1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月二十日(金曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 森幸太郎君
理事 飯島祐之君 理事 山口光一郎君
理事 細野三千雄君 理事 富吉榮二君
理事 藤本虎喜君 理事 菊池豐君
磯崎貞序君 古賀太郎君
田邊讓君 森田豐壽君
杉田一郎君 山口好一君
青木清左ヱ門君 江川爲信君
小笹耕作君 太田秋之助君
白木一平君 寺島隆太郎君
佐伯忠義君 吉澤仁太郎君
井伊誠一君 大澤喜代一君
高倉輝君 堂森芳夫君
平野市太郎君 松澤一君
麻生正藏君 松本六太郎君
増井慶太郎君 北政清君
山木武夫君
九月十九日委員棚橋小虎君辭任に付其の補闕として高倉輝君を議長に於て選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
文部大臣 田中耕太郎君
農林大臣 和田博雄君
國務大臣 植原悦二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 岩澤忠恭君
司法事務官 佐藤藤佐君
司法事務官 奧野健一君
厚生政務次官 服部岩吉君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前日に引續きまして質疑を續行致します、森田豐壽君から御發言を願ひます、森田君には、申上げるまでもなく、あなたの時間は三十分と云ふことになつて居りますから、御含みの上其の趣旨に副ふやうに御進行願ひます──森田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=1
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002・森田豐壽
○森田委員 一寸申上げて置きます、三十分の時間を與へられましたが、作日も一時間或は三十分と云ふことの御諮りがあつた譯であります、是は愼重に審議すると云ふやうな意味から致しまして、初めから委員長はさう云ふ趣旨の下に進行した譯ではないのでありまして、中途に於て突發的に時間の變更をすると云ふことは、どうも用意がありませぬので、或は其の點は期待に反するかも知れませぬが、出來るだけ御趣旨に副ふやうに質問を進めて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=2
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003・葉梨新五郎
○葉梨委員 どうぞ左樣に御進行を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=3
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004・森田豐壽
○森田委員 今囘提案されました此の法案は、申すまでもなく、我が國農業史上に於きまして劃期的なものであり、而も農村の革命とも申すべきものでありまして、此の法案が今議會に於きまして憲法法案と竝び提案されまして、所謂二大法案としまして茲に上程されましたことは、洵に喜ばしい限りでありまするが、私が茲に喜ばしいと申上げることは、申すまでもなく、農業生産力の發展と農村民主化と云ふものが、滯りなく具現された曉に於きまして直に喜びたいと存ずるのであります、其の觀點から致しまして、此の課題を完全に實現しようと思ひまして、此の農地改革を實施することが最も重要であり、而も此の改革を實施致しまするに當りまして根本的の心構へが必要であると思ふのであります、私は農業に於ける社會的生産力の發展と云ふ農地改革の經濟的意義を中心とすべきことを主張致したいのであります、農民が其の社會的生産力の發展に依りまして、各自の經濟的位置が確保された時、初めて心を安んじて農業生産を營み得るものであります、斯くなつてこそ世界經濟の一環としての日本農業が成立するのであると存ずるのであります、農地改革は其の經濟的意義を根本とすることに依つて、將來永遠に亙る普遍性を有するのであります、農地價格が、高いとか安いとか云ふやうなことも、小作制度の存置の問題も、過小農制度も、或は小作料の金納制も、皆農業の社會的生産力の發展を將來阻碍するか否か、即ちそれに依つて農民の經濟的位置を安定せしむるや否やと云ふ點を標準と致しまして判斷してこそ初めて其の是非が決定せらるるのであります、單に目前の政治的情勢、社會情勢に壓せられまして行ふことは、國家百年の大計を誤ることと存ずるのであります、私は此の見地から致しまして、今日農地改革の政治的社會的意義に付きまして少しく御尋ね致したいと存ずるのであります、此の點に付きましては、今更諄く申上げるまでもなく、我々が地方に歸つて直かに農民を指導致しまする根本的心構へと致したいが故に、愼重なる、而も御丁寧なる、明快なる御答辯を御願ひ致したいと存ずるのであります
第一に政治的意義に付て御尋ね申上げたいと存じます、是は一國の政治革命が行はれまする時に表面に浮び上つて來るのであります、即ち政治的混亂に陷り、そこから新しい政治形態が生れる場合、新しい政治は古い政治を否定し排撃するが故に、其の政治的混亂の責任を古い指導者の上に負はす、經濟的にも強力にそれ等指導者の物財を沒收致しまして、之を廣く大衆に開放し、以て自己の政治に大衆を引付けようとする一つの政治的目的としまして、農地改革が行はれる場合があるのであります、「ポツダム」宣言の受諾に伴ひまして民主主義平和日本の建設の義務を負ふ今日、靜かに農村に思ひを致しまする時に、政治的に見まして、地主が軍閥、財閥と結託致しまして、積極的に帝國主義的戰爭を惹起した事實は殆どないと考へるのであります、唯今次農地改革に於きまして其の政治的意義を認めたいのは、所謂農村民主化の建前から地主の經濟外的強制力を打破する點にある、即ち封建的勢力を打開するにあると存ずるのであります、而して從來地主に於きましても、其の總てが封建的であつたとは申されませぬ、寧ろ進歩的な地主に於きましては、技術的にも經濟的にも農村の指導者と致しまして努力を拂つたし、又親子の如き愛情を持ちまして小作人の爲に經濟的危機を救つた地主も少くないのであります、小作制度が惡いのではありませぬ、小作制度の封建制が惡いのでありまして、唯感情的に一切の地主を拂拭しようとするが如きは當を得ないものと存ずるのであります、今や地主は今まで執り來つた態度が封建的であつたと否とに拘らず、唯將來の日本農村の發展の爲に祖先傳來の土地を放すのでありまして、それは極めて深い感情の犧牲を持つて居るのであります、再建日本の農業を考へまして、今日地主も共に政府の施策に努力しようとして居るのであります、此の點に付きましては、政府に於きましても十分なる御考慮を拂はれたいと存ずるのであります、茲に遙かに目を歐洲、殊に「ソヴィエト」の占領下に於きます東歐諸國の状態を見まするのに、「ルーマニア」「ポーランド」「ハンガリー」に於ても、又近くは北鮮地方に於きましても、其の土地の改革は強力に此の政治的意義に依りまして行はれつつあるのであります、農地改革が、農民の經濟的地位の向上を無視して、唯政治的な目的の爲に行はれる場合は、そこに不自然なものを惹起致しまして、今後の農村の内部に對立的感情を激化し、平和な農村を混亂に陷らしめることがあることを、聲を大にして叫ぶものであります、何故に此のやうなことを申すかと言ひますに、現在の農民の本當の氣持を申しますと、此の農地改革を出發點と致しまして、次々に政府に依つて社會主義的政策が行はれるのではないかと云ふことを心配して居るのであります、そこで農民は折角精出して財産を作りましても、再び此の見地より致しまして地均しをされるではなからうか、幾ら働いても、さう云ふ場合があつたならば働き甲斐がない、斯う云ふ心配が農民一般に強くあるのであります、殊に是は中堅自作農にあるのであります、又地方に於きまして、小利巧なる小作者は、地主になつたならば、今に農業恐慌になつて、其の場合に於きまして、自分が自作農になつて居つた場合に於きましては、身動きが出來ないことになるのであるから、國の小作人で居る方が最も得策であるとしまして、而も若し小作人として居りました場合に、經濟恐慌が來たならば、國が何とか食はして呉れるだらうと云ふやうな考へも起して居るのでありますが、是に於きまして、或る種の連中が、俺等が農民の味方だと云ふやうな顏を致しまして、聲を大にして、農村は社會主義になるのだ、農地改革も、其の政治的目的に行はれるのであると宣傳致すので、眞面目な農民は迷つて居るのであります、委員會の進むに從ひまして、政府の所信も段々にはつきり致して參りまして、洵に結構だと存じますが、此の點に對しては政府のはつきりした御所信を承りたいと存ずるのであります
次に農地改革の社會的意義に付きまして、厚生大臣に御聽きしたいのであります、一國が敗戰と云ふ現實に立つの秋、社會的、經濟的混亂は益益多くの失業人口を生み出すものであります、此の傾向は、目下の我が國に於きましても最も著明に現はれつつある事實であります、又失業問題こそは敗戰國の最も深刻且つ解決困難なる社會問題であります、そこで是が解決の一方法と致しまして、農地改革に見ようとする試みがあるのではないでせうか、成程農地を細分致しまして、之を多くの者に分ち與へ其の農業經營の中に出來得る限り失業人口を追込まうとするのは、最も現實に適した手取り早い失業對策ではありませう、併しながら能く考へますと、決して根本的施策ではなく農業人口の中に濳在失業人口を含ませるもので、是は軈ては農業其のものの經濟機構の破綻を來すもので、近代農村、文化農村の建設とは程遠い逆な感じがあるのであります、此の點に關しましては、後で國土計畫の問題に付きまして御伺ひ致す積りで居りますが、農民の中には斯くの如き心配を持つ者があるのであります、政府が斯うした働く農民の手に土地を與へると云ふことは、大變有難いことではありまするが、政府の失業對策などを見ても、又東亞諸國の占領對策などを見ましても、總てが餘りに狹い農地の中に澤山の人を追込ましてしまふと云ふことは、將來共倒れになる可能性が十分あるのでありまして、さうした時に農民は一たまりもなく自ら倒れてしまふのであります、其の時に於きまして、農民の上に、國内と國外たるとを問はず、農民以外の資本に依りまして農民全部が獨立性を失はれるやうな心配を持つて居る點があるのであります、此の點に付きまして厚生大臣より御伺ひしたいと思ふのであります──厚生大臣は今居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=4
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005・葉梨新五郎
○葉梨委員長 要求致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=5
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006・森田豐壽
○森田委員 此の今までの點に付きまして厚生大臣がおいでにならなかつたならば、農林大臣の御囘答を願ひまして、次の質問に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、今囘の農地制度の改革は、御話のやうに結局農業の生産力を高めて、さうして農民の生活を向上せしめる、謂はば經濟の民主化と云ふものを徹底せしめる、斯う云ふ所に狙ひがあるのでありまして、又其の標準から色々の事柄を立案すべきであると云ふことは全く御同感であります、今囘の農地制度の改革は、日本が現在ありまする段階に於きまして、はつきりと他の國々「ロシヤ」其の他に於て執りました農地改革の方式とは全く異なつて居るのであります、是は何處までも沒收と云ふ一つの方式を執らずして、資本主義に於ける一つの合理性を求めた經濟改革である、斯う御理解を御願ひ致したいのであります
それから今後に於きまする所の農村に、失業其の他の者が流れ込みまして、農村が恰も失業者の掃溜めになると云ふことに付ての農民の不安に付きましては、私も全くさう云ふ事柄は心配だと思ふのでありまして、我々と致しましては、農地の改革が、又色々な此の失業對策が、農村と云ふものに總て振り掛つて來る、農村をさう云ふやうに考へると云ふことに付ては反對であります、私は開拓と云ふやうな事柄に於きましても、開拓其のものが單に都會の失業者の所謂掃溜めになる、斯う云ふことであつてはならないと思ふのでありまして、それは一面失業者に職を與へると同時に、農村の生産か、農業の生産力と云ふものを全體として高めて行くと云ふ考慮を常に持つてやるべき事柄だと考へて居るのであります、國土計畫其のものも、唯單に人口の配置を平面的に考へてはならないのでありまして、農村として現在持つて居りまする所の生産力、又色々な條件を十分考慮致して、何處までも農村に於ける生産力が上り、且つ農民の生活の向上と云ふ目的が達せられると云ふ見地を見失つてはならない、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=7
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008・森田豐壽
○森田委員 次に御尋ね致したいことは、最近數年間の農業政策は、總て食糧増産を中心として行はれて居つたのであります、其の政策は、自然的立地條件の如何にも拘らず、全く農業生産力を無視致しまして、やれ蜜柑を拔け、或は梨を拔けの、桑を拔けの、お茶を拔けのと、總ての果樹を拔かせることをやらせました、隨分農民は威かされ、又威かされた後は褒められたり致しまして、此の政策が農民と致しましては眞の農業の行き方ではないとは思ひながらも、政府の施策に應じて來たのであります、それが今日になつて見ますと、最も政府に協力致しました農家が、一番馬鹿を見たと云ふ結果になつたのであります、それも農業の本道に適つて居るのならば、是は馬鹿を見ても致し方ありませぬが、例へば靜岡縣富土郡に於きまして、御承知のあの沿線にあります所の梨を拔かした跡へ稻を植ヱろと云ふので、梨を拔かして稻を植ヱさせたのであります、其の梨をこがして稻を作つた梨畑は、農事試驗場の技師が、是は十年前から、梨をこいで稻を作つても稻は出來ないのだと云ふことを言つて居るにも拘らず、靜岡縣に於きましては、食糧増産の鳴物入りで遂に農民の厭やがるのに、強ひて之を拔かして稻を作らせたのであります、併しながら其の結果、農事試驗場の結果と同一の結果になつて居るかと調べて見ますと、今年の各地が豐作だと云ふ時に於きまして、今其の水田が農業保險の援助を受けなければならないやうな状態にありますことは、非常に遺憾なことと考へるのであります、私は今日の日本の農業は、何處までも適地適作の農業の眞理に則るべきものだと云ふことを確信するのであります、政府は從來執り來りました、又今執つて居ります所の食糧増産方策を、急速に適地適作主義に轉向する御考へがあるかどうか
又それと關聯致しまして、今後の農業生産計畫竝に未發表のお茶とか蜜柑とか、或は其の他の輸出農産物の生産計畫竝に増産奨勵政策、或は又科學政策等に付きまして、詳細なる御考へがありましたならば、此處で御聽かせ願ひたいと思ふのであります、尚ほ今後の農業が此の持殊農産物と普通農作物たる米麥、所謂米作農家と特殊農産物農家とが、收益に於きまして、大なる相違が今後に於て起ると考へるのでありますが、此の收益の差を、所謂政策的にどう云ふ風に扱つて行く御考へであるか、此の點も併せて御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=8
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009・和田博雄
○和田國務大臣 戰爭中、日本が一般の世界經濟から弧立して居りました關係上、又食糧生産に集中しましたので、農家の經營の立場から言ひまして、又日本の農業全體から見ましても、可なり歪められたものになつて居る、斯う云ふ事實は認めざるを得ぬと思ふのであります、之をどう云ふやうに切替へて行くか、斯う云ふことが今我々の苦心して居る所であります、是は食糧事情其の他が段々緩和して來ますと共に、やはり何と云つても適地適作、日本全體としては非常に多角經營的なものになつて行く、斯う云ふ風に切替へて行きたい、さう云ふ風に施策を進めて行く積りであります、勿論さう云ふやうにやるとしても、是は將來日本が世界經濟と交通の中に入つて行く時に於きましては、どうしても全體の需要の變化とか動向と云ふものを、是は大きな立場に立つて政府としては常に見て居る必要があるのであります、其の限りに於ての計畫的な農業の指導と云ふものはやはり、政府がやりますか、團體がやりますか、さう云ふ政策は兎も角必要だらうと思ひます、其の意味に於ても或る程度の計畫性を持たすことが必要でありますが、戰爭中に於きますやうな形のものは、出來るだけ早い機會に、具體的に之を切替て行く、斯う云ふ方針で進んで行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=9
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010・森田豐壽
○森田委員 尚ほ一寸申上げました養蠶の如きは、茲に増産五箇年計畫を發表されたのでありますが、茶とか蜜柑と云ふやうな所謂特産物、輸出農産物に對する増産計畫、或は奬勵政策、價格政策等が出來て居りましたら御發表願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=10
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011・和田博雄
○和田國務大臣 實は一寸先年企畫院く方へ食糧價格計畫を出したことがありますか、御尋ねの特産物を何處でどれだけ出すと云ふことに付ては、まだ具體的に纒まつたものはございませぬ、さう云ふ意味で價格政策を全般的にどう云ふ形にして行くかと云ふ點に付ても、まだ具體的に決定したものはございませぬが、是等の點に付ては、食糧の方面も事情が相當に變つて來ましたので、茶とか蜜柑等の特産物に對しても、一應の目安を立てたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=11
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012・森田豐壽
○森田委員 次に國土計畫と農業保險に付て御伺ひしたいと思ひます、我が國の農業生産の向上發展を阻碍するものは何であるかと云ふことを熟熟考へを見ますと、成程現在に於ては肥料不足を唱へるものもありませう、又農業資材の配給の圓滑化を望むものもありませう、又機械力の導入を希望するものもありませうが、眞に我が國の農業生産を阻碍するものは、所謂旱魃、水害或は病蟲害である、天の利、地の利を以て立つべき農業に於ては、少くともさう云ふ根本的な風水害等の問題を解決するにあらざれば、如何に増産計畫を致しましても水泡に歸することは皆さん御承知の通りであります、此の意味に於て、此の問題を根本的に解決するものは、農業保險にあらずして、用排水を主とする農業の根本的な計畫、施策を立てなければならぬと私は考へる次第であります、先づ第一に此の根本問題を解決し、而して後に農業保險の萬全を期すると云ふことでなければならぬ、此の意味に於て、私は國土計畫中に少くとも用排水、治山治水の問題と關聯致しまして、十分此の點が織込まれて居るかどうか御伺ひしたいと思ふのであります、先日の新聞に復興國土五箇年計畫と云ふものが發表されて居ります、又昨日あたりの新聞には、失業對策問題と致しまして、A、B、Cに分けまして、色々治山治水の問題等を絡めて發表して居ります、併しながら最も最初にやるべきA級の仕事に付きまして、農業方面から見るとC級に置かれて居るものが相當あるやうに見受けるのであります、此の點に付きまして、我が國が自作農を創定致しました曉に於て所謂風水害、旱魃の被害を被るのは自作農家自身でありますから、曾ての如く地主に一部を負擔して貰ふのでなく、自作農家自身に於て此の問題を解決するにあらずんば、自作農家の安定を期することは出來ないと思ふのであります、どうか其の意味に於きまして根本的に考へて戴きたいと思ふのであります、尚ほ此の間頂戴致しました農業保險の概況を一覽致して見ますと、最近に於ては大體一箇年約一億圓の障害があるのであります、此の一億圓の半分を國家が負擔することにして、それに他のものも加算して五千何百萬圓か茲に計上されて居るのであります、農業保險は御承知のやうに麥と米と桑、是だけのものしか保險をして居ないのであります、而も其の保險に於きましても、それは單に水害、旱害或は雹害と云ふやうな程度でありまして、病蟲害或は冷害の如きは例外にされて、保險をして居ないのであります、それでさへも兎に角一億圓の農産物の被害があつたと云ふ實例になつて居る、是は今日の米價、或は農産物の價格を以て致しましたならば──是は數年前のことでありますから、四十圓の米と致しまして是だけあつたと假定致しますれば、今日若しも米價が六百圓と假定致しましたならば、其の十五倍の十五億圓の保險料を拂はなければならぬ、政府は又其の半額を負擔するとすれば、七億五千萬圓を負擔しなければならぬことになるのであります、此の問題に付きましては尻拭ひをするのでなく、根本的な對策を立てて、所謂後からからと盜人に追錢的補助政策を執らずに、根本的に生産の發展を期する一つの方針を執つてはどうかと云ふ問題に付て御尋ねしたいのであります、農林大臣の外他の大臣が御見えになりませぬから、主として農林大臣に御伺ひするのでありますが、私は此の農業保險の問題に付て、少くとも農業保險の中に、唯米とか麥とか或は桑とか、さう云ふ所謂今まで我が國三千年の昔より栽培して居つた、さう云ふ作物ばかりを保障するにあらずして、茲に新生農村の發足に當りまして、最も必要なる適地適作を唱へる以上は、さう云ふ作物に付きまして、即ち柑橘であらうと、果樹であらうと、蔬菜であらうと、凡ゆる野菜に對しましても、之を保險の中に組入れまして、而も保險の範圍は共濟的な方法を執ると云ふことを此の前も農林大臣は仰しやつて居られましたが、是も結構でありませうが、其の中に總てを織込ませまして、國家が之を保障すると云ふことに之を直して戴きたいことを御願ひする譯でありますが、さう云ふ御意思があるかどうか、此の點に付て御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに、日本は非常に災害が多い國でありまして、之を徹底的にやりますのには、やはり治山治水から、降つて河川の工事、其の他灌漑排水と云ふものを一貫してやることの必要であることに付ては御同感であります、今後は何等かさう云ふ大きな構想に立つて是非やつて行きたいと思ふのであります、差當つて農業保險の問題に付て御答へ致しますと、此の農業保險が最近になつて非常に額が殖えて居りますのは、此の二、三年來の日本が災害を非常に被つたと云ふ點から來て居るのであります、只今の保險は極めて微々たるものでありまして、而も保險と云ふものは損害評價と云ふものを非常に詳しくやらなければなりませぬので、それ等のことで保險金が實際上農家の手に渡るのは、半年後になつたり、甚だしいのはもつと遲くなつて、甚だ農家に迷惑を掛けて居るのであります、それ等の點はどうも保險と云ふことの狹い概念に閉籠つて居りましたのでは、例へば病蟲害と云つたやうな非常に道徳的な危險を伴ひますものに付ては、保險の危險率と云ふものに付て理論的に行詰つてしまふことになるのであります、そこでやはり考へをもつと廣く、共濟なら共濟と云ふ方へ向けて、そこで所謂保險の事故も殖やし、又對象になるものも米麥のみならず、其の他のものも殖やして行く、一體それをどう云ふ形で國と農民との間に於て負擔して行くかと云ふことが具體的の問題になるのであります、それ等の點に付て、農業保險協會などと十分打合せまして、色々具體的な案を立てて、居るのであります、是は是非一つ、やはり單なる尻拭ひと云ふのでなくして、積極的に農業に再生産をもう一度やらせる、さう云ふ見地に立つて是非保險制度と云ふものの確立を圖つて行きたい、斯う考へ居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=13
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014・森田豐壽
○森田委員 内務大臣が見えませぬが、尚ほ私は農村の教育問題に付て、是非文部大臣に御伺ひしたいのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=14
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015・葉梨新五郎
○葉梨委員長 文部大臣の出席を頻りに要求して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=15
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016・森田豐壽
○森田委員 此の農村の教育問題に付きましては、今までの質問者も大分言はれましたが、私はもつと根本的に質問したいのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=16
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017・葉梨新五郎
○葉梨委員長 十一時半に出席すると云ふ通告があります、それを尚ほ早めるやうに今委員長から折角交渉中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=17
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018・森田豐壽
○森田委員 私が前から要求した大臣が少しも見えませぬ、それは御用意がないものと認めまして、質問も手間を取りますが、御許し願へますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=18
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019・葉梨新五郎
○葉梨委員長 委員長は昨日も委員會散會後、其の點に付きましては積極的に要求もし、注意も致して居つたのでありますが、本日も尚ほ其の效果が現はれませぬから、委員長として適當の措置を執ることに致します──只今内務及び厚生は政務次官が出席するとの通告がございました、直ちに出席するものと思ひますが、内務及び厚生の方は政務次官を以て御滿足願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=19
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020・森田豐壽
○森田委員 私だけ長くやることは甚だ忍びないのでありますが、私の最も主眼とする所は、今度内務省の考へて居る國土計畫は、一つ農村を主體とした根本的な國土計畫をして貰ひたいと云ふことを言はんとするのでありますが、それが居ませぬから、私の話をしたい所も實は出來ない譯ですが、此の方は…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=20
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021・葉梨新五郎
○葉梨委員長 森田君に御相談致しますが、あなたの御意見は御尤もと思ふのです、他の委員諸君に於ても、農村の土地改良事業と關聯して、國土計畫に付て内務省と農林省との間の連絡關係を明かにし、宜く是正して行きたいと云ふ意見があります、それで内務當局の出席は委員長から要求致しますから、其の際に御尋ねを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=21
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022・森田豐壽
○森田委員 それでは委員長に御願ひ申上げて置きます、尚逐條質問に於て私はやりたいと思ひますが、一體我が國の農村土木事業、所謂用排水の改良事業其の他に對し今まで彌縫的なことをやつて居つて、根本的にやらなかつた、それが爲に縣や町村は非常なる用水費や灌漑排水費を負擔して居つた、即ち大河川を持つて居る縣に於ては、縣費の大部分は之に取られたと云ふ状態にあるのでありますから、之を國として根本的に直すにあらざれば、地方に政治が分割される場合に於て、大河川を持つて居るやうな縣は將來の財政計畫は立たぬのであります、敗戰國の財政を建直さんとするには、先づ第一に根本問題から出發しなければならぬと云ふことを私は強く考へて居る、其の點に付きまして質問して行きたいと云ふことを主眼として考へて居ります
それでは餘り遲くなつて惡いから、第四の農村の教育問題を後廻しにして、第五の財産税と農地證券の問題に移ります、今度の我が國の經濟の建直しの爲に財産税と云ふものが、それも税法から行きますと劃期的な税法が布かれようとして居る、此の財産税を徴るに當りまして、所謂國民に負擔力がないから物納を許すと云ふことに依りまして、土地は其の物納の對象となつて居るのであります、大藏省は、財産税を先に徴るにあらざれば、國家の豫算の運營が出來ないことは私が喋々申上げるまでもない、隨て此の財産税は必ずや先に賦課されるものであつて、農地改革は二箇年と申して居りますし、又やり方に依つては二箇年で出來ませう、併しながら必ずや財産税の方が先に課かつて來る譯である、其の時に當りまして、所謂地主階級、土地所有者は此の財産税に對しまして、土地を財産税の對象と致しまして國家に納めることになります、其の時には恐らく此の財産税として納められたものは、大藏省の財産税特別會計の中に納まるものと私は考へるのであります、そこで若しも大藏省が此の土地を握つた場合、農林省が此の案を作つた以上は、其の土地は農林省に渡さなければならぬ、其の渡します時に於て、農林省は大藏省に對しまして農地證券を發行するのであります、必ず農地證券より外には農林省には金はない、だから農地證券に依りましてそれを解決する以上、大藏省に於ては農地證券に依つて之を解決すると云ふことになるのであります、さうすると、農地證券を大藏省の財産税特別會計が持ちました所で、是は金にはならない譯であります、一體此の農地證券を如何なる處置をなさるか、如何なる方法に依つて之を金錢化するのであるか、現金化するのであるかと云ふことに付て、實は大藏大臣に伺ひたいのであります、それに對しまして、土地は俺の方に寄越せと云ふことの約束があるでありませうか、其の時に農林省は一體農地證券をやるのでありませうか、それを唯持つて來て置くのでありますか、其の解決はどうなさるのでありますか、大藏省と農林省の間の問題を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 一言御斷り致して置きますが、今日も實は閣議で、各大臣に出て戴くやうに私からも十分御頼み致した譯であります、併し差支へがありまして出られなかつたのであります、尚ほ能く私からも申上げて置きます
只今の點は、農地證券を出すかどうかは今一寸決まつて居りませぬが、結局有償の管理替をすると云ふことになつて居ります、それ等の點に付きましては、大藏省と事務的にも能く話合を致したいと思つて居ります、唯今證券化するかどうかと云ふことは決まつて居りませぬが、結局手續としては有償の管理替をする、斯う云ふことになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=23
