1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月十日(水曜日)午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 馬越晃君
細野三千雄君
大井直之助君 杉田一郎君
廣川弘禪君 八重樫利康君
神戸眞君 苫米地義三君
堀川恭平君 氏原一郎君
叶凸君 清澤俊英君
堂森芳夫君 北政清君
的場金右衞門君 山木武夫君
井出一太郎君 野本品吉君
志賀義雄君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
大藏事務官 池田勇人君
農林政務次官 大石倫治君
農林次官 楠見義男君
農林事務官 三堀參郎君
農林事務官 佐野憲次君
農林事務官 坂田英一君
農林事務官 蓮池公咲君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
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本日の會議に付した議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します――的場金右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=1
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002・的場金右衞門
○的場委員 私は生産の方面と、供出に關する方面と、配給に關する方面に亙つて御尋ね致したいのであります、生産に關しては現在農林省と致しましては、農地開拓に相當力を入れて居られるやうに見受けて居りますが、其の實際を現場に付て調査して見ますと、非常に茲に困難が伴つて居るやうに考へます、之を御研究であるか、又其の點を何とか是正して貰へるのか、此の點を御伺ひしたいのであります、復員者、外地からの歸還者、さう云ふ同情すべき此の度の戰爭犧牲者達が、職なくして府縣あたりの指導に依つて農地の開拓移民と云ふやうなことが行はれて居りますが、現在さう云ふ憐れむべき人達は大した資産を持つて居りませぬ、僅か千圓ばかりの金を貰つて歸つて、山の方へ開墾に行くと云ふことにしましても、開墾と云ふものは六箇月乃至一年先にならぬと食糧は生産出來ないのでありますが、其の間の生活に困りますので、行きたくても行けないと云ふのが實情のやうであります、現在の助成金と云ふものは農機具とか或は小屋を建てるとか云つたやうなことに對しては、或る程度の補助金もあるやうでありますが、其の生活に困る――開墾地から物が出來てそれで食つて行けるやうになるまでの生活の補助金、助成の途が講ぜられなければやつて行けないと云ふのが實情であります、是等の點に付て何とか新たに御工夫になつて居るものかどうか、是等を何とか處置して貰へるのかどうかと云ふことを御伺ひしたいのであります、私共は開墾する者が生活に困らないやうにして開墾をさせて、半年乃至一年先に生産物が出來て、それで營農が出來るやうにして行きますのには、相當國費を以て國自體が國營で開墾をすると云ふ位な御決心がなければ是は成功しないのぢやないか、斯う云ふ風に考へて居る者であります、其の次に開墾が出來ても是が營農の指導が徹底致しませぬと、折角開墾をしても再び荒地になる縣念があるのであります、從來とても良い地面で收穫の上る土地でありますと、取殘されて居ないのであつて、此較的條件の惡い所が今開墾する土地であります、其の條件の惡い所へ、農業に不慣れな者を移植して、それが農業で生活が出來るやうにしますのには、營農指導と云ふことに重點を置かないと、切角開墾しても再び荒蕪地になる、是は實例の示す所でございますが、此の營農指導に付て私共の聞きます所に依りますと、農業開拓營團の方へ一名かの營農指導者を置くと云ふやうなことになつて居るやうに聞きますが、他に指導者を持たない開拓營團が、たつた一人の指導者を以て、斯うした大變困難な營農指導を立派にやつて行けるかどうか、私共は從來指導組織を持つて居る系統農業會のやうなものへ、或る程度の人を與へ、金を與へておやり下されば、從來の指導者を活用することにもなつて、總ての點が立派に行くのではないか、營農指導と云つても、農機具のことや、種物のことや、其の他のことまで一切御世話をしつつ指導をしなければならぬので、物のないものを揃へてやると云ふことでさへも並大抵のことではないと思ひますが、更に不慣れな者を條件の惡い所で農業を指導しようと云ふのでありますから、是には唯一名の指導者をぽつんと持つて行つても到底不可能なことではないか、是も營團などへ置かないで、別に方法を御考へになつた方が宜いのではないか、斯う云ふことを考へる譯ですが、それに付てはどう云ふ御考へでありますか
三番目に只今開拓されて居ります場所は高い山の方にばかり氣が付いて、平地林で比較的便利な所で、土地の肥沃な所に相當取り殘された土地があるのではないか、殊に個人有の平地林と云ふものには手が著いてゐないやうに思ひますが私共ああ云ふ高山地帶に於ける農業と云ふものは極めて範圍が狹いし困難が伴ふので、さう云ふ所よりも寧ろ平地林に著目をし、耕地となり得べき土地であるならば個人有であつても、之を強制的に取上げて耕地にするやうなことを御考へになる意思はないかどうか、斯う云ふことを御伺ひしたいのであります、先づ耕地開拓の問題だけに付て一應御説明を戴いて、後績けたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=2
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003・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、第一點の海外からの復員者或は戰災者等で、特に極端に資力の薄弱な人々に對しまする入植の問題でありますが、此の點は只今的場さんから御話になりましたやうに、實際問題として入植を希望致しましても中々さう云ふ方面の不十分な爲に、思ふやうに參らないと云ふやうな事態も御話の如くあるのであります、隨ひまして海外復員者或は滿洲關係の人々等に封しますることに付きましては、昨日も此の席で申上げました通りでありますが、尚ほ是等の戰災者でありますとか、復員者等で資力の非常に薄弱な方々に對しましては、一時例へば開拓増産隊に收容致しまして、入植者としての資格なり、或は實力を付けて行くと云ふやうに致しますと同時に、他面それ等の人々を以ちまして歸農組合と申しますか、さう云ふやうな組織で入植を圖つて行く、斯う云ふ方向に進んで行きたいと思ふのであります、勿論さう云ふ風に致しまして入植を致します場合に於ける、例へば住宅の協同施設でありますとか、大家畜、大農具と云ふやうなものに付きましては、事情の許す限り開拓の事業主體をして是等の施設を講じ、或は貸與せしめると云ふやうな方法を講じますと同時に、大體現在の所豫定致して居りますのは、入植者に付きまして一戸當り一萬圓程度の融通を致すと云ふ方法で現在進んで居るやうな状態であります、尚ほ施設の問題に付きまして、特に國營の問題に付て御意見もあつたのでありますが、私共も開拓地に付きましては大規模であり、且工事の極めて困難であるものに付きましては國が直接國營事業として致しまするか、或は適當な團體に委託をして、全額此の經費を國庫で持つて開拓事業をやつて行くと云ふ途と、もう一つは比較的小規模のものに付きましては、是は的場さんも御承知のやうに、例へば農業會其の他地方の適當な團體に於てやつて戴きまして、之に對して補助を講ずる、斯う云ふ方法で現在進んで居るのであります
次に第二番目の營農指導の問題でありますが、是は全く抑せの通りでありまして、新しく入植をし、又其の土地に於て將來健全な農業經營をやつて行き、又協同的に色々共同經營をやつて參ります場合に於て指導者が最も中心であり、又最も必要でありますることは、既に滿洲に於きまする開拓事業の經驗に徴しましても明かでありまして、指導者が偶偶不適當でありまする爲に折角好い條件の下に入りました開拓村が何時まで經つても其の實が擧らない、そこに少々條件の惡い所へ入りましても、其の中心である營農指導者が眞に適格なる人を得ました爲に、一兩年經たずしてめきめきと開拓の實を擧げたと云ふことを如實に我々も見又聞かされて居るやうな状態であります、今後の國内に於きまする開拓に付きましても、中心は仰せの如く營農指導にあらうと思ふのであります、隨て此の指導者の養成と云ふことに付きましては特に政府と致しましても力を入れなければならぬ問題と考へ、御承知のやうに現在此の指導者を中心と致しまして養成を致して居るやうな状態であります、此の問題に關聯しまして、現在まで使ひました地方の農民道場、或は修練農場、斯う云ふやうな方面の活動に對しましても、非常に我々としましては期待を掛けて居るのであります、一面斯う云ふ所で指導者の短期の養成を致しますると同時に、新しく入植を致しまする人々に對する色々の講習、養成、斯う云ふやうなことに付きましても現在御承知のやうに努めて居る次第でございます
御尋ねの農業會方面に於ける指導の問題でありますが、先程申上げましたやうに、小團地に付きましては、是は全體としては面積は非常に多いのでありまして、本年も八萬町歩以上のものが之に依つて開拓せられることを期待致して居るのでありますが、是等の農業會が事業主體となりまして開拓を致した曉に於て、將來は結局其の農業會の構成員として入植者の方々が農業經營に參加する譯でありますので、先程來申しますやうに、農業會も色々各方面の指導施設と合せて特に力を入れて戴きたい、現在十分ではございませぬが、農業會には色々技術指導者もございまするし、又之に對しましては戰爭中から引續いて相當國庫と致しましては豫算的の補助を講じて居るやうな次第であります、是等の指導者の方々の今後の活動も我々と致しましては期待致したいと考へて居るのであります、最後に平地林に於ける開拓の問題であります、此の問題は御承知のやうに戰爭中平地林の開放其の他の施設は講じたのでありますか、中々思ふやうに參つて居りませぬ、又咋年の暮に出來ました農地調整法に依りましても、個人有のものに付きまして開拓に供しまする場合に於て、一般の農地開放と同じやうな措置を講じたのでありますが、併し是も必ずしも十分ではなかつたのであります、色々手續が面倒であり、又價格の點に於て、或は其の他の法的措置に於て不十分の點があつたと思ふのであります、是等の點は是からの第二次土地開放の問題と關聯を致しまして、それ等と併せて私共と致しましては十分考へて參りたい、斯う云ふ風に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=3
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004・的場金右衞門
○的場委員 次に肥料の關係に付て少し御伺ひしたいと思ひます、肥料の問題に付ては前の質問者から色々質問があつて、大體は承知致しましたので、重複する點は省くことに致しますが、九州の南部に於きましては、化學肥料固より大事でありますけれども、骨粉肥料が戰爭前は米、菜種等の主要な肥料に相成つて居つたのであります、所が支那事變以來支那の生骨が入つて來ませぬので、年々骨粉が少くなつて以來、菜種とか水陸稻は減産又減産の一途を辿つて居るのであります、此の支那の生骨輸入と云ふことに付て、之を促進して載くやうな御考へはないものですか、化學肥料と雖も今まで御聽きしますと、さう速急に増産が出來ないやうに聽きますので、之を補ふ意味に於ても最も必要なことではないか、殊に九州南部に於ては、他に見られない特殊の氣候が現はれて來ることも農林省當局は御承知であらうと思つて居ります
其の次に自給肥料増産に付て色々御心配願つて居りますが、私達は緑肥の増産と云ふことが手取早い自給肥料ではないかと思つて居ります、所が緑肥の種がないので、是が又出來ない、大豆とか「ザートウイッケン」とか、其の他の朝鮮、滿洲方面の緑肥種の輸入と云ふことに付て何とか手が付けられてあるものか、又今後どんなになさる御方針でありますか、之を御伺ひしたいのであります、更に畜産關係を盛んにすることに付て色々御尋ねしたいのでありますが、局長がお見えになるさうでありますから、是は後廻しにしたいと思ひます
次に増産の爲に最も大事な問題は、科學技術の導入と云ふことが農業の面に徹底しなければ是以上の増産が困難ではないかと考へますが、それに付て私達は地方の農事試驗場をもう少し充實さして、科學技術がもう少し個々の農家に浸潤徹底するやうになさる御考へはないか、現在此の技術導入の爲に農園を作ると云ふやうなことを目論んでやつて居られるやうでありますが、それはどの程度進捗して居るものであるか、是も御伺ひ致したいと思ふのであります、此の科學技術を普及徹底する爲には、科學教育が尊重されるやうになり、而も科學技術者、言ひ換へると技術者と云ふものがもう少し尊重されるやうな制度にして貰はなければ、科學技術と云ふものは發達しないと考へて居ります、縣廳あたりの役人に致しましても、技術者は常に下役にしか使はれないで、文官の方だけが上役で農業關係の事務を扱つて居られる爲に、能く農業のことが分らない人達に支配されるので、實際中央で御考へになつたことが良くても、地方ではそれが立派に運營されない嫌ひも多いと思ふのでありますが、地方に於ける農業關係の經濟部長或は課長とか云つたやうなものは、技術の心得のある者が坐るやうに出來ないものであるか、今後さう云ふ風に取計つて行かれる御意思はないか、是も併せて御伺ひを致します
其の次に農業に關する技術に付きましては、從來篤農家と稱する隱れたる技術の保有者が相當あると思ひますが、之をもう少し重用するやうに、さう云ふものを取り上げて農業の面に貢獻せしむるやうに、唯一部にそれが使はれて居つては勿體ないと思ふやうな面が相當あるのではないかと思ひますが、さう云ふものを取り上げて廣く普及させるやうな何等かの工面を今後されるものであるかどうか、私共は斯う云ふことに氣を付けて戴きたいと希望をするものでありますが、私共の希望が充されるやうな何か方法があるかどうかと云ふことを伺ひたいのであります、民間の發明發見と云ふやうなものに付きまして獎勵をなさるやうに、さう云ふものも非常に國家に貢獻するものであるから大事に扱つて貰ふやう工夫をして戴きたいと考へるのであります、尚ほ此の科學技術を農業の面に浸潤徹底するやうにする爲には、指導者の充實がなければならぬと思ひますが、現在地方に於ける農業技術者は極めて貧弱でありまして、而も之を充實しようとしても地方農業會などは金がないと云ふのが實情であります、現在は十倍の經費を要するので、收入も十倍なければ人も入れられない結果になつて居りますが、此の面に國庫は相當の用意があられるかどうかと云ふことを御伺ひしたいのであります、以上肥料の關係と科學技術の關係に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=4
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005・楠見義男
○楠見政府委員 第一點の支那の獸骨の輸入問題でありますが、是は現在までは燐礦石の輸入竝に硫安の輸入等に關しまして先づ全力を注いで居るやうな状況で、此處まで至つて居りませぬ、併し御話の點は能く今後の努力に俟ちたいと存ずるのであります、緑肥の問題も、御承知のやうに從來は滿洲大豆を二萬「トン」程度のものは緑肥用として、特に九州方面には注ぎ込んで居つたのでありますが、最近の情勢で結局差當り之を期待することは困難であります、勿論滿洲或は朝鮮等から輸入の途が開けました場合には、當然其の方面に向けられる譯でありますが、差當り困難な情勢でありますので、特に内地に於きまして原種圃、採種圃、斯う云ふ方面の擴充に努力を、致して參りたいと考へて居るのであります
科學技術導入の問題でありますが、例へば最近も甘藷苗に對しまする電力利用と云ふやうなことに非常な大きな力を擧げて居りまするし、又農機具等に對しましても、科學的に之を導入することが極めて大きな效果のありますことは申すまでもないのであります、隨て斯う云ふ面に對しましては現に少額ながら豫算も計上致して居るのでありますが、今後の農業經營の革新の爲には、此の方面に特に力を入れなければならぬと考へて居るのてあります、技術尊重の問題は、結局特に農業のやうな方面では、さう云ふことは勿論必要でありまして、農林省と致しましては、從來さう云ふ點は特に考へて參つた積りであります、技術者の方々で部課長として活躍を願ひました方も少くないのであります、地方の方は現實には中中そこまで參つて居りませぬが、要しまするに技術に對して非常に理解のある方々、文官事務系統の方でありましてもさう云ふ風な人々に手傳つて戴くやうに、農林省と致しましても常に努力を致して居るのであります、篤農家引出の問題でありまするが、此の問題は技術滲透の問題とも關聯を致して居るのでありますが、先程御尋ねになりました農事試驗場の擴充、或は末端まで技術を滲透させる方式に付きましては、是も御承知のやうに農業の技術滲透の方策と致しまして、技術者の人々の所謂隣組と申しますか、町村の技術者の人々、又之には篤農家の人々も加はつて貰ひまして、郡單位に數箇所の模範的な實驗農場式のものを作りまして、農事試驗場等の研究の成果を其の實驗場に移し、又下からの技術の色々な體驗を其處に持寄りまして、お互に技術を錬磨し、又技術を滲透して參る方策を豫算として考慮して居るのでありまして、此の面に付きましては大凡八千萬圓程度のものを年間豫算としては考慮を致して居るやうな状態であります、技術指導者、特に農業會の技術指導員の問題に付きましても、是は從來も先程申上げましたやうに、相當多額の經費を年々増加しながら參つたのでありますが、一面に於て事務が煩雜でありました爲に、技術指導員が本來の技術に專念することが出來ず、事務の方に忙殺されたと云ふやうな弊害もあつたのであります、段々と此の機構が變り、又國の色々の註文も變つて參つて居るやうな状態でありますので、又人も復員其の他で殖えて參つて居りますので、是からの技術指導員は本來の技術面に專念し得るものであると思ふのであります、同時に國と致しましては、勿論是は財政の觀點もこざいますが、財政の許す限り、又關係方面の事情の諒解の付きます限り、是等の點に付きましては助成の途を繼續して參りたい、斯樣に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=5
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006・的場金右衞門
○的場委員 農業技術と云ふものを尊重して戴くと云ふことに付ては、更に一般の御配慮を御願ひ致したいと思ひます、農産課長とか開拓課長と云ふやうな椅子に全く素人の、若い大學を出たばかりの人がやつて來て、邪魔にはなるけれども、地方では爲にならない課長が相當に多いと云ふことを私共は見て居るのであります、是等の點に付ては更に御配慮を御願ひ致したいと思ひます
其の次に戰災者農家の問題であります、南九州の方は非常に空襲が激しかつたので、町と云ふ町は殆どやられました上に、農村部落が非常に多數戰災の爲に燒かれた、農村部落は空襲の危險がないと云ふので、町の者も荷物を疎開して預けてあつた位でありますから、農村の者は農機具其の他の農業必需品は持出して居ないので、殆んど丸燒になつて居る、是等の戰災者農家に對して特別の農機具、衣料等の配給を御配慮願つて居るかどうか、現在我々が見る所では、どうもそれが出來ないので、非常に戰災者農家と云ふものは困つて居るやうであります、是は今から開拓して移植することよりも、耕地だけは立派にあるのですから、之に農機具を與へ、農業の出來るやうな形にしてやれば、直ちに増産が出來ますから、増産の上には最も效果的なことであるのに、鍬がない、鋤がない、鎌がないと云ふやうな憐れな實情にあります、是は能く御分りになつて居なければ、係官を派遣して具さに御調査を願ひたいと思ひます、御調査になつて居るならば、之に付ての御同情ある御處置をして戴きますやうに、特に御願ひを申上げる次第であります
