1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年十月四日(金曜日)午前十時五十分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 森幸太郎君 理事 飯島祐之君
理事 山口光一郎君 理事 細野三千雄君
理事 富吉榮二君 理事 藤本虎喜君
理事 井出一太郎君 理事 菊池豐君
磯崎貞序君 古賀太郎君
坂田道太君 三浦寅之助君
杉田一郎君 松浦薫君
三ツ林幸三君 加藤高藏君
關根久藏君 原健三郎君
太田秋之助君 松岡運君
寺島隆太郎君 荒木武行君
大澤喜代一君 高倉輝君
中原建次君 平野市太郎君
棚橋小虎君 麻生正藏君
橋本二郎君 松本六太郎君
鈴木憲一君 増井慶太郎君
北政清君 山木武夫君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
司法事務官 奧野健一君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは是より會議を開きます、自作農創設特別措置法案竝に農地調整法の一部を改正する法律案、兩案に付きまして、補充的の質疑を本日は各派各各一名を限り許可することに致したいと思ひます、但し會期切迫の現況も御承知の通りでありますから、本日は極く簡潔に、出來得る限り午前中に之を終了致したいと思ひますから、其の御含みで順次御發議あらんことを希望致します──森幸太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=1
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002・森幸太郎
○森(幸)委員 今日まで委員會に於てそれぞれ御質疑になつて、一應は説明されて居るのでありますけれども、尚ほ此の機會に政府の所信を明かに致して置きたいと思ひますので、二、三御尋ね致したいと思ひます
第一に、未墾地開墾の計畫が相當立てられて居るのでありますが、此の未墾地開墾の計畫と畜力の計畫と云ふものが竝行して行かなければならぬと思ひます、此の點に付ての御方針を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 甚だ重要な御尤な御質問でありまして、開墾計畫を立てまする時には、實は同時にそれに伴ひまして、畜力を入れて行く計畫が立つて居る筈でありまするが、其の點に付きましては、實は十分とは申せないのでありまして、今囘の農地の未墾地開墾をやりまするに付きましては、至急にそれと「マッチ」した畜力計畫を立てまして、先づ畜力から入れて開墾が巧く行きますやうな方針で至急に具體的に立てて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=3
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004・森幸太郎
○森(幸)委員 次に第三條の第五項第四號に付きまして、法人其の他團體の借地致して居る場合、是等の團體或は法人が借地をして耕作をして居る場合に、さう云ふ團體、法人を耕作者として取扱はれるのであるか、又是は事實問題を捉へて御尋ねするのではありませぬけれども、神社或は寺院等の境内地に耕地のあつた場合に、斯う云ふものは除外せらるべきものと考へるのでありますが、此の二點に付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=4
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005・和田博雄
○和田國務大臣 法人等が現在耕作致して居る、而も適正に耕作して居ると云ふものは、やはり是は耕作者とは認めますが、本法に於ては其の者に土地を賣つて自作農を創設すると云ふことはございませぬ、それから神社等も、それが小作法に出して居ります土地が、例へば一町歩を超えます時には、勿論それは引掛りますが、境内其の他の點に付きましては、それでは餘りに從來の慣行と言ひますか、境内地としての其の他の點に付て不適當になる、斯う云ふ場合には具體的な問題に付て適當に考へて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=5
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006・森幸太郎
○森(幸)委員 是は今日まで相當議論されたのでありますが、第六條の買收對價の算出の基礎であります、是は一般國民から見まして妥當と納得が出來ないのであります、此の算出された基礎及び金納を一石七十五圓と云ふことに定めてありまするが、此の算出基礎等に付て承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 土地價格の算出基礎は農政局長から詳しく御話致しますが、金納の換算を七十五圓と致しましたことは、是は御承知のやうに、此の前の農地調整法の改正を出しました時に、其の時地主米價と云ふものが五十五圓であつた譯であります、そこで政府としましては、是は五十五圓と云ふものが事實地主が受取つて居る金納小作料であつた譯でありますので、それを採つた譯でありますが、併し其の時に色々の政治的な情勢に依りまして七十五圓と云ふことに致しまして、政治的な價格として實は決まつた斯う云ふ事情であつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=7
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008・山添利作
○山添政府委員 地價の算出の數字的の御説明を致します、是は前提と致しまして、地價を決めますのは標準價格と云ふ觀念を採つて居るのであります、即ち土地を買ひます者が現に支拂つて居る小作料に相當致すものを支拂ふ、それと同一の負擔、言ひ換へますると、土地代金の償還竝に其の土地に關する公租公課を支拂つて行く、さう云ふものを一定年間支拂ふことに依つて完全に償却し終る、斯う云ふのでありまして、結局現に支拂つて居ります小作料の負擔よりも過重になることなくして土地購入をせしめる、斯う云ふ標準價格の觀念に立つて居る譯であります、其の算出の基礎と致しましては二通り採つて居たのでありますが、第一は米の生産費を基礎資料としたものであります、米の生産費に付きましては年々色々變つて來る譯でございまするが、是は米價三百圓に決定されました昨年の資料、之に基いて計算を致しました、此の中味を分析致しますと、小作料として支拂ふものが六十圓八十八錢に當ります、是が即ち米價七十五圓と云ふものを基礎にして支拂ふ所の金納小作料に相當する譯であります、是は米穀生産費の中にございます土地資本利子及び小作料、此の二つの項目を合算し、其の合算致したものに對しまして、米の生産費の方は段當二石四斗と云ふことで非常に高く出て居ります、即ち良田と云ひますか、實際に於きましては優秀農家と云ふものが實は對象になつて居る、隨て一段歩當り二石四斗と云ふ計算になつて居ります、之を普通の農家、普通田に直すと云ふ意味に於きまして二十四分の二十、即ち二石と云ふやうに計算を致す、さう云ふ風にして土地資本利子「プラス」小作料、之を二十四分の二十、斯う云ふ風に掛けて算出しましたものが六十圓八十八錢であります、而して生産者は公租公課の如きものを幾ら負擔して居るか、是は同じ生産費の中の租税其の他公課「プラス」部落協議會費、之に對しまして今後はそれが二倍に上るだらう、御承知のやうに米價も違つて參り、色々な經濟關係が變つて來る、貨幣價値が變つて居ります關係上、さう云ふ公租公課の負擔は二倍になるだらうと云ふことで計算を致し、又同じやうに二石穫れる田と云ふものを標準にして計算を致しますると、十二圓九十七錢になるのであります、此の小作料から土地負擔に相當致しますものを差引きますと、四十七圓九十一錢になるのであります、是が純粹の地代として、即ち土地を購入した場合の年賦償還額として支拂ひ得る部分であります、之を先の標準價格の算出に依つて資本勘定をする、是は年利率が三分二厘、而して償還期限は二十四年と取つて居ります、さう致しますと年々の支拂額は六%〇三三になるのであります、それで換算致しますると、買ひ得る地價は七百九十四圓十三錢であります、是が一例であります
もう一つの場合は稍稍理論的に計算を致したのであります、大體農林省に於きまして、今まで小作料の適正化を思慮致して參つて居ります、其の場合に、是は從前の話で、小作料を物納した時代の話でございますが、先づ當時五割近くでございましたので、四割に引下げ、適正化すると云ふ意味で四割を概ね基準に致して居りました、是は農林省がと申しましたが、實は農林省ではなくて、地方で概ねさう云ふ所を標準に致して居つたと云ふ意味であります、之を物納的で見ますと二石穫れるものでありましたならば、年貢として八斗納める、そこで七十五圓の基礎に立ち其の八斗を考へますと、五十八圓五十錢であります、それから公租公課は、昨年の當時の地價決定等に使ひました資料に依りますと六圓八十七錢掛つて居るのでありますが、是は今後の情勢に依つて其の倍位になるだらう、其の倍即ち十三圓七十四錢であります、此の小作料相當額、即ち五十八圓五十錢から公租公課の負擔十三圓七十四錢を差引きましたもの、之を先程の六分〇三三で換算致しますと七百四十二圓と云ふことになる譯であります、之を睨み合ひ致しましても現に決まつて居ります七百五十七圓と云ふ公定價格は、此の標準價格と云ふ意味から見ましてもぴつたりと適當な所にくつ付いて居る譯であります、其の意味に於きまして現に決まつて居ります公定價格は標準價格と云ふ點から見ましたる價格と一致して居ると云ふことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=8
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009・森幸太郎
○森(幸)委員 なかなか高等數學で、一寸自分には納得しにくいのでありますが、一應承つて置く次第であります
次に御尋ね致したいことは、農産物價の安定化と農業災害に對する保險共濟制度の擴充に關してであります、是は關係方面からも此の農地調整法に對して相當強き條件とされてあるのであります、此の農産物價格安定、農業災害に對する保險共濟制度の擴充に對して、政府は今日どう云ふ處置をなされんとして居るか、此の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=9
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010・和田博雄
○和田國務大臣 農産物價の安定に付きましては、只今の所一番問題となつて居りますのは、農産物價と他の物價とが良き均衡を得ると云ふことであらうと思ひますので、其の點に付きましては、物價廳等に於て物價の水準を安定させ、又物價政策をやつて行くのでありまするが、それに對しまして、是は何としましても農産物と云ふものが適當な所に落著きまするやうに、我々の方と致しましては十分そこに意見を述べ、又努力を致して居る次第であります、是は將來の農産物價格の變動の際に於きましては、當然例へば農産物價格のやうなものが將來の恐慌に於て非常に下つて來るとか云つたやうな色色なことが考へられる譯でありまして、それ等の時に於きましては、是はやはり只今の食糧管理法と云つたやうなものを十分に活用致しまして、農家の再生産に支障のないやうな價格政策を執つて行きたいと考へて居ります
それから保險の點でありますが、是は御話のやうに、只今の保險制度は極めて災害の事故、保險事故等に於ても局限されたものでありますし、又其の制度其のものに付きましても、實は根本的に考へ直さなければならないと考へて居りまするので、其の保險事故を或はもつと殖やし、それから金額其の他の點に付きましても今少し考慮致しまして、具體的な案を實は民間の團體とも十分協力致しまして、或る程度のものは出來て居るのであります、結局是は相當の國費の負擔をどうしても生ずることになつて來まするので大藏省其の他の方面との折衝もありまするが、我々と致しましては、斯う云ふ農地制度が出來まして、一應の經濟的な一つの基礎が固まりますれば、後は自然の災害に際しまして、農家の經營を安定させて行くと云ふ方向に、どうしてもそこに大きな防波堤を作る必要を痛感致して居りまするので、是は是非早い機會に具體的な案に基いて折衝致しまして、もう少し擴げた共濟制度に依つて其の點の確保を是非致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=10
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011・森幸太郎
○森(幸)委員 農産物價の昂騰に從つて保險制度を擴充するに付ては、只今御話の國庫の負擔が相當増加されることは豫期しなければならぬ所だと思ひますが、米が又六百圓するとか云ふやうなことになつて來ますと、現在の保險制度では、どうしても保險としての價値が認められないのでありますから、是非速かに政府は保險制度、殊に共濟的な制度に付て計畫されたいのであります、特に御願ひして置く次第であります
次に御尋ね致したいことは第二十八條關係の、耕作地主となつた者でありますが、此の耕作地主になりました者が其の家庭の勞力の消長に依りまして、現在の耕作面積に對して減らさなければならぬ場合に於ては、此の法にあります通り、政府に之を買上げて貰ふことになつて居るのでありますが、其の家庭の事情で勞力が非常に殖えて來たやうな場合に、さう云ふ耕作地主の勞力の消長に依つて増減に關する自由を將來認められるかどうか、此の點に付て御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=11
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012・和田博雄
○和田國務大臣 自作農になりました者が、其の家庭の勞力が殖えて來て、將來其の經營面積を殖やさうと云ふ時には勿論自由はある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=12
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013・森幸太郎
