1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○勞働關係調整法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=0
-
001・会議録情報2
―――――――――――――――――――――
昭和二十一年九月十九日(木曜日)午前十時十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=1
-
002・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 是より開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=2
-
003・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 現在の勞働委員會に付て二三聽きたいと思ひますが、今日勞働委員會は何處に幾つ出來て居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=3
-
004・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 勞働委員會は中央に一つ中央勞働委員會と云ふのがございます、それから地方は各府縣に地方勞働委員會と云ふものが全部設置されて居ります、それから特別勞働委員會として、船員だけは別に運輸省に船員の中央勞働委員會が出來て居ります、それから船員關係の地方船員勞働委員會は各地方の海運局に設置されて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=4
-
005・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 要點だけで宜しうございますからして、現在の各勞働委員會の活動状況を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=5
-
006・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 中央勞働委員會も地方勞働委員會も、三月一日の勞働組合法施行後大體一月以内に設置されまして、最初の三月と四月の候に於きまして、所謂組合の資格審査と申しまするか、組合法第二條に於きましては、斯う云ふものが勞働組合と言ふ、それから是々に該當するものは勞働組合とは認め難いと云ふ條項がございますのでどれでも是でも皆受付けると云ふ譯にも參りませぬので、最初中央勞働委員會に於て、然らば勞働組合法第二條に謂ふ所の主として會社側から經費の負擔を仰いで居るものはどう云ふ範圍を言ふか、或は使用者、或は使用者の代表、若しくは其の使用者の利益を代表する者はどの位の程度を言ふかと云ふ點を中央に於て審議を願ひまして、其の標準に基いて、各地方も三月、四月の間は其の資格審査で殆ど委員會は追はれて居つたやうな状況であります、さうして組合が約七千以上、組合員約三百萬に達しまする組合が三月、四月の候に殆ど出來た状況でございます、それから後、其の間に於きましても取扱ひましたが、五月、六月からは主として爭議の調停を取扱つて居ります、今件數をちよつと持合せて居りませぬのが甚だ遺憾でございますが、相當地方の勞働委員會も此の爭議を取扱つて解決の斡旋を致して居る事情でございます、中央に於て取扱ひました事件と致しましては、是は爭議の調停ではございませぬが、北海道の三菱の美唄炭礦に於ける爭議が特異性を持つて居りましたので、其の調査を中央勞働委員會が致しましたのと、それから御承知のやうに三月に國鐵の山手線に於ける爭議、之に付きましての調停勸告を中央勞働委員會で取扱ひました、其の外は中央では爭議を取扱つて居りませぬ、爭議は、それぞれの各府縣に起つた爭議は地方の勞働委員會に於て取扱ふことになって居りまするので、地方では相當取扱ひつつある状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=6
-
007・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 構成は此の勅令の方に何人以内と云ふことに規定されて居りまするが、是はどんな風でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=7
-
008・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 中央勞働委員會は使用者、勞働者側及び中立各各七名以内でございます、それから地方勞働委員會は各各五名以内になつて居ります、併し中央勞働委員會は現在の所七名迄設置しませぬで、各各五名以内でやつて居ります、近く此の地方、中央も勞働委員會の改選をする豫定で居りますが、其の際は中央も七名迄置かうかと云ふ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=8
-
009・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 地方の方は各府縣とも五名づつにちやんと整って居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=9
-
010・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 地方は全部五名づつ揃つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=10
-
