1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月十三日(金曜日)午前十時十四分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 森幸太郎君 理事 飯島祐之君
理事 山口光一郎君 理事 細野三千雄君
理事 冨吉榮二君 理事 藤本虎喜君
理事 井出一太郎君
磯崎貞序君 北れい吉君
古賀太郎君 田邊讓君
中野武雄君 森田豊壽君
八重樫利康君 藥師神岩太郎君
山口好一君 青木清左ヱ門君
江川爲信君 小笹耕作君
太田秋之助君 白木一平君
寺島隆太郎君 保利茂君
井伊誠一君 大澤喜代一君
玉井潤次君 堂森芳夫君
中原健次君 平野市太郎君
松澤一君 橋本二郎君
松本六太郎君 増井慶太郎君
北政清君 山木武夫君
九月十二日委員中野武雄君及び布利秋君辭任に付其の補闕として三浦寅之助君及び菊池豊君を議長に於て選定した
九月十三日委員保利茂君辭任に付其の補闕として佐伯忠義君を議長に於て選定した
九月十三日理事布利秋君の補闕として菊池豊君が理事に當選した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
司法政務次官 古島義英君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
委員長の許可を得た出席者
内務次官 飯沼一省君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より開會致します、此の際御諮り致すことがございます、委員布利秋君が辭任致されましたので、其の補闕として菊池豊君が委員に選定されましたが、布君は理事でございましたので、理事の補闕選擧を行はねばなりませぬが、是は先例に依りまして委員長指名と云ふことに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=1
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002・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御異議ないものと認めます、それでは菊池豊君を理事に指名致します、前會に引續き質疑を繼續致します──上林山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=2
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003・上林山榮吉
○上林山委員 今囘審議中の第二次農地改革案、即ち農地調整法改正案竝に自作農創設特別措置法案は、言ふまでもなく三百五十萬の小作農家及び自作農家の農地二百萬町歩未開墾地百十萬町歩の再分配をなすことに依りまして、農村の經濟的民主化を圖り、以て生産の増強をなさんとするのが其の狙ひの重點でありまして、我が國に取つては正に劃期的な大事業であると思ふのであります、而も之を第一次の農地改革案に比較して見ます時に、解放される所の農地の總面積が其の約二倍となり、或は自作農創設地の買取、賣渡を國家が急速に行はんとする、自作或は小作料に關する制限規定を法文化したる所の點は、一應進歩的な改革案であつて、私は政府の原案に對しまして此の點に關しまして了解をして居るものであります、そこで私は本案に關しまして總括的に御尋ね申上げ、更に各項に亙りまして具體的に御尋ねをせんとするものであります
先づ第一に、私は日本の農業は二、三の例外を除いては歐米のそれと違ひまして、資本主義的な大農經營と云ふこともなければ、又社會主義的な共同經營と云ふこともなかつたと云ふことは、日本の農業が獨特の性格を持ち宿命を持つて居たと云ふことに基因するのである、斯う云ふ風に考へるのであります、即ち御承知のやうに、國土が非常に狹小であると云ふこと、或は山川の多い地勢であると云ふこと、人口が非常に過剩であると云ふことなどが、日本の農業への大なる制約となつて居つたのであります、更に戰爭に依りまして、國土が狹められ、復員者、引揚者と云ふやうなものを農村に抱え込むことに依つて、愈愈此の傾向が深刻になつて來て居る、さう云ふ風に考へるのであります、尚ほ他面に於きましては、水田耕作と云ふ獨特の經營方式と、或は段々畑の多い我國の農業は、機械化農業發展への障碍となつて居つたのである、でありますから、自然に家を中心としての農業經營とならざるを得なかつたと云ふのが日本農業の性格であつた、斯う云ふ風に私は考へるのであります、此の見地に立ちまして、果して政府の第二次土地改革案は、此の日本農業の性格と云ふものを十二分に認識しての改革案であるかどうかと云ふ點に付て、先づ御伺ひを致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=3
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004・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、極めて理論的な根本的な御質問であると思ふのであります、私も此の農地改革と云ふものは、どうしても其の國の現實と歴史とを十分理解した上で、それに即して行ひませぬければ效果がないと考へて居る者の一人でありまして、仰せのやうに、今囘の農地改革は、日本の農業と云ふものが持つて居ります所の特質、又日本の農地制度が有します所の特徴、それ等の事柄を十分考慮致しまして、それを基礎にして考案致したものでありまして、それ等の點に付きましては、只今御話のありましたやうな諸點に付て、我々としては十分考慮を拂つた積りで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=4
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005・上林山榮吉
○上林山委員 日本農業の性格に對して十分御認識をして居られると云ふ御答辯でありまして、私了解するのでありまするが、然らば農林大臣は、此の日本の農業の性格を十二分に認識した上で、如何なる經濟的な思想を背景として本法案を立案されたのであるかと云ふ立法理由に付て、直截簡明に御述べを願ひたいと思ふものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=5
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006・和田博雄
○和田國務大臣 本法の立案理由は、本會議で御説明致しましたし、只今御話の點にありましたやうな事柄でありまして、それ以外に何もないのであります、私は斯う云ふやうに考へて居るのであります、日本の農業と云ふものが行はれて居る、農民が農業を其處に行つて居る、其の行つて居るのには、それは一つの條件の下に、所謂要件の下に、一つの制度の下に行つて居る譯であります、さうしました時に、現在の實情に於てそれが日本の再建に取つて、又日本の農村の民主化と云ふものに取りまして、そこに改善すべきものがあると云ふことでありまするならば、其の要件の改善を行つて日本の農村の民主化を促進すると云ふことは、現在我々に課せられて居りまする「ポツダム」宣言の趣旨に則りまして民主化を行つて行く上に於ては、是非やらなければならない、斯う思つて居る次第であります、私が此の農地制度の改革に依つて求めましたものは、日本の農村、言換へれば、農業と云ふものに於ける合理性と言ひますか、さう云ふものを求めたのでありまして、日本の農業と云ふものが、現在の状態に於ては極めて不合理な部分を多く含んで居る、さう云ふものは此の際一切排除して、日本の農業が近代的な合理的な基礎の上に遂行されると云ふやうに持つて行きますることが必要である、斯う考へた次第でありまして、さう云ふ一つの觀點から此の農地改革と云ふものを行つた次第でございます、即ち之に依りまして日本の農業と云ふものは合理性を囘復致し、農業團體に資本蓄積の餘地が出來まする基礎が與へられることに依りまして、其の上に成立つ社會の構造も餘程合理的なものになる、私は斯う考へた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=6
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007・上林山榮吉
○上林山委員 日本農業を合理的に改革しようとする其の合理的の根據である、所謂立法理由乃至は經濟的に如何なる思想に基くかと云ふ點が稍稍不明瞭でありまするが、此の程度に致して置きたいと思ふのであります
昨日も保利委員から御尋ねがありましたやうに、小作地の二百萬町歩が果して計畫通りに消化されるかと云ふことは、非常に疑ひを持つて居る一人であります、なぜかと申しますと、小作關係の安定して居る地方、或は零細農家と云ふものは、必ずしも自作農創設に對して飛び付く程の熱意を示して居ないのではないかと考へるのであります、此の點に關して農林當局に於かれては、輿論調査、或は基礎的な何等かの調査を計畫され、或は實施されたことがあるのでありませうか、計畫通り三百萬町歩が消化されると御見透しになつた其の基礎を承つて、更に質問を續けたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=7
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008・和田博雄
○和田國務大臣 是は農林省としての輿論調査をしたことはございませぬ、先般どの新聞でありましたか、輿論調査をなさつた其の結果が出て居つた譯でありますが、斯樣に實は考へるのであります、此の改革を行ひますに付きましては、やはり何としましても十分此の改革の趣旨のあります所を農家なり一般の人達に理解さすと云ふことは、どうしてもやらなければいけないのであります、隨ひまして輿論の一應の調査だけを以て云々することは私共としては避けたいのでありまして、從來の農林省と言ひますか、政府の經驗に依りますと、從來と雖もやはり自作農の創設は事業としてやつて居つたのであります、其の事業としてやつて居りました時に、自作農創設の爲には、今まで預金部の資金を融通致して居つたのでありますが、其の資金への申込と言ひますか、自作農になりたい爲に金を貸して呉れと云ふ申込は、常に計畫の何倍と云ふか、遙かに超えて居つた譯であります、さう云ふやうな事情で、過去に於きまして──本法の自作農創設から比べますれば極めて微温的なあの時代に於きましても、農民自身の持つて居りまする土地所有に對する欲望と云ふものは、相當強いものがあつたことは事實なのでありまして、それ等の點から考へましても、日本の農民が土地に關しまして、何時までも小作人で居りたいと云ふことを心から思つて居る小作人が一體果して何人あるかと云ふことに私は疑問を持つて居るのであります、やはり人間でありますから、一つの經濟的な生活を營んで居る以上は其の地位の向上、經濟の向上に對する熱望は持つて居りますので、私共と致しましては、是等の趣旨を十分徹底しますれば──それは一方爲にする宣傳其の他の意見に付ては別でありますが、本當に之を話して見れば、十分に自作農創定と云ふことが出來るものではないか、斯樣に私は確信して居る次第でございます、勿論數多くの人間でありますから、中には今欲しくないと言ふ者もあるかも知れませぬ、併しさう云ふ者は恐らく微々たるものであり、又それ等の者に對しましては、事情の變化に依つて土地を持ちたいと云ふことにもなり得るのでありまして、其の點に付ては今後の我々の努力にも懸る所が多いので、其の點に付ては、凡ゆる方面から十分此の計畫の遂行に遺感なきを期したい、斯う云ふ心構へを以て著々準備を致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=8
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009・上林山榮吉
○上林山委員 勿論日本の農家程耕地に愛著を感じて居る國民は少いと私は考へるのであります、それも耕作權と所有權が同一人に歸することを勿論望むことは、條件如何に依つては極めて自然なことだと思ふ譯であります、然るに先程申上げましたやうな事情に依つて、或はさう云ふ方面の輿論調査や、色々なものに依り、或は其の方面の人々に就て聽いて見ますと、餘程疑問の點があるやうに思ひますので、斯う云ふ點を指摘申上げた譯であります、殊に今日農民は──勿論是は一部ではありますけれども、小作人に對して魅力すら持つて居るのではないか、斯う云ふ風に私は考へるのであります、なぜかと言ふと、數次に亙つて米價が引上げられた、或は闇値の暴騰に比例致しまして、石當り七十五圓の換算基準に依る金納小作料率では甚だしく小作料が安いのだ、加へて自作農創設に依りますと、三十年間と云ふ長い間借金を背負つて居なければならぬ、其の上に公租公課を負擔しなければならぬ、或は食糧事情が安定した後に於ける所の輸入食糧との關聯に於きまして、將來の農産物價格に不安がある、斯う云ふやうな點などから致しまして、相當の部分私は飛付く程の熱意を小作人が、此の自作農創設に對して示して居ないと云ふことは、確かに詭辯ではなくして、相當の論據ある今日の事實であると考へるのであります、そこで此の點に對しまして見透しを質問した譯でありますが、當局と致しましては、二百萬町歩を殘りなく消化するべく努力されることは勿論でありますが、私は以上申上げたやうな論點から致しまして、是が殘る、當局も場合に依つては殘るかも知れぬと云ふことを昨日申されたやうでありますが、其の結果は之を市町村の農業會、或は其の他の團體に賣渡す、或は管理せしめると云ふやうなことを農相は答辯されたのでありますが、私は寧ろ是は自作の意思ある小地主程度のものには、殘つた此の土地を更に何等かの方法に依つて條件を付けて賣渡すのが當然である、斯う云ふやうに考へるのであります、言ふまでもなく、大地主、中地主、或は高利貸的な取引に依りまして土地を得た小地主、さう云ふやうなものは論外でありますけれども、小地主と言はれて居る多くの人々に取つては、先祖代々粒々辛苦して贏ち得た所の自分の愛著の土地であります、でありますから、之を小作人が全部消化しなかつた場合は、町村に、或は農業會に之を賣渡すとか、管理せしむるとか云ふものではなしに、私は今まで盡して來た是等の中堅層である所の小地主、斯う云ふものに向つては、自作をすると云ふ條件に依つて、之を再び拂戻すべきではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、さうでないと、勿論自作農創設の政府の意圖する所は、決して土地國有論ではなくして、目的は飽くまでも自作農創設が目的であつたのでありますけれども、結果に於て茲に於て一時的にでも土地國有と云ふものが殘されると云ふことは、結局農地制度の改惡である、斯う云ふ風に考へるのでありまして、土地國有制度と農地私有制度とは、根本的に矛盾して居る所の思想であると考へるのでありますが、此の觀點から若し殘つた土地を斯う云ふ意味に於て何等か方法を考へる御意思はないか、但し私は今言ふやうに、單に之を儀禮的に、情誼に依つて解決せよと云ふ意味だけではなしに、自作する意思或は生産に從事する意思のある者に限つて之を拂戻すべきであると云ふやうな考へを持つものでありまするが、之に對する農林大臣の御考へを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=9
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010・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、小作人でありませうが、自作人でありませうが、將來の農産物價の變動、其の他さう云ふ經濟上の變化に關しては、是は等しく影響を受けるのでありまして、それが小作人であるか、自作人であるかに依つて變りはないのであります、寧ろ私はやはり小作人と云ふものが自分の土地を持つて、そこに自分の資本を投下し、又勞力を投下して、そこから擧つて來る所の收益は自分がそれを納めて行く斯う云ふ形に致します方が、日本のやうな特別な「モンスーン」地帶にある農業に於ては、小作と云ふ形に於けるよりも餘程良い經營ではないかと思つて居る譯であります
次にどうしても買はない小作人があつた時に國家が買ふ、其の買つた土地は、昨日も私、色々手を盡したが、結局買はないものは、村の農業會であるとか、實行組合であるとかに賣渡してやる、斯う云ふことを申したのでありますが、實は之を小地主に賣渡す譯には一寸參らないのであります、と申しますのは、やはりそこに小作人が依然として耕作致して居りますので、之をさう云ふ形で許すと云ふことになりますれば、結局小作人から土地を取上げて小地主に返す、斯う云ふことになつて行く結果となるのでありまして、是は農地改革と甚だ相反するやうな面白くないやうな結果となる譯であります、勿論其の場合に、是は一般的な問題として、地主が自作をすると云ふ目的の爲の土地返還の問題と結論的に關聯して來るのでありますが、其の場合には、現在耕して居る者が農業の生産を高める上から言つて宜いのだと云ふことでありますれば、其の小作人には依然として許して置く、斯う云ふ建前を堅持致して居りますので、御話のやうな譯には參らないのであります、それから中小地主で不耕地主は、是は全國的に調査した譯ではありませぬから、一般的には申せませぬし、又地方的に依つて違ひませうが、大體の村に於きましては、一町以下或はもう少し以下の中小地主と云ふものは、何等か外に職業を持つて居る人が多いと思ふのであります、殊に或る村の調査では、大部分は商人を兼ねて居るやうなものが多いやうにも考へて居りますので、さう云ふやうに致しますと、是は何としても實際上は現在小作して居ります者の方が、國民經濟の上から見て生産を上げる上に於ては宜いと云ふことになりますので、御話のやうに賣れ殘つたものを中小地主に賣渡すと云ふことは、一寸採りにくいかと考へて居ります、勿論此の法案は、私御説明申上げましたやうに、土地國有を目的にして居るものでは毛頭ないのでありまして、國家が之を買ふと云ふことは、急速に公正に小作人を自作人にする爲の一つの手段として考へて執つたのでありまして、隨ひまして出來るたけ國が自分で其の土地を持つと云ふことは致さない方針で進むのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=10
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011・上林山榮吉
○上林山委員 次に御尋ね致したいのは、今問題になりました不在地主の基準の問題と申しますか、或は不在地主の例外的な問題をどう云ふ風に取扱ふかと云ふやうなことに付て御尋ね致したいのであります、今大臣が御指摘になりましたやうに、大中の地主とか、或は都市の資本家が搾取的な投資の對象として土地を持つて居る場合はもう論外でありますが、實際農村の實情から例外的なものを考へて見ますと、五段歩とか七段歩と云ふやうな土地を持つて居る者が、而も其の土地を持つて居ること自體が生活保障の一助をなして居ると云ふやうな場合に於きましては、近接の都市に勞働に行く、或は勤めに行くと云ふやうなことになつて居る事態もある譯でありますし、或は又場合に依りましては、自分の家が其の村にある、或は自分の先祖代々の墓があるのだ、まあ一時的に其の土地を離れて行つて居るのでありまするが、是が再び歸るやうな状態になり得るのか、斯う云ふ實際的な問題も、嚴格な意味に於ける不在地主として之を御取扱ひになる御意思であるかどうか、此の點であります、更に又斯う云ふ實例は非常に多いのであります、是は岡山縣の人からの手紙であります──、類似の手紙が十數通來て居りますが──之に依りますと、「十一月二十三日郷里に居住せざる理由で、戰災者、外地引揚者は不在地主として耕地を取上げられる由でありますが、是は甚だ殘念でございます、些少なる耕地を取上げられた私共戰災者、外地引揚者は、今後一體何で生活の途を立てて宜いのでございませうか」と云ふやうな意味のことが書いてありまするが、斯う云ふやうに戰災者、或は外地引揚者が歸つて來て失業して居る、或は歸農したい、斯う云ふ場合にも全然不在地主としての御取扱をされるのでありまするか、此の點を明確に御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=11
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012・和田博雄
○和田國務大臣 それは結局住所の問題になるのでありまして、其の住所が其の市町村にありますれば、是は不在地主にならない譯でありますから、住所謂はば生活の本據が、例へば其の村に先祖傳來の墳墓がある、其處へ自分が歸つて來て其處が自分の生活の本據である、斯う云ふ状態であるならば、是は不在地主にならないのでありまして、住所が其處になくて、全然其の村からもう出て行つてしまつて居つて、自分の生活の本據は外にある、斯う云ふことでありまするならば、是は本法に於きましてはやはり不在地主となつて行く譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=12
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013・上林山榮吉
○上林山委員 勿論明文に依りますと、昭和二十年十一月二十三日となつて居るのでありますから、それを基準にして住所と云ふのであり、それを基準にしての生活の本據だ、斯う云ふ風な御答へがあつた譯でありまするが、さう云ふことになりますと、今言つたやうな實情にあるものは、全然考慮の餘地はないと農林省としては解釋して居る、斯う云ふ風に了解して宜いのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=13
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014・和田博雄
○和田國務大臣 具體的な事例が一寸明確でないのですが、結局斯う云ふことになると思ふのであります、例へば家族は村で生活して居る、併し本人は其の村に居なかつたと云ふやうな場合ならば、是は私は宜いと思ふのでありますが、家族も何も村に居らない、村を全部離れてしまつて、都會で生活して居つた、偶偶都會で戰災を受けた、斯う云ふやうなもの、是はどうも不在地主になると考へる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=14
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015・上林山榮吉
○上林山委員 私は、例へば自分の家があつて、或は又家がなくても、もと農業をして居つた者が海外へ行つて居つた、殊に海外に於ても農業に從來して居つた、さう云ふ者が引揚げて來た場合は、是は不在地主の例外的な取扱に依つて救ふのが當然だ、或は又之に準ずるやうなものに付ては、政府としては温かい氣持に依つて考へられるのが本當ではないか、斯う云ふやうに考へるのでありますが、此の點に對してはどう云ふ御見解を持つて居られるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=15
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016・和田博雄
○和田國務大臣 それは不在地主の議論としましては不在地主であります、併しさう云ふ海外の引揚者で農業を營んで居られた方々に、農業として又立つて行きたいと云ふ御希望がありますれば、是は開拓なり其の他の手段に依りまして、其の方面に御活躍を願ふと云ふことに致したいと思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=16
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017・上林山榮吉
○上林山委員 成程法文の解釋を嚴格にして行くとさう云ふ風になることは、私も一應諒とするのでありますが、進んで御尋ね致したいのは、例外的な規定に依つて、さう云ふ者を單に開拓だけではなしに、自分が先祖代々持つて居つたものを一時的に、海外に行つて居つた爲に人に貸してあつた、さう云ふやうな引揚者に對しては、相當特殊の取扱をしても宜いのではないか、要は生産力を上げ得るか上げ得ないかと云ふことが基準になる、斯う考へるのでありますが、其の點どうでありますか、要は生産能力を擧げると云ふことが此の農地改正の大きな目標だ、それ以外にも、勿論農村の民主化と云ふことも目標でありませうが、私は改革の重點は、少くとも生産の増強と云ふことになければならぬ、斯う云ふ風に考へるのであります、斯う云ふ場合は其の線に沿つて居ると私は考へて居るのでありますが、之に對しては、特殊な救濟の方法と云ふやうなことは、現在の所では何等考へて居られない譯でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=17
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018・和田博雄
○和田國務大臣 と云ふことは、結局海外に居つた人が村に歸つて來た、村に自分の土地がある、所が其の村ではもう既に小作人がそれを耕して居る、自分は海外に於て農業をやつて居つた、それで自分も其の村で農業をやりたい、そこで其の土地を返して呉れ斯う云ふことになるだらうと思ふのでありますが、其の場合には、是はやはり何處までも、どちらの人が此の農業をやつた方が其の生産力が上るかと云ふことに依つて其の土地の返還に付ては決定を致す譯でありまして、是は農地委員會其の他の具體的な判定を俟つて決めて行く、斯う云ふことになるのでありまして、法律の上から行きますればさうならざるを得ないのであります、併しさう云ふ人が實際上海外で農業をやつて居つたから、又農業をやりたいと云ふ時には、是は村内で農地委員會なりがさう云ふ考慮を運らすのみならず、政府としては今言ひましたやうな、開拓なり其の他の方法に依つてさう云ふ人達に耕地を與へて行きたい、斯う考へて居るのであります、是は例へば滿洲へ開拓移民で行つた人達に付ても、やはりさう云ふ問題も起り得ると思ふのであります、それ等に付ては、開拓其の他の方法に依つて問題を解決して行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=18
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019・上林山榮吉
○上林山委員 今開拓の問題が出ましたが、然らば御計畫になつて居る未開墾地百五十萬町歩の自作農創設の趣旨は、今言はれるやうに、主として海外の引揚者、復員者、或は戰災者、或は農家の次男、三男と云ふやうな、特殊の條件のある者に優先的に百十萬町歩の未開墾の農地を分與される御意旨であるのでありますか、或は其の他の點が重點に置かれて居るのでありませうか、其の點を此の際伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=19
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020・和田博雄
○和田國務大臣 大體御話の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=20
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021・上林山榮吉
○上林山委員 次に御尋ね致したいのは、耕作能力の基準を何處に置くかと云ふ問題であります、是は農地委員會等に於ても、取扱上極めて重要な點になると思ひますし、日本の農地の保有面積が非常に狹い、或は又農地委員會も初めてのことでありますので、運營上或は實際上困難が伴ふと思ひますので御尋ねする次第でありますが、ここに言ふ所の耕作農地と云ふのは、單に人的な勞力とか、家族の員數とか云ふやうなものだけを基準とすべきものではなくして、畜力或は簡易なる機械力、斯う云ふものの使用を含む所の經營能力、言換へますならば、業務成績、斯う云ふものを含んでの耕作能力と解すべきであるかどうか、此の點を御伺ひ致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=21
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022・和田博雄
○和田國務大臣 法律の中には慥か耕作能力と云ふことはなかつたやうに思ひますけれども、勿論唯勞力だけを使つてやつて居るものを考へて居る譯ではないのでありまして、畜力其の他或る程度の機械と云ふものを以て經營すると云ふことも、勿論認めて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=22
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023・上林山榮吉
○上林山委員 然らば近化的農園を經營して、生産力を非常に擧げて居ると云ふやうな農園、若しくは俗に言はれて居る精農家、斯う云ふものは法規の示す所では保有面積の幅の増減が出來るやうになつて居りまするが、事實上に於ても農林省と致しましては法規を其の儘活かして、實情に適したやうな風にやり得る、例へば保有面積が三町歩を超えても、五町歩であつても、さう云ふものは別取扱ひをして戴けると云ふ御見込を持つて居られませうか、法規の解釋ではなしに、實際の見込を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=23
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024・和田博雄
○和田國務大臣 今度の農地改革は、私御説明致しましたやうに、現在實際上相當生産力を擧げて居る經營、所謂自作經營に付ては何等經營面では制限して居ないのであります、隨ひまして只今御話のやうに、自分で自作して、自分の土地を五町歩なら五町歩經營して居る、斯う云ふやうなものに付ては、それが生産力の非常に低いものではどうかと思ふのでありまするが、實際上精農であつて、立派に經營致して居るものに付ては、面積を減らすと云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=24
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025・上林山榮吉