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024・森田豐壽
○森田委員 さうすると、大藏省の方では、要するに是等の農地證券をやると云ふ恰好になる譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=24
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025・和田博雄
○和田國務大臣 管理替になるのでありますが、證券を出す譯ではないのであります、國と國との間のことですから、管理替になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=25
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026・森田豐壽
○森田委員 尚ほ御聽きしたいことは、大藏省は財産税として取るのであります、大藏省に於もましては、要するに其の價格を賃貸價格の四十倍、四十八倍で、之を財産税と認めて取る譯でありますが、大藏省がどんどん取る場合、即ち是は色々議論も前にあつたやうでありますが、個人の物納をする場合に於きましては、此の農地改革案が出まして、自作農創定の此の特別措置法が出ました今日に於きましては、地主として、土地所有者と致しましては、恐らく惡い地所を先に財産税として納めると考へるのであります、餘り小作人も好まないやうな所、價値の比較的少ない所、又賃貸價格の割合から言つて割が惡いと申しませうか、餘り面白くない地所と云ふやうなものから出す、即ち耕作者の側から言はしめますれば、耕作者が餘り希望しない土地、小作人と雖も餘り希望しない、已むを得ず作つて居つたと云ふやうな土地が先づ第一番に財産税として物納されるのであります、此の時に當りまして農林省は其の監督權はないのであります、是は財産税として處理する地主の處置でありますから──隨ひまして是は自由でなくてはならぬと思ふのであります、此の時に耕作者が買ふ──一口に言へば、所謂小作人が其の土地を買ふと云ふ一つの裏書があつた場合に於て、財産税として取つて呉れと云ふやうな御交渉は、大藏省との間に於きましてはないのでありませうか、其の點に付きまして御伺ひしたいと思ふのであります、大藏省のどんどん取つたものはみな國で取つてしまふと云ふのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 やはり御話のやうに、財産税として納めまする時には、それを拘束する譯には參りませぬから、我々の希望としては、成程仰しやるやうに小作人が買ひたいと云ふさう云ふ、裏書があることは結構でありますが、財産税の方から言ひますと、そこの所はやはり惡い土地が行くと云ふことも起らうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=27
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028・森田豐壽
○森田委員 此の財産税と農地證券のことはもつと聽きたいのでありますが、大藏大臣がまだ參りませぬから、それは後廻しにして、内務大臣がおいでのやうでありますから、國土計畫、農村の國土計畫と云ふものに對してどう云ふ御考へを持つて居るか、一つ御尋ねしたいと思ひます、前段少しく私は申上げたのでありますが、大臣おいでになりましたので、私より重ねてはつきりしたことを御答へを願ひたく、質問申上げます、内務省に於きましては國土計畫を立てられて居るのでありまするが、それは、都市を中心としての國土計畫を御立てになつたのか、農村を主體として國土計畫を御立てになつたか、此の根本的の考へ方を第一番に御尋ねして見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=28
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029・大村清一
○大村國務大臣 國土計畫は只今の所内務省の所管事項になつて居りまして、國土計畫を如何に策定すべきかと云ふことに付きまして、各方面から資料を蒐集致し研究中なのであります、其の國土計畫に於きましては、敗戰後の事態に即しまして凡ゆる方面から觀察を致し、民主國家として、平和國家として進むべき日本に對しましての國土計畫上必要な事項を網羅したものを立てなければならぬと云ふやうに考へて居ります、隨て今御尋ねの農業、工業、商業各方面に亙ることは固よりであります、尚又此の治水治山と云ふやうな點も含めて研究をしなければならぬと思つて居りまするが、國土計畫として内務省で扱つて居りますものは、資料を蒐集すると云ふ準備的なものでありまして、是が決定に付きましては、近く政府に於きまして國土計畫審議會とでも云ふべきものを設置致しまして、其の民主的な運營に依りまして適切なる決定を得なければならぬと思ひます、而して國土計畫の内容に採入れらるべき事項に付きましても、一に審議會の意向に依つて決めると云ふことに致したいと考へて居る次第であります、曩に一部内務省に於きまして研究中のものを國土局として出しましたのも、單なる試案に過ぎませぬで、各方面から批判を聽き、又意見を聽きまして豫備調査を完璧ならしめやうと云ふ趣旨に外ならないのであります、あれに依りまして國土計畫をあの線で決めると云ふやうなことまでには至つて居ないものと御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=29
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030・森田豐壽
○森田委員 國土計畫と致しまして、所謂産業の配分計畫に依りまして、各産業を竝列的に竝べることでなく、農業を主體としてここに他の商工業を配列すると云ふ計畫も立つでありませう、或は工業を主體とし、中心と致しましてここに配列する方法もありませう、兎に角平らの、所謂竝列にあらずして、中心を置きましてここに一つの計畫を立てると云ふことがあると思ふのであります、併しながら今日の日本の状態を眺めまして我が國の經濟の再建を考へました時に、兎に角戰爭を行つた時代に於きましても、最も健全なるものは農村であつたのであります、他は全く灰燼と化したと言つて差支へない状態である譯であります、現在健全なる農村であり、而も其の農村は最も手早く起ち上ることが出來る情勢にあるのであります、又一面から言へば、之に依りまして農村を基盤として我が國の所謂經濟蓄積も出來ると考へられるのであります、此の點から行きまして、内務大臣は我が國の國土計畫をなすに當りましては、今最も健全なる農村を主體と致しまして、所謂農村の生産を發展させる意味に於て、農村の増産計畫から行きまして、用排水の問題、或は農村の道路の問題等、總て國土計畫に基きまして或る一定の規格を定めまして、其の計畫に依つて之を發表して戴くのでなければ、此の農地の改革案と云ふものも、後で之を變更しなければならないやうな問題なしと言へないのであります、私は此の自作農創定に當りましては、國家の國土計畫を先づ第一番に發表して戴き、第二番目に自作農の創定をなすべきだと云ふまでに考へて居るのであります、此の點から行きまして、内務大臣は、今以てまだ衆智を集めて居る、状況を調べて居るやうな御話でありますが、我が國の再建の上に於きまして、國土復興計畫は第一の問題でなくてはならぬ、之に伴つて産業計畫がなされなければならぬと私は考へる者であります、此の點に付きましては是非とも此の問題の解決するやうに、政府に於きまして一時も早く計畫をなされ、御發表を願ひまして、此の自作農創定の事業と竝行致しまして、否、寧ろそれよりも先に計畫を示されまして、此の自作農創定の將來變動なきを期して戴きたいと思ふのであります、尚ほ一寸申上げましたが、農村の最も被害を受くるべき、所謂農産物の最も被害を受くるべきものは、治山治水關係に關聯して居る、所謂排水と用水の問題であります、此の用排水の問題──道路の問題も無論必要でありますが──此の問題に付きまして、少くとも國土五箇年計畫なり一つの計畫を立てるに當りましては、根本的に國家が此の計畫を立てて戴かなければ、唯道路網の問題ではなく、此の用排水の問題を根本的に考へて戴くでなければ、此の自作農創定の仕事が出來て行かないのであります、是からは地主がなくなり、耕作者が全部負擔を負はなければなりませぬ、即ち小さく言へば、農民が負ひ、村民が負ひ、縣民が負はなければならないのであります、そこで國家の産業の上から行きまして、根本的に國庫負擔に於て其の大計畫を立てて戴きたいことを私は熱望するものであります、此の點に付きましては、先程も申上げましたが、此の間の新聞に、大分治山治水の問題に付きまして、失業對策と關聯致しまして、A、B、C、Dと云ふやうに載せて居りまして、A「クラス」のものを一番先に仕事をさせると云ふやうなことを書いてありますが、此の問題に付きましては、Cあたりの程度のものに於きましても、農業に關聯のあるものは一時も早く行つて貰ふにあらざれば──唯失業對策の面からばかり考へるのでなくて、生産力の向上發展の上から行きまして、第一番目にC「クラス」に入つて居りますものをA「クラス」にして戴くやうな考へはありませぬかどうか、此の點も御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=30
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031・大村清一
○大村國務大臣 國土計畫を策定致しますに付きましては、終戰後相當の時日を經過致して居りますので、段々事態が明瞭になつて來て居る點もあるのであります、併し尚ほ日本の今後進むべき行き方に付きまして、未出の條件もあることであります、併し先が分らないから何時までも計畫を放つて置くと云ふ譯には參らないのでありまして、今日の事態に即しまして立て得る限度に於きましての國土計畫を策定すると云ふことも致さなければならぬと考へるのであります、併し先にも申上げました如く、國土計畫と云ふやうな重大な問題は、單に内務省の職員に依つてのみ策定すると云ふことは適正を期されないのでありまして、もう少し視野を大きく致しまして國土計畫審議會と云ふやうな有力な機關の自主的策定に俟つと云ふことが必要だと考へて居ります、此の點に付きましては、内務省と致しましても更に推進方努力する積りで居ります、併し國土計畫が決まるまで總ての國政を待つて居ると云ふ譯にも參り兼ねるのでありまして、治水治山、特に私共の主管して居ります治水事業に付きましても、凡その見透しを以ちまして、やるべきことは著々やらなければならぬと考へて居る次第であります、尚ほ只今仰せになりました御意見に付きましては、あの試案に載つて居りますものは、更に再檢討致しまして誤りなきを期して行きたいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=31
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032・森田豐壽
○森田委員 此の國土計畫をなすに當りましては、私は少くとも農林省との關係に於て十分御考へを願ひたいことを希望して置きます、是が我が國の産業に非常なる影響を及ぼすものであると云ふことを考へまして以上申上げるのであります、尚ほ此の問題に付きまして具體的な案を速かに作つて戴きたいことを、重ねて此處で御願ひ申上げる次第であります
次は農村の教育問題であります、農村の教育の問題に付きましては、今までの委員會の状態、本會議の状態を見て居りますと、文部大臣や農林大臣の御考へ方が、青年學校や公民館のやうなものを以て所謂農村の教育をやつて行かうと云ふ御考へのやうでありますが、此の點に付きましては、私は農村の眞の文化の向上、所謂民主化を圖る上に於ては、こんな程度のものでありましたならば、是からの教育と比較致しますれば、將來問題にならないのではなからうか、從來の國民教育の後の高等科を卒業した程度の教育にしかならないのではなからうか、斯う思ふのであります、而も農林大臣は、自作農の中から指導者を今後出して行くと云ふやうな御考へであるならば、私は農村教育の問題に付きましては──今まで國に於きまして海兵あり陸士あり、國庫支辨に依つて斯う云ふやうな色々な軍關係の學校を作つて居りました、又師範學校の如きものが作られて居りまして、さう云ふ教育を受けました者は、其の土地の教育として再び郷黨の内にあつて教鞭を執らせるやうにさして居る例もあるのであります、そこで今後の農村を眞に民主化し、又文化の向上を圖り、平和農村の建設をしようとするならば、是に於て少くとも官費支辨の官立、所謂自作農では教育費がないのでありますから、其の費用に國が持つて教育し、而も其の教育した者は各農村の指導者として歸すと云ふことに依つて、初めて農村の將來が明るいと私は考へるのであります、此の點に付きましては、文部大臣にさう云ふ御考が若しありとするならば、此の際はつきり其の御考へを聽かして戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=32
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033・田中耕太郎
○田中國務大臣 御答へ申上げます、農村の文化の昂揚、特に教育の振興に付きましては、社會教育の面、又それは特に公民館を中心と致しますのでありますけれども、併し一般的の「チャンネル」から致しまして、民間諸團體及び關係文化或は宗教各方面の方々の協力を願つて働きかけたいと云ふ風に存じて居りますが、只今の御話の通り、農村に於ける學校教育と云ふことだけでは不足でありまして、農村の英才を國家の負擔に於て都會で教育し、而して農村に歸すと云ふやうなことも極めて必要なことだと存じます、さう云ふ意味に於て、育英制度を大いに擴充強化する必要があると云ふことを痛感して居ります、日本育英會の豫算等は、今後文化國家の要請に應じまして大幅に引上げねばならないと云ふことを痛感して居る次第であります、尚ほ農村の子弟が都會で教育を受けられるやうな風に致します爲には、それに育英事業が必ずしも有效に作用するとは限りませぬから、さう云ふ場合に於きまして都會に於て働きながら學ぶと云ふやうな方法も大いに考へる必要があると存じますので、さう云ふ意味に於きましては、大學、專門學校其の他に於きまして、さう云ふ働きながら學ぶ農村の子弟の爲に、或は夜學と云ふやうな色々な方法をもつと考へるべき必要があるのではないかと云ふ風に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=33
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034・森田豐壽
○森田委員 只今大分農村の人の爲の夜學のやうなことを仰しやつたのでありますが、私の言ふのは、地方に於きまして中等以上の學校を、所謂元の陸士、海兵の如く官費を以てやる、今日軍人の必要はないのでありまするが、農村の指導者こそ必要であると云ふ、所謂指揮官をここに養成すると云ふことを私は念願するものであります、是は如何なる補助金を農村に與へるよりも、所謂普遍性のある政策と致しまして農村の將來を見透した場合に於て、今日より必要なことはないと私は確信致しまして此の質問を申上げて居るのであります、どうか其の意味に於きまして、唯夜學程度の大學だとか、さう云つたやうな生緩いことであつたならば、農村の大學出は何時でも他の大學出に敵はないと云ふことになる譯であります、農村こそ此の重大なる人材を持つて來ることに依りまして、農村の協同化も出來るし、民主化も出來る譯であります、どうか其の意味に於きまして、そこの所は今出來なければ、將來さう云つた御意思があるかどうかはつきり此處で御答辯を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=34
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035・田中耕太郎
○田中國務大臣 農村の子弟の農村に於ける教育に付きましては、さう云ふ農村の指導者を養成する爲の特殊の教育に付て考慮致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=35
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036・葉梨新五郎
○葉梨委員長 森田君、協定時間の倍以上になつて居るのですが、大藏大臣に關するあなたの質疑は大藏大臣が出席されるまで留保して置かれまして、出席の際におやり下さつたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=36
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037・森田豐壽
○森田委員 承知致しました、それでは甚だ遺憾でありまするが、さう云ふ發表がされましたので是で一應引下ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=37
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038・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤喜代一君──大澤君に申上げますが、あなたの時間は理事會の決定に基きまして、あなたが社會黨の代表として一時間を御持ちになつて居られることでありますから、どうか御含みの上御進行あらんことを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=38
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039・大澤喜代一
○大澤委員 幸ひ關聯事項がありまして、内務大臣と文部大臣が居られるやうですから、先づ其の方から先にやります、文部大臣御忙しいやうですから、此の間の學制問題の續きではないですが、別な問題で一寸御伺ひしたいと思ひます、御承知のやうに、今度の農地改革法案は、農村から、如何にして今までの農村を支配して居つた所の封建的な地主の勢力を一掃して、明るい民主主義的な日本を作るかと云ふ所に、大きな眼目がある譯であります、さう云ふ點から考へますると、從來日本の文部省が執つて來た色々な教育政策、殊に封建的な意味では、それの集中的な一種の表現ではないかと思はれまするが、憲法の審議會あたりでも問題になつたやうでありますけれども、例の教育勅語です、それから長い間我々が強制的に歌はされました所の「君が代」です、ああ云ふやうなものに對して一體文部大臣は、農村の封建的な舊いものを一掃すると云ふ角度から見て、果して從來のやうな方針で以てあれを歌はしたり、讀ましたりすることが正鵠を得て居るかどうかと云ふことです、例へば「君が代」あたりは、強制的にやつて居ないやうですが、まだ隨分農村では、農村の民主主義と云ふものが徹底して居ない爲に歌つて居る所が多い、言ふまでもなく、「君が代」の文句は、「君が代は千代に八千代にさざれ石の」と云ふやうなものであつて、過去の日本としては、所謂天皇中心の憲法の精神から行つたらそれで宜かつたかも知れないけれども、今日の新憲法の精神から言ふと、明かに「君が代」ではなくて、主權は國民の中に在る、天皇は國民の中の一人だ、さう云ふやうな意味に於きましては、さう云ふ舊い封建的な色彩の濃い所の「君が代」は、國歌として廢めさせて、農村の子弟が喜んで明るい氣持で歌はれるやうな國歌が制定さるべきではないかと考へて居る、文部大臣は何處までも此の「君が代」と云ふものを存置して歌はせる方針であるかと云ふことを聽きたい
もう一つは教育勅語ですが、教育勅語は文部大臣から言ふと、中々良い所もあると云ふやうなことで、あれを相當固持して居るやうに聞いて居りますけれども、あの教育勅語の中にも、「爾臣民」だとか何とか云ふやうなことが澤山ある、今日の新憲法から言ふと、我々國民を捉まへて爾だとか臣民だとか云ふやうな言葉で表現することも、是は封建的で民主的ではないと思ふのです、斯う云ふ點を文部大臣はどう云ふ風に取扱つて行かれる積りか、其の點を一寸御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=39
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040・田中耕太郎
○田中國務大臣 教育勅語から先に御答へ申上げます、之に付きましては、教育勅語に對する從來の態度を全く變へなければならすと云ふことを、色々な機會に於きまして文部省では徹底するやうに努力致して居ります、詰り神樣の言葉である、隨て我々は全くそれに對して無批判的に盲從しなければならない、鵜呑みにしなければならないと云ふ態度が間違つて居る、又教育勅語のみが教育の淵源であると考へて來たこと、それが間違ひであると云ふ風なことを強調して參つて居るのであります、併し又更に大いに此の考へは徹底させなければならぬと存じますから新たなる方針を分るやうに示したいと云ふ風に今考慮中でございます、是は關係方面とも相談して早急に實行したいと思つて居ります
尚ほ「君が代」の問題でございまするが、是はまだ研究はそこまで行つて居りませぬけれども、それに付きましては、教育勅語に關する程、早急に今直ぐ御説明のやうに「君が代」を廢止してしまふと云ふやうな態度を執る意圖は只今の所ございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=40
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041・大澤喜代一
○大澤委員 さうすると、「君が代」の國歌の問題は近く何とか考へると云ふやうな状態にあると云ふ意味ですか、今の所全然「君が代」は考へて居らぬ、國歌の問題は考へて居らぬと云ふ意味ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=41
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042・田中耕太郎
○田中國務大臣 御説のやうな説も承つて居ります、是は併し研究しなければならない問題だと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=42
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043・大澤喜代一
○大澤委員 それでは「君が代」と教育勅語の問題は別の機會に御尋ねすることと致しまして、もう文部大臣の方は濟みました
次に内務大臣に御伺ひしたいのですが、此の委員會が始まりまして、屡屡問題になつて居ります、今も現に私の前に出た自由黨の方が申された所謂國土計畫──内務大臣はあれは單なる内務省の一局部の試案だと仰しやるけれども、あれが各新聞に大きく取上げられて、全國民に宣傳された譯です、相當な「センセーション」を起して居る譯なのです、隨て我々もあれを單に内務省の一部局の試案だとは考へることが出來ないし、恐らく現在の内務省竝に政府の持つて居る所の極めて大きなものの考へ方があの上に現はれて來たのではないか、さう云ふ風に實は善意に解釋して居る譯なのです、さう云ふ點で、今度の農地調整法の改革の問題と照し合せて考へて見なければならぬと思ふのは、農林省は五箇年計畫で百五十五萬町歩の開墾増産計畫が實現すると云ふことを言つて居りまするが、此の農林省の出して居る増産五箇年計畫と内務省が今度發表した五箇年計畫、此の點非常に食ひ違つて居るものがありはせぬか、是は農林大臣にも御尋ねしなければならぬのでありまするが、例へば昨昭和二十年十一月に閣議で決定致しました所の緊急開拓事業實施要領、是は今日でも農林省の方では此の線は捨てて居ない、之に沿うてやつて居ると私は考へて居るが、此の五箇年計畫の閣議の決定を見ますと、第一番に増産計畫ですが、五箇年で百五十五萬町歩を開墾する、之に對する勞働力の延人員と云ふものは十一億七千二百三十萬人、是の増産目標と云ふものは昭和三十年度で米に換算して千四百萬石を超えて居る、それから干拓六箇年計畫は十萬町歩、之に對する延人員と云ふものは四億萬人、是の増産目標と云ふものは、米にして三百萬石、麥にして三十四萬石、更に約二百十萬町歩の土地改良と云ふものが三箇年計畫で實行されると私は思つて居る、此の延人員は三億九千萬人、此の増産目標と云ふものは四百八十九萬四千石、さうすると此の閣議で決定した緊急開拓事業要領に依りますると、少くとも五箇年後に於ける増産高は大體に於て二千百二十四萬一千石と云ふものを目標にして居ります、之に對する勞働人員は十九億六千何百萬人、是が大體閣議の決定であり、今日の農林省當局の方針であると私は考へて居る、然らば此の閣議決定の農林省の政策と云ふものが實現した場合に於て、日本の食糧關係はどうなるか、言ふまでもなく、現在の耕地面積にしまして平年作は大體六千萬石を超える、さうすると此の五箇年の増産計畫が實現しますと、少くとも我々日本國民は五箇年後に於て八千數百萬石の食糧の目標と云ふものは達成されることになる、是は政府の發表した計畫である、然らば内務省が國土計畫として發表したものは一體どう云ふことになつて居るかと申しますと、其の五箇年計畫に於ては、日本の人口を大體八千萬人と見まして、それに要する食糧を八千七百萬石、米一人當り一・〇八石と見て居る、さうして實際に於て内務省の國土計畫と云ふものが實現されるとどれだけの食糧が出るか、之に對して内務省は七千萬石の米が出ると言つて居るが、一體此の計算は何處から來たかと云ふことなのです、政府の發表に依ると、五箇年計畫が實現すれば八千萬石以上出來て、米の洪水が來る、是は誰が見ても常識なのです、但し此の五箇年計畫と云ふものを止めたと云ふのなら別です、農地調整法も全部變へなければならぬ、而も七千萬石しか米が出ないから、足りない分の千七百萬石と云ふものは「アメリカ」其の他から輸入しなければならぬ、是が内務省の國土計畫なるものの食糧に對する根本的な方針なのである、一體此の食違ひは何處から來たものか、其の點をはつきりさして貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=43
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044・大村清一
○大村國務大臣 前にも申上げたと思ひますが、開拓計畫の方は政府と致しまして審議決定致したものでありますから、それは今日も固より存續して居るものと考へて居ります、それから、國土計畫に付きましては前にも申上げました如く、各方面から資料を蒐集致しまして、世論を聽き、意見を聽く意味に於きまして、特に國土局試案と云ふことに致しまして新聞に發表致したのであります、而して此の案に付きましては關係各省に於て協議を致して居りませぬ、隨て全くの試案でありまして、決定的なものは何處にもないのであります、さうしてそれが取扱に付きましては、前に申上げますやうに、國土計畫審議會とも云ふべきものを設けまして、そこで民主的なる策定を致したいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=44
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045・大澤喜代一
○大澤委員 是は甚だ奇怪な話を聞くものだと私は思ふ、苟も閣議で決定したものに對して、内務省の角度から見てそれは反對だと云ふのですか、少くとも閣議は農林大臣其の他の關係大臣が全部集まつて、凡ゆる角度から綜合して此の案は決定した筈なんである、然るに一内務省がなぜ此の案を否認しなければならぬか、假令試案と雖も是は大きな問題だと思ふ、あなたは閣議を尊重しないと云ふ意味で獨自な案を出したのでありますか、其の點を御聽きします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=45
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046・大村清一
○大村國務大臣 只今御説明申上げましたやうに、國土局の試しの案でありますから、閣議の決定を覆すと云ふやうな意向は毛頭ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=46
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047・大澤喜代一
○大澤委員 是はどうも僕は、あつさり内務大臣の方が、所謂内務省の誤りであつたと言つた方がはつきりして宜いのではないかと思ふ、さうでなければ大きな問題だと思ふ、内務大臣は閣議に反對することになるではありませぬか、一試案だからと云つて、閣議で決定したものに對して重大な、之を左右するやうな案を出す譯はないではないか、是は、私が善意に解釋すると、あなたが知らぬ間に、あなたの兒分の連中が或は新聞記者連中にそれを見付けられたのかも知れぬ、是は善意に解釋する場合である、併し善意に解釋しないで、内務大臣の權威の下に是が出來たとすれば、それはあなたは閣議に對して公然と反對すると云ふことになる、さうではないか、一千何百萬も違ふ、どつちが本當であるか、それから今一つ──まあ一々こんなものを相手にしても仕樣がないが、此の案に依ると、あなたは、日本の人口の分布の状態を非常に心配して居られて、商業人口と云ふものを戰前の地位に復さなければならぬと言つて居る、日本の今日の此の慘憺たる廢墟の中に於て、五箇年後に戰前の商業人口の五百萬と云ふものはどうして一體吸收出來るか、商業人口と云ふものは一番都會に集中するものである、日本の都會と云ふものは、東京を初めとして殆ど荒廢に歸して居る、五箇年後に於てどうして五百萬を吸收出來るか、それは不可能だと云ふだけではない、日本の經濟の將來のあり方に對する非常な大きな問題である、我々は農民の立場として考へると、從來の日本の農村が、如何に都會に於ける所の此の厖大なる商業人口の爲に搾取されて居つたか、日本の經濟それ自體の脆弱性と云ふものは、日本の戰前に於ける所の商業人口の厖大さにある、廣く「アメリカ」や「イギリス」などと比べて見ますと其の點ははつきりして居る、だから、如何にして斯う云ふやうな脆弱性を持つて居る所の日本の經濟組織と云ふものは、假令諸君の欲する所の資本主義の再建の線に沿うても、何とか整理しなければならぬ問題である、それを戰前の商業人口にしなければならぬと云ふのは何處から來たか、此の點併せて御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=47
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048・大村清一
○大村國務大臣 曩に國土計畫と云ふ土木局の試案が新聞に公表せられました結果、世間に疑或を生じましたので、私は只今御答辯申上げましたと同じことを、他の委員會に於きましてもはつきり公言致しまして、國土計畫の試案に於きましては、何等政府の見解を述べたものでないと云ふことを釋明致して居るのであります、尚ね此の委員會を通じまして國民の間に誤解のないやうに釋明致して置きたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=48
