1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
食糧緊急措置令(承諾を求むる件)
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昭和二十一年七月九日(火曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 馬越晃君
理事 細野三千雄君
大井直之助君 杉田一郎君
廣川弘禪君 淵田長一郎君
森田豐壽君 八重樫利康君
神戸眞君 苫米地義三君
堀川恭平君 氏原一郎君
清澤俊英君 田中健吉君
堂森芳夫君 北政清君
的場金右衞門君 柏原義則君
山木武夫君 井出一太郎君
志賀義雄君
出席政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 三堀參郎君
農林事務官 佐野憲次君
農林事務官 坂田英一君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
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本日の會議に付した議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します——八木佐太治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=1
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002・八木佐太治
○八木委員 唯今の委員長の仰せに從ひまして、出來るだけ簡單に御質問申上げたいと思ひます、土地問題に關しましては、農林當局に於て、未だ全貌を御發表になる域に達して居られないと云ふことは諒承致します、でありますが其の間に希望的なことを申上げまして、今後農林當局に於てどう云ふ風な方途を以て私の質疑に對して應ぜられますか、それを伺ひたいと思ひます、曾て是は長いことでありましたが、適正規模農家の設定と云ふことが、殆ど二十年前から叫ばれて居つたのでありますが、それははつきりした御答へも得ませぬで、近く自作農創設と云ふものに置き替へられたのでありますが、私共長く農村に住んで居ります者から言ひまして、此の適正規模農家、詰り專業農家でございます、此の維持育成と云ふものが、どれ程大事であるかと云ふことを沁々と見て居る者であります
〔委員長退席、岩本委員長代理著席〕
近來の食糧供出に關しまして、適正規模農家でありますならば、政府の要求されます全部に御答へされると云ふ態勢になつて居ります、それを供出に障碍を與へるものは小規模農家、詰り兼業農家でございます、さう云ふものが色々な方面から障碍となつて、現はれて居りますので、私共其の責任に當る者が始終苦しめられて居る現状であります、さう云ふことから言ひましても、亦日本の中堅農家の確立に依つて自給態勢を講じ、又現今はどうでありましても、詰りは世界經濟の一環に居ります日本農民が、此の後數年の間に豫想されます所の「ダンピング」、其の他の色々な經濟事情に依つて、又々元のやうな慘めな農家に陷るのぢやないかと云ふ風に考へます時に、自作農創設一點張りでなくして、出來るだけ此の適正規模農家、專業農家——我こそは農で以つて死んでやると云ふやうな、立派な農民道に立脚し得られる所の機能を與へて、維持育成して行くと云ふことが非常に大事な點ではないかと考へられます、唯近來の小農家と申しますか、それは戰時中に中堅農家が已むに已まれぬ事情で、勞力不足に依つて簡單に時期を決めて貸し與へたものが、今度の自作農創設に依つて取られなくなる、詰りは自作農創設の對象になつてしまふと云ふことになり、今は非常に苦しんで於るのみならず、私は勿論東北で、山形縣の者でございますが、山形縣は一毛作でありまして、六段以下の小農家は要配給農家、或は丸農農家、兼業農家であります、さうした所の農家は、畜力もなければ、技術に於てはもうひどく低下して居ります、其の他増産の熱意に於ても非常に缺ける所が多いのでありまして、斯う云ふものが農村を亂すことが夥しいと云ふことになつて居るのであります、之を段々と御方針に依りまして、本當の適正規模農家に變へさせるやうに、そこには失業問題と云ふことも出て參りませうし、或は土地の國家管理と云ふやうなことも豫想されませうし、幾多、困難はある譯でありますけれども、之を今のうちから乘越して行かなければ、悔ひを千載に貽すと云ふことに相成るのであります、言ひ足らぬやうでありますが、此の點に付て、次官のそれ等に對する御答辯を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=2
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003・楠見義男
○楠見政府委員 土地の問題に付ての御尋ねでございますが、昨年の暮に第一次の土地改革と致しまして、農地調整法の改正案の御協贊を得たのでありますが、今囘關係方面との連絡を密に致しながら、第二次の土地開放の問題が只今研究をされて居ることは御承知の通りであります、此の土地開放の狙ひ所は、出來るだけ多くの小作農をして、土地を持ち得る機會を與へると云ふことに大きな狙がある譯でありますが、併し又一面、唯今御述べになりましたやうに、將來の農村の在り方と云ふやうなことから考へて參りますと、健全な農家を育てて行く、又維持を致して行くと云ふことも、是は申すまでもなく極めて大切なことである譯であります、御述べになりましたやうに、適正な農家と云ふものは、是は勿論北海道、内地、又内地に於きましても東北、關東、近畿、九州と云ふやうに、其の所に依りまして、又生産事情に依りまして其の規模は異なりますけれども、其の他方々の生産事情、又經營事情を考慮に入れました適正農家と云ふものは、どうしても維持育成をして行かなければならぬ問題であると私共も考へて居るのであります、御承知のやうに、戰爭中に於きまして、所謂皇國農村確立運動と云ふやうなものが大きく登場致しましたのも、さう云ふ趣旨に外ならないのであります、今後の此の土地開放の問題に關聯致しましても、同樣に土地の經營を能率化致しますると同時に、出來るだけ之を適正にして參ると云ふ觀點から、色々耕地の集團經營化と云ふやうな問題も取上げられて居るやうな次第でありまして、所謂飯米農家と申しますか、兼業農家が、出來るだけ專業農家としての適正な營營に當つて行くことに付きましては、私共も全く同感で、此の心持を以ちまして今後に處して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=3
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004・山木武夫
