1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託義案
○勞働關係調整法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=0
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001・会議録情報2
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委員氏名
委員長 男爵 渡邊修二君
副委員長 子爵 高木正得君
公爵 三條實春君
侯爵 東郷彪君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 壬生基泰君
子爵 秋月種英君
子爵 松平乘統君
子爵 大久保教尚君
子爵 三宅直胖君
桑木嚴翼君
牧野英一君
吉田久君
男爵 松本本松君
男爵 山根健男君
男爵 山名義鶴君
男爵 中村徹雄君
種田虎雄君
我妻榮君
正田貞一郎君
竹中藤右衞門君
中山太一君
片倉兼太郎君
秋田三一君
古垣鐵郎君
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昭和二十一年九月九日(月曜日)午前十時三十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=1
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002・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 是より開會致します、先ず政府の説明を求めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=2
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003・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 勞働關係調整法案の概要に付て御説明申上げます、本法案の提案の理由に付きましては、概に本會議に於て申述べた通りでありますが、要點を申しますれば、本法は勞働組合法に依りまして勞働組合の健全なる發達を促進助長致しますことと相俟ちまして、爭議權に最少限度の制限を加へて、公共の福祉を擁護致します一方、勞働關係當事者間に不幸にして意見の不一致を招來致しました場合に、之を公正に且迅速に解決致しまして、産業の平和を維持し、以て日本再建に寄與せむとする譯であります、簡單に以下其の内容を説明致しますると、先づ第一章聰則に於きましては、以上述べました根本精神を明かにすることを目的と致して居るものでありまして、殊に第二條及第三條等に於きましては、爭議は當事者の自主的努力に依つて解決すべきものたることを本旨と致しまして、政府は其の自主的努力に援助を與ふるに止まるものであると云ふことを明かにして居るのであります、又第八條に於きましては爭議制限を爲す公益事業の範圍を必要の限度に止むることを規定して居る次第であります、次に第二章、第三章、第四章に於きましては、勞働爭議が發生した場合に於きまする斡旋、調停及仲裁に關する規定を設けて居るものでありまして、斡旋と申しますのは、爭議の起き、又起きむとする場合に、學識經驗を有する者をして爭議當事者間を斡旋せしめて、さうして、自主的に和解せしめることを目的として居る制度であります、又調停と申しますのは、調停委員會と云ふものを設けまして、當事者双方の意見を能く聽きまして調停案を作成しまして、之を兩當事者に提示致まして、其の受諾を勸告するものでありますが、第十八條第一頂第三號乃至第五號の所謂強制調停の場合と雖も、調停案の受諾を強制するものではありませぬ、調停に掛けることを強制するに止まりまして、調停案其のものは何時でも當事者の任意と致して居ります、其の次に仲裁と申しまするのは、是は勞働委員會で仲裁の裁定を致しますと、當事者は必ず之に服さなければならぬと云ふ制度であります、從ひまして此の仲裁と云ふことは、豫め當事者双方に於て之に服從すると云ふ同意があるとか、或は勞働協約に於てさう云ふことを規定すると云ふことを前提として居る次第であります、併し以上の三方法の何れの場合に於きましても、當事者双方の合意に依りまして本法に規定して居る者以外の者の斡旋、調停乃至仲裁を受けることは、勿論隨意でありまして、決して此の法律に依つて之を制限して居るのではありませぬ、第五章は爭議行爲等の制限禁止に關する規定でありまして、第一に工場等に於きまする安全を危くするやうな行爲は一切禁止して居ります、次に特定の公益事業に付きましては、所謂拔打爭議と云ふものを禁止して、國家公衆に對して爭議發生に對處する爲に必要な餘裕を與へ、且つ此の間輿論の批判を十分受け得るやうにして、此の拔打爭議と云ふものの突發的に起ることを禁止して居る譯であります、又第五章に於きましては更に警察官吏、消防職員、監獄勤務者、其の他一般の官公吏等の爭議行爲に付ては之を禁止して居ります、それは是等の官吏の職務は國家に缺くべからざる性質のものであると云ふ理由に依つて、之を禁止して居る次第であります、それから尚第五章の最後に於きまして、爭議行爲を爲したる故を以て解雇若しくは其の他の不利益な取扱を爲してはならないことに致して居ります、最後に第六章に於きましては、是等に關する必要な經費の辨償に關して規定して居ります、以上が大體本法案の概要でありまするが、本法案自體は勞働爭議の豫防解決に關する謂はば技術的の規定でありまして、又諸外國の法制に比較致しましても、寧ろ消極的な感があるのでありまして、是のみを以て勞働爭議の豫防解決の方法の全部でないことは勿論でありまして、爭議發生に至る原因、例へば賃金其の他の勞働條件、或は更に根本的には食糧問題、「インフレ」問題、失業問題等を解決することが必要であるのは言ふ迄もないのであります、政府も是等の面に付て能ふ限り努力を傾注致しまして、兩々相俟つて勞働關係の公正なる調整を圖つて、日本再建に資する所存でございます、大體此の法律は勞務法制審議會の審議を經まして、さうして特に公聽會にも懸けまして、勞務法制審議會には勞働者の代表も相當御入りになり、さうして小委員會案の作成等に當つて貰ひまして、大體此の輿論を其の儘映じて居る、それから又組合法を作りまする時の昨年からの沿革に徴しまして、斯う云ふ法律は當然出べきものだと云ふ一般の期待もあつたと云ふことで、此の内閣が出來ましてから前内閣以來の繼承したものを其の儘採上げて實は提案したものであります、それで内容は今申しました通りに、勞働爭議が起つた時に、如何にして之を豫防し、如何にして調整するかと云ふ其の技術的方法、是はどうも何處の國にもあることである、是はさうやらぬといかぬ、勞働組合法でも其のことを豫見して居ります、それを第一に置いて居る、第二の問題は全く公益擁護の立場に於きまして、それは今申しました拔打爭議に三十日間の餘裕を設けまして、突然「ストライキ」をやられては、困ることがある、例へば交通關係の如き、郵便、電信の如き、山の手爭議などの例に付ても御體驗の通りでありませう、是は一定の三十日と云ふ餘裕を取つて置かぬといかぬ、さうして國民の日常生活が困るやうにされてはいかぬぢやないかと云ふ意味で、各國とも斯う云ふ法制はあるのであります、それからもう一つは官吏の罷業の禁止であります、官吏と申しましても、國務に關係のある官吏を意味するのでありまして「エレヴェーター・ボーイ」とか小使と云ふものは入らぬのであります、本當の國家の職務に關係のある官吏であります、一般官吏が萬一「ゼネ・スト」でもやることになると、國務と云ふものは止まります、國務が止まりますと、矢張り内閣なり、政府と云ふものは、引つくり返ると云ふやうな懸念も