1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
農業團體法中改正法律案(政府提出)(第八號)
水産業團體法中改正法律案(政府提出)(第九號)
戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出)(第三號)
蠶絲業法改正法律案(政府提出)(第一七號)
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昭和二十年十二月十二日(水曜日)午前十時十二分開議
出席委員左の如し
委員長 川崎巳之太郎君
理事 仲西三良君 理事 松延彌三郎君
理事 北勝太郎君
愛野時一郎君 五十嵐吉藏君
石坂養平君 今尾登君
宇田耕一君 岡田啓治郎君
楠美省吾君 鈴木重次君
田嶋榮次郎君 濱地文平君
別所喜一郎君 森川仙太君
山田六郎君 安孫子孝次君
青山憲三君 加藤知正君
眞藤愼太郎君 唐橋重政君
二田是儀君 川俣清音君
同日委員大石大君辭任に付其の補闕として加藤知正君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
農林大臣 松村謙三君
商工大臣 小笠原三九郎君
出席政府委員左の如し
農林政務次官 紅露昭君
農林參與官 子爵 北條雋八君
農林省總務局長 楠見義男君
農林省農政局長 和田博雄君
農林省山林局長 黒河内透君
農林省水産局長 笹山茂太郎君
農林省蠶絲局長 山添利作君
農林省食品局長 柴野和喜夫君
農林省畜産局長 蓮池公咲君
農林省開拓局長 西村彰一君
食糧管理局長官 並川義隆君
商工省總務局長 菅波稱事君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
農業團體法中改正法律案(政府提出)
水産業團體法中改正法律案(政府提出)
戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出)
蠶絲業法改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=0
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001・北勝太郎
○北委員長代理 昨日に引續き委員會を開會致します――加藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=1
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002・加藤知正
○加藤(知)委員 蠶絲業法の第二十一條に依りまして、蠶絲協同組合が設立をせられることになるのでありますが、此の蠶絲協同組合と云ふのと、從來ありました養蠶實行組合、此の二つの關係に付て詳細御説明戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=2
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003・山添利作
○山添政府委員 蠶絲協同組合と申しますのは、從來蠶絲共同施設組合と云ふ名前で、種屋さん等が組合を作つて居りました、それを今囘蠶絲業會と云ふ別の制度を設けます爲に、名前を變へて蠶絲協同組合としたのでありまして、是は從來の共同施設組合と全く内容が同じであります、隨て附則に於きまして、從來の蠶絲共同施設組合は此の協同組合となると云ふ風に規定を致して居ります、養蠶實行組合のことは、御承知のやうに農業會に入ることになつて居りまして、別の系統になつて居ります、是とは全然關係がございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=3
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004・加藤知正
○加藤(知)委員 此の蠶絲協同組合と云ふものの其の目的のある所は、第二十二條の四項目に亙つて居るのでありますが、養蠶實行組合のなす所と自ら異るもののあることは言ふまでもありませぬけれども、併し是が別の系統に屬して居るとか居らないとか云ふやうなことをせずに、どうせ此の蠶絲業法を改正せらるるのだから、其の序に之を打つて一丸としまして、總ての養蠶業に關係の事柄は、自家用製絲等も之を行はしむることに改めて、さうして一つの組合の中に皆網羅する方が、所謂簡素化の意味から言つても宜いことではないか、斯樣に考へるのでありますが、其の邊に付ての御考慮は拂はれて居るかどうか、それを一つ伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=4
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005・山添利作
○山添政府委員 只今御述べになりました問題は、法案の整理として一つの御意見だと考へます、併し只今の養蠶實行組合、其の又上の農業會、此の制度を改める考へは、只今持つて居りませぬ、其の儘に致して居るのでありますが、將來さう云ふことに付て檢討をし、又法令も改めると云ふ時になれば、其の時に考慮を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=5
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006・加藤知正
○加藤(知)委員 現在の蠶絲業の状態は、御承知のやうに以前とは非常に違ひまして、變化を來して居ります、でありますから其の變化を致して居る事柄から考へましても、十分此の法律の上で改正せなければならぬものが澤山あると思ふのでありまして、詰り此の改正案は暫定的のものであつて、何れ其の内に能く一つ根本的に練り直してやる積りである、斯う云ふやうな意向を大臣が洩らされたことがあるのであります、それは私當然だと考へるのでありますが、其の點に付きましても何時頃さう云ふやうな風に運ばれるのか、是は大臣から承る方が宜いと思ひますが、併しながら直接蠶絲行政に當つて居られる蠶絲局長の御意見は、どう云ふ風に考へて居られますか、參考の爲に此の場合伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=6
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007・山添利作
○山添政府委員 只今御述べになりました意見の中には、恐らく養蠶實行組合及び其の養蠶を主とする團體に付て或る御意見を御持ちになつて、それを前提として御述べになつて居ることのやうに伺ひますけれども、只今の養蠶を含んだ農業團體制度は、私は當分の間は少くもあの儘の形が宜いのだと云ふ風に考へて居りまして、之を何時どう云ふ風に改正するかと云ふことは、只今何等考慮を致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=7
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008・加藤知正
○加藤(知)委員 本法第三十一條に依りまして、蠶絲業會が設立せられることになるのでございますが、それに付きまして伺ひたいのは、蠶絲業者十人以上設立云々と云ふことになるのでありますが、是は同一地區内の會員云々とございます、此の同一地區内と云ふのはどう云ふことになるのでありますか、此の蠶絲業會なるものは中央、都道府縣、若しくは市町村と系統的に之を組織せしむる御考へであるかどうか、其の邊を詳しく御述べを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=8
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009・山添利作
○山添政府委員 蠶絲業會の制度は、今までの公の目的を持つて居る團體法の立法例と變りまして、是は抽象的な規定が設けてございます、と申しますのは、蠶絲業會と云ふ一つの制度を設けて、どう云ふ業種の人が組織するか、又地區はどう云ふやうにするかと云ふことは、法制の上に何等特定した制限とか、規定とかを設けて居りませぬ、隨て此の制度の上に立つて蠶絲業の必要とする團體を謂はば自由に構成して行くことが出來るやうに仕組んでございます、さう云ふ風に法制が立ててございますが、實際問題としてどう云ふ風にするかと言へば、只今進んで居りますのは、全國の地區に依つて、又蠶絲業者を網羅した一つの團體を作ることに進んで居ります、構成員から申しますと、全國農業會、それから蠶絲業者、製絲業者、輸出業者是が集まりまして、日本蠶絲業會と云ふ全國團體を設けるやうに目下其の業者の間で準備を致して居ります、只今出來んとする蠶絲業會はそれだけでございますけれども、將來必要に應じて之を地方的に作ると云ふこともあらうかと思ひますが、只今府縣からずつと系統的にすると云ふ考へは持つて居りませぬ、と申しますのは、蠶絲業組合法に依りますと、養蠶關係は別と致しまして、製絲に付きましても、種に付きましても、府縣から全國團體を作る、それから又中央製絲會を作ることになつて居りますけれども、戰爭中色々企業整備が進んだと云ふ關係もございまして、現在では製絲業者に致しましても、又種の業者に致しましても、人數が少くなつて居りまして、府縣だけで一つの組合を作ると云ふことは意味がない、寧ろ全國單一の蠶絲業會の中に入ることが適切であると云ふので、さう云ふ團體を作ることになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=9
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010・加藤知正
○加藤(知)委員 さう致しますと、此の同一地區内と云ふのはどう云ふ意味をなすのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=10
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011・山添利作
○山添政府委員 それは具體的に、どう云ふ地區に依つて蠶絲業會を作るかと云ふことに依つて決まるのでありまして、法令上特定して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=11
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012・加藤知正
○加藤(知)委員 更に伺ひたいのは、第三十條の「蠶絲業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふ」「蠶絲業の指導奬勵に關する施設」其の他四項目掲げてございますが、此の中の蠶絲業の指導奬勵に關する施設と云ふのはどう云ふ方法でやられるのか、それを一つ伺ひたい、若し此の指導が技術に關係した指導と云ふことになりますと、農業會の蠶絲業に對する指導奬勵と或は矛盾し、或は衝突するやうなことがありはせぬか、繩張り爭ひがそこに生ずるやうなことがありはせぬか、斯う云ふことを實は氣遣ふのです、所謂命令二途に出でまして困る者は私は蠶絲業者であると思ふ、それで農業會の方は、是は養蠶に關することだけであると云ふやうな見解で居られるのか、それとも此の蠶絲業の指導奬勵は製絲に關係のもののまでもと云ふやうな御考へで居られるのか、若し養蠶製絲を兼ねて之をやると云ふことになりますと、どうも其の氣遣ひが十分にある、茲を一つはつきり伺つて置きたい
〔北委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=12
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013・山添利作
○山添政府委員 此處に書いてあります意味は獨り養蠶とか、製絲とか云ふことでなく、廣い意味合でございます、問題は具體的に農業會の仕事と矛盾したり、ぶつ突つたりしないか、斯う云ふ點にあると存じます、養蠶に關する指導は農業會が當るのが原則でありまして、此の會は直接養蠶の指導奬勵を致すのではありませぬけれども、養蠶の指導奬勵の目的を以て或る財源を作り、農業會を通じて出して行く、斯う云ふやうな方法を執るものと考へて居ります、又製絲等に關しましては、資材の斡旋と云ふやうなことを致すものと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=13
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014・加藤知正
○加藤(知)委員 私は本當に蠶絲業の改善發達を圖ると云ふことには、所謂養蠶家と製絲家とを直結せしめ、製絲家と「アメリカ」の機業家とが直結しなければ本當の改善發達は圖られない、斯樣に考へて居るのであります、でございますからして、此の養蠶家と製絲家を直結せしめ、製絲家と米國の機業家とを直結せしむると云ふことになると、養蠶は農業會のやることだ、製絲其の他の關係は此の蠶絲業會がやるのだと云ふやうに區別されることは甚だ宜くないと思ひます、本當に此の蠶絲業會の前途を憂慮せられる立場から餘程是は研究して貰はなければならぬと思つて居ります、是までの幾多の弊害は養蠶は養蠶、製絲は製絲或は横濱の問屋は問屋、「アメリカ」の機業家は機業家、養蠶家の拵へた繭は一體どうなるのか、製絲家の拵へた生絲は何處へどうなるのだと云ふ、其の行先すら分らぬやうな状態にあるのだから、自然拵へる者が無責任になり、本當の力が入らぬと云ふことになる、自分の拵へた生絲に對して、「アメリカ」の機業家から直ぐに小言が來る、或は良い物に付ては褒めて來る、斯う云ふことになりますと、同じ製品を拵へましても張合ひがある、そこに品物の良い物が出來る、唯機械的に規則的に上から押付けたり抑へたりすると云ふことは決して良い品物を拵へさすることにはならぬのですから、私は今申上げたやうに、どうしても是は養蠶家と製絲家を直結させ、製絲家と「アメリカ」の機業家とを直結せしめて、中間機關は一切之を廢して此の改善發達に當ると云ふことが一番最上の方法であると考へて居るのであります、此の點に付て政府當局の御意見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=14
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015・山添利作
○山添政府委員 只今御述べになりました趣旨は全く同感であります、隨てさう云ふ意味合から此の蠶絲業會の制度に於きましても、養蠶も入れば製絲家も入ると云ふ風に、關係業者が直接入つた一つの團體を作られるのであります、又養蠶は農業會がやる仕事で、海外の需要を反映する所の製絲と云ふやうなものは、全く關係がないかと申せば、それはさうではないので、只今御述べになりました御説の通りであると思ひます、併し物は直結々々と申しましても、自らそこに機構の分化と言ひますか、さう云ふこともあるのでありまして、農業會が農業一般、蠶絲業も含めて指導すると云ふ原則には變りはありませぬ、併しそこに製絲家も協力して行くと云ふ關係は必要であります、戰時中、日本蠶絲統制株式會社に依つて統制を致して居りました時分には、御説のやうに養蠶と製絲との關係が全く斷ち切れない關係にありましたけれども、今後もそこに密接なる協力關係が成立するやうな方法でやつて行きたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=15
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016・加藤知正
○加藤(知)委員 只今政府當局の御意見のある所を承りまして、非常に滿足するのでありますが、蠶絲業會が唯中央にあるだけで、地方にはないと云ふことになると、御考へはそこにありましても其の實現は私は困難であると思ひます、でありますからやはり中央に蠶絲業會を設けられると同時に、地方にも是非是は都道府縣、市町村までにも及ぼすやうな御考へを以て、今後大いに改正をなさるそれまでに十分此の點を御研究して下さるやうに希望致しまして、之に關する質問は一應是で打切りますが、之に付て私が特に一つ伺ひたいのは現在の桑園であります、何と申しましても現在のやうな桑園では碌な生絲は出來ませぬ、又今のやうな桑園では養蠶をやつても割に合ひませぬ、でありますから、どうしても良い生絲を作らうとするには良い繭を作らなければならぬ、良い繭を取るには良い桑園に依らなければならぬと云ふことは言ふまでもない、所が近頃の桑園は、非常に怪しい桑園になつて居る、本當に良い繭を作らうとしても出來ない貧弱極まる桑園になつて居る、でありますから之に依つて良い繭を作らうなどと云ふことは無理な話である、然らばどうすれば宜いかと云ふ問題になるのでありますが、良い桑園を作るには何と云つても、肥料に重大なる關係があると云ふことを申上げなければならぬ、其の肥料が今日では全くやりたくてもやることが出來ないと云ふことは御承知の通りであります、金肥即ち化學肥料と云ふものは、洵に不十分極まつた状態にあるのでありまして、食糧關係の農産物、即ち米麥重點主義とでも申しませうか、米、麥、甘藷、馬鈴薯等が第一位に置かれて居つて、桑園の肥料と云ふものは第二位、第三位に置いて居る所から、殆ど桑には肥料をやらない、やらない結果が、今日のやうな荒廢見るに堪へない桑園が多くなつて居るのであります、恐らく現在の桑園を能く調べましたならば、反當平均十貫目の繭も上るまいと、私は考へて居ります、さう云ふ貧弱極まる桑園では、是は到底駄目である、聞く所に依りますれば、「マッカーサー」軍司令部の方から、十六、七萬俵の生絲を差當り欲しいと云ふ希望を申されたと云ふ話であります、是は事實かどうか分りませぬ、分らぬけれども、之に付て確實な所から聞いて見ますと、確かにさう云ふ希望を米國の機業家は十分に持つて居ると云ふことを想像することが出來るのであります、併しながら十五、六萬俵の生絲が果して出來るかどうか、現在の桑園は曾ては六十五萬町歩からあつたものが、最近二十三萬町歩に減つた、其の二十三萬町歩も十五萬町歩の桑園を切下減反せよと奬勵金まで出して奬勵せられた、其の結果段々減つて來て、現在では五、六萬町歩もあるまいと我々は聞かされて居るのであります、現に私今朝自分の居ります所の田無から武藏境まで半道ばかりの所を歩いて來ますと、桑園を伐採してそれを牛車に山と積んで運んで居ります、桑を伐つてはならぬと云ふ「マッカーサー」軍司令部の命令があるにも拘らず白晝公然と桑の伐つたものを運んで居る、あれを「マッカーサー」軍司令部の人が見たならばどう云ふ感じを起すでありませうか、さう云ふやうな實情にあるのでありますから、如何にして此の桑株を拔取ることを止めるかと云ふことに付ては、是は餘程しつかりと政府からやつて貰はなければ駄目であると考へますが、尚ほ是と同時に如何に致しましても、立派な桑園を作らしめると云ふことに付て、一段の御考へを願はなければならぬことと存じます、それにはやはり肥料であります、此の肥料に付て私は昨年肥料の現地査察をやつたのでありますが、永い間奬勵して來た、堆肥と云ふものが、殆どものになつて居らないのであります、我々素人が見ても、こんなことでどうするのかと考へさせられた點が澤山あつたのであります、其の詳細を申上げたいけれども、此の席上に於ては之を遠慮致して置きます、化學肥料の未だ十分に出來ない今日、自給肥料は今申上げたやうな状態である、是では何を作らうが巧く行く筈はない、減産するのは當然の話である、でありますから、是は自給肥料に付て政府が非常に思ひ切つた政策を御執りにならぬと、到底農産物の増強などと云ふことは思ひも寄らぬ話であると考へて居るのであります、それに付きまして、私は此の間農業團體法の本會議の席上で、燻炭肥料のことを特に大臣に御伺ひした、所が大臣は故意に御答辯なさらなかつたのか、或は忘れて御答辯がなかつたのか、或は燻炭其のものを知らずして御答へにならなかつたのか、それは私には分らない、一言も此の燻炭肥料等に付ては觸れて居ない、是はどうも農林大臣の考へが餘りに冷淡であるやうに實は思はれた、今日は自給肥料と云つても堆肥ばかりでは本當の増産は出來ませぬ、堆肥と同時に燻炭肥料をやれば必ず増産出來ることは首を懸けて保證する、私は嘗て農商委員會等に於て大いに御話を申上げたのであります、燻炭は百利あつて一害なし、斯う云ふことを申上げて居る、でありますから、なぜ燻炭肥料に付て政府はもう少し力を入れられないか、私は不思議でならない、増産々々と云つて掛聲ばかりやつても、増産は出來るものではない、机上の空論では増産は出來ませぬ、本當に之をやらせる、やると云ふ所に行かなければ増産は出來ませぬ、唯やれやれと言つても駄目であります、堆肥を積め積めと言つても碌に積みはしない、其の積んだ堆肥も碌な堆肥が出來て居らない、燻炭肥料も其の通りである、でありますから、なぜ燻炭肥料に今少しく力を御入れなさらないか、其の一つを私は御伺ひしたい、殊に桑園と云ふものに對しては、斯う云ふ關係があります、燻炭肥料を十分にやりますと良い蠶が出來るのであります、何となれば、桑其のものに非常に力が付く、即ち病蟲害に耐へる力が十分に付くのであります、是は元の郡是製絲會社に於て研究をやつて居る筈であります、能く其の會社に就て御調べを願ひたい、そこで此燻炭肥料は桑園ばかりではない、水田に施用致しますと頗る效能があるのであります、先ず第一に苗代でありますが、此の燻炭をやりますと、其の結果は健苗が出來る、堅い苗が出來る、堅い苗を作れば堅い稻が出來る、病蟲害に對しても非常に力強く之に堪へる力が與へられますから、此の場合本當に増産しようと思つたならば、堆肥と共に十分燻炭をやらせると云ふ方策を執らなければ駄目であります、私は増産の本當の祕訣は、深耕をやらせることだと思ふ、深耕にも程度があつて、大體の所は一尺二寸位の深耕をさせ、それに伴ふだけの肥料をやらせますと、其の上の作物は必ず良く出來ます、都下の小平の關根總八氏と云ふ篤農家の如きは、肥料に應じて増産が出來ると言ひ、肥料(堆肥竝に燻炭)を千貫やれば千貫だけの收穫がある、五百貫やれば五百貫だけの收穫が上る、唯徒らに横に耕地を擴げて、開墾せよ増産が出來ると云ふやうな、そんな淺薄な考へで、どうしますか、現在の耕地でも今申上げたやうに耕し方如何に依つて、立派に増産が出來る、若し政府が私の此の言を御容れになりまして全農家に行はしむるならば、現在の生産額は二倍以上になりまして、食糧問題は立派に解決が出來ると申上げても私決して過言でないと存じます
私は農林大臣に尚ほ詳しく申上げたいのでありますが、如何に大臣に申上げても、あなた方が心から御承知下さらなければ駄目であります、直接事務行政の衝に當つて居られるあなた方が、さうか宜しい、やらう、斯う云ふ御考へで大臣、次官に御説きになれば、大臣、次官も宜しいと云ふことになる、本はあなた方にあるのです、若し私の言を御容れ下すつて、二倍の増産が出來なかつたなら、私は此の二つとない首を差上げます、やつて御覽なさい、唯机上の空論のみを戰はして、それで以て増産が出來ると思つたら、とんでもないことです、今日は實行の世の中である、此の點に付て幸ひに肥料に御關係の總務局長もおいでのことでありますから、十分之に付ての御意見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=16
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017・楠見義男
○楠見政府委員 便宜私から御答へ申します、燻炭を中心としての自給肥料の關係に付ての御尋ねですが、實は先日本會議で加藤さんから御質問になりました際に、農林大臣の答辯が漏れて居るやうな御話でございましたが、大臣としましては、燻炭を含めて自給肥料の増産の必要性を篤と御述べになつたのであります、勿論只今御述べになりましたやうに、肥料の問題は獨り此の食糧だけに限りませぬ、尤も現在食糧に付きましては、一番肥料難に喘いで居るのでありますが、併し食糧と同樣に、今後食糧を入れる見返り物資として最も重要な桑園、斯う云ふものに付きましても、同樣に肥料の必要なことは申上げるまでもないのであります、然るに御承知のやうに、戰時中は化學肥料が非常に減つて參りました、一面之を補ひます爲に、自給肥料の増産をやつて參つたのであります、其の自給肥料の増産をやりました結果、從來の化學肥料の三要素の一つであります加里肥料、加里肥料は販賣肥料としては殆ど問題にもならぬやうになつて參りましたけれども、自給肥料の増産に依りまして、其の不足の加里肥料は何とか賄つて行ける、隨つて現在窒素、硫安、加里の中で加里が一番問題が少いのは、自給肥料の増産に依る結果に外ならないと思ふのであります、そこで是からの食糧確保なり、或は其の他の作物の確保の上に必要な肥料と云ふことになりますと、一面に於きましては、農林大臣が豫ね豫ね本會議なり或は委員會の席で申して居りまするやうに、早急に化學肥料の増産、復舊、擴充是等の施策を講せなければならぬと思ふのでありますが、同時に是等の化學肥料の復舊、増産、擴充等と併せて忘れてならぬことは、申上げるまでもなく自給肥料の増産であります、自給肥料の増産に付きましては、先程來申上げますやうに、ここ數年來非常に其の増産は擧つて居るのであります、尤も此の増産の蔭には色々勞力の問題其の他種々困難な問題があつたのですが、是等の困難な問題は、今後相當緩和されるのではなからうかと思ふのであります、隨て我々と致しましては、一面に於きまして化學肥料の増産と同時に、自給肥料の確保増産と云ふことに付ては、戰爭中以上に特に努力を盡して參りたいと思ふのであります、今申しましたやうに、自給肥料の増産が旨くさう思ふやうに行かないと云ふことには、是は百何十億萬貫と云ふやうな自給肥料をやつて居りますので、勞力の上に於て、非常な大きな制約を受けて居つたのであります、此の點は戰後相當緩和されると思ひますが、更にもう一つの大きな理由と致しましては、是の指導面、普及をすると云ふ點に於て、戰爭中は中々思ふやうに參らなかつたのであります、是も御承知のやうに農業會等の技術指導員が應召し、又初期に於ては徴用を受け或は轉業をすると云ふやうなことから、中央で色々の計畫を立て實行して戴きますのは、結局地方廳であり、又地方の農業會である譯でありますが、直接最前線の是等の指導機關と云ふものが、何と申しましても戰爭中は非常に不足を告げて居る、是が爲に中々中央の計畫が末端まで滲透するのに相當の時日を要し、又完全に參らなかつたと云ふやうなことになる譯であります、隨て是等の惡條件と申しますか、困難な条件が漸次緩和されて參りました、今後に於きましては、自給肥料の増産問題は中央で強い要求、是が直ちに最前線の指導面に意思が疏通し、今後は相當自給肥料の問題は推進されるのではなからうか、我々と致しましても、其の方向で考へて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=17
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018・川崎巳之太郎
○川崎委員長 此の際委員長から一寸申上げたい點があります、農業團體法案も段々質疑應答が重なつて參りまして、今肥料問題になりましたが、食糧及び桑の増産に付きましては、肥料が先決問題であることは言ふまでもないのでありますが、其の肥料に付て豫算委員會、本會議等で大臣が發表なさる所では、化學肥料の數量など發表なさつて努力せられることは我々議員之を諒としますが、自給肥料に付ては此の間の本會議の加藤君の質問に對しても、唯大いに骨を折ると云ふやうな話で、加藤君が色々物を指して御問ひになつたのに對しては御答辯がなくて、又今日御話になつたのですが、又安孫子君なども緑肥其の他の自給肥料に付てはえらい研究をせられ、熱心に議會で説かれて居るのであります、そんなことには大臣の答辯にも、又今日の答辯にもなかつたのであります、そこで私共農林省の豫算を協贊する時に、増産の爲と云ふので大變な數字の金額を計上するのを拜見しまして問へば、是も自給肥料其の他に用ひるのだと斯う云ふ御話で、今の御答辯も其の意味でございますが、そこで實際やるんだ、やる積りだと云ふ聲明だけでは困るのです、局に當る方々が頻繁に更迭するや何かのさう云ふ一方の故障もありませうけれども、其の決心を行政機構の中にどんな風に織込んで、どの位の金額を此の自給肥料の爲に用ひると云ふ實際の話を少し打明けて御話にならなければ、我々議員は滿足が出來ないと思ふ、緑肥の如きは種を播いて置けば宜いので、そんなに勞力も要ることでなからうと思ふし、又燻炭の如きもどんな材料でも全國到る所に無雜作に出來るのでありますから、何でもない話であると思ふし、殊に千葉縣などは模範的にそれをやつて居ります、又それに付ても政府の努力に付ては唯同じやうな答辯をするだけで、實際的の努力は見られないのです、今の當局者を責める譯ではないが、數年間を見ると、一時逃れのことばかり言つて、何も我々の眼に止まるものを見て居ない、例へば燻炭のやり方に付ても、上手なやり方も下手なやり方もあらうから、一番優秀なやり方を千葉縣なり何處なりに模範を採つて、それを全國に普及する爲に全國の農業會の技師なり縣廳の技師なり農學校、農事試驗所の關係者を招き寄せて講習させる、それには入費を計上するとか、何とか實際の手を打たねば駄目だ、又大藏省專賣局の仕事の中で葉煙草に付ては、燒土を造る爲に窯を買ふ者に補助をするやうな仕組もして居りますが、農林省は何をしたかさう云ふことに付ては具體的の話の説明がない、それから茨城縣下館方面に養蠶家が澤山居る、是等は其の組合で以て銘々に燒土を造る窯を拵へるのに金の補助をして居るやうでございますが、さう云ふ個々の思ひ付きでなくて、政府として本式に自給肥料に骨を折るのならば、今日あたりはこんな方法を實際やつて居りますと、田舍にあつて無用の長物のやうに思はれて居る農事試驗場あたりに命じて斯うさして居ります、農學校は利用してこんな風にさして居りますと云ふやうなことを具體的に發表なされば宜い、大いに努力して居ります、考へて居りますと空漠たることを毎年々々繰返して居るよりも餘程明るくなると思ふのです、食糧の増産が呑氣な話で蓋を被せて置いて、外國に泣付いて輸入の許可を兩手を合せて頼む、乞食のやうな姿をするだけで食糧の問題が解決すれば宜いが、既に朝鮮、臺灣まで外國になつてしまつた今日に於て、本式に官も民も骨を折らなければ、食糧を幾ら外國から輸入した所がしようがないのだから、さう云ふ時には眞劍に自給肥料なり何なり――金肥は勿論でございますけれども、考へて下さらなければ困ると思ふのです、要するに私委員長の立場としても、議員諸公が熱心に御尋ねなさる此の問題に付きましては、計上した豫算は是れ是れで、それはこんな風に用ひて居つて實績が擧つたとか擧らないとか、是から先どうする積りだとか、空漠たる決心か何かの吹聽ではなくして、事實問題に付て御答辯下すつたならば如何です、蠶絲局長の方では斯う云ふことをして居る、總務局長の方ではこんな計畫をして居る、農政局長の方は肥料課を指揮してこんなことをやつて居るとか、さう云つた事實を示して下されれば、稍稍安心すると思ふのですが、其の邊に付ての御見込は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=18
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019・加藤知正
○加藤(知)委員 私の今御尋ね申上げたいと思ふことは委員長から縷縷御述べになりましたので、改めてもう御尋ねは申上げませぬが、今委員長の御話に付て政府當局の御考へのある所を詳細に伺ひたいと思ひます、重要な問題でありますから、どうぞ其の御積りで御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=19
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020・安孫子孝次
○安孫子委員 私も一寸關聯して申述べたいと存じます、今加藤さんから自給肥料の問題に付て御話が出ましたが、私も自給肥料に付ての御質問を申上げたい點がありますので、其の點を併せて御答辯を御願ひ申上げたいと思ふのであります、只今政府委員から堆肥の増産に付て恐らく百數十億貫と云ふやうな御話が出て居つたやうでありますが、私の手許にあります統計は、昭和十七年の統計しかないのでありますが、それに依りますと、堆肥、厩肥入れまして五十億貫に過ぎない、さうすると反平均八十貫匁に充たないのでありますが、假に百二十億と致しましても、反平均二百貫、二百貫の自給肥料では是は滿足に肥料分を供給することにならないのであります、それには勞力の不足と云ふ點もありますけれども、一面に於て資材の不足が大きな問題であると思ふのであります、山野の野草を刈取つてやらうと云つても、事實中々是はさう簡單には行かないのであります、現に北海道の如きは隨分資材はあるのでありまするけれども、中々それを集めることが出來ない、勞力不足もありますけれども、結局土地其のものから資材を集めると云ふ方策が講ぜられなければならぬ、其の意味に於きまして、私は慥か八十一議會かと思ひましたが、同僚の贊成を得まして田畑の緑化運動、緑肥の増産に關する建議案を出したことがあるのであります、其の時に申述べたことは當時の速記録を御覽戴ければ分ると思ひますが、北海道農事試驗場の調べに依りましても、年々土地から流亡する肥料分は多いのであります、それに依りますと窒素は一年を通じまして四百三十八匁、燐酸九十匁、加里五百三十匁、色々の場合を平均したのでありますが、恐らく他の府縣のやうに温暖な所では、是れ以上の肥料は年中流亡して居ると思ふのであります、其の流亡して居る所の肥料を取り、不足をなくすると云ふやうな手段を講ずる上から緑肥をやることが必要であるし、又農業を有畜化しようと思ひましても飼料がありませぬから、其の飼料を生産する上から云つても、緑肥をやることが必要であると思ふ、それで統計を取つて見ますと――私は建議案を出す時に昭和十五年の統計を取りましたが、五十一萬三千町歩緑肥があつたのであります、新しい統計はありませぬが、昭和十八年の統計に依りますと四十九萬九千町歩に減つて居るのである、是は勞力の關係、金のない關係、色々の關係がありませうが、緑肥を増産して戴くならば、肥料問題は直ちに解決が出來ると思ひます、假に反當二百貫の緑肥が生産されるとすれば、昭和十八年の統計に依りますと、水田二百七十貫平均、畑は二百八十貫になつて居ります、緑肥の増産を能くやれば三、四百貫は譯ないと思ひますが、假に内輪に見て反當二百貫として、農地面積の五〇%、三百萬町歩に普及致しました場合に於て、六十億貫の緑肥が生産されるのであります、六十億貫と云ふものは、昭和十七年の統計の堆肥の五十億貫よりは多いのであります、是だけ生産されましたならば、是は自給肥料の上に於て非常に大きな役目をなすものと思ふのであります、それで緑肥の成分は窒素は〇・五、燐酸〇・一、加里が〇・三で、是は決して多い分量ではないが、稍稍平均を取つたものであります、是でやりますと三千萬貫の窒素が取れる、二〇%の硫安とすると、五十六萬「トン」になります、又六百萬貫の燐酸が取れます、一五%の燐酸とすると十五萬「トン」であります、それから加里が千八百萬貫であります、四八%の加里と致しますと十四萬「トン」になるのであります、是だけの肥料が取れるのみならず、六十億萬貫の青草が取れる、是は家畜の飼料となり、家畜の腹を通して又再び土地に還元されるのであります、是等は主作物の間作、混作或は周圍作或は後作として十分作り得るのであります、私共の經驗から致しますると、北海道の如き半年しか耕作期間のない所でありましても、緑肥を十分活用出來るのですから、府縣の如く一年中出來る所へ行きましたならば、是は工夫すれば相當の緑肥が出來得ると思ふのであります、さうすると半面に於て飼料問題の解決にもなると思ふのであります、之を八十二議會に於て私建議致しましたけれども、當局は、おやりになつて居ることはおやりになつて居るのですが、其のやり方が極めて熱意がないと申上げては失禮でありますが、量的に少いのであります、是は廣い面積でなければ無論出來ないのでありますが、それで私は全國の農地を總動員致しまして、畑地の一年中の緑化運動をすると云ふ目的で建議案を出したやうな次第であります、金肥の生産が出來ない時に於ては勿論でありますが、金肥が十分生産されましても、やはり有機質肥料が十分土地に入らなければ、金肥を有效に使ふことは出來ないのでありますから、是は應急對策であり恆久對策であると思ふのであります、此の點に對しまして十分御研究を願ひ、強力な獎勵をして戴きたいのであります、斯う申上げると、種子がないと言はれる、是は農林省の技術當局にも私度々申上げたのですが、結局種子がないと言はれる、種子は作らなければないのであります、其の當時は滿洲から持つて來ると言ひましても、滿洲から必要量を持つて來ることは出來なかつたが、もう滿洲から持つて來ることも出來ないのであります、種子と申しましても、緑肥で言ひますと、紫雲英とか、或は大豆とか、或は「ザートウィッケン」とか、或は豌豆とか言ふものを考へまするけれども、是はさう云ふものがなくても、麥でも或は大根でも何でも宜いのであります、北海道では大根をやつて居りました、現在は大根の種子がないからやつて居りませぬが、大根の豐富な時には古種子をやつても若干は直ぐ出來るのであつて、大根をやりましても相當の生産が上つて居るのであります、又雜草を使用しましても、此の中に緑肥になるものもあると思ふのであります、其の當時私は斯う云ふことを御願ひ申上げたのであります、全國の試驗場を動員して、地方々々にはそれぞれ適當な緑肥作物がある筈だから、それを研究して、それを利用されましたならば、種子の不足も補ひ得るのではないかと云ふことを申上げたのでありますけれども、其の研究も甚だ微力でありまして、現在緑肥と云ふものは寧ろ減つて居るやうな状態であらうと思ふのであります、此の點を堆肥、厩肥の増産と相竝行して、強力に獎勵施策を御立て下さつて、おやり下さつたらどうかと云ふことを申上げたのですが、之に對する御所見を伺ひたいと思ひます