011・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 昨日私は大體の趣旨を抽象的に申上げて政府の御所見を伺つたのでありまするが、此の勞働委員會に於きまする委員の活動と云ふものが、矢張り此の新しい勞働關係に於きましても、是が基本になつて參るのだと思ひまするが、設立尚日が淺くして現在迄はまだ十分な活動も……世間に周知される程の大きな活動も出來ないことは無理からぬことだと思ひまするが、恐らく此の勞働關係が緊迫して一般の産業平和が非常な脅威を感ずると云ふやうな憂へは今後にあるのであります、戰後の事態の歩みは、是から軍需補償の打切り、其の他の賠償の問題だとか、さう云ふやうな色々な事態が今後出て來て、さうして産業を合理化しなければならぬことに關聯しましての、大量の失業者が出て來るのであります、斯う云ふ事態に直面致しまするので、此の勞働關係調整法が實施せらるるに至りましても、昨日も御伺を致しましたやうに、それ等の調停、仲裁の機關に於ける第三者の働きと云ふものは餘程しつかりしなければならぬと思ひます、私が咋日御尋ね致しました趣旨を更にもう少し具體的に申上げると、今日の是等の現存の機關の背景を成す所の、もつと大きな機關の設置が此の際必要なのではないか、實際に於きまして此の一兩年、是は各自同樣の希望でありまするが、日本には全く富が殘らぬのだと云ふやうなことを期して、皆が努力致しませぬければ、日本の産業建設、經濟の復興と云ふことは殆ど期し難い、昨日の中山委員の引例ではありませぬが、火事を起して消すのではなくして、火事を起さぬやうに努力する、さう云ふ觀點から考へますると、どうももう少し此の點を補強して、斯かる施策を具體的に速に御執りにならなければいかぬ、實は斯樣に心配を致して昨日も政府の御所信を伺つたのであります、今朝の讀賣新聞を私此處に來てちよつと通讀を致したのでありますが、其の中に「總司令部は十八日の對日理事會に對する經濟科學局覺書にある如く日本政府に對し一、勞務協議會の如き機關の設置により勞資間の圓滿なる調整をはかること、二、勞働關係の調整機能の確立、三、勞務規定を設定して勞働條件の改善、向上をはかること等を内容とする勞働政策を確立、もつて勞資の休戰を具現して經濟再建に精進するやう非公式に勸告」云々と云ふ新聞の記事を見たのでありますが、左樣なことが實際にありましたのですか、御話願つて宜しければ、それも伺ひたい、それとも關聯致しまして、もう少し具體的に御所信を伺へれば結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=11
-
012・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今讀賣新聞の記事に付ての關聯した御話がありましたが、其のことはちよつと政府部内に具體的にどうと云ふことになつて居ると云ふことはありませぬ、唯勞働問題に對する基本方策は矢張り經濟安定本部で決めることになつて居りまするので、安定本部にさう云ふ考へがあるかどうかは存じませぬけれども、まだ具體的にさう云ふ趣旨のことはない、私も實は今朝ちよつと通讀しただけで細かくは讀まなかつたものですから、餘り明確にも御答へすることは出來ませぬが、今御聽きした趣旨に於ては何にもありませぬ、此の問題に付て只今色々勞働委員會の運用其の他に付ての御質問、御意見もありましたが、勞働委員會の運用は現在でも相當程度行つて居ります、事實上それが案件となつて、現れる現れぬに拘らず、勞働委員會と云ふものは、勞働問題の中に入つて來まして相當な働きをして居ると云ふ事實は、前の調停法などとは比較にならぬ程に、餘程積極的に働いて居ると云ふ部面が多いのであります、併しながら委員の構成其の他は前にも説明しました通り、經過的に作つたものでありまして、まだ本當のものでありませぬ、色々さう云ふ點に對する非難も大分あります、今度は矢張り法律の規定に基いた正確なるものにして、さうして出來るだけ爭議の調停は此の機關に據らしたいと云ふ方針で居ります、それから尚其の背後を成すやうなことに對して、何か色々の機關でもと云ふやうな御示しもありましたが、さう云ふ點に付ても色々政府も考へなくちやならぬと云ふことは思つて居ります、まあ大體此の勞働問題の起きまする中心問題は矢張り實質問題であります、實質問題と申すのは、此の三四箇月以來の問題は主として賃銀の問題が中心であります、言葉を換へれば、物價騰貴に伴ふ此の「インフレーション」の問題、それに對して勞働者の生活確保と云ふ問題がまあ中心で大部分の問題は起きて居ります、それから最近斯う云ふ鐵道の「ゼネスト」などの傾向を見ますると、是は所謂整理に伴ふ馘首の問題と云ふやうな問題が起きて、是から恐らくさう云ふ問題及退職手當などの問題を繞つて、勞働爭議が起されるのぢやないかと云ふ風に考へて居ります、其の中間には色々勞調法の反對と云ふやうなことも、色々「デモンストレーション」などもありましたけれども、是は主として政治的の問題であり、本當の勞働條件の問題と私共は考へて居りませぬ、大局に於きまして考へて居りませぬ、段々斯う云ふ問題は消えて行きます、現に「ゼネスト」や勞調法の問題などは影も形もなくなつて居るやうに私は見て居ります、それで出來るだけ政治的目的のものは此の勞働爭議から段々遠ざかりまして、さうして本當の勞働條件の問題が爭議の中心となるべきものであり、又さう云ふ風にやるべきものだと云ふ風に問題を考へて居ります、さうしますると、問題の根本的解決と云ふものはどうしても經濟問題になります、それで生活問題に關聯した問題は、矢張り「インフレーション」なり、或は物價なり、或は食糧なりと云ふ問題の解決が一番重點になつて来ます、それから是からも起るだらうと豫想される整理の問題などに關しましては、是は産業の振興、結局此の失業者を暫定的にどうすると云ふことよりも、本當に失業となつて現れて來る所の谷の水を最も好い田に導く、結局灌漑用水として使ふと云ふ風に仕向けて行く産業の振興と云ふ面が最も重要である、それで及ばぬ點は失業對策なり生活保護なりの面に持つて行くと云ふ風に考へて居ります、さう云ふ問題の實質的の解決と云ふことが問題の中心であらうと云ふ風に考へて居ります、さうして斯う云ふ法律なり或は勞働委員會などの運用と云ふ問題に付きましては、是は出來るだけ御指摘のやうな公正なる第三者を出來るだけ介在させまして、さうして圖滑なる運用を期して行く、尚政府全體としまして、或は安定本部を中心に安定會議なども設けられまするし、さう云ふ面に於て労務面其の他は十分に考究されて行くと云ふやうな工合に大體體制を考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=12
