1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○食糧緊急措置令(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月九日(月曜日)午前十時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=1
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002・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは是より會議を開きます、今日より質疑に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=2
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003・秋田重季
○子爵秋田重季君 先達てから新聞に載つて大分世間を騷がして居る配給の粉の中毒事件がありますが、食糧問題として世間の人は皆非常に重大な關心を持つて、どう云ふやうな原因かと云ふことを大分注目して居るのですが、どう云ふやうなことですか、御分りになつて居りますか、其の點ちよつと……それが爲に大分近所の町會や何かで、配給を停止されて居る所もあるやうに聞いて居りますが、其の眞相を一つ御話願へれば結構と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=3
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004・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申します、今御話になりましたやうに非常に世間を騷がして居りますし、從つて又此の問題に付ては世間でも非常に關心を持つて居りますので、新聞紙等に於きましても此の問題を相當大きく取扱ひ、又刻々其の情勢を報告致して居りまして、新聞に報道せられて居りまする點は、具體的に又詳細に報道せられて居りますので、大體は御承知かと思ふのでありますが、結論を先に申しますと、實はまだはつきり致して居りませぬ、私共あの問題が起りまして、早速取調べましたことは三點あるのでありますが、先づ第一に毒物が混入されて居るかどうかと云ふことに付きまして、警視廳の衞生試驗所で此の問題を早速取上げて貰ひました、其の次には前にも小麥粉を持つて參ります際に、香水事件と稱しまして粉に臭ひが附いて居つたことがあるのであります、是は貨車が小麥粉を運びます前に、さう云ふやうな他の物が小麥粉の前に運ばれて居りました物の影響を受けて居りまして、是は其の場合には早速配給を止めまして、是は消費者には全然行渡りませぬでした、今度もさう云ふやうなことが小麥を運びます前になかつたかどうかと云ふことに付て、鐵道局にも其の點を能く調べて貰つたのであります、問題の小麥は外麥を栃木の小山の日本製粉で製粉致しまして、それを東京へ持つて參つたのであります、大體問題の小麥粉は貨車番號は「ワ」の五萬一千五號と云ふ貨車でございまして、之に六百八十二袋の小麥粉を積んで居つたのでありますが、此の「ワ」の五萬一千五號と云ふ貨車に其の前何を積んで居つたか、又それが毒物であつたかどうかと云ふことを調べて貰つたのでありますが、此の方は何等今の所さう云ふやうなものが問題にならないやうであります、それから其の次の問題は、製粉工場に於て操作上、さう云ふ毒物が混入する餘地があつたかどうかと云ふことでございまして、早速係官を小山の製粉工揚に派遣致したのでありますが、此の方も別段今の所何等さう云ふやうな痕跡はないやうであります、結局現在の所、最初に結論として申上げましたやうに、まだはつきり致して居らないのでありますが、特に警視廳、東京都が中心になりまして、尚今探究を致して居るやうな實情であります、一日も早く結論が出ますやうに焦慮致して居る次第でございます、それから消費者の方に對しましては早速殘つて居りました小麥粉を引上げまして、其の代りに、是も新聞等に出て居りまするやうに乾麺でありますとか、玉蜀黍でありますとか、斯う云ふものを配給し、一部米の配給も致しまして、其の穴埋めを致して居るやうな情勢でございます、何分にもまだはつきり致して居りませぬが、急いで居るやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=4
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005・秋田重季
○子爵秋田重季君 新聞に出て居りましても、どうも新聞ははつきりしないで詳細なることは少しも分りませぬが、其の物よりも中毒や病氣になつた人を取調べられて、それで一體どう云ふものが中毒を起したかと云ふやうなことを御研究になつたのだらうと思ひますが、其の點は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=5
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006・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 其の點も新聞に出て居りまする通りでありまして、植物性の、ちよつと名前は忘れましたが、植物性の中毒症状でないかと云ふことでありました、其の點は私まだ詳細承知致して居りませぬでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=6
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007・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 農林次官に御尋ね致します、今年の春になりまして、政府で絶對量が不足になつたと云ふ聲明を致しました結果、全國民が不安を感じまして、生存の危機さへ感ずるやうになつた結果、食糧獲得の滔々たる國民の力の現れは統制の埓を乘越えて、或は闇取引となり、或は不良供出となつたのだらうと思ひます、其の原因は何ぞやとなると重大な問題だと思ひます、私は其の最大の原因は既に解決して居るのぢやないかと思ふのでありますが、それで一番大きな問題として私の考へて居りますのは、農村に於ける青年が出征した後で、殘りの女や老人が作つたものを食慾旺盛の青年が歸つて來て喰つたと云ふこと、是が一番大きな原因だと思ひます、其の次は、昨年の天候が惡かつたこと、其の次には、爆撃の危險があつたと云ふことであります、處が本年は以上三つの大原因は全部解決して居るのであります、又全國民が擧つて都市に於て迄農業に從事したのでありまして、果して本年は近來稀なる豐作になつたのであります、それで本案に付きましても現在は衆議院で本案が議せられた時とは餘程時が移つて居りますので、果して現状に於て今後も尚本案の繼續運行を必要とするかどうか、又現在の日本として、又進駐軍の占領目的と云ふ立場から見ても、餘程本案に付ては研究を要することだと思ふのであります、大體四項目に大別して農林省の御説明を伺ひたいと思ひます、質問の第一點は、新米に對する供出の末端割當の時期を御尋ね致したいのでございます、昨年の供出不良の原因に相當大なる影響を與へましたのは、本年の二月になつてから末端割當が決定したことでございます、他方終戰後農民の心構へに非常に遺憾の點があつたのでございましたが、現状では農民の心構へは全く昔日の感があるのでございます、幸ひ最近の新聞紙上で割當が決定したことを讀んだのでございますが、要は部落の末端割當の時期如何と云ふことでございまして、十月に入ると讀んだのでございます、然るに早稻ものは既に收穫が半ばでございます、今年は部落内の農家の間で飯米に分割供せられるので、勿論此の早稻米の收穫には間に合ふ必要はないと思ふのでございますが、少くとも只今關東地方で收穫の始りつつある農林一號は相當收穫量も多いものでございますから、今の間に合して戴かないと云ふと、農家も困るし、農家の間の供出責任者等も皆困る結果になるのでございます、それに價格の點で、早い中の方程闇が高いと云ふ現状の見透しを農民の間で付けて居りますので、供出「ルート」から脱落する危險があると思ふのでございます、さうすると再び責任が當局にあると云ふことになるのでございます、そこで先づ第一に、部落の末端割當の時期の御答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=7
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008・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、御話にございましたやうに、昨年の出荷の不振の原因は、當時の終戰後の社會情勢或は政治情勢其の他色色の問題が絡み合ひましてああ云ふやうな情勢になつたのでありますが、併し其の中の又大きな原因は、是も御話にございましたやうに、供出割當が非常に遲れたと云ふことが大きな力をなして居ると思ふのであります、從つて本年の問題に付きまして、私共と致しましては端境期は勿論從來に引續きまして聯合軍の放出食糧に依つて辛うじて繋いで行けると思ふのでありますが併しそれかと申しまして、必ずしも潤澤ではない譯でありますので、どうしても新米の集荷と云ふことになりますと、其の滑出しをうまくやらなければならぬと云ふことを豫ね豫ね考へて居つたのであります、其の一つの問題としましては、矢張り御話になりましたやうに、供出割當を出來るだけ早くやると云ふことであつたのであります、勿論早ければ早い程宜い譯であるのでありますが、特に早場米に依つて端境期を繋がなければならぬと云ふ問題もありまするし、引續いての供出も滑出しを良くしなければならぬと云ふ二つの問題から色々檢討を致して居りまして、多少それでも遲れた感はあるのでありますが、幸ひ供出方法も衆議院に設置されました食糧對策委員會で同意を得、又關係方面の同意も得まして、御承知のやうに先般發表致したのでありますが、其の發表を待つ譯に參りませぬので、早場米に付きましては八月の中旬に府縣の食糧課長を集めまして、大體新らしい供出方法としては、斯う云ふ方法のことを考へて居る、今迄の供出割當の範圍に於きましては、地方長官を集めまして、其の時に新らしい供出方法を説明し、そしてどれだけ出して貰ふと云ふやうなことを致して居りましたので、非常にそれだけでも時間が喰ひ、又其の場で新らしい方法を頭に入れなければならぬと云ふことで、供出割當の會議もなかなかうまく參らなかつたのであります、其の例は本年の麥の供出割當に付て實驗したのでありますが、さう云ふやうなことを致しまして、本年は出來るだけ早く府縣にも準備をして貰ふ、斯う云ふ意味で、今申しますやうに、八月の中旬に事務的に食糧課長をも集めたのでありますが、其の際に併せて一般の供出當割の時期迄待つて居りますと、早場米が間に合ひませぬので、早場地帶に對しまして早場米の供出割當を實は致したのであります、一部の、勿論全體の中の一部でありますけれども、さう云ふことに致しまして、各府縣はそれぞれ縣に持つて歸つて準備を致す、そこで、九月、十月の早場米の割當と云ふものは既に決つて居るのであります、一部まだ末端に至つて居らない所もあらうかと思ひますが、其の方は大體進んで居るものと承知して居ります、尚餘談でありますが、早場米をうまく引張ります爲には、實は今年の例の赤字搬出と云ふことを強行致しました爲に、例年でございますと、生産地方で米がないと云ふやうなことは殆ど未だ曾てないのでありますが、赤字搬出を強行致しました結果、東北地方、又北陸地方に於きましても、其の端境期に於て自分の縣に食糧がない、從つて通常の状態で放置致しますと、早場米を先づ以て自分の縣で食つてしまふと云ふやうなことが懸念されましたので、其の早場米に關聯致しまして、例へば新潟には罐詰を送るとか、或は飼料として必要な麩を送るとか、……麩を送りましたのは農村で、御承知のやうに肥料がない、又飼料もないと云ふことで精白を非常に希望して居るのでありますが、其の精白を農村でゆつくりやらせて居りましたのでは、消費地方では首を長くして其の早場米を待つて居る譯でございますから、さう云ふことの塞ぎと申しますか、對策として實は麩の儘送る、さう云ふことで今準備致して居るのであります、尚是も餘談でありますが、現在各府縣に供出割當を致して居りますが、それが濟み次第、又衆議院の食糧對策委員會でも一應議會の目鼻が付き次第其の對策委員會の委員の方々に早場地方へ出向いて出荷の督勵をして戴く、斯う云ふやうな手配を實は致して居るのであります、それから一般の割當の末端への到著時期でありますが、昨年は御話のありましたやうに十二月になつて中央の割當が決まりました爲に、末端に參ります際には非常に遲れたのであります、そこで本年は早場地帶から順次割當を致すこととしまして、實は先週の木曜日から東北、北陸斯う云ふ方面の地方長官等と具體的に割當の打合會を致して居ります、本日で大體關東以北、北陸の方は濟むのでありまして、それが濟み次第滋賀縣の大津へ參りまして、關西、九州、四國、中國、斯う云ふ地方の地方長官と具體的に話合ふ、斯う云ふことになつて居るのであります、從つて大體普通に參りますれば地方長官が其の打合會の結果を持つて歸りまして、府縣で食糧委員會を開きまして、其の食糧委員の議を經て市町村に下すのであります、市町村では是も御承知のやうに食糧調整委員會の議を經まして、之を部落を通じて各個人に下すと云ふことになりますので、長ければ矢張り三週間から四週間は掛からうと思ふのであります、本年は架空の數字と云ふ問題、或は又農家の保有量と云ふやうな點に付て色々從來缺陷のあつた點を是正致しまして、出來るだけ分り易く致して居りますので、從來の最長一箇月掛かつたと云ふ點は相當短縮されるのではないかと思ひますが、併し或程度又地方でも揉めることでありませうから、結局早い所では本月の末位には末端に迄行くことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=8
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009・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 質問の第二點、割當決定に付ての御伺を致したいと思ひます、割當技術に付ては當局に於ても色々御苦心爲さつて居ることは固より拜察して居るのでございますが、目下の農村に於ける古米、馬鈴薯、麥等の賣急ぎ、最近に於ける買出し部隊に對する賣出し部隊の壓倒的多數且漸増傾向は確かに是迄の割當が適當でなかつたことを明かに示すものであると思ひます、絶對量は成る程不足して居るのでもございませうが、農家の手持食糧の凸凹であつたと云ふことは割當技術の不手際の結果であると思ひます、私は此の前の議會でも遺憾ながら收穫を隱すと云ふことが我が國農民の第二の天性であることを御注意致したのでございます、果して今秋の麥、馬鈴薯の割當に對する段別檢見法とか、附近の縣及び數縣の檢見法などは何の役にも立たなかつたのみならず、却て良心的農民の間に不公平の感を抱かせ、其の増産改良意欲の離反さへも起させるやうに思はれたのでございます、本省の新米に對する全國收穫豫想高も當局の御發表は非常に少いやうに思ひます、個々の農家は意外の豐作を驚いて心の中で認めて居つて、平均三割か、甚しきは五割見當も又しても正規の「ルート」から脱落するのではないかと思はれるのであります、又進んで段當收量の皆無等と云ふ不良耕作者への罰と云ふものがこちらにはないのであります、精農家は誠に殘念に思つて居るのでありますが、そこで當局に於ては今秋は如何なる方法に依つて割當高を決定するのか、供出の標準として全收穫量を把握する御自信があるのかと云ふことを第一に御伺ひしたいと思ひます、其の點御答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=9