それに關聯してもう一つ御願ひ申上げたいことは、燐酸肥料の問題であります、是は府縣の水田に於きましては、燐酸肥料は重要でありますけれども、左程に困つておいでにならないかも知れませぬ、併し北海道の如き畑作とする所、又麥の肥料とする所、今後開墾さるべき所の百五十萬町歩の多くは畑地になると思ひますが、是は燐酸肥料がなければ生産が上りませぬ、北海道は今年は非常な凶作でありました、是は氣候の關係に於て凶作になつたのでありますけれども、麥とか或は馬鈴薯とか云ふ冷害に強い作物の生産が上つて居ないのであります、其の原因は燐酸肥料の缺乏であります、若し燐酸肥料が相當に供給出來れば、北海道は一割や二割の増收は直ちに出來る、過去に於きましては――過去と云ふよりもつい一兩年までは、日本の穀倉として北海道は相當の數量の作物を府縣に出して居りましたが、今年は反對に府縣から貰はなければならぬと云ふことになつたのは、一つは氣候の關係でありますが、一つは燐酸肥料の缺乏の爲であります、畑作に重きを置き麥作に重きを置くと云ふことになりますと、燐酸肥料がないと云ふことは、生産に支障が生ずると思ふのであります、それで燐酸肥料に對する今後の見透しに付ても、併せて御尋ね申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=20
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021・川崎巳之太郎
○川崎委員長 政府委員から御答辯を戴く前に、委員長からも此の問題に付て一言申添へたいと思ふのであります、安孫子君が熱心に燐酸緑肥を主としたる建議案を出したのは二、三年前と思ひます、其の席上に於て時の農商省當局は、至極贊成だと云ふことで、滿場一致採擇になつたのであります、然るに一向其の後其の實行の成績のないのに、私共驚いて居る事實があるのであります、昨年私は農林省の方から派遣せられて、農林省の技師の方などと一緒に千葉縣を廻つて、増産の模樣を視察激勵に廻つたのであります、千葉縣の安房郡の方に、緑肥で以て大變に成績を擧げて表彰せられたと云ふ村役場があつたので、それは洵に結構なことだと思つて行つて見た、所が村長以下が出て説明して言ふのには、それは以前のことで、昨今は緑肥の種切れになつて表彰どころではない、やつて居ないのです、此の表彰に對しても私共慚愧に堪へないやうな次第であります、斯う言つて頭を掻いて話をした、農林省は緑肥のことも大いに獎勵して居るのに、種切れになつた儘放つて置く、是はどつちの罪か知りませぬが、褒美を貰つた村役場でさへもそんな有樣では、外の所では尚更ら獎勵して居らない、自給肥料や何かの爲に差向けるのだと云ふので、豫算を澤山取つていらつしやる筈だが、それをどう使はれて居るか、機會があつたら伺はなければならぬと云ふ積りに私共なつたのであります、安孫子君の御話、又先刻の加藤君の御話に付きましても、御意見は如何でございますかと御意見を伺ふのは宜いですが、御意見の理想論を此處で繰返しても、毎年同じことをやつては詰らない話です、此の短い期間にやつても唯暇潰しになる、今までは斯う斯う云ふ金を以て緑肥にはどう、燐酸にはどう割振つて居つた、又地方の無用の長物のやうに見られて居る所の農學校なり農事試驗場なりと云ふものは、實際こんな風に此の問題に付て働かして居るのだと云ふ具體的な事實を示して戴きたい、それでないと、こんな問答はお互ひに暇潰しだから、私は止めることにしたいと思ふ、千葉縣の或る農學校などに燻炭の熱心家があつて、校長など大いにやつて居る所がありますが、縣廳ではどうするかと云ふことを、私共縣廳へ更に戻つて、縣の肥料課長に聽いたのであります、さうすると、是は民間ではあんな風に盛上る力で以て、此の縣は一番燻炭肥料に努力をして居るが、中々熱が掛らないので、今年――昨十九年の縣會の時の話ですが、僅かに五千圓だけ其の方に向けて、そして自給肥料研究の入費と云つて、今年の縣會の豫算に採つただけなんだ、其の課長曰く、あなた方中央に居る方が農林省を鞭撻して、全國的に獎勵して呉れなければ困るのです、斯う地方の實際の縣廳の肥料課長が言つて居るのです、さうすると農林省が全國に對して自給肥料の獎勵をして居るとか何とか云ふのは嘘の事實と云ふやうに、私共は取る外なくなつて來る、だから理想論でなくて、具體的の項目なり、金額なり方法なりを擧げて御答辯下さつて、今までの繰返し言をせぬやうに一つ御願ひしたいと思ひます、農政局長、總務局長、蠶絲局長等、銘々の立場から一つ御答辯願ひたいものです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=21
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022・楠見義男
○楠見政府委員 委員長初め各委員の方々から、具體的に正確なる數字を示しての答辯をするやうにと云ふ御尋ねがありましたが、私只今此處に正確なる數字を持つて居りませぬので、それは後程擔當の所から具體的の數字を擧げて御説明致すことに致したいと思ひます、唯總括的の問題に付て御參考までに申上げて置きたいと思ふのでありますが、自給肥料の増産の問題、竝に緑肥の獎勵の問題、之に付きましては、是は既に皆様方夙に御承知の如く、年々相當の金額、時に依りましては數千萬圓の金額を出して居るのであります、極く最近の事例に依りましても、例へば昨年米の報獎制度を立てました際に、九〇%以上のものには石當り幾ら出すと云ふことで、四、五十圓高く買ふことにしたのでありますが、是は自給肥料九割までは或る程度供出が可能であらう、併し九割以上になつて來ますと、所謂胸突き八丁と云ふことで、結局自給肥料の増産なり、其の他のことで増産をしなければ、中々供出目標が達成せられないと云ふことで、直接農民に九割以上の分に付ては報獎金を出す、斯う云ふやうなことを致しまして、此の金額だけでも恐らく億に近い金に行くのではないかと思ひます、それからそれ以外の増産に付きましては、それは昨年來やつて居りまする所謂自給肥料の増産に關する報獎制度のことであります、是は從來の各村々に於きまする自給肥料の増産額以上に出たものに付ては一貫目幾らやると云ふことで、或は協同會社の設置をさせるとか、其の他の方法で以て、是も恐らく四、五千萬圓であると思ふのでありますが、或はそれ以上であつたかと思ひますが、さう云ふ金を出して居るのであります、それから昨年來是は安孫子さんの言はれる燐酸肥料の問題も關係致すのでありますが、家畜に依る燐酸源を求める、既ち鷄の増殖に依つてやらうと云ふので、是は飼料不足な状況でありましたが、特に種鷄に付ては飼料も確保致しまして、此の金も恐らく數千萬圓にならうと思つて居るのであります、厩肥に付ては其の外に家畜舍の改良に付てでありますとか、さう云ふ方面にも畜産獎勵の爲に是れ亦相當の金を出して居るのであります、結局是は先程加藤委員の御尋ねに依つて御答へ申上げましたやうに、中央と致しましては、巨額の豫算を計上し、之を地方廳を通じ、或は農業團體を通じ、或は實行組合等に、恐らく平常でありますれば、到底問題にならぬ位の巨額の金を出して居るのであります、是がそれ以外に或は學徒動員に依りまする草刈運動、之に付ても或は勤勞奉仕の費用と云ふので、相當の動員費を計上したりして居るのでありまするが、勤勞奉仕に依る學徒動員等の草刈運動は、是は各地で既に皆樣方が御承知の通りでありますが、斯う云ふやうな風に豫算を計上し、之を地方に流して居る、現實は金は地方に行つて居るのであります、結局是が所定の通りに恐らく私は行つて居ると思ひますが、さう云ふ獎勵施設を呼び水と致しまして、それ以上に急激に伸びると云ふことが困難な事情にあることは、先程申上げましたやうに、勞力事情が殆ど最高限に窮迫して居つた、或は指導員が缺けて居ると云ふ末端の行政方面の問題なり、或は團體方面の指導力が駈けずり廻つて振起させると云ふ所までに行くのは、戰時中中々困難であつたと云ふことが、大きな理由ではなかつたかと思ふのであります、自給肥料の増産に關する政府施設は、明年度も續いて計上致して居るのでありますが、結局さう云ふ風に戰時中困難でありました諸般の情勢が緩和されることに依つて、又一面化學肥料の急迫して居る情勢が農家には直接ひしひしと感じて居る際でありますから、あれ此れ勘案致しますると、一般の窮迫せる情勢と云ふ客觀情勢もございまして、相當伸びるのではなからうか、斯う云ふ風に考へて居るのであります、緑肥の種子の問題に付ても、安孫子さんから色々御話があつたのであります、實は戰爭中も此の種子の問題に付ては、隨分苦勞を致したのであります、私が直接大豆を所管致して居つた當時のことを考へましても兎に角滿洲から入つて參りまする、大豆は、食糧事情が非常に窮迫致して居つた時でありまするが、緑肥に使用する大豆だけは先づ天引して、其の殘りを食料、或は味噌醤油に廻さうと云ふ位に、緑肥の種子に付ては最優先と申しますか天引で以てやつた、さう云ふ位に種子に付ては努力を致して此の數年進んで參つたのでございます、併しそれだけでは足らず、他の方面の努力が足りなかつた爲に、御希望通りの實績が擧らなかつたことは、洵に遺憾と思ひます、是は先程來申しましたやうに、自給肥料全般の問題と致しましては、今後相當客觀情勢の變化に依つて伸びるのではなからうか、斯う云ふやうに考へて居る次第であります、それから燐酸肥料の將來の見透しに付ての御尋ねがあつたのでありますが、結局御承知のやうに、内地に於きまする燐酸資源の缺乏して居る情勢は申すまでもないのであります、結局是は燐鑛石の輸入に俟たざるを得ないのであります、内地では僅かに能登方面に極めて、埋藏含有率の低い燐酸資源があるだけでありますが、是はもう名前は變へましたが、戰時中は所謂戰時過燐酸と云ふことで、特別に規格を落して惡いものでありまするけれども、已むを得ず開發するやうな計畫を進めて居つたのでありますが、燐酸資源としては僅かに是だけでありまして、結局海外に仰がなければならぬことになつて居るのであります、一時は八十萬「トン」から百萬「トン」に近い燐鑛石が入つて參つたのでありますが、今日の情勢では殆ど途絶えることになつて居るのであります、隨て少くとも我々としては八十萬「トン」程度の燐鑛石の輸入を仰ぎたいと云ふので、聯合軍側に對しても、特に此の點を懇請して居るのであります、此のことは窒素肥料に付きましては、國内の硫安施設の復舊に依りまして間に合ふことが出來るのでありますが、畑作に必要な燐酸資源は、どうしても今申しますやうに燐鑛石に頼らなければならないのであります、そこで是も見返り物資の問題なり、或は船の問題になつて參るのでありますが、就中船が最も重要な問題になつて來るのであります、そこで少くとも近廻りのものの確保を得たいと云ふので、北支の山東省の燐酸資源、佛印の「ラオカイ」の燐酸、それから太平洋方面では「ラサ」大東島、差當り斯う云ふ近廻りのものだけで、三十四、五萬「トン」の燐鑛名が得られるのであります、隨て先づ第一に三十四、五萬「トン」の燐鑛石を得たいと云ふので、食糧輸入の懇請と併せまして、今之を懇請して居るのであります、斯う云ふ状態になつて居る、我々は向ふ側に要請します場合には、常に食糧と燐鑛石を合言葉のやうに致して要請して居るのであります、是は聯合軍側の同情ある協力を俟つ以外に途はないのでありまして、折角努力を致して居るやうな情勢であります、以上は大體でありますが、御報告申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=22
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023・加藤知正
○加藤(知)委員 只今總務局長から縷縷御答辯がありましたが、私は多年燻炭肥料のことを喧ましく申上げまして、殆ど燻炭氣違と云ふ惡評さへ同僚から受けたのであります、併し幸ひにも昨年は漸くにして局長通牒を出して貰ひ、又本年は次官通牒を出して貰つたのでありますが、それが爲に餘程地方に於きましても燻炭と云ふものを無視する譯に行かぬと云ふ程度まで技師の頭も變つて來た、だがやはりまだ本氣に燻炭を獎勵すると云ふ考へを持つて居る技師連は非常に少い、是は事實であります、そこで私は前千石農林大臣に對し、本當にあなたが増産を考へるならば、此の燻炭獎勵に力をお入れなさいと申したのであります、併しつい千石前農相は在任僅かにして退官せられたので我等の希望は達せられなかつた、併し今度の松村農相も千石氏と同樣農村通の大臣であるから、定めし私は此の大臣に依つて我々の希望の達し得らるるものと一縷の望みを持つて居るのであります、併しながら先刻も申しました通り、大臣は兎に角、其の下に居られる局長、課長以下の方々が、本當にやる積りでなれけば到底駄目なのです、でありますから、私は其のことを繰返してしつこく申上げるのでありますが、どうぞ燻炭肥料の獎勵に付ては、之に關する適當の施策を講ぜられたい、所が總務局長には先刻委員長の質問に對し自給肥料に付て色々手當云云の御答へがありましたが、其の御答への中には、燻炭肥料に付ての特別の御答へがない、併し局長通牒を出され、又次官通牒をも出された以上は、定めし燻炭獎勵に關する費用をも御計上になつて居ることと思ふ、そこで私は此の際特に申上げたいのは、此の燻炭肥料獎勵に付ては請願委員會にも之を請願し、又建議委員會へも建議し、請願委員會も採擇になり、建議委員會に於ても通過して居りますから、農林當局としては、之を下に置かれる筈がない、下に置かれなければ、是が獎勵に關する費用は勿論計上されて然るべきだと思ふ、どの位の費用が計上されて居りますか、此處で一つ伺ひたい、若し此處で實際の費用がどれ位あるか分らないならば分らないでも宜しいが、計上してあるかないか、斯う云ふことをはつきりと御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=23
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024・楠見義男
○楠見政府委員 只今御話の燻炭肥料にどれだけの獎勵金が上げられて居るかどうかと云ふことでありますが、私承知致して居りませぬ、當該の農政局の方を調べまして御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=24
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025・加藤知正
○加藤(知)委員 どうも只今の御答辯は甚だ不滿足であります、まあ一例を以て申上げて置きますが、實は私は此の間前田文部大臣に對して、本會議に於てもう少し糾彈的に御話をしたい位に考へて居つたのですが、いま一應私は此の委員會の席上で御參考の爲に御話申上げますが、兎角中央に於ても地方に於ても、篤農家精農家と云ふものを尊重するやうであつて、實は尊重を致して居らぬと云ふ事實が澤山あります、是が私は今日増産と云ふことを喧しく言つても増産の出來ない最大原因であると思ひます、此の點に付て詳しく申上げたいけれども是は後に讓ります、讓りますが我々共が良いことだと考へて申上げても、本省は勿論地方廳に於ても直ちにそれを實行するの勇氣がない、從來の慣習に囚はれて、さうしてそれを固く固陋的に墨守する惡い癖が中央の役所でも地方の役所でもあるのであります、一々指摘しては申上げませぬけれども、私は今の前田文部大臣に關して一つの其の事例として申上げて置きたい、實は燻炭肥料を元の農相山崎達之輔氏に進言したことがあります、あなたが本當に増産をやらうと云ふ御考へがあるならば、堆肥、厩肥と相俟つて燻炭肥料を獎勵されたい、燻炭肥料は百利あつて一害なしと云ふことを私は斷言します、斯う言つて私は進言したのであります、所が其時山崎元農相は加藤君、それ程良いものならば先づ以て自分の縣でやらすが宜しい、良いと云ふ成績が舉がれば直ぐに人が皆眞似をしてやるやうになるから……請ふ隗より始めよで自分の縣よりやつたらどうか、斯う云ふ話であります、私は左樣でありますか、無論致しませう、致しませうが、先づ以て一つ大臣から此の點に付て十分御獎勵を願ひたいと申し、縣へ歸つて燻炭肥料の話をした所、中央から何とも言つて來ないから獎められないと言ふ、實にどうも奇怪千萬な話でありましたが、仕方がない、そこで私は、大臣の迭られる度毎に燻炭肥料を進言し、又農政局長の迭る度毎にも進言して居たのであります、所が前田さんが我が縣へ知事として赴任されると云ふことを聞きましたから、今晩赴任されると云ふ其の日の午後一時半から三十分間の約束で、日本倶樂部で會見し、燻炭肥料には窒素、燐酸、加里の三要素を含んで居る以外に澤山の炭素を含有し、堆肥、厩肥と相俟つて農家に之を施用せしむれば、我が縣の如き冷害、旱害に苦しむ處では、大いに其の被害を輕減することになる、燻炭肥料は旱害、冷害に對する力を稻初め其の他の農作物に與へますから、是非我が縣の農家に之を使はせるやうにせられたい、天候任せにやつて居つて、今年はどうも冷害の爲に縮尻つた、旱害の爲に出來なかつたと云ふことでは、到底此の食糧難を救濟することは出來ない、故に此の度あなたは我が縣へ知事として御赴任なさることであるから何を措いても一つ此の燻炭肥料を御獎勵して下さい、實は斯う云ふ譯だと言つて山崎時の農相への話をし、又我が縣に於ける縣廳の役人連、技師連の考へ方をも話して、あなた一つ大英斷を以てやつて下さい、新潟縣は天下の穀倉だと言はれて居る、其の穀倉に於て年々大切な米作が巧く行かないと云ふことでは、洵に申譯のない話、どうぞ一つおやり下さい、と言つて三十分間に亙つて、私は燻炭肥料の獎勵を御願ひをしたのであります、にも拘らず、在任二年に亙つて一言も、燻炭の燻の字も言はれない、私は此の時一囘だけではありませぬ、我が縣に歸つて二囘も三囘も前田知事に話をして居る、にも拘らず到頭燻炭の獎勵はせられなかつたのであります、茲に速記録の寫しを持つて居りますが、前田文部大臣は私の熱が足りない爲に恐縮したと云ふ御答辯であるから、之れ以上追究する譯にも參りませぬが、若し本當に前田時の知事にして食糧増産に一片の誠意を有せらるるならば、加藤君、君は斯う云ふ話であつたけれども、色々研究して見ると、斯う云ふことを縣の技師は言つて居る、或は縣の係官は言つて居るから、燻炭に付ては今少しく研究の餘地があるではないか、我々の立場として之を獎勵するにはどうもさう云ふあやふやのものでは獎勵は出來ないと言つて、肚を割つての話をされるならば、私は之を諒とするが、何にも話をしない、到頭燻炭の燻の字を言はずに引揚げてしまつたのであります、而も一面に於てはどう云ふことをされたかと申すと、五百萬石を標榜して大いに増産獎勵をされたが、五百萬石を標榜したとて、肥料をやらないで穫ると云ふことは餘りにも蟲の良い話で、木に縁つて魚を求めるよりも尚ほ難い話であります、果せる哉我が新潟縣の昨年の米の生産は、五百萬石は偖て措いて、四百八萬石の平年作を割つて三百萬石臺に轉落したのであります、恐らく本年は三百萬石を割つて居るでありませう、私の進言を容れてそれでも尚且つ左樣な結果を生じたと云ふことであるならば、私は全部其の責任を負はねばならぬと思ひますが、私共の進言は更に聽かず、肥料も與へずに、五百萬石の増收を標榜して農民に之を強ひやうと云ふのだから、無責任なやり方と言はねばなりませぬ、私は曾て荒木大將が文部大臣をやられた際、私と會見の時間を約束して居りながら、それに背いて到頭私に無駄な足を運ばせたことがある、私は直ちに公開状をやつて苟くも文部大臣ともあらう者が時間を守らぬやうなことでどうして國民に本當の教育が出來ますか、直ちに文相の職を辭されたらどうであるかと迫つたのである、其の時に荒木文部大臣は、直ちに電話で以て謝罪せられた、それから其の後加藤鯛一君が私に對し、君は荒木大將を非常にいぢめて居るさうだが、えらい困つて居る、勘辨してやつてはどうであると言ひますから、それはとんでもない話だ、其の話は荒木文相が謝まられたから、僕はもうそれで宜しい積りで居た、併しそれ程困つて居らるるならば僕の方から進んで今一邊能く話をしよう――それから私は荒木文部大臣に會ひまして、色々申した、儂は大臣をやつたことはないが、あなたは陸軍大臣をやり、又文部大臣をやつて、二囘も大臣になつて居らるるが、儂に言はせると、あなたは大臣學を知らない、我輩は大臣はやらないけれども、大臣學ぐらいは知つて居る、御必要とあらば、大臣學の講義をしませうと言つたことがある、今の前田文部大臣は、儂に言はせると大臣學どころの話ではない、新潟縣民はどう云ふことを言つて居るかと申すと、五百萬石を標榜し非常な苛酷な供出をさして居ると言つて、全く怨嗟の聲が縣内に滿ちて居る、ああ言ふ人が文部大臣になつて、それでどうして國を治めることが出來るか、教育の振興が出來るかと、そこまで言つて居るのであります、私もあなた大臣をお辭めなさいと言ひたい位に考へて居る一人でありますが、まさかどうも本會議の席上で以てそれまで追詰めることもどうかと考へましたから、遠慮は致して居つた、兎角どうも中央の者は地方に責任をなすり付け、地方の者は中央の方からなどと言つて責任逃れをしやうとする惡い癖がある、儂に言はせると、今日の多くの役人は、あなた方がさうだと云ふ意味ではありませぬが、兎角どうも責任逃れをしたがる、本氣でやらうと云ふ心持がない、儂はそれを殘念に思ふ、日本の今日の六百萬町歩の耕地三百三十萬町歩の水田、之を我輩の進言を容れて本當にやつて御覽なさい、食糧難と云ふ心配は斷じてありませぬ、又國民か本當にやる積りならば、必ず明年なり明後年なりには、食糧の充實を期することが出來ると思ふ、それが今食糧難に陷り大問題を起して居ると云ふことは、要するに農民全體に一生懸命にやると云ふ心掛が足りないからである、現に東京都下北多摩郡小平村の關根總八君の如きは昨昭和十九年の大旱害に際し外の農民は夜安眠を貪ぼつて居る時に、同君獨りは毎夜午前一時頃から朝の四、五時頃まで一週間も續いて澤山な陸稻に對して河水を與へた、それが爲に此の附近一帶の陸作は皆枯死の状態に陷つたにも拘らず、關根氏の陸稻は全然旱害に罹らず反當四石五斗からの收穫があつた、是は努力の結果であります、品種其のものに當を得た關係もありませうが、人のしない努力をする所に、増産の事實が擧つた譯であります、上の好む所下是より甚だしきはなしで、本省に居られる所の方々が本氣で御獎勵なさるならば、必ず農民は之に蹤いて來ます、所が甚だ失禮の事を申上げますが、兎角中央の方に熱意が足りない、いや中央ばかりではない、地方に於ても其の通りで、是は前田さんばかりでない、私は甚だ之を殘念に思つて居ります、徒らに形式に捉はれ、固陋の觀念下に舊態依然たる獎勵のやり方であるから、増産どごろか、減産又減産となるのであります、御覽なさい、其報いが今顯はれて來て居るのであります、恐らく現状の儘で推移することになるならば、明年の三、四月頃になれば米は一粒もないと云ふやうなことに相成りませう、其の時にどう致しますか、併し此處まで日本の食糧事情を追詰めたことは、食糧の本山である本省を初め、我々食糧に關係をして居る者の大責任であると思ひます、戰爭に敗けた其上に、更に食糧で敗けたと云つては、洵に申譯のないことだと申さねばなりませぬ、殘念ながら敗戰後の日本は食糧に於ても獨立の出來ない洵に情けない状態になつて居ります、此の我が國の現状を打開して食糧に何等の不安のない食糧の新日本を建設するには、官民一體となり一大自覺の下に食糧の大増産に奮鬪努力を要することと存じます、えらい横道へ這入りましたが、何と言つても掠奪的農業では増産の實は絶對に擧りませぬから、どうか一つ肥料其のものに付ては今一段と下部組織へ徹底させる方法を考へて戴きたい、之を私は切に政府當局に御獎め申上げます、而して今一つ私が是非政府當局に聽いて戴かなければならぬことは、あの籾殼であります、燻炭の材料がないとか堆肥の資料がないなどと仰しやるけれども、私がずつと調べて廻つた所では、あの籾殼をどんどん其の儘田圃に抛り込んで居る、甚だしきは堆肥の中に積込まして居る、御承知のやうに籾殼と云ふものは今年やつて再來年にならなければ效果が現はれませぬ、それまでの間は却て土地が冷えます、土地が冷ては稻や其の他の作物は旨く發育する筈はない、それを皆やつて居る、長い間農會は何をやつて居つたか、縣廳は何をやつて居つたか、本省は何をやらして居たか、私は實際を見まして驚いた、あの籾殼を、燃料がない、燃料がないと言つて居ながら、あたら、籾殼を燃料にせず、田圃へ其儘抛り込んで置く、之を一切禁じて燃料となさしめ、操作其の宜しきを得れば朝夕の御飯を炊いた其の上に、立派な燻炭肥料が出來て、二重の働きをさせることが出來るのであります、燃料不足、肥料不足の今日、ああ云ふ無駄なやり方をさして傍觀して居ると云ふことはない筈だ、なぜ之を燃料にさせぬ、燻炭にさせ一石二鳥の働きをさせないのか、さう云ふ獎勵が徹底して居らぬ、私は最近に於て或る温泉に行つて暫く保養をして居つたのであるが、此の温泉は二時間以上も湯中へ入つて居なければ效能がないと云ふので、大勢の者が長時間入つて居る、其處で私が其湯治客に對し色々と此の農業上の話をする、之を周圍に居る者が一人として無駄に聽かうとしない、皆私の周圍に集まつて來て、眼を丸くして聽いて居る、女から婆さん連中に至るまでが聽いて居る、それから考へると如何に良い方法がありましても、それが生産農家下部組織の低位農家と言はるる一番大切な農家の人々へ徹底して居らないのであります、農事試驗場は如何に良い試驗成績を擧げて居ても、それが徹底して居らない、天下の名人たる老農家や篤農家の手許に如何に良い農法があり増産法があつても、それが一般農家へは徹底して居らない、それを一つ徹底せしむる方法を考へたらどうかと云ふことを、私は昨今痛切に感じて居るのであります、此處が一番大事な所です、上で幾ら騷いでも駄目であります、「吹く時は上騷がしき風なるも吹かぬ時にはいづち行くらん」で、下部組織に居る農民は何も分らずに暮して、一向譯が分らぬことになつてしまふ、どうか一つ實地に之を徹底させるやうに、どうしたならばと云ふことを御考へ下さい、私にも案があります、是は時間さへあれば後で述べたいと思ひますが、私は此の希望を述べまして、自分の質問は一應打切りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=25
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026・川崎巳之太郎
○川崎委員長 當局の御意見がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=26
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027・楠見義男
○楠見政府委員 只今加藤委員から縷縷御述べになりました燻炭の問題に付きましては、私としては十分御趣旨の點を生産當局にも傳へまして出來るだけ御趣旨に副ふやうに善處致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=27
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028・安孫子孝次
○安孫子委員 一寸一言、先程自給肥料に對しまして、政府委員から御述べになりましたが、今まで自給肥料が政府の御計畫通り増産が出來ないと云ふことに對しまして、政府委員の御述べになつた通りに勞力の問題等があると思ひまするが、勞力の問題は段々に解決すると思ふのですが、私はやはり先程申上げたやうに、資源の問題が非常に重要な問題だと思ふのであります、資源を培養する生産計畫と云ふものを立てなければならぬと思ふのであります、それがなければ幾ら獎勵致しましても、非常に多額の獎勵金を計上されて獎勵になつて居るのでありますが、それに對しまする當局の御苦心の點は多として居りまするけれども、其の御苦心に副ふだけの成績が擧らぬと云ふことは、どうしてもそれに即應する所の資源がないからだと私は思つて居ります、資源を培養すると云ふ立物で生産計畫を立てて行かなければならぬと思ふのでございます、今までのやり方は已むを得なかつたかも知れませぬが、もう食糧一點張りでございまして、自給肥料の増産とか飼料の問題とか云ふものは閑却されて居つた、飼料と肥料と食糧と云ふものは、三つ相關聯して居るものでありますから、一つに穴が開けば次の方に影響するのは當然であります、どうぞ此の點に對して、今後の生産計畫に對しては地力の培養と云ふことを根幹とした生産計畫が立つやうに御指導を戴きたい、之を切望して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=28
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029・川崎巳之太郎
○川崎委員長 他に更に重要な問題が幾つもありますから、此の際私から一言添へて肥料問題の質問は此の邊で打切りたいと思ひます、今加藤君及び安孫子君の熱心な御希望等がございました、又總務局長の御答辯を伺ひましても、政府の意のある所、立場は能く分りました、外から見て居るのと違うて、局に當られて苦心慘憺たること、それから農商省、今日名前が變りまして農林省になつてからも、多大の入費を自給肥料の爲に使うて居ること等の内輪の話を承りまして、御立場は洵に諒と致して居ります、併し私共農民の實情を見、其の感情を代表する議員と致しましては、何となく物足りぬものがあるので、之を此の際申上げて、更に一層の御奮發を願ひたいと思ふのでございます、大金を掛けることと苦心慘憺たることは洵に御同情申上げ感謝致す所でありますけれども、其の多くは痴人夢を説くと言つては失禮でございますが、どうも牡丹餠を畫に描くやうな問題が多いのぢやないか、それは一々事例を持つて居りますけれども、詳しく述べることは遠慮致しまして、簡單に分る御話のみを申上げれば、あなた方の御計畫は表の話であつて、裏から見るとさつぱりなつて居らない、どなたも否み難い實例を茲に一つ二つ述べて見ませう、燐酸肥料が足りないから鷄を殖して鳥糞を採る、洵に結構な話だし、鷄でなくても、南洋に方々鳥糞の島が澤山ある、それを持つて來ても宜いでありませう、併しながら鷄がそんなにあなた方の御努力、獎勵金で殖えて居るならば、今日鷄の一羽が百圓以上の値打をすることはないのぢやないか、是はあなた方は御存じだらうと思ふ、左樣な途方もない事實を現はして置いて、大金を掛けて鷄を殖やすことに努力して居るのだと言つても、何處を努力したのか少しも分らない、現在の實情は如何なる雄辯を以ても辯明出來ないことであります、又燐鑛石を是れ是れ輸入する、それも洵に結構だから、是非やつて戴かなければなりませぬが、只今は何百萬と云ふ兵隊が外地に居りまして、それが武裝を解除せられ、食物もなくなり、軍票を使ふことをも禁じられて、唯一意故國に歸ることだけを望んで居るのでありますけれども、それを送り還す船便さへ都合が付かない、聯合軍に米搗ばつたのやうになつて頼んでも都合が付かなくて、三年も經たなくては歸れないと云ふ話である、そこで昨日は在外同胞及び復員兵士を早く送り還すことに付て衆議院で決議案が通過して居る、そこに持つて來て外國にすつかり成り切つてしまつた所の南洋なり、佛印なりの方から燐鑛石を大量に運ぶ船の手筈が付きますか、をかしいことを言ふなと我々實際を知つて居る者は考へる、それですから理想と實際ともう少し合ふやうに御奮發を願ひたいことと、殊に肥料に付て申しますれば、最近二、三年間にどの位の金をどう云ふやうな費目に使つて、其の成績は、堆肥はどの位出來て反當りどの位の増産になつて居るか、それから鳥糞なり、牛、馬、豚等の踏肥はどの位増産になつて、それに金はどの位投じて居るか、緑肥、厩肥に付てはどう云ふ方法でどう云ふ費目にどの位金を掛けてどうなつて居るか、即席で御答辯はむづかしいことでありませうが、色々の機關、設備を持つていらつしやることでございますから、此の委員會も近く切上げることでありませうが、切上らない前に一つ「ガリ」版でも何でも宜しいのですから、御出し下さるやうに希望します――肥料問題は此の位で打切りまして、次は蠶絲問題の質問に移ります、先日質問の終りの方が殘つて居ります――五十嵐君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=29
