1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月二十六日(月曜日)午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 坂本實君 理事 馬越晃君
理事 松岡運君 理事 細野三千雄君
廣川弘禪君 本多花子君
八重樫利康君 苫米地義三君
堀川恭平君 吉澤仁太郎君
平野市太郎君 細田綱吉君
叶凸君 田中健吉君
北政清君 米倉龍也君
山木武夫君 小坂善太郎君
高倉輝君
出席政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 石川準吉君
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本日の會議に付した議案
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します、是より質疑に入ります、苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=1
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002・苫米地義三
○苫米地(義)委員 時間を節約する爲に簡單に質問申上げたいと思ひますから、どうか政府委員からも簡潔に御答へ願ひたいと思ひます
第一には、此の間農林大臣が説明致されました本案改正の要點四項、私の質問致したいのは其の中の一項、即ち第十五條の改正に付てであります、其の第十五條の四項は、「第五條第一項に掲ぐる團體の發達を圖る爲必要なる施設を行ふ法人に對し主務大臣の認可を受け短期貸付を爲すこと」とあるが
〔委員長退席馬越委員長代理著席〕
此の「必要なる施設を行ふ法人」其の範圍を伺ひたいと思ひます、それから第五號の「食糧營團其の他農林水産業に關する事業を營む法人」、此の事業と云ふものの範圍を伺ひたいと思ひます、それから短期貸付でありますが、此の短期と云ふ意味を伺ひたいと思ふ、即ち此の兩方の最大範圍を具體的に出來るならば御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=2
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003・石川準吉
○石川政府委員 御答へ申上げます、第一番目の第十五條第四號の法人の範圍でございますが、是は色々ございまして、例を以て申上げると、例へば農業團體であるとか、或は水産業團體であるとか云ふやうな各團體の綜合の利益代表的なやうなものがございますが、ああ云ふものが色々側面的に事業の斡旋をやつて居ると云ふやうな場合の施設を指すのでありまして、具體的に是れと是れと云ふやうなことを今御説明は出來ませぬですが、要するに各種團體の行ふ側面的な援助の施設を申して居るのであります、それから二番目の農林水産業に關する事業者の範圍、是は肥料でありますとか、或は水産業でありますとか、或は蠶絲業でありますとか、要するに農林水産行政に關係します所の各種の事業を營んで居ります法人の總稱でございます、第三番目の短期の問題でございますが、是は普通金融機關に於て行つて居ります所の、一箇月貸とか三箇月貸とか云ふやうな、「コール」式の短期の貸付を稱して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=3
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004・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今の御話では一寸抽象的で、私の希望するのは、斯う云ふ風に書いてあるけれども、其の範圍の一番最大限の實例を伺ひたいと思つたのです、短期と申しましても、二箇月も短期であるし、六箇月も短期、從來やつたものの最大限が幾らか、斯う云ふことを伺ひたいのでありますから、此の點をもう一遍御説明を願ひたいと思ひます、それからもう一つは大體此處に書いてありまする六項目で盡きて居ると思ふのに、新しく此處へ十五條の二として今度加へました點は、十箇年以内の貸付をやる、斯う云ふことになつて居りますが、此の點は第四號、第五號の短期貸付を十箇年以内と直してしまへば、それでも宜ささうに思ひますが、特に此の一項を獨立させた意味は何かありますか、どうか、御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=4
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005・石川準吉
○石川政府委員 今まで農林中央金庫に於きまして短期貸付を致しました限度は、大體一箇年以内と云ふことになつて居ります、それから更に一項を設けました理由は、やはり餘裕金運用でございますので、之を全部或る程度の長期に振替へてしまふと云ふことは非常に不便なのでございます、隨て物に依りましてはやはり依然として、短期の餘裕金の運用と云ふ制度も置かなければなりませぬが、又併せまして最近の經濟情勢に鑑みまして、例へば開拓資金でありますとか、或は肥料の設備資金でありますとか云ふやうなものに付きましては、或る程度長期に亙るものもありますので、それ等を併用して行きたい、斯う云ふやうな趣旨で特に一項を設けたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=5
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006・苫米地義三
○苫米地(義)委員 さう云ふ程度の貸付はやはり短期を含むのですから、それでも宜ささうに思ひますが、併し其の點は一つの便宜法でありませうから、それ以上は伺ひませぬ唯今度の改正の重要なる要點の、剩餘金を運用すると云ふ建前からしますれば、今までの項目で大體運用は出來る筈だと思ふのでありますが、特に今御話のやうな事業に投資すると云ふ必要は、やはり農林省獨特の御考へでありませうか、或は他の産業省、又は大藏省との間の御打合せが十分出來ての御話でありませうか、其の點を伺ひたいと居ひます、實は從來の融資關係では、工業方面が非常に困る状態になつて居ります、肥料の如きも資金がなくて非常に困る、其の困る結果、農林中央金庫に剩餘金があるのを融通する、斯う云ふことで其の點は結構だと思ふのですが、是は、他の預金其の他の資金が豐富になれば、工業方面の融資が、當然從來の融通面からやはり競合の状態になると思ふのであります、それでありますから、其の點に對しましては大藏省、商工省、其の他と十分な御連絡でもございましたでせうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=6
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007・石川準吉
○石川政府委員 御答へ申上げます、是は大臣の提案説明にもございましたやうに、最近に於きまする市中銀行或は特殊銀行に於きましては金融緊急措置と前後致しまして、非常な資金の逼迫を感じて居る譯であります、併しながら事業界に於きましては、戰災復興でありますとか、或は最近の民需産業の爲めの資金でありますとか云ふやうに、相當な資金を必要とするのであります、左樣に致しまして、中央金庫に於きましては相當厖大な資金を擁して居りますので此の際、從來は或は興業銀行、或は勸銀から融通されました分に付きましても、中央金庫の餘剩金を供給致しまして、協力して行きたいと云ふ考へ方でございますので、此の點に付きましては大藏省と十分な打合せを遂げて居るのでございます、隨ひまして、他の銀行が貸出すのに對しまして邪魔をすると云ふやうなことはなくて、寧ろ其の補助的使命を中金が果して行きたい、斯う云ふ風に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=7
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008・苫米地義三
○苫米地(義)委員 其の點に對しましては後程一寸觸れたいと思ひます、此の「バランス・シート」を見ますと、有價證券の所有が全國で二百五十億圓位になつて居ります、今囘の補償打切り其の他財界の變動に依りまして、相當の影響があるのぢやないかと思ふのですが、殊に外國證券を持つて居りますやうでありますが、其の點に對する御意見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=8
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009・石川準吉
○石川政府委員 今囘の補償打切りに關聯します金融機關の應急措置に依りまして、仰しやるやうに相當變動を受けたのでございますが、幸に致しまして、農林中央金庫に於きましては、國債或は地力債と云ふやうな有價證券が非常に多いのでございまして、金額で言ひましても約百三十億餘の有價證券を持つて居る譯であります、是は全部新勘定の方に移ることになつて居りますので、其の影響は他の金融機關に比べまして非常に少いのではないかと思ひます、又一方外地債はございますけれども、其の金額は極めて僅少でございまして、尚ほ其の他に不良債券と稱するものも若干ございますが、併しながら、只今申上げました國債或は地方債に比べますと、極めて僅少でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=9
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010・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今外國證券が極めて僅少だと云ことですが八億八千萬圓あります、全體の經濟から言つて決して僅少ぢやないと私は思ひます、近來國債の打切りと云ふ問題がございます、中金だけで持つて居りますのが百二十億幾ら、若しさう云ふ場合に立到つたならば、非常に大きな關係を農村に及ぼすと思ふのでありますが、要するに打切り問題に對する農林當局の御見解は如何でございますか、伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=10
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011・石川準吉
○石川政府委員 只今外地債が僅少と申上げましたのは、先程申上げました國債或は地方債に比較して少いと申上げたのでありまして、其の點は訂正して置きます、それから國債或は地方債のやうな有價證券が打切られた場合に於きましては、中央金庫は殆ど致命的な痛手を受けると思ひます、隨ひまして、若しさう云ふことになりますれば、それに相當した措置をしなければなりませぬが、現状に於きましては、近く制定せられるであらう所の金融機關整備再建法の内容と睨み合せまして、今後の措置を決めて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=11
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012・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今の此の輿論は相當深刻に現はれると思ひますが、それ等に對する關係は、農民を代表して十分に御開陳を願ひたいと思ひます、第十五條は剩餘金を運用する制限規定であります、嚴重な制限を規定して居る條項でありますが、今囘の改正に於きましては、是が殆ど解除されるやうな状況であります、さうして此の運用が愼重を欠きますと、殆ど無制限に方々へ伸びて行くのではないかと思ふ、一と頃産業、經濟、農業團體が、段々に自分の仕事を擴げまして、遂には保險會社まで手を伸ばしたと云ふやうな實例がございますので、此の規定を擴げますと、例へば肥料の原因が硫化鑛である、隨て硫化鑛山に投資する、或は石炭が必要だ石炭の山へ投資すると云ふやうなことで、此の關聯の性質をどの程度に抑へて行くかと云ふことは餘程是は嚴重にしなければならぬ問題だと思ふ、然るに此の十五條は、全般の上から非常に剩餘金の運用に對して警戒的な制限條項を附して居る條文でありまして、之に今囘の緩和條文が出來ますから、是の運用に對しては非常に愼重を期せなければならぬと思ひます、隨ひまして、政府では此の資金の運用委員會のやうなものを之に附屬さして、其の融資に對する愼重を期すると云ふやうな用意も必要であるかのやうに考へるのでありますが、現在の政府の御意見は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=12
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013・石川準吉
○石川政府委員 十五條の二の運用に付きましては、仰しやる通り、極めて是は愼重を要する問題でございますので、私の方と致しましては、之に前後致しまして、例へば預金部資金運用委員會と云ふやうなものに準じまして、運用の基準なり、其の他内容の研究なりと云ふことを、委員會に掛けてやつて行きたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=13
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014・苫米地義三
○苫米地(義)委員 左樣な審議委員會を設置すると云ふことは、極めて贊成であります、更に今御話の肥料工業等に投資する場合、是は一般の金融機關との競爭になることは當然であらうと思ひます、現在のやうに一方に資金がなくて、片方に餘つて居ると云ふ時は無論問題はないでせう、併し兩方とも資金がだぶついて居ると云ふことになれば、投資的な競爭が自然そこに生じて來る、其の場合に、工業方面の融資は各各それに堪能な經驗と技術とを持つた人等が此の審査に當つて居るのでありますが、農業團體の方には、農業統制に對する機構もございますし、又それに堪能な人的要素も缺けて居るのではないかと思ふのでありますが、それ等に對しては、新たにさう云ふ機構を樹立する考へでありませうか、若しさう云ふ機構を樹立すると云ふやうな爲に、經費が非常に澤山要ると云ふことであれば、やはり中金の經營、經濟の關係にも影響すると思ふ、專門的な工業方面の投資でない限りは、餘りさう云ふ費用を費すのも如何かと思ひますが、此の點御伺ひしたいと同時に、今申上げるやうに、此の條項は非常に組合員としては大事な條項でありますが、さう云ふ多方面に擴がると云ふことは、組合全體の危惧心を増すのではないかと云ふやうな感じもありまするので、それ等に對する政府の御所見は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=14
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015・石川準吉
○石川政府委員 此の農林中央金庫以外の金融機關に於きまして、資金が非常にだぶついて來た場合に競合すると云ふ御話でございますが、此の點に付きましては、先程申上げたやうに、我我の考へて居ります今囘の措置は、農林中央金庫が所謂協力を申上げる、斯う云ふ趣旨でございますので、外の方の所謂專門銀行が、資金が潤澤にありますれば、そちらの方から十分融通して戴きまして、尚ほそれで足りないと云ふ部分を手傳はす、斯う云ふやうに考へて居ります、それからもう一つ、中央農林金庫に、例へば興銀でありますとか、或は勸銀でありますとかが持つて居る特別の專門組織を作る意思は持つて居りませぬ、現在に於きましては、勸銀などと十分協力してやつて居りますので、それ等の點に付きましては、特別な組織を設けなくても宜いのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=15
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016・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の御説明のやうであれば至極結構だと思ひますが、若しさう云ふことであれば、現在の規定の第六號を適用して十分目的を達するのではないかと思ふのであります、一見獨立した融資をしますと、どうしてもそこに競爭の弊が起り、さうして金融の行政が又同じやうに二元化すると云ふやうな憂ひがあるのではないかと私は思ふのであります、今色々の問題で官廳割據主義と云ふ弊害がありますが、若し此の埓を超ゑますと、同じやうに金融の面でも農林省、大藏省の二元的な行政がそこに起りまして、可なり弊害を起すのではないかと思ふのでありますが、其の點に對する御考へを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=16
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017・石川準吉