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010・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、御述になりましたやうに統制を致して居りますると、どうしても控へ目に收穫量を發表する、農民自身さう云ふ氣持であり、又中間にありまする指導層の面に於きましても、結局例へば府縣廳で申しましても收穫割當が輕ければ輕いだけ、其の縣内の操作が樂な爲にさう云ふやうな傾向にあることは全く御話の通りであります、同時に私共と致しましては此の點を非常に遺憾に存じて居るのでありまして、私實は食糧管理局長官をやつて居りました際にも此の點が一番頭痛の種でありますと同時に、極論致しますると、此の考へ方が直らない限りは日本の現在の食糧問題は解決しないのぢやないか、救はれないのぢやないかと云ふことを、強く痛感致したやうな次第でございます、是は一片の法令でありますとか、或は一片の聲明とか色々の單純なことでは、此の弊は絶對に防がれないと思ふのであります、色々の經濟情勢の變化、或は社會情勢の變化、政治力の強化と云ふやうな各方面の力が寄集りませぬければ、なかなか面倒な問題であらうと思ふのであります、併しさうかと言つて全體の機運が熟する迄待つことは、到底事情が許しませぬので、政府と致しましては出來るだけのことを、其の間に於てやることは勿論必要なことと思ふのであります、そこで實は本年の供出問題に付きましては、是も御承知のやうに農家の保有量と云ふものは、味噌醤油の分も合せてではありますけれども、一人當り四合と云ふことに致しました、尤も年齡別構成に應じましてそれぞれの數量は違ふのでありますが、大人も子供も合せて、農家一人當り四合と斯う云ふことに致したのであります、從來の供出割當の基礎數字になつて居りました數字は、一人當り三合一勺五才と云ふことでございました、此の數字自體にも色々問題があり、又無理もあつたかと思ひますが、併し一人四合を保持すると云ふことになり、又供出した明る日に直ちに還元配給を受けなければならぬやうな農家に對しては、本年は供出割當を致さないと云ふやうな、農家保有の點に付ては相當改善を致した積りであります、從つて此の點を能く農家に徹底をさせ、數字を隱して迄することの必要のない點を能く一面に於ては強調致したいと考へて居るのであります、同時に特に是は先程も申上げましたことでありますが、出廻り當初の滑出しと云ふことが一番大事でありまして、此の滑出しがうまく行きませぬければ、なかなか正常の「ルート」に引戻すことは困難でありますから、出廻り當初に於きましては特に取締の點に付ては、是は内務省の方も非常に力を入れて努力して呉れて居るのでありますが、此の點は先づがつちりとやつて、市町村食糧調整委員會も出來たのでありますが、此の市町村食糧調整委員會に於ても委員を出して、例へば防犯組合と云ふものを作る、斯う云ふことも實は考へて居るのでありますが、もう一つ横流れの防止策として考へますことは、現在は御承知のやうに供出割當は部落單位でありまして、部落の連帶責任と云ふことになつて居りましたので、部落の相互監視と言ひますか、部落内の一人が横流しをやる、不正をやると云ふと、結局其の負擔が部落の連帶責任の爲に、部落としてはそれだけ何か大きくなる譯であります、部落相互監視と云ふことが相當行はれたのでありますが、昨年は個人割當が行はれました爲に、人は人、自分は自分と云ふやうな所から、其の點も缺くる所もあつたと思ふのでありますが、本年は部落と個人と兩方共に一長一短があるのでありますが、其の兩方を組合せて部落と個人と共同責任と云ふやうなことに致しまして、さう云ふ點も一つ十分に是正出來るやうな方向にして行かうと云ふことで、今進めて居るのでありますが、そこで供出上の問題になつて來ますると、さう云ふ風に色々從來非常に不明確な所が、本年ははつきり致して參りましたので、結論としては生産量だけが問題に實はなつて居るのであります、生産量の問題に付ては是も只今御述べになりましたやうに、地方と我々との觀方は相當違つて居ります、尤も地方では其の言譯と致しまして、八月一日の現在の状況を報告したので、其の後天候も理想的に近いやうな状況であり、又病害蟲其の他も一部は起りましたけれども、殆ど問題にもならない、又例年の風水害の問題もない、そこで八月一日現在で報告して居りました數字を訂正して居る向も少くありませぬし、又斯う云ふ時世で輿論が承知しない、例へば群馬、千葉で最近毎日新聞で相當叩かれた點がありますが、斯う云ふ世間が承知しないと云ふことで、府縣も相當其の點に付ては、關心を持つてやつて來て呉れて居りますが、併し尚且不十分の點が絶無とは申せないのであります、さうなつて來ますと結局生産量の問題は、純技術的の問題になつて來る譯でありまして、私共と致しましては平年生産基準量と云ふものを見まして、之を出しますのは單純に、純技術的に、是も御承知のやうに農事試驗場等でやつて居りまする、豐凶考照試驗と云ふものを基礎に致しまして、更に氣象臺等の協力を得まして、本年の氣象状況、例年との比較の氣象状況を基礎に致しまして、基準生産量を一つ出して、之を府縣に當てて居る譯であります、そこでさう云ふものを基礎に致しまして、實際の生産量と違ふ點は、純技術的に試驗場の人でありますとか、或は農業會の技術員でありますとか、勿論民主的の觀點から、市町村食糧調整委員會の人達も一囘は出させますが、さう云ふ風に致しまして純技術的に此の問題を取扱つて、問題を公けにしてやつて行かうぢやないかと云ふことで、其の方のことも實は考へて居るのであります、それと同時に國の食糧檢査所、是は最近は實は調査が主になつて居りますが、御互ひに自分の分擔して居る區域だけではなくつて、隣近所で交互に人の土地を見合はうと云ふことで、麥からやつて居るのでありまするが、此の點は今御話になりましたやうに、不十分であらうと思ひます、從つて此の點は相當今後強化して行かなければならぬと思ひまするが、同時に政府が直屬した調査機關と云ふやうなものを持たなければ、其の職員が府縣廳の職員であり、又其の人間が其の市町村の人間だと云ふことになりますと、どうしても人情から、又其の他色々の經濟的の制約から致しまして、上に行く迄の間に數字がぼやけてしまふと云ふやうなこともあらうかと思ひます、此の點は實は司令部邊りでも非常に關心を持つて居るのでありますけれども、斯う云ふ一つ新らしいやり方を考へなければならぬぢやないかと云ふ風に、實は進めて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=10
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011・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 今の點に關聯して御伺ひ致したいと思ひます、農家保有食糧平均四合と云ふのは、米だけの保有食糧、詰り米だけなんでございますか、それとも主食四合と云ふのでございますか、それに付て全國の收穫量の何割を占めることに農家の保有米がなるか、食糧の完全内地自給と云ふのは不可能であることは本會議で農林大臣から伺ひしましたけれども、都市への配給の不足量はどうして補填して行くのか、進駐軍の關係もあるかと存じますが、其のことと、それから供出餘剩米に對する自由販賣は先日の本會議で農林大臣は全然認めないと云ふ御言明がございましたが、理論上は成る程さう云ふものはない譯でございますが、實際上は餘程餘剩米が出來るのでございます、さう云ふことに關聯しまして、強權發動などと云ふことの農家の良心的なものに明朗性を缺くやうなことにはなりはしないかと思ふのでありますが、占領目的にも關係のあることとは存じますが、ちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=11
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012・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、四合の點は是は結論を先に申上げますが、米麥、甘藷其の他のものを通じて實は考へて居るやうな次第でありまして、全國的に申しますと、大體是は多少正確を缺いて居るかも分りませぬが、七十七・五「パーセント」が米、其の他が二十二・五「パーセント」が麥でありますとか芋類、さう云ふもので賄はれるやうな見當であります、尤も是は地域的に依つて違つて參ることは御承知の通りであります、東北とか、北陸其の他米の單作地帶、外の雜穀とか芋類の少い地帶はそれだけ米が多くなりまして、他の二毛作地帶に於きましては、米以外の食糧が多くなつて來るのでありますが、是は只今申しました比率は大體從來の消費實績と云ふものから勘案致しますると、さう云ふやうな數字になるのであります、それからさう云ふことで行きますと、大體米としてどの程度になるかと云ふ御尋でありますが、是も飯米農家と云ふものの數字をはつきり掴まなければなりませぬので、さう云ふことは先程申上げましたやうに、本年は一年間の保有食糧を持ち得ない、持てない農家には供出割當を致しませぬので、其の數量を落して參らなければならないのであります、從來のやうに飯米農家に對しましても、割當した時には相當はつきりした數字が出ますが、本年はさう云ふ事情で多少狂ひがあらうかと思ひます、大體私共は三千萬石程度のものではないかと考へて居るのであります、後は勿論それは全農家の一年分の食糧ではないのでありまして、今申しました轉落農家に對しましては、別に配給を致さなければならないのであります、ですから言ひ換へて申しますると、假りに六千萬石だとすれば、供出が三千萬石、殘りが三千萬石、斯う云ふことになるのぢやないかと考へて居ります、それから消費者側に對する問題でありますが、是はもう消費者の數量を現在の二合一勺で行ふ、或は二合三勺で行く、二号五勺で行く場合に依つて數字は違つて來ると思ひますが、併し假に二合五勺に致して見ました場合には結局輸入食糧を相當入れて貰はなければならぬ、大雜把に申して本年の三倍程度の輸入食糧は入れて貰はなければならないぢやないかと、斯う云ふ風に考へて居る次第でありますが、此の點は現在司令部と折衝をして居りますし、司令部は又司令部で本國に對して折衝を續けて居りまして、本國では是は日本にどれだけ出すかと云ふことは、實は「アメリカ」の陸軍省の豫算の額に依つて決るのであります、現在は御承知のやうに貿易關係はございませぬので、總て「アメリカ」の陸軍省の豫算で掲示をし、陸軍省で買つて日本に持つて來る、斯う云ふ恰好になつて居りますので陸軍省の豫算が決定致しませぬとはつきりした數字は決まらない、現在豫算委員會が向ふでも開かれて居るさうであります、從つてどれだけの増配が出來るかと云ふことに付きましても、實は此の委員會の決定如何に懸つて居るやうな状態で、勿論私共としましては出來るだけ多くの増配を期待致して居りまするし、司令部自體と致しましても其の點は全く我々と同樣の觀點から努力をして呉れて居りまするが、今申上げましたやうな情勢でありますので、まだはつきり致して居らないのであります、それから此の餘剩食糧の自由販賣の問題ですが、此の點に付きましては是はもう能く御承知の通りでありますが、農家の一部にはさう云ふやうな希望のあることは確かでありまするし、又政黨の一部に於きましてもさう云ふことを主張して居られることも事實であります、其の點は結局生産意欲の向上と云ふ觀點から出來るだけ出來たものは何でも彼でも全部政府に取上げると云ふことでは、先程もちよつと御觸れになりましたが、精農に對する對策としては決して十分ではない、と同時に一般の現在の價額の觀點、闇價格との睨合とか、色々さう云ふやうな點から言つても不十分で、是は自由販賣に是非したら宜いぢやないかと云ふことを一部では今申上げますやうに意見としては出て居るのでありますが、併し先程來申上げますやうな外から入れて貰はなければならぬやうな状態に於て、それともう一つは食糧が完全に解決した状態ではないのでありまして、矢張り相當此の消費者としては不足を感ずる時代に於きまして、斯う云ふやうな自由販賣を致すことはどれだけの弊害がある、又對外的にもどれだけの惡影響があるかと云ふことを考へますと、私共と致しましては到底此の問題は承諾出來ない、又實行出來なる問題であらうと存じます、此の點に付ては私共の態度と申しますか、政府の態度ははつきり自由販賣は認めないと云ふことで進んで居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=12
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013・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 次に供出代金に關する四つの點で農林當局の御意見を承りたい、最初は農業勞働賃銀に付ての問題でございますが、米の生産費は農家としては自家勞働の部分は決して考へて居ないのでありまして、手不足の場合に已むを得ず傭はなければならない傭入の勞賃が問題なのであります、此の日當の闇が餘りに高いし、其の上に白米等を要求されるやうで、自然安くては供出を嫌ふと云ふ結果になるのであります、そこで伺ひたいのは當局に於ては農家の傭入勞賃に對し、妥當なる最高限度價格を確立され、又普及され一方闇勞賃の徹底的取締を爲される上にどんな方法を取られようとするのであるか、其の第二點は、供出代金の農業會預金の支拂資金に關してでございます、本年春産の麥、馬鈴薯の代金は一應農業會の自由預金になつて居る、それを農民が支拂を要求に行くと、農業會では、常に支拂賃金が缺乏して居ると云つてなかなか現金を渡さないのが現状であります、此のことが農家に對しては、供出代金は當にならぬと云ふ觀念を與へるのでございます、そこで御伺ひ致したいのは、農業會の供出代金の支拂資金はどんな「ルート」で農業會へ渡つて居るのか、又將來涸渇することのないやうに、又地方の農業會の會計を當局に於て監督せられ、供出代金の支拂資金の殘高が不足して居るかどうか、又他に流用されて居るかどうかと云ふやうなことの御取締をなされ、もつと徹低されるやうに御取締りを願へるのであるか、第三點は、供出代金に對する所得税徹廢に付て、是は大藏省と御連絡があるかと思ひますが、農林省としての御意見はどうなんでありますか、闇に流せば、價格が高いばかりでなく税金が掛らない、農家の所得税には本年相當闇をして居るとの建前で税務署の査定を受けて居るのでございます、そこで大農は供出を嫌ふのもあります、私は供出物代金に對する課税が、單に農家の勤勞所得であるから撤廢せよと申すのではございませぬ、假令豐作になつて、量の點では恐れることがなくても、農産物の價格が下落しても、收入が公けにされて所得税のかかることが自然供出忌避の念を農民の心の底に抱かして、主食が正規「ルート」より脱走を望み、自家用以上の生産をしないと云ふやうなことになるので、農家の所得税は、闇を根絶する意味で供出代金以外の他の所得に對する査定と云ふものだけで決定されては如何かと思ふのであります、第四點は、是は只今出て居ります競馬法との關係もございますが、競馬收入を食糧生産、其の他の面に用ひ、農家に非常に滯留して居ります新圓を農村に於ける病院等の社會政策の方に使ふとか、或は之を良導して、農家の生活費の引下に充てるとか、詰り農家の生活必需品の方にそれを向けて供出促進の根源になさる御考はないかと云ふのでございます、以上の點の御答を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=13
