1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
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昭和二十一年八月二十一日(水曜日)午前十一時三分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 馬越晃君
理事 松岡運君 理事 須永好君
理事 細野三千雄君
板倉治作君 大井直之助君
坂田道太君 杉田一郎君
廣川弘禪君 本多花子君
森田豊壽君 八重樫利康君
神戸眞君 苫米地義三君
保利茂君 堀川恭平君
吉澤仁太郎君 平野市太郎君
金子益太郎君 細田綱吉君
叶凸君 田中健吉君
北政清君 米倉龍也君
的場金右衞門君 井上東治郎君
山本武夫君 井出一太郎君
野本品吉君 高倉輝君
八月十九日委員堂森芳夫君辭任に付其の補闕として田中健吉君を議長に於て選定した
八月二十一日委員志賀義雄君辭任に付其の補闕として高倉輝君を議長に於て選定した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
農林次官 楠見義男君
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本日の會議に付した議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します、討論の前に委員長が二、三大臣の所見を質したいと思ふのであります
先づ供出割當を民主的方法で行くと云ふことが屡屡言明せられて居りますが、其の具體的方策に付て政府の考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=1
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002・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、供出の民主化に付きましては、主な點が三つあると思ひます
一つは、從來のやうな一方的な天降り式な、且つ祕密主義を排しまして、納得づくで公開主義に依ると云ふことであります
それからもう一つは、供出をやりますに付ての中心は、府縣の食糧委員會でありますとか、市町村食糧調整委員會等の全面的な活用に依りまして、又それ等のものの働きに依りましてやつて行くと云ふことであります、勿論此の委員會の構成其のものに付きましては、是は私が屡屡本委員會に於て御説明申上げましたやうに、市町村食糧調整委員會に於きましては、耕作農民を中心にして、之を民主的な方法に於て構成して行く、府縣の食糧委員會に於きましては、耕作者の代表者のみならず、消費者の代表でありますとか、政黨でありますとか、兎に角民意を代表して居りまするものを以て構成して行く、斯う云ふことでございます
それから補つて置きますが、市町村の食糧調整委員會等の構成其の他のことに付きましては、何れ省令等にはつきり規定致す積りであります、私が今述べましたやうな構成なり何なりは、今度の麥でありますとか馬鈴薯の供出に付きましては、其の趣旨をはつきりと通牒で地方長官に出して居る次第でございます
それから供出の割當に當りましては、是は耕作者の再生産に必要な自家用保有量と云ふものを確保する、斯う云ふ建前で進んで居るのであります
其の次には早期の供出に付きまして、例へば早場米の供出、其の他甘藷等に付きましても、早期の供出に付きましては、早期の出荷の奬勵金でありますとか、其の他割當量以上の超過供出に付きましては、それに對する奬勵金と云つたやうなものも考へて居る次第であります
以上の四點は供出の民主化に於きまする大きな線でありまするが、其の外に供出の民主化と云ふことに付きましては、以上の大きな線に沿ひまして、それぞれの細目に付きましては、只今議院内に於て皆さん方が寄つて構成されて居りまする、食糧對策委員會に於きまして御審議、御檢討を願つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=2
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003・成島勇
○成島委員長 それから農産物の價格が、其の生産品を償ひまして、他の物價との均衡を保つやうに是正されることに付て、政府の考へはどうでありますか、併し農産物の價格を上げた爲に、今主食の價格を擧げた爲に五百圓生活を脅威するやうなことがあつては困る、其の點に對する政府の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=3
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004・和田博雄
○和田國務大臣 委員長の御質問竝にそれに含まれて居りまする御意見に付ては、私共としては全く同感でありまして、さう云ふ線に沿ひまして、實は農林省としましては、既に或る程度の原案を安定本部の方に持つて行つて居るのでありまして、それを出來るだけ早く、八月一ぱいに決めて貰ひますやうに只今努力を致して居ります、それから經濟安定本部に於きましても、實は今日の午後からも行きまして御相談申上げるのでありまして、非常に急いでやつて居る次第でございます、只今申上げましたやうに、生産者側の生産費、それから消費者側の色々な生活との關係、又一般物價水準の問題等、可なり複雜な問題が伏在致して居るのでございますが、それ等の點に付きましては時期を爭ふ問題でございますし、又一面から言ひまして、日本の將來の物價體系に關係がありますので、急いで只今審議致して居る次第でございます、左樣に御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=4
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005・成島勇
○成島委員長 もう一點、現在の食糧事情が總ての産業を阻碍して居るのであります、殊に本年は作柄も良好と云ふやうに豫想されるのであります、ですから來る新米穀年度からは消費者の闇買等がないやうにしたいと思ふのでありますが、それに對する政府の考へを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=5
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006・和田博雄
○和田國務大臣 仰せの如く、食糧事情が安定しまして、消費者が闇買等をしなくても宜いやうになりますることは、是は凡ゆる點から言ひまして、「インフレーション」の防止の點から言ひましても、又産業の再建の點から言ひましても、基本的な問題でございますので、我々と致しましては、消費者の配給事情に付きましては、是非増配致したい、斯樣に考へて居ります、是は出來るだけ努力致して、是非實現致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=6
