1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○自作農創設特別措置法案
○農地調整法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=0
-
001・会議録情報2
―――――――――――――――――――――
委員氏名
委員長 男爵 稻田昌植君
副委員長 子爵 北條雋八君
公爵 島津忠承君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 久松定武君
子爵 安藤信昭君
子爵 三島通陽君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
牧野英一君
松村眞一郎君
寺尾博君
男爵 内海勝二君
男爵 岩村一木君
男爵 毛利元良君
男爵 多久龍三郎君
赤木正雄君
竹下豐次君
我妻榮君
松尾國松君
菅澤重雄君
松本勝太郎君
原田讓二君
飯塚知信君
―――――――――――――――――――――
昭和二十一年十月七日(月曜日)午前十時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=1
-
002・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) それでは是から委員會を開會致します、先づ最初に農林大臣から本會議で提案理由の説明がありました以上に、もう少し御説明がある筈でありますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=2
-
003・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 本案の提案の理由に付きましては、本會議で御説明致しましたので、内容を今少しく詳しく御説明致したいと思ひます、第一に自作農の創作特別措置法案の内容に付て申上げますと、是は第一番に自作農の創設に付きましては、二箇年と云ふ短期間に廣汎に且公正に行ふ必要から、地主と小作人間の相對賣買は認めないことに致しまして、其の間に國家が入りまして、自作農の創設に必要な農地は國が直接土地の所有者から強制的に買收を行ひまして、小作人に之を賣渡すと云ふことに致した譯であります、此の改革が完了致しますると、小作地の二百六十萬町歩の中で約二百萬町歩と云ふ小作地、即ち小作地の八割が自作農地となることとなります、第二に、買收の對象となりまする農地と致しましては、不在地主の所有しまする小作地は從來通り全部が對象となりまして、在村地主の所有します小作地に付きましては、前囘の改革案に於きましては全國平均五町歩の保有を認めたのでありまするが、今囘は内地では平均一町歩、北海道では平均三町歩に引下げまして、此の面積を超える小作地全部が買收の對象となつて居ります、又自作地と小作地と合せまして三町歩以上所有して居りまする場合には、一町歩の制限の外小作地の保有を所有農地全體として三町歩の範圍に制限致しまして、之を超えまする小作地は買收することと致したのでございます、又農地の外でも自作農創設の爲に必要でありまする場合には、是は採草地でありますとか宅地と云つたやうな農業用地、農業用の施設なども買收し得ることに致しました、而して以上の買收の實施に當りましては、第一に自作地に付きましては從來通り原則として買收致さないことに致しまして、農業經營を制限するやうな取扱ひは致さないことと致したのであります、從ひまして例へば今自作地であつて自分の自家勞力を主として居りまして、三町歩でも四町歩でも實際の自作經營を自分の自作地に付て致して居りますものに付きましては、是は買收を致さない、農業の經營と云ふものは、是は原則としては制限致さないと云ふことに致して居ります、尤も自作地は其の耕作の業務が甚だ不適正な場合には、是は三町歩を超える部分を買收することが出來ると云ふことに致して居ります、第二に以上の述べました農地の範圍を決めまするには、從前のやうに個人單位に依りますることは農村の實情から見まして、其の必要も認め得られませぬので、今囘は世帶を單位とすることに致したのであります、第三に隣接市町村にありまする農地は今迄は一律に之を在村地主の農地として取扱つたのでありまするが、今囘は隣接市町村の中で社會的に又自然的に見まして其の市町村の區域の中に含みますることが妥當であると認められまする地區にだけ限定を致すことに致しました、第四に買收致しまする農地に該當するかどうかと云ふ決定に付きましては、買收の時期を基準とするのが原則でありまするが、假裝賣買乃至は小作地の不當取上げ等不當な土地移動のありました場合には、過去に遡りまして適用し得ることと致したのであります、例へば昨年の十一月二十三日迄遡りまして市町村の農地委員會が買收計畫を立て得ると云ふことに致しまして、自作農にならうとする小作人の公正な利益を保護することと致して居るのであります、第三に農地の買收價格は現行通り、田は賃貸價格の四十倍、畑は四十八倍の範圍内と致したのでありますが、報償金に付きましては、農地の買收を受けました土地所有者に對しましては、内地平均三町歩、北海道十二町歩を限度として、現行通り田は平均しまして二百二十圓、畑は百三十圓の報償金を交付することと致して居るのであります、唯買收しました農地の對價の支拂に付きましては、本會議で申上げましたやうに「インフレーション」の促進となることは極力之を避けますると共に地主の利益をも考慮致しまして、一定額は現金で支拂ひ、殘額は農地證券の交付に依ることと致して居るのであります、又農地を買受けました農民に對しましては是は可能な限度で一時拂を勸奬致しまして、其の殘額は年利三分二厘、三十年以内の年賦償還を爲し得る途を設けて居る次第であります、更に年賦償還に付きましては將來農産物の價格がどんなに下落する場合がありましても、土地を購入しました小作農の過重な負擔となりませぬやうに農地の主たる平年收穫物の價格の一定割合を超えないことと致しまして、此のやうな場合に付きましては年賦償還金の減免と云ふやうな措置を講ずることと致して居ります、次に國の買收と賣渡の手續でございますが、是は市町村農地委員會の樹立しまする農地の買收又は賣渡の計畫に依りて行はれることとなります、固より不當な又は違法な計畫に對しましては、地主或は小作者は異議の申立とか訴願と云ふことを爲し得ると云ふことに致しまして、救濟の途を拓いて居るのでありますが、市町村農地委員會の作成しました買收又は賣渡の計畫は都道府縣農地委員會の承認を受けることに致しまして、之に依つて確定すると云ふことになるのであります、計畫が確定致しますると、地方長官は之に基きまして農地を強制的に買收致しまして、之を小作農に賣渡すと云ふことになつて居る譯であります、農地の賣渡に付きましては、是は健全な自作農を創設すると云ふことを目途と致しまして、買收した農地の現在の小作農に賣渡すことを原則と致して居りますが、此の際多くの小作者に土地購入の機會を公正にすると共に、出來る限り耕地の集團化を圖る趣旨を以ちまして、買收計畫に於て十分の考慮を拂ひますのは勿論、必要がありますれば、農地の交換分合を強制的に行ひ得る途を設けて居る次第でございます、次に未墾地の取得及び處分に關しましても、既墾地に準じまして所要の處置を講ずることと致して居ります、其の趣旨は、本會議に於て御説明申上げました通り、國土を出来るだけ集約的に利用致しまして、國民に生業の基礎を與へ、又終戰後増加しました農村人口を處理しまして、農業の發展を期します上に於きまして強力に開拓事業を遂行して參ることが絶對に必要だからであります、農地の開發、就中開墾用地の所得に付きましては、從來農地開發法でありますとか、農地調整法の規定があるのでございますが、取得の主體竝に方法に付きまして、迅速且公正な計畫的な取得を期する上に於きましては、不十分な點が多いのであります、是等の點に鑑みまして本法の規定を置くことと致しました、さうして未墾地の買收竝に賣渡は、農地の場合と異りまして、都道府縣農地委員會の定める計畫に依つて行ふのを建前と致しまして、可及的に廣い視野に立ちまして、而も既耕地に於きます土地制度の改革と相照應した適當な措置が採られることを期待致した次第でございます、唯小面積のものに付きましては、賣渡の相手方は其の地區の農業者が多く、農地の買收と賣渡計畫との間に密接な關係がある次第もございますので、市町村農地委員會をして地元の實情に應じて處置せしめることと致しました、何れの場合に於きましても、買收の對象は農地の開發に供する未墾地を主と致しまして、所要の立木等に付ても之を買收し得ることと致したのであります、買收した未墾地は之を開發しまして、農地として自作農に精進し得る見込のあります者に賣渡すのを原則と致して居ります、是等の手段は概ね農地の場合と別段の差違はございませぬ、次に農地調整法中改正法律案に付きましては、第一に自作農創設特別措置法案と照應致しまして、自作農の創設事業の實施に當ります農地委員會と云ふものを民主的に改組致しまして、從來は地主と自作と小作と各各五人と致して居りましたのを、小作農は五人、地主は三人、自作農は二人としまして、小作農と土地所有者とが同數を以て組織することと致し、兩者の利益が公正に代表されまして、さうして自治的に運營されることを期待致したのであります、次に將來に亙つて農地の兼併を防ぐことが矢張り自作農の形態を維持します上に於きまして必要でありますし、又農地利用の適正と云ふことを圖ります爲にも必要でありますので、農地の移動とか潰廢に關しまする統制や小作地の取上の制限は一層是は強化することと致しまして、又當面の自作農創設事業の圓滑な實施を期しまする必要上、是等の制限は當分の間原則として地方長官の許可を受けることを要すると云ふことに致したのでございます、次に今迄申上げました自作農の創設に關しまする措置と相俟ちまして、殘る小作關係の改善に付ても、是は必要な措置を講ずることが肝要でありまするので、小作料は金納制となりましたが、將來何等かの事情で、經濟事情に激變を生じますやうな場合に、若し此の小作料が平年收穫物の價格の一定割合を超えるやうなことがありますならば、小作料の引下げの請求權を認めることと致しましたし、又現在日本の小作契約は、多くは口頭で結ばれて居るのでありまして、全部が全部文書と云ふものになつて居りませぬ、そこで小作契約は文書に依りまして、其の内容を明確に致しまして、耕作權の保護と強化とを圖ることと致すのであります、以上が兩法案の主なる内容でありますが、何卒御審議の上速かに御可決あらむことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=3
-
004・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 是から質疑を御願ひ致しますが、其の前に資料に付て申上げます、資料は農村當局から大分御手許に行つて居りますが、是以外に更に御要求がありますならば、此の際御申出を願へば大變結構であります、只今別に御氣付がないならば、後程でも結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=4
-
005・我妻榮
○我妻榮君 資料を一つ御願したい、それは第一次の改革があつた後で、「メモランダム」が來て居るやうですが、其の「メモランダム」に對して當局が御返答なすつた其の二つの資料を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=5