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014・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、第一の點の農業勞賃の問題ですが、御話になりますやうに、農業勞賃は、此の所どんどん實は上つて居て居りますし、又農業勞賃の外に、色々食糧とか、さう云ふ物の抱合ひに依る要求等もあることは事實であります、此の問題は一般の勞賃の影響を如實に受けて來て居るのでありまして、從來は例へば都市の勞賃と農業勞賃との間には相當の差がございました、例へば地方の都市勞賃が百の場合に、農業勞賃は七十であるとか或は七十五であるとか云ふやうに、此の相違はあつたのでありますが、最近の情勢は漸次是が鞘寄せ傾向を示して居るのであります、從つて農業勞賃のみの觀點から此の問題を實は取上げることは困難でありまして、一般の勞賃と云ふものをどう云ふ風に持つて行くかと云ふことに大きな關聯を持ち、又是と分離して問題の解決は困難ではないかと思ふのであります、今迄の勞賃の昂騰を致しました原因は、是は申上げる迄もなく、食糧事情が非常に惡うございました爲に、勞賃が高くなつたのでありますが、此の事態が惡循環を致しまして、結局食糧の供出にも影響をし、供出が少なければそれだけ闇が多くなつて來ると云ふ風に常に惡循環を致しまして、一般勞賃より昂騰し、全般的には鞘寄せの傾向を示して居る、農業勞賃は大きな傾向を示して居るのであります、幸ひ食糧事情も安定をして參ると云ふことになり、又一般の勞賃と云ふものも、復員其の他の關係で漸次需要に對する供給の方が多くなつて來ると云ふことで、勞賃と云ふものは落著くのではないかと思ひます、斯う云ふことは、都市よりも農村の方が、現在の状況に於きましては、何と云ひますか敏感に行くことと思ふのであります、從つて勞賃の今後の行き方と云ふものは相當低い所に落著くのではないか、斯う云ふやうに實は考へて居るのであります、尚一般の勞賃に對する問題に付きましては、厚生省及び經濟安定本部でも相當御檢討をせられて居るやうでございまするし、特に勞賃の問題に付きましては、司令部は特に物價問題の中心として非常な關心を持つて經濟安定本部に期待を掛けて居るやうであります、さう云ふやうな状況でございます、それから二番目の供出の支拂代金の問題でありますが、此の問題に付きましては、御述べになりましたやうに、一時非常に不圓滑なことがございました、是は日銀券が農業會の方面に行き渡つて居らない、是は全部ではございませぬが、一部には折角日本銀行券が地方の日本銀行の支店に行きました場合に、農業會方面が後廻しで、一般商工業方面の從來の取引銀行の方に流れたとか云ふやうなことも、一部は噂で止りましたが、一部は事實であつたやうであります、從つて私共は其の點は大藏省に強く言ひました、現在大臓省ではさう云ふやうなことはないと言つて居りまするが、併し具體的に尚不圓滑な點はあらうかと思ひます、始終私共は此の點に氣を付けて居るのでありますが、更に一層此の點は改革致しまして、さう云ふことのないやうに、是も先程來申しますやうに、斯う云ふことから供出がうまく行かぬと云ふことになりますと、折角大筋の方面を一生懸命やつて居りましても、一番農家にぴんと來る方面に手落があると、政府に對する不信を抱かせる、又農業會に對する不信を抱かせて、其の爲に供出全體に大きな影響を及すことは御懸念の通りでありまして、十分私共は此の點は留意して參りたい、斯う云ふやうに考へて居ります、それから所得税の撤廢の問題でありますが、此の點は大藏省方面でも撒廢の意思はないと承知致して居ります、實は此の勤勞所得税の問題に關聯しまして、闇價格を基準にして適當な割當をした所もあるやうであります、勿論地方的には其の査定が的確である所もあつたと思ひますが、的確と申します意味は、都市近郊で相當闇をやり、それだけのものを賦課されるに價した所もあつたやうでありますが、併し一律にさう云ふ方針を採つて、是は勿論中央での意嚮ではないと思ひますが、得てして末端に行きますとさう云ふ一律的なことをやります爲に、今御話になりましたやうな農民に對して非常に不安を與へ、又困らしたこともあるやうであります、從つて此の點は私共も大藏省に能く申入れ致しまして、十分其の點を再調査して戴くと云ふことで、東京都の近郊邊りも再調査をして貰ふやうになつて居るのであります、さう云ふことで進んで行くより外今の所では途がないと斯樣に思つて居るのであります、それから最後に新圓の利用の問題でありますが、此の問題も貨幣に對する、又金融機關に對する信用問題が解決致しませぬと根本的にはなかなかむつかしい問題であらうと思ふのでありまして、此の點特に政府としては信用囘復、信用維持の觀點から十分宣傳もし、趣旨も徹底しなければならぬと思ひます、さうしないと根本にさう云ふやうな不安な點がありますれば、なかなかうまく參らぬと思ふのでありますが、それはそれと致しまして、一面農家の斯う云ふものをどう云ふ風に持つて行くかと云ふことでありますが、例へば今囘の農地制度の改革に付きましても、出來るだけ現金で買はせるとか云ふやうなことも一つの行き方でありませうが、更に農村全體としての今後の行き方と致しますれば、色々將來の農村の行き方、在り方に付ては議論のある所でありますが、出來るだけ之を農村の經營の合理化、或は多角化、農産物の加工でありますとか、其の他有畜農業の奬勵でありますとか、農業經營の改善と云ふことに付ては、特に生産面に於て色々爲すべきことが多からうと思ふのであります、實は是も餘談でありますが、中央金庫からの農業會に對する貸出と云ふものもここ數年は殆ど動いて居りませぬ、是は結局戰爭中に於ける資金の需要と云ふものが一方では起らなかつたことであらうかと思ふのであります、が併し是からの今申しますやうな觀點から致しますれば、農村では相當金の要る仕事が多くなり、又さう云ふ方向に持つて行かなければ、一面農業經營の改善と云ふ點とも「マッチ」しないことが少くないのではないかと思ふのであります、從つてさう云ふやうな農業改善經營の多角化、合理化と云ふことの指導と同時に、さう云ふ方面の金の利用と云ふことに付ても併せて考へる必要があらうと斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=14
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015・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 農林大臣に御答へ願ひたいのでありますが、供出見返り品の配給竝に割當に付て一元的の何か機構を創設される御考はないかと云ふことを伺ひたいと思ひます、只今農民の間で能く政府に騙された等と云ふ言葉を都合の好い時に使ひますが、是は見返り品なんかがうまく行つて居ない所の關係で、寧ろ商工省の御關係で、農民は一途に農林省が惡いのだと思つて居るから農林省としては御迷惑だとは思ひますけれども、此の見返り品と供出とが商工省と農林省と兩當局に分れて居ることが何か差支が出來て惡いのではないかと私は思ひますので、完全な一元的機構を兩省の間で御作りになるとか云ふ御考はないか、それを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=15
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016・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へします、御話のやうに供出に對しまする報奬用の物資が確實に農家の手に入りますことに付ては、供出の確保の上からも非常に效果があることでございまして、我々とても報奬用の物資に付きましては、政府として外の物に較べますれば非常に苦心をしてやつては居りますが、どうも結果から見て農家が滿足するやうなことになつて居なかつた點が多々あるのであります、それには配給の「ルート」の點に付ても問題があつたと思ふのであります、我々農林省の立場からだけ考へますれば、是は農家に直接觸れて居ります農業團體の手を通じて一元的にやりますることが一番效果が多いのでございまして、肥料でありますとか、其の他さう云つたものは現在でも一元的にずつと行つて居るのであります、他のものに付ては上の方は矢張り從來は二元的になつて居つたのであります、末端に於てもさう云ふ點があつたと思ふのであります、處が先般の報奬用物資に付きましては最末端に於ては、是は市町村の農業會を通じて一元的にやると云ふことに致しました、是は外の一般の物資、農家の必要物資はそこ迄は行きませぬが、報奬用のものに付きましては最末端に於ては、是は市町村の農業會を通じて一元的にやつて行く、唯從來やつて居つた商人側の方の共同何と言ひますか、さう云ふ所が實際上確實にうまくやつて行くやうな所がありますれば、是は市町村の農業會と一體になつてやつて行く、併し原則は是は市町村の農業會と一體でやるのだと云ふやうに決めまして、確か兩省の次官の通牒の形で出して居るやうな次第であります、それからもう一つ其の點に付て考へなければなりませぬのは、報奬用の物資が實際に村に行きました時に、それがどの位の數量がどれだけ一體何時來たかと云ふことを矢張り農民に知らせることが實際上に必要なんであります、是は丁度御話が出ましたから御話して宜いと思ふのでありますが、今囘やらうと云ふ供出、又今やつて居る麥の供出なんかでも供出の割當に付て、其の割當を受けた者が納得すれば直ぐ供出が出來るのであります、是は確か三重縣の農業會だと思ひますが、私は話を聞いたのでありますが、地方新聞にも出たのでありますが、或町村農業會で報奬用物資の個人の數量を町の要所々々に貼出した譯です、皆に知れるやうに……、さうしますと、成る程あすこの者も此の程度だ、斯うだと云ふので、御互ひの間が分るものですから、非常に能く皆納得して、僅か五日で麥か何かの供出が出來た、さう云ふ事例がありますと、其の次の二、三の村で又それを眞似て、さう云ふことをやる、さうすると今迄遲れて居つたのが出て來ると云ふ、斯う云ふ形でありますので、どうしても農家に知らせて農家に納得さすと云ふことが根本だらうと思ひます、是は農家の貰ひます方面のもの、又出す方面のものに付ても同樣でありまして、其の點で私共としては從來肥料に付ても農家に行くのを兎角發表して居りませぬでしたが、是は一箇月に二囘位、是は村の末端迄やることはなかなか困難でありませうが、其の發表を縣なら縣の農業會で發表したものを村の農業會に知らせる、村の農業會は又それを其の儘村人に知らせる、斯う云ふことに致しますれば、成る程是だけしか來ないのだから、是は確實な數字だと云ふことが能く分りまして、誤解から來る所の不平がなくなつて來るだらう、斯う思つて出來るだけさう云ふやうにやつて居る次第であります、報奬用物資に付ては一應は末端迄一元化されることになりました、尚其の點に於ては上層の方では色々問題が殘つて居る、それに付ては出來るだけうまく調整して行かうと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=16
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017・松本學
○松本學君 只今の御質問にちよつと關聯して伺つて置きたいと思ひます、供出をさせました後を農家が自由にすると云ふことの議論が、今の御話になりましたやうに農民の方の希望もありますし、政黨の一部の方でもさう云ふ聲がありますし、國民の中にもさう云ふやうな議論が大分あるのであります、今御答の中にありましたが、私共も矢張り或程度此の自由を認めると云ふことが生産意欲を昂めることであるし、食糧の集荷の量を多くする、出來るだけ澤山の量を集荷すると云ふことが今日の急務でありますから、其の手段としても最も良い方法ぢやないかと思はれるので、さう云ふことを考へて居つたのでありますが、先達ても新聞に其のことが出て閣議で決定になつたと云ふことで一部では大分喜んで居つたやうでありますが、農林大臣が之を御取消しになつたと云ふこも先達て新聞に出て居りました、どこに其の自由にすることが出來ないと云ふ理由があるのであるか、衆議院でも此の議論が度々出たやうでありますが、新聞等でもそれを拜見しますが、之を自由にすれば一部の金を持つて居る人だけが食糧を專らにして、さうでない者が食に困ると云ふことになることが宜しくないことであるから、食糧不足の時にはどうしても統制しなければならぬと云ふ御意見のやうに拜聽致しましたが、只今の農林次官からの御答の中に何か輸入をすると云ふ必要があるからと云ふ御言葉があつたやうに、ちよつと私は聞き違つたかも知れませぬが、承つたが、何かさう云ふやうな事情があるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=17
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018・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 私から御答へ致しまするが、農家が供出しました後を自由に處分することを許したら宜いぢやないかと云ふ意見を持たれて居る方は色々あると思ひます、さうしてそれは抽象的に考へますと、さう云ふ御意見を抱かれることも或程度に於ては尤もだと言へるのでありますが、唯私共は今はさう云ふ時期としては適當でもなし、迚も實行も出來ないことと思ひますのは、大分豐作で民心が安定して來ましたのと、又來食糧年度からは是は向ふとの交渉で正確には發表出來ませぬが、是非増配をやりたいと思つて居ります、さうすることの希望で可なり落著いて來て居る譯でありますが、併し何と言ひましてもまだ絶對量に於ては或程度の輸入を一つは仰がなければならないので、それから今年の、來食糧年度の供出の如何が實際は日本の將來の食糧の何を決定すると思ふのです、それ位非常に重要な時期だと私は考へます、其の時に供出してしまつた後のものを自由販賣出來るのだと斯う云ふことになりますと、實は今迄の惰性と言ひますか、是は非常に殘念でありますが、生産見込を各縣では非常に少く言つて來るのであります、此の弊害は抜けませぬ、私は地方の長官達には此の間から供出割當をやつて居るのでありますが、今年は口を酸つぱくして、どうか去年のやうに普通の常識から考へて日本の農業の事情を少しでも知つて居る者ならば、如何に肥料が足りなくても天候が惡かつたと言へ米が四千萬石を割る、三千九百萬石幾らと一般に言はれて居りますが、さう云ふ生産高であると云ふことは是は私達長い間農業に關係して居つた者の常識では考へられないのであります、さう云ふことが實際上出て來て、それがどうも動かないと云ふ形で行けば、是はどんな年でもなかなか旨く行かないのでありまして、そこらはどうか大所高所から考へて、從來の此の弊害と云ふものは此の際頭を切換へてはつきりやつて貰ひたいと云ふことを此の間から御協力を願つて居る譯でありますが、どうしても生産高を正確に、科學的に把握すると云ふことから我々は萬全の努力を拂つて前からやつて居る譯でありますが、矢張り人間のやることでありますから、どうしてもそこに或程度の何が出て來る譯であります、さう云ふやうな状態でありますので、假にさう云ふことになりますれば、是は益益さう云つた弊害が今年も出て來る、さうすると折角豐作氣構であつて、今年は供出を滑かに、去年のやうに困難を起さず早期に割當て、而も其の供出を割當てるに付ては農家の側に兎に角農業の再生産に必要なだけの自家保有米ははつきり認めて、經營上何等支障のないやうな方式をやつて置いてすらも供出を圓滑にして行かう、斯う云ふ建前を採つて居る時根柢が崩れて來ると思ふ、さうしますと是は成る程あとになつたらさう云ふものが出て來るから宜いぢゃないかと云ふことでは實は濟まされないのであります、從ひましてさう云ふ觀點からしましても、供出制度を旨くやつて行く上からも是はどうしても餘剩米の自由販賣と云ふものは認められないのであつて、それ等の餘剩米に付ては別途の考へ方をして行く、斯う云ふ體制を今年は實は採つたやうな譯であります、此の點は唯農家の側の、さう言ひました個々の農家の意欲の方からは言へないのでありまして、矢張り全體的の立場から十分有らゆる條件を考へて善處したいと斯う思つて、我々としましては只今の所餘剩米を自由販賣をすると云ふ考はないのであります、殊に今日は還元米の問題を、一旦政府が買つて置いて又農家に還元すると云ふやうな問題を農家の自家保有の確保と云ふ點と、それからこんな點から實は解消致しまして、さう云ふ二重の無駄な手間をやらないやうにも考へて居りますので、是はどつちかと言へば、さう云ふ事柄は、是は農家の方から言つて寧ろ餘裕のある大きい所からの聲が多いのであります、それと同時に又もう一つ考へると、假に過小農にしても、若しも供出割當以外のものは自由に賣れるのだと云ふことになると、是は供出と云ふものを出來るだけ少くして、さう云つた闇で儲けようと云ふやうな氣にもなり兼ねないのでありまして、是は矢張り今の食糧の事情から、それだけの事情から言つても我々としてはどうも採り難い政策でありますので、是が我々としては認め難いと云ふ點があるのでございます、それからもう一つは、是は聯合軍の方の輸出の關係がございまして、それ等の點に付て供出割當とか色々な方針に付ては矢張り向ふと十分打合した上で今實行して居るやうなことになつて居る譯であります、さう云ふやうな關係から言ひましても、なかなか困難な點もございますので、今年は幸ひ作年でありますので、是は農家も十分自家保有米も經營上支障のない限度に於て許して居りますので、其の他の物の値段も相當の値段でありますので、是非是は正式の「ルート」で供出して戴いて、國民全體の食糧の安定を政府としては圖つて行きたい、斯う云ふやうに考へて實はあの問題に付ては善處すると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=18
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019・松本學
○松本學君 次官の先刻の御答辯の時に輸入の必要と云ふやうに承つたのですが、それはどう云ふことでありますか、ちよつと其の點を次官から承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=19
