1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○自作農創設特別措置法案
○農地調整法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年十月十日(木曜日)午前十時十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=1
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002・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=2
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003・原田讓二
○原田讓二君 私は農村の思想問題に付て御伺ひ致したい、今日の農民運動の状況はどうであるか、或は又農民組合の活動状況はどの位になつて居るか、此の問題は或は厚生大臣、又は内務大臣の所管に屬するかも知れませぬが、思想の問題に付ては御理解の深い又常に關心を持つて居られる農林大臣であります、殊に農村の將來とは重大なる關係がございますから、之を御伺ひ致すのも決して埓外ではないと、斯う考へるのであります、終戰後急激に農村の思想的な方面が變化を來して居ります、色々な形、色々な姿の上に於てそれが現れて居ることは、もう申す迄もないことであります、是は敗戰と云ふ此の心理的の影響が國民全般に暗い蔭をさして居ると云ふことから其の根柢が來て居るのでございませうが、農村に於きましては此の食糧の不足と云ふことから經濟的に金が流入致しまして、さうしてそれも正常なる方法又價格でなくしてそれが農村に溜つて行くと云ふ風なことが私は反道徳的、或は非倫理的の影響を農村の上にも及して居るのではないか、斯う考へるのであります、又都會からの疎開人、斯う云ふ人の私は行動や振舞、考へ方と云ふやうなものも、農村と相互的に關係しまして、どうも好い風に農村に影響をして居ないと云ふことも考へられます、又農村の青年が此の敗戰と共に「ニヒリステック」になりまして、そして戰爭中の此の非常に強い壓迫から反動的に愉樂を求めると云ふ傾向、而も流れるやうに走るやうに其の方に行つて居ると云ふやうな傾向が濃厚でありまして、其の爲に廢頽的の氣分が農村に起つて居ると云ふ風にも感ぜられるのであります、所謂危險なと我々の見て居りまする所の思想、丁度黴菌のやうに培養されて全く宜い時期にあると斯う考へられます、曩に承諾を求められました所の食糧緊急措置令と云ふ風なものにも私は此の問題は隨分關聯があると思ふのであります、どうも農村の米の供出、其の他主食物の供出が圓滑に行かないと云ふ風な問題、是は色々原因もございませう、或は農民が極めて正直であり素朴である、さうして政府の言ふ所を眞正面に解釋して居るに拘らず、どうも其の通りに行かないと云ふ風な所から馬鹿正直な者は損をすると云ふ風なことから、どうも供出を澁ると云ふこともあるでございませうが、私はさう云ふものは出す必要はないのだ、生きる權利を主張する爲にはさう云ふやうなものを出して置く必要はないと言つた風の考を注入する一つの思想的の運動があつて、さうして之を阻害して居ると云ふ風なことも言ひ得るのであります、農村に行つて見ますると此の米の供出の日の前に掛けまして、或は當日に掛けまして盛に農民運動大會が行はれて、そして農民の生活、生きる權利の主張と云ふことが盛に唱へられて居ると云ふことは是は誰しも見る所であります、或は強權の發動と云ふ風のことも、是は嚇しであつて、決してそれに怯へる必要はないと云ふ風のことも言はれて居るやうでありまして、今度の法案に付きましても私は矢張り是と關聯があり、又結付けられるやうな事態になつて來るのではないかと斯う考へます、既に曩に實施されましたる農地調整法と云ふ風な法律に見ましても、小作は地主の要求に應じて、そして土地を返す必要がない、放つて置けば自ら自分のものになると云ふ風な考へ方をすると云つた風の傾向になつて居るのであります、今後農地委員會が出來まして、そしてそれに裁定が下されると云ふ場合にも、私はさう云ふことに對して色々面倒な問題が起つて來るのではないか、斯う云ふ風に考へます、元來此の土地改革と云ふ問題、即ち今囘の此の法律を定められた根本と云ふものは、矢張り憲法の基本的人權の尊重と云ふ所に根幹があると考へます、日本では農奴と云ふことを言ひますけれども、農奴と云ふ言葉は決して適當でない、併しながら隨分長年下積となつて、さうして苦勞して來た、働けども働けども生活の實際の自由を得な居ないと云ふ人は隨分多かつたのであります、さう云ふ人達が自分の物を得て、自分の持つて居るものから、物を産み出すと云ふ樂み、愉快、希望と云ふものを今度新たに得ると云ふことは非常に重大な問題であり、又最も望しいことだと思ふのであります、一方又昨日も松村先生が言はれました、所有すると云ふことは盜むと云ふことと言はれましたが、無論農奴に比べまして斯う云ふ風な私は言葉も日本の農村には適合しないと思はれるのであります、世襲的に得て居る所の廣大なる土地、謂はば不勞所得を得て易々と生活して居つた人は今日それだけのものを他に分つ、無償で分つ譯でありませぬが、分つて、さうして國民共々に均一なる又平和な愉快な生活をすると云ふことに寄與すると云ふことは、私は又當然のことと思ふ、中國では共産運動が盛でありまして、其の初期に於きましては所謂土豪劣紳征伐と云ふことが盛に唱道されまして、所謂暴力の土地革命が行はれて居ると云ふ風に聞いて居るのでありますが、私は今囘の法律の根本はさう云つた風なものでないやうに、所謂暴力的の土地改革をするのでなくして、平和の裡に此の土地改革をなすと云ふことが此の法律の根本になつて居る、斯う考へるのであります、是は實に良い法律が出來るのである、さうして是は必ず實施されなければならぬと云ふことを希望する一人であります、一體法律と云ふものは讀んで見ますと、實に無味、蝋燭を噛む如きものであつて、さうして解釋に非常にむづかしい點もあるのでありまするが、どの法律と雖も時代の潮流を象徴しないものはない、此の農地法に致しましても、又自作農創設特別措置法に致しましても、矢張り時代の此の激動を象徴して居るものである、さうして是が謂はば今日の時代を描き出して居る所の私は大きな「ドラマ」であり、戯曲であると斯う考へる、此の中には所謂地主の沒落と云ふ悲劇も含まれて居れば、又小作の立上り、或は農村に於ける新興階級の希望、喜びと云ふものも現れて居ると云ふ風でありまして、謂はば此の法律が一つの脚本である、さうして是はまだ定本でない、又決定版でないかも知れない、之を完全なものに更にして行かなければならぬものであるけれども、是は一片の冷かな法律として眺めるものでない、非常に思想的な背景の深いものだと斯う考へるのであります、農村に於きましては、今日小作と地主との對立と云ふものは相當に激烈である、或は長上を重んずるとか、或は舊家、大家に尊敬を拂ふと云つた風な考は段々なくなつて居る、さうして所謂小作をやつて居る人が新しく立上つて、さうして新興階級になりつつある、私はさう云ふ風な家の青年に對しましては、どうも今日盛に新しく興つて居る諸君が考へなければならぬことがあるのだ、それは君等が今日何等尊敬を拂はない所の、又拂ひたくない風である所の昔の舊家、大家と云ふ風な階級と雖も、其の昔は矢張り君等と同じだつた、生れながらにしてさうではなかつた、矢張り粒々辛苦をして築き上げて今日の舊家、大家になつたのであるから、其の點は矢張り考へて、それだけの敬意を君等が拂はなければ、君等が今後さう云ふ風になる場合のことを考へてもさうしなければいかぬと云ふ風な話をしたこともある、又或青年は斯う云ふことを言つて居るのであります、一體政府の當局に致しましても、或は又政治家に致しましても、農村に來て色々話をして呉れるけれども、君等はどう云ふ風に思想的に、或は精神的に惱んで居るかと云ふことに付て聽き質し、問ひ質して呉れる人は一人もない、共産黨の人々がやつて來て色々話をする、之を聽いて見ると、實に理論的には我々肯ける點が非常に多いが、偖、そこへ飛込むだけの勇氣もなければ又割切れない考がそこにあるのだ、斯う云つた風な惱みに對して、之を導いて呉れる人は今日一人もないのだと云ふ風なことを言つて居る、農村青年の思想的の惱みと云ふものは今日非常に著しいと考へる、在來のやうな、農村の問題は、思想的方面、或は教育的方面の問題は文部省がやるべきものだ、或は又其の取締に付ては、或はそれを指導して行く方面は内務省がやるのだと云つた風の多元的な考へ方はいけない、寧ろ私は農林大臣が進んで綜合した一つの考の下に農村の指導に當らるべきものであつて、さうして是は技術の指導、教育、或は思想的な指導と云うものは別々に考へるべきでないと考へる、斯う云ふ風な問題に付て農林大臣はどう云ふ風に御考になつて、さうして之をどう御處置なさむとするのでありませうか、工業立國と申しますけれども、矢張り日本は農が國の根本でなくてはいかぬと云ふ風に田舍に育つただけに考へるのであります、工業も無論大事ではありまするが、將來新しき農業の中堅になつて行くものを是から養成する、育て上げると云ふことに付ては、只今申上げましたやうな點も加へて一つ御考を願ひたい、斯う思ふのであります、尚今日各地に於きまして委員會であるとか、或は協議會であるとか云つた風な自治的の組織が隨分行はれて居りまして、農産物の生産などに付きまして、或は供出などに付きましても總て斯う云ふ所に於て立案計畫され、さうしてそれが實施されると云ふ風なことを新聞などで伺つて居るのでありますが、此の状況は果してどう云ふ風な所迄行つて居るのであるか、或は又それが好い結果を現して居るのか、此の思想的背景は何であるかと云ふことに付ても私は大臣の御考を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=3