それから是は多年の問題でありますが、食糧増産に關する奬勵金とか補助金と云ふやうなものの交付が、政府は呉れると言ひながら、一年先にもう増産が濟んだ後で、補助金や獎勵金が來ますので、それは何の金であるか百姓はさつぱり分らない、呉れると云ふ時には何か話があつて宣傳があるが、それは嘘だ嘘だと考へて居る、金が來た時には、何の爲めの金が來たのか分らないと云ふやうな行き方であるやうでありますが、此の補助金なり奬勵金を折角御使ひになるならば、金を出したから責任が濟んだと云ふやうな恰好をしないで、一つ其の金が最も有效に食糧増産の面に貢獻するやうに、前以てやる位の處置をして戴きたいと思ひますが、是は今まで通りしか出來ないものか、何か新たに今後效果的に使へるやうな方法を御考へになつて居るものであるか、私達は村なり、縣なりへ、是だけの金で是だけの増産をせよと言つて、餘り小さな條件を付けずに前金を呉れる位におやりになるならば、確かに效果が上るだらう、折角莫大な金を御使ひになるのに何にも役に立たないと云ふことを常に遺憾に考へて居るものであります、之に付ての御所見を御伺ひしたいと思ひます
尚ほ増産の面に付てもう一つ御願ひして置きますのは、支那事變以來風水害が非常に多くて、折角作況が好く出來たものが、一朝にして潰れてしまふ實情にあります、之に付ては非常に殘念に考へて居りますが、風が吹いても、旱魃でも、或る程度増産の出來るものは藷類であらうと考へます、其の安全な藷類に付て今少し――今まで非常に努力して戴いて居りますが、此の上ながら何とか工夫して戴くやうに御願ひをしたい、特に是は收穫の時一遍に藷類が殺到致しますと腐敗せしむる缺點がありますので、收穫に於ける一遍に殺到する藷類をどんなに處理するかと云ふことが伴はなければならぬと思ひますが、其の爲には澱粉にする、或は切干にすると云ふやうなことで、澱粉工場等も相當昨年獎勵なさつたやうでありますが、是も資材の關係で唯やり掛けて其の儘になつて居るものが相當にあるやうであります、耕地を潰して敷地は決定して居るけれども、其の澱粉工場がまだ完成しないと云ふやうなものが相當にあるやうでありますが、ああ云ふものに付てはどんなになさる御積りであるか、尚ほ此の藷類の取扱に付て、序でに御尋ねを申上げて置きたいのでありますが、藷類の取扱に付ては藷類統制會社と云ふものがあつて之を販扱つて居りますが、帳面の上だけの取扱ひであつて、藷を現實に取扱ふ會社ではないやうであります、斯う云ふものを置いて藷類の取扱が圓滿に行かうとは思ひませぬが、やはり此の藷類統制會社と云ふやうなものを存續される御意思であるかどうか、私共は直ちに斯う云ふ不要な國策會社は廢めて、實際藷類を取扱ひ、此の腐敗を防正し得る機構のものが取扱のやうにした方が宣いのではないか、唯帳面の上だけの取扱にして、手數料だけを稼ぐ藷類統制會社の如きは、寸刻も置いてならない不要會社であると考へますが、之に付て農林當局としてはどんなに御考へになつて居るのでありますか、生産に付ては以上御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=6
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007・楠見義男
○楠見政府委員 第一點の戰災農家に對します衣料、農機具等の特配の問題でありますが、私の承知して居ります限りに於きましては、衣料は戰災者に付きましては一般都市民竝に農家には同樣に現在優先的に――殆ど衣料の如きは、戰災者竝に農村見返用物資に限定して居るやうに承知致して居るのでありますが、農機具に付きましては、まださう云ふ點に付ては私よく承知致して居りませぬので、至急さう云ふ點はよく實情を聽きまして、出來るだけ御趣旨に副ふやうにして行きたいと考へて居るのであります
補助金の交付を出來るだけ早くやれと云ふことは、豫豫言はれて居つたことでありますし、私共も其の必要は痛切に感じて居つた所でありまして、隨て本省からは出來るだけ早く、殆ど年度初めに一括致しまして地方に流して居るのでありますが、是が地方に行きました場合に、縣で或る程度温め、或は又體對で或る程度温める、隨て末端の農家の手に行きます場合に、御説の非常に遲れると云ふやうなことが間々あつたのであります、其の點は常に注意は怠らないのでありますが、尚ほ不十分の點が多々あらうと思ふのでありまして、農林省から地方に參り、それから下に行く監査と云ふ點に付ては、今後特に一層注意をして參りたいと考へる次第であります
風水害の問題に關聯して藷類の御尋ねでありますが、現在も御承知のやうに、此の點に付ては相當力を入れて居るのでありますが、結局特に本年の如きは藷に依つて此の端境期を切拔けると云ふやうなことも必要になる譯でありまして、現在の獎勵方策と致しましては、結局根本は健苗――苗にある譯でありますから、苗育成配付と云ふことに特に力を注いで現在參つたのでありますが、處理加工の問題に付きましては、今後の問題として、相當是は力を入れて行かなければならぬ問題であらうと考へるのであります、澱粉工場の御話もございましたが、昨年は農業會を主に致しまして、全國に五百工場の澱粉工場の増設を致したのであります、一部御話の如く未完成の所もありますが、此の設置だけは相當成功を收めたものと考へて居るのでありまして、尚一部未完成の所がございますれば、是等は至急に完成を致させるやうに引續き努力を致したいと思つて居るのであります、更に澱粉の外、色々それと關聯致しまして加工處理の問題に付ては、今後の問題として私共も十分是は研究をし、又改善を致して參らなければならぬと考へて居るやうな次第であります
それから藷會社の問題でありますが、現在は藷會社は政府の代行機關と致しまして、結局全國的の操作を致します機關として使つて居るのでありますが、末端に於きましては色々此の問題に付て――寧ろ末端と申しますよりも、道府縣農業會以上の點に於て色々藷會社の存續に付ては從來からも議論のあつた所でありますが、只今申上げましたやうな趣旨で以て使つて居りますので、現在之を廢止すると云ふことは、只今の所では考へて居りませぬ、唯地方に於きましては、今申しますやうに色々摩擦がある所もあるやうでありまして、特に私共の方と致しましては農業會と密接な關係を持ち、緊密に聯繋を致して、巧く是が政府の代行機關として動くやうに努めて參りたい、斯樣に現在考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=7
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008・的場金右衞門
○的場委員 次に供出なり配給に關して、今までの質問者が質問されなかつたやうなこと、それで諒解の出來ない二、三の問題に付て更に伺ひます、供出の割當基礎の數字が、收穫量を以て割當をなさつて居るのですが、此の收穫量の調査と云ふものが極めて杜撰のもののやうに考へますが、もう少し正確なる調査の出來る方法はないものであらうかと考へて居る次第であります、現在では地方の穀物檢査員の調査を主に使つて居るやうに思ひますが、一方穀物檢査員と云ふのは、是は作物の生産技術に付てはさう堪能な人ではないのであつて、唯出來ました毅類の品質檢査をやるのであつて、其の檢査員が收穫豫想を報告して、それを最も尊重して居られるやうに考へますが、是は生産指導の任に當つて居る人方の調査の方が正確に行くのではないか、さう云ふことに付てもう少し何とか基礎數字が正確になるやうに工夫なさる必要があるのではないかと思ひますが、是等に付て今後改めようとなさる御意思がありますか、此の供出の割當に付ては、基礎數字が正しいと云ふことが公平なる割當であると云ふことであつて、公平なる割當であれば、生産者は喜んで供出をするのでありますけれども、隣では來る秋まで十分食ふだけの……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=8
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009・成島勇
○成島委員長 一寸的場君に申上げますが供出、配給に付ては今まで幾度か議論を重ねて居りますので、簡單に要點だけ御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=9
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010・的場金右衞門
○的場委員 簡單に要點だけ申上げます、隣では全く田植の時食ふ物もないと云ふ實情の者があつて、極めて不公平である、隨てさう云ふ不公平な割當をして置いて、出さなければ強權發動、此の緊急措置令と云ふことになりますと、私共は承知し難いと思ふのであります、それでありますから、之を公平にする爲に、作付前に於て地力――土地の力を算定し調査して、之に或る程度の割當をして、目標をはつきりして増産に勵ましむやうな工夫をしたらどんなものであらうか、是だけに依つて割當と云ふことも出來ますまいが、天災もありますから、さう云ふ災害其の他の事項を考慮して、收穫前に於ける豫想も勿論調査致しませうけれども、植付前に於て地力を基礎とする努力をすれば、是だけは出來るから、是だけは供出をせよと云ふ目標を與へて増産に努力せしむるやうな工夫をなさる御考へはないのであるか、之を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=10
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011・楠見義男
○楠見政府委員 正確に收穫量を掴むと云ふことの點に付きましては、昨日も此の委員會で色々御話がありましたやうに、一面に於きまして供出と云ふ問題が絡んで參りますので、中々正確を得られないと云ふ實情である譯であります、併しながら現在の此の調査の方法は、今御話がありましたやうに、檢査員が直接に調査をすると云ふのではなくして、現在の建前は各部落で中庸の、又眞面目な農家の方々を選びまして、是等の農家に全刈、全調製をして戴き、其の眞實を報告して貰ひ、それを檢査所の系統で以て報告を取纒めて中央に提出する、斯う云ふ段取になつて居るのでありますが、色々供出其の他の情勢、事情が伴ひますので、遺憾ながら眞實の姿がありの儘中央にまで屆かない、而も是は食糧政策の中心の基礎をなす數字である譯でありますから、私共も其の點に於ては非常に苦慮致して居るのであります、結局は色色な條件に制約されず、又他から制約されずにありの儘を報告して戴くと云ふ方向に行かなければならぬと思ふのであります、要するに、總ての人々が是の重要性と云ふこと、又眞實性と云ふことに付て十分に理解をし、又重要性を感じて戴くと云ふこと以外には中中難かしい問題ではないかと存ずるのであります
それから事前割當の問題でありますが、御承知のやうに、昭和十九年に於ては、四月頃に米の事前割當を致したのでありましたが、此の年は偶偶作も惡く、事前割當は失敗に歸したのであります、併し豫て此の委員會で申上げましたやうに、是等の供出問題に付ては、一面に於て土地の生産力、一面に於ては農家構成、農家需要と云ふやうな點を併せて考慮する必要があらうと思ふのでありまして、今後の供出制度をどうするかと云ふ問題の場合には、特にそれ等の點を考慮に入れ、參考に供して、良い供出制度を作り出したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=11
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012・的場金右衞門
○的場委員 私が御聽きしたいと思ふことに付ては、大體御囘答を戴いたと思ひますが、價格の是正と云ふことが行はれなければならぬと思ふのであります、是等に付ては我が黨の北君より御尋ね致しましたけれども、どうもはつきりしなかつたやうであります、私達は現在のやうな状態に於て、生産の面、供出の面、配給の面を現在の儘の姿に置いて食糧の緊急措置令と云ふものを以て生産者を壓迫することは宜しくない、なすべきことでないと信ずるものであります、併しながら増産が十分に出來て、而も供出に對する取扱も公平に圓滿に行つて、配給も其の間に順調に行つて、闇をしなくても農機具が手に入る、闇をしなくても飯が食つて行けるやうに百姓の姿をして、茲に初めて――それでも文句を言つたり、それ程立派にやつて行けるやうにしても供出をして呉れない、國家を思はないと云ふやうな者に付ては、食糧の緊急措置令も亦已むを得ないと思ひますけれども、一方農民側に於て如何なる苦難があらうとも、どう云ふ悲慘な状態にあらうとも、それを顧みることなしに、此のやかましい、難かしい規則を以て農民を壓迫して戴くことは、是は農民として忍びないのではないかと考へます、以上私は唯殘された一部の問題だけを御尋致したのでありますが、今日まで各方面から色々要求もあつたやうでありますし、質問もあつたやうでございますが、今農林當局で御考へになつて居ることが徹底するやうに、率直にさう云ふことを徹底させて戴いて――色々困難な事情もございませうけれども、萬難を排して徹底を期して戴く、同時に先刻申上げた不要な藷類統制會社のやうなものは廢めて、生産團體と云ふものを強化して、自分の作つた物は自分が最後まで處理してやると云ふやうなことに導いて行つて、更に價格等も闇で賣らなくても生産が繼續出來、生活が續けられて行くと云ふやうな姿にして置いて此の規則を以て抑へると云ふならば別として、現在のやうな状態で此の規則で抑へて貰つては困る、斯う云ふ風に考へて居るのであります、價格の是正等に付て見透しが付いて居りますならば、此の上更に御聽かせ願ひたい、今の御話では、藷會社の如きものも、是は存置される御意思のやうでありますから、是も更に御研究を御願ひしたいと思ひます
畜産局長が御見にになつたので、さつき御尋ねを保留して置きました畜産振興の問題に付て、大臣も御見えになつたやうですから、一言御尋ねして質問を打切りたいと思ひます、自給肥料と云ふことと關聯を致しまして、畜産の振興と云ふことが伴はなければ、増産は出來ないのでありまするが、畜産の振興に付て何等かの御考へがあるのでありますか、從來のやうに成行に任せて置かれるのでございますが、其の點を御伺ひしたいのであります、畜産に付ては從來別途の畜産組合法と云ふやうなものがあつて、是で相當畜産の奬勵をやつて居られたやうでありまするし、今までは馬は武器なりと稱して、非常に大事に、國として馬政局と云ふものが別にあつて取扱つて居られたやうでありまするが、もう武器が必要なくなつたから馬は必要がなくなつたと云ふやうな御考へであるのかどうか、武器ではないけれども、食糧増産の爲には馬、牛と云ふやうな大動物が是非ともなければ今日の日本の農業は成立たぬと考へまするので、馬が武器だと云つて大事になさつた時よりも、此の食糧饑饉の時には更に是等の問題に付て今までよりも力を入れて貰ふ必要があるのではないか、斯う云ふ風に考へて居るのであります、馬の振興をの圖る爲には地方競馬などを盛んにやるべきものではないか、此の地方競馬法の制定と云ふやうなことに付て何か御考へになつて居るやうなことはないのであるか、今後どう云ふ風になさる積りであるのか、現在の所では馬の頭數も牛の頭數も著しく減少して行くやうに見受けられます、さう云ふ姿に於ては食糧の増産は望めない、何とかして貰はねばならぬと考へるのであります、此の點を大臣から教へて戴きたい思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 畜産の問題でありますが、私は、日本の農業を長い目で見まする時には、日本の現在の食糧の點かを言ひましても、どうしても畜産と云ふものは大いに振興したいのであります、家畜のない農業と云ふものは農業では實はないのでありまして、日本の今後行くべき農業經營の方向から行きましても、私はどうか農耕に家畜を取入れて、さうして家畜を以て動かす機械位は早くから個々の農民が持つて、さうして經營をやつて行くと云ふやうな方向に實は持つて行きたいのであります、隨ひまして家畜の細かい色々な振興策に付ては、畜産局長が居られますから御説明願ふとしまして、私としましても家畜の振興に付ては熱意を持つて居るので、異論はありませぬ、唯、今非常に食糧が窮屈なものでありまするので、飼料の點で非常に窮屈になつて、家畜がどんどん減つて來て居ると云ふ状態があるのでございまするので、何處かで此の勢ひを阻止し、轉換させて行きたい、斯う云ふ風に考へて居るのであります、勿論飼料に付ては或る程度の輸入も懇請致して居る次第でありまするし、飼料作物と云ふやうなものに付ての今後の研究を致して居る譯でございまするが、何處かで是は出來るだけ早く手を打つて、畜産と云ふものの基礎を固めて行きたい、斯う考へて居ります、價格の點は是はもう屡屡御答へ致したので、實はそれで御諒承願つて置きたい、斯樣に考へて居る次第でありまして、供出の割當とか、其の他に付きましては次官から御答へ致しましたやうに、合理的なものの割當は是非致したいと準備を致して居る次第であります、經營の方から見ました家畜と、それから又一面から言ひますと、經營と云ふ點だけでなくて、食糧と榮養と云ふ方から見た、例へば乳牛であるとか、さう云つたやうなものに付ても、勿論是が巧く農業經營に取入れられて、そこに日本の農業としての新しい天地が開けて來ると云ふことが私として非常に望ましいのでありまして、さう云つた點に付ては今後とも十分綜合的に考へまして農業政策と云のものを立てて行きたいと思つて居ります、食糧の増産と云ふ目下の點から言つても、肥料の點から御説のやうに自給肥料を造るのには家畜があれば一番宜い、さう云ふ點から言ひましても、勿論家畜は不可缺のものであります、御趣旨の點は十分私としても考へまして、畜産に付ても農業の經營と不可分な、地に付いた形で振興して行きたい、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=13
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014・蓮池公咲
○蓮池政府委員 畜産振興の點に付て御尋ねでありますので、大體最近の状況から取上げて居ります畜産の政策を簡單に御説明申上げます、御話の如く家畜、特に大家畜が戰時中竝に終戰後、此の春に掛けて非常に頭數の減少を來して居るのは、色々な原因があるのでありますが、我が國の農業と申しますか、我が國の再建の爲に非常に遺憾なことであつたと存じて居りますが、是も亦已むを得なかつた事態が多多あつたやうに思はれます、殊に大家畜の中、馬の問題にも疑問があるので、それを解明しろと云ふ御話でありますが、馬の大家畜としての利用價値と申しますれば、農業經營上、肥料の點から考へましても、農耕の重勞働作業から申しましても、必要缺くべからざる、又日本の農業全體に亙つて非常に大きな役割を演じて來て居つたのでありまして、左樣な状態に於て飼養管理せられて居る馬を一旦緩急ある場合に國防の用に立てると云ふことで、國防上の規格に合ふものを作り、又其の用意をさせて置くと云ふのが所謂馬は兵器であると云ふことであつたやうに思はれるのでありますが、さう云ふ事態が只今の所なくなつたにしろ、馬の農耕用竝に肥料等の部面に於ける農業部面の重要性は、金肥の不足を補ふ意味に於ても、いや寧ろ戰時中勞力を少くして收獲を擧げて行く農法をやつて來た過程から、地力の減退をして居る今日、地力維持増進の面からも缺くべからざる所でありまして、肥料の點から言へば牛よりも寧ろ馬に重點を置かなければならぬのではないかと云ふ點が技術上の結論であるやうであります、隨ひまして此の大家畜の頭數の減少に對しましては、今後事情の許す限り増殖を圖つて行かなければならぬと云ふ風に考へて居りまして、過般農林省の直營して居ります畜産施設である所の種畜場四箇所の外に、從前の馬の施設でありましたものを、馬と共に其の他の牛、山羊、緬羊等、一般家畜に、もあの制度を及ぼしまして、從來の種畜場と同じ體制に漕ぎ付けると云ふことを具體化しまして、尚ほ農場の經營することに依つて飼料の自給竝に營農も實踐して行く建前で種畜牧場制度を採りました、隨ひまして從前の如く所謂國立種畜場の働きをする場所が全國で二十四箇所出來た次第であります、此の方面に於て日本の家畜が――殊に他の質の良い優秀な家畜の種がともすれば缺けて行く虞れのある事態を國の力に依つて收拾、維持、確保致しまして、食糧の事情に關聯して飼料事情に裕りが出て參りますと同時に、優良種畜が増殖の基礎を培つて行くやうにと云ふことで對策を立て又實行に入つて居る譯であります、尚ほ日本の農業の實態から申しまして、大家畜の利用方法それ自體が、農家で肥料問題が餘程技術上の普及も進んで居りますけれども、大家畜の畜力其のものを農業經營上遺憾なく使つて行つて家畜の衞生上も宜しい、而も農作業の能率も上ると云ふことに致しまするには尚ほ相當技術上の指導を必要と致しますので、此の方面の仕事も家畜の頭數増加に連れて農家に家畜が入つて行きまする時に、經營上無理の起きないやうに、今から技術の素地を培つて置く必要があると云ふので、殊に馬の利用指導、大家畜、役畜の利用の指導と云ふ方面に國の施設を擴充致して居る次第であります