○森(幸)委員 最後に御尋ね致したいことは、此の法案審議中相當議論になつたのでありまするが、將に發布されんと致して居りまする憲法草案の第二十二條第二項、第二十七條の第三項と此の法案の執行に付てでありますが、憲法の草案に依りますと、正當な補償と云ふことに依つて公共の爲に利用されることがある、斯う云ふことになつて居るのでありますが、先程政府の説明されました價格は、必ずしも正當な補償價格と考へられないのであります、殊に耕地を買上げて之を個人に賣ると云ふことは、公共の爲と言ふには少し妥當でないのではないか、斯樣に考へるのであります、又憲法の第二十二條に依りまして、さう云ふことは一應法に依つて取締られると云ふ司法省の御話もありましたが、家族の分散に依つて耕地が段々と分れて行くと云ふ虞があるのであります、之に對しては農林大臣は先般、何等かの法を以てさう云ふことのないやうに致す積りだと云ふ御答辯があつたのであります、是は法文がまだ成文化されて居る譯ではないだらうと思ひますが、どう云ふ法に依つてさう云ふやうなことを防止し得られるのであるか、どう云ふ御考へを御持ちになつて居りますか、憲法と此の法案との執行上に付て將來の爲に伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=13
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014・和田博雄
○和田國務大臣 前段の御質問に付きましては、私此處で屡屡御答へ申しましたことで御諒承願ひたいのであります
後段の土地の零細化の問題と憲法の施行との關係でありますが、是はやはり我々としましては憲法發布に伴ひまして、民法とか其の他色々のものが改正になりまして出ると思ひます、其の時に同時位に私の方と致しましても、今囘の憲法の條項から來る零細化を防ぐ所の農地の構成の方から見た法制を何か作つて行きたいと思つて研究致して居ります、是は色々な考へ方があるのでありますが、結局問題は零細化を防ぐと云ふことにして、それを遺子なら遺子の相續、其の中で一番耕作能力のある者に相續さすと云ふことになりますと、他の者がどうなるかと云ふ問題が一番大きな問題になつて居ります、それなら他の者に對しては丁度「ドイツ」の世襲農場でやつたやうに、ああ云ふ形で或る程度の、一人立ちになるまでの負擔を帶びさせて、其の代り耕地は零細化を防いで、一人の者が經營して行く、斯う云ふやうな形にやるか、そこの所の具體的な細かいことは考へて居りませぬが、何かああ云つたやうなものと、日本の今度の此の新しい耕地に依る今後の農村の行く行き方と云つたやうなものを十分考へまして、日本の實情に適したやうな方向に何か法制をして行かなければならぬ、甚だ難かしい問題とは思ひますが、是は至急にやつて行きたい、私は大體さう云ふ風に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=14
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015・森幸太郎
○森(幸)委員 質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=15
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016・葉梨新五郎
○葉梨委員長 次は進歩黨の代表の諸君どなたか御質疑はございませぬか──荒木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=16
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017・荒木武行
○荒木委員 私は農林大臣に伺ひたいと思ひますが、此の法案を御提出になる裏付けとして、協同組合の法案と云ふものがどう云ふやうな状態になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=17
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018・和田博雄
○和田國務大臣 協同組合の法案に付きましては、農林省としましては一應の素案を得た譯でありまして、實は私は出來まするならば此の議會に提出致しまして、同時に御審議を受けたかつたのでありますが、補償の打切りとか其の他金融上の相當大きな變革が行はれることになりましたので、實は農業團體は御承知のやうに生産の面のみならず、金融面色々なことを一體となつてやつて居りまするから、あれの波動に付ては相當影響する所もありますので、是は是として、一應それを現在の機構のものに於て受け止めさせて置きまして、さうして新しく出發しまする協同組合は、それ等とは別に、又事態が一應落著いた基礎の上にやつて行く方が寧ろ新たに出來まするものに於て宜いのではないか、斯う考へまして延ばした譯であります、併し是は案が一應出來て居るのでありまして、實は其の案に付きましては出來ますれば至急に公表致しまして、世間の色々な公平な批評を受けて、それでもつと直すべき所は直し、より良いものに致しまして、此の次の議會には是非出したいと思つて居ります、關係方面との關係もありますので、實は成べく早く公表致したいと思つて今折衝致して居ります、案はもう既に出來て居る譯でありますから、出來るだけ早い機會に公式に公表致してやつて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=18
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019・荒木武行
○荒木委員 今一應の御説明がありましたが、私の伺ひたいと存じますことは、此の農地解放の問題と不可分の關係にありまする農村に於ける生産の能率を高めると云ふ趣旨を徹底する爲に、農林大臣は協同組合法の急速なる實施を御考へになつて居らぬかどうかと云ふことでありまして、今の御答辯で大體さう云ふ方向にあるやうに思ひます、それで私は今度の農地解放は、誰が考へても分ります通り、又政府でも御説明になつて居るやうでありますが、是で一番重點的の問題は、農地解放に依る經濟革命、或は農村の封建制の拂拭と云ふことでありますけれども、又一面それに付て農業生産を高めると云ふことが重點である、それにはどうするのかと云ふことになつて參りますと、此の新しい法律に依りますれば、制度が非常に先行して居りまして、之と結付く所の農民の現在の姿と云ふものが非常に後れて居る、即ち「ロシヤ」に於ては「トルストイ」「ゴルキー」の作品がありますが、日本に於きます農村文學の代表的作品としては、長塚節の「土」と云ふ小説があります、さう云ふ小説が示して居りますやうに、日本の農村は非常に封建制が強くて、其の文化、生活水準と云ふものは、大臣が御想像になつて居りますよりも非常に低いものと私は考へて居ります、さう云ふ訓練のない農村に於ける現在の耕作農民の生活と云ふものに對して、それと結び付かない所の非常に高度な、根本的な農地解放と云ふ重大問題をおやりになるのでありますが、さう云ふ場合には、其の制度と結付く所の農村に對する一つの生産運動が展開されなければならぬと私は思ふのであります、之をやらなければ、色々な制度ばかりを先に作りましても、一向意味をなさぬのであります、それで私は此の場合に於きまして具體的に伺ひたいと思ひますのは、御承知の「ソビエト」の石炭増産に於きます「スタハノフ」運動のことであります、「ロシヤ」は御承知の通りああ云ふ社會主義制度の國でありますが、僅か三十三歳の若い炭礦夫の「スタハノフ」と云ふ者が起ち上つて、石炭の生産に對しまして非常に高度の能率を上げたのであります、それが段々と波及しまして、「ロシヤ」の現在の状態は産業界に於ける能率を非常に高めて居ります、私の乏しい資料を以て申しますと、此の「スタハノフ」運動と云ふものは一九三八年「ドイツ」盆地で優秀な採炭夫の免状を持つて居る者が三十五萬人、鐵及び鋼鐵産業では全勞働者の二五%でありまして、是は中部であります、南部は三〇%、重機械工業では勞働者の三分の一、中機械、運輸機械、「トラクター」工業三三%、電氣機械工業では三四%、石油製錬工業では五〇%、さう云ふやうに「スタハノフ」運動が燎原の火の如く燃え盛つて、「ソヴィエト」の國家計畫は見事に達成され、計畫と云ふものをどんどん突破して行く、凡ゆる分野に於きまする生産増加の鍵は「スタハノフ」運動のお蔭であります、結局自分達の能力を最大限に使つて、自分達の國家の繁榮に盡力するのだ、祖國の爲に働くのだ、自分が働くことは能率が上り、生産が上つて生活が向上し、生活が保障される、それと同時に、生活が向上すれば、仕事は圓滑に早くもつとどんどん生産的になつて來る、斯う云ふ状態になつて居ります、さう云ふ裏付けがなければ、日本の今度政府が御出しになりました農地解放は本當に無意味であつて、何の爲の農地解放か分らないと云ふ状態になる、さう云ふことを非常に心配するのであります、それには具體性を持つた、農地解放の目的を達成する爲に、今大臣の仰しやいます協同組合運動を急速におやりになる、或は他に考へがあるか、從來私共の考へて居ります農業會とか、新しく出來る農業組合法案の内容は知りませぬが、是は「デンマーク」のやうに下から盛り上つた農民の協同運動でなく、上から下つた所の制度の革新でありますから、農民がちつとも結び付かぬ時に、非常に先走つたと申しては言ひ過ぎるかも知れませぬが、さう云ふ根本的な經濟革命に値する土地解放を斷行すると云ふことでは片手落であります、實質上に於きまして、現實の生活、現實の政治の上に於きまして、非常に私は重大なる問題が澤山出て來るのではないかと考へるのでありますが、其の點に關しましてもう一遍御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=19
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020・和田博雄
○和田國務大臣 全く御尤もでありまして、私も此の農地の改革だけで日本の民主化が徹底するとは考へては居ないのでありまして、此の農地改革を裏付けますと云ふか、農地改革の内容を成します生産力の増大と云ふ事柄に付ての施策が必要であることは、私も十分痛感して居るのであります、そこで協同組合を作りましても、協同組合も亦一つの形なのであります、謂はば形式であつて、協同組合を作るのは個々の耕作農民でありますから、其の個々の耕作農民が協同の力に依つてお互ひの農地の開放、技術の改善をやつて生産力を上げて行くと云ふ外はないのであります、それをやりますには、どう云ふ國に於きましても、又どう云ふ制度に於きましても、農村が一律に平均された水準にあるとは私は考へて居りませぬ、やはり日本の農村には非常に進んだ智能のある耕作農民も居れば、後れた者も居る譯で、どちらかと言へば後れた者が多い譯であります、それを導いて行きますのは、やはり只今仰しやいましたやうな、「スタハノフ」と云ふのは鉱業、鉱山の方での謂はば「パイオニヤ」と言ひますか、さう云ふ問題でして、皆それに倣つて行つたと云ふ形であります、農業の方に於ても、今囘我々が技術振興と云ふことを經營面に於て考へましたのも、さう云ふ一つの村の中心の、進んだと言ひますか、非常にしつかりした者を捉へて、其の者の實際上の經驗を周圍の者が實際見習つて行く、是が農民には一番早い、百の説法より現實に經營の上に於ての改善をやらせて行くと云ふことで事業をやつて行きたい、又農民自身もさう云ふ氣持で建設して行くと云ふ方向に仕向けて是非やつて行きたいと思ひます、其の點に付ては、私は最近村を廻りませぬけれども、色々の人達に村を廻つて貰つて、又講習會などを村の人達を選んでやつて見ますと、其の經營に對する意欲は農民である以上は相當熱心であると思ふのでありまして、是はやはり斯う云ふやうに制度が變りましたら、其の制度に從つて農民自身もそこまで伸びて行くと云ふことが必要だと思ひますので、此の點に付ては十分研究してやつて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=20
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021・荒木武行
○荒木委員 農林大臣の御話で大體滿足致しましたが、もう一點伺ひたいと思ひますのは、肥料國營問題、それから土地の國營と申しますか、大體さうう云ふ方向に進んで居るのでありますが、幾ら伺つてもはつきりしないのであります、此の點を農林大臣にもう一遍御伺ひ致します、今度の農地解放に依りまして賣れ殘りの土地を國家が管理する、斯う云ふことなのでありますが、結局其の方向と云ふものは、所謂土地國營と云ふことを主張さるる方々の御意見の方向へ進むのではないか、斯う云ふことを私はどうしても大臣からはつきり伺ひたいと思ふのでありますが、大臣の御答辯では、さうではないと云ふことを仰しやる、又豫算總會で私が伺ひました時に肥料國營に對しまして、肥料國營は本會議で御答辯になつた通り、其の「イデオロギー」には贊成だが、今は其の時期ではない、斯う仰しやる、土地國營の問題も私は同じ方向ではないかと思ふのでありますが、さうではないと云ふやうな御答辯でございます、是は甚だ難かしいことでございまして、私は非常にしつこいやうでありますが、之をはつきりして戴きませぬと、私のやうに農村に居る者が指導的立場に立つて非常に迷ふのであります、詰り豫算委員會で農林大臣は私の質問に對しまして、煙草でも鐵道でも國營はやつて居るのではないかと云ふことを仰しやつて居ります、私はそれを聽いて居るのではありませぬ、煙草も鐵道も電信電話も國營のことは私も知つて居ります、私の伺ひたいと存じますことは、所謂社會主義政治形態の下に於ける國營と云ふものは能率を増して行く、さうして是は非常に理想と現實と結び付いて居りますけれども、我が國のやうな状態に於きまして、社會主義政治形態になつて居りませぬ所の國柄に於て國營をやるのだ、國營をやつて居るではないか、斯う仰しやいますけれども、そこであなたが、「イデオロギー」には贊成だが、其の時期ではない、斯う仰しやいますから、私共農民は非常に混亂する、それは私の想像ではない大體分るやうな氣持もしますが、想像しては御無禮でございますから、農林大臣からはつきり私の伺ひたい原則を──私はやつて居る、やつて居ないを聽くのではありませぬ、原則論として農林大臣としての御考へは何處にあるかと云ふことを、もつと率直簡明に胸襟を開いて御答辯を伺へれば、私の氣持も非常に明朗になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=21
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022・和田博雄
