1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年八月二十九日(木曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長代理理事 須永好君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 馬越晃君
大井直之助君 坂田道太君
杉田一郎君 本多花子君
森田豊壽君 苫米地義三君
保利茂君 金子益太郎君
細田綱吉君 北政清君
米倉龍也君 平野八郎君
小坂善太郎君 野本品吉君
高倉輝君
出席国務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
農林事務官 石川準吉君
農林事務官 佐野憲次君
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本日の會議に付した議案
農林中央金庫法の一部を改正する法律案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=0
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001・須永好
○須永委員長代理 開會致します、委員長が見えて居りませぬから、私が理事の故を以て委員長を務めさして戴きたいと思ひます——米倉さん発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=1
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002・米倉龍也
○米倉委員 昨日農林大臣に、今後の我が國の蠶絲業の在り方に付きまして御尋ねを致しました所、大體私共考へて居りましたやうな線に沿つて、即ち養蠶と製絲が對立しない組織、機構で今後の蠶絲業の運營が圖られて行かなければならないと云ふことに付て、御同感の意を表されたやうに聽いて居りますが、更に進んで、もう少し蠶絲行政の今後の指導方針に付ての確立を、私は蠶絲行政の當局に御願ひをし、御所見を伺ひたいと思ふのであります、蠶絲業位我が國の産業の上で變遷の多かつたと申しますか、波瀾重疊の經過を經て來たものはないのでありまして、さう云ふ經過から見まして、一體原料繭と云ふものの極めて多數が、農家から零細なものを集めて來るものであるし、それが又短期間に乾燥をして、一年中の操絲の原料に貯藏して置かなければならないと云ふやうな、生ものの取扱であります、此の特殊の事情から、養蠶と製絲の對立が常に激化されて來たのであります、此の關係から、何時も結果は農家の不利を來して居つたのであります、其の弊害を取除く爲に、昭和十一年の五月に産繭處理統制法と云ふものが生れたと私は思ふのであります、其の産繭處理統制法の精神と云ふものは、今までの弊害を取除いて、常に養蠶家を保護すると云ふ精神に出て居ると思ふのであります、例へて見れば特約取引の認可制を布いたと云ふやうなことも、或は産業組合製糸或は乾繭取引の奬勵と云ふやうなことは、何れも養蠶家に有利な地歩を確保することを法的に認めたものでありまして、何處までも是は養蠶家を主にして蠶絲業と云ふものを考へて行く、此の精神が根本であると思ふのであります、今日時代が變りましたから、さう云ふ特約取引の認可制とか、或はもう産業組合法がありませぬから、從來のやうな産業組合製絲と云ふやうな、さう云ふ形を固執する譯ではありませぬ、それは當然色々變つて參りますけれども、結局今度蠶絲業統制法がなくなりまして蠶絲業法が出來た、蠶絲業法に依つて蠶絲行政を行つて行くのでありまするが、さう致しましても、其の精神は、曾ての産繭處理統制法の精神を以て行くのでなければ、再び又養蠶、製絲の對立と云ふやうなことが考へられる譯で、此の養蠶、製絲の對立を見ないやり方と申しまするのが、詰り協同組合の形であらうと思ふのであります、此の協同組合の組織が蠶絲業法に依つても行はれるし、現在の農業團體法に依つても出來ると思ふのであります、政府の御當局としては、先づ先程來申しまする指導精神がどこにあるかと云ふことと、さうして協同組合組織の行き方が、蠶絲業法でやるが本則であるか、或は農業團體法に依つてやるが宜いのであるか、さう云ふ點に付ての御考へを先づ承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=2
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003・佐野憲次
○佐野政府委員 御話のやうに、蠶絲業に付きましては、何と申しましても養蠶が本體であるのでありまして、養蠶家の立場を十分に考慮致して參る必要があることは、御話の通りであらうと思ふのであります、曾てのやうな製絲と養蠶家との間の相剋を來すと云ふやうなことのありませぬやうに、是は十分注意を致して行かなければならぬと思ふのであります、現在に於きましても、我々と致しましては、今御話のやうな御趣旨で十分やつて居る積りでございます、其の具體的な一つの方法と致しまして、組合製絲と申しますか、養蠶家が製絲をやつて參り、御話のやうに、此の前の産繭處理統制に依りまして、組合製絲なり、乾繭販賣を奨勵致して參つたのであります、併しながら過去の實際やつて參りました成績から見ますと、御承知のやうに組合製絲と云ふものも中々旨く參らないのでありまして、寧ろ成功致しましたものよりは、失敗したものの方が多いと云ふ傾向であります、尤もそれは價格が非常に不安定であつたと云ふことも、一つの大きな原因であらうと思ふのでありますが、そればかりでなく、どうしても經營が旨く行はれて居ない、技術に付て缺ける點があると云ふやうなことも、相當原因をなして居つたと思ふのであります、隨ひまして、私共、現在の所に於きましては、組合製絲に付きましては餘程愼重にやらなければならぬと考へて居るのであります、今協同組合で行くのか、農業會の方でやらす建前かと云ふ御尋ねでありますが、養蠶家だけでやります場合には、農業會でやるのが本筋であらうと思つて居ります、唯協同組合でやります場合の非常な特長と致しまして、協同組合でありますれば、養蠶家と製絲家とが一緒になつて協同組合を作ることが出來るのであります、養蠶家は繭を作る、製絲家は工場經營をやり、工場の技術を擔任して行く、お互ひに特長を發揮し合ひまして、是が一つの協同組合を作つてやつて行くと云ふ形が執り得るのであります、製絲家と協同をしてやつて參る場合には、協同組合を作つて行かねばならぬ、養蠶家だけでやる場合には農業會でやるのが本筋である、さう云ふ積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=3
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004・須永好
○須永委員長代理 農林大臣が御出席になりましたから、大臣御忙しいと存じますので、大臣に對する質問をやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=4
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005・米倉龍也
○米倉委員 蠶絲のことで一點だけ大臣に御伺ひしたいと思ひます、それは繭の價格の問題でありますが、此の繭の價格の問題は、米價の問題と同じに、現在の農村で最も關心を集めて居る重大な事柄であります、雙璧とでも申す程の重大なことに農家の方では考へて居るのであります、段々御審議が進んで、近く御發表になるらしいのでありますが、巷間傳へる所では、千四百掛とか、或は更に多いのは千八百掛と云ふやうに色々噂とりどりであります、米の方の問題でも、昨日御話がありましたやうに、價格の決定は、生産費と又需要供給の關係等も勿論考へる譯であります、繭は國内消費に現在當てられないものでありますから、需要供給と云ふやうな關係は、「アメリカ」との貿易關係を考へれば宜いのであります、農家の者も決して算盤を採らないのではない寧ろ實際上の算盤は、官廳などよりも、實際に即した算盤を採つて居るのでございます、それ等の人人が、どの位な程度が適當であると云ふやうなことを——官廳の方から言へば科學的でないかも知れませぬけれども、兎に角常識として算定し、それが一つの輿論的なものになつて居ります、其の考へと非常に懸け離れたやうなことを、殊に適當でない時期などにそれが發表されましても、農村の人々は何等それに感謝を致しませぬし、生産意欲の上に何の效果もないことは、今日まで澤山經驗して居る譯であります、事實現在の農村に於きましては、二千掛前後を最も適當であると云ふ風に輿論が動いて居りまするし、常識にもなつて居るやうに私共思ふのであります、今度改正なさる掛目は、大體新聞で言はれて居るやうなことは唯一片の噂であつて、まだ決定しないと云ふならばそれまででありまするが、大體どの位な所で落著くだらうと云ふ御見透しがありますならば、御洩らしを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=5