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049・大澤喜代一
○大澤委員 それでは御聽きしますが、五箇年後に於ける國土計畫の案と云ふものが、米の點に關して見ても、政府は全力を盡して五箇年計畫を實施すれば是だけの米が出來るのだと言うて、多額の豫算を取つて一生懸命やつて居る、それがあなたの試案と云ふ建前から言ふと、農林省なり閣議で決定した案は間違つて居ると云ふ前提の下に過日の試案を發表したものか、之をはつきりして貰ひたい、閣議で決定し、國策で決定した案は間違つて居るから、内務省は獨自の案を作るのだ、斯う考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=49
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050・大村清一
○大村國務大臣 はつきり申上げますが、あれは試案でありまして、内務大臣としてあの數字を決定的に確認したものではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=50
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051・大澤喜代一
○大澤委員 それでは、是は少くとも内務大臣は關知しなかつたと解して宜しいですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=51
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052・大村清一
○大村國務大臣 度々申上げます如く試案として發表することは私の責任でありますが、其の數字に付きまして、内務省の決定數字であると云ふやうな確認を致したものではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=52
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053・大澤喜代一
○大澤委員 それでは別の問題で内務大臣に御伺ひしますが、政府は、今度の農地調整法を中心にしまして、先程言ひましたやうに日本から舊い封建的な勢力を一掃して民主化する、是は具體的に言ふと、封建的な勢力をなくして民主化しようとすることは、言ふまでもなく封建的な勢力の支柱となつて居る所の日本農村の癌である地主の勢力を謂はば一掃することでなければならぬと私は考へて居る、それを更に煎じ詰めて考へると、地主的な封建勢力の下に永い間壓迫迫害されて來た本當の耕作農民、此の人達の人權を尊重して、此の人達が喜んで生産増強に參加出來るやうな方針を執ることでなければならぬと私は思ふ、そこで農林省の色々な意向を聽きますと、其の線に或る程度沿うて今度の改革も出して居るけれども内務省は果してさう云ふ「ポツダム」宣言の線に沿うて實際考へて居るかどうかと云ふ點に非常な疑問があると考へる、先般私は民主戰線の意味で、共産黨の志賀君、徳田君と三人で、あなたの所へ行つて、最近地方ではこんな大きな問題が起きて居る、是は内務省の意向であるかと聽いた時に、あなたは、さうではないと言はれた、ああ云ふ問題が今續々起きて居る、農林省の方は、例へば米の供出と云ふ問題に付きましても、或は米の増産に付きましても、成たけ農民が自發的に、強權を發動しない方針でやつて行かうと云ふ、さう云ふ方向を執つて居ることは事實である、併し最近の現はれを見ると、政府として、農林省として、成程一應さう云ふ方向を執つて居るが、併し地方に現はれて居る状態は全く其の反對である、例へば此の間あなたの所へ徳田君、志賀君と行つた事件は、青森縣石川町に起つた事件である、それはどう云ふ事件かと云ふと、偶偶三百二十七俵かの供出未了の米があつた、其の三百二十何俵と云ふ供出未了の米をどう云ふやうに處置しようとしたかと云ふと、此の未納農家の約三百人を大鰐警察署に全員檢擧して、あの除草期の忙しい時に一人づつ二階に呼んで訊問した、其の訊問の仕方もひどい、警察官は椅子に坐つて、百姓は皆土下坐をさせられて居る、さうして一人づつ三百人が調べられた、其の結果どう云ふことになつたかと云ふと、是は後程大臣に出しますが、皆誓書を取られて居る、其の誓書はどう云ふことを言つて居るかと云ふと、今度の未納一斗なら一斗出したことは洵に濟みませぬ、此の次の秋の新米で必ず補充致しますから御許し願ひたい、此の誓書を僕は此處に二十何通持つて居ります、私は序に農林大臣に伺つて置きますが、去年の供米を百「パーセント」しなかつた、しなかつた事情は、言ふまでもない、不當割當もあるだらう、天降り割當もあるだらう、殊に青森縣は不作であつた、其の爲に百「パーセント」供出しなかつた、そこになんぼか殘つた、其の未納供出量を今年の新米で補充せよと云ふのは、果して農林省の方針であるかどうか、此の點聽いて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=53
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054・和田博雄
○和田國務大臣 米の未供出の分に付きましては一應は馬鈴薯なり麥を割當てます時に總浚ひと言ふと語弊がありますが、裏口で此の均衡を取つて貰ふやうにしまして、さう云ふ馬鈴薯なり麥なりで出せるものは出來るだけ出して貰ふと云ふことにした譯であります、隨てまだ殘つて居りますものに付ては、自發的に是非出して貰ひたいと云ふことにして居るのであります、其の點に付ては、差當つては馬鈴薯と麥の時にさう云ふ事柄を致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=54
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055・大澤喜代一
○大澤委員 それは新米、米でも出せと云ふ命令を出したのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=55
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056・和田博雄
○和田國務大臣 米の點に付ては、さう云ふものは或は出て居ないかと思ふのでありまするけれども、そこの所ははつきり致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=56
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057・大澤喜代一
○大澤委員 私も、昨年米を百「パーセント」出さなかつたから、其の殘りの五%なり一〇%を全部新しい米で出せと云ふ命令を如何なる政府でも出したと云ふことは聞いて居ない、それを一體日本の内務省ともあらうものが、どう云ふ權限に基いて米で出せと云ふことの指令を出したか、之を聽きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=57
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058・大村清一
○大村國務大臣 此の委員會外に於きまして、大澤さんから事件を指摘されて御質問がありました、其の調査報告を一應受けて居るのでありますが、それは御話と大分食違つて居る點がありますので再檢討を致して居ります、尚ほ必要に依りましては、午後にでも今まで調査して居ります經過を此處で報告致しても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=58
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059・大澤喜代一
○大澤委員 食違つて居るかどうかは、何れ後で何かの機會に私も御聽き致しますが、兎に角約一萬俵の供出に對して三百二十七俵位未納したからと云つて、第一囘に於て約六百人、其の次に問題が起きた時には約千人、是が一樣に、或は駐在所或は警察署に召喚されて、さう云ふ書類を皆出して居る、それから更に私は最近の動きを見て非常に不安心に堪へないことは、同じく或る村に於きまして米の供出の問題が起きた、それを解決する爲に、やはり農林省關係が出ないで警察が出動して居ります、是は北津輕郡三好村で約百三十人の農民が一齊檢擧を受けて居る、私は其の檢擧を受ける内容の問題は他の機會に讓るとして、其の時の調べ方、之に付ては此の間も私は地方長官に話して嚴重に再調査を要求して居りますが、百三十人の喚ばれた百姓の大部分は、あの蚊の一ぱい居る夏の監房に蚊帳も吊らずに皆放り込まれて居る、或る者は十二日間、是は單なる證人です、十二日間も留置場などに放り込まれて居る、さうして其の調べ方も、皆土下坐さして膝を折らした、栲問暴行を受けたのが二人ある、是は全部地方長官に話してあるから後で調べると分ると思ふ、斯う云ふことが頻々と起きた爲に、どう云ふ結果が起きたかと云ふと、只今農林大臣に話したやうに、馬鈴薯の供出の際に村民が大恐慌を起しまして、若し此の馬鈴薯を百「パーセント」出さなければどんな目に遭ふか分らぬと云ふので、種薯は勿論、種薯を出してもまだ百「パーセント」にならない百姓は外から馬鈴薯を買つて來て供出した事實がある、是は農林省は強權を發動しないけれども、内務省が警察力に依つて、丁度戰爭中にやつたやうな農民に對する彈壓政治と同じやうな方向で以て今地方の農民に對して居る、私は人權を尊重せよと言はれて居る場合に於て、人殺しをした譯でもない、今の三好村あたりは昨年は一一〇%も供出した模範村なのです、それが言ふに言はれぬ事情があつて米の横流し、闇をやつた、是等に對して大量檢擧をし、而も蚊帳も吊らずに監房の中に打ち込んで置くとか、十二日間も留置するとか、或は土下坐をさして訊問、暴行を加へられて居ると云ふ例に對して、一體内務大臣はどう云ふ御考を持つて居るのか、此の點をはつきりさして戴きたいと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=59
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060・大村清一
○大村國務大臣 從來の警察のやり方に於きまして誤つた點が多々あつただらうと思ふのであります、併し終戰後の今日に於きましては、食糧の供出其の他の積極行政の面に於きまして警察が出過ぎることは十分に戒めて居るのであります、食糧の供出と云ふ問題は農林行政の一部でありまして、農林省の指導下に地方廳で此の事務を取扱つて居ります故に、此の米の供出は何處までも農林行政の線に沿つて推進をされる、其の間に於きまして農林行政を保證します意味に於きまして、諸種の罰則を設けて居ることがありますが、其のやうな罰則違反のことがあります場合に於きましては、是は警察として犯罪を取締る、刑事事件を檢擧すると云ふ立場に居りますから、それは斷乎としてやる、併し今日の時世と相成りましては、御話の如く人權を尊重すべきことは最も必要なことでありますから、其の點に於て格段の注意を拂ひまして、人權蹂躙に亙るやうな犯罪を檢擧方法は絶對に之を避けると云ふことで、其の指導を致し、其の徹底を圖つて居るのであります、私はよく今日の警察は戰前とは百八十度の轉換を致して居る、又致さなければならぬと申述べて居るのでありますが、其の心持は、從來の警察は民衆を指導する、教育をすると云ふやうな少し積極面に行き過ぎた、出過ぎた行き方がありますので、之を全部拂拭致しまして、警察は消極面に立ちまして社會秩序を維持して行くと云ふものに立ち還らなければならぬ、又其の職務の執行に當りましては、國民の基本人權を十分に尊重すると云ふやり方で行動しなければならぬと云ふことで、指導を致して參つて居ります、又其の指導は順次徹底しつつあると考へて居るのであります、併し何に致せ、全國に亙つて居ることであります、又多數の中には不心得の者もない譯ではございませぬ、是等は其の事實のありました場合に於きましては、十分なる訓戒を加へ、又其の行爲が度を失して居りますものに付きましては、それぞれの處分を致すと云ふことで、只今申しますやうな新方針が末端まで徹底することに懸命の努力を致して來て居ります、又今後一層之に努める積りで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=60
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061・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは是で休憩致しまして、午後は一時半から再開します
午後零時十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=61
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062・会議録情報2
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午後一時四十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=62
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063・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午前に引續きまして會議を開きます、質疑を續行致します──大澤喜代一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=63
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064・大澤喜代一
○大澤委員 今度政府で出した此の案は、先程申しましたやうに、私達が考へますると、結局日本の農業生産力を阻んで居るものは何かと云へば、それは日本の古い封建的な勢力である、だから農村の民主化と云ふことを方針とした、此の案と云ふものを考へますれば、結局如何にして現在の日本の生産力を阻んで居る所の封建的な殘存勢力を一掃するかと云ふことにある譯なのです、所が本會議以後今日に至るまで私共が色々先輩、同僚議員の御意見、特に自由黨を代表する各位の御意見、之に對する大臣の答辯、其の他を色々綜合して考へまするに、一體此の案の本當の狙ひ所が何處にあるか、非常に歪曲されて來て居りはしないかと云ふ心配が出て參つたのです、例へば、私は此の案全體が皆正鵠を得て居るものだとは考へて居りませぬが、少くとも現行法よりも數歩進歩を示したものであると云ふことには異議はないのであります、併し此の案を作つた所の現内閣、其の主潮をなして居る所の自由黨の諸君の御意見と云ふものは、果して政府の出した案の根本的な精神に對して理解を持つて居るかどうか、疑問だと思ひます、例へば此の案は政治の要諦として、地主にも宜しく、小作人にも宜しきものでなければならない、それは今日の日本の政治の中心的な問題でなければならぬと云ふやうなことを言つて居る、果して農林大臣は其のやうに考へて此の案を出したのかどうか、是は將來此の案に對する問題を考へる場合に於ては私は重大だと思ふのです、私はさうは思はないのです、詰り農村の民主化を妨げ、生産力を妨害して居るものは、言ふまでもなく封建的な勢力で、此の封建的な勢力の代表は地主勢力なのである、是はもうちやんと「ポツダム」宣言に依る日本の土地改革に關する諸資料の中にある、政府の出したG・H・Qの例の一九四五年の「農地改革についての覺書」、之に明記されて居ると私は思ふのです、此の點がはつきりされて居らない、先づ私は此の點をはつきりさせてから色々尋ねたいと思ひます、第一番目に「民主化促進上經濟的障碍を排除し、人權の尊重を全からしめ且數世紀に亙る封建的壓制の下日本農民を奴隷化して來た經濟的桎梏を打破するため」斯うはつきり謳はれて居りまして、我々社會黨は此の「マ」司令部より出した覺書に付ては全幅的に贊成です、私は少くとも現内閣も此の線に沿うて此の案を出したのではないか、地主にも宜く、小作人にも宜くでない、成程日本の農村の過去を考へると、地主の方々の中でも非常に立派な人もあると云ふことは、我々も認めるけれども、一つの階級の力として考へる場合には、明かに地主は日本の民主化を妨害して來た勢力なのです、和田農林大臣は、此のG・H・Qから出た覺書の第一條項、所謂「日本農民を奴隷化して來た經濟的桎梏を打破するため」、果して此の建前から此の案を出したものかどうか、其の點をはつきり聲明して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=64
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065・和田博雄
○和田國務大臣 是は言葉の表現はどうあるか知りませぬが、私が之を出しましたのは、やはり此の線に沿つて日本の農村の民主化を圖り、且つ農業の生産力を高める、さうして耕作農民をして、貴重なる其の勞働の成果を享受せしめると云ふ爲に均等な機會を與へる、斯う云ふ建前から出して居りますことは、本會議等に於て説明致した通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=65
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066・大澤喜代一
○大澤委員 それで大體和田農林大臣の意のある所は能く分りましたので、今まで此の案に對する、誤解があつたやうに私は承知して居りましたが、其の點は此の線に沿ふと云ふことではつきりしたと思ふのです、其の建前から御尋ね致しますが、日本の農村の封建勢力、而も此の地主的封建勢力の支柱となつたものの中に、少くとも國有林、國有財産、皇室財産、是等のものがあることはもう爭ふべからざる事實なのです、此の際御聽きしますが、農林大臣は此の國有地及び御耕地の解決をどう考へて居るか、其の全貌を一つはつきりさして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=66
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067・和田博雄
○和田國務大臣 御料地等に付きましては、只今の憲法の法制の下では、是は本案の對象とはならないのであります、是は皇室財産令がありまして、其の規定がありまして、さうならないのでありますが、新しい憲法が通りますれば、是は軈で國有財産となります、隨ひまして國有財産となりました場合には、御料林に付きましては、國有林と同じやうな建前を以て處理致したいと思つて居ります、只今の所、大體分りました御料林中の開墾可能地は合計一萬一千三十五町歩あります、其の中で開墾著手濟のものは五千五百二十八町歩ありまして、六月末完了濟のものは六百三町歩と云ふことになつて居ります、是は何れ新憲法が制定されて、是が國有林となる場合に於きましては、まだまだ調査致しますれば今後増加する見込があると思ひます、只今の所、現状は其のやうになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=67
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068・大澤喜代一
○大澤委員 序に御尋ね致しますが、國有地の問題は後に致しまして、それでは大體政府は現在の御料地は國有地になるのだと云ふ前提の下に、之を農地調整法の對象として考へて居ると、斯う私は理解しました、そこで、此の政府の農林省から出して貰つた資料ですが、小さいやうですが、皇室財産中の開墾可能の豫定面積に關する資料、之を拜見しますと、農林省の豫定面積と云ふものは五萬町歩、斯うなつて居ります、此の點間違ひないですか、何だか今の農林大臣と御話が違ふやうですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=68
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069・和田博雄
○和田國務大臣 それは一寸後で調べて見ないと分りませぬが、只今私が申しましたやうに、開墾可能地は御料林は一萬一千町歩と云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=69
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070・大澤喜代一
○大澤委員 それはあなたの方が出したのと餘程違ひます、何れが間違ひかと云ふことは後ではつきりして貰ひます、之を見ますとあなたの方で斯う謳つて居ります、皇室財産中開墾可能豫定面積に關する資料、農林省豫定面積五萬町歩、帝室林野局豫定面積四萬四千百四十町歩斯うなつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=70
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071・和田博雄
○和田國務大臣 それは何か委員會にでも出しました資料であるか調べて見ます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=71
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072・大澤喜代一
○大澤委員 あなたの方から出たことは事實なのです、一週間位前に出たのです、此の豫定地が假に五萬町歩でも三萬町歩でも、後ではつきりさせて戴くと致しまして此の數字は所謂皇室財産の費目の中にある普通御料地の總面積であるのかそれとも世傳御料地の面積の中に入つて居るのか、其の點をはつきりして戴きたい、何故ならば、少くとも今までの發表に依りますと、普通御料地總面積と云ふものは、總面積百六萬二千二百九十四町歩ある、それから世傳御料地面積は約二十萬八千五百町歩あるのです、合計御料地は百二十七萬九百五町歩ある、此の厖大な御料地の中から、只今農林大臣の御話をされた一萬幾ら、私の方に出した所の農林省の資料に依ると五萬町歩、私は假に此の出された資料五萬町歩を正しいものと假定致しましても、厖大な百二十七萬町歩以上の中から、一體たつた五萬町歩しか此の開墾の對象となるやうな開墾可能地がないかどうか、我々國民から言つたら、百二十七萬町歩あるのだから、もつと澤山開墾可能の豫定面積があるのではないかと云ふやうな素人考へを持つて居るのです、それから今大事なことは、普通御料地から取る場合と、世傳御料地を對象とする場合は、手續上重大なる相違があると思ひます、少くとも普通御料地ならば、慥か宮内大臣の決裁で出來ると思ひまするが、世傳御料地の場合は、樞密院會議に掛けなければならぬと私は聞いて居ります、其の兩方を政府は檢討した上に於て、御料地面積の一萬何千町歩乃至は五萬町歩と云ふものを決定したのかどうか、此の點は將來非常に大きな問題と思ひますから、はつきりして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=72
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073・和田博雄
○和田國務大臣 其の區別は只今はつきりして居りませぬが、色々關係方面と相談して出した數字であります、是は正確には段々調べて行けば分ると思ひます、唯開墾面積が非常に狹いと云ふ御話でありますが、やはり御料地のあります場所其の他に依りまして、開墾と云ふ點から見ますれば或はさう云ふことになるかも知れませぬ、其の點に付きましては詳しく調べて見ます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=73
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074・大澤喜代一
○大澤委員 御料地の問題で、現在御料地の中に小作人を使用して小作料を取つて居る總面積──是は直接何萬と云ふ小作人に取つて大きな問題なのですから、其の全貌を一つ發表して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=74
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075・和田博雄
○和田國務大臣 それ等のことは一つ後で調べまして…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=75
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076・大澤喜代一
○大澤委員 それでは數字のことは後で調べて、此の委員會が開催されて居る中に是非發表して戴きたいと思ひます、一言申上げますが、あなたの方の農林省開拓局として我々の手許に出した資料に依りますと、御料地の中で耕地、詰り田畑になつて居る面積は九千町歩となつて居るのです、所が「マ」司令部の皇室財産の發表に依りますと、昭和二十年十月三十日附聯合軍の總司令部渉外局發表御料地面積に依れば、日本の天皇が持つて居られる農地は三萬九千八百三十五町歩と云ふことになつて居ります、是は對日理事會にも之を「マ」司令部から發表して居るし、全國民にも、世界にも發表して居ります、所があなたの方で四、五日前私の手許に出した資料を見ると、實際は驚くなかれ六千三百十五町歩位しかないと云ふ、此の何れが正しいか、開拓局では九千町歩、「マ」司令部では約四萬町歩、四、五日前に出した資料、是は斯う云ふ風に説明して居る、帝室林野局で判明した農地だと云ふ臺帳には、實は六千三百十五町歩しかないのだ、「マ」司令部の約四萬町歩と云ふのは間違ひなので、是は由々しき問題だと思ふ、「マ」司令部が果して其の間違ひの資料を材料にして對日理事會に報告し、國民に發表したものか、それとも日本の宮内省が臺帳に四萬町歩と記けて置いたか、實際は本當に六千三百なんぼしかないのか、もつとあるにも拘はず、さう云ふ風に發表しないのか、是は大きな問題です、農林省は少くとも今度は此の農地調整法の精神に副うて、御料地も國有林も可能の限り之を解放するのだ、是は政府の方針だと思ひます、又「マ」司令部の方針だと思ひます、其の建前から言へば、此の數字の相違と云ふものは我々はどう考へたら宜いか、此の點をあなたからはつきりさせて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=76
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077・和田博雄
○和田國務大臣 對日理事會の報告がどう云ふ資料に基いたか私存じませぬ、それは一つ調べて見ようと思ひますが、唯開墾可能地でありますから、段々調べて行くと、調べるものに依つて、違ひますから、只今私が一千町歩と申しますのは、我々の方で調べましたものを申上げた譯でございますが、色々の方面から恐らくさう云ふやうなものが出て居ると思ひますが、其の點に付ては私の方でもう少し吟味して見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=77
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078・大澤喜代一
○大澤委員 事皇室の財産なのでありますから、我々と致しましても餘り立入ることはしたくないと思ひます、併し先程申しましたやうに、是は日本の封建性を土地問題から拂拭する爲には、どうしても此の御料地の問題、國有林の問題をはつきり解決しなければならない、是は日本の癌なのであります、少くとも國策として決定し、政府が此の案を出した以上は、此の日本の所謂封建性の主流をなして居る、日本の民主化の爲め非常な妨害となつて居る國有林、御料地に對しては、もつと詳細な正確な調べを持たなければならぬと私は考へる、斯う云ふやうに到る處に食違つて居る、是は決して小さい問題とは考へられない、農林大臣から言はせれば、「マ」司令部は如何なる資料に基いて國民に發表したか、それを對日理事會に發表したか知らないと御話になりましたが、是は大きな問題であります、「マ」司令部は、日本の政府の出して居る資料に基いて、皇室の厖大な財産を國民にも對日理事會にも發表して居るものと我々は考へて居る、若し此のやうな状態で居るならば、「マ」司令部の今まで發表した皇室財産と云ふものは洵に莫大なものである、土地ですから百三十萬町歩以上、全財産は「マ」司令部の發表に依りましても約十五億圓、而もあの時は田畑一町歩二十圓と計算して十五億圓と云ふやうな發表をして居つたと思ふ、然らば、今のやうな杜撰な調査に基くならば、日本の御料地國有林は勿論のこと、皇室財産全體の調査評價と云ふものも非常に不安定なもので、國民もそれを信頼することは出來ない結果になると思ふ、此の點を農林大臣を捉へて聽くのは稍稍氣の毒ですが、併しあなたは少くとも此の御料地、國有林に對してはもつと正確な資料を持つて居なければならぬ筈なのであります、一萬町歩や二萬町歩の問題ではない、何百萬町歩と云ふ問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=78
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079・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、十分御檢討下さることは宜いのでありますが「マ」司令部がどう云ふ材料で何處から出たものに依つたのか詳しいことは存じませぬから、それで知らないと申上げました、一應調べたものがあるので、帝室林野局で調べたものに依ると、昭和二十年の十月三十日に聯合軍總司令部渉外局の發表になる農地三萬九千幾らも臺帳面積の田畑になつて居るのでありまして、大部分は現状は農地でないと云ふことであります、隨て只今申しましたやうに、現状の農地のものは合計致しまして六千三百町歩餘りと云ふことに相成つて居る、開墾地に付きましては只今申上げた通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=79
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080・大澤喜代一
○大澤委員 さうすると此の臺帳で六千二百十五町歩しかないと云ふのであれば、あとの六分の五は何處へ行つたか、農地でなくなつてしまつたか、田でもなく、畑でもなく、原野になつてしまつたのか、最初から臺帳の方が間違ひであつて、明治初年以來僅か六千二百十町歩しかなかつたのか、是は大きな問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=80
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081・和田博雄
○和田國務大臣 正確なことは分りませぬが、御承知のやうに、臺帳面積は原野であつても、現状は田畑になつたものが相當ある譯でありまして、恐らく初めは田畑と臺帳にあつたものが其の後植林を致すとか、或は原野になつたとか、さう云ふ變つたことは起つて居ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=81