尚ほ畜産振興の士氣昂揚策として競馬を採入れる考へがないかと云ふことでありますが、馬産地方に於ける競馬と云ふものは社會の一般の情勢が許す限りに於ては、例へば畜産品評會、供進會等の催し等とも關聯して是が畜産振興の士氣昂揚施設として善用せられることは洵に好ましいことであると考へるのでありますが、御存じの通り「ポッダム」宣言受諾に伴ひまして同時に軍馬資源保護法の廢止となりまして、軍馬資源保護法で規定してありました種馬競爭の基礎法律がなくなりましたので、地方競馬を施行致しまするには勝馬投票權等とも伴つて實行致しますることは違法の措置になる虞れがあることになりますので、やり方に非常に苦心が必要であると云ふ事態でありますので、此の方面も情勢の整つて來るに連れまして適切なる制度が立てられることが必要であると云ふので十分研究を怠らぬ積りで準備を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=14
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015・的場金右衞門
○的場委員 今の畜産の關係で馬と牛とは同じ農家が使用して居るのに組合は別だと云つたやうな變な恰好になつて居りますが、之を同じ指導團體に統合される御意思はないのでありますか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=15
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016・蓮池公咲
○蓮池政府委員 農業上の利用部面から申しますると、役畜と云ふ觀點から牛と馬を別々に分けて別な組合に入つて別な指導を受けると云ふことになりますことは極めて遺憾であります、斯う云ふ制度が已むを得ず行はれたことは私御説明申上げるまでもなく國の大勢、國の事情から已むを得ざる經過的措置であつたと考へるのでありますが、馬の利用部面から申しますれば農業との一貫性を十分考慮した制度が考へられなければならぬと思ふのであります、牛の農業上の利用と馬の農業上の利用とは相共通する部面も多く、又相互相補ふ點も多いのでありますが、之を又別々の團體として指導すると云ふことは相當經過的な歪んだ姿を何處かに調整點を見付けなければならぬ、斯樣に考へて居るのであります、唯生産の部面になりますと、馬の生産部面と、牛の生産部面とでは生産の態樣、生産の地方等を異にするものが大部分でありますから、其の地方に於ては同じ組織であつても別な團體が出來ると云ふこともあらうかと存ずるのであります、併しそれが爲に各々別の法制が是非必要であると云ふことは考へられないのであります、同一の法制で別の組織が出來ると云ふことも亦適切な方法であらうと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=16
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017・的場金右衞門
○的場委員 大變親切に御説明を願つて有難うございましたが、今の馬の問題などは是非一つ馬と牛とが別の團體で指導されるやうなことがないやうに御願ひをしたい
それから平地林の問題はさつき御答辯を願つたのでありますが、是非一つ今度の農地法の關係に於ては耕地となり得る土地は、耕地と同じ取扱ひになるやうに御配慮が願ひたいと思ひます、有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=17
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018・苫米地義三
○苫米地委員 此の間、私の質問に對しまして適當の機會に農林大臣から直接御答辯を戴くことになつて居つたのでありますが、それは日本の農業政策を國内食糧の自給に方針を持つかどうかと云ふ點でございますが、是は農林大臣から直接御話を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=18
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019・和田博雄
○和田國務大臣 私は、自給を農林政策の根本にするかどうかと云ふことは、或る程度やはり時を限つて言はないと正確な答へは出ないと思ひます、今のやうな状態でありまするならば、是はやはり出來るだけ農業の生産力を高めまして、綜合的な食糧としての自給力を高めて行くと云ふ方向に生産農業の農業政策の一つの目標があることは、はつきり致して居るのでありますが、併し食糧問題と云ふものは日本の經濟が再建されまして、平和國家として全世界の經濟に參加することが許されましたさう云ふ状態を考へまするならば、單純に唯日本の内地だけで食糧を自給して行くと云ふ方向を日本の農業政策の根本とすると云ふことには、多少疑問があると私は思ひます、是はやはり日本の國家の經濟は全世界の經濟に關係があるのでありますから、假に自給が出來るとしても其の方が日本の國民經濟として一體「エコノミカル」であるかどうかと云ふ問題が殘る譯であります、私としては現在のやうな段階に於て殊に日本の經濟が農業工業を問はず、全體としての再建の途上にあり、殊に食糧が斯う逼迫して居ります時には、是は何と云ひましても一應消費材に對する需要は緊迫なものでありますので、食糧と云ふものに付ての生産力を高めて行くと云ふ方向で、出來るだけ「エコノミカル」の方法で食糧の生産を高めて行くと云ふことが根本だと云ふ程度しか、私は明確な答辯は出來ないのであります、食糧自給を根本とするかどうかと云ふやうな孤立經濟として考へることは、多少無理があるのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=19
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020・苫米地義三
○苫米地委員 大臣の御考へはもう分りました、私は現在の日本の環境は鎖國經濟になつて居ると思ふんです、さうして國民は食糧に戰いて居る、それでありますから農林當局は日本の國内で少くとも食糧は自給するのだと云ふ熱意のある方針を立てて、さうして國民を安心させることが非常に大きな影響を齎らせるだらうと思ふのであります土地の改良、肥料の増産、或は先程言はれました科學技術の浸透、新開地の開拓、某の他に依りまして少くとも農林當局は日本の國民の食糧は國内で自給してやるんだと云ふだけの大きな熱意を以て臨むことを私は希望するのであります、無論國際關係に立つ國の經濟の面から申しますれば、當然貿易と云ふ問題も起りますし、經濟的に交通すると云ふことは當然であります、併しながら食糧の今の状態を國民に安心させると云ふ點から申しましても、農林當局がもつと熱意を持つて國内で自給するのだ、必ず自給させる政策を執ると云ふやうなことに依つて、國民の食糧に對する不安感が緩和されるのではないかと云ふ考へを以ちまして質問したのでありますけれども、今の御話に依りまして大體分りましたから、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 誤解があると一寸困りますからもう一遍御話しますが、日本の食糧に對する自給度を高めて行くと云ふことは、是はもう我々が根本の精神として持つて居るのでありまして、又其の方向に政策を強力に進めて行つて居るのであります、併し苦米地さんの御質問は、一體食糧自給と云ふものは永久に、是から先永い間一體食糧自給と云ふものを方針として農業政策をやるのか、斯う言はれれば私は是は「イエス」とは中々答へにくい問題だ、斯う申上げたのであります、殊に現在のやうな段階に於きましても、食糧の自給が出來れば之に越したことはない、隨て其の方向に土地の生産力を高め、凡ゆる手を打つて進んで行くと云ふことに變りありませぬが、私は今の緊迫した事情に於てもやはり將來のことも考へて、應急策と恆久策とが旨くそこに調和の取れるやうな方向に農業政策をやつて行くと云ふ心構へでありませぬと、農業政策と云ふものが常に斷片的な、ばらばらなものになり勝ちなのでありまして、其の點に付ては、是は私一個の私見で色々御批判があると思ひますが、私はどうも政策と云ふものはさう云ふ形で現在のみならず將來を見ての――是は現在の條件に制約されることは勿論でありまするが、さう云ふ方向で進めて行くと云ふことが、結局好い結果を生むのではないかと斯う考へて居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=21
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022・成島勇
○成島委員長 それでは是で休憩しまして、午後は正一時から開會致します
午後零時四分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=22
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023・会議録情報2
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午後一時十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=23
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024・成島勇
○成島委員長 午前に引續いて開會を致します、大體本日を以て質疑を打切に致したいと思ふのであります、それで明日の午前十一時頃政府側を除いた委員だけの之に對する墾談會を開きまして、さうして午後三時頃正式の委員會を開き討論をして決めたいと思ひます、どうぞ左樣御含みを願ひたいと思ひます――志賀義雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=24
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025・志賀義雄
○志賀委員 此の食糧緊急措置令に付て結論から先ず申上げれば、是は要するに徳川幕府時代にも見られなかつた極端な官僚統制を強行せんとする勅令でありまして
〔委員長退席、馬越委員長代理著席〕
之に對しては私共としては絶對に贊成致し兼ねるのでありますが、それに付て關係當局に二、三御質問を致したいことがあるのであります、食糧緊急措置令は其の前六月十三日に發表されました食糧非常時宣言と相關聯するものであります、此の宣言に於ては、國を救ふ爲に皆力を協はせてやる時である、斯う云ふ風に言はれて居りますが、其の後間もなく農林省で職員の爲に買出し休暇を十日づつ認められました、成程農林省の職員諸君も今は食糧に困つて居られることは我々としても能く分るのでありますが、一體何を買出しに行かれるのか、やはりそこには闇の食糧があると云ふことを前提にしてでなければさう云ふ食糧買出しの休暇と云ふものは與へられないことになるのでありますが、一方では農林省は斯う云ふ食糧緊急措置令を發表されながら、省内に於ては斯う云ふことをやられると云ふことは、是は一つの大きな矛盾ではないだらうか、又もう一つ御尋ねしたいことは、戰爭が終つた當時、農林省の食糧管理局が青梅線の沿線に移つて居りましたが、是は私聞いたことでありますから其の眞僞を御尋ねしたいのでありますが、青梅沿線に疎開準備をした時に、米百俵、罐詰數百箱、地下足袋、作業衣多數が其の方に移されて居たさうでありますが、是が終戰の時になくなつて居たと云ふことであります、是は一體何處にどう云ふ風になつたのか是も伺ひたいのであります、さう云ふことがありまして、農民に對して食糧を隱して居るのは怪しからぬからそれを根こそぎ供出させる、供出しなければ、農林大臣の表現を以てすれば傳家の寶刀たる強權を發動する、斯う云ふことで以て果して農民諸君が納得して快よく出せるものであらうかどうか、其の農林省の態度心構へと云ふものに付て先づ伺ひたいので、是だけを最初に御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=25
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026・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、政府の食糧非常宣言を出しましたのは、食糧宣言に書いて居りますやうに、此の食糧の危機はやはり國民の全面的な協力を俟つて初めて突破出來るものだと斯う考へて居るのであります、是は申すまでもございませぬ、色々な政策をやつて行きまする時に其の政策に付きましての批判は各角度から出來ますし、又公正妥當なる批判は政府としては謙虚な氣持で受けるべきではございますが、要は其の政策が目標として居りまする事柄を達成する點にあるのでありまして、其の爲にはやはり國民も批判は批判すると同時に十分協力をして戴く心構へが又必要だと思ふのでありまして、さう云ふ意味で我々と致しましては、國民の協力を俟つて政府としての政策を實行致して此の危機を突破致したい、斯う考へて居るのであります、農林省の食糧休暇と云ふことは、食糧休暇と云ふ名前は、是は私何處でどう使つたのか存じませぬが、新聞には食糧休暇と出て居るのであります、是は農林省としましても、職員に或る休暇を從來からも認めて居りましたので、それを能率の下らないやうに、役所としての事務の澁滯のないやうに交代で兎に角休暇を認めて行くと云ふやうなことでありまして、食糧買出しの爲めの休暇ではないのである、斯う考へて居ります、食糧休暇と云ふのを新聞で書いたものですから、何だか食糧の爲の休暇を與へた、斯う云ふやうに誤解され易いのでありますから、どうか其の誤解は御解きになつて、戴きたいと思ふのであります、農林省の隱匿物資に付ては私は能く存じませぬ、さう云ふことがあつたかどうか、それは或は政府委員の方から御答へ出來るかどうか分りませぬが、私としては戰爭中は御承知のやうに農林省に居なかつたのでありますから、果してさう云ふことがあつたかどうか分りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=26
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027・志賀義雄
○志賀委員 私も噂でありますから能くは存じませぬが、さう云ふものがあつたと云ふことです、併しそれは果してあつたものかどうか、あつたとしてそれがなくなつたとすればどうなるのであるか、さう云ふ點に付て楠見次官から伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=27
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028・楠見義男
○楠見政府委員 私も終戰當時に於きましては其の方の擔當ではございませぬ、資材局長をして居つたのであります、隨て其の眞僞は私も承知して居りませぬが、唯斯う云ふことがあつたと云ふことだけは間接に聞いたことがあるのであります、それは終戰の直前に於きまして、御承知のやうな非常に混亂を豫想されたやうな事態がありまして、例へば各會社、官廳共に東京邊りでは女の職員は之を全部東京外に疎開をさしたと云ふやうに、今日から見ますと寧ろ非常に滑稽に近い程周章狼狽したやうな状態であつたのであります、隨てさう云ふ風な周章狼狽した環境下に於て、結局出來るだけ都の中心部にあるものは不便な所に移すと云ふやうなことは各方面にあつたやうに私は存じて居るのであります、尤もさう云ふやうなものが私共の方では若しあつたと致しますれば、事態が終著した場合には必ず總てそれを元に戻して、或は正規の「ルート」に之を上せると云ふことでやつて居るのでありまして、例へば戰爭中の警防團の爲に持つて居りましたものが隱退藏として誤り傳へられたものもあつたのであります、欺う云ふものも總て無用の誤解を避くる爲に政府の機關に移しましたことは志賀さんも或は御承知になつて居るかと存じますが、さう云ふやうな一般情勢の下に於てやりましたものは或はあつたかと思ひますけれども、それ以上詳細のことは私も承知致しませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=28
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029・馬越晃
○馬越委員長代理 志賀君一寸申上げますが、主税局長が御見えになりましたから、主税局長に關する御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=29
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030・志賀義雄
○志賀委員 主税局長は御忙しいさうでありますが、簡單でありますから……
次に只今の御話の此の事件の有無に付ては一應御調べ戴きたい、若しさう云ふ事實があるとすれば、之をどうしたか、其の品物の行方に付て私共餘りに不愉快なことを聞及んで居りますから、其の點に付て十分嚴密な御調査を御願ひしたいと思ひます、さうして出來るならばそれを公表して頂きたいと思ひます
次に食糧自給計畫に付て御伺ひしたいのでありますが、戰爭が濟んでから食糧自給計畫に付ては二囘ばかり發表されて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=30
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031・馬越晃
○馬越委員長代理 志賀君、主税局長さんの關係の方を一つ御濟まし願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=31
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032・志賀義雄
