1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月六日(金曜日)午前十時六分開議
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議事日程 第三十號
昭和二十一年九月六日
午前十時開議
勞働關係調整法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參照〕
昨五日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
商工經濟會法を廢止する法律案
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案
生活保護法案
同日本院に於て採擇することを議決したる北海道紋別郡雄武村に漁港設置の請願外十二件の請願は各各意見書を附し即日之を政府に送付せり
同日食糧緊急措置令(承諾を求むる件)特別委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 稻田昌植君
同日衆議院より左の政府提出案を受領せり
勞働關係調整法案
同日委員長より請願委員中山壽彦君を第二分科擔當委員に選定したる旨の報告書を提出せり
同日委員長より左の報告書を提出せり
恩給法の一部を改正する法律案可決報告書
帝國議會各議院の議長、副議長及び議員の手當に關する法律案可決報告書
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、日程第一、勞働關係調整法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、河合厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=3
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004・会議録情報3
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勞働關係調整法案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十一年九月五日
衆議院議長 山崎猛
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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勞働關係調整法案
勞働關係調整法
第一章 總則
第一條 この法律は、勞働組合法と相俟つて、勞働關係の公正な調整を圖り、勞働爭議を豫防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて經濟の興隆に寄與することを目的とする。
第二條 勞働關係の當事者は、互に勞働關係を適正化するやうに、勞働協約中に、 常に勞働關係の調整を圖るための正規の機關の設置及びその運營に關する事項を定めるやうに、且つ勞働爭議が發生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。
第三條 政府は、勞働關係に關する主張が一致しない場合に、勞働關係の當事者が、これを自主的に調整することに對し助力を與へ、これによつて爭議行爲をできるだけ防止することに努めなければならない。
第四條 この法律は、勞働關係の當事者が、直接の協議又は團體交渉によつて、勞働條件その他勞働關係に關する事項を定め、又は勞働關係に關する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、勞働關係の當事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。
第五條 この法律によつて勞働關係の調整をなす場合には、當事者及び勞働委員會その他の關係機關は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な處理を圖らなければならない。
第六條 この法律において勞働爭議とは、勞働關係の當事者間において、勞働關係に關する主張が一致しないで、そのために爭議行爲が發生してゐる状態又は發生する虞がある状態をいふ。
第七條 この法律において爭議行爲とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他勞働關係の當事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行爲及びこれに對抗する行爲であつて、業務の正常な運營を阻害するものをいふ。
第八條 この法律において公益事業とは、左の事業であつて、公衆の日常生活に缺くことのできないものをいふ。
一 運輸事業
二 郵便、電信又は電話の事業
三 水道、電氣又は瓦斯供給の事業
四 醫療又は公衆衞生の事業
主務大臣は、前項の事業の外、中央勞働委員會の決議によつて、業務の停廢が國民經濟を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
前項の中央勞働委員會の決議においては、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員の各各の過半數の同意がなければならない。
主務大臣は、第二項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遲滯なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。
第九條 爭議行爲が發生したときは、その當事者は、直ちにその旨を勞働委員會又は行政官廳に屆け出なければならない。
第二章 斡旋
第十條 勞働委員會は、斡旋員候補者を委囑し、その名簿を作製して置かなければならない。
第十一條 斡旋員候補者は、學識經驗を有する者で、この章の規定に基いて勞働爭議の解決につき援助を與へることができる者でなければならないが、その勞働委員會の管轄區域内に住んでゐる者でなくても差し支へない。
第十二條 勞働爭議が發生したときは、勞働委員會の會長は、關係當事者の双方若しくは一方の申請又は職權に基いて、斡旋員名簿に記されてゐる者の中から、斡旋員を指名しなければならない。但し、勞働委員會の同意を得れば、斡旋員名簿に記されてゐない者を臨時の斡旋員に委囑することもできる。
第十三條 斡旋員は、關係當事者間を斡旋し、双方の主張の要點を確め、事件が解決されるやうに努めなければならない。
第十四條 斡旋員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要點を勞働委員會に報告しなければならない。
第十五條 斡旋員候補者に關する事項は、この章に定めるものの外命令でこれを定める。
第十六條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の斡旋方法によつて、事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第三章 調停
第十七條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の調停は、この章の定めるところによる。
第十八條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、調停を行ふ。