-
013・山名義鶴
○男爵山名義鶴君 政府の方でも具體的に色々御考慮になつて居るやうでありますから、私は唯其の實施の速かならむことを祈るのでありますが、唯私の印象を申上げては非常に何ですが、何か今のやうな狹い專門の……勿論經濟上の實務を具體的に處理するのでありまするから、其の局に當るのは專門の堪能な學識を持ち經驗を持つた第三者でなければならぬと思ひますが、併しながら矢張り此の第三者と其の背景に輿論、輿論と云ふものが是は矢張り最後の審判を爲すやうなものになる、どうも我が國に於きましては、此の勞働關係のことは今日迄非常に偏つて考へられて居り、非常な其處に偏見があるやうに考へられる、是は矢張り廣い常識にしなければならぬ、さうして誰もが公正な意見を吐き得るやうに指導されるのでないと、將來の不安に對して十分な備へが出來ない、さう云ふ趣旨から昨日今日度々御尋をしたのであります、色々當局でも御考慮になつて居るのでございまするし、其の速かな實施を望みまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=13
-
014・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 他に御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=14
-
015・中山太一
○中山太一君 只今のことにも關聯しますが、此の勞働委員會には色々の段階がありまするが、調停委員の選定にも相當候補者を豫め作り、それから決定せられると云ふことでありますが、勞働委員會の方に於きましては、殊に政府の本案に於て希望されて居る所の産業平和の維持、經濟の興隆に寄與することを目的とすると云ふことであり、勞資相互が誠意を以てする自主的解決と云ふことが今日の急務である、政府も之に調整助力をし、又は爭議を防止すると云ふことが重點であるとすれば、其の目的を達成するには、餘程勞資相互が自覺して居り、又正常なる輿論が十分に現はれて來た時には、極く圓滑に速かに解決すると思ひますが、さうでなく、或機關が矢張り此の國家が意圖され、又勞資相互が平常な時には念願する所の産業平和、經濟興隆と云ふことを逸脱しないやうに教育しなければならぬが、それが問題が起つた時に、相互の委員が矢張り色々の立場から主張もし、又立場を擁護すると云ふことになりますと、なかなか解決が長引き、又困難に直面することもあらうと思ひます、此の時に昨日來熱心に御主張になつた其の精神、を御採入れになつて、何條でありますか十九條でありますかに於ての、第三者である委員を選ぶに對して、其の人選に對しては、十分なる考慮を拂はれるのみならず、更に此の數に對しては、勞働代表又は使用者代表の人員を同數でなくしても、場合に依れば其の公平な第三者の數が殖えても宜いのぢやないかと云ふやうなことも思はれます、或は双方五名宛であるならば、第三者の委員が矢張り同數でも宜い場合がある、又其の時の場合に依れば十名、双方併せた數と同樣と迄なつても宜いと思ひます、要は出來得るだけ圓滿に、而して勞働者の犠牲を少くし、使用者も事業の上に支障を來さないやうに、全く共存共榮の下に事業の繼續、運營が出來るやうな結果を齎らしめれば宜いと思ひます、正常なる輿論が之を解決する力ありとするならば、輿論と云ふ力を立派に之に加へると云ふことが只今困難でありますから、公正なる第三者の數が或程度多くあることが、公正なる輿論を代表する意味になりはしないかと考へます、之に對して御考慮を願ふ御考はないものでせうか、政府の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=15
-
016・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御尋の第三者の委員の選定方法に付きましては、是はもう極めて公正な人を選ぶと云ふことに最善の努力を致す積りで居ります、それから此の員數の問題は是は勞働組合法で同數と云ふことに決つて居ります、組合法の改正を出すにあらざれば此の變更は出來ないことと承知して居りますので、只今は組合法を變へる考はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=16
-
017・中山太一
○中山太一君 只今の時局は産業經濟の全く浮沈、興廢に關する重大な時でありますから、全く此の際勞資協力して眞に産業平和を以て相援け合はなければならぬ時と存じます、それにも拘らず刻下の現状は、極めて勞資關係は緊迫して居ると存ずるのであります、之を調整する爲に、本案を政府は提出され、さうして實施されむとするのでありますが、本法の實施時期に對しては十分なる考慮を拂はれて、平和日本の産業經濟の再建に資する爲に、又は失業防止に萬全を期する爲に、餘りに時期が遅れ過ぎてはいかぬ點がありはしないかと思ひます、私は何時からと云ふ言明を取るのではありませぬが、普通であつたならば、一月前ならば、是が半年遅れても宜かつたかも分りませぬ、又或は時期になれば直なに實施されなければならぬやうなことも起るかも知れぬ、或は其の中間になる場合もありませう、是は政治は臨機應變の措置を執らなければならぬ、必ずしも或時期に釘付けされた考に囚はれてはいけないと思ひますから、生きた政治を行ふ上に於て、此の實施時期等に付ては、善處して誤られないやうに願ひたいと考へますが、之に對して御心持を承りたいのですが、必ずしも時期を明示してなどと云ふ、さう云ふ意味を申すのでない點を御含み置きを願ひたいと思ひます、それから更に近く、或は原案が決定するのぢやないかと存じまする勞働基準法、只今基準法の草案として各方面に發表されて、公聽會等が催されて居りますが、組合制度の發達せる英米「ソ」聯等各國の基準法等をも十分に參酌、檢討され、又勞資兩者の意見も此の上とも十二分に質されて、我が國産業の現状に適應すべき良法であるやうに御配慮願ひたいと思ひます、是は當局に於ては萬遺憾ないことと存じますけれども、昨年決定した組合法が出來た時には、之が審議を十分盡さなかつた憾が確にありましたから、原案を修正と云ふよりも、原案を修正せずに濟むやうに、十二分に御檢討を願ひたいと思ひますから、之に對して大臣の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=17