○山木委員 次は、滿洲方面に開拓民として、參りました諸君、又青少年義勇隊として參りました者が、家族を合せて十數萬になつて居ると思ひますが、それ等の人達が今そろそろ歸つて參りました、話は別ですが、開柘をやつて見ますと、唯食糧に困るから自分も開墾しようと云ふやうな、非常に淺はかな考へで開拓地に入つて居る者が相當あると見えまして、其の出入が非常に頻繁であります、さう云ふ所に持つて來て、農を以て起たうとしました開拓民が幸ひ歸つて來られるので、それを上手に用ひますならば、内地の増産にも一段の效果が現はれると思はれます、今の所は個々の地方々々で、其の受入態勢を作つてやつて居りますが、是は政府の強力な後押しがなければ出來ないと云ふ點が相當あるのであります、例へば開墾地を、此處ならば宜い、普通ならば殘つて居りますものは瘠地が多いのでありまして、それより非常に身近に個人有となつて居る開墾地が澤山ありますが、それは中々手放さぬと云ふやうなことで、色々な點で此の眞面目な開拓民を受入れるのに今非常に困難をして居るのであります、言葉短かに申上げますならば、特に開拓民に對する受入の方法と云ふものに付て、政府は何か御考へがありますかどうか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=4
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005・楠見義男
○楠見政府委員 滿洲開拓に行かれた方々、或は御述べになりましたやうに、青少年義勇隊の人々が、あつちこつちから内地に歸り得る機會が多くなつて參ると思ふのであります、是等の人人の受入態勢の問題に付ての御尋ねでございますが、私共も、内地で御承知のやうな緊急開拓計畫を樹立致します際に、當然是等の人々の受入に付ても考へなければならぬと、當初から實は考へて居つたのであります、特に滿洲開拓の方々は、現地に於て具さに開拓の建設の當初から經驗をされたのでありまして、特に開拓に付きましては經驗深い、又本當に未開地に於て、未墾地を熟田とする、熟畑とするまで、特に其の方に努力を拂はれ、經驗を積まれた方々であります、又御述べになりましたやうに、其の土地で骨を埋めると云ふやうな固い開拓精神を持つて行かれた方々であります、是等の方々が中心になつて開拓事業が進められますならば、内地に於ける開拓事業と云ふものも、一部に現在ありますやうな中途半端な氣持でなくして、必ずや將來の希望は我々としても持てると存ずるのであります、隨て現在に於きましては、各府縣で色々計畫致します場合にも、特に是等の人々に付きましては優先的に考慮を拂ふ、又御承知のやうな開拓増産隊でありまするとか、或は開拓建設隊と云ふやうなものにも、便宜加入の途を設けて居るのでありますが、更に中央の事業と致しまして、百町歩以上の大きな面積に付ての開拓計畫を樹立致しまする場合に、其の一部を特に留保致しまして、是等の人々の歸つた時の用に當てるやうに、現に準備して居ることは御承知の通りであります、更に救出の問題に付ての御尋ねでございますが、結局私共と致しましては、中央で之を強力に推進をする機會を與へる必要があらうと存じまして、海外の引揚者の就勞對策委員會と云ふやうなものを設けて居るのであります、是は開拓關係としましても、さう云ふやうな委員會を設けまして、それ等は世話をなさる方々の代表者に委員になつて戴きまして、全般的に此の滿蒙開拓民の受入と云ふことに付きましても特に力を入れて參りたい、斯樣に考へて居りますので、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=5
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006・山木武夫
○山木委員 其の次は家畜の問題でありまするが、御承知の通り只今は飼料の關係で家畜の數が非常に減つて居ります、直接食糧の問題に關係ないのですが、餘りに主食の問題が緊迫して居りますので、動もすれば此の家畜の問題が等閑視されて居ります、併し能く之を考へて見ますと、肥料の問題の解決からしましても、それから現在のやうに、主食が此のやうな過重な責任と言ひますかを負はせられて居るのも、家畜の數の減つたのが最も原因して居るのぢやないかと云ふ風に考へて居るのであります、鷄も居らなければ、豚も居ない、でありますから此の濃厚な食糧に依つて主食が「カバー」される點が相當多いにも拘らず、それが等閑視されて居るのでありますが、實際考へて見ますと憂慮に堪へないものがあります、併しそれを解決する根本策は、勿論是は飼料の増産でなければなりませぬ、併し今此の限られた土地に於て、飼料をどう云ふ風に生産され、それから他の國との關係に於て、飼料はどう云ふ風な方向に向つて解決の途を探して居られるかと云ふことを、御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=6
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007・楠見義男
○楠見政府委員 家畜の問題に付きましては全く御説の通りでありまして、結局現在は乏しきものを家畜と人間が分け合つて居る、斯う云ふやうな情勢になつて居るのであります、此のことは先日も此の委員會で申上げました通りでありまして、結局じり貧に惡循環を致して、一層食糧事情を苦しくし、又其の基礎であります生産事情を惡く導いて居るやうな情勢なのであります、隨て是は出来るだけ、或る時には其の惡循環を斷ちまして、さうして寧ろ逆に、雪達磨式に伸びて行く方向に轉換して行かなければならぬと、豫ねがね思つて居るのでありますが、何分にも目前の食糧事情の窮迫の爲め、現在のやうな状態を續けて居るやうな次第であります、隨て唯今申しますやうに、思切つて此の惡循環を好循環の方に振向ける爲に努力しなければならぬと思つて居るのであります、そこで此の轉換は、中々今申しますやうに、目前の食糧事情の現状でありますから出來ないのであります、併し例へば、是も申上げましたやうに、乳牛の飼料問題に付きましても先般手を打つたやうな次第でありますが、未利用資源としての甘藷利用、其の他色々從來の家畜飼料として用ひられて居りましたものは、出來るだけ早く本來の家畜の飼料に戻し、さうして之を食糧増産の肥料代りに使ふと云ふ方向に向ひたいと、私共色々考へて居るやうな情勢であります、併し差當りの問題と致しましては、結局國内に於きましては御承知のやうな情勢でありますので、司令部の方にも御願ひを致しまして、麥皮の輸入を懇請を致して居るのであります、數量ははつきり申上げられませぬが、逐次此の輸入麥皮の實現は見つつあるのでありまして、既に是も或は御承知かと思ひますが、第一船は先月名古屋に入つて參つたのであります、色々此の食糧或は麥皮の輸入關係に付きましては、是が餘りに宣傳をやられますと、實は其の入れたのは食糧事情が非常に苦しいと言はれて居る地方から、それを入れて居るのでありまするので、非常に「デリケート」な問題でありますから、餘り大きく是は喧傳は出來ないのであります、併し國内に於きまする飼料事情も十分諒解を得まして、さう云ふ風に著々と實現を見つつあることを、此の機會に申上げて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=7