○志賀委員 では主税局長が御忙しいやうでありますから其の方から伺ひます、實は一昨日東京府下三多摩竝に東京の區内の農民の代表諸君が來られて、今囘の乙種事業所得及び綜合所得に關する税務署の査定が非常に苛酷であると云ふことに付て色々と陳情がありました、丁度其の日社會黨の叶凸君が此の委員會の席上でも此の問題に付て質問されて居りました、だから其の重複する點に付ては省くことに致しますが、例へば西多摩郡霞村水久保部落に於ける重税の例を申上げますと、平田隆助と云ふ八段歩を經營する自小作は乙種事業所得が一萬四千四百圓に査定されて居ります、綜合所得は一萬五千六百圓、合せて三萬圓です家族は六人、一々申上げますのは時間を取りますからもう一つ申上げますと、三段歩を經營して居る藤本菊五郎と云ふ小作の農家の方でありますが、是は乙種事業所得を五千九百圓と査定されて居ります、もう一人是は家族三人でありますが、小作で平岡森造、經營段別八段、是は小作であります、乙種事業所得一萬四千三百圓、綜合所得一萬五千五百圓、計二萬九千八百圓、一寸三萬圓近い、是は現在闇で飯米を購入して居るさうでありますが、斯う云ふ風に査定が昨年に比べると非常に辛くなつて居る、所が同じ村の内で農事實行組合長で自作を一町五段經營して居る人でありますが、此の人は名前の報告を受けて居りませぬので、分りませぬが、何れ調べる積りであります、査定は合計四千二百圓になつて居ります、所が此の霞村は東京都内でも寧ろ査定が甘い方であると云ふことであります、だから他の方面に於ては是よりも非常に辛くなつて居ります、斯う云ふ例は埼玉縣、千葉縣、茨城縣、靜岡縣、秋田縣其の他にも澤山あります、靜岡縣の如きは縣知事と縣會議員が配給三日を返上すると云ふ決定をして、それを實行に移したさうでありますが、縣民はそれに驚いて非常に反對して居ります、斯う云ふ状態で非常に皆今度の重税には困つて居る上に、一方には配給までも、勝手に上の方で返上すると云ふやうなことをやつて居るので、各方面に非常に混亂を卷起して居るのであります、御承知のやうに一人一人の農民と云ふものは非常に弱い者であります、今度の税金の査定が來た爲に、税務署に行つてそれに對する異議を申立することが出來ると云ふことを知らない農民が多いのであります、多くの農民は蒲團を被つて青くなつてぶるぶる震へて居ると云ふのです、是は今囘の緊急措置令で、傳家の寶刀と云ふことで、威されて居るので、斯う云ふ風に掛けて來られれば何とも致し方ないと云ふので青くなつて居るのですが、其の農民諸君の代表が來て言はれるには、一體日本には政府が幾つあるのかと云ふのです、闇をやつちやいけないと内務省は言ふ、皆公定價格で供出せよと農林省は言ふ、大藏省は闇で賣つて居ると云ふので査定して自分一方で税金を課けて、先日の主税局長の御答辯を伺ひますと、實收入に基いて斯う云ふ課税をしたと云ふことでありますが、其の實收入は加何にして調べられたのですか、農民諸君の來て言はれる所に依れば、一囘も自分達は調べを受けたことはないと云ふのです、聞けば税務署及び所得税を納めることに依つて納税の査定委員の資格ある人々は村の上層階級です、其の人々が勝手にやつて居る、隋て地主、富農、さう云ふ方面には今囘の査定で却て少くなつて居る、結局貧しい多くの農民が餘計な租負を負擔しなければならないと云ふ結果になつて居るのですが、是は昨日井出さんでございましたか、二重政府の御話がありましたが、我々は決して今、日本に二重政權を作り、人民管理云々と云ふことを能く共産黨が申しますが、さう云ふことは考へて居りませぬ、政府が斯う云ふ風に二重にも三重にもなつて居る、二重政權どころか、三重政權、斯う云ふ有樣であります、一體政府にしては大藏省當局としては、關係各省との連絡を取つて之をやられたのであるか、其の點を同時に農林當局にも御伺ひしたいのでありますが、唯自分の省の都合に依つて勝手に斯う云うことをされては、最早來年から農業の經營は出來ないと言つて農民は皆叫んで居るのです、大藏當局としては農民がどうならうとも、又其の爲に都市の人が飢えやうとも構はない、兎に角當面の財政計畫を働く人々の負擔に於てやつて行けば宜い、斯う云ふやり方としか受取れませぬが、其の點に付て御答辯願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=32
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033・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御答へ申上げます、東京都下の農家の所得の決定に付きまして、今年は非常に激増した、其の爲に都下三多摩方向に非常に不服な農家が多分にあると云ふ御話でございました、私も先立つて叶委員に對しまして御答へ申上げましたやうに、其の實情は私自身も陳情を一、二囘受けまして、體驗致したのであります、洵に敗戰直後、所得の决定に付きまして官民に諍と申しますか、殊に農家の方に御迷或を掛けたと云ふことを我々としても恐縮に存じ、出來るだけ早く我我の誤つた所を訂正し、又誤らざる所は農家の方に納得して戴きたいと日夜努力致して居ります、御話の八段歩の自小作なすつた方が、乙種事業所得一萬四千數百圓、綜合所得が一萬五千圓、それは此の決定が適切でありや否やと云ふことは、私其の農家の實態を存じませぬので、如何樣とも申上げ兼ねますが、自小作一段歩位で二千圓位の收入を擧げ得た農家の方が或る程度あると云ふことは、税務署、財務局の者から聞き及んで居ります、所得額は乙種事業所得と綜合所得税と一緒になつたものが所得額ではないのであります、第三の例で御話になりましたやうに、乙種事業所得一萬四千三百圓、綜合所得一萬五千五百圓、所得全體が一萬五千五百圓でございます、そして分類所得税たる乙種事業所得は基礎控除の千二百圓を控除致しましたものが乙種事業所得と云ふ分類所得で一萬四千三百圓に相成ります、綜合所得税は、是は綜合所得税の性質上控除致しませぬ、總體の額で所謂所得額の大小に依つて課税する方法でこざいますから、此の方は合計した一萬九千八百圓と云ふものが所得額でないので、綜合所得一萬五千五百圓が所得額でございます、して見ますと、例へば八段、一萬五千圓と云ふ方は、さう云ふ風な決定をして居る税務署は相當あると思ひます、併し其の決定が當該農家に適切であるかどうかと云ふことは此處で御答へ申上げられませぬ、唯然らば農家の實收入はどう云ふ風にして計算するか斯う云ふ御質問でございます、是は其の年中に於ける總收入金から必要の經費を控除したもの、其の總收入金とは如何なるものか、是は農家が公定價格で供出なすつたものは勿論全部入りまするが、正確に申しますると自分の家で食べた物も換算して收入に入ります、又若し供出と自分で食べる以外に他にお賣りになつた場合には、其の金額も收入金に入ります、さうして又必要なる經費とは、鋤、鍬、其の他肥料、或は傭人費、農會費、地租、斯う云ふものが入つて來るのであります、其の差額を所得として決定する、斯う云ふことに相成つて居るのでございます、闇に課税したことが善いか惡いか、此の問題は相當議論があると思ひますが、此の農業所得は飽くまで昨年の實績に依つて決めるのでございます、隨て昨年生産高に對して供出が七割だつた其の三割は自分の家で食べるか、或は他所にお賣りになつたかも分りませぬ、さう云ふ場合に若し他所に非常な高價でお賣りになつた場合には、税務署としては先程申上げました收入金から支出金を控除した額に依るのでございますから、之に課けざるを得ない規程の建前になつて居ります、若し御作りになつた物は何處へも闇では賣らない、公定價格ばかりでお賣りになつた場合に、闇で賣つたとして税務署が課税したならば、是は大いに誤りでございます、絶對にさう云ふことをなしてはいかないことでございます、若し公定價格でずつとお賣りになつて居るものをそれ以外の値段で賣つたと税務署が査定したならば、直ちに取消すべき筋合ひのものでございます、併し若し假に或る一部を相當な高價で他にお賣りになつたものを、税務署が公定價格でお賣りになつたとして所得を非常に少く決定したならば、是は課税上由々しい問題となると思ふのでございます、私は農家の所得の決定に付て實際の所得を目安にして決めた税務署の決定は妥當と思ひます、實收所得を捉まへて課税した税務署の決定は妥當と思ひます、是は私は或る意味に於て供出を阻碍すると云ふ議論は立たないのではないかと云ふことを自分自身としては考へて居ります、若し之を他に公定價格以外でどんどん賣る人が出來て、さうして税務署がやはり公定價格で決定したと云ふことになりますと、實所得を捉まへ得られないことに相成ります、是は課税の不公平を來す所以でございます、私は實際の收入を捉まへて課税することは、是は税務署として當然の職責であると考へて居る次第でございます
尚ほ三番目に立川税務署管内では、農民が非常に課税の苛酷なるに呻吟して居ると云ふ御話でござぃました、其の點あると思ひまして、實は先週の初め頃、又前の日曜日にも、二度財務局の其の職にある部長を行かし、又一囘は主税局の事務官を差向けまして、能く農民の方々の事情を拜聽させました、税務署の誤りの點もございまして、隨て二、三日前から財務局も參加したりしなかつたりでありますが、税務署が中心になつて各町村の役場にこちらから出掛けて參りまして、何でも町村長、農業會長、農事實行組合長或は部落會長の立會の下に、個々の納税者の御意見を聽きまして、直接に税務署と折衝致しまして、誤つたものを直すと云ふ手配を講じて居ります、勿論調査に當りましても各税務署に指令致しまして、町村長殊に農事實行組合長の意見、凡ゆる人の意見を聽いて決めるやうには指圖は致して居りまするが、數多い税務署の中には、其の點に十分でなかつたことも見受けられます、立川の税務署はさう云ふ部類に嵌まつて居るのではないかと思ひますので、先程申上げましたやうに個々の農家の人と、税務署の者が出掛けて行きまして、直接に折衝致して居る次第でございます
最後に各省と連絡して所得の決定を決めるか、斯う云ふ御話でございますが、所得の決定に付きましては各省と御相談申上げませぬ、我々と致しましては例年の例がありますので、大藏省としても今年は農業所得は斯う云ふやうになるぞ、營業所得は斯う云ふやうになるぞと云ふ指圖は致しませぬ、各財務局が其の職責に於てやつて居る次第でございます、以上御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=33
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034・志賀義雄
○志賀委員 税務關係のことは大藏省の管轄ですから、其のことは他の方へ相談されるが宜しいとか、相談されるかと伺つて居るのぢやないのです、一方農林省の方では公定で供出させる、殆ど食糧以外のものは、いや食糧までも喰込んで供出させようとして居る、それに對して自分の家の喰扶持以外のものは、只今大藏省の主税局長は或る種の農家と言はれましたけれども、是が全部に來て居る、或る種の農家ではありませぬ、全部に來て居る、それでは一體日本に政府は幾つあるのか、二重政權どころではない、三重政權にもなる、斯う云ふ風に申上げたのです、さう云ふ點に付て、やはり各自分の繩張りだけに付て勝手なことをして、全體の國の政治を紊し、人民の反感を買ふと云ふことは、今後止めて戴きたいと思ふのです、それから是は只今立川の方面でも税務署に對して、農業會長、實行組合長、其の他の人達の立合の上と言はれました、それで此處に例がありますが大分縣中津市であります、慥か市であつたと思ひますが、此處では農民組合に、お互ひの實收が幾らあるかと云ふことを査定させると云ふことを税務署の方へ認めさせたと云ふ情報が入つて居ります、斯う云ふやうに實際どれ程收入があるかと云ふことを、税務署と其の村の顔役ですね、上層階級でなく、働く農民自體の組織に公平に認めさせる、斯う云ふことに付て、既に中津の方面ではさう云ふ風になりつつあると云ふ情報があります、大藏省としては其の點に付て積極的にさう云ふ風にやつて戴きたい、さうして皆が納得の行くやうにして、不公平のないやうに、又過重な負擔のないやうにさせると云ふ方針に付ては御考へは如何でせうか、其の點を伺ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=34
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035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御尤もな御話でございまして、從來から各所得に付きましては、業者團體の意見を聽くことをやつて居りました、最近の如く農産物の價格の騰貴に依りまして、農業所得が營業所得にも増して大きくなつて參りました時には、從來の營業者團體に聽くよりも、先づ農民の團體から意見を徴することが必要だと思ひます、隨ひまして昨年から各町村に督税囑託員と云ふものを設けました、又本年の所得の決定に付きましても、先づ農事實行組合と連絡を取れと云ふことで各地ともやつて居ると思ひます、今後益益農業關係の團體の方々と事前に話をつけまして、納得の行くやうな課税方法をやつて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=35
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036・志賀義雄
○志賀委員 どうも御答辯が多少づつ喰ひ違つて居る、私は農民組合と申しましたので、農事實行組合とは申しませぬ、東京都の例を見ましても、農事實行組合長を參加させて査定して居るのですが、肝腎の農事實行組合の役員の人達は全然知らないのです、私の申すのは自治的の團體である農民組合です、之を申して居るのですが、先づ此の點に付てはもう御答辯を求めますまい、お忙しい樣子ですから――もう少し私の言ふ質問の「ポイント」を掴んで、御答辯を願はないと、餘計な時間が掛りまして――まだ大分後に質問なさる方がございますから、後の方の御質問の時にもさう云ふやうに御注意願ひたいと思ひます、それで主税局長に對する質問は打切ります、お忙しいですからどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=36
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037・馬越晃
○馬越委員長代理 一寸氏原君、杉田君、主税局長關係の御質問はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=37
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038・氏原一郎
○氏原委員 ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=38
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039・馬越晃
○馬越委員長代理 それではどうづ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=39
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040・志賀義雄
○志賀委員 それでは先程の第二の問題に歸ります、食糧需給計畫に付て農林當局に御答辯願ひたいと思ひますが、食糧需給統計を最近發表されなくなつたのは、どう云ふ理由に依るものでありますか、昨年四千三百萬石とか云ふ統計が發表されて居りますが、そこに統計の誤差として一五%のものがあると云ふことは、多くの專門家の一致した推定であります、是では統計が統計の用をなさない、それでは又全國の食糧需給をどう云ふ風に賄つて行くかと云ふ方途も中々立ち難いと思ひますが、食糧需給計畫に封して當局として、統計を發表なさる御計畫がないか、又なぜ發表されないのか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=40
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041・楠見義男
○楠見政府委員 前段の御尋ねは生産統計の問題だらうと思ひます、生産統計の點に關しましては、是は自由經濟當時に於きましては、御承知のやうに發表致して居つたのでありますが、併し戰爭が始まりまして、國家機密の數字としまして發表を禁じて居つたことは御承知の通りであります、終戰後の状態に於きまして、私共と致しましては、出來るだけ是は發表致したく存じて居るのでありますが、午前中の的場さんでしたか、御質問の際にも御答へ申上げましたやうに、結局本年の生産統計に付きましては、色々問題となるべき事項が多かつたのであります、何れに致しましても、私共と致しましては、結局地方から出て來る數字を掴む以外には、又それに頼る以外には途はないのであります、直接政府が自分の手で生産統計を集めて居るのではございませぬで、午前中申上げましたやうな方法で以て集めて居ります爲に、結局其の數字は地方から報告が參りましたものを頼りにせざるを得ないのであります、併し此の生産統計數字は、地方から出て參りまするものは結局午前中申上げましたやうな色々の制約の下に出來て居りますので、實は私共と致しましては、關係方面と折衝致しまする場合に常に此の問題に付ては惱まされたのであります、と申しますのは、是は輸入計畫の數字を決めまする一つの大きな資料になりますので、地方から出て參りました統計數字と云ふものに付て色々の角度から、關係方面から再檢討を要請されて居るのでありまして、具體的に共同で以て直接個々の農村に入りまして、個々の農家に付て再調査を致した場合もあるのであります、實は全國的に再調査をするやうにと云ふやうな非公式な要求を受けたるのでありまするが、併し其の場合には既に全國には立毛はない、結局個々の農家に付きまして聽取調査をせざるを得ない、而も五百萬農家の個々の農家に再調査を致しますことは到底不可能になりますので、具體的に縣を選びまして、其の縣内の又具體的な村、字、農家と云ふものを選びまして、之に依つて得ました結果を推定すると云ふやうなことを色々方法を講じて參つて居るのであります、今までに府縣から出て參りました數字と云ふものを基礎に致しまして、兩三囘調査をし直して參つて居ります、併し尚ほ確定的な結論を得るまでに至つて居らないのでありまして、さう云ふやうな關係から致しまして、本年は特に此の公表と云ふ問題が世間に傳へられて居るやうな状態であります、色々私共も各方面からさう云ふ問題に付きまして突つ付かれて居るのでありますが、色々内部的に、國内的な問題として非常に苦しい立場に立つて居るのでありまして、其の間の事情は能く御諒承を願ひたいと思ふのであります
それから需給計畫の點ですが、是も戰爭中は總動員機密として需給計畫は全然發表致して居りませぬでしたが、戰後の状態に於きまして、全體的の需給の見透しは議會等に於きましても發表したこともございます、唯私共が一番心配致しますことは、是は少し言ひ過ぎかも分りませぬが、大體日本人と申しますか東洋人と申した方が宜しうございませうか、悲觀的のことには非常に興味を持つのであります、特に報道面に於てさう云ふやうな點が多く看取されるのであります、缺配が何日續いた、或は何千萬人の餓死者が出る斯う云ふことは非常に「ニュース・ヴァリュー」があるやうに思はれるのであります、元々御承知のやうな非常に食糧の不足の際でありまするから、それを埋める爲に色々の努力をするのでありますが、不足だ、或は何千萬人が餓死するのだと云ふ聲に餘りにも脅え過ぎる傾向にあるのでありまして、是が一面に於て食糧の先行不安と云ふものを釀成し、隨て昨年の末から現象にありまするやうに、不用意な政府側の言葉もあつたと思ふのでありますが、一面さう云ふやうな雰圍氣が釀成されまして、愈愈買出し或は賣惜みと云ふやうな問題が起つて參つた、結局自分の首を自分で締めると云ふやうな窮迫の状態に追込んで參ることになるのでありまして、此の點は餘程私共としては、單に官僚主義とか或は祕密主義と云ふやうなことではございませぬので、一般の社會的な心理状態と云ふものを能く認識致しまして、それに合ふやうな風にやつて行かなければならぬと思つて居るのであります、隨て此の需給計畫の發表と云ふことは相當愼重に取扱ふべきものだと私は考へて居るのであります、尤もさう云うやうな點もございますが、最近に於きましては、例へば是も先達て此の委員會で問題になりましたやうに、供出をする時の發表も、皆が出さうと思ふ時には其の數字を發表することはお互ひの裨益になるのでありますが、成べく出したくないと云ふ時には、逆にそれが足踏みをする傾向になるのと同じでありまして、相當此の點に付ての取扱は愼重に致さなければならぬと考へて居ります、尤も色々な關係もございますので、適當な時にはさう云ふ點も發表致したい、斯樣に考へて居りますので御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=41
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042・志賀義雄
