1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○生活保護法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年八月二十四日(土曜日)午前十時十二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=1
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002・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 是より開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=2
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003・榊原政春
○子爵榊原政春君 此の法案に付きまして、大臣に二三の點を伺ひたいと思ひます、此の法案の第一條を拜見致しますと、平時に保護して而して社會の福祉を増進すると云ふのを目的として居るのでありますが、從つて此の法案の趣旨は消極的な平等の保護と云ふばかりに止らずに、更に積極的に此の對象者に對しまして生業の扶助を行つて彼等に自力更生の途を拓かせると云ふ趣旨であると承知致しますのですが、此の點に付て大臣の御見解をはつきり伺ひたいと存ずるのであります、更に若し實際に於て私が申しましたやうに積極的に生業扶助を爲して行くと云ふのが目的でありとしますれば、之に對しまして具體的に政府に於かれましてどう云ふ施策を御考へになつて居らつしやるか、此の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=3
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004・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御尋でございますが、是は私共は斯う云ふ風に解釋して居るのですが、大體は此の法律は最低生活保障と云ふことが目的でありまするから、どうしても大體に於て消極的性質を持つて居るものである、併し消極的性質を持つて居るけれども、其の平等に保護することは結局、社會全體の福祉を増進して行くと云ふことになると云ふ風に大體考へて居ります、それで社會の福祉と云ふことは、例へば具體的に申しますと、文化面とか、或は精神面とかに慰安を與へる、それからもつと文化的な享樂を與へると云ふことは勿論出來れば結構なことですけれども、此の法律の期待する所はそこ迄行つて居ない、矢張り最低生活の保障と云ふことが問題の中心である、併しまあ結局それをしなくちや社會の福祉は増進しないのぢやないかと云ふやうな意味に考へて居ります、併しながら此の法律にはそれぢや生業扶助などの面はないかと云ふと、それはあるのであります、あると云ふのは最低生活を保障する意味に於て之を懶けさして行くと云ふことよりも、出來るだけ働かした方が宜いのですけれども、最低生活の保障と雖も瞬間瞬間を扶助すると云ふことよりも、矢張り生活に安定を與へると云ふことが大切でありますから、さう云ふ意味に於ての生業の扶助と云ふことは勿論あるのであります、茲に其の事項の一つとして第十一條に掲げて居るのであります、處がどう云ふことを具體的にやる積りか、或はやつて居るかと云ふ御話でありますと、扶助と云ふものは大體四百圓位の程度で扶助をしようと云ふ大體の考になつて居りまするが、衆議院などの議論では千圓位にしなくてはいけないと云ふ議論もありまして、此の點は四百圓と云ふのは行政上の一つの方針として、考へて居る譯でありますから、勿論彈力を持つて居るものであります、それから實は此の法律を拵へて居りまする時と、只今の状態との變化がありますから、勿論四百圓でいかぬと考へて居ります、相當殖やす積りで居ります、處が御承知の通りに近頃の、今の終戰後から安定經濟に亙りまする迄の經過の時代と云ふものは、御承知の通り色々なことが出て參りますので、殊に海外引揚者の問題が重大になつて參ります、約八十萬家族、三百數十萬の海外引揚邦人が日本に大部分還つて來た譯であります、是は御承知の通り日本と縁故が薄くなつて居りますし、一面に於て企業力も亦明るい人々であります、之を遊ばして置くと云ふことはいかぬと云ふことで、前内閣來此の面に對しまして庶民金融金庫と云ふものを通じて三千圓の貸付をさせやうと云ふ風の政府の方針でずつと來て居ります、處が政府はさう云ふ方針を決めましても、庶民金融金庫と云ふのは矢張り採算を無視してやる譯に行きませぬから、なかなか個人的信用のない人に向つてさう容易に貸出が出來ませぬので、前内閣に於て其の方針を決めながら殆ど實行されませぬで、三千圓のものは三四百圓辛うじて貸すと云ふことであり、而も其の範圍は極めて少かつたのであります、さうして段段引揚者が多くなるに伴ひまして其の問題がやかましくなります、そこで此の内閣になりましてから、何とかして此の問題を取敢へず解決しなくてはいかぬと云ふ目途の下に色々考へたのでありまするが、是は此の法案を説明する時にも申上げました通りに、海外引揚者なるが故に特別の方法を執る、或は復員者なるが故に特別の方法を執るとか云ふことは廢めて、一つの線から以下の者を公平に、無差別平等に扱へと云ふ大體の方針に變つたものでありますから、そこで政府としましても方針を多少變へまして、兎に角或一定の線から落ちる人で、さうして之を生業扶助したならば非常に宜からうと思ふ人を拾はうではないか、さうすれば方針に合つて居るのではないか、聯合國の指示の方針にも合ふぢやないかと云ふことで、其の方に向けまして此の生活保護の三十億圓の資金の中から先づ三億圓割きまして、是は豫算の關係はまだ協贊を得て居りませぬけれども、今年度も半分もう濟んで居りますから、さう云ふ方面に於て金は毎月々々の豫算の査定を受けましてやつて居ります、さう云ふ金を以て差繰りましてさうして三億圓を都道府縣へ補助して、都道府縣をして其の地方の實情に即應して適正なる貸付をなさしめることに致しました、尚貸付の實際事務は庶民金庫に委託して都道府縣と庶民金庫其の他關係者を以て委員會を設けて、貸付をすることに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=4
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005・榊原政春
○子爵榊原政春君 只今大臣の御説明に依りまして、私は此の法案の狙つて居る所は平等に保護するにあると言はれますが、平等に保護すると云ふ立場は矢張り私個人としましては、社會正義に基いて社會の福祉増進の爲にやつて行く、從つて總ての人間が働くと云ふのが私は一つの大きな根本であつて、從つて平等に保護する中にも、出來るだけ彼等に一つの生業を與へて自力更生の道に就かせると云ふやうに持つて行くべきものであると私は思ひますし、さう云ふやうにして戴ければ結構なのぢやないかと、是は私の私見でございます、更に今大臣からの御説明で以て千圓ばかりの金を扶助してやる、或は庶民金融金庫から三千圓の金を貸付ける、特に三千圓の金を庶民金融金庫から貸付けるに當つては、三億圓の金を政府から特に庶民金庫に渡して居られると云ふ御話でありますが、此の三億圓の金を庶民金庫に御渡しになると云ふのを、此の事業の遂行の爲に政府が三億圓の金を御出資になるのでありましたら、今なり、或は政府の御考に依つて作られる所の社會團體のやうな處に之を御渡しになつて、社會團體を活用して彼等に生業の途を拓くと云ふ御考は御ありにならないかと云ふ點を伺ひたいと思ひます、更に私は庶民金融金庫は大臣御答の通りでありまして、金を借りに行きますのには相當の保證人も要りませうし、金を借りる方は非常に困難でございまして、特に今仰しやつたやうな海外引揚同胞になりますと、裸一貫でありまして、施設や資材も持つて居りませぬし、從つて擔保にすべきやうなものもないのでありまして、果して斯う云ふ者に庶民金庫が積極的な融資をするかと云ふことは、私は非常に疑問に思ひます、從つて私は今申上げたやうに、社會團體のやうなものにそれを御渡しになつて彼等の生業を扶助すると云ふ方が適切なんぢやないかと云ふ考へがございます、其の點に付て……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=5