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007・叶凸
○叶委員 只今の問題に關聯して——只今主食の配給を増配する意圖があると云ふ風に和田農林大臣は言はれたのでありますが、總ての生産の再開も、現在の社會状況の不安も、三合配給の實現を待望して居るのでありますが、それに對して具體的に、農林當局は作柄であるとか、或は進駐軍より提拱されて居ります所の食糧でありまするとか、色々な點から綜合されまして、どの點までの準備をなさつて居るか、一つ聽きたいのであります、度々農林當局の意見として、主食の増配と云ふことを言はれて居りますが、此の際其の點を再質問して、はつきりしたことを一寸聽かせて貰ひたい、如何なる準備を農林當局は持つて居られるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=7
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008・和田博雄
○和田國務大臣 それは私が豫算總會に於て、社會黨の井上代議士の御質問に對して御答へ致しましたやうに、進駐軍の關係がありますので、具體的な數字は申上げられないのであります、併し我々としましては萬般の準備を整へて居りまして、關係方面との折衝が付き次第、早くさう云ふ事柄を一般の國民にも知らせたい、斯う思つて居ります、併し現在の所は私は數字を申上げられませぬから、どうか御諒承願ひます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=8
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009・成島勇
○成島委員長 是より食糧緊急措置令を議題として討論に入ります、討論は通告順に依つて之を許します——坂本實君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=9
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010・坂本實
○坂本委員 私は日本自由黨を代表致しまして若干の意見を申述べて、討論に代へたいと存じます
緊迫せる食糧問題の解決が、現下凡ゆる經濟政策の基盤をなし、且つ之に先行すべき緊急問題なることは、今更論を俟たざる所でありまして、萬般の施策が此の一點に集中され、而も此の遂行に當つては、戰時中に見たるが如き獨善的、官治統制を廢し、飽まで自主的且つ民主的なる方法に依つて行はるべきものであると信ずるのであります、況や強權發動の如きは、却て生産意欲を阻碍する虞があり、其の實際的效果を得ることは至難であると存ずるのでありまして、其の運用宜しきを得ざる時は、寧ろ有害無益であると申上げても過言でないと存ずるのであります
只今議題となつて居ります食糧緊急措置令は、供出主要食糧に關する事項、生鮮食糧品の統制に關する事項、所謂幽靈人口の處罰に關する事項、竝に煽動防止に關する事項を主要なる内容とするものでありますが、先般來本委員會に於て、各委員諸氏より御指摘に相成りました諸點には、相當強硬なる御異論があつたのであります、政府の施策それ自體が兎角徹底を缺くの憾みがあり、周到なる用意と、仔細の注意が拂はれて居なければならない筈であるのに、政府自ら進んで打つべき手を打たず、國民をして己れの非を悟らしめ、納得せしめ得る體制の整備不十分である點は、正に片手落なる政治であり、凡そ非民主的な惡法であると非難される所以でありまして、改府の猛省を要請すること切なるものであります、元來政府が食糧供出不振の根本的なる原因を、個々の適當な施策を樹立することなく、徒らに一切の責任を農村に轉嫁せんとするが如き態度は、官僚的色彩が最も濃厚なることを如實に示したものとして、指彈されて居るのであります、即ち生産統計を正確に掴み得ない爲に、不公平な割當が間々行はれて居ること、農村に於ける食糧引出しの經濟的裏付けとなる肥料、農機具、生活必需物資等の供給が依然として不圓滑なること、供出主要食糧の價格が、一般物價との均衡に於て全く取れて居ないこと等であります、實に供出制度や統制制度が始まつてから、只の一度でも肥料が適當なる時期に必要量——是は假令十分でないと致しましても、最少限度で辛抱すると致しましても、一向に間に合はず、而も適正と思はれる價格で配給されたこともないのであります、更に又供出割當が適切なる時期に行はれたこともないのでありまして、其の買取價格も亦洵に無理なものであります、是等は政府が國民の信頼を繋ぎ得ない大きい原因である、政府は速かに是等の不合理を是正し、誠意と熱情を傾けて、萬全の措置を講ぜられんことを切望して已まないものであります
飜つて我が國の食糧事情に想ひを致します時、我々は今直面して居りまする食糧危機突破の大事を冷靜に考へます場合に、現に聯合軍側の絶大なる援助を蒙ることに依つて、辛うじて此の難關の打開が出來、日本人の多くは今聯合軍の厚意ある食糧に依つて、初めて其の生を全うして居る實情でございます、全國民は、少くとも此のことに關しては感謝の念を持たない者は一人も居りますまい、此の際我々は靜かに反省する必要があり、官民相倚り相扶けて、眞劍に自力の限りを盡すことに依つて、初めて感謝感恩の赤誠が披瀝され得るものと信ずるのであります、此の意味に於きまして、政府も國民も眞に協力一致最善を盡してこそ、初めて誠意が通ずるのである、敗れたりとは言へ我々の眞に深く猛省しなければならない所であると存じます、斯かる觀點から致しまして、一歩退いて考へます時、假令民主的に納得供出が行はれた場合でも、供出制度の存續する限り、一町村内に於て、又は一部落内に於て、眞面目な農民や消費者の眼から見て、農民的な責務を果さない農家の存在を豫測し得るのでありまして、是等惡徳農家に對しては、法に根據を持つ最後的制裁の必要は、必ずしも無用と斷ずることは早計とも考へられ、是非善惡を究明し、供出の實效を擧げることを第一義と存ずるのであります、斯かる見地より致しまして、曩に、我が黨に於きましては愼重なる檢討の結果、本案に對する我が黨の態度を決定する一つの成案を得たのでありまして、此の場合供出制度實施上萬已むを得ざるものと考へ、次の如き附帶條件を附して本案に承諾を與へんと致したのであります、今茲に御參考までに朗讀致します
世界列國の食糧事情、特に我が國の緊迫せる食糧危機に鑑み、食糧緊急措置令を萬已むを得ざる處置と認むるも、左記必須條件を竝行するにあらざれば農民をして過酷虐政の嘆を發せしめ、生産意欲を阻害する虞あるに依り、政府當局の猛省を促し、是が即時實行を要求すると共に、供出の徹底的民主化を講ずることを條件とし本案を承認するものなり
