1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月二十七日(火曜日)午前十時二十七分開議
出席委員
委員長代理理事 馬越晃君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 松岡運君 理事 細野三千雄君
大井直之助君 廣川弘禪君
淵田長一郎君 苫米地義三君
保利茂君 平野市太郎君
叶凸君 田中健吉君
北政清君 米倉龍也君
平野八郎君 山木武夫君
小坂善太郎君 高倉輝君
出席政府委員
農林事務官 石川準吉君
農林事務官 山添利作君
商工事務官 鈴木重郎君
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本日の會議に付した議案
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=0
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001・馬越晃
○馬越委員長代理 それでは是より會議を開きます、委員長差支への爲め、私理事の故を以ちまして委員長代理を致します、昨日に引續きまして平野市太郎君の御質問を繼續致します――平野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=1
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002・平野市太郎
○平野(市)委員 私昨日當局の御答辯を伺ひましたが、尚ほ腑に落ちませぬので、重ねて私は實情を申上げて御尋ね致したいのであります、戰時中に出來ました所の統制會社であるとか、或は統制組合と云ふやうな機關は、終戰後の今日、即時私は廢止して戴きたいのであります、何故なれば、昨日も申上げました如く、藁工品統制組合あり、統制會社ある爲に、一枚の叺で七十五錢の利潤を取られて居るのであります、是も勞して取るのであつたならば何等異存はありませぬですが、勞せずして之を取つて居るのであります、私此の實情を申上げまして、當局の御考慮を煩はしたいのでありますが、香川縣の坂出市は御承知の如く鹽の産地であります、此の附近の農民は擧つて副業に叺の生産をするのでありますが、坂出附近で出來た叺を坂出市附近の營業者に渡すのであつたならば、別に輸送の手間も掛らなければ、容易く行くのでありますが、是が統制會社と云ふ機關がある爲に、態態坂出市で出來た叺を三豐方面に持運ぶのであります、さうして三豐附近で出來た叺を坂出市に持つて來る、斯樣な時代に合はぬことをやつて居るのであります、是が爲に農民は叺の生産をしないやうになつたのであります、農業會長は非常に心配致しまして、態態農林省に出頭致しまして、農林省の諒解を得て、一枚の叺を生産致すならば、硫安十匁を與へる、斯樣な子供騙しのやうなことをやつて居るのであります、此のやうなことが果して時代に合ふでありませうか、統制會社と云ふやうな「トンネル」會社がなかつたならば、叺の生産は幾らでも出來るのであります、是は單なる藁工品の統制會社の一例でありますが、帝國薪炭統制株式會社に致しましても、燃料統制組合に致しましても、薪炭の出廻りが、ない爲に、生産をしたならば地下足袋を與へるとか、作業服を與へると申しましても、斯樣な機關があつたならば、如何に地下足袋を與へても薪炭の出廻りは惡いのであります、藷統制會社がある爲に、多くの藷を腐らしたと云ふことは、戰爭中事實が證明致して居るのであります、斯樣な統制機關は、戰爭中に出來た東條軍閥の惡政の遺物であります、一日も早く之を廢止して戴きたい、昨日當局の答辯に依りますれば、何れは廢止すると云ふやうなことを申されましたが、何時頃之を廢止するのでありますか、廢止する時期を御示し願ひたいのと、尚ほ斯樣な東條惡政の遺物である機關に農林中央金庫の金を貸付けて居ると云ふことは、如何にも我々農民の了解に苦しむ點であります
昨日第二番目に御尋ね致しました食糧營團でありますが、是も戰爭中出來た遺物であります、私昨日營團の不正に付て少し申上げたのでありますが、食糧營團は我々農民の俵を還元せぬのであります、私は俵は農民に還元すべきが正當だと思ふのであります、私は過去十箇年香川縣の縣會議員として、議場に於て之を叫んだのであります、なぜならば、俵は昔から常人足一人役と申しまして、農家の人足一人掛からなければ出來ぬのであります、是も昔は俵は米に附いて居つたのでありますが、現在はさう容易くは參らぬのであります、俵が米に附いて居つた時代は、石油罐もさうで、一斗石油を買ふならば、罐は附きものであつたのであります、其の當時の石油罐は、我々が賣るならば四錢或は五錢であつた、俵も其の時代は、古俵が四錢五錢の時代があつたのであります、俵は石油罐と同じであります、現在石油罐の空罐は一箇三十圓乃至五十圓致して居るのであります、農家の俵は現在一俵少くとも十五圓掛かります、原料の藁と人夫賃とを計算致しますならば、約十五圓掛かるのであります、私農民の立場から、十五圓を俵代として呉れとは申しませぬが、せめて農民が供出したならば、俵は農民の手に還元出來るやうに御願ひ致したいのであります、是がなぜ出來ないかと云ふ點を御尋ね致したい、一般消費者も麥は精麥にし、米は精米にして呉れと云ふ要求があつたのであります、戰爭の終つた今日であります、消費者の要求通り精麥、精米にして配給するのが當然かと思ひます、さうして其の米麥より生ずる糠を家畜の飼料とし、家畜を通して土に還元してこそ、日本の循環農業は成立ち、増産が出來るのでありますが、之を一日も早く改めまして、精麥、精米にし、其の糠は、一俵の麥を精麥致しますならば二斗五升乃至三斗出來るのでありますから、せめて十俵農民が供出するならば、糠二石還元して戴きたい、只呉れとは申しませぬ、公定價格を以て農民に拂下げて戴きたい、米十俵供出するならば、米糠五斗農民に公定で以て還元して戴きたい、是がなぜ出來ないか、是が出來ない爲に、御承知の如く農民組合員十萬を持つて居る新潟縣は、農民自身が加工して配給して居ると云ふことを聞いて居ります、私達も是が政府に於て出來ないならば、農民が自分自身で以て加工し、さうして消費者に配給する用意と準備を整へて居るのであります、之を許すかどうか、此の點承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=2
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003・石川準吉
○石川政府委員 御答へ申上げます、統制會社の解消の問題に付きましては、昨日次官から御答へ申上げたのでございまするが、現在ございます所の統制會社は、成程戰時中に出來たものが大部分であります、併しながら現在に於きましては、其の運營に於きまして或は多少間違つた所があるかも知れませぬが、何れも、或る使命を持つて居るので、存立して居る譯であります、併しながら何れ統制會社令とか、或は總動員法と云ふものも近く消滅することになりますので、それを機會に是等の統制會社に付きましては、經濟の實情に應じまして整理したい、斯樣に考へて居ります
尚ほ先程問題になりました藁工品の會社に付きましては、既に解消になりまして、現在に於きましては全農の方の一部局として、統制と云ひますか、其の仕事を繼續して居るのであります、隨ひまして、叺の問題に付きましては全農の連繋のありまする各農業會に於きまして、最も便利な方法に依つて生産し、配給することが當然だと思ひます
それから又御承知と思ひますが、藷會社に付きましては、既に是は解散の指令を出しまして、近く是も解消することになつて居ます、斯樣に經濟の實情に應じ、又其の事情に應じまして、統制會社の整理に付きまして考慮する次第でございまして、御諒承願ひたいと思ひます
それから食糧營團の俵の還元でございますが、尤もな話でございまして、俵に付きましては、何と言ひましても容れ物の不足と云ふことが供出に非常な支障を來して居ると云ふ事實も我々聞いて居りますので、我々は出來るだけ俵を還元したいと云ふ方針を執つて居ります、唯輸送の關係とか、或は都市に於て色々其の俵を利用されると云ふやうな状況から致しまして、完全に返つて居らないのでありますが、出來るだけ返す方針で進んで居ります
それから糠の問題でありますが、是は曾て戰時中玄米の普及が非常に盛んでありまして、玄米食でなければいけないと云ふやうな、慥か議會に於きましても非常な問題になつた問題だと思ひますが、それに依りまして一時玄米の方法を採つたのでありますが、最近に於きましては
〔馬越委員長代理退席、松岡委員長代理著席〕
榮養の上から言ひましても、やはり玄米よりも精米の方が宜いだらうと云ふやうなことも聞いて居りますので、現存に於きましては精米になつて居ることと思ひます、尚ほ今後の需給の見透しから致しまして、又國民保健の上から致しまして、只今御述べになつたやうな點は十分參考に致しまして、研究したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=3
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004・平野市太郎
○平野(市)委員 俵の還元でありますが、糠は公定價格で農民に還元致して呉れと要求するのでありますが、俵だけは無償で以て農民に還元して戴きたい、御答辯に依りますれば、輸送の關係でそれが旨く行かないと云ふことでありますが、それはさうであります、かるが故に、大體俵は今營團が我々に還元するのは、一俵四十五錢が二圓五十錢になつて居りますから、一石の米の相場から二圓五十錢を農民の方へ先に金を出す、俵を返したならば二圓五十錢拂つてやると云ふやうに、差引いて取引するやうに御願ひ申上げたいのでありますが、此の點を承つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=4
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005・石川準吉
○石川政府委員 此の點に付きましては具體的な問題になりますので、私共と致しましては早速食糧管理局と連繋を取りまして、研究致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=5
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006・平野市太郎
○平野(市)委員 それでありましたならば、農民は慾なことは申しませぬ、消費者には一石に對して二圓五十錢安く配給願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=6
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007・石川準吉
○石川政府委員 考へて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=7
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008・平野市太郎