頗る濃厚なんであります、さうしますると、今後の政府と云ふものは、國民の多數の投票を持つたものを「バック」として立つと云ふ政府になつて居りますから、「それが少數の官吏の罷業に依つて引つくり返ると云ふやうなことになりますると、是は本當の意味の「デモクラシー」でないぢやないかと云ふやうな點で、どうしても是は禁止して置かなくてはいかぬと云ふ意味であります、さう云ふだけの目的で立てられたもので、色々世間の勞働組合あたりに反對がありまして、御承知の通りの「デモ」などが大分ありましたが、私共は其の眞意を實は能く解することが出來ぬ、段々理解されるに從つて、此の問題は分つて來るものなりと云ふ確信の下に、此の法律を衆議院も通過を願つたやうな事情になつて居ります、で、どうしてもやらなきやならぬ、國家としてやらなきやならぬ當り前のことだからやれるのだと云ふことで、段々其の點が一般人に徹底しますれば、此の法案に對する誤解も解けて來るでありませうし、又勞働問題の調整及び公益事業上から云へば、どうしても是だけのものは必要なりと云ふ信念の下にやつて居ると云ふことを御了承願ひたいと思ひます、さう云ふ趣旨でありますから、何卒御審議の上速かに御贊成あらむことを希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=3
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004・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 質疑に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=4
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005・秋田三一
○秋田三一君 序でに衆議院の色々の議諭の大要の模樣を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=5
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006・河合良成
○國務大臣(河合良成君) それでは大體の樣子を述べます、此の法律に對する衆議院の議論は、矢張り今申しました三つに分けて議論が集中して來たのであります、第一の問題は其の斡旋、調停、仲裁と云ふ問題であります、是は勞働組合法に斡旋、調停、仲裁と云ふやうな意味のことを書いてありまして、さうして是は當然矢張り別の法律なり、或は勅令なり、何かでやらなくちやならぬ、其の手續が書いてありませぬので、やらなくちやならぬ規定なんであります、併しながら事柄は重大であるから、矢張り斯う云ふ「レーバー・アジャストメント」と申しますか、此の法律でやるのが最も適當であらうと云ふ譯で提案した譯でありますが、此の點に付きましては、衆議院に於きましては餘り議論はありませぬ、大體は此の第一の點は了承されたと思ひます、それから第二の點は今申しました拔打爭議の禁止と云ふことであります、是は勿論一般の事業に付てやるのではありませぬで、公益性の非常に濃厚な、而もそれが國民の日常生活に影響の及ぶものに付てだけなのであります、それで是は第八條に規定して居りまするが、「公衆の日常生活に缺くことの出來ないもの」と云ふことで、運輸事業、郵便、電信、電話、水道、電氣、瓦斯、醫療、公衆衞生と云ふやうな事業になつて居りまして、是は限定的になつて居ります、其の外、尚中央勞働委員會で特別に議決をしまして、中央勞働委員會は勞働者、資本家及び第三者から成立つて居るのですが、其の各代表の者の過半數の贊成があつた場合には、其の外の事業を一年間の期間を限つて指定することが出來ると云ふ風に、公益事業に多少彈力を付けて居ります、それは例へば食糧配給のやうな仕事でありまするが、是は食糧配給と云ふのは、本來食糧と云ふものは配給すると云ふ仕事ではない、此の頃のやうな食糧問題の非常に窮迫したやうな時には食糧配給の方法を執らなければいかぬから、さう云ふ方法を執つて居る時には、食糧配給の如きは公益事業と云ふことで宜いのぢやないかと云ふやうな問題が稀にありますので、それはさう云ふ制限付きで公益事業にすると云ふことになつて居りますが、此の問題も、此の範圍に付ては多少議論もありましたけれども、餘りやかましい議論はありませぬでした、唯さう云ふことは勞働爭議の發生の頭を叩くものであります、で、勞働爭議は勞働爭議權で權利として認められたものであるから、さう云ふものを國家が頭を叩くと、どうしても爭議と云ふものは氣合のものであるから、なかなかうまくやれぬのだ、爭議をやれぬと云ふことは、結局勞働者の權利を害すると云ふことになるのぢやないか、さうだからそんな風にするのはいかぬと云ふやうな議論が矢張り中心であります、一方それに對しましては、いや、それは矢張り國民の日常生活に關係があるのだ、國民の日常生活と云ふのは是は公益上極めて重要なることなんだ、それだから、それは矢張り國民全體の公益の見地からそんなものはやられては困る、一定の期間を置くべきものだ、それにしたつて三十日は長過ぎる、いや「アメリカ」あたりではもつと長い、いや「アメリカ」の事情はなかなか勞働組合などはちやんと基礎があつて、鬪爭力もあるのだから、それは事情が違ふ、いや、それだから「アメリカ」よりは少し短くしてあるぢやないか、と云ふやうな議論が重點でありました、結局爭議權を矢張り制限すると云ふことは、或意味に於て爭議權を奪ふに等しいものであると云ふことの主張でありました、併し之に對して、それは、勞働爭議は正當なる爭議でなくちやならぬ、さうして又憲法上の權利と云ふのも、是は公益の爲に、矢張り公共の福祉の爲に制限せらるべきものである、公共の福祉と云ふものは、矢張り勞働者の權利の主張よりも先行すべきものだと云ふやうな議論で立法されて居るのでありまして、其のさう云ふ面に對する政府の説明と、之に對する反對の主張とが重點であります、それから第三の點は、一番是が問題になつたのでありまするが、官公吏に對する爭議禁止と云ふ點であります、官公吏は爭議を大體やらぬ、又やつてはならぬと云ふことに對する議論は、此の實質に對する議論は餘りないのでありまするが、兎も角も一般國民に與へられた爭議權であるから、それを官公吏だけ除くのはいかんぢやないかと云ふことで、官公吏は爭議をやらなければならぬからと云ふ強い主張は少なうございました、少ないけれども、大體は矢張り官公吏と云ふものの人格も尊重して、さう云ふ風な爭議をやつてはならぬと云ふ風の扱ひをやるのはいかんぢやないかと云ふ點が中心問題のやうでありました、之に關聯しまして、生産管理の問題なども矢張り混つて議論に出まして、それに付ては相當強い議論もありました、生産管理に關しましては、政府の方針は御承知の通り決つて居る、其の線は一歩も政府として之を動かす考でもないし、又此の問題の直接關係する問題も少いので、幾つかの議論もありましたが、其の儘に終つた譯であります、それでもう一つの問題は、是は資本家側に對する擁護であつて、勞働者に對する壓迫であると云ふやうな抽象的の議論がなかなか起きました、併し此の法律は全く公共の福祉を目的として居る次第でありまして、別に資本家がどうの、勞働者がどうのと云ふ意味の對立的の意識を以て立てられて居るものではありませぬから、是は單なる誤解と存じて居ります、それから尚勞働法規に關しましては、組合法と勞働調整法とそれから勞働基準法、結局勞働保護法と申しますか、基準法と申しますか、結局勞働條件の内容を決めた法律……時間とか、休憩其の他就業條件など、賃銀なども之で決つて居りますが、此の法律を何故一緒に出さぬか、調整法を出す以上はどうしてもそれを出すべきものだ、寧ろ勞働保護法を先に出すべき位のものだ、それが遲れて居るのはどう云ふ譯だと云ふやうな色々議論もありました、是は御尤もな所と思ひます、組合法と三つとも一緒に出すのが一等理想的の方法だつたと思ひまするが、御承知のやうな終戰後の事情で、兎も角も組合法だと云ふので、組合法が一番先に出て、さうして其の中に勞働關係調整法が出來ました、さうして勞働基準注と云ふのは内容が非常に大きいのと、矢張り十分輿論を聽き、實際の事情に當て嵌るやうにやらなければなりませぬので、色々さう云ふ手數が掛りますので、どうしても此の議會に間に合ひませぬ、此の次の秋の臨時議會には是非提案したい積りで、今公聽會を開いて居るのであります、事實上是は一緒に出すことは出來ませぬので、急いで出すと云ふことに對する考を持つて居ると云ふ風のことで大體御了承を得たと思ひます、そこで衆議院としても、矢張り附帶條件としまして、勞働基準法を速かに制定せい、それから官公吏に「ストライキ」をやらせぬのだから、待遇の改善と云ふことを常に考へて置かなければならぬ、結局「ストライキ」は何の爲にやるかと云ひますと、主として矢張り勞働條件の關係でありまするから、勞働條件が困つた時に、「ストライキ」に依つて勞働條件に對する反省を促すと云ふことが一番太い線になつて居りますから、官公吏に「ストライキ」の途がないならば、絶えず勞働條件、俸給其の他の點に付て考慮して置かなければならぬぢやないかと云ふことで内閣に特別の委員會を設けて、さうして民主的の方法で官公吏の給與と云ふものを絶えず考へて行けと云ふ附帶決議が附いて居ります、御尤もなことだと思ひます、それからもう一つは本法の施行は何時からするか、其の施行期日に關しては餘程政治的に考慮せよと云ふ決議文が附いて居ります、と申しますのは、例の「ゼネスト」のやうな話も色々ありまして、是は勞働調整法を初め、非常にやかましく言つて居りましたが、最近は御承知の通り鐵道其の他の馘首問題と云ふものが、人員整理の問題が段々中心に移行して居るやうで、「ストライキ」の傾向の一番先は食糧問題を中心としました手當、賃金増加の問題から、斯う云ふちよつと政治的な色彩を帶びた勞調法の反對と云ふものが混つて來まして、さうして最近は事業整理と云ふことに對する問題が中心に起きて來たと云ふやうな形になつて居ります、さう云ふ政治情勢は色々ありまするから、其の政治情勢と睨み合せて、本法の施行の期日を決めたら宜からうと云ふ附帶決議であります、政府に於きましては此の三つの決議の趣旨は十分尊重すると云ふ答辯を致して居る次第であります、尚色々御尋に應じまして細かいことを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=6
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007・種田虎雄
○種田虎雄君 ちよつと速記を止めて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=7
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008・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 速記を止めて……
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=8
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009・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=9
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010・中山太一
○中山太一君 資料に付て大臣に御願ひ致したいのであります、豫告期間の問題、是は長い短かいと云ふことが衆議院で論議されて居るのですが、是は「アメリカ」、英國等に於ては豫告期間と云ふものは大體どう云ふ風になつて居りますか、それを知りたいと思ひます、それから契約勞働である場合に、相互に豫告する義務があると思ひます、是は使用者側だけでなく、勞働者側も、是は其の契約期間内に變更する場合には豫告期間が附いて居ります、斯う云ふものは慣例としてどう云ふ風になつて居りますか、知りたいのであります、又衆議院で、否、衆議院と云ふよりも此の頃の新聞で公聽會に於て問題になつたのでありますが、使用者側も勞働者の豫告を必要とすると云ふことが唱へられて居ります、是は契約勞働でないのに豫告が必要であるかないか、此の點も「アメリカ」等の實際の例を一つ聞きたいと思ひます、それから賃銀支給制が甚だ不合理な状態に置かれて居る、是も「アメリカ」、英國等の賃銀支給制度がどう云ふやうな状態であるか、大略で宜しうございます、それから時間問題になりますが、時間は實働の時間であるか、大體として八時間制がやかましく唱へられて居ります、其の八時間と云ふものは、實働の時間であるか、又形式的の時間であるか、是は審議を進める上に於て有力な重要な資材だと思ひますから、是も一つ、それから休日のことに付きまして、諸外國の休日は主として日曜に重きを置いて居ります、我が國では日曜も休日と見又國際日、色々と今後變るべき筈でありますけれども、旗日が澤山にあります、是も休日と看做されて居る場合があります、それから年末年始の休みもあり、又舊習慣に依つて其の地方地方のお祭り、所謂祭日にも休みがある、勿論それから盆とか其の他等もありますが、此の我が國の休日として見られるものと外國の休日として見られて居るものと比較したものを戴ければ色々の質問をし御答辯戴く上に於て非常に便宜なものと思ひます
尚豫告手當と云ふことに付て、英米の豫告手當はどれ位の率になつて居るのか、所謂日給にどれだけの額のものを負擔するやうになつて居るか、又更に年末、年度末に於ての賞與と云ふものは、向ふの勞働者に支拂ふのはどう云ふ状況に於て行れて居るか、是が矢張り爭議の一つの目標になる場合もあります、又退職手當と云ふものが英米に於て其の比率はどう云ふやうになつて居るか、我が國の退職の手當の觀念と英米の退職手當の觀念と云ふものは根本から違つて居るに拘らず、是が我が國の有利であるものは其の儘看過されて、一部の不利なものが強調されて居ると云ふことは非常な不合理な點がありはせぬかと思ひます、是だけの資料を御差支ない限り至急に戴きますやうに御願ひしたいと思ひます、續いて今日のやうな産業經濟界が重大難局に直面して居る時はないのであります、從つて勞資相互に道義的な而も美しい感情を以て理解し、所謂精神的な結合をして行くと云ふことが一番大切だと思ふのであります、さうして産業の再建、復興の爲には事業能率の昂揚が必要である、之を只今のやうなことでありますと、資本家が「サボタージュ」して居ると言はれるけれども、實際は眞劍に復興に努めて居りながら實績が上らない、又一方では勤勞者がどうも不眞面である、又爭議をして居ると云ふことも言はれる、又之にも種々食糧事情其の他事情があることでありませう、之を一々話して居れば、水掛論になりますが、要は双方が自覺して、さうして協力しない限りは、産業の再建、復興は至難だと思ふのであります、さうして中小商工業の振興も、國民生活の安定も、又平和日本の立派な再建も、それに依らなければ出來ないと思ひます、政府は此の勞資間の積極的に理解をする、もう少し美しい感情を以て協力する、對立でなしに、進んで双方御互ひの立場になつて、眞實を知り合つて協力して行くと云ふやうな御考へ、又それに對する對策を御持ちではないのでありませうか、それを御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=10