記
一 市町村食糧調整委員會又は都道府縣食糧委員會が申請したる場合の外強權を發動せざること
二 自家保有公定量は生産者に確保せしむること
三 米、麥等主要食糧品の價額を諸物價と均衡を保し得るやう、八月中に改訂すること
四 農村主要必需物資は政府に於て責任を以て其の生産配給を確保すること 以上
而して我が黨は、此の方針に從つて、鋭意政府を督勵し、政府も亦同感の意を表せられ、是が實現を約せられたのでありまして、我が黨提案になる附帶條件の第一點は、直ちに本令施行規則中の一部を改正して是が法文化する御意思のあることを明かにされたのであります、即ち政府の改正案は次のやうなものと承知致して居ります、
農林省令第 號
食糧緊急措置令施行規則中の一部を次のやうに改正する。
昭和二十一年八月 日
農林大臣 和田博雄
第一條の二 令第一條の規定に依る主要食糧の收用は市區町村食糧調整委員會又は都道府縣食糧委員會が其の議決に依り申請を爲したる場合に之を行ふものとす
附 則
この省令は、公布の日から、これを施行する。
而かも同時に、市町村食糧調整委員會の構成に付ては、飽くまでも耕作者を中心とする民主的組織とすべき旨、既に地方長官宛通牒濟みであり、何れ法令上にも明文化される御意思のあることを承つたのでありまして、何れも洵に我が意を得たものと存ずるのであります
〔委員長退席、須永委員長代理著席〕
更に又第二點、第三點、第四點の三項目に付ては、先刻委員長の總括的質問に對して、農相より確乎たる信念を披瀝せられまして、是が實施を誓約致されましたので、政府の御所存は略略諒承することが出來たのであります、唯此の場合農民の最も關心を持つて居ります重大な問題に付て一言附加へて置きたいと思ひます、それは米價の決定に付てであります、米價の改訂に付ては目下經濟安定本部に於て考究中であつて、八月中には決定されるやう鋭意促進されて居るとのことでありますが、之に對しましては政府側の御見解と、我々の見解に相當大巾な喰ひ違ひがあると云ふことを念の爲に申上げて置きたいのであります、政府は飽くまで農家の實生活に觸れ、農業經營の苦心を十分汲み取られ、出來得る限り他の諸物價との均衡を保ち得るやう、深い理解と温かき同情を以て、尚ほ此の上の御檢討を切望して已みませぬ、例へば算定の基礎となる農民勞銀の過小評價や、肥料、農機具其の他生活必需物資の入手は必ずしも正式「ルート」のみに依存すべからざる實情を併せ考慮せられんことを望みます、更に又政府の聲明は、往々にして空手形になり、一向に其の實伴はず、國民の不信は其の項點に達して居ります、計畫されたる配給物資は、必らず時と所との按配を得て、確實に實行せられたく、報償物資の如きも必らず不渡りにならないやう、信賞必罰の實を擧げ、嚴格に實踐履行せられんことを望むものであります、以上要するに政府は其の政策の遂行に忠實であり、本案運營其のものの適否如何が、此の法案の效果を擧げるに重大なる關係がありますので、本案成立後に於ては、政府は特に此の點に深甚なる注意を拂はれ、萬遺憾なきを期せられんことを重ねて此の機會に要望致しまして、原案に承諾を與ふべきものと議決することに贊意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=10
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011・須永好
○須永委員長代理 坂本君の御意見は原案に承諾を與ふべきものとの御意見であります、次に馬越晃君に發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=11
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012・馬越晃
○馬越委員 私は本案に承諾を與へんとする日本進歩黨の趣旨を簡單に申述べて見たいと思ふのであります、本令を發布致しました當時に於ける窮迫せる食糧事情の下にありましては、斯くの如き非常の措置を發令致しましたことは、洵に已むを得ざる措置と存ずるのであります、唯問題となりまするのは、農家の粒々辛苦の結晶たる米麥など主要食糧の價格の不適正と、供出割當の方法が非民主的にして、官僚獨善の不公正なものであつたことと、此の不公正な割當に基き供出を強要したる結果發動したる所謂強權發動に對して、囂々たる非難があつたのであります、然るに過般和田農林大臣の御説明に依りますれば、食糧緊急措置令施行規則第一條第二項に、是等不備なる點を是正明文化し、其の供出數量は民主的に組織せられたる市町村食糧調整委員會及び都道府縣食糧委員會に於て、實情に即したる割當をなし、且つ此の公正なる割當さへ實行せざる惡質農家に對してさへも、前記それぞれの委員會の申請に基き、共の強權が發動されることに相成りますれば、最早本令に對する非難すべき點の殆んどが除去されたものと言はなければなりませぬ、唯殘る問題は、政府の供出割當を實情に即したる公正なる決定をなすことと、是等主要食糧の供出價格を適正に決定することであるのであります、仍て政府は迅速に是が實現に對して、最大の努力を致すべきことを希望條件と致しまして、本案を承諾致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=12
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013・須永好
○須永委員長代理 馬越君の御意見も本案に承諾を與ふべしとの御意見であります、次に細野三千雄君の發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=13
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014・細野三千雄
○細野委員 私は日本社會黨を代表しまして、本勅令に對する社會黨の態度を表明したいと思ひます
〔須永委員長代理退席、坂本委員長代理著席〕