○和田國務大臣 農地の點は、能く農地調整法と自作農の創定の條文を御一讀下さいますならば、是が決して土地國有の「プリンシプル」に立つて居るものでないと云ふことが御理解戴けると思ふのであります、私は只今自作農を大規模にやつて行くと云ふことが、言ひ換へますれば、個々の農家が自分の生産手段を以て耕して行くと云ふ形が、日本の農業に於きましては一番謂はば適當な形態だ、生産力を上げて行くのにも其の基本から出發するのが適當な形態だと思つて居りますので、此の農地調整法に於きましては、土地を國有にすると云ふ方向に行くものではありませぬ、賣れ殘つたものに付きましても、國家がそれを長く持つて居ると云ふことは致さないのであつて、出來るだけ他の者に賣拂つて、實際上耕作する者に之を持たせると云ふことを考へて居るのであります、左樣に御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=22
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023・葉梨新五郎
○葉梨委員長 社會黨、細野三千雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=23
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024・細野三千雄
○細野委員 私は司法省の政府委員に御伺ひ致します、農地調整法の第九條の第一項の但書に付てでありますが、土地使用の目的の變更又は賃貸人の自作を相當とする場合、其の他正當の事由ある場合、解除若しくは解約をすることが出來る、此の自作を相當とすると云ふのは、是は賃貸人が、單に自分が自作人になりたいと云ふ主觀的な條件だけではまだ相當と言へない、客觀的に勞力が澤山あるとか云ふやうな條件も揃へなければならぬと思ふのでありますが、それだけで、一體此の自作を相當とすると云ふことになるのでありませうか、其の他に小作人の方の状況を考慮に入れて、相當であるかどうかと云ふことを決定すべきものではないでせうか、其の點を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=24
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025・奧野健一
○奧野政府委員 御説のやうに、單に賃貸人のみの關係からして自作をしたいと云ふやうなことだけで、自作を相當とすると云ふのではなく、小作人との關係及び農地全體の關係をも考慮に入れて、客觀的に見るべきものであると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=25
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026・細野三千雄
○細野委員 唯併し實際の取扱と致しましては、例へば裁判所が判斷せられることとなると思ひますが、恐らく今までの例からしまして、地主さんの方だけの事情、地主さんの方に勞力が餘つて居ると云ふやうな事情だけで判斷される虞が非常に多いと思ひまするが、今度此の自作農創設に依りまして、在村地主の保有し得る小作人の面積が一町歩に制限されることになりました、さうなつて來ますると、一方小作料は石七十五圓で換算せられた金納と云ふことになります、さうして今のやうな食糧事情であります、さうしますと、地主さんとしては、どうしても自分で、一町歩程度の土地でありまするから、此の土地を取上げて自作をしたい、斯う云ふ地主さんが非常に多くなつて來て居る、詰り一町歩殘されることは、結局新しく地主さんが其の一町歩の土地を取上げて自作になる形になると思ひます、さう云ふことに付きまして、司法當局はどう見て居られますか、さう云ふ場合に、今のやうに小作料が金納制度になり、斯う云ふ食糧事情の下に於て、地主さんも之を取上げて作つて食つて行かなければならないと云ふやうな事情のある時に、之を自作をする相當の理由と御判斷になりませうか、どうでありませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=26
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027・奧野健一
○奧野政府委員 是は各具體的な場合に付て相當と見るかどうかと云ふことが決定せられることと思ひます、先程來申上げましたやうに、單に自作をなすことを希望するとか、それを必要とするや否やと云ふやうなことを賃貸人側だけで決するのではなく、自作する能力、設備と云ふやうなもの、竝に其の結果農地の生産力が増大するや否や、或は又小作人の事情が返還を許すや否やと云ふ風な、各般の事情を客觀的に綜合的に判斷致すのでありまして、御説のやうな場合を一概に相當とすると云ふ風に斷定し得るかどうか、それは斷定し得ないと思ふのでありまして、具體的な各場合に付きまして、客觀的な情勢を綜合判斷致して決定しなければならないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=27
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028・細野三千雄
○細野委員 どうも要領を得ませぬが、もう一點だけ、此の第九條、或は其の他の條項にもあつたと思ひまするが、農地委員會の承認を得ずして今までの小作人が小作地を地主に返還したものが澤山あるのでありますが、例へばそれが小作調停の形に於てなされた場合には、それは無效になるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=28
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029・奧野健一
○奧野政府委員 其の無效になると云ふ場合は此の第九條に依る場合、即ちそれは一方的に解約若しくは解除した場合の效力の問題でありまして、調停等に依つて合意に依つて成立した場合は有效であらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=29
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030・細野三千雄
○細野委員 何か誤解して居られるやうですが、市町村農地委員會の承認を經ずして──其の場合の土地の移動も、調停の場合は有效になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=30
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031・奧野健一
○奧野政府委員 市町村農地委員會の承認を得ないで解約若しくは解除は出來ないと云ふことになつて居りますが、是は解約、解除が第九條に依つて一方的になされた場合の法律效力に關することで、合意の上の場合には第九條に依る農地委員會の承認と云ふことは必要ではないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=31
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032・細野三千雄
○細野委員 私の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=32
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033・葉梨新五郎
○葉梨委員長 協同民主黨、麻生正藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=33
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034・麻生正藏
○麻生委員 自作農創設特別措置法の第五條第一項第六號の規定は、第三條の規定の買收する農地の除外例の場合の農地を定めたものと考へるのであります、此の場合は自作農に準ずるものと認められたるものであるから、第三條第三號の規定を準用して、當該農地所有者の農地所有面積の範圍が定められるものと思ひますが、政府の明瞭なる御答辯を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=34
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035・山添利作
○山添政府委員 此の問題は御話にありましたやうな指導方針を以て臨みたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=35
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036・麻生正藏
○麻生委員 次は第六條の第一項及び第二項の規定は、市町村農地委員會が買收すべき農地の買收計畫を定めた場合の事項を定めたものと思ひまするが、此の場合、買收計畫の圓滿且つ適切なる樹立實行をなす爲には、豫め當該農地の關係在村農地所有者の意見を徴することにした方が適當ではないかと考へるのであります、政府は本法の運營に當つて、此の二項を以て市町村農地委員會を指導するは勿論、本法施行細則中にでも此のことを明記するの御考へがありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=36
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037・山添利作
○山添政府委員 御述べになりましたことは、同樣の趣旨に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=37
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038・麻生正藏
○麻生委員 本法第六條の第五項中に十日間とあります、それから尚ほ第七條の第三項中に十日間とありますのを、十日間では餘りに短いやうに考へますが、之を今少しく延ばす、或は十五日位と云ふ風に變更することに御同意なさる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=38
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039・山添利作
○山添政府委員 是は一寸見ますとさう云ふ感じを起すのでございますが、抑抑計畫を立てますに至りますまでに十分關係者と打合せを致し、連絡の上で決定致しますので、決定した時には既に當事者間では概ね分つて居る、斯う云ふ事實、又さふ云ふ風に取扱ふのであります、其の意味に於きまして決定致しました後の期間を延伸すると云ふ必要は認めないのであります、併し事實に於きましては、御述べになりましたやうな事柄が起らないやうに、事前に十分徹底するやうな措置をするやうに考へて居りますから、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=39
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040・麻生正藏
○麻生委員 本法の第二十八條で、自作農地の賣渡を受けた者、又は其の相續人が自作を止めやうとする場合は、國が之を買收して、更に他の自作農創設をする者に賣渡すことになつて居りますが、政府は自作農地の所有權の移轉は、將來永久に個人間直接の取引を認めざる御意思でありますか、さう云ふことと致しますと、或は本法と此の農地調整法の第四條の規定との間はどう云ふ關係になりますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=40
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041・山添利作
○山添政府委員 此の法律の規定に依りまして政府から土地を買ひました場合に、其の土地に付きましては三十年間此の第二十八條の規定が適用になる譯であります、而して其の第二十八條の規定の適用は、畢竟我が國の農地の適正なる配分、自作主義、之を貫いて行かうと云ふ規定でございますので、將來に於きましては、此の規定が更に他の土地にも同樣な趣旨と申しますか、政府が何等かの仲介等の勞を取るかどうか、是は將來の状況に依ることでございますが、此の規定と致しましては、今申しましたやうに、三十年間に亙つて、之を買入れました側から見ると義務であり、又制限のやうに受取れるのでございますが、國と致しましては、左樣にして自作農の創設と維持に當つて行くと云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=41
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042・麻生正藏
○麻生委員 農地調整法との關係は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=42
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043・山添利作
○山添政府委員 農地調整法にも、此の農地の權利關係の移動に付て、農地委員會の承認又は地方長官の許可の制度がある譯であります、此の關係は地方長官の許可と同時に、國から直接特別の恩恵を以て買つた土地でございますので、又國に對する一種の制限を負擔して居る、斯う云ふ關係に立つのでありまして、其の意味に於きまして政府が第二十八條を適用致します時には、同時に又農地委員會等の意見を聽いて、農地調整法の規定の運用と合體して運用される、斯う云ふ風に御考へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=43
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044・麻生正藏
○麻生委員 農地調整法第九條の八に付て、耕地整理施行地、或は新開拓地等で收穫が未だ確定しない場合は、年年契約して小作料を定められることがあります、即ち一作毎に變更することとなつて居る場合には、小作料の最高限度額以外の變更と云ふものは自由なものと認めて宜いかどうでありますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=44
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045・山添利作
○山添政府委員 其の最初に小作料契約を結びました時の小作料が結局爾後最高の關係になる譯であります、之を年々やらうとするのは、契約上さう云ふ契約は認められないではないかと思ひます、それは寧ろ或る程度高い契約小作料にして置いて、さうして暫く落著くまで此の減免を適用しようではないかと云ふ法律上の解釋になるのではないか、併しながら事態が落著きまして、契約した小作料が高いと云ふことになりますれば、是は農地委員會の方で適當な引下を命ずると云ふか、決定をする、斯う云ふことになると考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=45