○石川政府委員 御答へ申上げます、第六號に於きまして或る程度の運用は出來ると思ひますが、併しながら最近のやうに非常に貸出しの期間を短縮しなければならぬこと、手續の簡素化と云ふやうな問題、其の他を考慮致しまして、一々他の銀行を通じて行くと云ふ點に付きましては、多少の復雜があると思ひます、隨ひまして、今囘中央金庫から直接に必要なる資金を農林水産業團體に融通しよう、斯う云ふ意圖でございます、而して是は大藏省と共管でありまして、常に表裏一體を成して運用を致して居りますので、今御心配になるやうな點はないのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=17
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018・苫米地義三
○苫米地(義)委員 一般全融機關の資金の缺乏して居ることは事實であります、確かに其の點は中金の助力が非常に效果を擧げて居ると私も認めます、近く復興金融會社法案が出て成立すると思ひますが、其の結果、此の復興金融會社が全面的に産業の必要なる方面に資金を出すと思ふのでありますが、其の活動が始まりますれば、今肥料に投資しようと云ふ此の改正案は、一應引込むのでありますか、或はやはり積極的におやりになるのでありませうか、其の點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=18
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019・石川準吉
○石川政府委員 復興金融會社法案に付きましては、まだ制定されて居りませぬので、詳細に分らぬのでございますが、併しながら今まで私等の承知して居ります範圍に於きましては、他の金融機關が貸せない部分を復興金融機關がやる、斯う云ふ風に承知して居るのでございます、隨ひまして、此の復興金融機關が出來ましても、協力する範圍に於きましては、中央金庫は依然として協力する、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=19
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020・苫米地義三
○苫米地(義)委員 他の金融機關が貸し得ない所を、復興金融機關が之を引受けると云ふことでございませうが、其のことは中央金庫に對しても同じ意味にならうと思ひます、そこが私が競合だと、斯う云ふ風に考へるのであります、而も擔保を取らずに貸すと云ふことは私はないと思ふ、擔保力と云ふものは一囘でなしに、何囘も社債の擔保なり、或は借入金の擔保なりとして、現在各各擔保を提供して居る状態でありますから、從來の系統を以てやるならば、非常にそこは圓滑に行くと思ふのでありますけれども、全く別な農林中央金庫から融資すると云ふことになりますと、擔保の提供問題でも可なり「トラブル」があるのぢやないか、斯う思ふのであります、それ故に復興金融會社が出來るに相違ないのでありますから、出來ました場合に、其の調整を大藏省と農林省との間に、十分な打合せをして置いて戴かなければならぬと思ふ、是は融資を受ける方の側から申しましても、必ず其の點で苦しむと思ふ、是は一種の希望事項でありますけれども、其の點御考へ置きを願ひたいと思ふのであります
農産加工の方面に付きましては、是は積極的におやりになると思ふのですが、此の點に對して御伺ひしたい、實は昨日も聞いたのでありますが、青森縣で林檎汁十萬石を造る、之に對しては林檎の仕入資金が約二億圓位掛るさうです、之を三囘に廻しますと約八千萬圓位の融通資金が要るのですが、地方銀行では、現在の状況から致しまして不可能である、それで大藏省にも陳情致しまして、考へて貰つて居るさうでありますが、さう云ふものこそ、農林中央金庫の剩餘金を活用するのが妥當ではないかと私は思ふのであります、さう云ふ農業に非常に關係のある、而も細かい方面、小さい方面の農産加工業と云ふやうな方面に積極的におやりになれば、其の調査或は經驗、知識も關聯致して居りますから、寧ろ其の方に重點を置いて、純然たる工業の方は復興金融會社の方に讓つて行くと云ふことになれば、却て調和が取れて旨く行くのぢやないか、斯う思ふのであります、尚ほ其の點に付て大藏省の御意見も伺ひたいと思ひますが、大藏省の方が御見えになりませぬから、私は農林省の方に對しては是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=20
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021・石川準吉
○石川政府委員 一寸今の點に付きまして御答へ申上げます、農林中央金庫の使命は、御承知のやうに所屬團體を通じまして、所屬團體の「メンバー」の資金が主なるものでありまして、只今仰しやいましたやうな地方の農業團體の仕入とか、或は農林水産業に對する施設に付きましては、相談がございますれば十分に御相談に乘りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=21
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022・馬越晃
○馬越委員長代理 八重樫利康君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=22
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023・八重樫利康
○八重樫委員 私の御伺ひせんとする所の改正點に對する質問は、同僚の苫米地君に依つて盡きたやうでありまするから、私は寧ろ其の根本に入つて、農村の金融は農業經營に非常に關係があると云ふ點から、御伺ひ致したいと思ひます、中央金庫は現在金融界の王座を占めて居りまするが、其の資金は主に農村から、吸收をされて居りながら、其の大部分は都市に放出されて居る傾向があるやうであります、此の農村の金融の如何と云ふものは、直ちに農村の振興に關係あると云ふことは、今更申上げるまでもないのでありまするが、此の金融ばかりでなく、總ての點に於て農村は今まで搾取と束縛の對象になつて來たのであります、此の點に關しましては、實は農林大臣に御伺ひしたいのでありますが、御見えになりませぬので次官から特に御願ひ致したいと思ひます、即ち食糧の窮迫に陷つた原因も色々ありませうが、主として一般の社會の水準以下に農村が置かれて、而も工業に對しては安價なる勞力の補給源となり、商業に對しては單なる利益の搾取對衆となつて來て、さうしてそれを放任して顧みられなかつたのであります、其の結果と致しまして、有爲の農村の青年は農村を離れて都會に謂集し、農村は智能的にも、經濟的にも完全に轉落して來たのであります、今にして此の農村の實體と遊離した所の政策を一擲して、農村をして安んじて農業に精勵する方策の樹立せられざる限り、農村は依然として桎梏の中に苦しみ、生産が減退するであらうと思ふ次第であります、其の點に付きまして、細かいことは後廻はしと致しまして、先づ此の場合に於きまして、政府に於きましては、今まで歴代政府の執り來つた所の惡政と申したいのでありますが、之を一擲して、明朗にして堅實なる農村を建設すると云ふ考へを持つて貰ひたいと思ひます、其の點に關しまして、次官は如何なる御考へを以て今後の農付を指導して行くかと云ふ點を、先づ御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=23
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024・楠見義男
○楠見政府委員 只今の御尋ねの、今後の農村經營をどう云ふ風に持つて行くか、又農村金融と農業經營との關聯をどう云ふ風に持つて行くかと云ふ問題でありますが、御承知のやうに、終戰後の建直りと致しまして、色々の面に於て政府と致しましては施設を講じ、又施策を樹立して居るのでありますが、農村の面に於きましても眞に民主的に、又從來の封建的な面も出來る限り之を拂拭致しまして、直に民主的な、又自主的な農村を今後建設して行かうと云ふことで、土地問題に於ても、其の他の問題に於きましても、施策を考慮致して居りますことは御承知の通りであります、同時に今後の農業經營の面に入つて行きますると、是も只今御述べになりましたやうに、今後の農村經營と云ふ觀點から言ひますれば、結局此の問題は、農業經營を文化的に、又合理的に、科學的にやつて參らなければならぬことは當然でありまして、此の方向に今後進んで參らなければならぬことは申上げるまでもないのであります、特に問題になつて居りまする農村金融と農業經營の問題でありますが、今日の農林中央金庫の系統は、御承知のやうに、綜合的金融機關として多年の歴史を持ち、又當初は色色苦しい状態にあつたことも御承知の通りであります、幸ひ多年の經驗の結果、漸次力が付いて參りまして、今日に於きましては、市中の大銀行に伍して何等遜色ない所まで、綜合金融機關としての實力が具はつて參つたのであります、先程來色々問題になつて居りますることは、結局此の力の付いた農林中央金庫の餘裕金の問題が、色々問題になつたのでありますが、本筋は飽くまでも綜合金融機關としての使命達成に邁進しなければならぬことは、申上げるまでもないのであります、現在の綜合金融機關としての需要面は必ずしも伸びて居りませぬ、併し是は農村に於きまする現在の金融事情、或は經濟事情がさう云ふ風になつて居りまする爲に、結局餘裕金の問題で色々頭を惱まして居るのであります、併し先程來申上げるやうな農業の持つて行き方と云ふことから考へて參りますると、結局本筋の綜合金融機關の使命を完全に果す爲に、經營面に於きまして、又生産面に於て、加工面に於て、農村は今後經營の上に於きましても多角的になつて參りませうし、又色々文化的の施設が講ぜられることと思ふのでありますが、斯う云ふ面に對して農村金融は大きな裏打として役立つものと存じまするし、又私共も其の方向に農村金融と云ふものを持つて參ると云ふことに努めて參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=24