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006・和田博雄
○和田國務大臣 繭の價格はまだはつきりとは決まつて居りませぬ、是は經濟安定本部で、やはり米價を決めましたと同じやうに、色々な點を考慮しまして決定するのでありまして、新聞に出て居りまするやうに、最終的に決まつた譯でも何でもありませぬ、唯農業の方から申しますれば、やはり農産物の間に、不均衡があつてはなりませぬし、農産物間の均衡は、やはり取つたものに私等としては致したいと思つて居りますし、生糸の方は「アメリカ」の關係がありまするので、さう云つたやうな事情も、價格決定の場合に於ては一つの要素として考へられるものだと思ふのでありまするが、唯農家が一應期待して居ると云ふことだけを根據として、それを決定することは、價格決定としては中々參らぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=6
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007・細田綱吉
○細田(綱)委員 私は大臣に、極めて簡單で宜しうございますから御伺ひ致したいのであります、尚ほ關係局長の方に答辯を御廻し願つても結構であります、最近商工省が可なり大幅な企業の許可を撤廢したのですが、農林省に於ては、まだ殆どさうしたやうなことが見受られない、譬へて申しますると、油を搾らうと致しましても、縣で二、三とか四、五とか云ふ極めて少數の人達が獨占して居つて、外の農民、或は農産物の加工をして來た人達がそれをすることが出來ない、隨て其の方面の、加工業が極めて不振なのであります、今後企業許可の大幅な制限の撒廢をしたらどうかと云ふ風に考へられるのですが、此の點を一つ伺つて置きたいのであります、之に關して一つの實例を申しますと、茨城縣に於ては、今所謂搾油業として指定されて居る人が五人ある、而もそれは水戸を中心に極く一部の區域に限られて居る、だから此の人達だけで油を搾ると云ふやうなことになるから、農民には極めて不便になつた結果は、譬へて申しますと、長い間水戸線の沿線は、春先になると一面の菜種の花であつたのですが、最近は少しも作つて居ない、作つて居ない所に麥を作るかと云ふと、決してさうではない、遠い所まで菜種を持つて行つて搾つて貰つて、さうしてお役所に行つたやうな扱ひを受けて、ちつとばかりの割當を貰つた所が、事實上輸送の關係で持つても行けないし、計算にも合はないと云ふやうなことで、國民の食生活の上で最も必要な菜種油、或は其の他の油が生産されないと云ふやうな状況にあります、是は極端な今までの企業許可の制度が、禍ひをして居ると考へるのですが、もう少し之を開放したらどうか、開放することが農民の其の方面に於ける生産意欲を増加さして、却つて冬遊ばして居る所に菜種其の他のものを作つて、一面油も拵へれば、肥料にも廻はすと云ふことが出來ると思ふのですが、今其の面は企業許可と云ふ隘路に依つて阻まれて居る、此の點に付ての大臣の御所見を伺ひます
それから農村の電力であります、此の點は他の先輩諸氏から伺つたことと思ひますから、私は極めて簡單に申上げたいのですが、どの農村を見ても電力が不足して居る、特に電燈すらまだない農村が全國に澤山ある、是は果して農林省の所管であるかどうか分りませぬが、まだ油の燈火を點けて居る農村がある、又電燈を點けて居つても、電壓が極めて低いことに依つて、農村で百燭光位のものが東京の三十燭光位しか光燭がないと云ふ風に、農村の電力問題は、此の儘では農村電力化の面からも、或は農村文化の向上の面からも、放置出來ないのではないか、農村に對してもつと豐富な、低廉な電力を供給し、電燈は勿論、農業方面にも利用の出來るやうに、それが一擧にと云ふ譯にも行きますまいが、さうした方法を講じなければならぬと考へますが、少くとも私の廻はつた方面では、未だ何れの官廳からもそれ等に對する手が打たれて居ないと私は考へます、之に對して大臣の御所見を伺つて置きます
それから食糧營團は此の儘では相成らない存在であり、機構であり、人的の配置ではないかと思ひます、食糧營團に對する非難の聲は、私が申上げるまでもない、どう云ふ風に之をされるのか、或は此の儘で宜いと考へるか、此の點を御伺ひ致します
それから農業會の經理、經營の方法ですが例へば十の農業會を取つて見るならば、殆んど十とも違つたやうな經理、經營の方法を執つて居る、もう少し之を懇切に指導しないと、まるで農業會の幹部の頭に依るでたらめ經營が續けられる、之に對して一つの基準を與へることが、公的な農業會の經營竝に經理の方針として必要であると考へるが、之を農林省は指導の面に一歩を進めて居られるかどうか、御伺ひ致します
米價の點では、曾て大藏大臣が丸公と闇の中間が納まるべき價格であると云ふやうな御答辯が本會議場でなされたのですが、やはり米價に於ても、さうした考への下に進んで居られるのか、さうすると農林省は、闇價格と云ふものがどの程度に實際行はれて居ると云ふ風に御觀察になつて居るでせうか、或は農林當局の御意見は、そこまで御考へになつて居ないか、又は農林省が其の意見を持出しても、大藏省が容れるかどうかと云ふことは別でありますが、少くとも曾て大藏大臣が言はれた、さうした闇價格と丸公の中間價格を、將來の中庸な價格であると思はれますると、我々は將來の米價の決定は相當大幅の引上げを要すると思ふのでありますが、それに對する御意見を伺ひたいのであります
それから最後に、依然として農村に闇肥料が横行して居る、而も極めて高價に横行して居る、大臣は本會議で、肥料の國營は「イデオロギー」としては贊成であるが、併し其の方面に付ての委員會でも拵へて研究を進めたいと、斯う云ふ風に御意見を伺つたことがありまするが、此の儘では正規の「ルート」に流れる率に比して、相當な量が闇に流れて居るので、國營と云ふことが假に早急に行かないにしても、肥料會社の經營管理と言ひますか、或は監督の強化と言ひますか、それに力を盡さないと、私は肥料の闇と云ふものが益益其の量を高めるのではないかと思ふ、豐作から米價の値下りと云ふやうなことも傳へられて居る時に、肥料のみが農民の懷ろに極めて高い金を要求すると云ふことになると、農村の經營は成立たなくなるので、肥料の闇へ流れる方面を、斷乎として取締ることが必要であると考へまするが、此の點に付ての御意見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=7
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008・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、最初は農林省關係の企業の許可をもう少し緩めたらどうか、斯う云ふことでありますが、是は只今の所農林省の關係としましては、主要食糧の關係と、見返物資の點に、實はさう云ふものは限つて居る譯であります、最近は可なり整理を致して居りますが、御話の菜種の點でありますが、是はやはり原料の集荷蒐集と云ふ點を考へまして、それで企業の許可を致して居るのでありまして、強ち從來の者に特權を與へる、斯う云ふやうな考へでやつて居る譯ではございませぬ、是は御承知のやうに、凡ゆるものが今供給に比して需要が多いのであります、さうして又色々な生産の資材も少い譯でありますから、さう云ふものを、各業界に付て勝手に、自由にしてしまひますると、それは我れ勝ちに、強い者勝ちで取ると云ふやうなことになる、其の結果は適當な行くべき所に資材が廻らない、經濟と云ふものは一見極めて自由にしたが故に良くなるやうに思はれますが、實は却つて國全體の立場から言へば不自由になると、斯う私は考へて居りますので、出來るだけさう云ふことのないやうに、又企業の許可と云ふものに依つての弊害が起らないやうに、其の場の色々な具體的な事情を十分考へた上で、それぞれの許可を與へて居るのでありまして、實は許可必ずしも、あなたの仰しやいますやうな禁止と云ふことを意味するのではないのであります、唯大體今大きな方向は、主要食糧關係と見返物資とに限定致して居ります、是はさう云ふ許可の制度を漸次解いて行きますのは、どうしても生産と言ひますか、全體の經濟の部面が實質的に囘復して行く、さう云ふことをやつて漸次外して行くと云ふことでありませぬと、是は非常な混亂が起つて來るのではないかと思ひます、是は私の根本的な考へ方でありますが、現在の日本に於きましては、どの方面に於きましても、生産力の低下は何としても避けなければならぬ、是は今の時代の國の要請なんでありますから、個々の所に於て、「ロヂカル」に、純粹に考へれば非常に不合理だと考へられても、やはり生産力と云ふ點から凡ゆるものを考へて行かなければならぬ、斯う批判し、又建設して行かなければならぬ、斯樣に考へて、實は色々の問題を整理して行つて居る譯であります