一 關係當事者の双方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされたとき。
二 關係當事者の双方又は一方から、勞働協約の定に基いて、勞働委員會に對して調停の申請がなされたとき。
三 公益事業に關する事件につき、關係當事者の一方から、勞働委員會に對して、調停の申請がなされ、勞働委員會が、調停を行ふ必要があると決議したとき。
四 公益事業に關する事件につき、勞働委員會が職權に基いて、調停を行ふ必要があると決議したとき。
五 公益事業に關する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に關するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、行政官廳から、勞働委員會に對して、調停の請求がなされたとき。
前項の規定によつて地方勞働委員會又は特別勞働委員會の行つた調停が成らなかつたときは、中央勞働委員會は、關係當事者の双方若しくは一方からの申請又は職權に基いて、その事件の調停を行ふことができる。
前項の規定によつて中央勞働委員會が職權に基いて行ふ調停は、第一項第五號の事件に限る。
第十九條 勞働委員會による勞働爭議の調停は、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員から成る調停委員會を設け、これによつて行ふ。
第二十條 調停委員會の、使用者を代表する委員と勞働者を代表する委員とは、同數でなければならない。
第二十一條 調停委員會の委員は、勞働委員會の委員の中から、勞働委員會の會長がこれを指名する。但し、左の場合には勞働委員會の會長は、勞働委員會の委員以外の者を、調停委員會の委員に委囑することができる。
一 勞働委員會の委員以外の者を、使用者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員の同意を得たとき。
二 勞働委員會の委員以外の者を、勞働者を代表する調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の勞働者を代表する委員の同意を得たとき。
三 勞働委員會の委員以外の者を、第三者である調停委員會の委員に委囑することにつき、勞働委員會の使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員の各各の過半數の同意を得たとき。
前項但書の規定によつて委囑された委員は、これを法令によつて公務に從事する職員とみなす。
第二十二條 調停委員會に、委員長を置く。委員長は、調停委員會で、第三者である委員の中から、これを選擧する。
第二十三條 調停委員會は、委員長がこれを招集し、その議事は、出席者の過半數でこれを決する。
調停委員會は、使用者を代表する委員及び勞働者を代表する委員が出席しなければ、會議を開くことはできない。
第二十四條 調停委員會は、期日を定めて、關係當事者の出頭を求め、その意見を徴さなければならない。
第二十五條 調停をなす場合には、調停委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第二十六條 調停委員會は、調停案を作成して、これを關係當事者に示し、その受諾を勸告するとともに、その調停案は理由を附してこれを公表することができる。この場合必要があるときは、新聞又はラヂオによる協力を請求することができる。
第二十七條 公益事業に關する事件の調停については、特に迅速に處理するために、必要な優先的取扱がなされなければならない。
第二十八條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の調停方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第四章 仲裁
第二十九條 勞働組合法第二十七條第一項第三號の規定による勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、この章の定めるところによる。
第三十條 勞働委員會は、左の各號の一に該當する場合に、仲裁を行ふ。
一 關係當事者の双方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
二 勞働協約に、勞働委員會による仲裁の申請をなさなければならない旨の定がある場合に、その定に基いて、關係當事者の双方又は一方から、勞働委員會に對して、仲裁の申請がなされたとき。
第三十一條 勞働委員會による勞働爭議の仲裁は、特別の委員會を設けることなくこれを行ふ。但し、事件の事實調査のため、小委員會を設けることは差し支へない。小委員會は、勞働委員會の請求があつたときは、これに對し、仲裁裁定案を提出しなければならない。
第三十二條 仲裁をなす場合には、勞働委員會は、關係當事者及び參考人以外の者の出席を禁止することができる。
第三十三條 仲裁裁定は、書面に作成してこれを行ふ。その書面には效力發生の期日も記さなければならない。
第三十四條 仲裁裁定は、勞働協約と同一の效力を有する。
第三十五條 この章の規定は、勞働爭議の當事者が、双方の合意又は勞働協約の定により、別の仲裁方法によつて事件の解決を圖ることを妨げるものではない。
第五章 爭議行爲の制限禁止等
第三十六條 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廢し、又はこれを妨げる行爲は、爭議行爲としてでもこれをなすことはできない。
第三十七條 公益事業に關し、關係當事者が爭議行爲をなすには、第十八條第一項第一號乃至第三號の規定によつて調停の申請をなしその申請をなした日又は同項第四號の決議若しくは同項第五號の請求がなされた日から、三十日を經過した後でなければならない。但し、爭議行爲の發生中にその事業が第八條第二項の規定によつて公益事業として指定されてもその爭議行爲については、この限りでない。
第三十八條 警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者その他國又は公共團體の現業以外の行政又は司法の事務に從事する官吏その他の者は、爭議行爲をなすことはできない。
第三十九條 前二條の規定の違反があつた場合においては、その違反行爲について責任のある使用者若しくはその團體、勞働者の團體又はその他の者若しくはその團體は、これを一萬圓以下の罰金に處する。
前項の規定は、そのものが、法人であるときは、理事、取締役その他法人の業務を執行する役員に、法人でない團體であるときは、代表者その他業務を執行する役員にこれを適用する。
一個の爭議行爲に關し科する罰金の總額は、一萬圓を超えることはできない。
法人、法人でない使用者又は勞働者の組合、爭議團等の團體であつて解散したものに、第一項の規定を適用するについては、その團體は、なほ存續するものとみなす。
第四十條 使用者は、この法律による勞働爭議の調整をなす場合において勞働者がなした發言又は勞働者が爭議行爲をなしたことを理由として、その勞働者を解雇し、その他これに對し不利益な取扱をすることはできない。但し、勞働委員會の同意があつたときは、この限りでない。
第四十一條 前條の規定の違反があつた場合においては、その行爲をなした者は、これを六箇月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處する。