-
006・山添利作
○政府委員(山添利作君) 第二次の改革に付ての「メモランダム」ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=6
-
007・我妻榮
○我妻榮君 さうです、前の改革の際、議會の審議中に向ふから「メモランダム」が來まして、それに對して、三月一日ですかに御返答があつた、其の司令部との間の交渉文書、それを戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=7
-
008・山添利作
○政府委員(山添利作君) 第一次の最初のやつは、此の印刷物の中に載つて居ります、此方から出しました囘答文書を、それでは……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=8
-
009・松尾國松
○松尾國松君 今の文書は、此方から答へたもの、向ふから來たもの、悉皆御出し願ひたいと思ふ、それに依つて制限さるるものならば、我々は如何に考へても駄目になる、それを政府が腹の中に置いたり何かせずにはつきりする、それはどう云ふことかと云ふと、米を餘計配給すると向ふから輸入して呉れぬと云ふやうなことを、言ふのか言はぬのか知らぬが、新聞で我々は見る、あれ位愚なことはない、政府よりも向ふが能く知つて居る、我々の所へ調べに來ても能く知つて居る、一割足らぬ二割足らぬ、さう云ふことを幾ら言つても何にもならぬ、さう云ふ下らない考を持たないやうに、我々が審議する上にはつきり出して戴きたいと思ふ、それが先決問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=9
-
010・山添利作
○政府委員(山添利作君) 今の御話のやうに總て差出したいと思ひますが、正式の文書になりましたものは、既に此の中に入つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=10
-
011・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) もう資料に關する御發言はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=11
-
012・赤木正雄
○赤木正雄君 最近十箇年間に於ける年平均の耕地の水害面積、冠水流失面積、それからもう一つ、農地開發營團の開始以來の何が此處にありますが、各年毎の事業成績及び開發した後どれ程入植して居るか、それが少しもありませぬから、それを戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=12
-
013・井上勝英
○子爵井上勝英君 今の開發營團のと同時に、私が戴きたいのは入植者の脱落者調、入植者入手の主食及び種子の數量、其の正規の「ルート」を經たものと、然らざるものと區別しての調を戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=13
-
014・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) それでは是から質疑を御願ひしたいと思ひます、念の爲に申上げますが、今大臣は中座して居られますが、豫算總會に出て居られるので、間もなく戻られます、農政局長其の他政府委員が居られますから、先づ其の方へ御質問を願へれば結構と思ひます、御質疑は相當多いと思ひますので、只今は其の暇がございませぬでしたが、成るべくならば御質疑御希望の方は、私迄御通告を豫め願つて置けば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=14
-
015・山添利作
○政府委員(山添利作君) 只今我妻委員から「ジー・エッチ・キュー」との關係の文書に付きましての要求がございました、それは差上げてあります「諸外國における土地制度改革の實情」と云ふ書類、それの第三編「ポツダム宣言による日本の土地改革に關する諸資料」、是が第一次改革に出されて居ります、先般の臨時議會中に出されたのであります、それから其の次の方にございますのが對日理事會に於きまして論議せられました其の時の「ソ」聯案竝に「イギリス」案と云ふのが載つてございます、此の「イギリス」案なるものが基礎になりまして理事會で採擇になり、「マッカーサー」元帥に對する共同監督と云ふことになつたのであります、其の後に、是は何れ機會を見まして大臣から其の間の經緯の説明があるかと存じますが、「ジー・エッチ・キュー」の方から正式の指令ではございませぬが、指令の草案と云ふやうなものを提示せられたものがございます、是は祕密のものでございますので、後刻其の文書は讀み上げることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=15
-
016・松尾國松
○松尾國松君 ちよつと伺ひますが、是は衆議院の方の速記録を見たら分るかも知れませぬが、大體自作農創設に付て二箇年で經費の總額……さう細かいことでなくても宜いですが、經費の總額は項目別が聽けるなら承りたいのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=16
-
017・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は既墾地に對する經費でありますが、二十一年度に於きましては總計致しまして、十一億七千五百萬圓餘であります、其の内大きいものを拾つて見ますると、農地等買收對價支拂費が九億五千萬圓であります、それから農地委員會等補助、是は小作關係の調整に關する事業の補助でありますとか、或は農地對價の支拂竝に取立費の補助でありますとか云ふものを含めまして二億千九百萬圓餘であります、其の他の事務費でありまするとか、普及宣傳費でありまするとか云ふ經費になつて居ります、昭和二十二年度の豫定と致しましては二十三億四千一百萬圓、農地等買收對價支拂費が二十二年度に於きましては十九億圓になつて居ります、それから農地委員會等の補助、其の他先程申述べました經費に對應致しまするものが四億二千二百萬圓餘であります、昭和二十三年度に於ても二十二年度と同樣でございます、此の中御説明を要すると思ひますのは農地等買收對價支拂費でございますが、此の買收計畫は二箇年間に事業を遂行すると云ふのでございまするけれども、會計年度から申しますると三年間に亙つて居る譯でございます、而して其の面積は第一年度、即ち二十一年度に於きましては五十萬町歩、二十二年度に於きましては百萬町歩、二十三年度に於きましては五十萬町歩、計二百萬町歩を豫定致して居るのであります、其の買ひます農地の對價から申しますると、是は完全な價格でございまするが、二十一年度に於きましては三十二億圓、二十二年度に於きましては六十四億圓、二十三年度に於きましては三十二億圓、合計百二十八億圓でございます、此の中概ね三割は土地を買ひます者から現金で支拂ふことに豫定を致して居ります、從つて農地證券で支拂ひます部分は百二十八億圓の七掛、即ち九十億圓を豫定致して居る譯であります、農地關係、今日の關係に於きまして農地證券を發行する豫定は此の土地對價其のものだけを取つて見ますると九十億圓でございます、それから報奬金でございまするが、此の報奬金は、田に於きましては反當り二百二十圓、畑に於きましては百三十圓の標準に致して居りまするが、是は豫定面積と致しましては概ね買收面積の半ばに相當致します百八萬町歩と見込んで居りまして、其の金額は二十億三千萬圓でございます、從つて此の報奬金に相當致します、報奬金を含めましての農地證券の發行見込高は百十億三千萬圓と相成る譯であります、極く大體を申上げますとさうなります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=17
-
018・松尾國松
○松尾國松君 尚此の金額を取扱ひ、交付するには、府縣と市町村とがどんな關係を持つのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=18
-
019・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は農地證券關係に於きましては、其の資金に付きましては特別會計を設置することになつて居ります、從つて土地の買收代金、又其の賣拂の代金、是等の特別會計を設置して其の收支を明かならしめることになつて居ります、其の取扱に付きましては先づ第一に地主に對する土地代價の支拂でございまするが、是は只今の所、勸業銀行を使ひまして、勸業銀行を通じて農地證券を地主に交付することに致して居ります、それから土地を買ひました者から毎年償還金を取り立てる譯でありまするが、是は土地を買ひました者から市町村農業會に年賦金を納付せしめ、之を國庫の方に納める、斯う云ふ風に市町村農業會をして其の事務に當らせる豫定を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=19
-
020・松尾國松
○松尾國松君 さうすると府縣と市町村との關係はなくて、農地證券はどう云ふ金額にせられるか、それも聽きたいのですが、例へば其の一人の金額が一萬圓に上る時には一萬圓にせられるのか、或はどれだけかに切られるか、斯う云ふことです、それから其の次には今の問題は府縣と市町村には關係がない、關係なしにやるかどうか、斯う云ふことです、それから大臣の見えて居る所で一つ聽きたいと思ふのですが、土地整理局を置かれると云ふことでありますが、其の整理局を置かれると云ふのは、整理局と府縣との關係と云ふことを聽きたいのですが、一つ事務的に言へば、市町村、府縣とは關係なしに、それは勸業銀行から農地證券を一萬圓とか千圓とかのものを發行される、さうするとそれは市町村農會へ行つて、府縣と市町村と云ふものは關係ないことになるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=20
-
021・山添利作