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030・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 蠶絲業の再建の方策、振興策と云ふやうな點に付て御尋ねを致したいと思ひます、我が國の蠶絲業はここ數年來、年々減産の一途を辿つて參つたのでありまするが、殊に近頃に於きましては、激減に次ぐに激減を以てすると云ふやうな實情になつて居りまするが、之を減産を食ひ止め、更に増産の方向に向けると云ふやうなことは、私の考へでは是は尋常一樣な手段では到底出來ない、斯う思ふのであります、そこで本當に之をやるとするならば、政府に於きましても大きな決意と思ひ切つた手を打たなければ、到底繭は出來ないと、斯う私は見透しを付けて居るのであります、併しながら終戰後の状況から致しますれば、是はどうしても、どんな困難があつても、繭と云ふものは生産をしなければならぬ、生絲は作らなければならぬと云ふ情勢になつて居るのでありまするから、一つ大英斷を以て思ひ切つた手を打つて戴きたいのであります、そこで繭を作る上に於きまして最も大きな問題となるのはどう云ふ點かと言ひますと、是は色々ありませうが、先づ食糧との關係の問題、肥料の問題、それから價格の問題であらうと思ふのであります、本日は價格問題に付て御尋ねを致したいと思ふのでありまするが、政府に於きましては、先般來相當思ひ切つた繭の價格を改訂して値上げを致されたのであります、併しながら最近の情勢は、他の一般農作物との價格の均衡を甚だしく失つて居ると云ふことであります、即ち普通農作物は闇價格ならずとも、一反歩の收入と云ふものが千圓、千五百圓、更に多きは二千圓を突破致して居ると云ふやうな實情であります、然るに繭は先づ大體三百圓乃至四百圓しか反當收入はないのであります、而も一般の農作物と云ふものは、食糧と云ふ大きな魅力があるのに反しまして、繭と云ふものはさう云つた點が全く異つて居るのでありまして、單に金錢收入と云ふこと以外にない、而も其の收入に於きましては、一方は千五百圓、二千圓と云ふ多額の收入に對しまして、僅に三、四百圓程度に止まつてしまふ、斯う云ふやうな惡い條件の下に於ては、幾ら繭と云ふものは食糧であると云ふことを強く説いても、是は到底無理な話でありまして、繭が出來ないと、私は遺憾ながらさう云ふ風な悲觀的な見方を致さざるを得ないのであります、そこで斯う云ふやうな實情を十分一つ御考慮願つて、思ひ切つて大幅な値上をして、さうして他の一般農作物との價格の均衡を稍稍保ち得る程度にまで御引上げを願ひたいと思ふのでありまするが、此の點に對しまして、其の御用意がおありになるかどうか、之を先づ御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=30
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031・山添利作
○山添政府委員 繭の價格に付きましては、米の價格も上りますし、其の他色々一般の趨勢を見ましても、どんどん上つて行くやうな情勢でありますので、明年度の繭價に付きましては、適當な引上を致したいと云ふ積りで研究を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=31
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032・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 次はそれに關聯を致しまして生絲の生産費の問題でありまするが、是は昭和十八年に生絲十貫目の生産費が百五十八圓でありましたものが、二十年度に於きましては、色々政府の御心配に依りまして三百八十二圓と、實に大幅な引上を見たのでありまして、此の點は洵に結構でありまするが、最近の實情は是れ亦實に容易ならぬことに相成つたのでありまして、具體的に一例を申上げますと、昭和十八年の生産費百五十八圓の中には燃料費として計算されたものが三十一圓九十八錢であります、即ち昭和十八年、二年前に於きましては、生産費の中に占める燃料費は約二割であります、大體燃料費は生絲生産費の二割乃至三割程度を從來占めて參つたのであります、然るに本年度の實情はどう云ふことになつて居るかと云ふと、是は十分御承知だと思ひますが、三百八十二圓と云ふ生産費に對しまして、現に製絲業者が支拂つて居りまする所の燃料費は、群馬、長野邊りのあの山間地帶に於てすら、二百四十圓見當を支拂つて居る實情であります、恐らく他の地區に於きましては、より巨額に相成ると思ふのであります、即ち二百四、五十圓と云ふものが燃料費の爲に費されて居ると云ふ譯であります、之を割合に致しますと、驚くべきことには、實に六割五分乃至七割と云ふ數字に上るのであります、殘つた三割乃至三割五分では到底生産は窮屈でやつて行けつこない、殊に賄費等の暴騰に依りまして、生絲の生産費は非常に窮屈になつた――窮屈と云ふよりも殆ど二進も三進も行かぬと云ふのが現状であらうと思ふのであります、其の結果はどう云ふことになるかと申しますると、何處までが本當の話であるかは分りませぬが、現在生絲の價格が二千三百八十二圓と云ふことになつて居るのに、只今申しましたやうに、生産費の非常に苦しいと云ふ實情も反映して居ると思ふのですが、往々にして生絲の横流れと云ふことを耳に致すのであります、而も二千三百八十二圓の生絲が七、八千圓、最近に於ては一萬圓を以て取引を致されて居ると云ふ話まで聞いて居る、是も全然ない事實ではなからうと思ふのであります、斯う云ふことを色々考へました場合に、此の生絲生産費と云ふものは、十分に御考へになつては居ることと思ひますが、思ひ切つて實情に即した引上を願はなければ、やはり横流し其の他忌はしいことが生じて參り、生生絲産計畫の上にも、色々面白くない結果を招來すると思ふのでありますが、此の點に對する御考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=32
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033・山添利作
○山添政府委員 生産費がどんどん上つて行くと云ふ状況は、確かに御話のやうな點もあらうかと存じます、明年度の生絲の生産費を決めますることに付きましては、今までですと六月の分を一月に決めることにして居ります、是は其の直前になつて其の時の物價の情勢を反映して決めると云ふ方法を執りまして、支障のないやうに致して行きたい積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=33
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034・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 さうすると十分此の點に付ても御考へになつて居る、斯う云ふことですね――それから是は大變肝腎なことに感じて居るのでありますが、繭の價格を決定するには、生産計畫を立てて業者に繭、生絲、種と云ふやうなものの生産を割當をする、是が從來非常に時期が遲れて居るのであります、養蠶家と云ふものは既に一月、二月の農閑期にちやんと養蠶計畫を各各立てるのであります、所が政府の從來の決定に依りますと、三月、四月に價格を決めたり、或は生産計畫と云ふものを割當をすると云ふことで、時期が遲れまして、價格を上げても何しても間に合はない、増産をさせようと云ふ爲に價格を上げる、養蠶意欲を大いに昂揚してと云ふやうな親切な氣持でやりましても、時期を失つて居るが爲に非常に其の效果が減殺されると云ふのが今までの事例であります、そこで生産計畫、價格の決定と云ふやうなことは、少くとも之を年内に御決めになつて發表して行くと云ふ方法を執つて戴かないと、實際問題として困るのであります、是非さう云ふことに御願ひしたいと思ふのでありまするが、政府の御計畫は如何ですか、此の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=34
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035・山添利作
○山添政府委員 年内は困難でありますが、一月中にやりたい積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=35
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036・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 近く日本蠶絲統制株式會社は解散をされることになつたのでありますが、日本蠶絲統制株式會社の解散に當りまして、同社の持つて居る積立金を如何に處分するかと云ふ點に付て御尋ねをしたいと思ふのであります、統制會社は昨年度の積立金が多分九千六百萬圓かと承知を致して居るのであります、本年度の積立金は蠶絲類の價格の改定に依りまして、恐らく相當巨額な額に達すると思ふのであります、そこで此の改正法に依りますと、其の積立金と云ふものは蠶絲業會に引渡しをすると云ふことに相成つて居りまするが、是は洵に當然だと思ふのでありますけれども、私はさう云ふ巨額な金を次の蠶絲業會に全部引渡す必要はないと思ふ、そこで現に萎靡沈滯致して居り、而も減産の經路を辿つて居る蠶絲業を振興させる方面に、金を有效に一つ御使ひになつたならばどうかと思ふのであります、思ひ切つてそちらの方面に延ばして貰つたならばどうか、さう云ふ一定の金額は積立金として必要でせうが、それ以上相當の額は積立をする必要がない、斯う思ふのであります、それは各府縣に金をやつて、地方の特殊事情を十分活かすことも一つの方法でありませうし、方法に付ては色々あらうと思ひまするが、要するに蠶絲業の振興策を立てて、振興の爲め、再建の爲め、十分一つ御使ひになつて戴きたいと思ふのでありますが、此の點に對する政府の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=36
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037・山添利作
○山添政府委員 繭絲價格安定資金は、將來要るかどうかと云ふことは先づ考へて見なければならぬ問題であります、御承知のやうに生絲の生産も非常に減つて居る、幾ら出した所で「アメリカ」の需要に應へるまでにも行かぬと云ふ程度でありますから、其の意味に於きまして、生絲價格乃至繭の價格を支へる爲の安定資金と云ふものは、當分必要がないものと思ひますけれども、問題は爲替の決まる時にあるのでありまして、當分の間は國家が買上げて國家が出すのでありますから、價格問題はございませぬ、併し爲替が何時決まるか知りませぬけれども、將來決まつたと云ふ時に巧く行くか、或は逆になるか、そこにやはり「チャンス」がございますので、相當の金を取つて置く必要があらうと考へて居ります、もう一つの問題は御承知のやうに、積立金に付ては免税になつて居ります關係で、隨て其の使ひ方も法律できつちり決められて居るのであります、隨て之を他の方面に處分をしてしまふと云ふことは困難でございます、其の儘次の蠶絲業會に、同一の蠶絲價格安定を圖る爲の資金として引渡す、そこで管理をする、斯う云ふことになるのであります、併し一面此の養蠶施設に相當力を入れて、政府のみならず斯う云ふ會でもやつて戴くことが必要と考へて居ります、さう云ふことは又出來るであらうと云ふ見込を持つて居る譯であります、此の問題は此の程度の御答へに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=37
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038・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 さうするともう一點伺ひますが、其の積立金は他に使ふことが全然出來ないと云ふ話なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=38
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039・山添利作
○山添政府委員 さう云ふ風に法制上決まつて居り又課税を免除して居ると云ふ關係上、さう云ふ趣旨になつて居る、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=39
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040・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 最後に一點御尋ねしたいのですが、統制會社が解散になる、さうして次に蠶絲業會と云ふものが只今設立が進められて居る、そこで來るべき年度の蠶絲類の生産割當は、どう云ふ風な方法で割當をなさるか、詰り繭の生産、生絲の生産竝に蠶種の生産の割當をなさる方法を一つ御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=40
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041・山添利作
○山添政府委員 第一の繭でありますが、是は食糧の生産割當に準じて、同一の方法で今後もやつて行きたい、斯樣に考へて居るのであります、隨て政府から府縣、府縣から生産團體――と、斯う云ふ風に參ります、それから種の問題でありますが、是は今まで統制法に基きまして生産割當を政府が執つて居りましたのでありますが、其の法律も廢止になり、今後の事情と致しましては、寧ろどんな品種を養蠶の方で希望するか、又どんな製造家の造つたものを希望するか、さう云ふ養蠶の方面の希望をも十分入れたやり方を致した方が宜しいと考へて居るのでありますので、其の結果として所謂今までのやうな割當は之を廢止した方が宜しい、斯う云ふ風に考へて居ります、そこで斯う云ふ問題は今度出來ます蠶絲業會に於て自治的に取扱ふ譯でありますが、私の宜からうと思つて居る考へ方は、養蠶との間に豫約制度を執つた方が宜いのではないか、今までのやうな無駄な蠶種を造ると云ふことでありましては、折角の國の生産力を無駄にすると云ふことでありますから、其の邊はさう云ふやうな所で、豫約制度と云ふやうなことで、蠶絲業會に於て自治的統制をなすことが望ましいと考へて居ります、生絲に付きましては、今まで割當を致して居りましたが、是も廢止になります、特に今までは制限的意味に於ける生産割當と云ふやうな觀念もありましたが、是は事情は全然今後は逆でありまして、さう云ふものは廢止をする、併し色々な事情から致しまして、そこに仕事量の割當と云ふものはあることが望ましいと考へて居ります
隨て私共の腹案と致しましては、昭和十七年度即ち蠶種製造會社設立前の仕事量を基準に致しまして、さうして製絲業者に對して所謂購繭地盤の割當と申しますかさう云ふことをやつて行くことが適當である、さう云ふことに依つて一面製絲業に對する仕事割當の公正を期しますと同時に養蠶の増産、品種の改良と居ふやうなことにも製絲業者と養蠶業者と協力してやつて行けるやうな考へ方の方が宜いぢやないか、斯樣に考へて居ります、それで其の基準は先程申しましたやうに、昭和十七年度の實績を基準と致しますが、それだけで宜しいかどうか、之に適當な調整を加へたものを以て基準とするかどうかと云ふことは、目下研究中でありまして、是は業者の方の意見も參酌して最後的に決めたい積りでありまして、此のことも亦設立されんとする蠶絲業會の自治的統制に依る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=41
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042・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 實は私の言葉が一寸足らなかつたと思ひますが、私の伺ひたいと思つた要點は、從來蠶絲類の生産割當と云ふものは、政府竝に統制會社が行つて居つた、然るに統制會社は解散になつた、そこで今後の必要なる統制と云ふものが蠶絲業會の自治的の統制に任せられると云ふ建前になりますると、割當と云ふものも、隨て生産の基本計畫と云ふものも、政府が御立てになることは、是は無論でありますが、個々の業者への割當と云ふものは當然さう云ふことになりますると、蠶絲業會の手に依つて行はしむる方が適當であらう、斯う云ふ私の考へであります、其の點を簡單で結構ですから一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=42
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043・山添利作
○山添政府委員 繭の生産計畫に付きましては、是は食糧と綜合的の方が宜いと考へて居りますので、結局食糧に準じた取扱をして行きたい、併し種とか生絲とか言ふものに付きましては、御説の通りに蠶絲業會の自治統制に委ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=43
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044・五十嵐吉藏
○五十嵐委員 能く了解致しました、之を以て私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=44
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045・川崎巳之太郎
○川崎委員長 それでは午後まで休憩を致しますが、其の前に一寸總務局長に御斷りして置きたい、燐鑛石に關しては私の方に尚ほ意見もあります、細かいことは省略しますが、あなたの御説明の御立場は之を了承致しました、それから自給肥料問題に付ての委員長の要求に付ては、えらい細目に亙るものでなくても、大體のことを御示し下さる御意思がありませうか――斯のことを確かめまして、只今より休憩致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=45
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046・加藤知正
○加藤(知)委員 午後には是非大臣に御出席願ひたいと思ひますから、委員長に此の點御願ひ致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=46
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047・川崎巳之太郎
○川崎委員長 今日午後には出席されるやうに交渉致します、是にて休憩致します、午後は一時半より開きます
午後零時十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=47
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048・会議録情報2
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午後一時五十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=48
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049・仲西三良
○仲西委員長代理 是より會議を開きます――山田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=49
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050・山田六郎
○山田(六)委員 蠶絲業法改正法律案に付きまして二、三御聽き致します、蠶絲統制會社を廢止するとか、或は蠶絲製造會社を解散して蠶絲業會を作ると云ふことですが、是等は何れも聯合國軍司令部よりの命令に依つて、斯う云ふ體系になつたと云ふことですが、どう云ふ意味に於て、是の解散を命令したかと云ふことに付て、是までの官僚統制は宜しくない、自主的にやれ、民主主義にやれと云ふやうな意味に於て解散とか廢止と云ふことに相成つたのであらうと思ふのでありますが、今度の蠶絲業法改正法律案を見ると、三つの法律を廢止されて、それに代ふるに今囘蠶絲業法なるものが出たやうでありますが、内容は依然として同じで變る所がない、種に付ても、繭に付ても、生絲に付ても、悉く統制をやつて行かうと云ふやうな方針の下に出來て居るやうであります、さうすると、今日までの官僚統制と何等選ぶ所がないやうに考へるのでありますが、今囘の改正に依つて或は會社の解散に依つて機構が以前と斯う云ふ工合に變つたのだ、斯う云ふ風なそこに截然たる區別がある筈でありますが、其の點に對しての御所見を御伺ひしたい
〔仲西委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=50
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051・山添利作
○山添政府委員 「マッカーサー」司令部から指示がございましたのは、日本蠶絲統制株式會社及び日本蠶絲製造株式會社竝に共榮蠶絲組合を解散せよ、新しく「パブリック・エーゼンシー」の設立計畫を立てて司令部の同意を得よ、斯う云ふことでありました、此の三つの會社若しくは團體に對して解散を命令して來ました理由に付きましては、獨占の排除と云ふことが主たるものであります、即ち日本蠶絲統制株式會社に於きましては、繭、種、生絲に付て一手取扱を致して居ります、又製造會社に於きましては、大部分の生絲の製造を統合致して居ります、斯くの如き事柄が經濟の民主主義の線に沿つて居ない、斯う云ふ理由であると考へます、此の指令の出ます時に、一寸來いと云ふことで、私は「クレーマー」大佐に會ひに行きました、其の理由如何、斯う云ふ質問を致しました所、結局總てを一遍「クリーニング・アップ」して呉れ、一遍掃除して新しく出直して呉れ、斯う云ふ指示でありました、さう云ふ線に基いて居ると思ひます、それから所謂「パブリック・エーゼンシー」を作る案を業者の方々と相談して作りまして、相談に參つた、其の際此の新しい團體を作るのに付きまして、徹底して民主化し政府が干渉しないのだ、さう云ふ方向に於ける意見の交換を致した次第であります、さう云ふ經緯に基きまして、此の改正法律案を提案したやうな次第でありまするが、それでは實質上元の統制と今囘の此の改正法律案に依る運營方法と何處が違ふか、今までは蠶絲業統制法に基く官に依る國家の權力を背景と致しました統制をやつて居つたのでありますが、今度の蠶絲業會に於きましては、蠶絲業會に對する國家の強い監督權と云ふものを外してありますと共に、仕事の運營即ち蠶種に關する自治統制の如きものを如何にするか、又製絲業者に對する仕事量の割當を如何にするか、斯う云ふやうな點は何れも擧げて蠶絲業會の自治統制に任せるのでありまして、蠶絲業會自體の運營竝に其の行ふ仕事に付ての運營方法と云ふものが、民主主義の基本方向に沿つて居る、斯う云ふ譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=51
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052・山田六郎
○山田(六)委員 さう致しますると今囘の蠶絲業法に於て是まで政府の嚴重なる統制監督の下にやつて居つたものが、當業者の自由意思或は民主主義に依つてやつて行くと云ふやうなことに變らなければならぬ筈でありますが、其の點に對して現在の法律に依つて、やはり依然として生絲の生産、加工輸出或は繭の値段、總てに對して統制を致すと云ふやうなことになつて居るのでありますが、其の點は殆ど變りがないと云ふ風に考へられるのであります、殊に其の中で私共は斯う思つて居るのです、今日の如く蠶絲の生産が非常に減少を致したのは、極めて強度なる統制の結果である、此の統制と云ふのは、一面に於て國家の要請に應じてやらなければならぬと云ふことであつたのでありませうが、其のやると云ふことは、同時に生産を非常に阻碍する、生産の増加に對して大變大きな「ブレーキ」を掛けた形になつて來て居ると云ふことは、是は爭ふべからざる事實だと思ふのであります、一方に生産の必要があり、一方に生産を阻碍する政策を執ると云ふことは、是は兩立しない、でありますから、今日までの繭の生産の減少状態を見ると、統制が強化し始まつてから、繭の生産がぐんぐん減つてしまつたと云ふのは、其の他に色々な原因がありまするけれども、蠶絲統制と云ふものが強化されたのを境として、漸次生産が減少致したと云ふことは、爭ふべからざる事實であります、今囘の食糧輸入に對して、其の代替物に生絲がなると云ふやうなことになつて參りまして、生絲の重要性がそれに加はつた譯でありまするが、此の加はつた際に、どれだけの品物を「アメリカ」が必要とするか、或は其の他の外國が必要とするか、國内に於ても纖維饑饉の今日の状態でありまするから、國内の需要も相當多いでありませう、併しそれ等に對して、どれだけの量が必要であるかと云ふことに付ての數量を御聽きすると同時に、或る程度の數量を増加すると云ふことになれば、已むを得ざるものは統制を致すけれども、其の他のものに對しては此の際開放をする、斯う云ふことに致したならば繭の生産は漸次増加をするのではないかと考へられるのでありますが、其の點に對して政府の御所見を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=52
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053・山添利作
○山添政府委員 統制をどうしても必要とする面は、輸出生絲の確保と云ふ點であります、生絲を出して食糧を入れる、其の爲には只今完全に生絲を自由に致しますれば、恐らく現在の纖維不足の状況から言へば、皆是は國内で使つてしまふと考へて居ります、隨て輸出生絲の確保と云ふ目的の爲に必要なる統制をやつて行かなければならぬと考へて居る譯であります、然らば海外でどれだけの需要があるかと云ふ點になりますると、是は確實なことは數年來生絲の輸出が止まつて居つた状況に於きましては、推定致すことが困難であります、併し色々聽いて居ります中に、從來殆ど「アメリカ」では靴下に使はれて居りましたが、寧ろ今後は下着其の他の方面に餘計使はれるのではないか、斯う云ふ見込のやうであります、又靴下に付ても相當程度依然として使はれるだらう、斯う云ふ見込を持つて居ります、現に昨日「ダウティー」氏が横濱の檢査所を視察に參つたさうであります、其の時にも靴下用の十四中が入用だと云ふ御話をされて居つたさうであります、數量的にははつきりと分りませぬが、色々綜合して見まするのに、「アメリカ」でも二十萬俵程度のものは必要だ、斯う云ふ風に觀測されるのであります、唯遺憾ながら我國の供給力、生産がそれに伴はないのが實情であります、來年幾ら繭が作れるか、是は機業の状況等に依つて相當影響されると考へますが、先づ生絲に致しまして十八、九萬俵乃至二十一、二萬俵と云ふ所であらうと考へて居ります、其の中輸出する計畫のものは十五萬俵乃至十六萬俵の範囲でありまして、下級品の殆どを國内に廻す、斯う云ふ積りを致して居るのでありまして、世界的な需要と云ふものを考へれば、相當蠶絲の増産を圖つて行かなければならぬと思つて居る次第であります、併し食糧事情と云ふやうな點から、蠶絲の増産に相當制約がある、斯う云ふ事情は又山田委員が能く御承知の點であります、色々困難な事情に付きましても、適切な對策を立てて極力増産に邁進したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=53
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054・山田六郎
○山田(六)委員 さう致しますと、兎に角二十萬内外の生絲はどうしても輸出の方に必要だと云ふことになり、國内に於ける資源不足を云ふものは非常なる状態でありますから、此の方面に於ての需要も相當量に上るだらうと思ふのであります、そこで蠶絲統制株式會社を廢止を致しまして、蠶絲業會を作ると云ふことでありますが、蠶絲業會なるものは第二の蠶絲統制株式會社であつてはならぬと考へるのであります、さうして蠶絲業會を作ります理由は、兎に角輸出生絲を一纒めにして出すと云ふのには自由に開放して置いたのでは纒まらぬ、國内に消費されてしまつて、輸出の方に差向けることが出來ないと云ふことになる虞があるから、之を統制しなければならぬ、斯う云ふことだと思ふのであります、さう致しますれば、此の蠶絲業會と云ふのは、今日までの統制會社の如くに、悉くの蠶絲業生産品を統制せずに、輸出に關する生絲だけを取扱ふ會社に致して、國内に使ふ生絲或は副産物、玉繭、屑繭等に對しては、全部養蠶家の自由にし、或は製絲家が自由に之を賣ると云ふことに致しましたならば、生産上に非常に影響致しませうし、又生産者の氣持も變らうと思ふことは、他の農産物は何れも是までは公定價格で賣つて居つたのでありまするが、公定價格以外の物も相當あつた、或は現在の蔬菜の如き、非常に高價の物もありますのに、さう云ふ方面に對して蠶絲業は全く何ものもない、悉く上繭は上繭とし、屑繭は屑繭とし、玉繭は玉繭として、殆ど今日までは統制致して之を買上げて居つたのでありまするから、そこに養蠶家の育蠶意欲が非常に失はれたと云ふことは、爭ふべからざる事實でありますから、此の際輸出生絲を取纒めるが爲に、統制の必要があると致しましたならば、今囘の蠶絲業會と云ふものは、輸出生絲のみを取扱ふ團體とすることに致したならば、生産の上に及ぼす影響は非常に多からうと思ふのであります、それから生絲の價格でありますが、此の價格は今日の如き生絲の價格であつたのでは、高い安いと云ふ問題にあらずして、價格と云ふものに對しての農家の一種の趣味と言ひますか、面白味がなくなつてしまつたと云ふやうなことが、蠶絲業を今日に至らしめた最大原因であらうと思ふのであります、でありますから輸出に對しては統制の必要があるが、其の他のものに對しては此の際開放を致すと云ふやうなことが行はれましたならば、此の生産の上に於ても非常な獎勵にならうと思ひまするし、殊に農家が今日非常に困つて居る衣料等に付ても、屑繭其の他のものの自家消費を自由ならしめ、或は其の時の價格に依つて販賣の方も自由ならしめると云ふやうなことになりましたならば、是は生産の上に大影響を及ぼすことにならうと思ひまするが、其の邊に對する御當局の御意見を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=54
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055・山添利作
○山添政府委員 統制を致しますのは輸出生絲を中心にして、輸出生絲の確保に關係ある必要なる範圍に止めたらどうか、斯う云ふ御意見でございます、大體さう云ふ風に考へて居りまして、不必要な統制をやつて行く積りではございませぬ、農家の自家用消費に付きましても、之を相當程度に認めて行くことが養蠶を繼續する所以であると考へまして、本年度から實は相當程度自家用の範圍を引上げて居りまして、一戸に付て四貫目まで之を認めて居るやうな事情でございます、尚ほ副蠶絲に付て自由にしたらどうかと云ふ御話でございますが、一般の纖維資源が非常に少い關係上、纖維關係の統制は依然續けられるものであります、隨て其の全體の纖維統制が續く限りに於ては、副蠶絲の方もやはり歩調を合せた統制が必要だと思つて居ります、是は一般の纖維統制が續く間はさう云ふ風に致して行く外方法はあるまいと考へて居ります、價格等に付きましては、昨年繭價を相當引上げましたが、現在の主要食糧價格とは明かに不均衡を來して居ると思ひますので、明年度の繭價に付きましては、適正な價格に之を引上げたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=55
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056・山田六郎
○山田(六)委員 尚ほ此の際價格問題に付て御意見を御聽き致したいのでありまするが、此の價格を一月中に決定致さうと云ふことを先刻五十嵐君の質問に對して御答辯があつたのであります、私の考へと致しますれば、現在に於ける物價の動きと云ふものは、非常に早いのでありまするから、一月に決定を致して七月に受渡しする前の價格を決めると云ふことは、極めて至難だと思ひます、僅か其の間六箇月でありますが、此の六箇月が常の時代の何箇年に相當することは、過去の經濟事情が明かに示して居るのでありますから、どうしても繭の値段を決定するには、少くも早場の繭が五月下旬になると出る所もありますから、先づ四月或は五月に近く其の決定を致すならば、其の時の經濟事情と繭の價格が稍稍近づくのではないかとも考へるのであります、又今囘の政府の施設の要綱の中には、繭の價格は生産原價に依つて決定すると云ふやうなことになつて居るやうでありますが、此の生産原價と云ふものの計算が、今日の所では非常にむづかしいと思ふのであります、色々な机上で作る所の計畫と、實際に民間で行はれる價格との間には、餘りにも差が多過ぎる今日でありますから、現在勞銀に致しましても、其の他の物價に致しましても、其の間に非常なる差がある、斯う云ふ時代に、やはり生産原價と稱して大體決定されてある所の價格を標準として見ると云ふことになりますれば、繭の値段は到底それに副ふことは出來ない、でありますから、是は全經濟事情を斟酌致しまして、生産原價以外に經濟事情を取入れて、適正なる價格を決定する必要がある、而も其の價格は繭の生産時期に接近すればする程、其の時の實情に近い價格を決定することが出來やうかと考へられるのでありますが、其の點に付ての御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=56
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057・山添利作
○山添政府委員 繭價を決定致しますのに、生産費が根據になることは當然でありますが、其の他に一般の經濟事情、物價の趨勢等を勘案して決定を致すのであります、御指摘になりましたやうに、現在の生産費なるものは頗る掴みにくい、さう云ふことは事實でございます、相當推定も入りますし、又他のものとの均衡をも睨み合すと云ふ問題もあり、又物價はどうせ上る趨勢にございますから、さう云ふことも考慮に入れて決定を致したいと云ふ考へでありまして、山田委員の御述べになりました所と、大體同樣に考へて居ります、唯接近して五月頃に決めたらどうかと云ふ點に付きましては、成るべく養蠶の計畫等に著手を致します二月頃に、さう云ふことに著手を致すと思ひますが、早い目に決めて、さうして是だけの値段を明示して養蠶に携はつて貰ひたいと云ふ、斯う云ふ意味合から、前頃に決めた方が宜しいと云ふやうに、此の點は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=57
