1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月五日(木曜日)午前十時八分開議
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議事日程 第二十九號
昭和二十一年九月五日
午前十時開議
第一 食糧緊急措置令(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第二 商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 生活保護法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 北海道紋別郡雄武村に漁港設置の請願 會 議
第六 茨城縣取手町及隣接村地先利根川沿岸築堤に關する請願 會 議
第七 青森縣平川改修の請願 會 議
第八 廣島市及長崎市の復興に關する請願 會 議
第九 盲人附添人の汽車汽船賃免除に關する請願 會 議
第十 室蘭本線豐浦驛、札幌郡定山溪間に鐵道敷設の請願 會 議
第十一 青年學校制度の改革に關する請願 會 議
第十二 町内會隣組の組織擴充強化に關し助成金交付の請願 會 議
第十三 七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道敷設の請願 會 議
第十四 地方鐵道等の輸送力増強に關する請願 會 議
第十五 政府の買收せる地方鐵道の拂下に關する請願 會 議
第十六 地方鐵道等の負擔する道路工事費免除に關する請願 會 議
第十七 セメント増産及配給に關する請願 會 議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=0
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 昨四日渡部信君、太田半六君、渡邊三郎君貴族院令第一條第四號に依り貴族院議員に任ぜられました、就きましては、渡部信君を第四部に、太田君を第八部に、渡邊三郎君を第九部に各各編入致しました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 其の他諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=2
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003・会議録情報2
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〔參照〕
一昨三日恩給法の一部を改正する法律案特別委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 梅溪通虎君
同日委員長より左の報告書を提出せり
生活保護法案可決報告書
昨四日東京都制の一部を改正する法律案特別委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
委員長 白根竹介君
副委員長 男爵 伊江朝助君
正五位勳二等 小坂順造君
同日願に依り貴族院議員を免せらる
同日委員長より左の報告書を提出せり
請願文書表(第十囘報告)
本日第四部に於て請願委員安倍能成君の補闕選擧を行ひしに中山壽彦君當選せり
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、日程第一、食糧緊急措置令、承諾を求むる件、衆議院送付、會議、和田農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=4
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005・会議録情報3
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食糧緊急措置令
右は本院において承諾と議決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十一年八月二十七日
衆議院議長 山崎猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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食糧緊急措置令
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項及第七十條第一項に依り食糧緊急措置令を裁可し之を公布せしむ
御 名 御 璽
昭和二十一年二月十七日
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郎
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十六號
食糧緊急措置令
第一條 主要食糧(食糧管理法第二條の主要食糧にして農林大臣の指定するものを謂ふ以下第八條迄同じ)の所有者が同法第三條第一項の規定又は同法第九條の規定に基く命令に依り政府に賣渡すべき主要食糧を當該命令に定めたる時期迄に賣渡さざるときは政府は當該命令に係る主要食糧にして政府に賣渡さざる數量に相當するものを收用することを得
第二條 政府前條の規定に依り主要食糧を收用せんとするときは當該官吏をして收用せんとする主要食糧に付收用すべき主要食糧たるの表示を爲さしむると共に當該主要食糧の所有者に對し收用令書(以下令書と稱す)を交付せしむべし但し所有者知れざる場合其の他所有者に交付すること著しく困難なる場合に於ては權原に基き當該主要食糧を占有する者(以下管理者と稱す)に對し之を交付するを以て足る
第三條 當該官吏が令書の交付を爲したるときは政府は遲滯なく令書の交付の際に於ける當該主要食糧の所有者又は管理者(令書の交付を受けたる者を除く)其の他當該主要食糧に付權利を有する者にして知れたるものに對し之を通知すべし令書の交付後當該主要食糧の所有者又は管理者と爲りたる者其の他當該主要食糧に付權利を有するに至りたる者にして知れたるものに對し亦同じ
第四條 令書の交付又は前條の通知を受けたる者は收用に支障を及ぼす虞なき場合を除くの外政府の許可を受くるに非ざれば當該主要食糧の形質若は所在場所を變更し又は之を讓渡し、貸與し、質權の目的と爲し其の他當該主要食糧に關し新なる處分を爲すことを得ず
第五條 令書の交付又は第三條の通知を受けたる者にして令書に記載したる引渡時期に於て當該主要食糧の所有者たるものは令書に記載したる引渡時期に當該主要食糧の所在場所に於て之を引渡すべし引渡時期に於て所有者知れざる場合又は所有者より引渡すこと能はざる場合若は引渡すこと著しく困難なる場合に於ては令書の交付又は第三條の通知を受けたる者にして令書に記載したる引渡時期に於て當該主要食糧の管理者たるもの之を引渡すぺし
前項の規定は當該主要食糧に關し強制執行手續、國税徴收法に依る強制徴收手續其の他此等の手續に準ずべきものの進行中と雖も其の適用を妨げず
第六條 政府は當該官吏をして收用すべき主要食糧の引渡を受けしむるものとす
前項の規定に依り主要食糧の引渡ありたる時に於て政府は其の所有權を取得し其の他の權利は消滅す
第七條 政府は命令の定むる所に依り第一條の規定に依る收用に因り生じたる損失を補償す
前項の規定に依る補償金額は食糧管理法第三條第一項に規定する主要食糧に付ては同條第二項の規定に依る買入の價格、其の他の主要食糧に付ては時價に準據して農林大臣之を定む
第一條の規定に依り收用したる主要食糧は食糧管理特別會計の所屬とし第一項の規定に依る補償金は同會計の負擔とす
第一項の規定に依る補償金は一年内に償還すべき無記名證券を以て其の額面金額に依り之を交付することを得
前項の規定に依り交付する爲政府は證券を發行することを得
前項の規定に依り發行する證券は之を食糧管理特別會計法第三條の規定に依り發行する證券と看做す
第八條 第一條乃至前條に定むるものを除くの外主要食糧の收用に關し必要なる報告の徴取其の他主要食糧の收用に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
第九條 政府は青果物、魚介類其の他勅令を以て定むる食料品に付其の配給の適正又は價格の安定を圖る爲特に必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り此等の食料品の配給、讓渡、讓受、使用、消費、保管、移動又は價格の統制に關し必要なる命令を爲すことを得
第十條 主要食糧(食糧管理法第二條の主要食糧を謂ふ以下第十一條迄同じ)の配給に關し不實の申告を爲し其の他不正の手段に依り主要食糧の配給を受け又は他人をして之を受けしめたる者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す其の刑法に正條あるものは刑法に依る
第十一條 食糧管理法第三條第一項の規定又は同法第九條の規定に基く命令に依る主要食糧の政府に對する賣渡を爲さざることを煽動したる者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十二條 第九條の規定に依る命令に違反したる者は五年以下の懲役又は五萬圓以下の罰金に處す
第十三條 第一條の規定に依る主要食糧の收用を拒み、妨げ又は忌避したる者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十四條 前二條の罪を犯したる者には情状に因り懲役及罰金を併科することを得
第十五條 第八條の規定に基く命令に依る報告を怠り又は虚僞の報告を爲したる者は千圓以下の罰金に處す