-
018・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 第一の點は本法が兩院を通過致しましたとしまして、其の實施時期に付ての御尋でありましたが、此の實施時期に付ては、只今は何とも確定的には決つて居りませぬ、十分政治情勢を考慮して實施時期を決めたいと考へて居ります、それから第二の勞働基準法に對する御質問に付きましては、御質疑の御趣旨の通り、出來るだけ勞資双方の意見及輿論を聽きまして、さうして萬全を期して提案をしたいと云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=18
-
019・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 懇談會に入ります、速記を止めて……
午前十時四十七分懇談會に移る
午前十一時四十二分懇談會を終る
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=19
-
020・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 懇談會を閉ぢます、速記を始めて、他に御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=20
-
021・吉田久
○吉田久君 昨日ちよつと質疑を漏らしたのでありますが、それは第三者委員に付きまして厚生大臣から「リスト」が出來るのであると云ふことを承りましたが、それは詰り勞働委員會の「リスト」であると同時に、調停委員會の「リスト」でもあると承知致したのであります、さう致しますと、使用者側の代表委員と云ふものと、それから勞働者側の代表委員と云ふものと、それから第三者側の代表委員と云ふものとの色分けが「リスト」の上に於て判然されることになるのであるかどうか、此の點が私はつきりしなかつたものでありますから、どう云ふ御考を當局は持つて居られるか、承つて置くと大變宜からうと思ひますので、ちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=21
-
022・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 斡旋委員と云ふものは、御承知の通りに斡旋の場合に於て斡旋委員が出る譯です、其の斡旋委員を勞働委員に於て豫め用意して居るので、さう云ふ意味の「リスト」を作るのでありまして、其の「リスト」から出まする斡旋委員は、斡旋に關する問題だけであつて、調停の場合は勞働委員會の委員の中で調停委員が出來るのであります、是は勞働委員會の委員はちやんと決つて居りまするから、其の中で何名かの調停委員を出すと云ふ風になつて居るのであります、それだからそこの事情ははつきり致すと思ひます、結局斡施委員の斡施者は是は「リスト」の中から出すのでありますから、是は勞働委員以外の御方の一般の人から、斯う云ふ人も、ああ云ふ人も……勞働委員も勿論入つても宜いと思ひますが、それ等の人々が必要に應じて斡施して行く、是は餘程常識的な公正な人を選ぶことになると思ひます、調停の時に勞働委員會の「メンバー」から、或は中央委員會から、七名、七名、七名と二十一名でありまするから、其の中から出して行くと云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=22
-
023・吉田久
○吉田久君 本案の二十一條では「調停委員會の委員は、勞働委員會の委員の中から、勞働委員會の會長がこれを指名する。」ことになつて居るのでありますが、勞働委員會の會長は、勞働委員會の委員の中から、此の人は使用者側の代表に適當であると云ふ人を指名し、又此の人は勞働者側の代表委員に適當だと云ふことで指名し、又此の人は第三者の委員として適當な人であると、斯う云ふことで指名することになるやうであります、さうなると勞働委員會の會長が自分の裁量で、此の人は使用者側の委員、此の人は第三者の委員と云ふやうに決めることになりまして、果して其の指名された人がそれだけの資格を持つて居る人であるかどうかと云ふことに付て、爭が起りはしないかと思ふのであります、此の點は當初に私は自分の疑を披瀝して置いたのであります、でありますから、矢張り此の勞働委員會の委員の中にも、調停委員會を設ける場合には、調停委員會の中で、此の人は使用者側の委員、此の人は勞働者側の委員、此の人は第三者側の委員と云ふやうに、矢張り色分けして、豫め決めて置く方が正當ではなからうか、其の中から適當に會長が指名することにならないと會長の指名で唯漠然と委員會の委員の中から調停委員會の委員を指名することになると、非常に錯雜して來ることになりはしないか、又其の指名が時には違ふと云ふやうなことがありはしないかと云ふことを虞れるのであります、斡旋委員に付きましては、今説明を承りましたが、私の問はむとするのは、調停委員會の委員は、十九條に依つて、使用者を代表する委員、勞働者を代表する委員及び第三者である委員から構成されることになつて居る、而して二十一條に於て、調停委員會の委員は勞働委員會の會長が之を指名することになつて居りますから、其の會長が指名する場合の據り所の「リスト」、其の「リスト」の色分けと云ふものを豫めはつきりして置く方が宜いのではなからうかと云ふことに付て御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=23
-
024・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 勞働委員會の構成は、是は勞働者代表から何名、資本家代表から何名、第三者代表から何名と云ふ、初めからちやんと「マーク」されて出て居ります、それだから勞働者代表は誰と誰、資本家代表からは誰、第三者代表は誰々と云ふことが、はつきり分つて居ります、それだから其の中の誰を出すか、勞働者側は七人の中誰を出すかと云ふことは議長の權限になる譯でありますから、其のことは運用上少しも差支へないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=24