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004・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 甚だ有益な御意見を承つたのでありまするが、私も實は農村の青年をどう導いて行くかと云ふことに付ては非常に關心を持つて居る一人でありまして、殊に此のやうな激動期にありましては、是は唯單に農村の青年のみならず、有らゆる層の人達が惱んで居るだらうと思ふのであります、先般農民道場の場長が任意集りまして、二十人ばかり集つて、農民道場の場長と言ひますと、御承知のやうに農村の教育の面も擔當して居る人達でありますが、私に會ひに來たのであります、私も會ひまして、一番に質問を私が致しましたのは、皆さんが日本の現在の若い農家の子弟と接觸して居つて、一體日本の農村の人達が何を求めて居るか、どう云ふものを求めて居るのかと云ふことに付て一つ意見を聽かして貰ひたいと云ふことを尋ねたのであります、すると、答はまちまちであります、日本のやうに今迄言論の自由と云ふものが抑壓されて居りまして、自分で考へ、自分で物をはつきりと言ふことの訓練の足らない人達が私は多かつたと思ふのであります、是が恐らく日本の根本的ら缺陷であつたと私は思ひます、其の時に、此の激動期にあつて日本の農村の人達が何を求めて居るかと云う質問に對して、農村は斯う云うものを求めて居るのだと云う何かを求めて居る青年の層と、何が何やら分らずに居る層と何れが多いかと申しますると、私は其の人達の答から判斷しまするに、何かを求めて居る人達が案外少いのぢやないかと思ふのであります、そこで表面的な現象としましては、此の過渡期に於て色々な言論の自由の許されました結果、色々な運動があり、又それが政治の運動と結び著いて、色々農村にも波及して行つて居ると思ふのであります、併し農村が一體どうあるべきか、どう行くべきかと云ふことに付てはつきりした指針を與へて居るものは恐らくないのぢやないか、そこで私は是はどうしましても、日本の農村と云ふものが唯經濟的に確立致しまするのみならず、謂はば思想的にも健全な、さうして本當に民主的な精神と云ふものが生活の面にも體得されると云ふ方向に持つて行くと云ふことが、私は必要だと思ふのであります、と申しますのは、私は矢張り農村の人達も自分の職業と云ふものを通じて常に自分で物を廣く考へ、且自分で考へて自分で本當に其の個性に立脚して物を言ひ實行する人が出來るだけ私は多く出て貰ひたいと思ふのであります、そこで農村の教育の面に於て唯單に色々な外部から入つて來まする所の思想なり何なりを、唯形式的に大きな譯の分らないやうなことで唯それを呑込むと云ふのではなくして、是はどうしても自分で自分の生活と云ふものを基礎にしてはつきりと自己を確立して行くと云ふ方向に是非向けて行きたいと思ふのであります、そこで農民道場と云ふものも、是は從來のやうな「フォルマリスムス」に陷ることなく、十分そこに於て農家、農家と言へば農業をどうしても營まれる譯でありますからして、それ等の本當の職業を通じ、さうして思想的にもはつきりした個性のある人達を造つて貰ひたいと云ふことを私は特に要望致したのであります、是は日本の農村には現在非常に澤山の青壯年が居る譯でありますが、今の處、私は色々の現象があるにも拘らず、日本の農村と云ふものが、原田さんの仰しやいますやうに、矢張り何としましても國家の基礎として大きな役割を果して行くものだと考へて居りまするし、又農業と云ふものが持つて居りまする、工業とは違つた一つの環境もある譯でありまするので、又日本の農民と云ふものが、それは若い者は色色の點に於て將來と云ふものを見まして、過去を振返つて見る、餘裕と云ひますか、さう云ふことはなかなか困難でありまするが、併し何時かは私は日本の農村に矢張り殘つて居る良き傳統は、是は農村だけではありませぬ、日本の文化全體に於て、脈々として活きて居る良き傅統と云ふものが私はあると思ふ、さう云ふものに立還ることになつて、一遍其處へ立還つて又外へ眼を開いて行くと云ふ、斯う云ふ此の循環運動をやることに依つて、始めて本當のものが出て來るのではないかと斯う思ふのでございます、從つて例へば現象的に一時さう云ふ過去に於ける良きものと云ふものが忘れられるとしましても、其處に時を假せば必ず良いものを見出して呉れるだらうと云ふ希望を持つて居ります、さう云ふ意味に於て、是は農村の子弟と云ふものを十分指導して行きたいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=4
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005・原田讓二
○原田讓二君 有難うございました、農林大臣の思想的立場をはつきりと表明して戴きまして、私は國民諸君も安心するだらうと斯う考へるのであります、續きましてもう一つ御尋ね致したいと思ひます、最近私は地方の人から葉書を戴いたのでありまするが、それに依りますと、斯う云ふことを書いてあるのであります、自分は殆ど小作階級と言はれても宜い程の小さい地主なんである、處が、今月は自分が自作しようとしても、土地を返して貰ふことが出來ないで、誠に苦しい生活をして居る、で今度の此の農地法と云ふものは、我々小作階級的地主を窒息せしめるやうに出來て居るのである、財産税にも免税點と云ふものがあるのであるが、此の法律にも免税點と同じやうな精神の下に、何か特別の手段を講じて、我々此の小さい地主を生活し得るやうにやつて戴けないものであらうかどうか、一つ宜しく願ひたい、斯う云つた風の葉書を貰つたのであります、私は昨日我妻博士の御話を承りまして、始めて此の小さい地主の言はれる所が第四條と第九條に該當して居るのだと云ふことを始めて知つたのであります、で是は斯う云ふ風な所謂地主此の人は、長く都會に出て居りまして、さうして晩年に郷里に歸つて、さうして所謂昔は舊家でありましたけれども、段々沒落して、少しばかりの土地を自分の不在中に小作に預けて居つた、さうして歸つて來て自分が自活する爲に自作農をやりたい、斯う云ふ考を持つた人なんでありまするが、斯う云つた風な考の方に、今度の法律は全然扉を鎖してしまつて居るのであるかどうか、或はさう云ふ風な方の希望を、或は懇願を農地委員會に申出るならば、十分之を取容れて、さうして土地も返して貰ふことが出來るのであるかどうか、昨日我妻博士は合意と云ふものに付て不審を持たれまして、土地を返還すると云ふことに付ても合意でなくてはいかぬが、其の合意の内容も強制的のものであるかどうかと云ふことが疑はしい、此の點が注意すべきだと云ふ御話がありましたが、私は小作諸君の生活の安全なることも無論望む一人でありまするけれども、斯う云つた風な小さい地主の又生活をも保障してやる必要もあるのぢやないか、斯う考へるのでありますが、其の點どうもよく分りませぬので、一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=5
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006・山添利作
○政府委員(山添利作君) 土地の返還の問題に付きましては、是は色々な場合がある譯でありまして、從つて其の判斷に付きましても、自ら具體的な場合に即しまして、色々と考へなければならぬ點があると思ふのであります、此の前は戰災者若しくは海外から引揚げた人に付ての御話が出た譯でありますが、此の世の中が非常に變つてしまひました現在に於きまして、中小の地主の人が手作りを始めたいと云ふ希望の向きも相當あることは事實であります、之がさうでなくてさへ少い日本の農地の事情に於きまして、地主の方から申しましても生活問題であり、又小作自身の方から申しても切實な生活の問題として、そこに非常に苦しい状況を描き出しつつある譯であります、偖、此の農地調整法第九條の解釋と致しましては、前に申上げましたやうに、地主に返すのが正當と認める場合と申しますのは、地主が作つた方が結局生産力を上げるだらう、又小作人も其の土地を返すことに依つて生活上困難を來たさないと云ふ條件が揃つて居ると云ふことでなければならぬと云ふことを申上げたのでございまするが、今の事情の場合に於きましても、結局其の生活上の事情から土地返還を希望する地主と小作人との間の話合ひに依る譯でございまするが、之がなかなか纏らぬと云ふやうな場合に於きまして、考慮すべきことは何と云つても一方は繼續して其の小作地の上に生活を營んで來たと云ふ場合、又片方の方は色々事情もありませうけれども、兎に角其の事情の變化の爲に、今さう云ふ土地返還を要求して居る、斯う云ふ事情があるのでありまして、そこに繼續して居る状況を破壞したが宜いか、或はさうでないかと、斯う云ふ判斷に依る外はないことになつて來るのであります、さう云ふことになれば、是は矢張り繼續して居る状況を尊重して行くと云ふことにならうと考へるのであります、何れにしましても、事柄は農地調整法の問題であり、又それは今の因難なる社會事情を反映しての色々起つて居る事柄でありますから、私が度々申上げますやうな精神に從つて、さうして圓滿に話が著き得るやうに、農地委員會としても斡旋をすべきものと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=6
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007・牧野英一
○牧野英一君 今日は小さい問題に付て四點、政府委員の御考を伺つて置きたいと思ひます、先づ第九條の第三項でございますが、昨日我妻委員から色色御尋ねがありました規定でありますが、此の三項に關しましては、農地委員會の承認に付て刑罰規定が見えて居ないやうでございまするが、第四條に付ては刑罰規定が十七條の四にありまして、第九條の第三項に付ては漏れて居るやうに思ひます、是は私自身が思ひ違ひをして居りますかも知れませぬが、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=7
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008・山添利作
○政府委員(山添利作君) 第九條三項の規定に關しました場合は、第十七條の五に二號としまして、第九條第三項の規定に違反した者は六月以下の懲役又は五百圓以下の罰金に處せられることになつて居るのであります、是は十七條の五であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=8
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009・牧野英一