第十六條 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者其の法人又は人の業務に關し第十二條、第十三條又は前條の違反行爲を爲したるときは行爲者を罰するの外其の法人又は人に對し各本條の罰金刑を科す
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=5
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006・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今議題となりました食糧緊急措置令に付きまして御説明申上げます、昭和二十一食糧年度に於きます食糧事情に付きましては、昨年の産米が未曾有の凶作でありまして、豫て憂慮すべき状態が豫想せられて居つたのでございますが、更に供給面に於きます現實の集荷状況は誠に寒心すべきものがありました、即ち本年の一月末に於きます政府の買上數量は約一千九十六萬石、供出割當數量に對しまして漸く四割一分に過ぎぬ實状でございまして、之を昨年同期に於きまする約七割、一昨年の同期に於きまする所の約八割六分の成績に比較致しまする時は、其の絶對の數量に於きましても、又買入の進捗率に於きましても、極めて不成績でありまして、此の儘に推移致しました場合には、誠に容易ならぬ事態が豫想せられたのでございます、從ひまして此の状態を速急に改善致しますことは一刻も忽せにすることを得ない實情でございましたので、政府と致しましては、主要食糧の管理の強化竝に食糧品の配給の適正及び價格の安定に關しまする緊急措置を講じまして、國民生活の安定、延いては公共の安全保持を期する爲に本緊急勅令の制定を仰いだ次第でございます、而して此の勅令の主なる骨子と致しまする點は、第一に、主要食糧の所有者が政府の供出割當に依りまして、政府に賣渡すべき主要食糧を供出の期限迄に賣渡さない場合に於きましては、其の事情が特に惡質なものに付きましては、政府に於きまして強制的に之を收用し得るの途を拓いたのでございます、此のことは御承知のやうに從來の事例に徴しましても、一部少數な惡質不良な者の存在が善良な一般農家に尠からぬ惡い影響を及しまして、而も本年は此の傾向が特に顯著の如く見受けられたのでございまして、世俗に謂ふ、正直者が損をした、と云ふ從來の弊を矯めますると共に、之に依りまして當時全國的な傾向にありました供出に對する日和見的な態度の一掃を期したのでございます、第二の點は、生鮮食料品の再統制でございまして、是は昨年の十一月に生鮮食料品の統制を撤廢致したのでございまするが、其の結果價格の點に於きまして非常な昂騰を見まして、一般消費者は之を入手することが困難になつて來たのでございます、從ひまして國民生活の安定の上から申しまして、誠に憂慮すべき状態でございましたので、配給の適正、價格の安定を期しまする爲に、生鮮食料品に對しまして再び適當な統制の措置を講じ得ることと致したのでございます、第三の點と致しましては、主要食糧の配給上の不正の防止及び供出を阻害致しまする所の行爲の取締に關する措置でございます、以上が食糧緊急措置令の内容でございまするが、特に其の中心を成しまするものは、所謂「強權發動」の點に付てであります、是は寧ろ傳家の寶刀的役割と云ふものを十分果したのでございまして、供出の促進、延いては食糧事情の緩和には尠からぬ效果を擧げ得たものと確信致して居ります、而して今後に於きまして強權發動の規定は尚存續せしむる考でございまするが、其の運營に關しましては、一層之を適正又民主的ならしむることが必要でございますので、今般本勅令の施行規則の一部を改正致しまして、都道府縣食糧委員會、又は市區町村食糧調整委員會の申請を俟ちまして發動することを明確に規定致した次第でございます、何卒宜しく御審議の上御承諾あらむことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=6
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007・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 質疑の通告がございます、板谷順助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=7
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008・板谷順助
○板谷順助君 商工大臣と大藏大臣の出席を要求致します、膳國務大臣は差支があると云ふことでありますから、已むを得ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=8
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009・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 間もなくこちらに見える模樣でございます、御登壇を願ひます
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=9
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010・板谷順助
○板谷順助君 私は先づ第一に農林大臣に御尋を致します、此の法案は食糧危機突破に重大の關係を持つて居るのであります、御承知の通り本院に於きましても、曩に食糧問題に對する重大の決議を致して居ります、又此の法案は前内閣で立案をされまして、現内閣に於て踏襲をしたものでありまするが、若し法に不備ありと致しましたならば、改正するが宜しい、然るに衆議院の委員會に於て一箇月餘、二箇月近くも停頓をして居つたのは如何なる理由に依るか、勿論現在に於ても此の法案は適用されて居りまするけれども、斯く衆議院に於て紛糾致して居つたが爲に生産者は供出を出し澁り、又消費者に於きましては、遲配缺配の爲に不安の思ひを致したことに付きましては、現内閣の重大なる所の責任であると言はなければならぬのであります、又此の法案が衆議院を通過致しましたる際に妥協條件に依つて決つたと云ふことでありまするが、本院に於きましても、此の法案を審議する必要上、其の内容の御説明を願ひたい、兎角政府の態度が有らゆる方面に於て信念と勇氣を缺くことに付きましては、私は非常に遺憾に存ずる者であります、ちよつと御待ちを願ひます、大臣の出席があつてから發言を致したいと思ひます、御迷惑でも大臣が直ぐ見えるさうでありますから、暫くどうぞ一つ御待ちを願ひたいと思ひます、次に御尋ね致したいことは、敗戰國の我が國の現状は、申す迄もなく國家も國民も非常な窮境に陷つて居つて、經濟界の大革命を來して居るのであります、勿論之を打開するに付きましては、國民が非常な決意を以て先づ第一に國力の囘復を圖らなければならぬ、所謂國民皆勞主義を以て有らゆる方面に勞力の動員をせねばならぬと思ふのでありますが、政府は如何なる方面に所謂國策の重點を置くか、此の點に付て先づ第一に質問致したいと思ふのであります、是より其の質問の内容に付て説明を致しますが、春以來我が國の食糧事情は非常に惡化致しまして、即ち戰爭の大影響を受け、又人手不足、肥料の足りない、又風水害、海外よりの輸入がない、色々の惡條件の爲に食糧の大缺乏を來しましたことに付きましては、之が應急對策を講ずることは勿論のことであります、幸に政府の努力と「アメリカ」の好意ある援助に依りまして、此の難關を突破し得る見透しのつきましたことは、誠に御同慶に堪へない次第であります、併しながら斯く大缺乏を來したことに付ては、一時的の現象であると言はなければならぬ、諸君も御承知の通り、先年我が國の如き國土狹隘、人口過剩、而も山嶽地帶の多い此の島國に於て食糧を解決すると云ふことは困難であるから、英國の如く食糧の不足は海外より輸入をして工業本位に進んだらどうだ、勿論資源の乏しい國でありますから、外國より原料を輸入して之に加工を加へまして、貿易本位に進むことを國是として進むべきであると云ふ議論に對し、一方に於ては、我が國は四面環海、一の孤島である、萬一敵に包圍された場合に於て食糧を何處に求めるか、飽く迄自國に於て自給自足の途を圖らなければならぬと云ふ此の議論も行はれたのであります、併しながら將來に於きましては、新憲法に依つて、戰爭は絶對に起らないと見なければならぬ、又明年も講和會議が目前に迫つて居ることであります、又新聞紙の傳ふる所に依りますれば、海外より貿易使節團も來朝せられる、又聯合軍に於きましても、早晩自由貿易を許可されることと思ふのでありまするから、我が國の今後の進むべき道に對しましては、世界の大局に眼を注ぎ、所謂諸外國と有無相通ずるの政策を執る、是が所謂物價調節の一助にもなることと私は信ずる者であります、故に此の見地から、我が國の食糧の問題、御承知の通り今後開墾すべき土地はなかなか困難の土地が多い、將來八千萬の人口を養ふと云ふことに付きましては、餘程無理をせねば此の解決はなかなか困難であります、從つて今後の我が國の進むべき道は、食糧に對しては、勿論開墾に對してはやらなければならぬけれども、是は漸進的にやるべきものである、一時に開墾を行ひましても、決して成果が擧がるものではないのであります、從つて餘力を工業方面に注ぐ、工業と申しましても御承知の通り、此の度賠償として有力なる所の工場を大部分接收をされる運命に在る、又中小工業、所謂日本の將來中堅となるべき所の中小工業は、財産税に依つて殆ど破滅の状態に瀕するのではないかと、私は前途を非常に心配をして居る、今でも或一部の者は、財閥、資本家が非常に跋扈して有らゆる搾取を行つて居るが如く、口口に之を宣傳して居りまするが、以ての外であります、でありまするから、今後の我が國の状態は、所謂工業の一部、或は中小工業者の一部、又は從來我が國の特色であつた所の家庭工業、之を本位にして貿易に依つて途を拓くより、國力を囘復する途がないと信ずるのでありまするが、之に對する所の