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020・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、實は是は司令部の意嚮としては、勿論司令部の意嚮のみでなく我々としても當然やらなければならぬことでありますが、先づ國内で有らゆる措置を執つて、然る後輸入食糧を仰ぐと云ふことで、其の觀點から致しますと、特に食糧の如きものは統制を一層強化こそすれ、統制を緩和し、或はそれを止めると云ふやうなことに付ては、司令部としては全く同意致し難い點であると云ふことを常々言はれて居るのであります、此のことは是も御承知のやうに少し餘談になるかと思ひますが、國内的には今年の作柄が非常に豐作であると云ふことが、民心に安定感を與へて居りますると同時に、一面「アメリカ」の輿論から見ますると、それ程日本が良いのなら何も日本に出す必要がないのぢやないかと云ふことが、輿論としては又相當強く起つて來て居ります、併し先程來申上げますやうに、消費者に對しましても或程度の増配を期待する、實行すると云ふ觀點から致しますると、どうしても來年は本年以上の數量の輸入を期待しなければならぬと云ふ觀點に立たされて居るのでありまして、從つて之を自由販賣する、統制を緩和する、或は撤廢すると云ふことになりますると、輸入食糧を期待する上に於て一番大きな支障になるのではないか、斯う云ふ風に考へて居りますので、其の點を先程申上げました次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=20
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021・松本學
○松本學君 聯合軍との間に食糧問題に付て、食糧對策に付て色々御協議になつて居り、又十分の了解を御求めになつて居ることは當然のことと思ひますし、さうしなくてはならぬと思ひます、さうして聯合軍の方の協力も受け、援助も受けなければならぬことになりませうし、さう云ふ譯で向ふの意思も尊重せなければならぬ、聯合軍との協議がもう決つて居ると云ふことならば、最早や此處で以て色々論議するとしても無駄なことになる、併し輸入と云ふことは私共の考へ方では最後の手段であつて、それこそ飢饉年に我々の祖先が草の根を食つてでも我慢をした、國民に此の氣構へ、心持と云ふものを與へて、どんな苦勞でもする、出來るだけ輸入を少なくして、他人樣の御厄介にならぬやうにすると云ふやうな精神状態に國民を持つて行くことが、特に食糧の問題や何かに付て大事なことぢやないかと私共考へるのであります、最後の手段である、であるから先刻大臣からも御話になつたやうに、非常に「アンビギユアス」な生産上の統計を基礎にして、來年なり再來年なりの食糧計畫と云ふものを立てられて、さうしてどうしても數字上足りない、來年はもつと多くの輸入をせねばならぬと云ふ建前のやうに思はれるのでありますが、そこが私共の考へ方とちよつと違ふ所であると思ひます、出來るだけ輸入は少なくしなければなりませぬ、さうして考へまぬとすれば、如何にして集荷量を多くするか、兎に角食糧はどんどん出て來さへすれば宜い譯なんで、然る後に配給の方法が善いとか惡いとか、或は所謂「ディストリヴューション」の方がうまく「スムース」に行くか行かぬかと云ふことになるので、先づ先に集荷を如何にして多くするかと云ふことが是が一番大事なやうに思ふのであります、今御話のありましたやうに、供出と云ふものが全部供出であつて、今度は御改めになると云ふことでありますから結構でありますけれども、從來は全部を供出させて、還元配給をすると云ふやうなやり方であつた爲に、統計迄嘘をついて、出來るだけ少なくする、さうして供出量を出來るだけ少なくしようと云ふやうな心理状態になつて居つたのであるし、さうして又供出を少なくして置いて出來るだけ自分の手許に持つて居つて、闇にそれを流すと云ふやうなことに恐らくなつて居つたのであらうと思ひます、で私共の見まするのに、供出の方法と云ふのは或程度の「モデファイ」しても、是ではどうもうまく行かないのぢやないかと云ふやうな心持がする、うまく行かないと云ふことは、結局集荷の方がうまく行かないのでないかと云ふやうに思はれるのであります、そこで生産意欲を唆るとか何とかと云ふことばかりでなしに、政府の方で、政府と言ひますか……兎に角農民の手から食糧を離して、或所に集荷すると云ふ效果から言つても、一部分の供出は是は必要でありますから、或程度を確保するだけの供出は命じて置いて、それ以外のものに付ては農民の自由を認めると云ふことにした方が、却て集荷の方に好結果を來すのではないかと云ふやうなことがまあ考へられるのです、實は五月か、三月頃でありましたか、聯合軍の或相當責任のある人であつたのでありますが、其の人の意見として、どうも日本の食糧對策と云ふものはうまく行かない、是では聯合軍としても困る、全部の統制をやつて居ると云ふ所に何か缺點があるのぢやなからうか、矢張り「フリー・トレィド」と云ふか、「プライヴエット・コンサーン」と云ふやうなものを使つて、或程度自由と云ふものを與へないと云ふと「コレクチング・ルート」に於てどうも「スムース」に行かぬのぢやないかと云ふやうな意見があつて、それを私は聽いたのであります、それで實は三四の人と集つて、それを土臺にして或程度の自由を認めた私案を實は作つて見たやうなこともあるのであります、丁度其の責任者は今は本國に歸つて、居ませぬけれども、聯合軍の方の、先刻の御話のやうに意嚮として、何處迄も統制してやらなければいかぬと云ふやうなことであつて、御話合が付いて居ると云ふことならば、是はもう今此處に一部分を自由にしなければならぬと云ふ議論があちこちにあつても、是はなかなか實行の出來ないと云ふことになつて、空論になりますから、私は此處に申上げませぬし、實は其の意見も持つて居りまするけれども、多少さう云ふ自由に論議が出來るものならば一つ何か御考慮を願ふ意味に於て申上げても宜いと思ひましたけれども、只今の御話でありますれば無駄でありますから申上げませぬけれども、唯どうも今日迄の食糧の對策として見ましても、餘りにも統制と言へば、統制經濟と言へば、全的な統制經濟を行ひ、さうしてそこに農民を神樣か聖人君子か、然らざれば機械であるかの如き考へ方で、對策が立てられて居るやうにどうも見える、だから倫理道徳を説いて、立派な人間に直してしまはなければ、效果が上らないやうな方策が立てられて居るやうに見えるのでありまして、人情の機微に觸れた方策が、戰争中も今日も立つて居らないやうであります、是は結局極端なる統制の爲ぢやないかと思はれる、私は政治と云ふものは統制と自由と云ふものの「バランス」を取る「ポイント」を何處に置くかと云ふことが政治であると思ひます、供出と云へばもう全部を供出させる、統制と云へばもう全部を統制される、是ではどうも味のある政治が行はれないので、全く机の上の紙の上の、統制と云ふ、ぎごちない事務と言ひますか、一種の技術と言ひますか、さう云ふもので總てを解決されるやうな建前になつて居るのではないか、そこに今日迄の缺點があつたのぢゃなからうかと思ひますが、殊に此の統制と云ふものを或程度緩和して、自由の面を廣くすると云ふのには、斯う云ふ今年のやうな豐年の時、豐作の年を掴んで、此の時に手を打つと云ふやうな行き方が一番良い方法であらうと思ひます、自由にしますと、今大臣から供出の方に影響すると云ふ御話がありましたが、それは供出量と云ふ物の抑へ方であらうと思ひます、私共の立てた案は、三分の一を供出させて、あとの三分の二を自由にすると云ふ行き方を考へて、細かな案も出來て居りますが、此所では申上げませぬけれども、さう云ふ風にしますならば、物の供出は政府が御望みになつて居る通りに百「パーセント」の供出が出來て、供出成績滿點と云ふことになるだらうと思ふ、偖てあとの自由にすると云ふことは、結局農民が之を自分で喰べても宜し、或はどんどん賣つても宜しと云ふ自由處分をさせると云ふことになるので、其の時に其の政策宜しきを得れば、相當の量が、殊に米麥に於て相當の量が集荷されることに結果付けられるのではないか、是が若し集荷されると云ふことになつて、此の豐年の年に相當量が集荷されるやうになりましたならば、是は經濟の自然の法則に從つて、價格も段々低下して來るのぢやなからうかと云ふやうなことが考へられる爲に、實は御尋ね致して見たのでございますが、只今の御説明で、聯合軍との關係も御ありのやうでありまして、御意思のある所を了承致しましたので、是で私の質問を終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=21
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022・稻田昌植
○男爵稻田昌植君 ちよつと關聯して……今輸入食糧の御話がありましたが、其の前に先程土屋さんの御質問の時に、次官から御答になりましたことに付て、數字的にちよつと伺ひたいのです、それは假に二合五勺を此の次の食糧年度から増配しますと、輸入食糧が三倍程要るのだと云ふ御話があつたやうでありますが、是は私共にちよつと直ぐ頭に入り兼ねますので、御差支へなかつたら其の内容を御知らせ願ひたい、と云ふことは二合五勺にしますと現在から四勺殖えます、從つて四勺を殖やしますと、假に八千萬の人口に抑へて見て、一年間で約一千萬石内外ぢやないかと思ふ、さうすると云ふと昨年の收穫から見まして、今年は私共表面に現れた數字四千萬石を取つても二千萬石以上の増ではないかと思ひます、今年は昭和何年でしたか七千萬石も穫れました以來なかつた所の大豐作の年と思ふ、從つて二合五勺の配給、詰り四勺の増配で、一千萬石の増になるのに對して、米だけでもそれ以上に穫れて居ります、從つて二合五勺にしただけで輸入食糧を今年の三倍も入れる必要はないのぢやないか、ちよつと斯う思ふのですが、私の計算が間違つて居りますか、其の御説明旁旁御答を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=22
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023・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=23
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024・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて、大臣は今日午後は御見えにならないさうでありますから、若しも大臣に御質問が御ありの方は時間もございませぬけれども、午前中に御願ひ致します、若しも別に御質問がなければ是で午前中は閉ぢたいと思ひます如何でございませうか、大臣に御質問が御ありならば今の内に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=24
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025・菅澤重雄
○菅澤重雄君 簡單に一つ、段々承りますと云ふと、米の供出以外のものは自由販賣が目下の情勢からむづかしいと云ふことを聽きまして私共も成る程と納得致しますが、唯私は藷の問題、藷の問題は、是は米と違つて腐つてしまうものですから、其の腐敗を防ぐ爲に供出割當をして實行組合なり農業組合なりを信用して、其の供出だけはどうしても責任を帶びて出すと云ふやうにして其の以前でも以後でも其の責任量だけは絶對的に出させると云ふ責任を持たせて、後は自由に販賣して貰つた方が宜いと考へますが、さうでないと此の藷は輸送力や色々の關係で非常に私は今年は腐敗すると考へます、若しさう云ふことになれば却て藷の價格が安くなつて、さうして滑かに東京都に入つて食糧事情は緩和する、斯う云ふやうに考るのです、却て自由販賣と云ふやうにした方が安くなる、さうして都會に澤山入る、斯う云ふことを私は考へる、此の點に付て農林大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=25
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026・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 實は先般或新聞に野菜の自由販賣其の他の問題が出た譯でありますが、是は只今の處司令部の關係に於きましても、亦私共と致しましても之をやることは考へて居りませぬ、實は非常に是は不正確な記事が出ました爲に、非常に此の司令部の關係はまづくなつたのであります、此の食糧の關係に付きましては司令部の方に於きましては、殊に生鮮蔬菜に付きましても此の食糧緊急措置令に於て、統制の規定を置いて居りますやうに何處迄も主食が現在のやうな實情にある限りは是は何處迄も統制をして行くと云ふ建前を堅持致して居るのであります、從つて蔬菜其の他のものに付きまして統制を徹廢すると云ふことは是は出來ませぬ、併し藷に付きましては是は今年は非常に豐作でありまするので、御話のやうに又腐れ易いものでありまするので、是は統制を撤廢すると云ふことでなくして、統制の線には何處迄も沿ひますが、出來るだけ藷に付ては御話の點がないやうに色々な具體的なものを考へて行かうと斯う考へて居る次第でございまして、今年の藷は一面に於て主食として配給致しますと同時に、是は統制の線に沿つて出來るだけ國民の食糧を潤ふやうな、又農家の方としましても腐らすやうなことのないやうな手を考へて行きたいと思ひます、唯統制を撤廢すると云ふことはどうしても出來ないと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=26
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027・菅澤重雄
○菅澤重雄君 もう一つ、昨年度に於きましては澱紛の價格の決定が遲れたので、非常に澱粉業者が買入した人があつたり迷つたり致しましたが、今年は澱粉の相場に付ては訂正をする御考はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=27
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028・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ致します、昨年は御承知のやうな事情の下に於て遲れたのでありますが、本年は藷の價格の改訂に即應致しまして、當然原料藷が豐富にありますれば、買はなければならぬ譯でありますが、準備を致して居ります、昨年のやうなことはないと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=28
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029・菅澤重雄
○菅澤重雄君 昨年もそれが決定が遲れて非常に困つたのですから早く相場を御引上になつて貰ひたいと思ふのでありますが、私の縣は何しても澱粉を作るには全國で第一等ですから、澱粉を作る人が多いので、藷の供出や何かに非常に大關係を及すので、それが早くないと困ると云ふことは、昨年も縣知事が言つて居られたのですが、それに依つて賣る方も買ふ方も非常な影響を及すのですから、勿論當然去年と藷の相場が非常に高くなつて居るのですから澱粉の相場を勿論上げなければならぬ、それを早く決定して戴きたい、さうして相當額にしてやらぬと澱粉製造に支障を來すと考へて居ります、其の點まだ決定して居らないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=29
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030・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 澱粉の價格は御承知のやうに追々原料が上つて來るので考へなければならぬが、矢張り一面に於て主食としての甘藷の供出と云ふことも考へなければならぬから、それ等の點と綜合的に考へまして適當に準備を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=30