○牧野英一君 分りました、そこで第二に御尋ね申したいのは、斯う云ふ犯罪でございますが、此の犯罪の構成要件は、どう云う所に重點を置いて考へたら宜しうございませうか、御尋ね申上げる趣旨は、此の權利の設定移轉等に付て我儘が行はれてはならぬ、斯う云ふことになりますと云ふと、此の承認を經ないで事實上此の移轉設定等の行爲をなす、それが犯罪になると云ふものでございませうか、或は單に承認を受けるべき時に承認を受けなかつたことが犯罪になると云ふ趣旨のものでございませうか、之を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=9
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010・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は形式的に既に承認を受けると云ふ手續を爲しませぬ場合には、犯罪になる譯でありますけれども、偖、其の内容が惡いと云ふことを取締るのでありまするから、自然處罰されこると云ふ場合には、其の内容と云ふことが無論重視されるものと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=10
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011・牧野英一
○牧野英一君 是は時效の起算點に付て、實際上の問題を生ずるのでありますが、例へば第九條三項の場合に、當事者の合意に依る場合はどうなるかと云ふ昨日の我妻委員の御話に付て、政府委員は、是は合意のある場合でも農地委員會の承認を受けるべきであると云ふ御説明で、私共も得心を致すのでありますが、併しながら承認を受けないで、さうして此の關係が實際上合意に依つて持續されて居る、さうすると其の持續されて居る間だけ繼續的に犯罪行爲が續くと、斯う云ふ譯のものになりませうか、時效の起算點に付て、實際問題としては餘程大きな差異が出來ると思ひますので、それが少し氣になるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=11
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012・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是はさう云ふ風に、土地の返還を合意の上で受けたとすれば、其の受けた時から始まるのであつて、繼續してずつと所有者の方で使つて居る、其の状態が續いて居る間犯罪が續いて居ると云ふ風には私は考へないのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=12
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013・牧野英一
○牧野英一君 そこで第四に立ち歸りますが、權利の移轉の場合は、移轉する時に犯罪行爲が成立すると致しまして、賃借權を設定致しました時に、其の賃借關係が續いて居る間犯罪行爲が成立する、斯う云ふことになる虞はありませぬか、是は如何なものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=13
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014・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是はさう云ふ許可、若しくは承認を受けずして權利の設定をしたと云ふ時から起算をすれば宜いのぢやないかと云ふ風に私は考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=14
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015・牧野英一
○牧野英一君 さう致しますと、賃借權を設定して、事實上賃借權が行はれて居る、是は一體法律の好まぬ事實である、けれども其の事實は依然として繼續しながら、併しながら公訴の時效には掛つて、それを訴追することは出來ぬ、唯法律行爲が無效であると云ふことの制裁があるだけである、斯う云ふ風になりますが、それで此の四條の精神と云ふものは貫き得るものでございませうか、斯う云ふ點を私は疑つて居るのですが、如何なものですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=15
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016・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は長いこと其の状況が續きまして、例へば土地を借りる、其の場合に土地全體の利用厚生の見地から見て、甲よりも乙に其の土地を使用させた方が宜しいだらう、從つてそれ等の場合には農地委員會は承認をしなかつたであらうと云ふやうな場合を想定致して見ましても、長い間そこに耕作關係が續いて居ると云ふ事態が續きますれば、是は又其の状況を承認すると云ふことも考へなければならぬ譯でありまして、それが形式的に惡い状況で始つたと致しましても、それが續いて居り、一つの既成秩序を成したと云ふ風に見れば、其の状況を又承認したら宜いのぢやないか、尤も其のこと自體が非常に他の人の權利を侵害して居るとか云ふやうなことでございますれば、是は無效と云ふことになりまして、新しく處置をされると云ふことになると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=16
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017・牧野英一
○牧野英一君 當事者の合意に依つて此の規定を潛ることが出來ぬと云ふことが、第四條と第九條の三項とに現れて居るに拘らず、潛つた事態が現に成立して、當事者が爭ひをしないで濟むと云ふことが、それが適法化すると云ふことは、少し私は心得兼ねるのでございますが、此の規定が此の儘でありますと云ふと、裁判所の問題になつた時にどうなりませうか、例へば同じやうな例として私が考へて居りますのは、酒造税法等で、免許を受けないで、酒を造つた場合には、免許を受けないと云ふことが犯罪であつて、酒を造ること自體は犯罪でない、それで酒を造ることは宜しい、其の代り税金の方で制裁を受ける、斯う云ふのでありますが、此の法律ではそれだけの制裁で、現に成立して居る賃借權の設定なり、契約の解除なりと云ふものは、それで認める、斯う云ふことになる、似たやうなことでございますけれども、酒の方は、酒を造ると云ふことは國家的見地から差支ないことで、免許を受けなかつたと云ふことが、要するに惡いことに歸著するだけでございますけれども、此の規定では、當事者の合意に依るとは云へ、成立して居る法律關係が國家政策上好ましからぬ状況なのであらうと思ひます、さう云ふ見方が若し誤りでないと致しますると、此の法律に違反して、成立して居る状態を持續して居ることが、それが一つの繼續的犯罪であると斯う云ふ風に見られる虞はありはしないか、さう云ふ風に見ることが、此の國家政策を遂行するのに適當なことではないか、斯んな風に私考へるのですが、それで特に之をどう修正したら宜いかと云ふこと迄を私色々感じ煩ひましたけれども、今日迄成案が出來ませぬでしたが、其の儘で宜しいと云ふ當局の御考でおありになれば、まあそれ迄と考へて居ります、聊か心配になる點でございます、それで當局では是で差支ないと云ふ御見込でせうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=17
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018・山添利作
○政府委員(山添利作君) 先づ此の點は私が今申しましたやうな所で、事實上差支ないと考へて居るのでありまするが、併し牧野先生の御話がどう云ふ所からどう云ふ風に出て來るかと云ふことは、又別の機會に一つ御教へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=18
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019・牧野英一
○牧野英一君 恐れ入ります、何れにしても第九條の三項及び第四條に付て、當事者が合意をするならば、拔ける途があり得ると云ふ虞がありますので、是は國家的見地から、さう云ふことは許さぬと云ふ精神だけは、段々に行政上の措置の方でも御考へ下さることであらうと思ひまするが、此の場合に希望を申述べて置きたいと思ひます、それで質疑の第三と致しまして、此の自作農創設の方の規定で、小さな文字のことでございますが、此の間或方面からも注意を受けまして、昨晩も篤と讀直して見たのですが、第一條の「民主的傾向の促進」と云ふ言葉を讀直しまして、甚だ氣になるのでございますが、まあ是で分るではないかと仰せられれば分るのですが、結局まあ「傾向の促進」で、それが目的と云ふことになりますと、さう云ふ一種の傾向を拵へさへすれば宜いと云ふやうな、なんだか頼りないやうな氣が致します、どう云ふものか昨今此の議會に出ました外の法案を見ましても、民主的民主的と云ふ言葉を盛に使つてあるので、まあ失禮ながら率直に申しますと、民主的と云ふことを濫用されて居やしないか、又色々の法案にも民主的と云ふ言葉が無くても宜いのぢやないかと思ひますし、茲でもどうも…而も「民主的傾向の促進」だけで、弊と言つて少し失禮な言ひ分かも知れませぬけれども、氣になつて居るのでございますが、是も伺つて御答を得たからと云うて、どうしようとは思ひませぬけれども、昨晩もつくづくと之を讀直して、何とか鉛筆をねぶつて見たいやうな氣が致したのであります、尚其の御答を伺つて置けば大變幸福に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=19
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020・山添利作
