員 蠶絲業公共機關に付きましては、蠶絲業に對する「マッカーサー」司令部の指令に依つて作ることになつて居り、其の案を只今總司令部の方に提出中であります、併し大體其の承諾を得て居りまして、目下「ワシントン」方面に照會をされて居るものと思ひます、其の構想と申しますか、作る形は、大體公共機關は政府の機關である、且つ指令に示されて居りますやうに、一種の委員會に致しまして、大部分の委員の方々は、蠶絲業の各業種、各團體を代表する人になつて戴いて、さう云ふものを主體にして、官民一緒になつて構成する一つの機關であります、具體的に申しますれば、農林次官を會長に致しまして、さうして關係各廳の官吏、又蠶絲業者の方々は二十名と云ふことを豫定して居り、其の他學識經驗者を入れて、三十名以内の一種の委員會を作る、斯う云う考へで居ります、其の仕事は聯合軍最高司令部の指令にも掲げてございましたが、蠶絲業に關する技術的諸問題の調整、生絲の檢査及び格付の監督竝に輸出生絲の品質、纖度と云ふやうなことに付て、業會に對して勸告すること、其の他海外市況の調査、尚又蠶絲業に付て、其の他重要なる事項の審議、斯う云ふ風に考へて居ります、此の性格と致しましては、結局一種の蠶絲業界一般に對して役に立つやうな事柄を取纏めたり、發見したりして、之を業界一般に勸告すると云ふ役目を持つて居るのでありまして、何等此處で仕事をしたり、特別の決定する機關ではございませぬ、政府と此の機關の關係を見ますれば、一つの官民合體の或る種の行政と云ふと言葉が強いのでありますけれども、色々「アドヴァイス」をする、斯う云ふ機關であり、又重要事項に付て農林大臣の諮問に應ずるやうな性格を持つて居るものと考へて居ります、之に對しまして、蠶絲業會の方は、仕事をする機關であり、又蠶絲業に關することの自治統制を自ら行ふ機關でありまして、一方は忠告と云ふか、勸告する機關であり、一方は仕事を自らする機關である、斯う云ふ所で截然と性格上の區別がございます、是は餘程宜く連絡を取る必要もございませうと思ひますが、是等の點に付きましては、公共機關の構成者が、業界の出身者を以て主たるものとする、斯う云ふ所、又其の委員になつて貰ふ人の選任方法にしましても、業界から推薦された方を農林大臣の方で任命する、斯う云ふ用意も致しまして、其の間何等矛盾もなければ隙もない、斯う云ふ風に致して參りたい積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=93
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094・川崎巳之太郎
○川崎委員長 大石君に申上げますが、今内務大臣が特に差繰つて御見えになりましたが、選擧法案の方が直ぐ本會議へ上程されるさうであります、其の時にはあちらの方へ行かねばならぬと云ふことですから、簡單に御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=94
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095・大石大
○大石(大)委員 内務大臣は非常に御忙しいので、此の席に御見えを願ふことが出來ないと存じまして、先刻農林當局に申上げたのでありますが、内務省と宜く交渉して置いて下さると云ふことでしたが、更に私から質問致します、既に縣の方から御報告が行つて居ると思ひますが、高知縣の長岡郡長岡村に起りました一つの災害事件でありますが、御承知の通り、高知縣の平野には「アメリカ」軍が上陛をすると云ふので、作戰上あの平野は固より、背後の山嶽地帶にも大きな陣地を造つたのであります、其の關係より終戰後、長岡村に海軍の通信隊が居りまして、之に砲彈を集結したのであります、隨分夥しい、山の如きものでありました、さうして此の砲彈を分解しまして、火藥を取つて、さうして其の火藥を一定の場所に運んで來て、一つの穴を作りまして、中で燃やして居つた、是は皆勤勞奉仕でやつて居つたのであります、所が十九日の午前十時であります、新たなる勤勞奉仕が來たものですから、そこに居りまする海軍の將校でございまするか、或は下士官でありまするか、それが指圖をして居たらしい、色々分解の方法なり、其の穴に詰めまする分量なりを示して居つたやうであります、それは日々やつて居つた通りであります、それを教へて置いて、其の儘其の人は何處かへ去つてしまつた、其の後で、何分勤勞奉仕に來て居る者でありまするから、餘計入れれば大きな火が出ますから、そこに何かの興昧を持つたのか、澤山くべる、そこで野良に居つた百姓共が危いと大きな聲で之を制したさうであります、さうすると擔いで來て居つた者が其の穴に箱ごしに抛り込む者もあるし、途中で其の儘投げた者もあるらしい、忽ちに大きな火になりまして、天に冲する程に火が揚つたのであります、さうすると勤勞奉仕に來て居りました者は皆逃げる、風下に逃げた者は多少とも怪我をしたやうであります、一般農民も皆それぞれの防空壕に隱れ、或は崖の根に隱れ、或は川に入つて身を伏せる、斯う云ふ風な譯で、人畜の死傷はございませぬ、私は二十五日まで現場に行つて居りましたけれども、議會に來なければならぬので、二十五日までしか居りませぬでした、それまでは死傷者を世話して居りましたが、まだ死んで居りませぬ、所が十時頃から晩の十二時頃まで、其の大砲の彈が爆發して四方八方に飛散つたものでありますから、家の全壞が十二軒位と覺えて居ります、それから半壞、或は瓦が飛んだとか、硝子が割れた、建具が飛んだと云ふものは、殆ど現場より西南に亙りましては、二、三里の距離まで行つて居るのであります、此の半壞の被害戸數は私が出る先月の二十五日までは調査が出來て居りませぬ、さうして又全燒しました家も七、八軒あるやうであります、何れも