1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○食糧緊急措置令(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月十日(火曜日)午前十時三十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=1
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002・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 是より昨日に引續き委員會を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=2
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003・秋田重季
○子爵秋田重季君 先達てから新聞で、又世間が非常な關心を持つて居りまする小麥粉の中毒事件に對して、昨日御答辯がありましたが、どうもはつきりした御答辯がありませぬし、政府として餘りにそれに對して誠意のないやうな御答辯を拜聽したのです、又患者に對しての處置に對して、どう云ふやうな結果を得られたか、それに付ても御答辯を願つたのですけれども、どうも調査しても分らぬと云ふやうなだけの御答辯で、甚だ不滿足を感じて居りましたので、それ以上申上げるのも、却て不愉快を感じたやうな次第なのであります、でありますからして、重ねての御質問も致さなかつたのであります、今朝の新聞を見ますと、又荻窪方面に中毒らしいやうな記事が出て居りまして、段々と世間に粉と云ふものに對する不安を感じさせるやうな状況になつて來たのぢやないかと思ふのであります、それで粉を食べながら、どうも此の粉は中毒を起しはしないかと云ふやうな不安を持つて、家の者も食べて居るやうな始末でありまして、或所では粉を配給されて、是は大丈夫かと言つて聽けば、先づ犬に食べさせて御覽なさいと云ふやうなことを言つて居るやうな配給所もあるやうに聞いて居るのであります、是では粉に對して非常な不安を懷きながら食事をして行くやうな結果になるだらうと思ふ、又さう云ふ不安を持つて食べたら、必ず腹痛を起すか、下痢を起すか、中毒、を起すに決つて居るのであります、さう云ふやうな状況でありますから、もう少し政府が誠意を以て御研究を願はなければ、折角主食の代用として粉を配給されるのに、斯う云ふやうに不安を持ちながら、心配しながら食事を攝つて居ると云ふやうなことは、非常に健康上、衞生上、面白くないと思ふのであります、もう少し徹底してそれをはつきりとして戴いて、それに對する國民の不安を取除いて戴きたいと思ふのでありますが、十分なる御調査を願ひたいものと思ふのであります、重ねてしつこく御尋ねするやうでありまするけれども、又今朝の新聞を見まして一層斯う云ふ感を懷いたものですから、重ねて又御伺ひする次第なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=3
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004・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、其の前に御斷り申上げて置きたいのですが、私の昨日の御説明が不十分でありまして、秋田さんの御不滿を買ひましたことは誠に遺憾に存じます、實は政府と致しましても勿論東京都、警視廳、其の他最近では御承知のやうに檢事局迄乘出しまして、總動員で調査を致して居るのであります、偶偶まだ結果が分りませぬ爲に其のことを申上げた譯であります、何と致しましても御話のやうに、事主要食糧の問題でありまするし、消費者が不安を懷くやうなことになりますと、是又御話になりましたやうに、影響する所が極めて甚大でありますので、各方面總動員で努力を致して居る次第でありまして、尚引續いてそれは致す積りで居りますので、其の點はどうぞ御了承を願ひたい、と思ひます、それから荻窪の問題でありますが、是も私此處の參る直前に報告を受けたのでありますが、此の前の粉で中毒症状を起した人の中で、申告漏れと申しますか、調査の漏れて居つた人が追加されたと云ふ報告を受けて居ります、尚殘つて居りまする小麥粉の囘收に付きまして、一部は惠比壽の倉庫にあつたのでありますが、それはもう押へて調査をして居ります、尚消費者の方に廻りましたものに付て一部囘收漏れのものがあつたやうでありますが、警察署長、それから町會長、是等の人が兩方で囘覽板を廻して、殘つたものを全部囘收するやうに此の前もやつて居つたのでありますが、尚殘つて居る向もあるかとも存じまして、さう云ふ風な手配も取つて居ります、併し御話になりました根本的の調査と云ふ點に付きましては、手を緩めずに、先程申上げましたやうに、あちらこちらの方面から調査を進めて一日も早くはつきりした結果を得たいと云ふので焦慮して居るやうな状態であります、どうぞ其の點御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=4
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005・秋田重季
○子爵秋田重季君 先程も申上げました通り、市民が非常に不安を持つて食事をして居るのでありますから、一日も早く御調査願ひまして、其の不安を一つ取除いて戴くやうに、はつきりした發表をして戴きたいと思ふのであります、さうでないと何時迄も何時迄も不安を持つて食事をしなければならぬと云ふやうなことになりますから、どうぞ其の點十分御注意を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=5
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006・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 本改正令第九條のことでありますが、青果物、魚介類の統制に關する勅令、又それに必要なる命令と云ふことに付て、其の現在及び御研究中の將來に發せらるべき命令の内容に付て御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=6
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007・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 此の勅令に基きました青果物の省令は、是は委員會の際にも御説明申上げましたやうに、水産物及び青果物に付きまして、三月及び四月にそれぞれ統制規則を公布致しました、其の準備を地方廳と能く打合せを致しまして、現在其の進行途中にあるのであります、其の主な内容を申しますと、生鮮食料品に付きましては、根本の狙ひは統制の爲の統制に墮することのないやうに、うまく出荷竝に集荷をやつて行かう、そこで出荷の點でありますが、從來は例へば農業會なら農業會と云ふ風に、一つのものに決めて居つたのでありますが、必ずしもそれに拘泥せずに、昔郡區域で青果物の出荷組合と云ふものがございましたが、さう云ふやうな纏つた所で出荷組合を指定して、勿論全體の計畫は自治的に農業會が出荷計畫と云ふものを立てて參るのでありますが、併し其の實行に當りましては、必ずしも農業會と云ふことに限らず、例へば廣い區域の中で蔬菜の集散地と云ふものが、其の廣い區域の一部に、例へば二箇町村でありますとか、三箇町村でありますとか、斯う云ふ風に纏つた所では、必ずしも其の全區域を含めた農業會の支部と云ふやうなものでなくても、それ等の町村の區域で出荷組合が從來からございますので、さう云ふやうなものを出荷團體に指定をすると云ふ風なことを致しまして、出荷の活溌化を圖つて行きたいと考へて居るのであります、それから荷受の方でありますが、此の荷受の方も必ずしも、東京で申しますと、東京都の青果物統制會社と云ふものが戰爭中は唯一の荷受團體でございましたけれども、必ずしもそれに限らないで、或は農業會自體が荷受團體として生産地からのものを其の儘自分が荷受けをすると云ふやうなことも認め、更に又是は出荷と同樣に、荷受機關の指定も總て地方長官に一任はして居りますけれども、農業會が直配所を持つて、例へば全國農業會が東京都に直配所を設けて、さうして直接消費者に賣ると云ふやうな、從來と違ひまして、統制の爲の統制に墮せずに、出來るだけ産地の出荷を殖やし、又消費地への入荷を促進すると云ふやうな見當で以て進めて居るのであります、水産物の統制の方も大體同樣の狙ひ方でありますが、此の方は寧ろ統制と同時に、御承知の油の「リンク」制と云ふものを相當重要視致しまして、即ち主要な水揚港に水揚せられまする魚と油等を「リンク」致しまして、此の油は是も御承知のやうに聯合軍から最近は月々一萬「キロ」以上の油を貰つて居るのでありますが、此の油を「リンク」致しまして、水揚港に於て水揚せられたものに付ては、計畫的に大消費地及び地元の消費都市と云ふ所に對する配給計畫と云ふものは中央と地方と相談の上で立てて居るのでありますが、其の根本は飽く迄油の「リンク」、或は資材の「リンク」と云ふもので出荷を刺戟致しまして、生産を助長致しまして、それを正規の「ルート」で流して行くと云ふ狙ひを以て進めて居るのであります、尚色々改善の餘地があるかと思ひますが、只今の所はさう云ふ方法で進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=7