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011・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御質問は御尤なことでありまして、出來るだけ勞資双方の理解と協力とでやつて行かなくちやならぬと云ふことに付ては、政府も毛頭異存はありませぬ、又其の線に向つて進まなくちやならぬのであります、唯もう御承知の通りの終戰後の變革でありまして、それで何よりも大切なことは、結局人間の個性の完成と申しますか、個人の自覺と申しますか、さう云ふことが御承知の通りの民主々義の根本になつて居るものでありまするから、從來矢張り日本として行はれました相當の封建的の思想が一面にあつたが、それはまあ出來るだけ破つて、さうして勞働者の方面に付ても自由にしなくちやならぬと云ふことが、御承知の聯合國の日本占領後に於ける聯合國の思想でもあり、又政府もそれに從つてやつて居ると云ふ問題を第一に考へた次第であります、そこで經濟事情は今御話の通りに、食糧問題なり、或は資材の不足なり、或は經營の困難なり、色々な問題が茲に起つて來た眞中に、「デモクラシー」の進む道と云ふものは、一番大きな道として大きな眞中を突き拔けて行くものである、其處にどうも思はざる支障、思はざる色々なことが起ることは甚だ政府の遣憾として居る次第でありますが、段々落著いて參ります、殊に食糧問題の安定も目先が見えて參りました、是が決まりますれば、「イソフレ」面に付てもさう心配がなからうと云ふ大體の所見でございます、此の上少し資材其の他の物資でも入つて來ますれば、事業も起つて來る、さうしますれば事業と勞働との面の調整も段々圓滑に行く、又さうしなくちやならぬ、特に石炭の問題なり、中小工業の問題なりに付てもどうしてもさう云ふ線に沿つて行かなければならぬと云ふ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=11
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012・中山太一
○中山太一君 只今のやうな惡條件の下に産業を放任して置きますと、益益萎靡不振に陷りますばかりでなく、或は倒壞の不幸を見るものも少くないと存ずるのであります、さうすれば現に失業者がある中に益益失業者を續出せしむると云ふやうなことになるのであります、其の一方には民生物資の生産なり、見返り物資の増産も大いに爲さねばなりませぬが、是も豫期に反する結果を生じまして、政府の企圖さるる經濟再建も或は机上の計畫のみに終る虞があると思ふのであります、此の點に付ても一段と御考慮願はねばならぬが、先づ第一に日本の賃銀制度、此の不合理な賃銀制度が今尚放任されて居ると云ふことは、政府に於て相當責任がありはしないかと思ふのであります、是は働く技能がある、又眞面目な働きをしたからと云ふので收入が殖えるのではない、それで日本の賃銀制度なり手當制度と云ふものは、殆ど出鱈目なことである、從つて其の生産費の上に於ても、原價計算の取れない全く出鱈目な商品價格が出來て來る、是では高物價を益益招來し、それから輸出物資も遂には海外の市場から締出しを喰ふやうな虞がありはしないかと存じまするが、賃銀制度に對して…政府は今度も官吏の俸給等にも改正されるやうなことが出て居りましたが、それを見ても今尚其の誤りをずつと續けて行かれて、所謂刹那主義と云ひますか、姑息的である、こんなことで眞の産業の改善は出來ぬ筈でありますが、之に付て厚生大臣の御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=12
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013・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 賃銀に付きましては、矢張り勞働問題なり、或は經濟問題の觀點から致しまして、賃銀と云ふものをどう云ふ風に、何處迄國家が之を指導して行くと云ひまするか、或は枠に入れて行くと申しますか、さう云ふ問題は非常に實はむづかしい問題ぢやないかと思つて居るのであります、それで矢張り最低賃銀と云ふやうな問題が、何時も斯う云ふ賃銀問題に付て出て參るのであります、是は最低生活の保障と云ふ面と伴つて來て居ると思ひますが、次に出ます勞働基準法にも其の思想が幾らか現はれて來ると思ひます、唯此の最低賃銀と云ふものは、今日のやうな通貨にも物價にも安定性のありませぬ時には、最低賃銀と云ふことは、なかなかむづかしいのであります、一面又それと反對に最高賃銀と云ふやうな思想も、制限と云ふことも出て參りますが、假りに只今其の最低賃銀の指定などを致しましても、皆賃銀は最高迄行つてしまふ、只今の情勢では最低賃銀の問題は賃銀の中でも最も困難な問題であると考へて居ります、さうして上下とも只今の經濟情勢では切離すべからざる状態であります、それで家族手當と云ふやうな問題、是は特に日本に於て獨得に斯う云ふことをやつて居りますが、是は「イギリス」あたりと較べましたら、特別な發展だと思ひまするが、此の問題に付きましても色々問題を起して居りまして、例へば家族が多いと使用する方では困るから、成るべく家族の少い者を傭ふと云ふことになる、さうすれば家族の多い者は段々困つて來ると云ふやうな状況で、家族手當に付て一つの「プール」制度を設けて、何か保險の對象を設ける必要があると考へて居りますが、是もなかなか困難だと思ひます、と云ふのは皆てんでに家族手當の決め方が違つて居るのですから…、斯う云ふやうな意味に於て、賃銀制度と云ふものも、問題は寧ろ此の勞働者の最低生活保障と云ふことの面に於て、色々賃銀制度に對する一つの枠と云ふものは、最低生活を保障しなくちやならぬと云ふ上に於て賃銀を決めなければならぬ、賃銀制度の問題は、各國とも起きて居るのでありますが、今の御話の原價計算との關係に於きまする問題は、なかなか是はむつかしい問題で、今政府としては原價を採れるやうに賃銀をやりますれば、今日の情勢では勞働者が食つて行けぬことは當然になつて來ると云ふので、其の間の問題にはなかなか積極的に政府が觸れても面倒な問題ぢやないか、實際上出來ぬ問題ではなからうか、殊に經濟の變轉の時代に於きまして、國民生活は事實上の問題から申しますれば、相當の闇をやつて今日迄參つて居ります、闇のことを考慮に入れますると、矢張り今日相當に上つた賃銀でも、是でやつて行けて十分だと云ふ譯にはまだ迚もいかぬ、勿論一方に於ては、事業家は此の點に困難をして居ると云ふことは、是は言ふ迄もない事實なのであります、そこに「コスト」とそれから物價と「バランス」がすかつり取れて居りませぬ、政府に於きましても、其の「バランス」をしつかり取ることに努力して居りますが、其の全體の「バランス」が取れませぬと、賃銀の安定と云ふことが困難であります、勿論それを取らせることに全力を注ぎ、有らゆる努力をそれに注ぎつつある次第でありますけれども、只今の處で賃銀を政府として積極的にどうやつて行くと云ふだけの確信を持たないと云ふことを御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=13
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014・中山太一