側にさう云ふ軍事施設がありまするから、重要なものは疎開をして居りますけれども、終戰後持つて歸つて居つたものが皆燒けてしまつた、無論食糧も燒けてしまつた、さうして彈がひゆうひゆう來るものですから、外へ出ることも出來ない、其の晩から翌二十日の明け方まで穴の中に居つて、固より着のみ着の儘、食糧はなしと云ふ状態であつた、さうして又稻を刈りまして、之を積みまして、麥播もあるので之を處理して居りましたけれども、それも燒けてしまつた、其の近傍の田畑は硝子の破片、砲彈の破片、其の他色々な金屬類の破片で一面に埋まつて居つた、是はさう廣い範圍でもありませず、又戸數から見ましても被害人口から見ましても、戰災から言ふと言ふに足らぬものでありますが、其の被害の程度と云ふものは深刻なものであります、そこで是は進駐軍が來て其處に集めたのでありますから、進駐軍の方に聽いて見ますと、進駐軍は之を海底に沈めて處理することにして居た、所が砲彈の藥莢が眞鍮でありますから、其の眞鍮が欲しい、是は日本の國家からさう云ふ要求があつたから、それぢやそれをやらうと云ふことで、此の分解作業は縣がした、斯う云ふ御話であります、實際其の通りでせう、分解作業其の他に關して進駐軍は現場に來て居りませぬでした、所が戰災ならば他の救濟の途もあるが、終戰後に於てはどうにもしやうがないと云ふのが、縣當局の御考へださうであります、そこで所轄の警察から巡査部長が巡査を二人連れて現場へ參りまして、あつちこつち調査を致しますけれども、田畑にまで及ばないと云ふことで、被害者は極度に憤慨をして居る譯であります、一體是は進駐軍が言ふが如く國が貰ひ受けて縣に其の處置をせしめて居つたものであるか、責任の所在は一體何處にあるかと云ふことを御尋ねしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=95
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096・堀切善次郎
○堀切國務大臣 只今の高知縣の事件は、御話のやうに洵に氣の毒な、非常な損害だつたやうであります、此の損害に付きましての報告は、知事の方から來て居ります、唯それの處理の關係がどう云ふ風になつて居るかと云ふことに付きましては、こちらの方でも、まだはつきり致しませぬ、是は取調べるやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=96
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097・大石大
○大石(大)委員 御答辯に依りまして能く分りましたが、それではやはり進駐軍の言ふが如く、此の砲彈と云ふものは日本國が貰つたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=97
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098・堀切善次郎
○堀切國務大臣 其の邊も能く分りませぬ、調べて見なければなりませぬが、どうもああ云ふ火藥類や何かは、向ふの方で處分することが原則になつて居ると思ひますが、今の御話のやうな、さう云ふことがありますかどうですか、其の點を調べて見ないと、はつきりした御答へを致し兼ねますから、調べます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=98
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099・大石大
○大石(大)委員 御調べになりまして、國が貰つて縣に處理をさしたと事實が確定致した時に於きましては、それに對する救濟と申しますか、何か方法があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=99
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100・堀切善次郎
○堀切國務大臣 一寸考へて見まして、どうもそれだけの火藥は非常に危險なものを縣が引受けて處理すると云ふことは、一寸なかりさうに思ふのですが、其の邊どう云ふ事情であるか能く調べて見ないと分りませぬ、隨ひまして其の後の御問ひのことも、今何とも申上げられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=100
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101・大石大
○大石(大)委員 それでは御取調べの結果を待つ外ありませぬが、御參考に申上げますが、其の處理に掛つて居りました栗原高知縣知事はつい最近に更迭になりました、今の知事が著任早々でありますが、栗原君の話に依りますと、國が貰つて縣に處理をせよと云ふ内務省の命令でやつたと申して居るのであります、それ故内務省の方に御尋ねしたいと云ふ考へを持つたのであります、内務大臣に對する私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=101
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102・川崎巳之太郎
○川崎委員長 それでは今日は此の程度にして、明日は午前十時から此の會議を開きます
午後四時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00319451211&spkNum=102
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