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046・麻生正藏
○麻生委員 是は實際の場合は今の農政局長の御答辯とは反對の状況になつて居るのです、例へば新開地、開拓地、耕地整理施行地、などは土が移動したと云ふことの爲に非常にむらがある、其の爲に數年間經過しないと所謂熟地にならぬと云ふので、年々其の實情に應じて小作料を取つて行くと云ふことが今日通常行はれて居る、それを最高まで持つて行つて、と言ふとをかしいが、將來あるだらうと云ふ所に持つて行つて、それから減免すると云ふのは一寸實情に合はないのです、そこで今私が申上げたやうな點を御認めになつて、それが不滿であれば農地委員會に掛けて適正にやつて行くと云ふことになれば、實際の状況に合ふと思ふのですが、さう云ふ風に解釋することにしたらどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=46
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047・山添利作
○山添政府委員 第九條の三の第二號の、最初に決めたものが最高小作料と云ふことになる譯でございます、さう云ふ關係もございますので、今私が申しましたやうなことの範圍で、實際の事情に即するやうに運用を致して行く方が、今の法律上適當でないかと考へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=47
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048・麻生正藏
○麻生委員 市町村農地委員會の構成前の準備と云ふものは、誰の責任に於て誰がやつて、其の事務員の任命と云ふものは誰が命ずるかと云ふことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=48
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049・山添利作
○山添政府委員 是は正式に委員會が成立を致しませぬければ其の間委員會の存在もありませぬし、農地委員會の書記等の任命も行はれない譯であります、例へば委員會の召集は誰がするかと云ふやうなことに付きましては、是は當然市町村長以外になすべき人もございませぬので、それ等の關係は命令を以ちまして規定致したいと思ひますが、事實問題として、色々の準備行爲と云ふことは、市町村に農地委員會を置くと云ふことでございますから、配分を用意して置くと云ふやうなことは無論市町村でやつて貰ふ必要があると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=49
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050・麻生正藏
○麻生委員 それから農地の移動は、農業會がやつて、農地委員會とは何等の關係がないことになつて居ります、農地の配分と營農とは密接な關係にありますから、營農と農地の配分と云ふものを別々にして置いて、果して圓滑に、適正に行くかどうかと云ふことは非常に疑問に考へられますが、此の點に付て農業會と農地委員會との調整と云ふものはどう云ふ風に實際やるやうに御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=50
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051・山添利作
○山添政府委員 此の特別措置法の實施に當りましては、農地委員會に對して農業會も十分協力をして貰ふ、特に事務的に農業會には其の土地の關係のことを能く知つた事務の人も居る譯であります、十分協力をして貰ふことを希望致して居ります、又將來に亙つての問題でございますれば、此の農地委員會の仕事、又農業會の農地の配分等に關する仕事、是は將來の問題として其の時の状況に即して考へて行きたいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=51
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052・葉梨新五郎
○葉梨委員長 井出君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=52
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053・井出一太郎
○井出委員 簡單に二、三點御伺ひ致します、自作農創設特別措置法第二十七條に、公租公課と云ふ言葉が出て參りますが、先程の農政局長の御答辯の中にもございましたが、嚴密な概念規定をして置いて戴きたいと思ふのです、例へば無論租税は含まれるでありませうが、此の中に水利費とか農會費、或は部落協議費とか云ふものが含まれて公租公課と云ふものの意味を構成するか、其の點を御伺ひして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=53
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054・山添利作
○山添政府委員 此の範圍は土地其のものに強制的に賦課される所の費用を、ざつくばらんに申しますと、私は廣い方に考へて居る譯であります、併し是は同時に命令を以ちまして、大藏省とも協議の上きつちりと定めることに致して居ります、でございませぬと、例へば何か組合の決議等に依りまして之を莫大に取ると云ふことになりますと、國は絶えず減免をするとか云ふことになる、さう云ふことは無論考へる必要はございませぬけれども、範圍としては理論的にもさう云ふことが起ることは避ける必要がありますので、それは大藏省とも協議の上決めるのでありますが、強制的に賦課されるものは全部含むと云ふ意味に今の所考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=54
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055・井出一太郎
○井出委員 農地證券の價格維持と云ふ問題でありますが、百數十億と云ふ農地證券がある上に現在千數百億の公債がある、斯う云ふことになりますと、是はお互ひに影響し合ふことがあるであらうと思ふのでありまして、現在公債の市價と云ふものは色々に言はれて居りますが、打切説なども絡んで非常に危惧の念を持つて見られて居る、所で少くとも今度の農地證券と云ふものは普通の公債とは違ふのであります、其の點市價維持と云ふやうな特殊な考へを持つて居るかどうか、斯う云ふことを伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=55
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056・山添利作
○山添政府委員 農地證券の關係に付きましては特別會計を設置することになつたのであります、隨て農地證券の價格維持には操作が比較的便利であります、今後土地を買ひました者から相當繰上償還等があらうかと思ひます、さう云ふ財源を以ちまして農業會其の他勸業銀行等が買入れました證券を特別會計で買入れ償還をすると云ふやうなことで、市價維持は十分取計らつて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=56
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057・井出一太郎
○井出委員 もう一つ調整法の改正案の方で伺ひますが、農地委員會の構成は、現在では小作五人、地主三人、自作二人であります、斯う云ふことになつて居りますが、此の兩法案が一たび施行せられますと、農村に於ける自作なり或は小作、地主、此の關係が數的に比率が非常に變つて參ると思ひますが、其の場合に於て此の構成の比率と云ふものは變更をせられるのでありませうか、此の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=57
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058・山添利作
○山添政府委員 現状に依りまして此の農地委員會の委員の選擧を致し、其の委員は此の法律施行期間──施行期間と言ふと間違ひでございますが、實質上農地改革をやらうと云ふ二箇年間は任期を持つて居る譯です、其の期間中にすつかり状況が變つて來る、同時に又此の農地改革の仕事が完了致しますれば、農地委員會の性格も自然と變つて來るし、其の任務も變る譯であります、其の時になりますれば今度は別の觀點から之を變へて參る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=58
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059・葉梨新五郎
○葉梨委員長 無所屬倶樂部北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=59
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060・北政清
○北(政)委員 第一に大臣に御伺ひしますが、新憲法草案第二十七條で決めて居ります公正な補償と云ふことは、理論的に合はなくても、政府の決定したものを公正なりと云ふ御解釋になつて居りますか、如何に間違つて居つても、事實上理論は一つも合はなくとも、政府の決めたものは公正だ、斯う云ふ御解釋になつて居るかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=60
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061・和田博雄
○和田國務大臣 政府の決めたものが理論に合つて居りますので公正だ、斯う答へるより外ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=61
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062・北政清
○北(政)委員 合つて居りまする場合に於ては公正、合はない場合には不公正、斯う考へて宜しいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=62
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063・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地の價格と云ふものは、私共は勿論當然それは公正な、理論にも合つて居ることが必要だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=63
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064・北政清
○北(政)委員 どうも一寸分らぬのですが、政府の決めたことは間違つて居つてもそれでも公正か、どう考へるのか、斯う云ふことを聽いて居るのです、例へば去年の一石四斗と云ふものを二石四斗と間違つた、此の間違ひははつきりして居る、是でも政府の決めたものなら公正か、此の點一つ、「ノー」「イエス」だけで宜いのです、極く簡單に御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=64
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065・和田博雄
○和田國務大臣 公正であるかどうかと云ふことをどの見地から見るかと云ふことなのでありまして、勿論公正だと云ふことに付ては、それの立派な、理論に從つた公正だと云ふことになるのでありまして、やはり或る大きな見地から見て、是は公正だと、斯う云ふ判定を下すものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=65
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066・北政清
○北(政)委員 只今の最後の御答の理論的なるものは公正だと云ふ御解釋、それで結構だと思ふのであります、そこで今の米價の問題に移りますが、全國平均して二石四斗、標準點を取ると二石五斗にもなりませうが、さう致しますと、北海道の如き最大豐作の時でも二石に充たない所もある、是は全然合はなくなります、又地方に依つては斯う云ふことが澤山あると思ひます、さうすると此の米價の如きは、地方別に決めなければ公正でないと云ふことにならないかと思ふのでありますが、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=66
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067・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふことにはならないのであります、地方的に個々的に決めることこそ不公正になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=67
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068・北政清
○北(政)委員 此の法案の第二十三條ですか、「特に必要があるときは」云々、詰り交換分合であります、是は「特に必要があるときは」と云ふ風に非常に弱く書かれて居りますが、積極的に交換分合をやらうと云ふ御考へはないかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=68
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069・山添利作
○山添政府委員 此の法律を施行して居ります間に、事情の許す限り交換分合も致す譯であります、併しながら徹底した交換分合を致さうと思へば、此の買上の對象或は賣渡の對象だけでは不十分であつて、村の耕地或は部落の耕地、之を對象として、是とは又離れた見地に於て徹底的なことをやつて行く必要があるのであります、其の事柄は先づ此の自作農創設の場合に出來得る限り交換分合を圖つて、又引續いて徹底した交換分合を農業の機械化等と併せて遂行して行くと云ふ考へで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=69