それから農村電化の點であります、是は御話のやうに、日本の農村はまだ電化せられて居ない部分が非常に多くあります、生活の面に於ても、それから生産の面に於ても、御話の通りでありまして、此の點に付ては、農林省としても是非電化を致して行きたいと思ふのでありますが、是は資材其の他の關係が、御承知のやうに現在では非常に窮屈であります、それまで色々な具體的な案を立てるにしましても、急速に之を行ふことは中々出來にくいと云ふ實情でありますが、我々の理想としましては、細田さんの仰しやいますやうな風に、努力致したいと思つて居ります、農村電化の點に付きましては、農林省としては、此の問題は全面的に取上げて居るのでありまして、唯豫算に組む組まぬの問題ではなく、農林省の農政局に於て、凡ゆる面と接觸を保ち、研究を續けさして居ります、農村電化と云ふことは、御承知のやうに、あの「アメリカ」でさへまだ電化して居ない村が實はあるのであります、是は今の日本に取つて言ひますれば、農村側の問題よりも、寧ろ農村外の工業方面の生産の再開と云ふものを急速度にやつて行くと云ふことが伴ひませぬと、農林省がどんなに農村電化に熱意を持ちましても、具體的な進行過程が早くないと思つて居ります、我々としましては、併しさうだからと云つて放つては置けませぬので、將來の農村の事情を十分考へまして、良い農村を造ります爲にも、農村電化の問題を、大きな問題として取上げてやつて居る譯であります、漸次農村方面の施設としても具體化して行きたい、斯う考へて居ります、今年は僅かの豫算で、甚だ此の點は遺憾でありますが、將來の問題としては十分力を入れて行きたいと思ひます
それから食糧營團の處分のことでありますが、食糧營團は解散することに決まりまして、今手續中であります、地方の食糧營團は、食糧の配給統制をやつて居ります以上、どうしてもそこに何等かの組織が必要でありますので、此の食糧營團運營の點に付きましては、十分之を民主主義化致しまして、又消費者なら消費者の、食糧營團以外の人達の實際上の監督が出來ますやうに、運營に於て十分之を良くして行きたいと、始終實際にやつて居る譯であります、それから、食糧營團の本當にやり方の惡い點なんかは、どうか具體的に御教へ下さいますならば、それ等の點に付て、我々としては、直ぐ食糧營團に命じて、直させて行きたい、斯う考へて居る譯であります
それから農業會の經營經理に付ての問題でありますが、農業會は戰爭中元の農會と産業組合とが一つになつた譯でありますが、色々な仕事が茲に加はりまして、戰時統制の一翼を擔いで、實は仕事をやつて來た譯でありますが、經理面に付きましては、從來は國家に於きましてそれぞれ監査を致したのであります、相當の人を使ひまして、産業組合にしても、農會にしても、毎年必ずやつたのでありますが、戰爭中それ等の點が人手の關係、又は交通の關係、其の他食糧事情等で、事實上行はれて居ない現状であります、是は政府と致しましては非常に遺憾と考へまして、實は農業會の經理に關しまする——農業會の仕事が多くなればなるだけ、又實際金錢を使ふことが多くなればなるだけ、此の監査は嚴重に致すべきでありますので、農林省と致しましては、此の監査をやる爲に、實は今は人が散つてしまつて居ないのであります、一つの監査をやるに致しましても相當の人數を要するのでありまして、又專門家を必要とするのでありまして、其の專門家の養成にも努めて居りますが、是は是非監査をやつて行きたいと思ひます、只今自主的な監査聯合會がある譯でありますが、唯是だけに任せて置く譯には參りませぬ、我々としては準備は致して居る譯でございますが、まだ徹底的なことが出來ないことを甚だ遺憾に思つて居る次第であります
それから米價のことでありますが、闇と丸公との中間と云ふ點は、石橋さんが物價の水準とすると云ふやうなことを言はれたのでありますが、我々は米價を決めまする時に、闇と丸公との中間と云ふものは考へて居りませぬ、殊に闇價格と雖も實に千差萬別であり、唯一時的な事情を反映して居るものもありまして、是と丸公との中間が水準であると云ふことは、少くとも米價を決定致します場合には、さう云ふものが決定致す譯ではございませぬ、是は度々御説明申上げたやうな次第であります
それから闇肥料の問題でございますが、此の點は皆樣方からも、又凡ゆる方面からも非常に注意がありましたので、闇肥料の取締に付きましては、嚴重な通牒を屡々發して居る譯でありますが、恐らく化學肥料に付ては、闇肥料の量と云ふものは、是は總體から見ますれば、正確な數字は掴めませぬが、何としても極く僅かなものだらうと思ひます、それが傳はり傳つて、如何にも澤山のやうでございますが、それはどうかと私は思ひます、唯他の有機質なり其の他のものに付きましては、多少さう云ふものがあつたと思ひますが、それ等の點に付ては、今後も十分取締は嚴重にして行きます、殊に肥料の工場管理の點に付きましては、是は目下諸般の問題と絡みまして、是非我々と致しましては、肥料に付ての何等かの、増産と云ふことを目標にした、或る程度の管理的な措置を講じたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=8
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009・須永好
○須永委員長代理 細田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=9
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010・細田綱吉
○細田(綱)委員 私は一部に傳へられて居りまする如く、終戰と同時に日本の經濟は自由主義に戻ると云ふ風には考へて居ないが、併し私共最も警戒しなくてはならないのは、能率も惡かつたし、評判も惡かつた例の官僚統制であります、即ち今後の經濟は自由主義經濟に戻して宜いと云ふことにはならないと同時に、官僚統制を其の儘持續して宜いと云ふことにもならないのであります、其の最も極端な好い例を菜種の搾油に付て申上げて見ますと、農林省は恐らく全國的に搾油業者の地域的な分布を御調べになつて居ないと思ひます、譬へて申しますならば、茨城のあの北は平の境から、西は古河のあの廣い所を、水戸を中心に僅か五人の人達を許して置いて、他の人達がどうして其處まで持つて行けるでせうか、持つて行かうにも持つて行けない、それは不可能なのです、それでお前達菜種を作れと云つた所が作る筈がない、菜種が要らないものなら別ですが、菜種、胡麻、落花生等は、國民の榮養の上からも非常に必要であり、又其の粕は重要な肥料の役割をするものです、それを此の輸送の困難な時に、八里も十里も十五里も持つて行けと云つても、持つて行く筈はない、而も、粕も貰つて來る、油も貰つて來る、輸送も極めて簡單だと云ふことなら別ですが、輸送も可なりの闇で持つて行かなければならぬ、油を戻して貰ふのは極めて少量だと云ふことで、どうして持つて行く氣になるか、持つて行けない限り其の落花生なり、胡麻なり特に菜種等の生産意欲は出て來ないのが當然であります、從つて、私は簡單に自由經濟に戻すと云ふことは考へて居ないが、さりとて斯くの如き單なる机の上の官僚統制を持續されたのでは、全國的に加工を目的とする農産物は段々減少して行くのぢやないかと考へられます、そこで私は希望として申上げたいのですが、例へば菜種の搾油業が各縣にどう云ふ風に地域的に分布されて居るかと云ふことを、一つ御調べ願ひたい、是で宜いと云ふやうな考へは私は決して出て來ないと思ひます
それから食糧營團の點でありますが、中央は解散される、地方は其の儘と云ひますけれども、私は問題は地方ぢやないかと思ふのであります、中央の統制がなくなると、尚更出鱈目になつて來るのぢやないかと思ふ、特に民間であればあ許されないやうなことが新聞紙に載つても、食糧營團支部なるが故にそれが警察の問題にならぬと云ふやうなことは、殆ど枚擧に遑がないのであります、是は何とかしなければならぬと云ふことを大臣は仰しやるけれども、是は早急にしなければなりませぬ、特に私は、配給を受ける方面の代表者を參加させて貰ひたいと云ふことに付て、是非具體的にその考へを進めて戴きたいと云うことを希望として申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=10
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011・須永好