○志賀委員 只今日本人及び東洋人の性格に責任があるやうな御答辯でございましたが、一體今年の四月になつたら一千萬人の人間が餓死すると言つたのは、誰でもない、日本の大藏大臣だつたのですからね、大臣が言つて居るのですよ、さうして今まで日本では役人、政府の大官高官が言ふことを以て人民を威す、さうして威せば必ずそれが事實になつて來る、今度も傳家の寶刀として和田農相が振廻さうとして居る、だから恐れるのです、悲觀的に興味を持つのは東洋人の性格であるとか、日本人の性格であるとか云ふことではない、政府がさう云ふ風にさせるのですからね、澁澤前大藏大臣が是は言つたことである、果して今年の四月に一千萬人餓死したか、そんなことはない、日本は非常に全體的に食糧には困つて居るが――だから之を外から見る人は、なあんだ、あんなことを言つて嘘ぢやないか、だから日本の役人の言ふことは信用が出來ないからと、斯う云ふことにもなるのです、さうすると放出して貰へる食糧――又我々として聯合國側から食糧を輸入して貰へることは、非常に我々自身皆感謝して居ることでありますけれども、それを却つて阻碍するやうなことを政府當局がやられるやうな言動は、是は甚だまづいと思ひます、食糧需給計畫にしても、之をなぜ隱すか、それを大膽率直に發表して、是しかないのだ、是で皆力を協せてやらうと、なぜ率直に人民全體に愬へてやられる態度を執られないのか、何でも彼でも機密々々で隱して、時期でない、發表出來ないと言つてやつて來たのが、此の戰時中及び戰前からの日本の官僚の習慣でありました、それがどう云ふ慘憺たる結果を生じたか、戰爭の結果でお互ひに知つて居る通りでありますが、さう云ふ點を率直に愬へてやられるならば――日本人はそんなに悲觀的な性格は持つて居りませぬよ、一生懸命にやれる、一生懸命にやれないやうに政府當局がして居るのですから、斯う云ふ點の考へ方を根本的に改めて戴きたいと思ふのです、又食糧需給計畫の數字が發表出來ないと言はれるけれども、二合一勺は割らないと言はれる、或は新聞に依れば、二合一勺までそれを増さうとする、先程もどうも物の缺配が何日續いたと云ふことが出ると、悲觀的になる、さうすると新聞記者諸君がさう書いたのにも責任があるやうですが、さう云ふやうなことでなく、大膽にさう云ふことを發表すると共に、今のやうに二合一勺を保つと云ふのならば、是から人口統計で推算すれば、大體需給計畫と云ふものは分るのです、然るに二合一勺と云ふものが現實にはどうなんです、それは割らないと農林當局は言はれるけれども、遲配、缺配其の他の爲に一合五勺幾らしか配給しいことになる、それで七月の如きは配給の七割何分かが放出食糧、八月は八割になると云ふ、それで食糧需給計畫を發表しないと言ひながら、自分に都合の宜い方だけは發表する、而も其の數字は空配給の爲に全然胡麻化されて居ると云ふことになる、尤も朝三暮四と云ふ言葉はあります、猿に朝三つやつて晩四つやつたら怒つた、そこで朝四つやり晩に三つだと言つたら喜んだ、どうも是ぢや政府のやられることは此の猿猴にやつたやうに、いやそれ以上に我我日本人を猿以下に扱ふことになりはしませぬか、さう云ふことのないやうにやつて戴きたいと思ふのでありますが、其の點に付ては如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=42
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043・楠見義男
○楠見政府委員 澁澤大藏大臣の言動でありますが、此の點は、實は私先程御答への中に加へました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=43
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044・志賀義雄
○志賀委員 それは分つて居ります、それもあなたの責任ぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=44
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045・楠見義男
○楠見委員 政府の責任と申上げたのは、此の點であります
それから需給計畫の點に付きましては、今までの考へ方と申しますか、色色見透しの付かない場合、特に先行きが眞暗な場合、需給計畫の發表が非常に大きな支障を見る、混亂を見ると云ふことに付て申上げたのでありますが、御話の如く大體の見當は付き、又努力の目標と云ふものがはつきり致しまして、此の目標に向つて國民全體が需給の全貌を知り、そしてお互ひに之を乘り切る爲に努力して行かうぢやないかと云ふ觀點に於て需給計畫を公表すると云ふことは、私は極めて必要なことと思ふのであります、隨て是は實は先般も農林大臣からも本會議でございましたか、御答へ申上げたのでありますが、需給計畫に付きましては、現在實は農家の配給關係に付きまして、御承知のやうな麥、馬鈴薯の供出方法が從來と全然違つた形態を執ることになりました爲に、消費面に於て從來のやり方、考へ方に依る消費量の算出が極めて困難でありまして、隨て此の點に付て今盛んに數字上の再調査を致して居るのであります、是が出來次第、需給計畫に付ては公表し、又全國民の理解を深め、食糧危機突破の爲のお互ひの協力の度を深めると云ふやうな方向に持つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=45
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046・志賀義雄
○志賀委員 最後にもう一つ御聽きしたいと思ひます、此の食糧緊急措置と云ふものは獨り農家のみに關係を有するものではなく、工業生産全體にも關聯を持つものでありまして、北海道では今炭坑地方で坑夫は一日四時間しか働けぬのです、もう腹が減つて働けぬ、それでそそくさと坑内から出て行つて、自分の家の菜園を耕して馬鈴薯を植えたり、其の手入れをすると云ふやうなことになつて居るのです、又九州の炭坑地方でも、是は私共が一般的なことを申すのではなく、九州石炭鑛業會長の陳情書でありますけれども、現在に於ては六月上旬に比し三〇%石炭が減産して云ると云ふのです、それで勞務者加配は五月二十日、勞務者家族の加配は五月十四日に止り、遲配竝に缺肥して七月の食糧見込立たざる爲に五五%減産になるやも圖られず、此の儘推移すれば治安の維持も確保し難し勘う云ふ風な陳情が當局に對し出されて居るのであります、其の爲に石炭と云ふ、一國の工業に執つて人間の食糧のやうな物が無い爲に、益益全體の生産が萎靡し、それが延いては農家方面にも及ぶと云ふことになつて居ります、ここはどうしても今までのやうなやり方でなく、根本的に之を解決しなければならない、食糧緊急措置令と云ふやうな上から押へ付けるやり方でなくて、人民自身が積極的に此の今の日本の慘憺たる、状態を繰返さない爲に、本當の愛國心に基く活動をしなければならないと思ひます、今まで戰爭中に於て能く上の方からの所謂國民運動と云ふものがありましたが、食糧非常突破聲明なんかを見ても、どうも其の時の繰返しを我々には思ひ出させる、是はどうも働く人の創意を生かすことに依つてやつて行く必要がある、御承知のやうに長い間抑へ付けられて居たので、日本の人民は直接國家の政治、其の他生産の管理をし得るやうな所までは行つて居りませぬ、經營する所までは行つて居りませぬが、今の民主主義の時代には益益さう云ふ方向へ人民を協力させるやうにする、最初は緊急措置令のやうな内容のものでも、人民自身、農家に於ては供出は農家自身農民組合的のもの、其の他の組織の媒介を以てやつて行くやうに、都市の食糧營團も其の他の事業も、やはり其處の消費者の代表を參加してやらせる、斯う云ふやうにしなければ迚もやれない、我々は之を人民管理と云ふ風に呼んで居る、其の第一歩からでも宜い、始めたいと思つて居るのです、斯う云ふ風にやらなければ迚も此の危局は突破出來ない、唯上から、議會の後日の承認を得る爲に勅令を以て頭から臨んで掛る、それでそれを傳家の寶刀と呼ぶ、さう云ふやり方ではいけない、御承知のやうに關係方面では、日本刀を持つて居る者は皆取上げると云ふことになつて居ります、恐らく此の傳家の寶刀も日本刀であらうと思ひますが、此の際御返しになつたらどうですか、さう云ふ風に上から傳家の寶刀で威すと云ふやり方をする前に、もう少し實情を調べて戴きたい、人民の創意を生かす、之に潔く官僚の牙城を明渡すと云ふ風にやつて行かなければ、結局する所あなた方御自身の方で混亂を招かれることになるのです、事實農家に傳家の寶刀を以て米を出させようとするが、新潟縣の例を取れば、非常に米の出來る所でありますが、農家には米がない、然るに都市の「ブローカー」の所には米がある、だから東京から新潟縣に買出しに行くのに、決して農家に參りませぬ、町の「ブローカー」の所に行つて買つて居る、斯う云ふことは農林省其の他政府の關係官廳は其の實體を掴んで居られるかどうか、完全に處置を誤つて居られる、例へばまだ大阪附近の農業倉庫には可なり米が殘つて居る、無籍米が殘つて居る、是れなんかが今以て此の儘に放つたらかしてある、それで皆農家其の他の人々が農業倉庫にある無籍米に付て發見しようとすれば、例へば枚方の例でありますが、それを禁止する、人民の方で本當に眠つて居る、隱されて居る食糧を活用しようとするのを抑へ付けられて居る、而もさう云ふ風に言はれるまでは隱して默つて居る、さうして「ブローカー」其の他に對して旨い汁を吸はせる、斯う云ふやり方を根本的に改めるに付て、もう少し人民に斯う云ふ食糧を管理をさせる、それも唯今農林省の執られたやうに、下の方には末端だけをやらせる、國全體は非常な大きい權限を持つて下請に使ふと云ふやうなやり方、官僚の下請機關にすると云ふやり方でなくて、是と協力してやる、進んで管理を受けると云ふやり方、之を執られる方針を持つて居られるかどうか、其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=46
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047・楠見義男
○楠見政府委員 色々の點に付て御意見なり御尋ねがございました、第一段の石炭の問題でありますが、私共も日本の産業の再建の基礎はやはり何と申しましても此の石炭工業の復興、石炭の増産にあると存ずるのであります、御述べになりました北海道の事例は恐らく先月前あたりまでの情勢であつたことと思ひますが、幸ひ輸入食糧を放出せられることになりまして、特に石炭工業に付きましては最優先的に之を確保する、寧ろ、「イヤ・マーク」するやうな考へ方で以て石炭に注込んで居るのであります、隨て石炭の問題は――獨り食糧問題のみではございませぬで、其の外色々の問題があつたやうでありますが、併し其の中の大きな問題は食糧問題でごさいました爲に、其の食糧問題が今日では北海道では解決を見て居ることと思ひます、又九州に付ての御話もございましたが、此の點も私共つい三日程前でございましたか、現地の勞働組合の方々、或は地方商工當局の方々、又商工省石炭廳の方々とも十分に話合ひを致しまして其の事情を承つたのであります、今までの配給操作の上に於て縣當局と地方との間で色々考へ方が違つた點もございましたが、差當りの當面の急を救ふ問題と致しましては、是亦輸入食糧を「イヤ・マーク」するやうな形を以ちまして福岡の石炭を確保すると云ふ方向に現在進んで居るのであります、まだ司令部から正式の許可は參つて居りませぬので、是は未だ發表するまでに至つて居りませぬが、さう云ふやうな情勢でございます、此の際にやはり石炭に付きましても色々炭坑夫の方々が創意を用ひて、一面血の出るやうな此の食糧を確保すると同時に、一面増産に付ても色色方策を講ぜられて居るやうに伺つたのであります、そこで御尋ねの人民管理の問題でありますが、御話にありました如く實際の仕事を、國の色々の行政をやつて參ります場合に獨占的になるやうなことは絶封に避けなければならないのであります、今日議會は民主議會として再生を致して居るのであります、又實際の、例へば食糧の運營に付て申しましても、市町村で食糧調整委員會と云ふものを設け、又上では各政黨政派を超越した議會に於ける食糧の對策委員會と云ふものが出來て、色色政府の施策を鞭撻し又推進をして戴く、斯う云ふやうな方向に現在向ふことは御承知の通りであります、其の中間に於きましても食糧營團に於ては、例へば業務運營委員會と云ふやうなもので消費者代表或は從業員代表と云ふやうなものが加はつて參るとか、或は又隱退藏の問題に對しまして官民合同の委員會で、是は今までのやうな独善的な隱退藏の摘發ではなくして、官民合同に依る「フェア」な、明かな状況の下に於ける隱退藏の供出促進を圖つて行かうと云ふ風に、出來得る限りさう云ふ方向で私共と致しましては微力を致して居るやうな状態でございます、其の點御諒承を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=47
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048・志賀義雄
○志賀委員 甚だ不滿足な答辯でありますが、他の委員諸君の發言の關係もありますので、私の質問は是で打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=48
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049・馬越晃
○馬越委員長代理 堀川恭平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=49
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050・堀川恭平
○堀川委員 今まで皆樣方が農林關係のことに付きまして十分御質疑なさいましたので、私此處に重複することを止める次第であります、又相當長く委員會が繼續して居ります關係上、唯一、二のことを御聽き致したい、斯樣に存じて居るのであります
先般議會に於かれましては家畜のことに對してはぢり貧の方向に向つて居るのだ、それに對する對策としては何も持つて居らないやうな御答辯があつたやうに承るのであります、食糧増産に封する重大なる關係を持つ所の畜産關係に關して一應御聽き致したい、斯樣に存ずるのであります、畜産と肥料との關係、即ち我が國土に於きましては、無論化學肥料がなければ増産は不可能であるのでありますが、化學肥料、のみで相當年間やつて行くと云ふことは土地を荒廢させる原因にもならう、我が國と致しまして化學肥料と畜肥とを合して増産に挺身することこそ本當の肥料の價値が出るのではないか、斯樣に存ずるのであります、又畜産と有畜農業との關係、又畜産と運輸の原動力である所の小運搬との關係、又畜産と都市の衞生保健、即ち重病人或は乳兒用と云ふやうなものに對しての政策、の現状に付て現在どう云ふ御考へであるのか、一應御聽したい、斯樣に存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=50
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051・楠見義男
○楠見政府委員 實は畜産の問題に付きましては、本日午前に農林大臣から全般的の畜産振興に付ての方向、及び畜産局長から詳細御説明申上げたのであります、或は詳細の點は速記録等に依つて御覽願ひますれば結構かと存ずるのであります、尚ほそれを註釋致しまして私から今御尋ねの點に付て簡單に御答へ申上げて見たいと思ひます、御話になりましたやうに畜産の振興と云ふことと、農業の今後の經營竝に食糧増産、斯う云ふ觀點とは全く切離すことが出來ないのであります、隨て畜産振興と云ふ點に付ては、私共も之を等閑視して居る譯ではないのでありますが、先般來申上げますやうな、本當に目先に火がついて居る状態の爲に、已むを得ずやつて居りまする措置が、結局じり貧の状態になつて居るのであります、此のじり貧の状態を、何とか事情の許す限り、或は場合に依つては少々の犧牲があつても、其のじり貧をなくするやうな方向に持つて行かなければならぬと云ふことで、一應飼料問題其の他に付ても努力を致して居りますことを重ねて申上げたのであります、勿論御尋ねになりますやうに、飼料問題を中心と致しまして、色々の問題もございますし、又自給肥料の爲にはどうしても大家畜の確保と云ふことは必要であらうと存ずるのであります、小運搬に付きましても同樣であります、又都市の衞生保健の關係から致しまする牛乳其の他の乳製品の確保と云ふことも、全く御話になるやうなことでありまして、結局現在は是等の問題が總て飼料問題を中心に致しまして、行詰つて居るやうな状態なのであります、一面本日午前に畜産局長からも申上げましたやうに、種畜の整備、畜産の基本的施設に付きましては、竝行的に何時でも畜産振興の上昇線に復歸出來ますやうな態勢は整へつつありますが、一面に於きまして飼料問題が一番大きな支障になつて居る爲に、此の惡い絆を出來るだけ早く切ると云ふ方向に、現在努力をして居るやうなことであります、概略的のことだけを御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=51
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052・堀川恭平
○堀川委員 私丁度午前中休んで居りましたので、大臣の御話があつたと致しますれば、又速記録を見まして、それに對して又の機會に御尋ねしたいと存じますが、差當り次官と致されては、出來るだけやつて見たいが今の所はどうにも仕樣がない、斯う云ふやうな御話でありますが、家畜が現在のやうに少くなり、又是れ以上少くなつたと致しましたら、此の復奮に二年や三年では到底元通りになることは覺束ないと思ふのであります、で之を出來るだけ維持しなければならぬと云ふことは無論當局も其の御考へであらうと思ふのでありまするが、現在のやうな飼料の不足の時期、即ち未利用資源までも人間が食ふと云ふやうな時期でありますが、其の未利用資源まで人間に出して居るのに、家畜に飼料の配給、未利用資源の如き飼料の配給までないが爲に、農家として或は輓馬と致しましては、或は闇で麥を買ひ、さうして家畜に人間の主食である所の麥を食はし、人間が未利用資源を食はなければならぬと云ふやうな、左樣な政策は以ての外ではないかと私は考へるのであります、さうして現在乳牛の需要量は、二十一年六月の現在に於きましても、全國で乳牛が十八萬九千頭、そして是から搾る所の牛が七萬頭と假定致しましても、乳量は八萬石であるのであります、所で之に對して無論飮用或は煉粉或は「バター」と云ふやうなものを造られませうが、結局の所一歳未滿の乳兒用の需要量が七十四萬石、二歳以下が三十三萬石、重病人が一萬三千石と云ふやうな數量が要るのでありまして、結局の所百萬石も不足になると云ふやうなことになつて居るのであります、是では今後日本人の青少年を育てて行くのに、其の一歳二歳の者を殆ど殺してしまうやうなことになるのではないかと云ふことも心配されるのでありまして、私それに對しての飼料の輸入と云ふことに對しても、政府として相當御努力下すつて居ると斯樣に存ずるのであります、先般、昨日でありましたか、次官に於かれましては三十何萬「トン」かの輸入許可を貰つて、其の第一船が名古屋に入つて居るのだと云ふことも聞きましたが、此の輸入の數量が三十萬「トン」許可になつた、そして其の第一船は既に人間に食はしたと云ふことも聞くのでありますが、昨日の御答辯でははつきりとは申されなかつたやうでありますが、飼料の點を御聽きした其の御返事に、名古屋に第一船が入つて、相當其の方に向けて居ると云ふやうなことも御答辯があつたやうに思ふのでありますが、それ等に對して政府と致されましては、其の人間が食つても食へないやうな未利用資源を相當確保される、或はそれに米麥の現在のあの精白――三分搗を七分搗にするとか或は精白にするとかして、之を配合なさつて、さうして本當に我々が口に入れる所の主食である麥を出さすと云ふことの方が一擧兩得でないかと私は考へるのでありますが、政府の御考へはどうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=52
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053・楠見義男
○楠見政府委員 畜産の問題に付て特に飼料の問題に付て堀川さんの只今前提として言はれましたことに付て多少誤解があるといけませぬから、もう一度申上げて置きたいと思ふのでありますが、私の申上げましたのは出來るだけやりたいが現在はやれないのだ、斯う云ふことを申上げたのではないのでありまして、出來るだけ此のぢり貧の状態を戻したい、隨て現在は場合に依つては非常に食糧其の他の關係から見ると實は苦しいのであるけれども、其の線を越えて之を飼料の方に廻して居ると云ふことを申上げたのでありまして、例へば乳製品を確保致しまする爲に、又乳牛生産農家の飼料を確保致しまする爲に、牛乳に付ての所謂綜合供出と申しますか、さう云ふやうなことをやつて居ることは御承知の通りであります、未利用資源の點に付ての御尋ねでありますが、本來未利用資源に付ては全く堀川さんの御話のやうに、さうすべきものだと私も考へて居ります、それではなぜ現在のやうなことにしたかと申しますと、是も豫て申上げて居りますやうに、どん底になつて參つて、結局此の生を繋ぐ爲には、如何なることをしても生を繋がざるを得ないと云ふやうな、極めて窮迫したる状態を豫想し、此の状態を乘切る爲に現在のやうな未利用資源の活用を圖つて來たのであります、本年は恐らく是がどん底だらうと思ふのであります、一面御話の如く本年斯う云ふやうなものは寧ろ飼料に戻し、飼料に廻されて居る麥なり或は米と云ふものを供出面に出して來ると云ふことが本筋であることは申すまでもないことでありますが、此の點に付ても昨日も申上げましたやうに、早くそこに切換へをしたい、さうして時機を狙つて居るのであると云ふことを申上げて居るやうな次第であります、方向と致しましては全く同感に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=53