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031・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今のに關聯致しまして、澱粉工場と云ふのは部落に於ける資産家がやつて居りまして、昨年の如きは舊圓で買つた原料を使ひまして作つた澱粉を新圓で賣りまして、非常に新圓の獲得をして居る状態であるのが多いやうに思ふのでございます、それで今年の澱粉の價格の問題もございますけれども、非常に不當利得をしてうまく金融措置を逃れて居る者が多いやうに思ふのでございますから、其の點も御考慮に入れて御決定を願ひたいやうに思ひます、農民の間に於て相當斯くの如き指導者に對して憤慨して居る者もあるのでございます、其の點農林大臣は如何御考になつて居られますか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=31
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032・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) さう云つた點を十分一つ考へてやりたいと思つて居ります、主食の方としての甘藷の供出に支障があつては困りますし、澱粉の方からさう云つた點が壊されても困る譯でありますから、是はなかなか矢張り一つは原料として使ふし、一つは主食としてどうしても早く甘藷を出して貰はなければ困ると云ふ關係がありますから、それで色々考へまして準備を致して居る次第でありまして、御意見の點は十分參酌致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=32
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033・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは本日の午前の會議は是で閉ぢまして、午後は一時半から始めます
午前十一時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=33
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034・会議録情報3
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午後一時四十分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=34
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035・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 是から委員會を始めます、午前に引續き御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=35
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036・西酉乙
○男爵西酉乙君 午前中澱粉の御話がございましたけれども、澱粉工場を昨年は藷を腐らせない爲に全國に増設する、二百五十でございましたか、さう云ふ計畫があつてなかなか進捗して居らなかつたのでありますが、其の後どんな風に澱粉工場は進捗致しましたか、又曩の御話のやうに主食として藷の供出にも影響することですから、或は澱粉工場の増設を抑制して居られるのか、それ等の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=36
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037・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 澱粉工場に付きましては、昨年來食糧事情の段々窮屈になるに從ひまして、藷を其の主要食糧の代替として配給すると云ふ意味から、澱粉工場の増設を考へまして大體一工場當りに六、七、八萬圓の補助金を與へまして、増設をすると云ふことをやつて參りました、唯本年になりましてからは御承知のやうに一般的に補助金を打切ると云ふことになりました關係上、新年度から一應補助を打切つた、斯う云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=37
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038・西酉乙
○男爵西酉乙君 それで澱粉工場は今後もどんどん作らして藷を長く食糧補給の重要な材料とされるのが適當と思ふのでございますが、地方に依つては工場の増設をしようと思つてもなかなか許可を得たり何かすることが困難のやうなことも聞いて居るのです、まあ北海道なんかは澱粉で此の食糧の危機を乘切つたと云ふ事實もありますし、主食としての生藷の供出の關係もありませうけれども、根本の考へ方は長い先のことも考へて澱粉工場を建てることに御贊成なんでございませうか、どうでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=38
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039・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 大體相當昨年の助成に依りまして出來て居りますけれども、矢張り地域的にはまだ完全に整備されて居ると云ふやうな状態に至つて居りませぬから、地域的には矢張り相當増設して然るべきではないかと斯う云ふ風に考へて居るのでありまするが、先程申しましたやうに豫算的の助成が困難になりましたので、今の處國が金を出して其の助成をすると云ふことが實際問題として勿論出來ませぬ、まあ斯う云ふやうな状況になつて居ります、氣持としては出來るだけ今一箇所に集中して居るやうな工場を分散するとか、又自力で出來るものは作つて戴きたい、まあ斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=39
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040・西酉乙
○男爵西酉乙君 私の申上げることは補助金は勿論希望して居らないのでございますが、自力でやる連中がもう少し先程菅澤委員の御話がありましたやうに、澱粉の價格さへもう少し採算が採れるやうになれば、自力で建てる人がどんどん殖えるだらうと思ひます、從來作つて居つた人、工場を持つて居る人が獨占的な意味で餘り殖えることを好まぬと云ふやうな傾向もあるかと思ひますけれども、其の點が澱粉工場の必要が相變らずあるものとすれば、さう云ふ色々な支障をなくして、當局としても工場を作る意思のある者を支持してやつて戴くことが必要だと思ひます、先程農林大臣が御話のやうに、主食、生藷としての供出に差支へると云ふ點で、或は餘り積極的に支持して居られないのぢやないかと想像して御伺して居る譯なんですが、昨年度二百五十工場でしたかの御計畫は完成したのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=40
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041・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 一應完成致しました、今私の申上げましたのは全體的には相當澱粉工場と云ふのは出來て居ると云ふ風に考へて宜いと思ふ、地域的に其の配置が心ずしもうまく行つて居らない、と申しますのは、我々から申しますと、最近來藷を相當澤山何處でも作るやうになりましたのですから、其の關係で澱粉工場の地域的配置と云ふ面から見ますると、必ずしも整備されて居るとは申上げ兼ねるのぢやないかと思ふのでございます、それで御話の點は、具體的にどの地方でどう云ふ工場と云ふやうなことに付きまして、私の方に具體的に相談して決めて見たらどうか、斯う云ふ風に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=41
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042・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 大體政府委員の答辯で宜いのですが、矢張り甘藷は貯藏の點に付て實際今の日本ではまだまだ完成して居るとはなかなか言へないやうに思ふ状態であります、處が一方では今年なんかは殊に此の端境期、それから來食糧年度になりましても主食の大きな部分は甘藷で相當繋いで行かなければならぬ、斯う云ふ状態であります、さうしますと百姓から言へば甘藷を主食に活かすと云ふことと、それから澱粉工場から言ふと澱粉にした方が勘定が儲かると云ふので、甘藷をどんどん買付けて行く、斯う云ふことになつて供出の點に付て餘り齟齬を來してしまふと困ることがありますから、澱粉屋は非常に儲かる、併し甘藷の方は生甘藷の方で行つたのではどうも餘り面白くないと云ふやうなことがありますと、非常に是は困ると思ひますので、其の點を一つ考慮致して居ります、それから澱粉工場其のものは私は是は將來の日本の農村工場として、又甘藷其の他のものの保存と言ひますか、さう云ふ方から言つても矢張り重要なものだと思つて居ります、從つて澱粉の工場を抑制するとか何とかそんな考へは毛頭ございませぬ、併し今言ひましたやうな關係でそれ等の點をうまく今年は調整して行きたいと斯う實は考へて居るのでありまして、澱粉工場其のものが不必要であるとか何だとか云ふやうなことを考へて居るのではないのでございます、どうか一つ御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=42
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043・西酉乙
○男爵西酉乙君 御話の御趣旨はよく分りましたが、藷は生で主食の代用にするか、或はいつそ主として澱粉にして主食の代用に當てもし、貯藏もすると云ふ方に徹するか、其の如何に依つて、又御方針も變るのだらうと思ひます、ああ云ふ腐り易いものを處理する方法と致しましては、一應澱粉なら澱粉に加工してしまつて置いた方が宜いのではないかと私は考へるのであります、それともう一つはさうなりますると澱粉工場の經營者だけが特に有利な地位に立つと云ふこともいけませぬけれども、此の爲には農民を保護する建前から、農民の共同の經營のものを作らせると云ふやうな御方針を御執りになつたならば餘り弊害はないのではないか、殊に從來の澱粉工場經營者が餘り不當利得を得る爲に、農村の搾取階級視されるやうな弊害が強ければ、將來の澱粉工場を加工引受け、粉ならば賃挽のやうにさう云ふやうな組織にさせると云うやうに出來るのではないかと思ひます、是は政府が指示しないでも農民の方が自覺すればさう云ふことも出來るのである、さう云ふ指導もし得ると思ふのでございますが、藷を生で主食の代用にするか、一應加工して腐らぬやうに、貯藏に堪へるやうにして置いてから處分すると云ふ建前にするかどちらに重點を置くかと云ふことで、問題は解決するのではないかと思ふ、それ等に付ては今迄の御説明では生藷で主食代用にすると云ふ御方針のやうに伺ひますけれども、運搬、貯藏等總て加工後の方が能率的ではないかと思ひますけれども如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=43
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044・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 澱粉に致しますれば貯藏も容易でありますし、又運搬其の他の關係から見ましても非常に結構なことだと、斯う思ふ譯であります、御承知のやうに甘藷を主食に代用致しまする時期が何時も此の端境期に置かれます關係もありまして、之を一々澱粉に致しまして配給致したのでは其の消費者に間に合はないと云ふことを相當考慮に入れなければならないと云ふやうな事情がありまして、態態重い荷物を遠くから運んで消費地へ持つて來ると云ふやうなことをやらなければならないやうな状況に相成つて居ります、併し行く行く主食の方の端境期が或程度他の食糧に依つて賄へるやうなことになりますれば、其の時には御説のやうなことを十分考へて宜いのではないか、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=44
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045・菅澤重雄
○菅澤重雄君 今の西さんの質問に關聯してちよつと、私も西さんと御同感で、要するに此の藷を生で食べることは、唯季節が端境期でもあるし、麥を播く季節で、農業の方も忙がしい、秋の稻の收穫の時にぶつつかると云ふので、從來藷が腐つたと云ふ關係が、輸送も足らないことからあつたのですが、それが今言ふ西さんの説のやうに澱粉にして置けば何年でも差支ない、來年今年の物を食つても宜い、一年間に澤山拵へて置けば宜いと云ふことにもなりますし、先程から農林大臣の御意見を聽きますと、農家が一町歩位しか土地を買はせられないでやれば、どうしても多面的にやらなければならぬと云ふことを仰せられて居るから、さうすると私の縣などでは、大概農業會に澱粉の工場を許して居る、農業會がやれば即ち農民の會ですから、そこで分配も出來ればどうにもなる、澱粉にすれば澱粉粕は立派な蕎麥になる、澱粉の粕は腐らない、さう云ふことを農林省はもつと研究して、唯生で之を主食物の代用にすることが有利であるか、澱粉にしたり若くは其の粕を蕎麥にしたり、さう云ふものに利用してやつた方が宜いではないかと云ふことは、是は餘程將來研究を要する、それから飴も出來ますし、澱粉では砂糖も出來る、葡萄糖も出來る、さうすると是から「ハワイ」或は臺灣から砂糖を買はなければならぬと云ふことになると、正貨を輸出しなければならぬ、見返り品がないなんと云ふよりも、是から藷が出來て、主食が米麥で足りると云ふ時代が來れば、其の藷も砂糖にしたり飴にしたり段々是からさう云ふものに利用すると云ふことが必要ですから、研究して農民を指導するやうな意味に於て、澱粉工場を澤山拵へて、唯獨り澱粉業者にだけ利益を得させないで、農業會でやれば農民全體でやるのだからどしどし許せば宜いが、それを地方廳で指定して、此處の町村が宜い、あすこが惡いと云ふことで、なかなか指定を許さないやうに私は聞いて居る、それは從來のやつて居る澱粉業者が縣會議員に出て居るとか、陳情して居ると云ふことが多少支障を來して居る原因かも知れないと考へられます、兎に角縣ではなかなか許可しないらしい、どしどし私はああ云ふことをやらせて、色々の方面に新知識を得て、さう云ふ食糧問題の解決の爲に研究するが宜しいと思ふのですが、農林省はもつと積極的に其のことを研究して貰ひたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=45
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046・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 御話は大體私も同感でございます、唯本年と申しますか、昨年或は本年の状況に於きましては、今直ぐ總てを粉にして配給すると云ふことは、なかなかむづかしいではないかと云ふ風に考へるのですが、もう少し食糧事情が好くなりますれば、御説のやうに粉にして或は主食の代替と申しますか、食糧として、或は砂糖代用として、或は工業用の色々の資材にする、色々用途は廣くありますが、さう云ふ方面に活用して行くことが必要ではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、それから何か澱粉工場の設置に付きまして地方廳で之を抑止するやうな傾向があるやうだと云ふ御話でありますが、昨年は先程も申しましたやうに政府は助成金迄出しまして奬勵を致した關係もありまして、さう無下に申請を却下すると云ふやうなことは餘りなかつたんぢやないか、斯う考へます、唯具體的に地方に於きましては先程來申しますやうに地域的に非常に澤山澱粉工場のある所と地域的にさうでない所とございますので、或は非常に澤山ある地方に於きましてはもう是以上澱粉工場を設置するのもどうかと云ふやうな見解からして申請を受付けなかつたと云ふことも或はあるかとも考へますけれども、一般的には特に澱粉工場の建設を抑止して居ると云ふことは大體ないと、斯う云ふ風に私考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=46