○政府委員(山添利作君) 「民主的傾向の促進」と言ふと、如何にも御指摘になりましたやうな熟さない所があると存じますが、憲法が提出になりました前の勅書にも、民主主義的傾向と云ふ文字が見えて居ります、是の目的とします所は、勿論民主主義の確立と云ふことでございますけれども、日本の今の段階と云ふやうなことを考へ、又自作農創設と云ふことに依つて、何を意圖して居るかと云ふやうな心持を表す爲に、此の文字を使つたのであります、是がぴつたりとして居るとは思ひませぬが、さればと言つて外に好い文字がなかつたものでありますから、斯う云ふ文字を使つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=20
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021・牧野英一
○牧野英一君 まあお互ひに私共としても尚研究を續けまして、民主的と云ふ言葉をもつと穩かにぴつたりと來るやうに用ひるにはどうしたら宜いか、私共研究を重ねますが、當局の御心持は固より私共理解出來ますので、唯形式だけのことでございますが、今後斯う云ふ趣旨の各種の法律が出來るに違ひありませぬから、言葉遣ひと申しては末梢的のやうでございますけれども、御考を願へれば有難いことに存じます、第四の質問でございますが、此の華族世襲財産としての土地のことを心配致して居るのですが、華族制度が憲法の實施と共に取止めになりまするに付て、世襲財産のことが矢張り民法上我々に取つては一つの問題になりますが、同時にそれはまあどうなりますか、當局としての御見込、さうして世襲財産が取止めになると云ふことが何時頃どう云ふ風にするのでございませうか、其の方法及び時期如何に依つては、他の法規の運用にも影響を及すのではないかと思ひますので、此の點の御見込をちよつと伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=21
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022・山添利作
○政府委員(山添利作君) 華族世襲財産に關する問題に付きましては、私は別に宮内省の御意見を伺つたこともないのでございますが、此の法律を施行致しますに付きましても、又此の法律よりも早く實際上問題が起りますのは、財産税の納付の物納の場合であります、出來るだけ早い機會に、世襲財産の制度が廢止せられませぬと、華族の方は非常な迷惑をされる譯でありまして、あの解除の手續をされるのにも、非常な手數と金が掛るやうに伺つて居るのであります、是は宮内省方面で早急に善處をされるのであらうと云ふことを推測致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=22
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023・牧野英一
○牧野英一君 以上四點有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=23
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024・井上勝英
○子爵井上勝英君 私先日戴きました資料で以て色々伺ひたいと思つて居たのでございますけれども、時間ももうございませぬし、是は法案自體と關係ないので省略致します、唯、今年六箇月の間に、五萬九千十九戸入つた、之に付て千七百六十一戸の脱落が既にあると云ふことは、是は數字の上で是だけ出て居るのでございまして、此の數字が全部に亙つて居る譯ではなしに、又更に殖えると云ふことが考へられまするし、更に我々が開拓地を歩いて見ますると、もう主食の缺配、或は又それに表れない、副食物だとか、鹽だとか、調味料だとか、色々の物の地元關係村との折合が付かずに、之の調達に非常な苦勞をして居る、其の結果もう殆ど裸になつてしまつて、此の冬にでも援農資金のやうなものでも來なければ、どうしても飛び出す以外にないと云ふ、謂はば腰の浮いてしまつた潛在的の脱落者群と云ふものが可なりあると云ふことを考へますと、此の際當局としても、餘程此の實體を掴まれて、色々手を急速に打たれなければいけないと云ふやうな風に痛感すると云ふことだけを申上げて、此の方面での質問は止めたいと思ひますが、それに續きまして、實は今も牧野先生も仰しやつた、民主的傾向の促進と云ふ部面の具體的方策に付てもつと實は伺ひたいのであります、それは私も先日大臣に土地問題の解決の後に色々起る問題に付ての「ギヤップ」があるのではないかと云ふことを申上げたのでありますけれども、其の時にもちよつと具體的には御説明なかつたので、其の點を伺ひたいと思ひましたが、是も時間がないから止めて置きたいと思ひます、唯特に其の中で申上げて置きたいと思ふことは、御料林の問題であります、御料林が今度國有林に移管されると云ふことに付きまして、地元農村なんかで、昨日も菅澤委員が仰しやつた、農村と山の問題で以て非常に問題がある、薪炭なんかの不足して居る所では、直ぐ近くに御料林があるとすれば、從來の御料林の施業案と云ふものが、當然薪炭林の方面への切換へが行はれなければいけないのではないか、是なんかに付ての、謂はば農業の立地と申しますか、具體的な計畫をはつきり致して進まなければいけないので、之に對する準備と云ふやうなものが非常に大事ぢやないか、それからもう一つ、是は當然のことなんでありますけれども、御料林は從來の性質から言つても、純粹な林業經營が出來た、是はもう爭はれない事實であると思ふのでありますが、國有林の方はどうしても政治力が及して來るので、從つて林業經營が沈んで來るので、此の林業と云ふものは、結局國富の増殖と云ふことに非常に重大な影響を持つ、其の間財閥は解體されるし、それから財産税は取られると云ふことになれば、本當に國家百年の計を保つやうな重大な林業經營と云ふものを積極的にやるのは國以外にないのだ、さうすると餘程林業經營なんかに付て將來の政治力が及して林業經營を沈ませると云ふ點に付ては、十分な御考を戴きたいと云ふことを附加へて申上げて置きます、其の外のこともずつと伺ひたいと思つて居つたのでありますが、それは止めまして、唯一つ神社と寺院の所有地の問題に付て伺ひたいと思ひます、是は衆議院でも恐らく問題になつたらうと思ふのでありますが、此の間地方新聞に斯う云ふ問題が出て、非常になんと言ひますか、當局の言明を要求して居ると云ふやうなことがあり、又方々で私共聞かれるので、此の點を確めて置きたいと思ひます、それは或地方の課長さんが、「神社や寺院の所有地で、それが小作地として貸付けられて居る場合には、所在地の如何に拘らず、原則として政府が買上げることになる、自作者とは神社、寺院を代表する神職又は住職であり、氏子總代や檀徒總代が作つて居たのでは自作地とはならない、又自作地である場合は、其の自作經營が適正である限り買收はされないが、適正であるかないかの判定の基準は別に法規で定められる、併しそれを認定するものは市町村農地委員會である、新農地法案の精神は、法人に農地所有の必要がない、從つて成るべく所有させないと云ふ方針である」と云ふことを言明されたと、斯う云ふのでありますけれども、之に付て本日の新聞では、農地改革の施行令案と云ふものが出來て、近く衆議院の方々に發表になつて了解を求められると云ふことでありまするので、出來れば今日それを一應伺つて見たいと思ふのであります、此の法案が實際行はれると云ふことになりますと、總て命令事項と云ふものが大分多いので、實は私共法案を見ても能く分らない、勿論勉強の不足もあるのでありませうけれども、其の點に付て色々伺つて見たいのであります、それはそれとして、今申上げた神社、或は寺院の土地、自作地と言ふけれども、實際に於ては、神職だの住職だのと云ふ者だつて實際に自作して居る譯ではないので、是は神官なんと云ふのは、場合に依つては迭る場合もあるでございませうし、それからお寺の坊さんにして見てもぐるぐる廻つて居る、謂はば實際に於ては其の人達が小作して居るとも言へるので、又之を飜つて考へて見れば、農村人の氣持としては、結局自分の祖先を祀つて貰つて居る所に寄進する神饌田だとか、供養田だとか云ふ形で奉納したのだと、それを今の氣持から言へば、耕して居る氏子の總代であるとか、或は檀徒の總代が取るやうなことになるのではないか、一體さう云ふことが農村人の氣持にどう當嵌るかと云ふ問題は、私非常に問題であると思ふのであります、結局私共豫想して見る形としては、さう云ふことは出來ないので、村有田だとか、或は部落有田だとか云ふやうな形になるのではないかと云ふ風にも考へられるのでありますけれども、さうすると法律で決めて規則で縛つたと云ふやうな形になつても、實質に於ては、其處が政府の意圖されて居る所と別の方向に行くのではないかと云ふ風に考へられるので、宗教と云ふものが非常に大事であり、今も色々議論になつて居りますやうな、精神、或は思想の上から言つて重要なものであると云ふことになれば、寧ろ此の際施行令に於てはつきり御認になつて戴くことが出來ないかどうか、斯う云ふ點をちよつと大臣に伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=24
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025・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 神饌田の問題は、是は範圍に於て例外を認めなければならぬと思ひます、併し神饌田の名に於て、實際上必要でない程度に事實なつて居るものもあるのであります、さうしてさう云ふものは具體的な何として、必要な限度に於ての神饌田と云ふものは、是は例外として對象に入れないと云ふことに私は致す考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=25
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026・井上勝英
○子爵井上勝英君 それは施行令の方に入るのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=26
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027・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 書いたら宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=27