○政府委員(山添利作君) 私は唯金だけの取扱のことを申上げたのでありますが、是は全體の買收手續等に關係致すことでございまするから、其の點もそれでは申上げたいと思ひます、第一に買收手續と致しましては、市町村農地委員會に於きまして、どの土地を買收するか、又其の價格はどうであるかと云ふ一切のことを決定する譯であります、市町村農地委員會で決定致しますれば、之を府縣の農地委員會に提出致しまして、其の承認を受ける譯でございまして、それに依りまして、初めて買收計畫が確定を致す譯であります、其の時にどの土地が買收になり、其の價格は幾らであるかと云ふことが確定を致すのであります、同時に其の場合に買收計畫に於きましては、自ら買收計畫を立てます時には原則的には、同時に是は又賣拂計畫も立てて居る譯であります、一方には買つて直ぐ賣ると云ふ原則でございますから、事實上賣渡計畫も立つて居る、さう云ふことになつて居るのであります、そこで農地證券に關しましては、政府と致しましては、先づ三割に相當致しますものは之を全國的に封をして地主の方に現金で支拂をやる、是は個人に付きまして土地を賣りました代金の三割と云ふ意味ではなくて、大體一人に付て四千圓を限度として現金で支拂ふと云ふ風に考へて折ります、其の殘りを農地證券で支拂ふ譯でございます、其の農地證券の額面は千圓或は一萬圓、斯う云ふ風に千圓を最小と致すことであります、買收價格が千圓未滿と云ふものが出ましたならば、それは現金で支拂ひます、それから農地證券の條件でございますが、利率を三分六厘五毛とし、それは公債の普通の利廻りに相當します、それから償還年限を二十四箇年と致します、さうして元利均等償還を致します、此の實際の數字は千圓に付きまして年々二十四箇年間六十圓受取る、正確に申しますると六十圓三十三錢と云ふことになりますが、それを年金のやうな形で受取るやうなことになります、此の買收計畫が確定致しますると、府縣知事から農地管理局を通じまして農林省の證券發行の要求があり、農林省は大藏省に提出する、大藏省は之を日銀を通じて勸銀に證券の交付方を指令する、斯う云ふ手續に依りまして、地主の所に勸銀から證券を屆ける、斯う云ふことになるのであります、尚申し落しましたが、農地證券の發行價格と申しますか、交付價格でございますが、是は利率が三分六厘五毛と致して居りますから、額面に依つて交付する、即ち「パー」で交付する譯であります、農地管理局は、是は概ね地方行政協議會の地區に多少違つて居りまするけれども、準ずるやうな地區で設置致すのでございまするが、尤も東北、北海道は一つ、又四國と中國は一つと、斯う云ふ風でございまするし、又關東方面は本省に於きまして直接農地管理局の扱ふ仕事を致す豫定に致して居るのでありますが、此の農地管理局と府縣との關係に付きましては、何しろ此の仕事を二箇年間に確實に、遂行しなければならぬと云ふ事情に基きまして、行政機構も餘程整へて參る必要がありますので、其の地方地方に管理局を置きまして、此の仕事の推進に當ると云ふのを主たる使命と致して居ります、又普通ならば、本省等で持つて居ります權限は、具體的なものは是は擧げて管理局限りに於て處理を致すと云ふ考でございます、併しながらさう云ふ權限と云ふやうなことは比較的少いのでございまして、主たる性格と致しましては、推進機關と云ふ任務を持つて居る譯でございます、大體を申しまするとさう云ふ譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=21
-
022・松尾國松
○松尾國松君 是は土地管理局と府縣知事との關係はどう云ふ風な聯絡を持つか、斯う云ふことが能く分らぬのですが、それでそれはどう云ふ意味で聽くかと云ふと、詰り戰時中に於ては農林省は、勿論今の大臣ではないけれども、昭和十八年の時からして内務省との關係と云ふものはうまく行つて居る時もあれば、うまく行つて居らぬ時もある、人間のやることでうまく行くかどうかは其の時の按配で仕方がないが、併しながら農林省はどう云ふことをやつたかと云ふと、自分の方に費用を持つて居つて、それをどんどんと農業會に補助して、財政的に農林省は取つてしまつた、政治的の言葉を以て言ふと、市町村農會と云ふものを取つてしまつた、我々が參加して居らなければ成立たぬ所はどうとか言ふのではない、我々が農會長をやらなければならぬと云ふ所は宜いが、さうでない所は、市町村も何も知らぬ内に向ふに補助をどんどんやつて、大きな金額を農林省は政策的にやつて、我々が仕事を見て居ると、市町村はこつちから金をやるから市町村長を經ぬでも宜い、だから注意の足りない知事なんかの居る所ではちつとも知りはしない、我々の所は一々皆我々を通らなければいかぬのでどうもないが、さうすると片方では町村からは補助も何も呉れない、農會からは金を呉れる、僕は此の間の消息は皆知つて居るが、そんなことはどうでも宜いが、今度もそう云うことにならないかと思ふ、それから土地管理局長の妙な提案が來て、あの男は左だ、知事は右だと、そんな戲けたことになると飛んでもないことになる、私は實は地方制度改正に付て最も其の點を具體的に論じて、さうして我々の考の違はぬと云ふことを速記録に殘して置いた、だからさう云ふ意味に於てどう云ふ考を大臣は持つて居られるか、斯う云ふことを聽くのです、其の根本を、長いことは要りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=22
-
023・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へ致します、此の農地管理局でありますが、是は實は二年間に此の自作農の創定の仕事をやらなければならないことになるのであります、それで斯う云ふ仕事は、是は何としましても中央から末端に行きまする迄本當に連絡が能く取れまして、それで一貫して專心してやると云ふことでありませぬと、なかなか仕事は進まないと思ふのであります、日本政府は兎に角「ポツダム」宣言を受諾致しまして、あの條項を忠實に履行する義務を負つて居る、而も農地改革と云ふものに付て之を二年と云ふ短期間に行つて行くと云ふことになりますれば、どうしても本腰を入れてやらなければならないのであります、處が地方制度の今度色々の改正に依りまして、今迄中央集權的であつたものが地方へ分權されることになるのでありますが、併し仕事に依りましては現在でも、例えば國有林の管理は農林省で地方に營林署を持ちまして、それで一貫して農林大臣の指揮監督の下にやつて居る、あれで仕事が十分出來て居るのであります、今囘も勿論此の農地管理局と云ふものはさう云ふ趣旨で出來るのでありまして、唯色々の行政がばらばらに地方へ分化して行くと云ふ弊害は、是は斯う云ふ地方制度の改革の時には矢張り其の一面からは避くべき點が十分あるだらうと、斯う思ひまして、勿論此の農地管理局の下に置きまする縣縣に於きまする農地部と云ふやうなものは、是は縣の内部の實際上の農地をやつて居りまする人達、さう云ふ人達を以て構成して行く譯でありますが、此の大きな仕事をやつて行きます上に於きましては、どうしてもさう云ふ管理局と云ふものを設けて、そこで矢張り「ブロック」別に其の「ブロック」に屬します所の各縣の仕事と云ふものを總括してやるやうな態勢を整へませぬと、なかなか急速にやると云ふことは、大きな仕事でありますればありますだけ、是は專心矢張り十分眞面目に、眞摯な態度で行きませぬと到底出來ませぬので、其の意味で我々としてはそれは地方商工局と云ふやうなものがありますので、さう云ふことで色々な農地管理局と云ふものを置きまして、一貫してやつて行きたい、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=23
-
024・松尾國松
○松尾國松君 外樣の御迷惑を掛けては惡いから、要點だけ一つ承つて置きますが、斯う云ふ土地は、例へて申すと別府の温泉地であるとか、或は其の他各地にあれに類した温泉地がある、其の温泉地は申上げる迄もなく、下は温泉であつて上は田畑になつて居る、であるからそれは耕地と認めるか認めぬか、斯う云ふことであります、それは上には畑のやうな形を成して居るけれども、温泉の爲に物は穫れぬ、斯う云ふことであるが、併し畑と言へば畑、名稱は畑と云ふ名稱になつて居るのですが、それは温泉地の取扱はどう云ふ風に御考へになつて居るか、次には鑛毒地及び炭田の陷沒地ですが、さう云ふものはどう云ふ風に耕地と看做されるかどうか、斯う云ふこと、其の次には山岳部の田と云ふよりも畑ですが、是は私申上げぬでも皆さん能く御承知だらうと思ひますが、例えば山地に於ける畑は、收穫に於ても平地に於ける畑の三分の一が普通であつて、もつと少い所は五分の一、六分の一であるから、それを所有地の面積と比較すると、他の一町歩に對して或は四町歩でも五町歩でも及ばぬと云ふ風なのがありますが、さう云ふものはどう云ふ風に御考へになるか、それから次には今買つても賣つても返還せざる地があるのです、例へば一人の人が地を持つて居つて、賣つても返還せぬ、自分で作しようと思つても、返すことはどうもならぬ、斯う云ふやうなことに付てどう云ふ風に考へて見るか、それから其の次には、未墾地と云ふことが先程大臣の御説明にもありましたが、意味は分るのですが、例へばここに一つの田がある、畑がある、それに繼續して居つて開墾し得る所と云ふやうな意味か、さう云ふやうな點を、是は事務のことかも知らぬが、承りたい、それから其の次には、先程大臣の御話に、世襲的に農家が自作農になつても、農産物の價格の變動に依つて困難をしないやうに考へる、斯う云ふ御話である、是はまあ結構であります、結構でありますが、一つの具體的な例を以て言ふと、舊家で十町歩持つて居る、さうするとそれを丁度其の家族の者に三町歩づつ分けてやる、斯う云ふやうな場合に於て、私は實は其の點は幾らかむづかしい問題ぢやと思つて居るのですが、言ひ換へて見ますと、其の家の持つて居つたものが無うなる爲に其の家の一家は維持が出來て行かないと云ふやうなことが起るとすれば、さう云ふことは法規を一々讀んだら分るでせうが、さう云ふやうな場合に於ては、どう云ふ措置が考へられるものか、それは考へることの餘地はない、要するに三町歩と云ふもので決めれば、それ以外のことは、分けてやると云ふことは、分けてやり得ざる其の者が耕作人でない限りさう云ふものを保有することは出來ぬ、斯う云ふことになるのか、それだけちよつと承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=24
-
025・山添利作
○政府委員(山添利作君) 名前が畑であつて下に温泉がございます爲に作物が出來ないと云ふ土地でございまするが、是は全然出來なければ、無論名前が畑でありましても、此の法律に於きましては耕作せられる土地を言ふのでありますから、畑に入らない譯であります、併し幾らか穫れる、穫れが惡いと云ふことであらうと思ひます、さう云ふ土地は、甚だしく自作農の創設にする程値打がないと云ふことでございますれば、買收の對象にはならない、即ち外にも此の法律の中には燒畑、切替畑と云ふやうな例を擧げてございまするが、收穫の著しく不定な農地は、是は除くことに致して居ります、それから鑛害地の問題でございまするが、炭礦の爲に土地が陥歿して居る、又陥歿の虞がある、或は其の他の鑛害を受けて居る土地、是等のものも自作農の對象にするのには値打のない土地でございまするから、是も對象には致しませぬ、それから山の谷合にございます田等でございまするが、是は御話の通りに、日當りも惡く、又水も冷いと云ふやうな關係で、平地にございまするものとは相當收穫高は落ちる譯でございますが、併し是は普通の田なり又畑を成して居るのでございまするから、此の法律の對象になります、同時に又さう云ふものは地價も低い譯であります、それから地主の方から土地を返還して貰ひたいと云ふ場合に、小作者の方で返さない、さう云ふ場合の措置に關する御質問がございましたが、此の土地の返還と申しますか、取上と申しますか、是は戰が濟みましてから方々に起つて居ります非常に重要な且深刻な問題でございます、如何なる場合に小作者の方から土地を返させることが出来るかと云ふのは、農地調整法の第九條に規定が致してございます、農地調整法の第九條に「農地の賃貸人は」即ち地主の方は、「賃借人が宥恕すべき事情なきに拘らず小作料を滯納する等の信義に反したる行爲なき限り賃貸借の解除」、是は新らしく入れた字でございますが「解除若は解約を爲し又は更新を拒むことを得ず」、原則的には小作人の方に於きまして特別に信義に反する行爲がございませぬ限り、土地の返還請求は出來ないのであります、唯但書に於きまして、土地の使用した目的を變更する、それが學校敷地にならざるを得ぬと云ふやうな場合、又は賃貸人の自作を相當とする場合……問題に現になつて居りますのは此の場合が大部分と存じますが、「賃貸人の自作を相當とする場合其の他正當の事由ある場合は此の限に在らず」、此の自作を相當とする場合と云ふのは如何なる場合を言ふのか、之に付きましては、斯う云ふ解釋が確立致されて居るのであります、即ち小作者が作つて居るよりも地主が耕作した方が能率が上る、地主に設備もあり又家族勞力もあり、自作にした方が寧ろ全體から見まして生産が上る、又小作地を返します小作人の側から見ましても、其の事の爲に生活に困難を來す等の困つた事情が起らない、斯う云ふ場合に限つて土地の取上げと申しますか、返還が認められる譯でございます、此の爭ひのありますやうな場合、又爭ひがなくても、斯樣な土地の返還に付きましては、農地委員會の承認を受けなければならぬことになつて居ります、同じく第九條の規定でございますが、そこで農地委員會に於きまして是等の事情をそれぞれ具體的な事情に即して公正に又客觀的に判定を致す譯でございますが、地主の方から返してくれ、又小作者の方から返さぬと斯う云ふ風に爭ひがなつて居ります場合には、是は農地委員會が判定を致す譯でございます、まあさう云ふことでございまして、農地委員會の判定、又其の斡旋と云ふのに依りまして處理をして行きますことを原則と致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=25