本勅令は一條から十六條までになつて居りますが、其の中第二條から第八條までは法律の效果とか、手續規定でありまして、可もなし不可もなし、第九條は所謂生鮮食糧の統制の規定でありまして、是も統制と云ふことを認めまする我々としましては、此の限りに於きましては異論がありませぬ、第十條は幽靈人口或は食糧の詐取、詐欺的な方法に依る配給を防止しようとするのでありまして、是も贊成であります、第十一條の供出をせざるやうに煽動する者を處罰する規定、是は煽動と云ふ文字に付て我々は不滿を持つて居ります、曾て治安警察法第十七條で同盟罷業の誘惑、煽動、此の煽動と云ふ文字が非常に濫用された事實がありまして、斯樣な不明確な言葉は我々としては不滿を持つて居りますが、是は字句のことであります、結局本勅令に付きまして一番問題にしまするのは、第一條の強權發動の問題であります、此の強權發動に付きまして、此の勅令の出ました二月十七日當時、日本の國内の食糧の供出状況が惡かつたことは我我は之を認めます、併し此の供出が振はなかつた原因に至りましては、本委員會に於て、各委員から指摘されました原因と云ふものを速記録に依つて調べて見ますと、凡そ十六、七の原因が擧げられるのであります、それを一つ是非政府當局に於きましても熟讀して戴きたいと思ふのでありますが、ともあれ其の原因の中の大部分は、要するに政治の貧困と云ふことに原因して居るのであります、昨年の凶作であるとか、或は終戰に依つて農民の供出意欲が沮喪したとか云ふやうな、特殊の原因は除きまして、十六、七の原因の大部分と云ふものは、政治の貧困と云ふことにあるのであります、此の政治の貧困と云ふことは又政治に依つて換囘しなければならぬ、然るに前内閣は、當時偶偶議會がまだ成立して居なかつたのを、我々から言ふならば之を勿怪の幸ひとして、斯う云ふ緊急措置令の形に依つて本令を出された、當時まだ打つべき手が澤山あつたに拘らず、それを打たずに、自分の政治の貧困を棚に上げて、斯う云ふ最後の手段である強權發動にいきなり出られたと云ふことに對して、我々は非常な不滿を持つて居るのであります、併しながら彼の宮樣内閣時代のあの納得付くの供出とか、或は同胞愛に依る供出と云ふものが、結局に於て供出制度の締括りをするには役に立たぬ、何等かの締括りは必要だ、さう云ふ意味に於きまして、強權と云ふことは決して好ましいことではありませぬ、斯う云ふことは一日も早くなくしたいのでありますが、兎に角自主的の供出と云つても、供出制度のある限り締括りが付かぬといかぬと云ふ意味に於て、已むを得ず
〔坂本委員長代理退席、委員長著席〕
一つの制度として此の採用と云ふことも已むを得ぬかと思ふのであります、農村に於きまして米が有るか無いかと云ふことが屡屡問題になります、私は茲でそんなことの論議はしませぬ、唯事實としまして、五月頃に秋田縣では農民自身が食ふ米がなくて、數人の農民が農業倉庫を襲撃して、倉を打ち壞して米を持出したと云ふ事實があります、是は明かに其の農民には米がなかつたと云ふことの證據であります、併し都市の人に言はせると、消費者の人は往々にして、農村に行けば、衣類を出せば、品物を出せばどんどん物々交換で米を出す百姓もあるんぢやないか、ああ云ふ農民に對して何故強權を發動せぬのかと云ふ風な御叱りを我々は受けることがある、そこなんであります、一方に於きましては食ふ米さへもない農民がある、片一方に於てはまだ手持ちの米を持つて居る百姓がある、而も其の手持の余裕のある米に對しては、其の農民が既に供出を完遂して居ると云ふ理由に依つて、其の米には指一本指させないと云ふのが現在の供出制度であります、現在の供出制度には斯樣な不合理性があるのであります、でありますから、我々には強權は好ましくないけれども、已むを得ぬとして之を認める、さうして斯樣な餘裕のある手持米に對して、本當に國家の力を以て、之を正式の「ルート」に出すやうにしたいのであります、要するに斯樣な供出の不合理と云ふことは、結局供出制度が民主的でないと云ふことに歸著するやうに思ふのであります、隨ひまして我が日本社會黨としましては、此の供出割當制度と云ふものを徹底的に民主化すると云ふことを、從來も主張して來たのでありますが、唯それに對して政府當局に於ても、之を民主化すると云ふことを公約せられるのでありますが、我々としましては唯單なる政府當局の言明だけでは餘りに農民は從來の政府に騙され過ぎて來て居るのであります、隨ひまして之を明かに法規の上に明文化して貰はなくてはならぬ、斯う云ふ建前に於きまして今まで此の勅令に對して來たのであります、然るに其の後政府當局は、豫算委員會に於ける我が黨の代表者の質問に對して、供出制度の民主化に付て之を明文化すると云ふことを言明せられ、尚ほ既に法文の體を爲した食糧緊急措置令施行規則の改正案を作られて居るのであります、としますれば、我々としましてはまだ非常に不滿足であります、斯う云つた素つ氣ないたつた一箇條の規定では甚だ不滿足でありますが、尚ほ其の後委員會の構成に付きましても、大臣自ら此の委員會に於きまして色々言明せられる所がありますので、たつた此の一箇條の外に尚ほ此の委員會の構成なり、運營なり、機能なりに付きまして、言明通りの注文が出來るものと信じます、そこで我々としましても、此の勅令の尚ほ不滿の點に付きましては二、三の註文がありますが、一應其の註文を條件に致しまして、此の勅令を承認しようと云ふことに昨日態度を決めたのであります、條件としましては、供出を全般的に好くする爲には、此の勅令の改正だけでは勿論不十分でありませう、或は農林省關係以外の大藏省とか、商工省關係の、詰り政府買上價格の問題とか、或は肥料の問題とか、政府全般の色々な政策に關聯して來ますが、此の供出の問題を限局致しまして、四つの條件を御註文申上げます
第一、農民個人に對する收用は民主的に選ばれたる市町村食糧調整委員會の議決に依らざればなすべからざること
第二、農家には公定保有食糧を確保せしむること
第三、供出の數量は科學的の調査に依り正確を期し民主的に割當を決定し、異議ある者の訂正申立權を認めること
第四、主要食糧買上價格は再生産に必要なる經費に依り算定すべきこと
是等の内の例へば科學的の調査とか、或は價絡の點などに付きましては、既に現在の食糧管理法なり、或は食糧管理法の施行規則なりに據るべき法的の根據もあるのであります、それが今まで活用されて居らなかつた、法文それ自體が空文になつて居つた、活きて居る法律でありますから、之を一つ十分に達成を願つて、既に此の或る部分は實行せられて居る部分もあるやうでありますが、是非とも一つ御實行下さるやうに御願ひ致しまして、此の條件附に依りまして此の勅令を承認すると云ふ社會黨の説明に代へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=14
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015・成島勇
○成島委員長 的場金右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=15
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016・北政清
○北(政)委員 一寸議事進行に付て……通告順と云ふことであるが、なぜ其のお約束を守られないか、的場君より先に致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=16
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017・成島勇
○成島委員長 あなたの通告はありませぬ、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=17