第四十二條 第三十九條及び前條の罪は、勞働委員會の請求を待つてこれを論ずる。
第四十三條 調停又は仲裁をなす場合において、その公正な進行を妨げる者に對しては、調停委員會の委員長又は勞働委員會の會長は、これに退場を命ずることができる。
第六章 費用辨償
第四十四條 勞働委員會の委員、第十二條の斡旋員及び第二十一條第一項但書の調停委員會の委員竝びに勞働委員會による勞働爭議の調停又は仲裁のため出頭を求められた者は、勅令の定めるところにより、費用の辨償を受ける。
附 則
この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
勞働爭議調停法は、これを廢止する。
勞働組合法の一部を次のやうに改正する。
勞働組合法第十一條第一項を次のやうに改める。
使用者は勞働者が勞働組合の組合員なること、勞働組合を結成せんとし若は之に加入せんとすること又は勞働組合の正當なる行爲を爲したることの故を以て其の勞働者を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず
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〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=4
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005・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今議題となりました勞働關係調整法案の提案の理由を説明致します、先づ理由第一を申上げますが、是は勞働爭議の調停と云ふ點であります、我が國再建の上に於きまして勞働者の占むる意義は極めて重且大なるものがあります、併しながら勞働者に對して斯かる重大なる責務の完遂を期待致しまする爲には、どうしても民主主義機構の下に是等勞働者の團結權を保障致しまして、其の地位の向上を促進致しまして、我々の腕に依つて國家を再建するのだと云ふ勞働者の内發的自覺を促さねばならぬのであります、此の自覺がなくては眞に盛上る勞働意欲と云ふものは出て來ないのであります、前内閣に於て勞働組合法を制定致しまするし、現内閣に於て勞働組合の健全なる發達を促進しつつある所以も亦實に茲に存するのであります、故に勞働組合法の究極の目的とする處は、鬪爭でなくして平和でなくてはならぬ、破壞でなくして建設でなくてはならぬのであります、最近に我が國に於きまして、勞働爭議が頻々として起ることは誠に悲しむべきことであります、言ふ迄もなく終戰後の我が國の状態は謂はば經濟的斷層に打つかつて居るのでありまして、或は食糧面に、或は生活面に、或は通貨物價面に、或は失業面に各種の不安と激動とが續發致しまして、爲に勞働者が收入の不足と生活の脅威とに苦しむ事實は誠に同情を致さねばならぬし、此の面に沿ひたる勞働運動の活溌化も當然のことと言はねばならぬのであります、又他面經營者に於きましても、生産に對する惡條件に惱まされ、採算不能に陷り、生産に熱意を有せさる如きものすら見るに至つたのは甚だ悲しむべきことであります、併し今日は斯う云ふ現状に滿足すべき時期ではありませぬ、何としても斯う云ふ事態を乘り越えて國民一人々々が國民生活の安定及び國家再建の爲に働き拔くと云ふことにしなければなりませぬ、勿論今日の勞働爭議は或程度迄起るべき理由があつて起きて居ることは否むべからざる事實でありますが、是は國家の現状から見て有らゆる方法を以て最善を盡し、能ふ限り其の發生を未然に防止しなくちやならぬ、又萬一發生致しました場合に於ても、迅速に之を解決しなくてはならぬのでありまして、斯う云ふ實際上の根據に基きまして政府に於ても此の方針の下に新たに法律を制定する必要があるのであります、此の點は昨年十二月勞働組合法制定の際にも豫見せられた所であります、之が本法を提出した最も重要なる理由であります、併し一面勞働爭議は好ましくないとは言ひながら、決して權力を以て之を彈壓して事を處理すべき性質のものではありませぬ、先づ當事者が有らゆる合理的なる條件をお互に討究致しまして、相手方の立場と事情を出來るだけ誠意を以て考へまして、どうしても主張の一致せざる點に付ては事の性質に從ひまして、或は互讓し、或は公平なる第三者の意見を聽き、輿論に省み、問題の圓滿なる解決に努力すべきであります、仍て本法案に於ては、常に爭議當事者が、自主的に豫防解決に當るべきことを原則とし、之に配するに公正なる斡旋調停又は仲裁等の助力を與へることを目標としまして、法案が組立てられて居るのであります、第二の理由として申述べたいのは、勞働爭議と公益との關係であります、勞働者の團結權及び團體交渉權は常に公共の福祉の爲に利用せられ、是と調和を保つて行かねばならぬのであります、此の趣旨は憲法改正案にも特に謳つて居る點であります、特に國家の事務はどうしても都合好く遂行せられねばならぬのでありまするし、國民生活の脅威と云ふものはどうしても除かれねばならぬのであります、本法案に於きましては其の趣旨に則りまして、一方現業員以外の官吏等の爭議の行爲を禁止致しますると共に、他方運輸、水道、電氣、瓦斯、醫療、衞生等の最小限度に於ける公益事業に對する拔打的爭議を禁止致しました、且状況に依つては當事者の申請なくして調停を爲し得る途を拓いたのであります、是は國家と致しまして一般國民の公益擁護上當然の措置であると思ひます、以上は本法案提案の大體の理由であります、勿論本法案それ自體は勞働爭議の豫防及び解決に關する技術的法制に過ぎませぬから、問題の根本的解決の爲には、先づ勞働基準法を用意しなくちやならぬのでありまして、是は次期の議會に提案する積りであります、又是と竝行致しまして各般の實體的措置、例へば食糧問題、「インフレ」問題等の解決、失業對策、生活保護問題等の解決が必要であることは申す迄もない所であります、殊に現に多くの場合の爭議の原因となつて居りまする所の賃金其の他の勞働條件に付ても出來るだけ適當なる措置を採るべきであり、政府は是等の點に付ても出來る限りの努力を傾注して居る次第であります、以上提案の理由を申述べた次第でありますが、何卒御審議の上御贊成あらむことを希望致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=5
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006・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 質疑の通告がごさいます、牧野英一君
〔牧野英一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=6
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007・牧野英一