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054・堀川恭平
○堀川委員 現在都市の輓馬、或は小運送に於きましては殆どさう云ふ手を入れる所がないのでありまして、是等の牛馬と致しましては、斃れるより外に仕樣がないと思ひますが、是等が斃れた場合には、運送の根源をなす所の小運送でありますが、増産された結果の食糧であり、或は材木であり、色々な物に對しての運搬が利かなくなるぢやないか、斯樣に存ずるのでありますが、今年になつてから馬に一囘、牛に一囘位の配給量では、現在の馬は唯生きて居ると云ふだけでありませうから、あの牛馬、家畜が物を言ふのでありましたら、或は食糧「メーデー」をやつて居るかも知れぬと思ひます、それが現在直ちに死んで行つて居ると云ふことに對して、今申上げましたやうに糠の増量をなす、米を白にする、或は麥を今のやうに玄麥で配給することを止して、相當白にして是等を相當量配給すると云ふことが、輸入飼料に挨つまでもなく、相當量が直ちに出るのではないか、斯樣に存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=54
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055・楠見義男
○楠見政府委員 都市の輓馬に付ての問題でありますが、是は能く御諒承願つて置きたいと思ひますことは、御話になりましたことは何れも御尤もだと私は思ふのでありますが、併し全體の飼料事情は、或は私よりも堀川さんの方が御詳しいかとも存ずるのでありますが、結局苦しい物をどう云ふ風に分け合ふかと云ふことでありまして、一番本へ行けば人間と家畜の分け合ひ、又家畜の中に入つて來ますと乳牛とそれから重要鑛物、其の他の或は木材等の運搬と云ふやうなものと分け合ひ、更に又都市小運送との分け合ひ、斯う云ふ風に同じ部門に於きましても、どうしてもさう云ふ順位が自ら付かざるを得ないのが、現在の情勢であります、さうしないで、平均してしますると、結局皆が共倒れになる、斯う云ふやうな結果にならうと私は考へて居るのであります、そこで糠の問題にしても同樣でありまして、例へば東京のことを考へても、東京には殆ど米は入つて來ないのが現状であります、是が通常の状態でどんどん米が入つて來、或は營團あたりにも手持が二週間以上も持ち得るやうな状態でございますれば、糠の搾油と云ふやうなことも考へられるのでありますが、現在では米が御承知のやうな状態でありますので、結局それが出來ない、それでは此の外麥の問題に致しましても歩留りを現在は御承知のやうに九十三から九十四位まで引上げて居るのでありますが、之を少し歩留りを低くすればするだけ配給しなければならぬ量が多くなつて來る、結局今申しましたやうに、少いものをどう云ふ風にして分け合ふかと云ふ爲には、どうしても一部に於て不十分な、又不滿足な點が出て來るのは或る程度已むを得ないことであらうと思ひます、併しさうかと申しまして、何時までも斯う云ふ状態でもいけないので、先程來申しますやうに之を少しでも改善するやうに努力をすべく私共は考へねばならぬ、斯う云ふことを申上げて居る次第であります、此の點御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=55
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056・堀川恭平
○堀川委員 又の機會に速記録を讀まして戴きまして質問したいと思ひますが、最後にあの三十萬「トン」の飼料が許可された、之に對して飼料に一體どの位程度御渡しになる積りでありませうか、それを御聽きしたい、それからもう一つは金融の部面でありますが、家畜を商人に賣るのには現金で入る、兎に角家畜をなくすることに有利になつて居る、農家或は其の他の買入れに對しましては對鎖である、到底買入れが出來ない、斯う云ふやうな關係になつて居るのであります、此の點も何とか御考へになつて下された方が家畜の存續と云ふことに對して相當有利でないかと私は考へるのでありますが、其の點を一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=56
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057・楠見義男
○楠見政府委員 第一點の麩の三十萬「トン」と云ふことは、實は全然まだ發表されて居らないと思ひますし、恐らく是は發表出來ないぢやないかと思ひますが、私は三十萬「トン」と云ふ數字は承知致して居りませぬ、此の事は實は非常に「デリケート」な問題がありますので、先般も申上げたのでありますが、非常に食糧が不足だと云ふことを世界に宣傳をして居る國から是が入つて來るのでありますから、若しさう云ふことが出ますと非常に微妙な――將來其の麩に付ては輸入が止まる、斯う云ふやうな事態も考慮されますので、さう云ふことは一切發表されて居らないのぢやないかと私は思ひますが、其の發表如何は別と致しまして、三十萬「トン」と云ふことは私は實は承知致して居りませぬ、唯飼料事情に付ては、國内の色々窺迫した状況に付ても特に關係方面では同情を以て努力をして呉れて居る、さうして著々是が實行の緒に就いて居ると云ふことだけを申上げて宜てと存ずるのであります
それから家畜の封鎖支拂の問題は、實は一般の家畜の賣買に付ては御承知のやうに慥か半額の新圓、半額の封鎖であつたと思ひますが、併し一面に於ては、今御話の如く潰す方が全額新圓であると云ふことであれば、潰す方に獎勵をするやうなことになる譯でございますから、是等の點は能く調整を取つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=57
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058・堀川恭平
○堀川委員 それでは其の他は他の機會に致しまして私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=58
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059・氏原一郎
○氏原委員 第一に御伺ひ致したいと思ひますことは、昨年九月の十六、十七日を中心と致しました災害に依ります所の荒廢林地の復舊事業、竝に耕地の復舊事業は本年の三月三十一日、即ち昭和二十年度中に最初農林省は助成の請求を致しましたものの中で、どの程度まで事業が行はれて居るか、それからそれが現在どの程度まで工事が完遂されて居るかと云ふことを先づ一つ大雜把な見當で結構ですから、御分りになつて居れば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=59
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060・楠見義男
○楠見政府委員 詳細に私承知致して居りませぬので、別の機會に是は其の方の係りから御答へ申上げたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=60
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061・氏原一郎
○氏原委員 恐らく斯樣なことが現在の農林當局に分つて居る筈はございませぬ、昨年の九月十六、十七日災害と云ふものが地方廳から中央官廳に報告されて、それに對する補助の指令が出て、而もそれが著手をされて居ると云ふやうなことは殆ど全國的にはございますまい、私の選擧區の如きは、昨年の九月災害に依つて相當廣面積の荒廢林地を出しまして、是が復舊計畫を立てて農林省へ補助の申請もして居りますけれども、未だ一箇所として著手になつて居りませぬ、と同時に農林省關係の耕地の復舊事業等に付ても殆ど其の緒に就いて居りませぬ、私は農林省は斯樣な役にも立たぬ緊急勅令のやうなものを振廻して、直接之に依つて、百姓を威かしつけて何十萬石かの供出が出來たかも知れませぬけれども、一體是は根本的に本末を顛倒して居るのではないか、昨日及び本日の新聞を御覽になつても御分りの通り、九州及び山陽、各地域に於て相當の豪雨があつたが爲に、耕地、橋梁の流失、堤防の決潰と云ふものが相當澤山の數に上つて居ると云ふことが報道されて居ります、私は早速此の地方に於ける雨量に付て其の專門の機關に付て調査をして見ますと、新聞に豪雨だと出て居りますけれども、全體の雨量としては極く僅かの雨量であつたと云ふことを承知することが出來ました、是は一體何であるか、其の僅かの雨量で以て各河川が氾濫すると云ふことは一體何であるかと云ふならば、是は去年の災害に對して農林省が手を打つてなかつたと云ふことが一番大きな原因なのです、私も農林省の山林局の祿を食んで居つたことがありますから、聊か其の點に付ては專門的な知識も持つて居りますけれども、林地が荒廢する、それに對する砂防工事も何等施されないと云ふことは、結局其の土砂を次の雨の降つた機會に河川に向つて流し込む道を開けることになる、私の選擧區の六つの河川の工事に付て調査した所に依るとそれぞれの河床が最高四尺、最低一尺六寸高くなつて居る、それは勿論戰爭中に於ける過伐濫伐と云ふことが本質的な原因ではありましたけれども、其の過伐濫伐に對して農林當局が、國有林と云はず民有林と云はず、所謂植伐の均衡を取るやうな計畫を立てて推進することが出來ないで、唯片端から伐つてしまふと云ふことをやつた所に其の根本的な原因があつた譯であります、隋ひまして私共から言ひますれば、農林當局は此の緊急措置令を振廻はすことに依つて、自分自身の責任を囘避すると云ふことになるのではないかと云ふ風にも考へられるのであります、一體去年の九月災害と云ふものに對する復舊計畫、特に農林省關係だけでも結構ですが、荒廢林地の復舊、耕地復舊に對する事業と云ふものは何時になつたら其の緒に就くのでありますか、恐らく私は八日、九日の西日本に於ける水害に依つて何十萬石とも言へない減收が現實の問題として起つて居ると思ひます、現に私共の地域では二期作をやつて、早い所では既に穗を含んで居りますが、先月十五日から二十二日頃までの梅雨期の降りみ降らずみと云ふ天氣で、雨の降つた分だけでも河床が高くなつて居りますから、折角穗を含んだ一期作の水田に對して相當浸水を致しまして、是が結局又全體的に減收になる、強權發動と云ふやうなことに依つて供出を期待すると云ふ小手先のことを御考へになる前に、なぜ政府は、農林省は根本的な治水對策、或は耕地に封する災害防除と云ふことを根本的に御考へにならないのか、具體的に申上げますならば、一體昨年の九月災害と云ふものに對する荒廢林地の復舊工事とか、耕地の復舊工事とかに對して、凡そ何時頃までに御やりになり、何時頃までに農民の根本的な、本質的な耕作に對する不安を除去すると云ふ御考へであるのか、此の點を先づ伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=61
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062・楠見義男
○楠見政府委員 災害關係に付きましては、是も實は御缺席の際に森林地の問題に付て概括的なことを私から申上げたのでありますが、御話になりましたやうに、最近の風水害が昔に比べて特に甚だしい、此の原因は戰時中に於きまする植伐不均衡にあつたことは申上げるまでもないのであります、山林關係に居られたと云ふ御話でありますので、寧ろ詳細は私よりも御詳しいと存じますから、簡單に申上げることに致しますが、御承知のやうな山林治水事業竝に災害防止施設と云ふものは年度計畫に從つて現在來て居りますけれども、偶偶此の年度計畫の末期にも近付いたので……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=62
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063・氏原一郎
○氏原委員 さう云ふことは此の間あなたから伺ひました、さうでなしに、もつと簡單に、去年の災害に對して一體何時までに全國的にやると云ふのですか、それだけです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=63
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064・楠見義男
○楠見政府委員 昨年の水害復舊工事に關する經費と致しまして、本年度豫算に於て一億一千六百萬圓を計上する計畫であります、既に御協贊を經ました追加豫算にも其の一部は入つて居るのでありまして、本年度分は既に著工致して居りまして、事柄の性質上或は二年計畫で濟むものもありますし、或は三年計畫になるものもあります、私の承知して居りますのは此の程度でございまして、尚ほ詳しいことは他の機會に他の政府委員から御答へすることに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=64
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065・氏原一郎
○氏原委員 現在の和田農林大臣、楠見次官を中心とする農政に根本的な林政のことを御尋ねするのは少々無理な話でございまして、是は尋ねます私が野暮かも知れませぬ、食糧大臣、食糧次官程度であれば其の程度のことは御分りかも分らぬが、林政のことは恐らくは十分御分りでないと云ふことは平素から言はれて居ることでありますが、唯一つ御尋ねしたいことは、強權發動までして底を突いた食糧を農民から取上げなければならぬと云ふ一面に於て、政府の責任に於て災害防除をやらなければならぬと云ふことが本質的に先行すべきであるにも拘らず、其のことに對しては、勿論終戰後の色々な混亂或は資材の不足と云ふやうな惡條件が累積して居つたと云ふことは認めるに致しましても、今年の植付が終つたならば、直ぐ全國的に又暴風雨の時期が來て、折角の收穫を流してしまふことが來るではないかと云ふこと位は、幾ら頭の惡い役人でも、大體是は心配をするのが當然のことだと思ひまするが、昨年九月の災害に對する本年度の所謂改修工事などと云ふものが出來て居ないばかりでなく、私の調査する所に依ると、全國を通じて昭和十八年度の災害の――特に荒廢林地の復舊計畫と云ふやうなものは、殆ど四〇%位しか進行して居ない、斯う云ふやうなことの責任を誰もが取らないで、河は雨が降つたが爲に堤防が切れたのだ、山が崩れた爲に上流から土砂が流れたのだ、それで河床が高くなつたから僅かの雨でも田畑へ出水したのだ、斯う云ふ風に簡單に所謂責任を免るるやうなことでは、私は絶對に食糧問題などと云ふものの解決は付かないと思ひます、是では一面に於て開拓局を拵へ、新しい耕地を得ようとして居りまするが、一面に於て美田良田を水に流して、さうして之を犧牲にすることに依つて農民に賽の河原の石積のやうな、洵に儚い所の努力を積重ねさせる結果になると思ふ、私は農林次官が責任を以て確信を以て此の委員會で御言明が出來ないとするならば、別の機會でも結構でありまするが、昭和二十年の九月災害と云ふものに對する農林省關係の災害復舊工事と云ふものは、少くとも萬難を排して何時頃までに何年度中に大體片を付けて行くのだ、斯う云ふことに對しての責任と確信を持つた所の一つ御答辯を戴きたいと同時に、先程の昭和二十年災害に對する所の現在の災害工事の進捗率と云つたやうなものを、書面を持ちまして成るべく早い機會に御答辮を願ひたいと思ひます、此の問題では打切ります
次に農林省のやつて居りまする耕地整理事業でありまするとか、或は耕地の造成事業と云ふやうなものに付て、是は一體農林省には一つのお家流とでも申しまするか、農林省それ自體が持つて居る所の技術とでも申しまするか、何時の場合でも少し思ひ切つた計畫を立てまして、さうしてそれに依つて耕地を大幅に造り上げて行くと云ふやうな工事のやり方をやらないで、ほんの小手先の――鼻糞で行燈を貼ると云ふ言葉が私共の國の方言にありまするが、直ぐに破れてしまふやうなことをおやりになつて、さうしてそれに依つて役人の頭數だけは幾らでも役所にごろごろして居ると云ふやうな傾向があるのでございます、譬へて申しますると、耕地整理をやりまする場合でも、摺鉢の底に耕地があるとするならば、何時の場合でも其の摺鉢の淵の嵩上げをする、例へば堤防の嵩上げをすることに依つて耕地整理事業をやらうとする、思ひ切つてそれを「トンネル」水路と云つたやうな雄大な計畫を立てて、根本的に冠水地帶、沼澤地帶を美田化すると云ふやうな根本的な工事をやらない、斯う云ふやうな傾きが非常に多いのでありますが、此の點に付ては農林省は現在耕地整理事業其の他に依る所の工法に對して、一つの思ひ切つた革新を斷行することに依つて、本質的な根本的な工事の目的を達するやうに、一つ技術陣の所謂頭の入替とでも申しまするか、さう云ふやうなことに付て何か農林當局は御考へになつて居ることがありはしないか、此の點を御伺ひ致したい、序でに簡單ですから濟まします、大體に於きまして全國を通じて百に近い大中小都會が戰災に依つて燒かれたのでありますが、さうして之に對する所の都市計畫と云つたやうなものが内務省を通じてどんどん認可にもなつて居るやうであります、所で此の都市計畫に伴ひまして私共が考へて行かなければならぬことは、戰災都市に對する所の緑化地帶と云ふものが相當廣汎なる面積に亙ると云ふことが豫想されて居る、所が之に對して一體農林省はどう云ふことを考へて居るか、戰災都市の緑化と云ふことと、其の緑化地帶に對する所の所謂食糧問題との關聯と云ふやうなことをどう考へて居るか、譬へて申しますと、從來の都會に於ける竝木と云ふものが何時の場合でも「ポプラ」とか「プラタナス」とか云ふやうな外國から移し植えられた所の所謂外國の模倣並木を作つたり、或は又觀賞用の餘り役にも立たない唯珍しいと云ふことだけで樹木がどんどんと植えられて居りましたが、私は今日以後の日本に於ては、此の點に付ては或る人々は食糧の恐慌と云ふやうな問題を心配せられて居るやうでありますけれども、さう云ふことを考へても、尚又將來の日本の都會に於ける所の緑化地帶と云ふものに封しては、例へば所謂果樹園藝と云ふやうなもの、或は特用作物と云ふやうなものが藝術的に、而もそれが實利を伴つて計畫をされなければならぬ、例へば東京に於ける並木は私は柿、栗、桃と云つたやうな食用果樹類で宜しい、或は場合に依りましては氣候に依つては胡桃であるとか、無花果であるとか云ふやうなものが都會の並木に竝んで居つて、時が來れば幾らかでもそれが食糧として供給せられると云ふやうな工合に考へらるべきではないか、而も此のことは今からもう既に何等かの方針を農林省としても立てて、苗木の育成であるとか云ふやうなことを考へなければならない問題ではないかと云ふ風に考へるのですが、此の點に付てはどう云ふ御考へを持つて居られるか
最後に一つ申上げたいのは勞務加配の問題に付ては地方毎に民主的な委員會と云ふやうなものを設けて、其の運營を適正になさると云ふ御方針と承つて居ります、洵に結構でありまするが、此の委員會に對しましては唯單に從來の官僚がおやりになるやうな、官僚の言ふことはどんなことでもへーへー言つて聽くやうな御都合の好い委員だけを御集めになつて、それが何れかの團體に所屬して居るが故を以て消費者代表とか何とか云ふやうな都合の好い考へでなしに、本當に民主的な團體の代表者を御加へになる御意思があるかどうか、從來工場に對する加配米等は主として其の工場の重役連中が妾の宅に持運んだり、或は重役の所に持つて來てお客の接待用になつたり、或は事務職員の家庭の不足を補ふと云ふやうなことに使はれまして、本當に勤勞者、勞働者に對する加配米と云ふものの使命を十二分には達して居らない事實があるのであります、斯う云ふやうな點から考へましして、勞務加配の爲に作る委員會の運營、其の委員會の本質と云ふものは非常に官僚的な考へ方で律せらるべきものではなくて、本當に嚴肅な責任感を持つた委員會に作り上げられなければならぬのでありますから、念の爲に一つ御伺ひ致したい