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058・山田六郎
○山田(六)委員 其の點が意見が違ふのでありますけれども、政府で決定された價格を發表されて、養蠶家が喜んで養蠶に飛付くと云ふやうな値段を決め得るならば宜しいが、如何に經濟事情を斟酌すると云ひましても、養蠶家の滿足するやうな値段を政府で取極めると云ふことは、不可能だらうと思ふのでありますから、成べく遲い方が宜しいのではないか、斯樣にも考へられるのであります、尚ほ先達て東北六縣の蠶絲聯合會に於きまして、又去る二日には福島に於て養蠶業者の大會と云ふものを開いて、色々生産の非常なる激減、今日尚ほ引拔いて居るやうな状態でありますから、それ等に對して養蠶家の忌憚なき希望を聽いたのであります、其の時分に最も多く論議されたのは食糧問題であります、是は前に皆さんからも御話があつたらうと思ふのでありますけれども、今日の所食糧が斯う窮迫して參りますのでは、養蠶は到底出來ない、人を頼むにも食糧を與へずして勞銀だけ拂ふと云ふのでは、來て働くと云ふ人は居ない、而もそれに與へる食糧がないと云ふやうなことを盛んに言つて居られます、それから繭の品種の改良をしなければ困る、現在の所では或る時代には絲量本位の蠶絲が非常に多く出まして、其の蠶絲の性質が非常に弱い、其の弱い蠶をやつて始終違蠶をする、だから非常に危險性を伴ふから、其の危險性を多く價格の中に見積つて貰はなければ困る、でありますから今後はどうしても強健性のもので技術が立派であつたならば、絲量を第二にして強健性のものを選んで欲しいと云ふこと、而も其の種を作るものが統制されたが爲に、共同飼育組合と云ふやうな所で作つて居るから、責任者がない、何者が作つたと云ふことが養蠶家に一寸分らぬやうに出來て居つて、どうも不安で堪らぬ、であるから種を作るものは最後まで責任を持つて立派な種を供給すると云ふやうな、昔の種屋のやうなものに復活して貰つたならば、非常に安心して蠶が飼へるぢやないかと云ふやうな議論が多かつたのであります、それから繭の檢定と云ふ問題に付ても、其の通りであります、今度の此の改正された規則の中にも、而も五千圓までの罰金を取ると云ふやうな條項の下に、繭は檢定に依るにあらずんば取引をしてはならぬと云ふやうに、禁止令があるやうでありますが、是なども今日までの檢定の成績と云ふものをどれだけ信用して宜いか、斯う云ふ議論が非常に多かつたのであります、養蠶實行組合に於ては、或は之を二分し三分して、色々な方法で檢定を受ける、其の檢定を受ける時分に、却て供給をした繭がどうも思はしくないと云ふ事例が多かつた、是ならば非常に上等で、是れ以上の繭はあるまいと思つたものが、豈圖らんや檢定の結果は、絲量が少かつたと云ふやうな結果がある、さう云ふ例を擧げまして、其の今までの檢定と云ふものは信頼するに足らないと云ふことが一つ、それから今一つは檢定をするが爲に、繭の代金の受取期間が非常に遲れる、中には三箇月も四箇月も過ぎて、漸く其の結果が分つてから金を貰ふと云ふことになるのであるから、是は洵に困る、であるから何とか之を或は切歩檢定なり或は肉眼檢定とか云ふやうなことにして、繭を渡したら直ちに金を受取ると云ふやうなことが出來得るや否や、さう云ふことが出來得るとすれば、養蠶家も繭の受渡しを濟まして、是だけの金が貰へたと云ふことで、喜んで養蠶をすることにならうと思ふ、斯う云ふやうな議論が非常に多かつたのであります、此の點に對しましては、是は獨りさう云ふ會合の時のみならず、日本全國到る處の會合で此の問題は叫ばれるのでありまするけれども、檢定を悉くなくしてしまふと云ふやうなことに付きましては、相當考へねばならぬ點もありまするから、此の檢定は今囘の規則の第十五條の規定にある如く、五千圓の罰金を科すと云ふやうなことにあらずして、檢定に依つて取引するのを方針として、今の如き事情の下に檢定を受けずに、肉眼檢定若しくは切歩檢定に依つて、繭の取引を致し、直ちに金を決濟をして欲しいと云ふやうな業者に對しては、其の意に任してやる、所謂希望檢定と云ふか、隨意檢定と云ふやうなことに致しましたならば、養蠶家が非常に滿足致すだらうと思ひまするが、此の點に對しても御意見を御聽き致したいと思ひます、其の他色々の要求がありましたが、漸次それは御話申上げることと致しまして今の二、三點に對して當局の御意見を先づ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=58
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059・山添利作
○山添政府委員 食糧の問題が養蠶に付ての最大の隘路であると云ふ事情は、私共さう云ふ事實を認めて居る譯であります、之に付きましては、非常に苦しい食糧事情の中でありますけれども、何とかして行きたいと云ふ風に考へて居ります、今年も若干の加配をするやうに手配致したのでありますが、地方に依つて必ずしも徹底して居ないやうであります、隨て蠶絲當局と致しましては、生絲を出して食糧を入れる、國家的に見て桑園を潰して食糧を穫るよりも、生絲にして出した方が宜いと云ふことを考へて居る次第でありますから、さう云ふ爲に必要なる食糧に付ては、相當考慮を拂つて行くべきである、斯樣に考へて居りますので、出來るだけさう云ふことが實現しますやうに、私としては努力をしたいと考へて居ります
次に品種に付きまして強健にして且つ絲質の良いものを希望する、是は當然さうなければならぬことでありまして、戰時中は何でも質より量と云ふことで參りましたが、今後は輸出生絲を目標として、今のやうな品種に變へて行きたいと考へて居ります、又種に付て誰が作つたか分らぬやうなものを、今までは充がはれて居ると云ふ恰好でありましたけれども、今後は養蠶家の希望に依り、誰それの作つた種が欲しいと云ふことになれば、さう云ふことになるのであります、其の點は希望通りになる譯であります
其の次に檢定が當てにならぬ、金が遲くなると云ふことに付きましては、さう云ふ事實は偶偶素人が――素人と言ひますが、養蠶家でありますから素人ではありませぬけれども、今までの經驗の判斷でやりましても、檢定は實際上絲を引いて見る譯でありますから、其の點も不正確さはないものと考へて居ります、尤も檢定方法等に付きましても、段々新らしい方法を工夫して行くと云ふ改善發達に努力はしなければならぬと思ひますが、是はあつてもなくても宜いものだと云ふ風には、我々は考へて居らないのであります、唯缺點は御指摘になりましたやうに、金の拂ひが遲くなる、是が養蠶家に取つて甚だ面白くない、是は確かに缺點でありますけれども、出來るだけさう云ふことも早く行きますやうに、是は政府としても指導は致しますが、同時に業者の方でも勉強をして貰はなければならぬ、且つ今後は所謂蠶絲統制會社が一手に買ふと云ふ方針ではごさいませぬので、そこは話合ひで段々さう云ふ風になつて行くべきであり、又なつて行くであらうと云ふ風に考へて居ります、唯切歩檢定とかさう云ふことは宜しいのではないかと云ふことに付きましては、今後は輸出生絲を作つて行き、益益繭の品質も良くすると云ふ爲に、謂はばやり直しをしなければならぬと云ふ状況でありますので、さう云ふ制度が良いとは思はない、やはり檢定を正確に致しまして、さうして品質の改良と云ふことを圖つて行く必要があると考へて居ります、五千圓と云ふのは、是は相手が製絲家の方でありますけれども、法律の建前から言へば、養蠶の方でも當然問題になる譯であります、そこは別な方面を睨んで居ると云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=59
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060・山田六郎
○山田(六)委員 檢定問題は重大問題でありますから、尚ほ御聽き致したいのでありますが、理窟から言ふと、檢定をして繭を取引すると云ふことが、最も正確な筈であります、所が繭の絲量を決定すると云ふのは、繭を乾燥して煮繭をし繰絲をして繰上げて、又乾燥して揚返しをすると云ふ手順を要するのであります、同じ繭に致しましても、此の繭が正確にどれだけの絲量があるかと云ふことを見ることは、極めて困難なのであります、繭其のものの質との關係もあれば、煮繭手が若し誤つて煮繭が早過ぎた或は煮過ぎたと云ふのでも、絲量に大影響を及ぼします又繰絲をする工女に於ても、年中中間の絲量を取る工女もあり、或は糸目を多く取る工女もあり、絲目を切らす工女もありますから、工女に依りまして非常な差額があるのであります、是はどうしても上と下とでは一匁半位の差額が出るのでありますから、非常に其の點も違ふのであります、さう云ふ作業の中の色々な細かな注意の爲に絲量に、甚しきに至つては一割も一割五分も違ひが出ると云ふことは、製絲を少しおやりになつて見た方は、どなたも能く分つて居るのでありまするが、さう云ふやうな難かしい仕事でありまして、中々檢定には嚴正な絲目に出すと云ふことは、斷定の出來ないことであります、然らば他に良い方法があるかと云へば、私共はやはり檢定をして見るより外に方法なしと考へて居るのであります、殊に檢定に使つて居る工女の如き者は、優良工女を使つて居らない、優良工女は他の製絲工場に行つて働いた方が金になりまするから、先づ中以下の工女が集まつて居るのが實態であります、其の人々の手に依つて檢定されて、此の何億と云ふ繭の價格が決定するのでありますから、中々危險なる仕事であります、ありますが、檢定の方が稍稍正確でありますから、其の方に依ることは結構でありますが、檢定に依らず、寧ろ切歩檢定若くは肉眼檢定に依つて買ふことに決め、さうして代金の決濟が出來れば、養蠶農家が非常に滿足するであらうと思ふのであります、此の現に行はれて居る所の切歩檢定のやうな檢定では駄目です、やはり操絲檢定と同じで相當の手數を掛けて切歩檢定をすることになりますから、相當の時間を要すると云ふことは同じであります、是は極めて簡單な操作で出來る、切歩檢定若しくは肉眼檢定が此の中に加はれば、或は現在やつて居る所の檢定に依つて取引を致す、或は今のやうな簡易取引を以て其の時々の取引を決濟してしまふと云ふ取引も雙方やり得る希望檢定と云ふものにしたならば、非常に養蠶家が滿足する方面の人が多からうと思ふのであります、でありまするから、是は双方の方法に依つて繭の價格を決定すると云ふやうなことにすることが出來たならば、生産の上に及ぼす影響は極めて大きいと思ひまするから、其の點に付て更に御再考を御願ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=60
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061・山添利作
○山添政府委員 當分の間生絲も繭も國家貿易になつて居ります間は公定價格である、さうしますと、是は目下品質に依つてきちきちと決めて行くと云ふ譯であつて、どうしても其の意味からも品質の改良のみならず、檢定がやはり必要であると考へて居るのであります、併し金拂ひを早くすると云ふことは、勿論必要なことであり、先程申しましたやうに、今後は取引の形態が變つて來る譯でありますから、自らさう云ふ風になるものと思ふ、又みなでさう云ふ風に進めて行かなければならぬものと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=61
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062・山田六郎
○山田(六)委員 農産物の價格政策と云ふことに付て、餘程新しく考へて戴かなければならぬと思ふことは、價格を公定して、其の價格で取引せしめると云ふことが、滿足に出來得ればそれで宜しいのでありますが、今日米の價格等に於きましても、政府買上價格と民間の闇取引の價格と云ふやうなものを見るのであります、現在の民間の取引は如何に安くても四斗俵が四百圓、五百圓、高いものは三千圓四千圓と云ふやうな取引をして居ることは、是は公知の事實であります、それで繭に對しましてもやはりそれと同じで、色々な形式を整へましても、實質に於て非常に恐るべき結果になるのではないかと思ふことは、實際に於て繭の生絲、或は眞綿、さう云ふ蠶絲生産品の價格が、非常に闇價格と實際の公定價格と云ふものに差が出來ましたならば、是は屑繭なりと稱し、或は赤繭なりと稱して、殆ど生産の何割かは屑繭に行つてしまつたと云ふやうな事實を生じて、目的の數量を集めることが出來ないと云ふやうな結果になりはしないかと云ふことを非常に心配するのであります、私共は繭の價格に對しましても、或は檢定の方法に對しましても、出來得るだけ當業者の生産意欲を阻碍しない範圍に於て決めなければ、こちらの計畫が實際に副はない、是は過去の戰時中の總ての生産に對して苦い經驗を嘗めて居るのでありまするから、それと同一なる結果を來すのではないかと云ふことを、非常に心配するのであります、其の點に對しまして、尚ほ御再考を御願ひ致したいと思ふのであります
其の次の問題は肥料の問題、是は最前から色々御話があつたやうでありまするが、化學肥料等は容易に出來ないと致しましたならば、せめて蛹の還元だけはすることと云ふやうな御話があつたのでありまするが、是は事實に於ては養蠶家に一粒の蛹も現在まで還元されて居ないのであります、或は特殊の一部地方では、さう云ふことが行はれて居るかも知れませぬけれども、殆ど行はれて居ない、でありますから、今日桑園の荒廢が非常に甚だしい、それには肥料の缺乏が大なる原因を成して居りまするから、是等に對しては、是非何とか實現して欲しいと思ふのでありまするが、是等に對しまして正確に蛹だけでも養蠶家に還元してやると云ふやうな方法を實行する御意見がありませぬでせうか、それを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=62
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063・山添利作
○山添政府委員 蛹の問題を御話になりましたが、蛹に付きましては、先月來統制方法を變へまして、今までのやうなきつい意味の統制は廢止しまして、地方長官で必要と認める時に統制をすると云ふ趣旨に致したのであります、御話のやうに、或る程度之を養蠶家に遷元致したいと思つて居ります、唯一方大豆が穫れませぬから、此の蛋白質として蛹の相當多くのものを醤油の方に向ける計畫を致して居ります、養蠶の方にも或る程度蛹を還元致したい積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=63
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064・川崎巳之太郎
○川崎委員長 此の際一寸申上げます、商工大臣が此の委員會の要求に應じて此處に御見えになりましたが、時間を急ぐさうでありますから、商工大臣に質問の川俣君の質疑を此の際許可致します――川俣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=64
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065・川俣清音
○川俣委員 本委員會で、午前中肥料の問題に付て論議されました、硫安の生産高に付て及び其の生産に對する商工當局の意向をも十分檢討する必要がありますので、商工大臣に以下の點に付て御答辯を願ひたいと思ひます、最近の硫安の生産状況を見まするに、商工省の大體の見積りと、農林省の期待とに大きな開きがあるやうに思はれるのであります、そこで此の隘路を兩者の方面に於て打開しなければならぬと思ひますので、斯かる點から御尋ね致しますが、又硫安の増産に伴ひまして、硫安の相當の値上りが豫想されるのでありますが、此の値上り等も將來の農業經營の上に於て、非常に影響する所が大きいのでありまして、硫安の値上り等の點に付きましても、まだ御尋ね致さなければならぬと思ふのであります
第一に御尋ね致しますのは、硫安の來年度の生産高に付て商工當局と農林當局との間に意見の食ひ違ひがあるかないかと云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=65
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066・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 來年度に於きましては、商工當局としては六十九萬「トン」を見込んで居るのであります、併し其の他にも海軍の燃料厰及び帝燃其の他民間の人石關係の設備とか、「メタノール」關係の設備等の轉換等も考へて居りますので、是も早く行けば若干加はるかも分りませぬが、是等の轉換は大體昭和二十二年度、二十五萬「トン」二十三年度百十五萬「トン」と云ふことに豫定して居りますが、二十二年度になりますと、此の二十五萬「トン」に、それから元の設備に依る分が六十五萬「トン」と云ふことになつて參ります、二十三年度になれば、百十五萬「トン」に五十萬「トン」を加へた百六十五萬「トン」と云ふ計畫になつて居ります、但し川俣君御承知の如き最近の石炭事情でありますが、是は石炭が得られるものとしての計算でありますから、今の状況を以てすれば少し減産になりはせぬかと心配して、目下農林當局とも打合せて、場合に依つては、あの邊の勞力も出して貰つて、それを石炭増産に使ひたい、斯う云ふやうに考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=66
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067・川俣清音
○川俣委員 農林省は來年の増産の上に少くとも百萬「トン」乃至百二十萬「トン」を要すると御考へになつて居るやうに聞及んで居りますが、此の點に付て農林當局より御答辯はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=67
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068・川崎巳之太郎
○川崎委員長 農林省の方は居られませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=68
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069・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 一寸川俣君に申上げて置きますが、或は石灰窒素の分も含めて、窒素系肥料として農林省では考へて居るかとも存じます、隨て窒素系肥料に付て石灰窒素も合せますと、是は大體年間昭和二十一年度、約十萬「トン」二十二年度二十五萬「トン」位な増産を考へて居る次第であります、或は此の石灰窒素の分が硫安に換算されて硫安幾らと、よく農林省では成分で換算したものが出て居りますから、そこに數字の差があるのではないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=69
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070・川俣清音
○川俣委員 農林當局の方の御意見は別の機會に御尋ねするとして、そこで今大臣が大體御述べになりましたやうに、六十九萬「トン」を目標にして居られるやうでありますが、今大臣の仰せのやうに、最近は石炭事情が非常に惡化して居ります、石炭事情に付ては後程申上げますが、私最近の硫安工場の状態を調べて見ますのに、大體六十萬「トン」乃至七十萬「トン」と致しますれば、電解工場に於ける硫安が三十五萬「トン」乃至四十五萬「トン」と見て居るのであります、あとは石炭を直接利用致しました硫安工場と見なければなりませぬ、而も電解工場に於ける硫安に致しましても、「トン」當り四千五百「キロ・アワー」要する内の千五百だけは、やはり石炭に依存致して居るものが相當多いと見なければなりませぬ、是は「ボイラー」炭を要します、「ボイラー」炭は原料炭を要しませぬけれども、「ボイラー」炭として相當の量を要求して居るのであります、一方今最も活動的になつて居ります石炭を要する硫安工場は、是は目下の所一番働き宜い所の硫安工場でありますが、此の硫安工場の「トン」當りの原料炭は一「トン」乃至一「トン」六分掛るのではないかと思はれる、さうして又「ボイラー」炭は二「トン」を要するのだらう、或は發電用に更に二「トン」を要するだらう、合計發電は「ボイラー」炭としまして四「トン」は要するだらうと想像されます、是は大體の所でありますが、現に使用して居ります原料炭に致しましても、一「トン」乃至一「トン」七分位は要するやうであります、勿論原料炭でも、以前のやうな優秀な原料炭でありますれば、一「トン」四分程度で間に合ふのでありますが、最近の原料炭では、どうしても一「トン」七分を要するのではないかと思はれるのであります、更に「コークス」、硫安鑛石等を考へて參りますと、石炭が相當の値上りをし、「コークス」も相當の値上りを見込んで居りますし又鑛石の値上りも見込んで參りますと、相當な硫安の騰貴を見なければ、硫安の生産は不可能ではないかと云ふのが、大體硫安生産業者の意向のやうであります、此の結果、相當な値上りを商工省では期待致して、其の値上りを見込んで六十九萬「トン」と云ふものを見込んで居られますか、或は現在の價格で六十九萬「トン」出ると云ふ風に御考へになつて居りますか、價格の點からだけでも御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=70
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071・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 川俣君も御承知の如くに、石炭消費者價格二十圓十三錢であつたものが、今囘八十五圓に大幅引上になりました、隨ひまして是等の値上りは、當然硫安の生産費に多大の影響を及ぼす譯合でございまして、此の増産等に付ても、それ等を見込んで居ります、尚ほ獨り是は石炭ばかりでなく、電力に付ても大體動力も五割引上げると云ふことにして居りますので、それ等の點も併せて考へて居るのでありまして、川俣君の仰せられた値上りを考へて居るか、織込んであるかと云ふことに付ては、全く左樣に考へて居る次第でございますから、商工當局としては農林省とも能く打合せをして、價格問題等を御決めを願ひたい、斯樣に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=71
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072・川俣清音
○川俣委員 大體硫安「トン」當りの豫定されて居る價格はどの程度でございますか、其の點承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=72
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073・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 一寸此處で私數字をはつきり存じませぬし、御答辯する資料を持合せて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=73
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074・川俣清音
○川俣委員 それではどの程度の値上りを豫想されて居りますか、農林當局から御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=74
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075・川崎巳之太郎
○川崎委員長 居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=75
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076・川俣清音
○川俣委員 それでは續いて商工大臣に御尋ね致しますが、大體六十萬「トン」乃至七十萬「トン」と申しましても、硫安工場は今日まで相當修繕を後らせて參つて居りますので、修繕に要する鐵鋼材等の修理必需物資が相當窮迫を告げて居るのでありますが、之に對しまして、商工當局は所謂海軍關係の現物資材を手當て致すことに依つて、此の修理が可能であり、更に増産の爲の修理もそれに依つて可能であると云ふ風に御考へになつて居るやうでありますが、現實に是が現物化されて工場に行渡る時期は相當に遲れるのではないかと云ふ風に我々は見るのであります、此の點に付て商工當局の御見解を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=76
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077・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 此の硫安設備の復舊及び轉換に要する資材に付きましては、是は優先的に之を割當てる、斯う云ふ方法を執つて居りまして、先頃軍保有の資材を申受けました内、既に一萬數千「トン」を是等の方へ割當てて居ります、今後の分としては硫安と石灰窒素兩方合せて二箇年間約八萬「トン」位の鋼材を見込んで居るのでありますが、是は可能であり、同時に優先的に差上げて肥料増産に資したいと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=77
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078・川俣清音
○川俣委員 私共も割當てられたと云ふことは新聞及び商工當局の度々の御聲明で聞いて居りますが、現物が工場に到著するのは何時頃の見込みであるかと云ふ點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=78
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079・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 實は私率直に申しますが、細かいことは存じませぬ、存じませぬが、既に割當てして居るのは、軍の分は實物を貰つてあるので、實物が行つて居るから、それぞれ屆くことと考へて居ります、軍以外の分は、是は一應の計畫で割當ててございますから、優先的に割當てると云ふことになるのですが、軍の保有物資を貰つたものは實物を貰つたので、もう屆いて居ることと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=79
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080・川俣清音
○川俣委員 大臣は多分さう云ふ御答辯になるだらう、小さい點で大臣を責める意思はありませぬが、現物と云ふことを特に申上げましたのは、是は商工當局として現物があるもの、現物を御渡しになつた、斯う云ふ風に御考へになつて居るけれども、是は現物ではない筈であります、現物と机上とは合つて居ないことで、度々業者が行きましても、此處に是だけあるんだと云ふ商工省の御指示の通りの現物がない譯であります、現物が渡されたと申しますけれども、現物がない場合が往々起つて來て居ります、そこで現状は、割當てられたのと現物と合はないのであります、海軍關係に致しましても、陸軍關係に致しましても、商工省の手許にありまする數量と現物とが、非常な開きを示して居るのが現状であります、隨て現物を渡されたと云ふことが、今日に於ては前のやうな割當ではないから、現物だからと斯う一應は御説明になり得ると思ひますけれども、其の割當と現物が合はない現状に於て、現物は何時渡されたかと云ふ點を御尋ねして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=80
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081・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 川俣君能く實情を御存じのやうであります、私より御存じであります、私は歸りまして能く省内の關係者に傳へて見まして、若しさう云ふ風なことがありますれば善處させ、直ちに實行の出來るやうに取計らひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=81
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082・川俣清音
○川俣委員 大臣の御話、洵に私も了承致しました、早速御取計ひ置きを願ひます、更に進んで御尋ね致したいのは、今日のやうな石炭事情が續いて參りますると、石炭の減少致しまする傾向と云ふものは、是は大臣も十分御存じの通り、大體粗惡炭になる傾向を持つて參るのであります、數量が増して參りますと、之を選別致しまして、原料炭及び一般炭と云ふ風に、規格を段段と嚴格に査定出來るのでありますが、減少して參りますると、規格を嚴格にすることに依つて、更に減産する虞れを生じますので、此の査定に於て比較的「ルーズ」になり易いのは必然のことであります、そこで硫安工場に於けるやうな原料炭と云ふものは、是は今まで一「トン」五分、或は一「トン」六分と云ふ大體の見込みを以て配給されましても、粗惡になつて參りますれば、御承知の如く一「トン」八、或は二「トン」近くなる、或は優秀炭でありますれば逆に一「トン」四、一「トン」三と下るのでありますけれども、現在硫安に割當てられまする状態から見まして、原料炭と名前は付けられましても、相當質の低下されたものが配給されるのではないかと云ふ風に豫想されるのであります、隨て要求量と云ふものは更に増大する傾向にあります、そこで何と致しましても是は石炭の異常なる増産が必要になつて來るのでありますが、此の異常なる増産に付きまして、最も必要なものは、勿論勞力であります、私は石炭に付て餘り此處で議論する積りぢやありませぬ、簡單に申上げますが、其の中で最も必要とされるのは、恐らく先山であらう、採炭夫であらうと云ふことは言ふまでもありませぬ、そこで採炭夫と云ふ者は、相當な勞働力を要するのでありますから、兎に角眼の前に於ては、是はどうしても農村から援助を仰がなければならぬと思ふ、特に東北の農村に於きましては、是からは愈愈雪の爲に農業と隔絶されまして、比較的農閑期と相成るのであります、そこで此の農閑期に於ける農民、之を動員致しまして、北海道方面の増産を圖ると云ふことが、最も手近な方法でなければならぬ、是は常識的にも考へられます、所が今日までのやうに、徴用或は縣の命令等に依つて募集し、或は甘言を以て募集致しましても、中々優良なる所の採炭夫は得られないのであります、東北方面に於ける所の農民は、曾ては炭坑に一年二年、或は東北は金山地帶でありますから、坑内生活には比較的慣れて居る人々もあります、採炭には慣れて居らなくても、金山採鑛には相當の經驗を持つて居る者も少くないのであります、唯現状は金山或は炭坑に於ける状態が、農民の生活と非常な違ひがある爲に、中中其方面に勞力が移動出來ない所に缺點があります、そこで農民に眞に此の石炭事情を理解さして、炭坑に十二月から三月まで動員すると云ふことが好ましいのであります、此の好ましい状態を如何にして作り出すかと云ふことが問題だらうと思ひます、そこで問題になつて居りまする農業團體等を利用致しまして、團體部落が主體になり、農業團體が團體として北海道方面に行く、さうして勞力を奉仕した場合に、それだけの肥料を特配すると云ふやうなことが考へられないかどうか、此の點に付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=82
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083・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 洵に御尤もな御意見でありますが、唯さう云ふ農村の勞務者が農業團體等の斡旋に依りまして、農閑期中行つて働いて貰ふことは最も願はしいことでございますが、唯働いて掘出された炭の全額に相當する肥料を出し得るかどうか、是は一寸一應能く相談して見なければならぬと存じます、唯其の内の何割かを肥料としての硫安其の他の工場に向ける、さう云ふことは私の方でも考へて居るのですが、其の全額をと云ふ御話でありますと、是は他の一般への石炭の配分計畫にも關係のあることでございますから、一寸即答を致し兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=83
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084・川俣清音
○川俣委員 是は大臣も大體御存じの通り、例へば百人出たら、其の百人の人が幾ら掘つたかと云ふことは勿論計算も出來ませぬ、又百人の人が皆採炭夫になる場合もあり、雜夫になる場合、後山になる場合、先山になる場合もあります、勿論先山であれば何「トン」掘つたかは、請負契約でありますから明瞭であります、雜夫でありますれば何「トン」掘つたか不明であります、隨て私共も決して行つた者が掘つただけのものと云ふやうな數字に囚はれることは致しませぬ、併し百人應援致しましたならば、一體どの位の程度かと云ふことは、大體常識で判斷出來ます、其の中のどの位が特に硫安工場なり石灰工場に廻して、どの程度のものを増配するかと云ふこと、私はさう云ふ數量は論じて居りませぬ、大體期待に反しないやうにやる、金でやるよりも――私は金で募集した者は中々成績が擧らぬと云ふ風に考へます、隨て物でなければ働かぬと云ふ意味ぢやありませぬが、優秀なる先山を送りたいと云ふ所から、それには金でなしに、私は金は要らぬけれども行つて掘つてやらうか、斯う云ふ所に大きな期待を掛けて居りますので、此の點が解決されましたならば、農林當局と打合されますと同時に、自主的な農業團體と折衝されますならば、東北方面に於きまして、一萬五千から二萬の動員は決して不可能ぢやない、私も率先して後山位は勤め得ると考へます、此の點に付てもう一度明快な御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=84