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082・大澤喜代一
○大澤委員 農林大臣に對して御料地の問題を是れ以上聽くのも宜しくないと思ひますが、臺帳面の相違は何處にもあります、我々普通農家にもあるけれども、五分の一も六分の一も違ふと云ふことは容易ならざる問題です、而も「マ」司令部は斯う云ふことを聲明して居る、十月三十日に日本皇室の財産の發表に關し最高司令部經濟科學部は斯う云ふことを言つて居る、此の報告を將來の日本經濟を支配する計畫の作成に用ふる筈だ、斯う言つて居る、さう云ふ「マ」司令部の重大に考へて居るものの資料だとすれば、是は容易ならぬものだと思ふ、事實と相違して居るならば、訂正方を申込むべきであると思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=82
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083・山添利作
○山添政府委員 皇室の農地關係に付きましては、私も林野局に參りまして能く打合せを致して居りますが、生憎今日は其の資料を持つて來て居りませぬので、數字の御答へは出來ませぬ、今御指摘になりました四萬町歩が、實際は六千町歩と云ふ問題に付きましては、私の知つて居る限りに於きましては、是は農地と云ふ形で出て居りましても、實際使つて居るのは牧場とか混牧林と云ふやうな關係になつて居りまして、半ば牧場と云ふやうな形になつて居るのがさうであります、さう云ふ關係で實際と農地と臺帳面積に依つて農地と稱して居るものの間違ひが出て居るやうに承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=83
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084・大澤喜代一
○大澤委員 さう云ふ風に御聽きになつて居るかも知れぬが、我々國民としては其の點はやはりはつきりされた方が宜いと思ふ、先程申上げましたやうに斯う云ふ風な不正確なものだとすれば、今後の土地解放問題だけではなく、やはり皇室財産全體に對する國民の不安の問題が出て來るのですが、是は農林省關係の方から聽いても仕樣がいなと思ふから、如何でせうか、私は法律のことは分らぬけれども、此の委員會に宮内大臣を呼んで嚴重に此の點を調べる譯にいかぬものでせうか、此の點委員長に伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=84
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085・葉梨新五郎
○葉梨委員長 憲法改正案實施の曉ならばいざ知らず、現在に於ては好ましからざることと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=85
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086・大澤喜代一
○大澤委員 それでは好ましき状態になつた時に一つ之を問題にしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=86
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087・葉梨新五郎
○葉梨委員 承知致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=87
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088・大澤喜代一
○大澤委員 そこで農林大臣に御伺ひしたい、假に四萬町歩でも宜いが、或は臺帳の間違ひとして六千二百町歩でも宜いが、是は全部國の方へ、詰り農林關係に移して之を小作人に解放することになる譯ですか、法文には不在地主と在村地主の區別を設けて、在村地主は一町歩と云ふことになつて居るが、在村地主として扱ふのか、不在地主として扱ふのか、それ等の點に付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=88
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089・山添利作
○山添政府委員 是は憲法の規定に依りまして全部國有地になり、其の國有地になつた時に此の法律の規定に乘せて處分をする、其の事柄は法律の中にも、買上げました農地の處分の外に、命令を以て定むる國の所有する農地と云ふことで、實は其のことを豫定してちやんと規定して居る譯であります、又先程世傳御料と然らざるものとの關係に付て御尋ねがありましたが、實は私も其の點林野局長官と話し合つて見たこともあります、今後は世傳御料と然らざるものとの區別はないと思ひますけれども、農地關係のものは世傳御料のやうなもの、斯う云ふ山奧のやうなものには殆どございませぬので、然らざる皇室財産の中にあるもの、斯う云ふ風に御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=89
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090・大澤喜代一
○大澤委員 今度出た二つの法律案の根本的な性質に付てもう一度御尋ね致しますが、現行法の第一條では「本法は互讓相助の精神に則り農地の所有者及耕作者」云々と云ふことになつて居ります、所で今度の改正案を見ますると、「本法は耕作者の地位の安定及農業生産力の維持増進を圖る爲」云々とあります、さうすると現行法と今度出した案との第一條に於ける本質的な相違は何處にあるかと云へば、互讓相助の精神、それから農地所有者云々、是等の精神に則つて農村の平和を圖ると云ふやうなことがなくなつて居ると私は考へて居ります、言ふまでもなく、是は昭和十三年の本法審議の場合に、互讓相助の精神は衆議院で、農地所有者云々の文句は貴族院で附加されたものと聞いて居ります、そこで私御聽きしますが、現行法と今度出した案との比較に於て、先程申しました現行法の互讓相助の精神、所有者云々と云ふものを今度の改正案で全部削除する、其の削除した所の根本的な精神と云ふものを御知らせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=90
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091・和田博雄
○和田國務大臣 それは根本的な精神と申しますのは、今囘の農地改革と云ふものに依りまして、農村と云ふものの構成は變つて來るのでありますし、又本法の農地改革をやります趣旨其のものをはつきりと、それぞれの法案に於て明示致すことに致したのでありまして、何處までも此の改革が耕作者、土地を耕す者の地位の安定と農業生産力の維持増進を圖ると云ふ點にあると云ふことを強調したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=91
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092・大澤喜代一
○大澤委員 大體能く分りました、はつきり言ふと、今までの日本の農業政策と云ふものは、地主と小作人との互讓相助の精神に則つて、所有者と小作者とが仲好く日本の農村問題を解決しようと云ふことであつたが、今度是は飽くまでも働く耕作農民を中心の問題として民主的に解決するのだ、斯う云ふ風に私は理解します、又さうでなければならぬと思ふ、私はさう云ふ意味で之に非常に贊成するのですが、最近此の法案が議會に現はれましてから、各方面に於て此の法案を骨拔きにしようとする運動が相當執拗に行はれて來て居るのを私は見て居ります、昨年の議會に於ても、例の地主保有面積を折角政府が三町歩と出したものを五町歩に殖やされた、本年も一町歩と云ふやうな問題を更にもつと地主に有利に、三町歩にも四町歩にもしなければならぬと云ふやうな運動が澤山起きて居ります、私は斯う云ふ運動が起きて居ることに對して、政府が十分之を知つて、而もそれに對する斷乎たる方針を持つて居るかどうか、其の點を御尋ねしたい、例へば八月二十八日に「週刊自由」と云ふ新聞に其の點が摘發されて居るのです、土地改革を骨拔きにし、南部地主連上京して策動、是は地方の大地主の田中某と云ふ人が隊長になりまして、約四百人の地主を結集して中央に乘出して來て此の案を骨拔きにしようとする運動をして居るのだ、斯う書いて居る、農林省は是等の詰り骨拔きにしようと云ふ地主階級の運動に對してはどう云ふ風に考へて居るか、飽くまでも「マッカーサー」司令部の先程のああ云ふ精神で行つて、如何なる地主階級の策動や何かあつても、斷乎として此の精神だけは活かすと云ふ方針で行くのかどうか、それを去年の例もありますから此處ではつきりさせて貰ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=92
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093・和田博雄
○和田國務大臣 政府としましては、今囘の案が農村の民主化と生産力の發達の爲に最も適當である、斯う考へて出して居る譯でありますから、さう云ふ考へには變りはありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=93
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094・大澤喜代一
○大澤委員 私はさう言ふからと云つて、本法が皆正しいのだと云ふ見解ではないのですが、本法のやうなものでも改惡しようと云ふやうな運動が心配だから、一應農民の立場で御聽きしたが、まあ餘りはつきりしないやうだが、大體和田さんも何處までも是で行くと云ふ意向が見えたやうだから、私は安心して後を質問して行きます、どうか去年のやうなことにならぬやうに、社會黨は之をもつと良くしようと云ふ案を持つて居りますから、其の點を十分是から諒解して本法に對して色色御答へして戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=94
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095・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤君に申上げて置きますが、あなたの時間は既に經過致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=95
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096・大澤喜代一
○大澤委員 是から愈愈本論に入る譯なので、私は先程どなたかが申しましたやうに、委員長が何時間でも構はぬと云ふ當初の聲明を信頼して、此の通り澤山資料を持つて來て居るので…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=96
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097・葉梨新五郎
○葉梨委員長 其の後の理事會の決議に依つて行動致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=97
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098・大澤喜代一
○大澤委員 いや、あれは必ずしも我我の意思を代表したものではないのです、では御聽きしますが、私は特に今度の食糧問題に付て、それから農村の封建性と云ふことに鑑みて御尋ねするのですが、政府は二箇年に於て是だけ厖大な農地を地主から買上げて、さうして小作人にやると言ふ、それから更に五箇年に於て百五十五萬町歩の開墾をすると言ふ、之を我々が考へました場合に、政府はどれだけの準備を以て之を斷行して行くのか、其の點非常に心配です、現在政府としましては、之を斷行するに付ての人事だとか機構だとか、さう云つたものが最早準備が出來て居るのかどうか、國民は心配して居りまするから、其の點を一應はつきりさして貰ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=98
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099・和田博雄
○和田國務大臣 其の人的の準備、機構の準備は農政局長から御答へしますが、先程大澤さんから御質問のありました五萬町歩と一萬一千町歩との關係でありますが、只今調べて見ますと、御料林の中で開墾可能地の面積、其の中で開拓適地として調査が完了致しまして許可を得ましたのが一萬一千町歩、五萬町歩と云ふのは開拓計畫の實施上當局として開放を希望して居る面積、斯う云ふことでありますから左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=99
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100・山添利作
○山添政府委員 農政機構のことに付きましては、既に豫算は大藏省との間に話が決まりまして、其の「ライン」に從つて考へて居ります、其の要領は、本省に於きましては農政局の中に農地部を説置する、又地方には農林省の此の農地改革の仕事を推進する機關と致しまして、「ブロック」別に農地管理局を設置する、又府縣には農地部を設置する、勿論府縣に於きましては開拓關係の仕事も一緒になりまするが、さう云ふ考へを以ちまして人選等に付きましては、内々其の準備を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=100
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101・大澤喜代一
○大澤委員 私は地方に居つて見て居りますが、今度の農地改革と云ふものは、市町村の農地委員會或は縣の農地委員會と云ふものが出來て、重大な機能をなすので、是は總て地方の府縣廳、市町村が中心となつてやる譯なのですが、其の場合に農林省が此の案を遂行する爲に、直接の機關を地方に設置してやると云ふことになれば、地方のさうした此の機關との調整と云つたやうなものが果して旨く行くかどうか、是はもつと一元化すると云つたやうなことも考へる餘地がありはしないかと思ふ、其の點はどう云ふやうに御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=101
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102・和田博雄
○和田國務大臣 今度の農地の改革は、御分りになりますやうに、非常に急速にやらなければなりませぬし、且つ專門的な知識を要する譯であります、又此の農地改革をやるに付きましては、係員其の他の人が非常に熱情を以て仕事を一生懸命やつて貰はないといけない譯であります、そこで此の點に關しましては、本省からずつと末端に至りますまで、是は專門に一貫してやつて行くことが必要だと考へますので、今農政局長が説明しましたやうな體制を整へて居る譯であります、勿論人的な關係其の他地方の仕事の關係に於きましては、是は十分な連絡を取つて行く積りでありますが、建前はさう云ふやうに一貫してやることに致しませぬと、どうしても中々急速に參らないと考へます、そこでさう云ふ點に重點を置いてやつて行くことにして居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=102
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103・大澤喜代一
○大澤委員 それでは別の點を御聽きしたいと思ひます、本法が愈々通過して之を實行すると云ふことになれば、終戰後今日に至るまでのやうに、地主の土地取上と云ふことは、或る程度それぞれの機關に依つて調整される希望を我々持つて居りますが、現在まで終戰後に於て取上げられた所の土地、之を中心とする所の爭議と云ふものは非常な數字に上つて居ることは、もう農林省が出して居られる所の色々な資料に依つてもはつきりして居ります、八月十五日から六月頃までの爭議の件數は二十五萬見當、斯う云ふ風にあなたの方の書類にあるが、恐らく實際の數は是の五倍も十倍もあるのではないかと思ふのです、而も此の中本當の爭議となつて當局の手に掛つたものの中で、地主の要求が四割も通つて居る、假に其の資料に基いて、約二十五萬件ですか、此の總體の爭議の數が正しいものだと假定しましても、其の爭議の中四割も地主の要求が通つて居るとなれば、二十五萬件の起きた爭議の中に、地主の要求が通つて土地を取上げた件數と云ふものは莫大なものだと思ふ、一體今度の農林省が出した案に依りますと、是から出來る所の農地委員會が承認すれば、それは昨年の十一月二十三日まで逆つて處理することが出來る、斯う云ふ風になつて居りますけれども、私が考へますのににもう既に二十數萬件も取上げられた土地問題と云ふものは、今後農地委員會が出來たからと云つて、直ちに解決出來ると云ふ可能性は私は見て居りませぬ、それは農地委員會の性格にも機構にも依りますが、農民組合などの強い所は、抑抑地主の一方的な要求で土地問題は解決して居らぬ、此のやうな件數が起る地帶は農民の組織の弱い地帶である、そこに農地委員會が出來たからと云つて、是等土地取上問題と云ふものは解決しないと思ふ、若し此の土地取上問題が解決しないとするならば、小作人と云ふものは、折角此の案が通過したとしても、もう戰爭中及び戰爭後に取られたものは全部損だ、取つた方が儲けだと云ふやうな結果に陷つてしまふと思ふ、だから私考へるに、此の問題は單に是から出來る農地委員會に承認を求めると云つたやうなものであつてはならぬ、何故ならぬかと云ふと、本來戰爭中は勿論のことだが、敗戰後の今日まで、現行法の第九條に依れば、地主の方が正當の理由なくして、一方的に土地を取上げると云ふことは不可能になつて居る、それの罰則には少くとも六箇月以下の懲役、さう云ふやうなものをちやんと現行法で作つてあるにも拘らず、聞く所に依れば、全國で其の罰則の適用された件數とは一つもないと云ふやうな話で、司法省の方がいらつしやるから此の點は後で御聽きしますが、恐らく百萬件近い土地取上問題の中で、此の第九條の罰則を適用すべきものは幾つもあつたと考へるが、それを實行して居らない、それは少くとも政府の責任ではないかと私は思ふのです、さう云ふ意味に於ても、是から出來る農地委員會にそれ等の承認を求めて、今までの何十萬件と云ふ土地取上を解決すると云ふことは、私は責任上間違ひではないかと思ふのです、此の點に對して農林大臣はどう云ふ御考へであるか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=103
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104・奧野健一
○奧野政府委員 是は刑事局長が後刻見えて…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=104
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105・和田博雄
○和田國務大臣 御答へします、是は實質的には非常に難かしい問題を含んで居ると思ふのですが、此の地主の土地取上の中で、地主の要求が通る場合、其の他色々な事柄を事例に付て材料を御配りして置いたのでありますが、結局問題になりますのは大澤さんの御指摘になりましたやうに、地主が非常に力が強くて、片方の小作人の力が弱い、そこに不當に取上げられたと云ふやうなことだらうと思ひます、是等のものに付ては、是は法律で遡つて──兎に角農地委員會と云ふものが出來ますれば遡ることが出來るやうに致して居る譯でございますので、農地委員會と云ふものの活動に依りまして、それ等の點に付ては、具體的に解決して行くと云ふことに結局はなると思つて居るのでございまして、我々としては農地委員會と云ふものを十分に活動さして、それ等のものを處理して行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=105
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106・大澤喜代一
○大澤委員 それはあなたにしてはさう云ふ風にした方が一番無難なので、宜い所だと思ふが、併し農村の實情は大變なものですよ、是は私の友達の村長から來たのですが、斯う云ふことを言つて來て居る、農地法第九條第三項の違反行爲が地主に依つて公然となされて居る、此の罪は所謂親告罪ではない筈なのであるが、我が縣では凡そ千件に垂んとする地主があつても、此の罪の適用を受けて取調を受けた者さへない、是は檢事局の檢事が言つて居る、小作人が地主に土地引上をされても泣寢入をするか、或は小作調停法に依つて多額の費用を掛けて爭つて居る、自分の村の小作人で村切つての篤農家である蛯名馬藏が、三十年來小作して來た畑地四段二畝を今春に至り突如返還を要求され、之に應じなかつた所、地主は其の土地へ暴力的に立入り、粟と稗を播いてしまつた、小作人は仕方なしに小作調停を申立てたのであるが、青森地方裁判所の四囘に亙る調停も、地主の頑固なる一方的主張を如何ともすることが出來ず、調停を自ら取下げ、辯護士に依頼、小作權確認の訴訟を目下青森區裁判所で繋屬中だ、どうです、斯う云ふ箆棒なことになつて居るのです、ですから結局農地調整委員會あたりでああでもない斯うでもないと言つて居るが、斯う云ふやうに小作人は農地調停法に掛けるより仕方がない、農地調停法は地主は利かない、さうすると裁判所に行く、其の間に地主はどう云ふことをするかと云ふと、是は最近青森縣に起きた例ですが、地主は直ぐ裁判所に訴へた、裁判所も裁判所で、是は司法省に聽く爲に言ふのですが、往年新潟縣の小作爭議で百姓が腹を切つて死んだのですが、直ちに立入禁止の札を貼つてしまふ、是は何も今から十年も前の話ではない、今年の春の事件です、小作人は仕樣がない、其處に行けない、地主は澤山の暴力團みたいなものを雇つて來て、今まで小作人の播いて置いたものを拔いてしまつて、自分で播いてしまふ、それから約二箇月後に於て農民組合其の他が問題にしてやつと解決した、其の時には既に小作人の植えた何物もなくなつて、地主が全部播いて居つた、斯う云ふ事實は澤山ある、是は現にある一例に過ぎない、決して極端な例ではない、全國到る處に起きて居る、農林大臣、あなたは司法大臣ではありませぬから、其の責任を追究するのではないが、少くとも政府で農林省が此の現行法を出して、さう云ふ罰則を設けて居るのを實行しないと云ふに於ては、共同責任があるのですから、是等の農地委員會に之を附議したり承認させたりすると云ふことは、今までの、少くとも終戰後今日までに起きた所の一切の土地の移動を一應禁止する、認めない、否認する、此の建前の下に此の土地問題を再調査するとか善處するとか云ふならば穩かに落著くのではないかと思ふ、私は「マッカーサー」司令部の覺書なんか見てもやはりさう云ふ點を心配して居るやうに思ひます、だから政府も仕方がなくて、十一月二十何日に遡つて農地委員會に於て認めればとか何とか云ふことを言つたに違ひない、「マ」司令部の覺書はさう云ふことを心配して居る、だから思切つて働く農民の立場で、和田農林大臣は其の點の理解の強い人だと云ふことになつて居るのですから、終戰後に於ける一切の土地の移動を一應ここで否認して置いて、之を無效にして置いて、それから此の問題を取上げるやうな方法を執らなければ此の解決は付かない、さう云ふ勇斷と云ひますか、考へを持つて居ないかどうか、是は全國百萬件に上る取られた農民の齊しく聽かんとする所だから、餘り妥協しないで、本當のあなたの氣持を言つて貰はなければならぬと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=106
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107・和田博雄
○和田國務大臣 どうもそれは只今仰せになりましたやうに、非常に不當にやりましたものに付ては、結局只今言ひましたやうに、第九條の罪則とか其の他が不問に付されて居る形になるのであります、さう云ふものに付ては個個の農地委員會で十分問題にし得る事柄であります、個々の具體的な事件として解決して行く、斯う云ふことにならざるを得ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=107
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108・大澤喜代一
○大澤委員 和田農林大臣は、農地委員會と云ふものは何だか神樣が作つたやうなものだと思つて居る、以ての外です、我々は現在此の案に現はれて居る農地委員會にも反對です、小作人はたつた五人しかない、而も此の案に依ると、少くとも一町歩の地主が二町歩の自作をやつて、三町歩と云ふものを持つて農村に臨むことが出來る、是では今までの日本の農村を支配して來た封建勢力を立派に殘すことになるのだ、だから此の法案が二つ通過して見た所で、日本に於ける封建的勢力が此の爲になくなると云ふことは考へられない、是では依然として地主勢力が殘るのです、此の案では現行法より弱くなると云ふだけであつて殘る、是は現在の政府の性格が示す所だと我々は考へて居ります、だから其の上に出來た農地委員會と云ふものは、先程申しましたやうに、耕作農民の強い礎石がある所ならば宜いでせう、例へば農業會の選擧だつてさうです、あの選擧が今年春行はれて大いに民主主義だとかなんだとか言つたけれども、農民組合のある所はどうにか民主化して、さう云ふ經過を取つて居るものもあるが、あとの地主勢力の強い所は駄目だ、皆地主が會長になり、役員になつて居る、農地委員會も今のやうな法律で行くと同じ轍を履みます、だから農地委員會だけを我々は頼みにして此の問題を解決すると云ふことは出來ませぬ、それでも政府は、どうしても農地委員會と云ふものでなければ此の問題は解決しないと考へるかどうか、是は重大な問題です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=108
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109・和田博雄
○和田國務大臣 御答へします、そこの所はどうも多少意見を異にして居りますが、各農地委員會でやつて行くのが宜いと思ふのであります、是は私共は法律の建前と同時に、片方に於ては健全なる組合の運動なり或は勞働組合と云ふやうなものの發達が必要だと思つて居るのでありまして、只今の農地調整法に於きましては、農地委員會と云ふもので具體的に處理して行く、斯う云ふ建前を取つて行く、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=109
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110・大澤喜代一
○大澤委員 序に此の問題に關聯して司法省の方に御聽き致します、現行法の所謂罰則と云ふものはちやんと出來て居るのですが、此の罰則に依つて處理された事件が何件あつたか、さう云ふやうなことを伺ひたい、司法省の方は來て居りますか、來て居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=110
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111・葉梨新五郎
○葉梨委員長 刑事局長は三時頃でなければ出席不可能の由であります、只今參つて居ります方は民事局長奧野健一君です、民事局長では所管が違ひますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=111
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112・大澤喜代一
○大澤委員 それでは先程の終戰後の立入禁止の事件が幾つあつたか、其の内容を一寸伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=112
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113・奧野健一
○奧野政府委員 只今終戰後と仰せられましたが、此處に持つて居ります調査では、昭和二十一年の一月から七月までの耕作地立入禁止假處分の事件調がございます、之に依りますと、裁判所に現はれた耕作地立入禁止の假處分事件と致しましては三百九件であります、而して其の内譯は、小作人から申請を致しました件數は二百十一件、地主の方から申立てた件數は九十八件で、合計三百九件と云ふことになつて居ります、而して事件の内容は、小作權擁護と云ふ理由の爲に假處分の申請をした事件が百九十四件、それから所有權確保と云ふことの理由に依りまして假處分の申請をした事件は九十五件、それから耕地に對する所有權の確認と云ふやうなことに關する事件は五件、それから小作人同士の紛爭の事件は十五件であります、而して假處分申請事件の結果は、假處分の許可になつて居るものが二百六十八件、それから却下又は取下げと云ふことになつて居るものが三十七件と云ふやうになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=113
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114・大澤喜代一
○大澤委員 私は政府、特に農林省は屡屡農村の民主化とか生産力の増強とか云ふやうなことを言つて、何とかして明るい農村を作ると云ふやうなことで此の法案を出して居ると思ふのですが、併し實際先刻私が話したやうに、地方の今の情勢と云ふものは、只今報告にあつたやうに、昔最も日本の…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=114
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115・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤君に申上げます、既に一時間半を經過致して居ります、どうぞ簡潔に結論を御付け下さらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=115
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116・大澤喜代一
○大澤委員 簡結にと言はれますが、是は實に重大なことです、私は伊達に言つて居るのではない、土地を取上げられた農民を代表して言つて居るのですから、もう少し時間を下さい、私の言ひたいことは、如何に農村の民主化或は建建的な殘存勢力を一掃するのだと言はれて見た所で、此のやうに裁判所が一々地主の言ふことを聽いて、さうして立入禁止を許可する、さう云ふやうなことになつたのでは、迚も日本の民主北なんか出來はしない、どうして斯う云ふことを許可するに至つたのですか、其の點をはつきり御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=116