-
025・吉田久
○吉田久君 さうすると、今厚生大臣の仰つしやつたことは、勞働組合法に規定されて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=25
-
026・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 其の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=26
-
027・吉田久
○吉田久君 最初から「マーク」が付けられて、是は勞働者側の委員、是は資本家側の委員と云ふことで、委員の任命がある譯ですね、任命と云つちや語弊があるが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=27
-
028・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是はちやんと、組合法と施行規則に依つてはつきり決つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=28
-
029・中山太一
○中山太一君 此の條文に付ての、第三十六條の「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廢し、又はこれを妨げる行爲は、爭議行爲としてでもこれをなすことはできない。」此の出來ないと云ふ意味は、例へば炭礦に爭議が起つた時に電動機を止める、水揚げの作業を止めた時には廢礦になる、其の事業も壊滅するが、國家の大切な機關が取返しの附かぬやうになる、又鎔鑛爐等の場合、鎔鑛爐の火を消してしまへば、唯勞働爭議としての爭でなく、根本に大きな損害を與へるものである、斯う云ふことがいけないと云ふことであるのでありませうか、外の意味であるのか、それを一つ伺ひたいと思ひます、第二には、第四十條の「使用者は、この法律による勞働爭議の調整をなす場合において勞働者がなした發言又は勞働者が爭議行爲をなしたことを理由として、その勞働者を解雇し、その他これに對し不利益な取扱をすることはできない。但し、勞働委員會の同意があつたときは、この限りでない。」と云ふことでありますが、是は普通の勞働爭議であつて、所謂暴行、脅迫、威嚇其の他不當不正な行爲があつた場合は、是とは違ふと思ひますが、犯罪行爲もする位のものであるから、是は此の四十條の規定とは別だと思ひますが、之に對して御考は如何でございますか、それから附則の一番末文に「使用者は勞働者が勞働組合の組合員なること、勞働組合を結成せんとし若は之に加入せんとすること又は勞働組合の正當なる行爲を爲したることの故を以て其の勞働者を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず」、是は勞働組合もあるから、當然のことでありますが、一方勞働權は萬人に與へられて居ることでありまして、組合員ならざるが故を以て解雇し、又は解雇せしめると云ふことは出來ない筈でありますが、假令組合があつてもなくても、組合員であるとかないとか云ふ理由を以て……他の理由なら別でありますが、是は出來ないものだと思ひますが、此の三つに對する厚生大臣の御答辯を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=29
-
030・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御尋の第三十六條でありますけれども、茲にありまする、安全保持は、生命、人命に對する安全保持でございます、それ等に付きましては、それぞれ鑛山其の他に於きましては規則がありまして、さう云ふものに違反をしてはならぬやうになって居る、處が御承知のやうに組合法では、正當な爭議行爲に付ては刑法の違法性を阻却して居りますから、若し片一方の法律なり規則で、さう云ふ安全保持の義務を認めて置きましても、正當な「ストライキ」で業務を止めた時に、それが處罰されない、やつても宜しいと云ふことになりましては困りますので、之を以て、正當な爭議行爲としてやる場合でも、安全保持の義務は履行しなければいかぬと云ふことを規定したのであります、之に付きましては別に罰則がございませぬのは、それぞれの法規にそれぞれの制裁規定がございますから、それが適用になる譯であります、從つて鎔鑛爐等は之に入つて居りませぬ、それは鎔鑛爐の火を止めたらどう處罰するとか云ふ安全保持の規則はないことと思つて居ります、それから次の第四十條でございまするが、四十條は勿論正當な爭議行爲をした者を保護する趣旨でございますので、若しさう云ふ不當な爭議行爲をした者も解雇が出來ないと云ふことでは困りまするから、さう云ふ判定を勞働委員會の討議に掛けて、斯う云ふ行爲をしたのであるから解雇するとか、委員會に掛けて委員會が認めたと云ふことであれば解雇が出來るやうにしてあるのであります、それから附則に置きました勞働組合法第十一條の規定も、同樣に勞働權の保障をしたのでありますが、御承知のやうに勞働組合法では、勞働組合の組合員たるの故を以て解雇してはいかぬと云ふことだけであります、指示事項で今日迄の間に、組合はまだ出來ないが、組合を作らうと思つて活動して居ると云ふと、あれは組合を作らうとして居るからと云ふので解雇して居る事例が出て參りましたので、それでは困るから、組合を結成せむとする者を解雇することもいけないと云ふことを入れたのが一つ、もう一つは組合員で組合の活動をして居るからと云ふことで解雇すると云ふことがあつてはいかぬと云ふので、是は初めの勞働組合法の十一條の精神とちよつとも變つて居ないでありますが、法律と云ふものは、規定をするとそれを矢張り嚴格に狹く解釋することになりますので、是等を含めて改正することにしたのであります、是は只今御話のありまするやうに、組合員たるの故で解雇してはならぬと云ふので、他に正當な事由があれば是は已むを得ない、併し他に事由があると云ふことを名目にして勞働組合員を解雇すると云ふことはいかぬと思つて居ります、他に本當に事由があれば是は構はぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=30