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025・八重樫利康
○八重樫委員 次に御伺ひしたいことは、政府は農村から餘裕金を吸收し過ぎるのではないかと云ふことであります、其の結果、農村では零細なる所の餘裕金が色々の名目の下に吸收されまして、農家には住宅の改善の考慮もなく、農具の整備すらなく、鍬一梃、鎌一梃の農家が多いのは、日本農業の缺陷とされて居る次第であります、農業と云ふものは如何なる形に組織されましても、土地、資本、勞力の三要素以外には一歩も出ないと私は信ずるのでありまするが、然るに土地に關する問題は、早晩土地制度の改革に依つて幾分は改革されるだらうと思ひますが、資本の問題に關しましては、意外に農業指導者、政府も關心を持つて居らない、さうして色々な名目の下に、集まつた資金と云ふものは中央に集まつて、所謂中央集權の弊害と云ふものを現はして居る、現在戰災の多いのも中央集權の弊害であります、大分農村の金を使つて施設したものが破壞されて居る、又電車の混雜等も、中央集權の弊害を遺憾なく露呈して居る、是は速かに農村に施設を分散して、田園都市の形に於て農村と云ふものを作つて行かなければならぬ、其の爲には農村から餘り資金を吸收しないで、農村の色々の施設に向けて、何も是は中央金庫を通さなければならぬと云ふことはない、農家が個々の經營に於て、餘裕金を持つて自家經營に資すると云ふことが必要ぢやないかと云ふことを考へて居りまするが、此の點に關する御考へを率直に御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=25
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026・楠見義男
○楠見政府委員 餘裕金の吸收の問題でありますが、本筋は仰せの如く、出來る限り農村に之を還元すると申しますか、是は本來相互金融の建前でありますから、然るべき譯でありますが、唯從來の餘裕金の吸收の問題は、御承知のやうに金融事情なり、又經濟事情が隨分變轉して、變つて參つたのでありますが、同時に地方的に、是は何と申しますか、色々さう云ふ方面に付ての知識なり、經驗なりと云ふものは、中央の者と比べまして必ずしも十分でない、隨て農村の内部に還流致します場合は、是は問題はないのでありますが、併し農村外に此の資金が流れ出る場合に、色々其の點に於て憂慮せられるやうな事態があつたのであります、昔の信用組合が、一般の金融恐慌に際して色々立直りにくい困難に逢著したのも、さう云ふ事例に依つたものもあるのであります、隨て農村外に流れ出ます場合には、之を出來るだけ中央に於て、諸般の實情を能く掴んで、それに基いて融資をして行く、さうして組合金融としての基礎を固め、又不測の損害を生じないやうにと云ふことで、隨分中央でも苦勞をし、又地方的な組合金融に對しまする色々斡旋でありますとか、指導機關でありますとか、或は相談に乘る機構とか、色々なものを地方的にも作りまして、其の間餘裕金の運用に於て過ちのないやうに期して參つたのであります、さう云ふ意味から、餘裕金は戰時中は出來るだけ中央に吸收する方針を執つて參りました、併し本筋としましては、農村の内部に還流すると云ふ場合には、必ずしも中央に總てが總て之を吸收すると云ふやうなことは、考慮して宜い問題であらうと云ふ風に、私共も實は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=26
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027・八重樫利康
○八重樫委員 之に關聯致しまして、婦人の解放問題と住宅の問題を一言御尋ねして置きます、婦人の解放問題が相當論議されて居りまするけれども、特に農村の婦人は、如何に農業が集約されて機械化され、或は電動機が全面的に農村に入りましても、實際の農業勞働から農村婦人を解放する時期と云ふものは、恐らく近い將來にはないと思ひます、是は已むを得ざることと致しましても、家庭の内部に於ける不生産的な作業と申しませうか、家事勞働に引廻はされる婦人の勞働と云ふものは非常に過重であります、私の或る計算に依りますると、家庭内の勞働で、農家の婦人が歩いた哩數を調べた所が、七里半歩いたと云ふ例もあつたのであります、斯う云ふ點を考へまする時に於きまして、婦人の解放の前提と致しましては、どうしても婦人の知徳の昂揚を圖らなければならぬのでありまするが、農村の婦人は新聞を見るはおろか、「ラヂオ」を聽くはおろか、朝から晩まで家事勞働に引廻はされて居ると云ふ點に付きまして、どうしても住宅の改善、其の他の共同施設に依つて、農村に時間的の餘力を與へ、さうして農村の知識の昂揚を圖らなければならぬと云ふ考へを持つて居りまするが、此の中央金庫等の融通に依りまして、住宅改善其の他農村の共同施設に對して、政府に於て御考へがあると致しますれば、其の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=27
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028・楠見義男
○楠見政府委員 御尋ねの點に付きましては、私共も其の必要を十分認めて居りまするし、さう云ふやうな資金需要に對しましては、融通の途も開きたいと考へて居ります、特に御承知のやうに、婦人の負擔を出來る限り輕くすると云ふ問題、竝に住宅の改善の問題に付きましては、特に前者の婦人の問題に付きましては、或は共同炊事とか、或は共同託兒所とか、農繁期に於きまする色々の施策を從來も講じて參つたのでありまするが、此の方向で更に一層努力して參りたいと思ひまするし、次に又住宅の問題に付きましても、實は此の問題は特に東北、北陸地方に於て、改善をなすべき餘地が極めて多いやうに思ふのであります、それで私共の方で施設して居りまする、新庄の積雪地方の經濟調査所と云ふ所がございますが、幸ひなことに其の所長が、此の問題に付ては身命を打込んで改善に努力したいと云ふことで、折角研究を進めて居るやうな次第であります、是等の調査施設が更に良き成果を生みまして、全般的に此の住宅の改善に貢獻せらるることの早からんことを、實は期待して居るやうな次第であります、附加へて申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=28
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029・八重樫利康
○八重樫委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=29
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030・成島勇
○成島委員長 それでは田中健吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=30
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031・田中健吉
○田中(健)委員 私は數項目に亙つて質問致したいと思ひます、第一に肥料會社と金融の問題に付てでありますが、肥料の國營に付ては農林大臣が屡屡言明されて居りまするが、其の具體的な措置をどう云ふやうに考へて居るかと云ふ點であります、それから中央金庫が肥料會社に融資すると云ふのは、肥料を國營にする準備の爲であるのか、それとも單に肥料資本家を擁護する爲であるか、それから國營にする爲には、肥料會社の賠償資金とでも言ひませうか、さう云ふ資金をどれ位必要とするか