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018・北政清
○北(政)委員 いや、通告してあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=18
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019・成島勇
○成島委員長 的場君に發言を許しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=19
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020・的場金右衞門
○的場委員 私は協同民主黨を代表致しまして、私共協同民主黨の此の法案に對する考へ方を申上げたい、此の法令は甚だ好ましからざる法律案であると云ふことで、屡屡私は農林當局の御意見も御伺ひ致したのでありますが、其の後段々説明を御聽きして、或る點私共の納得することの出來る點もございましたし、更に又諒解の出來ない部分もあるやうに考へるのでありますけれども、以下私の申上げますやうなことを條件にして、此の法案を承認を致したいのであります
第一、農産物の價格を生産費を償ひ外の物價と均衡を保ち得るやうに適當に是正することを條件とするのであります、農産物の價格は他の物價に比較しまして著しく低簾で、常に其の均衡を失し、生産費を償へない状態に置かれて居るのであります、生産費を基礎として其の外の物價と均衡を保つ價格に是正しなければならないと考へるのであります、即ち現在の經濟情勢下に於て、他の物價と均衡を保ち、生産費を償ひ得る米價は千二百圓以上でなければならぬのであります、全國農業會が多年委託せる、篤農家である調査農家に付て調査致しました生産費は千二百五十圓となつて居ります、一般農家の生産費は是れ以上であり、生産の上らない地方に於ては千五百圓程度となることは明かであります、然るに主食の價格を引上ぐることは惡性「インフレ」を助長するものであるとして、農家の犧牲の上に於て之を防がんとする態度は、改められなければならないと思ふのであります、國民全體の負擔と協力に依つて、之を防止するの策を執るべきであると思ふのであります、故に米價を千二百圓以上とし、之に準じて芋類等の價格も決定すべきものであると思ふのでございます
第二、供出割當を適正にすることであります、割當方法を民主的な方法にし、自治的方法に依つて、農家の一人一人が納得の行く程度にし、而も公平なる割當をしなければならないと云ふことであります、從來の割當は物があるかないかと云ふことに關係なく、國全體の需給關係に依つて机の上で各縣に割當をされ、縣は又是と同一の方法に依つて市町村へ割當られ、市町村では縣なり國なりの割當數字と一致するやうに、數字を合せるやうに段別に應じて各農家々々へ割當を致して來たのであります、隨て耕作段別の多い農家は比較的樂に供出が出來、經營面積の狹小な農家は、收量の全部を供出しても尚ほ足らない状態のものもあつたのであります、地方毎に之を考へますと、或る地方は極めて樂に割當てられる、或る地方は非常にきつく、全部納めても供出が完了しない、斯う云つたやうな不公平、不合理なる割當をして置いて、強權を發動するが如きは洵に無理であると思ふのであります、此の割當が無理になります原因は色々ありますけれども、此の割當の方法が民主的でないと云ふこと、又割當の基礎となる收量の調査が不正確であつたと云ふこと等であると思ひますが、割當の基礎となる收量調査に於ても、農業を知らない檢査員や地方事務所の吏員などに依つて調査をさせ、收穫豫想に大きな齟齬を來し、割當を不公平ならしめたことも見逃せない事實であります、收穫の調査は農業技術員又は篤農家等、作況を見れば直ちに收穫量を正確に豫測し得る者をして調査せしめ、正確なる基礎の上に公平なる割當がなされなければならぬと思ふのであります、而して自家保有米は、許された程度に於て之を各農家に確保せしめ、今までのやうに自家保有米は全部供出させて置いて、逆に還元配給をなすが如きことのないやうにして戴きたい、さうする爲には公定保有量を確保せしめ、納得の行くやうに、公平に割當をなすべきであると云ふのであります
次に第三の點は、農村必需物資の増配及び配給の一元化と云ふことであります、農業生産の必需物資竝に農村生活必需物資は、正常の價格を以て購入することは常に不可能な状態にあり、非常な高値で買ふ、又は米と交換せねば買へない實情にあるのであります、笊一個、鎌一本買ふにも米がなければ買へない、醫者に行つても米を要求され、勞働者を雇ふにも米を要求され、供出を完全にすれば次の生産は不可能であると云ふ實情にあるのであります、故に純眞なる農家も一部の米を殘して、農機具の代償としなければならない、此の純眞なる、眞面目なる農民を惡徳農家と呼ぶことは適當でない、惡徳農家と呼ぶ前に、惡徳ならざるを得ぬやうにした責任を追究せねばならぬと思ふのであります、先づ農村必需物資を増産増配して、此の配給を闇に流れぬやうに、農業團體に於て一元的に取扱ひ、正常な價格を以て購入が出來るやうにして戴きたいと云ふことであります
第四に、農産物以外の一般物資に付ても其の配給を正確に統制し、強權を發動さるべきものであると思ふのであります、農家だけに強權を發動して、肥料や農機具や衣料品などは常に闇市に流れて行く、是では片手落でありますから、是等の物資に付ても、生産、供出に對して強權を發動され、正常なる「ルート」に依つて配給されるやうにせねばならないと思ひます
尚ほ強權發動は、市町村の食糧委員會の申請がありました場合の外發動しないと云ふことにして戴きたい、以上改むべきことは進んで改め、又新たに實施すべきことは實施をされて農家をして政府を信頼し、安心して自發的に國家の食糧危機を救はんとする態度に出でしむべきものであると思ふのであります、故に私共協同民主黨に於ては、以上の五つの條件を附して本法案を承認せんとするものであります、以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=20
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021・成島勇
○成島委員長 山本武夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=21
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022・山木武夫