○須永委員長代理 次は高倉輝君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=11
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012・高倉輝
○高倉委員 此の戰爭中に農林中央金庫は販賣代金の振替貯金などの方法で二百二十億圓を農業會に集めまして、其の中の百三十億圓を中金に集めて居ります、さうして其の百三十一億圓の中の七十二億圓が國債で、十二億圓が朝鮮、滿洲などの投資になつて居ります、詰り中金は集めた貯金の六四%を侵略戰爭の爲に使つたことになつて居ります、是は是までの農業會の軍部との結付き、竝に其の官僚的な性格を持つて居つたことを能く現はすものでありますが、特に植民地投資に付きましては中金は府縣農業會或は市町村農業會を通じまして、之を非常に熱心に勸めて、其の結果市町村農業會二億圓、府縣農業會十八億圓、中金十二億圓、大體合計三十二億圓と推定される額を植民地投資として居ります、是が今度の軍需補償の打切りから囘收不能になって居る現状でありますが、之に對する責任をどう云ふ工合に感じて居られるか、又是は誰が此の責任を負ふべきものであるかと云ふことを先づ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=12
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013・石川準吉
○石川政府委員 只今の御質問の點に御答へ申上げます、成る程戰時中に於きまして、中央金庫が色々外債を持つたり、或は其の他の債權を持つたのでごさいますが、それは當時の戰爭遂行中に於きまして已むを得ざることであつたと思ふのであります、現在考へますと、それは極めて危險な、不能に近いやうな債權を取ると云ふやうなことは非難されるやうなことでありますが、恐らく當時の理事者と致しましては、左樣に思つたのではないかと思ひますが、併しながら此の點に付きましては、我々としましても、今後どうするかと云ふ點は、今出來まする所の金融再建の措置と睨み合せて十分考慮して行きたい、斯う考へて居ります、尚ほ府縣農業會、市町村農業會に對しまして、中金が命令したと云ふやうな御話でありましたが、私等の聞いて居ります範圍内に於きましては、取付的な囘收はやつて居るやうでありますが、別段是非是れと云ふやうな命令にまでは及んで居らぬやうに思ふのであります、尚ほ是等は何れも餘裕金の運用として、本來の所謂系統機關としての需要に支障のない程度に於てやつて居ることは、十分御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=13
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014・高倉輝
○高倉委員 上から強制したのではないと云ふ御話でございましたけれども、事實は農民が餘つた金を出したのではなくして、是はやらなければいけないと云ふ風に義務付けて、農業會其の他から勸めましてやつたものであります、隨ひまして、是は當然責任を負はなければいけないであらうと私は考へます、特にそれに對して責任を負はない一つの實例と致しましては、例へば今まで軍閥的な勢力と結び付て是の援助をして居つたと云ふやうなことを、今總務局長の御話でも現に認めておいでになるに拘らず 現に中金の荷見理事長は、戰犯の故に公職追放を命ぜられて居るにも拘らず、現在其の職に就いて居られる、是は噂かどうか知りませぬが、農林省其の他の官吏が、此の理事長の現職に在ることを、頻りと運動して居ると云ふことの噂まで飛んで居ります、是等の事實を聞いて、又荷見理事長が經濟團體の常務理事となつて居りまして、今度の銀行「シンヂケート」に働き掛けて居る現象を見ましても、是までの官僚的な、又軍國主義的であつた農業會の方針と云ふものを、一向改めて居るやうに見えませぬのですが、殊に今の理事長のことに關する御所見も承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=14
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015・和田博雄
○和田國務大臣 中金の理事長の問題でありますが、之に付きましては、特に中金の理事長に付てどう斯うと云ふことは實はないのでありまして、唯斯う云ふ金融の措置に付ての、色々な從來の關係もあり、仕事が實際にある譯であります、我々としては出來るだけさう云ふことをはつきりと處理を致しまして、さうして適當に處置致したいと、斯う考へて居るだけでありまして、高倉さんの仰しやるやうに、中金のことであるが故に、特に中金の理事長に付て政府としてやつて居る、斯う云ふ考へは毛頭ありませぬ、事情さへはつきりしまするならば、我々としては何時でも適當なる人に迭へると云ふことはちつとも差支へないのでありますから、唯今斯う云ふ金融の事情に付て非常に混亂が豫想される譯でありますので、それ等の仕事と云ふものを適當に處理して戴くと云ふ意味で、今まだ居られる譯でありますから、左樣に御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=15
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016・高倉輝
○高倉委員 今其の必要があるから、遽にさう云ふ措置が執れないと云ふ御話でありますけれども、併し戰犯に依つて公職から追放されると云ふことに對しては、隨分重要な地位に在る人も、是は已むを得ず去らなければいけないのであつて、是から日本を民主主義化するには、さう云ふ戰爭犯罪人として確認されるやうな人が公職に就いて居ることは、民主化の邪魔になる、のみならず是は國際信義の上にも大きな妨げがある譯でありますから、多少一時不都合があると云ふやうなことで、之を放置して置くべきものではなからうと思ふ、最近に、追放令に遭つた人が、政治機關にまだ殘つて居るのは宜くないと云ふ新しい聲明さへ發せられて居る状態でありますから、それを官廳の内でさう云ふ態度を御執りになることは、官廳自身が是までの官僚的なやり方、軍國主義的なやり方を根本から反省して居ないと云ふ非難を受けても仕方がないだらうと思ふのであります、さう云ふ意味で、やはり此の問題は解決される必要があらうと思ひます、同時に又斯う云ふ問題が起きて參りますのも、結局役員を官僚が任命する所の今の官僚制度から來て居るのでありますからして、之を民主化すると云ふならば、やはりさう云ふ方面を民主化する方法を、具體的に御考へにならなければ、幾ら口で民主化を言っても、是だけでは民主化にはならぬだらうと思ふのであります、是は意見として申上げて置きます、時間がないやうでありますから簡單に質問を進めて行きますが、もう一つ今度の改正に付きまして、殊に肥料會社の「シンヂケート」團に對して二十億圓の投資をして、本年既に拂込んで居られますが、此の肥料會社に對して何の發言權も持つて居ないと思はれます、さうすると、是までの軍國主義的な投資の代りに、新しく金融資本と結び付て、其の方の便宜を開く爲の改正であると云ふ非難を受けても仕方がないやうな點があるやうに思ひますが、此の點如何でありませうか、御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=16
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017・和田博雄
○和田國務大臣 中金の理事長の點は、是は事柄が色々の點ではつきり致しますれば、適當に善處したいと思つて進めて居るのでありますから、どうぞ誤解のないやうに御願ひ致します、それから中金の民主化の點に付きましても、是は現在としては法律で決まつて居りまするので、役員の任命と云ふことになつて居るのであります、中金其のものの將來の考へ方は、是は此の前の委員會で總務局長や私から御答へしたやうに、出來るだけ協同組合と云ふことの本旨を徹底させて行きたい、斯う考へて居る次第であります