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008・山木武夫
○山木委員 其の次は供出促進の爲に、政府では報奬制度或は見返品等に依つてさう云ふ方面に力を注がれて居られます、私共村に居りまして、斯うしたことが最初に現はれました時に、折角農民道に立脚して一生懸命やつて居るのに、政府は我々と取引するのかと云ふやうに非常に憤慨したものの一人であります、併し段々の情勢に於ては、唯精神一點張りで以て供出を促進させると云ふことは成立ちませぬ、農家は色々な斯う云ふ必需品を要求して居ります、是は已むを得ないことでありますが、併し是までの供出の状態を見て居りますと、一番大きく働くのは指導者の如何であります、同じ環境にあり、隣接して居ります町村でも、それが町村長であつても、農業會長であつても、或は非常な熱心家でも、それは場合に依つて違ひますけれども、一村にさうした眞面目な、眞劍な人が一人出ることに依つて、隣村は七〇%或は六〇%で終つて居るにも拘らず、優に一〇〇%供出して居ると云ふ實情でありまして、是は今後と雖も決して忽せには出來ない問題であります、而も本當に今の國情から申しますと、少くとも農民だけでも本當の道義心に立つて、同胞愛に燃え立つて、さうして供出の如きは間髮を入れずに達成すると云ふやうなことが、もつともつと勸奬されて然るべきものだと考へて居ります、所が段々々々と物質的な取引の方に向つて參ることを非常に遺憾と思つて居るのであります、斯う云ふ精神教育と云ふのは大袈裟でありますが、さう云ふ人達から本當の意味に於て働いて貰ふやうな、さう云ふ運動でもありませぬかさう云ふことに對して、どう云ふ風に政府は進めてあられますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=8
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009・楠見義男
○楠見政府委員 單り供出の問題に限りませず、農村に於きまする色々の増産關係は勿論、或は消費關係に付きましても、是が旨く行くかどうかと云ふことは、一に懸つて唯今御述べになりましたやうに、指導者の如何に存すると思ふのでありまして、是は非常に困難な下に於ける増産事業に於て、或は又最近のやうな世相の下に於ける供出事情に於きまして、其の地方中心の指導者の方の宜しきを得ました爲に、非常に好成績を上げた事例は少くないのであります、御述べになりました點は私共と致しましては全く同感と存ずるのであります、唯現在の一般の情勢は、是も只今山木さんから御述べになりましたやうに、一面に於て其の道義心の昂揚、或は私共は從來之を農民道と稱して居つたのでありますが、古來からの眞に我が國としての美風でありまするのみならず、國の礎でありまする農民道の振起と云ふことを、機會ある毎に農民の方々に愬へ、又其の協力を得て居つたのでありますが、一面に於ては御述べになりましたやうな風に、此の農家必需物資の要求と云ふものも切實な聲として聽かされまする爲に、私共は是は單に物で物を鈞ると云ふやうな觀點でなく致しまして、農家の勞に報いる、御禮をする、斯う云ふやうな政府としての感謝の意も含めまして、現在報奬物資の放出に努力も致して居る譯であるのでございます、根本は何と申しましても、御述べになりましたやうに、農民道の振起と云ふことにあらうと思ふのでありまして、此の點は今後と雖も、機會ある毎に之を農家の方方に愬へ、又中間指導者の方々の協力を得、是非是は國の礎として育てて參りたい、斯様に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=9
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010・山木武夫
○山木委員 それに付きまして色々な方法もございませうけれども、現在行はれて居ります農民道場の如きものを擴充して、各地にああした農民道の修養道場と云ふものを積極的に御作りありたいと思ひます、是は勿論同感であられることと思ひます、どうか一つ折角御骨折を願ひたいと思ひます
それから最近水害が頻發して居りますが、是は戰時中河川工事の不完備、澁滯と云ふやうなことに勿論痛切な原因があると思ひます、併し其の原因たるや、山林の荒廢が私は一番恐るべきものではないかと云ふ風に考へて居ります、さうしまして山林を逸早く植林させてはどうかと云ふ風に、色々實際問題に於て考へ、又行ひつつありますが、二段歩や三段歩の山地の所有者ならば片手間で、家庭勞力で植林も出來ますが、少し大きくなりますと、高い種苗を買つて、それを植付けると云ふことは言ふべくして行はれない現状であります、でありますから地主と言はれる人達は、其の心持が本當にあつても植林は殆んど進んで居りませぬ、斯う云ふことが一面に於てはそれだけの損害となります、是は政府に於て、大きな力を茲に注いで、一時も早く植林の完成に急がなければならぬのぢやないかと云ふ風に考へて居ります、勿論機を逸せず當局としては力を致されて居るとは思ひますけれども、さう云ふ方面に對しては、今後どう云ふ風な形に依つて助長されますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=10
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011・楠見義男
○楠見政府委員 唯今御述べになりましたやうに、最近の水害或は旱害の大きな原因が、戰時中に於きまする濫伐の結果に基いて居ると云ふことは、私共もはつきりとそれを認められるのであります、即ち戰前に於きましては、國内で三千萬石乃至四千萬石の伐採量で、殘り千萬石乃至二千萬石は國外から輸入を致して居りましたのが、戰爭が始りましてから輸入の途が斷へ、而も需要量は或は八千萬石、或は九千萬石、一億萬石、斯う云ふ風に上つて參つたのでありまして、之を總て國内の伐採に依つて補つて參つた、而も植樹の造林がそれに伴ひませぬでした爲に、所謂植伐不均衡が漸次其の害を今日に及ぼして居るやうな次第であります、隨て私共としましては、國土保安の觀點から申しましても、亦最も重要な食糧増産の觀點から致しましても、此の植伐不均衡を速かに是正し、造林に徹底を致しますると同時に、災害防止の林業施設を擴充致して參らなければならぬと、深く感じて居るやうな次第であります、實は御承知のやうに、森林治水事業に於きましては、第一期計畫、第二期計畫と引續いて實施を致して參りました、現在は第二期森林治水事業の末期に當つて居るのでありますが、同樣に是も御承知の、災害防止林業施設としまして、是も年度計畫で立てて居りました、荒廢林地の防止に關する施設も、同樣に現在は其の年度計畫の末期に近づいて居るのであります、隨て現在は其の既定計畫に從ひまして實行を致して居るのでありますが、來るべき新規の計畫に對しましては相當根本的に、又大規模の森林治水の事業に沒頭しなければならぬと考へられるのであります、現在は既に先般の追加豫算の際にも御承知願ひましたやうに、本年は根本的に現在災害關係又森林治水關係に付きまして調査を致しまして、さうして之を將來の基礎計畫の方に供する、斯う云ふことで一方に於きましては既定計畫を進行致しますと同時に、それに引續く新規の計畫も基礎調査を現在致して居る、斯う云ふ状態でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=11