次に本會議に於て我が黨の平野代議士の質問に對して、農林大臣は、經濟安定本部が出來れば、肥料國營の準備調査會を設置すると云ふことを言明致して居ります、其の後安定本部が實現しまして、長官も決まりましたが、本會議で言明されたやうに、肥料國營の準備調査會を設置する爲の何等かの措置を講じて居るかどうかと云ふ點であります、それから農林大臣は屡屡肥料の國家管理と云ふことを言はれますが、肥料が現在相當程度の國家管理になつて居るのに比べまして、農林大臣の言はれる國家管理と云ふものは如何やうなものであるかと云ふ點に付ても、御伺ひ致します、それかを肥料の國營案を繞つて、商工省と農林省間に意見の相違があり、對立して居るかの如く考へられまするが、此の點に關しまして當局の所見を御伺ひしたいと思ひます、以上六點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=31
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032・楠見義男
○楠見政府委員 先づ第一點の肥料國營の問題でありますが、是は既に度々申上げて居りまするやうに、經濟安定本部に肥料國營準備調査會と云ふものを設けて、其の委員會に於て國營に付ての當否を論議し、さうして結論として、假に國營是なりと云ふことになりますれば、爾後の色々國營に關する、問題になる施策を進めて行くことになるのでありますが、先づ其の前提としての國營の當否の問題、又適否の問題に付て、委員會に於て調査をして戴かう、斯う云ふことで、此の經過は田中さんも御承知の通りであります、そこで經濟安定本部が實は御話になりました如く最近出來ましたが、部長はやつと最近——部の部長がまだ作つて居りませぬが、大體部長も作ると云ふやうなことになつて居ります、何と申しますか、開店匆々と云ふやうなことになつて居るのでありますが、之に對しまして、私共の方では豫て議會に於きまして色々申上げてある經過等も附加へて、此の肥料國營準備會の設置方を要請して居るやうな次第であります、經濟安定本部でも、此の問題に付ては取上げて戴けるものと存じて居ります
それから第二番目の農林中央金庫の肥料に對する資金融通は國營の準備かどうかと云ふ問題でありますが、是は國營に關しましては、只今申上げますやうに今後の經緯で進んで參る譯でありまして、今日只今の所、國營が是か非かと云ふやうな所の結論まで達して居らないやうな次第でありまして、隨て現在私共が考へて居ります資金融通は、國營の準備とか、前提とか、さう云ふことは全然考へて居りませぬ、純然たる農林中央金庫の豫備金の運用として、農村に極めて密接な關係のある、此の肥料工業の復舊に豫備金を運用して參りたいと云ふことを考へて居る次第でございます、隨て第三點の、國營に致しました場合の賠償資金がどうなるかと云ふ點に付ては、只今の所御答へ申上げ兼ねるやうな次第でございます
次に肥料の國家管理の問題に關聯して、現在とどう違ふかと云ふ問題でありますが、御述べになりましたやうに、現在強度の國家管理を致して居る部分があるのでありますが、是は肥料の配給部門、販賣部門に付ては、總て肥料會社の生産致しましたものは、日本肥料株式會社に一括販賣せしめまして、之を農業會の系統に依つて流して居るのでありまして、此の部分に於きましては國家管理と申しますか、或は見方に依つては買取專賣に類するやうなものでありますが、併し生産部面に於きましては、尚ほ統制を強化すると申しますか、生産増強を致します觀點から、相當之に強力な推進を加へて行かなければならぬ部門が多いのであります、事態は違ひますけれども、戰爭中には軍需會社法と云ふやうなもので、相當強力に此の生産確保の措置が講ぜられ、又推進せられたのでありますが、今日の事態に於きましては、現在は生産部門に對する強力な推進の手段と云ふものが法的には缺けて居るのであります、隨て肥料の生産を増強する、又配給の適正、圓滑を期すると云ふ觀點から申しましすと、後者の配給の方は大體現在でやつて行けるが、生産部門に付ては尚ほそれに對して強い施策を講ずる必要があらうと云ふことから、此の問題を取上げて致して居るやうな次第であります
最後に、國營問題に付ての農林、商工、兩省の對立があるかどうかと云ふ問題であります、此の問題は國營自體に付て先程來申上げますやうな關係で、又今後の經過で以て進んで參る譯でありますから、此の國營に付て、今日農林、商工兩省の對立と云ふことはないと御承知願ひたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=32
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033・田中健吉
○田中(健)委員 次に昭和二十一米穀年度の米穀需給計畫に付てでありますが、本年度の米穀の收穫豫想高は、私は諸種の情報から綜合して判定致して見まするに、五千八百萬石と六千二百萬石の間に此の總收穫高は見られるのぢやないかと云ふやうに考へて居りますが、政府はどの位の收穫高を見込んで居るかと云ふことに付て御伺ひ御します、此の見込高が基礎となりまして、昭和二十一米穀年度に於ける需給計畫が樹立される、此の見込高に立つた所の需給計畫の推算に付て、出來得るならば數字的に詳しく御伺ひしたいと思ひますが、數宇の御準備が整つて居らないとすれば、後で文書でも宜しうございますから、御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=33
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034・楠見義男
○楠見政府委員 本年産米の收穫豫想でありますが、實は全國的に作況調査を致して居るのでございますが、其の結果がまだ纒つて居りませぬので、其の正確なことは申上げられないのであります、併し各地の現在まで得て居りまする情報に依りましても、本年は相當良作が期待されると思ふのであります、今五千八百萬石から六千二、三百萬石の間の豫想と見るが、どうかと云ふやうなことでございました、私共としましては、正確に今どれ位の數字が豫想されるかと云ふことは申されませぬが、併し從來私共が考へて居りますよりは、相當好轉をして居ることは事實のやうであります、大體それに近いやうな數字を得られることを私共としては期待して居ります、併し正確に政府として今どれだけかと云ふことは申上げるまでに至つて居らないのであります、出來るだけ早く全國的の數字を取纒めたいと云ふことで、現在地方にも督促を致して居るやうな次第であります
それから明年の需給の問題でありますが、此の生産高が基礎になりまして需給の見透しを立てる譯であります、勿論一部には、來年の麥なり藷の收穫見込、是は本當の計畫的な推定になる譯でありますが、さう云ふものも頭に入れて需給計畫と云ふものを立てなければならぬ譯でありますが、根本の本年の生産見込と云ふものをはつきり掴むまでには實は至つて居りませぬことと、もう一つ大きな問題は、是は豫て農林大臣から御話申上げましたやうに、明年度に於きましては、消費者の配給基準に付きまして増配を考慮致して居るのでありますが、是非是は配給基準を増加致したいと考へて居るのであります、此の問題に付きましても、曩に農林大臣から申上げましたやうに、關係方面との色々の重大な關係がございますので、是等をはつきり致しませぬければ、明年の需給計畫と云ふものを立てる譯には實は參らないのであります、色々準備的のことは致して居りますが、併し是が本極りになるまでには至つて居ない現在の状況でありますので、此の點は左樣に御諒承を御願ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=34
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035・田中健吉
○田中(健)委員 次に世界の食糧事情に付て御尋ね致します、日本の國内の食糧事情を改善するには、世界の食糧事情と睨み合はせて考へなければならぬことではなからうかと思ひまするが、是も色々な情報に依りますると、本年は世界各地とも非常な豐作であると聞いて居りまするが、米國、「カナダ」、佛印、「シヤム」、「ビルマ」、朝鮮、臺灣、是等の世界各地に於ける主要農産物の作況に付て、何か政府と致しまして情報があれば、此の情報に付て世界の食糧事情に關する御答辯を御願ひ致したいと思ひます、又各國民の食生活に付ても、出來得るならば御伺ひ致したいと思ひます、是も數字で御伺ひしたいのでありますが、數字の御準備がなければ、後で書いたものでも宜しうございます、