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008・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 此の水産物關係で大體設備の出來て居る所では、相當に油との「リンク」制其の他で以てうまく統制が行渡つて居るやうに思ひますけれども、一般の小さな漁業をして居ります、油の消費しないやうなものは、非常に是は農産物以上に闇が旺盛になつて居るやうに思ひますが、其の方の統制に付て何か御考がございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=8
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009・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、御話のやうに油で「リンク」するものに付ては、是は特に大量的な水産物に付ては可能でありまするし、又或意味に於ては非常に歡迎もされて居るのでありますが、併し小さい、特に沿岸の漁業と云ふものに付てはなかなか此の統制は困難でありまして、御話のやうな點があらうかと存じます、從つて是等のものを總て引括めて統制することが宜いか惡いかと云ふやうな根本的の問題もあらうかと存ずるのでありますが、從つて此の統制は非常に困難であらうかと考へます、そこで之を一面放任して置いて御話のやうな色々弊害が出て參ることも豫想されるのでありまして、是等は結局御承知の漁業會と云ふやうなものがあるのでありますが、さう云ふやうな所で共同販賣をさせると云ふやうな自治的な方向に持つて行きまして、それに依つて出來るだけ一般の統制の枠を亂さないやうに進めて行く、指導して行くと云ふ以外には現在の所なかなかむつかしいのぢやないか、又之を洩れなく拾ひ取つて、さうしてがんじ絡めに統制の中に入れると云ふことに付きましても一面弊害も考へらるることと思ひますので、只今の所はさう云ふ方法で行くのが宜いのぢやないかと斯樣に實は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=9
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010・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今左樣な小さな漁業に關しましては、漁業會の手にさへも渡らずに闇になつて居りまして、特に販賣組合のやうなものには全然廻つて來ないやうな状態にありますが、組合とか漁業會とかの事業を御監督になつてさうして闇を防止されて、殊に國内の湖畔で行はれて居るやうな漁業は、相當地方の物價にも影響し又青果物の供出の方にも影響して居るやうに思ふのであります、別に政府としてはそれを統制強化すると云ふやうな御考はないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=10
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011・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 只今申上げましたやうにピンからキリ迄總て網の目に掛けて統制すると云ふ點に付ては、尚考慮を要する點があるかと思ひますが、併し御話になりましたやうな風に、他にも大きな影響を持つと云ふものに付ては、是は指導に依つて統制を正常の「ルート」に上せるやうにしなければ、一般の方面から見た、公平感の觀點から申しましても、却て惡い弊害があらうと思ふのであります、實は今湖面に付ての御話がございましたが、海上に付きましてもさう云ふ事例がございます、本當に小さい手釣等でやつて居るものは別と致しまして、仲で仲買が掻拂つて、さうして一消費都市の一部に……例へば料理屋とかさう云ふ方面に持つて行く、其の爲に非常に惡い影響を與へて居ると云ふ事例もあるのであります、斯う云ふものに付きましては地方の監視船が沖へ出まして、さう云ふものを取締るとか、色々具體的にはさう云ふやうな不正な、又一般に惡い影響を與へるものに對する取締を實は致して居るのでありますが、方法としてはさう云ふ方法で參る積りで居りまするけれども、併し本當に小さい手釣のもの迄統制すると云ふことは、是はもつと考へる餘地があるのぢやないか、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=11
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012・前田利建
○侯爵前田利建君 實は昨年度の供出が何故不振であつたかと云ふやうな方面の御説明は、昨日もございましたし、其の他方々でも言はれて居りますので、私達大體了解して居りますが、去年の御話を例に取りまして考へて見て、實際問題としまして、其の供出の配給とか、或は表向きに戴きます全體の生産高と云ふやうなものに付ても、相當差額があり、其の所謂あとのものがどう云ふ經路で、どうなつたかと云ふ方面のことを御知らせ戴ければ大變結構だと思ふのであります、例へば實際に於て、御承知のやうに米なら米の闇相場が、今月は幾らになつた、來月は幾らになつたと云ふことが半公然と行はれて居ると云ふことは、相當廣汎に横流れが行はれて居ると云ふことを御考にならなければならぬのであります、是が事實に於て大した餓死者も出なかつたと云ふことは、進駐軍の放出に依ることも多大にございませうが、實際に於て、さう云ふ表向きでないものが相當に行渡つて居たと云ふ實情にあるのぢやないかと思はれるのであります、從つて去年の裏の面の實情と、それに對する例へば此の間も、今年の分に付て、一定の配給をした後は自由販賣にすると云ふやうな説がありましたが、尤も是は御否定になりましたけれども、是なんかも多少裏の意味を合理化しようとするやうな精神ぢやないかと思ふのであります、それを御否定になつた場合に於て、さう云ふ裏の途と云ふものを防ぐ意味に於て具體的な方法でなしに去年に比して大局的に今年のやり方の御考を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=12
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013・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 昨年の供出殘の米の行方に付ての御尋でありますが、是は具體的に數量がどの程度どの方面に流れたかと云ふことに付きましては、實は正確に私共掴み得ないのでありますが、併し想像せられますことは、又事實地方の農民、域は指導者の人々の言つて居りますることを綜合し、又我々が目撃致して居りまする點を綜合して申上げますと、先づ第一に農家が相當食込んだと云ふことは事實であります、戰爭中は御承知のやうに一部警察權の發動迄致しまして、供出割當の完遂に突貫したのでありますが、從つて米と云ふものは必ず政府に供出割當は出すべきものだ、又出さなければならぬものだと云ふ觀念が農家の間には相當根強く入つて居りましたことは事實であります、從つて全國的に申しますと、一部に供出を完納致さなかつた農家もありまするけれども、全般的に申せば、一昨年は三千七百萬石の供出割當が百「パーセント」を突破したのであります、それから一昨昨年は三千九百萬石の供出割當でありますが、それも百「パーセント」突破して居ります、斯う云ふ事態でありまして、而も三千九百萬石の一昨昨年の供出割當は、既に二月の下旬には九十六「パーセント」になり、三月上旬には九十八「パーセント」、中旬には九十九「パーセント」と云ふ風に、三月中に殆ど完了致したのであります、それから一昨年の三千七百萬石の割當の場合も、三月の下旬では