○平野(市)委員 此の問題ははつきり致しませぬから、私次の問題に移つて參ります、次は供出制度の問題であります、今までの供出制度は、戰爭中ずつと續いて來た供出制度でありまして、精農家を殺す掠奪方法であり、報獎資材等に依つて、子供騙し的な、机上計畫に依る天降り式供出制度に過ぎないのであります、増産を圖らんとするのでありましたならば、何と申しましても農民の生産意欲を高めなかつたならば増産にならぬのであります、農民が増産をしなかつたならば、三合配給をやると申しましても絶對に出來ないのであります、供出制度が農民の考へて居ります如く自主的に行ふのでありましたならば、三合配給は私は戰爭中でも完全に行へて居つたと思ふのであります、現在餓死者を出して居ると云ふことは、此の供出制度の誤つた結果であると、農民の立場から熟熟私共は考ふるものであります、此の供出制度を即時私達農民の申上げまする如く改めたならば、三合配給も可能であると云ふことを申上げたいのであります、先づ此の供出制度は責任を持たさなければならぬと存じます、私は香川縣でありますが、香川縣下に於きましても、香川縣を先づ十三階級に分け、一村を五階級に分けなければならぬと思ひます、今のやうな供出制度は、出來たならば其の作柄を調査して割付をする、全く盲滅法界の割當であります、それで先に責任額を持たすことであります、土地を等級別に分けて一村五階級に分ける、上田、中田、下田――下田を更に三階級位に分けるのであります、さうして上田で以て普通の年米八斗、麥八斗以下區別致しまして、責任を先に持たすのであります、又甘藷栽培に致しましても、是は山畑の關係もありますから、少くとも七階級位に區別致しまして、農民の努力に依れば一千貫も穫れる畑でも三百貫の責任を持たし、次は二百貫、百貫、五十貫、三十貫と云ふ風に區別をして責任額を先に持たすのであります、戰爭中の如く藷は十月を過さなかつたら、十一月に入らなかつたならば掘つてはならぬ、十月に掘つた者は總動員法で罰すると云ふ風なやかましい規則を廢して、責任額を先に持たして、十月に掘らうが今頃掘らうが差支へない、上の畑で以て三百貫の責任を先に負はして置く、さうしたならば藷は今頃出來て居るのであります、早掘りする者に奬勵金を與へたり、詰らぬことをしなくても、今頃藷は完全に出來て居ります、私も藷を七段餘作つて居ります、此の供出制度は、責任額を持たすならば今頃藷を掘るのであります、藷を掘つたならば後は大根でも白菜でも、如何なるものでも栽培出來るのであります、二毛作出來る、それを十一月に入らなければ藷を掘らさぬと云ふやうな、戰爭中きつい法律を設けた爲に、十月を越して藷を掘る、御承知でありませうが、地方に依つて霜が降つて藷を掘つたならば、其の藷は貯藏が出來ぬのであります、直きに腐るのであります、さう云ふことを何等辨へずして、適當な時期に藷を掘らせぬ、斯う云ふ點が非常に食糧問題に行詰りを生じて居るのでありますから、責任額を先に持たして、藷を上畑で以て三百貫、二百貫と區別を致しまして、責任を果すならば何時掘つても構はぬと云ふ風にしたならば、腹の減る人は一人もないのであります、今頃からどんどん藷を掘つて自由に賣るのであります、供出だけは責任を以て果すのであります、此の方法をなぜ採らぬかと申すのであります、一毛作の所でも、農民の努力に依れば二毛作は完全に出來ます、香川縣の一毛作田で二毛作をするのは容易いことであります、十月の終りに麥の苗を育てて置いて、二月に入つて乾いてから整理して植えるのであります、さうしたならば二石でも二石五斗でも穫れるのであります、出來たならば、農民の努力を度外視して作況調査に依つて供出を強ひられるのでありますから作らぬのであります、完全に麥が出來る畑で以て麥を作つて居ない、是れを當局は御存じないでありませうか、香川縣に於て、九段の二毛作田を作つて居る百姓が六段しか麥を播いて居らぬ、なぜかと云ふと、全部麥を播いたならば、肥料が少い時に九段全部供出を強ひられるから、六段麥を播いて置く方が非常に利益である、斯う云ふ考へを起して居るのであります、是は一香川縣の例でなく、全國到る處斯樣な實例を私は見るのであります、かるが故に供出は土地に等級別を付けまして責任額を出し、責任額を果したならば、あと殘つたものは農民の自由にさすが宜い、私は此の意見を持つのであります、過日自由黨の意見の中に、斯う云ふ意見を農林大臣に話した時に、農林大臣は、自由にしたならば其の自由の高い米は誰が買つて食ふのか、貧乏人は食へぬではないか、斯樣なことを言はれたと云ふことを私は新聞で拜見したのでありますが、是は抑抑大きな考違ひでなからうかと私は思ふのであります、農民に自由にさせると申しましても、農民に闇賣させると云ふのではない、私も水田二町歩と畑七段餘作つて居る一百姓に過ぎぬが、責任額を果した供出の殘りは農民に自由にさすと云ふのは、農民が之を確保して、農民の手で自由に、實行組合の手を經て農民食堂を作つて賣らして呉れ、斯う云ふ要求をするのであります、さうしたならば農民の生産意欲は高まりまして、幾らでも増産出來るのであります、過日も委員會に於て、青森縣の農民が、食ふものがなくなつて農業倉庫を襲つて米俵を擔ぎ出した、又一方の縣では、農民が必要物資と交換して居る、斯樣なことを話されましたが、全部農民が食ふ物がなくなつて、農業倉庫を襲ふやうな農民ばかりになつたならば、どう云ふ結果になるか、寧ろ生産に勵んで、今頃必需物資と交換するだけの餘裕の米を持つて居る農民こそ、私は精農家なりと叫ぶものであります、今頃農民が山稼ぎに參りますならば、一日四十圓乃至五十圓の日當を得ることが出來るのであります、此の山稼ぎをするには、一升飯を食はなければ一日の勞働に從事することが出來ないのであります、此の米を買つて食ふ者が山稼ぎするとしたら、民家の米を買つて食ふのでありましたならば、香川縣でも五十圓では一升の米は手に入らぬさうであります、働いて食ふだけが出來るのであります、かるが故に是等の人々は、山稼ぎをするより納屋の隅で藁細工でもする、草履を作つて居るやうな状態であります、斯う云ふ状況を農林大臣は御存じないでありませうか、農民にうんと増産させるには、どうしても生産意欲を高める以外に途はないのであります、供出は責任額を決めて、今の三百圓でも六百圓でも宜しい、責任額を果したならば、農民が農業會食堂を設けて、此處で藷でも米でも、米が餘つたならば酒を作つても宜いと云ふ風に自由を認めてやる、小麥を作つたら、供出して殘つたら粉にして、饂飩にして醤油を掛けて賣つても宜しい、ここまでしたならば腹が減る者は一人もなくなる、全部の國民が腹が膨れる、米は天候に依つて支配される關係で、幾らでも増産出來ると云ふ譯には行きませぬが、麥と芋類は農民の努力に依つて肥培管理宜しきを得ますれば、今の三倍の増産が出來ることを、私は農民の立場から保證するのであります、此の點から私は、供出割當を土地の等級別にして、さうして責任額を果したならば、あとは農民が加工して自由に賣れるやうな制度を設けて戴きたい、餘りにも取締る爲に農民が必需物資と換へるのであります、私は分り易い一例を申上げますと、二馬力の電動機と變壓器を米と交換した農民があります、是が防犯課の手に依つて取調べた結果能く分つたのでありますが、米六俵と交換して居つたのであります、交換した所の「ブローカー」は其の米を、昨年でありますが一俵千八百圓、香川縣の闇値の最高價格で賣つて居つたのであります、斯う云ふやうなことになります、其の「ブローカー」が又闇商人に賣る、闇商人がそれを飯に炊いて、茶碗に一杯十五圓で賣つて居るのは事實であります、其の十五圓の白米の飯を賣つて居る横で、餓死者がばたばた斃れて居る、之を當局がお氣付にならぬでありませうか、農民に供出殘りの米を自由に加工して食堂で以て賣らせるのであつたならば、何を苦しんで朝茶椀一杯の飯を十五圓で賣るでありませうか、五十錢でも喜んで賣るのであります、一貫匁の藷が闇に五十圓、三十圓で流れて居ると聞くのであります、農民に自由に供出の殘りを賣らすのであつたならば、今のやうな話で一食一圓位ならば賣る、此の政策をなぜ執らぬのでありますか、此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=8
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009・石川準吉
○石川政府委員 此の食糧の安定を期する爲に、生産農家の生産意欲を向上しなければならぬと云ふ御意見に對しては、我々も全くさうだと思ひます、隨ひまして、色々な施策に付きましては常にそこに十分に注意して居るのでありますが、今述べられましたやうな責任制の問題も一つの方法かと思ひます、唯之に付きましては、確か一昨年だと思ひますが、事前割當式の考へを以て、丁度今の責任制のやうな考へ方を以てやつたのでありますが、其の問題に付きましては非常に結果が良くなかつたのであります、と申しますのは、やはり斯う云ふやうな問題は、末端まで滲透しまして、各生産農家も悉く分つて、理解して戴ければ宜いのでありますが、平野さんの御郷里に於けるやうに非常に理解が深ければ宜いと思ひますが、東北方面、北陸方面の米作一本の地帶に於きましては、どうしても天候の影響が非常に大きいのでありますので、責任制を布いても其の通り行かないと云ふ事情がございます、其の關係から、一昨年是と似たやうな「アイデア」を以てやつたのでありますが、どうしても旨く行かないと云ふので、現在の供出に戻つたのであります、併しながら此の供出に付きましては、色々從來の弊害もございますので、本年度に於きましては、度々委員會で申上げて居りますやうに、天降り式の割當ではいけない、隨て是は地方の耕作農民を主體としました所謂供出委員會を設けて、そこで供出委員會が更に又部落の委員會を設けて、部落の生産農家と納得づくめで食糧を出して貰ふ、斯う云ふ方法に變へて行くことに依りまして、從來の弊害を除去して行かうと云ふことを考へて居るのであります、併しながら只今申されました方法に付きましては、私等も非常に考へさせられる點がございますので、此の點に付きましては食糧當局に能く申上げまして、研究致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=9
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010・平野市太郎