○牧野英一君 勞働法は民法から分れて出た法律であります、併しながら民法から分れて出でつつお隣りの公法と結付きましたので、或意味に於ては民法の鬼子であり、叛逆兒であると言はれて居る所の法律でありまするが、又他の意味に於ては是は民法の寧馨兒であり、秀才であるとも言ひ得られる所の法律であらうと思ひます、勞働法の今後の發達が、民法を初め全法律に亙つての仕組み、精神組織、それを新たにする譯であらうと思ひます、さう云ふ意味に於て私共は此の勞働關係調整法案に付ては特別の關心を持つて居る次第でございまするので、聊か所見を申上げつつ政府の御心持を伺つて見たいと思ひます、抑抑勞働法は三つの部分より成立するものと云ふことが出來るでありませう、勞働法の三部曲と云ふのは第一は勞働組合法であります、第二は勞働調整法でありますし、さうして第三は勞働基準法であります、第一のものは既に法律になりました、第二のものが今御詮議に上つて居り、さうして來るべき近い機會に於て第三のものが審議せらるべきことになつて居ります、此の三つのものは車の兩輪と申しますか、實は勞働法の三輪車のそれぞれの輪を成すものでありまして、其の一を缺いては意味をなさないものと存じます、併しながら物には自ら發達の順序がありまして、總てのものが同一の時に揃つて形を整へると云ふことは困難な事情がございませう、自ら事物の進化發展の順序に從つて立法の完成を見る譯になります、さう云ふ次第から致しまして、先づ勞働組合法が制定されまして團體交渉權が認められることになりました、今日諸國に於きましても勞働條件と云ふものは、何とも政府の方から適當な基準を示すと云ふことに困難を感じて居りますので、當事者の駈引に依つて決めるより、致し方ない、斯う云ふことになつて居るのであります、是は十九世紀の法律生活に於ける自由競爭の原理の適用に外ならないものでございますが、併しながら十九世紀の法律の儘では其の自由競爭が公正に行かないのであります、それで十九世紀の終りから二十世紀の今日にかけて、自由競爭を其の點に於て公正ならしめるが爲に即ち「フェアー・プレー」の原則を明かにする爲に團體交渉權が認められることになりました、斯樣な意味に於て國家は最早十九世紀迄の放任主義「レッセフェアー」の主義から一歩出て、自由競爭に對し積極的な働きを始めることになつたのでありまするが、併しながら矢張り團體交渉權を認めて、事を當事者間の解決に委ねて居る限りに於ては、矢張り傳統的な放任主義を出でないものであり、他の言葉を以て言へば國家の無策、無政策なることを暴露した、自白したものになると云ふ譯になるのであります、併しながら現に制定せられました勞働組合法は單に團體交渉權を認めて、自由に爭議をしろと言つて居る法律ではございませぬ、それは其の爭議が常に正當でなければならぬ、正當の方法に依らねばならぬと云ふ正當と云ふ言葉を二度迄も使つて居るのであります、總てのことは正當と認められる枠の中に於てのみ認められることになつて居るのでありますが、扨然らば其の正當と云ふのは何人がどう云ふ標準に依つて之を判斷することになりませうか、即ち昨今は生産管理と云ふやうなことが問題になりましたが、或はそれを正當とし、或はそれを不當とし、色々の議論がありまするが、然らば今日の我々の國家組織に於て、最後の決定は誰がするのでござりませうか、御互に其の當事者が爭ふだけでは事柄は落著く譯ではござりませぬ、即ち自由競爭と云ふものは、最後に於ては裁判所が獨立の見解に依つて決定すると云ふことになりまするので、我々が常に如何なる自由競爭を爲し、如何なる爭議を試みるに致しましても、最後に於ては、裁判所の判斷に服從すると云ふ、立憲的服從の精神がなけらねばならぬ譯であります、さりながら今日の状況に於ては、其の判斷を裁判所に任せると云ふこと迄に事柄が整つて居りませぬ、法律の正面から申しますれば裁判官が裁判の形で正當と云ふことの如何なるものかを明かにすることになつて居りまするが、遺憾ながら裁判所に事を持ち出す前に、事柄の解決の方法が行政的手續に依つて事實上歪められて居ると云ふ事實が刑事統計に依つて示されて居るのであります、私は大正の後期以來、即ち前の世界戰爭後の我が國の状況に付て、「ストライキ」權と云ふことを主張致しました、法律の範圍内に於て「ストライキ」權と云ふことを論じ始めたのは、或は私でなかつたのではなからうかと思ひまするが、其の「ストライキ」が如何なる程度に於て權利として認めらるべきかと云ふことは、裁判所の判定を俟つて明かにせられねばならなかつたのにも拘らず、其の判例は一つもないのであります、さうして「ストライキ」がどう云ふことに依つて處置されて居るかと申しますると云ふと、公務執行妨害罪と云ふ形で統計に上るのであります、「ストライキ」に對して警察官が或方法を講ずる、それに對して反抗しまする所から、それが公務執行妨害と云ふ形で刑事統計に現れて、昨年は何件あつたと、斯う云ふ報告になりまするので、事柄の實態が、不幸にも裁判所に依つては眞直に正面から解決されると云ふことに立至らない殘念な状況になつて居るのであります、斯くの如くにして、此の「ストライキ」權其の他爭議の正當性と云ふものを明かに致しまする爲には、何か別な工夫をしなければならぬことになつて參ります、それが調停法の成立であります、獨り勞働問題に關することばかりではござりませぬ、大正の後半期から始つた所の深刻なる我が國の社會問題は、從來の民法、刑法に依つては解決することの出來ないことが多いのでありまして、從つて都市社會問題たる借地借家問題に於て、又農村社會問題たる小作問題に於て、總ての解決を調停に委ねると云ふことになつて、調停法と云ふものが發達致しました、さう云ふ譯から致しまして、總て社會問題に於ける爭の正當性如何と云ふことを發見致しまするのに、一方に於ては自由競爭に依つてではなく、駈引に依つてではなく、又他方に於ては單純なる法律問題として裁判所に依つてではなく、そこに第三者の仲介に依り健全なる社會の通念を基準として事を明かにしようと云ふことになつたのでありまして、勞働爭議調停法と云ふものが其の一つの現れで、大正の末年に成立致しましたが、それに一歩を進めて、此の度の勞働關係調整法案と云ふものが考案せられることになつた譯であります、斯樣に今日迄大體に於て勞働爭議のことは當事者間の解決に任せて、駈引に依つて結末をつけるべきものとされて居るのではありまするが、國家と云ふものが唯それを眺めて居るだけで、果して國家の任務が足りるものでございませうか、私は憲法改正案の上程せられました時に、政府に對して質問を致しました、其の趣旨は、今日稍稍言ひ換へて見ますと云ふと、我々は憲法の改正案に付て國體と云ふことを特別の問題として考へて居りまするが、此の國體と云ふことには、是は平たく、暫く法律上の文字の使ひ方から離れまして、我々の常識的な國の姿と云ふやうな意味に理解して見ますと、二つの意味を考へることが出來ませう、第一は傳統的に我々の國民的信念の間に成立して居る所の國體、之を憲法の改正案に關聯して如何に考へ直して行くかと云ふことでござりまする、是は縱の國體の問題と申しませう、或は國體の我が國に於ける特異性の問題、「スペシアリティ」の問題と云ふことになりませう、併しながら國の姿と云ふものには、更に十九世紀の國の姿と、二十世紀の國の姿があります、此の國の姿の變り方は我が國の特異性の問題ではなくして、世界共通の普遍性の問題であります、斯う云ふ意味から今日の憲法は獨り基本的人權を消極的に規定するばかりではなく、積極的に規定をせねばならぬ、國家がどう云ふ方法に依り、どう云ふ立場に於て國民の日常生活に積極的に働きかけるか、他の言葉を以て言へば、憲法の上に民法、刑法の原則がもつと鮮かにせられねばならぬ譯でございませう、斯う云ふ風に政府に御伺を申出た譯であります、國家は自由競爭の公正を保全すると云ふやうな、所謂警察官的な、警察的の立場に止つてはなりませぬが、二十世紀の國家はもつと積極的に働きかけると云ふ智慧と元氣とがなけらねばなりませぬ、さう云ふ點から申しまして、大正の後半期以來、さうして昭和にあつて調停主義と云ふものが段段に發達致しましたことは、國家に於ての一つの努力と考へることは出來まするけれども、併しながらまだそれは國家に於て無策たるを免れないと云ふ謗をも免れない次第であらうかと思ふのであります、さう云ふ譯で今後の國家は更に一歩を進めて、勞働基準法と云ふものを明かにせられねばなりませぬ、勞働組合法に依つて先づ當事者を爭はせます、爭ふのは何處迄も十九世紀的であります、それを爭ふには、爭ふのであるが、ちよつと待つて貰ひたい、調停に事柄を任して貰ひたいと云ふのが第二段、是は二十世紀の初りの現象であります、今二十世紀も半ばを終らむとする今日、是からの新らしい日本國を再建させようと云ふ我々に於ては、最も積極的な國家理念を明かにしなければならぬ譯で、是が遠からず政府の提出せらるべき勞働基準法に明かにせられる譯のものであらうと思ひます、斯樣な次第から致しまして、憲法改正案のことに聊か論及することの御許を仰ぎたいと思ひます、改正案の修正第二十七條の第一項に、「勤勞の權利を有し、義務を負ふ。」