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028・井上勝英
○子爵井上勝英君 それから一應衆議院の代表の方々に發表される、新聞に出て居ります施行令に付てちよつと御説明戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=28
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029・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の命令事項に付きましては、衆議院の代表の方、それから此の委員會の代表の方に來て戴きまして、御意見を御伺ひを致すことにして居るのであります、此の内容と申しましても、重要な點は極く僅かでございます、其の重要な點と申しますのは、此の耕作の適正、不適正を之をどう云ふ所に基準を求めるかと云ふ問題、是は優秀な者は宜いし、結局非常に惡い者は惡いと斯う云ふことになるのでありまするが、個人の場合に付て見ますると、此の場合に於きましても二つの「ケース」がある譯でありまして、自家勞力を主としてやつて居る普通の經營、是は出來るだけ尊重をする、其の場合著しく能率が惡いと云ふ場合には三町歩と云ふものを制限、三町歩を減しますものを國が買收する場合がある、斯う云ふことに致して居り、又斯う云ふ勞力を主としてやつて居ります農場等に付きましては、是は同等以上の成績を擧げて居るのでなければ適正經營と認めない、從つて三町歩以上は切られる、そこに多少程度の差がございます、又法人の場合に付きましては、是は法律の方に於きましても、個人の經營の如く保護と申してはをかしいのでありまするが、尊重はされて居ない譯でございまするが、此の場合、問題になりますのは、結局まあ法人がやつて居ります場合に、能率が低いと云ふことは當然と致しまして、もう一つ法人の行つて居る業務自身に必須の關係を持つて居ない場合は適正と認めない、從つて政府が買收することがある、此の意味は何を考へて居るかと申しますると、戰爭中色々な軍需會社等に於きまして、工場敷地にする等の豫定を以て農地を買收した、それが戰爭後自給農園と云ふ形に於きまして、必ずしも好ましくない農地の利用がされて居る、是は地元の戰爭の爲に土地を買收に應じた農民から致しますれば、當然元の耕作者に返還を希望すると云ふ次第でございまして、是は原則的に元に還させると云ふ方針を考へて居るのでありまするが、さう云ふ場合を考へて居るのであります、それから第二に重要な點は、農地を買受けます人の範圍如何と云ふ點であります、之に付きましては、現在其の土地の上に小作をして居る人に賣渡すと云ふ大原則であります、唯自作農の農業經營が不適正であるとして、政府が買收した土地があると假定致しますれば、其の土地の上には小作者が居ない譯であります、從つてさう云ふ土地に付きましては、今迄其の土地の作業に常時雇はれて居りました、農業勞働者、又家族勞力は多いけれども、耕作面積が非常に少いと云ふことで惱んで居る農民、又戰災者、引揚者等で此の際歸農をしたいと云ふ希望を以て居り、又其の能力もあると云うやうな人達、是は市町村農地委員會が適當と認める人と云ふ中の主たるものと考へて居るのでありまして、さう云ふ人に讓渡すのだと云ふことを規定して居る譯であります、それからもう一つ是は衆議院等の要望もあり、又色々打合せました結果と致しまして、此の委員會に於きましては、松村さんから御發言がございまして、元の地主に縁故あるものとして賣拂ふ場合を考へると云ふことであります、之に付きましては政府が買ひました土地の上にある小作農家、土地を買はないで居る、さうして或時期に於て農業から離脱をして行く、即ち耕作を止めると云ふやうな場合に於きまして、元の地主の方から耕作をしたい、其の土地に付て自作をしたいと云ふことであれば、是が相當と認められます場合に於ては、其の人に優先的に賣渡して行く、是はずつと後になりまして、自作農になりました人が已むを得ざる事情に依つて土地を手放す、それを政府が買收して、其の買收した土地の處分に付きましては同樣な考を持つて居る譯であります、主要の點と申しますればさう云ふ點であります、農地調整法の方でございますと、選擧に關する規定が主なる内容を爲して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=29
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030・井上勝英
○子爵井上勝英君 さうすると、松村委員が仰つしやつた所謂農地證劵に對して、元の自分の持つて居つた土地が今度賣られる場合には、先取權を認めると云ふ風に解釋して宜しうごさいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=30
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031・山添利作
○政府委員(山添利作君) 農地證劵とは全く關係がないので、其の土地に付て元の地主が自作をしたいと云ふ場合に、其の自作を相當と認める場合には、其の人に賣渡して自作をさせよう、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=31
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032・井上勝英
○子爵井上勝英君 もう一つ伺ひます、それは今の御説明で大體分りましたが、施行令に付てでありますけれども、例へば現在四町歩の自作をして居る、是はまあ所謂賃金を以て勞働者を使つてやつて居ると云ふ場合に、それは附近の農家よりも生産が擧がらないと云ふ場合には、一町歩を其の雇つて居る勞働者にやると云ふことになると、其の殘つた三町歩を自作するか、又新に勞働者を雇つてやると云ふことになり、又そこで其の三町歩の方の經營もずつと生産が落ちて來ると云ふやうなことになるのではないかと云ふ風に考へるのでありますが、其の點は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=32
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033・山添利作
○政府委員(山添利作君) それは色々な場合があると考へられるのでありますが、三町歩以上を不適正な場合に買收すると云ふのは、先づ三町歩程度迄であるとすれば、是は相當指導致せば、立派な自作も可能であると云ふ考に基いて居るのであります、一々の場合を色々な場合があらうと思ひますけれども、一定の規則を立つてやつて行くと云ふことでありますから、其處は大體論として適當だと云ふ基準を設けてやつて行く外に方法がございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=33
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034・井上勝英
○子爵井上勝英君 大分長く質問して恐縮でございますが、農林大臣始め關係者の方々が非常に熱心で此の法案を作られて、此の法案が意圖して居る改革には、私は誠に贊成なのであります、實施すればするだけの意義を認められるのでありますけれども、どうも今迄の色々伺つて居る説明では、此の次に來る所謂農村の姿と云ふものに付てどうしても懷疑的にならざるを得ない、例へば電化なんかと云ふことを言つて見ても、現在の日本の状況を見れば、「トランス」がある譯でもなし、電線がある譯でもなし、開拓地なんかでも一體いつになつたら明るい電氣が點くのだ、全然見當がつかない状態である、それから機械化とか、色々な問題に付てどうも條件が備つて居ないと云ふ風に感ぜられます、それから昨日も松村委員が仰つしやつた例の國營實驗農場と云ふやうなものでありますが、あれも小さい不徹底な指導農場と云ふやうなものを作らないで、寧ろ此の際政府が自分の責任で以て大規模な國營實驗農場を作つて、經營者もそこに飛込んで行つて、徹底的にやつて見る、憲法なんかはつきり決つて居るのですから、何も遠慮することはちよつともないので、さう云ふやうな問題に進んで行くと云ふ熱意を示されると云ふ位のことがあつて然るべきぢやないかと云ふ風に私は考へるのですが、結局餘程具體的に現在日本の農村の持つて居る色々の未解決の問題に付て基礎的にはつきり見直して行くと云ふことから出發する以外に、どうも方法がないのぢやないかと云ふことを私感ずるものですから、それで申上げて質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=34
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035・松村眞一郎