それからもう一つは生産農家に對する所の強權發動に依る供出と云ふか生産物の收奪と云ふか、それが一つ考へられて居るのでありますが、一面に於て農林省は斯う云ふ方面に付ては甚だしく寛大であると云ふことが又考へられる、農林省と云はず内務省もですが、農林省それ自體の「イデオロギー」がさう云ふ方面に對して非常に寛大であると云ふことが考へられる、例へば私共の選擧區では一里一里半位隔つた所からお醫者を迎へますと、米九升と云ふのはえらい半端でないかと言はれるかも知れませぬが、五升はお醫者さんが取つて、四升は車挽が取るのであります、是は現にさう云ふ状態である、それから又「パーマネント」を農家の娘さんが掛けに町に參りますと、必ず米五合以上を提供しませぬと「パーマネント」を掛けることが出來ない、だから髪結ひさんが米を持つて居る、お醫者さんの所へ行けば米は幾らでもあると云ふことは事實でありまして、現に私共は其の米を三俵も四俵も集めて確保して居るお醫者さんとも知合ひでありますが、さう云ふ方面にはちつとも此の緊急措置令のやうな權力の發動をようしないのであります、是はまるきり片手落の處置でありまして、今申しましたのは實例を一つ二つだけ擧げたのでありますが、さう云ふやうな形のこと、それから先程志賀君が言はれましたやうに、百姓よりももつと米の「ブローカー」、中都市に於きましても「ブローカー」をやつて居る連中の所に米が澤山ある、さう云ふやうな者に付ての所謂緊急措置令と云ふものを御考へにならないで、唯農家其の他を對象とした緊急措置令ではいけないぢやないかと云ふことを考へるのでありますが、此の點に付ては別に何等かの御考へがあるのでありますか、私は之をやつて初めて只今の緊急措置令と云ふものが效果が擧るのではないか、斯う云ふことを考へないで、唯一方的なことだけでは到底いけないのぢやないかと云ふことを考へまするが故に、此の點を伺ひたいと思ひます
それからもう一つ、是は地方問題になりますけれども、此の機會に御答辯を煩はしたいのは、高知縣に於ける所の早場米に對しましては、御承知の通り獎勵金の制度が除けられて居ります、なぜかと言ふならば、是は高知縣が氣候の上から考へても當然早く米が出るんだから獎勵金は出さないと云ふ農林省當局の御考へのやうでありまするが、是は高知縣と雖も氣候がさうだからと云ふので別に好んで二囘も米を作り穫るのではございませぬ、御承知のやうに颱風の通過地でございますから、非常に颱風に遭ふ所の機會が多いのでございます、それで一期作で穫れなくても二期作で穫る、其の代りに二期作が全然なくても一期作で穫ると云ふ建前で行つて居るのであります、それを氣候の關係で早く出來て居るから高知縣だけは早場米を除くと云ふことは、是は農林當局は認識不足ではないかと思ふのでありますが、此の點に付きましては全國と同じやうな取扱ひをなさる御意思はないか、之を一つ御伺ひしたいのであります、御參考まででありますけれども、高知縣の二期作に刺戟をされまして、徳島縣の太平洋岸に於きましても、段々と此の二期作の面積が擴がりつつあるのであります、それで徳島縣が二期作をやるのに對しては早場米の獎勵金があるのに、高知縣がないと云ふのは根本的の矛盾がありますし、颱風がやつて來るのでは已むを得ず二度に穫るのでありますから、それには氣候の天惠もございますけれども、さう云ふ關係になつて居ると云ふことを根本的に御諒解の上で、何分の之に對する御答辯を煩はしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=65
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066・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、第一番の耕地關係の技術人の頭の切替と申しまするか、さう云ふ點に付ての御尋ねでございましたが、御話になりましたやうに、我が國の耕地關係に付ての技術の問題は、唯單に土地に付てだけの問題ではございませぬで、即ち山林關係の技術と申しまするか、知識も加へてやらなければなりませぬし、又河川關係の知識も加へまして、結局是等の山林とか河川、或は純然たる農業土木、耕地技術と云ふやうなものが綜合的に加はりませぬと、結局末節だけの工事に終りまして、結局其の爲に全體としての效果を博し得ないと云ふことになるのであります、隨て現在開拓局に於きまして、耕地關係の仕事を扱つて居るのでありますが、此の開拓局に於きまする耕地の今後の在り方と云ふものに付きましては、今申しますやうな觀點から各方面の人々の知識を注入し、又土木に付きましても、或は從來大きな土木陣營として技術を持つて居りました鐵道關係の人々の知識も借り、總て斯う云ふ點に付て綜合的の觀點に於て、耕地技術をやつて行くと云ふ方向に現在進めて居るのであります、現實にさう云ふやうな擔當の課も設けまして、今申しますやうな方向に努力致して居るやうな次第であります
それから第二番目の戰災都市緑化の問題に關しての食糧果樹と申しますか、斯う云ふものとの組合せの問題でありますが、私共も將來の食糧と云ふ問題を考へて參りまする場合に於て、例へば同じ木でありましても、栗等は相當注目された問題として取上げられて居るのでありますが、私共の方の山林局に於きましても、特に此の栗等の問題を中心に致しまして、色々準備を進めて居るやうであります、詳細は私はそれ以上はまだ聞いて居りませぬが、兎に角栗の問題を中心として相當取上げる態勢になつて居るやうに承知致して居ります
それから勞務加配の點でありますが、此の點は私共地方長官に對しましても、先般も都道府縣の委員會の構成分子に付て具體的に明示を致しまして、例へば勞働組合の代表者の方々、或は消費組合があればそれの代表者の方々、斯う云ふやうな眞に産業事情、工業事情、消費事情に通じた人々、公正な人々に參加して戴く斯う云ふことを趣旨と致して居るのであります、それからお醫者さんとか其の他業務の對貨としての食糧の要求に付てでありますが、實は此の業務の對貨と云ふ問題に付きましては、緊急措置令を制定致しました際に併せて此の問題も取上げて、慥か食糧管理法の改正に依りまして取締ることに致したのでありますが、結局貰ふ方も出す方も、要求される方に付きましては、色々弱い立場もあるのでありますが、結局出す方も、又取る方も此の遵法精神と云ふものが缺如し、又第三者もそれが缺如して居る、只今御述べになりましたやうに、知人の方でさう云ふ方が居られると云ふ場合に、唯それは承知して居られますけれども、之に對してもあまり不思議とも思はないと云ふやうな一般的のさう云ふ空氣になつて居るので、私共はさう云ふものは寧ろ役所の立場から、結局さう云ふ事態を知り得れば、折角さう云ふ取締の途も設けたのでありますから、具體的に此の人間と云ふやうなことが知り得る機會がございますれば色々之を處罰し、又一殺百戒と申しますか、さう云ふ風に仕向けて參る機會も掴みたいと考へて居る次第でございます
それから高知縣の早場米の問題は、是は全國的の問題として取扱ふ必要があるやうに私も今伺ひまして感じまするので、是は一般の早場米に付て措置を講じまする時には、同樣のことを考慮するやうに食糧管理局方面にも研究をさせたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=66
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067・氏原一郎
○氏原委員 根本的な問題に付ては非常に不滿の點が多いのですけれども、楠見さんでは林政關係のことがお分りにならぬやうでありますから、別の機會に根本的のことを御伺ひすることにして、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=67
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068・馬越晃
○馬越委員長代理 杉田一郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=68
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069・杉田一郎
○杉田委員 私は本委員會も丁度私を以て最後の質疑者と考へられますので、簡單に御伺ひ致したいと思ひます、根本の問題と致しましては、此の食糧緊急措置令と云ふ惡法は是非とも撤廢して戴きたいと云ふのでありますが、是は既に撤廢しないと云ふ政府の言明もあります、併し法は法として存置して置きましても、其の運用に依つて法がないやうな風に食糧政策を變へて行く、所謂此の措置令を用ひないで宜いやうな風にやつて行くと云ふやうな御話でございますけれども、果して此の措置令を使はないで宜いやうな食糧政策と云ふものはどう云ふものであるか、私は其の點を一つはつきり御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=69
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070・楠見義男
○楠見政府委員 是は大臣も申上げましたやうに、食糧需給の問題は結局増産を主體にせざるを得ないのであります、一面に於て増産が可能になりまするやうに、土地の改革の問題に致しましても、技術振興の問題に致しましても、現に御承知のやうな方向で以て進んで居るのであります、併し一面に於きまして食糧の需給關係が昔のやうに自由な状態に戻ると云ふことには、中々現在の所では難かしいと思ふやうな状況である譯であります、隨て全體の需要の觀點から現在のやうな供出制度が續けられると云ふ場合には、どうしても欺う云ふやうな措置が裏打として御諒承願はなければならぬ、併し根本は今申しますやうに増産に努力を注いで參る、又それに依つて少しでも需給關係の改善の方途を講じて參る、斯う云ふことになるかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=70
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071・杉田一郎
○杉田委員 食糧増産に依つて、此の法の運營は唯法として止めて置くだけであると云ふ御答辯であります、洵に結構な御答へと思ひますけれども、併し從來までの戰爭中のことは私は申しませぬが、少くとも終戰後に於ける政府當局の農村に對するやり方と云ふものは、徹頭徹尾所謂農民と云ふものを欺瞞して居る、瞞まして居る、正直なものに馬鹿を見させ放しにして置く是では正直なものに對しては餓死をさせると云ふやうな結論が凡ゆる面に於てあるのであります、例へば此の六月でありましたか、食糧が非常に危機に直面したと云ふので、之に對しまして農家に於きまして所謂救國米と致しまして、麥の供出を自主的にやつた、所謂生産者として持つて居る餘分な二十年度に獲れました麥を供出致しました、此の生産者の販賣價格と云ふものは一俵三十二圓で計算されて買上げられて居る、併し先程志賀君からも申されました所謂隱退藏をして居て摘發され、さうして所謂賣渡命令に依つて取られる所の麥は一俵で九十二圓、所謂現在の國家の食糧危機を本當に同胞愛に依つて體驗致しまして、自主的に之を出した其の麥の値が三十二圓であつて、多く所有して居つて捕まつて、所謂賣渡命令に依つてなされるものが九十二圓と云ふことになつて居りますと、是では百姓は飽くまでも狡けて、さうして此の措置令に依つて出させられた方が高く賣れると云ふやうな結果になると思ふのであります、此の點どう云ふ訳で斯う云ふ風な差を付けたのであるか、一寸一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=71
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072・楠見義男
○楠見政府委員 其の問題は生産者價格と消費者價格に於て相違がございますものに付ての隱退藏の摘發に於きまして、各方面に亙つてさう云ふ問題があるのでありますが、只今の御話の麥の價格は、昨年の生産者價格で以て生産農家から供出を仰いで居つたのであります、隨て先に出した家と後に出した農家と、各農家の間に於て差等がございませぬやうに、生産者價格を一本でずつとやつて參つて居るのであります、勿論米のやうに後で價格を上げました場合には、先に出した農家が馬鹿を見ないやうに、遡つて補償を給付致して居るのであります、唯消費方面に於ける隱退藏の摘發價格に付きましては、結局是は消費者價格と云ふものに準據せざるを得ないのであります、今御話の如く其の面から見ますると、非常に生産者と消費者との間に價格の部面に於て大きな不公正と申しますか、差があるやうに思はれるのであります、併しそれぞれの面に立つてやつて參りますると、どうしてもさう云ふやうなものに準據せざるを得ないやうな實情になつて居りますので、其の邊の事情は能く御諒承願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=72
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073・杉田一郎
○杉田委員 此の問題は私農村の農民の方から、度々痛烈に言はれますので御伺ひしたのでありますが、理窟から考へても生産者の價格一本で行くと云ふのは當を得た話でありますが、反面に於て法を破つて買溜めたものに對する賣渡命令に依るものは、九十二圓と云ふ恰も三倍にもなる所の値段で以て買上げると云ふことは、所謂國法を破つて、さうして食糧を自分だけが宜いと云つて「ストック」した者の米は高く買つてやる、寧ろ是は私は反對だと思ふ、所謂さう云ふ者に對する賣渡命令に依つて出した米と云ふものは、寧ろ是は只でも宜いぢやないか、それに九十二圓と云ふ仕切をして、生産者が今になつて本當に同胞愛に燃えて自主的に、俺の家には一俵の餘分のものがあつた、二俵の餘分のものがあつたと云つて出して下さる米に對しては、依然として三十二圓と云ふ、斯う云ふ風な丸であべこべな凸凹なやり方、是が所謂政府のやり方に對して農民の不信を買ふ所以であると、私は斯う考へて居る、それで此の緊急措置令に付きましても、さうした結論から致しまして、私は是は先程農家の増産に依つて之を解決すると言ひますが、増産を阻碍することはあつても、斯うした法令は決して増産を獎勵すると云ふものでなく、又食糧問題を解決すべきものでないと云ふことを、私は意見として茲で申上げまして、質疑を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=73
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074・馬越晃
○馬越委員長 坂本實君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=74
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075・坂本實
○坂本委員 既に各委員から主として農村問題に關しまして種々御質疑がございましたので、私は水産關係に付きまして、聊か政府に所見を御尋ね申上げたいと存じます、其の第一點は水産行政の強化擴充と云ふ問題でございます、政府は水産資源の開發に關しまして、果してどの程度の積極的な具體案を持つて居られるかと云ふことに付きまして御尋ね申上げたい、先日の本會議に於きまして吉田首相、和田農相の施政演説の中にも、此の食糧危機突破の爲に、水産物の重要性を強調されて居りますが、私は今日まで何等見るべき具體的な政策を示されないことを甚だ遺憾に思ふものであります、所謂主要食糧、即ち米、麥、穀粉等の農産物の確保が絶對に必要でありますることは、申すまでもないのでありまするが、地上の産物には自ら限りもあり、未開拓地の開墾にも時間的に餘裕がなく、集約的農業にも奇蹟的な増收は望み得ないのであります、元來足らぬものがさう容易に足るやうにはならぬのが常でありまして、容易なら不足は既に疾くに解決されて居る筈であります、私は此の際無盡藏とも申すべき水産物に對しまして、もつと劃期的な政策を熱望して已まない者であります、農業と力を併せて、此の水産物資源で補ひまするならば、食生活に行詰りはなく、今や食糧問題解決に水産物の受持つ宿命的な役割を最重要視する機運は、全國的に熟しつつあるのであります、即ち海産物は必ず還元して農家の血となり肉となり、農産の増加を助け、農産の供給が再び水産に還元して水産物増産を助けます、此の交流循環は天の理法であり、最早其の重要性に於きましては、農産、水産と分つ必要はない位だと思はれるのであります、此の意味に於きまして、四面環海とも云ふべき我が國の特質を活かしまして、海國日本としては、須らく水産立國を國是として再建する爲には水産省の設置をして、水産行政を獨立し、諸般の態勢を整備すべきであると思ふのでありまするが、政府の御所見は如何でございますか
更に又私は實際的に實效を擧げる方策、即ち絶對量を確保することが此の際最も必要なことでございまして、今囘日本の食糧危機を緩和する爲め、漁區擴張論が對日理事會で提唱されました程、國民は今や特に饑餓線上に直面して居るのでありまして、食糧問題の解決は、獨り主要食糧のみに限らず、漁業方面に對しても重大な關心を持つべきであり、時偶偶漁區の擴張が許可されましたことは、此の食糧事情逼迫の折柄、正に旱天に慈雨にも等しい朗報で、從來の許可區域に比して約四倍の擴張となり、之に依つて七、八月の食糧危機に對する水産食糧資源の確保が可能となるものと存ずるのであります、即ち此の漁區擴張決定は、國民生活に大きな安心感を齎すものとして感謝さるべきであり、此の擴張に對して政府は何處まで應へる政策を執るかが、今後に殘される問題であると思ひますが如何にして其の實效を擧げんとせらるるか、生産計畫乃至生産の目標はどうであるか、尚ほ又私は特に捕鯨と云ふことに付きましては、絶對に必要だと存ずるのでありまするが、關係方面への御連絡はどの程度に運んで居りますか、御尋ねを申上げたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=75
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076・楠見義男
○楠見政府委員 水産の重要性に關聯致しまして、行政機構の問題に付ての御尋ねでありますが、勿論私共も御述べになりましたやうに、水産食糧は特に蛋白給源と致しまして、澱粉食糧、家畜食糧の綜合關係から、特に重點を置いて參らなければならぬと思ふのでありまして、從來も左樣でありました、併し今後は一層植物蛋白が其の給源を失ひ、又近き將來に於て中々難かしい情勢の下に於きましては、どうしても動物蛋白として此の水産を盛立てて行かなければならぬ譯であります、併しながら今申しますやうに、飽くまで此の問題は綜合食糧問題として取上げらるべき問題であらうと考へますので、農林省と致しましては、一般の主要食糧竝に動物蛋白たる水産物、斯う云ふものは合せて綜合的觀點から處理すべきものと考へて居りますので、水産省の獨立と云ふやうな問題に付ては、現在の所考慮致して居りませぬ、併しながら水産行政の機能が、今後水産を再建致します上に於て、其の機能が強化されるに從ひまして、機構を擴充して參ると云ふことに付きましては、現在私共も考慮中のことでありますので、此の點を附加へて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=76
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077・三堀參郎