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117・奧野健一
○奧野政府委員 立入禁止の假處分に付きましては、小作人の方の申請と地主の申請の件數は只今申上げた通りでありますが、此の假處分を許可するかどうかと云ふことに付きましては、司法省の方から大體裁判所の方へ、此の立入禁止の假處分は重大な事柄でありますが故に、十分愼重に──例へば口頭辯論等を開いてやると云つたやうに、兎に角十分愼重に取扱つて貰ひたいと云ふ意味の通牒を出して居ります、それ以上の事柄は裁判に關する事柄でありますから、司法省としてはどう云ふ通牒を出すと云ふことも出來ませぬが、此の點に付ては時局を十分認識して愼重に取扱をして貰ひたいと云ふことを言つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=117
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118・大澤喜代一
○大澤委員 如何にあなたが愼重々々と言つても、現實に於て斯う云ふ澤山なものが出て居つては、何にも愼重にやられて居らない、是は私斯う考へるのです、最近民主主義、民主主義と云ふ聲があるにも拘らず、先刻内務大臣にも御聽きしたやうに、地方に於ては戰爭中明治時代と同じやうな警察權力の發動が澤山あつて、是は昔と少しも變つて居らない、裁判所の連中の考へ方と云ふものも、日本が是れ程酷い目に遭つて、さうして切替へなければならぬと云ふ場合に、本人自身の頭は少しも切替へられて居ないのではないかと思ふ、あなたは民事局長ださうだが、裁判所の斯うした判事や檢事の連中をもう少し民主的に何とか教育すると云ふやうなことを、あなたは局長として考へて居らないかどうか、大臣は居ないので仕樣がないが、あなたはさう云ふ點に付てはどう云ふ方針を持つて居るか、若し頭の切替の出來ない判事などは首を切替へるか何かして處分をしなければ到底日本の民主化は出來ない、それをあなたに求めることは不可能かも知れませぬが、司法省はさう云ふ方針を以て進まなければならぬと思ふ、あなたはさう云ふ方針を以てどれだけの仕事をして來たかそれを御聽かせ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=118
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119・松澤一
○松澤(一)委員 只今の民事局長の答辯は不十分ですから、關聯して御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=119
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120・葉梨新五郎
○葉梨委員長 簡單でございましたら許可致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=120
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121・松澤一
○松澤(一)委員 民事局長に御尋ね致します、最近小作人が地主に向つて、自分の耕作地に立入禁止を申請する、此の傾向を──此の所有權の推移をどう御考へになるか、今日では小作人の所有地でない所へ、地主が所有權を持つて居りながら、立入ることに對して我我は立入禁止をして居る、然るにあなた達の裁判所は、今日もまだ所有權絶對なりの見地で、小作人が耕作地に立入るのを禁止して居る、此の法律の解釋、法律の取扱方、要するに立法の精神を御伺ひしたい、其の後所有權制約の法律が出て居るに拘らず、尚且つ所有權絶對なりの觀念で裁判所は考へて居られるのか、そこを十分明確に御伺ひしたい、今御答辯を承ると、さう云ふ色々の事例に付ては愼重にと云ふ指令を發して居るが、裁判所が勝手にやると云ふ御話であつた、併しそれは法律の範圍で裁判官が獨立してやるのであつて、法律の範圍以外に獨立した權限はないと思ふ、此の際土地所有權に對する明確なる御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=121
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122・奧野健一
○奧野政府委員 御答へ致します、最近の農地に關する立法等に照らしまして、現在に於きましては所有權のみが絶對であると云つたやうな考へは、自然變更しつつあると考へます、即ち所有權と借地權と云ひますか、或は小作權、或は宅地の關係に於きましては所有權と借地權と云つたやうな、所有權とそれ以外の權利の關係に付きましては、所有權絶對ではなくて、さう云ふ借地權と申しますか、それ等のものが所有權より獨立して其の權利が十分認められつつあると云ふ風に考へる譯であります、裁判等をやる場合に於きましては、やはりさう云つたやうな立法の精神に則つて裁判すべきものであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=122
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123・松澤一
○松澤(一)委員 まだ一寸不十分です、所有權絶對なりと云ふことが不十分であれば、なぜ裁判所は假處分を許可するのか、僕は、今日では小作人が自分の耕作地に地主が所有權を振廻して入つた場合には、逆に立入禁止の許可を申請することが出來るが、今日減殺された所有權を以て耕作者の權域に立入禁止をするのはどう云ふ譯か、そこだけで宜い、あなたの只今の御答辯は十分分つて居りますが、そこを明確にすれば、今後地主に所有權ありと雖も、善良なる耕作權を持つた小作人に對して、裁判所が輕々に立入禁止などを許可するものではありませぬ、口頭辯論の必要もありませぬ、初めから受付けませぬ、現に山梨縣では此の理論で絶對に受付けさせない、然るにさう云ふことが分らないで受付けると云ふのは、要するに裁判官が今日の立法精神を知らないからである、それはあなた達の責任だと思ふ、まだ裁判官は地方に於ては所有權絶對だと考へて居る、隨てさう云ふ裁判を獨立した、天皇の名に於て行ふと云ふことは、今日では減殺された所有權に對して擁護を加へて居ることになる、是は民主化の上に重大な影響がある、今日の御答辯は、少くとも全國の耕作者に對して重大な影響があると私は思ふのであります、大變失禮であるけれども、あなたの明確な御答辯を御願ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=123
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124・奧野健一
○奧野政府委員 御説のやうに、耕作權が現存して居る以上、それが何等かの理由に依つて消滅して居ると云ふことではなく、現に耕作權が存續して居る場合に於ては、所有者と雖も濫りに立入ることが出來ないことは當然であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=124
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125・北政清
○北(政)委員 重大な事項ですから關聯して質問を御許し願ひたい、今度の新憲法の根本に觸れる問題ですから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=125
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126・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは極く簡單に御願ひ致します──北君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=126
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127・北政清
○北(政)委員 農林大臣が前の私の質問に答へました耕作權の確立の限界、是と今民事局長からの御説を對比すると、今度の新憲法の趣旨に副ふか居と聽くと、農林大臣は副ふと言つてるが、第二十七條に於て認められた私有權、私有財産の所有權と云ふものに對してはどうするか、私有財産と云ふものは否認されるかされないか、此の點をはつきりさして貰ひたい、是だけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=127
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128・奧野健一
○奧野政府委員 新憲法に於きましても、私有財産制度は十分認めて居ると考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=128
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129・北政清
○北(政)委員 農林大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=129
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130・和田博雄
○和田國務大臣 やはり新憲法は今民事局長が御話のやうに、私有權を認めて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=130
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131・北政清
○北(政)委員 今は耕作權の方は重要だ、所有權と云ふものは重要でないと云ふことであります、是は民事局長の御答辯ですが、それに對しまして、そこで耕作權に對してはどうするか、耕作權の限界はどうだと昨日問うたことに對して、契約を守る所の範圍に於てやるのだ、私の其の契約に疑問があるのではないかと云ふ質問に對して、それもさうだと云ふ答辯をして居るのでありますが、然らば地主が契約を守らない場合に於て立入禁止を要求すると云ふことも當然である、之をやつていかぬ、之を受付けていかぬと云ふのはどうだと云ふやうなことに對して、それは努めてさうすると云ふ御答辯では、私は滿足出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=131
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132・和田博雄
○和田國務大臣 どうも少し行違ひがあるやうでありますが、只今松澤さんの御話では、所有權は絶對ではない、所有權の絶對と云ふ觀念は變りつつあるのだ、所有權と云ふものは絶對だと云ふ觀念で色々立入禁止處分をやることは困るのだ、さう云ふことは出來ないのではないかと云ふのに對して、民事局長は、成程さうだ、所有權の絶對性と云ふものは變りつつあると云ふことを御答へになつたので、私もさうだと思ひます、だから耕作權と所有權の關係に於ても、所有權と云ふものは絶對ではないのであるから、そこで元のやうに絶對には出來ない、唯併し耕作權と雖も、所有權との關係に於て、そこに正當な理由があつて法律が許した場合に於ては、それに十分何が出來ると云ふことを私は申したのでありまして、そこにちつとも矛盾はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=132
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133・大澤喜代一
○大澤委員 時間が大分潰されたのですが、大事な質問ですから、私やつて戴くことには贊成なのです、それでは私はあと三つの點を御伺ひすることにします、他の人にお氣の毒ですから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=133
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134・葉梨新五郎
○葉梨委員長 どうぞ簡潔に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=134
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135・大澤喜代一
○大澤委員 土地の報償金の問題、それから肥料の問題と、將來の米の見透しの問題…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=135
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136・葉梨新五郎
○葉梨委員長 肥料問題は商工大臣が今日はどうしても物資需給の方の關係で出席出來ないさうですから、出席される機會までそれは御保留を願ひます、其の他の二點に付て御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=136
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137・大澤喜代一
○大澤委員 それではうんと端折つて、今度の買上げる土地の金の問題でありますが、先づそれに付て御聽きしたいのは、農地證券の發行などに付て、其の償還方法とか、さう云ふ問題に付て政府はどう云ふやうな案を持つて居るか、それを順序として發表して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=137
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138・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大藏大臣が三時かつきりに出席をすると云ふことになつて居りますから、如何ですか、兩當局お揃ひの上の方が便宜ではありませぬか、農林當局で宜しうございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=138
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139・大澤喜代一
○大澤委員 農地證券の發行、其の償還の方法などは大體分つて居るのではありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=139
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140・山添利作
○山添政府委員 農地證券を發行致しますが、此の農地證券の償還に付きましては年々元利均等償還で返して行きますので、二十四箇年間經てば完全になくなる譯であります、隨て途中に於きまして、例へば普通の公債のやうに抽籖に依つて償還をすると云ふことは考へて居りませぬ、唯斯う云ふことを考へて居ります、土地を買ひました人から、場合に依りまして相當程度繰上償還をして來る場合があると存じます、其の場合に於きましては大體さう云ふものを財源と致しまして、農地證券の買入償還を行ひます、それはどう云ふことかと申しますと、此の證券は流通は制限は致して居りませぬと同時に、是は現在のやうな金融事情でございますから、是が右から左へ賣れると云ふやうな状況でもございませぬ、隨て農地證券の價格維持と云ふことも考へなければなりませぬし、又それ等のことに付きましても、持主等が特別の事情で之を賣つて呉れと云ふやうな場合には、信用組合等に於きまして買受ける、之を土地を買ひました人から繰上償還をする其の財源を以て買入れる、鎖却をして行く、斯う云ふ考へで居ります、今申しますやうに、原則論と致しましては、二十四年間で一切なくなる譯であります、隨て特別の償還計畫と云ふものは立てて居る譯ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=140
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141・大澤喜代一
○大澤委員 序に聽きますが、報償金の交付の條件はどうなつて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=141
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142・山添利作
○山添政府委員 報償金の交付に付きましては、平均三町歩を限度と致します、而して其の金額は、田に付きまして平均二百二十圓、畑に付きまして百三十圓、其の實行方法と致しましては、田に付ては賃貸價格の十一倍、畑に付ては十四倍、是が現在やつて居る方法でございます、現在の方法を踏襲して參る見込でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=142
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143・大澤喜代一
○大澤委員 今度の買上げた金の日本の經濟に對する影響と云ふものは大きい問題でありますが、是は又何時か別に御聽きましす、私は取敢ず此の報償金の問題を御聽きしたいと思ふのであります、それは地主の皆さんから言つたら、報償金が少いとか、足りないとか云ふやうな考へも出ると思ひますが、我々から見ると、今度の買上價格それ自體に付ても非常に異議があるのです、假にそれを妥協致したと致しても、此の報償金を交付する、さうすると三町歩までは報償金を出すが、假に酒田の本間さんは千何百町歩持つて居るが、其の酒田の本間さんも報償金は貰へるのですか貰へないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=143
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144・山添利作
○山添政府委員 本間さんに於きましても三町歩を限度として貰へます、其の理由は、是は中小地主を對象とするのでございますけれども、事務的に全般に三町歩を限度として交付すると云ふことでございませぬと、非常に段が付く關係がございまして、是はなだらかにすると云ふ事務的な理由に基くものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=144
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145・大澤喜代一
○大澤委員 中小地主を此の報償金に依つて何とか面倒を見ると云ふことが果して出來るか出來ないか、正しいかどうかと云ふことは議論の餘地があるとして、假令事務的な問題があると假定しても、本當に三町歩しかない地主にも報償金を拂ひ、百町歩も千町歩も持つて居る者にも報償金を拂ふ、五十町歩以上の巨大な地主は相當に日本には居るのですが、それ等にも尚ほ國民の血税で集めた金を報償金としてやらねばならぬと云ふことは、國民としては納得出來ないと思ふ、何故此の僅かに三町歩しかない小地主と何百町歩、何千町歩の地主と一緒にして報償金をやらなければならぬか、何とか事務的な方法を講じて、百町歩も千町歩も持つて居る地主に對してはやらなくても宜いと考へるのは當然ではないかと思ふ、日本の農民から言つても、國民から言つても、事務的な問題に藉口してさうした巨大な地主にまでも國民から集めた税金から報償金と云ふやうな名目でやると云ふことが、私としては納得出來ないと思ふのですが、何處までも三町歩の小地主にもやるし、百町歩、千町歩の地主にも報償金を拂はなければならぬかどうか、私は此の點に付てもう少しはつきり當局の意見を聽かなければならぬと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=145
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146・和田博雄
○和田國務大臣 報償金の問題は、前の農地改革では全部やると云ふことになつて居つたのですが、それは自作の收益價格と地主の立場に立つての採算價格と云ふものの差額を地主に報償金として出す、斯う云ふ考へであつた譯であります、今囘はそれを中小地主と云ふものが今度の農地改革に依つて相當の影響を蒙るし犧牲も拂ふ、そこで中小地主に限つて報償金を出すと云ふ考へでありまして、御話のやうな御議論も私は立つと思ふのでありますが、是は一應今農政局長が説明しましたやうな事柄で、兎に角三町歩と云ふことで打切つて、一律にやると云ふ建前を執つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=146
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147・大澤喜代一
○大澤委員 どんな建前を執つても不合理なものに違ひないのでありまして、箆棒な常識上考へられないことなのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=147
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148・葉梨新五郎
○葉梨委員長 三時になりましたが、御議論に亙つては何時まで經つても盡きないと思ひますから、どうぞ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=148
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149・大澤喜代一
○大澤委員 今和田農林大臣が言つたやうに、土地の買上價格と云ふものを地主の收益價格を標準としないで、地主の立場に立つた價格を以て買上價格にしたと云ふこと自體が不合理なのである、だから田を賃貸價格の十一倍、畑を十四倍にした、其の倍率の數字が出たのは自作農の收益價格と地主の採算價格との差額をどうして信率にしたら宜いかと云ふので十四倍、十一倍が出來て來たのである、二百二十圓、百三十圓と云ふ報償金の額は、地主の立場からの基準で作つた金額なのである、一體地主の立場で此の買上價格を決定することは、小作料を何割と見たか、恐らく三割九分に見た筈です、さうでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=149
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150・和田博雄
○和田國務大臣 地主の立場から買上價格を見たとは申して居ないのであります、自作收益價格──小作人が自作人になると云ふ立場から買上價格を見たのであります、併し今度は地主の立場に立つて見ますと、地主が從來所得として受けて居つた小作料と云ふものから、税金等を引いて資本還元したものが地主から見た價額でありますから、其の差額を報償金として出す、斯う云ふことに致して居るのでありまして、買收價格は、何處までも小作人が從來掛けて居つた小作料と云ふものの程度を拂つて自作人になる、斯う云ふ立場に立つて居るのでありまして、決して地主の立場に立つて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=150
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151・大澤喜代一
○大澤委員 そこが私はどうも役人の詭辯ではないかと思ひます、買上價格は、三割九分と云ふ高率の小作料を前提とした地主の價格ですよ、地主の方で主張したので仕方がないから、あなた方は地主の價格を基準とすると囂々たる非難を受けるから、表面上は自作農の收穫を以てやつた、併し地主の要求を酌んだ報償金を金額に換算してそれを加へて出して居るのです、それは違ひないのです、だから私は其の場合の三割九分などと云ふやうな地主の高率小作料と云ふものを前提にして、計算すると云ふことは間違ひではないかと言ふのです、だから、私は結論を言ひますが、此の報償金は此の場合御廢めになつた方が宜いのではないか、殊に現在の日本の農村の實情を見ますと、此の報償金は約二十億圓以上出る譯です、二十億圓の金を農地の改良費だとか──私は東北人ですが、──東北の冷害對策だとか斯う云ふものに使つてこそ初めて日本の農村の生産力の増強があり、日本の農村民主化と云ふものがある、一方に於て高い價格を以て買上げ、一方に於て報償金を拂ふ、而も一町歩の不耕作地主は殘す、此の人は偶偶二町歩の自作をやると云ふことはあり得ることである、さうすると二町歩の自作をして一町歩の不耕作地主となる、さうして百何十億圓と云ふ金が所謂地價證券となつて入つて行くのです、其の結果農村にはどう云ふ階級的な變化が起るかと云ふと、從來のやうに高率小作料で以て地主勢力と云ふものを中心として農村を支配はしないだらうけれども、其の人達は半面に於ては土地は耕作農民にやつたけれども、其の代償として百何十億圓の金を懷ろに入れる、更に此の人の大きな土地に對する基盤と云ふものは、今申上げましたやうに一町歩殘した土地と、二町歩の自作、此の人達と、日本の農村に於ける七割までは過小農である、此の一町歩未滿の七割の過小農が、假に此の案に依つて自作になつて見た所で、是は依然たる舊い地主勢力中心になり是で本當に民主的な農村を作り得るかどうか、少くとも本法の狙ひ「マッカーサー」司令部が命令した所の日本の封建的勢力を農村から一掃出來るかどうか、是は由々しい問題で不可能です、ここを私は考へなければ、今度の調整法及び此の自作農措置法は結局に於て意義をなさなくなる、日本の農村は此の地主の封建的勢力を中心として行きますよ、而も地主の勢力が依然として殘ると云ふことは…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=151
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152・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤君、御意見は其の位にして、然るべく結論を御付け願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=152
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153・大澤喜代一
○大澤委員 日本の過去の軍國主義と云ふものは、主として封建農村を基盤としたものなのです、日本の軍國主義を一掃しなければならぬと云ふので、世界の輿論が日本に集中して居る、其の建前で日本の農村問題を捉へなければならぬ、然るに今言つたやうな、斯う云ふ多額の金を出し、六十萬町歩以上の土地を持たせ、二町歩の土地も兼併させる、斯う云ふことになると、再び日本は、好むと好まざるとに拘らず、軍國主義の方向へ行くと云ふことは考へられることです、農林大臣は此の點は餘程愼重に考へて、結局是は現政府の責任──と言つて見た所で、農林大臣が出したと云ふ意味で今後とも永久に其の責任はなくならぬものだと思ふ、我々國民も此の現内閣それ自體に對しては大した期待は持つて居らぬけれども、和田農林大臣に對してはさうではない、少くとも戰爭中に我々と同樣に監獄に入つて居つた、國民は其の監獄に入つたと云ふ點に於て非常な期待を持つて居る、もう少し何とか良い法案を拵へて呉れるだらうと云ふ希望を持つて居るに拘らず、斯う云ふ地主温存の妥協的な法案を出したと云ふことは私は遺憾だが、時間がないやうですから、それに付ては今度條項の審議に於て更に發言させて戴きたいと思ひます、それから今の御話に依ると、刑事局長が後で三時頃來るさうですから、此の點も簡單に御聽きしたいと思ひますので留保して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=153
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154・葉梨新五郎
○葉梨委員長 磯崎貞序君、あなたに割當てられて居る時間は三十分でありますから、それを御承知の上御進行願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=154
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155・磯崎貞序
○磯崎委員 先程來諸賢から色々御話になりましたので、私は重複的なことは成べく申上げませぬ、只今委員長の宣言に基きまして、成べく時間も早く進行したいと思つて居ります、唯私が質問を致しますのは、地主の聲とか或は小作者の聲とか云ふものから離れまして、各方面に於ける輿論を代表致しまして、忌憚のない質疑を試みる積りでありますから、其の意味に於て御答辯を煩はしたいと思つて居ります
私が申上げますまでもなく、日本に於ける農業が持つて居りまする大きな脆弱面は、所謂經營規模が極めて小さいこと、それから其の土地が小さくて各方面に分散して居ること、或はそこに投ぜられて居る技術が洵に時代の線に沿うて居ない、斯う云ふやうな觀點からしまして之を見究めなければならぬのでありますが、只今農林統計等拜聽しますると、日本農家五百七十萬の中に於きまして、五段未滿が三九%、更に五段以上一町までのものが三一%で、結論から申しますると、一町未滿が七割であると云ふことになつて居りまして、如何に規模が小さいかと云ふことは私が申すまでもない、そこで此の規模を適正化する、更に各方面に散つて居る小さいものを集めて集團化すること、及び餘り文化的でない技術面に成べく畜力とか機械とか、或は現代的な文化を導入して、さうして段當收量を上げ、或は「コスト」を下げて、近く世界經濟と競爭しても優るとも劣らない所の態勢を作ると云ふことは必要である、此の態勢から考へまして、今提案せられて居る立法を見ますと、八割の小作者をして土地所有者にさせると云ふことは洵に結構なことだと思つて居りますが、唯單純に甲から乙へ移すだけでは意味はなさない、そこで先般來の御説に依りますと、再分配をして適正な農家を築き上げると云ふことでございまするが、適正農家と云ふのはどう云ふ風な形で行はれるのか、其の點に付きまして伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=155
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156・和田博雄
○和田國務大臣 適正農家と云ふものは、地方々々に依つて違ひますし、農業の經營のやり方に依つても違ひまするので、一概に定義すると云ふことは出來ないと思ふのでありまするが、兎も角自作を主にして考へますれば、自分の自家勞力を十分に使ひ得る位の面積と云ふこととも言へやうと思ふのであります、勿論其の際に或る程度の家畜を入れる、出來ますれば機械を入れると云ふやうなことも可能な程度に於ては考へなければならないと思ひますが、地方々々に依つて經營のやり方が違ひますから、一概には言へないのであります、唯今度の農地改革は、一應適正規模の農家を創設すると云ふことには直接には觸れて居ないのでありますが、それ等のものは、今囘の農地改革に依りまして土地の均分を行ひました後、耕作者の協同の組織に依つて經營的に適正な農家を漸次作つて行く、斯う云ふ風に考へて居る次第でありまして、勿論今囘に於きましても、自作農の創定をやります時、さう云ふことが出來ます所に於てはやる考へでありますが、其の點は只今述べましたやうな工合に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=156