それから肥料金融に付て、中金が「シンヂケート」に入つて資金を出すことが、是は金融資本との間の結託ではないか、斯う云ふ御話でありますが、實は、私共が肥料金融に付きましてあの「シンヂケート」の案を決めましたのは、是は色々の御批評が可能かと思ひまするが、我々がさう云ふ方法を採りました氣持は、あの當時肥料の方で一番の「ネック」は金融であつたのであります、肥料の方には、復興をする上に於きまして非常に多くの資金が要つた譯であります、所が其の資金を事實上出し得る能力のありまする所はないのであります、そこで肥料は農村の方から致しましても一番欲求して居る所であり、且つ我々と致しましても、出來るだけ早く肥料の方の復興を願ひたい、其の資金難を打開致しまする爲に、あの當時の事情として、一番力のありました中金の資金を移入すると云ふことに致したのであります、主としてあれは中金の資金に依つて居るのであつて、形は「シンジケート」と云ふ形を取つて居りまするが、我々があの當時ああ云ふ形で肥料の金融をしましたのは、今言つたやうな趣旨からでございます、是は金融をしたから、其の金融をした金融機關が其の工場を産業的に把握すると云ふのが、寧ろどちらかと云へば從來の金融資本が取つて居つた形態なんであります、我々としては、中金が工場に金融をしても、それは金融をしたと云ふ金融者の立場からの色々の何はありませうが、それで工場を全部從來の金融資本家のやうに把握して行くと云ふことを考へるのでなくして、金融はあの當時の差迫つた金融難を打開する爲めの金融であり、肥料に對しまするさう云つた監督其の他のものは、是は國家として、肥料管理案なら管理案と云ふものを以て臨んで行く、斯う私共としては考へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=17
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018・高倉輝
○高倉委員 結局さう云ふことは、最後には言譯けになつて、今大臣も御認めになつたやうに、實際に農民の欲する所の肥料が農民に配布されるやうな結果にならないで、金融機關に利用される結果になると云ふ危險を、其の中に非常に含んで居る、私は是は認めなければなるまいと思ふ、さう云ふ點が此の改正の中に含まれて居ると云ふことを、私は認めない譯に參らない次第であります
尚ほもう一點御伺ひ致します、今日本の前には、極端な農業恐慌が目の前に迫つて居ると思はれます、大正の末から昭和の初めに掛けての、あの第一次大戰後の農業恐慌とは比較にならない所の大恐慌が、目の前に迫つて居ると云ふことは、是はもう否定することの出來ない事柄でありませう、あの時の恐慌は、結局は日本の資本主義の持つて居る内部的原因が大部分現はれて來たのでありますが、今度の恐慌は、それと共に、更に日本の農業の是までの國際的競爭力の弱さと云ふものが加はつて來て、之を一層深刻な、悲慘なものに陷れるものであらうと、私共は考へます、是までは日本の農業の國際的な競爭力の弱さと云ふものを「カバー」する爲に、外米の原則的な輸入禁止、或は税關、外地米の移入制限等々の途を講じて居りました所が、今度の敗戰に依つて、日本の農業を保護する途が全くなくなつてしまつた譯であります、是が日本の農業恐慌に大きな原因を與へて、或る意味で日本の農業を破壞する所の危險さへ我々は感じなければならないのであります、極端な例は、日本の農民の作つた米を、日本人自身が買へなくなるやうな状態までも豫想しなければならないと、私共は考へて居りまするが、現在農村に多少の金があると云ふことになつて居りますけれども、併し此の農村の現金と云ふものは、殆ど是は生産に投資されることのない資金でありまして、所謂「ポチンチェル」資本、眠れる資金であつて、「インフレ」がなくなると同時に、此の資金も亦消え去つてしまふべき性質のものでありますから、若し此の「インフレ」が去つたあと、日本の農業が國際的な自由競爭の位置に置かれましたならば、農民は痩せ衰へた土地と、ちびてしまつた農具と、空つぽの財布以外には何にもないと云ふ状態に、追込まれなければならないと考へるのであります、之に對する對策と云ふものを、農林當局は持つておいでにならなければなりませぬし、其の爲に中金と云ふものも非常に大きな位置を占めるべきでありまして、其の意味に於きまして私は今度の改正に大きな意義を認めるのでありますが、此の目の前に迫つて居る日本の農業の大恐慌に對して、農林當局は如何なる對策を御持ちになるか、又それに對して中金を如何に御使ひになる御考へでいらつしやいますか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=18
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019・和田博雄
○和田國務大臣 どうも問題が大きいし、論點が多少はつきりしませぬし、前提が色々あると思ふのでありまして、中々是は明快な御答辯は致し兼ねる點もあると思ひますが、日本が恐慌に曝される、而も其の恐慌は一九二九年に始まつた世界的恐慌とは違つた形で現はれるかも知れぬ、斯う云ふ御話で、其の點に對する對策でありますが、是は私は斯う云ふやうに考へます、日本と云ふ國をそこに靜かに置いて、唯批判的な立場から、靜態的にそれを見て行くと云ふ立場でなくして、現在日本が歩んで居る途は、將來此の講和會議を通じ、又他の世界經濟へ入つて行く一つの下準備を致して居る譯であります、そこでそれには日本の經濟と云ふものが、唯農業だけでなしに、工業の部面に於きましても、出來るだけ早く色々の問題を處理して、再開して、日本の經濟が、全體の規模からすれば縮小されても、其の縮小された確かな地位からもう一遍再出發して行く、斯う云ふことを早くやつて置くことが、今あなたの仰しやいます恐慌に對した時に、日本がそれに對してどう云ふ程度に抵抗が出來るかと云ふことを、決定するものだらうと思ひます、それなくしては問題は私は解決出來ないと思ひます、日本の經濟に農業自體が孤立して存在して居るのではないのでありまして、農業自體の抵抗力と云ふものも、やはり工業面の生産再開と相關聯して考へらるべき問題であるのであります、例へば石炭が出來、又肥料が出來、さう云ふ農業の再生産に必要な生産材の面が、農業に十分注入され得まするやうな條件が、日本の工業の再開に於て、今後日本が本當の「フリー・ハンド」で、裸の儘で外國と接觸した時に、太刀打出來るやうな程度に出來て居りますならば、是は十分ななにが出來ると思ふのであります、さう云ふことをやるべく、日本と云ふものが苦悶致しつつ、建設を致して居るのが現在の姿だと思ひます、それを工業の面の再開を差措いて、唯農業だけの點から考へて、高倉さんの仰しやる恐慌に對する對策と云ふものをへ考て行きますと、私は可なり是は抽象的な議論になるので、甚だ遺憾だと思ふのであります、是は結局どう云ふ商品に依つて日本の農業が壓迫されるかと云ふ問題になると私は思ひます、さうすれば農産物間の競爭と云ふものが一番常識的に考へられるやうになると思ふのであります、其の時に農産物として考へられるものは、やはり主要の食糧だらうと思ひます、さうすると主要の食糧であると云ふことになれば、是は朝鮮及び臺灣の米作、それから「インド」、「ビルマ」、「タイ」佛印方面の米作、斯う云ふことになるだらうと思ふのであります、それから「アメリカ」の小麥、カナダの小麥と云ふものと競爭になるだらうと思ふのであります、其の競爭が日本の農業生産にどの程度に影響して來るかと云ふ問題に歸著すると思ふのであります、さうすると、其の場合に考ふべきことは、日本全體としての世界の貿易に參加し得る其の方式如何に依つて、是はまるで變つて來ると思ひますし、又其の當時に於ける日本の食糧其の他の事情に依つても、是は相當に變つて來るぢやないかと思ふ、日本の食糧生産が非常に窮屈であつて、生産力は上らず、而も不足であり、大部分を輸入に俟たなければならないと云ふやうな事情でありますならば、日本の農業に於ける影響と云ふものは可なりある、さう云ふ色色な條件がありますが故に、私は生産の條件を一應考へた上で、日本の農業として今我々が考へて置かなければならないのは、高倉さんが觸れられたやうに、此の「インフレーション」の過程に於て、農民の手に蓄積された貨幣資本を、出來るだけ早く現物の資本に換へさして置く必要がある、是は謂はば土地を持たして置くと云ふこと、それから少い資材ではあるが、出來上つた農具なり其の他の生産財を農民の手に早く確保させる、斯う云うことになるだらうと思ふのであります、隨て我々が實際上の今囘土地改革を行ひました一つの理由も、私自身としては其處に認めて居るのであります、是はやはり貨幣資本を農業に於ては出來るだけ現實の、而も不可缺の資本に轉換して行くと云ふことが、農民的な立場から見ましても、亦國全體の立場から見ても、妥當なことであるし、又良いことであらうと思つて居るのであります、さう云ふ基礎を與へて置いて、そこに現在の條件に於て許される材料の技術なり、智能なりを農業に滲透さしまして、それを農民自體の生長と言ひますか、教養と言ひますか、農民自體の一種の向上と云ふか、さう云ふものも必要だと思ひますので、爾か致しまして、農民の經營的な基礎其のものを鞏固にする、斯う云ふことが、一應は基本的にはなければならぬと思ふのであります、唯流通面だけの問題として恐慌を捉へられることは、どうかと考へるのであります、それから其の場合に於ける、中央金庫と云ふものがどう云ふ面に働くかと云ふことになりますれば、私は中央金庫としては、農業の生産面の經營と云ふ面に、出來るだけ其の資金を使はして、行くと云ふ方向に、金融機關としての將來の行き方があるのではないかと、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=19