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047・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今の澱粉工場に關聯しまして伺ひたいと思ひますが、農林當局に於ては昨年非常に御奬勵になつた結果昨年の所謂農業會の會長が代議士其の他が多かつた關係上、其の者が働いて澱粉工場を作つた場合が多うございます、さうして今度公職追放等に引掛りました者で、働いた關係上其の者の私利を肥やすと云ふやうな工場に轉落して居るものが相當あるやうに見受けるのでございますが、澱粉工場の會計を一遍御監督になる必要がある、さうしないと云ふと一般農民の爲にならない、殊に粕の點でございます、粕を乾燥致しまして製粉機に掛けて之を轉賣して居る場合が相當ございます、之を以て相當の私利を得て居ります、此の點御監督になる御氣持はないか、さう致しませぬと折角國費を掛けて御作りになつた澱粉工場が地方の農民の爲にはならず、特に今年の如きは澱粉工場行の供出は是迄のやうに兵隊の壓力もないんだから出さないと云ふやうな考が起きて居る地方が相當あるやうに思ひます、折角澱粉の農村の機械化、農村の副利の爲の施設が破壊される處があると思ひます、如何なる御考へでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=47
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048・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 澱粉に付きましては、出來上つたものは一應澱粉統制會社に於きまして、一手に收買致して之を配給すると云ふ仕組を取つて居ります、從つて其の前の加工費及び粕等の副産物の費用、さう云ふやうなものも一應澱粉工場の原價計算の中に織込みまして政府の方で之を査定の上決定して居る譯でありますので、若し其處に何等かの御話のやうな點があるやうでありますれば、今後私達と致しまして其の具體的の内容を能く調査して見ることに致したい、斯う云ふ風に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=48
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049・佐竹義履
○男爵佐竹義履君 只今澱粉のことで色々御話がありましたが、私も之に關聯しまして御伺ひ致したいと思ひます、昨年度の藷類の如き腐敗、是は貯藏中の腐敗らしいですが、又は横流れ、是も相當あるやうに聞きましたが、さう云ふものの對策がどう云ふ風になつて居りますか、それから今の澱粉統制會社の方の割當は相當昨年度も多いやうでありましたが、結局其の二十「パーセント」位しか貰へなかつた、斯う云ふことも聞いて居りますが、本年度の各種の割當、澱粉或は粗澱粉、芋粉でございますね、さう云ふものの割當がどう云ふ風になつて居りますか、又する積りでございますか、具體的に御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=49
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050・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 昨年甘藷及び馬鈴薯の輸送關係等に依つて相當腐敗、減耗が多かつたやうだから、今年は之に對してどう云ふ風に考へて居るかと云ふことに對しましては、實は御承知のやうに今年は相當特に甘藷に付きましては豐作を豫想せられて居りますので、私達と致しましても最も其の點に苦心を致して居ります、何と致しましても甘藷の割當を成るべく早く決定致しまして、生産者及び輸送業者其の他の關係者が計畫的に之を出荷せしむるやうにすることが、最も必要である、斯う云ふ風に考へまして、今さう云ふ考の下に色々具體的に進めて居ります、尚澱粉に對する割當量及び其の實績でありますが、甚だ恐縮でありますが、今此處に持つて居りますのは馬鈴薯の澱粉のみに付てしかありませぬので、一應それに付て申上げますと、二十一年産の馬鈴薯の割當は大體全部で二千一百萬貫であります、其の内澱粉の割當は僅かに二千百萬の中三百萬貫が其の割當に相成つて居ります、配給の方は實は割當數量が餘り多く集らなかつた關係上、一應此の割當數字は本年は實現することが出來なかつた、斯う云ふ風な状況に相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=50
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051・佐竹義履
○男爵佐竹義履君 澱粉とか粗澱粉、それから「アルコール」或は其の他、さう云ふものに對する割當を、各種の芋類の割當を、成るべく早く業者の方に聽かせますと仕事が捗るだらうと思ひますから、さう云ふ風に御願ひしたい、尚「マッカーサー」の好意に依つて相當の「コーンスターチ」を輸入したと聞きますが、既設の澱粉工場を活用して、食糧にもなり又平和産業の基礎原料ともなる澱粉又は粗澱粉を多量に作られますかどうか、又さう云ふことに御贊成であるとしますと、今後の政府の計畫と云ふものを御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=51
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052・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 大體主食に代用致しまする關係の數量が許す範圍内に於て、出來るだけ澱粉の方へ廻すと云ふことに致したい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=52
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053・佐竹義履
○男爵佐竹義履君 戰爭中政府は澱粉工場を澤山作つたやうでありますが、是も戰爭に間に合はなかつたやうでありますが、既設竝新設の工場に十分なる割當をなして、十分なる生産を出來るやうにしたいものと思ひますが、政府の見解は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=53
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054・長谷川清
○政府委員(長谷川清君) 澱粉と申しますか、甘藷の割當に付きましては、實は數日前より各地方長官に御集り願ひまして、連日此の御相談を申上げて居るやうな状況でありまして、本年は例年に比較しまして非常に早く割當が出來るものである、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=54
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055・佐竹義履
○男爵佐竹義履君 澱粉に對しましては、當局の熱意は大いに認める所でありますが、唯其の實行が非常に遲いと思ふのであります、澱粉原料の芋類の割當等は成るべく早く發表しまして、安心して業者に仕事をさせるやうな熱意と好意を持つて奮起して戴きたいと思ひますが、何卒其の點宜しく願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=55
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056・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私は農林當局に斯う云ふことを伺ひたいのですが、兎に角此の食糧危機を突破するのには、所謂段當收量の多いものを作ると云ふことを奬勵すべきではないか、斯う云ふ意味に於て私は玉蜀黍を主張した者であります、玉蜀黍を奬勵して農林省がやつたならば、此の食糧危機を突破することが容易である、斯う考へまして、屡屡發言したのでありますけれども、或農林大臣をやつた人は稗を主張し、或農林大臣をやつた方は鳩麥を主張する、斯う云ふことで、私甚だ微力にして、私の主張する玉蜀黍と云ふものはどの位の程度に今内地で作つて居るかと云ふ、稗と鳩麥と玉蜀黍との統計を一つ最近の三箇年位の、若しくは五箇年位のものの統計を、出來れば農林省に一つ出して戴きたいと思つて居ります、それから私の意見としましては、一段歩當りの「カロリー」の多いものは薩摩芋と「ジヤガ」芋と、其の次には玉蜀黍であると云ふことの確信を私は持つて居るもので、日本が三千年來米食にのみ依存して居つたけれども、八千萬以上の人口を養ひ、尚今後増加する人口を此の國土狹小の日本が養ふのには、どうしても米の外の代用食を研究しなければならないと云ふ場面に直面して居ると私は考へる、そこで私の主張する所のものは、米、麥と、玉蜀黍が第三位を占めて、是が軈て主食物となると云ふことを私は確信して疑はないものであります、外國の例を聞いても、今小麥と殆ど半々位に王蜀黍の粉を食べて居ることを、私は各方面から聞いて居ります、日本で農林省はそれをどうも無視して居るやうに私は考へるので、去年信州の桔梗ヶ原へ視察に行きましたら、此處では農林省が二百六十萬圓か補助を出して、長野縣に囑託して、今試驗をやつて居りますが、昭和十二年から玉蜀黍を作つて試驗して居る、此處では一段歩當り十二俵半穫れると云ふことを言明されて居ります、それから一昨年富士吉田へ行つて泊つて研究しましたら、此處でも十俵穫れると云ふことを山梨縣の農事試驗場は主張して居ります、さう云ふやうなものをどうして農林省はやらないのか、斯う云ふやうに私は考へます、農林省の方針如何を聽きたいのですが、併しながら最近の三年なり五年なりの統計に、稗がどの位増加したか、鳩麥がどの位増加したか、玉蜀黍がどの位であるかと云ふことの統計に依つて、私は成行を見て、更に方針を決定したいと考へて居ります、此の點を甚だ御手數ですけれども、調査を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=56
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057・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 玉蜀黍の問題は御尤もな點が私も實はあると思ふのでありまして、統計は最近のものを調べまして御手許に差上げます、玉蜀黍が長野の試驗場で、御話のやうに農林省としては力を入れて試驗をさして居る譯でありまして、是は唯食糧と云ふのみならず、家畜とも結び付き、それから又開拓なんかやる點でも直ぐ考へなければならぬ作物だと思つて居りますので、農林省としては可なり力を今後入れるべき、又今としても尠くとも私自身は相當力を入れて行きたいと思つて居るのでございます、是は段當收量は御話のやうに今は相當出來ます、それから殊に王蜀黍に付きましては六月ですか、「アメリカ」からも實は玉蜀黍の種を貰ひまして、向ふの良い種を貰つて、此方でそれを又試驗場へ持つて行きまして試驗して、それから良いものを作つて行かうと云ふ譯で、種を貰ひましたのと、玉蜀黍自身を一つ播かせようと云ふので、「アメリカ」から少し貰つたのであります、さう云ふやうな形で漸次、是は是非日本の作物の中へ、經營の中へ取入れて行きませぬと、唯政府が奨勵だけ致しましても、農家は自分の能力、販賣關係とか、其の他の作物の價格關係、經濟關係で、矢張り取附きませぬ場合もありますので、さう云ふ點も十分考へて、經營の中へ入つて、農家が安んじて又之を好んで栽培するやうな方に是非持つて行きたいと思つて居る次第であります、何れ數字は一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=57
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058・菅澤重雄
○菅澤重雄君 もう一つ價格の點で伺ひたいのですが、私は玉蜀黍論者である爲に、或五六十町歩の開墾地の小作人に年貢の代りに玉蜀黍を半分と金で半分、七八年取つて居つたのであります、其の時分に私の地代としては、一反歩五圓であります、此の五圓に換算して此の玉蜀黍を一俵取つたのでありますけれども、それが段々物價の上るに從つて、今は闇取引が千圓以上して居るのでありますが、公定價格が何でも十何圓か、二十圓以内だと思ふのであります、千圓もするものが二十圓以内の價格では作る人が供出することがないから、奬勵が一面に於て、足らないやうな形になつて、作り方が少い、斯うも考へます、それからもう一つ私縣の方へ行つて、此の間聽きました處が、落花生が百斤十六貫匁、一貫匁が三升ですが、それが枡に直すと四十八升であります、それが百斤の價格が幾らと云ふと、公定價格で百五十圓、併して闇取引が一升百四十圓で、四十八倍の相場の違ひがある、四十八升ですから四十八倍、一升と百斤の闇の相場が同じみたいなもので、こんな價格で供出する者は一人もない、其の實情を私調査して、どうしてさう云ふ相場の割出しが出て、どう云ふものでそれを何時迄も直さないで置くか是は代替で供出されるのでありますけれども、我々地方は山岳地帶で落花生の出來る地帶と川の方の田が出來る地域と二つになつて居ります、田の方は米で供出するけれども、落花生の方は作つても一粒も供出しないで、而も米の配給を受けて居る、さう云ふやうな一村の上に於て二つになつて摩擦を生ずるやうな状況を呈して居る、それ等を是正するのにはどうしても適正な相場にして代替で、其の落花生を出させると云ふやうな方法を講じなければ出來ないのです、今云ふ百斤百五十圓では出す人が一人もありませぬ、さう云ふやうな状況で全部落花生は闇になつて居る、此の相場の割出し方は、何處からさう云ふことを決定するのか、何處が經濟本部の價格を決定する場所であつて、さう云ふことを決定するのか、或は業者を集めて聽くのか、地方長官か何かに、其の地方の特産物の價格を聽いて、生産費とか、何とか色々のものと比較したものに依つて、適正なる相場を決定することが然るべきではないかと思ふが、どう云ふ意味で、玉蜀黍とか、落花生はさう安くなつたのか、之を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=58
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059・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は價格を決めるのには、從來は農産物は農林省がやつて居りました、農林省がやりまするに付きましては、先づ最初に考へますのは、各物の生産費を矢張り考へまして、それから反當りの收入、經營の面からはそれぞれの物に付ての收益關係等も十分考へまして、米價と云ふものを一應の中心に置きまして、農産物の價格、それぞれの間の均衡を取るやうな建前で、少くとも、價格の公定は致して來て居つたのであります、其の方針は變つて居なかつたと思ふのであります、唯色々の農産物に付きまして、非常に收量が減つたり、それから特殊の事情がありまして、必ずしも「プリンシプル」が一貫してない面は、是はあつたと思ひます、從つて多少の凸凹があり、又需給が非常に緊迫して居つて、食糧全體の何が窮屈でありました爲に、公定價格面では生産費を嚴密に調査して、均衡が取れて居つても、農家の側から云へばそれを供出しないで闇に流したと云ふさう云ふ面もあつたと思ふのであります、價格の點に於ては、一應の均衡を取ると云ふ建前で、是は農林省の方は、元は價格の方をやつて居りました、調整課ですか、價格關係の方をやつて居つた方で決めて居つた譯であります、今後は是は物價廳で決めることになると思ふのであります、價格を決めます時には、是は矢張り、其の途の專門の人だとか、或は業者なら能くものの分つた業者、さう云ふ有らゆる方面の意見を聽きまして、それから色々の「データー」を集めまして、農林省と致しましては、愼重に價格を決定致して居るのでありまして、時に依れば實際に調査に出て行つて、調べてやつて居ると云ふ實情であります、併し御話のやうに物に依つては非常に不均衡なものがあるのであります、是は大豆なんかは低い所にある品ではないかと思ひます、さう云ふ點は、それ等のものの増産とか、色々な必要を考へまして、是は是非適當に今後是正して行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=59
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060・菅澤重雄