-
026・松尾國松
○松尾國松君 まだありますけれども、大臣も御急ぎでせう、外に御迷惑を掛けますから、私は是で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=26
-
027・山添利作
○政府委員(山添利作君) 尚ほ未墾地の問題等がございましたが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=27
-
028・松尾國松
○松尾國松君 大臣の暇がなくて、外の人に御迷惑を掛けるから私は後で、別の人に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=28
-
029・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) ちよつと速記を止めて
午前十一時十九分速記中止発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=29
-
030・会議録情報3
――――◇―――――
午前十一時四十九分速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=30
-
031・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=31
-
032・三島通陽
○子爵三島通陽君 此の法律をざつと拜見した所でありますけれども、私は根本的に此の法律は大變に時宜を得たものであると思ひます、色々むづかしい點もあらうと思ひますけれども、内外の客觀情勢から考へましても、誠に適當なことであつて、又相當色々な意見もありますが、私は中道を歩いて居るものだと思ひます、唯併し之を實行せられるに當りまして、一つ一番考へなければならない問題があるのではないかと思ひますので、其の點を伺ひます、それはどうも地主と云ふと、大體惡い者と云ふやうに決めて掛られて居る今日ぢやないかと思ひます、色々な言葉の中にも農民を地主の桎梏から解放するとか、色々さう云ふやうなことを盛に言はれるのでありますけれども、勿論此の言葉を全面的に私は否定は致しませぬ、斯う云ふ言葉も相當使はれて宜いこともあらうと思ひますけれども、併し地主全般が全部農民を搾る、食つて居る、搾取をして來たのみとは言はれぬことが多々あらうと思ひます、そこで此の法律が出ました時にさう云つた方面からの色々むつかしい問題がありはしないか、少くとも此の法律を活かして行く場合の政府の御決心と云ふものを私は承りたいと思ふのであります、と云ふのは地主で例へば相當の此處に土地を持つて居る、其の小作料と云ふものを半分以上も農地改良とか、其の他色々農民の指導、小作者の指導と云ふことに當つて居る地主が澤山あると思ふ、さう云ふやうな場合に、それ等の耕作者は小さい地主になつて指導者を失ふと云ふことになつてしまふと思ふのです、さう云つたことに付ての何か御配慮がありますか、それを先づ承りたいと思ひます、私が個人的に知つて居ります地主でも、自分の所に上つて來る小作料の半分は農地改良に當てて居ると云ふ人もあります、又或は農産物と云ふものはちよつと加工すれば非常に高く賣れますから、さう云ふ農産加工の色々な設備と云ふやうなものをやつて、さうして指導して行くと云ふやうな地主が相當是亦多いと思ひます、是等は今直ぐに今の農民の諸君が共同經営、或は何か共同と云ふやうな、さう云つた設備をすると云ふことは、非常に望ましいことでありますけれども、是はなかなか一朝一夕に行かないのではないか、果してそれには相當政府が御世話を燒いておやりにならなければならないのではないか、勿論彼等が自主的にさう云ふことをやることは望ましいことでありますけれども、或はそれは民主的かも知れないけれども、此の際さう云ふ人達が好き指導者を失つた場合に、何か政府としては此の法律を活かして行く上に於て、此の法律の精神を活かして行く上に於て、相當の御考慮が要るのではないかと考へられるのでありますが、其の點は如何でありませうか、農林大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=32
-
033・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 非常に御尤もな御尋でありまして、私が此の農地の制度の改革の案を出しまするに付きましては、例へば地主がどうであるとか、小作がどうであるとか、個々の何に捉はれて考へて居る譯ではありませぬ、唯日本の土地の所有なり、分配なり、其の利用なりと云ふものが最も合理的に、さうして全體の農業の生産率が擧りまするやうに致すと云ふ建前を堅持致して居るのであります、御話のやうに今囘の此の土地の制度の改正に依りまして、まあ大きな地主と云ふものは、事實上なくなつて行く譯でありまするが、併し此の農村に於ける謂はば從來優良な地主の方々が爲して來た土地の改良でありまするとか、或は其の他色々の指導面と云ふものを是は正當に表示されて行くべきだと、私はまあ考へて居ります、將來地主の何としましては、是は其の人達が大切な地主でありまして、十分實質的な徳望のある人であり、又知識人でありまするならば、さう云ふ面に於て村の謂はば成る程自分は元のやうな地主ではないが、さう云ふ一つの力としての指導力と云ふものは又持つて戴きたいし、又自然持つだらうと思ひます、御話のやうな將來の農村は直ちに個々の農家が自作農になりましても、共同組合と云ふものの發展には色々のまだ條件が備はる必要がありまするので、地主が例へば農村工業でありますとか、或は又それ等の工業に於ける新しい土地の開發をして、自分で新しい農業經營をやつて行きまするとか、さう云ふ色々な面に於て矢張り從來の經驗と、それから財力と言ひますか、力を使つて戴く分野は私相當あるのぢやないかと思ひます、さう云ふやうな點に付て是非一つ具體的な色々な個々の村々に依つてそれぞれ違ふでありませうが、政府と致しましてはさう云つた面に付ての施設を是は是非やつて行きたいと考へて居る次第であります、農村の所謂變化と云ふことを考へて見ましても、さう云ふ面を中心としての地主の將來の行き方、一つの新しい構成と云ひますか、さう云ふ道は當然考へられるのぢやないかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=33
-
034・三島通陽
○子爵三島通陽君 農林大臣の御答辯で大體滿足致しましたが、又農林大臣の初の御言葉にもありましたやうに、私共は決して現在農林當局が政府はさう云ふ考を私が先程農民を地主の桎梏から解放すると云ふやうな言葉、さう云つた言葉を政府の方々が今持つて居らるる時に、又此の法律の精神がさう云ふ精神から出て居るのではないかと仰せられれば、それはもう其の通りだと思ひます、でありますから私も大體中道を行つて居るのであると云ふことを申して、此の法律にも贊意を表したのでありますけれども、今御話のやうに段々伺つて居りますと、それは其の在村の地主のさう云ふ指導者と云ふものは、さう云つたやうな形で殘るだらうと思ひますが、必ずしも在村でなくてもさう云つたものは相當あるので、是はさう云ふ縁が切れてしまふと思ふ、ですから何か矢張り政府の強力なさう云つた指導が要るのではなからうか、餘りさう云ふことを政府が強力指導すると云ふことは民主的でないと云つて、又さう云ふことを嫌ふ聲も出て來るのであらうと思ひますけれども、併し私はさうすることが農民の生活を向上させ、此の法律の精神を活かして行く上に必要だと思ひますので、何か其の協同組合等に付て、或は又教育等に付ても、どうも又少し話が外れましたけれども、今迄の農業學校とか、農學校とか、或は青年學校とかと云ふもののみでは私は滿足出來ないので、又御考があるかないかと云ふ具體案を伺つたのですが、何かございましたら、一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=34
-
035・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 農業の此の從來の農業教育等だけでは滿足ではないと實は私は思つて居ります、殊に今度のやうに農地の改革が行はれまして、まあ相當の中小の自作農が村の信用の主流を成して行きますると、一番望ましいことは、それ等の農業の經營が非常に合理化されまして、其の農業の經營だけで或程度の教育が出來ると云ふだけの農民が力を持つと云ふことは一番望ましいと思ふのであります、併しそれをやりまするのに色々な施設を政府としてもやらなければなりませず、又農業經營其のものの改善に付ては、各個人の素質とか能力とかが加はつて來ますから、一概にさう云つた全體の水準が上ると云ふことは望まれませぬが、我々としましては矢張り村の青年が十分一般の教養を高め得るやうな機會を出來るだけ與へることをして見たらどうかと斯う思つて居ります、私は一番最近考へて、卑近な所から出來れば矢張りやつて行きたいのは、矢張り「ラジオ」を農民に一つづつ持たすと云ふことと、共同作業場が幸ひ各農村にはありますので、出來ますれば共同作業場に一つ圖書館でも置いて、丁度文部省が公民館をやつて居られますやうに、私はああ云ふのは非常に宜いと思ふので、それを働く場所に結付けて、丁度農村恐慌の時に共同作業場を中心にして村をどうしたら更生出來るかと云ふので、村の本當の指導者が集り、又村の若い青年が集つてやりましたやうな、其の場所を使つて、そこで御互に研鑽し得るやうな機會を與へて行つたらどうかと思ひますのと、もう一つは、是は私共の方で考へて居りまするのは、四國なら四國に一つの綜合試驗所を作るとしますと、其の試驗所に矢張り研修所を同時に設けまして、農村の子弟が働く其の暇々に出て來て、而も大した負擔を負はずに優秀な教養を身に着ける機會を農業だけでなしに與へて行つたらどうか、斯う云ふやうなことを考へて居る譯であります、幸ひ我々の方としましては、今度農業綜合研究所とか開拓研究所と云ふものが出來た譯でありまするので、さう云ふものに付ては、是は今迄の地主の方々、或は其の他の人々の中で矢張り立派な人達は、何等かの形で御協力を願つて、それで實質的な農村の教育と云ひますか、教養を高めて行くと云ふことを一つやつて見たらどうか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=35