○上林山委員 次に是は昨日も問題になりましたし、又本會議でも問題になつて居りましたが、一番私共が關心を集めて居るのは、折角政府が強權に依つて農地を買上げて、之を生産力を高むる意味に於て小作人に拂下をした、斯う云ふ風にして非常なる努力をした結果出來た自作農家、是が果して現在の状況から判斷しまして何年續くものであらうか、斯う云ふ風に實際危惧の念を持つて居るのであります、言ふまでもなく今申上げましたやうに、今までの小地主と云ふやうな人々は、先祖代々粒々辛苦して自分が贏ち得た土地であるから、土地に對する所の愛着心、或は經營方針と云ふものを非常に密接に考へて居る、併しながら今度のは、政府の力、時の力に依つて樂に手に入れたのでありますからして、人に依つては、或は上から政府の保護政策が徹底しなければ、沒落することも案外早いのではないかと云ふやうな考へを持つて居るのであります、そこで之に對しまして政府としては、自作農を折角創設したが、之を維持するに付ての具體的處置、是は法案を眺めて見ましても、單に所有權を移轉することを禁止してあると云ふこと位しか、法案上からは見出すことが出來ないのでありますが、具體的な保護政策、例へば昨日も申されましたやうに、農業保險をどの程度に擴充強化されようとして居るのであるか、或は農村金融の問題をどう云ふ風にやらうとして居られるのであるか、或は經營指導の方針に付て農林省は具體的にどう云ふことを考へて居るか、斯う云ふやうな點が非常に重要になつて來る、斯う思ふのであります、色々やるのだと云ふことは言はれて居りますけれども、具體的な面がまだ伺へないので、もう少し進んだ所を御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=25
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026・和田博雄
○和田國務大臣 御尤もな御話でありまして、私共も此の自作農になりました者の維持に付きましては、是非今後出來るだけのことは、政府としてやるべきことはやつて行きたいと思ひます、農業保險の問題は一應の素案は出來て居るのでありまするが、是は現在の保險の事項を擴げまして、寧ろ保險と云ふよりも、どちらかと云ふと共濟と云ひますか、其のやうな色彩を強くしたものにして行きたい、斯う考へて居る次第であります、唯保險の制度は、斯う云ふ非常な「インフレ」期に於きまして直ぐ實施することは、實際上の效果の點に付て多少の懸念もありますので、農業會其の他と十分連絡を取つて、一應の要綱程度のものは出來て居る譯でありますが、「アイディア」は今言ひましたやうに保險事項を殖やしまして、農家の再生産を確保すると云ふ見地に立つた保險制度にして行きたい、斯う考へて居る次第であります、是は何れ具體的な案が出來ましたならば、出來るだけ早い機會に議會に提案致しまして、是非御審議を御願ひ致したいと考へて居る次第であります
それから農業金融に付きましては、是はどう致しましても相互金融に依つて行くより外はないのでありまして、只今の中央金庫其の他のものを今少しく民主的なものに致しまして、相互金融の組織に依つて農業の金融をやつて行く、斯う云ふ考へ方に變りありませぬ、それから一番問題になりまするのは、私は恐らく今後は、自作農の創定が出來まして自作農が多くなつた時には、不動産金融の問題が一番大きな問題になつて來ると思ふのであります、是等の點に付ては、現在不動産金融機關としましては中央金庫及び勸業銀行がある譯でありまするが、此の不動産金融に付ては、中金の機能を何等か擴大するなりして、不動産金融の機關を政府として是非確立する必要があるのではないか、斯う考へて居る次第でありまして、是等の點に付ては十分研究して誤りなきを期して行きたいと考へて居ります
それから經營の指導に付きましては、今囘も八千萬圓ばかりの豫算を計上致しまして、指導農場を五箇町村に一箇所作りまして、其處に於きまして技術の滲透を農家に圖つて行くと云ふ案を立てまして、只今實行致して居ります、大體指導農場は現在の所約千までは參りませぬが、八百以上位の所で、正確な數字は記憶して居りませぬが、千足らずのものが大體豫定されて居ります、政府としましてはさう云ふやうな施設を講じまして、自作農の創定されましたものの維持を圖りまするが、又一つには、何と云ひましても自作農になりました人達を協同組合に纒めまして、自作農の人達の組織の力に依つてお互ひに其の地位の維持改善を圖つて行くと云ふやうな方向に指導して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります
協同組合法に付きましても、今議會には金融措置令其の他の關係で提案に至りませぬでしたが、是非次の議會等には之を提案致しまして、自作農になりました者達の協同の力に依つて、其の人達の地位が保たれまするやうな組織を實施致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=26
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027・上林山榮吉
○上林山委員 自作農創設の維持と關聯がありまするので、此の際司法大臣と農林大臣に御尋ね致したいのでありまするが、折角苦心をして出來た自作農創設の維持が、法案の立場から眺めて見ますと、或は其の他の法規の點から見てみますと、是が法的に保障されて居ないと思ふのであります、改正憲法草案若しくは之に基く所の民法の改正案に依りますと、相續平等の制度が採られます爲に、家族は必然に農地を分割するやうになりまして、結局農地の細分化と云ふことが起ると考へるのであります、之に對しまして司法大臣は、例へば遺言とか、或は遺留分とか其の他の方法に依つて、農地をばらばらにしないやうな方法を執ると云ふやうな御話のやうでありました、單なる法規の概念論と致しましてはそれで宜いかも知れませぬが、實際の農村の實情にはそれは適しないのだと云ふ風に私は考へて居るのであります、之に對しまして、例へば長男の相續であるとか、或は次男を指定して相續せしめるとか、何等か農地と云ふものをばらばらにしないで、之を世襲せしめると云ふと語弊があるかも知れませぬが、さう云ふやうな形に於て農地の細分化を防いで生産を擧げると云ふやうな、法的措置を民法に於て司法省としてはどう云ふことを考へて居るか、今御述べになつて居るやうなことでは、私共の解釋と農村の實情からすれば、絶對に自作農を保護出來ないと云ふやうに考へるのであるが、此の點をどう御考へになるか、或は又農林省に於かれても、此の法案の中に何か一條を設けて、此の農地の細分されることを防ぐやうな方法を御考へになつて居るか、現在の所有者、今後自作農者になつた人の所有權は、一々地方長官其の他の認可を得なければ、之を讓渡出來ないと云ふやうなことが規定されてありますけれども、私はそれでも事實上の小作人が出來ると同時に、或は又今言つたやうな、今度の民法上から來る農地關係の細分と云ふことが必ず行はれると考へますので、もう少し突進んだ當局の所謂肚を承つて置きたいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=27
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028・和田博雄
○和田國務大臣 御話の點は事實御尤もなのでありまして、今度の憲法に依りまして均分相續になると云ふ、其の面から考へますと、例へば遺留分其の他遺言に依つて之を避けることが出來る譯でありまするが、まだそれだけでは十分ではありませぬ、併し私共としましては、是は農政の立場から、御話のやうな結果が出ませぬやうな何か別の方法を是非實際上研究致したいと思つて居ります、例へば此の點に付て直ぐ頭に浮かぶのは、「ドイツ」がやつたあの世襲農場法、あれは一種の家産法のやうなものでありますが、ああ云つた制度が今後必要になつて來るのではないかと思つて居ります、是は此の土地制度の改革が行はれた今後の一番大きな問題としてそこに殘つて居る譯でありまして、此の點に付ては、農政の立場から是非耕地の細分が行はれることを避けるやうな何等かの制度を設けたいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=28
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029・古島義英
○古島政府委員 上林山君の御質問は洵に御尤もであります、私も左樣に考へて居るのでありまして、如何なる方法を講じましても、零細農家の出て參ることは、此の程度では已むを得ないこととなつて來るのであります、一代の相續の際は僅かに分配されるだけでありますが、二度、三度の相續があれば、恐らくはもう耕作することの出來ないやうな零細農家になつてしまふと思ふのであります、そこで司法省と致しましては、曾て本會議で大臣が答辯致しましたやうに、別の法律を拵へて是が對策を講ずる、斯う云ふことである、所が如何樣な法律を拵へたならば是が救濟出來るかと申しますと、容易な問題ではないのであります、そこで我々は寧ろ信託耕作と云ふ風に導いて、其の仕事の遂行上差支へない程度の法律を拵へたならば、辛うじて是が救濟出來るのではないかと云ふことも考へて居るのであります、所が實際から申しますると、信託耕作に致しましても、所有權の名義は共有である、共有になつて居て、民法の共有の規定を適用すれば、いつ何時でも分割の請求が出來ることになつて參ります、所で相續を致した當時の氣分で居れば兎も角もでありますが、後になつて紛爭を起すやうな場合には、此の分割請求が起つて來るであらう、分割請求が起つて來た時に、分割を許さないと云ふことの法律を又拵へなければならぬと云ふことになります、さう致しますと、理論的には、別の意味に於て公共の利益でないに拘らず、所有權の制限をすると云ふことの問題も起つて參ると云ふことになりまするが、餘り零細農家を拵へると云ふことは、是れ自體が公共の利益を害することであると云ふ解釋を致しまして、寧ろ零細農家防止の爲の所有權の制限であるから、已むを得ず左樣にした方が宜からうと云ふことに大體は話を決めて居るのであります、目下法制審議會に於ても之を話題にして進めて居りますが、こちらの我々關係だけに於ても、此の點は十分に注意を致して、餘り所有權のばらばらにならぬやうに、零細農家の出來ないやうに全力を盡して見たいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=29
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030・上林山榮吉
○上林山委員 農林省が農政方面から單獨法を設け、或は司法省が更に民法の立場から特殊の規定を設けると云ふ御答辯を得ましたので、其の點は此の程度に致して置きます
次に御尋ね致したいのは、零細農家に對する農林當局の保護政策と云ふか、さう云ふ面に付ての具體的な方策を伺つて見たいのであります、成程本案の實施に依りまして、小作地の約八割が解放されることになるのでありますけれども、尚ほ七、八十萬の零細農家が殘るのではないか、或は自作農から轉落して來る者も必然的に起り得るのでありまして、私は將來も零細農家が相當數日本に存在すると云ふことを考へねばならぬと思ふのであります、零細農家は、言ふまでもなく形式が非常に舊式である、或は能率が非常に上らない、或は農家の生計の上からも、國家的見地から云つても、是は捨てて置けない重要な農村の社會問題である、斯う云ふ風に考へて居ります、仍て殊に豐作であるとか或は凶作とか云ふやうなこと、或は經濟界の變動に對して非常に抵抗力が弱い、斯う云ふものに對しては、もつと組織的な方法に依つて之を政府が保護しなければならぬのではないか、例へて言ひますと、斯う云ふものに向つてこそ共同經營をやらしめるとか、其の他能率を上げしめるやうな方法を別途に考へる位の積極性がなければ永遠に救はれないのではないか、斯う考へるのであります、勿論法的な趣旨と致しましては、御承知の通り、小作料の制限をしたとか、或は耕作權を相當確立したと云ふやうな面も見られるのでありますが、もう少し經濟的理由に依る所の保護政策を十分に御考へになつて居るか、此の點を御伺ひして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=30
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031・和田博雄
○和田國務大臣 零細農の問題、所謂過小農の問題も、此の土地改革を行ひました以後に於ける一番大きな問題の一つであらうと私は考へて居ります、唯過小農を考へます場合には、色々な觀點から考へ、又それを指導して行かざるを得ないのでありまして、零細農は農業だけで生計を營んで居るものではありませぬ、さう云ふものは殆どないと云つても宜いと思ふのであります、それ等のものは所謂兼業農家としまして、農業以外に何等かの所得の途を求めて、それに依つて生活をして居ると云ふのが多からうと思ふのであります、戰爭中は軍需工業の方面にどんどん勞働力が捌けて行きましたので、零細農其のものの所得は相當上つたのでありますが、それ等の勞働の機會がなくなりました以後に於て、此の零細農をどう導いて行くかと云ふ問題が深刻な問題として出て來る譯でありますが、是は今御話に出ましたやうに、共同經營と云ふ形に持つて行くことも一つの考へ方だらうと思ひます、それと同時に、やはり現在是等の農家が從事致して居りまする農業以外に所得の途を與へることに依つて、それ等のものを農業だけから得る所得でなしに、他から得る所得で生活を維持せしめて行くやうに指導して行くことも亦一つだらうと思ふのであります、實際上零細農家が働いて得て居りまする勞賃は、大部分はやはり農業内部に於て得て居るものが多いのでありまして、農業以外から得て居ると云ふものは、恐らくそれに比べて少いことになつて居る譯であります、そこでそれ等の點に付きましては、農業に於てなし得る事柄、言換へれば農村の所謂工業と云ふ方面に吸收しますのも一つの途でありますし、又山林なり其の他の面に於て勞賃の收入を得しむるやうに導いて行くことも一つの途だらうと思ふのであります、斯う云ふ風なことをやりましても、實は農業だけでは、過小農の問題は解決致しませぬ、私はさう思つて居る譯であります、是はどうしても農業外の工業の發展を俟ちまして、其の面に吸收して行くと云ふことがありませぬと、どうしても過小農の問題を徹底的に解決することは出來ないと考へて居る次第でありまして、それ等の點に付ては共同の經營に持つて行くなり、又は農村工業に收容するなり、又一部のものは農業から出て行つて貰つて、其のあとのものを農業として成立つやうな經營にして行く、斯樣な工夫をして、實際上は村で一つの協同組織に依つてそれを指導して行く、斯う云ふやうに致すのが宜いのではないか、斯う考へて居る次第でありまして、此の點に付きましては、一つは、日本の經濟の囘復と見合つて具體的に指導方法を考へて行くと云ふことにならうかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=31
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032・上林山榮吉
○上林山委員 只今概略承つたのでありますが、其の方法も一つの方法でありますし、相當の熱意を示されて居ることも分るのでありますが、此の點は餘程積極的な具體案をもつと御示しを願ひたいと思ひます、併しそれは其の程度に致しまして、昭和二十一年四月の農林統計に依りますと、耕作面積別では一戸當り五段以下が三九・二%を示し、五段以上一町未滿が三一・三%でありまして、兩者を合せますと全體の約七割を占めて居るのでありますが、三段未滿のものは全體の二二・七%を示して居るのであります、是が所謂零細農に入るのだらうと考へますが、此の二二・七%の零細農と云ふ現在に於ける状態が、今囘の農地改革に依つてどの程度解消される御見込でありませうか、此の點を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=32
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033・和田博雄
○和田國務大臣 是は數字的に出すことは非常に難かしいと思ひます、結局は二百萬町歩の小作地に付てどう云ふやり方で自作農を創定するかと云ふことに、實は係つて居る譯でありまして、數字的の結論を出すことは中々困難で出來ないと思ふのであります、併し御話のやうに、三段未滿の零細農と云ふものは、其の内容を餘程分折して考へて見なければいかぬのではないかと思つて居るのでありまして、それ等の點に付ての具體的の調査と云ふものが實はないので、甚だ殘念なのでありますが、例へば地主が食糧不安の爲め飯米を得る爲にやつて居るやうなものもあると思ひますし、それから又、三段は三段であつても、非常に囘轉の早い蔬菜などを作つて居る都會近郊の農家もあるでありませうし、是はそれ等の内容を相當分折した上でありませぬと、それ等のものに對しての具體的の策は中々立ちにくいと思ふのであります、若しも三段未滿の零細農が單に飯米農家であつたり、又其の三段以外に所得の途を得て居るものであつて、所得自體としては相當安定したものでありまするならば、是は、農業の方からは成程面積自體は少くとも、さう悲觀すべきものではないのでありまして、其の内容を相當檢討した上で、實際上の策を講じたいと思つて居りますが、只今の所其の具體的の内容に付ての細かい調査は實はございませぬ、是は農地委員會なり、何なりで、實際上の買收計畫を立てたり致します時に於ては、其の點は極めて明瞭になつて出て來ると思ふのであります、只今の所は總括的の資料はないので、何とも見透しが付かぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=33
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034・上林山榮吉
○上林山委員 數字の上の御計畫がなければ已むを得ませぬが、農村の工業或は商業其の他の産業との綜合的の計畫に依つて、零細農ばかりでなく、農村の一切の問題を經濟的に解決しなければならぬと云ふ政府の方途、是は當然のことであり、私共もそれを切望するのでありますが、此の農村工業と云ふ部面に付て、農林省自體で直ちに著手せんとせらるる具體的な事業は、第一次の加工、或は第二次の加工と云ふやうな、農産物に對する加工でありますが、之を本年から來年に掛けてどう云ふやうな方法でやられんとするのであるか、更に其の以外の所謂農村工業をやると致しましても、今囘の所謂占領關係の賠償徹去に依りまして、相當電氣がなくなつて來るのであります、殊に關西方面に對する所の火力發電所は相當減少するのでありまして、是等から來る農村の電化、所謂農村工業の將來に關する農林省當局だけの見透しは如何でありませうか、此の點を御伺ひして置きたいのであります、農村工業は極めて積極的にやつて貰ひたいのであるが、之に關聯して今申上げる點を明瞭にして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=34
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035・和田博雄
○和田國務大臣 農村工業自體に關し、政府として只今具體的に、第一次、第二次として茲にどれだけと云ふ定まつたものはありませぬが、農村電化に付きましては、第一次としまして實は十の地帶を選びまして、其處に模範的な電化の村を作つて行くと云ふことを先づやりまして、其の經驗を基礎にして、逐次其の成行を見て擴げて行く、斯う云ふことに致して居つたのでありますが、豫算の都合で本年度は僅か二地帶しか認められないことになりまして、我々としては非常に殘念に思つて居る次第でありまして、是は是非此の計畫を擴げまして、十の地帶はやつて行きたい、斯う思つて居ります、農村工業に付て、私共としては只今は斯う云ふことを致して居るのでありまして、商工省との連絡も取りまして、農業中央協力會議で地方々々に於て實際ありまする農村工業と云ふものを只今指導致して居ります、それを我々の方と致しましては援助致しまして、それの助長を圖つて行く次第でありまして、是は結局は各村々、地方々々に、やはり其の地方に適しました時計であるとか、或は木工であるとか、さう云つたやうな色々のものを植付けまして、漸次さう云ふ方面を開拓して行くと同時に、只今の所は資材の關係で第二次加工の罐詰とか、さう云ふものは餘り考へられないのでありまして、さう云ふ方面で今直ぐ大きな期待は出來ないのでありますが、さうでなくして、寧ろ農村に適した工業を色々農村に植付けて行くと云ふ方面に、どちらかと云へば力を注いで行きたい、斯う考へて居る次第であります、まだ具體的に年次的な計畫として纒まつた程度には、只今の所は達して居ない實情であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=35
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036・上林山榮吉
○上林山委員 私は農村自體の發展を、農地の改革だけでは絶對に期することは出來ないと考へて居るし、政府も勿論考へて居られるでありませうが、此の際に於て農村の勞力と云ふものを、組織的に、或は之を生産化すると云ふ面から云つて、もつと大きく取上げますならば、所謂見返物資を作つて、海外貿易に農村に居ながら「タッチ」すると云ふやうな大きな考へを以て、農村工業の積極的な發展を圖つて戴かなければならぬのでありまするが、斯う言ひましても、是は農林省だけの問題ではなし、商工省或は内務省の國土計畫とも十分の連絡がある大きな問題でありまして、農林大臣のみに之を強力に要望致しましても無理だと思ふのでありまするが、何れに致しましても、農村の工業化と云ふ問題に付て農林省が一つもつと積極的な、具體的な計畫を持つて、寧ろ商工省乃至は國土計畫をやらんとする内務省に向つて、所謂經濟省としての具體的な計畫を強力に推進して行く位の考へがなければならぬのではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、更に其の面から言ひまして、第二次の加工の問題に付ては、此處で種類を擧げるのを避けまするが、現在の状態に於ても相當多數第二次の加工位までは農村で出來る問題が多いのでありますから、斯う云ふ點に付てももつと私は御研究と御計畫が願ひたい、殊に今農村の電化を十地帶を選んで農林省が計畫したと云ふことに付ては、其の案の概要は私共も幾分か承つて、是は洵に進歩的な御考へであつて結構だと思ふのでありますが、此の二地帶を選んで如何なる構想に依つて模範的な農村の電化をやられんとするのであるか、此の際一つ承つて見たいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=36
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037・和田博雄
○和田國務大臣 農村工業に付てまだ案がないと申しましたのは、農村工業自體に付ての色々の調査なり、それから其の案は只今農林省に於ても或る程度のものは持つて居るのであります、第一次の農地改革をやりました時にも、農村工業の問題は問題になりましたことでありまするし、又農地改革をやりまする以上は、御話のやうな農村勞力の有效なる利用は必然的な問題でありますので、私の農政局長の時にも或る程度の素案は持つて居つたのでありますが、それがまだ豫算に達するまでに至つて居ないと云ふことを申上げたのでありまして、此の點御諒承を御願ひして置きたいのであります
それから此の二つの地帶に付ての農村工業をやる内容でありまするが、是は色々の面があるのでありまして、實は斯う云ふやうな「アイディア」で十地帶を選んだのであります、それは日本に於きましては、各地帶に於てそれぞれ農業經營の樣式が非常に違つて居ります、又作る作物其の他色々な點に於て違つて居ります、養蠶地帶あり、さうでない地帶がありますので、それ等の特色ある地帶十を選びまして、其の十選んだ所に於て一つの村を選定して、そこで其の地帶のそれ等の經營を模範的に電化して行くと云ふことを考へたのでありまして、具體的の細かい點は、何れ機會がありますれば政府委員から御説明して宜しうございますが、さう云ふ「アイディア」で案を立てて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=37
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038・上林山榮吉
○上林山委員 其の概要を説明するのには時間が取れるのでありますか、簡單であれば、大事な問題でありますから、此の際承りたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=38
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039・葉梨新五郎
○葉梨委員長 其の方の擔當政府委員が只今居らぬやうですから、次の機會に御讓りを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=39
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040・上林山榮吉
○上林山委員 農林省の問題はまだ數件殘つて居りますけれども、内務省と關聯した問題がありまするので此の際後に讓りまして、此の問題から御尋ね致したいと思ふのであります、私は農地改革の問題に致しましても、或は供出の問題に致しましても、殊に地方の經濟部門に對する政府の指導、是が適正である爲には、何と云つても之を運營し、指導監督する所の、第一線に働いて居る所謂經濟關係の官吏に適任を得なければ、此の仕事をば立派に定結して行くことは出來ない、斯う考へて居るのであります、殊に今日の日本の官吏制度の欠陷は色々あるのでありまするが、産業部門に對する所の地方の官吏の任免權が、現在に於ては大體内務省のみの所管になつて居るやうな點であります、之に對しまして私は先づ農林大臣に御伺ひ致したいのでありまするが、農林省が、供出或は割當、今の農地改革、斯う云ふやうな農政方面の仕事に付て圓滿に效果を擧げる爲には、餘程此の方面に理解のある人物を配置しなければならぬ、さう云ふやうな點から、農林大臣は、例へば地方の經濟部長其の他の關係の官吏を異動任免する場合に、どの程度の連絡或は關係を持つて居られるものでありませうか、其の點を先づ御伺ひ致しまして、次に内務大臣に御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=40
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041・和田博雄
○和田國務大臣 地方の經濟部長の異動に付きましては、是は直接は内務大臣がやられて居るのでありまするが、唯經濟部長は、何と云ひましても供出其の他の點に付きまして、農林省と關係が非常に深い譯でありますので、只今の所農林省と交流人事をやりまして、農林省からも其の方面に付て非常に堪能な者を經濟部に出しまして、内務省と十分連絡を取つて致して居る次第であります、唯今囘の農地改革に付きましては、是は何と致しましても專門の知識を要し、又此の改革に付ての十分な熱意を持つて居る者を採用致しまして、一貫してやる必要がありまするので、地方に農地管理部を設けまして農林省が直轄してやつて行く、斯う云ふ一つの態勢を整へることに致した譯であります、經濟部長等に付きましては、内務省とも十分連絡を取つて居りまして、只今言ひましたやうに、相互ひに人を入替へまして、供出其の他の點に付ては遺憾なきを期して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=41
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042・上林山榮吉
○上林山委員 經濟部長若しくは水産課長、商工課長、養蠶課長、山林課長、或は今度出來ます所の開拓課長と云ふやうな者は、農林省關係の仕事が非常に多いのでありまして、此の方面に向つては農林省として、もう少し熱意を持つた交流人事、或は内務省に對する強力なる所の要望をしなければ、現在のやうに内務省だけに之を所管をせしめてやつて居りますと、所謂派閥に囚はれた人事をやりますので、折角赴任した經濟部長が、供出の爲に或は其の他の農政の爲に盡力をして居る僅かの間に、是が轉任をさせられると云ふやうなことが多いのであります、それも單に適材を適所にやると云ふ表面の言出しでありますけれども、裏面を見ますと、相當の事實が伏在して居るのでありますから、所謂經濟相としての農林大臣は此の方面にももう少し關心を持つて戴きたい、斯う考へるのであります
更に此の際農林省に統計を示して戴きたいのは、農林省の所謂古手官吏で農林省關係の外廓團體、さう云ふやうな方面にどの程度今日在職して居る者が居るか、此の統計を一つ御示し願ひたいのであります
尚ほ私は此の際内務省に、今農林大臣に申上げた線に沿ひまして少しく具體的に御尋ねをして見たいのであります、先づ第一に鹿兒島縣經濟部長が長崎縣へ轉任を命ぜられましたけれども、何故か、赴任せずして退職したのであります、所が更に農林省から長崎縣の經濟部長へ轉任を命じましたけれども、之も肯んぜずして長崎に赴任をしなかつた、仍て長崎の縣廳には約一箇月間、最も長崎の經濟復興に重要な時期に於て經濟部長が欠員をして居つた、斯う云ふ事實があるのでありますが、之にはどう云ふ問題があつて此の二人の者は赴任をしなかつたのであるか、尚又一箇月も掛つて漸く重要な經濟部長の「ポスト」をば充したと云ふ此の事實は、餘りにも官吏が其の人事行政に付て怠慢ではないか、斯う云ふやうに考へるのでありまするが、此の點を先づ承つて見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=42
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043・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに、地方の經濟關係の人達に付きましては、私も上林山さんと同じやうな考へを持つて居るのでありまして、是は是非勝手に迭ることなくして、やはり職務に精勵出來ますやうに致して貰ひたい、斯う常々考へて居るのでありまして、此の點に付ては内務當局にも十分申入れて居る次第であります、殊に最近のやうに非常に食糧の事情が逼迫して居りまする時に於きましては、何と致しましてもそれ等の點に付ては十分内務省、農林省の間に連絡が密であることを必要と致すのでありまして、其の點に付ては内務大臣とも十分打合せを致して居る次第であります、是非御期待に副ふやうに致したいと思ひます、唯只今の御要求の、農林省の古手の官吏がどの位あるかと云ふことに付きましては何れ調べました上で御答へするやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=43