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157・磯崎貞序
○磯崎委員 適正に對して不適正と云ふ言葉がありますが、私は此の際、適正農家を築き上げる意味から所謂不適正なる經營面を一つ芟除する、所謂一段とか半段とか乃至一段半と云ふ極めて微弱な劣惡な所に農業技術を投入して居る面、例へば戰時に於て食はんが爲に經營して居るやうな、一國の食糧増産上面白くない斯うしたものは當然適正農家の方に然るべく犧牲になつて貰はなければならぬと云ふ風に考へて居りまが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=157
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158・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふことが出來ますれば極めて結構なことでありまして、我々としましても其の考へ方には反對は致しませぬ、併し結局それは現在に於きまする過小農家をどう云ふ風にやつて行くかと云ふ問題とも關係して來るのでありまして、是等の點に付きましては、此の委員會で屡屡私が申上げましたやうに、色々な方法を考へて行かざるを得ない、斯う思つて居るのであります、或は農村に向く工業であるとか、或は其の他の産業を興して、そつちの方へ向けて行くと云ふやうな、色々な事柄をやるより外には方法がない、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=158
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159・磯崎貞序
○磯崎委員 それでは成るべく時間を重んじて二つ重ねて質問致します、所謂農地の造成に付て、一町以上に付て色々切られて居ります、所謂上の方を切つて居ります、それと同時に、下の方も御考へを願つて、最近特に激しくなつた小さな土地所有者、斯うしたものが如何にも刻下の食糧生産に對して意味をなさない存在だと云ふやうな觀點から、さうした方面もやはり一つ對象にされて宜いのではないかと思ふが、是等に對して御考へを承ります
更に、先程來大澤さん其の他からも御説のありました、地主に對する一町の保有量のことであります、之に付ては先般來色々御意見がありましたが、一面から考へますると、最近我が國に於ける所有權者と云ふものは、先程仰せのやうな大きな人は別としまして、三、五町歩程度の地主は、何れも過去に於きまして孜々營々として土地を今日まで保有したのだ、斯うした人が偶偶其の時には努力關係等に依つてここに切られると云ふことになるのでありますが、一面其の内部を見ますと、或は物置を持ち、納屋を持ち或は技術を持つて居る、唯子供が戰地へ行つて居つたとか、軍需工場へ行つて居つたとかで、時に勞力關係に利がなかつたと云ふことから、せがまれる儘に已むなく貸した、其の時に測らずも此の立法が生れて犧牲になるのだと云ふ觀點からしましたならば、其の人等が職工さんとか鍛冶屋さんとか或は煎餅屋さんに五畝、一段貸して置いた、さうしたものを取つて其の本人を以て自作農を創設する、其の位の形は斯うした地主には垂れて下さつて然るべきものである、各方面から此の要請が輿論として現はれて居りますが、之に對する御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=159
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160・和田博雄
○和田國務大臣 御話の點は、法律の第五條の六號と致しまして、現在自作農が、疾病であるとか其の他色々な事由で自分が耕作することが出來なくて、一時他に貸して居る、さう云ふやうなものに付て、市町村の農地委員會が其の自作農が近く自作するのだと云ふことを認めました場合に於ては、それ等の土地に付ては強制の買上をしないと云ふことになつて居るのでありまして、自作農に付ては、そこに左樣な裕りを持たして居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=160
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161・磯崎貞序
○磯崎委員 一寸私の質問が足りませぬでしたが、さう云ふ一町歩の保有を許されたものであつて、所謂耕作の技能も持ち設備も持つて居るが、偶偶其の時の環境が勞力其の他に於て不足して居つた爲に、さうした形になつてしまつた、而も今日耕作したいと云ふ希望を持つて居る場合、さうした者に限つては耕作を許されて然るべきであると云ふ風に私は考へて居りますが、それに付ての御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=161
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162・和田博雄
○和田國務大臣 今全然耕作して居らない、從來から自分で自作したことのない不在地主、又不在地主でなくても不耕作地主であると云ふものに付ては、一寸認める譯には行かぬのでありまして、是は一町歩を限度として持つて貰ふと云ふことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=162
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163・磯崎貞序
○磯崎委員 次は買收價格の問題に付てですが、是は各方面から輿論的質問を受けて居ります、即ち政府の現在買收せられんとする價格は、所謂賃貸價格を基礎にして、畑に於て四十八倍、田に於て四十倍と云ふことであります、是は極めて不當ではないか、先般の本會議に於てもどなたかから御質疑がありました通り、所謂好む好まぬに拘らず強制的に買上げられる場合に於て、其の當時の農林大臣の御説に依りますと、一方的に耕作農民が買ひ得られると云ふやうな御説でありましたが、所謂價格に付きましては、要するに適正に於て決められるのが妥當である、其の觀點からして、そんな根據のない賃貸價格に基礎を置くよりも、現在何處の土地に於ても極めて正しい、長い間の各方面の社會的な輿論に依つて現存して居りまする所の物納に於ける所の小作料があります、之を現在政府の色々やつて居る三分二厘、或は二分五厘でも宜しい、其の金利に依つて逆算して得たものが正しいのだと云ふ聲が各所に於て起つて居るのですが、之に付きましての御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=163
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164・和田博雄
○和田國務大臣 農地價格に付きましては、私が御説明致しましたやうに、現在小作人が拂つて居ります小作料、それ以上の負擔を負はずに自作になり得る一つの標準價格としての買收價格と云ふものを決めて居る譯であります、併し地主達のことも考へまして、只今申しましたやうに、補償金と云ふやうなものを三町歩を限度として田に於ては二百二十圓、畑に於ては百三十圓出すと云ふやうな恰好になつて居るのでありまして、今度の價格に付きまして、御話のやうに一つの小作料を其の儘還元致しまして價格に致す譯には一寸參り兼ねると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=164
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165・磯崎貞序
○磯崎委員 現在の土地には、水利や暗渠排水或は區劃整理等各種の土地改良費が投入されて居りますが、斯うした費用に付ては、先般の御答へに依りますと、買收に對して適當に考へると云ふことでございましたが、耕地整理組合、水利組合其の他の方面から發行する根據のある、曾て地主が投じました費用に對しましては御認めになると云ふ御考へでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=165
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166・和田博雄
○和田國務大臣 大體農地の價格は、賃貸料の外、畑に於ては四十八倍、田に於ては四十倍と云ふ範圍内で色々分けて居りますが、土地に依りましては、例へば土地改良を行つて、而も現在の所賃貸價格が非常に低くて現状に即しないと云ふものもありますので、さう云つたやうな特別の理由のあります時には、是は農地委員會の申請に基いて地方長官が決定する額に依つて之を買ふ、斯う云ふことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=166
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167・磯崎貞序
○磯崎委員 今の土地改良費と云ふのは、現實に現在行つて居りまして、極く負擔の重い所になりますと、段當千圓から千五百圓も投入し、而も其の費用を組合員に於て連帶して或る金融機關から借りて居ると云ふやうな形になして居る、斯うした問題を認めて戴けませぬと、只取られる、寧ろ「マナイス」になると云ふやうな結果に陷るのでございますが、只今の御説に依りまして、恐らく妥當な形に於てさうしたものは全部證明が組合長に依つてあり、或はそれに對する總ての完備したものがありますならば、當然認められないものはないと云ふ風に私は考へて居りますが、それに付きまして重ねて御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=167
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168・山添利作
○山添政府委員 是は投じました費用が其の儘土地の生産力に反映して居ると云ふことであれば、其の儘土地の價格が増加して居ると認められる譯でございます、併し是は事業のやり方が非常に稀な場合でございまして、理窟を申上げれば金は掛けたけれども、實は土地改良の效果が掛けた費用程一向現はれなかつたと云ふ場合に於きましては、やはり效果あつた範圍に限る、是は當然さう云ふ風に扱はなければならぬものではないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=168
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169・磯崎貞序
○磯崎委員 農地委員會の問題ですが、各行政區劃に依つて農地委員が出來る譯です、而して現在の土地の分布状態は、其の村々の段別と住む人口に依つて各村の勞働力が色々入り亂れて居ります、此の場合各所に農地委員會と云ふものが出來まして、色々土地の問題を計らひます場合に、自分の土地の區域内は、曾て入り込んで居りました他町村の小作者を成べく排除して、其の土地の者だけで作ると云ふやうな空氣が相當起つて居ります、さうしますと、甲の村は人口が少くて耕地が多い、それは適正農家と云ふよりは、寧ろ一町七、八段とか二町位の農家になる、乙の村になりますと、大分それと逆になると云ふやうな場合がございますが、それは各行政區劃毎に結成せられる農地委員會に於きまする自治的解決に任せて宜しいものでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=169
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170・山添利作
○山添政府委員 理想的に申しますれば、廣い範圍に亙りまして考へられると思ひますが、實際問題と致しましては、市町村毎の農地委員會が其の區域に於ける事實を基礎にして合理的な處理をして行くものだと云ふ風に考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=170
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171・磯崎貞序
○磯崎委員 次に御尋ねするのは、柑橘園に對しましても適用なされるのであるかどうか、所謂十五度以上の傾斜面を持ち柑橘園でなければ一寸出來ないもので、而も表面は畑であると云つたやうなものに付きましては、對象になるかどうかと云ふことが一つ
それから農産及び園藝の種子を生産する目的で、其の附近の地主から土地を相當面積借りて其の目的に使用して居ると云ふ法人がありますが、之に對しましてはどう云ふ風な御見解を御持ちになるかどうか
更に最近まで大分土地の移動があつた、所謂自作農創設と云ふのは、長い間縣當局や中央の御施策に依つて各方面にやつたのでありまして、今日まで不斷にそれが造成されつつありますが、色々伺ひますと、昨年の十一月二十三日後のは遡及して效力を認めないと云ふやうなことにも聽いて居りますが、此の農地調整法の規定に依つて縣の許可を得て合法的に登記をして、所有權まで移轉して、各各自己の所有權なりとして耕作して居る、さう云ふものにまで遡及するのでありますか、それに付きまして御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=171
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172・山添利作
○山添政府委員 果樹園でありますとか、或は種苗を作つて居ると云ふものも等しく農業でございまして、此の法律の適用がございます、併しながらさう云ふ特殊な經營状態のものに付きまして、其の經營が優秀であれば、之を分割し經營を破壞して行くと云ふ考へはないと云ふことは屡屡申上げて居る通りであります
又土地の所有權の移動に付きましての問題でごまいすが、形式的にも、又内容的にも合法的なものであれば、それを否認すると云ふことはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=172
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173・磯崎貞序
○磯崎委員 二箇年で此の仕事を遂行すると云ふ御方針のやうでありますが、私は二年では絶對に不可能だと思ひます、併し當局はどう云ふ觀點で之を二年でやり得ると云ふやうに御考へなのか、先の大澤氏の質疑に關聯して居りますが、極めて重大な問題でございまして、現在明年度の種下しとか或は耕作計畫とか、色々の面に於て農家は此の問題に相當な關心を持つて居るのであります、是は何れ議會の方で決まつた後でなければ決定はしないでせうが、此の農地の取計らひに付て二年間にどう云ふ順序で機構を設け、それに對する買收計畫、賣渡計畫等、色々な條項があるやうでありますが、二箇年内にどう云ふ順序でやるか、もう少しはつきり伺ひたい、之に付きまして、途中で色々轉々するやうなこと、或は不分明になつて、自分のものであるか、人のものであるか、どうなるか分らぬと云ふことで相當苦しんで居りますから、之に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=173
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174・和田博雄
○和田國務大臣 今度の農地改革では、別段今やつて居ります經營の樣相を動かす譯ではないのでありますから、さう云ふ心配をする必要はないのであります、唯二箇年にやります順序と致しましては、我々の方としまして法律が通つたら何時までに何をやると云ふ順序は決めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=174
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175・磯崎貞序
○磯崎委員 どうも私の農地問題に付ての考へと大分違つて居るやうでありますが、所有權を唯簡單に移轉すると云ふだげなら、是は何等の意味もない、唯二箇年の間に甲から乙に移ると云ふだけでは意味をなさない、少くとも現在一番要請せられて居ります食糧増産と云ふやうな觀點からして、之に重點を置いて進行せられて然るべきものである、唯所有權を甲から乙へ移すだけと云ふやうなことより、もう少し現實な問題でやつて戴く、或は所謂適正農家を作る、不適作農家を捨てて適正農家の方をやる、さう云ふことにしなければ、どうしてもそこに各自の保有します土地面に移動を生ずる譯でございますから、當然そこまで掘下げてなさるべきものである、さう云ふ根本に觸れてやつて戴きたい、是は根本の最も重大な點であります、何れも農家はそれを望んで居り、又今年は自分はどの位耕したら宜いかと云ふやうな所まで考へて居りますが、唯所有權を甲から乙へ移すだけでは私は意味をなさぬと思つて居ります、それが一點、今一つは、先般來同僚から色々質問されましたが、決して全部が此の土地を喜んで買ふとは思はれませぬ、恐らく相當事志と違ふのではないかと思ひます、隨ひまして先づそんなに急がないで、希望者に申告させて、それから只今申しまするやうな計畫面に「タツチ」して、紙の上の問題は捨てて、現實に生産面に觸れて、直ぐ明年或は今の食糧増産に役立つやうな筆法に願ふことが一番根本ではないかと思つて居りますが、之に付きまして一つ御答へを煩はしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=175
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176・和田博雄
○和田國務大臣 第一點に付きましては、最初に私から御答へ申上げましたやうに、此の改革に依りましては、小作人に土地を與へる、多くの小作を自作にすると云ふことでありまして、一一適正な規模の農家を作つて行くと云ふことには直接觸れて居ないのであります、隨ひまして適正規模の創設と云ふことは、今後土地の改革をやりました後でやつて行くことになる譯でありまして、御話のやうな御心配はないと思つて居ります、勿論農地委員會に於て買收計畫を立て賣渡計畫を立てます時に、さう云つた面に付ての凡ゆる考慮を拂つて行くことは言ふまでもないことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=176
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177・磯崎貞序
○磯崎委員 私は何處までも、さうした形式的な問題では意味をなさぬと思つて居ります、成べく根柢になる事柄に付て十分に施策せられて然るべきものであると云ふ觀念は動かせないのであります、それから今一つ、小作者が政府で思はれるやうに土地を渇望して居るかどうか、隨て希望を取纒めておやりになつても宜いのではないかと云ふやうに考へる、其の御意思があるかないか
序に申上げますが、特に技術面に付て一つお聽きしたい、私は唯書面の上でどう斯うすると云ふことでなく、現實に増産を圖つて戴きたいと云ふ意味合から質疑をするのでありますが、現在各地方に色々農業指導技術員がある、假に町村で申しますと、一町村一名乃至二名ございます、所が最近農業保險のことであるとか、其の他色々事務上の問題で、此の指導員机の上の事務に追はれて、本然の技術指導と云ふことに中々及ばない、そこで想ひ起すのは、日本の養蠶の偉大な發展をした歴史である、曾て養蠶農業が盛んでありました、當時に、養蠶組合を全國的に作つた、其の養蠶組合に對して、二組合乃至三組合に一名位の養蠶の指導員を置いて、それが掃立から飼育、上簇、販賣に至るまで面倒を見る、而も毎日各家庭を歩いて、技術上のことから經濟面のことまでやつて居る、其の爲に其の先生と養蠶家とは信仰的な立場にまでなつて、とても好い結果になつて、偉大な日本の養蠶農業が發展したのでありますが、實は今日のやうに食糧の緊迫の際に、技術員はあつても殆ど一人か二人、而もそれが事務に追はれて居ると云ふことでは、到底本然の仕事は出來ない、そこで二乃至三部落に一名位の農業指導員を置いて、種蒔から病蟲害から草取り、收穫、脱穀、供出に至るまで面倒を見させよう、さうすると技術の點に於て指導が出來まするとか、或は供出する上に於きましても、現在色々民主的な供出制度が行はれて居りますが、殆ど先生が各管内を廻つて居りますと、各農家の生産量も手に取るやうに分つて參ります、さうして其の間には、色々野菜や其の他の買出部隊も來ませうが、さうした方面で警察の方の仕事までもして貰ふ、どうも警察官に強權發動などは愚の骨頂でありますが、技術指導員に依つて、技術の方面或は農業警察の方面、或は供出の面にまで「タッチ」させて、食糧増産に付て技術面に專念させると云ふ意味から、全國各町村にさうした方面の人物を配在する、幸ひ復員者が多くありまして、相當な技術を持つて居る人士が、動もすると失業面に追はれて居るやうな譯でありますから、其の方面を動員すれば直ぐ其の目的は達せられる、或は地方には相當熟練農家がありまして、それ等の人を囑託すれば此の目的を達する基準にもなる、普通馬鈴薯が段當三百乃至四百貫穫れる、所が熟練農家或は精農家は千貰から千五、六百貫穫る技能を持つて居る、さふ云ふものを動員して増産運動に努力させ、技術面に專念させる、さうした農業指導員が全面的に必要ではないか、先日政府の方では、全國數箇所にさうした指導農場を置いて居る云々と云ふ御話もありましたが、一番の末梢に於てさうした任務を負ふべき人が現在缺けて居る、色々強權發動などをさせないで、圓滿に先生と生産者との間が宗教的信念に結付いて、供出のこともさせるし、技術のこともさせるし、色色のことも出來ると云ふことに付て、政府は相當の手を打たれて然るべきものではないか、之に付ての御考へを御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=177
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178・和田博雄
○和田國務大臣 買收を致します時には、勿論小作人の希望も取る譯でありまして、是が全部の計畫が出來ませぬでも、出來ました計畫から逐次やつて行くと云ふことは先般の委員會に於ても御答へ致した通りであります
それから後の町村に於ける技術員の普及と云ふ點に付きましては、御意見御尤もでありまして、私共と致しましても、只今市町村の農業會等に技術員が居る譯でありますから、それ等の方面の技術員も十分充實させまして、是非指導の點に付ては萬全を期したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=178
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179・磯崎貞序
○磯崎委員 結論に入りますが、各所で座談會或は農民の聲も色々聞きますので、それを率直に農林大臣──農林大臣ばかりでは無理でせう、政府當局にもう一つ含んで置いて戴きたい、御承知の通り日本民族の給源地は農村である、淳風美俗乃至給源が農村であると云ふことさへ言はれて、色々施策を練つて居るのでありますが、敗戰した日本が、此の基盤の上に所謂新しい日本を築き上げると云ふことに對しまして、色々施策が執られて居るのであります、其の農村が、今どうかと申しますと、只今色々論議されて居ります、土地立法を廻つて色々の空氣が擡頭して居ります、先づ小作者の方の空氣を率直に申上げますと、我々は此の戰爭中、軍閥、官僚の指導下にあつて、戰爭に勝たんが爲に食糧の増産を要請された、我々は資材其の他が不足であるけれども、人力を以て活動した、所が戰ひに破れてしまつた、破れた今日はどうかと云ふと、政府から同胞を救へと云ふことで、隨分盛んに熱心に増産を要請された、其の増産の要請された政府は中々肥料を與へて下さらぬ、或は現在誤つた觀點から供出をさせる、それも收穫量以上の供出割當が來る場合は到底不可能でございます、さうしたものもつい決定した數量を出しませぬと、強權の發動と云ふ譯で、ほとほと我々は之に困り、遺憾に思つて居る、一體終戰當時のことを考へて見ると、日本の八千萬、或は當時一億と言つたでせう、其の總ての者が恐らく茫然自失して虚脱状態にあつたことは確かだが、虚脱状態に陷らなかつたのは我々だけであつた、戰爭中に於ても戰後に於ても、孜々營々として朝早くから夜遲くまで草を刈り、それを以て作物を栽培して居つた、肥料がありませぬから中々思ふ通りの作物の收穫もない、穫れた以上の無理な供出は出來ないから、一寸御申越し通りに行かぬ、さうすると強權の實刀を御拔きになる、斯う云ふ状態に我々はほとほと苦しんで、澤山作つて成べく國家の爲に御奉公しようと云ふ觀念も薄らぎ、成るべく適正な農業どころではない、段々減段して、他の仕事の方へ移つた方が宜い、恐らく三年、五年の先には土地などは値打がなくなつて、我々農耕に從事する者は激浪に浚れて、何處かへ吹き飛ばされてしまふのだ、こんなことでは我々は熱心に増産運動は出來ないと言つて居ります、又健全な自作農で三町歩内外を持つて居る連中はどうかと云ふと、我々は朝から晩まで働いて多少蓄積が出来る、蓄積が出來ますと先づ買求めるものは土地であります、去年五畝買つた今年は一段買つたと云ふことで、孜々營々として餘剩資金で土地を求めて居る、一町五段、二町、三町と其の土地の殖えるのを何よりの樂しみとして増産の意欲、供出、色々の面に御奉公出來るのだ、所が最近に於ける所の立法で、こんな風にしてやつて居ると皆切られてしまふのだ、現在はさうした形の制度だが、又次に第三次の改革案が出來て、更に切下げ程度がもう一歩進むだらうと云ふやうな所から、さうした一般の農村の健全なる耕作者と云ふものは、もう此の問題に付て政府に相當怨嗟と申しますか、最近は寧ろずつと神經が弱つて、愀愴恐怖と云ふ觀念にさへ陷つて居ります、政府は民族の給源地であり、淳風美俗の地として讚へられた此の上に、新しい日本を建設すると云ふ農村の思想動向をどう云ふ風に御覽になるか、農林大臣の御感想を承つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=179
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180・和田博雄
○和田國務大臣 私は今囘の農地改革等に付きましては、十分眞意を徹底致させまして、さう云ふ色々の誤解から來ます事柄は出來るだけ避けるやうに致したい、斯樣に考へて居ります、御承知のやうに今囘の農地改革に於ては、自作經營に付ては何等の制限を致して居ないのであります、此の點に付きましては十分御理解を求める積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=180
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181・磯崎貞序
○磯崎委員 大體農林大臣に對する質疑は終へましたが、農林大臣は色々親心で御配慮を願ひ──政府當局も勿論でございますが、併し恐らくは是は親心が仇心で、農民は中々さうは思うて居りませぬ、私の申すことに間違ひがあるかないか、恐らく三年か五年先に行きますると、實際私が申上げるやうに、はつきり政府の親心が仇心になると云ふことを強く申上げまして、私の農林大臣に對する質問を打切ります
次に税の問題に付きまして一應御尋ね致したい、實は現在相續税を御取りになつて居りますが、其の相續税が各方面に於きまして三千圓から五千圓程度に査定されて、税務官吏の方面では、是は七千圓も八千圓もするものであるが、特に半分位にして置かうと云ふやうな聲であつて、其の程度で決定されて、何れも納付しつつありますが、其の農耕地は何れ自作農の創設で買取らるべき運命のものでありますが、是はどう云ふ風なことになるか、大藏大臣の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=181
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182・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の御質問は實ははつきり御答へ出來ないのであります、數字をどう云ふ風に査定して居りますか承知しませぬが、若し其の結果が今度の自作農創設の爲に買入れ價格と非常な相違を生ずる爲に、納税者に何等かの不當な損害を與へるやうであれば、無論考慮しなければならぬものと思つて居ります、事實に付ては只今承知しませぬから、はつきりしたことは申上兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=182
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183・磯崎貞序
○磯崎委員 實は税務署の所まで申上げても宜しいのでありますが、まあ是は後日に殘します、實際只今申上げるやうな形で往々行はれて居る、何れも相當な金額になりますから、分納して居ると云ふやうな譯で、其の第一囘を納めたと云ふやうな程度の人さへあるのでありますが、それが近く農地を買收されると云ふやうなことで、相當恐怖して居りますが、是は今大藏大臣の御話の如く、必ずや修正さるべきものであると考へて居りますが、さう云ふ個所が各所にございます、恐らく是は日本全國ではないかと思つて居ります、それで特に、農耕地と申しましても市街地附近になりますと、宅地のやうな基準から價格を御決定になるのかとも思はれますが、坪二十圓とか三十圓と云ふやうなものさへあるのであります、其の點に付きまして取る方は大分好い値で税金の對象になさるが、此の片方の農林大臣の買收價格と云ふものは洵に不公正でございます、是はさうした場合にははつきり大藏大臣に於て適當な御處斷を願へるかどうか、重ねてもう一度御願ひしたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=183
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184・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今申上げましたやうに、事實が今私には分りませぬから、どう云ふ處置を執るかと云ふことははつきり申上げ兼ねますけれども、御話のやうに納税者に若し不當なる損害を掛けて居ると云ふやうなことがありますれば、無論修正しなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=184
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185・磯崎貞序
○磯崎委員 大體質疑は終了致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=185
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186・葉梨新五郎
○葉梨委員長 此の際大藏大臣に對します質疑を、關聯事項として許可致したいと思ひます、吉澤仁太郎君も大藏大臣を御要求になつて居られます、吉澤君、先づ大藏大臣に對する質疑から御進行を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=186