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006・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 御答へ致しますが、庶民金融金庫の方は先程申上げました通りに、損をしても宜いと云ふ金を渡しませぬで、非常に取扱方が嚴重であり、防衞的にやつた訳です、それで今度は三億圓は損しても宜いと云ふことになりますると、貸付の方は非常に樂になります、それはもう必ず責任を持つてやらせます、又庶民金融金庫だけで此の仕事がやり終せぬのではないかと云ふ懸念もありますので、目下其の外の金融機關にも擴めると云ふことを具體的に考へて居ります、さうして各個人保證か、或は連帶の保證と云ふやうな人的擔保を中心にしてやると云ふ方針で進んで居りますから、是は前とは餘程變つたやり方をやると云ふことはもう間違ひないことと申上げて宜からうと思つて居ります、併し是は矢張り金融と云ふことをやりませぬと、其の金を唯與へてしまひますのでは、なかなか人間と云ふものは勵みがありませぬので、矢張り其の金は借りた金で返すのだと云ふことでやらせませぬと、直きに生活費などに使つてしまふ懸念も甚だ多いのでありまして、矢張りやらせますには是は大體金融の道に通じた專門家を通してやるのが宜いと思ひます、社會事業團體になりますと大分性質が變つて來て居ります、どうも生業の資金を社會事業團體にやらせると云ふことは少し性質上どうかと思ひますし、又社會事業團體でやつて居る御方の氣持とも少し其の線に沿ふのがぴつたり來ぬと思ひまするのと、只今の社會事業團體と云ふのは、是は公のものもありまするし、私設のものもあるのでありますが、公のものは多少使ふ途もありませうが、私設のものになりますと、まだ發達は極めて細いのでありまして、斯う云ふ點に付て是から餘程變つた方針で助長して行かなければならぬと思ひますが、只今の所では之を此の「ルート」で全部をやる、斯う云ふ大きな國の問題をやらせると云ふことは適當でないと云ふ風に政府の方では考へて居ります、府縣にこちらから金を渡して、其の府縣が府縣の責任に於きまして庶民金融金庫の府縣の支部を使つて金を貸付さすと云ふ意味になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=6
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007・榊原政春
○子爵榊原政春君 此の法案に依りますると今申上げて居るやうな生業扶助と申しますか、彼等に職を與へると云ふ行き方は、一つは是と併行の公共事業費、さう云ふものの中から彼等に公共事業に依つて職を與へて、それから今御話のありましたやうな生業扶助と云ふ形で以て出て來るものだと思ふのでありますが、今あります所の傷痍軍人、或は其の遺家族、或は寡婦、斯う云ふやうな一人前の勞働にはちよつと困難である、併し何とか働いて生業を持つて行きたいと云ふやうな者に對しては、何か政府で以て特に御考がありますのですか、それを伺ひたいと思ひます、更に是等の人を纒めてと申しますか、或は各地に於きましても一つの産業なら産業の一部分を區域毎に擔當させると云ふことが非常に望ましいことと思ふのであります、其の爲には各地域に彼等を「メンバー」とした所の協同組合と云ふやうなものを作らせまして、さうしてそれを政府が御指導になつて彼等の救濟をやると云ふやうなことが望ましいことぢやないかと私は思ひます、此の點に付きまして大臣の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=7
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008・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 傷痍軍人、寡婦等の問題に付きましては、只今特に傷痍軍人に對する政府の施設などは端的に申上げますと不十分だと思ひます、それで此の問題ばかりでございませぬ、孤兒の問題にしましても、浮浪兒の問題にしましても、さう云ふ問題に對する今迄の政府の施設は如何にも末端的に極く線の細いやり方でありまして、將來文化國を以て立つて行くと云ふ我が國としましては私は不十分だと云ふ考を持つて居りまして、是は冬の議會迄には何とか少し根本的の案を樹てて、又議會の協贊を經たいと云ふやうに考へて居ります、併し只今の所でも生活保護の面からと致しましては、矢張り授産場と云ふもの、或は輔導所と云ふやうな施設を大分やつて居りますので、傷痍軍人は傷痍軍人として、怪我をした人は怪我をした人で働ける、或は寡婦の如きは授産的の、寧ろそれは組合に入れても結構であるし、組合を組成されぬでも結構でありますと云ふやうなことで大分やつて居りまして、今度此の生活保護法に關聯しましても、さう云ふ施設を相當積極的に進める積りで居ります、がもう少し斯う云ふ、社會から何と申しますか、落伍と申しますと語弊がありますけれども、さう云ふ面に向つての施設は根本的に建て直す考であることを此の際申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=8
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009・榊原政春
○子爵榊原政春君 今授産場とか、さう云ふやうなものを御作りになつて、彼等の救濟をやつていらつしやると云ふ御話を承つたのでありますが、私は先程申上げましたやうに、彼等を集めたやうな一つの協同體と申しますか、協同組合と申しますか、さう云ふやうなものを一つ政府で以て成るべく彼等に自發的に御作らせになるやうに希望したい、是は私は市町村單位と云ふやうな小さい單位でなくて、出來れば府縣位を單位にして、さう云ふやうなものを作らせまして、是は民生委員の問題とも關係するのでございますが、民生委員の中にも一つの産業專門家、企業家なども此の中に加へまして、嘗て戰爭中に於ては各軍需工場が下請に一つの部品を出して、其の部品は農村なり、或は斯う云ふ團體なりが一部々々擔當してやつて居つたのでありますが、さう云ふやうな一つの組織を、協同體を御作りになつて、彼等に職を與へて行くと云ふやうな御考は如何かと思ひますので、此の點に付て一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=9
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010・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の點に付きまして、此の生活保護法ともう一つ失業對策の問題に於きまして、共同作業所と云ふものを、授産場と云ふと何か職をここに授けると云ふ氣持ですが、極くまあ幼稚と申しますか、技術的に幼稚な方は授産場で行きますが、それから纏つたやうなものは共同作業所と云ふやうなものを廣く設けることを考へて居ります、是は小さい、例へば草履を拵へるとか、或は土産品を拵へると云ふやうな所から、進んでは工場「アパート」のやうなもの迄考へて居りまして、それは公共事業として實施する積りで居ります、さう云ふ面に於きましては、出來るだけ協同組合主義の思想でやつて貰ひたいと云ふことを奬勵する積りで居ります、併しながらそれで出來ない場合もありまするので、今はさう云ふものが、あちらこちらに、民間から出來るだけ盛り上つて出來たものをやつて行くことだから、必ずしも協同組合に限る譯でありませぬ、協同組合主義の共同作業所と云ふやうなものは頗る結構でありまして、出來るだけさう云ふ風にやつて貰ひたいと云ふ方針で進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=10
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011・榊原政春
○子爵榊原政春君 私ばかり御質問しまして誠に恐縮でありますが御許し下さい、民生委員の問題でありますが、此の法案の運營に當りましては民生委員の問題は頗る重大な問題だと思ふのでありますが、民生委員の委員令案の要旨を拜見しますと、從來の民生委員はどうも色々と問題があるので、新らしい氣持で民生委員の組織をやつて行きたい、斯う云ふ趣旨なのでありますが、其の最後の所に方面委員の從來職に在つた者は原則として其の儘民生委員になつて貰ふとなつて居ますが斯う云ふことはちよつと私拜見しますと矛盾したやうな所がありますのです、私としては、此の民生委員の問題に付きましては、是非今申上げたやうな、彼等に只生活費を與へてやると云ふだけの消極的なものでなくて、彼等に一つの生業を與へてやると云ふ、一つ積極的な形で以て彼等を救つて行つてやることが私は望ましいことである、從つて産業家とか、或は彼等の實情を能く知つて居る者、出來れば又そこには柔かな氣持に於きまして、婦人なんかの參加も非常に望ましいではないかと思ひます、私の氣持と致しましては、以上申しましたやうに、産業家とか婦人と云ふやうなものを大いに入れて貰ひたいと云ふやうな氣持がありますので、此の點に付きまして大臣の御考を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=11