と云ふことが書いてあるのであります、之に付て厚生大臣に伺を申出たのでありますが、不幸にして此の權利及び義務と云ふ文字に依つて表されて居る事柄の私の解釋と、厚生大臣の御答になつたこととの間には多少の距離があるのであります、厚生大臣の御話では勤勞の權利と云ふのは勤勞を爲すの自由と云ふことを意味するのであり、さうして政府原案に於ては其の權利と言つて權利しか規定せられなかつたのでございまするが、衆議院の修正に於て更に義務を負ふと云ふことが附け加へられました、其の義務と云ふことはまあ輕い意味と、私は厚生大臣の御答の言葉其の儘には記憶は致して居りませぬが、當時私の受けました所の印象は極く輕い意味に御答になつたと考へて居ります、併しながら私は勤勞の權利と云ふことは我々の學問上用ひて居る所の勞働權と云ふ意味、國家の積極的な責務を包含する意味に理解致したいのであり、從つて又勤勞者の義務と云ふものは生易しいものではないと云ふことを、私は考へて居ると云ふことを、當時申上げて置いた次第でありまする、勤勞者は我が國の全産業の爲に、更に言葉を用ひますれば、全産業それ自體の爲に勤勞の義務を負ふと云ふことの意味のものであると斯う云ふ風に私は考へて居りまするので、全産業の再建の爲には勞働者は獨り其の權利を主張するばかりではない、殊に自由權を主張するばかりではない、どんな重い義務を負はされるかも知れないと云ふことを覺悟して貰はねばならない、固より此の勤勞者の義務と云ふものは民主的方法に依り國會に依り、法律に依つて決められるものには違ひござりませぬけれども、併しながら憲法が各種の自由權に付て法律を拘束して居ります、其の法律を拘束して居りますのと違つて、此の點に於ての立法權は非常に廣いものになつて居ります、適當の勤勞者の義務と云ふものを規定するに付ては殆ど何等の制限をも認めないと迄言つて宜いのでござりませう、固より政府原案十條の、基本的人權を尊重すると云ふ原則を覆す譯には行きませぬけれども、併しながら其の義務の内容を、假に場合を假定して考へましても、色々なことがあり得ることと私は考へて居るのであります、企業それ自體、産業それ自體と云ふことを申しましたが、産業それ自體と云ふ言葉を此の憲法改正案に對する質疑に於ては、企業それ自體の原則と云ふ言葉に申上げて、企業と云ふものは企業所有の關係から企業經營の關係に段段進めて考へねばならぬので、企業と云ふものを國家的、社會的に進めて行くに付ては、企業所有の關係の方に餘程遠慮して貰はなければならぬことがあるに違ひない、之を商法の規定に付て申しますれば、現在の會社法が株主總會を最高機關として居る仕組は餘程根本的に改めて戴かねばならぬ、此のことは國内の問題だけに付てでもさうでありまするが、今我々の國に保有されて居る資本關係がどう云ふ運命に迫られつつあるであらうかと云ふことは皆樣の御承知の通りであります、斯樣な時に當つて、我々は其の一種の外交政策の覊絆から出來るだけ獨立すると云ふことを考へ、我が國の産業を我が國の産業として保持し、發展せしめるに付ては、企業所有の關係から企業經營の關係を獨立せしめると云ふ必要がありませう、固より事は商法とか、或は民法とかと云ふ細末のことで解決の出來るものではござりませぬが、併し會社法の根本精神に關する所の改正も亦自ら其の大きな問題に付て若干の御手傳をすることが出來る筈のものと心掛けて居ります、さう云ふ所から企業それ自體と云ふことを考へますると、所謂資本階級は企業それ自體の爲に自己の所有權に付餘程遠慮をして戴かねばならぬ、政府原案の十一條に依る所の公共の福祉の爲に常に權利と云ふものは行使されねばならぬ、此の原則が何處迄擴げられて參りまするか、そこに一つの微妙なる意味が汲取られる譯になるのでござりまするが、それと同時に、私は財産權に關する規定に於て、矢張り政府原案の十一條とは離れ、財産權とありますが、特別に財産權は義務を伴ふの原則をもつと明かにして戴きたいと云ふことを司法大臣に伺を立て、此の點に付ては不幸にして司法大臣からは私にまだ得心の出來ない程度の御答しか受けることが出來ないことになつて居ります、其の細かいことは兎に角と致しまして、企業それ自體、或は産業それ自體の原則と云ふものは、獨り會社法の改正に止りませぬので、勞働法の範圍に於ても、所謂資本階級の方からは産業それ自體の爲に餘程多大の讓歩を願はねばならぬことになるのでありまするが、それと同時に勤勞階級に向つても多大の讓歩を求めねばならぬ譯であります、勤勞階級に向つて企業それ自體の爲に求める所の要求が新たに勤勞の義務として規定せられたもの、斯う云ふ風に私は解釋を致したい、勤勞階級は、勤勞は自由であるから自由なる程度に於て義務を果すと云ふだけに止つてはいけますまい、お互に此の日本國の再建の爲には我慢の出來ぬ所を我慢して働いて貰はねばならぬと、斯う云ふことにまだまだなるのであつて、所謂今日迄勞働法で、勞働法上の原則として國際聯盟を始め諸國の法規に於ての、それぞれの條約法規に現れて居る所の程度を超え、我我はもつと齒を喰ひ縛つて、上の人も下の人もお互に働かねばならぬ時になつて居るのではないかと察するのであります、さう云ふ所から勞働基準法に於きましてもどれだけのことが規定せられるものでござりませうか、此の生存權の規定に對して衆議院が新たに修正を致しまして、勞働者に對しては最低限度の生活を保障すると云ふ意味の此の文字の用ひ方に付ては尚一つ各位の御考慮を煩したいのであつて、私から申しますると少し如何かと思はれるやうな用語例になつて居りまするが、何れに致しましても、趣旨は最低限度の生活を保障せねばならぬと云ふ譯になるのであります、そこで勤勞階級に於ても其の勤勞の權利としては獨り勤勞の自由を主張するばかりでなく、勤勞をするに付ての生存權を主張する權利がある、斯う云ふ風に私は解釋をして行きたいのであり、改正案は憲法上矢張り或程度に於てそれを認めて居るものと考へるのでございますが、併しそれは固より最低限度のものであると云ふことを考へねばなりませぬ、産業それ自體の原則に對する勤勞階級の義務責任と云ふものを考へますると、權利として要求せられるものは最低限度のものであり、それ以上のものになると云ふと改正案の十一條でございますが、修正案の十二條、それ以上のことは國民の不斷の努力に依つて權利を主張して行かねばなりませぬ、國家を頼つてはなりませぬ、それ以上のことは不斷の努力に依つて全うせられねばならぬことになりまするので、其處に憲法改正案は規定が謂はばばらばらに斷片的にはなつて居りまするけれども、それを集めて之を理解することに依り、一方には資本階級の義務が明かにせられ、他方に於ては勤勞階級の義務が理解出來るやうになつて居るものと考へます、さうして斯樣な勤勞階級の義務の中で第一に茲に考へねばならぬのは調停に對する處の立憲的服從の義務と云ふことであります