○平野(市)委員 天候に依つて左右されるので、昨年もやつたけれども東北方面では失敗に終つた、是は各縣に於て趣を非常に異にすると思ひますから已むを得ませぬが、香川縣邊りは全部の農民の要求でありますから、出來る縣から徐々にやつて行つて、香川縣が模範を示し、次は岡山縣に移つて行くことが安全であります、良いことは率先してやらすべきだと思ふのであります、さう致しますと、何時までも今のやうなことでは同じことを繰返すのみでありまして、自主的供出に今度改訂され、委員會を設けてやると申しますが、此の委員會たるや、私共に言はすならば狸と狐の騙し合ひであります、大きな農業會と云ふ狐が政府を騙し農民を騙して居る、其の一例を思しますと、政府から我々農民に割當られた供出は、政府から割當てた管理米を供出したらそれで宜しいのでありますが、其の管理米の供出に、農業會又は末端の町村農業會に至るまで、是は狸で狐の子分でありますが、是等が管理米の割當に當つて、職權を濫用して公文書を僞造して、地主の保有量を盛込んで農民に押付けて來るのであります、何も知らない農民は、全村通じて一石しか出來ない所に一石三斗の割當が來るのでありますから、どうしても供出出來ない、仕方なく我々の農民組合に頼つて來る私達が其の村へ參りまして能く調べた所が、職權を濫用して、公文書を僞造して、地主の保有量を盛込んで取る爲に、何時まで經つても百「パーセント」の供出は出來ぬのであります、之を縣當局に交渉致しまして、一旦取下げて、改めて管理米だけ供出したならば、直ちに供出が終るのであります、私が言つたやうな責任制を持たした所の事前割當を何故しなかつたかと云ふことは、何も分らぬ狐や狸が、農林省に參りましてつべこべ言ふ爲に、又さう云ふものを濫用する爲に正しい供出割當が何時までも行はれぬと思ふのであります、香川縣に於て農業會、村役場が、其の職權を濫用して公文書を僞造し、農民組合を騙して、農業會長を初め村長が辭職して居る村は枚擧に遑がないのであります、調べたならば全部不正をやつて居ります、是は何時までも今のやうな甘き供出制度に醉はんとする一つの策動であります、此の策動に何時までも農林省が乘つて居るやうなことがあつたならば、國民は餓死するのであります、甚だしい農業會は、割當の上に筆の先で胡麻化して、小さい村に於てでも四十石或は五十石と云ふ餘分の供出を取つて、縣當局の者の賄ひに當てて見たり、闇で賣つたりして居る農業會が澤山あるのであります、斯う云ふことを考へますならば、一日も早く責任制を持たした供出割當にして、農民の生産意欲を昂めるやうに是非御願ひ申したいのであります
供出制度はそれ位に御願ひしまして、次に私は強權發動に付て御願ひ申したいのであります、強權發動は今の場合已むを得ないことと存じます、是は私達全農の者は甘んじて受けますが、何時までも米價が今のやうなことでは行かないと思ひます、米價は恰も海の波の如く、上り下りがあることは昔から今日まで續いて居ることでありまして、已むを得ぬと思ひますが、此の米價の下落した場合に、米價の高い時に農民が出し澁りをする時に、強權發動を以て取上げるが、一朝米が安くなつた場合はどうするか、此の點當局はどう云ふ風に御考へになつて居るのでありますか、私達農民は決して米價が一石千圓、今頃農業會は千五百圓を叫んで居りますが、千五百圓も要求は致しませぬ、三百圓で宜しい、寧ろ二百圓でも宜しい、我が國の經濟は米價が基準であつたのであります、米價を基準とした價格でありまするならば、何を好んで百姓が米の値上りを喜ぶでありませうか、米が少し上つて他の物が百倍に上つて居るのであります、農機具の例を申しますならば、本會議に於て我が黨の平野力三氏は、肥料は二十六倍上つて居ると申しましたが、農機具の上つて居ることを申さなかつたのでありますが、農機具は戰前に比較致しますならば百倍の値上りであります、我々の使用する唐鍬一挺が、一圓二十錢のものが現在では百二十圓であります、牛具が一挺公定で五圓位であつたものが、現在の公定價格で百八十圓でありますが、農民の手には四百圓でなければ手に入らぬ、表面は公定でありますが、裏面から何か食ふものを持つて行かなければ農家の手に入らぬ、斯う云ふやうな状態になつて居るのであります、かるが故に米價が高くなることは農民としては餘り好ましくないのであります、寧ろ諸物價が下るならば、米價を安くして戴く方が農民に取つては非常に好ましいのであります、さりとて時代の波には打贏つことは出來ませぬので、最近米價が上るさうでありますが、米價が既に上つて、他のものがそれに比例してうんと上ると云ふやうなことであつたならば、農民はやつて行けない、若し米價が下つた場合に、米が自由販賣になつて外國のものがどんどん入つて來る、農産物の買手がないやうになつた場合に、當局は農家をどう云ふ風に救濟するか、此の救濟方法に付て今から準備を整へて居るかどうか、此の點を私は承りたいのであります、どうしても之を今から防ぐ必要があると思ひます、それには農村の電化の必要を私は強調するものであります、私は昭和二年以來農村電化を叫んで、香川縣に於て農村電化の先驅者としてやつて來たのでありますが、現在では炊事場に至るまで電熱器を利用致しまして、農家の風呂も飯も全部電化してやつて居るのであります、是はどうしても、今から其の準備を當局がなさる必要があると思ひます、米價が下つて、農民を何とか救濟して呉れと云ふやうな要求の聲を聞いてから、農村電化をやらうかと云ふやうではもう遲いのであります、私達が昭和三年頃農村電化を實施致しました當時に、政府が農村電化に目覺めて、農村の方面に電力を用ひて居つたならば、戰爭中ももう少し頑張ることが出來たかと思ふのであります、私が昭和三年に灌漑用に初めて電動機を取付けた時には、米國製の中古品で、一馬力の「モーター」が僅か七十圓であつたのであります、電線も幾らでも來る時であります、さう云ふ時に中央の政治家は都會に重きを置いて、都會に仁丹の看板にすらうんと電氣を付けて、農村を眞暗にしたのであります、あの當時農村に電氣を引込んで、農村電化をやつて居つたならば、今日のやうな餓死者は出なかつたと思ひます、どうしても強權發動を今やられる反面に、米價が下つた時に、生産費の輕減を圖る爲に農村電化の必要があると叫けぶものであります、それには農林中央金庫の金を農民に貸付ける用意があるかどうか、又農産物が極度に下落致しまして、農民の首が廻らなくなつた時に、農林中央金庫の金を無擔保、無利子で貸す御用意がありや否や、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=10
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011・山添利作
○山添政府委員 將來海外の農産物との競爭關係に日本農業が置かれる場合の状況の變化、其の時に即する爲に今から準備して置く必要があると云ふ御説は、全く私共其の通りに考へて居ります、さう云ふ場合に對處致します爲に、根本的對策と致しましては、仰せのやうに農業の生産力を高めまして、競爭能力を強くする、是が根本對策であります、同時に又價格對策と致しましても、食糧管理法等の運用に依りまして、急激なる變化を來たさないやうに、飽くまでも生産費を維持すると云ふ建前で參るべきものと考へて居ります、農業に於ける生産性を高めます方法と致しましては、勿論根本的になりますと農地制度の問題と云ふやうなこともあり、斯う云ふことも此の議會に提出になる譯でありますが、農業の機械化とか、或は電化とか、又經營内容の多角化等、多方面に亙りましてなすべきことが多々あると思ひます、只今例に擧げられました電化問題、是も極く小規模でございますが、今年の豫算にも取入れて居るのでございます、總額に致しまして三十六萬圓ばかり、極く僅かな金額でございますけれども、斯う云ふ方面に著目をしてやつて參りたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=11
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012・平野市太郎
○平野(市)委員 其の點を重ねて御尋ね致したいのでありますけれども、時間の關係上省きます、農民は米の上がることを餘り好まぬのであります、さりとて時代ならば致し方がないのでありまして、農民も食はずに働けないのであります、最近米價の問題が決まる譯でありますから、僞りなき事實を參考までに申上げます、米一石の價格は幾らにするのが正しいかと申しましたならば、幾らが正しいと云ふものは恐らくなからうと思ひます、政府は六百圓にする、或は七百五十圓にしようと云ふ聲を聞きます、各縣の農業會長は千二、三百圓、是も何から割出して居るのか我々には分らぬのであります、私は米價は幾らにせよと申さぬのであります、農民が次の生産――再生産が出來る價格にせよと云ふことを私は要求致したいのであります、昔から米一反作る農民の手間は約四十五人掛かるのであります、それを現在の勞働賃銀に換算をして戴きたいのであります、今頃勞働組合は一日八時間制を叫んで居りますが、農民が一日八時間位働くのであつたならば、日本の農業は滅亡であります、忙がしい時には四六二十四時間働いて居るのであります、さうして四十五人掛つて居るのであります、それに最近は幾らか機械化されまして、約十人減じましても約三十五人は掛かるのであります、本年の米を作る費用に要した實際の點を參考までに申上げますが、荒地を使つて代を掻いて田植をするまでの整地費二百五十圓要つて居ります、田植賃が一反歩八十圓、此の八十圓たるや半分は金、半分は食ふ物を出さなかつたならば仕事をして呉れない、先づ田植に要する準備でありますが、苗代の準備を致しまして整地まで二百五十圓、田植賃が八十圓であります、今の價格であつたならば一石はもう飛んでしまつて居ります、それだけでは米は出來ませぬ、それに肥料を施して草を取つて、出來上つたならば刈取つて、扱いて、俵に入れて供出するまでの手間賃を計算して下さつたならば、幾らが正しいかと云ふことを、私は參考までに申上げて置きます
次に私は日本はどうしても有畜農業でやつて行かなければ、農業は立つて行かぬと云ふことを泌み泌み感ずるものであります、本年は萬人口を開けば豐作である、豐作であると云ふやうなことを言はれて居りますが、私達百姓の立場から本年を考へて見ますならば、決して豐作ではない、天候は豐作型でありますが、收穫は決して豐作でない、今後天候が順調に參りましても平年作であります、何故ならば、自由經濟當時から戰爭に移つて今日に至るまでに地力が衰へてしまつて居ります、所謂土地が榮養失調に掛つて居ります、此の地力の増進を圖らずしては、どうしても増産は出來ぬのであります、地力の増進を圖るのはどうしても有畜農業であります、有畜農業なくして地力の増進は圖れぬのであります、最近化學肥料の要求を盛んに申して居ります、假に化學肥料が農民に澤山手に入るやうになつて、硫安に依つて農作物を作らうと致しますならば、一年や二年は出來ますけれども、益益地方が衰へて、三年五年後には恢復出來ないやうになつて來るのであります、どうしても地力の増進を圖らなければならぬ、此の地力の増進を圖るのは有畜農業に俟つより外ないのでありますが、今までの政府のやり方は、何等方針もなければ計畫もない、無方針、無計畫であります、さうして我が國の施策の主流をなすものは、農民を生かさず殺さずの政策を取つて來た徳川時代と更に變らないのであります、之を根本から民主的に改めずして、何時までも生かさず殺さずの政策を續けたならば、地力は段々と衰へ、減産になる一方であります、此の有畜農業たるや何等の計畫が立つて居らぬのであります、中央に其の計畫がない爲に、地方に至るまで無方針、無計畫であります、私香川縣の一例を申上げますが、香川縣は明治四十年に中央から長谷川技師と云ふ乳牛專門の技師が來られまして、三箇年間乳牛を非常に奬勵したのであります、それが爲に香川縣は關西一の乳牛王國となつたのでありますが、其の技師が迭り、長官が迭つたら乳牛の方針が變つた、次に來られた技師は改良和牛專門で、乳牛の改良も行はなかつた、其の次にやつて來た技師は鮮牛專門の技師がやつて來る、何が何やら一定して居ないのであります、私は此の有畜農業を計畫的に奬勵しなければならぬと思ふのであります、それにはどうしても三反歩以上作つて居る農家には、少くとも牛馬一頭と豚の一頭を飼ふ、是は是非計畫的にやらさなければならないと思ひます、之にも生産意欲を高めてやらなければならないのであります、軍隊があつた當時には、斯う云ふ要求はしても叶はないことでありますが、最早軍隊はなくなつたのですから構ひませぬ、牛を飼ひ、馬を飼ふ農民に皮を還元する、此の方針を執つて、有畜農業の生産意欲を高める方針を立てて戴きたいのであります、牛を飼うた者は、最後は其の牛を屠殺するのであります、馬も屠殺するのでありますが、此の牛を飼つた者に、最後には必ず皮を實費で農民の手に還元されるやうな政策を執つて戴きたいのであります、それには中央金庫の金を需要家に利用致させまして、四國でありましたならば、四國四縣に一箇所で宜しい、皮を鞣す工場を國家が設けまして、實費で四國四縣の皮を鞣して、牛を飼うた所へ皮を返してやる、斯う云ふ政策を執りますならば、三反歩以上作つて居る農民は進んで牛馬を飼育するのであります、牛一頭、馬一頭飼育するならば、五反歩の自給肥料は出來る、是さへあれば他に何も肥料は要らないのであります、其の上豚一頭を飼育さす、豚の一頭位は、農家の自家用の厨芥で以て飼育が出來るのであります、米や麥の白水を飮ましてでも、五箇年間掛つても十箇年掛つても、肥料を生産する機械として飼はす、斯う云ふ方針を立ててやつたならば、豚一頭で三反歩の自給肥料が出來るのであります、牛一頭、馬一頭飼つて居つたならば、何等化學肥料に頼ることなくして地力の増進が出來るのでありますが、此の方針が何等政府の方で立つて居ないと云ふことを私達は遺憾に思ふのであります、宜しく牛馬を飼育する者は、政府が實費で以て、皮を鞣して農民に還元してやると云ふやうな政策を立てる必要があると思ふのでありますが、政府は斯う云ふ點に付てどう云ふやうに御考、になつて居るか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=12