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070・北政清
○北(政)委員 極めて結構だと思ひますが、小作人が今度土地を買受けまして、其の支拂ふ年賦金は現行小作料よりは安くすると云ふ肚かどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=70
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071・山添利作
○山添政府委員 現行小作料を超えざる範圍にしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=71
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072・北政清
○北(政)委員 若しも超えます場合に於ては、それを免除してやる御考へがありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=72
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073・山添利作
○山添政府委員 第二十七條の運用に依りまして、其の時の状況に即して、免除であるか或は支拂猶豫であるかと云ふことが決定される譯であります、之を一概に論ずることは出來ないのでありまして、其の時の經濟事情、農業事情と云ふものを考へて決める譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=73
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074・北政清
○北(政)委員 只今の御説明で、現行契約小作料よりは餘計取らぬと云ふ御考へである、さうすると、假に猶豫致しましても、若しあれば取ると云ふことになる、そこで減免、猶豫、此の境は何處にありますか、私は是は斯う云ふ風に考へる、物價の變動に依りましたもの、若しくは今のやうな場合には減免である、或は不作、凶作、斯う云ふ災害に依るものが猶豫でないか、斯う思ふのですが、そこをはつきり御返事を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=74
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075・山添利作
○山添政府委員 北さんの御述べになりましたやうに、さう云ふ事態が起れば取扱はれるだらうと私も考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=75
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076・北政清
○北(政)委員 今の答辯では、先には契約小作料より高くは取らぬ積りである、高くなつたら猶豫するかどうか分らぬ、斯う仰しやつた、減免か、猶豫か、其の時の事情に依ると仰しやつたのは、今の御話と食ひ違ひが起る、是はあとで一緒に御返事願ひたい
最後に簡單な問題ですが、調整法の問題に付きまして、六年以上の禁錮又は懲役に處せられた者と云ふ、是は、一體政府の肚は、善心に立還つて國の責めを負擔して歸つても、まだ責めると云ふ肚か、さう云ふ肚はないのかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=76
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077・山添利作
○山添政府委員 是は普通の立法例に倣つたものであります、それから前の點に付てでありまするが、北さんの御述べになつたやうに行くだらうと云ふやうに私が申述べましたのは、もう物價水準が違つてしまつた、隨て第二十七條に該當して超えるのだと云ふ時には、切捨てになる譯です、それから災害の場合に於きましては、大體農業保險で救つて行く譯でありますけれども、非常な災害であれば、是は所謂減免をしなければならぬ、此の時にはまだ裕りがある譯ですから、隨て延ばすと云ふ關係になるだらう、斯う云ふことを申上げたのでありまして、而も其の具體的なことは、是は事が起つて來ないと今から豫定は出來ない、斯う云ふ趣旨で申上げて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=77
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078・北政清
○北(政)委員 北海道だけの問題ですが、北海道の今の五町歩制度を壞さぬと云ふ建前に於て、過般も御返事を聽いて大丈夫と思うて居るのですが、更に一言御返事を願ひたいと思ふことは、所謂數地區に依つて分けることが出來る、之を十二分に發揮して戴いて、北海道の總數に於て十二町、或は四町を超えないと云ふやうに善處して戴けるものと思ひますが、さう諒承して宜しいかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=78
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079・山添利作
○山添政府委員 其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=79
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080・北政清
○北(政)委員 以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=80
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081・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是で各派の整理質問が終了致しました次第であります、最後に私より政府に六點に付きまして質したいのであります
第一は、地主に保有を認められました一町歩の小作地に付て、將來地主が自作しようとする場合、農地調整法第九條の規定に從つて自作を相當とする場合は之を認めるものと考へますが、如何でありますか、此の點に付て御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=81
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082・和田博雄
○和田國務大臣 第九條に從ひまして自作を相當と認めまする場合には、是は自作が出來ると云ふことになつて居るのでありまして、唯自作を相當とすると云ふ此の第九條の解釋と運用に付きましては、是は屡屡申述べました所に依つて御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=82
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083・葉梨新五郎
○葉梨委員長 第二點でありますが、政府が買收した農地が第十六條に依つて處分が出來ないで、其の儘政府の所有になつて居る場合に、其の小作人が耕作を廢止する場合は、元の地主が其の土地に付き自作を希望する時は、政府は元の所有者を縁故ある者として土地を買受け得る者の範圍に加へ、且つ其の順位に付ても當然考慮を拂ふべきものと考へますが、如何でありますか、御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=83
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084・和田博雄
○和田國務大臣 賣れ殘りの農地が生じまして、將來其の小作人が其の土地の小作を廢めてしまふ、斯う云ふ場合は、是は元の所有者に耕作の能力がありまするならば、御質問のやうに取扱ふやうにすることと致しまして、是は命令の中に書く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=84
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085・葉梨新五郎
○葉梨委員長 第三點に付て御伺ひ致します、此の法律施行の後に、農地調整法第九條及び同改正法附則の地方長官の許可を受けて地主が土地の返還を受けて自作をなす場合もあると思はれますが、農地委員會が農地買收計畫を定めるに當つて、其の農地は小作地として取扱はれますか、又は自作地として取扱はれますか、附則第二項の適用に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=85
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086・和田博雄
○和田國務大臣 此の點も御答へ致したのでありますが、附則の第二項は、不當な土地取上が行はれました場合に、農地委員會が相當と認めまする場合に於きましては、昨年の十一月二十三日の状態に依つて買收計畫を定めるのでありますが、正當に、且つ適法に元の小作地が自作地に變つて居りますれば、それは勿論自作地として取扱はれる、斯う云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=86
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087・葉梨新五郎
○葉梨委員長 第四點の御質疑を申上げます、第五條第六號の場合の自作を相當と認められる農地と、第三條に依つて保有を認められる小作地との關係は、自作農に付て通常認めらる、範圍と同一にすべきだと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=87
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088・和田博雄
○和田國務大臣 是は御質問の通りに取扱ひたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=88
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089・葉梨新五郎
○葉梨委員長 第五點、異議及び訴願の申立期間は何れも十日間で、餘りに短いと思ひます、是では不都合を來すと考へますが、政府は何か適當な措置を考へて居られますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=89
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090・和田博雄
○和田國務大臣 是は只今麻生さんの御質問に對して御答へを致した譯でありますが、買收と賣渡の計畫は、之を決定するに當りましては、事前に十分關係兩者と連絡打合せを遂げて行きますやうに指導致しまして、又事實其のやうに取運ばれるものと我々は考へて居りますので、實は計畫が決定しました後には餘り長い期間を置く必要はないと考へて居ります、此の點は實は御質問の次第もありますので、農地委員會に於きまして十分關係者と打合せを致しまするやうに取計らつて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=90
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091・葉梨新五郎
○葉梨委員長 第六の點は、此の法律の施行に付きましては命令に讓られる點が多數ありまして、且つ相當重要な事項も含んで居りますので、命令の制定に付きましては、豫め議會代表者等を以て構成する委員會に諮られることが適當と思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=91
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092・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに致しますのが我々も必要だと考へて居るので、是非さうしたいと思ひます、而も法律は早く施行を致したいので、是はもう出來るだけ早い機會にやりたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=92
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093・葉梨新五郎
○葉梨委員長 以上六點が私の最終質問であります、之を以ちまして質疑は全部終了致しました次第であります、午後は一時半から開いて、各派の討論を致すことに致します、是にて休憩致します
午後零時九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=93
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094・会議録情報2
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午後二時十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=94
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095・葉梨新五郎
○葉梨委員長 休憩前に引續き是より會議を開きます、是より本委員會に付託せられました自作農創設特別措置法案竝に農地調整法の一部を改正する法律案を一括議題として討論に附します、討論は通告順に依り之を許します──森幸太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=95
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096・森幸太郎