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044・葉梨新五郎
○葉梨委員長 上林山君の御要求に依りまして、特に内務次官飯沼一省君の發言を許可致します──飯沼一省君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=44
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045・飯沼一省
○飯沼説明員 只今御話の、制度の運用が人に依ると云ふ點、洵に御同感でございます、私共としましても、出來るだけ適材を適所に置きまして、目的の達成に努めたいと考へて居るのであります、色々農林省との關係の御質問がございましたが、只今農林大臣から御話もございました通り、内務省と農林省の間は、人事の異動に付きましては出來るだけ緊密な連絡を取つてやつて居るのであります、殊に又只今水産課長、或は商工課長と云ふやうな御話でありましたが、斯う云ふやうな異動に付きましては、どちらかと申しますと、大體に於て皆地方の方から内申をして參ります、内申をするに付きましては、十分に關係の各省と御相談を致しました上で内申致して來る例が多いのでございまして、御話の趣旨は洵に御尤もでありますので、將來とも十分に關係省との間の連絡を緊密に致して人事をやつて參りたいと考へます
長崎縣の經濟部長に付ての御尋ねがございましたが、事は私の就任前でありまして、詳しいことを承知致しませぬが、色々家庭の事情等に依りまして、或は又個人の事情に依りまして、到底赴任は出來ないと云ふやうな例が實は間々起るのでございます、是は洵に遺憾なことでありまして、私共としましては、出來るだけさう云ふやうな事態の起らぬやうに努めて居るのでありまして、御指摘のやうな事態を生じましたことを私共としても洵に遺憾に考へて居ります、今後は十分に注意致しまして、左樣なことの起らぬやうに致したい積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=45
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046・上林山榮吉
○上林山委員 極めて當り前の御答辯でございますが、唯今後注意すると云ふ程度では、既に病膏盲に入りまして、此の人事行政は刷新出來ないのではないかと云ふ危惧の念を持つて居ります、殊に經濟復興と云ふ重大な時期に於きまして之を刷新しなければ刷新する時期はないのではないかと云ふ位に考へて居るのであります、さう云ふ觀點から根本的な問題は拔きに致しまして、先づ具體的な問題を質したいのでありますが、更に同じく福岡縣の經濟部長が東京都に轉任を命ぜられたのでありますけれども、是が退職を致して居るのでありますが、此の理由が何であつたか、それを私承りたいのであります、新聞紙の報ずる所、或は私共の聞いた所に依りますと、福岡縣の經濟部長は、其の任地に於ては優秀なる人であつて、殊に供出等に向つては相當熱意を持つて縣民の信頼を集めて居つた、所が僅か三箇月にして此の人が東京都に轉任を命ぜられて居る事實であります、それは新潟縣の警察部長が、新聞紙の報ずる所に依りますと、「バーモ」長官を隱匿して居つたとか何とか云ふ關係があつて、是が左遷をされなければならぬと云ふことになつた、所が何故か之を新潟縣の警察部長から福岡縣の經濟部長に寧ろ榮轉せしめられた、斯う云ふ事實があるのでありますが、之に對しまして、時の福岡縣知事は内務大臣に對して、餘りにも人事が輕率ではないか、地方長官の意思も聽かないで轉任せしめると云ふことは、不都合ではないかと云ふ、公文の電報を内務大臣に打つて、内務大臣は之に遺憾の意を表して居るのでありますが、私は一つの人事を、殊に自分の閥に屬する或は自分と何か特殊の關係のある者を庇護せんが爲めに盥廻し的な人事をやつて、寧ろ左遷をしなければならぬやうな者を榮轉せしめると云ふやうな内務人事は、今日の所謂官僚の民主化と云ふ點から言つても、效果を擧げると云ふやうな點から言つても、洵に私は當を得たやり方ではないと思ふ、今内務次官は知事の内申に依つて之を決定する、斯う云ふことを言はれたのでありますけれども、それは玄關口の話であつて、所謂裏玄關に於ては斯う云ふやうな取引が行はれて居る、さう云ふ風に私共は聞いて居るのでありまするが、之に對してどう云ふ御考へを持つて居られるか、其の事情を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=46
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047・飯沼一省
○飯沼説明員 地方廳に勤務して居ります官吏の轉任と云ふことは、私共出來るだけ避けたいと云ふ考へを以てやつて居るのであります、併しながら多數の人の間に、或は辭める人が出て參ります、或は又他に轉ずると云ふやうな人が出て參ります場合には、どうしても之に對する補充の異動を行はざるを得ないのでありまして、さう云ふやうな場合には、遺憾ながら他に此の異動が波及することを如何ともし難いやうな状態の起りますことは、御諒察戴けるだらうと思ふのであります、併しながら先程も申上げました通り、私共としましては成るべく同じ土地に長く在任をして貰ひまして、さうして地方の事情にも通じ、其の分擔して居ります所の仕事を完全に遂行出來るやうに致したいと云ふ考へを持つて居るのであります、只今御指摘になりました例を擧げての御話は、實は私能く承知して居らないのでありますが、派閥がある、若しくは不公平な人事が行はれると云ふ御話は、私共も實は能く納得が行かないのでありまして、私共は何處までも人事の公平と云ふことを得ることに最善の努力を致して居ると云ふことを申上げて御諒解を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=47
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048・上林山榮吉
○上林山委員 私は内務次官の御答辯は、先程から申上げますやうに、通り一遍の答辯だ、斯う云ふ風に考へるのでありますが、又後で速記録を見まして、内務大臣の御答辯を戴くと云ふことにして、内務次官に更に質問を續けたいのであります、
只今信賞必罰に依つて人事をやり、派閥に囚はれずして人事をやると云ふことを申されましたが、具體的事實に依つて之を證明すれば澤山あります、けれども時間の關係もありますので、具體的な大きな問題のみを一、二申上げますれば、新潟縣警察部長が「バーモ」長官を隱匿して居つたと言へば宜いのか、關係があつたと言へば宜いのか、詳しくは分りませぬが、之を或る方面から指摘やられたので、已むを得ず左遷をしなければならぬ、斯う云ふ事情になつたが、それが而も福岡縣の經濟部長に榮轉をしたと云ふ事實を、次官は果して是が信賞必罰的な人事であると思ふかどうか、或は此の人の裏に内務省の首腦部の人が控えて居る、例へば現在追放組になつた所の、活動停止をせられて居る、所謂内務省の先輩が内務省の人事の中に食ひ入つて居る、言換へますと、内務次官も或は内務大臣も「ロボット」的な人事をやらされて居る、斯う云ふ風に聞くのであります、さう云ふ意味から言ひまして派閥がないと云ふことが言へるかどうか、もつと正直に一つ證明をして戴きたい、なければ幸ひであります、ないことを祈るのでありますが、さう云ふことを私共は其の方面の人から詳しく聽いて居りますので、其の點證明願ひたいのであります、更に島根縣廳の燒打事件でありますが、之に關して、知事以下は退官或は休職を命ぜられた、殊に警察署長までも懲罰を受けて居る、併しながら當時の内務省の首腦部、或は警視廳關係に現在居られる人か分りませぬが、さう云ふやうな内務省の首腦部の人に對しては、何等か此の事件に關聯して信賞必罰と云ふ點から處置を執られたのでありませうか、此の點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=48
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049・飯沼一省
○飯沼説明員 内務省の人事が派閥があつて公正でないやうな御話でございましたが、私は此處でさう云ふ事實のないことを申上げたいと思ひます、人の批評は色々あらうと思ひます、部外の人が色々批評されますけれども、是は如何とも致し方がないのであります、少くとも私共此の仕事を御預り致して居ります以上、内務省の人事に付て、或は派閥であるとか、或は公正ならざる人事が加へられて居ると云ふことは、絶對にないと云ふことを申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=49
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050・上林山榮吉
○上林山委員 絶對にないと云ふことを斷言されることは、少し輕率ではなからうか、斯う云ふ風に私は考へます、此の問題に付ては、氣の毒でもありますから、内務次官に對しては是れ以上追究致しませぬが、内務大臣の御出席を願ひまして、此の問題は眞に内務行政の刷新、而も經濟方面に關係して居る所の所謂地方人事行政の刷新、さう云ふ點に關して、もう少し具體的に、而も内務部内に於ける人々の意見をも材料として持つて居りますから、さう云ふ意味に於て私は更に御尋ね致したいと思ひますので、此の點は今日は是れ以上追究致しませぬ、併し内務次官の今言はれた、さう云ふ人事はございませぬと云ふことは、露骨に申しますと、大臣とか次官と云ふものが「ロボット」的な人事をやらされて居るのではなからうかと云ふ疑ひを益益私共は濃厚にするだけであります、此の點もう少しく具體的に御研究を願ひまして、所謂「ロボット」化せられないことを私は望むものであります、此の點は此の程度で打切りたいと思ひます
次に農林大臣に御伺ひ致したいのは、新しく農地を求めんとする者に對する門戸の開放に付てであります、先程農林大臣は、新しく開墾する所の開墾地は、主として復員者、海外引揚者或は戰災者又は農家の次男、三男、斯う云ふ者に優先的に分讓するのである、斯う云ふ答辯でありましたので、私共意を強く致して居るのでありますが、私は此の問題に關係致しまして特に御伺ひ致したいのは、未墾地百十萬町歩と云ふものが御計畫通りに完成され得るや否やと云ふ點であります、先般農林省は約百五十萬町歩の開墾計畫を發表せられたのでありますが、其の後の經過を私共聞いて見ますと、所期の目的を達して居ない、遲々として最初の開墾計畫が進んで居ないと云ふことを聞くのでありますが、此の百五十萬町歩に對する其の後の實情を承りたいのであります、尚ほ百十萬町歩の計畫は是とは別であるかどうか、さうして此の百十萬町歩の開墾は、今までのやうな開墾技術或は開墾の方法に依つて之を實施されんとするのであるか、或はもつと機械力を利用して、或は集團的に是が開拓をせんとするのであるか、私は其の點を明かにして貰はなければ、今までと同樣な結果に陷りまして、結局百十萬町歩の未墾地の開墾と云ふことも駄目になるのではないか、斯う云ふ風に考へるのでありますが、所謂機械力を利用して、新たなる開墾の方式に依つて是が開墾をやられる準備を整へられて居るのであるか、此の點を先づ明瞭に致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=50
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051・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、從來の開墾が計畫通り進まなかつたことは、私共も甚だ遺憾に思つて居るのでありまするが、開墾の今後のやり方に付きましては、是は國がやりますのを、營團が代行してやりますのと、一部は委託してやる、それから補助してやる、斯う云つた三つの方向で行く積りでありますが、御話のやうに、機械を使つてやると云ふことは、大きな開墾に付きましては是非さうやらなければなりませぬので、只今も實は機械が製作なり其の他資材の關係で渉々しくありませぬので、多くの機械を計畫通り使つて居りませぬが、只今は機械班と云ふものを作りまして、それを移動させて、機械を使つて開墾を致して居るのであります、開墾の細かい實績に付ては開拓局長が見えて居りますから御説明がございますが、大體昨年度の實績は豫定の七〇%位に達して居ります、本年度は十三萬町歩の豫定でございますが、七月までに約四萬町歩が出來て居る次第でございます、勿論此の開拓と云ひますことは、唯土地を開拓しただけでは足らないのでありまして、其の開拓した土地に開拓民を入植せしむると云ふことを以て初めて完備致すのであります、それ等の點に付きましては、只今は資材其の他色々の點に付て條件が整つて居らないのでありますけれども、是は大藏省方面なりとも交渉して、資金なり其の他出して戴きまして、入植等に付ても今後は遺憾なきを期して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります、私も先般近くの開拓地を見廻つて參つたのでありますが、そこは飛行場の跡で、やはり「トラクター」を使つて開拓致して居つた譯でありますが、問題は何と言ひましても、先づ實際に家を建てると云ふことが必要なのでありまして、住宅からやつて行くと云ふことになりませぬと、中々土地を耕してやつて居りましても渉々しく進まないやうな次第でありますので、是等の點は今後農林省と致しまして、是非計畫の實現を期して行きたいと考へて居る次第であります、色々な點に付ての御鞭撻を是非御願ひ致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=51
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052・上林山榮吉
○上林山委員 未開墾地百十萬町歩の計畫が機械力を利用して計畫通り實施出來ると云ふ考へ方に對して、私贊意を表するものであります、今までのやうな計畫或は開墾のやり方では、是は全然見込のない數字であらう、斯う云ふやうに考へるのでありまして、此の點に對しましては特に御注意を喚起して置きたいと思ふのであります
更に開墾に對して御尋ね致したいのでありますが、此の百十萬町歩の開墾が濟んだ後も、少くとも五箇年計畫位を立てられまして、開墾或は干拓事業をもう少し徹底的にやつて戴かなければ、過剩の人口を收容することは到底出來ないと考へますが、農林省は干拓事業に付てどの程度の御計畫を現在して居るか、或は百十萬町歩以外に開墾を更に計畫されて居るかどうか、もう少し思ひ切つた計畫を立てて戴かなければならぬのでないかと考へます、更に是と關聯致しまして考へられることは、現在まだ軍用地或は飛行場、斯う云ふもので相當耕地にならずにある所が多いのであります、是は聯合國との關係もありませうし、或は所管の違つて居ると云ふやうな關係もありませうが、何れに致しましても、之を先づ耕地化するやうな方法を執り、更に進んでは、地元民とか入殖者に對しまして、是が拂下を早くやると云ふことを考へなければならぬのでありまするが、今度の農地の改革案と關聯致しまして、斯う云ふ問題をどう云ふやうに御取扱ひになつて居るのであるか、或は將來之に對して、どう云ふやうな具體的な方法に依つて是が解決を圖らんとせられるのであるか、此の點に付て特に私承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=52
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053・和田博雄
○和田國務大臣 飛行場、其の他の軍用地に付きましては、之を開墾することを許されましたものに付きましては著々やつて居る譯でありまして、唯聯合軍との關係に於きまして多少停頓致して居るものもある譯でありますが、其の點に付ては相當の折衝を致して居ります、又干拓に付ては、實際十萬町歩の計畫でありまするが、差當つては此の十萬町歩を實現致しまして、此の以後のことに付きましては、又其の時の事情に應じまして農林省としては計畫を立てて行きたい、斯う考へて居る次第でございます、開墾も何しろ百十萬町歩、全部で百五十五萬町歩の開墾、干拓のことでありまするし、殊に五箇年間に實行致すと云ふ大事業でございますので、我々と致しましては、先づ此の第一期の計畫を實現致すやうに力を注いで行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=53
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054・上林山榮吉
○上林山委員 開拓と干拓に對しましては、積極的な御努力を願ひたいのでありますが、軍用地の耕地化の問題、之に對しては許されたるものに付ては、之を耕地化して居ると言はれるのでありますが、耕地になり得る全軍用地の何「パーセント」が現在耕地になつて居るか、或は又之を具體的に所有權までどの程度移して居るかと云ふ問題は、もう少し私承つて置きたいのであります、私共の見る所では、まだ軍用地が耕地になつて居ない面も相當ありますし、陳情も受けて居りますし、自分等も之に「タッチ」致しまして、或は大藏省、或は其の他の方面にも連絡を取つて善處して居るのでありますが、私はまだ農林省のやり方としては、斯う云ふ方面に對して──難かしい所の開拓をやる前に、期う云ふやうな直ちに耕地になり得るやうな方面に向つて、聯合國との關係があるならば、其の關係があるやうに大藏者との關係があるならばあるやうに、もう少し突進んで之を耕地化し、而も所有權までも移し得るやうな方法を講ぜられなければ、決して農地の擴大と云ふことは圖り得られないのではないか、斯う云ふ考へで居るのでありまするが、此の點に付て地方の實情に實際適しない御答辯でありますので、一つもう少しく分るやうに御話願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=54
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055・和田博雄
○和田國務大臣 甚だ失禮致しました、軍用地は大體開墾可能地が十二萬町歩ありまして、只今の所四萬町歩が開墾されて居る次第であります、勿論大藏省の國有財産管理部との關係もあります、それ等の點に付きましては、農林省としては大藏省とも十分折衝は致して居るのであります、唯所有權移轉の問題に付きましては、只今の所、御話のやうに直ちに所有權を移轉して居る所もあると思ひますが、さう云つたやうな點に付きましては、大藏省當局、國有財産管理部と話合ひを致しまして、實際私共も陳情も承つて居りますし、又實地に付て開拓に入つて居る人達にも會ひまして、十分な意見も聽いて居りますので、それ等の人達の希望が通りますやうに、農林省としては交渉をして居るのであります、此の開墾可能地に付きましては、比較的開墾することが易いので、出來るだけ實績を擧げて行きたいと思つて居る次第であります、現在は十町歩の中僅か三分の一だけが出來て居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=55
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056・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午後は一時半より再開することに致しまして、暫時休憩致します
午後零時六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=56
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057・会議録情報2
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午後一時四十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=57
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058・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午前に引續き會議を開きます──上林山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=58
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059・上林山榮吉
○上林山委員 大臣の來るまでの間、前の質問に關する疑義の點がありますので、それを質して置きたいと思ふのであります、曩に農林省が發表した開墾計畫の百五十五萬町歩と、今囘の未開墾地の百十萬町歩とは別のものであるかどうかと云ふ點を御尋ね致したのでありまするが、之に對しては大臣から御答へがなかつたのであります、其の點はどう云ふ風になつて居りますか、重複して居るかどうか、此の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=59
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060・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今の御尋ねの百五十五萬町歩の開拓計畫と、今囘の買收計畫の百十萬町歩との關係でありますが、今度の買收關係は民有地を買收すると云ふ建前になつて居ります、隨て前の開墾計畫は國有地を含めての數字であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=60
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061・上林山榮吉
○上林山委員 曩に大臣から答辯がありましたやうに、新たなる農業規模にしなければならぬ運命にある人々に門戸を開放する建前として、引揚者、復員者、戰災者或は農家の次男、三男、斯う云ふやうな人々を主として是等の未開墾地に入植せしめる、或は分讓する、斯う云ふことを言はれたのでありますが、それ以外の其の附近に於ける農家が之を求める場合は、此の求めに應ずる用意があるかどうか、或は引揚者、復員者、戰災者其の他の希望者の基礎的な調査と云ふものが出來て居ての計畫であるか、唯一應此の計畫を實施して後、それ等の事情を勘案して之を分讓すると云ふ方針を以ての開拓事業であるか、開拓事業に對する根本的な方針を、之に關聯して一つ御述べ願ひたいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=61
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062・笹山茂太郎
○笹山政府委員 第一點の御尋ねの入植地、開拓地の分讓に關する問題でありますが、是は地元の農家が經營面積を擴張する爲の開墾用地も相營あるのであります、是が全體の計畫の百五十五萬町歩の中で、内地に於ては八十五萬町歩の中五十萬町歩程度を豫想して居るのでございます
尚ほ開拓地の取扱の問題でございますが、是は現在縣の方からの報告に依りますと、内地に於ける所の開墾適地、是は國有地も含めてでございますが、今まで開拓適地として選定されて居るものが合計して八十五萬町歩程あるのであります、其の八十五萬町歩の適地の中で民有地に屬するものに付きまして、今後買收する、斯う云ふ方針でございます、勿論此の開墾適地の調査に當りましては、從來の調査だけでは非常に不十分の點がありますので、今後專門の開拓調査委員を縣の方に設定しまして、それ等の調査委員が科學的に、又合理的に調査をしたものを、地方開拓委員會と云ふものに掛けて、衆議を凝らして適地であるか否かを判定するのでございます、此の判定された所の資料を縣の農地委員會に提供するのでございます、そこで縣の農地委員會としましては、自作農の創設としまして縣の實際の入植志望者其の他の事情を勘案しまして、即ちどれを先に買收するか、或はどの方面に先づ重點を置くか、斯う云つた點に付て勘案致しまして買收計畫を立てて參るのでございます、そこで縣の農地委員會が計畫しましたもので、縣の方で認可されたものに付て政府が買收をすると云ふ段取りになつて居るのであります、此の買收された未墾地に付きまして、先づそれを農場にしなければならぬことになるのでございますが、是は縣の方で適當なる事業者を選定しまして、其の開發工事を實施せしめる、其の場合に於て入植の問題が生ずるのでございますが、其の入植者の選定に付きましては、從來通り縣の方で選定するのでございます、隨ひまして其の機會に於きまして、先程御話のありましたやうな海外よりの引揚者、復員者或は農家の二三男、或は地元の經營面積を擴張する爲の所謂増段開墾、斯う云つたものに付きまして、入植者を具體的に決めて參るのでございます、そこで開墾工事と共に、是等の入植者がそれぞれ入植地に入つて開墾工事に著手するのでございますが、完成された、場合に於きましては、縣の農地委員會がそれぞれ賣渡計畫を立てるのでございます、此の賣渡計畫を立てるのは、其の土地が相當見込のあるやうな土地になつた場合に於て立てるのでありまして、そこに大抵開墾後三、四箇年の年月の經過が必要ではないか、斯う云ふ風に考へて居ります、斯樣にして賣渡計畫に基きまして、先に入殖した者を中心にして自作農を創設して參る、斯う云ふ考へを持つて居るのでごさいます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=62
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063・上林山榮吉
○上林山委員 然らば今後五箇年後に於て開拓と干拓と既耕地、之とを合せた日本の耕地はどれ位にする具體的な、積極的な御計畫であるのでありませうか、此の全貌があれば、それを一つ承つて置きたいのであります、殊に之と關聯致しまして大事なことは、日本の農業人口を幾らに限定するか、其の一つの基準と云ふものを御示し願ひたいのであります、此の問題は後で私詳しく大臣に御尋ね致したいのでありますが、此の點に付て一應御説明願ひたいのであります
〔委員長退席、細野委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=63
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064・笹山茂太郎
○笹山政府委員 今後五箇年後に於て、開拓事業が完成した場合に於ける日本の農耕地の状態でございますが、先づ開墾に依りまして、北海道を合せて百五十五萬町歩の農地を造成しよう、斯う云ふことになつて居ります、それから干拓に付きましては、是は大體十萬町歩を豫定して居るのでございます、隨ひまして現在の既耕地、田畑を合せて約六百萬町歩に對しまして、約二割五分程度の増加が期待される、斯う云ふ風に考へて居ります
それからそれ等の新しい開拓地に於て吸收する所の農業人口の問題でありますが、是は入殖戸數を大體増段開墾とそれから純入殖者を合せまして約百萬と想定するのであります、即ち此の新しい開墾地に於て、有業農業人口として、約二百萬程度、斯う云ふ風に考へて居るのでございます、隨ひまして現在の農業有業人口數は、是は昭和十九年の調査でございますが、千百六十六萬七千人、斯う云ふ風になつて居るのでございます、開墾完成後に於きましては之に約二百萬の有業農業人口が殖える、斯う云ふことになつて居ります、内務省の國土計畫に依りますと、五箇年後に於ける所の有業農業の人口を千六百五十萬と云ふ風に推定して居るのでありますが、私共の研究した結果に依ると、千六百五十萬人に五箇年後に達すると云ふのには、既存の農村に於きましては、從來の農付に於ては農村工業等の普及に依りまして、從來以上に相當活溌に吸收すると云ふ措置も一方に於て必要であると共に、又新しく開墾された所に於きましても、是等の面積等に付てもつと擴張しなければ、ここまで達し得ることは相當至難であらう、斯う云ふ風に考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=64
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065・上林山榮吉
○上林山委員 日本の五箇年後に於ける農業人口を幾らにするかと云ふことは、極めて基本的な重大な問題でありますが、國土計畫案に依る農業の人口數と、農林省が開拓其の他の合せて考へて居る農業人口數との間に非常な開きがある譯でありますが、あの國土計畫を樹立するに關しては、農林當局としては何等之に密接な關係を持つて居なかつたと云ふことに承つて宜いのでございませうか、此の點を明かにして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=65
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066・山添利作
○山添政府委員 内務省で先般發表致しました國土計畫案なるものは、國土局の大體の草案として發表されたものでありまして、本格的に練上げますことは今後に屬する問題であります、あれは農林省が今まで立てて居ります色色な計畫を其の儘材料として採入れられて居るのであります、例へば食糧増産計畫であるとか、或は今の人口の問題に付きましても、最近の調査に「プラス」して、有業農業人口は相當殖え──今まで千四百萬人位あつたのでありますが、さう云ふものに足したのを其の儘に出されて居る、併しあれは農林省と内務省と協議の上作成したものではありませぬ、農林省が今まで食糧増産計畫とか開拓計畫と云ふものを立てて居り、それを材料として其の儘採入れられて居ることは確かでありますが、兩方で練上げたと云ふ性質のものではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=66
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067・上林山榮吉