-
036・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 休憩を致します、午後は二時半から再開を致します、と申しますのは、午後一時半から二時半迄財政に關する政府の御説明があるやうでありまするから、其の方に出席をなさいます御希望の方があるやに推察されますので、二時半迄休憩を致します、尚もう一つ申上げますことは、或は會期が四日延長になるかも知れませぬから、延長の詔書が出る出ないに拘らず、二時半に御集りを願つて置きます、休憩を致します
午後零時三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=36
-
037・会議録情報4
――――◇―――――
午後二時五十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=37
-
038・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) それでは午前に引續き委員會を續行致します、井上子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=38
-
039・井上勝英
○子爵井上勝英君 ちよつと質問させて戴きます、農地調整法と言ひますか、農地改革の意義或は事情は私了解出來るのでございますけれども、之に關聯してちよつと分らない問題があるので、それを伺ひたいと思ひます、土地問題に關聯して、農村の民主化とか、社會化とか、或は電化とか、科學的經營の問題が必然的に解決されると云ふ風にどうも考へられない、勿論是は衆議院なんかでも色々議論されて居ることと思ふのでございます
けれども、電力の問題を考へて見ても、實際に於て是が窮屈となつて來て居りますし、農具だとか機械や肥料も極めて不十分で、特に農具は質が惡くて、日本の農業技術に合致した改善が殆ど行はれて居ないと言つても宜いのではないか、規格の統一、優秀製品の完成、斯う云ふことはどうも一朝一夕には求められない、是は過去の歴史が示して居るので、例へば足踏脱穀機の改良なども二十年も掛かつてやつと今日のやうなものが出來、其の間に農民が蒙つた經濟的負擔と云ふものは非常に莫大なもので、是が今日農村の機械化とか色々なことを言はれて居る場合に今後又矢張り非常に農民に引つ掛かつて來る問題ぢやないかと云ふ風に考へられます、それから農業技術から言へば、農民の水準は低いし、多角的經營と云ふものは、なかなか十分に行かないし、有畜農業にしても、家畜の飼育の經驗が乏しくて、之の指導とか育成が誠に至らない、さう云ふ状態であると思ひます、殊に有畜農業は必ず加工をやらなければいけないと云ふのですけれども、此の加工方面に於ける技術だとか或は機械だとか云ふやうなことに、はつきりした見透しが付かない状態であると私は考へるのであります、今度立案されて居るやうに伺つて居りますあの協同組合にして見ても、從來購買販賣組合と云ふやうなものがあつたのでありますけれども、生産加工と云ふやうな恆久な社會的結合組織と云ふやうなものが未發達の日本では協同組合法と云ふやうなものが出來ても、一體どれだけの發達が行はれるかと云ふことは、疑問に思ふのであります、何れにせよ一つの仕事を完成するのには、各方面に亙つての綜合的研究が必要で、それに伴ふ農民の生活文化なり技術文化が十分に發達しなければ、農村社會の民主化とか經營の多角化と云ふやうなことは期待出來ないので、相當年月を要すると思ふのであります、殊に一朝、此のやり方なんかを誤りますと、政府の意圖されて居る所と違ふ方向へ行くのぢやないかと云ふ疑問がある、殊に農村の人口が現在歸農だとか其の他の關係で、所謂從來の農村地帶とか或は開拓されて居る村でも、急速に増加して來て、土地の細分化、經營の零細化と云ふことは、可なり進んで來て居ると私は見て居ります、斯う云ふ方面で生じた貧農だとか飯米百姓、或は半失業状態の農業勞働者と云ふものが相當急激に増大して、今後の重大な農村問題を惹き起すと思ふのでありますけれども、更に是等の人々は、都市工業が敗戰の結果急激に殆ど弱體化して、農業外收入と云ふものが激減するので、益益困窮化する傾向にあると思ひますが、從つて土地問題は是等の人々に取つて更に新しい問題を生じて行くのぢやないかと云ふ風に想像されるのです、それで以上のやうなことから言つても、結局土地問題の解決と他の諸問題の解決には、相當の「ギャツプ」が出來るのぢやないかと云ふ風に思ふのです、何故斯う云ふ質問を出すかと云ふと、どうも今日何か土地問題を解決すれば、急に世の中が明るくなると云ふやうな議論が、色々な雜誌だの何だのにちよつと見られるやうなんで、私共さう云ふことがないのではないかと云ふ風に考へるので、此の點を特に伺つて見たいと思ひます、それで又之に付て具體的な方策として、綜合農業研究所とか、或は開拓研究所と云ふものが新聞で發表してあるのでありますけれども、私はさう云ふ點に付ては、是等がまだ研究所長も決つて居りませぬし、研究「テーマ」も決つて居ないので、之を云々すると云ふことは言へないのですけれども、どうも新聞で見ただけでは、餘り今言つたやうな方面がやられないので、寧ろ農村の内部に問題があるので、殊に現在農民組合とか、それからもう既に現れて來て居る農産物の下落とか、色々の問題が次々に出て來て、農村が可なり複雜怪奇になつて來て居るので、斯う云ふ時代に一體どう云ふ風に具體的にやられて行くと云ふやうな點を伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=39
-
040・和田博雄
○国務大臣(和田博雄君) 此の農村の問題の解決でありますが、私共も此の例の土地問題を解決しただけでは農村の問題が直ぐに解決出来る、全部が全部「オーケー」になるとは實は毛頭思つて居ないのであります、唯併し斯う云ふやうに考を進めて行きたいのでありまして、と云ふのは農業が營まれて居ると其の農業が營まれて居るのは、或一定の社會的な、又經濟的な一つの條件の下に農業と云ふものは營まれて居る、さうすると其の社會的な、經濟的な條件の中
で一番農業の經營と云ひますか、生産に付て基本的なものは、どうしても是は農地の所有であり、分配であると云ふものの關係だらうと思ひます、此の點を其の儘にして置いて、さうして色色の農村の電化であるとか、農村の工業化であるとか云ふ色々のことをやりましても、是は從來それをやつて來て、なかなか效果の擧がらなかつたことなんです、資材其の他が相當豐富な時期に於て、尚且それが出來なかつた、處が問題は、其の條件を變へて、實際上耕作する者が一番大きな農業上の資本の主なものである土地を持つて、さうして其の土地から上る收益をもう一遍農業へ再交付し易いやうな條件を作つた其の上で、其の地盤の上に、例へば農村の工業であるとか、電化であるとか、色々なことをやると云ふことになりますると、問題は又自づと別だらうと思ふのでありまして、今のさう云ふ點に付ての難點は、是は日本の經濟が戰爭で謂はば非常に縮少してしまつて、さうして農村の電化を行ふとか、或は農村方面に於ける工業化を行ふとか云ふことに付ての、工業生産力と云ふものが非常に低くなつた爲に來る隘路は其處にある譯でありますが、其の條件が滿たされれば、是は元とは違つた地盤に於て、さう云つた工業化なり電化なりが振興し得ることになると、斯う思つて居るのでありまして、其の點になつて來ると、是は農地の改革其のものの問題ではなくして、日本の農地改革を行つたそれを地盤として、農業をどう云ふ方向へ持つて行くかと云ふ問題、謂はば農業の固有の領域よりも、外域を成す問題の方に私はなつて來ると思ひます、其の點になつて來ると、實は日本の是は工業力の囘復と云ふものを一時も早くやつて行くと云ふこと以外には方法はありませぬ、其の工業の囘復を圖ると同時に、農村側としては、是は農機具の問題にしても、電化の問題にしましても、從來のやうに唯外部からそれを迫られて取入れると云ふ形でなくして、農村の寧ろ内部からそれ等の問題を、それ等の事柄を取入れて、さうして實際上今度は自主的な地盤に立つて行くと、斯う云ふ方 に進めて行かなければならぬと思ひます、又それでなければ地に著いたことが出來ないと思ひます、唯其の時に國家がどう云ふ役割をやるかと云ふことは問題でありますが、國家がやる時に、民間でやる時に、民間ではやれない一應の誘ひ水をするとか、或程度の資本を投下すると云ふ方向をはつきりするとか、さう云ふ大きな事柄はやつたら宜いと思ひます、それで今度の協同組合法などで考へましたのは、從來のやうに唯産業組合のやうな流通の方面の中間の商人を排除すると云ふやうな形の仕事だけでなく、末端の農業協同組合は、是は農業の生産の面に於て共同に色々なことをやつて行く、例へば水の問題を解決するとか、或は共同の加工をするとか、共同の作業をするとか云ふたやうな意味で、御互に個々獨立の自作農場、自小作ではあるが、それ等の者が協同することに依つて初めて村なら村の問題が解決出來ると云ふやうな、さう云ふ生産面のことを主としてやると云ふことを中心にして、實は考へて居る譯であります、勿論此の農地制度の改革と云ふのは、是は農業の改革、農業の生産力の發達を圖りまする爲の一つの基本的な條件ではありますが、是で十分な條件だとは我々は毛頭考へて居ないのであります、此の農地制度の改革を行つたあと、此の改革された農地関係の下で矢張り耕作をし、それから經營をして行くのは、是は現在の處、農民でありまするから、其の農民の智力を増進したり、或は經營の指導をしたりすると云ふやうな面は、是は農民諸君の自分の努力にも懸つて居ることであるし、又それ等の點に付ては政府の施設にも懸つて居る點だらうと思つて居るのであります、唯日本の人口問題の壓力から起つて來る色々の經濟の關係は、是は唯單に一片の法令だけを以ては、實は解決が出來ないのであつて、人口問題其のものを解決します爲にはですね、是はどうしたつて日本の農業だけでなくて、外の工業、色々全體の經濟力の發達と云ふことで、基本的に解決するより外には、是は理論的に言つてもさうならざるを得ないと思ひます、唯農村の方では今外の産業が餘り再開して居ないので、此の農業の方面が恰もさう云つた失業者なり、復員者なりの、謂はばごみ捨場みたいになつて來ると云ふことだけは、私は出來るだけ矢張り避けなきやならぬと思つて居るのであつて、例へば過小農の問題にしましても、農地改革が行はれても過小農は、殘ると思ふ、殘る過小農はどうしてもそれ等の人達に出來るだけ外の部面の勞働の機會を與へると云ふことは考へなければならぬと思ふのであります、是はないないと言つても、農村の内部に於ける色々の點を考へて見ると、農業内部に於ても相當の勞働の需要はある、需要はあるのだし、又農業と結び付いた山村、其の他の經營に於ても農業勞働力の需要もある譯でありますから、それ等の面に持つて行くのと、それから矢張り是は開墾をもう少ししつかりした調査の基礎の下にやつて行つて、此の方面に人口を吸收して行く、さうして既墾地の農地改革と云ふものの效果を完成さして行くと、斯う云ふことが矢張り必要になつて來るのぢやないかと、斯う僕なんか思つて居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=40