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085・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 特に北海道の勞務が非常に不足して居りまする關係上、今東北方面から一萬五千乃至二萬の勞務者を得られることは、洵に結構なことであります、隨ひまして肥料の問題に付きましても、是は十分考へませう、御期待に副ふやうに致します、實は川俣君御承知でありませうが、先般鶴見の日本鋼管が火が消えるかも知れない、火が消えては困るから、自分の方から二百人の人を出さうと言つて出した、是は今山え貯炭になつて居る分から出して居るのでありますが、それを持つて來れば鐵鋼の火を消さずに濟むと云ふなら、そして君等が出て行つてやると云ふならやらせようと云ふので、今發つて行つて働いて居ります、それで今私共の方も考へて居りますから、川俣君の仰せのやうに、農村の方から行つて、其の石炭は肥料の方に、硫安の方に使ひたいのだと云ふことになれば、是は日本の食糧問題の解決の點から考へて、硫安の製造には最も重點を置かなければならぬのでありますから、さう云ふことに取計らふことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=85
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086・川俣清音
○川俣委員 私はもう一つ附加へて商工大臣に御願ひして見たいのですが、是は商工省の方々に先山になつて呉れと云ふことは、中々困難であると思ひますけれども、雜夫等のことでありますれば、一箇月や二箇月御勤めになつても決して困難ではない、と同時に、農林省の方々も、是は一體官吏が地下勞働を體驗して見ると云ふばかりではなく、今日まで石炭に勞働者を移行出來なかつたのは、明治初年以來囚人を使ひ、或は上野の山に居る浮浪者を集めて來て炭礦へ送り込むと云つたやうな所に、勞務者の質を下げ、炭礦から他に轉業することを以て足を洗ふ、それを以て出世なりとするやうな、炭礦坑夫を辭めることが人間だと云ふ風に考へられて來た所に、勞務者の給源が涸渇した原因があるのであります、官尊民卑の風は好ましいことではないに致しましても、まだ存在するのであります、隨て役所の人々が先づ後山位は勤めると云ふので、商工省の人々が何割か、農林省の役人も何割かが先に立つて入ると云ふことでありますれば、一萬五千から二萬と申上げた東北の農民が、更に二萬五千なり三萬になり得ると想像するのであります、此の點に付ても、もう少し一段の御努力を願はなければならぬと思ふのですが、此の點に對する御答辯を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=86
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087・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 先般も日本鋼管の鐵鋼の者が向ふへ行きました場合も、又九州の日本製鐵の者が向ふに參りました場合も、何れも團長竝に團員に商工省が加はつて居ります、團長には優秀な事務官が自ら率先して之に參加して是等を率いて行つて居ると云ふ工合でございます、隨ひまして今川俣君が仰せられた精神は、尚ほ廣く移すことに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=87
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088・川俣清音
○川俣委員 農林省も單に農民に増産意欲を奬勵するばかりではなく、率先して石炭増産に身を以て挺身することが必要だと考へます、それでどなたか農林省に於かれても、此の點に付て御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=88
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089・並川義隆
○並川政府委員 私は其の方の直接の關係の者ではございませぬが、先程來熱心に御話しの點に付きましては、私達も同じやうな考へを持つて居ります、出來るだけ御協力するやうに致したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=89
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090・北勝太郎
○北(勝)委員 只今石炭採掘に農夫を使つて肥料の増産を圖る、斯う云ふやうな御説でありますが、實は昨年それをやられた、所が私は北海道ですが、北海道の農家は冬暇だらうからと云ふのでやられたのですが、實に迷惑をした、是が爲に増産になるものが増産にならなかつた、是は餘程氣を付けて貰はなければならぬ、本當に暇のある人なら宜いが、如何に冬でも、農家と云ふものはそれぞれ一年の年中行事を決めて仕事をして居る、俵も編めなかつた、何も出來なかつたと云ふやうなことになつて來まして、殊に家畜を飼ふものなどは大迷惑でした、さう云ふことは一つ思ひを致して貰はぬと、今の御話では大變に都合が好ささうだけれども、實に増産に非常に困る問題であります、私は一方に都市に働かざる失業者が澤山居る、それを活用することをせずに、一方一生懸命働いて増産をやつて居るものを持つて行くと云ふことを當り前のことに考へられたら飛んでもないことだ、農村の實情に合はないと云ふことを申上げて御考慮を願つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=90
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091・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 北君の仰せられるのは洵に御尤もに思ひます、唯前年に於きましては御承知の如き徴用で行きましたから、さう云ふことがあつたかも知れませぬ、今川俣君が仰せられたのは、農業團體等に於て自發的に手の空いて居る者が行くと仰せられたから、全面的に私は贊成したのであつて、今日私共は徴用等に依つて農村の方から人を採らうとは考へて居りませぬ、現に農村は北君仰せられた通り、昔の農村は或は冬暇だつたかも知れぬ、併し今日の農村は一年中忙しいと云ふことは、私も百姓の子でありますから、能く存じて居ります、私の川俣君に贊成しました意味は、手の空いて居る人が冬の間進んで行つて貰ふと云ふことであるから、是程望ましいことはないと云ふことでありますから、能く其の點は御諒解を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=91
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092・川俣清音
○川俣委員 今の點で私も一言申上げなければならぬ、私も徴用ではいかぬ、率先して行くやうな者でなければ、唯人間が行つただけでは石炭の成績が擧らぬと云ふことは十分考へて申上げた、尚ほ復員等に於きまして農村の勞力が相當餘裕――と云ふ程ではないに致しましても、可なり緩和されて來て居る、其の點に付て十分私共は確信を持つて居りましたので、數字を擧げて一萬五千なり二萬と申上げましたが、私は北君より東北のことに付ては百姓のことに付てもつと深く接近して居る積りであります、それは議論になりますから申上げませぬ
もう一點御尋ね致したいのは、政府は盛んに硫安の増産を一方考へて居りながら、聯合軍の指令に基くと稱しまして、硫酸設備を硫安工場からもぎ取るやうな方法にも見える譯であります、是は現情に於きましては一貫作業をして居ることに依つて漸く硫安の製造が成立つて居るのでありますから、是から硫酸工場をもぎ取りますと、或は減産を命じますと、硫安に直接の影響する點が多大であらうと思ふのですが、此の點に對する御見解を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=92
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093・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 「ポーレー」大使が發表されました賠償に關する中間の御意見であります、あれに付きましては、實は私共もあの細かい具體的内容はどうなつて居るかと云ふことで色々向ふの方にこちらの事情を詳しく話をしたいと考へて居り、又諒解を求めなければいかぬと考へて居るのであります、唯硫酸設備を其の儘すつと持つて行かれると云ふことに付きましては、向ふも日本の最低生活と云ふものは保障すると云ふことを言つて居られ、其の最低生活の保障には御承知のやうな日本の事情でありまして、土地は狹くなつた、人は殖えた、又今後も一層復員或は在外同胞の引揚げで殖えて來る、而も食糧は斯う云ふ事情の下にある、どうしても食糧に付ては増産をやらなければならず、又不足食糧其の他のものを入れる爲にも見返り物資等の製造をしなければなりませぬ、さう云ふやうな各種の問題がありますので、能く先方の諒解を得るやう目下各種の資料に付て説明致して居りますが、私共は向ふも能く分つて呉れることと思ひます、但し此の問題は今、相當「デリケート」な問題でありますから、今日はそれ以上觸れさせないで戴きたいと思つて居ります、何れにしましても、日本人が豫期せぬ嚴しい賠償が參つて居る譯で、日本産業に與ふる打撃と云ふものは少くない、隨て是等に付て出來るだけ日本國民生活の爲に打撃を少くして貰ふやうに、全力を盡して居ることだけ申上げて御諒解を仰ぎたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=93
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094・川俣清音
○川俣委員 私も色々大臣の苦衷を察しますので是れ以上は控へますが、大體新聞を通じて商工當局の意向を見て居りますと、一率に三割を減ずるやうにも見受けるのであります、それは總體として三割か或は二割五分か、私は「パーセンテージ」は存じませぬが、例へば日本の生産現状から二割五分減じ得ると致しましても、硫安工場と密接な所から一樣に減ずることは影響する所が大きいのぢやないか、さう云ふことを大體申上げて置きます
〔川崎委員長退席北委員長代理著席〕
私も是れ以上は餘り申上げませぬ、諒承致しますが、特に硫安に付ては深い關心を持つて居られると思ひますから、一貫作業をなすには硫安の現状の生産維持は困難であると云ふ點を申上げまして、私の商工大臣に對する質問は終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=94
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095・北勝太郎
○北委員長代理 宇田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=95
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096・宇田耕一
○宇田委員 私は商工大臣に電力問題に付て御聽きしたいのであります、治水等に伴ふ諸施設の中に、發電計畫を織込むべきものと考へて居りますが、其の點に關して大臣の御見解を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=96
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097・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 一寸御尋ねの意味がはつきり致しませぬでしたが、治水、利水等の問題と共に發電計畫を決めるべきものであると思ふがどうかと云ふ御趣意でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=97
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098・宇田耕一
○宇田委員 さうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=98
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099・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 左樣ならば私共同樣に考へて居ります、昨今御承知の如く「ダム」の建設と云ふことが力強く唱へられて居る、又是は私共實行に移さなければならぬと考へて居ります、併し此の「ダム」の建設には治山、治水の問題、利水の問題、就中農業用水として使ひ得ると云ふやうなことも十分に考へてやらなければならぬ、斯樣に考へて居りますので、まだどう云ふ組織で參るか分りませぬが、中央に一つの「ダム」臨時建設本部と云ふやうなものを作りまして、そこで例へば利水の關係に付ては農林省、或は治山、治水の關係に付ては内務省、或は財政的の見地もありませうから大藏省、又技術的な點は商工省に電力廳がありますから其の者が加はる、或は土木の關係、或は輸送の關係等で運輸省の者も入ると云ふやうな工合に、各方面の人を網羅しまして、「ダム」の建設等に付ての十分なことをやりたい、特に先刻一寸問題になりましたやうに、石炭の非常に不足する場合であり、又今後石炭を掘盡すと云ふのには相當年月が掛るかも知れませぬが、何れにしても日本の産業が段々復興して參りますれば、其の多くをやはり電力に依る方が日本の實情に合ふやうに思ひますので、其のやうに今根本的の問題を決めたい、こんな風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=99
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100・宇田耕一
○宇田委員 發電所の開發等に付きましては、御承知のやうに日本發送電が管轄して居るのでありますが、一、二萬「キロ」程度の發電所に付きましては、寧ろ地方の實情に即して民間に開發を許すのが適當でないかと思ひますが、此の點に付て如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=100
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101・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 あれは御承知のやうな所謂統制ばやり時代であつたからああ云ふことになつたのでせう、あの當時でも反對論のあつたことは御承知の通りであります、併し現在の如く機構が定まつて來ますと、さう云ふ風に小さいものを許すのが宜いのかどうかと云ふ問題は、相當考へて見なければならぬのぢやないかと思ひます、但し御意見の次第は能く分りますので、能く考へて見た上で善處さすやうに致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=101
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102・宇田耕一
○宇田委員 特に僻遠の土地ですと、工場立地條件等が從來の資本主義的な考へから割出すと適當でない關係で、開發すべき所の水力は澤山ありながら、發電所の設置が遲れる、或は計畫が途中で葬り去られると云ふことがありますが、將來の立地計畫、或は國土計畫等から見まして、必ずしも僻遠の土地がそれに適せないと云ふことでもないでせうから、さう云ふ意味から言ふと、寧ろ地方の實力に依つて解決した方が宜い、一例を申上げると、農業會等の最近の預金だけを見ましても、僻遠の地でも一億やそこらの金を持てつ居る、さうすると一萬「キロ」や二萬「キロ」の開發には少しも事を缺かない、さう云ふ點から見ましても、寧ろ地方の實力に依る方が宜いのぢやないかと考へられる點もありますので、御意見を聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=102
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103・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 仰せの點は御尤もに存じますので、能く一つ考へまして、現在の法規の上でどうなつて居るか、若し又さう云ふやうに直すことの方が宜いと云ふ結論に達しますれば、左樣な風に持つて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=103
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104・宇田耕一
○宇田委員 發電計畫等に付きましては其の位に止めて、次に電力の配電機構に付て御意見を伺ひたい、地方農村の電化、其の他色々の電力を中心とする工業化が盛に唱へられて居りますが、現在の配電會社の機構と云ふものは、地方の行政機構と必ずしも一致しない點があります、特に僻遠の縣になりますと、段々と小さい支店程度のもので配電行政をやると云ふことになつて居ります、隨て農村の電化とか、終戰後特に動力關係が重要になつて來るに從つて、人的機構に於ても、非常に貧弱になつて居る所が多い、さう云ふ點から考へまして、配電行政はどうしても今後直さなければならぬ點が多いと考へますが、之に付ての商工大臣の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=104
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105・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 少し專門的なことに亙るやうですから、電力局長等をして答辯せしむる方が、あなたの御氣持に副ふのぢやないかと思ひますが、若しさうでございますれば、私は是れ以上の質問がなければ、其の程度に止めて置いて戴いて、電力局長を此處に出して御答辯させることに願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=105
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106・宇田耕一
○宇田委員 それで宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=106
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107・北勝太郎
○北委員長代理 加藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=107
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108・加藤知正
○加藤(知)委員 私は商工大臣に對して二、三御質問申上げて置きたいと思ひます、先づ第一に御尋ね致したいことは、生絲の輸出に付てであります、大東亞戰爭中は内地だけでありますから、其の品質も軍需品を除くの外、繭でさへあれば宜い、生絲にさへなれば宜いと云ふことでありましたが、敗戰後の今日には海外輸出、就中賠償物資、外米輸入の代替物資と云ふやうなことになつて居ります、是までとは違つて、品質本位で蠶絲業の改善發達を圖らなければならないのであります、それには養蠶家と製絲家を直結し、製絲家と米國企業家を直結せしめて、一貫致した施設を講じて、米國機業家の希望に應ずるやうにしなければならないと考へるのであります、それには生絲の生産までは農林省でやる、生絲の輸出は商工省でやると云ふやうでは、一貫致した施設とは言はれないと思ふのであります、隨て蠶絲の改善は出來ないと思ひます、縱し出來ましても、米國の流行に副うてどんどん生絲の改良をやつて行くと云ふことが、頗る困難の状態になることは言ふまでもありませぬ、之に對する所の商工大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=108
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109・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 御述べになつたことは、大體私共同感でありますが、但し生絲の輸出までの製造、輸出全部を一貫してやれと云ふことに對しましては、輸出ならば是は聯合軍司令部の命令です、一元的にやれと云ふことは、是は命令でありまして、商工省が今度外局として貿易廳を置いて之をやることになつて居るので、此の命令が變るまでは、今如何に仰せられてもやりやうがないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=109
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110・加藤知正
○加藤(知)委員 其の一元的と云ふことはどう云ふ意味か一寸分り兼ねますが、私共の一元的と云ふことは、詰り繭から生絲、生絲から輸出と一貫致した施設が即ち一元的ではないか、斯う思ふのであります、そこで「マッカーサー」軍司令部からの一元的と云ふ意味はどう云ふ意味であるか、今一應御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=110
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111・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 それは輸出輸入と云ふものは一箇所で全部やれ、是が一元的と云ふ意味であります、隨ひまして、例へば蠶絲であるとか、繭であるとか、生絲であるとか云ふものを、農林省でやられても、之を輸出する生絲に付ては、輸出輸入と云ふものは一元的にやれと云ふことであつて、隨て米の輸入も、或は棉の輸入も、見返り物資の輸出も是は貿易廳が日本の全部の貿易をやる、是が一元的の意味であるのであります、隨ひまして今あなたが言はれるやうに、農林省と商工省にある行政を一貫してやれと申しましても、それはやれないと云ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=111
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112・加藤知正
○加藤(知)委員 一元的の意味は分りましたが、御承知のやうに、もう殆ど昔からと言ひたい位古い歴史があつて、農林省、農商省と云ふやうに色々時代が變つて來て居りますが、それでもどちらかと言ふと、絶えず農林省と商工省と分れますと生絲の輸出は商工省に入つて居る、今私が申上げたやうなことは、蠶絲業者間の問題になつて居るのです、恐らく「マッカーサー」軍司令部も此の生絲の問題に付きましては、私の今申上げました繭から生絲、生絲から輸出と云ふやうに一貫しなければ、米國絹業者の好みに應じた生絲は作られないものであると云ふことを、政府當局が能く御説明になつたら、能く分ると思ひます、「マッカーサー」軍司令部に分らないことはないと思ふ、向ふからの命令だから是は仕方ないと仰しやられればそれまででありますが、そこが政府當局の努力さるべき所ではないかと、私は思ふのでありますが、其の點に付きまして「マッカーサー」司令部に對して如何やうに御交渉なされましたか、其の點を伺つて見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=112
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113・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 私共はあなたの言はれたやうな昔のやうな農林省の行政である、商工省の行政であると云ふやうな「セクショナリズム」の考へで申して居るのではありませぬ、併しながら今日の情勢は、貿易と云ふものは一元的にやる必要があるので、貿易廳を作つて一元的にやるのであります、是が日本の現状では最も相應しい、最も適當であると云ふので、私共も之に從つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=113
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114・加藤知正
○加藤(知)委員 生絲の問題は此の程度にして置きまして、今一つ御尋ね申上げたいと思ひますことは、全國の都市が空襲の爲にどの位燒かれて居るか、實際の數字は私分りませぬが、新聞紙の記載する所に依りますと、百十何都市が燒かれて居ると云ふことに相成つて居ります、そこで其の都市の人人は今此の嚴寒の候に向はんと致して居る今日、住むに家のないやうな状態でありまして、偶々建てましても見るかげもない洵に小さな所に入り込んで居るやうなことで、洵に同情の念に堪へない、そこで此の都市の燒け出された商工業者と云ふものを、一體どう云ふ風にやられる御考へであるか、斯う云ふことであります、そこで大部分の今日まで商工業に從事して居つた人は悉くやはり商工業に從事させようと云ふ御考へであるか、それとも其の中の何割と云ふものは之を農業に轉業せしめるとか、其の他の業に轉業せしめると云ふ御考へかどうかと云ふことを御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=114
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115・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 其のことは既に豫算總會等で申述べました、此の委員會は私は蠶絲業法の委員會だと承知したのですが、それに關係ある御答辯は致しますが、商工業をどうするかと云ふやうなことは他の機會に讓つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=115
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116・北勝太郎
○北委員長代理 一寸皆さんに申上げますが、會期愈愈切迫して時間が貴重になりましたから、本法案に關係のある質問だけに止めて戴きたいと思ひます、どうぞ御諒承願ひます――山田さん引續いてどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=116
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117・山田六郎
○山田(六)委員 今一つか二つ御伺ひ致したいと思ひます、蠶絲統制株式會社も最も近き將來に解散を實行すると云ふことでありますが、伺ひますれば五十嵐君の質問に對して、蠶絲製造株式會社の赤字問題に關して、政府は是が何等かの處置を付けてやる義務があるが如くに考へて居る、斯う云ふ御答辯があつたと云ふことであります、さうするとそれは政府が蠶絲製造會社を作る際に、色々査察をして作らし、斡旋の勞を取つたからと云ふことでありますか、或は蠶絲統制株式會社が蠶絲製造會社に投資をして居る、投資をする際には農林省も大藏省も同意をして投資をせしめたのであるから、此の製造會社が今解散に相成つて、相當の赤字がある際には、政府として之を放つては置けない、何等かの方法をしなければならぬ、斯う云ふ風の意味に於ての御考へであるか、其の邊の所を御聽き致したいと思ふのであります、それからもう一つ、此の赤字が相當大なるものであると云ふことを聞いて居るのであります、私は能く分りませぬが、人に依つては一億圓にも近い數字になつて居ると云ふやうなことを聞いて居るのでありますが、さう云ふ大變な赤字だと致しましたならば、如何なる方面から之に對して補填をしてやると云ふ御計畫でありませうか、其の邊の所も御聽きしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=117
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118・山添利作
○山添政府委員 昨日五十嵐委員の質問に對して、政府と致しましても相當の責任を感じて居ると云ふ意味のことを申しましたのは、統制會社が投資をして居るからと云ふ意味ではございませぬ、會社設立の經緯竝に官選をするとか云ふ戰時中に於ける生産計畫を強行致した、斯う云ふ點から申したのであります、それからどれだけ赤字があるかと云ふことは、正確なことは私も存じて居りませぬ、併し一億圓あるぢやないか、斯う云ふことは恐らく所謂共助金の問題をも含めての意味と考へて居りますが、共助金の措置に付きましては、是は繭の産額が戰時中非常に減りました、隨て今度蠶絲業等を復元致しますに付きましても、元通りの規模にはなり得ぬと云ふことも已むを得ないのでありまして、是は別の意味でありまして、本當の意味の會社の損失と云ふことでありますれば、そんなに多額のものがあるとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=118
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119・山田六郎
○山田(六)委員 今度蠶絲統制株式會社が解散をし清算を致します際には、其の持つて居る資金の中で絲價安定資金だけは今度の蠶絲業會に引渡すべしと云ふことが、蠶絲業法の中に規定があるやうであります、それから政府の御方針では、蠶絲統制株式會社の株主に對しては年六朱に相當する配當を附加するだけで、それ以上の金は配當をしない制限配當をせしむるのだ、斯う云ふ御方針だと承つたのでありまするが、さうすると絲價安定資金は蠶絲業會に引渡す、一方株主に對しては六朱の配當しかしないと云ふことになりますれば、其の時に於て繭價の引上とか、色々なことの爲に蠶絲統制會社に殘る剩餘金と云ふものは極めて大なるものである、相當に大きな、絲價安定資金の二倍若しくは三倍に近い剩餘金が出る、斯う云ふやうなことも巷間傳へるのでありまするが、果してさう云ふ清算の結果になりましたならば、是等はどう云ふ風に、其の金を處置されるのでありませうか、其の點に付て御意向を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=119
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120・山添利作
○山添政府委員 繭價を改訂致しました所謂差益が相當ございますが、其の相當部分はやはり繭絲價格安定資金の中に繰入れられる部分、それから蠶絲業の改良發達と申しますか、役に立つ仕事に使はれるものであらうと考へます、御話のやうな、さう云ふことをやりました後で解散の結果殘るものに付ては、恐らく爾かく莫大なものぢやないのぢやないかと考へて居りますが、それに付きましては蠶絲業會に引渡すなり、或は其の他の大日本蠶糸業會あたりでやつて居ります蠶絲價格研究と云ふやうな資金に充てますなり、是は又關係方面の意見を伺つたりして、適當な方法になるだらうことを希望して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=120
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121・山田六郎
○山田(六)委員 御答辯に依つて最初私共が考へて居る方面にさう云ふ金が向けられると云ふことで滿足するのでありますが、現在の農村の状態から言ふと、蠶の生産を現在の程度に止めると云ふことは容易ならぬことであると思ふのでありまするが、更に幾らでも、増産をしろと云ふことになりますれば、新たなる種々なる手を打たなければ、到底此の蠶の生産を増すと云ふことは思ひも寄らぬことである、斯う云ふ風に考へるのであります、それには色々な要求も意見もあるやうであります、或は桑苗の無料配付をしろとか、或は指導員の全額國庫助成をしろとか、色々希望があるやうでありまするが、此の頃の新聞に依りますと、聯合軍司令部に於ては、政府の凡ゆる助成を此の際打切ると云ふやうな命令があつた、或は各町村役場に至るまでも人事費以外のものは支出して相成らぬと云ふ通牒が出て居ります、斯う云ふ點から見ると、政府が色々産業政策に對して助成をすることは、今後も繼續してなし得るのでありませうか、或は聯合軍の命令に依つて、さう云ふことは、なしにくくなると云ふ情勢に置かれてあるのでありまするか、其の點を一寸御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=121
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122・山添利作
○山添政府委員 聯合軍の命令は、今後さう云ふものに付て新しく承認を得よ、斯う云ふ制度になつて居るのでありまして、將來どう云ふ方針が執られるか存じませぬけれども、全面的に補助金等を否定したものではないやうに私は考へて居ります、唯許可を受けると云ふことでありますから、一應「ストップ」して置く、斯う云ふ程度でありまして、許可の手續を經て交付すると云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=122
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123・山田六郎
○山田(六)委員 さうすると只今の問題は現在までに決まつて居るものは補助しても宜しい、今後新たに補助すると云ふ政策を立てる時には諒解を得る、斯う云ふことに承知して宜いのでありまするか、現在色々農業、土木方面には、町村農道の開設、色々な仕掛けた仕事が相當多いのでありますが、恩給さへも途中で止めろと云ふやうなことを命令する時代でありますから、さう云ふ種々な助成金もここで打切られると云ふことになれば、是は容易ならぬ問題だと思ふのでありまするが、其の點は今後新たにするものは許可を受ける、現在まで民間に約束してあるものは、是はどんどんやつて宜しい、斯う云ふ風に承知して宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=123