○上林山委員 ああ云ふ問題を發表されますと、國民としては、又我々としても、一應是が政府の試案である、或は政府の案であると云ふことを能く考へ勝ちである譯であります、殊に農地改革と云ふやうな、或は産業再建と云ふやうな、大きな問題を控へて居ります時に、一方的な案を示されて、是が矛盾を生じ、論議の中心になると云ふことは遺憾であると考へますので、將來斯う云ふ方面に對しては、緊密な連絡を取つて、比較的實行案に近いやうなものを試案としても御出しになるやうに連絡協調をして戴きたい、例へば安定本部は安定本部としての一つの案を立てる、内務省の國土局は國土局として立てる、農林省は農林省として立てる、斯う云ふばらばらな案を國民に直ちに示すと云ふことは、輿論を聽取する意味に於て一應の便法ではありませうけれども、もう少し魂の入つた、實のある案を發表されることを私は希望する次第であります
最後に結論として、私は意見を混じへながら申上げたいことは、日本の農業の性格、所謂耕地が少い、或は人口が過剩である、其の他の條件に依つて、其の發展性には一應の限度と云ふものがある、私は斯う云ふ風に考へて居るのであります、殊に私は是等の宿命的な困難を打開する爲には、政府としても、國民としても、一大計畫と一大發奮とを要するのであつて、尋常一樣の計畫や努力を以てしては、數年ならずして八千萬に垂んとする所の、此の人口増加の速度に追付くことは到底出來ないと思ふのであります、而も八千萬の人口を基準にして考へますと、一平方「キロ」當り二百十六名と云ふやうな、高密度を以て日本の人口は増加する譯でありますが、資源の點或は産業構成の立地條件などから致しまして、負擔が非常に加重になつて來ることは御承知の通りであります、故に私は是等を打開する方法としては、先程申しましたやうに、産業の再建或は失業問題の解決、乃至は工業立國の方針或は農村の工業化、さう云ふやうな方面に勿論全機能を發揮しなければなりませぬが、之を以てしても、私は日本の農業問題を根本的に解決することはどうしても出來ないと思ふ、でありますから、此の點に對して政府は日本の宿命的な農業を打開する根本的な方法としては、約二千萬人位の日本の人口を、平和會議締結直後直ちに海外に平和的移民として移植せしめる、私は是は内地に於ける農業の改革と竝行して、最も根本的に強調せられなければならぬ重大な問題であると考へるのでありますし、日本の根本的な農業を改革するものは、平和的な移民をどの程度なし得るかと云ふことに懸つて居ると言つても過言ではないと云ふ風に考へるのであります、此の點に對しましては、政府委員からの御答辯は要りませぬが、適當な機會に總理大臣の御答辯を得ることに致しまして、結論として是だけを申上げまして私の質疑を終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=67
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068・細野三千雄
○細野委員長代理 松澤一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=68
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069・松澤一
○松澤(一)委員 大臣は來られぬのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=69
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070・細野三千雄
○細野委員長代理 農林大臣は今一寸御差支へださうですが、直ぐ來られます、司法關係に付て質問を求められて居るやうですが、司法政務次官は見えて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=70
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071・松澤一
○松澤(一)委員 二百萬町歩を自作農地にすると云ふ譯ですが、其の自作農に依る食糧の増産をどう考へて居られるか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=71
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072・山添利作
○山添政府委員 自作農が小作農に比較致しまして生産能力の高いことは御承知の通りであります、配付致してあります統計資料に依つて見ますると約三%、斯う云ふ風に生産力が高いと云ふことが出て居るのでありす、併し實際問題と致しまして、尚ほそれ以上に遙かに増加が期待し得るものだと考へるのでありまして、茲に資料として配付致しましたものに於ける此の生産力の相違よりも──此の二百萬町歩を自作地に致しますことを基礎と致しまして、今後に展開される農業技術の向上、是は土地改良の問題、肥料を投入する問題、或は機械、有畜農業と云ふやうな問題、さう云ふやうな點から致しまして、茲に單に統計資料として擧げてありますものよりも遙かに期待すべきものが多いと考へて居ります、併し然らばそれが何「パーセント」であるかと云ふことは申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=72
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073・松澤一
○松澤(一)委員 私達の考へでは、耕作權が或る程度確立される十年、二十年前は、小作農の收穫と自作農の收穫は約二割違ふ、農林省も其の統計で示して居るし、我々も實際上さう云ふことでやつて居つた、所が最近では多少耕作權が確立して參りましたので、自作農と小作農との收穫の差が非常に狹ばまつて來たと思ひます、それでも三%と云ふことはないと思ふ、其の點から言及して行くと、六十萬町歩の土地を責り殘す、六十萬町歩の小作地を殘すと云ふことは、地主を保存して置くと云ふのか、それとも小作人を殘すと云ふのか、其の點を一つ明瞭に伺ひたい、是は大臣でなければ一寸無理かと思ふのですが、委員長、大臣を至急呼んで下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=73
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074・細野三千雄
○細野委員長代理 今呼んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=74
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075・松澤一
○松澤(一)委員 それから司法省關係の問題は、政務次官では分りませぬ、大臣でないと無理です、なぜかと云ふと、本當の所有權と耕作權の根本論に入るので、失禮ながら政務次官では無理だと思ひます──農林大臣が見えましたから大臣に伺ひます、六十萬町歩を殘したのはどう云ふ譯で殘したか、小作を殘す爲に殘したのか、地主を殘す爲に殘したのか、其の點を一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=75
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076・和田博雄
○和田國務大臣 一町歩を保有限度として殘しましたのは、地主が其の一町歩に付ては自作出來ると云ふ意味で殘したのではないのでありまして、今囘の農地改革に依りまして、日本の小作地の大半を自作地化すると云ふ點から、一應二百萬町歩と云ふことでありますると、一町歩と云ふものがそこに保有の限度として殘ると云ふことなのでありまして、現在に於きましては此の程度は已むを得ないと云ふ譯で殘したのでございまして、地主が之を自作し得ると云ふ意味で殘したのではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=76
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077・松澤一
○松澤(一)委員 もう少しはつきり御答辯願ひたい、私の申上げて居るのは、地主を殘す爲に六十萬町歩殘したのか、小作を殘す爲に殘したのか、答辯はどつちかで簡單だと思ふ、此の返答を承らなければ私の論旨は進められない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=77
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078・和田博雄
○和田國務大臣 小作を殘す爲に殘したのかと云ふことは、どうも質問の要旨が分らないのでありますが、私は實は是は斯う考へて居ります、假に全部を自作化したと假定します、是は非常に靜態的に考へればさうであります、全部を自作化した、併し其の自作化したものが是れ亦暫くの時を經ますれば、必ずそこに、日本のやうな小農國、自家勞力を基礎にする經營形態に於ては、勞力上の變化から經營面積の變化が起らざるを得ないと思ふのであります、さうすると、其の場合には二つの制度が考へられるのであつて、其の土地を他人に貸すか、それとも貸すと云ふことを全部禁止してしまつて、經營面積を殖やす者は必ずそれを全部買はなければならぬが、其のどつちかの制度になるのでありますが、私は其の場合に於ても、或る程度の小作制度は、小作農制度自體が、合理的な、適正な、小作人其のものの耕作權と云ふものの安定されました、又小作料其の他の點に付て合理的な制度でありますならば、小作制度と自作農制度が併存しますことは、自作農と云ふものが大きな主流を成して居る限りに於ては、さして支障のない一つの農業制度だ、斯う考へて居る次第でありまして、其の意味から言へば、小作を殘すと云ふことに御解釋下すつても構はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=78
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079・松澤一
○松澤(一)委員 敗戰日本は好むと好まざるとに拘らず、急速に民主化されなければならない、殊に農村の封建制度を撤廢し、農民を農奴より解放する所の徹底した農村の民主化を圖ると農林大臣は言明されたし、又「ポツダム」宣言も之を規定して居ると私は思ふのであります、然るに農村を民主化し、農奴を解放すると言ひながら、どうして小作制度を殘すか、それでは農林大臣の言ふやうな、徹底した農村の民主化とは言はれないと思ふ、隨て二次まで出來たのでありますから、第三次の農地改革の提案をする意思があるかどうか、是は必ず、そんなことはないと仰しやるのだらうから、承らぬでも宜いのですが、さう云ふ不徹底な農村の改革を提案して置きながら、曖昧なことで尚且つ小作制度を殘さうと云ふならば、それでは農村は解放されたのではないのであります、農村を解放しない、又解放されないと云ふ御答辯なら、今後又承つて行かうと思ふが、農村を十分解放して行き、農奴を解放する、小作制度をなくすると云ふ言葉を承らざれば、本當の農村の解放にならぬと思ふ、隨て六十萬町歩は今申上げたやうに地主として殘すか、小作人として殘すかと言つたら、今小作制度として殘すと解釋しても宜いと言ふ、それではあなたの今まで議會で答辯されたことや、今までの農地制度の改正に對する御答辯と背馳して居ると思ふが、其の御心持を承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=79
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080・和田博雄
○和田國務大臣 農地制度の上で今囘の改正が、小作地二百六十萬町歩の中の二百萬町歩と云ふものを強制的に國が買上げまして、それを小作人に賣渡して自作農の創定を行つて行く、隨てあとには六十萬町歩の小作地が殘る、是は一面から言へば、地主にそれだけの保有の限度を認めて居る譯でありますから、地主は地主として殘る譯であります、併しそれは農業制度の全體から言へば、其の限度に於て小作制度と云ふものを日本の農地制度の上に於て殘して行く、斯う云ふ觀點になるのでありまして、表裏して居るのでありまするが故に、別段私の答辯には矛盾はないと思ふのであります、只今の所、第三次の農地改革をやる考へはないのでございまして、此の第二次の農地改革と云ふものに依りまして、日本の農村の民主化と云ふものは一應の完成を見る、斯う考へて居る次第であります、唯小作制度が殘りますが故に、然らば小作制度の點に付ては放置して置くかと言へば、それはさうではさくして、殘存する小作制度に付ては、何處までも之を合理的なものに致して行くと云ふことを、今度の法律改正に於ても考へた次第なのであります、唯茲で御斷り致して置きますることは、成程二百萬町歩に付ては、強制的に之を買上げまするが、それなら殘りました六十萬町歩に付て、全然自作農の創定と云ふものは行はれないかと言へば、是は地主、小作の双方の合意に依つて、任意に自作農の創定が行はれる、小作農が土地を買ふと云ふことは別段禁止して居る譯ではないのでありまして、それ等の點は双方の自由に任せて居るのであります、唯二百六十萬町歩の中の二百萬町歩に付て、國が大規模に、強制的に自作農の創定を策定して行く、斯う云ふ建前になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=80
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081・松澤一
○松澤(一)委員 農林大臣は、二百六十萬町歩中、二百萬町歩解放すれば、日本の農民の大部分が解放されると云ふ錯覺に陷つて居る、さう云ふ錯覺に陷つて居るなら承りたいのですが、それでは一體二百萬町歩を解放すれば、日本の所謂純小作、小作兼自作農程度の所謂小作農民が、どの程度解放されて行くか、戸數に於て、人數に於てどの程度に解放されて行くか、それを承つて見ると私は大體分ると思ふのですが、最近新聞の發表して居る所に依ると、農林大臣は約七十萬の純小作が殘ると言はれたと書いてありました、それは本當かどうか私は知りませぬが、我々が推定すると二百萬も殘る、本當は我我は土地制度其のものの解放を願ふのである、是こそ農民の熱望する多年の懸案であつて、土地の解放が、若し一部分の人の解放に終るやうであるならば、日本の農業の解放は出來ませぬ、土地の解放と同時に、農民それ自體の人數の解放も出て來なければいかぬ、是が明確に行かなかつたら、成程土地の上から言へば、二百六十萬町歩中二百萬町歩を解放されれば、其の七割乃至八割が解放されると云ふ數字は明かになつて參りますが、それでは一體小作人がどれだけ戸數に於て、人數に於て解放されて居るか、一つ承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=81
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082・和田博雄
○和田國務大臣 其の計算は中々難かしいのでありまして、解放されまする農地の分配關係にも依つて異なると思ひますが、私共は大體三百萬の者には土地が渡る、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=82
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083・松澤一
○松澤(一)委員 今の答辯は一寸分らぬのですが、序に私の方から言ひます、一體農林大臣は、若し將來小作制度を殘すとすれば、地主に多少土地を殘して置いて、それを小作に融通する、其の操作の上にも殘して置くのだ、今までの本會議などで聽いて居ると、土地の操作の上に、所謂將來小作制度を殘せば多少の土地の往來があるだらう、さう云ふ點でも殘すと云ふやうな言葉を使はれて居るのですが、それならなぜ二百六十萬町歩の小作地を全部政府が一應買上げぬか、全部一應政府が手に持つて、さうして何もそれだけ全部小作人に賣渡さぬでも宜いから、それを掴んで置いて、さうして小作制度其の他の操作をして行つたらどうか、或は土地の移動等に將來支障を起すとすれば──或は色々な事情で近い將來に多少とも不都合があると云ふならば、なぜ政府がそれを持つて居なかつたか、私は政府が農民を解放する、農奴を解放すると言ひながら、是は農林大臣の言ふやうに、小作制度を殘すと理解して宜いと云ふやうなことよりも、地主制を殘すと云ふことに力が強かつたと私は考へて宜いと思ふがどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=83
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084・和田博雄
○和田國務大臣 是は意見の相違になると思ふのでありますが、一國の農業制度の中で、例へば二百六十萬町歩の小作地の中で、二百萬町歩が自作地になる、大半が既に自作地である、斯う云ふ農業制度と、小作地が大半のものを占めて居る所の農業制度とは、私は非常に違つたものだらうと考へて居るのであります、隨ひまして今囘の改正は、小作農地が殘ると云ふ點に付ては、成程御意見のやうに全部が自作地にならない譯でありますから、さう云ふ點から言へば、是は或は徹底しない、斯う云ふ御意見も立つと思ふのでありますが、我々と致しましては、大半の、殆ど八割にも達する小作地を自作地に化して、隨て又殘存の小作制度其のものに付ては、之を非常に合理化しまするならば、それで以て十分農地改革の目的が達せられると考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=84
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085・松澤一
○松澤(一)委員 私が今申上げる通り、まだ農林大臣は本當の農村の感情と云ふものが分らぬと思ふのであります、農地を解放すると同時に、小作人の解放がなければならぬ、二百六十萬町歩の土地を二百六十萬戸で作つて居ると云ふならば、二百萬町歩解放すれば大部分が解放されたとも言へるのですが、二百萬町歩解放されても、必ずしも其の割に農民が解放されない數字が出て來はせぬかと私は思ふ、それが若し政府に於て今日に於てもはつきりしないやうだつたならば、是は無謀な計畫ではないか、唯土地だけを目標にして農民の解放を考へたと云ふだけでは、無定見です、少くとも今日の農村の民主化と云ふことは、土地だけの解放ではなく、其の土地に屬した農民が如何に解放されるかと云ふことが併せ考へられなければ、本當の農村の民主化と云ふことは考へられませぬ、隨て農村に於ては、精神的にも小作人が長い間地主の制壓下に置かれ、非常に階級差別を受け、さうして萎縮した氣持を持つて居る、之を都會人や指導者に言はせれば、素朴と言はれ、或は純情と言はれるけれども、それは丁度萎縮した羊のやうに、默々として唯人間竝の生活をして居ると云ふ農民が、今日でも全國にどの位あるかと云ふことを先づ農林大臣は御考へにならなければいけませぬ、其の點で、眞に農村の解放をするならば、なぜ地主に一町歩殘すかと云ふことを是から私は御尋ねしますが、現在土地を耕作して居る地主に一町歩までまだ小作地を殘さなければならぬと云ふ、其の理由は一體何處にあるか、それを承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=85
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086・和田博雄
○和田國務大臣 御手許に配付しました自小作別農家戸數の表を御覽になつて戴きたいのですが、此の表に依りますると、自作兼小作、小作兼自作、純小作合せて大體三百七十萬戸の人數が居るのであります、此の中で純小作と云ふのは百五十七萬戸であります、それから小作の色彩の強い者が百十萬戸であります、それを合せますと約二百六十萬と云ふものになるのであります、是等の者が今囘の小作地の二百萬町歩の解放に依つて直接に利益を得るのでありまして、是は相當の人數に上るのではないか、私は斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=86
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087・松澤一
○松澤(一)委員 それは私にも能く分つて居ります、二百六十萬の皆が其の恩恵を受けるかも知れませぬが、又二百六十萬皆多少の小作地を持つやうになるかも知れませぬ、それは御分りだらうと思ふ、私は今二百六十萬と云ふ最大限の話をしたのですが、それと今度は別に、今御答辯がないやうですが、一體なぜ耕作して居る地主に一町歩殘さなければならないか、今日農村で土地を持つて居る地主と云ふものは、自家勞力に依る自作農として居るのでありまして、それ以上一町歩をなぜ殘さなければならないか、自分の耕作し得ない土地、耕作權が確立して取ることの出來ない土地をどうして一町歩殘さなければならないかと云ふ理由を一つ明確に御返事願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=87
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088・和田博雄
○和田國務大臣 是は今囘の制度が、小作地を全部自作地にすると云ふ建前を執りませずに、土地の所有者に對しては平均一町歩を殘すと云ふ、其の限度に於ては小作制度も同時に殘して行く、斯う云ふ建前を執つて居りまする關係上、御話のやうに、土地を耕作して居る者に付きましても、例へば二町五段耕して居る者に付ては、五段だけの小作地と言ひますか、小作に出し得る土地の所有が認められる結果になつて居るのでありまして、是は今囘の土地改革が、あなたの御意見のやうに全部を自作としてしまはない、斯う云ふ點から來る所の結果なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=88
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089・松澤一
○松澤(一)委員 農林大臣、そこがはつきりしないのではありませぬか、現在自分が作つて居て、それ以上作り得ないと云ふ農家に、どうでも五段なり最大一町歩までまだ殘してやらなければならないのか、私はなぜ之を言ふかと云ふと、六十萬町歩殘して小作制度を殘すと云ふことがはつきりしないからです、今度は個々の問題で御尋ねしようと思ふのですが、今日の日本の農業經營は、御承知の通り零細農家と言ひますが、日本の事情としては、是れ以上適正農家と云ふことはもう過去の夢です、それは移民や開拓を對象としての農家の規模經營で、今日では現状を維持して居るが、其の現状の耕作を如何に高度化しなければならないかと云ふ指導に當らなければならないのに、故らに小作制度を殘して、現在土地を耕作して居ながら尚且自分が耕作し得ない土地を最大限一町歩まで殘すと云ふ氣持が、どうしても、農村解放の上で分らない、唯簡單に言へば小作制度を殘したとか、地主を殘したとか言ふけれども、本當にはつきり言ふなら此の制度は不徹底だ、一町歩殘したことは今に問題が起る、私は後で段々之を御尋ねしますが、此の一町歩殘したばかりに、必ず一、二年の後には農村に重大なる關係を持つて來ると云ふことを農林大臣は考へなければならぬ、其の時に農林大臣は、俺は知つちや居ないと言はれるかも知れないが、さう云ふ無責任なことでは困るではないか、隨て私は、此の耕作地主に殘された最大限一町歩の土地は將來どう處分しようと云ふのか、永久に小作に貸さうと云ふのか、それとも或は時を經て之を地主に取上げてやらうと云ふのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=89
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090・和田博雄
○和田國務大臣 どうもはつきりしないのでありますが、斯う云ふ風に考へて戴きたいのであります、例へば自作と小作と云ふ制度が茲にある譯であります、日本の農業經營と云ふものが、現在のやうな形に於て總て固定すると云ふことは、私は考へて居りませぬ、經營自體は、恐らく凡ゆる經營が變化するものだらうと思ふ、其の時に、假に全部を自作にしてしまふ、斯う云ふ状態であつても、そこに個々の經營に付て言へば、經營上の變化と云ふものは、各農家の勤勉、其の他技術の發達、それの採入れ方に依りて變つて來る、社會は變化すると云ふことを考へざるを得ないのであります、其の時に、總ての經營の變化を、全部が自分の自作にして土地を買はなければ、經營の面積を殖やすことは出來ない、さうなると是は甚だ不便なことと思ひます、あの大きな土地改革をやつた「アイルランド」でも、やはり或る程度の小作制度は殘して居るのであります、是は日本の資本主義と云ふ立場に立つて土地制度をやる以上は、どうしても其の限度の小作制度を殘して置くと云ふことは、經營の上での「フレキシビリティ」を認めると云ふ點から言つて私は必要だと思ひます、唯、殘された小作制度と云ふものが、今までのやうな不合理な制度であつては困るのであつて、それは合理的なものでなければなりませぬが、小農國に於て、而して將來の變化を含んで居る國に於ては、此の限度に於て經營上の變化と云ふものに付ての處置を、小作と云ふ形に置いてあると云ふことは、土地制度を總て自作にすると云ふ觀點に立たれて其の議論を論理的に御進めになれば、是は或は不徹底だと云ふ一面の御批評も出來るかも知れませぬけれども、私は、却て自作と云ふものを主にして、或る程度の小作制度を殘して置くと云ふことの方が、經營の面から言へば彈力性があつて、良い面があるのではないか、斯う實は考へて居るのであります、成程、現在の状態に於て一町歩の保有を認めて居ると云ふ點に於て、自作農の創定と云ふ面から言へば、是は御話のやうに全部が自作地にならないのでありますから、不徹底だと言へるのでありますけれども、其の觀點だけを貫くことは出來ないのではないか、私は斯う考へて、今囘の全國平均一町歩と云ふことに付きましては左樣な考へ方を以て此の案を作つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=90
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091・松澤一
○松澤(一)委員 今の農林大臣の話を聽いて居ると、それでは今後の個人的な經營の面を考へてのものであるか、それだつたならば、政府がなぜ小作地全體を買上げて置かぬかと云ふ問題になる、政府が小作地全體を買上げて置くことに依つて、將來の經營規模其の他に對する便宜があるけれども、之を個人々々の地主と云ふ上に立たせ、或は小作人と云ふ上に立たせての土地の取殘しと云ふことは、非常な不都合な、却て農林大臣が思ふよりも反對の立場が出て來る、此の點に付ては私はどうしても農林大臣と反對の意見を持つて居る発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=91
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092・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地制度の改革は、土地國有と云ふ改革ではないのであります、さうではありませぬで、何處までも土地と云ふものは經營する者に與へて行く、言換へれば、私有制度と云ふものを認めた、其の基礎に立つての土地制度の改革なのであります、國家が買ひまするのは、何處までも便宜の手段として國家が買ふのであります、隨て御話のやうな點に付ては、やはり地主其のものに殘して置くと云ふやうにならざるを得ないだらう、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=92
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093・松澤一
○松澤(一)委員 私は國有論を申上げたのではありませぬ、所謂買上げて置く、政府が一應全部買上げろと云ふことであつて、政府がそれを持てと云ふのではありませぬ、論より證據、私は將來を考へて見て居るが、農地委員會になれば、土地の爭奪が起るのです、農林大臣は、二箇年位で以て全部を政府が操作しようと思ふかも知れないが、下手をすると、農地委員會等に於ては土地の爭奪が出て來る、なぜかと云ふと、丁度八百屋の店頭で良いものを選り取りで買はうとするやうなもので、八百屋の方は惡いものを早く賣らうとするし、買ふ方は良いものを選つて先に買はうとするし、是は今まで政府が力を入れて上手にやつて來たものを、農地委員會に持つて行くと、却て土地の爭奪戰になる、一體それでは政府はどう云ふ考へを持つて居るか、私はそこまで話を進めて行く、良い土地を賣らして小作に作らすのか、或は惡い土地を殘すのか、さう云ふ極端な議論になるかも知れませぬが、地主が賣放さうとする土地があるとすれば、惡い土地を賣るのは當り前である、小作人の方は、或は農地委員會が之を買はうとした場合は、成べく良い土地を買はうとすることを考へる、それでは農地委員會が公正妥當にやれば宜いではないかと云ふ話になりますが、此の農地委員會の問題は後で申上げますが、さう云ふ紛爭を釀させる點から見ても、なぜ一應政府は手持にしなかつたか、斯う云ふ點を今後の運營上の關係から御尋ねするのであります