、勞働組合は立憲的主張を認めたと云ふことになりませう、正當なる爭議方法のみ許して居るのでありまするから、爭議を爭議として許して居るのではございませぬ、是はどこ迄も「フェヤー・プレー」、どこ迄も立憲的な民主的な方法に依つて主張せらるべき立憲的の主張に止まらねばなりませぬ、併しながら立憲的に物事を主張すると云ふ民主主義の半面には、立憲的に服從すると云ふ精神がなけらねばなりませぬ、自分の主張に依つて國家、社會其のものの主張を破り、殊に産業それ自體が危殆に陷ると云ふやうなことになるならば、それは如何なる意味に於ても勞働組合法の豫期して居る處ではないに違ひございませぬ、此の點は今厚生大臣から御説明のあつた通りでございます、さう云ふ譯で立憲的服從の精神を明かにするに付ては、第一には裁判所の判決に立派に潔く服從すると云ふ覺悟がなければなりませぬが、併しながら爭議の解決が今差當り裁判所の手を經て明かにせられると云ふことの避け難いことになつて居りまする今日に於ては、廣い意味に於ける調停、此の調整法に規定せられて居る各種の方法に對して寛容な、心の廣い立場で以て服從の精神を發揮すると云ふことが必要であらうと思ふのであります、斯う云ふ即ち此の民主的と云ふことは單に數の力を恃んで、數の優越性を主張すると云ふことにのみ求められべきでございませぬので、此の多數決と云ふことが誠に結構な方法であるが、併しながら往々にして不幸な結果を齎すことに鑑みて、自ら其處に道理と云ふものがどう云ふ風に支配するかと云ふことを反省しなければならない譯でございます、其の意味に於て第三者の健全なる常識に依り社會の通念の示す所の判斷に付ては、一方に於ては企業それ自體の原則に依る資本家、他方に於ては同じく企業それ自體の原則に依つて勤勞階級が穩かに十分誠意を以て服從すると云ふ立憲的服從の精神と云ふものが考へられねばならぬ譯であります、此の點に付ては政府はどう云ふ風に御考になつていらつしやることでございませうか、獨り斯う云ふ法律を拵へたと云ふだけでなく、裁判所に代へて、形の上で裁判所より生温い所の此の法律ではあるが、併しながらそれに對して立憲的に服從すると云ふ精神を、一方に於ては固より資本階級が、併しながら他方に於ては勤勞階級が十分覺悟をしなければ、將來の我が國の産業の再建と云ふことは困難である、此の法律の運用の根本の點に付て政府はどう云ふ風に御考になつて居るかと云ふ謂はば思想的な點を御伺ひ致したいと思ひます、是が質問の第一點であります、一體此の民主主義と云ふことは英米就中我々は「イギリス」の制度を基にして今日迄研究致しました、「イギリス」人の「サイコロジイ」の中には、其の多數決に依つて議決する所の「バーリアメント」、或は「ハウス・オブ・コンモンス」が主に「オムニポーデンス」を持つと云ふことを考へながら、併しながら「イギリス」特有の常識と云ふものがある、「イギリス」特有の「リーゾナーブルネス」と云ふものが大きな働きを絶えずして居る、是等は常に自ら調節節制をすると云ふ所に「イギリス」の政治の妙味があると云ふことになるのではありますまいか、「イギリス」流の民主主義を其の儘輸入致しますると云ふと、例へば「フランス」に於ける色々な「イギリス」とは餘程樣子の違つた事例に接するのであります、又「ドイツ」に於きましては從來の帝政制度が倒れて、新たに「ソシアル・デモクラット」が政府を取つて、民主主義を明かに致しますと、其の民主主義の下に結局獨裁制が成立した譯であります、多數決と云ふ數の問題の裏に常識と云ふものがどう云ふ風に働くかと云ふことを豫定致しませぬと云ふと、民主主義の將來に付ては相當に憂慮すべきものがありまするので、從つて此の法案が成立することは當然希望致しまするが、此の法案と共に政府に於ては立憲的服從の精神と云ふことに付て相當に御計畫があることと考へまするから、それを伺ひたいと思ひます、扨それに關聯を致しまして、私は憲法改正案の質疑の時に申しました中産階級政策と云ふことに付て一言論じ及ぶことの御許を得たいと存じます、此の調整法に於ける各種の方法の運用と云ふものは、要するに中産階級の擔任になるものと考へねばなりませぬ、固より使用者側の代表者、及び勤勞者側の代表者と、それ等の代表者が出ますのでありますけれども、其の「アンパイア」になる所の第三の眞中に座る所の判斷は、其の委員の責任に立つべき人は、雙方の隔意なき立憲的主張を聽きながら、最後の判斷をする譯であります、それはどこ迄も健全なる訓練されたる常識の持主でなければなりませぬから、勞働問題に對する利害關係を離れた所謂中産階級と云ふものに責任を負つて貰はなければならぬことでございませう、中産階級と云ふものが如何なる場合に於ても健全なる社會の通念の持主として模範的なるものであります、さうして外國の立法例に於ては中産階級の保護保障と云ふことが二十世紀に於ける憲法上の原則上の一つになつて居るのであります、不幸にして憲法改正案には其の趣旨が見えて居りませぬ、片方には財産權の制限が規定されて居り、片方では勞働者の團體交渉權が認められて居ると云ふ程度で、中産階級に付ては一言も言ひ及ばされた點がございませぬが、それに付ては政府の御所見は如何かと私は申上げたのでありますが、それに付ては御答がございませぬでした、併しながら民主主義の構成と云ふことに付きましては、一方に於ては御承知の通り陪審と云ふ問題がありますが、是は今日それに説き及ぶのは餘りに片寄つた問題でありませうけれども、陪審の制度、「イギリス」流の陪審を元にして之を日本的なものに建直しまする爲には、陪審の構成に於て中産階級の要素をどう云ふ風に採入れるかと云ふことが一つの問題であります、又第二に、我々の是から問題に致します、現に問題になつて居りまする所の參議院の構成と云ふものは、是は我が國特別なる問題でござりまするが、參議院にも職能代表の趣旨を入れねばならぬと云ふことが各方面から主張されて居る、固より是は當然のことでありまするが、私はそれに加へて中産階級の代表と云ふものが、或形に於て考案されて如何でございますかと斯う云ふ積りでありまするが、是はどう云ふものかまだ餘り世の中の議論に上つて居らぬやうであります、併しながら「アメリカ」の事例を申しますると云ふと、「アメリカ」に於ては極端なる自由競爭から獨占生活に陷つて、到頭そこに一種の經濟状況が現れましたに付て、所謂「アンチ・トラスト・ロー」と云ふものが發達しつつあるのであります、「アンチ・トラスト・ロー」と云ふものが今我が國に於ては、財閥解體と云ふ問題に現れて居る經濟民主主義の一つの問題になつて居りますが、併し「アンチ・トラスト・ロー」の考へて居る所は獨占的な産業組織を制限をして、そこに中産階級を保護する、そこに自由競爭の或取引を許すと云ふことは、中産階級の健全なる成立を許すと云ふ趣旨にあるのであります、此のことは我が國の將來が、或は資本主義であるか、或は修正資本主義であるか、或は社會主義であるかと云ふ問題を離れて差當りの問題としても、我々は此の中産階級の保護、保障と云ふことは、考へて然るべきでござりませう、稍稍問題の軌道を離れるやうでございますけれども、何れ遠からず財産法と云ふ問題が我々に提供される譯でありまするが、此の財産法に於て中産階級と云ふものがどう云ふ風に取扱はれるでありませうか、此のことを政府に御伺ひ申したのでありましたけれども、どなたからも之に付ては御答がござりませぬでした、併しながら茲に勞働關係調整法に付て重ねて申上げます、勞働關係調整法の將來を擔ふものは當事者の立憲的主張と立憲的服從とに依らねばならぬものが多大でありまするけれども、そこに一つの最後の結論を編み出すものは、中産階級から出て居る所の調停委員