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012・山木武夫
○山木委員 此の點は小さい問題のやうでありますが、現在行はれて居ります普通水利組合法でありますと、此の水利組合と實際耕作して居ります所の關係者とは、相當程度離れて來て居る現状にあります、是は惡い言葉で申上げますと、小さい政治の遊びのやうな形に相成つて、中々耕作者の要求する所とぴつたり來ないやうな現状になつて居ります、幸ひ此の農業會は既に強力なものになつて居りますし、普通水利組合の全部を農業會に包含させてやることに依つて、そこに摩擦もなければ、仕事が正確に實現されて參りますし、是は私共の地方のみならず、各地に於てさう云ふ要望があることと思はれます、此の際どう云ふ風に御考へになつて居られますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=12
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013・楠見義男
○楠見政府委員 其の點に付きましては私詳細承知を致して居りませぬが、結局此の圓體の問題に付きましては、御承知のやうに色々の體團がありましたのを、戰爭中統合し、是が又段々と分化をして參るやうな傾向にある譯でありますが、併し共通的の事柄を取扱ふもの、即ち唯今御述べになりましたやうな耕地に關する組合と申しますか、團體制度が、新しく今後の團體の問題に付て檢討致します場合には、それと密接不可離の、又一緒にした方が宜いと云ふやうなものに付きましては、當然考慮を致して然るべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=13
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014・山木武夫
○山木委員 それは是非實現して戴きたいことを御希望申上げます、是で私の御尋ね申上げたいことは全部終りましたが、私の非常な下手な發表に對して、次官は非常に懇篤なる御説明を戴きまして、洵に有難く感謝申上げます、是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=14
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015・岩本信行
○岩本委員長代理 井出一太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=15
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016・井出一太郎
○井出委員 數日來の質疑應答に依りまして、食糧緊急措置令は固より、日本の農業政策全般に對する色々な角度からの檢討が加へられましたので、敢て蛇足を加へる必要もないまでになつて居りませぬ、私は今までに觸れられませぬでした若干の問題を取上げまして、當局の所信を伺ひたいと思ふのであります、後程釀造關係のことで御尋ね致しまするが、大藏省委員の中御越し願へるならば、さう云ふ御手配をして戴きたいと思ふのであります、それは後廻しに致しまして、最初に伺ひたいことは、曩に苫米地委員の御質問もあつた譯でありますが、それをもう少し掘下げて御答辯を得たいのであります、所謂強權の發動に付て、政府は何處まで之を強行する肚があるか、併せて現在の米穀年度に於ける需給計畫の面に於ては、一體何「パーセント」位の所で謂はば仕上げをすると申しませうか、鳧を付けると申しませうか、さう云ふ見透しを御持ちであれば伺ひたいと云ふことであります、是はもう御存じの通り、現在は供出の時期を遙かに外れて居つて、所謂傳家の寶刀でありまする此の措置令が、若干の效果はあつたらうと思ひますけれども、今日に至つては、果してそれまでの斬れ味を示したか、傳家の寶刀を拔いた以上は、是はやはり業物であるか鈍刀であるか、さう云ふ斬れ味を示して戴くと云ふことでなければならぬと思ふのであります、先頃の農林大臣の答辯の際に伺ひますと、未利用資源を除いた現在の買入數量は豫定量の七九%餘、檢査數量に於ては八一%餘と云ふ風になつて居るのであります、現在の段階では最早之をさう餘計に「パーセンテージ」を高めると云ふことは困難な状況になつて居ると思ふのであります、さうして一方是は食糧管理局あたりから出た數字かと思ひまするが、此の米穀年度に於ては、究極に於て六十萬「トン」の輸入食糧を貰つても尚且つ約四百萬石、凡そ一箇月分の食糧が此の米穀年度に於て不足する、斯う云ふことに聞いて居るのであります、其の根據となる本年度の供出の「パーセンテージ」は、一體どう云ふ程度で仕上げをするかと云ふことを伺ひたいのであります、先程來の論議に於て、強權發動を成べくやりたくないと云ふやうな御答へもあつたのでありますが、之を此の儘にして置きますと、やはり正直者が馬鹿を見ると云ふ現象が起りますし、今後の麥とか馬鈴薯とかの供出に於て、市町村調整委員會を活用して、其の方面で米に於て未完了の分は考慮すると云ふやうな御話もあつたのでありますが、それがとことんまで、必ず百「パーセント」までさう云ふ麥や芋を通じて出さしめると云ふ強い肚を御持ちであるか、若しそれをやる以上は、農林省の基礎數字と申しますか、割當方法に於て、絶對に是が的確なものである、斯う云ふ信念を御持ちにならなければ、是は出來ないことになるのであります、其の邊の所信を伺ひたいと思ひます、昨今謂はば食糧對策が後手後手と後から現象形態を追つて參ると云ふ風な形である、謂はば人間の彈力性と申しませうか、生物に餌ありと云ふ風な言葉もあります通り、さう云つたものに縋つて、人間と云ふものは何かして食つて行けるものだと云ふ風な、是は別な面から、見れば、政治と云ふものは全く貧困と云ふよりは寧ろ「ブランク」である、斯う云ふ風なことになるのではないか、人間の持つて居る彈力性に頼つて居る政治では、是は政治ではない、さう云ふ點に於ける當局のきつぱりした肚の中を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=16