-
041・井上勝英
○子爵井上勝英君 今御話戴いたので大體了承するのでありますが、結局又今後の經濟と云ふものは可なり窮屈化して來る、現に其の好い例が都會なんかで「ゼネスト」だの、何だの、或は團體交渉權だなんと云ふのも、結局其の反映と言ひますか、前觸の一つだと思ふのでございますが、さう云ふ意味から言つても、今後農村なんかで再生産されるとは言ふものの、農民の負擔と云ふものが非常に重くなると云ふ風に私は考へるのでございますが、之に付て大體農林當局あたりでは今度の小作農が自作農に變つた場合の負擔と云ふやうなものは、どう云ふ風になると御考になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=41
-
042・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は年賦償還金なんかに付て云へば、大體現在の小作料程度のものを拂つて、二十四箇年の年賦で自作農になれると云ふ建前になつて居るので、是は計算して見ましても、標準農家に付ては大體公租公課を負擔しましても、今の小作料よりも廉くなる譯でありますが、唯負擔の問題は國が之を將來農村に課して行く此の課税の問題に係るのでありますが、結局は農家が之に依つて其の農業經營の改善を行ひ、生産力が上つて所得が殖えれば、其の殖えた所得に適當な税がかかつて來ると云ふ風になれば、私はそれで宜いのだと思ひます、唯さう云ふ關係なくして過重な負擔が農村にかけられると云ふことは是は何處迄も避くべきでありまするが、農村が實力を備へて、なうして各農家がそれぞれ所得も上り、勞働の所得も上つて來て、又經營上の所得も上つて來て、それに適當な、國民としての負擔が掛つて行くと云ふことになりますれば、それで宜いと思ひますが、唯暫くは私は斯う云ふことは起つて來ると思ふのであります、從來は耕地の改良にしても、それから色々な農業上の施設にしても負據者としては地主が負擔して居つた、それが今度は耕作者と云ふものが其の負擔者の地位に代る譯でありますから、其の關係に於て共同の力で負擔が分散しますから、或程度迄は負擔し得ると思ふのであります、併しさうでないやうな場合には是は矢張り國として將來さう云ふ大きな施設なり何なりで農地の生産力を擧げる爲に必要なものは國が矢張り從來通り施設を講じて援助してやつて行くと云ふことにならうかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=42
-
043・井上勝英
○子爵井上勝英君 もう一つ伺ひたいのは、先程三島子爵が御質問になつた教育の點なんでありますけれども、私も非常に之を重視して居るので、現に「デンマーク」なんかで農業に依つて此の國が再興したと云ふのも結局農民自體に實力を持たしたと云ふ所に、非常な力があつたと云ふことなんでありますけれども、先程大臣は現在の農業教育に付て慊らないと云ふやうに仰つしやつたと私伺ひましたけれども、實は私も其の點で現在の文部省の農業教育と云ふものに付て非常に不滿を持つて居るのでありますが、之に付きまして、現に現在農林省では農民道場と云ふものを以て非常に積極的にやつて居られるのでありますが、今後一體農民道場教育と云ふものに付てどう思つて居られるか、又私聞いて居る所では現在の農民道場と云ふものは從來の兎角精神主義的な存在であつて、技術的には幾分不足して居ると云ふ所があつたと思ふのですけれども、是は豫算の關係とか色々な制約があつたと思ふので、之に付ては更に積極的に援助されると云ふ必要があると思ふのですが、其の點に付て一つ是非伺つて置きたい、同時に先般もちよつと新聞紙上で拜見しましたが、今度指導農場と云ふものを造られる斯う云ふことでありますけれども、此の指導農場と云ふものも私は各府縣をちよつと歩いて見ますと、豫算がさう大してないのに可なり造る…豫算がないと云ふのは現在の物價高の關係もありますし、色々の點で與へられて居るものでは十分のことが出來ない、或處では土地は見付かつたけれども建物が出來ない、或處では土地はどうもなかなか見付けにくいと云ふやうな状態があつて、非常に停頓して居るやうに見て參りましたのですが、現在此の資材不足だとかそれから耕地が益益狹くなつて居る現在に於きまして、何とかして此の既存のものを活用すると云ふことが非常に大事なんで、此の指導農場と云ふやうなものも從來の農民道場に附設して造ること、或は又農民道場に缺けて居る技術面に付て積極的に進めると云ふ風に御考へ戴けないものかどうか、まあ聞けば是は噂でありますから、さうではないと思ふのでありますけれども、農民道場關係が開拓局關係にある、それから指導農場が今度は農政局の中にあると云ふやうなことで、其の管轄爭ひと云ふやうな…爭ひと云つては語弊があると思ひますけれども、其の間でどうもうまく行かないのだと云ふやうな風にも風の便りで聞くのでありますが、其の點に付てどう云ふ風に御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=43
-
044・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へしますが、此の農村の教育と云ふ點に付きまして、農民道場を使ふと云ふことは私も贊成なんですが、先般も農民道場長の諸君が自主的に御集りになつて、色々農民道場の行き方に付て自己反省をやられた譯でありまして、私もそれに會つて色々話を伺つたのでありますが、從來の農民道場と云ふものが、其の經營と云ふ點が寧ろ疎かになつてしまつて、所謂惡く言へば神憑り式な精神主義に墮して行つた、斯う云ふ非難はあつた譯で、是は時勢上已むを得なかつたと言へば得なかつた譯でありますし、又それはそれながらに一應の社會的な目的を達したとも思ふのでありますが、唯農民の教育、殊に農村の中堅の農民の養成と云ふ點から行きますと云ふと、それだけでは少し足らない點があるのではないかと云ふ氣もするのであります、固より此の健全な精神の涵養と云ふ點から、高邁な思想と、しつかりとした自負とを持つたやうな、殊に農業なら農業と云ふものに付ての謂はば自覺と責任とを持つた、精神的に立派な青年が出來ますることは、是は望んでも望み切れない程の大切なことだと私も思ふ譯でありますが、唯矢張り農村の農民の教育を致しまする時には、どうも其の教育が今迄のやうな一つの形に捉はれてしまふと云ふことは、私はどうかと思ふのであります、此の點も農民道場長の諸君に言つたのでありますが、矢張り一番日本で必要なのは、將來非常に自己の値打を知り、又他人の値打を知つた、兎に角個性のある、自分の本當の個性を活かし得るやうな人が欲しいのであつて、斯う云ふ人を作るやうに一つやつて貰ひたいと云ふことを申したのでありますが、唯それには是は矢張り農家の子弟でありまするから、どうしても農業の實際上の教育と言ひますか、技術又經營、さう云つた面のことをして、それでそこに矢張り精神的なものを掴んで行くと云ふことに致しませぬと、どうも足が地から離れちやつたやうなものでもちよつと困ると斯う思つて、農民道場と云ふものが從來よりは經營面にもう少し力を注いで貰ひたいと云ふことも、私も前の農政局長の時に申したこともあるのでありますが、是は農民道場をさう云ふ農村の中堅の子弟の教育の爲に使ふと云ふことに付ては、私は是非さうして行きたいと思つて居ります、それからそれには農民道場と云ふものの施設が實は十分でない點があつたであらうと思ひます、此の點に付ては農民道場長の諸君からも相當熱烈な要求があつた譯でありますが、經營的に色々更新して行く爲には、必要な施設に付ては政府としても是は考へる必要があると思ひます、唯指導農場との關係でございますが、農林省としては出來るだけ農民道場を縣としては之を指導農場に選定することはちつとも拒否しては居ないのでありまして、是はああ云ふ施設のあり、寧ろ我々の施設、又立派な道場長の居るやうな所は、指導上指導農場になつて下されば是は一番宜いことでありますから、さう云ふ點に付ては、農政局にあるから、開拓局にあるからと云ふので、別にどう斯うと云ふことはありませぬ、方針としては農林省としては一貫して居る積りであります、まあ農民道場は幸に各縣にあるし、それから相當の人材も居るのですから、最近は又新しい一つの農村に於ける知識慾の芽生へと言ひますか、さう云ふ要求も非常に強い譯でありますので、農民道場は相當活用して、農村の實際的の教育と云ふことは私としてもやつて行きたい、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=44
-
045・井上勝英
○子爵井上勝英君 大臣の御言葉を聽いて非常に嬉しく思ひますけれども、現實に地方へ行つて見ますと、今の點が誠にあやふやでありますものですから、どうか一つ此の點を更に、諄いやうでありますけれども、能く行くやうに御仕向け願ひたいと思ひます、あと大臣は御用が御ありになると思ひますから、私あとは……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=45
-
046・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) いや、私は用事はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=46
-
047・井上勝英
○子爵井上勝英君 他の方々に若し御ありになれば、私後で政府委員の方に伺つて、あとは止めます、若しなければ續けさして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=47
-
048・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=48
-
049・井上勝英
○子爵井上勝英君 もう一つ、今度は開拓關係のことに付て少し伺はして戴きたいのですが、現在方々に少し歩いて見て私非常に痛感したのでございますけれども、それから只今戴いた資料の中にも、自作農創設特別措置怯の四十條に關係する問題であるのでありますが、開墾なんかやられる場合に、どうも之を阻害して居る問題が隨分あると云ふ風に私感じて來たのであります、現在開拓と云ふものが急いでもなかなか成績を擧げられないと云ふことは、是は當然なことなんでありますけれども、それに付て五箇年間に百六十五萬町歩造成計畫と云ふことをやられて居るのでございますが、是はまあ實際から言ふと非常にむつかしい問題で、單なる豫算的措置を講ずればそれで足りるとか云ふ問題でないと思ふのであります、其の素地の獲得に付て可成り隘路があると云ふ風に感じまして、工事を進めて開拓者を入植させるのに、何か之を制約する惡い諸規則はないかと云ふことを此の間調べて見たのでありますが、實に煩瑣な手續があるのでございます、四十條の説明にもございましたのでありますけれども、農地開發法とか、或は耕地整理法、河川法、砂防法、森林法、牧野法、或は國立公園法とか、其の他法律關係で以て八十一種類、それから河川堰堤規則とか町村有林野に關する手續、電信電話線建設條例等の諸規則と云ふものが五十六種で、是等合せて大體百四十種類位が關係して居る、從つて事務能率が實に擧らないで、事業著手迄に驚くべき日時が經過してしまふ、斯う云ふことがあつては、緊急實績を擧げようとしてもなかなか出來ないのであります、斯かる制約を排除すると云ふことが必要ぢやないかと思ふのですが、其の點に付てどう云ふ御考でございますか、ちよつと伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=49