でなければならぬと云ふことを考へるのでありまするが、さう云ふことを根本として、政府は中流階級政策と云ふことに付てどう云ふ風に御考になつて居るか、中流階級政策と云ふことは税法から始り、陪審にも及び、參議院の構成にも及び、其の他色々な方面に亙る所の廣い問題であります、併しながら今茲に調停と云ふ誠に重大なる問題、此の勞働問題を解決する方法としての裁判所以下、形に於ては裁判所以下でありまするが、其の實踐に於ては裁判所以上の重さを持つべき此の組織に關聯をして、政府は中流階級政策と云ふことをどう云ふ風に御考になつて居るか、重ねて御伺ひ致したいと思ふのであります、此の調整法は、調整の擔任者たる其の中流階級に對して、斯くの如き重大なる責任を豫定するものと考へられるのでありますが、それは一口に申しますれば、先程も申します通り、健全なる社會の通念を代表する者としての中流階級と云ふことになるのでござりまするけれども、此の調停と云ふものが假令直接に法律の規定に依つて判斷をするのでないにしても、手輕な常識判斷を以て事が全うせらる、ものと考へてはなりますまい、それは一方に於て大いに智慧を要するのであります、ぼんやりした普通の常識ではありませぬ、私は健全なる常識、訓練された常識と云ふ言葉を申しましたが、併し常識を超えた所の一つの智慧がなければなりませぬ、獨り斯くの如き智慧を要するだけではござりませぬ、他方に於ては膽力を必要と致します、此の調停委員が如何なる膽力を持つかに依つて事が決るのであります、是は右を顧み左に振り向きふらふらしてはいかぬ、何處迄も自分の正當とし正義とし合理的なるものとして、企業のそれ自體の爲に考へる所の其の結論を、勇敢に發表するだけの膽力を必要とするのであります、固より此の問題の解決には金が要りませう、豫算の問題ではありませうが、豫算を超えての智慧の問題であると云ふことを我々は考へねばなりませぬし、又智慧の問題を超えて人間としての重大なる決意を要する膽力の問題であると思ひます、私は千九百二十六年の春「ヨーロッパ」に居りまして、見學調査を致して居りましたが、其の時に或法律が出來ました、此の法律では勞働爭議と云ふものは、何處迄も爭議を勇敢にしろ、爭議に付ては何等の制限を加へない、併しながら「ストライキ」と「ロックアウト」は産業の阻害になるから是は許さぬ、やるだけやつた以上は之を勞働裁判所に持ち出せ、勞働裁判所は、裁判官は一人、資本家代表を一人、勞働者代表を一人、此の三人を以て組織したる控訴院に於て判斷をする、此の判斷は絶對に決定的なものであつて、それに違反する時には重大なる刑罰を科する、斯う云ふ法律が出ました、それは四月八日頃でありました、私は之を御土産の一つに致しまして、さうして當局に報告を致しました、斯くの如き法律を見ました、さうして其の法律を作つた當局に聽きました處が、自分の國ではやれると思ふと云ふ返事でありましたが、我が國に於ては調停以上に斯樣な組織を御考になる餘地はございませぬかと報告致しました處が、是は固より公式の話ではございませぬけれども、扨、我が國の裁判官にそれだけの見識とそれだけの責任心、膽力とを、果して今待ち設けることが出來るであらうか、裁判所は、兎に角法律は斯うなつて居るからと云つて裁判をする傾きがあつて、自分の判斷の責任を法律に讓つてしまふ癖がある、是は固より法律を尊重しなければならぬ精神から云つて大切なことではあるが、併しながら斯樣な裁判所の精神の下には、智慧と云ふものの足りなさと、膽力と云ふものの不足と云ふことが考へられるので、昭和の初めに於ける所の日本の現状としては、其の立法例を我が國に考慮する餘地がない、斯う云ふ返事でありまして私は退りました、併しながら段段と時局が斯樣に進展致しました今日の我々に於ては、勞働關係調整法の運用に於ては、斯樣な智慧と斯樣な膽力とを有する所の適當なる第三者を得なければなりませぬ、斯樣な第三者を得るに付ては、さう云ふ人をどう云ふ風に取扱ふかと云ふことも問題になる譯でございまするので、中産階級政策に關聯して、此の調停委員の見識、智慧及び膽力即ち責任との關係に付て、政府はどう云ふことを御考になつて居るか、之を第三の質疑として申上げて見たいと思ひます、此の法律案は、勞働組合法から更に此の法律になり、此の法律から更に勞働基準法になると云ふ、勞働法の三つの車が順序よく發達して行くに付ての、進化の階段に於ける一つの連結環であります、此の連結環として私は重要視致して居ります、私は唯象牙の塔に立て籠つて純粹の理論の研究を致して居りまする者でありまするから、誠に誠に不束で勞働問題の現状に即した議論を致す能力がござりませぬ、併しながら斯樣に物の道理を考へて居ることが、幾分でも御採り上げになることが出來る餘地がござりまするならば、其の點に關する政府の御所見を伺ひたいものと考へます(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=7
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008・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御尋に御答へ致します、第一の問題は立憲的服從と云ふやうな趣旨に付ての御尋でありました、此の問題は牧野博士の御意見では、國家の公共權と申しますか、と云ふやうな一つの考と、それから憲法上に於ける個人權と申しますか、さう云ふやうな問題との關聯性に亙る御趣旨のやうに拜承して居るのでありますが、さう云ふ觀點から率直に申上げますと、勤勞の權利義務と云ふやうな問題の實質的の政府の考及び之に對す政府の政治としてのやり方と云ふことに付きましては、大體牧野博士の御議論と同感でありまして、其の趣旨に副うてやるべきものだと云ふ風に考へて居ります、唯嚴正な、法律的な解釋になりますると、此の前の憲法の御質問の時に御答へ致したと同樣に、多少法律上の解釋に違つた點があると云ふ風に感じて居りまするが、何れにしましても勤勞者の生活保障と云ふことに對しては、憲法上之を努めなければならぬと云ふ政府の責任を持つて居る譯であります、是が「ソ」聯の憲法に於ける義務であると云ふことと多少法律解釋は違つて居りまするが、政治の實際に於きましては殆ど同じことだと思つて居ります、現に只今政府のやつて居りまする生活保護、失業對策其の他に對する政策は、國家の許す範圍に於て、財政の許す範圍に於て「ベスト」を盡して居ると云ふことであり、又さう云ふ風に憲法を解釋し、さう云ふ風に法律を制定して行くのが日本の現状に於て最も適切なりと云ふ信念の下にやつて居る次第であります、それから企業それ自體の原則と、此の勞働權との關係に付て重ねての御尋のやうにもありましたが、是は矢張り資本と經營とは法律の制度如何に拘らず、事實上分離しつつあると云ふ現實の事實は、是は否定出來ないのであります、其の經營權と勞働權との關係と云ふことに付きましても、只今經營協議會、其の他の制度に於て問題の融合一致を進めて居ると云ふ現實の事實もあるのであります、が、大體は契約の原則の下に置いて居りまして、法制上是が渾然一致すると云ふ態勢に迄行つて居りませぬ、併しながら政治の將來の見透しとしまして、言葉は多少はつきりせぬかも知れませぬが、健全なる社會化と云ふやうな線に向つて、政治の理想はそれを目標として進みつつあると云ふことは、是も申上げて宜からうと思つて居ります、さう云ふ意味に於て立憲的服從と云ふことを總て解釋して掛らなくちやならぬのでありまするが、此の立憲的服從と云ふ點に於きましては、裁判所は勿論のこと、或は勞働委員會と云ふものがありまして、總て此の勞働問題の調停