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013・山添利作
○山添政府委員 畜産の重要なことは申すまでもございませぬ、農業の理想と致しましては、地力を保持しつつ生産性を擧げて行くと云ふ所にあるのであります、其の爲には仰せのやうに有畜農業に俟つことが根本であります、と同時に農家の勞働力を萬遍なく利用しまする關係からも、又今後の國際貿易の上に、相當程度或は酪農を組入れて行くと云ふことも考ふべきことでありまして、私共と致しましても、只今御述べになりましたやうな方法に、農業經營を導きたいと云ふ風には考へて居るのであります、併しながら只今の状況と致しましては、何分戰爭が終りまして、まだ國内經濟も漸く囘復の緒に就くか就かないかと云ふ時でありまして、色んな條件が只今滿されて居りませぬ關係上、大きな畜産計畫を立てると云ふ風な時期にはまだ立至つて居らないのであります、趣旨と致しましては、御述べになりました方向に進みたいと考へて居ります、而して畜産を致しました農家に皮を還元すると云ふことは、是は確かに有效なる着想と考へます、協同組合等の仕事として、さう云ふ方向に着目して行くと云ふことは、是は十分考究して見るべき問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=13
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014・平野市太郎
○平野(市)委員 當局の畜産計畫に付て、酪農をやらして居ると申しますが、今までの酪農は森永「ミルク」であるとか、或は明治「ミルク」であるとか、斯う云ふやうな資本家の爲に乳牛を飼育して居つた者が犧牲になつて居つたのであります、皆彼等は繩張を持つて居ります、何處其處と何處其處は森永「ミルク」の繩張であると云ふ、繩張爭ひをする爲に、官廳方面の人は森永「ミルク」とか明治「ミルク」と云ふやうな方面の方と懇意な人があると云ふことを見受けます、今後我々農家に酪農を奬勵し、乳牛を獎勵するのでありましたならば、明治「ミルク]とか或は森永「ミルク」と云ふやうなものを應援するのでは、どうしても農家の酪農事業は發展せぬのであります、一體農業經營の上にも、又一國を治めて行く上に於きましても、天の惠み、地の惠みに從ふ、此の理念を離れては何も成立たぬのでありまして、將來の我が國は、どうしても見返物資を持つて行かなかつたならば外國の物を取入れることは出來ぬのであります、そこで私は酪農經營に付て考へて居ります一端を申上げまして、政府の御考慮を煩はしたいのであります、御承知の通り、今日の日本が戰爭の爲に失つた所の南方であります、此の南方は「ゴム」や石油や砂糖には惠まれて居りますが、南方の住民の最も好むものに惠まれて居らぬのであります、南方の最も好むものは練乳――「ミルク」であります、さりとて南方に於て乳牛一頭を飼育することも出來ぬのであります、之を我が國の天の惠み地の利に致すならば、日本の國は北海道から九州の涯、四國の島々に至るまで、幾らでも乳牛の飼育は出來るのであります、全國の農民に乳牛の飼育を奬勵する上に於て、一番に飼料の問題の解決を付けなかつたならば、如何に政府が畜産に重きを置いて居ると申しましても、有畜農業は發展せぬのであります、是も其の縣其の縣に依つて趣きを異に致しますが、香川縣の有畜農業が發展しましたのは、四國農業の發展に連れて有畜農用が發展して來たのであります、米麥農業に連れて發展して來たのであります、それが現在二分搗、玄米食になつた爲に糠がないのであります、同じ四國四縣に於きましても、高知、徳島、愛媛の如き縣は天然資源に惠まれ、山林原野などがあるのであります、然るに香川縣の如き――又他にも澤山あると思ふのでありますが、香川縣の如き天然資源に惠まれて居ない方面には、耕地の一割を供出の對象としない牛馬の飼料を作らすと云ふ方針に持つて行かなかつたならば、如何に當局が有畜農業の奬勵に力を入れましても、實際に於て飼料の關係で行詰るのであります、外國の飼料は今の所仰ぐことは出來ぬのであります、耕地の一割を割いて飼料を作らすと云ふ御計畫ありや否や、此の點を御尋ね致したいのであります、さう致しませぬと有畜農業は發展致さぬのであります
〔松岡委員長代理退席、坂本委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=14
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015・山添利作
○山添政府委員 御話のやうに、有畜農業と申しましても結局飼料の問題に歸着する譯でございますが、如何にして我が國で飼料を作るか、之には今御話になりましたやうに、耕地の一部を割いて飼料を作ると申しますか、さう云ふことに段々向ふのぢやないか、此の事に付きましては、まだはつきり申上げる段階には參つて居りませぬけれども、目下研究を致して居るのでございます、米を作り裏作に麥を作る、此の一點張りで行きましては、地力を保持し土地の生産力を擧げると云ふことに付きまして、そこに尚ほ研究の餘地があるのでありまして、數年間の一囘の裏作を主要作物に向けて行く、斯う云ふやうな小さい規模に於ける輪作でございますが、さう云ふやうなことを取入れて參りますことが今の畜産も入り、又土地自身の生産力を保持し昂揚する上に相互的に宜いのぢやないか、斯う云ふやうな著想を以ちまして研究は致して居りますが、まだ斯うすると云ふ所までは到達して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=15
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016・平野市太郎
○平野(市)委員 其の點私色々考へて居ることもあるのでありますが、時間がありませぬから、又何れかの機會に申上げます
次は繭の値上に付て御當局に御尋ね致したいのでありますが、終戰後蠶絲が食糧輸入の最大なる見返物資となり、今後貿易が開かれまするならば、輸出品の重要なる地位を占め、又將來農村工業を思ふ時に、此の際繭の値上はどうしても思ひ切つてやらなければならぬと思ふのであります、現在養蠶家は一反歩に於て大體千圓か千二百圓位しか利益を擧げて居らぬのであります、桑から蠶を飼つて繭にして、一反歩千圓や千二百圓の利益でありましたならば、果して是が利益と言へるかどうか、桑の葉を栽培する肥料代にも足らぬのであります、政府は今囘繭の値上と云ふことを準備されて居るさうでありますが、どの位値上をされるのでありますか、將來の生絲貿易其の他の農村工業に對する奬勵の點を考へまする時に、思ひ切つた値上をせなければ、如何に奬勵を致しましても、正反對に養蠶家は滅亡してしまふ、桑は寧ろ掘返して他の食糧作物を作ると云ふ風になりはしないか、斯樣に私は虞を懷くものでありますが、どの程度繭の値上をなさるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=16
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017・山添利作
○山添政府委員 私も實は先般まで蠶絲局の方に關係致して居りまして、今後の情勢に應じまして如何に蠶絲を擴充――と申すよりも、實は維持するかと云ふことに腐心致して居つたのであります、何と申しましても、繭の値段は米とか其の他の農産物と比較しまして、從來の釣合觀念よりも、上にあると云ふことでなければならぬと考へて居ります、其の趣旨を以ちまして、政府に於きましても目下審議を致して居りますが、明言致すまでには達して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=17
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018・平野市太郎
○平野(市)委員 時間がありませぬから、最後に一點だけ御尋ね致します、私達農民に取つて重大な問題は、何と申しましても農地問題と肥料問題であります、土地問題は比較的民主的に進展しつつありますが、肥料問題に關しましてはどうしても民主的になつて居ない、肥料國家管理法案は著々進んで居るやうでありまして、最近議會にも提出されると思ひますが、其の内容は必ずしも民主的でないことを遺憾に思ふのであります、即ち要綱の第八に明記してあるやうでありますが、政府の肥料買入或は賣渡は日本肥料株式會社にやらすと云ふことになつて居りますが、是は完全に、此の農村の必需資材の肥料を官僚統制に置かんとする一つの現はれではなからうかと思ふのであります、肥料は全國農業會に當らすのが當然かと思ふのであります、慾を申しますならば、私は此の肥料の運營は日本農民組合にやらし、さうして各府縣の支部聯合會に當らすのが最も民主的であると思ふのでありますが、一足飛びにそこまでは參らぬと思ひますが、此の日本肥料株式會社にやらすよりも、今の所私は全國農業會を以て之に當らすのが最も民主的ではなからうかと思ふのであります、政府は此の點やはり日本肥料にやらすのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=18
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019・山添利作
○山添政府委員 只今御指摘になりました點に付きましては、日本肥料に差當り事務を扱はせると云ふ意味でありまして、ずつと其の形態で行くと云ふやうには必ずしも考へて居らない譯であります、日本肥料其のものに付きましては、あの會社は將來製造の方面に進んで參り、而して配給の面に付きましては新しい構想で考へて行きたい、斯う云ふやうに思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=19