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017・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、先づ最初の強權發動を何處まで續けるかと云ふ點でありますが、此の點は昨日も農林大臣から此の席で御答へ申上げましたやうに、現在の供出制度と云ふものが存續致しまする以上、其の裏打として強權發動の規定は續けて參りたいと云ふことであります、勿論續けて參りまするけれども、運用方法に付きましては、色々愼重に又考慮を致さなければならぬ點があらうかと考へます、是は御承知のやうに、食糧調査委員會の申請を俟つて發動するのを原則として參りたいのであります、其の問題に關聯致しまして、供出をどこで仕上げるか、又其の問題に關聯して、六十萬「トン」を輸入しても尚ほ四百萬石不足するのをどうするかと云ふ問題に付て、一應御説明を申上げて置きたいと思ふのであります、と申しますことは、供出の切替へ、或は今年度の食糧に對する努力、又麥、馬鈴薯の供出制度とも密接な關聯を持つて居りますので、御説明を申上げて置きたいと思ふのでありますが、六千萬「トン」の輸入を見ましても尚ほ四百萬石不足することを發表致しましたのは、實は新しい食糧緊急危機突破對策を實施する前の現實の状態であつたのであります、即ち昨年來の供出状況は一面強權發動の措置を裏打と致しまして、是も度々申上げましたやうに、挺入れが三月の中旬から四月にかけて出來て、相當當時の食糧事情を改善は致したものと確信は致して居るのでありますが、併し結局供出の實情は底を衝いたと云ふ感を深くして居つたのであります、隨て此の状態で進みますれば、結局六十萬「トン」の輸入を見ましても尚ほ四百萬石の不足が見込まれる、勿論此の四百萬石の穴を埋める爲には、食糧輸入を更に申請をしなければならぬ譯でありますが、四百萬石と申しますと丁度六十萬「トン」に相當するものであります、隨て前の六十萬「トン」と合はせますと百二十萬「トン」を入れなければ穴が埋まらないことになりますので、此の四百萬石の不足を最小限度に切詰めることが、我々と致しましては當然の任務であつたのであります、隨て此の四百萬石の穴をどうすれば埋められるかと云ふことに、食糧危機突破對策の根本の狙ひ所が置かれた譯でありまして、既に御承知のやうに、一部では救縣米或は救國米として數字上は農家の手には殘つて居らないけれども、實際上には多少尚ほ殘つて居る餘裕の米を、救國米として救國運動に依つて出して戴く、又其の一部は結局麥なり馬鈴薯なりを此の年内に食ひ盡す、從來は御承知のやうに、麥に付きましては大體半分は農家の手に殘り、半分が一般の操作用に上つたのでありますが、而も全體と致しましては、大體食糧年度内に於きましては五割から六割が消費せられまして、殘りの四割乃至五割と云ふものは翌食糧年度に繰越されて居つたのが實情であつたのであります、併し今日の事態に於きましては倒底さう云ふやうなことは許されませぬので、本食糧年度内に馬鈴薯、麥は食ひ盡くすと云ふことを先づ私共としては考へざるを得なかつたのであります、食ひ盡くすと云ふことは、結局長く食つて居つたものを短い間に食ふことでありますので、それだけ農家の保有量と云ふものは或る場合に於きましては殖えて參るのでありますが、一面それを見返りと致しまして、從來の既定計畫では考慮を致して居りました農家用の配給米、或は還元米、斯う云ふやうなものを自家用の麥に依つて賄つて行くことから致しまして、政府の配給數量を減らす、配給數量を減らすと云ふことは、結局全體の枠をそれだけ縮めることになる譯でありますから、先程申上げました四百萬石を最小限度まで切り詰めることになる譯であります、此のことは同時に最初に御尋ねの、昨年の米との繋ぎの問題にもなる譯でありまして、七月一日現在に於きまする農家の食糧の保有状況を、市町村食糧調整委員會等が中心になつて戴きまして、はつきりと正確に之を掴んで戴く、其の殘存食糧と、それから新しい年度までの食ひ繋ぎの食糧として、どれだけ要るかと云ふことを十分に檢討して戴きまして、其の殘りを全部供出して戴く、結局斯う云ふことに依つて國全體が新食糧年度への、即ち新しい米が出るまでの食ひ繋ぎをやつて行かうと云ふことに致した譯であります、そこで仕上げの問題は、結局昨年の米と是からの馬鈴薯と麥とを綜合的に見ると云ふ結果になつた譯でありまして、結局供出の少かつた方々はそれだけ餘計に馬鈴薯なり麥を出して戴くと云ふことに依りまして、供出の一貫性、綜合性を持たした譯であります、是が出來ませぬければ結局出ないだけが其の縣自體の一般の純消費者の配給量を減らさざるを得ないことになり、又國全體の配給量が減ると云ふことになりますので、是も最初に申上げましたやうに、救縣運動とか、或は救國運動として農民諸君にも愬へ、又一面消費者の方々にも能く此の食糧事情を諒解して戴きまして、少しでも食ひ延ばしをして戴くやうに、現在私共と致しましては努力をして居ると云ふのが實情であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=17
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018・井出一太郎
○井出委員 當局の御苦心の程は能く分りました、今や缺配は一部大都市の問題ではなくして、全國的——如何なる米の寶庫と言はれる場所にも今將に缺配状況が起り掛らんとして居るのであります、只今の御答辯の中にありました救縣運動、或は救國運動、斯う云ふ聲が澎湃として國民の中からも起つて參らなければなりませぬし、又國民代表である議員などが、率先して中心にならなければいかぬ問題であると思ふのであります、此の食糧に對して救國運動を起すと云ふことは、政府としては、大分以前から斯う云ふことを口にされて居つたやうに記憶致しますが、若し何等かの構想がおありになりますならば、それを御示し願ひたいと思ひます、それに關聯致しまして、救國運動は更に縮まつて救縣運動になり、救縣運動は救郡運動になり、是が救村運動になり、斯くては部落、更に小さくなつては親類縁者と云ふ風な範圍に縮小されて行く傾向があるのであります、之を單に府縣「ブロック」制とか、農村「セクショナリズム」と云ふ風な言葉で片付けるには、現在餘りに深刻な所まで參つて居るかに見受けるのでございます、各地の食糧事情を見まするのに、或る縣に於てはまだ相當、何十日分位の米を持つて居る、然るに片方ではもう既に十日、二十日缺配である、斯う云ふ凸凹を何とか是正出來ぬものであるか、是は本會議でも若干さう云ふ問題に觸れられて居りますが、其の隘路として輸送力の問題がありはせぬか、運輸關係の政府委員がいらつしやいませぬが、輸送力の缺陷ありや否やと云ふ點、農林關係で御分りになつて居つたならば、それを御説明戴きたいし、更に此の府縣「ブロック」制と云ふ風なものが解消出來ないと云ふことは、是は謂はば政治力の不足ではないか、若し自縣第一主義で以て「セクショナリズム」を固陋に守つて居る縣知事があるならば、斯様な者はどんどん首を馘ると云ふ位の決意を政府當局は示されなければならぬと云ふ風な考へを持つのであります、取敢ず今の二、三點を特に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=18
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019・楠見義男