もう一つは、將來小作制度を殘して置くことの方が、唯單に經營規模其の他に付ても都合が好いと云ふことだけで、日本が超劃期的な土地制度の改革をすると云ふ時に斯う云ふやり方をしたと云ふことは、關係方面からさうだと言へばさうかも知れませぬが、率直に言へば、關係方面が日本の本當の農村の實情を知らないのにつけ込んで、寧ろ農林當局がこんなことにしてしまつたのではありますまいかと私は考へて居る、僅か六十萬町歩の土地まで政府が一應手持にして、さうして地主でも必要な人には之を買戻さしてやる、必要でなかつたならば之を他に向けると云ふ操作を政府で行はなかつたならば、却つて紛糾を起させるではありませぬか、現に昨年の第一次農地改革の案が出て以來と云ふものは、其の土地が闇取引で横行したり、或は土地取上──此の間も本會議で司法大臣は、其の調停だけでも約五千件全國に起きて居ると言はれて居るが、私達から見れば、何十萬件の小作爭議、所謂土地取上等の表面に現はれない問題が起きて居る、是は要するに、此の問題を繞つて寧ろ政府が農村を紊すやうなものではありますまいかと私は思ふのであります、殊に耕作しない地主に土地を一町歩殘すと云ふ此の見解も、私は能く承つて置きたいと思ふ、私が劈頭から申上げて居るのは、どうしても農林大臣は地主性である、農村の解放と言ひながら、少しも解放の考へ方も持つて居ないではないか、關係方面からの命令だから、或は關係方面との關係だから、農地は解放しなければならぬが、地主の爲に多少でも其の餘力を殘して置いてやらうとか、或は地主の爲に、不合理ではあるが無理押をして置かうと云ふことが、ありあり農林當局の考へとして私共には見得る、殊に不耕作地主の如きに至つては、其の村に住みながら一坪の土地も作らぬと云ふのは、本當の農村に來ると分るのですが、さう云ふ非農家と云ふものは殆どない、若しあつたとすれば、それは土地抛棄をした人なのです、要するに百姓は厭だ、割に合はない、百姓などと云ふものは馬鹿がするものだと云ふことで、農村に居ながら土地を作らず、小作米の上前で子供を教育までして居た惡徳の地主が多い、斯樣な農村に居ながら土地を作つて居ない、所謂不耕作地主などと云ふのは、寧ろ地主方面からもどつちからも指彈されて居る階級である、さう云ふ人達にまで故ら一町歩を殘さなければならぬと云ふ理由は何處にも認められぬ、却てそれが爲に地主は之を曲解して、一町歩までは自分達が耕作出來得るものだ、斯う考へて居るのが、今日全國幾十萬件起きて居る所謂土地返還等の問題ではありませぬか、隨て斯う云ふ、誤解した、問題を起させるやうな政府の施策と云ふものは、却て農村を混亂に陷れる、農村を解放するどころではない、却て其の爲に土地取上法とまで農民は泣いて居る所もある、況して──私は率直に言ふが、農民組合等の發達した所では是は徹底して居るけれども、全國に農民組合等は徹底して組織されて居りませぬ、其の組織されて居ない農村に如何に今日土地取上を中心として色々な問題が起つて居るかと云ふことは、時々新聞面を見ても農林大臣は御分りであらうと思ふ、自分の耕作する小作地が地主に無理やりに取上げられ、地主に泣込んで拒絶されて、其の親父が歸りがけに首を吊つて死んでしまつたとか、或は其の他の悲慘事と云ふものは農村には澤山あるのであります、戰爭直後血腥い話が澤山あるものだから、農村の純情な、さう云ふやうな死に方或は悲慘と云ふものは、餘り世間の同情を呼ばないのでありますけれども、農村には土地を繞つて如何に悲慘なことが多いか、それも是も農林當局が土地問題の解放に向つて全くの經驗がなく、不耕作地主にまで一町歩を殘すと云ふやうな、馬鹿もない政策を執つた結果なのであります、又不耕作地主が一町歩貰つてどうなりませうか、先程の農林大臣の御答辯に依れば、耕作權を確立して土地を作らせないと言ふに至つては、何故に作らせない人に其の土地を見せびらかして置くのか、却て地主をして思切りを惡くさせ、心の中を紊すものではありませぬか、此の點どう云ふ氣持で斯う云ふ政策を御樹てになるか、簡單に言へば、土地が一町歩以外に離れて行くとか、地主から小作に持つて行くと云ふだけでは、何も今日の日本の農村と云ふものを考へて行けませぬ、地主は思切り良く、又時代の流れを能く理解して、農民は其の土地を持つことに依つて農産物を増産させると云ふことに政治の施策がなければならぬ、却て土地をそつちにやつた、こつちにやつたで、混亂を起させるやうなことは、どうしても私は納得出來ないと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=93
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094・和田博雄
○和田國務大臣 一町歩の保有を認めましたのは、地主が一町歩は作り得ると云ふので認めたのではないことは、只今御答へ致した通りでありまして、それ以外に別に他意はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=94
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095・細野三千雄
○細野委員長代理 松澤君に申上げます、此の點は御話が何處まで行つても平行線であるので、私の方で發言を制限する意思はありませぬけれども、或る程度分つたと思ひますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=95
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096・松澤一
○松澤(一)委員 分つたけれども、はつきりせぬと──それではもう一度承つて置きます、此の殘した一町歩は、地主は絶對取れぬものかどうか、今仰しやつたが、もう一遍御答辯を願ひたい、況してや、不耕作地主等には土地が取れない、完全な小作地として耕作權が認められて是が殘るのか、さう承知して差支へありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=96
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097・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付ては、農地調整法の第九條の規定が適用になりまして、それで判定をして行く、斯う云ふことになつて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=97
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098・松澤一
○松澤(一)委員 農地調整法の第九條に行きますが、司法大臣はおいででありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=98
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099・細野三千雄
○細野委員長代理 古鳥政務次官が見えて居りますから、次の質問に移つて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=99
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100・松澤一
○松澤(一)委員 それでは御伺ひしますが、調整法の第九條で、信義を重んずる限り土地は取られない、斯うありますが、それだけでなくして、自作を相當とする時には此の限りにあらずと云ふことが書いてある、此の自作を相當とするとは、どう云ふ時か、尚ほ改めて承つて置きたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=100
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101・和田博雄
○和田國務大臣 自作を相當とすると申しますのは、地主が唯自作をしようと云ふだけではいけないのでありまして、其の地主が自作をするに付て、十分農業上の經驗も持ち、且又地主が自作をします方が現在小作を致して居る小作人が怠惰であるとか何とか、色々なことで、小作人がやりますよりも地主が自作しました方が實際土地の生産力も上り増産にもなる、斯う云ふ風な客觀的な判定を下して、自作を相當とすると云ふことに致すのでありまして、唯單に地主が自分の飯米の爲に自作したいと云ふことだけでは、土地を取上げることは出來ない、此の解釋は司法省とも十分打合せて居りまして共に從來からさう云ふ解釋をして來て居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=101
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102・松澤一
○松澤(一)委員 司法次官でも宜しいのですが、今までの土地の取上は、自作を正當と認めると云ふ場合でなくとも、土地返還の訴訟或は調停が出た時は、裁判所が之を許して居る、はつきり言ひますが、今までの裁判所は皆金持が贔負なのです、最近に於ける此の土地取上の最大理由は何處にあつたかと云ふと、米の飯を食ひたい、例へば土地法などと云ふものが出るから、早く土地を取つて置かぬとどうなるか分らぬ、と云ふことから起きて來て居る、然るに小作調停法が出て以來、私も調停委員の一人として其の經驗を持つて居りますが、私達が目を離したが最後、大概土地は小作人の手から地主の手に渡つて行く、此の現實をどう見るか、所謂立法の精神は、小作人が不正であらざる時、信義を守る限り、必ず土地が作れると云ふ立法である、其の運用の精神を能く司法大臣に承つて置きたい、所が此の立法精神と云ふものは常に蹂躙されて、其の運用をする判事達は議論を捏ね廻はして、是は何と云つてもお前の方は一町歩作つて居るではないか、こつちの方は一段しか作つて居ないのではないか、今二段位こつちへやつたつて、丁度好い鹽梅だと云ふのが、今の日本の小作調停の裁判なのです、私達が居ればさう云ふことは滅多にないが、山梨縣あたりがさう云ふ判定をやつて居るのですから、他府縣では思ひ半ばに過ぎるものがあると思ふ、立法の精神と運用の精神とが違つて居る、之を司法省に於て徹底出來るかどうか、若しさう云ふ判事があつた場合に、農民の意思に反してさう云ふ立法の精神と違つた判定をした判事の糺彈が出來るかどうか、一つ司法省の次官から承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=102
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103・古島義英
○古島政府委員 只今の御話は、恐らくは小作調停の問題だらうと思ひます、小作調停は判定をするのではありませぬ、申出人、相手方の兩方が相談の上で調停を成立させるのでありますから、其の調停の出來るまでの間に、其の階段として、或はお前は多く作つて居るから、片方の少い方に渡せと云ふやうな話もするでありませう、それは調停を成立させる爲の階段に過ぎぬのであります、判定ではありませぬ、即ち左樣にして、地主にのみ贔屓をするやうな判事があり、さう云ふ實例があれば承りたいのでありますが、私は寡聞にして左樣なことを知りませぬ、私自身も小作調停は致して居ります、併しながら斯樣な場合に於ては、私は讓歩を勸めて、折合ひの付く所で茲に調停を成立させるだけであります、色々な事情はありまするが、是は判定ではありませぬから、誤解のないやうに願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=103
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104・松澤一
○松澤(一)委員 それでは司法次官に御尋ね致します、全國の小作調停で、どう云ふ人が調停委員になつて居るか、一つ表でも見たら能く分るが、物持とか地主が多くて、小作人の代表と云ふものは殆どない、ないどころではない、名前はあつても其の調停などには出て居りませぬ、是だけ言へば、さう云ふ調停が、どう云ふ方向へ其の調停を持つて行くかと云ふことは、御判斷が付かうかと思ひます、それ以上私もこつちの贔屓、あつちの贔屓と言つて見ても仕樣がありませぬ、
今一つは、今あなたの御話の通り、法律を知らない、物を知らない、何も知らない小作人を引摺り出して、お前の方は十作る、こつちは一つ作るのだから、こつちに一つ分けろと云ふことで、指導と云つても──今日農地調整法が出て居るが、若し調停委員が眞に此の農地調整法を理解するかと云へば、是は片一方が十、片方が一つだから、一つを分けてやれ、是では本當の判定でも和解でもありませぬが、さう云ふ和解に導くことを強ひて居る、調停されて居ると云ふのは、其のやうなことをおやりになつて居るのでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=104
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105・古島義英
○古島政府委員 大變感情に趨つた御話のやうですが、實際は調停の模樣から言へば、成程色々な事情もあります、事情を申しますが、それは片方で、或は地主の居ない所では小作人に向つて、もう少し讓歩したら宜いではないかと云ふことを言ひます、若しくは、小作人の居ない所で地主に對すれば君の方で頑張つても駄目だから、君の方でもさう云ふことを頑張るなと言ひます、併しながら、それは調停を如何にして成立せしめようかと云ふ、進行の技術的の方法であります、決して何れに贔屓し、何れに味方しないと云ふものではないのであります、そこでどう云ふ者が調停委員に多く出て居るかと申しますと、全然物の分らぬやうな人達ではいけませぬから──恐らくはどの地方裁判所の調停委員と雖も、大概の場合に於て毎年其の人を決めて居るのでありますが、御承知の通り、地方裁判所が其の年の小作調停の主任判事と云ふものを拵へて居りまして、其の主任判事に於て、其の場所に於ける、小作人にも都合の好いやうな、或は地主にも都合の好いやうな、何れにも贔屓しないやうな、公平無私だと云ふやうな人だと認めました其の人に囑託を致して居るのであります、其の中で、偶偶小作人でも大分頑張る實例もあります、併しながら地主の方が多く頑張ると云ふので、近來に於ける調停は、多くは地主の方を凹ますと言つては誤弊があるか分りませぬが、地主の方に多く讓歩をさせて、小作人に有利に展開して居るのが今日の實情であります、而して其の調停の成立した模樣を見ますと、多くは、公平に見まして、小作人の側に利益になつたやうな調停が出來た例が多いのであります、是が實際の實情であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=105
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106・松澤一
○松澤(一)委員 久し振りで大變古い話を伺ひまして、私も昔を思ひ起したのですが、小作調停法の出た時代は、日本の軍閥が跋扈した時代で、お前が薪を採れば俺が水を汲むと云ふやうな、所謂相互協助と云ふやうな言葉──勿論今日も我々捨ててはならないが、さう云ふ魅惑的な言葉に騙まされて、地主と小作人は相協力しなければいかぬと言はれたものです、それで私は言ひますが、例へば猫と鼠が相談して、どつちにも有利な相談が出來るか、さう云ふ欺瞞的な制度に依つて、私達は此の小作調停法と云ふものは──あなたの仰しやる通り、又私も之には可なり苦勞して居つて、分つて居る積りで居りますが、兩方良い、兩方惡いと云ふこと、兩力で喜ばれる、兩方で恨まれる、さう云ふことは今日では許されませぬ、今日では唯兩方宜いと云ふことは許されない、其の土地に執著を持ち、せめて自分の作つて居る土地だけでも將來は安心の上に立つて作れるやうになりたいと云ふ、長い間の念願を持つて居る、此の小作人の土地を、唯兩方宜いと云ふことだけで半分そつちへやれば、小作料が少しまけて貰へるから得ではないかと云ふやうな考へが、今までの小作調停であつた、今日はそれではならぬと云ふのが、所謂今日の農地の解放なのです、農村から封建制度を取れ、農奴を解放しろと云ふことも、さう云ふ點から來て居りますので、だから古い小作調停などは私は考へて居りませぬ、もう一つは、判事や下つ端の人の考へて居ることは、今日でも所有權絶對である、さう云ふ考へを持つて居るからいけない、小作調停の出來ない前は、一片の法律で取上げられた、小作調停で先づ先づと云ふ法律が出來て來た、其の内に漸く多少でも進歩した農地調整法が出來て來た、さうして小作人の土地に對する安定と云ふものが或る程度出來て來た、それでも尚ほ且つ古い裁判所の判事や物持は、所有權と云ふものは未だ絶對のものだと思つて居ります、私は絶對のものだとは思はない、苟くも所有權の上に制限する法律が幾つか出て來たならば、絶對なる觀念と云ふものは相當減殺されて行かなければ、ならないと思ひます、今日農林大臣の言葉を承つても、其の片鱗が現はれて居る、土地を所有して居る所に強味を持つ、農家を解放しなければならぬ、日本から農奴を解放しなければならない、小作人の條件を良くして、小作人に安心しろと云ふ爲には、所有權と云ふものは本當に僅少で、若し「パーセンテージ」で言へば、少ししか殘らぬと思ふ、其の殘らぬものに付て議論をして力を入れる所に、私は納得がいかぬと云ふことを茲に表明しますが、さう云ふ意味で、少くとも農地調整法の第九條は、今後土地制度が斯うなつて來て小作制度が殘るとすれば、重要なる觀點になつて來ると思ふ、隨て此の第九條に關しては、今後此の點から見ると、農民が所謂信義に反せざる限り絶對に取得ぬものだと云ふ考へを持ちますが、それで差支へありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=106
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107・古島義英
○古島政府委員 御説尤もでありますが、實際に信義に反する行爲があり、或は正義に反する行動がある時には致し方ありませぬが、然らざる時には、取戻しは出來ませぬ、それは法律が約束して居る間は法律上のことは致し方ないのであります、其の他の正義に反するとか、或は信義に反すると云ふ場合には、是は法律が保護を致さぬのでありますから、左樣な時には取戻されることは當然であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=107
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108・松澤一
○松澤(一)委員 斯う解釋して宜しいのですか、所謂信義に反せざる限り絶對に土地は取られぬものだ、隨て小作制度を認めるなどと云ふ言葉も、今日私はあつてはならぬと思ふ、それは此の法律の第九條では死物化しますが、農林大臣はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=108
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109・和田博雄
○和田國務大臣 死物化する譯ではないのであります、殊に今度は第九條で、農地委員會の承認を受けなければならぬやうに致したし、而も其の承認を受けずしてなした行為は無效だと云ふことまで致しまして、實際永小作權の保護を今一段と徹底致して居るのでありまして、私共の考へますには、此の規定に依つて、永小作權は十分保護されたことになつたと思ふのであります、此の第九條の今囘の改正は、相當の程度の改正であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=109
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110・松澤一
○松澤(一)委員 具體的に農林大臣にも司法次官にも申上げたいことは、例へば戰災者だとか引揚者だとか、或は其の他農村に土地を持つて居る者が農村に歸つて來て居る、それ等の人達は何十年間も土地を放棄して居る、百姓なんて馬鹿のすることだと云ふので、學校の先生になつたり、商賣人になつたり或は官吏になつたりして居る、さう云ふ人が村に歸つて來て、是の訴をする、御承知の通り、今日の農地委員會と云ふものは、今後多少は變つて來るでせうが、さう云ふ人達に動かされる、裁判所も動かされる、さう云ふ場合に、もう新しい農家は既墾地では作らせない、政府は少くともここまで氣が付かなければいかぬ、今まで土地を抛棄して──村の在住地主として殘つて居ても、今まで百姓を捨てて、都會なり其の他で特別な仕事をして居た者が、米がないから、働くことが出來ないから、或は自分は失業したからと云ふ理由で、土地を取りたがつて居る、是は一面から見ると氣の毒な人が多い、併し將來さう云ふ生活の出來ない人には、生活保護法に依つて生活を保障することが出來る、何も土地を取上げることはない、もう一つは、開拓地以外に、既墾地で新しい農家を作つてはならぬ、是は農林大臣も御存じだと思ふ、是は一つの例ですが、私も東京に來てびつくりした、議會開會以來毎日議會に通つて居るが、東京の緑地──燒跡に茄子や南瓜、王蜀黍其の他色々作つて居るが
〔細野委員長代理退席、委員長著席〕
私の推定を以てすれば、あの面積で都の人口を潤ほす蔬菜などは十分穫れる、特殊の蔬菜は多少足りないだらうが、兎に角其の日其の日の野菜位は穫れさうに思ふ、それで畑の中に入つて能く見ると、實が成つて居ない、要するに、東京人は新しい農家を作ることを知つて、農法を知らない、百姓と云つても、今日は中々科學的である、米を食ひたいとか、失業して居るからと云ふことでは、私は既墾地に農家を作ることに反對なのだ、少くとも是は農村に住んで土地と親しんで居る者の考へて居ることである、隨てさう云ふ土地問題が一番起きて居るのである、司法次官に申上げたいことは、全國に之を通牒して、少くとも土地取上の問題は一應抑へなければいかぬと思ふ、況してや、舊態依然たる判事の頭は切替へられて居ないし、多少切替へられたと云つても、まだまだ物持のことを先に考へるやうな觀念で居る、さう云ふ點に對しては、司法省は全國の裁判所に向つて之を徹底しなければいかぬと思ふ、勿論農林省は小作官等に向つて逸早く之を徹底さして居るやうでありますが、常に小作官と裁判所が相衝突するのは此の點にある、要するに、立法の精神、運用の精神と、今度裁判所が實際に使ふ考へ方とが違つて來る爲に、法律の權利がありながら農民に迷惑を掛けて居ると云ふことを、司法省は能く御考へを願ひたいと思ふのであります
次に御伺ひしたいのは、農地委員の問題ですが、一體農地委員を地主三、小作五としたのはどう云ふ譯か、是は農地法が關係方面からこちらへ來る當時も、局長から此の御説を二、三囘承つたのですが、此の農地委員の割振りに付ては、寧ろ關係方面には其の腹案がなかつたらしい、それを故ら農林省が五・五・五と言つた時代もあるし、或は又別の數字を言つた時代もあるし、さうして今日の地主三、自作農二、小作農五と云ふ比率にして來たのですが、勿論是は多數決に依る委員ではないので、之を兎や角言ふ譯ではありませぬけれども、なぜ小作人の人數をもつと殖やさなかつたか、なぜ地主を一人かなんぞにしなかつたか、況してや、都市計畫が出れば、地主は其の代表の權利を失つて行きます、少くも自分が思つて居ることを多數の前に行つては口がきけないと云ふ小作階級、もう一つは、敢て地主や物持の爲に萎縮して居た小作人階級の代表者を成べく多くして、發言の機會を與へるには、人數を多くする、地主一人に對して小作人は三人も五人も出て宜いと思ひますが、此の點などは農村の實情を知らないからです、斯う云ふ點に對して、どう云ふ譯で斯う云ふ數字を關係方面に拵へて來たか、御辯明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=110
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111・和田博雄
○和田國務大臣 農地委員會の構成に付ては、此の前の農地調整法の改正の時には、五・五・五としまして、地主、小作、自作と云ふものを同數に致したのでありますが、此の構成に對しては、斯う云ふ批評があつたのであります、それは自作が一面に於ては土地の所有者でありますが故に、是は耕作者たる土地を持たない小作よりも、寧ろ地主の側に傾くのではないかと云ふ御意見が其の當時ありまして、此の構成は、公平なやうに見えて、公平でないのではないか、斯う云ふやうな意見があつたのであります、それに付ては我我としても一應の意見は持つて居る譯でありますが、今囘は土地所有と云ふものと小作とを對等に致しまして、隨て自作農の方は地主の方の範疇に入れまして、地主、自作總計五人とし、小作人も五人と云ふやうに、兩方を同數に致しまして、そこで兩方が總て同じ數で話合ふと云ふ態勢を取つたのでありまして、それ以外に別に他の意思があつた譯ではないのでありまして、出來るだけ地主、小作兩方共同じ數で、兩方が同じ地盤に立つて、農地委員を構成して、農地委員會を運營して行く、斯う云ふやうに考へます、是は小作人の方も、村に於て選擧をして、小作人から信望のある方、十分發言もなし得る立派な人を選んで貰ふ、又片方の地主、自作もさう云ふ人を選ぶと云ふことになるのでありまして、其の點に付ては、選擧と云ふ制度を採つて居りますので、比較的御心配の點はないのではないかと思ひます、私はやはり小作の方も、數に於て何も多くなくても、堂堂と自作なり地主なりと對等に話合つて行くやうに訓練されることが必要でもあり、又さう云ふやうに向上して行くことを、望ましいことと考へて居るのであります、其の點に付ては、今囘の改正も同數であると云ふ點は非常に好いのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=111
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112・松澤一
○松澤(一)委員 農地委員會のことを諄く言ふやうでありますが、農林大臣は本當に農民の事情を知らないのです、農民組合等がある場合は多少宜いのでありますが、全國に農民組合等の組織があるのでありませぬ、隨て組織のない農村に行くと、殆どどうにもならない、之に對して監督官廳である、府縣廳が多少指導して行くのかどうか、或は自治と云ふ美名の下に、農地委員會等にやり放題に委して置くのか、それを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=112
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113・和田博雄
○和田國務大臣 是は官廳の方に於ても適當な指導は致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=113
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114・松澤一
○松澤(一)委員 土地の賣買に付て御伺ひしたい、地主に報償金を出すと云ふことは飛んでもない話ではありませぬか、報償金は當然其の土地を守つて來た農民に與ふべきで地主に之を出すと云ふ、之を見ても農林省は地主性ある政策ばかり行ひ、小作人に稗益する所はないのではないか、斯う云ふ點に於て、報償金を寧ろ小作人の方に振替へられぬかどうかと云ふことを御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=114
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115・和田博雄
○和田國務大臣 自作農を創定致しますに付きましては、其の土地の價格が小作人に取りまして今後過大な負擔になりませぬやうに、適當な所に決めると云ふことに依りまして、小作人の自作農になることを容易に致して居るのでありますが、他方此の大きな變動期に於きまして、地主の方に於ても、やはり先祖代々からの土地を小作に從ひました者に手離すと云ふことに相成る譯でございますので、是は或る一定の限度を限りまして、社會的な觀點から報償金を出すと云ふことに致したのでございまして、此の報償金を小作の方へ振替へると云ふことは出來兼ねることである、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=115
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116・松澤一
○松澤(一)委員 土地の賣買價格が安いとか高いとか云ふやうなことをよく言はれるのですが、其の關係方面では、只でも取つてしまへと云ふやうなこともあつた、私はどう見ても、最近までに於ける地主と云ふものは、非常に土地を資本主義的に考へて、土地に投資をすると云ふやうな考へ方で土地を持つて來たのですが、それが今日斯う云ふ時代になつて、どう云ふ値段で賣買されて行かうが、是は已むを得ぬと私は思ふ、もう一つは、今農林大臣の謂ふ先祖傳來の土地、此の先祖傳來の土地は、其の當時の小利口な地主が無智な百姓を騙して、酒一升、鶏一羽で貰つた土地や、或は勝手に自分で後から自分のものだと云つて強奪した土地である、それを小作人に依つて良田美畑とされて來た、其の土地が賣られる時に、小作人の方に一錢の報償金、賞與も謝禮もしないで、地主が持つて行くと云ふことは、私はどう見ても不合理だと思つて居る、農林大臣は枉げて之を小作人にやつて戴きたい、此處に居られる議員の方々は、皆農村に理解のある方々で、決して之に反對する方々ではないと思ふ、少くとも是れ位のことは分らなければならぬと私は思つて居る、農林大臣は、是は僅かな金で、今日物持が取つても仕樣がないので、せめて零細な農民の方に此の報償金は廻して貰ひたい、一つ御考へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=116
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117・和田博雄
○和田國務大臣 それはさうは參らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=117
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118・松澤一
○松澤(一)委員 色々の意見が出ると、將來の農業經營をどうする、斯うすると云ふ、色々多岐多樣な意見が出て、本會議以來澤山食傷する程承つたのでありますが、今後日本の農業經營、即ち現状の零細農、所謂小農經營が如何なる方針で如何なる方向に持つて行かれるかと云へば、是は異口同音に、少くとも其の經營機構と云ふものを變へて行かなければならぬ、それは集團經營にするか、或は協同經營にするかと云ふことは、誰も考へて居ることですが、私は農林省に一點聽いて置きたいと思ふ、是は分り切つたことで、農村が機械化になつたり、或は色々文化的になつたりすることは、今からの問題で、當然農村を考へる者の考へて居ることで、之を諄々しく言ひたくないのですが、唯其の指導精神を聽いて置きたい、將來日本の農業經營は、色々の意味で色々の制約を受けるでありませう、併し此の儘の經營ではいかぬと云ふことは誰でも分つて居ることと思ひますが、それでは集團經營とすれば、其の經營はどんな經營で行くか、徹底した協同經營と云ふやうな形式で行くか、或は共同作業程度で、日本の國情に適する經營方針の指導をするか、是は思想的にも、實際的にも重大な問題であると思ふので、此の點を一つ承つて置きたいと思ひます、もう一度言ひますが、經營と云ふものは、何かの形で集團的な經營に入らなければならぬと思ふのですが、徹底した協同經營で行くか、或は私が今考へて居る所の、或る程度の──勿論機械化や電化は必要なのですが、共同作業的な指導精神で行くか、其の指導精神を承つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=118
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119・和田博雄
○和田國務大臣 實は私は今度の農地改革をやるに付きまして、經營の點に付ては、比較的と言ひますか、可なり自由な立場を執つて居るのでありまして、總てを徹底的な協同經營に持つて行くとか云ふやうなことは考へて居りませぬ、是は恐らく、今のやうな日本の經營の状態、又は農地の所有に基く經營の状態に於きましては、徹底的な協同經營ではなくして、やはり部分的な協同的な經營と言ひますか、さう云ふ方面に於ける協同化と云ふことになるのではないかと思ふのであります、私は日本の農業經營と云ふものは、寧ろ各種の農業經營が色々の形のもので暫くの間は存在して行くことが却て宜いのではないか、斯う考へて居るのでありまして、全面的な協同經營と云ふものを直ぐにどうすると云ふことは、是は中々行はれ得ない面もありまするし、事實さう云ふ方向へ指導して行かうとは考へて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=119
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120・松澤一
○松澤(一)委員 農業政策としては、勿論對外的の問題があるから、それでは例へば農業政策の方では、農林大臣は、安い米でも何でも矢鱈に日本に入つて來れば宜いと思ひますか、それとも、或る程度の計畫經濟を立てて、さうして米が日本は一千萬石足りない、其の一千萬石だけを輸入しようと云ふやうな、所謂農村保護政策の上に立つ計畫經濟で行くか、こんなことはもう分り切つたことだと思ふのですが、唯内部に於ける經營と云ふことに對しては餘程重大だと私は考へて居る、隨て今聽いて居ると、何だか譯の分らないやうな、ぐにやぐにやと言つてしまつたが、一體其の邊の所ははつきり言つたら宜いではないかと思ふのであります、例へば「ソヴエト」のやうな經營方針で行くのか、それとももつと變つた一つの經營方針で行くのか、それで私は一言農林大臣に申上げて置きますが、私は滿洲の開拓を十年研究して見たが、日本の農民には協同經營が適せない、條件も勞力も資本も一切が一つでありながら、どうしても一、二年經つて其の經營が立つて來ると個人經營に移りたがり、其の儘協同經營にさして置くと、生産の能率が落ちて來る、滿洲のやうな開拓の一切の條件の揃つた所でも協同經營が徹底的に出來ぬやうな日本の農民に、複雜多岐な日本の内地で到底協同經營などと云ふものは出來ぬと云ふことを私は疾に見越して居るのでありますが、最近議會を通じて聽けば、誰も彼も協同經營々々々々と云ふ言葉を使つて居られるのですが、徹底した協同經營が日本の農民性に適するかどうか、それからそれに依つて日本の生産が上るかどうかと云ふことは、今後日本の農民を精神的に指導する上に重大なことなのです、是は土地制度と同様に重大なことであるので、私は農林大臣に、少くとも將來の農業經營、所謂農民の指導精神と云ふものが、或る部分的な共同作業的な指導に依つて今日の農業形態と云ふものを變へて行くのか、それとも今日多く無定見に叫はれて居る協同經營々々々々で、徹底した協同經營で行くのか、其の持つ實際の面がどう行くかと云ふことを御尋ねして居るのでありまして、我々はもう少し新しい農林大臣としての指導精神を承つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=120
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121・和田博雄
○和田國務大臣 協同經營の問題は、日本に於きましても屡屡取上げられたのでありますが、曾て農林省が協同經營の調査を昭和四年でありましたか、恐慌に掛つた頃でありましたが、協同經營が非常に問題になつた時に調査を致したことがあつたのであります、全國的な調査を致したのでありまするが、相當喧しく協同經營を叫ばれまして、僅かに其の當時殘つて居りましたのが二十三か四、五のものであつたと私は記憶して居ります、而も其の内容は極めて貧弱でありまして、協同經營としての實の擧つて居るものは殆どなかつた實情であります、勿論是は其の當時に於きまする色々な社會的な條件、或は農業關係で言へば、小作料、土地の價格、或は勞働の換算、其の他の點に付て色々の問題はあつたでありませうが、所謂叫ばれた協同經營なるものの成績は餘り好くなかつたのであります、私は日本の現在のやうな形に於て、又斯う云ふ地帶の小農國としての日本に於きましての經營の將來の方針は、全面的な協同經營と云ふことではないと思ひます、やはり是は部分的な協同の力に依つて、部分的な共同作業と言ひますか、部分的な協同と云ふことになるのであらう、斯う考へて居る次第であります、其の方が寧ろ日本の今の農業の事情には適した一つの經營の方式ではないか、斯樣に考へて居る次第であります、勿論是は日本の農業に取りましては、問題を唯斯う云ふ形で打止めることなく、やはり我々としましては、凡ゆる形の農業の經營の形態を何處までも研究致しまして、生産力の上りますることに付ての努力は是非拂ひたいと思ひまするが方向は、仰しやいますやうに全面的な協同經營ではなくして、寧ろ部分的な共同作業と云つたやうな面だらう、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=121
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122・松澤一
○松澤(一)委員 今度の農地二百萬町歩を政府が一應買上げるに、最も迅速の方法で、一箇月か二箇月の内に全部買上げる方法があるだらうか、聞けば、各町村が選擧して農地委員會を開いて、其の町村の農地計畫と云ふものを立て、さうして政府がそれを買上げる順序になるのでありまするが、私が一番心配するのは、不徹底だとか何とか言つても、是は一番革新的な農地解放で、先程も言ひましたやうに、此の問題を繞つて、農村は土地の爭奪で相當紛亂するだらうと思ふが、成べく土地の買上と云ふことは早く行つて、丁度經濟、財政の方面で、封鎖だとか、補償打切りだとか、さう云ふことをそつとやつた、さう云ふやふに、土地の買上に對する諦めを早く地主にさせると云ふことが必要である、若し諦めを遲くさせて置くと、却て地主に紛亂が起る、是は農林大臣、私餘分のことを言ふやうですが、實際に農村の中から出て來た、私の言ふことを、疎かに聽いてはあなたの施政の失敗になりますよ、隨て成べく速かに此の土地を買上げる方法を執り、勿輪小作に土地を渡すことは遲くとも宜い、それは一年、二年掛つても、渡すと云ふことになつて來れば、政府のことだからそれは渡しはぐれはないと思ひまするが、兎に角買上げることを迅速にすること、是は此の政策を成功させる唯一の目標だと思つて御忠言申上げるのでありますが、其の點は一つ十分御考慮置きを願ひたいと思ひます質問を申上げたいこともまだ多少あるやうな氣が致しまするが、此の問題はきつと長い時間皆さんがおやりになると思ひますし、私も無駄口を省いて、成べく私の思ふ重點だけを御聽きしたのですが、最後に一言農林大臣に申上げたいことは、私は農民の氣持を申上げます、戰爭中──戰爭中どころではない、三千年來陰慘なる農村に於て、農奴と言はれ、奴隷と言はれ、或は百姓と言はれ、最近では惡農の汚名までも著ながらも、他の階級は戰爭が濟んだら皆解放されたのに、戰爭が濟んでも尚且つ國民の食糧を生産しなければならぬと云ふ至上命令の上に立つて、今日も農民は解放されて居りませぬ、戰爭中は子弟を戰線に送り、女や年寄の手で食糧の増産をし、さうして農民が長い間、せめて自分の耕作するだけは自分の一生の中に自分の手に入れたいと云ふのが、是は全國を通じての農民の本當の心情へだと思つて居ります、所が此の農地解放が、劃期的と言ひながら、政府の言明を俟つても尚且つ數十萬戸のまだ解放に與からぬ農民が後に殘ると云ふことは、返す返すも此の法案に取つて遺憾だと思ふのであります(拍手)農林大臣能く御考へ下さい、今申上げた通り、農民は純情だ、農民は素朴だ、さうして農民の爲に多くの村の指導者其の他が一生懸命考へて居るのだらうが、往々にして其の指導者は農民搾取の對象になつて居る、農民は凡ゆる階級の搾取の對象となり、或は其の村の保守的存在の爲に、今日も亦奴隷化して行かなければならないと云ふ宿命的運命に追込まれると云ふことでは、私は日本の民主的革命の上に農村は決して解放されぬと斷定しても敢て過言でないと思ふのであります、近い將來に、敢て私が先程來言ふやうなことを考へて、農地改革案を提出して、全小作地を農民に與へられるやうな改革を行はれんことを切望して、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=122
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123・和田博雄
○和田國務大臣 農地の買上を早くしろと云ふ御忠告に付きましては、私共も十分考へまして、出來るだけ早くやりたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=123
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124・藥師神岩太郎
○藥師神委員 一寸議事進行に付て、何時まで日程の豫定がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=124
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125・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それは理事會を開きまして御協議する積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=125
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126・藥師神岩太郎
○藥師神委員 豫算委員會のやうに、最初は三時間の質問應答を認め、次には二分の一になり、最後には三分の一になると云ふやうな、不手際なことはないやうにして戴きたい、其の點は最初から御考へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=126
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127・葉梨新五郎
○葉梨委員長 委員長として御答へ致します、本法案は、我が國の農地制度の改革としまして、大化の改新以來の改革法案であります、仍て此の審議は愼重審議國民の負託に應へるやうに努力を致したいと思ひます(拍手)其の爲に、私は出來得る限り各委員の發言を許可したいと思つて居ります、但し重複する點等に付きましては、或は御意見等に過ぎるやうな點に付きましては、是はお互ひに自省をして戴く、討論の際と違ひますから、質問は質問らしくと云ふことに於て御自省の上御進行あらんことを希望する次第であります(「ヒヤヒヤ」、拍手)──八重樫利康君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=127
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128・八重樫利康
○八重樫委員 先程來農民の聲と云ふことが出て居りますが、私は多年農村に居りまして、自作農として農業に從事しました、體驗から、此の自作農創設案竝に農地調整法を受ける身から御質問を申上げたいと思ふ次第であります
第一に御伺ひしたいことは、此の農業經營と云ふことは、有機的結合に於きましては他の經營とは異なりまして、最も密接なる微妙な關係を持つものであります、其の一部の機能の停滯が、直ちに全體の經營に作用し、生産に重大な關係を持つものでありまして、時に依りましては非常に立派な法律でありましても、相關關係に於きまして他方に於て其の發展を拒むものであります、故に農業に關する諸法令は、總て一貫せる農業政策を基本として發せられなければならぬのであります、單なる省令、規則と雖も、其の目的とする所以外に農業全般に如何なる關聯を持つやを檢討しなければならぬのでありますが、本法が、耕作者の地位の安定と、農業生産力の維持増進を目的として制定せられた趣旨は十分了解されますが、本法施行に當つて、農村に如何なる事態を惹起するかを些細に檢討したらどうか、曩に第一次農地改革案が發表せられるや、平和な農村に、不在地主は別問題でありますが、其の町村内に於ける小地主對小作者の紛糾は到る處に發生致しまして、曾て見ざる險惡なる空氣に包まれた事實を忘れてはなりませぬ、そこで農村は常に、共存共榮と云ふ言葉は古いかも知れませぬが、人情を以て經營されて居ります、單なる「イデオロギー」に依つては出來ないのでありまして、假に隣に屋根替があつても、計算を度外して御手傳ひに行つたり、隣の仕事が遲れればそれに御手傳ひに行く、一本の水路を引くにも、其の中に義理と人情がなければならぬのでありますが、此の制度が出來た爲に、小地主、小作人は道で會つても顏を背けるやうな状態になつたのであります、形式的に一部の農民が解放されても、農村全體は崩壊するのであります、私の見る目に於きまして、一箇村に於ける一農家のお家騷動は全般に影響を及ぼして紛糾を來して、村の道路も何も滅茶苦茶になつた例があるのであります、是が農村の實際の姿なのであります、斯う云ふ風に考へまする時に於て、此の影響する所は重大なものであると云ふことを十分に御考へを願ひたい、殊に農業と云ふものは、封建制度であるとか何とか言ひますけれども、歴史は古いのであります、歴史が古いものの改革と云ふものは容易なものではないのであります、何でもさうでありますが、若いものでありますれば改革は出來まするが、中々容易ならぬことと考へなければならぬ、隨ひまして政府が此の法律の施行に當つて、徒らに法に基く所の強權を振廻さないで、何處までも、農民相互の納得の行くやうに解決して行かなければならぬ、さうして平和な農村に禍根を貽さないやうに御願ひ致したい、是は簡單に考へると、過渡期であるからさう云ふことは已むを得ませぬけれども、土地の爭は七代崇ると言つて居ります、私の隣では畔一本の爭でまだ三代經つても往き來して居らぬ、土地の問題は、地主が土地に執着するやうに、小作人も土地に執着するのであります、執着しないものは解決されますが、土地の交換分合などもさうでありまして、極く瘠せて惡い土地を向ふに渡して、良い土地を貰ふにも拒んで居るのは、土地に對する執着からであります、斯う云ふ方向を能く見なければならぬ、所が歴代の内閣に於ては、色々な農村の法律を作りましたが、此の農村の實體に遊離した所の一方的法令を濫發致しまして、徒らに耕作者の末稍神經を刺戟するのでありますが、其の結果農村の安定と進展に何等寄與する所がなかつたのであります、政府は本法起草に當つて此の點に對して十分に考へを持つたかどうか、又此の實施に當つて、如何なる指導の下に之をやるか、此の點を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=128
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129・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに、此の農地の制度と云ふものの改革が、農村に取りまして非常な影響を持つて居ることは、我々も左樣に考へて居る次第であります、隨て此の農地の制度を改革致すに付きましては、やはり市町村の農地委員會と云ふ、村の委員會を中心に致しまして、凡ゆる運營をやつて行く、斯う云ふ考へに立つて居るのでございまして、農地の買收計畫も亦賣渡の計畫も、總て村の自作、小作から選ばれた者を以て構成する市町村農地委員會と云ふものの働きに依つてやつて行く、斯う云ふやうに考へて居る次第でありまして、それ等の人達の働きに依りまして、村の農地の改正が圓滑に行きまするやうに、我々と致しましては十分に連絡を取るやう指導致して行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=129
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130・八重樫利康
○八重樫委員 先程、早速此の農地の買上をやれと云ふやうな御話もありましたが、此の問題を解決するに於きましては、先程申上げたやうに能く實情を話して納得が行くまでには、二年では寧ろ短か過ぎるではないか、昨年の十一月二十三日現在で押へて居るのだから、今少しゆつくり掛つても、此の問題で農村に禍根を貽さない方が宜いと云ふ方へを持つて居りますが、此の點に關して御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=130
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131・和田博雄
○和田國務大臣 私共の考へとしましては、やはり出來るだけ早くやりますることがどうしても必要でありまして、長く時間が掛れば掛る程、是れ亦色々の事柄が起つて來る譯でありますので、市町村農地委員會と云ふものに自主的に働いて貰ひまして、出來るだけ早い機會に完成を致したい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=131
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132・八重樫利康
○八重樫委員 さう出來れば結構でありますが、私はさう簡單には參らぬと思ひます、實は私は、政府の考へて居るよりも進歩的の所もありますし、又保守的な所もあるので、多少矛盾する點もあるだらうと思ひますが、政府が此の法律を起草するに當りまして、「フエスカ」が、小作者の位置は、間斷なく驅使せられる日傭夫の地位に劣ると喝破したのでありますが、勿論其の通りでありまして、小作制度と云ふものは存在すべきものではないと私は思つて居りますが、何故小作制度と云ふものが現存したか、其の原因を深く考へる必要がある、耕作地が耕作者の手を離れて不在地主、不耕作地主の手に移つて、再び農村に還らざる原因は何處にあるか、耕地の所有は、農業經營の進歩改善に依つて利潤の増加と云ふ方向を取らずして、先程申上げた方もありますが、耕作者にあらざる者、私の言葉は少し過ぎて居るかも知れませぬが、寄生地主稼業の方向を取らざるを得なかつた根本の素因とを追究しなければならぬと思ふ、此の制度其のものよりも、制度がなかつた爲に耕作者の手から地主の手に行つたのであるか、或は其の他の經濟的、社會的の何等かがあつたに違ひない、私は是は農林大臣から聽くまでもなく分つて居りますが、其の點の解決をしなければ、如何に法的措置が出來たと致しましても、又小作者が所謂自作農になりましても、再び元の苦しみを受ける、自由經濟の中よりも、其の枠の中に居て苦しむと云ふことは、非常に苦しいのであります、だからして、斯う云ふ點に對しまして、將來の農業はどう云ふものであるべきかと云ふことは、先程も質問があつたやうでありますが、何處までも農林大臣は之に對して抽象的な御答へをして居られますが、私が具體的に御聽きすることは、將來の農業と云ふもの、日本の農業政策と云ふものは、所謂食糧の自給を目標として行くか、さもなければ、世界經濟の波に乘つて安い食糧を買入れる見返物資等に於きましても、生産して合ふ物を生産させる、此の二つの方法の中の何れを採るかと云ふことを御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=132
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133・和田博雄
○和田國務大臣 日本の農業が、將來食糧自給を目指し、之を農業政策の目標にすると云ふことは、私はさうは言ひ切れない、斯樣に考へて居ります、やはり將來の日本の農業政策は、食糧生産のみならず、見返物資其の他輸出品、又は國内の其の他の事情に應じて多角的に色々の製品を造る、さうして農業者の生活水準と云ひますか、福祉を高めて行く、斯う云ふ風に持つて行くのが、農業政策の目的であらうと思ふのであります、是は曾て恐慌の時に、土地の移動の調査を農林省、又私達が村に入つて隨分多くの村を廻つてやりました時に、色々の原因を述べて居るのでありますが、農産物の價格が下落した爲であるとか、或は非常な負債の爲であるとか、又冠婿葬祭の爲であるとか、兎に角農家が非常な悲境に沈淪した原因は、一般の經濟の變動から來るものも相當あるのでありまするが、何と言ひましても農業の經營それ自身が極めて貧弱であつて、眞に強い基礎に立つて居るものでないと云ふ點が看取せられたのでありまして、是は將來の日本の農業政策の目標としましては、どうしても唯單に食糧の自給であるとか、見返物資の生産であるとか云ふやうなことでなくして、それ等のものを引括めて、農業に實際從事して居ります者が國民所得の公平な分配を受ける、隨て相當の所得を得ると云ふやうな、福祉の増進と云ふ方へ持つて行くべきであらう、斯う考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=133
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134・八重樫利康
○八重樫委員 了承致しました、次に御伺ひしたいことは耕作地の制限の問題であります、即ち本草案に依りますれば、自作地に於きましても一定の限度の制限が課せられて居るのでありまするが、地主が土地に執着する以上に、小農も土地に對する執着が多いのでありまして、出來得る限り澤山の土地を持ちたいと云ふので、晝夜を分たず、老若を問はず、働いて居るのでありますが、是が一つの枠に入れられてしまひますると、其の經營能力の如何を問はず、頗る窮屈な農業が營まれるのであります、そこで私は元來耕さざる者は所有すべからずと云ふことを昔から言つて居るのでありますが、其の代り耕作能力ある者は無制限に土地を所有する、能力のない者は手放すことは當然であります、そこに一つの自由性を持たせると云ふことが宜いではないか、假に具體的に申しますれば、甲の人が一反歩の土地を持つて、單純な農業の經營能力しかない、併し其の子供が、酪農の知識があつて、多角型農業を營みたいと云ふ時には、其の能力に於て、其の資力のある限り、能力のない者から土地を買ふと云ふやうな、彈力性を持たす方が宜いのではないか、私は小作制度と云ふものは認めませぬ、必ず耕作者の手に於て所有すると云ふ原則は堅持して居りまするが、其の代り、さう云ふ彈力性を持たすと云ふことが、將來の農業と云ふものに生甲斐がある、現在に於てもさうであります、如何に民主主義農村が出來ましても、農村の欲望には變りはないと思ひます、でありますから、斯う云ふ方法を執るならばどうかと云ふ點に付きまして、農林大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=134
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135・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地の制度の改革は、やはり多くの小作人に均等に土地所有の機會を與へると云ふことが一つの目的となつて居りますので、唯單に、今小作者に於て耕作能力があるからと云つて、無制限に之を與へると云ふやうなことは致し兼ねるのであります、併し是は現状を押へて居りまするから、現在自作して居る者が三町歩以上を實際經營致して居りましても、自分の土地を三町歩なり五町歩なり本當に耕して居りまして、それを立派に耕して居ります者に付ては、其の經營を制限すると云ふことには致して居ないのでありまして、其の點は一つ誤解のないやうに御諒承を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=135
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136・八重樫利康
○八重樫委員 少し諄く御伺ひするやうでありますが、是は一旦自作農となつた、其の後のことであります、是は如何なる條件の下にあつても、現在の三段百姓は三段百姓、一町歩百姓は一町歩百姓に行かなければならぬと云ふ建前を取つて居るのでありますが、其の今後の動きであります、之を一旦自作農にした場合に於て、所謂自由の讓渡が出來るかどうか、之を許した方が宜いではないかと云ふ點であります、現在の自作農を作る時の問題ではなくて、今後の問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=136
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137・和田博雄
○和田國務大臣 今度の制度に依りまして自作農になりました其の土地に付ての處分は、制限致して居る譯であります、と申しますのは、折角自作農になりながら、直ぐそれを自由に處分出來るやうにしますれば、自作農を創定した趣旨の大半がなくなつてしまひますので、自作農になりました者の土地は、一定年間政府の許可其の他がなければ處分出來ないやうに致して居りますのと、それから土地が一方に於て少數の地主に兼併されることを防ぎます爲に、土地の移動其の他に付ての制限を設けて居りまする、併し實際上此の制度が行はれました以後に於きまして、茲に又小作地として六七十萬町歩と云ふものが殘つて居るのであり、又開墾其の他の面積も殘つて居る譯でありまして、自作人が其の經營を擴げる爲にそれ等の土地を自由に買ひますること、即ち經營者が土地を今後自由に買ふと云ふことに付ては別に制限はない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=137
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138・八重樫利康
○八重樫委員 了承致しました、次に一町歩の小作地を殘した問題であります、是は先程の質問者が質問した面とは別の面に於て、私は殘して置けば弊害があると思ひます、なぜかなれば、私の申上げることは、一町歩ばかり殘されても、勿論小作人は迷惑致しますし、地主も迷惑千萬なのであまりす、なぜかなれば、現在の農村に於ける最も癌とする所は、農村に二つの潮流のあることであります、農村にある者は、學校の先生であらうと、坊さんであらうと、心を協せて健全な農村を作らなければならぬと云ふ點に於きまして、一町歩を殘すと云ふことは必ずそこに爭議が起きます、其の爭議につけ込んで、私の謂ふ、最も面白くない、百姓でない指導者が隨分食ひ込む、私は農業を指導する者は必ず鍬を取れと言ふ、拙くても、長引いても、百姓の手に於て解決付いたものであれば宜い、必ず農民以外の農村指導者が食ひ込んで來る例がある、農民組合に於ても農民自身が作つたものは旨く行つて居ます、又農業會に於ても、眞に働く農民が指導者になつて居る農業會は旨く行く、所が職業的な、所謂農村指導者なるものが農村に食ひ込んで來る、さうして村を紊亂させると云ふことを惧れるのであります、一町歩の小作地を殘すことは、健全な農村に爭を起す因であるから、私は一町歩などと云ふものは要らぬと思ひます、私は斯う云ふ考へを持つて居りますが、農林大臣の御所見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=138
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139・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふ御意見も或は立つかも知れませぬが、小作地として殘つて居ります土地に付きまして、必ずさう云ふ爭議が起ると云ふことを前提に致しますのも、是れ亦どうかと思ふのでありまして、其の點に付ては、私は必ずしもさうは考へて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=139
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140・八重樫利康
○八重樫委員 事實現在に於てもあるのであります、私は或る農民組合に頼まれて行つたのでありますが、農民にあらざる農民指導者が來て、農民組合から集めた白米を食つて、鮭の洗ひを食つて土産を持つて歸つて行つたのであります、所が此の農民組合は豈圖らんや崩壊したのであります、眞に農村の中から盛り上つた農民組合なら宜いのであります、私は、眞に健全なる農民組合は農村人の手に於て解決すると云ふ建前を持つて居るのでありますから、斯う申上げたのでありまするが、農林大臣は心配がないとするならば、意見の相違であらうと思ふ
次に御伺ひしたいことは、先程上林山君が質問した點でありまするが、私には九人の子供があるのであります、假に私が一町歩の土地を殘してころつと死んだ場合に、それが九人に分割されて、詰り遺産相續になるのですが、其の時に於きまして其の土地が如何樣に將來處分されて行くのか、それが相續の體系は其の孫に至つて、其の曾孫になつてどう處置されて行くか、而も其の中に一人の相續人があるのでありますが、後は全部他の方へ行つて居ると云ふ場合に於ける民法上の今後の見透しと云ふものを、幸ひ司法政務次官が參つて居りまするから、どちらからでも宜しうございますから御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=140
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141・古島義英
○古島政府委員 御質問の通りであります、實際現に所有して居る方が亡くなつたと云ふことになりますれば、今度の民法改正の要綱に依りますと、大體其の直系卑屬と、配偶者がそれを相續すると云ふことに相成るのであります、さう致しますと、其の配偶者と直系卑屬が相續致しますから、其の場合には僅かに五つか十に割れるだけであります、所が其の孫さんが相續し、曾孫が相續すると云ふことになりますれば、恐らくは一坪、二坪と云ふやうな部分まで分裂して參ることと思ふのであります、それは理論的にさうなりますが、それを如何に救濟するかと云ふのは、先程上林山君に御答へしたやうな次第でありまして、即ち司法省の考へでは、委託耕作と云ふやうなことにでもし、さうして一定の人、其の相續の方々が或る人に委託をすると云ふことにでもしたらどうか、委託を必ずしろと云ふことにしたら宜いのではないかと云ふ考へを持つて居ります、併しながら其の法案を如何に作るかと云ふことに付ては、今折角それを審議會に掛けて研究を致して居ります、若し其の儘で進むと云ふことになりましても、實際は共有に相成ります、共有になれば、民法の共有の法條に依りまして、共有者の一人は何時でも共有權の分割が請求出來ると云ふことになりますから、同じの斯樣な分裂すると云ふ危險がある、そこで若しさう云ふやうな法律を拵へれば、其の共有權の分割の制度までも改正して掛らなければならぬと信じます、及ぶ所が甚だ重大でありますから、今日之を研究して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=141