次に遠洋漁業の問題でありますが、遠洋漁業は一時的に許可されて居るものであつて、恆久的のものではない、斯う云ふことを私先般來新聞で承知致して居りますが、是は一時的である場合には、どう致しましても資本の投下、施設の充實等に付て、業者が本腰を入れないのでないかと考へられますので、政府に於て、一時的に許可されて居るものを、出來るならば恆久性を持たせる方法を執るべきでないと考へまするが、當局の所見を御伺ひ致したいと思ひます、此の二點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=35
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036・楠見義男
○楠見政府委員 世界の食糧事情でありますが、御述べになりましたやうに、全體的に好轉を致して居るやうであります、唯御擧げになりました地域の中で、朝鮮、臺灣は必ずしも左樣でございませぬ、特に朝鮮は、私共得て居ります情報では、非常な水害で、現に朝鮮に歸る人々も交通が囘復をしませぬ爲に、九州にまだ止つて居るやうな状態で、彼此れ二月近くも待機をして居りますが、さう云ふやうなことで、朝鮮は非常に水害がひどいやうであります、又臺灣も是は戰爭中からの作付轉換なり、色々の問題がございまして良くないやうでありますが、其の他の地域に於きましては、大體良いやうであります、特に「アメリカ」、「カナダ」に於きましては、昨年から今年に掛けまして、相當無理をして世界に食糧を供給致しました爲に、例年の繰越高は相當今年は減少をして居るやうでありますが、其の減少を「カバー」しても餘りあるだけの豐作が傳へられて居るやうであります、是も正式に報告を私共掴んで居る譯でありませぬが、情報に依りますると、「アメリカ」では是も或は田中さんも御承知かと思ひますが、昨年は小麥は「アメリカ」では未だ曾つてない豐作であつたのでありますが、本年は更にそれよりも上廻る第一次、第二次の收穫豫想がある毎に、其の數量が殖ゑて行くと云ふやうな状況でございまして、昨年度の今までの最高「レコード」を更に來年は破る斯う云ふやうな情勢でありますけれども、當時七月十五日の豫想に依りますると、三千四百三十萬「トン」餘りの收穫豫想に我々承知して居るのであります、それから玉蜀黍でありますが、玉蜀黍は一昨年が「アメリカ」では從來の最高「レコード」でございました、所が之を更に本年は上廻るやうな状況で、同樣に七月十五日現在の收穫豫想では一億五百六十九萬六千「トン」、約一億六百萬「トン」と云ふやうな數字であります、其の後此の數字は更に殖えて居るやうなことであります、全體的には非常に世界的にも恢復をして居る、「ヨーロッパ」あたりも漸次此の戰爭後の平靜が取戻されて、總て生産が増加して居ると云ふ風に承知致して居ります、唯南方の佛印なり、「タイ」、「ビルマ」と云ふ方面が、どの程度復舊をして居るかと云ふことは、確たる情報を掴んで居りませぬが、私共が期待して居る程速かに、まだ復舊はして居らぬと云ふことだけは確かのやうでありますが、併し是も漸次復舊の途を辿つて居るものと承知致します、大體數字的に申上げられますのは、只今私の承知して居る所は以上の通りであります
それから遠洋漁業の問題に付て、一時的の許可と云ふことに付ての問題でございますが、此の問題は先般G・H・Q・の渉外局から發表された捕鯨に付て、世界の他の諸國の抗議に對する辯明と申しますか、聲明と申しますか、其の中にあつたことを指しての御尋ねのやうでありますが、私共も、此の問題に付ては一時的の許可と云ふことになつて居りますが、併し今後の色々の觀點から考へて參りましても、是非是は恆久的な漁業として許可を得たいと云ふ風に考へますので、其の期限が過ぎますれば、更に引續いて申請を致したいと考へて居りまするが、今日の所色色、御承知のやうな微妙な國際情勢の下にございますので、今後の問題として、此の問題は扱つて參りたい、斯う云ふ風に實は考へて居るのでありますが、此の間の色々「デリケート」な事情も御承知のことと思ひますから、是れ以上申上げませぬが、さう云ふ風に御諒承を御願ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=36
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037・田中健吉
○田中(健)委員 次に貿易の再開と外米の輸入、それから増配の問題に付て御伺ひ致しますが、先般の豫算總會に於きまして、吉田總理大臣が講和會議が近き將來、即ち明年の七、八月頃以前開かれるのぢやないかと云ふやうなことを、辯明されたやうに、記憶致しますが、さうだとすれば、明春頃までに貿易が再開されるものと推察しても宜しいかと云ふ問題が一つ、それから現在「アメリカ」より食糧が來て居りますので、此の食糧に依つて日本の國民が大分救はれて居りますので、之に對して我々は、日本國民と致しまして、非常に感謝致して居りまするが、此の食糧は輸入品であるか、それとも「アメリカ」軍が「アメリカの國内より買上げて、日本に送つて居るのであるかと云ふ點に付て、一寸御伺ひして置きたいと思ひます、それから外米の輸入の爲には、日本からどのやうな品物が輸出されなければならないか、さうして其のやうな品物を作る工業施設が完備して居るかどうかと云ふ問題に付て、御伺ひ致します、其の點が明確にならないと、結局、輸入の見返りとして是々送ると言つても、其の送る爲の工業施設と云ふものが確立されなければ確實性はない、私の考へでは、貿易が再開されれば南方米或は其の他から米穀が輸入されると思ひますが、假に本年度六千萬石と見ましても、尚ほ二千萬石——是は私の推定ですから、或は數字が著しく違ふかも知れませぬが、二千萬石位不足ぢやないか、隨て外米を輸入することは必然である、そこで政府が昭和二十一年度の米穀需給計畫推算に、輸入米をどれだけ見込んて居るかと云ふことに付て承つて置きます、此の點が明確にならないと、農林大臣の近き將來の増配と云ふ言明が空念佛に終つてしまふ、農林大臣は貴族院に於て、十一月一日より増配したいと云ふことを言明したやうに私記憶致して居りますが、十一月一日から増配すると云ふことになると、最早現在に於て輸入米、或は來年度に於ける産米の見透し、其の他に付て色々な數字計算の下に、需給計畫の推算が立つて居るのであるが、其の計畫が立たないと、十一月一日より増配することは不可能だと思ひます、それで結局一人當りどれ位増配するかと云ふ問題に付ても、此の際御伺ひ致して置きたいと思ひます、結局増配すると云ふことと、數字がはつきりして來ることになると、それが現在の闇米價を或る程度引下げることに役立つぢやないか、今までの言明は極めて抽象的であり、根據が薄弱であるやうに考へられますので、出來るならば、十一月一日に農相が言明する通り増配が斷行されるものか、而して一人當りどれ位の増配の可能性を持つか、其の基礎は輸入米或は本年度産米、或は來年度の産業、斯う云つたやうなことに付て詳細承ることが出來れば幸ひであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=37
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038・楠見義男
○楠見政府委員 貿易再開の見透しの問題でありますが、是は田中さんも只今御述べになりましたやうに、講和會議の開催時期との關聯もあらうと思ひますから、實は私共此の問題に付ては承知致して居りませぬ、洵に遺憾ながら御答へ申上げる譯には參らないのでありますが、現在の輸入して居ります食糧が、貿易品として來て居るかどうかと云ふ點に付ては、是は貿易品としては參つて居らないのでありまして、「アメリカ」の陸軍省が陸軍の豫算で國内から買ひまして、之を日本に持つて來る、斯う云ふ状態でありまして、貿易品としては入つて來て居らないのであります、唯之に付ての見返り的の物資の施設が完備して居るかどうかと云ふ御尋ねに對しましては、是は現在に於ても、或は將來の貿易再開を致しました場合の見返り物資としても、最も大きなものは申上げるまでもなく生糸と紡績關係でありますが、幸ひ是等の施設に付ては、尚ほ不十分な點もありますが、漸次計畫は軌道に載つて居ると思ひますし、特に紡績の施設の方は、十分現在の所で間に合つて居るやうに承知して居ります、生糸の方も折角製絲設備の復舊に努力をして著々進んで居るやうに承知をして居ります