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012・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 御答へ申上げます、民生委員は只今御指摘のやうなやり方、或は又多少でも恩惠的、慈善的と云ふやうな感じが從來兎角ありましたものを、斯樣なものでないと云ふやうな風に變へると云ふ趣旨から、今囘の方面委員令を廢止致しまして、新らしい民生委員令と云ふものを作りたいと云ふ趣旨は御指摘の通りでございます、實際實施の場合に、現に方面委員の職に在る者を或程度暫くの間は矢張り民生委員として第一線の仕事をやつて戴かなければならない事情があるのでございます、それは御承知のやうに、此の民生委員令は大體生活保護法の施行と一緒に十月一日から之を施行する豫定でございます、さうなると云ふと、今迄の方面委員を全部止めまして、新らしく民生委員と致しますと、茲に選任方法で書いてありますやうに、色々市町村の推薦委員會と云ふものを作らなければならない、それから推薦をさせまして、さうして此處にありますやうな色々の手續をして參りますには、地方の全國七八萬の方面委員或は是が十萬を超すやうになるかも知れませぬが、それだけの委員を揃へますには可なり時間が掛かるだらう、全國一齊にやりますものですから……、さうなると一番大事な市町村の補助機關實際第一線の仕事をして貰ひます方面委員、今度民生委員になるものでありますが、それがなくなつてしまふ、空隙な、空な所が出來て來るやうなことになりますので、斯樣なことになつては一大事でございますから、本來と致しましては、御指摘の通り此の際不適任の方には退いて戴く、併し今の方面委員の中にも、今よりやつて戴いて居る人があることは申す迄もありませぬ、左樣な人は是は變へると言ひましても全部排除する積りではございませぬ、お年寄で働けないとか、或は不適任の人がありますれば、此の際變へると云ふことは當然のことでありますが、之をやる時間的餘裕がございませぬから、一應手續が濟む迄の間民生委員と云ふことになつて戴いて、さうして準備が出來てから變へると、斯う云ふ風に致したいと云ふ趣旨でございます、それから第二に或は婦人の方面委員或は又生産家等を民生委員にする意思があるかと、斯樣にすべきものであると云ふやうな御意見のやうに拜聽致しましたのでありますが、仰せの通り矢張り遺族の方の問題などを取扱ひますには、是は何としても婦人でなければやれませぬし、又家庭に立入つて御世話致します上から申しますれば、矢張り婦人と云ふものも必要でありますので、是は先般も大臣から衆議院の會議に於きましては、婦人の委員をうんと今度動員する豫定であると云ふことを仰せられましたので、其の積りでございます、それから産業家と云ふやうな者も先程から御述べになりましたやうに、働き得る要保護者に對しましては、先刻大臣が御述になりましたやうに、働く機會を與へると云ふことでありますので、さう云ふ方面の色々の御指導の爲には、特にさう云ふ必要な地區に於きましては、民生委員になつて戴くと云ふことも私共と致しましてはやつて行くと云ふ積りで居ります、尚此の機會に申上げますが、此處にもあつたと思ひますが、從來は方面委員の時代に於きましては、全部方面委員は地區を擔當致しまして、方面委員と申しますと、地區を擔當すると云ふことが要件になつて居つたのでございます、併し今囘は斯樣な風に固苦しく全部の方面委員が、皆それぞれ地區を分擔して居ると云ふことも必要ではない、或町村なら町村に於きまして、或區なら區に於きまして衞生の問題、或は只今御述になりました生業扶助の關係から特に地區を持たない、全體的に色々御指導する民生委員と云ふことも必要だと云ふ風なことから、地區の擔當のない民生委員を置くことになつたので、斯樣な場合に於きましては産業家と云ふ風な者も、必要に應じまして御願ひしなくちやならぬと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=12
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013・榊原政春
○子爵榊原政春君 只今御深切な御答辯を戴きまして有難うございました、是非一つ産業家や婦人を、早く其の民生委員の中に入れて戴けますやうに御配慮願ひたいと思ひます、更に私は今あります所の此の對象となつて居ります生活保護者、特に失業者であるとか、引揚同胞とか、復員軍人とか、さう云ふ中には非常に精神的に「スポイル」されて居る人間が私は非常に多いと思ふのでありまして、眞面目に働くと云ふ精神に缺けて居る人間が相當此の對象の中に居るのではないかと、斯う思ひますのですが、さう云ふ人間に對しまして何等かの、精神的な補導をすると云ふことに付きまして、本案と關聯しまして御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=13
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014・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の情勢は申す迄もなく生産を非常に増強しまして、物を一つでも餘計造らなくちやならぬ時代になつて居ります、それで生産意欲と云ふことに對して、もつと國民全體は振ひ上つて戴かなくちやならぬと云ふことは申す迄もない事情であります、御承知のやうに、此の各種の不安事情から、斯う云ふ何んと申しますか、國情が經濟的に申しますと一つの斷層にぶつかつたやうな時代になつて居りますので、なかなか御承知の通り建直しが困難であります、終戰當時、去年の暮などから見ますると、大分落著いた情勢でございますけれども、そこで矢張り軍需補償の打切り、それで近日中に決まるでありませうが、賠償工場の指定と云ふやうなことが一巡しますれば、惡い材料はもうないと思つて居ります、是で出盡したと云ふことになりますれば、もう食糧問題の解決などに伴つて、形勢挽囘と云ふ所迄行きはせぬかと云ふ氣持を持つて居りますから、斯う云ふ「スポイル」されたとか或は懶けて居る癖は段々直つて來る傾向と思ひます、唯之を私共の面から見まして、積極的になかなか官廳が中心になりましてもむづかしい問題である、と云ふて民間でせられてもむづかしい問題で、もつと食でも十分になりませぬと斯う云ふことは解決しませぬので、斯う云ふ問題ばかりでなく、例へば孤兒の問題、浮浪兒の問題にしましてもむづかしいので、世話しても逃げ出してしまふ、此の間も或聯合國の關係で御菓子が少しあつて、それを浮浪兒に與へて置きますと決して逃げないと云ふので、さう云ふ點にも非常な微妙な心理が働きますので、何よりも私共として經濟上の安定と云ふものを豐富にし、總ての問題を安定にし、生活も國で保護すると、自然さうしますると民心も落著くのではないか、只今の所では精神的にどうすると云ふことに付ては、厚生省としましては積極的の施設を持ちませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=14
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015・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 咋日復員省の問題に付て御質問がありました、今復員省の部長が出席されましたから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=15
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016・榊原政春
○子爵榊原政春君 只今大臣から非常に御丁寧な御答辯を戴きまして有難うございました、咋日實は木内委員の御尋に對しまして、社會局長から生活保護費が大體二十二億、それから生業扶助に與へらるべきものが、大體三千六百萬圓程度であると云ふやうに私は承知致しましたのでございます、生業扶助と云ふ面には、もう少し大きな費用を御割き願つて、何とか今大臣が仰しやいましたやうに、職を與へると云ふことが、精神的にも亦彼等を甦生させて行く所が大きいと思ひますので、此の面に一つ御努力願ひたいと思ひまして、私の質問は此の程度で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=16
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017・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 先刻木内委員に御答へ致しました時に、實は申上げましたやうに、一應豫算の區分と致しましては、斯樣な風に相成つて居るのでありまするが、大臣から先程御述になりましたやうに、生業扶助の單價等が非常に低過ぎませぬかと云ふやうなこと、或は又此の方面にうんと力を注いで、生活扶助を受けなければならぬやうな状態になる前に、先づ立上がらすことが必要ではないかと云ふ點に付きましては、衆議院に於きましても、非常にさう云ふ議論もございまして、此の方面にはうんと力を入れて行くと云ふことに致したいと考へて居ります、豫算の關係は其の時にもちよつと申上げましたやうに、細かい區分になつて居りまして、地方廳等に配付致します時にも、是等の點細かく分ける譯でもありませぬので、別に之に拘束される譯ではございませぬので、寧ろうんと此の方面に力を入れましてやりたいと云ふことで、實行豫算等のことに付きましても、さう云ふ風な御意見もございましたので、只今大藏省當局とも打合を致して居るやうな次第でございます、尚先程大臣から御話になりまして、大いに「スポイル」された精神を振起させる必要がないかと云ふ御話、其の通りでございます、具體的の施策としては、厚生省の方では大臣が御述になりました通り、ございませぬですが、是は第一線に働いて戴きます方面委員、今度民生委員になりますが、是等の人々が個人の家庭に付きまして、大いにさう云ふ方面にやつて戴くと云ふことは勿論のことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=17
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018・板谷順助