○山木委員 私は無所屬倶樂部を代表して申上げるのでありますが、勿論政府の唯ならぬ御努力に對して、全面的に贊意を表するものでありますし、今度の措置令に對して無條件に承認を與へんとするものでありますが、唯私は此の間國へ歸りまして、來年の供出に付て色々指導者層の人達と懇談して參つたのであります、其の席上、先づ一體來年の供出なんかあるだらうかどうかと云ふことを異口同音に言はれたのであります、其の言葉は甚だ分りにくいのでありますが、やはり同じやうな供出方法で行くのかどうかと云ふことでありました、昨年のやうなやり方であつては、今日色々苦しい結果となつて現はれて居りますので、是は尋常一樣なことでは供出は出來ない、政府は民主化すると云ふことを言明されて居りますし、それに對する期待は勿論ありますけれども、並大抵のことでは難かしい、何とか拔本塞源的なことをやつて欲しいと云ふ聲が瀰漫して居るのでありまして、私はそれに對して非常に心配して居るものでございます、先程來自由黨、進歩黨から色々條件もございましたが、靜かに考へて見ますと、それ等の條件は既に政府が一生懸命にやらうとするものを唯明文化すると云ふ點でありまして、私はさう云ふことは蛇足と言つては失禮でありますけれども、政府を信頼し政府のやらうとすることを見究めたい、私共は野に在つて政府と一本になつて完全に之を遂行させることの方が、却て私共の立場として徹底して居るのではないかと信ずるのであります、それは言つて見れば色々缺點はありますが、私共は絶對に政府を信頼致します、さう云ふ積りで眞劍に政府を助けて、來年の食糧危機を突破しようと云ふ決意なのであります、どうか一つ誠意を盡しておやりなさるやうに御願ひします、簡單でありますが、贊意を表します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=22
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023・成島勇
○成島委員長 井出一太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=23
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024・井出一太郎
○井出委員 私は新政會を代表致しまして、本案に對して承諾を與へることが餘儀ないものであると云ふ意思を表明致したいと存ずるのであります、現在の食糧事情下にありましては、食糧の國家管理と云ふことが餘儀ないものであり、又それを認める以上、供出制度と云ふものも當然行はれなければならぬものであり、供出制度を行ひまする以上、其の最後の括りと致して、強權發動と云ふ言葉は惡いのでありますが、兎も角強制力に依つて主要食糧を收用すると云ふことも、是は已むを得ない、斯う考へるのであります、勿論是は本委員會數次の機會を通じて色々と指摘された通りでありまして、終戰後に於ける國の政策の貧困、殆ど無策に近い所の政策の缺陷が、大きな力をなして居ると云ふこともございます、隨て無條件で之を發動すると云ふことに對しては「ブレーキ」を掛けなければならぬと思ひます、併し先程自由黨の方から四つの條件がございましたし、社會黨からもやはり四つ條件が出たやうに承つて居ります、是等は何れも、左樣な條件が必要であると私は考へるのでございます、尚ほ先程の委員長の質問、之に對する大臣の御答辯に於ても、此の案の修正の方向が一應はつきり致した、斯う相成つた以上は、之に對して私共は承認の意を表するものでございます、と同時に、私ここで二つばかり希望を申上げることを御許し願ひたいと思ふのであります
私も農村の出身であり、農民の立場を能く理解致して居ります、現在他の産業が全然生産開始に及んで居らない時に、農家だけは孜々營々として、今年の天候の加減もありましたらうけれども、秋には豐作が豫想されると云ふ非常に明るい面が現はれて參つて居ります、斯う云ふ農民の努力、而して又此の努力が酬いられない不平不滿と云ふものを、私は幾多聽かされて居る、さう云ふことが先程來の色々な條件となつて現はれたのも能く分ります、私は農家の諸君に屡屡言ふことでありますが、兎も角農家の諸君は、食糧に於ける安定感だけは君達は持つて居るのだ、是は消費者の立場も能く考へて欲しいと云ふことを屡屡申すのであります、消費者の立場に於ての意見は、此の委員會を通じて餘り顯著でなかつた、どちらかと申すと、重農主義的な傾向さへもあつたと云ふことを私は指摘したいのであります、此の消費者の立場に於て若干申上げて見たいことは、先程大臣の言明にもありました通り、近く食糧事情が好轉するならば増配も考慮をして居る、斯う云ふ御話も承つたのでありますが、此の際もう少し具體的に、少くとも二合三勺と云ふ配給量はさう遠くなく、可及的速かに還元をして戴きたい、固よりそれ以上の餘裕があることならば、更に増量することを御願ひしたいのでありますが、政治と云ふものは國民に希望を持たせる、熱を燃やさせる、斯う云ふことが要諦でありまして、曾て「ヒトラー」が「オランダ」を手に入れた時に、一週間一箇の煙草を二つ配給して見せた、之に依つて國民の志氣が非常に鼓舞された、私は「ヒトラー」の侵略を決して讚へるのではありませぬが、さう云ふやうな意味に於て、民に此の際希望を持たせる、外のことは兎も角、何も彼も皆惡い、通貨の膨脹は一千億にもならうとして居るが、どうやら食糧だけは二合三勺になつたと云ふことになれば、非常に感激を致し、前途に希望を持つやうになると私は考へるのであります、(「二合三勺では感激せぬよ」と呼ぶ者あり)勿論一躍三合になると云ふことは、是は到底思ひも依らぬことである、我々は聯合軍の管理下に置かれて居ると云ふことも考へなければならぬ所でありますが、今申上げたやうな意味で、一刻も早く之を漸次増量すると云ふことを特に強く申上げて置きたいのであります
それからもう一つ申上げて置きたいことは、先程も農産物價格と他物價の均衡、而も之を大幅に値上をすると云ふ風な意味で價格政策が取上げられたのであります、此の中に恐らく含まれて居らうとは思ひますが、農産物相互間に於ける價格の適正化、例へば果樹を栽培し、蔬菜を栽培する農家は、主食栽培農家に對し非常に貨幣經濟的に惠まれて居る、或は養蠶農家は、食糧關係から餘儀なく桑を拔いて食糧を植えると云ふ風なことは、一に掛つて價格體系の凸凹に原因するのであります、斯う云ふ點も價格政策の全體を取上げる際に、切に御考慮を願ひたいと思ふのであります、以上申上げまして、本案に贊成を致すものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=24
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025・成島勇
○成島委員長 高倉輝君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=25
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026・高倉輝