○森(幸)委員 日本自由黨を代表致しまして意見を申上げたいと存じます、只今議題になつて居りまする兩法案は、我が國農村に對して最も重大な法案であり、殊に劃期的な制度の改革を意味して居るのであります、本法案取扱に付きましては、本會議に上程せられて以來、我々は愼重に其の結果に付て想ひを馳せたのでありまするが、先般祕密會に於て政府より示されました本法案提出の由來を考慮致しまして、原案を是と認めるものであります、但し法律は其の運用の妙味を考へなければならぬのでありまして、如何に立派な法律でありましても、其の運用宜しきを得ないことには、其の法案を活かすことは出來得ないのであります、先刻委員長を通じて政府の所信を質された所の、運用の方法に於て我々は滿足するものでありまして、あの政府の質問に對する答辯を我々は得まして、原案を修正せずして之を認めるものであります、以上自由黨としての所信を申述べた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=96
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097・葉梨新五郎
○葉梨委員長 荒木武行君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=97
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098・荒木武行
○荒木委員 私は日本進歩黨を代表致しまして本案に贊成致します、我黨は法案が上程されまして以來、委員會に於て審議を進めて參りました結果、最初に此の法案から受けまする印象は、重大なる農村に於ける經濟革命でありまして、此の法案が所謂土地國有を目指す所の思想的な根據が非常に豐富であると云ふ見解から致しまして、愼重に審議を致したのでありますが、今日まで政府當局の答辯を承りますと、土地國有にあらず、飽くまでも我が國の農村の實情或は現實の状態を把握致しまして、さう云ふ社會主義的な土地國有と云ふやうな方向に趨らずして、何處までも我が國の農村の實體を把握して、穩健中正なる經濟革命を斷行するものである、同時に又此の土地解放に付きまして、其の運營の主體となりまする農地委員會の運營は何處までも愼重に致しまして、さうして此の法文の精神を活かして行くと云ふ點、それからもう一つは、午前中に農林大臣の御答辯にありました如く、此の法案自體が直ちに以て農村の所謂封建性を拂拭して、民主主義的な農村の生産状態を上昇せしむる方向に向つて參りまするには、所謂生産増強の目標の下に、協同組合其の他の方法に依りまして、或は技術の指導に依りまして、飽くまでも此の法案を裏付けする所の努力を吝しまない、さう云ふはつきりした言明がございましたので、私共は政府を信頼し、さうして又私共も農村の生産階級を代表して、何處までも所謂日本の農村の現状に本當に適して居りませぬ所の、足が大地を離れたやうな、所謂社會主義的な、現實に結び付かぬやうな状態に對しましては、何處までも之を排撃して、穩健中正なる我が黨の政策に則りまして本案を通過せしめ、穩健中正の中に立派なる日本的な生産上昇を目的と致しました所の農地解放の精神を活かして參ると云ふことが宣言されましたから、我が黨は之に贊成致します、同時に政府の本案審議になされました答辯や或は精神と云ふものが、一貫して變ることなく、飽くまでも、愼重に進められて行くと云ふことを確信致しまして本案に贊成するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=98
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099・葉梨新五郎
○葉梨委員長 中原健次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=99
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100・中原健次
○中原委員 私は只今本委員會に付話されて居ります農地調整法改正案竝に自作農創設特別措置法案に對しまして、社會黨を代表して修正の意見を申上げたいと考へるものであります、劈頭修正の内容を申上げます
自作農創設特別措置法案修正の條項は即ち第三條第一項の全體の文章を削りまして、單に「小作地である農地は、政府が、これを買收する」と云ふ此の一文に改めたいと考へます、第二は、第三條第二項、第三項、第四項を全部的に削除致します、第三條第五項第一號中「第一項第三號」とあります所を「北海道にあつては十二町歩、都府縣にあつては中央農地委員會が都府縣別に定める概ね三町歩」と改める、第四條第二項は之を削ります、第十三條第三項乃至第五項は之を削ります、更に第四十三條第一項中「第十三條第三項に規定する報償金」とあります分を削る、第四十八條中「此の場合に」と云ふ字句の以下を削ります、更に附則第二項中「相當と認めるときは、命令の定めるところにより」を削り、「十一月二十三日」と云ふ點を「八月十五日」と改め、最後の「ことができる。」と云ふ點を削ります、さうして附則の第三項と致しまして、「昭和二十年八月十五日以後本法施行までの間になされた、農地の所有權、賃借權、地上權其の他の權利の設定又は移轉は、無效とする。」と云ふ字句を加へます
更に農地調整法の一部を改正する法律案の修正に對しまして、第九條の八第二項但書中「田に在りては二割五分、畑に在りては」と云ふ字句を削りまして、第十五條の二第六項中「五人」とある所を「六人」と、「三人」とある所を「一人」と、「二人」とある所は「三人」と改めることに致します、第十五條の十四第三項第一號中「十人」とあるを「十二人」、同第二號中、「六人」とある所を「二人」同第三號中「四人」とある所を「六人」と改めます
斯樣な修正の動議を提出したいと思ひます
最後に希望條件と致しまして次の四つの點を主張致します
第一は、土地取げの處罰の勵行
第二は、小作調停制度の民主的改正
第三は、山林を耕作農民に開放する
第四は、市町村制第七十二條の三に依る市町村長の町村團體に對する監督上必要なる命令の規定を農地委員會及び農民組合竝に農業協同組合等の民主團體に適用しない
斯う云ふ希望條件を附したいと考へます
只今の修正條項に關しまして一言修正の意見を申述べまして、其の理由を明かに致したいと考へるものであります、申すまでもなく、本法案が占めて居りまする社會的、經濟的條件は非常に重要であると同時に、複雜多樣なる關係を持つて居るのでありまして、私共は十分本法案に對しまして愼重を期すると同時に、冷靜なる判斷を以て之に臨むの必要を痛感して居る次第であります、惟ふに昨年の十二月第一次の修正がなされまして程なく其の第一次修正法律が社會の批判の俎上に上り、折角農村民主化の名に於てなされました第一次修正もつひ何等の效果を擧げることなく、引續き第二次の修正を見るの必要に逢著したのでありまするが、惟ふに今囘の第二次修正に關しましても、是は言ふまでもなく我が日本政府が自主的に之を行つたのではないのでありまして、日本民主化の最初の條件として農地調整法の急速なる根本的改正を要求されたことに始まると思ふのであります、考へて見れば洵に或る意味では遺憾千萬でありまして、少くとも此のやうな日本民主化の最初の條件である土地改革の問題の如きは、進んで我が日本政府が之を積極的になすべきであつたと沁々私は思ふものであります、偖て何はともあれ、其のやうな一つの昏迷状態を續けました本農地關係法律の我が日本農村に與へました影響は、又決して簡單でもなく、甚だ遺憾な問題を次々と激發致したのでございました、此のやうな状態から地主階級は耕作地の返還要求のことを急速に始めまして、以來事件數は驚くべき數字を示したのでございまして、即ち政府の發表する本年六月までの統計に見ましても、優に二十五萬件を突破して居ると云ふ状態であります、殊に第一次改正法の施行以來、最も目に立ちますものは、名義變更に依る土地所有の分割或は請負小作の發生若しくは名目のみの自作轉換と云ふ耕地の引上策の數々が相次いで、農村を慌だしい紛爭の渦中に投じたことでございます、殊に舊法に依る地主的勢力を以て構成致しまする農地委員との共謀に依りまして、擬裝的名義變更の、權利移轉の登記が又續々と現はれたことでもあつたのであります、私は茲に若し必要ありまするならば、甚だ遺憾でございますけれども、多數の實例を提示することが出來るのであります、此のやうに致しまして、政府が現實に耕地買收を實行するまでには、必要なだけの土地は恐らく良からざる地主に依りまして取上を完了されるでありませうし、或は又地主の好都合な條件を付けまして小作人に對しまして土地の賣付をしてしまふか、どちらかであらうと思ひますし、此のやうな經緯の中に又所謂闇値段を以ちまして「ブローカー」の手にそれ等の土地を渡し、急速に分讓を敢て進めて居る状態であります、さなきだに土地なき耕作者は愈愈失業の状態に引戻されつつあるのでありますが、之に對しまして政府は何等見るべき對策も設けることをせぬのでありまして、唯一片の言譯的な通牒を以て其の間の責任を糊塗して居ると云ふに過ぎないのであります、茲に一つの具體的例證を示して見ますれば、岡山縣兒島郡琴浦町では、町長が先頭に立ちまして、農地調整法などどうでも宜いではないか、或は威脅して土地取上を承認させて居ると云ふことが既に五十件を超えて居るやうな状態であります、又同縣後月郡共和村では農地委員會が全部地主で、知事の許可を得ることなくして取上げました件數既に二百件に及んで居るのでございます(「簡單々々」、「一小部分の例が大局に關係するか」と呼ぶ者あり)一々例を擧げますと限りないことでございまして、簡單に要點だけを述べますが要するに、是は法の不備を徹底的に暴露するものでありまして、機構の地主性を端なくも茲に立證して居ると私は信ずるのであります、此のやうな事態は耕作農民の不安を増大させるばかりか、延いては食糧増産を著しく阻碍すること亦明かてございます(「ノーノー」)此のやうにして現在既に土地所有の分散化がなされて居りますし、隨て第二次改正案に依つて地主所有一町歩となりましても、或は自作三町歩が決定致しましても、既に多數の脱法行爲があり、長い間小作人として耕作に勵んで參りました彼等は極端なる零細農に落込んで居ると云ふのが、現在の實際の姿でございます、是に於て先づ初めに政府が肚を決めなければならぬと思ひまする點は、此の不當なる土地取上の禁止に關する取扱を斷乎遡りしまして、昭和十九年八月十五日までとし…(「二十年ではないか」、「支離滅裂だぞ」、「理論は一貫して居る」、「單なる言ひ違へだ」と呼ぶ者あり)昭和十九年は二十年の間違ひ、それ以後に於ける返還も、權利移轉の登記濟のものも、一切を擧げて其の權利の設定又は移轉は之を無效とすべきものであると私共は堅く信じて疑はないのであります(拍手)更に地主の保有面積一町歩に關する問題であります、此の法案は日本民主化の先行條件をなすかの如くに言はれて居りますけれども、遺憾ながら擬裝民主化のそれに終る以外の何ものでもないかの如き疑ひを持つものであります、第一在村地主に一町歩の保有面積を殘さんとして居るが、之にしても昨年十二月の第一次改正の際、政府原案は三町歩と云ふことになつて居りましたが、當時自由黨、進歩黨の壓力に禍ひされまして、五町歩にまで之を引戻したと云ふことは餘りにも有名なる出來事でありまして、如何にしても舊體制を維持せんとする保守勢力の努力でございまして、洵に悲しくも是亦日本民主主義の醜態を露呈したるものであると云ふ以外に何等の言葉もないと思ひます、出來るだけ民主化を囘避して、封建制を存置せんとしたのでありますが、遂に或る種の事情に依り、漸く事ここに及びましたものの、偖て此のやうなやり口は、新體制を創り出すことを極度に傷けるものであると云ふことは自明の事實であります、敗戰後の日本は、茲に軍國主義的、軍事的過去の一切を清算して、眞に平和を愛好する民主主義日本を建設せんことを要請されて居るのではないでありませうか、さうして僞りなく忠實なる「ポツダム」宣言の履行實踐をなし遂げつつ國際講和會議に於て恆久性ある平和國家日本として(「簡單々々」其の他發言する者あり)徹底せる民主主義國家日本として、其の眞實を理解され承認されなければならぬのではないかと信ずるのであります、茲に於て私は各方面の誠實を喚起したく、政府及び其の保守勢力は、如何なる辨明を以て小作制度の存置を圖らんとするのでありませうか、さうして又農村階級制度を敢て固執せんとするのでございませうか全國各地に分布されるでありませう所の地主階級は、保守派の諸君が主張されまするやうに、農村の中堅勢力であると云ふことは疑ふ餘地はございませぬ、併しながら其の中堅勢力たるの謂ひは、民主的要件を破碎する反動的勢力であり、軍國主義的要素をなす中堅勢力であると云ふことを遺憾ながら承認しなければなりませぬ、假に思うて見ますると、地主的身分の故にさうして又搾取階級としての地位を以て、小作農民の上に坐せんとする其の願ひの故に、小作農民の隷屬を強要することとなるでありませう、隨て又農村の民主化は却て地主階級の地位を危くすることとなることは言ふまでもなく、凡そ勤勞農民ほど封建制度の下積みになつた階級はなく、基本的人權の尊重が新憲法に謳はれはしましたものの、地主、小作の關係が存續する限りに於て、其の壓迫を撥ね返し、隷屬關係を乘越すことは遂に困難となるでありませう、日本民主化の最初の條件が、農民の爲に土地からの解放をなさんとするのであると云ふことは、最早議論の餘地のないことでございますが、農村に於て斯かる階級關係を殘さんとすることこそは、其の意識すると否とに拘ることなく、所謂保守反動の温床を作ることでありまして、同時に又其のことは「フアシズム」的勢力の培養條件をなすものであると私は信ずるものであります、日本軍國主義の指導者達は、主として農村地主階級の子弟であつたことは斷じて偶然ではないのでありまして、茲に我々は思ひ半ばに過ぐるものがあるのであります、又一方、此の地主保有面積一町歩と云ふことが農村紛議の原因をなすものであると云ふことは、先に申上げました例に見ても明かなる所でありまして、姑息にも茲に小作制度を固執せんとする表面の理由亦何處にも見出し難くなるでございませう、戰爭廢棄を内外に宣言する民主國家の日本に取りまして、恐るべくも亦憎むべき「フアツシヨ」反動の温存體維持の危機を避けて、永遠に帝國主義戰爭の激發をなからしめるべく冀ふ次第であります、仍て茲に地主保有面積一町歩の條項に付きましては、遺憾ながら私共聊かの贊意を表することも出來ず、絶對的に、根本的に之に反對を聲明する次第であります