大臣の抱負經綸があつたならば、此の席に於て御示を願ひたい、幸に本年は天候に惠まれまして豐作でありまして、米は恐らくは六千萬石以上取れるでありませう、其の他藷、麥を併せましたならば、稍稍自給自足が出來ると私は思ふのであります、若し政府が現在の食糧の大缺乏を基準として、無謀なる開墾計畫を樹てましたならば、恐らくは私は將來に於て誤算を生ずるものと思ふ、幸に近年農家が順調に、健全なる發達をして居るのでありますから、此の農家を保護する上に於きましては、萬全の策を講ぜねばならぬのでありまするが、若し政府が羮に懲りて膾を吹くが如き政策を執ると云ふことに付きましては、是は絶對に避けなければならぬと私は思ふのであります、然るに二十一年度の豫算面を見ますと云ふと、五箇年計畫として、開墾百五十萬町歩を起すと云ふのである、現在我が國の全國に於ける田畑が六百萬町歩、此の四分の一を起すと云ふのである、而も一段歩八百圓、干拓事業に對しましては六千圓、此の金を掛けて起すと云ふのであるが、一體どう起す積りであるか、成る程飛行場、軍用地もあるだらう、飛行場の開墾に付ては「マッカーサー」司令部は許可を與へて居る、併しながら是は戰爭以來既墾地約五萬町歩を潰して、是等に當てて居る、軍用地、或は飛行場、工場地帶に向ひまして、既墾地約五萬町歩を之に當てて居る、であるから、是等の既墾地は從來の所有主に返して自作農を創設すれば宜しい、何も開發營團の如き大仕掛なる所の機關を設けて國費を費す必要はない、實質的に之を開墾すれば宜しい、立派に出來る、斯う信ずる者であります、更に驚くべきことは、此の百五十萬町歩の開墾の中に約半分の七十萬町歩を北海道に於て開墾計畫を樹つて居るのであります、是亦一體何處を起す積りであるか、成る程圖面の上から見たならば、北海道に於ては相當の廣い面積はある、併しながら交通の便利の好い處は泥炭地、火山灰地を、從來道廳に於て排水工事、其の他有らゆる方法を講じても、なかなか開墾出來やしない、恐らくは五年や七年で、物になるものぢやありませぬ、國有地に於ては、約十萬町歩位あるのです併しながら、是は森林地帶である、先づ第一に木を伐らねばならぬ、治水其の他の關係に於てさう簡單に行くものではありませぬ、從來北海道に於ては約九十八萬町歩の既墾地があつたのでありまするが、現在に於ては七十七萬町歩に是が減じて居る、畑に於ては、驚く勿れ十六萬町歩、水田に於ては、五萬町歩と云ふものが既に荒廢に歸して居る、是は大部分移住民でありまするが、政府が入植はさして居るけれどもあとは何も構やしない、構やしないから移住民の大部分が逃げ出して居る、殊に又一昨年來都會に於ける所の戰災者、疎開者の諸君が宣傳に騙され、北海道に移住して一體どう云ふ状態になつて居る、都會の慣れぬ人々が行つては見たけれども、或一部の者は逃げ出して居る、殘つて居る者は衣食に窮し、旅費もない、色々の關係に於て進退兩難に陷り、殆ど窮境に陷つて居る、一體政府は之を調査したのか、大體北海道に於ける所の開墾計畫は地形と國情に依りまして、大農式にやつて見た處が、其の片つ端から荒れるやうな状態です、是は今日迄の歴史が證明して居る、でありまするから、移民政策を行ふ上に於きましては、先づ第一に少くとも三五年の間は食糧を供給してやらなければならぬ、又農村に落著かせると云ふことに付ては、或程度迄は、文化的に殺風景な所には決して落著きはしない、であるから私は今後に於ける所の開墾計畫を立てるに付きましては、先づ第一に從來の既墾地の荒れたやつを整理する、又北海道に例を申しまするならば御料林、或は又大學林、大學の如きは恐らくは北海道ばかりではなく、全國に多數の所謂演習林なるものを持つて居る、是等を取上げて農家の子弟の經驗ある者達に、土地を分與して自主的にやらせれば宜しい、是が效果的である、何も政府が大袈裟な金を掛けてやる必要はない、北海道ばかりでなく全國の開墾と云ふものは、漸進的にやらなければ決して效果があるものでないと、斯う私は信ずるものでありまするが、政府の所見はどうであるか、政府が斯かる無謀なる所の計畫を樹てたのは恐らくは失業對策に結付けたものと私は思ふ、勿論今日の失業救濟と云ふことは重大な問題であります、從つて之に對する對策を講ずると云ふことは勿論のことでありますけれども、是は別に考へべきものである、無謀なる開墾計畫に結付けて、勞多くして效なき所の仕事をやらすべきものではない、若し政府が私の只今申上げたことに付て確信があると言ふならば、此處に於て御説明を願ひたい、次に私の御尋を致したいことは食糧管理の特別會計の問題であります、御承知の通り此の會計に於きましては、現在に於て四十三億の赤字を出して居る、又更に一般會計から二十億の金を此の會計に繰入れて居る、果して此の金が有效に使はれて居るかどうか、私は非常に疑問に思つて居るのであります、御承知の通り此の會計は、從來生産者保護の目的に於て行はれたのが、現在では消費者保護に是が變つて居るのであります、此の特別會計の創設の當時は、所謂大正から昭和に掛けて米が安く、農家が非常に窮境に陷つて居る、何とかして之を救濟せねばならぬ、そこで政府が需給調節の案を立てまして、出盛りの時分は農家から米を買ふ、之を金利、倉敷を加へて徐々に之を賣り出して、所謂收支相償ふと云ふ特別會計を設置したのであります、其の結果はどうだ、幾ら經つても米が値上りをしない、或年の如きは、諸君も御承知でありませう、米の調節を圖らむが爲に、或は米を燒捨てる、海に捨てると云ふやうな極端な論迄行はれたのであります、又或年は、印度が不作であるからして印度に米の輸出を圖つて見ましたけれども、日本の米は粘り氣がある、印度は手で食ふと云ふやうな關係に於て是が失敗に歸したのであります、處が、現在に於て是が消費者保護に變つて居る、果して消費者保護になつて居るか、成る程一部の米は公定價格に依つて安い値段に於て配給はされて居るだらう、併し是はほんの二割、三割、あとの主食の大部分なるものは闇値に依つて之を補充して居る、政府の公定價格が安い關係もあつたでありませう、農家は出し澁つてなかなか思ふやるに米を出さない、成る程米も不足であつたかも知らぬが、兎にも角にも消費者側から見ましたならば、結局平均すれば、此の公定價格が禍を爲し、却て高い米を食ふ結果になつて居る、其の間に一體誰が儲けて居るか、所謂惡徳農家、闇商人、彼等が此の法律、所謂特別會計の爲に利益を得て居ると云ふ結果になつて居る、斯う思ふのであります、若し私の云ふことが間違つて居つたならば、御説明を願ひたい、大體此の補助政策、私は財政窮乏の場合に於て補助政策なるものは全廢すべきであると云ふ論者であります、例へば此の度新年度に於て、生産者價格を石六百圓とし、消費者價格を四百五十圓とする、農林省、或は大藏省、其の他閣議に於て是が色々に議論された、又民間に於ても此の問題に付ては現在盛に論議されつ、あるのであります、昨日來の新聞を見ますると云ふと、經濟懇談會に於ては、米の供出を例へば三千萬石と見て、あとは自由販賣にすると云ふことが決つたやうに出て居るのでありまするが、農林大臣は之を否定して、決して自由販賣は認めない、縱令供出されても自由販賣は認めないと云ふ意見が出て居るのでありまするが、大藏大臣、農林大臣の孰れの説が正しいかと云ふことを此の席に於て言明を願ひ度い、國民は迷つて居る、大體今日の俸給、賃銀は御承知の通り、三倍、五倍以上の値上りをして居る、又官公吏の待遇改善費に於きましても同樣である、是は孰れも闇生活を標準としたる所の問題である、今日敗戰國の國民としては、有らゆる國民が此の苦難を分け合はなければならぬと云ふ重大な時期であります、私は今米價、或は消費者價格の問題に付て茲に論議する者ではありませぬけれども、大體政府が此の價格を定めるに先立つて、現在の物價の安定、或は「インフレ」の克服、之に對して全力を注ぐべきものであると私は思ふ、大藏大臣は、現在の「インフレ」は生産が増強せられたならば必ず克服は出來る、又「インフレ」は憂ふるに足らぬと云ふやうな意味のことを屡屡仰しやつて居るけれども、恐らくは私は國民の大部分は此の説に承服をしないと思ふ、大體其の結果誰が一番困るか、言ふ迄もなく新圓の獲得の出來ない者、又今日五百圓の生活をして居る人々である、御承知の通り、新圓は殆ど偏在して居つて、紙幣の働きを爲して居らない、或三國人の如きは大部分の新圓を獲得して居る、之を是正すると云ふことは政府の重大な責任であるのであります、此の物價安定、「インフレ」問題が解決せずして、生産者價格が六百圓は安いとか高いとか、或は消費者に對する所の補助が百五十圓で宜いとか惡いとか云ふ問題は、それは不思議だ、此の儘放任して置いたならば、如何に大藏大臣が御言明になりましても、惡性「インフレ」なるものは益益増長すると云ふことは火を睹るよりも明かであるのです、であるからして此の問題に對しましては、閣僚間に於きましては、御互に各省割據の如き態度を執らず、能く國民の生活の實情を調査し、又物價なるものは決して人爲的に押付けても、其の通りには決して行くものではないのであります、所謂需給關係、如何に生産増強と云ふことを大藏大臣が申されましても、現状に於てはなかなか出來やしないのです、通貨の膨張が先立つ、此の點に思ひを致されまして、現在の我が國の非常な大危機を突破すると云ふことに付て最善の策を執られむことを希望致します、私は先程申上げました通り、補助政策と云ふものは考へ物だ、例へば六大都市の野菜の出荷を促進するが爲に一般會計に於て六億八千萬圓の補給金を計上されてある、現在東京に於ける所の野菜の配給はどう云ふ状態にあるか、恐らくは諸君は御分りでありませう、果して是が有效に使はれて居るかどうか、大部分は私は是は途中に流れて居ると云つちや語弊があるかも知れませぬが、恐らくは其の目的を達して居らぬと思ふのです、又今後に於ける所の所得税の關係に於きましても、もう資本家とか財閥なんと云ふものはありはしない、大衆課税に依つて大部分の收入を計るより途がないのであります、勞働者諸君は、國民大衆が戰友であるが如く唱へて居られるけれども、我々御互が皆國民大衆である、であるから例へば米に對する所の補給金を出して見た處が、一方に於て國民から取つて、右から取つて左に渡すと云ふやうな結果になる、であるから今後に於ける所の補助政策なるものは弊害のみ多くして效果がないと信じて居る、更に幸ひ大藏大臣も御出席になつて居ることでありますが、先程申上げました通り我が國に於ては未だ各省割據の弊害と云ふものが是正されて居らない、從つて今申上げたやうに、閣僚間に於ても例へば米價問題に於ても、又開墾計畫問題に於ても意見が統一して居らない、のみならず今後に於ける所の政府が有らゆる機會に於て民意を尊重すると云ふ意味に於て、或は調査會、委員會を設ける、之に諮つて決めると云ふことを屡屡仰しやつて居るが、從來の此の委員會なるものは成る程民間の衆智を集めると云ふ意味に於ては立派でありますけれども、御承知の通り結局政府の原案に大體に於て問題が決る、政府の當局は必ず原案を主張するだらう、又選ばれた所の委員の人々は政府に嫌はれちや大變だ、睨まれちや大變だと云ふやうな考から、結局政府の原案に決る、今後民意を尊重する意味に於きまして、此の委員會を設ける上に於きましては、眞に民主主義を徹底するが爲に、此の委員會の活用に付ては十分の注意を拂はれることを希望して置きます、尚膳國務大臣に對する質問、商工大臣に對する質問もありまするけれども、御出席がありませぬから他日の機會に讓ることに致しまして、私の質問は此の程度で終ります