○板谷順助君 今の問題に關聯して御尋ねしたいと思ひます、大體此の豫算を組立てられた當時の價格は、例へば勞働賃金、俸給に致しましても無論公定價格、或は其の他の資材に付ても、公定を標準として作られたことと思ふ、處が現在御承知の通り物價が非常に暴騰して居つて、恐らくは此の豫算面で處理と云ふことはなかなか困難だ、從つて一般豫算に於きましてもそれと同樣に、大體公定を基準として作られたことでありまするから、今後此の赤字が如何なる所の數字迄上ぼつて行くかどうか、と云ふことが私は問題と思ふのであります、それで今の委員の方の御話になつた通りに、働き得る者、手足を動かし得る者は出來得るだけ失業對策なり、或は又生業保護の方面に於て之を働かせ、實際生活保護法は、働き得ない、今日如何に努力しても食ひ得ない者を救ふと云ふ、所謂保護すると云ふことが、私は此の精神の第一の目的ではないかと思ふのであります、從つて例へば此の生活の保護費が、三百圓を今或は大臣が四百圓に増すと云ふ御話があつても、殆ど燒石に水同樣で、ほんの副食物の一部にしかならぬと私は思ふのであります、でありますからして今日日本を再建せねばならぬ重大な場合に於ては、出來得るだけ働いて居る者は、例へば家庭工業者に致しましても、滿足な仕事は出來なくても已むを得ませぬ、其の他の方面に於て之を働かせる、成るべく人數を不足にして、眞に今日生活の状態に困つて居る者は、徹底的に之を保護すると云ふ方針に是非進んで戴きたいと思ふ、恐らくは今申上げまする通り、如何に豫算を御組立てになつても、是は滿足の結果は出やしませぬ、始終變つて行くと思ふのであります、そこで私は是は關聯問題でありますけれども、大臣の注意を喚起しなければならぬ問題があります、是は所謂終戰處理費の經理であります、勿論敗戰國の義務と致しまして、聯合國の要求に對しては誠實に出來るだけ滿足に目的を達してやらなければならぬことは、是は當然であります、當然でありまするけれども、實は終戰處理費が我が國の物價の上に、或は又勞働賃金の上に非常に重大な關係を持つて居ります、如何に政府が「インフレ」を克服する、或は又物價の安定を圖るなどと言ひましても、此の終戰處理費の經理如何に依つては、益益「インフレ」に拍車を掛け、勞働賃金の如きも益益暴騰すると云ふことに私はなりはしないかと思ふ、此の終戰處理費が、甚が所謂政治の責任に於て行はるべき問題でありますが、之をあなたはどうして監督するか、私は特別會計に於て之を處理して、出來るだけ此の方面に於て日本の經濟の安定を圖ることが、先決問題でありませぬかと云ふことを質問をした處が、速記を止めて之に御答辯になつたのであります、其の後の情勢を見ますと云ふと、更に改善されて居る所はない、所謂放漫なやり方で以て弊害が多い、此の處理を、聯合軍の了解を得て出來るだけ之を處理すると云ふことに全力を注いで戴きたいと思ふのであります、でありますから、今申上げまする通り、此の豫算が三十億である、或は將來に於て段々それが保護せなければならぬと云ふ人間が殖ヱて、四十億になるか、五十億になるか分らぬ、又一面に於て、此の豫算が勞働賃金其の他資材の騰貴の爲に、常に私は改定せねばならぬと云ふ問題が起ることを心配するのであります、でありますから、何と言っても政府が全力を注いで今日の物價騰貴、所謂「インフレ」を防遏すると云ふことに付て全力を注ぐと云ふことが、要するに私は先決問題ぢやないかと思ふのでありまするが、大臣直接の御關係はありませぬけれども、今申上げまする通り、所謂失業者が出來る、或は又生活保護者が段々増加すると云ふことに付て、此の今私が申上げました問題に重大な關係がありまするから、十分一つ關係各省と御協力になつて、出來るだけの御努力あらむことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=18
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019・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御質問に御答へ致しますが、只今御指摘の通りに、出來るだけ働ける人は、全部働かせる、さうして本當に保護しなくちやならぬ人には出來るだけ保護を厚くせいと云ふ御趣旨は、御尤もでございまして、もう其の線に沿うて最善の努力を致す積りであります、それから豫算の點に付きましても只今御話の通り、段々物價騰貴の状況を見たので、例へば只今五人家族に東京で三百圓見當と云ふことに致して居りますけれども、是は元、二百五十圓位と考へて居つたのを三百圓に上げた次第であります、尚物價態勢の問題は、經濟安定本部を中心に置いて色々今考を立てて居りますが、御承知の通りに日本の物價は、食糧其の他主な物價に非常に補給金が行つて居りますので、結局其の米にしましても、政府の買ふ米とそれから國民の買ふ米との値段に非常な開きがある、石炭にしましても、段々さう云ふことが激しくなつて來る、此の状態に於て進むことは、一體國家財政から見てどう云ふ影響が起るかと云ふことは大いに考へなければならぬ點であります、と云つてそれを消費者物價に全部してしまふと物價が高くなる、さうすると斯う云ふ金も餘計掛つて來ると云ふことになりますが、經濟安定と云ふ點はどう云ふ線に置くかと云ふ問題に付て今苦慮して居る、是は其の方針如何に依つては斯う云ふ豫算に不足を生ずるかも知れない、さう云ふ時は是は補充金の性質を持って居りますので、追加豫算なり、或は豫備金で拂つて行かなければならないかも知れないが、一面今御指摘の「インフレーション」と非常に重大な關係を持つて居るのでありまして、私共の方は「インフレーション」自體の問題の所管でありませぬけれども、此の「インフレーション」と云ふものの如何に依つては、斯う云ふ此の社會生活の保障なり、或は國民生活の安定と云ふものの根本は崩れて來るので、其の點に付ても私は勿論重大な關心を持つて居る譯であります、それで只今の所では先づ大體の所は心配は要らぬのぢやないかと云ふ大體の見透しを持つて居ります、と云ふのは、斯う云ふ「インフレーション」の問題は物と金との關係でありまして、さうして其の物と云ふのはどの物でも皆同じでなく、食糧の如きは是は百と云ふ重さを附けて宜しい、此の眼鏡の如きは五とか七とかの重さで宜しい、此の萬年筆の如きは二とか三とかと云ふ重さで宜い、皆物に重さを附けて、物と通貨との關係と睨み合って「インフレーション」の關係になると思ひます、そこで其の一番重大な食糧問題が、此の天候の惠まれ方と、世界に於ける物資、食糧の非常な増産の影響で大分明るくなつて參りまして、どうやら來年は少しの補充で通れるのではないか、相當分量を上げてですな、少しの補充で通れるのではないかと云ふ見込が段々立つて參りましたので、是が解決しますれば、ちよつと「インフレーション」の方は片滑りするかも知れませぬが、大體は心配ないのではないか、昨日も豫算總會でそんな御質問もありまして、私も自分の考を御答したのでありますが、それは萬一仰しやるやうな風になるとどうするかと云ふやうな質問でありました、そんな風にして心配は要らぬが、萬々一そんなことになりましても、食ふ物と著る物と云ふことの何とか安定が付きますれば、さうすればそれは物本位に考へて何とかやる途もあるのではないか、況やさう云ふ心配もない、先づ食ふ物が大丈夫と云ふことになりますれば、どうやら落著くのではないか、併し申す迄もなくそれ迄の暫定的の間には、終戰處理費の如き非常に大きな金が出て行く、御指摘の通り終戰處理費がなければ日本の財政は健全であります、大體は心配は要らぬと云ふやうな建前になつて居ります、併し終戰處理費も失業問題から見れば、此の進駐軍の家屋などを建てますものは、是は職業を與へて行くことになるが、それは直ちに生産財にならぬから、其の點に付て一般に生産事業に從事する方に使ふ者に對して非常に「ハンディキヤップ」があることは疑ひないことでありますが、それは先へ行けばさうさうあるものではないから、通貨が相當増加するにしても、先の見透しから言へば、大體食糧さへ解決すれば軌道に乘つて行くのぢないかと云ふやうな氣持、又其の線に沿つて政府は努力したいと思つて居ります、併し今御指摘のやうに其の點は餘程關心して行かなければならぬ點でありますから、終戰處理費其の他の金の使ひ方に付きましては、「インフレ」を起さないやうに出來るだけの努力を我々も致しますし、又關係閣僚にもさう云ふ意見を絶えず申して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=19
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020・原泰一
○原泰一君 大臣に御伺したいのでありますが、此の法案に關聯しまして、幾度も國の責任に於て最低生活を保障して行くのだと云ふことを仰しやつて居る譯でありますが、實際の此の内容を見ますると、地方費の負擔に若干任せられて居る面がある、十分の八は國庫で御出しになつて、殘りの分は地方費負擔と斯う云ふ風にされて居るのでありますが、從來の例を申しますと、地方費に負擔を押しつけられた場合に、地方では其の負擔させられたものを忌避する爲に、實際の援護者があつても援護しないと云ふ實情が非常に多かつたのであります、今度の御説明には、それに對しては特別の分與税を出してやると云ふことでありますが、併し分與税を出してやるとしましても、其の分與税は果して救護の費用に使ふかどうかと云ふことに付て頗る懸念される點があるのでありますから、分與税を出すと云ふならば、初から國の責任でやつて居るのだから、國が全部負擔して行くのだ、丁度戰爭中に於ける軍事扶助法の全額を國庫が負擔されたと同じやうな建前で行かれることが宜いのぢやないか、さうすることが最もはつきりして居るのぢやないか、さうして行けば、第一條に付て衆議院で兎や角言はれたやうな論議もなくなるのぢやないかと云ふことも思ふのでありますが、其の點に關しましてどう御考へになつて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=20