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020・平野市太郎
○平野(市)委員 もう宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=20
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021・坂本實
○坂本委員長代理 小坂君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=21
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022・小坂善太郎
○小坂委員 私は去る七月十一日の本會議に於きまして、本法案が上程せられました機會に質問を致しました、質問の要點は三つありまして、第一は、此の農林中央金庫の金は零細なる農山漁村の預金の集積である、之を旨く運用することは農村の民主化の爲に望ましいのですけれども、一歩誤ると、折角の此の預金の集積を、産業資本の犧牲に供してしまふ處があると云ふことを申したのであります、其の意味は、此の預金が今囘仄聞致しますと、市中銀行、所謂市中の五大銀行、興業銀行、勸業銀行と一諸に、農林中央金庫が「シンヂケート」團を組織する、さうして肥料會社の機構擴充の資金を賄つて行かう、殊にその中農林中央金庫の受持つ分野が九三%、殆ど大部分であると云ふことを聞きまして、是は今の肥料會社、或は肥料工業と云ふものに對する根本的な檢討をした後に許さるべきものではないか、又其の金が假に長期に、此處にありますやうに「十箇年以内の定期償還貸付又は年賦償還貸付を爲すことを得」斯う云つた意味の長期に運用せられることに付ては、餘程檢討を要するのではないか、斯う云ふ點を指摘致しまして、さうして實は私は此の法案を讀んで見ますると、斯う云つた方面に、殊に肥料會社に對して農林中央金庫の金を運用すると云ふ規定はない、斯う見ましたので、是は如何なる法的根據に依つて運用せられるのであるかと云ふことを質問致しましたのが第一點であります、第二點は、今申上げたやうな關係から、農林中央金庫が本來の使命から逸脱致しまして、金融資本の持つ役割をする、斯う云ふことが考へられる、此の點に對しての御見解、第三點は、今肥料が非常に必要である、何としても凡ゆる智能を傾け、凡ゆる機構を整備して、肥料増産一本に力を結集して行かなければならないのだ、然るに今の肥料工業に對する監督行政が非常に多元的なものになつて居る、殊に生産行政に付てだけは、少くとも一元化を要すると思はるるに拘らず、農林省、商工省の間に二元化されて居る、此の點に付て何とか一つ御處置を願つた方が宜いのではないか、斯う云ふことに付て御質問致した譯であります、其の質問に對する御答へに付て、私は後程委員會で又御質問すると申して置きましたから、先づ其の順を逐うて御質問を致します
第一の運用に付てですが、此の法的根據は、第十五條の運用であると云ふことを農林大臣は御答へになつたのであります、此の法案を拜見しますると、第十五條の二に「業務上の餘裕金を以て同項第四號又は第五號の法人に對し主務大臣の認可を受け十箇年以内の定期償還貸付又は年賦償還貸付を爲すことを得」斯う書いてありますから、恐らく之を仰しやつたのだらうと思ひますけれども、第四號には「全國農業經濟會、道府縣農業會、市町村農業會、森林組合聯合會、森林組合、産業組合聯合會、産業組合又は水産業團體の發達を圖る爲必要なる施設を行ふ法人に對し主務大臣の認可を受け短期貸付を爲すこと」斯う書いてありまして、第五號には「食糧營團其の他農林水産業に關する事業を營む法人に對し主務大臣の認可を受け短期貸付を爲すこと」斯う書いてあるのであります、是から見ますると、肥料工業と云ふものはどう云ふ點で此處に含まれるやうに解釋せられるか、此の點に付て御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=22
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023・石川準吉
○石川政府委員 御答へ申上げます、此の第十五條の第五號「食糧營團其の他農林水産業に關する事業を營む法人」此の農林水産業に關する事業を營むものと云ふ點に對しましては、我々は相當廣く解釋して居るのであります、殊に貸借問題は單なる法理論の問題でありますが、現實の問題と致しまして、今肥料工業は早急に復舊しなければならない、然るに是は資材の問題もございますが、更に多く資金の問題が之に含まつて居る、而して現實の具體的な問題と致しまして、現在終戰後の非常な痛手で資金が纒まつて出ない、併し肥料は農村の重要なる一つのものでありますから、中央金庫の餘裕金を以て、借りなければならぬと云ふ具體的な問題から、今囘の改正が生じたのでありますが、根據としましては第五號を取つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=23
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024・小坂善太郎
○小坂委員 第五號は只今の御答辯で了承致しますが、私の希望としましては、斯う云ふ後で多少問題を含むのではないかと思はるることに付ては、明確に第五號も御變へになつて、第五號に肥料工業と云ふことを御明記になる方が宜いのではないか、斯樣に考へて居りますが、明確に之を御書きになる御意思があるかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=24
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025・石川準吉
○石川政府委員 此の中央金庫の改正法に付きましては、既に御承知のことと思ひますが、全般的に相當是は改正しなければならぬ所がございます、殊に最近の經濟變動に伴ひまして、更に其の必要が増加した譯でありますが、今囘の臨時議會は會期も短いことでございますので、差當り緊急の途を開いて置くと云ふ程度の改正を致したのであります、隨ひまして、只今御質問の點に付きましては、全體改正の場合に十分に考究したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=25
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026・小坂善太郎
○小坂委員 第一點は了承致しました、第二點でございますが、農林中央金庫が金融資本と同じ役割をして居るぢやないかと云ふ點であります、是は實は私も委員會に臨むまでは多少疑問を持つて居りましたけれども、昨日の總務局長の御答辯中に、飽くまで繋ぎ資金でやつて行く方針である、短期の急場を凌ぐ爲である、斯う云ふ御意見がございましたが、其の通り了承致しまして、此の農林中央金庫の肥料工業に對する質問は、只今仰せのやうに、非常に資金が涸渇して市中に資金がない爲に、此の場合の短期の繋ぎ資金として運營するのだ、斯う云ふやうに解釋して置きたいと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=26
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027・石川準吉
○石川政府委員 左樣に御諒承願つて結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=27
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028・小坂善太郎
○小坂委員 さうしますると、繋ぎ資金を借りると云ふことになるのでありまして、肥料工業は要するに永續性を持つた工業でありまして、差當りは甚だ資金に困る、又現状に於ては一日も早く一握りの肥料も多くと云ふことで、一般の熱望が肥料と云ふものに結集して居りますから、ここで多少のことは問題にならなからうと思ひますが、此の肥料工業と云ふものは、曾て昭和四年頃は硫安の「ダンピング」を受けて慘憺たるものでありました、將來關税障壁を失つた日本が、いつ又此の状態を繰返さないとも限らないのであります、さう云ふことが現出した場合に、繋ぎ資金で貸して置いて、此の借金の跡始末はどう云ふ風になさる積りであるか、其の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=28
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029・山添利作
○山添政府委員 只今の問題は、肥料工業の前途に非常に關係のある問題でありますから、肥料の増産と云ふことに付て責任を持つて居ります私から、一言御答へをして置きたい點がございます、私の方の考へと致しましては、將來外國から硫安が入ると云ふ場合も無論あらうと考へて居りますし、寧ろ現状から考へますと、所要量の生産が達成致しまするまでは輸入しなければならぬ状態がある譯であります、併しながら食糧を國内に於て自給度を高めると云ふことは、どうしてもやつて行かなければならぬ事柄のやうに思ひます、それに關聯致しまして、肥料の點に於きましても出來得る限り國内で自給するやうな態勢に持つて行きたい、同時に又さう云ふことを致す以上は、價格政策其の他――關税と云ふことは別問題で、寧ろ肥料に付ては米と竝んで、相照應した統制をやつて行く爲に、輸出入等も一定の計畫に基いて、所謂自由貿易と云ふ形でなくやつて行くと云ふやうに考へて居ります、隨て又海外に於ける肥料の價格と、國内に於ける價格に付きましても、輸出入の關係は、或る機構を通じて「プール」すると云ふ恰好にして、飽くまでも國内で相當の自給をする、又自給をする必要が價格政策を左右して行く、斯ふ云ふやうに考へて居ります、是は將來に屬することでございますけれども、只今御心配になりますやうなことは實は全然豫定して居らないし、又さうではないやうにして行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=29
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030・小坂善太郎