〔國務大臣和田博雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=10
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011・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 只今の御質問に御答へ致します、何故此の勅令が衆議院に於て遲れたかと云ふ御尋でございまするが、衆議院に於きまして此の勅令に關しまして最も問題になりましたのは、所謂強權發動の點に付てであります、此の強權發動が從來のやうに一方的に唯官僚的に行はれると云ふことであつては、米の今後の供出と云ふことに付て非常に惡い影響を及すのであつて、斯う云ふものは供出制度自體が合理的に行はれるならば不必要ではないか、斯う云ふ議論が出ました、又もう一つは農家に對してだけ強權を發動して、農業以外の者に對する強權の發動のないと云ふことは是は不公平ではないかと云ふ議論があつたのであります、併しながら我々と致しましては供出制度と云ふものを合理化しまして、そしてそれを事實民主的に行つて行くと云ふことをやりますればやりまするだけ、さう云ふ方式に依つてさへ尚供出をしない、さう云ふ人に對しましては、矢張り最後は國家の權力に依りまして其の締め括りを付ける、さうして供出制度の目的を完遂すると云ふことが必要だと考へたのであります、併しながら此の強權發動自體が從來のやうな始終非難がありましたやうに、一方的な發動でありますならば、是は矢張り改めなければならぬと思ひます、緊急なる必要に依りまして出來ましたものでありまするし、其の目的とする所は立派なものでありましても、其の法の運用に於て色々の非難がありまするならば、是は政府として當然改めて然るべきことと斯樣に考へて居るのであります、そこで政府と致しましては強權の發動の方式を、市町村の食糧調整委員會、又は府縣の委員會の申請を俟つて初めて之を發動すると云ふことに致したのであります、是等の點に付きまして十分委員の方々の御了解を得、其の上で此の法案と云ふものに御贊成を願はうと致したのであります、相互に十分理解して戴きまして、私は此の法案と云ふものを通過して貰ひますることが今後に於きまする供出制度の實行上にも最も必要と考へましたので、多少の時間は掛りましたが、其のやうに努力致したのであります、幸にして御理解を得まして衆議院を通過致した次第であります、第二點、今後に於ける日本の勞力配分を如何にするかと云ふ御話で、それを食糧の自給政策と關聯しての御尋でありますが、私は將來に於きまする日本は矢張り御説のやうに輸出工業の方面に相當の勞力の配分を致すべきだと思ひます、併しながら一方日本は食糧の自給と云ふことは、是は完全なる自給は私はなかなか困難だと思ひます、假にありとしてもそれが將來國民經濟的に「エコノミカル」であるかどうかと云ふ問題が殘るのであります、それと同時に日本に於ける食糧の自給度を高めますることは、それは逆に言ひますれば日本が世界の經濟に接觸して入りました時に、食糧以外に日本の必要なる所の生産材を輸入し得る餘地が多くなるのでありまして、其の限りに於て日本の經濟の再建には極めて大きな貢獻を爲し得るのでごさいまするので、私は食糧政策の點から言ひましても、是は出來るだけ矢張り日本に於ける食糧の自給と云ふことに付ては政府としては考ふべきことだと思ふのであります、自給度を十分競争し得るだけの能力を持つた組織と農業の組織の上に打樹てて行くと云ふことでなければならぬと、斯樣に考へるのであります、第三點は、其の點に關して開墾は無用ではないかと云ふ御議論のやうでござりましたが、開墾は決して無用ではありませぬで、日本の將來を考へまする時に、唯單に農業面からだけ言ひましても、其の他の觀點から言ひましても私は必要だと思ひます、御話のやうに從來開墾地として殘されて居りました處が、從來の經濟的な條件の下に於ては成る程不利な點もあつたでありませうが、併しそれには種種な原因があつて十分除去し得る點もあつたのであります、例へば開墾適地として其の他の國土保安の點から考へましても十分開墾適地として適しまする處が、或は土地所有の關係、其の他の點に付て是等の土地が開放せられなかつた場合もあり得るのであつて、それ等の點を考へて見ましても、唯開墾を一概に否定は出來ないのであります、殊に私は今後行ひまする開墾に付きましては十分なる所の專門家に依り、有らゆる角度から之を調査致しまして、さうして開墾の適地を決定致しまして、開墾適地の決定に於ては愼重の上にも愼重を期して、さうして經濟的に十分是が立つて行くやうな方式に於てやって行く積りであるのであります、只今御話のやうに地元民に唯耕地の擴張と云ふ點だけから開墾問題を解決することは實は出來ないのでありまするし、それのみに依つて現在の要求を滿すことも出來ないのであります、地元民に耕地を擴張すると云ふ意味に於きまして、過去に於ける軍用地と云ふものは、其の方式で大體やつて居ります、地元の者に先づ優先的に之を返すと云ふ形でやつて居るのでありまするが、併し軍用地に於きましても、既に之を開墾致しまするには或機械力を必要とする、又相當の集團地に於きましては、營團等をして之を行はしめて居る點もあるのであります、御料林の問題に付きましては、是が國の管理に歸しまするならば、其の經營に付きましては國有林と同樣の方式に依つてやつて行きたいと思ふのであります、現在大體國有林に於きましては約九萬町歩の開墾適地がありまするので、是は開墾に解放致す考で居るのでございます、それから私は開墾と云ふものを、唯單に經濟的にのみ問題を考へることは可なり一面的ではないかと思ふのであります、私は開墾と云ふ非常に困難なる仕事を、日本の民族が持つて居りまする所の技術を提げて、之を解決し、そこに新しい所の文化を打ち建てると云ふ此の仕事は、私は民族の性格の陶冶の上から言ひましても、政府として十分取上げて、合理的な方式に於てやるべき大きな仕事であると思ふのであります、經濟的に或部分に於ては國の負擔がありましても、それに依つて得まする所の結果は、私は日本の國民の上に於て、非常に大きなものがあると確信致して居る次第であります、食糧管理の方式に付て特別會計に付ての御意見がありましたが、私は現在のやうな實情に於きまして、供出制度と云ふものをどうしても執つて行かなければならない實情に於きましては、是は現在の形に於ける食糧特別會計と云ふものは矢張り必要だと思ふのであります、成る程食糧管理法と云ふものは二つの目的を負つて居るのであります、其の一つは生産者を保護すると同時に、片一方に於きましては矢張り消費者の利益を考へまして、そこに米價と云ふものを決定致す二つの利益を是は負うて居る一つの法律なんであります、そこで只今仰しやいましたやうな一つの補給金から來る所の問題があるのでありまするが、此の補給金の問題は、是は理想的に言へば生産者價格と消費者價格との間に多くの補給金を出すと云ふことは、是は正道ではないと思ひます、併しそれを現在の段階に於て、一時に打切ることが日本の此の經濟再建の上から言つて、適當であるかどうかと云ふ問題は御考を願ひたいのでありますが、我々は今囘は其の觀點に立ちまして問題を決定致したのでございます、それから新聞紙上に出ました農家の供出が濟みました後の自由販賣の問題でありますが、是は決定致した問題ではございませぬ、是は私が本日の新聞に於きまして言明を致しましたやうに、此の點に付きましては、昨今此の供出制度に付て衆議院にあります食糧對策委員會とも諮りまして、供出の方式に付て發表致したものがあるのでありまして、それに依りまして行ふのでございまして、農家の餘剩米に付ての自由販賣と云ふものを實行して行く考はございませぬ
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=11