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021・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 御尤もの御話でございまして、是はさつぱりと國家が全部負擔するのも一つの行き方であらうと思ひます、併し是は昨日も此處で申上げました通りに、大體行政としましては、地方的性格が非常に濃厚な行政でありますから、矢張り一部は地方の責任に於て行ふのだと云ふ形を取つた方が、矢張り地方行政として宜からうと云ふ考で斯う云ふ案になつて居るのであります、分與税は大體其の方面に行かなければならぬことは問題はありませぬ、此の點はこちらとしても十分監督して行く積りでありますが、それは一厘一毛をどうと云ふ譯のものではありませぬが、分與税の性質上であらうと思ひます、そこに矢張り地方的の一つの性格が出て來るのぢやないか、例へば地方でも色々の分與税もあるのでありますから、さう云ふ時に矢張り地方の府縣に於きましても、自らそこに矢張り各局、各部、各課の仕事の牽制がありまして、矢張り斯う云ふ生活保護のやうな事業はどうしても一生縣命やるのだ、やつて行かぬといかぬのだと云ふことを御互の牽制作用で多少持たして行く、行政の末端に於てはさう云ふこともあらうと思ひます、さう云ふやうな所に多少地方的の勵みの色彩を持たした方が宜いのではないかと云ふ氣持でやりました問題でありまして、運用の結果是がうまく行かぬとあれば、又それは其の時方法を考へても宜いと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=21
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022・原泰一
○原泰一君 只今御答辯の御氣持は能く分るのでありますが、唯實際のことから言へば、率は今度少くなつたのでありますが、併し金額に於ては、全體が高額になつて居る譯でありますから、以前とさう變りはないと思ふのであります、地方の町村になりますと、其の僅かなやつをしない爲に、其の實情はもう到る所さう云ふ譯でございますから、是非其の運營の上に於て決してさう云ふことのないやうにと云ふことを、主務省から御監督なり御指令をして戴くやうに御願をしたいと思ふのでございます、それから先達て來此の範圍のことに付て、板谷委員なり其の他から色々御尋があつたのでありますが、此の法律は、他の社會法制が出來ない間は、一切の救護を要する者を引受けてやつて行くと云ふ建前になつて居る譯であります、さう云ふ建前になつて居るけれども、現在尚一面失業救濟の仕事を御起しになつて行くんだと云ふことで、其の豫算も計上してあるのでありますから、其の點に關しまするやつを、此の法の運用と相俟つてもつと盛んにやつて戴く必要があるのぢやないか、一切のものを、失業者に付ても失業救濟の法が出來る迄は皆んな之へ來いと云ふやうな呼び掛けでは、矢張り先日來御心配になつた點が非常に多いのでありますから、失業保險なり社會保險の爲のものが出來ます迄は、失業救濟でやつて行かれる其の施設なりを盛んにして、是非そつちの方へ多くを救濟するやうにして行つて戴きたいと云ふことを、實際の面に於て非常に強く希望を持つのでございます、其の點に關しまする御考を一つ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=22
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023・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の分與税に關しまする問題は、御趣旨のやうに十分監督を致しまして、其の御趣旨に副ふやうに運用致します、それから失業救濟と此の生活保護法との關係でありますが、失業救濟の面は出來るだけ失業救濟の面でやつて行くと云ふ積りで居りまして、只今豫定されて居りまする公共事業費が約六十億になつて居ります、其の中で五億だけはもう何箇月間で使ひましたから、五十五億と云ふことになつて居ります、それで此の五十五億と云ふ問題は、其の内譯をどう云ふ風に分けるかと云ふことを、關係方面と今交渉して居る所でありますが、大體開拓面、開墾面、農地面に約三十億ばかり行くかと思つて居ります、それから河川問題、それから造林の問題、……造林と農地を混ぜて三十億圓であります、それから内務省面の問題で道路の問題、それから學校建築、裁判所なども極く僅かばかりでありますがそれでやります、それから戰災復興の問題、區劃整理の問題、戰災地の跡片附けの問題と云ふものにも六、七億は行つて居りませう、併しながらどうも全體の豫定ではそれで足りませぬので、多分又此の次の議會には多少の追加豫算を追加せぬければいかぬぢやないかと思つて居ります、其の中に厚生省の方面の問題もあります、都市の失業者の問題、是は今申したやうな色色の問題が又都市に於ける失業者の救濟にもなりまするし、又戰災地の跡片附けの問題の如きは都市に多いので、是も矢張り都市の失業者の救濟になる、併し失業者の全體の三分の一位の見當は都市に居ります、だからさう云ふ問題に對しましては、別に輔導所とか、共同作業所或は知識階級の特別な救濟方法、或は機動的にやりまする公共事業、結局「プール」でも作りまして、浮動して來る失業者を皆集めて、それを道路の修繕とか、戰災地の跡片附けとか、下水の工事とかに廻して行くと云ふやうな計畫などを皆具體的に見込みまして、厚生省の中に失業對策本部と云ふやうなものを置きまして、是は民間人と役所の人と繩を綯つたやうな風にしまして、それに大體の責任を持つて貰つて、さうして各府縣にも失業對策本部と云ふものを置きまして、是が農林省なり、内務省なり、文部省でありまする失業對策の色々な公共事業の失業者を吸收する面へ入つて行く、さうして一つ一つ「チェック」してそれを推進して行く、追跡して行く、果して失業者がそこ迄入つて居るかどうかと云ふことを調べて、さうでなければ之をどう云ふやうにするか考へる、さうして全國に四百何十箇所の勤勞者がありますが、それを動かしてやつて行くと云ふ體制を只今進めて居ると云ふやうな事情でありまして、勿論此の面に於て相當の失業者は救濟出來ると思ひます、併し此の日本の失業者の状態はどうも外國と又違つた點もありまするので、只今四月二十六日の「センサス」をやりました調査に依りますと、十三歳から六十一歳迄の人で、全く仕事がない人及び仕事があつても一月一週間以内の人が二百五十五萬人と云ふ數字になつて居ります、數字になつて居りますけれども、只今の所では、それは失業者かどうかと云ふことも多少はありませうけれども、はつきり外國のやうに現れて居ないのであります、大阪の如きは、矢張り工業などで人が足らぬと云ふやうな實情が一部にある位で、どうも是等の失業者と云ふ形が少し「アメリカ」などの失業者の形に較べると違つた性質を持つて居ります、併し今度工場整理や、賠償物資の撤去などをやつたりして來ますと、是はもつとはつきりと失業者が出て來ると思ひます、併し段々統計に出た數字と實際の動きとが、どこを捉へて宜いのかと云ふことに付ては、實はどこを捉へて行かなければならぬだらうかと云ふことで困つて居ります、何れにしましても積極的にやつて居りますから、生活保護法の實體的の仕事を與へて行くことが出來る、其の他終戰事務費の如きも大部分は矢張り仕事になつて參りまするので、進駐軍の多くの建築も仕事になつて行きますから、斯う云ふ方面に於ても失業者が吸收される、尚一般の産業にしましても、整理をやると同時に、中小工業などを出來るだけ奬勵して行くことになります、又纖維工業の如きは、見返り物資關係で段々勃興して行く形にありまするので、彼此合せまして相當失業者が吸收出來ると云ふ見込で居ります、出來るだけ其の面に於て不當に生活の保護を受ける人が少なくなると云ふことが所期の目的であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=23
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024・原泰一