九十四「パーセント」と云ふのでありまして、四月下旬には九十九「パーセント」になつて居る、結局百「パーセント」を超へたのでありますが、斯う云ふ風に供出はもう出すべきものだし、又取られるものだと云ふことでございましたから、斯う云ふやうになつたのでございますが、併し終戰後のあの情勢の下に於て、而も統制撤廢の聲が滔々として現れ、具體的には生鮮食料品の統制撤廢の形で現れたと云ふやうなことから致しまして、もう戰爭中のやうに米は出さなくても、宜いのだと云ふやうな聲が一般に擴がりましては農家としても出來るだけ今迄米を節約して外のものを食つてやつて居つた者も、米をどんどん食ふと云ふ食込の事實は、是は確かにあつたと思ふのであります、從つて後から供出が遲れて參りました際に、そんなことなら早くやつて呉れれば宜かつたと云ふやうな聲を聞いたことも二三に止まらないやうでございました、併し全般的に申しますと、農家の食込以外に闇に流れたと云ふことは、是は相當の數量であつたらうと思ふのであります、此のことも昨日土屋さんから御話がありましたやうに、當時の状況、特に二月危機、三月危機、四月危機と云ふ風に、一般に大量飢餓に對する危機説、食糧危機の聲が新聞紙では勿論報道され、又其の他の部面に於きましても報道され、政府に於ても或大臣が大量飢餓のことを新聞で報道されたと云ふやうなことから、一般に非常に先行不安を來したのであります、其の最も顯著な例は北海道であります、北海道では昨年は例年にない凶作であつたことは事實でありますが、其の半面一般的に今申しますやうな食糧危機が非常に深刻に傳へられ、更に「ソ」聯の進駐と云ふやうなことが二囘に亙つて相當流布された、斯う云ふやうなことから總ての人が、農家は勿論、先行不安で抱へ込むし、消費者は消費者で相當の無理をしてもそれを買出をする、親戚縁故を頼つて買出する人々もありましたけれども、併し又さうでなくて大量的に買出をする、物交をやる、斯う云ふやうなことで闇、横流れと云ふものが相當多かつたらうと思ふのであります、就中集團的の買出、是は最近は内務省に於きましても相當強く現地の進駐軍とも連絡を取つてやつて戴いて居りますが、一時は第三國人の集團買出しと云ふものは目に餘るものがあつたのであります、之に依る買出しと云ふものも相當大きかつたと思ふのであります、大體今甲しますやうな三つの點に亙つて物が流れたと云ふやうな状態でありました、そこで本年の行き方をどうするか、是は昨年の色々具さに經驗致しました弊害を除去すると云ふ點に、最も主力を注がなければならぬことは申す迄もない點でありまして、昨日土屋さんの御質問に對して御答へ致しましたやうに、農家に對しましては十分に保有量と云ふものを認めまして、其の爲に昨年のやうに勿論是は絶滅は困難ではあらうと思ひますけれども、無理をして生産量を隱すと云ふやうなことのないやうにさせると云ふことが一つの大きな狙ひでありますが、同時に消費者に對しましても、幸ひ本年は豐作でもありまするし、聯合軍の了解を得次第、具體的に増配を實行すると云ふことに依つて消費生活の安定を圖つて行く、さうして勿論一方では購買力の減少と云ふこともありまするが、併し現在の二合一勺で、而も缺配があるやうな事態で、それでやつて行けと云ふことは、是其のこと事態が無理なのでありますから、配給量の増加と同時に、それを十分確保すると云ふことに依りまして、生産者に對しても、又消費者に對しても、さう無理なことをして迄闇買を起すことのないやうな事態に持つて行くと云ふことが、實際に食糧需給の操作の觀點から申しましても、又政治的の意味から申しましても特に必要であらうと存じますので、昨日申上げましたやうな方法で進んで行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=13
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014・前田利建
○侯爵前田利建君 それで今の御話は能く分りましたが、昨日の御話で今年度は非常な豐作であるに拘らず多量の輸入食糧を入れなければならぬと云ふ御話であつたのでありますが、今年のやうな豐作と云ふものは將來外地のなくなつた日本に於て平均作であるとは考へられない、下廻る可能性の方が多い、其の場合に日本の、日本人全體の何と申しますか、食生活の方式と申しますか、從來餘りに海外のみに依存し過ぎて居たのではないかと云ふ氣がするのであります、是は長い傳統でありますから、茲に直ちに變へると云ふことはむづかしいと思ひますが、例へば西洋人の食べるものを考へて見ましても、肉食と言はれて居る位で肉が主になりませうが、それを假に副食物を日本式に考へて見ましても、主食の麺麭と云ふものを比較して見ると、其の麺麭の量と云ふものは極めて少ないのであつて、昔から合理化と言ひますか色色な物を食べると云ふことに依つて、適當なる榮養を攝つて居るのぢやないかと思ふのであります、日本人はそれを米のみに依つて、殊に農村の連中とか、或は實際の勞働に從事して居る者の食事と云ふものは、殆ど米に依存する、從つて米の含有して居るものからして、或程度非常に餘計食はないと榮養が保たれない、之をもつと合理的にして、比較的米を少くして、野菜とか魚とか言ふものを多く食べると云ふ方法に、次第に指導して行くならば、米と云ふもの全體の消費量が餘程減るのぢやないかと云ふ氣がするのでありまして、丁度戰爭以來米が減つて不自由であり、且今進駐軍が來てさう云ふ食事を見せ付けられ、又粉の配給に依つて麺麭と云ふものが非常に普及されて居る現在は、さう云ふ方面の指導に最も好い時機ぢやないかと思ふのであります、政府としてさう云ふ方面の合理化と申しますか、さう云ふ方面の宣傳を御やりになる御意思があるかどうかと云ふことを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=14
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015・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申します、仰せのやうに今後の日本の食生活と云ふものの方式は變へて行かなければならぬと考へます、それは勿論此の食生活に付きましては、多年の慣習と申しますか、さう云ふやうなことから致しまして、なかなか一朝一夕、短期間には困難な點もありまするけれども、一面又供給の點で、例へば肉食なら肉食と去ふことに致しましても、其の肉の供給源と云ふものが直ちに得られるかと云ふと、又困難な事態であることも御承知の通りでありますが、併し長い目で見て參りますると、例へば日本の水田農業と云ふものに付ても、面積の上に於て當然制約を受けなければならぬ點もあります、從來の澱粉質にのみ多く頼つて居つた食生活と云ふものは、榮養の觀點から言ひましても、どうしても是は改良して行かなければならぬと思ひます、勿論最近の聯合國の放出食糧に依る食生活に於きましても、是は少し餘談でありますが、我々以上の年輩の者は相當是で實は苦痛を致したのでありますが、併し我々の子供邊りを考へますと寧ろ麺麭食を喜ぶと云ふやうなことでありまして、食生活の改善に必ずしもさう困難なことではないと存ずるのであります、從つて現在差當り手を盡して行かなければならぬことは、粉食の普及と云ふ問題であります、此の點に付きましては從來も民間に於ても色々唱道せられ、殊に貴族院に於かれましても、粉食問題に付ては豫ねて唱道せられて居つた向もあるのでありますが、私共も將來の食改善の方向としては種々の點に付て、粉食と云ふ問題が、相當大きく取上げられなければならぬと考へて居ります、現在粉食の指導に付て、特に其の道の權威の方、又此の點に付て非常に御熱心な方々を煩しまして、徐徐ではありまするけれども、手堅く又末廣がりに普及さして行くやうな方法に付て、今御骨折を願て居るやうな次第であります、政府としましては此の點に付て相當力を入れて參らなければならぬと考へます、同時に問題は蛋白資源でありまして、是も先般來、豫算總會等に於きましても、水産の問題に付て相當強調せられ、又色々の説を拜聽したのでありますが、水産の増殖に付ても政府としては力を入れなければならぬと考へて居るのでございます、更に有畜農業の觀點、農業經營との結び附きから申ましても、又食生活の改善の關係から申しましても、畜産資源を殖やすと、現在御承知のやうに飼料事情其の他で相當窮迫した情勢であつたのでありますが、此の水産と畜産の増殖と云ふことに、力を入れて參らなければならぬ、斯う云ふ風に政府としては考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=15
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016・前島勘一郎