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012・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 板谷君からの御質問の中、直接食糧或は開墾等に關する點は今農林大臣から御答へ申上げました、別段それに私附加へる必要はないと存じますから、農林大臣の御答を以て私も同意だと御承知を願ひたいのであります、唯農林大臣の返答の中にありましたが、無論理想的に申せば補助金或は補給金なんと云ふものは、速かに撤廢すべきものだと考へて居ります、政府としても無論之を良い制度としてやつて居る譯ではございませぬ、唯過渡的にどう云ふ處置を執るかと云ふことは、是は又別に考へなければならぬ問題であります、左樣なことから惡性「インフレ」必至だと云ふ御言葉でありましたが、是は私は少しく板谷君と所見を異にするのであります、私は今後の財政處理如何に依りましては、危險なしとは決して申して居りませぬけれども、其の點にさへ注意を加へれば、私は日本が惡性「インフレ」になる心配はないと信じて居ります、是はなかなか證明はむづかしいことでありますが、例へば日本銀行の調べました所謂小賣闇價格指數なるものがございます、是は昭和二十年九月即ち終戰直後を百と致したものでありますが、其の指數を見ますと、今年二月が一九一になりまして是が騰貴の頂上であります、大體私共も今年の二三月が日本の物價の騰貴の一應の頂上だと考へて居つたのでありますが、此の數字が矢張りそれを示して居りまして、昭和二十年九月を百に致しまして、本年二月が一九一、爾後下りまして、多少波瀾がございますが、七月がまだありませぬが、六月の指數が一八一でございます、別に大藏省の、今度安定本部に行きましたが、大藏省の物價部で作つて居ります指數は、是は内容が少し違ひますのでありますが、それを見ましても矢張り同じやうな傾向を、是は東京の所謂露店市場の物價でありますが、本年二月十四日を基準に致して、百に致したものであります、それが二月末迄にはちよつと騰りまして一一九・二、それが三月二十七日には八六、四月二十四日には七八・八、それから五月二十九日には八〇・九、五月六月がちよつと騰りまして、六月二十五日が八二・五、七月は是は又他の指數を引繼がなければならないやうになつて居りますが、七月は六月の末から見ますと約二「パーセント」下つて居ります、そんな譯で最近の状況は御承知のやうに、日本銀行の紙幣發行高は著しく増加して居ります、それだけ又昨年から本年のあの紙幣交換迄が非常に紙幣發行高が増加致しました、それから紙幣交換に依りまして非常に之が收縮しましたけれども、是は物價には影響はありませぬ、通貨の收縮が物價に影響がなくて、それから其の後の又紙幣の最近に至る迄の増加、之が又物價には其の紙幣の増加の如き影響を示して居らぬ、紙幣の増減とそれから物價との影響、動きは一致して居らないのであります、まあ決して完全な指數とは申せませぬが、左樣な事實もございまして、今日の紙幣膨脹と云ふものが、特別の事情に依るものである、是が出た紙幣が悉く市場に現れて、是が流通して、さうして其の流通速度も多くして、物價を騰げて居ると云ふ事實は幸にして今日の處は認められて居りませぬ、然るに先程御指摘のやうに、幸ひ食糧事情も稍稍好轉するかに見えまして、其の邊から斷片的に報告がありますやうに、最近食糧の價格も稍稍下つて居るやうに見受けます、此の状況を以て致しまして、今後の財政の處理を適當に致して參りますれば、多くの方の御懸念の所謂惡性「インフレ」なるものは、十分避け得る見込があると考へて居る譯であります、又左樣に致さなければならぬのでありますから、其の積りで補助金に致しましても、或は其の外の財政的處理に致しましても、やつて行きたいと考へて居る次第であります、尚是は先程農林大臣からも申上げたかと思ひまするが、最近新聞に色々米價問題やら、或は自由販賣云云とか云ふやうなことが現れまして、世間を騷がして誠に相濟まない譯であります、是は政府が發表致した譯でも何でもない譯でありまして、色々の評議は致して居ります、此の評議の場合に、各省の意見が相當に對立して議論をすると云ふことは、有り得べきことであり、又しなければならぬことと私は思ふ、初めから各省の意見が全く一致すると云ふことは、稀有にはあるかも知れませぬが、さうは多くはない、閣内に於ける議論は十分にやらなければならぬ、併し一旦定つたことは各省一致してやつて行くと云ふことで宜いと思ふ、最近無論米價問題は重大なる問題でありまするから、相當の議論があつたことは事實であります、それも發表した譯ではありませぬが、最近政府側の手落があるかも知れませぬが、實は報道機關の戰線に最近少し變化があつた、今迄のやうに報道機關、新聞等が一致協力して居ない、詰り拔駈の記事が出ると云ふ遺憾な現象を最近して居る、其の結果斷片的に何かさう云ふ閣内等にある議論が、何かの形で出たものと思ひますが、それを普通ならば新聞社の方で自重して呉れるのである、それが稍稍弛みまして、一部の新聞に拔駈的に、而も不完全な報道が出たと云ふやうなことで、大變議員各位は言ふ迄もなく、世間を騷がしたやうな次第でありまして、甚だ遺憾なことであります、是は各閣僚も申合せまして、今後左樣なことがないやうに致したいと努力致して居る次第でございます、併し議論があつたと云ふことで、それは各省割據と云ふ噂があるのでありますが、私の見る所、現在閣内に所謂割據と言はれるやうなものはないと信じます、どうぞ御安心を願ひたいと存ずる次第であります、以上甚だ簡單でありますが、之を以て御答と致します
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=12
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013・板谷順助
○板谷順助君 私は別に開墾が無用とは言やしない、要するに開墾事業の如きものは、さう窮屈にやつても效果がない、所謂漸進的に經驗ある農家の子弟が、自主的に起すべき筋合のものである、然るに開發營團の如き大袈裟な機關を設けて、之をやると云ふことが果して效果があるかどうか、此の點を質問したのであります、例へば北海道の開墾計畫に付きましても私は先程申上げましたやうに、五箇年計畫として七十萬町歩起すと云ふ、何處に其の土地があるか、例へば失業對策に於て六十億計上されてある、此の金額の約半分の三十億は之に向けると云ふ話である、勞多くして效果のないやうな仕事をすべきものぢやない、幸に厚生大臣も御出でになつて居るが失業對策は別に考ふべきものである、先程來申上げましたやうに、我が國の所謂國力を培養すると云ふことに付ては、何としても資源の乏しい國であるから外國から原料を輸入して、それを加工して出來るだけ貿易本位に進めなければ、決して國力は囘復しやしない、勿論食物は大切でありますけれども、衣食足るのみに依つて決して解決されるものではない、此の意味に於て私は質問して居るのであります、であるから、若し政府の計畫されて居る所の、北海道に所謂机上の計畫として、七十萬町歩起すべき土地がないならば是は改むべきものである、如何に豫算が計上されてあつても、斯う云ふ無謀な計畫は改むべきものであると、斯う云ふ意味に於て私は質問して居るのであります、又大藏大臣は先程來抽象的に色々「インフレ」に對する御話があつたのでありまするが、是は私は議論になるから此の席では申上げませぬ、又適當の機會があると存じます、商工大臣御出でになりましたけれども、餘り長くなりましたから適當の機會に讓ることに致しまして、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=13
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014・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました食糧緊急措置令は其の特別委員の數を十九名とし、其の委員の指名は議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=14
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015・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=15
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016・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=16
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017・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔根本書記官朗讀〕
食糧緊急措置令(承諾を求むる件)特別委員
侯爵 大久保利謙君 侯爵 前田利建君
伯爵 黒田清君 子爵 今城定政君
子爵 秋田重季君 子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君 林春雄君
男爵 稻田昌植君 男爵 佐竹義履君
男爵 西酉乙君 男爵 前島勘一郎君
中村藤兵衞君 山崎延吉君
松本學君 奧村嘉藏君
菅澤重雄君 原田讓二君
名古屋三吉君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=17
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018・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第二、商工經濟會法を廢止する法律案、日程第三、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、是等の兩案を一括して議題とすることに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=18
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019・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、委員長八代男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=19