次に來年の輸入食糧をどれだけ見込んで居るかと云ふ點でございますが、是は先程來申しましたやうに、此の基礎に依つて違つて來るのでありますが、同時に此の問題は、聯合國側に於きまする輸出餘力と云ふやうな問題も關聯を致して居るのであります、隨て關係方面と今折角緊密な連絡を執り、且つ關係方面も本國と緊密な連絡を執つて居るのでありまするが、今日の所まだはつきりとしたことを申上げる時期に至つて居らないのを甚だ遺憾とするのでありますが、此の點は非常に「デリケート」な問題が生じまするので、是れ以上實は御答へ申上げることを遠慮致したいのであります、最後の増配時期の問題及び數量問題であります、数量の問題は只今申上げましたやうに、はつきり申上げるまでに參りませぬが、唯申上げられることは、私共としては出來るだけ此の数量は多くしたい、國内的にも許す限度に於て、又國際的の關係に於てなし得る最高限度に於て、此の問題は出來得る限り多く數量を増加したい、斯う云ふことで折角努力を致して居る次第であります、遠からず此の問題は固まると思ひますが、今日の所遺憾ながらまだ固まつて居りませぬので、はつきりしたことを申上げるまでに行かないのであります、時期の問題に付きましては、是は新米が、出廻り出しました當初から、所謂大臣が明食糧年度と申しましたのはさう云ふ意味でありますが、新米が出廻り出しましてから、出來るだけ早く之を實施致したい、斯う云ふことでありますが、是も量の問題、全體的の問題と關聯を致して居りますが、出來るだけ早く此の問題は解決致したいと考へまして、折角事務的にも又國際的にも努力を致して居るやうな實情であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=38
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039・田中健吉
○田中(健)委員 次に米價の問題に付て御伺ひ致します、新米價、詰り米價を値上すると云ふやうなことが當局より屡屡言明されて居りまするが、其の新米價の點に付て、是は從來の如く多樣多岐に亙るものであるか、生産買上價格、或は其の販賣價格、其の他報奬とか色々なものが從來あつたのですが、其の米價の全貌に付て御伺ひ致します、本年度の豫想收穫高は、私の推定ですが、六千萬石と致しまして、外米輸入二千萬石、假にそれを以て昭和二十一米穀年度の需給計畫が立てられた場合に、米價に變動があるかどうかと云ふ問題です、さう云ふ觀點に立つて、新米價と云ふものが維持出來るかどうか、詰り米價の變動に對する方策如何、斯う云ふ點であります、現在の米の闇値は食糧不足に基因する、色々の問題もあると思ひますが、主として、食糧不足に基因するのぢやないか、さう云つた場合に、食糧が相當程度充實されて來ると云ふことになると、必然的に米價と云ふものは變動を見る、現に闇米價と云ふものは下りつつある傾向にあるのであります、是が段段下つて公定米價を割る所まで來るか、來ないか、其の點に付て、新米價と云ふものは、斯かる見透しの下に維持出來るか、出來ないか、斯う云ふ問題であります
それから米價の變動に依り、自作農創設資金の償還が不能になるやうな場合がなきにしもあらず、大正八、九年間に非常に高い値段で自作農創設をやつて、それが大正末から昭和六、七年に掛けて、非常に農民が困つた過去の例もありますので、米價の變動に依つて償還が不可能になつた場合に如何なる方法に依るか、勿論是は農調法案の場合に御尋ねすべきことであらうと思ひますが、一應此の際伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=39
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040・楠見義男
○楠見政府委員 米價の問題に付きましては、他の物價との均衡を考慮してやると云ふことも一つの理由でありますが、同時に大きな問題は、米の生産費を償ふと云ふことも大きな内容になつて居るのであります、隨て此の點から米價問題を私共は取扱ひ、隨て又豫て申上げて居りますやうに、此の問題は經濟安定本部で現在取上げて、速急に決めるやうな段取りで今進めて居るのであります、是は極く最近に決定を見と思ひますが、私共としましては、此の觀點から米價問題を考へますと同時に、此の米價の只今御尋ねになりました態樣と申しますか、態勢の問題に付きましては、本來の米價を改訂致しますと同時に、本食糧年度に於きまする特別の——端境期に於きまする食糧事情の觀點から、此の窮迫した端境期の食糧事情になつて居ります爲に執らなければならぬと致しまして、早場米の確保奬勵と申しますか、此の奬勵的なことをやると云ふことも考へて居るのであります
次に米價の變動の問題でありますが、只今申上げましたやうな觀點から米價を決めて參る譯でありますから、是からの輸入食糧、或は今年の實收が確定したと云ふやうな場合に於きましても、此の決めました米價に付きましては、變動をさせない、斯う云ふ考へであります
次に自作農創設費用との關係でありますが、是は寧ろ將來の農産物價の問題との關聯の下に於ける御尋ねのやうに承知致しましたが、此の問題に付きましては、既に御承知のやうに、自作農創設に關しまする今囘の法律案に於きましても、特別に償還金の問題に付ては考慮を致して居りますし、一定の合理的な基準の下に、價格の變動がありまして、端的に申せば、下つた場合の措置に付きましては、法文の中に其のことを書いてありますし、又特別の災害等に依りまして減收があつた場合の措置も、やはり其の法文の中にはつきり書きまして、自作農創設事業に大きな蹉跌を來さないやうに、特に考慮を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=40
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041・田中健吉
○田中(健)委員 時間がありませぬから、四點一括して簡單に伺ひます、農地制度改革、農地證券、それから戰爭用地の返還問題、其の他一點です、自作農創設事業に付ては、私の考へでは、是は純然たる國營にすべきものであつて、都道府縣、市町村に從來は其の事業をやらして居つたのでありますが、今度の場合には、中央地方に國の農地行政官廳、又は事業官廳を設置して、唯一番の最下部の市町村には、自主的な市町村の農地組合を作らせるやうにしたら宜いと思ふが、此の點に對する當局の所見を御伺ひします、それから農地制度改革のことに付て、地主に對して農地證券を交付すると云ふことを聞いて居りまするが、農地證券を持つ地主は金融を受けることが出來るか、農地證券にはどれだけの利子が附せられるか、農地證券には償還期限と云つたやうなものがあるかどうか、其の他農地證券の特別な點に付て御伺ひ致したいのであります、それから大東亞戰爭中に、戰爭の理由を以て耕作者から耕地を買上げ、又は借上げた土地は、戰爭終結の今日に於ては、其の理由が消滅して居るから、他の理由に依つて之を元の耕作者に返さないと云ふことは不當であらうと思ひますが、何か特別の措置を講じて返還させる御意思ありや否や、それから終戰後俄か作りの耕作者が殖えて、又地主が土地を小作人より取上げて耕作して居るものもあり、其の大部分は信念を以て農業を始めたのではなくして、一時的に食糧難を解決する爲にやつて居るので、食糧事情が平常化すれば、是等のものは耕作地を抛棄する危險性があるのであります、其の故に自作農創設は本當の農民に對してなさしむべきものであると思ひまするが、終後戰の俄か耕作者で、食糧が平常化すれば土地を抛棄する危險性あるものまでも、何等審議することなくして耕作させるかどうか、それから昭和十六年以降、不當に取上げられた土地を小作人に返還せしめた上に、自作農を創設させなければならぬと思ひますが、此の點に付きましての當局の御考へを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=41
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042・楠見義男