○楠見政府委員 先づ第一救國運動に付て、政府として構想があるかどうかと云ふ點でありますが、是は昨年の秋に於きまして、食糧危機突破國民運動を、政府と致しまして提唱致したことがあるのであります、此の際に政府と致しましては、斯う云ふやうな運動は結局官製的運動に墮することの從來の弊を避けまする爲に、民間に於きまする各界、各層の方々の參集を求めまして、政府からそれを依頼致しますると同時に、其の運動は總て擧げて純民間運動として御願ひ致したい、斯う云ふことで出發致したのでありますが、併し當時の社會情勢竝に、やはり從來からの惰性と申しますか、考へ方の惰性もありまして、結局政府が呼び掛けたものに付きましては、官製團體と云ふ誤解を受けまして、中々思ふやうに進行致さなかつたのであります、是は御述べになりましたやうに、又私共もさう云ふ風に考へる者でありますが、此の種の運動は眞に盛り上る運動でなければ、結局單なる天降り的の、又官製的の運動に墮するのでありまして、隨て政府と致しましては、救國運動は一切此の盛り上る力に依つて、特に國民の代表であられます所の政黨の皆樣方の力を中心として、此の運動を展開致して戴きたい、斯う云ふ風に期待を致して居る状態でありまして、政府と致しましては何等之に付ては構想を持たない、又持たない方が宜い、斯う云ふ風に私共は考へて居るのであります
それから此の凹凸を是正して行く上に於て輸送力の缺陷がなかつたか、あつたか、斯う云ふことでありますが、此の點に付きましては、是も御承知のやうに昨年の末から極く最近まで、所謂赤字搬出と云ふものを全國的に致したのであります、是は未だ曾てさう云ふことを致したことはないのでありますが、食糧需給の觀點から時を稼ぐ爲に、本來であれば需給がとんとんである縣からも、赤字を出して縣外に出して貰つたのであります、併し是は純算術平均的には中々困難でありまして、結局私共と致しましては、出來得る最高限度までを實行すると云ふことで進んで參つたのであります、此の理由は、勿論輸送力と云ふものも一部にはございました、併し實は是は大きな問題ではなかつたのであります、偶偶最近の水害などで橋が壞れましたとか、或は一部小運送が思ふやうに行かぬと云ふやうな事例もありましたけれども、全體的の問題と致しましては是は大した問題ではないのでありまして、結局旨く行かないと云ふのは、又或る意味に於きましては已むを得ない事情でもあるのでありますが、例へば六月なら六月までを區切つて全部出して貰ふと云ふ場合に、それでは七月の食糧がどうなるかと云ふ目途がはつきりと付きませぬければ、出す方も中々思ふやうには出せないと云ふ、或る程度已むを得ない事情もあつたのであります、是等の點に付きましては、出來るだけ食ひ延ばしの方策を講じて、少しでも餘計に出して貰ふと云ふことで現在まで參つたやうな情勢であります
それから府縣「ブロック」の問題でありますが、勿論私共は良い意味に於ける「ブロック」、例へば四國なら四國と云ふ所は、本年は全體として不足でありますが、併し其の不足を四國内で先づお互ひの力を出し合つて、國の厄介になる前に出來るだけ自分達の力で賄つて行かう、斯う云ふやうな意味の地方「ブロック」と云ふものも本年は出て參つたのでありますが、一面に於ては、御述べになりましたやうに、惡い意味の「ブロック」思想と云ふものも本年は根強く出た地方もあるのであります、勿論私共はさう云ふやうな所に對しましては、地方長官に付きましても、相當嚴重に申入れ、又内務省とも十分連絡を取りまして、更迭或は辭めて戴くと云ふやうなことも致しましたし、將來も其の積りである譯であります、併しここで私共が痛切に感じましたことは、一面さう云ふやうなこともございますが、又他面に於て、最近は段々一人の長官なり、或は一人の經濟部長の力だけでは、中々「ブロック」の思想を打破し得ないやうな根強いものが、末端にまで滲透しつつあるやうな空氣も察せられるのであります、勿論此の點に付ては、私共は中間の指導者の方々にも、是は言葉は惡いかも分りませぬが、大きな責任があると思ふのでありまして、さう云ふやうな指導をせらるる所もあるのであります、結局將來は一人の知事、或は一人の經濟部長の力でなくして、全體の、特に中間の指導者の方々、是等の人々に能く國の全體の事情を呑込んで貰ひまして、それ等の人々の協力を得て、農民諸君にも説得して戴く、斯う云ふ風に縣全體の努力に依りませぬければ、中々將來我々の心配致しまする此の府縣「ブロック」と云ふものは容易に打破し得ないのではないか、斯う云ふ風に考へるのでありまして、是等の點に付ては、別の觀點から今後の努力を私共に課せられて居る問題である、斯樣に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=19
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020・井出一太郎
○井出委員 供出の問題が單なる官僚機構の「メアニズム」と云ふやうなものだけでは片が付かぬと云ふ今の御話は、私も非常に同感であります、之に關聯致しまして、例へば食糧營團、農業會乃至は地方事務所、斯う云つた一連のもの、之を官僚機構と呼び得られますかどうか分りませぬが、斯う云つたものに對する不信頼の聲が非常に高くなつて參りました、一面人民管理と云ふ風な聲が起つて居ることは御承知の通りであります、此の人民管理なるものは如何なる内容を持つものであるか、私も詳しくは存じて居らぬのでありますが、まあ此の背後には何等かの政黨の指導と云ふ風なものも多分あるであらうと思ふのでありますが、斯う云つた食糧管理人民委員會と云ふ風な形のものが漸次出來まする場合には、是は所謂人民の名に於て二重權力が存在して參ると云ふ風な傾向を招致しはしないか、而も場合に依つては、此の人民管理の名の下に却て供出の熱意を冷却させるやうな方向を取ると云ふ、誤つた指導も行はれて居るやうな場合もあるやうでありまして、是は洵に遺憾であります、出さない人民管理と云ふことであつては、是は洵に「ナンセンス」でありまして、是は恐らく何等の法的根據を持つては居らぬ譯でありますが、政府は斯う云つた組織を此の儘に放任されますかどうか、放任して置く時には洵に憂慮しなければならぬ事態が起るだらうと思ふのでありまして、場合に依つては此の熱意を冷却させると云ふ風な煽動に對しては、本措置令第十一條の罰則の適用をしても然るべきものではないか、私はこんな風に思ふのであります、併しながら先程の次官の御説明の中にございましたやうに、單なる官僚機構だけでは駄目である、人民の盛り上る民主的な供出なり、食糧管理なりの方向を採り入れると云ふことは、非常に必要であるのでありまして、斯う云ふ長所を今後の、例へば市町村食糧調整委員會と云ふやうなものの中に相當廣範圍に、大規模に採用されるやうな意思がおありではないか、以上の點を御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=20
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021・楠見義男