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020・会議録情報4
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商工經濟會法を廢止する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月二日
委員長 男爵八代五郎造
貴族院議長公爵徳川家正殿
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工業所有權法戰時特例を廢止する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月二日
委員長 男爵八代五郎造
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔男爵八代五郎造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=20
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021・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 只今上程相成りました商工經濟會法を廢止する法律案竝に工業所有權法戰時特例を廢止する法律案の委員會の模樣を御報告申上げます、委員會は去る九月二日午前午後に亙りまして開催し、政府當局から提案の理由竝に法律案の内容に付て説明があり、續いて質疑に入りました、愼重審議の結果兩案とも政府原案通り可決すべきものと決定致しました、以下質疑應答の概略を申上げます、先づ商工經濟會法を廢止する法律案に付ては、第一に、此の商工經濟會法を廢止して、其の後でそれに代るべき法律案の提出がないのはどう云ふ譯か、又商工經濟團體の取扱を將來如何やうになさるるかと云ふ質問に對しまして、政府は、總て民意を基礎とし、民主的に運營する見地から、從來の如き會員の強制加入、會費の強制徴收等、時勢に不適當であるとする所の現行法を廢棄したのでありまして、今後は民意の伸張を期待し、社團法人組織の商工會議所が各都市、府縣に設置さるることを豫期して居るもので、之に依つて商工業界の輿論を結集し、緊密なる連絡協力に依つて商工業者の利益を保護増進し、綜合的に産業の健全な發達を圖りたいと考へて居るとの答辯がありました、第二に、商工業團體の外に、農業團體其の他に對する取扱は如何相成るや、又今後提案さるべき商工協同組合法との關係は如何樣であるかと云ふ質問に對しまして、政府は、戰後産業界の實情に即應して總て民主的に指導助長を目途とし、大體此の協同組合の組織が全般的に實現發達することを豫期して居るとの答辯がありました、其の他商工會議所の維持經費の問題、或は又商工經濟會の解散に當つて其の善後處置に對する方策等、極めて詳細な質疑がありまして、政府から一々懇切な説明がありました後、討論に入りました處、一委員より商工經濟會法の廢止は今日の民主時代には已むを得ない處置であつて、今後の商工業は強度の民主化を豫想されるが、其の指導宜しきを得て商工經濟團體の健全なる進歩發達を希望し本案に贊成する旨の意見を述べられまして、次で採決に入りました處、全員一致政府原案通り可決すべきものであると決定致しました、次に工業所有權法戰時特例を廢止する法律案に付て申上げます、此の特例を廢止して平時の状態に復するのであるが、從來立法の趣旨から言へば、發明創意を奬勵し、産業發達に寄與するのが建前であるべき特許法其の他の法令が却て企業家大資本の獨占に惡用されて、其の爲に産業の發展を阻害したる事例が澤山にある、此の點に鑑みて此の際法令に改訂を加へ、産業再建の進展に即應し、民意を反映せしむる考はないかと云ふ質問に對しまして、政府は、目下外國の關係諸法令に付て廣く調査中であり、將來適當の改訂を加へたいと考へて居る、且既に發明奬勵に對して若干の施設を行つて居ると云ふ答辯がありました、續いて討論に入りました處、別段の意見もなく、採決の結果、本案は政府原案通り可決すべきものと決定に相成りました、以上極めて簡略でございまするが、詳細は速記録に讓りまして、御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ兩案の採決を致します、兩案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=22
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023・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=23
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024・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=24
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025・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=25
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026・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=26
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027・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 兩案の第二讀會を開きます、御異議がなければ兩案全部を問題に供します、兩案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=29
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030・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=30
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031・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=31
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032・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=33
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034・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 兩案の第三讀會を開きます、兩案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=34
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035・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=35
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036・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第四、生活保護法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、委員長高木男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=36
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037・会議録情報5
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生活保護法案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月三日
委員長 男爵高木喜寛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔男爵高木喜寛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=37
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038・高木喜寛
○男爵高木喜寛君 只今上程されました生活保護法案に付きまして委員會の審議の經過竝に結果を御報告申上げます、本法案は先月十七日衆議院に於て可決されましたる後、同じく十九日本院の本會議に上程され、即日委員付託と相成り、翌二十日第一囘委員會が開かれたのであります、第一囘委員會は直ちに正副委員長を互選し、政府の説明を聽取致しました、法案の内容は厚生大臣が過日本議場に於て説明されましたから省略致します、而して本案は刻下極めて重要なる法案でありまするから、委員會に於きましても、愼重審議を遂げ、本月三日之を終了致したのであります、本法案は未だ實施されざる保護法案であり、それに付ての質疑でありますから、既に施行されたものと異り、從來の方法に對する批評又は缺陷の指摘を含まず、將來本法案實施に際し、起り得べき不便又は失敗を豫想して注意的質疑多く、假設的なる問題が多いのであります、蓋し本法が實施されたる場合に於て、其の性質上多くの實行上の問題を惹起すべきことは十分豫想せられるのであります、以下委員會の審議に於ける重點を申上げます、先づ本法案の根本理念に關しまして、本法案は國が其の職責に顧み、生活困窮者を當然に保護すべしとの所謂社會的見地に立つものであるか、或は生活困難者に對する惻隱の情に發する人道的見地に立脚するものであるかとの質問に對し、政府より、本法は明かに社會的見地に立つものであるが、其の社會的見地の根柢には温かき人道的見地の光が込められて居るのであるとの答辯でありました、次に本法案に依り保護を受くる者は改正憲法案の條章にも照し、保護を受ける權利を有するものであるかとの質問に對し、政府より、國は生活の保護を要する者に對して本法に依り保護を行ふべき責任を有するものであるが、保護をさるべきものが之を受ける權利を有するやうな建前を執るものではない旨の答辯がありました、次に本法案に於ては生活の保護を要する状態にある者の生活を保護すると規定されて居るのみであつて、具體的に如何なる者が保護を受け得るかが極めて不明確であり、又第二條の怠惰又は素行不良等の判斷も困難であつて、世人の不安を招く虞があるから、是等ももつと明確に規定すべきであるとの意見が述べられたのでありまするが、之に對し政府から、本法案は苟くも保護を要する者は之を無差別平等に保護しようとするものであるから、具體的に對象を規定することは困難であつて、寧ろ運用の妙に俟たむとするものであるとの答辯があつたのであります、次に昨今の風潮に顧る時、一般國民の生産的勤勞心の振起高揚こそ喫緊の要務である、又本法に依る保護に付て、生活扶助もさることながら、此の際積極的な生業扶助の活用に努むべきであるとの意見に對し、政府より、經濟の囘復に伴つて、必ずや國民の勤勞精神が取戻されて行くものと信ずる、生業扶助の活用に付ても全く同感であつて、生業扶助の金額を高め、且又庶民金庫よりする生業資金の貸付も愈愈開始されるから、其の活用に大いに努むるとの答辯があつたのであります、然るに本案は生活の失格者を保護するもので、社會協同體として、社會正義に基き之を救濟するのでありまするが、斯かる事業は從來尠なかつたので、一般慈善事業と同樣憐憫に依り救濟せられるものと考へ、被保護者に於て卑屈なる感情を抱く虞がありはしないかとの御意見がありました、然るに本案が其の對象とする被保護者の範圍が極めて漠然であります、本案は三十億圓の國費を持ち、國民の一割、八百萬人に生活保護を與ふるを目的とするが、同時に働く意思なき者、怠ける者、又素行不良の者は除外して居ります、生活失格者の以上の者とは極めて密接の關係がありまするが、其の判定明瞭ならず、當事者の常識的判斷に俟つことが多いのであります、又生活を持たざる者、例へば浮浪者の如きは又別個の立場に於て救濟するものであり、政府答辯に依れば浮浪者は之を二つの場所に分ち一つは浮浪者を收容して醫療其の外の直接手當を行ひ、次で他の個所に移し、之に仕事を與へつ、更生せしむる施設を現在東京横濱に設ける計畫である、是は救濟事業に屬し、本法案に入らないとのことであります、次に本法案は其の第一條に示す如く、生活失格者を平等に救濟し、其の事情に依り優先權を認めませぬ、例へば傷痍軍人の如きも特に之を經歴に依り優先的保護を加へず、總て生活失格者は何の理由に依らず平等に救濟するので、現下の事情に於ては引揚者、傷痍軍人、軍人遺家族、戰災者等は當然此の中の大部分を占むることとなるのであります、然るに茲に重要なる質疑を起しましたのは失業者であります、失業者には近く失業救濟事業費六十億圓を以て始められる救濟事業が起さるべく、又失業保險の如きも設定せらるることに依り救濟せらるるのであるが、現下の事情として失業者にて貯蓄なく職業の機會なき者は、暫時的なりとも此の救濟の對象となり得るのであります、次に本法案は其の保護方法として生活扶助、醫療、助産、生業扶助、葬祭扶助等の場合を含み其の保護を行ふが、其の主要なるものは生活保護で、之が爲豫算二十二億圓を費す計畫であります、從つて直ちに起る問題は、如何なる標準に於て其の生活保護を決定するやと云ふことであります、厚生省は大體最低なる「カロリー」の必要量を公定價格に於て攝取し得る費用を標準とし、一人一日六圓五十錢程度、二人八圓、三人九圓、四人十圓、五人十一圓の如き目安を置き、一つの代表家族として三十一歳の寡婦が一歳、三歳、六歳の三兒を育て、六十一歳の老人を養ふ場合に於て、現在の物價として大都會に於ては三百圓より三百二十圓程度の保護を爲し、中都市に於ては二割減、農村に於ては其の三割減とするのであります、衆議院に於ても此の金額に付ては議論があり、寧ろ少數の人にても十分なる生活費を與ふべきを贊成された者が多いのであります、尚此の家庭保護は兒童ある場合之を國民學校に通學せしむるに差支ない程度としたのであります、尚此の金錢給與の單一の方法を採ることは、本法案として徹底を缺くものと考へる方が多く、此の金錢給與と共に、此の被保護者を指導して、一つの共同作業の組合の如きものを結成せしめて、更生の道を與ふることも實施の場合に於ては必要なるべく、又單なる金錢給與を機械的に行ふに止らず、其處に精神的指導を加ふべしとの強き議論がありました、次に本法案は其の費用支出に當り、其の一部を道府縣に於て負擔せしめ、都市町村も之に關與せしめ、尚其の直接なる實行者として方面委員を之に當らしむるのであります、政府に於ては最近に於て從來の方面委員の組織を改組し、新に民生委員なるものを設け、市町村長を之が指導に當らしめ、本案を實行せむとするのであります、被保護者の審査、程度等の判定は、此の委員の所存に依り決定されるのであります、此の點に關し現在の方面委員、又將來の民生委員が、果して之を實行するに適當なりや、又適當なる者は勿論多く存して居るが、不適當なる者亦多かるべく、其の實行を見る迄は結果は知り難いのであります、之に付て隣組組織を關係せしめてはとの議論がありましたが、今日の隣組は專ら食糧配給に重點を置く故に、却て被保護者の生活に近接し過ぎ適當ならずの議論があり、本案の民生委員の推擧方法に於て從來の方法を十分に檢討し、或場合には事業家を選び、又婦人或は開業醫師をも加ふべきだとの議論があり、何れにせよ、民生委員は此の重要なる事業の責任を負ふ者として嚴重なる人物檢討を行ふべきものである、尚以上の金錢のみに依りては生活不能の虞があり、内職の如きは之を認むる方針なる旨政府委員の答辯がありました、最後に本法案は成文不備の點多く、此の責任を持つべき都市町村、又民生委員に於て、實行上判斷に苦しむ場合多かるべき點に付て質疑がありました、政府に於ては、此の保護法案は現下の状況として看過し能はざる特別事情あり、兎も角實行を先として、此の保護に付尚研究を行ひ行くべき旨答辯がありました、尚海外引揚者、復員軍人、結核、青少年犯罪者、健康保險、社會事業法的質問等、多數の質疑がありましたが、是等は速記録で御覽を願ひたいのであります、質疑を打切り、懇談會を催し意見を交換し、次で討論に入り、四人の委員より贊成の演説がありました、總て此の法案は成文其の他不備の點が多々あるから、運用に大なる注意を拂はなければならないと云ふことに一致し、從つて此の運用に責任ある民生委員の推薦に特に考慮せられたしとの強き忠告的希望が述べられたのであります、討論を打切り、直ちに採決に入りました處、滿場一致本案は可決されました、是にて生活保護法案特別委員會の報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=38
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039・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=39
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040・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=40
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041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=41
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042・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=42
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043・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=43
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044・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=44
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045・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=45
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046・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=46
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047・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=47
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048・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=48