○小坂委員 只今の御答辯でございますが、勿論萬全の施策を御執りになるのは當然でありますが、一旦さう云ふことがあつた場合に、資金の出て來る元が非常に苦しい、過去の農村恐慌時代に於ける血の出るやうな農民の預金も、此の中央金庫の中に含まれて居りますので、只今見ると二百二億圓にも上つて居る厖大なものである、又有價證券に百十億からの厖大なものを持つて居る、そこで非常に大きな金のやうでありますが、三千五百萬農民の非常に大切な金であります、若しさう云ふことがあつた場合に、是等の人に迷惑を掛けないやうな措置を執られて置くと云ふことが必要ぢやないか、斯う考へる、そこで今後非常に危險な事業、今日本が急速に復興して行く爲に色々な危險を冒さなければいけない、殊に資本主義の體制の下に於て、資本主義的な考へ方からしては極めて危險であると思ふ金融上の貸付も致さなければならぬ仕事に對しては、復興金庫を作らなければならぬ、是は當初は資本金二億圓と云ふ御話でありまして、極めて少いので驚いて居つたのでありますが、最近百億と云ふことである、肥料工業への融資はこちらの方がまあ私共考へますと妥當である、一番宜い、將來危險なしとせぬ仕事の本質に加へ、殊に現在復興擴張工事をして居ります連中のやり方を見てみますと、私共が見ましても可なり中に無茶をして居る所もないでないやうに見える、斯う云ふものに復興資金を貸付けてやるのに、此の農林中央金庫の金を出すと云ふことは、少し考慮、又は檢討を要する點があるのではないか、此のやうに考へるのですが、現在差當り非常に肥料資金が必要である、だから貸すのである、是は繋ぎである、斯う云ふ御答辯であると、其のやうに了承致しまして、それで出來るだけ復興金庫を全面的に御活用を願ひたい、斯樣に希望を致す譯であります、此の點は此の位に致しまして、質問の第三點でありまするが、肥料行政が、殊に生産行政が二元化されて居る、此のことは官制の上から見ますと、肥料工業と云ふものは生産數量の決定を除いた凡ゆる生産行政を商工大臣が持つと云ふ風に書いてある、所が法令の上から見ますると、重要肥料業統制法、或は硫安の増産配給統制法、さう云ふものの主務大臣が農林大臣になつて居られる、そこで此の官制の上と法令の上との食ひ違ひが出て來る、と申しますことは、法令上の主務大臣が農林大臣であられますから、此の製造業者の組合、又は其の組合を通じて製造業者自身と云ふものに對しての監督の主務大臣は農林大臣であられます、それ等の法令の中には社債の擴張限度を決めることや、又組合に對する人事權と云ふものも含まれて居る、そこで勢ひ此の生産行政が二化化されてしまふと云ふことが言へるだらうと思ひます、それで私の御伺ひしたいことは、兩省の間に屡屡此の問題に付て御話が進んで居られると云ふやうに新聞などで伺つて居るのでありますが、何れにしても此の際は、どちらかはつきりした責任を執るやうにして戴いて、此の國を復興するのには責任の所在を明確にすることが根本である、勿論業者にしても、生産「サボ」をやつた業者などに付ては十分嚴罰を加へて、さうして責任を果さしめると云ふことが當然必要であらうと思ひまするが、監督官廳にもどちらかにはつきりと責任を持つて貰ふ、斯う云ふ一般の聲が非常に強いやうに了承致して居るのであります、此の點に付て兩省の政府委員が御見えになつて居りますから、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=30
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031・山添利作
○山添政府委員 所謂肥料行政の一元化の問題に付きましては其の衝に當つて居ります我々自身も、痛切に其の必要を感じて居ります、隨て一方の省に之を明確に致しまするか、或は第三の統合した形に依つて明確に致しまするか、何れにしましても目下研究を致して居りますけれども、速急に御願ひすることを實は希望致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=31
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032・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 今農政局長の御話のございました通り、今日の肥料問題が食糧と關聯致しまして急速に増産策を執らねばならないことは當然でありまして、其の觀點から生産行政に關する責任を持つた強力な行政を致さなければならぬこと、御説の通りだと存じます、此の點に付きましては、從來の經緯もございますから、農林當局とは事實上は緊密な連絡を執りまして、各工場の生産復興に努力を致して居りますので、事實問題としての競合なり、或は非常な御迷惑と云ふやうなことはないと存じますが、今申上げましたやうな趣旨に於て、やはり責任を持つた態勢で、之を強力に遂行する必要があると云ふことに付きましては、先般來農林當局とも連絡を致して居るのでありまして、近く何等かの方法に依つて是の決定を御願ひ致したい、斯う考へて居るのであります、固より是等の肥料の生産業者が二省に分屬する、二元化されて居ると云ふことは、其の強力な政策の遂行の上に於きましても、亦此の指導監督を受ける業者の立場に於きましても、色々不便があらうと存ずるのであります、又兩省間の實際の事務を執る上に於きましても、やはり多少の不便がある譯でありますので、之に關しましては、やつと一元化することが緊切な問題であらうと存じます、唯是等の一元化を圖ります大體の狙ひと致しましては、單に生産行政の一元化と云ふだけでなくして、やはり事務の能率が上り、又業者の生産意欲を益益昂揚して、而も端的に責任を以て整備復興が出來るやうな、能率的な合理的な行政機構を作る必要があらうと思ふのであります、特に生産工場に於ては、御承知のやうに化學綜合工業として肥料も生産せられて居ります關係から、肥料行政の一元化に依つて、工場の内部に於ける工業が二元化三元化されたやうに分屬することも亦考慮せねばならないと存ずるのであります、肥料は假に一元化致しましても、他の共同して兼營して居ります工業の形態が、各省に分屬すると云ふことも考慮して、此の問題の解決をして戴くやう、近く何等かの方法で決定を見て行くやうに、兩省の間で御相談を進めて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=32
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033・小坂善太郎
○小坂委員 農林、商工兩省間で非常に緊密な連絡を執られ、肥料の生産實績も次第に上つて居ると云ふ點に付きましては、敬意を表するものであります、併し只今の御答辯の中で、第三の部門を作ると云ふ御話がございましたが、是は恐らく新聞などで時々拝見致す肥料廳であらうと思ひます、此の點に付きましてどう御考へになるか伺ひたいのであります、私の意見と致しましては、やはり此の兩省が喧嘩をして仕樣がないから、眞中に別なものを作らうと云ふやうなことは成たけ避けて戴いて、兩省とも其のどつちでも宜い、官廳の「セクショナリズム」を排して、今まで自分の省でやつて居つたことが他の省に移つても、自分の持つて居る範圍では全的に協力すると云ふ御考への下に決定して戴くやうに、私個人としては其のやうな考へを持つて居ります、此の點に付て御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=33
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034・山添利作
○山添政府委員 此の行政の一元化を考へますに付ては、當面の急を要する増産を早急に達成致したいと云ふのが主眼でございまして、私共所謂「セクショナリズム」とか云ふやうな考へは、毛頭持つて居らない積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=34
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035・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 今農政局長の御答辯の通り、全然さう云ふ意味で問題を考へて居りませぬ、御話の通り、増産の目的を達成させる最も最後的の能率的の機構をば作りたい、全然さう云ふやうな考へに囚はれて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=35
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036・小坂善太郎
○小坂委員 只今の御二人の答辯で諒承致します
次に最近臨時物資需給調整法と云ふのが上程せられるやうに聞いて居ります、是は恐らくは民主化された日本の工業を、國民の總意に基いた形で建直して行かう、動員して行かうと云ふ趣意に立つ立法であると考へます、恐らく日本の工業の中の最高を占むるものに只今の肥料工業と云ふものは存在するだらうと思ひます、臨時物資需給調整法が出來た場合に重要肥料業統制法とか硫安増産及び配給統制法とか、斯う云ふ法律はどうなるのでありますか此の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=36
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037・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 本議會に提案されて居る臨時物資調整法は、色々の重要な物資に付ての生産竝に配給の統制を必要とするものがまだ多々ございまするので、是等に付て適用する所謂共通法令として制定を致したい、斯う云ふ考へでございます、隨ひまして個々の單獨の物資に付きまして、それぞれの事業法若しくは統制法のあるやうなものに付きましては、無論それ等の特殊物資に關する特例法令に含まれるものは、それに依つてやつて行くことは當然の考へ方であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=37
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038・小坂善太郎
○小坂委員 私の個人的な考へになるのですが、私は敗戰後の日本を建直す經濟方式は、自由と云ふ言葉が、十九世紀に取られた自由主義の意味のものでは勿論問題にならない、非常に少い資材を有機的に統制して、國家全般の目から見た新しい統制、今までのやうな部分的な統制でない、全般的な、綜合的な統制經濟が採られなければならないと考へて居るのであります、そこで臨時物資需給調整法と云ふ如きものも、今までのよりも更に統計其の他のものを整備致しまして、完全な一つの日本工業の復興の鳥瞰圖を作つて、其の鳥瞰圖に當篏まるやうな、全般的なものが一つ一つ綺麗に配合された統制が出來て行くことを望んで居る譯であります、今の鈴木さんの御答辯で、今まであるものは全部其の儘其の間に介在して行くと云ふやうなことは、今までの部分的統制の弊を其の儘殘して行くやうに思はれるのでありまして、色色の御事情もあると存じますが、其の間に二元的なものを生じないやうに十分御研究願ひたいと考へて居るのであります、此の問題は此の位に致しまして、最近肥料審議會と云ふものが出來ると云ふことを承つて居りましたが、新聞で見ますと、農林省と商工省との間に話合ひが付かないで、審議會がお流れになつたと云ふやうな記事が見られるのであります、私は斯う云ふことでは駄目である、肥料審議會と云ふものは、農林大臣が議會でも御約束になつたことでもありまするので、速急に作つて戴きたいと考へて居ります、此の點どう云ふことで出來ないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=38
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039・山添利作