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124・山添利作
○山添政府委員 是から現實に支拂ふと言ひますか、交付をするものでありまして、既に約束したものは、是から金を出すと云ふものも含んで居ります、併し許可を得れば宜い譯であります、現に私共もそう云ふ手續をどしどし致して居るものもございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=124
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125・山田六郎
○山田(六)委員 それから今後の繭の生産を増加するには、今御話申上げました如く、新たなる思ひ切つた手を施さなければ、到底生産の維持或は増産と云ふことは困難でありまするが、私は此の際先刻御話の中に統制會社の剩餘金と云ふものに對しては、蠶絲業の爲に相當使ふ計畫でもあり、使ふことも出來ると云ふやうな御意見のやうでありまするが、是は洵に喜ばしいことであります、若しさう云ふ金が出來得るとしましたならば、之を各府縣の情勢に應じて各府縣にそれぞれの活動の資金として助成を致し、さうして出來るだけ地方の適切なる御方策に依つて増産を圖ると云ふやうなことを御計畫下さいましたならば、非常に效果があるだらうと思ふのであります、今一つの案は、政府が大なる開墾計畫をされて居るやうでありまするが、此の開墾計畫の内容は、食糧の増産の爲に開墾をなすものに對して、是れ是れの助成をすると云ふ方針のやうでありまするが、それを食糧の増産及び桑園の造成の爲に開墾するものと云ふことにして、其の大なる計畫よりなる國庫の助成金に桑園を加へることが出來ないかどうか、若し出來ましたならば、是非此の桑園の開拓と食糧増産の爲めの開拓と云ふものを同一の取扱をすると云ふことを實現したいと思ふのでありますが、其の點に付て御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=125
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126・山添利作
○山添政府委員 食糧に對する奬勵施設も、地方事情に依りまして、それぞれ計畫に異る點もございますので、助成と云ふものも、或る程度地方に委せると云ふやうなやり方をすることが結構だと考へて居ります、それから大きく建てられて居りまするけれども、開墾計畫の中には桑園を作ると云ふ問題は含めて居りませぬけれども、何分廣い土地でありますから、其の中、其の周邊と云ふやうなもので、是は桑園にするのが土地全體の利用度から見て宜からうと云ふ所では、養蠶を取入れて行くやうにしたいと云ふ風に、私共は思料を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=126
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127・山田六郎
○山田(六)委員 其の問題は生産を増す上に於て非常に重要な關係がありまするから、是非御努力下さいまして、桑園を開墾助成の対象と致すことに御願ひ致したいのであります、御希望だけでなく、之を實現すると云ふ御決意の下に、御努力を御願ひ致したいと思ひます
更に農業會の問題に付て一、二御聽きしたい問題があるのでありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=127
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128・北勝太郎
○北委員長代理 今政府委員が此處にいらつしやらないさうですから、後の機會に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=128
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129・山田六郎
○山田(六)委員 尚ほ私は大臣に對して御聽きしたいことがあります、それから農業會の問題に對して二三御聽きしたいと思ひますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=129
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130・北勝太郎
○北委員長代理 それは保留して置きます――岡田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=130
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131・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 今日本で打突かつて居りまする一番大事な問題は食糧問題だと思ひまするが、此の食糧事情が極めて容易ならざる状態にありますることは、政府當局も御認めになつて居りませうし、又「マッカーサー」司令部の經濟科學部長「クレーマー」大佐も、既に言明致して居る所であります、そこで終戰に依つて、戰爭は濟んだから、米麥、藷類などの主要食糧が從來以上に殖えて來ると云つたやうなことは、到底思はれない現状であります、所で然らば水産物はどうであるかと云ふことになりますると、其の振興方法、やり方如何に依りましては、私は水産の問題は、必ずしも悲觀すべき問題ではない、斯樣に存じて居ります、殊に今日の食糧事情に於きましては、政府當局は水産に關しては、一段と努力さるる必要があるのぢやないかと思ひます、御承知の通り魚は海の中に棲んで居りますし、鹽は海の中に無盡藏にあります、漁村は海に面して居ります、それでありまするのに、漁村では年中鹽が足りないと云ふことを今言つて居ります、それで時に、殊に大漁の時には魚を腐らす、國家は毎年鹽を海外から何十萬「トン」となく輸入しなければならぬと云ふのが今の實情でありますけれども、是は實際言ふと、考へ方に依つては、實に妙な話であると思ふのであります、今後日本の水産は大きく分けて考へますと、二つの役割があると思ふのであります、其の一つは、國民の食糧生産と云ふ面からの役割と、他のもう一つは、敗戰後の賠償物資の關係が此の水産製造物に依つて一つの大きな役割をする、斯樣に思ふのであります、而も今日日本の國の領土は非常に狹くなつてしまひました、海も制限はされましたけれども、水産活動の面はやり方に依つては擴げられるのではないか、斯う云つた状態にある、而も食糧危機に直面致して居ります今日、水産の飛躍的開發を圖り、漁撈の高度化を圖つて、さうして曾ての日本のやうに、水産を世界の最高峰に置くと云ふことは、政府當局として考へなければならぬのぢやないかと私は思ふのであります、戰後日本の水産振興策を大臣に聽きたいのですが、幾ら待つて居つてもおいでになりませぬ、それで先づ、大體政府が斯う云つた見地に立つて御考へになつて居ります所の明年度の漁獲目標を何處に置いて居られますか、先づそれを御伺ひ致して見たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=131
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132・笹山茂太郎
○笹山政府委員 大臣に對します大きな問題に付きましては措きまして、私からは來年度の水産計畫に對する答へを申上げます、實は來年度の水産計畫に付きましては、増産の最も根幹であります漁船の状況、それから燃油、綿絲、「マニラ」麻等の資材等の供給から見ますと、其の點に付きましては實ははつきりした見透しが付いて居らない状況でございます、併しながら私共と致しましては、食糧事情の現在緊迫せる状況に鑑みまして、出來得る限り努力を致しまして、目標と致しましては、大體戰前の十二億貫程度のものを來年度に於て漁獲したいと云ふことで、色々漁船の問題、資材の問題に付て取扱つて居るのであります、尚ほ操業海域は、終戰の結果相當制限せられまして、從來我が國の水産に相當な貢獻を致して居りました北洋或は東支那海の方面、其の他南方海域に於ける所の漁撈は、今の所窮屈になつて居るのでございますが、是等のものが假に十分行かないと致しましても、まだまだ許された海域に於きまして相當な漁獲が出來るのではないかと云ふやうに實は考へて居ります、戰爭中は不幸に致しまして漁船は徴用其の他に依りまして極度に逼迫致し、又重油等の燃油が殆ど配給がないに等しかつたやうな状況でありまして、是等の生産手段は現在に於きましては、相當軍需物資が民需に轉換された結果、相當量は確保致して居るのであります、是等の物資を極力利用しまして、一日も早く水産が戰前の状況に囘復することを目途と致しまして、各種の方針に出て居るのでございます、尚ほ燃油に付きましては、聯合國の厚意ある援助に依りまして、差當り十二月分と致しまして六千五「トン」の供給を得て居るやうな次第でございまして、今後とも是等水産物の増産上最も必要なる所の資材等の方面に付きましては、聯合國の厚意ある援助に依つて解決をして參りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=132
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133・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 來年度の漁獲目標十二億貫と承つたのであります、今御話の通りに戰前に於きまする日本の水産業の地位と云ふものは、少くとも世界の最高峰を行つて居つたのでありますが、戰時中其の生産が非常に低下した、即ち大東亞戰爭の勃發以來魚介類の生産状況は、戰前の平均漁獲高十四億貫だつたと記憶して居りますが、それに對しまして、年々低下して行きまして、私の承知致して居る所に依りましても、昭和十六年には約十六億貫位獲つて居つたが、十七年には八億數千萬貫、十八年には七億八千萬貫、十九年には六億六千萬貫、二十年は是は見込であらうと思ひますが、どの位になるか知れませぬが五億貫か、六億貫位ではないかと承知致しますが、斯う云ふ風に激減して居るのである、所が戰爭は濟んだ、來年の目標は十二億貫だと云ふのであります、而も此の非常に減産を致して來ました原因は、戰時中特に必要なる漁船が徴用された、又今は勞務は餘つて來たでありませうが、戰時中は漁業者即ち勞務要員と云ふものが非常に足らなかつた、殊に資材が不足であつたと云ふことが其の原因であると思ふ、今御話に依りますと、燃油は聯合軍に話して、何ぼでありましたか一寸聽き洩らしましたが、或る數を確保したと云ふ風に言つて居られますが、今申しまする通りに、漁船資材、殊に燃油それから「ロープ」網類、斯う云ふ一番必要な資材が、果してどの位用意が出來て居りますか、漁船の如きは、近海に自由に出漁を許されて居りまする百「トン」未滿の漁船と云ふものは、戰爭中に七割も八割も破損其の他で役に立たなくなつてしまつたと云つたやうなことで、出漁不能の状態に置かれて居るのであります、そこで私は漁船に付きましては、此の軍需施設の轉換等に依りまして、是が修理施設を増強することを圖らなければならぬ、何としても木造船は建造しなければならぬ、同時に修理を徹底的にやらなければならぬと云ふ風に思ふのであります、明年度に於きまする漁船の建造の目標を御立てになつて居りまするならば、是はどの位になつて居りまするか、又漁獲目標十二億貫達成に必要なる所の――今油の數字を私聽漏しましたから、燃油、漁網、「ロープ」等の最も重要なる資材に對しましては、十分の御用意が出來て居るのかどうか、其の邊に付て御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=133
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134・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今御話のありました増産の最も根幹である所の漁船の問題、資材の問題でございますが、漁船に付きましては、現状は大體「トン」數に致しまして七十九萬「トン」位でございまして、其の中の約三分の一は補修を要するやうな状況になつて居ります、是等の修繕を要する漁船に付きましては、私共としましては、關係方面とも連絡を取りまして、大體三、四月頃までに之を完成したいと思ひまして、資材の手當、造船所との交渉に付きまして、それぞれ御斡旋を申上げて居る次第でございます、併しながら漁船は大體戰前に於きましては百萬「トン」もありましたのが、現在さう云ふ風になつて居りまするので、十二億貫を達成するには、どうしても新しく茲に三十萬「トン」位の船を建造しなければならぬ状態になつて居るのでございます、是等に付きましては、吾々の考へとしましては、大體木造船が十二萬一千「トン」、鋼船としまして二十一萬一千「トン」合せて三十三萬二千「トン」程度のものを明年一ぱいに完成致したいと云ふことで、それぞれ對策を進めて居るのでございます、此の新造に付きましては、最も困難なる問題は鋼材其の他の資材でございますが、此のことに付きましては、先づ軍需より民需の方に轉換された所の資材を相當優先的に廻して戴くことと、それから造船所に相當手持資材もありますので、之を積極的に漁船の建造に活用して戴くこと、それから從來陸海軍の艦艇でありまして、今囘不要になりました分、即ち民需用に轉換された分で、現在漁船に使つても適當であると云ふ分に付きましては、是も相當あると思ひまするので、是等の漁船への轉換に付きましても、それぞれ關係方面と折衝を進めて居るのでございます、此の分に付きましては、近く現物に付きまして、それぞれ分配が開始される豫定であります、斯う云つた手段を以ちまして、運輸省方面其の他關係方面に話合を進めて居るのでございますが、何と申しましても、此の漁船の建造は至急を要する問題でございます、一方是等の漁船の建造に付きましては、現在船價が相當高く付いて居ります、而も將來漁業の經營から考へまして、是等の船價で果して合理的に行くかどうかと云つたやうな、色々經營上の問題もありまするので、是等の點に付きましては、金融の方面、其の他場合に依りましては國庫の助成に付きましても考慮せなければならぬかとも考へて居るやうな次第でございます
尚ほ油の問題でございますが、油は大體平年に於きましては、重油に付きましては三十九萬三千「キロリットル」位消費されて居つたのでございますが、昨年から今年に掛けまして、殆ど實物の配當はないと申しても宜い位僅少でございます、是等の燃油に付きましては、從來「タール」其の他松根油、「カーバイト」等に依つて補つて居つたのでございますが、終戰の結果に依りまして、軍需から民需の方に廻された分から漁業用として差當り燈輕油四千「キロリットル」の配分を受けました、此の分に付きましては、既に府縣の方にそれぞれ配當濟でございます、尚ほ戰爭中増産に努めて居りました所の松根油でございますが、是は終戰の結果不要になりましたので、此の分に付きましても、漁業に重點的に貰ふと云ふ話合を進めて居りまして、是れ亦關係方面と話合が濟んで、大體差當り製造濟のものが七千「トン」ありまするので、是はそれぞれ大體水産業會を通じて漁船の方に配當すると云ふ手筈を決めて居るのでございます、今後の供給に付きましては、先程申上げたやうに、是等の燃油に付きましては、日本の内地に於て生産されるものものが現在としましても非常に窮屈であります、隨ひまして此の中から漁船に重點的に割當て貰ふと云ふことにしましても、其の數量としましては大した期待も持てないのではないかと云ふことを考へて居るのでありまして、先づ大部分のものは勿論輸入に待たなければならないのでございますが、我々としましては、國内に於ては出來る限りのことはしなければならぬと云ふやうな見地から、石炭地方でありまする所の漁業會等に對しましては、石炭の簡易液化を獎勵して、それに依つて若干の補ひを付けて參り、又先程申上げた松根油で今後生産されるものは、一萬「トン」餘ある見込でございますから、是等のものも漁業の方に廻すと云ふことで、當座の間を補つて行くより外方法がない状況でありますが、漁業の問題に付きましては、聯合軍等に於きましても、非常に熱心に支援して呉れて居りまして、先程申上げたやうに十二月分として相當量の油を應援を受けたやうな状況で、今後一月、二月と續きまして供給を仰ぎ得るのではないかと考へて居るのであります
尚ほ魚網綱の點でありますが、是は平時は相當使つて居りましたが、戰爭中は殆ど供給がないと云つても宜い位貧弱なものであります、隨て茲に急に戰前の生産をやらせると云ふことになれば、從來我慢して使つて來た所の網類等は急速に之を新しいものに替へなければならぬと云ふやうなことから考へますると、どうしても綿絲が二萬七千「トン」、「マニラ」が四萬五千「トン」位要るのではないかと云ふ風に想定されるのでございます、其の中で特に差當り緊急を豫想される所の數量は、綿絲に付ては約一萬五千「トン」位、「マニラ」に付ては約二萬「トン」位でありますが、之に對する供給としては、終戰の結果軍需から民需に轉換されたもので綿絲が六千餘「トン」でございます、それから「マニラ」麻が三千五百「トン」位あるのでありますが、是等のものに付てはそれぞれ水産業會の方で引取つて、それぞれ商工省の方の割當の下に、關係方面に製造を命じて居るやうな状況で、大體順調に進んで居ります、今後の供給に付きましては、先づ二十年産の内地産の麻類を極力魚綱の方に確保したいと云ふことで、先般商工省方面とも話合ひをして、今年出來ました所の麻類の相當部分を漁業の方に割いて貰ふことに話合ひが付きました、此の分に付きましては、引取り次第生産に掛りまして、即刻漁村の方に廻したいとの考へを以て今進んで居るやうな状況でございます、斯樣な事情でございまして、今後の増産を擧げるには色々困難な點はありまするけれども、食糧事情の現在の状態に鑑みまして、我々としては目標としては出來るだけ早い機會に於て戰前に歸したいと云ふ積りで進んで居るのであります、大體漁船竝に資材に付きましては、今申上げたやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=134
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135・北勝太郎
○北委員長代理 岡田君に一寸申上げますが、先程大臣が直ぐ見えられるやうに申しまんたが、向ふから今直ぐ都合が付かない、併し必ず行くと云ふことを言つて參りましたから、どうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=135
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136・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 只今の御説明に依つて漁業用資材、漁船に付きましても、或は又燃油に付きましても、漁網綱に付きましても、現在凡ゆる手を盡して確保致して居る、又終戰後或る程度の軍方面の物資の確保をしたが、結局現在の量では足らない、足らないのは輸入に俟たなければならぬと云ふ説明でありましたが、さうすると此の輸入に關しまして、現在特に聯合軍の方に要請するなり手を打つて居られますかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=136
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137・笹山茂太郎
○笹山政府委員 燃油、綿絲「マニラ」麻等に付きましては、それぞれ終戰連絡事務局を通じて、聯合軍の方に懇請致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=137
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138・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 其の不足の數字はどの位でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=138
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139・笹山茂太郎
○笹山政府委員 是は私共先程申上げたやうに、十二億貫を目標に致して、色々數量を研究致して居ります、隨ひまして是等の燃油、棉花其の他に付きましては、商工省一般のものと一緒になつて、實は申請して居るやうな状況でございます、其の數量に付きましては、先程申上げたやうに私共十二億貫を目標にする場合に必要なる所の數量と云ふ風に御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=139
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140・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 先刻御話になつた數量は所要數量を仰しやつたのではないのですか、輸入を要請された數量とは違ふのすでか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=140
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141・笹山茂太郎
○笹山政府委員 それを標準に致しまして、輸入を懇請致して居る訳であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=141
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142・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 其の點どうも分らぬのですが、十二億貫を前提として要請されて居ると云ふことは分りますけれども……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=142
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143・楠見義男
○楠見政府委員 全體の問題でありますから、便宜私から御答へ申上げます、御承知のやうに聯合軍に對しまして輸入を要請致して居りますのは、特に先方側からの要請もありまして、個々のものに限らず、全體の計畫を示せ、さうして又其の全體の輸入に應じた見返り物資の計畫を出せ、斯う云ふやうな要請があるのであります、そこで現在出して居りますのは石炭、鐵鑛石、鹽、非鐵金屬、石油類、此の石油類の中には勿論重油から揮發油、輕油、潤滑油、原油も入つて居りますが、さう云ふものを含めて石油類と致して居ります、それから只今問題になつて居りまする魚網綱關係で特に重大な關係のあります棉花、さうして其の以外に是は食糧として一番重要な穀類、それから砂糖、油脂類、肥料關係で燐鑛石、飼料大體斯う云ふやうなものを中心に致しまして要求致して居るのであります、そこで只今御尋ねの石油類でありますが、一應現在計畫して向ふへ出して居りますのは、來年の第二四半期即ち九月までの要輸入數量と致しまして、先程申上げましたやうに石油の中に於ても色々區別はございますが、總計致しまして六十五萬三千「キロ」を要求致して居るのであります、隨て此の輸入されまする石油の中で、勿論現在の情勢から申しますと食糧が一番大事であります、そこで輸送關係竝に食糧と致しましては、水産關係に特に重點を置いて配分を定める、斯樣に我々は承知致して居るのであります、又今までの軍のものを民に轉換した場合の配分の行き方、或は終戰後の石油の配分計畫に於きましても、常に輸送と水産物と云ふものが第一順位で、あとは順送りで賄つて行く、斯う云ふことになつて居りますので、先程水産局長から御説明申上げました水産物の増産上の油の輸入が確保されますれば、著しく其の状況は好轉致すものと考へて居る次第であります、棉花の方も全體で申しますると來年の第三四半期まででありますが、第三四半期までの總計を見ますと、十八萬「ピクル」を要請致して居るのであります、此の方は勿論一般の生活必需物資としての衣料と云ふことも考慮致して居りまするが、同時に又漁業用水産用の資材としての棉絲の給源と云ふ方面にも相當増し得るものと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=143
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144・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 漁船の操業に付きましては、曩に聯合軍司令部の命令に依りまして、總「トン」數百「トン」未滿の漁船は沿岸から沖合の最大距離が五百「キロ」までは出漁出來ることとなつて居りますから、先づ沿岸漁業をやるのには一應事を缺かぬのではないかと思ふのでありますけれども、何れに致しましても四面に海を持つて居りまする日本の海面に於きまする出漁許可區域即ち操業區域が兎に角制限をされて居ると云ふことでありまして、隨ひまして從來日本漁業と致しまして露領沿海州或は千島、「カムチヤッカ」方面の北洋漁業を初めと致しまして、支那海、南洋方面の漁業と云ふものを喪失致した結果と相成つて居るのであります、隨ひまして我が國の漁場は戰前に比して著しく狹隘となり、爲に其の打撃も大きいと見なければならぬのでありますが、政府は聯合軍に對しまして、是等の喪失漁場に對する出漁の懇請と云ふやうなことをおやりになつて居るか、今漁業用資材に付きましては、色色の手を打つて居られると云ふことを御説明を承つたのでありますが、制限區域外の漁業と云ふものに對しまして、出漁懇請許可の要請と云ふことに對して、何か手を打つて居られまするか、何れに致しましても、私は今日の需要を補ふ爲に水産物を澤山獲る、漁獲を増強することが何と申しましても必要であると思ふのであります、隨ひまして許された區域内に於ける漁業を十二分にやらなければならぬ、即ち定置漁業、機船底曳網漁業、或は揚操網漁業即ち巾着網漁業を大いにやつて、此の生産を確保しなければならぬと云ふことが、當面の最も重要なる問題でありますと共に、更に進んで許可區域外にまでも進出をする必要があるのではないかと云ふ風に考へて居るのであります、是等の點に對しまして、何か手を御打ちになりましたかどうか、仄聞する所に依りますると、「アメリカ」の太平洋艦隊司令長官の「スプルーアンス」提督は、日本の食糧の不足の實情を諒承致しまして、其の一助として捕鯨漁業などには許可するに至つたと云ふ風のことも聞くのであります、併し私は確たることを存じないのでありますが、是は事實であるか、此の點も併せて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=144
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145・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今操業區域の制限に依りまして、從來の水産業が相當な影響を受けて居ると云ふやうな御話がありましたが、全く其の通りでございます、北洋、支那海及び南氷洋其の他南西方面に於きまして、從來相當な漁獲があつたのでございまするが、現在是等の海域は總て許可區域外にあるのでございます、是等の區域外に出漁することに付きましては、私共としまして出來得る限り日本の食糧の事情を傳へまして、好意ある援助を受くるやうに、實は交渉致して居るのでございます、船の準備が付き次第、又操業の實行が現實に於て可能なる範圍に於きましては、出來るだけ是等の海域外に於ても出漁が出來るやうに、今後とも懇請を致して參りたいと思つて居るのでございます、實は先般冬期間の捕鯨の中心が小笠原方面にありまする關係上、一月から三月に掛けまして、是非小笠原諸島方面に於きまする所の捕鯨に付きまして許して戴きたいと云ふことで懇請を致して居つたのでありますが、之に對しまして先般聯合軍から正式に許可の指令がありました、當業者は出漁の準備を目下進めて居るやうな次第でございます、一寸速記を止めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=145
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146・北勝太郎
○北委員長代理 速記を止めて下さい
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=146
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147・北勝太郎
○北委員長代理 速記をやつて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=147
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148・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 次に私は水産物の集出荷、配給の點に付て聽きたいのであります、生鮮食料品、是は野菜も鮮魚類も含むのでありますが、之に付きましては曩に統制が撤廢されたのであります、所謂丸公の枠が撤廢されまして、價格面に於きまして自由と相成りました、其の後の状態を見て居りますと、是は勿論過渡期の現象でもあると思ひますが、相當混亂状態を呈して居ります、殊に消費地に於きまする魚價は、一般に比して非常に高くなりまして、消費者の負擔能力即ち購買力では、買うて食べることが出來ない所の消費者も相當多數にあると思ふのであります、當局は此の價格の調整に付きまして、何か對策を御考へになつて居りますかどうか、自由價格だから此の儘自然の推移に飽くまでも放任されるのであるかと云ふやうなことに付て、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=148
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149・笹山茂太郎
○笹山政府委員 統制撤廢後の鮮魚介類の集出荷の状況竝に價格に付きましては、今御話のあつた通りでありまして、價格の面に於きましては、非常に高くなつて居るのでございます、大體を通覽して見ますと、例外許可價格の最高は二十倍にも達して居るやうな状況でございまして、是等の問題に付きましては、我々としましては出來るだけ安い價格を以て消費者に配給すると云ふことを希望して居るやうな状況でございますが、何分にも現在の状況を以てしては、十分に參り兼ねる事情にあるのでございます、そこで此の價格の問題に付きましては、どうしたら安く行くかと云ふことに付きまして、實は統制撤廢後に於ける集出荷に對する措置としまして、地方長官に指導したのでございます、それは二箇月毎に荷受機關、出荷機關、それぞれ業者の統制協議會を設けまして、それぞれ水準價格を設けまして、それに依つて取引をする、又出荷先に付きましても、それ等の協議會を中心に統制して參ると云ふやうなことで、指導さして居つたのでありまするが、それは中々徹底しない向きもありますので、又一方消費地方面に於きましては、入札賣或は糶賣等を實施致しました結果、非常にそれが暴騰しまして、結局産地の値段を高めたと云ふやうな實際の問題もありますので、是等の消費地方面の糶賣、入札賣方面に付きましては、至急之を止めて、協定値段に依つて取引をするやうにと云ふことに付きまして先般地方長官の方に指導した次第であります、尚ほ價格の暴騰に依りまして、從來の手數料率、小賣機關等の手數料率が、現在に於ては非常に高くなり過ぎて居るやうな傾向もありますので、是等の價格を現在の魚價に應じて、相當程度に引下げようと云ふやうな措置も先般致した次第であります、何れに致しましても、法律的な統制がなくなり、法規の面に於て之をどうすると云ふことも出來ませぬので、結局出荷者、荷受者雙方の理解ある自主的統制に俟たなければならぬと考へるのでございます、併しながら實際問題としまして、一般の經濟状況、殊に購買力が相當各方面に高まつて居りますので、之を從來のやうな低い價格で抑へると云ふことは、中々困難でありますが、我々としましては、出來るだけ消費者に御迷惑の掛らない、而も又生産者にも迷惑の掛らない合理的な値段に依つて取引するやうに致したいと考へて居ります、其の一つの手段としましては、どうしても自主的にやれと申しましても、そこに利害關係がありますので、中々勵行されない嫌ひもあります、又一方産地から市場に出すよりも、其の他の方面に出した方が有利であると云ふやうな點もありますので、結局市場を通しての出荷配給と云ふことが非常に出來難いと云ふ事情にあります、隨ひまして是等の出荷機關が、自主的に統制が出來得ると云ふ爲に或る種の裏打をそこに致さなければならぬのではないかと云ふ風に考へて居ります、換言すれば自主的統制が出來るやうに、或る方面に於て利害關係を一致させると云ふやうなことに付きまして考へて居るやうな次第でございますが、其の一つの手段としまして、今後配給さるべき所の油、網等の資材に付きましても、出荷と「リンク」したものに致したいと考へて居るのでございます、即ち配給された油が結局市場性あるものとしまして統制を自主的統制の面に現はれて來るやうに出荷されるやうに、それに依つて實施したいと云ふ風に致して參る、今後の價格の面に於きまして、又配給先、配給數量の面に於きまして自主的統制が出來易いやうに、價格の面に於てやつて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=149
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150・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 御話能く分りました、所で生鮮魚介類に對しましては丸公を外したのでありますが、水産製品に付きましては、所謂官治統制と申しますか、從來の統制が存續致して居るのでありますが、是は片方が生鮮食品だから取外して、其の製品は取外さないと云ふのであります、是は今後とも尚ほ統制は持續せられる御考へでありますか、又水産製品に對する價格に付きましては、どう云ふ御考へを持つて居られますか、此の點を一つ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=150
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151・笹山茂太郎