○中山太一君 只今の賃銀の問題は非常に産業再建上重大な問題であり、又國民の生活安定の上にも極めて關係があるのでありまして、物價を適正物價にしようと苦心されても、一方に不合理な賃銀が是正されない限りは之が達成は不可能であります、それから物價を公正にしようとして公なり其の他の方法で政府が行はれて居るのでありますが、一方に闇に等しいやうな盲目的な賃銀制度を其の儘放任されて居つたならば、是は産業の復興を無視することになるのですが、政府は茲に矢張り苦心を拂はれて、適正な勞働者の生活が安定するやうに、産業の成立つやうな方法を講ぜられることが必要ではないかと考へて居ります、家族手當の問題がありましたが、此の家族手當が、是は日本の家族制度、温情主義、主從關係等の濃厚であつた所謂或一面に於ては封建的な遣物だと言はれる其の制度の時には、私は當然一家族何人居つても養はなければならぬと云ふことが必要だと思ふ、今日は勞働權がはつきりと認められ、團體權も爭議權、所謂罷業權迄認められることになつた、資本家とは五分々々である、對立の立場にある、そこに恩惠的の意味は存在しない、好意は持ち合はなければならないけれども、一方にのみ恩惠的負擔がある筈はない、生産に關係がないのに拘らず、何人でも、五人でも十人でも、家族が多ければ一人が勤務しても、それを負擔しなければならぬと云ふ、こんな不合理な賃銀の制度がありやう筈がないと思ふのであります、之を直さなければならぬと思ひます、是は厚生大臣が大いに抱負經綸を以て之に當らなければならぬことではないかと思ひます、農家が今の都市に於ける勤勞者の如く、一人が働いて居つて家族を皆養ふと云ふ觀念であつたならば、一町歩も決して耕作することは出來ない、所謂協同主義、皆共稼ぎでやつて居つてさうして能く其の任務を果す、此の高物價時代に一人が何處かの事業に關係して居るからと云ふので、それのみが負擔すると云ふことではいけないのではないか、もう少し勤勞の權利があると同時に義務がある、此の際には皆が働いて、さうして一家の生活を安定せしむると云ふことも必要ではないか、生産の革命と同時に生活の革命化が行はれない限りは、此の際適當に之を打開して行くことは出來ないのではないか、さうして一家の負擔が三人なり五人に依つて收入が得られるので樂に負擔に堪へて行くと云ふことになれば、茲に勤勞者の生活に餘程ゆとりが出來るのぢやないか、今の儘であつたならば………それで家族手當と云ふ意味で政府でさう云ふ制度をやつて居る、私は此の制度が一番間違つて居ると思ふのであります、生活保護法に反對して居られる某婦人代議士の如き、家族制度は封建時代の遣物だと攻撃して其の内容に對して意見を加へて居ります、それにも拘らず五人、十人居つて家族手當を最も高額に要求せられると云ふことになると、是は全然生産計畫が立たないものである、生産計畫が立たないさう云ふものを作つて、良い物を安く市場に出さうと云ふことは出來ない、出さなければならぬが、出來ない、さうすると一方には公で押へられて居るから、それを作ることが出來ない、それが所謂生産者の、資本家の「サボタージュ」と云ふことになるので、茲に無理がある、それから輸出しても、さう云ふものが見返り物資として海外の市場に觀迎される氣遣ひがない、必ず閉出しを喰ふ、此處でも産業が行詰る上に、後日交易が許されるやうになつて輸入品がある時になると、日本の今のやうな出鱈目な賃銀なり手當法の儘でありましたならば、私は其の時に全部が崩潰つてしまふ、日本の産業は壊滅すると云ふ惧れがあります、此の大切な問題を考慮されずして刹那の問題のみに沒頭されて居つたならば、日本の再建は思ひも寄らぬことだと本員は深憂する次第であります、厚生大臣は必ず之に對して相當な御抱負がある筈でありますが、それに付ての御意見を聽かして戴きたいと思ひます、又勤勞者の不幸であるのは、先程御話がありましたやうに、斯う云ふ不合理なことでは産業家が堪へられないから、家族の多い人は雇はないやうにすると云ふことであります、社會問題として以ての外です、けれども已むを得ないことである、斯う云ふ矛盾を直すことが厚生大臣の尊い政治的の使命のやうに思ひます、家族の多い者は一層優先的に職を得させなければならない、それが家族の多い者が一番除け者になる、斯う云ふ社會的の矛盾を放任して置かれて宜いものであるか、是は矢張り家族手當等の缺點であります、それよりも勤勞者の技能を一層優れさせて、優秀なる技能を以てすれば、今よりも遙かに收入が殖えて宜い、多額の收入になつても宜いが、決して高賃銀ではない、生産の上には非常に安い負擔になる、産業家も犧牲にならず、それで勤勞者は益せられる、さうして一般消費者も良い物を安く買ふことが出來るから、是は三者共益される實質があると思ひます、それから收入の少い人は技能を益益磨いてさうして自分の腕に依つて收入を増す、不勉強の人は一層特別に勤勞を進めて、さうして收入が殖えるやうにする、事業に貢獻しつつ自分の力を發揮して高收入になると云ふことに仕向けられる制度でない限りは、私は産業の健全な發展も、それから物價の適正な價格の維持も、それから勤勞者の生活の地位の安定も不可能ではないかと考へるのであります、大臣の一つ率直な御意見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=14
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015・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 原價計算、賃銀、物價等に亙つての重ねての御尋ねでありますが、是は今日迄のことは御存じの通りであります、御意見の點は御尤もでありまするが、今日迄の實際の事實から見ますると、生産者が採算が取れる賃銀で以て、さうして其の賃銀で勞働者が生活がやつて行ける賃銀と云ふものは、實は今日迄出來なかつた、と云ふのは御承知の通り戰爭は濟みましたが、今日非常に不生産的に金なり物資が使はれて居るやうであります、と申しますのは、復興建築をするにしても、或は又引揚者に對しましても、百何十億と云を金が要つて居る、それから今年あたりは又終戰連絡事務費として聯合軍隊の軍人の家など造ることにも非常な金が掛ります、それから米の値段にしても、消費者價格と生産者價格に百圓の差を置きまして、其の差額に付て三十億の金が要るのであります、又石炭に關しても莫大の補給金が要ると云ふやうに、戰爭が濟んだけれども、矢張り物と云ふもの勞力と云ふものが皆生産的に使はれたかと云ふと、所謂經濟的な意味に於ける生産でないものに已むを得ず使つた、戰爭に於て是だけの穴が明いた、損害を受けた、色々なことがありまして、さう云ふことにずつと金が要つた、民生安定の費用もさうです、公共事業もさうです、さう云ふことは御承知の通りに戰爭の反動として色々なものが要る、其の瞬間を掴へまして、ちやんと「コスト」が合つて、勞働者がやれる賃銀、是は到底出來ない、どうも出來ぬので、何とかしたいと努力は政府もして居るけれども、是は時を待つよりしようがない、其の時は現に進みつつあります、來年度の豫算になりますと餘程性質が變つて來ませう、それから米の問題も、食糧問題も斯う云ふ風になつて、見返り品の關係も段々良くなつて來たと云ふことになつて居りますから、段々「ギヤップ」が埋まるに從ひまして平常に歸つて來ます、さうして生産者の方と勞働者の方とそこに「バランス」が段々取れて來る、それ迄は生産者の方は場合に依つて積立金を出して貰ふ、勞働者の方は貯金を下す、色々なことでやつて行く、それで其の繋ぎをやつて、其の間にどつちが重い、どつちが輕かつたと、さう云ふ懸念はございますが、大體に於て時の進むに從つて、其の「ギヤップ」は埋つて行くと云ふやうな情勢となつて參ります、唯遺憾なことには軍需補償の打切りの問題が起きまして、是が産業界に「シヨック」を與へ、金融界に「シヨック」を與へて、又勞働者の方面には人員整理と云ふ問題が起て來て、段々正常に來て居るものが、擬制資本の除去と云ふことを中心に致しまして、茲に又新たな困難に際會して居ると云ふことは遺憾なことであります、大體時を以て其の「ギヤップ」を埋めて行くと云ふことに進んで居ります、其の面で一番重要な問題は食糧と云ふことであります、政府も今御趣旨の所には勿論方向を向けて居りますが、矢張り是は斯う云ふ大事件である、斯う云ふ國を擧げての日本の受けた困難でありますから、其の點も御了承を願ひます、併し今御話のやうな線に向つて進みつつあることは疑ないことだと云ふ風に考へて居ります、それから家族手當其の他の點に付ての御尋でありますが、是は家族手當の非常な膨脹と云ふことは、是は矢張り終戰後の重大な………戰爭中にも相當ありました點でありまして、此の點も何とか「アヂャスト」をして行くべきものだと考へて居ります、併し一面に於て兎も角も食つて行かなくちや仕樣がないと云ふ點が現實の事實なものですから、此の制度を動かすことに依つて一部の方面に生活が非常に苦しくなると云ふ事態を起すやうな方法は、是も今急に執ると云ふことはなかなか困難であらうと思ひます、併し一面に於て生活保護の面に於て相當やつて行かなくちやならぬ、憲法に依る社會保障に對する國家の責任と云ふ點を餘程強調して行かなければなりませぬから、さう云ふ面で色々救濟出來る面もありませうし、と言うて「イギリス」のやつたやうな風に、家族制度などに對する非常な國庫の負擔と云ふやなことになつても、是も亦「インフレ」を起す原因になりますので、非常に困難な問題でありまするけれども、矢張り是も今申した全體の國家の波が收まりまして、濁つた水が沈澱して居りまする其の沈澱の度に應じて之を解決し、又政府も其の面に向つて努力をして行かなければならぬと思つて居ります、それで先程申しました「プール」の問題ですが、家族手當として一人二十圓やつて居るものもあり、三十圓やつて居るものあり、色々になつて居りますので、全體を「プール」にして補填すると云ふやうなことには是はちよつと困難性があります、例へば二十圓ならば二十圓と云ふやうに決つてしまへば「プール」は直ちに出來る、出來るが、是はもう工業の種類に依りまして、鐵工業其の他の重工業、纖維工業になれば尚又違つて來ます、纖維工業の如きは手當金をやつて居るのは少いと思ひます、と云ふやうに、業態に依つて違ふと思ひますけれども、「プール」にして補填するにしてもどう云ふ方面でやるか、或一定の限度だけで二十圓ならば二十圓と云ふ限度でやるか、或は業態に依つて分けるか、何處迄可能かと云ふことは、今色々調査し、社會保險制度調査會に於ても調査して居るやうな次第であります、實行可能と思はれる點がありましたら、其の點から實行をやりたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=15
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016・中山太一
○中山太一君 色々御説明願ひましたが、本員の申して居りますのは、收入を滅ずると云ふ意味でなく、收入は現在より殖えても合理的な意味にならなければいかぬと云ふこと、さうして勤勞者の生活を安定する、之を困らす意味でなくて、安定することが必要で、今のやうな不合理なことであつたならば、決して製品を良い物を廉く造ると云ふことにならない、産業の健全な發達が出來ぬ、そこで産業は何處迄も合理化して行かなければ良品を廉く造ることは出來ない、是は産業、生産ばかりでなく、今問題になつて居る鐵道でも私はさうだと思ひます、鐵道の賃銀を上げても料金は上げなくして濟む、運賃を上げなくして濟むと云ふ方法があると思ひます、それが合理的な賃銀の支給方法であるならば出來る、現に「アメリカ」の科學的經營法の實施せられた例の或鐵道會杜の賃銀値上問題の時、同時に運賃を上げなければならぬと大問題になつた時に、運賃を上げず賃銀を上げて、從業員の報酬は相當支拂つて立派に内部的の改善をやり、設備も完成して成功をして居ることは御承知の通りであります、是は今の不合理な賃銀でなしに、矢張り科學的な基礎を持つた賃銀の支給法になつて居るからそれが出來たのでありますから、此の點を本員は申上げて居るので、今日の生活を不安ならしむる意味でなく、寧ろ餘裕のあるやうにして行く、それから同時に働き得る人は自ら生活の改善をして行く、是も私は厚生大臣として、特に御留意願ひ、仕事をやつて戴けば一般國民大衆が幸福になりはしないか、此の難局を打開するには産業の健全なる改善、或意味に於て革命が必要である、生活も革命が必要だ、政治ももう少し國民の生活なり産業に對して其の實績が上るやうに善政を施して貰ふ、此の三者の力に依つて立派に出來やせぬかと思ふ、斯う云ふ鐵道の例等も御承知でありますから、是は省きます、次のことを御尋ね致したいと思ひます、只今御尋ねしました合理的な賃銀制度を將來御檢討を願ひ、一家皆働主義に依つて生活の革新を斷行して貰はなければならぬと云ふ本員の尋ねた主張は御了承戴いたものと思ひまして、是は打切ることに致します、勤勞の權利、勤勞の義務がはつきり定められて居るにも拘らず、今失業者が殖えて居る、是が職を得ようとしても勤勞の權利がありながら其の權利は一つも行使することは出來ない、政府は勤勞を希望する者には直ちに其の仕事を與へると云ふ準備がなければならぬ筈だと思ひます、失業者が自分で勤勞したいと云ふ……しないと云ふ者は已むを得ないけれども、しようと云ふ者に對しては、各種の事業が既に行はれて、其の希望を滿たすやうな手配が出來て居らなければならぬ、それが尚遲れて居るやうであります、厚生大臣は之に對してどう御考へか、一面又今の家庭經濟の上に困難をして居るが、是も勤勞の義務を自覺して大いに共同戰線に立つと云ふことも必要であります、一方働くことが出來るやうにしてないことは甚だ矛盾のやうに思はれますが、之に對して政府の御考を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=16
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017・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 勤勞の機會を與へると云ふことに付きまして、只今では御承知の通りに各府縣に於きまする勤勞署中心で色々御世話して居る次第でありますが、是はどうしても矢張り豫算的措置と俟ちませぬと十分なることは出來ませぬ、それで此の内閣が成立しまして以來、其の問題に對して色々計畫を立てて、聯合國側の十分なる支援を得まして、只今六十億の公共事業費と云ふものを豫算として提案中であります、之の承認を得ました上で直ちに各方面に著手しようと云ふことで、只今其の準備を致して居ります、さう云ふ風に御承知願ひます、其の内容に付きまして只今此處で申上げても宜しうございますが、大體是は安定本部に於て決めますることで、それで安定本部に於て大體見當を付けまして、主にそれは開墾とか、それから植林とか、域は土木、河川、道路、戰災復興工事と云ふやうな面に參つて居ります、それで特に都市方面の失業者に對しましては、六十億の中で取敢へず厚生省の豫算として二億ばかり取つてあります、それから戰災復興院としまして四、五億の金が割當てられて居るのであります、それから尚不足の場合には追加豫算でも貰へることになつて居ります、それでさう云ふ面が主として都市の面になるのぢやないかと思ひます、一方田舍の面は只今も申しました公共事業をやつて居る、併しそれも都市と田舍と入り混つて居りまするので、必ずしも都市と田舍が分れた譯ではありませぬ、それから都市の勞働者がそこへ移動して行くことも考へなくちやならぬ、其の都市の事業の中で、例へば都市の失業者でどうしても仕事をしたいと云ふやうな希望者を「プール」しまして、さうしてそれを戰災地の復興とか、域は緑地の農耕とか、開拓とか、或は道路の修繕、其の他「スクラップ」の蒐集と云ふやうな部分に、機動的に集めて行きまする機動的公共事業と云ふやうなものを考へて居ります、それから輔導所、授産場を強力にし、共同作業所と云ふやうなもので色々共同作業をやらせる、或は進んでは工業「アパート」のやうな、中小工業を「アパート」のやうな式にやらせると云ふやうな計畫を具體的にやつて居り、著々進んで居りまするが、豫算が取れませぬとさう云ふことも出來ない譯であります、そんな風に御了解願ひたいと恩ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=17