○菅澤重雄君 さうすると玉蜀黍或は落花生に付ては相場を訂正するまださう云ふ確信もないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=60
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061・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は餘程色んな面から調べて見まして、矢張り適當な均衡を、米價も變りましたので、適當な均衡を取つて行くやうにと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=61
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062・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 此の緊急勅令の當面差當つた問題を承りたいと思ひます、それは詰り供出の未完了の人、之に對する措置はどう云ふ風におやりになるのか、先日又何かの統計か知れませぬが、二割四分とか供出しないものがあると云ふ風なことをちよつと承つたのであります、それに封してどう云ふ措置を御執りになるか、若し其の供出が完了すれば、或は今日受けて居る處の遲配と云ひますか、それはもうなくなるのではなからうかどうか、若しさう云ふ供出がなかつたなら二十日間遲れて居る穴埋めの方法を外の方法でして戴けるかと云ふことを一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=62
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063・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 供出未完了の分は、是は我々の方としてはまだ出來るだけ之を出して貰ひたいと思って居る譯でありますが、實際上は新米の何がありますれば、或はむつかしい點もあるかと思ひますが、是は出來るだけ出せるものは一つ出して戴きたいと思つて居ります、それから遲配、缺配は、是は現在の状況では御承知の通り直ぐ穴埋め出來ると云ふ實情でありませぬ、併し來年度になりまして米の方、其の他薩摩藷等が相當出來て居りますので、増配も致し、色々工夫を致した結果、相當のゆとりが出來て來ますれば、何か考へたいと思ひますが、今のやうな現状では直ぐ穴埋めすると云ふことは出來にくい状態であることを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=63
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064・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 全く別の話でありますけれども、先刻來色々玉蜀黍、其の他の話が出ましたが、私斯う云ふことを脇から耳に致したのであります、それは或は農林省の方では御承知かと思ひますが、秋田縣に渡邊某と云ふ篤農家が居り、非常に肥料のことを研究して居る、前年苦心の結果斯う云ふものを發明した、多分酵母と申しますか、昨年度に付て見ると、一段歩米十五俵の收穫を得た、若し是が成功すれば一段歩三十俵擧げることは易々たるものである、昨年米十五俵取れた外、大根、牛蒡のやうなものは太くて、長くて拔くことが出來ない程成長した、之を用ひれば關西方面へ行けば米が二度取れるかも知れない、斯う云ふ耳よりの話を承つたのであります、私の友人ですから是非來て呉れと申します、それは齋藤憲三と言つて元代議士をした方であります、齋藤君のお父さんは長く代議士をして居つた齋藤宇一郎と云ふ有名な農村關係のことを研究して居つた方でありますが、其の息子の齋藤君の話なんです、それに付て何か農林省の方でも御聽き込みのことでもあるか、或は御研究になつたことがあるか、若し此の話が本當とすれば非常に御心配になる點も雲散霧消、今に「ブラジル」の「コーヒー」のやうに米を海の中に捨てなければならぬ時代が來るんぢやないかと思ふのです、是は強ち架空な話ではないのであります、實は先日郷里へ歸りまして、此の話を郡の農業會へ持込んだ處、農繁期が過ぎたら是非やつて見たい斯う云ふことを申して居つたのでありますが、果して御聽き込みがあるかどうか、餘りうま過ぎる話でありまするけれども、山崎先生がおいでになりますが、何か之に似寄つた話が愛知縣にもあると云ふやうなことを申されて居るのですが、本省の方では御聽き込みのことはありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=64
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065・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 酵素の問題は、是は色々な方面から私も耳に致して居りまするし、又さう云ふ話も伺つたこともありまするが、農林省としましてはさう云ふ方々の持つて居りまする酵素なり、何なりを戴きまして、それを十分研究致した上で、若し良いものでありますならば、實際上普及して行きたい、斯う云ふ態度を執つて居りまして、農林省、政府の立場としてはどうしてもさう云ふやうに實はせざるを得ないのであります、例へば戰爭中やかましくありました馬鈴薯の一芽植なんかの點にしましても、一芽植と云ふことは原料を少くして濟ます、種を少くして濟ますと云ふ點から言へば宜いに決つて居るのでありますが、併し一芽植で實際上の成績を擧げまする爲には、それに對する相當の經驗が要りまするし、熟練が要る、誰がやつてもそれは効果が擧ると云ふものでありますれば、農林省としては是は直ぐ宣傳を致すのでありますが、唯相當の技術を要しまする場合には、それだけの條件を付けて、斯う云ふ人がやれば是は宜いだらうと云ふ風にやりませぬと、直ぐやつて宜いと云ふので、それを皆やつて農作物の生産が惡くなると云ふことになると、是は國の非常な損失でもありますし、又政府の信用も落ちると云ふことになりますから、なかなか農業の事柄は、色々の土地柄、其の他の條件で色々違つて、それぞれ特殊の技能を要するものが相當多い譯でございまするので、さう云つたものに付ては、是は一部の者から見ますと非常に消極的だと云ふ非難は或は蒙むるかも知れませぬけれども、まあ愼重な態度を執つて居る譯であります、酵母の問題も、是は勿論民間の良い技術でありまするので、是が良いものでありますならば、我々としては是非受容れてやりたい、斯う云ふ態度を執つて居りますが、其の前にさう云ふ方々に金なり、何なりを提供して試驗場で學問的な研究をやつた上で、良いものであれば實際上普及したい、さう云ふ態度で以て臨んで居る譯であります、色々の方面から、御話の秋田、或は靜岡、其の他神奈川でも相當の話は承つて居る次第でありますが、尚それ以外の試驗場、其の他でどの程度にやつて居るかと云ふことに付きましては、私今ちよつと何がありませぬので、それは申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=65
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066・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 其のことで本年秋田縣で以て二千の青年を呼び集めて七月頃からそれの訓練をする、勿論發明した、或は發見したと云ふか、其の人は、是は私すべきものではない、若し的確にそれが行くならば、全國的に無償で御話しようと斯う云ふことを申して居るさうでありますが、私も唯耳にしただけでありますから、それは一つ御研究になつたら如何かと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=66
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067・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 ちよつと農林大臣に伺ひたいのでございますが、今度農村の方を四合配給に致しまして、都會の方は二合五勺と云ふ風に致しますと、大體米の部分は農村の方に多く必然殘るやうになるだらうと思つて居ります、從つて依然として米の買出しと云ふことは衰へない問題だと思ひます、特に馬鈴薯、甘藷等は非常に殘るだらうと思ひます、買出しと云ふよりも寧ろ現在に於ては既に賣出し部隊と云ふものが列車の三分の二以上を占めて居るやうに思はれるのであります、さう致しますと、先程の全面的供出を聯合軍に於て主張せられるのならば已むを得ないのでございますけれども、此の状態を農林省に於て御説明になつて何とか、現在に於て闇の價格と、闇をしないで居る農家との收入が斷然違ふのでありまして、本年のやうに非常に豐作の場合、現に麥、馬鈴薯が農家に轉がつて居ると云ふ状態でございますので、此の儘にして置きますと、善良な農家の救濟策として頗る策を得ないもののやうに思ひますが、是は本年のやうな餘り物の多い、殊に賣出し部隊の多くなつて來た現状を御説明になつて、本年の御對策として聯合軍に對し全面的供出と云ふのではなくして、事業を御説明になつて、一部分は供出から除外するとか、或は餘り物をどう云ふやうに處分爲さる御考であるかと云ふことを伺ひたいのでございます、社會黨の方で反對して居りまする理由は、自由販賣になると資本家の買占を受けるからだと言つて居りますが、舊來の資本家ではなくして、現在農村に於ては新圓以外では取引を致しませぬので、新圓を持つて居る人が詰り買占をする虞があるかと存じますけれども、それにしても餘り物の處分に付て相當の御對策がないと云ふと、善良な農家が非常に救濟されないことになるから、何か御考はございませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=67
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068・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 農家の保有量は、それを米でやるか、麥でやるか、或は甘藷で何すると云ふ、其の割合は各縣、各村の實績に從つて決めて行く方法を採つて居ります、從ひまして農家の方だけに多くの米なり、何なりが殘つてしまふ、斯う必ずしも結果的には言へぬのぢやないかと思ひまして、其の地方々々の消費實績を決めまして、其の實績に依つてそれを決めて行く、斯う思つて居ります、それから都會の方の一般消費者の割當配給増加、是は其の外にも今朝次官が御説明致しましたやうに、勞務加配の増加と云ふことも考へて居りまするので、それ等のものを平均致しますると、まあ可なりの數量になることになつて居ります、それからもう一つ餘剩米の自由販賣と云ふことでありまするが、是は今朝程松本委員から御意見があつたのでありますが、我々の方と致しましては、其の時私が御答へ致しましたやうに、實際の供出其のものを圓滑にやると云ふ點から言つて、此の餘剩米の自由販賣と云ふことをどうしても認める譯に行かぬ、併し此の餘剩米を、供出を致してしまつた後の米がどの位あるか分りませぬが、それに付ては是は矢張り正規の「ルート」に乘せるやうな何等か一つ工夫を致したい、と申しますのは、今御言葉の中にありましたやうに、是は自由販賣に致しますると、結局新圓を持つて居る「ブローカー」であるとか、商業者であるとか云ふ者が、其の間に入つて跳梁すると云ふことになる譯であります、さうすると、都會にそれ等の者が持つて來て賣れば、安い値段で賣らないと云ふやうなことになりまして、却て融通過程を攪亂致すことになるのぢやないかと考へられるのであります、と申しますのは、逆にと云ひますか、正規の供出の「ルート」がずつとうまく行けば、後の脇道と云ふものが比較的少くて濟むのでありますけれども、何處迄もそれが完全に行くと云ふことでありませぬと、其處が崩れてしまつたのでは、是は總量が多くなるのだから宜いぢやないかと云ふ御議論を拜聽致したのでありますが、總量が多いから宜いぢやないかと云ふのでは、生産者が多いから宣いぢゃないかと云ふことと同じ議論になつて、さう云ふことは責任あるものとしては、どうしても採りにくいことであります、唯併し御話のやうに農家に於て供出を完全にして、而も後殘つた物に付ては、どうしてもそれを賣ると云ふことをやれば、正規の「ルート」に乘せるやうに價格の面であるとか、色々な面で、特別の措置を講じて行きたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=68
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069・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今の御説明で大體分りましたが、現在農家に於て春の麥、馬鈴薯の割當が比較的民意に即したと申しますか、樂でございまして、大分殘つて居るのでごさいますが、それを再供出なさる御積りでございますか、或はそれをしないと仰せになりますのですか、又此の甘藷に於て、同じやうに藷が殘るのでございますので、主食の農家保有米としましては米の量を非常に減らさなければならない、もう米がなくても食へるだけの物になつて居るやうに思ふのでございますけれども、併しさう致しませぬと、米の供出と云ふことは矢張り藷と違ひまして、米を殘したのでは納得の行く供出と云ふことにならないのですけれども、其の點如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=69
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070・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は斯う云ふやうに私共考へて居るのです、實は統制と云ふ此の大きな線は是は撤廢は出來ないのですが、此の線に副つて甘藷なり馬鈴薯に付ては、可なり裕りと云ひますか、統制の線に沿つた一つの裕りと云ふものを認めて行つたらどうか、斯う思つて居るのでありまして、何分斯う云ふ「サイコロジー」が働くことを私は惧れて居るのです、今我々の例へば自由販賣なら自由販賣にする意思が毛頭ないにも拘らず、そんなことが出ますと、是は將來自由になるだらうと思つて、それならば供出に付ては出來るだけ少い方が宜い、是は農家として斯う云ふ「サイコロジー」に囚はれると思ふのです、さうすると折角供出して行かうと云ふ時に崩れて行くのでは誰が困るのかと云ふと、國民が困る、政府としては實際是は非常にまづいことになりますし、虻蜂取らずになつてしまふことがあるのでありまして、是は何としても矢張り一般の國民に配給すると云ふ此の分量が最も大きい主流なのでありますから、是は取り易いやうに供出して貰つて供出して後のものは別の問題として、是は考へて行く、斯う云ふ風な氣持で居る譯であります、我々としても今度の甘藷は是非腐らせないやうに、それから統制の線を外れずに何とかやつて行く、それから遲配缺配の問題が出ましたが、是は將來甘藷で補ふと云ふやうなことを是非やつて行きたいと思つて居ります、それからそれには統制を撤廢すればそれは出來るかと云へば、必ずしもさうではない、さうすれば亂雜になるのでありますから、統制の大きな線を引いて、それに即しながらやつて行く、斯う云ふ考で實は進んで居る譯でありまして、御話のやうに今後各種の問題に付ては、其の點は非常に重要な問題であるのでありまして、是非早い割當の甘藷は早く取り、今年は甘藷が豐富あでりますので、甘藷は出來るだけ有效に使ひたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=70