○楠見政府委員 今御述べになりました點は、何れ農地に關しまする委員會に於て、詳細論議せられることと存じますので、極く簡單に私から御答へ申上げて置きます、第一點の國營の問題でありますが、勿論今囘の此の農地改革は國の手に依つて耕地を買收し、之を開放して參る譯でありますから、買上事務とか色々な問題は、國の意思に基いて國の機關としてやることになります、隨て是等の機構の問題に付きましても、同時に農地制度の趣向と合はせて、現在豫算的にも色々檢討致して居るのであります、要しまするに國の事業として、國の機關として之をやつて參ると云ふことになる譯であります、證券の問題は、年賦で返して行くと云ふことになるのでありますが、それ以外の色々詳細な點は、私も只今記憶致して居りませぬので、何れ別の農地委員會で御答へ申上げることに致します、それから用地の問題、是は特に飛行場問題等に此の問題が多かつたのでありますが、形式上は補償をしまして、謂はば賣買に依つて國が取得したのでありますけれども、併し実質上色色問題もございまするし、特に飛行場等に付きましては、從來の耕地が半強制的に飛行場に供せられたと云ふやうな場合も少くないのでありますから、特に之を開放致しまして、更に耕地と致しまする場合には、出來るだけさう云ふやうな趣旨も頭に入れまして、地元の耕作者に渡して行く、斯う云ふ方法で現在進んで居るやうな事情であります、最後に俄か作りの農家に對する問題、又土地の引上の問題でありますが、此の問題も既に御承知のやうに、昨年十一月二十三日現在を以ちまして、土地の所有状況と云ふものの基礎に致しまして、今囘の農地開放が行はれる譯でありますから、隨て其の時を境に致しまして、農地委員會に於て色色檢討をせられることになる譯でありますが、同時に國が今囘買收して、自作農を創設して參る場合に於きましても、只今御述べになりましたやうに、自作農として是が旨くやつて行けるかどうかと云ふことが、今後の自作農を維持して參ります上に於て極めて重要でありますので、此の點も自作農として眞に農業經營に徹し得ると云ふ見透しの付いた人々に、之を開放して行かう、斯う云ふ方向に進んで居ることを、附加へて申上げて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=42
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043・田中健吉
○田中(健)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=43
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044・馬越晃
○馬越委員長代理 平野市太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=44
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045・平野市太郎
○平野(市)委員 私今囘初めて出て參りまして、政府の説明を承り、各議案を見ましても立派に出來て居りますが、私は純農民の立場から見ます時に、餘りにも政府の首腦部の方が農村の實情に暗いと云ふ點を、私殘念に思ふのであります、自由經濟當時、又戰爭中より現在に至るまで、我々農民の零細なる金を集めて、其の金は殆ど都會文化に使つて居るのであります、農村文化を閑却しまして、都會文化に重きを置いた爲に、現在の食糧難の原因もそこにあると私は思ふのであります、此の中央金庫の貸付の問題に致しましても、組合員外に貸付けて居る、其の中で私達が最も遺憾に思ひますのは、日本藁工品配給株式會社であります、是は私香川縣に於ての一つの例を申上げますが、私達は農閑期に於て叺を生産する一百姓に過ぎぬものでありますが、一枚の鹽叺を生産致しますならば、農家の手取金は一圓九十錢であります、是が藁工品と云ふ「トンネル」會社を一つ通つたならば、消費者の手に移る時は二圓六十五錢になるのであります、斯樣な搾取會社に我々から集まつた所の金を貸付けて思ると云ふことは、私甚だ遺憾に思ふのであります、次には地方食糧營團にも金を貸付けて居るやうでありますが、此の食糧營團たるや、私農民の立場から、即時廢止して戴きたいと云ふ意見を持つものであります、此の食糧難に行詰つて居ります時に、食糧營團に我々の生産した所の米麥を配給さすと云ふことが、抑抑誤つて居るのであります、又戰爭中の麥の二分搗きであるとか、米の玄米食であるとか、現在は二分搗きに搗かして居りますが、是が抑抑間違つて居るのであります、斯う云ふ點を改めなかつたならば、我が國の食糧問題は解決付かないと思ひます、現在失業者は澤山出て來る、或は「インフレ」と云ふことは、國民の腹が、腹八合に膨れたならば、斯う云ふ問題は一擧に解決が付くのです、それを國民が腹八合に膨れぬやうなことを政府自身がやつて居るやうな感がするのであります、食糧營團の例を申しますれば、一番能く分ると思ふのであります、麥も精麥致しますならば、麥糠は二斗五升乃至三斗出來るのであります、米も一俵十六貫を精米致しますならば、米糠は六升出來るのであります、之を家畜に食はせて、家畜の腹を通して土に循環してこそ、我が國の農業は循環農業として増産出來るのであります、それを食糧營團と云ふやうなものに任す爲に、現在の二分搗が、政府の示す二分搗に搗いて居るや否や、殆ど私は二分搗に搗いて居ないと思ふのであります、此のやうな食糧營團と云ふやうなものは、即時廢止致しまして、農民組合を主體とする所の團體、或は地方の實行組合等に任して、我々の生産した所の農産物は全部加工して供出させる、即ち自分の作つた米萎は、米でありましたならば精米し、麥であつたならば精麥して供出するのであります、さう致しまするならば飼料は殘るのでありますから、其の飼料に依つて、有畜農業を盛んにしてこそ増産は出來るのであります、現在食糧に行詰まつて居るのは此の點にあるのであります、此の營團に金を貸付けると云ふ點が、我々には分らぬのでありますが、將來も斯う云ふ風に食糧營團に金を貸付ける御趣旨であるか、此の點を御尋ね致したいのであります
尚私達が農業經營をやる場合に牛を飼ふのでありますが、日本が戰爭に敗けました時に、誰言ふとなく、進駐軍がやつて來る、占領軍が日本の國に乘込んで來たならば、農家の鷄、域は牛は徴發されてしまふと云ふやうな噂が立つた爲に、農家の者は殆ど牛を賣つたのであります、賣つた時には僅か六百圓、七百圓程度であつたのでありますが、二、三箇月して農家の者が牛を買はんとする時には、一萬四千圓であります、現金で買ふならば八千圓で買へる牛が、封鎖預金で買ふならば一萬四千圓掛る、政府は此の農家の者が直接牛を買はんとする時に、今の封鎖を解き、せめて農民が牛を買ふ現金位は貸付ける御意思ありや否や、此の點を御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=45
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046・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、農林中央金庫から配給機關に對して金を貸すことはどうかと思ふと云ふやうな御趣旨の御質問と承知致しました、私共は一面に於て、農業會其の他生産者が、其の生産物に付ての加工、其の他に付て、色々改善を加へて参ります上に必要な資金は、先程來申上げましたやうに、綜合金融としての本來の筋でありますから、是は當然考慮して居るのでありますが、同時に餘裕金のある場合、一般的の機關ではなくして、農林水産業に密接な關係のあるものに付て、餘裕金を供給したいと云ふのが趣旨であります、隨て其の前提でありまする機關が適當であるかどうかと云ふ問題は、是は此の中央金庫の金融の問題とは別箇の觀點から實は檢討を致して參りたい、斯う云ふことであるのでありますから、其の點はどうか別の問題として御考慮を願ひたいのであります、唯統制機關に付きましても、今日の情勢の下に於て存置することが適當でないと云ふやうなものに付きましては、漸次此の統制機關は改廢をして參る積りでありますが、只今の所食糧營團に付ては、廢止するとか、改變すると云ふやうなことは考へて居りませぬ
次に飼料の問題でありますが、是は實は唯目前の非常に急迫した食糧事情の爲に、飼料も人間の食糧に廻はすと云ふやうなことをやつたのでありますが、是は本當に緊急事態に於ける處置でありまして、斯う云ふことは農業を漸次太らせ、改善して參ると云ふ觀點から申しますれば、最も惡い施策でありますが、只今申上げますやうに、目前の飢餓を何としても救はなければならぬと云ふことで、今日のやうな事態になつたのであります、此の問題は私共と致しましては、畜産の基礎であります、又畜産は農業の基礎でありますので、一日も早く斯う云ふ事態から脱却したいと云ふことで、其の方向に只今方向轉換しつつあるのであります
家畜の購入資金の問題に付きましては、私共と致しましては、勿論さう云ふやうな資金の需要に對しましては、融通の途を開くことは當然のことと考へて居りますし、具體的な事例に即しまして十分考慮をして參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=46
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047・馬越晃
○馬越委員長代理 平野君の御質問は明日御繼續願ふことに致しまして、本日は之を以て散會致します、明日は午前十時より開會致します
午後零時二十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01219460826&spkNum=47
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