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020・高倉輝
○高倉委員 農業恐慌が近い中に來ると云ふことだけは、御認めになつていらつしやいますやうでありますし、唯來方に付ての問題でありますが、併しどつちにしました所で、現在の日本の農業を敢然保護し、其の他の方法に依つて、護ることが出來ないか、今までは、それに依つて辛うじて日本の農業の國際的競爭力を護つて來たが、護れなくなつたことは、是は誰も否定することが出來ないのであります、さうしますと、例へば今日本に入つて居る主食物との競爭と云ふ話を、和田さん自身の方から御出しになりましたが、是れまでの計算でも、大體「ビルマ」米に比べて日本の内地米は二・四倍の「コスト」が掛ると云ふことになつて居つた、臺灣米に比べても一・八倍になつて居つたと記憶して居ります、さうすると是は運賃を掛けましても向ふから入つて來る米と、どうして競爭して行くか、今は占領下にありますけれども、時の問題として日本がやはり「ブレトン・ウッヅ」協定に入らなければならない、出來るだけ早く、此の協定に參加しなければならぬと云ふことは分り切つたことであります、さうすると否應なしに我々が自由競爭しなければならぬ、其の時に如何なる方法に依つて此の自由競爭に耐へられるかと云ふ問題であります、それで先程農地の問題が出ましたが、是は又農地調整法の時に、機會がありましたら私も深く伺ひたいと思ひます、此處で其の問題を出しますと一層混亂すると思ひますから、是は後に譲りますが、併し實際さう云ふ方法に依つて、果して今農民の多少持つて居る所の現金が、本當に生産財として轉換されるかどうか、私共は農村に於て見て居る限りに於ては、されて居ないのであります、之を轉換する方法、或は實際に外國の農業と競爭の出來る所の高さにまで日本の農業を引上げる爲には、是は本當に日本の農村を民主化しまして、農民の民主的な組織に基いて、農業經營を或る點まで發展させると云ふ方法以外にない、さうやれば今申しました所の資金も生産財に轉換する可能性も出來て來るし、又私共もさう云ふ一つの經驗を持つて居りますそれをやらずに、唯上からの改革に依つて、果して生産財が農民の手に入るやうになり、其の前に農民の生産が高められるかどうか、勞働生産率が實際高められるかどうか、其の點に對する確信を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 多少對蹠的な立場からものを言つて居るやうな感じがするのであります、私は「ブントン・ウッヅ」協定に早く參加すると云ふことは存じて居るのでありますが、唯斯う云ふ積極面もあることを御考は願ひたい、それは經濟は市場が廣くなればなる程、全體の世界經濟と云ふものは安定性を持つと云ふことで、やはり考へて戴きたい、日本は成程世界經濟に入ると云ふ一面に於て、競爭を受ける譯ですが、それと同時に、日本の農業の市場が開拓されると云ふ譯であります、日本の農業と云ふものは、何時までも米麥中心の農業に跼蹐すべきものではなくして、相當農業の中に「ヴァライエテイー」を持ち得るものだと考へて居る、そこで生産力の問題ですが、東亞諸國の生産力の問題は、それは生産力と云ふよりも、寧ろ「コスト」の問題とされたのでありますが、それは「インド」なり其の他の國々の、非常に低廉な「ミゼラブル」な生活を基礎にしての「コスト」の御比較だらうと思ふ、生産力自體から見れば、私は日本の農業の生産力と云ふものは、少くとも所謂東亞に於ては一番高かつたらうと思ふ、此の高かった日本の生産力が、初めて僕は明治以來日本が色々な點に於て發展して行つた一つの基礎を與へたのだと考へて居る、其の點に付て、農民自體の生活がどうであつたかと云ふ問題は殘つて居りますが、生産力自體から比べれば、日本の農業の生産力を中國或は「ビルマ」其の他の東亞の米作地帶に比べれば、是は雲泥の差であらうと思ふ、而も非常に「ミゼラブル」な「インド」其の他の農民の「コスト」を以て、直ぐ其の儘日本のものと比較することは、是は私はどうかと思ふ、日本としては、やはり「コスト」を下げると同時に、農民の生活水準を高めんと云ふ方向に持つて行くべきではないかと思ふ、それから、上からの改革で生産力と云ふものが上るかどうかと云ふ御疑問でありまするが、斯う云ふ農村を民主化すればと云ふ中には、私は上からの改革と云ふものと同じ條件がやはり含まれて居る、民主化される時には、民主化される人達主體の或る程度の生長と云ふものを考へなければ、民主化されない、併し上からの改革の場合に於て、實を結ぶかどうかと云ふことは、やはり經濟を行ふ農民自體と云ふものの、相當の啓發が私は必要だと思ふ、此の問題は、私はどちらの立場から言つて見た所で、同じ問題に歸著する、唯其の民主的のやり方と云ふものに付ては、是は勿論自覺した主體的な、農民其のものの本當の氣持から出て、初めて民主化されると云ふことは、私共別に異論はありませぬが、唯生産力自體の問題に於て民主化したと云ふことで生産力が上るかと云ふことになつて來ると、私は多少疑問を持つのであります、其の點は多少私は意見を異にする、斯樣に考へて居るのであります、唯協同化だけで日本の生産力が上るか、あなたの所謂民主化したと云ふだけで生産力が上るかと云ふことは、現實の問題としては、私は條件から言つて可なり無理がありはせぬかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=21
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022・高倉輝
○高倉委員 具體的な實例に付きまして、成べく觀念的な討論になりませぬやうに話を進めて行きたいと思ひます、それで生産力の低さと云ふことでありますが、生産力の低さと云ふことは、固より耕地面積から擧る所の収穫量と、それから今一つは、一人當りの勞働生産量、此の兩方の面から考へた問題であります、日本の農業と云ふものは非常に勞力の掛る農業であつて、勞働生産力が低かつたと云ふことは認めなければなるまいと思ひます、其の勞働生産力の低かつた所の日本の農業が、一方に於ては非常に野蠻な状態で勞働力の掛らない南方の農業と、或る場合には「アメリカ」其の他の非常に近代化した勞働力の高い農業と、此の二つを敵として戰はなければならないと云ふ所に現在我々の當面して居る大きな問題があつて、此の問題はやはり我我が命懸けで考へて置かなければ、是からの農業を破滅に陷れることになるだらうと思ふのであります、それで工業化と云ふことを仰しやいましたが、是は日本の農業を考へる爲に、他の面へ理由を轉嫁するやうな結果になります、工業化と農業との關係はやはり具體的にもつと考へて、例へば工業化するに當りましても、農村の工業化と云ふ問題から出て行かなければ、農村の問題は決して片付かないのでありませう、さうしてもう一つの協同化の問題でありますが、協同化が宜いと私共言ふのではありませぬ、協同化しなければ日本の農業は近代化されないと云ふことであります、畜力を入れるにも、機械力を入れるにも、是は協同化されなければ出來はしませぬ、協同化すれば勞働生産力が上つて、日本の農業が近代化すると云ふ意味でありますが、上から來ますやり方では、協同化に依る所の近代化と云ふことが出來ないのであります、是はやつて御覽になれば直ぐ分ります、今までさう云ふことで成功した例は日本にないのでありまして、それがありましたら日本は疾に近代化し、協同化して居る筈であります、日本の農業がちつとも近代化せず、協同化しなかつたのは、其の何よりの證據であります、今是だけはやらなければいけない、やるにはどうするかと云ふと、今申しますやうに、實際耕地の交換分合をやるにした所で、或は耕地改革をするにしましても、機械化、畜力化、總てのことが、やはり下からの民主的な組織に依らなければ實際出來ないのであります、それをやらなければ日本の農業は近代化しない、勞働生産力が高まらない、そこに於て外國との競爭性が弱いと云ふことになりますから、結局に於て是は我々が日本の農村を民主化し、日本の農業を近代化して、一刻も早く此の方向に向つて行かなければ、是からの農業恐慌に對して、我々は耐へることが出來ない悲慘な状態に陷るのではないか、其の結果は、日本農業だけではなく、日本全體に大きな缺陷を現はして、日本が國際的に復興する爲の根本的な缺陷になるのではないかと云ふことを惧れるから、此の問題を申上げるのであります、此の點に關する御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 