○原泰一君 今の御答を伺ひまして、御苦心の程を御察しして居る譯であります、唯私共實際面を知つて居る者から言ひますと、動も致しますると、實際の面に於て「ペーパー・プラン」で御樹てになりましたのは實際面には動いて居らぬと云ふことが多いのであります、だから折角さう云ふやうな民間人と、役所なり學者等を織混ぜて、さうして有らゆる面に入つて行くと云ふことがおありになれば、それをどんどん動いて行くやうに御實行を願ふ、又さう云ふ大衆は今日到る所にあるのでございますから、それをさつさとやつて行くやうにして貰ひたいと願ふのであります、それから今の御言葉に、失業者の數がはつきり分らぬと云ふことでございますが、それはもう御説明の通り、實際「センサス」をされましても、私は無職だと書いて出す人は少いのでございますから、そこで失業者と云ふものは出て來ないと云うやうな譯で、日本人が體面を考へると云ふやうなことから云つても「センサス」には出て來ないと云ふ面があるから、さう云ふ點を一つ呑み込んで戴きまして、今度の民生委員令には、恐らく各種委員即ち從來あつた職業連絡委員、さう云ふやうな各種委員を統合されると云ふ御意圖もあるやうですから、さつき榊原委員が御質問になつたやうに、こちらから進んで向けることを民生委員におさせにならうと云ふ御意圖もあるやうでありますから、其の面も大きく取上げられて、實際の動きの上に於て十分それを一つやらして戴きたい、斯う云ふことを私共としては希望する譯であります、それからそれに併せまして大臣から御伺したいのでございますが、失業者の問題は非常に大きく取上げられて居る譯でありますが、又中には御心配になつて居られますやうに恩給を取上げられた人とか、或は扶助料がなくなつた人であるとか、或は又地道にやつて居つて、さうして遺産を會社の株券にして居つたとか、或は又預金にして居つたと云ふ人が皆國策に依つてさう云ふものの配當がなくなつたり、預金が押へられてしまつたりと云ふやうなことになつて、さうして今迄それに依つて生活して居つた人が路頭に迷ふ、斯う云ふ事實が非常に多いのでございます、本會議に於て私の御尋しましたことに關聯しましての手紙なぞを寄せられて、實に涙なくしては見られないやうな悲慘な事情に沈淪して居る、何とかして貰ひたいと云ふことを言つて來られた人もあるのでございます、斯う云ふ方は恐らく相當居るだらうと思ふのでございますから、さう云ふ人達に、さあ生活保護法が出來たから來いと言つても、なかなかおいそれと生活保護法の保護を受けようと云ふものは、從来の日本人の面子と云ふものから考へて其處に來ないことが懸念される、それは是非そこへ來るやうに民生委員を激勵されてやつて戴きたいと思ふのでありますが、建前から行けば、矢張り大臣が前にも言はれたやうに、社會保障なんと云ふやうに、國民御互が保障し合つて行くのだ、御互が扶け合つて行くと云ふ建前ならば、さう云ふ人達も安んじて法の援護を受け得ると云ふやうになり得ると思ふのであります、先刻も板谷委員が言はれたやうに、此の法は成るべく困つた人だけで行きたいと云ふことは、獨り板谷委員のみの考とは思はないのであります、さうであると、さう云ふ人は自然入れて行くと云ふことになりますから、そこで大臣の御考を伺ひたいと云ふのは、失業保險と云ふ單に狹い範圍でなく、社會保險と云ふもつと廣い恩給のなくなつたとか、扶助料のなくなつたと云ふ人も「カバー」し得る社會保障と云ふものを成るべく早い機會に御圖りになると云ふ風な御意圖があるかどうかと云ふことを御伺したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=24
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025・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御話の通りに、矢張り此の生活保護法だけでなくて、社會保障……全般の制度上の完成と云ふ所に進んで行くと云ふことは勿論のことであると思ひます、さう云ふ方面に向つて進み、一面に於ては完全雇傭をし、一面に於ては社會保障法と云ふものを制度として行くべきであると云ふことに出來るだけ早く進みたいと思ひます、それで其の一つの問題の失業保險の問題でありますが、是は社會保險調査會で段々此の案を拵へて貰つて居りまして、小委員會等で略略案も出來たやうでありまして、私は一應拜見、大體の基礎だけは御聞きしたのでありまするが、保險の大體の原則から見まして「リスク」の問題などが思つたよりも樂のやうに感じます、是ならば案外早くやれるのぢやないかと思ふ、出來ましたならば此のの暮議會迄には提案出來るのぢやないかと云ふ氣持を實は持つて居る譯です、最後の案が出來まして、もう少し調べて見ないと分りませぬが、財政上の負擔も比較的に少いやうであります、唯是は愈愈其の法律が出來ましても、實施しますのは矢張り來年の四月頃になると思ひます、さうしますと整理の問題が一應片附きまして、今の失業者には間に合はない、今の失業者は失業救濟で行く、迚も食へないと云ふ者は生活保護法で暫定的の處置で行くより外に仕樣がないのでありまして、此の時代は一通り濟むか、或は續いてさう云ふ状態が起きて來るか分りませぬけれども、ちよつと今の場合には間に合はぬのであります、さうしますると、大體就業状態に付きましても安定を得ますから、其の安定期を機としまして失業保險をやることは可能なりと見込んで居ります、それから其の外は例へば養老年金、厚生年金の養老なり死亡なりの制度、ああ云ふ制度などを一般國民に及す、結局國民全體を一丸としました養老、死亡年金と申しましても、保險と申しても宜いと思ひますが、斯う云ふ制度なども是非考へたい積りでありますが、斯う云ふ制度の保險料負擔の問題は色々考へなければなりませぬので、私の今頭に持つて居りますのでは、斯う云ふ保險料は極く大雜把に「エー・ビー・シー・デー」位に分けて「エー」は餘計拂ふ「ビー」は其の次、「シー」は少くて「デー」は殆ど拂はぬと云ふやうな制度か何か大雜把にやりませぬと、斯う云ふ保險は一種の「ブロークン、インシュアランス」なんですからなかなか面倒なのであります、處が經濟の非常な動搖に依りまして富の分配關係は餘程變つて、來て、さうして其の新興層がまだ安定しないのであります、例へば只今にしましても、新圓が何處に片寄つて居るとか、封鎖がどうなつたか、財産税を課けられるとどんなことになるか分らぬ、さうすると動搖がありまして、之がもう少し安定して、さうして金のある人は金のある人で決めて、金のないのは金のない人で決めて、少し落著きませぬと斯う云ふ保險はなかなか實行し難いものであります、もう一つは通貨の購買力の問題、通貨の購買力の動搖と、それから富の再分配のやうな形に事實上なりましたが、其の富の分配が落付くと云ふ所でないと、國民全體を網羅したやうな國民全般の保險と云ふものは少し無理ぢやないのか、それよりも失業保險の方が先に來る、それから斯う云ふ保險に來るのぢやないかと云ふ風な考を持つて居ります、だから全般的の完全雇傭の問題なり、或は社會保障の全般的の問題に付てはもう少し考へたい、併し案外經濟の状態に依つて早く到來する時が來る、經濟上の安定が少し遲れれば一部の者が遲れると云ふ見透しを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=25
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026・原泰一
○原泰一君 もう一つ今の失業者の救濟のことを御考になりますと同時に、先日來矢張り皆さんの間にも精神的な指導と云ふやうなことが非常に強く主張されて居る、其の意味の懸つて存します所は、失業者が此の法律で皆援護して貰へるのだ、斯う云ふやうな氣持になつて、仕事はないから是で援護して貰へるのだと云ふ氣持になつて參りますと、非常に憂慮すべきことでないかと思ひます、從ひまして從來各國の例を見ますと、失業保險などを實施されまする場合には、言葉は是は他の言葉になる譯でありませうが、強制勞働法と云ふ、能力のあつて仕事をしないと云ふやうな人には仕事をさせて働く習慣を與へてやると云ふやうに、國家がさう云ふ意味に於ての強制勞働法などを施行されて居るのが多いのであります、今後の失業保險などを實施されまする場合には、是非それを相俟つてやつて行かなければならぬのではないか、先年「デフレ」……大藏大臣は今「デフレ」の状況だと云つて居られますが、確かに其の状況はあると思ひますが、是迄昭和三、四、五年の「デフレ」のひどい時に、實際働いて居る者は是非強制勞働法をやつて貰はなければならぬ、斯うまあのべつに無闇に救護、援護をすると、國家が援護するのは當り前ぢやないかと云ふやうな態度で其の人達がやつて來られたのでは困る、どうしても強制勞働法をやつて貰はなければ困ると云ふ、其の當時の既に議があつたのですから、愈愈失業保險と云ふやうなものを御作りになることになりますから、相俟つて強制勞働法の如きものを、是は先年司法省で小山さんの頃であつたか、御考になつたことがあるやうでありますが、さう云ふ用意があるかどうかと云ふことも伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=26
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027・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 從來の日本人の國民性と致しまして、唯國家の保護を受けて金を貰つて遊んで居ると云ふやうな氣持よりも、何か仕事を與へて呉れと云ふやうな氣持の方がなかなか實際問題として強いやうでございます、地方などでもさう云ふやうな空氣がなかなかあります、まあどうしても是が生活が出來ぬので、寡婦とか或は癈疾者とか、老人とか云ふやうなのは別でありますけれども、働ける人は出來るだけ働きたいと云ふ希望がなかなかありまするが、只今の日本の現状に於きましては原料と資材の不足と云ふことが問題の中心になつて居りまして、例へば纖維工業にしましても、「アメリカ」から今度棉が入つて來ますが、其の棉が果してこなせるかと云ふ問題が今現實に起きて居ります、それはなぜかと云ふと一面に於て矢張り食糧の不足だから田舍の女などは此の間御盆に歸つたきりでなかなか工場に歸つて來ないと云ふやうな實情であります、それから紡績にしましても糊の材料がない、革がない、機械油がないと云ふやうな色々な專門的な原因がある、それからもつと外の事情に於ては石炭がない、日本はどうしても石炭が昔と較べると、其の三分の一しか出ませぬので、六十萬「トン」、七十萬「トン」の收支さへも維持出來ないやうな状態になつて居ります、さう云ふことで、食糧、資材、原料と云ふやうなものが非常に不足して居りまするから、働け働けと云つても、實は働くことが出來るのは、詰り道路を直すとか、戰災地の片附けをするとか云ふやうなことだと働けますけれども、是は餘り生産的なことにはならぬのですが、さう云ふ面に於て今非常な惱みに打つかつて居りますので、私只今の處では、強制勞働と云ふやうな所迄日本ではやらぬでも、私はもう少し此の資材と原料が充實すれば、自然とそこに事業が興きて來る、事業が興きて來れば必ずそれに吸收される、日本人はそれに喜んで向いて行かうと云ふ習性と性格を持つて居る、今の所では持つて居ると云ふ風に感じますので、今度の憲法にも國民は勤勞の權利を有すると云ふやうな規定も出來ました、一面に於ては義務でありましたかと思ひますけれども、法律で其處迄行くと云ふことは私共としては現在は企圖して居りませぬ、併し御話した通りに、「イギリス」の失業保險でありましたか、あれなどはうまく行きませぬで、非常に懶者を多くしたと云ふことでありまするから、斯う云ふ實例で失業保險とか云ふ制度をやる時には、國民生活の全體から考へまして、どう云ふ風に之を導いて行くか、懶者が出ないやうに、生産意慾を落さないやうにして行くかと云ふことは、餘程深甚なる考慮を拂はなければならぬと思ひますが、之を法律的にやつて行く、或は他の方面からやつて行くとしても、寧ろ事業が非常に盛になりまして、見返り物資も相當出て來ることになれば、形相一變の形を呈すると云ふことは疑ひのないことだと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=27
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028・原泰一
○原泰一君 厚生大臣がおいでになる機會を捉へてもう一つ伺ひたいと思ひます、それは今の點は私も日本人はさうあると思ひます、實際はさうありますが、昭和四、五、六年と云ふ時期に於きましては、全國に居りまする其の指導に當つて居る、救濟に當つて居る人達が、あの人達は働くことが出來るのに遊んで歩いて居ると云ふ人が多量に居つて困つた時代があつたのです、厚生大臣も御承知の通り、當時は「デフレ」の非常に酷い時期なのです、今日大臣が非常に樂觀して居るやうに、事業が大いに興ると云ふことは國民齊しく承知して居る所でありますが、果して其處迄何時來るかと云ふことは、必ずしも産業が興ると云ふ時期に到達すると云ふことは、相當な距離があるのぢやないか、さうしますと、折角働かうとした人達も段々働く意慾と云ふものが沈滯して來ると云ふことは想像されるのぢやないかと思ひますから、是は私は昭和四五年頃の實際の状況から申上げて居る譯でございますから、是非一つそれを御考慮の中に御置き戴いて、さうして然るべき計畫を御立て置きを戴いた方が宜いのぢやなからうかと、斯う存じますのであります、それから御伺したいことは大體三百圓見當で生活保護費を御下げになつて居る譯でありますが、段々御話も出て居りますやうに、迚もそれだけではやつて行かれないと云ふことは、皆樣誰でもさう御考になることでありますから、是はもう御實行になつて行きますれば、もつと金が必要ぢやないかと思ふのであります、そこでさう云ふ場合にはもつと金を與へても宜しいと云ふ實際の途も拓かれて居るのでありますが、是は經濟安定本部の方に是非大臣の方から御告げ願ひたいと私は思ふことは、是は或程度物價が安定して行けば宜いのぢやないかと云ふ考へ方は、大衆生活をして居りまする者を非常に壓迫することになるのだ、成る程經濟安定は高い所で安定するかも知れませぬが、それでも生活出來ない程度の人達に取つては非常に脅威であると云ふ其の事柄を一つ厚生省を御主管になつて居る大臣としては是非御考を願ひたいのであります、私も先日も申上げましたやうに實際今日東京で乏しい配給を受けますだけに、五人分の配給を受けるのに三百五十圓掛つて居るのであります、是はもう僅かな配給だけなのであります、是だけでは食つて行けない、配給のものを買ふだけで三百五十圓掛つて居ると云ふ現況になつて居ります、それはちよつと二箇月程前でございますから、或物に付ては非常に高くなつて居ります、是は最近値段を御上げになるばかりでなく消費負擔も多少御上げになると思ひますが、さうなれば從つて保護を受けなければならぬ人、それだけで生活をして居る人達は、配給は或程度廻はして貰つても相應な金は掛ると云ふことになる譯でありますから、物價を或程度下げると云ふことは、是は「アメリカ」あたりでも勞働組合あたりで是非物價を上げないやうにする政策を採つて呉れと云ふことを言つて居るやうでありますが、是は是非厚生部面から經濟安定本部の方へ強く御働き掛けを願ひまして、物價を上げないやうに、寧ろ下げると云ふことに御努力願ひたいと思ひます、是はもう自由主義には反するかも知れませぬが、斯う云ふ經濟變則の時代に於ては已むを得ないのぢやないかと思ふのであります、それに付て是非御願ひしたいことは、是は米の値段は御上げになつても宜しい、併し消費者値段を上げないやうに、寧ろ下げる位にして戴きたい、國鐵の運賃値上げとか、煙草の値上げと云ふことは絶對にやらない、國家のやつて居る仕事は賃銀でも物價でも上げないやうにして、物價を上げない防波堤になるやうにして戴かぬと云ふと、物價が騰つて生活に困る連中は一番困るのであります、何とか工夫をしてやつて行ける人は宜しいのでありますが、食ひ盡してもう食ふ物がないと云ふ状況が續いて居るのでありますから、或所の如きは此の儘行つたら飛んだことになりますよと云ふやうなことをさへ懸念をされて居る情勢にもあるのでございますから、是は是非一つ厚生大臣としては、經濟安定部面の方へ強く働き掛けて其の物價を上げないのみならず、物價を下げる工夫をして戴きたい、全體的に下げることが出來なければ、大衆の物價だけは廉賣市場を設けると云ふやうなことをやつて戴いて、厚生施設を斷行をして戴くことが必要ぢやないかと、斯う思ふのでございまするが、此の點に對しまして是非大臣の御考慮を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=28
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029・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今御尋の點でございまするが、今原委員からの御尋の第一の初の點と後の點とは非常に實はむづかしい問題でありまして、明瞭に私も今此處でどうと云ふことを責任を以て御答へ出來ませぬのでございます、第一番の此の昭和六七年と今日との比較の問題ですが、實は昭和六七年のあれは世界中の「オーバー・プロダクション」と云ふことでありますが、物が有り過ぎて非常な失業状態を起したのであります、「アメリカ」が何處かで小麥に「アニリン」を掛けたとか、「ブラジル」の「コーヒー」を燒いたと云ふやうなことさへありまして、日本では信州で繭が三圓位になつて、どうしても生産費が引合はぬので、お婆さんが長野へ來て川の中へ投げて氣が狂つたと云ふことであります、あれは物が餘り過ぎてどうも困つたと云ふやうなことで働くにも働けない、それでぶらぶら遊んで居ることが非常に多くて、繭を作つたつて引合はないし、米を作つても引合はないと云ふ、世界の「オーバー・プロダクション」の壓迫を受けた、資本主義的の一つの現はれでなかつたかと云ふ風に私共は見て居ります、處が今度は戰爭で物は少くなつたのですから、是で資材と原料さへありますれば必ず日本の事業は興ります、さうして是は物が足らぬ、資材、材料が足らぬので、興きたい勢はあります、そこで足らぬものを無理にやらせる時には仕方がない、不生産的でも構はぬから、道路とか戰災地の片附けをやらせるのですが、事業が興きればここに必ず人が働きます、さう云ふ意味に於ての樂觀なんであります、決して全體を見透して樂觀して居るのではありませぬ、だから昭和六七年と少し今日は事情が違ひますから、私は望みを捨てない、資材と原料さへあれば出來ると云ふ見込で居ります、さう云ふ點が少し今の御意見と、經濟上のことでありまするが、あなたと私の意見と多少違ふかも知れませぬ、それから後の物價の問題でありまするが、是は食糧は下りませう、下りますからそれに誘はれて、他の物價が下がるかどうかと云ふことは實は分りませぬ、購買力が是だけ出て居りますし、又是だけ大きな豫算で、又追加豫算でも出ますから、だから食糧は下がるだらうが、他は下らぬと云ふことになれば、其の間にどう云ふ現象を起すかと云ふことは、非常にむづかしい問題で見透しが付きませぬ、それで爰でそれでは必ず下げる政策を採るかと云ふことになりますと、さうすると豫算と云ふものの根本を又やつて行かなければならぬ、或は又何か購買力を政府が直接に吸收すると云ふ、別の方法を採らなくちやなりませぬ、さう云ふことは軍需補償の打切をやりました後に、直ちにさう云ふことはなかなか出來るか出來ないかと云ふやうな非常な問題がありまして、只今の所は政府では其の考を持ちませぬ、と云ふやうな事情を綜合しますると、物價政策として、それぢや安くせいと言つたつて出來るかどうか、併しそれよりも假に食糧を増配しますると、さうすれば餘程問題は樂になつて來る、假に五勺の米で、一人で二合五勺になれば、それを一箇月になりますと七升五合になります、七升五合を假に今闇で買つて居ると假定します、是は我々が闇を言ふのは甚だ何だが、假に闇で買つて居る人があるとしますると、其の金は幾らになりませう、七升五合で、假に之を假定の數字で申上げるのは何ですけれども、假に一升五十圓であるとしますれば四