-
031・中山太一
○中山太一君 今の附則のことは、本員の御尋ねしたこととちよつと違つて居りました、勞働組合關係、又爭議關係、組合を結成しようとする爲に解雇出來ぬのは當然で、之に付ては何等の疑義も、疑問も持つて居りませぬ、勞働組合が結成されて盛んになつて來た時に組合員でない者を使ふことが出來ぬ、組合員でない者は解雇することが出來る、斯う云ふ強制的の要求が方々に起るが、是等の人も同じことで此處で法律の保護を受けて居る、勞働權と云ふものは立派にある筈である、それを排除すると云ふことはどうであるか、新しく何か協約でも出來て、組合員でない者は成るべく使はぬやうにするのは別であるが、入らぬからと言つて既に勤務じて居る者を解雇すると云ふことは公平でないと思ひます、又平等に扱はるべきもので、斯う云ふことがあり得る筈はないと思ひます、之に對する御意見を伺ひたい、それからもう一っは先程の鑛山のことですが、是が段々と實際の爭議が進んで、是々は一般の國民生活の上に大きな影響があると云ふ意味で、鎔鑛爐等が止められて何十日か用をなさぬ時には、他の工業が皆休止しなければならぬと云ふやうな場合が起つて、失業者を續出すると云ふ色色のことが起つて來ると思ひます、是は實際に當つて段々研究されると思ひますが、是は別でありますが、唯鑛山等に於て生産管理の名目に依つて、之を止めてしまへば人命に關係するから俺達の方が管理して行くのだと云ふ斯う云ふ名目が、今迄爭議の時の口實になつて居る、是ははつきりした、今の御説明に依つて爭議の圈内に入るべきではないと云ふことになりますれば、今の人命に關する安固の爲に、水を揚げる「ポンプ」を動かすとか、或は空氣を送るとか、其の他の作業は、是は繼續しなければならぬと云ふ場合に行はれて行くと云ふことが別になつて居れば、是等の生産管理の戰術の目的にならぬことが分りましたから結構であります、最後の附則の所だけをもう一度御答辯を願ひたいと思ひます、私はそれで質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=31
-
032・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の三十六條のことは、是は爭議行爲になるかどうかと云ふことでなしに、さう云ふ行爲を止めてはいけないぞ、斯う云ふことであります、爭議全體が「ストライキ」なら「ストライキ」としてやつて居る時に、其の安全保持の仕事だけは止めちやいけないぞと云ふ、斯う云ふことでありますから、御了承を戴きたいと思ひます、それから最後の附則の點は、是は團結權を保障した規定であります、それで結り個々の勞働者をどうすると云ふ趣旨ぢやない、組合と云ふ團結權を保障して居りますから、其の團結權を阻害する行爲はいけないぞと云ふことでありますから、組合員であると云ふことの故を以てそれを解雇してはいけない、さう云ふことであります、それから組合員でない者の解雇は之に入らぬ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=32
-
033・中山太一
○中山太一君 今の三十六條のことは、御説明の通り、私も其の意味で質問したのでありますから、是は異議はありませぬが、最後の所は其の反對の現象が屡々起る、之に對して政府の御考はどうですか、それを強要される場合があるが、それに對する政府の御考はどうであるかと云ふことなんで、此の文の解釋でなく、丁度其の反對に、一方は保護されて居るが、一方のさうでない者は保護されないが、それは政府の趣旨であるかどうかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=33
-
034・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 政府の趣旨としては、組合員でない者も、之を解雇することは決して好む所ではございませぬ、唯併し組合と工場との間に勞働協約、團體協約を締結される場合に、一應「クローズド・ショップ」と云ふ制度がございまして、自分達の組合員以外の者は雇はないと云ふことを使用者との團體協約で決められて居るものがあります、是等に於きまして、詰り組合員でないものは雇はないと云ふ約束をして居りますから、それに基いて採用されないと云ふ、或は解雇すると云ふ問題が出て來るかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=34
-
035・中山太一
○中山太一君 御説明能く分りました、私も此の本文に於てさう云ふ差別があつてはいけない、協約の方は、是は雙方の意思が一致したのであるから、是は別であります、それで御説明で全部了解しました、私は是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=35
-
036・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 他に御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=36
-
037・吉田久
○吉田久君 第三者のことに付てちよつと御尋ね致しますが、勞働組合法の第二十六條で「第三者は使用者を代表する者及勞働者を代表する者の同意を得て行政官廳之を委囑すべきものとす」とあります、さう致しますと、第三者委員は、使用者を代表する委員と、勞働者を代表する委員が出來ました上で其の同意を得て出來るやうでありますが、此の點は如何でありますか、實際的に使用者の代表委員と、勞働者の代表委員が全部同意しませぬと、要するに官廳では第三者委員を委囑することが出來ないことになるであらうかどうか、絶對的のものであるかどうか、若し絶對的のものとすれば、其の同意は果して所期されるものであるかどうかと云ふことに付て御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=37