○松村眞一郎君 先程ちよつと私の昨日申上げましたことに付て誤解されたのぢやないかと私思ひますので、非常に遺憾と思ひますから、私は農地所有が竊盜であると云ふことを申したのぢやないのですから、それだけ能くどうぞ御了解願ひたいと思ひます、竊盜のやうなことになつては相成らないと云ふことを申して居るので、農地を有して居る者は自己反省をしなければならないと云ふ意味のことを、良心的に申して居るのでありますから、どうぞさう云ふやうに御考へ願ひたいと思ひます、土地其のものには本質上決してさう云ふ竊盜的要素は含んで居らないと云ふことは開墾の場合にも申しました、開墾をして土地を所有するに至る迄には血と汗とで取得して居るのですから、何處に竊盜と云ふ思想があるかと云ふことを私は申して居るのでありますから、どうぞ其の點を御了解願ひたいと思ひます、次に農村の指導のことがございましたが、私其の點に付て一言申したいのは、農村の指導で一番大事なことは、農を擔當して居る人が如何に農が大切であるか、自分の使命が如何に重大であるかと云ふことの自信が先づ第一と云ふことを私は確信致して居る、私は櫻内農林大臣の時に、奈良、大阪、京都に農業の、何と云ひますか、一緒に一つやらうぢやないかと云ふことの發言をされたことがありました、私其の一人として出掛けて行つた、共の時に奈良や大阪や京都の諸君と膝を組合せて話したのでありますが、其の時に私は斯う云ふことを言うたのです、農村の方々が非常に憂へて居られるのは、どうも離村をして困る、良い青年が村から離れてしまつて非常に困るがと云ふやうな話をされ、それから其の母親達も、娘達がどうも百姓達の所に片附くことを嫌ふと云ふ話がありました、私は村の青年……何處でございましたか、奈良縣の添上郡の…奈良市の直ぐ傍ですが、添上郡の何とか村と云つたが、名前は忘れましたが、直ぐ傍の茶の出來る村です、そこに行きまして、私青年と一緒に話したのですが、どうもさう云ふことで、自分自身が自信のない考で農業に從事して居つて宜いのかと云ふことを私は申したのです、離村する者があれば離村して貰つたら宜いぢやないか、其の人と一つ別れ話をしようぢやないか、君達は是から農村を離れて都會に行つて、色々な勞役なんかに從事するのであるが、出來るだけ一つ都會で働いて呉れ給へ、さうして農村から出た所の勞務者は、如何に堅實なる思想を以て、都會に於ける所の勞務に從事するかと云ふことを標本的に示し給へと云ふことを言つて快く別れようぢやないか、さうして自分達が殘るが、自分達は農業を非常に大切と思つて居るから、從來は諸君と共に働いて居つたけれども、諸君が今度は出られるから、我々殘る者は二人前三人前働くから安心して呉れ給へ、農村は自分達が働いて或は食糧も増産する、自分達は石に噛り付いても農村の大事なことを信ずるから徹底的にやる積りである、斯う云ふことで御互に一つ相談しようぢやないかと云ふことを話を致しました處が、青年達は共鳴して呉れました、私は、母親達はどうしてさう云ふやうな娘の心掛に付て能く話をしないのか、都會に憧憬れて都會の所へ嫁入すると云ふやうなことを考へて居るのは、それは片附いた時を考へて御覽なさい、暫くすると、どうも土臭くていけない、百姓女はいけないと嫌はれるばかりであります、それよりも農村に居る者は、農村の中に居る所の有望な青年と共に家庭を作ると云ふ考になるのが當り前ぢやないか、母親としても大變な心得違ひぢやないか、それで奈良縣などに居ると、大阪あたりから「ハイキング」と云つて、綺麗な着物を着たやうな女が遊びに來る、さう云ふのを見ると、泥塗れになつて居つて田に働いて居ると云ふことを非常に娘達が嫌ふと云ふやうなことを言ふから、それはをかしい話ぢやないか、土に塗れ、さうして陽に焦けて居ると云ふことは、非常に農業に勤勉であると云ふ一つの證據ぢやないか、若しさう云ふやうな女の人達が歩いて居つた時に、奈良縣に「ハイキング」した處が、實に自分達は心に恥づる、うかうかして居つてはいけない、あの勤勉なる農家の子女を見たならば、我々はうかうかしてはいけない、唯日常の勞苦を慰するが爲に、唯一日行樂をしたのであつて、我々は決してふざけて居るのぢやない、さう云ふ行樂それ自身が意義があると云ふことを本人も考へて輕卒な態度を取らないやうにさせたら宜いぢやないか、都市の女に對して見習ふのではなくして、都市の女が反省して歸るやうにしたら宜いぢやないかと云ふやうなことを申したのですが、是は能く共鳴して呉れたのです、母親達も青年達も…娘さん達とは話はしなかつたのですが、母親達や青年達とは話をし、食事を一緒にしたり、私膝を組合せて話をしたのであります、私は其の精神で一向差支ないと思ひます、元來農に從事して居る者が、自己の職業の非常に大切なる使命があると云ふ自尊心なくして、農村は決して振興しないと私は思ひます、ですから農村の諸君と話をして、君は農を大切と思ふか、大切と思はぬのかと云ふことを先づ決心しようぢやないか、大切と思はないならば農を出て行き給へ、併し先程私が申した如く、農から出た者は農を傷付けないやうにして戴きたい、都會に於て十分に農村の堅實なる精神を發揮して貰ふと云ふことに御互にしようぢやないかと云ふことをやつて貰へば、農が振興すると云ふことが當然であると云ふことを申上げましたので、其の申しましたことは當時共鳴を得ましたと私自身も信じて居ります、出來るだけさう云ふ態度で行かなければならぬと云ふことを信じて居りますから、さう云ふやうな意味に於て、出來るだけ農林省も力強く指導して戴きたいと思ひます、自分で農の問題に付て自信のない者は農業を托するに足りない、能く是は御考になられたい、それは少し横道でありますが、私は此の兩法案に對しまして第一に考へる所は、此の兩法案の根柢に横たはつて居る所の偏狹性と云ふことを非常に遺憾に思ひます、狹量であると云ふことを遺憾に思ひます、それは不在地主の問題です、是は第三條の第一號を見ると、「農地の所有者がその住所のある市町村の區域外において所有する小作地」と云ふものは總て政府が買收してしまふ、是は何を意味して居るか、是は所謂不在地主と云ふ觀念を小さい町村だけに限つて、町村以外から此の農業を眺めると云ふやうなことはいけないと云ふやうな、さう云ふ狹量な考で日本の農業は建設出來ないと云ふことを私は確信する、非常に是は狹量です、村に居なければ農業を解せられないと云ふやうな、さう云ふことを言つて居ると云ふと、私は斯くの如き偏狹な態度に出て居る此の特別措置法に依つて出來る地主と云ふものは、共に市町村の農業を語るに足るでせうか、併しながら日本全體に亙る所の農政を談ずる者をくぢるものだと私は考へます、自分の農村以外から入れちやいかぬと云ふ偏狹な立法と云ふものは非常に不愉快に感ずる、例へば私の知つて居る友人を見ても不在地主の中には大學の教授も居ります、直轄學校の校長も居ります、殊に先程居られた永井君などは矢張り不在地主の一人です、併しさう云ふやうな人々が地主で以て小作人が來た場合に、どう云ふことになりますか、私は其の地主との間に圓滿なる小作關係が成立したならば、結局其の全國的の農政、全世界的の農政も私は宜からうと思ふ、さう云ふ見地から日本の農業を眺めると申しますか、非常に私は遺憾に思ふのは、唯市町村と云ふものに囚はれて、それ以外の者は土地を持つてはいけないと云ふやうな、偏狹極まる特別措置法案であるが故に、私は贊成致しませぬ、此の根本的な精神は、斯う云ふ視野の狹い考で指導すると云ふことが益益日本の農業をして偏狹ならしめる所以であつて、今日は又民主主義政治になつて居る、憲法第十五條を見ても、「公務員は全體の奉仕者」であると云ふことになつて居るのでありまするから、「全體の奉仕者」であるが、併し是は民主主義憲法であるが故に、主權の存する國民に依つて我々は仕事をすると云ふことになれば、主權の存する所の國民全體が十分視野の廣いものでなければならぬ、それから託されて今度は公務員が仕事をする、斯くの加き偏狹なる農民を以て澤山ずつと全國を瀰漫せしめたならば、或は公務員はさう云ふ人を統御することは便利でありませう、自分よりも或意味に於きまして知識が足りないと云ふことになりますから、併しそれは民主主義の精神に違反するものと思ふ、さう云ふ意味でありますから私は此の法律は、日本の國として是は恥辱的立法であると私は心から信じますが、斯くの如き立法が永く續くと云ふことになれば、日本として非常に悲しむべきことであると考へますから、どうしても將來はこんなやうな偏狹な考は脱却すべきものであると思ひます、そこは私は非常に遺憾に考へる、日本の現情はそれ程能く徹底して居りませぬ、斯くの如き程度の立法を必要とすることも、日本の現情を考へて私は痛歎せざるを得ない、併しながら斯くの如き程度のことで立法をしなければ現在の事情に適せないと云ふことを考へたならば、我々は非常に是は悲しむべきことであると云ふ意味に於て、將來への發展の段階として暫定的立法としてのみ私は此の兩法案を是認すると云ふ外はないと思ひます、併し今日はもう全體に斯う云ふやうな空氣になつて居つて、是でやらうと云ふことになつて居るのでありますから、私は唯其のことを一言申して置いて、私は之を以て良い立法と思ひませぬ、只今申しました如く暫定的立法である、將來への發展の唯一階梯であると云ふ意味に於て此の法案を私は眺めて居りますが、大臣はさう云ふことに對してどう云ふ御考になつて居るかと云ふことをあとで御意見もありましたならば伺つて見たいと思ひますが、其の他にまだ私は感服しないのがある、例へば農地の所有者であつて住所地にある市町村に居つて、而も其の面積を超えた耕作地は持つてはいけないと云ふことになつて居る、處が、從來の農村の指導者と云ふ者は、自分で實は農作が致したい、併しながら色々なことを頼まれて、已むを得ず指導者になつて居る者が非常に多い、併しそれは私から言ふと、其の指導者の意志薄弱であると思ひます、さう云ふ指導をやる資格があるかどうかと云ふことも自分で反省しなければならぬと思ひます、凡そ指導者と云ふ以上は、自分の持つて居る土地が十分耕作出來ないと云ふ状態になりつつあると云ふ状態を見たならば、もう指導に我々は沒頭する譯には行かない、自分の農作上眞面目に働かなければならぬ、耕作しなければならぬ、即ち指導者たるよりも自分は篤農者の方にならう、さう云ふ心掛にならなければならぬと思ひますが、今日の時勢已むを得ず、さう云ふ人をして心ならずも指導者の其の位置にあらざるを得ない状態になつて居る、是は何かと云ふと、役所の方の陣容が整つて居ない、已むを得ずさう云ふ人を頼まざるを得ないのでありますから、さう云ふ人が知らず識らずに今度は誘惑され、自己の土地を耕すことを段々閑却することになつて、其の結果小作地として取上げられてしまふ、斯う云ふことになる、是は甚だ氣の毒なことであつて、本人の反省の足りないこともありませう、結局それはどう云ふことになるかと云ふと、自分の農業技術を摺り減らして、段々摺り減らして居る、遺憾なことである、氣の毒なことです、更に大事なことはさう云ふことをやつて居る結果、自己の良心其のものが摺り減ります、私は是は良心が枯れると考へる、良心の摺り枯らしであります、其の次になるとすれからしになります、私は言葉の遊戲をやつて居るのではありませぬ、良心が段々枯れて來る、良心々々と振り廻はして來ると枯れます、僞善でありますから、それがすれからしになる原因であつて、さう云ふやうな人が指導して居つた場合に闇取引と云ふやうな問題が起つた時にどう云ふ態度を採るか、能く御了解が付くことと思ひます、能く是は考へなければならぬ、其の意味に於て偏狹性を脱却しなければならぬと云ふことを第一に申します、第二は此の兩法案を繞る所の小作爭議に付て、どう云ふ態度を是から採るべきか、私は小作爭議に付て協調的平和性、協調の平和性の徹底を整へられたいと云ふことを私は要望する、元來政府が土地を買取る場合、さうして自作農に賣渡す場合に、私は昨日申しました適正價格でなくてはならない、適正でなくてはならぬ、それと