-
050・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 只今井上さんから素地の獲得に付きまして、色色御意見がありましたが、誠に其の通りでございます、開發を進めて參る上に於きまして、素地の獲得を迅速にすると云ふことと、其の素地が獲得されたならば、色々な諸規則に拘束されないで、迅速に工事が行くやうにと云ふ状態を作り出すことが最も大切であると思ふのであります、從來斯う云つた方面に付きまして、制度は不十分でございますので、今囘の自作農創設特別措置法案に於きましては、開拓適地と云ふ風に決定された所に付きましては、其の後に於ける開發農地の色々な手續、其の他認可、斯う云つたことは不必要にする、即ちさう云つた特別な改めて色々な手續を履まぬでも、開墾は進め得ると、斯う云ふ状態を作る爲に規則を制定したやうな次第でございます、河川法とか、或は砂防法とか、或は國立公園法とか、天然名勝記念物保存法とか、其の他森林法、牧野法、色々ございますが、一旦開墾適地と決定された分に付きましては、其の開發に付きましては是等の諸規則は適用せられない、斯う云ふ規則を制定したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=50
-
051・井上勝英
○子爵井上勝英君 もう少し伺はして戴きますけれども、今度の開拓に關係の事業實施機關に對してでありますけれども、緊急開拓の事業主體と云ふものは、大體五十町未滿の集團地開墾は地方長官の適當と認める團體或は個人、五十町から三百町の集團開拓は都道府縣、農地開發營團、地方農業會其の他實力ある團體、個人で地方長官の決定するもの、三百町以上は農林省で決定すると致して居りますが、併し實情に於ては農地開發營團が相當部分擔當して居る、此の農地開發營團に付て伺ひたいのでありますが、營團の過去の五箇年の實績と云ふものは、必ずしも宜いと考へられないのでありますが、是は勿論戰爭と云ふやうなものがあり、勞力、資材が極端に制限を受けたり、空襲激化の爲に工事は進捗せず、營團に對する當局の手續が非常に煩雜だと云ふやうなことを聽かされて、それが實績の上らない原因だと云ふこと迄言はれて居る位なんでありますけれども、今度緊急開拓の大事業を進める上に於て、營團の自主性をもう少し認められないものかどうか、必要以上の干渉は少し愼んで貰ひたいと云ふことを、營團側としても言つて居るやうに私聞いて居るのでありますが、營團が十分に其の機能を發揮しなければならないと思ふのであります、營團の事業は專ら開墾ばかりで、集團地の開墾には特に營農のこともやらないで實績が上らない、此の方面の資金と云ふものは一體どう云ふ風に配慮せられて居るものか、それから入植當初に於て入植者が一番困難を感じて居るのは營農の關係で、種苗と肥料の入手です、それから生活に於ては主食の購入であります、先程私は其の資料を出して載きたいと云ふことを申上げましたのは、實は二箇所ばかり見ました處が、此の主食の購入と云ふことに付て非常に困つて、遲配などと云ふことで可なり苦しんで居るやうなのであります、ああ云ふ農地を開墾して入つて居る連中に取つては非常な負擔になると思ふのであります、此の點を伺ひたいと思つて居るのでありますが、今資料がありませぬければ、後で書面で伺つても結構でありますが、是等の人々を親切に面倒を見て戴くと云ふことが、結局開拓地を今後完全にするかどうかと云ふことだと思ふのです、入植者と共に苦樂を重ねるべき營團が之を輕視して居ると云ふことは、どうも私には解せないのであります、此の際營團の機構を改めてと言ひますか、今迄はどうも土木關係が非常に多くて、何でも彼でもひつくり返してしまつて、其のひつくり返した後に草が生へて居ると云ふやうなことでは、折角の開墾してやらうと云ふやうな氣持も十分の成果を擧げ得ないと云ふことになると思ひまするので、其の點に付て伺ひたいのです、それからもう一つ、今度の第二次金融措置に關聯して、開拓關係で營團とか増産隊の運營に付て何か支障がなかつたかどうか、其の點をちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=51
-
052・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 只今開發營團に付て御尋ねがございましたが、從來農地開發營團の仕事と云ふものは、御承知の通り農地開發法に依つて運用された面が大部分でございます、從つて地區の決定なり其の他に付きまして、色々認可を要する事項が多かつたのでございます、處が斯う云ふ緊急開拓事業になりますと云ふと、地區の選定其の他に付きましては、從來の農地開發法のやうな風にやると云ふことは非常に手間を取ることになりますので、現在に於きましては、農地開發法に依るやうな手續は執つて居らないのであります、從ひまして經費其の他の點に付きましても、政府の委託と云ふことにしまして、國庫の方から供給される資金を以て專ら動いて居るやうな状況でございます、從來やかましく言つたと云ふ點は、營團を金縛りにすると云ふやうな意味合ではなかつたと思ひます、營團が設立匆々でございまして、其の育成に付きましては、非常に各方面の援助を要すると云つたやうな關係から、それを育てる爲に色々御注意を發した點があらうかと思ふのでございます、今後の運營に付きましては、勿論營團ははつきりした任務を持つて居るのでございますからして、それが自主的に其の目的に向つて努力されることは、勿論好ましいことでもありますし、又積極的に自らの力を養つてさう云ふ點の解決に當られることは、我々としても希望する所でございます、又開發營團が從來營農方面に付ては比較的手ぬかりがあつたと云ふことは、御話の通りでございます、今後開發營團の地區に於ける所の入植者の營農指導に付きましては、十分配慮して參りたいと斯う考へて居るのでございます、是等の營農の指導に要する所の資金は、現在中央金庫等から借りて居るのでございます、又入植者に對する所の種苗、肥料、農具等の配給に付きましては、是は大體に於ては地元の農業會の方と連絡を取りまして、是等の配給を受けて居るのでございます、勿論營團自體と致しましても、農具を自ら買つて入植者に配給すると云ふやうなこともあるのでございます、開拓地に於ける所の肥料の配給に付きましては、是は一般の耕地と同樣な基準を以て配給されて居るのでございます、主食の配給でございますが、是は從來入植者の勞働に加配して、男は一日二合、女は一合と云ふ風に加配が定められて居つたのでございます、處が地方に依りましては、縣全體の食糧事情が非常に窮屈であると云つたやうな關係から、是等の加配が履行されて居らない所もあつたのでございますが、今後是等の配給に付きましては、地方とも連絡を取りまして、出來るだけ面倒を見ると云ふことに致して參りたいと思ふのでございます、尚先般の金融措置に依りまして、是等の營團とか或は其の他の開拓關係の團體に付きまして、どう云ふやうな影響があつたかと云ふ御尋でございますが、其の當時預金をして居つた者の中で若干は第二封鎖に掛つたのでございます、營團の分に付きましては、餘りさう云つたことが結果的になかつた、斯う云ふことになつて居るのでございます、是等の封鎖された資金の措置に付きましては、各方面と今折角協議を進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=52
-
053・井上勝英
○子爵井上勝英君 御尋ねした中の營團の機構改革と云ふやうなことに付てなのでございますけれども、是は或は現在營團の理事長と云ふやうな者があるので、そちらの方でやると云ふことになるかも知れませぬけれども、現在の機構と云ふものは、どうも私なんかの考では、土木關係が重視されて、肝心な營農關係に主力が注がれないと云ふやうな風に感ずるのでありますが、其の點に付ては別段御考はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=53
-
054・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 從來營團に付きましては、先程申上げたやうに、營農面の指導陣が割合に貧弱であつたと云ふ點は御話の通りでございまして、今後是等の面に對する所の改革に付きましては、幸ひ營農指導の豫算が取れましたので、さう云つた方面に付きまして施設を充實して參りたい、斯う考へて居ります、營團機構の問題と致しましては營農部と云ふやうな部を特に設けまして、專任の理事を特に置きまして、入植者の營農指導と云ふことに指導陣を擴充したいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=54
-
055・井上勝英
○子爵井上勝英君 入植に付てもう一點伺つて置きたいのでございますが、入植者の決定は之を府縣廳に大體一任されて居る、處が最近の傾向を見ますと、各府縣でどうも入植地へは自分の府縣の入植者だけを入れる、適格者があつても、他府縣の者は絶對に入植せしめないと云ふやうなことがございますのですが、是で果して適正な入植者の配置が出來るかどうかと云ふことを疑ふのでありますが、先日香川縣の栗熊村の分村の滿洲の牡丹江の歸還者百二十五名が、岡山縣に入植したと云ふので、關係者が熱心に岡山縣當局に懇請したのでありますが、絶對に他府縣の者は入れられないと斷はられた、處が此の岡山の地區では入植者がないと云ふ風なこともあつて、ちよつと矛盾して居るやうに私見て來て居るのですが、斯う云ふ矛盾が開拓事業が進展しない一つの原因ではないか、政府は入植者を決定することに付て、何とかもう少し府縣に一任と云ふことと同時に、何か御考になつて戴けるやうな餘地はないか、特に滿洲開拓民と云ふ者が隨分歸つて來て入植就農の希望もあり、又或は非常な悲慘な状態で歸つて來る是等の人々に對して、農林省としても國策移民と云ふやうなことで可なり積極的に推進されたのでありますから、此の人達に對しても何とかもう少し見て上げて戴きたい、此の制度と云ひますか、府縣で決めてしまふと云ふやうな點に付ての改正を私は希望したいのでありますが、其の點に付ての御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=55
-