○三堀政府委員 私から細かい點に付て御答へ申上げます、第一は漁區擴張に關聯致しましての國としての具體的な生産計畫でありますが、今度許可せられました區域は、中部太平洋の鰹、鮪と、それから西の方の「トロール」底曳の區域であります、此の漁區は兩方共國と致しましては、終戰直後に決定せられました漁區以外、常に擴張に付きまして關係業界とも連絡を執りまして、前に許可せられました區域では到底やつて行けない所以を十分に御話をして、司令部の方の諒解を求めて居つた所なのでありまして、之に對する出漁の準備は豫ね豫ね整へて居つた所であります、準船に付きましても、漁具に致しても、準備を整へて居ります、漁船に付きましては、先般も申上げましたやうに、全體の計畫と致しまして、三十三萬「トン」計畫が出來て居りまして、其の中先般許可になりました約五萬「トン」のものが、此の九月頃までに第一計畫として出來上る譯なのでありますが、それに依りまして大體此の中部太平洋に於ける鰹、鮪竝に西の方に於ける「トロール」底曳は、先づ差當りと致しましては可能であらうと思つて居ります、それから漁具の方の網「ロープ」に付きましても準備を整へて居るのでありまして、網に付きましては其の原料であります棉花が、全體量としての輸入が決まりましたので、大體國内の手持一萬梱と合せまして、輸入から七萬梱ばかり廻して貰ひまして、八萬梱を差當り今年分としての漁網用に充てることに、商工省竝に司令部の方とも話が決まりましたので、之を速かに網として漁業者の手許に屆けることに現在力を注いで手配を致して居るのであります、網に付きましても大體差當りと致しましては、困らないだけの準備が出來て居ると確信致して居ります、「ロープ」に付きましては遺憾ながら麻資源が非常に不足して居りますので、十分とは申上げ兼ねる譯なのでありまして、唯差當り從來からの手持が若干ありますのと、それに加へまして國内の苧麻、大麻其の他の麻資源を十分に活用致すことに致しまして、差當りは先づ是だけで賄つて行けるかと思つて居ります、併し何れに致しましてもそれでは不足致しますので、將來と致しましては此の「ロープ」の問題は相當重要な問題にならうかと、今から色々と苦慮致して居る次第であります、尚ほ油に付きましても、是は當然新たに許可を受けました方面に付きましては、別途に輸入を懇請しなければならないので、是は目下資料を整へて關係方面と色々折衝を續けて居るのであります、それから序に申上げて置きますが、今度の此の漁區の擴張に依りまして、差當り夏場に致しましては先づ月當り三千「トン」強の漁獲が得られるやうな目算を立てて居ります、併し西の方の「トロール」底曳が秋以降が漁期に入ります、秋以降冬場になりますと、此の三千「トン」強の計畫は尚ほ相當量増加をするであらうと信じて居ります
それから捕鯨問題でありますが、捕鯨に付きましては沿岸捕鯨と致しましては中部、千島方面に相當豐かな漁區がある譯なのでありますが、是が現在の所まだ解除を見て居らないのであります、それからもう一つは御承知の南氷洋の捕鯨でありますが、是もまだ現在許可を見て居らないのでありますから、兩者とも我々と致しましては捕鯨業が非常に確實な、而も相當纒まつた漁獲を得られる漁業でありますので、是も豫ね豫ね司令部の方に十分資料を整へて懇請を續けて居るのであります、之に付きましても中部太平洋の鰹、鮪、或は西の方の「トロール」底曳に對すると同樣、好意ある解決を何れ見ることであらうと信ずる譯なのであります、現在の所はまだそれに付てはつきりしたことを申上げる域に達して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=77
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078・坂本實
○坂本委員 次に水産業團體法の問題でありますが、是は戰時中の所産でありまして、急速に民主的な性格に改變して、而も其の健全なる發達が我が國水産業の根本對策を確立し、一面國民給食に、給養に資し、一面國富の増進に貢獻する所以であると思ひまするが、之を改正する御意思はないか、而も現在存在致して居ります各團體、各組合、諸機構は餘りにも屋上屋を重ねて居る憾みがあります、鮮魚の如き迅速なる處置を必要と致しまするものに付きましては、到底其の活溌なる運營を望み得ないと思ふのであります、過般來水産物統制規則の問題に付きましても種々御話がございましたが、私は寧ろ現状の姿に於きましては撤廢した方が宜いのではないかと思ふのでありますが、政府の御答辯に依りますと、今外す時期でないと云ふやうな御話であつたのでありますが、昨年の十一月二十日に統制の枠を外されました、是は過般の厚生大臣の御話もありましたやうに、統制の短所が極端に現はれたと云ふことも一つの理由であつたと云ふ風に伺つたのであります、然るに其の後三月十六日に至りまして再統制を實施されたのであります、統制撤廢當時に於きまする業者の錯覺も多分に手傳つて居ると思ひまするが、今日の實情を見まするのに、實際に於て其の實が擧つて居らないと思ふのであります、而も又此の關係の統制團體は、實際に於て集荷の實力を持ちませず、又末端の配給に携はつて居りまする組合等も、獨占的な弊害に陷りまして、道義心の缺如も致して居りまする關係上、鮮度を生命と致しまする配給上に甚だ遺憾の點が多い、割當を基準と致しまする配給權は抛棄しても、寧ろ自由市場で高くても自分の好みのものを買つた方が宜いと云ふやうな實情にあるのでありまして、極端に申しまするならば、不買同盟を起つて居るかのやうに聞及んで居るのでありますが、私は斯かる統制は官の威信にも關係致しまするし、且つそれが取締も出來ないと云ふやうな實情でありまするならば、寧ろ撤廢した方が宜いのぢやないか、斯う云ふやうな氣持が致すのであります、併しながら既に政府の所見を明かにされましたやうに、此の儘存續して行くと云ふことでありまするならば、少くとも現在の機構をもう少し變へなければいけない、或は生産者から直賣する形式と申しまするか、詰り段階を極端に少くして行くと云ふやうなことに致しまして、此の特別な性質を持つて居りまする鮮魚の扱ひに付きましては、尚ほ萬全を期したい、斯樣に考へるのであります、政府の御所見を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=78
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079・三堀參郎
○三堀政府委員 團體法の問題に付きましては、曩の通常議會で農業團體の方と關聯を持ちまして、役員の選擧、其の他差當り團體を戰時の統制色の非常に濃い法制から民主化する差當りの措置だけを一應講じた譯なのでありまして、是は根本的に民主化すべき當然考慮を要する問題だと考へて居るのであります、唯水産業團體の關係は、御承知の通り漁業權の問題と密接な關聯を持つて居る譯なのでありまして、御承知の通りに地先水面の專用漁業權は、漁業會が免許を受ける唯一の資格になつて居る譯であります、さうしまして此の專用漁業權の問題は地元漁民に取りまして、其の生命を左右する重要な死活問題なのでありまして、此の團體と此の漁業權とをどう云ふやうに考へて參るかと云ふことは、十分な全國的の調査に依る準備がなくてはならないと思つて居るのでありまして、團體竝に漁業權を將来民主的に持つて行かなければならぬと云ふことに付きましては、十分に考へて居るのでありますけれども、それには愼重な準備を要します關係上、適當な速かなる機會に準備を整へまして、御協贊を得るやうに致したいと考へて居るのであります
それから主とんて鮮魚の統制に付てでありますが、現在の問題と致しまして、先般來から御議論が出ましたやうに、此の食糧の不足して居ります時に於きましては、少くとも主食に關聯を持ちまして非常に重要であります所の鮮魚の統制を外すと云ふことは、是は聊か時機を得ないものではないかと思ふのでありますが、唯我々の極めて力を入れて參つて居りますのは、集荷の問題であります、此の集荷の統制の問題も、御承知の通り全國津々浦々の沿岸から獲れる魚を、全部一尾殘らず統制の枠に嵌めようと考へて居る譯ではないのでありまして、司令部の好意に依りまして、現在一萬「トン」強の油を貰つて居りますが、此の油を裏打に致しまして、油と「リンク」致しまして、經濟的な裏打のある限度に於て統制を致して居るのであります、詰り陸揚地を一應指定致しまして、此の主要なる陸揚地に入つて來る魚のみを統制致し、其の代り其の魚に對しては油を渡すと云ふ仕組に依つて居るのでありまして、其の他の小型の漁業に依る普通に方々の濱で揚るやうな魚まで統制をしようと云ふことは考へて居らないのであります、結局する所大消費地、或はどうしても他から運んで來なければならないと云ふ地方に對する供給を確保する意味に於て、油を裏打にしても、無理のない統制と云ふことで現在續けて居るのでありますから、其の點は御諒承を願ひたいと思ふのであります、さうして之を末端に渡す場合にどうするかと云ふ問題は、私としましては、恆久の統制の問題とはさう直接深い關聯を持たずに、自由に考へて宜いのではないかと思ふのでありまして、集荷の統制は現在と致しましては、是は勿論續けて參らなければならないけれども、末端に於ける配給に付ては、何時までも之を割當制に依るやうな所謂配給を續けて行かなければならないものだとは深く考へて居らないのであります、特に此の五、六月に於けるやうな際にありまして、資材も相當出廻りましたし、漁獲にも惠まれまして、特に東京に於ける入荷は相當に多かつたのであります、さう致しますと、坂本さんの御指摘のやうに、或は隣組等に於ては漁場の關係もありまして、二日に一遍或は三日に一遍と云ふやうな配給では、五百圓生活に耐へられないと云ふやうな向きもありまして、配給辭退と云ふやうな聲も我々は聞いて居るのであります、隨ひまして末端に於ては或は之を自由販賣の機構をもつと適當に育成して行く、今御話の通りに、生産者の直賣制度を設けるとか、或は又統制會社の模範店舗を設けるとか、數を殖すとか云ふやうな方法に依りまして消費者の不便をなくし、或は積極的にもつと魚は魚らしい配給組織に持つて行くと云ふやうなことも當然考へて宜いと思つて居ります、但し是は漁獲量と睨み合せながら考へて行かないと、金のある者のみが買へると云ふ弊害も拓きますので、其の邊も可なり彈力性のある考へ方で進んで行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=79
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080・坂本實
○坂本委員 最後に現在の段階に於きましては、水産の加工製品と云ふものの重要性を考へなければならないと思ふのでありますが、政府の適切なる施策が急速に實施せられんことを要望致しまして、政府の御考へ方を伺ひたいと思ふのであります、先程農林次官の御話にも、水産物が主食の綜合配給計畫と云ふことの中に相當重要性を持つて織込まれて居ると云ふことを御話になつたのでありますが、要するに各家庭に出來得る限り普遍的に配給されると云ふことが理想だと思ふのであります、然るに現實のやうな姿に於ては集荷の問題や輸送の問題で未だに偏流して居る、而して計畫の實施を阻んで居ると云ふ實情なのであります、急がば廻はれとも申しますが、適當な魚種、大量の魚獲物に付ては簡單な處理加工に依つて保存性を與へて、販扱上にも便利にし、農山村にも喜ばれる配給が肝腎だと思ふのであります、隨て又一面國民の食生活にも限りのある量への依存を一擲して、質への轉換を誘導して、食糧問題に對する不安を除去したいと考へるのであります、鮮度を生命とする魚介類の配給は實に難かしい、兎角計畫性を失ふ虞のあることは、先に申上げた通りでありますが、此の場合政府は少くとも水産物の加工と云ふことに付ても、積極的な施策が欲しいと思ふのであります、其の意味に於きましては、全國的に製氷の設備或は冷凍、鹽藏、乾藏或は罐詰等の水産製品の劃期的な増産を圖る必要があると思ふのでありますが、之に對しまする政府御當局の御意見を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=80
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081・三堀參郎
○三堀政府委員 御話の點は我々も大體に於きまして同感に存ずるのありますが、唯問題は、今までの所では御承知の通り如何に生の魚を出來る限り多量に、と申しますよりも、需要に幾らかでも應ずる程度に供給するかと云ふことに、實は精一ぱいであつたのでありまして、積極的に將來の問題等を考へながら、加工に付てのはつきりした、腰を据えた計畫を立てるまでに漁獲が遺憾ながらなかつたと云ふ實情であると云ふことは御理解を願へると思ふのでありまして、先程も申しましたやうに、最近漸く軌道に乘つて來た此の情勢を掴まへて、特に簡易加工を中心にして、年間平均した質の良い動物蛋白の供給を目指して進むと云ふことに付ては、勿論考へて參りたいと思つて居ります、唯それに付ても、魚獲が順調に進んだとは言ひながら、さう云ふ簡易加工を考へることになりますと、問題は鰮でありますけれども、鰮の量がまだ殖えて參らぬのでありまして、此の點は非常に殘念に思つて居る次第であります、御承知の通り戰前鰮の量の多かつた時分に於きましては、殆ど全魚獲に對する四割以上のものが鰮に依つて占められて居つたのであります、其の結果質の良い加工も出來て居りましたけれども、鰮の量が少いと云ふことが、全體としての漁獲にも影響すると云ふ實情でありまして、此の點に付ては非常に殘念に思つて居る次第であります、併しながら鰮は鰮として、段々漁獲が殖えて參りましたならば、十分設備を整へて、加工製品に付ても考へを進めて參りたいと思ふのであります、又もう一つ御質問になりましたやうに、製氷、冷凍設備が戰災に依つて相當傷みまして、此の資材が特殊資材の關係で非常に困難でありまして、是も亦特に夏分に控へまして、我々としても頭を惱まして居る問題であります、御話の點は我々も大體に於て異存はない、同感を表し得る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=81
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082・馬越晃
○馬越委員長代理 北君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=82
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083・北政清
○北(政)委員 極めて簡單でありますが、大臣がおいでにならなければ十分な返事が伺はれないと思ひますが、午前の苫米地さんの御質問に對しての御答辯は洵に重大なものと考へるのであります、私の聽き違へであつて呉れれば幸ひだと思ふでありますが、日本の食糧自給政策に付きまして、大臣の御話では、今は食糧を努めて増産しなければならぬが、將來外國との關係も執れて行きますと云ふと、或は貿易關係其の他に於て日本での食糧を生産すると云ふことが極めて不安であると云ふ重大な御發議があつたのであります、是は農業政策の根本をなすものであつて、肥料問題に致しましても、又土地問題にしましても、此の日本國民が國内に於ての食糧の安全率を持たぬ以上、問題が全然變つて來るのだ、殊に戰爭を抛棄して居ります今日の日本と致しましては、是はどうしても生存の必需物資である食糧だけは、日本國内で生産しなければならぬのである、然らばさう困難なものかと言へば、私共は大した心配はないと思ふ、今其の數の正確なことは申されませぬが、農林省の出しました統計に依りまして、所謂外地を除いて昭和八年には六千六百萬石の生産と記憶致して居るのであります、又昭和十二年に於きましては六千八百萬石になつて居る、斯う致しますと、何にも心配はないのだ、十分な肥料其の他の物が全部揃ひますならば、日本國内の食糧に於て十分確保出來る、何をさう惧れるのか、又「ダンピング」市場となりましても、それは向ふ側の肚次第に依るのでありますから、それを惧れて國内に於て食糧の自給が出來ない政策を執りますならば大變なことである、斯う考へるのであります、本年の食糧にしましても、四千萬石そこそこの生産である、それから聯合國側で決めて呉れました六十六萬「トン」、更に「フーヴァー」氏の御意見としては八十七萬「トン」であります、是だけで兎に角苦しいながらも生きて行くと致しまするならば、極めて少いものであります、四千六百萬石そこそこで濟むのであります、日本は元の水田の儘で、米だけで六千八百萬石出來て居るではありませぬか、何も惧るべきものでない、そこでそれをどうしても他に求めなければならぬ、食糧を他に求めることを基礎として行くならば、日本の産業と云ふものは總て根柢から狂つてしまふ、日本の今までのやり方では、何時まで經つても現在のやうな不安状態はどうしても拔けないものである、此の重大の御發議があつたのでありまして、私の聽き違ひであつて呉れれば幸ひだと思ふのでありまするけれども、若し次官が御返答が面倒であるならば、後で大臣と御相談になつて、適當な機會にはつきりした農林省の態度を決めて貰ひたい、私は他の大臣が御言ひになつたのならば兎も角、農林大臣が之を御言ひになつたことは、實に重大なことと考へて居るのであります、農業政策の根本をなすものでありますから、どうかはつきりとして戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=83
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084・楠見義男
○楠見政府委員 此の問題に付きましては、從來からも大臣と色々話合ひをして居つたことでありまするし、先般私からも此の問題に付て御答へしたことがありますので、其の際の經過も大臣に申上げて、意見の不一致はなかつたのでありますから、私が代つて御答へ申上げましても間違ひはなからうと思ひますから左樣御諒承を願ひたいと思ひます、苫米地さんの御尋ねになりました趣旨は、自給度を高めると云ふことぢやなくて、必ず日本の自給をするのだと云ふ方向で多くの農林政策の根本に關する必要があるのではないか、結局他から物を多く期待せずに、日本だけで食つて行くのだと云ふことを目標にすべきではないか、期ふ云ふ風に受取れる節があつたのであります、實際の御考へは或は必ずしもさうではないかも分りませぬが、得てしてさう云ふ風に聞き取れるやうな御議論であつたのであります、私の先般申上げ又農林大臣の本日申上げて居りますことは、勿論是は食糧に付きましては最高度に自給度を上げなければならぬ、此の點に付ては何等異存はないのでありまして、隨て其の問題に關聯しまして、私も先般其の自給度を上げる爲に是は苫米地さんからも御指摘があつたのでありますが、從來未墾の地として殘され、又我々としては幸か不幸か今まで殘されて居る東北或は北海道方面に土地の改善の餘地を認め、其の方に力を注いで行かなければならぬ、斯う云ふことを思つて居るのでありますが、唯議論が少し行過ぎますと、結局、例へば繭を作つて居る、是は食糧輸入をする爲に繭を作つて居るのであります、是は見返り物資として最も重要なものでありますが、併しそれなら、輸入食糧を期待するよりも桑畑を潰して食糧を作れば宜いではないか、さうして日本は自給體制に驀らに進んで行くべきではないか、斯う云ふ風に議論が進み易く、又聞く人に依りましてはさう云ふ風に聞えるのであります、そこまで考へることは結局行過ぎではないか、勿論最高度に自給度を上げると云ふことは必要であるけれども、併し又一面に於ては適地適作と云ふこともあるのであるから、將來の日本の産業なり、經濟の國際市場に於ける在り方、國内的に申せば日本の産業經濟の在り方、適地適作と云ふやうな觀點を能く考慮に入れて、さう一概に一本槍に進むと云ふことは困難ぢやないか、さう云ふ事情も能く考慮してやらなければならないのではないか、併し根本の考へは自給度を出來得る限り上げると云ふ點に於ては間違ひのない所である、斯う云ふ風に御答へをして居るのであります、若し誤解がありますればさう云ふ風に御諒解を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=84
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085・馬越晃
○馬越委員長代理 それでは質疑は大體本日を以て打切りまして、明日十一時から政府委員を除きました委員の協議會を開くことに致しまして、午後三時から委員會を開催致します、本日は是にて散會致します
午後三時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00719460710&spkNum=85
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