同時に小作關係に於ても適正小作料でないと私はいかぬと思ひます、即ち適正の精神を徹底して戴きたい、小作料に付て聊も搾取的であるとか、騙取的であるとかと云ふ現象又は結果が生ぜざるやうにして戴きたい、即ち公正なる態度を採つて進んで行くと云ふことに私はしなければならぬと思ひます、それであるからして或は小作官であるとか、其の他の役人、さう云ふやうな人は聊かも偏狹な考を持つてはいけないと思ひます、殊に偏した考を持つてはいけない、極く公正な立場に立つて仕事をしなければならぬのでありまして、聊かも憎惡の考を持つとか、因襲的な考を持つとか云ふやうなことがあつてはならない、公明正大な態度を持たなければならぬ、凡そ物を判斷すると云ふことは非常にむつかしいことである、人を裁くと云ふことはいけないことになつて居る、是は人を裁くことは出來ない、宗教の方面ではさう云ふ思想が盛にあります、小作官とか何とか言つて小作調停をする場合の態度、心掛、是は非常に大事なことと思ひます、それでありますから、斯う云ふ兩法案が通過すれば、是は政府は勿論考へて居られるでせう、此の小作官等の關係の全國の會議が開かれることは當然であります、愈愈開かれた場合に、此の兩法案の趣旨を非常に包容のある豐かな氣分を以て眺め、偏狹な態度をすつかり脱却するやうに、徹底するやうにどうぞ御努め願ひたい、此の問題は、小作爭議などありますと裁判所に參る譯でせう、小作爭議が法律化しますれば、さう云ふ場合に矢張り裁判所の判斷も大變必要であります、それは矢張り裁判所が司法權を行使する上に於て法案の趣旨を十分徹底して十分理解したならば、此の法案が、私が今申しました如く偏狹性が假令ありとしても、偏狹性と云ふことは元來間違つたことでありますから、出來るだけ解釋に於て補ひ得るものは、私の考へて居ります目標に向つて一歩づつでも前進するが如き法律解釋が行はれることを私は考へまするが故に、此の法案の趣旨のある所を十分徹底して戴きたい、元來勞働爭議とか、小作爭議と言ひますが、爭議と云ふことは鬪爭であつてはいけない、鬪爭と爭議は全然違ひまして、鬪爭と云ふことは戰ふことでありますから、戰ひと云ふやうなことは手段又は目的とすべきものでありませぬ、元來爭議と云ふやうなことは爭と言ひますけれども、それはもう裁判で分るので、裁判と云ふものは原告と被告と云ふ者が兩方互ひに歩み寄つて、日本の裁判と云ふものは勝敗で、原告と被告が爭ふやうなことがありますが、是は法律が發達した、例へば「イギリス」のやうな所ですと、原告も被告も兩方相談付くで裁判所へ持つて行く、能く分らないから裁判所で決めて貰ふ、原告は原告の考を申します、被告は被告の考を申します、分らないから決めて貰ふ、是が爭議、其の間に何等爭と云ふものがない、鬪爭はありませぬ、爭議と云ふものは元來さう云ふ性質なんです、だから互ひに理を盡して磨き合つて、理を磨き合つて、さうして適正なる結論に到達すると云ふことが爭議なんです、爭議の目的は爭つてはいけない、私はいつも斯う云ふ激しい言葉遣ひをするが、私は爭つて居るやうに見えますが、言葉は荒いが、頭は冷靜です、頭は非常に冷靜です、能く御了承願ひたい、それで適正なる結論に到達する爲でありますからして、鬪爭でありませぬ、鬪爭とか戰爭とか云ふものは破壞的なものであります、相爭つて相手方を潰さなければ承知しないと云ふことが、是が爭なんであります、爭と云ふことぢやありませぬ、鬪爭、鬪とか、戰鬪とか、鬪爭とかと云ふことは、相手方を破壞すると云ふことがあるのでありますが、之を一番御考にならなければならぬのですが、それには競爭と云ふことを考へれば宜いのであります、競爭と云ふのは、お互に競つて居るのでありますから、「フェアー・プレー」が生じます、同じ目標に依つて競つて行く、何も相手方を叩くと云ふことはありませぬ、そこで誤つて居る所の競技者が場所を奪つたり、相手方を叩いたりする、それは競爭と鬪爭とを間違へて居る、「フェアー・プレー」と云ふものはさう云ふものぢやない、さう云ふ譯でありますから、お互に研磨することが目的でありますから、競爭は建設を目的とし、鬪爭は破壞を目的とするものであると云ふことを能く考へて、小作爭議は地主を倒す爲にやるのぢやない、さう云ふことを能く考へて、研磨する、丁度玄米をお互に磨り合せれば白米になる、是は矢張り研磨して居るのであります、唯餘り研磨すると擦り減ります、そこで先程申しましたことが大事な所であります、餘りやつて居ると、白米自身が擦り減つてしまふのです、さう云ふやうに指導者を使つてはいけない、指導者を研磨の程度に止めることが大事で、消耗する程度に使つてはいけないと云ふことを能く御考を願ひたい、斯くの如き意味に於て、此の兩法案は、さう云ふ私は非常に不備な所があると思ひますが、大臣はどう云ふ考で之を施行されますか、それを一應承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=35
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036・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 色々と御忠告を承つた譯でありますが、私も此の法律と云ふものを非常に狹い見地から取上げて居るのではありませぬ、私は寧ろ此の法律を施行しますことに依りまして、將來日本が、是は世界の農業と必ず接觸して行くことになるのでありまして、殊に最早日本は孤立した國ではなくて、農民も經濟的に言つて、既に世界的な地盤に立つて農業を行つて居るのであり、又日本の有らゆる面に於て、私は現在もう既にさうだらうと思つて居るのであります、此の不在地主の點に付きましても、それは寧ろ働く人に土地を與へて、さうして其の人達がしつかりした基礎に立つて農業經營を行つて行く、それが同時に世界の大きな波に對しても十分耐え得るものであるやうに基礎をそこへ與へて行くと云ふ、寧ろ私は廣い世界的な規模に於て、大きな考で此の農地法案と云ふものを考へて行きたいと思ふのであります、勿論此の法律を施行致すに付きましては、御話のやうな偏狹な、偏つた考で施行する考は私は毛頭ありませぬ、矢張り公平な立場に立ちまして、お互に寛容な氣持を以て、理解と云ふことを主にして行く、理解し合つて行く、日本人は理解と云ふことがなかなか出來なかつたのは、今迄言論の自由がなかつたが故に、どうも宜い加減の所で妥協するのでありますけれども、本當の理解と云ふことにはなかなか達し難い私は民族だつたと思ふのであります、是は日本の民族の缺點だらうと思ふのでありまして、十分意見を出し合ふことは宜いのでありまするが、今後はお互に理解し合ふと云ふ、此の氣持になつて行くやうに是非指導して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=36
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037・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 赤木さん、何か御發言がありましたら此の際御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=37
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038・赤木正雄
○赤木正雄君 簡單に…牧場と農業と混合して經營して居る場合がありますが、是は相當大きな面積がなければ出來ませぬし、又多くの場合は個人が永年研究の結果、非常に宜い成績で經營して居る、斯う云ふ場合に對しては、固より是は此の法規外にあるやうに私は思ひますが、矢張り是は法規を適用するものでせうか、之を假に僅かな面積に分割しては、到底今迄のやうな經營は出來る筈はなし、又牧場も牧畜も非常に日本としては將來必要なのでありますが、斯う云ふ場合に如何に御取計らひになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=38
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039・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の法規の中にありまして、是はさう云ふことを尊重致して居るのであります、買ふとか分割すると云ふことは全然ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=39
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040・赤木正雄
○赤木正雄君 此の規定ではさう云ふ場合には別に分割されない、もう一つ伺ひたいのでありますが、今も指導農場の御話がありましたが、是は今後は今迄のやうに、單に農事試驗場のやうな御考では本當に農村の爲にはならない、出來得れば其の地方の篤農家を出して、斯う云ふ人を特に指導農場に入れて、あの人が居るならば本當に喜んで聽かうと、前の試驗場のやうに何だか淋しい所に化學の試驗をやつて居つても效果がない、本當にあの人の指導ならば宜いと云ふ、さう云ふ特に立派な人を地方で選んで成るべく指導農場に御採用願ひたい、大臣の御考は如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=40
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041・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) さう云ふ方は是非指導農場に來て貰ひまして、一諸に技術の指導と言ひますか、さう云ふことに當つて貰ひたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=41
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042・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 是で御通告なさいました方々は全部終了致しました、御諮りを致しますが、此の程度で質疑終了と致して御異議ございませぬでせうか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=42