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049・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=49
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050・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=50
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051・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=51
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052・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=52
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053・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第五より日程第十七迄の請願、會議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=53
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054・会議録情報6
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意見書案
北海道紋別郡雄武村に漁港設置の件
北海道紋別郡雄武村長高田良一呈出
右の請願は北海道紋別郡雄武村は終戰後遠洋漁業の近海漁業轉換に因り一大漁場と化し海産加工業の活動亦見るへきものあるに拘らす、現存の船入澗は港口淺く且狹隘にして大型漁船の收容力不十分なるに依り速に全額國費支辨に依る漁港を設置し以てオホーツク海に於ける無盡の水産資源開發に資せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
茨城縣取手町及隣接村地先利根川沿岸築堤に關する件
茨城縣北相馬郡取手町長高安賢吉外三十九名呈出
右の請願は茨城縣北相馬郡取手町地先より同郡大野村地先に至る約三里の利根川流域には廣大なる干拓地現存するに拘らす徒に放置せられあるは現下の食糧事情に鑑み寔に遺憾なるに依り政府は曩に對岸千葉縣側に施工したると同樣該區間に築堤を設けて其の内側を農耕開拓地とし以て食糧増産に資すると共に出水に因る人畜の被害防除に寄與せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
青森縣平川改修の件
青森縣南津輕郡大鰐町長中嶋嘉七外十一名呈出
右の請願は青森縣平川は豫て要改修中小河川に編入せられあるに拘らす今猶之か實現を見さるは甚遺憾なるに依り速に工事に著手し以て古來津輕の寶庫と稱せらるる同流域の開發に資せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
廣島市及長崎市の復興に關する件
廣島市長木原七郎外三名呈出
右の請願は廣島市及長崎市は去歳八月原子爆彈の戰禍を被り前者は其の殆と全部を後者は其の大半を烏有に歸し爾來鋭意自力復興に邁進し居れるも人的、物的の大損耗と共に今や經濟的破綻を來すに至り市財政を以てしては事の成就洵に容易ならさるものあるに依り兩市か地方に於ける政治、經濟、文化、交通の中心地たる實情に鑑み政府は特別の考慮を拂ひ速に之か復興の實現を圖られたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
盲人附添人の汽車汽船賃免除に關する件
東京都淀橋區西大久保四丁目百七十番地中央盲人福祉協會内平民原泰一呈出
右の請願は盲人は現下の交通困難なる状態に於ては附添人なくして外出旅行等絶對に不可能なるに依り正眼者に伍して自活の途を開拓し居れる是等盲人に對する國家保護の第一著手として附添人一人に限り汽車汽船賃を免除せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
室蘭本線豐浦驛、札幌郡定山溪間に鐵道敷設の件
北海道札幌市長上原六郎外六名呈出
右の請願は室蘭本線豐浦驛より虻田郡眞狩、留壽都、喜茂別の各村を經て定山溪に至る鐵道を敷設するは定山溪鐵道との接續に依り道南地方と札幌市との捷徑となり交通上資する所大なるのみならす沿線の未開地開發竝觀光路線として貢獻する所亦尠からさるに依り速に同鐵道を實現せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
青年學校制度の改革に關する件
北海道余市郡余市町大字濱中町五十二番地公立青年學校長大田又藏外二名呈出
右の請願は男女勤勞青少年に對する教育の普及は文化日本建設の根基なるに拘らす現在の青年學校制度は之か目的達成上極めて不充分なるに依り速に請願書記載の如き公民教育制度に改むると共に其の設備と教職員の充實を圖り以て男女青年の向上を期せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
町内會隣組の組織擴充強化に關し助成金交付の件
岡山縣倉敷市長古屋橘衞呈出
右の請願は國政の末端組織として國民生活の基盤をなす町内會部落會は其の事務益益増大し負擔過重の爲め遂に自潰の危機に立至れるも窮迫せる地方財政は之か援助を許ささる實情なるに依り國庫より助成金を交付して組織を強化し以て其の機能を十二分に發揮せしめられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道敷設の件
石川縣商工經濟會會頭林屋龜次郎呈出
右の請願は七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道を敷設するは地方産業の開發と輸送力の強化に寄與するのみならす七尾、伏木の兩港を連絡して日本海運の發展に資する所大なるに依り速に之か實現を圖り以て新生日本の發展興隆に貢獻せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
地方鐵道等の輸送力増強に關する件
東京都麹町區丸の内三丁目四番地社團法人日本鐵道會會長村上義一呈出
右の請願は地方鐵道、軌道は國有鐵道と相携へて交通上重要なる使命を有するに拘らす現下資材入手の不圓滑、金融上の拘束等に因り其の機能を發揮し得さるは甚遺憾なるに依り政府は速に之か隘路打開の方途を講せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
政府の買收せる地方鐵道の拂下に關する件
東京都麹町區丸の内三丁目四番地社團法人日本鐵道會會長村上義一呈出
右の請願は最近に於ける地方鐵道の買收は物的戰力増強を目的とし省社一體の理念の下に策定せられたるもの多く今や我國か軍國的性格を拂拭して民主主義國家を建設せんとするに當り其の目的の大半を喪失せるに依り政府は民營を適當とする線路にして之か經營を希望する者に對し戰前の状態に還元するやう其の拂下に付考慮せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
地方鐵道等の負擔する道路工事費免除に關する件
東京都麹町區丸の内三丁目四番地社團法人日本鐵道會會長村上義一呈出
右の請願は戰災都市に於ける都市計畫に基き道路工事を施すに當り之か經費の一部を地方鐵道、軌道業者に負擔せしめらるる場合あるも其の金額莫大にして現下經營極めて困難なる業者の到底堪へ得さる所なるに依り之か負擔を免除すると共に路線移轉或は道路に關する工事を命せられたる場合は其の移設費等に付補償の途を講せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
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意見書案
セメント増産及配給に關する件
岐阜縣本巣郡北方町長大野勇外二十名呈出
右の請願は戰災の復興に當り土木、建築、農業等各方面に於けるセメントの需要切なるものあるに拘らす供給圓滑ならさる爲必要なる施設を完遂し難き實情にあるは洵に遺憾なるに依り速に之か増産の方途を講すると共に地方へも必要量の配給を行はるるやう取計はれたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵徳川家正
内閣總理大臣吉田茂殿
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=54
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055・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是等の請願は、請願委員長の報告通り採擇することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=55
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056・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十一時四十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X02919460905&spkNum=56
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