の局に當るのでありまするが、特に勞働委員會が仲裁を爲す場合等に於きましては、殆ど強制的の效力を持つて居る次第であります、又全體が民主主義的の立場に於て此の問題を處理して行くと云ふやうな所を綜合的に考へまして、矢張り事實上に於きましては、國家の公共權と云ふものが相當高調されなければなりませぬから、其の線に沿うて、そこに勞働者も、資本家も立憲的服從と云ふ事實上の觀念が出て來るのであると云ふ風に解釋して居ります、殊に資本家の「サボ」の場合の如きに對しまして、資本家に責任のあると云ふ時には、今度は物資調整法と云ふものを用意して居りまするが、是も何れ本院にも提案されることと思つて居りまするが、それ等に付きまして、矢張り政府が生産命令を出して、生産「サボ」の場合に處すると云ふやうな途も持つて居ります、さう云ふ時には勿論それは資本家が服從して行かなくちやならぬと云ふ建前になつて居ります、さう云ふ風に立憲的服從と云ふ意味から見まして、さう云ふ線に沿うて相當物は進行しつつある事實はあります、併しながら大體今度の憲法なり、勞働法規の立て方は、政府に於ては大體に於て消極的立場に立つて居ります、矢張り個性の完成、個性の自覺と云ふことを中心に、それを一番大きな問題として、或は是は十九世紀とか、或は昔の人權擁護の立場だとか云ふ色々な議論があるにも拘らず、大體と致しましては、個性の完成と云ふことを中心にしまして、政府と云ふ立場は、今迄戰時中にやつて居りました全體主義的の立場から見ますると、餘程後退した消極的な性格に於て萬事を律して居ると云ふことは疑ひないことだと存じて居ります、それから其の次の問題は、中産階級に關する問題でありましたが、是は私の擔當致して居りまする仕事の範圍を多少脱する點があるかも知れませぬが、此の機會に於て私の所懷を申述べまするが、大體に於きまして、只今は矢張り健全なる中産階級の建設と云ふ面に向つて、政府の方針は進んで居ると申して宜からうと思つて居ります、第一番は富の分配の關係でありますが、是は財閥の解體、財産税と云ふやうな問題、「インフレーション」と云ふものの進行は、言ふ迄もなく富の分配に變更を來すのであります、斯う云ふ風にしまして、富の分配關係が非常な變動を受けつつあると云ふことは、是はもう現實の事實であります、併し其の結果、或は却て一部に富の集ると云ふ現象もあるのでありまするけれども、此の地方に集つた富と都會に集つた富と云ふやうなことは、是は又多分時の經過で、自然にそこらの統制が自ら求められるのではなからうかと云ふやうに考へて居ります、さう云ふ富の分配の、積極的或は已むを得ざるに出でた結果の富の分配が段段變つて來ると云ふことが一つ、それから工業の形態に於きまして段段「マス・プロ」の工業が非常に減りまして、さうして中小工業が非常な發達を遂げて行く、又遂げなくちやならぬと云ふ只今の經濟事情になつて居ります、それから勞働者問題に對しましては、先程申しましたやうに、法律として勞働者を經營に參加させると云ふことは、積極的には認めませぬけれども、事實問題としましては、勞働者を經營者的に段段地位を向上させて行くと云ふことは、是は目標とする所であります、又「プロフイット・シェアリング」、其の他の方法で段段さう云ふ風になつて行くことが宜いと思ひます、さう云ふ風に勞働者の地位を段段向上させて行くと云ふことが、一つの目標でありますから、出來れば中産階級的の生活水準に達しさせたいと云ふことを矢張り考へて居ります、それから農民の問題に付きましても、只今農地法其の他の關係に於て段段地主階級に變化を受けまするけれども、耕作權を農民に與へると共に、矢張り國際情勢の變化に伴ひましてどうしても農業の高度化と云ふことを目標にして行かぬと、唯食糧を増産すると云ふだけの目標でなく、どうしても「インテンシブ」の農業に行かなければならぬと云ふことは疑ないことであります、是も矢張り農民を出來るだけ中産階級的の生活の水準に上げたいと云ふことを目標にして居りまするから、大體此の立て方は矢張り中産階級の奬勵と云ふことになつて行くと私は存じて居ります、さう云ふ意味に於きまして、勞働爭議の問題の解決に付きましても、中産階級的の者がそこに重大にして公正なる發言權を持つと云ふ方法に努めて行きたい、只今は好むと好まざるとに拘らず、矢張り勞働者と經營者の對立した階級的の形になつて居ることは、是は已むを得ぬことでありまするが、勞働委員會の組織の如きも、矢張り勞働者と資本家、經營者の代表の外に一般の第三者を入れまして、さうして會長其の他は第三者でやらせまして、第三者の公正にして冷靜なる批判、さうして特に中産階級なり又輿論を「バック」とした批判に依つて此の問題を處理して行きたいと云ふ方向に現在進んで居ります、只今の勞働委員會は組合法が出來て間もないことでありまして、勞働團體の結成等が遲れました爲に、多少政府が力を添へて作つた形になつて居りまするが、近い内には全く法律の期待した形に拵へ直す積りでありますが、其の點に於きましても第三者と云ふものの位置を餘程重大に考へて行く考で居ります、又調停委員の性格も此の線に沿ひまして、出來るだけ堅實な市民的な性格を持つた常識の豐富で、殊に其の上に博士の御指摘の如き相當の叡智を持つた人を之に加へて、さうして「リスト」を作つて、勞働爭議の度毎に其の「りすと」から拔いてやつて行くと云ふやうな御趣旨に副つて調停委員會の性格も決めたいと云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=8
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009・牧野英一
○牧野英一君 牧野としては細目のことは委員會に讓りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=9
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010・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました勞働關係調整法案は、此の特別委員の數を二十五名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=10
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011・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔根本書記官朗讀〕
勞働關係調整法案特別委員
公爵 三條實春君 侯爵 東郷彪君
侯爵 鍋島直泰君 伯爵 壬生基泰君
子爵 秋月種英君 子爵 松平乘統君
子爵 高木正得君 子爵 大久保教尚君
子爵 三宅直胖君 桑木嚴翼君
牧野英一君 吉田久君
男爵 松本本松君 男爵 渡邊修二君
男爵 山根健男君 男爵 山名義鶴君
男爵 中村徹雄君 種田虎雄君
我妻榮君 正田貞一郎君
竹中藤右衞門君 中山太一君
片倉兼太郎君 秋田三一君
古垣鐵郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 次會の議事日程は、決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十一時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03019460906&spkNum=14
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