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142・八重樫利康
○八重樫委員 其の點農林大臣から御伺ひ致したいと思ひますが、只今のやうな場合に於きまして、長男が實際は耕作をして居る、次男は東京に來て居ると云ふ場合に、其の父が死んだ場合に於きまして、其の次男に共有權がありまするが、是は不在地主となりますか、どうですか、不在地主となりますれば、歸つて來ると共に耕作の權利がそこに發生するのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=142
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143・和田博雄
○和田國務大臣 只今司法省の方から、民法上の法律論の論理を發展さして戴いたのでありますが、私は、此の問題は農政の面から、經營が細分しませぬやうに特別な立法が要るのだと思ひます、是はどうしても農政の立場から、丁度「ドイツ」の「エルプホーフ・ゲゼック」のやうになるかも知れませぬが、何等かの形で或る一定の限度の耕作面積と經營面積が減らないやうな、さう云ふ特別の立法をしなければならないのでありまして、民法の建前と云ふよりも、寧ろ將來の日本の農政の制度を固めると云ふ別個の見地から、是は特別の立法を致すべきものだと考へて、此の點に付きましては我々の方としても研究致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=143
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144・八重樫利康
○八重樫委員 さう云ふ風な方法に依つて此の問題を解決することに付ては了承致しましたが、此の法律が公布になつた場合に、其の方法が後廻りして、ぽつつり死んだ人があつたと云ふ場合には、臨時的措置として如何なる方法を御執りになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=144
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145・和田博雄
○和田國務大臣 是は民法の改正の間に合ふやうに私の方としてやりたいと思ひます、併し唯法理論としては、御尋ねのやうな論理を展開し得ると思ふのでありますが、實際上農村として見ますれば、やはりそこには協同體としての家がある譯でありまするから、そこは實際問題として、内部的に家々に依つて、具體的に問題を解決され得る部分もある譯でありまするから、形式的にのみ問題を考へる譯にも參らないのでありまするが、それは我々の方としましては、民法の改正と歩調を合せまして、是非其の點に付ての處置に遺憾なきを期したいと考へて居る次第であります、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=145
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146・八重樫利康
○八重樫委員 其の問題は幾ら食ひ下つても其の程度だらうと思ふのでありますが、次に本法と關係の深い開拓の問題に付きまして御伺ひ致したいと思ひます、開拓は、好むと好まざるとに拘らず、是非なさなければならぬ仕事でありまするが、一部の人達が申しますやうに、今直ちに何百町歩の開墾をせよと申されましても、現在計畫中の所謂豫定地の中に、既墾地に附屬して居る所の牧草地、採草地、薪炭林があるのであります、是等を一擧に開拓するが如きは、片方に於きまして不毛地の開拓は出來ましても、既耕地に對する一種の減産を來すと云ふ結果になるのでありまするが、さう云ふ點を十分に御考へになつて居るかどうかと云ふ點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=146
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147・笹山茂太郎
○笹山政府委員 新しく開墾する場所で從來の農村が使つて居りました採草地とか、或は薪炭林、さう云つた方面に付きましては、私の方で一つ十分注意して參りたいと思ひます、新しく開墾地を開墾すると云ふことは、今までの農業經營を發展させる、從來の農村の發展と云ふ形で考へたいと飽くまでも思つて居るのでございまするから、苟くも從來の農村の農業經營に不都合が生ずるやうなことのないやうに指導して參る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=147
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148・八重樫利康
○八重樫委員 それからどうも現在の開拓計畫は、農業土木的に之を解決しようとする憾みがあります、私は實際現在開拓をやつて居るのでありまするが、開墾地に助成をするよりも、其處に新しい部落を建設すると云ふ前提の下に仕事を進める方が宜い、さうして電燈の設備であるとか、井戸の開鑿であるとか、凡ゆる文化施設を出來るだけ進めて、さうして永遠に定著性のある所の生活を營ましめれば、開墾などと云ふものは直ぐ出來るのであります、昔の人間は隨分山の上でも開墾が出來た、此の開墾と云ふものは、計算や農業土木では出來ないのであります、金を溜めるやうな者は開墾地に入らぬのであります、金を溜めるやうな者は、錦を飾つて郷里に歸る、稼ぎたくない時は、濁酒を飮んで三日も山の中に寢て居つて、食へなくなれば働くのが開墾地の状況であります、斯う云ふものを數字の上で斯う斯うと言つても出來ない、私は實際やつて居るのでありますが、どうも模範青年は皆逃げてしまふ、だから今後の開墾としては、農業土本的な施策と云ふものを後廻しにして、新部落の建設と云ふことを目標としたらどうか、此の點に關しまして農林大臣から聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=148
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149・和田博雄
○和田國務大臣 それは御説のやうに私も考へて居ります、やはり開墾と云ふものは、住居から何から與へて行きませぬと、どうしても落付きませぬ、從來のやり方に付きましては、色々皆さん方の御批評もありましたので、十分其の點を採入れまして、今後はさう云ふ方向でやつて行く、斯う云ふ風に致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=149
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150・八重樫利康
○八重樫委員 次に經營の問題でありまするが、本法の目的は、農業耕作者の生活の安定と食糧の増産、所謂食糧生産の發展性と云ふことでありまするが、是は私實際百姓をやつて居りまするから、私が一番能く覺えて居る、あとの人は話を聞いたり本で見たりした質問が多いだらうと思ひますが、是が絶對兩立しないのであります、絶對増産をしようとすれば、生産費は餘計掛つて來る、さうして報酬遞減の法則に囚はれる、百姓を巧くやるには、餘計穫らないで生産費を切下げると云ふことが、農業經營の建前なのでありますが、其の何れを採つて今後指導して行くか、今までの農業指導と云ふものは、絶對増産を目標として居る、米が餘つて減段問題が起きた時でも、絶對増産を目標として來た、斯う云ふことを鵜呑みにして來た結果、農村不況に陷つた、本當の農業經營と云ふものは、餘り澤山穫らないで、樂をして生産費を引下げると云ふ所に値打があるのであります、之をどつちを採るか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=150
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151・和田博雄
○和田國務大臣 それはやはり經營のやり方の問題になるのではないかと思ふのでありまして、やり方を巧く變へさへすれば、多く穫れて、「コスト」も下つて來る、斯う云ふことに農業がならなければならぬのではないかと私は思ふのでありますが、働けば働く程澤山穫れるが、併し「コスト」は高くなつて、生活が何時までも良くならないと云ふのが、今までの農業の惡かつた點でありますから、其の點は改めるべきではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=151
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152・八重樫利康
○八重樫委員 今まではさう云ふ風に指導されて來たのでありますが、百姓と云ふものはどつちかに偏るのであります、併しそれは其の程度で宜いのであります、次に私が最も聽きたいことは、農村の勞力問題であります、現下勞働組合が發達致しまして、政府も之に對して相當哺育して居ります、さうして所謂工場勞働者方面では、十時間を八時間にして呉れとか、或は待遇の改善を叫んで居りますが、農村の勞働問題をどうするかと云ふことを考へた人は一人もない、一體農村は封建的であるとか何であるとか言つて居るけれども、百姓と云ふものは、朝起きると夜寢るまで、さうして年寄りも子供も女も男も、殊に婦人の如きは、子供の養育、家事の勞働と云ふものを特別に働いて居る、此の問題の解決は、經濟的或は文化的の向上に依ると云ふやうな、抽象的な言葉で言へば言へまするが、此の點に對しまして農林大臣は如何なる考へを持つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=152
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153・和田博雄
○和田國務大臣 農業に於ける勞働と工場の勞働とは、全く違ふ點がある譯であります、もう申すまでもなく、農業では自然の制約を受けまするので、勞働に於ても非常に忙がしい時と非常に忙がしくない時とがある譯でありまして、工場勞働に於けるやうにずつと平均的に勞働すると云ふ譯にはならないのであります、そこで考へますのは、片方は經營に於ける賃勞働者でありますが、片方の農民と云ふものは、何と云つても一家獨立の經營者なのでありますから、經營の内部に於ての勞働の分配と云ふものを能くやつて行く、斯う云ふことで此の自家勞働の問題と云ふものは解決して行くことになるのであります、之を一般の勞働問題としますれば、農業勞働力の需給の調整と云ふ事柄は、都市の工場勞働とは違ひまして、非常な繁閑がありまするので、結局其の大きな山と谷との間をどう云ふやうに、村なら村全體として均らして行くかと云ふことになるのであつて、質的には全然違つた問題だと思ひます、其の意味に於て、農業に於ける勞働と云ふものは、經營内部の勞力分配の問題として取扱ふべきものであると思ひます、それから賃勞働者があるのでありますが、農業に於ける獨立の賃勞働者は、正確な數字は分りませぬが、極めて僅かでありまして、之に付きましては只今の所勞働組合も何もないのでございますが、是等の問題に付きましては、さう云つた組織其の他に依つて漸次改善を圖つて行く、斯う云ふことにならうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=153
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154・八重樫利康
○八重樫委員 さう云ふことになりますれば、現在の農民と云ふものは宿命的にさうなのだから、現在以上經營の面に於て之を是正するより外に方法がないと云ふ御話でありますが、如何に農業經營を改善致しましても、現在の勞働の半分ともなる譯には行かないのであります、何も好んで今まで經營の面を考へて居らない百姓はない、色々考へて、如何にして此の勞働と云ふものから脱却しようか、幾らかでも減らさうかと考へて來たのであります、併しながら是が出來得ないのには色々原因があるのであります、住宅の構造も惡い、さうして、婦人の解放なんて、農村の女に參政權を與へて居りますけれども、恐らく誰を書いて宜いか分らないと思ひます、農村の婦人は「ラジオ」を聽く暇も、新聞を見る暇もない、此の點は考へなければならぬと思ふ、農業の經營の面に於て適當にやるなどと言つたつて、是は到底出來ないのであります、是は重大な問題であります、將來の農民を解放するなどと言つても、現在の小作人の頭では、解放された所で、實際に於ては頭の良い者が來て凡ゆる方法に依つて搾取するのでありますから、搾取されないやうな耕作農民を作るのには、やはり頭を良くしなければならぬ、所謂農の改良は農民の改良から始まらなければならぬのであります、現在の勞力の問題、それから耕地と云ふものが一つの枠に嵌まつてしまつて、將來は働いても澤山の土地も持たれない、分家も出來ないやうな状態になつた時の農村の勞力問題は、別に取上ぐべき問題ではなからうかと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=154
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155・和田博雄
○和田國務大臣 一寸私にも理解し兼ねる點があるのですが、結局は、現在の農家の働き方をもつと合理化して、そこに餘剩を作つて行く、斯う云ふことになるのではないかと思ふのでありまして、是は言換へますれば、農業に於けるやり方を改良致しまして、自然の制約から來る不合理な點をどの程度に解決して行くか、斯う云ふことになるのであつて、農業經營の改善と云ふことは、言換へれば勞力問題の一つの改善、斯う云ふことに歸著するのではないか、斯う思ふのであります、勿論それをやりまするには、現在の農民の知識なり教養なりを高める萬般の施設を必要とすることは當然であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=155
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156・八重樫利康
○八重樫委員 最後に御伺ひ致したいことは、海運と國鐵の所謂同盟罷業の問題であります、是が農村にどう響いて居るかと云ふこと、是は私能く聽いて戴きたいと思つて居るが、郷里に歸つた場合に問題になつたのであります、農民組合から、私に來て呉れと云ふのでわざわざ歸つたのでありますが、或る會で農民が集まりまして、勞働者が生活維持の爲に政府と鬪つて居る、經濟鬪爭を超えて政治鬪爭にまで入つて居る場合、農村の不況と云ふものが眼前にぶら下つて居る時に於て、我々は政治鬪爭と云ふものはやらないが、經濟鬪爭と云ふものだけは開始しなければならぬ、そこで農村の不況は、勞働者のやうに、今日から待遇が好くなれば直ぐ金が入ると云ふのではないから、一年も前から始めて貰はないと、不況のどん底になつてからでは遲いと云ふ時に於きまして、あの「ゼネスト」の問題が新聞に出て來た、それなら我々はどう云ふ方法で農民運動を起すかと云ふことの苦心をして居つた場合に、あの報道が傳はつたので、百姓共は、さうだ、我々は此の方法だ、百姓が百姓の生活維持の爲には、供出米を阻んで運動を繼續するより外にない、我々の要來する千二百圓の米も實現が薄い、我々の方法は是より外にないと云ふので、其の運動に著手しようとしたのでありますが、私は、待て、米の値段は決定的ではない、農村に對する方針も、まだ議會開會中であつて、はつきりしない場合に於て、農村と云ふものは所謂道徳の源泉池であると云ふことを考へて、さう云ふ輕擧妄動をすべきものではない、勞働者がどうしようと、我々は餘程考へなければならぬ問題だ、斯う申して來たのでありますが、若しも是が一旦決行された場合に於きましては、農民運動と云ふものは根強いのであります、勞働者のやうに、昨日運輸大臣が説明をし、今日納得するやうなものではない、やり出したら是は凄いのであります、其の時に於きまして、農林大臣が農民道徳の昂揚などと言つても、效くものではありませぬ、どうしても此の運動を抑へるには、一般勞働組合の罷業と云ふものと農民運動と云ふものを竝行さして行かせる大要があると思ふ、若しも農民がさう云ふ運動を起した場合に於て、強權發動なり食糧管理規則を適用するが如きことがあつたならば、是は政治に於て非常に不公平があると私は思ふ、此の點に對しまして農林大臣は──我々は農民であります、農民の今後に於ける行くべき道をすつかり握つて置きたいと思ひますので、責任のある御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=156
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157・和田博雄
○和田國務大臣 どうも私甚だ答辯に困るのであります、農民のさう云ふ政治運動と云ふ點に付てでありますが、私は農民と普通の賃金勞働者とは全然違ふと思ふのであります、片方は勞働力を賣つて生活をして居るのであります、片方は商品生産者なのであります、そこの所には、性質的に完全に違つたものがあると思ふのであります、それ等の點、將來の問題に付きましては、我々と致しましても十分御話のやうな點は考へまして研究を致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=157
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158・八重樫利康
○八重樫委員 私は立場は同じだと思ひます、勞働者が生活維持の爲に鬪爭する、生活權獲得の爲に鬪爭する、我我百姓も生活權の爲にさう云ふ方法を執ると云ふのは同じである、重要な肥料、農機具、食糧、石炭の運搬まで停止してやると云ふことは、一般人の生活權を脅かして居ります、我々食糧の供出拒否も同じであります、此の場合に於きまして農民の運動を抑へ付ける、一方だけは成だけ抑へ付けないで、圓滿に解決すると云ふことは、甚だ不公平であると思ひますが、我々は強權の發動其の他に付きまして既に決議濟みでありまして、どうも自分達が繩に掛かることを決議したのでありますから──それを掛けられても甚だ困るのでありますが、さう云ふ空氣が出來たとすれば、實際昨日の農業會長會議に於きましても、二割位供出して、あとは米の値上りまでは止めた方が宜いのではないかと云ふ發言があつたのであります、是と睨み合せて、是は餘程重大に考へなければならぬと思ふのであります、此の勞働運動と農民運動に付きましては特段に御考究を願つて、勞働者と同樣に此の運動を取扱つて貰ひたい、食糧生産者であるからそつちの運動は惡い勞働運動だけは、生活權の維持の爲には食糧運搬を止めても宜い、宜いとは言はなくても、已むを得ないと云ふやうな御取扱がないやうに、一つ御考究を願つて置きます、まだまだ聽きたいことは抱へて居りますけれども、前質問者が聽いたり、時間もないので此の程度で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=158
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159・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木清左ヱ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=159
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160・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は先づ第一番に、參考資料として戴きました中の「ポツダム」宣言に依る日本の土地改革に關する資料に付て質して見たいと思ひます、其の一、農地改革に付ての覺書、一九四五年十二月九日の分でありますが、此の第一囘の土地改革をやつて、又更に今囘第二次の土地改革をやつた、其の間僅かに六箇月にしか過ぎなかつたと云ふ此の事實を考へて見ますと、そこに政府の提案の上に於て、又議會が議決致しました其の結果より見て、何かそこに不附合ひなものがあつたと云ふことを看取されるのであります、隨て先づ前提として御聽きしたいのは、最初の第一次の土地改革に於きましては、地主の保有面積が五町歩であつたのが今度一町歩になつた、其の間の推移に付て農林大臣の御説明を承りたいのであります、又其の間の聯合軍司令部との間の色々な交渉の點にも觸れて戴ければ尚ほ結構であります、是は一般國民が非常に不可解に考へて居る點でありまして、一つ御説明を戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=160
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161・和田博雄
○和田國務大臣 第八十九帝國議會に提出致しました、第一次農地改革の内容としまする農地調整法の改正の審議が致されて居りました丁度十二月九日に、農地改革に付ての覺書が出た譯でございます、之に依りますと、日本の政府は、一九四六年三月十五日までに、次の諸計畫案を内容とした農地改革案を司令部に出せと云ふことに相成つて居るのでございます、此の指令に依りまして、第八十九議會に於きまする御審議、御可決を經ました後、農地調整法の改正と云ふものがあつたのでありまするが、三月十五日までに此の指令に依る計畫を聯合軍司令部に出す義務を政府としては負つた譯でございます、そこで是等の條項を色々斟酌致しますると、結局第一次の農地改革の線に沿ひまして、それを強化する一つの案を提出致すことに致しまして、三月十五日に提出致したのであります、さう斯う致しまする中に、此の土地制度の改革に付きましては、司令部の方と致しましても、日本の民主化の上に付きまして重大な關心を持つて居りまして、それが次いで對日理事會に提出され、其の議案となりまして、此處に御配り致しましたやうな「イギリス」案でありまするとか、或は其の他の國々からの案が出て參つたのであります、其の對日理事會の席上に於きまして、「アチソン」は、此の日本の第一次農地制度の改革及び三月十五日に出したものに付ては、日本政府が非常に眞摯にやつて居ることは認めるが不十分だと云ふことを、はつきりと言明致して居るのであります、對日理事會に於て議案として審査されて居ります間、又三月十五日の案を出しました以後も、政府と致しましては關係方面と始終折衝を致し、話合ひを致した譯でございまするが、農地制度改革案と致しましては、何としても前の五町歩と云ふ保有の限度に於ては土地の解放と云ふものに付て不十分である、何としても多くの耕作農民に土地を與へて、是が地位を安定せしめる必要があると云ふことの強き主張がありまして、今囘提案致しましたやうな一町歩と云ふことに相成つた次第でございます、さう云ふことに依りまして大體二百萬町歩の小作地を自作地化すると云ふことに相成つた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=161
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162・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうすると、前の五町歩の決議に付ては、「マッカーサー」司令部との間は殆ど沒交渉であつたのでありますか、どの程度の諒解が進んで居つたのでありますか、其の點まだ農林大臣の御説明ははつきりして居りませぬ、勿論其の時には大臣でなかつたのでありますが、此の問題には深く御關係になつていらつしやると思ひますので、御質問を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=162
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163・和田博雄
○和田國務大臣 第一次の農地改革に付ては、政府が「イニシアティーヴ」を執りまして、農林省と致しましては、原案と致しまして三町歩案を出したのでございまするが、閣議に於きまして五町歩に相成つた譯であります、隨て此の法案を出しますに付きましては、さうなつた閣議の決定其の他を向ふへ持つて行きまして、色々説明を致して居つた次第でありまして、さう云ふ係りとの間の説明其の他に付ては、十分な了解を得て居つた譯でございますが、勿論それを以て向ふが十分と致しませずに、此の農地改革に付ての覺書を途中に於て出して來た次第なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=163
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164・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 五町歩が三町歩になつた經緯に付ては、餘り深く突込むのもどうかと思ひまして此の程度で止めますが、三町歩が一町歩になつた理由を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=164
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165・和田博雄
○和田國務大臣 三町歩が一町歩になつた理由は、三町歩に於てもまだ農地の解放に付ての程度は十分でないと云ふことでありまして、三町歩の場合には、大體日本の小作地の約半分位が解放されることになりますが、一町歩に於て約八割と云ふものが解放される、斯う云ふことでありまして、日本の農村民主化を徹底的に致しまする爲に、一町歩と云ふものを適當と致した次第なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=165
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166・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私が只今斯う云ふ質問をして居ります理由は、國民の間に──農民の間にと言つても宜いのでありますが、去年の八月十五日に停戰の詔書を我々が拜承致した時、日本は負けたけれども、占領軍の方では一時に日本を潰すのではなくて、徐々に潰して行くのだと云ふ一般的な批評があつたのであります、勿論私自身も、農民の中心をなす指導者も、斯かる批評には耳を藉さないのであります、所が此の農地改革それ自體を考へて見る時、最初の第一次的な案では非常に生緩かつた、それが今囘第二次的に強いものになつた、更に第三次、第四次的の改革が來るのではないかと云ふことで、非常に怯えて居ると言つては誤弊があるし、期待して居ると言つても誤弊があるでせうが、兎に角さう云ふことを考へて居る、隨て私は此の間の事情を或る程度はつきり致さなければ、恐らく此の日本を占領して居る聯合國が自分自身で軍政を布くのでなくして、天皇を中心にした日本の現在の政治家に依つて占領政策を代行させて居ると云ふ、此の聯合軍の眞意を、私は日本の國民が寧ろ誤解するやうな結果になりはせぬかと考へて居る譯であります、それで此の點を明かにしたいのでありますが、農村の民主化と云ふことが強く叫ばれ、現在の日本の政治は民主化と云ふことを中心としてやつて居る、此の民主化と云ふ言葉を更に平たく申せば、恐らく納得の行く政治と云ふことだらうと思ひます、隨て農地の改革に付きましても、やはり國民齊しく納得する改革でなければならぬ、又小作人齊しく納得する改革でなければならぬ、と同時に地主も齊しく納得する改革でなければならぬ、此の點に於きましては、曩に農林大臣は土地改革の趣旨を徹底致す點に努力すると申されたのでありますが、是は私共の考へて居ることと同じ線を農林大臣も進んで居られるので、非常に結構であります、私は此の納得の行く民主的の農地改革を行ふ爲に、どうしても改革の趣旨を農民に徹底させると云ふ見地から、一つ私の質問を進めて行きたいと思ふのであります、隨て曩の「ポツダム」宣言の問題になるのでありますが、此の日本に對する覺書を讀んで見ますと、果して日本政府が此の覺書通りに總てのことを實行して居るかどうか非常な疑ひを持つて來るのであります、唯實行して居る點は、農地改革の法案を第一次と第二次と御出しになつたと云ふことだけなのです、それ以外に此の農地改革の覺書に現はれて居ります、第二項の「A極端なる零細農形態」「日本の過半數の農家が一・五二エーカー以下の土地を耕作してゐる」と云ふことが日本の農村の癌である、さう云ふことが先づ指摘してあります、其の次に「極めて高率の農村金利の下に於ける農村負擔の重壓」と云ふことが「C」として規定してある、又「D」へ行きますと、「商工業に對比し格段に農業に不利なる政府の財政政策」「E」へ行きますと、「農民の利害を無視せる農民乃至農村團體に對する政府の權力的統制」、之を改善しなければならない點だとして指摘して居るのであります、まだ他にも澤山ありますが、政府は是等の諸點に對してどう云ふ政策をやつたか、此の點を私は御説明を得たいと思ひます、斯う云ふやうな聯合軍の指摘せる點に於て、日本の政府が甚だ怠慢である結果が、第一囘の農地改革を今議會に於て我々が決議したにも拘らず、尚ほ第二次の改革をやらなければならぬと云ふやうな原動力を成して居るのではないかと思ふのでありますが、之に付て一つ御説明を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=166
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167・和田博雄
○和田國務大臣 それはさうではないのでありまして、此の第二のA、B、C、D、Eは日本の農業構造を長きに亙つて病的ならしめた其の原因は斯う云ふものだと云ふ、斯う云ふ向ふの日本の農業構造に對する分析に關する一つの意見とも見るべきものなのでありまして、之に付て日本政府がどう斯うしろと云ふことではないのであつて、日本の政府は三項に依りまして、三月十五日までにA、B、C、D、E以下の内客を持つた一つの改革案とを出せ、斯う云ふことにあるのでありまして、農地の改革に付きましては、今囘の農地改革に依つて、是等のものの内容は十分採入れられて居るのでありまして、其の點に付て、聯合軍司令部に於ても、之を十分承認致して居るのであります、唯協同組合其の他の點に付きましては、是は今後の協同組合法等に依りまして其の實現を圖りたいと思つて居る次第であります、又農民に對する技術上其の他の啓發事項の點に付きましては、技術振興に關する施設を、是は聯合軍司令部と十分打合せました上で、豫算にも計上致しまして、只今其の實施を致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=167