日本の農業を近代化し、それに協同化を入れて行くと云ふ點に於ては、私は異論はないのであります、あなたの御質問が、今仰しやいましたやうに、唯協同化すると云ふことを言はれるので、協同化するのにはやはり協同化を行ふ所の農民自體の向上が必要だらう、主體的な條件が相當な高さに達することが必要だらうと云ふことを、今の事情に即して御答へしただけであります、それから協同化することに依つて生産が上る、斯う仰しやられることは、私は議論としては一應納得するのであります、唯問題は、どう云ふ面に於て、今の與へられた技術、條件に於て、協同化と云ふものがどの限度に於て可能であるかと云ふことに、具體的な問題としては懸つて居るのであります、それから農民の民主的な組織と云ふものに依つて初めて協同化が行はれる、斯う云ふことでありますが、組織として協同化を行つて行くと云ふことは、私は贊成であります、唯、今の日本の状態を考へて見た時に、日本の農業に於ては、例へば耕地の交換分合をするにしても、耕地整理を行ふにしても、缺けて居るものはやはり資本であります、其の資本とを實際上現在の農民が總て之を負擔出來るかと言へば、出來ないであります、そこで農業を民主化して、而も農業の近代化を圖つて行く爲には、どうしてもそこに或る程度の力を必要とするのであります、是は現在に於ては已むを得ない、それだけの力を培養する爲には、どうしても國家的な資本と云ふものを動員せざるを得ないのであります、さうして又事實現在の技術に於ては、國家として或る程度のものを持つて居るのであります、之を農民自體がやはり解決すると云ふ形で行はなければならない、さう云ふことを私は申上げて居るのでありまして、生産力の點に付ては、我々の考へて居りますのも、勿論段當收量だけではなくて、勞働生産力の向上と云ふことを同時に考へて居るのでありますが、唯勞働生産力だけを考へると云ふ行き方は、私は贊成し兼ねるのであります、やはり勞働生産力の増加と同時に、段當生産量が上り、同時に全體の生産量が上り、隨て「コスト」自體は下つて行くと云ふことでなければならぬ、是は國民經濟的にはどうか、斯う言ひますと、日本のやうな所では、自然的に非常に集約化せざるを得ないと云ふことになつて來ると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=23
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024・高倉輝
○高倉委員 そこで丁度問題が元の所に返つて來ると思ふのでありますが、詰りさう云ふ工合に日本の農業を近代化し、又協同化して生産力を高めなければいけない、之を當局に於て認められるとしますと、其の爲には此の中央金庫のやり方が大きな邪魔をして居つた、農村から取上げた所の金を農村の復興、或は農民の生活の向上、農業技術の向上、其の他農業の本質的な發展と云ふ方面には使はれることが非常に少くて、其の他の面に使はれて居つたと云ふ所に、是までの中央金庫、農業會、其の他を中心とする方針に誤りがあつた、であるから、此の際根本的に改めて、新しい方法に依つて、眞に中央金庫を金融機關の使命として、我が農業の本質的の發展、農民の生活の安定と云ふ方向に向けてやれるやうにすべきであると考へますが、其の爲には今度なされた改革が非常に末梢的なものであつて、何等の役にも立たぬのではないか、將來もつと根本的の改革をする積りだから、今度は此の程度に止めると云ふ御意見かも知れませぬけれども、併し斯う云ふ差迫つた問題なんだから、此の際にはもつと根本的な方法に改めて、眞に農民の金融機關になり得るやうな方向に持つて行くべきではないか、斯う云ふ工合に私共は考へて居るのでありますが、其の點は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=24
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025・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の改正に依りましても、御承知のやうに農地の造成、其の他農業生産面に於ける長期の金融の途を開いて居るのであります、農業金融其のものが生産的の金融の面と、それから販賣的の流通過程に於ける金融の面と——廣い意味では農村が生産から最後の配分までも含んで居りますのと同じやうに、金融の面に於ても全體を含まざるを得ないのであります、唯從來色々批判されて居つたのは、さう云つた形に於て生産面への金融と云ふものが、行はれることが非常に少かつたと云ふことで、斯う云ふ事實は私共あつたと思ひます、やはり其の面は國家がやつて居つたのであります、將來の面としては協同組合的な金融と云ふものが、やはり生産面に於ても十分金融し得るやうな運營方針を行つて行くべきものだと、方法としてはさう考へて居ります、大體今度の改正案に於きましても、其の面の考へ方は私共は多少とも取入れて居る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=25
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026・高倉輝
○高倉委員 尚ほ最後にそれと開聯して一寸御伺ひして置きますが、今度の改正案の中には養蠶、製絲の問題が含まれて居りますが、養蠶、製絲の問題が、果して此の程度のもので將來發展するものかどうか、現在は見返物資として製絲の問題が非常に重要であることは固よりでありますが、併し是から軈て時が經ちました時に、日本の製絲業は、例へば「ナイロン」其の他の化學工業と競爭しなければならぬ、又是まで日本に押へられて居りました所のあの中國の大規模なる養蠶業とも競爭しなければならない、其の時に、今の儘で進んで行きまして此の競爭に堪へられると考へておいでになるかどうか、或はそれに對して特別に方針を持つて居るかどうか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 是は中央金庫法の改正でありまして、金融部面に於て養蠶、製絲に便宜を與へようと云ふ譯でありまして、之を以て全部が全部日本の養蠶業の基礎が固まるとは考へて居りませぬ、是は當然のことでありますから、其の點は御理解戴けると思つて居ります、養蠶に付ては、御話のやうに、中國養蠶業と云ふものは戰爭前に於ても非常に進歩致しまして、殊に蒋介石は其の點に非常に力を入れまして、實際良い蠶種が出來て居つたのであります、又「イタリー」の方にも相當の蠶絲業がある、「アメリカ」の方は、需要の方から言ひますと、今まで輸出生絲の七〇%は婦人の靴下と云ふやうなものに使はれて居つた譯でありますが、是は「ナイロン」の進出に依りまして、此の方面は今の儘で放つて置きますれば、將來の需要はさう樂觀は出來ませぬ、唯肌觸りが「ナイロン」よりも生絲の方がまだ良いと云ふ點に多少の特色がある譯でありますが、今の儘で放つて置けば此の方面の需要と云ふものは、恐らく減るのではないかと正直に見て居ります、そこで問題は特に「コスト」の問題になつて來るのであります、「コスト」が安ければ、「ナイロン」よりも絹の方が肌觸りが良し、靴下としなも宜いのでありますから、此の方面で技術的に考へ、又養蠶の「コスト」をもつと下げ、生絲の「コスト」も下げて、而も良い品質のものを作ると云ふことに、私共としては今後何等かの制度を設けて、徹底的に研究して、改善して行きたいと思つて居ります、それから將來結局望まれるのは、「アメリカ」の女の肌着類と洋服であります、是は今は絹其の他人絹でありますが、「アメリカ」の習慣として女は一年に一着づつ買つて行く譯であります、さうすると此の方面に人絹と混つて絹が一割なら一割、或は技術に依つては二割と云ふやうに此の方面に混織として入つて行きますならば、是は非常な需要の増加となりますから、靴下など多少失つても遙かに殖えると思ひますので、斯う云ふ方面の研究が日本に於て、非常に必要だと思つて居ります、是は實は「アメリカ」の事情は、只今こちらへ來ます色々の雜誌を見て、又向ふの人の話を聞いて農林省としても調査研究を致して居ります、「アメリカ」の方の需要の動向と、中國或は其の他の蠶絲業の點なんかも十分考へまして、日本の蠶絲業と云ふものに付ては、唯單に桑園を確保するとか、養蠶農家を維持するとか云ふ以外に、もつと基本的な技術的な研究調査と云ふものを是非やつて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=27
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028・高倉輝