○男爵前島勘一郎君 昨日農林大臣の御答辯に依りますと、供出未完了の分は、其の中に新米も出廻つて參りますので、どうなるか分らぬと云ふやうに承つたのでありますが、此の未完了の數量は現在どれ位殘つて居るのでございませうか、承りたいのでございます、さうして此の未完了の農家に對しては、一方に於て完全供出をなした農家があります、又他の一方に措置令に依りまして強權が發動せられて、強制的に買上げられた農家がありますのに、一方に於て産米を闇に流して不當利得をして居る、又自ら飽食して涼しい顔をして居る農家があると云ふことは、何か我々の氣持として割切れないものがあるやうに思はれるのであります、尤も割當の不適當なものや、農家の個々の事情も考慮に入れる必要はあるでありませうが、是等の供出の殘つて居る農家に對しては、どう云うふ御處置をなさる御積りでありますか、政府の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=16
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017・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 昨年は米の供出割當は約二千二百萬石と致したのでありますが、最近迄に米の供出を見ましたのは約二千萬石でありまして、二百萬石が米としての、我々當初期待して居りました數量よりも減つて居るのであります、そこで此の二百萬石の問題でありまするが、此の六月に馬鈴薯と麥の供出の割當を考へました際に、從來の此の農村に於きまする供出の状況竝に農家の保有の状況と云ふやうなものを睨み合せまして其の後始末を馬鈴薯と麥でやる、從つて其の意味から申しますと、昨年の米と本年の馬鈴薯、麥は綜合供出と云ふやうな意味合になる譯でありますが、さう云ふやうなことで、市町村食糧調整委員會に總浚ひをして貰つて、それに依つて後の馬鈴薯、麥の供出割當を決めて行かう、斯う云ふ方向で實は致したのであります、勿論市町村の食糧調調委員會と云ふものが、發動が不十分な爲に的確に行つて居らない所もあらうかと思ひますが、考へ方と致しましては、さう云ふ方向で參つたのであります、さう云ふことを致しました趣旨は、是は只今仰せになりましたやうに、矢張り又正直者が馬鹿を見たと云ふやうな不平の起らないやうに、又公平の觀念に於て、支障の存することのないやうにと云ふやうな觀點から致した積りであるのであります、さうして此の何處迄も行くやうでありますが、馬鈴薯、麥に付ての供出割當の殘りのものに於ての締め括りでありますが、之を今囘の米、甘藷の供出に際しましては、其の殘を保有量としての中に計算をしてやつて行くと云ふやうなことで、何處迄も締め括りの途を講じて參りたい、斯う伝ふことで進んで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=17
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018・前島勘一郎
○男爵前島勘一郎君 さうしますと、麥や馬鈴薯の生産に對して割當が色々ございますが、其の供出が割當量に足りない供出をした農家に對しては、又其の非常に惡徳的に供出を怠つた農家に對しては、矢張り強權發動が行はれるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=18
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019・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 強權發動の對象としましては、現在の處、此の腐敗し易い芋類は入れて居らないのでありますが、米麥を現在對象にして居りまして、麥に付きましては、強權發動は必要な折を見てやりたい、是は勿論衆議院に於きまする論議の結果に基きまして、市町村の食糧調整委員會、或は道府縣の食糧委員會の申請に依つてやると云ふことには致して居りますが、強權發動はやつて行きたい、現に一部の地方では、食糧調整委員會が、一つどうしても聞かない惡質な農家に對しては申請をしてやつて貰はうぢやないかと云ふやうな聲のあることも耳に致して居るやうな情勢でありまして、強權發動は最後の締め括りとして是非存置すると同時に、必要に應じて發動して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=19
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020・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 農林大臣に伺ひたいのでございますが、最近農村に於て色々考へることは、將來不安と云ふことが農家の側に多いのでございますが、第一に米の專賣のことに付て本會議で御答辯を伺ひましたが、米の如く、畑と違ひまして、非常に生産に苦心を要するものに對して專賣をすると云ふやうに脅かされることは、農家の不安を非常に増長するものでございますので、此の際米の專買は絶對にしない、さうして安心して米生産の絶對量を殖やし、決して自家用のみに滿足せず、勞力を掛けても國家の爲に働けるやうにと云ふやうに、專賣は絶對にしないと云ふ御言明を承りたいと思ひますが、それと併せまして、強權發動の將來の不要になる、停止の時期に付て、昨日他の委員からの御質問に對して、御答辯を伺ひましたが、其の將來停止するに持つて來る方法に付ての御抱負を伺ひたいのでございます、尚是は聯合軍の日本に對する食糧品に對する政策にも關係のあることと存じますが、農林大臣の將來に於ける日本農村の指導と、聯合軍の方の考とに對する日本農村の指導の御抱負を伺ひたいと思ひます、是は農民の側と、都會の消費者の側と、又聯合軍側の立場に於て御檢討を願ひたいと思ふのでございますが、伺へますものでございましたら伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=20
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021・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へ致します、此の專賣は、私としましてはやる考はございませぬ、此の專賣論と云ふものは、是は私丁度農林省に入りました時に、昔米穀課と云ふ課がありまして、農務局の中の一課でございました、其の時には農務局に屬して居つたものでありまして、私丁度其の米穀課に入つたのでありますが、私のことを申上げまして非常に恐れ入りますが、其の時に矢張り專賣が問題になりまして、其の專賣に付きまして丁度調べろと云ふ命令を受けたものでありますから、外國の文献其の他を可なり私が調べて參つた譯あります、それから内地に於ける專賣の色々な……吉植床一郎案とか、色々の各委員から出た案も隨分私調べました、處が外國に於ける專賣をやりましたのは、確か第一次戰爭の時は「スイス」か「ノルウエー」であつたかと思ひますが、是は戰爭中、而も其の食糧の大部分を輸入に待つて居りまする國に於きまして、輸入の食糧と、それから内地の生産の食糧との間の「バランス」を旨く取つて行くと云ふ關係から確か專賣した、或は「ノルウエー」であつたと思ひますが、そつちであつたやうに記憶して居ります、其の結果は財政的に非常な負擔を負ひまして、戰爭中に於ては、戰爭と云ふ一つの必要から或程度の效果は擧げた譯でございますが、戰爭が止みますと共に、是は止つちまつたやうなことになつて居つたやうに記憶致して居ります、日本に於きましても、米穀統制法と云ふ法律が出來まして、あの恐慌の時に、日本の農村が米價の下落の爲に非常な苦況に沈湎した時に、矢張り減反案と同時に專賣案が確か色々方々で研究されたやうに思ひます、併し此の專賣案と云ふものは、其の時々に出て來ます形に依りまして、其の内容は非常に異つて居るのでございまして、例へば全部のものを全部買つてしまつてさうしてそれを政府が賣ると云ふやうなことは、成る程抽象的な論理的に考へれば一應極めて、又形式的には完備して居るやうな案でありますが、偖てそれを實行すると云ふ點から考へて見ると、是は第一、二重の手間があるし、經費が掛るし、餘程是は考慮すべきものでありまして、色々の點に於て緩和されまして、どうしても問題の焦點が常に農家の自家保有米、それから農業の生産をやつて行くに付て必要なる所の種子でありますとか、其の他のもの、其の他は飼料と云つたやうなものも入る譯でありますが、さう云ふものはもう專賣の埓外に置いてしまふと云ふことに結局は歸著して來るのであります、其の點が常に專賣の場合には一番問題になるのでありまして、それがうまく行くか行かぬかと云ふことがここに恐らく掛つて居ると私は思つて居るのであります、外國から入つて來るものの專賣は是は極めて簡單でありますが、内地産のものの專賣に付て見るとそこに非常な問題が出て來る、そこで專賣と云ふ、如何にも強力なやうな感じを受けまする行き方と云ふものは、是は遠い將來ではどうか知りませぬが、只今の状態に於ては之を今執ると云ふことは、最近一時米價の問題の時なんかに於ては、一部に於て議論になつたやうでありますが、私は其の時と雖も餘り贊成はしなかつたのであります、何故なれば自家用の保有米、それから農業の生産に必要なものと云うものは、結局は何處かに於て之は除外されざるを得ない、さうして見ると、現在やつて居る所の米穀の管理方式と云ふものと結果に於ては或程度一致する部分が非常に多いことになつて來るのであります、さうしますると現在の食糧管理法に據つて居りまする所の米穀の管理法式と云ふものを合理化しまする方が、生産農家に對しまする關係から行きましても、專賣よりも私はまあ結果に於ては宜いのではないかと、斯う思ふのであります、と申しまするのは、是は御承知のやうに、日本の農家と云ひまするものは、五百五十萬戸の農家、其の農家の營んで居りまする農業經營と云ふものが、色々の地方々々に依つて「ヴァラエティ」がありまするし、又農家其のものに付て、米作なら米作其のものに付て見ても、色々の何がある譯でありまして、それ等のものを唯形式的な專賣と云ふ形で行きますることは、どうも私としても面白くないと思ふのであります、それよりも矢張り今やつて居りまする所の供出制度、供出と云ふ名前が是は戰爭中から使つて來たのでありまして、餘り感服した名前ではありませぬが、今のやうな管理方式に依る國家の買入れ制度と云ふものをもう少し合理化しまして、そこに農民の方の生産の基礎も確立し、又農民側にも生産面に付ての或程度の自由を與へ消費者の方に於ける配給に付ても支障のないやうな此の計畫を以てやると云ふことの方が、今迄戰爭中のみならず、終戰後に於ても色々と歴史の流れに從つて我々が經て來た經驗と云ふものを活かすと云ふ點から考へましても、是は能率的であることと實は考へましたので、私は專賣と云ふものは妥當でないと、斯う云ふ考へを持つて居りましたので、本會議に於て、やる積りはないと云ふ御答辯を川村さんの御質問に對して致した譯であります、私は此の管理制度と云ふものは、今度のやり方に於ては、可なり極端で、少し言い過ぎかとも思ひますが、管理制度の行くべき或は極限ではないかと、斯う思つて居ります、今度の管理制度、言ひ換へれば供出制度と云ふものが、是は大きな將來の食糧の方策を決める上に非常に良い私は經驗になると、斯う考へて居る次第でありまして、今年の何は是非一つ色々な點に於て、從來の誤りを匡し、又新しい工夫を入れた譯でございまするので、是非各方面の御協力を得まして、圓滑にやつて行きたい、斯う考へて居る次第であります、それから強權の發動を止める時期でありますが、是は供出制度と云ふ、斯う云ふ制度が無くなりますれば、是は強權の發動と云ふものは當然無くなると思ひます、此の供出の制度に伴ひまして、實は強權の發動、其の他外國の色々の關係から斯う云ふ一つの最後の國家の締括りに依る制度を以ちまして供出制度の完遂を期して居る譯でありますが、是は政策と云ふものが總て統制と或意味に於ての自由との混合形態の組織が常に行はれると考へて居るので、それ等一般の色々な條件が變つて來ますれば、是は自由の部分が殖えて來、統制の部分が減つて來る、斯う云ふことになると思ふのであります、併し現在のやうな資材の窮屈な、最近賠償の可なり大きな枠が決りましたので、日本の經濟の再建の基礎的の組織と云ひますか、範圍と云ひますか、さう云ふものは一應決つた状態でありまするが、現在のやうな段階に於ては、一番矢張り必要なのは、是は民間及び官廳の知識を糾合致しまして、矢張り立派な、しつかりした一つの計畫の下に、勿論資本主義下に於ける計畫でありますが、其の計畫の下に有らゆる方面に於て相互に矛盾を來さないやうな政策を立つて行く、言ひ換ればそこに矢張り大きな統制の線と云ふものはどうしても存續する必要があると思ひますので、來年はどう云ふ風になりますか、全體の經濟の復興にも依ると思ふのでありますが、此の供出制度と云ふものは矢張り存續しまする、而も存續するに付ての社會的な理由と云ひますか、「レーゾン・デートル」を持つて居る間は、是はどうも強權發動と云ふものは止める譯には參らぬと、斯う考へて居るのであります、それから殊に將來はどうなるかと云ふことは、是は世界の經濟の恢復の仕方、殊に敗戰國及び勝つた國の經濟の恢復の仕方、又それ等の國々の經濟の在り方、言ひ換へれば全體の世界經濟の在り方と云ふものにも矢張り影響を受け、それとの關聯に於て考へなければなりませぬので、今何時になつたらどうかと云ふ速斷は、是は私としても下し得ないのでありまするが、それ等のことは今後共色々な世界の情勢もはつきりして來、又日本の經濟事情も今年を契機として、食糧と云ふものは比較的安定して來ますれば、問題を處理し、考へて行く上に非常に好都合になつて來るのぢやないかと、斯う私としては考へて居る次第でございます、それから最後の點は、日本の農民、言ひ換へれば殊に日本の農村に於ける人達の現在に對しまする所の考へ方、又は將來に對する或種の不安に付ての其の指導原理の問題でございまするが、實際是は日本の農村と云ふものは、矢張り社會の今の變化の影響を受けまして、相當大きな變化の過程の中にある譯であります、そこで此の頃能く聞きますことは、日本の農村の、言ひ換へますれば青年層、二十五から四十、五十位の中年層の方々は、比較的安定した、そして何か積極的なものを持たむとして居ることが看取されるのでありますが、と言ひますのは、それ等の人人が、矢張り現在に於きましては農村に於ける本當の實力を持つた人達でありますので、又それ等の人達が戰時中に於ても或程度指導の地位に立つて居つた人達でありますが、割合さう云ふ人達に於ける安定性は見受けられるのでありまするが、それ以下の若い二十年代、域は十年代の青年が方途に迷ひ、最近は農村文化に付きましても、色々の點に付て可なり、謂はば低劣な娯樂なり何なりに趨つて居る傾向も見受けられるのであります、併し私は是は斯う云つたやうな大きな過渡期に於きまする現象としまして、餘りに其の點に付て神經質に考へるべきものではないと思ふのであります、と申しまするのは、從來の農村に於きましては、是は殊に東北地方とか色々な所に於きましては、何としましても斯う云ふ例はあるかも知れませぬ、其の村の區長にしましても、部落實行組合長にしましても、村に於ては年寄りと言ひますか、可なりの老年層が、實力と言ひますか、社會的な力を持つて居つた、それで伸びむとする若い青年層と云ふものは、なかなか其の舊來の陋習を打破しまして、新しく伸びて行くと云ふ氣運には惠まれなかつたと云ふ點が、矢張り相當あつたと思ふのであります、勿論從來の秩序の中には、殊に農村に於きまするやうな急激な變化を宜しとしない社會に於きましては、日本の傳統の中にありまする良きものを脈々として傳へて居る、それを十分青年達が本當に理解するだけの知性と、それから教養のなかつた點も考へられるのでありまするが、併し一面に於きましては、長い間の傳統の中に、矢張りそれは時代の新しい動きと共に變つて、若い青年の此の盛上つて内から爆發しようとする力を十分活かすべき社會的餘裕なり、餘地がなかつたことは是亦事實であります、私が十數年前に東北、殊に秋田、山形を二週間から三週間掛つて村々を廻つて見ました時に、若い青年が一番惱みとして我々に愬へましたのは、農村に於ける青年層と云ふものが、兎に角所謂活躍の餘地のない點であつたと思ふのであります、其の状況は、私は餘り戰爭中と雖も變つて居なかつたと思ふのであります、多少は變つて居ると思ひますが、變つた點は少なかつたと思ひます、そこで將來としては、是は若いさう云ふ人達が、一面に於きましては、私は願くは、農村の社會の中、歴史の中に、又地方の文化及び中央の文化の中に存して居ります本當に良いものを自分達の面から把握しまして、それを十分に活かして戴きたい、それから又、他方に於きましては、是は其の立脚點に立つて、此の世界的な變動の中にあり、外國からも良き文化の流れが入つて來る譯でありますから、何時迄も自己と云ふものを失はずに、入つて來る新しいものの中で良いものは十分是は採入れて、そこに本當の意味での日本的な農村の固有のものを打立てて行く、農村の文化と云ふものを打立てて行くと云ふやうな、是は是非指導もし、又農村に於きまする先覺達の努力、協力と云ふものを御願ひしたい、斯う考へて居る次第でございます、是はどこの社會に於きましても、農村と云ふものが何としましても、是は其の一つの社會が、健全な發達を致しまする上に於きましては缺くべからざるものでありまして、農村が唯食糧なり、其の他必要なものを生産するだけの職能を受持つて居るとは、どうしても我々は考へ切れないのでありまして、農村と云ふものは、其の民族の新らしい血潮と云ふものを常に都會へ供給し、又民族が常に「レギュレート」して行く一つの不動な基礎を持つて居るものと、斯う私は常に考へて居りまするので、さう云ふ一つの大きな社會の構成上、又社會の「レギュレート」の上に於て職責を持つて居る農村の、而も次の時代を擔ひまする青年に付ては是非共さう云つた遲れないで其の社會の持つて居りまする少くとも水準の中に於ける知性と文化は是非持たせるやうにやつて行きたいと思つて居ります、或は農村に於ける圖書館の設置とか、又「ラヂオ」の普及とか、都會から農村への色々の働き掛けとか、さう云つたことが必要であると思ひます、最近我我の方と致しましては、實は農事振興會が各方面で講習會をやつて居るのであります、それは單に經濟のみならず技術、經營、其の他の色々な「エキスパート」、「オーソリティー」を地方へ派遣しまして、是は非常に希望が多い譯でありますが、人數を三十人とか、四十人とかに限りましてやつて居る譯であります、是は迚も熱心なのであります、集つて來まする若い農家の子弟達は實に眞劍に知識を求め、良きものを求めて居るのでありまして、是等の點に付ては、政府としましても、今囘豫算を取つて出來まする地方の模範農場を利用しますとか、其の他有らゆる機會を利用致しまして、唯經濟的な政策だけに滿足することなく、さう云つた農民の生活、農民自身の本當の意味の文化と云ふものの向上の方へ是非一つ指導を、指導と云ふと語弊がありますが、御互に研究し合つて今後の日本の礎を築いて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=21
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022・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 農林大臣に御尋ね致します、農家と云ふものは、米價が下つたからと云つて米を作らなくなるとか、或は上つたから米を作るとか、さう云ふものではございませぬで、傳統的のものであり、歴史的のものでございますけれども、目下主食品の價格ががた落ちに下るやうな傾向がございますし、又聯合軍側の御意思もありまして、又世界的豐作などと云ふものから見まして、矢張り何か日本農業の生産業と云ふのではなくて、部落の經濟的に相當指導、新らしい指導を考へなければならない時期に來て居るぢやないかと思ふのでございます、それで主食と併せて見返り品の生産とか、或は農業生産物の加工とか、さう云つた指導をしまして、聯合國側の意圖に牴觸することのないやうに、寧ろ其の意思を十分に採入れ、占領目的も十分に、寧ろ出來るだけの便宜を與へるやうにしながら、今申上げた加工とか、何か經濟的の下に農村が將來成立つやうな指導をすべき時期が、目下の急務であるやうに思ふのでございますが、其の點に付ての何か御抱負を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=22
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023・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 日本の農業が、是は恐らく近い將來に於きましては、世界の農業と接觸致しまして、若しも世界の貿易の形態が自由貿易と云ふことになりますれば、是は自由競爭の地盤に立たされざるを得ないやうになつて來ると思ひます、其の時に、日本の農業と云ふものはどう云ふやうにあるべきかと云ふ問題は、今から十分に考へて置くべきことだと思ふのでありまして、此の點に付きましては、私は矢張り一つには、日本の農業が世界の農業と言ひますか、世界の市場と接觸をすると云ふ、斯う云ふことから來まする積極的な「プラス」の面を捉へまして、日本の農業と云ふ面を出來るだけ多角經營化して行く、斯う云ふことに考へて行きたいと思ふのであります、是は日本の農業と云ふものは、北は北海道から南は鹿兒島に至りまする迄、それぞれの土地を取つて見ますと、成る程主流は米麥作と云ふものを主にした經營でありますが、最近の調査に依りますると、米と麥と甘藷乃至馬鈴薯を作つて居る農家がまあ一番多いやうになつて居ります、併し此の點だけで日本の農業の將來と云ふものを貫いては危ないと思ひます、是は輸出品に適當な氣候風土に合ふ所が澤山ある譯であります、將來はさう云ふものを經營の中と採入れまして、農業經營の面から言へば色々な各商品の價格下落から來る危險を經營全體として分散して、之を負擔すると云ふ方向に進めまするのが一つと、もう一つは矢張り農業の色々な生産と云ふものを、家畜であるとか、域は機械と云ふものを導入して、是は經濟學の方の言葉で言へば、生産要素の結合の割合を變へて今少しく資本的の要素を採入れまして、動き方と云ふものを變へて勞働の生産力と云ふものを高めて、其の面から却て抵抗的な力を強くして行くと云ふ方向に持つて行くことが必要であらうと思ひます、さうすると將來の農業政策と云ふものは今囘の土地制度が行はれました以後に於きましては、經營面に集中して來ると思ひます、さうしますと經營面に集中して來ると云ふことは農業生産を行ふのに必要でありまする所の經營、生産材の問題になつて來るのであります、家畜でありまするとか、農藥でありますとか、或は肥料、農機具でありまするとか、さう云ふやうなものになつて來るのであります、そこで其の面から將來の此の農業政策と云ふものはどうしても農工一如と言ひますか、工業と不可分、前よりもつと不可分のものになつて來るのであります、そこで日本の經濟としましては、それ等の工業面と云ふものを安い「コスト」で、而も良いものを日本の農業面に、而も相當此の戰爭以後購買力と云ふものを持つた市場としては擴大した農業の方へ、農業と云ふものを基礎にしてさう云ふものを復興し、再編成して行くと云ふことに實は懸つて居るのであります、固より私は此の農業と云ふものは農業だけて問題が解決出來るものとは決して思つて居ないのでありまして、殊に今のやうに日本の農業が大半貨幣經濟の中に足を突つ込んで居る、而も此の傾向たるや到底除去することの出來ない、又除去してはならない面に於きましては、是は工業面に於て今より一層しつかりして、今私が言ひましたやうに良い農機具、低廉な肥料、農藥にしても優秀なる農藥、さう云つた農家に不可缺な生産資材が手に入るやうになれば、是は百姓としては好んで勞力を中心にして、何處迄も謂はば自己勞働を酷使すると云ふことにはならなくなつて來るのであります、さ云ふ方に今後日本の將來の農業の指導と云ふものを持つて行くやうに實際全力を盡すべきだと、斯う自分では考へて居ります、さう云ふことを政府がやりまして、あとは農家が今度は共同の力に依つてお互に自己の經營を良くして行く、斯う云ふ風に致しまするならば、私は此の氣候の變化に富んだ、而も科學的な、まあ日本人は餘り科學を尊重しないと言はれますが、併し東洋の民族として觀ますれば最も科學的な日本に於きましては將來の日本の農業と云ふものは可なり發展する餘地が考へられるのぢやないか、さう云ふやうに又實際日本人それぞれが自覺して、政府もさう云ふ風に考へてやつて行きませぬならば、日本の將來と云ふものはさう大きな期待を持つことは出來ないと云ふことになると思ひます、是非さう云つたやうに著實にやつて行きたいと考へて居ります、固より現在に於てはそれ等を實際上行ひまする所の條件が充ちては居りませぬ、資材は足らず色々な點で、是はどちらを向いても「ネック」が餘りに多過ぎるのでありますが、是等の點を一つ々々解決する所から解決して行きまして、是非經營の基礎を固めて行きたい、斯う私は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=23
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024・林春雄