更に自作農創設特別措置法の第一條は、農業生産力の發展と云ふことを明記して居りまするが、斯かる政府の意圖にも拘らず、實際には果してどうなるでございませうか、第一に一町歩の小作地の下に多數の小作人が隷屬をして居りまするし、さうしてより小さく分化されました耕地の關係が茲に生れて參るのであります、而して半封建的な桎梏の下に、原始的な生産樣式を以て自己の勞働力に對しまして無慈悲なる自己放出を求めつつ、それを唯一の據り所として非能率的な状態が茲に約束されて居るのでございます、此のやうな事態の中から小作人が改正案第九條の十に依りまして、用排水費及び有益費、修繕費等の負擔の契約に關しましても、是は恐らく屡屡地主、小作の關係に於て不利益なる事情の中に約束されてしまふであらうと考へられる、此のやうな状態の中に追込まれました小作人が、どうしてか能く再生産擴大に要する諸經費等を負擔致して行くことが出來るのでありませうか、茲に此のやうな矛盾が伏在して居ることを知りまする時に、併せて又近い將來に農業恐慌の來襲することなしと保證し得ない現在と致しましては、甚だ今後に對する小作農民の地位に危惧を持たざるを得ない次第でありまして、同時に又貿易の再開、資本主義工業生産囘復後に於ける是等小作農民の一群が、資本主義市場の渦中に溺れることがないと云ふことを誰が能く斷言し得るでありませうか、殘念ながら茲に小作人は此の桎梏の中に遂に起ち上る力をさへ失ふの虞なしと致しませぬ、斯くして政府の折角の計畫も遂に畫餅となる虞があるのでありませう、即ち政府の言ふ如く、農業生産力の發展が之を以て期待され得ると云ふ、責任ある言明が出來るでありませうか、此のやうに不安定なる状態の中に農業經營が進められて行くことになるのでございませうが、今後政府は從來の儘の生産方法を踏襲するのであつてはならないと思ひます、今や日本農業の正常なる發展の爲には、協同經營の形態が進まなければならないし、生産の集中化、近代的生産樣式の採用が何を措いても必要とされる次第であります、さうして精力的に農業の機械化を圖り、農耕運營の民主化を徹底させることが、何よりも重要なる當面の課題でございまして、更に一切の機構を民主的な組織の上に打立てて行かなければならないであらうと云ふことを、私共は特に強調する次第であります、又一面眼を轉じて見ますると、厖大なる未開墾地があるのでございまするが、此の厖大なる未開墾地に對しましては、急速に是が開發のことを圖り、農地の協同管理を著々實行に移して、日本農業の新生面を茲に求めたいと冀ふ次第であります
土地制度の改革の斷行は、從つて土地私有的性格を揚棄致しまして、土地の公共性を確立することが必須の條件であると云ふことも亦併せて強調致します
此のやうな複雜多樣なる社會状態の中に於て、又非常に困難な經濟的條件の下に於て、徹底的に土地改革の斷行のなされ難い今日の過程にあつて、小作人の耕作上の負擔は極度に過重されるでありませう、遂に此の過重なる負擔に耐へ兼ねて起ち上ることの困難なる悲慘なる小作人の状態を考へまする時に、如何に一部長い間の所謂地主に對する貢制度から解放されんと致して居りまする農民と雖も、小作料の適正化と云ふことに付て非常なる關心を持つて居る次第であります、小作關係の存續する限り、極めて愼重に此のことは考慮されなければなりませぬし、之を單なる投下資本に對する金利と云ふ考へ方のみを以て致しますことは、餘りにも單純なる見解でありまして、假に之を金利計算に依ると致しましても、是等の數字の點に付きましては相當議論の餘地のあることでございまして、取別け又地價の決定に關しましても數々の論議を殘す所でございます、要點は現在の小作者の社會的、經濟的地位、境遇、立場を十解考察致しまして、小作料の適正なる決定を見なければならぬと考へるものでございます
斯樣な見解から私共は、茲に政府原案に對しまして、小作料の一率一割五分を主張致します所以があるのでございまして、小作農民の活溌なる生産意欲の昂揚を期する爲にも、斷じて此の點は忽せにすることの出來ない重要點であることを申上げて置きたい
更に報償金の問題に付て一言附加へて置きたいと考へます、是は質疑の時間にも繰返し繰返し申上げたことでございまするが、何が故に此の報償金を必要とするかに付ての理論的根據は甚だ薄弱でございまして、私共は寧ろ全國民大衆の負擔に於て斯くの如き報償金を支出せんとする政府の考へ方は、何としても之を了承することが出來ないのでございます、殊に我が日本の現在は、より注意深く支出するの必要があるの時でありまして、此の條理盡さざる所の報償金を支出することに依りまして、聊かでもそれが又「インフレ」助長の一因をなすと云ふが如きことを考へますならば、尚更危險千萬であると考へるのであります、此の際宜しく報償金設定の件に關しましては勇敢に之を削除すべきであると云ふことを進言して已みませぬ
最後に農地委員會の委員定數の問題でございまするが、是は今囘の農地改革のことが、さうして農村の決定的な民主化の爲に、封建的殘存要素を放逐する爲に此の法律案が上程され、是が施行されんと致して居りますることを思ひまするならば、實際は、此の委員の數を、各階層に適當に振當てて決定すると云ふ手續を止めて、寧ろ一般の公選に依つて適當數の委員を選出することの方がより適切であると私は考へるのであります、偖て併しながら在來の色々な慣習を一應考慮致しまする爲に、茲に此の員數の割當に關しましては、本法案の性質に鑑みまして、飽くまで解放さるべき筈の小作農民を中心として、此の委員の振當がなさるべきであると云ふことを強調する次第であります、隨ひまして先に朗讀申上げました即ち委員數の數字の修正を茲に主張致しまする次第でございます
之を要するに、總括的に考へまするならば、我が日本が今や直面致して居りまする重大問題は、何と致しましても、徹底的に日木民主化を圖ることにあるのでございまして、萬一過去の行掛り、或は情實或は徐々に適正なる方法に依ると云ふやうな物の考へ方に立ちまして、眞に徹底すべき筈の民主主義を過たしめることがありまするならば、是こそ正に我が日本七千三百萬の最後の日を約束付けることになるのであります、此のやうな見解に立ちまして、本法案の重要性が又言はれるのでございまして、唯單に言葉の先で本法案の重要性を言ふことでなく致しまして、本法案の重要性を信ずれば信ずる程、尚更如何なる過去の行掛りがございませうとも、此處に斷乎たる態度を以て冷靜に此のことを處理するの必要があると考へるものであります、斯かる見解から以上申上げました四點の修正意見を述べまして、私の討論を終りたいと考へるものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=100
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101・葉梨新五郎
○葉梨委員長 藤本虎喜君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=101
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102・藤本虎喜
○藤本委員 私は協同民主黨を代表致しまして只今提案されて居りまする法案に付て意見を申述べたいと思ひます
本法案は耕作農民の地位の安定竝に勞働の成果を公正に享受せしめると共に、一面農業生産力の發展と、農村に於ける民主主義傾向を促進すると云ふ點に付きましては、相當進歩的なものであると思ふのであります、でありますから以下三項の希望意見を附けまして贊意を表する次第であります
第一點は、農村に於ける傳統の温情、互讓相助の美風を護持育成の方策竝に指導を徹底することであります、日本農業は、御承知の通り家族勞働に依る自給態勢の、主として水田農業であります、是が農地の所有權の移轉を繞つて波瀾を起すやうになつて、其の結果鹿を逐ふ獵師山を見ずと云ふやうな有樣になりまして、色々温情や美風を壞すやうなことがありましては、將來農村の經營に於きまして非常に困るであらうと思ふのであります、でありますから、それに付ては、先日委員會に於て色々理由は申上げて居りますから省略致しますが、是非其の方策を講じて貰ひたいと思ふのであります
第二點は、自作農の維持に對する耕作農民の不安を一掃し、有利なる農業經營が出來るやう、政府は凡ゆる施策を講ずることであります、其の第一項は、今まで小作農は、不作がありますと、小作料を負けて貰ふと云ふやうなことに依つて助かつて居りましたが、今度自作農になりますと、それが出來ないと云ふやうなことで、不安を懷くと云ふやうなことに相成るのであります、でありますから、其の災害に對する保護と致しましては、從來農業保險或は家畜保險がありましたが、是は御承知の通り昭和十八年以來少しも變つて居らない、でありますから現状に即せない、例へば保險金の如きも非常に安いと云ふことになつて居りますので、段當收益の少くとも現價格の八〇%位までは被害が多かつた時には貰へるやうに、又牛馬に於ても、從來三百圓のものを現在の價格に引上げて、其の八〇%位は貰へるやうに策を講じて貰ひたい、尚ほ此の掛金に付きましても從來通りの率を以て、尚ほ事務費或は再々保險に付ても從來の率を以て助成をして貰ひたいと云ふ點であります、さうでなければ、非常に不安を以て小作農になりたがらないと云ふやうなことになるのではないか、是が第一項であります
其の次には農産物價格に對する點でありますが、是は先日述べました通り、生産者が投下致しました所の生産費を賣渡價格とすべきであると思ふのでありますが、今までの傾向に依りますれば、どうもそれが一般に納得が行かない點であります、色々の事情で物價の政策或は二重價格の政府負擔も財政の都合等で旨く行がないと云ふやうな點がありとすれば、私は經濟安定の施策を根本的に、綜合的に講じまして、さうして此の農産物價と他物價との均衡を保つと云ふことが必要ではないかと思ふのであります、尚ほ最近巷間では「デフレ」になり、農業恐慌が來る、此の場合にはどうしても自作農としてやつて行くことが出來ないのではないかと云ふ聲があるやうであります、それに付ては、外國から必要以上の食糧がうんと流れ込むことに對して、非常に不安を持つて居るやうであります、さう云ふ場合には、政府は外國から來た所の食糧を買取り、さうして内地で出來たものは生産費に於て買取ると云ふ操作に依つて、安心が行くやうに施策を講じて貰ふやうにして戴きたいと思ふのであります
尚ほ是から此の小さい農業を有利に經營すると云ふのには、どうしても科學技術を滲透せしめると云ふことにしなければならぬのでありまして、之には指導農場の設備がありますけれども、非常經費が貧弱でありまして、而も經營や或は人事其の他に付て責任の主體が分らぬと云ふ點で、どうも心證が惡いのでありますから、此の經費に付ては、今までの十倍位の程度に引上げて助成をする策を講じて貰ひたい、尚ほ此の責任の主體に付ては、十分納得の行くやうに政府は考へて貰ひたい、尚ほ農業技術員が自分の地位が安定して一生懸命指導すると云ふことになりますれば、増産に對して非常な效果が上ると思ふのであります、そこで農業技術員の費用に對しては、政府は成べく全額の助成を講ずるやうにして貰ひたいのであります
第三點は、自作農の維持育成に付て萬般に互る所の方策を講じ、再び小作農に轉落しないやうに方策を講ずることであります、それに付ては第一、肥料其の他生産資材の對策であります、是は基準量と云ふものがあるのでありますから、其の基準量を確保すると云ふこと、其の次には最近質が大分低下しつつありますから、質の向上を圖ると云ふこと、次には農産物價に對して高價に失すると云ふ點もあるのであるから、之を安價にする、尚ほ時々農具にしろ、肥料にしろ、適期に間に合はないと云ふことで、是が増産を阻んで居る點もありますので、其の點も考慮して早くなるやうに、資材に付ては此の四點に對して十分の施策を講じて貰ひたいのであります
其の次には、開拓事業竝に土地改良事業であります、未墾地を買上げて開拓をやると云ふやうなことになつて居りますが、從來開拓、開墾に付きましては相當の力を入れて居るが、其の後の入植者に對する所の保護育成が足りないと云ふやうな點がありまして、結論に於て成功することが少いのであります、でありますから、之には保護育成に付て大いに力を入れて貰ひたいと思ふ、次には土地改良でありますが、大きな排水事業、或は河川改修、或は河川、水路、溜池等の設備に依りまして増産の途が殘されて居る、又地方に依りましては、大きな酸性土壤があり、或は土質が惡いと云ふ所があるのでありますから、此の土地改良事業にもう少し力を入れたならば、此の増産が出來、自作農の維持育成に對して非常に效果的なものがあると思ふ、此の點に付て十分の施策を講じて貰ひたいと思ふのであります
第三項には、協同組合法を成べく早く提案して、是が普及徹底を圖つて、今までの搾取機關を改造する、さうして農村工業或は販賣、或は配給の利益を農村に還元することに依つて、農村の繁榮を圖ると云ふやうにして貰ひたいと思ふのであります、以上三點に付きまして愚見を述べまして贊意を表する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=102
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103・葉梨新五郎
○葉梨委員長 井出一太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=103
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104・井出一太郎
○井出委員 私は國民黨を代表致しまして此の農地關係兩法案に對して贊意を表するものでありますが、同時に若干の苦言を致したいと思ふ者であります
本法が非常に進歩的であると言はれ、又劃期的な改革であると言はれまして、輿論の支持を壓倒的に受けて居るやうに見えまするが、之に依つて批判の眼が曇らされると云ふことを私は憂ふるのであります、私は本案は盾の一面を解決せんとするに過ぎないのでありまして、他の一面に觸れる所が極めて少い、斯樣に感ずるのでございます、即ち農地の所有が、其の面に於て民主的に均分化されると云ふことは認められるのでございますが、肝腎の經營の面に於きまして、果してどれだけの改善が試みられて居るでございませうか、本法の目的として掲げて居ります農業生産力の發展と、民主的傾向の増進と、是れだけで總て成れりと云ふ工合に好い氣持になつて居ると云ふのは、勿論愼まなければならぬと思ふのであります、本法は、日本農業の謂はば舊秩序と云ふものに對して、切開を試みたものである、唯問題は「メス」を入れただけで濟むものではない、是から針を以て縫ふと云ふことも殘されて居りまするし、「ガーゼ」の交換もしなければならぬと云ふこともございませう、本法で一度手を付けました以上は、日本農業はどうしても新秩序に向つて編成替へをされなければならぬのであります、我々は次々と是から打つべき手を考究しなければならぬと思ふのであります、例へば先程協同組合法案と云ふ風なもので之を裏打ちしなければならぬと云ふ御意見も出ました、或は又自作農になつた者が轉落するのを防止する爲に、例へば「ドイツ」で行はれた世襲農場制或は家産法と云ふ風なものを以て是が補強工作をしなければならぬと云ふことは、私も同感でございまして、さう云ふ風な手がやはり其の他にも色々考へられなければならぬと思ふのであります、其の他指摘致して居りますときりのない話でありますが、兎も角本法だけではまだ尚ほ未完成な部分が數多いと思ふのでございます