-
038・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 組合法の規定に依りまして、今御話の通りに、第三者委員の選定は勞働者委員及資本家委員の同意を得ることになつて居りますが、併しどうしても同意を得ることが出來ぬ場合には、厚生大臣及地方長官は職權を以てやることが出來る途が開いてあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=38
-
039・吉田久
○吉田久君 何條でですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=39
-
040・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 施行令第三十七條の末項であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=40
-
041・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 他に御質疑はございませぬか――質疑は終了したものと認めます、討論に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=41
-
042・種田虎雄
○種田虎雄君 私は本案に贊成する者であますが、簡單に所見を披瀝したいと思ひます、現行の勞働爭議調停法は大正十五年に制定されたものでありまして、既に二十數年を經過して居ります、政府の御説明に依りますると、其の間に取扱はれました所謂爭議調停關係の件數は僅に六件であつた、斯う云ふことなんであります、如何に現行勞働爭議調停法が役立つて居らないかと云ふことは、此の事實を以て見ても明かなことと思ふのであります、殊に現在のやうな勞働情勢下に於きまして、どうしても此の現行の勞働爭議調停法の色々の缺陷を是正致しまして、新法を制定すると云ふことは已むを得ないことである、此の新しい勞働爭議調停法と勞働組合法とは所謂表裏一體を成しまして、我が國産業の平和的再建を期して行かうと云ふ意圖の下に立案されたものと思ふのであります、偶偶其の制定の時期が少し勞働組合法よりも遅れて居りまするが爲に、立案の趣旨に付ては、政府は相當詳しく度々御説明になつて居るのでありまするけれども、一部には本法案が勞働組合運動を彈壓するものである、斯う云ふ強い反對意見が行はれて居ると云ふことは誠に遺憾なことでございまするが、其の主張にも亦傾聽すべきものありと信ずるのであります、扨て本法案は、其の内容を檢討して見まするのに、先づ立法の目的精神を闡明されまして、次に勞働爭議及爭議行爲の觀念を定義されて居るのであります、更に勞働爭議を未然に防止する方法に付きまして、或は斡旋、調停、仲裁等に關しまして、詳細なる規定を設けられて居るのであります、而も是等の方法は強制することなく、飽く迄も爭議の解決は勞働關係者の自主的解決に俟つ建前を執つて居らるるのであります、斯くの如き立法は極めて民主的の進んだものと思ふのであります、併しながら爭議解決の重要なる役割を果さなければならぬ勞働委員會の任務は極めて重大でありまして、其の構成委員中の第三者所謂中立委員でありますが、比の委員に付きましては、本委員會に於きましても各委員から其の選定に付て強く色々の御意見が出て居りまするが、此の中立委員は勞資雙方より公正なる人物を選ばれ、雙方の信用を得るのに非ざれば、如何なる仲裁も調停も其の效を發揮し得ないと思ふのであります、それ故に政府に於かれましては特に此の人選に付て愼重なる態度を以て御選定あらむことを切望するのであります、最も本法案の論難されました點は、爭議行爲の制限禁止に關する規定であります、併し此の規定は民主主義の先進國と云ふべき諸國に於きましても、此のやうな規定は設けられて居るのであります、我が國の如く一般に未だ正當なる民主主義が徹底して居りませぬ現段階に於きましては、假令理想と致しましては好ましくない、規定でありましても、過渡的には已むを得ない規定であると思はれるのであります、要するに法は死物でありまして、之を活用する人如何に依つて其の效果を發揮するのであります、それ故に本法案の精神を、勞働關係者には申すに及ばず、廣く一般國民に對しまて如何にして之を徹底せしめるか、又法の運用に際しましては、末端行政の衝に當る吏僚諸氏が能く法の精神を呑込まれて、巧みに之を實施し得るや否やと云ふことが極めて重要な點であると思ふのであります、殊に本法案は、先程も申しましたやうに相當強い反對もあつたのでありまするが故に、其の施行に當りましては細心周到なる注意を拂はれ、萬全の方途を講ずる必要があと思ふのであります、尚目下政府に於て研究立案中に懸つて居りまする勞働基準法の如きは、各方面の意見を徴せられまして、十分に完全なものとして、早く之を御制定になり、成るべく早い機會に議會に提案されまして、政府の誠意のある所を御示しになつて、我が國民主化の先驅をなすべき勞働組合運動に適正なる指針を與へられむことを希望するのであります、以上簡單でありまするが、私の所見を述べまして本案に贊成する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=42
-
043・中村徹雄