○林春雄君 農林大臣に御伺を致します、日本の米ばかりでなく、麥でもさうですが、其の他食糧の生産の量の統計が非常に不完全であります、本年など五千萬石とか言つて居りますが、農林省では六千萬石と云つて居ります、私は何故さう云ふことを申すかと言ふと、矢張り食糧は配給を十分にして行けば強權發動など用ひなくても宜くなると思ひます、刑は罪なきを期する、詰り此の法と云ふものは罪のないのを期すると云ふのでありまして、當局も勿論さうだと思ひますが、詰り百姓が好んで供出をし、我々が安く當り前の正當な値段で米なり、食糧なりを得られると云ふことになればさう云ふ問題はなくなる、併し是はなかなかむづかしいことであります、處で水産がどれ位の生産があるだらうかと云ふことを能く色々な方面で採らうと思つても實際には採れない、併し米や麥、甘藷、馬鈴薯などは正確な數が出ても宜い筈だと思ひます、唯個々の心理状態が働いたりは色々なことで非常に數が少く出たり、或は場合に依つては多く出るのですが、多く出ることはないのですが、特に米の生産高のことに付ては、先年米のさう云ふ方の專門家の話を聽いたが、維新以來ずんずん殖えて居る、けれどもあれはあの時分には少いやうに出て居るが、本當はもつと多かつた、日清戰爭の明治二十七年の時に政策が加つて俄然殖えて居る、統計を御覽下されば分ります、それから明治三十七年の日露戰爭の時に又俄然殖えて居る、二割位殖えて居る、是も矢張り一種の政策が加はつて斯うなつたので、實際はまだ澤山穫れた、斯う云ふやうなことであります、それは全國の米穀の出來方を始終見て廻つて居る一種の專門家です、後に安藤廣太郎君に聞いたら、ああ云ふのが居てなかなか正確なんだ、腰だめだから下手にぼつぼつ勘定するよりも寧ろ正確だと云ふ話を聽きました、近頃さう云ふ者が居るかどうか知りませぬが、兎に角米などは昨年は三千九百萬石、麥が本年は一千六百萬石と言つて居りますが、是は餘程少いのでありまして、殊に依ると三割も四割も多いと云ふことであります、近頃聞く所に依りますと、私は越後に關係して居りますが、越後の農家では米がないと言ふが、實は隱して持つて居つて、此の頃蟲が附いて來た、おまけに豐年だと云ふので、慌てて安く買はぬかと賣焦つて居る始末です、是等は先程から御話が出ましたやうに百姓の心理状態が働いてさう云ふ状態になつたのです、實は或田舍の農をやつて居る人に聞いたのですが、政府が此の際思ひ切つて三合位の配給をすれば供出は直ぐ出來ると言つて居ります、是は其の人の「エスティメーション」で、果してそれで行くかどうか分りませぬが、さう云ふものを持つて居ても皆が買ひに來なければ蟲に喰はれるから、と言つて直ぐ闇で賣ると云ふことも出來ないから、どうか買つて呉れと云ふことを向ふから言うて來ると言ふのですが、是は信州の例ですが、こちらで昨日菅澤さんが、さうすれば出しますよと云ふことを言ひましたが、果してさう云ふものでありますかどうでありますか、此の食糧の生産高を計算する、新聞で見ると科學的方法とか色々な方法で確かにやると云ふことを承りましたが、今迄はどう云ふやうな方法で大體見て居られたのですか、將來はどう云ふやうな方法であれを正確にされるか、統計の基礎、數字の基礎と云ふものがはつきりしなければそれから先の計畫を立てると云ふことは全然砂上の樓閣であります、是は是非やつて戴きたい、今迄なければどう云ふ方法かで必ずやつて戴きたいと思ふのであります、殊に實際是は重要な問題であります、それから先程前田侯爵も言はれましたが、食糧の色々の生産高を、國家としては色々な食糧を提供して、それで國民が適宜それを混ぜて食ふ、詰り食生活の改良と申しますか、改正と云ふことであります、是は實はむづかしい問題でありまして、私共學術振興會で數年來委員會を作つて調査をして居りますが、此處においでになる寺尾さんなども其の委員になつてやつて戴いて居るが、なかなか結論に達しないと、今度日本の領土が大分變つたものですから、例へば滿洲の豆と言つても其の豆は入らなくなる、そこで計畫の基礎が大分動搖致しましたので、まだ結論に達しませぬが、是は何れ或種の結論を得ましたならば、必ず御參考に供する時期があると思ひます、詰りさつき言はれたやうに米ばかり食つて居ると云ふのではいけないと思ふ、是は極く好い例を申しますと、一例を申しますと百姓が一升飯を食つて居る、農民が兵隊に入りますと初めは腹が減つて仕樣がない、兵食では足りない、米麥六合に色々な物を混ぜても足りない、處が一月か二月經つと食物を餘すやうになる、それは何故かと云ふと、米ばかり食つて居ると「カロリー」は餘る程あるが、蛋白其の他必要のものが足らぬから、それで身體に飢餓感が起つて來る、處が確かなものを食べて居れば飢餓感が、初めは習慣で豐滿感がないから足らぬ足らぬと云ふが、暫く經つと云ふと六合の飯を餘すやうになる、飯を餘すものは古兵、新兵は足りないで皆食ふ、斯う云ふことで働くのは古兵でも皆同じやうに働いて、重勞働の時は陸軍では五千「カロリー」以上の食物を與へるやうになつた、必ずしも分量が多い譯でない、是等の點は詰り日本の國土の地力でどれだけ牧畜が出來るとか、どれだけ水産があるとか、水産の方は餘り當てにならぬから困りますが、牧畜であるとか或は其の他野菜など植物性食物にしても、米、麥其の他色々野菜類のやうなものを適當に混入することに依つて又適當な鹽梅が出來るものでありまするが、さう云ふやうな標準は是非講じてなければならぬと思ひますが、或は農林省の方でもそんなことは自然御考になつてやつて居ることと考へますが、將來に於てはどう云ふ風な御考でありますか、それを一つ御伺ひ致したい、第三に先程秋田子爵の言はれた粉食の問題でありますが、此の粉食と云ふことが出來ました時に、私共はどうも餘り私は贊成出來ない、何故出來ないと云ふと、米ならあの中に砂粒を混ぜたりなんかして參りますと云ふと、目に見えるからそんなものは入れませぬ、粉食は田舍でも實際やつて居るのですが、藁でも玉蜀黍の軸でも何でも粉にすれば分らないと云ふので、小麥粉の中に色々な物を入れてそれで分量を殖やして來る、今度の中毒などもそんなことで何が入りましたか、佐々木喬君の話で毒分はないのぢやないかと云ふが、或はさうかも知れない、私は中毒の症状がどんな症状であるかと云ふことも新聞で見ただけではつきり分りませぬ、其の後のことも分りませぬからどう云ふ風になつたか分りませぬ、粉食には粉に對して科學的の檢査方法もやつて戴きたいと思ひます、是は是非農林省にやつて戴きたい、農林省でさう云ふ御考が既にあるならば大變結構であります、是非御考へ置きを願ひたいと思ひます、丁度酒の中に水を混ぜる分は宜いが、「メチール・アルコール」を混ぜられたら大變であります、それは「メチール・アルコール」は「メチール・アルコール」の檢査法があつて、さうしてさう云ふ飮料を賣ることは出來ないことになる、粉の中には何を混ぜても宜い、昔は能く亞砒酸の中毒がありましたが、それは鼠取りに輸入した時、亞砒酸の粉は小麥粉に似て居るので、そこで掃き寄せと稱して亞砒酸の粉の澪れたものを掃き寄せて來る、それで亞砒酸中毒が神戸とか税關のある所にありましたが、是はさう面倒なことがない、一定の檢査法を設ければ、是は小麥だけの粉である、或は外の藁が入つて居るかと云ふやうなこと位は、泥が入つて居れば尚更分ります、是等の檢査法を、一體唯粉でありさへすれば、袋の中に入つて「メリケン」粉と書いてあれば小麥粉と云ふことであるが、何か檢査法があればさう云ふやうなことを承りたい、是は農林大臣より寧ろ次官の方に承りたいが、私はそれだけ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=24
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025・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 私から御答へ出來る程度で御答へ致しまして、後は次官から一つ御答へ致します、生産高を正確に把握しますと云ふことは、是は實際上なかなか觀念的には色々な案が立ち得るのでありますが、事實問題としては實にむづかしいと思ひます、それで政府全體として實は統計なんかの矢張り整備と言ひますか、日本の統計をもう少し科學的に、言換へれば出來るだけ科學的にすると云ふ意味で統計の方の色々な改善も今研究致して居る譯でありますが、農林省としては從來は生産高を調べまするのには、是は實際檢査員なり其の他の者、又市町村調査員なりを動員致しまして、是は實地に調査を致し、又坪刈り等を致して之を集計致して居つたのであります、併し結局は是は統計を調べまする所の人達の考へ方と、それから一つには其の統計が利用されまする制度と言ひますか、それとの關係で正確な數字が出易かつたり出にくかつたり實はすると思ふのであります、例へば肥料なんかに付て言へば、是は假に段別割に肥料を何することになれば多く言つた方が得ですから多く言つて來る縣もある、供出なんかでは少く言つた方が得だから少く言つて來ると云ふやうに、人間が神樣でないのですから、そこらの所の政策的の考慮と云ふものが日本では餘りに入り過ぎて居ると私は思ふのであります、さう云ふ點はさう云ふ政策的な考慮を入れずに、實は正直な數字を出します方が是は其の人達の爲のみでなく、國民全體の結局は之が爲になるのでありまして、縣なんかで生産高を低く言つて來て、縣の爲になるかと云つたら、私は決して縣の爲にならないので、寧ろ全體が旨く圓滑に行くことに依つて却て正確な數字を出した方が縣の爲にも消費者の爲にもなると思ひますが、そこが永年の因習でなかなか正確なものが出ないのが現状であります、是は何とかして直して戴きたいと思ひます、