土地所有を均分化したことに依りまして、直ちに日本農業が合理化するものでありませうか、此の爲に經營は益益零細化致し、農業近代化の基本條件である土地の集中的大規模利用と云ふ方向とは相反したる向きへ向つて居ると云ふことは、否定出來ないやうに思ふのであります、成程本法に依つて農業の經營の大部分が勤勞の成果として耕作農民の手許に多く歸屬せられることになりまして、是が農業再生産の面に資本増加の形で増して行くと云ふことは、今までにも増して大きく期待をして宜からうと思ふのであります、併しそれにも一應の限度があるのでありまして、日本農業の根本を規定致して居ります社會經濟的條件、或は技術條件、之を改善するのには、未だ多くの問題を殘して居ると思ふのであります、隨て政府は想ひを此處に置かれまして、大膽に、果敢に、今後之に關する一聯の施策を準備せられますことを特に要望致して置きます、一體日本農業は、國民經濟の分野に於て何を受持つべきかと云ふことに付て、曾て農林大臣は、日本農業に過分な期待を持つことは考へものであると云ふ意味の御答辯をされましたが、私も此の狹小なる耕地と厖大なる人口との二律背反が日本農業の宿命であると考へて居るものでございます、隨て此の狹い耕地からは、土地生産力をやはり可及的に増大しなければならぬと云ふ情勢が生れて參りますし、一方此の厖大なる人口は農業勞働生産力の發展に對して「ブレーキ」を掛ける所以となつて來るのでございます、此の儘で行きますと、日本農業は自給自足の枠の中に閉籠つてしまつて、他を顧みないと云ふ風な偏狹な方向へ行く危險性もなしとしないのであります、併しながら我々の向ふべき大道と云ふものは、やはり農業を本當に合理化致しまして、少くとも限られた條件の下に最大級の生産力を發揮して、外國農業との競爭をなさしめることに向けなければならぬと思ふのであります、此の爲には國際恩恵と云ふ世界經濟の動向に乘りまして、適地適産の農業に立つと云ふことが肝要であらうと思ふのであります、斯かる見地に立ちまして日本農業が再編成されなければならぬのであります、其の一環として今囘の農地改革を著手されたものと、私共は斯樣に理解致しまするが故に、我が國民黨と致しましては、尚ほ種々注文もございますけれども、目下の微妙なる國際情勢に鑑みまして、之に贊意を表するものでございます、併しながら前に申したやうに、本案は他の施策と相俟つてのみ其の目的が達成せられるものであると云ふことを特に此の際強調を致して置く次第であります、以上を申上げまして本案に贊成するものであります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=104
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105・葉梨新五郎
○葉梨委員長 北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=105
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106・北政清
○北(政)委員 私は此の法案は現下の日本と致しまして最も適當な時期に行はれた、どうしてもやつて行かねばならぬ、然らば本當にやつて行くには、此の原案の儘ではやれない、斯う考へますが故に、若干の修正──若干でない、それが實行出來ることを目標とした修正案を提出致します、尚ほ委員會に於て隨分論議させて戴いたのでありますから、極めて簡單に理由を申上げたいと思ふのであります、先づ小さな點を後廻はしにしまして、主なる修正を致したいと考へて居ります
先づ一町歩の地主保有面積と云ふことを止めること、是では農地改革の眼目がなくなる、日本農業の一番の缺陷は、細分化されて、是では共同することも出來なければ、勞力の上に於ても亦土地改良の上に於ても、どうにもならぬのが日本農業の一番の缺陷でありますから、之を此の際斷行しなければならない、それには一町歩以下がありましては、實際上一番重要な一段、二段と云ふ小段別のものが之に依つて自作化出來ないことになりまするから、此の際一町歩保有と云ふことを止めさせたいと考へるのです
それに附隨した關係と、もう一つは小作人が自作農になるに付きまして、將來共に自作農として眞劍に生産に從事し得るやうにしてやらなければならぬ、此の爲には非常な重い年賦金、而も今目に見えて日本の通貨と云ふものが大收縮をし、日本の經濟と云ふものが、今非常な大消耗戰をやつた後の跡片付けの時であります、其の場合に通貨の借金で三十年間乃至は二十四年間に之を拂つて行くことは問題であります、それでは寧ろ小作が自作にされたのではなく、農村から追放になると云ふ懸念を多分に持つのであります、其の點に付ての修正を致したいと云ふのが、此の自作農創設特別措置法案を私が修正せんとする重大なる理由であります、そこで一寸面倒くさいかも知れませぬが、御許しを願ひまして、字句が餘りに分りにくいので、之を分り易くしたいと思ひます
第一條は其の儘、第二條は「この法において、自作地とは」と云ふ所から下を削りまして「自作地とは、所有權者が耕作してゐる農地をいひ」、是で分る、それから「小作地とは、農地を所有しない者が、賃借權、使用權、使用貸借による權利、永小作權、地上權又は質權に基き耕作してゐる農地をいふ。」、斯う直したいのであります、其の次の「前項の規定の適用については、耕作の業務を營む者の同居の戸主若しくは家族」、關係のない者が同居して居つても、其の戸主が權限があると云ふことは、全く理由をなさぬ、そこで「耕作の業務を營む者の戸主若しくは同居の家族又は命令で定める特別の事由に因りその者と同居しなくなつたものと同じとみなす。」、斯う極めて簡單にしたい、其の次に於ては「自作農とは、自作地に就き」云々とありますが、自作地と云ふことは變なので「自作農とは、所有地に就き耕作の業務を行つてをるものをいひ、小作農とは、借地又はその他の權利に就き耕作の業務を營む個人」斯う入れたい
第三條は一町歩を除きました、其の關係上一は「農地の所有者が自ら耕作の業務をなさざる小作地」是だけのことで宜しい、二號も削つてしまふ、三號が二號になりまして、一番最後に「その面積を超える面積の當該區域内の小作地」とありますが「當該區域」と云ふことが必要がなくなりますから「その面積を超える小作地」、其の次の項は全部削除して宜しい、其の次は、其の後に三箇所ありますが、二つになりますから、「又は第三號」と云ふことがなくなります、尚ほ印刷が出來ぬでせうから概略を申上げて置きます、一「耕作の業務が適正でないものの所有する自作地の面積が第一項第三號の面積を超える面積の自作地」と改め、其の中の「場合、當該面積を超える」と云ふことは必要がない、それから「自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供してゐるもの」で宜しい、「自作農以外」の上を削つてしまひます
其の次に第四條は、同居の問題に付ては同じで、上の「同居の」を消して「戸主若しくは同居の家族又は第二條第三項に規定する特別の事由に因りその者と同居しなくなつた者も同じものとみなす。」是だけで澤山だと思ひます、其の次の項を削つて宜しい
其の次には、第五條の七號の「新開墾地、燒畑、切替畑」と云ふ次に「牧草畑」と云ふ文字を入れて貰ひたい、此の牧草畑に付ては特に北海道に於て必要なので御願ひしたいのであります
其の次には第十二條の第一項で「政府が、これを取得し、當該農地に關する權利は、消滅する。」とあるが、「政府が、これを取得する。」、是で澤山である、取得してしまへば、權利の消滅は當然であります
第十三條の第三項の「第三號」を「第二號」とする
それから其の後へずつと行きまして、第二十六條の終りに、「年賦金及諸負擔金の合計が、現行契約小作料の三分の二を超えてはならない。」、政府は屡屡現行小作料よりうんと安くなる、斯う言つて居りますが、私共の計算では、どうしても高くなると思ふのであります、そこで安くなると云ふ御趣旨ならば、勿論御採用下さると思ふのでありまして、「三分の二を超えてはならない。」、斯わ云ふ風に入れて戴きたい
其の次に第二十七條で「當該農地の對價の支拂につき年賦金額を」の次に「この法律公布の時の物價に比例して」と入れて、減免條件を確立したい、それから其の次の「年賦金額」の上に「凶作不作等の災害については」と入れて「災害については年賦金額の支拂を猶豫し、」とする、詰り凶作、不作とか云ふ災害の場合には猶豫するのである、物價の變動に對しては減免であると云ふことを此處で確立をして置きたい
次に僅かのことでありますが、續いて第二十八條の「相續人が當該農地に就いての自作をやめようとするときは、」の次は「政府に賣渡しを申し入れなければならない。」是だけの言葉で宜しい、「前項の申入があつたときは、本法の定めによる自作農を創設する。」是れだけで宜しい、「この場合における當該農地の對價には、第六條第三項の規定を準用する。」とありますのは、其の儘生かして置きます、自作農創設の方に於きましてはそれだけであります
此處に私は三つの希望を附けたいと思ひます一は農産物價は公正にすること、此の理由は省略致します、其の次は、戰時統制に依る各種の中間搾取機關を排除し、生産生活必需品の一元配給をすると云ふことに依つて、農村經濟の安定を圖つて行きたい、斯う云ふ考へであります
其の次には調整法に付て申上げます、調整法で第九條第一項の次に耕作權の確立に付て最も大切な要の所があやふやになつて居る、と云ふのは「宥恕すべき事情」とか、「信義」とか云ふことで、秤で量り得ないことを以て書かれて居るので、是では爭ひの根本解決が付かぬ、そこで其の場合の認定は、市町村農地委員に裁定をする權利を與へる、さう考へます、是は耕作權確立の重大岐路になると思ふので、「前項の宥恕すべき事情の有無、信義に反した行爲等に付ては、當事者間の意見が一致せざる場合は、市町村農地委員會の裁定に從ふことを要す」斯うしたいのであります
それから先程社會黨の方では「田に在りては二割五分、畑に在りては」云云と云ふのを削りたいと云ふ修正のやうでありますが、是は田に付ては七十五圓と云ふ價格が決まつて居るから、原案通りで宜しい、それから農地委員會の選擧權者或は被選擧權者に付ては、原案通り認めたいと思ひます、殊に其の數に付きましては、先程社會黨の修正案がありましたが、小作人と小作人以外の者との差を付ける必要はない、同數の方が最も公平であるから、原案の儘で修正を要しませぬ
其の次は「六年の懲役又は禁錮以上の刑に處せられたる者」の四の三號を削つて、第四號を第三號にして、尚ほ六年未滿と云ふことも要らぬ、「懲役又は禁錮の刑に處せられ其の刑の執行を終り又は執行を受くることなきに至る迄の者」とする、是は罪を受けて、刑期を終つて歸つて來た者に永久に權利を與へないのは、苛酷であると云ふ建前から、斯うした方が宜からうと思ひます
以上であります、是非共御贊成願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=106
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107・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是にて討論は終結致しました、仍て只今より採決を行ひます、採決の順序を申上げます、其の順序は、自作農創設特別措置法案と、農地調整法の一部を改正する法律案とを別個に行ひ、最初無所屬倶樂部の修正案に付て採決を行ひ、次に社會黨の修正案に付て採決を行ひ、最後に原案に付て採決致すことと致します、尚ほ此の際委員以外の方は委員席を退席せられんことを希望致します
最初に自作農創設特別措置法案に付て採決致します、先づ無所屬倶樂部の修正案、即ち本法第二條以下十四箇條の修正動議に付き贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=107
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108・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立少數、仍て此の修正動議は否決せられました──次に社會黨提出の第三條關係の修正案に付き贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=108
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109・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立少數、仍て此の修正案は否決せられました──次に原案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=109
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110・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立多數、仍て本案は原案の通り可決致しました(拍手)
次に農地調整法の一部を改正する法律案に付て採決致します、先づ無所屬倶樂部の修正案に付き贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=110
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111・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立少數、仍て本修正案は否決せられました──次に社會黨提出の修正案に付き贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=111
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112・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立少數、仍て此の修正案も否決せられました──次に原案に贊成の諸君の起立を求めます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=112
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113・葉梨新五郎
○葉梨委員長 起立多數、仍て本案は原案の通り可決致しました(拍手)
連日洵に有難うございました、諸君の非常なる御盡力に依りまして、本委員會は本日を以て無事に其の任務を終了致すことが出來ることに相成つたのでありまして、委員長より深く感謝致して御禮を申上げる次第であります、本日は是にて散會致します(拍手)
午後三時三十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X01719461004&spkNum=113
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