百圓になります、食糧の足すだけを買ふだけで四百圓と云ふことになつて居る、斯う云ふことが社會的に非常な惡い弊害を與へて居るのですから、それが今度安い値段で行くとすると、四百圓と云ふものが公定價格になると、二十分の一位になり、さうすると二十圓位で濟む譯です、さうすると三百八十圓の違ひが出て來る、さう云ふ所に何か大きな原因が存在して居るのぢやないかと云ふやうなことを考へますので、どうも物價を安くするよりも餘計與へる、餘計與へるならば物價は少し高くても宜いのです、逆に言ひますと、さう云ふ點に非常に重大な點があり、併しながら總ての人が闇をやつて居る譯ではありませぬが、二合一勺でやつて居る人も無論ありませう、「カロリー」の點からやり切れぬと云つたら、それは他の方からやつて居るとか貯藏して居ると云ふことになつて、そこらの問題になるとこんがらかつて此の物價政策を果してどう云ふ風にするか、又政府は差額をいつも拂つて行くと云ふことになると、是は大變な金になりまして、三百圓としますれば、千萬石で三十億圓になり、二千萬石を拂ふとすれば六十億圓になり、二千五百萬石拂ふとすると七十五億圓になる、さう云ふ金が出て、それで物價を消費者に安くさへすれば、それで「インフレ」は止まるかと云ふと、さうでない、それは却て「インフレ」を増強する、さうすればそれをどうするかと云ふやうな根本問題がいつもここにありますので、唯物價を安くして、消費者の爲になると云ふ點だけで問題を徹底することは困難の事情にある、是は安定本部が責任を以て處理して行くことですが、私共も矢張り其の閣僚の一人として、それに參加する場合の我々の意見も御希望通りの一點だけで行けない、と云ふ事情が色々あると云ふことを御諒察願ひまして、是は出來るだけ國民生活全體に有利に行くやうに、生活が安易に行くやうにと云ふことは出來るだけ努めて、其のことの御趣意には一點の變りもありませぬけれども、それをどうするかと云ふことに付ては、色々安定本部等の意見もあつて、内閣全體の意見もありますので、此處で私は明瞭に、斯うしますと云ふことを申上げるだけのまだ所に行つて居らぬことを甚だ殘念とする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=29
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030・原泰一
○原泰一君 今の御説明を伺ひまして、大體經濟觀に付きましては、根本的にどうも食ひ違つて居るやうですが、私は現在の状況に於て、施設は段段少くなつて居る、今後取つて行かれるし、そこで生産面に使ふ所の資材もいつになつたら豐富に輸入が許されるか分らないと云ふやうな状況に於きましては、經濟面に於て生産が盛んに起ると云ふことにはなかなか容易に到達しないのぢやないか、樂觀することは少し無理ぢやないかと、私はさう云ふ感じを持つて居るのでございますから、其のあとは水掛論になりますから、まあ必要はないのでございます、それから物價の問題に付きましては、是は私共は、實際の庶民生活を知つて居る者から言へば、茲に參考書類の中に、餓死した者の數字が五十何人と云ふものを御出しになつて居りますが、是は浮浪者で檢査をした上で餓死したと云ふことで出た者だけでありまして、此の民生委員、方面委員が家庭で世話をして居る者で、本當に食ふ物が無くなつて、病名は心臓麻痺とか他の名前ですが、實際は餓死したと云ふ者が今迄相應にあるのでございます、さうして現にもう少し知らずに居つたら、あすこも餓死するのに、宜い所で食ひ止めたと云ふ話も聞いて居りますから、私は大衆生活と云ふものは、もう物價が高いとか何とかでなく、物を買ふことの出來ない状況に居ると云ふやうな本當に現状でありますから、さう云ふ人が多數であつて、兎に角何か物が買つて食へると云ふ人はもう非常に少いと私は思ふ、今迄何か縁故で手に入れて居ると云ふ者もあつたでありませうが、さう縁故ばかりも頼つて居られない、さうかと云つて金がないと云ふことで、非常に困難を感じて居る者が多いのでございますから、是も私の生活して居る面と、大臣の生活して居られる面との周圍が違ひますから、話が自然食ひ違ふと思ひますけれども、其の點は一つ、大衆の中には本當に生活に困つて居る者が多いのだ、今日の物價を以てしては、是は本當に其の人達を殺して行くものだ、經濟安定を自由にして置いて待つと云ふことならば、それは其の人達の餓死するのを見殺しにするのだと云ふ位の、私は極論すればそこ迄爲政者としては考へて、一つ手を打つて戴くことが今日の状況を知つては非常に必要ぢやないか知らぬ、まあ色々安定本部で御考になつて居りませうが、併し大衆の生活方面、消費者方面を擔當して居られるのが厚生大臣でありますから、其の生活部面を擔當して居られる厚生大臣と致しましては是非一つ大衆生活を擁護する陣頭に立つて戴きたい、斯う云ふ氣持なのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=30
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031・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御尋ねでございますが、勿論其の通りのことで大衆生活を擁護し國民生活を保障して行かう、さうして又當然是はやつて行くべき階級に向つて出來るだけやらう、其の線に向つて全力を盡すことは疑ひのない處であります、唯私の申上げるのは、甚だ物價の現状と云ふものは是以上ぐんぐん下げて行ける見透しが付くかと云ふことに對して、誰しも事實上の觀察を申上げませぬと、此處で物價はどんどん安く出來るんだと云ふことを申しても、片方に通貨がどんどん出て行くと云ふことになると、其處に矛盾がありますから、其の矛盾を私は良心的に、それはもつと安く出來るのですと云ふことが言へるかと云ふことに對して、私は自分で良心的に言へないと感ずるものでございます、是は斯う云ふ事情であるから、片方に於て食糧は安くなるかも知れないが、他の生活はなかなか安易に行くかと云ふと、片方に大きな金が出て行くから、片方に食糧が安くなつて、例へば三百圓の物が二百圓に下つても、斯うやつて金が出て行きますれば、それだけ「インフレ」を助長して行きます、生活を易くすると云ふことに政府が責任を背負つて無理して行けば、片方では金が出て行く、それが又「インフレ」となつて行くと云ふ現象を見なければならないので、其の點は餘程愼重に考へて行かなければならぬ、此處で必ず物が安くなる、政府は今よりずつと安くすると云ふ方針で行くことはなかなか困難ぢやないかと云ふことを端的に御答した訳であります、それで庶民生活全體に付てのことは私共も出來るだけ實情に接し、又其の積りで居りますが、決して其の點は怠らずやつて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=31
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032・原泰一
○原泰一君 今御話がございましたやうに、澤山放出する、金が殖えて行けば、殊に「インフレ」を助長すると云ふことは仰つしやる通りでございますが、物價が高くなつて保護費がそれだけ出て行けば、前から大臣の話がありましたやうに、「インフン」助長のあれにもなる、官業の運賃などが高くなり、放出する金が多くなれば、物價が高くなると云ふことは自然現象と思ひます、其の點も經濟的議論になりますから、私としましては此の點に關しまする、質問は是で終りたいと存じます、大分時間も迫つて居りまして、私一人で色々御尋しても恐縮でございますから、又別の機會に改めて此の問題に付て御尋することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=32
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033・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 今日は此の程度で散會して如何でございませうか、何か御質問があれば……それではさう云ふことに致しまして散會致します、次囘ははつきり豫定がありませぬが、多分來週の木曜日あたりかと思ひます
午前十一時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=33
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034・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 高木喜寛君
副委員長 子爵 京極高鋭君
委員
公爵 島津忠承君
侯爵 黒田長禮君
伯爵 前田利男君
子爵 北小路三郎君
子爵 安藤信昭君
子爵 榊原政春君
小山松吉君
佐々木惣一君
男爵 奧田剛郎君
男爵 團伊能君
男爵 北大路信明君
原泰一君
長谷川萬次郎君
野田六左衞門君
板谷順助君
木内四郎君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
復員事務官 荒尾興功君
厚生事務官 葛西嘉資君
同 加藤清一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00319460824&spkNum=34
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