○楠見政府委員 人民管理の問題に付きましては、私共と致しましては御承知のやうに、現在主要食糧に付きましては、國の最も統制ある管理の下に之を致して居るのであります、隨て此の國の管理が紊されると云ふやうなことに付きましては、特に同意を致し兼ねるのでありますが、只今御述べになりましたやうに、食糧營團の問題に致しましても、或は供出の問題に致しましても、民主的な方向で以て之をやつて行くと云ふことに付きましては、私共も十分從來の方針に付きまして檢討を致さなければならぬ點が多々あるのであります、隨ひまして、現に御承知のやうに、私共の關係致して居りまする仕事、即ち食糧の調整委員會の問題に致しましても、或は隱退藏の供出促進に關しまする官民合同の委員會の運營に致しましても、總て斯う云ふ民主的な方向で以て、出來る限りやつて參りたいと云ふ風に考へて居るやうな次第であります、大體私共は、御述べになりました點と同樣な考へを持つて進んで行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=21
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022・井出一太郎
○井出委員 どうも長くなつて大變恐縮でございますが、もう一、二點御尋ね致したいと思ひます
本措置令第九條は、青果物或は魚介類に對する統制の規定であります、昨秋是等の生鮮食料品に對して統制の枠が外され、一應自由市場に是が任されました、其の時の經緯は先達て河合厚生大臣が此處に御出席になつて御説明があつたので諒承致して居るのであります、昨秋枠を外した時期と云ふのは、謂はば野菜は冬枯の時期に至るし、魚類は時化の時期になる、而も目前暮と正月と云ふ風な大需要期を前に致して居る、統制の枠を外すには洵に惡い時期であつたと私共は思ふのであります、今後例へば漁場が擴大されると云ふ風なことに依つて、漁獲高は相當に多くなる可能性をも持つて居りませうし、野菜と云ふ風なものも、蔬菜栽培が一番算盤に合ふと云ふ風なことから、どんどん出て參ると云ふことも考へられるのであります、適當なる時期若しありとするならば、此の枠をもう一遍外すと云ふ風な、詰り生鮮食料品と云ふものは、河合大臣も言はれましたやうに生き物であつて、中々一筋繩ではいかんと思つて居るのであります、難かしい、斯う言はれましたが、農林當局に於ては、若し適當なる時期があれば、此の枠を外す考へは御持ちになつて居りますかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=22
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023・楠見義男
○楠見政府委員 生鮮食料品に付きまして、需給事情が許し、又價格問題を中心と致しました經濟事情がそれを許すと云ふやうな事態が來ますれば、唯今井出さんの御述べになりましたやうな事柄が問題になる譯でありますが、併し現在の見透しに依りましては、當分は斯う云ふ風な事態は中々難かしいのぢやないかと云ふ風に、私共は考へて居りますので、生鮮食料品の統制を撤廢すると云ふことは、現在に於きましては私共は全く考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=23
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024・井出一太郎
○井出委員 唯今の次官の御答辯は、實は私の意見とは若干違ふのでありますが、之を論じて居れば水掛論になりますので、此の程度に致します、最後に、先程申しましたやうに、大藏關係はどなたか御見えになりませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=24
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025・岩本信行
○岩本委員長代理 今連絡を取つて居りますが、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=25
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026・井出一太郎
○井出委員 いや、それならば後の機會で宜しうございますから、農林省の關係だけ今伺つて置きます、六月一日から七月末日に至るまでの二箇月間釀造禁止と申しませうか、酒類は固より、味噌醤油の釀造まで禁止をされたやうであります、是は勿論此の時期と致しましては、謂はば「マッカーサー」司令部に依つて食糧まで輸入して貰つて居ると云ふ現状である、國民が「アルコール」飮料から遠ざかると云ふ風な意思表示をすると云ふことは、私は非常に效果が多いと思つて居ります、先達て味噌、醤油の問題に付ては、どなたかの發言に對する御答辯で承知を致して居りますが、日本酒でございますけれども、固より腹を滿たすことの方が醉拂ふことよりも先である、此の論理は當然である、此の論理の正當性の前には酒は何等の自己主張を爲す譯に行かぬと思ふのであります、併し酒類自體の持つて居りまする消極的な強さと申しませうか、是は中々根強いものであると思ふのであります、最近氾亂して起ります「メチール」の問題、是などは此の適切なる例證であらうかと思ふのであります、隨て此の二ケ月間を區切つての釀造禁止と云ふ問題が、今後更に何處まで延長されるかと云ふ風な點に付ての、御見透しが御ありであつたならば之を伺ひたい
それからもう一つ、之に併せまして濁酒の問題でありますが、是は正常なる「ルート」に乘るべき主要食糧を非常に暗々裡に使ひ果して居ると云ふことは申上げるまでもないことでありまして、此の量が一體どれ位あるか、全國農業會あたりの推定に依りましても、是は百萬石を下るまい、斯う申して居ります、昨年酒造米として配給されましたものは、米にして六十五萬石、それよりも多い所の百萬石と云ふやうな數量が濁酒に使はれて居るのでありまして、濁酒が衞生上惡いとか、或は非常に不經濟であるとか、乃至は遵法精神に對する大きな妨げになると云ふ風なことは、是は申すまでもございませぬが、併し若しも酒類の釀造を禁止した曉には、是は現在推定される百萬石と云ふ風な濁酒密造に使はれる數字は更に殖えて、百五十萬、二百萬と云ふやうな數字にならぬとは保障し難いのであります、さう云ふ點に於ては寧ろ若干の酒造は許すことの方が宜いのではないかと云ふ風に私は考へるのであります、其の點に付ての御意見を伺へれば結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=26
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027・楠見義男