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187・吉澤仁太郎
○吉澤委員 私は本案に對して農林大臣に御質問申上げる中に、大藏當局に對して御質問申上げたい念があつたのでありますが、大臣の御都合で、今關聯質問としてやれと云ふ委員長の御指名でありますから、あとの質問は留保致しまして、大藏大臣に對する質問だけ一、二申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=187
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188・葉梨新五郎
○葉梨委員長 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=188
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189・吉澤仁太郎
○吉澤委員 本案の最も重點であると言ふべき農地證券の問題でありますが、是は曩に提案の時の御説明に依りますと、大體記名式のものにして、融通性がないと云ふやうに承つて居りますが地主の大小に拘らず、現在土地だけ所有して居つて他に收入のない方々が相當あると思ふのであります、是等の方々が政府から交付された土地證券を其の儘融通することも出來ず、擔保にも、又賣買にもならぬと云ふやうな場合がありましたならば、萬一災害を受けたとか、或は不時の費用が必要であるとか、若しくは兒童の學資等の必要であると云ふ時に、殆ど融資の途がないと云ふやうなことがある譯でありますが、之に對して大藏大臣は如何なる御考へを御持ちでありますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=189
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190・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の農地證券の問題は、農林省がどう云ふ風に計畫されて居るか、實はまだ聽いて居りませぬが、唯御話だけであると、御質問のやうに少し差支へがあるやうに考へます、無論財産税を取る時に又熟考しなければならぬ、さう云ふやうに考へて居つたのでありますが、どう云ふ風にせられるのか、實は聽いて居りませぬから、はつきり申上げ兼ねるのであります、尚ほ研究して見ますが、今の御話では何か差支へが起るやうに私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=190
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191・葉梨新五郎
○葉梨委員長 山添農政局長から其の方の説明をして戴いて、兩當局の考へを御質疑になつたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=191
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192・吉澤仁太郎
○吉澤委員 結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=192
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193・葉梨新五郎
○葉梨委員長 山添さん、何かあなたからそれに付て御説明されたら如何ですか、はつきりして宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=193
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194・山添利作
○山添政府委員 特別に流通制限をすると云ふ考へは持つて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=194
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195・吉澤仁太郎
○吉澤委員 それでは此の問題は何れ後で改めて伺ふことに致します、大藏大臣に御伺ひしたいのですが、或は大臣御分りならないかも知らぬと思ひます、餘り細いことのやうですが、併し決して細い問題ではない、相當重大な問題であります、本年度の所得決定に際しまして、或る財務局では、農家の保有米を營團の拂下價格に依つて課税せよ、斯う云ふ御指令があつたのであります、私共所得税調査員は、それは非常に不合理である、詰り苛酷であると云ふことで、從來の方針通り、大體地主の供出價格程度で認めさせたのでありますが、或る税務署に於きましては、財務局の御指示通りの方針でおやりになつた所もあるやに承つて居ります、詰り生産物ではあるが、其の米の價値に付て、一般消費者の手に渡る値段と同樣の收入を見ても宜しい、斯う云ふ御見解のやうであります、是は私、大分そこに無理があると思ふのであります、何となれば他の農作物其の他の收入も、總てやはり所得があつて初めて所得税を課せられるのであつて、農家の自家用米に乙種所得税を課するに際して、營團の拂下價格、所謂政府の拂下價格を以つて課税の對象とすることは非常に無理があると思ふのです、現に行はんとし、又行ひつつあるのでありますが、大臣の御見解を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=195
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196・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の事實を私初めて伺つたのであります、御話に依りますと、其の營團の拂下價格で評價したと云ふのは農家の自家用米のやうでありますが、成程さう云ふ風に評價するのが理窟に合ふと思ひます、と云ふのは、消費者は消費米ですから小賣價格で買つて居る譯でありますから、農家も自分の消費米を評價する場合には、成程消費者價格で評價すると云ふ税務署の方が理窟があるやうであります、事實はどう云ふ風になつて居るか分りませぬが、今の御話では理窟があるやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=196
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197・吉澤仁太郎
○吉澤委員 大臣がさう云ふ御見解であるとすれば承つて置く程度でありますが、今の御見解は非常に無理があると云ふやうに思ひます、然らば芋も麥も、農家の自家用のものは全部それに依つて課税せなければならぬと云ふことに相成るのでありまして、其の他蔬菜類の如きも、公定價格があるならば丸公價格、全部買つたものと云ふことになると思ひます、大體所得税は農家の所得したものに對して課税の對象にすべきものであつて、自家用のものに對して或程度の價格を認めるのは宜しいが、全部丸公であるとか、或は一般時價であるとか云ふやうに見積つてやると云ふのは無理があると思ひます、尚ほ能く御研究を御願ひしたいと思ひます、私の大藏大臣に對する質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=197
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198・葉梨新五郎
○葉梨委員長 諸君に申上げます、大藏大臣は來週からは中々本委員會に出席を願ふことが困難になるではないかと豫想せられますので、此の際、大藏大臣に對する質疑を御持ちの方は、御準備が出來て居る限り、一つ關聯的に御濟ましを願つたら如何かと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=198
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199・平野市太郎
○平野(市)委員 私は一農民として實際税金を賦課されて居るものであります、今囘御提案になつて居りまする自作農の問題が實施されるや、農民は皆土地を買ひたいのであります、買ひたいのが本當なのです、けれども茲に農民として、買つたならばどうかと云ふ非常に心配の點があるのであります、それは第一番が税金の問題であります、どのやうな税金が賦課されて居るかと申しまするならば、是は本年我々農民に賦課された税金であります、事實であります、事實を申上げまして大藏大臣に御伺ひ致すのでありますが是は米麥作を主體にした農家でありまして、香川縣香川郡大野村の税務署の調査であります、昭和二十年度の米麥の收入を、米の生産は一段歩の收穫を一石六斗と見て、其の價格一石に付き二百五十四圓、麥一段歩の收穫二石として、一石に付き七十五圓、米と麥との藁を段當り八十貫と見て十貫、公定價格一圓三十錢と見て、此の合計が一段歩生産金高五百六十六圓と見て居るのであります、さうして一方農家の支出でありますが、控除される額は、公租公課一段歩に付て七圓八十二錢引かれるのであります、肥料代を一段歩二十一圓八十錢引かれて居ります、種子代でありますが、米麥の種子代一段歩三圓十八錢と見て居るのであります、それと勞働賃金でありますが、一段歩米と麥とを作るのに、其の農民の勞働賃金を二十一圓三十錢に見て居るのであります、牛の使ひ賃でありますが、是は秋と夏であります、麥を作る時と稻を作る二期作の牛と人間との手間を十二圓五十錢に見て呉れたのであります、それから農機具の修理費でありますが、之を一箇年七圓に見て居るのであります、それから其の他と致しまして──是は大抵俵代を見て居られることと思ふのでありますが、其の他として九圓引いて呉れて、合計八十六圓引かれるのであります、さうして純益を四百八十圓、之に對して税金を盛込んで課けられて居るのであります、一段歩に四百八十圓しかない、それに對して最高は千圓であります、最低四百圓と見て居るのであります、斯う云ふ税金の課け方をせられて、農民が土地を買ふ氣になれるでありませうか、折角斯う云ふ第二次の農地改正案が出まして我々農民が土地を買はんと致しましても、斯樣な税金の課け方をせられて、農民が甘んじて土地を買へるでありませうか、どんな農業に經驗のない者でも、麥と米を作るのに一段歩の勞働賃金が二十一圓三十錢でやれるでありませうか、是は一日分と二期作の一年の勞働賃金と間違うて居るのではなからうかと思ふのであります、牛の使ひ賃も今年の夏の田植に──私は百姓でありますが、推されて當選したお蔭で田圃が出來なかつたのであります、そこで之を請負制度で牛を使つて貰つたのでありますが、一段歩の牛の使ひ賃が二百五十圓であつたのであります、田植賃が一段歩八十圓でやつて呉れたのであります、斯う云ふ風に計算をするならば、莫大な費用が掛るのであります、所が麥と米との肥料代を僅かしか見て居らぬ、二十一圓八十錢であります、麥と米とに農業會から配給を受けた肥料代だけでも一段歩六十七圓を拂つて居るのであります、全部矛盾して居ります、さうして盛込んで課けて居るのであります、是は單なる麥と米とを作る農家に對する税金でありますが、特殊農家として果物を作つて居る農家であるとか、又私達の如く都市附近で蔬菜を作つて居る農家の税金と申しましたならば、全部闇價格で査定して税金を賦課されて居るのであります、甚しきは一段歩三千圓位の税金を取られるやうな状態になつて居ります、最近農村の小作人も聊か金を溜めて居りますけれども、さう云ふ税金の課け方をせられるのでありましたならば、三年位したならばもう全部税金に取られてしまふのであります、之を何とか政府の方で御考へを願ひたいのであります、殊に特殊農家として果物を栽培して居るとか、蔬菜を栽培して居る農家の税金を、皆闇價格に見ると云ふことは大いなる間違ひであります、中には不心得な農民で闇で賣る人もなきにしもあらずであります、併しそれは賣るのではないのであります、無理矢理に買はれるのであります、そこで農産物の價格は總て作付をする前に決めて戴きたいのであります、二十一年度の米の價格が今尚ほ決定しないと云ふことは、農民に取つて洵に困るのであります、蔬菜の價格に致しましても、是は來年の税金になつて來るのであります、現在私は蓮根を一段一畝作つて居りますが、農業會から買受けました其の種が一貫目四十圓であります、一段一畝に私は百貫、四千圓の種を放して居ります、此の蓮根を一人前に作り上げるのでありましたならば硫安十俵やらなければ出來ぬのであります、之を闇で入れるのでありましたならば一萬五千圓掛るのであります、之を全部闇値で入れることは出來ぬのであります、所が私は色々苦心して八千圓の肥料を施して居ります、今頃農業會の方で是の價格を決めて居る、自由販賣は許されないと云ふので價格を決定されたのが、蓮根が荷受機關渡で、一貫目十七圓となつて居るのであります、計算して戴きたい、元が取れぬのであります、所が税務署の方ではやはり種の一貫目四十圓もの價格を見積つて、七百貫作つたから何ぼと云ふやうな税金を掛けられて來るのであります、大藏省は今後やはり此のやうな標準で決めて來られるのか、御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=199
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200・石橋湛山
○石橋國務大臣 本年の農家に對する所得税の査定に付ては、各地方に於て色々の苦情がありまして、其の三、四囘の申請なり、若しくは私などへ色々な陳情がありました向きは全部調査をさせまして、誤りがあつた場合訂正をさせまして、大體各方面とも問題は濟んで居るものと私は心得て居ります、でありますから御話の香川縣の例も、若し誤りがありましたならば、是は無論訂正することに吝かではございませぬ、それから今御話の數字に付きましては、果して税務署の査定が誤つて居るか、正しいかと云ふことは、私は今此處で判斷は出來ませぬが、一寸氣付きましたことは、勞働賃銀などは多年自家用の勞働は其の賃銀の中に計算をして居らないのであります、それが當然であります、さう云ふことで算盤を取つて居るのではないかと思ひます、其の他肥料でありますとか、農機具でありますとか云ふものの代金などに付ては、是は御話のやうであれば、肥料の如きは誤つて居ると申さなければなりませぬ、其のやうな譯でありますから、數字のことは今はつきり致しませぬが、若し誤つて居りますれば無論訂正致します、決して大藏省は無理な税金を取る積りはございませぬ、唯何時も申しますやうに、是は戰時中からの問題ですが、農家だけではない、一般の問題でありますが、御承知のやうに、物價は相當に高くなつて居る、賃銀其の他も高くなつて居るに拘らず、税收入がどうしてそれに副はないか、それは時間的の食違ひもございますが、詰り所得等の査定が現在の物價よりも今までは低くなつて居つたと云ふことであります、そこで是は一遍に訂正する譯に參りませぬが、大藏省の只今の方針としては、闇であるとか公定であるとか云ふことでなく、各人の實際の所得に對して公正な課税をする、斯う云ふことでありませぬと、非常に全般として不公平であります、併しながら一軒々々調べる譯に參りませぬので、自然或る地方毎に何か基準を設けて課税することになりますので、往々にして間違へる、其の間違ひの點は、繰返して申上げますやうに訂正致しますから、御諒承を願ひたい、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=200
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201・平野市太郎
○平野(市)委員 此の調査は大野村の農民組合の協議會で、餘りにも間違つて居ると云ふので、わざわざ税務署の役人に來て戴いて、どう云ふ課け方で決めて行つたのかと聽いた所、先刻私が申上げたやうな報告を致したのであります、間違ひないのでありまして、今大臣の御説明に依りますると、間違つて居る點が分つたら申込んで戴くならば減額してやると云ふ御言葉でありますが、是は大野村の一部分でありますが、香川懸下全部に斯う云ふやうな矛盾した税金を賦課された爲に、九月十日に香川縣下の農民は一大示威運動を起したのであります、丁度十日は雨が降りまして人員が少なかつた關係で、僅か三百名餘出たさうであります、さうしてわざわざ税務署へ押掛けて此の農民の苦しい立場から要求致した時に、頑として税務署は應じなかつたと云ふのであります、弱い農民が一一間違つて居るから訂正して呉れと言つて參りましても、容易に應じて呉れないのであります、何人が考へましても無理で、籾種と麥種五升而も三圓八十錢の種代でやれるでありませうか、斯う云ふ點を一つ御考へになりましても、農民を人間扱ひして居ないのであります、是は殿樣の時代から今日に至るまで、農民は唯物を言ふ牛馬位にしか思つて居ないからだと思ふのであります、此のやうなことで農村の民主化が圖られるでありませうか、農村の經濟が立直るでありませうか、もう少しく日本の農民を人間扱ひして戴きたいのであります、今も大臣の御言葉に依りますると、それは自家勞力を見て居ないだらう、今まで我々は朝夕星を戴いて働いて居ります、農民の働いて居るのは、牛馬と同じで、さう云ふ勞働賃銀と云ふものは見て居なかつたでありませう、麥五俵、米四俵作るのに二十一圓三十錢の勞働賃銀で出來るでありませうか、特に自家勞力を見積らなくては絶對に出來ぬのであります、是はどう云ふやうに見られて居るのか、幸ひ農政局長も居られるのでありますが、はつきりした御答辯を大藏大臣と御二人のを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=201
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202・石橋湛山
○石橋國務大臣 言ふまでもなく、單に大藏省のみでなく、政府は農村の諸君を人間と見ないなど、そんなことは絶對にないのでありまして、さう云ふ誤解は解除して戴きたいと同時に、左樣なことも成べく仰しやられぬやうに御願ひしたい、香川縣の何處の税務署か知りませぬが、税務署が若し再審査を要求してもしなかつたと仰せられるならば、其の税務署の名を御擧げ下されば調べます、左樣な不都合なことはない筈である、若し左樣な不都合な税務署があれば處斷致します、最後の數字のことは、只今申上げましたやうに私は中途より伺つて分りませぬが、只今所得の査定を致しますに、自家勞力を入れないのが當然でございます、計算上は詰り收入の中から外へ拂つた費用を差引いた殘りが自分の働いた所得になる譯であります、併し計算は一應それで辻褄が合ふ譯であります、そこいらの御考へと或は所得の査定に付ての計算方法とに一寸御考への食違ひがあるのではないかと思ひますから、其の點一寸御注意申上げて置きます、尚ほ其の數字に付ては、税務署の名前を御擧げ下さいますれば、十分調査致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=202
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203・平野市太郎
○平野(市)委員 税務署の方へ大藏大臣から直接改めよと云ふ御通知を急速に出して戴きたいのであります、此の例は大野村の調査でありますが、香川縣は全部間違つて居るのであります、是非税務署の方へ改めよと云ふ通牒を一刻も早く出して戴きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=203
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204・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸御尋ね申したいのですが、其の再審査の要求をしたが、それを拒絶したと云ふ税務署の名前を教へて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=204
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205・平野市太郎
○平野(市)委員 是は高松市の櫻町にあります税務署、一中の前にあります財務局であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=205
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206・山添利作
○山添政府委員 其の關係に付きましては非常に難かしい問題がある譯でありまして、農林省と致しましても、代表的な地方へ人を派しまして、實情を調査致し、將來課税の合理化と云ふことに付きまして、十分大藏省に協力したいと云ふのでやつて居ります、それから又此の税の修正の點に付きましては、御話のやうな點もあるかと思ひますけれども、それぞれ地方で處理して居られる状況だと承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=206
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207・平野市太郎
○平野(市)委員 最近政府の方の意見を色々聽いて居りますると、農村に新圓が集中されて居ると云ふことを聽くのでありますが、過日農林大臣は、農村に新圓が吸取されて居ると云ふことを言ふが、實際調べた結果、農村には新圓が餘りにも偏つて居らぬ、斯う云ふことを私承つて安心致したのであります、けれどもそれは農林大臣の御言葉でありまして、他の方は大低農村の奴は惡い、今まで闇をやつて金を儲けて居る、斯う云ふやうに考へて居られる方があるのであります、今頃の農民は聊か貯蓄を致して居りますが、農民は半期が一日なのであります、農民の收入は年二囘しかないのでありますから、農民位貯蓄心の強い者はないのであります、然るに少し貯蓄が高まつたからと云つて、農村に新圓が集まつて居る、斯う云ふやうな考への下に出鱈目な税金を課けられて居るのではなからうかと私は思ふのであります、農民と雖も人間であります、無暗に金が儲かつたならば、温泉にでも浸かりたいのであります、私過日温泉も調べたのでありますが、温泉に浸かつて居るやうな人は、大低資本家か大地主であります、さなくば會社の重役であります、色の黒い農民は滅多に温泉に浸かつて居らぬのであります、斯う云ふ點も能く御調べになつて、今までの農村に對する見方を改めて戴きたいことを切に御願ひ致しまして、私の質問を終りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=207
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208・冨吉榮二
○冨吉委員 只今の點に關聯して大藏大臣に御伺ひ致します、政府が公定價格なるものを決めて、其の點に於て嚴重な取引をさせて居るのに對して、税務署の課税の標準としてはそれに依らないと云ふやうな御話があつたのでありまするが、是は如何なる根據に基くものでございませうか、其の點御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=208
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209・石橋湛山
○石橋國務大臣 所得の査定は各人の所得を査定するのであります、ですから其の査定の方法には技術的には色々ありませうが、兎に角租税を課ける本になる所得と云ふのは、公定價格でありますとか、闇價格でありますとか云ふやうなことでなく、各人の所得を見る、斯う云ふ建前であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=209
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210・冨吉榮二
○冨吉委員 さうしますと全然公定價格と云ふものには依らないと仰しやるのですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=210
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211・石橋湛山
○石橋國務大臣 全然依らないと云ふ譯ではありませぬが、繰返して申しますやうに、所得税は實際の所得に課けるのでありますから、其の所得を見るのであります、それを他の基準で見れば、所得と違つて間違へば高くなり、反對に間違へば低いものになる、斯う云ふ譯でありますから、税の建前から云へば、飽くまでも所得を見るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=211
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212・冨吉榮二
○冨吉委員 所得を見ると云ふことは成程分りますが、併し其の所得と云ふものは一軒々々に付て能く分りませぬから、其の地方で基準を決めると云ふやうな御話でありますが、所謂闇をやつて儲かつて居る惡農と云ふやうな者と、正直に政府の言ふなりにして暮らして居る者と、同一の率に依つて其の所得を勘案せられて課税せられると云ふことは、私は茲に非常な將來への重大な問題が起つて來ると思ふのであります、それは成程間違ひがあれば、其の査定をやり直すに吝かなるものではないと云ふやうな御熱意のやうでありますが、それは大藏大臣の机の上で考へられたことであつて、東洋經濟の調査に現はれた事項としてはさう云ふことになつて居るかも知れませぬが、實際問題としては、税務署の役人と一般人民と云ふものとの間に於ける從來の封建的な關係に於きまして、迚もさう云ふことはなし得るものではないのです、それは農村に於きましても、さつきから言はれて居ります一部の相當の「インテリ」階級でありますとか、或は顏役でありますとか、税務署の役人と常に一杯やつて居るやうな連中は、おい是はいけないぞと云ふやうなことで行けますけれども、税務署の役人と云ふものは殆ど北向きの鬼瓦見たいの顏をして、百姓なんか怒鳴り付けるのですから、それは事實上、再審査などと言つても、大臣から特別に電報でも打つてやかましく仰しやれば兎も角も殆ど修正されないで以て、泣寢入りと云ふのが大體現状なのです、最近闇物價と云ふやうな忌はしいことが起つて來ましたことに依つて斯う云ふことが起るのでありますが、私は其の點に於て、政府はそこに何等か一つの打開點を發見されませぬと、先程平野君から、此の場合農地調整法が實施されても農民が土地を買ひたがらないとか、色々な御話がありましたやうに、農民生活と云ふものが非常に暗澹たるものになり、前途、民主化どころではない、非常な暗いものになる、斯う云ふ點に於て農村の課税に付ての相當な御考慮が拂はるべきものであると思ひますが、依然として所謂封建的な役人風を吹かす税務官署の見積りと云ひますか、其の所得を中心と云ふやうな曖昧なる基準で宜しいのでございませうか、其の點重ねて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=212
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213・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問は、詰り税務署が惡い、或は税務署の官吏が惡いと云ふことになりますが、是は農村だけの問題ではなく、屡屡申上げますやうに、税務署の機構乃至税務官吏の素質を向上すると云ふことが根本になる譯であります、是は今まで常に議論を官民共に致して居りながら、改善の實が、甚だ上らなかつたのでありますが、今後一つ大いにそれをやりたいと考まして、税務官吏も相當に──是は財産税率等の問題もあるのでありますから、相當に増加致しますし、各府縣廳のあります所には財務局の出張所を設けまして、色々御相談を聽くやうな施設も作りました、詰り今の財務局を少し擴大し、さうして其の下部機構に財務局の支局を府縣廳のある所には皆設けると云ふやうなことに致しまして、監督、或は又御相談──其の土地の方々の税務或は其の他今度の金融措置と云ふやうな事項に付きまして、御相談するやうな仕組にも致しますし、又大藏省官吏、就中税務官吏の講習所を設けまして再教育も致したいと考へて居ります、斯う云ふ人間の問題でありますから、中々急速に行きませぬが、今極力進めて居りますので、漸次改善されることと存じます、それから是はやはり税務署に依りまして、御話のやうに再審査等を要求しても中々しないと云ふ風なものもあるやに聞きますが、左樣な苦情を聞きますれば、私の方から其の税務署に命令を出し、或は譴責をする等の手續を躊躇なく執つて居ります、兎角納税者と税務關係では、税を取る方は、多く取りたい、納める方は成べく納めたくないと云ふやうなことがありまして衝突し勝ちなのであります、其の點の調節は精々圖つて居ります、全般的に非常に良いと云ふことは申上げ兼ねますが、左樣な考へで改善を圖りたいと思ひます、差詰めの處置と致しましては、且體的に何處の税務署がどうである──先程も其の爲に一寸御尋ね申したのでありますが──と云ふことがはつきりすれば、其の税務署なり財務局なりに對して十分なる戒告を與へたい、斯樣に致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=213
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214・冨吉榮二
○冨吉委員 自家勞力を控除しないと云ふ御趣旨でありますが、是は法令の定むる所さうなつて居ると思ひます、併し私はさう云ふことは矛盾ではないかと思ふ、詰り自家勞力を以てのみ立つ農村經濟に於きましては、農村の生産に於きまして、其の生産費の中に勞力代を見積らないと云ふことは、其の純益算定の上に非常な矛盾であると私は考へる、此の點何か御改めになる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=214
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215・石橋湛山
○石橋國務大臣 先程の御話の數字は毎々申上げる通りに、どう云ふ數字であるかはつきりしませぬから、的確なことは申上げられませぬが、若し所得の調査とすれば自家勞力を入れないのが當然なのであります、例へば我々が給料を貰つて居るのと同じことなので、自分で給料を貰つて、此の給料が所得になる譯です、それと同じやうに自分で仕事をして居るとすれば、さうして自分で作つたものを消費して居ると假にすれば、やはりそれが自家勞力と云ふものに依る所得です、我々は月給を貰ふし、自分の勞力で事業をして居る人は、其の勞力で得たものが所得になりますから、是は理窟でありますが、一應所得の調査をすればさうするのが當然であると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=215
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216・細野三千雄
○細野委員 簡單に伺ひます、今度發行せられる農地證券は額面千圓一種類と大體聞いて居りますが、之を買收される地主に御渡しになる場合に、斯うした價格は大藏大臣が定められると云ふことに法文でなつて居りますが、是は大體どの程度になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=216