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071・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私は米價の問題で伺ひたいのですが、去年は確か地主米と云ふものは一石五十五圓かであつたと思ひますが、今度は七十五圓になるのですね、さうすると二十圓ばかり上つたやうになりますが、政府の考では、米と云ふものは適正價格は幾らであるか、地主の米であるから五十五圓で宜いとか、七十五圓で宜いとか云ふものであるとするならば、地主から買上げた米を政府が賣る場合に於ても、五十五圓で買上げたから五十五圓で賣る、七十五圓で買上げたから七十五圓で賣ると云ふことは、正しい建前ではないが、然るに五十五圓で買ひ上げた場合に政府は二百圓で賣つて居る、さうすると、二百十何圓と云ふものは、政府は地主の米に於て利益を得て居る、さう云ふ利益は何處から出るのですか、是は私どうも疑問に堪へない、地主の米だから安くて宜しい、生産者から出た米を三百圓とするならば、奬勵金としてやれば宜いが、奬勵金として耕作者にやる位は當然である、生産費があるから當然な話ですが、政府が賣る場合に於て五十五圓で買つたものを三百圓で賣ると云ふことは不合理ではないかと考へられますが、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=71
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072・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は七十五圓の關係と云ふものは、小作料が七十五圓、物納の小作料を金納にする場合には七十五圓と云ふことになる譯でありまして、地主の保有米の中から供出を割いて五十五圓で……、二十年産米を五十五圓で買つたやつは確か五十五圓で地主には拂下げて居ると私は記憶して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=72
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073・菅澤重雄
○菅澤重雄君 もう一つ違ふ問題を御聽きしたいのですが、金納にする理由はどうも私共には分らないが、金納にした場合に時代の趨勢に依つて物價は上るのですから、それを其の時代の他の物價と比較した相場に依つて金納にすべきものを、從來の米相場を何處迄も押へて地料にすると云ふことは、地主の生活も今日の物價に依つて生活するのだから、總ての物資が上れば地主と雖も生活が苦しい、地主だけを困らして政府は公平なりと考へて居ると云ふことは、少しく片手落の處置で、差別待遇をするやうに考へられる、地主も等しく日本國民であるから、小作人と地主とさう相違のある筈のものではない、金納にすると云ふことになれば……どうしても物納であつたから土地を付けて置いたんだが、金納になれば自作をしなければ、今度は七十五圓では闇の一升の米も買へないと云ふことになるんですから、どうしてもそこで土地を上げて、作らなければならないと云ふことで、小作人と摩擦が起るのは是は當然の話であります、私は伊那邊りに參りまして、信州の伊那邊りの状況を聞くと、其の問題が非常に複雜して、小作人と地主の間に紛糾が生じて居る、そこで新聞や何かで地主の保有米、保有米と云ふことを聞きますけれども、私の縣などには地主は保有米など一粒もありませぬ、保有米と稱するのはどう云ふことを保有米と云ふか知らぬが、地王が氣の毒だと云ふことで米を二斗位づつ一人の人でやると云つたやうな土地もありますけれども、私の縣などでは全部小作米を農業倉庫に出して自分の配給を受くべき何合なら何合と云ふ割合で老若男女を通じて下さると云ふことで、やるのだから保有米と云ふものは少しもない、それを地主の保有米を供出すれば宜しいとか何とか、新聞に澤山共産黨や何かがさう云ふことを主張したり、書いてありますが、私の縣などにはさう云ふ保有米はない、唯割當の一合何勺なら一合何勺なり二合何勺なら二合何勺の老若男女の區別がある、その二合何勺の配給を受けて居るので其の保有米のやうな餘計なものはちつともありませぬ、斯う云ふやうな譯で、農林省は新聞を信用して居るんでせうか、居ないのですか、どうも共産黨や何かの文句ばかりを聞いて、それを信用して、政府はそれに依つて動いて居るやうに、共産黨のまるで手先になつて、地主を苦しめて殺さうとして居るやうに見える、一面から見れば其の田畑の賣買と雖も實際賣買よりはどれ程安いか知れない、四分の一位若しくは五分の一、斯う云ふ安い相場でやる、地主だつて何處からか其の土地を盜んで來たのでもなければ取つたのでもない、祖先の皆汗の結晶に依つて出來たものである、それを惡地主だの搾取だのと云ふ名稱を地主に冠して、誰も一言も地主を良く言ふ者がない、私は明治三十九年から開墾地を起してやつて居りますけれども、未だに五圓の所で甲種所得税を拂ふと一反歩の地料が三圓しか殘りませぬ、三圓のものを三反歩併せても闇で薩摩藷一皿が買へない、それを惡地主とか何とか云ふやうな名前で一般の社會が認めると云ふことは私は不滿に堪へない、之を公開の席上に於てどうしても一應其の因を解かなければなりませぬ、而して今度政府は我々の地所を作つて居る小作人に一町歩しか買ふことが出來ないとするならば、三町歩作つて居る者はあとの二町歩を政府が買つて、其の地料を私が五圓で付けて置いたと同じやうに、三十年も五十年も同じ五圓でやつて居つたやうに付けて置いて、其の相場を上げるか上げないか、斯う云ふことも聞きたい、是は私ははつきり此處に特筆大書して置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=73
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074・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) どうも多少誤解があるのですが、私共は何も共産黨の手先になつて居る譯でも何でもないのでありまして、政府は政府として獨自の立場に於て色々な政策を致して居る譯であります、地主の保有米に付きましては是は物納の時には或程度の保有米と云ふものが自然に認められて居つたのであります、二十一食糧年度に於ては、大體全國で百萬石あたりかと思ひますが、併し此の物納小作料が、先般議會を通りました農地調整法改正に依りまして、金納小作料になりましたが故に、來年度からは必然的にそれがなくなつてしまふことになる譯であります、それから今度の農地法で小作人が一町歩しか買へないと、斯う云ふ御話でありましたが、それは必ずしもさうではないのでありまして、小作人が一町歩しか買へないと云ふ風に別段制限は致して居るのではありませぬ、一町歩と云ふことの制限は、不耕作の地主が、自分の手に保有して置ける耕地の面積が一町歩と云ふことであります、今迄の農地法では、全國平均まあ五町歩と云ふものが、在村地主が持つて居た譯でありますが、今囘は内地に於ては概ね一町歩、北海道に於ては平均四町歩と云ふものを、自分の手に、自分が耕さずに持つて居れる、斯う云ふのであります、從ひまして小作人が自作人にならうとする時には、何も一町歩しか買へないと、さう云ふ譯ではないのでありまして、唯今囘の農地改革は、出來るだけ多くの小作人に土地を持たせようと、斯う云ふ趣旨が入つて居りまするので、一人で自分が耕しもしないのに、三町なり五町なりを買ふとか、或は二町にしても三町にしても買ふと云ふことは、是は自作農創定の趣旨に反しますので、さう云ふことをやらないと云ふことだけなのでありまして、そこの所は一つ誤解のないやう御了承を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=74
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075・菅澤重雄
○菅澤重雄君 内地に於ては三町歩以上は大體持てないやうに承知して居つたんだが、北海道は十何町歩か……二町歩か三町歩と云ふやうなことを、新聞で見たんですが、是は内地に於ても私は北海道と同樣土地があると考へられる、又北海道より以後に開墾になつた場所が多い、さう云ふ所は何千年來もう開墾が出來なかつた、それは開墾する要素が足らなかつたので、井戸を掘るにも百五十尺も深く掘らなければならぬし、それは容易な金では出來ない、五千圓も一萬圓も掛けなければ井戸が掘れない、所謂飮料水がない、それから防風林もない、人心の統一も何も出來ない、一村を成し、一部落を成す要素がないから、何千年と開けないであつた内地の開墾地がある、さう云ふ所は北海道と同樣の措置でなければならないと思ふ、從つて其の土地は三町歩以上作らなければ生活が出來ない、現に私の小作人で六町歩作るのもありますし、七町五段作つて居るのも隣村にあります、さう云ふやうな土地は、所謂三里塚の御料牧場の附近ですね、硅藻土で吹けば飛ぶやうな所は、今年の春などは、三升に五升に八升と云ふ收穫であると云ふので割當をやつて居ります、ですから肥料が無ければ――肥料の力で收穫をしたんですから――絶對に麥が穫れない、從つて澤山の土地を作らなければ生活が出來ない、硅藻土であるから土地を耕すのに澤山の場所が要る、壤土と較べれば一年でも三倍以上の不耕作が出來る、さう云ふやうな土地ですから、北海道と同樣の取扱をしても宜いのではないかと、斯うも考へるのですが、内地は何處迄も其の寸法で行くのならば、是は少しく農林省が見方が違つて居やしないかと思ふのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=75
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076・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 其の點は例外を認めて居ります、土地に依りまして、例へば燒畑であるとか、さう云ふやうな劣等地に付きましては、例外を認めて居る譯なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=76
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077・菅澤重雄
○菅澤重雄君 例外がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=77
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078・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) ええ、例外を認めて居ります、それから經營の面に付ては、自分で自作をして居る、現に自分で自作をして居る者に付ては、三町歩と限つて居ないのであつて、經營面に於ては、是は原則としては、現在まあ自由に認めて居る譯であります、現在自家勞力で五町なら五町耕して居ると、斯う云ふ者は其の儘五町を持つて居つて宜い譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=78
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079・菅澤重雄
○菅澤重雄君 他から小作人は入りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=79
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080・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 小作に出さず、自分で自作して居る、勞力が足らぬから日傭ひでも傭つて五町なら五町本當に耕して居つて、立派な農業者だ、さうして相當の生産を擧げて居ると云ふことを農地委員會で認めますれば、其の儘經營して行つて宜いことになつて居ります、從つて經營の點に付ては、例へば會社なんかが自分は本當に農業をやる積りはないのでありますけれども、食糧獲得の意味で大きな土地を持つて居ると云ふことは、形式的には或程度自營と言へますけれども、農業と云ふ點から言ひますと、生産能率は少しも上つて居ない、寧ろさう云ふものは專門の農家に一町なら一町耕さして行けば宜い、さう云ふものは三町歩を越えて持つことは出來ない、斯うした土地を開墾しようと云ふことで行つて居るのでありますが、實際上現に自分で耕して、自家勞力が手不足で、多少日傭ひなら日傭ひを傭つて三町なり三町五段、四町なり耕して居るものは其の儘認めて行つて、三町歩に削ると云ふ考ではありませぬ、今度の要綱はさう云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=80
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081・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 此の種の緊急勅令と云ふものは謂はば應急處置で、應急處置であるならば軈て取外すのぢやないかと思ふのでありますけれども、どうも私考へて見て取外す時機がないかのやうに思はれるのです、それは供出制度と云ふものが無くなれば此の制度は要らなくなるのでありませうけれども、どうも考へて見ると、供出制度と云ふものは永久に續くやうな氣がするのですが、それは如何でありませうか、即ち數日前發表されたあの政府の國土計畫、あれに依りますと、農地が五箇年間に七百五十萬町歩、詰り現在より百五十萬町歩増、人口は八千萬、米の最低生産額六千萬石、最高八千萬石、所要額が八千七百萬石、一人一石八分と計算してありましたが、さうすると平年七千萬石生産するとしても、千七百萬石は不足である、是は永久に不足なんです、殊に是から進んで六年、七年となれば、農地の増加率は前の五箇年計畫のやうには行かない所謂遞減すると思ひます、其の外開墾開拓も其の割合に進まぬと思ふし、之に反して人口の方はあべこべに殖えて行く、人口の方も國交が恢復して、外國へ移民するとか植民するとか云ふことがあれば、是は幾らか減ることがありませう、まさか産兒制限と云ふこともやりますまいから、人口の方は遞増して來る、さうなると其の不足と云ふものは段々大きくなつて來る、言ひ換へれば此の供出制度と云ふものは永久になくなることはないと云ふ風な感じを懷くのであります、さうなると此の緊急勅令も應急手當でなくて、ずつと永久のもののやうに思はれますが、其の點は如何でせうか、此の緊急勅令と云ふものは外す時機がなくなつてしまふのぢやないかと思ひますが、御考はどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=81
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082・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は供出制度があります以上は必要だと思ふのでありますが、日本が早く講和條約を結びまして、日本の經濟が出來るだけ早い機會に建直りますれば、又事情も變つて來ると思ひますので、出來るだけ早くさう云ふ風に成るたけ巧く進んで行くやうに是非して行きたいと思つて居ります、供出制度があります以上は、是はどうしても置いておかなければなりませぬ、將來のことに付きましては、色々事情や條件が變つて參りまして、今から一概に永久に供出制度を續けると云ふことは考へられないし、さう云ふことであつては日本國としては大變でありますので、さう云ふことのないやうに一つ進めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=82
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083・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは今日は是で散會致します、明日は本會議がございますから、本會議の散會後に御集りを御願ひ致します
午後三時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=83
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084・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 佐竹義履君
委員 侯爵 大久保利謙君
侯爵 前田利建君
子爵 今城定政君
子爵 秋田重季君
子爵 土屋尹直君
林春雄君
男爵 稻田昌植君
男爵 西酉乙君
男爵 前島勘一郎君
中村藤兵衞君
山崎延吉君
松本學君
奧村嘉藏君
菅澤重雄君
原田讓二君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 長谷川清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00219460909&spkNum=84
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