056・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 入植者の決定に付きましては、御話のやうに、只今府縣廳の方で決定致して居るのでございます、と申上げまするのは、結局各府縣にそれぞれ希望者が集るのでございますからして、其の集る所の開拓希望者を此の地區にはどれだけ入れるかと云ふやうな事柄に付きましては、矢張り府縣廳が一番實情を知つて居るのでございますからして、現在の處府縣廳の決定に委して居るのでございます、唯其の府縣廳の方で希望者が多くて、其の縣内に於て入植の豫定地が見付からないと云ふやうな場合に於きましては、農林省の方に其の府縣から申出るのでございます、さうした場合に於きまして、農林省の方で餘裕のあると思はれる所の府縣廳に交渉しまして、今其の入植者を斡旋して行つて居るのでございます、先般も北海道に對しまして、二萬戸入植させると云ふ風に準備が進んで居るやうな状態でございまして、又東京附近、其の他の入植希望者の多い所、而も一面に於て適地がないと云ふやうな所に於きましては、東北方面にそれぞれ御世話を致して居るやうな次第でございます、此の入植者の決定に付きまして府縣「ブロック」にならないやうに極力私共の方でも能く心懸けて參りたいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=56
-
057・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 牧野さん、御發言を御要求でしたが、今日は成るべく四時迄に終りたいと思ひますが、それ迄に御濟みであれば只今御願ひしたいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=57
-
058・牧野英一
○牧野英一君 そんな風にはなりはしないと思ひますが、明日御許を願へれば明日にでも……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=58
-
059・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) では明日……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=59
-
060・菅澤重雄
○菅澤重雄君 今度の農調法に依つて、二年間に土地を買上げると云ふことになりますが、其の買上げた土地を、小作人が若し買入れを希望しない場合には、政府は之を小作に付けて置く見込でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=60
-
061・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 政府が買ひまして、どうしても小作人が買はないと云ふものは、餘り多く我々は豫期して居りませぬが、さう云ふものがありました時には、是は其の村の農事實行組合でありますとか、或は農業會等に自作農創定の爲に賣拂ひましたり、或は最後には農地委員會に管理させる、斯う云ふことに致さうと思つて居ります、それから殊に又賣れ殘りの土地で、其の小作人がもう將來耕作は止めてしまふ、斯う云ふやうなことがありました時には、元の地主に十分耕作の能力があつて、農地委員會がそれが適當と認めたものは、其の自作をする者に賣る、斯う云ふことに致したらどうか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=61
-
062・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私は斯う云ふことを考へるのでありますが、是は杞憂に終れば甚だ結構でありますけれども、先程三島子爵の言はれるやうに、地主に於ても、又地方的に於ても、非常に小作料の凸凹のある所があつて、或は小作人から糶り上げて小作料を高くして搾取をすると云ふやうな、第三者から見ると見える場面もありませうけれども、最も安い三圓とか五圓とか一反歩の地料が現在行はれて居る、是は三十年も續いて、物價の安い時から同樣の額で居ると云ふやうな所は、餘りに其の土地を買ふことを小作人は希望しないのでありますが、さうすると今伺ひましたやうに、農地法に依つて地方の農地委員會か何かが買入れて、小作人に付けた場合に、地料を上げないで其の儘で居るや否や、斯う云ふやうなことが心配されるのでありますが、又政府が買上げた場合に於ても、賃貸價格を上げて、所謂小作料を引上げると云ふやうなことがありはしないか、斯う云ふやうなことも心配されるのでありますが、早晩賃貸價格と云ふものも、地租を政府が取る場合に於て改正しなければならないと思ふが、其の時分に安い所は今度賃貸價格を引上げると云ふやうなことが起りはしませぬですか、さう云ふことを豫想した時に、從つて地料も引上げると云ふやうな結果になりはしないか、斯う云ふことを考へるのでありますが、それは政府に於てさう云ふ場面に付てどう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=62
-
063・和田博雄
○国務大臣(和田博雄君) 賣れ殘つた土地に付て、假にそれを農地委員會が最後の手段として管理しまするやうな場合には、勝手に小作料を上げると云ふことは、法律の建前からも出來ないやうになつて居りまするので、其の心配はまあないのぢやないか、斯う思つて居ります、是は小作料の統制令できちんと統制されて居りますから、勝手に農地委員會が上げて行くと云ふことは出來ない、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=63
-
064・菅澤重雄
○菅澤重雄君 尚第九條の八の説明を見ると、田に在つては收入の二割五分を超えることを得ず、畑に在つては一割五分を超えることを得ずと云ふやうな規定がありますが、若し此の二割五分と云ふことになると、今の價格にすれば一反歩の地料が百三十七圓五十錢迄引上げる可能性を持つて居るし、畑は今のやうに藷やなんかを作つて、五百貫も穫れると云ふことになると、二千圓にもなる、又其の他の作物が千圓も穫れる、さうすると三千圓の收入がある、それを一割五分に引上げることが出來ると、四百五十圓迄引上げることが出來ると云ふ算定になるのでありますが、政府はさう云ふやうに、田に在つては二割五分、畑に在つては一割五分を超えることを得ずと云ふことになるのでありますから、さう云ふ所迄は上げても宜いと云ふやうな認め方のやうに思はれるのであります、そんなことがあれば、是はどうしても委員が買受けて、地方の農業會か何かが地料を引上げるやうなことが起りはしないかと、斯う考へられるのでありますが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=64
-
065・和田博雄
○国務大臣(和田博雄君) 此の九條の八は、小作料を引上げても宜いと云ふ規定では毛頭ないのでありまして、將來此の農作物の價格が非常に下落した場合に、其の小作料が茲で言ひますやうに田に於て二割五分、畑に於ては一割五分を超える時には減免の請求が出來ると、斯う云ふ規定であつて、寧ろ小作人保護の規定であります、地主の方で田は二割五分、畑は一割五分迄上げられると云ふ、斯う云ふ趣旨ではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=65
-
066・菅澤重雄
○菅澤重雄君 是は下つた時の場合ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=66
-
067・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) さうでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=67
-
068・菅澤重雄
○菅澤重雄君 農家は今度は米が下る番だとか、農作物の下る番だとか云ふやうな、前途を憂慮して居る農民もあるので、勢ひ此の二重價格なども、政府は何十億と云ふものを何處迄も、大藏省も出すことは承諾が出來ないと思ふから、米麥の價格は必ず下るものと、斯う云ふやうな場合を豫想して、どうしても、今五圓や三圓の安い地料で作つて居る者は買ふことの希望を持たないらしいのですが、其の時のことも考慮しなければならぬと思ふので、此の賃貸價格などは大藏省で定めると思ふのですが、其の場合に農林省は矢張り農林省としての立場から、大藏省を掣肘する譯には行きますまいけれども、餘程今より考慮して置かないと、そんな場合が起りはせぬかと考へられるのです、尚此の自作農創設特別措置法案の命令事項の中に、斯う云ふことがあります、産業組合とか養蠶組合とか云ふやうなものが桑畑のやうなものを團體で耕作する見込で、土地をさう云ふやうな場合に買受けて經營して差支ないのでありますか、例へば養蠶組合とか、實行組合です、それは差支ないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=68
-
069・山添利作
○政府委員(山添利作君) それはさう云ふことでございますれば、差支ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=69
-
070・菅澤重雄
○菅澤重雄君 不在地主と云ふものは一町歩を限つて持てるやうに或所にはあるやうにも考へられますが、是は不在地主は絶對に持てませぬのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=70
-
071・山添利作
○政府委員(山添利作君) それは「ゼロ」です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=71
-
072・菅澤重雄
○菅澤重雄君 一町も持てない……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=72
-
073・山添利作
○政府委員(山添利作君) さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=73
-
074・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私は宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=74
-
075・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) それでは本日は此の程度で散會を致します、明日は午前十時から開會を致します
午後三時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=75
-
076・会議録情報5
出席者左の如し
委員長 男爵 稻田昌植君
副委員長 子爵 北條雋八君
委員 公爵 島津忠承君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 久松定武君
子爵 安藤信昭君
子爵 三島通陽君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
牧野英一君
松村眞一郎君
寺尾博君
男爵 内海勝二君
男爵 岩村一木君
男爵 毛利元良君
男爵 多久龍三郎君
赤木正雄君
竹下豐次君
我妻榮君
松尾國松君
菅澤重雄君
原田讓二君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
政府委員
農林事務官 山添利作君
同 笹山茂太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00119461007&spkNum=76
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。