○笹山政府委員 水産の加工品に付きましては、只今の所鮮魚のやうに統制は實は撤廢致して居らないのであります、是は實は其の原料である所の鮮魚介が値段も配給關係も法律的な統制を撤廢されましたのに鑑みまして、今後是等の水産加工品の配給關係に付きましても、官治的な統制が法律的な統制が困難ではないかと云ふ風に考へて居ります、況して原料の價格が非常に區々になつて居る、隨てそれに依つて製造されるものも、一つの價格で以て縛つて行くと云ふやうなことは、實際問題からしても無理でありますので、是等の水産加工品に付きましては、現在の所では例外價格を大幅に認めまして、取引されて居るのでありますが、今後は出來る限り速かに是等の價格に付ても考慮させなければならぬと思つて居ります、尚ほ是等の水産加工品の問題に付きましては、其の外に色々企業整備當時の關係もありまして、直ぐ撤廢されると一部に又相當な打撃を蒙る面も出て來ますので、それ等の行政に付ても傍ら考へて行かなければならないと云ふことで、現在それ等の具體的案に付きましては、研究中であります、方向としましては將來價格に付きましても、配給に付きましても、法律的な統制と云ふものを廢めまして、自治的統制に依られる方向に進みたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=151
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152・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 先程御話になつたかと思ひまするが、所謂自治的統制になりまして、現在では集出荷機關を通して消費市場に出る分量が非常に減じて來たと云ふ實情であると思ひます、さうして所謂生産地地場で處分され販賣される傾向が多分にあるのでありますが、自治的統制をやる裏付と致しまして、私は重要資材の配給に當りましては、水産業團體との結付きを持たせる、言ひ換へますならば、水産業團體と云ふ機關を通して重要資材の配給をやる、即ち出荷成績を良好ならしむる爲にさう云つた方法を執ることが必要であると思ひまするが、此の點に對しては如何に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=152
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153・笹山茂太郎
○笹山政府委員 自治的統制強化の方法としまして、資材の配給に付て水産團體に御願ひすると云ふことに付きましては、私も其の通り考へて居ります、從來とも水産業團體を通じて資材の配給は致して居つたのでありますが、今後やはり自治的統制の主體、根幹としまして水産業團體が活動する譯でありますから、資材の配給に付ても全面的に御願ひ致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=153
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154・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 此の團體法の改正は、申すまでもなく水業業團體の自治的活動の促進を期すると共に、役員制度を改正されまして、官治統制から自治的統制に移ると云ふことを骨子としての改正でありまして、是は今日當然のことと思ふのでありまするが、其の點團體法の改正の中に入つて居りませぬが、現行團體法の第三條に「水産業團體は行政官廳之を監督す」と斯うなつて居るのであります、既に自治的統制に移行しまする以上は、此の行政官廳の監督の範圍は、水産業會等の會則の規定の認可とか、又は四十七條に規定致して居る決議又は役員等の行爲で、法令又は會則に違反した行爲に對する監督と云つたやうなことが規定されて居るのでありますから、さう云ふ點に限定されまして、行政官廳の一般的な監督などは御廢めになつたら宜いのじやないかと云ふ風に私考へるのであります、即ち第三條の一般監督の規定は寧ろ御廢めになつた方が宜いのぢやないかと云ふ風に思ふのでありますが、此の點に付て御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=154
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155・笹山茂太郎
○笹山政府委員 實は水産業團體の民主化に依りまして、水産業團體は今後は本當に會員の意思に依り自由濶達な活動をすると云ふことが本體であらねばならぬと思ふのであります、唯現實の問題と致しまして、水産業團體には良い團體もありまするけれども、やはり今後育成しなければならぬ所の、所謂育成途中の團體が相當あるのではないかと云ふ風に考へます、實は此處に書いてあります監督と云ひましても、決して色々な掣肘をする趣旨から出來て居るのではありませぬで、結局育成して鞏固なる本當の力を持つた團體に致したい爲の監督を主にして居るのであります、又是等の團體が他の面との關係、經濟的な關係、又組合員と團體それ自體との關係に付きましても、やはり公的の見地からそれぞれ指導しなければならぬ面も、或はあるのではないかと思ひますが、我々と致しましては、出來るだけやかましい監督と云ふものは廢めまして、結局將來水産業團體が立派なものになるやうに育成して行きたい、其の育成をして行く上に御注意申上ぐべき所は申上げて、お互ひに立派なものになりたいと云ふ意味に之を解釋する次第であります、隨ひまして從來色々喧しいやうな規定を此の改正の機會に削除致して居るやうな次第でございます、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=155
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156・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 今御話の通り監督の名に依つて、所謂監督をすると云ふことよりも、指導に重點を置かれた監督でありたいと云ふ、左樣な御趣旨であつたと了承致しますが、希望致して置きます
次に私は法案の末尾にあります附則第二條第一項中に、「改正規定に依る最初の理事の選任は命令を以て定むる期間内に之をすべし」とあるのでありますが、命令を以て定める期間と云ふのはどの位の期間を豫定されて居りまするかと云ふことと、尚ほ自主的に役員の選任、選擧等をやることに相成るのでありますが、是は下級の組織である漁業會から地方の水産業會、更に中央水産業會と云ふ風に選擧をして行くことであらうと推察するのでありますが、さう云ふ御考へでありますか、何時までに是等の自主的の選擧を完了させる御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=156
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157・笹山茂太郎
○笹山政府委員 最初の理事の選任に付きましては、此の法案が通過致しますれば、出來るだけ早い機會に於て實はやりたいと思ひます、何月やると云ふ具體的なことは只今實は豫定して居りませぬが、出來るだけ速かにやりたいと思つて居ります、尚ほ此の選任に付きましては、御話の通り單位漁業會を先づ最初に御願ひしまして、それから縣の水産業會、それから中央の水産業會、斯う云つた順序に依つて進められると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=157
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158・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 期間の豫定がないと仰しやるが、どうせ自主的に早くやると云ふことでありますから、大體の目安を御持ちにならなければならぬ、單位團體、それから府縣に來る、最後に中央になるのでありますが、全部が完了するのは大體どの位のやうに御考へになつて居りますか、是は農業團體の關係もあるのでありますけれども、參考に承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=158
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159・楠見義男
○楠見政府委員 農業團體の方の順序を申上げて見たいと思ひます、是は色色の要求から致しまして、實は出來るだけ早く選擧をするやうにと云ふやうな要請も一部の方からあるのであります、併し私共と致しましては、選擧を致しまする場合に色々選擧の規定を用意しなければならないのでありますが、其の内容と致しましては、選擧人名簿を作るとか、其の他是も出來るだけ簡略に致したいと考へますが、さう云ふ實際の手續上の準備の問題がありますと同時に、農業關係に於きましては水産と異なりまして、特に御承知のやうに現在供出の眞最中にある譯でありまして、而も明年一月には恐らく總選擧もある、斯う云ふことになりますと、農村としては混亂と申しますか、忙しいことになりますので、農業團體の方は大體斯う云ふ風に考へて居ります、市町村農業會の方は大體三月末までに選擧をする、隨て供出も完了し、或はさう供出にも大した影響もなく、又選擧の方の準備も出來ると云ふ所はそれまでにやつて戴いて結構ですが、終期は三月末までに市町村は選擧をするやうにし、それから先は出來るだけ早くやりたいと考へて居りますが、現在の所では市町村の選擧が濟みまして、それに選ばれた會長さん方が道府縣の理事、幹事を選任せられる譯でありますから、大體一月位の餘裕を置いて、四月末までにと云ふ風に大體考へて居りますが、尤も是は或は其の半分の十五日間位の間に道府縣の方を選任することにしたらどうかと云ふやうな意見もありますので、此の一月にするか、半月にするかと云ふ點は、皆樣方の意向を聽いてはつきり致したいと考へて居ります、一應私の頭にありますのは、道府縣の方は四月まで、さうして完了したら、後全國の農業會の理事及び監事を選任する、結局今の豫定で行きますと、五月の初めに全國の役員が選任せられる、斯う云ふことになる譯でありますが、先程申上げましたやうに、道府縣の選任を十五日程度に止めますと、當然四月中に全國の役員も選任される、斯う云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=159
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160・笹山茂太郎
○笹山政府委員 水産業團體の役員の改選に付きましては、大體單位業會に付ては三月一ぱい、それから府縣團體、中央團體それぞれ一箇月間の餘裕を以てやる積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=160
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161・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 總務局長の答辯で能く分りましたが、極めて細かいことですが、私過日郡支部に關しまする農業團體の規定が削除されてあると云ふことに對して質問致したのであります、其の點を、所々此の法文からは削除したけれども、自主的に設置することが、現下の實情にも適する譯であるし、其のことを而も望んで居ると云ふ答辯を受けて、能く諒承したのであります、現在では支部に於きまする支部長は理事を以て充てることになつて居りますが、今後は自主的に必要があればやるのでありますから、支部の役員或は其の他の職員を以て其の支部を設置致しました際に支部長とする、是れ亦自主的に解決される問題だと思つて居りますが、さう云ふ解釋で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=161
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162・楠見義男
○楠見政府委員 御述べになりました通りであります、隨て四月に入つて道府縣の理事を選任致す場合に、現在郡支部は道府縣農業會の理事になつて居りますから、それ等の人も併せて理事の儘で置いて置きますれば、之を同時に併せて選任する、斯う云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=162
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163・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 私大臣に對しまして質問する事項を保留致しまして質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=163
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164・北勝太郎
○北委員長代理 眞藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=164
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165・眞藤愼太郎
○眞藤委員 水産に關する質問を致したいと思ひます、第一に水産業に於ける生産者の協同組織を確立する爲には、現下の新情勢に即した觀點から、新規の法律を用意すべきでなかつたかと思ふのであります、水産業團體法は漁業法の中の漁業組合に關する規定と水産會法を統合し、之に戰時統制の理念を盛込んだ複雜な法律でありまするから、其の一部を改正しただけでは、現下の要請に副ひ得ないものが多いのであります、更に海洋漁業に對する統制が廢止せられたばかりでなく、現在所謂海洋漁業なるものは壞滅状態に置かれて居りますが、將來漁村に於ける企業力が強化されて來ますと、漁村を足場とする新海洋漁業も漸次勃興を見るものと考へられるのであります、隨て今後に於ては海洋漁業は總て此の團體法に依つて處理すべきものと思ふのであります、是等の事情からすれば、漁村に限らず、全水産業の協同體を確立する爲に、新たな觀點から新規の組織法を制定すべきではなかつたか、又近い將來に制定する爲の準備を進めて貰ひたいのでありますが、之に對する御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=165
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166・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今水産業團體の民主化に付きまして、現行法の改正だけでは物足らないと云ふ御質問でありました、將來海洋漁業を含めた大きな意味の團體、而も民主化された團體として考へなければならないと云ふ御説でございますが、私共同樣に考へて居るのでざいます、唯現在の状況からすれば、水産業團體に付きまして、之を海洋漁業と同じ團體の中に入れて自主的な團體にした方が宜いかどうか、それ等の點に付きましては、尚ほ研究の餘地があるのではないかと思ひます、唯海洋漁業者と沿岸漁業者とは、非常に密接な關係を持つて居りまするので、是等の兩面が調整を取つて、それぞれの分野の上で發展して行くことを希望して居るのであります、是等の水産業團體が、今度の改正で以てどうしてもいかぬと云ふ點がありました場合に於きましては、今後團體法の海洋漁業を含めたものと一緒になつた所の團體として、どう取扱つて行くかと云ふことに付きまして、其の時に於きまして實は研究して參りたい積りで居ります、尚ほ此の改正された團體の運營竝に其の實施に付きましては、能く注意致しまして、改正の目的が立派に果されるやうに指導して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=166
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167・眞藤愼太郎
○眞藤委員 第二に漁業會に於ける漁業の自營に關する問題であります、水産は新日本を建設して行く上に於て、色々の使命を負つて居るのでありますが、差當つては食糧問題の解決に關する大きな使命を分擔して居るのであります、此の大使命を遂行する爲には、漁村に於ける生産力を出來るだけ増強することに努力することが必要であることは勿論であります、即ち其の具體的方法としては、漁業會に對して積極的に漁業の自營を許し、漁業生産の集約化及び能率化に依つて生産の増強を圖るべきであります、現行法に於ても漁業會に於ける漁業の自營を認める規定はありますが、行政官廳の許可事項になつて居ります關係上、慣行的に漁業會で自營して來た簡單な漁業のみに限られて、積極的に漁業に付ては許可を與へない方針であつたやうであります、隨て自營に付ての許可規定はあつても、事實は自營禁止の状態に置かれて居るのであります、漁業會に漁業の自營を積極的に許さないのは漁業經營に失敗した場合、經濟的に漁業會の基礎を危くすると云ふやうな考へ方に基いて居るやうでありますが、今日の漁業會は昔の漁業組合と比較して餘程進歩して居ります、漁業自營に付ての實力も相當に持つて居ると思ひます、漁村の振興を圖り、水産業の劃期的な發展を期する爲には、漁村それ自體に於ける企業力、或は漁業經營上の實力を高めて行くことが肝要でありますが、斯樣な考へ方からしても、漁業會に於ける漁業の自營は寧ろ積極的に之を獎勵すべきものと考へるのであります、之に對する政府の御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=167
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168・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今御述べになりました漁業會の自營の點でございますが、從來御説の通り、割合に此の點に付きましては、行政官廳としまして消極的な取扱をして居つたやうな傾向があるのでございます、併しながら漁業會の實力も段々付いて參り、又是等の協同體を中心にしまして本來の漁業に乘出す、積極的に水面の開發を進めると云ふことは、我々として最も望ましいことでありますので、現在ありまする所の制限に付きましては、極力之を緩和して參りたい方針であります、尚ほ今後是等の自營に付きましては、色色具體的な場合に付て判斷しなければならぬ點が多々あると思ふのでございますが、唯抽象的に良いと言ひましても、やはり其の時の其の團體の實力なり、其の他經濟的事情竝に全員の操業との關係、是等を關聯して考へて行きたいと思ひます、方針としましては、從來の制限を緩和しまして、出來るだけ積極的に乘出して戴くと云ふ方向に向つて進みたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=168
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169・眞藤愼太郎
○眞藤委員 それから第三に地方水産業會竝に中央水産業會に對しても、漁業の自營の途を開くべきではないかと思ふのであります、比較的大規模の漁業に付ては、之を區々の漁業會に自營せしむることは、不適當な場合もあり得ると思ふのであります、此のやうな漁業に付ては、地方の水産業會、又は中央水産業會に於て、直接其の經營に乘出すべきが妥當ではないかと存ずるのであります、將來の水産業を考へる時は、其の程度の積極性は是等の上部團體に附與すべきであると思ふのでありまして、此の點に付て改正案は何等の考慮も拂はれて居られないやうでありまするが、何か御考へがありますでせうか、一寸伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=169
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170・笹山茂太郎
○笹山政府委員 今御話のありました地方の水産業會、中央水産業會に對しまして漁業の自營を認める規定の點でございますが、實は現在の規定に付きましては、其の點は解釋に付て色々議論のあることも聞いて居るのでございます、併しながら我々としましては、地方の水産業會、中央の水産業會、それぞれ此の法律に目的、事業が掲げてあります、此の範圍内に於きましては、漁業の自營を場合に依つてはおやりになると云ふことに付きましては、何等差支へないと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=170
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171・眞藤愼太郎
○眞藤委員 第四には漁業權の開放に關する問題であります、漁業權に關する問題は、本改正案の條項とは直接關係はありませぬが、漁業會の健全なる發達を圖り、漁村の經濟的繁榮を望むならば、どうしても漁業權に關する問題の解決が必要となつて來るのであります、御承知の如く漁業法に規定して居りまする定置漁業權、區劃漁業權、特別漁業權竝に專用漁業權の中、僅かに專用漁業權のみが漁業會に其の所有を許されて、會員たる漁民に開放されて居りますが、他の三種の漁業權は、特定の個人に獨占せられて居りますので、多數の漁民は此の三種の漁業權に含まれる漁業の恩惠から閉出されて居るやうな關係にある者が多いと思ひます、而も此の三種の漁業權の對象となつて居る漁業は、何れも漁獲高が多く、何れも有望なものばかりであります、其の有望な漁業を一部の者にのみ獨占せしむることが、今日の考へ方からして、如何に不合理な制度であるかは、此處に申上げるまでもないと思ふのであります、故に地先海面に於ける漁業は、總て之を一般漁民に開放すべきでありまして、此のやうな積極的な方途を講ずることなくしては、漁民の生活を安定し漁村の新しき建設を期待することは出來ないのでないかと考へるのであります、此の問題は農業分野に於ける耕地開放の問題と同じ性質のものであると思ふのであります、即ち農業分野に於ては、農地調整法改正案が此の議會に提出せられ、永年地主の獨占下にあつた耕地が開放されやうとして居ります、漁業權に付ても是と同じ考へ方を以て臨むべきものと信ずるのであります、私の考へでは漁業法を改正し、總ての漁業權を漁業會に歸屬せしめて、漁業會が中心となつて是が經營を管理して行く制度を確立することが、今日の時代に最も相應しいのではないかと思ふのであります、此のやうな意味に於きまして、政府は近き將來に漁業法の改正を斷行なさる要があるのではないかと認めるのでありますが、御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=171
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172・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今御話の漁業權の問題でございますが、私共としましては、地先海面の利用、漁業開發に付きましては、出來得る限り之を沿岸漁民の手に依つてなされることを希望する者でございます、從來定置漁業、區劃漁業が、實は漁業會の手を離れて、他の一部の人に獨占されて居つたと云ふことは、是等の漁業が割合に資本の投資が相當掛るのと、それから斯う云つた企業に付きましての苦心が、一方に於て相當伴ふと云ふやうな關係に於きまして、漁業會が手に染めなかつたと云ふことも、場合に依つてはあると思ひます、又所に依りましては、慣行に依る所の專用漁業權等に付きましては、徒らに權利の上に眠つて居て、十分な利用開發も行はれて居らないと云ふやうなこともありまするので、是等の問題としましては、現下の情勢に即しまして、出來るだけ多數の漁民に使用の機會を均等に與へ、沿岸の都市方面に付ても供給をして參りたいと斯う云ふ風に考へて居るのであります、隨ひまして是等の方針から考へ、現在の漁業法が果して適當であるかどうかと云ふことに付きましては、只今研究中でございます、若し改正を必要とすると云ふことでありますれば、其の點に付きましても、將來改正を致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=172
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173・眞藤愼太郎
○眞藤委員 第五に系統團體の自主的統制に付て御伺ひしたいと思ひましたが、先程岡田君の質問に對して漁價の急騰致しましたに付て、之に對する對策として、先程水産局長から御答辯がありましたので繰返さぬことに致しますが、唯私は今日の如く漁價が上つたのでは、現在東京都内に於きましては、殆ど配給はあつても配給の魚を買受けられないと云ふ人が非常に多いのが事實であります、寧ろ此の頃市中では魚は食べるものでなく見るものだと云ふやうなことも言はれて居るやうな状態で、私共漁業關係の者としては、魚の額と人の顏を見ると、洵に恥かしい氣持が致して居るのでありますが、私は此の高くなつた事情に付ては、能く知つて居るのでありまするけれども、それを今更繰返しても取返しの付かないことでありますから、唯今後如何にすれば安く多く大衆の人々に食はせられるかと云ふことに向つて、善處邁進しなければならぬと思ひます、それには先程水産局長から御答辯がありましたが、大體の考へ方は私も同樣に思ふのでありますが、要は資材の十分なる裏付けに依つて、生産の絶對量を得るにあらざれば、此の魚の價格と云ふものは、外の食糧に同じでありませうが、魚の方は特に私はさう感じて居るのであります、私資材の問題に付ても御尋ねする積りでありましたが、先程岡田君の質問に對して大體諒承致して居りまするから、資材問題に付ては此處で繰返さぬことに致します、唯只今申上げました今の高い魚を一日も早く値段を安くして、多くの人に食はしたいと云ふ念願でありまするから、どうか一つ此の點は先程も伺ひましたけれども、一層の御盡力を願ひたいと思ふのであります
次に第六點でありますが、特に系統團體の中央機關に對する政府の育成方針に付てでありますが、從來の實情からしますれば、水産業團體の中央機關に對する水産局方面の態度は極めて消極的であつて、之を積極的に育成して行かうと云ふ熱意が、どうも缺けて居つたかのやうに思ふのであります、中央機關は政府が作つた法律に依つて出來たものでありまして、謂はば政府が生み落した團體でありまするから、政府は今一段と徹底した親心を以て、其の育成に努力して戴きたいと思ふのでありまするが、其の御方針があるならば一寸伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=173
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174・笹山茂太郎
○笹山政府委員 中央水産業會に對する所の政府の育成でございまするが、從來も先任者等に於きましては、相當熱を持つて此の育成に努めて參つたことと存ずるのであります、尚ほ今後自主的な團體とは申せ、水産業會の發展の爲には政府と全く表裏一體を成す團體でございまして、寧ろ今後の水産業會の發展に付きましては、此の團體の力を以て解決をしなければならぬ點が多々あると存ずるのでございます、其の意味合に於きまして、私共と致しましては、今後中央系統團體に對しましては、出來る限りの御援助なり、御力添へを致したい積りでございまするので、どうか系統團體あたりからも、活溌に政府に對しましてそれぞれ意見を開陳せられ、相共に今後の水産業の再建に付きまして邁進致したいと存ずるのであります、さう云つた考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=174
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175・眞藤愼太郎
○眞藤委員 それでは第七に、漁業金融機關の獨立に關する問題でございます、漁業金融機關の獨立問題は、長い間の懸案でありまして、現在は御承知の如く、農林中央金庫として所謂農業分野に隷屬して居りますが、漁業は經營上の危險率が多い所から、其の融資は警戒的になつて居ります、貸付後に於ける事業に對しても、監視的とならざるを得ないやうであります、そこで經濟情勢が「デフレ」に轉ずるやうなことがあつた場合に、漁村方面に對する金融は、相當に逼迫を免れないだらうと思ふのであります、斯くの如き經濟情勢に備へる爲にも、又漁村に於ける漁業の經營を活溌に展開させる爲にも獨自の金融機關を確立すべきであると思ふのでありますが、之に付て御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=175
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176・笹山茂太郎
○笹山政府委員 漁業金融の獨立の問題でございますが、實は現在御話の通り、農林中央金庫に漁業金融部面も屬して居るのであります、所で之を獨立した方が最も強力、圓滑に出來るかと言ひますと、只今の状況と致しましては、必ずしもさう言へないのではないかと云ふ風にも考へるのでございます、農林中央金庫に屬しまして、さうして其の全體の金融の下に活動し、融資を致して參ると云ふことが、寧ろ彈力性があつて良い部面もあるやうに思はれるのでございます、唯漁業に對する所の金融の點に付きまして、圓滑を缺くやうな問題があるとすれば、それは融通の方法、方式等に缺陷があるのではないかと思ふのでありまして、是等の點に付きましては、金融機關の方と常に連絡を取りまして、圓滑に參るやうに進めたいと存ずるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=176
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177・眞藤愼太郎
○眞藤委員 第八に、漁業保險制度の確立でありますが、漁業は海上を職場とする關係上、諸種の危險の發生率が多く、故に保險制度確立の必要が早くから叫ばれたのでありますが、今以て實現を見ないのは、甚だ遺憾であるのであります、此處で言ふ保險と云ふものは、漁業保險、漁船保險等の外に、社會政策的見地から致しまして、漁業勞務者を對象とする保險を意味するものであります、最も漁船保險は既に實施を見て居りますが、漁船に制限を設けて居るのを撤廢して、少くとも全部の漁船を對象とする漁船保險の創設を希望するのであります、我が國に於ける食糧問題は、米の増産や輸入に依つては解決されないのであります、それに依つて量の問題は解決するかも知れませぬけれども、榮養の問題は魚の増産がなくては絶對に解決されないのであります、國家は國民の榮養を生産する水産業の發達に對して、積極的に努力すべきことは勿論でありますが、其の一つの方法として、國家に依つて漁業保險制度を實施し、物と人とを保障することが必要ではないかと考へるのであります、之に付て御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=177
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178・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今漁業保險の制度に付きまして御話がありましたが、實は漁業保險に付きましては、從來研究致したことがあると云ふ風に聞いて居るのでございます、唯御承知のやうに漁業が地方的に見まして非常に危險率の算定が困難であるのでございまして、是等の條件等に付きまして、十分な調査をした上でなければ、之を國營に移すと云ふことに付きましては考慮を要すべき問題だらうと思ふのでございます、是等の問題に付きましては、先づ差當りと致しましては、漁業會等の共濟制度に依りまして、是等の社會的な施設を講ずることが適當であらうと云ふ風に私共考へて居ります、併しながら今後の問題に付きましては、從來からの研究調査を進めて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=178
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179・北勝太郎
○北委員長代理 岡田君、保留された大臣に對する質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=179
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180・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 今日本の國が當面致して居りまする色々重要な問題があるのでありまするが、中でも私は、今日は食糧政策が一番大事であると思ふのであります、民生の安定、國民生活の確保と云ふことを申しますけれども、私は食糧問題を離れた民生の安定はあり得ない、國民生活も食糧を離れては確保し得ないと云ふ風に考へて居るのでありまするが、今日は國民を飢餓と寒苦から救ふ爲に、食糧と住宅と衣料の問題を解決しなければならぬ時に直面致して居ります、政府は曩に「マッカーサー」司令部に對して食糧三百萬「トン」の輸入を懇請して其の許可を得られたとのことでありまするが、是は食料危機に直面致して居りまする今日、我が日本國民と致しましては、洵に幸とする所でありますが、其の輸入は大體何時頃になる見込でありますか、御差支へなければ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=180
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181・松村謙三
○松村國務大臣 原則的の許可は得ましたが之をどのやうにして持つて來、又どれ位の數量を寄越すかと云ふことに付ては、只今の所見込が付て居りませぬ、實はそれに付て今日非常に心配もし、努力も致して居る譯でございます、今日は既に向ふからの指示もありまして、是は食糧のみではありませぬが、政府部内に是等の物を受入れる機關を作れと云ふ指示を受けて、今度商工省にもう一課を設けて、そこで一手に輸入を圖ると云ふことになるのであります、そこで政府全體として要請を致して居りますので色々のそれに要する書類等も只今出してやつて居るのでございますけれども、見返り物資等に付きましても、色々向ふへ提示を致して居るのでございます、此の程度以上申上げることは出來ませぬ次第でありますが、未ださう云ふ御尋ねの所まで進んで居ないことは洵に遺憾でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=181