○高倉委員 農林當局は日本の農業に對して、大變樂觀的な見解を持つて居られるやうに見えまして、私共は不安を押へることが出來ないのでありますが、今御話になりました「コスト」の競爭性を作る爲には、何時でも日本の農民の生活を引下げることに依つて競爭性を作ると云ふことと、先程申しました保護政策、是まで此の二つに依つて居りました、所が今後愈愈保護政策が採れないと云ふことになりますと、「コスト」の競爭の爲に農民の生活を一層引下げなければいけない、結果に於てさうならざるを得ない危險が非常にあると思ふ、是は否應なしに現はれて來ると思ふ、それに對する對策をはつきり立てて置かないで、其の他の末稍的な方法では、此の問題の解決は行かないのではないか、さう云ふ意味でも、農村への本當の金融機關と云ふものを作り上げる必要があらうと考へまして、其の意味で今度の改正案に不安を持つて居ると云ふことを申上げて、私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 只今高倉さんの仰しやる結論は、甚だどうも遺憾なことで、何れ後で十分御諒解を得たいと思ひますが、私の御答へとしては、私は「コスト」を下げると云ふことは、何も農民の生活水準を下げると云ふことを意味して居りませぬ、是は、農業政策の目的は、一體農民の生活を下げると云ふやうな方向の農業政策と云ふものは、やるべきことぢやないのであつて、是は何處までも農民の生活の水準を上げ、農民の文化を高めると云ふ方向に行くべきであります、併し是は十分能く御考へを御願ひしたいのは、結局日本に於ける資本の蓄積と云ふものが、言換れば、日本の經濟力と云ふものが、全體として高まらなければ、此の問題は根本的には解決しない、所が農業に於ては、幸ひに今度の戰爭に於きまして、兎に角農業は、或る程度の被害は被つたが、此處に日本の資本の蓄積をやるべき餘地が相當あるものがある、茲に農業に對して凡ゆる改革を行つて、其の生産力を高めて、資本の蓄積と云ふものを多くして、日本の經濟の力を高めて、日本の農民の生活水準を高めて行く、斯う云ふことに經濟上としてはなつて行くのでありまして、唯生活水準を低めることに依つて競爭力を養ふと云ふ方法で、外國の農業に對する競爭と云ふ問題を考へて居ないことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=29
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030・高倉輝
○高倉委員 今の農林大臣の御話がございましたので、最後に一言結論を伺ひますが、さうすると、結局日本が「ヨーロッパ」の諸國と對立出來る所の資本主義的國家にならなければ、農業問題は片付かない、是から日本の進むべき道は、資本主義的に強化されると云ふ道だ、斯う云ふ結論になるのでありませうか、今の御話だとさう思はざるを得ないのでありますが、それで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=30
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031・和田博雄
○和田國務大臣 どうも高倉さんは相當「ロジック」が飛ばれるやうでありますが、私は經濟の生産力と云ふものを高めて行く、斯う云ふ風に申上げて居るのでありまして、さう云つた一つの政治論を申上げたのではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=31
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032・須永好
○須永委員長代理 森君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=32
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033・森幸太郎
○森(幸)委員 私は此の機會を借りまして、農林大臣の御所見を承りたいのであります、是は、五月三十日附を以て總理大臣竝に農林大臣の方へ建言書が提出されたと聞いて居るのでありますが、私は此の申上げることに共鳴し、或は之を信仰して居ると云ふ意味ではないのでありますから、それは豫め御含みを願ひたいと思ひます、それは、昭和十一年の頃から研究された榮養週期の學説であります、是は只今全國食糧増産同志會と云ふものが結成されて居りまして、相當の普及力を持つて居るのであります、私機會を得て先般此の人々等の會合に出席致しまして、さうして是等の人々の所見を聽いたのであります、必ずしも私は之を承服した譯ではありませぬが、今日は食糧増産の爲に、凡ゆる角度から全國民が研究を重ねて居る場合であります、所謂溺れる者は藁をも頼りにするやうな場合でありますから、凡ゆる角度からの研究と云ふものは、資料の許し得られる限りに於て、相當さう云ふ問題を取上げて研究をし、それの可否判斷を國民に示して、さうして國民を迷はせないやうにしなければならぬと思ふのであります、現在も強力綜合酵母と云ふものが相當に地方に於て普及されんとして居ります、是等のことも、政府として之を取上げて、それが良いものであるか惡いものであるかと云ふことをはつきりさせて、所謂生産農家をして誤らしめないやうにしなければならぬと思ふのであります、所が此の榮養週期説の問題は、昭和十一年から相當起つて、西ケ原の方で研究を重ねた結果、之に對し非常な壓迫を加へて、戰爭中に於ては、特高警察が此の普及者に對して妨害を加へたと云ふ所まで聞いて居るのであります、斯う云ふ問題を、農林省としてはどう云ふ風に御取上げになつて居るか、一つ政府の御方針、又強力綜合酵母等に對しての所見を承つて、農民をして迷はしめないやうにして戴きたい、斯樣に考へますが、農林大臣の御意見を此の機會に伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=33
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034・和田博雄
○和田國務大臣 其の問題は實は豫算總會でも出まして、農林省としては、普通民間にありますものを、唯頭からいかぬと云ふことを言つて居るのではありませぬ、十分に農事試驗場で科學的な研究を致しました上で、共の價値の判斷を致して居る譯であります、酵母酵素の問題に付きましても、色々酵母酵素を持つて來て貰ひまして、農事試驗場で實驗致しまして、其の上で意發見を表して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=34
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035・森幸太郎
○森(幸)委員 其の研究のやり方が、西ケ原式とは敢て言はないですけれども、農事試驗場と云ふものは、やはり自己の學説を楯にして、傳統を持つて居りますから、さう云ふ試驗成績の發表は、信用すべきであるのですけれども、一般には之を信用しない、現に榮養週期説の問題に於きましても、福島縣の試驗場では、非常に成熟期が早まつて來る、早まつて來るけれども、同じ圃場で作つても滑りが出て來る、同一の試驗でも同じ結果が出ない、さう云ふやうなことで色々な發表をする、斯う云ふやうに解釋するのではないかと思ふのであります、さう云ふ場合に、個々に研究して居る者を其の職員に加へるとか、所謂立會的な試驗を行ふと云ふことにして、第三者をして公正な試驗であり、成程是は良いとか惡いとか、批判を下せるやうにして試驗しなければ、折角やつても却て疑ひを深めると云ふことになつてはいけない、斯樣に考へるのであります、酵素の問題に於きましても、澤山實際に農業者に使はしめて、さうして實際の農業者を指導して行く、唯試驗場の限られたる場所でやらずに、實際にやつて行く、斯う云ふやうな研究を進めることが必要だと私は考へるのであります、今後さう云ふやうな態度を執つて下さらんことを希望して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=35
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036・須永好
○須永委員長代理 それでは今日はもう時間になりましたから、是で散會致します、次會は委員長から公報で知らせて戴くことに致します、散會致します
午後零時十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X01519460829&spkNum=36
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