○山添政府委員 流れた譯ではございませぬ、出來るだけ早い機會に成立をされるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=39
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040・小坂善太郎
○小坂委員 其のやうに一つ御努力を御願ひ致します、次に日本の肥料の需要量でございますが、農林省が御出しになつていらつしやる窒素肥料の需要量が、二十一年度に九百十萬八千「トン」、二十二年度に二百三萬四千「トン」、二十三年度の二百十一萬八千「トン」、二十四年度に「二百二十萬八千「トン」、二十五年度二百二十七萬三千「トン」、燐酸肥料が、過燐酸に換算致しまして二十一年度百五十六萬八千「トン」、二十二年度百六十五萬「トン」、二十三年度に百七十萬五千「トン」、二十四年度に百七十七萬七千「トン」、二十五年度百七十七萬二千「トン」、加里肥料と致しましてK2O肥料五〇%に換算致しまして二十一年度に二十六萬七千「トン」、二十二年度二十七萬九千「トン]、二十三年度二十八萬七千「トン」、二十四年度二十九萬八千「トン」、二十五年度三十萬五千「トン」、斯う云ふ數字であります、此の數字は勿論希望數量であらうと考へて居つたのでありますが、其の後色々伺ひますと、是は二十五年度に窒素肥料の場合で言ひますと二百二十七萬「トン」造るのだ、斯う云ふ製造方面の責任數量であるやうな感じも致すのであります、是は食糧全般から國内の食糧自給態勢を確立する上に、是だけの肥料を欲しいと云ふ御希望の數量のやうに初め考へて居つたのでありますが、生産目標であると云ふやうな感じに囚はれて來て居ります、一般は其のやうに解して居るやうに思はれるのであります、所が内地の硫安或は石灰窒素等の肥料生産設備の現状及び將來を見ますると、此の點まで達するのは非常に困難ではないかと思はれるのであります、現に比較的諸條件が緩やかな面で見ましても、百四十五萬「トン」と云ふのが窒素肥料の全體の成績の最高點であります、硫安の最高を取り、石灰窒素の最高を取り、兩者を加へて百四十五萬「トン」にしかならない、そこで二百二十七萬「トン」から百四十五萬「トン」を引きますと、八十萬「トン」から開きが出て來る、敗戰後の日本でありますから、此の開きの八十萬「トン」を生産しまするのに相當な困難が伴ふ、是は餘程の餘裕でもなければ出來なぃ數字ではないかと考へて居りますが、當局の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=40
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041・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 只今御述べになりました數量は、先程農政局長の御答辯にもありましたやうに、出來得る限り自給度を高めて行く意味に於きまして、やはり自給目標の數字でございます、即ち生産目標としてそれを達成するやうに努力を致して居るのであります、唯御承知の通り、今御述べのございました通り、從來の國内に於ける生産能力は、戰災其の他の影響もございまして、戰前に於ける最高能力も今御話の通り百四、五十萬「トン」でありまして、殊にそれが戰災の被害に依りまして相當低下を致して居りますから、それだけのものを完全に自給すると云ふことに付きましては、相當の困難が伴ふことは當然でございます、殊にここ一兩年の間に於きましては、資材或は資金等の關係もございまして、直ちにそれだけの生産能力に達成することは相當困難でありまして、差當り我々の生産目標として、能力の整備、復興計畫の對象として居りますものは、昭和十三年に百萬「トン」の實産を擧げることを目標に目下努力中なのであります、此の問題に付きましても、既存工場の修理復興だけでは固より不十分だと存じまして、戰爭中に色々出來ました例へば「アルミニウム」關係の施設、或は電力關係の施設であるとか、或は「メタノール」關係の施設、さう云つたやうな工場の轉換も計畫しまして、差當り二百三十萬「トン」實産の計畫を進めて居るのであります、唯此の問題に付きましては、先般聯合國軍方面の指令もございまして、今直ちに當初の計畫通り全面的に遂行するには、關係方面の諒承を得られない問題もございまして、差當りは既存工場と、關係方面の承認を得ました工場に全力を集中致しまして、其の工場の修理復興を一日も早くやる、而して其の結果尚ほ日本の肥料の需給状況から見て不足すると云ふやうな場合に於ては、聯合國軍方面でも十分考慮すると云ふことを言明されて居りますので、物の順序と致しましては、當面の問題は既存工場と關係方面の承認を得ました工場に全力を結集致しまして、其の修理復興を終へました當時の能力を更に檢討し、需給上相當の不足を見まする場合には、改めて關係方面の承認を得まして、轉換工場の整備を急ぎたいと考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=41
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042・小坂善太郎
○小坂委員 大體實現可能な目標を捉へて、それに向つて邁進されると云ふことが一番必要だと思ひます、それに付きましても鋼材であります、今まで鋼材が肥料工業に對して比較的能く廻つて來たと云ふことは、非常に當局の御努力を多として居るものでありますが、是が大體戰時中の「ストック」であると云ふことに御著目願ひたいのであります、それで今後の鋼材の生産がどの位になるのか、肥料に對しての鋼材がどの位割當てられるのかと云ふことを一つ御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=42
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043・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 現在の計畫と致しまして、既存工場と關係方面の承認を得ました工場の修理復興には、大部分はやはり戰爭中、其の後の所謂在庫でございまして、最近に於きまする鐵鋼の生産事情から申しますると、今後の新しい工場の建設に大量のものを期待すると云ふことは、可なり困難でございます、唯當面の修理計畫の決定して居るものに付きましては、此の僅かな國内生産ではありますけれども、聯合軍の指令もあり、之に凡ゆる力を結集して、一日も早く肥料の増産確保を圖る、斯う云ふ趣意に基きまして、國内の僅かながらのものを、之に全面的に集中配當を致して居ります、尚ほ今後の鐵鋼の見透しから言ひますと、是は單に肥料の問題だけではございませぬので、其の他肥料に必要な工事が多々ございます、之に付きましては、やはり聯合軍方面に懇請を致しまして、鐵鋼、鋼材其のものの輸入も今折衝中でございまするし、又物に依つては既に諒承を得て手續の進んで居るものもございますが、今後の肥料工業の重要性に鑑みまして、國内の自給出來ない方面に付きましては、やはり關係方面の援助を得たい、斯う考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=43
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044・小坂善太郎
○小坂委員 尚ほ今後取得を要する鋼材が、業者の言つて來ることが正しいとするならば四萬五千「トン」要ると云ふことに、窒素肥料だけでもなつて居ります、國内生産が極めて貧弱な状態にあります數字は承知して居りますが、是は餘程の努力がないと出來ないのではないか、一囘目標を立てられたならば、必ず之を實行すると云ふ強い方針を樹立して貰ひたい、此のことを期待して居ります、尚ほ鋼材に關聯してでありますが、石炭事情が非常に惡い、是は申すまでもないことであります、石炭は直接生産にも關係しますが、同時に復興資材としての「セメント」の生産に不可缺なものであります、「セメント」の取得と云ふことが今甚だ巧く行つて居ない、此の點に付ても十分努力されなければ復興は出來ないと思ひます、話が長くなりさうですから、成たけ端折つて申上げますが、此の石炭關係から「コークス」の生産が非常に落ちて來て居る、殊に今日の新聞で見ますと、八幡製鐵所も賠償指定を受けて居る、斯うなつて參りますと、「コークス」の生産と云ふものは月産どの位見込でありますか、其の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=44
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045・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 肥料用の原料としての石炭「コークス」の問題でありますが、現在の所、今御話のやうに、製鐵關係或は「ガス」工場等に於ける「コークス」の生産状況は、一般石炭の需給逼迫の折柄非常に減退を致して居ります、併しながら今後の石炭の増産の見透しも付いて參つて居りまするし、極く最近に於きまする九州地方の生産も好轉をして參つて居りますので、今後是等の石炭の増産に伴ひまして、製鐵工場或は「ガス」工場等には相當の配當が出來ると思つて居ります、唯八幡工場の今囘の賠償指定に依りまして、今後どれだけ減るかと云ふことになりますと、實はまだ正確な數字を持つて居りませぬので檢討を致したいと存じますが、又八幡だけでなくして、やはり「ガス」工場方面でも相當出る譯であります、又御承知のやうに、それぞれの工場に「コークス」爐を裝備して持つて居りますが、其の方面の餘力も現在の所まだ澤山ある譯でありますから、是等の肥料關係の「コークス」確保の爲には、色々な方面の「コークス」爐を動員するならば、決して今の所さう不足をするやうな状況ではございませぬ、問題は寧ろ原料炭の問題でございまして、それも石炭の増産に期待を掛けて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=45
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046・小坂善太郎
○小坂委員 肥料用「コークス」は、需要量として一、四半期に二十萬「トン」から豫定して居るやうでありますが、特別の御助力を願ひたいと思ひます、申すまでもないことですが、八幡の製鐵所竝に廣畑、輪西、釜石、皆其の製鐵所が賠償の對象になつて居ります、主たる「コークス」の供給源は申すまでもなく製鐵所であります、此の點に付ても、聯合軍當局などに對して特段の御交渉を願ひたいと思ひます、それから尚ほ内地の原料炭問題の一助としまして、石灰窒素肥料などの生産にありましては、佛領「インド」支那の「ホンゲー」炭、「ドントリウ」炭を輸入すると云ふことが、非常に大きな役割をするのであります、私共實際に聞いて見ますと、大體四割は默つて居ても生産が殖えて來る、非常に優秀な原料炭であります、此の佛印炭の輸入に付てどんなやうな御見透しを持つて居られるか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=46
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047・石川準吉