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182・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 私共當局が今日の實情に鑑みまして、食糧輸入に最善の御努力をして下さつたことに對しましては、洵に多とするのであります、が一面輸入が極めて重要でありますると共に、國内の農民が増産をしなかつたり、又供出を澁つたり致しましては、食糧は愈愈窮迫を告げるものであると思ふのであります、何と申しましても生産、増産が第一でありまして、是には肥料の關係等、先刻來相當質疑應答が交はされ、同時に供出には同胞愛に愬へなければならぬと云ふ點は、松村農林大臣は常に同胞愛に愬へて三千萬石の供出に期待を掛けて居られるのでありますが、本年の作柄に徴しますると、是れ亦其の完遂は難かしい問題であると思ふのであります、併しながら農民は御承知の通り、常に自己保有米さへ確保出來るならば供出には喜んで應じると云ふことを能く私共聞かされるのでありますが、實情として農民は生活必需物資を買ふのにも、其の見返りとして米其の他の物資が要る、病氣して醫者に行つても、其の他何處に行つても米を呉れと云ふことを言はれるのでありまして、斯う云ふ實情の下に、農民は保有米の外に、兎に角食糧を持たなければ、今日の生活がなし得ないと云ふ状態に置かれて居る、假に農民が米を出さないと云ふことがあれば由々しき問題であり、人道上からも許されないのであります、併し供出に不公平もあり、供出價格は一般物價に比べて安い、還元米は約束をしながら、それが裏切られた、又供出後に種々の名目に依つて更に追加供出を要求されると云ふことが地方に多々ある、殊に粒々辛苦した米が、終戰直後に、已むを得なかつた事情かも知れませぬが、此のどさくさ紛れに不當處分があつたと云ふことは、農民の供出意欲を阻碍すること、實に大なるものがあつたのであります、併しながら食糧危機に直面して居る今日、農民として國民同胞の餓死を默視することは出來ないのであります、不平も不滿も祖國再建の爲には、同胞再建の爲には、新日本建設の爲には、同胞愛に依つて拂拭し、多少の犠牲は、否大なる犠牲をも忍んで負擔するこそ農民道であると私は信ずるのであります、そこで供出割當は權力づくでは勿論いけませぬ、實情を無視したやり方ではなりませぬ、農民が納得の行くやうに、誠意を以て農民に接し、農民の心理を把握することが一番大事であると思ふ、此の點に付ては松村農林大臣は御忙しい中を地方に御出掛けになり、農民に特に接して、是等の點に付て農民の氣持を把握することに御努力になつたことも御承知して居ります、同時に斯の如くして政府に對する農民の信頼が強ければ強い程、此の供出問題の解決するのに一番役立つと思ひます、此の點に付ては私は當局の更に善處を要望せざるを得ないのであります、又此の食糧事情の下に於て全國民は三合配給を要請して居る、需給の關係上是が實現は困難であると私共には考へられる節があるのに、兎に角國民は三合配給と云ふことが滔々として要請されて居る、而も國民の榮養状態は寒心すべき状態である、今や此の實情を調べますと、巷には榮養失調者が續出して居る、冬に向つて今や襲ひ掛る寒氣と共に餓死者を見て居る、最近では榮養失調者の續出と共に、榮養低下の爲に結核患者が非常に殖えて來て居る實例を、私は到る處に聞く、是は由々しい問題である、是等の對策は勿論、厚生省に於ても講ぜられなければならぬ點だと思ひますが、さう云ふ状態でありまして、私は飢餓對策として此の際三合の主食の配給は難かしいでありませうが、食糧三合相當榮養量の配給を、何とか御考へになつて、國民を榮養失調より救つてやると云ふことが必要ではないかと思ふのであります、政府に於きましては、米、麥、藷類竝に粉食其の他所謂未利用資源の利用の外に、動物性蛋白質に富んで居る所の魚介類、端的に申しまするならば、私は魚を以て三合相當榮養量とすることは、刻下の急務であると云ふ風に思ふのでありまするが、此の點に付きまして、當局の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=182
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183・松村謙三
○松村國務大臣 御答へを申上げますが、主要食糧だけで三合と云ふことは、是は一年に一石一斗足らず位になる數字でございまして、平年通りに食ふと云ふことであります、此の不足した斯う云ふ場合、負け戰のさうして凶作を致して居る場合に、國民が平生通り食はうと云ふ要求は、是は無理な要求であつて、此のやうな考へ方で聯合國側から、三合も食つて、そして其の上多數食糧を寄越せと言つても、是は勿論得ることの出來ない數字であり、即ち「ヨーロッパ」あたりの關係から見ましても、忍び忍んで足らない所だけの補ひしか供給を得ることが出來ませぬのでありますから、主要食糧に於て三合を食はせろと云ふ説は、今日の日本の此の事態を正しく見たならば申されないであらうと私は思ふのでございます、併しながら御説のやうに、大體三合を配給しろと云ふ聲は無理からぬことであつて、一日の營養を總て主要食糧で攝つて行かう、一時配給に依つて何も得ることは出來ない、野菜も得られない、漁類も得られないと云ふやうな場合の叫びが固であつて、是は無理からぬことと思ひますが、之に三合程度の榮養を攝れるものと云ふ只今の御質問に對しては、私共は努力次第に依つては是は言ひ得るのであり、又今日に於ては或る程度充されつつある所もあるのではないかとさへ思はれる位でありまして、是は一生懸命で努力致しますならば、其の目標、其の得る「カロリー」には達し得るものと、私共は自信を持つと申上げても、努力次第に於ては言ひ得ると思ふのであります、さう云ふ意味に於きましたならば、私は御趣旨は非常に結構であり、我々もそれが爲に大いに努力を致したいと思うて居ります、近來生鮮食料などの枠を外しましたのも此の爲であり、不幸にして尚ほ過程中でありまが故に、價格が高くて、細民階級には困りますけれども、併し之に付きましては、聯合軍側から重油も特に漁獲の爲に寄越して呉れて居ると云ふやうな廉もありますので、漁獲高も増して、今御説のやうな程度に十分な供給を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=183
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184・岡田啓治郎
○岡田(啓)委員 大臣の御説明に依つて了承致したのでありまするが、私は今御話の通りに二合一勺「プラス」輸入「イクオール」二合三勺、二合三勺「プラス」副食と申しますか、榮養食糧就中魚即ち三合相當榮養量と云ふ考へを以て、榮養給源である水産物の増産と云ふことに、今日は最も努力をして戴かなければならぬ、斯樣に確信を致して居るのであります、曩の第八十八議會に於きましても、當時總理大臣宮でありました東久邇宮殿下に於かせられましては、あの際施政方針の演説の中にも、水産の劃期的増産を強調されまして、今日の食糧事情に寄與する一方面として、水産物に努力する外はないと云つたやうな御趣旨の御演説のありましたことを記憶致して居るのでありまするが、私正にさうなければならぬと存じて居るのであります、日本の國の領土は「ポツダム」宣言受諾の結果狹小になりました、海も制限されて居るのでありまするけれども、是も先刻承りますると、聯合軍に交渉を願つて、海洋漁業も亦許可を得る點に於て御努力を願つて居ると云ふことを承つたのでありまするが、何と申しましても、此の食糧の面に御努力を願はなければならぬ、資材の面も先程政府委員より承りましたから、重ねて御尋ねは致しませぬが、此の日本の國と致しましては、即ち國民榮養食糧の生産面からしての水産物、即ち魚類と云ふもの、又敗戰の結果賠償物資としての水産製品と云ふ二つの大きな面があると思ふのでありますから、どうか此の上とも私は現在の食糧事情に鑑みまして、水産に對しまして政府は劃期的振興施策を御講じ下さると共に、之に依つて食糧問題解決の一助にされんことを重ねて要望致しまして、大臣の折角の御努力を御願ひしたいと思ふのであります
〔北委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=184
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185・松村謙三
○松村國務大臣 全く同感でございまして、出來るだけの努力を致して食生活を充したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=185
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186・森川仙太
○森川委員 連日御奮等鬪の大臣に、さぞ御疲れのことと存じますので、極めて簡單に水産問題に關聯して一點だけ御伺ひ致します、それは只今同僚岡田君から御話がありました通り、現下の食糧事情の下に於ける水産物増産の如何に重要であるかと云ふことは、是はもう申すまでもないことであります、私は常に考へて居るのでありますが、水産が此の位重要でありながら、水産に對する論議が餘りに低調で、議會に於ても水産に對する論議が續けられたことは、恐らく今の同僚議員二、三人が申上げた位ではないかと思つて甚だ遺憾に存じて居りますが、此の水産に關聯して、特に私は水産教育の問題に付て、大臣の御所見を伺ひたいのであります
事業の經營は總ては勿論人であります、其の人を養成する意味に於て、水産教育が大變重要なことだと思ふのでありますが、是が非常に閑却されて居るのではないかと云ふ點も考へて居るのであります、前年中學校が工業學校に轉換し或は商業學校が工業學校に轉換致しました當時、私は時の水産局長にも伺つて見たのでありますが、せめて商業學校、中學校が轉換する場合に、水産學校に轉換するやうな計畫を御立てになつたことがあるかと伺つた所が、さう云ふことを考へたことはないと云つた御答辯を伺つて、實はびつくりしたのでありますが、水産教育と云ふ問題に、餘りに冷淡ではなかつたかと考へるのであります、それから特に水産教育に關聯致しまして、漁村の青年學校の問題を、もう少し考へて行かなければいかぬ、それは同じ青年學校でありましても、農村の青年學校と漁村の青年學校とは、本質的に違はなければならぬと思ふのであります、所が色々な事情で、殆ど同じ畫一的な教育をやつて居るやうでありますが、是では本當の意味の水産教育が出來ないと思ひます、殊に水産業の中心を成して居りまする漁村の若い青年と云ふのは、一番純眞で、一番可愛いのであります、漁村の中心を成して居るのであります、私は漁村の青年と特に親しく致して居りまして、自分も自ら漁船に乘つて海にも行きますし、又漁村の青年を宅へ呼び、又自分も一緒に其の部屋へ行つて歡談し、色々なことをする機會を得て居りますが、實に純眞である、併しどちらかと申しますと、世間的に摺れて居ないだけに、之を教育して本當の日本の水産業の中核となるやうな人を作つて行くと云ふことが特に必要ぢやないかと云ふことを考へるのであります、斯う云ふ意味から申しまして、私は水産關係の此の中等學校にしましても、或は進んで青年學校に致しましても、是は文部省を離れて、農林省が之を直接專管すると云ふやうな形に進むべきではないかと云ふことを考へて居るのでありますが、是等に關しまして農林大臣の御考へは如何でありますか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=186
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187・松村謙三
○松村國務大臣 御話の通りでございまして、水産に對する教育と云ひますか、訓練と申しますか、此の面に於て將來の水産業の重大なることを考へます時に、是非是は乘出してやらねばならぬことだと考へるのであります、日本の國土は此のやうに狹小になりまして、殘る所は海面を拓いて、さうして國の冨を増すと云ふ大きな使命を持つて居るのでございまして、現在の食糧危急の突破と云ふだけのことではない、永遠に亙る大きな使命を持つて居ることと思はれるのであります、隨ひまして之に對する青年のそれに向く訓練、教養と云ふことに付ては、特別の教育を要することと思ふのであります、全く同感でありまして、其の方面に努力を致したいと思つて居ります、農林省には御承知の通り水産講習所があつてやつて居りますが、此の講習所の長い歴史から見ますと、相當の人材を此の面に出して居りますことは御承知のやうな譯でありまして、あの點から見ましても、其のやうな機關に付て是非私共も考慮致して行きたいと思ひます、文部省の所管のことに付きましては、是は此處で申上げることだけは遠慮申したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=187
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188・森川仙太
○森川委員 非常に力強い言葉を戴いて感謝に堪へないです、どうぞ其の方針で御進み戴きたいと思ひます
それからもう一點だけ水産局長さんの御答辯でも宜いのでありますが、御伺ひ致したいのでありますが、近時遠洋漁業等の大企業が出來なくなつた關係上、大資本家が沿岸の漁業權を買漁つて、而も非常な高値に吊上げて買つて、さうして沿岸漁業に轉換して進出して參つて居る傾向が各地とも多分にあるのであります、此の儘にして放置するならば、恐らく非常に困つた事態が起つて來るのぢやないか、折角今まで營々としてやつて居つた小さい資本、又は自分の資本に依つてやつて居つた漁業家が、非常な悲境に陷る事態が來るのぢやないかと云ふやうな點を考へますと、此の場合何等かの處置方法を考へなければならぬぢやないかと考へるのでありますが、是等に對してどんな御考へを持つて居られますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=188
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189・笹山茂太郎
○笹山政府委員 遠洋漁業者が現在操業海域の制限に依りまして、從來通りの活動が出來ない、隨ひまして其の結果沿岸漁業の方に進出をして、沿岸漁民を困らして居ると云ふやうな御話でございますが、一部左樣な所もあると思ひます、實は現在の食糧事情に鑑みまして、緊急に相當魚を漁獲しなければならぬ關係上、出來るだけ能率の上る漁業に俟たなければならぬ點もありますので、是等のことに付きましては、沿岸漁業と關係がありまするけれども、それ等の關係を能く調整しまして、能率ある漁獲を致して居るやうな次第でございます、今後斯う云つた過渡的な事態は、操業海域の制限の撤廢等に依りまして、將來に於ては必ず解消する問題であると思ひまするし、沿岸漁民との調整に付きましては、十分注意して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=189
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190・森川仙太
○森川委員 其の他少し伺ひたいこともあるのでございますが、大臣が御忙しい所でありますから、私の質問は之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=190
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191・川崎巳之太郎
○川崎委員長 次に唐橋君から大臣に對して簡單な御尋ねがあるさうですから――唐橋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=191
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192・唐橋重政
○唐橋委員 餘り簡單でもありませぬが……、先達ての本會議に於ける三宅代議士の質問に付ては、統制外の食糧の横流しをして居るもの一千萬石と云ふ推定になつて居ります、農林大臣は左程あらうとは思はないと言つて居りましたが、一千萬石あるか八百萬石であるかは別と致しまして、相當量の食糧が統制の枠外に横流しをして居ることは、爭はれざる事實であると考へます、其の點に付きましては、私も農村人でございまして、よく考へある人にも聽いて居りますが、村々に依つて事情は違ひますけれども、供出數量の二割位が農家の浮動保有米となつて殘るのではあるまいかと考へて居る者もあります、二割と云ふ數字になりますと大變な數字になりますが、少くとも一割以上位の主要食糧と云ふものが、政府供出以外の浮動食糧として農家の手に殘つて居るのではなからうか、論より證據には、今初めてでもございませぬが、買出に地方へ往來する人々の手持の品物に、米が入つて居ないものは恐らくなからうと思ふのでありまして、斯う云ふものが假に一割あつたと致しますれば、それを政治的に掴むことに依つて二合一勺の配給を二合三勺に配給することは、出來なければならぬことであると思ふのでございます、然るに此の浮動保有米と云ふものが、完全に政府の手に依つて掴み得ない、素直な正しい供出がなし得ないと云ふ所に、此の食糧配給の不均衡を來し、一方に鱈腹食ふ者もあり、一方には榮養失調を來す人が居ると云ふことを心祕かに考へて居る所でございます、そこで今日の割當制度を見ますと、穫れた筈だと云ふ數字を政府が割出して、之に對して農家の供出する數量は是れ是れであるから、お前の村には是だけの供出能力があるものだと云ふことで割付けるのでありますが、實際の末端の町村に參りますと、一方には供出して餘裕ある者は浮動保有米を持ち得る者があり、一方には過小農家、小作農家の如きに至りましては、明日から還元配給を受けなければ食べ得ない程度の供出を致す者もある、農村に參りますと、農村自體の間に食糧の窮迫を感じて悲痛な叫びを上げる者があり、横流しをなし、闇をなし得る餘裕がある者があると云ふ實體なのであります、茲で私共地方の役場を預ります者の立場から考へましても、どうしても此の浮動保有米を政府が掴むことを考へなければならぬと思ふのでございます、此の點に付きまして、最も必要があるのは政治力である、政治の力を以て末端の供出を擔當する町村長と政府との間にしつかりした血の繋りがなければならぬ、之に依つてのみ此の浮動保有米を政府の手に吸收し得るものと考へるのでございます、そこで私は政府に御尋ねを致したいと思ひますことは、本年の供出は是からですから、全力を擧げて私共は地方に居つて供出の完遂に努力を致す積りでございますけれども、其の供出の完遂を、割當られました數字に囚はれて、それを完遂しようと致しますと、只今申上げましたやうに、一方には還元配給を受けなければ食へない者が出て參り、一方には供出して餘裕ある者が出て來るやうになるのでありますから、そこで私共の希望する所は、もつと政府が大まかに町村の需給状態を調べて、其の範圍に於て町村の需給計畫を立てて、町村民に食はせるものは町村に出來たものを食はせる、さうして其の殘つた所の物を以て供出に充てるやうな制度を立てて戴くことが本當だと思ふのでございます、今日は戰爭が終りまして、事態は變つて參りましたが、戰時中は是だけの米は穫れなければならぬ筈だと云ふ假想の數字の下に割當て、それが完遂されねば非國民だ、愛國心が足らぬ、斯う言つて地方事務所は市町村長に鞭撻を加へ、市町村長は農事實行組合に鞭撻を加へる、全く畫一的な供出の割當を強制したのであります、本年の如きは如何なるものかは豫斷を許さぬが、此の割當の數字を完遂致しますには、是は同じやうな努力を致して行かなければならぬのである、政府は納得した供出をさせると仰しやつて居るのでございますが、其の納得と云ふことは、決して斯う云ふ出來たことに對しての數字を唯頭から割付けて、其の供出を命ずると云ふのでは、納得ではないと考へる、根本基調となるものは町村長である、或は町村農業會長である、即ち町村當局が初めから是だけの米は出し得る、俺達の村では是だけ穫つて、是だけ食つて、是だけのものを出し得ると云ふ數字がはつきり生れて來ることに依つてのみ、私は納得した供出が出來ると考へるのであります、そこで政府の供出方針としては、實收高調査の爲め、所謂坪刈などをやつて、福島縣はそこから二合八勺五分の自家保有米を認めることになつて居ります、さうしてそれを差引いた數字が供出數量になるのでございますが、實際町村の實情に接しますと、其の數字の通り行かぬのであります、そこで私は此の際政府に御要望申上げ、御尋ねして見たいと思ひますことは、先づ政府が供出させる數量は今のことで宜しいが、もう一つは、是は今年の間には合はないので、明年のことでございますが、各町村長は、自分の村では供出量が幾ら、食糧營團の手を通じて還元配給したものが幾ら、此の數字は過去五箇年の實績に依つてちやんと分つて居る筈です、此の數字を基礎として、町村の實情を考へれば、一應出し得る米の數量と云ふものは町村長には分ると思ひますので、先づ割當をなさる前に、町村長に向つて此の數字を自發的に出させたら如何かと考へますが、御考への程を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=192
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193・松村謙三
○松村國務大臣 色々地方の實情に即する御話を承りまして、私共事實至らぬ所が多いと思ふのであります、今御話のやうな點に付きまして、今日まで戰爭中のあのやうな歪められた供出から、今日のやうな終戰直後、斯う云ふことになつて來て居るものでありますから、今年の供出も或る程度の改正を加へましただけでやつて居るのでありまして、地方の實情に副はぬ點が相當多いかと思ふのであります、明年以後の供出制度のやり方に付きましては、色々根本的に考へなければならぬ點があるだらうと思ひますが、今年は是でやつて行くより外に途がないと存じます、明年度以後のことに付きましては、只今御話のありましたやうに考へることも、一つの大きな方法ではないかと思つて拜聽致したのであります、即ち地方に即した考へ方から割出して來る、是は何と云つても町村長の力でありますから、其の考へに依つてやると云ふことが、八常に實效を擧げる所以であると思ふのであります、唯今日の場合には、それをやつて、それから出た數字で果してやつて行けるかどうか、斯う云ふ食糧の非常に窮迫した時でありますから、其の點に付てはどうか存じませぬが、少し食糧の生産が増すと云ふことになりますれば、さう云ふ方法が或は最も良いのではないかと考へまして、將來のやり方に付きましては、十分考慮致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=193
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194・唐橋重政
○唐橋委員 私も目前の急場を突破しなければならぬ場合に、明年以後のことを御話するのは如何かと存じますが、明日にも二十一年の生産に著手しなければならぬ場合でありますので、少しく時間を要する次第でありますが、もう少し私に尋ねさして戴きたいと存じます
只今私の申上げましたことが、明年以後の問題として、大體大臣の御諒承を得たことは、非常に有難いことでありますが、將來の問題と致しまして、只今申上げました通り、町村の賄ひは地方町村で立てる、町村と申しましても、市街地の町場は別でございますが、生産地帶の農村に於ては、町村長の權限を以て自給自足の賄ひを立てる、斯う云ふ建前を以て進んで參りますれば、自然食糧營團の農村部面に於ける配給と云ふものは、町村機構の一部か或は農業會の一部としてやつて行く、斯う云ふやうなことに變らなければならぬと思ひますが、將來に於て農村生産地帶に關する限り、食糧營團の配給を農業會に御任せになることを御考へになりませぬかどうか、此の點を御聽きしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=194
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195・松村謙三
○松村國務大臣 其の點に付きましても、斯う云ふやうなことになりますれば、自然其の點にも考慮しなくてはならぬと考へて居ります、實は此の委員會ばかりでありませず、其の問題は二、三囘も承りまして、地方の一つの大きな要望になつて居るのではないかと考へらますので、是等の點に付ては十分に考慮したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=195
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196・唐橋重政
○唐橋委員 私の申上げることは大臣に大體諒承されたやうでございますが、此の際もう一つ御伺ひ致したいと思ひますることは、只今私の申上げましたことが大臣の御諒承を戴いたとしたならば、明昭和二十一年度の供出のことは、生産に即しない供出があるべき筈がないことは申すまでもないのでありますが、今日の町村農業會は畫一的な割當制の爲にそれの完遂に日も尚ほ足らざる状況でありまして、村の實情に即して計畫を立てる暇がないと云ふのが實情でございます、米の割當が來て、米を一生懸命にやつて居ると麥の割當が來る、麥をやつて居ると養蠶の割當がある、木炭の割當がある、其の一つ一つが悉く離れ離れに幾多の系統から町村に割當られて居る實情でございます、さうして其の數字が只今申上げましたやうに、町村の實情に即しないものをも理論數字に依つて、割當をせられる、之を完遂しなければ同胞が飢ゑる、戰爭に敗ける、斯う云ふことでやつて來たのでございますが、私は少くとも昭和二十一年以後の食糧問題其の他の重要なる生活必需物資を生産し供出する爲には、只今から昭和二十一年度の生産竝に農村の食糧對策を考へて行かなければならぬと思ふのでございます、今日まで戰時中を通じまして農村に供出を強要せられたのは、米麥等の主要食糧を初めとして、繭、羊毛、木材、薪炭、雜纖維、凡ゆるものが要望せられて居つたのでございますが、其の中には只今申上げましたやうに、理論數字を割當て、徒らに耕地反別に基き山林反別に基いて割當られて居ります關係上、所に依つて木のない所に薪の割當が行き、山なき所に炭の割當が來ると云ふやうなことが多々あつたのでございます、そこで私は今年度の食糧飢饉を突破することは、大臣の御手腕に信頼するとして、昭和二十一年度以後こそは、町村の生産能力に應じた本當の供出體制と云ふものが確立されなければならぬと考へるのであります、二十一年度を期して、二十一年の生産計畫竝に食糧供出對策を目標として、急速に全國の町村長に號令を下されまして――政府の必要な物は、大きなものは指折つて見れば分ると思ふ、主要食糧、木材、木炭、斯う云ふやうな物はどうしても農村から供出せられねばならぬものであります、さう云ふ物に付きまして、國家の必需數量の凡その目當を付けて、それを大臣の胸に納めて置いて、一應過去の實績に基いて各町村に呼び掛け、町村長の獨自の見解に基いて、食糧は此の程度出す、木材は此の程度出す、養蠶は此の程度出すと云ふ計畫を立てさせて、それを御集めになつて、町村長が自ら背負つて立つ、是ならなし得ると云ふ情報を御集めになつて見たらどうか、さうして國家の必需數量と、町村長が責任を負ひ得る數量との間には、多分相當の差額が出來ると思ひますが、其の差額を詰寄せて、お前の村はもう少し努力が出來ぬか、米の方で絶對出來ないならば木炭でもつと出來ないか、食糧で出來ないものは養蠶でもう一つ努力が出來ないか、斯う云ふことにして、政府と町村とが本當に語り合ひ歩み寄つて、少くとも國家の要請に應へ得るだけの働きをすると云ふやうなことをやることが非常に有效である、今日の町村長は借りた覺えのない借金を拂はされて居るのであります、決して米を何ぼ出すと言つた覺えがない、幾ら生産すると言つた覺えがない、さうして秋になつて割付けられて、之を出さない者は町村長に熱意がない、斯う言つて鞭撻されるのでありますが、政府はなぜ早く町村長に證文を書かせないか、本年度は量だけの生産を必ずします、是だけのことをやつて國家の要請に應へませうと云ふ此の諒解が付くならば、町村長は直ちに村に歸つて農業會長、農事實行組合長、凡ゆる機關と共に二十一年度の生産計畫を立てて、之を完遂すべく生産の面から先づ計畫を立てるだらうと考へるのであります、私は此の際急速に昭和二十一年度に對しまして、町村當局に向つて、明年度の生産計畫と國家の要請する必要數量とを示して生産計畫を立てさせて、さうして昭和二十一年の増産の完璧を期したらどうかと考へるのでありますが、急速にさう云ふことをやつて見せようと云ふ思召はございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=196
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197・松村謙三
○松村國務大臣 私詳しいことは存じませぬが、今日の計畫作付でありますね、あれはさう云ふやうな下から盛上る形を縣なり國なりが今御話のやうに話合ひをして作付計畫を決める、生産計畫を決める、斯う云ふことになつて居るのではないかと思ひますが、それが實際に行はれないで、やはり上から押付けた形になつて町村長あたりの責任のある人 意見も聽かないで割付けて來る、斯う云ふことになつて來るのではないかと思ひますが、若しもさう云ふことでありますならば、私等も嘗て議會でもそれ等の問題に付て聽いたことがありますが、出來るだけやはり町村の實際行へる計畫に基いてやると云ふことに改めたいと思ひます、是は若しもさう云ふことでありますならば、早速遲れない中に其の御考へを出來るだけ實行致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=197
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198・唐橋重政
○唐橋委員 御考へになつて居る所は、恐らく作付の割當等をなさつて居ることは、さう云ふやうな意味を多分に含んで居ると云ふことは、私も十分承知致して居ります、併しながら膝詰の談合と申しますか談判と申しますか、其の點に付ては全く上からの割當であり、引受けて來ただけのものを、是だけ作るのだぞと云ふ、斯う云ふのが、今日の實情ではないかと思ふ、そこで町村長には味がありませぬ、仕事をやるのに味がありませぬ、でありますから、是は是非一國一城の主として町村長を取扱つて戴きまして、其の村々の特質を十分に活かす、例へば迚も私の村では米は是れ以上出せないが、炭ならもう少し出せませうと云ふやうな見當でやつて戴きたいと思ふのであります、此の見地に立つて、取敢へず二十一年度に於てさう云ふ計畫を立てさせて見る、更に町村長自體を以て其の町村の農産物の増産竝に供出計畫に付て五箇年計畫位のものを各町村に樹立せしめられまして、さうして今年の供出は是より以外に出來ないが、私の村には開墾すれば是だけのものが出來る、溜池を造れば是だけの水田が出來ると云ふやうなものを、各各の町村から計畫を立てしめまして、其の計畫に即應したる補助、助成をなさる、斯う云ふことが宜しいのではなからうかと考へるのでございますが、此の開墾或は土地改良等の問題の如きも、事實は一つの割當主義でございまして、客土をすれば宜い所に暗渠排水をやり、暗渠排水をやれば宜い所に客土をやると云ふやうなことで、折角割當られたものを達成しないのも殘念であり、さればと申して達成しようと思へば實情に即せざるやうなことも往々にして行はれて居るのでございます、歸する所私の申上げますることは、もつと町村長、農業會長と云ふやうなものを大きく御信頼になつて、さうして自主的な計畫を立てさせる、それから色々中央から御計畫になる、開墾或は土地改良等の如きも、唯割當主義と云ふやうなことでなくやつて戴く、又細かな補助金、先刻色々御話が出ましたが、畜産の獎勵にせよ、養鷄の獎勵にせよ、餘りに細かなものを數々の助成をなさらずに、町村自體が立てたさうした生産竝に供出の計畫に對しまして、大まかに助成金と云ふやうなものは町村長の手腕に任せて之を交付すると云ふやうな建前を御執りになることに依つてのみ、私は今後の本當の民主主義農村が生れて來ると考へるのでございます、是等の點に付て大臣の御意見を伺ひたいと思ひます、更にもう一つ此の機會でございますから附加へて申上げますが、さうした計畫を以て進んで參ります爲には、町村長と農業會長との關聯と云ふものは、相當に是は重要なことに相成つて參ると思ふのでございます、今囘は特に町村民の農業會員の意思に依つて、選擧に依つて出て參ります所の役員が出て參ると云ふことでありまするが、其の結果に依つては一町村の當局と農業會長との間の關聯の點に於て缺くるやうな結果になる懸念はないか、斯樣に考へるのでありますが、冀くは農業會長は町村長をして兼務せしむるのが穩當であると考へるのでございまするが、之に對しての御所見は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=198
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199・松村謙三
○松村國務大臣 大體御話のやうに運びたいと考へて居ります、先刻申しました通りに、能く地方の實際を承りまして、出來るだけ本當の實行性のある計畫に基いてやりたい、補助の御話のやうな點は、是は事實私共も其の弊害を認めて居るのでございまして、出來得るならば御話のやうに漸次變へて行くことが、非常に效果的であらうと考へて居ります、それから町村長と農業會長を一つに兼ねしむると云ふことに付きましては、是まで色々議論のある所でありますが、大體に於てさう云ふことは宜からうかと存じますけれども、今日此のやうに民主主義と申しますか、農業會會員の考へ方を基礎とせねばならぬ上に於きましては、さう云ふことは望ましきことと思ひますけれども、さう云ふことを選擧に依らずして決めると云ふことは如何なものかと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=199
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200・川崎巳之太郎
○川崎委員長 此の際申し上げます、大臣は餘程時間を御急ぎなさるやうに思ひますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=200
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201・唐橋重政
○唐橋委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=201
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202・川崎巳之太郎
○川崎委員長 あと加藤君一人殘つて居るのですが、それでは大臣が非常に御急ぎのやうでありますから、今日は是で散會を致しまして、明日の朝十時から開會を致します
午後六時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912907X00419451212&spkNum=202
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