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168・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論此の文面の上に於てはそれを示しただけでありますが、此の文面が現はれて居ると云ふことは、そこに日本の農村の缺陷を衝いて居るのでありますから、此の衝かれた點に付ては、政策の上に於て、十分なる解答を與へなければならぬと思ふのであります、其の次に第三項の中のD項「小作人が自作農化したる場合再び小作人に轉落せざるを保障するための制度」、Dの第一が、「適正利率による農村長期及び短期信用の普及確保」、斯う云ふ問題がありますが、是等に付ても現在の金融部面に於てどう云ふやうな改善方法を、政府は既に御執りになつたのか、法律を出すやうに研究して居ると云ふのではいけないのであります、もう既に此の指令を受けてから半年以上に相成るのでありますから、何等か政策の上に現はれて來なければならぬと思ふのであります、其の次の第二の「加工業者及び配給業者の搾取に對する農民の保護手段」と云ふことに付ても、又第三項の「農産物價格の安定策」、又第四の「農民に對する技術上その他の啓發事項普及の計畫」第五項の「非農民的利害に支配せられずかつ日本農民の經濟的文化的進歩を目的とせる農村協同運動の釀成竝に奬勵計畫」と云ふことに付ても、私は恐らくまだ日本の政府は、殆ど手を着けて居らないと思ふのであります、是ではいけないと云ふことを私言ふのでありまして、隨て今どう云ふ面に於て是等の諸事項に付て政府は手を著けて居るか、其の具體的な現はれを一つ御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=168
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169・和田博雄
○和田國務大臣 第一項の「適正利率による農村長期及び短期信用の普及」と云ふことに付きましては、差當りは中央金庫法の改正と云ふことに依りまして、中金に長期の農地開發、自作農創定、其の他の長期の金融の途を講ずると云ふ施設を差當つては講じた次第であります、それから「加工業者及び配給業者の搾取に對する農民の保護手段」、是は結局は農民の自治的團體を助長致しまして、其の力に依つて此の目的を達成すると云ふことにあるのでありまして、それ等に付ては協同組合法と云ふものを制定致したいのでありますが、此の議會には提出する運びに至らなかつたのであります、それから農民の技術啓發に付きましては、技術振興の施設として、只今豫算を八千萬圓ばかり計上致しまして、各五箇町村に一個の指導農場を置きまして、其の準備をやつて居る次第であります、それから農産物價格の安定策に付きましては、現在は寧ろ「インフレ」景氣でありまして、物價の安定と云ふか、斯う云ふことを致して居る所であります、それは經濟安定本部に於て、農産物のみならず、其の他の物價政策として施策を採ることに致して居る次第であります、他のE項の「農民の國民經濟への寄與に相應にしたる農民の國民所得分け前の享受を保障するため必要と認めらるる計畫」、斯う云ふものは色々なものがある譯でありまして、是等に付ては、今後必要に應じて具體的に之を實施致す、斯う云ふ考へで居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=169
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170・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是等に付ての細かい點は、又後から一つ質問を致すことと致しまして、其の中の農業協同組合法案を──是は本會議に於ても質問があつたのでありまするが、何故に之を延ばしたかと云ふ理由に付て、本會議では餘り御説明がなかつたやうであります、此の農地の改革を實行すると共に何と云つても農業會の民主化と云ふ意味に於ける農業協同組合と云ふものが、即時、農地改革と竝行して進められなければならないにも拘らず、此の改革案を先にやつて、肝腎要の農業協同組合法案を來議會に廻はしたと云ふ、其の行き方に付て非常な疑問を持つて居るのでありますが、此の點一つ御説明を得たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=170
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171・和田博雄
○和田國務大臣 農地制度を改革致しますれば、中小の自作農民が農村の主流となりますので、それの協同組合と云ふものは必要となるのであります、我々と致しましては、一應の素案を作つた譯でありますが、偶偶金融措置令等に依りまして農村の金融關係に相當の影響を持つ法案が出て參りましたので、それ等の影響を今暫く見まして、其の整理を俟つた上で協同組合法を出す方が實は適當と考へて、私としては延ばしたのであります、又協同組合法案其のものに付きましては、各方面に於てそれぞれの御意見もありますが、我々としては、一應此の金融措置令の結果を俟つて出す方が適當と考へまして、次の機會に讓つたのでありまして、さうすることに依つて實質的にはさして支障がないもの、斯う見透しましたが故に延ばした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=171
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172・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に第二囘の農地改革案の基礎になります所の英國案に付て檢討して行きたいのでありますが、是は英國案自體を檢討するよりは、私の質問の中に當嵌かを、其の場合々々に依つて檢討して行つた方が便利だと思ひますので、是は後廻しに致したいと思ひます
先づ第一に、私は零細農家の生産部面への再組織と云ふ問題に付て御質問致したいと思ふのであります、此の農村の癌と申しますのは、何と云つても零細農家が──一町歩以下の農家が日本の農家の七割を占めて居ると云ふことが原因であると私は考へるのであります、所が何が故に是が農村の癌であるかと申しますと、收穫の面に於て、此の零細農家の收穫と、それから此の零細農家の中には勿論轉落農家、或は惰農と云ふものが含まれて居るが、又其の一方に於て精農と云ふものがあるのであります、此の精農と惰農の差が收穫の面に及ぼす影響は非常に大きいと思ふ、隨て精農、惰農の區別を再組織して、何とか惰農を追放して生産部面へ動員する途はないかと考へるのでありますが、農林當局は此の事柄に付てどう云ふ考へを持つて居られるか、先づ御聽きしたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=172
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173・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の自作農の創設に於きましては、惰農に土地を與へる積りはないのでありまして、何とかして將來精進して行く人達に土地を與へて、之を自作農にして行く、斯う云ふ從來執つて居りました方針は變りはないのでありまして、惰農をして本當に精農たらしめます爲には、唯單に斯う云ふ土地の改革だけではありませぬで、やはりそこに共同の力に依り、又教育其の他に依りまして之を鞭韃して行くより外には方法はないのであります、實際上惰農でありますならば、是は經濟的には一つの失敗者となる譯でありますので、さう云ふ自ら來る所の制裁は勿論惰農をして起たしめる一つの要素ではありませうが、我々と致しましては、協同の組合なり教育其の他の面の力に依りまして、さう云ふ惰農を整理するやうに導いて行きたいと考へて居るのであります、今度の農地改革は、さう云ふ人を自作農にすると云ふことは決して考へて居るものではないことを御諒解願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=173
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174・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は惰農の整理と零細農家の整理と云ふ意味に於て、今度の土地解放の條件に付て、生産意欲に燃えて居ること、即ち供出の部面に於て相當の成績を擧げて居ると云ふことが、先づ第一條件にならなければならぬ、例を以て申しますならば、其の大字に於ける供出の「パーセント」が其の部落に於ける平均以下の者には土地配分を受ける資格がないと云ふやうなことをはつきり示すならば、供出を百「パーセント」完納したならば、地下足袋を與へるとか、肥料を與へると云ふやうな、子供騙しのやうな方法ではなくて、總ての農民が最も欲して居る、自分の作る田だけは自分の所有にしたいと云ふ希望があるのでありますから、さう云ふ農民悉くが欲して居る點に此の解放上の條件を持つて行くならば、恐らく供出の問題などは立どころに解決すると思ふのでありますが、此の點農林大臣は如何に考へて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=174
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175・和田博雄
○和田國務大臣 供出の成績と是とを直接結付ける譯には參り兼ねますが、農地委員會其の他が買收計畫又は賣渡計畫を立てます時に、惰農に土地が行くことを避けまして、出來るだけ本當ゆ農家として精進する生産意欲に燃えた人に行くやうに指導して行く考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=175
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176・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の問題から從つて供出の問題に觸れて行くのでありますが、本年度の供出の基準は一筆調査だと云ふことを承つて居るのであります、さうなると、一生懸命に努力した者に對する報酬がないことになる、是は大それた考へかも知れませぬが、闇で肥料を買つて田圃にうんとやつた、米はうんと穫れた、勿論此の餘分に穫れた米を闇で賣ることを奬勵するのは如何かと思ひますけれども、それだけ農民が努力したことに對しては、報酬がなければならぬと云ふ點から見ると、私は一筆毎の調査と云ふことは、供出の面に於て先づ失敗するのではないかと思ふ、斯う言ひますと、勿論農林大臣は、百「パーセント」以上供出した者に對しては相當米價を高く見積つてあるではないかと言はれるでありませうが、僅かに百圓や五十圓の金に依つて評價されるが如き精農の努力ではないのであります、其の金以上のものが私はなければならぬと思ふのでありますが、此の點をどう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=176
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177・和田博雄
○和田國務大臣 一筆毎に調査をしまする目的は、生産高を正確に把握致しまして、僞りの數字の下に供出の割當をやることを避ける爲にやつて居るのでございまして、供出の制度を本當に公平にやつて行く爲には、どうしても生産高を正確に掴むことが根本の條件でありまして、其の點に關しましては、委員の皆樣方からも今まで色々と御意見が出、又さう云ふ御要求があつた譯でありまして、我々としましては何とかして今年の生産高を正確に掴んで、納得の行く方法で供出の割當をやりたい、斯う云ふ苦心の現はれなのでございまして、其の點御諒解願ひたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=177
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178・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論農林大臣の意圖される所は能く分るのであります、此の間私は郷里に歸つたのでありますが、其の時農民は全部口を合せた如く、今年は一筆毎に調査されるのだから、來年などは青草を田圃にやらぬと言つて居る、闇で肥料を買つた者など不平が非常に多い、私は、今年餘りに此處に重點を置かれて供出を督勵致されますならば、恐らく明年度の收穫の上に大きな影響があると思ひます、兎に角農民運動に付ての御高見を同僚から拜聽致したのでありますが、農民の全體が勞働爭議のやうに「ゼネスト」を斷行するとか、「ハンスト」を斷行するやうなことは恐らくないのでありませう、併しながら現に農民の生産「サボ」が、斯う云ふやうなことを強行されることに依つて、農民の心の中に意識せずして藏されて居る──藏されて居るではない、もう既に農民はさう云ふやうな不平を甚だしく洩らして居るのであります、隨て今の農林大臣の御説明に依りますと、調査を正確にやらなければならぬから、正しい調査の爲には必要だと云ふのでありますが、それでは實際供出の面に於ては正しく調査をして、農民の努力に依つて一段から十俵穫れたら、十俵全部取つてしまふ──勿論保有米は殘すのでありますが、其の點をもう少しはつきり御答辯を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=178
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179・和田博雄
○和田國務大臣 供出の割當方式に關しましては、先般食糧對策委員會の方方と御打合せ致しまして、あの方式をやることに致しまして、各地方長官と打合せをして居る譯であります、勿論農家の再生産に必要な保有米ははつきりと認めまして、其のあとは一定の供出をして戴く、斯う云ふことに致して居るのでございまして、只今仰せになるやうに、調査をしたから來年は餘り田を作らぬと云ふやうなことを言ふ農民がありますならば、私はさう云ふ事柄はいけないのだと云ふことを寧ろ言ふべきであつて、さう云ふ心事其のものを是認することは出來ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=179
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180・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の問題は是れ以上觸れても期待する答辯は得られないと思ひますので、此の程度で止めて置きますが、此の供出の問題に付ては尚ほ色々議論があるのであります、即ち精密な調査をなされるのも非常に結構でありますが、精密なる調査をする爲には手間が要るのであります、誰が此の調査の任に當るか、是が問題であります、農民自身が調査に當ると言ひましても、百姓は忙しいのであります、殊に是等の調査をやる者は、恐らく精農が擔當するのでありまして、此の人的要素に於て、恐らく是が實現と云ふものに對して、非常な支障を來すのではいかと思ふのでありますが、此の點農林大臣は如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=180
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181・和田博雄
○和田國務大臣 其の御注意は、非常に有難い御注意でありまして、慥か九月一ぱいと思ひましたが、出來るだけ早い機會に、農家の忙しくならない内にやる、農家の人にも手傳つて貰ふと云ふことに致して居るのでありまして、それは是非末端に於きまして、忙しい農民の手を餘り取るやうなことのありませぬやうに、能く注意致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=181
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182・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 非常に諄いやうでありますが、實は農林大臣の供出に對する御考へに付て、御注意を喚起して戴きたいと云ふやうな考へから、もう一つ申上げたいと思ひますが、肥料を見返物資として御渡しになります、此の供出したから肥料をやると云ふこと、是は取扱の上に於ては甚だ結構であります、併しながら一般農民の間で、米を百「パーセント」完納出來るやうなものは、所謂精農である、精農に、農民に一番大切なる所の肥料を與へると云ふやうなことはいけない、寧ろ此の肥料と云ふものは平等に分けるべきであると云ふやうなことを主張して居るのでありますが、やはり今年もさう云ふことは御實行になりませぬか、寧ろ私共は他の物資を見返物資として與へるべきであつて、農家の一番大切な、一番増産の基本である所の肥料を、見返りとして農家に與へると云ふことは、宜しくないと思ふのでありますが、此の點に付ては如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=182
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183・和田博雄
○和田國務大臣 其の點も我々としましては十分考慮致して居るのでありまして、供出の對象にならない農家に付きましても、基準量の肥料だけは配給することになつて居るのでありまして、決して供出した者だけに肥料を配給すると云ふやうなことはやつて居りませぬ、基準の必要量だけは、總ての人に配給をすると云ふ建前を執つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=183
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184・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 基準量と言ひますけれども、其の基準量が豫定計畫と言ひますか、農家の必要量だけ渡つて居らないのが現状でありまして、此の點やはり私は不服なのであります、是は農民に取つて重大な肥料の問題でありまするから、もう一つ御聽きしたいと思ひますのは、此の肥料の増産は、議會に於て非常な問題となつて居る、併しどうも肥料増産に對して、或は肥料の國家管理とか、或は肥料に對する強力な増産の方法などに付て、何等かの法案が近く出るものと期待して居つたのでありますが、どうも此の議會には間に合はぬやうなことではないかと思ふのであります、國民は一番之を危惧して居るのでありまして、一つ農林大臣に此の點の御説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=184
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185・和田博雄
○和田國務大臣 肥料の増産に關しまする法案に付きましては、色々と折衝を致して居る譯でありますが、是が此の議會には間に合ひさうもなくなりました點に付ては、實は我々としても甚だ遺憾に思つて居るのでありますが、是は是非至急に何とか纒めまして、出來るだけ早い機會にやりたいと思つて居ります、併し此の法案が出ませぬでも、今まで増産に付て打つべき手は、金融の方面に於きましても、資材の方面に於きましても、著々やつて居りまするので、其の點は一つ御諒承を御願ひ致したい、斯う思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=185
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186・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に農地の再配分の條伴に付て御聽きして見たいのでありますが、其の第一は、地主より解放される所の土地を、どう云ふ風にして選定するのであるか、解放すべき土地選定の方法に付て御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=186
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187・和田博雄
○和田國務大臣 是は市町村の農地委員會がやることになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=187
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188・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 其の事務的手續ではないのであります、地主が持つて居る土地のどの田圃を買上げるとか、其の選定は勿論農地委員會がやるのでありますが、其の選定に付ての標準が恐らくあるだらうと思ひます、地主の中の一番良い田圃を取上げるのか、地主の厭な田圃を出して貰ふのか、其の點であります、選定の標準に付て一つ御説明が願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=188
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189・和田博雄
○和田國務大臣 是は地主の方にさう云ふ選擇權があるのではないのでありまして、法律の中にも規定致して居りまするやうに、市町村の農地委員會が農地の買收計畫を決めますには、左の事項を勘案して之をしなければならぬと云ふやうに、一、二、三とずつと書いてあるのでありまして、農地委員會が、此の村に於て自作農創設上必要と認めるものに付て、買收の計畫を立てることになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=189
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190・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうすると、農地委員會に兎に角權限があるのでありまするが、茲に農地委員會の主張と地主の主張と小作の主張との間に、所謂紛亂と云ふものが起きるのであります、隨て私はどう云ふ標準に依つて地主の土地を解放させるかと云ふ、一つの基準、或は平等なら平等、何れでも宜いのでありますが、それ等の基準を寧ろ政府は示して置く方が宜いと思ふのであります、隨て買收計畫に對して不服があれば、異議の申立が出來ると云ふ一項であります、其の不服とはどう云ふ場合が不服に該當するのか、此の點が土地解放の基準になるのでありまして、最も宜い方法でやると云ふやうな、さう云ふ簡單なことではいけないと思ふのです、此の點を御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=190
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191・山添利作
○山添政府委員 此の取扱に付きましては、只今農林大臣から御説明致しましたやうに、先づ以て地主からも、それから小作農からも、土地の調査と云ふ意味に於きまして、土地に付て色々の申告をして貰ひます、其の時に地主の方から賣りたいと云ふ希望を持つて居ります、又小作の方からすれば、此の土地を買ひたいと云ふ希望を持つて居ります、それ等のことを斟酌致しまして、農地委員會で買收計畫及び賣渡計畫を定める譯でございますが、其の場合に於きまして、自作農となるべき買手は大勢ある譯と云ひますか、總ての小作農の人達は、土地を買ひたいと云ふ場合が多いと思ひます、其の場合に、結局地主から買入れます土地の標準と致しましては、公正に、一人の地主に對して數人の小作人があると云ふ場合に、多くの人に土地購入の機會を與へるやうな買入れ方をする、無論買入れます土地は、小作人に賣ることが原則でございますから、さう云ふことを標準にする、又自作農になります場合に、安定性のある立派な自作農を作ることが勿論理想でございますから、其の地方々々の事情に依りまして、自作農になる人が田ばかりに偏るとか、或は畑ばかりに偏るとか云ふことのないやうな標準を以て、適當な割合を經營する所の自作農になり得るやうなことを考へる、それから又なし得る限り耕地の集團化を圖る、斯う云ふことを基準と致して居るのであります、事柄は具體的な判斷に依ることでありまして、之を或る數量的な基準を以て示す譯にも行きませぬし、それが故に又農地委員會の判斷に依つて事柄を最も合理的に決定して行く、斯う云ふ制度になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=191
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192・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 一つまだ買收計畫の異議を申立てる場合の御説明がないのでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=192
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193・山添利作
○山添政府委員 異議に付きましては、其の異議の事項に付て別段の制限は致して居りませぬ、隨て不服のことに關しましては、何事に依らず異議を申立て得る譯であります、併し其の異議が取上げられると云ふことに付きましては、異議を言ふだけの明瞭なる事項がなければならぬ譯であります、之に付きましても、どの事項と云ふ風な明瞭な基準は實は立てて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=193
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194・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是は何れ逐條審議が恐らくあると思ひますが、其の時までに一つ政府の方でももつと此の問題に突込んて御吟味が願ひたいし、我々としても、此の程度の質問で終るべきものでなくて、是は非常に重大な問題だ、先刻社會黨の方が言はれましたやうに、一町歩殘したから斯う云ふ問題が起つて參るのであります、此の點に付ては私は質問を尚ほ保留して置きたいと思ひます
次に此の委員會の當初に於て御説明になりました、再配分に於て當然排斥されるものと云ふ御説明があつたのでありますが、どう云ふものが再配分に於て當然土地を受けられない、排斥される仲間に入るのであるか、其の具體的な御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=194
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195・山添利作
○山添政府委員 此の買入れました土地は、健全な自作農になる見込のある人に賣渡すのでありまして、それでは其の健全な自作農になる見込のある人と云ふものはどう云ふ意味か、結局腰を入れて農業に從事して行く直面目な人と云ふことでありまして、是は必ずしも經營面積が小さいからと云ふので自作農になる見込のない人、或は惰農であると云ふ風には考へられないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=195
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196・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 まだ此の農地の再配分の問題だけでもうんとあるのですが、今日は一つ此の程度でどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=196
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197・葉梨新五郎
○葉梨委員長 あなたの御質疑はまだ次會に御繼續になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=197
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198・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 繼續します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=198
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199・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは次會は追つて御報告することに致しまして、本日は是にて散會致します
午後五時九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=199
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200・会議録情報3
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〔參照〕
自作農創設特別措置法案外一件委員會要求參考資料
十 農家の經營状況調(内地平均の標準)
(1) 一箇年の收穫數量竝に其の價格
(2) 一箇年の農業要目に關する支出費(肥料代、飼料代、雇人料、農業用品代、農業用藥品代、包裝費其の他)
(3) 一箇年の家計要品代價及び家計出費竝に公課税、祭典費、部落費、學校費、衞生費等の支出費
内譯{一町歩水田經營農家の場合
一町歩のうち畑五段、水田五段經營農家の場合
一町歩畑のみ經營農家の場合
五段歩水田經營農家の場合
五段歩畑經營農家の場合
(但し、馬、牛、豚、鷄等を飼養する場合は適當に實状に即したるものを見込んで作成のこと)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00319460913&spkNum=200
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