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018・中山太一
○中山太一君 色々失業對策に付て御苦心になつて居ることと存じまして大變結構に思ひます、豫算の通過も政府としては必要でありませうが、此の失業對策と云ふことは一日も捨て置けないことでありますから、緊急な議案に付ては、或は臨時に即決の出來るやうな方法でも或は要求さるべきものではないかと存じます、或は臨時に或方面の道路の問題、或は今の燒跡の整理なり、之を菜園化するとか、或は建築を準備するとか云ふ、色々な所に隨分勞力を要する點もありますし、それから都市計畫も、道路計畫も出來て居りまするが、斯う云ふやうなことに對しても都市の方に於て相當勤勞者を必要とする、兎に角職場がなくて困つて居る今、闇生活、物は闇値段だから高くて食へないと云ふやうな者を食へるやうにしなければならぬ、全然收入がない、又海外から引揚げた者で收入がなくて困つて居る、斯う云ふやうな者に何か收入の途を與へることは、是は一日も捨て置けないと云ふことは御考慮願はなければならぬ問題だと思ひます、それで失業救濟に對しては今積極的に御配慮を願つて、一日も捨て置けないと云ふ御考の下に、厚生御當局に於て施策を進められむことを希望する次第であります、失業救濟に付ては、我が國はまだ家族制度であり、將來は家族制度がどう云ふやうに變革されるか分りませぬが、今は家族制度が現存して居りますから、之を基礎として中小商工業を復興させ、興隆せしめれば、之にも一人や二人は入れます、それから中小工業を營む者の家族が失業者とならぬで濟むことになります、農業も之が振興に依つて多角的に經營すれば、現在農家の家庭に一人若くは二人入れても、高度の農業經營、或は多角的な經營をやれば、そこに勞力を相當に收容し得る點もあると思ひます、又昭和六年頃の失業者が相當にある時に、小賣業者が相當に數がありました、百五十萬以上ありました、是が一つも家族から失業者を出さない、職を失つても皆生活して居る、それに一人なら一人の人を、色々な緑故者を入れてやる場合には、是も相當の失業者を救濟することが出來る、大臣の御話はあつたやうな方面の外にも、斯う云ふ點も御留意願へば、相當の失業者を收容し救濟することの出來る自然的な大きな力があると存じますから、此の點も一つ御考慮の中に入れて戴きまして、さうして是が一日も早く……失業の爲に貧困な生活を續けて居る、曾ては相當の身分であつた人が實に氣の毒な生活をして居りますことに思ひを致されまして、緊急に之が御解決を希望する次第であります、又今都市のうつちやつてある燒け跡を一日も早く自給菜園等にすれば、是も食糧増産になるばかりでなく、各家庭も生活に惠まれて、又大きな負擔が減じて行くことになりますから、此の點も關聯性を持つものでありますので、之に對して御配慮を願ひたいと思ひます、尚只今の勞働爭議の中の團體權が濫用されて居るやうな傾向、さうして無理な要求を貫徹せむとして居る、さうして積極的に物を要求する、それが容れられないから遂に同盟罷業になつたと云ふのでなく、最初から罷業を目的としてやられて居るやうな、所謂英國で言はれて居る豫測せられたる罷業、是が徒に繰返されて居る、英國では豫測された罷業は違法であると迄言はれて居りますが、日本では是が多いやうでありますが、政府は斯う云ふのに對してはどう御考へでありますか、團體權としての權利のみならず、濫用に陷るやうなことでなく、もう少し節制があり義務も遵奉すると云ふやうなことに付て相當規定する必要があると思ひますが、今囘御提案ありましたのには、それが考慮されて居ると存じますけれども、政府の御考を此の點に付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=18
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019・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 先程の私の失業對策の問題に付て、ちよつと今御質問もありましたので、もう一言附加へて置きますが、今申しましたのは、主として公共事業のことを申したのでありますが、其の外、聯合軍の爲に家屋を建てるのに矢張り數十萬人の人が要るとか、さう云ふ面に對する失業者も吸收されまするし、それから今中山委員からも御觸れになりまして一般の産業と是とは非常に重大な關係を持つて居りますので、特に中小工業の勃興と云ふことは、失業對策に非常に重大な救濟になりますので、特に其の點は石炭の増産に俟つ所が非常に多い、石炭の増産が何より失業對策に效能があると云ふ風に考へる次第でありますので、さう云ふ面に付ても政府は出來るだけ努力をして居ります、それから又失業問題の性格が、只今御指摘の如くに、多少外國と違つた點がありまして、昭和六年頃の不景氣にも餘り目立つて朱業者と云ふものが出ませぬで、大分地方に吸收されたと云ふ實績がありますので、日本の此の家族制度と申しますと少し狹いですが、それよりも廣い意味に於ける何か一つ日本の長い間の慣行としまして、失業問題には案外地方的吸收力と云ふやうなものも相當あるやに考へて居りますが、勿論それで滿足とは思ひませぬから、先程申しました色々の方法を講じて積極的に救濟をしたいと云ふ考で居ります、それから只今の勞働者の爭議權の問題でありまするが、是は矢張り只今御指摘のやうな事實も私はあると思ひます、併しどうしても是は勞働組合の自覺、勞働者の自覺に待たなくてはならぬ問題でありまして、此の問題に付て事柄の性質上、政府として積極的に干渉をすると云ふやうな立場は執つて居りませぬ、なかなか斯う云ふ問題の見境ひはむつかしい問題であります、正當なる爭議と云ふ意味に於ては、法律上、憲法及び勞働組合法上認められた權利になつて居ります、どうしても是は勞働者及勞働組合の自覺に待たなくちやならぬと云ふ風に大體問題を取扱つて行つて居るのが只今の現状であります、併し是は正當ならざる範圍に亙ります時には、それは政府として色々制限を致します、と申すのは、例へば生産管理の問題の如き其の一例であります、さう云ふ風に御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=19
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020・中山太一
○中山太一君 今囘提案された中にも、又政府も色々實際から御考へになつても是が考慮されて居るやうでありますが、經營協議會と云ふことであります、是は果して經營協議會と云ふやうな意味で行はれて居るが、好い成績が擧つて居るかどうか、十分行はれながら爭議が繰返されて出るやうであります、それから名稱も觀念もそれで宜いかどうか、經營と云ふことも、勤勞者と經營者の一部に依る經營協議會と云ふのが宜いのかどうか、生産管理の問題が自主的でなければならぬと云ふことが分つて居る時に、經營と云ふものは株主と經營者との關係か、經營者と勤勞者との關係に於ける經營協議會、そこで決めたものが絶對の權限があるやうな風に迄取扱はれようとして居るやうな傾向がある、是が果してどうであるか、寧ろ名稱も工場協議會とか、職場協議會、生産協議會、業務協議會と云ふやうな意味に改められることが穏當ではないか、經營協議會と云ふものは株主と經營者との間にもあり得べきものである、單に勤勞者と經營者の間に用ひられる言葉としては適當ではないのぢやないかと思はれますが、此の點も政府はどう御考へになりますか、又政府は勞働者の團體、所謂勞働權の尊重と同時に團體權を尊重して、是が段々勞働組合の出來ることを或る意味に於て獎勵ではないけれども促進なされて居りますが、諸外國に於ては使用者も孤立でなしに、使用者團體も労働組合と同じやうな形に置いてあつて、さうして平時であり、地位も總てが對等の下に、合理的な交渉が行れて居るやうであります、日本では使用者は孤立した状態であつて、さうして勞働者の團結のみが出來て居る、勞働組合が出來ると云ふ時に、併せて使用者關係も適當なる業種組合等のことが計畫されなければならぬのぢやないか、是が全然放任されて、一方にのみ偏したやうなやり方をする、又勞働組合が設けられると云ふ時には必ず今囘のやうな調整法が伴なはなければならぬ、一面には別の基準法としなければならぬ、さうでなくて勞働組合法が制定されるならば……、それと同時に爭議が目的でなく、何處迄も勞資の合理的な協力に依つて勤勞者の生活も保護し、向上せしめる、同時に日本の産業を健全に發達させ、さうして社會大衆の福利を増進すると云ふことに寄與貢獻しなければならぬのであります、それが組合が先に設けられたのは我々は不合理だと思はれます、一緒でなければならぬと思ひますが、それが一歩進んで、後先がまだ伸びない、組合のみが先に設けられなかつたら、左程爭講が繰返して起らず、もう少し勞資の間が協力的な態度を以て進むことが出來たのではないかと思はれますが、政府の方に於ては使用者側の組合に對して、又團體に對して、どう云ふ御考を御持ちになつて居るのであるか、又今の經營協議會と云ふことは色々の角度から其の名稱が穩當でない、工場協議會、職場協議會、生産協議會若しくは業務協議會と云ふやうな實質の伴つた意味でないといけない、此の資料を見ましても、其の經營協議會なり、勞働協約は、工場長に依つて大概締結されて居る、工場長が所謂重役でなければ決められないこと迄決める、其の協議會で決めたことは遵奉する、會社が或程度守らなければならぬ義務迄負はされて居る所もあるやうであります、此の點は其の局面を相當に限定することが必要ではないかと思ひます、大臣の御考を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=20
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021・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今經營協議會に付ての御尋がありましたが、之が權利關係と、それから事實上の働きとは、政府に於ては、矢張りはつきり區別して考へて居ります、企業權、經營權と云ふものと勞働權と云ふものとは等しく是は憲法から發して居る、基本人權から發して居る所の二つの權利であるので、其の間の截然たる區別は法律的にはつきり付けて居りますので、經營協議會と云ふ名が付いて居るからと云ふことで、勞働者が經營權を左右出來ると云ふ觀念ではありませぬ、其の點は法律的にはつきり區別して居ります、それだから特に經營協議會などに人事とか、經理などの問題には立入つて呉れるなと云ふやうな方針を執つて居る次第であります、併し此の事實上の問題と致しまして、工場經營にはどうしても勞務と云ふものが非常な重大な役割を成して居ることは言ふ迄もないことであります、勞務の面を無視しては到底生産は出來ないのでありまするから、それだから生産の實行と云ふこと、經營の實行と云ふ面に關しましては、勞働者との間に御互に出來るだけの協議を遂げて行つたら宜いのではないかと云ふ一つの考は持つて居る譯であります、それで其の線に沿ふことに依つて自ら經營協議會となつて來つた譯でありまして、決してそれは經營權の侵犯と云ふ問題ではありませぬ、それから又それに依つて工場長が株主總會を拘束する、或は社長の權限を拘束すると云ふ性質のものではありませぬ、是は出來るだけそれは尊重して貰ひたいと云ふ精神に於てやつて居ります、併し是は委任状でも持つて來まするとか、代表權を持つて行つた時には、是は會社が交渉するものであると考へて居ります、其の名に付きまして色々御議論がありましたが、是も御尤なこととは、存じまするが、是は經營協議會と云ふ名を付けなければならぬと云ふことは、決して之を決めて居る譯ではなりませぬ、工場協議會でも、業務協議會でも、それは御隨意で宜いと云ふことになつて居ります、さうして經營協議會と云ふものを作るが、政府が之を作れと云ふことを命ずる譯でもありませぬ、此の點に付きましては、基準を作つたらどうかとか色々議論がありました、政府としては一定のものを示すのはどうだらうと居ふ考から、中央勞働委員會で一つの見本のやうなものを作つて、大體の基準は勞働委員會として示して居ります、と申すのは、只今迄經營協議會と云ふ方の實際が却つて行き過ぎて居る點が多々あるやうでありまして、さう云ふやうな點の自覺も必要ぢやないかと云ふ意味を以て其の基準を示した譯であります、それから第二の問題の事業者側の團體と云ふことでありますが、是は矢張り勞働問題として採り上げる時には、事業者側の方は今迄がつちりした組織も力も持つて居るのであつて、民主主義の實行に一番先に採り上ぐべきものは勞働者側であると云ふ事實上の見地から、其の面に重點を置かれて組合法などが出來て居る譯であります、勿論憲法にも勞働權を認める代りに財産權を認めると云ふ風に、兩方とも兩立して居りますけれども、日本の従來からの實情、特に終戰後の現状に於きましては勞働權の確認と云ふ方が最も急を要する問題だと云ふ意味に於て、組合法だけを先づ採り上げた、さうして實際の力を持つて居る事業者側の團體の如きの方は奬勵的の態度を執らぬと云ふことだけでありまして、是はもう實際には幾ら御作りになつても宜い、又作られた方が宜いと云ふことも考へて居りまするけれども、それをどうかおやり下さいと言ふことより、寧ろ勞働者側の方に勞働問題の民主的促進を圖ると云ふことが大體の方針になつて居ります、其の線に沿うて主にやつて居ることを御了承願ひたい、特に私は其の問題に付て申上げることの出來ぬのは、是は私の方の所管でないと思ひますから、多分商工大臣の所管になつて居ると思ひますから、其の點を御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=21
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022・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 本日は是にて散會致します、明後十一日午前十時から開會致します
午後零時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=22
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023・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 渡邊修二君
副委員長 子爵 高木正得君
委員
公爵 三條實春君
侯爵 東郷彪君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 壬生基泰君
子爵 秋月種英君
子爵 松平乘統君
子爵 大久保教尚君
子爵 三宅直胖君
桑木嚴翼君
吉田久君
男爵 松本本松君
男爵 山根健男君
男爵 山名義鶴君
男爵 中村徹雄君
種田虎雄君
我妻榮君
正田貞一郎君
竹中藤右衞門君
中山太一君
片倉兼太郎君
秋田三一君
古垣鐵郎君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 富樫總一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00119460909&spkNum=23
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