殊に自由經濟の時代に於きましても、普通の農業關係の人達は、假に六千萬石と出て來れば其の一割なり二割なりと云ふものは「アローワンス」があつたのだ、斯う云ふことは常識であつたのでありまして、それは一つには農家の方の心理から言つて、日本で永い間物納の小作料と云ふやうな形のものがあつたので、米の收穫高其の他物納のものに付てはどうも低く減免關係で行くことが骨の髄迄滲み透つて居る、處が「キヤッシュ・クロップ」の方は、例へば繭の如きは自分が不作と云ふことになると、是は近所隣に顏向けが出來ないと云ふので、どうも高く出て來ると云ふやうな關係があつた譯です、私は是は矢張り科學的な方法でやらなければならぬと思ふ一つの何は、矢張り農業氣象と云ふものをもう少し是は政府として完備したいと思ふのであります、地方々々の農業氣象と云ふものの觀測其の他を完備致しまして、矢張り農業氣象と收穫高と云ふものと「データー」をもつと正確に蒐めますれば、是は其の時の肥料の供給であるとか、農機具其の他の經濟的な要素の供給が不變だと云ふことを前提にしますれば、是は可なり農業氣象と其の他の關係で言へば、機械的と言つては語弊がありますが、科學的に出て來るのではないかと思ひます、今年は一應さう云ふ考を採り入れたのであります、それで農林省が今割當をやつて居りますが、其の總生産高と云ふものは其の他の……それだけでありませぬが、其の他色々の調査を「データー」にして綜合的に判斷を下して、農林省は幾ら幾らと斯う云ふ數字として縣と交渉して居る、斯う云ふ風になつて居る次第であります、それから第二點の日本人の食糧内容が非常に米麥に偏して居つて、綜合的な榮養の點から缺けて居ると云ふことは是は私も全く御同感であります、併し色々さう云ふ意見がありますので、考へて居りますが、之をどう改善するかと云ふことは實際むづかしいのであります、例の國家主義者である「ナチス」の「アントン・チェスカ」が科學は獨占を破ると云ふ本を書いて居りますが、矢張り其の點に付て、成程食糧は部分的に非常に豐富であつても、食生活自體が偏つて居れば何にもならないと云ふことを強く主張して居られることを前に讀んだことがあります、其の點で我々の經驗として考へるのは、確か不況の時にやりました榮養食の問題だと思ひます、さう云ふ集團的な給食になりますれば、其の點が比較的私はやり易いと思ひますが、それを個々の家庭に於て食生活の内容を改善さすと云ふことになると、先づ主婦の頭を替へ、夫の頭を替へ、子供の長い間の食生活を變へて行くと云ふことで是はやらなければならぬでせうが、非常に困難性を伴ふのであつて、急激なる結果はなかなか得にくいのではないか、將來はさう云ふ榮養食其の他は公衆食堂のやうな所で漸次改善して行く、集團的に物を考へて行つた方が案外樂ぢやないかと思ふのであります、是はまだほんの試案でありまして、それ等の點に付ては十分色々の御意見を聽いた上で是非何とかやつて行きたい、幸に食糧が窮屈になりましたので、日本人の食生活が實質的に變つて來て居る譯であります、固より其の變り方が好い變り方かどうかは、脂其の他蛋白質供給が少いのでありますから、貧弱になつて變つて居る譯でありますが、さうでなくもつと豐富にし、御意見のやうな方に是非持つて行きたいと思ひます、さうすれば主食の數量も少くて濟む譯でありますし、色々の點で好都合かと思ひますので、其の點は今後の研究問題或は實際の施設の上に出來るだけやつて見たい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=25
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026・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 粉食に關しまして、粉の試驗の問題であります、現在迄の所計畫的に粉の試驗、檢査と云ふやうなものは實はやつて居りませぬ、先程大臣から申上げました通り將來粉食の問題が大々的に採上げられて行くと云ふ場合には當然隨伴して起る問題であらうかと思ひますが、現在の所は今申しますやうに計畫的にはございませぬ、唯やつて居りますことは、是も今後情勢が變ると思ひますが、本食糧年度に於て未利用資源と云ふ問題を採上げたのであります、其の際に勿論毒物に付ては當然未利用資源の中から外して居ります、さうでないものに付て、纖維素の多いものは消化器を害し、又人體にも有害でありますので、纖維素の多いものは未利用資源として政府の取扱ふものに含ませない、斯う云ふやうな觀點からして、纖維素の點を縣のそれぞれの衞生試驗所のやうな所で檢討して貰ひまして、さうして其の一定の量より少いものだけを未利用資源として取扱ふと云ふやうなことを致したことはあります、此の問題は未利用資源全體の、今後の食糧事情等の觀點から見まして、原則としては本年考へて居りましたやうな甘藷莖葉とか其の他の未利用資源は本來の肥料飼料に還元したいと考へて居りますので、此の問題も本年限りに終ることが多からうと思ひます、後は先程から問題になつて居ります具體的の毒物の化學的抽出試驗と云ふことだけでありまして、それ以外のものは現在の所まだ考へて居りませぬ、以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=26
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027・林春雄
○林春雄君 今の未利用資源の話ですが、本當の食糧以外のものは混ぜないと云ふならば何ですか、嵩を殖すだけの未利用資源が隨分多いのです、尚先程農林大臣から食改善の話があつたが、個々の人の食の改善と云ふことを農林省で何して戴くと云ふ必要はない、日本の國土でどれだけ食糧となるべき榮養素を産出することが出來るか、例へば甘藷を北海道に入れ、馬鈴薯を九州に植えると云ふやうなことをするとまるで駄目になる、物を育たない所に育てようと云ふのは無理です、實は私の關係して居る財團で、山梨縣の千「メートル」の高地の開拓を今年度から始めました、さうしてさう云ふ高い所で如何に人間に榮養素を興へることが出來るかと云ふ模範を示したい、無論米は作れず、麥も或はむづかしいけれども、ちやんと人間を育てることが出來る榮養のあるものを作りたいと云ふので、今年木を伐つて始めました、是はまだ出來上つて居らぬので農林大臣に自慢を申上げる譯に行かないが、私も其の内行つて見ようと思つて居ります、日本の國土狹しと雖も、探せば出來る所が澤山あると思ふ、唯無暗に、今迄稗を植えて居つたのを止めて米を作ると云ふやうな計畫では迚も駄目で、是は專門家の知識を得なければなりませぬ、實は學術振興會には總ての權威の方が集つて其のことを研究して居ります、學者が集つてやつて居るのでありますから、實際それは駄目だと云ふことになるかも知れませぬが、さうでないやうにやる積りで居ります、増産には矢張りさう云ふ分量、詰り量の問題の増産と同時に質の増産のことを御研究願ひたい、それだけを私は申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=27
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028・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 實は今日の午後は農林大臣、農林次官は已むを得ざる用事があつて委員會に御出席願へませぬことになつて居ります、幸ひ資料を御手許に配付することが出來ましたから、今日の午後は休みまして、明日午前十時より開會致します、今日は是で散會致します
午前十一時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=28
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029・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 佐竹義履君
委員
侯爵 大久保利謙君
侯爵 前田利建君
子爵 今城定政君
子爵 秋田重季君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
林春雄君
男爵 稻田昌植君
男爵 前島勘一郎君
中村藤兵衞君
山崎延吉君
原田讓二君
名古屋三吉君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 坂田英一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00319460910&spkNum=29
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