○楠見政府委員 酒の釀造問題竝に濁酒の問題に付ての御尋ねでありますが、實は本年の酒は、日本酒の仕込に付きましては、是は御承知のやうに大體仕込の時期がもう濟んで居るのであります、寧ろ今後の造酒をどうするかと云ふことになる譯でありますが、此の點に付きましては、現在の所まだ政府としてははつきりとした態度は決めて居りませぬ、唯申上げたいことは、二つの考へ方があるのでありまして、此の點は唯今も井出さんから御述べになりました通りであります、即ち現在外國から食糧を入れて居り、而も其の食糧を輸出して居る國に於ても、小麥の釀造用向けを制限して居る、さう云ふ風に酒向けの小麥使用を禁止し、或は制限を立てて居る國から食糧を貰つて居る國が、其の食糧を酒に廻す、斯う云ふことは現在に於ては極力遠慮しなければならぬぢやないか、斯う云ふ考へ方が一つであります、是は私は其の通りだと思ふのであります、併し一面、例へば濁酒の問題に付て御話になりましたやうに、結局酒も明日の生産の原動力として農家の疲れを癒し、或は鑛山、工場等の勞働者諸君の疲れを癒す、斯う云ふ觀點から見ますと、結局私共としては此の點に付ても考慮を拂はなければならぬ、況や酒がない爲に非常に不經濟な使ひ方をした濁酒、又密造酒がどんどん出來て參ると云ふことになりますれば、是は却て國家經濟の觀點から申せば損になる譯でありますから、是等の點を十分檢討し、又關係方面に十分連絡し、其の時の食糧事情と云ふものの下に於て十分話合を致しまして、政府としては今後の問題に付ては態度を決めたい、斯樣に考へて居るのでありますが、現在の所は、今後の見透しをどうするかと云ふことに付ては、まだはつきり致して居りませぬ
それから味噌、醤油の釀造に付ての禁止があつたやうな御話でございましたが、味噌、醤油に付きましてはさう云ふことは致して居りませぬ、寧ろ是は原料難で苦しんで居るやうな状態でありまして、大豆も擧げて之を味噌の釀造に廻し、而も釀造を急がして居る、斯う云ふやうな情勢でありますので、此の點附加へて申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=27
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028・井出一太郎
○井出委員 其の味噌、醤油の問題でございますが、此の頃或る府縣で其の禁止令に便乘したと申しませうか、一應釀造家の手持原料をすつかり吐出させ、さうして之を食糧に廻すと云ふ問題が、やはり大分さう云ふ風に行はれた例がありますが、それは別に釀造禁止とは關係はないと考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=28
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029・楠見義男
○楠見政府委員 御話の如く、釀造禁止とは全然關係はないのであります、寧ろ是は其の縣の食糧事情が非常に窮迫致して居りまする爲に、例へば味噌原料の大豆と云ふものを一般食糧の用に供したい、其の爲に是は出して呉れ、斯う云ふことで、是は別に隱退藏でも何でもない譯でありますが、さう云ふことを申出て居る向もあるのではないかと思ふのであります、併し私共と致しましては、それは具體的の府縣は承知致して居りませぬけれども、私共は此の主要食糧と同時に、味噌と云ふものも非常に重要視して居るのでありまして、特に現在の此の原材料の關係、就中大豆が不足して居る状況から致しますると、さう云ふ所の大豆と云ふものは擧げて味噌の用に供し、さうして現在主食で困つて居りますやうな事態が、更に主食が解決致しました曉に味噌醤油で起り、依然として食糧の不安が續くと云ふことを出來るだけ緩和致しまする爲に、味噌釀造優先と云ふ建前を、實は政府としては立てて居るやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=29
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030・井出一太郎
○井出委員 一寸それに關聯して伺ひますが、國民榮養の點に於ける蛋白資源としての味噌、醤油の重要性は、唯今次官が仰しやつた通りでありますが、其の豆に對する——是は主として滿洲大豆と云ふことに相成りませうが、其の輸入の見透しと云つたものを若干御漏らし願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=30
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031・楠見義男
○楠見政府委員 滿洲大豆に付きましては、終戰直後に於きまして司令部に對しまして、滿洲大豆五十萬「トン」の輸入申請方に付て御願ひをしたのであります、併し御承知のやうな「ソ」聯治下の情勢でございまして、未だに滿洲との間の連絡は一切付かない、斯う云ふやうな情勢である譯であります、そこで滿洲の大豆に付きましては、現在の状態の下に於きましては一切手掛りなし、斯う云ふことを申上げざるを得ないやうな洵に殘念な状態であります、隨て是からの問題になつて來ますると、滿洲の事情が、段々と緩和されて參りますれば、是は御承知のやうに、滿洲の大豆は相當の生産力があり、又あの國に於きましては所謂換金作物として、大豆は農民の手から八割以上のものが市場に出るのでありますから、此の現在の情勢さへ緩和されますれば、入つて來る道は私は期待をして宜いのではないかと思ふのであります、併し現状は今申しましたやうな情勢である譯でありますので、國内産の現在の大豆の動員、或は是から生産される大豆の動員と云ふことの外には、唯今の所「アメリカ」に期待をする以外には、一寸途はないやうに承知致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=31
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032・井出一太郎
○井出委員 以上を以て私は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=32
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033・岩本信行
○岩本委員長代理 御諮り致します、丁度時間でありますから、休憩か散會かどつちかにしたいと思ひます、あとまだ七人程通告がございますが、今日は本會議もありますから是で散會致しまして、明日御骨折でも午前十時から開きたいと思ひますが、如何でせうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=33
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034・岩本信行
○岩本委員長代理 それではさう云ふことに致しまして、本日は是にて散會致します
午後零時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00619460709&spkNum=34
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