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217・山添利作
○山添政府委員 それは事務的に打合せた關係から私から御答へします、是は利率を三分六厘五毛と云ふことに計算を致しまして、隨て額面は「パー」でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=217
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218・細野三千雄
○細野委員 此の證券の發行せられる限度は決まつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=218
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219・山添利作
○山添政府委員 是は必要なだけ發行致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=219
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220・松本六太郎
○松本(六)委員 時間もありませぬから、簡單に御尋ね致します、只今農地證券に付ての御尋ねがあつたのでありますが、私も此の點に付てもう少し御尋ねをして置きたいと思ふのであります、山添局長は、幾ら出すか、要るだけと云ふ御話でありましたが、大體政府の豫想して居られます所はあると思ふのであります、是は私も一應それを承つたこともあるのでありますが、兎も角も報償金を加へますと、今度の事業に依りまして百億圓以上の國家財政の負擔がそこに起つて來る譯であります、此の農地證券はどう云ふ會計で大藏省は御處理になるのであるか
それからもう一つは、此の事業が農林省が今日企圖して居られますが如く圓滿に遂行致しますれば、是は漸次年賦償還に依つて支拂はれて行くのでありますが、今日の社會情勢と申しますか、農村の實態から見ますと、此の事業は左樣簡單に、農林當局が考へて居られるやうに計畫通りには遂行されないと云ふことが、我々には看取出來るのであります、一應強權に依つて二百萬町歩の農地を買收されますが、之を自作農化すると云ふ段になりますと、是は容易に完成しない、一例を擧げますと、耕作權が確立した以上、何を苦しんで土地を買はなければならぬかと云ふううな思想が強く動いて居るのであります、又一面には、今御質問がありましたやうに土地を持つことに依つて農民生活は破綻に瀕するのだ、此の重税の下に於て非常な苦しみをするよりは、小作で行く方が宜い、其の小作も從來の地主のやうな個人の小作をするのとは違つて、國家の土地になつてしまつたのであるから、國の小作をするのであるから、土地の取上もない、又小作料も場合に依つては大いに減免をして貰へる可能性が多分にある、斯樣な觀點に立つて土地を持つて自作農にならうとする意欲が非常に薄らいで來て居ることは事實であります、又農民組合等の發達して居りますやうな地方の實情を聽いて見ますと、左樣な地方程特にさう云ふ傾向が顯著であります、斯樣な風に見て參りますと、結局國家が此の土地の多くの部分を背負ひ込んでしまつて、國家と小作人とが小作爭議をやらなけばならぬと云ふやうな悲しむべき事態も想像されるのであります、それはそれと致しまして、さう云ふ場合に賣れない土地の農地證券はどう云ふ風な處置をなさるのであるか、此の點は先程大澤君からも一寸御指摘になつたやうでありますが、左樣な點に付ての大藏當局の財政上の今後の御見透しなり、御方針なりを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=220
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221・石橋湛山
○石橋國務大臣 第一のどう云ふ會計でと云ふ御質問ですが、一般會計で處理する積りであります、それからあとの土地が萬一賣れなかつた場合にどうするかと云ふことであります、是は農林當局の周密なる研究に依つて左樣なことは萬ないと考へて居ります、現在の小作人に土地を持たすと云ふことが小作人諸君の利益になるべき筈、さう云ふ目的を以て行はれる制度でありますから、それが今御話のやうに、案外今の小作人は土地を持つのを厭だと言つて之を買はない者があると云ふのは寧ろ我々としては意外に考へるのであります、それは偖て措きまして、さう云ふことも想像すれば出來ないこともございませぬので、さう云ふ場合の處置は、別に何等か方法を講じたいと只今技術的に檢討を致して居る次第であります、大藏省としては、無論今囘の自作農創定に依りまして金利の差でありますとか云ふものが國民全般の負擔になりますが、それはさして大きなものではない、農地證券を發行致したもの、或は又地主に現金も拂はなければなりませぬが、さう云ふものは大體右から左へ囘收されるものと考へて居ります、萬一それが出來ないと云ふことが起りますならば、それは別に考慮をすると云ふことを曩に申上げたやうに研究は致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=221
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222・松本六太郎
○松本(六)委員 之に關聯致しますから、もう一點だけ山添局長に御尋ね致して置きたいと思ひます、實は大體私の順番が廻つた時に私が御尋ねしようと思つた問題でありますから、是と關聯して此の際御尋ねをして置きます、元來小作人が土地を持ちたいと云ふことは常識であらねばならぬと我々は考へるのであります、又私共は農村に居つて左樣な聲は從來聽いて參つて居るのであります、其の意味に於て此の度の政府の執られました農地政策と云ふものは、畫期的なものであり、非常に結構であると我々は考へて居るのでありますが、併し實情は今申上げるやうに、遺憾ながら政府の企圖せられるやうには其の結果は參らぬと云ふことが、大體明瞭になつて來て居るのであります、そこで農林當局に御尋ねするのでありますが、買ふ方は國家權力で嫌やでも應でも一定の土地は、或る條件の土地は買上げるのでありますが、賣る方は買ひたいと云ふ希望者があれば賣るが、さうでなければ無論賣らないのでありますけれども、ここはもう少し御考へ願つたらどうかと思ふ、土地を耕作する意思のない者に對しては、無理に此の土地を賣ることは合理的ではありませぬ、併しながら其の土地を耕作したいと云ふ希望があり、耕作をする希望を持つて尚ほ土地は耕作するが、土地は買はないのだと云ふ、之に對して政府は何も御考へになつて居らぬのかどうか、此の點一つ御伺ひ致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=222
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223・山添利作
○山添政府委員 政府で買ひました農地を現に小作をして居る者に賣るのが原則でございますが、今御指摘になりましたやうな、現在の小作人が買ひたくない、他に希望者がある、斯う云ふ場合に於きましては、耕作權の交換を指示することも出來ます、又もう一つの方法と致しましては、政府が買ひました土地と政府が買上げない小作地との交換分合を致しまして、新しく政府が交換に依つて取消した農地を小作人に讓渡す、斯う云ふことを強制的にやり得る途も法案の中に規定してございます、是は第二十三條及び第二十五條の規定を御覽になつて戴きたいと思ひます
それから先程農地證券の發行に限度はないかと云ふ御質問でございましたが、それは法令の限度があるかないかと云ふ風に私は諒解致しましたもので、必要だけ、斯う云ふやうに御答へして失禮致しました、計畫ならございます、其の計畫は、土地代金の中三割は一時拂にして貰ふと云ふことを見積りまして──是は既墾地の場合だけでございますが、土地代金の分に於きまして九十億圓、補償金の分と致しまして二十億三千萬圓併せまして百十億圓であります、此の外に未墾地の分がございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=223
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224・古賀太郎
○古賀委員 農地證券の利率は今三分六厘五毛と仰しやいましたが、是は國家の財政如何に拘らず永久に變動することはないのですか、二十四箇年の年賦償還の利率に於きましても變更にならぬ御方針でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=224
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225・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今は無論變更致しませぬ、併しながら日本の金利水準が全般的に非常に下るとか──私はそんなことは起らぬと思ひますが、公債政策が非常に變更が起るやうな場合には、是は保證出來ない譯であります、現内閣としては無論公債に變更を加へる積りはありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=225
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226・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは刑事局長に對する質問が僅かございます、其の前に委員長から、大藏大臣に午前中の質疑の中保留された分がありますので、伺つて置きますが、財産税の物納の際、物納されたものが農林省に所管替へになる際に、それの代金と申しますか、大藏省の税收入の方は兩省の間でどう云ふことになるかと云ふ質疑がありました、尚ほ其の際の物納價格は自作農創定法の規定に依る價格に依つて行はれるものであるかどうかと云ふ質疑が保留されて居りましたので、之に對する御答辯を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=226
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227・石橋湛山
○石橋國務大臣 土地で物納する價格は、先般本會議で申上げたと思ひますが、自作農創設特別措置法が出まして其の價格に依るのであります、それから物納された土地を處分する場合には、無論今囘の自作農創設法の中に入る譯であります、そこで色々事務的に檢討致しましたが、やはり此の處理は農林省に一括してお任せしたいと大藏省は考へて居ります、技術的にどうなるか一寸はつきり致しませぬが、政府部内の農林省でありますから、別段代金を取つて賣る必要はなからうと思ひますので、其の農地の管理處分は農林省に移管したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=227
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228・葉梨新五郎
○葉梨委員長 財政計畫はどうなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=228
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229・石橋湛山
○石橋國務大臣 財政計畫としては、それだけの收入があつた譯であります、ですから、それは物納で大藏省の手でありませうとも、農林省の手でありませうとも、政府の所有の間は、やはり政府所有のものでありますから、政府の財産として計上される、それの處分が出來ますれば、そこに收入がありますからやはり政府の所得になります、でありますから財産税の關係は一向差支へございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=229
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230・葉梨新五郎
○葉梨委員長 其の處分の出來るまでの間の歳入の面は、赤字公債を以て補填される譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=230
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231・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は農地に限りませぬ、財産税は、只今の計畫では特別會計で處理する積りであります、財産税特別會計が出來まして、さうしてそこへ物で入りましたものは全部そこの資産として計上される、若しそれが處分が出來まして換金が出來ますれば、それは直ぐに歳出の方面へ使へる譯でありますが、換金の出來ないものは、其の特別會計に依つて公債を發行せしめる、公債を發行しまして、其の公債で金融をすると云ふことになるのでありますから、赤字公債とは少し違ひますけれども、兎も角特別會計の公債が發行になります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=231
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232・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは大澤君保留の司法省刑事局長に對する質疑を極く簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=232
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233・大澤喜代一
○大澤委員 刑事局長に御聽き致します、政府の出した資料に依りましても、終戰後に土地取上件數が約二十五萬件、其の中爭議化したものは一割近い二萬四千件ある、併し實際の農村の實情を見ると、此の十倍もあるだらうと我々は見て居るのです、そこで是等の土地取上の問題と云ふものは、御承知のやうに現行農地調整法の第九條「農地の賃貸人は賃借人が宥恕すべき事情なきに拘らず小作料を滯納する等信義に反したる行爲なき限り賃貸借の解約を爲し又は更新を拒むことを得ず」「農地の賃貸借の當事者賃貸借の解約を爲し又は更新を拒まんとするときは命令の定むる所に依り市町村農地委員會の承認を受くべし」、之に反した者は第十七條の五に依りまして「六月以下の懲役又は五百圓以下の罰金に處す」、斯う云ふことになつて居るのであります、所が實際聞く所に依りますと、殆ど此の罰則の適用された土地取上爭議と云ふものはないのではないか、現に東北地方では聞いて居らない、土地取上の件數が殖えて居るに拘らず、此の現行法に依る適用がない、反對にあるのは立入禁止だとか、さう云ふものは裁判所がやつて居る状態なのだ、一體全然ないのか、罰則を適用した事件は全然なかつたがどうか、あつたとしたならば、其の内容に付て御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=233
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234・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 御答へ致します、農地調整法第九條違反の事件が、全國的に本省に報告になつた件數はまだ極く僅かでありまして、其の内容は大體農地委員會の承認を受けないで、小作人と地主との間に色々な形の契約に更新して居ると云ふ事件でありまするが、此の事件に付て現地に於て如何なる處斷をしたかと云ふ、そこまではまだ報告には接して居りませぬけれども、極く僅かの數ではありますが、事件になつたのがございます、本省の方針と致しましては、農地調整法第九條の違反事件に付きまして明確な證據のあるものに付ては、罰則の命ずる所に從つて嚴重に處斷するやうにと云ふことは、檢事局方面に豫ね豫ね指示は致して居るのでありますが、まだ裁判の結果等に付きましては報告に接して居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=234
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235・大澤喜代一
○大澤委員 何件あつたのかまだ分らぬのですか、數字は兎も角、爭議件數は此の農林省の出した資料に依つても、終戰後二十五萬件ある、我々の計算に依ると、此の十倍あると思つて居る、それに對して僅かな件數と云ふことは、我々としては納得出來ない、而も刑事局長の御話では、嚴重に處斷するやうに全國の檢事局に話してあると云ふことであるが、果して其の通り實行されて居るかどうか、私は疑問だが、そんな大きな件數があるに拘らず、さう云ふ極く僅かの件數で終つて居るか、此の點御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=235
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236・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 御指摘のやうな事件は、地主と小作人との間に、所謂相談づくめで色々な形の契約に變更して居るのであります、例へば請負契約であるとか、或は雇傭契約であるとか、色々な形の契約に變へて居りますので、外部から檢事局の方面で、果してそれが農地調整法の違反になつて居るかどうかと云ふことを探知する手掛りが中々ありませぬので、若しさう云ふ事件に付て、責任のある者から、投書、密告があつたとか、或は告訴、告發でもありますれば、檢察當局の發動としては非常に便利になるのでありますが、今の所さう云ふ手掛りが見當りませぬので、恐らく發動して居らないのではないか、斯樣に承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=236
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237・大澤喜代一
○大澤委員 是は由々しき問題だと思ふのです、兎も角政府の發表で二十五萬件ある、假令あなたの方に密告、投書等がなくても、政府が二十五萬件あると云ふことをちやんと謳つて居るのです、爭議件數がそれだけあると言つて居る、然らば此の二十五萬件の數字は何處から出たかと云ふと、我々の想像する所に依れば、大部分は縣の方の小作官であるとか、或は市町村の方面であるとか、さう云つたやうな機關を通じ、或は農民組合の報告だとか、さう云ふ所を通じて二十五萬件と云ふ數字が此處に現はれて來たものと思ふ、あなたの方にするならば、此の二十五萬件以外の件數ならば、是はもう縣の方も市町村の方も、農林省も知らぬのだから、恐らく檢事局も之を知ると云ふことは容易ではないと想像される、けれども、二十五萬件の土地取上の爭議と云ふことを謳つて居るに拘らず、あなたが檢事局の方に嚴重に處斷せよと云ふことを指示して居るのだとすれば、此の二十五萬件と云ふ現はれた爭議自體を對象にして、今からでも遲くないから嚴重に調査して、處斷するなら處斷すると云ふ方針を執るのが、法それ自體から言つて正しいのではないかと考へるのですが、其の點はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=237
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238・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 縣廳或は農會等の調に依つて御指摘のやうな爭議件數が出て居ると云ふことでありますが、爭議があつた場合に、直ちに檢察當局が發動すると云ふやうなことは、是は又他面に於て嚴に戒めて居るのでありまして、爭議は成べく雙方が圓滿に協調して解決するやうにと云ふ方針で臨んで居ります、爭議があるから直ちに檢察當局が發動すべきだと云ふやうな方針ではございませぬので、恐らく當局の方に於ても、其の間に爭議があつて、茲に違反事件が必ず伴ふと云ふ場合が考へられないのではないか、縣の方で爭議等に付て一番關心を持つて居られ、又其の爭議の斡旋に當つて居られる縣當局の方面から告發でもありますれば、直ぐ檢察當局の發動がある、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=238
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239・大澤喜代一
○大澤委員 それは不徹底です、第九條の適用は、爭議であつた場合に、違反を認めて發動せよと云ふ適用ではないと思ふ、少くとも此の九條に謳はれて居る限りに於ては、不當なことをした地主に對して適用すべき罰則條項ではないかと思ふ、爭議があらうがあるまいが、そんなことは第二だ、それから今あなたは地方の役人だとか、さう云ふ連中から特別の告發とか何とかあつた場合には、何とかすると云ふやうなことを言つて居るが、是は親告罪ではないのでせう、是は本人とか被害者とかの告發がなければやらぬと云ふ條項ですが、少くとも二十五萬件の爭議があると云ふことは事實なのです、爭議がなくともやらなければならぬのだから、此の十倍、二百五十萬件の中で對象となる事件が實際問題としてあるかも知れぬ、それを此處で發表出來ないやうな僅かな數字で以て──而もあなたから聞くと、嚴重に處斷すべしと云ふことを指令で出して居ると云ふが、出して居るかどうか疑問だ出して居るに拘らず、さう云ふやうに實行されて居ないとすれば、是は檢事の怠慢だ、ですから私は無理なことは言はぬが、是は少くともそこにさう云ふ重大なる嫌疑事項が出て居るのですから、爭議がなくて圓滿に終つたと雖も、それは決して圓滿に終つて居るのでなくして、地主の持つて居る所の封建的な支配勢力に壓されて泣寢入りに小作人が判を押す場合が多い、だからそれすらも農地委員會に掛つて居ないと云ふことがはつきりして居るならば、是は當然違反事件として問題にしなければならぬ又農地委員會に掛けてさう云ふ風に承認を得たと云つても、地主の一方的な脅迫だとか何かに依つて、實際上の案件として判を押したるものは、是は意味はないものと思ふ、現に農地委員會が現行法に依つて今年の春改選さるべきことになつて居つた、改選さして居つたならば、相當民主的な農地委員會が出來たかも知れぬけれども、政府は未だ尚ほ現行法に基いた所の農地委員會と云ふものを選擧して居らない、だから假に農地委員會が承認しても、現行法に依る所の農地委員會が出來て居らぬのだから、農地委員會が判を押しても、それは極めて不徹底なものだと私は考へて居る、是が實際情勢なのです、ですからあなたは、少くとも政府の指令に基いて、全國の檢察當局に向つて至急調査なり何なりをして、此の問題の解決を付けるやうにするのが本當ではないかと思ふ、それをあなたはやれないか、やり得るか、あなたの返事如何に依つて我々にも考へがあるのだから、それを御聽きしようではないか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=239
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240・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今の御意見の中に、澤山の爭議があるのに檢察が少いのはいかぬではないか、斯う云ふやうな御質疑がありましたので、爭議があつたからと云つて直ちに檢察權が發動するものではない、爭議があつた場合に直ちに檢察權を發動すると云ふやうなことは、寧ろ愼まなければならぬと云ふ方針を執つて居るので、左樣に申上げたのであります、爭議とは又別に、御指摘のやうに農地調整法違反の事件が全國に多數あると云ふことでありますれば、私共の調査の及ぶ範圍内に於て、私は檢察權を發動することに吝さかではないのであります、唯檢察權を發動するに付きましては、縣の方なり、或は農地委員會等で承認を與へることになつて居りますので、農地委員會が、承認を與へないのに斯う云ふことになつて居ると云ふ、此の事實を申告して下されば、之に依つて檢察權を發動するのに非常に端緒を得られれば便利でありますので、斯樣な事實を知つて居る方があれば、告訴なり告發をして戴くと大變結構に存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=240
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241・葉梨新五郎
○葉梨委員長 もう如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=241
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242・大澤喜代一
○大澤委員 では此の問題は打切りまして、先程もう一つ引つ掛つて居つたのですが、最近農村では、警察當局が非常に農民を彈壓して、居る事實が澤山出て來て居るのです、それで内務省の方にも御聽きしたのですが、例へば供出米を一割か二割未完納したと云ふので警察に何百人と云ふ農民を召喚して色々脅迫とか何とかやつて居りまするが、其の中に、私は警察で取上げた所の小作人からの文書を此處に十何通持つて居りまするが、是は斯う云ふことを謳つて居るのです、詰り其の村で偶偶約一萬俵の割當の中、三百俵位しか未供出がなかつた譯ですが、それが怪しからぬと云つて、前後二百囘に亙つて約一千人近く檢擧して居る、其の檢擧した農民を警察の階下の留置所に何百人と入れて置いて、一人づつ二階の司法室に呼んで、さうして取上げた文書なのです、是は誓書と書いてある、警察に誓ふ譯です、それはどう云ふことかと云ふと、例へば斯う云ふ風にちやんと謳つて居るのです、「割當量一俵三斗七升なるも今の所手持米なく、今年の秋の收穫まで御願ひ申上げます」と、警察署へ出して居る、其の次は「割當量一俵一斗五升ですけれど、何とか二斗に御願ひ申上げます、十八日まで二斗供出します、殘り三斗五升は秋に供出します」、是は金崎定次郎、それから、「成田佐太郎、割當一俵三斗七升中一斗供出致し、殘り一俵二斗七升は秋作を以て供出致します」、皆斯う云ふ風に誓書と云ふものを警察に出して居る譯です、先刻農林當局に聽いたら、今年、詰り昭和二十年の供出米の未納と云ふものは昭和二十一年の新米を以て出せと云ふ命令を出したことはない、詰り未供出分を新しい今年の新米で以て前年度を下げて出せと云つて命令を出した覺えはない、勿論私はさうだと思ふ、それにも拘らず、地方の警察當局は大量に農民を檢擧して、さうして一人々々土下坐をさせて、今年の是から出る──今あるのではない、是から出る米で以て、此の間出さなかつた所の前年度の供出米を補充致します、と云ふやうな書類を取ると云ふことが、是れ自體非常に大きな問題ではないか、是は少くとも所謂今日の新憲法の精神から言はなくても、昔、戰爭中ならいざ知らず、而も政府も農林省もさう云ふ方針を執つて居ないにも拘らず、獨り此の警察の暴力と云ふか威力を以て、大量の百姓から之を取上げると云ふことは、人權の蹂躙とか脅迫にならないか、少くとも是は警察に任して置けば──農民はもう縣の警察部に何十囘莚旗を立てて行つて、警察を包圍して、斯う云ふ一旦取上げられた誓約書を取つて來て居る、けれども警察當局と云ふものは、是等の署長とか何とか云ふものを未だ何等處罰もして居らない、農民は秋の供出を前にして、斯う云ふ署長が居つたらどう云ふ目に遭ふか、戰々恟々たるものだ、だから是は是からの食糧問題にも大きく影響するが、一つあなたの畑として、斯う云ふ政府の方針に反してまでも警察の威力で以て、警察の二階に拉致して土下坐をさして取る、斯う云ふ不當なことは人權蹂躙にならないか、少くともあなたの立場から、何とかしてさう云ふことをさせないやうな方針を執る餘地があるのではないかと思はれるが、さう云ふ點に付て御意見を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=242
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243・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今御指摘のやうな事實が若しあつたとしますれば、それは非常に不當なことでありまして、中には所謂人權蹂躙の問題として取上げなければならぬこともあるだらうと思ふのであります、具體的な事例に付きましては、まだ私共の方には何等報告もありませぬし、内務省の方からも聽いて居りませぬので、其の事實の眞相内容等に付ては承知致しませぬけれども、御指摘のやうな事實があつたとすれば、檢察當局をして嚴重に取調べを進めさせたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=243
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244・大澤喜代一
○大澤委員 納得しました、後で此の證據をあなたの方に御上げします、それから序ですから一つだけ聽かして貰ひたいのですが、實は最近農村に、戰地へ行つて居つた人達がどしどし歸つて來て居ります、所が其の後どうなつたかと我々の心配なのは、例の「バンコック」から歸つて來た所の辰春丸が鹿兒島に二千數百人の兵隊さんを連れて來たのですが、其の場合に戰地に於て非常に亂暴を働いた將校達に對して「リンチ」を加へた、それで一時司法關係で之を抑留した、然る所二千何百人の農村に歸る兵隊が、其の爲に歸らないのではないかと云ふ大きな心配があるのですが、辰春丸事件は其の後どうなつたか、今後さう度々あるとは思ひませぬが、一應司法當局に報告された範圍内で、御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=244
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245・佐藤藤佐
○佐藤(藤)政府委員 只今の辰春丸事件と云ふのは、まだ本省には何等報告に接して居りませぬ、現地に於てどう云ふ處斷をされて居るか、又抑留の状態等に付ても承知致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=245
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246・大澤喜代一
○大澤委員 それでは致し方がありませぬ──どうも有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=246
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247・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは本日は是にて散會致しまして、明日は午前十時より開會致すことに致します
午後五時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00719460920&spkNum=247
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