○高倉委員 私は日本共産黨を代表しまして、此の措置令に對する意見を申上げます、第一に、此の措置令が眞に日本の農業の爲を思はず、又日本の働く農民の爲を思つて居ない點を指摘しまして、極めて官僚的な措置であり、地主的な措置である、隨て極めて非科學的な結果になつて居りますからして、農業問題の發展の爲にも、亦食糧問題の解決の爲にも、大きな妨げとなるものであることを指摘致したいのであります、此の措置令は、今度の議會に於きまして、勞働調整法と竝んで最も大きな問題を起しました二つの代表的なものでありませう、言ふまでもなく、此の二つの法案、措置令が惡法である何よりの證據であります、眞に働く人間の生活を思はず、其の意思を代表しないから、斯う云ふ大きな問題を起したに外なりませぬ、其の爲にどうすれば此の措置令の缺陷を除くことが出來るかと言ひますと、申すまでもなく是は眞に民主主義的な、働く農民の組織に依つて解決する以外に途はありませぬ、度々働く農民の立場に立ち、民主的な方法に依つてと云ふことを當局は申されましたけれども、併し實際に其の方法と云ふものは少しも示されて居りませぬ、譬へて申しますと、昨年農地調整法が出まして、其の爲に全國に土地の取上げが起り、土地を作つて居らない地主が、土地を取上げて耕作農民にならうとする努力が全國に大きく現はれました、其の爲に脅かされた農民と地主との關係からして、度々此處でも述べられたと思ひますが、闇小作竝に請負小作と云ふ新しい制度が日本に生まれて居ります、是が今日食糧の闇を生み出して居る一番の貯水池であります、土地を取上げられる爲に脅かされた農民は、是までの既定の小作料以外の小作料を地主の所に持つて行つて、土地の取上げを辛うじて防いで居る、斯くの如くして地主に入つた所の主食糧が、都會に流れて、金持の懷ろに入る大きな「ルート」が出來て居ります、斯う云ふやうな具體的のことを防ぎ止めようとしないで、唯民主的なと云ふ言葉を使ひましても、斯う云ふことは根本的に解決されないでありませう、それで私共が關係を持つて居ります所の或る村々に於きましては、實際に民主的な農民委員會の組織に依りまして、科學的な檢見一筆調査、坪刈等に依つて、今までの割當とはまるで違ふ所の、科學的な方法で以て割當を致しました、其の結果は、是は或る村には農林省の調査官が見えて居りますから、和田さんも能く御存じであらうと思ひますが、是までどの村よりも供出の成績を實際に上げて居ります、どの村よりも先に供出を完納して居ります、さうして其の供出を完納しただけでなく、村内に居る所の非農家に對して、特別供出をして其の生活を確保しようとする方向にさへ向つて居ります、のみならず、是は或る地方に於ける所の農民協議會と云ふものと、勞働組合竝に食糧管理委員會と直結しまして、都市の非農家の生活を確保する方向にまで進んで居るのであります、斯う云ふ工合に、私共が民主的な組織の力に依つて、科學的にやつて居ります所の農村に於ては完納を致しまして、實際に強權發動の必要が少しもないのであります、強權發動の必要があると云ふことは、強權發動をしなければ食糧の供出をなし得ない所の、下手な政策しか持たないと云ふ何よりの證據だと思ふのであります、眞に民主的な組織に依つて、民主的な方法に依つて、食糧の問題、農業の問題を解決しようとするならば、強權發動などと云ふことは絶對に必要がない、でありますから、此の條件を付けて是で贊成をすると云ふやうな措置令其のものが、既に非常に大きな缺陷を持つて居る何よりの證據であります、私共は是が優れた法案であり、措置令であれば、條件も何も付けず、心から贊成するのであります、贊成出來ない、之に絶對に反對を唱へなければいけないのは、之に依つて農業の發展竝に供出の完遂と云ふことが、到底望めないと云ふことをはつきり知つて居るからであります、で今まで私共が實際に實驗して居りますやうな方法、詰り眞に民主的な働く農民の組織に依つて、科學的な官僚的でない、地主的でない方法に依れば、食糧の問題も解決し、農業の問題も正しい發展を遂げられると云ふ自信を持つて居りますから、さう云ふ立場に立たない所の此の措置令に對して、全面的に反對せざるを得ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=26
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027・成島勇
○成島委員長 北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=27
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028・北政清
○北(政)委員 私は本議題となつて居ります食糧緊急措置令は承認すべからずと主張するものであります、其の理由は、元來食糧がどうしたならば完全に配給が出來、國民が安心して生活が出來るかと云ふことが主なる問題であるのであります、然らば此の法令は農民のみを對象とした法令であります、元來正式「ルート」に流れないが故に非常な混亂を來して居るのであります、私は寧ろ、正式「ルート」に流さない主導因は何處にあるかと云ふと、買出部隊、闇商人にあるのであります、其の主導者が罰せられないで、農民だけが罰せられる、皆さんが付けられた條件竝に農林大臣が御説明になりました農民の組織、食糧委員會、其の委員會から申請したものでなければ罰しないことに致しますなら、農民だけが罰せられる法令に完全になるのであります、徳川幕府のあの純粹封建時代に於ても、生産物の總てを取上げる、斯う云ふ強權をやつたことはないのであります、又「ソヴィエト」の一九二〇年、一九二一年に行いました、穀物專賣制を布きまして、さうして之に應じない者には十年以上の懲役を科し其の村落から追放するの令を出したのでありますが、其の結果大失敗に終りまして、赤衞軍を繰出してさへ解決が出來ない、斯くして「レーニン」及び「クラシン」が「ロシヤ」の政策を根本的に變更して、國家資本主義へと大轉向を致しましたものであります、此の實績から見ましても、斯樣な農民のみを差別待遇する法令と云ふものは、斷じて供出を阻むものである、逆になる、政府の考へ方と私の考へとは違ふ、私は「マッカーサー」司令部が十二月九日に政府に出された所の指令を見ましても、民主主義化促進上經濟的障碍を排除し、人權の尊重を完からしめ、且つ數世紀に亙る封建的壓制の下、日本農民を奴隷化して來た經濟的桎梏を打破するが爲め、日本帝國政府は其の耕作農民に對し、其の勞働の成果を享受する爲め、現状以上の均等の機會を保障すべきことを指令す、斯う言って來て居るのであります、此の「マッカーサー」司令部の指令に對しましても大きな反對的な行動ではないか、私は斯く信ずるものであります、又私共は此の法令が色々な條件を付けて骨拔きにして、それでも必要だと云ふ所の官僚精神、是が農政の全面を支配して居る所の官僚頭なんであります、其の結果が今日の食糧事情に立至つて居ると云ふことを御自覺願ひたいのであります、私共は現に政府が昨年の八月から十二月までの肥料、硫安の配給に付きまして、割當て十二月中に配給せなければならぬものを一月になつて配給し、それを二月六日に一遍に二十六倍と云ふ暴騰をさせた價格にして、一月の最初に遡及してやると云ふことになつた、昨年の十二月までに農民に與へて居るものだけでも斯うです、其の金額二千六百萬圓だと私記憶して居るのであります、又本年の春以來、自給肥料の奬勵に五千萬圓を出してやると言つて、各町村は堆肥の奬勵の爲に品評會をやり、既に此の經費は使つてしまつて居るのに、豫算がないと言うて出さない、又報奬物資、此の報償物資の農機具等にしてもどうですか、莫大な値上りをさせて、負擔をさせて居るではありませぬか、斯樣な農民に信頼のない今尚ほ口先で釣つて行かうと云ふ欺瞞政策では、どうしても駄目だ、如何なる強權、強力な法律が出ましても、農民は之に協力せないだらう、斯く致しますならば、寧ろ却つて逆に、食糧配給の不圓滑を來す大本となるのでありますが故に、是が私の第一の反對理由であります
次いで農民が喜んで供出するの方法があるか、先づ私は價格問題に於きましても、過般大藏大臣は現在の米價が二石六斗を以て計算されて、一石四斗の昨年の收穫よりないので、非常に間違ひだつたと云ふことを、大藏大臣ははつきり致して居ります、然るに農林大臣は五百圓生活を維持する爲に此の値で置かなければならぬと、斯う言うて居る、大藏大臣と農林大臣と何時の間に變つたか分らぬやうに變つた、是れ即ち農林大臣の肚の中、五百圓生活の爲には農民を犧牲にすること差支へなしと云ふ斷案から來て居る、實に重大な思想が此處に流れて居るのであります、又現在の價格に付け之を正しいと思つて居られるか、大藏大臣は物價水準を、公定價格と闇價格との中間を以て水準とする理想であると、是亦はつきり致して居る、斯樣な意味合に於きましても、昨年の秋六十圓そこそこでもぎ取らうとする、又春になつて肥料は二十六倍に上げると云ふことで、所謂資本家の經營して居る肥料會社の利益の爲には躊躇せなんだが、農民には石三百圓にした、一俵が百二十圓にした、最近噂に聞く所に依れば、成程自由黨と陰で御相談があつたと、さつき自由黨の委員の方が仰しやつたから、陰であつたのだらうと思ふが、一石六百圓、私は一石か一俵か分らぬが、一體こんな價格で農民からもぎ取る爲には此の法令が宜いのか、そこに根本的に價格の問題がある、私共は價格は何も無茶なことは言はぬ、世間の一般物資と公平にして貰へば宜しうございます、先づ現在の勞働賃金に於てどうだ、現在三百圓と見て居る勞働賃金は、農民の一日の勞働を十圓と云ふ計算から來て居る、現在政府が出して居るあの豫算面から見ても、給仕一人で、一日十圓、昨年國民學校を出た所の女給仕で……、勞働時間に於て少くとも三倍、あの人方は年を通じて五時間行きませぬ、農民は十五時間行つて居ります、勞働力に於て問題にならない、恐らくあの給料の十倍の賃金を貰つてもやれまい、私共其のやうな十五倍にせよと云ふのではないが、是等の勞働賃金は、闇價格で賣つて生活を維持すると云ふことから之を御認めになつたものであるか、果して然らば、此の米價を値上げしますならば、此の勞働賃金を増さなければならぬと云ふ理由はなくなつて來る、たつた十圓で農民の仕事がどうして出來ますか、又私は適當な時期に、適當な價格でなければならぬと思ふのであつて、是は昨年秋あたり、私は石五百圓程でやるならば、殆ど政府の手に集り、斯うまで皆に不安を與へないで行けた、然るにも拘らず六十圓位で消費者の手に渡る、だから汽車に布團を持込むやら、窓を打破るやらして、汽車を打壞してしまつた、其の原因は何處にあつたかと言へば、適當な時に適當な價格にしなかつたからである、あの強權でお前は五年以上食はすぞ、十五萬圓の罰金だ、煽動する者は三年だ、斯う云ふことで日本の食糧問題がどうして解決出來ますか、私共は今年の收穫から見て、七千五百萬の人口として、政府の發表されて居る五千七百萬石の米の生産、又麥の生産、其の他二千萬石で、此の七千七百萬石を一人一石づつと看做しても七千五百萬石で宜い、我々三合配給と云ふことは種も何もないことを言つて居るのではない、ありもしないのに三合配給などと云ふことは言はない、輕勞働に於て三合は樂々やれる、之を一人當りにすれば、子供もあるから、二合五勺になるでせう、さうすると是は樂々やれる、三合配給をすることになつたら誰が買出しに行くか、誰が横流しをするか、是は決して不安な數字ではない、巧く行けば六千萬石行くでせう、又聯合國側と云ふやうな御話もありましたが、日本國内で穫れたもので、之を榮養の足るだけ食はせると云ふことには恐らく御反對はないと思ふ、それ位の御説明は大臣ともあらう人が行つて出來ないことはなからうと思ふ、又もう一つは、先程皆さんからも御話があつて、輕い條件附でありましたが、私は之を絶對的に必要とする、今のやうに何一つ買ふにも、米を持つて行かなければならなぬと云ふやうな實情で、お前達はそれでも出さなければならぬのだと云ふことは、是は誰が何と言つても農民自身の組織する團體に扱はせてこそ、他に横流しする必要もなくなる、それを流したら農民自身の責任である、斯うやれば米を他に流さなければならぬ理由がなくなる、此の理由を除けば宜い、是がどうして出來ないのか、今尚ほ少數の營業者を助けんが爲に、多數の農民と消費者を苦しめ拔いて居る、私共は之を打開することに依つて、こんな法令はなくても樂に三合配給はやれると云ふ確信を持つて居る、尚ほ官僚の方に、自分が言ひ出したのだから何としても否決されては困ると云ふ、洵に淺ましい氣持がある、其の意味に於て斷じて本法案は承認すべからずと思ひます、以上を以て私の意見を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=28
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029・成島勇
○成島委員長 討論は終局致しました、是より採決に入ります、原案に承諾を與ふべきものとするに贊成の諸君の起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=29
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030・成島勇
○成島委員長 起立多數、仍て本案は原案の通り承諾を與ふべきものと決定致しました、此の委員會に併託されました農林中央金庫法の一部を改正する法律案の審議は、明後二十三日午前十時より開會致します、本日は之を以て散會致します
午後零時二十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01019460821&spkNum=30
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