○石川政府委員 佛印炭の輸入問題に付きましては、目下關係方面に御願ひして、打合せ中でございます、現在の所まだ色々と連絡其の他が不十分な關係もございまして、今直ちに期待は一寸困難かと存じますが、關係方面でも非常に厚意を持ちまして、現地方面に御連絡願つて居るやうな状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=47
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048・小坂善太郎
○小坂委員 只今の御答辯で了承致します、一つ折角の御努力を願ひます
此の問題は此の位に致しまして、次に中央金庫の問題であります、資金貸付先を拜見致しますと、統制會社に對する貸付が非常に多い、其の統制會社は殆ど「トンネル」會社であると云ふことに付て注目したい、貸付すべきものは、此の統制會社を廢止して整備したら宜いぢやないか、斯う云ふ議論は此の議會でも屡屡出て居る、此の中で藷類統制が一億一千萬圓、藁工品なども廢止されると云ふ風に先程の御答辯で伺つたのであります、斯う云ふ統制會社の廢止された場合、其の貸付金は十分に囘收が出來るのでありますか、尚ほ日本肥料に對して二億七千萬圓貸付があります、此の日本肥料は配給の機關でもありますが、同時に資本家的な考へ方から採算が合はなくなつた工場、例へば日本水素の小名濱とか、今度四日市或は徳山あたりでやる轉換工場、是等に多くの投資をしていらつしやる、斯う云ふ方面に對しての投資は所謂採算が合はなくて、金を囘收すると云ふことも出來ないのではないか、此の點に付てはどう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=48
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049・石川準吉
○石川政府委員 先程の日本藁工品配給統制株式會社、是は現在全農が代つて承繼致しまして、全農が未囘收のものに付ては責任を負ふことになつて居ります、又今度廢止される日本藷類統制株式會社、之に對する貸付も前同樣全農が承繼致しまして、全農の方で未囘収のものに付ては責任を持つてやることになつて居ります、それから日本肥料株式會社に對する二億七千萬圓に付ては、日本肥料株式會社自體が貸付けた分も入つて居りますが、是は日本肥料株式會社から更に各肥料工場に廻つて居る分が大部分でございます、唯私共の方としては、各肥料會社個々にやる場合には、日本肥料會社を責任代表者として貸付けしたのでありまして、是が肥料會社を通じて各社に廻つて居ります、隨て現在日本肥料會社の資産内容を始終注意して居りまして、今の所では小名濱とか四日市でやつて居りますが、決して不良ではございませぬ、其の點御安心を願ひます、尚ほ先程肥料會社に對する資金の問題に付きまして、色々御眞摯な御意見、御希望がございましたが、我々と致しましては、約三十億圓以上の復興資金を要する肥料資金に對しまして、中金からと致しましては、其のほんの一部分を融通するに過ぎないと思ひます、尚ほ昨日も委員會で申しましたやうに、中金の餘裕金の運用に付きましては、御説の通り普通の金融機關と違ふのでございますので、十分愼重な態度を執りまして、例へば委員會制度を設けまして、貸付先であるとか、貸付先の限度であるとか云ふやうな點まで色々研究してやつて行きたい、斯う考へて居ります、隨ひまして、先程農政局長から話されましたやうに、全般の肥料が不景氣になつたと云ふやうな場合になりますと、國家全體の問題として其の時に考へなければならぬと思ひますが、併しながら通常の見透しに於きましては、若し必要があれば擔保もありますし、其の他債務確保の爲には十分なる手段を講じて行きたい、斯う思つて居ります、尚ほ復金が非常に資金を豐富に持つて居りまして、是が現在の肥料工業其の他に十分の資金を貸して戴くならば、敢て中金が貸出ししなくても宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=49
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050・小坂善太郎
○小坂委員 次いで御伺ひしたいことは、只今生産奬勵金と云ふものがある、是は非常に必要なことで、信賞必罰と言ひますか、巧くやつたら必ず褒めてやると云ふことは、是は個人の場合でも國家の場合でも是非必要であると思ひます、此の生産獎勵金と云ふものが、假に自給堆肥と云ふものに例を取つて見ますると、いつ來るか分らぬ、殊に非常に多種多樣のものに付て歩合制度が設けられ、或は獎勵金制度が設けられて居りますので、どの奬勵金がいつ來たのか、中で分らなくなつて居るやうな事情もあるのであります、是は官廳の支出も非常に手續が難かしい點があるだらうと思ひますから、此の遲れる點に付ては、まあ出來るだけ早くやつて戴くと云ふより致し方ないのですが、そこで中央金庫の餘裕金と云ふやうなものを、さう云ふ方面に貸出して行く、さうして増産が出來たら直ぐ褒めてやると云ふやり方を採つて戴けないものか、さう云ふ方面に十分御活用になつて戴く用意があるかと云ふことを御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=50
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051・石川準吉
○石川政府委員 政府の獎勵金が非常に遲れて困ると云ふ話は、色々手續關係があると思ひますが、其の立替拂ひと致しまして、何處かの團體が中央金庫の餘裕金を一時運用すると云ふ點に付きましては差支へないと思つて居ります、隨てさう云ふ場合がございましたら、十分考慮したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=51
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052・小坂善太郎
○小坂委員 實はさう云ふ場合が可なりあるのであります、自給堆肥の生産奬勵金と云ふやうなものは先づさう云ふことを御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=52
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053・山添利作
○山添政府委員 只今總務局長から御答へ致しましたのは、補助金を以て事業費の一部として居る事業に付ての問題でありまして、今のやうに何か褒賞的に出ますものに對して、中央金庫が先拂ひをして置くと云ふことは、恐らくさう云ふ必要は實際ないのではないかと思つて居りますが、今の自給肥料の問題は、豫算と致しまして、實は大藏省と折衝中の問題でございます、何とか解決が附くものと期待致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=53
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054・小坂善太郎
○小坂委員 非常に御熱意のある御話で、是非さう云ふやうに御願ひ致します、唯ものが遲れると云ふのは、非常に有難味が薄くなるものであります、又化學肥料の生産に致しましても、大體一「トン」造ると幾ら殖してやると云ふやうな話が政府からありまして、さう云ふことは實は工員を督勵して生産を増強させる上に、會社が先に立替へてやつて居ります、お前さん、昨日は連勤して呉れて有難い、明日は是だけ一つやつて呉れと云ふやうな話は、半年經つてから褒めてやるのでは駄目で、やはり其の月、其の月位に褒めてやらなければ、其の次の月の生産は上つて來ない、さう云ふ意味で、是非生産褒賞と云ふやうなことに、有效に中央金庫の資金を扱つて戴きたい、斯う云ふ意味で御願ひ致して居る譯であります
次に先程も同僚から御話が出て居ましたが、有畜農業のことであります、大體有畜農業と云ふと、牛と豚を考へる譯なのでありますが、私は是非山羊を大いに飼はせることを一つ獎めたい、日本の今後の農業の行き方と云ふものは、やはり自作農が創設されて、農村と云ふものは段々分割され、零細化されて行くのぢやないか、それを防ぐ爲の共同管理と云ふことについては、十分施策を講ぜられるでせうが、さう云ふ方向に行くのではないかと云ふ氣が致すのであります
〔坂本委員長代理退席、馬越委員長代理著席〕
それに付けても、大きな金の要る牛とか云ふものをいきなり考へるよりも、どの家庭も必ず山羊を飼ふやうにする、都市の我々にしましても、山羊ならば何處へ行つても安く手に入る、さうして周りの草原でも、燒跡の草原でも飼つて行けるのだ、斯う云ふやうな風にして行くことが、先づ身近から我我の生活を改善する上から必要ぢやないかと思ひますが、山羊を増産することに付て特別な御考へがありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=54
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055・山添利作
○山添政府委員 今後日本の農業が大きくなる希望は、非常に少いことは確かでございますが、零細になると云ふことは、さう云ふ見透しも持つて居りませぬし、又さう云ふことのないやうに致して行くやう制度的にも考へて參りたいと思ひますが、是は別と致しまして、御話のやうに山羊は兎も角飼料が要らないので、斯う云ふものを取入れて參りますことは、極めて適切なことだと考へて居ります、隨て是は方々の人も言はれ、又農林省と致しましても、特別の手段と云ふよりも、さう云ふことを奬めると云ふやうな形で進めて居るのでございます、斯う云ふ一般的に廣く奬めたいと云ふやうなものに付きましては、やはり今後は補助金と云ふやうなことも段々困難でございますし、廣く獎めると云ふ形で參る、必要があれば良い種畜等を元にして、數を殖やすと云ふことに努めて參りたい、斯う考へて居ります、併し一定の計畫を以てどうと云ふ程のことは今はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=55
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056・馬越晃
○馬越委員長代理 小坂さんに申上げますが、午後本會議がございますので、各黨それぞれ御用事があると思ひますから、明日に御續行願ひまして、本日は之を以て散會致します、明日は午前十時から開會致します
午後零時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=56
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057・会議録情報2
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〔參照〕
細野委員及び田中委員要求資料
一、農林中央金庫最近の試算表
(總勘定元帳中各科目に於ける各項目を詳細に記述すること)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01319460827&spkNum=57
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