○男爵中村徹雄君 私は本法案に贊成致しますに付て、私の考へましたこと、希望致しますことを述べたいと存じます、本法案は勞働爭議の豫防、防止の技術的制限であつて、それ以上のものではないと云ふことを最初に厚生大臣が申されたのでありますが、さう云ふ意味では大變消極的な性格を持つたものだと思ふのであります、それで此の前の吉田委員からの質問に對する御答の中にも、勞働階級の民主主義化と云ふことと、公共の福祉との間に交錯する線を引くのである、現下の如き遷り變りの時代には之を何處に引くかと云ふことが極めて重大な問題である、本法案の如きまあ此の邊の所が其の線ぢやないかと思ふと云ふ風に言はれたのでありますが、私はさう云ふ詰り靜止した所に線を一本引く、靜態的な、「スタテイック」な言ひ方と云ふものは、本當の事情を言ひ表して居ないのぢやないかと云ふやうに感じたのであります、既ち敗戰を楔機としまして起りました勞働攻勢と云ふやうなもの、さう云ふものに對する防禦的な意味を本法案は持つものだと思ふのであります、既ちもつと「ダイナミック」に、動態的に考ふべき問題と思ふのであります、それで、さう云ふことは先日配付して戴きました「アメリカ」の勞働協約の内容に付て戴きました印刷物、あれと最近我が國で出來て居ります勞働協約との内容を見ますと、我が國のは「アメリカ」のそれに比して著しく社會主義的であり、著しく「アメリカ」に較べて行き過ぎて居る所がある所を見ても確かであらうと思ふのであります、それで斯う云ふやうに考へますと、先程山名男爵から現在の調停機關の背景を成すやうな、更に大きな機關が必要ぢやないかとか、第三者の選定方法、或は之を輿論を背景としたもつと強力なものにしてはどうかと云ふやうな御意見は、確かに必要なことであると思ふのでありますが、更にそれを超えて、既に本委員會の席上での中山委員の御意見だとか、山名委員の御意見の中に既に示唆されて居りますやうに、勞働、資本、更に消費者の立場と云ふやうなものを含んだやうな新しい……詰り古い勞資協調ではなく、新しい勞資協調の方式を發見する時機が既に來て居るのではないかと思ふのであります、それは本法案の存在其のものを不必要としてしまふやうな、本法案を死文化せしめるやうな新しき勞資協調の新方式を我々は發見すべく努力すべき時であると私は思ふのであります、私の言ひますことは大變な理想のやうに聞えますけれども、私目身は必ずしもさうは考へて居りませぬ、斯う云ふやうに希望致しますことを附加へまして、私は本法案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=43
-
044・吉田久
○吉田久君 私は過去の經驗に基きまして、本案に付きましては協定及び仲裁の機關を裁判所の所管とすべきである、而して調停に付ては有權性を要すべきものであると云ふことを申上げたのであります、第二段と致しましては、裁判所の所管を否と致しましても、勞働委員會の所管として尚其の調停には有權性を認め、之に對しては裁判所に不服の申立てを許すべきであると云ふことを主張致したのであります、今も其の主張は正當であると考へて居りますので、當委員會に於きましては、是等の主張に付て實は委員各位の決を採つて戴きたいと考へて居つたのでありまするが、併し飜って實際問題として考へまして、若し私考へて居ることが幸に具現せられて本案の訂正を見ると云ふことになりますと、本案の成立が或は阻止されることになりはしないかと云ふことを考へまして、若しさう云ふことになりますと是は遺憾なことであると思ひ直したのであります、と申しまするのは、本案は勞働關係の調整法律として、勞働組合法に基く勞働爭議を解決する爲には役立つ法律であると云ふことを考へるからであります、但し其の役立つのにどれだけの機能を發揮するかと云ふことは私は疑問に致して居ります、併しながら兎に角も現下の情勢に照しまして、此の法案が法律として世の中に出て、さうして勞働爭議の解決に役立つと云ふことになれば、非常に結構なことであると考へますので、其處でどうしても是は實際的には法律として成立せしめなければならぬ、斯う云ふ風に考へ直しました、左樣な次第で、私も第一段、第二段の主張に付きましては敢て委員諸君の御意見を具體的に求めることは致しませぬが、併しながら本案が法律として世の中へ出まして、さうして共の實際に施行せられました運用に鑑みまして、成程調停の機構を變へる方が宜しいのであると云ふことに相成りましたならば、是は一つ其の機構を變更する用意を政府に於ても心得られたいと云ふことを御願ひ致しまして、本案に付ては私はさう云ふ趣意に於て贊成の意思を表明致す者であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=44
-
045・中山太一
○中山太一君 非常に隔意なき質疑應答も出來、懇談會でも伺ひましたから、差支へなかつたら之を以て討論終結して戴きたいと思ひますが、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=45
-
046・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 討論終結して御異存ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=46
-
047・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 御異議ないと認めます、採決に入ります、勞働關係調整法案に贊成の諸君の起立を請ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=47
-
048・渡邊修二
○委員長(男爵渡邊修二君) 全會一致と認めます、仍て本法案は可決せられました、連日御苦勞樣でございました、散會致します
午後零時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=48
-
049・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 渡邊修二君
副委員長 子爵 高木正得君
委員
侯爵 東郷彪君
伯爵 壬生基泰君
子爵 秋月種英君
子爵 松平乘統君
子爵 大久保教尚君
子爵 三宅直胖君
桑木嚴翼君
吉田久君
男爵 松本本松君
男爵 山根健男君
男爵 山名義鶴君
男爵 中村徹雄君
種田虎雄君
我妻榮君
正田貞一郎君
竹中藤右衞門君
中山太一君
片倉兼太郎君
古垣鐵郎君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 富樫總一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003757X00619460919&spkNum=49
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。