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043・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御異議ないと認めます、然らば討論に入らうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=43
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044・岩村一木
○男爵岩村一木君 私は此の二法案に對して贊意を表する者であります、政府は連日の各委員の二法案に對する傾聽すべき意見、熱烈なる希望、適切なる注意等に付きましては、十分聽取されたことと思ひます、本法實施の曉は我が國農地制度の劃期的の大變革でありますが故に、是が實施に當られましては、本法の運用に殊更御注意を願つて、混亂を來さないやうに、萬全の處置を講ぜられるやうに希望致します、特に本法の成果の如何は、懸つて各各の農地委員會の動向、活動に依ると思ひますので、之を構成する人物、即ち農地委員の人選に付きましては、從來の行掛りとか或は情實を排されまして、最も公正なる人物が選出されるやうに、當局は指導されることを特に希望致します、尚併せて本法が實施されたればこそ、我が國の農地制度も良い方面に向つて、又我が國食糧増産の實を擧げ得たと云ふ實證をも示されむことを希望致しまして、本二法案に贊成を致す者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=44
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045・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 松村さんに申上げますが、前に通告の方がございますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=45
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046・松村眞一郎
○松村眞一郎君 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=46
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047・三島通陽
○子爵三島通陽君 私も兩法案に贊成致す者でございます、もう時間がございませぬから詳しいことは申上げませぬ、此の法律を制定されることに付きましての、政府の御苦心と云ふものに對して、深い敬意を表します、農民の土地に對する魅力と云ふものに付きましては、今更詳しく喋々する必要もないと思ひます、之に依りまして多くの農民が土地を得られて、さうして安定と増産をせられむことを、私は心から喜ぶ者であります、さうして所有權と勤勞部面との一致を見て、能率もさぞや増進されるであらうと云ふことを期待する者でありまして、地主と小作人との色々の問題も大體に於て一掃されるであらうと思ひます、此の問題に付きましては隨分長い間色々な問題がありまして、我々國民も之に對しては隨分心配をさせられた點が澤山あります、勿論之には地主の惡かつた場合も相當ありませうけれども、併し又地主の中にも隨分宜い地主があると云ふことは、皆が度々此の委員會に於て、御話があつた點でありまして、此の法律に對しても隨分一方から世の中で誤解があつて、農民を地主の桎梏から解放する爲に、比の法律を出すのだと云ふ御言葉がございましたが、政府はさう云ふことはないと度々言はれまして、私共も安心致して居りますが、さう云ふ誤解は此の法律を施行せられることに依つて一掃せられるであらうと思ひます、私の小さな實例を以て申上げて恐縮でありますが、私は曾て「ボーイ・スカウト」と云ふものをやつて居りました時に、或縣の農民の一角に「ボーイ・スカウト」と云ふやうなものは英米の資本主義のやり方で、あれはいかぬと云ふので勞農少年團「ピオニール」と云ふものをやりまして、是はどう云ふ訓練をやるかと云ふと、地主の家に石をぶつつけると云ふ訓練をやる、さう云ふやうな心持は是は無理もない點もあつたらうと思ひますが、さう云ふ心持のみで地主を見ると云ふことはどうかと思ふのであります、度々御話がありましたやうに良い地主から離れて行く小作人、それ等の今度は小地主をどう指導して行くかと云ふやうなことは非常に大きな殘された問題だと思ひます、只今井上子爵から仰せられた色々の又此の法律を施行した上にも懷疑的になると言はれましたが、それは非常に御尤であると思ひます、其の點に付きましては今岩村男爵から申されましたが、尚政府に於かれましても十分に御配慮を戴きたいと云ふことを強く申上げる次第であります、農民道場、農民の指導農場、學校教育、特に農村の學校教育の改革其の他の一般的な農村の大きな意味の教育と云ふことに付ては、特に御配慮を戴きたいと云ふことを申上げて私は此の兩法案に贊成を致す者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=47
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048・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は兩新案の成立を適當なりと考へますが、斯う云ふことを要望致したい、元來新憲法は基本的人權と云ふものを非常に廣く深く尊重して居ります、基本的人權と云ふものは「現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の權利として信託されたものである。」と云ふことを新憲法の九十七條に書いてあります、さう云ふ譯でありますが、元來基本的權利と云ふものは結局物と心との權利になります、心と云ふものは良心の自由を根幹とする思想、宗教、學門、言論、皆是心の自由、良心の自由から生れて來る一つの現れと考へます、物の方は財産權の不可侵と云ふことが根柢になつて居る、財産權の根本と云ふのは土地であります、更に農地が其の根本であると云ふことを考へますれば、農地の生産力を増大すると云ふことは非常に必要であると云ふことを基本的人權の方面からも考へなければならぬ、農業生産力の發展は、又結晶する所は矢張り食糧の生産と云ふことになります、結局良心と食糧と是が基本的人權の根幹であると云ふことを考へました場合、良心と云ふものと食糧、人と生産を考へて行かなければならぬと云ふことは當然の事でありますから、常に兩立して居る問題で、食糧ある所に道義あり、平和ありと考へます、さう云ふやうな譯でありまして、非常に是は大切な法案であると云ふことを私は痛感するのであります、從つて農地を有する者は信託せられたる者であると云ふことを考へなければいけないと思ひます、小作關係に於ては適正小作料と云ふ趣旨を以て公正なる關係に立つと云ふことを始終努めなければならぬと思ひます、斯う云ふやうな關係でありますから、私は此の平和日本、道義日本建設の爲に最も緊要なものが此の兩案に依つて目的が達せられるものと考へますから、兩法案の成立後に於きましては、運用に付て適正精神の徹底と、さうして公正な態度を以て之に當るべきことは當然であつて、此の趣旨に於て適切なる行政を行はれむことを希望致しまして、本案に贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=48
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049・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 討論は終結したものと認めまして御異議ごさいませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=49
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050・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御異議ないと認めます、然らば採決に入ります、御異議ないと認めますので兩案を一括して議題と致します、兩案に對して贊成の方の擧手を願ひます
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=50
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051・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 全會一致と認めます、是で兩法案は政府原案通り可決確定致しました、連日誠に御苦勞でございました、是で散會致します(拍手)
午後零時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=51
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052・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 稻田昌植君
副委員長 子爵 北條雋八君
委員
公爵 島津忠承君
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 久松定武君
子爵 安藤信昭君
子爵 三島通陽君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
牧野英一君
松村眞一郎君
寺尾博君
男爵 内海勝二君
男爵 岩村一木君
男爵 毛利元良君
男爵 多久龍三郎君
赤木正雄君
我妻榮君
松尾國松君
菅澤重雄君
原田讓二君
長島銀藏君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
政府委員
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00419461010&spkNum=52
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